○
渡部(一)
委員 どういうふうに議論するべきなのか、私は甚だ困惑しておりますのは、問題が深刻だからであります。
例えば、第八条に送金の自由が堂々とうたいとがっております。そして、この第八条で送金の自由がうたいとげられているなら送金は完全にすらすらと行われるのかと思っておりますと、その二項においてどんなことが書かれているかというと、「いずれか一方の締約国が、自国の
関係法令に従い、為替制限を課することを妨げるものではない。」こういうふうにいたしますと、その条項を最大限に拡大いたしますと、前項を完全に抹殺することが可能であります。だからこの第八条というのは事実上何も決めていないのに等しい。
日本側進出企業が送金の自由について盛んに叫んでおることに全くこたえていない、と言うのは少しひど過ぎる見解でしょうか。私は、こういう条項は一遍決めてしまうとひとり歩きして、条文だけが歩くことを
考えますと、これはちょっと無理なんではないかなと思われます。
〔
委員長退席、深谷
委員長代理着席〕
また第五条、これはその五項に「一方の締約国が自国の領域内において他方の締約国の
国民及び会社に対し一から4までに定める事項に関して与える待遇は、第三国の
国民及び会社に与える待遇よりも不利な待遇であってはならない。」とありますが、そんなことを言うのだったら、台湾とか香港の人々に対して金融でも企業活動でも与えられている特殊な
立場、これこそまさに香港及び台湾の
投資が
中国国内で大急増している
理由ではあるのでございますけれ
ども、それと同じ待遇にするのか違う待遇にするのか。同じ待遇にするというのが内
国民待遇との均一化ということでございますのに、内
国民待遇を一方でうたいながら、一方ではそういう現実がありながら、そしてこの第五条の五項を平然と持ち込んでくる。それが
議定書において最後にカバーしてごまかさなければならなかった
理由ではないのか。
そうしたら、一体これは何を
意味しているのか。内
国民待遇という
言葉だけを
日本はとる。実と花で分けて
日本は議論するというのはよく言うことですが、花だけとる、実はそっちに上げる。香港と台湾の企業はどんどん何でもおやりなさい、
日本側は何もしませんということを
意味している。しかし、そういう結論として、
日本はその後も
投資を増大しないではないかという悪い果実をもう
一つには受けなければならない。そうしたらこんな
交渉は事実上
意味がないのではないか。私は甚だ憂えているわけであります。もうこの辺はよくおわかりでございましょう、
交渉された皆さんとしては。だから
日本側としては、ほかの国と同じように内
国民待遇をつけた、
最恵国待遇をつけた取引をしましたよという花をもらって帰る、そして
中国側のメンツを立てる。実際的にはそんなことは全然できない現実というものをそのまま放置する。そして
日本はもう一回、
投資に対して不熱心という泥をかぶってみせる。悪く想像しますと、この間からの竹下さんの放言その他を糊塗するために、こういうまずい
協定を結ばれたのではないかと私は思うぐらいなのです。日中
関係を本当に友好にさせるためには、率直に物を言わなければならない。率直に物を言わないでおいて、後々恨みの残るような、正確に言えば誤解を生ずるような
協定をつくり上げたとしたら、後々問題点が多くなるのではないかと私は心配しております。
第一条にはもっと明快な部分が幾つかあります。私は特許に強いのですけれ
ども、一条の(1)項の(d)号に「特許権、商標権、営業用の名称及びサービス・マークに関する権利その他の工業所有権並びにノウハウに関する権利」と書かれています。けれ
ども、これに関する
中国側の
規定は未整備です。この間特許法ができたばかりです。商標権に関して全部完璧にできているとは思われません。そういうものが積み重なっているのに、ここに全部書かれている。自国内にそういう部分がないにもかかわらず、この
協定を結ばざるを得ない
中国側の
立場を
考えますと、これはちょっと気の損な
協定だと私は言わざるを得ない。
中国側に対しても気の毒、
日本側も思い込みで、これはおかしなことになってしまったと思わざるを得ない。
したがって、この
協定は形だけは非常にきちんとできているけれ
ども、
議定書で骨抜きになっており、本文の中でも骨抜きになっており、これでは運用次第でどうにでも解釈できる妙な
協定だと言わざるを得ない。
大臣、これは甚だよくできているけれ
ども、甚だ後に紛争を惹起しやすい
協定と言わざるを得ない。したがって、
大臣はこの運用について今後たくさんの追加協議を行わなければならないことになるでしょう。そういうのは
協定として安定的でないと私は思わざるを得ない。こういうのを受け継がれたことについては、私は甚だ批判的であります。
したがって、結ばれた以上、これを否定できるのは当議会でありますけれ
ども、御事情によってそれもできにくいお
立場に自分を追い込んでおられ、今度の李鵬さんとのサインの会は恐らく盛大に行われるおつもりなのでしょう。それを
考えると、私
どもは、この
協定に対して一体どういう補完
措置をとるかということに焦点を合わせるしかなくなってしまう。これはまことに将来に問題がある。私が今申し上げたことに一々御返事をなされば、
中国側に
説明をなさるときに大変困るだろう、私そこもおもんぱかっております。私は思いやりがあり過ぎると、さっき自分で自分を批判しました。私はこれ以上言いません。けれ
ども、まとめて言ってもらいたい。私は心配しております。
もしこれをやるのだったら、このペーパーの中で
一つだけ光っております
合同委員会、いろいろな紛争事項や何か何でも話のできる
合同委員会が十四条でできたということは、この
協定の中で
一つだけ光っていると思いますが、この光っている
合同委員会にあらゆる問題を持ち出して協議をする。ただ、協議をするという
意味が、
中国の方と協議するということが、両方が不満を言い合って何も実行しないという
合同委員会であってはならない。そこに持ち出された不平不満というのは、両国に知れ渡るように提出されなければならない。そしてその結論は、単なるお
話し合いじゃなくて、実現の可能性のある実効
措置となってとられなければいけないと私は思うのです。したがって、この
合同委員会においては、
日本は現実の
投資、合弁あるいは日中
貿易の前進に関して阻害要因となっている数々の失敗例を列挙して、例えば白書のような形にして提出する。それは遠慮とか礼儀とかではなくて真実を正確に述べる、進出した
日本の企業が本当に困りに困っている現実を正確に提出する、ちゃんと答弁いただくというふうに運用していただきたいと思うのですが、どうでしょうか。今までの間失敗した企業、日中友好の気持ちがありながら何もできないで帰ってきた企業、大きな進出の力を持ちながらためらっている企業、そのふんまんを述べるところがどこにもないわけでありますから、この
合同委員会において実効的な
措置がとられるような運営をしていただく。白書のような形で現実の問題点を全部列挙して
中国側に徹底するように渡す、こういう
措置をとっていただきたいと私は提案するのでございますが、いかがでございましょうか。