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1989-04-11 第114回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成元年四月十一日(火曜日)     午前九時開議 出席委員   委員長 浜野  剛君    理事 柿澤 弘治君 理事 北川 石松君    理事 田中 直紀君 理事 浜田卓二郎君    理事 深谷 隆司君 理事 河上 民雄君    理事 神崎 武法君 理事 林  保夫君       井出 正一君    石井  一君       石原慎太郎君    大石 正光君       鯨岡 兵輔君    小杉  隆君       坂本三十次君    椎名 素夫君       中尾 栄一君    中山 利生君       水野  清君    村上誠一郎君       佐藤 観樹君    高沢 寅男君       伏屋 修治君    正木 良明君       渡部 一郎君    石井 郁子君       中路 雅弘君    松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宇野 宗佑君  出席政府委員         外務政務次官  牧野 隆守君         外務大臣官房審         議官      谷野作太郎君         外務大臣官房外         務参事官    丹波  實君         外務大臣官房領         事移住部長   黒河内久美君         外務省アジア局         長       長谷川和年君         外務省欧亜局長 都甲 岳洋君         外務省条約局長 福田  博君         外務省情報調査         局長      山下新太郎君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      高橋 雅二君         通商産業省通商         政策局北アジア         課長      片山登喜男君         外務委員会調査         室長      藪  忠綱君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十一日  辞任         補欠選任   村上誠一郎君     井出 正一君   岡崎万寿秀君     石井 郁子君   松本 善明君     中路 雅弘君 同日  辞任         補欠選任   井出 正一君     村上誠一郎君   石井 郁子君     岡崎万寿秀君   中路 雅弘君     松本 善明君     ――――――――――――― 三月十六日  旅券法の一部を改正する法律案内閣提出第三  一号) 同月十七日  投資奨励及び相互保護に関する日本国中華  人民共和国との間の協定締結について承認を  求めるの件(条約第一号)  航空業務に関する日本国オーストリア共和国  との間の協定締結について承認を求めるの件  (条約第二号)  航空業務に関する日本国トルコ共和国との間  の協定締結について承認を求めるの件(条約  第三号)  所得に対する租税に関する二重課税回避のた  めの日本国ベルギー王国との間の条約を改正  する議定書締結について承認を求めるの件  (条約第四号)  所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税の防止のための日本国政府インド共和国  政府との間の条約締結について承認を求める  の件(条約第五号) 同月二十四日  実演家レコード製作者及び放送機関保護に  関する国際条約締結について承認を求めるの  件(条約第七号)(予)  千九百六十七年七月十四日にストックホルムで  及び千九百七十七年五月十三日にジュネーヴで  改正され並びに千九百七十九年十月二日に修正  された標章の登録のための商品及びサービスの  国際分類に関する千九百五十七年六月十五日の  ニース協定締結について承認を求めるの件  (条約第八号)(予) 同月二十三日  日本国平和宣言に関する請願(粟山明君紹介)  (第二五六号)  同(渡部行雄紹介)(第二五七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  投資奨励及び相互保護に関する日本国中華  人民共和国との間の協定締結について承認を  求めるの件(条約第一号)  旅券法の一部を改正する法律案内閣提出第三  一号)      ――――◇―――――
  2. 浜野剛

    浜野委員長 これより会議を開きます。  投資奨励及び相互保護に関する日本国中華人民共和国との間の協定締結について承認を求めるの件及び旅券法の一郎を改正する法律案の両案件議題といたします。  これより両案件について政府より提案理由説明を聴取いたします。外務大臣宇野宗佑君。     ―――――――――――――  投資奨励及び相互保護に関する日本国中華人民共和国との間の協定締結について承認を求めるの件  旅券法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  3. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 ただいま議題となりました投資奨励及び相互保護に関する日本国中華人民共和国との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この協定につきましては、昭和五十五年の第一回日中閣僚会議において協定締結交渉早期開始につき合意いたしましたので、その後両国政府間で交渉を行いました結果、昭和六十三年八月二十七日に北京において、両国政府代表者の間で、この協定の署名が行われた次第であります。  この協定の主な内容といたしまして、投資の許可について、最恵国待遇相互に保障しているほか、投資財産、収益及び投資に関連する事業活動、出訴権等に関する内国民待遇及び最恵国待遇、収用、国有化等措置のとられた場合の補償、送金等の自由、投資紛争解決のための手続合同委員会設置等について定めております。  この協定締結により、我が国中華人民共和国との間の投資増加並びに経済関係の拡大及び緊密化が促進されるものと期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第でございます。  何とぞ御審議の上、本件につき速やかに御承認あらんことを希望いたします。  次に、旅券法の一部を改正する法律案について御説明いたします。  我が国旅券発給件数は、昭和二十六年の旅券法施行以来増加の一途をたどってきましたが、特に最近においては円高傾向の定着と相まって急激な伸びを示しており、昭和四十七年に約百万件であった発給件数昭和五十七年には二百万件台、昭和六十二年には初めて三百万件台を超えて三百三十八万件に達し、今や我が国は米国に次ぐ最大規模旅券発給国となるに至りました。  従来はごく一部の国民を対象としていた旅券発給がこのように急激に一般化するに伴い、旅券発給窓口の混雑、旅券事務量の膨張、旅券管理複雑化等の諸問題が生じており、その改善が急がれております。他方、大量渡航時代における旅券事務及び出入国手続合理化及び管理強化必要性から国際的に機械読み取り旅券(MRP)の導入が開始されておりますが、我が国といたしましても早急に機械読み取り旅券導入することが望まれております。  現行旅券法昭和四十五年に改正して以来二十年を経過しており、このままでは、右のような現在の内外の諸状況対応し切れなくなっております。このため、旅券法の一部を改正することにより、手続簡素化事務の整理、合理化を行い、国民の一層の便宜及び行政効率の向上を図るとともに、内外における旅券制度の適正な運用を図ろうとするものであります。  以下、この法律案の主な内容につき御説明申し上げます。  第一は、一般旅券原則数次旅券化であります。  旅券を国際的な標準旅券に統一し、事務合理化を図るため、一般旅券は、有効期間五年の数次往復用旅券とすることを原則としました。ただし、二重に旅券発給する場合及び発給を受けようとする者が長期二年以上の刑で訴追中である場合等においては、渡航先を個別に特定し、有効期間を五年未満とすることができることとしました。一往復用一般旅券につきましては、外務大臣が指定する地域へ渡航する場合を除き廃止することとしました。  第二は、有効期間満了時点を明確化したことであります。  機械読み取り旅券導入に備えて、すべての旅券有効期間満了の具体的な日付を旅券面に記載することといたし、同日を経過したときに失効することといたしました。  第三は、提出書類簡略化等であります。  一般旅券発給申請のために必要な提出書類のうち、渡航費用支払い能力を立証する書類を削除することとしました。また、申請書請求書等通数及び写真のサイズ等詳細については、技術の進歩に伴って簡略化を弾力的に実施し得るよう、省令で規定することといたしました。  第四は、本人出頭義務の緩和であります。  本人出頭義務原則として交付時一回とし、申請時は幅広く代理申請を認めることといたしました。また、病気、身体障害交通至難事情等真にやむを得ない理由があるときは、例外的に本人出頭を免除し得るような救済措置を設けることといたしました。  第五は、記載事項訂正原則廃止であります。  機械読み取り旅券導入に備えて、旅券記載事項訂正原則として廃止し、新規発給にてかえることとしました。ただし、渡航者便宜のため、一般旅券につきましては、名義人の氏名、子の併記に係る事項等に関して変更が生じた場合には、別ページに訂正を追記することを認めることとしております。  第六は、切りかえ発給規定化と再発給制度の一部廃止であります。残存有効期間が一年未満になった場合等における切りかえ発給を明文で規定することとしました。また、査証欄に余白がなくなった場合についても切りかえ発給により新規旅券発給することとしました。第七は、合冊廃止であります。  事務簡素化の観点より、現在では諸外国にほとんど例を見ない合冊制度廃止することとしました。  第八は、手数料の一部の都道府県への分納化であります。  都道府県における旅券事務財政基盤改善するため、これまでの委託費方式を改め、手数料の一部を実費を勘案して政令で定めるところにより都道府県分納することとしました。  次に、施行期日等であります。  この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとし、手数料都道府県への分納に係る規定につきましては、平成元年六月一日から施行することといたしております。  以上がこの法律案提案理由及びその内容の概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  4. 浜野剛

    浜野委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     ―――――――――――――
  5. 浜野剛

    浜野委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河上民雄君。
  6. 河上民雄

    河上委員 ただいま外務大臣から趣旨の御説明がありました旅券法日中投資保護協定につきまして質問をいたしたいと思います。  まず、旅券法質問から始めたいと思います。  今大臣の御説明の中にもありましたように、現在は年間数百万の日本国民が、日本政府が発行いたします旅券を受けて海外に渡航している状況でございまして、旅券渡航先欄に、英語で言いますと、「本旅券北朝鮮を除くすべての国及び地域に有効である」、このように書かれております。以前はこのほか中国北ベトナム、東ドイツが含まれていたことは御承知のとおりでありますが、これらの国はすべて第二次世界大戦後の冷戦体制のもとにおける分断国家の一方であったと言ってよいのだと思いますが、今や歴史流れの中で三カ国はもう書かれなくなっておるわけであります。私どもは、今日、日本国民海外に参ります場合に必ず持ってまいりますこの旅券にあります「北朝鮮を除く」というこのただし書きを旅券から除くように主張いたしております。また、年来、私ども朝鮮民主主義人民共和国との間にさまざまな折衝をいたしてまいりましたのも、そうしたものが除かれる時代が来ることを念願していることを御理解いただきたいと思うのでございます。したがって、旅券法審議ではございますけれども、ここで若干、朝鮮半島をめぐる情勢につきまして、外務大臣の、また政府のお考えをまず伺っておきたい、このように思います。  最近、大喪の礼に出席いたしましたブッシュ・アメリカ大統領が、その後中国そして韓国を訪問いたしました。またさらに、それに先立ちまして、ソ連シェワルナゼ外相日本を訪問いたしました後、フィリピンそして朝鮮民主主義人民共和国を訪問してソ連に帰ったわけであります。私は、この背後にやはり中ソ和解という三十年来の対立に終止符を打つ画期的な状況というものがあると思うのでありますが、そしてその中で朝鮮半島情勢への対応をそれぞれの国が真剣に模索し始めた、こういうふうに理解してよいのではないか、このように思います。しかも、日本の新聞では余り大きく出ませんでしたけれども、去年の暮れからことしの初めにかけまして、中国北京を舞台にして、アメリカ朝鮮民主主義人民共和国それぞれの外務大臣、つまりシュルツ国務長官金永南外相との書簡の往復さえ行われたということが報道されておるのでありまして、私は、ここに一つの時のしるしみたいなものがある、このように思うのでありますが、政府はこうした情勢をどのように考えておられるのか、まず伺いたいと思います。
  7. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 お尋ねの朝鮮半島情勢、なかんずく北朝鮮に対する我が国対応、そうしたものを一連のものとして考えました場合に、世界が、また特に私たちが、朝鮮半島南北融和、さらには統合という問題に関しまして格別の関心を有していることは事実でございます。そのことは極東の安定につながる、世界の安定につながる、こういうふうに私たちは認識いたしております。ただ、過去三十六年の忌まわしき植民地化時代歴史のことを考えますと、日本が先んじて言うわけにはいかないというような一つの規制もおのずからそこに存在いたしております。  しかしながら、米ソ和解の中におきまして、また中ソ和解の中におきましても、当然この問題は大きな国際問題としてそれぞれの国々考えておりますから、私たちも常に、アメリカともソ連とも中国ともこの問題に関しましては、外相相寄るときには必ず話題にいたしております。特に我が国には不幸な二人の船員の問題がまだ片づいておりませんから、そうしたことを通じましても、ひとつ第三国の御協力のほどをお願いしたいと言いつつ、本年は総理並びに私も本会議施政方針基本におきまして、北朝鮮政府我が国政府との接触を速やかならんことを望むものである、このように申し上げておるというのが今日の私たち基本的な考え方でございます。
  8. 河上民雄

    河上委員 今宇野外務大臣も触れられましたが、先ほどの外交演説の中で、「北朝鮮との関係改善につきましては、朝鮮半島をめぐる国際政治の均衡に配慮しつつ進める」、こう述べられたことを指すのではないかと思いますが、政府は、いわゆる北朝鮮に対して、朝鮮民主主義人民共和国に対して敵視政策をとっていない、現在とるつもりもない、こういうふうに再三明言されるのでありますけれども相手側からすれば、朝鮮側からすれば、必ずしもそれで満足しているわけではないのでございます。それはやはり基本的には朝鮮半島に対して日本国自身が行うべき朝鮮民主主義人民共和国に対する植民地時代の後始末というものを怠っているというか放置してきたことにあるのではないかと思うのでありますが、外務大臣はその点いかがお考えでいらっしゃいますか。
  9. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今日までの歴史流れを見ますと、我が国といたしましては、いち早く韓国との間に基本条約を結びまして、そこには明らかに過去の日本政策、またいろいろな歴史的な事実、これに対しましては深く反省をしますとはっきり申し述べておりまするし、同時に、韓国朝鮮半島における唯一合法的な政権であるということも明言いたしております。これは特に国連決議に基づいての言葉であるということも御承知であると思いますが、そうしたまま、今日世界のいろいろな情勢が変わりつつあるときに、そのままの姿で来ておるということは事実でございます。だから、これであっては、せっかく私たち朝鮮半島融和というものを考え南北が第一義的にお話をなさることを考えるといたしましても、従来のそういう態度敵視政策であったと解されかねまじき状態も私は十分知っておりますので、したがいまして、過般、田邊書記長がお行きになられましたときを一つのよき契機として、竹下総理国会におきまして過去の反省というものは南北すべての朝鮮半島に住む方々に対する反省である、こういう趣旨発言をなさった。私は、この発言は非常によい発言である、だからひとつ北朝鮮もそうした我が国政府の真意を酌み取っていただきたい、かように思っているところでございます。
  10. 河上民雄

    河上委員 今外務大臣から重ねて先般の竹下総理国会における発言を再確認されことは大変結構だと思っております。竹下総理発言は、日本政府として公式に初めて遺憾の意を表したという意味におきまして、私はやはり画期的なものだと評価したいと思っておるのでございます。先般、田邊書記長が訪朝いたしましたときのいろいろ報道によりますと、会談の中で金日成主席も、一部の人々のよい発言、こういうような言い方で間接的ながらこれに対するコメントといいますか評価を加えているやに聞いておるわけでございますが、同時に、これが言葉だけに終わらないで、実際の行動にどうあらわれるかということを冷静に見守っていきたい、そういう発言も他の方から出ておるようなわけでございまして、私はこれからが大変大切な時期に来ていると思うのであります。したがって、これからの外務省また外務大臣発言なり行動というものが非常に微妙な、非常に緊迫した時代に入ったというふうに私は理解いたしております。ひとつそういう立場で進んでいただきたいと思うのでありますが、先般の竹下発言というものは、今を去る日韓基本条約でもうすべて終わったのではないということを示唆したというふうに受け取ってよいのでしょうか。
  11. 谷野作太郎

    谷野(作)政府委員 お答え申し上げます。  先ほど大臣から御答弁いたしましたように、日韓基本関係条約の第三条についての私どもの認識は、先ほど大臣から御答弁申し上げたとおりでございますが、この第三条は韓国政府のいわば基本的な性格について国連決議を引用して確認したものでございまして、と申しますことは、そこでこの条約におきましては、今後の我が国とそして北朝鮮との関係については何ら触れておらない。そういう意味において、そこは私どもとしては白紙である、今後の先方との話し合いを通じてこれを構築していくというのが私ども立場であるということでございます。
  12. 河上民雄

    河上委員 韓国との請求権及び経済協力協定というのは、同時に基本条約とともに結ばれたわけでございまして、そのときに無償有償、いわゆる五億ドルというのが決められたことは御承知のとおりでありますが、大変私ども記憶に残っておりますけれども小坂善太郎委員椎名外務大臣との質疑応答大臣もよく覚えておられるかと思いますが、いかがですか。
  13. 谷野作太郎

    谷野(作)政府委員 具体的にどの点を念頭に置いての御発言か存じませんけれども、いずれにいたしましても、韓国との関係におきましては、先生御記憶のように、有償無償協力を通じて請求権の問題についてこれを決着したという経緯がございました。
  14. 河上民雄

    河上委員 そこは大変大事なところでして、小坂委員質問されましたのは、第二条では、平和条約第四条(a)項を含めて、請求権問題は完全かつ最終的に解決されたとなっているが、北鮮との請求権問題はどうなるかという質問でありまして、それに対しまして椎名外務大臣は、基本条約第三条で国連決議百九十五号を引用して韓国はこういう性格の国であると規定しているが、これと関連して請求権問題についても、休戦ラインの北には実際上の支配、管轄権は及んでいないことを念頭に遭いて処理しておるので、北の問題はいわば残されておる問題である、こうなっております。これは間違いないし、今も政府態度は変わらないというふうに私は理解いたしますが、よろしいですか。
  15. 谷野作太郎

    谷野(作)政府委員 お答え申し上げます。  仰せのとおり、北朝鮮との間の請求権の問題につきましては未解決であるというのがただいまの政府立場でございまして、この問題につきましては、将来の日朝間の話し合いにゆだねられるべき問題であるというのが政府基本的な考えでございます。
  16. 河上民雄

    河上委員 それはここで確認しておいた方が今後の交渉上よいと思うのであります。  さらに言いますと、後に昭和五十四年の予算委員会で我が党の川崎寛治委員柳谷政府委員との間にも質疑応答がございまして、これによりますと、いわゆる北朝鮮には、現在というよりも戦争の終わった時点におけるいわゆる請求権の問題が残っている、双方の請求権が残っているという言い方をされておりますので、その点も今日変わっていないと確認してよろしゅうございますか。
  17. 谷野作太郎

    谷野(作)政府委員 そのとおりでございます。
  18. 河上民雄

    河上委員 そういうことで、ひとつそれはここで確認さしていただきます。  次いで、朝鮮民主主義人民共和国我が国との間の国交というのは現時点ではないわけでございまして、日本では、いわゆる北朝鮮は全く孤立しておって、何か孤立させないようにしてあげなければならないというような言い方がしばしば聞こえてくるわけでありますけれども日本を取り巻く周辺の国々朝鮮民主主義人民共和国との間の外交関係がどうなっているかということを調べてみますると、はっきり言うと、全く外交関係がないのは日本フィリピンだけでございます。いわゆるソ連から中国、そしてインドシナ三国はもちろん朝鮮民主主義人民共和国国交はございますし、それからASEAN諸国フィリピンを除きますとこれは全部あるわけです。そうやって考えますと、日本フィリピンだけがないわけでございまして、しかもシェワルナゼ外相がこの前フィリピンを訪れた後、アキノ大統領記者会見をいたしまして、近く朝鮮民主主義人民共和国領事部を置くというような発言もされているような状況であります。  こういう状況の中で、私どもが何らかの関係というものを急がなければならないということは明らかだと思うのであります。まだ国交がない段階におきましても、私はその努力をあきらめてはならない、こんなふうに思いますが、例えば貿易事務所を置くとかあるいは記者交換常駐を行うとか、あるいは関税の引き下げとか輸出保険の適用など具体的なアクションを、一斉にできないにしても、どれかから始めるというようなお考え大臣いかがでございましょうか。
  19. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 先ほども河上委員からは「北朝鮮を除く」というあの文言を削除できないかというお話がございました。これは御承知のとおり、経緯がございましたから最後に一つだけ残っているということでございますが、それとも関連しますが、やはり邦人がパスポートを持って行ってもらうというのは、その人自身保護ということを中心に考えていかなくちゃなりません。そこから貿易も始まるだろうし、いろいろなことが始まるだろう。こういうことになりますと、一番手っ取り早いのは承認という段階になれば非常によいわけでございますが、現在、御承知のとおり朝鮮半島南北統一という問題、そんな問題もございますし、いろいろな関係日本だけがどこかひとり走りしたということは私たちもいささかどうかと思いますが、これは慎重にしていかなければならない、かように考えております。したがいまして、一般論で申しますと、国交がないときには、その前段階として在外事務所を設けるということは一つの方法ではないだろうか、私はかように考えます。
  20. 河上民雄

    河上委員 大臣も御承知のとおり、日中国交回復の前段におきましては、国交がなかった時点中国との間にLT貿易というものがあったのでありまして、私どもは今大臣がおっしゃいましたその発言は大変重要だと思っております。ひとつそういう方向で今後御努力いただきたいと思います。  実は、昨年の九月、私は朝鮮民主主義人民共和国創建四十周年の記念式典に山口書記長のお供をして伺いまして、ピョンヤンにおける幾つかの式典に参加したわけでございますけれども、その中で金日成主席が報告演説というのを行いまして、これは約一時間二十分にわたるとうとうたる演説でございましたけれども、その最後のところで金日成主席は次のように述べておるのであります。「われわれは、わが国の自主権を尊重する資本主義諸国とも善隣・友好関係を発展させるべきです。共和国政府は、国家関係のない資本主義諸国とも平等と相互尊重の原則で経済・技術協力と文化交流を発展させ、それらの国の人民との友好関係を発展させるでしょう。」というような言い方をいたしておりまして、ここに国家関係のない資本主義国という言い方、単に資本主義国ともではなく、国家関係のない資本主義国ともという言い方をしている点を私どもは大変注目をいたしたわけでございます。こういう際にはお互いのサインというものが大変重要でございまして、サインを見失うことなく進めていかなければいかぬ、こんなふうに思っているのであります。  私は、今そういう在外事務所というようなお盾がございましたけれども、それではそういうとき、旅券法にこだわるわけでございますけれども、ただし「北朝鮮を除く」というのを除くことができるかどうか、今大臣一般論でお答えになりましたので、これは一般論でお尋ねしたいと思うのであります。例えば台湾との間には国交はございません。しかし、旅券法では台湾は除く地域に入っていないのですね。こういうケースもございますけれども、これはどのような理由からでございますか。
  21. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 お答え申し上げます。  台湾につきましては、もちろん在外公館はないわけでございますが、交流協会事務所というものがございまして、在留邦人の把握あるいは台湾側当局との接触も可能でございますので、特に指定地域とする必要はないということでそのような取り扱いになっております。  他方、北朝鮮につきまして、一般論として大臣がお答えした点を踏まえてお答え申し上げますと、北朝鮮に渡航した邦人の保護につきまして、随時日朝関係当局間で実務的な連絡が行われるような体制ができたような場合には、すなわち一般論として、在外事務所の設立といったような条件が整うのであれば、現行の取り扱いを見直して数次旅券発給することが可能ではないかと考えております。
  22. 河上民雄

    河上委員 今の御答弁からいたしますと、そしてまた大臣の先ほどの御答弁を重ねて考えますと、何らかの在外事務所というものが設置されるような状態になりますときには、いわゆる旅券からただし書きを除く、必ずしも国交が完全に樹立しなくても除くというふうに理解してよろしゅうございますか。
  23. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 そのように御理解いただいて結構だと存じます。
  24. 河上民雄

    河上委員 それでは、今回の旅券法の改正の一番のポイントになりますが、第五条の三項のただし書きについて少し伺いたいと思うのであります。  ここには依然として「外務大臣が指定する地域」という言葉が入っておりまして、それに伴って指定された地域については五年の数次旅券発給という原則が除かれるわけですけれども、この「外務大臣が指定する地域」という言葉はどのように解釈し得るのか。また将来の展望の中でどのような可能性が秘められているのか。秘められているというのはちょっと極端な言い方でありますが、将来への展望、今大臣がおっしゃいましたような将来の外交的努力と相まって、この第五条がどのような解釈を可能にするのか、私ども非常にその点に関心を持っておりますので、伺いたいと思います。
  25. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 先生御指摘のように、「外務大臣が指定する地域」は、第五条第一項によりまして、通常の数次往復用旅券渡航先からは除かれ、同条の第三項により、原則として一往復用旅券が発行されることになっておりますが、このことは、外務大臣政策的判断でその地域を指定から外せば、その地域も他のすべての地域と同様に通常の数次往復用旅券渡航先に含まれるようになることを意味するものでございます。したがいまして、外務大臣が将来北朝鮮を指定地域から外すことを決めた場合には、外務省告示を改定することによりまして、北朝鮮を他のすべての地域と同じ扱いにすることができ、法律を改正する必要はないと考えております。
  26. 河上民雄

    河上委員 今の御答弁の中で、政策的判断という言葉がございましたが、それは先ほど来外務大臣がおっしゃっておられるようなことを意味されるというように理解してよろしいですか。
  27. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 そのような御理解で結構だと思います。
  28. 河上民雄

    河上委員 今の外務大臣が指定する地域に関連して、今度は非常に具体的なことを伺いたいのでありますけれども、はっきり申しまして、朝鮮民主主義人民共和国との往復に関しましてでありますが、数次旅券の発行が今答弁されたような解釈の中で現在においても可能であるというふうにも読み取れるのでありますけれども、例えば日朝貿易などに携わっておるような方々につきまして、現在は常に一回一回、絶えず二、三カ月ごとに行かれる方でも手続に二月くらいかかるというようなケースがよくあるわけですね。そういうような方々が今後外務大臣政策的判断で数次旅券発行の対象になり得るのかどうか。してほしいという要望も非常に強いわけですけれども、その点はいかがでございましょうか。
  29. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 現在の状況におきまして、今御指摘のような人について数次旅券発給できるかというお尋ねでありますと、先ほど来大臣の御答弁にもございますように、邦人保護の観点からはそのような環境が整っていないというふうにお答えせざるを得ないわけでございますが、将来の展望といたしましては、先ほど来御答弁申し上げておりますような状況になれば、その時点で数次旅券発給ということは可能になるというふうに考えております。
  30. 河上民雄

    河上委員 大臣、日朝関係の打開というものが大変多くの困難を伴っているということは、朝鮮半島をめぐる情勢にも一つの原因があるかもしれませんが、日本側に歴史的な大きな原因があるというふうに、先ほど大臣もそれを認められたわけですけれども、私ども社会党もかつて飛鳥田委員長時代から、そして石橋委員長、土井委員長の各時代を通じまして努力いたしてまいりまして、大変だということはよく承知いたしておりますが、しかし一歩一歩積み重ねていく中で、それはそのときは即効性はなくても、ここというときに布石を打つということが最終的なゴールに到達する道だというふうに私は思っておるわけでございます。  そういう意味で、今後、外務大臣におかれましても、ぜひ慎重かつ積極的な御努力をいただきたいと思いますが、その点の外務大臣のお考えを承りたいと思います。
  31. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 北朝鮮に関しましては、特に河上委員もそのお一人でございますが、歴代社会党の委員長が非常に御尽力していただきまして、また今回の田邊さんの訪朝によりまして一段と前進した、かように評価してもいいのではないか、かように私は考えております。  もちろん、これはやはり世界情勢がそのような対話の時代を迎えつつあるという大きな背景があるということも私たちは忘れ去ることはできませんし、また同時に、韓国の盧泰愚大統領も七・七声明におきましていろいろとそうした呼びかけをしていらっしゃる、こうしたことも大きな背景である。だから、我々もそうした動きというものに対しまして十分責任を持って対処しなければならない、かように思っております。  だから先ほど来、今回の旅券法の改正におきましても、私たちといたしましては、前には見られないような一つ前進をここで試みておるということもひとつ御理解賜りたいと思いますし、その一般的な状況をさらに具体化さすためには、私はやはり速やかなる政府間の話し合い、これもぜひともお願いします、恐らくは田邊書記長からもそういう話が届いておると思います。あるいはまた、自民党訪朝団やってきてもいいですよ、こういうふうな態度も見られます。お互いにそうした面では、ひとつ対話を促進したいものだという心が私たち旺盛ですが、今まで反応のなかった北朝鮮からもそうしたものが何かうかがえる、こういうふうなことでございますので、なお一層、先ほど来申し上げましたような観点において、この問題はやはり日本政府といたしましても責任を持ち、なおかつ慎重に一歩一歩進めていくということは大切なことである、かように心得なければならない、こういうふうに私は認識いたしております。
  32. 河上民雄

    河上委員 大臣、ありがとうございました。  それでは、あと若干事務的なことを今度の旅券法の改正に関連して事務当局に伺いたいと思います。  今回改正されなかった箇所というのが、そして昭和四十五年改正の当時各党からその運用、適用について非常に論議がありましたものが幾つかあるわけでございます。その一つが第十三条一項五号、いわゆる公安条項と呼ばれるものでありますが、それについて一、二お伺いしたいと思います。  大阪在住の主婦の水野マリ子さん、これは旧姓中野マリ子さんというふうに伺っておりますが、水野さんに対する旅券発給拒否の例がございます。この主婦に対しまして二度も本条項を盾にして発給制限をいたしまして、行政訴訟にまで発展をいたしたことは御承知のとおりであります。  本件につきましては、昨年五月、大阪地裁はこれを違法との判決を下しましたが、外務省はその後控訴されたのか、それとも控訴を断念されたのか、お伺いいたしたいと思います。
  33. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 今御指摘の事案につきましては、控訴いたしております。
  34. 河上民雄

    河上委員 その手続はいつとられましたか。
  35. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 まことに申しわけございませんが、ちょっと手持ちの資料がございませんので、調査いたしましてお答えいたしたいと思います。
  36. 河上民雄

    河上委員 それは後ですぐお返事いただければ結構です。  いずれにせよ、これは裁判所ですら違法という判定を下すようなケースでございまして、私はやはり、今回改正の対象になっておりませんけれども、こうした第十三条一項五号のごときものの運用には篤と乱用を戒めていただきたい、このように思います。これはお答えは、というよりも、特に要望をいたしたいと思います。  それでは、後でまたお返事をいただきましてから、もしこの時間の間にお返事がいただければ、そのときに触れさせていただきます。  それから、先ほど大臣趣旨説明の中にありましたが、機械読み取り旅券導入ということが今回の改正の大きな目玉になっておるわけでございます。もう一つは、地方自治体が扱う事務手続に対しまして、いわばお金がそれぞれ地方自治体へ行くという点があるわけでございますが、この機械読み取り旅券導入に伴いまして、旅券のサイズが今度は少し小さくなるというふうに伺っておりますけれども、これは当然従来の旅券をそのまま使うわけでございますから、新しい旅券のサイズ、つまり旅券のサイズを改めるのはいつごろからになるでしょうか。
  37. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 機械読み取り旅券導入につきましては、現在鋭意努力中でございまして、平成四年ないし四年度には導入いたしたいと考えております。それに伴いまして、旅券のサイズも先生御指摘のような少し小さな携行しやすいようなサイズに変更することといたしております。
  38. 河上民雄

    河上委員 大体いつごろになるというふうに伺っているわけです。
  39. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 現在のところ平成四年をめどとして作業いたしております。
  40. 河上民雄

    河上委員 この平成四年というのは四年の四月一日からという意味ですか。
  41. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 現在、機械の開発あるいは予算の手当て等の問題がございまして確実にお答えしにくい点がございますけれども、私どもの一応の目標といたしましては、平成四年度開始ということで考えております。
  42. 河上民雄

    河上委員 それでは、もう時間が大分少なくなりましたので、日中投資保護協定についてお伺いをいたしたいと思いますが、大臣はこの後沖特の方へ行かれるやに伺っておりますので、その前にちょっと基本的な点を大臣に伺いたいのであります。  日中関係におきましては、今投資促進というのは大変緊急の課題だということで、今回、李鵬首相が来られます場合にも、それが大きな項目になっているというふうに新聞報道で伝えられております。そうした経済交流、技術、文化交流というのは非常に大事でありますけれども、しかし、その前提において、日中戦争をめぐる歴史認識というのが一番大事ではないか、私はこんなふうに思うのであります。さきに竹下総理国会で、二月でしたか、答弁されました答弁内容というのは、中国では日本考えている以上に大変な衝撃を与えておることは大臣も既に御承知だと思うのであります。人民日報などの報道によりましても、二月二十一日の全人代で代議員からこの問題が取り上げられまして、後世の史家の判断に任すというような言葉などが、四十年たって、一体いつになったら後世になるのかというような歴史家からの批判も起きたくらいでございます。また李鵬首相も四月に入ってからこの点を再度取り上げておられるのでありますが、このような竹下総理発言というのは日中間にぎくしゃくしたものを引き起こしておりますことを念頭に置きながら、外務大臣、さきの大戦に対する認識をどうお考えになっておられますか。
  43. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私も李鵬首相と昨年直接お話をいたしております。その当時は、我が国におきましても一国から批判を招くような発言があったことも事実でございます。私はここは大切にしなければならないと思うのですが、李鵬首相は次のようにおっしゃいました。我が国においても目の前で父が殺され、母が殺され、子供が殺されております、それを見た人が現在祖国のために働いてくれます、悲しい思いであります、だから、そういう悲しい思い出を忘れて日中間のすばらしい関係を結ぼうとお互いに努力しておるところでございますから、そういうようなことを思い出させるようなことがないように格段の御配慮のほどをと、こういう私といたしましても本当に胸を打たれるような発言があったわけでございます。帰りまして、私はしばしばそういう御発言を引用して日中間の大切なことを申し上げております。  したがいまして、我が国においては目の前でそういうことはなかったわけでございますから、私は、明らかに日中戦争というものは軍国主義による侵略である、こういうふうに定義づけまして、そしてそうした認識の上に日中永久の友好を築かなければならぬ、かように思っております。
  44. 河上民雄

    河上委員 今のような宇野外務大臣のお考えは、宇野外務大臣自身の戦争体験というものも根底にあるのではないかと思いますけれども竹下総理も今外務大臣が言われたと同じ認識に立っていると大臣はお考えになっておられますか。
  45. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 過般の衆議院の予算委員会におきまして、この問題が野党の方の質問によって取り上げられましたときに、総理大臣もはっきりと外務大臣の認識と私も何ら変わりませんということを明言されました。
  46. 河上民雄

    河上委員 私、一九八五年に訪中をいたしまして、そのときに鄧小平さんとお会いする機会がございましてお話を承ったのでありますが、鄧小平氏がこのように申しました。人は歴史を忘れることはできるが、歴史歴史としてある、こういう非常に味のある、また非常に胸を突かれる言葉を伺ったのでございます。どうも我々はつい歴史を忘れてしまう、あるいは忘れたがるという傾向があるわけですけれども、現実の外交におきましても、そういう点は一番大事なことだ、私はこんなふうに思います。既に中国との間には国交が樹立し、また平和友好条約も結ばれ、さまざまのルートで交流が進んでいるわけでありますけれども、何かそこはいつもこれが繰り返されるということがあってはならないことじゃないか、私はこんなふうに思っております。  外務大臣総理があのような発言をされることのないように、後から言葉が足らなかったなどというようなことを言わなければならないことのないように、特に外交の担当者として、ひとつそういう点を全閣僚についても責任を持っていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  47. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 既に日中平和友好条約におきましては、今の認識がきちっと書かれておるわけでございますから、内閣が変りましょうとも、やはり内閣の承継性という点からも、当然そのことは総理を初め全閣僚が守っていかなければならないと私は思いますし、このことは私はかつていろいろな機会に申し上げたことがございます。今後もそういうことはやはり守っていかなければならぬと考えております。
  48. 河上民雄

    河上委員 それでは、少し技術的なことに入って質問させていただきたいと思います。  今回の日中首脳会談における議題はどのようなものになるでしょうか。
  49. 長谷川和年

    ○長谷川(和)政府委員 今回、李鵬総理が参りまして首脳会談が行われるわけでございますが、議題としては、日中二国間関係、それから国際情勢、二国間関係では、例えば経済、貿易、その他の問題、国際情勢につきましては、アジアあるいは世界、こういった問題について議論が行われると承知しております。
  50. 河上民雄

    河上委員 対中資金協力の問題も当然出てくると思うのでありますけれども、この点については政府はどのような見通しを持っておられますか。
  51. 長谷川和年

    ○長谷川(和)政府委員 対中資金協力に関しましては、昨年竹下総理中国を訪問されましたときに、約八千五百億円にわたります、内訳は八千百億円の円借款、約四百億円の輸銀ローンでございますが、これを約束しております。政府の方針としては、こういった既にコミットしました経済協力を今後とも進めていく、中国の現在の改革、開放、こういった政策中国の友好国としてお手伝いをするというのが政府基本的な考えでございまして、こういった考えに沿いまして、従来からの約束を誠実に履行していく考えでおります。
  52. 河上民雄

    河上委員 それでは、具体的に伺いたいのでありますが、政府は、我が国から中国への直接投資を促進するために日中投資促進機構、正式の名称か仮の名称か存じませんが、こういうものを双方に設立する構想を明らかにしておられるようでありますが、一体これはどういう性格のものなのか、またどういう仕事をするのか。伺うところによれば、どうもこれは民間の人たちの機構であるようにも思いますが、政府はどの程度コミットするのか。また双方に設立するという以上、北京と東京に事務所を置くというようなお考えなのか。そうした具体的な内容について御説明いただきたいと思います。
  53. 片山登喜男

    ○片山説明員 お答えいたします。  先生御指摘の日中投資促進機構の件でございますけれども、これは仮称であるというふうに聞いております。この組織につきましては、投資保護協定の署名を受けまして、昨年十月、中国投資環境調査団が派遣されましたけれども、この調査団のフォローアップをするという趣旨で、調査団に参加いたしました主要な企業の方々が発案をいたしまして、新しい対中投資の促進をする組織を設立したいということで準備が進められているものと承知しております。したがいまして、性格につきましては、民間が中心となった現在のところ任意団体として設立したいというふうに伺っておりますけれども、そのような性格のものだと思います。  また、仕事につきましては、現在準備作業を進めているということでございますけれども基本的には、調査団の皆さんの御意見として、対中投資を促進するためには個々の投資活動が円滑にいくということが極めて重要だという考え方から、個別の投資案件につきましていろいろな支援をしていく、そういう仕事をしたいというふうに考えていると承知しております。  また、中国側の機関につきましては、投資活動の円滑化のためには中国側の御協力を得るということが極めて重要であるという観点から、中国側も対応する組織をつくってこの活動を支援していただきたいという意向を持っているというふうに聞いておりまして、新しい組織、できれば中国にも事務所を持ちたいという意向であるというふうに承知しております。
  54. 河上民雄

    河上委員 それにつきましては、政府としてはどの程度責任を持つのか。
  55. 片山登喜男

    ○片山説明員 ただいま答弁させていただきましたように、基本的に民間の団体でございますので、政府として直接支援するというのはなかなか難しい面があるわけでございますけれども、例えば投資を助成するいろいろな機関がございます、ジェトロとか日中経済協会、そういう団体もあるわけでございまして、そういう機関が今度新しくできる組織に十分協力をしてほしいというようなことを要請する等、新しくできる組織についてはできる限りの支援をしていきたいというふうに考えております。
  56. 河上民雄

    河上委員 この協定だけでは、今後の日中の投資促進ということはうたわれておりますけれども、しかし大体どのくらいの規模になるかということは必ずしもはっきりしないのですが、日本側あるいは中国側が、日本からの中国に対する投資の規模はどのくらいになることを想定しているのか、また要望しているのか、そういうことは通産省の方ではおわかりになっていませんか。
  57. 片山登喜男

    ○片山説明員 現在の対中投資、年間約三億ドル程度ということでございます。通産省として決してこの数字が十分なものであるというふうには思っておりません。しかしながら、直ちにどのくらいの水準でなければならないかということも大変難しいことでございますので、できるだけ拡大していくということを期待している次第でございます。
  58. 河上民雄

    河上委員 せっかくこういう協定を結んで、そしてまた今首脳会談を行うわけですから、大体こういうところまでいきたいという目標みたいなものはあるはずだと思うのですが、実際はどうなんですか。できるかできないかは別として、この程度までにやらなければいかぬというお考えはないのですか。
  59. 片山登喜男

    ○片山説明員 現在のところ、そのような具体的な目標というものは持っておりません。
  60. 河上民雄

    河上委員 日本の場合、中国との貿易、それから経済協力においては他国より日本の比重が非常に大きいわけですけれども、しかし、投資に関しては欧米の方がはるかに進んでいる、こういう現状があるわけですね。欧米の方は、やはり中国の市場の将来性というものを買ってかなり大胆にやっておりまして、先ほど私がちょっと触れましたように、一九八五年に鄧小平氏にお会いしたときにも、どうも日本の資本家は憶病だというような言い方をしておったのを思い起こすのです。  この協定、つまり日中投資保護協定が結ばれたそもそもの目的からいいましても、何かやはり目標みたいなものを持っている必要はあろうかと思うのでありますが、ひとつこれは外務大臣投資促進という目的でこういう保護協定を結んだわけですから、大体こういうところまでいきたい、現在は年間三億ドルというお話ですけれども中国側からの要望というのは、これをもっとふやしてほしいということにあろうと思うのですが、大体心づもりとしてどういうふうにお考えでいらっしゃいますか。李鵬首相から何か要望があった場合に、ただそれを受けるだけなのか、日本側として大体ここまでにしたいというようなお考えは一体ないのでしょうか。
  61. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 河上委員も御承知のとおり、日中貿易も画期的に大きくなっておりますし、その間、双方の理解と信頼が非常に大きく構築された結果だと私は思います。特に我々といたしましては、従来、雇用の問題あるいはまたエネルギーの問題等々、我が国投資そのものにつきましても制約するようなことが幾つかありました。だから速やかに投資保護協定というものを結んで、そうした制約が極力ないようにしようではないかということでやっておるわけでございますから、我々といたしましても、中国側に対しましても、いろいろな面でやはり今申し上げましたようなことの具体化を進めることも必要である、こういうふうに考えております。  例えば、あれだけの大きな土地でございますから、山西省ではこういう問題がある、奥地ではこういう問題があると、いろいろあるだろう、こういうふうに思っておりまして、私たちも経済界の方にお目にかかりますと、例えばこの間中国へ行ってきたが、こういう場所についてはこういうような企業あるいはまた産業の誘致を考えられておったし、進出を望んでおられるがと言って、極力その具体的な事例を話して、またいろいろな経済界の考え方も聞いております。それをまた率直に大使館を通じましてお話をするというふうなことで、この問題は保護協定ができることにおいてさらに相当推進される、こういうふうに私は確信いたしております。特に李鵬総理が今回お越しの節には、そうした問題を今後さらに発展せしめるよう全力を挙げたいというお気持ちを十分お持ちだというふうに嗣いでおりますので、今回の訪日を生かしていかなければならない、意義ある訪日にしなければならない、かように考えております。
  62. 河上民雄

    河上委員 それでは、この協定の中の技術的なことでありますけれども協定本文では内国民待遇を認めておりますが、議定書においては、「真に必要な場合において他方の締約国の国民及び会社に差別的な待遇を与えることは、「不利な待遇」とみなしてはならない。」というような規定が入っております。これはどういう意味でしょうか。この文章だけ読みますと、運用次第では内国民待遇というのは有名無実化される懸念もあるんじゃないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  63. 谷野作太郎

    谷野(作)政府委員 お答え申し上げます。  アジア局長が参っておりますが、投資保護協定は私が最後の段階で参画いたしましたので、お許しを得まして私の方から御答弁させていただきます。  ただいま御指摘のように、協定の本文におきまして、これは初めてでございますが、中国はこれまでヨーロッパ諸国を中心に二十数カ国とこの種の協定を結んでおるわけでございますが、原則的に我が国に初めて内国民待遇を認めたということでございます。  そこで、ただいま先生から御指摘のように、他方議定書におきまして例外の措置を大変激しい日中間の議論を経て設けました。その例外というのは三つございまして、一つは公の秩序、第二点は国の安全、そして第三点は国民経済の健全な発展のために真に必要な場合、これらのいずれかの要件を満たす場合には、内国民待遇を必ずしも与えなくても、それをもって協定の違反とは直ちに認めないということでございますが、もう一つここで重要なのは、しからば何をやってもいいのかと申しますと、その場合におきましても、中国側できちんと透明性を持って関係の法令で例外のケースを明示していただきまして、透明性を持ってそういった例外措置をお示し願いたいということでございます。  いずれにいたしましても、本体は、初めて日本に対して内国昂待遇をこの協定をもって認めたということが非常に重要なことでございまして、この点につきましては、日本の経済界からも一応の御評価をいただいておるところでございます。
  64. 河上民雄

    河上委員 ありがとうございます。  それでは、先ほど領事移住部長にお願いをいたしました件について御答弁いただけますか。
  65. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 先ほど御指摘がございました水野マリ子氏に対する旅券発給拒否の件につきましては、政府といたしましては、昭和六十三年六月九日、大阪高裁に控訴いたしております。
  66. 河上民雄

    河上委員 今回、旅券法につきましては、第五条で、将来の展開に対して対応できるような理論的な装置が一面できているようにも思いますけれども、しかし、今お尋ねをいたしました第十三条一項五号のように、昭和四十五年当時から大変論争になりました点がほとんど改正の対象になっていないのでございまして、その点大変残念だと思っております。  最後になりますけれども外務省におきましては、今後、旅券法はそうちょいちょい変えるものではないと思いますけれども、従来から問題になっておりながら今回改正の対象にならなかったこれらの諸点につきまして、外務省として今後どういうふうに考えるか伺いまして、私の質問の最後にさせていただきたいと思います。
  67. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 海外渡航の自由というのは憲法にも保障された自由ではございますけれども、それも無制限に許されるものではないわけでございまして、公共の福祉のために合理的な制限に服すべきことは当然かと思います。既にこの点につきましては、最高裁の判例においても確認されているところでございますので、この点につきましては、今回も十三条一項というものは残したわけでございますが、最近の邦人渡航の激増に伴いまして、例えば赤軍関係者が海外に動き回っているとか、今いろいろな状況が出てきておりますので、私どもとしてはこのような十三条一項のような制限事由というものは依然として必要だというふうに考えております。
  68. 河上民雄

    河上委員 なぜこのことに私がこだわるかと申しますと、昭和四十五年の改正のときに、我々の先輩の帆足計さんとか戸叶里子さんとかそういう方々がこの問題について非常に深く掘り下げた議論を情熱を持って闘わせておられます。当時帆足さんはソ連に行くというのを阻止されたわけですけれども、今やそういうことはなくなりつつあります。歴史流れの中で、極めて技術的な旅券法でありますけれども日本の外交的姿勢のあり方というものがいつも問われてきた。そういう意味で、私は、この旅券法を単に技術的な法律というだけではなく、外務大臣におかれましても、外交の一つ基本姿勢という観点からこの問題を取り扱っていただきたい、こんなふうに思います。特に第五条の改正の部分が、大臣一つの御努力によりまして、私どももまた努力をする中で、まさにただし「北朝鮮を除く」というのがなくなる日を私どもは念願をいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  69. 浜野剛

    浜野委員長 次に、渡部一郎君。
  70. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは、私は投資奨励及び相互保護に関する日本国中華人民共和国との間の協定につきお尋ねをしたいと存じます。  まず、このたび李鵬総理日本にお見えになる。それで日中関係の諸問題は両者の間で常に継続的に打ち合わせをしながら建設していかなければならない多方面かつ複雑な問題が多うございますので、私はこの来訪を契機にして両国政府間のさまざまな懸案事項が解決されるように望みたいと思っております。それはあくまでも日中関係基本関係を形成している日中友好の数々の原則が再確認される線上で行われるべきだと思っているわけであり、外務大臣もその点は同じ気持ちで処理されるものと信じております。  しかし、この間にその問題点を幾つか見るうちに、まず多年にわたる不協和音、光華寮問題であるとか戦争責任の問題であるとか、こうした問題が日本国からの八千百億という膨大な借款と相殺されたような形で一時的にはおさまっておりますけれども中国側の言明を見る限り、こうした問題が決して解かれていない問題として継続しているような感じがしてならないわけであります。日本側の立場は、こうした日本側の戦争責任に基づく諸問題、それから光華寮問題というような戦争責任の尾を引いた諸問題に対して、我が日本外務省基本的な見解をまず短くきちんとお話しいただきたいと思います。
  71. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 幸い日中平和友好条約締結後、昨年で十年目を迎えました。しかも、その間その条約に基づきまして信頼は非常に高まっておると思います。ただ、時として不協和音が出ることも間々あった。しかし、これはむしろ我が方からの過去の歴史、戦争に対する認識の差ということが申せると思うのでございますが、我々といたしましては、日中戦争というものは日本の軍国主義の侵略であった、こういう認識のもとに、常にそれを頭に置きながら新しい時代の構築にかからなければならないと考えております。  特に、私は先般の弔問外交におきまして八十八人のお方に電話した。そのときに一人欠かさず申し上げたことは、昭和時代は、皆さん方の御参列によっていとも厳かに、しかも大規模のうちに終わりましたが、これから私たちは新しい象徴天皇をいただきまして、平成という時代を新しいスタートを切りますから、お互いにひとつ新しいスタートでお願いいたします、実は万感の思いを込めてそういうごあいさつを申し上げております。このことに対しましてはほとんど全員の方が了とせられまして、いろいろかつての恩讐があった場合といえども、それを越えてやっていきましょうというふうなよき反応を得ております。  したがいまして、今後そうしたきずなをより一層拡大、さらにはまた強化するためには、経済というものも一つの大きな物差しであろうと思います。文化も大きな物差しでございます。それには、先般敦厚の遺跡に対しまして日本としての協力をなさったことも、古き文化をたっとび、東洋における日中の古き歴史をたどった、それを現代人の力によって守ろうという一つの証左であろうと思いますが、特に私たちは、中国関係者とお話しする場合には、中国の労働力、中国の資源、日本の資金、日本の技術、こうしたものを双方本当に心から組み合わせてやっていこうじゃございませんか、こういうふうに申し上げております。そうしたことで、今後もまず私たちはお互いによき隣人であるという、そのよき隣人としての関係を打ち立てていくことに全力を挙げたい、かように思います。
  72. 渡部一郎

    渡部(一)委員 新聞報道によりますと、大喪の礼の続きとして報じられているのかも存じませんが、天皇陛下の訪中要請が中国側から提出されるという記事を散見するところでございます。政府は、憲法に基づいて天皇に対し助言をすることになっているものと思われるわけでございますが、かかる問題は当然既に検討済みと思われますが、これに対してどう反応されるか、今の段階お話のできる程度でお話をしていただきたいと存じます。
  73. 長谷川和年

    ○長谷川(和)政府委員 お答えします。  新聞報道等によりますと、そのような話がございますが、公式には私どもはそういうことはまだ聞いておりません。どのような対応をするか、これはそれが出る段階あるいは出た段階でいろいろ考えたいと思いますが、現時点ではまだそのようなことは正式に聞いておりませんので、私たちとしても考えていない次第でございます。
  74. 渡部一郎

    渡部(一)委員 聞いてないから考えてないというのはレトリック上の間違いです。聞く前から出そうな質問考えていくのが役人じゃないですか。そういうくだらないことに時間を使わないでもらいたい。あなたへの答弁は求めません。大臣、お答えいただきたい。
  75. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 皇室外交と申し上げるのが正しいかどうか別としまして、皇室外交は平和外交を推進していただく上で非常に大切なことでございます。私は、そういう趣旨から申し上げまして、いろいろな国々からもしそのようなお言葉があるのならば、当然我が国はそれにこたえていかなければならない、かように考えております。
  76. 渡部一郎

    渡部(一)委員 非常に微妙な言い回しでお話しになりましたので、私は追及はそこでとめておきたい。政府の外交に対するお立場をこの問題についても慎重、的確にお願いしたいと存じます。思いやりがあり過ぎるな、これは。  次でありますが、この日中投資保護協定についてでございますが、非常に丁寧に拝見させていただきまして、交渉の御苦心のほど深く敬意を表するところであります。しかしながら、できがこれぐらいある意味で悪い条約もまず珍しいのではないかと同時に言わなければならないのが残念ながら本当のところであります。  と申しますのは、日中間の諸問題というものが解決されない、両国の法律体制が整っていない、両国の考え方が詰められていない中で、協定だけ先行していくという例が明らかだからであります。例えて言いますと、中国国内に向かって日本の各企業というものの進出、また投資が非常にレベルが低いということを先ほど河上議員もお述べになりましたけれども、何回も中国側から言われているわけであります。合弁企業の数はさっぱりふえない。出たものはどんどん撤退していく。新規に行ったものは中国において多くの失敗と多くの恨みを抱いて帰ってくるというような状況が現に存在している。何回交渉してもらちが明かない、その声は国内に高いのであります。  例えば、中国国内における外資系企業においては、国内において製品を自由に販売することができない。投資した金額を回収できない。輸出義務が課せられて、製品の一部は必ず機械的に輸出しなければならない。外貨バランスをとることを義務づけられる。合弁機関といっても会社の設立に制限が課せられておる。その上、労賃を自分が決定できない。製品の原材料の安定的な供給が保証できない。電気が勝手に停電する。電力量が割り当て、削られる。そして工場の建屋というものは公道からひどく離れたところに一方的に設定されて、それを拒否することができない。工場の中の、甚だしい場合は、重役と称する重役会議を開くと、重役会議の決定権がない。工場長は工場長としての権限がない。みんなを集めて訓示することもできない。こういうような言い方で、たくさんの日中友好を旨として現地に進出された方々が苦しんでおられる状況が次から次へ上がってきているわけであります。それは大臣も一部もう既に御存じのことと存じます。  ところが、今回の投資保護協定はこれらに対して解決になるだろうか。日本国民投資をし、進出しようという企業にとっても解決にならない。それから今度は中国側の期待、この投資保護協定によって日本はうんと投資してくれるのじゃないかという思い込みが当然存在するわけですけれども、それは全く、これを正確に見る限りは、投資が画期的に前進する見込みはないのではないかという感じを私は持つ。むしろこの協定を鳴り物入りで一この協定は、一つの日中関係の認識の違い、あるいは法令上の穴、そうしたものを埋めるには役に立つことを私は認めますけれども、効果が目覚ましく上がらないという意味では、これはどうしようもないところがあるのではないかと思うわけであります。  この点についてどうお考えなのか。一々の条項を扱うのでなく、本質論としてお尋ねしたいと思います。
  77. 長谷川和年

    ○長谷川(和)政府委員 中国投資環境に関しましてただいま委員が御指摘のいろいろな事例、これはまさにその通りだと私は思います。現に、中国に対する日本投資を見てみますと、昨年度の場合には三位であった。一位が香港・マカオ、二位が米国、日本が三位。こんなに近い国でありながら、そういうような状態である。これはただいま委員が御指摘になったいろいろな投資環境に関する原因、要因あるいは障害等があるかと存じます。  私も投資保護協定承認されて発効したからといって直ちには投資の促進要因にはならないかと思いますが、ただ、こういった法制面における整備を通じまして、日本の企業家、投資家に対して中国に対する投資を促進しようという意欲を植えつけ、また中国側において外国、殊に日本からの投資を受け入れる環境、法制面の整備、こういった点でなお一層の努力をする一つのいいよすがになるのではないか、そう思う次第でございまして、日本から見ますと、エジプトそれからスリランカに次いで三番目の投資保護協定でございますが、単に協定の発効のみならず、我々としても今後とも中国側に呼びかけていく。こういった努力を通じまして、だんだん日本からの投資がふえていく、そして中国側の御要望にもこたえることができるのではないか、そう希望する次第でございます。
  78. 渡部一郎

    渡部(一)委員 どういうふうに議論するべきなのか、私は甚だ困惑しておりますのは、問題が深刻だからであります。  例えば、第八条に送金の自由が堂々とうたいとがっております。そして、この第八条で送金の自由がうたいとげられているなら送金は完全にすらすらと行われるのかと思っておりますと、その二項においてどんなことが書かれているかというと、「いずれか一方の締約国が、自国の関係法令に従い、為替制限を課することを妨げるものではない。」こういうふうにいたしますと、その条項を最大限に拡大いたしますと、前項を完全に抹殺することが可能であります。だからこの第八条というのは事実上何も決めていないのに等しい。日本側進出企業が送金の自由について盛んに叫んでおることに全くこたえていない、と言うのは少しひど過ぎる見解でしょうか。私は、こういう条項は一遍決めてしまうとひとり歩きして、条文だけが歩くことを考えますと、これはちょっと無理なんではないかなと思われます。     〔委員長退席、深谷委員長代理着席〕  また第五条、これはその五項に「一方の締約国が自国の領域内において他方の締約国の国民及び会社に対し一から4までに定める事項に関して与える待遇は、第三国の国民及び会社に与える待遇よりも不利な待遇であってはならない。」とありますが、そんなことを言うのだったら、台湾とか香港の人々に対して金融でも企業活動でも与えられている特殊な立場、これこそまさに香港及び台湾の投資中国国内で大急増している理由ではあるのでございますけれども、それと同じ待遇にするのか違う待遇にするのか。同じ待遇にするというのが内国民待遇との均一化ということでございますのに、内国民待遇を一方でうたいながら、一方ではそういう現実がありながら、そしてこの第五条の五項を平然と持ち込んでくる。それが議定書において最後にカバーしてごまかさなければならなかった理由ではないのか。  そうしたら、一体これは何を意味しているのか。内国民待遇という言葉だけを日本はとる。実と花で分けて日本は議論するというのはよく言うことですが、花だけとる、実はそっちに上げる。香港と台湾の企業はどんどん何でもおやりなさい、日本側は何もしませんということを意味している。しかし、そういう結論として、日本はその後も投資を増大しないではないかという悪い果実をもう一つには受けなければならない。そうしたらこんな交渉は事実上意味がないのではないか。私は甚だ憂えているわけであります。もうこの辺はよくおわかりでございましょう、交渉された皆さんとしては。だから日本側としては、ほかの国と同じように内国民待遇をつけた、最恵国待遇をつけた取引をしましたよという花をもらって帰る、そして中国側のメンツを立てる。実際的にはそんなことは全然できない現実というものをそのまま放置する。そして日本はもう一回、投資に対して不熱心という泥をかぶってみせる。悪く想像しますと、この間からの竹下さんの放言その他を糊塗するために、こういうまずい協定を結ばれたのではないかと私は思うぐらいなのです。日中関係を本当に友好にさせるためには、率直に物を言わなければならない。率直に物を言わないでおいて、後々恨みの残るような、正確に言えば誤解を生ずるような協定をつくり上げたとしたら、後々問題点が多くなるのではないかと私は心配しております。  第一条にはもっと明快な部分が幾つかあります。私は特許に強いのですけれども、一条の(1)項の(d)号に「特許権、商標権、営業用の名称及びサービス・マークに関する権利その他の工業所有権並びにノウハウに関する権利」と書かれています。けれども、これに関する中国側の規定は未整備です。この間特許法ができたばかりです。商標権に関して全部完璧にできているとは思われません。そういうものが積み重なっているのに、ここに全部書かれている。自国内にそういう部分がないにもかかわらず、この協定を結ばざるを得ない中国側の立場考えますと、これはちょっと気の損な協定だと私は言わざるを得ない。中国側に対しても気の毒、日本側も思い込みで、これはおかしなことになってしまったと思わざるを得ない。  したがって、この協定は形だけは非常にきちんとできているけれども議定書で骨抜きになっており、本文の中でも骨抜きになっており、これでは運用次第でどうにでも解釈できる妙な協定だと言わざるを得ない。大臣、これは甚だよくできているけれども、甚だ後に紛争を惹起しやすい協定と言わざるを得ない。したがって、大臣はこの運用について今後たくさんの追加協議を行わなければならないことになるでしょう。そういうのは協定として安定的でないと私は思わざるを得ない。こういうのを受け継がれたことについては、私は甚だ批判的であります。  したがって、結ばれた以上、これを否定できるのは当議会でありますけれども、御事情によってそれもできにくいお立場に自分を追い込んでおられ、今度の李鵬さんとのサインの会は恐らく盛大に行われるおつもりなのでしょう。それを考えると、私どもは、この協定に対して一体どういう補完措置をとるかということに焦点を合わせるしかなくなってしまう。これはまことに将来に問題がある。私が今申し上げたことに一々御返事をなされば、中国側に説明をなさるときに大変困るだろう、私そこもおもんぱかっております。私は思いやりがあり過ぎると、さっき自分で自分を批判しました。私はこれ以上言いません。けれども、まとめて言ってもらいたい。私は心配しております。  もしこれをやるのだったら、このペーパーの中で一つだけ光っております合同委員会、いろいろな紛争事項や何か何でも話のできる合同委員会が十四条でできたということは、この協定の中で一つだけ光っていると思いますが、この光っている合同委員会にあらゆる問題を持ち出して協議をする。ただ、協議をするという意味が、中国の方と協議するということが、両方が不満を言い合って何も実行しないという合同委員会であってはならない。そこに持ち出された不平不満というのは、両国に知れ渡るように提出されなければならない。そしてその結論は、単なるお話し合いじゃなくて、実現の可能性のある実効措置となってとられなければいけないと私は思うのです。したがって、この合同委員会においては、日本は現実の投資、合弁あるいは日中貿易の前進に関して阻害要因となっている数々の失敗例を列挙して、例えば白書のような形にして提出する。それは遠慮とか礼儀とかではなくて真実を正確に述べる、進出した日本の企業が本当に困りに困っている現実を正確に提出する、ちゃんと答弁いただくというふうに運用していただきたいと思うのですが、どうでしょうか。今までの間失敗した企業、日中友好の気持ちがありながら何もできないで帰ってきた企業、大きな進出の力を持ちながらためらっている企業、そのふんまんを述べるところがどこにもないわけでありますから、この合同委員会において実効的な措置がとられるような運営をしていただく。白書のような形で現実の問題点を全部列挙して中国側に徹底するように渡す、こういう措置をとっていただきたいと私は提案するのでございますが、いかがでございましょうか。
  79. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私は、今渡部委員が申されましたことを、一つの制度に対する本当によきアドバイスである、かように受けとめたいと考えております。  この経緯は、私が昨年五月に参りましたときに、秋には十周年記念を迎えなくてはならぬ、竹下訪中もあり得る、そうしたときに首脳会談の重要なテーマとしてこの協定を結びたいと思うということで外務大臣同士が合意をいたしまして、その後作業が進みまして、竹下訪中のときにその協定が結ばれた、こういう経緯がございます。  今おっしゃったことは、私たちも随分聞かされてまいりました。特に、電力不足だよ、あるいはまた雇用関係においてもなかなかスムーズにいかないのだというふうに、進出する企業から十分聞かされてまいりました。だから、そういう面をカバーするのがいわば内国民待遇という一つの大きな問題になっておるわけでございますが、昨年この協定が結ばれました直後、秋でございますが、大型経済ミッションを派遣いたしまして、そうした問題を含めて、臨海部並びに奥地部両方ございますが、趙紫陽さんが臨海の方に力を入れ過ぎられて、奥地はどうなるのだという、中国政府内部においてもいろいろ議論がなされたという問題もございますし、そうした問題も含めながら、今後一日も早く双方の環境をよい方向へ持っていこうとするのならば協定も大きく役立つだろう。  そして、今御指摘の合同委員会で本当にこれからいろいろ話していかなくてはならないことがたくさんあると思います。我が国は資本主義構成でございますし、中国は社会主義でございまして、しかも四十年間その制度が続いてまいった。それを開放、改革という名のもとに内容的にどのように変えていかれるか、大変努力もし、苦労しておられることも私は聞いておるわけです。さらには競争の原理というものをどうするかという問題も私聞きました。お互いに論争もしました。そんなことでございますから、今後は腹をぶち割ってお互いが合同委員会で話し合って、企業によりましても、産業の種類によりましても、地域によっても、それぞれまちまちだろうと思いますが、そういう問題を詰めていきたい。特に李鵬総理は、この協定を結んだ以上は実効あらしめたいという気持ちで訪日なさると私たちも仄聞いたしておりますので、今の御忠告というのは、私は十二分に、両国の将来の幸福のためにももっと具体化、さらには検討しなければならないものは検討すればいい、こういうふうに考えております。
  80. 渡部一郎

    渡部(一)委員 日本側の企業は、法令が正確にできておらず、また国家関係交渉が適切でないとどういう行動をとるかについては熟知されていることと存じます。しかしながら、この場合、これで推し進めますと、どんな事態が発生するか、それについて私はもう一つ嫌な未来像を懸念として申し上げておきたい。  それはなぜかというと、現在中国国内における大きなホテル、大きなマンション等の建設は禁止状態になっておるわけであります。例の整とん政策の結果、インフレを克服するためにやっておるわけであります。確かに下水、上水の処理も考え北京市内に山ほどマンションを建ててしまって、水が上へ上がらないとかセメントが足りないなどという事態を見ると、それはそうかなと思うわけであります。しかし、それはだれが建てているのかを見ると、もっとびっくりすることがあります。それは香港、台湾の資金で建てられているという形になっていることであります。これはこういう人々に対する国内的な戦略的措置と私には思われますが、特別な待遇がされておる。それは中国の内政の問題であれでありますが、内国民待遇とかなんとかという言葉を用いますとそれが問題になる。この協定はまたそれに大きな穴をあけてしまったという事情になっている。  そうすると、どういうことになるかというと、日本の企業家たちは香港で合弁の会社をつくり、社長だけ香港人の帽子を借りてくる、そして中国交渉するというようなことが今発生し始めております。これは見る見る多くなることでありましょう。香港の企業は大変たくさんお金を持っておるから自力で投資しておるのでしょうか。決してそうではなくて、この問題については、後ろ側にいる国際的な金融、あるいは日本も含めた国際金融の力というものは巨大であります。そういう形で香港という名の国際金融が侵入してくる。これはやがて中国国内に別の意味のふんまんを生ずることでありましょうし、長続きする政策ではないことでありましょう。したがって、日本としては、日本の企業家たちにある程度モラリスティックなビヘービアを当然要求しなければならぬ時期が来ることでありましょう。  したがって、この協定については、そういう将来も考えた上での交渉というのがあるべきものではないか。それは香港と台湾に対する中国の国内政策あるいはさまざまな政策について言っていい部分もあるだろうし言って悪い部分もあるでしょう。だけれども、忠告と助言は、内政干渉の話にひっかからずに忠告の言葉を持たない日本外交というものは、やがてみずから墓穴を掘ることは明らかでございましょう。私は、日本が今戦後最も心を持たなければいけないのは、侵略の意図を抑えて、そしてそういう意図がないことを明快にしてやるという第一段階から、第二段階へ入って今や忠告と助言、友情に基づいた交際がどんなものかというのを世界に知らせるときが来ているのだと思います。ですから、この交渉についての、これはまことに将来懸念が多いぞということについては、どうぞ中国側に公式、非公式にお述べいただいた上、これだけでなぐ補完措置をこれに重ねてとっていただくことをぜひ希望したいと思いますが、いかがでしょうか。
  81. 谷野作太郎

    谷野(作)政府委員 お答え申し上げます。  直接の交渉を担当した者といたしまして、ただいまの御批判、おしかりはまことに残念でございますが、他方、確かに先生御指摘のような幾多の問題が中国への我が国からの投資について、実際問題としてあることは事実でありますし、私どもはそれは承知いたしております。先ほど来お話が出ております電力の問題、エネルギーの問題、それからよく指摘されますインフラがまだまだ未熟であるという問題、法令がしょっちゅう変わるではないかという問題、大変多くの問題があることは承知をいたしております。  しかしながら、しかるがゆえに今の時点投資保護協定なるものを結ばない方がよかったか、その方がより正しい選択であったかといいますと、私は、不完全ではありましょうけれども、やはりこの種の協定を結んだことにより幾つかの点は両国の政府間で確保されたわけでございますし、しかるがゆえに日本の企業の方も、先ほど申し上げましたように、一定の評価を与えてくださっておると思います。  そこで、先ほど来の先生の御助言であります合同委員会におきまして、まさに先生の御心配の諸点も含めまして一表にいたしますならばいたしまして、きちんとした議論を、これは日本からの投資が伸びることが非常に両国の利益でありますから、そのためには日本の企業はこういう点で困っておる、こういう点が問題だということを、まさに先生御指摘のように、率直、明快にこの合同委員会の場等を通じまして先方に指摘していきたい、このように考えております。
  82. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私の意のあるところは十分お聞き届けいただいたような感じがいたしますので、今後の運用その他において私は見守っていくようにしたいと考えておりますが、どうか不断の努力を積み重ねていただきますように、特に切望いたします。  今度は投資保護協定と絡んで申し上げるわけでございますが、実は上海におきまして私費留学生が三万八千人たまっているということを仄聞いたしております。彼らは日本の今までの入国管理のルールに基づき日本語学校の入学許可をもらい、日本の身元保証人もでき、そして自分の故郷で約二十万円、彼らの年収の約三年分を用意して上海までやってきたところ、日本側の入国審査基準が急に厳しくなったというので、上海でだぶついておられて騒ぎになっておる。もちろんこれに対して日本側の法令に基づくマイナスというのではなくて、中国側の、中国人自身の思い込み、あるいは中国国内における私費留学生を相手に商売をしている人たちの問題点というのは既に指摘されておりますし、日本側の立場を述べれば述べるほどこうした人々に対して救済がとれない事情も伺わしていただいたところであります。  しかしながら、傷ついた庶民というのは、いつの国家関係においても必ずはみ出してきて、何かの新しいルールを必要とするのでありまして、上海の街頭にこういう人々がうろうろしながら日本に行きたいと叫んでいる状況をいつまでもいつまでも放置するということは決して賢明ではない。中国側が責任を持ってその人たちにお金を返還して処理するとか、中国側が何かするというのか、日本側が全額お金を出して日本側に引き取って何かするというのか、二つの極端な選択肢でなくて、両者相助け合いつつ何かの施策をとらなければならないのではないか。またもう一つは、彼ら自身もみずからの責任のある分野を分担する。日本風に言うならば三方一両損みたいなやり方が必要なのではないか。それが明快に合意され、周知徹底されない限り、この上海留学生問題というのは、日中関係一つの火種として不愉快な影響を持つのではなかろうかと思うわけであります。したがって、現行法令の運用においてどういうふうにあったという部分も含めまして、李鵬総理がお越しになったときに、この問題についての決着を何かの形で日中間でする、少なくとも協議する、あるいは特定のワーキンググループをつくるというようなことが必要なのではないかと思うわけでありますが、大臣の御見解を承りたいと存じます。
  83. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 過般来の就学生問題の上海における一連の紛争、これは後でまた申し上げますが、そうした経緯を踏まえまして私も主張しましたが、内閣で関係閣僚会議をつくらして、そしてそこでいろいろと検討させました。  まず第一に、日本語学校というはっきりしたものもございますが、何分にも五百に余る学校が雨後のタケノコのごとく出て、これらが問題を起こしておる。これは大変だ。その資格をどうするか。これは文部省しっかりやれ。そして同時に、それらの学校の協会をつくりまして、お互いにきちっと姿勢を正す、相互監視するということも必要なのではなかろうか、そういうような体制もとらせました。  同時に、就学生でございますから労働者ではありませんが、やはり日本国内における一つのアルバイトということも、これは否定するわけにいかぬ。その場合に、アイバイトが主になってしまうと、就学生という名をかりた単純労働者の激増ということになると大変でございます。そこを今後どのようにしていくかということを私たちも真剣に考えなくてはなりません。だから、これは就学生であり、同時に単純労働者という立場日本政府としての考え方を鮮明にしなくちゃならないと思います。経済界では今いろいろと議論が沸いております。したがいまして、技術者は入れてもいいが単純はだめだという極端論もございますし、一定の保証によって、また雇用者の責任において一定の期間ならばいいじゃないかという話もございますが、政府といたしましては、まだその問題に取り組んでおりません。したがいまして、現在は内閣の方でいろいろ検討していてくれますが、私も、その問題に関しましても、当然対処しておかなければ、単に中国だけではなしにアジア全体の問題としても大切な問題ではなかろうか、かように考えております。  したがいまして、就学生の問題に関しましては、とりあえず今申し上げましたような一つの場を設けまして、それぞれの担当省が責任を持つというところまで来ておるということだけは御報告いたしたいと思います。
  84. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ただいまの御発言で大変意を強うしているわけでございますが、李鵬さんがこの問題に触れられるかどうかについてお尋ねするつもりはありませんが、日中の両政府でこの問題を既存ルールからはみ出した問題であると認識されて、適切な処置でこの問題、上海問題と極冒してわざわざ私は申しますが、上海問題だけは片づける、こういうお立場であると理解してよろしゅうございますか。     〔深谷委員長代理退席、委員長着席〕
  85. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 上海問題が端緒となって私たちも今申し上げたようなことをやりました。だから、これは今後の日中間の一つの大きな課題である、こういうふうにまだまだ未解決の問題がございますから解決をしなければならない、かように考えております。
  86. 渡部一郎

    渡部(一)委員 次に、これも旅券からちょっとはみ出している話ですが、海外救急を制度化しようというのを厚生省が頑張っておられる御様子だと伺っているわけでございます。先日、中国国内において大変な列車事故が起こった。バスがひっくり返った。医療設備が現地で非常に整っていない上、日本語のわかる人も非常に少ない状況の山の中で起こった。その際に、日本側から人を出したいと思いましても、例の昭和六十二年の国際緊急救助隊は、そういう邦人の救出のために運用される仕掛けではないために派遣ができなかった。結局医師団を、一方では善意の医師団たちがある程度自腹を切って出かけることを申請して、それに対して地元の関係者が接触をして飛び出した。そこへ大使館も非常にうまく受け継いでくださったというような、善意と善意と善意で処理されたという状況を聞いているわけでございます。  しかしながら、最近の日本人の世界的な活動を考えますと、この種の事故はますます多くなると思われるわけでございます。そして日本人の事故に対して非常に大きなお金が後からかかってくるという状況もありますので、確かに医師団派遣とか専用機の派遣、緊急設備の派遣とか当該政府との交渉とかを含めまして、こういう制度を考えていくことは必要なのではないか。私はどういう形がいいかをまとめて今申し上げる立場ではございませんが、厚生省が御研究を開始されている御様子でもございますから、結局は外務省がこの問題に大きく関与しなければならぬごとも事実でございますので、ぜひ御研究をいただいたらいかがかと思いますが、いかがでしょうか。
  87. 高橋雅二

    ○高橋説明員 お答え申し上げす。  先生御案内のとおり、国際緊急援助隊の派遣に関する法律は、我が国の国力に応じた国際的な協力をするべしという理念に立ちましてでき上がった法律でございまして、これは原則として、特に開発途上国におきまして大規模な災害が生じた場合に相手国の要請に応じて派遣する、こういう仕組みになっております。それで在外邦人がこういう事故に巻き込まれましたときでも、大規模な災害で向こうから要請が出てくれば発動される仕掛けになっておりますが、そうじゃないときには発動されない、こういうことでございます。そういう意味で、必ずしも我々が出したいなと思うようなときに出せないということもございます。  ただ、この前の上海の事故のときには、今先生がおっしゃったような善意の方々もございましたし、かつ、北京にございました中日友好病院の日本人のお医者さんが二人、中国政府の了解を得まして現地に飛んで援助に当たった、こういうこともございます。私たちとしては、こういうときにも現存の仕組みをいろいろ組み合わせて対処していきたいというふうに考えておりますが、法律規定は今申し上げましたようになっておる次第でございます。
  88. 渡部一郎

    渡部(一)委員 今お述べいただいたように、各種の法令を適用しつつ対処されたのは事実でございますが、今後はもうちょっとそのシステムを強化するように御研究いただいたらいかがかな、こう思っておるわけでありますが、どうでしょうか。
  89. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 海外における邦人の援護につきましては、先生御指摘のような手段を含めましていろいろな検討が必要だと考えておりますが、他方、邦人の旅行者自体の自助努力というものも必要でございますので、旅行保険のもとで海外救急サービスを受けられるというようなシステムがございますので、そういうことの自助努力の必要についても私ども引き続き啓発していきたいというふうに考えております。
  90. 渡部一郎

    渡部(一)委員 では次に、旅券法の一部を改正する法律案そのものについて移っていきたいと思います。  これについては、私は本国会の中で二度にわたって質問させていただきまして、大変前進されたことに対してうれしく存じておる一人でございます。  ただ、二、三点、ちょっとお尋ねしたいと思います。  我が国においてMRP、機械読み取り旅券導入の準備が進められていると先ほどから承っておるわけでございますが、この導入の時期、読み取り機械の開発状況、それから偽造防止、守秘義務の厳守というようなところについていかがかなと思われる点が幾つかあります。もう解説する必要はないと思いますけれども、この旅券発給都道府県段階に渡すというのがこのお話の中に出てくるわけでございます。都道府県としては、発給することによって収入が多少入るので、それはプラスになるとは思いますけれども旅券発給都道府県に全部渡せば渡すほど、その偽造あるいは読み取り機そのものの偽造というようなものについて、技術革新というものは光の当たる分野だけでなくて光の当たらない世界にも行われているわけでありますから、大変心配しているわけであります。  聞くところによると、この読み取り機は非常に簡単な機械だそうでございまして、つくろうと思ったら、現在の大学生程度のエレクトロニクスの知能の持ち主で一カ月などという嫌な話すら既に聞いておりますものですから、この読み取り機あるいはそのカードをつくる方の機械、両方にわたってよほどうまく研究開発が行われていきませんと、一年か二年するうちに日本のMRP保持者と称する者が世界じゅうでたくさんふえていく。現在、日本旅券世界のやみ市場では非常に高い値がついているんだそうでございますから、それを増大することになるのではないか、そういう将来の不安を持っているわけであります。  法令とは関係がなくてちょっと気の毒な質問かも存じませんが、そこのところをお答えいただきたいと思います。
  91. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 MRP旅券につきましては、現在機器の開発を進めておりまして、また、その機器の機能の確実性の確保あるいはテストというものが必要でございますが、先生がおっしゃったような守秘の点につきましては、当然のことながら本省のコンピューター及びMRP関連機器の管理を厳重にする等のことを万全を期するつもりでございます。  また、偽造、変造防止の点でございますが、今回のMRP旅券導入ということによりまして、私どもは従来以上に偽変造の難しくなるような旅券を作成することができると考えております。例えば写真の張りかえ、改ざんの防止策といたしましては、写真の転写技術の導入、それから旅券記載ページへの全面ラミネート処理等を行うことを予定しておりまして、従来から我が国旅券というのは偽造が非常に難しい精巧なものというふうに認識されておりますけれども、この点はさらに強化されるものと考えております。
  92. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そのただいまの御確信がさらに続きますように、ハイテクノロジーを応用されまして、ますます日々この旅券のガードをきつくされますように希望したいと思います。しかし、ガードをきつくすると同時に旅券の発行がおくれたり、それで善良なる市民に被害を与えないようにしていただきたいという逆のこともまたお願いしなければなりませんので、ぜひお願いしたいと存じます。うなずいておられますから、もう御答弁要りません。  次に、最後の質問になりまして甚だ困っておるわけでありますが、これは大臣に国務大臣としてぜひお願いしておかなければなりません。  それは日本国民の保険ですね。国民健康保険とかの保険の資格が海外に出た場合に停止されることがあります。それから年金、これも停止されることがあります。それから選挙権、これも停止されることがあります。それから地方税その他の税負担で停止されることがあります。それからもう一つは戸籍なんです。  私が今申し述べたこの五つが、あるものは停止すると当人にとって経済的なプロフィットがあります。あるものは停止すると大損害を受けます。ところが、この辺はひどくあいまいでございまして、あいまいなために出入国に当たって事実上それが消滅してしまって、当人が、善意の個人が被害を受けたり、あるいは悪意の人がそれを継続することによってもうけたりというのがひどくございます。  例えば、十二月三十一日に日本にいませんと、地方税は免除になります。それを利用して、最近年末に海外へ行こうと呼びかけている業者すらおります。私はそれは自分で確認しております。それは明らかなる脱税行為でございますのに、これが流行しております。また保険、年金の資格を継続するために、銀行に頼んでおいて自動払いにして海外に行かれる方がたくさんおられます。そして三年も四年もたって帰ってきて継続されるわけであります。これは我が身を守る庶民のささやかな知恵なんでございましょうが、それがいいのかと言われますと、まことに何とも言えない感じがするわけでございますね。  そうすると、旅券と一緒に国民の資格についてある程度のサゼスチョンを与えるペーパーを旅券に挟み込むなり、出入国に当たって注意なりすることが必要なのではないかな、この辺は今後の御研究の課題にしていただけないかなと大分前から騒いでおるわけでございます。特に選挙の資格については本当に困っておるわけでありまして、海外選挙区ができるまでの間、残存期間、あなたの選挙資格は地元市町村において投票できますという一行がないために、海外ではもうだめだと思って投票しない方もたくさんおられるわけでございます。そんなこともたくさん考えますと、海外に行くときの注意事項として、そういうものが幾つか必要だな、しまいには、このMRPの中にそういう資格を一発で織り込む何かうまいのはできないのかななどと夢のようなことまで考えておるわけでございますが、こういう話の大好きな大臣に今後の御検討を約束していただきたいと思いまして、私の最後の質問といたします。
  93. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 いろいろそういうお聞かせ願った面もあることだろうと思います。ますます海外渡航者の多いときには、やはり一考しておかなければならない問題だろうと思いますが、余りにも現金な答弁になるかもしれません。あくまでも外務省の職域とそうでない職域がございます。これをどうするか。各関係省庁がそれに対してどういう意見を言うかということもございましょう。例えば税金だと大蔵省だとかあるいは年金だとそのほかの省だとかいろいろあります。また選挙の問題も先般一応提案までできたのですが、これは審議未了のまま廃案になってしまったというふうな問題がありまして、私もあのとき党の役員をしておりましたからいろいろ関心を持って調べましたが、例えば郵便ならいいけれども、在外公館におけるところの投票というと、ドイツなんかは絶対だめだ、そこら辺あいまいにしたまま隣の国でいいのかというような調子でやった面もあった。だから、これからの非常な日本の国際化ということから考えますと、御指摘の面は、私はやはり問題じゃないというわけにはいかない、一つの関心を持たなければならない問題だ、そういうふうに今日理解いたしております。
  94. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ありがとうございました。
  95. 浜野剛

    浜野委員長 次に、林保夫君。
  96. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣初め皆様御苦労さまでございます。限られた時間でございますので、少し前向きの話できょうは聞かしていただきたいな、このように思っております。  まず、このたび改正になります旅券法につきまして、私はちょっと対応が遅過ぎたような気も実はしております。MRPの問題につきましても、国際一家として当然やらなきゃならぬ問題でもありますし、既にかなりの国でやっているような状況でありますが、いずれにいたしましても、今回やることになりましたその辺のいきさつにつきまして、事務局の方から国際的にはどういうふうになっているかお答えいただきたいと思います。
  97. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 お答えをいたします。  MRPにつきましては、既に御案内のとおり、一九八〇年に国際民間航空機関で一定のガイドラインが出されまして、この結果、既に米国、カナダ、豪州、西独、英国及びフィンランドで導入いたしておりまして、オランダも近々導入の予定というふうに聞いております。我が国といたしましても、急遽作業を進めておりまして、平成四年度には導入できるように今作業いたしているところでございます。
  98. 林保夫

    ○林(保)委員 資料によりますと、米国、カナダ、豪州、西独、英国及びフィンランド、この国だけですか。まだほかにもございますか。
  99. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 ただいま申し上げましたように、オランダも近々導入の予定というふうに承知いたしております。
  100. 林保夫

    ○林(保)委員 これによって行政サイドの合理化もできるわけでして、それから地方に対しましても、発給のときにたしか千五百円地元へ残すというようなことで、大体どういう収支になる予定になっておりますか。
  101. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 このたびの旅券法改正の一つの大きな眼目が先生御指摘の旅券手数料分納制でございますが、これは従来から都道府県におきましては大変な赤字になっておりまして、その意味財政基盤強化が必要であるということから、今回分納制ということを導入いたしたいというふうに結論づけたわけでございます。  なお、具体的な金額につきましては、これは法律事項ではございませんで、政令事項でございますので、念のため申し上げます。
  102. 林保夫

    ○林(保)委員 審査するんですから、政令事項でも大体の見通しをお話しいただきたいと思いますが……
  103. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 現在、数次旅券につきましては、旅券手数料が八千円でございますが、私ども考えといたしましては、このうち千五百円を都道府県の分とするというふうに考えております。
  104. 林保夫

    ○林(保)委員 いや、それで数字としましてどれくらいなことになるのでございましょうかね。
  105. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 これは、例えば発給件数を四百万通というふうに見込んだ場合には、平成元年度におきまして六十億円程度のものが都道府県の取り分となるように考えております。従来、例えば昨年度でございますと、国からの都道府県の委託費が三十億円足らずでございましたので、その意味では都道府県財政基盤強化に資するものと考えております。
  106. 林保夫

    ○林(保)委員 また事務的で結構ですが、そういうことによって行政サイドの合理化がかなりできると思います。平成四年でしたか、少し遅いではないかというような感じもいたしますけれども、行政サイドの合理化のポイントと、それから国民に対してはどういう便益が出てくるのか。一回窓口へ行けばいいというようなことにはなっておるようでございますが、その辺をはっきりと議事録で残したいと思いますので……。
  107. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 平成四年度導入と申しましたのは、MRP旅券機械読み取り旅券導入考えているわけでございまして、今回の旅券法改正につきましては、都道府県に対する手数料分納化につきましては本年六月一日から、その他の部分につきましては一年を超えない期間の中でなるべく早く実施するという方向で考えているわけでございます。
  108. 林保夫

    ○林(保)委員 時間がないので、もうはしょっていきますけれども事務的に二つの点をはっきりお答えいただきたいと思いますが、今入国に際してピザを必要としている国はどこどこなのか。それからもう一つは、一般旅券のほかに公用旅券もあり外交旅券もありますけれども、それがどの程度の規模になっているのか、御覧明をいただきたいと思います。
  109. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 現在、査証につきましては、我が国が査証免除協定というものを五十一カ国と取り交わしております。これは主として、最近発効いたしました米国のほか、西ヨーロッパの国がほとんどでございますし、一部中南米、アジア等の国も含まれております。  それから、旅券発給数でございますが、昭和六十三年度の統計で申しますと、一般旅券につきましては約三百九十二万通、外交旅券が三千五百二十六通、公用旅券が二万三千二百九十六通となっております。
  110. 林保夫

    ○林(保)委員 いろいろ聞きたいのですけれども、公用旅券だけで結構ですが、これの発行基準はどういうふうになっているのでしょうか。
  111. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 国の用務のために渡航する者につきまして公用旅券発給いたしております。
  112. 林保夫

    ○林(保)委員 それからもう一つだけ。一回往復限りの旅券でもいいという人もいると思いますが、これからの扱いは、そういうのはどういうふうになるわけですか。もう一律でやってしまうのでしょうか。
  113. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 今回の改正法案で数次旅券原則といたしましたのは、既に旅券発給におきましても九割程度数次旅券という要求になっておりますことが一つと、それから一次旅券というものは国際的には余り例がないものでございまして、既にいろいろな国でMRPというものを導入しておりまして、有効期限が無期限である一次旅券につきましては、出入国の際にさまざまなトラブルが生じているというようなことも考えまして、数次旅券一本化に踏み切ったわけでございます。この点につきましては、私ども国民の皆様方の便宜につきましていろいろ啓発しながら御理解を得たいというふうに考えております。
  114. 林保夫

    ○林(保)委員 今度は大臣にお伺いしたいのですが、二つあるのです。  一つは、八千円の料金が高いという声が大分みんなの声でありますよね。これをどのように御判断になっておるかという点を簡単にお答えいただきたいのと、もう一つは、海外旅行する場合にお上へ行ってパスポートもらうと、何か全く安全だというような感じの期待をパスポートに対して持っていますね。それはそれなりに理由はあって、ビザを取ったり旅券発給するわけですけれども、しかし、なお最近のいろいろなことからいたしまして、外務省の方も寄り寄りお考えになっておられると思いますけれども海外旅行に対する危機管理というもの、これは大臣どういう大きな方針で取り組まれるお心づもりなのか、その二点をお伺いいたしたいと思います。
  115. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 パスポートの手数料、高い安いという問題は、それぞれの方の御判断にもよりますが、政府といたしましては、適正である、かように考えてやっておるわけでございます。  なおかつ、パスポートそのものは、我が国の人たち海外における安全、保護、そうしたために発給されておるわけでございますので、個々におきましても十二分に御注意賜りたいと思います。特に、最近こうして日本の国力が大きくなればなるほど、それと正比例して旅行者にも危険が及ぶということもございます。こればかりは、外務省といたしましてもいろいろとマニュアル等々を出しまして、それぞれの対策を講じていただいておるわけでございますが、先般の三井物産のラオスにおける拉致事件等々も、幸い初動捜査がよかったので早く発見できましたが、やはり日本が富めるがゆえの一つの犯罪だ、こういうふうに考えますと、個人といわず企業におきましても十二分にその点は考えていただきたい。企業なんかは現在五十万人の邦人が出ておるわけでございますから、我こそ日本人なりというような調子で派手な行動等をされておりますと、あんちくしようというようなことになりかねないとも限りません。そうしたこともふだんから個々に考えていただかなければなりませんが、大公使館、出先の我が方の在外公館を通じまして、この点はさらに十二分に安全を期していきたい、かように考えております。
  116. 林保夫

    ○林(保)委員 これからいろいろの課題がありまして、単に外務省だけでなく、運輸省あるいは法務省あるいは現業官庁、そのほかいろいろ問題がありますけれども、この点はこれから一泊大きな課題として、お互い日本人が先ほどおっしゃられたような自助努力の問題も含めてやらなければならぬ問題でございますので、また追って御質問申し上げる機会もあるかと思いますので、この辺で終わりたいと思います。  日中投資保護協定につきまして、明日、李鵬総理が来られまして、私どもといたしましても隣国でありますだけに大事に扱い、またこのことが日本の国際的な、特に東アジアにおける立場を強化する形に期待してお迎えしたいな、こういうことできようも保護協定を急に審査するような状況になったと思います。これにつきまして、内容的には現在の日本中国間における経済問題、大臣物すごくいろいろな問題が出ていますね、先ほど来質問が出ておりますように。それはそれといたしまして、これからやるべき問題として、もう既に報道されておりますように、三つほど焦点を絞ってお聞きしておきたいと思います。  日中投資促進機構、これがどういう現状にあって、これからどういう発展をするのかという点を事務局の方からお答えいただきたいと思います。
  117. 谷野作太郎

    谷野(作)政府委員 お答え申し上げます。  これは基本的には中国への日本投資をより一層促進するという目的を持って、民間の高いレベルで設立されるものでございます。いろいろな目的がございますが、基本的には、先ほど来お話が出ておりますようないろいろな日本の企業の方々の御苦労、御不満、そういうものをお聞かせいただいて、中国側の相手方と十分議論を尽くし、解決を図るというのが第一点でございます。また、これから中国投資をなさるような方にいろいろな適切な御助言を申し上げるという役割も期待されておるわけでございます。
  118. 林保夫

    ○林(保)委員 日中技術交流会議、五月下旬に発足して、またココムの問題などを協議するという報道も出ておりますが、どういう構想を持っておられますか。ココムの問題といえば米国との関係が特に重要だと思いますので、その辺の見解を。
  119. 長谷川和年

    ○長谷川(和)政府委員 ただいま委員お尋ねの件でございますが、恐らく五月ぐらいに第一回の会議が開かれるのじゃないか。この会議において、日中双方間における技術の交流の促進を図りたいということを考えております。  ココムの問題というのは、実はこれは西側内部の問題でございまして、その場でもって中国側と話をするにはふさわしくない問題と心得ております。恐らく中国側から、一般的な日本からの技術交流の促進、これをもっと拡大してほしい、このような意見の表明あるいは要望があるのじゃないかと思っております。
  120. 林保夫

    ○林(保)委員 それから、報道によると、北京の環境保護センターという構想が出ておりますが、これについて、今どの程度進んでおるのか、将来の見通しも含めて。
  121. 長谷川和年

    ○長谷川(和)政府委員 この環境保全センターにつきましては、私の所管ではございませんが、私の承知しているところでは、日本から調査団が参りまして、先週末帰ってまいりました。中国におきましても環境保全の問題が大変大きな問題になっておりまして、昨年竹下総理が訪中,された際に、先方、李鵬総理から、環境の保全、保護等に関していろいろ協力を仰ぎたいという話がございまして、それ以来事務的に詰めてきたところでございます。私、まだ先週末帰ってまいりました調査団の報告を聞いておりませんけれども、恐らく調査団の報告というのが、今回予定される総理と李鵬さんとの会談において本件について議論が行われる場合に、一つの重要な基礎になるのじゃないかと考えております。
  122. 林保夫

    ○林(保)委員 続きまして、台湾、マカオ、香港の問題についてちょっと承りたいのでございます。  これらの扱いについて、本協定ではどのような事態を予想し、またどのような対応を将来されるはずになっておるかという点を事務的にお答えいただきたいと思います。
  123. 丹波實

    ○丹波政府委員 条約の適用地域の問題でございますので、私から御答弁申し上げます。  この条約の一条、二条、三条、四条、例えば「自国の領域内」あるいは「締約国の領域内」という言葉がございます。その関連での御質問と思いますけれども、この協定は日中間において行われます投資奨励し、保護するためのものでございまして、中華人民共和国の国内法が現に及んでいない台湾、香港、マカオに対して適用されるということは考えておりません。  台湾につきましては、御承知のとおり、中華人民共和国政府の実効的支配というものが現在のところ台湾には及んでいないということでございます。  香港に関しましては、先生御承知のとおり、一九八四年の中英共同宣言におきまして、中国が一九九七年七月に香港に対しまして主権行使を回復するということになっておりますが、その後におきます中国本土の法律の香港への適用の問題につきましては、これを適用するかしないかをその後決定するということが書かれておりまして、したがって、この協定が九七年の七月以降に香港に対しても適用されることになるかどうかは現時点では予断を下し得ない。その時点での中国の判断を踏まえつつ、その時点対応していきたいと考えております。  最後に残りましたマカオにつきましては、一九八七年の中国・ポルトガルの共同声明におきまして、中国は一九九九年の十二月二十日にマカオに対する主権行使を回復するということになっておりますが、法令の適用につきましても、やはり香港に対すると同じ考え方が表明されておりますので、その後の状況を見て、この協定の適用ということも検討したい、さように考えております。
  124. 林保夫

    ○林(保)委員 本協定によると、企業の投資財産及び収益は、協定九条によって、一九七二年九月二十九日以後に取得されたものについても適用する。これ以前の問題については、どれくらい、どういう扱いになるのか、見解をお願いいたします。
  125. 丹波實

    ○丹波政府委員 この適用が、現在適用される地域として考えております中国本土につきましては、ここの日付以前の時点では、日本の対中投資の実績がゼロでございますので、実体的な問題は生じないと思います。
  126. 林保夫

    ○林(保)委員 今度は大臣に二つお願いいたします。  まず最初は、李鵬総理が来られまして、対外的な援助努力を一層拡大するという報道がなされております。それからもう一点は、何かこの機会に新天皇の中国訪問を約束するような報道がございます。この二点についてお答えをいただきたいと思います。
  127. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 日中の経済協力に関しましては、投資保護協定等々を結んで、さらに積極的な取り組み方、これは今回その趣旨を御説明申したばかりでございますから、今後もひとつ微に入り細にわたりまして両国国民の友好をそうした面におきましても深めたい、かように考えております。  なおまた、李鵬総理訪日の際に、天皇陛下に対する御招待があるのではないか、こうしたお尋ねでございますが、具体的にまだそうした話が出ておりません。そうした段階で私がコメントをすることは差し控えたいと思いますけれども、やはりまた我が国における皇室は、過般の弔問外交を通じましても非常に立派な国であるということが各国それぞれ認識されております。特に現天皇は皇太子時代から随分と各国を訪問されまして、その親善の実を上げていただいておりますので、もしどこの国なりともそうしたことがございましたならば、やはり服喪ということもございましょうし、そうした服喪の期間が明けました場合には、我々といたしましても、そうしたことはありがたくお受けしなければならないだろう、かように考えております。
  128. 林保夫

    ○林(保)委員 最後に、中国とも関係するわけですが、海外援助、特にODAの問題です。  大臣も御承知のように、近ごろ週刊誌とか新聞で、きのうもここに報道がありますね。「美名のカゲに利権構造」、お読みになられたと思いますね。それから国民の間にも、これだけ大きな金額をやって一体どうなっているんだ、こういう言い方の話が、大臣、大変多くなってきているわけです。私はすべてが悪いとは言わないですけれども、やはりそこらあたりを、主管の外務省、特に大臣はやはりきっちりやられないと、これはリクルートとは言いませんけれども、いろいろな大きな問題が出てくると思うのですが、どういうお考えでこの問題をきっちり国民説明しながらおやりになるかという御存念を最後に承りたいと思います。
  129. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 昨年のサミットで総理がお約束されまして、それはODAの内容また金額ともに世界一だ、そういうふうに考えておりますが、今後は極力有償無償、さらにはアンタイということで進めていきたいと考えております。でございませんと、せっかくODAを出したって日本がついてきておるということでは諸外国の批判がございます。また、内におきましては、当然これは貴重な国民の税金でございますから慎重を期したい、かように思っておりますが、特にことし七・八%という非常な伸び方で予算の中に編成をいたしまして、その予算の審議をお願いしたいのですが、ぜひとも早くお願いしまして諸外国にも我々の誠意を届けたい、かように考えている次第でございます。  貿易面において、我々は非常に努力しながら黒字を克服するようにいたしております。そのためには輸出依存型じゃなくして内需依存型というふうなことで、これはある程度実効を上げておると思いますが、同時にまた、世界的な好況がずっと続いておるというふうなことで、我が国の黒字は減る傾向にもありましたが、またそれがふえないとも限らない、こういうことをおもんぱかりまして、我々は、そうした黒字はODAという形において世界に奉仕をしておるのです、こういうふうな説明ができるように、ことしは七・八%というものを私率先してつけさしていただいたのも、そういうところでございます。  しかし、一部報道にありますように、この間弔問外交でいろいろな国々が来られましたが、もうほとんど外務省では手が足りません。各省さらには議員同士の交流、さらには議員連盟もございますが、そういうところ挙げて歓待をしていただいたということでございますから、そこだけ見て、これはODAの何かたくらみがなされたと言わんばかりの書きぶりには、私もこれはいささか違うんじゃないか、かように思っています。しかし、一つはそういうふうに見られがちであるということならば、我々といたしましても、いやしくも外交にへんてこなうわさがたっては大変でございますから、十二分にそうしたことはきちんとした体制で内外ともに立派な外交が推進されておるというふうな姿勢は当然とっていかなくてはならない、かように考えております。
  130. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣の言やよしてございまして、やはり大臣、これだけになりますと、よほど丹念にきっちりやらなければならない課題になってきておりますので、その点を御銘記いただきまして、また追っての検討をさせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  131. 浜野剛

    浜野委員長 次に、中路雅弘君。
  132. 中路雅弘

    中路委員 旅券法の改正の問題から御質問いたしたいと思いますが、今回の改正で数次旅券原則となったわけですが、一次といいますか一回限りの渡航者も相当おられるわけであります。修学旅行あるいは生きているうちに一度海外へ行きたいというお年寄りやあるいは海外移住のための渡航者といった人たちは一次旅券でいいということになりますが、こういう人たちについて、今度数次になりますと一律八千円です。一次の場合は四千円だったわけですが、何らかの減額の措置あるいは選択の幅を持たしてもいいんではないかと思いますが、検討はできないものかどうかということをまずお尋ねします。
  133. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 お答え申し上げます。  今回の旅券法改正におきまして数次旅券原則といたしましたのは、現在の国際的な傾向といたしましても、機械読み取り旅券の制度が徐々に広まっておりまして、我が国の一次旅券のようなものは他に余り例を見ないということ、したがいまして、一次旅券が有効期限を明記していないということから各国の出入国の手続の際にトラブルが生じているというような事態、そしてまた既に現在申請がございます旅券につきましても、数次のものが九割という状況を踏まえまして、私どもMRPの導入ということを一つのめどといたしまして数次旅券一本化を図ったわけでございます。他方、現在既に、例えば海外移住者などで有効な一次旅券をお持ちの方は、それがそのまま、有効なままあるということでございますので、こういう点を含めまして、私ども全面的に国民に対する行政サービスの向上といった観点から御理解願えるのではないかと期待しているわけでございます。
  134. 中路雅弘

    中路委員 手数料等の減額についても検討はしていただきたいということをもう一度お願いしておきたいと思います。  今回の改正で北朝鮮への渡航について数次旅券発給される道が開かれたこと自体は評価できるわけですが、問題は旅券発給に当たって他の国と差別なく行われるかどうかということだと思います。これは差別なくやるべきだと考えますが、いかがですか。
  135. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 今回の旅券法改正の中には、先生今御指摘のとおり、北朝鮮渡航者について本数次旅券発給できるような弾力的な規定が設けられているわけでございますけれども、本来、一次旅券北朝鮮への渡航者発給するということにつきましては、邦人保護の観点から、渡航の都度、その日程あるいは渡航目的につき承知しておくことが現在のような日本北朝鮮との間に政府レベルの連絡が難しいという状況では必要だという観点から一次旅券発給ということを規定しているわけでございますが、旅券法の改正案の中では、外務大臣が判断するとき「指定する地域」ということで北朝鮮が別途記載されているわけでございます。
  136. 中路雅弘

    中路委員 北朝鮮についてはそういった面ではやはり差別があるわけですね。この基本には国交回復の問題があるわけです。それまでこういうことを続けるということならば大変許されないことだと思います。もともと北朝鮮との間に国交がない、これは日韓条約の第三条で韓国を唯一の合法政府とみなしている今の対朝鮮政策にあると思うのですが、朝鮮には南朝鮮も北朝鮮も存在し、全朝鮮を代表する政府がないというのが事実なわけです。今や韓国を唯一の合法政府とするのは現実に合わない見方になってきているのではないかと思うのですが、この点についてはいかがですか。
  137. 長谷川和年

    ○長谷川(和)政府委員 ただいま委員日韓基本関係条約に御言及なさいましたが、日韓基本関係条約の第三条は、韓国政府が第三回の国連総会の決議百九十五号に明らかにされているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府である、こういうことを確認しているにすぎません。我が国としましては、北朝鮮との関係についてこの条約の第三条が何ら触れていないと考えております。  ただいま委員御指摘のように、確かに一九五〇年代あるいは六〇年代に比べますと、朝鮮半島をめぐる国際情勢がある程度変わっているのは事実でございます。例えば、現在北朝鮮国交を持っている国が百一、韓国国交を設定している国は百三十でございます。一方、両方と国交を持っている国は七十ございます。こういった意味では国際情勢にある面では変化がある。しかし、基本的に第三回国連総会の決議にありますこういった決議の趣旨については変化があるとは認識しておりません。我が国北朝鮮国交がないのは日韓基本関係条約の三条とは全く関係ございません。
  138. 中路雅弘

    中路委員 国際情勢の変化についても今お触れになりましたけれども、南北朝鮮の同時国連加盟さえいろいろ問題になっている今日であります。こうした韓国を唯一の合法政府というような実態を伴わない規定になっているということは明白でありますから、空文に等しくなっているこうした今の見地を早急に改めるよう、この機会に私は強く要求をしておきたいと思います。  旅券法関係で別の問題ですが、もう一点お聞きしたいのです。これはでさましたら外務大臣にもちょっとお答え願いたいのです。  昨年の六月に櫻内代議士を団長とする日本・ベトナム議員連盟の一行がカンボジアを訪日されました。私ども松本善明議員も同行されていまして、お話を聞いたのですが、その際に、カンボジア人民共和国の側から、共和国政権の旅券を所持したカンボジア人が日本に渡航を認めてもらえない。その例で挙げられましたけれども、例えばイ・サムディという赤十字の事務総長でお医者さんなんですね。赤十字の事務総長で、難民の問題等人道的な見地で日本に来たいと言っても認められなかった。しかし、日本の方からは旅行者や商用で来られる方も相当多く来ておられるということなので、こういう場合にやはり日本への渡航を認めてもらいたいという要求もあったということをお聞きをしています。この共和国政府旅券を所持したカンボジア国民外務省は査証を与える。例えば赤十字の事務総長ですね。こういう人たちの場合、そういう方向で検討していくべきではないかと思いますが、これは代表団の比口さんが受けた要望でもありますので、今後検討していただけるかどうか、お尋ねしたいと思います。
  139. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 技術的な面もあるかもしれません。それは政府委員からお答えすればいいと思いますが、カンボジア問題は今アジアの一番の紛争でございます。早く解決したいというのが私たちの気持ちでございます。したがいまして、現政権ヘン・サムリンを初めとして四派連合、ぜひともそうした非同盟中立的な政権が誕生するということを私たちも心からこいねがっております。その面では議員連盟のお方が超党派でお行きになったその感想等々私たちは大切にしなければならない、私はかように考えておる次第でございます。  具体的な問題は政府委員からお答えさせます。
  140. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 技術的な点について補足させていただきたいと思います。  査証発給の可否につきましての判断は、個々の申請につきまして諸般の事情を勘案して行うものでございますので、現在具体的な申請がなされていない状況政府対応につき申し上げるのは非常に困難でございますが、いずれにせよ、お話のようなカンボジア赤十字関係者から査証申請がなされた場合には、これらの赤十字関係者の訪日目的にも配慮しつつ、また、ただいまのお話念頭に置きつつ検討することになろうと考えます。
  141. 中路雅弘

    中路委員 特に具体例で挙げましたけれども、こうした赤十字の事務総長の地位にある方ですね。こういう点の査証はぜひこれは認めるべきだというふうに私も思います。ぜひ今後そういう方向でやっていただきたい。  日中投資保護協定の問題ですが、関連する問題ですが、日中関係考える場合に、さきの十五年戦争をどう見るかという問題は、やはり避けて通れない問題であります。外務大臣も、先般もまたきょうも議員の質問で、軍国主義による侵略であったということを言っておられます。これは竹下総理宇野外務大臣と同じ考えだということをたしか先般国会でも答弁されているところですけれども、この外務大臣がおっしゃっている軍国主義による侵略であったということは、さきの戦争はいわゆる侵略戦争であったということと同じ意味ですか。
  142. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 我が国は、さきの戦争につきましては、十五年戦争という立場でとらえました場合に、日中間には共同声明さらには平和友好条約等々つくりましたが・その共同声明ではっきりと過去の歴史に関しましては我が国が遺憾の意を表しておりますから、これは私、永久に変えてはいけない、やはり永久のものである、かように考えております。特に、それに続く戦争に関しましては、サンフランシスコ講和会議におきまして、当然同様の意図を私たちは友好国になっていただいた方々には表明をした。ただ、残念ながらソ連等等参加せられなかった方にはそうしたようなことはございません。特に日中関係の今後のこと、よき隣人としての立場を踏まえた場合には、先ほども具体的に申し上げましたとおり、中国の要人のお方が、目の前で親を殺され、子供を殺された、そうしたことがあったんですよ、その悲しみを乗り越えて新しい時代にそれぞれの国が今取り組んでいるのですから、このことは日本といたしましてもぜひとも銘記していただきたい、だからそのようなことを思い出すような話にならないようにお願いしたいと、こうしたことは私やはり大切だろうと思いますし、特に共同声明、条約において我々の先輩がきちっと処理をされた問題は、当然内閣は守っていかなくてはなりません。そんな意味で、私はいろいろ考えまして、軍国主義の侵略であるという言葉を使った次第であります。
  143. 中路雅弘

    中路委員 西ドイツはヒトラー・ドイツの戦争を侵略戦争であったということは公式に認めておられることは、これまでも指摘してきましたけれども、イタリアを最近私は見ましたら、イタリアもまたイタリア平和条約の前文でこう書いているのです。「ファシスト政権の下におけるイタリア国が、ドイツ国及び日本国との三国条約の当事国となり、侵略戦争を企て、それによって一切の同盟国並びに他の連合国との戦争状態をひき起こし、かつその責任を分担している」というふうに、イタリア平和条約の前文は明確に述べていますが、外務大臣の今の御見解は、このイタリア平和条約とまた同じ認識に立っておられると理解していいですか。
  144. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私が申し上げたのは、我が国についての私たちの認識でございまして、イタリアの認識を私はコメントする立場ではない、かように思います。
  145. 中路雅弘

    中路委員 軍国主義による侵略だということはおっしゃっているのですけれども、すっきりとこの戦争が侵略戦争だということは認めておられないわけです。  角度を変えてもう一問お尋ねしますけれども大臣の言われる軍国主義、私、広辞苑で昨日見てさましたら、こう書いているのです。軍国主義というのは、「国の政治・経済・法律・教育などの政策・組織を戦争のために準備し、軍備力による対外発展を重視し、戦争で国威を高めようと考え立場。」というふうになっていますけれども外務大臣、当時の日本は軍国主義国家、すなわち一部の軍人とか軍部というのでなくて、国家全体が軍国主義であるという認識で、軍国主義による侵略だったというふうにおっしゃっている、そう理解していいわけですか。
  146. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 昭和八年に御承知のとおり国際連盟におきまして、当時の世界の国の数は今日ほどもちろんございませんが、そうした少ない国の時代に、実は日本は今のタイ国、シャムだけが棄権をしましたが、そのほかの国々は全部日本を向こうに回しまして、要は四十二対一という悲惨な決議を受けております。だから国際連盟脱退というふうな孤立無援の状態をみずからつくり出してしまいました。その結果がどうであったかということは歴史の示すところでございます。だから、私といたしましては、そういう意味で私の認識を先ほど申し上げた次第であります。
  147. 中路雅弘

    中路委員 軍国主義による侵略だということは、今私が引用しましたけれども、この軍国主義国家日本が引き起こした戦争であったという認識だと理解していいですね。
  148. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 いろいろ評価はございましょうが、例えば中国におきまして、中国とそして日本軍とどちらが鉄砲を撃ったんだというような話すらがいろいろ議論されました。そのとき私は、鉄砲を撃ったのがどちらであったにせよ、日本が他国にいたということ自体が我々としては大きな反省すべき材料だ、こう言っておるわけであります。
  149. 中路雅弘

    中路委員 限られた時間ですから、続けませんけれども総理もそうなんですが、この戦争が明白な侵略戦争であったということについてはなかなか明快にすっきりとそういう答弁をされない。軍国主義による侵略だったということをおっしゃっているわけですけれども世界の常識なんですね。この戦争がこうした軍国主義日本によって、また絶対主義的な天皇権力によって遂行された。これは歴史の事実でありますし、こうした世界の認識、大勢についてもきちっと御答弁されないという点に、やはり大きな問題があるということを私は強く指摘して、あと法案について一、二御質問したいと思います。  この保護協定の収用、国有化と類似の効果を有する措置も補償の対象にされる、第五条ですか、となっていますが、公害企業に対する業務停止あるいは制限も類似の効果を有する措置として補償の対象になりますか。
  150. 丹波實

    ○丹波政府委員 協定の解釈の問題でございますので、私から答弁申し上げます。  御指摘の五条の二項は、収用、国有化等の問題につきまして、「公共のため、かつ、法令に従ってとられるものであり、差別的なものでなく、また、補償を伴うものである場合を除くほか、収用、国有化又は収用若しくは国有化と類似の効果を有するその他の措置の対象としてはならない。」というぐあいに規定されておりまして、したがいまして、問題は先生が御指摘の公害規制に伴う例えば操業停止といったものがここで規定しております収用または国有化または類似の効果を有するものに該当するか否かということであると思いますけれども、この点は具体的な状況によって判断さるべきものでございまして、あらかじめ抽象的に線を引いて該当するしないということを抽象的に論ずることは非常に難しいのではないか。諸般の状況というものを考えながら、あるいは場合によっては問題が起こった場合には、この協定で設置される日中台同委員会を通じて議論するとかというようなことを通じて、あるいは実績を積み重ねながら具体的なものを判断していくということになるのではないかと考えられます。
  151. 中路雅弘

    中路委員 ケース・バイ・ケースというお話もありますけれども、いずれにしても、補償の対象になる、協議をすることもありますけれども、そういうことで、この類似の効果を有する措置という中に私が言ったものもその検討の対象にはなりますね。
  152. 丹波實

    ○丹波政府委員 お答え申し上げます。  私が意味しておりますところは、公害規制による操業停止といいましても、例えばそれが二、三日にわたるものであるのか、あるいは半年、一年にもわたって、あるいはそれ以上にもわたって、そもそも中国投資をしていったということを無意味にするような状態になるのか、そういう全般的な状況考えていかなければ、入る入らないというような議論を抽象的に申し上げることは非常に難しいのではあるまいか。これは私は先生にも御理解いただけるのではあるまいかということを申し上げたつもりでございます。
  153. 中路雅弘

    中路委員 例えば公害企業に対する規制をしたくても、それを補償するだけの外貨がないということもありますね。あるいはそうした措置をとろうとする場合に、協定五条にあります、公共のため、かつ、法令に従って、差別的なものでなく、また、補償を伴うというここの条件を満たしているかどうかをめぐっての紛争になる可能性もあると思いますが、こういう場合にどのように解決をされるのかということをもう一問お尋ねしておきたいと思います。
  154. 丹波實

    ○丹波政府委員 この点につきましては、全協定を通じまして複数の解決の方法が規定されておることは、先生御承知のとおりでございまして、まず損害を受けた国民あるいは会社が、この場合は前提として中国といたしますと、中国政府と話す。あるいは場合によっては、これは合同委員会協定の実施の問題すべて取り上げることができるわけですから、そういう局面にもあるいは持ってこれる。いろいろ手を尽くしてもだめな場合には、あるいはその関係の会社、国民中国の国内法によりまして司法的な解決を求めるということも考えられますし、あるいは協定十一条は、そういう会社が中国の国を相手取って国際的なところでできております仲裁裁判あるいは調停というところにも持っていくことができるという規定がございますように、いろいろな複数の解決のルートというものが規定されておりますので、こういうものが活用されて円満な解決に達するということを私たちは期待しておるわけでございます。
  155. 中路雅弘

    中路委員 最後になりますが、今度のこの投資保護中国との協定については私たちも賛成であります。しかしこの中で、外務大臣に最後に念を押しておきたいのですが、やはり相手国の内政干渉や経済主権の侵害になることのないように、ひとつ十分この協定を守ってやっていただきたい。このことを最後に外務大臣にもう一度御答弁をお願いしておきたい。
  156. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今回の協定はあくまで相互信頼、相互親善、相互発展、そういうふうなことを一つのテーマとして私たちが誠心誠意議論の果てつくり上げたものでございます。したがいまして、十二分にこの協定の精神を酌み取って今後保護の問題にも対処していかなければならない、かように思っております。
  157. 中路雅弘

    中路委員 終わります。
  158. 浜野剛

    浜野委員長 これにて両案件に対する質疑は終了いたしました。
  159. 浜野剛

    浜野委員長 これより両案件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  まず、投資奨励及び相互保護に関する日本国中華人民共和国との間の協定について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  160. 浜野剛

    浜野委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、旅券法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  161. 浜野剛

    浜野委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両案件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  162. 浜野剛

    浜野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  163. 浜野剛

    浜野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時十分散会      ――――◇―――――