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1989-06-14 第114回国会 衆議院 運輸委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    六月七日  小里貞利委員長辞任につき、その補欠として  島村宜伸君が議院において、委員長に選任され  た。     ――――――――――――― 平成元年六月十四日(水曜日)     午前十時六分開議 出席委員   委員長 島村 宜伸君    理事 尾形 智矩君 理事 柿澤 弘治君    理事 川崎 二郎君 理事 久間 章生君    理事 二階 俊博君 理事 新盛 辰雄君    理事 長田 武士君 理事 小渕 正義君       石橋 一弥君    魚住 汎英君       岡島 正之君    加藤 六月君       亀井 善之君    鴻池 祥肇君       佐藤 敬夫君    関谷 勝嗣君       園田 博之君    高橋 一郎君       緒方 克陽君    左近 正男君       戸田 菊雄君    吉原 米治君       西中  清君    中村 正雄君       中路 雅弘君    野間 友一君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 山村新治郎君  出席政府委員         運輸政務次官  森田  一君         運輸大臣官房国         有鉄道改革推進         総括審議官   丹羽  晟君         運輸省運輸政策         局長      塩田 澄夫君         運輸省国際運         輸・観光局長  中村  徹君         運輸省地域交通         局長      阿部 雅昭君         運輸省地域交通         局陸上技術安全         部長      清水 達夫君         運輸省貨物流通         局長      大塚 秀夫君         運輸省海上技術         安全局長    石井 和也君         運輸省海上技術         安全局船員部長 田辺 淳也君         運輸省港湾局長 奥山 文雄君         運輸省航空局長 林  淳司君         運輸省航空局技         術部長     中村 資朗君  委員外出席者         警察庁交通局運         転免許課長   滝藤 浩二君         環境庁大気保全         局自動車公害課         長       南戸 義博君         労働省労働基準         局安全衛生部安         全課長     梅井  勲君         労働省労働基準         局賃金時間部労         働時間課長   諏訪  佳君         建設省道路局有         料道路課長   小野和日児君         建設省道路局高         速国道課長   玉田 博亮君         参  考  人         (日本国有鉄道         精算事業団理事         長)      杉浦 喬也君         参  考  人        (日本国有鉄道         精算事業団理         事)      池神 重明君         運輸委員会調査         室長      荒尾  正君     ――――――――――――― 委員異動 五月二十四日  辞任         補欠選任   石橋 一弥君     石渡 照久君   魚住 汎英君     小川  元君   尾形 智矩君     坂本三十次君   大野 功統君     渡辺 紘三君   岡島 正之君     愛知 和男君   緒方 克陽君     関山 信之君 同日  辞任         補欠選任   愛知 和男君     岡島 正之君   石渡 照久君     石橋 一弥君   小川  元君     魚住 汎英君   坂本三十次君     尾形 智矩君   渡辺 紘三君     大野 功統君   関山 信之君     緒方 克陽君 六月三日  辞任         補欠選任   田中 直紀君     亀井 善之君   森田  一君     川崎 二郎君   若林 正俊君     中村正三郎君 同月六日  辞任         補欠選任   大野 功統君     島村 宜伸君   中村正三郎君     宮里 松正君 同月八日  辞任         補欠選任   小里 貞利君     加藤 紘一君 同月十三日  辞任         補欠選任   宮里 松正君     佐藤 敬夫君 同月十四日  辞任         補欠選任   亀井 静香君     園田 博之君   村上  弘君     野間 友一君 同日  辞任         補欠選任   園田 博之君     亀井 静香君   野間 友一君     村上  弘君 同日  理事森田一君及び若林正俊君同月三日委員辞任  につき、その補欠として川崎二郎君及び尾形智  矩君が理事に当選した。     ――――――――――――― 六月十三日  四国への新幹線鉄道導入に関する陳情書  (第一七二号)  九州新幹線鹿児島ルート建設促進に関する陳  情書  (第一七三号)  コミューター航空整備促進に関する陳情書  (第一七四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  参考人出頭要求に関する件  特定船舶製造業安定事業協会法の一部を改正す  る法律案内閣提出第三八号)  陸運に関する件  海運に関する件  航空に関する件  港湾に関する件      ――――◇―――――
  2. 島村宜伸

    島村委員長 これより会議を開きます。  この際、一言あいさつを申し上げます。  このたび、図らずも運輸委員長の重責を担うことになりました。まことに光栄に存じます。  御承知のとおり、今日の運輸行政は、陸、海、空を通じ重要な問題が山積しておりますが、それぞれの問題解決はもとより、二十一世紀への展望に立った総合的な運輸政策の確立に寄せられる国民期待は極めて大きいものがあり、本委員会に課せられた使命はまことに重大であります。  幸い練達堪能なる皆様方の御指導、御協力を賜りまして、微力ではございますが、委員会の円滑な運営を図り、その職責を果たしてまいりたいと存じます。  何とぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)      ————◇—————
  3. 島村宜伸

    島村委員長 この際、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が二名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 島村宜伸

    島村委員長 御異議なしと認めます。  それでは、理事に       尾形 智矩君    川崎 二郎君を指名いたします。      ————◇—————
  5. 島村宜伸

    島村委員長 この際、山村運輸大臣及び森田運輸政務次官から、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。山村運輸大臣
  6. 山村新治郎

    山村国務大臣 私は、このたび宇野内閣発足に際しまして運輸大臣を拝命しました山村新治郎でございます。今国会におきまして、運輸委員会の開かれるこの機会に一言就任のごあいさつを申し上げます。  運輸国民の生活と密着しており、豊かで活力ある社会を築き上げていくために期待される役割はまことに大きいものがございます。  私としては、佐藤大臣の方針を引き継ぎ、引き続き運輸行政の基本であります安全の確保に万全を期しつつ、運輸をめぐる多くの課題に積極的に取り組み、問題の解決最大限の努力をいたす所存でございます。  特に、国鉄改革の大きな課題である職員雇用対策長期債務処理対策には真剣に取り組んでまいる必要がありますし、新東京国際空港完全空港化も一日も早く実現いたさなければなりません。  これら諸問題の解決には、何と申しましても本委員会関係各位の御理解と御支援を賜らなければなりません。重ねてよき御指導と御助言を賜りますようお願い申し上げまして、私の就任のごあいさつといたします。よろしくお願いします。(拍手
  7. 島村宜伸

  8. 森田一

    森田(一)政府委員 このたび運輸政務次官を拝命いたしました森田一でございます。  ただいま大臣からお話がありましたように、運輸行政は陸、海、空ともさまざまの問題を抱えておるところでございます。これらの問題の解決には遅滞を許されないものがございます。私も、山村大臣のもとで力いっぱい尽くしてまいる所存でございます。  その際には、委員長初め委員皆様方には大変お世話になると思いますが、今後とも何分よろしくお願いを申し上げる次第でございます。  今後の御指導を心からよろしくお願いを申し上げ、私のごあいさつとさせていただきます。(拍手)      ————◇—————
  9. 島村宜伸

    島村委員長 陸運海運及び航空に関する件等について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  陸運に関する件について、本日、参考人として日本国有鉄道清算事業団理事長杉浦喬也君及び理事池神重明君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 島村宜伸

    島村委員長 御異議なしと認めます。そのとおり決しました。よって、     —————————————
  11. 島村宜伸

    島村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。尾形智矩君。
  12. 尾形智矩

    尾形委員 このたびの宇野内閣の誕生に当たりまして運輸大臣就任をされました山村新治郎大臣、そして運輸政務次官就任をされました森田一政務次官に、まず心からお祝いを申し上げる次第でございます。  特に山村大臣におかれましては、就任早々中国の混乱に際しまして特別機を配慮していただきまして、在住邦人の帰国に大変な便宜を図っていただきまして、多くの国民皆さんから大変感謝をされておるわけでございます。かつて運輸政務次官のときに男山村新治郎大変評価を受けたわけでございますが、今回も就任早々国民皆さんから大変な御期待をいただき、そしてそれに十分こたえていただきまして私ども本当に心から感謝を申し上げておるところでございます。運輸行政、多事多難な折でございます。どうぞ大局的な見地に立たれまして事の処理に当たっていただきますことをまず心からお願いを申し上げておきたいと思います。  時間がございませんので早速質問に入らせていただきたいと思いますが、私は航空行政について順次質問を行ってまいりたいと思います。答弁の方よろしくお願いを申し上げる次第でございます。  御案内のとおり、航空利用者が年々増加の一途をたどっておるわけでございます。昭和六十年度国内航空利用者が約四千四百万人だったと言われておりますが、これは十年前のおよそ二倍に当たると言われております。国内線航空利用者はこれからもどんどんふえていくというふうに言われておるわけでございますが、特に平成十二年ごろには一億人を突破するのではなかろうかというふうに予想がされておるわけでございます。  同時にまた、人ばかりではございません、航空貨物輸送も順調に伸びを示しておるわけでございまして、人と物を同時に運ぶ、それが急激に伸びておるという状況になっておるわけでございます。そしてまた、御案内のとおり国内線も国際線も大変急激な伸びを見せておるというような状況であるわけでございます。これらの状況に対応するために政府空港整備を急いでおるわけでございまして、政府空港整備五カ年計画を策定いたしましてこれに対処しておるわけでございますが、この点についてまずお伺いをいたしたいと思います。  昭和六十一年の十一月二十八日に第五次空港整備五カ年計画昭和六十一年度から平成年度まででございますが、これを決定をされました。一兆九千二百億円という総額の金額でございますが、その第五次空港整備五カ年計画進捗状況は一体どういうふうになっておるのか、この点についてまずお尋ねを申し上げたいと思います。
  13. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 お答え申し上げます。  空港整備五カ年計画は、昭和六十一年度から平成年度まで、これを第五次計画期間といたしまして、調整費千二百億円を含めて総事業費は一兆九千二百億円となっております。総事業費に対しますところの六出二年度末までの実績の見込みでございますが、これは一兆一千四百四十八億円ということでありまして、進捗率で申し上げますと五九・六%でございます。さらに、これに平成元年度の政府予算を含めますと一兆五千八百四十九億円ということでございまして、進捗率は八二・五%という見込みでございます。
  14. 尾形智矩

    尾形委員 当然、この第五次空港整備五カ年計画が終わりますと第六次の空港整備五カ年計画も実施されると思われるわけでございますが、これはいつごろ決定をされるのか、また、その概要についてわかりますればお知らせをいただければと思っております。
  15. 山村新治郎

    山村国務大臣 お答えいたします。  空港整備五カ年計画は、航空輸送需要の増大と航空機大型化高速化に対処して空港施設を緊急に整備する必要から、昭和四十二年度初年度とする第一次計画以降、逐次策定されてまいりました。現在、六十一年度初年度とし、平成年度最終年度とする第五次計画が実施されているところでございます。  次期五カ年計画の策定につきましては、現段階では平成年度初年度とする計画として策定されるものと考えております。その場合においては、過去の例から見ますと平成三年の後半に最終的に決定されることになるものと考えられます。したがって、計画概要につきましては今後検討されることになろうと思います。
  16. 尾形智矩

    尾形委員 航空利用が急激に増加をいたしておるわけでございますが、既存の空港整備、そしてまた新空港建設等促進をされております。そこで、航空安全性を確保するために空域調整の問題がこれから出てくるわけでございます。現在は御案内のとおり一本の直線進入経路しか設定できないILSというのを使用しておるようでございますが、このILSに比べまして精度が高くて周辺の地形条件、あるいは航空機の性能に合致した複数の進入経路が設定できるMLS開発が進められておるようでございます。既に運輸省所管電子航法研究所において実用型のMLSを試作いたしまして仙台空港実験をし、さらに熊本空港においても実験が行われておると聞き及んでおるわけでございます。  この点についてお伺いを申し上げたいわけでございますが、国内におけるMLS開発状況、そしてまた実験状況、それから実用化計画がどういうスケジュールのもとになされておるか、この点について実はお知らせをいただきたいと思っております。  あわせて、欧米諸国においてもこの研究が大変進められておるというふうに伺っておるわけでございまして、既にいろいろな空港におきましては、この実用化に向けての実験が行われておると承っておるわけでございますが、どの国で、またどの飛行場、例えばニューヨークのケネディ空港とかそういうような幾つかの空港があろうかと思いますが、そういうような空港名、そしてまた何年ごろこれが実用化していくのか、そういう点について御答弁をいただきたいと思います。
  17. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 ただいま先生指摘MLS開発状況等でございますが、国際民間航空機関、いわゆるICAOでございますけれども、これが定めました進入着陸援助システム、これの国際標準によりますと、一九九七年、すなわち平成九年でございますが、この十二月三十一日まで、すなわち平成九年いっぱいまでは現在のILS、これをプライマリーシステムということにしております。そして、一九九八年、平成十年の一月一日以降はMLS、これをプライマリーシステムとする、こういうスケジュールを立てて、現在世界的に開発が進められている段階でございます。  我が国状況でございますが、こういうスケジュールを受けまして、我が国におきましても現在熊本空港設置をいたしましたMLS試作装置によりまして、これは運輸省電子航法研究所が機器の開発評価研究を行っておるわけでございます。その後、この試作装置仙台空港にさらに移設いたしまして、平成二年から三年にかけまして管理運用面での調査研究を進めていく、こういう計画をしております。  MLS実用化につきましては、これらの地上装置調査研究のほかに、航空機機上装置整備計画あるいは諸外国におけるMLS整備状況といったものを勘案して最終的に対処するということになるわけでございますが、全体の整備にはさらに数年程度を要するというふうに予想されます。  諸外国におきましても、アメリカイギリスカナダ等諸国におきまして、既に一部の空港MLS設置いたしまして、または設置をする計画を持っておりまして、その開発評価とか利用技術等にかかわる調査研究が進められておるというふうに聞いております。具体的に空港名につきましては、イギリスについてはロンドンのヒースローあるいはロンドンの北西にありますマンチェスター空港アメリカにおきましてはニューハンプシャー州のレバノン空港カナダにおきましてはノバスコシア州のポートホークスベリー空港でしょうか、そういうところで評価実験が行われておるというふうに聞いております。
  18. 尾形智矩

    尾形委員 現在日本の国は経済が安定的に伸展をいたしておるわけでございますが、ただ、御案内のとおり幾つかのいろいろな問題が提起をされておるわけでございます。その中で、特に地域格差がだんだん広がりつつあるというのがこれからの大きな政治課題になっていくと私は感じておるわけでございます。特に、一極集中主義と言われておりますように、東京に大変な機能が集中をいたしておるわけでございますが、これを地域にも及ぼしていかなければいけない、一極集中主義から多極分散型の国家をつくっていかなければいけないというのがこれからの国づくり最大課題であると思っておるわけでございます。  御案内のとおり、この日本の国には百万都市政令指定都市が全国で十一ございます。一番北の札幌から一番南の福岡まで十一あるわけでございますが、その十一あります政令指定都市の中で、人口が減っておりますのは実は北九州市だけでございます。ほかの地域は御案内のとおり人口伸びておるわけでありまして、札幌市や福岡市は北九州市よりもはるか後に政令指定都市になったわけでありますが、今や札幌人口百六十万を超えました。そして福岡市も百三十万になってまいりました。北九州は一番多いときが百六万、今や百三万台になっておりまして、今でも人口が実は減りつつあるわけでございます。これは、石炭、鉄に代表されますようないわゆる産業構造の変化、エネルギー革命、そういうようないろいろなことで定義がされておるわけでございますが、ただ、それだけでは片づけられないいろいろな問題もあるわけでございます。  特に北九州の場合は、近郊に二百万と言われるほどの飛行機を利用する人々がいるわけでございますが、近郊に実は飛行場がないわけでございます。これが実は北九州浮揚発展に大きな影響を与えておると私ども考えておるわけであります。かつては日本の四大工業地帯の一角を占めて、実は戦後の日本の復興の原点であったと言っても過言でないほどでございましたが、今やそういう状況でございます。どうしても新北九州空港をつくっていかなければいけないというのが最大懸案事項になっておるわけでございます。  御承知のとおり、北九州市は昭和六十二年に地域雇用開発等促進法に基づきまして緊急雇用安定地域、いわゆる特定不況地域にさえ指定をされておるというような状況になっておるわけでございます。そういう意味で、私どもどうしても実はこの北九州空港を建設していきたいということで、今日まで努力がなされてまいっておるわけでございます。  昭和五十三年七月に、実は新北九州空港建設促進期成会というのができまして、運輸省港湾局が周防灘の苅田沖に、関門航路、そして北九州、苅田港それぞれの港のしゅんせつの土砂を処分するための土砂処分場を五十二年から建設しておりましたが、実はそこを空港予定地ということで、これは勝手に決めたわけでございますが、それにお願いをして、何とか海上空港を建設して地域浮揚を図っていきたいということで期成会が出発をして今日に至っておるわけでございます。たびたび運輸省大臣初め航空局港湾局関係の各地域陳情をしておるわけでございます。  そういう状況であるわけでございまして、実は運輸省当局も、その土砂処分場海上空港として適地であるというような表現もいただいておりますし、また、調査費等もつけていただいて、いろいろな面から調査をしていただいておるわけでございます。  ところが、実はその人工島、土砂処分場も、第一期工事と言われるものが既に終わりに近づいておるわけでございまして、港湾局は、これに併設をいたしまして第二期工事にこれから入らなければいけないというような状況にあるわけでございます。しかしながら、私どもはその地域を、その人工島を新北九州空港候補地ということでお願いをし、また暗黙の了解と言っても過言でないと思います。そういう形になって、ここに新北九州空港を建設していこうという状況になっておるわけでございますが、現在のところ、まだそこを正式に新北九州空港にするといういわゆる位置決定がなされていないわけでございます。これでいろいろな大きな問題があちこちに波及をするわけでございますが、新北九州空港位置決定というのは一体いつごろなされるのか、その点について御答弁お願い申し上げたいと思います。
  19. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 位置決定と申しますか、新北九州空港のいわば空港法上の位置づけということの御質問かと思うのでございますけれども先生指摘のように、現在第一土砂処分場が概成しつつある、さらに第二土砂処分場港湾計画におきまして計画決定がされておるということで、これから第二土砂処分場についての漁業補償その他の手続等が進められていくことになると思うのですが、それを港湾計画空港として利用するということについての正式な決定がなされましたならば、その上で、その後の空域問題、その他空港としての所要の調査をいろいろいたしまして、今予想されるのは、その場合に空域が一つ大きく問題になるであろう。北の方に山口宇部空港、それから小月の飛行場、それから南の方には築城の飛行場というのがございますので、これら飛行場との空域調整が必要になってくるわけでございますが、現段階で私どもが考えておりますのは、先ほど先生から御質問ございました直線進入によるILS進入ではちょっと空域調整が難しい。MLS、これによる曲線進入が可能になれば空域調整が可能になるであろう、そういうふうに思われますので、そういう曲線進入方式によるMLS導入の時期といったもの、それによる空域調整の具体的な内容といったものを十分調査いたしまして、その上で空港としての正式な位置づけをしていくことになろうかというふうに考えております。
  20. 尾形智矩

    尾形委員 御答弁の趣旨はよくわかるわけでございますが、実は大変困った問題が起こっておるわけでございます。と申しますのは、運輸省港湾局、特に担当の第四港湾建設局におきましては、第二期という言葉が適当かどうかわかりませんが、苅田沖土砂処分場併設をいたしまして、新門司地区のいわゆる土砂処分場、第二期工事であるわけでございますが、これをするための漁業補償に入ったわけでございまして、紆余曲折はございましたが、十七の漁業協同組合がこのテーブルに着きまして、今第四港湾建設局、大変な御努力をされておるわけでございます。  ただ、その中で、この第一期の苅田沖土砂処分場の場合では、実は海洋公園ということでございましたのですが、今度はこれは空港になるのだということで、空港になるということに決定をすればこれは大変な補償額になるのだという、事実そういう根拠がどこにあるのかは定かではありません、しかしながら普通の土砂処分場と、それから空港建設の埋め立てをするというのとは大分違うのだという認識があるようでございまして、それが決まりませんと、なかなかその交渉がはかどらないということで漁民の皆さんが大変困っておるわけでございます。  同時にまた、これを埋め立てをするためには福岡県議会、北九州市議会、苅田町議会、この三つの議会の同意が必要であるわけでありますが、今やまた第一期と同じように土砂処分場でこれを同意いただきたいということではもう通らない状況になっているわけでございます。どうしてもここらあたりをきちんと整理をしていかないと前に進まないという問題がこれにはあるわけでございまして、その点が大変問題になりますが、これを前に進めていくためにどういう形で処理をされる御予定であるか、そこらあたりの点についてお答えをお願いいたしたいと思います。
  21. 奥山文雄

    ○奥山政府委員 お答えいたします。  新門司沖の第二土砂処分場の建設につきましては、先生案内のとおり第七次港湾整備五カ年計画に基づく事業でございまして、関門航路などの整備に伴います土砂処分場としてこれを建設するという趣旨でございます。しかしながら、土砂処分をした結果といたしましてそこに広大な人工島が出現するということになるわけでございまして、この利用計画につきまして、土砂処分場計画を決めると同時に将来の土地利用のあり方について検討しておるわけでございまして、その検討の中にさまざまな意見がございますけれども先生案内空港建設ということも地元の意向としてあるというふうに伺っておりますので、そのことも含めて技術的な面で可能かどうかということを検討しているわけでございます。  したがいまして、この埋め立てを進めるためには関係漁業者との調整が当然要るわけでございますが、その際、関係漁業者と漁業損害に関する話し合いをさせていただくわけでございますけれども、将来の土地利用のあり方につきましても勘案の上漁業者と話をしてまいりたいということで、現在鋭意努力をしているところでございます。相手のあることでございますから、その話し合いの結果どういう落ちつきになるか、まだ定かではございませんけれども、私ども関門航路などの整備の重要性もこれあり、できるだけ早く解決をしてまいりたい、なおかつ将来の土地利用につきましても遺憾のないような形で埋め立てを進めてまいりたい、さように考えて交渉を進めている段階でございます。
  22. 尾形智矩

    尾形委員 大変複雑で難しい問題だと思いまして、的確と申しますか、すっきりした答弁ができにくい状況にあることはよく理解をいたしておるわけでございますが、漁業補償交渉等にも大変影響してまいりますし、議会の同意を得るためにもいろいろ問題、波及があるわけでございますので、できるだけ速やかにこの位置決定をしていただいて用途決定をしていただくように要望しておきたいと思います。  新北九州空港につきましては、調査費を全体の枠の中で決めていただいておるわけでございます。ことし、この平成元年度は一体どういうふうになっているのか、やはり全体の枠の中で調査費を決めていただくのか、さらにまた独自に調査についての予算化というのができないものかどうか、そういう点についてお伺いをいたしたいと思います。  それから、今までもずっと毎年調査費をつけていただいておりますが、これから後どういう調査が残っておるのか、具体的にどういう調査をしていくのか、そういう点についてお知らせをいただければと思っております。
  23. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 今年度の、平成元年度の空港整備予算の中で調査費につきましては一括計上しておるわけでございます。北九州につきましても所要の調査をするつもりでございますけれども、これについてはその具体的内容はこれから検討してまいりたいと考えているわけであります。  いずれにしましても、北九州空港につきましては基本的には先ほど申し上げましたMLS進入、これが必須の条件になりますので、これについての十分な開発評価をできるだけ早く進めていくということ、それからもう一つは、先ほど来御議論いただいております土砂処分場、これについての解決を早急に図っていくということがむしろ基本であろうと思いますので、その辺を重点、中心といたしまして必要な検討をこれからも進めてまいりたいと考えております。
  24. 尾形智矩

    尾形委員 航空局長にお伺いいたしますが、ずばりいつごろ開港の予定でございますか。それが答弁できますればお願いをいたしたいと思います。
  25. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 これにつきましては、再々御議論いただいておりますMLSの、しかも曲線進入によるMLS実用化ということ、それからもう一つは予定されております第二土砂処分場の、いわゆる人工島としてこれができ上がる時期というものを双方勘案いたしますと平成十年代に入るのではないか、平成十年以降になるであろうと思われます。
  26. 尾形智矩

    尾形委員 まだいろいろお伺いしたいことがありますが、時間がないのでもう一つ先に移らせていただきたいと思います。  今航空局長からお話がございましたように、新空港平成十年代ということになってまいりますと、その間若干の時間があるわけでございます。先ほど申し上げましたように、北九州は御案内のとおり今景気も大変低迷をいたしておるわけでございまして、何とかこの景気の低迷に歯どめをかけて、少しでも上昇気流に乗せていかなければいけないというのが最大課題になっておるわけでございます。  そういう観点から、現在あります、今休港になっております北九州空港を再開発をして、そしてとりあえず海上空港ができ上がるまでこれを使っていきたいということで、運輸省当局も御理解をいただいて、ことし、平成元年度予算の中で二十三億二千九百万円の予算をつけていただいておるわけでございまして、今年度と来年度にわたりましてこの整備をして、そして平成年度を目途に飛行機を飛ばしていこうということになっておりますが、何と申しましても東京便が確保できない。そのほかの、北九州空港からいろいろなところ、鹿児島でありますとか名古屋でありますとか、いろいろなところへ飛ばしましても採算がとれませんし、また利用客も非常に少ないわけでございます。  そういう意味で、東京便の確保ということが最大課題になってまいっておるわけでございます。いわゆる羽田の沖合展開がなされまして二十五便ふえたと伺っておりますが、既に昭和六士二年七月にもう十便が決定しておる、そして平成元年、ことしの七月には残りの十便が決まる、残りますのはあと五便しかないということで、その五便の中にも実はいろいろのところから手が挙がってたくさん希望があるようでございます。そういう点で、この路線の決定というのは一体いつごろどういう機関でどういう形でなされるのか、その点についてぜひお知らせをいただきたいと思います。
  27. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 ただいま先生指摘いただきましたように、羽田につきましては現在のところ五便程度の枠しか残っていないというのが現状でございます。しかしながら、羽田空港につきましては、沖合展開事業、いわゆる第三期の工事が完成いたしませんと滑走路処理能力がふえないわけでありまして、その第三期の工事が完成いたしますのが平成七年ごろでございます。したがいまして、現在が平成元年度でございますから、あと六、七年ぐらいはこの五便という便数の枠でいわばしのいでいかなければならないという非常に厳しい状況にあるわけでございまして、残り五便の使い方につきましては、これからの各路線ごとの需要の動向とか機材の大型化の可能性とか、そういう諸般の状況をいろいろ考慮しながら相当慎重にこれに対応していかざるを得ないと考えておるわけでございます。
  28. 尾形智矩

    尾形委員 時間が参りましたので、最後に山村大臣お願いを申し上げておきたいと思います。  実は、この新北九州空港というのは、全国各地で今空港建設がなされておるわけでございますが、その中でも大変特異なケースでございまして、運輸省港湾局土砂処分場として人工島をつくっておるわけでございます。実はそれを飛行場利用させていただこうという形で、つくっている方も利用させていただこうとしておる方も運輸省関係でございまして、非常に特殊なケースだと私ども考えておるわけでございます。  実は、六十一年五月に、当時の三塚運輸大臣が現地を視察していただいておるわけでございまして、大臣も、航路しゅんせつをして、そして土砂を処分して、その処分した土砂のいわゆる人工島が空港になるということは、これは一石二鳥だというふうな御発言もいただいておるわけでございます。実は石原運輸大臣にも現地を視察していただこうということで、今福岡県選出の衆参両院議員三十一人で新北九州空港建設促進会議員連盟というものを超党派で組織いたして、私が事務局長を務めておるわけでございますが、石原運輸大臣にも現地視察を依頼しておりましたところ、「なだしお」問題等がございまして実現がなされなかったわけであります。佐藤大臣にもお願いをして、時期を見てということでございましたが、かわられたわけでございまして、どうしても山村運輸大臣に現地を視察していただいて、北九州だけではなくて周辺の人たちが大変期待いたしておるわけでございます。  山村運輸大臣は「よど号」事件のときには、実はこれは福岡空港でございましたので大変あの付近にはファンもたくさんいるわけでございまして、大臣においでをいただきますと、また大変意気も上がってくるわけでございまして、ぜひできるだけ早い時点で現地を視察していただいて、大臣が的確に御判断をいただければと思っておるわけでございます。大臣、その点についていかがでございましょうか。
  29. 山村新治郎

    山村国務大臣 今いろいろ特殊事情等をお伺いいたしました。私も機会がありましたら、ひとつ行って現地を見させていただきたいというぐあいに考えております。
  30. 尾形智矩

    尾形委員 ありがとうございました。
  31. 島村宜伸

  32. 緒方克陽

    緒方委員 ただいま新しく大臣になられました山村さんがごあいさつをなさいましたけれども、その短いあいさつの中で、大きな問題は国鉄改革における清算事業団職員の問題と、土地問題あるいは交通安全の問題ということをいみじくも述べられたわけでございます。そういう意味で、今のあいさつにも関連いたしまして、非常に差し迫った問題であります清算事業団の職員の問題、あるいは新聞、マスコミでも大変問題になっておりますJRの不当労働行為の問題、またそういった中で労使関係が非常に荒廃をしている中で事故が多発をしている、一体どうするのかということで、その安全の問題について今から質問をさせていただきたいと思います。  前回の五月二十三日の委員会におきまして、私はJRの不当労働行為の問題について質問を行ったわけでありますが、その中で前大臣であります佐藤さんからは「一連の地労委の命令というものに対して運輸省としても非常に深刻に受けとめていますし、またこの問題は真剣に対処しなければいけない」という答弁と、いま一つ労働省との関係についても、これはこの不当労働行為の問題でありますが「労働省から本件に関して申し入れというか話があれば、もちろん真摯に協議してまいりたい」というような答弁があっているわけでございます。  この二つの答弁の問題でありますが、労働省はそれなりにJRを呼んだりして話をしているというように仄聞しているわけでありますけれども、その後労働省からは運輸省に対してどういうお話があったのかということがまず第一と、二つ目に、地方労働委員会の命令は深刻に受けとめ真剣に対処したいというこの言葉が、運輸省としては具体的な行動としてどういうふうになっているのか、この二点についてまずお尋ねをいたします。
  33. 山村新治郎

    山村国務大臣 五月二十三日の社会労働委員会における審議の概要につきましては労働省から連絡を受けております。  二つ目のJRの採用をめぐる不当労働行為事案について、地方労働委員会から救済命令が出されていることは私も深刻に受けとめております。JR各社、これは地方労働委員会においてみずからの主張が受け入れられなかったということで、それぞれ中央労働委員会に対し再審査の申し立てを行い、あるいは再審査の申し立てについて検討しているところであると聞いております。これらの事案については今後中央労働委員会で審理が進められることとなり、当事者間においてなお係争中の状況であることを勘案しますと、運輸省として今後の推移を見守ることが適当ではないかというぐあいに考えております。
  34. 緒方克陽

    緒方委員 今の当事者間で係争中であるということで慎重に見守りたいというような発言は、ここ何回もずっといろいろあるわけですね。しかし、現実にはJRではいろいろな事故が起きている、またマスコミの論調も、もう既に三十件の命令が出て、全部これは明らかにJRが不当労働行為をやっているということで命令が出ている。そういう現実の中で、労使紛争がこういう状況で荒れている中で、果たして安全が確保できるのかどうかということになればもっと真剣に考えなければならぬし、また、この問題は、いわゆる国鉄改革法が通るときには、不当労働行為はあってはならない、あるいは労働組合で差別があってはならないということが明確に政府答弁として出ているにもかかわらず、こういう問題が次々に起きている。一体これは何だということでありまして、これは確かにJRが当事者でありますが、まさにこれは国会の問題である、政府の問題であるというふうに言って前大臣にも見解を求めた結果、深刻に受けとめ、真剣に対処しなければならぬ問題だというふうに言われたわけです。  今の山村大臣も深刻に受けとめているという話でございますが、深刻に受けとめているけれども何にも行動を起こさないということでは問題ではないか。労働省から連絡を受けているという内容ですけれども、やはりこの時点では、連絡を受けた時点で一体どうしようかということで一定の働きかけを、何があるのか真剣に対処しなければならぬということになれば何か動きがなければならぬというふうに思うのですが、その辺について大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  35. 山村新治郎

    山村国務大臣 労働省からの内容の詳細について、政府委員の方から説明させます。
  36. 丹羽晟

    ○丹羽政府委員 先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、労働省からは、先日の社労委員会のやりとりにつきましての連絡を受けているところでございます。  今、先生の御指摘ございましたように、佐藤運輸大臣が真剣に受けとめているということを御答弁申し上げましたが、その件につきまして、私どもの方といたしましては、一般論として不当労働行為があってはならない、こういうことは当然だと思っておりますし、また、会社の事業が円滑に行われるためには、民間会社にふさわしい自主的な労使関係、そういったものが確立されていくことが重要であると考えております。清算事業団職員の再就職対策の問題につきましても、最重要課題の一つとして全力を挙げて取り組んでいかなければならないと考えております。  運輸省といたしましては、今後ともそのような考え方で対処していくということをしておりまして、そのような運輸省の考え方を先日佐藤大臣が申し上げたところでございますが、今のJRの採用をめぐる不当労働行為の事案につきましては、先ほど新大臣から御答弁申し上げましたように、当事者間においてなお係争中であります。そういうことでございますので、運輸省としては、今後の推移を見守ることが適当であると考えておる次第でございます。
  37. 緒方克陽

    緒方委員 審議官、そういうふうに話をそらしてもらっては困るわけですよ。議事録では明確に質問の中で、この一連の地方労働委員会の命令について何とかしなければならぬじゃないですかということについて、佐藤大臣は、問題は非常に深刻に受けとめていますし、また問題は真剣に対処しなければならぬということで、質問は労働委員会の不当労働行為の命令のことについての答弁なんですよ。そこをそらしてそういうふうな言い方では問題だと思います。  今の、この問題は深刻に受けとめて真剣に対処しなければならぬ、そういう前大臣の発言と、今山村大臣が言われました深刻に受けとめているという中で、深刻に受けとめているけれども何にもしないということは深刻ではないのではないか、労働省とかその他と何らかの協議をするということが必要ではないか、そうしなければ深刻ということにならぬのじゃないかということで、そのことについて、大臣、どうなのですか。その辺について深刻に受けとめておられるわけですが、受けとめるだけで何にもしないということでは、これはまさに国会の問題あるいは政府の問題、我々の問題ですけれども、それでいいのかどうかということで大臣の考えをお聞きしたいわけです。
  38. 丹羽晟

    ○丹羽政府委員 先ほど来御答弁申し上げておりますように、一般論として不当労働行為があってはならないこと、それから会社の事業が円滑に行われるためには民間会社にふさわしい自主的な労使関係が確立されていくということが重要である、そういうことにつきましては、運輸省といたしまして折に触れて指導を行っているところでございます。確かに、中央労働委員会で係争事案がかかっているということ自身は、そういう認識からいたしますと深刻に受けとめざるを得ない話であると思っておるわけでございます。  それで、私どもといたしましては、先日本委員会で私どもの法律を議決いただきましたときの附帯決議の内容などにつきましても、その趣旨を会社に伝えて指導をしているところでございます。
  39. 緒方克陽

    緒方委員 この問題でいつまでやりとりしてもしようがないですが、少なくとも、そういう深刻に受けとめて、また真剣に対処しなければならぬという問題について答弁をされているわけですから、一般的にいろいろな形で指導しているということでは承服しかねます。ただ、時間の関係で、それ以上言っても押し問答になりますけれども、そういう認識で重大な事故が発生した、不当労働行為の問題あるいは労使間のそういう状況の中で起きたときには、これは運輸省自身も含めて大変重大な責任を負わなければならぬ、そういう問題がありますよということだけは、この際、明確に申し上げておきたいと思います。  二つ目に、前大臣答弁されたことですが、新しい大臣になられましたので、再度お尋ねをして確認したいのですが、この清算事業団の職員の問題については、国鉄改革の中でも残された最大課題であるというのは先ほどあいさつの中でも述べられたわけでありますが、現在、まだ約二千七百名の職員が毎日自学自習で不安な日を送っている、この雇用の問題について具体的にどう解決をしようとしているのか、認識をされているのかという点について大臣の所信をお伺いいたします。
  40. 山村新治郎

    山村国務大臣 おっしゃるとおりに、清算事業団の職員の再就職対策、これは国鉄改革に残された最重要課題の一つというぐあいに考えております。政府といたしましては、全力を挙げてその推進に取り組んでいるところでございます。  昭和六十二年の四月一日に再就職先未定のまま清算事業団に移行した職員は七千六百二十八名であったのが、新会社により実施された追加採用や各分野の積極的な御協力によりまして再就職先が進んだ結果、平成元年六月一日現在で、再就職先未定の職員二千六百十八人ということになっております。  今後の清算事業団職員の再就職対策につきましては、再就職先未定の職員の集中している北海道、そして九州、これらの地域の雇用情勢が依然として厳しいところから、各方面の御協力をいただきながら全国的観点から再就職対策を行うことも必要であると考えております。したがって、職員個々の希望、能力を踏まえた教育訓練、個別求人開拓、職業紹介等をきめ細かく実施するとともに、広域再就職促進のために住宅確保の円滑化、子弟の転入学のための情報提供等の細かな措置を講ずるなどにより、平成二年四月一日までに再就職を切望する職員全員の再就職が達成されるように最大努力を払ってまいりたいというぐあいに考えております。
  41. 緒方克陽

    緒方委員 この清算事業団の職員の問題については前回議論しましたけれども、事業団が言っている認識と、現場でのいろいろな就職状況の違いがあるということはこの前言いましたからこの際は申し上げませんけれども、とにかく非常に重要な問題であるということで、後ほど具体的な清算事業団の仕事がそういう観点でされていない実態については問題として明らかにしたいと思いますが、そういうことを前提にして、次の問題に入りたいと思います。  一九九〇年の四月一日以降、清算事業団の職員の身分は法律的に一体どうなるのかということですね。国鉄の民営・分割化に伴って清算事業団が発足をいたしましてもう二年と三カ月日に入っているわけですけれども、約七千六百いた清算事業団の職員が、さっき言われた数字になったのは事実であります。しかし、私が前回の委員会でも指摘したように、いろいろ国会では議論があっているわけですが、それが十分守られていない。  例えば国会の約束である公的部門の数も減らされ、北海道や九州での雇用情勢は大変厳しいということでありまして、あと九カ月しか時間がないではないか、完全な就職ができるとはとても思えない実態が今九州、北海道などでは特にある。また、労働委員会の命令でもJRへの採用を命じている現状にあるとき、それはどんなに努力をしても実際に来年の三月三十一日でできないということが予想されるわけであります。努力は確かにされるでしょうけれども、それができないという場合に一体どうなるのかということで大臣にお尋ねをするわけであります。  この清算事業団職員の皆さんの就職が、国会決議のとおりにいかなかった場合の身分は法律的には一体どうなるのかということが一つと、また、そうなった場合には一体どうしようと考えておられるのか、この二点についてお尋ねをいたします。
  42. 丹羽晟

    ○丹羽政府委員 先日も清算事業団の理事長からの御答弁がございましたように、清算事業団の今後残された時間で、再就職先が未定の職員の方々につきましては清算事業団が今最大限の努力をいたしております。そして私どもも、その清算事業団の努力につきましてできる限りの支援を考えております。そして来年、平成二年の四月一日までに再就職を希望する職員全員の再就職が達成されるように最大限の努力を傾けていきたい、かように考えております。
  43. 緒方克陽

    緒方委員 質問に答えていただきたいのですよ。問題点は二つですね。一生懸命努力するのはわかっています。それは前回も言いましたし、今も努力されているわけですが、法律的に身分は一体どうなるのかということで先日、事業団の杉浦理事長からはお答えをお聞きしたわけですが、大臣の方からも、質問通告の中でも大臣にこのことについてはお考えをお聞きしたいというふうに言ってありましたから、この点について法律的な身分は一体どうなるのかということについてお答えを願いたいと思います。
  44. 山村新治郎

    山村国務大臣 今いろいろ御答弁申し上げましたとおり、全力を挙げてすべての方の再就職という方へ持ってまいるということでございますが、この清算事業団職員の身分につきましては、法律上特段の規定はないというぐあいに考えております。
  45. 緒方克陽

    緒方委員 法律上特段の規定はないけれども、実際に一体どうなるのかということについてはないわけですから、どうなるのですか。
  46. 丹羽晟

    ○丹羽政府委員 先日来御答弁申し上げておりますように、法律上特段の規定はございませんので、ともかく決められた期限内に最大限全員の方に再就職をしていただく、こういうことをやっていくということで考えております。
  47. 緒方克陽

    緒方委員 今の答弁では納得できないですね。今一生懸命やると言うけれども、実際にできない話についてはまた後ほど申し上げますから、今の答弁については納得できないということだけ申し上げておきたいと思います。  そこで、そういう状況に絡みますけれども、どうしても完全雇用ができないという場合に、当然職員の経費の計上が必要となってくると思うわけでありまして、一九九〇年度の予算の概算要求に向けての準備がそろそろ始まるのではないかと思います。これは事業団において、それから運輸省とも協議しつつということになっているようでありますが、この概算要求に向けての経費の計上というのが必要ではないかと思うのですが、この点については運輸省と清算事業団の両方についてお答えをいただきたいと思います。
  48. 山村新治郎

    山村国務大臣 運輸省といたしましても、極力職員全員の再就職を達成するよう最大限の努力を払っておるところでございますし、また、そのようなことに向かって努力し、達成したいと思いますが、再就職促進法が失効いたします。そうしますと、清算事業団の再就職対策業務は終了するということになります。来年度の清算事業団の再就職対策のための概算要求は、この法の予定しております雇用奨励金の支給等の経過措置的なものを除きましては、概算要求というものを考えておりません。
  49. 杉浦喬也

    杉浦参考人 ただいま運輸大臣からお答えいただきましたのと全く同じでございまして、私ども、これから一生懸命頑張りまして、第三年度目に全員の再就職を達成したい、またそれは職員が一生懸命それに応じてくれれば可能であるというふうに私は思っております。  また、今先生も御指摘のように、第三年度目に入りまして、これで三年目で再就職対策の法的な裏づけは期限が切れる、こういうわけでございますので、その両面から考えまして、私どもは引き続き雇用対策を行うような、そういう予算を要求するということを考えてはおりません。
  50. 緒方克陽

    緒方委員 今のような答弁は、全く現実を無視した答弁であって絶対に承服できないということでありまして、それを具体的に証明するような資料を、清算事業団が一体どういうことをやっているのかということで具体的な資料を提出したいと思います。資料を理事長、それから委員長にもお配りしたいと思います。  ただいま資料を配っておりますけれども、本当に清算事業団は真剣にやっているのかということは、それは言えないというような実態を明らかにしながら、とてもじゃないが今のようなことでは国会決議が守れない、そういう意味で具体的な資料をお示ししたいと思います。  実は杉浦理事長、ここに今お配りしました資料は、北海道の清算事業団の稚内の支所、それから北海道の清算事業団の旭川支部の雇用対策の支所の状況というものがあるわけですね。この内容を見ていただきたいわけであります。  まず一枚目に、稚内の雇用対策支所の状況というのは、再就職希望調査内訳で、項目としてJR北海道が六十六人、公的機関が四十三人、民間希望が六、そして関連企業が四、自営が四、特殊法人が二ということであります。これはダブリもありますから百二十五になっておりますけれども、明らかにJR希望が六十六、そして公的機関が四十三という数字になっているわけです。ところが、同じような状況の中で、旭川支所の「職員の希望している職種」によりますと、「民間企業を希望しているが職種にこだわらない」というのが六十五、「公的部門」が十八ということで、合計九十一という数字になっているわけですね。つまり、この表というのは実際に職員が希望している表じゃないものをつくって、何か地元の団体とかいろいろなところに配ったということのようです。事業団本部にはそれは多分行ってないかと思うのですが、こういうふうな改ざんをして、適当に資料をつくっていろいろな就職作業をやっているという状況、こういうようなごまかしをやっているような事業団の支所あるいは支部とかいうのが真剣にやっているというふうに言えるのかどうか、この点について理事長は一体どういうふうにお考えですか。
  51. 杉浦喬也

    杉浦参考人 今、資料を拝見をいたしておるところでございますが、私どもの方も日ごろから全国的に実態把握しておりますし、また問題の旭川地区につきましても、大変問題の多い箇所でございますので、十分に実情を把握しております。  問題の一番のポイントは、何といいましてもこの旭川地区、特に稚内支所の場合に、職員の気持ちが私どもが願っておる気持ちになかなか合わない。これはどういうことかといいますと、職員が就職相談に応じようとせず、自分たちは国鉄の民営・分割に反対であって、よってその改革を前提とした雇用対策に応ずるつもりはない、もとの国鉄の職場へ戻せ、こういうことを言葉で言い、あるいは気持ちの中に持っておるというところが最大の問題かと思います。  私どもは、JR北海道に受け入れる余地はないのだ、これは再三再四職員に申し上げておるところでございまして、JR北海道以外のところに就職をしてほしいということを何回も申し上げておるところでございますが、職員の多くの部分がそれに耳を傾けない、ここが非常に問題かと思います。  今の資料の中身、詳細にはわかりませんが、そうした気持ちを持って北海道の管理者が、各民間企業等あるいは公共職業安定所に対して本当に日夜努力をしているところでございますが、その会議の席上において表現をいたしました表現の仕方として、当職員がJRに行きたいのであって民間に行きたくないのだよという数字を申し上げることはまことにぐあいが悪い。民間に行きたいという気持ちを持っておる。したがって、民間の皆様方、どうぞよろしく私どもを御支援賜りたいと申し上げるしかないと思うのです。それがまた全く正しいことだと私は思います。  そうしたことからいたしまして、この数字の中身も、将来管理者が説得をし職業相談をいたすならば、いずれ民間志向に移るであろうというような、そうした期待感も込めまして数字をあらわしたものかなというふうにも思うわけでございます。決して物事を曲げて表現をしたということではない、善意な発意であると私は思います。
  52. 緒方克陽

    緒方委員 善意の発意というようなことですけれども、実際にそれではそれから作業が進んで  いったり、いろいろな話があったときに、実は違ったよというようなことになったら困るわけです。  いわゆる清算事業団も公の団体ですから、そういうところが配る中身についてはそういうふうにしないと、あなた自身の言葉で言えば、発想が善意であればどんなうそをついても、数字が違っていてもいいということになれば、そういうことが通れば世の中は大変なことになってしまいますよ。杉浦さん、実態はまだJR希望が多いです。しかし、私たちは説得するつもりですが、現状はこうですというふうに言わなければ、結果としてはうそを言ったことになるのです。そういうようなことが許されるとするならば、清算事業団はどの部分を信用すればいいのかということになるわけですから、開き直りの今の発言ですけれども、それはまずいですよ。  できればということではなくて、真実は真実で言っていかなければ、それが誤解を生んだり、あるいは雇用促進で相手を裏切ることになるわけですから、今の発言は、現地から聞いてそういう真意でありましたというふうになったとしても、結果としてうその表を出すというのは、では、そのほかでもそういうことになるわけですか。意図さえ善良で正しい、自分たちがいいということでやったとすれば、数字は間違っていてもそれはいいのだということになれば、ほかでもそういうことになると思うのですね。それは人間としてどうなんでしょうね。雇用促進するからということでかばいたい気持ちはわかりますよ。だけれども、それは通用しないのじゃないですか。意図さえ正しければ数字は間違っていてもいい、そんなことはこの世の中に通用しませんよ。それは杉浦さん、おかしいですよ。その辺はどうなんですか。
  53. 杉浦喬也

    杉浦参考人 そうした数字で実際にその会議に配付されたかどうか、私まだ確認しておりませんが、数字の的確な中身を外部に発表するという場合におきましては、先生おっしゃったように、職員の実態そのものを表現していいと私は思います。  ただ、先ほど申し上げましたように、あくまで事業団の答え、特に現地の人の仕事の目標は、全職員を再就職させたいという気持ちが日常あるわけでございまして、そうした日常の気持ちからそのような発言あるいは資料になったかなというふうに私は憶測いたします。今、先生おっしゃったようなことも十分にかみしめまして現地には申し上げたいと思います。
  54. 緒方克陽

    緒方委員 それでは、そんなことがどんどん通用するようであっては事業団そのものの信用が問われるわけですから、十分現地を指導してもらいたいと思います。  あと事業団の問題で二、三ですが、一つは、今度の改革でいわゆる分割・民営化の中でJRに採用された人とされなかった人といろいろあるわけです。特に問題なのは、地元に帰りたいというようなことも含めて、JRに採用にはなったけれども、三万名の公的部門がある。だからこの際、このことについては何らかの努力をしてもらうためには、その方がより帰りやすいというようなことも含めて、JRの採用を辞退をして、事業団に行って、そして公的部門へということで希望した人がいるわけです。ところが、この人たちについては一体どうなっているかといいますと、事実上はそういう努力がされないで具体的に放置をされているという例があるわけです。  余り一般的に言ってもわかりませんから具体的に言いますと、例えば新宿支所の山本恒雄さんという人の例ですが、この人は単身赴任で見えていた。そして採用にならなかった。だから、静岡の方に帰りたいのだということでいろいろ相談したけれども、結局本人は役所に出かけていって、公的部門に採用してもらいたいという話をした。役所では、事業団から採用してくださいというような文書などが来ればそれは採用しますけれども、例えば何々市役所だけでは採用しにくいですよということもあって、もう一遍、事業団としての再就職を進めるために、事業団としてそういう要請あるいは政府からの要請を出してもらうようにしてもらいたいということについてこたえていないということがあるわけですね。本当に再就職を進めるということであれば、そういう個々の例も含めて、事業団が要請をすれば、市役所としてはあるいは自治体としては受けますよという場合には、当然そういう努力をされてしかるべきではないかと思うのですが、その辺についてはどうでしょう。
  55. 杉浦喬也

    杉浦参考人 公的部門に行きたいという希望の方がたくさんおられるということは、私ども個別の面談等におきまして十分承知しております。  ただ、これはいろいろと経緯がございまして、国鉄改革の以前から公的部門に、全省庁それから各地方公共団体にお願いいたしまして、かなりの数の公的部門への確保をお願いいたしまして、事業団にも二万二千人という膨大な数の内定者を当初抱えたわけでございます。これ以上枠をふやすということは非常に難しい情勢ではございますけれども、しかしなおかつ事業団に移りましてから、職員の希望を聞きますと、公的部門に行きたいという希望があるわけでございますので、でき得る限り、難しい情勢の中ではございますが、現地の地方公共団体等にお願いをいたしまして、実績も若干上がっている、今まで約四百人の職員が事業団に移行後も公的部門に就職が内定をいたしております。  今、具体的に職員の個人の名前を挙げて御指摘になりました例でございますが、この方も、やはり公的部門志向が非常に強い。それで、一遍JR東海に就職を決定された後も辞退をいたしまして、あくまで事業団に所属して公的部門に行きたい、こういうふうに言われたわけですね。そこで、私ども一生懸命御本人の希望を聞きながら、静岡県東部地区への御本人の希望に合うように、沼津、富士地区等の自治体にかなり働きかけをしております。ただ、その自治体の方の、いわゆる採用条件というのが非常に厳しいというようなことで、現在まで決定されていない。  一方、並行いたしまして、その本人に対しましては、地域に余りこだわっては大変ですよ、したがって地域にこだわらないように、東京と神奈川の地区についてこういう募集がありますので行きませんかということを再三本人に言っております。全部例を挙げるのはあれですが、国立国会図書館、日本輸出入銀行、自治省、東京都交通局、国立市、農林漁業金融公庫、横浜市、総務庁統計センター、神奈川県、こういうような公的な機関のあっせんを行いましたが、御本人はあくまで静岡県東部に働きたいということで、これらの応募を一切いたしておりません。私どもが一生懸命努力をいたしておるのはこのようなことでございますが、本人のいわば勤め先の志向が余りにも強いということのために、現時点で公的部門に採用されていないというのが実情でございます。そうした難しい状態をよく本人にこれからも説得しまして、公的部門というものを第一に選ぶのならば、もう少し場所を拡大しなさいというふうに今話をしているところでございます。
  56. 緒方克陽

    緒方委員 今の具体的なあっせんをされた場所については、私が十分承知していない面もありますから、それは後ほど具体的にやりたいと思いますが、私が今質問したのは、例えばいろんなルートで、どこどこの役所とかいうところに話が行って、その役所としては、事業団から要請があれば、文書でもあれば採用したいが、そこがないからというようなことがあっているということだから、そういう具体的な、自治体が受け入れやすい条件のようなものを、これは一つの例ですよ、例ですけれども、そういうようなものも、やはり本当に再就職を進めたいとするならば、そういった個々の問題についても、事業団から要請を出してもらえれば受ける可能性がありますよというような場合には、これは積極的にやっていくということがやはり必要ではないかという意味で申し上げているわけですから、そのような努力をしてもらいたいということであります。  次にいま一つ、これは例で、事業団の下部職員とそれから事業団のいわゆる管理職、それは支所、分室あるわけですが、そういった人たちとの中で一緒に取り組んでいくというか、そういう姿勢が必要ではないかということでひとつ申し上げたいのです。  実はここに北海道の新聞があるわけで、これも稚内の問題ですけれども、これによりますと、稚内の市役所の公的部門の就職の問題で、社会党とか地区労が市長に会って要請をした。そして、ぜひ採用してもらいたいという行動をしたわけですけれども、そのときに、いわゆる事業団の組合の人も立ち会って話をして、これはどうも再就職というのは実現をしているようですね。ところがこの際、そういう活動をしたのは認めないということで実は賃金カットに遭っているわけですね。どういう前段の職場の環境があったか十分には承知していない面もありますけれども、やはりこれは理事長、再就職をそこで進めるということになれば、二時間の問題で、組合も行ったからこれはカットじゃなしに、それはそれで話が進むなら、一人再就職が片がつく話だから、無許可で行ったんじゃなしに相談をして行っているわけだから、そんなにごりごりやる問題じゃないんじゃないか。  やはり私たちもあるいは清算事業団の職員の方も組合もそういうことで努力をしているわけだから、そこでそういう問題が起きるとなおかつ余計不信感が起きて、進む話も進まないということが現実には起きてくるんじゃないか。だから、それは規定に照らせば何に照らせばということはあるだろうけれども、事再就職の場合に、そんなに——無届けじゃないですよ、相談をして行っているというようなことについては、これからはもうそんなことはまずいんじゃないかなというふうに思うのですけれども、この点についてはどうなんですか。
  57. 杉浦喬也

    杉浦参考人 一般的には、勤務時間中でありましても、どこそこへ再就職の運動のために行きたいという申し出がございますれば、管理者としては喜んで時間を与えていると思います。また場合によっては管理者が一緒になって出かける場合もあるというふうに聞いております。この稚内市長の問題も私、大分気になりまして調べました。結論としては賃金カットということに相なったわけでございますが、その間にいろんないきさつがあったようでございます。  ただ本件、就職活動という観点からとらえますと、今先生おっしゃったように、余り管理するというような立場だけではいけないという感じもいたしますが、一方では、やはりどんな組織でもそうですが、現場にはそれぞれルールが必要であって、秩序立って行動をする必要があるというようなことで、再就職活動の外出につきましても一応のルールはつくっておるようでありまして、どうもそのルールをめぐって若干の行き違いがあったようでございます。  そこで、これからも私どもとしましては、よくそのルールを守ってやってほしいということは職員に徹底をしたいと思いますが、一方ではまた職員が自発的に就職活動へ行きたいということにつきましては、ルールを頭に置きながら、よく職員の身になって管理者が善処すべきだ、両方の気持ちでおるわけでございまして、先生の御指摘の点も含めまして前向きな形になるようにしていきたいと思います。
  58. 緒方克陽

    緒方委員 時間が迫ってきましたから、安全問題について少し触れてみたいと思います。  JRの労務政策、労使紛争で事故が多発をしているわけでありますが、それを防止するためにも労使の安定化ということが政府主導で必要だということだと思います。特に輸送を担当するJRにとって、安全で正確な、そして利用者を、また貨物を運ぶということは最大の使命であるというふうに思うわけです。  先日も質問しましたけれども、JRと国労の間では、現在全国四十の都道府県で二百十二件が争われているわけです。JRの労使関係は戦後最悪であって、最大の労使紛争であると思っております。労使の紛争は必ず事故があるということで、過去の例でも三十年前の三井三池の大惨事であるとか、ホテル・ニュージャパンであるとか、日航ジャンボ機などでも労使問題わけても前近代的な労使関係が問われているわけです。労使の紛争は職場の人間関係を悪化させて、必ず事故へと結びつくことが証明されているわけですが、そういう中で幾つかの問題が起きております。  昨年の十二月五日の東中野駅の事故の直前に、「選択」という雑誌では、「心配されたJRの安全」「大事故頻発の裏で対立深める労使」等の小論文が出されています。また、最近出された「経済界」という雑誌でも、「JR東日本は第二の日本航空になる?」「経営効率重視で安全を置き去り」というふうなことで出ているわけです。この中でも労使関係が問題になっておるわけですが、そういう中で、運輸大臣としては鉄道事業法二十三条によって、運輸省政府は安全確保のために労使紛争を指導すべきじゃないかというふうに思うのですが、ここで非常に問題の点を報告したいと思うのです。  実はこれは一九八八年一月六日にJR東日本の「地域異動に関する現場長会議」というのがあっております。盛岡支店の会議室であっているわけですが、驚くべき発言があったわけですね。地域異動というのは東日本の中での人事異動がされたわけですが、それについての発言の要旨、議事録があるわけです。どういうことが言われているかといいますと、安全は何も出ておりませんが、今度のいわゆる東日本の中の人事異動全体は、二十項目ありますけれども、「労務管理を目的に配置された。」ということがまず第一。その中にはいろいろありまして、五番目に、「国労財政破綻を狙え。会社は「知恵と金」がある。」九番目に「生首では切らないが、徹底して国労と他組合員との差をつけろ。」いろいろなことを言っておりますけれども、一番大きな問題は、十九番目に、会社、いわゆる盛岡支店の方針、東日本会社の方針として、人事異動に当たっては何をやるかということで「地元から一旦はずす。通勤可能な遠距離地へ。」飛ばすということなんですよ。  結局、JRとか輸送業務というのは、事故が起きたときにはいろいろな意味ですぐ応援に来なければならぬとかできるだけ職場に近い方がいいということもあるわけですが、労務政策上、地元から切るということで、通勤可能な遠距離へ、そんなむちゃくちゃなことを会社の方針としてやっているわけで、もう考えられないことですね。通勤距離が伸びればそれだけ労働者は疲れるし、現場でも事故を起こす可能性があるわけですよ。できるならば通勤距離は短い方がいいというのが当たり前じゃないですか。そういうようなことが今東日本では行われている現実があります。  このメモについては盛岡の地方労働委員会で採用されているわけです。そういった安全よりも労務政策中心で、とにかく組合分断をやればいいというようなむちゃくちゃな実態があるわけで、このことについて考えた場合に、今のJRの労務政策というのは、安全に直接影響するようなことを労務政策のためにむちゃくちゃなことをやっているというのがこの発言要旨でも明らかになっているわけであります。こういう問題については運輸省としては十分指導をすべきじゃないかというふうに思いますが、その辺についてお尋ねします。
  59. 丹羽晟

    ○丹羽政府委員 ただいま先生指摘のJR東日本の発言の問題につきまして私ども承知しておりますのは、組合側は地方労働委員会における盛岡駅等出向事件の審査の場でその旨の主張を行った、これに対して会社側は事実に反するということで否定したという経緯があるということは聞いております。しかし、いずれにしましても、本件そのものは当事者間で係争中の事案に関連する問題でございますので、運輸省としては、その事実の有無を含めてコメントは差し控えたいと考えております。
  60. 緒方克陽

    緒方委員 今のはそういう事実があると私は言ったわけですが、そういう中でいろいろ労使対立、安全問題があるということで、政府として、運輸省として指導すべきではないかという点については前段に質問しましたが、大臣からお答えを……。
  61. 丹羽晟

    ○丹羽政府委員 JRにつきましては、確かに昨年来社会的に関心を呼んだ幾つかの運転事故を発生しております。ただ、全体として見てみますと、運転事故件数は、国鉄時代の昭和六十一年度が千三十五件でございましたが、JRとなった六十二年度が九百二十七件、六十三年度が九百件、そういう形で傾向としては減っている、こういう事態でございますので、全体の傾向としてJRにおいて事故が多発しているという状況ではないのではないかと思っております。  しかし、安全の確保というのは運輸事業の基本でございますから、運輸省としても安全の確保に関しては万全を期するようにいろいろ指導しております。例えば昨年末の十二月十五日にJR各社の社長を呼んで、いま一度社内の安全対策を徹底的に再点検するとか、現場の末端に至るまで列車運行の安全確保に向けて心を引き締めて業務を遂行するよう、そういう指示をいたしております。その後、私どもとJR各社の安全問題担当の部局との間でつくりました鉄道保安連絡会議というものを定期的に運輸省において開いておりまして、その場を通じまして安全対策の徹底を期するようにしております。
  62. 緒方克陽

    緒方委員 それで、まず上越線の渋川−敷島間の脱線事故に関して質問したいと思います。  国鉄からJRになって一年目から小さな事故が続発していたわけですが、JR側の内部文書ではそれをいろいろ証明していたわけです。現場の労働者はいろいろな不安を感じていたわけです。国鉄時代にはあり得なかった非常事態宣言というのが、例えば千葉運行管理本部ですか、というようなところなどで、私たちが承知しただけでも七件も非常事態宣言が出されているわけですね。事故が起きて、警告とか重大事故の予想ありというようなことなら別だけれども、非常事態宣言というのはもう大変異常なことです。  そういう状態がいっぱいあるということでありますが、JRの東日本の幹部などは、新しい機械を入れれば、人間が少ない方が安全は高まるというような山之内副社長の発言などもあって、いろいろ問題があるわけであります。ハードの面を強化すれば事故がなくなるかといえば、それはなくならない。ハードとソフトの部分が一体とならなければうまくいかないというのはだれでも明らかなことですね。  例えば十月十九日に上越線の渋川−敷島間で貨物列車の後方二両が脱線して分離し、そしてその四十分後に次の列車が逆方向から来て脱線転覆事故が起きたということがあるわけですが、これは少なくとも車掌を、国鉄時代では列車係というふうに言っておりましたが、こういうものがあればこういう大事故は防げたわけですけれども、実際にはそれがなかったということでこういう問題が起きているわけです。この事実について、運輸省としてどのように指導されたのか、今後発生した場合の運輸省の責任というものについてはどうお考えなのか、お尋ねをしたいと思います。
  63. 丹羽晟

    ○丹羽政府委員 先生指摘の、昨年十月十九日の上越線において発生した貨物列車の衝突事故の原因につきましては今なお調査中の部分が残っておりますが、現段階においては、第一の原因といたしましては貨物列車の車軸が破断して脱線、分離した、それから状況の把握とその後の処置に適切を欠いたまま貨物列車の運行を続けたために、別の貨物列車が脱線して残された車両に衝突した、こういうふうに考えております。  本件について、運輸省としましては、事故後直ちに貨物会社に対しまして、まず事故原因の究明と再発防止対策の実施、それから二番目に、列車防護等の基本的な対応措置の再教育訓練の実施、三番目に、事故時における適切な運行管理の指導の強化、この三点を指示いたしました。これに対して貨物会社は、再発防止に資するために車軸異常の原因究明のための専門委員会設置、それから運転手に対する異常時における状況の把握と対応のあり方等についての再教育の実施、それから安全総点検の実施、こういうことを行ったということの報告を受けております。それからまた、関連するJR東日本におきましても、安全総点検の実施と、輸送指令員に対して運行管理の適正を図るための再教育の実施、そういった対策を講じた旨報告を受けております。  私ども運輸省といたしましても、同種事故の再発を防止するために、昨年の十二月十日から一カ月間実施しております年末年始の輸送等に関する安全総点検、その中の重点項目といたしまして異常時の安全輸送のための運転取り扱いに関する指導状況ということを項目として織り込みまして、また先ほど申し上げました運輸省とJR各社の安全担当者との間で構成される鉄道保安連絡会議、そういうものを設置いたしました。それで、この事故の教訓を生かして輸送の安全確保についてJR各社を指導しているところでございます。  今後とも、安全こそ最大のサービスという認識に立ちまして、同じような事故の再発防止など安全の確保に万全を期するようJR各社を強力に指導してまいりたいと考えております。
  64. 緒方克陽

    緒方委員 時間がなくなってまいりましたので、最後の質問をしたいと思います。  先ほどの上越線の事故の後、JR東日本は安全推進支社長会議を開くわけです。そして一月十日から十一月いっぱい総点検をやるわけですが、終わった五日後に東中野の痛ましい大事故が起きるわけです。このことは上からの指導や全力を挙げてやったという結果の事故であり、これまでのJRのやり方では事故は防げないということが言えるのじゃないか、したがってATS−Pの導入ということをやるというふうに言っておりますが、それだけでは安全は確保できないということであります。  特に、事故における特徴を申し上げますと、例えば、一九八八年の八月二十九日、東北線の転覆事故では、東北運輸局はJR盛岡支店に対して「イ、事故防止の連絡体制が整っていない。ロ、内規に従って警備を行えない会社の体質に問題がある。」というような指摘をしているわけですね。ところが一方では、さっきも言いましたように、八八年の一月六日、沢田次長の、人間は安全じゃなくて労務管理を目的に配置されたというような発言に象徴されるようなことがあるということ。  それから次の特徴は、八八年の十二月五日、東中野の事故のときでありますが、たまたま作業に向かう国労組合員が乗り合わせたわけです。自分もけがをしていたわけですけれども、直ちに負傷者の救助に当たった。しかし管理者は、この組合員の顔を見るなり、国労バッジをつけていたということで、国労バッジを外せというのが開口一番であったわけです。この人は負傷者の救助とか復旧に当たったということで、後ほどJR東日本から表彰されたということにはなっているわけですけれども、バッジとか国労敵視政策みたいなことをそういう非常事態のときまで言うような体質自体が問題じゃないか、そういうことであります。安全確立、そういうことを考えた場合に、政府利用者とか学識経験者を入れた事故対策委員会などをつくるべきであるということを考えますし、また労使問題を全面解決すべきでありまして、運輸省としては積極的に紛争解決に働きかけをしていただきたいと思いますが、大臣の所見を伺います。
  65. 山村新治郎

    山村国務大臣 安全の確保、これは運輸事業の最大の使命でございます。JR各社の毎年度の事業計画や設備投資等においても、輸送の安全の確保が十分に図られるよう指導しているところであります。また、安全の確保については、これは経営者そして社員一丸となって取り組むべき課題であると思います。また労使間においても、労使の協議のもとに締結されました労働協定に基づきます経営協議会の場等を通じて引き続き十分な意思の疎通を図り、労使がその立場を超えて会社として一丸となって安全確保に取り組んでいってほしい、そういうぐあいに考えております。
  66. 緒方克陽

    緒方委員 終わります。
  67. 島村宜伸

    島村委員長 戸田菊雄君。
  68. 戸田菊雄

    ○戸田委員 まず、安全確保等の問題について若干の質問をいたしたいと思います。  警察庁の方、おいでになつでおると思いますが、六十二年度、六十三年度もわかれば、道路交通事故の動向等についてお知らせを願いたい。     〔委員長退席、久間委員長代理着席〕
  69. 滝藤浩二

    滝藤説明員 六十三年度中の交通事故発生状況でございますが、発生件数六十一万四千四百八十一件、対前年比二万三千七百五十八件、四%増でございます。死者数におきましては一万三百四十四名、対前年比九百九十七名、一〇・七%の増となっております。また負傷者につきましては七十五万二千八百四十五名、対前年比三万六百六十六名、四・二%の増でございます。交通事故の死者数につきましては、昭和五十年以来十三年ぶりに一万人を突破するという憂慮すべき事態になっております。  なお、交通事故の増加の特徴について申し上げますと、高齢化社会の進展というのがございまして、高齢者、六十五歳以上の方の死者数の増加が著しいというのが一つ挙げられようかと思います。また、特に初心者の事故、初心者と申しますのは免許取得から一年という人でございますが、こういう方の事故の増加が特に著しいわけでございます。特に二十四歳以下の若者の増加というものがその中でも特徴的ではございますが、二つ目に挙げられようかと思います。それから二輪車乗車中の事故率、これが非常に高い状態に依然としてある。四つ目でございますが、シートベルトの未着用者の死亡事故率、これが非常に高いというようなことが指摘できるのではないかと思っております。  以上です。
  70. 戸田菊雄

    ○戸田委員 今警察庁の滝藤運転免許課長、これは「昭和六十一二年度 交通事故の状況及び交通安全施策の現況 第百十四回国会(常会)提出」三十ページの一覧表の被害状況と変わりありませんね。今発表されましたように、発生件数六十一万四千四百八十一件、前年比四%増、死者数が一万三百四十四名、一〇・七%増、負傷者数が七十五万二千八百四十五名ということになっておるわけですが、大臣、このような状況で推移をすれば十年間で七百万を超しますね。これは大変な事態だと思うのです。したがって、私は今の交通状況の改革は、もちろん都市部における渋滞の解消、過疎地における公共の足を守るといういわばパスや交通機関の配置、こういうものを含めて、なかんずくこの事故防止が最大の要件じゃないかという考えを持つのですが、大臣の見解はどうでしょうか。
  71. 山村新治郎

    山村国務大臣 自動車事故の防止につきましては、車両の安全性の向上及び自動車運送事業の運行管理、車両管理の適正化等の面から事故防止対策を推進しておるところでございます。  特にただいまお話がございましたように、昨年の全国の交通事故による死者は一万三百四十四人という極めて遺憾な結果となっております。運輸省としましても、自動車輸送におきます安全の確保をさらに徹底させるために関係団体に対して運行管理の充実強化、過労防止の徹底、車両の点検整備の励行等について指導の強化を図っておるところでございます。今後とも、自動車輸送の安全確保は自動車運送事業の使命であり、運輸省といたしましてもあらゆる機会をとらえて事故防止の徹底を図ってまいる所存でございます。
  72. 戸田菊雄

    ○戸田委員 確かに運輸省、担当の警察庁等々大変な努力はやっておると思うのです。  例えばこの現況の中でも、「総合的な交通安全推進体制の確保」、「交通安全計画の作成」、「交通安全対策の総合的な推進」、「道路交通安全施策の現況」ということで個々の事故への対応というものを事細かにやっている。ただ実効が上がらないのですね。これは一体どういうところに原因があるのか。殊に私が問題にしたいのは道路貨物運送事業の労働者の現況ですが、大変過酷な状況になっておるのですね。労働省おいでになっていると思いますが、トータルで稼働時間数どのぐらいいっていますか。
  73. 諏訪佳

    ○諏訪説明員 毎月勤労統計調査によりますと、昭和六十三年におきます道路貨物運送業の年間総実労働時間は二千六百八十七時間となっておりまして、産業計と比べて非常に長いということになっております。
  74. 戸田菊雄

    ○戸田委員 報告を見ましても、大体歩行者で傷害件数が一番多いのは幼児と高齢者ですね。総体の二八%を超えておる。やはりどうしても対応が弱いですからそういうところにいってしまう。だから、こういう面に対して、歩行優先という格好、人命第一、こういう角度で保安施設、その他運転の安全施設、すべてそこに集中して施設と運用をやっていくようでないと私はいけないのではないかと思うのですが、事故防止について警察庁ではどう考えておりますか。
  75. 滝藤浩二

    滝藤説明員 事故防止対策につきましては、私どももかねがね何が決め手になるかということで鋭意努力しているつもりでございますけれども、死者数等を見ましてもなかなか所期の目的を達していないところは残念でございますが、現在、私どもとしましては、先ほど申し上げましたとおり免許を取りまして最初の、初心者の事故率、死亡率が非常に高いということがございますので、これらを盛り込んだ道交法の改正を国会に今提出させていただいております。そのほか、基本的には関係省庁との緊密な連絡をとりました、昨年八月に出ました交通対策本部決定でございます交通事故防止に関する緊急総合対策を引き続き強力に推進するということで、現在鋭意施策を推進しているところでございます。  具体的には、例えば高齢者対策ということでございますが、高齢者の方々、特に事故の多発地点がございますが、こういうところを高齢者の方で通られる方等ございますし、利用される頻度の高い方がございます。こういう個別、具体の箇所での安全指導を強化するとともに、老人クラブだとかその他の集まりのもとでの安全運転教育といいましょうかあるいは歩行者の教育、安全教室と申しましょうか、そういう高齢者の特性だとか事故実態を具体に踏まえまして、その安全教育の普及ということに意をいたしているつもりでございます。そのほか高齢運転者につきましては、高齢者学級だとか適性検査機器を活用いたしましてそういう安全運転の指導に努めているところでございます。  また、先ほども申し上げましたけれども、シートベルトの未着用者の死亡率が高いということもございます。この着用方についての理解を深めるための運動あるいは広報、啓発活動を推進いたしますとともに、街頭におきましての指導、特に若者、夜間における若者の着用の徹底も私ども現在鋭意推進をしているところでございます。  以上でございます。
  76. 戸田菊雄

    ○戸田委員 特別項を起こして高齢者対策、こういうことでいろいろ検討事項に入っているのですね。例えば信号管制の歩行確保、私も国会の前を時々歩きますが、そういう場合に青になってそこを出発をして渡るまで、年をとった人ですと精いっぱいですね。だから、ぴょんぴょんと青が点滅するようになって、それから行けばこれはとても間に合わないですね。だから、ああいう点はその場所によって時分が違うと思いますけれども、歩行者用で大量に利用されるようなところはそういうところの環境に応じて時間をとったり、速度を速めたり遅くしたりというようなことがあってもいいのじゃないかと思うのですね。  今確率的に見ますと、例えば五つぐらい信号灯がずっとあって二キロぐらい、そうすると青が点滅するとだあっと人が行きますね。ああいう状況になりますと、おおむね二十メーターを超す歩行距離ですと、七十を超えた皆さんですとなかなか容易じゃないのです。あるいは五歳ぐらい、この間大変悲惨な事故が発生しましたけれども、お母さんのつい立てをやっておった坊ちゃんがやられた。しかし、結果考えてみますと、被害者も被害者だけれども、やった方も被害者ですね、交通事故は。大変な状況です。ですから、そういう状況を考えますと、こういった施設上の安全弁もひとついろいろ検討されてもいいんじゃないだろうかという気がしますけれども、その辺の見解はどうでしょうか。
  77. 滝藤浩二

    滝藤説明員 先生指摘のような御意見も承っているところでございまして、実態に合った規制、管制がどうあるべきかということを現在それぞれ検討いたしているところでございまして、できるだけ実態に合った、先生指摘のようなものに合えばということで努力をいたしているところでございます。
  78. 戸田菊雄

    ○戸田委員 それでもう一つは、大臣、これはちょっと見解を承りたいのですが、今労働省の方が発表しましたけれども、道路貨物運送事業の従業員は二千六百二十時間ですよ。これは驚くなかれ過酷労働条件ですね。実際を見ますと、九州鹿児島から出発して大阪までやって日帰りで帰るのですね。青森から東京築地の市場へ来てそして日帰りで帰るのですね。これはもうたまらないですね、夜寝ないのですから。ですから、朝方ちょうど登校児童がいて、そこへよく突っ込む。これは居眠り、仮眠状況ですね。これは疲労が原因ですよ。こういった状況に置いている労働条件というのは早期に改善をさせなければいけないのじゃな  いでしょうか。  今少なくても金融諸団体においては、これは内閣全体としても週休二日制、土曜閉庁、そういうことで時間短縮をやろう、労働省も基準を改正して、さしあたって四十六時間体制、もちろん貨物輸送車の従業員その他については三年の猶予期間がありますけれども、いずれにしても時間短縮を総体としてやっていこうという状況ですね。  私は党の責任者ですから関係閣僚の皆さんに、国家公務員それから一般民間、これを含めて大体当面四十四時間体制、四十二時間、二年後には四十時間体制と全部時間短縮体制をやろうということで要請をしているのですが、そういう状況で二千六百二十時間です。さしあたって、経済摩擦その他の状況、国際的な影響もこれあり、これは閣議一致して時間短縮にいこう、こういう状況になっているのですから、千八百時間を目標にさしあたって整理をしましょうということですから、二千六百二十時間なんというのは問題にならぬですね。だから、そういう状況を徹底して指導を強化して労働条件、体制というものをつくらなければ、貨物関係の事故はもうなくなりませんよ。そういう面で大臣、ひとつ強い指導をやっていただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  79. 山村新治郎

    山村国務大臣 このトラック事業の長時間労働問題の是正、これは安全で良質な輸送サービスを提供するという観点から重要なばかりではございませんで、トラック産業の今後の健全な発展に必要不可欠なものでございます。優秀な人材確保という観点からも必要な重要問題と認識しております。  運輸省としてはかねてより過労運転の防止を関係者に指導しており、六十二年度からは事業者監査における最重点項目として取り上げ、その徹底を図っているところでございます。また、今国会に提出させていただいております貨物自動車運送事業法案は、御指摘の過労運転の防止や過積みの防止等、社会的規制の徹底を期するための制度を盛り込んだものでございまして、早期成立をぜひお願いしたいというぐあいに考えております。
  80. 戸田菊雄

    ○戸田委員 それから七十数万の人が、傷害件数があるわけですね。ですから、交通事故が発生しますと必ずお医者さんのお世話にならなければいけない、こういう状況です。私はかつて参議院で社労委員長をやっているときに、救急医療センターというものをまず国の出先機関の医療機関の皆さんが協力していただいて、そして地域的に全部医療センターというものを設置をしてはどうか、その際に、必ず交通事故者は八割が頭を打つのですね。だから、そういう状況からいけば脳神経外科の先生を専門的に配置する、そういう医療救急センターというものを設定して、各公的機関のお医者さん、大学病院の先生がいましょう、公立病院の自治省関係のお医者さんがいましょう、あるいはかつての国鉄とかNTTとか郵政省とか自治省とか、そういったものが全部出先にあるわけですから、そういう先生がこぞって救急センターをつくって、そしてそこに出向していただいて、常時昼夜を分かたず待機制がとれる、こういうものをつくってはどうかということだったのですが、まだそこまでは行きません。そこまでは行っていませんが、やや前進をして、相当今、もちろん今の日本の医療は個人医、開業医が中心で、勤務医は四割程度でしょう、だから、そういう点でまず勤務医のお医者さん、これを見ますと大分開業医の皆さんも協力してやっているようですから、このこと自体は非常に歓迎すべきことだと思うのですね。だから、こういう状態でもいいですから、そういうものに必ず脳神経外科専門医を入れた救急センター的なものをひとつやっていただいて、そして早期に治療にこたえられる体制が必要だと思うのですが、こういうものの促進について大臣、どう考えますか。
  81. 山村新治郎

    山村国務大臣 運輸省といたしましては、自動車事故被害者の救済の一環といたしまして、初期治療を担当する公的医療機関等に対して救急医療機器等の整備に要する費用の一部につきまして自賠責特別会計から補助を行っております。参考までに、平成元年度予算額として六億五千万円。なお、自動車事故により重度の意識障害者となった方に対して適切な治療と療護を行うために、五十九年二月より自動車事故対策センター附属千葉療護センターを開設、運営しているところでございます。また、本年七月の開業を目途に東北療護センターの整備も進めておるところでございます。  参考までに千葉療護センター、これは直営でございますが、昭和五十九年二月に開業、病床数五十床、施設設備費約二十四億円、平成元年度運営費約十一億円、また、東北療護センター、平成元年七月開業予定でございますが、病床数三十床、施設設備費約二十五億円、平成元年度運営費約四億円、このようなぐあいにやっております。
  82. 戸田菊雄

    ○戸田委員 時間がありませんから一括質問をしてまいりたいと思いますが、ただいまの医療センター等の問題について大臣の見解、全く了とするものでありまするけれども、ぜひそれと加えて、交通遺児が今十万を超えますね、このくらいおるわけでありまして、そういった人たちは、ことし予算、五億円昨年つけておったものを、何かどこかで忘れたのかどうかわかりませんが、一時解消のような状況がありました。これは復元しましたが、こういった面についても来年度予算等については十分配慮していただきたい、こういうように考えます。  それからもう一つは、スパイクタイヤの禁止について環境庁で関係各省とずっと打ち合わせをしまして、これを制定するというようなことできておるわけですが、この現況の進行ぐあいをちょっと教えてください。それが一つ。  それからもう一つは、宇野総理は就任以来、本会議の我が党の土井委員長質問に答えて、消費税見直しをやります、こう言っているのですね。おおむね私は、かつて竹下総理が懸念を表明した九項目、これの大体見直しというように考えているわけですが、その閣僚として運輸大臣、この見直しについてどのように考えておりますか、この点についても伺いたいと思います。
  83. 山村新治郎

    山村国務大臣 消費税につきましては、総理大臣の所信表明演説にもありましたように、政府として免税制度等各方面から指摘を受けている諸問題について、税制調査会において実情を十分勉強していただいた上で適切に対処する、こう申しております。運輸省といたしましても、運輸産業界におきます消費税の実施状況につきまして引き続き十分実情を把握するとともに、問題がある場合は適切に対処してまいりたいというぐあいに考えます。
  84. 南戸義博

    ○南戸説明員 お答えいたします。  スパイクタイヤによる粉じん問題につきましては、これまでの関係省庁、地方自治体等の取り組みにもかかわりませず問題が解決しておらず、依然厳しい状況にあると考えております。このため環境庁といたしましては、スパイクタイヤの使用禁止及び脱スパイクタイヤへの円滑な移行とその定着を図るための各種対策を盛り込んだ総合対策立法が必要であると考えまして、本年三月初めに関係省庁に環境庁案を提示して、今国会への法案提出を目途に調整を進めてきたところでございます。  しかしながら、脱スパイクの方向で対策を進めることにつきましては政府部内の意見の一致が得られていますものの、法律による規制につきましては、安全性の確保、各種対策の法律上の位置づけ、規制の実効性の確保などの論点の調整が引き続き必要な状況でありまして、現時点ではまだ法案について合意を見るに至っておりません。環境庁といたしましては、今後ともできるだけ早期に法案の成案を得るべく、関係省庁との折衝を継続していきたいと考えております。
  85. 戸田菊雄

    ○戸田委員 ぜひ促進をしてください。これは三年前に議員立法で出して、社会党案は常に提示をしておりまするから、ぜひそのように御努力を願いたい。  それで大臣、時間がありませんけれども、消費税についてもう二、三質問しておきたいと思うのです。  消費税の税率は三%なのですね。したがって、それに基づいて国民最終消費を土台にいたしまして、平成元年度の予算には消費税三兆六千百八十億、これを税収でもって見積もっておる。そういう中において税率三%ですけれども、結局、自動販売機その他JRのような場合三%で取れないわけですね。だから、調整作業としてこういうことをやっているわけでしょう。  電車特定区間、山手線及び大阪環状線等ですが、百二十円、百五十円、百六十円、これはそのまま、転嫁をしない。それから百八十円、二百四十円、三百十円、三百八十円、四百四十円等々の各区間については、それぞれ十円にしているのですね。そうしますと、百八十円の場合ですと五%強ですよ、税率が三百四十円の場合は四%強。三百十円の場合は三・一%。三百八十円で三%弱ですね。一円四十銭ばかりカットする、こういう状況になる。トータルで一応三%ということで積算をしているようですけれども、これは法律違反だと私は思うのです。三%なら三%、それが片や五%、あるところによっては、これは後でゆっくりやりますけれども、駐車場の料金なんて一〇%を悠々と取っている。ですから、こうなると竹下総理が懸念をした物価上昇等の問題、便乗値上げ、こういうものがばっこしますね。そういう状況ですから、こういう問題について適切に見直しを——運輸業界内の交通産業関係業界、それは三千万の免税業者はありましょう。タクシー会社その他は大体これに入ると思うのです。あるいは貨物輸送関係でもそうだと思うのです、一人社長も多いのですから。そういったところもあります。     〔久間委員長代理退席、委員長着席〕  だから、そういった状況の問題を含めていきますと、それらについての各般の経済諸状況に反映するところが大きいのでありまするから、それをひとつ視点を設けて、そして徹底して見直しをする必要があるだろう。私は見直しは反対なんですよ、廃止しろというのですから。しかし今、宇野総理初め政府が言っていることはそういうことですから、そういうことであれば、そういう矛盾を解決していくことは大事ではないだろうかというような気がいたしますので、その点の見解をお伺いして終わります。
  86. 山村新治郎

    山村国務大臣 JRを初めとする運輸産業界全体の実態を十分把握いたしまして、便乗値上げが行われることのないよう十分配慮しながら、できる限り公平に利用者へ転嫁を確保するという考え方に立って、問題点があればこれに対応してまいりたいというぐあいに考えます。
  87. 戸田菊雄

    ○戸田委員 ありがとうございました。
  88. 島村宜伸

    島村委員長 長田武士君。
  89. 長田武士

    ○長田委員 先日、中国からの帰国に対します増発便の要請を我が党でいたしまして、大臣、素早く手を打っていただきましてありがとうございました。  私は、きょうは大都市圏における交通問題について何点かお尋ねをしたいと考えております。  首都圏を初めといたしまして大都市圏における人口や産業の集積は非常に進んでおります。通勤通学の鉄道の混雑、都市部を中心といたしまして道路の混雑、この問題は今社会的な最も大きな問題として、東京都民を初め首都圏の皆さん方は大変に悩んでいらっしゃる。特に首都圏における慢性的な交通渋滞で、路面電車やバスなどの公共交通機関の機能は著しく低下をいたしておりまして、騒音、振動、排気ガスなどの公害、交通事故の増加にもなっておる、こういう状況でございます。こうした都市交通機能が麻痺している状態に対しまして、中でも都市圏における公共交通機関のあり方はどうあるべきか、どうすべきか。また、鉄道、道路交通を含めた総合的な交通体系をいかに再構築するかということが私は問われておるのではないかと考えております。  例えば慢性的な交通渋滞に対しまして、渋滞するのは当たり前というような認識を私たちはすぐ持つわけでありますけれども、そういう認識は変えるべきである、このように考えております。すなわち、本来の公共交通の使命であるところの定時、定速、快適、安全、そういう乗客優先の原点にもう一度立ち戻って、その機能をいかに実現させるかということが私は大きな課題だろうと考えております。  都市交通円滑化のために交通渋滞をいかに解消するか、そういうことで昨年七月、政府の交通対策本部より「大都市における道路交通円滑化対策」というものが出されて、私も読みましたけれども、短期的な対応、長期的な対応いろいろありますけれども、どうも実効の点でいかなるものかということを実は私も危惧をいたしております。佐藤運輸大臣も所信表明の中では「「大都市における道路交通円滑化対策」に基づき、道路交通の混雑解消のための施策を講じてまいりたい」、このように見解を述べておるわけでありますけれども、この点について山村大臣、こうした手詰まりの状態の都市圏における交通渋滞の実態に対してどうされようとされているのか、どういうお考えなのか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
  90. 山村新治郎

    山村国務大臣 大都市におきます道路交通混雑、これは国民生活や産業活動に深刻な影響を与えており、交通円滑化対策は大きな課題でございます。運輸省としては、従来から鉄道、バスなどの公共交通機関の整備を通じて道路交通渋滞の解消に努力してきたところでございますが、昨年七月交通対策本部におきまして決定されました、ただいま述べられました「大都市における道路交通円滑化対策について」、これを受けまして、これらの措置に加えまして、建設省の協力を得ながら混雑緩和に資する環状道路の早期整備、踏切対策などの道路容量の増大対策、貨物輸送の合理化などの道路交通需要軽減対策を推進しております。
  91. 長田武士

    ○長田委員 私は、大臣が今触れました点も含めまして次の三点が重要なポイントだろう、このように考えておりますので、お聞きをいただきたいと思っております。  第一は、利用者の利便性や社会的な要請にこたえるためにも、公共交通の環境の整備を図ることが重要な課題ですね。特にバスの定時運輸のための専用、優先レーンの拡大や、駐停車禁止場所の設定、あるいはロケーションシステムの採用などが必要であろうと考えております。具体的な例といたしまして、私新聞で見たのですけれども、全国初の新バスシステムといたしまして、大阪市営バスですね、利用客が三十年代はピークだったのですけれども、それがだんだん減っていってしまいまして、公共交通として用をなさない、そんな状況下でいろんな打開策を講じたということを聞いております。そういう点でようやく大阪市の市営バスは乗客がふえまして、市民の足としてその役割が再評価されておるという状況があるようでございます。公共交通の環境の整備を図ることについてどのように考えていらっしゃるかということが第一点。  それから第二点は、モノレールやリニアなどの高速交通システムを含む交通網の整備充実ということが必要じゃないかという感じが私はいたしております。そうした意味から、モノレールとかリニアについての現状の取り組みについてお尋ねをしたいというのが第二点。  第三点は、異常なまでの交通渋滞を打開するためには、私はこれは余り好ましい方策ではないと思いますけれども、総量規制やマイカー通勤の自粛、全体としての交通制限が必要かなという感じも実は持っております。総量規制を含めた抜本的な混雑緩和対策の必要性はこれまでも何度か実は論議があったのでございますけれども、なかなか具体的な政策になり得ない、こういう状況であるかと思います。  以上、三点について御見解をお聞かせいただきたいと思っております。
  92. 山村新治郎

    山村国務大臣 リニア、超電導磁気浮上方式リニアモーターカーと正式には言うそうでございますが、昭和六十三年度平成元年度の二年間の予定で、実用化に向けた今後の技術開発の進め方の検討等とあわせてこの新実験線に関する調査を実施しておるところでございます。この調査を進めるに当たっての基本的な方向について学識経験者等の意見を得るために、省内に超電導磁気浮上式鉄道検討委員会設置して鋭意検討を進めておるところでございます。去る三月十日に開催しました委員会におきまして、新実験候補地として北海道、山梨、宮崎の三地区を選定したところでございます。現在これらの候補地について自然条件等調査を進めるとともに、実用化に向けた今後の技術開発の進め方の検討を鋭意進めておるところでございます。  あと、他の問題につきまして、詳細を政府委員から御説明申し上げます。
  93. 阿部雅昭

    ○阿部政府委員 私の方から、バスの話と大都市におきます新交通システム等の話をさせていただきます。  都市におきます過密化の進行またモータリゼーションの進展等によりまして、走行環境が悪化しバスの運行速度が低下する等、バスの利便性が総体的に低下しておるということは事実でございまして、これに対し運輸省としては、都市におけるパス輸送の改善対策としまして、警察当局等の御協力も得ながら、パスの専用レーンあるいはパスの優先信号といったようなものを設置すること等によりまして、バスの走行環境の改善を図るということを進めておりますとともに、またパス車両につきましても、低床あるいはドアの広い、あるいは冷房化を行ったバス車両を導入するといったようなことも進めまして、また先生も御指摘ございましたが、バスの接近表示システムといったようなものも大都市において逐次採用する、あるいはバスの停留所につきましてもシェルターつきの施設をつくるというようなことですとか、あるいは鉄道との乗り継ぎターミナルもつくるといったようなことを鋭意事業者を指導し、また助成措置等もわずかではございますが計上しながら指導し、実施に当たっていただいているところでございます。  このようなことによりまして、御指摘ございましたように、大阪市ですとかあるいは東京都の交通局でやっておりますパス等につきましても表定速度が若干向上する、あるいは利用増も見られるというような状況が見られておりまして、私どももそのような方向をさらに今後バスについても拡充してまいりたいというふうに考えております。  また、新交通、モノレール等の整備状況についてお答え申しますと、大都市圏におきますモノレールあるいは新交通システムの現在の状況を申し上げますと、営業中のものが七事業者五十六・三キロになっておりますし、現在建設中のものが八事業者六十三・四キロというものがございます。なお、今後建設が予定されているものもございまして、一事業者十六・〇キロということでございます。  また、リニア地下鉄というものも、建設中でございますのが一事業者、これは具体的には大阪市の七号線でございますが五・三キロ、それから今後建設が予定されているもの、これは東京都の十二号線になりますが、四十二・七キロというようなものが現在建設が予定されている、そういうような状況でございます。
  94. 長田武士

    ○長田委員 ただいま三点にわたりましてお尋ねをいたしました。特にリニアの問題ですね、地下鉄についてお聞きをしたいのでありますけれども、このリニア地下鉄は二十一世紀の未来型交通手段といたしまして脚光を浴びているわけであります。昨年までに、実用化は可能との結論も出されているようであります。低騒音で建設コストが安い。その上、急勾配あるいは急カーブにも強いということも言われているわけであります。今お話がありましたとおり、大阪の地下鉄七号線、これは計画がなされているようであります。それから都営地下鉄十二号線、東京都知事も大変熱心にこの点については研究をされ、また導入のことについても実現化したい、こういう要望であります。これは具体的な実用化の方はどうなんでしょうか。計画はあるのですけれども実用化という点ではどうなんでしょうか。
  95. 阿部雅昭

    ○阿部政府委員 お答えいたします。  リニア地下鉄につきましては急曲線がとれる、または急勾配で走れるといったようなすぐれた特性を持っておりますし、またトンネルの断面積が約二分の一に縮小できるといったようなことで、建設費が極めて削減できるといったような経済性も認められます。このようなことから、運輸省としましては民間と協力しまして、昭和六十年度から三カ年計画で試験線を建設いたしまして、走行テスト等による研究開発を進めてまいってきたところでございます。  研究の結果でございますが、実用化の見通しがきちっと立ちましたので、大阪市は七号線、これは京橋−鶴見緑地間五・三キロでございますが、これにつきまして採用が決定され、その路線につきましては、来年の花と緑の博覧会に間に合いますように来年の三月に開業が決められておりまして、現在鋭意工事が進められておるところでございます。また、東京都につきましても十二号線、これは全長で四十二・七キロにわたる長大なものでございますが、これにつきましても東京都としましては、リニア地下鉄方式を採用するということを既に決定しておるところでございます。
  96. 長田武士

    ○長田委員 次は、運輸大臣にお尋ねするのでありますけれども、今月五日の東京新聞とのインタビューの中で、リニアの新実験線について積極的な姿勢を示されたわけでございます。すなわち大臣は「リニア新実験線は北海道、山梨、宮崎が候補地に選ばれている。七月には将来の採算性などを考え、一カ所に絞って最終決定したい」、さきの答弁ですと、三カ所決まったみたいなことですが、そうじゃないのですね。一カ所に絞りたい、こういう方針を示されております。また、千葉などが計画しておりますところの東京都心と成田空港を結ぶシャトルサービス型のリニア計画にも触れておりまして、「効果があるなら、短距離型リニアも実用化を考えるべきだ」、このようにインタビューで答えていらっしゃいます。  再度新大臣にお尋ねをするのでありますけれども、リニア計画についてのお考え方をもう一度御説明いただけませんか。
  97. 山村新治郎

    山村国務大臣 私が申し上げましたのは、今この実験線、北海道、山梨、宮崎その三カ所の中から一カ所を決めるということでございますが、この実験の結果によりまして、これがどのような効果があるかが出てくるわけでございます。北海道も山梨も宮崎もそれぞれ大変熱心でございまして、知事さん等もぜひ我が方へというような熱心な勧誘がございました。しかし、これは学識経験者の皆さんの御意見を伺って、それが出た上で決めるわけでございますが、もし実験線が大きな成功をおさめますれば、日本のいわゆる運輸行政というのはかなり変わるのじゃないかと思います。  それと、先ほど申されましたいわゆる国土庁のリニア計画というのがございます。これはまだ正式に国土庁から運輸省に言ってきたことではございませんで、新聞報道によりますと、業務核都市等を結ぶ高速鉄道についてということで、リニアモーターカーについて、現時点においては輸送容量、建設・運営コスト、旅客運送システムとしてこれが必ずしも明確に出ておりません。今後さらに調査を進める必要があるということを考えておりますが、私が申し上げましたのは、実験線が決まり、そしてこの実験結果によっては、日本というか世界じゅうの交通体系が大きく変わってくるのじゃないかということを申し上げたわけでございます。
  98. 長田武士

    ○長田委員 この運輸大臣の発言に呼応しまして、今ちょっと大臣が触れられましたけれども、国土庁は先月首都圏の周辺の業務核都市などをリニアモーターカーで結ぶ構想につきまして最終調査結果の大枠を固めておるわけでございます。  この構想は、多極分散型国土形成に伴う業務核都市の対象であるつくば市、大宮市、八王子市、厚木市、横浜市、川崎市、千葉市のほかに羽田と成田、この両空港周辺にも新駅を設けましてリニア環状線をつくろう、こういう計画のようでございます。  総延長は約二百八十キロありまして、JR東海などが実現に向けて取り組んでおりますところの中央リニア、この新幹線の開通を前提に着工する、完成までは大体十年くらいかかるという状況であります。総工費は数兆円、このように言われております。大臣の御発言の四全総の構想を踏まえたものかどうか、この点はどうなんでしょうか。
  99. 塩田澄夫

    ○塩田政府委員 今委員が御指摘になりましたリニアによりまして業務核都市を連結するという構想は、先ほど大臣がお答え申し上げましたように、国土庁が業務核都市の振興策の一環として検討をされていると聞いておりますが、まだ正式にこういうものを運輸省に提案されたというものでもございませんし、ただいま大臣がお答えを申しましたように、リニアモーターカー自体につきましての輸送容量、建設・運営コストなど、旅客輸送システムとしての諸特性が必ずしもまだ明確でございませんので、今後さらに調査を進めることになっておりまして、その結果や技術開発進捗状況を踏まえまして輸送機関としての位置づけを検討する心要があると思います。現在はそういう段階でございます。
  100. 長田武士

    ○長田委員 次に、高速道路についてお尋ねをいたします。  高速道路の利用料金と高速道路の建設費との関係はどのようになっておるのか、この点についてお尋ねをいたします。  また、高速道路の建設費の内訳はどのようになっておるか、簡単で結構ですから建設省。
  101. 玉田博亮

    ○玉田説明員 お答え申し上げます。  高速自動車国道は、御承知のとおり昭和四十七年以来プール制を採用いたしまして、これは早急に整備する必要があるということで有料道路制度のもとで整備を進めてきているところでございます。  したがいまして、高速自動車国道の建設に要します費用につきましては、財政投融資資金を初めといたします借入金をもってこれに充当してございまして、この建設に要しました費用、維持管理に要する費用、それから借入金の金利等を利用者の皆様方から料金という形で御負担をいただいて整備するという方式をとってございます。  次に、財源としてというお話でございますが、平成元年度を例にとってその内訳を簡単に申し上げますと、高速自動車国道の建設費、これは一年間に建設する建設費でございますが、一兆六百三十億円でございます。これに維持改良費、調査費、建設利息、業務管理費等を加えまして、全体で三兆一千三百五十四億円の支出計画になってございます。  その資金の内訳でございますが、政府が援助をいたします政府出資金、これは国費でございますが、六百八十一億円。それから財政投融資資金等の借入金、これは全体で一兆八千八百三十五億円。それから利用者の皆様方からいただいております料金収入、これが約一兆一千八百億円。これが資金の内訳の概要でございます。
  102. 長田武士

    ○長田委員 運輸省と建設省の両省は五月二十三日、日本道路公団から申請の出ておりました高速道路料金の改定につきまして、消費税の転嫁分を含めまして六月一日から八・九%、平均でございますけれども、値上げを許可いたしております。主要道路はますます渋滞がひどくなるのになぜ高い料金を払わなくてはならないのか、利用者には総じてこういう意見が強いわけであります。現行の料金制度のあり方を見直すべきであるという声も非常に高いように私は思っております。国土の均衡ある発展を図りまして、着工時期の違いによる路線間の不公平をなくすためには、料金プール制の基本的な考え方に賛成せざるを得ないだろうという感じを私は持っておるのですけれども、この調子でいきますと、だんだん料金が上がってしまう、青天井で上がってしまう、そういう感じさえ利用者は実は持っておるのですね。そういう点では、一方においては渋滞がさらにひどくなる、そういう中にあって料金はどんどん上がってしまう、こういう状況が続くわけであります。  そういう中で国費の問題についても、負担も相当重いわけでありますけれども、この点も多少ふやして、やはり利用者の負担というものをある程度抑えるべきであるというような感じも私は強く持っておるのですが、どうでしょうか。
  103. 塩田澄夫

    ○塩田政府委員 ただいま先生が御指摘になりました問題は、高速自動車国道における国費の導入をもう少しふやすべきではないかという御質問と理解いたします。  私どもも、今委員が御指摘になりました高速道路の料金についての諸問題につきまして建設省といろいろ話をしておりますが、その過程で、この道路に対します国費負担のあり方は道路財源の配分の問題でございまして、まず建設省が所管をしている問題でございます。この点につきまして建設省からは、高速自動車国道への国費助成の充実について検討する意向であるというふうに聞いております。
  104. 長田武士

    ○長田委員 高速道路の管理や建設について一層の合理化を図るべきだ、このように私は考えております。料金値上げについて東名・名神などの利用者の納得を得るためには、既設の道路の渋滞対策あるいは改修などに努力をすべきだという点はぜひひとつやっていただきたい。それから、必要性が余り高くない、そういう路線は着工をある程度おくらしてもやむを得ないんじゃないかという感じがいたしております。そういう点についてもどう考えていらっしゃるか。合理化の問題、渋滞対策、さらには余り利用度の高くないところについては建設工事のある程度の延期もやむを得ないんじゃないかという感じがいたしますが、どうでしょうか。
  105. 塩田澄夫

    ○塩田政府委員 今御指摘の点につきましては、高速自動車国道の管理、建設におきまして徹底した経費節減が図られるべきことは当然であると考えておりまして、これまでも運輸省も建設省と指導いたしまして、日本道路公団におきまして交通量の少ない区間での暫定二車線供用、それから料金収受業務の自動化などの合理化に努めてもらってきております。運輸省としましても、ことし五月、高速自動車国道の料金改定認可に当たりまして、建設省と連名で事業の一層の効率化に努めるように日本道路公団に指示をしたところでございます。今後適宜状況報告を求めまして、所要の指導を行ってまいりたいと考えております。
  106. 長田武士

    ○長田委員 次に、東京都の地下鉄建設、とりわけ都営地下鉄十二号線についてお尋ねをいたします。  都営地下鉄十二号線につきましては、御承知のとおり昭和四十七年に都市交通審議会、これは現在の運輸政策審議会に当たりますけれども、「東京圏高速鉄道網整備計画」、答申第十五号でありますけれども、答申されたところでございます。現在東京都の事業といたしまして、本格的に工事が始まっております。  まず、放射部のうち、光が丘−練馬間四・八キロでありますけれども昭和六十年八月七日付で工事施行認可を取得いたしまして、平成年度完成を目途に、昭和六十一年度から工事が着工しております。また、練馬−新宿間については工事施行認可の手続を経まして、平成年度から着工いたしまして、平成年度に完成の予定でございます。  さらに運輸省は、西新宿を起点に本郷三丁目、上野広小路、両国、勝どき、浜松町、六本木を経由いたしまして新宿に至る、これは環状部二十七・八キロについて五月三十一日付で、建設主体の第三セクター、これは東京都地下鉄建設会社というのですけれども、社長は都知事になっております、これに事業免許を与えたと伺っております。今後、都市計画決定、環境影響評価の手続などがあるわけでありまして、それを経まして用地買収を開始されるわけでありますけれども、一日も早い着工、完成が待たれるところでございます。  私はこの都営地下鉄十二号線は、東京の首都機能の充実と交通網の整備を図る上でかなめ的な役割を果たすであろう、このように考えておりまして、重要な路線であると認識をいたしております。そうした意味から、今後地下鉄十二号線全線の早期完成を強く要望するわけでありますけれども大臣の御所見についてお尋ねをいたします。
  107. 山村新治郎

    山村国務大臣 お答えします。  都営地下鉄十二号線環状部につきましては、その建設を行う東京都地下鉄建設株式会社に対して、このほど、平成元年の五月三十一日、鉄道事業の免許を交付したところでございます。東京都及び同社の計画によりますと、当該路線は平成年度末、全線を同時に開業することといたしております。運輸省といたしましては、当該路線の重要性にもかんがみまして、計画どおりの完成に向けてできる限りの支援を行っていきたいと考えます。
  108. 長田武士

    ○長田委員 また、この地下鉄十二号線については、当初の路線、これは昭和四十七年三月の都市交通審議会から答申されたものです。それに加えまして、昭和六十年七月に運輸政策審議会から「東京圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画について」、これは答申第七号でありますけれども、当初路線に加えまして、光が丘−大泉学園町間約四キロでございますが新たに追加されました。なお、今後新設を検討すべき方向として、埼玉県新座市方面が付記されているわけであります。  私は、この地下鉄十二号線の光が丘から大泉方面への延伸につきましては、これまで何回か予算委員会でこの問題を取り上げました。御承知のとおり十二号線は国における都市政策の一貫性を保ちながら、東京の多心型都市構造への転換を推進し、加えて沿線各地域の再開発と活性化に寄与する、そういう目的を持っております。さらに、住民の利便向上などを図る上からも重要な路線でありますし、都議会を初めといたしまして、関係各区及び沿線住民から早期建設の要請が非常に強いわけであります。中でも、新たに追加された光が丘から西に至る大泉方面への延伸、この路線については地元の方々からは非常に強い要望が出ております。  しかし、答申より四年目を迎えたわけでありますけれども、今日においてもいまだに具体的な整備計画が示されていない、そういう現状でございます。この延伸路線について、私はぜひとも整備する必要があると考えておりますけれども、今後の見通しを含めまして大臣にお尋ねをいたします。
  109. 山村新治郎

    山村国務大臣 地下鉄十二号線につきましては、運輸省としてできる限りの御支援をしてまいります。今御質問のありました光が丘以西の区間の整備につきまして、今現在進められております工事の推捗状況を見て、また、東京都が今後どのようなぐあいに検討してくるのか、これを踏まえて積極的に対応してまいります。
  110. 長田武士

    ○長田委員 この地下鉄十二号線の光が丘−大泉方面への延伸路線につきましては、運政審の答申第七号の中では昭和七十五年、すなわち平成十二年でありますけれども、それまでに終わるべき路線として位置づけております。そういう意味からも今後の取り組みを期待するわけでありますが、仮に東京都からこの延伸路線について路線免許の申請があった場合、運輸省は速やかに認めることができるかどうか、この点はどうでしょうか。
  111. 阿部雅昭

    ○阿部政府委員 鉄道事業の免許につきましては、鉄道事業法第五条におきまして、事業主体の事業遂行能力とか事業計画の適切性等について免許基準が定められておりますので、東京都から申請がなされた場合には、これらの基準に照らして適切に処理を行っていきたいと考えております。
  112. 長田武士

    ○長田委員 東京都の地下鉄建設経営調査会の最終報告によりますと、十二号線の輸送需要と採算性について次のように予測いたしております。  すなわち、十二号線の全線開業時、昭和七十一年度末でありますけれども、つまり平成年度における終日総乗客数は九十八万五千人、営業キロ単位で考えますと二万四千人でありますが、開業十年後には百二十一万三千人、営業キロ当たり三万人に上る、このように予測いたしております。こうした予測につきまして、運輸省はどのように見ておられるのか、また、今後光が丘−大泉方面への延伸路線を考える場合、どの程度の需要予測が必要と思われるのか、この点はどうでしょうか。
  113. 阿部雅昭

    ○阿部政府委員 東京都の地下鉄建設経営調査会の報告では、ただいま先生お述べになりましたような地下鉄十二号線についての需要予測その他の作業がなされておりまして、開業時百万人、開業十年後に約百二十万人といったような輸送需要を見込んでおります。建設費等のコストの面との対応におきましても、このような輸送需要は採算の確保が可能な水準であろうと私どもも見ておるところでございます。  なお、光が丘から大泉学園間の延伸部分についてどの程度の輸送需要があるかといったようなことにつきましては、東京都も今後の問題として現在取り組んでおるところでございますが、延伸部の整備につきましては、需要というだけではなしに、さらにそれにかかる建設費ですとか、あるいは関連道路の整備状況ですとか多くのなお解決すべき課題があるかと思いますので、それらにつきましても鋭意東京都の検討状況を踏まえ、私どもも検討してまいりたいというふうに考えております。
  114. 長田武士

    ○長田委員 私は何でこの問題を出したかといいますと、大臣、ちょっと聞いてください。どうも大泉延伸については採算性の問題がちょっと厳しいのじゃないかとか、そういうようなことで、せっかく申請されましてもこれは運輸省でなかなか認可しない。したがいまして、だんだん時間が延びてしまうというような経緯も今まで実はあったのですね。したがいまして、地下鉄十二号線については今度ミニ地下鉄にするとかいろいろな方式をとりました。そういう点について私はちょっと危惧が出てまいりましたから、見込みとかそういう問題についてお尋ねをした、そういう点でございますから、どうか免許申請が出ましたら前向きにひとつ許可をするような対応をしていただきたいと思いますが、大臣、どうでしょうか。
  115. 山村新治郎

    山村国務大臣 適切に、前向きに対処してまいります。
  116. 長田武士

    ○長田委員 だんだん声が小さくなってしまいましたが、よく聞こえましたから……。  地下鉄十二号線に限らず、地下鉄の新線建設にかかわる国の助成について一層の充実を図ってほしいという要望も一方ではございます。例えば、地方公共団体の負担の軽減を図るために、国と地方公共団体の負担割合を都市計画街路事業並みに二対一に改めてほしいという要請も実は出ております。また、他の地方公共団体にわたって敷設されます民営鉄道の路線については、受益者負担の原則から営業キロによる案分比例で負担の平準化を図ってほしい。営業キロ数ですね、これによって案分比例を図ってほしいという要請も実は出ております。この点は可能なのでしょうか、どうでしょうか。この点についてお尋ねをいたします。
  117. 山村新治郎

    山村国務大臣 都市機能の維持向上や都市交通の混雑緩和のためには、都市における鉄道輸送力の増強が不可欠でございます。しかし都市鉄道の整備、特に地下鉄整備につきましては多額の投資が必要でございます。これをすべて利用者負担で賄うことは現実に困難でございます。このため運輸省として、従来から地下鉄整備に対し地方公共団体の協力を得ながら一定の助成を行うことといたしてまいりました。これによりまして、大都市における地下鉄整備の推進に鋭意努めてきたところでございますが、現行地下鉄の補助制度におきましては国と地方の助成割合、一対一ということになっております用地下鉄整備が当該地域に大きなメリットをもたらすということにかんがみてこの割合が決められたものでございます。今の国の財政、御存じのとおりなかなか厳しい状況にございます。そこで、国の負担割合の引き上げということ、努力はしてみますが、なかなか難しい問題ではないかと思います。
  118. 長田武士

    ○長田委員 以上で終わります。
  119. 島村宜伸

    島村委員長 小渕正義君。
  120. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 私は海上航行関係での、特に無線問題を中心にお尋ねいたしますが、運輸省昭和六十三年の十二月二十六日付で、船舶安全法施行規則第四条第一項八号に基づいて外洋を航行する長距離旅客船への無線設備の設置についての通達が出されたわけでありますが、私ども調査では、関係者間の意思疎通が図られない中でいきなりこれが出されたというふうにも聞いておるわけですが、なぜにこのようなことが実際に行われたのか、それらの事情、理由等についての説明をまずお聞かせいただきたいと思います。
  121. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 まず通達の背景から御説明申し上げますと、昭和五十年の二月二十二日に、長距離カーフェリーの「しれとこ丸」が航行中に低気圧に遭遇いたしまして所定の航路を外れたということで、同船は沿海区域航行船舶でございまして、通達距離の短いVHF無線電話しか備えていなかったということで陸上との通信可能範囲を超えてしまった。当時におきましては無線電話等通信可能な設備を備えた他船、付近航行船舶もなかったことから、他船を介して通信もできなかったということで、一時陸上との通信が途絶いたしまして大きな社会不安を招いたわけでございます。この事件にかんがみまして、昭和五十年二月及び三月に、法的に備えつけ義務のない沿海区域の長距離カーフェリーに対しまして、無線電信を備えつけさせるように指導を行う旨の通達を行ったわけでございます。  しかしながら、昭和五十九年に至りましてSOLAS条約の改正がありまして、外航船に対しまして無線電信と同等の二メガヘルツの無線電話の備えつけを義務づけたこと、また最近の内航船、漁船にも無線電話を備えつける船舶が多くなったこと、それから海上保安庁における無線電話遭難周波数の聴守体制が拡充されたことなどから、昭和五十年当時に比べて船舶通信体制も著しく発展したことがございまして、従来の無線電信にかえて、それと同等の効力を有する無線電話でも安全上十分であるというように判断するに至ったわけでございます。  したがいまして、六十三年の十二月二十六日にこの旨の通達を行ったものでございまして、この通達においても従来どおり無線電信を備えつけることを否定はいたしておりません。無線電信をつけるか、あるいは無線電信と同等以上の効力を有する無線電話どちらかをつけるようにということの通達をいたしたわけでございます。また関係者に対しましては、通達の内容につきまして、旅客船協会及び全日本海員組合に対しまして事前に十分説明を行い、その意見も聞きつつ、安全上同等の効力を有する無線電話を認める旨の通達を行ったところでございます。
  122. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 今の説明によりますと、船舶電話の普及ということと、技術的にかなり信頼性が高まったということ等が理由のようでありますが、先ほどもお話がありました五十年三月二十二日の通達を出された背景は、「しれとこ丸」等のいろいろな問題から出されたわけでありまして、そういう意味ではこれを確実に守りながら、しかも運輸省としてそういう指導を行うという背景は、この「しれとこ丸」の事件以来、参議院においてもこの問題が議論されて、運輸省としてはこの五十年三月の通達の姿勢で今後指導していきますということで出された。そのような通達の出された当時のいろいろな背景を考えるならば、少なくとも通達が廃止されるような方針の変更ですから、当然これは関係先にも十分意思疎通を図って、それぞれの納得、理解の上でやられるべきじゃないのかというふうな感じが強くします。それだけに私は五十年三月二十二日の通達は重みがあったと思います。  それが今回は、今の話では、今回の通達を出すに当たっては関係者にも通告したというようなことでありますが、そういう関係者との意思疎通が図られない中で突如こういうことを出されたというふうな意味で非常に慎重さを欠いているのではないか、そういう意味での判断をするわけでありますが、なぜあえてそういうことまでしてこの通達を今回出さなければいけなかったかという背景等について、もう少し御説明いただきたいと思います。
  123. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 無線電信と同等の効力を有する無線電話で付近船舶との交信が十分行われる、あるいは陸上との交信もできるということで、無線電話によりましても安全上問題がないという判断をいたしまして、また、将来GMDSSの取り入れがございますけれども、そのときには無線電信から無線電話に移っていくという世界的な傾向もございますので、それらを勘案いたしまして今回の措置をとったものでございます。
  124. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 今、安全上の問題でということが言われておりますが、関係者の話をいろいろお聞きしますと、無線通信の持つ特性から、島影その他で不感地帯が生じる等、非常に不安定な状態が発生する危険性がいろいろ指摘されておるわけであります。こういう中で、少なくとも旅客船等の航行でひとときたりとも不安定な状態、通信が不能になるようなことは絶対に許されないことであります。そういう点で、特に東シナ海等で漁船群が集中して操業している場合における混線その他でこの船舶電話が不通状態になっていくとか、そういう問題点が関係者の中ではいろいろ指摘されておるわけでありまして、そういう意味で、今言われた安全性が確保できたからということではちょっと理由が薄弱じゃないかと私は思うわけであります。  特に、もう身近に衛星通信制度というものが一九九二年には確立されるであろうという見通しがあるわけでありまして、それまでなぜ待てなかったのか、なぜにこの時期にこのような通達を出したのかということでは、いまだにその理由が極めて不明ということで関係者間において不信感があるわけでありますが、この点についてはどのようにお考えですか。
  125. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 ただいま委員指摘のように、私ども十分説明いたしたつもりでございますけれども、まだ理解が十分でないという面もあるようでございますから、私どもといたしましては、今後とも関係筋に十分理解をしていただけるように説明を続けてまいりたいというふうに考えております。
  126. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 関係者の方に理解を深めるために努力したいと言いますけれども、しかし、関係者である事業者団体では、この無線通信の欠点等がある現状から、関係諸団体、特に船の労使関係においては無線問題協議会というものを設置いたしまして、安全問題等の調査研究を実施し、その結論が出るまでは、五十年三月二十二日の通達をそのまま維持していくということで双方が確認されているという事実がございます。  このようなことを考えますならば、今関係者により理解を求めると言うけれども、実際にこの関係者である海運の労使の中においてさえまだそういう不安感があるからこそお互いが十分大丈夫だというところまでは今後とも調査研究して、そしてこの前出された通達を実施するかどうかという結論を先送りしている、こういう現状であることからいきますれば、運輸省としては、単に安全上の問題と業者により理解を深めたいと言っても、何かそれ以上に理解を深めるような材料でもお持ちですか。そういう通達の中で関係者がこれだけお互いに話し合いながら、議論しながらいまだに実施に踏み切れないという現状であるならば、それは単なる言葉だけの意味でしかないと思いますが、その点いかがですか。
  127. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 無線電話の有効性につきましては国際的にも評価されておりまして、今度の条約改正で無線電信から無線電話に移行するということが決まっております。したがいまして、技術的にも根拠があるものというふうに私どもは考えております。
  128. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 これは関係者にとっては非常に大事な問題なんです。それが今のような御答弁だけでは理解しようとしても全然できません。まず何はさておいても、実際に関係しておるそういう事業者団体の人たちがそういうようなことを言っているわけでありますから、あえて何で昨年の暮れこれを急いでやらなければならなかったのか。そういう通達を緊急に出さなければならないような理由でも、事態でも何かあったのですか。今の当局の答弁では全然理解できません。そういう意味で、何かこの通達を出すときの関係部長さんが内航旅客業界の理事長に天下りされた土産に持っていくためのものだったのじゃないかとか、一部に非常にうがった見方までされているわけでありますが、確かに今の局長答弁でいきますならば、それをどうしてもあえてやらなければならなかった緊急性というのは全然何も感じられないわけですけれども、この点どうですか。
  129. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 GMDSSが一九九二年から発効いたします。これが発効いたしますと、新造船は無線電話を備えつけなければいけないということになります。したがいまして、今計画している船について無線電信をつけますと、その後に無線電話にかえるという二重の手間がかかってまいります。したがって、そういうことも配慮して、今回、無線電信でも無線電話でもよろしいという措置をとったわけでございます。
  130. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 結局、この前の百九十八号の通達で、電話法及び船舶職員法等により有資格者として通信士の配乗というのがこの五十年の通達では義務づけられたわけです。そのために多くの通信士が採用されたわけでありますが、今回の通達において通信士が不要となってくることになるわけでありまして、そういう意味では、特に船主のような人たちにとりましては、競争力との関係で少しでもコスト低減ということがいつもあるわけですから、この通達が出されたことが大きな理由になって通信士が要らなくなるということで、採用どころか新たに雇用問題が発生してくることは必然でありますし、また現在そういうことが起きているわけであります。そういうことに対してはしからばどのような対策を講じられているのか、この点についてはいかがですか。
  131. 田辺淳也

    ○田辺政府委員 今回の通達とあわせまして、関係船員の雇用維持に関しまして労使間の十分な協議の上円満解決に配慮すべき旨の通達を別途出しておりまして、以後、これによりまして労使間の協議が適宜継続されてきておりまして、また、平成元年度の春闘等においても通信士配乗問題が協議対象となったと聞いております。春闘以降は労使によりまして、先ほど先生が申しました無線問題協議会が設置されておりまして、私どもといたしましては、この協議会で安全問題、雇用問題等について協議が行われて円満に解決されるものと思っております。  なお、この協議会の結論が出されるまでの間は、引き続き五十年三月の通達、それに基づく通信士配乗を維持するということで労使間の話し合いが成っているようでございまして、現在具体的な雇用問題は生じていないと聞いております。
  132. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 具体的な雇用問題が現在発生していないというのは、先ほど私が申し上げましたようないろいろな問題点があって、労使がまだそういう意味における基本的な合意がなされていないから発生していないわけです。だから、少なくともそういう点から考えますならば、こういう通達を出す以上は、新たにこういう雇用問題が発生するということが、必然的にそうなるわけでありますから、当然それを含めた総合的な対策を示されながら実施していくということが私は至当ではないかと思います。  何か参考資料をいただいたのを見ますと、六十三年十二月二十六日、海労第四百一号ですか、船員部労課長の、雇用問題をひとつやれという一片の通達が出ておるようでありますが、ただ紙切れだけでこういった問題が解決するわけではないわけでありますから、当然そこまで考えるならば、この通達のときと同時に、雇用対策についても、こういった点、こういった点については行政としても十分配慮するとか、何かそういう総合的なものを示されながらやらなくては、ただ単なる通達だけですべて物事を処理しようとするそういう行政の姿勢は、やはり私は非常に問題だと思います。  そういう意味で、今のお話のように、まだ具体的には余り深刻な雇用問題が出ておりませんがというのは、先ほど申し上げましたように、まだあの通達ですべて不安感はない、お互い通達に基づいて実施しようというところに踏み込んでいないからです。まだまだいろいろな問題があるということで労使双方が研究調査して、お互いはっきり見きわめがついてから初めてそういう実施に踏み切ろうという段階だからこそ現在雇用問題が出ておらぬわけでありますから、そういう点から考えますならば、本来ならば六十三年のこの前の通達は撤回されてしかるべきだ、実際に余り実のない通達を出しておるということになりはしないかと思いますが、その点はいかがですか。
  133. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 技術的に同等の効力のものを二つ指定しまして、それのどちらでも選択をできるというやり方でございます。こういう選択の幅を広げるというやり方は、使う方の側にとってみれば非常にいいやり方ではないかというように考えております。  技術的な問題点についていろいろ不安感があるという現場のお話も伺いましたので、私どもとしましては、機会があればそういうお話も十分お聞きして参考にしてまいりたいというふうに考えております。
  134. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 では、ちょっと時間がないので先に進みます。  今回の通達の対象になった船舶の概数と、そのために該当する通信士の数、予備員を含めてどれくらいの数字になるか、把握されておるかどうかというのがまず第一。  次に、今回の通達で無線通信から無線電話に移行したような船舶がもう実際に出ておるかどうか。それと、現状の設備の中で移行可能な船舶というものは実存するのかどうか、あるとすればその数は大体どの程度なのか、この二つについてひとつ御説明いただきたいと思います。
  135. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 まず最初の御質問でございますが、対象船舶数は四十一隻でございます。また、通信士の数は百一名でございます。  それから、次の御質問でございますが、移行した船舶はないというふうに聞いております。また、移行可能な船舶につきましては、遠海船が十五隻、近海船が二十六隻、合計四十一隻であると聞いております。
  136. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 それでは、先ほどの御答弁もありましたように、ぜひひとつこれからもこの種のこういった問題については関係者の意見を十分聞いて、十分諮ってやるように、もっと慎重にやってほしい、特にその点を強く要望してこの問題は一応終わります。  次に、本四架橋問題についてお尋ねします。  御承知のように瀬戸大橋が完成いたしました。そのために船員の離職問題が発生し、特に、時限立法でありますが特別措置法が発動されまして、現在離職者対策その他が関係先によってやられておるわけでありますが、大体六百六十九名ですか、六百名を超す離職船員の中から、いまだに二百名が離職で失業中であるというような状況だと聞いておるわけであります。これは時限立法ですからあと二年間でありますが、これらのあと残されている離職者二百名に対する今後の取り組み、対策といいますか見通し等についてはどのような状況なのか、その点を御説明いただきたいと思います。     〔委員長退席、二階委員長代理着席〕
  137. 田辺淳也

    ○田辺政府委員 先生指摘の約二百名の離職者のうち百六十名が船員の離職者でございまして、そのうちの三十名は今職業訓練を受講中でございます。この三十名の方々は、訓練終了後にはほとんどの方が就職可能と見ております。  残る方々につきましては高齢者の方が大変多くございまして、海陸ともにその年齢層に対応する求人が極めて少ないというような事情とか、これらの方々が自宅から通勤できる職場を望んでいるというようなことでございまして、再就職指導も大変困難な状況に今陥っておりますけれども、この本四特別法に基づく離職者支援をしてまいる一方で、特に国、公団、地方公共団体と十分な連絡をとりまして、これらの方々の就職促進方についてさらに努力をしていきたいと考えております。
  138. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 確かに中高年層の再就職問題、しかもそれぞれ家庭や地域的な特性等がありまして、住居を離れることができないとかいろいろそういう大変困難な問題がありましょうけれども、ぜひひとついろいろと関係先と協力していただいて知恵を絞って一段の努力お願いしておきたいと思います。  次にお尋ねしますが、瀬戸大橋が開通しておるわけでありますが、大体予想された通行量からいくと比較にならぬように少ない。計画から比較すると実際は非常に低い状況にある。そういうことから、運賃割引制度を拡充して少しでも利用者を増大しようという努力をされておるわけでありますが、あわせて、一つは、橋の通行料、基本料金が高いから利用者が少ないのではないかということも考えられまして、地方公共団体を中心にしてあの瀬戸大橋の通行料金の基本料金を引き下げろというような強い要望というか運動が行われておると思います。その点に対しては関係省庁はどのような見解をお持ちか、まずその点をお尋ねいたします。
  139. 小野和日児

    ○小野説明員 瀬戸中央自動車道の通行料金につきましては、本年四月に割引制度の拡充を図ったところでございまして、当面この割引制度の十分な活用が図れるように努力してまいりたいというふうに考えております。
  140. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 今そういう状況でありますが、一番懸念されるのは、結果的にこれは通行料との兼ね合いで旅客航路の運賃がある程度決まり、そういう中で利用者が利用されておるわけであります。まさにそういう意味では、本四架橋の通行料金と裏腹の関係に宿命的に置かれているのがあの海峡のフェリーのそれぞれの船舶だと思います。そういう点で、もしも今言われるような基本料金等を値下げするということになりました場合に、その影響が現存の稼働中のそれぞれの船舶の営業にかなりまた重大な影響を与えるのは必至でありますが、その場合、現在の特別措置法は大体二年間ですね、だから、このような今申し上げたような事態が発生して、そのときにはもう特別措置法が期限が切れておったということでは、実際の瀬戸内の今現在稼働されておるそれぞれの旅客船の関係者にとっては救われないわけでありますので、当然、この特別措置法の趣旨からいきますならば、そういうことの兼ね合いの中で新たに起きる問題についても対処することが至極当然のことだと思います。そういう意味で、その点をいかにお考えをお持ちですか、まずお尋ねをいたします。     〔二階委員長代理退席、委員長着席〕
  141. 田辺淳也

    ○田辺政府委員 料金の値下げ等によりましてどの程度の航路再編成がなされ、また離職船員が発生するかというのはなかなか難しい、予測ができない問題でございますけれども、もし大量の離職船員が発生するということになりましたならば、この本四特別法の趣旨を踏まえた適切な雇用対策、これを実施していく必要があると考えておりまして、雇用対策の円滑な実施につきまして建設省、本四公団等に要請をする一方で、また関係諸機関等々と諸対策を講じてまいるつもりでございます。
  142. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 今の御答弁を了といたしますが、ぜひひとつそういう意味では前向きにこの措置法の趣旨に沿ってそういう事態が発生した場合には対処されることを特に強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  143. 島村宜伸

    島村委員長 中路雅弘君。
  144. 中路雅弘

    ○中路委員 きょう三点の問題についてお尋ねしたいと思いますが、最初に消費税の関連ですが、タクシー労働者の労働条件との関連でお尋ねしてみたいと思います。  四月一日の消費税導入がいろいろ国民各階層にさまざまな影響を与えているわけですが、タクシー業界及びそこで働く労働者に対しても非常に深刻なものがあります。福岡では、御存じのように九州の運輸局において、消費税導入に伴う賃金の引き下げという事態のもとで、今そこで働く労働者の長期間の座り込みなども続けられているというような事態も起きていますが、この事態が引き起こされたのは、御存じのように多くのタクシー事業者が、消費税導入に伴う運賃改定分をそれぞれのタクシー労働者が上げた運賃収入より分離して残りを賃金対象運賃としているため、結果的には消費税分の賃金引き下げになったところから起きたわけです。  そこで、具体的に何問かお聞きしますけれども、今回の消費税導入による運賃改定は道路運送法の八条ですね、「運賃及び料金の認可」という、この八条による運賃改定と考えますが、いかがですか。
  145. 阿部雅昭

    ○阿部政府委員 タクシーの運賃は、道路運送法第八条の規定によりまして各事業者からの申請に基づき認可しているものでございます。このたびの消費税導入によります運賃改定についてもこれと同様の扱いでございます。したがいまして、改定後の運賃は税金と運賃に分けられるものではなくて、消費税相当分を含む運賃そのものでございます。
  146. 中路雅弘

    ○中路委員 今明確にお答えになっていますように、今回の運賃改定も道路運送法八条による運賃改定ということですが、個々の業者が課税業者の場合消費税を納めなければなりませんけれども、会計処理として、例えば消費税分を預かり金としているということはありますけれども、今お話しのように当然消費税分を含めて運賃収入と考えていくべきだと思いますが、会計処理と運賃収入とは概念が違うわけですから、今お話しの点をもう一度確認しますけれども、消費税分を含めて運賃収入というふうに解釈していいわけですね。
  147. 阿部雅昭

    ○阿部政府委員 消費税を含んだものが運賃でございます。  なお、先生ただいま御指摘ございました財務処理の扱い等の視点もございましたので、ちょっとその点に触れさせていただきますと、自動車運送事業者の財務諸表作成に当たっての会計処理につきましても、私ども一定の指導をいたしました。それにつきましては預かり金といったような整理をするような扱いをいたしておりますが、ただ、これは会計処理上の問題でございまして、いわゆる運収といったようなもの、特に運転者の賃金計算の基礎となります運収といったものがそれと直接関係あるものではない、いわゆる運収の算定は労使間の協議により決定されるべきものであるというのが私どもの考え方でございます。
  148. 中路雅弘

    ○中路委員 会計処理と運賃収入と概念が違うということは今もお話しになったとおりですね。しかし、実際にはさきに指摘しましたように福岡を初めとして各地でこの消費税分を除外して、控除して運賃収入としているために、それが賃金にはね返って、結果的に賃金引き下げという事態が今起きているわけです。  例を挙げますと、持ってきましたけれども、これは極端な例ですが、九州の小倉タクシー協会が四月二十六日に出した「消費税関係業務の確実な実施について」という各社社長、理事長にあてた文書です。その中にはこう書いてあるのですね、「運収には消費税分が組込まれており、消費税三%分を控除したものが運収であることを明確にする。」ということがこの中に明記をされているわけです。これは先ほど来の答弁からいっても明らかに不適切なペーパー文書であります。こういう問題について、運輸省として業界を適切に指導すべきであるというふうに思いますが、いかがですか。
  149. 阿部雅昭

    ○阿部政府委員 今回の運賃の改定につきましては、私ども円滑なその施行が行われますように、実は三月九日付で地域交通局長名で関係業界にも指導通達を出しておりますが、その第一項目では「今回の消費税導入に伴う運賃改定を理由として、運転者等の労働条件の切り下げを行なわないこと。」ということを明記してあるわけでございます。  それで、ただいま御指摘の小倉の件につきましては、私どものこのような指導と予盾しかねない部分も見受けられましたことから、その是正方について運輸局におきまして厳重に協会を指導したところでございます。
  150. 中路雅弘

    ○中路委員 今のこのペーパーが不適切な文書だということで指導されたということが報告されたのですが、今もお話しのように地域交通局長名で三月九日に今お話しの通達が出ています。「今回の消費税導入に伴う運賃改定を理由として、運転者等の労働条件の切り下げを行なわないこと。」ということで、これは連合会の会長あてですか、文書が出されていますけれども福岡だけではないのですね。こうした問題は広島からも私のところに同じような問題が今寄せられています。やはり一片の通達だけに終わらせないで、今各地で起きている福岡のようなこうした例、消費税導入を口実にして賃金引き下げを行っている事業者や業界に対してやはり今具体的な指導をする必要がある。  事業者で見れば法人税のこともありますし、LPガスも今値下げになっていますから、全体としては経費は安くなっているのではないかというふうにも思うのですね。それだけにこうした消費税導入を理由にした賃金引き下げということが事実上行われているわけですから、そういうところには、今具体的な福岡の例でおっしゃいましたけれども指導をひとつ徹底させてほしいということをもう一度重ねてお願いをしたいと思いますが、いかがですか。
  151. 阿部雅昭

    ○阿部政府委員 三月九日付の指導内容につきましては業界に周知されているものと理解しておりますけれども、この問題をめぐって労使間のトラブルが発生している地区がなおあるといたしますれば、この指導内容の趣旨が十分に理解されるよう運輸局を通じましてさらに今後とも指導してまいりたいというふうに考えております。
  152. 中路雅弘

    ○中路委員 次に、これも簡潔にお答え願いたいのですが、例の航空の問題ですけれども、747−400の二人乗務問題と関連した問題で二、三お聞きをしたいと思います。  ことしの五月十七日の、これは私は朝日新聞の夕刊で見たのですが、欧州四カ国、イギリス、フランス、西ドイツ、オランダは、ダッシュ1400について各当局の安全基準に適合しない部分がある、安全に重大な疑義があるとして型式証明を拒否したと言われていますけれども承知しておられますか。承知しておられるとすればどのような疑義が提起されていたのか、具体的に示していただきたい。
  153. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 ただいま御質問ございましたような新聞報道がなされましたので、私ども航空当局からオランダの航空当局に対しまして問い合わせを行いました。その結果、そのヨーロッパの航空当局が問題としております主要な事項というのは、一つはアッパーデッキ、ジャンボの上のこぶのついている部分ですが、アッパーデッキにおける急減圧対策、二つ目は電気系統の配線経路の変更、三つ目は地上電波からの電子機器の保護、この三点の設計改善であるという回答をオランダの航空当局から得ております。  ただ、これらの指摘事項につきましては、このダッシュ1400の型式の飛行機が二十一世紀に向けて使用される航空機であるということを考慮いたしまして、この型式の航空機安全性をより一層向上させるという観点からそういう指摘をしているものであって、従来から飛んでおりますいわゆるジャンボ機、少なくともその程度の安全性は十分確保されておる、したがってこのダッシュ1400で商業飛行を行うことには特に支障はない、こういうことがオランダの航空当局の見解であるというふうに聞いております。
  154. 中路雅弘

    ○中路委員 提起されて今三点ほど出ましたけれども、私はこの中に非常に重要な問題も含まれていると思うのですね。例えば電気系統の配線の処理の問題、後でちょっと触れますが。今もお話がありましたけれども、私もその後の新聞報道を見ますと、欧州四カ国はこのダッシュ1400の型式証明をその後認定したということが報じられているわけです。最初に指摘された何点かの問題ですね、解決をしてこの型式証明を認定されたのか、いわゆる具体的な設計変更が行われた結果認定されたのか、そうでないのか、もう一度お聞きをしておきたい。
  155. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 ただいま申し上げましたように、ヨーロッパの航空当局が指摘をしております三点の問題点でございますが、これはボーイング747−400、この型式の飛行機が二十一世紀に向けて使用される航空機であるということを考慮しまして、この型式の航空機安全性をより一層向上させるという観点から提起されたものということであります。したがいまして、当面この航空機を商業運航に供することについては特段の支障はないということでございますので、そういうより一層安全性を向上させるという意味からの具体的な設計上の改善策については、引き続いてボーイング社とヨーロッパの航空当局が話し合いを継続するという前提のもとに三カ月間の暫定耐空証明を出した、こういうふうな状況になっておるということでございます。
  156. 中路雅弘

    ○中路委員 今お話しのように、提起された問題は解決をしないまま話し合いは継続するということで暫定の認定をしたということですけれども、やはり航空機の問題、交通問題はそうですが、とりわけ安全というものは航空の問題では最大の問題ですから、そういう点で安全の問題と関連して提起されている問題、これが解決されないままいわば政治決着といいますか、アメリカとヨーロッパとの経済的ないろいろな関係もあるでしょう。安全技術問題をそうした政治決着でやるということは本当によくないことだと思うのです。  先ほど指摘された中の一例を挙げますけれども、例えば先ほどありました電気系統の配線、これは具体的には床下にある電源パネルの一部を操縦席に移す、移設しなければならないということが出ているわけですね。このパネルはトラブルシューティングする場合に的確に対応できるようにするためのものですけれども、このパネルを操縦席に移設を要求するというのは既に航空関係者も問題にしているところでありますし、いわば航空機関士的な要素がダッシュ1400に除かれているという不安からこうした要求が出ているということも伺っているのです。これはそういう問題と関連があるのじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  157. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 先ほどの三点の問題点のうち、一つは電気系統の配線経路というのがあったわけでございますが、こういう指摘につきまして、具体的にそれじゃどこをどういうふうに改善するかということについては、目下ボーイング社とヨーロッパの航空当局が種々協議をしている最中であるというふうに承知をしております。したがって、現在具体的にこうするというところまでの情報は私ども得ておりませんので、これからいろいろな情報を入手いたしまして、御質問のような件につきましても十分調査をしてまいりたいというふうに考えております。
  158. 中路雅弘

    ○中路委員 これからの調査ということですけれども、今お話ししましたように、電気系統の配線の問題、特に電源パネルの移設の問題、この問題は、三人乗務を二人乗務にするわけですが、二人でよしということについての疑義を投げかける、そういうものと関連した要求でもあるんですね。私はこの点は、提起されている問題については十分検討をすべきだというふうに考えます。  近く日航の方からダッシュ1400についての耐空証明の申請が行われると思いますけれども運輸省としてどのような態度で臨まれるおつもりか。各航空会社の導入計画を見ますと、これからダッシュ1400が次々導入されることになっているわけですが、その意味では運輸省の責任も非常に重要であります。前回のこの委員会運輸大臣航空局長は、八五年のあの規制緩和の法案採決の際の附帯決議を尊重した耐空検査をするということを約束されているわけですが、その具体的な中身についてどのように考えておられるのか、具体的にひとつ話していただきたい。
  159. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 具体的な耐空証明の手順でございますけれども外国で製造されました航空機に対します耐空証明は、従来から、当該製造国の政府が行った証明、アメリカの型式証明でございますが、その内容を踏まえまして、設計それから製造過程につきましては書類の審査を行う。それから、完成後につきましては地上機能試験それから飛行試験、これを行うということになっております。基本的にはボーイング747−400につきましてもこういう手順に沿って耐空証明の検査を行っていくということにいたしておりまして、その際にはさらに、既に導入が行われた諸外国航空当局の対応だとか、あるいは既に運航しております他のエアラインにおける運航実績といったようなものも加味いたしまして、それを踏まえまして十分な審査を行っていきたいと考えております。
  160. 中路雅弘

    ○中路委員 今考えられているのをお聞きしますと、全体として大丈夫だということですね。いろいろ証明がなされているものを追認するというような枠内じゃないか。附帯決議を尊重した耐空検査ということは、やはり十分な独自の運輸省の責任での検査が必要だと思いますが、私はこの問題と関連してとりわけ要望しておきたいのです。  この耐空検査を実施する場合に、現場で働いている、実際運航している航空労働者の意見、今いろいろこの問題で不安も出ているわけですし、意見もたくさん出ています。そういう問題について航空関係者の幅広い意見を十分聞いて検討をさるべきだというふうに思います。こうした手続によって、附帯決議の趣旨が十分尊重されるという形で我が国自身の耐空検査を本当の意味で権威あるものにしていくというためには、そういう関係者の意見を十分聞いて検討していくというふうにしていただきたいと思いますが、いかがですか。
  161. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 ボーイング747−400の最少乗組員数、これに関します安全性の問題につきましては、これまでも日本航空が現場の関係者を含めまして、乗員編成会議あるいは乗員編成検討委員会といったものを設けまして、おおむね一年間にわたって十分協議が行われた、関係者の意見も十分聞いたというふうに承知しております。そういう十分な検討を経た上で、最高経営会議で二人乗務での導入決定した、こういう経緯があるわけでございます。私どもといたしましては、そういう経緯を踏まえまして、いずれにしましても運輸省としては、航空の安全というものは何ものにもかえがたい重要なものでございますので、耐空証明の際には十分な安全性についての検討をしてまいりたい、このように考えております。
  162. 中路雅弘

    ○中路委員 今おっしゃった現場の乗員の主張を含めた乗員の編成会議の結論、これ自身が両論併記であるわけですね。そういう意味で、私はこの問題についてはあえて改めて、そうした慎重な検討が必要だ、安全問題を単なる労使問題という枠で考えるのではなくて、今後の航空の安全行政にとって禍根を残さないようにひとつ検討していただきたいということを重ねて要望しておきたいと思います。  最後にもう一問ですけれども、これは造船の事故の関係ですが、労働省お見えですか。——二月十六日にNKKの浅野ドックで、造船ではこれまで最大の事故だと思いますが、修理点検中のインド貨物船エンジンルーム内での爆発火災事故があって、十二名が死亡、十三名が重傷という造船事故としては最大の惨事が起きました。私も三月の中旬に現場の浅野ドックへ直接調査に行ってまいりましたけれども、この事故については直接特別の調査団が、団長は東大の平野教授だそうですが、事故原因の調査を進められております。今この調査はどこまで進んでいるのか、お聞きをしたいと思います。
  163. 梅井勲

    ○梅井説明員 お答えいたします。  労働省におきましては、災害発生直後、爆発火災の専門家から成る特別調査団を設置いたしまして鋭意原因調査をやっているわけでございます。中身としましては、事故の原因となります爆発した物質、爆発の着火源、着火経路等につきまして検討を行っております。また、被害を拡大した要因と考えられます避難通路の状況、避難用具の状況等につきましてもあわせて検討を行っております。  なお、経過でございますけれども調査団の最終報告は、既に実施しました三回の現地調査を含めまして数回の検討を行っておりまして、近く取りまとめという予定でございます。
  164. 中路雅弘

    ○中路委員 調査結果は近くまとめて発表されるということですが、これは後の法案とも関連してきますけれども、造船全体は、御存じのようにずっと産業再編成による非常な人減らし、合理化の結果、造船修理業は、神奈川県内だけを見ましても、一九七八年に一万七千人いた造船の労働者が、八六年では八千二百人まで激減をしております。  浅野ドックの場合も、七七年に常用労働者約九百人が現在二百人、かわって下請労働者が五百人にも上るという形です。今度災害で死亡した十二人のうちその大半は下請の労働者ということですね。現地でいろいろお話を聞きますと、いろいろな下請の企業が入ってきますから、作業をやっていても、作業の手順も十分わからない、安全教育が十分やられているかどうかということもあります。また、工期が非常に短いために危険物を十分抜き取ることもできないというような意見も多数聞きました。ちょっと時間的に調べましたら、この船は災害のあった十六日の朝、横浜港に入って、十時半にはもう二号ドック前に入り、十一時にドック入り、一時から作業をやるということになっているのですね。この間に、安全のために必要な協議、あるいは船内についても、脱出口がどこにあるかということなんかも含めて説明しなければいけません。そういうことをやられる時間が時間的に見てもほとんどないと思うのです。  事故原因は徹底的に明らかにすべきだと思いますけれども、それを待つまでもなく、必要な再発防止策をとるべきだということを現地で痛感したのですが、きょう特に要請をしたいのは、とりわけこうした危険物があるところ、機関室の修理作業などにおいて、爆発性のものがある、発火性のものがある、引火性のものがある、危険物がある、有害物質がある、こういうものは必ず除去して作業をやるとか、あるいは安全確保について必要な工程をきちっと確保する、あるいは万全な安全管理の指導をする。例えば、インド人はほとんど脱出しているのです。話を聞いたら、英語で脱出口のことを叫ばれたんだけれども、下請の人はよくわからないから、上へ駆け上がろうとして途中でみんな煙に巻かれて死亡したということも言われています。こうしたことも体制を十分協議して、徹底して作業をやるべきだと思います。改めて造船、船舶のこうした修理作業における安全管理について、全国的にこうした安全についての指導を徹底させていただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  165. 梅井勲

    ○梅井説明員 お答えいたします。  造船業につきましては、従来から監督指導の重点対象として安全衛生面の指導を行ってきたところでございますが、本災害の発生以後直ちに類似災害の防止という観点から、私ども労働省労働基準局長から、日本造船工業会等関係団体に対して指示をいたしました。お話しのごとく、船主との連携により、修理作業による危険性の事前の把握、適正な工期の設定、下請事業所を含めた安全衛生管理体制の整備、こういうようなことにつきまして総点検を実施するように指示し、また都道府県の労働基準局長に対しまして、この総点検が的確に行われているかどうかということについての指示を行ったところでございます。  なお、先ほど申し上げましたけれども調査団による調査結果が近く出る予定でございますから、これらのものを含めまして、再度、再発防止の徹底について関係事業所に対し指導を実施する考えでございます。
  166. 中路雅弘

    ○中路委員 これで終わりますが、大臣、お聞きになったと思いますけれども、造船関係は特に大きな災害事故が多発しているのです。運輸省の造船はそうですけれども、労働省ともよく提携していただいて、こうした造船の作業について、人命が失われるような大きな事故、佐世保で数年前に同じ事故が起きているのです。そういうことがないように、ひとつ労働省とも船舶の安全管理について十分協議もして、指導していただきたいということを最後にお願いいたしますが、いかがですか。
  167. 山村新治郎

    山村国務大臣 労働省とも綿密な連絡をとりながら、災害防止に努力してまいります。
  168. 中路雅弘

    ○中路委員 時間ですので、終わります。      ————◇—————
  169. 島村宜伸

    島村委員長 内閣提出特定船舶製造業安定事業協会法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新盛辰雄君。
  170. 新盛辰雄

    ○新盛委員 特定協会法の一部改正、これから新しく造船業基盤整備事業協会、こういう呼称に変わる法律でございます。  この問題を論議しながら、外航海運船員対策に対する政策全体についてお尋ねをいたします。  まず、造船業の現状と今後の見通しについて伺います。
  171. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 我が国の造船業は、大幅な船腹過剰による世界的な新造船需要の減退、円相場の急騰に起因する不況に対処するために、昭和六十二年度に特定船舶製造業経営安定臨時措置法に基づき設備処理、集約化等の構造対策を実施するなど、各種の対策を講じてまいりました。このような対策の効果に加えまして、最近の海運市況の改善によりまして、昭和六十三年度には新造船受注量が四年ぶりに前年度を上回り、また昨年後半から船価が回復に向かうなど、ようやく不況は底を打ったと考えております。  今後の見通しにつきましては、将来的にはタンカーの代替等によりかなりの需要が期待できるものの、まだ相当量の過剰船腹が潜在すること、船舶の使用期間が延びていることなどから、当分は予断を許さない状況が続くものと考えております。
  172. 新盛辰雄

    ○新盛委員 造船業の集約化あるいはそれに伴う活性化対策は当然必要なことでございますが、今お述べになりました諸点に立ってこれからの状況をどういうふうに見ておられますか。
  173. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 造船業の構造対策により船価が回復する等の効果が出てきておりますけれども、長い不況の間に研究開発投資が低迷するとかあるいは就労構造にひずみが生ずる、具体的に申し上げますと従業員の老齢化が進むというようなことと、若い技術者が造船業は非常に不況のイメージが強いものですから集まりにくくなっているというようなことが現在問題になっております。したがいまして、今後は造船業を活性化していかなければならないということでございまして、この活性化対策の大きな柱といたしまして、今回御提案を申し上げております特定船舶製造業安定事業協会を造船業基盤整備事業協会に改めまして、ここを通じまして技術開発を支援して造船業を活性化していくということでございます。
  174. 新盛辰雄

    ○新盛委員 今出されました就労構造が非常に若手就業者の不足とおっしゃいましたが、期間雇用、そして年齢構成、高齢化状況、こうしたことについて現実どう対処しておられますか。
  175. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 我が国の特定船舶製造業の労働者の平均年齢を見ますと、六十三年の三月末で四十一・一歳となっておりまして、全製造業平均の三十六・五歳に比べまして高齢化が進んでおります。それで問題は、その年齢構成を見ますと三十歳未満が八%、三十代が二八%、四十歳以上五五%というように顕著な逆ピラミッド構造になっております。このように造船業の就労構造が、長期にわたる業績の低迷と合理化によって著しく高齢化しておりまして、今後は若年労働者にとっても魅力のある産業となるように、その活性化に真剣に取り組んでいくことが必要だと考えております。造船業に夢を与えるような技術開発をやり、若い人にどんどん造船業に入ってきてもらえるような状態にぜひ持っていきたいと考えております。
  176. 新盛辰雄

    ○新盛委員 民間における高度船舶技術、これは今回の法律で助成をしていくことなんですが、これを開発して、かつその波及効果というものを求めていらっしゃるわけですが、今お話しのように年齢構成が逆ピラミッド型である。このまま放置しますと、五年から十年たつ間に一体どういうことになるのか。合理化、合理化で不況時代に職場では随分と大変な御苦労があった。しかし現実、今度は景気が回復をしていくという、内需の拡大を図られているというこのときに、逆ピラミッド型の形をこのまま推移させるということは、造船業界はとてもじゃないがこれから成り立っていかない、こう思うのですが、どう対処されますか。
  177. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 このような状態で放置をいたしますと、造船業は活力を失い、衰退産業になってまいります。したがいまして、活性化対策を図って若い人たちをどんどん採用できるような状態にする。そのためには、まず現在行っております構造対策、特に集約化、事業提携等をさらに充実強化をいたしまして船価の改善に努め、経営状態を安定させ、労働条件もよくしていく。さらに技術開発等を進め、魅力のある産業に再生をさせていく必要があると考えております。
  178. 新盛辰雄

    ○新盛委員 今造船の問題を主点に置きましたが、造船即外航海運、特に海運業というこの関連においてはこれまで何回も指摘をしているのですけれども、造船、海運、荷主、この三者の一体感というのが欠けているのじゃないか。まさしく造船の場面においても就労構造が大変な危機的状況にある。そして近代化船を建造しても、それに乗る船員の不足というのが今問題になっているわけですね。  特にこの関連でいえば、内航路では既に船が動かなくなるだろう。内航海運業は今深刻な船員不足に悩んでいる。その原因は船員の高齢化、若年労働力の海離れという半ば慢性化した現象に加えて、ここ二、三年の内需拡大に伴う好況により各業種とも船の稼働率が上がってきたので、船腹の不足現象がここに起こっている。この関係から見ましても、今造船の場面でもそういうことが指摘をされるし、外航海運や内航海運の中でもそういう面が出てきている。そして荷主は自分の生活防衛のために、それこそ海を使って荷物を運ぶ、この物流の中において日本経済というものは成り立っている。それがどうもばらばらに、船は解撤をする、あるいは一方では海運業は外国人を乗せる、そして荷主の方は、どうでもいい、とにかく荷物を運びさえずればいい、この感覚がばらばらになっているんじゃないか。造船、海運業、荷主の一体感をどうしてつくり上げるかということについて運輸大臣の御見解をいただきたい。
  179. 山村新治郎

    山村国務大臣 我が国海運、造船は、二度にわたりまして石油危機、産業構造の変化等により極めて厳しい状況に直面し、運輸省としては、海運の近代化、船員の雇用対策、造船業の安定と活性化等に真剣に取り組んでまいりました。これらの問題はもとより互いに関連性を有するものであり、今後とも相互に連携をとりながら海事産業の健全な発展に努めてまいる所存でございます。
  180. 新盛辰雄

    ○新盛委員 大臣、それをお書きになったのは当然運輸政策局でしょうけれども、今大事なのは船の状況がどうなっているか、これを十分把握していただかなければならないのです。  日本の商船隊の方にひとつ重きを置きますと、日本商船隊という呼称はされていますけれども、もう既に日本の船に八〇%は外国人が乗っているのです。やがて一〇〇%外国人が乗ってしまえば日本の船員の行き先はない。商船大学がある、専門学校がある、海技大がある、そこで習熟をした技術能力者が船に乗ろうとしても乗れないという現実がある、これを一体どういうふうにするか、このことについてお答えください。
  181. 中村徹

    中村(徹)政府委員 お答え申し上げます。  外航海運我が国商船隊という御指摘でございますので外航海運の問題だろうと思いますが、確かに先生指摘のとおり、外航海運におきましては商船隊の隻数そのものは余り変わっておりませんけれども、その中における日本船の割合というのは非常に減少してきているというのは事実であると思います。  そこで、我が国のいわゆるフラッギングアウトという現象が進んでいるわけでございまして、そのフラッギングアウトの防止対策ということが私ども課題だというふうに考えまして、日本船についての国際競争力をつけるという観点からただいま対策を考えているわけでございますが、当面、労使合意に基づきます海外貸し渡し方式による混乗の拡大を図るということが適当である。これは海造審のワーキンググループでもそういう報告書が取りまとめられているわけでございます。運輸省といたしましては、こうした考え方が現実的な解決策ではないかというふうに考えておりまして、これを指針として関係者間で十分協議が尽くされ、問題の解決を図っていくということを期待いたしておるところでございます。
  182. 新盛辰雄

    ○新盛委員 海造審のワーキンググループの報告書を拝見いたしました。海外貸し渡し方式による混乗、マルシップといいますが、こうした状況に追い込まれてきたのは一体なぜなのか。確かに今おっしゃるように、経済コストで見るならば、日本の船員は給与が非常に高い、外国船員からすると外国船員の三倍、この状況だから経済コスト的な面で考えればマルシップもやむを得ない、あるいは便宜置籍船もやむを得ない、そうしておいてフラッギングアウトは防止したい、こうおっしゃっておるわけでありますが、建前は防止したいとおっしゃっておるけれども、一面これを是認していらっしゃる、ここのところがどうもわからないのであります。  その第一の質問は、最近運輸省は、遠洋の漁船あるいは外航の客船などの日本籍船に外国人労働者が乗船することを認めていかざるを得ないという方針をお出しになっておるのです。それじゃ、条件つきで認めるとしても一体どういうふうになるのか。ここで、今の商船隊の日本籍船、マルシップあるいは便宜置籍船あるいは外国人乗船の日本船、これは何隻で何人か、この一九八九年度末まではできないでしょうが、前年度くらいのところはぜひひとつ明らかにしてください。このお出しになる数値がどうも各面、運輸白書を見ても違いが出ておるのです。四千名くらい、予備員とは何か知りませんが、その辺の追及調査もなされていないから、一体どういうふうな構成というか比率になっておるのかをぜひこの場で正確に知らせていただきたいと思います。
  183. 中村徹

    中村(徹)政府委員 私の方から、まず隻数及びその船腹量について数字を申し上げさせていただきます。  我が国商船隊の船腹量は、六十三年の年央において二千百二十七隻、五千五百三十七万総トンでございます。このうち、日本籍船は六百四十隻、二千四百五十八万総トン、外国用船は千四百八十七隻、三千七十九万総トンというふうに把握いたしております。そして、その日本籍船六百四十隻、二千四百五十八万総トンのうち、近代化船は全体で二百十三隻、千二百七十四万総トンでございまして、割合で申しますと、隻数で三三%、総トン数で五二%となっております。(新盛委員「乗組員は」と呼ぶ)乗組員の数につきましては、後ほど船員部長からお答えさせていただきます。  それから、日本船六百四十隻のうち海外に裸で貸し渡されている船舶、これをいわゆるマルシップというふうに考えますと、二百二十四隻、三百二十九万総トンとなっております。  次に、便宜置籍船でございますけれども、これは先ほど申し上げました外国用船千四百八十七隻、三千七十九万総トンのうち、リベリアとかパナマなどいわゆる便宜置籍国から用船しております船舶は千百六十二隻、二千百九十八万総トンとなっております。
  184. 新盛辰雄

    ○新盛委員 それと、学校の卒業者の方々の就職状況はどうですか。
  185. 田辺淳也

    ○田辺政府委員 まず、先ほど我が国商船隊の隻数の構成についてお尋ねがありましたが、私の方からその乗り組み状況について御説明させていただきます。  先ほどのお話で、我が国商船隊は二千百二十七隻ということでございます。それにおける乗組員数は、これは純外国船または混乗船等がありまして正確な把握は困難でございますけれども昭和六十三年度推計してみた数字を御説明したいと思います。合計で約四万七千八百人がこれらの約二千杯の船に配乗されておる。そのうち日本人が約一万一千四百人、二四%に当たります。それから、外国人が約三万六千四百人となっております。  その内訳でございますが、日本船について申し上げますと、これは六百四十隻の分ですが、先ほどのマルシップに乗っておる船員ですが五千三百人、このうち日本人が千八百人、外国人が三千五百人。それから近代化船でございますが三千四百人、これは全員日本人でございます。それからその他の日本船でございますけれども四千五百人、これも全員日本人でございます。合計で一万三千三百人。日本人、外国人の内訳を申し上げますと、トータルで日本人が九千七百人、外国人が三千六百人。  そのほかに外国用船というのがございますから、その分を申し上げますと、便宜置籍船の関係でございますと二万六千七百人。この内訳で日本人が千七百人、外国人が二万五千人。その他の外国船でございますが七千八百人、これは全部外国人でございます。それで外国用船の合計を申し上げますと、合わせまして三万四千五百人で、日本人が千七百人、外国人が三万二千八百人、こういう内訳になってございます。  それから、お尋ねの商船大学、商船高専の卒業生の就職状況でございますが、まず商船大学の乗船実習科及び商船高専の航海学科、機関学科の卒業生につきましては、就職希望者はほぼ全員就職しております。しかし、海上産業への就職者数と陸上産業へのそれと比較しますと、昭和六十三年度では商船大学の場合、海上が四十六名、陸上が六十六名ということになっております。商船高専の場合ですと海上が九十五名、陸上が二百三十六名ということになっておりまして、海上への就職者が少ない状況になっておる。  今後の海上職域への就職の見通しでございますけれども、今まで大変不況状況が長く続いております外航海運界にもようやく明るさが見えてきたということ、それからもう一つは、不況下に雇用調整等によりまして若年船員層がかなり少なくなってきているというようなことがございまして、今後は各社とも新規採用の枠を広げていくのではないか、そう見ております。  以上です。
  186. 新盛辰雄

    ○新盛委員 今の御答弁のことに関係をしまして、就労の現実が極めて厳しい、陸上より落ち込んでいる船員の賃金。最近、船員の賃金は高い高いということで、コストを安くするために外国人を乗せる。これがマルシップになり便宜置籍船になり、経営者はよりそういう方向に進んでいる、混乗の問題にさらに踏み込んでいる、そこに来ているわけですね。卒業者の中でも陸上の勤務者が非常に多いわけですが、船員大学あるいは専門学校を卒業する皆さんが、それこそ大変な技術を習得しておられるのに陸上の方に行く。陸上の賃金が高いからだ、そうも言えるのですが、賃金の比較を最近の事例を一つ出してください。
  187. 田辺淳也

    ○田辺政府委員 船員と陸上労働者の給与の正確な比較というのは、データの整合性が大変難しいところがございますけれども、私どもの調べたところによりますと、まず船員につきまして平成元年度の春闘の後の外航の初任給、これは基本給でございますけれども、中卒で十五歳ですが十一万五千百二十円、高卒でございますが、部員で十八歳、これが十一万八千百二十円、それから大卒、職員でございますけれども二十二歳で十六万五千百八十円。陸上における東証一部上場企業の初任給でございますと、基本給で比べますと中卒、十五歳ですが十一万三千六百五十一円、高卒十八歳で十二万九千四百四十五円。それから大卒二十二歳で十六万四千五百七円ということになっております。  それで標準的な船員である三十五歳の部員の、これは外航の場合でございますけれども、これも平成元年度の春闘後の給与の所定内の賃金を調べますと、これが三十一万三千六百二十円でございまして、陸上におきます高卒三十五歳の製造業の場合ですと、所定内賃金二十六万八百円、こういう数字になっております。
  188. 新盛辰雄

    ○新盛委員 結局、そういうことから賃金の面ではそんなにも大きな隔たりはない、なのに経営者側の方としては、よりコストを下げていくためにどうしても外国人を乗船させる、こういうことになるわけであります。先に質問しましたように、運輸省としてこれから指導される面では、このフラッギングアウトにも関連するのですけれども外国人労働者を乗せる、いわゆる日本商船隊の八〇%乗っているのですから、まだこれからこれ以上にお認めになるつもりなのかどうなのか、そのことを明確にお答えいただきたいと思うのです。
  189. 中村徹

    中村(徹)政府委員 ただいまのお話は、日本籍船についての混乗の問題であろうと思うわけでございますが、一方で国際競争力という観点からフラッギングアウトというのが進んでいくというのも現実でございますので、これの防止策といたしましては、全体的に国際競争力をつけるということで海外貸し渡し方式による混乗というのが一つの現実的な解決策であろうと考えておるわけでございます。  ただ現実に、そういう混乗を進めていく場合には、やはり個別に関係者の間での協議により一つの合意が成り立って、そういう中でこういう問題が解決されなければならないという考えでございますので、具体的には関係者間の協議というものを通じて解決されていかなければならないと思っておるところでございます。
  190. 新盛辰雄

    ○新盛委員 チープレーバー、いわゆる低賃金労働者導入ということにつながるわけですが、この歯どめをしていくことが日本人船員をより確保するということにつながるわけですし、また海外貸し渡し方式の混乗の拡大を図っておられるということなんですが、これはマルシップ特例をすべての日本商船隊に拡大をするという意味にもつながって、これはフラッギングアウトをある程度防止するための政策だとこの海造審のワーキンググループでは言っておられるのですよ。その面の努力は当該の海員組合なども一生懸命知恵を絞って労使で協議をされて、そして特別に緊急雇用対策をされて、既に外航二船団の中でも八千九百二十名が海を離れておられる、こういう状況なんですね。ところが、これから先もこのまま混乗を進めていかれるということはどういうことになるのか。  私は前回も佐藤大臣に、あなたは日本のナショナルミニマムとして政策的にこれを救済する方途はないのか、こう申し上げたのですね。それに対するお答えは、「ナショナルミニマムとは一体何だろうかというふうに定義づけますと、これはもちろん人によって随分差があると思いますが、それは我が国にとって最低限必要な日本船または日本人船員の数であり、そしてそれは国費でもって維持していく必要があるんだというのが私はナショナルミニマムという定義だ、」それで、このことについて「中長期的な観点からこの問題はまず検討してまいりたい、」こう断言をしていらっしゃるわけです。  今、緊急な問題です。これは、海員組合側からも申し入れがあると思いますが、もうここまで来れば、もはや日本の商船隊というよりは日本船員をどれだけ確保することができるかということにつながるわけですから、山村運輸大臣はこのことについてどうお考えかを、将来の問題もありますから、お答えいただきたい。
  191. 山村新治郎

    山村国務大臣 佐藤運輸大臣からもいろいろお伺いもいたしました。佐藤大臣からは、中長期的観点から検討してまいりたいというようなお答えがあったと思います。早速に担当部局と相談いたしまして、ナショナルミニマム、これについてどのような態度でいくか検討してまいりたいと思います。
  192. 新盛辰雄

    ○新盛委員 最近景気が、内需拡大等を含めて海運業の方は、特に円が安くなればなるほどある程度の活力を持ってくるわけです。その比較表もございますが、これから円が百四十八円、百五十円、この前後にとどまるのかどうか、経済学者に聞いてみなければわかりません。これはドルと円の国際通貨の問題もございますから、ここではそれがどこの基準だということは申し上げませんが、これから百五十円台でということになると、海運業は相当な船腹を持たなければならぬ。そして、そのためにはその船を操船していく船員の確保が一体どうなるのかということから見まして、さっき造船の問題でも年齢構成について伺いましたが、現実これまた逆ピラミッド型の要員構成ですね。しかもなお、船員、部員、この形をなしている日本商船隊の構造になっているのです。八〇%は外国人労働者が乗っています。そういう中での日本のこの年齢構成、どういうふうに補っていくか。いわばこの部員というのはずっと一緒に二十年、三十年ぐらい乗っている人もおるかもしれません。そういう方々を転換させるという画期的な方法というものはないものかどうか、このことについてもお答えいただきたい。
  193. 田辺淳也

    ○田辺政府委員 部員につきましては、部員のままでは就業の機会がだんだん少なくなってくるというような状況もございまして、海技資格を取得させまして職員として外国船と内航船に乗り組ませることを目下促進しておりまして、そのための訓練等、これは日本船員雇用促進センターというのがございましてそこで実施をしております。ちなみに、このセンターで昭和六十三年度の実績を見ますと、四百八十九名がこの訓練に参加しておる。そういうことで、部員の職員化というのを私どもとしてもこれから推進してまいりたいと考えております。
  194. 新盛辰雄

    ○新盛委員 推進していただくのはいいのですけれども、現実の問題としてどうしてもひっかかるのは、日本商船隊をどれだけ日本人の手で確保できるか、もうここにすべてかかっているのですよ。今の要員構成の面でも、それを随時やっていきたい、あるいは転換教育もやりたい、そういうような面で免許のあり方、海技技術の資格をどういうふうに取得させることができるか、この辺の問題もこれからの研究課題でしょうが、ぜひやつていただかなければなりません。それで、そうなる原点は何かというと、やはり混乗なんですよ。このフラッギングアウト防止は国民生活の安全保障という面からとらえてもらわなければいけない、経営コスト的にとらえてもらったのでは困る、これが私の指摘をしているところです。  第二の問題は、混乗船は外国人船員に頼っているところに問題がありはしないか。現実、もう外国人を、あのフィリピンとか韓国とか、あるいはリビアやパナマ、そういうようなところの便宜置籍船であったとしても、その内容は結局低開発国船員に技術を教えていく船だという理解の仕方もしているのですよ。だけれども、こういう形になってきますと、フィリピンあたりではもう既に海技の面の習熟が、専門学校や船員の大学などをつくってやっておられると聞いておりますから、やがて日本の船に乗らなくてもいいということになった場合に、外国人船員を乗せるのは過去のものになるのじゃないか。日本はそのときに一体どうするのか。もう陸に上がって二度と船には乗りません、そういう人たちをまた持ってくるということでは大変なことになりはしないか。一人の船員を養成するのに十年かかるのでしょう。だからそうした面で日本船員の後継者育成についてどうするかという問題が出てくると思うのですよ。この点が先ほどから申し上げている要員構成の問題、卒業者の就労の状況、そして現実の混乗の問題、こうしたことに関連をしてくるから明確にしていかなければならぬのじゃないでしょうか、どうですか。
  195. 田辺淳也

    ○田辺政府委員 先生指摘のとおり、最近は雇用対策がかなり進んだこともございまして、若年船員層が非常に少なくなっているということでございまして、私どもといたしましても、今後の日本人船員の将来を考えますときに、やはり若年船員が非常に少ないということは大変問題である、そういう意識を持っておりまして、外航海運に明るさも見えてきました今日でございますので、私どもといたしましては、まず各船社サイドに新規採用の長期計画を樹立していただきたいということでまずこれを確立し、その後それに沿ってできるだけ商船大学、商船高専の方々に一人でも多く海運界に来ていただきたい、そういうことでいろいろな対策を講じてまいりたいと考えております。
  196. 新盛辰雄

    ○新盛委員 新しい海上技術、それはソフトの面もありハードの面もございますが、この開発、創造の場として、ハードの面あるいはソフトの面で、その場に限って外国人労働者が乗るとか新規の日本の船員が乗るとかという問題をどういうふうにコントロールすることができるか。その上に立って、夢と希望を与えられる、いわゆる海洋日本を守っていく、そういう面の政策というのはやはりナショナルミニマムになってくる。どう見てもそういうふうになってくる。これは国策として、国が責任を持って対策を立てなきゃいけないんじゃないですか。その面が、どうも業界に任せっきり、造船は造船、海運海運、荷主は荷主という状況になっておるからへこれは日本の商船隊でございますと胸を張れないんですよ。アメリカなどは、それこそ戦時中においても、船員といったら陸上のどの職場よりも十分に金をつぎ込んで、そして安全運航のためにも、そしてあの戦争中でもわずか七、八百名戦死者が出ただけ、日本は六万人から出ているのですよ、船乗りは。そういう事例もある。  だから、日本は七つの海に囲まれて、海は完全に自分の手中にある。海運、外航の関係においてはそうではないのですね。あらゆる面で、私どもの生活物資その他日本の経済の原点をもってする海運というのを、どうも日本政府は粗末に見ているんじゃないか、そんな気がしてならないのですよ。だから、ここのところにミニマムを設定しなさい、政府が力を加えてやってください、こう言っているわけですが、大臣、今度これだけはひとつやりましょうということをぜひ約束してくださいよ。
  197. 中村徹

    中村(徹)政府委員 ただいま先生のお話がございましたナショナルミニマムの問題につきましては、フラッギングアウトのワーキンググループでも、我が国商船隊についての定量的なナショナルミニマムを設定して、それについての国の責任を明確にすべきだという意見もありました。また、ナショナルミニマムを議論する場合には、国防問題とも関連して、過去に苦い経験のある船員の徴用問題等に踏み込まざるを得なくなるという意見もあったわけでございます。  そういうことで、いろいろな意見があったわけでございますが、現在の状況の中で早急にナショナルミニマムを設定するということは極めて困難な状況にあるということでございます。ただ、我が国の商船隊の将来の姿、役割というのは、やはりこれをどういうふうにとらえるかというのが今後の重要な検討課題で、そういった面からいろんな情勢を勘案しながら、中長期的な観点で検討をすべきであるということになっておりまして、そういう報告がなされたわけでございます。私どももそういった観点から、運輸省としても検討をさらに深めてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  198. 新盛辰雄

    ○新盛委員 では、時間が迫ってきておりますので、ひとつ確認をしていきたいと思うのですが、日本人船員の雇用と労働条件に極めて影響を及ぼしております日本船への外国人船員の導入、これは行わない。今現実にやっていますね、やっているけれども、将来はできるだけそういうことをやらないようにしたいと約束できますか。
  199. 中村徹

    中村(徹)政府委員 やはり日本海運業というのは企業採算の上に立って、国際的な競争場裏においてもまさにそのとおりなのでございますが、それぞれ政府の助成ということではなくて、本来その企業採算の場において国際競争力をつけていかなければいけないわけでございます。  そういった観点から申しますと、やはり全体に、船員コストにつきましても、国際競争力のあるものにならざるを得ない。その場合に、混乗というのは日本籍船を維持する上での一つの手だてであり、その中でどういったふうに日本の船員というものを、そういった意味で日本籍船を混乗という形で維持しながら、そしてその中で日本の船員というものを維持していく。それは日本の船員が職員という形で、先ほど先生お話ございましたような部員の職員化というようなこと、そういう手だても使いながら、そして日本の船員というものを企業採算の上において維持していくというやり方をとらざるを得ないというふうに考えておるところでございます。
  200. 新盛辰雄

    ○新盛委員 ぜひひとつそれは進めていただきたいと思うのです。  それと、安全と日本人船員の雇用確保という面から見まして、日本法人が支配する仕組み船に、日本人の船員五名以上配乗を義務づけるということは行政措置としてできないものかどうか。
  201. 田辺淳也

    ○田辺政府委員 日本人船員の職場を確保するという意味から、便宜置籍船等の外国船へも日本人船員をぜひ配乗させたいと私どもも思っておりますけれども、これは外国法人でございまして、直接私どもがいろいろなことを行政上お願いするということが大変難しい状態でございます。私どもといたしましては、日本船社を通じまして、そういう外国船社にもぜひ日本人の船員の職場の確保をお願いしたいということで要請をしてまいりたいと田やっております。
  202. 新盛辰雄

    ○新盛委員 次に、マルシップ関係等を含めてですが、日本の船員法が適用されない、そして税金は納めている、失業保険はない、このことの処置は将来どうお考えになっていらっしゃいますか、法律改正も必要になるわけですが。
  203. 田辺淳也

    ○田辺政府委員 一般的に申し上げますと、外国船に乗り組む日本人につきましては、雇用主が日本国内に住所を有していない外国法人等でありますから、船員保険法は適用されないというようなことになっております。  ただ、現在日本の船主が雇用しております船員等につきまして、その雇用対策の一環として、自己の雇用する船員を一時的に外国船へ派遣する場合、この場合には予備船員という位置づけをいたしまして、船員保険の適用を受けることができるように、そういう措置をとっております。ところが、現在離職船員が外国船に乗船する場合につきましては、これは先生指摘のとおり船員保険の適用がございませんで、これらの船員に船員保険を適用することについては、いろいろと制度的な問題もございます。そういう問題を解決していかなければならないと思うのですけれども、私ども運輸省といたしましては、日本人船員の保護のためには適用されることが望ましいということで、船員保険法の所管官庁であります厚生省にもその旨お願いをしたいと考えております。
  204. 新盛辰雄

    ○新盛委員 次に、財団法人の日本船員福利雇用促進センター、一名SECOJと言いますけれども、これを通じて、外国船に乗船する就業奨励金を最近、去年の船員法改正で十二万から十八万円に引き上げたばかりですね。さらに増額するというおつもりはございませんか。
  205. 田辺淳也

    ○田辺政府委員 昨年度十二万円から五割増しの十八万円に引き上げたばかりでございまして、少し様子を見てその辺は検討したいと考えております。
  206. 新盛辰雄

    ○新盛委員 最近のウオーターフロント開発及び海上レジャーにかかわる技能者に対して、船員に適した職種もあると思うのですね。これは新しい職域として期待を一面されているわけですが、ついては現在地方の船員再教育機関でのみ行われております、船員の経歴を生かして資格が取得できるような、ある意味ではその種の技能養成、こうした研修を全国規模で行っていった方がいいんじゃないか。これはもう各地で今リゾート開発その他やっておりますからね。そしてウオーターフロントの開発等も進んでおりますから、就労の場として、やはり船乗りというのは、今「ふじ丸」ができて、あの豪華客船に乗っかることを楽しみにしているという面では、これから新造船の期待もあるわけですから、そういう意味も含めてぜひひとつ御検討いただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  207. 田辺淳也

    ○田辺政府委員 海洋レジャー産業への船員の活用ということにつきましては、日本船員雇用促進センターの行います技能別の訓練の中に船員職域拡大訓練というのがございまして、その中の一つとして小型船舶操縦士の免許取得、こういう研修を六十三年度から実施しております。さらに平成元年度につきましては、小型船舶の船体、機関の整備訓練を実施する、この訓練コースも新設いたしまして、これら産業で活躍できる要員の養成に努めております。SECOJは一応全国法人でございまして、全国的にもそういう展開をできるような組織になっておりまして、こういう面でこの訓練コースの充実を図っていきたいと考えております。
  208. 新盛辰雄

    ○新盛委員 最後に、今回の運輸省の予算の内容を見まして、海運対策、造船その他に対する資金計画がなされているわけですが、日本開発銀行から融資を受ける、この金利ですが、何%なのかということになりますと、できるだけこれは安い方がいいわけなんですね。金利三%程度の無担保低利融資とか借入金の返済繰り延べとか、金融支援のこの措置をどういうふうにこれからお考えになるのか。これは中小船社の自主経営体制を確立する意味でも大事なことですし、また最近の、こうした日本開発銀行の貸出金利を三%程度引き下げてもらったらなという強い要望もあるわけですが、このことについてお聞かせいただいて、終わりたいと思います。
  209. 中村徹

    中村(徹)政府委員 先生承知のとおり、計画造船につきましての開銀融資で認められている金利というのは最優遇金利でございまして、開銀のいわば資金調達コストそのまま貸し出しているという形でございます。現在は四・八五%と承知しております。したがいまして、これをさらに金利を引き下げるということになりますと、一般会計からさらにそれに対する補てんをするとかいうようなことも必要になってまいりますので、極めて難しい状況だということは率直に申し上げざるを得ないというふうに思っておるわけでございます。
  210. 新盛辰雄

    ○新盛委員 終わります。
  211. 島村宜伸

    島村委員長 西中清君。
  212. 西中清

    ○西中委員 特定船舶製造業安定事業協会法の一部を改正する法律案に対しての質疑を行います。  我が国の造船業は、昭和四十八年の第一次オイルショック以来、長い間不況の波を受けてまいりましたが、本年に入りましてから大きく回復する兆しが出ていると聞いております。現状はどういうことなのか、またどういう理由で回復を来しておるのか、その辺の事情についてまず御説明をいただきたいと思います。
  213. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 お答え申し上げます。  運輸省の建造許可実績によりますと、六十三年度我が国の造船業の新造船受注実績は四百八十五万総トンと、前年度実績を一〇%程度上回っております。それから昭和六十年度以降、三年間連続した減少傾向から四年ぶりに増加に転じたということでございます。今年度に入りましても、輸出船を中心に新造船の受注量は堅調に推移しておりまして、一応不況の底を脱したと考えております。ただ一方では、船舶の使用期間が延びているというような要因もありまして、当面大幅な需要の増加期待できる状況にはないと思います。  こういうように需要が伸びてきた原因でございますが、最近の海運市況の回復、それから船価もやや上がっておるわけでございますが、これは二度にわたります構造調整をやりまして、設備削減とか集約化を行った結果であろうというふうに考えております。
  214. 西中清

    ○西中委員 こういう堅調の状態で推移をしておるということでございますが、今後どういう回復を示すか、その辺の予測はなさっておりますでしょうか。
  215. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 海造審が需要予測をしたものがございます。それによりますと、標準貨物船に換算したトン数でございますが、当面は二百五十万トン程度で推移いたしますけれども、それから上昇に向かいまして、一九九五年以降につきましては、標準貨物船トン数で四百七十万トン程度まで回復していくという予測が立てられております。ただこれはあくまでも予測でございまして、造船業は景気、山谷ございますので、予測としてそういう予測があるわけでございます。
  216. 西中清

    ○西中委員 これまで不況対策として二度にわたる製造設備の削減等を実施されたわけで、現在約四百六十万CGT、こういう形になっておりますが、今後の需要予測、先ほど御説明のようにそう的確にはできないかと思いますけれども、現在の製造能力程度でよし、こういうようなお考えであるのかどうか、その辺の御見解を伺いたいと思います。
  217. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 現在五千総トン以上の船舶を建造できる設備の能力では、昭和六十二年度に実施されました設備処理によりまして、先ほど先生が申されましたように標準貨物船換算トン数で四百六十万総トンとなっておりますけれども、従業員の数等から見ますと、現時点での実質的な能力では、当面の厳しい需要環境に合わせて合理化が実施された結果、これよりも低いものとなっております。今後の新造船の需要につきましては、先ほど申し上げましたように二百五十万トンから三百万CGT前後にとどまるものと考えております。現在の能力で十分当面は対応できる、そういうことでございます。  さらに中長期的に見ますと、一九九〇年代後半にはかなりの建造需要が発生するという予測もされておりまして、このまま放置をすれば造船労働者の雇用問題、高齢化の問題、若年労働者の不足等の問題が一層深刻化していくというおそれがございます。したがいまして、今回お願いしておりますような技術開発を中心とした活性化対策を図って、若年層にも魅力のある産業にしてまいりたい、そういうことによって人員も確保していくということを考えております。
  218. 西中清

    ○西中委員 そういう背景の中で、今もちょっとお触れになりましたけれども、造船業に働く従業員の数が、二十七万人をピークといたしまして現在八万三千人というふうに聞いておりますが、これからの需要とにらみ合わせて、また、先ほど高齢化という話も出ておりますけれども、今後の適正な労働力というものはどの程度というようにお考えか、お伺いしたいと思います。
  219. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 当面は三百万CGT程度でございますので、現状の従業員数で賄っていけるというふうに考えております。建造量がふえた場合には、いろいろな建造の合理化等を図りつつ十分先の予測を立てながら、雇用の問題、増員の問題等は検討していかなければいけない問題だというふうに考えております。二度とあの苦しい雇用調整を繰り返したくないということでございます。
  220. 西中清

    ○西中委員 この問題はまだまだ高齢化その他の問題があって非常に難しい要素を抱えておると思いますが、慎重に進めていただきたい、このように要望いたしておきたいと思います。  そこで、特定船舶製造業安定事業協会が今日まで二度にわたりまして土地及び製造設備の買い上げを実施いたしましたけれども、その実績について御説明をいただきたいと思います。
  221. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 協会は五十四年度に九造船所を買収いたしましたが、このうちの八造船所については既に譲渡を完了しております。残る一つの造船所につきましても、今年度中に譲渡すべく努力をしているところでございます。また、この協会は、五十四年度の九造船所のほか六十二年度に五つの造船所を買い上げておりますが、今後これ以上買い上げをする予定はございません。
  222. 西中清

    ○西中委員 この土地の処分でございますけれども、まだ第一次が若干残っておるように伺っております。一応この処分の目途は十年をめどにしておるように聞いておりますが、第一次買収分は本年中にほぼ譲渡を終わると考えていいのですか。
  223. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 第一次買収分が一造船所残っておりますので、この売却につきましては今年度じゆうに行うよう努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  224. 西中清

    ○西中委員 今後協会が買い上げを行う予定なり計画なりは立っておりますか。いわゆる三次分といいますか、それについて御説明いただきたいと思います。
  225. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 設備処理を二度にわたって行いまして、現在の建造能力は四百六十万CGTということでございまして、将来を推定いたしますと、これ以上の設備処理も必要がないということでございます。そういうこともございまして、これ以上の買い上げは必要ないというふうに考えております。
  226. 西中清

    ○西中委員 今回の法改正は造船事業の活性化対策が中心であろうと思いますが、超高速船や高信頼度舶用推進プラントの研究開発促進する、そのため事業として新たに研究開発に対する助成事業を行えるようにする、これが内容になっておると思います。それから、研究開発者に対する協会の補助率は二分の一、加えて借入金利子相当分の助成も行う。中長期的に見ればいろいろ問題もあろうかと思いますけれども、これは極めて手厚い助成だなと私は思ったわけであります。この点について、ここまでやらなければならないのかどうか、そしてそれだけのことをやらなければならない理由は何か、御説明をいただければありがたいと思います。
  227. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 今回実施しようといたします高度船舶技術の研究開発は、造船業の活性化、海上輸送の高度化等に寄与する極めて政策的意義が高いものでありますが、一方、必要な研究開発投資、研究期間、それから克服すべき技術的課題等から見まして極めて高い開発リスクを伴っておりまして、この助成が過剰であるとはいえないというふうに考えております。
  228. 西中清

    ○西中委員 研究開発ですからリクスも当然あろうかと思います。他の省庁の方でも似たような助成制度があるということも承知いたしておりますが、今日、民間の力というものはかなりなものでございます。ただ造船の方はちょっと弱いのだということになればこれはいたし方ないのかなと思いますけれども、全体の流れとしてはこれほど補助、助成をしなければならぬのかという思いもしないわけではない、こういうことをちょっと申し上げておきたいと思います。  そこで、研究開発される船でありますが、超高速船、テクノスーパーライナーとかいうものだそうでございますけれども、これのねらいはどういうところにあるのか、この船を開発しようとしたそもそものねらいは何か、基本的な問題を御説明していただきたいと思います。
  229. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 テクノスーパーライナー、超高速船でございまして、これは五十ノット以上のスピードで千トン程度の荷物を運んで外洋を走ることができる性能を有するものでございます。こういうものを開発して実用化できますと、まず東京から北海道までは十二時間、日本からアジアNIESの大部分が一日圏内になるというような性能を有するものでございまして、これは造船業を活性化するのみならず、海運産業の活性化、また海運輸送需要の新規創出というようなものが期待できるということで、非常に大きな政策的意義を持っておるものというふうに考えております。
  230. 西中清

    ○西中委員 いずれにしてもこれで研究を進めるわけですから、それなりの開発期間といいますか、どの程度で計画を完成したいと思っておられるのか、また、この研究開発にはどれほどの費用をかけようとなさっておるのか、その辺の計画お知らせいただきたいと思います。
  231. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 テクノスーパーライナーにつきましては、技術研究組合をつくりまして、ここで研究開発を行う予定にしておりますけれども研究開発期間は平成元年度から五年間を見込んでおります。そして、最終年度には、実海域において縮尺模型船で実験を行って、設計技術を確立したいというふうに考えております。これの予算と申しますか開発に要する経費でございますが、大体全部で百億円程度というように考えております。
  232. 西中清

    ○西中委員 先ほどお示しいただきました性能、速度、こういうものを見ますと、もしこれが完成いたしましたならば、物流等においても大きな変化、影響が出てまいると思います。また、世界の造船業にとっても極めて大きなインパクトを与えるものじゃないかな、このように予測をしておるところでございます。これには相当技術的な困難もあろうかと思いますが、さまざまな技術開発、特許というようなものも出てくると思うわけでございますけれども、その所有者は一体だれなのか、この辺のところについての御説明をお願いしたいと思います。
  233. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 国からの補助金によります研究開発では、その特許等は研究開発実施主体に属することとなりますので、今回は研究開発実施主体であります技術研究組合、それからエンジンの方も開発をやっておりますから、その方は研究開発会社が特許を所有するということになります。
  234. 西中清

    ○西中委員 国が二分の一を負担し、さらにまた利子の助成を出すということでございますから、私は半分半分くらい持つのかなと一応思ったわけでありますけれども、その辺なかなか割り切れぬものが残ります。優遇といえば優遇だな、このように考えております。それはそれとして、後でも触れますけれども外国の、我が国におけるいろいろな政府の助成というものについてはそれなりの批判もあることでございますから、この辺は少し考えるところがあるのではないか、こういうふうに申し上げておきたいと思います。  そこで、法案の三十五条の二でございますけれども、「試験研究実施者等の納付金」、ここで、「協会は、業務方法書で定めるところにより、第二十九条第一項第五号の助成金の交付を受けて高度船舶技術に関する試験研究を行った者又はその承継人から、当該高度船舶技術の利用により試験研究実施者等が得た収入又は利益の一部を同号に掲げる業務に要する経費に充てるための納付金として徴収することができる。」こういうことが書いてあるわけでありますけれども、これによりますと、利益の還元について明確な規定というものがなされていないのじゃないかな、こういうふうに思います。「徴収することができる。」という程度でございまして、これは何ら規定を決めないのか、決めるのか、その辺のところの御説明をいただきたい。特に、利益を生んだときには、どういう形で、どういう基準で決めてまいるのか、その辺のところは後々のためにも明確にされる方がいいのではないか、こう思っておるのでございますけれども、その点、いかがでしょうか。
  235. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 納付金の額、徴収の時期等、徴収の方法は明確にする必要がございます。研究開発の内容とか得られた成果の価値、それから成果の利用形態、利益の程度等を個別に考慮してこれは決定することとしておりまして、具体的には大臣が認可する協会の業務方法書において決定の手続、それからこの開発が成功したかどうかという成功の認定基準等を定めて、これに従って個々の研究開発プロジェクトごどに個別に徴収の方法を定めることといたしております。
  236. 西中清

    ○西中委員 外航船舶建造融資利子補給臨時措置法第九条には、納付金の納付等について法律化されておるわけですね。業務方法書でというお話がありますけれども、これは法律事項にはならない、こう思いますが、その辺のところ、差がついておるのはどういう理由なのかお伺いをいたしたいと思います。
  237. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 技術開発につきましてはそれぞれの成果、すなわち技術開発の結果の価値が非常に大きな差がございまして、したがいまして個別に一々決めていかないと公平さが保てないということでございます。
  238. 西中清

    ○西中委員 先ほどの特許の問題もそうですが、また助成の問題もそうですし、この納付の問題についても、御答弁の趣旨といいますか、なかなかこの研究開発というのはリスクも多うございますからわからないわけじゃないのですけれども、こういったことが重なりますとやはりいろいろの誤解を招く面もあるのではないか、私はそう思っておるわけでございまして、今後の問題としてまた慎重にひとつ御検討いただきたい、このようにも思います。  ところで、米国の造船業協会が八日、日本、西ドイツ、韓国、ノルウェーなど四カ国が、自国の造船業に多額の補助金を出して米国の造船業に大きな打撃を与えた、こういうことで包括通商法三〇一条に基づいて米通商代表部に提訴をしたということが伝えられております。この点について運輸省でどのように把握をされておるか、御説明をいただきたいと思います。
  239. 山村新治郎

    山村国務大臣 お答えします。  我が国は従来よりOECD等における国際取り決めを遵守してまいりました。造船政策もそのような形で実施しており、不公正貿易の対象とされる理由はないものと考えております。今後、提訴の内容等を検討して、米国側の真意を確かめ、適切に対処してまいりたいと思います。
  240. 西中清

    ○西中委員 既に内容については把握をされておるのじゃないかと思いますが、御説明いただきたいと思います。
  241. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 お答え申し上げます。  提訴の中身につきましては、たしか十一項目ぐらいございまして、現在その中身を詰めておるところでございます。中身につきまして主なものを申し上げますと、税制上の優遇措置あるいは輸出船に対する輸銀からの融資、それから計画造船の開銀からの融資、それから造船所の再編合理化に当たっての特定船舶製造業が土地を買い上げたときの利子補給というようなものが含まれております。
  242. 西中清

    ○西中委員 大臣から、内容を検討し米国側にこの点について説明をしたい、また交渉もしたい、こういうお話でございますけれども、これからの段取りといいますか、今後の展開はどういうことでそういうことをなさっていくのか、方針が決まっておれば伺っておきたいと思います。
  243. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 提訴の中身を十分検討いたしまして、その中の誤解であるとか、あるいは事実無根であるとか、あるいは国際的な決まりによってやっておるものであるとかいろいろあるわけでございますが、そういう理由を外交ルートを通じまして説明をし、理解を求めていくということをやってまいりたいというふうに考えております。外務省とも十分相談しながら進めていくということでございます。
  244. 西中清

    ○西中委員 これはアメリカ側の言い方を全面的に認めるわけにはいかぬだろう、このように私も思っております。ただし、先ほどから私はいろいろと御質問いたしておりますが、やはり問題は、各種の助成、政府の補助、こういったものについてアメリカ側は厳しい目を向けておるという一つのあらわれだろうと思いますね。こういう傾向は予想もしない造船業界にも向けられたということで、今後の政策的な対応というもの、政府の政策については極めて慎重にやっていかなければならぬ面もあり、またそういう方向に進んでいくだろう、こういうふうに私は思っておるわけでございます。したがって、手厚い助成だなというようなところは、必要なものは必要でこれはどうしても出さなければならぬでしょうけれども、ひとつ慎重に、その辺のところは今後いろいろの政策を展開される上で配慮をしていってほしいな、このように思っておるところでございます。  この点について、今回の法改正がまた一つ向こうの、何といいますか提訴の追い打ちということにならないかな、こういうふうに心配もいたしておりますが、その点について運輸省はどういうふうにお考えかお伺いをいたしまして、私の質問を終わることにします。
  245. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 今回の提訴の中にも技術開発の支援というのが入っております。しかしながら、今回の私ども開発を目指しております超高速船あるいはエンジンその他次世代を担うような船舶の技術開発は、基礎的なかつ応用研究までのものでありまして、しかも長期にわたる研究、かなりリスクをかけた研究を行うものでございまして、これが造船市場を乱すようなものには当たらないということで、こういう提訴の中身に該当するようなものとは考えておりません。
  246. 西中清

    ○西中委員 終わります。
  247. 島村宜伸

    島村委員長 小渕正義君。
  248. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 ただいまも質問が出ておりましたが、要するに、過日の米国造船業界からの日本造船界に対する不公正貿易という観点からの提訴問題であります。  今運輸省としての考え方その他をお聞きいたしましたが、突如としてこれが今回出てきた、その背景は一体何なのか。大体、米国造船業界が指摘しているようなことは、改めて最近になってそういう施策をとったことじゃなしに、従来からずっと長い間行われてきているわけであります。それが該当するかどうかは別として、米国造船業界が指摘しているようなことは、これはもう今申すまでもなく、それに類するようなことはずっと行われてきておったわけでありますが、今回突如としてこういう問題を出してきたという背景は一体何なのかという点で非常に疑問に思う点があるわけでありますが、そのあたりはいかがお考えなのか、その点をお尋ねいたします。
  249. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 これはあくまでも推測でございますけれどもアメリカは一九八一年までは造船に対して手厚い建造助成を行っておりました。レーガン政権になりましてこれが打ち切られたわけでございまして、以後商船の建造は非常に少なくなった、艦艇の建造をやっていたというような状況でございます。現在は、艦艇の建造につきましては緊張緩和の結果減っているということで、商船建造につきまして非常な危機感を持っているのではないかというように考えております。
  250. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 大体米国造船業界はもうほとんど艦艇中心で今日まで操業してきておるわけでありまして、現在の米国造船業界は国際競争の中でやろうという意思も能力も一切ないような状況で、すべて艦艇建造で、国防費の中で実は今日まで育ってきたと言っても過言ではないと思うわけです。そういう意味では言いがかりも甚だしいわけでありますので、ひとつ政府はこの点については今後ともぜひ毅然として対応をしてほしいと思います。そういう意味においての運輸大臣の責任は極めて重大でありますが、その点の御決意をお聞かせください。
  251. 山村新治郎

    山村国務大臣 お答えします。  我が国は、従来よりOECD等における国際取り決めを遵守しつつ造船政策を実施しており、不公正貿易の対象とされる理由はないものと考えております。今後、提訴の内容等十分検討いたしまして、米国側の真意を確かめ、適切に対処してまいります。
  252. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 適切に対処することを大いに期待しておりますので、よろしく。  それから、ちょっと質問事項を通告しておりませんでしたが、今回特定船舶製造業安定事業協会法を一部改正して、従来の二回にわたる造船業界の設備処理、廃棄関係の業務から、新世代の造船中心の研究開発に取り組むようになるわけであります。我が国造船業界として二回にわたりまして設備削減が行われましたが、今後の国際的な海運、造船関係を見たならばまだまだ過剰ぎみではないかという説も国内にあります。そういう点から考えると、運輸省としては造船業界の設備処理はこの二回にわたる四〇%また三〇%、これで大体もう一応完了した、あとは系列化でより集約化を促進する、そういった主要業務はこれでもう大体終わりというふうな見解の上に立って今回の協会法を改正して新しい分野の方の仕事に取り組むということになさっているのか、今後なおある程度あり得るかもしれないけれども、そういう意味では並行的にそういった仕事をやっていこうとしているのか、その点はいかがですか。
  253. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 海造審等の需要予測によりますと、ここ数年は三百万CGT程度で推移いたしますけれども、一九九五年以降につきましては四百七十万CGT程度の建造が期待できるということでございまして、現在二度の設備削減をいたしまして四百六十万CGTの建造能力でございますので、それから見ますと、今後、中長期的に見れば、設備を削減するような必要はないというふうに考えております。したがいまして、今後協会が買い上げ事業をするような事態はないんじゃなかろうかというように考えております。
  254. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 ほぼそういう事態は発生しないだろうという予測といいますか、見方でありますが、非常に心強いことであります。この造船関係の需要予測、海造審等でもそれぞれ行われましたが、必ずずれてしまったのですね。今まで三回ほどの山が、何年ごろにちょうどこれくらいの山に来るだろうというのが全部ずれてしまったという傾向がありますから、そういう意味では十分事態を慎重に見守りながら、ひとつ対処してほしいと思います。  それでは、今回のこの新しい研究開発に取り組む内容でありますが、大まかにこれからのスケジュールとプログラム、大体そういったものについてひとつお示しいただきたいと思います。
  255. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 超高速船につきましては研究組合をつくりまして、これは大手七社が現在手を挙げておりましてそれがメンバーになるわけでございますけれども、そこで五年計画研究開発を進めてまいります。それで、五年後には、研究の締めくくりといたしまして、実海域で縮尺モデルを走らすというようなところまで持っていきまして、超高速船の設計の技術を確立したいというように考えております。  また、高信頼度推進プラントにつきましては開発会社をつくる予定でございまして、ここで研究開発を六年間にわたって進めてまいる、それで実用化できるような技術を確立していきたいというふうに考えております。
  256. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 このたびの、新材料による新しい舶用推進機関の開発、これは一つの会社組織でやろうとしているわけですね。それから、新形式の超高速船関係開発については、これは組合ですか、研究組合という形の中でやろうとしている、これはどういう特徴があるのか、この違いというのは。なぜ片一方は会社組織にし、片一方は研究組合方式にしたのか、その点についての内容をお聞かせください。
  257. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 超高速船につきましては、基礎的なところから応用研究のところまで進めてまいります。それで、これは研究組合もつくるわけですが、鉱工業技術研究組合法に基づきました組合でございます。これは、営利を目的としたものではなくて、組合員が協同で研究開発を行うということを目的としております。  これに対しまして、高信頼度舶用推進プラント会社につきましては、研究開発終了後に、ライセンス供与によるライセンス料収入を予定しておりまして、研究開発とともにその事業化も目的としておりますために、商法に基づきます法人を予定しているところでございます。
  258. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 そうしますと、高信頼度のエンジン関係は、これからずっと会社組織の中で、これが所期の目的を達成したならば、それをそのままこの会社が、これらの営業活動といいますか、販売その他あらゆるものをずっと引き続き行うということを前提にしてこういう会社組織だ、こういうふうに理解すると同時に、この新しい技術研究組合は、お互いの共同開発のためのある一定の目的を達したならばこれはそれぞれが解散してしまって、それぞれがそれぞれの会社でやる、こういう方式に将来的になるからこういう形にしたのかどうか、その点が今私の理解で大体よろしいかどうか。
  259. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 研究組合につきましては、開発終了後しばらくの間は特許等を管理するということをいたしますけれども、それが終わりますと解散ということになります。  それから研究会社につきましては、ライセンス等の販売と申しますか、技術の販売をいたしますので残っていくという形になります。
  260. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 そうしますと、伺ったところではこのエンジン、高信頼度の舶用機関関係は三井とどこでしたかね、二社、それから新しい超高速船の研究開発は造船大手七社、大体これが中心になってそれぞれこれから推進されるというふうに話を聞いておるわけでありますが、そうしますと、所期の目的を達成して、いよいよ共同開発研究が大体目的を達した。各社それぞれ、所属しておった七社がそれぞれの分野でもう後はすべて営業活動をやっていく、こういう形になっていくのではないかと思うわけであります。その場合に、さっきのお話を聞きますと、新しい研究開発の形式については二通りの型があって、それらを並行的にそれぞれの担当分野の中で、七社の中のそれぞれが担当していくというふうに聞いておりますが、将来的にはこういう二つの形式、水中翼船型ともう一つの型、ホバークラフトタイプ、ジェットタイプだと思いますが、それぞれ当初こういう二つの形式で共同開発に取り組み、結果的にどれか一つに集約するということでなしに、それぞれが所期の目的を達成するとしたならば、以後は二つの分野で各社が取り組んでいくという形になるのかどうか、その点はどうですか。
  261. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 先生がおっしゃられましたように、超高速船の基本のパターンとして二つございます。ホバークラフトを基本にしたものと、それから水中翼船と申しますかジェットフォイルみたいなものでございますが、その二つがございまして、どちらがすぐれているか、どちらを基本にして新しい船型を開発した方がすぐれているかというのは、今後の研究の進みぐあいでわかってくるわけでございます。したがいまして、二つを並行に進めるわけでございますが、もし二つともそれなりの成果があるということでありましたら、二つとも完成をさせたいというように考えております。
  262. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 それぞれが特徴のある、それぞれのすばらしい能力を発揮する新しいタイプとしてでき上がったとするならば、それぞれ二つの並列したタイプの中でやるということですが、一番造船で問題になるのは、こういうふうにして新しいものを研究開発したものが結果的にはパテントですか、または特許と言ったらいいけれども、そういうものが確立されていないので、すぐまねされて、ちょっと少しどこかいじって、厳密に言えば変えたということで、もうそれがほとんど流用されてしまう。こういうのが造船界の実は一番悩みでもあるわけですね。したがって、今回こういうような新しい、これだけ国の助成を受けながら共同研究開発した後の技術的なそういういろいろな問題の盗用というのか流用というか、そういうものをいかに防止するかということについて、これは私は非常に大きな問題だと思うのですが、この点はどのようにお考えなのか、その点はどうですか。
  263. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 従来から、造船業界はそういう面では非常に甘い面がございまして、いろいろな図面がそのとおりよそでつくられるとかいうことがあったわけでございますが、こういう非常に先端的な技術につきましては特許によりこれを保護するということでございまして、これらの最新技術の流出につきましては、そういうことがないように厳重に管理をしていくということになります。
  264. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 もう時間が来ましたが、最後に、研究開発組合に参加する会社からそれぞれ賦課金を徴収するようになっていますね。これは当然のことでしょうけれども、一律的な考え方なのですか。それとも、何か研究テーマをお互い分類して、それぞれが専門分野で取り組むと思いますが、そういうものに応じた賦課金として納入させるような考え方なのか、そこらあたりはどうですか。
  265. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 研究開発に要します費用を助成金でもらって、開発成果が上がって、それで利益を生むようになった場合に、その一部を賦課金として協会に納めていただくという筋書きでございます。
  266. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 研究開発機関は、参加する七社の中からの出し前というのは一切ないのですか。参加する七社は必ずそれぞれ応分の分担をするのでしょう。その点についての考え方を聞いているのです。
  267. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 失礼しました。先ほどはちょっと勘違いの答弁をいたしました。  賦課金につきましては、研究開発については、補助金が直接研究費の二分の一国の一般会計から出ます。したがいまして、直接研究費の二分の一は研究開発を担当するところが必ず出さなければいかぬ。それ以外に研究者の人件費等がございます。これが研究を担当する会社の方の負担になります。そういうものをトータルしたものが賦課金であるわけでございます。  しかし、賦課金というのは、それぞれ担当する研究の範囲とかそれぞれの事業の成果、それからそれを利用しようとする程度によって違ってくるわけでございますので、そういうものを考慮しながら、各事業年度の開始前に総会の決議によって各社の賦課金を決定していく予定になっております。
  268. 小渕正義

    ○小渕(正)委員 終わります。
  269. 島村宜伸

    島村委員長 中路雅弘君。
  270. 中路雅弘

    ○中路委員 十七分と限られていますから、法案そのものについて何点かお聞きします。  協会法の一部改正ですが、今度のこの超高速スーパーライナーの研究開発、それから高信頼度舶用エンジン、高度船舶技術の研究開発に対する国の一般会計からの助成ですが、助成金それから利子補給というのがあると聞いておりますけれども初年度それぞれ幾らになりますか。
  271. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 質問をちょっと聞き漏らしましたけれども、金額でございますか。——初年度平成元年度、一般会計から、超高速船の開発に関しまして、補助金として五億四千六百万円、それから高信頼度舶用推進プラントの開発につきましては二億円、合計七億四千六百万円でございます。  それから、それとは別に、開銀からの出融資が開発をする会社に制度として認められております。
  272. 中路雅弘

    ○中路委員 これらの試験研究は五カ年計画だというお話ですが、計画は何年計画で、研究資金の総額はそれぞれ幾らぐらいになりますか。
  273. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 超高速船の研究開発総額につきましては約百億円でございます。それから高信頼度舶用推進プラントの研究開発費は総額が約四十二億円と見込んでおります。
  274. 中路雅弘

    ○中路委員 この研究開発を行う企業は別法人とすると聞いておりますけれども、これは技術研究組合法に基づく組合をおつくりになるのですか。もう一つの方は研究会社ということですが、今恐らく調整中だと思いますが、それぞれ技術研究組合に参加をする企業、それから研究会社の方はどの企業が担当するのか。今おわかりになっておるところを教えていただきたい。
  275. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 超高速船の方の研究組合につきましては、大手七社の造船所が参加することになっております。しかし、参加をする組合員の確定につきましては総会のときに決まるということでございまして、他に希望があれば入ることもあり得るということでございます。  それからもう一つ、研究開発会社につきましては、三つの造船会社が今やろうという意思表示をしております。三井造船と川重と日立造船でございます。これはまだ確定いたしておりません。
  276. 中路雅弘

    ○中路委員 まだ最終確定はしていないと思いますけれども研究組合法に基づいた組合の方は大手七社ですから、川重、三井造船、こうしたものがメーンになって、石播、日本鋼管、住友、日立、こういう七社が加わるのだろうと思います。研究会社の方は三社と言われますが、これまでエンジン部門の研究をやってきた実績から見ると、三井造船が中心になるのじゃないかと思います。大体今お話ししたようなところがメーンになるのじゃないかと思いますが、いかがですか。
  277. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 従来、高速船の方を申し上げますと、例えばホバークラフトの建造に経験が深いところ、それでかつ技術を持っているところ、それから水中翼船なら水中翼船について実績があり、かつ技術者もいるところというようなところが中心になるわけでございます。それから、エンジン会社につきましては、御指摘のように、三井がかなりエンジンをたくさんつくっておりますし、基礎研究も進んでいるということで、そういうことになるかと思います。
  278. 中路雅弘

    ○中路委員 二つともこの改正案による研究開発は、いずれも大企業しか事実上参加できないような技術開発ですね、超高速船を内容としたものでありますから。特に中小の造船企業はおよそ手が出ないという感じがするわけです。中小企業造船を含めた全体の活性化につながるのかどうか、あるいはこうした改正案が造船界の仕事の確保あるいは今後のこうした雇用の改善、そういったものに役に立つのかという点で御意見を伺っておきたいのですが、いかがですか。造船界の今後の雇用問題の解決あるいは造船業全体の活性化、こうしたものとの関連です。
  279. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 こういう超高速船みたいな、最先端でかつ格好のいいものでございますので、造船業のイメージアップにつながるということで造船業全体の活性化につながっていくわけでございます。したがいまして、中小も含めて造船所に入りたい人もふえてくるのではないか、我々そういうように期待しておるわけでございます。
  280. 中路雅弘

    ○中路委員 苦しい答弁ですけれども、過去十年にわたってこの法案に基づいて国の財政を投入して、造船産業の構造不況を克服するということで、特定船舶製造業者の設備及び土地の買収等による過剰設備の廃棄の事業を推進したわけであります。一つは今の新しい事業、超高速船の研究開発というのがありますけれども、これまでの事業はこれからも継続して、こうした設備廃棄の事業を進めていかれるのですか。今後の協会の仕事はどういうことなのですか。
  281. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 協会の事業として、特定船舶製造業の安定ということで、買い上げ業務につきましては形式的には継続した格好になりますけれども、実際問題としてそういう事態は起こりません。したがいまして、現在買い上げたところを管理し、それを譲渡していくという業務になります。主体は新規業務、前向き業務にどんどん移っていくというように考えております。
  282. 中路雅弘

    ○中路委員 最初の法案をつくられた趣旨の事業は、今のお話でも、いわば十年で事実上大体終わりなのですね。新しい仕事を協会の名前でやられるというのが実態ではないかと思うのです。  一つお聞きしておきたいのですが、造船産業に携わる働く人たちの人員削減の問題ですけれども、この法案のもとで進めてこられた十年間、全体でどういう変化を来しておるのか。従業員数、その中でとりわけ常用工関係でおわかりになりましたら少し資料を教えていただきたい。
  283. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 お答え申し上げます。  我が国の造船業の下請を含む全労働者数は、昭和四十九年末のピーク時に二十七万四千人でありましたが、昭和五十三年末には十七万六千人になり、さらにその約十年後、昭和六十三年九月末には八万三千人へと減少しております。また、下請を除いたいわゆる本工、職員の数は、昭和四十九年末の十八万四千人から昭和五十三年末には十三万七千人に減少し、さらに十年後の六十三年末には五万五千人へと減少をいたしております。
  284. 中路雅弘

    ○中路委員 結局、この十年間で見ますと、国家財政をつぎ込みながら独占グループヘの生産の集中あるいは市場の独占ということが促進され、その救済と利益の擁護が中心になったというふうに思うのです。一方、雇用問題を見ますと、今言われたように大変深刻な事態になっていますし、造船のある町は本当に火の消えた町と言われるような事態を引き起こしたわけです。造船の全体のこれからの見通し、造船産業の景気の問題、中長期な見通しというのはどういう状況ですか。
  285. 石井和也

    ○石井(和)政府委員 現在、造船業につきましては、昨年の秋ごろから海運市況の回復とか、あるいは集約化、事業提携の強化というような対策が実りまして、需要が一〇%程度ふえてきております。また、船価も上がりつつある状況でございます。それから、中小造船につきましても、内需の拡大等によりまして、かなりの船の建造が現地では行われているということでございます。
  286. 中路雅弘

    ○中路委員 全体として、今回復の過程にあるということは明確になってきていると思うのです。  これは日本造船工業会の長谷川会長が新聞で述べているのですけれども、余りにも急激な人員削減で、日本造船業界の現況はむしろ労働力不足に悩んでいるところだということも語っていますが、ここまで一方で人減らしをずっと進めてきたわけです。この十年間で、今お話しのように、最初の法案をつくったときの趣旨に基づいた事業は、もう事業上やる必要がないという事態になっています。新しく研究開発ということで、独占企業を中心にしたこうした研究開発に多額の国の費用をつぎ込む、私は、そういう点でこの法案はもう既に必要ないというふうに思うのですけれども、きょうこの法案についての採決も行われるということなので、こうした法案については、この法案を継続して、景気も回復している企業に対して手厚いこれだけの国の金をつぎ込んでてこ入れをするという必要は全くない、こうした改正については賛成できない、容認できないということを述べて終わりたいと思います。
  287. 島村宜伸

    島村委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  288. 島村宜伸

    島村委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  特定船舶製造業安定事業協会法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  289. 島村宜伸

    島村委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  290. 島村宜伸

    島村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  291. 島村宜伸

    島村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十八分散会