○斎藤栄三郎君 私は、
自由民主党を代表し、
竹下総理大臣並びに関連閣僚に御
質問をいたします。
本論に入ります前に、山陰地方並びに
広島地方における水害
被害者に対し、及び七月二十三日の
潜水艦衝突
事件による
犠牲者並びにその
遺族に対し、心からお悔やみを申し上げる次第であります。
トロント・
サミットで竹下首相が北方領土問題並びに自由貿易の堅持について強く主張されたことに対し、私
たち国民としては我が意を得たり、よく言ってくれたという感じを持っておるのであります。さらに、前
総理中曽根さんがはるばるソ
連を訪ねて、民族の悲願である北方領土問題について忌憚なき意見を述べられたことに対しても、心から感謝の意を表するものであります。
竹下総理にお伺いしたいことは、この民族の悲願をいかにして達成するかについての腹づもりをお示しいただきたいと
考えるのであります。
トロント・
サミットで自由貿易の堅持が必要だと言われて間もなく、
アメリカの下院では包括通商法が通りました。上院も通るであろうという見通しが濃い、これこそ私は重大問題だと思うのです。その
法案の内容は保護貿易主義であり、ブロック主義を開くものであります。
昭和七年、カナダのオタワで英連邦
経済会議を開きました。そのねらいとするところは、英連邦加盟四十六カ国の間では関税を低くする、ドイツと
日本に対しては高い関税をかけるというものであったのです。その結果はどうなったでしょうか。イギリスの国際競争力は弱まり、
世界は
縮小均衡に陥り、ついに恐慌に陥ったことはつい最近の
事件であります。
アメリカが今たどろうとする方策は保護貿易主義であり、下手をすると
世界経済が
縮小均衡に陥るのではないだろうかと
懸念をいたすのであります。
アメリカは、自由貿易協定というものをイスラエル、メキシコと結び、今またカナダと結ぼうとしております。その次は
日本ではないでしょうか。これは完全なブロック
経済であって、私はこういうことをどんどんやっていったら
世界経済は完全に
縮小均衡に陥ることを
懸念するのであり、この点について
竹下総理の忌憚なき御意見と、この
アメリカの包括通商法阻止のために御努力くださるようにお願いをいたす次第であります。
次に、先ほどもお答えいただきましたが、
ODA、
政府開発援助について、これから五年間に五百億ドルの金を使うということを承りました。
私は去年の二月、アフリカのケニアに参りました。ケニアでケニヤッタ農工大学というものを見てまいりました。
日本が六十億円
援助をし、
土地はケニア
政府が出してつくった大学であります。そこで学ぶケニアの青年の喜々としている姿を見て、
援助こそまさにこうでなければならぬということを痛感して帰ったのであります。
援助は、与える国の喜びであると同時に、もらう国もこれでますます発展できるようなものが必要ではないかと
考えます。今までの
ODAは、
援助をもらう国から
日本政府に
要請をし、これを
調査し、閣議にかけて出すので、どうしても時間がかかります。もっと緊急臨時の資金が必要だと、
世界各国を歩いてみて大使から言われました。今回小
規模無償協力資金制度をおつくりになるかどうか、外務大臣にお伺いしたいと思うのです。
アメリカでは既にそういう制度が行われております。
日本でもぜひともその制度が必要であろうと私は
考えますが、外務大臣の御
所見を伺いたいと思います。
イラン・イラクに和平の光が差してきました。イランはシーア派、イラクはスンニー派であって、イスラムの歴史千三百年の間に常にこの二つが対立抗争をしてきたのです。したがって、今回一時の平和が来ても根本的な平和が得られるかどうかは疑問でありますけれども、とにかく八年から九年かけて戦ったということは異常なことであります。この平和のために
国連が果たされた
役割並びに外務大臣の御努力に対し敬意を表します。ベトナム・カンボジア問題も九年の幕を閉じようとしております。ぜひともこれが成功することを祈りますが、
日本政府としてどういう
協力をするか、またどの程度の
援助をするかをお漏らしいただきたいと思うのです。
イラン・
イラク戦争の戦後復興のためには千五百億ドルという莫大な資金が必要だと言われております。この千五百億ドルという莫大な資金に対しどのような
協力がなし得るか、
日本政府の率直な御意見を拝聴したいと思います。
次の問題は、
累積債務の問題です。
現在、
累積債務は一兆二千億ドルです。この一兆二千億ドルというのは発展
途上国の
GNPの半年分です。発展
途上国の貿易の二年分に当たるのです。これをどう処理するかということが非常に大きな問題だと
考えるのであります。ただいま
宮澤大蔵大臣から御
所見を拝聴いたしましたが、
宮澤さんはトロントで
債務の株式化ということの主張をなさったと承っております。その内容をお示しいただき、また
宮澤さん独自の
累積債務解決の方策についてお教えいただけたら非常に幸せに存じます。
以上、当面する大きな
世界経済、
世界政治の問題に触れましたが、次は
国内問題に移ろうと思います。
今、
日本の一人頭
GNPは
世界一です。貿易は
日本一国で
世界貿易の一割を占めております。そうして、外貨保有高は八百九十億ドルを突破し、これまた
世界一。まさに豊かな国の数字ばかりであります。ところが、実感はこれに伴わないのです。そこに問題がある。なぜ実感が伴わないかといえば、私は、第一、税の問題、動いている
経済の実態に合っていない
税制が第一の原因だと思います。第二は、
土地が高くて幾ら働いても自分の家が持てないということです。そうして第三番目は、
円高にもかかわらず物価が少しも
国民生活を潤さないというところに問題があるのではなかろうかと
考えます。
以下、この順序に従って御
質問をいたします。
まず、
税制改革であります。
昭和十一年、
日本の税は間接税が六五%でありました。間接税の特色は選択の余地があることだと思います。自分のことを言っては恐縮でありますが、私はたばこはのみません。なぜのまないかといえば、間接税を払うのが嫌だからであります。選択の余地があるのです。たばこのお値段の六割が税金だと承っています。のむかのまないかは各人の自由であります。直接税の方は強制力を伴って選択の余地がない。私は、戦前の
政治家が間接税を六五%にしておったということは非常に賢明だったと思う。
ところが、戦争に負けてシャウプ
税制改革が行われ、現在は直接税
中心であります。今の
日本の税金は直接税が七三%、間接税が二七%であります。しかも、その直接税の内部で負担の不公平が行われているところに問題があるのだと思います。
したがって、今回
税制改正をやり、直間比率の
是正を図ることは時宜に適した
措置だと思います。もしも今のままにしておいたら法人はどうなるでしょうか。
日本の株式会社の中でもうかる
企業はどんどん海外に逃げちゃうと思います。その理由は簡単です。水は低きに流れ、
企業は税金の安いところへ移るものです。
さらにまた、サラリーマンの諸君は気の毒です。一生懸命に働いて所得が上がっても、
税率の刻みが細かくて十二段階に分かれている。少しぐらい賃金が上がっても重い
税率で持っていかれちゃうのです。どうしてもこれを改正しなきゃなりません。現在の十二段階を五段階に分ける、賢明な
措置であると
考えます。
そうして、
所得税、法人税の次は相続税です。
今は相続税は三千二百万円までが非課税です。これを六千四百万円までに上げるのです。私は、これではまだ大都会ではなかなか相続税の負担が軽くならないと思いますけれども、全国的
規模において
考える場合にはこの程度の改正でもやむを得ないのではないかと思いますが、直接税で約五兆六千億円の
減税を行うのであります。
私はリカルドの租税の原理という本を愛読しております。これは一八一七年にロンドンで出されたものであります。財政学を勉強する者は一応通らなければならない本であります。その中に租税の四原則ということがうたわれております。第一は、税金は国家の必要とする
財源を賄うものであること。第二は、税は公平でなければならないとうたい、第三は、租税を徴収するコストが余りか
かり過ぎてはだめだと訴え、そうして古い税ほどいい税だと述べておるのであります。
この基準に照らして、今回の
税制改革について
大蔵大臣に御
所見をお伺いいたします。
今回の
税制改正で
財政再建はできるでしょうか。
財政再建とは、
昭和六十五年に赤字公債を出さないでも予算の編成ができるという内容です。大蔵省が配られた資料を拝見すると、
消費税の
税率三%では
昭和六十五年に一兆五千億円の赤字公債を出さざるを得ないと書いてあります。もしもこのとおりだとするならば、せっかくの
税制改正にもかかわらず、
財政再建は不可能だということになります。しかし、
大蔵大臣が他の場所で述べられたところを
新聞で拝見すると、
財政再建はできると言っておられる。
大蔵大臣から率直な結論をお伺いしたいのでございます。
第二は、税は公平でなければならない。これは多言を要しません。
今、
日本で
税制で問題なのは
不公平税制だと言われています。その
不公平税制は大きく分けると三つです。
第一は、医師の
税制についての
批判が多いのです。医師への
批判というのは、必要控除率を五段階に分けております。今回の改正では五千万以上五二%という控除率をカットいたしました。したがって、医師に対してはかなりの
増税になるであろうと
考えます。
第二は、
キャピタルゲイン課税です。従来は原則非課税、回数で三十回、株数で十二万株以下の売買の場合は有価証券取引税を一万分の五十五掛けるだけであります。これが非常に評判が悪く、今回の
税制改正では二つの道を開いたのです。
一つは、原則課税とし、まず株式売買をした場合、売買金額の一%と有価証券取引税一万分の三十、この二つを合わせると一・三%になります。これを証券会社で届けて処理するか、これを源泉分離と申します。もう
一つは、税務署に届け出て、キャピタルゲインとキャピタルロスを計算して、キャピタルゲインがあった場合に二〇%の税をかけるか、どちらかを選びなさいということであり、従来より私ははるかに前進したものであると
考えるのであります。
そこで、
大蔵大臣にお伺いしたいのは、先ほどから何回も問題になっておりますように、証券取引をめぐるいろいろな
事件があります。大蔵省の証券行政として反省すべき点はなかったか、また証券取引法の改正までいく必要があるかどうか、その点についての率直な御意見をお知らせいただきたいと
考えるのであります。
次に、徴税コストの問題であります。
今、国税庁の公務員は五万三千五百人であります。この体制で果たして新しい
税制を乗り切ることができるかどうか、これまた
大蔵大臣からお教えをいただぎたいと思います。
古い税ほどいい税だと言います。
日本では
消費税は新しい税だと
考えられておりますが、
世界的
規模で
考えると古いのです。ローマの初代皇帝アウガストゥスが初めて
消費税をつくったのです。
税率は一%でした。ヨーロッパでは
消費税の観念というのは徹底しております。その典型的な例がヨーロッパ型付加価値税、いわゆるEC型付加価値税だと思います。今、
世界では四十四の国がこれをやっております。
日本の近所では台湾、韓国、またニュージーランドも
導入し、社会主義の国ハンガリーまでこれを
導入しているのです。一たん
導入した国はこれをやめていないのであります。
したがって、税の体系としては、まず所得に課税する
所得税、資産に課税する資産税、そうして消費にかける
消費税という三つに分けてこそ公平なる
税制ができるのであって、私は
経済の発展段階に応じて租
税制度というものは変わるべきものだと思います。
明治の
時代に、
日本では地租が
中心でありました。それは、農は国の本なりで、農業が主要
産業であったからです。そうして、日露戦争以後は法人税が
中心になってまいりました。これは株式会社制度の発展に伴うものです。今、
日本が豊かになり、消費が非常に多彩化してきた今日においては、
消費税の新設は私は絶対必要なものだと確信をいたすのであります。
そこで、
消費税導入の場合に一番問題なのは、三%の転嫁ができるかどうかという問題であります。私も自民党の
税制調査会の末席を汚しておりまして、その
税制調査会では、一%がいいか、三%がいいか、それとも五%がいいかについて白熱的な討論をいたしましたが、過去の経験に照らし三%ということになったのであります。この三%が転嫁できれば問題はないのですが、転嫁できるかどうかということで多くの
企業は迷っているのです。現在の独占禁止法では、価格の協定は違反であります。この税法では、転嫁するための方法を相談することは道が開けておりますけれども、その限界が非常に難しいのです。
そこで、
大蔵大臣にお伺いいたします。転嫁のためにどういう方法をおとりになることが一番よろしいか、御明示いただけたら幸せに
考えます。
次は、この
消費税で物価がどれくらい上がるかということが大衆の心配の種です。インフレになりはしないかという心配です。それからもう
一つは、五兆四千億円も
消費税で吸い上げちゃうんだから景気が悪くなりはしないかという心配でありますが、これらについても
大蔵大臣の御意見を拝聴したいと思います。
私は、インフレの心配は絶対ないし、不景気になる心配もないと確信をいたしております。
今の景気が非常によろしいのは四つの理由からです。第一は、
円高によって海外から輸入する原材料が非常に安いということです。第二点は、金利が公定歩合二・五%で非常に安いということ、第三は、労使の
協力によって労働の生産性が非常に高まっていること、第四は、設備投資によって
世界一の優秀なる設備を持っているということです。この四つの材料がそろっている以上は、私は不況になる心配は全くないと思います。新しい
税制改革をやるときの
環境としては、今のように物価が安定し、そうして景気の見通しが明るいときにやるべきものだと確信をいたしますが、
大蔵大臣の御意見はいかがなものでしょうか。
しかし、新しいものには不安が伴います。したがって、これから
政府がやらなければならぬことは、広く
国民にその内容を理解していただくことだと思うのです。そのための努力を真剣になさることを要望したいと思います。
そこで、思い出しますのは、
アメリカの第二十八代大統領ウィルソンが大西洋を渡って第一次
世界大戦後ベルサイユ
会議に臨みました。彼は学者です。
世界の永久平和のために国際連盟をつくったのです。意気揚々として帰ってきたが、
アメリカ国会では
批准は認められません。彼は失望落胆し、とるべき
対策として彼は全
アメリカを遊説して歩いたのです。
竹下総理は、
所信表明演説の中でつじ説法を行うと言っておられます。まさにその気持ちでこれを実行に移していただく、そうして広く
国民に理解を求めることがこの法律を生かすゆえんだと思いますが、
竹下総理の御
所見を承りたいと
考えるのであります。
よく
世間では、今は三%でスタートするがやがて上げるんじゃないかという
批判があります。
日本では憲法で、法律でなければ税は動かせないのです。租税法定主義と言っております。したがって、
国会さえしっかりしていれば私はその心配は全くないと断言をいたしますが、御意見はいかがなものでしょうか。
そうして、この税に対して
金持ち優遇だという
批判があります。
私は、
一つの統計をお示ししたいと思う。免税点、
日本では、夫婦と子供二人の家庭では三百十九万八千円以下の方には課税がないのです。
アメリカでは百七十五万五千円です。イギリスでは九十一万円です。
日本は三百十九万八千円であっ
て、
世界のいかなる国より免税点は高いのです。
税率は、
所得税、国税で五〇%、地方税で一五%で六五%です。これを諸外国と比べると、イギリスは六〇%、
アメリカは三七%であって、決して
日本の
税制が
金持ち優遇ではないということがこの事実によっておわかりいただけるであろうと
考えるのであります。
私は、今もしこの
改革をやっておかなかったら、二十一
世紀になると
日本の
経済が空洞化してしまうのではないだろうか、そうして二十一
世紀になったときに勤労意欲がなくなってしまうのではないだろうか。そういう点を
考えるならば、十分
国会で議論をしてこの
法案を通すことが国家百年の大計のためだと断言をいたすのであります。
次に、通産大臣にお伺いをいたします。
円高利益の還元問題であります。
昭和六十年九月二十二日一ドル二百四十二円だったものが、きょうは百三十二円であります。
我が国は、一年間に四億三千万トンの原材料を輸入する国です。この
円高によって安い原材料が入りました。製品も入りました。どの程度利益還元が行われているかという問題です。去年の暮れ現在の統計で約七割と承っておりますが、私はまだ少ないのではなかろうかと思います。どうぞ、もう少し
円高利益の還元に御努力をいただきたい。
なぜはかばかしく進まないかといえば、流通機構の複雑さにあるのではなかろうかと拝察いたしますが、いかがなものでしょうか。去年
総理がお出しになった「
ふるさと創生論」の中に、
日本で一番おくれているのが流通だと書いておられます。私も全く同感です。どうぞ蛮勇を振るって流通機構の
改革に努力なさることを要望したいと思いますし、同時に通産大臣の御
所見を承りたいと思います。
次に、通産行政で大きな問題は、NIESとの問題です。
NIESとは韓国、台湾、香港、シンガポール、これらの国々からどんどん物が入ってまいります。
昭和五十五年から最近までの八年間に、NIESからの輸入が三倍にふえている。特に電気製品、繊維、雑貨などがそうです。これは
日本の物価を落ちつける効果はあります。同時に、NIES諸国の
国民生活を向上させる効果も認めますけれども、同時にその業種に携わっておった
日本の中小
企業が非常に苦しんでいることを
考えると、どういう
政策を御用意であるかを承りたいのであります。
従来、通産省は異業種交流ということを言っておられますが、その実績はどうか。何とぞ中小
企業対策に万全を期してもらいたいと
考えるのであります。
私は、発展
途上国からは安い労働賃金で追い上げられ、先進国からは保護貿易主義で閉ざされ、一体
日本はこれからどうなるかということを
考えると、非常な不安に駆られます。通産大臣、どうしたらいいとお
考えでしょうか。私は、科学技術の振興によって
日本の行く道を打開する以外に道はないと思うのです。
ここで参考になるのが、実はイギリスの歴史だと思います。一七七六年にジェームス・ワットが蒸気機関の発明をしました。彼はグラスゴー大学の物理学の教授であった。このジェームス・ワットの発明によってイギリスの
産業革命が幕を開いたのであります。同じくグラスゴー大学の
経済学部の教授であったアダム・スミスは、ウェルス・オブ・ネーションズ、国富論という本を書いて自由貿易の理論を展開し、これがイギリスの繁栄をもたらしたのです。
私は、ぜひともこれから科学技術振興のためにこれを重点
政策として取り上げられることをお願いいたすのです。
昭和六十三年度の予算を拝見すると、科学技術費は一兆七千億円、全予算の三%であります。これをフランスの七%、
アメリカの五%に比べると、著しく見劣りがいたします。どうぞ通産大臣が主力となって、この科学技術振興のために御努力くださることをお願いしたいと思いますが、御意見はいかがなものでしょうか。
次に、農林水産大臣にお伺いをいたします。
貿易自由化の荒波にもまれ、佐藤農林水産大臣の御苦労のほどは、本当に頭の下がる思いであります。もう三年たつと、牛肉もオレンジも自由化を免れません。
国民の期待しているところは、これで肉が安く食えるかという問題であります。率直に御
質問をいたします。一体、安くなるんでしょうか。
牛肉の自由化の内容を見ると、これから三年間、毎年六万トンずつ輸入をふやす。現在二十一万トンですから、三年後には三十九万トンとなります。数量がふえるんだから、下がるはずです。しかし、自由化初年度は関税を七〇%かけ、二年目は六〇%かけ、三年目は五〇%の関税をかけるという。こうなると、
国民は
判断に苦しみます。一体牛肉は下がるのかどうかということです。
そこで、農林水産大臣に第一点の御
質問はその点でありますが、第二の
質問は、この激しい競争にさらされる農民諸君の善後策をどうするかということです。その点の
対策を明示していただくことをお願いいたすのであります。
ウルグアイ・ラウンドでは米の自由化までが問題になるであろうとうわさされております。かねて農林水産省は、米の自由化は絶対にやらないと言っていましたけれども、今までの日米交渉を見ておりますると、絶対と言っていて必ずやられてしまうのであります。そういう点を
考えてまいりますると、転ばぬ先のつえで、ウルグアイ・ラウンドに対する
対策を立てておかなければいけないんじゃないか。
自由化とは、コストの競争であり品質の競争です。安くてよければ必ず売れる。安くてよくて売れないのは棺おけだけだと言われています。コストを下げるにはどうしたらいいかといえば、農業で言うならば、経営
規模の拡大であります。
昭和五十五年、農用地利用増進法という法律をつくり、町村長が中に入って賃貸借を進めてまいりました。おかげさまで大分経営
規模は拡大されましたけれども、まだまだ不十分だと思います。もっとこれを強化していくことが必要ではないかと思いますが、農林水産大臣の御
所見を承りたいのです。
そうして、品質をよくするためには、適地適作でなければだめなんです。農業ぐらい天候と水の影響を受けるものはありません。全国一律にやるのではなしに通地適作でやる。そうしてこそ初めてよい品質のものができるんだろうと確信をいたすのであります。そういう
観点からひとつ、聡明な佐藤農林水産大臣ですから、従来の
政策の見直しをなさることをお勧めしたいと思いますが、御
所見のほどはいかがなものでしょうか。
農は国の本なりということは真実だと思います。でありますけれども、だからといって国際競争に負ければ全滅なのであります。国際競争に勝つために何をなすべきかということが、今
考えなければならぬ
政策の
中心課題だということを申し上げておくのでございます。
次に、
土地問題であります。
この三年間の間に商業地は三倍に上がりました。住宅地でも二倍半に上がってしまいました。今、一流大学を出て、一流
企業へ勤めて、二十二で勤めて六十の定年まで働いても、一生涯にもらえるボーナス、退職金全部ひっくるめて二億円です。その中で貯蓄できるのは一八%ですから三千六百万円です。これでは、もうマンションを買うのが精いっぱいであって、とても庭つきの家などというものは買えません。私は、どうしてもこの際大事なことは、
土地政策こそ
日本民族の生命であるという
考え方を持って真剣に取り組んでいただきたいと思います。去年の暮れからの
政府の御努力により一応
地価は安定しているかのごとく見えますけれども、私は、高値安定であってはならないのであって、
国民の手の届くところにこれを下げることが肝要だと思いますが、御意見いかがなものでしょうか。ぜひともその努力をしていただきたいのであります。
地価が高騰したその
一つの原因は一極
集中であります。そこで、
竹下内閣は、行政機関の移転ということを訴えられました。九十の行政機関が地方に分散をする。その跡地が四十八ヘクタールと承っております。その跡地の処理をどうなさるか。高値で売って
地価暴騰に拍車をかけることのないように、念のために申し添えておくのでございます。
次に、遷都の問題です。
私は、この重大問題、すぐ結論が出るとは思いませんけれども、
総理大臣の御
所見の一端を伺わしていただけるならば、非常に議論をするのに話が進むであろうと
考えるのであります。
以上、
土地の
政策を論じましたが、
土地と
税制の問題、二つあります。
一つは、従来、
企業が借金をして
土地を買う、その利息は損金として認められました。だから、どんどんと借金をして
土地を買い、転がしたのです。今度の
税制改革では、借金をして
土地を買っても、その
土地を四年間使わなかったら利息は損金として認めないのであります。これは私は非常な
改革だと思います。これで
土地転がしの一部は抑えられるだろうと思う。
次は、相続税と
土地の問題であります。
従来の相続税では、現金で相続するより
土地で相続する方が得なんです。何となれば、
土地の評価は
路線価額で時価の半値だからです。今度はこれを改正し、相続開始三年前に買った
土地、建物は取得価格、時価で評価するというのであります。こうなると、相続
対策として、節税
対策として
土地を買う方は少なくなるであろうと
考える。税の面からも
土地対策を進めなきゃなりません。同時に、
政府の
決意の問題だと
考えるのであって、承りますると、
土地基本法を制定なさるそうであります。次の
国会に出されるそうでありますが、その内容をお漏らしいただけたら幸せに存じます。
日本では私有財産の尊重ということが憲法にうたわれています。しかしその憲法の中にも、適当なる補償を払って公益優先ということがうたわれているのであって、私は
土地基本法の
中心をなすものは公益優先ということでなければならぬと思いますが、
総理大臣の御
所見を承りたいと
考えるのでございます。
以上で
土地問題を終え、次に、私は今参議院の
国民生活調査会に
関係をしております。この参議院の本
会議で
会長、長田裕二先生が御報告なさったのでお聞きいただいたと思います。今、
国民生活で長期の問題としては出生率の低下であります。どんどん出生率が減っている。出生率が減るということは老人化に拍車がかかるということでございます。もう少し出生率を何とかしなきゃならぬということを我々一同は
考えました。しかし、国家が出生率をふやすような手を打つことはなかなか難しい。下手をすると誤解を生ずるからであります。
そこで、なぜ出生率が減っているかといえば、
一つの原因は
土地問題です。住む家が手に入らないということ。もう
一つは教育費の問題です。今、高校、大学に通う子供を持っている家庭では
生活費の二割が教育費なんです。そこで、
国民生活調査会のレポートの中では教育
減税を強く訴えたのであります。今回の
税制改革では、十六歳から二十二歳まで、高校から大学に通う子弟を抱えている家庭は扶養控除三十五万円のほかに十万円を上乗せすることになっております。私は、
国民生活調査会の主張が一部入れられたものと
考え、感謝しておりますけれども、もう少しこれをふやす努力が望ましいのではないかと思いますが、
大蔵大臣の御
所見を承りたいと
考えるのであります。
税の改正をやると同時に必要なことは、行政
改革を強力に推進することだと思います。
昭和五十八年のスタート以来、真剣な努力を重ねた結果でありましょう、十兆円の国費が節約され、二万六千人の国家公務員が整理されたというのです。
政府としては御満足かもわかりませんが、納税者の
立場から見るとまだ不満なのです。どうぞもっともっと行政
改革を推進され、納めた税金が有効に適切に使われるよう行政
改革についての
総理の御
所見を重ねてお伺いしたいと
考えるのでございます。
結論に移ります。
日本と
アメリカとの
関係を見ると、四十年ごとに大きく変わっています。ペルリが浦賀に来ましたのは、当時
アメリカの重要
産業は捕鯨であった、鯨を追って
日本の近海まで来たが、
日本が鎖国であるために薪炭の補給が得られない、そこで
日本の開国を迫りました。あれから四十年間、すなわち日露戦争の勝利までであります。この間、実に日米間はよかったのです。
しかし、日露戦争で勝った
日本に対し、
アメリカは非常に冷たい
態度となります。日露戦争の勝利から四十年というと、
昭和二十年八月十五日の敗戦までであります。この間の日米間をよく示すものは排日移民法であり、
日本人の労働力を締め出しました。そうして日米通商航海条約の廃棄であります。
日本にくず鉄を売らない、油を売らないと言い、とうとう太平洋戦争突入、そうして
日本の敗北となったのです。
それから四十年、すなわち
昭和六十年までです。この間、
アメリカは
日本に対しては賠償を
要求せず、ガリオア基金(占領地救済基金)、エロア基金(占領地
経済復興基金)、これをくれたおかげで
日本の復興が速やかになりました。そうして、
アメリカが自由貿易を堅持してくれたためにどんどんと
日本の輸出は伸びたのであります。それが今日の繁栄の基礎なのであって、私は
昭和六十年までは非常によかったと思います。
ところが、六十年になって
日本の
GNP一人頭が
世界一となり、
世界最大の債権国となったときに、また日米
経済摩擦が激しくなったのであります。したがって、これからもまだまだ日米
経済摩擦は激しくなると思いますけれども、
日本と
アメリカが提携していってこそ
世界の平和が維持できるのであります。そういう
観点から見れば、私は
基本は話し合いによる日米
協力関係を推進する以外に道はないと
考えるのであります。
この多事多端の国政を担当される
竹下総理並びに
関係閣僚に対し、その御努力に対して敬意を表しますが、同時に私が最後に贈りたい
言葉があります。熊沢蕃山は「憂き事の尚この上に積もれかし限りある身の力試さん」と言いました。「憂き事の尚この上に積もれかし限りある身の力試さん」であります。
どうぞ、まだまだ摩擦は激しくなりましょう。しかしながら、何としても平和を保ち、そうして輝かしい
日本を築くためには、閣僚諸君並びに竹下首相の御健闘を心からお祈り申し上げるのであります。
これをもって私の代表
質問を終えます。(
拍手)
〔
国務大臣竹下登君
登壇、
拍手〕