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1988-08-02 第113回国会 参議院 本会議 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年八月二日(火曜日)    午前十時一分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第三号   昭和六十三年八月二日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  議事日程のとおり      ─────・─────
  2. 藤田正明

    ○議長(藤田正明君) これより会議を開きます。  日程第一 国務大臣演説に関する件(第二日)  去る七月二十九日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。野田哲君。    〔野田哲登壇拍手
  3. 野田哲

    野田哲君 私は、日本社会党護憲共同を代表して、竹下総理を初め関係大臣に対して、当面する重要課題について質問をいたします。  質問に入る前に、先般来の豪雨によって大きな被害を受けられた島根県浜田市、広島県加計町を初め関係地域の皆さんに心からお見舞いを申し上げ、お亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りいたします。  また、政府に対し、速やかに災害対策の適切な措置がとられるよう要望いたします。  七月二十三日、海上自衛隊潜水艦と遊漁船が衝突し、三十名に上る犠牲者を出す海上自衛隊始まって以来という痛ましい事故がありました。不慮の事故に遭われた方々に心からお見舞いを申し上げます。お亡くなりになった方々の御冥福を祈り、御遺族方々の御心中いかばかりかと心からお悔やみ申し上げます。  事件を起こした潜水艦海上自衛隊のとった措置、また先般の当院における連合審査での防衛庁態度は、何とか責任を回避したいという言い逃れの態度、事実を隠そうとする態度が目立ち、犠牲者国民感情との間に大きなずれが感じられたことは極めて遺憾であります。事故調査が進むにつれて潜水艦側のミスが次第に明らかになりつつあるようでありますが、なぜ総理防衛庁長官はいまだに潜水艦は最善を尽くしたと強弁されるのですか。少なくとも、政府防衛庁対応が身内をかばったとの印象を持たれないような適切な措置を望んでおきたいと思います。  我が党は、既に総理に対して文書で申し入れているように、事故の真相を隠さず公表し、その責任を明確にすること、御遺族被害者に万全の補償措置を講ずること、軍用艦船を含めて東京湾海上交通安全確保のための総合管理計画を策定すること、また、そのための法的措置を講ずることを政府に強く求めるものであります。総理防衛庁長官にその所信を伺います。  さて、世界は今、二十一世紀を前にして、INF全廃条約批准からデタントの広がりなど新たな時代を迎えようとしており、我が国もまた大きな歴史の転換点に立っていると思います。このことは、我が国政策的な枠組みそのものの再検討が求められていることを意味しています。世界有数経済大国となった我が国世界の中での位置と役割は、大きくかつ重いものとなっています。政府の新経済五カ年計画がその表題を「世界とともに生きる日本」とうたったことは、その意味で当然と言ってよいと思います。  しかし、竹下総理政治哲学が、この「世界とともに生きる」ことにあるのかどうか、いま一つ不明確であります。総理は、「ふるさと創生論」を唱え、その延長線上で「地球ふるさと論」を語られました。総理、二十一世紀を前にした我が国役割とは、世界的な平和・軍縮動き平和憲法を持つ我が国が率先して対応することであり、相手国自立と発展に役立つ経済協力を積極的に進めることであり、地球的規模での環境の保全に尽力することなどでなければなりません。これは中曽根政権路線転換でなければならないと考えます。  ところが竹下政治は、依然として防衛予算を突出させてGNP一%枠を突破させたことや、公約違反大型間接税導入のたくらみ、経済情勢への正しい対応を欠いた縮小均衡財政運営の固執などに見られるように、それは中曽根政治継承そのものであります。前政権との違いといえば、中曽根総理が得意とされたトップダウン方式ではなくて、根回しの重視という政治手法の相違にしかすぎないではありませんか。竹下総理政治哲学とは一体何なのか、竹下政治政治理念とは一体何であるのか、以下、各論に触れながらそれをただしていきたいと思います。  まず、きのうのある新聞に紹介された一人の主婦の声があります。「リクルートコスモス株で、こっそりもうけていた政治家は、ずるいじゃないの。あれじゃ田中角栄の方がましよ。あんな人たち税制改革を唱える資格があるの?」、こういう言葉でありますが、お聞きになっていかがですか。  竹下総理、それから宮澤総理国民がこの臨時国会に寄せている大きな関心の一つは、リクルート問題について政治的、道義的にどうけじめをつけるのかということであります。  まるでぬれ手でアワをつかむようにではなくて、手もぬらさずにすくい取って何千万円もの大金が一度に転がり込んでくる。そういう庶民には想像もつかないうまい話が、どういうルートで、どういう目的政府与党最高幹部のところに持ち込まれたのか。そして、それが表ざたになると、異口同音に、秘書がやったこと、家族がやったことと責任を転嫁しておりますが、世間ではだれ一人として秘書が勝手にやったとは思っておりません。リクルートの江副前会長も、家族の方は存じ上げていない、秘書方々ともつき合いはないと語っているではありませんか。後ろ暗いからこそ、本人の名前を出さないで、家族秘書の名でやっていたのだと世間は見ているのであります。  この構造は、明らかに形を変えた金銭の贈与ではありませんか。しかもそれが、前総理、現総理、現蔵相、現幹事長、現政調会長を初めとした政府与党最高幹部周辺にばらまかれている。もし政策的な請託があったとしたら、実質的な贈収賄事件性格が極めて強いと言わなければなりません。  先日の殖産住宅相互会社に絡む贈収賄事件についての最高裁判所判断では、非公開株を上場前に取得できる利益もわいろに当たると認定していることは、今回のリクルート問題の性格を物語っているのではないでしょうか。既に、この問題にかかわった川崎市の助役は、その責任をとらされ、市長から解職されています。日経新聞の社長も、新聞人としての倫理上の責任をとり辞任しています。責任をとろうとしていないどころか、秘書家族責任を転嫁したり、単なる商行為でどこが悪いのかと開き直っているのは政治家だけではありませんか。これをこのまま放置することが責任ある政治と言えるでしょうか。  一体、竹下総理宮澤総理は、みずからの周辺のことも含めて政治的、道義的に政府与党としてこのことにどのようなけじめをつけようと考えておられるのか、また法的にどのような措置考えているのか、国民の納得のいくようなお答えを承りたい。  また、殖産住宅事件最高裁判断に照らして、今回のリクルート問題について法務省はどのように考えているのか。株式の授受の時期やその趣旨関係者職務権限有無等について調査すべきではないのか。法務大臣の見解を伺います。  次に、国際情勢認識とそれに対する方針について伺います。  INF全廃条約批准以来、米ソ間には新しいデタントの機運が広がり、アフガン、カンボジアにも和平の動きが本格化しようとしています。七年間続いたイラン・イラク戦争にも平和への模索が始まろうとしており、世界は久しぶりに緊張緩和時代を迎えようとしております。総理は、国際情勢のこの流れをどのように認識しておられるのか。緊張緩和とは見ていないのではないでしょうか。  竹下総理は、先般の第三回国連軍縮特別総会演説をされて、信頼協調をうたい、その基盤づくりのための外交努力を表明されました。しかし、日本にとって解決しなければならないのは、最大の外交的懸案である日ソ関係日朝関係について対話の推進による信頼協調でなければなりません。しかし、これは発展しておりません。  日ソ関係においては、北方領土問題と相互軍縮の問題が同時に存在をしております。朝鮮半島の問題では、制裁の早期解除経済的、外交的な相互交流正常化韓国政府の側からさえ提起されるに至っております。このような平和的な雰囲気の醸成の中で、初めてオリンピックの成功もあり得るのではないでしょうか。これらの課題について総理はいかなる外交的イニシアチブをとられようとしているのか。国民は、政府のいたずらな軍拡路線治安対策軍事的対応によるオリンピック防衛論に危惧の念を抱いております。言葉だけではない信頼協調への展望を明らかにしていただきたい。  このような観点から申しますと、初めに一%突破ありきの軍拡政策は明らかに誤りであり、総理自身国連演説とも矛盾していると言わざるを得ません。平和へ向けての信頼協調を言うなら、緊張緩和軍縮へ向けての日本基本的なスタンスをまず示すべきであります。みずから軍縮への決意と実績を示すことで平和への発言力も強まるのではないでしょうか。総理が旧態依然たる抑止と均衡論を脱却されることを強く要請したいと思いますが、総理の御所見はいかがでしょうか。  また、日本防衛費経済成長円高が相まって、結果的には昭和六十二年度はGNPの一%以内におさまりました。国民世論調査でも、これ以上の防衛費の増大に反対の声が圧倒的に多いのであります。アジア諸国においても、米国においてすら、これ以上の日本軍拡は危険であるとの声が高まっております。  総理、国際的な配慮からも、国内世論の考慮からも、さきに私が述べた平和へのイニシアチブの上からも、この際、防衛費GNPの一%以内という歯どめを復活させるべきではないでしょうか。総理の明快な御答弁を期待いたします。  また、総理は、アフガン問題などについて「平和のための協力」をうたわれています。今後、地域紛争解決に当たっては各地で日本対応が問われることになると思いますが、要員の派遣について国連要請があったとしても、少なくとも自衛隊員派遣はしないこと、軍事的にはもちろんのこと、紛争への一方的な介入にも関与しないことなどの原則をこの場で確認いたしたいと思いますが、いかがでしょうか。  また、総理は、「世界に貢献する日本」ともうたわれています。しかし、それが国際社会における平和と社会正義実現のために具体的にどう行動することになるのか、極めて不明確であります。ODAの増額だけでなく、フロンガス、地球砂漠化開発による環境破壊などのグローバルな環境問題や、南アフリカ、東南アジアなどで頻発している人権侵害問題など日本への期待と要求は強いものがありますが、これらにどう対処されるつもりか、具体的にお示しいただきたい。  特に、ことしは世界人権宣言四十周年であります。日本もまた国内に被差別部落問題、在日外国人の処遇や出稼ぎ労働者の問題、アイヌへの差別、精神障害者問題など多くの人権問題を抱えております。これら諸問題に対して、総理人権問題という角度からどのような認識対策をお持ちなのか、明らかにしていただきたい。  次に、先般のサミットについてお伺いいたします。  サミット政治宣言は、西側ソ連との関係の最近の変化INF条約について、西側諸国が「強固で団結してきたことによってもたらされた」とか、「断固たる態度と団結の直接的な結果」などと、依然として力の政策西側優位の立場を変えていません。総理は、デタント動きに大きな影響を与えたはずの世界的な反核・平和の運動の高まりや、ソ連のペレストロイカを初めとする外交姿勢変化について、どう評価をしておられるのでしょうか。  また、政治宣言は、ソ連軍事力の脅威に関して、「我々の目標は、現在の戦力の不均衡を解消した後、より低い戦力レベル安全保障と安定を高めることである。」と言っています。これは直接かつ即時の軍縮へのイニシアチブを放棄して、まず軍拡という立場を正当化する口実づくりにすぎないとも読み取ることができます。ソ連の極東における軍事力との不均衡を言うのであれば、相互に引き下げる方向で解決すべきではないでしょうか。日ソ間の軍事的なレベルダウンの交渉は今すぐににでも始めることができるはずであります。総理にそのお考えはないのでしょうか。  経済宣言については、余りにも楽観的過ぎるとの批判も多くあります。例えば債務問題でも、アメリカの抱える世界一の債務途上国の一兆ドル以上の累積債務との解決策について、経済宣言はいずれ当該国調整構造改革に言及するにとどまっています。しかし、これらは従来のマクロ経済調整構造改革がうまくいかなかった結果として問題になってきたのではないでしょうか。大蔵大臣の御見解を承りたいと思います。  また、経済宣言は、「各国が最貧国に対する将来の援助において高いグラント・エレメントを維持するよう要請する。」と述べています。総理は、日本ODAの比率において、借款の割合を減らし、最貧国や最貧困層への無償援助を彼らの自立努力と結びついた形で増加させる考えをお持ちですか。あるならその目標値を示していただきたい。  また、総理サミットで発表された最貧途上国の対日累積債務七千億円の棒引き方針は、以前から日本ODA借款中心であるとの批判があることへのおくればせの対応であります。今後は無償協力を量的にも中心にするとの公約ができないものでしょうか。総理のお考えをお伺いいたします。  政府が先般発表し、総理自身サミット公約されたODAを今後五年間で五百億ドルにするという中期目標は、私の計算ではGNP比にすると〇・三四%にしかなりません。これは、最低当面〇・四%を達成目標とし、急いで国際目標である〇・七%が達成できるような計画を立てるべきではないでしょうか。  さて、既に一兆円を超えるに至った日本の巨額のODA予算支出については、その理念も明確でなく、国会関与もなく、責任体制実施体制がばらばらであります。国民のとうとい税金が投入されていることにかんがみ、この際、最貧国、最貧困層中心にした開発途上国自助努力支援との理念目的を明確にし、国会関与と行政の一 元化を図り、国民への情報公開等を明記した国際開発協力基本法を制定すべきではないでしょうか。総理の御見解を示していただきたい。  なお、ODAのあるべき理念からして、東西論に立った西側戦略的要衝へのいわゆる戦略援助はやめるべきであります。最近とみに強まっているアメリカからの戦略援助肩がわり要請については、この立場から拒否すべきであります。まして、軍事政権への援助民主主義人権観点からも停止すべきであると考えますが、総理はいかがお考えでしょうか。  サミット経済宣言は、その附属書の中の日本くだりで、「税制改革を推進する。」となっています。しかし、その意味は、あくまでその前段にある「内需主導型成長への一層の依存を維持し持続させる」ための構造改革の一環であると私どもは受けとめています。とするならば、大幅減税不公平税制是正こそがこの目的にかなうものであり、消費税はその趣旨に反すると思いますが、総理の御意見を承りたい。  また、このくだり国際公約とみなして消費税導入に利用することは許されないと思いますが、いかがでしょうか。  次に、税制改革についてただしたいと思います。  昭和六十二年度の税収は、当初予算比で七兆四千億円、補正予算比でも三兆七千億円の増収であることが明らかになっております。このような極端な過小見積もりは、消費税導入への口実づくりであり、減税要求を抑えるための意図的なもので、国会国民に対する背信行為と言わざるを得ません。この結果、六十二年度の税収は、六十三年度税収の当初見込みさえも一兆七千億円も上回っています。このような大幅な見込み違いのもとでは、国民信頼を得る税制改革論議はできないのではないでしょうか。総理並びに大蔵大臣責任ある御回答を求めます。  さて、政府が望んでいる大型間接税としての消費税導入は、国民国会に対する重大な背信行為にほかなりません。  まず第一に、一九七九年第九十一国会冒頭衆参両院会議で、いわゆる一般消費税国民の理解を得られなかった、したがって財政再建一般消費税によらず進めるとの決議がなされているのであります。  次いで、一九八五年二月の衆議院予算委員会で、当時の中曽根総理が「多段階、包括的、網羅的、普遍的で大規模消費税を投網をかけるようなやり方でやることはしない」との統一見解が示されております。  さらに、翌年の総選挙の際、自由民主党は、いわゆる大型間接税導入しないという公約を掲げて衆議院三百四議席を獲得し、現在に至っているのであります。  今回、政府税制改革と称して導入しようとしている消費税は、明らかにこのいずれにも背反する大規模消費税大型間接税にほかならないではありませんか。この国会決議政府統一見解選挙公約、いずれにも反していることについて、総理国民に対してどのような説明をされるのか、明快な御答弁を求めたいと思います。  自由民主党安倍幹事長は、今回の税制改革について、多数決が議会政治本質だ、このように述べていますが、議会政治本質を言われるのであれば、選挙公約国民にやらないと約束をした大型間接税は、やらないことこそが議会政治本質ではないでしょうか。総理の御所見をお伺いいたします。  また、税制改革理念目的について、大平内閣以来二転三転しており、国民は何が一体必要だから税制改革をやるのかと、大きな懸念を持っています。竹下内閣税制改革理念目的は何なのでしょうか。また、それは大平内閣中曽根内閣のそれとどこがどう違うのか、明らかにしていただきたいと思います。  国民が今税制に関して一番強く望んでいるのは、不公平、不公正の是正であります。今回の政府改革案では、金持ち優遇基本は変わらないどころか一層促進をされています。所得税減税の仕方もそうでありますし、キャピタルゲイン課税についても新たな不公平が生ずる手法がとられており、私たちはこれを認めるわけにはいきません。総理は、この法案によってどれだけ不公平が是正されるとお考えか、明確な御答弁をいただぎたい。  総理は、去る三月の予算委員会で六つの懸念、その後さらに一項加えて七つの懸念を挙げられました。これらの懸念は今回の税制改革案でどのように解消するのでしょうか、具体的にお答えいただきたいと思います。  結果的には低所得層老人世帯などを直撃する逆進的なものであることは疑いありません。我が党の試算でも、減税増税をプラス・マイナスすると、標準世帯年収三百七万円以下、共稼ぎ世帯年収八百五十六万円以下の層には、かえって増税となることが判明しております。総理はこのことについてどう説明されるのでしょうか。  さらに、この種の大型間接税は、やがては税率が逐次引き上がられていくという可能性、事例を多分に持っています。総理は、この消費税税率が三%のまま不変であると明確に保証できますか、イエスかノーで明確に答えていただきたい。  次に、産業構造転換国民生活の問題についてお伺いいたします。  農業問題は明日の同僚梶原議員質問に譲ります。  政府が現在進めている内需型への転換策は、短期的な視点からの輸出抑制輸入促進という貿易摩擦対策だけが前面に出ています。しかし、長期的に考えるならば、世界経済の将来と国民生活のあり方を考えた本格的な内需型構造への転換策が必要であります。政府はそのトータルビジョン国民に示すべきであります。この点について総理はどのようにお考えでしょうか。  現在、産業環境変化産業構造転換に伴って、これに容易に対応できない地域産業労働者などが生まれています。特に、高齢者や技術的に対応力のない人々生活、就業問題は極めて深刻であります。一口に産業構造転換とよく言われますが、それにはこのような深刻かつ重大な犠牲が伴うことは、当然にもあらかじめ想定されておくべきであります。このような例は全国至るところに露呈をしております。  例えば、広島の因島の造船関係者や、瀬戸内海の架橋によるフェリーボートや連絡船従業員の問題、北海道の炭鉱離職者北洋漁業乗組員など、直接の原因はそれぞれに異なっていても、皆、経済社会の条件の変化の中で困難な転業、転職を強いられている人々であります。政府としてこれらの地域人々にどのような対応を実施されるおつもりなのか、具体的な内容についてお聞かせいただきたい。  次に、土地対策について伺います。  経済審議会が出した「経済運営五カ年計画」によりますと、豊かさを実感できる国民生活実現を唱え、土地住宅政策にも確かに触れられています。しかし、サラリーマンが一生働いても家一軒手に入れられないという地価の現状を放置しては、その言葉もむなしいと言わざるを得ません。地価を引き下げ、同時に宅地の供給を増大させるために、土地保有税導入を含めた思い切った土地対策が必要ではないでしょうか。総理の御見解をお示しいただきたいと思います。  また、一極集中是正と多極分散型国土の形成について一言ただしたいと思います。  政府東京一極集中是正策として政府機関地方移転を打ち出していますが、これでは決定的に不十分と言わざるを得ません。東京一極集中は、東京にある政府企業本社などの権限財源の歴史的な一極集中によるところが大きいのではありませんか。だとするならば、政府は、まずみずからの権限財源を地方自治体に移管すること から始めるべきであります。この点について総理のお考えをお伺いいたします。  竹下内閣が発足して九カ月が経過いたしました。この間を通じて、竹下総理政治哲学とは何か、また、内外の諸課題に対する政治スタンス政治手法はどうなのか、国民には判断しにくい政治が続いています。竹下政治哲学政治手法について、ある人はコンセンサスと一言で評しています。もしそうだとするならば、竹下総理コンセンサスとは相手を取り違えたコンセンサスと言わざるを得ません。  例を挙げると、牛肉やオレンジの自由化問題では、日本の農民とのコンセンサスではなくてアメリカ政府とのコンセンサス消費税導入について言えば、大企業業界団体とのコンセンサスやその上に立った自由民主党内のコンセンサスであって、消費税を払うことになる国民とのコンセンサスは全く形成されておりません。  竹下総理は先日の所信表明で「若聞人なくば、たとひ辻立して成とも吾志を述ん」、こう先哲の言葉を引用して税制改革決意を述べられましたが、それならば、今回の税制改革法案をまず撤回してつじ立ちされるか、さもなくば、国民の意思を問うために衆議院を解散してつじ立ちされるべきであると強く指摘をして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣竹下登登壇拍手
  4. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず、西日本中心とする大雨によりまして被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。と同時に、お亡くなりになりました方々の御冥福をお祈りいたします。  この災害に対しましては、一市一町において災害救助法を適用いたしますなど、被災住民方々に対する救助、救済に全力を挙げてきておるところであります。去る七月二十八日には両県に政府調査団派遣したところでありまして、被害状況の早急な把握に努めますとともに、対策に万全を期してまいりたい、このように考えております。  次は、第一富士丸についての御質問であります。  今回の事故及び事故処理をめぐりまして、自衛隊一般国民感情の間にずれがあるという御指摘が多数あったことは十分認識をいたしております。今日我が国防衛にとって重要なことの一つは、国民から信頼され親しまれる自衛隊を確立することであります。こうした見地から、今回の事故は真摯にこれを受けとめまして、その教訓を生かし、よりよき自衛隊の確立に心を引き締めて努力していかなければならない、このように考えております。  このため、この事故の原因等につきましては、多角的に調査検討を行いまして、御指摘の、公表すべきものは公表し、将来の事故防止に努めていく所存であります。被害者方々に対する補償につきましても、事故原因調査結果を踏まえ、適切に対応していく考え方でございます。  なお、その段階においてそれぞれ責任の所在を明らかにすべきものと考えております。  さらに、海上交通安全確保につきましては、この二十七日、自衛隊の艦艇を含む船舶の航行安全に関する当面の措置を決定したところでございますが、今後事故原因の速やかかつ徹底的な究明の結果を待って一層航行安全対策を講ずる所存であります。  次は、リクルート事件政治責任、道義的責任についてのお尋ねがございました。  いわゆるリクルートコスモスの問題につきましては、まず、株式公開に至るプロセスが投資家保護及び公正な証券取引の確保といった見地から適切な規制のもとに置かれていたかどうかという点につきましては、現行法の定めるところによりまして調査検討を進めますとともに、我が国経済社会における健全かつ公正な証券取引の確保という観点から、現行制度に欠けるところはないか、関係者の御意見も十分承りました上、改善すべきはきちんと対応していく考え方であります。  また、問題とされて指摘されております政治家、その関係者が含まれておるではないかという点でございます。  それぞれの取引に当たった人は現行制度のもとにおいてみずからの責任において行われたものであるといたしましても、たとえそれぞれの行為は現行制度に許された経済取引であるにいたしましても、国民感情として割り切れないものがあるという批判はしっかりとこれを受けとめるべきであると考えます。したがって、私を含む、李下に冠を正さずの教えどおり、一人一人の政治家として今後とも十分心してまいりたい、このように考えておるところであります。  続いて、国際情勢全般の認識についてのお尋ねがありました。  先般、イラン政府国連安全保障理事会決議五九八の受け入れを公式に表明いたしましたことは、同決議実現に向けての重要な第一歩であり、我が国としてはこれを歓迎するものであります。また、INF条約の署名は、西側の結束のたまものであり、核軍縮の第一歩として大いに歓迎するところであります。  ただし、米ソ関係を軸とするいわゆる東西関係は、基本的にはなお厳しい現実が存在しておることも事実であります。またそのほか、国際情勢には依然不安定な要因があることも事実であります。いずれにいたしましても、我が国としては、東西関係を含む国際情勢の一層の安定化のために、今後とも可能な限りの努力をしてまいる所存であります。  ソ連、北朝鮮との関係にお触れになりました。  最近の日ソ関係は、実務関係の諸分野では着実に進展しておりますが、北方領土問題及び平和条約締結問題については進展を見ていないのが現実であります。政府としては、日ソ関係を真に安定したものとして広範な協力関係を確立するためには北方領土問題を解決して平和条約を締結することが不可欠であるという基本方針をまず踏まえまして、日ソ関係進展のために今後ともあらゆる努力を続けてまいる所存であります。  北朝鮮との関係につきましては、我が国としては、韓国との友好協力関係の増進を大前提としながら、経済、文化等の諸分野における民間レベルの交流を積み重ねていくことが基本方針であります。ちなみに、去る七月七日の盧泰愚大統領の特別宣言を受けまして、我が国としても一定の条件のもとに日朝関係の改善の考えを示したところであります。いずれにいたしましても、第十八富士山丸問題の解決が極めて今は重要なことであるというふうに問題意識を持っております。  なお、対北朝鮮措置につきましては、オリンピック終了時に、テロ再発防止等の本件措置目的達成状況とか朝鮮半島をめぐる国際情勢等を総合的に勘案して、その後どうするかを検討していくという基本考え方を今日持っております。  いわゆる国際緊張緩和軍縮にお触れになりました。  平和と軍縮は現下の国際社会の緊要な課題であることは言うを要しません。私の現下の国際情勢に関する認識については既に述べましたとおりでございますが、かかる国際情勢を踏まえまして、我が国としては実効的かつ具体的な軍縮実現のために今後ともできる限りの努力をいたす所存であります。  防衛費の対GNP比にお触れになりました。  六十二年度防衛関係費の対GNP比は、決算ベースでは御指摘のように一%を下回る見込みでございます。が、決算というものは予算を整斉と執行していった結果として出てくるものでありますので、積極的な政策意味を持つとは言いがたいと思います。いずれにいたしましても、政府としては、今後とも昨年一月の閣議決定の方針に従いまして節度ある防衛力の整備を行ってまいりたい、このように考えておるところであります。  平和維持活動への要員派遣にもお触れになりました。  国際協力構想の一つの柱である平和のための協力についてのお尋ねでありますが、そもそも国連の平和維持活動は、個々の事例によってその目的、任務が異なっております。したがって、その目的、任務から自衛隊のそれへの参加の可否を一律に論ずることはできませんが、現行自衛隊法上は自衛隊にそのような任務を与えておりませんので、これに参加することは許されておりません。さらに、国連の平和維持活動そのものが関係当事国の要請に基づいて中立公平の立場より行われるものでございますので、対立しておる一方の国に肩入れする、このような考え方は全く持っておりません。  地球環境問題でございます。  さきのサミットでも、その積極的な取り組みを私自身も強調してまいりました。この問題は、環境庁の地球的規模環境問題に関する懇談会、この検討結果等をも踏まえまして、科学的知見の集積と技術開発の強化、それから国連環境計画等の国際機関を通じた協力開発途上国環境保全への支援等によりまして、地球環境問題に一層積極的に取り組んで国際的貢献を果たしたいと、このように考えておるところであります。  南ア問題にお触れになりました。  南アフリカにつきましては、我が国は南アのアパルトヘイト政策に一貫して断固反対をいたしてきております。南ア政府に対しては今後とも毅然たる態度で臨む考え方であります。  なお、各国の状況につきまして一般論として申しますならば、我が国としては各国の人権状況の改善を促進するような現実的なアプローチをとることが適当である、このように整理いたしておるところであります。  人権問題についてお触れになりました。  国内的にも、子供、老人、女性、障害者等に関する人権問題、御指摘のありました部落差別問題、社会の国際化に伴う外国人等の人権問題など、広く社会のあらゆる局面において人権に関する問題が起こされておることは十分承知いたしております。ことしは、御指摘のように世界人権宣言四十周年に当たりますので、関係各省庁がそれぞれの立場で啓発などを行いまして、一層問題解決のために努力をしてまいりたい、このように考えます。  反核、ペレストロイカについて申し上げます。  平和の維持と軍縮促進は人類共通の願いであります。他方、既に言及いたしましたとおり、米ソを軸とする東西関係基本的には依然として厳しい現実があります。こうした現実のもとで、我が国としては今後とも平和と軍縮促進のための国際的努力に貢献していく考え方であります。  ゴルバチョフ政権は、その成立後、対外政策面においても従来とは異なるダイナミックな政策を展開されておる。我が国としても、ソ連の体制、政策に不変の部分があることは十分認識をしながら、ソ連政策のうち肯定的な面は正当にこれを評価して、かつ我が国基本的利益を踏まえて、ソ連の動向を注視して対応していく考え方であります。したがって、ペレストロイカ、またグラスノスチ等我が国政策にそれぞれ反映していくことを心から期待しておるところであります。  日ソ間の軍事レベルダウンについても御言及がありました。  ソ連が北方領土の不法占拠、極東ソ連軍の増強等を是正してもらうことが先般の中曽根・ゴルバチョフ会談にも指摘されたところであります。  なお、アジア・太平洋地域の軍事情勢を含め、安全保障問題についての話し合いは既に日ソ外相定期協議、事務レベル協議等で行われておりまして、これらの場で我が国考え方は繰り返し繰り返しソ連側に伝達をしておるところであります。  最貧国に対する無償援助であります。  後発開発途上国、いわゆるLLDC、これに対します援助につきましては、我が国としても今後一層の無償化を促進していくべく先般のODA第四次中期目標の中で明らかにした次第であります。この趣旨に沿って、相手国経済財政困難など個々の状況を勘案しながら適切な対応の仕方をしていくべきものであります。  そうして、今般設定したODA第四次中期目標におきまして、量的拡充とともにODAの質の改善を図るとの観点から、無償資金協力についてはその拡充、なかんずくLLDC対策の重要性にかんがみまして、対LLDC援助の一層の無償化と債務救済措置の拡充に努めるという方針を打ち出してきたところでございます。御指摘いただいたことにこたえるゆえんのものであります。この方針に従いますならば、無償資金協力が一層拡充されていくというふうに考えておるところであります。  GNP比にもお触れになりました。  今般決定したODAの第四次中期目標において、先進援助国のODA総額に占める我が国の分担割合を、中期目標計画期間中に先進援助国中の我が国経済規模に見合った水準に引き上げることを念頭に置いて、一九九二年までの向こう五年間のODA実績総額を五百億ドル以上とするよう努めました。あわせてODAの対GNP比の着実な改善という方向を目指しておるところでございます。  基本法の問題であります。  私も読ましていただきました。理念国会関与あるいは機構の問題等に触れられております。  我が国は、開発途上国経済社会開発の自助努力を支援するとの理念に基づきまして経済協力を実施してまいっております。この実施に際しましては、国会に対しても、相手国立場も配慮しつつ所要の報告、資料の提出等を行いますとともに、情報公開にも努めてきておるところであります。援助に対する国民の一層の理解を得るべく、今後も努力してまいる考え方であります。  我が国経済協力実施体制は、全体として、いわゆる四省庁体制ということにもお触れになりましたが、順調に機能しておると考えております。これをいかにして一層効果的、効率的に実施していくかということについては絶えず意を用いているところでありまして、今のところ、御指摘援助基本法の制定ということは考えていないという実情であります。  さらに、戦略援助軍事政権への援助、これはやってはならぬと、そのとおりでございます。あくまでも相互依存と人道的考慮という基本的な考え方に基づきまして、民生の安定、福祉の向上に貢献していく、こういう考え方でございます。軍事的用途に充てられる援助は行わないという基本方針でございます。  次に、消費税にお触れになりました。  納税者の重税感、不公平感を解消して、高齢化の進展や経済社会の一層の国際化に対応しながら経済の活力を維持していくため、課税の公平、中立、簡素の基本原則のもとに現行税制を抜本的に見直して、国民が公平感を持って納税し得るような税体系を構築することが何よりも急務であります。  サミット経済宣言におきまして、構造改革観点から税制改革の推進について言及をいたしたことは事実であります。それは、いわゆる国際公約を背景にしてという意図はございません。そして、消費税導入を含む今般の税制改正というのは、全体として経済に好ましい影響を与えるものであるというふうに考えておるところであります。  税収見込み違いについて申し上げます。  税収見積もりは、その時点における政府経済見通しや課税実績など利用可能な資料の限界の中で最大限の努力を行ってまいるものであります。したがいまして、確かにいろいろなことから法人税を中心に大幅な増収が生じたことは事実でありますが、税収見積もりは客観的資料に基づいて行ったものであって、これは意図的な見込み違いというものではないということをはっきりしておきたいと思うのであります。  さらに、財政再建決議から統一見解選挙公約等にお触れになりました。  一九七九年すなわち昭和五十四年の財政再建決議、当時私も大蔵大臣でありました。そして六十年のいわゆる統一見解、また六十一年六月選挙の際の中曽根前総裁の発言、政府としてはこれらを重いものと受けとめておることは事実であります。それらを検討の上に検討を重ねた末昨年二月に売上税法案を提出いたしましたが、御案内のように、さまざまな批判があって、審議未了のまま結局廃案となりました。  こうしたいわば一連の反省の上に立って厳粛に、謙虚にこれらを受けとめまして、さて、国民の理解を得られるような税制の確立という観点からどうしたらいいか、それこそ各方面の意見を伺いながら、消費税の創設を含みます今般の税制改革案を取りまとめたものであります。  議会政治本質については、私は、さまざまな案件につき、いろいろ異なる意見を代表する者がお互いに議論し合って、そして苦しい選択の中から立法府としての意思を固めていくことによって国民の負託にこたえる、これが議会制そのもののあり方であると思います。したがって、その意味において、現下の最重要課題であります税制の抜本改革につきましては、どうか十分な御審議を賜りますことを、この際、心からお願いを申し上げる次第であります。  さて、理念が二転三転したではないか、こういう御指摘でありました。  確かに、大平内閣のもとにおいて財政再建のための一般消費税(仮称)の導入が問題とされ、そして中曽根内閣のもとにおいては減税のための財源、こういう売上税の導入という議論が行われたことは私も記憶いたしております。今回の税制改革においては、税制改革法案第四条に規定しますとおり、所得課税において税負担の公平の確保を図るための措置を講じますとともに、脱体系全体として税負担の公平に資するため、所得課税を軽減し、消費に広く薄く負担を求め、資産に対する負担を適正化すること等によって、国民が公平感を持って納税し得る全体的な脱体系の構築を目指して行われるものであります。これまで十年にわたる税制改革の試みは、いずれも戦後の経済社会変化に即応して、国会におかれてもよりよき税制の構築を図るという意味で御議論をいただいてきたわけであります。私は、そういう基本的な考え方もまた否定することはできないと思うのであります。  さて、現行税制の不公平是正の問題であります。  負担の公平は税制に対する納税者の信頼の基礎となるものでありまして、今次の税制改革法案におきましても基本原則の一つとして定められておるところであります。現行税制のもとで直接税、とりわけ給与所得に対する税負担の重さが不公平感を募らせていることから、脱体系全体を見直す必要がありますほか、個別消費税の持つ不公平を根本的に改めますとともに、御指摘がありますいわゆる不公平税制是正を図りますことによって国民の理解と協力を得ようとするところであります。  そこで、それについて私が先般の国会で申しましたいわゆる間接税の持つ六つの懸念、あるいは最近申しております転嫁問題についての七つの懸念等について御質問がございました。  いわゆる逆進性の問題は、脱体系全体として、また歳出面をもあわせて考えるべきものでございますが、今次税制改革におきましては、大幅な所得減税などによりまして中堅所得者を中心に税負担の軽減を図っていこう、それには各種控除の引き上げによって課税最低限を引き上げることとしたい。さらに、消費税導入に伴って物価への影響が出る場合においては、生活保護等について適切な歳出での配慮を行おう、こういう考え方であります。  そしてまた、懸念一つであります税率の引き上げが安易に行われるのではないかという懸念につきましては、恐らくヨーロッパにおいて絶えず所得減税と兼ね合いで消費税率が上がってきたという事実を御認識の上の御質問であろうと思うわけでありますが、この税率引き上げ問題というのは、これはとにかくここまで三%というものを構築していくためにもろもろの議論がありました。そして、何としても国会こそがこの税率についての最大の歯どめである、私はこのようにいつも考えておるところであります。  さらに、いわゆる納税義務者の方の事務負担等についての懸念も申し上げました。これは簡易課税制度等最大限の配慮をいたしたところであります。  また、インフレの問題につきましての懸念も申し上げましたが、価格を通じての税負担として一回限りの値上がりは甘受していただかなければならない、このように考えます。既存間接税の廃止もありまして、消費者物価の上昇は一%強の見込みでございます。なお、逆に転嫁を確実にしていくためには、これは独禁法等々法律、行政両面で最大の努力をしていかなければならないというふうに考えておるところであります。また、これに伴う便乗値上げでございますとか、あるいは俗称下請いじめでございますとか、そういうことにならないような配慮も十分監督していく所存であります。  また、税制改革の家計負担に与える試算につきましては、いろいろな種類のものが公表されております。前提の置き方で違いはございますものの、政府試算は統計資料等に基づいて標準的、客観的なものでございますので、どうか御審議の際、十分御参考にしていただければ幸いであります。  税率水準の問題は、さらにつけ加え強調いたしますならば、まさに国会そのものが歯どめであるという基本考え方に立つべきであると思います。  産業構造転換国民生活についてお触れになりました。  我が国にとって内需主導型の経済構造を定着させますことは、豊かさな実感できる国民生活実現いたしますとともに、産業構造調整の円滑化を図っていくためは極めて重要なことであります。政府におきましては、このような視点に立って先般新しい経済計画、御指摘なさいました「世界とともに生きる日本」を策定いたしました。この展望と経済運営の指針を示したところでありまして、今後は本計画を着実に実施して、内需主導型経済成長の一層の定着を図ってまいらなければならないというふうに考えております。  その間、産業構造転換に伴って生ずる各種の雇用問題に的確に対応することは重要な課題であると思います。おっしゃるとおりであります。かかる観点から、先般、第六次雇用対策基本計画を策定して、産業構造転換等に対応する中長期的な観点からの雇用対策基本的な方向づけを行ったところでございます。  御例示なさいました御指摘のような地域人々についても、地域雇用開発促進法に基づく地域雇用開発に努めますとともに、まず一つ、特定不況業種等雇用安定法、国会でそれぞれ議了していただいた法律であります。本四連絡橋の建設に伴う特別措置法、炭鉱離職者臨時措置法、漁業離職者臨時措置法、これらの特別の対策法に基づきまして、今後とも各種給付金の支給等特段の措置を講ずることによって、その雇用の安定に努めてまいりたい、このように考えておるところであります。  土地対策であります。  近年の地価高騰に対して、税制面では、いわゆるミニ保有税の強化を初めとして各種の措置を講じてまいりました。最近の地価動向を見ますと、東京都、神奈川県等の地価が鎮静化の傾向がある、これは確かであります。しかし、これは十分であると決して思っておりません。今後とも、総 合土地対策要綱等に基づきまして、税制を含め、監視区域制度の機動的な運用、金融機関等に対する引き続いての指導、諸機能の地方分散、住宅宅地の供給等を内容とします総合的な土地対策の推進に努めてまいろうと、こういうふうに考えておるところであります。  地方自治体への行政権限また財源の移譲、これにお触れになりました。絶えず議論され、私どもも傾聴に値するものとしていつも対応しておるところであります。  四全総でも示されておりますように、地域特性を生かした魅力ある地域づくりがまず重要であります。国と地方を通じますところの行財政改革の推進、これももとより重要であります。こういう観点から、国と地方の機能分担のあり方等について幅広い見地で見直しますとともに、多様な財政需要の増大に対しましては、地方財源の確保と安定のため今後とも適切な措置を講じていくべきものであると、このように考えます。  最後に、私の政治哲学税制改革、解散問題にお触れになりました。  私の政治哲学につきましては、所信表明の文言を引きながら御批判がございました。確かに私は、コンセンサスの形成こそが民主主義のいわばとりでであると、このように思います。議会制民主主義はひっきょう多数決によって決せられるものとはいいながら、議会政治本質は、異なる意見をぶつけ合う中で、立法府としてそれぞれ苦しい政策の選択を行うことにあるではなかろうか、このように考えます。  国会に与えられた使命はまず論議を交わすことであります。そして、今次税制改革案につきましても御審議をお願いする次第であります。そのような使命を持っておりますだけに、軽々に選挙というものはよりまして与えられた任期をみずからが短縮するというようなこと、これこそ与えられた任期は大事な大事なものであるということを重ねて申し上げて、以上をもってお答えを終わります。(拍手)    〔国務大臣瓦力君登壇拍手
  5. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 自衛隊潜水艦と民間船舶の衝突事故における防衛庁態度についてのお尋ねでございますが、私は、今回の事故において多数のとうとい人命が失われたという事柄の重大性につきましては十分認識いたしております。まことに痛恨のきわみであります。  今回の事故の原因につきましては、海上保安庁初め関係機関において調査が行われておりますが、私といたしましては、今後ともこれら機関の調査をも参考にしつつ、何ゆえに今回のような事故が発生するに至ったかをあらゆる角度から徹底的に究明し、再発防止策を早急に確立することが私に課せられた何よりも重要な責務であり、このことに防衛庁の全力を挙げて取り組んでまいる決意でございます。したがって、かりそめにも防衛庁内において責任回避や言い逃れがあるといった姿勢、かようなものはあってはならないことであり、またないものと考えております。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一君登壇拍手
  6. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) リクルートの問題につきましては、総理大臣がお答えになられましたが、私の場合につきましては、私の事務所の判断に慎重を欠いた点がございました。その点は、私といたしまして監督が不十分であったと反省をいたしております。今後十分注意をいたします。  なお、この問題の制度面の問題につきましては、総理大臣が詳しくお答えになられましたので重複を避けさせていただきます。  次に、トロント・サミット経済宣言についてお触れになられました。  先般のサミットは先進国経済が比較的順調に成長を続けております中で開かれ、それは各国の政策協調の結果であると考えることができると思います。しかし、御指摘がありましたように、例えばいわゆる累積債務問題についての対話は残念ながら不十分であったと申さなければならないと思います。  いわゆる最貧国、サブサハラ等の諸国への債務免除の点につきましては具体的な成果があったと存じますけれども、もっと大きなラテンアメリカ等々の累積債務国の問題についての対策はやはり十分でなかったと申さねばならないと思います。  この問題の解決策は、結局債務国の自助努力を前提に、国によっていろいろな組み合わせがあるとは存じますけれども、私どもの考えからいいますと、やはりその中でも国際機関が、例えばIMFであるとか世銀であるとかいうところがもう少し何らかの積極的な寄与、関与をいたすことが必要ではないかというふうに考えておりまして、我が国の場合などはそういう国際機関の努力を援助する、あるいは国際機関と一緒に努力をするということが国民的な支持が得やすいゆえんではないかと、私どもはそう考えておりますが、問題はそういうことで将来に残ったというふうに思っております。  それから、税収の見積もりについておしかりがございまして、これは先ほど総理も触れられましたが、見積もりには最善を尽くしたつもりでございますけれども、結果としては法人税を中心に大幅な増収が生じました。過小見積もりであれ過大見積もりであれ、見積もりを誤ったという点では同じことでございますので、御批判は甘受しなければならないと思います。  私ども最善を尽くしたつもりではございますが、考えてみますと、やはり我が国経済がかなり根本のところで変わっているのではないか。例えば、サービスが経済に持っている比重が非常に大きくなっている、あるいはいわゆるハイテクノロジーというものが各分野で非常な力を持つようになった、また大きな為替の変動があった、あるいは国際化が急速に進んでいる等々、従来の手法だけでこれからの歳入見積もりが行えるかどうかということについて省内でも実は再検討をいたしております。  見積もりを間違えましたことは御批判を甘受いたさなければなりませんが、しかし、消費税等を導入するためにわざわざ見積もりを間違えたのではないかということにつきましては、それは思いも及ばぬことでございます。(拍手)    〔国務大臣林田悠紀夫君登壇拍手
  7. 林田悠紀夫

    国務大臣(林田悠紀夫君) いわゆる殖産住宅事件並びにリクルート問題につきましてお答えを申し上げます。  殖産住宅事件につきましての最高裁判所の決定は、証券監査官等がその職務に関し、株式上場直前に公開価格で新株の割り当て等を受けて利益を得たという事案に関するものであり、いわゆるリクルート問題に直ちに当てはめられるものではないと考えられます。  いわゆるリクルート問題につきましては、検察を含めた捜査機関が各種の報道あるいは国会の御論議等を注目しているものと思いまするが、もしそこに犯罪の嫌疑がありとすれば適切に対処するものと確信をいたしております。(拍手)     ─────────────
  8. 藤田正明

    ○議長(藤田正明君) 斎藤栄三郎君。    〔斎藤栄三郎君登壇拍手
  9. 斎藤栄三郎

    ○斎藤栄三郎君 私は、自由民主党を代表し、竹下総理大臣並びに関連閣僚に御質問をいたします。  本論に入ります前に、山陰地方並びに広島地方における水害被害者に対し、及び七月二十三日の潜水艦衝突事件による犠牲者並びにその遺族に対し、心からお悔やみを申し上げる次第であります。  トロント・サミットで竹下首相が北方領土問題並びに自由貿易の堅持について強く主張されたことに対し、私たち国民としては我が意を得たり、よく言ってくれたという感じを持っておるのであります。さらに、前総理中曽根さんがはるばるソ 連を訪ねて、民族の悲願である北方領土問題について忌憚なき意見を述べられたことに対しても、心から感謝の意を表するものであります。  竹下総理にお伺いしたいことは、この民族の悲願をいかにして達成するかについての腹づもりをお示しいただきたいと考えるのであります。  トロント・サミットで自由貿易の堅持が必要だと言われて間もなく、アメリカの下院では包括通商法が通りました。上院も通るであろうという見通しが濃い、これこそ私は重大問題だと思うのです。その法案の内容は保護貿易主義であり、ブロック主義を開くものであります。  昭和七年、カナダのオタワで英連邦経済会議を開きました。そのねらいとするところは、英連邦加盟四十六カ国の間では関税を低くする、ドイツと日本に対しては高い関税をかけるというものであったのです。その結果はどうなったでしょうか。イギリスの国際競争力は弱まり、世界縮小均衡に陥り、ついに恐慌に陥ったことはつい最近の事件であります。  アメリカが今たどろうとする方策は保護貿易主義であり、下手をすると世界経済縮小均衡に陥るのではないだろうかと懸念をいたすのであります。アメリカは、自由貿易協定というものをイスラエル、メキシコと結び、今またカナダと結ぼうとしております。その次は日本ではないでしょうか。これは完全なブロック経済であって、私はこういうことをどんどんやっていったら世界経済は完全に縮小均衡に陥ることを懸念するのであり、この点について竹下総理の忌憚なき御意見と、このアメリカの包括通商法阻止のために御努力くださるようにお願いをいたす次第であります。  次に、先ほどもお答えいただきましたが、ODA政府開発援助について、これから五年間に五百億ドルの金を使うということを承りました。  私は去年の二月、アフリカのケニアに参りました。ケニアでケニヤッタ農工大学というものを見てまいりました。日本が六十億円援助をし、土地はケニア政府が出してつくった大学であります。そこで学ぶケニアの青年の喜々としている姿を見て、援助こそまさにこうでなければならぬということを痛感して帰ったのであります。  援助は、与える国の喜びであると同時に、もらう国もこれでますます発展できるようなものが必要ではないかと考えます。今までのODAは、援助をもらう国から日本政府要請をし、これを調査し、閣議にかけて出すので、どうしても時間がかかります。もっと緊急臨時の資金が必要だと、世界各国を歩いてみて大使から言われました。今回小規模無償協力資金制度をおつくりになるかどうか、外務大臣にお伺いしたいと思うのです。アメリカでは既にそういう制度が行われております。日本でもぜひともその制度が必要であろうと私は考えますが、外務大臣の御所見を伺いたいと思います。  イラン・イラクに和平の光が差してきました。イランはシーア派、イラクはスンニー派であって、イスラムの歴史千三百年の間に常にこの二つが対立抗争をしてきたのです。したがって、今回一時の平和が来ても根本的な平和が得られるかどうかは疑問でありますけれども、とにかく八年から九年かけて戦ったということは異常なことであります。この平和のために国連が果たされた役割並びに外務大臣の御努力に対し敬意を表します。ベトナム・カンボジア問題も九年の幕を閉じようとしております。ぜひともこれが成功することを祈りますが、日本政府としてどういう協力をするか、またどの程度の援助をするかをお漏らしいただきたいと思うのです。  イラン・イラク戦争の戦後復興のためには千五百億ドルという莫大な資金が必要だと言われております。この千五百億ドルという莫大な資金に対しどのような協力がなし得るか、日本政府の率直な御意見を拝聴したいと思います。  次の問題は、累積債務の問題です。  現在、累積債務は一兆二千億ドルです。この一兆二千億ドルというのは発展途上国GNPの半年分です。発展途上国の貿易の二年分に当たるのです。これをどう処理するかということが非常に大きな問題だと考えるのであります。ただいま宮澤大蔵大臣から御所見を拝聴いたしましたが、宮澤さんはトロントで債務の株式化ということの主張をなさったと承っております。その内容をお示しいただき、また宮澤さん独自の累積債務解決の方策についてお教えいただけたら非常に幸せに存じます。  以上、当面する大きな世界経済世界政治の問題に触れましたが、次は国内問題に移ろうと思います。  今、日本の一人頭GNP世界一です。貿易は日本一国で世界貿易の一割を占めております。そうして、外貨保有高は八百九十億ドルを突破し、これまた世界一。まさに豊かな国の数字ばかりであります。ところが、実感はこれに伴わないのです。そこに問題がある。なぜ実感が伴わないかといえば、私は、第一、税の問題、動いている経済の実態に合っていない税制が第一の原因だと思います。第二は、土地が高くて幾ら働いても自分の家が持てないということです。そうして第三番目は、円高にもかかわらず物価が少しも国民生活を潤さないというところに問題があるのではなかろうかと考えます。  以下、この順序に従って御質問をいたします。  まず、税制改革であります。  昭和十一年、日本の税は間接税が六五%でありました。間接税の特色は選択の余地があることだと思います。自分のことを言っては恐縮でありますが、私はたばこはのみません。なぜのまないかといえば、間接税を払うのが嫌だからであります。選択の余地があるのです。たばこのお値段の六割が税金だと承っています。のむかのまないかは各人の自由であります。直接税の方は強制力を伴って選択の余地がない。私は、戦前の政治家が間接税を六五%にしておったということは非常に賢明だったと思う。  ところが、戦争に負けてシャウプ税制改革が行われ、現在は直接税中心であります。今の日本の税金は直接税が七三%、間接税が二七%であります。しかも、その直接税の内部で負担の不公平が行われているところに問題があるのだと思います。  したがって、今回税制改正をやり、直間比率の是正を図ることは時宜に適した措置だと思います。もしも今のままにしておいたら法人はどうなるでしょうか。日本の株式会社の中でもうかる企業はどんどん海外に逃げちゃうと思います。その理由は簡単です。水は低きに流れ、企業は税金の安いところへ移るものです。  さらにまた、サラリーマンの諸君は気の毒です。一生懸命に働いて所得が上がっても、税率の刻みが細かくて十二段階に分かれている。少しぐらい賃金が上がっても重い税率で持っていかれちゃうのです。どうしてもこれを改正しなきゃなりません。現在の十二段階を五段階に分ける、賢明な措置であると考えます。  そうして、所得税、法人税の次は相続税です。  今は相続税は三千二百万円までが非課税です。これを六千四百万円までに上げるのです。私は、これではまだ大都会ではなかなか相続税の負担が軽くならないと思いますけれども、全国的規模において考える場合にはこの程度の改正でもやむを得ないのではないかと思いますが、直接税で約五兆六千億円の減税を行うのであります。  私はリカルドの租税の原理という本を愛読しております。これは一八一七年にロンドンで出されたものであります。財政学を勉強する者は一応通らなければならない本であります。その中に租税の四原則ということがうたわれております。第一は、税金は国家の必要とする財源を賄うものであること。第二は、税は公平でなければならないとうたい、第三は、租税を徴収するコストが余りか かり過ぎてはだめだと訴え、そうして古い税ほどいい税だと述べておるのであります。  この基準に照らして、今回の税制改革について大蔵大臣に御所見をお伺いいたします。  今回の税制改正で財政再建はできるでしょうか。財政再建とは、昭和六十五年に赤字公債を出さないでも予算の編成ができるという内容です。大蔵省が配られた資料を拝見すると、消費税税率三%では昭和六十五年に一兆五千億円の赤字公債を出さざるを得ないと書いてあります。もしもこのとおりだとするならば、せっかくの税制改正にもかかわらず、財政再建は不可能だということになります。しかし、大蔵大臣が他の場所で述べられたところを新聞で拝見すると、財政再建はできると言っておられる。大蔵大臣から率直な結論をお伺いしたいのでございます。  第二は、税は公平でなければならない。これは多言を要しません。  今、日本税制で問題なのは不公平税制だと言われています。その不公平税制は大きく分けると三つです。  第一は、医師の税制についての批判が多いのです。医師への批判というのは、必要控除率を五段階に分けております。今回の改正では五千万以上五二%という控除率をカットいたしました。したがって、医師に対してはかなりの増税になるであろうと考えます。  第二は、キャピタルゲイン課税です。従来は原則非課税、回数で三十回、株数で十二万株以下の売買の場合は有価証券取引税を一万分の五十五掛けるだけであります。これが非常に評判が悪く、今回の税制改正では二つの道を開いたのです。一つは、原則課税とし、まず株式売買をした場合、売買金額の一%と有価証券取引税一万分の三十、この二つを合わせると一・三%になります。これを証券会社で届けて処理するか、これを源泉分離と申します。もう一つは、税務署に届け出て、キャピタルゲインとキャピタルロスを計算して、キャピタルゲインがあった場合に二〇%の税をかけるか、どちらかを選びなさいということであり、従来より私ははるかに前進したものであると考えるのであります。  そこで、大蔵大臣にお伺いしたいのは、先ほどから何回も問題になっておりますように、証券取引をめぐるいろいろな事件があります。大蔵省の証券行政として反省すべき点はなかったか、また証券取引法の改正までいく必要があるかどうか、その点についての率直な御意見をお知らせいただきたいと考えるのであります。  次に、徴税コストの問題であります。  今、国税庁の公務員は五万三千五百人であります。この体制で果たして新しい税制を乗り切ることができるかどうか、これまた大蔵大臣からお教えをいただぎたいと思います。  古い税ほどいい税だと言います。日本では消費税は新しい税だと考えられておりますが、世界規模考えると古いのです。ローマの初代皇帝アウガストゥスが初めて消費税をつくったのです。税率は一%でした。ヨーロッパでは消費税の観念というのは徹底しております。その典型的な例がヨーロッパ型付加価値税、いわゆるEC型付加価値税だと思います。今、世界では四十四の国がこれをやっております。日本の近所では台湾、韓国、またニュージーランドも導入し、社会主義の国ハンガリーまでこれを導入しているのです。一たん導入した国はこれをやめていないのであります。  したがって、税の体系としては、まず所得に課税する所得税、資産に課税する資産税、そうして消費にかける消費税という三つに分けてこそ公平なる税制ができるのであって、私は経済の発展段階に応じて租税制度というものは変わるべきものだと思います。  明治の時代に、日本では地租が中心でありました。それは、農は国の本なりで、農業が主要産業であったからです。そうして、日露戦争以後は法人税が中心になってまいりました。これは株式会社制度の発展に伴うものです。今、日本が豊かになり、消費が非常に多彩化してきた今日においては、消費税の新設は私は絶対必要なものだと確信をいたすのであります。  そこで、消費税導入の場合に一番問題なのは、三%の転嫁ができるかどうかという問題であります。私も自民党の税制調査会の末席を汚しておりまして、その税制調査会では、一%がいいか、三%がいいか、それとも五%がいいかについて白熱的な討論をいたしましたが、過去の経験に照らし三%ということになったのであります。この三%が転嫁できれば問題はないのですが、転嫁できるかどうかということで多くの企業は迷っているのです。現在の独占禁止法では、価格の協定は違反であります。この税法では、転嫁するための方法を相談することは道が開けておりますけれども、その限界が非常に難しいのです。  そこで、大蔵大臣にお伺いいたします。転嫁のためにどういう方法をおとりになることが一番よろしいか、御明示いただけたら幸せに考えます。  次は、この消費税で物価がどれくらい上がるかということが大衆の心配の種です。インフレになりはしないかという心配です。それからもう一つは、五兆四千億円も消費税で吸い上げちゃうんだから景気が悪くなりはしないかという心配でありますが、これらについても大蔵大臣の御意見を拝聴したいと思います。  私は、インフレの心配は絶対ないし、不景気になる心配もないと確信をいたしております。  今の景気が非常によろしいのは四つの理由からです。第一は、円高によって海外から輸入する原材料が非常に安いということです。第二点は、金利が公定歩合二・五%で非常に安いということ、第三は、労使の協力によって労働の生産性が非常に高まっていること、第四は、設備投資によって世界一の優秀なる設備を持っているということです。この四つの材料がそろっている以上は、私は不況になる心配は全くないと思います。新しい税制改革をやるときの環境としては、今のように物価が安定し、そうして景気の見通しが明るいときにやるべきものだと確信をいたしますが、大蔵大臣の御意見はいかがなものでしょうか。  しかし、新しいものには不安が伴います。したがって、これから政府がやらなければならぬことは、広く国民にその内容を理解していただくことだと思うのです。そのための努力を真剣になさることを要望したいと思います。  そこで、思い出しますのは、アメリカの第二十八代大統領ウィルソンが大西洋を渡って第一次世界大戦後ベルサイユ会議に臨みました。彼は学者です。世界の永久平和のために国際連盟をつくったのです。意気揚々として帰ってきたが、アメリカ国会では批准は認められません。彼は失望落胆し、とるべき対策として彼は全アメリカを遊説して歩いたのです。  竹下総理は、所信表明演説の中でつじ説法を行うと言っておられます。まさにその気持ちでこれを実行に移していただく、そうして広く国民に理解を求めることがこの法律を生かすゆえんだと思いますが、竹下総理の御所見を承りたいと考えるのであります。  よく世間では、今は三%でスタートするがやがて上げるんじゃないかという批判があります。日本では憲法で、法律でなければ税は動かせないのです。租税法定主義と言っております。したがって、国会さえしっかりしていれば私はその心配は全くないと断言をいたしますが、御意見はいかがなものでしょうか。  そうして、この税に対して金持ち優遇だという批判があります。  私は、一つの統計をお示ししたいと思う。免税点、日本では、夫婦と子供二人の家庭では三百十九万八千円以下の方には課税がないのです。アメリカでは百七十五万五千円です。イギリスでは九十一万円です。日本は三百十九万八千円であっ て、世界のいかなる国より免税点は高いのです。税率は、所得税、国税で五〇%、地方税で一五%で六五%です。これを諸外国と比べると、イギリスは六〇%、アメリカは三七%であって、決して日本税制金持ち優遇ではないということがこの事実によっておわかりいただけるであろうと考えるのであります。  私は、今もしこの改革をやっておかなかったら、二十一世紀になると日本経済が空洞化してしまうのではないだろうか、そうして二十一世紀になったときに勤労意欲がなくなってしまうのではないだろうか。そういう点を考えるならば、十分国会で議論をしてこの法案を通すことが国家百年の大計のためだと断言をいたすのであります。  次に、通産大臣にお伺いをいたします。  円高利益の還元問題であります。  昭和六十年九月二十二日一ドル二百四十二円だったものが、きょうは百三十二円であります。我が国は、一年間に四億三千万トンの原材料を輸入する国です。この円高によって安い原材料が入りました。製品も入りました。どの程度利益還元が行われているかという問題です。去年の暮れ現在の統計で約七割と承っておりますが、私はまだ少ないのではなかろうかと思います。どうぞ、もう少し円高利益の還元に御努力をいただきたい。  なぜはかばかしく進まないかといえば、流通機構の複雑さにあるのではなかろうかと拝察いたしますが、いかがなものでしょうか。去年総理がお出しになった「ふるさと創生論」の中に、日本で一番おくれているのが流通だと書いておられます。私も全く同感です。どうぞ蛮勇を振るって流通機構の改革に努力なさることを要望したいと思いますし、同時に通産大臣の御所見を承りたいと思います。  次に、通産行政で大きな問題は、NIESとの問題です。  NIESとは韓国、台湾、香港、シンガポール、これらの国々からどんどん物が入ってまいります。昭和五十五年から最近までの八年間に、NIESからの輸入が三倍にふえている。特に電気製品、繊維、雑貨などがそうです。これは日本の物価を落ちつける効果はあります。同時に、NIES諸国の国民生活を向上させる効果も認めますけれども、同時にその業種に携わっておった日本の中小企業が非常に苦しんでいることを考えると、どういう政策を御用意であるかを承りたいのであります。  従来、通産省は異業種交流ということを言っておられますが、その実績はどうか。何とぞ中小企業対策に万全を期してもらいたいと考えるのであります。  私は、発展途上国からは安い労働賃金で追い上げられ、先進国からは保護貿易主義で閉ざされ、一体日本はこれからどうなるかということを考えると、非常な不安に駆られます。通産大臣、どうしたらいいとお考えでしょうか。私は、科学技術の振興によって日本の行く道を打開する以外に道はないと思うのです。  ここで参考になるのが、実はイギリスの歴史だと思います。一七七六年にジェームス・ワットが蒸気機関の発明をしました。彼はグラスゴー大学の物理学の教授であった。このジェームス・ワットの発明によってイギリスの産業革命が幕を開いたのであります。同じくグラスゴー大学の経済学部の教授であったアダム・スミスは、ウェルス・オブ・ネーションズ、国富論という本を書いて自由貿易の理論を展開し、これがイギリスの繁栄をもたらしたのです。  私は、ぜひともこれから科学技術振興のためにこれを重点政策として取り上げられることをお願いいたすのです。昭和六十三年度の予算を拝見すると、科学技術費は一兆七千億円、全予算の三%であります。これをフランスの七%、アメリカの五%に比べると、著しく見劣りがいたします。どうぞ通産大臣が主力となって、この科学技術振興のために御努力くださることをお願いしたいと思いますが、御意見はいかがなものでしょうか。  次に、農林水産大臣にお伺いをいたします。  貿易自由化の荒波にもまれ、佐藤農林水産大臣の御苦労のほどは、本当に頭の下がる思いであります。もう三年たつと、牛肉もオレンジも自由化を免れません。国民の期待しているところは、これで肉が安く食えるかという問題であります。率直に御質問をいたします。一体、安くなるんでしょうか。  牛肉の自由化の内容を見ると、これから三年間、毎年六万トンずつ輸入をふやす。現在二十一万トンですから、三年後には三十九万トンとなります。数量がふえるんだから、下がるはずです。しかし、自由化初年度は関税を七〇%かけ、二年目は六〇%かけ、三年目は五〇%の関税をかけるという。こうなると、国民判断に苦しみます。一体牛肉は下がるのかどうかということです。  そこで、農林水産大臣に第一点の御質問はその点でありますが、第二の質問は、この激しい競争にさらされる農民諸君の善後策をどうするかということです。その点の対策を明示していただくことをお願いいたすのであります。  ウルグアイ・ラウンドでは米の自由化までが問題になるであろうとうわさされております。かねて農林水産省は、米の自由化は絶対にやらないと言っていましたけれども、今までの日米交渉を見ておりますると、絶対と言っていて必ずやられてしまうのであります。そういう点を考えてまいりますると、転ばぬ先のつえで、ウルグアイ・ラウンドに対する対策を立てておかなければいけないんじゃないか。  自由化とは、コストの競争であり品質の競争です。安くてよければ必ず売れる。安くてよくて売れないのは棺おけだけだと言われています。コストを下げるにはどうしたらいいかといえば、農業で言うならば、経営規模の拡大であります。昭和五十五年、農用地利用増進法という法律をつくり、町村長が中に入って賃貸借を進めてまいりました。おかげさまで大分経営規模は拡大されましたけれども、まだまだ不十分だと思います。もっとこれを強化していくことが必要ではないかと思いますが、農林水産大臣の御所見を承りたいのです。  そうして、品質をよくするためには、適地適作でなければだめなんです。農業ぐらい天候と水の影響を受けるものはありません。全国一律にやるのではなしに通地適作でやる。そうしてこそ初めてよい品質のものができるんだろうと確信をいたすのであります。そういう観点からひとつ、聡明な佐藤農林水産大臣ですから、従来の政策の見直しをなさることをお勧めしたいと思いますが、御所見のほどはいかがなものでしょうか。  農は国の本なりということは真実だと思います。でありますけれども、だからといって国際競争に負ければ全滅なのであります。国際競争に勝つために何をなすべきかということが、今考えなければならぬ政策中心課題だということを申し上げておくのでございます。  次に、土地問題であります。  この三年間の間に商業地は三倍に上がりました。住宅地でも二倍半に上がってしまいました。今、一流大学を出て、一流企業へ勤めて、二十二で勤めて六十の定年まで働いても、一生涯にもらえるボーナス、退職金全部ひっくるめて二億円です。その中で貯蓄できるのは一八%ですから三千六百万円です。これでは、もうマンションを買うのが精いっぱいであって、とても庭つきの家などというものは買えません。私は、どうしてもこの際大事なことは、土地政策こそ日本民族の生命であるという考え方を持って真剣に取り組んでいただきたいと思います。去年の暮れからの政府の御努力により一応地価は安定しているかのごとく見えますけれども、私は、高値安定であってはならないのであって、国民の手の届くところにこれを下げることが肝要だと思いますが、御意見いかがなものでしょうか。ぜひともその努力をしていただきたいのであります。  地価が高騰したその一つの原因は一極集中であります。そこで、竹下内閣は、行政機関の移転ということを訴えられました。九十の行政機関が地方に分散をする。その跡地が四十八ヘクタールと承っております。その跡地の処理をどうなさるか。高値で売って地価暴騰に拍車をかけることのないように、念のために申し添えておくのでございます。  次に、遷都の問題です。  私は、この重大問題、すぐ結論が出るとは思いませんけれども、総理大臣の御所見の一端を伺わしていただけるならば、非常に議論をするのに話が進むであろうと考えるのであります。  以上、土地政策を論じましたが、土地税制の問題、二つあります。  一つは、従来、企業が借金をして土地を買う、その利息は損金として認められました。だから、どんどんと借金をして土地を買い、転がしたのです。今度の税制改革では、借金をして土地を買っても、その土地を四年間使わなかったら利息は損金として認めないのであります。これは私は非常な改革だと思います。これで土地転がしの一部は抑えられるだろうと思う。  次は、相続税と土地の問題であります。  従来の相続税では、現金で相続するより土地で相続する方が得なんです。何となれば、土地の評価は路線価額で時価の半値だからです。今度はこれを改正し、相続開始三年前に買った土地、建物は取得価格、時価で評価するというのであります。こうなると、相続対策として、節税対策として土地を買う方は少なくなるであろうと考える。税の面からも土地対策を進めなきゃなりません。同時に、政府決意の問題だと考えるのであって、承りますると、土地基本法を制定なさるそうであります。次の国会に出されるそうでありますが、その内容をお漏らしいただけたら幸せに存じます。  日本では私有財産の尊重ということが憲法にうたわれています。しかしその憲法の中にも、適当なる補償を払って公益優先ということがうたわれているのであって、私は土地基本法の中心をなすものは公益優先ということでなければならぬと思いますが、総理大臣の御所見を承りたいと考えるのでございます。  以上で土地問題を終え、次に、私は今参議院の国民生活調査会に関係をしております。この参議院の本会議会長、長田裕二先生が御報告なさったのでお聞きいただいたと思います。今、国民生活で長期の問題としては出生率の低下であります。どんどん出生率が減っている。出生率が減るということは老人化に拍車がかかるということでございます。もう少し出生率を何とかしなきゃならぬということを我々一同は考えました。しかし、国家が出生率をふやすような手を打つことはなかなか難しい。下手をすると誤解を生ずるからであります。  そこで、なぜ出生率が減っているかといえば、一つの原因は土地問題です。住む家が手に入らないということ。もう一つは教育費の問題です。今、高校、大学に通う子供を持っている家庭では生活費の二割が教育費なんです。そこで、国民生活調査会のレポートの中では教育減税を強く訴えたのであります。今回の税制改革では、十六歳から二十二歳まで、高校から大学に通う子弟を抱えている家庭は扶養控除三十五万円のほかに十万円を上乗せすることになっております。私は、国民生活調査会の主張が一部入れられたものと考え、感謝しておりますけれども、もう少しこれをふやす努力が望ましいのではないかと思いますが、大蔵大臣の御所見を承りたいと考えるのであります。  税の改正をやると同時に必要なことは、行政改革を強力に推進することだと思います。  昭和五十八年のスタート以来、真剣な努力を重ねた結果でありましょう、十兆円の国費が節約され、二万六千人の国家公務員が整理されたというのです。政府としては御満足かもわかりませんが、納税者の立場から見るとまだ不満なのです。どうぞもっともっと行政改革を推進され、納めた税金が有効に適切に使われるよう行政改革についての総理の御所見を重ねてお伺いしたいと考えるのでございます。  結論に移ります。  日本アメリカとの関係を見ると、四十年ごとに大きく変わっています。ペルリが浦賀に来ましたのは、当時アメリカの重要産業は捕鯨であった、鯨を追って日本の近海まで来たが、日本が鎖国であるために薪炭の補給が得られない、そこで日本の開国を迫りました。あれから四十年間、すなわち日露戦争の勝利までであります。この間、実に日米間はよかったのです。  しかし、日露戦争で勝った日本に対し、アメリカは非常に冷たい態度となります。日露戦争の勝利から四十年というと、昭和二十年八月十五日の敗戦までであります。この間の日米間をよく示すものは排日移民法であり、日本人の労働力を締め出しました。そうして日米通商航海条約の廃棄であります。日本にくず鉄を売らない、油を売らないと言い、とうとう太平洋戦争突入、そうして日本の敗北となったのです。  それから四十年、すなわち昭和六十年までです。この間、アメリカ日本に対しては賠償を要求せず、ガリオア基金(占領地救済基金)、エロア基金(占領地経済復興基金)、これをくれたおかげで日本の復興が速やかになりました。そうして、アメリカが自由貿易を堅持してくれたためにどんどんと日本の輸出は伸びたのであります。それが今日の繁栄の基礎なのであって、私は昭和六十年までは非常によかったと思います。  ところが、六十年になって日本GNP一人頭が世界一となり、世界最大の債権国となったときに、また日米経済摩擦が激しくなったのであります。したがって、これからもまだまだ日米経済摩擦は激しくなると思いますけれども、日本アメリカが提携していってこそ世界の平和が維持できるのであります。そういう観点から見れば、私は基本は話し合いによる日米協力関係を推進する以外に道はないと考えるのであります。  この多事多端の国政を担当される竹下総理並びに関係閣僚に対し、その御努力に対して敬意を表しますが、同時に私が最後に贈りたい言葉があります。熊沢蕃山は「憂き事の尚この上に積もれかし限りある身の力試さん」と言いました。「憂き事の尚この上に積もれかし限りある身の力試さん」であります。  どうぞ、まだまだ摩擦は激しくなりましょう。しかしながら、何としても平和を保ち、そうして輝かしい日本を築くためには、閣僚諸君並びに竹下首相の御健闘を心からお祈り申し上げるのであります。  これをもって私の代表質問を終えます。(拍手)    〔国務大臣竹下登登壇拍手
  10. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず最初に、西日本集中豪雨にお触れになりました。  これにつきましては、万全の災害対策につきましてこれを強力に推進してまいります。  そして、潜水艦と民間の船舶が衝突したことに対する再発防止対策についての御鞭撻もございました。  この問題、まさにそれこそ今日とるべき責任考え、精力的に対応をしてまいります。  さて、その後まずお触れになりました問題は、サミットにおける政治宣言等にお触れになりました上のいわゆる日ソ関係、なかんずく領土問題であります。  確かに、この領土問題は御指摘のとおり民族の悲願であります。しかしこの問題は、私はサミットでこれに触れたわけでありますが、基本的には北方領土問題は日ソ二国間の問題でありまして、日ソ間の交渉によって解決すべきである、このように考えております。しかし、我が方の立場について友好国を含め世界の各国に説明を行うのは当 然のことである。サミットの場においてはそれに対して理解が得られたものというふうに私は評価をいたしておるところであります。そこで、この問題について今日大変な変化があったということは、残念ながらお答えする状態にはありません。  しかし、先般中曽根総理が訪ソされ、その際、いわゆる中曽根・ゴルバチョフ会談におきましてあらかじめ三条件というものが了解点に達しておった。すなわち、領土問題に対して忌憚のない意見をお互いがぶつけ合おうということ、そして、研究所等において自分に忌憚のないスピーチをさしてもらいたいということ、三番目には、自分のテレビ出演に対していささかもカットすることなくこれを放映してもらいたい、この三つが実現を見たというのは、私はいわゆるグラスノスチというものが、すなわち情報公開というものが現実の姿となってあらわれたということを私なりに理解いたしておるわけであります。  したがって、基本的な立場について今合意が得られたとは思いませんが、そうしたグラスノスチとか、あるいはペレストロイカとか、そういう問題が具現化していくことに対する期待を持ちながら、我が国としても粘り強く基本方針を堅持して対応すべきものである、このように考えておるところでございます。  次の問題は、サミット等でもやはり当然のこととして議論をいたしました、いわゆる自由貿易地域問題等についての、御意見を交えたところの御質疑でございました。  この問題につきましては、御説のとおり、いわゆるいろいろな経済のブロック化というのが、結果として御指摘のとおり排他的になり、拡大均衡ではなくして縮小均衡の方向をたどる一つの傾向を持っておるということは歴史が証明しておるところでございます。したがいまして、あくまでも私どもはこの保護貿易主義というものの台頭を抑えて、そしてこれからウルグアイ・ラウンド等を通じながら真の自由貿易主義というものに立脚したグローバルな経済運営をやっていかなければならないと思っております。  そこで、これまた御指摘がありました日米自由貿易地域構想、これは確かに米議会においても、私が訪米した際にもこのような意見がございました。そして我が国におきましても、これについていろいろな説をなされる方がございます。一方、アジア・太平洋地域構想というような議論が行われておる問題もございます。しかし、ひっきょう、こうした地域構想というものの歴史的経過を振り返りながら、今日は私はかつての歴史と同じような傾向をたどるとは必ずしも思いませんけれども、しかしまだ勉強の段階ではないかというふうに私自身理解しておるところであります。  当面の問題といたしましては、包括通商法の成立の問題につきまして、我が方としては、レーガン政権が今後とも断固として保護主義と闘って、もって保護主義的色彩の強い新包括貿易法案が最終的に成立しないことを強く希望いたしておるところでございます。  次の問題につきましては、それぞれ税制問題等、あるいは大蔵大臣、通産大臣等々にそれぞれお答えをお譲りすることにいたします。が、税制改革に対する国民の理解を得べきだ、この考え方は全く御指摘のとおりでございます。  私がつじ立らしてでもということを申し述べましたが、こうしてこの国会において一生懸命お答えさせていただくのも、これは国民の代表たる皆さん方に対する直接の対話でございますだけに、これこそ国民に対する理解と協力を求める最高の場所である、このように思い今日までも努力をいたしてきた次第であります。今後とも、機会をとらえまして、私どもの考え国民の代表の皆さん方に対して国会の場を通じて徹底的に御理解をいただき、感情と感傷を交えることなく、また、特別に国民の皆さん方に対してはこのようなことも御存じないですかなどという非札なことを断じて申し上げないで、それこそ理解を深めつつ審議し、審議しつつ理解を深めるという姿勢で臨みたい、このように考えておるところであります。  まさに、今次の機会をとらえて税制改革を行うことこそ、二十一世紀へ向かっての活力ある国土づくりの基本をなすものであると信じておるところであります。  さて、いま一つ、行政改革に対する熱意の問題についてお触れになりました。  行政改革、今御指摘がございましたように、歳出の削減、現行の施策、制度をそのものとして仮定計算をした、たびたび国会で御議論をいただいております資料等に基づけば、十三兆一千億というものが結果として節減されたと言われましょう。そして、二万六千人の方々のいわゆる純減も達成いたしております。一方、既に果実を見ましたNTT株の売り払い代金の活用、あるいはサービスの向上が国民の皆さん方からまさに理解して指摘されておる国鉄の民営・分割の問題、専売公社のたばこ会社への移行の問題もございます。  そうしたいわば目に見えるもの、確かに今これを民営化するのだというような目に見える目新しいものはございません。それだけに私は、行政改革というものが、せっかく押し上げた荷車がまさに手を離してがけを転げ落ちてくるような印象を国民の皆さん方に与えてはならない。総定員法でございますとか、あるいは行政組織法でございますとか、そのような行政改革の原点に返って、国、地方を通じた着実な行政改革を進めることによって初めて、いわゆる税制改革環境も整うであろうということは、全く感じを等しくいたしておる次第であります。  最後の問題は、日米経済摩擦等、四十年周期について御指摘がございました。  確かに四十年前、私は先般の首脳会議に参りましたときにも感じましたのは、たまたまガリオアの奨学金、フルブライトの奨学金等によって留学した二人の最高幹部が、私のいわばスタッフとして日米首脳会談等に参加しておりました。  当時を思い出しますと、二十億ドルと言われておりましたが、そのうちの五億ドルは返済しておりますので、十五億ドルという数字が教えられます。それは五カ年間にわたる我が国GNPのいわば四%弱に当たるものでございます。年々多少の相違はございましたが、総じて四%でございます。そういたしますと、今日のGNPから比較してみると、まさに十四、五兆円ものものが援助された状態にあったということはやはり歴史を振り返って私どもは忘れてはならないことだと思います。  したがって、国際的な役割を果たすと同時に、日米関係は、今御指摘いただきましたとおり、やはりすべてを話し合い、いわば共同作業で物事の解決に当たっていこうと、このような基本方針で今後とも臨んでいくということを申し上げまして、私のお答えを終わります。(拍手)    〔国務大臣宇野宗佑君登壇拍手
  11. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) ODAに関しましていろいろと卓見を拝聴いたしました。  仰せのとおり、ODAは「世界に貢献する日本」の外交方針の一本の大きな柱でございます。このことは総理大臣もしばしばお話しなさっておられますが、第四次計画におきましては、過去五年の倍額の五百億ドル以上、これを決定いたしました。このことは、総理サミットで発表なさったわけでございますが、各国の高い評価を得ております。  これによりまして日本世界における援助国の第一番目となった次第でございますが、確かに額は大きいがその内容はどうかという問題に関しましては、今後努力をしなければならないと存じます。特にスピードアップせよというお説に対しましては、そのとおりであろうと存じます。なおかつ、小規模無償に関しましても、このことは十二分に今後その内容充実のためにも検討していかなければならない課題である、かように存じております。  続きましてイラン・イラクの紛争でございますが、幸いなるかな、国連事務総長の努力によりまして、確実に和平の日は近づいておる、かように私も信じております。  日本は、世界の中におきましても、両国と忌憚ない意見を交換することができるという数少ない国家の一つでございますから、今日までもそれぞれその国に対しまして努力をしてまいった次第でございますが、特に、今後も和平プロセスの中においてどのような日本の仕事があるかということは、積極的に取り組んでいかなければならないと存じておる次第でございます。そのために、近く総理の親書もいただきまして、私の特使として外務審議官を両国に派遣する予定を持っております。同時に、戦後復興に関しましては、我が国といたしましてはできる限りの協力をいたしたい、かように存じております。  以上であります。(拍手)     〔国務大臣宮澤喜一君登壇拍手
  12. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いろいろ示唆に富むお尋ねをちょうだいいたしましたが、まず累積債務問題でございます。  御指摘のように、これが今日の世界経済における最大の問題でありながらまだ解決の十分な道が発見されていないということは、このたびのトロントのサミットでもさようでございました。  考えますと、やはりこれは国々によりまして対応も違うことではございますが、基本原則は債務国の自助努力、それから市場メカニズムで問題をなるべく解決していく。それから国際協調ということであろうと存じますが、私自身はそこへやはり国際機関が、世銀でございますとかIMFがもう少し積極的な関与をすべきではないかという考えを持っております。それは、我が国のようにこのラテンアメリカとはかなり遠い国から申しますと、やはり国際機関と一緒に仕事をするということが国民的な合意を得やすい。我が国は相当のことをしなければならないはずでございますので、国民的な合意を必要とするということからでもございます。  それから、そういういろいろなスキームの中でやはり債務の株式化ということは一つ考え方である、いかなる場合にもそうだとは申しませんが、私は一つ考え方であろうと、御説のように思っております。  ただ、御承知のように、アメリカ自身が世界銀行の増資が議会で難航しておったという状況がございましたので、先般のサミットではこれ以上この問題を強くは申しませんでしたが、しかし、これは世銀増資の追加を待ちまして、やはり将来とも伸ばしていきたい構想だというふうに私としては考えております。  それから、税制改革が行われるが、六十五年度赤字公債依存の体質から脱却は可能であるかということでございました。  このたびの税制改革が、御指摘のように、全体としては大幅な減税超過になります。したがいまして、その限りでは財政はいわば苦しいということにならざるを得ませんけれども、しかし、まだまだ行財政改革を推進して経費の合理化を図る余地はあると存じますし、何よりも経済政策運営がよろしきを得ればこういう問題には随分大きな違いがございますので、政策運営に努力をいたしまして、私としては六十五年に赤字公債依存の体質から脱却するという目標をなお全力を挙げて追求いたしたいというふうに考えております。  次に、証券取引法の問題について御言及がございまして、店頭登録の問題でございますが、これを、店頭登録前の株式移動を一律に制限いたしますと、いわゆる株式公開前の安定株主をつくるということに大きな支障が出るわけでございますが、そうなりますと株式を公開するという意欲をそぐことになる。また、市場が円滑に機能しないことになるという問題が片方にございます。しかし、今回のようにこういう売買が一般投資家の不公平感を招いた、あるいは証券市場に対する信頼を傷つけたということも事実でございますので、公正な証券取引はいかにあるべきかについて、学識経験者を含めまして各方面の意見を聞いて検討を進めてまいりたいと考えておるところでございます。  それから、消費税の転嫁の問題は、確かに今回の消費税について一番大きな問題の一つでございますが、消費税が実施されますと一遍だけあれこれの価格が一様に一定の時期に引き上げられるということでございますので、そういう意味では、個々のものがぽつぽつ上がっていくというのとは違いまして、環境としては転嫁しやすい環境であろうかと思いますが、税制改革法案におきまして、事業者及び国は円滑かつ適正な転嫁が行われるように努めなければならないという規定をわざわざ置きました。具体的には、お話しになられましたように、一定の要件のもとで消費税の転嫁の方法の決定に係る共同行為、これは中小企業に限ることでございますが、あるいは表示の方法の決定に係る共同行為等々を暫定的に認める立法措置をいたしまして、転嫁が円滑に行われますように行政としても努力をいたしたいと存じます。  直間比率の問題につきまして、昭和十一年には間接税が六五であったという御指摘がございました。昭和二十五年、シャウプ来日の当時も間接税の比率はたしか四三でございましたから、ただいまの七三対二七というのはかなりこれは崩れた姿でございます。このたびの改革によりまして、これを平年度で計算いたしてみますと、ほぼ六六対三四になろうか、ほぼ二対一になろうかというふうに考えておるところでございます。  それから、この消費税が景気あるいは経済にどのように影響するか。CPIにつきましては経済企画庁の試算によりますと一・一%ないし一・二%でございますが、ただいまの経済の運営が比較的順調でございますし、また、このたびの税制改革はネットとしては二兆四千億円の大幅な減税になりますので、これが内需拡大に資さないはずはない、景気に対してはプラスになると考えてよかろうかと存じますし、また、御指摘のように、直接税について、所得税については勤労意欲、法人税については企業意欲というものを高めるための減税を行っておりますから、これもプラスになるというふうに考えておりまして、中長期的には経済企画庁の試算は、今回の経済に与える影響はほぼ実質成長率で〇・二%程度押し上げるという試算があるそうでございますけれども、全体といたしまして、私はこれは不景気ではなくてむしろ景気の内需拡大に資する税制であるというふうに考えております。  それから、先ほど、いわゆる土地を買いました場合の借入金の利子の問題、それから相続税の際の取得不動産、三年より近くで取得したものについては取得価格で計算する等々の措置についてお話がございまして、これはぜひそういうことで実施をさせていただきたいと考えております。  また、教育減税につきましては、御指摘のように扶養控除額三十五万円にかえまして四十五万円にいたしましたのは、十六歳から二十二歳までのいわば教育費に金がかかる扶養家族のことを考えたのでございます。これがどのような効果をあらわしますか、実施をいたしましてなおしばらく様子を見させていただきたいと考えておるところでございます。(拍手)    〔国務大臣田村元君登壇拍手
  13. 田村元

    国務大臣(田村元君) まず、差益還元でございますけれども、昨年末までに円高差益の約七割程度が還元されておるという経済企画庁の試算は、我々の判断とほぼ一致いたしております。また、それ以後、つまり昨年末以後の還元も着実に進んでおるものというふうに推定いたしております。  それから、必ずしも流通機構の複雑さが円高差益還元の障害になっているというふうに断定はできませんけれども、通産省としましては、一層の円高差益還元を進めますとともに、言うなれば、 国際的に難解と言われております日本の流通合理化にも鋭意努めておるところでございます。  それから、NIESの問題でございますけれども、輸入の急増によりまして苦況に陥っております繊維産業につきましては各種対策、例えば転換法を初めとする各種政策を着実に実施いたしております。御指摘の電気製品につきましては、現時点ではNIESからの輸入は我が国産業に深刻な打撃は与えておりません。いずれにいたしましても、NIESからの製品輸入の増大はつきましては、業種の実態や我が国経済が置かれております国際的な立場を踏まえながら適切に対処をいたしてまいる所存でございます。  それから、融合化施策の問題でございますけれども、円高の定着など経済環境の急激な変化のもとで、異分野の中小企業が業種の壁を超えまして交流して、互いの技術や市場開拓力を活用しようとする動きが活発化してきております。そのような異業種交流グループの数は、昨年の通産省の調査では少なくとも七百、グループへの参加企業数も二万社以上に上っております。新製品開発等で成果を見つつあるグループはそのうち約二百程度と推定されます。通産省としましては、本年度から融合化法の施行等によりましてこのような動きを強力に支援する施策を講じておりまして、今後その成果が得られるよう努めていく所存でございます。  なお、科学技術、とりわけ基礎技術の振興の必要性は申すまでもございません。科学技術庁等とも十分協力をして、実効を上げるべく鋭意努力をいたしておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣佐藤隆君登壇拍手
  14. 佐藤隆

    国務大臣(佐藤隆君) 斎藤議員にお答えをいたします。いろいろ御激励もいただき、感謝をいたしております。  最初の御質問は牛肉が安くなるかどうかというところから始まりましたが、その後で国内対策いかん、こういうことでございました。国内対策を御説明申し上げるとその次の最初に言われたことがある程度御認識いただけるかと思います。そういう意味で申し上げたいと思います。  まず牛肉、オレンジ自由化についてでありますが、先般の日米、日豪合意が関係農家にとり極めて厳しい試練であることは十分認識しているところであり、今後国内措置につき最大限の努力を傾注してまいる所存であります。このため、厳しい競争条件のもとで牛肉、かんきつ生産の存立を守り、その体質強化を図っていくとの基本考え方にのっとり、所要の対策を具体化していく必要があると考えております。  そういう方向に沿って、牛肉につきましては、国内肉用牛生産の振興合理化を推進するため、肉用子牛の価格安定等に関する立法措置等所要の法制の整備について検討を進めるとともに、あわせて、当面懸念される価格変動等に対処するため、肉用子牛の価格安定、肥育経営等の安定、肉用牛の低コスト生産の推進、牛肉の流通の合理化等の緊急対策についても鋭意検討を進めているところであります。  また、かんきつにつきましては、需給及び価格の安定等を図るための緊急対策として、ミカン園の再編整備の推進、果汁原料用ミカン等の価格安定対策の拡充強化、果汁工場の設備の近代化、合理化、需要の拡大のための措置等を検討するとともに、国内かんきつ生産の競争力の確保を図るため、優良品種への転換、園地の整備等の推進を中心に鋭意検討を進めているところであります。  ということで、牛肉は安くなるかどうか、こういうことでございますが、そういう国内対策等もあわせまして、私どもは食肉流通の合理化等も考えながら、牛肉の消費者価格の引き下げが図られるものと思っております。  三番目には、ウルグアイ・ラウンドで米の自由化がと、こういうお話でございましたが、ウルグアイ・ラウンドでは米だけではなくてあらゆる農業、あらゆる制度、これが全部まないたの上にのりますから、さよう御承知おきをいただきたいと思います。  その際、絶対やらぬと言っていてやっているではないかというような意味の、ちょっと正確ではございませんが、私そう聞きましたが、やるべきものはやる、やらないでいいことはやらないというふうに考えております。  しかし、米につきましては自給する方針に変わりはございません。前国会以来、私だけではなくて、竹下総理からも国会を通じて御説明、御答弁を申し上げているとおりでございますので、それで御承知おきをいただきたいと思います。  四番目に、経営規模拡大を強力に進める必要があるがどうか、こういうことでございますが、くどくどここでは申し上げません。農地の流動化、これを真剣に進める、地域の実態に応じて取り進める、こういうことがまた適地適産にもつながる、こういうふうに考えておるわけでございます。  いずれにしても、農業は天の恵みと災いの中にある農業でございます。そこに第一次産業の難しさがございますが、一生懸命努力してまいりたいと思っております。(拍手
  15. 藤田正明

    ○議長(藤田正明君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。    〔異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 藤田正明

    ○議長(藤田正明君) 御異議ないと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十七分散会