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1988-12-08 第113回国会 参議院 内閣委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十二月八日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  十二月七日     辞任         補欠選任      鳩山威一郎君     岡野  裕君  十二月八日     辞任         補欠選任      岡野  裕君     木宮 和彦君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         大城 眞順君     理 事                 板垣  正君                 名尾 良孝君                 永野 茂門君                 久保田真苗君     委 員                 岩上 二郎君                 大島 友治君                 大浜 方栄君                 岡田  広君                 亀長 友義君                 木宮 和彦君                 古賀雷四郎君                 桧垣徳太郎君                 野田  哲君                 山口 哲夫君                 飯田 忠雄君                 猪熊 重二君                 吉川 春子君                 柳澤 錬造君    国務大臣        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  高鳥  修君    政府委員        人事院総裁    内海  倫君        人事院事務総局        職員局長     川崎 正道君        総務庁長官官房        長        山田 馨司君        総務庁人事局長  勝又 博明君        総務庁人事局次        長        兼内閣審議官   服藤  収君        総務庁行政管理        局長       百崎  英君        総務庁行政管理        局行政情報シス        テム参事官    重富吉之助君        総務庁統計局長  田中 宏樹君        法務大臣官房審        議官       東條伸一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        原   度君    説明員        警察庁長官官房        企画課長     菅沼 清高君        経済企画庁国民        生活局消費者行        政第一課長    川名 英子君        法務省民事局参        事官       寺田 逸郎君        法務省矯正局保        安課長      中間 敬夫君        外務省北米局安        全保障課長    重家 俊範君        大蔵省主税局調        査課長      尾原 榮夫君        文部省初等中等        教育局小学校課        長        菊川  治君        厚生省保健医療        局管理課長    矢野 朝水君        厚生省児童家庭        局母子福祉課長  炭谷  茂君        労働省労働基準        局賃金時間部労        働時間課長    畠中 信夫君        自治省行政局公        務員部公務員第        二課長      佐藤  信君    参考人        地方自治総合研        究所事務長    池田 省三君        東京弁護士会消        費者問題特別委        員会委員     木村 晋介君        元内閣法制局長        官        林  修三君        日本弁護士連合        会消費者問題対        策委員会幹事   藤田 裕一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案(第百十二回国会内閣提出、第百十三回国会衆議院送付) ○統計法及び統計報告調整法の一部を改正する法律案(第百十二回国会内閣提出、第百十三回国会衆議院送付) ○行政機関の休日に関する法律案内閣提出衆議院送付) ○一般職職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 大城眞順

    委員長大城眞順君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨七日、鳩山威一郎君が委員辞任され、その補欠として岡野裕君が選任されました。     ─────────────
  3. 大城眞順

    委員長大城眞順君) 行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案及び統計法及び統計報告調整法の一部を改正する法律案の両案を便宜一括して議題といたします。  本日は、両案審査のため、参考人方々から御意見を徴することといたしております。  御出席いただいております参考人は、地方自治総合研究所事務長池田省三君、東京弁護士会消費者問題特別委員会委員木村晋介君、元内閣法制局長官林修三君、日本弁護士連合会消費者問題対策委員会幹事藤田裕一君、以上四名の方々でございます。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席いただきまして、ありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  それでは、議事の進め方について申し上げます。  まず、各参考人十分程度で順次御意見をお述べいただき、その後、各委員の質疑にお答えを願いたいと存じます。  なお、恐縮ですが、時間が限られておりますので、簡潔にお答えくださるようお願いを申し上げます。  それでは、まず池田参考人にお願いいたします。池田参考人
  4. 池田省三

    参考人池田省三君) 地方自治総合研究所池田でございます。  私は、これまで地方自治体におけるコンピューター利用プライバシー保護政策調査研究する中から、プライバシー保護のあり方について考えてまいりました。また、昭和五十七年より武蔵野市の個人情報保護審議会委員をお引き受けし、それなりに自治体行政プライバシー保護政策というものを現場で見てきたつもりでございます。現在までに四百三十四自治体が国に先駆けて個人情報保護条例制定しておりますが、本日はこうした自治体におけるプライバシー保護政策実態というものを踏まえながら行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律について私の意見を申し上げたいと存じます。  まず最初に申し上げたいことは、本法案個人情報保護法案と言われながら実はプライバシー保護法案ではないということであります。  私たちプライバシー保護政策の確立を求める立場からいえば、これは極めて失望すべき事実でございます。本法案は正確に申せば自動処理個人データ法案でありまして、行政運営合理性あるいは効率性を確保するための個人情報管理法案にすぎません。これは、既に十月十三日の衆議院内閣委員会総務庁長官が「これはプライバシー保護法案ではなくてデータ保護法案である。」と答弁されていることから見ても特に異論のない認識であると思います。  とはいえ、本法案は、個人権利利益保護を第一の目的とするとも説明されております。しかしながら、OECDの理事会勧告あるいは我が国プライバシー保護研究会報告を持ち出すまでもなく、プライバシー保護のための行政機関の責任というものが全く明確にされておりません。  第一の問題点は、収集制限項目がなく、第四条の個人情報ファイル保有目的も「できる限り」「特定しなければならない。」とされており、個人情報収集目的明確化すら「できる限り」という表現によってあいまいにされている点でございます。  昭和五十四年の行管庁調査では、七つの省庁が保有する九十八のファイル個人データのうち、本人の同意を受けているものはたった六ファイルにすぎません。一方、全く本人の意向を確認していないものが十九ファイルもございました。今回の法案はこのような一方的な個人データ収集に歯どめをきかせることすらできないものではないか。さらに、センシティブ情報についてもその収集あるいは記録についての規制がございません。  第二の問題点は、個人参加原則でございます。  本法案には国民本人開示請求権規定されており、一定程度この原則が保障されたかのような印象がないわけではございません。しかしながら、第六条ではファイル自身の存在すら公表されないものが十一項目にわたって列挙されております。ファイル自身が全く見えないとすれば国民はアクセスのしようがないわけですから、個人参加権利はここでは全く否定されてしまうわけでございます。また、官報で公示されることとなったファイルについても、第十四条では事務適正遂行への支障のあるものというものを含めておりまして、ここでも国の保有する個人情報の内容が国民の前に公開されない危険性をはらんでおります。さらに、開示請求自身についても多くの適用除外が置かれ、学校の成績、診療に関するもの、刑事事件に関するものは開示請求自身が認められず、いわば門前払いとなっており、その他のものについても事務の適正な遂行支障を及ぼすものは各省庁判断いかんで開示されないこととなっております。これでは個人参加原則がいわば全く骨抜きになってしまっていると言えることではないでしょうか。  第三の問題は、利用制限の問題でございます。  原則禁止となっておりますが、やはり適用除外によって事実上規制できないものとなっている。  このように本法案は、プライバシー保護原則に照らしてみると余りに重大な欠陥を持っていると言うことができようかと思います。  次に、本法案を先進的な地方自治体プライバシー保護条例と比較して考えてみたいと思います。  自治省調査によりますれば、本年四月一日現在、四百三十四の市区町村において個人情報保護条例制定されており、この条例の適用される住民は約四千三百万人に達しております。これは我が国の人口の半分に近い数でございます。  具体的に言いますと、第一に、まだ数は少ないのですが、プライバシー保護対象コンピューター処理されている個人情報だけではなく手作業で処理されている個人情報、いわゆるマニュアル処理を含めている自治体が二十一ございます。あるいは、自治体行政だけではなく民間部門についても規制対象にしている自治体も十六団体ございます。  御存じのとおり、これらの規制は本法案には初めから用意されておりません。  第二に、収集規制規定している自治体は九十六あり、特にセンシティブ情報についての記録禁止規制規定している自治体は実に四百二十三団体に上り、センシティブ情報収集そのもの禁止している自治体も二十六ございます。つまり、ほとんどの条例制定自治体センシティブ情報については極めて慎重に取り扱っているということでございます。  本法案収集規制あるいはセンシティブ情報の扱いについては既に述べましたので繰り返しませんが、大きな隔たりがあると言ってよいのではないでしょうか。  第三に、個人情報利用提供規制については四百十八の自治体規定しておりますし、国等とのオンライン禁止あるいは規制規定している自治体も三百二十二団体に上ります。  ここで強調したいのですが、個人情報利用提供ということで今後極めて大きな問題になるのは、個人情報個人ファイル結合の問題であるということです。御存じのように、コンピューター技術通信技術の革新は急速に進んでおります。したがって、従来処理できなかったような膨大な情報の蓄積、処理現実のものになってきております。現在国の保有している個人情報は約十四億件と言われますし、自治体の保有している情報はおおむね五十億件を超えるものと思われます。これらの個人情報がすべて結合されるということはあり得ないにしても、放置しておけば国民の知らない間に個人情報が体系的に蓄積され利用されていくという方向に向かうのは避けられないこととなるでしょう。そこでは、国民全体についての情報が体系的に把握され、国の隅々に至る管理体制をしいていくことも可能となり、情報を独占したものは巨大な権力として機能していくことが予想されます。この結合についての規制は、したがって焦眉の課題であると考えます。  しかしながら、本法案には結合禁止あるいは規制の条文がございません。確かに第十条で「受領者に対し、提供に係る処理情報について、その使用目的若しくは使用方法制限その他必要な制限を付し、又は安全確保措置を講ずることを求めるものとする。」となっております。しかし、第十条は第二項で「制限を付し、又は必要な措置を講ずることを求めるに当たっては、保有機関の長は、これらの者の事務又は業務の遂行を不当に阻害することのないよう留意するものとする。」としております。これでは結合規制についてもしり抜けになってしまうわけです。ここでも自治体程度レベルを確保してほしいというのは過ぎたる要求でございましょうか。  最後に、住民参加の問題です。  これは個人参加原則を言っているのではなく、個人情報保護に関するシステムに対して住民あるいは国民意見がどのように反映されるかという問題です。例えば、個人情報保護条例制定している自治体のうち百三十六団体個人情報システムを設置、変更する際、審議会意見を聞くなどの手続を規定しております。私の所属する武蔵野市においても、システムの変更、入力項目の是非、既存のファイルから新しいファイルを作成するなどの際、審議会に諮問し、その了承を前提としております。  しかしながら、国の法律であるこの法律案にはその規定を全く見つけることができません。  実は、自治体プライバシー保護条例はいまだ十分なものではございません。かつ、実際の運用に当たって、プライバシー感覚なしで個人情報が取り扱われているという実態は少なくございません。しかし、そうした自治体レベル個人情報保護政策と比較してすらも本法案は重大な問題を持っているということでございます。  のみならず、本法案が原案のまま成立するとするならば、ようやく始まった自治体プライバシー保護行政への積極的な流れを逆に阻害してしまうのではないかという心配がございます。とりわけ、プライバシー保護条例制定がこれからの問題である都道府県については、国に準じてデータ保護条例にしてしまうおそれが非常に強いと考えざるを得ません。  最後になりますが、本法案全体を見渡しますと、公の秘密を守ることについては熱心であっても、プライバシー保護の本来の目的である個人情報、つまり私人秘密を守ることを余りに軽視しているという感想を持たざるを得ません。本来、プライバシー保護法情報公開法とセットで考えられるものでありまして、情報公開がまずあり、その例外規定としてプライバシー保護があるものと言わなければなりません。つまり、公の秘密ができる限り公開され、その例外規定として私人秘密が守られるというものです。その意味で、本法案は逆立ちしている法案と言っても過言ではないでしょう。  そうした点から考えますと、本法案抜本的修正が必要であります。少なくとも国民プライバシー保護行政をコントロールできるシステムは必須のものであり、国民の参加する審議会等プライバシー保護行政の監視、改善についての国民意見が反映される機関を設けることを特に強く要望したいと思います。  以上でございます。
  5. 大城眞順

    委員長大城眞順君) ありがとうございました。  次に、木村参考人にお願いいたします。
  6. 木村晋介

    参考人木村晋介君) 今かかっております法案行政の保有する個人情報射程距離に置いた法案ということでございますが、私は、民間企業の保有する個人情報管理に関連して発生している情報主体側市民被害について若干の例を報告さしていただきまして、民間の保有する個人情報についても早急に保護規制が必要だという点について参考意見を申し上げたいと思います。  個人情報全般について市民苦情がどの程度なのかという状況については必ずしも全般的なデータはないわけですけれども、私ども消費者関連弁護士会委員会などでいろいろ聞くところによりますと、特に信用情報についての情報正確性とか情報収集の問題などについての苦情がふえているという傾向があるようでございます。  国民生活センターでの調査などによりましても、五十九年に十三件取り扱っておりましたのが六十二年には四十三件にふえている。あるいは、国民生活センターと各地方消費者センターなどのこの種の信用情報に関する苦情を見ますと、五十九年五十六件であったものが六十二年には六百件近くになっているというようなことでございまして、恐らくこの信用情報だけでなくて他の民間の保有する個人情報についてもいろいろ同様の苦情被害が生じているのではないだろうかということが推測されると思います。  とりわけ、個人信用情報については苦情の申し出が多いわけでございますけれども、この個人信用情報自体につきましては、金融機関あるいは金融企業それから信販企業などの与信管理の上から見まして、個人信用情報を持ち、これを交流するということはやはり必要なことなのだろうと思います。特に、近年問題になっております多重債務者の発生を防止するという観点から見ましても、個人信用情報自体は重要な役割を演じているというふうに私どもも考えております。  しかし、現在こうした個人信用情報機関が、銀行系あるいは信販系あるいは貸し金業専業者関係それからそのほかの外資の関係等含めまして、全国に主なものが四つあるわけでございますけれども、そこの保有する情報件数を単純に合計しますと七千万件ぐらいになる。恐らくこれは各情報機関でダブっているものもあると思いますので現実にはもう少し減るかと思いますけれども、しかし相当数事故情報がありまして、しかもこれが多重債務者防止という観点から近年情報センター間での情報交流も行われているということでございまして、そういう点でこの信用情報に係るプライバシー侵害が起こった場合の被害の広がりというものも大変大きくなってくるわけでございます。  御承知のように、六十一年の三月に通産関連大蔵関連プライバシー保護に関する通達が出されまして改善がなされているわけでございますけれども、それにもかかわらず、誤った信用情報登録によって信用を受ける機会を失った、あるいは誤った情報が載っているんだけれどもそれの訂正がなかなか認めてもらえない、こういった種類の苦情は大変多いわけでございます。  六十二年の五月に千葉市内で、ある理容関係機械販売会社倒産をいたしまして、この倒産に関連して架空契約その他の被害が出ました。この会社岩上商会という会社ですけれども、ここが理髪店に対して機材を納入したかのような架空契約をつくりましたりあるいは商品を納入していないというようなことがあって、この関係被害を受けた理容業者は二百八十人以上に上るというようなことが新聞などで報道されております。この関係で、架空契約で全く判こを押したことがないという理髪業者もいたわけでございますけれども、それにもかかわらず信用情報上は延滞の登録がなされまして、このために住宅ローンや車のローンなどの与信を受ける機会を失った、こうしたトラブルが発生しまして新聞などで大きく報じられたことがございます。  この種の、本来登録されてはならないはずの事故情報信用情報登録されるという例は数々ございまして、各消費者センターなどで受けたトラブルの中を見ましても、クレジットカード契約をしたんだけれども普通郵便で来たために郵便受けで盗まれて三十万円カードを盗用された、信販の保険がおりて弁済になったんだけれども、それにもかかわらず事故情報登録されてクレジット契約などができないで困っている。あるいは、全く身に覚えのない自動車のクレジット代金の督促が続いて、調べてみたら自分の名前が冒用されていた、裁判で勝ったんだけれども、それにもかかわらず事故情報登録されている。こういうような苦情がございます。  要するに、これは信用情報機関に対する事故情報登録信用情報機関に加盟しておりますクレジット企業判断に一方的にゆだねられている、公正な審査がされていないということに大きな原因があるように思います。与信企業というのは与信契約についての一方の当事者なわけですけれども、この一方の当事者債務者について事故情報登録するかどうかということについて一方的に権限を持っている、これは非常に問題が多いと思います。そのために、例えば裁判などでは信販契約クレジット会社との契約が無効とされるようなケース支払い義務がないと見られる事案についても、支払いを拒絶するとブラックリストに載せるというようなことを言われまして泣く泣く支払いを強制される、こういうようなケースもたくさん起こっております。  これも相談のケースでございますけれども、カタログを見て血圧計を購入しましたが、調子が悪いのですぐに返品した、しかし代替品が送られてこない、その上、支払わなければブラックリストに載せるというふうにおどかされている、このようなケースが大変多いわけでございます。  それから、これは信用情報に関連するものでございますけれども信用情報に関連するもの以外でもいろいろプライバシー保護の上では問題の多いケースが起こってきております。  これは私が現在訴訟で争っているケースでございますが、ある会社員が東洋信託銀行貸付信託の口座を申し込みまして貸付信託契約をいたしました。そうしますと、銀行の方からダイレクトメールがいろいろ送られてくるわけでございます。会員番号などが付されましたものがたびたび送られてまいりました。そのうち今度は積水ハウスという会社からダイレクトメールが送られてまいりました。このダイレクトメールを見比べてみますと、全く同じシールが張られておりまして、会員番号も全部同じなわけですね。同じ機械で印刷したとしか思えない、そういうものが送られてきたわけです。これは明らかに銀行側が自己の顧客のリストをこの住宅会社の方に漏らしたとしか思えない、こういうケースが起こってきております。銀行の方に公に聞きますと、そんなことはあり得ないということをよくおっしゃるんですけれども現実銀行情報がこうした他の民間企業情報主体の承諾なしに全く無断提供されているという事実があるわけでございます。単に住所と名前だけではないか、これはプライバシーとは関係がないではないかという意見もあるかもしれませんが、しかし現実銀行と取引をしているということがわかる形で会員番号も含めて情報提供されているということになりますと、その人の経済生活に関する情報無断で漏えいされた、銀行契約上の守秘義務にも反する事態であるというふうに断ぜざるを得ないと思います。  このように民間の保有しております個人情報についてのトラブルも近年ますます多くなっておりますので、立法に当たりましては、今回は法案を見ますと射程距離に入っていないようでございますが、早急に民間の有する個人情報についても何らかの保護のための法制度をつくる必要があるというふうに考えております。
  7. 大城眞順

    委員長大城眞順君) ありがとうございました。  次に、林参考人にお願いいたします。
  8. 林修三

    参考人(林修三君) 林修三でございます。  私は、個人情報保護の問題につきましては、かつて行政管理庁の行政管理委員をいたしておりまして、その時期にこの問題についてかかわりを持って以来、十数年にわたってこの問題についていろいろ関係を持ってきております。また、我が国法律制度につきましては長い間法制局におりまして携わってまいっております。そういう経験等から、この法案について若干の意見を申し上げたいと存じます。  まず、我が国における個人情報保護対策のあり方について述べたいと存じます。  近年の我が国における情報化の進展、特に電子計算機による個人情報処理の急速な拡大は国民の間に不安感や個人権利利益の侵害のおそれを生じさせており、その保護対策の必要性が指摘されております。  諸外国では、昭和五十五年のOECD理事会の勧告もあり、多くの国において個人情報保護に関する法律制定されてきております。  そのOECDも勧告を実施するに当たっての具体的措置につきましては、その国の法制度あるいは国民性、伝統などの違いによる加盟国の裁量の余地を認めており、各国の保護法制も国によって相当異なっている面がございます。したがって、我が国保護法制を考えるに当たっても、諸外国の法制をそのまま持ち込むということにはまいらない点がございまして、我が国の国情というものも当然に考慮するべきであろうと存じます。  ここで、いわゆるプライバシー保護個人情報保護関係について少し意見を申し述べたいと存じます。  プライバシーの観念は、我が国においては現在まだ実定法上のものではなく、専ら学説または判例の上で論じられているものでございまして、その内容は、まだ必ずしも明確ではございませんが、一応他人にのぞき見されたくない自分に関する事柄を他人にのぞき見されない権利ないし利益といったものと考えられております。一方、この法案は、行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の取り扱いに関する基本的事項を定めるものでございまして、その範囲内でプライバシー保護されるというものであって、世間で慣用されているプライバシー保護という用語を使わずに個人情報保護としてあるのは、より内容に正確であり適切なものではないかと存じております。  以上のような基本認識からいって、この法案の内容は全体的に妥当なものと存じます。また、全体としてOECDの勧告にも沿ったものと認めてよいと思います。  しかし、この法案についていろいろと議論があることは私も承知しております。それらのうち主要なものについて、以下、四点について私の意見を申し述べたいと存じます。  まず第一に、本法案目的でございますが、これに関して、行政運営優先の法案だというような意見があるようでございます。これにつきましては、OECD勧告がプライバシー保護情報の自由な流通との調和を目的として出されたものであるように、我が国の制度化に当たっても、国民一般の利益につながる行政情報システムの発展にも資するものとする必要があり、本法案目的規定が「行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人権利利益保護する」というようなことになっておるのは適切なものであると思います。  第二に、第四条の保有制限でございますが、これに関連して、いわゆるセンシティブ情報収集制限を明確に規定すべきであるという意見が言われておるようでございます。これにつきましては、OECDの議論においても、センシティブ情報と万人に認められるような情報を定義づけることは非常に困難、むしろ不可能であるとされております。それから、他面から申しますと、この収集制限規定を置いている国でも、法益的なあるいは公益的な必要のある場合のセンシティブ情報収集規定を置いている国は幾らでもあるわけでございます。そういう意味で、本法案個人情報全般対象として保有制限をかけることによって実質的にいわゆるセンシティブ情報をも含めて個人情報収集を実質的に制限する、つまり保有制限規定であるいは目的外使用の規定を置くことによって実質的にこの個人情報収集制限にも寄与しているというやり方は、適切なものではないかと思っております。  また、適法公正な手段による収集ということを規定せよと言われておるようでございますが、これにつきましては、我が国の現在の憲法下における行政原則は法に基づいて行われることになっており、行政機関対象とするこの法案においては特に改めて規定する必要はないものじゃないかと思っております。  第三に、事前通知、公示と開示の適用除外事項について申し上げたいと思います。これにつきましては、各種の適用除外が多過ぎるんじゃないかという意見が出ております。しかし、この法案を詳細に見てまいりますと、各段階における適用除外はそれぞれ公共の利益や本人あるいは第三者の利益に配慮されたものであって、いずれも必要最小限度のものと考えてよいと思われます。  政令委任事項が広いんじゃないかという御議論もあるようでございますが、この政令委任事項については前各号に準ずるものというような縛りもかけられておりまして、必ずしもそういう意見は当たらないんじゃないかと思っております。  最後の論点として、民間部門の保有する個人情報保護の問題がございます。これにつきましては、私も将来的には立法化が必要だと思っておりますが、民間部門については営業の自由との調整が必要なことなど別途の問題もございまして、今直ちにこの法案に盛り込むというのは適切ではなく、閣議決定もございますように、それぞれの関係省庁で早急に検討、措置を考えてもらいたいと存じております。  結論として申しますと、我が国の急速な情報化の進展等にかんがみ、政府案の一刻も早い成立、施行が非常に大切であると存じております。  ただし、この法律案我が国にとって全く新しいものであり、また個人情報保護にとって必要な具体的措置の詳細まで法律規定できるものではございませんので、この法律の施行に当たっては、可能な限り明確な運用基準を定め、その適正、厳格な運用を図っていっていただきたいと存じます。また、この法律施行後においては、必要に応じて積極的に制度、運用の改善を図ることが必要だと存じます。  以上、この法律案についての私の意見を申し上げました。  ありがとうございました。
  9. 大城眞順

    委員長大城眞順君) ありがとうございました。  次に、藤田参考人にお願いいたします。
  10. 藤田裕一

    参考人藤田裕一君) 私は、日本弁護士連合会の立場から今回の個人情報保護法案について意見を述べさせていただきます。  まず、結論から先に申しますと、法案抜本的修正が必要であるというように考えております。  そこで、時間もございませんので、修正していただきたい事項の柱立てだけを申し上げます。そして最後に修正を要するその理由というものを簡単に述べさせていただきたいと思います。  まず、修正を求めたい第一の事項でありますが、それは目的規定であります。  この法案第一条では「行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、」という当然のことを規定いたしたために、個人情報の取り扱いの場面におけるプライバシー保護という本来の目的が極めて不明確になっております。やはり、個人情報の取り扱いに関する個人プライバシー保護がこの法案の第一義的な目的であることを明記し、しかもそれが憲法上の権利保護であることをはっきりとうたってほしいと考えている次第であります。  第二に修正をする必要がある点は、マニュアル処理による個人情報保護対象に含めていただきたいということであります。  個人情報処理に関連して生じるプライバシーの侵害の危険性は、何も電算機処理に限ったことではないのです。むしろマニュアル処理される個人情報記録にこそ個人プライバシーと深くかかわる情報が存するのではないかと思っております。例えば、次に述べますセンシティブ情報のうち、個人の思想、信条やあるいは団体加入の有無などの情報については、対象となる個人の数が少ないがためにマニュアル処理されることが多いと思われますが、しかしこうした情報こそ個人プライバシーにとって大変大きな脅威となります。  次に修正を検討していただきたい点でありますが、それはセンシティブ情報についてであります。  センシティブ情報について収集、保管、管理利用などする各場面で、他の個人情報以上に慎重な配慮がなされるような規定を設けていただきたいと思っております。なるほど、センシティブ情報についてはその範囲の確定ということで問題があり、OECDの理事会でもこれについて具体的な表現はしておりませんでした。しかし、OECDの理事会勧告と同時期に発表された欧州評議会、いわゆるCEの条約では、センシティブ情報として人種、政治的意見または宗教その他信条を明らかにする個人データ及び健康または性生活に関する個人情報を挙げており、特別慎重な配慮をするように要求しております。また、主要各国、例えばスウェーデン、アメリカ、フランス、先般成立いたしましたイギリスのデータ保護法においても、センシティブ情報について特別の規定を置いております。  このように最近の各国の趨勢は積極的にセンシティブ情報に関する規定を置く傾向にあります。我が国が自由主義国家のリーダーとして国際社会を動かしていく以上、自由主義の基礎ともいうべき国民の基本的人権をより積極的に擁護する必要があると考えておるわけであります。  そこで、我が国の場合センシティブ情報としてどのような個人情報が考えられるのかということでありますが、この点に関しては憲法自体が明確な答えを用意してくれていると思っております。すなわち、憲法は国民の思想、信条、信教の自由など人格の不可侵性に強く関連する自由権や法のもとにおける平等に関する事項を具体的に列挙しており、これらに関する情報がまさにセンシティブ情報と言っていいと考えております。したがって、センシティブ情報の範囲は、憲法の条項との関連でとらえれば確定するのに困難ではないと考えております。あとは、国が法案センシティブ情報に関する規定を盛り込むか否か、これは専ら政策の問題であると考えております。  四番目にぜひとも検討をお願いしたいのは、収集制限に関する規定を盛り込んでいただきたいということであります。  法案には収集制限に関する直接的な規定はなく、第四条において個人情報ファイルの保有制限で間接的に制限しているにすぎません。しかも、その制限の内容も「法律の定める所掌事務遂行するため必要な場合に限り、かつ、できる限りその目的を特定しなければならない。」という極めて抽象的なもので、収集制限への間接的影響も全く期待できないと思っております。  そもそも個人情報は形のないものであります。それでありながら個人の人格に深くかかわるという特性を持っております。そういう特性を持つ個人情報の取り扱いから生じるプライバシー侵害を防止しようとすれば、当然、個人情報ファイル記録されて形が与えられる以前から、すなわち収集の段階から規制を加えなければ真に個人情報保護することにはならないのです。そうした意味で、まず収集の段階で利用目的からの規制収集の手段、方法の面からの規制を明記していただきたい、そのように考えております。  五番目に、利用提供制限に関する第九条の修正を検討していただきたいということであります。  特に、第九条二項の二号から四号の規定では「相当な理由のあるとき」あるいは「特別の理由のあるとき」という極めて抽象的な基準で目的利用や外部提供ができることになっております。しかし、よく考えてみますと、こうした「相当な理由」あるいは「特別の理由」を判断するのは目的利用を禁じられておる当該の行政機関の長が行うことになっているのであります。この判断の適否をチェックするシステムがこの法案では十分整っておりません。そうしますと、結局、各行政機関あるいはその長に目的利用であるかどうかということの委任を、これは白紙的に行っているということに等しいんではないかと思っております。したがって、各行政機関の行う個人情報の取り扱いについて、これを監督する機関を設けるなどのチェックシステムの整備ができない以上、目的利用等の例外規定はより具体的に修正していただかなければならないと考えております。  修正をお願いしたい六番目の事項は、ファイル簿の閲覧、公示制度、さらには個人情報の開示制度について、種々の例外規定を設けている点であります。  個人情報保護に当たって情報主体開示請求権が重要な意味を持ち、さらに開示請求権を実効的なものにするために公示制度があることは十分御理解されているところと思いますが、この法案ではこれらの制度について二重、三重の例外規定を設けており、結局、国民が本当に知りたい自分の情報項目について一般的な公示もなされない、したがってどこに知りたい情報があるのかもわからない、仮にわかっても開示してもらえないということが将来予想できるわけであります。やはり、行政機関が保有する情報情報主体である国民のものである、あるいは少なくとも情報主体保有機関が共有するものであるという発想に立っていただき、公示できないことあるいは非開示とすることが真にやむを得ない場合に限定していただきたいと思っておりますし、そういう観点でこの法案の審議もしていただきたいと思っております。  まだいろいろと修正していただきたいところはありますが、時間の関係でどうしても修正を検討していただきたい点を最後に申し上げますと、それは訂正、抹消の点でございます。  この法案では訂正、抹消については個人の具体的権利規定しておりません。しかし、後ほど述べますように、個人情報に関する個人プライバシー権としての自己情報コントロール権は情報化社会における普遍的な権利として承認され、我が国もその例外ではないはずです。そして、この自己情報コントロール権を内容のあるものとする以上、誤った情報や不正確な情報情報主体みずからが訂正、抹消できなければ自分の情報をコントロールできるということにはならないはずです。こうした考え方は個人情報に関する法律がない現在であっても裁判所で一部承認されており、この法案で訂正、抹消請求権を否定するのはいかがなものかと考えております。  次に、私が今まで述べました考え方の支点となる事柄のうち、三点に限って申し上げます。  まず第一点は、この法案保護すべき国民権利についてでありますが、これについて、表現が適切かどうかは知りませんが、私自身としては個人情報プライバシー権だと思っております。プライバシーという言葉はさまざまな意味で用いられ、権利として認めるには余りにも漠然とし過ぎていると言われる方もおります。本来、プライバシーというものは私的領域への不可侵性という観点から発達した権利利益でありますから、そもそも私的領域に対する社会の考え方の変化によってさまざまなプライバシーが生まれてくるわけで、この法案プライバシー一般の保護目的とするものでないことは明らかです。しかし、個人情報の取り扱いとの関連で個人プライバシー権を考えるとき、一九六〇年代以降、情報化社会における個人プライバシー権利として自己情報コントロール権が承認されてきた歴史的事実があること、また自己情報コントロール権の生成の基盤である情報化社会は各国の文化、社会性の違いを超えた普遍的社会構造であること、さらにはOECDの理事会勧告で示された八原則が自己情報コトンロール権の最低限の、いわゆるミニマムの内容であることなどを考えますと、我が国でも最低限OECD八原則を内容とする自己情報コントロール権としての情報プライバシー権があるものと考えていいのではないかと思っております。そして、この権利は、本来、個人人格と深く結びつくために憲法第十三条などで保障されるべき憲法上の権利だと思うのであります。また、それであるからこそ、さきに述べさせていただいたように、目的規定でもこのことを明記し、この権利制限する場合、それ相応の合理的理由があるか否か慎重に検討されなければならないと思っておるわけです。  次に、今述べたことと関連いたしまして申し述べたいと思いますが、今回の法案では公示制度や開示制度に関し広範な除外事由を置いておりますが、いずれも個人情報プライバシー権を制限してまでなぜ除外事由にするのか個々の情報ファイルごとに検討されておりません。いずれの除外事由も、各行政機関の職務との関連でどのような個人情報がどのように利用されるのか、そしてそれが情報プライバシー権を制限する合理的理由たり得るのか、個々具体的に検証されなければ憲法第三十一条の適正手続保障規定に違反するのではないかとすら私は考えております。  最後に、民間企業等が保有する個人情報の取り扱い規制との関連でこの法案問題点を述べさせていただきます。  先ほど木村参考人意見陳述にもありましたように、民間企業が保有する個人情報関係ではさまざまな問題が出てきており、私自身も二、三の事件を扱っておりまして、早期に法的規制が必要だと思っております。また、経済企画庁でも、去る九月九日、報告書を発表され、法的規制の必要性を述べられています。  しかし、民間部門については、営業の自由という言い分が企業側にあってなかなか法的規制に到達するまで大変だろうと思います。しかし、それでも早期に規制立法を定めなければ国民感情に対応できなくなると思っています。そこで、国としても何としても民間部門規制立法を制定する必要が生ずると思うんですが、立法規制をしようとする国の側が十分な個人情報保護法を持たぬ以上、必ず企業側から片手落ちの声が上がり、立法規制が困難になるのではないかと思っています。そういうことがないよう今回の法案個人情報が十分保護される内容に修正してもらいたいと、そのように考えております。  以上です。
  11. 大城眞順

    委員長大城眞順君) ありがとうございました。  以上で参考人方々からの御意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 久保田真苗

    久保田真苗君 池田参考人にお伺いします。  自治体プライバシー保護行政なんですが、今お聞きしますと、大分自治体条例化が進んでおるようでございます。私もこの間自治省に対して質問しましたところ、自治省としては民間情報も含めて条例化に対する指針のようなものを自治省として出すことにかなり積極的なように見受けたわけでございます。  ところで、そういう見地からいたしますと、自治体でのプライバシー保護行政で最も大事なところはどういうところに問題があるとお考えでしょうか。
  13. 池田省三

    参考人池田省三君) お答えいたします。  自治体行政を通じてプライバシー保護の問題を考えるときに一番重要なことは、内部での個人情報利用のあり方、もう少しはっきり申し上げますと、行政内部での目的利用というものをどう規制していくかというそこが重要ではないかというふうに考えます。なぜならば、それは住民にとって一番見えにくい部分である、そういった意味で一番チェックされなければならない場所ではないかと思うんです。  具体的に一例だけ申し上げたいと思うんですが、例えば東京の葛飾区におきましては、自治体が保有しています個人情報について、それを利用することについて本人の同意を得る手続というものを行っております。  具体的に申し上げますと、老人福祉の一環としてシルバーパスであるとかあるいはマル福医療証というものが発行されておりますが、この発行に当たっては所得制限がございまして、一定以上の収入があれば発行されないということになっておるわけです。従来は老人福祉課が課税台帳を見て所得を確認し、対象者を把握して郵送する、こういう形をとっておりましたし、これはある意味でどこの自治体でも同様な形で進められていると思います。しかし、葛飾区の場合は、個人情報保護条例制定以後、老人福祉課が課税台帳を閲覧するに当たって当該本人の同意を得ることを必須条件にしたというところに特徴がございます。つまり、課税台帳というものは地方税を課する目的収集した個人情報でございまして、例え区民サービスのためとはいえ老人福祉課が勝手に閣覧するのは目的利用に当たる、したがって利用に当たっては本人の同意が必要だという考え方です。このようにして六十歳以上のすべての老人に「福医療証・シルバーパス 交付に関するお願い」という往復はがき、実に四万二千通だったそうですが、これを発送して、同意するしないのいずれかに丸をつけさせて返送してもらうという手続をとったわけです。当然予想されることですけれども、老人にその趣旨が直ちに理解されるわけではございませんから、大混乱が生じました。つまり、区役所の方で勝手にやってくれとか老人をおどかすのかという電話も殺到したようでございます。しかし、私から見ればこの混乱はよい混乱です。つまり、市民プライバシー意識と職員プライバシー保護意識を高めていったという意味では非常によい混乱であった。  つまり、行政はそのように内部利用に当たって住民あるいは国民プライバシー保護というものを常に念頭に置く、それが自治体だけではなくて国も含めてなんでしょうが、行政の中でのプライバシー保護のあり方として多分一番重要なものではないかというふうに考えております。
  14. 久保田真苗

    久保田真苗君 もう一つ、結局これは個人情報でございまして、特に自治体の扱う個人情報そのものは、窓口とかいろいろな社会保障関係そして住民台帳、そういったいろいろな窓口的な情報が非常に多く、住民に非常に密接なかかわりを持っています。したがいまして、自治体でいかにそのプライバシー保護がなされるか。今回の法案は、林参考人も指摘されましたように、これは行政情報保護の枠内でプライバシーが多少考えられているといった範囲を抜けていない、そのこと自体を私も大変残念に思うものですけれども自治体プライバシー保護についていたします場合にもっと住民が直接物を言ってよろしいのではないか。どういうプライバシー保護住民は強く求めているのか、何しろいろいろな情報で一番近いところにある自治体からのプライバシー保護についての活動モデル、そういったものを参考にしていくことができたら将来に大変いい影響があるんじゃないかと思うので、どういう住民参加といいますかが行われているかあるいは行われたらよいとお考えか、その辺をお聞かせください。
  15. 池田省三

    参考人池田省三君) お答えします。  プライバシー保護条例を持っております自治体のかなりの部分が個人情報保護審議会というものを設けております。この個人情報保護審議会というものが、例えば住民から具体的な個人情報保護に関する苦情であるとかあるいは問題点の指摘だとかそういったものを受けて、いわば行政とは離れた第三者の形でそれを議論し問題点を探り、そして改善というものを首長に勧告していく、こういう手続が非常に必要なんではなかろうか。現実にそれは自治体で行われていることであります。この場合、審議会委員の任命というのはかなり多くの部分が首長の任命ということになるんですけれども、そこで具体的に住民参加の道を開くために幾つかの自治体では次のような方法をとっているわけです。  一つは、例えば私が所属する武蔵野市もそうなんですけれども、地域の労働団体であるとかあるいは地域の一つの商工関係団体であるとかそういった地域の団体の推薦を得て委員を任命するというやり方が一つございます。あるいはまた、公募という方法をとりまして、市民から個人情報審議会に就任したいという人間を公募いたしまして、数が多い場合は抽せんで決めるわけなんですが、そういう形で市民の参加を認めている、こういう自治体も幾つかございます。つまり、そういったいわば住民が具体的に個人情報保護システムというものについて発言権を持つということ、これが今自治体では非常に求められ、かつ進んでいるところだろうと思います。  ちなみに、そういった中でどういったプライバシー保護というものが具体化されていたかということを一、二簡単に申し上げたいと思うんですが、例えば川崎市におきましては、住民に対するさまざまな行政上の必要に応じたアンケートがございます。そこで、フェンスをつくるために、当然そのアンケートに答えた人間の所得というものを知りたいわけですけれども、答えたくない人がいるということを想定いたしまして、所得を尋ねる項目について答えたくないという項目を新たにつくる。非常に小さいことのように見えますけれども、これもある意味で僕は非常に大きな意味を持っていると思います。あるいは、藤沢市などの図書館では、図書館の個人情報というのはだれがどんな本を読んだということがある程度推定できますから思想、信条にかかわる個人情報というものになってくるわけです。したがいまして、大体の図書館はオンライン処理はしておりませんで、オフラインで図書館の中だけで処理するというそういう傾向になっておりますが、例えば藤沢では、それにつけ加えまして、本を返却しない人に対して催促の督促状を出す場合に、あえて本の名前は書かないということをやっておるわけです。  いわば小さい一つ一つの積み重ねですけれども、そういった具体的な一つの取り組みが恐らくはプライバシー権というものを行政並びに住民の中に定着さしていく一番いい方法ではないかというふうに考えております。
  16. 久保田真苗

    久保田真苗君 ありがとうございました。  次に、林参考人にお伺いいたします。  一番最後のところで民間部門のお話が出ました。もちろん今回の法案はこの問題を扱っていないということで、関係省庁でもって早急に対応したらいいのではないか、そういう御意見がございました。  私もこの部門は大変大事だと思っております。なぜならば、個人情報の大部分は民間情報でございます。そして、ここで消費者等、直接個人情報に非常にかかわりのある方々がいろいろな被害といいますかあるいは懸念といいますか、そういう事件が大変目立ってきております。したがいまして、政府が何らかの対応を早急にしなければならないということについて思うわけでございますけれども、せんだって各省庁の対応について伺いましたところ非常にばらばらでございます。例えば経済企画庁は、将来立法化を一応念頭に置きながら国民世論の高まりを待つというようなことでございます。私はもう世論は十分高まっているとは思います。通産省は、業者に対する行政指導で十分だと考えているようでございます。また自治省は、指針を出すことによって民間部門情報条例によって扱うということに腰を入れてきているというふうに見られるわけでございます。ところが本法案を出しました肝心の総務庁は、民間情報につきましてはとても総務庁の手の届かないところにある、したがって今回の法律以上のことはなかなか総務庁の権限外になるものだ、こういうことでございます。官房長官の御意見も伺いましたが、政府がどのような対応を民間情報についてしていくのかということについては展望もないし、それに取り組むという意思もどうも私には見えなかったのでございます。そういう意味で、お先真っ暗だということは、これはOECDの原則を余りにも無視しているのではないか。現在、この法案行政の電算機情報でございますけれども、先の見通しもないままになぜ総務庁がこういうものを手がけてきているのか、一体この先はどうなのかということを懸念するものでございます。  私は決して行政指導でなすべきことではないと思っておりますけれども林参考人はどういうふうにお考えでしょうか、将来見通しを伺います。
  17. 林修三

    参考人(林修三君) 今の御質問にお答えいたしますが、民間情報について何らかの立法措置が必要であろうということは先ほどの私の意見陳述でも申し上げましたとおりでございまして、私自身としてもこれはやはり今後ひとつ政府でも取り組んでもらいたいと思っているところでございます。  今までの状況を見ますと、この民間情報個人情報保護でございますか、これについては幾つかのなお研究すべき問題点があるわけで、それでおくれているんだということが言えると思うのでございますが、一つは、政府の公的情報の問題と違いまして、いわゆる営業の自由なり職業選択の自由なりそういう点から、それぞれの民間活動による個人情報収集とかあるいはファイル化とかそういうものについての規制立法をするについては、そういう点のいわゆる憲法との関係の、特に営業の自由とか職業選択の自由との関係の調整が必要である。それから、各企業、事業形態別に統一的な取り扱いをするのは必ずしも適当でない部面がある。したがって、各所管の役所の行政長がそれぞれの意見を相当取りまとめなければいけない、そういうふうな問題がございます。  それから、先ほどお話がございました総務庁の権限がなかなか及ばないという点は、確かに現在の各省の設置法の建前から申しますと総務庁の言うのにももっともな点がございまして、各省庁の所管している事業についての民間機関における情報保護について今の総務庁がすぐ立案する権限についてはもう少し何らかの措置が必要だろうという気がいたします。これについては、現在、御承知のとおりに閣議の方針で経済企画庁が民間情報の問題についての取りまとめ役をしているようでございます。経済企画庁が、今お話のとおりに、先般、若干の考え方を出しました。それで、各省のそれに従っての今までのやり方は、今お話しのとおりに各省若干ばらばらの点がございます。かなり意欲的にやっているところもございますし、どうもまだ余り手のつかないところもございます。これは、例えば内閣段階で、内閣官房なりあるいは総理大臣官房なりそういうところで、各省の全体を統合したこの法案をつくるシステムを何か考える必要があるだろうというような気がいたします。  この点につきましては、先ほど久保田委員からはどうも内閣側の対応が鈍いというようなことをおっしゃいましたけれども、これは衆議院でこの法案の議決に際して附帯決議をつけておられまして、民間情報についても早急に何らかの法的な措置について検討しろというような附帯決議もついております。これは、政府の方でも恐らくこれを受けて今後何らかの行動に出てもらうことが期待できるんじゃなかろうかと思います。それにつきましては個別の事業分野ごとの検討も必要でございますが、今申しましたとおり、どこでこういう法案をつくるについての取りまとめをするかという方針はやっぱり政府部内で決めてもらう必要があるだろうという気がいたします。  それから、今ちょっとお話がございましたが、地方条例民間情報についてコントロールすることは、私は必ずしも適当じゃないと思っております。各企業、殊に大きな企業は日本全国でいろいろな営業活動をしておりまして、ある地方団体ごとにプライバシー規制が違えば企業にとっては非常に処理、対応に困るわけです。民間企業情報についての保護措置はやはり国の法律でやるべきものだと、私はそういうふうに考えております。今申しましたとおりに衆議院での附帯決議もございますし、政府が早急にこれに対する対応措置をやってもらうことを私も実は期待しております。
  18. 久保田真苗

    久保田真苗君 時間が一分だけになりました。  藤田参考人に伺います。  修正項目数ある中で訂正、抹消権に二重丸をおつけになっていらっしゃいます。私も数ある情報を全部どこの機関であろうとコントロールするなどということは実際には不可能だろうと思っています。したがいまして、個人権利プライバシー権利を守る最低の歯どめの線はこの訂正、抹消権であろうと思います。  ここを強化するために、藤田参考人は具体的に何か御提案がございますか。
  19. 藤田裕一

    参考人藤田裕一君) 具体的にと言われてもないんですが、この法案ではとにかく申し立てだけができるということで、例えば情報主体の方に異議があっても、それを再調査して回答をするだけということでございます。  しかし、これについては先ほど判例があると申し述べましたが、たしか昭和五十九年の東京地裁の判決で、これは軍属が逃亡したかどうかということの情報、これは情報主体の方では逃亡したという扱いが不満でこの抹消を求めたわけなんです。その逃亡したかどうかという事実に争いがありまして、結局は抹消が認められなかったわけですが、判例の中でも、そういう個人の人格に結びつきが非常に強いような個人情報については、場合によっては間違っておるあるいは不正確であれば訂正ができるんだということをはっきりと申し述べております。  そうすると、これは判例ですのでその事件自体をとらえてそれを射程距離に置いておりますが、必ずしもそうした限定的な意味ではなくて情報に誤りがあるということになれば、情報によって人格がいろいろな形で評価されるわけです。一つの情報の誤りが全部の人格の評価の誤りにつながる場合もあるわけですから、どんな細かいことであろうと誤りあるいは不正確な点があれば訂正できる権利というものを認めるべきであろうと思います。  それと、もう一点だけ申し述べますと、誤りあるいは不正確という点は、実際は情報主体の方から立証していくことが非常に困難な面がございます。ですから、立法措置をとるに当たってはその辺の立証責任の転換、要は行政側に誤りがないというような立証責任を負わせるような措置も含めて御検討願いたい、そのように考えております。
  20. 久保田真苗

    久保田真苗君 ありがとうございました。
  21. 名尾良孝

    ○名尾良孝君 私は林参考人に二点だけお伺いをしておきたいと思います。  まず、私といたしましては、本法律案は高度情報化社会を迎えるに当たって行政機関の保有する個人情報保護行政の適正、円滑な運営と調和しつつ法制化するという画期的な立法でありまして、プライバシー保護のための第一歩を踏み出したという点は評価されるものであり、賛成するものであります。  特に第一点としてお伺いしたいのは、先ほどもお話が出ましたマニュアル情報でございます。  本法律案は、御承知のように、OECDの勧告、それに基づいて加藤研究会、プライバシー保護研究会が設置され、さらにその後、臨調の最終答申を受けて林参考人が座長となられた研究会が六十一年十二月に報告をされて、それがもとになってこの法律案ができたわけであります。  加藤研究会におきましては、コンピューター情報のみならずマニュアル情報についてもこれは対策を講じる必要がある。ただ、マニュアル処理については、システムの成熟度、処理データの内容、規模及び処理方法が多種多様であることなどから、具体的な規制対象とその内容については適正な限定を置く必要があるというふうに言っておられますが、林研究会におきましては、保護すべき個人情報は公的部門における行政機関の持つコンピューター情報に限るというふうにされております。ただ、その報告書の中でこういうふうに言っておられます。「電子計算機処理に係る個人情報のみを対象とした規制を行うに当たっては、手作業による処理への逃避をもたらしたり、電子計算機の利用の拡大を抑制したりすることがないよう留意する必要がある」この意味は、私から言わせるならば、逆にマニュマル情報というものはなるべくコンピューター処理に切りかえていく、そしてマニュアル情報というものはなるべく減らしていく、減らしていくことによって情報の内容を把握しこれをシステム化していくと言うことができるというふうにも考えております。  これは、今後の検討条項として衆議院においても附帯決議をされ、参議院においても恐らく附帯決議の中に入ってくるであろうと思うのでありますが、今後のマニュアル情報処理についてコンピューター情報との関係においてどのようにお考えになっておるか、それが第一点であります。  第二点は、先ほど申し上げましたように、林研究会では、もちろん臨調の最終答申を受けられての研究会でありますから公的部門におけるコンピューター情報ということに限定をされております。その中で特におっしゃっておられるのは、公的部門つまり国の行政機関が保有をしている個人情報というものは、これが収集、集積、保有されているのは法令に基づいて職権によりまたは公的信用を背景に収集されたものが多いということがまず前提になっておる。つまり、今政府機関が保有をしておる情報というものは頭からこれはもう正当であるというふうに言っておられる。私ももちろんそれを信じております。しかし、国民が心配をしているのは、果たして政府機関が持っている自分たちの個人情報というものが正当に収集をされ、保有をされているものであろうかということを心配をしておるんだと私は思うんです。でありますから、公的信用を背景にあるということを立証する必要があるのではないか。これは、私は本法案を修正しろという意味ではなくて、やはり先ほどいろいろ参考人からお話が出ましたように、抽象的な言葉ではなくて、いわゆるセンシティブ情報の中で思想、信条、宗教、健康状態であるとかあるいは教育ということに対してはある程度法的に明確にできないものか。それを明確にすることによって行政機関の方は、私の方は正当に収集して持っておりますよということであっても、国民の方から見て、やはりそれを法制化することによってやはり自分たちの情報はこれだけ厳正に守られながら政府機関に保有されているんだなという安心感を持つと思うんです。  そもそもこの法案ができた原因は一番先に何かといえば、国民の中には自分の個人情報が十五億件も政府機関に保有されてどのようなものになっているのだろうかということを心配している、それを解除して安心させてやるというのがこの法案をつくることになった一つの大きな要因だと思うんです。そういう意味で、やはり国民信用をされる、国民が安心のできる法律案として今後考えていかなければならないわけではないか。  なるほどセンシティブ情報というものの定義はなかなか難しい。難しいけれども、この法案のように極めて抽象的ではなくて、ある程度具体的にその基準を示すということが今後必要ではないか、こういうふうに考えておりますが、その二点について林参考人の御意見を承って私の質疑を終わります。
  22. 林修三

    参考人(林修三君) お答えいたします。  第一点の手作業の処理情報を今度の法案では対象にしておらないことの理由でございます。  これは、私が座長を務めました研究会でも一応そういうことにしたわけでございますが、その理由の主なことは、第一に、電子計算機による個人情報処理というのは手作業の処理に比べて記録を大量に処理できる、それから迅速に処理できる、それから情報の集中等、結合及び検索が非常に容易である、それから一たんコンピューターとかあるいは磁気テープに入力されますとそれを簡単に訂正できない、そのようなところで記録とか処理の不透明性がある、そういう点においてマニュアルの処理に比べて非常に際立った特色があるわけでございます。こういう電子計算機の利用の拡大ということに対してそういう今のような電子計算機処理が国の持っておる個人情報について行われている、これに対する国民の不安感あるいは個人権利利益が侵害されるおそれがあるんではないか、そういうようなことを背景といたしまして行政に対する国民の信頼を確保する、そういうところからこの個人情報保護法案をつくろうということにしたわけでございます。そういう意味から申しますと、手作業の処理で行われているものは、今申しました電子計算機処理情報とは違いまして特に情報の集中、結合、検索あるいは記録処理の不透明性というようなところには余りそういう問題がない。それから、現在においては国の機関においても情報の的確迅速な処理のためには大量の情報につきましては原則として電子計算機処理に移るという方向をとっております。それぞれの事務についていろいろの事務的なものはございまして一挙に進んでいないものもございますけれども、方向としては大量な情報につきましては電子計算機の処理でいかなければとてもやれない、大体そういう状況にあることは明らかなところでございます。そういう意味から申しますと、手作業の処理で行われているものについてまで今直ちにこの個人情報の法制を適用する必要はそれほどないんじゃないか。そういう趣旨でこれは電子計算機処理情報に一応限っていこうということにしたわけでございます。  それで、お話のとおりに、OECDの理事会の勧告あるいはいわゆる加藤委員会でございますかの報告でも、手作業の処理についても範囲に含めたというものが出ておりますけれども、今申しましたようなことで当面非常に必要なのは電子計算機処理情報の問題であろう、これがやはりその特色からいって国民がそれに対する漠然たる不安と申しますかそういう点を持っているんではないか、そういうところからこういうことにしたわけでございます。  過去においては、日本の公的機関においては保有する情報はすべてマニュアルの手続でやっておりまして、マニュアルでやりますと情報全体の管理というのはなかなか難しいし、それを照合することも非常に難しい点がございまして、それは逆の意味においては、一般の国民の側からいっても公務員の守秘義務というのが非常によく守られている、そういうことから手作業で行われているものについてはそれが正当な理由なくして外部に流出したりほかの情報結合されたりというような不安は余り持たなかったんだろうと思います。そういう意味で電子計算機処理情報について当面やるということが適当じゃないかということで、こういうような私たちの研究会でもやはりそういう報告をしたわけでございます。  それで、ただこの電子計算機処理情報に限ることにしたために今電子計算機処理システム情報処理はやろうというのを手作業にかえるというようなことはやっぱり防止すべきであるということでございますが、これは、大量な情報につきましてあるいは今後の公的機関における事務処理の状況といたしまして、今申しましたような電子計算機処理情報についていろんなコントロールが及ぶ、それを嫌って手作業にかえるという可能性は私はそうないんじゃないかと思っております。これは、実際上、行政機関ではそういう理由だけで今まで電子計算機処理でやっていたものあるいは電子計算機処理方式でやっていたものあるいはこれからそういうことでやろうというものを手作業の処理にするということはほとんど考えられないんじゃないかと思います。また、国の行政運営の方針としても、内閣を初め各省大臣等においてもそういうような傾向を許さない方向でひとつ行政の運営をやっていただきたい、それは可能なことであろう、そういうふうに思っておるわけでございます。  それから、センシティブ情報の問題についてのお話でございますが、先ほどもちょっと申し上げましたが、何がセンシティブ情報かということについては範囲の確定がなかなか難しい。これはOECDでもそういうことを言っておりますし、実際問題としても他人に知られたくない情報というのは人によって非常に違うわけでございます。それで、共通的には、おっしゃるとおり確かに思想、信条あるいは信教の問題、そういうような問題が主だろうとは思いますが、もちろんそれだけには限らないわけでございます。したがって、センシティブな情報収集制限ということを法的に決めることは非常に難しいわけでございます。  それから一方で申しまして、外国でもセンシティブ情報収集についての制限規定を置いているところもございますけれども、しかし、公益的な理由なり公共的な理由で法令に基づいて収集することについてはそれは大体認めておるわけであります。また、行政の必要から言えば、公的機関としてある種のセンシティブ情報といえども法令の根拠を持って収集しなきゃならない必要性はこれはあるわけでございまして、それはどこの国でもそういう法的な措置はやっておるわけでございます。  我が国においては、行政は今の憲法上は法によって行うというのが建前であります。したがって、いろんな国の機関なり公的機関センシティブ情報を含めまして各種の情報報告とか届け出とかあるいは申告とかいろんな形で国民の側から集めることを決めた法律がたくさんあるわけでございますが、そういう個人情報に関することでもすべて一定の法令の規定に基づいて報告を求めあるいは申告をさせあるいは届け出をさせているわけでございます。そういう法令は、殊に法律についてはすべて国会の御審議を経て、適正公正な行政のために必要な限度でそういうことができるんだということは特に戦後につくられた各法律についてはすべてそういうような趣旨が入っておりまして、当該行政機関においての行政事務遂行する上で必要な限度においてそういう報告等なり届け出を求めることができるということになっておるわけでございます。私は、そういう意味においては全体的に申しまして今のこの個人情報を含めていろんな情報を国の機関が集めるあるいは持っていることについてはそれは公正適正な手続で行われている、そう言っていいと思うのでございます。  現在の我が国行政では、法令に基づく行政のほかに割合広い範囲でいろいろな行政指導というものが行われていることは御承知のとおりでございます。行政指導は法令に基づかないで行われている点に一つの特色があるわけでございます。しかし、この行政指導は当然強制的な性質を持つものではないわけで、法令に基づかないで行われている以上、相手方の任意の承諾なしに行政指導をやることはできない。したがって、行政機関がいろんな情報を集めるにいたしましても、仮に行政指導によって集めるにしても、それは当然に相手方の任意提供ということがあるわけであります。しかも、それをやれるのはそれぞれの当該行政機関の任務なり目的の範囲に限られるわけでございまして、それがその範囲を出て違法なことをやっていれば当然に違法な処置として当該公務員についてもあるいはそういうことについても法的な措置もございますしあるいはいろんな制裁措置もあるわけです。そういう意味においては私は、現在の法律制度のもとで行われている個人情報収集というものについては全体としてある程度公正妥当な適切なものの保障はあると思います。  先ほど申しましたように、個々の具体的なこの情報はとってはいけないというようなことは法的にはなかなか否定しにくいことで、しかも仮に個人プライバシー関係のあるようなものにつきましても公的な必要で場合によっては法令に基づいて収集しなきゃならない場合もあり得るわけでございます。そういうものについては法による行政という背景で行われていることにおいてやはり国民から信頼してもらうということが必要だろう、また信頼も受け得るんじゃないかと思います。また、この法律では、そうして集めたもののファイルにつきましては保有、管理についてのいろんな制約を課しております。特に目的外使用とか機関内における結合についてのいろんな制限をかけておりますが、そういう面においても国民の信頼を確保するに足る点があるんじゃないか、そういうふうに考えております。
  23. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 林参考人にお尋ねをいたします。  このたびの法律は、結局はその背景に政府機関相互の情報オンライン化が存在するということであろうと思います。そのために生ずる不安を解消するための法案であろうと思いますが、これと行政組織の所掌の分割の問題がございます。  情報のオンライン化と行政組織の所掌分割とは相矛盾するものではないか、こう思いますが、その点についての御所見をお願いいたします。
  24. 林修三

    参考人(林修三君) お答えいたします。  ちょっと御質問の趣旨を私とり違えている点があるかも存じませんけれども、今回の法律は、公的機関収集される情報について個人情報保護ということに観点を置いてファイルのつくり方あるいはその保有のあり方それから後における目的外使用とかそういうこと、逆に言えば開示請求とかあるいは訂正の申し立てというような個人情報保護についてのいろんな規定を入れた。その目的は、やはり行政に対する国民の信頼を確保する。で、大量のいろんな個人情報を各機関が保有しているので、それが殊に電子計算機処理によって非常に迅速に行われるとすればあるいはその電子計算機処理によるとオンラインシステム導入で外部からそれにアクセスすることも割合やりやすいとかあるいはその情報結合、集中、検索ということも非常にやりやすい、そういうことで国民の方で不安感があるのでその不安感に対応する意味で電子計算機処理情報に一応限ってこういう法案をつくろうということでございます。  それで、公的な情報につきましては、政府部内でこういう法案をつくるについては総務庁が大体そういうことについての権限を持っておるわけでございます。国の機関全体にわたって少なくともそういう国の機関を拘束するような法案をつくることは当然にできるわけで、こういう法案が出てきたわけでございます。民間情報につきましては、さっき申しましたようにそれぞれの事業についての所管の役所がございますので、これについてのいろんな考え方をいたしませんと民間情報についての統一的な法案をつくることについてはいろいろな問題点がある。それから、民間情報そのものについての営業の自由という点から、若干その点についての処置がおくれている点があるということが言えると思います。  それから、各省の組織がいろいろ分かれていることとの問題でございますが、これはある意味では言い方が必ずしも適当かどうかわかりませんが、国の持っておるいろんな個人情報目的外に使用されないとか外部に勝手に流出しないとかそういうことに対する一つの、何と申しますか、歯どめ的なものは、各省の組織が今いわゆる縦割り行政になっております。それで、今の行政組織で申しますと、内閣という最高の機関のもとで各省大臣が行政事務を分担管理しているいわゆる縦割り行政になっておりまして、そういう意味でこれは必ずしも言い方は適当ではないのでございますが、各省がそれぞれ持っております個人情報目的外に使用されたり結合されたりする可能性というのは非常に少ないわけです。それ自身非常に少ないわけで、これはほっておいても割合少ないわけです。ほっておいても少ないわけでございますが、しかしそれだけではやはり歯どめになりませんので、今度の法律ではそういう各省間における流用とか目的外使用とかあるいは外部に対する流出ということについての制限規定を置いたわけでございます。国の行政組織が非常に縦割り行政になっている点においては、それ自身この情報結合され集中される可能性は国の場合は割合少ないわけでございます。ただ、これは、電子計算機処理情報になりますと割合簡単に各省間で流通しようと思うと流通する可能性が出てくるわけで、そこに問題があるわけでこんな法案が必要だろうと思います。いわゆる行政組織の中で電子計算機処理情報が集中され結合される危険性はむしろ地方団体の方に多いわけで、先ほどちょっとお話もございました地方団体の方には私は相当そういう問題があると思いますが、国の場合は比較的そういうことは少ないと言えると思います。しかし、それは、やはりそれだけじゃ足りないんで、こういうようなシステムが必要だろう、そう思っております。  ちょっと御質問の趣旨に合わないようなことをお答えしたかもわかりませんが、一応お答えいたします。
  25. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 池田参考人にお伺いしたいと思います。  今回の法案の二十六条によると「地方公共団体は、個人情報電子計算機処理等を行う場合には、この法律規定に基づく国の施策に留意しつつ、個人情報の適切な取扱いを確保するため必要な施策を策定し、及びこれを実施するよう努めなければならない。」こういう規定がございます。  この法案についてのいろんな意見はいっぱいあるわけですが、この法案を前提にして、地方公共団体の施策に対しこのような条文があるということについて地方公共団体プライバシー保護条例とかそういう点に関する影響という点でこの条文がどのような効果というか意味があるとお考えか、簡単にお答え願いたいと思います。
  26. 池田省三

    参考人池田省三君) お答えいたします。  御指摘になった条文は実は総務庁の原案では、地方公共団体は、個人情報電子計算機処理を行う場合、この法律で定める国の施策に準じて施策を策定し、及びこれを実施する責務を有するとなっておりましたが、今回、この法案では「地方公共団体は、個人情報電子計算機処理等を行う場合には、この法律規定に基づく国の施策に留意しつつ、個人情報の適切な取扱いを確保するため必要な施策を策定し、及びこれを実施するよう努めなければならない。」というような形に変わったというふうに伺っております。つまり、準じが留意しということになりましたし、責務は努めるということになったわけです。したがって、原案から見れば自治体を拘束するという性格はかなり薄まったんではないかというのが一つございます。  しかしながら、私が最初の意見で申し上げましたとおり、先進的な自治体プライバシー保護条例あるいは政策と今回の法案を比較検討してみますと、残念ながらこの法案というものは条例レベルから見て評価し得る水準には達していない。したがって、この法案がそのまま自治体に援用されるとなれば我々は非常に強い危機感を持たざるを得ないということであります。  幸い、市町村におきましてはおおむねプライバシー保護というものの考え方がようやく定着してきておりますし、行政の方もそれなりに築き上げてきたという流れがありますからそう簡単に変わるというふうには思っておりませんが、特に心配しておりますのは、都道府県レベルプライバシー保護条例というものは今後の間もなく始まるであろうという課題である。したがって、都道府県レベルでこの法案がいわば準用されるようなことになりますと、冒頭申し上げましたとおりデータセキュリティーというものに軸を置いてしまってプライバシー保護というものが軽視されるそういった行政につながっていくんではないか、それを今一番恐れているということになろうかと思います。
  27. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 同じく池田参考人にお伺いしますが、地方自治体プライバシー保護条例制定している団体が現在四百三十四ほどあるとおっしゃったんですが、この団体の中でいわゆる結合禁止規定規定している団体の数がわかればどのくらいかという点が一つ。  それから、地方自治体としては、結合禁止規定を置いていた場合にこの法案はそういう点については全く無関係ですので、その辺がどんなふうな流れになっていくだろうかという予測みたいなことになりますが、お答えください。
  28. 池田省三

    参考人池田省三君) まず、結合禁止あるいは規制というものを条例制定している自治体というのは三百二十二団体であろうかと思います。これは本年四月一日現在の数です。  そこで、四百余の条例制定団体のうちで三百二十二団体国等とのオンライン禁止あるいは規制規定しているという一つの数字を見ていただければわかりますように、結合禁止というのは自治体レベルでは一つの常識といいますか、当たり前の形としてかなり定着してきているということがございます。しかしながら、先ほどの御指摘のとおり、この法案が成立して自治体がこれに準じたような措置に努めなければならないという規定があって、国の法律に基づいて全く別な形で、つまり今まで自治体がずっと築き上げてきた流れとは異なってこの法案の流れの中で新しく条例をつくる、そういう自治体が出てまいりますとやはりそのオンライン禁止結合禁止という形が落ちていくというそういう危険性というのはやっぱり否定できないことではないだろうか。  特に、自治体の場合には生活に密接な関係のある個人情報というものを市民一人当たり大体四十から六十件くらいだと思いますけれども保有しておりますから、これがいわばオンラインという形で結合という形で体系的な個人情報という形で組み立てられたりあるいはそれが公共団体であれ民間団体であれ他の外部団体にもし流れていくとするならば、これは住民生活の面から見ても非常に重要な問題になってくるだろう、そういった意味ではこの法案について結合禁止というそういった問題意識というものをもっとより強く出すべきではないかということが言えようかと思います。
  29. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 時間がありませんので、木村参考人藤田参考人に一言ずつお答えいただきたいと思うんですが、要するに、誤った情報ファイル登録されている、これに対する訂正申し立てないしその抹消請求ということについては、開示請求は権利性が認められているけれどもこちらの方については権利性が認められていない。そうすると、誤った情報登録されているということがわかった、これを何とか抹消したいということに関して、この法案ではそれを抹消して真実に訂正することができない。現行法のもとにおける司法手続においてこれを救済し得る余地がどの程度あるだろうかどうだろうか。  一、二分ずつでお二人で順番にお答えいただきたいと思うんです。
  30. 木村晋介

    参考人木村晋介君) これは、まず裁判所の司法判断ですから裁判官によっても違うかもしれませんけれども、先ほど五十九年の判例の紹介がありましたが、司法機関によって訂正が認められる余地というのはかなり考えられるだろうというふうに思います。  ただ、誤った情報が実際に生活に日常的に与える影響を考えますと司法的な救済を待っていたのでは間に合わないという問題がありますので、申し立てを実効あらしめるという点からいきますと、その情報を有している機関あるいはその外部に申し立ての内容に関して審査する適切な公正な機関のようなものを置かないとならないのではないかというふうに思っております。
  31. 藤田裕一

    参考人藤田裕一君) お答えします。  従来、抹消請求権に関するこうした規定がないときには、先ほど私がちょっと御紹介しましたが、裁判例で抹消を認めるあるいは訂正を認めるという可能性があったんですが、こうした法律ができると逆にそうした従来の裁判例の流れを逆行させてしまうおそれがあるんじゃないかと私は実は思っております。  そして、こういう条文があるにもかかわらず抹消請求した、仮にそれが長い時間かけて認められたとしても、実は、今木村参考人が申し上げたとおり、その間に国民権利侵害というのはその期間ずっと生じているわけですね。それは誤った情報に基づいているわけです。ですから、事後的にそういうものを救済してみてもその間の被害の回復ということはもう取り返しのつかないことになってしまうわけです。そういう意味で誤った情報あるいは不正確な情報というものを早期に訂正ないしは抹消するという手続規定を置くということは、事後的救済ではなくて事前救済といいますか、まさに起こっている被害を今歯どめするという立場からぜひとも必要なのではないか、そのように考えているわけです。簡単ですが。
  32. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 以上でございます。  ありがとうございました。
  33. 吉川春子

    ○吉川春子君 木村参考人にまずお伺いいたしますが、民間の保有する個人情報によっていろいろな被害が生じているというお話でしたが、民間企業の保有する膨大な個人情報が今回の法案対象から除外されておりましてプライバシー保護という点で非常に不十分なわけです。  先ほど具体的な例として示された、銀行が顧客の住所、氏名を建設会社に漏らしたという事例、あるいは、私、新聞で読んだんですけれども元社員が会社の顧客情報を持ち出したということに対してその元社員に対して背任罪で告訴した、こういう事例も報道されておりますが、そういう情報を他へ提供したりあるいは持ち出したりした行為について刑法的に罰せられる可能性があるんだろうか、またそういう必要性についてもお伺いしたいと思うんです。  また、今もちょっと話題になっておりましたけれども、民事的にも救済するとしてもなかなか損害の立証とかそういうことが困難な場合も多いのではないか、こういうふうに私は思うんですが、こういうふうに民間保有の個人情報によりプライバシーが侵害された場合、どういうふうに民事的、刑事的に救済されるか、その点についてのお考えを聞かせていただきたいと思います。
  34. 木村晋介

    参考人木村晋介君) 現行法で情報の漏えい等の事態があったときに刑事罰で処理できるかという点については、情報主体の側から刑事処罰を求める方法というのはほとんど今の制度の中では考えられないんじゃないだろうかという気がいたします。先ほどの漏えいされた企業が背任罪等で処罰を求めるということはあり得るかと思いますけれども、それは企業内の問題でありまして、問題の市民にとっては刑事的な救済を求める手段というのはなかなかないんじゃないだろうかというふうに思います。  それから、そうなりますと民事的な救済ということになるんだと思うんですが、現行法でやるとすれば、現在、先ほども紹介しました銀行の顧客情報が建設会社に漏らされているというケースでは、銀行に対する関係では契約上の信義則上の守秘義務違反ということで債務不履行責任、さらには収集した方の建設会社に対しては不法行為による責任ということでやっておりますが、御承知のとおり日本の裁判というのは非常に長くかかるということと同時に、結局は損害賠償といっても精神的な苦痛に対する被害という意味での慰謝料請求という形をとらざるを得ませんので、そういう点で現在の裁判などでは慰謝料の請求の額というのは必ずしも高い水準にはないということもありまして、被害回復という点でもあるいは裁判で損害賠償を取ることが今後の被害を防止する上での抑止策になるかという点でも甚だ現状ではお寒いという気がいたします。
  35. 吉川春子

    ○吉川春子君 重ねてお伺いいたしますが、民間保有の情報規制する場合に営業の自由の原則とぶつかる、こういうお話が今もありましたけれども、その点についてはどういうふうにお考えですか。
  36. 木村晋介

    参考人木村晋介君) 今、営業の自由ということがどういう点で問題になるかということは、その情報についてその企業がどういうふうにかかわっているかということによっても大分違うとは思うんですね。情報を使って販売を促進していくという企業の場合、あるいはその情報を使って与信判断などをするという企業の場合、それから情報自体をあるいは商品化しましてこれをあちこちに販売するというようなそういう情報自体を商品にしている企業もあるわけで、そういうことによってかなり違うかと思うんです。  しかし、それで求められているものは営業上の利益の問題で、それに対する関係では、プライバシーの問題というのはやはり私ども弁護士の立場からいきますと憲法上の人格的な権利という点で、その間の利害調整をするとすればやはり人格的な権利に重点を置いた配慮を、もし立法をするとすればしていかなければならないんじゃないだろうかというふうに思っております。
  37. 吉川春子

    ○吉川春子君 藤田参考人にお伺いいたします。  本法案について修正してほしいという点を幾つか挙げられましたが、例えば行政機関あるいは民間情報取扱業者が結果としてそういうプライバシーの侵害行為を行った場合の罰則とかあるいはその損害賠償挙証責任の転換、こういうような問題についてはどのようにお考えですか。
  38. 藤田裕一

    参考人藤田裕一君) まず、罰則の点でございますが、一つは、これは大変難しい問題があるかと思うんです。特に行政機関が保有する個人情報の場合については、例えばこの法律では規定しておりませんけれども収集制限を仮に規定したといった場合にそれに違反した行政職の職員が罰則を受けるかということになりますと、これはある意味で行政の指揮系統の中で動いている一職員にしかすぎないわけでして、じゃ最高責任者はだれかということになれば長官になるわけでございます。そうすると、そうした指揮系統の中で動いている末端の人を処罰するのは必ずしも適切であるとは私は実際問題として行政関係では思っておりません。  しかしながら、仮に民事関係でまいりますと、指揮系統で動くという点では一緒でございますが、そこには国公法とかそういうことで定められた指揮系統というのはございませんで、民事上の雇い主と雇われる人間という契約関係だけになるわけですから、考え方としては末端のそういう収集制限に違反して情報収集したとか利用目的に違反して利用したとかいうそういう職員を処罰するということは考えていいんじゃないか、そういうふうに思っております。  それと、次に損害賠償の点についてですが、これについては、先ほども木村参考人の方から、損害の立証は非常に難しい、それで額も頭打ちになるということを言われております。これは実際そういうことでございまして、情報による精神的な苦痛というものそれ自身がまだ国民的な理解は余り得られていない。ところが、これは実際受けた人にとっては大変なものなんですね。ですから、そういうものを一般の立証に任せるということでは被害の回復というのは図れない、また将来に対するサンクションという意味も余り持たないだろう。そうすると、やはりサンクション的な意味を持たせるための損害賠償であれば民事的な懲罰的賠償責任というものをこの問題については若干考えないといけないんじゃないか、そういう分野ではないかというふうに思っております。
  39. 吉川春子

    ○吉川春子君 時間がほとんどなくなりましたが、林参考人に一言お伺いしたいのは、プライバシー権の定義について古典的なと申しますか、従来の私生活への介入を禁止するという意味に加えて、自己の情報は自分でコントロールする権利だということも加えないと情報化社会におけるプライバシーの侵害から守れないんじゃないかと私は思うんですが、いかがお考えでしょうか。
  40. 林修三

    参考人(林修三君) プライバシー権利と言われるものの内容につきましては、先ほど申しましたとおり、我が国では実定法がございませんで専ら学説、判例で議論されていることでございます。判例もまだ必ずしもそうたくさんはございません。したがいまして、その定義はなかなか難しいわけでございます。また、今お話しのように、時代によって内容もだんだん変わってきておることは事実でございます。  それで、私さっき申しましたように、一般的に承認されているところは、やはり自分のプライベートな、他人によってのぞき見されたくないことを他人によってのぞき見されない権利とか利益、そういうものだというふうに普通理解されておりまして、今お話しのような自己情報コントロール権というふうな考え方が最近出てきていることは確かでございます。また、それが一般的に承認された法理であるとまでは私はいっていないんじゃないかというふうに思っております。
  41. 吉川春子

    ○吉川春子君 終わります。
  42. 大城眞順

    委員長大城眞順君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々に一言御礼を申し上げます。  長時間にわたり御出席を願い貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十六分休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  43. 大城眞順

    委員長大城眞順君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案統計法及び統計報告調整法の一部を改正する法律案行政機関の休日に関する法律案及び一般職職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案、以上四案を便宜一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  44. 久保田真苗

    久保田真苗君 私は、まず最初に、土曜閉庁関連法案について質問をしたいと思います。  かねがね総務庁長官は、土曜閉庁を六十四年の一月実施ということで明言してこられたわけです。その準備期間として一カ月ぐらい必要だろうと言われてこられたわけです。そこで、私どもはこの一月実施ということをもちろん念頭に置きながら審議をやってまいりまして、それはもう非常に差し迫った法案であるところから、この法案個人情報保護法よりも先議するということを一生懸命お願いしてきたわけでございますけれどもこれが入れられていないで、今、同時にこの両方をやっているという状況でございます。  そこで、この法案はきょう委員会で議了するわけでございますけれども、来年一月実施ということでありますと、最初の閉庁土曜日が一月十四日ということになるわけですから一月実施という線は可能だろうと私は考えておりますけれども、この点、土曜閉庁がいつから実施されるのか、明確な御答弁をお願いいたします。
  45. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) ただいま委員御指摘のように、私は、かねがね年のかわり目がやはり一つの制度として発足するに適当な時期ではなかろうかというふうに考えまして一月実施というふうにしたいものだということで考えてまいったところでございますし、当委員会におきましてもそのように御答弁申し上げておったところでございます。  事務的には一カ月ないし二カ月の猶予期間が欲しいというふうに考えておりました。いろいろなPRやあるいは人員配置等々いろいろな問題から考えまして、ぎりぎりぜひ一カ月は欲しいというのが事務方の意見でございました。しかるところ本日議了いただくということでございますが、実は最初の休みになる日が一月十四日と想定されますけれども、その一カ月前ということではなくてやはりその月から実施をするということでありますから、本来で申しますれば一月一日から実施をするということに制度上はなるわけでございます。そういう意味合いにおきましては一カ月前という期間を既に過ぎておるところでございますが、せっかく一月実施ということでそれを目指してきたのでございますので、いろいろなPRの資料等の印刷はただいま全部ストップをさせておるところでございます。何とか一月実施をしたいということでぎりぎりまで努力したいというふうに考えておりまして、本日議了いただけますならば私どもとしては一月実施をするように最大限の努力をしたいというふうに考えております。
  46. 久保田真苗

    久保田真苗君 くどいようですけれども、これはたくさんの職場そしてたくさんの国民が期待を持って見ている法案でございます。もしこれが一月一日からの実施という線が崩れるということでありましたらば、私どもは、何ゆえにこの法案を実施時期が一年先、二年先の内容を盛っている個人情報保護法と絡ませておやりになったか、なぜ私どもの先議要求が果たされなかったのかということで、やはりこれは公務員として最善を尽くすということにならないと思うんですね。ですから、ここのところの私どもの強い希望というものをよく踏まえていただきまして、総務庁長官には何が何でも一月一日で実施するということで庁内を督励しそのお約束を果たしていただきたいと思います。  もう一度御答弁をお願いします。
  47. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) 国会における御審議の順序等につきまして私の方からとやかく申し上げる立場にないわけでございますが、私の方では、個人情報保護法案は実はさきの通常国会にお出しをいたしたところでございまして継続審議になっておったところでございますので、絡ませるなどということを毛頭考えたつもりはございません。  それから、一月実施ということにつきましては、私自身がぜひ何とかして一月実施にこぎつけたいものと考えまして、既に一たん二月実施やむなしということで事務方としては断念せざるを得ないという進言もあったわけでありますが、そこを何とかやろうではないかということで今準備を進めさせておるところでございますので、何とかきょう議了いただいて近日中に本会議で上げていただけるということであればその線に沿って指示をしてまいりたいというふうに考えております。
  48. 久保田真苗

    久保田真苗君 次に、人事院それから総務庁にもお尋ねしたいのですが、将来展望の問題なんです。  六十五年度から完全週休二日制を実施するように人事院には勧告をお願いしたい。なぜならば、勤務時間問題研究会の中間報告で六十五年という時期を出しているわけですね。ですから、人事院もこの線に沿ってぜひ時期的にこのことを明示して、明示された目的がなければなかなかこういう大きい仕事は進まないのでございますから、ぜひそれをお願いしたい、こう思うわけです。  また、総務庁長官にもお願いしたいのは、人事院がせっかく将来展望で方向性としては初めて目標をお出しになっている。時短に関しては公務、公共部門先行でいくということを打ち出していらっしゃる。この姿勢をお受けになって、国全体の時短を進めるというお立場からぜひ完全週休二日制を早期に実現していく姿勢を打ち出していただきたい、こう思います。この点はひとつよろしくお願いしたいのですが、御答弁をお願いいたします。
  49. 内海倫

    政府委員(内海倫君) ただいまの御意見につきましては、私どももその基本的な考え方におきましては何も異なるものではございません。  従来、週休二日制というものを私どもも総務庁と相携えながらかなりいろんな面の問題も克服しながら進めてまいってきたわけでございますから、さらにこれを一歩進めて完全週休二日制の実現を期するということは私どもとしましても大きな願いである、そのための努力を惜しむものではございません。  先ほどお示しになりました研究会の中間答申でございますが、これは、御存じのように、職員局長がその意見を求めるために設けましたいわば非公式の勉強会でございますけれども、その道の専門家がいろいろ相寄りまして練り上げていただいた答申でございますから、当然そういう線に沿うことは私どもも考えなきゃならぬと思います。さりながら、現実の問題を見ますと、やはり一方で行政サービスの低下というふうなことを恐れる声もありますし、また一般民間における完全週休二日制への対応の実態というものも見きわめなければいけませんし、さらにまた銀行も完全実施に踏み切るとすればどういうふうな影響が出るか、その上今回審議いただいております土曜閉庁がどのような形で影響が出てくるか、こういうことをもう少し総合的に検討をした上で私どもの最終的な期限というふうなものも考えたい。当面、本年の勧告といいますか意見としましては、国全般の労働時間の短縮ということに出されておる期限というふうなものをまず頭に置きながら、かなり積極的な完全週休二日制の実現に対する意見は申し述べたつもりでおります。  そういう意味で、今後も政府御当局といろいろな形で連携をとりながらその実現ということに努めていきたい、こういうふうに考えております。
  50. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) 完全週休二日制実施につきましては、主要先進各国のうちイタリーは制度的にかなり違っておりますけれども、例えばアメリカあたりは、一九四五年、昭和二十年に既にやっておるということでありますし、またフランスあたりでも、一番遅いところではありますが、二十年ぐらい前から実施しておるという状況にございます。今や完全週休二日制を目指して努力をしなければならないときであるという認識は私どもも持っておるところであります。  ただ、公務員につきましては先憂後楽であるべしという意見も非常に強いわけでありまして、例えば世論調査等をいたしました際にも、役所が土曜日に窓口を閉めて休むというのはいかがなものかという御批判も国民の皆様方の間にかなりあることも事実であります。中小零細企業、農民などは休むに休まれない、そういう中でおまえたちが休むのはもってのほかだという御意見を寄せられる向きもあるわけであります。そういうことを踏まえまして、今回少なくとも相当規模の事業所においては月に二回以上はいわゆる週休二日制を実施しておるという実態が六割以上に達しておるということを踏まえまして、国家公務員としてもこの辺で踏み切らせていただいてもいいのではないかというふうな判断に至ったわけであります。  したがいまして、私どもといたしましては時期をはっきり明示をして申し上げることはできませんが、少なくとも一般国民の間に完全週休二日制がかなり定着をしたという姿の中で国家公務員につきましても完全週休二日制を実施すべきではなかろうかというふうな判断に立ちまして、今後人事院の御意見等も十分伺いながら進めてまいりたいというふうに考えております。
  51. 久保田真苗

    久保田真苗君 私どもが非常に関心がありますのは、完全週休二日制をどのくらいの射程距離の中に置いてお仕事をお進めになっておるか。と申しますのは、そういうタイムスケジュール的なものが一応はございませんと、大きいお仕事ですから、それに伴って準備が進んでいかないということを懸念いたします。  人事院総裁とされましてはどのくらいのタイムテーブルで進めたいというそういう御希望をお持ちか、そこをもう一度伺わせていただけますか。
  52. 内海倫

    政府委員(内海倫君) その期限をどの辺に置くかということがやっぱり決まらないといろいろな意見をつくるのにも迫力を欠くということは確かにそうだろうと私も思います。  先ほども申しましたように、一応国全体の一般の労働時間短縮ということにかかわる期限がまず一つのめどだろうと思います。それから、先ほどもお触れになられました研究会の答申というものも一応期間を明示してやっておりますから、これも一つの目標にはなり得るわけです。  さてそこで、六十五年ということになりますと極めて直近のときになりますので、先ほど私から申し上げまた総務庁長官からもお答えになりましたように、やはりいよいよ完全週休二日制ということで土曜閉庁を全部に及ぼすということになりますとそのよって起こる影響というものもかなりいろんな角度で考えてみなきゃいけませんので、それを十分考えられるだけの期間はどうしても私はとりたい。とりわけ世論というものがどう傾いていくかということは今度の土曜閉庁の制度が実施されますとかなりはっきりしてくると思いますので、その辺も考える。しかし、じんぜん日を延ばしてということは適当でもありませんし、我々は決して考えてもおりませんので、おいおいにはっきりしてくる、こういうふうに考えております。
  53. 久保田真苗

    久保田真苗君 できるだけひとつ早くお知らせをお願いいたします。  次に、法務省にお伺いしたいんです。  この土曜閉庁の問題に関連して今非常に問題になっておりますのが拘置所の問題です。弁護人が土曜日に接見すること、これは非常に必要性が高いものというふうに思われます。平日の面会時間は九時から十七時、土曜日は九時から十二時半なんですね。しかし、弁護士会などの御調査によりますと、平日の場合接見の件数が平均三十九人、土曜日は三十八人、これは結局半日でやっている人数だと思いますので、非常に混雑をし満員であるというくらいニードが高いわけです。  これは非常に人権にもかかわることですから、今まで余り具体的なお約束といいますか必ずやりますというようなはっきりとしたお答えになっていないんですけれども、弁護人の土曜面会ができるようぜひ万全の処置をお願いしたい、こう思いますし、拘置所と警察との関係を見ますといかにも拘置所が不公平に扱われているように思いますし、これは何とかいい手だてでここを保障することはできないものでしょうか。
  54. 中間敬夫

    説明員(中間敬夫君) ただいま拘置所の弁護人接見の問題につきまして御質問でございますが、まず基本的には今回の土曜閉庁方式によります四週六休制の導入というこの趣旨にのっとりまして、面会それから差し入れの窓口、つまり対外的な窓口につきましては原則は閉めさせていただきたいと考えております。ただし、今先生御指摘の弁護人接見に関しましては、あらかじめ御連絡をいただきまして、かつその面会の用務の中で緊急性並びに必要性が認められる場合につきましては、それなりの職員の手当てをいたしまして面会の便宜をお取り計らいすべく現在各施設に検討を進めさせておるところでございます。  と申しますのは、やはり、まず前もってあらかじめの御連絡をいただきませんと職員の手当てが簡単にはつきませんし、それからまた現在私どもの行刑施設の職員というものは極めて限られた最小限の人員でもって配置されておりまして、例えばこれらの職員の四週六休制を出すのも現在が精いっぱいないしは超過勤務でこれをカバーしないと到底出し切れない、そんなような現状にございます。ちなみに年次休暇でも、例えば夏休みでも一年にわずか二日しか出せない。それから、年次休暇が二十日一般的には認められるわけでございますけれども、平均しますと六日程度しか年次休暇がとれない、そのような職員の現状にございます。  そのようなわけであらかじめの御連絡とそれから用務における必要性並びに緊急性が認められる場合について弁護人接見をやらしていただく、こういうことでお願いをいたしたいと考えております。
  55. 久保田真苗

    久保田真苗君 ともかくこれに対応するように万全の措置はとっていただけるということで、当面一月から実施されるべきこの中ではそうしていただくより仕方ないと思うんですけれども、本来の姿から考えますともう少し抜本的な対策があってしかるべきじゃないでしょうか。  弁護人の接見はもちろんのこと、家族の面会、差し入れも、土曜、日曜というものがつぶれるということは、これは働いている家族にとっても非常に都合の悪いことです。しかも、土、日のリラックスした気分の中で家族が面会するということはその家族の影響力によってその犯罪者に対する改悛の情を起こさせる、更生にも役立つというそういう効果を考えますと、これは考え直していただけないものでしょうか。つまり人員を適切に配置し、ウイークデーにおいてもウイークエンドにおいても稼働できるという体制の方向に持っていっていただけないものか、それが私の希望なんです。それは非常に必要なことだと思います。  もう一度御答弁を。
  56. 中間敬夫

    説明員(中間敬夫君) ただいま受刑者の方につきましても面会の必要性、重要性という御指摘がございました。先生おっしゃるとおり、特に受刑者はいずれは社会へ復帰してまいるわけでございますから、この人たちと家族とのつながりを深めさせるということは、これは大変に意義深いことでございます。したがいまして、これらの面会を極力計らいたいとは思いますけれども、先ほど御説明申し上げました現状の職員配置の枠内では現在私ども精いっぱいの努力をやっておるというふうに考えております。  ところで、土曜日を例えばほかの日に振りかえてほかの日を閉庁にというお話でございましたけれども、これは今回のこの休日法が第二、第四土曜日を新たに休日にするということで定められておりますので、この法律をそのまま使いますればやはり土曜日以外の日を閉庁日ということで休んで土曜日に面会をやるというわけには簡単にまいらないであろうというふうに考えております。ただし、この全体的な職員配置の見直しは当然にやらなきゃならぬことではありますし、また現在衆議院の方で御審議をいただいております刑事施設法案の成立の暁にはもっと抜本的な職員配置の見直しもいたしまして、その対応もまた考えなければならぬというふうに考えております。
  57. 久保田真苗

    久保田真苗君 私が申し上げたいのは、この土曜閉庁に絡んでいろいろな交代制の職場にいろいろな人員配置の配慮をしなきゃならないその中の一つではないかということを申し上げているのであって、抜本的な対策を私は人事院総裁にも総務庁長官にもこの際お願いしておきたいと思います。  また、それに関連しまして、今各省庁で具体的な開閉庁の範囲について検討ができていると思うんです。できるだけその範囲を拡大するのがもちろんこの法の精神だと思うんです。できるだけの人が土曜閉庁というものの恩恵に浴するということだと思うんですが、そのことは「各行政機関の長が特に事務を行う必要があると認める官署」というものが閣議決定でなされておりますけれども、その対象として挙がっている職場を具体的にこの際挙げておいていただいて今後の御努力にまちたいと思うんですが、具体的な名前をお聞かせください。
  58. 勝又博明

    政府委員(勝又博明君) 土曜閉庁の導入に伴いまして、その実施の趣旨に伴いましてできるだけ多くの機関において土曜閉庁を実施していくことは適当であるわけでございますが、どうしても業務の必要から土曜閉庁のできない官署というものがございます。  それを類型別に見ますと、大きく分けまして、まず一つは、交代制の官署でございまして、例えば刑務所等の保安部門でありますとか国立病院の病棟部門でありますとかあるいは航空管制官署でありますとかなどの官署がございます。さらには第二のカテゴリーといたしましては、週末に特に利用の高い公共施設でございまして、例えば博物館、美術館等がございます。さらには学校及び病院の外来部門でございまして、これにつきましては将来の土曜閉庁を視野に入れながら当面は実施に向けて検討を進めることにいたしますが、当面は土曜閉庁はいたさない、こういうことでございます。その他、例えば市況の情報収集するようなセクション等土曜日にも一部開庁する官署がございまして、全体として見ますと、一般職国家公務員の約四割の職員が土曜閉庁の官署に属さない、こういう状況でございます。  制度の趣旨から見ましてできるだけ今後とも土曜閉庁官署がふえますことを期待するわけでございますが、そのためには勤務体制のあり方等々各般の工夫がより一層求められるものと、かように考えております。
  59. 久保田真苗

    久保田真苗君 これは人員配置それから増員の問題と絡んで非常に大事な問題でございますので、今概略お答えいただいたんですけれども、この対象になる職場のリストを一度いただいて勉強さしていただきたいと思うんですが、よろしゅうございますか。
  60. 勝又博明

    政府委員(勝又博明君) 先生の御趣旨は土曜閉庁実施後における開庁官署のリストということであれば、まだ手元にございませんのでそれが整備され次第お届けしたい、かように思います。
  61. 久保田真苗

    久保田真苗君 次に、下請労働者の問題なんです。  土曜閉庁の実施に伴いまして、公務部門における下請労働者それからパートタイマー、臨時雇用契約者、こういう者が減収を来すという非常に深刻な問題があるんじゃないかと思いますけれども、これに関して何か特段の御措置があるのかどうか。例えば官庁の食堂、売店等のサービス企業の労働者、こういう方たちは日給月給なんですね。こういう方たちの問題、それから民間企業についても週休二日が当然減収につながるというようなことでは、これはなかなか国民の協力が得られにくくなるということがございますけれども、この点について総務庁長官はどういうお考えをお持ちでしょうか。
  62. 勝又博明

    政府委員(勝又博明君) 官署に入居しております各種店舗が役所の土曜閉庁によりましてその営業形態に影響を受けることは事実かと思います。  しかしながら、数字的に見ますと、土曜閉庁前であれ土曜閉庁後であれ職員の一週間当たりの勤務時間には変更がないわけでございます。したがいまして、単に数字から申し上げれば当該官署に入っております職員がその当該官署に出店しておる店舗を利用する割合というものは変わりがないんじゃなかろうか。そういう意味において当該店舗の営業成績には顕著な差はなかろう、こういうふうに思っておるところでございます。
  63. 久保田真苗

    久保田真苗君 総務庁長官、それじゃどうぞよろしくお願いいたしますが、ただいま私が申し上げましたような必要な職場の交代制の問題、そこへの人員の適正な配置の問題、増員の問題それから下請業者のこういった所得の問題、こういうことを絡めましてひとつ今後とも御努力をいただかなきゃならないと思いますので、ひとつどうかよろしくお願いいたします。  最後に、長官の御決意のほどがございましたらお聞かせ願いたいと思います。
  64. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) ただいま御指摘のように、国民のサイドからは行政サービスの低下を来さないようにしっかりやれという御要請がある反面、役所が休みますことによりましてその影響するところはいろいろと出てまいるわけでございます。  したがいまして、とりあえずは四週六休の月二回の土曜日を閉庁とするということでありますが、先ほど御主張のように完全実施ということになればなおさらのことでございます。今回これを実施することによります影響というものを、私どもも十分実態を踏まえて国民の皆様方にできるだけ幅広く受け入れられるような実施方法を考えてまいりたいということで努力してまいりたいと存じますので、今後ともまたお気づきの点についてはいろいろ御指摘をいただき御鞭撻をいただきたいと存じます。
  65. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 個人情報保護法の問題に入ります前に、若干緊急を要する問題がございますので、外務省の方に質問をまずいたします。  実は、三沢基地に配備されておりますF16戦闘機それからアメリカ軍の空軍艦載機が最近、北海道とかあるいは東北、信州方面に非常に超低空飛行を行っておりましていろいろと被害を出しております。この問題について伺います。  昭和六十二年の七月に三沢基地にF16戦闘機が五十機配備されました。その後から各地で今言ったような事件が続発をしているわけでございます。  ほんの一例だけ申し上げてみますと、昭和六十二年の八月には秋田県の男鹿、南秋田郡方面で超低空飛行がありまして、授業を中止したりそれから乳幼児がおびえたりあるいは家畜が異常な動作をするなどという事故。それから、六十二年の十一月には北海道全域にわたりまして超低空飛行が行われまして、特に日高方面では牧場の競走馬が暴走いたしまして負傷したり民家のガラスが割れたりしています。それから、六十三年の八月の二十五日には秋田空港の滑走路の上を突然F16が超低空飛行を二機で編隊を組んでやっている。それから、同じく六十三年九月二日には岩手県の山中に低空飛行のときにとうとう墜落をしてしまう。それから、九月の二十二日には山形県酒田市の上空で編隊でこれまた低空飛行をやりまして、市民が非常に驚いて問い合わせが殺到した。最近では、十月の五日から七日にわたりまして北海道の稚内市の近くに豊富町というところがありますけれども、これまた超低空飛行が行われまして、乳牛三十頭が驚いて先を競って牛舎に逃げ込んで事故を起こした。十一月一日には同じ北海道の陸別、別海町で十機の編隊で超低空飛行が行われて、乳牛四十頭が暴走をして木さく五カ所を壊す。ごく最近ですと、十一月の十七日、長野県伊那谷、木曽方面で八月ころから行われていたようですけれども超低空飛行が行われている。  ざっと挙げただけでもこれだけありまして、まだほかにもたくさんございます。今までも指摘されていると思います。  こんなようなことでとにかく子供たちがおびえるし乳牛が暴れて事故を起こしたり、あちこちで大変な被害が起きておりまして、この付近の市民にいたしますと大事故につながらなければいいなというような心配を常に持っているわけであります。  そんなことでまずお聞きしたいことは、低空飛行、特に超低空飛行と言われているんですが、日本の航空法第八十一条では制限されております。禁止されていると思うんですけれども、外国に駐留する軍隊、日本でいえばアメリカ軍、これは当然その駐留する国の国内法というものを尊重しなければならないというのが国際法の考え方ではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  66. 重家俊範

    説明員重家俊範君) 非常に一般的に申し上げまして、国際法上、一つの国におきまして外国の軍隊というものはその国の法令の適用を受けるということではございません。しかしながら、同じように国際法上の原則といたしまして、法令の適用は受けませんけれどもその法令を尊重するという義務はあるということであろうというふうに思います。  先ほど先生が御言及になりました航空法第八十一条の問題でございますが、これにつきましてはそういうことでございまして、かつ航空特例法ということもございまして、直接にアメリカ軍に適用になっておるということではございません。しかしながら、航空法第八十一条に言うところの最低安全高度というものにつきましては、米軍といたしましてもこれを実際上遵守してやっておる、こういうことでございますし、随時、先ほど先生が申し上げられましたいろんな事件が起こるたびに私どもといたしましてはアメリカ軍に申し入れ、かつそういうことをちゃんとやるようにということを累次申し入れ連絡調整をしておるわけでございます。
  67. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 両国の取り決めによりますと、最低の高度、これは幾らになっているんですか。
  68. 重家俊範

    説明員重家俊範君) 先ほど申し上げましたように、両国の取り決め合意に基づいてやっておるわけではございませんが、航空法第八十一条によりますと、同法に言う最低安全高度というのは百五十メートル、ただし人口密集地域上空では三百メートルというふうになっていると承知しております。
  69. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 そうしますと、今私が申し上げたような地域というのは百五十メートルの高度以下で飛んではならない、こういうことになるわけですね。ところが、実際には住民の通報によりますととてもそんなものではない、もっともっと低いところをもうそれこそ頭すれすれに飛んでいるんじゃないかと思われるくらいに飛んでいるというのが実態なわけですね。  そういう点、具体的に調査されておりますか。
  70. 重家俊範

    説明員重家俊範君) 先ほど申し上げましたように、米軍に対しましてはそういうことを累次申し入れておるわけでありますが、それに対しまして米側の方からはそういう航空法第八十一条に言うような最低安全高度は実態的に守っておるというふうに連絡をしてきておるところでございます。  その実態的内容につきましては、どこが人口稠密地域であるかといったようなことは実は我が方から地図等を米側に提供しまして、米側もそれを参考にしているというふうに承知しております。
  71. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 今申し上げました北海道、秋田それから長野、こういう地域というのは人口密集地帯じゃないですよね。ですから、どうしても百五十メートル以下で飛んじゃならないというところにみんな該当していると思うんです。それで、アメリカ軍の方に聞けばそれは高度は守っておりますと言うけれども、実際には守っていないのが実態なんです。  ですから、これは一度外務省として、防衛庁だけに任せるのでなくして直接お調べになったらいかがでしょうか。
  72. 重家俊範

    説明員重家俊範君) 私どもといたしましては、安保条約あるいは地位協定の円滑かつ安定した運用を図っていくためには関係地元の方々の御要請あるいは米軍の駐留目的の達成というようなことを、なかなか厳しい問題ではありますが、よく調整を図っていかねばならないというふうに考えておりますし、また地域住民方々に対する安全を確保し影響を最小限にしていかなければならないというふうに考えているわけであります。  そういう観点に立ちまして各地域にございます施設庁の地域局あるいは関係自治団体等と連絡をとらせていただいておりますし、また米側とそれに基づきまして連絡をとっておるわけでございますが、そういう努力をさらに一層今後強化していきたいというふうに考えております。
  73. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 防衛庁に外務省の方としては任せていらっしゃるような何かそんな感じを受けるんですが、この間、外務省では沖縄で鉄砲の弾が民家の中に落ちていたというそういう問題で具体的に調査に出かけましたですよね。南の方に出かけたんですから北の方にというわけじゃないけれども、沖縄の実態調査をやっていらっしゃるんですから、それと同じように、今申し上げたような地域では広い地域にわたってもう去年からずっと続発しているんです。ですから、防衛庁だけに任せて調査をして現場でもってアメリカ軍に申し入れただけでは済まないと思うんですよ。これはやっぱり政府対政府の問題だと思いますので、そういう立場でまず外務省でぜひ実態調査に乗り出してほしい。  いかがでしょう。
  74. 重家俊範

    説明員重家俊範君) お言葉でございますが、私どもとして防衛庁に任せておるということでは必ずしもございません。累次連絡をとらせていただいておりますし、かつ相当詳細な情報関係方面から入手しておるわけでございます。それに従いまして米側といろいろやっておるわけでございます。  先ほど先生が申し上げました低空飛行につきましても、当面必要な情報等は私ども入手しておると考えておりますが、具体的な必要性等を見つつ、先生の言われたことも心にとめていきたいと考えております。
  75. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 しかも、基地間基地間で移動する場合に非常に多く事故を起こしているんですね。超低空で飛んでいる。どうも訓練区域外でも飛んでいる。訓練区域外でもそういった訓練をやっている。ある程度は合法的だというふうにおっしゃる面もあるでしょうけれども、しかし明らかに訓練区域外、基地間基地間の移動のときにこういった超低空の事故が続発しているというそういった事実なんですね。ぜひひとつそういうことで、今十分意にとめたいというようなことでございますので、ぜひ検討して、これはぜひとも現地調査に乗り出してほしい、そのことを強く要望しておきます。そして、実態調査の結果、防衛庁だけに任せるのではなくして、政府対政府の間できちっとアメリカ政府に対して今後こういうことのないように強く要請をしていただきたい、このことを最後にお願いしておきたいと思います。  それでは、個人情報保護法に移ります。  個人情報保護法で一番大切なことは何かと考えたんですけれども、これは、法律名前のとおり個人情報保護することだと思うんです。いわゆる個人の人権をどう守っていくかということに尽きると思うんですね。  ところが、個人情報というものは一体だれのものなのか。私自身であれば山口哲夫という男はいろんな情報を持っているわけですね。それは私自身のものだと思うんです。だから、国民一人一人が持っている情報というものはその人々の一つの権利だと思うんです。自分のものだと思うんです。ところが、この法律を読んでみますと、どうもそういうふうに解釈できない面がたくさんあるんです。何か収集している政府が自分のもののように感じていらっしゃるのではないだろうか。私はそうじゃないと思うんですね。私から申し上げれば、私の個人情報というのは収集している政府側に一時貸しているんです。ですから、政府やあるいは民間団体でいろいろと集めている人は逆に借りているものなんです。ですから、必要がなくなれば直ちに返さなければならない、そういうものだと思うんですけれども、どうもその辺を錯覚していらっしゃるんではないだろうか。そんなことが随所に出てくるんです。  一番最初に出てくるのは何かといえば、この第一条そのものだと思うんですね。これを読んでみますと「行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、」今後いろいろな問題にこの精神というものが全部反映されていく。政府の都合の方が先になるんですね。ですから、私は、そういう点でこの法律というのは非常に問題があるな、一番大事なことを忘れていらっしゃるのではないだろうか、そう思いました。  きょう午前中、四名の参考人方々から意見を聞かせていただきました。三名の方が、この法律はやっぱり修正するべきであると、そういうふうにおっしゃっておりました。それで、前の委員会で久保田委員の、例えばマニュアル情報なんかを含めてこれはやっぱり修正するべきでないですかという質問に対して長官から、これは今後考えたい、こうおっしゃっております。それは一例でございますけれども、随所に長官は、これで十分だとは思っていません、今後十分検討しなければならないというそういう御発言があるわけです。  そういうことからいきますと、衆議院の方の附帯決議についておりますように、五年以内にこれは見直すということを言っております。五年以内なんというのはどうかなと、私自身はそう思っております。もし問題があるのであれば、それは明らかになっている以上はこの場で修正するという気持ちを持ったって私は一向におかしくないと思うんです。私ども野党各党は修正については大体意見の一致を見ているわけですね。そして今までの論議の中でも明らかに何カ所か修正するべきだなということがクローズアップされているわけですから、私は、いい法律案をせっかく今ここでつくろうとしているのであれば、むしろ政府側がそういった修正に応ずるような気持ちでもってその辺を直してでも提案し直したって一向に構わないと思うんですけれども、とにかく附帯決議にもありますように最低五年以内には必ず見直すというようなことだけはここでお約束してもらわなければならないと思うんですけれども、長官のお考えはいかがでしょうか。
  76. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) 今回、政府といたしましては、政府が保有いたします電算処理されました個人情報保護しなければならないという認識に立ちましてこの法案をまとめ上げさせていただいて御審議をお願いしておるところでありますが、この法案をまとめますまでの間に私どもといたしましては十年余りの歳月をかけまして勉強してきたところでございます。その間には各方面の御意見も随分承りました。さらに、再三申し上げているところでございますが、私ども法案を提出いたしますにつきましては、総務庁が自分勝手な考えでまとめたものを自分の判断に基づいてお出しできるわけではございませんで、やはり政府は一体として国会を通じて国民の皆様方に責任を負うわけでございますので、すべての省庁が同意をしなければ法律案を出せないという限界がございます。そういう中で私どもがぎりぎりの折衝を通じてようやくまとめ上げましたのがこの法律案でございますので、私どもとしては現段階において許される限りのベストなものをお出ししたというふうに考えておるところでございます。  ただ、何分にも初めての法律でもございますので、したがいまして実施の上におきましていろいろとまた問題点も出てこようかと考えております。したがいまして、そういう点につきましては具体的な御指摘あるいは実施の上で今後直すべき点が明らかになった場合には謙虚にこれを受けとめて是正を図ってまいりたい。  審議会などを設けたらどうかというような御意見もございますが、行政改革担当官庁としてみずから審議会を率先して創設するわけにもまいりませんので、適時適切に専門家の方々の御意見を伺いあるいはまた国会の御議論等を踏まえて修正、是正をすることには決してやぶさかでないという気持ちでおるわけでございまして、五年後見直しということを衆議院においては附帯決議につけられたわけでありますし、参議院側においてもそうした御意向があるというふうに承っております。それらにつきましては誠意を持って対処をしてまいりたいというふうに考えております。
  77. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 ぜひひとつ五年以内には見直しをしていただきたいと思います。  それで、長官御自身が大変努力をされてここまで提案してきたというその誠意は私はわかります。ただ、この問題というのは総務庁だけの問題ではないと思うわけですね。やっぱり日本全体としてどうするかということですから、むしろ内閣としてこの問題を一体どういうふうに扱っていくかというそういった論議が必要だと思うんです。そういう点では、前にもおっしゃっておったと思うんですけれども、各省にはエゴが非常にあり過ぎますね。ですから、総務庁の考えていることがもっと各省庁に反映できるようなそういったきちっとした指導体制というか、そういうものをとっていただきたいと思うんです。この際総務庁がきちっとしたイニシアを握りまして、国会でせっかくいろんな意見が出たわけですから、そういった意見が各省にも全部影響してくるわけですから、そういう意見というものを十二分に閣議の中で反映させていただいて我々の意向を酌んだ修正を五年以内にぜひともやっていただけるように、特にそのことを強調しておきたい、こう思います。  それでは具体的な問題に入ります。  今回は電子計算機に係る個人情報のみを対象にしておりますけれども、なぜ手書き情報対象にしなかったんでしょうか。
  78. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) 手書き情報対象にすべしという御意見があることについては私どもも承知をいたしておりますが、手書き情報を入れるということになりますと、一つには、範囲の切り方が非常に難しいという問題がございまして、イギリスなどにおいても、そうした議会における御意見に対しては法の実効性を保つことがなかなか難しいというようなことで取り入れなかったというような状況も聞いておるところであります。  かつまた、日本の役所というのは、御承知のように非常に縦割り行政で、各省の局間においても情報が横に流れるというようなことは従来はほとんどなかったというような実態もございまして、手書きのものである限り、電算処理されたものと違いましてオンライン化されたり検索されたりよそから情報が取られるというようなことは比較的ないのではないだろうか、そのような判断から今回は手書き情報につきましては入れないということにさせていただいたわけでありますが、今後、その実態等につきましてさらに研究を重ねまして、適当な線引きができますならばそれらのものについても今後の検討の中で考えてみたいというふうに思っております。
  79. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 手書き情報というのは極めて重要な情報が割に存在していると思うんです。それから、プライバシーの侵害の危険性というものも、これはコンピューター情報とほとんど変わらない。そして、今、手書き情報も非常に迅速、大量に情報処理することができるようにもなってきております。長官は、各省間の情報交換というかそういう利用というかは余りないとおっしゃるんですけれどもコンピューター情報に比べればこの手書き情報の方が意外に安易に各省間を渡り歩くという危険性が私はあると思うんです。  そういうことから考えますと、プライバシー保護研究会報告にも書いてありますね。「プライバシー侵害の可能性は、コンピュータ処理のみならず、マニュアル処理についても認められるので、」「原則的には、マニュアル処理も含めた対策を講じる必要がある。」こんなふうに、これは昭和五十七年七月のプライバシー保護研究会報告ですけれども、これにも書いてあるわけですね。  そういうことから申しますと、やはりマニュアル、いわゆる手書き情報というものは、私はこの対象にしていかなければかえって法律の趣旨というものは生きてこないんじゃないだろうか、こんなふうにも思いますので、それこそ五年以内の見直しの中ではこれは早速検討していただきたいと思うんですけれども、どうでしょうか。
  80. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) 一つには、そうした手書きの個人情報につきましても、当然のことながら法令を遵守する義務なりあるいは守秘義務なりというものが課されておるわけでありまして、それを扱っておる者がみだりにその目的以外に流用したりなんかすることができないことは当然のことであります。  そういう意味合いにおける網はかぶされておるわけではありますが、しかしながら、ただいま御指摘のような御意見のあることにつきましては私どもも十分承知をしておるところでございますので、今後の重要な検討課題にさせていただきたいと思います。
  81. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 ぜひ検討して修正できるように取り計らってほしいと思います。  次は、統計法の問題です。  統計法は、この法案の第三条で適用除外になっております。それで、統計法の十五条の二項で、総務庁長官の承認を得れば使用目的を公示さえすれば目的外に使用してもいい、こういうふうになっておりまして、私は随分いろんな指定統計が利用されていると思うんです。  特に後ほど問題にしますけれども、今全国にわたって母子世帯の実態調査が行われておりますが、その母子世帯の実態調査対象を何から選び出したかといえば、これは国勢調査から選んでいるんですね。何で国勢調査から選ばれるのかなと思ったら、国勢調査にはちゃんと氏名を書く欄があるわけでして、氏名さえ見ればあと中身にわたって点検していけば母子世帯はどこにどんな人がいるということが全部わかるようになっているんですね。私は、統計というものが必要なんであって、統計から得たものをそういった別な方面で活用するということは極力避けていかなければならないと思うんです。  その点は統計法の精神からいきまして間違いないですね。
  82. 田中宏樹

    政府委員(田中宏樹君) 統計調査によって集められました個人調査票といいましょうかこういうものは、先生御承知のとおりでございますが、個人が識別されない形で集計処理されることを目的とする情報でございますので、個人の氏名がわかるという格好で再活用するようなことはいたしておりません。  私ども総務庁長官の承認を得て目的外使用を許すというのは、せっかく国民の協力を得まして集められました貴重な情報でございますので、これを有効活用することは私ども目的にも合っておると思います。それはそれでございますが、今先生のおっしゃった、母子家庭の世帯を調べるのに国勢調査というのは多分こういうことかと思いますが、国勢調査調査区を抽出していく基本の単位として選ぶ場合に私どもの国勢調査調査区を御使用願っているのではないかというふうに理解しておりまして、個別の世帯が私どもの統計のところから名前としてそちらに流れることは一切ございませんので、御了解を願いたいと思います。
  83. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 どうもそうでないようですよ。  抽出調査をするわけでしょう。ですから、国勢調査の中で区域をまず定めて、その区域の中の統計をやりますね。何番と何番と何番が対象だというようなものというのは、これは母子世帯かどうかがわからなければまずできないわけでしょう。だから、国勢調査の中身をずっと調べていって、母子世帯だけを先に抽出しましてその中から地域を区分して、それじゃ母子世帯の何番と何番を使うというそういうような形で利用されているんじゃないかと思う。だから、国勢調査から抽出したというそんなことが言われると思うんですね。  ですから、私は、今おっしゃったように、あくまでも統計上に必要なんであって、それであるならば名前なんかは書く必要がないと思うんですね。  国勢調査はもちろんですし、それから社会生活基本調査調査票というのがここにあるんですけれども、例えば「本人の仕事の種類」もちろんこれは全部名前を書かせるんですが、仕事の内容がよくわかるように書いてくださいと。どこでどんな仕事をしているかまで書かなければならないんですね。それから、「世帯の年間収入」これが番号の七番のところに丸印をつければこの人は年間六百万から六百九十九万円だというそんな細かい範囲までわかるようになっている。そんなのが随所に出てくる。  これは統計上必要かもしれないけれども、さっき言ったようにちょっと間違ってこれを利用されたら名前までわかるんですから、これはやっぱり個人プライバシーというものが侵害されている一つの例になるのではないでしょうか、いかがでしょう。
  84. 田中宏樹

    政府委員(田中宏樹君) 原則的なことを申し上げて大変恐縮でございますけれども、統計調査によって集められました個人情報をこの個人情報保護法案対象から除外しました理由としては三つ挙げさしていただきたいと思うんです。  本法案の場合には、個人が識別されその個人に着目した使用が行われる可能性のある個人情報対象とするものであるものに対しまして、統計調査によって集められました個人情報というものは、先ほども申し上げましたように統計を作成するため集計処理されまして個人が識別されない形で使用されることが前提でございます。  それからもう一点は、統計調査においては、国民との信頼関係を維持し正確な申告を得ることを通じまして統計の真実性を確保するために、統計法において秘密保護の仕組みが既に存在していること。  それからもう一つは、行政機関が行う統計調査の実施に当たりましては、総合調整機関としての総務庁が厳しい管理を行っておる。  こういう三点で私どものいわゆる統計調査によって集められます個人調査票というものあるいは個人秘密というものは別な法体系で保護をされておりますし、それから今まで欠落をしておりました部分を今回の私ども統計法の改正で整備をいたしましてなお一層秘密保護に当たりたい、こういうことで御審議をお願いしているところでございます。
  85. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 今、個人の識別ができないようにという考え方でやっていらっしゃる。ところが、名前が出てくればこれは完全に個人の識別ができるんですよ。そうでしょう。  ですから、私は、統計に必要ないのであれば名前というものは何にも載せる必要がないと思う。統計上、何で名前というものは必要なんですか。
  86. 田中宏樹

    政府委員(田中宏樹君) 統計の正確性と申しましょうかこれを確保するということで、手段として御記入を願っているだけで、これは何度も繰り返しますが、私どもに参りました調査票は私どもの局を一歩も出ることはございませんで三年間私どもで保管をいたします。これは国勢調査の場合でございますが、保護をして、これは刑務所へお願いをして溶解処分をしているところでございまして、うちから一歩も出ることはございません。  それからもう一つは、そういった集めました調査票によります情報はみんなコンピューターに入れるわけでございますが、氏名は入れてございません。したがいまして、コンピューターに入りました磁気データというものは氏名は入っていない、こういう御理解を願いたいと思うんです。
  87. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 統計上正確を期する、私の考えではこれは逆ですね。  名前を書かせられれば、以下質問されることがプライバシーに非常に関係することがあるからちょっと言いたくないなと思ったら、間違ったこと、違ったことを言う危険性があるんですよ。名前を全然書かなくていい統計であれば、まあ絶対に悪用されることがないから真実を書きましょう、こういうことになるんです。これは根本的な違いですね。  私は自治体におりましたので、実は統計には若干経験があるんです。そういう経験から申し上げているんですけれども、これはお考えが反対ですよ。どうですか。
  88. 田中宏樹

    政府委員(田中宏樹君) 何度も繰り返しになって大変恐縮でございますけれども、私どもとしましては、統計データとしてインプットされて以降は個人名前としては出てまいりませんので、これはいわゆる個人が識別される形の利用は私どものところから以上はないはずだと、こういうふうに確信しております。
  89. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 そうでなくして、名前を書かせることが調査内容の正確を期すんだとおっしゃるから、それは逆ですよ、名前を書かせられれば真実は述べれないという方が逆に多いのではないですかと、そこをお聞きしたいんです。
  90. 田中宏樹

    政府委員(田中宏樹君) 一つは、調査の重複あるいは脱漏が生じないように調査対象というものを確定したいというつもりがございます。それからもう一つは、記入内容に疑義があった場合の問い合わせということも必要かと思いますが、いずれにしましても、大正九年以来国勢調査というのはやってまいりましたけれども、こういう方式でお願いしてきたところでございます。
  91. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 記入内容の疑義がある場合って、何万も集まってきた調査票をどこで点検するんですか。
  92. 田中宏樹

    政府委員(田中宏樹君) 市町村の段階でございます。
  93. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 市町村でそんな何万って集まる中、一つ一つ点検なんかそんなことはできないですよ。  それはちょっと違うのではないでしょうかね。
  94. 田中宏樹

    政府委員(田中宏樹君) 市町村段階では確認のためチェックをしておると、こういうふうに申し上げるところでございます。
  95. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 深追いしませんけれども、これはちょっと違いますよ、私の認識からいたしますと。調査員が聞いたときに、あなたこれちょっと違うんではないですかとかそういうことはあるかもしれませんよ。しかし、役所にこんなに集まってきたものを全部点検してそれが正しいかどうかなんて、そんなことなんかやっている暇はないですよ。これはちょっと研究してみてください。自分の体験なり実際にやっている方々のいろんな意見を聞くと、どうもそういうふうに私は思っているんです。ですから、統計の最高の責任を持っていらっしゃる方なんですから、ちょっとその辺ぜひ一度研究してみてくださいよ、いろんな方々の御意見を聞いて。  それで、もう一つ。  インプットされるまでは名前があるけれどもそれ以降は絶対に名前がなくなるんだと言うんですけれども、インプットするまでの間というのは随分長い時間がかかるわけでしょう。調査員が調べて、それが市町村役場に集まって都道府県に来るんですか、それから統計局の方に入ってくるんですか。この間にもし情報が漏れたらどうするんですか。
  96. 田中宏樹

    政府委員(田中宏樹君) 統計に従事する者につきましての秘密保護規定は、先生御承知のとおり、統計法の中に厳重に規定をされておりますし、これは私どもも厳重に指導をしておるところでございます、ということでございます。
  97. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 秘密にはしているんだけれどもそれでも漏れる危険があるから、万全を期すために統計法としてはいろんなことがあるわけでしょう。だから、統計上に全然必要のない個人名前なんていうのは、私は入れる必要はないと思うんです。  それともう一つは、聞き取り調査をやられますよね。これは、アメリカなんかでは聞き取り調査はやっていないんです。全部郵送ですよ。間き取り調査というのは調査員がいろんなことを聞けるわけでしょう。そうすると、いやこの調査員には私のこんなことは知られたくないんですというような方が調査員で来られることだってあるわけでしょう。しかし、やっぱり、国勢調査だとかいろんな聞き取り調査をやられれば、答えざるを得ないということになるわけですね。ですから、そういうことからいくと、精度を期すためにも、個人プライバシーを守るためにも、聞き取り調査というのは果たしていいんだろうかなという疑問を持たざるを得ないんです。アメリカのように郵送にしたらいかがでしょうか。
  98. 田中宏樹

    政府委員(田中宏樹君) 統計局が行っています国勢調査を初め指定統計の主なものは、ほとんど自計式といいましてとめ置き法でございますので、調査票をお願いしまして置いてまいりまして御記入を願っているわけでございまして、聞き取り調査のものはございません。  それからもう一つは、もちろん秘密保護につきましてはいろいろ工夫を重ねておりまして、特に調査員等に見られたくないというようなこともございますので密封方式を取り入れたりということもやっておりますので、念のため申し上げます。
  99. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 いろいろと配慮しているようですけれども、なお配慮をしていただきたいと思います。  外国でせっかく郵送でやっているんですからその点も検討していただきたいし、そこまですぐできないんであれば、今密封すると言っていましたけれども、すべての調査でそういうことがやられているとは思わないんですよね。まだ聞き取り調査だって残っていると思うんです。ですから、そういう点ではぜひひとつ絶対に表に出ないような対策というものも一度考えていただきたいと思うんです。  それで、先ほど申しました母子世帯等実態調査なんですけれども、これは問題が非常にたくさんあるんです。  今までに申し上げてきたことは省略いたしますけれども、例えば名前を書かせたり、それから面接をされているんですよ。今あなたがおっしゃったように決してとめ置きじゃないんです。面接でやられているのは、実際にやられている人が言ってきているんですから間違いないんです。  それから、ここでは調査員を募集しているんです。だから、どんな人でも調査員になれるんですよ。そうすると、どんな人が私の前にあらわれて調査していくかわからない。私は、このやり方も受ける方としてはやっぱり非常に不安があるので、それこそ郵送にしてもらわなければならないと思うんですね。  そういう点で、厚生省いらしておりますね。厚生省の考えでは福祉政策に必要だというんですけれども、これは名前は書いてないけれども世帯番号がちゃんと書いてあるから、調べればどこのだれそれさんということが全部わかるようになっております。  何で福祉政策名前が必要なんですか。
  100. 炭谷茂

    説明員(炭谷茂君) 今回私どもの行いました母子世帯実態調査は、既に昭和二十七年からやっておるものでございますが、確かに先生おっしゃいますように、この調査はあくまで母子世帯の福祉の向上施策に反映させるための基礎的な資料でございますので、個別の名前等は必要ございません。したがいまして、あくまで必要とするのは総体の数字だけでございますので、個別の名前等は必要ないところでございます。  ただ、調査をする際に、世帯把握の関係上、世帯名簿というものに名前調査員が持ちまして調査に当たっているということは事実でございます。これはあくまで調査正確性を期すために、家を訪問するためにつくっているものでございまして、これを調査目的に使う、調査結果に反映させるということはございません。
  101. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 それであれば地区番号から世帯番号というのは書く必要はないと思うんです。おたくの方でちゃんと台帳を持ってやっているんですから。これだって受ける方にしてみると、世帯番号と書かれたら、ああうちは十八番なんだな、そうすると十八番というところを見ると自分の名前が出るんだなというそういう不安を持ちますわね。  特にこの内容を見ましたら、ここまで必要なんですかね。母子世帯になった理由として、拘禁それから未婚の母、心身の障害、離別するまでの期間、実に緻密な調査をしているんですね。それで、ある月における収入が十四項目にわたって、貯金を幾ら引き出したかまで書かなければならない。私は、福祉政策にここまで必要があるかなという感じを持たざるを得ないですね。  どうですか。例えば、一例として拘禁があったのかないのか、心身の障害があるのかないのか、離別するまでの期間が何年何カ月あったのか、それを福祉政策のどういうところに使うんですか。
  102. 炭谷茂

    説明員(炭谷茂君) 今回の私どもの全国母子世帯等調査は、「等」がついておりますように、母子世帯と申しますのはいろいろな範疇がございます。典型的な例は離婚、死別でございますけれども、母子福祉法に基づきましてこのような拘禁の場合とか心身障害者の場合とかというような特殊な場合も範疇として特別にそれに準ずる世帯として施策を講じておるわけでございます。したがいまして、そのような法律上の規定も踏まえまして、昭和二十七年以来このような調査でやっているということはあるわけでございます。  また、離別までの期間、何年何カ月というふうに設けておりますけれども、私どもの母子世帯の施策をやっていく関係上、この期間が長いか短いかによって自立の対策の仕方、経済的社会的な自立の対策の仕方がいろいろと工夫を要するところがございます。具体的に申せば、離別までの期間が長ければ長いほどいろいろと自立についての非常にきめの細かい施策が必要であるというふうに考えましてこのようなものをとっているわけでございます。
  103. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 離別までの期間が長ければ長いほどそれに対応するだけの施策が必要だ、それは個人個人の問題ですよね。個人個人方々に対して、この方はやっぱりこの程度の対策が必要だなというとき、それはむしろ自治体が決めることですよ。国の全体の政策の中で、何年何カ月の離別期間があった人がこれだけいるからどうこうするというそういう政策の立案にはならないんじゃないかなというふうに私は考えているんです。ですから、これを見ますと、そういう点でどうも必要のないものまで調べているような、逆に調査を受ける方にしてみると何か不安を感じるようなそういう調査というのは、私はやっぱりやるべきじゃないと思うんですね。  それは私の意見です。しかし、いろんな意見があるんです。ですから、そのためにもこういう問題になるような調査をする場合には、これは政府だけが決めるのではなくて、もっと専門家の意見を率直に聞いてみる必要があるんじゃないでしょうか。そのために審議会のようなものをつくりまして、調査が必要なのかどうなのか、内容がこの程度でいいのかどうなのか、調査の方法が面接をする必要はないのか郵送にするべきなのか、そこまで政府としてもっと真剣に考えていただかないと、冒頭申し上げたように、個人情報は政府のものだなんていうそういう間違った認識に私はつながってくると思うんです。そういう間違った認識があるからこういう個々の問題のときにこんなところまで個人の人権を侵すような調査につながってくると私は思うんですが、どうですか。
  104. 炭谷茂

    説明員(炭谷茂君) 今回の私どもの母子世帯実態調査は、いわば母子世帯のセンサスと申しまして非常に基本的な情報でございます。これは毎年行っているわけでございませんでして、五年ごとに行っております。昭和二十七年以来既に今日まで今年を含めまして八回やっておるわけでございます。この調査に基づきまして私どもの母子福祉施策が非常に充実して、その充実する際の参考になったというふうに考えているわけでございます。  ただ、先生おっしゃいましたように、この調査に当たってプライバシーの問題というものについては十分配慮しなくちゃいけないということは御指摘のとおりでございます。したがいまして、これからの調査に当たってはプライバシー保護という面にいつも十分配慮して進めていきたいというふうに考えているわけでございます。
  105. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 私は恐らく政府の各省の間でも今の意見は論議のあるところだと思いますよ。厚生省ではそこまでどうしても調べたい、しかし、総務庁の方にしてみればそんなところまで調べる必要があるのかという意見もあるかもしれない。恐らく政府間の中でさえ私はあると思うんですね。ましてや国民の間ではいろんな意見があるわけですから、私は第三者機関をもっと素直におつくりになった方がこれからのためにいいのではないかなと思います。これはぜひひとつ総務庁とも十分協議して検討してみてください。これはお願いしておきます。  それでは次に、個人情報収集制限の問題に移ります。  国民の基本的人権にかかわる例えば思想、信条あるいは結社、表現の自由、勤労者の団結権、団体行動権、いわゆるセンシティブ情報と呼んでおりますけれども、こういった情報は知られること自体がこれは基本的人権を侵すことになりかねないと思うんです。私はそういう点でぜひこれは禁止していただきたいな、こういうふうに思っているんですけれども、その考え方。  それからもう一つは、こういった思想、信条あるいは宗教等についての個人情報を持っている官庁の名前それから収集目的、これを聞かせてください。
  106. 百崎英

    政府委員(百崎英君) いわゆるセンシティブ情報収集禁止してはどうかという御意見でございますけれども行政機関の場合に、公益目的を達成する上で一切こういうものを収集してはいけないということは別な意味で非常に問題があろうかと思いますので、基本的には各省の所掌事務の範囲内で必要なことであればこういった情報収集もできるのではないかというふうに私ども考えております。  そこで、この法律案におきましてそういったいわゆるセンシティブ情報収集禁止規定を設けなかったのは幾つかの理由がございますけれども、一つは、OECDの理事会勧告においても述べられておりますように、何がセンシティブ情報に当たるかということはこれは非常に定めがたいというようなことがございますし、我が国における世論調査の結果などを見ましても、一番人に知られたくないのはまず収入、財産あるいは家庭生活の状況それから主義、信条、病歴、こういうような結果もございますので、結局、時代によりあるいはまた人によっていろいろセンシティブ情報というもののとらえ方が違うのではなかろうか、そういうようなことがございましてここでは範囲が非常に特定できないということがございました。  それからもう一つは、ある意味では技術的な話にも関連いたしますけれども、仮にそれじゃその行政機関がいわば例外的に法令の規定に基づいてセンシティブ情報収集できるというふうにいたしましても、現在の我が国法律を見ますと、こういったセンシティブ情報収集がどういう場合にできるのかあるいはできないのかというようなそういうことを正面から取り上げた法律規定がほとんど見当たらない、こういう状況でございます。現に各省が収集していると思われますのは各省庁の設置法に基づくいわゆる資料収集規定に基づいて収集しているのではないかと思いますが、そういった場合に、仮に新たに例えば個別具体的な法律を定めまして、その法律に基づく場合以外は収集できないというようなそういう規定をこの法案に設けますと、一つは、現在存在するいろいろな個別の実体法をとりあえず全部見直してみる必要がございますし、また各省の設置法に今資料収集規定はございますが、その規定の中に、例えばこの法律で言えば電算処理をする場合に限ってはセンシティブ情報収集原則としてできない、そういうような規定を置かないとその法律の適用関係においてまた混乱を生ずるというようないろいろな難しい問題がございまして、この法律では収集の段階の制限規定というものは設けなかったということでございます。  以上です。
  107. 重富吉之助

    政府委員重富吉之助君) 先生の御質問の後段の部分についてお答え申し上げます。  行政機関の場合は、民間の企業等の場合と違いまして、公共の利益などの行政目的を実現いたしますために、先生お尋ねの思想、信条、宗教に関する個人情報も取り扱わねばならぬという場合もあり得るかというふうに考えておりますが、具体的にどの省庁がどのような個人情報を現在の段階で電子計算機処理しているかということについては私どもは把握いたしておりません。
  108. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 後ほど出るかもしれませんけれども、今国民が一番知られたくないと思っているのは収入の問題だとおっしゃっていましたね。それは確かにそういう方もいらっしゃる。しかし、国民のいろんな方々がどういうものを知られたくないかということはそれぞれみんな違うと思います。  そうすると、全般的に見て一番大事なことは何かといえば、憲法で定められた基本的な人権だけは最小限守るというのがこれは政府の仕事ですよね。円滑な行政、適正な行政というのは何かといえば、その土台は、基本的な人権をきちっと守るということが政府としての円滑、適正な行政だと私は思うんですね。そういうことからいきますと、この思想、信条、宗教等については、これははっきり基本的な人権の問題だと思うんですよ。  だから、そういうものをどこで集めているかもわからないでは困るんです。私は国民の一人として、自分がどういう思想を持っているか、どういう信条、宗教を信じているか、これは私のものなんですよね。国民一人一人のものなんです。それをどこで集めているかわからないというのではちょっと納得できないですよね。そんなものを勝手に貸した覚えはないわけですからね。せめて、どこの官庁でどういうファイルを持っているか、そういう件名くらいはちゃんと出すべきではないですか。中身まで全部出せとは言いませんよ、いろんな問題があるでしょうから。しかし、どこの官庁がどういう目的でこれだけのものは集めておりますよということぐらい、これは明らかにしてもらわなければ国民として納得できないですね。
  109. 重富吉之助

    政府委員重富吉之助君) お答え申し上げます。  現段階では、私どもは、各省庁にどういうファイルを持っておられますかということで、六十三年六月末現在のファイル実態について調査をいたしまして、報告を求めております。  ただ、その中に思想、信条の関係ファイルがどの程度あるのかということについては私どもはつまびらかにしていないわけでございます。と申しますのは、まだこの法律は成立いたしておりませんけれども、後ほど御説明したいと思いますが、この法律の事前通知除外等におきまして、犯罪捜査それから国の安全、そういう国の重大な利益等に関するファイルについては総務庁に事前通知をしなくてよろしい、それは公共の秩序、国の安全等を守るための行政を的確に遂行するためにやむを得ないことだ、そしてまた総務庁としてはそれらを事前調整することは総務庁の権限から見てなかなか難しいというようなことで除外しておりますので、そういうファイルが仮にあるといたしましてもまだ私どものところには提出されていない、私どもも調べ切っていないということで現在把握していないということを申し上げているわけでございます。
  110. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 今言ったような情報はいずれ総務庁に来るかもしれないわけでしょう、どうですか。
  111. 重富吉之助

    政府委員重富吉之助君) お答え申し上げます。  そのうちの一部については来るだろうと思っております。全部は多分来ないだろう、こんなふうに考えております。
  112. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 仮に来ても、それは国民にどうやって発表するんですか。
  113. 重富吉之助

    政府委員重富吉之助君) これはまた法律の組み立てを申し上げないといけませんが、事前通知されたファイルのうち、公示してよろしい、公示すべきだというファイルにつきましては、官報なりそれから各省庁の窓口で閲覧簿をつくりましてこれを国民にお知らせする、こういうことにしております。
  114. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 官報なんか国民の大多数は見てませんね。それから、役所の入口に行きますと、ガラスを張って中に公示してありますよ。こんなものだれも読まないですよ。同ページもぶら下がってあるものを表だけひょっと見るかもしれないけれども、自分の情報がどういうふうに集められているのか、そんなもの一々見ないです。それは役所で形式的にやったというだけなんですね。  一番大事なことは、国民として自分の人権にかかわるものが例えば防衛庁でどういうふうにファイルされているのか、外務省でどういうふうにファイルされているのか、それだけでも知りたいわけでしょう。そうしたら当然国民にわかるように発表したらどうですか。  例えば新聞の一面全部を買い切って、各省の持っているファイルは次のとおりです、と。これは個人情報保護法ができたら真っ先にやったら、さすがにこういう法律ができるとやっぱり違うとますます国民は人権というものを大切にするのではないですか。個人情報というのはいかに大切かということがよくわかると思う。総務庁長官が大変に苦労された成果というものはまずそこにあらわれると私は思うんですね。防衛記念日には、日本じゅうの新聞、田舎で出ている新聞まで含めて自衛隊の宣伝の広告が、あれは何億円かかっているんですかね、一回調べてみたいと思うんですけれども、あんな金の何分の一かあればできることではないかと思うんですが、どうですか、長官、やってみたらどうですか。
  115. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) この法律が御可決をいただきました暁には、私ども、こうした制度ができましたことにつきましていろいろな機会にPRをしてまいりたいというふうに思っております。  ただ、これは諸外国の例を申し上げては大変恐縮でありますが、国民の皆様方も初めのうちは大変関心を持たれるようでありますけれども、そのうちに何だそんなことかという程度になってしまって余り開示を求める件数がなかったというのが、私、欧州あたりを回ってみますと、どうも異口同音にそのようなことを申しております。手数料問題なんかも、後で御議論があるようでありますけれども、西ドイツでは、たしか手数料を五マルク取るということにしたけれどもさっぱり見に来ないので結局やめちゃったというような話も、私、聞いてきたところであります。  結局、国民の皆様方の間にみずからのプライバシーを守るという意識そのものが高まってまいりませんとどのような方法でPRをいたしましても効果が余り上がらないのではないか。そういう意味合いにおきましては、外国の立法の経緯なんかを読んでみますと、一つには、個人情報をきちっと保護するということも大変大切だけれども、反面、行政側に余計な負担をかけないということによって行政の効率的な運用を図るということについても配慮をしながら論議をしたということを議会の方々が随分おっしゃっておられますので、私どもとしてもいろいろな機会に実効性のある制度のPRをしてみたいというふうに考えております。
  116. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 先ほど参考人池田さんだったと思いますけれども、葛飾区で、高齢者の無料パスを出したいが所得制限がある、その所得制限というのは、今までは税務調査の中である程度把握して、役所が勝手にその税務調査の中を見てこの人は所得制限に該当するといってパスは出さないとかということをやっていたけれども、税務で集めた個人情報を福祉で使うのはまずいから、これは使っていいですかということをはがきでもってそれぞれの対象方々に出してそして了解を得て初めてそれを見せてもらったが、大変に混乱が起きた。そんなことまでしなくてもという電話もあった、しかし一方では、大変いいことだという意見もあったということでした。  今、長官がおっしゃったように、利用する方が意外に少ないかもしれない。しかし、それは私はやむを得ないと思うんです。今、役所側として大事なことは、せっかくこの法律をつくったら個人情報というものはこんなに大切だということを国民の一人一人にお金をかけても知らせることだと思うんです。そういうPRを徹底させることによって初めて、国民は自分自身でプライバシーというのは守らなければならないんだな、そしてまた、もし破られているとすれば開示請求とかあるいは訂正だとか先ほども問題になっておった削除の申請をするとかそういうことは自分みずからやらなきゃならないのだなと、国民の意識というものは高くなってくると思うんです。そういう人権をみずから守っていかなきゃならないという国民の意識を高める仕事が私は行政の役割ではないかと思うんです。そういう点では思い切って金を使うべきでないでしょうか。  長官、ぜひひとつ来年は思い切った予算要求をして、新聞広告を一面で出してくださいよ。もう総理大臣候補になるかもしれません。
  117. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) 広報につきましては総理府の方で担当しておりますが、私どもといたしましても、新しい制度でございますので、できるだけひとついろいろな機会国民の皆様方に知っていただくよう努力をしたいと思います。  それから、あるいは私どもが今回この法律をお出ししたことによって市町村の側における関心も急速に高まりつつあるように思いまして、未制定のところでも恐らく制定が進むのではないかと思いますし、都道府県が現在ゼロでありますが、これも恐らく来年あたりかなり勉強をされるんではないかというふうに思います。そうしますと来年から再来年ぐらいにかけましては個人情報保護の、何といいましょうか、ムードが恐らく非常に高まってくるんではないかというふうに思いますので、そうした機会もとらえまして国民の皆様方に御理解いただくように努めてまいりたいと思います。
  118. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 私は、実は正直に高鳥長官に期待しているんです。各省庁を説得するのに大変な御苦労をされてきたと思うんですよ。しかし、出されたものは非常に不満ですよ。私は納得できない。できれば引っ込めて、もっと我々の意見を入れて再提出してほしいくらい。でも、長官の今までの努力に対しては私は大変に敬意を表しているんです。ですから、期待しておりますだけに今まで申し上げたことをぜひ実現さしていただきたい、来年の予算は大幅増を実現させて国民の人権を守る意識を高めるための御努力をぜひひとつお願いしておきたい、そう思います。  次に、個人情報利用提供制限に移ります。  第九条の「処理情報利用及び提供制限」で「処理情報は、」「保有目的以外の目的のために利用し、又は提供してはならない。」こういうふうに規定しておりますけれども、ただし書きで例外を設けております。所掌事務の範囲内、事務遂行に必要な限度、こんなところで目的利用、外部提供を可能にしているわけであります。  そこで、この第九条なんですけれども、これはどうも私は、目的外の利用それから外部提供を正当化するおそれがあると思うんですね。どうでしょうか。
  119. 重富吉之助

    政府委員重富吉之助君) お答え申し上げます。  第九条といいますのは、先生御指摘のとおり、これは原則利用提供禁止ということを規定しておりまして、その第二項で例外規定を書いておるわけでございますが、それらの例外規定は、第二項のただし書きにございますように「処理情報ファイル保有目的以外の目的のために利用し、又は提供することによって、処理情報本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められるときは、この限りでない。」ということをきちっと書いておきまして、個人権利利益を不当に侵害するおそれがある場合はこの限りでないということは、それはやってはいかないよ、ただし、その前提のもとに本人の同意があるときと。  それから、第二号で行政機関内部で相互に利用することが相当な理由があるとき、これは社会通念上妥当と認められるときということでございます。  それから三番目に、他の行政機関とか地方公共団体とか特殊法人、そういうものについてそれらの行政機関なり地方公共団体なり特殊法人がその所掌する事務を適切に遂行するために必要な場合に限り、これも相当な理由があるとき提供することができると。  先生が御心配になっております第四号の規定でございますが、これは「専ら統計の作成又は学術研究の目的のために処理情報提供するとき、」それからそのほかに「処理情報本人以外の者に提供することが明らかに処理情報本人の利益になるときその他処理情報提供することについて特別の理由のあるとき。」こうございますが、私どもとしては「その他処理情報提供することについて特別の理由のあるとき。」といいますのは、現在私どもが把握しておりますのでは、例えて申しますと、どこかのメーカーの自動車が事故を起こした、その自動車が結局性能的に問題があるのではないかということでその自動車をリコールする、回収する、そういうときに運輸省が持っている情報をその当該メーカー、例えば本田とかトヨタとか日産とかそういうメーカーに渡す。それは、その型式というか自動車の性能の欠陥によって再び同じような事故を起こさないためにやるわけでございますので、そういう非常に公共の利益があるという場合だけを考えているわけでございまして、先生の御心配の向きは少ないのではないか、こんなふうに考えております。
  120. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 そういうことになりますかね。  いわゆる処理情報利用及び提供制限の除外というのは「相当な理由のあるとき」とか今言ったように「本人の利益になるとき」とか「特別の理由のあるとき」というんですけれども、しかし、自分の情報が本当にこの第九条によって利益になるのだろうかどうなのかというのは、これは行政側が判断することではないのではないでしょうか。やっぱりそれぞれの個人判断するべきことであって、行政側がこれは利益になるんだからいいんだといって別なところに利用させるということは果たしてどうかなという感じを持たざるを得ないんですね。私は、これは非常に危険だと思うんですよ。行政はそう思っても、国民は違うと思うかもしれない。  だから、私は、くどいようですけれども、そういうものをきちっと判断できるようないろんな各界各層の方々の代表に入ってもらうような第三者機関というものを設けて、その中でやっぱり決めていくべきではないかなと思われてならないんです。こんなところにも最初に申し上げた目的の逆な面が出てきているのではないだろうか、どうも行政の都合だけで書かれているのじゃないかなというそういう感じがしてならないんですがね。
  121. 重富吉之助

    政府委員重富吉之助君) お答え申し上げます。  ここにございますように「相当な理由」とか「特別の理由」私、先ほどちょっと説明を漏らしましたけれども処理情報本人以外の者に提供することが明らかに処理情報本人の利益になる」というような場合を御説明申し上げておきますと、例えば交通事故にお遭いになった方が心神喪失の状態になっておられる、そういう情報を、手術をなさるその方の事前の病歴等を手術をなさる病院なり医師に御連絡を申し上げる、それから、例えばどなたかが賞勲局で叙位叙勲を受けられる、そういう際にその叙位叙勲の判定をなさる方々に特定の方がまたは行政機関がその情報を差し上げる、そういうような場合は本人の利益になることは明らかでございますので、それは問題はないと思っています。  それから、ここで「相当な理由」とかということを書いておりますが、それらはすべてこの法律の二十条にございます苦情処理対象にもなりますし、それはこの法律の調整の役割を果たします総務庁が客観的に対外的に見ても御説明できるという理由でなければ問題が起きた場合に当然総務庁に苦情の申し出とかその他問題の提起がなされるでありましょうから、総務庁長官は二十一条、二十二条で資料の提出及び理由の説明を受ける、そして意見を述べるというようなことで先生のおっしゃるようなことはかなりの程度担保できる、こんなふうに考えております。
  122. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 私は必ずしもそうは思わないんですけれども、後からまた出てくるかもしれませんしほかの問題もたくさんありますので、とりあえずほかに移ります。  それで、結合禁止の問題です。  これも先ほど参考人からちょっと出ていましたですけれども、私はコンピューターの特性がこの結合というものだと思うんです。そういうことからいきますと、個人情報というのは相互に結合される危険性が非常にある、そんな中でもしも誤った個人像というものがつくられてきたら一体どうなるんだろうか。必ずしも一つの情報が全部正しいとは限らないですね。そういうものが結合されたときにますます個人像というものがゆがんでしまう危険性というものがあるのではないか。私、残念ながら具体的に例がありませんけれども、一般的に考えると、理屈として考えればそういうことも考えられる。  その辺、心配ないでしょうか。
  123. 百崎英

    政府委員(百崎英君) 今、先生がおっしゃいましたように、オンラインとかあるいは磁気テープ等による個人情報ファイル結合でございますが、これはまさにコンピューターの特性と言ってもよろしかろうと思います。  これからの技術発展ということを考えますと、ますますそういった電算機の特性というものが生かされていくような時代になっていくんではなかろうか。この法案では、そういったことを頭に置きながらそのためのいわば基盤づくりといいますかをするような考え方でおりますけれども、いずれにいたしましても、結合禁止ということは結局は個人情報保護を図るためということではなかろうと思いますので、コンピューターの特性を生かしながらそういった個人情報保護を図っていくためには、結合禁止するというコンピューターの特性をいわば失うような形での禁止という手段でなくて、むしろ今お話しのようなファイルの保有目的に基づいた利用提供制限とかそういったような手段をもって規制することが適当ではないかというふうに考えております。  諸外国におきましても、そういったこともございまして立法例におきましては他の機関との個人情報ファイル結合禁止するようなそういう規定は設けておりません。
  124. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 これは専門的な方でなければなかなかわからない点があると思います。結合によって個人の像がゆがんでくるという心配というのは随分言われていますので、これはぜひ一度研究していただければなというふうに思います。  それでは次に、個人情報の公示の問題に移ります。  これは先ほどちょっと前段で触れておりますので簡単になるかもしれませんけれども、六条の一項、個人情報ファイルの保有等の事前通知。各省庁が保有しようとする個人情報ファイルについて、その名称、保有目的などを総務庁長官に通知することを第六条で義務づけているんですけれども、これもやはり通知しなくてもいいというのがここで十一項目挙がっているわけです。  これは全部挙げる必要があるのではないでしょうか。総務庁として、適用除外にしたものについては総務庁で把握しなくてもいいというんですけれども、れそで大丈夫なものでしょうか。
  125. 重富吉之助

    政府委員重富吉之助君) お答え申し上げます。  六条二項で事前通知の除外を設けました理由でございますけれども、これは、特に秘匿性が高くて総務庁が事前通知を受けて調整を行う余地が極めて乏しいファイル、例えて申しますと六条二項の一号でございますが、「国の安全、外交上の秘密その他の国の重大な利益に関する事項を記録する個人情報ファイル」。  それから二号の犯罪の捜査等、個別の犯罪事案について事前に対外的に総務庁といえども知られると犯罪捜査等が非常にやりにくくなるそういうようなもの、これは一応総務庁が事前調整を行う余地も少ないし、また知らせるということは防衛とか犯罪捜査、外交の重大な秘密等から問題がある、こういうものは一応除外と。これは世界各国でも大体除外がかなり多うございます。  それから、三号以下十号まででございますけれども、これは例えば試験的なファイルとか一年以内で消去されるファイルとか職員単位で作成している小っちゃなファイルとかそういうものにつきましては利用のされ方が非常に範囲が狭いし量も少ないというようなことで、個人権利侵害のおそれが少なくて、また総務庁も事前に調整する必要が少ないというふうに考えているファイルでございます。  それから、十一号で「第三号から前号までに掲げる個人情報ファイルに準ずるものとして政令で定める個人情報ファイル」とございますが、これは「準ずる」という形でございまして、私どもは極めて限定的に考えておりまして、例えて申しますと賃金職員ファイルとかそういうふうなごく限られたものだけを考えておりまして、広範囲にするつもりはございません。極めて厳格に運用するつもりでございます。
  126. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 これは先ほど申し上げましたけれどもファイルの名称だけを公表しても一向に構わない問題だと思うんですよ。  それで、久保田委員が前の委員会でたしか質問したと思うんですけれども、例えば出入国ファイル、犯歴のファイル、こういったものは明らかにされないわけです。これなんかどうなんですか、こういう件名の個人情報は持っておりますよというそのファイルの名称だけ出すことによって何か具体的に影響があるんでしょうか。
  127. 重富吉之助

    政府委員重富吉之助君) お答え申し上げます。  質問と答えが若干ずれるところがあるかとも思いますけれども、六条一項に、通知するときにはファイルの名称だけでなくてその記録項目とかファイル範囲とか収集方法とか提供先とかいろいろ公示することになっております関係上、そういうものを出しますと原則として開示したものは一部のものを除きまして開示請求の対象になるというようなことでいろいろと問題が出てくる、そういうことでファイルの名称も公示しない、業務遂行を著しく阻害するおそれがある場合ということでこういうふうなものを公示の対象外とすることができるというふうに考えているわけでございます。
  128. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 やっぱり一番最初の目的が私と総務庁の考え方が違うから、どうしてもこういう具体的な問題についても変わってくるんですね。  今のお話ですと、そういうものを明らかにすれば開示請求の対象になる、いいんじゃないですか。私は当然だと思うんです。  例えば、自分の犯歴が仮に間違えられてファイルされたら大変なことになる、だからどうしてもここだけは調べておきたいと思う人がおればその開示請求をして、間違っていなければ安心するでしょうし、もしも間違っていたらこれは大変な問題ですから訂正の請求をする、そういった権利につながってくると思うんです。
  129. 重富吉之助

    政府委員重富吉之助君) お答え申し上げます。  例えば犯歴ファイルを開示対象の外にするように私どもが考えましたのは、こういう理由によるものでございます。  例えばある人を採用するというような場合に、あなたは前歴があるかないか調べていらっしゃいとこういうことになりますと、本人でございますから、開示請求の対象になりますと当然自分が犯歴があるのかないのか、あった場合はどういう犯歴があるのかということを調べることができます。そうすると、雇用してもらいたいという人がある会社に行きまして会社の方からそういうことを要求されたら、それは出さざるを得ないだろうと思うんです。そうすると、そういう犯歴等がわからないようにしておけば会社はそういうことを要求できない。これは刑事政策上の問題等もございましょうけれども、更生をしたい、世の中に生まれ変わってまた新しく職を得て仕事をしたいという方たちにとってマイナスになる可能性を持っている、犯歴ファイル等を開示請求の対象にするということはそういう面もあるわけでございます。  それから、出入国ファイル等につきましては、これはちょっと私もよく存じませんけれどもその記録項目、範囲等がわかりますと、要するに出入国管理法等を破って入出国しようというような人たちにとってどういうことを隠すべきか、そういうようなこともわかりまして社会の治安を維持する上に非常に問題が発生する可能性がある。そういうようなこと等いろいろございまして、こういうものは開示請求の対象にしないというのが適当ではなかろうかというふうに判断したわけでございます。
  130. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 例えば採用するときに犯歴を持ってこい、開示請求して持てきなさい、そういう場合に本人が不利益をこうむるかもしれないからとおっしゃいましたですね。そういうものは何か別なところで制限できないんですか。  そういう人権にかかわるものまでファイルの中から開示請求して持ってこさせちゃならないとか何らかの別なところできちっと制限をするべきであって、一番大事なのは国民権利を守っていくことなんですから、もし自分の犯歴が間違っていたことになれば、それこそこれからいろんな面で影響が出てくるかもしれない。そういう個人個人の人権を守ることがまず私は大事だと思います。今言ったようなことで自分が不利益になるような問題がもしあるとするならば、それは別な法律でもってきちっと制限を、そこまで開示請求して持ってこさせるようなことはさせちゃならないという何かをつくるべきだと思うんですね。こっちの方でそういう形で制限されたのでは私はちょっとこれは違うのではないかなと思うんですよ。それは出入国の関係についても言えると思うんです。  ですから、そういうことをやはり第三者機関でもっと専門家の知恵を入れて検討する必要があるんじゃないでしょうか。ここで私と総務庁といろんな議論をしてみたってなかなか結論が出るものではないですよ。ですから、私は真剣に論議をしていただくような第三者機関というものをどうしてもやっぱりつくるべきだ、そんなふうに思うのでございます。  これは各省庁に任せるべきことではないと思いますね。これは総務庁が通知をすればいいというものではないと思うんです。きちっと許可するべきですよ。こんなものを集めては個人情報保護法の精神に反する、これは行き過ぎだといってそのぐらいの許可権を総務庁が持たなければ、各省庁なんか自分のやりたいように集めるわけでしょう。行政の円滑、適正な運営だなんて言って集めるんですから、それをどこがチェックできるかといったらやっぱり行政機関としては総務庁しかないわけですから、私はもっと総務庁がそういう権限を持つべきだと思うんですよ。総務庁長官のそちらの方の考え方は、おなかの中では恐らくそうだと思うんですよ。それは各省がたくさんあって大臣がいるから、これまで説得してこられてなかなか大変だと思うんですけれども、私はそういう考え方で総務庁に頑張ってほしいなと思うんですが、それは意見として申し述べておきます。  それで、警察庁いらっしゃいますか。  読売新聞の六十三年六月二十三日に「本部コンピューターと各署のパソコンをオンライン化「県警ネットワークシステム」早くも威力」そしてその記事の中に「警察庁にある車検情報から犯人の住所を瞬時に割り出し、緊急逮捕に結び付けた。」個人情報利用の問題だと思うんですけれども、こういった車検情報から緊急逮捕に結びついたという成果を新聞で報道されています。  警察庁、車検情報というのを持っていらっしゃるんでしょうか。
  131. 菅沼清高

    説明員(菅沼清高君) お答えいたします。  ただいまの記事を承知しておりませんので、どういうような書き方か少しわかりませんけれども、恐らく警察庁が保有いたしております犯罪捜査に関するファイルの中の、これは事柄の性質上具体的なファイルのことについては控えさせていただいているわけでございますけれども、贓品車両に関するものも入っているわけでございます。
  132. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 済みません、ちょっと今のところ聞こえなかったので……。
  133. 菅沼清高

    説明員(菅沼清高君) 贓品——盗んだ車両ですね、に関するものも入っているわけでございます。  また、御推測いただけると思いますけれども、手配をされている車両等についても当然入るわけでございまして、そういったものを第一線において認知した場合にその端末から当然警察庁のファイルの方に照会をしてくるわけでございますので、そういたしますとその車両についての必要な情報あるいは犯罪についての必要な情報が府県の方に回答される、それを犯罪の検挙に結びつけた、こういうことではないかというように考えております。
  134. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 いただきました「行政機関における電子計算機処理に係る個人情報調べ 昭和六十三年十一月 総務庁」を見ますと、今言った車検情報というのは警察では持っていないんですね。
  135. 菅沼清高

    説明員(菅沼清高君) 先般来当委員会で御説明をしているわけでございますけれども、警察庁がただいま持っておりますファイルは運転免許に関するファイル、家出人に関するファイル、銃砲に関するファイル、風俗営業に関するファイル、この四つのファイルを保有しておりまして、そのほかに犯罪捜査に関するファイルも保有いたしておりますが、その具体的なファイル名等につきましては犯罪捜査の手法にかかわることでもございますので控えさせていただく、このように御説明をしているわけでございます。したがいまして、先ほどお話のありましたようなものも犯罪捜査に関するファイルの一部として保有している、このように御理解いただきたいと思います。
  136. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 そうすると、犯罪捜査に関する情報を持っている中に車両の関係についてもファイルされているということですね。
  137. 菅沼清高

    説明員(菅沼清高君) そうでございます。  贓品車両に関するファイルのほかに車両一般についても必要な情報ファイルいたしております。これは、御承知のように、今全国に五千七百万台に及ぶ車があるわけでございまして、犯罪が発生いたしますと大抵の犯罪は直接間接に車両を用いているわけでございまして、現場のいろんな情報とかそういったものの中から犯罪に関係のあるものないもの、これをできるだけ早く処理する必要がございます。また、犯人像を絞り込むための必要な情報でもございますので、車両についてのファイルは贓品車両のほかに一般的車両についても保有をいたしております。
  138. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 昭和五十七年の二月に同じように出された行政機関で持っている個人情報ファイルの件名とちょっと合わせてみたんですけれども、五十七年には車両照会業務というのがちゃんと載っているんですね。今回出された中には載っていないんです。それから、指名手配の照会業務の中でも、今回出されたものの中からは指名手配、犯歴、暴力団員ファイルが除かれているんです。それから、犯罪手口照会業務も除かれている。一指指紋照会業務も除かれているんですね。  これは何で除いたんでしょうか。
  139. 菅沼清高

    説明員(菅沼清高君) お答えいたします。  今お話のありましたものは以前に総務庁において調査をされたときの回答に基づくものであろうかと思いますが、この法律との関連におきまして、これは総務庁の方においてもそのようなお考えだと承知しておりますけれども、この法律において私ども現在保有しているファイルについての御説明は先ほどお答えをいたしたようなことでございまして、犯罪捜査に関するファイルの中には幾つかのファイルがございますけれども、それはそれぞれ警察が犯罪捜査のためにどのような手法をファイルとして持っているかということを明らかにすることにもなりますので具体的なことについては控えさせていただきたい、こういうことでございます。よろしくお願いします。
  140. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 五十七年にこういうものがありますといって総務庁に提出した、今回はその中から幾つか、半分以上カットして提出した。これは行政上一貫性がないですね。  こういうものは犯罪に関することだからということで隠したんだろうと思うんですけれども、しかし五十七年にはちゃんと総務庁に出しているんですよ。だから私は心配するんですよ。こういうときでさえそれぞれの省庁の都合でもって総務庁に出したり出さなかったりするわけでしょう。総務庁ではもう混乱しますわね。今までこういう情報があったのに今度は入っていない。だから、私はやはり総務庁が一貫性を持って各省庁に対する指導をきちっとやらなければならないと思うんですね。こういうやり方でやられますととっても不安でしようがないですよね。  そして、あと十分しかないので残念ですけれども、例えば暴力団員のファイルを持っているということを公示して何が困るんでしょうかね。何も困らないと思うんですよ。大体そんなものを持っているだろうなと国民は思っていますよ。そういうものを持っていますと書いたからといって別に何でもないことだと思うんですね。そのことによって個人権利が大変侵害されるんでしょうかね。私はそうは思いませんですね。そういうのが幾つでもあるんですよ。そういうことを考えるときに、私は総務庁が通知を受けるだけではなくして、もう少し各省庁に対してチェック機能というものを持ってほしいなというように思います。  時間がないんで、本当はもう一回くらい審議してほしいんですが、何かきょうで終わるんだなんという話を聞いて非常に残念なんですけれども。  それで、本人の開示、訂正、削除の請求権の問題があるんです。処理情報の不開示というのがあるんですね。用意してきたんですけれども。  長官、この本は読んでいらっしゃるそうですね。大変私も参考になりました。  簡単に申しますと、アメリカのサンフランシスコで帰宅途中の若いカップルが愛用のファルコンを走らせていたところ、パトカーに急停車を命じられ、銃を突きつけられたまま手錠をガチャリ。そして留置場で一夜を過ごさせられた。理由は、このファルコンは一年前に盗まれたと記録されてあり、その後回収されカップルの手に返されたが、その回収の事実を警察が記録することを怠ったため、そのまま盗難車としてコンピューターシステムに入っていた。警察が当然持っている情報を、盗難車なんですから、それが返ったんですからこれは落としておかなければならなかった。それをやっていなかったために入っておって、その車に乗っていた人間を逮捕してしまった。それは自分の車なんですよ。こういう間違いが起きるんですね。  だから、私は、本人の開示、訂正、削除の請求権というのは個人権利を守るためにも必要だろうと思うんです。自分がきちっと開示請求をして、これは大変だなと思ったら、これはとんでもない間違いですよ、こんなものはとうの昔に私の手元に返ってきていますよとやっておればこんな事件なんか起きなかったと思う。  それから、共通一次試験でも言えるんです。共通一次試験の点数というのは、大体翌日になると自分で採点できるくらいずっと答えが出てきますよね。ところが、これは全然開示請求の対象にならないんです。  大学の受験もそうなんです。高校の内申に自律神経失調と書かれたことで幾ら受けても落第させられた。おかしいなと思っていろいろ調べてみたら、自分の健康状態にこんなことが書いてある。これは医者なんかそんなことは一つも言っていない。先生が自分のことをそんなふうに書いたんではないだろうかというそんな事件もあったことを私は何かで読んでおった。こういうことを考えますと、例えば私学では入学試験の点数というのは開示していますよね。それから、司法試験だって開示しているんです。何で国立の大学等が、まず一番最初に権利を守らなければならない政府がそういうことをしないのかな、こう思うんです。  これは時間がありませんから理由を聞いている暇がありませんけれども、私はこれは一度ぜひ検討していただきたい。このことだけを強くお願いをしておきたいと思います。  それから、運営審議会の問題でございます。  これは先ほども申しましたけれども行政機関が間違った運用、法の拡大解釈をしたときに改めさせる権限というのは全然ないですね。ですから、新たに電算機に入れるものを認知する場合だとか不服審査機関というのがないわけですから、その機関の問題だとか法改正について五年以内にやるわけですから、直ちにそういう法改正の内容について審議をしなければならないので、そういう審議機関にするだとかそういったいわばプライバシー保護審議機関のようなものを、さっきも申しましたように附帯決議にもあるわけですし、林委員会報告の中でも審議会の設置は必要だと強く訴えておりますので、こういう考え方からやはり早急に審議機関を設けなければならないだろう、そんなふうに思いますけれども、長官、もう一度御決意のほどをお聞かせください。
  141. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) 先ほど御指摘のありました教育、医療などにつきましては、当委員会におきましてもしばしば御指摘のあるところでございまして、私どもといたしましては、今は、教師対生徒あるいはまた医師対診療を受ける人というような信頼関係に基づいてそれぞれ適切に対処をしていただくべきものと考えておりますが、将来、国民世論の動向等を踏まえまして開示をするべきことが至当であるというような合意が形成されるならば開示の対象にされてもいいのではないかというふうに考えておるところであります。  それから、保護審議会を設けるべきではないかということにつきましては、先ほどもちょっと申し上げたわけでありますが、私ども行政改革担当官庁としてみだりに審議会等をふやすわけにはまいらないということで差し控えておるわけでございますが、期限を限っての御検討をいただくような学識経験者等の御意見を承るそうした審議会等につきましては今後考えたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。  なおまた、国会における御議論等を踏まえまして私ども随時ひとつ検討を重ねてまいりたいと思っております。
  142. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 最後になりましたので意見だけもう少し申し上げておきたいと思うんです。本当はここも聞いて十分論議してみたいところなんですけれども。  まずその前に、今、長官のおっしゃった審議会の問題ですけれども、私は、国民の人権を守るために必要な審議会というのは、これは総務庁は何も遠慮することはないと思うんですね。大手を振ってつくった方が喜ばれるんじゃないでしょうかね。行政改革をやる審議会をつくるよりははるかに国民に私は喜ばれると思うんですよ。こういうものこそやっぱり率先してつくってほしいですね。このことはお願いしておきます。  あと地方公共団体との関係については、衆議院でも、これは地方自治体の個々の権限を抑えるようなことは絶対にしない。だから、今出されているこの法律案よりはるかにいいものをつくろう。先ほどの参考人意見でも、随分つくっていますね。そういうものは絶対に抑えることはしないというふうにお答えしておりますので、それは守ってほしい。  自治省、いらしておりますね。済みません、質問できなくて。お願いしておきます。自治省は、こういうものがまとまりますとすぐ通達を出すんですよ。国の法律に準じてやりなさいと。せっかく今自治体でもっといいものをつくろうと思っておるのに、そういうものが入ってくれば、これはやっぱり国の法律に従っていかなければならないのかと思ってもっと悪いものができてくるんです。だから、これは通達だけは出さないでほしいと思う。これは本当にやってくださいよ。せっかくいいことをやろうと思っているのに、それを政府が抑えるなんというのは、これは今の長官の答弁にも反しますからね。これは自治大臣にぜひひとつ伝えておいていただきたいと思うんです。  それから、制度上の問題でもいろいろあります。  先ほど手数料の問題が出ましたけれども、予算もゼロ、定数もふやさない。これではせっかくいい法律つくったって、私は余りよくないと思うんですけれども、これだけでは問題がありますけれども法律をつくったってこれは全然生きないですよ。やってみなければわからないというふうにおっしゃると思うんですけれども、やってみて必要なことがあればぜひひとつ思い切って予算をつけて定数をふやして、全国どこにおっても開示請求ができるように便宜を取り計らってもらいたいと思うんです。一体どこへ行ったらいいのかさっぱりわからないのでは困りますので、それもお願いしたい。  最後に、事務次官の申し合わせというのがあります。これは読んでみましたけれども、結構いいことを書いています。今のこの法律よりももっと中身がいいのではないでしょうか。大分古い話ですけれども、昔の方がずっとよかったですね。それが何でこんなふうに変わってきたのかなと思ったんです。この次官会議の申し合わせというのは生きていると思うんです。ですから、そのいいところは、この法律でこれから政令とかいろんなものをつくるんでしょうからぜひひとつその中に生かしていただいて、全部がいいとは思いませんから、せめて次官の申し合わせくらいは一歩でも後退することのないように取り計らっていただきたいなと思います。  そのほかいろいろとありますけれども、時間になりましたので終わります。  どうも大変ありがとうございました。
  143. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 私は行政機関の休日に関する法律案から質疑を始めます。  まず、この法律の言葉の使い方が極めて疑問の多い使い方をしておりますので、意味がわからない点がございますのでお尋ねをいたします。  行政機関というものにつきましての定義は第一条の第二項に掲げられておりますが、その中の「内閣に置かれる各機関、」というのはわかります。ところが、これを除いた「内閣の統轄の下に行政事務をつかさどる機関」こうありますが、これは一体どの範囲のものを指すかが疑問が生ずるわけであります。例えば、地方自治体は含むのかという問題です。この「統轄」という言葉の意味が大変あいまいもことしておりますために起こってくる問題であります。  それから、「内閣の所轄の下に置かれる機関並びに会計検査院」こうありますが、「内閣の所轄の下に置かれる機関」というのと「内閣の統轄の下に行政事務をつかさどる機関」というのとどのように違うのかという点でございます。  具体的に言いますと、学校教育機関とか研究機関というのがございますが、これは含まれるのか含まれないのか。もちろんこれは国立でありますが、含まれるのか含まれないのかという問題。  それから、地方公共団体の所轄する教育機関、研究機関、これは含まれるのかどうかという問題であります。  この点について御説明を願います。
  144. 勝又博明

    政府委員(勝又博明君) 行政機関の休日に関する法律規定してございます「内閣の統轄の下に行政事務をつかさどる機関」と申しますのは総理府及び各省でございます。この場合の総理府といいますのは大総理府という意味での総理府でございます。それから「内閣の所轄の下に置かれる機関」と申しますのは人事院を指しておるわけでございます。  最初に戻りまして「内閣の統轄の下に行政事務をつかさどる機関」という表現は国家行政組織法の規定ぶりを援用したものでございますし、また人事院に係る「内閣の所轄の下に置かれる機関」と申しますのは、これは国家公務員法の規定ぶりを援用したものでございます。  それから、先生御質問の学校、研究機関はどこに属するのかということでございますが、これは当該学校、研究機関が属する省ないしは府の中で読まれることになります。  それからまた、地方公共団体に係る機関、これはこの法律対象外でございまして、別途、自治省所管の法律において手当てされるものと考えております。
  145. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 教育とか研究というものが行政事務に含まれるかという問題ですが、この点はどうですか。
  146. 勝又博明

    政府委員(勝又博明君) この行政機関の休日に関する法律対象といたしますのは、いわば行政府全体をとらえておるわけでございまして、行政府がトータルとして特定の日に閉庁の状態にある日を規定しようとするものでございます。  その行政府の中に属します機関と申しますのは全体としての行政府に包含されるものでございますから、すべて行政府という中でとらえておるわけでございます。したがって、行政府が行う事務行政事務ととらえますれば個々の施設、機関等が行う事務行政事務としてとらえられる、こういうことでございます。
  147. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 私が御質問申し上げましたのは、教育自体は行政事務かという問題です。  もし行政事務ということであれば、どういう根拠に基づいて教育自体は行政事務であるのかということでございます。
  148. 勝又博明

    政府委員(勝又博明君) 学校、教育機関の属します例えば文部省であるとか何省であるとかのそれぞれの設置法におきましてそれぞれの教育機関、研究機関事務を掲げておるわけでございます。したがって、これを省の事務レベルで見れば行政事務としてこの法律においてはとらえておる、こういうことでございます。  したがって、先生が御懸念の一般常識的、一般通念的な意味での行政事務かどうかということにつきましては、あるいは若干奇異な感じは与えるかもしれませんが、この法律におきましては行政機関全体としてのとらえ方をしておるものでございますから、学校、教育機関ないしは研究機関の行う事務行政事務の中でとらえておる、こういうことでございます。
  149. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 行政機関と申しますのは言うまでもなく国家機関で、ここで言うのは国家機関のことだと思いますが、この行政機関というものは元来国民に対するサービスをする機関であると理解をいたします。これは憲法第十三条を根拠として当然そうならざるを得ないと思います。  そうしますと、国民に対するサービス機関であるならば、国民が困らない状況において休むべきではないか、国民が困るような状況で休むのはサービスの精神に反する、このように思いますが、いかがですか。
  150. 勝又博明

    政府委員(勝又博明君) 今般、いわゆる行政機関の土曜閉庁を導入しようとするに当たりましては各界各層の御意見も十分承ったわけでございますが、その中で一番大きかった御意見と申しますのは、行政機関の土曜閉庁には賛成だがなお行政サービスの低下を来さないようにすべきである、こういうことでございました。  私どもといたしましては、そのような御意見を十分踏まえまして行政サービスの低下を来さないような配慮を行うことといたしておりまして、具体的には緊急時におきます執務体制を整備する等等のことを考えておるわけでございますが、まず基本的には、土曜閉庁をすることによりまして行政事務行政需要を完全に全うできないというような機関などにつきましては土曜閉庁いたさないということで対処したいと思っております。  具体的に申し上げますれば、交代制勤務の官署でありますとか週末において行政需要の多い美術館、博物館等でありますとかあるいは当面は学校及び病院の診療部門でありますとかなどにつきましては土曜日も開庁するということで対処したいというふうに考えております。
  151. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 具体的にお尋ねいたします。  今、労働者の労働時間を少なくするということは、これは私も反対ではありません。大変いいことだと思います。しかし、国家機関国民の困るような時期に休むのはどうか。  例えば土曜日に休むということになりますと、労働者は皆一生懸命に働いておりまして、土曜日以外は休みがとれない。休みをとれば月給が減るということになります。また、御承知のように、土曜日以外のときに仕事を終わってから手続をしようとしても、もうお役所の方の時間が済んでおります。だから大変困るわけです。  そういう点を考えますと、国家公務員の労働時間の短縮ということは土曜とか日曜を避けるべきだ、一般の国民が暇のあるときには開いて暇のないときにお休みをとられるというのが正しいのではないかと思いますが、そういう考え方について大臣はいかにお考えでしょうか。
  152. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) 私ども今回の法案を御提案申し上げる前に各界の御意見も随分承りました。マスコミの皆さんでありますとかあるいは商工、労働関係、各方面の御意見を承りましたが、その中で一つだけ、実はたしか名古屋の商工会議所であったと思いますけれども、土曜も日曜もむしろ公務員をふやして窓をあけてサービスをしろという御意見が確かにございました。しかし、その他の大多数の方々は、今日の世界の趨勢あるいは労働時間短縮に対する広く社会的な要望、それらを考えてみるとまあまあ国の場合においても土曜閉庁というのはやむを得ない時代の趨勢ではなかろうかというそういう御意見が大勢であったように思います。中には条件つき賛成という方もありまして、休むのはいいがそのかわり勤めるときはしっかり勤めろ、サービスもよくしろという御要望を付しての賛成というのが相当ありましたけれども、しかし、いずれにしてもまあまあ認めていいのではないかというそういう国民の皆様方の御理解を得つつ、本来ならば完全週休二日制にしたいところでありますが、それをとりあえず月に二の土曜日を閉庁させていただく、ただし国民の皆様方の生活に直接影響のあるような部門については土曜日も休まずにやるというようなことであえてやらせていただきたいという判断をしたわけでございます。  委員のおっしゃるような御意見国民の皆様方の中にあることは十分承知いたしておりますが、そういう中でも今回はそろそろ御理解を得られる時期になったんではないかなと判断したというのが今回御提案を申し上げた理由であります。
  153. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 月曜日から金曜日までを執務時間を延長して午後八時までやる、こういうことであれば国民は不便は感じないでしょうね。午後五時でやめてしまったということになりますと、仕事の方も五時までありますからもう手続のしようもない。  特に問題のありますのは、御承知のように、昭和六十三年五月三十一日の閣議決定で「行政機関における土曜閉庁方式の導入について」というのがございまして、それの第五項に「地方公共団体等における土曜閉庁方式の導入」というのが書かれておりまして「地方公共団体における土曜閉庁方式については、できる限り国と均衡をとりつつ導入することができるよう法的措置を含め所要の措置を講じる。」とこうあります。ということになりますと、今度のこの行政機関の休日に関する法律ができますと地方公共団体に対してもこういうふうにしろということをお勧めになるということが読み取れるわけですが、そうなりますとこれは国民に対する大変な不便を来すということになりますが、この点についてはいかがでしょうか。
  154. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) 実は、現在、四週六休を開庁のままやっておるわけでありまして、いわば土曜日については半数交代で休んでおるというのが現在の状況でございます。これは、国は全面的に実施しておるわけでありますし、都道府県もほぼ完全実施をしておると思います。市町村においてもたしか六割か七割くらいは実施をしておるように把握をいたしております。でありますから、これを土曜閉庁方式に切りかえることによりましてサービスの面、勤務時間の面においてはさしたる変わりはないわけでございます。  問題は、市町村の場合特にそうでありますが、地域住民の皆様方と直接接触する機会が非常に多い、したがってそうした面での御配慮を十分いただかなければならないということであります。事実、直接住民異動とかあるいは死亡とかに関するような事務については土曜、日曜でも取り扱っていただいておるようでありますが、そういうふうな面で十分御不便のないように配慮をしていただきながら地方公共団体においても逐次実施さるべきものと考えております。  そしてまた同時に、地方公共団体においても土曜閉庁を実施することができる法律を別途自治省の方では御審議をお願いしているところでございますけれども、私どもは、地方自治団体地方自治団体の自主的な御判断に基づいてそれぞれ適切に実施していただくべきものというふうに考えております。    〔委員長退席、理事名尾良孝君着席〕  それからもう一つ、住民に不便を来さないかということについての大変な御議論があるわけでありますが、これはたしか四国のどこかの県であったか市であったかと思います。ちょっと正確には記憶いたしておりませんが、土曜日の午後もサービスのためにやるというのをやられたところがありますが、住民方々利用がほとんどなかったという実績がございます。  したがいまして、国民の皆様方に第二と第四の土曜日は窓口が閉まっております役所がございますよということのPRが十分行き届き、国民の側においてもそういう利用を、何といいましょうか、承知していただけるならば、さしたる御不便はおかけしないで済むのではないかというふうに思っております。
  155. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 これは世論調査がなされたということで私自身が見たわけではありませんが、昭和六十三年の六月に行われた世論調査では行政機関の週休二日制の促進について賛成が三〇%しかなかった、こういうことでございます。  そこで、今回の土曜閉庁を決定するに当たりましては国民の声をどのように聴取されたのか、問題があるのではないかと思います。また、聴取された意見の内容はどういうものであったのか、もし御調査になってわかっておればお知らせ願いたいと思います。  こうした世論調査の結果が今回の措置に対してどう反映しておるのかという問題もお聞きしたいのであります。
  156. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) 御指摘の「公務員に関する世論調査」につきましては総理府が実施したものと思いますが、役所はあげておいた方がいいか閉めてもいいかといって聞かれれば、国民の皆さんはあげておいた方がいいとお答えになるのは当然でありまして、この調査そのものから賛成が三〇%しかないからおまえだめだぞと言われてもちょっと困るんではないかと思うわけでありまして、条件つきの賛成が少なくとも六〇%近くあるということは、まあまあサービスよくしっかりやれば閉めることも認めてもいいんではないかという御判断ではないかと思うわけであります。  さらに、二月から金融機関が全面的に完全週休二日制を実施されることになっておりますので、国家公務員の場合も地方公務員の場合も、そうしたこと等相まって国民の皆様方の御理解はだんだん深まるものというふうに思っております。
  157. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 この問題につきまして労働省にお尋ねをいたしますが、中小零細企業が週休二日制をとった例があるかどうか。  あれば、そういう週休二日制をとった場合に中小零細企業の労働者はどういう影響を受けたであろうかという問題についての御調査がありましたらお聞かせ願いたいんですが。
  158. 畠中信夫

    説明員(畠中信夫君) 私ども、毎年、賃金労働時間制度等総合調査というものを実施いたしております。昨年度のこの調査結果によりますと、先生御指摘の中小零細企業における週休二日制の普及状況につきましては、例えば百ないし九百九十九人でございますが、その企業規模におきましては七四・六%の労働者に何らかの形での週休二日制が適用されております。それから、三十ないし九十九人という企業規模におきましても四三・七%の労働者に何らかの形での週休二日制が適用されておるというそういう状況になっております。  それから、週休二日制の導入の効果でございますけれども、それにつきましても最近の調査結果というのは少々ございませんけれども、週休二日制を採用したことによりまして、例えば従業員の定着率が向上したあるいは採用が容易になったあるいは労働者のモラルが向上したあるいは労働時間管理の合理化等が図られて生産性が向上したというような非常に積極的な答えが多く見られておるところでございます。
  159. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 労働者が休日が多くなるということは大変いいことでございまして、そのことについては反対をする人は恐らくいないと思います。  ただ、ここで問題になりますのは、行政機関との関係で不便か便利かという問題なんですね。つまり、労働者の方は国民、主権者ですからね。国民が主人ですから、主人ほどこで休もうとそれは自由なんです。主人のサービス機関である、従者である国家公務員とか地方公務員というものが国民、主権者に御迷惑のかかる方法で休むというのは問題ではないかということをお尋ねしているんです。  しかも、これは年がら年じゅう届け出事務があるわけじゃありませんので、結婚届は一生に一回か二回でございます。出生の場合も一生に一回か二回なんですね。それでいいわけだ。その一生に一回か二回のことが不便か不便でないかが問題になるわけですね。これは一人の人間について余りたくさんの問題ではないからいいではないかという御意見かもしれませんが、それを集約しますと不便の度がたくさん集まってきてみんなが不便だと、こういうことになる。  それで、そういう点の御考慮を今後は行政機関ではしていかれるのがいいのではないか、そういう点についてどうお考えになるのかと、こういう質問なんでございます。
  160. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) 先ほども申し上げたところでございますが、まずは行政サービスの向上に努めることが一つであります。  それからもう一つは、国民の皆様方が日常直接に土曜、日曜でもどうしてもあげておいてもらわなければ不便だというようなところについては交代制勤務を採用いたしましてそうしたサービスに万全を期するということが一つであります。  それからもう一つは、緊急非常事態の場合には当然のことながら閉庁などと言っておられませんので、それは必要なスタッフは全部出て事に当たるというような体制を整えるというようなことによりまして国民の皆様方の御批判を受けないように努めてまいりたいと思っております。
  161. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 ちょっと問題を変えますが、行政機関の休日というお言葉でございます。これは、その実質は国家公務員の休日のことではないか、こう思いますが、行政機関機関そのものに一体休日があるのかということです。これは、恐らく内容は実質的には国家公務員の休日等ということではないかと思いますが、そういうこととして理解をして今から質問をいたします。  この法律におきまして、毎月第二土曜日と第四土曜日を含めまして日曜日、国民の祝日に関する法律規定する休日それから年末年始、こういうものが行政機関の休日として規定されることになりますね。今度の法律でそうなります。  それでは、今度のこの法律でわざわざこういうことを決めなきゃならないということは今まで決めていなかったからだ、こう思われますが、今までなぜ日曜日、国民の祝日に関する法律規定する休日が行政機関の休日となっていなくて今度改めて行政機関の休日とすることになったのか。  現在のそういうものが事実上行政機関の休日とされてきておるのは、一体どの法律的根拠に基づくのか。これは、行政機関の休日ということですから、何か法律の根拠がなければできぬはずなんです。それが今まで実際上行政機関の休日として行われてきたということになりますと何らか法的根拠があるはずですが、その法律の根拠は何でしょうか。
  162. 勝又博明

    政府委員(勝又博明君) 現在、日曜日を行政機関の休日とする直接的な法律の根拠はないわけでございますが、昭和二十四年一月以来施行されております新給与実施法の改正によりまして日曜日が勤務を要しない日とされたことから、間接的にはこれが法的根拠と言えょうかと思われますし、そのような形で現在の給与法に引き継がれておるところでございます。  また、国民の祝日につきましては、国民の祝日に関する法律に休日として規定されておるわけでございますが、この法律の趣旨ないしは立法経緯から見まして、行政機関において休日とする取り扱いがなされるということについては十分な根拠があるのではなかろうかと、かように思うわけでございます。  なお、この法律案規定してございます行政機関の休日と申しますのは、職員の休日ではございませんで、行政機関が執務を原則として行わない日ということでございます。事務の性質上どうしても開庁しなければならないような官署を除きまして、行政機関においては全体として休みの状態になっている日というものを行政機関の休日と呼んでいるわけでございます。    〔理事名尾良孝君退席、委員長着席〕  冒頭申しましたように、日曜日、国民の祝日等につきまして明確な法律的な根拠はないわけでございますがそれなりに根拠を持つものでございますが、この際、閉庁土曜日につきまして第二、第四土曜日につきまして官署を閉めるということとこれまでの日曜日ないしは祝日の官署を閉める状態とは同様でございますので、閉庁土曜日にあわせまして日曜日、国民の祝日等を含めましてこれを行政機関の休日というふうにまとめて規定させていただいたというところでございます。
  163. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 そうしますと、これは法的根拠はないんだけれども昔からの慣習でいつもこういう日は休むんだ、休みだということだと思いますね。  それで、そういう慣習はどうして起こったかといいますと、やはり戦前の慣習を受け継いでいることではないでしょうか。これは大正十一年の閣令六号というのがあるということを最近知りましたが、それによりますと、官庁の執務時間は日曜日及び休日を除き午前八時三十分より午後五時までとし土曜日は午後零時三十分までとする、こういうふうに決めてあるんですね。それによりまして大正時代から昭和の初期にはお役所ではやっておったわけでしょう。実は憲法が改正になりましてから法律をつくるべきであったけれども、うっかりして忘れたので従来どおりの慣習で内輪のことだからやってきたと、こういうことではないでしょうか。
  164. 勝又博明

    政府委員(勝又博明君) まず、従来の日曜日ないしは国民の祝日等におきまして役所を閉めておきましたことにつきまして、先生、慣習とおっしゃいましたが、先ほど申しましたように一般職給与法の流れあるいは国民の祝日法の趣旨ないしは制定経緯等から見ましてそれらに根拠を有するものというふうに私ども考えておるわけでございます。  先生の第二段に御指摘の閣令六号でございますが、これは昭和二十二年政令第十四号によりまして、日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定中閣令とあるのは総理府令と読みかえるものとするというこの規定がございまして、これによりまして閣令六号は現在総理府令としての効力を有しておるものでございます。しこうして、この閣令六号の執務時間の定めと申しますのは、日曜日、年末年始等が別途の根拠によりまして休みの日として既に定められているということを前提といたしまして、その休みの日以外の日における執務すべき時間を定めたものでございまして、そういう意味におきまして今後とも閣令六号の効力というものは依然残るというものでございます。
  165. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 実は、なぜ私、慣習と申したかといいますと、先ほどおっしゃいました終戦のときの法律で、従来の法律、命令で憲法に反しないものは有効とするというそのことがあるから申したんです。  といいますのは、憲法は、御承知のように、幸福追求に関する権利については立法その他の国政の上で最大の尊重を必要とする、こう決めております。国民が便利なように法律はつくれよと憲法で決めている。ところが、実際には土曜日を休んでしまえば国民は便利ではないわけです。むしろ水曜日が休みなら、一般の人は働いておいでだ、お役所はその間は休む、それなら国民は不便を感じないんですよ。だから、水曜日及び金曜日を休日とするというふうに変えればこれは立派であったと思うんです。ところがそうでないので、憲法の精神に反するではないか。だから慣習だと申し上げたんです。大正十一年の閣令六号によってそれを踏襲したというのはどうも言いにくい、だから慣習と申し上げたわけでございます。  そこで、今度この法律ができるわけですが、これと大正十一年のこの閣令六号との関係につきましては、この閣令六号は廃止になる、こういう意味でしょうか、それともそうでないという意味でしょうか。
  166. 勝又博明

    政府委員(勝又博明君) 閣令六号は、先ほども申しましたように、別途の根拠を持って定められた休みの日以外の日におきます職員の執務時間のありようを定めたものでございます。今回の行政機関の休日に関する法律は、それ自体は行政機関のお休みの日を定めたものでございまして、その日に対応した職員の勤務時間というものがそれぞれ定められておるわけでございます。  そのような前提でもって閣令六号による執務時間の割り振りというものは今後ともなお残るわけでございまして、その意味合いにおきまして閣令六号は今後とも効力を有する、今回廃止の手続をとる必要のないものでございます。
  167. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 せっかく立派な憲法ができたんですから、その精神に従って国家公務員の勤務時間それから休む日にちというものは当然決められるべきである。閣令というのは、これは政令でしょう。その大正時代の閣令によって事を処理するということは幾ら何でもみっともないのではないかと私は思います。  そういう点については、大臣、どうでしょう。
  168. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) ただいま委員から大変ユニークな御意見をいろいろお聞かせいただきましたが、伺っておりますと、やっぱり、これは適当な機会にもう一回整理をしなければならないのかなというふうにも思います。  私どもの方でもただいまの御指摘を踏まえて勉強してみたいと思います。
  169. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 このたびの法律では、実際には役所を閉めてしまうわけですが、閉庁という言葉のかわりに休日という言葉を使ってございますね。閉庁ならば、役所を閉めるんですからそれは文字どおりわかります。ところが休日ということになると、役所が休んでしまうというのは一体どういう意味なのかと大変疑念を生じてくるわけです。  こういう言葉の使い方についてはどうでしょうかね、どのようにお考えですか。
  170. 勝又博明

    政府委員(勝又博明君) この法律におきます行政機関の休日と申しますのは行政機関が全体として休みの状態に入っている日ということでございまして、個々の行政機関、個々の行政官署について見ますと、先ほど来問題になっておりますような行政サービスを低下させないというような必要から、第二、第四土曜日といえども開庁している官署もあるわけでございます。いずれにしましても、そういうような官署も含めましてトータルとして行政機関がお休みの状態になっている日を行政機関の休日としてとらえたわけでございます。  確かに、先生御指摘のように、職員の休みと紛らわしいというような御指摘もあろうかと思いますが、例えば銀行の閉店日、これは銀行の休日ととらえられておるわけでございまして、そういう意味におきまして前例はあるわけでございます。
  171. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 これは長官の先ほどの御答弁でいいわけでございますが、人事院総裁がおいでですのでお伺いいたします。  国家公務員の休日あるいは地方公務員の休日というものを民間の一般の国民の休日と異なる日に決めるということにつきましては、いかなる差しさわりが生じるか私はわかりませんですが、どのようにお考えでございましょうか。
  172. 川崎正道

    政府委員(川崎正道君) 職員と申しますか公務員の休日を民間の労働者の方々の休日と異にするかあるいは同じくするか、これはいろんな考え方があろうかと思います。必ずしも民間方々と公務員の休日が同じでなければならないとは思いませんが、ただ、我々といたしましては職員の勤務条件という観点から公務員の休日を定めておるわけでございます。そういう観点から申し上げますならば、やはり社会一般の方々がお休みになる土曜、日曜日を中心として公務員の休日を決めていくというのが原則的な考え方であろうかと思います。  ただ、公務員にはいろんな仕事がございますので、その提供する行政サービスのいかんによりましては先ほどから議論が出ておりますようは交代制勤務という形で土、日曜日に行政サービスを提供する職員も出てこようかとは思いますが、やはり原則的には一般の方々の休日である土曜、日曜日を職員の休日に当てるというのが妥当であろうかと、このように考えております。
  173. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 公務員の休日というものにつきましてもちろん例外があることは、私も主張いたしたいと思います。例えば、消防署が休まれては因るし、病院が休まれても困ります。警察も困りますね。  だから、そういう問題について今問題にしているのではなくて、窓口業務ですね。国民が届けに行ったりする場合の都合を考えますと、やはり公務員と民間とが同じ休日をとるということは大変不都合が生ずるのではないか、こういうことでございます。これは、毎日、国家公務員は夜遅くまで勤務するんだ、一般の国民は午前中で終わりなんだ、こういうことでありますれば余り問題はないと思いますが、ところが実際には大変不便を感ずることが多いわけです。一生に二度か三度のことでしょうけれども、不便を感じます。  だから、今後そういう点の御研究が必要ではないか、私はこう思うわけですが、いかがでございましょうか。
  174. 川崎正道

    政府委員(川崎正道君) 官庁といいますか役所が行政サービスを提供するという問題と職員個々の勤務条件のあり方ということとは別のことであろうかと思います。  で、職員個々の勤務条件を扱う人事院が行政サービスの問題につきまして余り差し出がましいことを言うのはいかがかとは思うんですけれども、人事院といたしましても今委員御指摘の点につきましていろいろ勉強はいたしてみました。で、土曜日における行政サービスというものがどの程度のものがあろうかというのを調べてみたわけでございますが、例えば登記所の事務とか陸運事務所の事務といったような事務あるいは税関の事務、こういったものをいろいろと調べてみたわけでございます。  我々が勉強いたしましたところによりますと、最近、民間の企業も土曜日が休みのところが多いということで、大企業を中心といたしまして土曜日に役所にお見えになる方々が昔に比べますと非常に減っております。通常のペースで申しますと、半ドンといいますか半日勤務ですから、月曜日から金曜日までの事務量の約五〇%の事務量があればいいわけでございますが、現実には五〇%を切りまして実は二〇%とか三〇%程度事務量になっておるわけでございます。  といたしますと、まあそれでも土曜日にお見えになる方がございますので御指摘のように土曜日における行政サービスのあり方というものは考えなければならないのでございますけれども、一方、コストのかかる話でもございますのでコスト面と行政サービスの量あるいは職員の勤務条件という三つの要素をいろいろ勘案いたしますと、やはり国家公務員につきましても土曜閉庁という形で土曜日に休めるような方式に持っていくことが現在の日本の社会経済の情勢からは妥当かなというような判断を人事院としてもいたしておるわけでございます。
  175. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 この点は見解の相違でございますので、もうこれ以上議論はいたしません。  自治省にお尋ねをいたしますが、地方公共団体の開庁方式、四週六休制というものがあるということを聞いておりますが、その実施状況はどのようになっておりますか。
  176. 佐藤信

    説明員(佐藤信君) ことしの十一月一日現在で申し上げますと、四週六休制を実施あるいは試行している団体は、都道府県では一〇〇%、政令指定都市では五〇%、それから一般の市町村、東京都の特別区合わせまして七六・八%、約七七%でございます。全地方公共団体では合計七七%ということになっておりまして、毎月これらの割合が徐々に高まってきているという段階にございます。
  177. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 もう少しお聞きしたかったんですが、時間が迫ってきました。  学校の方の問題で文部省にお尋ねをいたしますが、学校の週五日制という問題が起こっておるそうでございます。これは、現実の制度としてもう始まっておるんでしょうか、あるいはこれからこういうことを何らかの法律をつくって実施しようというわけでございましょうか、お尋ねをいたします。
  178. 菊川治

    説明員(菊川治君) 世の中の週休二日制が進んでまいっておりまして、それに関連しまして学校の五日制をどうするかという問題がございます。  ただ、学校を五日制にする場合はいろいろ問題がございまして、教育水準が下がるのではないか、あるいは子供の学習負担はどうか、あるいは土曜日が休みになった場合の子供が地域や家庭での受け皿があるかどうか、また塾へ通ってしまうのではないかというふうな問題もございまして、そういった問題を詰めた上で検討していく必要があろうと思っております。昨年末の教育課程審議会での答申でもそういう御指摘をいただいておるわけでございまして、そういうこともございましてこの問題につきましては来年度の概算要求で調査研究協力校を要求いたしておりまして、その概算査定を待ちまして調査研究を進めていきたいというふうに思っております。
  179. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 質問者を交代いたします。
  180. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 前回、個人情報保護法についてお伺いしたわけですが、またきょうちょっと時間をいただきましたので同じくこの法案についてお伺いしたいと思います。前回、駆け足で伺ったものですから、細かく聞けなかったところについていろいろお伺いしたいと思います。  法案の四条の保有の禁止というか保有の要件に関連してお伺いしたいと思います。  先ほど、午前中参考人方々の御意見をいろいろお伺いしたんですが、参考人方々のうち池田参考人藤田参考人のお二人は、いわゆるセンシティブ情報の存在、それの保有の禁止というふうなことが当然あるべきだというふうな御意見でした。林参考人は、センシティブ情報というふうな概念が非常に不明確であるということも一つの理由に挙げられた上で、行政が違法なことをすることはないという前提のもとにそのような保有禁止条項は不必要じゃなかろうかというふうな意見を述べておられました。いずれにせよ、このセンシティブ情報について保有禁止規定を設けるべきだというふうな各界の意見があることは、もう法案作成段階から御承知のことだろうと思います。先ほども山口委員からいろいろ御意見も出ていたわけでございます。  先ほどの山口委員の質問に対する行政管理局長の答弁の中でよくわからない点がありましたので、ちょっと確認したいんです。収集禁止を認める法規があるとか認めない法規がないとか何かそんなような趣旨のことを言っておられましたが、これはどういうことを言っておられたんでしょうか。
  181. 百崎英

    政府委員(百崎英君) 先ほど御答弁申し上げましたのは、現行の法律の中でいわゆるセンシティブ情報についてある場合には収集できるとかあるいはできないとかそういうことを正面から取り上げて規定している法律はほとんど見当たらないと、そういうことを申し上げたわけでございます。
  182. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 現行法規に確かにセンシティブ情報について収集していいとか悪いとかという規定がないというふうには私も理解しているんです。  その次に伺いたいのは、何も規定していないから、だからできるということなんでしょうか、だからできないということなんですか、あなたの結論はどっちになるんですか。
  183. 百崎英

    政府委員(百崎英君) そこで、現実には各省庁は公益目的を達成する場合に、その設置法の情報、資料収集に関することという権限に基づいて収集をいたしておるわけでございます。個別の実体法がなければセンシティブ情報収集できないというふうには私は考えておりません。
  184. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 それから、参事官も何か行政目的達成のためにはセンシティブ情報収集することは禁止されていないというふうな趣旨のことを先ほど御答弁なさったように思います。確かに、いわゆる一口にセンシティブ情報とこう言った場合に、範囲が広くてどこまでをその中に含めるかいろいろ問題はあると思います。ですから、センシティブ情報と一口に言う中で、どなたに伺っても、うん、それはその中に入るのに間違いないなというふうな問題とすれば、政治的信条とかあるいは宗教的条項というふうなことは、これはどなたの御意見を伺ってもセンシティブ情報という中に入るということは間違いないだろうと思います。  そこで、私が伺いたいのは、センシティブ情報一般というふうなことで枠を広げるといろいろ御意見もあるでしょうけれども、今申し上げたような個人の政治的信条に関する情報をどのような行政の必要性とか行政目的達成のためにそのような情報が必要だという具体的な場合はあるかないか、どんな場合を考えて言っておられるのか、まず局長からお答えください。
  185. 百崎英

    政府委員(百崎英君) 現行の制度の中で例えば一つ考えられますのは、いわゆる破壊活動防止法の規定がございますけれども、その中でたしか政治的な信条等について調査をするということが書かれていたと思いますけれども、やはり公安といいますかあるいは治安といいますかそういった必要上調査をする必要がある場合がやっぱり考えられるのではなかろうかというふうに考えております。
  186. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 いきなりそう言われても私もよくわかりませんが、破壊活動防止法のどういう点で思想、政治的信条を調査して行政機関が保有してもいいという規定になっておるんでしょうか。
  187. 重富吉之助

    政府委員重富吉之助君) 破壊活動防止法の第三条にこういうことが規定してございます。「この法律による規制及び」……
  188. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 それはむしろ逆の規定ですよ。  あなたが今おっしゃった破壊活動防止法の三条は、よく読んでみなさい。「思想、信教、集会、結社、表現及び学問の自由並びに勤労者の団結し、及び団体行動をする権利その他日本国憲法の保障する国民の自由と権利を、不当に制限するようなことがあってはならない。」と書いてある。逆のことが書いてある。  要するに、私が今言いたいのは、一般論として行政目的を達成するために必要だという場合があるとかどうとかおっしゃるけれども、具体的にそういう政治的信条だとかあるいは宗教的信仰について、もしそれを調査して収集して保有して、それを理由にして行政を執行するような場面というものが考えられますか、考えられたらお答えください、こう申し上げているんです。
  189. 重富吉之助

    政府委員重富吉之助君) 今の三条はそういう先生がお読みになったようなことを書いておるわけですが、ということはその基本的人権を侵すような形で収集してはならぬということでありまして、その基本的人権を侵さないような形で収集することは可能であるというふうに読むべきだろうと考えております。  それで、そういうことからいきまして日本の社会秩序を破壊するというふうなことを考えているグループ、そういう団体があればそれらの構成員等について思想、信条等について調査することは当然あり得る、ただしその調査は無制限にやってよろしいということではないという規定である、こんなふうに解釈しております。
  190. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 破壊活動防止法のどこに思想、信条を調査してよろしいと書いてあるんですか。  破壊活動をするような行為をする団体、そういうものに対して加入したりあるいはそういうものを主導したりしてはならぬとかどうとかはいろいろ書いてある。破壊活動防止法は思想を処罰しているんじゃないんだ。行為を処罰しているんだ。  どこに書いてありますか。
  191. 百崎英

    政府委員(百崎英君) 破防法の例えば第四条のいわゆる暴力主義的破壊活動といいますか、これは次のような行為をいうということで、これの例えば第二号だと思いますが、「政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対する目的をもって、左に掲げる行為の一をなすこと。」ということは、ある行為をなす場合にその基本になっているのはやはり政治上の主義等々を推進したり支持したりというふうに解釈すべきではないかというふうに考えております。
  192. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 四条のこの定義の中で、一項二号には今あなたが読んだことが書いてある。しかし、簡単にその要点だけ読むと、政治上の主義を推進する目的をもって左に掲げる一つの行為をなすこと、例えば騒擾罪をやるとかあるいは放火するとかこういうことを暴力主義的破壊活動というということが書いてあるだけであって、こんな定義から思想、信条を調査していいなんということはどこから出てきますか。何を言っているんだ。
  193. 百崎英

    政府委員(百崎英君) この破防法と破防法の執行の任務に当たっております公安調査庁の設置法とを突き合わせて考えますと、そういったような暴力主義的な破壊活動を行うそういう団体につきましてその規制に関する調査を行う等々というようなことが設置法の「所掌事務及び権限」に書いてございますし、また破防法の第二十七条におきましても「公安調査官は、この法律による規制に関し、第三条に規定する基準の範囲内において、必要な調査をすることができる。」というふうに書いてございます。
  194. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 もうこれ以上話をしていてもしようがないからやめておきますが、ただ言葉だけでなくして、もう少し検討してもらいたいんです。  要するに、政治的信条によってあるいは宗教的信仰によっていかなる行政的差別もできない。それを理由にしていかなる行政国民を仕分けすることはできないんです。できもしないことを理由にしてそういうふうな情報収集することも違法だ、保有することも違法だ。もし思想、信条によって行政の区分けが可能ならいいですよ。可能じゃないです。もしそういうことを可能だという法律があるなら、その法律が憲法に違反している。  いずれにせよ、局長と参事官は安易に、必要がある場合、行政目的達成のため不可欠のとき、こういうときにはセンシティブ情報収集することはできますとおっしゃるけれども、もう少し細かくやるんだったらこの問題をいつまでもやっていてもいいんだけれどもそういうわけにはいかぬからもうやめますけれども、私が言いたいのは、もうこの法案法案で来ちゃってもう少しで時間が終わりなんでやむを得ぬ。  けれども、そういう問題も含めて、先ほど山口委員が言われ、そして長官がお答えになった審議会等では、こういう条項はもう少し検討して、センシティブ情報収集禁止というふうなことを書くことがますます必要になってくる。そうでないと今のような局長や参事官のようなお考えの方が出てこられる。こういうお考えの方が出てこられないためにもセンシティブ情報収集禁止ということは必要だと思うんです。  長官、いかがですか。
  195. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) 今引用した例の説明が必ずしも適切でなかった点があるかもしれませんが、国が外交なり治安なり防衛なりという行為をいたしております段階におきましてセンシティブ情報なるものが結果として集まってくるケースはあり得ると思うのでありまして、例えば先ほどもちょっとお話がありましたが、極右・極左暴力破壊活動を行うというような犯罪があった場合にその犯罪の特定個人についての犯歴というものが恐らく警察なり法務省なりに集まっていくでありましょう。そうしたものがコンピューター処理をされて保管をされるということはあり得るケースだと思います。  ただ、一般的に申しますならば、思想、信条、宗教等をそうした行政遂行に必要もないのに収集しそれを利用するということはあってはならないというのが私どもの基本的なスタンスでありまして、したがいましてそこに目的拘束ということをはっきりうたっておるわけであります。その行政遂行する目的のために必要な事項以外は収集してはならぬということは、あえて言えばセンシティブ情報について必要もないのに集めてはいけませんよということを規定しておるというふうに御理解をいただきたい次第であります。
  196. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 次に、六条に関連して、六条二項のいわゆる長官に対する通知の除外事由に関連してお伺いします。  先ほども警察庁で御答弁されたように、例えば盗難車ファイルあるいは車両のファイルそのものについても、犯罪捜査に関するファイルだ、だからそれは通知しないんだ、こういうふうな御答弁であったように理解しました。  先ほど山口委員が質問されたように、いろいろこういうファイルがあります、ああいうファイルがあります、と。しかし、実際にじゃどうだということになってくると、警察庁でも、少なくも今言われた二つのファイルは、これは犯罪捜査に関するファイルだから総務庁長官への事前通知の適用除外だ、こういうふうに言っておられる。そうすると、この前のときにも質問しましたが、あるファイルがこの事前通知の適用除外に当たるか当たらないかを全くその保有機関に任せてしまった場合、総務庁としては全くわからないわけです。  その辺について何らかわかる方法はないだろうか。そして、それはそっちの適用除外じゃないんだ、こっちに持っていらっしゃいというふうなことについての可能性というものは、長官、どうお考えなんでしょうか。
  197. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) 実は、この法律案をまとめます段階におきまして、各省庁は、一体、総務庁が何でそんなことをやるのか、我々が持っているファイルを何で総務庁にみんな一々中身はこうでございますよといって登録をしなきゃならないのかねというそもそも論から入ったわけでありまして、そういう中において各省庁とのぎりぎりの折衝を通じて、少なくともこれだけは出しなさいよということで集めてまとめていったのが今回の法律の立法過程であります。  したがいまして、私どもといたしましては、各行政機関の持っておりますファイルにつきましては原則として総務庁にこういうものを持っておりますということを通知してもらわなければいけません、ただどうしても極めて限定的に列挙をしましたその理由に該当するものについてのみ除外するのはやむを得ないということで、できるだけ限定をしたつもりであります。  それに対する担保はどうなのかということなのでありますが、これは、私ども二十条、二十一条によりましていろいろと適時適切な対処はいたしたいと存じます。  それでは不十分ではないかという御指摘がございますが、今後、行政監察等、いろいろな機会を通じまして各省庁がこの法律にのっとって適時適切にやっているかどうかということにつきましては十分ひとつこの法律の趣旨を踏まえて対応していきたいというふうに考えておるところであります。
  198. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 結局、六条二項の事前通知の適用除外ファイルについては、今のお話をお伺いしても総務庁としては、平たい言葉で言うと、お手上げで先様任せというふうな感じで非常に残念なことに思います。  ただ、七条三項の方の通知はしたいけれども不掲載のファイルについては、総務庁としてはファイルの存在自体はわかっているわけですから、不掲載だなんといってもそういうわけにいかないよというこの辺についての心組みというか、その辺はいかがでしょうか。
  199. 重富吉之助

    政府委員重富吉之助君) 先生の御質問の第七条三項に列挙されている事務に関するファイルにつきましては、私どもとしては当然に、なぜこれを公示すると事務の適正な遂行を著しく阻外するおそれがあるんですかという質問はいたすつもりでございます。そうして十分調整を図っていきたい、こんなふうに考えております。
  200. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 それでは、九条の第三者に対する提供利用についてお伺いします。  特に、二項の各号についてお伺いしたいんですが、まず、一号の本人の同意がある場合とか本人提供する場合、これはいい。二号、三号も、官庁ないし準官庁というかそういうふうな点でまあいいだろう、こう考えるんですが、四号に三つ類型があるんです。一つは、「専ら統計の作成又は学術研究の目的のために処理情報提供するとき、」。これは具体的にはどんなことをお考えなんでしょうか。
  201. 重富吉之助

    政府委員重富吉之助君) お答え申し上げます。  統計の作成に関しましては、統計は原則として個人名を付さずに専らその統計の集計のために使うわけでございまして、個人情報保護という点では心配はないのではないか、こういうことが一つでございます。  それから、「学術研究の目的のために処理情報提供するとき、」ということでございますが、これは学問の自由というような問題がございましてなかなか行政機関としてはタッチできない。それから、学術研究でございますから学者の先生が研究されるその範囲内でお使いになるであろうというようなときでございますので、私どもは、個人情報が侵害されるおそれは非常に少ない、こんなふうに考えているわけでございます。
  202. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 私がこれを心配するのは、保有機関の長が、統計の作成とか学術研究のためだったら提供してくれ、ああいいよとこういうことになるわけですが、それを決定する保有機関の長の全く自由な一存に任せておくと恣意的にあなたには見せるけれどもあなたには見せないというふうなことになってくる。要するに、形の上では統計の作成とか学術研究ということで常に客観的な公平な利用というふうに見えますけれども、実際は保有機関の長が、一口に言って御用学者だとか自分の省庁に都合のいい者だけには見せてあげる、しかしそうじゃない者には見せてあげぬというふうなことになってきて非常に公平を欠くおそれがあるんじゃなかろうか、こう考えます。  これについての省令とか何かもう少し具体的な該当の有無の判断の基準的なものは考えておられるんですか。
  203. 重富吉之助

    政府委員重富吉之助君) お答え申し上げます。  この二項の四号も、先ほどから御説明申し上げておりますけれども、二項の前段にございますように、ただし書き以下でございますが、「処理情報ファイル保有目的以外の目的のために利用し、又は提供することによって、処理情報本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められるときは、この限りでない。」処理情報本人権利利益個人情報が不当に侵されるというような心配があるときはこの限りではないということで行政機関を縛っております。  ただ、先生がおっしゃいますように、基準なりガイドラインというようなものをきちっとつくらなければ危ないではないか、こういう御意見についてはまことにそのとおりだと思いますので、私どもは、この法律案がもし認められまして成立するようなことになりましたら施行までにできる限りガイドライン等をつくりまして万遺漏のないようにいたしたい、こんなふうに考えております。
  204. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 二番目の類型の「処理情報本人以外の者に提供することが明らかに処理情報本人の利益になるとき」こうありますけれども処理情報本人の利益になる場合だったらむしろ一号の方へ持っていってしまって「処理情報本人の同意があるとき、」の中の枠内で十分におさまると思うんです。ところが「処理情報本人の同意があるとき、」という項目があるにもかかわらず、そのほかになお処理情報本人の利益になるということを保有機関の長が判断して第三者に対する提供を認めるというふうなことは、ちょっとむだのように思いますがいかがでしょうか。
  205. 重富吉之助

    政府委員重富吉之助君) お答え申し上げます。  実例をもってお話を申し上げた方が御理解しやすいかと思いますので申し上げますと、例えば、ある方が交通事故にお遭いになって人事不省になられる。そういうことで緊急に手術等をする必要があるというようなときにその方の御病歴を執刀なさる方が知っておられた方がよりベターであり本人の利益になるわけでございます。そういうときに過去にその方の病歴がある病院なり医師から執刀していただく病院に病歴または血液型等を御連絡申し上げるということは、本人の同意は得られないんですけれども本人の利益になる。  それから、先ほども申し上げましたけれども、叙位叙勲等をお受けになるときに、情報をお知らせするということが一々本人の同意によってやるよりも第三者的に判断してやられるわけですから、その判断をなさる先生方にお知らせ申し上げるというようなことがあり得るということから、一号と四号の場合は違うのではないかというふうに私どもは考えております。
  206. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 第二の類型の今の御説明にしても、第三の類型である「処理情報提供することについて特別の理由のあるとき。」についての具体的な例の説明を先ほど山口委員のときにもされたわけですが、何だか非常に特殊な場合を例に挙げられるようなことが多くて、そう言われるとなるほどそうかなとも思うけれども、何となしにすっきりせぬ、こう思うんです。  なぜこれがすっきりしないかというと、行政機関が公権力に基づいて収集した個人情報私人提供するということは原則的にはできないはずだという立場に私は立つからいろいろ申し上げているんです。  先ほども山口委員からでしたでしょうか、これはだれのものだというお話がございましたが、それを保有するのは行政機関であったとしても、行政機関の保有は国民から頼まれた仕事をやるために必要な範囲で持っているだけなんですから、頼んだ人、委託者の承諾も何もなしに第三者に勝手に提供するということはどうなんだろうということでこの第三者提供、特に私人に対する提供については、もう少し個人情報行政機関が保有することの法的な意味、性質というものをお考えになって今後検討していただきたいと思いますけれども、長官、いかがですか。
  207. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) この前も一体政府が持っておる個人情報はその個人のものであるか政府のものであるかという論議は多少させていただいたと思うわけでありますが、いずれにいたしましても、私どもといたしましては個人権利利益が侵害されることを防ごうということでこの法律をお願いしておるわけでありますから、原則として第三者等にその情報を伝達するということはしてはならない。ただし特別の事由がある場合にはこういうことも考えられるということで、あくまでも原則禁止という精神を貫いていかなければならないものというふうに考えております。
  208. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 十七条の訂正申し立てに関連してお伺いいたします。  午前の参考人の会議録を総務庁としても後日いろいろ御検討いただくこととは思いますが、この訂正申し立てに関連して木村参考人藤田参考人のお二人の御意見を要約して申し上げれば、誤った個人情報が保有されている場合に是正し抹消を求めるための司法救済は現状でできないわけではないけれども訴訟において非常に長期間必要だとかしかもその間間違った情報がそのままぶら下がっているというふうなこと、そのために直接的な差しとめだとかあるいは損害賠償請求だとかいろいろ問題が非常に多過ぎるというふうな御意見なんです。  これについて、どうしても訂正申し立てを権利として認める必要がある。ただ言っていって、ああそうかい、調査しておくよというだけの問題じゃなくて、調査して間違ったら直せということを国民権利として認めるということがぜひ必要だと思います。特に、もし今後この十七条の規定がこのままでずっといってしまいますと、訂正申し立て、抹消請求というのは法的にないんだというふうに今よりもむしろ司法救済が後退する可能性すらある。  こういう点を考えると、この訂正申し立てについての権利性について概括的な御意見で結構ですが、長官、いかがですか。
  209. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) 今の制度のもとにおきましてはそもそも開示請求権なるものが明らかになっていないわけでございますが、開示請求権をまず認めたことによりまして本人が、間違っているかどうか自己の情報について確認することができる。もし間違っておるということが明らかな場合には、当然のことながらそのデータ管理しているところの責任者は速やかに、「遅滞なく」と書いてございますが、この是正を当然すべきものであるということだと私どもは考えております。  ただ、行政行為の結果として収集されたデータでありますので、そのデータ収集過程においてはそれなりの手続を経て収集をされておるものと思いますので、したがって明らかな間違いについては当然速やかに是正はしなければなりませんが、確認に若干の時間がかかるというケースもあり得るであろうということで第二項を定めておるところであります。  いずれにいたしましても、基本は、間違っておれば直しますということであります。ただ、法の仕組みといたしまして、行政機関の考え方とその当該本人の考え方との間にどうしても一致を見出せない場合には、まず早急の手段といたしましては、総務庁長官に対しまして、おれのデータはこういうふうに書かれているけれどもこれは明らかに間違いだということで私どもにおっしゃっていただけば、私ども関係行政機関の方とお話し合いをして、私どもの方で是正をさせることができれば是正をさせるようにいたします。それでもなおかつ意見が一致を見ない場合には、これは不服審査申し立てというような手続をせざるを得ないというのがどうも現在の行政の仕組みでございますので、そういうふうにしておるわけであります。  これは今後問題になると思いますが、民間等の情報規制する場合には公権力の行使とおのずから違いまして民間で任意にやることでありますので、私は、訂正請求権というようなものは民間情報規制の場合には認められてしかるべきものであろうというふうに考えております。
  210. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 二十六条に関してお伺いしますが、この二十六条を読んでみた場合に、地方公共団体はこの二十六条によって法的に何らかの拘束を受けるんでしょうか。受けるとすれば、その受ける拘束の内容はどういうものなんでしょうか。
  211. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) 「国の施策に留意しつつ、」というふうに書いてあるところが一番ひっかかるところじゃないかと思うのでありますが、私ども地方自治団体の自主性を拘束する気持ちは少しもございませんで、国がこういうふうに個人情報保護をする立法をいたします、ついては地方におきましてもそうした施策がとられることが望ましいという観点に立ちましてこのように書いておりますので、地方がああしてはいけないとかこうしろとかということを申すつもりはありません。
  212. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 そうすると、総務庁としては、一生懸命頑張ったけれども諸官庁からのいろんな押し合いへし合いの結果としてこういうふうになってしまった、だからこの法律規定に基づく国の施策に留意しろというのは、そういうことのないように総務庁でも一番最初の案を出したようなそういう方向もよく見定めてということで、この法案自体に準拠してというふうなお考えは全然ないということでよろしいんでしょうか。
  213. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) 私も地方が定めておられます条例を幾つか見ました。それからまた、今検討中の状況などについても、新聞報道等にも注意をして見ておるつもりであります。  その中には国が定めたものとかなり違った内容を持ったものもございますが、そういうものがいけないとかどうとかということを私どもは申すつもりはございませんで、これからお決めになるところでは迷っていらっしゃるところもあるでありましょう。そういうところについては、国はこういうものを定めることになりましたのでそうしたことも参考にしながらやっていただきたいということは申しますが、これに右へ倣えしてつくれなどと言うつもりはございません。
  214. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 この法文自体には関係ないことなんですが、また後日の、例えば審議会でも設置されたときに御検討していただくことの一つとして、政治家に関する個人情報に関しては何人も開示請求できるというふうな規定を入れることをお考えいただくということはどうなんだろうかという点なんです。政治家というのが非常に漠然としているならば、公職の候補者及びその選挙の当選者ということだけでもよろしいんですが。  ここで一つ御参考までに申し上げれば、政治家のプライバシーに関して一つの判例があります。御参考までに読んでおきますと「特に国会議員ないしその候補者については、他の一般公務員と異なり、その適否の判断には殆んど全人格的な判断を必要とする」こういう東京地裁の判決、そしてそれを最高裁がそのまま是認した判決がございます。要するに、言っていることは、国会議員ないしその候補者については国会議員としての適否の判断についてはほとんど全人格的な判断を必要とするんだということで、要するに政治家にはほとんどプライバシーは認められぬという判決。  それから、学者の見解も、公権力担当者はその地位を得た時点で国民の監視や責任追及に服することに同意したものと考えられる、だから公権力担当者についてはその名誉やプライバシーにまさるものとして国民の知る権利国民の監視権が位置づけられることを承認すべきである、こういうふうな学者の意見もあるわけなんです。  ですから、この法案個人情報についてその個人がどう開示請求するかということの規定ですけれども、政治家、国会議員ないし候補者に関する個人情報については日本国民はだれでも開示請求できるというふうな条項を入れることもお考えいただけるでしょうか。いかがでしょう。
  215. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) 国会議員のプライバシーということについては、これはもうプライバシーがないんだという意見もあることは私も承知いたしておりますが、それをどのような形で国民の前に明らかにするのかということについては国会で今後御議論をいただくべきことであろうと思いますので、私から今この場で意見を申し上げるのはいかがかなというふうに思います。  国会議員は国民の皆様方の前にみずからのことについてはいつでもすべてを明らかにできる公明正大さが必要であろうというふうには思いますが、半面、国会議員も一個人であるし、またその家族のプライバシーというものも当然のことながらあるわけでございます。その辺の兼ね合いを考えながら国会において御議論をいただき、お決めいただくことであろうと思います。
  216. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 最後に、この法案問題点の非常に多い法案ですので、条項的にこれが全部そのとおり是正されるかどうかは別にして、保有禁止条項の設置、事前通知の適用除外範囲の問題、情報収集方法の適法性それから開示請求権及び訂正請求権等の問題を含めて今後もますます個人情報は拡大し増大し高度化していく状況にあるわけですから、この法案の今後の見直しというか是正について、しつこいようですけれども、簡単に長官の御意見を伺って終わりにしたいと思います。
  217. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) 私どもは、今日まで十年余りの検討を経、またOECDのガイドライン等も踏まえまして、現在この法律はベストのものとしてお出しをしておるわけでございますが、国会におけるいろいろな御議論あるいはまた一般国民から寄せられております御意見等を踏まえまして、今後また真剣に検討を重ねてよりよきものにしていかなければならないというふうに考えておりますし、さらにまた、電算処理というのは非常な勢いで変貌を遂げていっておりますのでそれらにも適合するような形のものを考えなければならないことは当然であります。  院におかれましても五年後見直しというようなことについて非常に強い御意見があることも承知をしておりますので、それらも踏まえまして誠実に検討してまいりたいと思います。
  218. 吉川春子

    ○吉川春子君 まず、納税者番号制についてお伺いいたします。  不公平税制の是正、それから株式売却益、いわゆるキャピタルゲインの問題などから、こういう納税者番号制についてクローズアップされています。竹下総理も前向きに検討するという答弁をしておりますが、反面、国民の間にはプライバシー侵害のおそれがあるということで反対の声も大変強いわけです。  この問題を本法案との関連でお伺いしたいと思いますが、政府税調の納税者番号等検討小委員会が納税者番号の導入について十数回検討を重ねて近く制度の導入を是とする中間報告書を提出する見通しだと、このように報告されていますが、こういうことなんでしょうか。
  219. 尾原榮夫

    説明員(尾原榮夫君) ただいま先生から御指摘がございましたように、納税者番号制度につきましては、税制調査会の中期答申、本年の四月になされたものでございますが、そこでも検討する論点が多いということで今税制調査会に小委員会を設けられまして、そこで審議が行われているところでございます。  まだ審議の途中でございまして、どういうふうな報告が出るか我々待っているところでございまして、大蔵省としてはこうした税制調査会の検討結果を待ちまして適切に対処したいというふうに考えているところでございます。
  220. 吉川春子

    ○吉川春子君 近く中間報告書を出すということは間違いないんですね。
  221. 尾原榮夫

    説明員(尾原榮夫君) はい。近いうちに報告書が出されるものと承知しております。
  222. 吉川春子

    ○吉川春子君 それで、今検討を重ねておられるということですのでどういう検討をされているかということについてお伺いしたいんですけれども、それはどうでしょう。どういうことが検討されていますか。
  223. 尾原榮夫

    説明員(尾原榮夫君) 繰り返しになりますが、税制調査会の中期答申の中でいろんな論点が指摘されております。  例えば、専ら税務執行上だけの制度として考えてよいのかとかあるいはその対象として特定の資産性所得のみに限定していいのかとか制度の実効性はどうか、さらにはいろいろ懸念がございますプライバシーとの関係についてどう考えるかとかあるいは資金シフト等経済への影響についてどう考えるか、数々の論点について審議がなされているというふうに承知しております。
  224. 吉川春子

    ○吉川春子君 具体的にお伺いしたいと思いますけれども、番号をつける方法として年金番号が有力だ、こういう報道があるんですけれども、この点についてはどうでしょう。
  225. 尾原榮夫

    説明員(尾原榮夫君) その点につきましてはまだ審議がなされている段階でございますので、報告書ができ上がりました段階で考え方が明らかになるものと考えております。
  226. 吉川春子

    ○吉川春子君 もちろん結論はまだ出ていないんですけれども、こういうことも検討されているんですね。
  227. 尾原榮夫

    説明員(尾原榮夫君) 番号制度をどうするかというのも一つの検討課題と承知しております。
  228. 吉川春子

    ○吉川春子君 それで、仮に年金番号を使用するとすれば年金の個人情報ファイルを使用する、こういうことになりますね。
  229. 尾原榮夫

    説明員(尾原榮夫君) 現在審議中でございますのでお答えできる段階にはございませんが、番号制度の問題は、一般的に言いますれば税制調査会だけの話ではないのではないかというふうに考えております。
  230. 吉川春子

    ○吉川春子君 この納税者番号の制度を導入するとして、そういう基本的な方向だというふうに伺っていますが、その場合にどういうものが必要になるんでしょうか。  例えば氏名とか住所とか生年月日とかそういう種類のことですか。
  231. 尾原榮夫

    説明員(尾原榮夫君) ただいままさに納税者番号制度全般にわたり審議がなされているところでございますので、その結果を事務局も待っているところでございますので、その点についてのお答えは御容赦いただければというふうに思いますが。
  232. 吉川春子

    ○吉川春子君 検討中であるということを前提にして聞いているんで答えていただかなきゃならないんです。  まさか氏名が必要ないということはないでしょう。
  233. 尾原榮夫

    説明員(尾原榮夫君) 一般的に、納税者の方からは適正な申告をしていただくわけでございます。一般的に納税者番号制度といいますのは、そういう適正、公平な課税の実現のために所得の把握をどうするかというところから出てきている問題でございますから、仮に納税者番号制度を検討いたします場合には氏名の特定、つまり納税者の特定は必要であろうかというふうに存じます。
  234. 吉川春子

    ○吉川春子君 住所、生年月日、勤務先、年収、家族、こういうものはどうですか。
  235. 尾原榮夫

    説明員(尾原榮夫君) ただいま報告書を待っている段階でございまして、その具体的な点につきましては報告書で明らかにされるのではないかというふうに思っております。
  236. 吉川春子

    ○吉川春子君 今申し上げたのは最低のことで、それ以上にいろんな情報が必要になるんじゃないかと思うんですけれども、総務庁にお伺いいたしますが、例えば、厚生省保有の年金ファイルを大蔵省が納税者番号の制度を導入するということで用いるということは、仮定の話ですが、そういうふうになった場合に今審議していますこの法案においてそういうことは可能ですか。
  237. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) この法律案ではあくまでも個人情報保護ということを最重点に置いて考えておりますので、私どもといたしましては、積極的にそのような利用の仕方を推進するという考えは今のところまだ全く部内で検討しておるわけではありません。  もしそのようなことをされるということであれば適当な規制は必要なんだろうと思いますが、今のところ私どもとして積極的にその仲間になって検討するという考えを持っておりませんので、したがって今どうとかこうとかと言う段階にはまだなっていないというふうに申し上げる以外にないと思います。
  238. 吉川春子

    ○吉川春子君 年金のファイルを基本的に利用するという意味は納税者番号制を導入しようという立場に立てばあるわけですね。例えば国民皆年金で社会保険庁が二十歳以上の被保険者六千三百三十二万人の番号を所有しているわけですから、まさにこういうものを使うということが現実の問題になってくると思うんです。  それで、今、長官がそういうことになれば多少の規制は必要になるんじゃないかというふうにお答えになりましたが、基本的には今審議しているこの個人情報保護法案で厚生省の持っているそういうファイルを大蔵省が利用するということは可能ですよね、禁止してはいませんよね。
  239. 重富吉之助

    政府委員重富吉之助君) お答え申し上げます。  基本的には禁止されておりません。
  240. 吉川春子

    ○吉川春子君 そうしますと、これが具体的な問題になってきた場合に、無制限にそういうふうにもならないということであるとすれば、ぎりぎりのところどういう制限が設けられるんでしょうか。
  241. 重富吉之助

    政府委員重富吉之助君) これは仮のお答えでございますが、もし将来我が国におきまして納税者番号制が導入されるというようなことになった場合に、その具体的内容とか適用範囲さらには利用のされ方などというものがどのようになるか、税調の報告、またその後の検討を見ないとわかりませんけれども、そういうことがわかりますと利用規制等の必要性といいますか、さらには規制の方法といいますか、そういうものについて検討していかねばならぬ、そんなふうに考えております。
  242. 吉川春子

    ○吉川春子君 それは新たな立法が必要という意味ですか、それとも内部的な規則でいいのかあるいは政令というような形式になるのか、どういうことになるんですか。
  243. 重富吉之助

    政府委員重富吉之助君) 仮定の問題でございますので非常にお答えしにくいわけでございますけれども、私どもは、仮にその番号というものが税だけに限定して利用されるというような場合については所得税法等の税法において規制するというのが一つ方法として考えられる。  そのほかに、もし年金番号とかその他の行政の各分野で広く利用されるというようなものをお使いになるというようなことになりますと、一般法でございますこの個人情報保護法においてその規制等のあり方について検討することも必要ではないか、そんなふうに思っております。
  244. 吉川春子

    ○吉川春子君 大蔵省にお伺いいたしますが、今検討されているその内容なんですけれども、これはもちろん税だけに利用する、こういうことで検討が進んでいるわけですね。
  245. 尾原榮夫

    説明員(尾原榮夫君) 今まさにそういう点も一つの重要な論点でございますので、近々報告書が出るものと存じますので、それを我々も見守っている状況であるということをひとつ御理解いただきたいと思います。
  246. 吉川春子

    ○吉川春子君 そうすると、税以外のものにも適用されるような報告が出る可能性も否定しないということですか。
  247. 尾原榮夫

    説明員(尾原榮夫君) そういう考え方が出ることも否定できないと思います。
  248. 吉川春子

    ○吉川春子君 アメリカの制度を参考にするということが有力だという報道がありますが、アメリカでは社会保険、年金、税務、兵役、預金口座の開設に利用され、一九六二年から実施されて社会保険庁が管理しているということです。諸外国の例でも、幅広く適用されています。  したがって、最初は正確で迅速な税制という目的であっても国民総背番号制、こういうところに発展していかないということは否定できないわけです。そうなりますと、揺りかごから墓場まで、あらゆる個人情報の統合が可能になる。そしてまた、現にこの委員会の審議でも結合ということを否定されていないわけですから、そういう可能性というのも出てくるんじゃないか。  しかも、今、お答えではっきりしたように、この個人情報保護法案はそういう納税者番号制度導入によるプライバシーの侵害を十分に規制する機能というのは持っていない、こういうふうになるんじゃないですか。
  249. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) 国民総背番号制とかあるいは納税者番号制とかにつきまして、私ども今現在の時点で全く考えておるわけでございませんので、具体的な検討をしておりません。おりませんからただいまのことについて適切なお答えをする用意を持ち合わせておりませんが、仮にそのようなケースがあるとした場合には、やはりそれぞれの個別の個人権利利益をきちっと守る個別の規定というものを当然つけなければならないだろうと思います。  この個人情報保護法案は、いわば一般的な個人情報に対する保護規定であって、個々のそうした利用の仕方についてはまたさらにその必要に応じて個別の規制というものが加わるということはあり得ることであろうと思います。
  250. 吉川春子

    ○吉川春子君 大蔵省に伺いますが、報道によれば、プライバシー保護対策ということについては消極的なといいますかそういう論議も交わされているというふうに聞いていますが、小委員会でのプライバシーの検討あるいは大蔵省自身としてその納税者番号の導入についてやっぱりプライバシー保護ということを慎重に考えているのかどうか、いかがですか。
  251. 尾原榮夫

    説明員(尾原榮夫君) 先ほども申し上げましたが、申告納税のもとで適正、公平な課税を実現するためには、納税者の方などから所得の基礎となっております事実について税務署にお示ししていただくということがどうしても必要だと考えております。  新聞報道に載っておりますのも、その税務についての考え方といいましょうか、適正、公平な課税を実現するために税務当局は何が要求されるかということが恐らくプライバシーと関連して論じられたのではないかというふうに思っております。  なお、私ども税務調査などを考えてみますと、適正な公平な課税の実現、その限りでいろいろな情報の提示をお願いしているということは十分に認識しているわけでございます。
  252. 吉川春子

    ○吉川春子君 いわゆる目的外使用については、各番号を使って各行政機関収集した個人情報の交換に関しても税務当局が他の行政機関から情報を入手するのは認めるべきだ、こういう意見が多数を占めているとも書かれています。こういうことが事実ならば、プライバシー保護は税務事務に関しては問題にする必要はない、こういう乱暴なことになりかねないわけです。しかも、今審議しております個人情報保護に関する法律がそういうプライバシーの重大な侵害が行われる可能性も否定できない内容になっているということを私は指摘しておきたいと思います。  私たちはキャピタルゲイン課税等についての不公平是正については別に政策を発表していますのでここでは触れません。しかし、納税者番号制、ひいては国民総背番号制、こういう方向に向かって国民プライバシー権の侵害のおそれのあるような制度の導入には賛成できない、そのことを申し上げておきたいと思います。大蔵省、もう結構です。  続いて、民間分野の問題についてお伺いしたいと思います。  経企庁、お見えですね。  去る九月に国民生活審議会の消費者政策部会が民間部門の保有する個人情報の適切な保護のあり方について報告を出しています。この概要について簡単に御説明いただきたいと思います。
  253. 川名英子

    説明員(川名英子君) ことしの九月に国民生活審議会消費者政策部会で報告書が出されました。  その内容は、消費者取引適正化の観点から消費者取引にかかわる消費者保護のための法的規制を講ずる方向で考えるべきであるとしていますが、当面はこの報告に従いまして個人情報保護のあり方というその報告を踏まえまして、行政、事業者それから消費者が消費者保護のために具体的に対応していくことが必要であるとしています。  当庁としましても、この報告の指摘を踏まえまして立法化のためのコンセンサスを図っていく必要があるとしております。それとともに、この消費者取引における個人情報保護のために関係各省と連携をとって適切に対処していきたいと思っております。
  254. 吉川春子

    ○吉川春子君 報告によりますと、個人情報保護のあり方といたしまして幾つかの原則を示しています。  例えば、事業者はそもそも事業活動に必要のない個人情報収集すべきでなく、特に思想、信条、犯罪歴などのセンシティブ情報収集すべきでない、こういうふうになっておりますけれども、この考え方をとった理由はどういうところにあるんでしょうか。
  255. 川名英子

    説明員(川名英子君) これはもともと消費者に迷惑のかかるようなこと、トラブルの起こるようなことは消費者保護の立場からすべきではないということで、思想とか信条とか犯罪歴というのは登録されますと消費者のプライバシーを侵害されるおそれがありますので、これは収集すべきではないとしております。
  256. 吉川春子

    ○吉川春子君 そうしますと、これは原則的にそういうことは好ましくない、こういう基本的な考えを示されたものと思いますが、OECDの八原則あるいは憲法十三条の幸福追求の権利、そういうもので非常に必要な原則であると私も考えています。  それに続いて伺いますが、個人情報目的外使用それから本人同意の原則、こういうものも挙げられています。これらもやはり同じような理由ですか。
  257. 川名英子

    説明員(川名英子君) はい、同じでございます。  情報には、顧客情報信用情報というのがありまして、顧客情報につきましては目的以外に利用する場合には消費者に知らしめる必要があるとしておりますし、信用情報につきましても登録後直ちに通告することとし、それから目的外に使用することを禁止しております。
  258. 吉川春子

    ○吉川春子君 長官にお伺いいたしますが、私は今の経企庁の説明というのは非常にすっきりしていると思うんですね。  センシティブ情報は集めてはならない、目的外使用は禁止本人の同意の原則、こういうものが民間の保有する情報についてはっきり方針で示せるのに行政機関の方はいろいろいろいろおっしゃってそういうことが盛り込まれないあるいはその例外が物すごくたくさんある、こういうことについて大臣はいかがお考えでしょうか。
  259. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) 行政機関の場合と民間の場合とで規制の仕方がおのずから違ってくるのは当然のことだと私は思います。  今までも参考人方々からいろいろな御意見が出されておると思いますが、それは私もかなり弁護士会方々の御意見とか各界の方々の御意見を承っておりますのでかなり承知しておるつもりであります。  私自身このように整理をいたしてお答えをしておるつもりなんでありますが、それは、一つは、国の場合には一つの適法かつ公正な行政行為の結果として蓄積されたものが個人情報としてファイルされていくということでありますのに対しまして、民間のものはあくまでも民間の営業行為の一環として任意に行われるものであります。したがって、民間でそうした個人情報収集する場合におきましては、本来、当然のことながらあらかじめこうした個人情報ファイルを持っておるということについてその目的を明らかにして、仮に規制をするとすれば届け出をしてもらわなければならないし、目的外使用については当然禁止をする。あるいはまた、センシティブ情報なるものは民間において本来当然集積されるべきはずのものではございません。国の場合におきましては防衛とか治安とかあるいは外交とかそうした行政行為の過程においてそうしたものが入ってくることはやむを得ないところでありますが、民間の場合にはそのようなものは必要ないわけでありますから、当然のことながら禁止されてしかるべきであると考えます。  さらにまた、先刻来何回も申し上げておりますように、本人の同意ないし取り消し権というようなもの、消去、削除を要求する権利というものも当然認められてしかるべきである。でありますから、いわゆる国がやります場合と民間がやります場合では扱いには当然違いが出てくるということであります。  仮に私どもがそうした民間部門までこの法律で一本でやるということにすれば、それは委員のおっしゃるような部門はこの法律の中に入ってきたはずでありますが、民間部門は別でございますという前提に立って申し上げておりますので私どものような法律になったというふうに御理解いただきたい次第であります。
  260. 吉川春子

    ○吉川春子君 国家権力は悪いことはしない、民間は悪いことはしそうだ、こういうような考え方については私は承服しかねるわけです。  法務省にお伺いいたします。  最近、個人情報が漏れて被害をこうむった事例として民事、刑事それぞれの訴えが東京地裁に出されたと新聞で読みました。  刑事の方は、ある企業の元社員らが会社から顧客データを不正にコピーして持ち出したということで背任罪で告訴されたということです。データを持ち出すということを窃盗罪あるいは横領罪等で告訴していませんけれども、これは現行刑法では処罰する規定がない、こういうことですか。
  261. 東條伸一郎

    政府委員東條伸一郎君) 現在、我が国の刑法上、情報の不正入手それ自体を一般的に処罰する規定はございません。  ただ、委員御指摘のように、個人情報につきましてそれを不正に入手するその他いろいろな事例が出てきておりますが、それらにつきましては、それぞれの事案におきます情報の保管形態、どのような形で情報が保管されていたか、それから当該行為に関与いたしました行為者が一体どういう地位にあったのかあるいは行為の態様はどういう形で情報を持ち出したのかというようなことをいろいろ検討いたしまして、現行刑法上の例えば窃盗罪は、情報が一つの物の形でまとまっている場合に例えば外部の人がこっそり入ってきてその物自体を持ち出していってしまうという形で窃盗罪でありますとかあるいは内部の人間がそれを勝手に外へ持ち出した場合には横領罪というようなことにも相なる場合があると思いますし、それ以外で考えられるのは例えば背任罪のような成立がそれぞれ問題になりまして、そのようなことで処罰をした事例も過去数件ございます。
  262. 吉川春子

    ○吉川春子君 そうしますと、個人情報一般を保護して、そしてそういうものが侵害された場合には一律に刑事的な処分を受ける、こういうようなことは今の法体系の中ではちょっと難しいということでしょうか。
  263. 東條伸一郎

    政府委員東條伸一郎君) 先生の御指摘の問題は、情報の主体といいますか客体といいますか、ある個人について、その人についての情報が不正に利用されたという見地からですと……
  264. 吉川春子

    ○吉川春子君 そうです。
  265. 東條伸一郎

    政府委員東條伸一郎君) そういうところに絞ってまいりますと、現行刑法でわずかに規定がございますのは、例えば、一定の範囲の例えば弁護士さんですとか医師等が患者さんや依頼者から聞きました秘密本人の承諾なしに勝手に他に漏らしたという場合には秘密漏泄罪という罪がございますけれども、一般的にそういう形で処罰する規定はございません。
  266. 吉川春子

    ○吉川春子君 民事事件についてですけれども、これも先ほど木村参考人がおっしゃっていましたが、信託銀行に口座を開いたところ、ある建設会社にその情報が漏れた、でプライバシーが侵害された、こういう事件を扱っているというお話でしたけれども銀行などの金融機関個人信用情報等を無断で流したことに対してどういう救済措置があるんでしょうか。
  267. 寺田逸郎

    説明員(寺田逸郎君) ただいまお尋ねのございました事件そのものについて具体的にコメントをすることはやや難しいわけでございますけれども、一般論といたしまして、そのような個人情報が保管していた者から他に流れましてそのために損害を受けたという場合に民事上の救済はどうなされるべきかということについてお答え申し上げたいと思います。  その場合に、仮に損害が出たということになりますと、損害を与えた者といたしましては、本来、その情報を保管していた者、そのほかにその情報を保管していた者から他に取り出した者あるいはさらにこれを利用した者というふうに幾つか考えられます。で、民法の救済の体系のあり方から申しますと、それぞれこれらの者に対しまして不法行為上の責任というものを問うことが可能になります。  ただ、このような分野は一般的にプライバシーの侵害の一部と考えられているわけでございますけれどもプライバシーの侵害につきましては、いまだにどの範囲がプライバシーに属するかについて明確な保護の範囲というものが必ずしも他の不法行為の分野に比較いたしますと確立しているとは言いがたい状況にございます。したがいまして、個々の事実上、事実の要素その他それぞれの事件の特殊性というものを十分に考慮に入れた上で救済を考えざるを得ないという状況にございます。  なお、今私が申し上げましたのは不法行為一般の問題でございますけれども、仮に銀行との間に特別の約束があるというようなケースでございますと、その約束の相手方に対しては債務不履行上の責任を問うということも可能と存じます。
  268. 吉川春子

    ○吉川春子君 刑法でも一般的には処罰されない、民法上も財産的な損害あるいは慰謝料的な精神的な苦痛、そういうような場合がはっきり認定されれば不法行為による損害賠償あるいは契約不履行の損害賠償ということで救済できますけれども、やはりプライバシー侵害一般に対しての救済措置はなかなかないのではないかと私は思います。  そういう意味で今度の法案がそういうものに対する規定を欠いているということも一つの大きな欠陥ではないかということを指摘いたしまして、残り時間が少なくなりました。  最後に、土曜閉庁のこの法案について質問をいたします。法務省ありがとうございました。  人間らしい生活をするために、働き過ぎの現状を改めまして労働時間の短縮、週休二日制、こういうものを求める国民の声は大きな世論となっています。国際的にも先進資本主義諸国においては週休二日制が実施されておりまして、我が国の現状では週休二日制の普及率が一八・七%、隔週という変則的な週休二日制でさえ六四・九%にとどまっている、こういう点でも著しくおくれていると言わざるを得ません。  この法案は、行政機関の休日を法定化することによって第二、第四土曜日の閉庁により四週六休制を実施しようとするものであります。いろいろ不十分な点はありますけれども、公務員労働者の完全週休二日制の方向を目指すものであると考えますので、我が党はこの意味でこの法案には賛成の態度をとっています。ただ、土曜閉庁の政府の方針は、閣議で行政サービスを極力低下させないとしながら、現行の予算、定員の範囲内で実施するとしておりまして、その結果、国民へのサービスの低下、公務員労働者への労働強化は避けられない部門が出てくると言わなくてはなりません。  具体的に伺いますが、長官は、前回、人勧問題の審議の際の答弁で、四週六休については現在のところ支障なく本格実施という段階に入っておると報告を受けている、今後業務量の増加がある場合には六十四年度予算編成に対して各省庁からの要求が出るので、その点を踏まえて査定するとお答えになっておられます。  具体的に要求が出てきております現在、この土曜閉庁それから四週六休を国民生活へのサービスの低下をもたらさないようにやるためにも定員増の要求については積極的に査定すべきであると思いますが、いかがでしょうか。
  269. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) 今、委員おっしゃいましたように、私もこの委員会におきましてお答えを申し上げておりますのは、四週六休を現在実施いたしておりまして特段この点で支障があるという報告を今現在も受けておりません。むしろ、土曜閉庁をすることによりまして今半数交代勤務をしておりますのが出るときには全部出る、休むときには全部休むということになりますのでそれだけ事務能率も向上いたしますし、勤務のやり方としてもむしろ楽になるということでございますのでかえってやりやすくなるではないかという判断をしているところでございます。  なお、今お述べになりましたように、六十四年度につきましては各省庁の御要求等につきまして私ども十分その内容を精査いたしまして、これまた財政当局との相談もあるわけでありますけれども必要なものについては認めることにはやぶさかではないという判断をいたしておるところであります。
  270. 吉川春子

    ○吉川春子君 支障があるという報告を受けていないとおっしゃいますので、どこかパイプが詰まっているんじゃないかと私は想像いたします。  去る九月に東京小平にある国立精神・神経センターを私、視察してまいりました。病院当局、労働組合の双方と懇談も行いました。このセンターでは、外来患者はふえる傾向にあるそうです。社会復帰をした患者さんが勤務の都合上ウイークデーはなかなか来られない。それで、夜とかあるいは土曜日、こういうときに病院に参りますので夜間外来の必要性も高まっているということでした。現在、隔週木曜日に夜間外来を実施中でありますけれども、お医者さんや看護婦さんやケースワーカーたちはボランティアという形で行っているということです。まさに公的な病院こそ困難を背負ってやるべきだとそこの組合の人も言っておりましたけれども、しかし、国の本来行うべき医療機関としての役割を縮小した部分を例えば民間にゆだねるとかあるいは公務員労働者の労働強化その他のさまざまな負担増によって医療がようやく支えられているようなことがあるとすれば、それは大変好ましくないと思うんですね。  で、閣議で言われる行政サービスを極力低下させないということの意味は、民間への依存あるいは労働者への労働強化によって切り抜ける、こういう意味ではないと思いますが、どうでしょうか。
  271. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) ただいまお挙げになりました具体的な事例につきましては、これは厚生省に聞いてみませんと私の方では何とも申し上げようがないわけでありますが、全体として大きな減員を立てている中で国立病院・療養所等につきましては実質七千八百二十九人を今日までふやしてきておるわけでありまして、全体としてのふえる中におきましては国立学校と国立病院・療養所等については一番配慮をしておるというつもりでおるわけであります。
  272. 吉川春子

    ○吉川春子君 厚生省、お見えですか。  今厚生省に伺おうと思っていたんですが、四週六休の実施に伴い各地の医療機関において細かいところでのさまざまなサービスの低下が起きていると聞いています。例えば、看護婦さんが一人減ることによって、患者さんが期待しております散歩についていけなくなる、入浴回数が減るあるいは土曜日の外来の窓口を狭めざるを得ない。  こういうような医療機関というのは看護婦さんやお医者さん等によります各種のきめ細かいサービスが医療効果に大きく影響を及ぼすと思うんですけれども国民へのサービス低下といいますか、こういうような実態があるということをどの程度つかんでおられますか。
  273. 矢野朝水

    説明員(矢野朝水君) 国立病院・療養所におきます四週六休につきましては、いろいろ創意工夫をいたしまして実施しているわけでございます。そういう中で、私どもとしましては、全体として見ますと特に大きな支障は生じていない、こういう認識をしております。  ちなみに、この四週六休を実施します際に私どもは施設に通知を出しまして、こういう点に配慮して四週六休をやってほしいということで指示したわけですけれども、その中で、何か問題があれば地方医務局を通じまして上げてほしい、こういうことで指示しておるわけでございます。ことし四月に本格実施に入ったわけでございますけれども、これまでのところ、そういう問題ありということで特に施設から何も聞いておりません。  それから、先ほど例に出ました精神・神経センター、これは武蔵病院の例かと思いますけれども、特に四週六休につきまして問題があるというようなことは聞いておらないわけでございます。  ただ、土曜日の外来につきまして私どもは創意工夫の一環の一つといたしまして予約制の導入ということも考えておるわけでございます。そういう中でこの土曜日の予約制の導入に伴いまして患者がふえたのか減ったのか、こういうことも調べたわけでございますけれども、二百五十を超えるような病院・療養所があるわけでございますのでいろいろございまして、中にはかえってふえておる、こういうところもございます。ただ、全体として見ますとやはり減っているところが多いわけでございますけれども、こういった場合でも急患とかそれから初診の方はちゃんと引き受けるとかあるいは再診の方については病状等を考慮して診なければいけないときには診る、こういうことでいろいろ工夫してやっておりますので私はそう著しいサービスの低下は来しておらない、こういう判断をいたしております。
  274. 吉川春子

    ○吉川春子君 そのとき厚生省の方も同席していたんですよ。四週六休によって国民へのサービスの低下をもたらさない、そして労働者に対する労働強化もやっぱりあってはならないと思うわけです。  最後に要望いたしますけれども、政府は閉庁になった方が業務の効率化は図られるから時間短縮できる、こういうふうにおっしゃっていますけれども、私は法務省、職安、陸運局などを視察しましたけれども、いずれも労働者からの訴えは深刻なものでした。そういうことを聞いていないなどということは、私はちょっと調査が足りないと思います。先ほどの法務省の方も言っていたじゃないですか。土曜日の設計が難しい、人員がぎりぎりだというふうにおっしゃっていたわけです。定員削減のために絶対的な人員不足から来る慢性的なサービス残業とかあるいはさまざまな問題が起こって労働者も神経をすり減らしているわけです。  私は、衆議院で総定員法について第七次定削計画以降どうするか今検討している、こういう答弁も読みましたけれども、むしろ定員削減ではなくて定員をふやしてその四週六休制を本当に国民にとっても労働者自身にとっても実のあるものにするということを要望いたしまして質問を終わります。
  275. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 官房長官、お忙しいところまことに済みません。  竹下総理のこの国会の冒頭の所信表明演説で、私は代表質問もやったけれども、十回ぐらい読んできたんです。  第一にお聞きしたいのは「行財政改革と税制改革は、日本が新しい時代に向かって歩むために必要不可欠なものであり、まさに車の両輪に例えられるものであります。」それで後の方へいって「私は今後とも引き続き行財政改革を粘り強く進めていく決意であります。」とこういうふうに述べているんです。だけれども、竹下内閣になって具体的に行政改革で何をおやりになったんでしょうか。私は何もしていないと思うんだけれども、官房長官、いかがですか。
  276. 小渕恵三

    ○国務大臣(小渕恵三君) 行政改革は国政上の最重要課題の一つと位置づけまして、臨調、行革審答申を最大限に尊重しつつ随時具体策の推進を図ってきたところでございまして、その成果は着実に上がりつつあると認識をいたしております。今後ともいささかもその努力を後退させることがあってはならない、こう考えております。  そこで、今先生御指摘のように竹下内閣としての取り組みということでございますが、所信表明でも申し上げましたように、行財政改革、税制改革は車の両輪に例えられるものでございまして、現下、御案内のとおりにこの臨時国会も税制改革の最大の案件を抱えて御審議をちょうだいいたしておるところでございます。  そこで、行財政の改革につきましては、鈴木内閣以来大きな目標を設定いたしまして、御案内のとおり国鉄の分割・民営化、電電、専売公社の民営化等の実績を上げてまいったわけでございます。したがいまして、そうした目玉と称していいかどうかわかりませんけれども国民にもわかりやすい大きな改革は一応その成果を得たと考えておりますので、今後はきめ細かな対策を講じながら対処いたしていかなければならないと思っております。  その観点から、行財政改革の推進につきまして衆議院の税特委に提出をいたしたところでございますけれども、新行革審の「公的規制の緩和等に関する答申」が去る一日総理大臣に提出をされましたので、近く規制緩和推進要綱を決定いたしまして公的規制の緩和に積極的に取り組むなど行政改革の一層の推進を図ってまいりたいと思います。  おしかりをちょうだいいたしましたが、竹下内閣になりまして目につくような実績を上げておらないという御指摘は大変耳に痛いところではございまするけれども、申し上げましたように大きな改革が一応済んで、これからきめ細かなこうした答申に基づいた改革を着実に遂行いたしてまいりたいと思いますのでいま少しくお見守りをちょうだいいたしたい、このように考えております。
  277. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 官房長官、国鉄とか電電とかたばこは前の内閣がやったことで、それで今仕上げだといえばそれもわかるけれども、竹下内閣になってから今こういうものをやっているんです、どうですと。長官はきめ細かなと言われたけれども、大きなことがいっぱいまだ残っているわけです。行政改革は道半ばにしてというんですけれども、それを今私がここでもって言いなさいといっても官房長官も困ると思うからやめておきますけれども、そういう役人が書いた答弁文書を読んでいただいたのでは困りますということだけは言っておきたいと思うんです。  次にもう一つ、お忙しいからお聞きしておきたいのは、今ここでもって審議をしているこのプライバシー法案、これは重要法案として考えているんですか、それとも一般の並みの法案として考えているんですかということなんです。  といいますのは、これも総理の所信表明の中で触れているんですが、こういうことを言っているんですよ。「朝鮮半島情勢の安定化にとっても重要なソウル・オリンピックの成功に向けて協力を呼びかけてまいりました。」これも確かに一つの大事なポイントだと思います。しかし、ソウル・オリンピックというのはもう終わっちゃったし、この総理演説からわずか数カ月の間の問題なんです。それは所信表明演説で総理はしゃべっているんだけれども、これだけ国民にとって重要な影響力を持ったこのプライバシー法案我が国にとって初めてこの国会に出すわけだから歴史以来初めてと言ってもいいくらい、それも相当重要な要素をはらんだこの法案をこの国会で御審議をいただいてぜひ成立をさせていただきたいというのならば、せめて所信表明演説のときに少しぐらいそのことについて触れてしかるべきだと思うんだけれども全然触れていない。  そうすると、政府はこんなプライバシー法案なんかそれほど重要な法案じゃないからどうでもいいよと思っているんですかということなんです。
  278. 小渕恵三

    ○国務大臣(小渕恵三君) 全くそのように考えておるはずはございませんで、御審議を願っておるこの法案行政に対する信頼を確保するためのいわば行政改革の一つとして極めて重要な法案と考えておるわけでございます。  施政方針あるいは所信表明の演説等で具体的にその法案名を列記いたしておらないということは御指摘のとおりでございますが、であるがゆえに決してこの法案の重要性を低く評価していることは全くございません。ぜひこの法律案を通していただきまして、国民生活にとっても極めて重要な法案でございますので一日も早く執行のできるようによろしくお願い申し上げる次第でございます。
  279. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 じゃ、官房長官、このプライバシー法案は政府にとっては重要法案として扱い、考えているというように判断していいんですか。
  280. 小渕恵三

    ○国務大臣(小渕恵三君) 政府で提出さしていただいております法案はいずれも重要な法案でございまして、私どもといたしましては、特にこの法案につきましては、申し上げましたようにある意味では行政改革の一環でもあるという見地から考えましてもぜひ一日も早い施行をお願いを申し上げておるところでございます。
  281. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 官房長官お忙しいですからもう結構です。ありがとうございました。また時間があるときにいろいろお聞きしたいと思います。  あと総務庁にお聞きをしていくんですが、コンピューターがどんどん広がっていくことによって事故も結構起きてきているわけです。コンピューターによる事故というものはかなり大きいことはおわかりだと思うんです。ですから、言うならば不正に悪用して社会的に被害を与えるようなそういうことについてこの法律でもってこれからやっていくんだけれども、そういう事故の起きないようにする対策は講じられているのかどうなのか、その辺はいかがでしょう。
  282. 重富吉之助

    政府委員重富吉之助君) お答えを申し上げます。  現在までのところについてまず申し上げますと、昭和五十一年一月二十九日に事務次官等会議の申し合わせというのをつくりました。それは電子計算機処理データ保護管理準則というものでございますけれども、この準則に基づきまして今まではデータ管理組織、磁気ファイル管理、電子計算機の操作等の管理、電子計算機室の保安管理等について所要の規定を定めておりまして、それに基づきまして各省庁、保安管理、事故対策等について努めてきたわけでございます。  ただ、今回、この法案におきまして第五条で安全確保の義務をデータの保有者たる各行政機関の長に課したわけでございますが、私どもは、従来の保護管理準則といいますのが管理的な保護措置が中心であったわけでございますけれども、先生御指摘のとおり、コンピューター等の技術革新が大変急速でございましていろいろと問題が起きておる、例えばハッカー等の問題が起きておる。そういうこともございますので、今後は、私どもとしましては技術的な保護措置、例えばアクセスの制限とか暗号等を使うそういうこと、それから物理的な保護措置、施設とか設備とかそういったものについての基準、ガイドラインをより充足いたしまして先生御指摘のような事故等が起こらないように万全の措置を講じたい、こんなふうに考えております。
  283. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 次には、きょうの委員会でもってこの法案を議了することになると思うんです。そういう形になってこの法案が成立したら、いろいろ具体的にどういうふうにこれを実施していくかということについてプログラムをお持ちだと思うんです。言うならば、いかに国民に不安を与えないで、結果的には国民にとってもメリット、プラスがありいいことなんだということで実施に入るのでなければいかぬことでもって、そういう点についてどうお考えになっているか。  前回も申し上げましたように、これは行政機関のためのものではなくて国民のためのプライバシー保護法案なんだから、その点はどういうふうにプログラムをおつくりになるとお考えになっているわけですか。
  284. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) 本法の施行期日につきましては、公布の日から一年以内ということになっておるわけであります。開示、訂正については、開示請求手続、手数料の決定、窓口の整備等の必要性から、公布の日から二年以内ということにされておるところであります。  全く新しい制度でございますので政省令、ガイドラインの作成、ファイルの公示の準備、制度の周知徹底等が必要でありますので一年近くこの準備にかかると思われます。また、開示、訂正に係る部分については二年近くの準備を要するものと考えておりますが、ただいま御指摘のように、国民権利利益保護という観点からできるだけ早く施行できるように努力したいと考えております。
  285. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 まだお聞きしたいことはあるんですけれども、もう一つのこの統計法の方で少し質問してまいります。  第一は、四条でもって今度は「政府が本邦に居住している者として政令で定める者について行う人口に関する全数調査」と言っているわけですけれども、このいわゆる国勢調査というものも、やはりプライバシーという点から考えたときに、こういうことを調べられたんでは困るとかなんだとかといっていろいろ問題が起きるんですけれども、その辺をどういうふうにお考えになっているかです。
  286. 田中宏樹

    政府委員(田中宏樹君) 統計法の改正をお願いしましたのは、一つは、現在の統計法では指定統計のみ、いわゆる国勢統計等を中心にしました重要な統計でございますが、これだけは秘密保護規定もございますし目的外使用の規制もございますが、その他届出統計あるいは承認統計等につきましては今まではそういう規定はかぶさっていなかったわけでございます。こういう欠落部分を、今回の個人情報保護法では統計に関する調査につきましては一括して適用除外になっておりますので、これとの関連でこれら秘密保護につきましてはなお十全の措置をとりたい、こういう趣旨で改正をお願いしているわけでございます。
  287. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 もうちょっとお聞きするんだけれども、給料を幾らぐらいもらっていますかなんて入っていないやね。社会的な地位というかどういう職業についているかは入っている、それから役職の地位みたいなのも書き込まれるようになっている。その辺のそういう生活状況とか知られたくないようなことであっても、それが国勢調査をやる上については必要であり、そのことが結果的には役に立つんだというならばいいけれども、余り事細かくやっていって国民が嫌がるようなことは、もしどうしてもやるのなら調査員の方が見れないように封でもしちゃって出すとかなんとかその辺について、まだすぐことしやるわけではないんだから、どういうお考えを持っているかです。
  288. 田中宏樹

    政府委員(田中宏樹君) 国勢統計の調査項目でございますけれども、十年ごとに行われます大規模な方の調査項目は二十二項目、その中間に行います簡易調査では十七項目というふうに決められております。  調査項目の中身でございますが、国内の人口における自然的属性、例えば年齢、性別等、社会的属性、例えば配偶関係とか教育等でございます。経済的属性、例えば就業状況、産業等でございますが、等の人口に関する基本的な事項に限られておりまして、国や地方公共団体におきます行政施策の基礎資料を得るために必要不可欠なものに絞っておるつもりでございます。  国情も違いますし社会構造も違いますので国際的に単純な比較はできませんが、ちょっと主なところだけ申し上げますと、それらに比べても項目数としては少ない国の一つでございまして、例えばオーストラリア一九八一年で三十八項目、カナダ一九八一年で四十六項目、フランス一九八二年で三十項目、イタリア一九八一年で二十六項目、イギリスが一九八一年で我が国と同じ二十二項目、アメリカ一九八〇年で七十二項目というふうになっておりますので、できるだけ必要最小限に絞らさしていただいているというふうに理解しております。
  289. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 必要なものは国勢調査は大事な調査だからやらなきゃいかぬと思うけれども、やっぱり国民に不安を与えないようにしなくちゃいかぬと思うんです。  それで、そういう点は配慮をしていただいて、それからさっき言った第四条のところでもう一度聞いておかなければと思うのは、今度「本邦に居住している者として」とこうしているでしょう。そうすると、日本の国の中にいる者はいわば外国人もみんな調べましょうということなんだけれども、従来は、短期の場合にはどこかへ行っておっても居住地でもって申告するようになっていたはずなんです。  そうすると、今度は、外国へ行っている者は全部カットするというそういう意味ですか。
  290. 田中宏樹

    政府委員(田中宏樹君) 今回の改正でも「本邦に居住している者」というふうにしておりまして、先生おっしゃるように、短期に海外に出かけておる者は三月以内の旅行でありますればこちらでカウントをするという形でございまして、これは前回どおり別に変わりはございません。
  291. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 わかりました。  じゃ、三カ月以内というのは国内であってもそうだし、どこへ行っていてもそういう短期の場合は現住所かそこでもって申告しなさいということね。  それから、これもずっと見ていて気がついたので事前に申し上げておかなかったんですが頭がいいから御答弁をいただけると思うんだけれども、十九条の罰則のところをちょっと見ていただきたいんです。  ここで言っていることは、言うならば申告を命ぜられた者が申告をしなかったとか虚偽の申告をしたとかそういうふうな、国民の側の方がその決められたことを守らなかったときは六カ月以下の懲役または十万円以下の罰金。それから、十九条の二の方へいくと調査をする側の者がその知り得た秘密を漏えいした、なにしたというのは一年以下の懲役または十万円以下の罰金。  調査員の方は今までのやつをいろいろ見ますから、各自の生活状態もみんなわかっちゃうわけだ。だから、それをしゃべられちゃいけないから、漏らしたらある程度罪にしなくちゃいかぬ。しかし、その漏らした方が一年以下で申告をしなかった方が六カ月というのは、バランス上からいくならば国民の側に随分過酷な罪を着せるんだなと思うけれども、そこはどうなんですか。
  292. 田中宏樹

    政府委員(田中宏樹君) 今回の改正につきましては罰金の額を改定したことだけでございまして、六カ月と一年というのは従来どおりでございますが、調査をする側につきましてはより厳重にという趣旨でこういう差ができているんだろうというふうに理解しております。
  293. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 いや、私が申し上げたいのは、国勢調査というのは、国家としていろいろの経済活動なりなんなりの上でもって必要な統計を集めたいという形でやるわけでしょう。  そういう点からいって、今も言うように、調査員の人たちが回って紙を集めていくんですからみんな見るわけだ。それで落ちていたらそこに書き込ませにゃいかぬですから、どうしても見るわけなんです。そうすると、それぞれの家庭の生活状態までわかっちゃう。だから、それを漏らしちゃいかぬ、漏らしたらおまえさん一年以下の懲役だぞ、十万円以下の罰金だぞ、これは私はいいと言うんだ。  しかし、国民の側からいけば、わしは国勢調査をやってくれなんて何も頼んだ覚えもない。だからそういう点からいって私から言わせれば、調査員が漏らしたのが一年で済むならば、国民の方が申告しなかったあるいは何をしたというなら少し罰金ぐらいはいいけれども、懲役とはいささか過酷じゃないですか。  いろいろの世論調査をやったってそうでしょう。一〇〇%集まる世論調査なんてありゃせぬですからね。それと同類に、国がやる国勢調査を見ちゃいかぬけれども、その辺について今度は五千円を十万円に上げただけなんだけれども、私から言わせれば、従来にしても調査員の罪と申告をさぼった国民の罪とのバランスというものは国民の側にこんな重い罪を科すなんというのは過酷ですよ。  その辺、今どうこうせいとは言わぬけれども機会を見て検討なさったらと言うんですが、どうでしょうか。
  294. 田中宏樹

    政府委員(田中宏樹君) 指定統計につきましては国民に申告の義務を課してございますので、これの最終的な担保ではございますが、実際にこの罰則を適用してぎゅうぎゅうやるというようなことは実際上起こり得ませんで、あくまでも国民の理解と協力、自主的申告ということにポイントを置いて運用をしておりますし、これまでもそういうことでやってまいりました。  お考えとしてはよく理解できるんでございますが、最終的な担保ということだけで御理解を賜りたいというふうに考えます。
  295. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 今の答弁を信用しましょう。  そういうことだと思うのよ。国民の側から頼んでそんなものをやってくれなんて言って、人口が一億二千万おろうが六千方おろうがそんなこと関係ないんだから。自分の生活が、それ相応の収入もあり、そして生活環境がよくて愉快な生活ができりゃいいんである、だから、国家としてこういうものは国際的にもどこでもやっているように必要だから調査をする、調査をする以上は正確なデータが必要だからかなり細かいことをやるわけですから。これは、言うならば、だから政府の都合でやるんだから、今答弁なさったそういう考え方を生かして実際にやっていただきたいということをお願いしておきます。  それと同時に、これは皆さん方がおつくりになったんじゃないかと思うんですが、こういうのをどう思います。これ。(資料を示す)  いや、これは答弁は要らない。  委員長には見せておかなきゃいかぬ。国勢調査員が最敬礼して、そうして国勢調査員を命じている。あれをもらいに行くわけです。  ここに今のお役所のお役人的感覚が出ている。国勢調査員をお願いしなくちゃいかぬのだから、これは逆なわけだよ。いろいろ御苦労かけるが調査員をやってください。そのかわりあなた方、知り得た秘密は漏らしちゃいけませんよと言って、逆になって頼まにゃ。そういうところに政府のお役所的な感覚があるからこういうものをつくっちゃう。
  296. 田中宏樹

    政府委員(田中宏樹君) 御指摘の図表を見さしていただきましたけれども、これには「国政調査員ヲ命ス 大正九年七月二十日」という日付が入っておりまして、大正時代のことを絵にしたものでございまして、現在は先生も御指摘のとおりの姿勢で、調査員もお願いしてやっているところでございますので御理解を賜りたいと思います。  なお、絵柄は今後注意をいたします。
  297. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 今の答弁を信用して、私の質問を終わります。
  298. 大城眞順

    委員長大城眞順君) 他に御発言もなければ、四案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  299. 大城眞順

    委員長大城眞順君) 御異議ないと認めます。     ─────────────
  300. 大城眞順

    委員長大城眞順君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、岡野裕君が委員辞任され、その補欠として木宮和彦君が選任されました。     ─────────────
  301. 大城眞順

    委員長大城眞順君) 行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案の修正について古川君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。吉川春子君。
  302. 吉川春子

    ○吉川春子君 私は、日本共産党を代表して、内閣提出行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案に対する修正案を提出いたします。その内容は、お手元に配付されております案文のとおりでございます。  これより、その提案理由と内容の概要を御説明申し上げます。  今日、日本社会において国民プライバシー保護はますます重要な課題になっています。  プライバシー権は、憲法上、幸福追求の権利として最大の尊重を必要とするとされています。  現在、高度に情報化された社会の到来によって、収集された大量の個人情報コンピューターによる保有、処理が可能となり、知らないうちに行政機関民間業者に自分の情報利用されるなどプライバシーの侵害の危険が一層大きくなっています。したがって、私生活への国家権力の介入を許さない一人にしておいてもらう権利としてのみならず、自分の情報を自分でコントロールする権利としてのプライバシー権を保障することが焦眉の課題となっています。  警備、公安をつかさどる行政機関による盗聴やスパイ行為など基本的人権に対する侵害から国民を守るためにも立法化が必要です。  ところが、政府提出案は、保護対象行政機関保有の電算機処理個人情報に限り、また各所に例外規定を設けており、国民権利保護とはほど遠い内容になっています。さらに、個人情報収集について制限規定を設けておらず、その結果、思想、信条、宗教など基本的人権にかかわる個人情報収集、保存、利用や公権力による不当、不法な個人情報収集に法的根拠を与えることになり、逆に国民プライバシーを危うくする内容になっています。  我が党は、国家権力の私生活への介入を禁じ、かつ、自分の情報は自分がコントロールするというプライバシー権を保障し、個人情報保護の諸原則を確立するため、政府提出法案の欠陥を抜本的に正す立場から修正案を提出するものです。  次に、修正案の概要を申し上げます。  第一は、法の目的を「プライバシー権利の侵害を防止すること」とし、この権利が日本国憲法の保障する基本的人権であることを明記し、個人情報保護するために必要な基本的事項を定めることとしております。また、法律の名称も目的にふさわしく「個人情報保護に関する法律」に改めます。  第二は、プライバシーの侵害の防止を実効あるものとするために、規制対象に国の行政機関地方公共団体、特殊法人のみならず、個人情報を取り扱う民間業者及びその委託を受けて個人情報収集する者を含めております。また、コンピューター処理個人情報は、もちろん手作業のものを含むすべての個人情報対象としております。  第三は、不法または不当な方法で個人情報収集してはならないこととし、警察、公安調査庁等が盗聴、スパイ行為によって個人情報収集することを禁止しています。さらに、思想、信条、宗教及び社会的身分に関する事項など基本的人権にかかわる内容の個人情報収集禁止しています。  職業及び経歴、犯罪歴、身体的特徴及び健康状態、取引、所得及び財産などの個人情報については個人別に検索し、抽出することを目的とした個人情報ファイルを保有することを原則として禁止しています。  第四は、個人情報を当該個人の知らないところで収集利用提供されることを防ぐため本人の同意を得なければならないこととし、また、個人情報の保有の目的外使用を禁じています。  第五は、個人情報を保有している行政機関個人情報取扱業者等に対し、その記録正確性の確認、同意を得ずに収集されたものかどうかなどを知るため、自分に関する情報の開示を請求することができることとし、記録が不正確であったり誤っている場合、訂正及び補正を請求することができることとしました。不法、不当な手段で収集された個人情報については、当該記録の廃棄を請求できることとしています。  なお、開示請求権を十分に機能させるため、軍事、外交を含め個人情報ファイルの公示の例外を認めておりません。  第六は、国民プライバシー保護する機関として、プライバシー保護委員会を設置することとしています。  委員会は民主的に構成運営され、会議は公開を原則とします。また、必要な調査、勧告、研究、報告を行い、さらに、個人情報取扱業者の所有する個人情報に関する訴えの審査及び監督を行います。  最後に、国民プライバシー保護を実効あるものにするために、行政機関職員及び個人情報取扱業者が、この法律で禁じられた個人情報収集した場合及び個人情報目的外に利用しまたは提供し公表した場合の罰則と損害賠償の規定を設けています。  以上が修正案の提案理由とその概要であります。  委員各位の御賛同をいただき、速やかに可決されますよう要望いたしまして、修正案の趣旨説明を終わります。
  303. 大城眞順

    委員長大城眞順君) これより四案並びに修正案について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。久保田真苗君。
  304. 久保田真苗

    久保田真苗君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、ただいま議題となりました行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案に反対、統計法及び統計報告調整法の一部を改正する法律案に対して賛成の討論を行うものであります。  まず、行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案に対する反対の討論を行います。  我が国憲法第十三条は、個人の尊厳を保障し、他人がみだりに個人の私的事柄についての情報を取得することや、他人が自己の知っている個人の私的事柄をみだりに第三者へ公表したり利用することは許されないとしているのであります。  そして高度情報化社会への進展が著しい現在、プライバシー権は、人に知られたくない権利からさらに積極的に自己に関する情報の流れを自分でコントロールする自己情報コントロール権というのが国際的に共通した認識であります。  ところが、本法律案は、表向きは個人情報保護をうたいながら、実はこうした基本的人権でもあるプライバシー権を保護するどころか、行政庁による自由勝手な個人情報管理目的としており、断じて認めるわけにはいかないのであります。  以下、反対の理由を申し述べます。  反対理由の第一は、本法律案には、プライバシー保護原則で最も重要な収集制限規定が明記されていないことであります。  行政機関は、思想、信条及び宗教といったセンシティブな情報、さらには社会的差別の原因となる社会的身分に関する個人情報など個人の尊厳に関する基本的事項及び基本的人権の中核をなしかつ多数原理によって侵すことのできない不可侵的権利に関する事項についての個人情報は、適正かつ公正な手段で、しかも本人の同意を得なければ収集してはならないのであり、なかんずく思想、信条、宗教といったいわゆるセンシティブな情報は、収集自体行ってはならないのであります。  このことは、プライバシー保護の大原則であり、OECD理事会の勧告のガイドラインにおいても明記されているのであります。  にもかかわらず、本法律案には最も重要な原則である収集制限原則規定されておらず、プライバシー保護からは大きく後退しており、欠陥法律と言わざるを得ません。  第二は、本法律案には適用除外規定が余りにも多く、個人情報ファイル行政庁の都合によって国民の前から秘密にされる危険性があるという点であります。  個人情報ファイルの事前通知、公示、利用提供制限また開示請求は、自分の情報を自分の知らないところでだれかが収集、保有していないかを確かめ、それが間違っていれば訂正したりあるいは廃棄させるという個人情報保護原則に立脚したものであります。  しかし、政府は、国の安全、外交上の秘密に関する事前通知の適用除外、公共の安全や秩序維持に関する公示の適用除外、さらには教育、医療分野等に対する開示請求の適用除外といった規定を設け、個人情報ファイル国民の前から秘密にしようとしております。  政府は、二重、三重の適用除外を設け、主権者である国民から個人情報ファイルを隠そうとする意図は何か、また、どれだけの情報を隠せば気が済むのでしょうか。  第三は、個人情報の安全及び正確性の確保に疑問がある点であります。  電子計算機処理による個人情報が適切に管理されていなければ、不正確なまた不完全な個人情報利用あるいは提供されたり、個人情報が漏えいしたり滅失すれば、個人にとって大変な不利益をもたらすことは火を見るより明らかでありますが、しかし、今やデータベースへの侵入等のコンピューター犯罪、さらには間違ってブラックリストに記載されたために信用を受けられないといった信用情報などによる経済活動の妨害が多発しているのが我が国現実なのではありませんか。  しかるに、本法律案第五条では、行政機関の長は、安全確保措置を講ずるよう努めなければならないと、個人情報の安全及び正確性の確保についてはただ単に努力義務となっており、本法律案では具体的な保護対策が講じられるとは到底考えられず、個人情報の安全及び正確性の確保に欠陥があると言っても過言ではありません。  かつて、行政管理庁に設置されていたいわゆる加藤委員会報告書には、訂正権を認め「個人情報正確性及び安全性の確保に努める必要がある」と指摘していたにもかかわらず、本法律案には不正確なまた不完全な個人情報に対しての訂正権をも認めていない点を政府は猛省すべきであります。  第四は、本法律案の中に非常に抽象的であいまいな表現が随所に見られ、本法律案運用に当たっての統一性、斉一性が図られていない点であります。  例えば、第四条の「個人情報ファイルの保有」の問題については「必要な場合に限り、」とのみ規定されており、一体どこまで可能なのか不明であります。さらには、第七条第二項では「個人情報ファイル簿の作成及び閲覧」は「事務の適正な遂行を著しく阻害するおそれがあると認めるとき」とこれまた抽象的な表現になっており、本法律案の運用が各省庁ばらばらになる危険性をはらんでいるのであります。  加えて、第七条あるいは第九条第二項の「処理情報本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められるとき」といった表現が随所に出てくるのであります。  こうした抽象的表現の多い本法律案では、個人情報保護するための統一性、斉一性を維持することができないばかりか、実効性を確保することもできないでありましょう。  日本社会党・護憲共同は、本法律案の内容がデータ管理法でしかないことに失望し、国民プライバシーを真に保護する法律が早急に必要であることを強調して本法律案に反対いたします。  次に、統計法及び統計報告調整法の一部を改正する法律案でありますが、改正内容はおおむね妥当なものと考え、賛成するものであります。  以上で私の個人情報関係法案に対する討論を終わります。
  305. 名尾良孝

    ○名尾良孝君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案並びに統計法及び統計報告調整法の一部を改正する法律案の原案に賛成し、日本共産党提出の修正案に反対の討論を行うものであります。  近年、行政機関等における個人情報の電子計算機による処理の急速な拡大は、行政運営の効率化、行政サービスの向上に大きく寄与しているのでありますが、反面、従来の手作業による処理には見られない電子計算機処理の特性から、国民に不安感を与えあるいは個人権利利益の侵害のおそれが指摘され、新しい制度的な対応が重要な課題となっているところであります。  申し上げるまでもなく、電子計算機による処理は、いわゆるマニュアル作業には見られない際立った特徴を有していることに加え、個人情報行政運営の基盤として利用され、全国民の生活に直接関係を持つものでありまして、第二臨調を初め各方面からその保護対策の必要性が提言されていたのであります。  今回、行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の取り扱いに関して新たに立法化されたことは極めて画期的であり、時宜にかなったものであります。私は、この行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案を作成された政府の努力に対し、高く評価をいたしております。  この法律案は、OECD理事会の勧告の基本ラインを踏まえて作成されており、この法律制定によって自己に関する情報がみだりに他人に知らされるのではないかという国民の不安感が解消され、また、開示請求権、訂正の申し出によって国が保有している自己情報を知ることができ、さらには誤った情報に基づく不利益を受けるおそれが少なくなるなど国民にとって大きな利益を得ると思うのであります。  一方、個人情報コンピューターによる処理が統一的に規定され、行政に対する信頼性が一層確保されるとともに、行政サービスの向上、行政の効率化が期待されるところでもあります。  また、統計法及び統計報告調整法の一部を改正する法律案は、統計審議会の答申に基づき、統計行政の円滑な運営に資するため、統計調査に係る秘密保護を図ろうとするものでありまして、このことは被調査者の統計調査に対する信頼の確保に通じ、妥当な措置であります。  なお、日本共産党提出の行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案に対する修正案は、全体として現実的ではなく、行政の果たす重要な役割を考慮しないものであり、国民全体の利益を考慮した場合、これに賛意を表することはできず、反対の意向を示すものであります。  政府は、今後とも、我が国における高度情報化社会、国民の自己情報に関する意識、行政情報の保有、利用のあり方等状況の急激な変化に対応して、これらの法律が常に時代に適合するよう必要な措置を講じられることを要望して私の討論を終わります。
  306. 吉川春子

    ○吉川春子君 私は、日本共産党を代表して、内閣提出行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案に対する反対討論を行います。  今日、行政機関民間企業の保有する個人情報は膨大な量となり、かつこれによるプライバシー侵害事件も多数発生し社会問題にさえなっており、一刻も早く国民を守る法的措置が求められています。本法案の提案理由説明でもプライバシー権を含む個人権利利益保護をうたっているにもかかわらず国民権利利益保護するものとはなっておらず、国民プライバシー保護に資する法律とは到底言えない内容となっています。  以下、具体的に反対理由を述べます。  第一に、本法案対象行政機関の保有する電算機処理に係る個人情報に限定されており、手処理個人情報は除かれ、また民間企業の保有する膨大な個人情報もその対象から外された結果、国民の私生活に介入されない権利は脅かされ続けることになるのです。  第二の理由は、国の安全、外交上の秘密、その他国の重大な利益に関する事項などについては、個人情報ファイルの存在そのものを秘密にして、国民の目から隠し、巨大なブラックボックスを合法的につくれるということであります。この秘密にできるファイルは、警察、自衛隊関係など広範囲に及び、国家機密法制定に口実を与えることにもなりかねず、到底容認することはできません。  第三の理由は、個人の思想、信条、宗教など基本的人権にかかわる情報収集や不当、不法な手段による個人情報収集、保有を禁止する規定を全く欠いていることであります。  特に警備公安関係機関による市民団体、労働組合などに対する監視、盗聴やスパイ行為は、世論の大きな批判を浴びています。我が党の緒方国際部長宅盗聴事件、最近発覚した共産党本部のビデオカメラでの盗み撮り事件は、プライバシー権を保障すべき責任がある政府みずから国民プライバシー権を侵害するという事件であります。これは、行政機関法律を遵守するから個人情報収集制限規定は不必要であると繰り返し答弁されている総務庁の主張が全く説得力を持たないことを事実で示しています。個人情報収集制限規定を設けない本法案は、国家権力による思想調査や盗聴、スパイ行為などを放置する危険性をはらんでいます。  高鳥総務庁長官は、本法案プライバシー権そのものを保護する法律ではない、しかし本法案プライバシーは国の保有する個人情報について的確に保護すべきだという考え方に立ったものと述べておられます。国がこの時期に至ってもプライバシー保護法制定しないということ自体責任は重大でありますが、さらに国の保有する電算機処理個人情報に限ってみても本法は憲法のプライバシー権の保護にはほど遠いものです。  本法案を撤回し、個人情報保護する基本的原則を盛り込んだ真の個人情報保護法案が提出されるべきであることを指摘し、私の反対討論を終わります。
  307. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました両法律案の原案に対し賛成、日本共産党提出の修正案に対し反対の討論を行うものであります。  我が党は、行政は本来国民のためのものであるとの立場から、これまでも必要な改革には積極的に協力し、相当の成果を上げてまいりましたが、行政情報の公開問題等臨調答申でも指摘されている行政に対する信頼性の確保を図るための重要施策は、残念ながら積み残されてきていると思うものであります。  今回提出された行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案は、電子計算機処理に係る個人情報の取り扱いに関する基本的事項を定める新たな立法であり、国民プライバシー侵害に対してようやく不十分ながら法律による規制を行おうとするもので、従来全く野放し同様であったことと比べ、若干の進歩を認めることができ、これに賛成するものであります。  しかしながら、本案は、国民のための行政観点から見ますと、まだまだ不十分と言わざるを得ません。  特に、次の三点について留意すべきであります。  その第一は、行政機関個人情報収集する場合は、法律で定められた所掌事務の範囲内で、かつ特定の行政目的に必要最小限のものに限り適正かつ公正な方法で、かつ原則として本人の同意を得て行うべきものであります。  第二に、個人情報目的利用及び外部提供の問題であります。  政府は行政情報システム化を推進しておりますが、システム化は、確かに行政の簡素化、効率化を図り、国民の負担を軽減するメリットがありますが、反面、個人に関する情報がひとり歩きする危険があります。届け出、申請等で国民が自己に関する情報提供するのは、一定の行政目的のためであります。にもかかわらず、国民提供するときに予期しない事柄のために個人情報利用されることは、国民の不安感を増大するだけではなく、行政に対する国民の信頼感を破ることとなってしまうのであります。  第三に、開示の問題であります。  個人に関する情報は、本来、その個人自身の尊厳に関するものであり、本人にはすべての情報を開示するという原則は堅持しなければなりません。  また、コンピューターウイルスによるデータの改ざんや破壊等によって非公開の個人情報が誤ったものとなる危険があり、誤った情報によって個人権利利益の侵害されることは防止しなければなりません。個人情報正確性を確保するためには、本人が確認することが最も有効であり、そのため開示する範囲をできるだけ拡大するように常に見直すとともに、訂正等の申し出があったときはそれを最大限尊重するようにすべきであります。  次に、統計法及び統計報告調整法の一部を改正する法律案は、個人情報保護法案に関連して、指定統計調査以外の統計調査についても秘密保護を図ろうとする妥当なもので、賛成するものでありますが、今後の統計行政は、中長期的構想に立ち国民のための統計づくりに引き続き努力されるように要望いたします。  最後に、政府に対し強調しておきたいことがあります。  それは、今回の法案行政に対する信頼性の確保のための改革の手始めにすぎないことであります。  まず、プライバシー保護の面から言えば、行政部門ではマニュアル処理に対する保護が欠落しております。また、膨大な個人情報を保有する民間部門については、法的規制がほぼ野放しの状態であります。今回の立法を契機として、国民プライバシー保護のために早急に対策を講ずるべきであります。  さらに重要なことは、行政情報の公開問題であります。  プライバシー保護情報公開は、行政に対する信頼性の確保のための基礎であります。特に情報公開の方が重要であります。しかし、臨調の最終答申から五年以上も経過しながら、情報公開問題に対する政府の対応は牛歩以上に遅いとの感がぬぐえません。  我が党は、国民のための行政改革には積極的に協力し、また努力を傾けてまいりました。政府においても、二十一世紀に向け国民のための行政を推進するため、新たな制度改革に一層努力されることを強く要望して、私の賛成討論を終わります。
  308. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となりましたいわゆるプライバシー保護法案に対して、修正案に反対、原案に賛成の討論を行います。  このプライバシー保護については、OECDにおいても保護原則を勧告しており、サミット参加国で制定されていないのは日本とイタリアだけであるというのですから、この際、法を制定することについては賛成するものであります。  しかし、この法案の内容では、その運用いかんによっては大きな問題も発生することになるのであり、したがって、運用面では次の諸点について十分留意されるよう強く望むものであります。  第一に、このプライバシー保護法案は、行政機関のために制定するのではなく、国民プライバシー保護するのが目的であり、そのことを認識し徹底させることによって、国民が安心できるよう何らかの方法をとること。  第二として、政府、行政機関は、収集された個人情報について、その秘密保持と目的以外に利用されないよう、各省庁地方行政機関に対して厳重に徹底させること。  第三として、行政機関個人情報収集して保管する以上は、本人から開示の請求があった場合は、その要求に応じて速やかに開示をすること。  第四として、行政機関が保有する個人情報が誤っていた場合は、個人にとっては重大なことであり、その場合、本人から訂正の請求があった場合速やかに訂正すること。  第五として、この法案は初めて制定する法律であり、国民が不安を持っていることも事実であり、大臣も不備な点は修正すると答弁しているのでありますから、制定後五年以内に必ず見直し、手直しをすること。  政府は、以上の意見を十分尊重して、国民が安心できるよう心して運用されるよう要望し、賛成討論を終わります。
  309. 大城眞順

    委員長大城眞順君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  310. 大城眞順

    委員長大城眞順君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案について採決を行います。  まず、吉川君提出の修正案について採決を行います。  本修正案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  311. 大城眞順

    委員長大城眞順君) 少数と認めます。よって、吉川君提出の修正案は否決されました。  それでは、次に原案全部の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  312. 大城眞順

    委員長大城眞順君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  久保田君から発言を求められておりますので、これを許します。久保田真苗君。
  313. 久保田真苗

    久保田真苗君 私は、ただいま可決されました行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・国民連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、行政機関における情報化の進展にかんがみ、電子計算機処理に係る個人情報保護の一層の充実を図るため、次の事項について適切な措置を講ずべきである。  一、総務庁は、高度情報化の進展に伴うOA機器の多様化、性能向上、急速な普及に対応して、適宜に電子計算機処理の範囲について見直しを行うこと。また、マニュアル処理に係る個人情報保護についても別途検討すること。  一、思想、信条、宗教、病気及び健康状態、犯罪の容疑、判決及び刑の執行、社会的差別の原因となる社会的身分に関する個人情報収集・保有に当たっては、ファイル保有目的を厳密に特定するとともに、可能な限り法律その他の法令等によって収集根拠を明確にし、その利用提供安全確保に特段の配慮を加えることによって、個人権利・利益を損なうことのないよう万全を期すこと。  一、行政機関は、個人情報収集に際して、収集目的収集の根拠、収集に応ずる義務の有無等をできるかぎり明らかにすること。   また、行政機関は、法律の定める事務遂行に必要な限度で、かつ、収集することに相当の理由がある場合を除き、みだりに第三者から個人情報収集することのないよう努めること。  一、総務庁は、行政機関個人情報ファイル利用及び提供するに当たっては、そのファイルが使用に供される事務目的を達成するため必要な限度において利用提供し、処理情報本人等の利益を不当に侵害する利用提供が行われないよう、明確な基準を設定すること。   また、個人情報ファイル保有機関は、目的利用提供先等については、その利用提供状況の記録を保管するよう努めること。  一、総務庁は、個人情報ファイルの保有等に関する事前通知の適用除外となるファイル、及び個人情報ファイル簿に掲載されない個人情報ファイルファイル数、記録範囲、適用除外の根拠等を可能な限り的確に把握し、みだりにその範囲が拡大されることのないよう、必要な措置を講ずること。  一、特殊法人については、保有する個人情報ファイル数、データ量が多いことにかんがみ、早急に必要な措置を講ずるよう指導すること。  一、開示請求権が認められない教育、医療関係個人情報に関して、情報の性質上その開示については特別の配慮の必要性を踏まえつつ、国民の意識の変化に対応した制度の在り方について、別途検討すること。  一、個人情報の安全性確保、個人情報ファイルの保有等に関する事前通知、個人情報ファイル簿作成、処理情報利用及び提供処理情報の開示等に関して、政府部内の統一性・斉一性を維持し、規制等の実効性を確保するために、総務庁は可能な限り明確なガイドラインを作成すること。   また、個人情報収集、保有、利用提供により個人権利利益を不当に損なうことのないよう、総務庁は保有機関による本法運用の実態調査等によって十分把握し、所要の実効ある措置を講ずるよう努めること。  一、情報化社会の進展に伴う各般の影響等を踏まえつつ個人情報保護の推進を図るため、学識経験者等により保護法施行に関する基本的な事項等を調査・審議する場を設けること。  一、政府は、総合調整機能の充実を図り、本法の趣旨及び運用実態等の国民への周知のため、毎年度、報告書を作成し、個人情報保護に対する国民の意識向上と参加を促進して、本法の実効性の確保を期すること。  一、個人情報保護対策は、国の行政機関等の公的部門のみならず、民間部門にも必要な共通課題となっている現状にかんがみ、政府は早急に検討を進めること。  一、我が国の高度情報化、国民の自己情報に関する意識、行政情報の保有・利用の在り方等、状況の急激な変化にかんがみ、五年以内に本法の必要な見直しを行うこと。  右決議する。  以上でございます。  何とぞ御賛同いただきますようお願いいたします。
  314. 大城眞順

    委員長大城眞順君) ただいま久保田君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  315. 大城眞順

    委員長大城眞順君) 多数と認めます。よって、久保田君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  次に、統計法及び統計報告調整法の一部を改正する法律案について採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  316. 大城眞順

    委員長大城眞順君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、行政機関の休日に関する法律案について採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  317. 大城眞順

    委員長大城眞順君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、一般職職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案について採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  318. 大城眞順

    委員長大城眞順君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  永野君から発言を求められておりますので、これを許します。永野茂門君。
  319. 永野茂門

    ○永野茂門君 私は、ただいま可決されました一般職職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・国民連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     一般職職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   社会経済情勢の変化等に伴い、労働時間短縮・週休二日制の実現が緊急かつ重要な国民的課題となっていることにかんがみ、公務員についても、その積極的な推進を図るため、政府並びに人事院は、次の事項について速やかに適切な措置を講ずべきである。  一、病院、学校等においても、土曜閉庁方式による四週六休制の早期実施に努めること。  一、土曜閉庁方式による完全週休二日制を早期に実施できるよう、計画的な条件整備に努めること。  一、土曜閉庁方式の実施に当たっては、その趣旨について国民の理解を十分得るよう配慮するとともに、行政サービスを極力低下させないよう各般の努力を行うこと。  一、年次休暇の完全取得の促進、超過勤務の縮減、休暇制度の拡充等により、年間総労働時間の短縮に努めること。  右決議する。  以上でございます。  何とぞ御賛同いただきますようお願いいたします。
  320. 大城眞順

    委員長大城眞順君) ただいま永野君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  321. 大城眞順

    委員長大城眞順君) 全会一致と認めます。よって、永野君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの両決議に対し、高鳥総務庁長官から発言を求められておりますので、この際、これを許します。高鳥総務庁長官
  322. 高鳥修

    ○国務大臣(高鳥修君) ただいまの行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案に対する附帯決議及び一般職職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきましては、政府といたしまして、今後とも検討し努力してまいりたいと存じます。  特に、行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案に対する附帯決議のうち、本法の五年以内の必要な見直しを行うことについては誠意を持って対処してまいりたいと存じます。
  323. 大城眞順

    委員長大城眞順君) なお、四案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  324. 大城眞順

    委員長大城眞順君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時三十三分散会