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1988-10-13 第113回国会 参議院 内閣委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十月十三日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  十月十二日     辞任         補欠選任      久保田真苗君     山口 哲夫君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         大城 眞順君     理 事                 板垣  正君                 名尾 良孝君     委 員                 大島 友治君                 大浜 方栄君                 岡田  広君                 亀長 友義君                 古賀雷四郎君                 桧垣徳太郎君                 小野  明君                 野田  哲君                 山口 哲夫君                 飯田 忠雄君                 峯山 昭範君                 吉川 春子君                 柳澤 錬造君    国務大臣        外 務 大 臣  宇野 宗佑君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  田澤 吉郎君    政府委員        内閣官房内閣安        全保障室長        兼内閣総理大臣        官房安全保障室        長        佐々 淳行君        内閣法制局第一        部長       大出 峻郎君        防衛庁参事官   小野寺龍二君        防衛庁参事官   福渡  靖君        防衛庁参事官   村田 直昭君        防衛庁参事官   鈴木 輝雄君        防衛庁長官官房        長        依田 智治君        防衛庁防衛局長  日吉  章君        防衛庁教育訓練        局長       長谷川 宏君        防衛庁人事局長  児玉 良雄君        防衛庁経理局長  藤井 一夫君        防衛庁装備局長  山本 雅司君        防衛施設庁長官  池田 久克君        防衛施設庁総務        部長       弘法堂 忠君        防衛施設庁施設        部長       鈴木  杲君        外務省北米局長  有馬 龍夫君        外務省欧亜局長  都甲 岳洋君        外務省条約局長  斉藤 邦彦君        外務省情報調査        局長       山下新太郎君    事務局側        常任委員会専門        員        原   度君    説明員        外務省北米局外        務参事官     時野谷 敦君        建設省建設経済        局建設業課長   村瀬 興一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案(第百十二回国会内閣提出、第百十三回国会衆議院送付)     ─────────────
  2. 大城眞順

    委員長大城眞順君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨十二日、久保田真苗君が委員を辞任され、その補欠として山口哲夫君が選任されました。     ─────────────
  3. 大城眞順

    委員長大城眞順君) 防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 峯山昭範

    峯山昭範君 きょうは官房長官のお時間の都合もあるそうでございますので、質問の順番を多少変えて質問させていただきたいと思っております。  私は、きょうは特に防衛庁長官には初めて質問をさせていただきます。そういうふうな意味も含めまして、初めに非核原則の問題についてお伺いをしておきたいと思います。  先般の竹下総理の国連の軍縮総会におきます演説でも、日本非核原則を国是としている、そういうような意味の御発言もあったわけでありますが、この非核原則に対する防衛庁長官官房長官のお考え質問の初めにお伺いしておきたいと思います。
  5. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 御承知のように、我が国防衛は、平和憲法を尊重して専守防衛に徹する、他国に脅威を与えない、与えるような軍事大国にならない、シビリアンコントロールを確立する、そして非核原則を守るということが基本的な考え方でございますので、将来ともこの考え方を貫いてまいりたい、かように考えております。
  6. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 非核原則歴代内閣によっても堅持されてきたことでございますし、今先生指摘のように、竹下内閣におきましても引き続いて今後とも堅持してまいることは当然のことでございます。
  7. 峯山昭範

    峯山昭範君 この非核原則の中の特に持ち込みの問題がやはり大きな問題になってきておると思いますし、国民もこの問題について大きな不信を持っているわけであります。  そういうような意味で、ここでまず、先般から何回か問題になっておりますイージス艦バンカーヒルとそれから駆逐艦ファイフの問題についてぜひともお伺いをしたいと思うのであります。  この二つの戦艦が横須賀母港とするということで今回配備されたわけでございますが、これの戦略的意義につきましては、防衛庁としてはどういうふうにこの問題を分析していらっしゃるかという点がまず第一点。それからもう一つは、この横須賀母港化に対しまして米側からはどういうふうな説明がなされているのか、この二点についてお伺いしておきたいと思います。
  8. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) 委員承知のとおり、最近におきましても極東アジアにおけるソ連軍の増強というのは続いております。それから、活動も依然として活発でございます。そういう状況のもとで、米国としては、抑止力を強化するという立場から第七艦隊艦船を近代的なものに置きかえているということとその一環といたしましてバンカーヒルファイフというような新鋭艦をこの第七艦隊極東に配備したということと見ております。
  9. 峯山昭範

    峯山昭範君 抑止力向上ということが中心でございますか。
  10. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) そのとおりでござい ます。
  11. 峯山昭範

    峯山昭範君 そこで、この両鑑はトマホークを積載することができるというふうに私ども聞いているわけでございますが、いわゆる通常型のトマホークが搭載されている、こういうふうに理解してよろしいんでしょうか。
  12. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) バンカーヒルファイフも、いずれもがトマホークを搭載する能力を有しているということは存じておりますけれども、そのことと実際にこれを搭載しているか否かというのは別のことでございまして、一般的に申して、米国政府は個々の艦船装備の内容について論ずることはいたしませんので、これが何を積んでいるかということは、今、先生の仰せになられました、これが通常トマホーク弾頭を積んでおるのかどうかということについては承知いたしておりません。
  13. 峯山昭範

    峯山昭範君 ですから、核、非核は別にいたしまして、別にしてというより非核のいわゆる通常型のトマホークを積載しているかいないかということもわからないんですか。
  14. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) さようでございます。
  15. 峯山昭範

    峯山昭範君 私は、そこら辺のところは非常に大きな問題だと思うんです。  米軍米国政策として核を積んでいるか積んでいないかということを明らかにしないということは米国政策としてわかっている。また、事前協議がなかったから要するに積んでいないであろうと政府がしょっちゅう言っているわけでございますが、実際問題として、通常型のトマホークを搭載しているかどうか、そこら辺のところも確認はできないんですか。当然そこら辺のところは確認すべきである、私はそう思うんですけれどもね。
  16. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) これは繰り返し政府が申していることでございますけれども、一般的に申しますと、米国は、その艦船に積んでいる武装について論じないということに加えまして、トマホークミサイル搭載能力を有している艦船、それは能力を有しているということと実際に積んでいるか否かということとは別であるというふうに申しているわけで、それを明らかにしていないということでございます。
  17. 峯山昭範

    峯山昭範君 それじゃ、トマホークそのものを積んでいるかどうかということを見分ける能力というのは日本にはあるんですか。
  18. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) そのような技術的能力我が国政府にあるかどうか私は存じません。
  19. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは防衛庁どうですか、わかりますか。外務省でも結構ですが、今、外務省ですね。  その技術があるか。トマホークそのものを積んでいるかどうか、そういうことを例えば米側から、いやどうぞ調べてください、こういうふうに言われたときにそれを調べる能力はないんですか、日本には。わからないの。
  20. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) 米国艦船につきまして、外から見て実際にいかなるミサイルを中に積んでいるかということは確認することはできません。
  21. 峯山昭範

    峯山昭範君 いやそんな、これは、大臣、初歩的な質問でございまして、トマホークそのものを積んでいるかどうかということもわからない。  私が聞きたいのは、本当は、トマホークは積んでいるけれども、その中の核か非核であるかということを見分けることができるかどうかということを私は聞きたいんです。その前段階の、トマホークを積んでいるかどうか見分ける能力があるかないかという、そんなことまでわからないの。そういうこともまたここで明らかにできないの。
  22. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 私ども、具体的にはバンカーヒルあるいはファイフがいわゆる垂直発射装置というものを有していることは承知いたしております。この垂直発射装置と申しますのは、ただ単にトマホークだけではなくてその他のものをも発射する能力があるということまでは承知いたしておりますけれども、実際にトマホークミサイルというものがその鑑の中に搭載されているか否かということを承知していないということでございます。  それから、先ほどの、それではその艦船に乗って見ててくれというようなことになりますと、それはその形を見てということでございましょうが、それはやはり専門的な知識のある方が判断されることであろうと存じます。
  23. 峯山昭範

    峯山昭範君 ですから、実際問題としてそのトマホークを見分ける能力がある人がいるんですか、日本には。いないの。
  24. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) 実際にそのトマホークミサイルを見れば、それがトマホークであるということはわかるかと思います。
  25. 峯山昭範

    峯山昭範君 ですから、トマホークを見ればと言うたって、これはトマホークですよと言われないとわからないの。どういうことなの、見せてもらえばということなの。
  26. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) トマホークミサイル、そのミサイルの実際を見ればそれがいかなるミサイルであるかということを見分ける能力は有しておるわけであります。そういう意味でございます。
  27. 峯山昭範

    峯山昭範君 もう一つ先質問をしておきましょう。  トマホークが積んであってそれが核であるか非核であるかを見分ける能力はあるんですか。  ちゃんと答弁してもらいたいけれども、これはソ連ゲラシモフ外務省情報局長記者会見でおっしゃっていることの中に、要するに、このトマホークの核と非核の識別については「試みとして核弾頭通常弾頭のSLCMをそれぞれ積んだ艦船二隻をソ連側に(距離をおいてでも)みせれば、まったく手を触れることなしにどちらが核で、どちらが非核かすぐピタリと当ててみせる」と。その後もあるんですけれども、向こう人たちはそういういろんな面で技術的にも勉強しておるわけですよ。  日本には、現実にこれは核で、核を積んでいる積んでいないということがぴしっと判断できる人はいないんですか、これはどうなんですか。
  28. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) ただいま委員指摘ゲラシモフ氏の発言につきましては、我々が米国から聞いておりますところでは、米国はそういう可能性について否定いたしております。外から見まして鑑が核を積んでおるかどうかを判定することは不可能であると。ですからこそ現在の交渉において依然として査察についての解決が見られていないという状況でございます。
  29. 峯山昭範

    峯山昭範君 あなたはソ連のゲラシモブさんの話を私がたまたま引いたからそれは否定しているけれども、向こうは知っていると言うてんねん。知らぬと言うてんのと違う。知っていると言うてんねん、ここは。どないして見分けるかあなたはゲラシモフさんに聞いたんじゃないんでしょう。だから日本はどうなんだと。そういう人はいないのかね。
  30. 鈴木輝雄

    政府委員鈴木輝雄君) 私ども、先ほど官房長官大臣から御答弁いたしましたように、非核原則を守りまして核装備研究開発はしておりませんので、一般文献等では承知しておりますが、核装備、核を搭載いたしましたミサイル外側から見ましただけで実際に核物質が中に含まれているかどうか、そういうところまで判別する技術といいますか、そういう研究は特段やっておりません。
  31. 峯山昭範

    峯山昭範君 だから、結局はこのトマホークを積んでいるかどうかということも、あるいはそのトマホークに核がついておるかどうかということも、現在の時点でわかる人はいないわけだ、日本には。そういうことですね。
  32. 鈴木輝雄

    政府委員鈴木輝雄君) 外側からはそうでございますが、中をあげまして核物質であるかどうかを吟味するということになりますと、それはできるかと思います。
  33. 峯山昭範

    峯山昭範君 当たり前でしょう、そんなことは。  これは非常に大事な問題でありまして、実際問題、検証する場合に、いや積んでいるよ、積んで いないよ、それじゃ検証しようかといっても、わからないというんじゃどうしようもない。そこら辺のところはもうちょっと私はいろんな面で研究する必要があるんじゃないかなと思っております。  それから、これは外務省でも防衛庁でも結構ですが、このトマホークというのは今の二隻の船には積載していると言われているわけですよね、一般的に。このトマホークというのはどの程度射程で、どの程度能力を持っているのか、また弾頭を積んでいるとすれば通常どんなものを積んでいると言われているのか、これを御説明いただきたい。
  34. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) トマホークにつきましては三種類ございまして、対地攻撃ミサイルが二種類、そのうちの片方が核弾頭でございまして、もう一つの方が通常弾頭でございます。  その核弾頭つきトマホークミサイルについては、大体二千五百キロメーターぐらいの射程というふうに言われております。それから、通常弾頭になりますと千百キロメーター程度というふうに言われております。  それから、第三番目のトマホークは対艦ミサイルでございまして、これは四百五十キロメーター程度射程承知いたしております。
  35. 峯山昭範

    峯山昭範君 私の資料でもこの核弾頭つきのものについては射程が二千五百から三千キロ、こういうふうになっております。相当の能力を持ったトマホークを積載しているんではないかと言われているわけです。  そこで、これは外務省に一遍お伺いしておきたいんですが、こういうふうなものを母港化するというようなときには、これは事前協議とは別に安保条約の第四条に基づく随時協議といいましょうか、こういうようなのは当然申し入れをしまして、その意図とか目的とかいろんなものを協議するというのが通常なんじゃないかなと私は思うんですけれども、その随時協議を提起したということは聞いていないわけでございますが、その提起しなかった理由等も含めまして御説明いただきたいと思います。  先ほど抑止力向上のためというようなお話もございましたけれども、そこら辺のところは、日本国民立場からしますと、通常こういうふうなトマホークが積載されているんではないかと一般的に思われているわけですね。そういうふうな艦船日本横須賀母港とするということについては事前協議はなかったけれどもやはりあの船には核を積んでいるんじゃないか、そういう不安というのはあるわけですよ。それを解消するためにも政府随時協議なりなんなりしかるべき不安解消のための努力をすべきだと私は思うんですけれども、ここら辺のところを一遍御説明いただきたいと思います。
  36. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) まず、母港化ということでございますが、それにお答えいたしましてから四条協議についてお答えいたしたいと思います。  いわゆる母港化と申しますと、その第七艦隊に属しております十隻の鑑舶のうちの二隻がことし横須賀を去りまして、それのかわりとしてこのバンカーヒルファイフが、それらの家族を横須賀に居住させたい、海外居住計画と申しますけれども、横須賀に居住させたいということで参ったわけでございます。それにつきましては、ファイフについてはたしか去年の九月だったと思います。バンカーヒルにつきましてはことしの一月、それぞれ発表がございましたが、発表に先立って事前日本政府にも通報がございました。これは、安保条約地位協定上、何ら問題のないことでございます。  それから、今回、二隻の前に当たっていわゆる随時協議を行ったかどうかということでございますけれども、私どもは、先生がおっしゃられましたように、まさにいわゆる持ち込みということがなされる場合には事前協議が行われるというきちっとした条約上の枠組みがあるわけでございまして、これが行われていない以上、核の持ち込みはないということを確信いたしておりますので、今回、通常安保条約地位協定関連の条項に基づいてこの二隻の船がやっているということで対処した、こういう次第でございます。
  37. 峯山昭範

    峯山昭範君 私は、官房長官、そこら辺のところは従来の考え方だけでは解決できない問題がある。  バンカーヒルファイフの今回の母港化に対しまして、地元の長洲知事から、これは県民の不安が非常に深い、そういうような意味政府としても一歩踏み込んだ対応を国に求めたい、そういうふうな意味申し入れをしておられますね。これに対して政府としては何らかの対応をすべきだ、私はこういうふうに思うんですけれども、そこら辺のところは、これは官房長官、どういうふうになっていますでしょうかね。
  38. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 長洲知事外務大臣のところに八月の末にお見えになられまして、今先生がおっしゃられた趣旨のことを申されております。その際、外務大臣からは日本政府立場、これは先ほど私がその趣旨を申し上げましたので繰り返しませんけれども、それを篤と話されて、そのような疑念があるのは残念であるけれども、日本政府立場は以上のような次第であるから何とぞ御理解いただきたいということをお伝えした経緯がございます。
  39. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 私のところにも実は同様の要請を持ち越した党もございましたが、そのときも、今北米局長が答弁申し上げましたように、従来から政府としては、安保条約上、鑑船によるものも含め核兵器の持ち込みが行われる場合はすべて事前協議の対象となり、また核持ち込みについては、事前協議が行われた場合、政府としては常にこれを拒否する考え方であるという旨を申し述べ、従来からの考え方に基づいて対処するということで御答弁申し上げておるところでございます。
  40. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは、おっしゃることはわからぬでもないんですけれども、非核原則の中の核持ち込みに対する国民の不安といいましょうか、疑惑といいましょうか、これはもう現在まで積もり積もっているわけですよね。そういうような意味では、従来のいわゆる形式的な硬直した考え方では説明し切れない、国民の不安を解消し切れないと言っても私は過言じゃないと思うんです。  そういうふうな意味で、官房長官、これは逆にちょっと質問いたしますが、国民核持ち込みに対してやっぱり大きな疑惑を持っているんではないかという事実は、これは認めますか。
  41. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) そうした主張をなす国民もおりますが、片や政府が一貫して堅持をしております非核原則につきまして、このことに信頼を寄せている国民も多数おるものと理解しております。
  42. 峯山昭範

    峯山昭範君 官房長官ね。そのとおり、官房長官の言うことを否定するつもりはありません。核持ち込みに不安を持っている人たちもたくさんいるだろうし、また政府が言うとおり持ち込まれていないとお考えの方もたくさんいらっしゃるでしょう。  しかしながら、今までたくさん世論調査があるんです。これはもう私の手元にいろんな新聞社世論調査やいろんなものがいっぱい出ています。そのいろんな世論調査のどれを見ましても、日本には核が持ち込まれている、いるんではないかという疑惑を持っている人が常に大体七割近くですね。三割でもたくさんですから官房長官の言うとおりたくさんでしょうが、持ち込まれていないと思っていらっしゃる方もおる。しかしながら、その疑惑に相当不安を持ち不信を持っていらっしゃる方はたくさんいらっしゃる。初めは五割、六割だったのが、最近はだんだんふえてもう七割を過ぎている。  そこで、これは政府、総理府でも世論調査の機関を持っているわけです。小冊子が毎月出ているわけです。そんな中で、それじゃ政府としては、この非核原則の中の核持ち込みに対する疑惑、核が持ち込まれているんじゃないかと国民が非常 に不安を持っているその点について、政府として一遍調査してみますか。私は、核が持ち込まれているんじゃないかと不安を持っている人がたくさんいる、こう言っているわけですが、官房長官は、いやそれはない、アメリカが言うように政府信頼して持ち込まれていないと思っている人もたくさんいるとおっしゃっているわけです。これは一遍調査してみた方がいいですよ、官房長官国民官房長官の言うとおりか我々の言うとおりか、これは一遍調べてみる値打ちがあるし、また将来のためにもこの不安解消のためにも政府のとるべき道というのが明らかになるんじゃないかと私は思うんですけれども、そういう点を含めましてどうですか。
  43. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 核持ち込みについて国民の中にそうした不安を持たれる方がなしとしないということを申し上げておりまして、その数を調査したことはもちろんありません。しかしながら、世論調査をもってその存否について明らかにすることはこれまたなし得ないことでございますので、この際は、従来から日米安保条約基本的根本理念、すなわち相互の信頼に基づいて行われておることでございますので、政府としては、この三原則を堅持し、このことについて国民の御信頼を得たい、こういうふうに思っております。
  44. 峯山昭範

    峯山昭範君 長官安保条約につきましてはうちの党も事情がいろいろあれこれありまして、私も安保条約そのものはそれなりの評価をしているわけです。それだけに非常に心配をしているわけです。要するに、現在のような状況が続きますと国民政府に対する不信感も高まりますし、と同時に安保体制そのものに対する理解も失われていくんじゃないか、私はそういうような意味で非常に心配をしておるわけです。そういうふうな意味では、これは、そうおっしゃいましたが、非常に大事な問題ですから、もう一遍各新聞社世論調査の数字を全部申し上げてもいいんですが、事実この核持ち込みに対する不安というのがふえているのは事実です。その世論調査を信じる信じないは別にいたしまして、実際そういうデータが出ております。ですから、長洲知事がこういうふうに一歩踏み込んだ対応をと言うのもやむを得ないと私は思うんです。  そこら辺のところは、政府としてもただ従来からの、アメリカ信頼してだけではなくて、当然また信頼もなければいかぬと思うんですが、その上に立って、さらに何らかの方法がないかということを考えることも大事じゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  45. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 民主政治におきましては世論調査というものを通じて民意の動向を把握することは、これは至極当然のことだというふうに理解いたしております。  しかし、本問題につきましては、基本的にはこの核の持ち込みありなしについては、安保条約の存在、この条約によってアメリカ側を信頼するか否かということに帰着するわけでございます。日本政府としては、この条約に基づいてアメリカ側の対応についてはこれを信頼することから出発いたしておることでございますので、私どもとしては、政府の方針について十分アメリカ側もこのことを承知しておりますし、高度な判断もそれぞれ最高レベルにおいていたしておることでございますので、政府のこの方針につきまして国民により一層理解を求めるべくあらゆる手法を通じて努力をいたしていきたい、そして安保条約の持つその意味が十分達せられるように努力をいたしていきたい、このように考えております。
  46. 峯山昭範

    峯山昭範君 御存じのとおり、我が国は世界で唯一の被爆国であります。そういうような我が国の過去のいろんな経験の上に立ちまして非核原則というこの国是ができ上がってきたわけです。そういうような意味で、核兵器を嫌う国民の気持ちというのは、これはもう世界でも一番強い国じゃないかと私は思っております。  そういうふうに考えますと、米国のいわゆる核抑止上の政策である個別の核の存在は肯定も否定もしないというふうな考え方は、これはアメリカの軍事戦略上のそれなりの政策ですからわからないわけではないんですけれども、我が国としては核兵器に対する厳格な考え方をもう一回考え直す時期に来ているのじゃないか、こう私は思います。  それから、アメリカのいわゆる核の存在に対する現在の政策というのは、いろんな新聞報道なんかでも見ておりましても、将来はいずれは見直さざるを得なくなる、私はそういうふうに判断をいたしております。  例えば、官房長官はいろいろおっしゃいますが、我が国政府考え方に立てば、アメリカの核の存在に対する政策というのは既にもう破綻しておるわけですね。  何でかというと、先ほどおっしゃったように、日本に来ておる船には要するに核を積んでないんでしょう。どこに積んでいるか積んでいないか、あるかないかというのは明らかにしないと言いながら、要するに日本に来ている船には積んでいないでしょうと日本は信じておるわけでしょう。ということは、明らかに積んでないんでしょう。積んでおることはあるんですか。積んでないんですな、これは。ということは、検証の問題がありますよ。だから初めに聞いたわけですが、それはあるにしても、本当に積んでないということになれば、これは、アメリカは明らかにしないと言いながら日本に入ってくる船は積んでないわけですから、これはもう破綻しておるわけです。  そういうふうに考えていくと、この非核原則という問題を日本が絶対守らせる、そこら辺のところを日本なりに考えなければいかぬし、また国民が理解できるようにしなければいかぬ、こういうふうに私は思うんです。そういう点を含めまして、さらには国民のいろんな感情というものも含めまして、非核原則を断固守っていく。これは、例えば竹下総理が国連の演説で幾らやりましても、日本がもう少し厳格な検証をする。日米安保の上からも、例えば中に入って見てくださいというふうに言っていただいてもわからないんじゃしようがないけれども、そのくらいやっぱり厳格にやった方がいいんじゃないか。  もう一歩何とかならないか。とにかくにっちもさっちも、この何十年来同じ質問しても同じ答弁ばかりで、もう一歩何とか前進できないか。この非核原則、いわゆる持ち込みに対する国民の不安を解消するための考え方政策政府の動き、こういうようなものをもう一歩何とかならないか、こういう意図を含めて私は質問しているわけでございます。  最後に、官房長官のこの問題に対する御見解をお伺いしておきたいと思います。
  47. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 重ねての答弁になりますが、政府としては非核原則という国是に近いこの方針を堅持をしておるわけでございまして、その前提に立ちまして友好国との条約に基づいて日本の安全も確保しておるわけでございます。  その中で、核の問題につきましては、委員指摘のように、唯一の被爆国としてこの問題については国民各層が極めてナーバスであることは、これは否定し得ないことでございます。しかるがゆえに、両国ともしっかりとした条約に基づいて我が国に対する持ち込みについては厳然として事前協議の条項もございますし、もしそのような協議があれば我が国としては峻厳とこれを拒否するという立場を維持してきておるわけでございます。従来から政府としてはその姿勢を堅持いたしておるわけでございますし、引き続いて同様の態度を維持していくことでございます。  しかしながら、委員指摘のように、国民の間にも種々のお考えのあることは承知をいたしておりますので、政府としてはこの基本的方針についてさらに国民の理解を求めるべく最善の努力をしていく必要があろうかと考えております。
  48. 峯山昭範

    峯山昭範君 官房長官、結構です。  防衛庁長官にお伺いをいたします。  国際情勢についての御認識をお伺いしたいわけでございますが、世界の平和と我が国の安全保障を考えるに当たりまして国際情勢を的確に把握す るということは非常に大事な問題でありますし、また将来の方向性を正しく認識するということは非常に大事な問題であると私は思っております。  そんな中にありまして現在の国際情勢は、大臣もよく御存じのとおり、INF全廃条約の締結、そして引き続いてまた戦略核の半減や通常兵器の削減、そういった問題につきましても今、これから米ソがいわゆる軍縮への対話をしていこうという努力をしているわけであります。また、地域紛争の面につきましても、御存じのとおり、アフガンの問題が解決の方向へ向かっておりますし、またイラン・イラク戦争につきましても八年ぶりに停戦ということで、いわゆる世界じゅういろんなところで和平といいましょうか平和への努力がなされまして、そういう方向へ進んでいるわけでございます。  そこで、この国際情勢につきまして防衛庁長官としまして基本的にどういうふうに認識していらっしゃるかということと、この世界の動きに対しまして防衛庁としてはどういうふうに対応していったらいいと判断していらっしゃるか、あわせてお伺いしておきたいと思います。
  49. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) ただいま委員指摘のように、国際情勢を正確に把握するということはこれからの日本防衛政策を進める上において最も重要な課題であろうと思いますので、そういう点で私たちも国際情勢の把握というものに積極的な姿勢を示してまいらなければならない、こう考えております。  ただいま御指摘のように、INFの全廃条約の発効だとかあるいはまたイラン・イラク戦争の停戦あるいはソ連軍のアフガニスタンからの撤退開始等、情勢が非常に緩和されてきていると思うのでございます。さらに米ソ間では軍備管理だとか軍縮の話し合いが進められていることでございます。このことは国際社会における平和という面からいって非常に喜ばしいことでございますので、将来ともこういういわゆる交渉、単に米ソ間だけじゃなくしてさらに世界全体がこういう趨勢に動くことは本当に望ましいことだ、こう思うのでございます。  ただしかし、世界の軍事情勢というものは、そういう動きに即応しているかといえば必ずしもそうじゃないように私たちは今受けとめているわけでございます。米ソを中心として東西のいわゆる軍事対峙というものは、やはり依然として底に流れているんじゃないだろうか。したがいまして、国際社会の平和というものは、これまでどおりいわゆる力の均衡による抑止というものが支えになっていると言って差し支えないと思うのでございます。もちろん局地戦争も、それぞれやはりデタントの方向に動いておりますけれども。  特にソ連状況については、これは資料で申し上げますというと、防衛大綱ができた当時、ですから一九七六年と現在の一九八八年とを比較しましても、かなりソ連装備が充実されている。それから、ゴルバチョフさんが就任したときから現在の状況を見ましてもかなり装備が強化されているという状況から見まして、やはり独立国として他から侵略を受けない平和な日本をつくるというためには、節度ある防衛力を整備するということと先ほど来議論のございました安保体制の信頼性というものを確保して日本の安全を確保するための防衛力の整備をしていかなければならないという考え方を持っているわけでございます。
  50. 峯山昭範

    峯山昭範君 大臣防衛庁長官というのは、大臣が今おっしゃいましたように、世界の情勢を非常に正確に把握すると同時に、いろんな思考が硬直してしまってはいかぬと私は思うんです。やっぱり柔軟な考え方を持たないといかぬのと違うかなという考えが基本にあるわけです。大臣は経験豊かな大臣でございますから、そういうような意味ではぜひ世界の情勢というもの、いわゆる我が国防衛というのは余り具体的には申し上げませんが、やっぱりソ連を目標にといいましょうかして、我が国防衛というものを相当いろんな意味考えている。  しかしながら、それはそれで後で議論をするといたしまして、ただしかしという大臣の話の前段の方からいきますと、世界の平和、軍縮という方向は、これは一つの大きな潮流になっているんじゃないかな、そういうふうに私は考えているわけです。そういうような意味でも、世界のそういうようないろんな潮流、大臣もおっしゃいました幾つかの具体的な事例があります。そういうようなものにおくれてはいけないし、そういうようなものをいろんな面で分析をしながらやっていかないといけない。そういうような方向へ流れているというのもこれは具体的事実であって、どうしてこういうようなことになっているのかなというそこら辺の分析は、これは大臣じゃなくて結構ですが、どういうふうに分析をしておられますか。
  51. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) 東西関係が現在動いているその背景といたしまして、例えばソ連におきまして、長い間の経済停滞、社会的な停滞ということによって、発展性がないということにゴルバチョフ、新しい指導者が非常に危機感を持ちまして、そこでソ連における改革、グラスノスチという政策を打ち出しておるわけでございます。それによってソ連の経済を活性化するという、そういう方針だと思われます。それを進める上で国際的にそれを有利に進め得る環境をつくりたいというのが恐らくソ連の指導部の考え方ではないかと思われるわけでございます。  もちろんソ連の場合は、これはいろいろ推定でございますのでわかりませんけれども、推定によりますと、国民総生産の一五ないし一七%を軍備費に回しているということが言われております。そういったような軍備の投資というものを民間の方に回すということによって経済を活性化する、そういう考慮もあり得るかと存じます。  ただ、それにもかかわらず、現在のところ軍事面におけるいわゆるペレストロイカ、グラスノスチというのは非常に限定的なものにすぎないわけでございます。確かに軍上層部における人事の異動というものが非常に行われたというのは事実でございます。それから、例えば合理的な十分性、それから防勢的な体制というようなことが言われておりますけれども、実際には、グラスノスチにつきましても、例えば軍事費というものは依然として公表されておりません。したがって、先ほど申し上げましたとおり、ソ連の軍事費というのは推定にすぎないという状況でございます。それから、合理的な十分性といったようなものについても、それがどういうものであるかということは依然としてはっきりいたしておりません。防勢的な体制と申しましても、現在ソ連がとっております体制というのは、決して防勢だけではなくて極めて攻撃的な性格を持っているという点では今のところ変わっておりません。  それからさらには、先ほど大臣からも指摘がございましたけれども、極東におけるソ連軍状況というのは依然としてまだ増勢にあるということで、必ずしも本来ソ連のペレストロイカとかグラスノスチから想像されるような形に軍事情勢はまだ動いていないということを言わざるを得ないわけであります。これは、長期的に影響が出てき得るということはもちろんでございますので、我々としては十分それを注目しながら見ていきたいと存じております。
  52. 峯山昭範

    峯山昭範君 今の答弁はもう全く硬直していますね。昔聞いたのと同じようなことを言うてます。  これは何もソ連のことだけを私は言うているのと違うんですよ。世界の平和、軍縮の方向というのは、これは何もソ連だけじゃないんですね。国連における第三回の軍縮特別総会等を見ましても、平和、軍縮の力というものは大きな流れとしてなりつつある、私はそういうような考え方を持っているわけです。 したがって、世界の人々の平和と軍縮を求める世論の力というのは大きいと思うんですね。これは一つありましょう。  それからもう一つは、やはり米ソの核大国に対する強い強い批判の声というものがあるわけですよ。核はなくしてもらいたいという強い世界の世論みたいなものはあるでしょう。我が国だって核 の抑止力の傘の中に入っているとしましても、核はない方がいいわけですからね。そういうこともありますし、それから軍拡や武力紛争によって軍事費というものが相当ふえて、いわゆる民生、国民の生活というものを日本だけじゃなしによその国もみんな圧迫している。そういうような点から、やはり何とかそこら辺のところをちゃんとしたいという考え方があってそういうふうな大きな潮流になっていると私は思うんですね。ですから、そこら辺のところは明確に分析しておいていただかないといけないんじゃないかと思うわけです。  今、ソ連の話がいろいろありました。私も実はこの二、三週間にわたりましてソ連のお二人の方にお会いいたしました。今のペレストロイカの話やいろんな話を聞きました。今、参事官の方からは一九七六年と一九八〇年でソ連がかなり軍事力を増強しておるとかいろんな話がいっぱいありました。ゴルバチョフさんになってからでも大分違う、こうおっしゃっておりますが、ゴルバチョフさんの先般からの三回にわたる和平提案とかいろんなものを見ておりますと、やはり従来とは多少違うんじゃないかな、日本に対する考え方もやはり変わってきているなと。そこら辺のところを敏感に受けとめて、全く変わらないんだというんじゃなしに、やはりそこら辺の分析をもうちょっと突っ込んでやる必要があるんじゃないか。  参事官にお伺いいたしますが、例えば、先般、ゴルバチョフさんの人事異動がありましたね。先ほどお話がありました。あなたは、全く変わっていないみたいなお話でありましたけれども、これはどういうふうに分析をしておられますか。
  53. 都甲岳洋

    政府委員(都甲岳洋君) お答え申し上げます。  ゴルバチョフ書記長といたしましては、国内改革の基本的な問題といたしまして経済の改革を挙げているわけでございます。その雰囲気づくりをいたします前提条件として政治的な民主化ということを言っておりまして、そのために党機構の改革及び最高会議を中心とするソビエトの権限強化ということを中心として据えておりますけれども、この中心となるペレストロイカの構想が必ずしも十分に進んでいないということに対して危機感を感じ、それを進めるために必要な布陣を急遽とったということが一般の観測でございますし、私もそういうようなことで今回の人事異動が行われたのではないかと、そのように考えております。
  54. 峯山昭範

    峯山昭範君 ですから、そこら辺のところはペレストロイカ、いわゆる国内改革を積極的に進める、後退はもうあり得ないというぐらいの相当いろんな面での決意をしている、そういうふうなお話を私はお伺いしました。それは一〇〇%信用するかしないかは別にいたしまして、従来から言っていた考え方とは大分変わってきているなという感じはいたします。そこで、今のソ連の動きというものはいろんな面から分析し、我々日本の国内においても、外務省初め防衛庁もそうですが、積極的に対応していかないといけない、そういう段階に来ていると私は思います。  そこで、ゴルバチョフ書記長の先般の七項目の提案があるわけであります。今先般の人事の話もありましたが、これはゴルバチョフ書記長の指導体制が相当確立してきたと、私はそういうふうに分析をしているわけであります。そんな中にありまして防衛庁としては、ソ連の軍事政策というのは将来どういうふうな方向に進むと分析をしていらっしゃるかというのが一つ。  それからもう一つは、この七項目和平提案、これは九月十六日のクラスノヤルスクであった七項目提案とそれからその前にウラジオストクであった提案もあるわけですね。確かに、大臣も御答弁ありましたように、前々から言っていることを重ねて言っているということもあるかもしれません。一つ一つ比べてみますと、確かにそういう点もあるようであります。私も詳細に比べてもみましたし、分析もしてみました。しかしながら、従来言っていなかったことあるいは新しい提案と見られるところもあるわけですね。そういうような意味では、ソ連ソ連として、日本に対していろんな意味で積極的な働きかけといいましょうか、提案といいましょうか、そういう考えがあるように私は思います。  そういうような意味で、この七項目提案を含めまして政府としてはどういうふうにお考えになっていらっしゃるか。これは外務省防衛庁と両方から御答弁をいただきたいと思います。
  55. 都甲岳洋

    政府委員(都甲岳洋君) お答え申し上げます。  先般のクラスノヤルスク演説の中での七項目提案につきましては、従来から先生も御指摘のように、ウラジオストク演説あるいはインドネシアの「ムルデカ」紙に対する回答というような形で表明されてきたソ連のアジア・太平洋地域における軍縮についての考え方、軍備管理についての考え方をさらにまとめたものであって、全体としては私どもはそれほど新しい点はないというふうに考えております。  それで、むしろその中に示されている考えよりもソ連としてこの地域において具体的な安全保障に役立つような考えを示してきたというふうには私どもは必ずしも受け取っていないということを、全般的な評価といたしまして申し上げられると思います。
  56. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) まず、前半につきまして、ソ連の今後の動向についての見通しという御質問でございますけれども、これは、将来のことについてその見通しをつけるということは極めて困難かと思います。  そこで、我々として注目している点を幾つか述べさせていただきたいと思います。  まず第一には、やはりペレストロイカというもの、これを成功させるためには、恐らくソ連における投資と申しますか、資金というものを民間の方に大量に流さなければ成功しないというふうに想像されるわけでございますけれども、それがソ連における軍事費というものにどういう影響を及ぼすかという点、これが第一に注目される点ではないかと思います。  それから、最近ソ連におきましては、先ほど申し上げましたとおり、盛んに合理的な十分性、それから防勢的な体制ということがドクトリンとして打ち上げられておりまして、いろいろな議論が行われております。先ほども申し上げましたとおり、現在のところそれによって実質的な変化というものは我々としては確認できていないわけでございますけれども、こういう議論が実際のソ連の体制、配備にどういう影響を及ぼしていくかということ、これについて我々としては注目いたしたいと存じております。  それから、クラスノヤルスク演説につきましては、これはクラスノヤルスク演説自身は範囲の非常に広いものでございますけれども七項目提案に限って申しますれば、ただいま外務省から答弁がございましたとおり、我々といたしましても、この中の提案はおおむね従来ソ連が行っていたものの繰り返しでございまして新しいものはないというふうに見ております。
  57. 峯山昭範

    峯山昭範君 やはり、大臣、対話がないところには信頼感も生まれないと私は思うんです。そういうような意味では、ソ連とどういうふうに対話を進めていくかという非常に大事な問題だと私は思うんですけれども、これは外務省防衛庁、そこら辺の問題はどういうふうに取り組んでおられるんですか。  それぞれもちろんパイプはあるでしょうけれども、もう少し対話をどんどん進める。だから、新鮮味は全くない、新しいものは何にもないじゃないかといってぽんぽんぽんぽん言ってしまったんじゃどうしようもないんで、同じことを言っていても少しでも新鮮味を出そうとか平和のために何とかやろうとか一生懸命提案しているわけですから、そこら辺のところを含めてもう少し対話を進めた方がいいんじゃないかなという感じがするわけですが、この点についていかがでしょうか。
  58. 都甲岳洋

    政府委員(都甲岳洋君) ソ連との対話を進めていくべきだという先生の御指摘はまさにそのとおりだと思います。いかに意見、主義、主張が違っ ておりましても、対話をすることによって相互理解が深まるということは事実でございますし、やはり両国の関係を安定させていくためにあらゆるレベルの対話を通じてそのような相互理解を増進させるということは、私は基本的に重要なことだと思っております。  そういう観点から、日ソ間におきましても経済の分野、政治の分野、いろいろな分野で対話が今までも進行してきております。特に重要なのは外務大臣レベルの対話でございますので、私どもも、二年半前を最後に行われていなかった外務大臣レベルの対話を続けるべくソ連側に働きかけてまいりましたけれども、このほど九月の国連総会における日ソ間の話し合いにより十二月後半にはシェワルナゼ外務大臣が訪日をするということが確定いたしました。これは高いレベルでの対話の継続のために非常にいい機会だということを考えておりますので、そのためにあらゆる努力をし、そして実りのある対話が成立するように準備をしていく考えでございます。
  59. 峯山昭範

    峯山昭範君 防衛庁もひとつ。
  60. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) ソ連との対話の必要性につきましては、ただいま外務省から御答弁申し上げたとおりかと存じます。  防衛庁自身がソ連と対話するというようなことをあるいは御質問されておられるのかもしれませんけれども、これにつきましては、やはり原則としては政治、外交というものが先行すべきものと我々としては考えております。現在、例えば米ソ間では国防大臣同士の相互訪問、参謀総長の訪問というようなものが行われております。ヨーロッパにおいても一部そういうことが行われておりますけれども、これはあくまで米ソの首脳会談、それからヨーロッパにおきましても二国間関係自身、安全保障会議というようなものが進展した後にそういう防衛の実務レベルといった形の接触が行われてきたという実例がございます。そういった観点からも、対話というのはまず政治、それから外交が先行すべきというふうに考えております。
  61. 峯山昭範

    峯山昭範君 この問題の最後に、クラスノヤルスク演説の日本にかかわっている部分、全部を読み上げておりますと時間がかかりますからポイントのところだけいきますと、全部で五項目ぐらい最後のところにあるわけです。  これは、どうも外務省も気に入らぬらしいですけれども、そこのところを一遍読んでみたいと思います。  ソ連国民は、他の日本の近隣諸国の国民と同様に、日本米国との「負担の分担」の枠組みの中で執ように軍事力を増強していることに憂慮している。防衛費のGNP一%という数字は、つつましいものに見えるが、しかし日本に増大する経済力とともに、それが現実に遂行されることを考慮すれば、この一%という数字は、非常に真剣に考えてみるべきである。日本人は、今日の世界では軍国主義によらずとも大国の地位を達成することを実証したように思える。それなのになぜ、全人類にとってかくも有益なユニークな経験を自ら汚そうとするのか。それなのになぜ、世界のほとんど至る所での日本の経済的プレゼンスの並外れた活力を、戦前および戦中との歴史的連想によって減殺しようとするのか。 という演説があるわけでありますが、これはいろんな意味があると私は思います。私どもが防衛費がどんどん増大していくという不安を持っている、これは事実なんです。それと同時に、日本が軍事力によらず経済力で世界の大国にのし上がったということについては、それは自慢してもいいんじゃないかというふうなことをほかの国も認めているわけですから、そういうふうな意味では非常に大事な問題であろうと私は思います。  そこで、アジア・太平洋地域の平和と繁栄のためにゴルバチョフさんの提案があったわけでありますが、これは本当は外務大臣なり総理にお伺いしたいのでありますが、きょうはおりませんからお伺いしておきたいのでありますが、日本としては、具体的にいわゆるアジア・太平洋地域の平和と繁栄という問題を含めてどういうふうな考えを持って話を進めているのか、具体的な提案をする用意があるのかどうか。相手が提案したのを、あれはあかんと言うんじゃなしに、日本はこういう考えを持っているぞと言わないといけないのでありまして、そこら辺のところはどうなっておりますでしょうか。
  62. 都甲岳洋

    政府委員(都甲岳洋君) アジア・太平洋地域におきましてソ連との関係を安定するということはやはりこの地域の平和と安定にとって死活の重要性を持っていると、私どもはそのように考えております。  御承知のように、ソ連との関係の安定ということを考えます場合には、日ソ間には基本的な問題、すなわち北方領土問題というものが未解決で、戦後四十数年たった今日、いまだ平和条約が締結されていないという状況がございます。私どもは、そういう意味で基本的に日ソ間を長期安定的な基礎の上に発展させるためにはこの問題の解決が必要だということをソ連に訴え続けてきているわけでございますけれども、やはり、全般的な状況の中で日ソ間においてはこれが最優先課題であるという従来の姿勢は外交方針の基本として対ソ関係においては主張し続けていくべきだと、そのように考えております。  と同時に、実務関係の発展等を通じて、その以前におきましても関係をその範囲において安定させていく努力は続けていくべきだと、このように考えております。極東の安全、平和という観点からいたしまして、日ソ間ではこのような考えを持って進めていくということが重要なのではないかというふうに考えております。
  63. 峯山昭範

    峯山昭範君 世界の情勢につきましては大体その程度でおきまして、次に、次期中期防の問題とそれから防衛費の問題についてお伺いしたいと思います。  まず、これは総理もまた大蔵省当局も防衛庁もそうでありますが、いつも予算編成のときになりますと、防衛費といえども聖域ではない、こういう発言がたびたびあるわけでありますが、この意味は具体的にはどういうことなんでしょうか。
  64. 日吉章

    政府委員(日吉章君) 昨年閣議決定されました「今後の防衛力整備について」という文書の中にもございますように、我々が防衛力を整備するに当たりましても、これは、やはり、一国の財政とか経済とかそういう中におきまして防衛力をどのように整備していくかということと全く切り離して検討するわけにはいきませんものですから、そういう観点から、完全な意味の聖域というものではない、かように理解いたしております。  国の施策の中にはそれぞれ強弱いろいろな性格がございますけれども、やはり大きな国家の政策あるいは財政、そういう枠の中で執行される問題でございますから、防衛力といえどもその強弱はありますけれども、そういう枠組みの中で聖域化することはできない、こういう意味だと理解いたしております。
  65. 峯山昭範

    峯山昭範君 今、完全な意味での聖域ではないとおっしゃいましたね。ということは、ある意味では聖域なんですな。
  66. 日吉章

    政府委員(日吉章君) それは表現の問題でございまして、私は、その中に強弱があるというふうに申し上げたことと同義語ととらえていただければと思います。  といいますのは、国防といいますのは国家の存立にかかわる基本的な政策でございます。そういう意味で国家目標、国家政策の中にはいろいろなものがございますけれども、これらはそのときそのときによりまして必ずしも経済規模等に応じてパラレルに充実していくとかそういうようなものではないわけでございまして、そういう点ではその他の経済により密着いたしております政策よりももっと国家の基本的な根源的な問題にかかわります政策でございますものですから、経済との関係は他の施策に比べて相対的に薄い部分があるのではないか、かように考えまして私はそのような表現を使った次第でございます。しかしながら、 国家の政策の一端を担っているわけでございますから、決して聖域というふうには言えないと思います。
  67. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは、ここ数年、十年近く防衛費はやはり聖域化されている、こういうふうに私は思うんです。  大臣も御存じのとおり、これは詳細を申し上げてもいいんですけれども、要するに、一般予算がいわゆるゼロシーリングになって以来、防衛費だけはずっと突出してきた。例えば、社会保障関係費と防衛費の伸び率が並んだのが昭和五十六年でありますね。並んでからはもうずっと社会保障費を突破しておりますし、またそのほか一般予算の伸び率とのかかわり合いからいいましても、五十七年からははるかにオーバーしている。それだけではありませんね。そういうゼロシーリングのもとでもいわゆる特別枠というのが認められて、しかもその後の査定でも防衛予算というのは大体一%ぐらいしか縮小されないですね。大蔵の査定でもそうです。したがって、この伸び率というのは、その後、それこそ毎年予算の中でトップに近いところを占めているわけですね。こういうふうな実情を国民は知っているわけです。そういうふうな意味では、防衛費が聖域化されているんではないか、こういうふうな国民の不安もあるわけです。そんな中でいわゆる一%を突破したということで、ますます不安を深めているわけであります。  そういうふうな問題について、大臣国民信頼を得るためにもこれは非常に大事な問題でありまして、大臣はそのほかの省庁の大臣もやってこられたわけでございますからよく御存じだと思いますが、防衛費が突出しているということについてはそれなりの不安を持っている人がいるのも事実なんですね。そういうふうな意味でこの防衛予算に対するお考えをお伺いしておきたいと思います。
  68. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 防衛費の問題につきましては、先ほど来お話がありましたように、昭和五十一年、三木内閣時代、坂田防衛庁長官当時にこの防衛大綱というのがつくられたわけでございます。  これは我が国防衛政策の基本をなしているわけでございまして、極限的なあるいは小規模の侵略に対して原則として単独で日本対応するためのいわゆる効率的な防衛力の整備を図らなきゃならない。これをもとにして五十一年から十年間、当時の経済財政事情からいっていわゆる一%の枠で十年間ぐらいで進めたらこの目的は達成されるんじゃないだろうか、こういうことで進められましたが、ちょうどその十年間を経過しましたけれどもそれが達成できなかったわけですね。したがいまして、六十一年から五カ年の計画で今の中期防衛力整備計画というものが策定されてことしで四年目になるわけでございまして、総額明示方式で十八兆四千億という枠の中で節度ある防衛力の整備をしましょうということが昨年一月の閣議で決定されたわけでございますので、こういう方向で防衛費の予算化が進められてきているわけでございます。  今年度の概算要求につきましても、御承知のように、一つは、正面装備をする。もう一つは、後方部門が後退しておって隊員の士気がどうも後退しているんじゃないかということで、その部門にも力を入れなきゃいかぬ。もう一つは、先ほど来いろいろお話がありましたように、基地対策というものをもっと考えていかなければならない。そのことが国民との接点の面でいろいろな問題がございますので、そういう点にも重点を置こうということで三兆九千二百七十三億円という概算額を今大蔵省に示しているわけでございます。これからいろいろ調整してまいらなければなりませんけれども、六・一三%のアップになるわけでございます。  今、委員指摘の比較もございますが、昭和三十年度と六十三年度を防衛費その他と比較してみますというと、社会保障費は百倍なんです。それから、防衛費は二十七倍、文教費は三十七倍、こういうように私は今把握しておるわけでございまして、長い目で見ますというと決して突出しているというような考え方にならないのじゃないだろうかと、こう思います。それに、経済情勢ともう一つは国際情勢というものがこれに大きな作用をいたすものでございますから、そういう考え方で必ずしも突出した予算じゃない、国民に理解していただける予算じゃないだろうか、こう思うのでございます。
  69. 峯山昭範

    峯山昭範君 大臣、私が講釈することも何にもないんですけれども、十年一昔といいますね。三十年も、昭和三十年と六十三年じゃちょっとひど過ぎませんか。大体十年間ぐらい前のやつと比較するのなら話はわかりますけれどもね。昔で言うたら十年一昔でも、最近はもっと回転が早いですよ。そういうふうな意味では、三十年代というのはそれこそ日本の戦後の混乱がまだ十分おさまっていない時代といってもいいんじゃないかと思うんですね。そういういわゆる福祉も何にもなかった時代、そんな時代と比較するのはちょっとやっぱりあれでございまして、その当時、三十年代にお元気だった方が現在どうかというふうな面で見ますと、ちょっとやっぱり間が開き過ぎておる。都合のいいところだけ大臣のところへデータを持ってくるわけですよ。それじゃ困るんでありまして、もう少し近いやつを持ってこいということで比較していただきたいと私は思います。  そこで、大臣、もう一回時間があると思いますのでそのときにまたゆっくりやりたいと思っておりますが、大臣が一番先におっしゃいました大綱の水準の問題、これは非常に重大な問題でありまして、私もこれは大臣質問したいと思っておりますが、きょうはこの問題は次に譲りたいと思っております。  そこで、防衛庁長官の一番大事な仕事というのは何だと大臣はお考えでございますか。
  70. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 私は、防衛というものの基本は我が国の独立あるいは平和、国の安全を確保するという国家存立の基本に関する重大な使命を担っているわけでございます。この大任を果たすためには、単に自衛隊だけではこれはなし遂げられません。一つは、やはり外交政策ですね。平和協力外交を積極的に進めていく。ODA等の政策を積極的に積み上げて、平和協力外交を推し進めていかなきゃいかぬ。いま一つは、私は、国民信頼を得なければならない、こう思うんです。大きな役割を果たすこの仕事は国民信頼なくして不可能だと私は思うんです。  したがいまして、私は、就任早々、自衛隊諸君に対しても、よき自衛官になる前によき社会人になりなさい、こういうことを主張してきているわけでございます。したがいまして、今回の「なだしお」の衝突事故等の問題についても非常に反省しているわけでございまして、信頼を得るためには余り事故のない、しかも国民にはなるほど自衛隊があって戦後四十年独立国としての平和は保たれたんだということが言われるようにしていかなければならない。  一例を言いますと、自衛隊の飛行機が飛んでいる、この飛行機は落ちるんじゃないかというような心配国民に与えちゃいかぬ、この飛行機によって国が守られているんだという見方にしていかなければならない、こう思いますので、信頼が一番だ、こう考えています。
  71. 峯山昭範

    峯山昭範君 まことに失礼な質問をしまして申しわけないと思っておりますが、大臣がおっしゃることはごもっともなところもあります。  そこで、これは実は大臣の前の瓦長官のお話で申しわけないんですが、昭和六十三年、ことしの六月十一日、現職の時代に瓦前防衛庁長官は福岡の商工会議所で「日本防衛について」というテーマで講演をしていらっしゃいます。これはお聞きになったことございますか。ないかもしれませんね。これは新聞報道でございまして真偽を確かめたわけじゃありませんが、あったのは事実でありまして、その話の内容としましてはこういうことをおっしゃっておるわけです。テーマは「日本防衛について」ということです。そこで「(防 衛費に日本は)惜しみなく金を使ってもよいのではないか。戦争となれば膨大な金を使うことになるのだから」と。それから始まりましてずっと間がいろいろあるんですが、「防衛庁長官として一番大事なことは」、私が今大臣質問したことであります。「金(予算)を取ってくることだ、と人に言われた」と。そしてその次に、「(日本が外国の侵攻に対して)屈服してもよいと言うのならそれはそれでよいが、自由とか価値の高いものを守るというのであれば、惜しみなく金を使ってもよいのではないか」との考え方を示したというふうなお話が続いているわけであります。  私も、まあこういうことが本当にあるかどうか、これは本当でない方がいいと思っているわけでありますが、もしこういうようなお考えが少しでもあるとすれば、これは考え方としてはちょっと行き過ぎといいましょうか、口が滑ったといいましょうか、そういうふうになるんじゃないかなと思うんです。それは、本音の辺として、ある点では予算をばっちり獲得するということが大臣としての役目であろうと私は思います。内局の皆さん方やいろいろなところからつつかれるかもしれません。しかし、たとえそうであったにしても、また対外的な講演とかそういうところではそこら辺のところは問題になる可能性もありますし、やっぱりきちっとすべきところはしないといけないというふうに私は思うんですけれども、この点は大臣どうお考えでしょうか。
  72. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 瓦長官が国の安全というものは非常に重要なんだという強調の意味でそういうお話をされたと思うのでございますが、しかし、決して予算を他の省庁に足を突っ込んでまでとろうなどというさもしい考えはございません。堂々と防衛力の整備の必要性を大蔵大臣に訴えて、そうして得られるものはいただくというような形で進んでいくべきだと思います。  瓦長官のお話は、それは国家存立の基本にかかわる防衛なんだからということを強調するの余りで出たことじゃないだろうかと思います。
  73. 峯山昭範

    峯山昭範君 時間がなくなってまいりましたので、中期防の問題をちょっと聞いておきたいと思います。  詳細はこの次にお伺いするといたしまして、先ほど大臣もおっしゃいましたように、節度ある防衛力、非常に大事な問題であろうと私は思います。また、十八兆四千億のお話もございました。これもそれぞれ問題があると私は思っております。それが歯どめであるかどうかという議論は、これもこの次に譲りたいと思いますが、次期中期防、これは非常に大事な時期に入りました。  そういうような意味で、この次期防の構想、それからその整備計画がもう既に考えられていると思いますが、その策定作業は現在どういうふうに進んでおりますでしょうか。また、そのスケジュール等含めまして御説明いただきたいと思います。
  74. 日吉章

    政府委員(日吉章君) 六十五年度におきまして現在の中期防計画の期間が終了するわけでございますが、それ以後の六十六年度以降、防衛力関係の経費がどうあるべきかという点につきましては、先ほども申し上げました昨年一月二十四日の閣議決定、「今後の防衛力整備について」というタイトルでございますが、その中で、現在の中期防計画が終了するまでの間に、改めて国際情勢や経済財政事情等を勘案しまして、平和国家としての我が国の基本方針のもとで決定を行うということになってございます。ところが、私どもといたしましては、防衛力整備の性格から考えまして、防衛力の整備といいますものは計画的、継続的に行うことが望ましい、こういうふうな考え方防衛庁といたしましては持ってございますので、担当いたします防衛庁といたしましては、六十六年度以降もやはり中期防と同じような中期的な計画を政府として立てていただきたいという考え方を申し述べたいと、かように考えております。  時期についてでございますけれども、中期防策定の過去のスケジュールから申し上げますと、大体二年程度ありますとある程度の十分の時間がとれるのではないかと思いますので、そろそろ内部的に私どもの方で検討し、一年程度たちましたところで関係省庁間との協議にゆだねまして、その場でいろいろ御検討いただきまして政府計画としてお決めいただければ非常にありがたいと思います。  それにいたしましても、政府としてやはり六十六年度以降中期的な計画が必要なんだというふうな意思確認をしていただき、私どもに指示を与えていただく必要がございますので、私どもといたしましては、今も申しましたような二年程度の準備期間をいただきたいという考え方に立ちますれば、できるだけ早くそのような御検討をいただきまして政府としての御指示を私どもに与えていただければありがたいと、かように考えております。そのような段階でございます。
  75. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは大臣も御存じだと思いますが、新聞報道によりますと、国会の情勢でこの作業に着手できないということが報道されているわけであります。  それによりますと、「防衛庁は「ここで次期防の検討に入ると、リクルート問題の次は次期防と、国会に新たな火種を持ち込みかねない」」、そういうことから始まりまして「加えて、「消費税の導入も次期防の出費につぎ込むためと結びつけられ、内閣が命運をかけている消費税の実現に影がさすことになっては、防衛庁政府内の嫌われ者になってしまう」」というふうな報道があるわけであります。  これは実際問題として、大臣政府の方でも長官の方からの指示を今待っているわけでありますが、そこら辺のことを含めまして、防衛庁長官としての次期防作成に当たっての構想または指示、そういう点についてもあわせてお伺いしておきたいと思います。
  76. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 今防衛局長から御説明さしたように、やはり、中期防的な考え方でこれからも策定すべきものじゃないだろうかというようなこと。それから、今まで言われております総額明示方式というのは一体どんなものだろうかというようなこと。それともう一つ一番重要なことは、先ほど来峯山委員からお話がありましたように、国際情勢が一体どうなるかということが一番大きい問題になるんじゃないだろうかと私は思うのでございます。したがいまして、計画を早急に出すというわけにいかぬ問題だと思いますので、慎重にこれは取り扱わなきゃいかぬ、今の新聞の報道はそういうようなお話でございます。私は、国際情勢というものをどういうように把握してそれを防衛計画に反映させるかということが一番大きいのじゃないだろうか、こう思いますので、ただいま検討さしているような状況でございます。
  77. 峯山昭範

    峯山昭範君 きょうはこれで終わります。
  78. 大城眞順

    委員長大城眞順君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時三十二分休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  79. 大城眞順

    委員長大城眞順君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  80. 吉川春子

    ○吉川春子君 新しい防衛庁長官に初めて質問をいたします。  私は、まずソ連の脅威という問題について伺いたいと思います。  防衛白書は、ことしもかなりソ連の脅威ということについて記述されております。INF全廃条約の締結ということがありまして、これはこれによって核兵器削減に結びつかなかった戦後の軍備管理交渉とは異なって、陸上中長距離ミサイルの一分野とはいえ世界に初めて核軍縮をもたらすものであり、大きな意義を持っていると私は考えます。世界の流れは核軍縮の方向に向かっているのではないでしょうか。  政府はINF条約の締結をどのように評価しておられるか、とりわけ軍事面においてこれがプラスに影響を与えるのではないかと私は思うんですけれども、いかがでしょうか。
  81. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 峯山委員にもお答え申し上げたのでございますが、世界の軍事情勢というのは、今先生指摘のINF全廃条約のいわゆる批准だとかあるいはイラン・イラク戦争の停戦だとかあるいはソ連軍のアフガニスタンからの撤退開始だとか、いわゆる米ソ間の軍備統制だとかあるいは軍縮の交渉というものが盛んに行われているということは国際平和の面からいって非常にいい傾向だと思うのでございますけれども、しかし軍事的な状況というのは依然として米ソを中心として東西間の対峙というものが存在するのじゃないだろうかということです。  したがいまして、国際社会の平和というものはやはり力の均衡による抑止によって支えられていると私たちは見ているわけでございます。確かに趨勢としてはそういうデタントの趨勢にあるということはよく理解できますし、またその傾向というものは望ましい姿だと思いますけれども、現実はやはり力の均衡による抑止によって平和が保たれていると私たちは見ているわけでございますので御理解をいただきたい、こう思います。
  82. 吉川春子

    ○吉川春子君 ことしの防衛白書で、INF条約の影響については、通常戦力の比重が相対的に高まるため、ソ連側の優位が一層際立つことになる、こういうふうに記述しています。こういうことによって日本の軍備拡大の根拠を求めようとしているように私は思いました。すなわち極東ソ連軍の増強、行動の活発化を云々して我が国防衛力整価の一層の必要性を強調しているわけです。  日本政府にとってはINF条約の締結ということも軍備拡大の理由となってしまうんですか。
  83. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) ただいま大臣から御答弁ございましたとおり、INF全廃条約の締結は、これは我々としても非常に歓迎するところでございます。これは、何よりも核軍縮の第一歩であるということ、それから厳密な現地査察を含む非常に詳細な検証が合意されているという点でやはり画期的な条約であるということだと存じます。同時に、INF、ソ連のSS20等の中距離ミサイル日本にも到達する地点に配備されているわけでございますから、それが撤去されるということは、これは我々としても当然評価すべき点だと存じます。  防衛白書におきまして、この中距離核兵器の削減によって通常兵力の比重というものが増大する、これは、けれども同時に、抑止の体制全体が通常兵器から戦略核兵器に至るまで各種の核兵器を含んだそういう均衡の中で成立している状況のもとでは、そういう一部の核兵器、それから核兵器全体としてもさらに交渉が進むわけでございますけれども、そういうものがなくなればそれだけに通常兵力の重要性というものがある意味で増大するということ、これもまた事実ではないかと存じます。この点は特にヨーロッパにおけるINF全廃条約に対する反応を見ましても非常にはっきりいたしておりますし、それだけはやはり通常兵力における均衡を達成しなければならないというそういう問題意識というものは特にヨーロッパの場合には出てきているわけでございます。そのために、核兵器だけではなくて通常兵力についても、それから均衡をどうやって保つかということが非常に大きな課題ともなり、交渉の対象となりつつあるわけでございます。そういう認識を白書において述べた次第でございます。
  84. 吉川春子

    ○吉川春子君 そうしますと、通常戦力の比重が相対的に高まる、だからこちらの方を増強しなきゃならない、こういうことになるんですか。
  85. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) 通常兵力の不均衡というものが増大した場合には、ただ単に核兵器が削減されたというだけでは平和とか安定というものが強化されるということにならないということでございます。  したがって、通常兵力の不均衡というものが非常に大きくなる場合には、もちろん均衡を回復する方法としては、一方では整備といいますか、通常兵力を強化するということもございますでしょうし、逆により低いレベルの均衡に到達するようなそういう形での交渉、それから話し合いというようなそういう解決の方法もあり得るわけでございます。
  86. 吉川春子

    ○吉川春子君 INF条約を高く評価されて、核軍縮の第一歩を踏み出したものだ、こういうふうにおっしゃりながら、いやしかし通常戦力が重要でその整備をもっと高めなければならないというような今答弁でしたけれども、これは世界の流れにさお差すものだし、また核軍縮の方向へ向かおうとする世界に対してさお差すものだと私は思うわけです。  それでは伺いますけれども、ソ連が脅威だというふうにおっしゃるわけですが、ソ連の何が脅威なんですか。例えば、ソ連の地上軍、海軍、空軍、あるいは侵略の意図、どれなんでしょうか。
  87. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) 我々はソ連を脅威と申し上げているわけではございませんで、潜在的な脅威ということを常に申し上げている次第でございます。脅威というのはその意図とそれから能力とが組み合わさったところで生ずるわけでございまして、意図というものをソ連が現在有しているということを考えているわけではございません。ただし、その能力という点に着目いたしますと、それが意図に転じた場合に脅威になり得るという意味で潜在的な脅威ということでございます。  したがいまして能力という点に注目するわけでございますけれども、ソ連極東における軍というのは、一九六〇年代末—一九七〇年代を通じて現在に至るまでも陸海空いずれも強化を続けてきているわけでございます。それが我が国にとっての潜存的な脅威であるというふうに見ているわけでございます。
  88. 吉川春子

    ○吉川春子君 私は去年もこのソ連脅威の問題について質問したわけですけれども、今回空軍力に関してお伺いしたいと思います。  ことし四月の米国防総省報告「ソ連の軍事力」が明らかにされましたけれども、これは防衛白書も参考にして書かれているということですね。ここでも抽象的にソ連脅威ということを盛んにあおっているわけです。しかし、具体的に比較している箇所ではアメリカが優位だという記述が各所に見られて、ソ連脅威論も大分怪しくなってきています。  例えば、「今日のソ連海軍は、米国の空母ならびにその総合的な戦闘能力である空母戦闘グループに対抗するものを持っていない。」とかまた「われわれと同盟国とは、海軍の戦闘の多くの重要な分野においてソ連に対しかなりのリードを保っている。」、特に海軍力についてはこういう記述が目立つんですけれども、それではどこが脅威と言っているかといえば、「地域的機能的バランス」の中の「東アジア/太平洋における軍事バランス」のところで次のように述べています。   ソ連の太平洋艦隊の航空部隊の攻撃戦力(巡航ミサイル装備した九〇機以上のバックファイア型とバッジャー型)とソ連空軍攻撃兵器装備機(AS4型とAS6型巡航ミサイル装備のバックファイア型とベアG型)とフェンサー型(この戦域におよそ二五〇機)のような戦術航空機は、この地域の米軍ならびに基地と日本、千島列島、カムチャッカ半島周辺水域の米国ならびに同盟国の船舶にとって深刻な中長距離の脅威となっている。  こういう記述があるんですけれども、防衛庁も大体こういうようなお考えですか。
  89. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) アメリカの報告書の中で、確かにバランスが必ずしも米国にとって不利でないという、そういう記述が何カ所かございます。  ですけれども、報告書の中で、太平洋全体、アジア全体を見た場合に、その一つは、アジア諸国の経済的なダイナミズムといったようなことから、みんなだんだん国力が強くなっているという面、それから太平洋全体といたしましてはアメリ カの第三艦隊、第七艦隊という非常に強力な艦隊があるという、そういう事実に基づいて全体のバランスを言っているわけでございます。  それと同時に、この「ソ連の軍事力」だけではなくて他の米国の報告を見ましても、ただし地域的、サブリージョンと言っておりますけれども、サブリージョンにおいては必ずしもそのバランスが有利ではないという、そういう記述もございます。  それから、ただいま先生の御指摘になられたところその他において、ソ連極東軍の増強というものが日本を含めて一部の諸国について脅威の増大となっているという、そういう記述もございます。これらの点については私どもも同じような見方をいたしております。
  90. 吉川春子

    ○吉川春子君 そうしますと、ソ連の戦闘機フェンサー型が東アジア・太平洋地域に二百五十機配備されている、これが脅威だということなわけですけれども、それでは日本が中期防の完成時に日本の作戦航空機、戦闘機の数はどうなるんですか。F15とF4のトータルの数でお答えください。
  91. 日吉章

    政府委員(日吉章君) お答え申し上げます。  先生ただいま御質問になられましたF15とF4でございますが、それを合計いたしますと二百五十四機でございます。
  92. 吉川春子

    ○吉川春子君 ですから、日本だけでソ連と同じ数の戦闘機を既に持っている、こういうことになるわけですね。  さらに「ソ連の軍事力」によりますと、「日本、フィリピン、韓国ならびにグアムから出撃する米国ならびに同盟国の航空機も、ソ連の爆撃機の大戦力を減少させていく上での役割を果たすことができる。」というふうにいたしまして、アメリカは自分の国と同盟国の航空機を合わせた力とソ連の空軍力を対比しているわけです。  そこで、また数を伺いますが、米軍日本及び日本周辺に配備されている航空機は何機あるんですか。例えば沖縄、三沢あるいは韓国、グアム。数は出ますか、言っておきましたよね。
  93. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) 西太平洋に配備されております米国の戦闘機は約三百六十機と見積もっております。先ほど先生がフェンサー二百五十機ということを言われたわけでございますけれども、ソ連極東地域に配備されております航空機というのはこれよりもはるかに数が大きいものでございまして、我々の見積もりでは戦闘機だけで千七百六十機ぐらい極東にあるというふうに見ております。ですから、先ほどの二百五十機に対応するものでは必ずしもないというふうに思っております。
  94. 吉川春子

    ○吉川春子君 アメリカがこの地域で脅威だという数としてその数を挙げているわけで、いろいろその他のものは私も数から省きました。例えば支援戦闘機などは日本のものも数として私は入れませんでした。そういう数の比較から見て、圧倒的に作戦航空機の数がアメリカ日本、そして同盟国の方がまさっているわけですね。だから、ソ連が脅威だというふうに指摘しているところについてもアメリカ日本が優位じゃないですか。それは数が雄弁に物語っていると思うんです。  それから、さらに国防総省の「ソ連の軍事力」では   イージス級の対空巡洋艦、改良型フェニックス・ミサイルを搭載したF14型機、F/A18型戦闘/攻撃機を中心として改善された米国艦隊能力は、長距離爆撃機による攻撃に対する信頼性の高い防御を提供している。 こういうふうにしているわけです。  米国防総省の分析によってさえアメリカは依然として圧倒的に優位に立っているとしているんですけれども、こういう分析に基づいてもなおかつソ連が脅威であるとすればその理由は何でしょうか。
  95. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) ただいま先生が引用された部分というのは、これは例示といたしましてアメリカが述べている点でございまして、ここで挙げられている航空機だけが脅威ということではなくて、やはり極東に配備されているそれ以外のいろいろな航空機というものも攻撃の能力があるわけでございます。したがって、数の比較としては先ほど述べられた数だけではないということをまず申し上げたいと存じます。
  96. 吉川春子

    ○吉川春子君 それ以外の航空機というのはもうちょっと小型でもうちょっと能力も落ちる、そういういろいろなものを含めて、数は多くなりますが、アメリカはそういうのは脅威だというふうに言っていないわけで、一番脅威だと見ている航空機で比較した数字が今のような結果になったということは紛れもない事実じゃないですか。  それで、ことしの防衛白書の中で「洋上防空についての検討」というところがあります。これによりますと、「洋上防空体制のあり方についての検討内容」として「ミサイル発射母機対処機能」が挙がっています。このミサイル発射母機対処機能というのは何でしょうか。
  97. 日吉章

    政府委員(日吉章君) 最近の経空脅威というものを見てまいりますと、ミサイルが長射程化してきている、あるいはそれを積んでおります航空機の行動半径が増大している、そういうようなことによりまして経空脅威の増大にいかに対処しなければならないかということが緊急の検討課題になっているわけでございますが、その中のミサイル発射母機対処機能と申しますのは、これはミサイルを発射いたします母機、ミサイルを搭載しております航空機そのものに対してどういうふうに対処するかという能力でございまして、私どもは、それに対しましては要撃機と早期警戒機を組み合わせまして対処することが効率的ではないかと、かように考えておる次第でございます。
  98. 吉川春子

    ○吉川春子君 これに関連するといいますか、対応する記述が米国防総省報告の中にありますが、それによりますと、アメリカソ連の空軍力を戦争の初期段階に地上で破壊する戦術、すなわち目標に向かう途中のソ連の攻撃機を破壊するため最善の方法はその基地にいる間に攻撃することだ、こういうふうにしています。「ミサイル発射前、母機そのものを要撃するためのミサイル発射母機対処機能」というふうに白書が言っていますように、アメリカのこの戦略に対応して日本の自衛隊も限りなくソ連に近いところで相手を撃ちと落すことが洋上防空の内容になっている。防衛白書はそうですよね。そうですか。
  99. 日吉章

    政府委員(日吉章君) ただいま申し上げましたように、近時におきます軍事技術の進歩によりまして遠くから経空脅威というものが実現化しているということでございます。したがいまして、私どもといたしましては、それに有効に対処するためにはミサイルそのものに対処するということも重要でございますが、それを発射する母機にも対処し得るような能力を持つことが重要だと考えているわけでございます。ところが、私どもは、基本的に申し上げておりますように専守防衛という基本方針を防衛の基本方針として持っておりますので、私がただいま申しましたミサイル発射母機対処機能と申しました機は航空機の機でございまして、我が領土、領空に対して攻撃の意図を持って侵攻してきております航空機に対する能力でございまして、それが離陸いたします相手方基地そのものを攻撃する能力、そういうふうな母機対処といいますか、基地対処能力までを備えようとしているものでないことは御理解いただきたいと思います。
  100. 吉川春子

    ○吉川春子君 その基地そのもので破壊するのはアメリカがやると国防報告に書いてありますね。しかし、日本防衛白書はまさか基地をたたくとは書けないでしょうけれども、限りなく近いところで仮に基地の中で攻撃することが失敗して飛び立った航空機に対して直ちにそれを攻撃する能力、これが母機対処機能じゃないんですか。防衛庁のおっしゃる洋上防空とはこのようにソ連機をソ連基地内でたたくというアメリカの戦略を補完するものであるとはっきり中身を読めばわかるわけです。そのためにソ連の内陸深くまで探ることができるOTHレーダーを硫黄島につくり、あるいはイージスシステムを持った護衛艦を導入して アメリカと共同してソ連機を迎え撃つ、なるべく早く撃ち落とす、こういう万全の対策をとろうとするのが洋上防空じゃないですか。これは逆にソ連に対して日本脅威をあおるものになると思うんですね。ソ連は大変このことを脅威に感ずるというふうに思うわけです。  先ほど防衛庁長官は、専守防衛だ、そして他国に脅威を与えるような軍事大国にならないというのが日本防衛政策だ、こうおっしゃいましたけれども、まさにソ連に大変脅威を与えるような洋上防空という構想を今度の防衛白書は打ち出しているじゃないですか。どうでしょう。
  101. 日吉章

    政府委員(日吉章君) 表現の問題かと思いますけれども、基本的に先生と私どもの方で発想の違いがあるかと思いますのは、先生は限りなく相手基地に近いところで撃ち落とすというふうにおっしゃられましたけれども、私どもは私どもの領土、領空のできるだけ外で対処し得るようにしないと我が国の地理的特性等から考えまして有効に対処できない、こういうことでございまして、限りなく相手の基地に近くということではありませんで、私どもの領土、領空のできるだけ外で対処し得るような能力を備えたいということでございます。  それから、全般的なソ連我が国との防衛力の比較でございますが、これは幾つかの航空機の例等も国際参事官から数字を申し上げましたが、先生が抽出されました数字とはかなり違っておりますけれども、常識的に考えまして日本ソ連の脅威になり得るというふうには全く考えられないのではないかと私は思います。
  102. 吉川春子

    ○吉川春子君 それじゃなぜOTHレーダーなんて必要なのかということになってくるわけですよね。それはまさにソ連の奥深いところで情報を探りたい、そしてそれに対処するために必要でこのOTHレーダーをつくるということになると思うんです。  私は、この質問の最後に防衛庁長官伺いたいんですけれども、やはりこういう形で領土、領空の外でというのは、じゃソ連に近いところでということと別に違わないわけでしょう。そういうところでアメリカの基地でたたく、そういう戦略と対応して日本が洋上防空というような構想を打ち出し着々とその準備をするということはソ連に脅威を逆に大変与えるようなことになる、これは日本の憲法からいってももちろん許されないし、それから政府の解釈によっても戦力を持たないはずの自衛隊、これがミサイル発射母機対処機能などというのは何事かと、私はこういうふうに申し上げたいんです。こういうソ連にとっても大変脅威となるものをやめるべきだと。  私はこのことについて長官の見解を伺いたいと思います。
  103. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 平和憲法が制定されましてから、我が国の主権国としての固有のいわゆる自衛力は否定していないという原則から私たちは自衛隊というものを設置してまいっているわけでございます。したがいまして、先ほど来申し上げておりますように、他国に脅威を与えるような軍事大国にはならないというこの原則をも守りながら節度ある防衛力の整備をしてまいるのでございます。  ただ、いわゆる世界の技術の進歩といいましょうか、そういうようなことをも配慮していかなきゃならないということでございますので、そういう点は、ただいま防衛局長から答弁させたとおり、常に節度ある防衛力の整備を進めてまいります中でもやはり国際情勢だとか技術の進歩等に合った防衛力の整備というものも進めていかなければならない。そのことによって独立国として他国からの侵略を防ぐようにしていかなければならないということをも私たちは配慮していかなきゃならないと、こう思うんです。
  104. 吉川春子

    ○吉川春子君 他国に脅威を与えない、与えるような軍事大国にはならない、こういう建前からいってもこれはかなり外れるし、私はこういうような形で洋上防空などということは戦争挑発策にもつながるんじゃないかということで厳しく批判をして、次の質問に進みます。  次期防についてお伺いいたしますけれども、政府が五十一年に閣議決定いたしました「「防衛計画の大綱」の達成状況」、これが昨年の白書に載っておりましたが、対潜水上艦艇が六十二年度で六十一隻となって大綱別表の水準を突破している。そのほか中期防では大綱の定める護衛艦六十隻が六十二隻になり、作戦用航空機では二百五十機が二百五十四機になる。潜水艦が十六隻が十六隻ということで、陸海空ほとんどすべてにおいて中期計画完成時には大綱別表の水準に到達するということは明らかですが、この一%枠にかかわる軍拡の歯どめとされてきた中期防ですが、防衛計画大綱の基本的な枠組みのもとにこれを定める防衛力の水準の達成を図る、こういうことを目的にしているのですから、中期防の完成によって大綱水準にほぼ達するとすれば次期防の必要性というのはないのではないかというふうに私は思いますが、いかがでしょうか。
  105. 日吉章

    政府委員(日吉章君) お答え申し上げます。  大綱におきましては、限定小規模の侵略に対しましては原則として我が国が独力で対処する防衛力を整備するということを目標にいたしております。この目標そのものはおおむね中期防が完成いたしましたときには達成するわけでございますが、おおむねと私が申し上げますように、まだ達成されない部分があるという点が一点でございます。  それから、大綱の目標としております目標そのものは、定量的に固定的な目標概念ではございませんで、相手国の軍事技術の水準等があるいは国際情勢が変化してまいりますと限定的小規模な侵略の態様そのもの、規模そのものが変わってまいりますので、それに独力で原則として対処し得る防衛力というものも相対的な概念として変化するということが考えられます。したがいまして、大変な軍備縮小が起こりまして周辺諸国の軍事水準、軍事力の整備が非常に低いものになるというような画期的なことでも起こりますれば別でございますが、幾らかなりともその能力が増加しているということになりますればその目標そのものが上がっていくという点が第二点でございます。  第三点は、防衛力は同じ防衛力水準でありましても絶えずそれを維持しさらには更新していく、こういうふうな経費、努力が必要でございます。  こういう三点の観点から見ましても、六十六年度以降もやはり計画的に防衛力を整備していく必要があろうかと私どもは考えております。
  106. 吉川春子

    ○吉川春子君 そうしますと、次期防の検討に入っていくということですけれども、仮に別表あるいは大綱の見直しを行うとすれば、それはどういう状況になったときに行うのかということをお聞きしたいと思います。今のは要するに大綱別表の見直しということには触れられませんでしたね。  そのことをまず最初に伺っておきます。
  107. 日吉章

    政府委員(日吉章君) 大綱そのものといいますか、大綱の基本精神までも見直すという事柄と、それから大綱の基本精神はそのまま維持いたしますがそれに基づいて定められております別表を修正するというものと、さらには別表も変えない、こういうふうな三つの概念に分けられるかと思いますが、理念的に申し上げますと、まず、大綱に掲げております精神そのものを変えるということになりますれば、これは大綱が策定されますときに前提といたしました国際情勢そのものに大きな変化があった場合ということになりますが、現時点におきましてそのような大きな変化が生じているというふうには考えておりません。なおかつ、将来それが生ずる可能性があるかという点につきましては、将来の点でございますからこれは予測しがたい点があろうかと思いますが、現時点におきましては大綱策定の前提となっております国際情勢、軍事情勢の認識には変化はないと考えております。  ところが、その基本的な前提が変わっておりません場合にも、国際的な軍事技術水準等が上昇いたしました場合に、そこに掲げられております別表の規模、数、量、これらでございますけれど も、これらにつきましては大綱の別表の注書きにもございますように、そもそも大綱を策定いたしましたときに保有しあるいは保有することを予定している装備を前提にして数、規模、量等を考えて書いておりますから、その場合には、大綱の基本精神はそのまま踏襲するといたしましても別表の改定ということが理念的にはあり得るということだと思います。  ただ、次期防策定の過程におきまして別表はそれでは改定するのかと言われますと、まだ六十六年度以降政府計画として中期的な計画を策定するということすら決まっていない段階でございますから、今後これらもあわせて検討するということでございます。
  108. 吉川春子

    ○吉川春子君 そうすると、国際情勢についての変化がないということでしたが、これについてもう少し伺っておきますと、五十三年度あるいは五十二年度の白書によりますと、大綱の作成に当たりまして国際情勢上の前提について幾つか具体的に述べていますが、その中で「中ソ関係は、仮に部分的改善はあっても、対立の根本的解消には至らないであろうこと。」というふうにあります。  今の御答弁からしますと、最近の中ソ接近に関して、この前提事項に変更を見ない、こういうことですか。
  109. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) 中ソ関係につきましては、この数年間実務的な関係が進展しており、最近ではさらにより緊密な関係、いわゆる正常化というものが行われる機運というものが見られること、これは事実でございます。  しかし、それにもかかわらず、非常に長い国境を接している中ソ、それから非常に長い間の対立というような問題が一挙に解消するということでは恐らくないんではないかというふうに考えられます。したがって、中ソ関係というのは、過去のような非常に厳しい情勢というものが緩和されるということ、これは予想されるわけですけれども、それならば根本的に中ソの関係が変わってしまうということではないというふうに見ております。  もちろん将来のことでございますので、必ずしも完全な見通しをつけるということは難しいかと思います。
  110. 吉川春子

    ○吉川春子君 大綱別表の変更の可能性があり得る、こういう答弁でしたが、それ自体大変けしからぬことだと思います。  六十六年度からの次期防ということになりますと、さらに膨大な軍事費が必要になることは明らかです。仮に、来年度の予算の概算要求を基礎にして予算額、伸び率、こういうものを前提にして六十六年度から五年間で次期防を行うとすれば、この間、私の計算では二十五兆九千億、こういう中期防をはるかに上回る膨大な軍事費が必要となるんですけれども、こういう計算で間違っていませんよね。
  111. 日吉章

    政府委員(日吉章君) 先生がどのような前提でどういうふうな計算をされたかつまびらかにいたしておりませんので、そのような金額になりますのかどうかコメントを加える立場にはございません。
  112. 吉川春子

    ○吉川春子君 もっと伸びるかもしれませんが、とりあえず来年度の概算要求の水準を基礎にして計算をいたしますと二十六兆という軍事費が必要なんです。  次期防をおやりになるということですので、防衛庁長官、この膨大な軍事費はどこから持っていらっしゃいますか。
  113. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 今、二十五兆九千億という数字を御発表になったようでございますが、私たちはそういう考えはまだ全然考えておりません。したがいまして、そういう軍事費をどこから持ってくるかなどということも今考えておらないのでございまして、先ほど来申し上げておりますように、中期的な規模のいわゆる計画は立てなければいかぬだろう、また総額明示方式というものも一応話題になっておりますのでこれも検討の対象になるであろう。また、いわゆる国際情勢等を特によく把握した上でこれを進めていかなければならない。ただいま御指摘のいわゆる中ソ関係というものは、また朝鮮半島の状況というものは私は大きな要素の一つであろうとも思われます。したがいまして、こういう状況等をよく把握した上で私たちは的確な計画を立てていきたい、かように考えておるのでございますので御理解をいただきたい、こう思います。
  114. 吉川春子

    ○吉川春子君 そのような膨大な軍事費は使うつもりはない、こうおっしゃっていただくと一番よかったと思いますが、竹下首相はトロント・サミットでアメリカと責任を分かち合い国力にふさわしい役割を担う、こういうふうにおっしゃっておられます。それで税制改革の推進を誓約してきました。また、渡辺自民党政調会長は、昭和六十五年までには年に五・四%ずつ実質的に防衛費を伸ばすというお約束がございます、そうなるとますます財源は足らなくなるとおっしゃって、そのために消費税が必要なんだと露骨に述べておられるわけです。  私は消費税について防衛庁長官の御認識を一言伺いたいんですが、次期防をやるためにも消費税の導入は必要だと、こういうことではありませんか。
  115. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 私はそういう関連した考え方防衛計画あるいはまた防衛力の整備を考えてはおりません。
  116. 吉川春子

    ○吉川春子君 ずっとこの問題で触れてまいりましたが、政府は、世界の核軍縮の流れに逆らってソ連の脅威、潜在的脅威と言ってあおり、その軍備拡大の理由づけにしてきました。ソ連に大変脅威を与えかねない洋上防空、こういうものにさらに軍事費をつぎ込もうとしている。そのための財源づくりの消費税導入ということであれば、これはとんでもないことで絶対に認めることはできません。  私たちは、核兵器の廃絶、そして日本の平和、国民の暮らし、こういうものを大切にして、それを達成するために全力を尽くしていきたい、こういうふうに考えております。そのことを一言最後に述べまして、官房長官がお見えになりましたので質問を先に進めたいと思います。  官房長官にお伺いいたします。  天皇の病が大変あついということで日本各地のお祭り、イベント、こういうものの中止が続発しております。さらに自治体での自粛、神田の由緒ある懐かしい古本まつりまで中止に至ったということです。この結果、お祭り用品の専門店だけではなくて各地の中小零細業者たちが悲鳴を上げて深刻な打撃を受けています。  さらにジャズからオーケストラまであらゆるジャンルの音楽家が結集しております日本音楽家ユニオン、こういう団体があります。ここではこのほど「天皇の病状悪化にともなう「歌舞音曲自粛」についての声明」というものを発表いたしました。それを拝見しますと、演奏家を初め実演家たちが次々と仕事を奪われている事態が続発して、芸術家たちが表現の自由を奪われ、一般市民たちは芸能を享受する権利を妨げられている、こういうふうに述べています。そして演奏家たちはキャンセル料も実損分経費の補てんも行われないままいるということも指摘されています。  こういう事態に陥った多くの原因は、私は政府にあると思います。それは、外務大臣の外遊の取りやめあるいは外交日程のキャンセル、そして総理御自身も国内日程も取りやめる、こういうような政府の姿勢がこういう事態をまず引き起こしているんじゃないかというふうに私は思うんですが、官房長官はいかがお考えでしょうか。
  117. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) まず、私ども、陛下が大変病あつい状態となられておりますが、心から御平癒を願っている気持ちはまことに大きいものがございます。  そこで、御指摘のありましたように、陛下の御病状を憂えて国民の中に種々の行事等の取りやめをされている向きもあることも承知をいたしております。しかしながら、このことは陛下の御平癒を願う国民の率直、素朴な気持ちのあらわれだと考えておりまして、このこと自体はまことにたっ といと私どもは考えております。  しかしながら、各種行事が過度に中止、延期になるという事態は、やはり国民の社会経済生活に著しく影響を及ぼすということであればこのことは好ましいことでないことは言うまでもないことと思いますし、このことは日ごろから国民の御幸福を願っておられる陛下のお気持ちにも沿わない、こういうことでございまして、私自身も九月の二十九日にこの気持ちを記者会見で申し述べたところでございます。  したがいまして、政府としては、国民の皆さんが率直にそうしたお気持ちのあらわれとして各種の行事等をお取りやめになっていることについて、政府として行政の立場からその中止をすることを中止をさせるというようなことはいたすべきことではないと思いますし、要は国民の皆さんの自主的判断にまつものだというふうに思っております。  そこで、御質問のありましたその責任はよって政府にあり、こういうお尋ねと御意見でございますが、私どもは決してさようなこととは考えておりません。特に陛下が御病気になられた折にいろいろ情報が率直に申し上げて乱れ飛んだ点もございまして、そういうことも含めましていろいろこの報道が行われたことは事実でございます。政府といたしましても、それぞれの閣僚がみずからの判断でその事態に対応したということよりも、むしろそれぞれの閣僚がその時点に立っていかに対処すべきかということで外国出張等を取りやめたことは事実でございますが、そのことが即この行事の国民的取りやめについてそれを惹起したというふうには私どもは考えておらないところでございます。
  118. 吉川春子

    ○吉川春子君 憲法上天皇に関する規定が幾つかあるんですけれども、国政の権能を有しないとなっています。その天皇が御病気だからといって国政にいろんな影響を与え、またそういうものが中断するということはおかしいと思うんです。憲法の主権在民の原則に照らしていっても、国民の生活や営業が窮地に立たされるようなことがあってはならない、こういうふうに思うんですけれども、その辺の御認識はいかがですか。
  119. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) お尋ねの意が十分私把握し得ないんでございますが、大変恐縮ですが、いま一度お尋ねいただければありがたいと思います。
  120. 吉川春子

    ○吉川春子君 国政の権能を有しない天皇が御病気だからといって国政にいろいろな影響が及んだりあるいは影響があって中断したりということはおかしいんじゃないか、それから主権在民の原則に照らしてもこういうことによって国民の生活や営業が窮地に立たされるというようなことはあってはならないのではないかと思いますが、長官の御認識を伺いたいと思います。
  121. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 天皇陛下の御病気そのものが即国政に特段の影響を与えておるとは考えておりませんで、政府といたしましては、御病気の平癒を願うことと主として国政についてそれぞれ任務を果たしていくこととは別の問題として今対処いたしておるところでございます。
  122. 吉川春子

    ○吉川春子君 建設省にお伺いいたします。  私、新聞報道で読んだんですけれども、建設業界を指導監督する立場にある建設省が、この問題に関して、建設工事現場での仕事の自粛を暗に求めたり、同省発注の官公需の延期をにおわせている、こういうふうに報道されておりますけれども、こういう事実はあるんでしょうか。
  123. 村瀬興一

    説明員(村瀬興一君) お答え申し上げます。  私どもとして、今先生がおっしゃいましたように工事の自粛等を業界に対しまして指導しているというようなことはございません。
  124. 吉川春子

    ○吉川春子君 今後もそういうことはないということですね。
  125. 村瀬興一

    説明員(村瀬興一君) 現在のところそのようなことは考えてございません。
  126. 吉川春子

    ○吉川春子君 こういうことはしないということですね。確認してよろしいですね。
  127. 村瀬興一

    説明員(村瀬興一君) 今申し上げましたのは、現時点におきましてはそういうことは考えておらないということでございます。
  128. 吉川春子

    ○吉川春子君 それでは、この間外務省がイギリスのデーリー・スター、サンに対する抗議文の中で「アワソブリン」という言葉を使っている問題についてお伺いしたいと思うんですけれども、これは、英語の辞書を繰ってみますと主権者という意味があるんですけれども、日本の憲法上からいくと「アワシンボル」ではないかというふうに思うんですが、なぜ主権者、「ソブリン」という言葉をあえて使ったのか、その理由についてお伺いいたします。
  129. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) その点、私、この委員会でお答えしたところでございますけれども、今回の事件は、国の象徴であり一部ではございますけれども対外関係において我が国を代表する権限を持っておられる天皇に対する誹謗中傷記事に対して、日本政府として抗議をしたわけでございます。したがいまして、このような文脈の中で天皇陛下が問題とされているわけでございますので、一部ではございますけれども国を代表するというその面に着目いたしまして元首に当たる言葉を使ったわけでございます。  その際、元首にどのような英語を当てるかという点でございますけれども、英国におきまして最も普通に使われております「ソブリン」という言葉を使ったわけでございます。  ただいま御指摘のとおり、「ソブリン」という言葉の説明として字引に主権者という意味もあるかと思います。しかしながら、その主権者という意味が従来の伝統的な国際法におきます行政権等を掌握しております統治者という意味に限られて使われているかというとそうではございませんで、これは、現に字引、辞書類におきましても、国際法の教科書等におきましても、主権者という意味と並びましてその権力を制限された国の元首という説明も使われているわけでございます。したがいまして、「ソブリン」という言葉を使ったからといってそれが天皇をいわゆる主権者として我々が理解しているということを示すものでは全くございません。
  130. 吉川春子

    ○吉川春子君 「ソブリン」という用語を使ったけれども主権者と考えていないというのはもう当然のことですが、イギリスの国王の場合には実質的な権限があるわけで、かつての絶対君主的なそういう行政権が全部集まるとかそういうことではありませんけれども、日本の天皇に比べれば実質的な権利もかなりある。だから「アワソブリン」というふうになるのかもしれませんが、日本の国政上の一切の権能を有しない、こういう天皇に合わせて使う言葉としては非常に不適切であったということを私は指摘しておきます。  ついでに外務省に引き続いてお伺いしたいんですが、F16の墜落事故についてお伺いいたします。  九月二日に米空軍三沢基地のF16が低空飛行訓練中に岩手の川井村の山中に墜落しました。幸いなことに雨が続いた後だったので山林の一部を焼いただけで被害はおさまったということですけれども、その山のすぐ裏側には人家もあり、まかり間違えば大事故になるところでした。  米軍の事故調査委員会責任者ロナルド・ブライアント大佐はエンジントラブルの可能性を示唆していますけれども、事故の原因は一体何だったんでしょうか。
  131. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) ただいま先生指摘の事故につきましては、私どもも遺憾に存じておりますし、もとより米側としても遺憾に存じておる次第でございますが、ただいま先生お尋ねの事故の原因でございますが、その点につきましては現在米側におきまして調査を行っているというふうに私ども承知いたしておりまして、現在のところただいまの御質問に確たるお答えを差し上げる立場にない点を御了解いただきたいと存じます。
  132. 吉川春子

    ○吉川春子君 事故原因究明の責任は日米双方にあり、捜査権も日米双方にありますが、それぞれどの機関で調査し究明しているんでしょうか。
  133. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) 事故現場の捜査権につき ましては先生指摘のとおり日米双方にございまして、現場におきまして米側と我が方警察当局との協力体制のもとに捜査が行われたというふうに承知いたしております。
  134. 吉川春子

    ○吉川春子君 どの機関がやっているんですか。
  135. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) 警察当局において捜査に当たったというふうに承知をいたしております。
  136. 吉川春子

    ○吉川春子君 日本は警察で、アメリカはどの機関なんですか。
  137. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) どの機関であるかという点は私ども承知しておりません。米軍のしかるべき担当の部局が調査に当たっているというふうに理解をいたしております。
  138. 吉川春子

    ○吉川春子君 その日本側の機関である岩手県警ですが、円滑に捜査を行っているんでしょうか。当初の二日間は米側が現場の立ち入りを拒否したというふうに報道されていますが、現場検証などはきちんとやっているんですか。
  139. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) ただいま先生指摘の点につきましての私どもの認識と申しますか、承知いたしておりますところを申し上げますれば、岩手県警におきまして事故発生後機体のすぐ近くにまで捜社員を出したということでございまして、現場の保存あるいは実況見分等の活動を行っていたわけでございます。けれども、現場に到着いたしました米軍の責任者から、機体は炎上中であって危険である、そういう説明がございまして、したがいまして米軍の爆発物処理班が到着し処理し危険がなくなるまでの間、機体のすぐ近くで活動しておりました捜査員を機体を中心にいたしまして半径三百メートルのところまで引き下げる措置をとったということでございます。したがいまして、日本側が現場におきまして捜査ができなくなったというようなことはございませんで、県警といたしましては捜査員への危険の防止という観点から一時的な措置としてそういう措置をとったということでございます。  したがいまして、危険がなくなりました時点からは日米共同で現場の実況見分等を円滑に行ったというふうに私どもは承知をいたしております。
  140. 吉川春子

    ○吉川春子君 爆発物を取り除いて現場が保存された状況でできた、こういうことですか。
  141. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) ただいま先生指摘の具体的なところまで実は、私、承知いたしておりませんのできちんとお答えできない次第でございますけれども、私どもが承知いたしておりますのは、日本側、すなわち岩手県警におきましても米側との協力のもとにきちんとした実況見分等を行い得たというふうに承知をいたしている次第でございます。
  142. 吉川春子

    ○吉川春子君 それでは、エンジンなど、その後撤去されたものの調査、こういうものは行ったんですか。  それから、パイロットへの事情聴取はどうですか。
  143. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) 恐縮でございますが、今先生指摘の具体的にどういう捜査活動を岩手県警の方において行われたかという点につきましては承知いたしておりませんので、要しますれば私どもにおいて事情を聞きまして御報告をさしていただきたいと存じます。
  144. 吉川春子

    ○吉川春子君 こういう事故のときは普通は日本がパイロットへの事情聴取とかエンジンなどの調査、こういうものは行うんですか。今回の事例じゃなくて一般論としてどうですか。
  145. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) 通常の場合どういうことが行われておるかということについては、申しわけございませんが私、直ちにお答えできませんけれども、本件のごとき米側が第一次裁判権を有しているという種類の事故でございますので、いずれにしても、米側との捜査上の協力を維持しつつ御指摘のようなことも要すれば行うということではなかろうかというふうに存じております。
  146. 吉川春子

    ○吉川春子君 じゃ、その具体的な問題については後で調査して報告してください。  そうして、そのときに日本側の警察を現場から排除した米兵は、基地の外でありながら自動小銃を所持していたようですけれども、これはどういう法的根拠によるものですか。
  147. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) 自動小銃を所持していたかどうかという点につきまして、私、ただいま承知しておりません。  ただ、今回のような事件に際しまして、現場における危険の防止でありますとか安全確保あるいは事故原因究明のための現場の状況保全、そういうもののために必要な措置を米側はとり得るということは、地位協定上、例えば米国の財産保全等のために日米が協力する、そういう規定もある次第でございまして、それ自体異とするものではございません。
  148. 吉川春子

    ○吉川春子君 そうすると、確認しますけれども、安保で米軍の駐留が認められている、軍隊である以上銃を持つのは当然だ、こういうことになるんですか。
  149. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) 私が申し上げましたのは、事実関係の問題といたしまして自動小銃を持っていたかどうかということは、私、承知いたしておりませんのでそのようにお答え申し上げた次第でございます。
  150. 吉川春子

    ○吉川春子君 じゃ、どういう種類の銃を持っていたんですか。
  151. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) どういう種類の銃を持っていたかどうかということを恐縮ながら私、承知いたしておりませんし、そもそも持っていたのかどうかということも承知いたしておりません。
  152. 吉川春子

    ○吉川春子君 あなたはこの記事の新聞は読まなかったんですか。
  153. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) 読みました。
  154. 吉川春子

    ○吉川春子君 そこには銃を持った米兵がうろうろしていたという記事だって何紙も報道していましたでしょう。読んだけれどもその事実は確認はしていないということですね。
  155. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) 恐縮ながら私、その記事にその種の記述があったということをただいま記憶いたしておりませんでしたので、かつ、私、そういうことを確認したということもございませんでしたので、先ほどのように、私、承知しておりませんでしたということをお答え申し上げた次第でございます。
  156. 吉川春子

    ○吉川春子君 ちゃんと調べて報告しますか、そうすると。
  157. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) 先生指摘の点をめぐる事実関係がどういうものであったかということは調べさしていただきます。
  158. 吉川春子

    ○吉川春子君 幾つかの新聞が報道していますように、米兵は基地外でありながら自動小銃を持ってその辺をうろうろしていたわけですよ。  地位協定の十七条十項の(b)では、米軍が基地外で軍事警察活動を行う場合、日本の当局と連絡して米軍内の規律、秩序の維持のため必要な範囲に限られています。現場調査に来た米兵に規律や秩序の維持を図る必要があったのかどうか。酔って騒いだりとか暴れたりとかそういうようなことが想定される場合は格別として、そんなことが考えられない以上、地位協定に反して日本人を対象にした軍事警察権が使用されたとしか言いようがないと私は新聞の記事を見てそういうふうに理解しました。こういうことについては厳重に注意するように要求しますが、ともかく事実関係を調べていただきたいと思います。  話を戻しますけれども、F16、これはどれぐらい事故が起きているものでしょうか。日本以外の例で教えてください。
  159. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) 御質問が全世界でどの程度起こっているかという御質問でありますれば、私、現在のところ何件起こっておりますというふうにお答えし得る材料はございません。  私どもただいま承知しておることを申し上げれば、日本では先生指摘の事故を含めてF16の墜落というのが二件あった。先生指摘の事件の前は、八七年三月に墜落したという事故が一件ございました。そのほか私が承知しておりますのは、ことしに入って西ドイツで墜落事故が五件あったということは承知いたしておりますが、それ以上の情報はただいま私持ち合わせておりません。
  160. 吉川春子

    ○吉川春子君 昨年十月二十六日の米上下両院合 同経済委員会安全保障小委員会では、一九七九年以来F16シリーズの戦闘機が七十六機も墜落していることが明らかにされています。別名未亡人製造機という名前があるそうですけれども、欠陥機ではないか、こういう疑いも持たれているわけです。電気系統の製造上の欠陥が特に問題にされています。  今回の事故はF16の一連の事故と関係がないんでしょうか、あるんでしょうか。
  161. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) 御質問でございますが、私、今回の事故は、先ほど申し上げましたように、米側において原因を調査中という状況でございまして、その原因がどうであったかということを申し上げられない次第でございますので、先生指摘のような電気系統の事故に起因するものであるということであるのかどうか、その点を含めてただいまお答えし得る状況にない点、御了解をいただきたいと存じます。
  162. 吉川春子

    ○吉川春子君 去年の十一月、F16の翼、C/D型のものですけれども、これに構造上の欠陥があり、三沢基地でも飛行制限を実施しているということが発表されていますが、これは今も継続していますか。
  163. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) 恐縮でございますが、翼にかかわるところの問題のゆえに飛行制限が行われたかどうか、私、ただいま承知いたしておりません。
  164. 吉川春子

    ○吉川春子君 いずれにしても、F16はいろいろな欠陥、問題が明らかになって、欠陥機とまで呼ぶ人がいるくらいなんですね。そのF16が墜落して原因が究明もされていないのに訓練を再開する、これは一体どういうことですか。
  165. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) 私どもも、今回の事故が生じたということにつきましては遺憾に思っておりますし、かつ、米側もそのような認識でいる次第でございます。  事故の当日、米側に対しまして、安全確保の重要性ということにつきまして申し入れも行った次第でございます。米側は、直ちにF16の飛行をその時点で停止いたしまして、残余のF16全部につきまして技術専門家による点検を行うという措置をとり、かつまたパイロットに対しては安全運航につきまして改めて徹底を図ったというふうに私ども理解をいたしておる次第でございます。
  166. 吉川春子

    ○吉川春子君 その事故が起こって後点検したと言いますけれども、これまで米軍は十分な点検をして飛行していなかったんですか。そんなこと考えられませんよね。
  167. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) 御指摘のとおり、当然のことながら米軍におきましても日ごろ十分な点検は実施しているというふうに私どもも考えております。
  168. 吉川春子

    ○吉川春子君 点検しないで飛んでいたらそれは大問題です。しかし、これまでも十分な点検をしていながら今回のような事故が起きているわけです。米軍は、パイロットの操縦ミスでないというふうに言っています。だとすると、それならば整備ミスなのか構造上の問題なのかということになりますけれども、整備ミスを検討している様子もありません。そうなれば、原因究明前に飛ぶことは極めて危険なことと言えるわけです。  私は、日本国民の安全ということを考えたら、政府は直ちにこんな危ない飛行は中止を要求するべきだというふうに思うわけです。政府は飛行の中止を要求せよということを私は強く主張します。  現に、訓練再開後、三沢のF16は秋田空港へ緊急着陸する事故を起こしています。自衛隊秋田救難隊の駐機場では、約五分間で百メートル四方の駐機場の四分の一が油浸しになり、消防車二台で火災発生を防いだと言われています。この事故も場合によったら大惨事になる危険性があったわけですね。この事故の原因は何ですか。
  169. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) 私どもがただいま承知いたしておりますのは、米軍のF16が燃料漏れのために緊急に着陸の必要が生じたということで秋田空港の管制通信官に緊急着陸したいという通報を行った、その上で秋田空港に着陸をいたしたということを承知いたしておりますが、油漏れがどうして生じたかという点についてまで私ただいま承知をいたしておりません。
  170. 吉川春子

    ○吉川春子君 じゃ、ちょっと時間の関係もありますので先に行きますが、こうしてF16というのは頻繁に事故を起こしているんですね。日本国民の安全というものを顧みることなく低空飛行訓練を続けているわけですけれども、こういう事故のほかに、爆音についての被害も大変続出していますが、これは御存じですか。
  171. 時野谷敦

    説明員(時野谷敦君) F16の訓練飛行によりまして関係地域の住民の方々に騒音でありますとかその他の被害を生じせしめる事例が生じておるということは私ども重々認識をいたしております。  したがいまして、私どもは、随時、米側に対しましては飛行の訓練によってかかる被害が生じないように地域住民の方々に与える影響に配慮すべきであるということを申し入れてまいっておりまして、米側もその点につきましてはできる限りの配慮をいたす旨申し述べているところでございます。
  172. 吉川春子

    ○吉川春子君 防衛庁長官、お聞きのようにF16をめぐってこれだけいろいろな問題があり、しかもそれが解明されないうちに訓練が再開されている。いつ何どきまた周辺の住民がいろいろな惨事に遭うとは予測もできない、こういう事態なんですね。  私は、ぜひこの問題を防衛庁長官にも認識していただいて、こういう再発防止と訓練の中止、もろもろの原因の調査の結果の公表、こういうことをアメリカに厳しく要求すべきだと思うんですけれども、いかがですか。
  173. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) この飛行訓練は、御承知のように、我が国及び極東の平和と安全の維持のために駐留米軍の任務遂行上必要なものであるということと解しております。  しかしながら、訓練に際しては今御指摘のような事故防止というものをやはり十分配慮しなきゃならないし、騒音の問題等についても十分配慮していかなきゃならない、こう思われます。したがいまして、私たちとしては、今吉川先生指摘のように、できるだけ機会あるごとにこの問題は米軍にもお話を申し上げたい、こう考えているところでございます。
  174. 吉川春子

    ○吉川春子君 時間の関係で質問を少し省略いたしましたが、政府は、米軍による実弾射撃を伴わない通常の飛行訓練は施設、区域の上空外の領空においてこれを行うことは地位協定上認められている、こういう態度をとっているわけですけれども、地位協定のどの部分で認められているのか。  地位協定では、二条で施設、区域の使用、三条で施設、区域の出入りのための措置、五条で基地飛行場への出入りとその間の移動が規定されているけれども、施設区域外での訓練を行うということは規定はしていないんですね。法的に明確にされていないことを米軍が行えるとしたらそれは占領下と同じことになってしまって、そういうことは絶対許されないことはもう明白だというふうに思うわけです。  いずれにしましても、私はあえて言いますけれども、この訓練は違法、無法だ。こういうものを追認するのではなくて国民の安全を守る、財産、生命を守る、こういう意味から米軍機の低空飛行訓練を直ちにやめさせるべきだ、私はこのことを強く主張して質問を終わりたいと思います。
  175. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 外務大臣、お忙しいところありがとうございます。外務省、最近時々おかしな事故が起きるけれども、宇野外務大臣がかなり精力的に世界各国を駆けめぐって御活躍していただいていることには心から敬意を表したいと思います。  大臣、きょうは北方領土の問題で少し、これは大臣からお答えいただかなければと思うんです。  私が言わなくたっておわかりのとおり、北方領土にソ連が攻め込んできたのは、日本が八月十五日に無条件降伏して十三日を過ぎた八月二十八日なんです。それから、四島全部の占領が終わったのが九月三日。いかに不法な占領をしたかということは、これは再三私も取り上げてきたことで す。  それで、前にも予算委員会でもずっとやってきたんですが、一つどうしても気になるのは、昭和四十八年の十月に当時の田中総理が向こうへ行かれまして、ブレジネフ書記長と首脳会談をおやりになった。いわゆる田中・ブレジネフ会談で共同声明を出しました。その中には歯舞、色丹、国後、択捉という名前はなくなっちゃった。田中総理は、当時、帰ってきてこの国会で、戦後未解決の諸問題はという中にこの歯舞、色丹、国後、択捉は入っているんだ、そのことはちゃんとブレジネフとも確認をしているということを報告しているわけです。ところが、ソ連政府もそれから在日のソ連大使も、もう領土問題で未解決の問題はないということを再三にわたって発言をしているわけです。  それで、私は予算委員会でその点を取り上げて、少なくても両国の首脳が会ってそれで共同声明を出した、その共同声明の内容の解釈が食い違っているんだからこれはちゃんと外交のテーブルにのせて、これはどういうことなんだという解釈の一致ぐらいはきちんとさせておいてくれということを言ったんですが、それから一年たってまたあれはどうなったと聞きましたけれども、やっていない。外務省がいつも答弁するのは、いえ、戦後未解決の諸問題はという中に入っているんですというその田中総理の報告のことだけなんです。  なぜそれを外務省がおやりにならないのか。向こう政府日本政府で言っているのが違っている、返せ返さないとかの問題ではなくて、その共同声明の解釈を一致させるぐらいのことはちゃんと外交交渉にのっけてやってほしいということを言っているんですが、外務省はさっぱりその点について取り組まない。  その辺について大臣からお答えをいただきたいと思います。
  176. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 田中・ブレジネフ会談、ちょうど私、その当時自民党の副幹事長をしていました。田中総理がお帰りになった日にお出迎えして、そして自民党本部で直接お話を伺った一員でございます。そうした経緯もございますが、この間、やがてシェワルナゼ外相が来られるであろう、それに先立ちまして国連でお出会いすることができなかったという建前でソロビョフ大使に来てもらいまして、私はある程度のことを申し上げました。  そのときに私はブレジネフ・田中会談に触れまして、日本としての共同声明のいきさつ、未解決の問題の中には北方四島問題があることをあなた御承知ですねと田中総理は念を押された、それに対しましてブレジネフ書記長は「ヤーズナーユ」、私は知っておりますというロシア語を使いまして、そういう話もしました。そして別れ際にもう一度田中総理が、先ほど知っているとおっしゃったが未解決の中には北方四島問題がございますよ、もう一回念を押します、こう言われたときに「ダー」という言葉を二度使って「ダーダー」、そうだそうだとおっしゃった、こういう経緯もありますよと。したがいまして、一八五五年からずっといろいろと条約が重ねられてきておるが、そういうふうな歴史的な事実というものを踏まえ、またお互いのカードを示しながら、ひとつぜひともやりたいものだからその準備をしておいてほしいということを私としては申し上げたわけでございます。  もちろん歴代外務大臣は、出会うと常にイの一番に、平和条約を結ばねばならぬが前提として北方四島の一括返還問題ありということはおっしゃっております。それに対しまして相手方が、もうそれはありませんとかそういう問題はもう解決済みですとかいろいろと答えが変わっておる、そういう状況が今日なおかつ続いておるということでございます。  したがいまして、柳澤委員が今御指摘になられました点は、次回の外相会談におきましても一番大きな問題としてやはりきちっとした姿勢をお互いに示しながら粘り強く交渉を進める必要がある、私はこのように考えております。
  177. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 ぜひおやりになっていただきたいと思うんです。  それで、外務省の方も、ソ連大使がそういうことを言ったらすぐソ連大使を呼びつけて、呼びつけてなんて言うといけないけれども、それは違うじゃないかといって即刻なぜ手を打たなかったんですかと言いたいんですが、もう何回聞いてもさっき言ったとおりなんです。  次には、大臣、世界各国の地図で北方領土がどう扱われているかと昭和五十四年に国会で取り上げたんです。それで、外務省はあわてて世界各国から地図を取り寄せて調べた。そうしたら、北方領土を日本領として扱ったのは韓国と中国と西ドイツのたった三カ国です。  それで、外務省はもちろん在外各大使館を通じて訂正方の申し入れをやった。それで、これはもう御存じだと思うんですけれども、トルコはすぐ直してくれた。一年たったら今度はパナマが直してくれた。その次の年かなんかにはクウェートが直してくれた。今まだその六カ国だけなんです。アメリカに至っては、日本ソ連と両方の色をしま模様にして、直したと言っているわけなんです。  ですから、その後、この六カ国以外にそういう形でもって日本領に直した国があるのかどうなのか。  昔一度、外務省のお役人さんは、そう毎年毎年地図を直すわけにいかないので、四、五年に一遍ですから云々なんという答弁をしていたわけだけれども、もう十年になるわけです。そういう点でその後新しく訂正した国があるのかどうなのか。それから、今後どうやってその地図の訂正をさせようとするか、その辺のお考えをお聞きしたいと思うんです。
  178. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) この問題は非常に重要な問題でございまして、柳澤委員がつとにこうしたことに大変な御努力をしていただいていることに対しまして私は心から感謝申し上げたいと思います。  したがいまして、五十四年、五十五年と外務省といたしましては、御指摘のとおり、地図の訂正を世界的に調べ、なおかつまだ未訂正のところは訂正してもらえということでやったわけでございますが、甚だ残念にいたしまして今申されたような状態が続いておるわけでございます。  しかし、米国といたしましては、御承知でございましょうが、我が国の領土である、ただいまソ連が占領中という旨は書きましょうというふうなことになっておりますが、特に最近米ソ間のグローバルゼロ、INFのああした交渉等を通じましても、世界にあるいろんな地域紛争等の中に、まあ紛争とは言いがたいと思いますけれども重要な案件として、米国から常にソ連側に四島問題どうするんだという話を提示していてくれる。だから、私は国務長官にお会いしましたときにはそうしたことの感謝の意を申し述べておるところでございます。  先般も、ここにおられます自民党の板垣委員を初め党の関係者の方々にこのためにヨーロッパを視察していただきました。特に英国におきましては非常に深い理解を示していただいたということは既に御承知賜っておると存じます。  非常に大切な問題でございます。世界には百六十カ国以上あるわけでございまして、国連加盟国でも百五十九でございますから、やはり常日ごろ鋭意努力をしなければならぬ問題である、かように考えまして私たちは今後も在外公館を通じまして各国に我が国の主張の正しさ並びに地図におけるその表示の正確さ、そうしたことを求めていきたい、かように考えております。
  179. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 それは大臣在任中にぜひ前進するようにさせていただきたいと思います。やはり情けないことだと思うんです。  それから、もう一つ大事な点は、私はいつも不思議に思うんだけれども、国連の総会が毎年開かれている。日本から総理か外務大臣かどなたかが行って演説しているわけです。世界各国の代表が来ているんだから、我が国の固有の領土である北 方領土をソ連によってこのとおり不法に占領されて、ここに軍事基地はつくられ軍隊が置かれこうこうしかじかですとなぜそこでそのことを世界の代表に訴えないのか。  ことしも六月一日、竹下総理が行って特別総会で演説しているんですけれども、これも読ませていただいたんですが、北方領土問題については「我が国が位置しているアジアにおいては、日ソ間で北方領土問題を解決することが重要であります。」というたったこの一言なんです。日本国民が北方領土に目を向けて、北方領土が返らない限り戦後は終わらないんですという気持ちでもって総理府があそこでもああいう看板を出しているくらいなんです。それが、日本の国の内閣総理大臣が国連の総会に出ていってこの程度のものしか言えないというのはこれはどういうことなんですか。だから、この六月一日はもう過ぎちゃったことで、次の機会には、外務大臣なり総理大臣なりどなたが行かれるにしても、少しでもソ連がそういうことに関心を持って、そして日本ソ連の関係を友好にするためにもこの問題が解決しなきゃいけないのだなというふうな気持ちにさせるために国際世論を動かしていただくということで御努力いただきたいと思うんですが、いかがですか。
  180. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) もう仰せのとおりでございまして、総理の場合は軍縮という一つの大きなテーマもありましたからその点一言で終わっておるというふうな面がややあったかもしれませんが、しかしたとえ一言でも申されたということは大きなことだと私は思っておりますし、もちろんことしの通常総会におきましては加賀美大使に私の意を体しまして北方問題に関しまして発言してもらいました。本来なら私はもっと強く言う立場でおりましたが、そこは政治家と大使のあるいはニュアンスが異なっておるところがあるかもしれませんが、今後そうした国際会議等々を通じましてもやはり主張すべきは主張しなければならない、かように思っております。  特にここでつけ加えておきたいのは、現在は政府の要人ではありませんが前総理の中曽根先生が七月にゴルバチョフと出会われました。そして、ソ連でテレビを通じて話をしたいということに関しまして、この問題を一番に取り上げて言われました。これをテレビで話すことをカットせずに、ソ連はその発言を許したというところもやはり大きな変化が起こりつつあるんではなかろうか。私はそういうふうなことを直接お伺いしましたから、そういうふうに相手方もグラスノスチあるいはペレストロイカ等々、その体制に相当大きな変革をもたらす努力をゴルバチョフ書記長はしておる。そういう努力は私たちも評価しながら、さらに日ソ間の関係を改善するためにこういう問題だけはひとつお互いに理解を示そうではないか。  このことは大切なことだと思いますので、仰せのとおり、今後、我々といたしましても、鋭意こうした問題につきましてはバイであれあるいはまたマルチであれ、そうしたところを通じましていろいろと理解を深めるために努力をしなくちゃならぬ、かように思っております。
  181. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 ありがとうございます。  一つのきっかけだと思いますからこの機会にぜひこの問題を大きく取り上げて、外務大臣、恐らくまた行かれると思いますから。竹下総理のこれは言ったなんといううちに入らないです。「日ソ間で北方領土問題を解決することが重要であります。」と言っているだけでね。  私が言いたいのは、不法に占領されてこういう状態にあるんですと。それで、世界の中でもそれを知っている国は恐らく三分の一ぐらいだと思う。ほとんどの国はそんなものは知りはせぬと思う。そういう状態にあるにもかかわらず、日本政府の代表は国連の舞台に来てそのことを世界の人たちに訴えない。なぜなんだろう、国連の七不思議の一つと言われているんです。  ですから、外務大臣はお忙しいと思いますから、今度私が行ったら必ずその点はきちんと言うという約束だけしていただければ結構ですが、その点だけお約束いただけますか。
  182. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) もちろん御期待に沿うて努力をするつもりでございます。
  183. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 じゃ、結構です。  次に取り上げていきたいのは、シビリアンコントロールの問題です。  もちろん防衛白書にもちゃんとこれは書いてありますし、いろいろな機会でいつも言われていることなんですが、じゃ、シビリアンコントロールとは一体どういうことなんだと政府を代表して官房長官の御見解もお聞きしたいし防衛庁長官の御見解もお聞きをしたいんです。法律かなんかの文章でなくて、こういうことなんだとわかるようなそういう表現でもって話していただけませんか。
  184. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) よくわかるようにということでございますが、その解釈はやはり正確を期さなければなりませんので申し上げたいと思いますが、シビリアンコントロールとはやはり民主主義国家における政治の軍事に対する優先を確保すること、これに帰するのではないかというふうに思います。  我が国の現行制度におきまして、国防組織たる自衛隊は、文民である内閣総理大臣防衛庁長官のもとに十分管理されているほか、法律、予算等について国会の民主的コントロールのもとに置かれております。また、国防に関する重要事項については安全保障会議の議を経ることとされておりシビリアンコントロールの原則は貫かれておるものと考えております。  このように我が国のシビリアンコントロール制度は十分整っており、政府としては今後ともこの制度の適正な運用に万全を期していきたいと、こういうふうに考えております。
  185. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 平和憲法のもとで与えられた自主権を行使するためには、やはり他国に脅威を与えるような軍事大国にならないということが大きな一つの規制でございます。それで、そういうようなことを考えていきますというと、軍事に政治が優先するという姿勢をつくっていく、国会が優先して自衛力の整備というものを図っていく。したがいまして、法律だとか予算だとかこういう問題は常に国会の議を経て進められるということがこれからのいわゆる自衛権の行使の面で必要なものであろうということでシビリアンコントロールという制度ができたものと思うのでございます。  したがいまして、シビリアンコントロールということによって防衛庁等もいろんな批判といいましょうか、いろんな規制を受けているわけでございますから、そういう点がシビリアンコントロールというものの一種の大きな役割じゃないだろうかと私は思うのでございます。  何か言い尽くせないところはございますが、率直に私の気持ちを申し上げたのでございます。
  186. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 例えば、昭和五十三年の予算委員会で、私が、シビリアンコントロールは確立しているんですかと言ったら、確立していますと言われた。そんなこと言ったって総理、今長官がおっしゃったとおり国会が優先してコントロールするわけだ、その国会に防衛問題を議論する委員会すらないじゃないですか、それで何でシビリアンコントロールが確立しているなんて言えるんですかと私はそう言って、最後に時の内閣総理大臣が衆参両院に防衛委員会を設置することを希望しそのために努力しますと言った。それからまた二年かかって、たしか五十五年のはずですよ、安全保障特別委員会ができたのは。  そうすると、自衛隊法ができたのは昭和二十九年で、それから五十五年までのこの約二十五、六年間というものはその点についてシビリアンコントロールというものがあったと見るんですか、なかったと見るんですか。これは防衛庁に聞いたって無理だと思う。そうでないんですよ。防衛庁はどういう判断をなさるんですか。
  187. 依田智治

    政府委員(依田智治君) 先生指摘のように、五十五年に衆議院に安全保障特別委員会、五十五年の七月に参議院に安全保障及び沖縄・北方問題に関する特別委員会設置と。ただ、この委員会も法案は審議しないというような当面の約束になっ ておるようでございますが。その以前におきましては、国会の予算委員会、内閣委員会等において防衛二法案等の審議は相当重点的に行われてきておるということで、国会がどういう仕組みでこの防衛問題を扱うかというのはまた国会御自身の判断かと思いますが、そのなかった時期においても、予算委員会とか内閣委員会等において十分審議がなされシビリアンコントロールの機能は保持されてきたというように私ども解釈しております。
  188. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 非常に難しいことだけれども、やはりもうそろそろ、日本の国家がこのくらいになったんですから、その辺についての見解を統一しておかなきゃいけないと私は思うんです。  ざっくばらんに聞くけれども、例えば、あそこに板垣先生がおられるが、板垣先生内閣総理大臣になれるんですかなれないんですか、どっちですか。
  189. 大出峻郎

    政府委員(大出峻郎君) ただいまの御質問は、憲法の第六十六条第二項というところでもって「総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。」というふうに規定されておりますので、これに関連しての御質問であったかと思いますが、まず憲法六十六条第二項の「文民」の解釈について申し上げますというと、これにつきましては憲法制定当時からいろいろと論議のあったところでございますが、この第二項の趣旨は、要するに、国政、国の政治というものが武断政治に陥ることを防ぐところにある。こういうふうに考えられるところから、一つは、旧職業軍人の経歴を有する者でありまして軍国主義的思想に深く染まっていると考えられる者、こういう者はこの憲法第六十六条第二項に言いますところの「文民」には該当しないというふうに従来から考えてきておったわけであります。また、自衛隊は憲法で認められる範囲内にあるものとはいいますが、国の武力組織であることでありますので、自衛官は、これは現職の自衛官ということでありますが、その地位にある限りここに言う「文民」ではないというふうに解釈をいたしてきておるわけであります。  このような趣旨政府といたしましては従来から御答弁申し上げてきているところでございまして、旧職業軍人の経歴を有する者でありましても軍国主義的思想に深く染まっているとは考えられない人あるいは自衛官の職を離れた人はここに言う「文民」に該当するというふうに考えておるわけであります。  ただいまちょっと具体的な例をとっての御質問でございますが、私、これに直ちに具体的にお答えし得る立場ではございませんが、要するに、現在の自衛官の出身者の方、この方は、職を離れたということを前提といたしますれば、出身者はそのことだけで内閣総理大臣あるいはその他の国務大臣になり得ないというものではない、これが憲法六十六条二項の解釈でございます。
  190. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 今の説明をどう解釈したかと、こういうふうに皆さんに聞いても、恐らく十人十色、みんな違う解釈をすると思うんです。  大体、私が板垣先生はなれるんですかと言ったら、なれるというのとなれないというのとここでささやいているくらいなんです。  私は、シビリアンコントロールは、おっしゃるとおりに民主主義国家としていく以上、これは厳然と守り抜かなきゃいけない、私もその立場にはいるんですよ。しかし、今のような説明を聞いていて、だったらどういうことになるんですか。  アメリカのアイゼンハワー大統領はあれだけの北大西洋の全部の総司令官であった。フランスのドゴール大統領もそうでしょう。イギリスのチャーチル首相だってそうです。みんな軍人出身者ですよ。そうすると、今のような解釈からいくならば、アメリカもフランスもイギリスもシビリアンコントロールは確立されていない、民主主義国家ではないんですという判断を下すことになるんですよ。それでよろしいんですか。
  191. 大出峻郎

    政府委員(大出峻郎君) ただいま具体的なアイゼンハワーという方とかあるいはドゴールというような方についてのお話がございましたが、先ほども申し上げましたように、これらの例を直ちに我が国の場合に当てはめて考えるということはちょっと困難なことであると思いますが、自衛官の出身者の方がそのことだけで内閣総理大臣国務大臣になれないということではないということを先ほども申し上げたわけでございます。
  192. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 もう少しわかるような説明をどなたかしていただきたいんですが、どうですか。  先ほど、軍国主義者と言ったでしょう。大体、軍国主義者という言葉自体どう解釈するんですか。軍人だったから軍国主義者であり文民だったから軍国主義者でないなんというものは、それはもう成り立たないんですよ。そうでしょう。軍人でないような、適当な言葉がないからあれだけれども、もっと言えば右翼の何々でというのはそれは軍人以上に軍国主義者だ。だから、軍国主義者だとかあるいは文民統制だとかそういう言葉を簡単にこうやって防衛白書に書くんだけれども、だったら、それに賛成か反対かは人それぞれによって国民みんなが違う、しかしそのことはどういうことを言っているんだ、どういう意味なんだというその辺のところの意思統一をきちんとしておかなければいけない。それが今の日本の国の中では、シビリアンコントロールということについて十人十色、百人が百人みんな違った解釈をすると私は思うんです。ですから、せめてこの辺でその辺についての政府の統一見解をお示しをいただきたい。
  193. 大出峻郎

    政府委員(大出峻郎君) 憲法の六十六条二項の「文民」という言葉についての解釈を先ほど申し上げたわけでありますが、一つは、現職の自衛官である方々、これは現職の自衛官としてその任についておられる限りにおいてはここで言う文民ではない。しかし、自衛官の方々がその職を離れられれば、これはここで言うところの文民に当たるということを一つは申し上げたわけであります。  それからもう一つの問題といたしましては、これは憲法の制定当時からいろいろな議論が重ねられてきたところで、先生もその辺のところをよく御承知のところでございますけれども、例えば旧職業軍人の経歴を有する者、そういう方々はここで言う文民ではないということになりますというと非常に文民でない範囲というものが広くなってしまうわけであります。我々はそういうふうには考えませんで、旧職業軍人の経歴を過去に持っておられた方、そういう方であっても直ちに文民でなくなるというふうに理解するものではない。この憲法六十六条第二項が修正という形でもって入ったわけでありますが、この立法のいきさつ等を考えてまいりますというと、先ほど申し上げましたように国政が武断政治に陥るということを防ぐ、そういう趣旨にあるんだということからいたしまして、旧職業軍人の経歴のあられた方すべてが文民ではないということではなくて、さらにそういう中で軍国主義的思想に深く染まっているという、そういう要件をプラスしてそういう者が文民ではないというふうに今まで御答弁を何回か申し上げてきておるわけであります。  そこで、そうしますというと、そういう判定というものは一体具体的にはどういうふうにやるのかという御趣旨のお話もただいまございましたけれども、まず内閣総理大臣の問題につきましては、これを指名するのは国会であります。したがいまして、国会においてそこは御判断をなさるということになろうと思います。  内閣総理大臣以外の国務大臣につきましては、その任命をされるのは内閣総理大臣でございます。内閣総理大臣国務大臣として任命されるかどうかということを御判断なさる場合にこの辺についていろいろ総合的に判断をしていくということになろうと思うわけであります。  それから、もう一つは、軍国主義的な思想に深く染まっているという言葉は、表現的には非常に主観的な感じのするものでありますけれども、これにつきましてはどういうものを言うかということにつきましては、やはりそういうものが外にあらわれておる、いろいろな日常の活動の中でそういう考え方を持っておられるということが外に活 動としてあらわれておる、そういうような人を結局判断をしていくということになるのであろうというふうに考えておるところであります。
  194. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 これ以上続けていってもこれは官房長官、やっぱり難しい問題ですから、そういう点でここで言っても無理なことで、政府の統一見解を何かの折に出してくれませんか。  それから、もう一回言っておきますけれども、防衛白書やいろいろなものに政府のお役人が書くようなそういう文章の羅列じゃなくて、もうちょっとわかりやすいように。さっきから言っているように、今も出ている軍国主義者とか文民だとか、今それがわからないんです。だから、そういう点でもってそのシビリアンコントロールというものがどういうことを言うのだということを、国民みんなが読んだらああそうかといってわかるように。かつて旧軍におった者も軍国主義者でなければいいとかあればどうだとか、それでそれを国会で判断する。何で国会でそんなことを判断できますか。一人一人にこれは軍国主義者かどうかという投票でもさせるんですか。だから、その辺がもう少しどういうものなんだということが、もうそろそろ。  先ほどからの話を聞いていれば、少なくともアメリカは民主主義国家じゃないんです。あなたがおっしゃったあれからいくならば、アイゼンハワーというのはもうあれだけの北大西洋の総指揮官だったんです。ドゴールにしたってしかり。じゃ、アメリカもフランスもイギリスもれっきとした軍国主義者が大統領をやっておったのだし総理をやっておったのだからこれらの国は民主主義国家じゃないと日本政府が言いますか。これはゆゆしきことになるでしょう。  ですから、そういう点でもってもう一回この機会に、シビリアンコントロールということがどういうことなんだということの意思統一をしていただきたい。  それで、次に聞きたいのは、統幕議長とは何をするんですか。防衛庁の組織図で統幕議長も陸海空の幕僚長も全部横並びで並んでいる。外国だったら、陸海空の幕僚長の上に統墓議長がおってその指揮命令系統をそこが持つわけだけれども、日本は、防衛庁長官が統幕議長も陸海空の幕僚長も全部指揮をとるんです。  そうすると、統幕議長は何の仕事をなさるんですかということになってくるのだけれども、その辺は防衛庁はどういうお考えを持っておるのか。どういうお考えというか、見解なんですか。
  195. 日吉章

    政府委員(日吉章君) お答え申し上げます。  統幕議長と申しますのは防衛庁設置法で認められております統合幕僚会議の議長のことでございます。  その統合幕僚会議の所掌事務でございますが、これにつきましては、防衛庁設置法第二十六条によりまして七項目にわたって所堂事務が書かれておりまして、この七項目につきまして長官を補佐することが所掌事務になってございます。  その中には、統合防衛計画の作成とか、それから防衛計画の調整に関することとかございますけれども、先生がただいま問題意識として持っておられますことに関することを申し上げますと、多分第四項に掲げられております「出動時における自衛隊に対する指揮命令の基本及び統合調整は関すること。」というあたりが先生の問題意識にミートするのではないかと思いますが、今私が申し上げましたように、防衛庁設置法では指揮命令の基本及び統合調整、陸海空自衛隊の統合調整に関することにつきまして長官を補佐する権限を有しております。
  196. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 今何を言っていたんだ。ちゃんと防衛庁の組織図をごらんなさいよ。統幕議長は防衛庁長官を補佐するなんて、何にもそんな地位にはないんです。  第一、陸海空の幕僚長を防衛庁長官が指揮をとることになっているんです。それで、先ほど言ったように、シビリアンコントロールで文民でなくちゃならぬといって、今、長官がそういうふうになっている。それで実際に、それといったときに作戦に支障を来さないかどうか。そんなこと、とてもじゃないけれども防衛庁長官だって困ると思うんです。そういう体制で今日まで来ておるんだけれども、こういうことでいいんだろうかなというふうに恐らく長官も、大臣になられてまだ日が浅いですからいろいろ細かいことはなにされないで、だんだんやっていったらその辺で壁にぶち当たって、それで自衛隊法のあり方とかいろいろそういうことについて検討しなきゃならぬときが来るんじゃないかと私は思うんです。  だから、シビリアンコントロールは厳然として保持をしなければならない。民主主義国家としての体制だけは堅持をしなければならない。そういう中にあっての自衛隊というものがどうあるべきか、今のような自衛隊の体制でもって緊急事態に役に立つのかどうなのか。大体、これはこの中にも書いてあるんだけれども、防衛出動命令なんというのは国会の承認を要することになっている。そんなことは常識で考えたってそうでしょう。あってはならぬけれども、もしもどこかから攻め込まれてきた、それといったときに、じゃ防衛出動をするのに国会の承認を得て、それから防衛庁長官がそれぞれの部隊に防衛出動の命令を出すという形、そんなことが可能なのかどうなのか。ということは、それは昭和二十九年のあのころだからそのようなことを、軽々と軍が勝手なことをしちゃいかぬというような気持ちでお書きになったと思うんです。しかし、今になって現実にこういう事態になれば、そういうことでは自衛隊は動けぬわいなあということぐらいは気がつかれる。あるいは気がつかれなかったかもしらぬけれども、いまだにそういうところへメスを入れて検討しようということもなされなかったんですけれども、防衛庁長官、どうですか、一度根本的にその辺を検討してみるというお考えにはなりませんか。
  197. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 実は私は防衛行政を本格的に進めるのは今回が初めてでございますので、しかも就任して責任は非常に重うございますけれども、新兵なんです。四十日程度でございますので。  私、いわゆる民間人として入ってまいりましたものですから、いろんな面で先生指摘のような点は私もこれでよろしいのかなという疑問はある程度持っております。しかし、私はまだ初年兵でございますので、そのことが防衛庁全体のあるいは自衛隊全体の組織を乱してはいけませんものですから、これまでの歩みもございますしこれからの歩みもあるわけでございますから、ひそかに考えてはおるものもありますけれども、今御指摘のような形で一貫したシビリアンコントロールのもとにこういう形でなければならないというものはまだ検討しておりませんものですから、将来私もできるだけ勉強して先生の御希望に沿うような自衛隊をつくるために努力をしたいと考えております。
  198. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 これは本当に大事なことですからぜひ検討していただいて、そして国の将来に向かって誤りのないようにしなくちゃいかぬことですから、大臣、そういう点でぜひそれぞれ関係者を集めていろいろ検討していただきたいと思うんです。  それは、答案用紙を防衛庁の中でもどこでもいろいろのところへ持っていって、シビリアンコントロールとはどういうことだといって書かしたらわかりますよ。まずもって十人十色の答案が出てくる。それほど違っておって、防衛庁の中ですらも、そんなことを言うと官房長は怒るかもわからぬけれども、一致していないんです。それじゃ困っちゃう。だから、政府としてその辺の統一をするような形をぜひしていただきたいと思います。  時間もなんですから、その点はそういうぐあいでお願いをして、それで今度は主権の侵害の関係についていろいろお聞きをしていきます。  大韓航空のジャンボ機が南サハリンの上空でソ連の戦闘機にミサイル撃墜されました。あれはソ連の領空を侵犯したわけじゃないです。しかも、あのときのソ連の戦闘機のパイロットは、これは民間機ですとはっきり言っているわけなんです。 しかし、地上の司令官は、いいから撃ち落とせと言って、ミサイルを二発撃ってあそこへ撃ち落としてしまった。これについて私は、あの直後にも予算委員会でやりましたけれども、言うならば、犠牲者の乗っておった飛行機は韓国の飛行機だし、撃ち落としたのはソ連だ。そういう国際関係がややこしいから、いろいろのデータを出して、この遺族の人たちの援助を、恐らく裁判になるかもわからぬだろうけれども政府として極力してやってくださいよと言って、それぞれの関係大臣から、それはいたしますという御返事を聞いたんです。けれども、今私がここで聞きたいのは、ソ連の領空侵犯はしてはいませんです。しかも、ソ連の戦闘機のパイロットが、これは民間機だと言ったにもかかわらず、文句を言わぬで撃ち落とせと言って落とされたんです。それは政府の皆さん方は十分御存じだったと思う。  それについて、日本政府としてあるいは防衛庁としてどういう見解をお持ちなのかということです。
  199. 日吉章

    政府委員(日吉章君) 先生指摘の大韓航空機撃墜事件に当たりましてソ連のとりました措置及び事実関係そのものにつきまして、私どもといたしまして正確に確認しまたコメントし得る立場にはございませんが、二つの点で私どもが了解いたしておりますのは、ソ連がKAL機を民間機と認識していたかどうかという点は、防衛庁といたしましては判断できる立場にない。KAL機が民間機であったのはこれはもう周知の事実でございますけれども、ソ連がそれを民間機と認識していたかどうかという点は確認し得る立場にないという点が一点でございます。  それから、その撃ち落とされましたKAL機がソ連の領空を侵犯したかどうかという点も、正確にはわかりませんけれども、撃ち落とされたKAL機のものと思われます航跡は、私どもはサハリンの上空を通過しているというふうに考えております。  ただ、大韓航空機を撃墜いたしましたソ述の措置そのものにつきましては、今、私は二つの点での事実関係につきまして承知していないあるいはこういうふうに理解していると申し上げましたけれども、それとは別にいたしまして、このような事件が起こりましたということは極めて遺憾なことだというふうに防衛庁といたしましても認識をいたしております。
  200. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 本来ならばあのときもあのテープは防衛庁発表したくはなかったはずだけれども、結局国際的な問題になって出したわけだけれども、今のようなことを言っておるようなことではどうしようもない。  しかも、防衛庁長官官房長官もお聞きをいただきたいんだけれども、南サハリンはあなたの今の言い方からいくとソ連の領土だということになるけれども、そういう認識を持っているんですか。
  201. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) ただいまの御質問に直接お答えすることになるかどうかちょっと自信がございませんけれども、南サハリンは、御承知のとおり、平和条約におきまして我が国が領土椎を放棄しておりまして、その帰属は国際法上未定の状態にございます。
  202. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 わかった。あれが正確な判断だ。  日本の国はサンフランシスコ講和条約でもって放棄したから、日本のものじゃないことは明らかだ。しかし、ソ連はサンフランシスコ講和条約に調印もしていない。それで日本からは離れたけれども、あの南サハリンがソ連のものだというふうなことの帰属についてはいまだに決まっちゃいないことなんだ。その上を突っ切っていったからといって何であなたのような、そういう判断でもって防衛庁の幹部がおられるから、防衛庁長官、話がおかしくややこしくなっちゃう。ですから、その辺の問題をきちんと認識をしていただきたい。  それで、これは防衛庁の方にお聞きしなきゃいかぬけれども、昭和五十年代、昭和五十年から五十九年の十年間に我が国の領空が侵犯されたのが十五回あるわけだ。その都度、外務省を通じて向こうに抗議文は送っているわけなんだ。領空を侵犯されるあるいは領海を侵犯されるということは、国家の主権を侵されたことでしょう。国家の主権を侵されたものが紙切れ一枚の抗議文を送って、それであのときの防衛庁長官は、それは外務省の仕事です、我々の仕事ではありませんとそう言って、そして外務省向こうへ抗議文をやっているだけということです。  国家の防衛を担当している防衛庁として、私はこの点について大臣の御見解をこの機会にお聞きしておきたいと思います。
  203. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 御指摘の領空領海侵犯の発生はまことに遺憾だと思うんです。したがいまして、これは本来なら防衛庁として抗議といいましょうか、それに対しては一つの措置を講ずべきものだと思うのでございますが、いろんな国際情勢その他また日本の置かれた状況等もございましてその当時の状況は御指摘のようなことに相なったと思うのでございますが、今後、領海侵犯、領空侵犯等のあった場合はやはり厳重に抗議をし対応していかなければならないものだと私は考えております。
  204. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 そういう判断で受けとめて対処していただきたいと思うんです。  そして参考までに申し上げておくんですが、大分前になりますが、ソ連の原子力潜水艦が日本の領海侵犯をしたとき、あのときに時の官房長官は、領海侵犯と受けとめるといってソ連大使館の参事官を呼んで小言は言ったわけなんです。しかし、最終的にはソ連の軍艦は二時間三十五分にわたって我が国の領海を堂々と通過していったんです。それに対して、国の最高指揮官たる内閣総理大臣も、時の防衛庁長官も、一言半句それについてどうしろという指示はそのときには出していないんです。  私は、そういうことがあるから、先ほどもシビリアンコントロールでいろいろ言いましたのもそうなんだけれども、そういうときにやはりその責任の地位にある人がきちんと指揮をとってもらわなきゃならぬ。何もそこで大砲を整って撃ち合いをしろなんて言っているんじゃないんです。あのときも後で私は当時の官房長官にも言いましたんですけれども、あれはソ連の原子力潜水艦が事故を起こしたんですから、だったら初めから領海侵犯と受けとめるなんということを言わないで、無害航行として認めるといって、事故を起こしたんだからそのまま通っていきなさいといってちゃんと通してやればいいでしょう。しかし、領海侵犯として受けとめるというならば、それなら何で海上自衛隊のあれを持っていってそれを阻止するようなことをしなかったんですか。そういうことについて、防衛庁長官が何らの指揮もとっていない、ましてや国の最高指揮官である内閣総理大臣が何の指揮もとってない。そういうことでは困るのであって、そういうときにはそれぞれの地位にある人がきちんとしていただかなきゃならないし、それが私は主権国家のあり方だと思うんです。  そういうことについて防衛庁長官、それから総理大臣はいらっしゃらないから官房長官にもお願いしておくんですけれども、内閣総理大臣が世界でも日本内閣総理大臣ほど権限を持った者はいないほどに大きな権限を持っているんだけれども、きちんとそういうときの指揮はおとりいただけますか。その点だけお約束いただきたいと思います。
  205. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) ただいま御指摘のような事故が将来起きた場合において、私たちとしては的確な措置を、やはり主権国としての権威を持ってそれに対応していく必要があろう、こう考えますので、将来ともこういう点については正しい態度で臨みたい、かように考えております。
  206. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 最高指摘官たる内閣総理大臣といたしましては法律に基づいて適切に対処することは言うまでもないことでございまして、一義的には防衛庁長官等に委任をしておることでございますので、領海領空侵犯事犯に対しましては防衛庁長官等のもとに適切な指揮が持たれ るものと考えております。
  207. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 無用なトラブルを起こせと言っているんじゃないんでして、その姿勢をきちんとしてやっていただきたいという意味で言っているんですから、誤解をなさらないように受けとめていただきたいと思うんです。  そして、あれはもう五十六年になりますか、あのスウェーデン、永世中立国といってこれは第一次世界大戦にも第二次世界大戦にも参加しなかった国ですけれども、そのスウェーデンですら、あそこへソ連の潜水艦が領海を侵して入ってきたとき、結局捕まえて艦長を連れていっちゃったんです。それで取り調べてソ連に謝罪させたんです。補償金も取ったんです。たった人口八百三十万ぐらいしかないあの小っちゃな、しかもはっきりと永世中立国といって世界の国から認められているスウェーデンですらも、国の安全ということについてはそのくらいの毅然たる態度を持ってやっている。それに比べて日本の場合には、領空侵犯されようがさっきも言うようにただ抗議文だけ外務省を通じてやる。領海侵犯されても何の手出しもできない。それではいささかもって情けないことであって、そういう点について今後とも十分対応の道に誤りないようにしていただきたいと思う。  それで、官房長官、お時間はよろしいんですか。官房長官のいらっしゃる間にもう一つ、自衛隊の使命の問題。  官房長官にお願いしたい点は、午前中同僚議員が質問しているとき、防衛庁長官が国の安全保障の云々ということについて見解をお述べになったんですが、ぜひお考えいただきたいのは、自衛隊というのは国の安全を守る、一億二千万国民の生命、財産を守る、国家、国土を守る、そういう使命を持ったものです。そうであればこそ、先ほど長官は、国民から信頼されるような自衛隊でなくちゃならないと。おっしゃるとおりで、私もじっと聞いておって本当に長官いいことを言われると思ったんですが、私なりに言わしていただくならば、それだけの大きな使命を持っている自衛隊であれば国民からもっと尊敬されるようなことでなくちゃいかぬし、それでまた自衛隊の人たちも制服のままで胸を張って町の中が歩けるようにしてあげることだと思うんです。今のような肩身の狭い思いをして、それで外出して出てくりゃ大急ぎでうちへ行って制服を脱いで背広に着かえてそれから町の中を歩くというような、こういう扱いをしておる限り、いざといったときに、先ほど大臣が言われたような形で自衛隊の諸君が動くかといったら動くわけないんだ。だから、国民から信頼され尊敬されるような自衛隊になること。そのかわり、自衛隊の諸君は胸を張って堂々と町の中を制服のままで歩けて、そのかわりいざというときは命をささげてもこの国をおれたちは守るんだという、そういうものを持っていただかなきゃならないと思うんですけれども、その辺についてどうお考えになり、これから政府としてどういう指導をなさっていかれようとしているか。これは特に官房長官の方にお聞きしておきたいと思うんです。
  208. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) ただいまの柳澤先生の自衛隊に対する期待とまたその職務を遂行することについて国民の理解を求めていくべきであるということについては全く同感の至りでございます。  最近の世論調査の指し示すところによりましても、自衛隊創隊以来、あるいはもっと言えば警察予備隊以来、その当時の国民の持つ感覚に比べれば今日は格段に理解度が深まっておるという認識もされるわけであります。しかし、国民の中の一部におきましては、なおかつ自衛隊に対して極めて批判的なお考えを持たれる向きもなきにしもあらずであります。  そうした意味で、自衛隊の皆さんが、おっしゃるように国家と国民に対してその生命と財産を守りその本旨を全うするためには、やはり誇りを持ってその崇高な職務を遂行するよう国民の方からの激励も理解もなければならないというふうに考えております。と同時に、自衛隊の幹部以下すべてにわたりまして、そうした国民の理解を得るための日々の努力もこれまた要請されるところであります。双方相まって、真に精強にして我が国を守り得る立派な自衛隊が今後ますますその責務を果たしていけるものだと思っております。そういった意味におきまして、政府といたしましてもさらに国民各界各層に対して自衛隊の存在について深い理解を得られるべく努力をいたしてまいりたいと考えております。
  209. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 官房長官、予定の時間を大分オーバーして、ありがとうございました。  防衛庁長官、先ほども十年一昔という言葉が出ておったんだけれども、十年前の防衛白書には、一般市民との差別扱いが云々というようなことが書かれておったんですね。受験しようと思ったが辞退を強要されたとか。ことしの防衛白書にはそういうのは出てこなくなったので改善されたんだとも思いますけれども、今も官房長官が言われておったんですけれども、今でもまだ時々あちらこちらで居住するについての制限を受けたり、それから国体に参加しようとしても参加させられなかったとか、そういうことも聞くわけだが、そういう差別はなくなったという判断をしてよろしいんですか。どうですか、その辺。
  210. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 私は、実は「小原台」という小説、これは防衛大学校の第四回の卒業生で蛯原康治という人が、今自衛隊山口地方連絡部長をやっていますが、小原台、いわゆる防衛大学校の生活をずっと小説化した著書なんでございます。それをその蛯原という人が私にぜひ読んでほしいというので、読みました。  そうしますと、一期から四期当時の防衛大の学生に対する世間の目というのは、税金泥棒だとまず言われるというんです、あの制服を着ておると。それからもう一つは、せっかく結婚しようと未来を交わしたお嬢さんがあったのに、防衛大学校へ入ったと言ったら途端に、やめましたと言われたというんですね。そういう時代があったわけなんです。  ところが、ちょうど二十九年に防衛庁、そして自衛隊が誕生したわけでございますが、それから戦後いわゆる四十年間、独立国として他国から侵略されない、そして平和が維持されたということは、やはり節度ある防衛力、それから日米安保体制の信頼性によるものだということが国民の中に大きく理解されてきている一つじゃないだろうか。ただ、防衛庁が一体どうなのかというはっきりした認識のもとにそれが出てきていないとしても、以前のような状態ではないと私は思います。  きのう、私、実は防衛大の視察に行ってきたんです。防衛大約二千人の諸君とお会いして、昼飯を食べながらいろいろ懇談をしてまいりましたが、蛯原康治さんの日記のような状態ではございません。かなり自信を持って、しかも自分の未来というものを日本防衛に託する、そういう使命があるんだという意識に燃えております。さらにまた、自分は海外へ出ていろいろ世界の安全保障について貢献をしてみたいというような理想を抱いている青年にもお会いしまして、その時代から見ますとかなり変わったなと、こう思います。  しかし、私は、自衛隊に対する国民の認識というのはまだ薄い、また不安な点が多いと思うのでございます。私はそういう意味で、先ほど来申し上げておりますように、自衛隊員はみずから自衛隊員として誇りを持つと同時に、国民信頼を得るような隊員になりなさい、ょき社会人になりなさいということを主張してきているわけでございます。
  211. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 そういう意味からいっても、前の中曽根総理にも一度言ったことがあるんですけれども、これだけの国家でこれだけの軍事力を持っておって、それを指揮するのが総理府の外局の防衛庁でしょう。世界にそんな国がどこにありますか。ちゃんと独立した一つの省としての資格を持たせるべきです。  それから、階級にしたって、呼び方は音と変わったわけだけれども、昔流で言うならば、今の日本の自衛隊には大将がないんですよね。だからそ の辺のところも、大将をつくったらシビリアンコントロールに影響するとでも思っているのかどうなのか、私にしたら本当に摩訶不思議だと思うんです。  それからもう一つ、これも長官聞いておいてください。前々の防衛庁長官にも言ったんだけれども、毎年朝霞でもって観閲式を行う。それは、大臣とか国会議員とかみんな忙しいからあれだけれども、せめて歴代の防衛庁長官ぐらいはあそこへ参列してあげなければ、そこでもって総理がどんなに自衛隊の使命はと偉そうに演説したって、あそこへ並んでいる自衛隊の人たちにすれば、私は腹の中でせせら笑っていると思うんです。本気でもって政府がそういうことを考えているのなら、せめて歴代の防衛庁長官をやった人ぐらいはあそこへずらっと並んでそうして君ら頑張れよと総理が言えばその気になるけれども。だから、そういう意味からいえば、自衛隊というものを一番軽視しているのは、私は国民というよりも政府だと思うんです。政府がその気がないから、結局そういうふうなものが国民にもうつっていって今のような状態になってしまっている。そういう点についてはいかがですか。
  212. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 政府というよりも、新しい憲法ができて、そうして自衛権の問題がいろいろ国会内で議論されまして警察予備隊あるいは保安庁の保安隊、それから二十九年に自衛隊になったわけですが、この歩みが、私は何か自衛隊に一つの不安を与えている要素じゃないかと思うんですね。これが一つ。  それともう一つは、そういう関係から、やはり国民もそういうような見方をする。また、政府自体も、何か自衛隊に余り力を入れますというと軍国主義になりはしないかというようなことで、そういう何となく自衛隊に余り力を入れないことがむしろある意味でのシビリアンコントロールじゃないかなどと、こういう見方をする嫌いがあるわけですよね。ですから、そうじゃなく純粋な意味で国を本当に守るのは自衛隊なんだということで、大いに頑張れよという意識をやはり国会でも与えていただければいいし、また政府もそういう姿勢で臨まなければならないと思うのでございます。  したがいまして、ただいまの観閲式における歴代防衛庁長官は、案内状は出しているんですけれども、いろいろお忙しい方々が多いようでございますので出席していないように承りましたが、今後は全員出るように私から特筆して御案内しよう、こう思っておりますのでよろしくお願いいたしたいと思います。
  213. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 もう時間もないですが、あとまだFSXの問題。  昨年の暮れにここへ竹下総理が来たときに、FSXについて、内閣でお決めになったんですかと言ったら、内閣では決めていないという答弁を聞きました。そのまんまでもう大分時期がたちましたが、といって防衛庁から出されたこういうのを見るともうちゃんと、先ほど吉川委員からF16というのは事故が非常に多いという話が出まして一生懸命私は聞いていたんだけれども、その非常に事故の多いF16を改造して日米共同開発でやるんだなんて本当に問題でありますが、これはもうきょうはやめておきたいと思います。  ただ、現在使っている支援戦闘機F1は国産でできたんです。その後継機、後の飛行機をどうするかというのが何で国産でできないんですか。何で日米共同開発をやらにゃいかぬのですか。アメリカの方ですらも、FSXを日米共同開発することによって日本の航空機産業の技術は十年から二十年間ぐらいはスローダウンするだろうなんて向こうも見ているわけでしょう。  きょうはもう余り時間がないからこの問題は宿題にしておいていただいて、そしてもう少しそういう長期的な展望を持ってお考えいただかなきゃならないし、私から言わせるならば、どう考えたって日米共同開当をするということなんかについては承服のできる性格のものじゃない。  この前もこの問題をやっていたら、防衛局長の答弁では、機数が少ないからコスト高になるから云々だとか何だとかというようなことですが、それは昭和四十五年の七月十六日に防衛庁長官決定として出している「装備の生産及び開発に関する基本方針」の中で「防衛の本質からみて、国を守るべき装備はわが国の国情に適したものを自ら整えるべきものであるので、装備の自主的な開発及び国産を推進する。」。それであのF1が生まれたわけだ。そうしたらその後、次はと言ったら今度は共同開発。  その辺、防衛庁考えているのは何を考えているんだろうかなという気になりますけれども、それは次にして、きょうは終わりたいと思います。
  214. 大城眞順

    委員長大城眞順君) 本案に対する本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後三時三十八分散会