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1988-12-16 第113回国会 参議院 税制問題等に関する調査特別委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十二月十六日(金曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員の異動  十二月十五日     辞任         補欠選任      高橋 清孝君     岡部 三郎君      永田 良雄君     井上  孝君      二木 秀夫君     仲川 幸男君      及川 一夫君     渡辺 四郎君      矢田部 理君     大森  昭君      中野  明君     和田 教美君      下村  泰君     青島 幸男君  十二月十六日     辞任         補欠選任      谷川 寛三君     佐藤謙一郎君      大森  昭君     対馬 孝且君      勝木 健司君     柳澤 錬造君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         梶木 又三君     理 事                 斎藤 十朗君                 林  ゆう君                 平井 卓志君                 降矢 敬義君                 吉村 真事君                 志苫  裕君                 安恒 良一君                 峯山 昭範君                 近藤 忠孝君                 栗林 卓司君     委 員                 井上 吉夫君                 井上  孝君                 板垣  正君                 岩本 政光君                大河原太一郎君                 大木  浩君                 岡部 三郎君                 加藤 武徳君                 久世 公堯君                 後藤 正夫君                 佐藤謙一郎君                 斎藤栄三郎君                 斎藤 文夫君                 下稲葉耕吉君                 田辺 哲夫君                 谷川 寛三君                 仲川 幸男君                 藤井 孝男君                 松浦 孝治君                 村上 正邦君                 森山 眞弓君                 千葉 景子君                 対馬 孝且君                 福間 知之君                 山口 哲夫君                 山本 正和君                 渡辺 四郎君                 太田 淳夫君                 塩出 啓典君                 和田 教美君                 橋本  敦君                 吉井 英勝君                 柳澤 錬造君                 野末 陳平君                 青島 幸男君    事務局側        常任委員会専門        員        竹村  晟君        常任委員会専門        員        片岡 定彦君        常任委員会専門        員        保家 茂彰君    公述人        東京大学教授   金子  宏君        全国粧業小売連        盟副理事長    宮本卯一郎君        全国商工会連合        会会長      佐多 宗二君        横浜国立大学教        授        宇田川璋仁君        伊勢崎市長    下城 雄索君        税制経営研究所        所長       谷山 治雄君        住友化学工業会        長        土方  武君        中央大学教授   丸尾 直美君        トヨタカローラ        愛知特需部次長  久野 靖正君        税  理  士  粕谷 晴江君        全日本水道労働        組合委員長    斉藤 親仁君        日本生活協同組        合連合会専務理        事        福山 雅夫君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○税制改革法案内閣提出衆議院送付) ○所得税法等の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○消費税法案内閣提出衆議院送付) ○地方税法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○消費譲与税法案内閣提出衆議院送付) ○地方交付税法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 梶木又三

    委員長梶木又三君) ただいまから税制問題等に関する調査特別委員会公聴会を開会いたします。  税制改革法案所得税法等の一部を改正する法律案消費税法案地方税法の一部を改正する法律案消費譲与税法案及び地方交付税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  本日は、各案につきまして、お手元の名簿の十二名の公述人方々から御意見を拝聴いたします。  この際、公述人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  皆様には、御多用中にかかわりませず本委員会のために出席を賜りまして、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして心から厚く御礼申し上げます。  本日は忌憚のない御意見を賜りまして今後の審査の参考にしてまいりたいと存じますので、どうかよろしくお願い申し上げます。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度で御意見を順次お述べいただきまして、その後で委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、これより順次御意見を承ります。  まず、金子公述人にお願いいたします。金子公述人
  3. 金子宏

    公述人金子宏君) 金子でございます。  現在、こちらの委員会で御審議中の税制改革に関する諸法案について意見を述べるようにというお申しつけでございますので、私の意見を申し上げさせていただきます。時間の関係で、まず改革案全体について簡単に意見を申し上げまして、次 に所得税の問題について意見を申し上げたいと存じております。  このたびの改革案は、所得税法人税相続税等直接税の負担軽減合理化消費税の創設を柱とする間接税制度全面的改革内容とするものでございまして、シャウプ勧告以来の抜本的改革と呼ぶにふさわしい内容のものであると考えます。  私は、次の三つ理由からその基本的な方向内容賛成でございます。  第一は、今度の改革案国民経済国民生活変化に着目しながら、全体として公平、効率、中立、簡素といった税制基本原則に沿った改革を目指していることでございます。  第二は、人の担税力三つの表現であるところの所得資産消費に対してバランスのとれた課税を行おうとしていることでございます。  第三は、今度の改革案が、急速に進行しつつある人口高齢化社会福祉の充実の必要に対応して、税制福祉型に切りかえるという意味を持っていることでございあます。  財政の統一的な運営という観点からは、消費税目的税でなく一般財源としたことはもちろん妥当でありますが、消費税は、人口高齢化に応じて今後ますます増大する社会保障支出安定財源としてその存在意義を認められていくことになると思います。恐らく、後代の人々が今度の税制改革意義を論ずる場合には、今度の改革我が国税制福祉型に切りかえられたという点を評価することになるのではないかというふうに私は考えております。  次に、所得税改革案についてでございますが、税率課税ベース課税単位の順序で意見を申し上げていくことにしたいと思います。  まず、税率でございますが、今度の改革案の最大の特色は、国税についても地方税についても、ブラケットと申しますか、所得段階の数を思い切って少なくする一方で、そのブラケットの幅を思い切って拡大したことでございます。これで給与所得者の大部分は生涯を通じて一つ税率の適用のみを受けることになりますので、今度の改革案は、実質的には納税者の大部分にとって税率がフラットになったのと同じ意味を持っているのではないかというふうに存じます。しかも、今度の改革では、全所得階層を通じて所得税がかなり大幅に減税されることになっておりますので、給与所得者が今まで持ってきた重税感負担累増感は著しく緩和されることになると思います。  また、今度の改正案では、最高税率地方税を含めて六五%と大幅に引き下げられておりますが、これも妥当であると考えます。シャウプ勧告においても指摘されておりますように、税率が高過ぎますと勤労意欲の喪失、脱税や租税回避の蔓延といった好ましくない結果が生じます。また、高過ぎる累進税率は、いろいろな特別措置導入の口実に使われることもございます。そういう意味で、今度の税率の引き下げは妥当な措置であると考えております。  もっとも私は、富の格差が増大し過ぎることは好ましくないと考えているものでございます。富の格差が増大し過ぎますと、社会的な不安定が生じることがございますし、それから場合によっては、社会的な沈滞が生ずるという危険もございます。我が国社会的活力とか国民の旺盛な勤労意欲、こういうようなものの一つ源泉は、戦後社会における経済民主主義と申しますか、経済的平等にあるというふうに私は考えているものでございます。そういう意味で、富の格差が増大し過ぎるのを防止するためには、ある程度累進税率を、ある程度のと申しましたのは相当程度のという意味でございますが、累進税率を今後も維持していく必要があるというふうに考えております。  次に、課税ベースの問題に移りますが、今度の改革案では、各種人的控除引き上げによりまして課税最低限が大幅に引き上げられております。言うまでもなく、これは最低生活費控除のかなりの実質的な引き上げ意味しているわけでありまして、好ましい改正であるというふうに考えます。  ところで、課税ベースについて特に注目されることは、株式等譲渡によるキャピタルゲイン課税対象に戻されたことであります。有価証券譲渡益は、戦後課税対象に含められておりまして、それからシャウプ勧告では譲渡益課税と申しますか、キャピタルゲイン課税についての重要性というのが非常に強調されていたわけでございますけれども昭和二十八年の改正で一般的に非課税とされて以来、長い間にわたって原則非課税とされてまいりました。しかし、キャピタルゲイン所得の一種でございますので、公平負担観点からはこれも課税対象とすべきことは当然でありまして、課税対象に戻すべきだという議論税制調査会でも繰り返し行われてきたところでございます。それが今度ようやく実現したわけでございまして、これは所得税制の歴史の上で非常に大きな意味を持つ出来事であると私は考えております。  課税方式としては総合課税分離課税二つが考えられます。この点につきましては、今度の改革案では分離課税方式が採用されております。すべての所得は同じように課税すべきものであって、キャピタルゲイン例外であってはならないという原理論からすれば、もともとは総合課税対象とされるべきものであります。しかし、次の二つ理由から、当面は分離課税方式を採用するのはやむを得ないところであると思います。  一つは、キャピタルゲイン把握と名寄せがなかなか困難だという執行上の問題でございます。この点では今後把握体制の整備を図っていく必要がございます。  いま一つは、昨年の改正利子所得について二〇%の税率源泉分離課税制度が採用されたことでございます。この改正は、非課税利子課税対象に取り込んだという点で非常に重要な改正でございましたが、課税方式についてやはり議論があり、結局は分離課税に落ちついたことは御高承のとおりでございます。  そこで、利子に対しては二〇%の分離課税をしておき、他方でキャピタルゲインに対しては総合課税を行うことにいたしますと、資金が株式投資から他にシフトして税制中立性を失うということになります。したがって、税制投資中立性を維持するためには、利子と同じ取り扱いをする必要がございます。したがって、利子の場合と同じように二〇%の税率分離課税を行うことは妥当な措置であると考えます。私は、今度の株式譲渡益課税の案はなかなかよくできているというふうに考えている一人でございます。  ただし、所得税の建前からいえば、分離課税はどこまでも例外でございます。利子キャピタルゲイン給与所得事業所得と比べて担税力が低いわけではございませんので、もともとは給与所得事業所得と同じように課税されるべきものであります。もちろん、長期譲渡所得の場合は長期間にわたって累積してきた価値の増加でございますので、したがって何らかの平準化措置は必要でございますけれども、他の所得と同じように課税するのが原則でございます。したがって、将来の方向としては、利子キャピタルゲイン総合課税対象とするように持っていっていただきたいと思います。昨年の所得税法改正の附則で利子課税方式の五年後の見直しが規定され、また今度の改革案について衆議院の修正でキャピタルゲインの四年後の見直しが規定されているのもそのような含みを持ったものであるというふうに理解しております。  ただ、私は、先ほども申し上げましたとおり、今度の改正案キャピタルゲイン課税対象に戻されたこと自体を、長い間の懸案を解決するものとして高く評価しているものでございます。  なお、いわゆる医師優遇税制についても今度の改正案見直しが行われておりますが、これも長い間の懸案を解決する措置として妥当なものであると考えております。  残り時間が少ないかと存じますけれども、三番目に課税単位の問題についてごく簡単に申し上げ ます。  戦後、我が国所得税制は、課税単位については個人単位主義を採用してまいりました。ただ、若干の家族単位主義を加味する形で個人単位主義を導入してまいりました。今度の改革案では、資産合算制度が廃止されることになっておりますので、一層個人単位主義に純化していくということになります。まだ若干の家族単位的な要素は残っておりますけれども、従来に比べるとそうなると存じます。  この点については、家族単位主義あるいは夫婦単位主義一つの考え方でございまして、それ相応のメリットはございますけれども税制婚姻中立性という観点、あるいは今後は婦人も社会に出て大いに活躍するようになるであろうというような点、その他ライフスタイルの変化などを考えますと、当面は個人単位主義を維持し、将来この問題はなお検討を続けるということが妥当な措置ではないかというふうに考えております。  簡単ですが、以上、私の意見を申し上げさせていただきました。
  4. 梶木又三

    委員長梶木又三君) どうもありがとうございました。  次に、宮本公述人にお願いをいたします。宮本公述人
  5. 宮本卯一郎

    公述人宮本卯一郎君) 宮本でございます。中小企業を代表いたしまして意見を申し述べます。  私が属しております大型間接税反対中小企業連絡会は、およそ二百五十の業種、団体が加盟しており、その傘下事業所の数はおよそ二百万、間接構成人員の数、つまり家族従業員の数は一千万人を超えております。  さて、消費税問題が論議され始めましてから中小企業納税姿勢を批判するような言葉を時折耳にいたしますが、私どもはその都度まことに残念に思ってまいりました。この際はっきり申しておきますが、私ども中小企業国民の一員といたしまして納税の義務は十分に承知しておりますし、また大多数の企業は極めて正しい納税を行っております。そして、思想的にも大変に穏健でございます。二年前の衆参同日選挙のときには、私どもは総力を挙げて自民党を支持いたしました。しかし今、私は社会党の推薦でこの席に立っております。一体これは何を意味しますか。私どもは現在自民党に対して限りない怒りを抱いております。そうして、声を大にいたしまして消費税反対を叫びます。  なぜ反対なのか、その理由を申し述べます。  政府与党は、行政改革不公平是正もほとんど行うことなく消費税を導入しようとしておりますが、これらを的確に行うならば財源は十分に生じるはずです。例えば役所に行ってみますと、余り仕事をしていない役人がごろごろしております。行政官庁どももっと簡素化すべきです。そうして、行政官庁を通じてばらまかれる補助金等も実にむだで不公平なものが多く、その相当額が、特定政党の圧力によって特定政党の票につながるように、ばらまかれているということは多くの国民が知っております。また、現在の税金は弱いところ、つまり取りよいところから取って、強いところは大優遇というのが実情です。今私が申しましたのはほんの一例ですが、これらを改革、是正しただけでも財源はあり余るほど出てきます。  次に申したいことは、六十一年七月の衆参同日選挙のときに、与党大型間接税は導入しないとはっきりと公約いたしました。だから、衆議院でも三百の議席をとったんじゃありませんか。しかるに、三百の議席をとってしまうと今度はその議席の上に大あぐらをかいて、やれ売上税だ、やれ消費税だ、国民をばかにするのもいいかげんにしてもらいたい。政府与党がいかに詭弁を弄そうとも、今導入しようとしている間接税、すなわちこの消費税公約違反紛れもない大型間接税なんです。だからすべての世論調査の結果は、圧倒的多数で消費税絶対反対です。竹下内閣支持率日ごとに低下しているじゃありませんか。しかし政府与党は、この世論を踏みにじって消費税を導入しようとしており、民主主義の何たるかを全く理解しておりません。  私はここに、ある週刊誌のコピーを持ってまいりました。この中に五ページにわたりまして「新税ねらう笑顔の恫喝」という記事が掲載されております。その内容は、消費税に関する記事ですが、国税局長商工会議所の会頭を食事に誘うとか、元通産大臣がこの前の売上税のときにこれに反対したある有名な団体会長の追い落としをしたとか、国税庁の幹部青色申告会幹部に対して、自民党税制調査会幹部が怒っているので謝りに行きなさいと言ったとかというものなんです。つまり、政府与党が一体となって各方面を恫喝し、籠絡しているという記事なんです。  そしてもう一つ、これはある新聞の八月二日の記事ですが、中小企業庁が中小企業団体消費税反対に関し、幹部発言、行動までも克明に調査していると、こういう内容です。これもほんの一例でありまして、政府与党が結託して恫喝籠絡によって消費税反対運動を抑圧しようとしていることは、これまた紛れもない事実です。これはまさしく言論、思想の抑圧であり、民主主義を根底から覆すものです。この政府与党を見ておりますと、かつての特高警察、治安維持法がほうふつとしてまいりまして、民主主義の危機を感じます。  折りしも、リクルート疑惑がますます根深い様相を呈してまいりましたが、これには竹下総理を初め政府与党の大幹部がずらりと連座しております。また、議員やその派閥の金集めパーティーが盛んに行われ、中には一夜で純利益十億円のパーティーもあると報じられております。  さて、このようなぬれ手でアワの金には税金が一銭もかからない、こんなばかなことが許されていいんですか。消費税はこんなばかげた連中によって導入されようとしているんです。このような不逞やからに(発言する者多し)まじめな中小企業が、善良なサラリーマンが……
  6. 梶木又三

    委員長梶木又三君) ちょっと公述人に申し上げますが、「不逞やから」というのを訂正してください。
  7. 宮本卯一郎

    公述人宮本卯一郎君) 額に汗して働いて、その中から税金を納める、その厳しさが何でわかりますか。だから、消費税には絶対に反対します。あなた方がいかにやじろうとも、殺されようとも反対しますよ。政府与党は、消費税を導入しようとする前に行政改革を徹底的にやりなさい。不公平税制を徹底的に是正しなさい。そうすれば、消費税を導入しなくても財源は十分にあり余るほど出てきます。  そうしてリクルートに関係した議員は、たとえ法的には問題なくても、道義的には重大な責任があります。総理でも、政党の党首でもこの際潔く議員辞任すべきです。消費税の論議はこういうことをきちんとやってからやりなさい。こんなことは小学生でも知っているんです。それがなぜできないんです。そうして、与党がどうしても消費税を導入したいのなら衆議院を解散し、弱い者いじめの消費税を導入しますよとはっきり言ってから総選挙をやりなさい。私ども間接構成人員を含め一千万を超す中小企業は未曾有の悪税である消費税には絶対反対します。それゆえに消費税賛成議員は次の選挙で必ず落選させます。(「余計なことだよ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)  参議院はかっては政党色のない良識の府と言われました。参議院は、今初心に返って、この悪税消費税を廃案にすることを強く要望します。私のこの発言に随分やじを飛ばしている議員もおられますが、そういうことをしておりますと、リクルート議員同様、後日必ず後悔します。後悔先に立たず、この言葉を肝に銘じてください。厳しく警告して、私の意見開陳を終わります。
  8. 梶木又三

    委員長梶木又三君) どうもありがとうございました。  次に、佐多公述人にお願いいたします。佐多公述人
  9. 佐多宗二

    公述人佐多宗二君) 私は、全国商工会連合会 会長佐多でございます。  ただいま審議中になっております税制改革法案外法案について意見を申し述べさせていただきたいと存じます。  まず、総論から申し上げると、我が国におきまして今後の高齢化社会の到来と経済社会の一層の国際化を踏まえ、経済活性化を図りつつ、福祉社会をよりよく確実なものとしていくために、時代に即応していくことが必要だと思います。  私は、三十五年前に県会議員に立候補いたしましたが、その信念を申し述べたことを記憶いたしております。  まず第一に、国民に腹いっぱい食わせる政策を打ち出しました。三度三度の食事、いわゆる糧度を足らしめるのが政治の初めなり、と叫びました。二番目には、社会保障の充実した社会社会治安が必要であるということから、言葉にして、まくらを高くして国民を休ましむるは政治の半ばなり、と言ってまいりました。三番目には、高度文化の恩恵に浴せしめるは政治の終わりなり、と申してまいりました。  三十数年間にこのような経過をたどって我が国が世界に奇跡をつくったことは、戦後の政治が正しかったと思っております。そのために、改革に当たっては、その基本としましては、高いか安いかの議論をする前に、税制は公平でなくてはならないと思います。第二に、税制国民の前に中立でなくてはならないと思います。そして第三には、できる限り簡素でなければならないと思います。基本的な方向として次の諸点を政府に要望いたしてまいりました。  第一に、行財政改革をさらに推進し、歳出の削減、合理化を徹底することであります。第二に、公平で簡素な税制を目指すことであります。第三に、二十一世紀の国際的日本社会を展望したものであることであります。  これらについて、今回の税制改革法案におきましては、一つ目には中堅所得者層税負担重圧感不公平感を解消するために思い切った所得減税の実施であります。二つ目には、企業活動を活性化するために法人課税の一層の減税であります。三つ目には、近年の地価高騰の中で重税感が強まっておりまする相続税についての思い切った減税、合理化であります。四つ目には、いわゆる不公平税制の是正については、有価証券譲渡益原則課税化など、課税の適正、合理化の推進であります。五つ目には、現行間接税を抜本的に見直し消費全般に広く薄く負担を求める消費税を創設するとともに、酒税等については時代に合った抜本的改革を行うことであります。したがって、私どもの要望はおおむね政府案に配慮されつつあると判断をいたしております。  しかし私は、政府改正案を見て賛成という前に、反対はしないという立場に立っております。  それでは、所得税法等の一部改正法案並びに消費税法案について具体的に申し述べさせていただきたいと存じます。  まず、所得税法等の一部改正法案についてであります。  その第一は、個人所得課税負担軽減についてであります。  所得税については、昭和五十年代以降大幅な減税が行われていないということ等により、国民の多くが重税感を持っております。特に、中堅所得者層税負担重圧感不公平感が強いのであります。消費税の導入ということになれば、これは消費者の負担増となってまいります。したがって、所得減税は思い切った大幅な減税、例えば消費税に伴う増収を上回る大幅な減税とすることが最低限必要であるとともに、税率の段階を簡素化する必要があります。さらに、所得減税は、消費税の導入以前に実施し、国民重圧感不公平感を排除すべきだと考えます。改正法案はこれらの点について配慮されており、評価できると思うのであります。十二段階を五段階の案にするなどしているようであります。  第二は、法人税についてであります。  我が国では、従来所得減税の財源として法人税引き上げを行ってきていることもあり、法人課税負担水準は、実効税率で五一・五五%となっており、主要先進諸外国の例を見ましても高率となっております。したがって、我が国経済活性化を図っていくためには、少なくとも国際水準までの負担軽減を図るなどの措置が必要だと考えます。  今般の改正法案におきましては、現在四二%の基本税率が三七・五へ、また中小法人では三〇%が二八%に引き下げられるとされております。おおむね評価できると思います。中小法人については、競争の公平性からも、生協等と同率の二七%に軽減が図られるよう、ぜひお願いをいたします。  第三は、相続税等についての軽減合理化であります。  相続税については、昭和五十年以来、制度基本見直しが行われておらず、重税感が強いのであります。したがって、商工会では相続税の軽減合理化について、従来から強く要望してきているところであります。改正法案におきましては、課税最低限が現行の二倍に引き上げられているとともに、最高税率も七五%から七〇%に軽減されていることなど、軽減合理化が図られており、評価されるべきものと思います。  しかし、商工会としては、さらに次の三点を要望したいと思います。  一つ目は、個人事業者の事業用土地等に生前一括贈与の贈与税納税猶予制度を創設することであります。これは農業用資産のを見て気づいたわけでございます。二つ目は、中小企業事業承継税制に関し、土地等の事業用財産について、特に低率としていただくようにお願いをいたします。三つ目は、同族法人の取引相場のない株式の評価については、一定規模の土地等の評価減額を行うことであります。  第四としては、負担の公平の確保についてでありますが、国民の税に対する不公平感を排除する必要があり、そのためには所得消費資産等の間に均衡のとれた税制を確保することが重要であります。国民が公平感を持って納税できるよう、安定的で信頼感のある税制としなければならないと存じます。  改正法案では有価証券譲渡益課税社会保険診療報酬課税の特例について一定の改善を見ております。まだ不十分であると思いますので、一層の改善を期待するものであります。宗教法人課税につきましては、今後とも御検討をお願い申し上げます。  次に、消費税法案についてであります。  空にはジェット機が飛び、陸には新幹線が走り、海は高速艇で結び、日本も世界に負けず、高度な社会になってまいりました。過去を顧みますと、農地の改革、新円切りかえ、財産税法、増加所得税法等の数多くの革命的変遷がなされましたが、大型の所得税減税等を実施し、不公平税制の是正を行うとともに、引き続き、行財政改革を推進することを前提としていただきたいと思います。仮に消費税の導入が必要であるとするならば、竹下総理が述べられた消費税導入に伴う八項目の懸念に十分対応していただき、所得消費資産等のバランスをとり、負担の公平に留意した上で導入すべきであると考えます。しかし、導入に際しては、次の七項目について強く要望をいたします。  その一つは、転嫁できる措置を講ずることであります。その二は、一定水準以下の生業的企業非課税とすることであります。原案の三千万以上をぜひともお願いをいたします。その三は、簡易課税制度を認め、事務の煩雑さを排除することであります。その四は、税率引き上げについては歯どめをかける措置をとることであります。その五は、課税期間を決算期に合わせることであります。個人については暦年と原案になっているようでありまするが、そのとおりお願いをいたします。その六は、非課税品目は原則として認めないことであります。その七は、現存の間接税については原則として新しい消費税に一本化することで あります。  また、消費税の導入に当たっては、中小企業に対する影響を最小限度にしていくことが必要であります。特に、小規模事業者に対する記帳及び納税など事務負担軽減合理化するために、商工会等を中心に消費税の導入のための人的、財政的支援措置や記帳機械化支援措置等円滑な対策をお願いいたします。  また、小売商業者及び下請事業者に対する価格転嫁対策をあわせて進めていただくことが導入に当たっての大前提であり、これらの諸施策を明確に講ずることにより、中小企業者が抱く消費税導入に当たっての各種の懸念を解消していくことが必要であると思います。  したがって、昭和六十三年度補正予算等において次の三つの事業が特に必要でありますので特段の御配慮をお願い申し上げます。  一つは、商工会及び商工会議所による記帳代行オンライン化事業推進のための基金の創設であります。二つ目は、商工会及び商工会議所による消費税に関する相談、講習、研修等の実施であります。三つ目は、各種広報事業の実施についてであります。  以上、私の意見を終わりましたが、なお、昨日の夜、日本橋の問屋さんの代表の方が来て、積極的なPRの実施、転嫁のできる措置、コンピューター処理が可能な実施期間の弾力的措置などをぜひお願いしてほしいという要請がありましたので、この機会に申し添えさせていただきたいと存じます。  まことに御清聴ありがとうございました。
  10. 梶木又三

    委員長梶木又三君) どうもありがとうございました。  次に、宇田川公述人にお願いいたします。宇田川公述人
  11. 宇田川璋仁

    公述人宇田川璋仁君) 宇田川でございます。  本日のような税制改革のいわばクリティカルなポイントで私の意見を述べさせていただけるということは大変ありがたいと思うわけでございます。  私は財政学者の末席にいるものでございますが、ただ、税制とか財政を勉強する場合、当然のことでありますが、私はそれを政治経済学的に眺めなければいけないと思っているわけでございます。そういう公の問題については、そのような政治経済的に分析するという方向は当たり前のことでありますが、経済学の方でそういうアプローチがようやく進められまして、私のアメリカの恩師はおととしそのようなアプローチですばらしい仕事をしたということでノーベル賞をとりました。  そういうことで、私は本日、税制の細かい議論よりも、そういう税制の見方といいますか、あるいは税制の考え方、そういう点についてお話というか私の意見を申し上げさせていただきます。  それはまず、どういうことかといいますと、税財政その他行政、私ども国民に深くかかわるそういう問題、これはもちろん政治的に処理されるべきものでありますが、政治的に処理されるべきものの決定の仕方は、今日デモクラシーのもとでは、もちろん我々が、一般国民が投票する、しかしその上に立って政治家の方々とか役所の方々とか、あるいは財界の方々あるいはその方々のいわばロビー的活動、全体としてそういう形で世の中の政治決定は行われるわけでありますが、その政治を行ういろいろな、投票者も含め、それから政治家の方々も含めて、政治家の方々というか、あるいは投票者もすべて普通の人であるという認識なんであります。つまり、普通の合理的な個人、もっとはっきり申し上げますと、神でもあるいはプラトー的な賢人、君主でもない。つまり、合理的で自分の許された利益は追求する。  これは、そういう認識で政治的な現象を見なければならないといたしますと、特に政治の場合にはルールが必要なわけでありますから、そのルールがきちんとしていなければ、そのルールに基づいて自己の利益を追求するということは当然あり得る。そうすると、ある好ましくない現象が起こったとすれば、その個人を責めるよりも、そのルールに実は欠陥があるということを認識しなければならない。だから、世の中の政治決定に当たって一番大事なことは、きちんとしたルールをつくることだ、こういうことを私は学び、今とりわけそういう気持ちを強く持っているわけでございます。  税制に限りますと、税制の中心は、たとえ消費税問題があるといたしましても、そのルールの中心は所得課税であります。所得課税につきましては、中心である所得課税に実は本来のルールそれ自体に欠陥がある、だからいろいろな問題が生じたということであります。要するに、ルールを問題にするということであれば、我々だれでも、国民すべてが乏しいのはそれぞれの国の状況によって不満はないかもしれない、しかしそのルールが不公正であれば、等しからざるものであれば怒ることおびただしいのは当然であります。そういう意味で、ルールの欠陥があれば、すべての人はそのルールの欠陥を徹底的に利用し尽くすものであるから、利用し尽くす個人よりも責められるべきものはルールだというふうに私は考えるわけであります。  今日の法人税所得課税を含めてそういう近代的な税制というものはすべての国で行われている。いわばそういう意味で、もう世界的な共通の枠組みというものがあるわけですね。幸い我が国においては昭和二十四年、シャウプ博士によっていわば目の前にこれが所得税というものだよというものは見せられていたわけであります。それが今日に至るまでにその原点が大分崩されてきてしまった。  所得を大きく分ければ、給与、それから資産は目に見える資産と目に見えない資産がありますが、土地からの売買益を含めた資産というものは、土地はビジブルで目に見えるものでありますから、いろいろ問題ありとしても、それなりに資産としての土地からの収益がつかまえられる。ところが、問題は金融資産だったわけであります。シャウプは、御存じのとおり銀行預金はすべて預金者の実名であるべきだと。世界のルールであります。有価証券はすべて登録制である。キャピタルゲインは全額課税所得に含めよと。これは何の突拍子もないことを言っているんではなく、それがルールなわけであったわけであります。ところが、特に金融資産について大きくゆがめられた。  私のある経験をお話しすることをお許しいただきたいんでありますが、私は財政学者であります。私は大学紛争で講師をやめたんでありますが、長年国税庁の税務大学校の財政学の担当を十年もやりまして、紛争でやめるときは国税庁長官からよく長くやってくれたという記念杯などもいただいたわけであります。そのとき、私ども外部にいるとなかなか税務の細かいことはわからないで試験をやりますものですから、税務職員の方に今日の税制であなた方が見て一番好ましくない不公平なものは何かということを書いていただいたわけです。そうすると、異口同音といいますか、八割、九割の多くの方が金融資産からの所得把握が不十分だと。それはルールの欠陥であると同時に、金融機関の非協力で、それは単に所得税制を不公平にしているだけじゃなくて、そのまま相続税制の不公平に連なるということで、いわば税務のディテールを知り尽くしておられたそのころの、あるいは今日でもそうかもしれませんが、税務署の第一線の方々はそう私に答案として毎年示してくれておりました。そういうことがずっと続いていたわけであります。  今日まで手つかずで、ようやくいろんなものを含めて今日の税制改革が行われようとしているわけでありますが、もうそういうことは単に専門家のいわば実態把握ではなくて、今日の所得税改革しなければだめだと、それが税制改革の最大の課題だということは国民のまさしくコンセンサスであると言うべきであると思います。  それから、税制というものは非常に細かにわたるものですから、例えば不公平とはどの程度不公平だということはなかなかわかりづらいんでありますが、終戦後あるいはシャウプ先生が出したこ ろと違って、今日は財政学者、経済学者の分析能力はすばらしく進歩しました。そのためには学問も計量経済学とかコンピューターの処理とか、したがいまして今や税制の分析は民間で十分やっているわけですね。例えば財政学者でも、私の若い親友であり世界的に名をなされた本間大阪大学教授などは、この税制改革について極めて精力的にこの数年間税制改革はどういう姿を国民にもたらすかということを分析している。  つい最近も、本間氏をキャップとする斉藤その他私の若い親友は発表しているわけでありますが、そんなわけで、今や税制についてはどこが欠陥かということは、もうすべて一般国民サイドで、学者などがいわばリーダーシップをとることと思いますが、そういう分析能力ができている。それは貴重なインフォメーションとなってすべての人に理解されているということでありますので、ルールがきちんとしなければならない。ルールというものはそれを覆い隠せないという状況になってきているわけでありまして、それは大変いいことだと私は思うわけであります。  最近、この十一月ごろですかに出た本間君たちのグループの分析、彼はそういう世界的な学者でありますから私は大いに信をおくわけでありますが、彼の指摘を三つほど指摘させていただきたい。私もそれに合意したいと思います。  それは一つは、五十年代半ばまでは確かに多く言われておりますように、所得分布には平等化の傾向が見られた。しかし、それ以後、五十年代半ば以後は、所得、金融資産については平等化傾向は見られないというのが一つであります。  それから第二は、政府御提案のキャピタルゲイン、これは五%が利益で、二〇%、一%というこれが原則課税という方向でありますが、そういう原案の課税の案を実施しても、キャピタルゲイン課税はそれをしない場合とほとんど変わらない。しかし、総合課税を行えば、今、政府が御提案の一〇%から五〇%という五段階に非常に簡素化されて負担を低める。そういう場合でも、これを総合課税すれば所得の再分配には大きく貢献すると。  それから三番目、よく言われることは、消費税の導入は、今まで漏れていたものを消費の段階で課税するからクロヨン問題の解決に大きく寄与するというようなことも言われているわけでありますが、本間君たちの実証分析によれば、勤労者、自営業、個人経営者すべてを通じてこのルートで間接税を課することによるこのクロヨン解消はほとんど見られない。少しはあるんでありますが、余りないと。  時間でありますので、最後に私の結びとさせていただきたいわけでありますが、こういう実証分析、これはいわばそのデータも分析の方法まで発表されておりますから、我々はそれについて当然おまえのここは間違っているとかこれはということは言えるわけで、そういう意味でいろいろな実証の仕方をフォローすることはできるわけでありますが、しかし私は、彼は我が国若手の財政学者の第一流の人でありますから、私もその能力を買っておりますからそういうものをかなり信用しますが、それを見ましても、また今日世上で日々新聞にあらわれているようないろいろな事件を見ましても、必要なのは所得税改革である。そして所得税改革を中心とすることによって、そして今まで政府御当局がねらっていらっしゃる税率の簡素化、クロヨン解消、老齢化社会に対処できる、そして法人税を引き下げて国際化にも対処できる、そういうすべて提示されている課題は、所得税改革しきちんとしたルールを基礎にすることによって全部可能だと、これはまた本間氏なんかのグループでもあるわけですが、やはりすぐれた財政学者である八田達夫氏の、ことし出た「直接税改革」というすばらしいいい本があるわけでありますが、その中で物の見事にそういうことを解明しているわけであります。  したがいまして、私はここで最後に言いたい結びといたしましては、今言ったことの繰り返しでありますが、今日税制改革でやりたい高齢化国際化法人税引き下げ、所得税の簡素化、これはすべてその所得税改革の線の上で実現できるものだ、したがって消費税は不要である、こう申し上げて私の話を終わらしていただきます。  ありがとうございました。
  12. 梶木又三

    委員長梶木又三君) どうもありがとうございました。  以上で公述人各位の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  13. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 御指名をちょうだいいたしました自由民主党の斎藤文夫でございます。きょうは四人の公述人方々には大変御多忙のところ御出席をいただきまして、ただいまは貴重な、まためったに聞かれないような御意見まで拝聴させていただきまして、まことに得るところ大でございました。  私どもは、実は税制改革論議はもう十年来にわたって、またそれぞれの内閣のときにも問題を提起し、与野党間でかんかんがくがくの論議をいたしてまいりましたし、また政府税調においても長年にわたり論議を交わしてきておられるところでございまして、いわんや思いつき等でぽっと出したというようなことは全くないところでございます。  そこで、実はきょうはそれぞれの公述人方々に真剣な税制の御質問を申し上げるつもりでおったところでございますが、冒頭申し上げなければなりませんのは、先ほど宮本公述人意見を聞いておりまして、賛否はどうあろうとも真剣に私どもはお聞きをして、そしてお互いに論議を積み重ねていく、反対意見にも十二分に耳をかしていく、これが私ども自民党のとってきた立場であると私は確信をしております。  そういう中で、全く先ほどは中身のない感情論むき出しのお話を拝聴さしていただきました。私どもが多数議席を誇っておりまして、数の論理でもしも解決するとするならば、本法案も一気かせいに決まるところでございます。また、それを一つの議会制民主主義だ、こう評価をしておられるグループもあるところでございます。しかし私どもは、お互いに意見の違う者同士が粛々として論議を交わしていこう、いやしくも、言論の府としての尊厳を私どもは高めながら、二院制の意義、あるいはまた参議院の独自性をしっかりと確立をしていきたい、こういうことで今日まで努力をしてきておるところでございます。だからこそ、今日参議院においては真剣に与野党間で論議を交わしておられることはテレビ、新聞でそれぞれの皆様方がよく御承知のところでございます。  考え方によりますれば、先ほど民主主義の危機だという御指摘がございましたが、民主主義が健全に機能しているからこそ宮本公述人のまさにびっくりするようなお話もこの場で聞かれたわけでございます。私どもはあなたのお話を拝聴しておりまして、ばかにするのもいいかげんにしろとか、政府与党恫喝だとか、おまえらは不逞やからだとか、そしてまた、選挙で落選させるぞ、後で後悔するなと逆に恫喝をされるような、実は感情むき出し論の御意見の開陳を拝聴いたしまして、本院における審議の上で私はまことに遺憾な御発言だと思っておるところでございます。立場の違いだけでは済まされない。したがいまして、宮本公述人に対する質問は私は中止をいたします。  さてそこで、まず金子公述人にお尋ねをさせていただきます。  いろいろのお立場で得るところをお聞かせいただいたわけでございますが、宮本公述人が、行革をすれば、あるいはまた不公平税制改正すればもう財源はあり余っているよと、こういう御指摘をいただいたところでございます。私どもは今日まで、例えばこの五年間、人員削減は二万三千三百人、そして補助金カット八千億、あるいはまた予算はゼロシーリング、経常費一〇%カット、さらには国鉄あるいは電電、専売、それぞれ野党の あれだけの激しい反対があったにもかかわらず民営化をして軽量化を図ってきたところでございます。今後もさらに食管会計その他等々一生懸命出費を抑制するべく行政的な改革を進めていくわけでありまして、税制改革行政改革というものは一本でやってきておるところでございます。  それだけに、先ほどそういう御意見がございましたけれども、これからの二十一世紀を展望して、高齢化時代あるいはまた国際化時代、本当にシャウプ税制をその都度手直しをして継ぎはぎだらけのこの税制で乗り切っていくことができるんだろうか、あるいはまた、おっしゃられたような財源がこれからも続々と出てくるのか、こういうことについて御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  14. 金子宏

    公述人金子宏君) お答え申し上げます。  行政改革不公平税制の是正によってかなりの財源が生み出されるということは確かだと存じますが、それは今後の財政需要の増大を賄い切れるものではない、ごく一部分しか賄い切れないであろうというふうに私は考えております。そして、実を申しますと、今お話がございましたように、行政改革はかなりのテンポでかなりの程度に進行してきているというふうに私は実感しております。それは、私どもの大学の例を一つとりましても、非常に切り詰めたやりくりが必要とされてきている。建物のメンテナンス一つにしても大変に苦労しているというようなこともございまして、身近に行政改革が進んでいるということを実感しております。  それからもう一つ不公平税制のことでございますが、確かに我が国にはいろいろな不公平税制がございました。現在でもございますけれども、徐々にオイルショック以降それが是正されてきているということは確かであろうと思います。  それで、昨年の利子税制度の改正、これも今まで非課税だったものを課税対象に取り込むというわけで、これは画期的な改正でございましたし、今度のキャピタルゲインも、今まで非課税のものを課税に取り込むということで、これも大きな改正でございます。そういう形で不公平税制の是正も非常に進行してきているというふうに言ってよろしいと思います。これは、税制というのはいろいろな政治的な関係の中で生み出されるものでございますから、不公平税制を完全に払拭するということはなかなか困難ではございますが、かなりの程度に進んできている。そして、外国と比較しても、我が国不公平税制程度というのは少ない方であるというふうに現在の時点では言えるかと思います。ただ、もちろんまだ残っておりますので、それをいろいろな形で是正していっていただきたいと思います。  そういうわけで、行政改革不公平税制の是正だけでは必要な財源を賄うことはできないであろうというふうに私は考えておりまして、高齢化社会が既に進みつつあるわけですが、今後さらにスピードを増していく、それにつれて社会福祉財源が必要になっていくわけですが、そういう意味では税制を今のうちに福祉型に切りかえておくということがどうしても必要なのではないかというふうに考えておりまして、その意味で一般的な消費税、広く薄く課税するような消費税の必要性が非常に大きいというふうに考えているわけです。この辺は私の同僚あるいは知り合いの財政学者、経済学者の中でも意見は分かれておりますけれども、むしろその必要性を強く認識している人々が多数であるというふうに私は思っております。  直接税の改革、特に所得税改革については確かにシャウプ博士のおっしゃった線に戻っていくということが私は必要であると思います、公平負担観点から。しかし、シャウプ勧告のころは、今日のように経済の規模が大きくなり、そして社会福祉支出が増大するというようなことは恐らく予想されなかったと思います。そういたしますと、そういう意味ではやはりシャウプを超えることが必要なのではないかというふうに思います。それで、早目に福祉型に税制を切りかえておくという必要が非常に大きいというふうに思っているということだけを申し上げておきたいと思います。  以上でございます。
  15. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 重ねて金子公述人にお尋ねをいたします。  実は、いろいろこの委員会を通じまして反対理由というものは聞かせていただいてまいったところでございます。たくさんございますので、さっと題目だけ申し上げます。  例えば、公約違反である。総理の八つの懸念が解消されない。あるいは再配分機能を阻害して金持ち優遇税制につながる。あるいは先ほどもありましたが、行革を先にすべきではないか、そして不公平税制を先に解決をしろというようなこと。さらに消費税につきましては、時期が早過ぎる、拙速を避けて中長期的に見直すべきではないか。あるいは消費税の持つ逆進性が不公平を拡大する、弱者へのしわ寄せとなるではないか。あるいは物価が上昇する、家計直撃、インフレ懸念、こういうようなことも言われている。さらには税制に歯どめがないじゃないか、とかく間接税は痛税感がないから軍拡路線につながるよ、こんなようなことをおっしゃる方もおられる。それから、一律税率は不合理だ、こういう意見もございました。さらに転嫁ができない、特に零細小売業はここに大きな懸念を持っている。あるいは事務の負担が増大をする。帳簿方式あるいは簡易そしてまた限界課税方式はいろいろ矛盾や不公平が内在している等々、たくさんございました。  したがいまして、こういうような反対論に耳を澄まして、私どもも謙虚にお聞きをいたしておるところでございます。しかしながら、二十一世紀は待ったなしにもう十三年後に来るわけでありますし、そのときにおけるところの人口構成あるいはまた、先ほど先生が御指摘になりました福祉型の税制体制に切りかえていかなければならない。さらには社会資本の充実もより必要になってくる。そしてまた、同時に今日、百五十九兆円の公債を抱えている。言うならば、一面、国家財政は硬直化の危機にもある。  これらを考え合わせてまいりますと、これらの反対理由以上に、新たに税制をここで抜本的に改正をする、そして大減税を一方で行いながら、そして新たな消費税という制度の導入を図っていかなければならないのではないか。一部御認識、御理解が違うために反対の御意見もあるところでございますけれども、やはり政治というものは、一面、国民の皆様方に御認識、御理解をいただく勇気を持った施策の展開も必要であろう、このように思いますときに、金子公述人の御意見はいかがでございましょうか。
  16. 金子宏

    公述人金子宏君) 今度の消費税については、いろいろな批判があるということは私もよく存じております。  それで、所得税を大幅に減税する、これはもう本当に必要なことでございまして、国民重税感を持っておりますし、特にサラリーマンが不公平感を持ち、また負担累増感を持っておりますので大減税をする、他方では不公平税制を是正する、これが非常に大切なことでございます。  それから、法人税につきましては、国際的な水準に比べると我が国負担水準がかなり高いということがございまして、現在では、それぞれの国の国民経済は国際経済秩序の中に徐々に組み入れられつつあるというふうに私は思っておりますけれども、そういう時代に一つの国だけが高い税率を維持していると、いろいろと国際的な税制中立性と申しますか、そういう点でも問題がございますので、これからはだんだん税制の国際的調和と申しますか、ハーモニゼーションの要求が強くなっていくと思いますが、そういう意味でも法人税率を下げなければならないということがございます。  それから、他方では消費税でございますけれども、これは国民所得水準が一般的に平準化してきているということは確かだと思います。それで、ライフスタイルも変わってきているということもございます。そこで、現在の消費税制度を見 てみますと、選択的な課税制度であるということもございますし、一般的にサービスが課税対象から漏れている。そして、今日の最終消費支出では約五〇%がサービスへの支出であるというようなこともございまして、サービスが一般的に課税対象から漏れているというのは随分大きな問題ではないかと思います。  そこで、消費税制度そのものをもっと中立的で公平なものにするためにも、課税対象を広げて一般化するということが必要でございます。  それからもう一つは、高齢化社会が非常に速く進んでいて、やがて我が国が世界の先進国の中でも最も高齢的な社会になっていくということが予測されているわけでございますので、安定財源の確保ということがどうしても必要なのではないかというふうに私は考えます。  それで、所得税の増税によって大きな税収を得るというのは実は困難でございます。ですから、やはり安定財源としては消費税が適当なのではないか。ただ、いろいろな問題が消費税にあるということはそうでございますが、実は選択の幅が非常に狭かったということでございます。恐らく、白地に絵をかくならば、ヨーロッパ型の付加価値税のようなものが一番いいであろうということになると思いますが、それに近いものが昨年廃案になったという経緯もございますので、そこでセカンドベストとしての帳簿方式を考えるほかはなかった。他の一般的な消費税に比べれば、私は帳簿方式の方がずっとよくて、EC型に次いでセカンドベストであるというふうに考えておるわけでございます。  それで、確かに納税者に受け入れられやすくするためにいろいろな制度が加わったということで、わかりにくくなっている点はございますけれども、これは将来だんだんに改善していく、実施の段階で改善していくということは可能なことでございますので、そういう方向で解決していくのがいいのではないかというふうに私は存じております。
  17. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 それでは、宇田川公述人にお尋ねをいたしたいと思います。  先ほどの御意見を拝聴しておりまして、所得税改革中心主義、それでルールを整備すれば税率もクロヨンも、高齢化国際化も対応できるよ、こういうような御意見を拝聴いたし、私どもも十分今後考えていかなければならない、このようにも思っております。  ただ、水平的な公平に中心をお求めになるということとあわせまして、今日の国際化、しかも金融の自由化時代、企業法人税率等を下げていかないと、これまた産業の空洞化というような問題も起きてまいります。あるいはまた個人の所得税も十分な配慮をしていかなければ勤労意欲の阻害、あるいは外国へこれまた逃げていく、こういうような問題も起きないとは限らないわけであります。既にヨーロッパ等においては自国の税制に希望を失って外国へ頭脳の流出、また若年層が流出をしている。スウェーデン等でその例を私も勉強をさせていただきました。  一つの例でありますが、日本で百万円税金を納めなきゃならない人が、仮に今の税制でニューヨークへ移ったとするならば三十六万円程度で済む。こういうような国際的な自由化時代、果たして所得税改革中心、これだけでいいのかな、こんな気がいたすところでございます。  それ以上に実はお尋ねをいたしたいのは、税制改革というのはいかなる時代においても国民生活、あるいはまた我が国経済に影響を最も与えない時期に導入されるべきではなかろうか、このように私は思っておるところでございます。それだけに、現在の日本の経済のファンダメンタルズはいかなる点をとっても最優等生であると思っております。  例えば、経済成長率は去年五・二%、ことしは五%を予測されておると思いますし、物価も昨年は〇・五%、本年は多少高く見積もっても一・二%足らず、あるいは失業率も二・七%、あるいは所得の平準化もアメリカに比べて約三分の一、こういうようなこと等を考え合わせますと、今こそ抜本的な税制改革というものはこの時期を逸してはないのじゃないか。三年ほど前までは円高不況、あるいはオイルショックのときには日本の企業というものは一体これから先どうなるんだろう、そして円高が始まればこれまた倒産をするぞ、景気を波動的にとらえましても二年、三年の波動の中で右左大きく振れてきたのが実情でございます。  たかだかここ二年、日本経済が世界においてもなるほど実力があると認識をされるようになったわけでございまして、この安定した優位な経済事情というものが一体いつまで続くかということになれば、この予測は非常に難しい。来年あるいは再来年にはまたいろいろなミノアーな原因によっていろいろ波風が出てくる可能性もある。こうなりますと、税制の導入というものは今こそ私は最適な時期ではないか、いろいろな形はございましても、そう考えておるところでございますが、御意見をお聞かせいただきたい。
  18. 宇田川璋仁

    公述人宇田川璋仁君) ただいまの御主張、まさしくそのとおりなんですね。ただ、そのとおりという意味は先生とちょっと違うんですね。それはどういうことかといいますと、税制改革するには、安定して経済力が高まり物価も上がっていない。まことにいいと思う。まさにそうなんです。だから、何を改革するのにちょうどいいか。もう日本はそういうふうに今や世界最高の成長発展した国でありますから、したがいまして昭和二十四、五年以来続いてきてまだ残っていると思われる、ニュートラルでない、中立でないところを消すのに一番いいんですね。弱いところがあればそれを政府がやらなくちゃならない。だから、そういう意味で先生の御主張と全く同じです。  ただ私は、だからそういう意味で、今までいろんな形で、貯蓄優遇だとか農業軽減課税だとかその他がたくさんあると思いますが、そういうものにメスを入れて世界に出して恥ずかしくない所得税にする。そういうことで、先ほど申し上げましたことは、そういうことをやる一環の中に、当然低目の税率、世界との歩調、それから法人税率は私も割高だという声をよく知っております。私も実はそういう分析をしたことがございます。これもいろいろ細かなところがあるわけですが、そういうことにもこたえられるということでありまして、ですから私が申し上げましたことは、所得税の現在の高い累進度を維持して、それで課税ベースを広げて、税収がたくさん出てくるからそれでおやりなさいということじゃないんですね。課税ベースを広げ、そして法人税を下げましょうと。今の一〇%—五〇%の所得税もできるわけですね。そして福祉社会もできるということを経済分析で示すことができる、こういうことを申し上げたわけでございます。  それからもう一つ、そういうことで、政府御当局の問題とされているところは今のような形でカバーできる。事実、財政の諸問題というものは、閣議決定の昭和六十五年度赤字国債脱却というものはもう目に見えるところにある。  それから、私きょうは地方税制に触れませんでしたけれども地方税制について言えば、国税の場合よりも地方税制はある意味でちょっと困っている状況なんです。それはどういうことかといいますと、住民税減税ですね。それから地方の大きな間接税消費税の中に組み込まれる……
  19. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 時間がありません。恐れ入ります。
  20. 宇田川璋仁

    公述人宇田川璋仁君) ああそうですか。はい。
  21. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 ありがとうございました。地方税についてもお聞きしたかったわけですが、時間がございませんので。  最後に、佐多公述人にお尋ねをいたします。  大変中小企業のために日々御努力をいただき、心から敬意を表します。特に、公述人はコンピューター導入について大変御努力をされてきておられます。今回も特に、商工会議所と商工会をオンライン化して記帳代行業務を取り扱いたい、こう いうことで基金の創設等に御努力をされておられる。この基金の規模、そしてネットワークの完成はいつごろか。時間がないものですから一言だけでもお尋ねをしたいと思います。
  22. 佐多宗二

    公述人佐多宗二君) 商工会並びに商工会議所記帳事務の代行をやっておりまするが、消費税で今後特にこの仕事がふえるだろうというふうに考えております。そこで、コンピューターオンラインを安定的な方向でやるために、少なくとも百億円の基金をお願いしております。また、その他にも五十億してございます。どうかよろしくお願い申し上げます。
  23. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 実施時期はいつですか。
  24. 佐多宗二

    公述人佐多宗二君) 実施時期は一年以内にと考えておりますので、よろしくお願いします。
  25. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 これで終わります。  ありがとうございました。
  26. 志苫裕

    志苫裕君 社会党の志苫です。  宮本公述人発言について斎藤議員の所見が述べられましたが、国民の中には公述人と同じようなまさにうっぷんに近い気持ちがあることは事実なので、もし国民全部に公述人としてここへ来てもらったら恐らくあのような発言がこの委員会を圧倒するだろう。問題は、それをどう受けとめて案法をどう処理するかは我々議会側の問題であって、税制に絶対というものはなかなかないわけでありますから、その時点での国民の選択によるというのがルール。国家の根幹である税に対する国民の信がなければ成り立たないと言われるゆえんだと思うんですね。だから、耳の痛い話を聞いたからといって感情的に反論を加えるのは、それを恫喝というんですね。しかし、そういう論争をするのはこちらじゃないので、ただ、公述人にそのような発言をすることは適当でないという、これも議会人の見識として述べておきます。  最初に金子公述人、宇田川公述人、どちらも学者の先生方で、税財政の御専門家で多くの論文にも我々は接しておりますので、ちょっと共通課題を聞きますが、実は衆参を通じて、今度の税制改革の賛否はちょっとこっちに置きまして、それにしても消費税法案というのは、税法の常識からいってもこれはむちゃくちゃじゃないかという感じを率直に言って私らは審議していて感じますね、これが一体税法っていうものかいと。我々議会が法律を決めるわけですが、租税法律主義というのは議会で決めりゃいいというものじゃないので、それなりの発展過程をとって拘束をされるべきさまざまな条件を持っています。  それから見ると、どうもこの税法は、小倉会長ですら堕落型と、大蔵省の主管の局長は不公平といえば不公平というふうに発言をしておる内容を、ここで時間もございませんから私は税法の内容に触れませんが、いわば負担者じゃなくて納税者に配慮をし過ぎた結果、あるいは売上税の反省をどう取り違えたのか、とにかく納税者に受け入れられるようにしようということで、消費者と納税者の間のさまざまな問題を初めとする随分いびつな税制でないかなということが我々の懸念材料の一つです。後世に禍根を残しはしないだろうか。  金子先生、いろいろ問題もあるようだがおいおい直してもいけるだろうと言うんですが、不公平税制とだれもが思っているものが直せないのは、実はそれが既得権になっているからなんです。それでまた、ゆがんだ税制であっても、それをもとにして国民税金とつき合いをし商取引が行われる。したがって、みだりに変えるということはそれなりの経済攪乱要因になるわけですね。きのうつくってあした都合が悪いから直そうというわけには、ちょっくらちょいとこれは政治過程にも受け入れられにくいし、経済攪乱要因にもなるという意味で、僕らはつくるものなら立派なものをつくりたいという意味議論をしてみましても、ちょっとこれは、特にもう学者から見ますとなっちゃおらぬというレベルのものじゃないでしょうか。両先生から簡潔にお聞かせいただきたい。
  27. 金子宏

    公述人金子宏君) それではお答え申し上げます。  これは、先ほど申し上げましたように白地に絵をかく場合であれば、もっと違ったものがかけると思いますけれども、何といいますか白地にかくとすれば、恐らくEC型付加価値税のようなものが国際的なスタンダーズという点でも採用する場合によろしいのではないかと思っておりますけれども、EC型に近いものであった売上税が廃案になって、その経緯から次のベストは何かということを検討した結果、帳簿型の課税ということに落ちついてきたわけですが、ただ帳簿型の課税方式、純粋な帳簿型から見ますと、またいろいろ今おっしゃったような修正箇所があるのかもしれません。ただ、これはいろいろな経緯でそういうふうになったということでございまして、私も法案を何度か読みましたけれども、何というのか別にふできなものであるというふうには特に思いませんでした。  いろいろ制度上改善すべき点があることは確かですけれども、それはだんだん改善可能であろうというふうに私は実は思います。  それから、事務負担の点がいろいろと問題になっているようでございますが、これはどうも私の見るところでは、消費税は新しい租税ですのでいろいろとわかりにくい点はございますけれども法人税所得税の方がもっと複雑なのではないかという感じを私自身は持っております。  それから、納税義務者に配慮し過ぎではないかということでございますが、これは昨年の経緯なども考え合わせてこういうところに落ちついたのであろうと存じますけれども、この点は実施に当たって、転嫁が十分に行われるように、他方では過剰な転嫁が行われないようにということを十分に配慮していく必要があるというふうに私も思います。それで、この点は、通れば恐らく何といいますか、いろんな問題が出てくると思います。既に現在いろいろな本が出版されておりまして、私が見ただけでも随分たくさんあるという感じを持っておりますけれども、そういうようなものを通じて徐々に納税者の間にいろいろな知識が普及しつつあるのではないか、むしろ納税者となるべき方々は現在対応態勢をとりつつあるのではないかという感じもいたします。  ですから、一たん採用した後でいろいろ……
  28. 志苫裕

    志苫裕君 簡潔で結構です。
  29. 金子宏

    公述人金子宏君) はい。直していくというふうに私は思っているわけです。既得権化という点はあるいはあり得るかもしれませんが、ただ、現在これから世界の税制がハーモナイズされていくという時期でございますので、むしろ合理化と申しますかEC型に近い方向に改めていこうという圧力が働いてくるというふうに私自身は思っております。  以上でよろしゅうございましょうか。
  30. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 公述人の方に申し上げます。  時間が限られておりますので、お答えは簡潔にお願いいたします。
  31. 宇田川璋仁

    公述人宇田川璋仁君) それでは簡潔に申し上げますが、私は、一九七三年ですか英国がECに加盟する前で、実態調査に参った経験があります。そこで、ヨーロッパ諸国で得た結論だけ申し上げます。  一つ、そのときは私は中小企業の同業者と一緒に行ったんですが、この方々は転嫁できないんじゃないかということを一番心配しておりました。向こうの答えは明快であります。税額票があるから、インボイスがあるから転嫁できる。それから、これはインボイスがなければわからないけれども、インボイスがあって転嫁を保証してくれるということであります。  それから第二は、ドイツあたりはよく主張しておりましたが、付加価値税のメリットは業者に帳簿をちゃんとつけてもらう、そういうことをさせるメリットがあるということであります。  それから、これはちょっとそのときの経験より最近のことになりますが、御存じのとおり、アメリカでも付加価値税を導入しようという考えはずっとあります。アメリカのそういう税制の実務家 及び学者グループ、そういう税学者等とよく研究会をやるんですが、ヨーロッパからのアドバイス、それはアメリカがやるとすれば単一税率にしなさいということでありまして、単一税率ということは、免税とか非課税とか簡易課税とか、そんなことはしなさんな、こういうことでございます。
  32. 志苫裕

    志苫裕君 これも両公述人にお伺いします。  垂直的所得再配分機能を持った税制というものはそれなりに国民の間に受け入れられている、定着をしているというふうに我々は理解をしています。  ところで、今度の税制改革の特徴をそれぞれお話がありましたが、フラット化であるとか税率のブランケットの幅のことはちょっと性格が違いますが、全体として法人税でも資産税でも所得課税でもフラット。それからまた、消費税というのは比例税率ですからこれは大きい意味での税制のフラット。こうなってまいりますと、金子先生も先ほどちょっと指摘がありましたが、やっぱり富の格差というふうなものに寄与してしまう、国民によって常識的に受け入れられてきた垂直的再配分機能が失われる。これは非常に懸念材料なんです。  そこで、税法の常識として、そのような税率のフラット化等のような、そういう税構造のフラット化というふうなのを仮に選択するのであれば、少なくとも資産課税、特にあの世まで持っていっちゃ困る相続課税、こういうふうなものを徹底するものとまさにセットでないといけないというのが税法の常識じゃなかったんでしょうか。その点が、それは幾らかキャピタルゲイン課税の話がありましたが、宇田川先生の話ですと、本間教授のフォーラムの結果を出して何にも寄与しないという実証的研究の話があるんです。  結局、なぜこうなるのかというと、やっぱり日本の所得の平準化という認識が政府の方にはある。しかし、それに疑問を挟むならば、実証的に見るとそのような実態はない。特に、最近における金余り等を背景にした資産所得の拡大というふうなものから見ますと、今、資産所得の拡大にブレーキを踏むべきなんであって、アクセルを踏むべき時期ではないんじゃないかというところが実は両論の分かれるところになっているんじゃないかと思うんです。  私は、日本において所得の平準化、いわば所得階層分布というふうなものが日本にそんなにデータがあるとは思えません。私も探してみました。感じで言っていることはわかりますね。あとは単純に所得階層の一から五まで比べて倍率が減ったとかそんなことだと。それも中身を見れば、一体資産課税が第五階層に入っておるのか、あるいは移転所得を受けておる第一階層にそれらが抜けてないのかというような、いろいろありますね。これはちょうど宇田川先生が本間教授のフォーラムの実証的研究を例に出してフラット化という状況はないという御発言、それから金子教授は、フラット化というものを背景にして消費税の導入が全体として公平に寄与するという論理を展開するんですが、これは率直に言って両論です。  もう一度、ここのところをお話しいただけませんか。
  33. 金子宏

    公述人金子宏君) 私は、所得は著しく平準化しているというふうに考えます。それから、富の点についても日本は欧米諸国に比べればずっと富の平等性が高いと思います。ただ、何といいますか、一部で富の格差が集中といいますか、そういうものが生じているという現実があることはいろんな資料から存じております。  それで、フラット化と所得税について申しましたけれども、これはアメリカの場合ですと一五%、二八%という二つ税率で、さらにその上に三二%というのがあるわけですが、私もここまで下げるのは不適当だというふうに思っているわけでございまして、今度のは六五%ですけれども、下げるとしても五〇%ぐらいであろうというふうに思っているわけです。と申しますのは、水平的公平と同時に、垂直的公平というのもやはり大切なことでございまして、それは富の格差是正ということが背景にございます。ただ、今まではどうも高過ぎたというふうに私は思っております。高過ぎると、さっき申し上げましたように、いろいろな問題が生じますので、相当に下げなければならないということは確かだと思います。  それから、相続税のことにお触れになりましたけれども所得税の場合は税率が高いといろいろ効率を害するということがございますけれども、相続税の場合は既に蓄積された富でございますので、勤労意欲を阻害するとか、そういうことはございませんので、所得税税率よりは少し高いところにセットされてもいいのではないかというふうに思います。今度の改正でも、七〇%がたしか所得税最高税率だったかと存じますが、それもそういう考え方に基づいているというふうに存じております。  それから、キャピタルゲインのことですが、やはりたとえ分離課税であっても課税対象制度上加われば、それはちゃんと執行することになりますから、ほとんどないに等しいということはないはずでございます。かなりの税収がそこから上がり、そして資産所得であるキャピタルゲインに対する課税が行われるということになると思います。もちろん将来の方向としては総合課税対象に持っていくということが必要ですが、今のところ、まだ把握体制が整備されておりませんので、把握体制の整備とあわせて総合課税化は考えなければならないというふうに考えております。  以上でよろしゅうございますか。
  34. 宇田川璋仁

    公述人宇田川璋仁君) まず、所得分布が平等化しているというのは、これは統計的に吟味さるべきことなんですね。普通OECD等でやっている統計は余り当てにならない。OECDが悪いんじゃなくて、我が国のOECDの報告がよくない。というのは、これも企画庁にいた昔の経済分析者の本にちゃんとありますので、これは先生方も御承知だと思います。そういうところを見ますと、OECD等で言っている、日本が一番平等化しているというのは、ああいう人によればそれはうそで、日本が一番不平等なのかもしれないと言っております。その点はひとつよく御検討をいただきたいと思います。  それから、資産について格差が縮まってはいない。それは五十年代以後拡大しているということは、これはもう実感でわかることでありますし、そういう状況だと思います。したがいまして、これからそういうことであるとすれば、ごく粗っぽく言いまして、フローとしての所得とか消費に低い税率をかけるということであれば、やはりだれもが思うことは、相続の方をきちんとしないと、日本はまたその階層といいますか、経済的な階級社会への道を行くということは心配する。そういう意味で、今、先生おっしゃったように、相続税の方をきちんとするということはそうなんですね。  それで、相続税をきちんとするためには、これもだれでも知っているように、土地の方に移してしまえば低評価であるということで、だから相続税の場合は、その相続課税における土地評価をどうするかと。そのまま時価でやったらたまらないから、評価はきちんとして税率を下げようじゃないかと。これで公平になるわけですね。そうすると、土地がそういうことをやるとすれば、今度は土地ではうまみがないということであれば、相続は金融資産で持とうとそちらへシフトする。だから、相続税をきちんとするためにも金融資産をちゃんとつくっておく、金融資産をちゃんと税務行政的に捕捉しなければだめなんで、そういう意味で、金融資産の方に、従来日本の方は一番これが抜け穴だということはもうだれでも知っていることですから、それをきちんとするということはフローとしての所得をつかまえる。それから相続課税をきちんとする場合、シフトしたとき、それがわからないじゃ、また大きな抜け穴になると。  そういう意味で、相続税と所得税というのは関係しているし、私が先ほど言ったように、みんな合理的な日本人なんですから、ルールにでこぼこ があればそこに行くのは当然なわけですから、そういう点にすべて目を通してきちんとお願いをしている、こういうことでございます。
  35. 志苫裕

    志苫裕君 佐多参考人、一つだけでいいですが。  個人事業の利益は事業主のものになるんですね。その事業主に給与を払うというのは、もともとみんな自分の利益になるんですから、それに給与を払うというのは不合理じゃないかというのがとかくの論争になるわけですね。どういう御見解ですか。
  36. 佐多宗二

    公述人佐多宗二君) わからないんですが、ちよつと。
  37. 志苫裕

    志苫裕君 事業主に給与を払うでしょう。今そういう制度をとっているでしょう。それが不合理ではないのと。サラリーマンからすれば不合理だというのが、いわゆるみなし法人の問題で一番の大きい議論になっているんですが、その点について何か御意見はありますかというんです。余りありませんか。
  38. 佐多宗二

    公述人佐多宗二君) 消費税のことを考えておりましたので、その問題についてはちょっと勉強しておりません。
  39. 志苫裕

    志苫裕君 それじゃ、それで結構です。  金子先生、一つだけ簡単でいいですが。  配偶者特別控除ですね、ちょっと先ほどお触れになりました。私は、こういう普遍的なものでない特別なものを持ってきますと、それはまた、おれも特別にしろというのがいっぱい寄ってきて税制が緩うなる。特別な措置をつくると、どうしても課税ベースが狭くなるものですから、財源的には税率を上げなきゃならぬという悪循環、これは一例ですが。  今、この配特を例にとりますが、一つは婚姻に対して中立的でないんじゃないかとか、もう一つは、こういう特別なものをやたらとこぶのようにくっつけると、税制がやっぱりゆがむ原因になると。おれもおれもというので、いろんな個別的利益が税制目がけて押し寄せてくるということで、基本的には望ましくないという意見については、先生の御意見はどうですか。
  40. 金子宏

    公述人金子宏君) この配偶者特別控除という制度は、事業所得者の場合には、配偶者を雇用して給与を支払って所得分割が行われるので、専業主婦と言うと言葉が悪いですが、専業主婦の場合にもある程度同じような取り扱いをしてもいいのではないかという考慮からできたわけでございます。同時に、勤労をしている主婦の場合についても、課税限度をそれに応じて引き上げましたので、結局同じような取り扱い、勤労をしている主婦も専業主婦の場合もそういうことになったわけでございます。  それで、これはただ、特別措置とは考えられておりませんで、何かこれがほかの措置を呼び起こすかどうかという点になりますと、その可能性はまずないのではないかというふうに私は思っておりますが、何か、あるいは私が気づかないことがあるのかもしれませんので、その辺はもう少しよく考えてみたいと思います。
  41. 志苫裕

    志苫裕君 もう一つ金子先生、一言でいいですが。  憲法十四条からの要請からくる最低生活非課税原則、これを消費税に貫くとすればどういう方法がいいでしょう。
  42. 金子宏

    公述人金子宏君) それは、結局二つほどの方法がございまして、もちろん課税最低限所得税の方で引き上げ、それから所得税を支払わない低所得層については社会給付を増加させるというようなやり方と、それからアメリカで最近議論されている還付を伴う消費税というようなやり方と、両方のやり方があり得ると存じます。
  43. 志苫裕

    志苫裕君 宇田川先生、その還付制度はどんなものでしょうね。仮に消費税を導入する場合、課税最低限以下の者は還付という方法については、御所見ございますか。
  44. 宇田川璋仁

    公述人宇田川璋仁君) そういう案もありますけれども、事実、消費税が入ればそういうことになるでしょうね、そういうことをすると。なぜかというに、これはアメリカのレーガン税制改革でも言っているけれども消費税非課税を認めても、例えば生活必需品、この非課税の便益を受けるのは、要するに低所得者じゃなくて中所得者、高所得者もみんな入ってしまうということですから、消費税のことであれば、まあそれしかないということです。
  45. 志苫裕

    志苫裕君 わかりました。  最後に一言ですが、宮本公述人の絶対反対の立場はわかりましたが、ひとつそれはこっちへおきまして、自民党が無理やり押すかもしれぬのですがね。仮にこう入ったとして、四月までに間に合いそうですか、皆さんの実際の仕事から見るとどうですか。いろんな段取りが間に合いますか。
  46. 宮本卯一郎

    公述人宮本卯一郎君) 私たちは、あくまでも粉砕しようという決意でございます。
  47. 志苫裕

    志苫裕君 わかりました。  終わります。
  48. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 公述人の皆さん、きょうは本当にありがとうございました。  それでは、最初に宇田川先生にお尋ねしますが、先生はルールをつくれと、特に、金融資産のいわゆるキャピタルゲイン等の把握が非常に不十分であるという、こういう点のお話があって、私たちも同感でございます。そこで、今の我が国税制は、むしろ総合課税よりも分離課税方向に来ている、そういう向きがあるわけですが、やっぱり総合課税をすると、そのためにはどうしても番号制度等も導入しなきゃならない。また、仮名預金やあるいは証券取引においても仮名や借名等を厳重に禁止すると。そういう方向が世界の、まあ国によって違いはあると思いますが、大方先進国の方向であると理解していいのかどうか、先生のお考えをお伺いしたいと思います。
  49. 宇田川璋仁

    公述人宇田川璋仁君) 私の理解する限りそうだろうと思います。そういう制度が世界の共通の制度であるというふうに感じます。
  50. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 番号制についてはいろいろプライバシー等の問題で、消費税反対ほどの反対はありませんけれども、必ずしも理解の得にくい問題もあるわけです。この点、いわゆるプライバシーの保護に配慮してやるべきだと、私たちはそのように考えているのですけれども、先生のお考えはどうでしょうか。
  51. 宇田川璋仁

    公述人宇田川璋仁君) そういう目に見えないものを、どこへでも行けるものをつかまえるのは、つかまえるだけの行政が必要で、コンピューターの今日、それが一番威力を発揮する。それで、アメリカ初め西欧諸国もここ何年か、十年かの間にそれが完備したということだろうと思っております。
  52. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 金子先生にお伺いしますが、先生は今回の消費税導入を福祉税制と、こういうのはきょう初めてお聞きしたわけですが、私たちは消費税というのはかなり逆進性がありますからむしろ反福祉税制である、このように考えているわけです。恐らく、先生の福祉型と言われるのは、これからの高齢化社会に向かって財政需要がふえてくる、そういうときにその福祉財源を確保するのに非常に増税しやすい、そういう意味福祉税制とおっしゃったんじゃないかな、このように理解しているわけですが、それでよろしいんでしょうか。
  53. 金子宏

    公述人金子宏君) それは必ずしもそうではございませんで、要するに、既に社会保障支出というのが非常な伸びを示しているという現実がございまして、それに対応するという意味も持っているわけでございます。それで、私は長期的に見ればやはりこの導入によって税制福祉型に切りかえられるということになると思います。後の人は恐らくそういう評価をするのではないかというふうに考えております。    〔委員長退席、理事平井卓志君着席〕  それから、税率引き上げればということをおっしゃいましたけれども、これはそう簡単に引き上げられるものではございませんと予想いたしますし、租税法律主義というのがございますから、これは国会がお決めになることでございます。私 は、税率の点については特にここでは意見は申し上げなかったつもりでございます。
  54. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私たちも、将来財政需要もふえてくるだろう、行政改革もやっていかなきゃいかぬ。しかしその場合に、消費税税率もあるいは上げなければならないような状況にはなるんじゃないか。そうなりますと、小倉税調会長は、今の帳簿方式は堕落した消費税だと言われているわけですが、どうしても将来の税率アップがあった場合には、今の形ではやっぱり生活必需品とかぜいたく品の税率に差を置くことはできない。そういう意味で、大蔵省も将来はEC型の付加価値税、伝票方式に変えなければならない、こういう考えを持っておるようですけれども、先生はEC型の方がよりベターとお考えですか。
  55. 金子宏

    公述人金子宏君) 白地に絵をかくのでしたらそう思いますけれども、この制度、小倉会長の御発言がございました。小倉会長は、日本的に修正されたという意味でああいう言葉をお使いになったのではないかと私は思っておりますけれども、いろいろ問題があれば、だんだん改正されていくということになると思います。そして、もし仮に将来財政需要の必要上税率を上げるというようなことになれば、やはりEC型の方がベターではないかというような世論が形成されるということもあり得ることであるというふうに私は予想しますけれども、これは将来の問題でありますので、何とも申し上げようがないと思います。
  56. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 宮本さんにお尋ねしますが、いろいろ言われました。    〔理事平井卓志君退席、委員長着席〕 私たちも、民主政治の建前から、公約違反税制を導入するということは、政治の原点としてこれは政治のやるべきことではないと思います。しかし、そういう点は別として、また不公平税制も是正、あるいは行政改革もやらなければならないと思うのでありますが、もしそういう点もやったとして、そういうことは理論的にできるかどうかは別としても、その場合、消費税のようなものの導入にはあくまでも反対であるのかどうか。  それともう一点、その反対理由は、私は、価格アップが、価格転嫁ができないという点、それと事務処理が非常に大変だという、この二点ぐらいがやっぱり中小企業の皆さんも一番最後に残る反対意見じゃないかと思うのでありますが、それ以外に何かあれば、大体そういう考えでいいのかどうかお尋ねしたいと思います。
  57. 宮本卯一郎

    公述人宮本卯一郎君) 先ほども申しましたように、行政改革を十分にやり、また不公平税制を確実に是正するならば、もう消費税の問題は出てこないだろうと思います。消費税は絶対に必要がないと思います。したがいまして、消費税が出てこなければ価格の転嫁その他の問題も出てこない、このように考えております。
  58. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 佐多さんにお尋ねしますが、あなたは全国商工会連合会会長で、傘下には大変たくさんの中小企業があると思うんですが、私は、この傘下の中小企業の人たちも今回の税制改正には反対意見が非常に強いと思う。ところが、会長はここで賛成意見を述べたわけであります。本当はみんな反対だけれども自民党が言っているからもう賛成やむを得ないという、そういうお気持ちなのか、本当に全国のそういうあなたの団体の人たちの意見というものは聞かれているのかどうか、どのようにお感じですか、そのあたりは。
  59. 佐多宗二

    公述人佐多宗二君) 先生がおっしゃるように、反対意見も相当ございます。しかしながら、やはり基本的には、企業家でありますから、法人税所得税を減税していただくわけですから。  その反対理由というのは、価格転嫁ができるかどうかということと、帳簿が面倒ではないかということが中心であります。反対意見も相当聞いたわけでございます。そこで、転嫁の問題と帳簿を簡単にすれば賛成してもよろしいというような大方の意見にまとまっておるわけでございます。
  60. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それで今、最後に佐多さんも言われましたけれども、四月一日実施ということは非常に難しい、しかもまだ法案審議をしている。この国会で結局通ったとしても、今の国会は二十八日で、もう年末は何もできない、そういう点を考えますと非常に厳しいと思うんです。  それで、先般のこの委員会においても、竹下総理は何としても四月一日からやると、そういうことなんですが、しかし現実として、四月一日にやろうなんということはもう大変なことであろう。こういうことは、その無理も、言葉のないぐらい非常に無理の上の無理の話じゃないかと思うんですけれども、そういう点はあなたは会長として全国の業者の納得を得られると思いますか。
  61. 佐多宗二

    公述人佐多宗二君) そういう意見も相当ございます。しかしながら衆議院の、四カ月ないし六カ月は税務上弾力的に扱うということを期待しておるわけでごさいます。そういう意味から、さほど四月実施に目立ったような反対はないわけでございます。
  62. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは、公述人の皆さんから大変簡潔に御答弁をいただきましたので、あと一分残っておりますがこれで終わります。
  63. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 日本共産党の吉井英勝でございます。  公述人の皆さんには、きょうは本当にお疲れさまでございます。どうもありがとうございます。  宮本公述人のお話を伺っておりまして、二年前には、大型間接税はやらないということで一生懸命自民党選挙で頑張っておられたということは私どももよく知っております。それから、昭和四十九年以来自民党の先生を顧問にされて、百万票集票ということで頑張ってこられたとか、ことし八月二十五日には顧問を解任されたとか、いずれにしろ、その間一生懸命やってこられたということはよく存じ上げております。  それで、消費税導入問題を前にして怒りを持ち、そしてこの消費税導入による経営危機ということを前にして、いわば悲痛な訴えの声を上げられた。そういうことで、先ほどお聞きしたことについては、政治家たる者そういう市民の皆さんの声をしっかり胸に刻んで頑張らなきゃならぬという、こういう思いで聞かせていただきました。  さて私は、四月にも「全粧連新報」をいただいて読ませていただきましたが、その中で商売と生活を守るためのやむにやまれぬ行動であるということで、そういう思いからこの間もずっと頑張ってこられたということはよくわかるんです。ですから、先ほども幾つかの質問にお答えいただきましたように、この問題は、通ったらどうなるかとか、そうじゃなくて、これをやめる以外に解決はないんだというそのお話はお話としてよくわかるのでありますが、競争の激しい業界と聞いておりますけれども消費税が経営にどういうふうに打撃になるのかとか、また再販制度との関係もあわせて、業界の皆さんの実態とか、そして経営上心配なさっていらっしゃる問題について、少し業者の立場からお話を聞かせていただければと思いますので、よろしくお願いします。
  64. 宮本卯一郎

    公述人宮本卯一郎君) 中小企業は非常に今厳しい環境の中にございます。  私の業界でございますが、年々、組織の者の中の二・五%ないし二・七%が廃業あるいは転業に追い込まれております。したがいまして、こういう消費税が導入されましたら、もうこの廃業、転業はさらにさらにそのパーセンテージの度を増しまして、非常に多くの者が経営困難、そして路頭に迷うという者も相当に出てくるだろうと思います。また、そういうようなことで私どもはもう自分の生活を守る、営業権を守るというふうなことで消費税反対しております。私どもは、決して感情論で言っているわけじゃございません。自分の生活と営業を守るということでございます。  そういうふうなことで、今、再販の問題がどうのというふうな話も出ましたが、そういうことは考えておりませんで、まず営業を守る、そのためにはぜひ消費税を粉砕したい、こういうことでございます。
  65. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 そういうことなんですが、特にメーカーの支配のかなり強い業界でもありますし、 メーカーの系列支配と申しますか、そういう点で導入による問題もこれはかなり伺ってもいるんですが、さらに御心配していらっしゃる問題などございましたら、あわせて伺っておきたいと思います。
  66. 宮本卯一郎

    公述人宮本卯一郎君) メーカーの支配というようなことは全くございません。私どもは、自分の意思によりまして自分の店を経営しております。
  67. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 まあ各系列ごとにありまして、その問題についてそれはそれとして伺っているんですが。  それで、金子公述人とそれから宇田川公述人に伺いたいと思いますが、この法律が仮に通った場合、四月一日より効力が生ずると。そうなると、仮に六カ月間弾力運用だということにしても、その場合、業者の方が消費税を徴収してもよいし、しなくてもよいということでいけるかどうか。また、この間に業者の方が税務当局に対して納税してもよいし納税しなくてもよいと、そういうふうなことが税法また税制度としていかなる意味を持ってくるかということについて、学者の方のそれぞれの御見解をお二人から伺いたいと思います。
  68. 金子宏

    公述人金子宏君) それは、やはり最初は新しい法律の実施の段階では、混乱とかあるいは納税者の不理解による、理解が十分でないことによる執行上の問題とかいろいろ起こると存じますけれども、その辺は適切に税務当局が対処するほかはないというふうに私は思っております。あるいは国会が何か附帯決議をするとか、そういうことも別にない——あるのかどうかその辺はわかりません。やはり法律が通ればそれは弾力的に運用するということはもちろんしばらくの間は可能でございましょうけれども、徴収したものを納付しなくてもいいということが言えるのかどうか。私はそれは、あるいは少し期限を徒過してしまうとか、そういうようなことは実際問題としては納税者がふなれなためにあり得るかもしれないというふうな感じはいたします。  いずれにしても、新しい制度ですので、混乱とかそういう問題はあるかと存じますが、徐々にそれは定着していくのではないかというふうに思っております、時間を経るに従って。
  69. 宇田川璋仁

    公述人宇田川璋仁君) 私は、法学者じゃございませんものですから、税法の規定についてはよくわかりません。  一般的に、そういう事業という仕組みの中に税をほうり込む場合には、例えば先ほど私ちょっと触れましたが、英国は付加価値税が一番新しく入り、その後ニュージーランド等々に入りましたが、英国では、ブループリントをつくりまして、十分にインフォメーションとお互いの意思疎通を図った上で、そして用意ドンでいっていると思うわけでございます。ビジネスの世界だったらラーニング・バイ・ドゥーイングですか、やりながら学ぶということはあると思いますが、税法というものはラーニング・バイ・ドゥーイングでは困るんじゃないかと素人なりに考えております。
  70. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 最後に一点、宇田川公述人からお聞きしておきたいと思いますが、三%の転嫁カルテルの問題ですね、これは独禁法の骨抜きにつながる問題について御見解をお聞かせいただければと思います。
  71. 宇田川璋仁

    公述人宇田川璋仁君) 三%を転嫁するということで、ですから、私先ほど言いましたように、本来、税の中に転嫁を確保せしめるような措置がとられて、そしてその独禁法は独禁法としてファンクションが違うのでありますから、それでやるということのはずなんですね。ところが、ファンクションを税法の中に引用するというのは、これもまた世界のルールとは反するのじゃないか、私は余り世界のあれは知りませんが、経済学者としてはそういうふうに考える次第でございます。
  72. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 まず、佐多公述人にお尋ねをいたします。  消費税についてでありますが、御関心が転嫁であることは申すまでもありませんけれども、転嫁をするためには上乗せをする税額はきちんと計算されていなければならないことになりますし、したがって事務処理はどうしても煩雑になるわけでありまして、じゃ、事務処理を簡単にすると転嫁ができるかというとなかなかできない。転嫁はしたいけれども事務処理をどうするかというこのジレンマに逢着するわけでありますね。この問題をどのようにお考えになっておられるか。  また、転嫁の問題も、消費者と事業者との間の信頼感、これがベースにないと転嫁もうまくいかないわけでありまして、今回の消費税法案というものが事業者と消費者の間の信頼感を高める方向で作用するとお考えになっておられるかどうか、この点についての御所見を伺いたいと思います。
  73. 佐多宗二

    公述人佐多宗二君) 消費税は帳簿方式と別記の方式とがあると思います。新聞その他には、帳簿方式では税金が微量漏れるのではないかと心配をいたした記事を見ました。しかし、今の帳簿方式でいかないと大体三倍ぐらいの事務量になると思います。見直すときは別といたしまして、さしあたりはやはり帳簿方式でさほど漏れるのではないのですから、指導していただければ立派なものだというふうに考えております。
  74. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 それでは、金子先生と宇田川先生に同じ質問でありますが申し上げて、御所見をいただきたいと思います。  税法の審議のあり方ということで伺うのでありますが、この消費税法案政府の姿勢を見ておりますと、例え話で申し上げますとこんなことになると思うんです。我々は西に行きたいんだ、そこで車を持ち出しまして乗ってくれと言うんですが、道路事情がよくないから乗り心地が悪いかもしらぬ。しかもこの車にはハンドルもブレーキもついていない。ハンドルがついていないという意味は不公平だという意味です。ブレーキはという意味は歯どめもついていない。どうなるかわからぬけれどもとにかく発車させてくれ、道々直すわ、こういうことなんですが、そういった車に乗れと言われたら、皆さんどうお考えですかとお尋ねするのが本旨なんですが、税という国家権力の力でいや応なしに国民からお金を召し上げていく、それを審議する審議の仕方として、今私が例示申し上げましたような、とにかくだまそう、うそを言おうと何だろうと乗せてしまえばこっちのもんだと、こういったやり方というのは一体どうなんだろうか。この点についての御所見をぜひ承りたいと思うんです。
  75. 金子宏

    公述人金子宏君) どうも私は、自動車とそれから税制との関係がよくわかりませんでしたけれども、今度の税制改革案ではいろいろと、一番最初に申し上げましたように、公平とか効率あるいは簡素というような考慮が払われているというふうに思っておりまして、そういう意味では、ハンドルもブレーキもついているのではないかというふうに一応お答えしておきたいと思います。
  76. 宇田川璋仁

    公述人宇田川璋仁君) これは先ほども申し上げたことでございますが、税制というものは、ルールの中でも、私は法学者ではありませんが、法律には憲法、基本法と通常の法律があるわけでありますが、税法は憲法みたいなものだと思うんですね。例えば予算などは一年が終わりますとそれで終わる。ところが税法というのは、例えばことし売上税で三年後にやめるというものじゃなくて、これから数十年、きっとそういう長期恒久税制として導入する。だからそういう意味では、これも私どもの公共選択論の常識なんでありますが、税制基本法である。基本法に対処するには、今日例えば、私が豊かである、あるいは私が貧しい、あるいは私がビジネスマンである、あるいは私が銀行員だ、そういうことではなくて、五十年後には今度は自分の子供、これはまた豊かであるかもしれないし貧しいかもしれない。要するにあらゆるケースを通じて、だから現状じゃなくて、今後のウン十年を通じてこれなら理解できる、これなら全員が納得するルールだというものでなければならない。そういうものとして税制審議は経常的な扱いでなくてはいけないと私は思うわけでございます。
  77. 青島幸男

    青島幸男君 私は、第二院クラブの青島幸男で ございます。御承知のとおり私に許された時間はごくわずかでございますので、率直にお尋ね申し上げます。  まず、金子公述人にお尋ねを申し上げます。  先生は、この法案賛成のお立場をとっておられるというのはよくわかるのですが、賛成の中にもいろいろあると思うんですね。ですから、時間の関係でこれから三つの考え方を提示いたしまして、それについてお示しいただければ効率的だと思いますので、失礼を省みずやらしていただきます。  まずAは、法案内容については余り難点はない、このままいくことは時宜に即しておるので、これはこのまま原案どおり通して実行すべきである。Bでございますけれども、いろいろ難点はある、しかし現状を踏まえてこのまま行って、とつおいつ逐次、適宜修正を加えていって納税者になじむようにしていけばそれでよいではないか。これがBです。Cは、いろいろ難点は多い、しかし、これから財政事情は逼迫してくるだろうし、それから日本の経済も世界的なものになってきているだろうし、世界の国々の税法との整合性も考えなきゃならぬ。  あれやこれや考えると、今上げられている法案は非常に難点は多い、問題点は多いかもしれないけれども、今やらなければ時期を失するだろう。ですから緊急避難的に今やるのがよろしいんだ、これはスタートするより仕方がないという三つの考え方があると思いますが、その三つのいずれに近いかをお答えいただきまして、その後お考えがありましたら補足御説明をいただくことでお願い申し上げます。  以上です。
  78. 金子宏

    公述人金子宏君) 私は、今の三つのお考えの中でBプラスぐらいのところでございます。Bの中でも上の方と申しますか、そういう感じを持っております。
  79. 青島幸男

    青島幸男君 福祉税制ということが御発言の中にありましたが、それはそのとおり受け取っていいかというのは前の委員からの質問もありました。目的税ではございませんので必ずしもそうなるということにはならないんじゃないかという不安が国民の中にあると思いますけれども、この点だけお答えいただいて質問を終わります。
  80. 金子宏

    公述人金子宏君) 財政の統一的運営という観点から、一般財源とすることは妥当なことだというふうに私恩っておりますが、精神的にはやはり福祉財源といいますか、そういうふうな考え方を持っております。  ちょっとこれは理解が困難な言い方かもしれませんけれども福祉目的税という議論もございましたし、私は目的税とするのは不適当だけれども、やはり福祉ということを考慮して導入の必要性は一層高まるというような感じでございます。
  81. 青島幸男

    青島幸男君 わかりました。  終わります。
  82. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 以上で公述人に対する質疑は終わりました。  この際、一言御礼申し上げます。  公述人の皆様には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして心から厚くお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)  午後一時三十分から公聴会を再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時三十分休憩      ─────・─────    午後一時三十分開会
  83. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 税制問題等に関する調査特別委員会公聴会を再開いたします。  休憩前に引き続き、各案について公述人方々から御意見を拝聴いたします。  この際、公述人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  皆様には、御多用中にかかわりませず本委員会のために出席を賜りまして、まことにありがとうございます。委員会を代表いたしまして心から厚く御礼申し上げます。  本日は忌憚のない御意見を賜りまして今後の審査の参考にしてまいりたいと存じますので、どうかよろしくお願い申し上げます。  次に、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分程度で御意見を順次お述べいただきまして、その後で委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、これより順次御意見を承ります。  まず、下城公述人にお願いいたします。下城公述人
  84. 下城雄索

    公述人(下城雄索君) 伊勢崎市長の下城でございます。  参議院税制問題等調査特別委員会の諸先生方には、日ごろから地方自治行政につきまして格別な御理解と御高配を賜りまして、衷心より感謝を申し上げます。  本日は、税制改革問題につきまして、せっかく公述の機会をお与えいただきましたので、都市行政を預かる市長の立場から意見を申し述べさせていただきます。  なお、今回の税制改革につきましては、それぞれの立場からいろいろの意見や主張がございまして、私ども市長をもって組織いたしております全国市長会の中で特に意見の集約をしたわけではなく、以下、私が申し述べますことは、あくまでも私個人の意見としてお聞き取りいただきますようあらかじめお断りさせていただきたいと存じます。  さて、御承知のとおり、現在の我が国税制は、昭和二十五年のシャウプ勧告をもとにいたしておりますが、約四十年を経過した今日、いろいろなひずみが目立ってきておりますことは周知のことでございます。このゆがみやひずみは、近年における我が国経済社会の著しい変化税制が十分に対応できていないために生じているものでございまして、結果として、国民の中に税に対する不公平感重税感が高まってきていることは否定できないところでございます。したがって、今後における我が国の本格的な高齢化社会の到来や経済社会の将来を展望いたしますとき、このような国民税負担に対する不公平感を払拭するとともに、所得消費資産の間で均衡のとれた望ましい税体系を整備することが強く期待されておるところでございます。この点につきましては、私だけでなく、多くの市民がそれを望んでおるところでございまして、また、かねてより全国市長会といたしましても要望いたしておるところでございます。  このようなことから今般、政府におかれましては、所得税負担軽減合理化及び消費税消費譲与税の創設などを内容とした、いわゆる税制改革関連六法案を今国会に提案されております。  この法案は、公平、中立、簡素という租税原則に照らして、国民の税に対する不公平感を払拭するとともに、いわゆる直間比率の見直しを行い、所得消費資産等の間で均衡のとれた望ましい税体系の構築を図ることを目的といたしておるのでありますから、私といたしましては、これを信じ、また、従来からの私どもの要望にも沿うものでございまして、基本的には賛意を表するものでございます。  ところで、私ども地方団体は、税制全般の見直しの問題とあわせまして、今回の税制改革に関連いたしまして、地方税財源の確保を強く要望してまいってきたところでございます。  御案内のとおり、今回の税制改革案におきましては、国民の租税に対する重税感不公平感の解消を図る見地から、消費税の創設による収入見込み額を超える大幅な減税が行われることとなっております。したがって、国税及び地方税の減税及び地方間接税の廃止、または調整併課によって地方交付税並びに地方税の大幅な減収が見込まれることから、この減収分に対する十分な財源補てん措置を求めてまいってきたところでございます。  幸いにいたしまして、既存の間接税の廃止または調整併課に伴う減収額につきましては、消費譲 与税の創設によりまして完全に補てんされることとなり、また、国税の減税に伴う地方交付税の減収分につきましては、消費譲与税を除く消費税を地方交付税の対象税目とし、その二四%を地方交付税とすることで完全な補てん措置が講ぜられることとされております。  また、個人住民税等の減税に伴う減収分につきましては、地方交付税によりましてその一部が補てんされることになるものの、なお八千八百億円の純減収が生ずる見込みとなっておりますが、これにつきましては、今回の税制改革が、前回の売上税関連法案のようないわゆる税収中立性、レベニュー・ニュートラルの原則によらず、国民の要求に対応して、住民負担軽減合理化を図ることを先行することとされたことから、いわば事前の減税ということとして受けとめておりまして、今回の税制改革重要性にかんがみ、やむを得ない措置と考えております。  さらに、今回の税制改革案に伴う減収の補てんにつきましては、その補てん率が国の六六%に対し、地方は七一%と高くなりまして、また、改革後の国、地方の財源割合も、改革前に比べ若干地方が高くなることとなっていることは、地方への配慮がなされたものと理解いたしておるところでございます。また、個々の地方団体に対しましては、今後地方交付税や消費譲与税を通じまして激変緩和の措置が講ぜられると伺っておりますが、今後とも地方行財政運営に支障を生ずることのないよう万全の措置を講じていただきますよう改めてお願い申し上げる次第でございます。この点特によろしくお願い申し上げます。  なお、地方税の減税に伴う減収額につきましては、最近における税の自然増収の一部により賄われることとされておりますが、基本的には、行政改革による対応が必要であると考えております。既に行政改革に取り組んでおる私たち地方団体の立場から申し上げますと、補助金等の整理合理化あるいは地方への権限移譲を前提とした組織の縮減、諸制度の改善など、国におかれては引き続き行政改革の推進をお願い申し上げる次第でございます。  もとより、地方自治体といたしましても、今後とも一層行政改革に取り組んでいくことといたしておりますが、行政改革を推進するに当たりましては、国と地方の信頼関係の確立が何よりも重要であると思慮するところであり、これは今回の税制改革にも通ずるものであると考えております。  せっかくの機会でございますので、この国と地方の信頼関係の問題点につきまして若干意見を申し述べさせていただき、諸先生方の御理解と御協力を賜りたいと存じます。  御高承のとおり、現在、国と地方の間には国庫補助負担率の復元問題が懸案となっておりまして、我々市長は大変心配をいたしておるところでございます。国庫補助負担率の引き下げは、国の厳しい財政事情を背景として、昭和六十年度から再三にわたり実施されてきたものでありまして、これによる地方財政への影響額は四年間で累計五兆円もの多額に上っておりまして、厳しく地方財政を圧迫いたしております。申すまでもなく、この引き下げ措置は、国の補助金等の臨時特例等に関する法律等に基づきまして、本年度限りの暫定措置として実施されてきたものでございます。  したがって、法律の期限が来て、しかもその後の国の財政状況は、最近の経済情勢を反映して巨額の自然増収が生じており、当時とはその事情が大きく異なってきておるのでありまして、当然のことながら、明年度以降の国庫補助負担率は昭和五十九年度の水準に復元すべきものと考えております。  この問題につきましては、政府において昭和六十四年度予算編成の過程でその取り扱いを検討することとなっておりますが、以上申し上げましたとおり、明年度以降の国庫補助負担率を昭和五十九年度の水準に復元することは、国と地方との財政秩序を回復し、その信頼関係を確立するための国の当然の責務であると存じておりますので、予算編成に当たり諸先生方の御理解と御高配を賜りますようお願い申し上げる次第でございます。  以上、甚だ簡単ではございますが、税制改革並びに当面する地方財政に関する重要問題につきまして忌憚のない意見を述べさせていただきました。  大変貴重な時間をちょうだいいたしまして、まことにありがとうございました。
  85. 梶木又三

    委員長梶木又三君) どうもありがとうございました。  次に、谷山公述人にお願いいたします。谷山公述人
  86. 谷山治雄

    公述人(谷山治雄君) 税制経営研究所の谷山でございます。  良識の府とされております参議院意見を述べさせていただきますことを、大変光栄に存じております。  私は、一民間の研究者でございますので、時間の関係もございますし、消費税の問題を中心に意見を述べさせていただきたいと存じます。  先生方も御承知のように、国民世論の過半数、三分の二は消費税反対をしているわけでございまして、その理由につきましては、既に国会でも議論をされておりますので、ここで繰り返す必要はないかもしれませんが、一応三つの問題があると考えます。  一つは、プロセスの問題でございまして、いわゆる公約違反の問題、国会決議違反の問題、それからさらにリクルート疑惑との関連の問題、そういうプロセスの問題が一つあると存じます。  第二は、内容の問題でございまして、これは言うまでもございませんが、竹下総理がみずからおっしゃいました八つの懸念なるものが全く解消されていないという中身の問題が第二でございます。  第三は、消費税導入の理由の問題でございまして、何のために今、消費税を導入するのか大変国民は疑惑に思っているところでございます。  まず第一に、もし仮にこれを減税財源として考えますと、自然増収があることももちろんでございますけれども、中身が大変不思議でございまして、今回消費税を導入いたしましても、消費譲与税あるいは交付税の交付あるいは諸間接税の改廃を含めますと、国の純収入は六千六百億円足らずしかございませんので、到底これは減税財源とは言えないと考える次第でございます。  それから、地方交付税につきましても、これは所得税法人税の減税に伴います交付税の減収を補てんするだけでございますから、これも減税財源とは言えない。何のために一体それでは消費税を導入するのか、大変不思議な感じがすると言わざるを得ないわけでございます。  次に、第二に将来の展望でございますけれども高齢化社会ということが盛んに言われますけれども国民の見るところでは確実にふえるというのは防衛費その他でございまして、高齢化社会その他につきましては、最近でも年金のいわゆる改悪プランが審議をされている最中でございますので、一体どういうビジョンを描かれて高齢化社会に備えての消費税ということが議論されるのか大変不思議に思うところでございます。  以上の三点が私は国民反対理由であろうと感ずるわけでございます。  ここで、消費税の中身に入ります前に、リクルート問題についてとやかく言う余裕はございませんけれども、一言だけ述べさせていただきますと、私はこの問題は課税問題が発生するのではないかというふうに考えております。  昨日の朝日新聞の中山興業銀行特別顧問の談話、本日の鉄鋼連盟の山城副会長の談話にもございますように、これは株の形をかりた贈与である、金銭の授受である、こういう談話が発表されております。それから、税法の実質主義の原則から申しますと、贈与税なりあるいは雑所得としての所得税課税なり両方の併合なり、そういう問題が起こってくる、こういう問題であると私は考える次第でございますので、ひとつ御検討を願いたいというふうに存じます。  さて、消費税の問題でございますけれども、今 回の消費税は、課税範囲の広いことにおきましてはまさに世界無類と言ってもよろしいわけでございまして、言いかえますと、非課税が極力圧縮をされております。あえて比較しますと、ニュージーランドがこれに近いと言えますけれども、ニュージーランドは住宅や公共活動には非課税にしておりますので、その点から考えましても、今回の消費税ほど課税範囲、課税対象の広いものはない、私はこういうふうに考えてよろしいと思います。  なぜそういうふうになったかという問題でございますけれども、もちろん広く薄くという租税哲学がございますけれども、いわゆる売上税の反省から帳簿方式というものを採用された結果、いわゆる非課税が余り多いと簡素化に反するという、そういう問題があるわけでございまして、帳簿方式というのが一つのてこになって実は非課税を極力圧縮した、こういうような構造になってきたのではないかと私は考える次第でございます。  したがいまして消費税は、もともと竹下総理みずからおっしゃっておりますように、逆進性の懸念が濃厚でございますので、このように課税範囲を広くいたしますと、逆進的な負担という性格はますます強まらざるを得ないと考えるわけでございます。この逆進性を緩和するための一つの方法としましては、要するに非課税を多くすること、税率を複数にすること、さらに、カナダでやっておりますように、税額控除を設けて一定の税金所得から控除する、つまり消費税相当分を控除する、このような救済措置を講じませんと逆進性はなかなか緩和できない、こういう問題でありますけれども、そういう配慮は何らなされていないようにお見受けいたします。  次に、広く薄くということなんで、税率は三%で低いからいいのではないかという、こういう御意見もあるようでございますけれども、なるほどEC諸国と比べますと確かに低い税率でございまして、そこからまた安易に税率引き上げられるのではないかという、こういう懸念もあるわけでございます。もっとも竹下総理は、竹下内閣としては税率の改定を提案しないというお話でございますので、これは竹下さんが二十世紀じゅう全部政権を担当しておりますと、税率が上がらないという大変結構なことになるかもしれませんが、とにかく税率引き上げの問題があるわけでございます。  この三%という税率でございますけれども、これは低くないということを実は申し上げたいのでありまして、どこの国でも大型間接税を導入しますときには、〇・一%とか一%とかでそれぞれ出発しておりますし、また現に、税の効果からいいますと、同じ性質を持ちます小売売上税の例をアメリカに見てみますと、アメリカは現在四十五の州で小売売上税を実施しておりますけれども、そのうち九つの州が三%台の税率であります。十五の州が四%台の税率、十四の州が五%台の税率でございまして、大体税率は低いところであるわけで、この三%の税率が決して低くはないということを申し上げておきたいと存じます。  さて次に、この問題をまず消費者のサイドから見ますと、もちろんこの税金の最大の経済効果は物価騰貴でございますが、これは残念ながら政府側は一・一%と言い、いろんな民間の団体が一・三%、一・八%、さらにまた二・二%、いろんな数字を出しておりますので、これは方法論の違いによるものであろうと存じますけれども、私は一・一%は余りにも低過ぎる、もっと高い二%近くになるのではないかと思っておりますけれども、さらに大事なことは、一般的な物価騰貴率だけではなくて、生計費の上昇率が実は問題になります。  私のところはごくささやかな研究所でございますので、とても統計を詳細につくることはできませんけれども、ごく単純な仮説を申し上げますと、いわゆる一般の消費しかしない家庭は三%、あるいは便乗値上げ等があれば三%以上の支出増加になるわけでございますし、一方でいわゆるリッチな世帯がございまして、例えば車それから家電、宝石、毛皮、ゴルフ用具、そういったものを絶えず買う、買えるといたしますと、むしろ消費税負担は現在よりも減少するということもあり得るわけでございまして、一般的な物価騰貴率ももちろん重要でございますけれども、いわゆる消費支出の形によって非常にばらつきがあって、どちらかといいますと、いわゆるリッチな世帯ほど負担が軽くなるということが、私は今回の消費税の持ちます大きな問題であると存じます。  さてそこで、次の問題でございますけれども消費者の立場に立ちますと、今回いわゆる便乗値上げ等に対する措置は非常にあいまいでございまして、JRの運賃等に見られますように、ある区間は据え置きになる、ある区間は税率より上がると、こういうことはもう既に歴然としているわけでございまして、そういった、悪質であれ、悪質でなくても、いわゆる便乗値上げの危険性が多分にあるということを申し上げざるを得ないわけでございます。  それから次に問題は、今回の消費税は、いわゆる事業者の協力を取りつけることに懸命になる余り、いわゆる消費者無視と申しますか、事業者にこびを売っているとは申しませんが、大変これは妙なところがございまして、既に国会でも指摘されておると存じますけれども消費者が消費税負担として払っているものが国庫に納まっていかないという、そういう問題があるわけでございまして、これは免税事業者の問題、簡易課税の問題、限界控除の問題、そういう制度によってそういう結果が出てくるわけでございます。  もちろんこれにつきましては、簡易課税適用の業者の売り上げは大体一六%ぐらいではないか、それからまた非課税、免税事業者の売り上げが三%ぐらいだから大したことないという御意見もあるようでございますけれども、全体の経済の機構からいいますと、私は大きな問題であると存じます。時間の関係上、詳しい計算は述べることはできませんけれども、簡単に言いますと、非課税事業者から仕入れますと、非課税であってもやはり税額控除はできるわけでございますから、その差額は結局国庫補助金をもらうのと同じことになるわけなんで、そこがまた一つ大きな問題になると存じます。  そこで、諸先生方の注意を喚起する、大変おこがましいことを申し上げて恐縮でございますけれども、この免税事業者とか簡易課税というのは、何か中小零細業者のための対策のように見えますけれども、実はそうとは限らないわけでございまして、いわゆる免税事業者の基準とか簡易課税の基準は前々年という基準をとりますので、新規に法人をつくりまして、それで何億、何十億売り上げても免税事業者になる、あるいはまた、やり方によっては簡易課税の適用をされる、こういうことになりますので、そういういわゆるループホールがあることが非常に大きな問題になってくるわけで、この問題は、私は単に中小零細企業に対するリリーフ、救済としては考えることはできないんではないかというふうに考えるわけでございます。  さて、少し急ぎますけれども、次に事業者の立場でございますけれども、これも転嫁の問題がいろいろ議論されておりますので簡単に述べさしていただきたいと思いますけれども、私も中小企業のコンサルティングをやっておりますので、実はけさも二、三の会社から電話がかかってまいりましたけれども、四月一日からの実施はまず無理だという、こういう一つの結論でございます。それはまず、簡単に言いますとプライシング、価格づけがあと三カ月では到底できないという問題。それにコンピューターの入れかえといいますか、プログラミング、これもとてもできない。時間もないのに脱線して申しわけございませんけれども、そういうことでコンピューター会社にうんと値上げを要求されるという心配もしたようでございまして、四月一日はまず無理だということでございます。  そこで、弾力的条項なるものがございますけれども、これも既に御存じのように、納税を猶予す ることはないわけでございますから、一番早いところは、四月決算の法人は六月に納税しなきゃいけません。一体これが間に合うのかどうかというのが私は業者の偽らざる気持ちであろうかと存じます。  そこで、この消費税は、事業者にとりましては明暗いろいろございますけれども、まず得をする方から申しますと、消費者からお金を預かるわけでありますから、いわゆる金利の運用ができるという問題が一つメリットとしてあると存じます。それからその次に、非課税売り上げが五%以下ですと税額控除がききますので、一種のゼロ税率と同じことが働きまして、これも得するという問題もございます。さらに、簡易課税その他先ほど申し上げました制度を通じて国庫補助金をもらったり、消費者の所得が事業者の所得に転化をしたり、そういう得のところもございます。  しかし、同時にマイナス面もたくさんあるわけでございまして、最大の問題は私は転嫁の問題であろうと存じます。  今までの議論をお聞きしておりますと、転嫁の問題と申しますと、前転、つまり買い手に転嫁をすることが盛んに議論をされておりますけれども、現実には百円の物を百三円で売れない、百円に据え置く、九十七円にする、これは後転せざるを得ないわけでありまして、そういう後転の保証というのは一体あるのかどうか。実はこの点は御議論としてどうも私はないようにお見受けいたしますので、転嫁には三つの転嫁があることはこれは教科書にも書いてあることでございますので、前転、後転、排転、あるいは消転と申しますが、特にどのように一体なるのか、この辺の検討を十分いたしませんと、私は事業者の不安は消えないだろうと存じます。  もう時間もあと二分しかございませんので急ぎますけれども、あとの問題は、いわゆる転嫁困難な場合にこれは非常に事業に危機をもたらすという大きな問題がございます。それから事務負担の問題、税務行政上の負担の問題、いろいろあると存じます。  そういうわけでございまして、私もヨーロッパその他へしばしば行きまして税務行政等も見ておりますけれども、これは日本で言われているほど税務行政はうまくいっておりませんで、最後にイギリスの例をごく簡単に申しますけれども、イギリスは人口が半分の国でございますけれども、いわゆる付加価値税に従事している職員がちょうど一万三千人おるわけでございまして、現在日本の間接税職員は四千人強でございますから、一体これで税務行政をどういうふうにやっていくのか。少なくともイギリスの場合には大変異議の申し立てやそういうことが非常に多いわけでございまして、私は税務行政上の問題につきましても大きな問題を残さざるを得ないと存じます。  税制改革全体につきましては時間の関係上省略させていただきまして、一番最後でございますけれども、私の考えでは、仮に消費税賛成という立場に立ちましても、余りにも時間がなさ過ぎる。しかも、リクルート問題等もございまして、いわゆる消費税賛成する方でも、渇しても盗泉の水は飲まずというお気持ちがあるんじゃないかというふうに私は考えるわけでございます。  そういうわけで私は、提案でございますけれども税制調査会等の枠を超えて五つの分科会をつくっていただきたい。一つ消費者の影響。もう一つは事業者の影響。三つ目は高齢化社会あるいは国際協力、防衛費の問題を含めます財政に関するいわゆるビジョンの問題。第四にマクロ経済との関係の問題。それから最後に税務行政の問題。そういうふうな分野について少なくとも一年はじっくり審議をして、それで案を国民に示して総選挙で問うていただく、こういった筋道が今一番大切なことじゃないかと思いますので、参議院は良識の府でございますので、ひとつこの公聴会が法案通過のパスポートにならないようにくれぐれもお願いいたしまして、私の公述を終わりたいと思います。  どうも長い間ありがとうございました。
  87. 梶木又三

    委員長梶木又三君) どうもありがとうございました。  次に、土方公述人にお願いをいたします。土方公述人
  88. 土方武

    公述人(土方武君) 住友化学工業の会長でございまして、経団連の副会長税制委員長を務めております土方でございます。  本日は、大変貴重な機会をお与えくださいましてありがとうございました。    〔委員長退席、理事斎藤十朗君着席〕 しばらくお時間をちょうだいいたしまして、税制改革法案消費税法案を初め関係六法案について、賛成の立場から意見を述べさせていただきたいと思います。  我が国経済は、民間企業のたゆまざる努力に支えられ、円高の危機を克服いたしまして、今やかつてないほどの好況に恵まれておるわけでございます。このような好機にこそ、税制改革行財政改革を初めとする制度改革を徹底して行うことによりまして、二十一世紀を見据え、急速に進む高齢化社会に対応いたしまして、福祉社会を着実に実現していくという目標に向かって、その基盤を築いていくことが必要であろうかと存ずるわけでございます。とりわけ税制の抜本改革は、現行の税制のゆがみ、ひずみを是正するばかりでなく、大幅な所得税法人税の減税によりまして、民間の持てる活力をフルに発揮させることによって経済活性化を図り、内需主導型の経済を定着させていく上で極めて重要な課題であると存ずる次第でございます。また、国民が広く薄く負担を分かち合う消費税の導入によりまして、高齢化社会を支える財政の基礎体力を涵養するためにも、ぜひともやり遂げねばならない課題であると考えるわけでございます。  このような考え方に立ちまして、以下、衆議院で可決されまして本院に送付されておりまする関係法案を支持する理由を述べてまいりたいと存じます。  今回の税制改革の第一の柱は、所得税法人税の大幅減税でございます。所得税減税の必要につきましては、今臨時国会の冒頭の七月に一兆三千億円に及ぶ所得税減税が全会一致で可決されましたわけで、そのことからも今さら議論の余地もないわけでございます。しかし、この減税は今年度限りの特例措置とされておりますので、これをぜひとも恒久的な制度改革に仕上げる必要があると思うわけでございます。さらに、各種人的控除引き上げなどを加えまして、国民が日々の勤労の成果をできるだけ多く手元に残せるようにいたしますことが、今、政治に期待されておるところであるというふうに思っておるわけでございます。  また、法人税につきましては、私が税制委員をやっております経団連では、長年にわたりまして我が国企業の実質的な税負担が世界で最も高いということをいろいろ計算して示しまして、御理解を求めてまいったわけでございます。  アメリカ、イギリスに加えまして、社会党のミッテラン大統領のフランスにおきましても既に法人税の大幅減税がなされております。また、西ドイツも一九九〇年には大幅な減税を行うことを決めておるようでございます。こうして世界各国が競って法人税減税を進めております中で、国際化社会の時代に我が国ひとり高い法人税を課するということを続けていくことはまことに難しいことではないかと思うわけでございます。  経済発展のかぎは民間の活力にございます。企業が高い法人税でもって留保が少なく、そのために前向きの研究開発や設備投資がためらわれると、あるいは企業に働く従業員勤労意欲がなくなるということになりますれば、さしもの日本経済もだんだんと立ち行かなくなるというふうに考えるわけでございまして、この点は民間労組の方々にも広く認識されておりまして、所得税減税とあわせて法人税の減税を支持していただいておると思っております。  税制改革のもう一つの柱は消費税の導入でございます。私は、不公平税制の抜本的解決策としても消費税を考えるべきだと存ずるわけでございま す。  今回の税制改革につきまして、一部には、減税と不公平税制の是正がされれば、消費税の導入は必要ないという御意見もございました。しかし、不公平ということでありますれば、サラリーマンや法人企業、それに一部の物品に偏った、こういった課税が放置されていることこそ最大の不公平であり、現行税制の枠組みをそのままにしておいて幾ら枝葉をいじりましても問題の根本的解決にはならないと存ずる次第でございます。消費に薄く広く課税する消費税の導入によりまして、現行税体系の持つさまざまな欠陥を克服することが求められるべきでございまして、新しい消費税により、従来所得税特定の物に対する課税に過度に依存してきました問題を、かなりの程度解決できるのではないかと、このように考えておるわけでございます。  また、所得税では、所得の捕捉が十分になされているかどうかが、そもそも問題となるわけでございます。源泉徴収によりまして課税をされておりますサラリーマンに比べまして、自営業者や農業者の所得捕捉が十分とは言えないということはもう既に周知の事実でございます。これがサラリーマン層の重税感不公平感を招きまして、税制改革を求める世論の背景になっておりますことはどなたも御否定なさらないと思うわけでございます。  また、日本の所得税は強度の累進税率になっておりまして、したがって中堅以上のサラリーマンでは所得の伸びを上回る税負担の増加率となりまして、ただでさえ住宅、教育等の負担が大きい働き盛りのサラリーマンに重圧感を与えておるところでございます。あらゆる消費課税対象とする消費税であれば、こういった所得税の欠点を解消していくことができると存ずる次第でございます。消費税では捕捉格差の問題はもちろん生じませんし、消費は外形的な行為でございますので、仮に所得を隠すことができましても消費の事実を隠すことはできないということで、消費税であればだれもがその消費の額に応じまして公平に負担をすればよいということになると存ずるわけでございます。  次に、現行の個別間接税に目を転じてみますと、その不合理性は大変なものでございます。例えば物品税は、そもそもぜいたく品課税の性格を持つものでございましたのですが、現在では庶民の生活に欠かせない必需品となっております家庭電気製品とかあるいは自動車とかというものから税収の大部分を得ておるわけでございます。また、既に家計支出の過半を占めておりますサービスの点につきましても、現行間接税ではサービスを対象としておりますものは入場税、通行税などほんのわずかでございます。それ以外に支出というものは非常にたくさんサービスに出されておるわけでございますけれども課税対象にはなっておらないわけでございます。で、消費の関心がテレビや自動車というように同じ方向に向かっておりました時代ならばともかく、今のような消費が多様化し個性化いたしておりますときには、何がぜいたく品であるかということを政府で決めて、それだけに課税していくということは大変不合理ではないかと思うわけでございます。サービスを含めた消費全体に課税する制度にぜひ変えていただきたい、そういうことで間接税の不公平さが解決されると、このように考えておるわけでございます。  加えて、我が国はかつてどの国も経験したことのない急速な高齢化の途上にございます。現在、御承知のように五・九人の働き手で一人の高齢者を支えておりまする現状でございますが、およそ三十年後の二〇二〇年には二・三人で一人を支える勘定になると言われております。また、年金、医療費などの社会保障給付は現在のペースでは年間三兆円ずつふえていくということになりまして、社会保険料負担の増加が必至の中で、今までのようなサラリーマンと法人企業に偏った税制を続けていくならば、早晩、財政負担は限界に達しまして、豊かな社会を支えるべき社会保障制度の根底が崩れていくというふうに考えざるを得ないわけでございます。  サラリーマンと企業に偏った負担を課しているこの直接税という問題と個別物品に集中いたしました現行の間接税、この両方の不合理をあわせて解決し、さらに高齢化社会の進展に備えた税体系を築くことが今回の税制改革の目的であり、これが最大の不公平税制の是正策であると信ずるわけでございます。  その具体的方策を求めて、昭和六十年以来政府及び与党税制調査会国民の注目のもとに審議を続けられ、さらに昨年の売上税の反省のもとにつくられました最終回答が今回の消費税であると、このように理解をいたしております。税額転嫁の仕組み等にいろいろな問題があるわけでございますけれども我が国の商慣行や流通の現状に照らし合わせてみますると、やはりまず簡易な方式で新しい間接税になれていくという今回の行き方は、妥当な選択ではないかと私どもは思っておるわけでございます。  最後にもう一言つけ加えさしていただきますと、税制抜本改革というものは、そのすべてが実現されない限り、所期の効果を満たし得ないと思います。当面の自然増収を頼りに減税だけを拡大するということは、財政の現状からすれば到底許されないことでもございます。抜本改革を全体として遂行することによりまして、初めて恒久的な所得税減税も可能であり、将来を見据えて国民が真の豊かさを享受できる社会というものへの布石ができると信ずる次第でございます。  以上、今回の税制改革を支持する理由をるる申し述べてまいりました。どうか本院におかれましても十分御審議の上、一日も早く税制改革法案を成立されることをお願いいたしまして、私の発言を終わらしていただきます。
  89. 斎藤十朗

    ○理事(斎藤十朗君) どうもありがとうございました。  次に、丸尾公述人にお願いいたします。丸尾公述人
  90. 丸尾直美

    公述人(丸尾直美君) 中央大学で経済政策、福祉経済などをやっております丸尾です。  私は、今回の消費税導入を柱とする税制改革に対しましては、次に述べますような条件が満たされることを条件として、そういう条件が満たされれば支持できるのではないかというふうに考えております。どんな改革でも大きな改革はどうしてもどこかに利害を損ないますし、問題を生ずるわけですけれども、そういう問題を解決するには一種の社会契約的なパッケージ的な解決が必要であろうと思うんです。  そのよい例は、アメリカのレーガン政権のもとでの税制改革です。あの中で個人の株のキャピタルゲインに関しましては、全額が所得税扱いにされてすべてが所得税並みの課税対象となるという画期的な不公正是正がなされたわけですね。これはブラインダー教授が評価しておりますように、彼自身たちも思いがけなかったほどの一種の社会契約的な解決の効果です。つまり、一方で譲る、しかし他方において得る、全体としては好ましい結果が生ずる、そういうのが社会契約的な解決ですけれども、今回の改革におきましても反対があるからということでいい面まで捨て去るということは、たらいの水と一緒に赤子を流すようなことになってしまう。そういうことがあるのは必ずしも好ましくない。ぜひ社会契約的な解決の道を求めて社会的合意の得られる解決をしていただきたいと思うわけです。  しかし、私が問題としますことは、政府は今回の税制改革の理念として、消費所得資産等の課税のバランス、それから税体系の不公正是正、高齢化、長寿化に備える国民福祉の充実と歳入構造の安定化に資するということなどをうたっておりますが、このような目的は非常に結構で私も賛成ですが、そのような方向に必ずしもなっていないというところに私の不満とするところがあるわけであります。  まず、所得消費資産等の課税の均衡ですけれども政府は当初は非常に消費所得とのバラ ンスというようなことを言いましたけれども資産とのバランスの関係を初めは余り言わなかった。後の段階になりましてだんだん野党などの要求で出てきたわけですが、個人消費のGNPに対する割合を見ますと、例えば一九七五年には消費はGNPの六〇・六%、一九八六年度には五七・七%、まあ若干低下しています、消費の比重自体が。それに対して資産は一九七五年度にGNPの約二九%、これは上場会社株式総額ですね、二九%。それが今はGNPがことし三百六十五兆円ぐらいとしますと、上場会社資産全体は東京証券取引所だけで四百六十兆円ですか、けさの新聞で。全国では五百兆を超しているわけです。一・何倍になっているわけです。消費に対しましては、一九七五年度にGNPの四七・七%でしたが、今や二・四倍以上になっているわけです。資産の比重というのはGNPに対しましても消費に対しましても非常にふえているわけです。その割には資産に対する課税のバランスということが言われなかった。野党などの要求で浮かび上がってはきましたけれども、その割には提案されている資産課税——資産といいましても資産から生まれる所得ですけれども、そのキャピタルゲインに対する課税というのは余りにも今の段階では不十分である。この点をもっと明確に十分将来少なくともやるということを約束してもらいたいということですね。  それと、土地に対しても同様なキャピタルゲイン、値上がりして得られた利益に対する課税等に対しましても、とにかく資産価値がやはりGNPに対して非常にふえていますから、その辺のバランスというものを十分考慮していただきたいということです。  それから、もう一つこの機会に申し上げさしていただきたいんですが、資産に対する公正化というのは、特に株の場合、事後的にキャピタルゲイン課税でもって吸収するというのは一つの方法でして、それはそれで大いにやっていただきたいんですけれども、もう一つの方法があるわけですね。それは株式の増加に事前に株を持たない人が参加して、株を持つ人をふやしていくということですね。これはやはりアメリカのレーガン政権でもESOPという、つまり従業員株式所有制度という制度を導入して非常に促進しているわけですね、非常に急速にふえています。サッチャー政権下でも、従業員持ち株制を法制的に利潤分配制度とセットにして導入して税制で助成しているわけです。税制上、そういう形で資産分配の平等化ということをこの二つの保守政権は非常に力を入れているわけです。そして、上院議員などでもこの株式資産平等化に情熱を燃やしてやっている人がいるわけです。保守政党でもそうであるわけですね。ぜひともその辺を頭に置いていただきまして、株式キャピタルゲイン課税するということだけでなくて、平等化を進めるような、資産自体の平等化を進めるような株式所有への勤労者参加という方式を考えていただきたいわけです。  実は私は、八年間勤労者財産形成審議会の委員をやらしていただきまして、ことし四月、残念ながら満期になりましてやめましたけれども、その間これを主張し続けてきたわけですけれども、なかなかそういう機運はなかったわけですけれども、こういう機会に、ぜひとも税制的にもそういう制度を助成するという考えを出していただきたいと思います。これは今すぐというわけじゃないですけれども、そういうことをひとつ約束していただけるようなことが将来できれば非常にいいんじゃないかと思います。  それから政府は、長寿社会に備えて福祉を充実させ、その財源安定をするということを消費税導入の大義名分としてたびたび言ってきたわけですが、その割には福祉ビジョンが具体性を欠く。二回にわたって財政計画等ビジョンを出していただいたんですけれども、あちこちに問題点があるわけです。財政計画の基礎になる基本的な数字、例えば就業者のうちの雇用者がどれくらいの比重かということは、雇用者というのは所得の捕捉率も高いし、税金社会保険料をきちっと払いますから、非常に財政収支に影響してくるわけですけれども、その雇用者比率が政府の計画ですと二〇〇〇年にも二〇一〇年にも七五%ぐらいなんですね。現に大体七五%になっているんです。過去十年ぐらいの間に雇用者比率は一〇%ポイントぐらい上がっているわけですね。そういうことを考えますと、これから十五年雇用者比率が上がらないというそういう想定のもとでつくった年金計画や社会保障財政計画というのは、まだ詰めが足りないということを言わざるを得ないわけです。我々経済学者から見まして、もうちょっと精緻なことはできるんではないかと思うわけです。時間がなかったということもあるでしょうけれども、今後もう少し詰めていただきたいということです。  それよりももっと大事なことは、やはり何に税収を使うかということですね、もうちょっと明確にできないかということです。一方で税金を取る、片方で福祉支出がこんなに要るという、それぞれ出す場合に、そのどこにふえる収入を使うかということで、こういうところには使います、だからこういう問題の福祉が充実しますからみなさん御安心してくださいという、そこが確約されるとこれは一種のパッケージになるわけですね。ですから、その辺のところを具体化できないかということを思うわけです。  特に、私が今頭に置いておりますのは、一つはやはり老人医療の公費負担部分が非常に今問題になっています。このままですと、加入者按分率一〇〇%化と相まって非常に被用者保険の負担が重くなっていく、そして他方、自営業者の方でも国保の収納率がなかなか上がらない、一時は非常に下がっているというような問題があったりしまして問題ですから、その辺のことを考えますと、やはり公費を、今三分の一負担していますけれども、もうちょっと上げていくことが必要ではないかということであります。  それから今、厚生白書なんかも中心的に取り上げてきておりますし、話題になることが非常に多いのは、寝たきりなどの介護ですね。そういう部門に使われるお金というのは、医療費などに比べまして、非常にまだ少ないわけですね。そして、意外と少ない金で十分な福祉充実ができるわけです。例えば政府が今、ありがたいことに介護手当等々を考えていますけれども、介護手当一人五万円、仮に寝たきりの人三十万人に出しても、それは全部出す必要はないでしょうけれども、仮に出したとしても、三十万の高齢者に出しても年間の支出は千八百億円です。これは大変な金ですけれども、しかし医療費に比べるととてつもない金額でもないし、消費税収入からすれば全く考慮できないという支出でもないわけですね。それから、もちろん全部に払う必要も必ずしもないわけです。  介護というのは、これは一つの例ですけれども、意外と少額のお金で効果のある福祉充実ができます。この介護の不安というのが今の日本の高齢者、あるいはそれを介護を将来する人あるいは自分も介護されることになる人々の不安を非常に大きくしていますから、そういう点に福祉費用を使っていきますよというようなことをもう少し明確に出していただきたい。  今度の福祉ビジョンで若干そこのところに触れられていて、特に施設関係それからデイサービスにつきまして一万カ所、これはそのころの人口の一万三千人に一カ所くらいです、二〇〇〇年のころですね。それくらいのことを福祉ビジョンで書いていますけれども、その辺は、私非常に評価しておるわけですけれども、そういう点をもう少し明確にしていただいて、今度の税制改革によってそういうことを積極的にやりますよということを十分強調していただければ、私は非常にいいことであり社会契約的パッケージとして成立するというふうに思います。  それからもう一つは、政府も今考慮していますけれども、やはり一方で減税と一方での消費税、その両方の純利益の恩恵を受けないのが年金生活者だということが言われます。所得税はどっちみち払っていませんから。しかし、見方によっては、 年金生活者は今度の消費税で将来の年金の財源が確保されるとか、少なくとも物価が上がった分は物価スライドでカバーされるではないかという議論もありますけれども、やはり相対的に当面不利になるわけでして、そのことと、それはないとしても、ほかの考えからいきましても、非常に基礎的な年金というのはベーシックであり、基礎年金と言うには、その内容を知れば先進国並みと言うのをはばかるような内容であるわけですから、やはりそういう点についてもう少し、一月三万円以下の年金しか受け取ってない人に対しての配慮、そういうところにも、パッケージの一つとして消費税収入が回るというような、そういうような約束がもう少し明確になれば非常にいいのではないかというふうに思っております。    〔理事斎藤十朗君退席、委員長着席〕  以上、私の考えは、不公正税制の是正、時間がありませんから特にキャピタルゲインのことだけを申し上げましたけれども、そちらに対する適切なる政策、それから福祉ビジョンに対してもう少し明確な約束をするということ、それからもう一つ最後に一つだけ、消費税導入が行われることによって行政改革の努力が、一番肝心のやってもらいたいところが残っているのがそのままに残されてしまうということ、それからもう一つは、税収をもっとふやして不公正税制などを是正して取るべきところから取るというその努力がここで挫折する、この二つがないように、今後もやるべき行政改革はやる、やるべき不公正税制は是正して取れるところはもっとしっかり公正に取るという、このことを満たしていただく、この三条件を満たしていただくということが、私が税制改革賛成する条件であるわけです。
  91. 梶木又三

    委員長梶木又三君) どうもありがとうございました。  次に、久野公述人にお願いいたします。久野公述人
  92. 久野靖正

    公述人(久野靖正君) 久野でございます。  このたび、税制問題等に関する調査特別委員会の公聴会に私のため貴重な時間を与えていただきましたことに対し深く感謝しますとともに、私の甚だ不勉強な点と浅薄な考えや発言がありましたらお許しいただきたいと思います。また、あくまで個人としての考え方でありますので、その点、御了解いただきたいと思います。  まず、今回の税制改革の本旨が、長い間直接税中心だったのを間接税にもウエートを置くいわゆる直間比率の見直しであり、消費に関する税が長年の懸案であったことを考えると、機は熟していると思います。  私は、二十八年間サラリーマン生活をしていますが、世間で言われているクロヨンとかトーゴーサンとかの言葉に大変ひがんでおります。それは法律的な取り決めでもなく、単なる世間に広く使われている用語ですが、まんざら実態と離れた根も葉もないことではないと思います。それに、税の捕捉度合いをあらわす用語ですから、本日の本題とは直接関係ありませんが、そのようにしっかり捕捉されている階層の人の税がその上高く、今や限界にまで来ていると言われていることに大変不公平感を持ちます。  国民が税を納めてその実感がわくのは公平であると感じたときであり、不公平感のあるときは取られたと感じます。所得の多い人からたくさんの税を取るということは徴税の大前提でありますが、それも行き過ぎると、稼ぎの多くが税と化し、残りがそれほどではなく、労働意欲の減退にもつながりかねません。特に、四十代、五十代の働き盛りの人は、家計支出が多いだけにこのことを痛感していると思われます。  法人とて大体同じようなことが言えるのではないでしょうか。法人の海外進出が、税が全部原因ではないでしょうが、会社経営に当たって、経営者は時には腹を据えた経営をしなければならないかと思いますが、悪くなったときの保証はないけれども、もうかったときは高い税では会社経営は無難な経営になりがちではないかと思います。さきの個人所得の場合とあわせて考えると、経済が鈍化し、その先がどうなるか、容易に想像ができることです。  先進ヨーロッパの国々が充実する社会保障のもと経済が停滞し、国に勢いがなくなった例は我々のよく知るところであります。我が国は、社会保障もよくし、経済も活力を失わないようにしなければなりません。  次に、シャウプ勧告以来と言われる中で、我が国は戦後の奇跡的な経済復興と高度経済成長をなし遂げ、国民の生活レベルは飛躍的に上昇しました。戦後のあの時代とどの点をとっても比較にはなりません。教科書を買うのが精いっぱいの時代から、教科書は無償となり、その何倍以上もの教材を買ったり、あるいは塾で勉強することができます。また、一部特権階級のスポーツだったゴルフは、今若者までが手を出し、まさに大衆のスポーツとなっております。  このような社会の中で、応分の負担ができる人や階層は時代とともに変化しています。世界に例のないほど貧富の差がなくなってきている現在、広く薄くの税はあらゆる階層にとって負担可能と言ってもよく、消費に責任を負うという意味では公平な税であります。消費税は、直間のバランス是正のほかに、資源有限のこの社会で、とりわけ資源小国日本では、物やサービスの消費はその代価を払うだけではなく、人間の本能を満たしてくれた社会に対し、何らかの責任を負うべきであり、その形が税となって浪費を防ぎ、社会通念の確立に役立つものと思われます。  次に、消費税の中身について考えますと、さきに指摘した公平化という点で、我々サラリーマンにとって税率が著しく下がり、さきに述べた私のひがみも少しはなくなります。法人も潤うところが大きいかと思われます。しかし、まだ是正すべき不公平はあるようです。また、三%の一律課税ではなく、ぜいたく品を一般生活物資と切り離し、二段階課税を検討すべきではないかと思います。  さらに、消費税の弊害として逆累進性と物価上昇の要因がありますが、逆累進性は低所得者に最も打撃を与えるようになり、消費税によって充実する社会保障でよほどうまくカバーしないと悪税となります。物価も、消費者に転嫁される分を最小限にとどめ、絶対便乗値上げをさせない監視とその対策を十分考えなければなりません。  最後に、消費税は一般論として賛成しますが、さきに挙げた点を十分考慮し、急がず慎重審議をしていただいて成立を図っていただきたいと思います。それに、成立した暁は、簡素な税のうたい文句のとおり行政改革に努め、安上がりの政府づくりに邁進していただきたいと思います。  以上です。
  93. 梶木又三

    委員長梶木又三君) どうもありがどうございました。  次に、粕谷公述人にお願いいたします。粕谷公述人
  94. 粕谷晴江

    公述人(粕谷晴江君) ただいま御紹介をいただきました税理士の粕谷晴江です。私の意見を述べさせていただきたいと思います。  初めに、法人税所得税などの所得課税改革の問題について述べさせていただきます。  まず、法人税についてですが、法人税改革案の中心は、基本税率を四二%から三七・五%に引き下げることです。法人税の減税額を国税庁の発表しております昭和六十一年法人企業の実態に基づき試算してみますと、資本金一千万円未満の法人は、利益を計上しています法人の中の七二%になりますが、一社平均減税額は二十一万円です。減税規模全体の中に占める割合はわずか一〇%です。一方、資本金十億円以上の企業では、その数は全体の〇・三%にすぎませんが、一社平均減税額は二億六千七百万円で減税規模全体の五〇%を占めます。  次に、所得税についてですが、改革案の中心は、最高税率の引き下げと人的控除の引き上げです。国税庁統計年報に基づき、申告納税者所得階層別の減税額を試算してみますと、所得額五百万円以下の納税者数は全体の八〇%を占めております が、減税額では減税規模全体の一八%を占めるにすぎません。一方、所得額三千万円以上の納税者は、その数が全体の一・三%ですが、減税額では減税規模全体の四〇%を占めます。  このように法人税所得税改革案に共通して言えますことは、税率引き下げ等が高所得企業、高所得者階層に厚い減税効果を及ぼすということです。一方、現在法人税所得税課税されていない階層は何ら減税が及びません。  次に、女性の立場から述べさせていただきます。  配偶者特別控除について申し述べたいと思います。  いわゆる専業主婦控除と言われます配偶者特別控除制度の創設は、その基本認識が事業所得者の青色専従者給与を所得分割と見ている点にあります。これは個人事業における家族労働の実態を無視し、青色事業専従者給与の経費性を否定した認識です。  配偶者特別控除制度は、片働き世帯とそれ以外の共働き世帯、独身世帯との間に課税上の新たな不公平を生じます。さらにこの制度は、夫が勤務先に妻の給与等を申告するなどプライバシー保護の面でも問題があり、女性の社会進出のブレーキとなるおそれがあります。また、稼得者本人の控除である基礎控除額より配偶者控除額の方が多くなるという不合理も指摘することができます。既婚女性の就業率が五〇%を超え女性の社会参加が目覚ましい今日、このように選別的な控除制度は廃止し、減税効果が全体に及ぶ基礎控除の大幅な引き上げが望まれるところです。  また、社会的弱者と言われています母子世帯に税制改革の及ぼす影響を見てみますと、母子世帯の現状は、給与所得などの稼得所得が収入のうち八〇%以上を占める世帯の割合は七七%になっています。社会保障給付が収入の五〇%以上を占めている世帯は一二・一%にすぎません。母子世帯の大半は、自己の勤労によって生活を維持しています。年収が二百五十万円未満の世帯が全体に占める割合は七五・四%に上ります。消費税創設に伴う支出増の手当てとして、母子世帯に生活保護費などの社会保障給付金を引き上げることが考えられているようですが、この数字を見ますと、母子世帯に対しては社会保障給付の引き上げでは問題の解決にならないことがわかります。  次に、消費税の創設について述べさせていただきたいと思います。  まず、消費税の性格についてです。  大型間接税は本来、所得の低い人ほど負担割合が高いという逆進性を持っています。この逆進性を緩和するために、生活必需品を非課税にしたり、ぜいたく品に高い税率を用いるなどの措置が講じられます。しかし、今回提案されている消費税は、その仕組みの上から逆進性を緩和することが困難で、食料品や公共料金等あらゆる消費課税される上、単一税率であるために逆進性の強いものになっています。  さらに、消費税の創設により最も懸念されるのは物価の上昇です。消費税は、日本国民が全く経験したことのない新しい税制です。帳簿方式など制度があいまいなことも手伝いまして、導入前後混乱を生じ、税率分にとどまらない物価の上昇を招くことが予想されます。現在、日本の物価は世界的に見てかなり高く、この上物価が上昇すれば生活が圧迫されます。総理府の毎年行っている世論調査政府に対する要望を見ますと、昭和五十九年まで物価対策が常にトップを占めていました。物価の安定に対する国民の切実な思いが伝わってきます。  消費税は、商品やサービスの値段に上乗せされ、それを消費者が消費行為を通じて負担する税です。ですから、消費者は値段という形で負担した税金を事業者に預け、事業者は消費者から預かった税金を税務署に納めるという源泉徴収に似ています。源泉徴収制度の代表的なものは給与所得者源泉徴収ですが、両者の大きな違いは、所得税では自分の負担する税額が明記され確認できるのに対して、消費税では値段の中にどのくらいの税金が含まれているのか、消費者にはわかりにくいということです。  消費税が導入され、税収の中に占める間接税の割合が高くなるということは、見える税金から見えない税金へ移行するということを意味します。負担した税金が見えないということは、重税感を抱かないということにもなります。間接税重税感を抱かせず、税金が値段の中に潜り込んでしまうのです。税金は、自分の所得の中から痛みを持って払い、また徴税する側も国民の税の痛みを理解して、むだのない効率的な財政運営をすることが、民主国家を支える民主的な税制と言えるのではないでしょうか。  終わりに、改革案全体を見渡しますと、所得消費資産等の組み合わせのバランスに重きを置くとしていながら、資産課税への是正が不十分で課税ベースの拡大が図られていません。各税目とも応能負担原則が薄れ、高所得者層、高収益企業に有利な税体系になっており、税負担所得の高い者から低い者もしくはない者へ、法人から個人へ大きく移動し構造が変化します。  国民不公平感重税感が生じるに至った最大の原因は、課税基本とされる応能負担原則に立脚した総合累進課税所得税制に多くの優遇措置を設け、分離課税を導入して課税ベースを縮小させたことにあります。国民不公平感を払拭するためには、まず現行税法上のゆがみ、ひずみを是正し、税に対する国民の信頼を回復することが先決であると思います。  これで私の陳述を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  95. 梶木又三

    委員長梶木又三君) どうもありがとうございました。  次に、斉藤公述人にお願いいたします。斉藤公述人
  96. 斉藤親仁

    公述人(斉藤親仁君) 御紹介いただきました私は、命の水とその使われた水の再処理を行う水道、下水道に働く労働者並びにガス、電気供給の労働者をも組織する全日本水道労働組合の委員長斉藤でございます。  労働者そしてまた一国民の立場できょうは当委員会にお話をする機会を得ましたことを感謝申し上げ、主権者たる勤労国民の一員として消費税問題について議員各位に御意見を申し上げて、ぜひともお聞き届けいただけるよう願うものであります。  もとより、限られた時間の中でありますから、消費税導入をめぐる今日の政治状況についての国民の怒りとその心情、これらを含む基本的立場と、水道、下水道という命の水、命にとって日常生活上欠くべからざるものを課税対象としていることから生じる問題について、意見を絞って申し述べたいと思います。すなわち公営事業、公益事業を対象外とすれば消費税を認めるというものではございませんことを、あらかじめ基本前提とさせていただく次第であります。  基本的に反対する理由一つは、今、粕谷公述人からもございましたが、一つは、我々は、公約違反で税収の大増収と大幅な福祉切り捨てのもとで軍備拡大の財源を搾り出すような、打ち出の小づちとなるようなこの消費税に対して、これは将来にわたる大増税路線の確定を認めることで許すことはできないと思うのであります。  第二に、リクルート疑惑など、中曽根前政権、竹下現政権の枢要にかかわる一大疑獄事件の真っただ中で、国民政治不信は高まっています。みずからは秘書のせいにして、ぬれ手でアワの大金を手にしながら、額に汗して働く者、年金生活者、職のない人たち、その他社会的弱者から投網をかけたようにして搾り取る消費税を新設することは政治的道義的にも認められないことだと思うのであります。  第三に、国民の求めている税制改革と今日の政府提案は大変なギャップがあります。私たち勤労国民の切実な願いは、もっと徹底をした大幅所得税減税であり、一方における年金、福祉の充実であります。お金持ちやお医者さん、大法人などに対する優遇税制資産所得に対する優遇は、引き 続きその改革が不徹底のまま優遇は残され、改めなければならぬままに置かれていると言わざるを得ません。  こうしたことから、基本的には、私は本関連法案は全面撤回をすること、内閣の総辞職を求めているのが大多数の国民の声だと申し上げたいのであります。消費税導入は、その持つ逆進性とともに社会的不公平を拡大するもので、一億総中産階級化という神話とは異なり、社会的不公平を拡大するばかりであります。三%は低い税率といっても、竹下内閣一代限りという先日の答弁の報道に接して、国民は、ああやっぱり導入すれば後はどこまで高くされるかわからないという庶民の不安がもう的中したのかと感じているのであります。内閣の支持率の低下はこうした国民の怒りと抗議というように、主権者たる国民の声に政治家各位も襟を正してきちっとお聞きいただくべきであると強く訴えるところであります。上に厚く下に薄い、目先をかわす薄い減税で国民を欺くような政治手法は許せないものだと思っています。真の不公平是正と勤労国民への徹底した大幅減税こそ考えるべきでありましょう。  さて、水道、下水道という日常欠くべからざる身近な公共サービスに消費税をかけることについて、悪税の証明として二、三の問題点を指摘しておきたいと思います。  税は、取られる者、納める者にわかりやすいものでなければならないのに、私たちの友人である市民の皆さんがあちこちの水道局などに問い合わせてこられますけれども、窓口をその電話はたらい回しをされた上で、今の段階ではまだよくわからない、料金が上がるのか上げられないのかもわからないという答えが多く返っていっているのが実情であります。事業体と一般住民にどういうはねっ返りがあるのか、具体的な構造、内容を明らかにし得ぬままに法案だけが先行して成立するというのは、主権者たる消費者を置き去りにする悪法と言わざるを得ません。現実に行われつつあることは、全くもって民主国家の納税の理念に合致しないのであります。  私たちが関係方面に極力手を尽くして調べようといたしましても、どこからかの統制があるとみえまして、ふだんなら対応してくれるところも、資料、数値について日ごろの対応と打って変わりお出しいただけません。したがって、わからないことが多いのであります。逆に言えば、各事業体においてすら、まして国民、一般消費者にはわかないまま、知らされないままに、国の決定だからとこの消費税を押しつけてくるという図式が見えるのであり、これは認めがたい政治の姿と言わなければならないと思います。きょうは、これを撤回し、改めて考えるべきだと申し上げたいのであります。  第二に、はっきりしたことはわからぬが、大体の概要として我々の仲間が押さえた上での話としてある当局者筋が漏らしてくれたことによりましても、全国では命の水とその再生処理に相当多額の税金がかかるということは推測されるところであります。まずもって、空気とともに欠くことのできない命の水とその再生処理にすら税金をかけるという政治的発想については、国民大衆としても関係労働者としても認めがたい発想でありまして、かつて二年前に没となりました流水占用料、水源税などと同じように、これは成立を許せない考え方ではないでしょうか。斎藤先生が厚生大臣の折にはこれを没にしていただけましたけれども、今度は消費税として水に税金をかけてくるということについても私ども断じて認められないということでございます。限りある資源であり人間労働が加わったものでありますから料金をいただくということは当然としても、我が国国民感情から見ても国情としても、水にあるいはその処理に税金をかけようとする発想は許しがたい悪税の証明と申し上げるほかはございません。究極の悪税とはこのことではないかと言っても過言ではないでありましょう。  第三に、水道、下水道料金に上乗せされる税金は、その持つ逆進性とともに低所得者層ほど料金負担の過重負担がかかるということになります。ほかに代替のない水の料金に税金を上乗せするという考え方は、基本的に間違っています。水道料金は今日、格差是正の補助金が少しありましても、現実には十トン三百円から四千三百七十円まで全国では十五倍の格差があるのであります。それに税金をかけることは、さらにこの格差を広げ、不公平負担を拡大し、低所得者層ほど負担感が重くなるものでありまして、そうした点からも認めがたいのであります。  第四に、今日、安定給水と健全財政の確立を目指す中で、ただでさえ苦しい事業体の経営、財政にとりまして新税の負担は過重でありまして、経営の悪化そしてその圧迫、そのために、住民のための安定給水と環境保全、社会生活の基礎基盤としての下水道建設、普及等についても事業の発展を著しく阻害してくることは明らかであります。そうした点からもこの法案について、水道、下水道という分野から見ましても認めることはできないのであります。  第五に、人間生活のもととなるものに税金をかければ、すべての物価上昇に三%にとどまらない大きな影響を及ぼすと考えられるのであります。悪い波及効果を及ぼす、そういう政治の根幹が今問われていると思います。  以上の観点から、本関連法案については白紙撤回をされること、成立についてはあくまで反対であるということを申し上げまして、私の意見陳述を終わります。  ありがとうございました。
  97. 梶木又三

    委員長梶木又三君) どうもありがとうございました。  次に、福山公述人にお願いいたします。福山公述人
  98. 福山雅夫

    公述人(福山雅夫君) 私は、日本生活協同組合連合会の専務理事の福山でございます。  このたび、本公聴会に公述人として税制改革法案についての意見を述べる機会を与えていただき、心から感謝を申し上げる次第でございます。  まず、弱者の集団でございます消費団体として、私ども基本的な意見を申し上げたいと思います。  消費者への課税の強化、負担の逆進性と不公平を拡大し、物価を引き上げ消費税の導入には反対の意を表明するとともに、生活協同組合への課税強化についても納得できない、そういう立場から、具体的な調査と実態に基づき陳述いたします。  第一に、消費税の導入を柱とした今回の税制改革によって私たちの暮らしが一体どのような影響を受けるのか、一九八七年一カ年間の毎日の家計簿を振り返って調べてみました。日本生協連の行いましたこの調査は、全国九十五世帯における一月から十二月までの毎日、毎月の実際の家計支出金額に基づいて試算されたものであります。調査世帯の年代構成は二十代から各年代にわたっております。地域構成も北陸を除いたすべての地域を網羅しております。なお、この試算は便乗値上げ等の物価上昇が全くないことを前提にして行っております。  今回の調査の結論を先に申し上げますと、消費税が実施された場合には、昨年一年間の家計の実例から見て多くの世帯にとって税負担が増加することが明らかになりました。  その第一点は、今回の税制改革では、高齢化社会における負担の増加に備えて広く薄く負担するために消費税を導入するとしています。しかし、今回の調査結果によると、年金生活者の世帯では軒並み二万円以上の負担になり暮らしが大変になることが明らかになりました。私的年金も含めた年金収入は平均で二百九十八万円となっております。税制改革による所得税の減税分を差し引いたといたしましても、消費税による新たな負担増は最高で七万五千円、平均でも年間二万二千円の増加となっています。  第二点は、年収の低い世帯ほど減税の恩恵も少なく、税負担の割合が高い結果となっております。差し引き増税になる世帯は、年収六百万円以 下では七四%もの世帯が増税になります。厚生省の六十二年分国民生活基礎調査の概況によりますと、年収六百万円以下の世帯が全世帯の七〇%を占めておりますので、消費税が実施されれば年収の少ない世帯を中心におおよそ国民の半数が増税となることも推定されるわけでございます。  第三点は、消費税は生活必需品を初めとするすべての商品とサービスに課税されます。言いかえますと、消費支出全般に課税されることになると言っても過言ではないと思います。このため、収入に対する消費支出の割合の程度によって家計への影響も大きく変わることになります。年収に占める消費支出の割合を見てみますと、年収三百万円未満の世帯では九四%、三百万円台では七九%と高い割合となっていますが、一方では、年収九百万円以上の世帯では六〇%以下と低くなっております。以上のことからもおわかりいただけますように、高額所得者に厚い減税とあわせて、消費税が導入されますと税負担の不公平が大きく拡大をされます。公正に反する税制改革となり、経済的弱者にとっては高い負担となることは明らかでございます。  第四点として、今回の試算に当たりまして便乗値上げ等は前提としていないことを申し上げましたが、消費団体として一言申し添えますと、消費税の価格への転嫁をしやすくするためとして独占禁止法の適用除外による転嫁・表示カルテル行為を認めることにしております。カルテルが行われますと市場メカニズムによる公正な競争が阻害されて便乗値上げが促進されることになり、大幅な物価上昇となるおそれも十分にございます。むしろ共同行為による便乗値上げ、過剰転嫁を防ぐためにも独占禁止法による監視を強化することによって本来の機能を十分に発揮すべきでありましょう。こうした独占禁止法の運用にかかわる変更は、最終負担を予定されている消費者として納得できるものではありません。  第二に、今回消費者七団体による共同の調査といたしまして、各都道府県知事あてに消費税導入による地方自治体や地域経済、県民生活への影響調査のアンケートを実施いたしました。四十七都道府県中二十六都道府県から回答をいただきました。地方自治体の税負担の増加もあって、公共料金の引き上げなど県民生活に影響を及ぼすことが明らかになりました。  その第一の点は、消費税導入及び個別間接税の改廃によって地方譲与税、交付税による収入を勘案しても、影響試算をいたして回答いただいたほとんどの県の税収が減少し負担が増加することが明らかになっております。税収の減少では、具体的な県を挙げて恐縮でございますけれども、兵庫県では二百四十億円、埼玉県では百七十億円にもなることが回答されております。また、消費税負担による経費増は埼玉県で百億円、高知県では四十億円にもなっております。  第二点は、各都道府県自体の消費税負担による支出増や県民生活、県内経済への影響について試算ができていない自治体が極めて多いことも明らかになりました。地方自治体においても税制改革消費税についての理解や合意が十分に進んでいないと思われますので、地方自治体への影響につきましても十分審議を尽くされますように要望する次第でございます。  第三に、消費税が実施された場合に生協の事業経営にどのような影響が想定されるのか、数字を若干示したいと思いますが、全体の数字を示すことは事業上不可能でございますので、考えられる事態について列記をいたします。  第一の点は、生協における組合員の幅が非常に広がりまして、年金生活者や低所得者層が多くなりました。そういう面から申し上げますと、さきに述べましたような状況のもとで購買力が大きく低下することになります。したがって、供給高も必然的に低下することが避けられないという状況でございます。  第二点は、消費税は売り上げを発生させた事業者が納付する税金となっております。税金分を価格転嫁して値上げすることによって消費者に負担させることを予定している税金ですが、必ず値上げできるという保証はございません。食品中心の事業体であれば、生協に限らず円以下の端数が出てくることにもなります。このために、値上げをして消費税分を消費者に転嫁するか、あるいは仕入れ値引きをして前段階の事業者に税金分を転嫁することができなければ、納付する税額をその事業者が負担することになり、第二事業税となってしまいます。  第三点は、消費者は購入価格の値上げ分を他に転嫁できませんので、生活防衛のためにはより安い価格の商品を選んで選んで買いあさることになるでしょう。このために、厳しい競争をしている小売業界の中で価格への転嫁が困難なときには、必要な利益を確保することができないために事業者は淘汰をされることにもなるでしょう。このことは、多数の生協の場合についても例外ではございません。  第四点は、消費税の実施に伴う対策会議の費用や時間あるいは導入準備のための帳票類の整備あるいは改定、コンピューターのソフトの開発、商品価格の値づけなど多大な経費が必要となると考えられます。このようなイニシアルコストの転嫁ができるのだろうか、私どもは本当に疑問に思っておるところでございます。また、公共料金が値上げとなり諸物価に波及すれば、商品の原価や経費も値上げになると思われます。諸物価の値上げは経費増となって利益の減少となることが予想されます。以上のように、消費税が実施されることによって事業や経営にさまざまな影響を及ぼすと考えられます。このために供給高の減少や利益の圧縮などによって構造的な赤字体質に陥る危険性も十分にあるということを申し添えたいと思います。  第四番目に、所得税法等の一部を改正する法律案についてでございますけれども法人税率は全体として減税の方向となっております。今回の改正案では公益法人とともに減税の方向になっておりますが、公益法人である協同組合の法人税率については基本税率は据え置かれましたけれども、大型生協についての税率引き上げ内容になっております。  私ども生活協同組合は、今回出されております生協に対する課税強化案には以下二つ理由によって納得しかねることを申し述べます。  第一点は、協同組合は非営利法人であり、その性格は規模の大小や事業の形態によって変わるものではございません。協同組合への課税を二段階に区分する措置は、協同組合の存在を否定することに通ずるものと言わざるを得ません。  第二点は、税制改革を論議した政府税制調査会の答申には、協同組合への課税について言及されておりません。法律案を公正に準備されることが強く望まれている点から言えば、深い疑念を持たざるを得ません。  以上のことから、さきに述べました生活協同組合への課税強化については、改めて反対意見を表明するものでございます。  最後に、私どもの会員生協による税制改革について一万四千人のアンケートに基づき意見を申し上げます。  今度の税制改革内容については、八四%が不公平を感じております。その理由の筆頭として、経済的弱者へのしわ寄せになっていることを指摘しております。また、税金負担につきましても、非常に重いという意見が六五%になっております。さらに、税金の使われ方についても、七八%がむだに使われていると答えております。その他たくさんの項目についてのアンケートをとっておりますが、税制改革は必要であるという意見も多数ございます。しかし、税制改革に当たっては、圧倒的多数の消費者が期待している不公平税制の是正をまず何よりも先に断行すべきであり、消費税については各界や国民の声が十分反映をされる必要があると考えます。  参議院におかれましても、十分ひとつ審議を尽くしていただくよう強くお願い申し上げまして、陳述を終わらせていただきます。  大変どうもありがとうございました。
  99. 梶木又三

    委員長梶木又三君) どうもありがとうございました。  以上で公述人各位の御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  100. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 自由民主党の下稲葉耕吉でございます。  公述人の皆様方は、師走の公私ともに御多忙な中を当委員会にお出ましいただきまして、大変貴重な御意見を開陳していただきました。まず心から厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。  お話にもございましたように、昭和二十五年、まだ日本は占領下でございました。その際につくられましたシャウプ税制が根幹になりまして、若干の手直しはございましたけれども、今日に至っているわけでございます。そして、それを今回抜本的に改正しよう、しかも政府自民党は長年かけましていろいろ検討してまいりました。その結果を今回国会にお願いしているわけでございます。  そこで、約四十年にわたる日本の変化というふうなものを見てみますと、これは想像もできなかったほどの大きな変化があるわけでございます。産業構造の変化はもちろんのことでございます。経済的な面におきましても、さらにまた国際的な分野におきましても、四十年そこそこ前には全然想像することもできなかったほどの変化と発展が今日あるわけでございます。科学技術の問題にいたしましても、あるいはまたサービス業の飛躍的な発展。日本も昭和二十五年ごろは経済協力を外国からいただいていたわけでございますけれども、今日の日本はアメリカに次いで第二位の世界に対する政府開発援助をやっている国になりました。ここ一年か二年の間に、アメリカを抜いて世界のトップになろうというふうな段階でございます。  ところが、これも先ほど来お話がございましたように、現在の日本の情勢は、端的に言いましてサラリーマンと企業法人と一部の物品に偏った税制で運営されているというふうな状態でございます。もちろん我々といたしましては、行政改革というものが基本になると思います。行政を徹底的に改革し簡素化し、そして合理的に、能率的に運営するということが責任であろうと思うのでございます。  さらにまた、税制改革についてもそうでございます。今議論されておりますのは、いかにして国の歳入を確保するかという議論でございますけれども、もっと大切なことは、その歳入された金をいかに有効に国家国民のために使うかということでございまして、これについても議論しなければならない。これは当然なことでございます。  そういうふうなことを前提といたしまして、現在の行政を見てみますと、これもまたお話ございましたように、円高を克服いたしまして、現在、日本の経済は好調でございます。二十一世紀を目指しまして、来るべき高齢化社会を踏まえ、福祉社会建設のためにその基盤をつくるための税制改革、これはもう今が絶好のチャンスであるというふうに私は確信するわけでございます。  そこで、いろいろ議論がございましたけれども、まず下城公述人に国と地方との関係について若干お尋ねいたしたいと思うのでございます。  実は一昨日、当委員会におきまして竹下総理大臣は、国と地方との関係は車の両輪みたいなものだ、こういうふうにおっしゃいました。私も全く同感でございます。しかし、言葉はいいんですけれども、実際はなかなか難しい点があろうかと思うのでございます。一方の車が大きくて他方が小さければ、車はひっくり返るわけでございますし、目的地に到達することはございません。そして、国と言いますとすぐ政府ということを考えるわけでございますけれども、地方と言いました場合には、政府という言葉に対応する言葉がなかなか探し出せない。地方、要するに四十七の都道府県があるわけでございますし、市町村にいたしましては三千二百四十五ある。それぞれの地方公共団体がみんな特徴が違うわけでございます。そして、いわゆる税収等の中身、その比率等もばらばらであるわけでございます。今回の抜本的な改正によりまして、従来の制度と違うわけですから、なかなか直ちにスムーズに移行できるという問題でもなかろうと思います。  政府はその点をとらえまして、激変緩和措置というふうなことを考えているわけでございますけれども、またお話がございましたように、八千八百億の純減がある。これはマクロに見て、トータルではそうでございます。今申し上げました数のそれぞれの地方公共団体にとってはそう大して影響をこうむらないところもあるかもしれませんけれども、非常に影響をこうむるところも多いだろうと思うんです。  そういうふうな観点から、先ほど国と地方との信頼の問題にお触れになりました。私はこのような制度がうまくいくかいかないかというのは、何よりも信頼の問題が大切だろう、このように思います。その観点から申し上げますと、やはり地方の時代、地方の時代だと言われておりますが、今回の税制改正で七つの地方間接税のうち三つが廃止されました。そして四つが調整というふうな形になりました。それに相当する財源一兆九百九十四億ですか、それがなくなりまして消費譲与税として国から譲与を受けるというふうなことになった。地方の独立独立ということを言われますけれども、現実に地方公共団体の首長として率直にどういうふうなお考えなのか、まずその辺のところを承りたいと思います。
  101. 下城雄索

    公述人(下城雄索君) お答え申し上げます。  国庫補助、負担金等のいわゆる整理合理化につきましては、地方制度調査会、臨時行政調査会等々の答申の趣旨に沿いまして、地方行政の自主性や自立性の向上、行財政運営の簡素化、合理化等々の観点から今後とも積極的に推進する必要があると考えておるわけでございますが、いまだ十分な成果が上がっておらないのが現状でございます。のみならず、国庫補助負担率の引き下げ措置は六十三年度までの暫定措置として行われてきたものでございまして、国と地方の信頼関係を損なわないためにも、本年度限りで廃止すべきものと考えております。
  102. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 まさしくそうでございまして、その国庫補助負担率の復元問題につきましてもなかなか遠慮しいしいお話しなさったように承るわけでございます。  お話のように、四年間で五兆円に上る財政的な問題があるわけでございます。私どもも地方自治の観点から、あの五十九年の段階には国の財政も大変困っていた時期でございまして、今になりますと税収が見込み以上に巨額に上る、あるいはNTT株の売却益等の問題もあるというふうなことで、今回も従来どおりの措置というものが繰り返されるならば、やはり国と地方との信頼関係に大きなひずみというものがさらに生ずるんじゃなかろうか、こういうふうに私どもも感ずるわけでございますので、この点につきましても当委員会でいろいろ議論されました。総理は、やはり予算のときにひとつ決着するんだというふうなお話でございましたけれども、その点も我々も何とかできるだけの努力をいたしたい、このように思うわけでございます。  それから、次にお伺いいたしたいわけでございますけれども、きょう公述人方々大勢いらっしゃいますけれども、地方自治の現場に直接携わっておられますのでもう一つ承りたいと思うのでございまするが、やはりこの税制改正がうまくいくかいかぬかということは、一にかかって私は国民の理解と理解に基づく協力ということだろうと思うのでございます。そういうようなことで、地方自治の責任者として現場で多くの市民に接しておられるわけでございますので、その辺のところ、今度の税制改革について国民の中に理解が深まったとお考えになっているのかなっていないの か。先ほど福山公述人も若干触れられたようでございましたけれども、その辺のところを市町村長のお一人としてどういうふうにお考えになっておられるか承りたいと思います。
  103. 下城雄索

    公述人(下城雄索君) お答え申し上げます。  努力中でございますということが一つ言えると思うのでありますが、いずれにしても、私といたしましては国の減税政策にたいしまして賛意を表しております関係からいたしますと、全市民に対しまして努力をしてこれにこたえていかなければならないという責任と義務があるわけでございますので、目下努力中でございます。
  104. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 それでは土方公述人にお願いいたしたいと思いますが、先ほど今度の税制改革賛成の立場からいろいろ貴重な御意見を承りまして私ども大変意を強くしたわけでございますが、若干角度を変えまして国際的な観点から今回の税制改革についての御意見を承ってみたいと思うのでございます。  御承知のとおりに、輸入品目につきまして、例えば英国との間におきまして主としてウイスキー摩擦等がございました。あるいは自動車の輸入、そういうふうな問題なんかは今度の税制改革によりまして次第に税率が軽減されるということになるわけでございますが、その他の輸入品については一様に消費税がかかるわけでございます。私、不勉強でございまして、日本の消費税に対する外国側の反響というのが現在よくわからないわけでございますけれども、三%の消費税がかかるということによって、非関税障壁じゃないかというふうなことで、業種によっては大問題となり国際的な課題となる可能性が場合によってあるんじゃないかという懸念をするわけでございますが、その点についての御見解を承れればありがたいと思います。
  105. 土方武

    公述人(土方武君) お答え申し上げます。  御承知のように、ウイスキーとかワインとかいうものについての日本の関税が非常に高率であって、また国内の消費税と申しますか、それが国際的に問題になっておりますことは御承知のとおりでございます。それも政府の方で真っ先に是正をされつつあるわけでございます。我々三%の消費税というものにつきましては極めて低率であるというふうに理解いたしておりますので、これが国際的に問題になるとはちょっと考えられない次第でございます。
  106. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 それでは次に、丸尾公述人にお伺いいたしたいと思います。  先ほどのお話を承りまして、私大変共鳴するところが多いわけでございます。条件が満たされれば賛成というふうな立場で最後に三つの条件をお述べになったわけでございますが、今度の消費税の導入につきましてやはり竹下総理自身最初六つの懸念とおっしゃって、それから八つの懸念、それを何とか中和——中和という言葉を使っておられますが、中和したいというふうなことで具体的な議論というのがなされているわけでございます。それは中和ではないとか、いや中和できているとかいろいろ議論はございますけれども。そこで、パッケージ的な改革が必要であるというふうなお話がございました。これは消費税税制全般の問題についてはもちろんそうでございますけれども、税以外の政策的な問題まで含めましていろいろお話がございまして、私はもうなるほどそのとおりだろうと、こういうふうに思うわけでございます。  それから、不公平税制に関連する例のキャピタルゲインの問題に関連しまして、資産所有の平等化とか拡大とか、その辺の具体的な提言があったわけですが、御承知のとおりに、今回の一連の税制改革の中で原案といたしまして寝たきり老人減税の問題につきまして、現行八十万円でございます扶養控除、特別障害者特別控除等を含めまして、それを九十万円の減税で提案いたしまして、御承知のとおりに、衆議院の本会議における修正におきまして九十万円が百二十万円になったというふうなことでございます。これはどちらかといいますと、先生のいわゆる普遍主義的な制度への移行というふうなものを国が考えつつあるんじゃなかろうか、こういうふうに思うわけでございます。  そこで、年金の問題それから医療の問題、医療に関連する社会保障の問題、これもいろいろ制度的には進んで今日に来ていると思うわけでございますけれども、その辺につきましてやはり寝たきり老人減税がこういうふうになったことは一応評価されているようでございましたけれども、その辺のすき間なりあるいは将来の方向なり、いろいろ御意見なりあるいは制度に対する御意見を承れればありがたいと、このように思います。
  107. 丸尾直美

    公述人(丸尾直美君) 今回の税制改革の論議の過程で、中和といいますか、パッケージ的にといいますか、交換といいますか、社会契約といいますか、そういうようなことがいろんな点で進行してきていることは、私は評価しているわけです。  私が挙げましたことの中でも、今も御指摘のありました寝たきり老人などに対する介護の問題がありますけれども法案の中で出ている減税措置以外に、たしかここ数日の間に介護手当というふうな話が出ております。減税ですと、御承知のとおりに、税金を払っている家庭でないと恩恵がないわけですけれども、介護手当ですとあるわけですね。そして、特にそういうのを必要とする人はどっちかというと低所得者で、所得税を余り払っていないような方が多いわけですから、やはりすき間といいますと、ここの分野では減税措置だけですと減税の恩恵を受けない人には恩恵がない、そういう点で、どっちかといいますと減税よりも介護手当あるいはそのどっちか選択とか、そういうようなことがあった方がより普遍主義的ではないかと思うわけです。
  108. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 今の問題に関連いたしまして若干突っ込んでお伺いいたしたいと思うわけでございますけれども、西欧的な社会保障といいますか、そういうふうな問題と、それからアメリカ的な個人を中心とする保障形態、そういうふうなものの中間に我が国はあるのじゃないかなというような感じがいたしますし、いろいろあれしてみますと、先生も大体そういうふうな御意見のように承るわけです。  今から老人福祉サービスといいますか、そういうふうな問題がどんどん今日的な課題として重要になってくると思うのでございますが、そうしますと、先ほど出てまいりました老人介護の問題だとか何だかんだ含めまして、住宅構造の問題だとかあるいは住環境の問題だとか、そういうふうなものが大きな課題となってくる。今度はそれに対して税制がどういうふうに立ち入ればいいのか、政府として政策的にどういうふうに立ち入ればいいのか、その辺のところについて御意見ございますれば承りたいと思います。
  109. 丸尾直美

    公述人(丸尾直美君) おっしゃるように、ヨーロッパ、特に北欧型の非常に公的に介護などをやる政策と、アメリカのように介護、医療をかなり民間に依存するところと、その中間、中間といいましても単に中間というよりもそのよい面をうまく組み合わせたといういわゆる福祉ミックス、それに日本の伝統である家庭などのインフォーマル部門、それをうまく最適にミックスすればそれほど公的な費用、税金をかけなくて、いい福祉が充実できるだろうというのが私の考えであります。  そして、後の方の御質問ですけれども、住宅構造、住環境など、これも介護問題と非常に重大な関係があるわけですね。日本の住宅構造というのは、非常に寝たきりになったときに寝たきりにしてしまいやすいわけですね。ベッドでないということだけで非常に違いますし、車いすの出入りが自由にできないということですね。そういうことが今後非常に重大な意味を持ってくるわけです。  ですから、寝たきりの人ができたとき、あるいはできるおそれがあるとき、住宅の改善、車いすとかそういうものを通りやすくするとか、寝たきりでもある程度ノーマルな生活ができるようにするとか、あるいはギャジベッドを入れて起き上がりができるようにするとか、そういう政策に関して政府税制上あるいは補助などの形で十分措置 をするということは、本人や家族のためだけでなくて、寝たきり老人を減らすという意味でも非常に効果があるんじゃないかと思います。  よく北欧へ行きまして、日本では寝たきり老人がこれくらいいるけれどもデンマークやスウェーデンではどれくらいだと言いますと、我が国は寝たきり老人は病人以外はいませんということを言います。これは文字どおりそうではないんですけれども、非常に起き上がる努力のリハビリテーションとかそれから車いす、ギャジベッドとか介護等々でやっているわけでして、これをやりますと寝たきり率というのは非常に減るわけですね。それは、本人にとりましても非常に福祉になります。そして老人自殺率なども下げるのに役立つでしょうし、いろんな点で効果があると思いますから、そういう点での税制上あるいは補助についてもう少し御配慮いただくというようなことももうちょっとお約束いただければ、税制改革のパッケージとして非常に有効な意味を持つのではないかと思います。
  110. 下稲葉耕吉

    下稲葉耕吉君 今度は久野公述人にお伺いいたしたいと思いますが、トヨタカローラにお勤めのようでございますね。税制が公平であれば何も感じないんだけれども、不公平だと取られたというふうな感じがするというふうにおっしゃられました。私はそれはなるほどそうだと思うのでございます。  それと同時に、やはり消費に責任を持つということが大切であるというふうな御発言もあったわけでございます。先ほど土方先生の方からもお話がございましたように、広く薄く税金をかける、税制を直すこと、これがやはり最大の不公平の是正になるんじゃないかというふうな御意見の開陳があったわけでございます。毎日そういうふうなことで、産業労働者と言っては失礼でございますけれども、いろいろ活動をしておられまして、すばらしい税制というふうなものは果たして全体としてどういうふうな形がいいのか。例えば三%ではなくて二段階がいいというふうなことでございましたけれども、先ほどの最初のお話と若干矛盾するような感じもしないわけでもないんですが、その辺についてもう少し突っ込んだ御意見がございますれば承りたいと思います。
  111. 久野靖正

    公述人(久野靖正君) 税金は、だれも払いたい払いたいという人はないと思いますけれども、まあしようがないかなというふうに思えれば公平じゃないか、そういうふうに思っております。  それから、二段階云々で申し上げたように、国民生活に非常に必要度の高いものとそうでないものとを分けるべきではないかという素朴な考え方でございます。
  112. 安恒良一

    ○安恒良一君 社会党の安恒であります。  公述人の皆さん大変御苦労さまでございます。たくさんの方がおいでになりますし、私に与えられた時間は二十七分で、皆さんに御質問ができないのをお許し願いたいと思います。  まず最初に、粕谷晴江さんにお聞きをしたいのですが、御主張の中で今回の配偶者特別控除についての御批判があり、やはり基礎的な部分をふやすべきだという御意見を聞かせていただいたのですが、私はその点に賛成なんです。  そこで、ちょっとこれらの問題についてお聞きしたいのですが、ヨーロッパ各国、アメリカ等では二分二乗方式というのが取り入れられています。この点について、課税単位を世帯単位にした方がいいのか、それとも個人単位にした方がいいのか。二分二乗方式についての御意見も含めてお聞かせください。
  113. 粕谷晴江

    公述人(粕谷晴江君) お答えさせていただきます。  全く私自身の意見ですけれども、世帯単位の課税というのにつきましては、まだ多少その問題点が整理されないといけないんじゃないかと思います。現在のところは個人単位課税でよろしいのではないかと思っております。
  114. 安恒良一

    ○安恒良一君 次に、下城市長さんにお聞きしたいんですが、まず最初に、今度の消費税が導入されました場合、おたくの市の財政に、財政的にどれだけの影響があるのか御説明願いたいと思います。
  115. 下城雄索

    公述人(下城雄索君) お答え申し上げます。  消費税につきましての地方財政への影響の件でございますが、現段階におきましては、この数値につきましての把握は大変困難なことでございまして、影響がないとは言えませんけれども、従来の国と地方の信頼関係からいたしまして、これらの補てんは当然なされるものと考えております。なお、個々の自治体の財政運営等につきましても、支障のないように講じてほしいと考えております。  また、税の不公平感の解消が図られるならば、これを導入することは望ましいと考えております。さらに、住民に対します影響等につきましても、税の不公平感重税感の解消が図られることになれば、市民も大変納得するものと考えております。
  116. 安恒良一

    ○安恒良一君 残念ながら、私聞いているのは、おたくの市では財政規模としてどうなるのかと、こういうことを聞いたわけでございますが、まあ結構です。まだ十分におつかみになっていないようですね、市長。  そこで私、続いてお聞かせ願いたいんですが、今度の税制改革では、国と地方の財源配分は、私たちで計算しますと約六一対三九になるように感じます。大平内閣のもとでも国が四五、地方が五五であったわけですね。  そこで、二十一世紀高齢化社会を展望した改革というのが今度の税制改革政府の中心的な言い分の一つなんですが、問題は、その時代に役割を果たすことが期待されているのは、私は高齢化社会では特に地方自治体の役割が重要だと思います。ですから、どうも今度の改革は時代に逆行しているんではないだろうか。例えば、当面平年度で約九千億に近い財政欠陥が見込まれていますが、その手当てが十分でありません。ですから、自治体側としてはこれはどう対処されるんですか。
  117. 下城雄索

    公述人(下城雄索君) これは最初に私が申し上げましたように、この問題につきましては、これからの課題として我々も大いに努力もし、お願いもせなければならない問題でございますが、いずれにしても、今回の税制改革によって、交付税以外の譲与税等によりましてそういう問題を解決していただきたいというのが我々の願いでもございます。
  118. 安恒良一

    ○安恒良一君 それじゃ、重ねてお聞きいたしますが、自治体にとって消費税導入のメリットというものについて端的にお答え願いたいと思います。
  119. 下城雄索

    公述人(下城雄索君) お答え申し上げます。  メリットは……
  120. 安恒良一

    ○安恒良一君 ないでしょう。
  121. 下城雄索

    公述人(下城雄索君) ないといいましょうか、そうお答えする以外に今のところございませんので、御理解いただきたいと思います。
  122. 安恒良一

    ○安恒良一君 よくわかりました。  それじゃ今度、土方会長さんにお伺いをしたいんですが、土方さん、法人税の減税問題等いろいろ言われましたが、アメリカのレーガンさんのこの改革について土方さんはどのようにお考えでございましょうか。
  123. 土方武

    公述人(土方武君) お答えいたします。  アメリカの税制と日本の税制とは随分違っておりまして、アメリカは政策税制が非常に大きな割合を占めております。それを整理いたしまして基本税率を下げたということでございまして、税制改革が全体といたしましては引き下げになりまして整理もされたということで、企業にとっても非常によかったんではないかというふうに思っております。
  124. 安恒良一

    ○安恒良一君 いや、アメリカにおいてレーガンさんは法人税改革をやられましたですね。そのことについてどういう御評価なり御意見なりをお持ちでしょうか、ちょっと聞かせていただきたいんです。
  125. 土方武

    公述人(土方武君) お答えいたします。  結果として非常に税率が下がりましたので企業の活動が活性化された、このように高く評価いたしております。その方法は、日本と違うということを先ほどちょっと申し上げましたわけでございます。
  126. 安恒良一

    ○安恒良一君 そこで、法人税について土方さんに少し聞きたいんですが、日本の法人税の実質税率の問題だと思いますが、諸外国から非常に高いと、こういうことになっているんです。日本における各種引当金ですね、いわゆる賞与、それから退職給与引当金、それから貸倒準備引当金等々、租税の上でいろんな引当金がございます。それからまた、法人税の減免のための諸制度等があるんですが、そういう点で本当に実質税率というのが日本は各国に比べて非常に高いんだろうか。そこのところ、土方さんの御主張では非常に高いと言われたんですが、そういうものを諸控除した場合の法人税の実質税率についてどうお考えになっていますか。
  127. 土方武

    公述人(土方武君) お答えいたします。  私ども常に実効税率と申しますか、実質税率と申しますか、二つあるわけでございますが、それに換算して物事を考えておるわけでございます。それで基本税率は、例えば法人税は今四二%でございますけれども、これに法人の地方税を加えまして、さらに先ほどお話ありましたいろんな引当金その他を加減いたしました結果が実質の税率になるわけでございまして、これが現在日本では五一%。それで諸外国はそういうことを計算いたしましていろいろ整理もされた結果、アメリカは四〇%、イギリスは三五%といったような税率になっておるように理解いたしておるわけでございます。
  128. 安恒良一

    ○安恒良一君 実質税率を、今の法人税率から各種引当金を控除した場合にそうなるという御主張は承っておきますが、私はこれは間違っていると思いますね。  それで、いま一つお聞きしたかったのは、結局、アメリカでレーガン氏の改革については、この法人税を引き下げる場合のやり方として、日本で言うならば、このような引当金制度というものを全廃して法人税課税ベース全体を広げる、その中で税率を下げると、こういうやり方をアメリカのレーガン氏は見事にやってのけられたんですが、そういうやり方について、土方さんはどうお考えなんでしょうか。
  129. 土方武

    公述人(土方武君) お答えいたします。  日本の場合、法人税の引当金と申しますのは極めて整理されてまいりまして、現在大きなのが三つございます。貸倒引当金、退職手当引当金、それに賞与引当金といいますか、そんなものでございますが、これはいずれも企業会計上の制度でございまして、例えば退職手当引当金、賞与引当金などは従業員に対する賃金債務を適正に積み立てるということで、収益とするに要した費用の期間対応ということもございますし、この二つの面で我々はこれが最も企業会計上正しいやり方だということで、今まで政府の方も御承認を願ってやってきたわけでございます。  貸倒引当金、退職手当引当金につきましても、これが引き当てされなくて何かの事故が起こりましたときに、企業が非常に危機に瀕するようなことのないようにということで認められてきたわけでもございますし、そういうことでございますが、今、安恒先生のおっしゃいますように、こういったものをすべて整理して基本税率をぐっと下げるということであれば、また我々もそれに対処して考えていかなきゃならぬというふうに思っております。
  130. 安恒良一

    ○安恒良一君 経団連が五十九年に法人税税率の引き下げをいろいろ要望されたときに、会長は日本の税率は高いというふうに言われたんですが、大蔵省自身がそうでないと、こういう反論をして具体的数字を挙げたことを御記憶ございますか。
  131. 土方武

    公述人(土方武君) 私は、その当時経団連の税制に関与しておりませんので存じませんけれども、お話は聞いております。  これはしかし、大蔵省と十分その後打ち合わせいたしまして、例えば今回の税制改革では法人税が、現在は実質五一・五五%でありますのが改正後は四九・九八%になるというような数字につきましても、完全に大蔵省と今は数字が一致いたしております。
  132. 安恒良一

    ○安恒良一君 大蔵省と言うんですが、それは私どもから見ると、あなたたちの圧力で数字的には自民党さんがお折れになっただけだと思いますが、それは結構です。  それから、最後に一つ土方さんにお聞きしたいんですが、今、サラリーマンは税の不公平感を非常に持っていますが、その不公平感の最大の一つは、何といってもこれはいわゆる税の捕捉の問題です、クロヨンとかトーゴーサンと言われる。今、会長の御主張では、サラリーマンの一番怨嗟の的になっている税の捕捉というのが、消費税によって何か是正されるような御意見の開陳のようだったんですが、その点について、ちょっと考え方を聞かせていただきたい。
  133. 土方武

    公述人(土方武君) 先生のおっしゃいますとおりに、サラリーマンは他の業種に比べまして捕捉の仕方が不公平であるという感じは持っております。したがいまして、所得税を減税いたしまして、他方、消費税というものに置きかわると考えました場合に、その捕捉の仕方がより公平になるというふうに申したわけでございます。
  134. 安恒良一

    ○安恒良一君 いや私、そこのところちょっとわかりかねて聞いたんですがね。  まず問題は、クロヨンとか、捕捉というものを直すことは、今回の消費税をやることによって非常に不十分なんですよ。そうしますと、サラリーマンはそこが直されないまま一般消費税を取られる。一方、今までクロヨンで免れておった人は、消費したら税金を納めるということになりますから、サラリーマンも同じように消費をすれば、やっぱり消費税を取られるわけですから、その限りにおいて不公平税制に、今申し上げましたようなことに手がつかなくて、消費税所得捕捉の格差がなくなるというふうには考えられないんですが、その点はどうなんでしょうか。
  135. 土方武

    公述人(土方武君) お答えいたします。  先生のおっしゃるとおりでございまして、個々の税目を今のままにしておけば、その不公平はそのまま残るわけでございます。ただ、消費税ができまして、所得税税率が減るということにおいてその分だけ公平感が出てくる。依然残っております不公感はあるわけでございますので、今後その点はもちろん税目ごとに検討していただきたいと思うわけでございます。
  136. 安恒良一

    ○安恒良一君 次は、久野さんにお聞かせを願いたいんですが、私は、今度消費税反対をしていく理由を明確に言いますと、まず消費税をつくる前に、納税者の強烈な怨嗟の的になっています、特にサラリーマンから言われていますこの不公平税制を徹底的に改めることが必要だろう。そういうことをしないまま消費税をつくれば、ますます不公平税制というのは一段と格差が広がるし、さらに消費税自体が新しい不公平をつくり出すことになる。そしてその次の問題は、総理は、これを解消するために最近では八つの懸念の解消ないし中和と、こういうことを言っておられますが、この法案審議しておるんですが、それが一つもできてない、非常に不十分だ、こういうことがわかるんです。  久野さんは長い間サラリーマンをされておった、こういうことでありますから、あなたの理由の中にもいろいろあったんですが、ここらの問題点について、長年サラリーマンをやっておられる方として、この消費税のところについての考え方を聞かしていただきたい。
  137. 久野靖正

    公述人(久野靖正君) 一般的に税率が下がれば、それはサラリーマンにとってもちろん歓迎することなんですが、消費税によって社会保障も充実するということですので、弱者はそれによってカバーしてもらえるものがあるんじゃないか、そういう考えでございます。
  138. 安恒良一

    ○安恒良一君 それから、土方会長にいま一つお 聞きをしておかなきゃならぬのですが、いわゆる二十一世紀へ向けての高齢化社会に対してという意味で、年金の支給年齢を年次を追って六十五歳に引き上げる、こういうことなんですね。ところが日本の場合には、御承知のように、終身雇用制度でありますが、今六十歳以上定年を持っているのは五八・八%ですね。それが一年間でどれだけ進んだかということ、六十三年度の調査の結果ですが、前年が五八・七ですから一年で〇・一%しか上昇していないんです。こういうような形で今度の長寿社会展望、消費税を導入のための展望、社会保障のビジョンというものを出されたんですが、果たしていわゆる企業定年を六十五歳に延ばすということが、どうも施策というものを見ますと、それぞれの民間資本、企業の努力に相まつことがうんと書いてあるわけですね。そこらの点についてどういうふうにお考えですか。
  139. 土方武

    公述人(土方武君) お答えいたします。  私ども企業の経営者といたしましては、目下非常に老齢でも皆さん健全でございますので、なるべく定年を延ばして働いていただきたい、労働時間を短縮してでも長年働いてもらうという方向で努力いたしておるわけでございます。  ただ、厚生年金が六十五歳になるということは、先手を打たれといいますか、企業の方がまだそれに追いついていかないというおそれも今あるわけでございまして、私ども大いに努力をしなきゃいかぬと思っております。社会保障年金が年々増大するというところから六十五歳という延長がとられたと思うわけでございますが、社会全体がそれに沿っていきますように我々も努力していきたいと思っておるわけでございます。
  140. 安恒良一

    ○安恒良一君 最後に、福山さんにお聞きしたいんですが、今度の税制改革資産所得消費のバランスをとるんだと、これが大きなテーマになっているようですが、今、この三つ課税課目の中のバランスが一番最大に崩れているところはどこだというふうにお考えでしょうか、ひとつお聞かせ願いたい。
  141. 福山雅夫

    公述人(福山雅夫君) 私の方では所得だというように考えております。
  142. 安恒良一

    ○安恒良一君 そこでその次、消費資産、これはどちらが大きく問題があり、バランスが崩れていると思いますか。
  143. 福山雅夫

    公述人(福山雅夫君) 消費だというように考えております。
  144. 安恒良一

    ○安恒良一君 斉藤さんから前段にいろいろなことを聞かされたんですが、斉藤さん、水道だけではなくして、何かガスとか電気等々言われましたね。しかし、ガスにかかること、電気にかかることと水道にかかることの問題は、どうも御主張は、それらを組織しているというけれども、水道のことを中心に述べられたと思います。ガスとか電気、これは御承知のように、今度地方税税制改革がございますね。そういう問題等を含めて、ちょっとそこのところの関係を正確に言っておいていただかないと御主張がわかりかねたものですから、整理して御意見を聞かせてください。
  145. 斉藤親仁

    公述人(斉藤親仁君) お話を限定する立場として、私の方は、上下水道労働者のほかに若干のガス供給と電気の供給労働者を含む労働組合ではあるが、時間の制約上、基本論一般と上下水道関係についての問題点について公述させていただくというふうに整理をいたしました。  以上、御了解願いたいと思います。
  146. 安恒良一

    ○安恒良一君 それから丸尾教授にお伺いしたいんですが、消費者が業者に支払った消費税というお金の性格ですね、私はこれはいわゆる公金だと思いますが、いや、これは業者の売上金なんだから預かり金だと、こんな意見等も今闘わせているところなんです。いわゆる消費者が業者に支払った消費税というお金の性格について先生はどのようにお考えでしょうか。
  147. 丸尾直美

    公述人(丸尾直美君) これはどちらに今転嫁されるかというようなことに依存することであって、本来なら、税金といえばそれは公金なんですけれども、事実上どちらになるかはその業種によって違ってくるというのが現状じゃないかと思います。  それからついでに、先ほどちょっとあわてて言ったものですから間違いまして、株式上場会社の株式資産全体が一九七五年度に消費の一七・七%と言いましたが、ちょっと読み間違いまして四七・七%です。済みません、訂正させていただきます。
  148. 安恒良一

    ○安恒良一君 もう時間がありませんけれども、丸尾先生、実はこれを議論しているのは、消費税というお金は公金です。ところが、御承知のように、取り立てまして長いのは一年四カ月流用ができるわけですね。そして、これが大企業ほどうまくやれば財テクに使われるわけです。そういう意味で、ここのところは、お金の性格というものは、消費者が払ったものはやはり公金というふうにきちっと位置づけておかないといけないんじゃないかなと、こんな感じを持っているんですが、その点をお聞きしたかったんです。
  149. 丸尾直美

    公述人(丸尾直美君) そこは、私自身も十分考えなかったところでして、非常に興味ある御指摘ではあろうと思います。
  150. 安恒良一

    ○安恒良一君 結構です。
  151. 和田教美

    和田教美君 公述人の皆さん、お忙しいところありがとうございます。公明党・国民会議和田でございます。  私の持ち時間が非常に短いものですから、消費税を中心にお聞きしたいと思いますが、お答えはなるべく簡潔にひとつお願いを申し上げます。  税の専門家のお二人にお聞きしたいわけでございますけれども、谷山税制経営研究所所長さんにまずお聞きしたいんです。  この消費税の問題については、税調会長自身が堕落した消費税ということをおっしゃっておるし、新聞の論調などを見てもあいまい、粗雑、いいかげんというふうなレッテルを張られているわけですね。果たして税制として体をなしているのかという感じがするわけなんですが、先生のお話でも、逆進性の問題についてこれを薄めるために、例えばカナダなんかで一定の税額を所得から控除する方式なども考慮しているというふうなことをおっしゃっておりましたけれども、いろんなそういう工夫をしたらこの逆進性その他の、いわゆる大型間接税というふうなものの持つ本質的な問題点、欠陥というのが直るものかどうか。その点、先生はどうお考えになるか、まずその点をお聞かせ下さい。
  152. 谷山治雄

    公述人(谷山治雄君) お答え申し上げます。  私、大型間接税が逆進性を持っているということは、根本的に私は改まらないというふうに思います。  ただ、緩和する方法としましては、非課税とか完全非課税であるゼロ税率制度とかあるいは複数税率制度とか、そういうものを設けて逆進性を緩和する。もう一つ、低所得者層に対する打撃を緩和する意味では税額控除等の方法を採用する。具体的に申しますと、例えば日本の場合には、生活保護費を最低の基準と考えますと、四人家族で約二百万でございますから、その三%、六万円の税額控除をしますとかなりの程度は緩和できるだろうと。  しかし、それにいたしましても、根本的には解決できないというのが私の見解でございます。
  153. 和田教美

    和田教美君 次に、粕谷さんにお尋ねいたします。  この消費税の性格について非常に鋭いお言葉がございましたけれども、我々が見ても、さっきも水道の労働組合の方がおっしゃったように、命の水にまで税金をかけるとか、食料品にも税金がかかる。あるいはこの間も話が出ていたんですが、お産の場合にも税金がかかる。おむつにも税金を取られる。身体障害者が車いすを買うという場合も税金を取る。およそ取る方の論理だけが優先をして、取られる側の論理を全く無視した非人間的な税制の典型だというふうに思うんですね。  そこで、御婦人の立場からその点をどうかんがえているかということと、もう一つ、さっきお述べになった母子世帯の問題に関連して、母子世帯は大半は自分の稼得所得でやっているんだから、 単に消費税の対策として生活保護をふやすとかなんとかということだけではだめなんだというお話がございました。私も原則として、税金の問題は税制の中でそういうマイナス面を極力埋めていくという努力が必要だと思うんですね。ところが、どうも政府の答弁を聞いておると、これは確かに欠陥があるから、予算措置その他、他の施策によって埋めるんだということを盛んに強調される。そういうことは、僕は税を考える場合の基本的な考え方に間違いがあるのではないかというふうに思うんですが、その二点についてお伺いします。
  154. 粕谷晴江

    公述人(粕谷晴江君) お答えさせていただきます。  前の方の御質問につきましては、社会的弱者と言われます母子世帯ですとか高齢者世帯に対して非常に厳しい税金になると思います。今回の消費税の形は、その逆進性が緩和される方法がとりにくい帳簿方式ですので、特に逆進性が強くて、そういう階層に厳しいしわ寄せが行くのじゃないかと思われます。  それからもう一つ、母子世帯のことをおっしゃいましたけれども、おっしゃるとおり、税制の欠陥を給付で補うという形が本来の形かどうか、ちょっと疑問に思われるところだと思います。
  155. 和田教美

    和田教美君 次に、住友化学の土方さんにお尋ねをいたします。  政府は、今度の税制改革基本的な考え方として所得資産消費の均衡ある税制をやるんだと、こういうことを盛んに強調いたしておりますし、土方さんの先ほどの公述でも、そういうことを評価するような御発言がございました。ところが、他の公述人の多くの方が、この三つのバランスという点で見て一番落ちているのは、つまり資産に対する課税が非常に甘いのではないかという点を指摘される方がかなりあったわけでございますね。私が見ましても、資産課税というのには、資産そのものに対する課税資産所得に対する課税とがあると思うんですけれども資産所得に対する課税では、株についてのキャピタルゲインの問題というのはやっと第一歩を踏み出したということだと思うんですけれども、特に土地ですね。我々は特に大法人の持っている土地、これに対する保有税を、土地増価税というような形のものを取るべきだというふうに考えておるわけなんです。政府は、未実現利益にはかけるべきでないという論理でそれを退けておるわけなんですけれども、その点については、住友化学も土地をたくさん持っておられる、つまり装置産業ですから、その点はどういうふうにお考えになっているかお聞かせ願いたいと思います。
  156. 土方武

    公述人(土方武君) お答えいたします。  所得資産消費、この三つのバランスの上で税金が取られるべきであるということはまさにそのとおりでございまして、ただ、それが特に所得に偏っておる、直接税が七三%も占めておるというところに、私は不公平税制だということを先ほど申し上げたわけでございます。  先生御指摘の資産につきましては、私は、全くの私見でございますけれども、日本の相続税というのは相当重いわけでございまして、最終的にはこの資産は相続税で相当取り上げられておるのじゃないかということで、三代目には資産がなくなると言われておるほどでございますから、そういう意味で、先ほどのキャピタルゲインにつきましてはおっしゃるとおりだと思いますが、資産全体につきましては多少の違った考えを持っておるわけでございます。  土地につきまして、特に企業の持っております土地、企業はその土地を仮に処分いたしましたときは、時価で売った分についてきっちりと税金を払うわけでございまして、それを保有しておる間には税金は払っていないということになるわけでございます。ただ、その土地を保有しておるだけで何らのメリットがない、果実を生んでおりませんときにこれに課税されるということは企業の崩壊につながっていくのではないかというふうに思うわけでございます。何ら果実を生みませんのに税金だけ取られますれば、その分だけ借金がふえるというだけのことでございますので、それは無理ではないかというふうに我々は考えておるわけでございます。ただ、その含み資産と申しますか、そういうものは処分いたしますれば必ず税金は払うという意味においては、きっちりと捕捉されておるというふうに考えております。
  157. 和田教美

    和田教美君 今、相続税の問題をお話しになりましたけれども、これは個人の場合であって、法人の場合には相続というのはなかなか起こらないですね。法人が死ぬということはまずないと思いますからね、大法人が。そうすると、そういう形の実現利益というものは出てこないわけですね。その点はどういうふうにお考えになりますか。
  158. 土方武

    公述人(土方武君) 法人はおっしゃいますとおり死にませんが、だから活動しております間、その活動に対して税金を納めておるわけでございます。
  159. 和田教美

    和田教美君 丸尾先生にお尋ねしたいんですけれども、丸尾先生の御議論は、条件つき賛成ともとれるし、大変厳しい条件、福祉のプランとかあるいはまたその他のいろんなこと、キャピタルゲイン課税をもっと十分やれとかそういうふうなこともおっしゃいましたが、そういう条件が整わなければ消費税というふうな形のものに軽々には賛成できないと。どちらに重点が置かれておるのかですね。つまり、条件つき賛成なのか、条件が満たされない場合には反対という方にウエートを置いておられるか、どういうふうに受け取ったらいいのかちょっと明確でなかったので、お答え願います。
  160. 丸尾直美

    公述人(丸尾直美君) 条件つき賛成というのは、条件が満たされなければ、それは定義は同じことですね。ただ、条件というのは、場合によっては、法律的にすべて今載らなければならないということでは必ずしもないですね。附帯決議というのがどれくらいの効力を持つのかどうか知りませんけれども、何かほかの形で、社会契約の中で、私の言いましたことの中には政府が約束できることもありますから、そういう点が非常に納得いくものになれば、私は賛成したいと思っておるわけです。  ことしの予算委員会のとき、衆議院の方でしたけれども、私はやはり条件を言いまして、そのときは、ことしじゅうにできるか疑問だということを言いましたけれども、その後、かなりそのとき強く言いました福祉ビジョンなども出てきましたし、若干の点で、特に介護関係、デイサービス等で具体的な数字が出てきましたものですから、もう少し福祉の点とそれから不公正税制のところで納得いくような改善がなされれば、私は賛成という立場でございます。
  161. 和田教美

    和田教美君 最後に福山さんにお尋ねしたいんですけれども、今度の消費税の問題については価格転嫁の問題がいろいろ議論になっております。先ほどのお話でも、一方において価格転嫁、転嫁カルテルというふうなものが認められておるために便乗値上げになる可能性が強いというお話がございましたが、しかし生協の立場としてみれば、なかなかその転嫁も難しい、そして非常に経営が苦しくなる可能性があるというお話がございましたが、福山さんとして、全体としてこの問題はどちらの方により問題点があるというふうにお考えなのか、生協の立場で結構でございますから、ひとつお述べを願いたいと思います。
  162. 福山雅夫

    公述人(福山雅夫君) 先ほど申し上げましたように、価格転嫁の問題は非常に大きな問題でございまして、実際に生協の場合でございますと、組合員がみずから生活を守るために出資をしそして利用をする、そして商品を選定して値づけまで間接的には関係をする、こういうことでございまして、私の方で考えますと、今度の消費税の導入によってこの転嫁問題は大変な影響を受ける、こういうぐあいに実は考えておるわけでございます。  ただ、これも転嫁できない場合においては実際問題といたしまして損益に大きな影響を与えるということになりまして、現在の生協だけの実態から申し上げますと、現在でも購買生協の場合、二四%ぐらいが決算におきまして赤字を実はもう出 しておるという状況でございますが、これが導入をされまして転嫁されないというような場合には、赤字生協でもかなりの税金負担しなければならない、こういう状況であるということを申し述べさしていただきます。  それから、先ほど大変どうも失礼をいたしました。私は勘違いをいたしまして、安恒先生の御質問に対しまして申しわけございませんでしたけれども資産そして所得消費の関係でございますけれども、私どもはやはりこの順番で、資産そして所得消費の順にとらえておりまして、特に家計実態の中におきましても消費については、所得とか資産に関係なく、やはり個人が生活する場合においては支出をしなければならない、こういう状況にございますので、先ほど大変失礼いたしましたけれども、勘違いをいたしておりましたので、訂正をさせていただきたいと思います。
  163. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 日本共産党の近藤忠孝であります。時間の関係で、ごく限られた一、二の方への御質問になるかと思いますが、御了承をいただきたいと思います。  まず、谷山公述人であります。  消費税の導入は必要だというその必要論の中に、こういう大型間接税の採用は国際的潮流で、こういうものを持っていないのは日本だけだ、こういう意見がありますが、これについてどうお考えか。
  164. 谷山治雄

    公述人(谷山治雄君) 私は、この大型間接税を持っていないことは大変にいいことだというふうに考えております。簡単に申しますけれども、世界の歴史で見ますと、この大型間接税と称しますものの歴史は、大体第一次大戦の前後から始まっているわけでございまして、どなたが言ったか知りませんが、この税金は戦争と危機の税金であるという有名な言葉がございますので、そういう意味で私は、日本が今まで大型間接税を持っていなかったことは大変幸せであるというふうに考えております。  なお、それだけではございませんで、アメリカでは、御承知のように、レーガン税制改革で付加価値税の導入否決をいたしましたし、必ずしも世界各国が大型間接税に傾斜した租税政策をやっているとは限らないということを申し上げて、お答えにしたいと思います。
  165. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 それと関係いたしますが、ブルッキングス研究所のペックマン博士がやはりこれに関係して述べておるといいますが、それをちょっと御紹介いただきたいと思います。
  166. 谷山治雄

    公述人(谷山治雄君) 今、質問されましたように、ブルッキングス研究所にペックマンという博士がおりまして、これはアメリカの経済学会の会長でございますけれども、この本を読みますと、これは翻訳もされておりますけれども、簡単に申しますと、一つは、今、大型間接税、付加価値型の税金を導入しようと考えている国が三つあると。これはアメリカとカナダと日本だと。しかし、これらはいずれも所得税改革が不十分で、所得税でもっと財源が取れるということを検討していないんじゃないかというのが第一の指摘でございます。それから第二の指摘は、今、世界各国で付加価値税がはやっている一つ理由は、所得税が余りにも惨めな状態にあるからだ、つまり包括的な課税が行われていないという、こういう指摘がございまして、これがペックマン博士のあれで、これは翻訳もされておりますので時間がございましたらぜひひとつごらんになっていただきたいと存じます。
  167. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 同じく谷山公述人でありますが、今度帳簿方式を採用しましたが、その理由として、これは簡便だから採用した、これは業者には大して影響ないよというその簡便さがかなり強調されておるんですが、果たしてそういうものかどうか。そして、零細業者には帳簿をきちんとつけるのはなかなか大変だと思うんですが、帳簿がきちんとつけられないようなこういう業者に対して税務行政上どんなことが考えられるのか。例えば、推計課税その他ですね。これが実際に業者の営業その他にどういう影響があるのか、これについてお答えをいただきたいと思います。
  168. 谷山治雄

    公述人(谷山治雄君) お答えするのは大変時間のかかる御質問でございますけれども、まず、私は税理士もやっておりますので、率直に実務的な観点から申しますと、前の売上税の税額票の方が納税額の計算は簡単でございまして、むしろ帳簿方式の方がはるかに厄介な判断を必要とする。これについて詳しく申し上げる時間がございませんけれども、私どもは実務的なべースで言いますと、帳簿方式の方がはるかに判断の問題がございまして、大変面倒くさい。税額票の方がそういう意味ではコンピューターに入れればいいという問題がありまして、はるかに簡単であるということを実務家ベースから申し上げておきたいと存じます。  それから今、記帳義務があるのないのございますけれども、確かに帳面をつけていない業者に税務行政がどう立ち向かうかということでございます。これは、所得税の場合も同じようなことでございまして、恐らくやはりこれは推計課税とか、そういったことで税務行政としては対処をしてくるだろう。ですから、そういう意味では帳簿もつけられないような零細企業にとっては消費税問題というのは所得税あるいはそれ以上に大きな問題になるだろう、かように考えます。
  169. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 この消費税一つの大きな問題は、価格転嫁の問題で、これが議論されてまいりました。  そこで、価格カルテルなんですね。これは果たして中小企業に有利に作用するものかどうか、場合によっては大企業の方がこれの恩恵を受けるんじゃないか、こういう意見もあるようですが、この辺の問題点について御指摘いただければ幸いと思います。
  170. 谷山治雄

    公述人(谷山治雄君) 私もよく勉強しておりませんので的確にお答えできませんが、このカルテルの場合には、いわゆる中小企業が三分の二ということなんで、三分の一は大企業が入ってもいいということになりますので、大企業のイニシアチブによりますそういった価格形成といいますか、そういったことになる危険が私は多分にあるだろう、かように考えております。
  171. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 今、価格カルテルと申しましたが、転嫁カルテルの言い違いであります。  それから簡易課税制度、これも中小業者のためにというのですが、考えてみますといろんな問題点があるんですね。これ全部を短い時間に御指摘は難しいと思いますが、端的に言ってどんな問題点があるか、御指摘をいただきたいと思います。
  172. 谷山治雄

    公述人(谷山治雄君) 簡易課税の問題は、御承知のように、製造業の場合にはいわゆるみなし付加価値率を二〇%と考える、卸の場合はみなし付加価値率を一〇%と考える、こういうことでございますので、付加価値率がそれより上回るところは有利になってまいりますけれども、それより下回るところは当然不利になってまいりますので、これも時間の関係上詳しくはあれですけれども、卸売業の付加価値率は大体六・五%ぐらいですし、小売も大体一六・五%ぐらい。サービス業は付加価値率が大きいわけなんで、簡易課税はかなり実際には業種別に不公平といいますか、いわゆる中立性を害する、そういうものが出てくることは間違いないというふうに考えております。  それからもう一つは、簡易課税を採用しますと設備投資等の税額控除が認められませんので、必ずしも簡易課税が得策とは言えません。  それからもう一つ、さきに申しましたように、消費者が三%で負担した税金が実は簡易課税とか限界控除を通じて国庫に納まらない、そういう問題もございますので、いずれにしましても私は、簡易課税制度というのは、名前は簡易課税であっても、実際には経済中立性を阻害する非常に重要な要因になって、小企業、零細企業にとって有利な制度とは必ずしもなり得ない、かように考えております。
  173. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 次に、粕谷公述人にお願いいたします。  先ほどの御発言の中で、消費者にとっては税金 が目に見えない、こういう話がありまして、いろいろ考えてみると、確かに不可解な面がたくさんあるんですね。  それから、税額以上に税金を取られた場合、それを取り戻す方法があるのか、そんな場合にどこへ訴えたらいいのか。どうも訴える方法もないんですが、この辺について税制上の問題あるいは法律上の問題ですね、端的にお答えいただきたいと思うんです。
  174. 粕谷晴江

    公述人(粕谷晴江君) お答えさせていただきます。  消費者は実際の税負担者ですけれども、税法上、当事者としての地位が何ら与えられていませんので、それを消費者が取り戻すとか、それからどこかに訴える方法というのはないと思います。
  175. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 ないんです。ですから、余計に取られても取られっぱなしということになると思うんですね。  最後に、全水道の斉藤公述人にお願いしますが、水の課税の問題です。  私も十三日の当委員会でこの問題を取り上げまして、日本以外にこんなのどこにあるんだと言ったら、六十数カ国採用している国のうち、律課税はニュージーランドただ一国だという大蔵省のお話がありました。恐らく、あれで全国民が水にも課税されるのかというので、私びっくりしているんだと思うんです。そういう点で、ちょっと先ほどから御発言があったと思うんですが、実際、水を供給する立場の労働者として、水にまで課税される、この辺の実感、現場ではどういうものでしょうか、御紹介いただきたいと思います。
  176. 斉藤親仁

    公述人(斉藤親仁君) ヨーロッパの一部に税金がかけられている例を知らないではありませんが、日本の国情において、まさに瑞穂の国と言われるような日本の中で水にさえ税金をかけるというのは、人間の感性としても許せないし思想的にも許せない。  したがって、先ほども申し上げましたように、過去二年間水源水利税だとかいろいろな水にかかわる税金の画策がございましたけれども、先ほど斎藤元厚生大臣をお褒めしたんですが、おとめいただいたりしたように、これを阻止してきたのが我が国の歴史であります。今回もぜひ守りたいと思います。よろしく。
  177. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 私は民社党の柳澤でございますが、公述人の皆さん方、本当にきょうは御苦労さまでございました。時間がございませんから、二、三だけお聞かせをいただきたいと思います。  最初に、丸尾先生にお尋ねするんですが、先ほど消費所得資産のバランスをと言っているんだけれども、そのような方向にはなっていない、所得よりか資産の比重がふえている、なぜかといえばそれは資産に対する課税が十分でないからだ、そしてもっとキャピタルゲインを厳しくやれという御意見を拝聴したわけです。  そのキャピタルゲインを厳しくやるということについて、こういう点をといって具体的な事例をお教えいただければ幸いだと思います。
  178. 丸尾直美

    公述人(丸尾直美君) 先ほど、確かに資産消費に比べましても、所得あるいはGNPに比べましても異常に高くなってきているということが意外と認識されていないために私は強調したわけです。しかし、必ずしも税金が安いから資産が非常にふえたというんではなくて、経済が発展していきますとだんだん蓄積がふえていきますから、資産というのは所得に比してだんだんふえていくわけです。ですから、ある意味では当然ではありますけれども、ふえたからにはそれに対する課税というのは相対的にむしろふえるのが自然ではないかというのが私の考えです。課税の仕方はいろいろありますけれども、土地に関しましても株式に関しましても、日本の場合はキャピタルゲインに対する課税が異常に寛大であったという感じを持っています。  特に、土地に関しましては開発利益です。例えば、公的な機関が地下鉄をつくったとかそういう場合にも、その土地が異常に上がるとその利益は地主に行く。これは経済学的に見ましても、外部経済を内部化しないでほかのところへ行ってしまうということになるわけですね。やはりそういう棚ぼた的なキャピタルゲインというのは、経済学的に見ましても、あるいは分配上の構成から見ましても、むしろ課税が強くなければならないわけですけれども、どうも開発利益などの課税に対して日本は非常に寛大だ。例えば厳しい国では、特にスウェーデンのような国は、開発が決定されるということになりますと、その土地の、そこは値段がいかに上がろうと、公的な購入価格は十年前の地価であるわけです。消費者物価等の上昇は反映されますけれども、異常に上昇したことは全く考慮されないで購入される、しかも自治体が先買い権を持つということで。こういうのは非常に極端ですけれども、そうでないほかの国でも、大体先進諸国では棚ぼた的な開発利益に関しましてはかなりきちっと課税しています。その辺が一つ。  資本に関しましては、キャピタルゲイン株式に関しましても国によってさまざまですけれども、保守的だと言われるレーガン政権でも、先ほどのような一種の社会契約的なやり方で、一方で確かに所得税を非常に累進度を下げまして、法人税の減税をやりました。しかし、他方でいろんな特別控除を除くと同時に、キャピタルゲインに対して所得税並みの扱いをした、これはもう画期的なことであるわけです。サッチャーさんなんかの場合には分離で三〇%ですけれども、そういう保守的な政権でもそれくらいのことをやっているということを考えますと、我が国制度資産に関して非常に寛大である。その日本で、資産所得に対して異常な伸びをしているというのは、おっしゃるように課税が寛大だったからという面も作用していたかもしれません。  いずれにしましても、資産の比重が相対的に高まっていますから、それなりの課税をするというのが公正ではなかろうかというふうに考える次第であります。
  179. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 ありがとうございました。  次に、久野公述人にお聞きしたいんですが、先ほどの御意見の中で、クロヨンも根も葉もないことではないんだ、それで行政改革もぜひやってほしいという御意見がございました。私がお聞きしたいのは、行政改革についてこれはもう議論もし、私たちも検討してきたから、専門的なことはかなり理解をしているわけですけれども、むしろ久野公述人のような一般のサラリーマンの立場から極めて庶民的に眺めて、こういう点をぜひやっぱりもっときちんとしてほしいという、そういうふうな御意見をお聞かせいただければ幸いだと思います。
  180. 久野靖正

    公述人(久野靖正君) すぐ思い出せるのは、やっぱり役所へ出した書類のおりてくるのが遅かったり、それからその場で応対した人の返事がすぐ出なかったり、そんなことを特に感じます。
  181. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 最後に、下城公述人にお尋ねいたしたいんですが、市長さんをなさっておるんで市民との接触が非常に多いと思うんです。それでお聞きしたいことは、今回の税制改革六法、非常に複雑な内容であるわけなんですが、市長さんからごらんになって、市民の皆さん方に浸透度というか、理解度というものがどの程度までいっているというふうに御判断なさっているかお聞かせいただければと思います。
  182. 下城雄索

    公述人(下城雄索君) お答え申し上げます。  この税制改革に関連いたしまして市民がどの程度理解をしておるかというお尋ねでございますが、これは物の考えようでございまして、私は、この税制改革に賛意を表しております市長としては、かなり高く見ておりますけれども、一方、反対する人もおりますので、その割合の内容は今のところちょっと不明でございますが、努力中でございます。
  183. 青島幸男

    青島幸男君 私は二院クラブの青島幸男と申します。  長いこと御苦労さまでございますが、私で最後でございます。時間がございませんので、一点だけに絞って御質問申し上げますけれども消費税の問題でございます。  消費税の導入に関しまして、今、国民が非常に疑念に思っているのは、逆進性の問題と、それから税の痛みが希薄になってしまう、こういう問題と、それから税率政府の言うように守られるかどうか、この三点だと思いますけれども、第三番目に挙げました税率の問題についてまずお尋ねをいたします。  下城公述人からお尋ねをいたしますけれども、この三%という税率ですけれども、これは政府が言うように、内閣がかわろうとどうしようと未来永劫守られるとお考えでしょうか。それとも三%を超えるぐらいなら反対だというお立場でしょうか。それとも、上がるんだったら上がるにはそれなりの理由があるんだろうからこれは是認する、こういうお立場でしょうか、いかがでございましょうか。
  184. 下城雄索

    公述人(下城雄索君) お答え申し上げます。  私は、政府を御信頼申し上げておりますので、上がることは望みませんが、今のこのことにつきましては賛意を表したいと思っております。
  185. 青島幸男

    青島幸男君 わかりました。  それでは土方さんにお尋ねします。今と同様の質問でございますが、いかがでございましょうか。
  186. 土方武

    公述人(土方武君) お答えいたします。  私は、三%の税率がいかに変えられるかということは議会の承認を経てやられることでございますので、議会を御信頼申し上げておる次第でございます。  ただ、所得税その他の減税と引きかえに消費税をまたいじるというようなこともあるかと思うのでございますけれども、そういったときには十分御審議の上お決めいただければまことに結構だ、このように思っております。
  187. 青島幸男

    青島幸男君 丸尾公述人、同様の質問でございますが、いかがでございましょうか。
  188. 丸尾直美

    公述人(丸尾直美君) 私の考えは多少違いまして、高齢化に伴う福祉消費税とを結びつけていけば、当然税率は長期的には二倍、三倍になる可能性があると思います。しかし、そういうことを言えない雰囲気という、日本は非常におかしなところがあるんですね。はっきりさせて、税率がこれだけふえていく、しかし経済がこれだけ成長していけば手取りは十分ふえますよというふうにして言った方が経済的に学者としては合理的だと思うんですけれども、しかしそういうことを言うと、それ見ろということで非常に言えなくなるという、そこは必ずしも日本の議会というのは合理的でないような気がします。
  189. 青島幸男

    青島幸男君 もう時間がなくなりましたのは承知しておりますので端的に申し上げますけれども、今までお話を伺いまして、賛成の立場から御意見を公述なすった方々は大変楽観的な人生観をお持ちだということに私はうらやましさを感じまして、発言を終わります。  ありがとうございました。
  190. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 以上で公述人に対する質疑は終わりました。  この際、一言御礼申し上げます。  公述人の皆様には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして心から厚くお礼を申し上げます。  明日は午前十時から委員会を開会することとし、これにて税制問題等に関する調査特別委員会公聴会を終了いたします。    午後四時四十四分散会