運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1988-12-21 第113回国会 参議院 税制問題等に関する調査特別委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十二月二十一日(水曜日)    午前十一時開会     ─────────────    委員の異動  十二月二十日     辞任         補欠選任      村上 正邦君     小野 清子君      橋本  敦君     上田耕一郎君  十二月二十一日     辞任         補欠選任      藤井 孝男君     仲川 幸男君      千葉 景子君     本岡 昭次君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         梶木 又三君     理 事                 斎藤 十朗君                 林  ゆう君                 平井 卓志君                 降矢 敬義君                 吉村 真事君                 志苫  裕君                 安恒 良一君                 峯山 昭範君                 近藤 忠孝君                 栗林 卓司君     委 員                 井上 吉夫君                 井上  孝君                 板垣  正君                 岩本 政光君                 小野 清子君                大河原太一郎君                 大木  浩君                 岡部 三郎君                 加藤 武徳君                 久世 公堯君                 後藤 正夫君                 斎藤栄三郎君                 斎藤 文夫君                 下稲葉耕吉君                 鈴木 貞敏君                 田辺 哲夫君                 谷川 寛三君                 仲川 幸男君                 松浦 孝治君                 森山 眞弓君                 及川 一夫君                 千葉 景子君                 福間 知之君                 本岡 昭次君                 矢田部 理君                 山口 哲夫君                 山本 正和君                 太田 淳夫君                 塩出 啓典君                 和田 教美君                 上田耕一郎君                 吉井 英勝君                 柳澤 錬造君                 野末 陳平君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        内閣総理大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君        法 務 大 臣  林田悠紀夫君        厚 生 大 臣  藤本 孝雄君        通商産業大臣   田村  元君        運 輸 大 臣  石原慎太郎君        郵 政 大 臣  中山 正暉君        労 働 大 臣  中村 太郎君        自 治 大 臣  梶山 静六君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       中尾 栄一君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  内海 英男君    政府委員        内閣法制局第三        部長       津野  修君        公正取引委員会        委員長      梅澤 節男君        公正取引委員会        事務局官房審議        官        糸田 省吾君        総務庁統計局長  田中 宏樹君        経済企画庁国民        生活局長     末木凰太郎君        経済企画庁調査        局長       冨金原俊二君        国土庁長官官房        長        公文  宏君        国土庁土地局長  片桐 久雄君        法務省刑事局長  根來 泰周君        大蔵省主計局次        長        篠沢 恭助君        大蔵省主税局長  水野  勝君        大蔵省関税局長  長富祐一郎君        大蔵省証券局長  角谷 正彦君        大蔵省銀行局長  平澤 貞昭君        国税庁次長    伊藤 博行君        厚生大臣官房総        務審議官     末次  彬君        厚生大臣官房老        人保健福祉部長  多田  宏君        厚生省健康政策        局長       仲村 英一君        厚生省社会局長  小林 功典君        厚生省児童家庭        局長       長尾 立子君        厚生省保険局長  坂本 龍彦君        厚生省年金局長  水田  努君        通商産業省通商        政策局長     鈴木 直道君        通商産業省産業        政策局長     児玉 幸治君        運輸省地域交通        局長       阿部 雅昭君        運輸省地域交通        局陸上技術安全        部長       清水 達夫君        郵政省電気通信        局長       塩谷  稔君        労働省婦人局長  佐藤ギン子君        労働省職業安定        局高齢障害者        対策部長     竹村  毅君        自治省財政局長  津田  正君        自治省税務局長  湯浅 利夫君    事務局側        常任委員会専門        員        竹村  晟君        常任委員会専門        員        片岡 定彦君        常任委員会専門        員        保家 茂彰君    参考人        日本電信電話株        式会社代表取締        役副社長     村上  治君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○税制改革法案内閣提出衆議院送付) ○所得税法等の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○消費税法案内閣提出衆議院送付) ○地方税法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○消費譲与税法案内閣提出衆議院送付) ○地方交付税法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 梶木又三

    委員長梶木又三君) ただいまから税制問題等に関する調査特別委員会を開会いたします。  まず、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  税制改革法案外案審査のため、本日、日本電信電話株式会社代表取締役社長村上治君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 税制改革法案所得税法等の一部を改正する法律案消費税法案地方税法の一部を改正する法律案消費譲与税法案及び地方交付税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題とし、これより安恒良一君の質疑を行います。安恒君。
  5. 安恒良一

    安恒良一君 私は前回、消費税弾力運営についてお聞きしたんですが、時間がなくなって途中でやめました。  総理にお聞きをしたいんですが、きょうの新聞で、消費税の半年間延納を認める、こういうことで自民党はいわゆる腹を決めて本案の成立のための野党折衝に入ると、こういうことが大きく報道されているわけですが、この点の事実について総理のお考えをお聞かせください。
  6. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ちょっと今、安恒委員お尋ねの件については、正確に把握をいたしておりません。今までここでお答えしているとおりのことで、私のもとより頭の中でいろんな体操をしたことはございますけれども、自民党が折衝するということは確認をいたしておりません。
  7. 安恒良一

    安恒良一君 実はこういうふうに報道されているんですが、「四月実施消費税執行に当たって」は半年間弾力的運営を行うとした衆議院段階での修正、これは前代未聞なんですが、法律修正しないままお話し合いができたと聞いているんですね。それを具体化する方法として、「四月から六月決算期事業者については消費税の納税を来年九月三十日まで猶予する」、それから「課税売上高五億円以下の事業者簡易課税を選択する場合、来年三月三十一日までに届け出をする必要があるが、それを同九月三十日まで猶予する」ということで話し合いが続けられているということが、これはきょうの朝日新聞の切り抜きですが、大きく報道されています。  でありますから、いわゆるこういうような考えを、総理、あなたは大蔵大臣ですからお持ちなんですかどうですか、このことを具体的に聞かしてください。
  8. 水野勝

    政府委員水野勝君) 従来から申し上げておりますように、衆議院でいただきました修正、当参議院での御審議をも踏まえつつ、明確なものとして、実のあるものとして固めてまいりたいということで、政府サイド与党サイドが腹を決めてどうこうということは、総理からも申し述べられましたように、ございません。
  9. 安恒良一

    安恒良一君 全く国会ばかにした、軽視した答弁です。というのは、この法律の施行は来年の四月以降ということになっているわけです。参議院論議を踏まえつつというのは、じゃ私たち論議を踏まえたことを、最終的にこの法案を上げるときに条文修正をされるんですか。少なくとも、ここでいろいろ問題が指摘をされたならば、それをやはり修正するというのが議会制民主主義じゃないですか。それを、国会論議を踏まえつつ法案が上がった後にこうこうします。議会ばかにするにもほどがあるじゃないですか。  それと同時に、このことも一つある。ガイドラインの問題、いわゆる消費税法執行前にガイドラインを間に合わせなければならぬということでずっと前に記者会見をされています。このガイドラインも私たちに示されてしかるべきじゃないですか。そのガイドラインはこうなっています、それから半年間実施延期の中身はこういうふうにやりたいと思います、それでこの法案に賛成ですか反対ですかと、こういうふうな議論をされるのが税法審議している国会じゃないでしょうか。私が今言ったガイドラインをまず示していただきたい。  それから、この半年間の実施延期について、なぜ私がこのことをきょう大きな声で言うかというと、納めるのを半年間延ばすと、こう書いてあるんですね。消費者お金を取られちゃうんですよ、これ。お金を取られるんだから、預かり金だから預かりの期間を長くすればいいじゃないかと、こんな簡単なことで消費者を納得させることができるんでしょうか。  というのは、消費者事業者と分かれていますが、事業者の場合もこれはやっぱり消費者であるわけですね。ですから恐らく一億全部総消費者だと思います、政府機関消費にもかかるわけですから。そうすると、その消費者というものに理解と納得を得ないままの消費税というのはうまくいかないわけです、こういうところの点をあいまいにしておくと。そして、国会審議以外で党対党で話がつけばそれでいいんだということで、議会制民主主義というものとの関係はどうなるんですか。この点について、総理、お考えを聞かしてください。
  10. 竹下登

    国務大臣竹下登君) おっしゃる論理は私にも非常によくわかる論理でございます。が、今お話を聞きながら私の頭の中で整理をいたしますと、四月決算法人が六月末になりますか、それから五月決算法人が七月末、その二カ月の間、そうなることが執行の上で、あるいは周知徹底を図る上で、今おっしゃったような預かり金期間が、指導が徹底する間、四月決算法人、五月決算法人、六月決算法人までがそういうことになるのかなと思って頭の中で整理しておったところでございますが、この問題はあくまでも法律そのものではなく執行の問題であろうと、こう思いますので、きょうも意見を聞きながら、対応することがあるとすれば一つ考え方なのかなと、こう思って先生のお話を聞いておったところでございます。
  11. 安恒良一

    安恒良一君 総理消費税というのはそんないいかげんな税金なんですか。消費者は来年の四月一日からきちっきちっと消費税を預けていくんですよ。これを出すんです。私は公金と言って、あなたは預かり金と言った。しかしながら、納めたものは早くそれが国庫に回収されることを望むので、それを執行の問題だからということで、法律条文を何らいじることなく、しかもまた、ガイドラインを今示してくれということについてガイドラインも示さないまま、執行の問題だからいいじゃないかと。総理税制に詳しい割にどうかしておりはせぬですか。そんなことでいいんですか。ガイドライン一つも、私が、それじゃガイドラインを示してもらいたいということに対して答弁は何もしない。それで、単なる執行の問題だからそれでいいじゃないかと。そんなことで一億二千万の国民が納得するというふうに思いますか。その点どうですか。  もう少し総理、あなたは税金を取り立てる方向だけに頭がある、消費税ありきということで。しかし、消費税というのは消費者消費して納めるんですから、そこにポイントが置かれなきゃならないんですよ。どうもあなたを初め水野主税局長なんか全く税金取り立て屋の頭だけなんだよ、取り立て屋の頭。それがいけないということを私が言っている。ですから、どうですか、じゃガイドラインを示してください。どういうガイドラインか、ガイドラインを示してください。
  12. 水野勝

    政府委員水野勝君) 消費税は、あくまで御提案申し上げております法律として法律関係は確定をして明確なものでございます。そうした全体としての法体系の中で国税当局としてどういうことができるかということでございますので、決して法律自体をいいかげんなものと考えて対処するということはないわけでございます。その範囲内におきましてこの趣旨に即したことがどのようなものがまとめられるか、本委員会での御審議も承りながら関係者で詰めておるところでございます。
  13. 安恒良一

    安恒良一君 納得できません。ガイドラインを説明してください、総理ガイドラインを。
  14. 水野勝

    政府委員水野勝君) 繰り返しで恐縮でございますけれども、この条文をいただきまして、この条文に則して、またこの条文趣旨が生かされるように配意しながら、現在、そしてまた当委員会参議院の御審議も踏まえてまとめるということでございます。しかし、決していいかげんなということでなくて、明確なものにいたすつもりでございます。
  15. 安恒良一

    安恒良一君 同じ答弁は時間がもったいない。できないならできないと言ってくださいよ。  総理、税というのは、刑法と同じように厳格に運用しなきゃならないんですよ。四月一日実施消費者は四月一日から払うんです。しかし、執行上、皆さん意見を聞いてお金を納めるのはさらに延ばしましょうということでは消費者は納得できないんです。そこでガイドラインというものを示すと言うから、ガイドラインを示してくれと。  それじゃ、こう聞きましょう。今、ガイドラインができてないそうですから、ガイドラインができた上でこの法案については最終的に決着をつけられますね、総理。どうですか。ガイドラインを私たちに示した上で決着つけられますね。まだ二十八日まで日にちもあることですから、できてないそうですから。それはどうですか、総理
  16. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 法案決着という御表現でございますが、これは行政府の方から申し上げることではなく国会自身でお決めになることであろうと思います。が、執行に当たるガイドラインというのは、執行の面においてそういうことを国会でお答えしておるわけですから、必ずこれが実施に間に合うような形で示されるものであろうというふうに考えております。
  17. 安恒良一

    安恒良一君 国会議会人としてそれでは責任が持てないんですよ。四月一日から納めた税金、一方それが納まるのは後になると、こういうことを、そのところの中を明らかにしないまま私は議会人としてそれでいいと言うわけにいかないんです。租税法定主義なんです。税制を、あなたが何回も何回も、この国会議論して決めてくれと言っているじゃないですか。それがそこのところをぼかしたままいいじゃないかと、それは四月一日執行なんだから執行のときまでに間に合えばいいじゃないかというのは、あなたが日ごろ言っておられることと全然違うことをあなたはされようとしているんですよ。  だから私は、この国会は二十八日までありますから、私たちがこの法案議論している間にガイドラインを示していただけますかと。国民としては四月一日から税金を取られたらそれがどういうふうに国庫に入っていくのか、それを早く示してほしいと。そして私たち国民を代表してそれは議論しているんですから、その私たちに示さないままやるということはいけないですよということを言っている。総理、どうですか、それは。
  18. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 執行に当たってのガイドラインというのは、私はいずれ明らかにしなきゃならぬと思っております。これは私自身が、あるいは間違っておるかもしれませんが、あのたばこ税のときにたしかそういう例があったような記憶がございます。
  19. 安恒良一

    安恒良一君 総理たばこ税消費税をあなたは同一にするんですか、税金に詳しい詳しいと言う総理が。たばこというものは国民の一部の嗜好品で、金額からいっても、税の規模スケールからいっても全然違うんですよ。あなたは、おれは税は得意だとおっしゃるけれど、何が得意ですか。税のスケールが全然違う、規模が違う。それをたばこのきにはそれがあったからいいじゃないかと。それこそ空気を除いてすべてに税金をかける、国民全体の重要な税金をやるときに、ガイドライン執行前に私たちに示すことができない、そんなことでそれでいいんですか。たばこと何が同じですか。たばこはごく一部の税制じゃないですか。どうですか、その点、総理
  20. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いや、税の専門家だと言ったことは一度もございません。初級講師としては合格しておるだろうと、こういうことをいつも申し上げておるところであります。東畑調査会以来の税制調査会委員であった安恒委員の方が、それはその限りにおいて上級講師であると私自身思っております。したがって、今ちょっとたばこのことは言わなきゃと思ってちゅうちょをいたしましたけれども、やっぱり予算執行に関することは、法定主義において税法スキームを決めてもらうわけですから、執行に関する問題は行政権限内に属することではないかと思います。
  21. 安恒良一

    安恒良一君 租税法定主義というのはそういうことじゃないんですよ。あなた、ますます頭が混乱してきていますね。  四月一日から執行すると書いてあるんですよ。四月一日から執行したら、四月一日から我々は税金を払って、それが国庫にきちっと入っていくと、このあかしが必要なんですよ。それを単なる予算執行と同じと一言うている。それで、あなたは初級講師でもないですね、そんなことを言い出したら、率直に言って。初級講師でもないですよ。そこのところはもう少し、取られる国民がどう感じるかということについて、どうしてこれだけの大きなことをやろうとするときにあなたに配慮がないんですか。どうですか、もう一回聞きます、その点。
  22. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 気配りがきかないといえばそれは謹んでお受けいたします。が、私なりに過去の乏しい経験の中からして、やはり法定主義できちんと決まった執行問題についてのガイドラインというのは、その執行までに国民皆さん方にできるだけわかりやすくお示しするのが適切であろうと思っております。
  23. 安恒良一

    安恒良一君 国民に示すと同時に、この法案をこの国会で決めることになるでしょう。あなたがこの国会法案継続審議にして十分議論をすると言うならその論理は通るんですよ。しかし、あなたはどうしてもこの国会提案者として決めてもらいたいと、こう言っているんでしょう。決める前にどうして私たちにお出しにならぬのですかということを聞いているんです。そこを答えてください。決める前に、決める私たちの方にどうしてそのガイドラインをお出しにならないのですかと、こう聞いている。総理、それに答えてください。
  24. 竹下登

    国務大臣竹下登君) したがって、やっぱり今のような議論を十分吸収しながらスキームを決めてもらうわけでありますから、執行ガイドラインというものは、それらを整理整とんしてからお出しするのが正しいのじゃないかなというふうに思います。
  25. 安恒良一

    安恒良一君 了解できません。これは明確に言っておきます。国民も同じ気持ちだと思うんですね。取られる人が、自分の納めた税金がいつどうなるかということが示されないまま、租税法定主義であるというので国会で決まるということについては、厳しい批判があると思います。  次の問題に行きます。  消費税逆進性についてですが、総理はこの逆進性というのは七つの懸念の中で最大の問題だというふうに挙げられまして、私とのこの前のやりとりでは中和ということでやりとりをされました。  そこで、例えば今までの多くの同僚議員議論の中から、生活保護法年金等はこれは本来スライド、それから今度消費税を含めていわゆるあれを引き上げていくと、こういう答弁がありました。さらに課税最低限生活保護法のいわゆる中間層の方々の扱いについてもいろんな議員から議論をされました。これに対して、どうも考え方は何か一時金と、こういう考え方が出てきておるようですが、この点について最終的にどういうお考えをお持ちなのか、ひとつ総理考え方を聞かしてください。
  26. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今の問題、まだ私の頭の中できちんと整理整とんされておるわけではございません。五十三年の所得税減税、あのときは戻し税でございましたが、そのときに議論されたことが私の頭の中にはございますというところまではたしかお答えしたと思うのでありますが、事務当局をしてその進みぐあいがあるとしますならばお答えさせることをお許しいただきたいと思います。
  27. 篠沢恭助

    政府委員篠沢恭助君) 消費税の導入に伴いまして物価への影響が生じます場合に、生活保護のほか真に手を差し伸べるべき人々ということをよく考え予算編成の中で適切な措置をとるようにということでございます。そういう御指示もあるわけでございます。  具体的にどういう考え方をとっていくかということにつきまして、いろいろな御意見も出ようかと思っておるわけでございますけれども、私ども事務方といたしましては、現在予算編成の中で厳しく詰めていきたいということで検討をこれから続けていきたいという段階でございます。
  28. 安恒良一

    安恒良一君 その問題はそれくらいにして後で詰めましょう。  それじゃ厚生大臣にお聞きしたいんですが、今、老夫婦家庭の一カ月の消費は大体二十四、五万円というふうにいろんな統計で言われています。これを私はわかりやすく食える年金と言うんですが、食える年金をもらっている人は今の年金受給者の中で何%ぐらいいますか。
  29. 水田努

    政府委員水田努君) 厚生年金平均支給額は月額にして大体十三万円程度でございます。
  30. 安恒良一

    安恒良一君 質問に答えていません。厚生年金だけ言っているんじゃないですよ。今、年金生活者の場合で食える年金は二十五万円と言われていますから、老夫帰で食える年金をもらっている人は今の年金受給者全体の中で何%、何人おるかと聞いている。
  31. 水田努

    政府委員水田努君) おおむね二二%でございます。
  32. 安恒良一

    安恒良一君 総理、今言われたように二二%の人は食える年金をもらっている。だから、その方方にいわゆる消費税が若干上乗せされる、こう言うならこれはわからぬわけではありません。しかし、八〇%の人は二十五万円以下なんです。厚生年金なんか今言われたようなんですね。そういう方が今まで営々と働いて今日の日本の繁栄を築いていった、その人の生活費にこの消費税は直接食い込んでいくことになるんですよ。そうしますと、いやそれは来年の年金スライドで考えりゃいいじゃないかと。それで事務当局に聞いたら、まだ今一生懸命検討中でございます、そんなことを私たちに今答弁をしているんですが、そんなことで総理、あなたがおっしゃる逆進性の解消とか中和ができると、こういうふうになるでしょうか。もう少し積極的な考えがあってしかるべきじゃないですか。どうですか、総理、あなたは。
  33. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 年金については、今の物価上昇分を翌年からスライドしていくという仕組みがあることは私も承知しております。真に手を差し伸べるべき人ということに対する私の考え方は、これは非常に大ざっぱな話ですが、生存権の最低保障と課税最低限の中間の中でお手当てできる方々に対する措置ということを、具体的に今財政当局、厚生省等で詰めていただいておるという段階でございます。
  34. 安恒良一

    安恒良一君 ですから、あなたの言っておられることは大変冷たいということになるんですよね。今あなたがおっしゃったように、生活保護の人は生活保護を引き上げりゃいいじゃないか、年金の人は年金のスライド制があるからいいじゃないか、課税最低限と保護の方とその間の中間、ボーダーライン層といいますか、そういう方々に一時金か何か考えりゃそれでいいじゃないか、こうおっしゃっていますけれども、これも多くの同僚議員も批判したように、年金のスライドというのはどのくらいになるかという議論もここで進んでいるわけですよね。いいですか、二十五万円ある人なら別だと、その人はスライドで考えられる。しかし、十何万もらっている人が、スライドした中から生活全体にかかる空気以外のやつは全部取られるわけですから、それでいわゆる逆進性を緩和したということになるんでしょうか。すなわち、私はここに消費税の大きな欠陥があるということを言いたいんです。そういう方々の生活に配慮をしてない。  例えば、昨年の売上税は食料品を非課税としましたね。また、EC諸国の付加価値税も、多くの国では食料品を初め生活関連物資に対する税率を低く抑える、もしくはゼロ税率にする。そういうふうにいろんな配慮が諸外国ではしてあるんですよ、いろんな配慮が。ところが今度の消費税は、今申し上げましたように空気以外の生活必需品すべてに一律に三%をぶっ掛けて取り立ててしまう。これは私は、世界にまれなる悪平等の税制だと思います。こういう点について総理、もう一遍簡単に、あなたは今逆進性の中和ということについてどういうふうにお考えですか。でなければ、私はこんな血も涙もないこういう税法づくりに国民は合意を与えるわけはないと思います。その点どうですか。
  35. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 安恒委員と私の考え方の中にかなりの乖離がある、これは私も十分承知いたしております。  しかし、元来間接税の持つ水平的公平性は評価されますものの、所得というものを中心に応能主義的考え方考えた場合は逆進性というのは元来存在しておる。しかも、今度いろいろ議論の結果、大変な三%という低税率でございますから、言ってみれば、そこに複数税率を導入するということに対しては、それこそ先ほど来申し上げておりますような財政上の問題あるいは税法全体の中の問題等で、中和という言葉を使いましたが、科学的に必ずしも正確な言葉じゃございませんけれども、可能であるという考え方で理解を深めるように今日までお願いをしてきたものでございます。
  36. 安恒良一

    安恒良一君 私は、税法というのは一遍施行されたら——例えば一時金論なんか出ていますけれども、一時金は一時金にすぎないんですよ。ですから、私はそこに一つの問題があると思いますね。一時金というのは出したその年だけですからね。毎年一時金をずっと出すなら別ですよ。それは一時金と言いませんわね、毎年毎年出すやつは。  そこで私は、それならば、予算予算といってあなたたちは逃げますから予算のことについて聞きますが、中曽根内閣以来私たちは二極分化予算と言っています。それは何かというと、防衛費と経済協力費は物すごく増加しています、あなたの代になっても。ところが、国民生活向けの予算はかなり圧迫されています。あなたの代になってうんと伸びたのは公共事業費だけですね、これは。ですから、今あなたたちは、すべてこれは来年度の予算で配慮します配慮します、こういうふうに逃げられるわけです。しかも、その中身を言えといっても、まだ中身は今検討中でございますと皆言うわけですよね。そうすると、六十四年度予算は既に概算要求決定が出ていますね。あの推移を見ても、今までの予算編成の傾向とほとんど変わってないんです。  そこで総理、あなたは中曽根内閣時代の財政運営、歳出予算の計上の仕方を逆転させるぐらいの覚悟と決意をお持ちですか。そうでなければ、今あなたたちが言っていること全部が——本当に逆進性を中和するような予算が組めるんでしょうか。歳出予算を含めた財政全体の姿の中であなたたちは中和する中和する、こう言うんだから、そこのところの考えをお聞かせください、総理
  37. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 中曽根財政と言われましても、五回予算編成したうち四回は私でございますので、その路線が今日まで継承されておる。その批判については私自身の責任だというふうにも思っております。  恐らく、若干専門的な角度から分析したお尋ねだと思います。率直に、概算要求基準、シーリングはもう済んでいるじゃないか、その中で今、中和予算を六十四年度予算の中でつくることはなかなか難しいじゃないか、こういう議論であろうと思いますが、私は六十四年度予算の中でほとんどのものは消化できるではなかろうかというふうに考えております。ただ、六十三年度補正予算というものも、これは半分ぐらいプロの話になりますが、私の頭の中にあることも事実でございます。
  38. 安恒良一

    安恒良一君 総理、どうですか、あなたがおっしゃっているその課税最低限生活保護法の間にある方を、一時金などと言わなくて、課税最低限以下の者に対する還付制度、これは例えばカナダなんかでも実施していますね、そういうことをひとつぜひお考えになっていただきたいと思いますが、その点どうですか。一時金というのはそのときだけなんですよ。そこはどうですか。
  39. 竹下登

    国務大臣竹下登君) それは、おっしゃるとおり一時金はまさに一時金でございます。だから、財政側からの考え方からいえば、ばらまきという言葉が使われることが間々あることも十分承知しております。が、今のカナダ方式というものは、私は、負の税とでも申しましょうか、マイナスの税と申しましょうか、負の税の議論も随分ありましたが、やはりこの物価上昇分等については施策の上でその都度組まれるものでございますし、いわば負の税というところの仕組みはいろいろ検討をいたしましたが、手続上も、それから理屈の上でもなかなか難しいという結論に達したことは事実でございます。
  40. 安恒良一

    安恒良一君 手続上とか理屈のことをここでやり合っておったらまた時間がかかりますから、課題がありますから、総理、もう一遍冷静に検討してみてください、このことについて。でないと、私はこれからさらにあなたと、じゃどこに問題があるか、それだけで議論しなければならぬ。きょうは全体をやりたいと思いますから、ひとつ。  それじゃ、次の課題に行きたいと思いますが、次の課題は、納めても国庫に入らない危険な消費税ということで少し議論をしたいと思います。  今、審議中の消費税法案は、納税義務者は課税売上高三千万以上となっています。この点に関しまして、最終の税負担者、消費者とその業者との間に、私は、消費税をめぐる不信感を持ち込む危険が非常にあるということを指摘してお聞きをしたい。  それはなぜかというと、何か課税売り上げ三千万と聞くと相当の売り上げのように聞きますが、一カ月当たりに換算をしますと二百五十万なんですよ。二十五日の営業、日曜日休むということで一日の売り上げ十万円なんですね。そうしますと、一日の売り上げが十万円程度の業者は結構多いんですよ、十万円程度。政府は、いやこれは業者の七割近くが非課税業者だ、こういうことを言って、大したことがないというのでありますが、今私が言ったようなことで計算しますとどういうふうになりますか、その点。
  41. 水野勝

    政府委員水野勝君) 事業者の数からまいりますと、今御指摘のように、三千万以下でございますと七割弱ございます。ただ、そうした方々の売り上げ自体について見ますと、これは二、三%程度の規模かと思われます。
  42. 安恒良一

    安恒良一君 売り上げのことは聞いてないんですよね。要らぬこと言わないでください。  ところで、三千万以下の売り上げしかない業者も消費税相当額を売り上げに上乗せして消費者から取って、国庫に納入しないでいいということになりますね、その場合。消費者から取っても国庫に納入しないでいいと。私は、ここに消費者、税の負担者の不信が出てくる。それはなぜかというと、三千万以下の業者も仕入れには消費税がかけられますからね。この点はどうですか。
  43. 水野勝

    政府委員水野勝君) 仰せのとおりでございまして、免税業者でも三%をほかの業者と横並びでお上げになるということは、これはあえて、それは不当であるということは言えないのではないかと思っております。それは、今、委員御指摘のように、例えば八割が仕入れ値ならば二・四%部分ぐらいは仕入れに入っている、そういう面もあるからでございます。
  44. 安恒良一

    安恒良一君 総理消費税は多段階課税であり、しかも前段階控除方式であるということはお互いが承知している。  そこで、例えば小売業者がその売り上げに三%の税率で計算して預かった金額は、仕入れ段階で既に支払われている控除対象の税金相当分とは同額でないんです。したがって、この場合業者の手元にお金が残ることになるんです。このことは大蔵省も認めるでしょうね、今の言い方で。そうしますと、この残りたお金は、前回私の質問で、総理答弁では預かり金ですとあなたは言う。預かり金は業者が預かるんですが、一番長くても一年後には国庫に納めなきゃならぬ預かり金ですね。しかし、この三千万円以下の業者は、今言ったこの差額の預かり金を国庫に納める手段がないんですよ。私はこれは、そういう業者を責めているわけじゃないんですよ、そういう手段がないんですから。しかし、消費税を納めた消費者は納得しませんよ、その業者から取られているんですから。ところが、取った人は納めようと思っても納められないんですね。消費者が納めた税金国庫に届かない、そんな消費税の計算方法を認める、税制としてはむちゃくちゃじゃないですか。矛盾があるんじゃないですか。その点、総理どうお考えになりますか。  そこで、総理が御答弁する前に、ちょっと税務当局に、きのう今言ったような預かり金の中から国庫に納付しないで済むと見込まれる金額を試算しておってくれと言っておいたその試算の金額を言ってもらってから総理答弁を下さい。
  45. 水野勝

    政府委員水野勝君) 先ほどの納税者数は非常に多うございます。したがいまして、金額を合わせますとぎりぎり、じゃそれは全部お手元にという場合には二千億円ぐらいのものにはなります。しかし、それは御承知のように三%上げていいということであって、業者がどうされるか、それはその分だけサービスされるか、そこはやっぱり先ほどの御指摘のように二・四%は転嫁しなきゃそのコストはかかる、そのお手間というものも考えると、そこはあえて納めなくて結構でございますというふうに仕組んでいるところでございます。
  46. 安恒良一

    安恒良一君 総理、今言われたように、ざっと計算しても二千億ぐらいになるだろうと。問題は、それから先まだ計算し切ってないんです。二千億から仕入れにいった分をどれだけ引くかということです。これも知れています。  例えば、これは極端な、あなたがアバウトの論議好きだと時々言われますから、半々としましょうか、一千億と。この半々というのは全くアバウトですよ。私はそうでないように計算するように言っておったんですが、計算ができていません。そうしますと、国庫に納めない金がそれだけ業者の手元に残る。消費者は業者を不審な目で見る。消費者は、税金を納めた人の立場から見ると猫ばばされたと思いますね。片方の方は、私は自分は好きこのんでこんなものを猫ばばする気はありません、私は立派な商人ですとか立派な生産者です、こういうことになる。そんなことを白い目で見られるのは割が合わぬと、こう業者は言いますよ。これが今回の消費税一つの大きな欠陥なんですよ、今言ったこと。今度のあなたがやろうとしている税金の大きな欠陥です。これをどういうふうに解決し、どのように考えられますか。総理のお考えを聞かしてください。
  47. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 三%、仮に前段階控除が二・四とすれば、〇・六に当たるものになるわけでございますが、二・四が全部がそうであるとは私ももちろん思いません。全部が〇・六であるとも思いません。これこそアバウトな議論の根底にあるわけでございますけれども、しかし、免税点というものが存在する限りにおいては今の議論はあり得ることであります。そうして、その免税業者の方々も、いわゆる前段階の問題はもとよりでございますが、帳簿にいたしましても、前段階からの仕入れ、それからいわゆる卸というものは、大量の場合と少量の場合といわゆる単品にすれば価格が違ってくる場合もございますので、それらのものは間接税の持つ、そしてなかんずく免税点のある税制というものにはこれはやむを得ない税制であろうというふうに私はお願いをしているところであります。
  48. 安恒良一

    安恒良一君 総理、あなたは、私と前の日の論議の中で、この消費税をやれば不公平税制の緩和に大きく役立つと、こう言われたんですよ。ところが、消費者の立場からいうと、税金を納めた人の立場ですよ、猫ばばされる危険性がある税金を納めろと言われて、これがどうして不公平の解消に役立つんですか。猫ばばされる。今あなたも言われたように、数字なら具体的数字を言ってもらいたいが、試算し切ってないんだから、これは。かなり残ることは間違いないんですよ、三千万円以下の業者は、三%かけて取る場合。そうでしょう。ですから、そんなことでどうして国民が、これで不公平が直るというふうに信じるとあなたがおっしゃっても信ずることができるんでしょうか。私は本当にこれは欠陥法案だと思います。  総理、その点と、こんな欠陥法案を強引に適用して事故が起こりませんか。以上、お答えください。
  49. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 間接税制の中で免税点問題が存在しておるときには、これは本来今の議論はエンドレスにあり得る問題である。それぞれの事業者の方はすべてが、再販価格制度等は別といたしまして、公定価格ではございませんから、それらがいろんな形で最終消費者の方に渡るときには、この三%というのがいろんな形においてあり得るだろうということは私も十分想像できます。だから、それらのことは本来含まれた税制であるということは、やはり国民皆さん方に理解を得なければならないことだと思っております。
  50. 安恒良一

    安恒良一君 何回も言いますがね、あなたは、どうしても一億納税者になる、そういう方に対する配慮があなたの言葉に本当にないんです。消費税だからしようがない、そんな仕組みは、猫ばばがあろうと何があろうとしようがないとあなたの言葉は聞こえるんですよ。私は、一国の総理としていま少し説明の方法があると思いますよ、率直に言わしてもらって。あなたのお話を聞いていると、宿命だ宿命だ、消費税というものはそういうものも持っているんだ、免税点をつくればしようがないじゃないかと。しようがないじゃないかといっても、取られる人は取られているんですからね。それが中間で猫ばばされてどこへ行くかわからないんですよ。国庫に入るなら慰めがあるんですよ。国庫に入らないんですからね。それなのに、しようがないじゃないか、国民理解をしろ、納得しろと言っても、なかなか国民は理解も納得もできません。このことをはっきり言っておきます。  そこで次は、資料を配っていただいていると思いますから、転嫁問題について少し議論をしてみたいと思う。特に交通産業であります。  まず、運輸省、運輸大臣の手元にも行っていると思いますが、タクシー関係消費税の試算について私は私なりのこういう仕組みを計算しましたが、これでいいでしょうか、タクシー関係消費税は。
  51. 阿部雅昭

    政府委員(阿部雅昭君) いただいた資料、一ページ目の計算方式等は私どもそのとおりだと考えております。二ページ目の試算につきましては、福岡市内の分だけについての私どもの調査はございませんが、全般的な調査から見て、ほぼこのような形になっておるんではないかというふうに想像いたします。
  52. 安恒良一

    安恒良一君 大臣、これは私がつくったんですが、認められましたね。  そこで聞きますよ。まず、タクシー運賃の転嫁問題についてですが、タクシー業者には個人タクシーを含めた非課税業者がいます。それから簡易課税業者がいます。それから課税業者がいます。そして、タクシーは現行の同一地域同一運賃制度がとられていますね。こうした状況の中で運輸省は、消費税転嫁のための運賃値上げに際してはどう対処するつもりなんですか。どうも一律に三%の運賃値上げを認めていくというような方向ですが、具体的に明確に答えてください。
  53. 阿部雅昭

    政府委員(阿部雅昭君) タクシー運賃につきましては、個々の事業者間でコストに若干の差はあるということは事実でございますが、利用者の利便ということを考慮いたしまして、同一地域同一運賃の原則を適用してきております。このような考え方は、消費税の導入に当たっても私ども変更する必要はないと考えておりまして、今後も、課税、非課税、免税合わせまして同一運賃を採用するのが全体的な意味で適当ではないかというふうに考えております。
  54. 安恒良一

    安恒良一君 そこで運輸大臣、今度はあなたに聞くからあなた答弁してください。  いわゆる個人タクシーはほとんど非課税業者になると思うんですね。それから、この表を見ていただきますと、福岡市内のことを見ていただきましても収入ランクが非常にこういうふうに違うわけですね。ですから、ある人は非課税業者になるし、ある人は簡易課税業者になる。ある人は完全な課税業者にもなりますね。一律に三%かけて初乗り運賃なら初乗り運賃が一律に上がるんですね。私たちは払いますよ。今と同じ論理が出てくるんです。非課税業者はもらいっ放しです、それは。しかも、それは国庫に納めないんですよ。同一地域同一運賃というのは結構です。利用者の利便のためだというんですが、また三%分、個人タクシーや非課税業者に乗ったときには御本人たちの、タクシー業者の意思は無視して猫ばばの現象が起こるんですよ。その点運輸大臣、どうお考えですか。
  55. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 確かに、御指摘のように若干制度の精緻さを損なう要素はあるとは思いますが、それ以上に中小事業者の事務負担を極力配慮することが重要だという観点からこれが認められたと認識しております。
  56. 安恒良一

    安恒良一君 大臣、事業者の事務負担を簡素化することも重要ですが、タクシーに乗る多くのお客さんのことをあなた運輸大臣として考えないのですか。事務負担のことだけ考えればそれで運輸大臣が勤まるんですか。タクシーに乗るお客さんは三%猫ばばされる人もたくさん出てくるんですが、そっちに対する配慮をどうされるんです、大臣。
  57. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 確かに、御指摘の点はあると思いますけれども、また同一地域同一運賃という原則が崩れますと、これまたお客様にいろんな形で御迷惑をかけることになるということで、非常に難しい選択でございますけれども、先ほど申しましたような認識のもとにその決心はしたわけでございます。
  58. 安恒良一

    安恒良一君 今の答弁は全然納得できません。どうしてもあなたたちは、あなたも竹下総理が指名した運輸大臣だからやむを得ず、猫ばばの論理もやむを得ないと言わざるを得ないんでしょうが、私は納得できません。  それから、じゃ三%運賃を上げて転嫁できると、こう言っていますが、本当にできるかできないか少し論争してみましょう。  東京都内では売上高五億円以上の事業者が全体で九八%を占めていますね。福岡は政令都市ですが、福岡市内では五億円以上というのは、この表を見ていただくとわかるように一〇%しかいないんです。したがって、この運賃値上げの足並みがそろうというふうにお考えになるんでしょうか。  というのは、非常にこの点は違ってくる。この表を見ていただくと、同じこの五億円以下と五億円以上の簡易税率をとった場合の税金の金額と、それから簡易税率をとらない実質計算額ではこんなに金額が違うんですね。例えば一つのボーダーラインで見ますと、五億円台が十社あります。この金額でいきますと千二百六十一万九千円取られるわけです。ところが、四億円台は簡易税率ですからこれは二百六十六万一千円でいいんです。実際これは実質税率で計算すると一千万になるわけですね。これはどこかに線を引くからやむを得ないということのお答えが返ってくると思いますけれども、こういう現状の中である地域では消費税を速やかに転嫁できるということで運賃が上げられる。ところが、ある地域では、例えば一つ福岡の例を挙げましたが、こういうようなところはとても運賃が上げられない。しかし、企業課税はどうしても出さなきゃならぬ。こういうことになると、それはなけなしの財政の中から出すという現象が私はタクシー業界に起こってくるんじゃないだろうか。  なぜかというと、これは総理もよく聞いてほしいんですが、タクシーとかトラックとか、こういうところは人件費比率が高いんですよ。大体七、八〇%というのはざらにあるんですからね。そうするとあとの残り、仕入れというのは残りですから、そちらの税は前段階控除でできますけれども、人件費を含めた営業成績全体にこれはかかってくるわけですから、なかなかこういうところは運賃が上げられないという現象が出てくるんです。ですからそうなりますと、ある地域では運賃に三%乗せて運賃を上げた、ある地域では運賃が上げられない。なぜかというと、私が調べましたところでは、地方郡部のタクシー業者は前回運賃を上げた後の収入が落ち込んだまままだ回復していない。こういう業者は消費税で転嫁したいと考えても、転嫁すればお客が離れていきますからそのことでなかなか転嫁ができない、こういうことになるわけですが、こういう点について運輸大臣、これは私はタクシーはわかりやすいので例で挙げたんですが、トラック運送業なんかにもそのことが言えると思うんですね。  以上のことについて運輸大臣、どうしようとするんですか。どういうお考えをお持ちですか。
  59. 阿部雅昭

    政府委員(阿部雅昭君) お答えいたします。  運輸事業は、地域によっては確かに需要が伸び悩むといったような苦しい状況下に置かれているのが現状かと思いますが、三%ということで税率もある程度低い、また全般的な物価水準というものも一律に上がるというようなことで、かなりそういう意味では負担増ということについての消費者の逸走といいますか、そのようなことは少なく抑えられるんではないか、何とか三%上げることによってお客さんあるいは荷物などが急激に減るということはなしに推移できるのではないかというふうには考えております。
  60. 安恒良一

    安恒良一君 全く落第の答弁ですね。何とか上げてお客が減らぬでいくだろうと。現実の実態とは全然離れていますから、こんなことを議論したら時間がもったいない。今の答弁、運輸大臣、全く希望を言っただけ、現実はそんなことにはなりません。これだけ言っておきます。これは全く今の答弁は中身がありません。このことだけ指摘しておきます。  それから、前回の質問で運輸大臣は肝心なところを御答弁になりませんでした。いわゆる過疎地域におけるバスの問題ですが、これは年間百億強の補助金が国から出されています。地方自治体からも百億強が出ています。これは竹下総理も過疎地域御出身だから非常に御熱心に応援をされているようでありますが、二百億円の補助金をもらって過疎地域は国民の足を確保しているんですね。こういうバス会社は赤字なんです。ところがこういう過疎バスの運賃にも三%の消費税をかけられることになるんですが、そうでなくても赤字経営の会社はどうしてやっていったらいいんでしょうか。どのようなこれに対する補てん措置なりいろんなことをお考えでしょうか。これはひとつ運輸大臣と総理お二人からお聞きをしたい。
  61. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 新税制の結果、地方の交通に支障を来してはこれは大変なことになりますので、やはり補助金の上積みということを考えて今大蔵当局とも交渉中でございます。
  62. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私も、御指摘のとおり過疎地域の出身でございますが、今の段階におきまして、運輸大臣のお答えを申し上げたとおりでありますとお答えせざるを得ません。
  63. 安恒良一

    安恒良一君 次は転嫁カルテルの問題で、公取委員長お見えになっているからお聞きしたいんですが、今までの答弁は、独禁法の適用除外として転嫁と表示のカルテルを認めることにする、こういうことであったんです。ところがそのことが発表されてから独禁法学者からもいろんな批判が出ていますし、また同僚議員も若干聞いたんですが、私は最終的にこのところをちょっと聞いておきたいんです。転嫁カルテルというのは値上げ率のカルテルになるんじゃないかと。なぜかというと、実際は基本の価格を統一しなければカルテルに参加した企業が私は三%上乗せをすることはできないのじゃないかと思うんです。ですから結果的に言うと、結局は価格体系を決めることになるのではないだろうか、これが第一点です。  それから第二点目には、カルテルについては免税業者も、それから大企業も参加する。ですから、結局これは今言ったところも参加しないとカルテルはうまくできませんから、そうしますと便乗値上げ、商品、サービスの内容までお互いに調整して申し合わせをする、そういう可能性が私はあると思うんです。その場合、あなたたちはどう取り締まるんですか。その取り締まりの方法、手段についてお聞かせください。  以上、二点です。
  64. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 今おっしゃいました第一点については、先般の独禁法学者の御提言にも触れられている点でございます。今回の特別立法が予想をしております転嫁カルテルは、消費税相当分を価格に上乗せするということでございまして、もともとその本体の価格をそろえるということを前提にしていない。もしそういうことがありますと、今回の特別立法で認められる共同行為に当たりませんから、これは違法カルテルになるわけであります。  ところで、そういう上乗せ部分だけのカルテルが果たして機能するのか、そういうものを認めると根っこの価格をそろえるということに結局なってしまうというのが、今委員もおっしゃいましたし、独禁法学者も危惧するということで御指摘になっている点でございますけれども、これは今度の特別立法では、先ほど申しましたようにその点は明確にしておるわけでございます。  実際の現実を見ますると、過去公正取引委員会が各種の価格カルテルを摘発いたしておりますけれども、それを類型的に見ますと、今までばらばらで売っておった価格を統一的に定めるというカルテル、それから本来市況から見れば価格が下がっていくであろうところを、いわばカルテルで値下げをとめるという意味での維持カルテル、もう一つは、それぞれの事業者の本体価格はばらばらでございますけれども、例えば何%上げるという値上げカルテルという類型がございまして、類型的に見ますと、今度の転嫁カルテルというのは第三者の類型に非常に近い。現実的にそういう値上げカルテルというものが、これは違法事例でございますけれども、現実にカルテルとして機能しておりますので、こういうカルテルを認めると根っこの価格をそろえないとカルテルは機能しないという法律学者の御意見については私どもは見解を異にする、ここは厳正にやっていくということでございます。  そこで、大企業等も参加するカルテルになると、やはりこれは便乗カルテルになるんじゃないかということでございますけれども、これも毎度申し上げておりますように、今回の特別立法はそもそも中小企業の転嫁を容易にするということでございます。ところが、大企業と中小企業が混在しているような業種につきましては、中小企業だけの孤立カルテルにいたしますとこのカルテル自身が機能しない。つまり、中小企業の価格カルテルを円滑にするためのいわば、過去の立法例もございますけれども、そういった業種については、大企業が三分の一以下の場合にはカルテルを認める。委員が御懸念になっておりますし、私どもも法律が成立しました場合に最も運用に気をつけなければならないのはこの便乗値上げの問題でございます。  たまたまこういう立法が設けられることによりまして、私どもは野方図に行われるよりも、転嫁が円滑に行われると同時に、便乗値上げを我々が行われないようにするためのいわば手がかりをこの制度に求める、それが今回の特別立法に当たりまして我々公正取引委員会に課せられた重要な任務であると考えておるわけでございます。  したがいまして、予算事情等も非常に厳しいということは十分承知をいたしておりますが、その中で必要最小限度我々のこの期間における活動の手当てをいただきまして厳正に任務の遂行に当たってまいりたいと考えております。
  65. 安恒良一

    安恒良一君 公取委員長、簡単に答えてください。  私は、それじゃ総理にお聞きしたいんです。やっぱり帳簿方式だと。簡易課税制度がある上に売上高が三千万超えても、今度は限界控除制度というものもあるわけですからね、六千万以下の事業者に。ですから、これは流通関係の学者でも、あの人はあんなことを言っているけれども、転嫁されるべき税額を正確に追求するということは難しいと学者が言っているんですよ、あの人は簡単にできるようなことを言っていますがね。  そこで、できるできぬの話はやめましょう。一番消費者が知りたいのは、せめて自分が負担する税額がはっきりわかるということだと思うんです、この問題は。ですから、本体価格とは別に消費税が幾らであるかということを必ず明示する、このことについて総理、お約束してください。そうするとここのところは少しある程度緩和される。一番やっぱり知りたいのは、自分が消費するものの中で税額がはっきりしないほど今いろんな不安が出てくるんですから、私はこの点について、本体価格とは別に消費税が幾らであるかということを必ず表示する、そういうふうに統一したらどうかと思うんですが、総理、そこはどうですか。
  66. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、初めから具体的な問題については事務当局の助けをかりなければなりませんが、いわゆる外枠表示方式になじまない、単品ごとに考えてくると存在をいたすものがあるというのもやむを得ないことではなかろうかというふうに考えております。
  67. 安恒良一

    安恒良一君 私は、外枠とか内枠とありますけれども、国民消費税を納めるんですから、やはり国民が品物を買ったときにこれには幾ら税金がかかっているということがわかることは政治として決して悪いことじゃないと思うんです。また、消費税を本当にあなたが完全に実施しようと思うならば、そのことはそこまで業者に気を使う必要はないんですよ。業者だけの代表じゃないんですから、総理は。一億の総理でしょう、皆さん。そうすると、一億は納税者ですから、その人が納得する、これには価格は幾らだけれども税金が幾らになると教えることは決して悪いことじゃないでしょう、総理。それを外枠とか内枠とか難しいことを言ってね。  通産大臣、全体としてどうですか、そこのところは国民にわかりやすいようにする。商品の値段、これは値段ですよ、これは税金ですよと。通商産業省の大臣としてはそれぐらいのことはお考えでしょう、国民の立場で。どうですか。
  68. 田村元

    国務大臣(田村元君) それはわかりやすくするにこしたことはないわけです。今、外枠だ内枠だというのは厄介じゃないかというお話ですが、多くの業者が外枠、つまりタックスは幾らと、それを指向していることは事実でございます。ただ、中小小売商の中では意見が分かれておるようでございます。  そういうことでございますから、いずれにしてもタックスがどれだけということが消費者にわかりやすくなることはこれは当然のことでございますから、その方法論についてはまたいろいろとありましょうけれども。
  69. 安恒良一

    安恒良一君 私どもは消費税が決まることは反対ですが、万が一おやりになったときはぜひそこのところをいわゆる国民にわかるようにこれはしなきゃならぬということだけ申し上げておきます。  次に、長寿社会と国民負担論についてお聞きします。手元に厚生省から資料をつくっていただいて配付されています。これをもとに論争しますから、この数字を読み上げていただく必要はございません。  そこで、まずこの問題について、消費税の導入と高齢化社会に備える財源対策と国民負担論について、今まで本会議、ここにおいても同僚議員からしばしば厚生大臣大蔵大臣総理に質問がありました。今後の社会保障については保険料を基本としながら税による財源を適切に組み合わせていくべきものであり、どのように組み合わせるかは国民の選択である、こういう答弁をされています。また、厚生大臣は、社会保障制度の再構築をしていくわけだが、その未来像は国民の合意を待たなきゃならぬ、定量的に年次計画を示すのは困難だと、こう述べられている。しかし、いずれも大変不十分な中身であります。  そこで私は、年金、医療、福祉、高齢者雇用問題で社会保障費が増大をすることは事実でありますから、その増大の状況がこの表であるならこの表であるということで簡単に御説明をしてもらいたい。それと同時に、国民の負担のあり方が不明のままであります。組み合わせですね、例えば、いわゆる保険料か税か、さらに国民負担というのがこのほかにありますね、税外負担としての一部負担がありますから、この三つの組み合わせがあると思うのであります。ところが、最近政府は公費負担を私的負担に、特に中曽根内閣以来切りかえているのが顕著であります。  ですから、国民の負担論で租税、社会保障の負担、これは保険料を含みますが、費用徴収を合わせて大体百兆円に達する財源になるわけでありますから、応能負担の原則に立って、こういう点について考え方を聞かしてください、厚生大臣
  70. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) 今後の社会保障費用の財源についてというまず最初のお尋ねにつきましては、やはり基本的には、受益と負担の関係がより明確な保険料を基本としながら、税による財源を適切に組み合わせてまいるという考え方は従来御答弁申し上げたとおりでございまして、しからばその割合はどうかと、こういうことにつきましては、やはりそのときどきの国民の選択によるべきものではないかというふうに考えておる次第でございます。
  71. 安恒良一

    安恒良一君 この算出基礎は、私は私なりに、一ページ目は既に衆議院で出されたやつ、二ページ目が私がお願いをしたいわゆる厚生年金、以下科目別の七十年——八十五年、五年単位で負担の状況が保険と税でどうなるかということを、患者負担を含めて出してもらったんですね。  そこで、この表の説明を細かくする時間はないんですが、例えば一つの例を聞きましょう。厚生年金について、あなたたちは七十三年から三年に一歳ずつ延ばして、八十五年には六十五歳にしたいという政策的な方針を打ち出されていますが、そういうものの計算はどこにどうこれが入っているんでしょうか。  それからいま一つ、医療保険についても医療費のいわゆるむだ遣い、いろんな問題が何回も政策課題として提起されている。それから逆に、医療費を節約するためには予防に力を入れるべきである、ホームドクター制度を初めとするそういう政策的な提言がいろいろされていますが、そういう政策的な提言をこれは含んで計算をされているんでしょうか、されてないんでしょうか。されているならされている、されてないならされてないと、このことについて。それから、されてない場合には、なぜそういう政策を含んだことにしなかったのか、そのことについて聞かしてください。
  72. 末次彬

    政府委員(末次彬君) お配りいたしました資料でございますが、これは現行制度をもとにいたしまして現行の給付割合というもので計算をいたしておりまして、ただいま先生のお尋ねのございました政策的要素は織り込んでございません。これは何度も同じ答えで恐縮でございますが、こういう政策的要素を織り込むというのは、今の時点で非常に困難であるということでございます。
  73. 安恒良一

    安恒良一君 今度は総理大臣に聞きますが、これで国民に社会保障のビジョンを示したと、だから負担論として、消費税にひとつ高齢化社会で賛成してくれといって、賛成するでしょうか。  今言ったように、例えば厚生年金一つを見ても、今の制度でいけば八十五年はこうなると書いてある。ところが、一方において七十三年から三年に一歳ずつ受給年齢を延ばしていくと書いてあるんです。そして八十五年にはそれが完了すると書いてある。それは全然この試算の中に入ってないんですよ、試算の中に。こんなことを示して、国民にこういう状況になりますから消費税を払ってくださいと。だれが納得するんですか。この試算は私から言わせればお粗末限りなし。もう少しきちっとそういうものについて、例えばわかっている、私たち反対ですよ、年齢を六十五歳に下げることに反対ですよ。しかし、既にあなたたちはそういう方向を出しておって、それも含めた計算もできていない。もう以下においてをやです。  一つ一つ論駁するのに時間がもったいないから、これはいたしません。ぜひともこういうものについては、本当に国民の負担論として、私が言いましたように、いわゆる八十五年の高齢化社会に向けて税の負担がどうあるべきなのか、保険料負担がどうあるべきなのか、さらに一部負担という問題もありますが、それがどうあるべきか。それに加えて、単なる今の引き延ばしではなくして、政策を織り込んで、そして私は速やかに定量的な計算をされて、毎年毎年細かく出せと言っているわけじゃないんです。いわゆる五年ごとの数値をせめて出してもらいたい、こう言っているんですから、そういうものを提案されて税の審議に供される、これが政府としてお考えになるべきことだと思います。  労働大臣もお座りでありますが、労働省も、六十五歳になるのにどうすればいいかということの具体的な中身は一つもありません。ほとんどが企業努力にまつ、こういうことでありまして、この点はきょうは論争する時間がありませんので、また改めて時間をとって労働大臣ともゆっくり論争しますが、どうもビジョンというものに具体的な政策の裏づけなり具体的な財政の裏づけがないんですよ。そして、この税を審議してもらうためにやむを得ず慌てて出した、これがいわゆるこの問題であります。  そのことを私は指摘して、ぜひ総理から担当大臣に対して、やはり国民の理解を得られるような、今言ったようなことについて説明ができるような政策資料づくり、数字づくりをしていただきたいと思いますが、総理どうですか。
  74. 竹下登

    国務大臣竹下登君) このいわゆる社会保険負担、それから租税の部分がいかにあるべきか、もう答弁も、先ほどお読み上げになりました。今回出したものは確かにぎりぎりのものを出したわけでありますが、現行の制度、施策を前提にしてという数字で見ますと、それ以上のものを出すのはなかなか難しい問題でございます。  だから、この福祉ビジョンというものをより濃密なものにするためには、今のように国民皆さん方にもわかりやすい議論等を闘わすことによって、これは政府、国会一体となりながら構築していくというのが、いわゆる国民の選択という意味の中にも入っておるというふうに私は理解をいたしております。
  75. 安恒良一

    安恒良一君 残り時間が少なくなりましたから、私は不透明な消費税の問題点ということを最後に少し総理と……。  まず、これは私のきょうの質問でもあったんですが、どうも総理は、消費税が、余りにも税を負担する消費者の立場を無視されているように私には思えてなりません。  そこで、この前お金の性格について総理議論しましたね。私が公金だろうと述べたら、総理は預かり金だと、こう言われました。そこで、私は百歩譲って預かり金だとしましても、納税者である消費者国庫へ納入する税金として預けたわけですから、国庫に納入してくださいというふうに預けたわけですから、何でもかんでも使っていいと、株を買おうと、預金をして利子を稼いでもいい、そんな意味の預かり金だと、こう総理はこの前答弁をされました。しかし、私は一般消費者、納税者の気持ちを理解すると、あなたの答弁との間にはかなりやっぱりギャップがあるように思えてなりません。  そこで私は、再度お聞きしたいんですが、公金に準ずるとか公金に限りなく近い預かり金だと、こんな気持ちを総理お持ちになりませんか。
  76. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 正確な答弁に必ずしもなろうかと思いませんが、今おっしゃいますとおり、私は一億総消費者であるという考え方を持てと言われたのは、たしか経済企画庁に国民生活局ができて、初代が本院議員の中西さんのときだったと思いますが、これは佐藤さんに言われた言葉であります。今で言えば一億二千万、最終的にはすべて消費者であると。この考え方は、私も日米会談のときにもつい使ってしまった言葉の一つでありますから、そのことは私も心しておるわけであります。  さて、具体的な預かり金の問題あるいは運用の問題と、こういうことになるわけですが、公金といえば国庫へ入ったものが公金であろうというふうに私は思っております。が、限りなく近いと、学問的な定義で申し上げるわけではございませんが、その考え方は私にも理解できます。
  77. 安恒良一

    安恒良一君 今私が重ねて念を押しましたから、前回よりも若干ニュアンスを変えられたお答えが出てきたと思いますが、結局私はここに問題があるだろうと思う。  というのは、預かり金だからこれがある程度置かれてもと、こう言われるんですが、しかし、前回も議論をして資料を出しましたように、ほとんどが徴収された翌月に国庫に納められているんですよ。それからまた、主税局長たばこのときにそんなことがあったと言うけれども、たばこのときの例を言うと私からまた怒られる。たばことこの税を一緒にするような主税局長じゃ、これまたお粗末限りがないわけですからね。たばこというのはごく一部のことですから、これはもうお粗末限りがないんです。  そこで、物品税やそれから今の源泉徴収というのは、納税者に不信感を持たせないためにほとんどが翌月とかなっているわけです。ところが今回の税は、個人事業者は年に一回なんですよ、法人事業者は年に二回。こういう預かり金を国庫に納入する制度を今あなたはつくろうとされておるわけですが、それは何かと聞けば業者の納税事務負担軽減のためだと、こういうことなんですね。ところが、今さっきからずっと議論してきておりますように、中には預けた金の行方がわからない金さえ出てくる不透明な問題があることを私は何回も議論したわけです。  ですから、本当にあなたが信頼される税制度をつくっていこうというなら、結局、業者の手元に税金という性格を持った預かり金を長期間置いておくということについて、これが妥当であるかどうかということをやっぱりお考えにならなきゃならぬと思うんです。すなわち、一日も早く消費者から預かった税金国庫に入るというような法律の仕組み、そういうことをお考えになる必要があるんじゃないでしょうか。この点、総理どうですか。
  78. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今の議論でございますが、例えば国有鉄道であった時代、電電公社であった時代、このいわゆる日銭というものが国庫へ入るまでの間のいわば運用期間というのを私どもも相談して決めたことがございますから、一挙に国庫へ入るというのは、これはきょう支払ったものがきょう入るという仕組みはなかなか困難でございます。  それで、今度は財政的立場からいいますと、可能な限り早く入れば、いわゆるつなぎの大蔵証券を発行する限度が縮まってまいりますから、それは好ましいことであろうと。したがって、現実のいわゆる納入期とそして大蔵証券というのが存在しているのも、大体そういうところから存在しておるのじゃないかなというふうに思います。
  79. 安恒良一

    安恒良一君 どうも総理答弁消費者大衆の側にお立ちになってないで、皆さん国民から批判されることを少し恐れられて、ややすり抜け答弁を今されたと思うんですね。私は何も、きょう払ったものをきょうと言っているわけじゃないんですよ。ほかの税制は大体一カ月か二カ月後には全部入っているじゃないかと。国有鉄道というのは、やっぱり国家がやっているから国有鉄道で、電電公社も国がやっておったから電電公社なんですよね。だから、それはちゃんと料金をあれしているわけですから、もう全く私が聞いたこととは違うわけです。今回の場合は、私企業を含めて、預かり金が一年とか半年あるということを今問題にしているわけですからね。  この前私が計算させて、譲渡預金、CDで九カ月運用した場合相当な金になるということで、そうしたら主税局長反論しましたから、じゃ、あなた流でやってみなさいということで、これをつくってもらったのがあるんですが、例えば東京電力なら東京電力では、やはりいわゆる全額運用の場合には四億とかそういう金が、何千万、億というのが出てくるんですよ。これは全部よう作業しませんと言うから、大成建設と東芝とトヨタと三菱商事、東京電力がこの預かり金を三カ月のCDで定期でやった場合、それから九十日の譲渡預金でやった場合にどれだけの金額が出るかというのがここに一覧表がございます。総理の手元にも行っていると思いますが、これだけの大きな金になる。  そうしますと、どうもこの金の運用益というものは、何となく私から言うと、事務手続に金がかかるからということから、形を変えた補助金じゃないかという感じがするんですよ。形を変えた補助金ですね。しかし、形を変えた補助金というのは、国会のコントロールなくして補助金が出たらたまりませんからね、これは。しかもこれは将来の展望、経済の発展、生活水準の上昇に伴って消費税がふえると同時に、どんどん形を変えた補助金がふえていくわけです。これではこの税制に対する消費者の不信は大きくなりますし、税制の不透明さを如実に物語っており、最大の欠陥、欠点だとこの点は考えます。  ですから、どうも総理のお考え方は、消費税の導入ありき、これが前に出て、国会で我々が、野党がいろんな欠陥を指摘します。ところが、それは法案を成立させた後、十分検討したいとか十分実施したい。こういう態度は私は議会制民主主義に反すると思うんですが、この点はどうですか。少なくとも、指摘されたことはその法案審議する中で直していくということが必要じゃないですか。その点、簡単にお答えください。
  80. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 国権の最高機関たる国会論議の中で指摘されたものは、可能な限りその場で考え方を申し述べるべきものであるという原則は、私も理解できるところであります。
  81. 安恒良一

    安恒良一君 これも論争する時間がありませんからやめますが、考え方を述べるだけではだめなんですよ。述べると同時に、野党の指摘が合理性があれば、それを取り入れて修正していくというのが議会制民主主義ではないでしょうかと言っている。  そこで、私はもう時間がありません。結論を申し上げますが、前回も申し上げましたように、私はやはり今消費税をやるべきではない。消費税をやるならば、課税ベースの拡大を中心とする不公平の是正をやるべきである。ですから、我が国において今、一般消費税を取り入れるということは、そういう必要は全然ない、これが私どもの主張であります。  そこで私は、この前も申し上げましたが、まず、将来こういうものを取り入れていくと、合理性を求めるという立場から考えましても、一つはいわゆるインボイス、帳簿方式が採用されるべきである。それから第二番目には、消費者に対する税額が明示される必要がある。第三番目は、典型的なぜいたく品にはやはり累進課税税率を採用すべきである。第四点は、課税最低限以下の者に対する還付制度を設ける必要がある。こういうふうに私は考えるわけでありまして、しかもいわゆるこういう税制というのは、公平で最低生活費非課税の原則、こういうことが確保されなきゃなりません。こういうような観点から考えますと、この法案は欠陥だらけであります。  そこで、この法案を撤回されて、少し論議を深めて、今申し上げたような点について内容を深められることを強く私は申し上げて、総理のお考えを聞いて、終わりにいたします。
  82. 竹下登

    国務大臣竹下登君) インボイス方式を初めといたしましての御議論でございます。それぞれの論点は私にも十分理解できる問題でございます。したがって、衆議院において見直し規定等がいろいろ修正の中で入れられたのもそのような考え方があってのことだと思います。可能な限り、これが国民の理解の行き届く形で執行に移さしていただくことを心からお願いを申し上げて、私のお答えを終わります。
  83. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分に委員会を再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時三十一分休憩      ─────・─────    午後一時三十分開会
  84. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 税制問題等に関する調査特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、各案について質疑を行います。志苫裕君。
  85. 志苫裕

    志苫裕君 総理に最初にちょっと所見を伺っておきますが、総理、しばしば本席でもお述べになっておられるように、今日は税制問題を論議するには大変いい環境だ、ひとつ真剣に御論議を賜りたい。それにこたえて我々ももちろん精いっぱいやっているのでありますが、それにしては何となく外野がうるさいんじゃないですか。どうも気になる外野の動きを少しただしますが、魔が差したような九日のこの委員会の運営、あれは委員長もどうも良識ある参議院に汚点を残したと思うが、それを除きますと大体一生懸命やっているんですよ。ようやく法案の問題点も出そろってきたし、これをさらに深めていけば、幸いまだ会期もあることだし、第二院だし、法案の処理も可能だとこう確信をしておるんですが、何となくこの外野の動きが慌ただしい。  報道によると、きょうにでも何か乱暴な法案の採決でも行われるかのような雰囲気で、一体どこのどいつがそんなとんちんかんな画策をしておるのかなと私も不思議なんですが、理事会はあすからのより充実した審議を尽くす日程の協議も協議中であります。ですから、あえてマスコミの観測記事などは気にいたしませんが、ひょっとするとだれかやっているのかなという感じがないわけじゃないんで、まさか総理、政府の与党の中にそういうたわけたような動きでもあるのか、まさか御本人、指図などしているんじゃないでしょうね。いかがでございますか。
  86. 竹下登

    国務大臣竹下登君) それこそ国会の運営は国会独自でお決めになることでありまして、国会で指名された内閣総理大臣が指図するなど思った途端にその総理大臣は失格と、このように思っております。
  87. 志苫裕

    志苫裕君 大変立派な答弁で安心しました。  そこで、いい雰囲気で議論をさせてもらおうと思うんですが、実は六法案審議が始まりました十二日に、私は、政府税制改革の考え方を中心に、理念とか手法とかそういう問題で総理の見解をただしましたし、私の主張も述べました。決められた時間で次の質問のことも気にしながらこの席でやりとりするというのは、案外大事なことを聞き漏らしたり、言い忘れたりするものなんでして、そこで、とっておいてもらったテープなどを再生して総理答弁も少し客観的に整理をしてみました。  私なりに総理答弁をまとめてみると、一つは、まずこういうことをおっしゃっていますね。こんなに洗練された言葉で言うているんじゃないですけれども、重税感あるいは不公平感は所得税に偏り過ぎた税制からきているという認識をもとにして、消費一般を課税対象にした、すなわち消費税を組み合わせた税体系をつくることでこれを解消したい。まず、こうおっしゃっているようですね。  第二点、国民の所得水準が平準化をしてきたという認識をもとに、税の所得再配分機能よりも水平的公平の方を重視したいというふうに第二点でおっしゃっているようですね。  第三点、現行の各税目にゆがみ、ひずみ、いわゆる不公平というようなものがあることは否定をしないけれども、それはそれで是正の努力をしていけばいいことで、手順としては、消費税を組み合わせた税体系をつくることを優先したい、幸い税制論議をするにはいい環境だと。  以上三点、私なりにまとめてみましたが、そんなところで、あなたの主張はそれでいいですか。
  88. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私の答えよりもはるかに精緻に分析していただいたことでありまして、そのとおりであります。
  89. 志苫裕

    志苫裕君 事務当局、大体私が述べたまとめ方でいいですか。
  90. 水野勝

    政府委員水野勝君) ただいま仰せになりました三点、総理からも申し述べられましたように、おおむねそのとおりではないかと思うわけでございます。
  91. 志苫裕

    志苫裕君 これと対比させながら、改めて、私というよりは国民の多く、あるいはまた税財政学者の多数派も含めて、こういう主張をしているということを申し上げます。  重税感あるいは不公平感は現行税制そのもののゆがみ、ひずみ、言いかえれば各税目の構造上の問題なのであって、税体系によるものではないということを第一点には言っておるわけです。したがって、直接税改革を真正面から取り上げて解決を図るのが本筋だろう、こう言っているわけです。  二点目に、租税理念としての公平は応能原則が基本であって、税制の所得再分配機能を軽視することは、日本の活力の源泉である平等化社会の将来を危なくするんじゃないかと、二点目にそう主張しているわけです。  三点目は、政府が重視をしている水平的公平は、突き詰めて言えば課税ベースだとか所得の捕捉などの問題であって、消費税を導入した税体系によってそれを和らげるという、からめ手からの手法をとると不公平は永久に残ってしまう、したがって、手順としては所得税、直接税改革、すなわち不公平税制の是正が先ではないか、二十一世紀論なら幸い時間があると、こう言っているわけですね。  あえてつけ加えれば、先ほど我が同僚安恒委員もやりましたが、消費税法案そのものが大変ふできで、不公平で、非常に問題が多いし、特に最低生活費非課税とする憲法の要請にも相入れないところもあるからということを言うているわけなんです。  しかし、これは違いは違いとして、私は決して税制の哲学の違いによる意見の対立というようなものがないわけじゃないと思います。しかし、哲学だけで現実の税制が決まるなんということはないわけでありますから、すぐれて現実的なものですから国民の選択によって結論を求めなきゃならないのですが、この際、若干補足する意味で、基本になっておる問題について、総理の言い分だけでいいのか、我々の言い分というものはそれなりに理屈があるなと思いながらもまるっきり考慮する必要がないのか、そこのところを少しただします。  所得再分配機能を私は非常に重視するんですが、しかし総理の言い分は、それは財政の方で、支出の方で、言うなら中和をすればいいじゃないかと。中和というのは、あなたは化学の先生でもなかったそうだが、英語に中和というのがあるかどうか。中和というのはpH七がちょうど整ったところなんですが、これはまあいいですが、私だってちょっと化学をやっているんです。  そこで、これは租税当局でいいでずよ。今、この所得再分配の役割は税制が何割、財政が何割受け持っていますか。
  92. 水野勝

    政府委員水野勝君) 財政の再分配機能は、仰せのとおり、歳出面とそれから税制面両方あり得るわけでございます。ただ、それぞれがどの程度を持って行うべきか、その度合いは、やはりそのときそのときの社会経済情勢を踏まえて、国民のいわば御選択の結果として判断されるべき問題であろうかと思うわけでございます。ただ、現時点でどちらが何割、どちらが何割という定量的なものは、ただいま一義的、定量的にお示しすることはちょっと困難でございます。
  93. 志苫裕

    志苫裕君 租税当局あるいは財政当局も含めてですが、税財政に課されている役割が幾つかありますけれども、国民所得の再分配というものに相当大きいウエートをかけられているわけです。そのほか資源配分であるとか、あるいはまた景気調整とかそれぞれありますけれども、しかし所得再分配の役割が大きい。私に言わせれば、それが所得の平準化という一種の虚構の上に軽視されてよろしいという認識でさまざまな税体系を確立しようと。それはおかしいじゃないかと言われれば、財政の方で、歳出の方で分配の役割を果たしますと言うからには、それぐらいの何かメルクマールを持つか計測をしていなきゃだめですよ。これは財政当局の方もそのような目のつけどころで財政をひもといたことはないですか。
  94. 末次彬

    政府委員(末次彬君) ただいまの御質問に的確にお答えしたことになるかどうかちょっとわかりませんが、所得再分配調査をやっておりまして、これは当初所得に対しまして再分配所得がどの程度効果があったかということを計測いたしております。  これはジニ係数であらわしておりまして、そのジニ係数の改善度というところを見ますと、五十九年でまいりますと、当初所得に対して再分配所得の改善度が一三・八%という数字になっておりまして、その内訳といたしまして、税による再分配所得の効果が三・八、そのほか社会保障、これは保険料を引きまして社会保障給付金と医療費を足したものでございますが、これの効果が九・八%、こういうふうになっております。これがおおむねの目安ではないかというふうに考えております。
  95. 志苫裕

    志苫裕君 それは平準化論議で、せっかくきょうは総務庁が経企庁もおいでになっていますからちょっとそのことはやりますが、厚生省、せっかくあなたお答えになったけれども筋違いなんで、結果としての再分配の状況をお話しになったというふうには思いますが、それは一体税が機能しているのか財が機能しているのかと聞いているんですよ。  今度の税制改革は、所得再分配の観点から見ると、税制の分配機能を和らげて財政に期待しようという転換なんですよ。それは、うるさいから一時金を出しておこうなんというレベルの話じゃないんでして、やっぱりしっかりしたものを持っていないでこのことを抽象的に論じて、気がついたら物すごく不平等な社会になっておったということを僕らは恐れるわけで、税の役割を減じるんなら財の役割をふやす、それはどのようなメルクマールを持ってやるんだということを聞いたので、厚生省のお答えは答弁になりません、そんなものは。これはちょっと答えられる人もないようだな。  総理、後ほど平準化問題をやりますが、やっぱり少しこういう観点での調査のようなものは大事だと思うんですよ、我が国の将来社会を展望しますとね。これはひとつ総理も念頭に置いてくださいね、そういう調査をやっていこうということはね。  そこで、平準化にいきますが、平準化という認識があるから税体系全体を通してのフラットというのが出てくるんでして、これが依然として二層分化しているということになりますと、こういう税体系は出てこないわけですから。そこで、我が国の所得分配を正確に表示し得るような統計は存在しないんじゃないかなと。今ちょっと厚生省からお答えがあったけれども、経企庁でも例えば国民生活白書だとか、あるいは家計調査とかいろんなものをいただいておりますが、どこかに少しずつほかの資料を適当に持ってきて埋め合わせないと全体の正確な表示にならないという、そういうものばかりじゃないかというふうに思うんですが、まず総務庁の方から、この家計調査というのは国民の所得再分配の姿をあらわしていますか。
  96. 田中宏樹

    政府委員(田中宏樹君) これまた直接のお答えになるかどうかわかりませんけれども、申し上げますと、家計調査の対象世帯でございますが、単身世帯と農林漁家世帯を除く二人以上の普通世帯でございまして、勤労者世帯、個人経営者世帯、法人経営者世帯、自由業者世帯、無職世帯等が対象になっておりまして、数で申し上げますと、全消費者世帯に占めます家計調査の対象世帯のシェアでございますが、世帯で七二%、人口では八四%でございまして、対象外といたしました単身世帯のシェアは、世帯では二一%、人口では八%、農林漁家世帯では、世帯としては七%、人口としては八%というぐあいで、ほぼ全体の姿をあらわしているというふうに考えております。
  97. 志苫裕

    志苫裕君 じゃ、ちょっとそれについて聞きましょう。  資産所得の捕捉を見ますと、例えば国民経済計算から見ますと物すごく乖離がありますね。資産所得の捕捉は皆さん正確に言って大体何割ぐらい資産所得の捕捉ができていると思いますか。念のため申し上げますと、これはほとんど第五分位層、あるいは十分位にしますと十分位に集中するんです。金持ちのところなんです。そこの資産所得の捕捉率は私に言わせれば一割程度だろうと思いますが、どうですか。国民経済計算等からすればそうなっておる。いかがですか。
  98. 水野勝

    政府委員水野勝君) 御指摘の数字にあらわれる率として、そうした家計調査とかそういうところにあらわれる率のお話か、課税上あらわれてくる率かということでございますが、私どもで申し上げますと、資産所得としての課税上の問題だとすれば、従来はやはり相当資産所得というのは課税上は逃れておったところでございまして、十四、五兆円の利子所得は逃れておりました。これは去年御提案をして改正していただきました。ことし御提案しているのはキャピタルゲインでございます。一応御指摘いろいろございますけれども、原則課税を御提案しております。  それから土地の譲渡所得、これは一応捕捉としては、実物があるわけでございますから、逃れておることはないのでございますけれども、控除等によりまして、これは相当やっぱり課税ベースとしてはかなり落ちている部分はございます。
  99. 志苫裕

    志苫裕君 国税当局だけではなかなか所得再分配はわかりにくいんですが、今あなたのおっしゃったのも全体としてはということなんでしょうね。それが家計調査に出てまいりますと、資産所得の申告率が大変低いんです。それから、第一分位にあるところの社会保障移転所得の申告率も大変低いんですね。そうなりますと、家計調査が持つ所得再分配を見る一番の欠点は、一番上のところに肝心の資産所得が入ってこない、一番下のいわゆる社会保障給付等で暮らしている人たちが入ってこない。すると、貧乏人と金持ちが除かれて真ん中だけが統計に入ってくるという欠陥があるんです。体操の得点を見ていますと九・八、九・八、九・七といって、一番低いのと上のをはねちゃうじゃないの。一番高いのと低いのをはねて資産所得階層別分布が出てくる。  こうなりますと、真ん中の似たのを集めて、ジニ係数が改善されたとか、上下が縮まったとかということを思い込んでいくと、所得の平準化というものに大変な誤認を起こす。ちょうど経済企画庁おられますが、経済企画庁は最近出しました両白書の中でも、特に最近における株、土地等の高騰によるその分化、この格差の拡大、不平等化というものを懸念をして、税制についても一言ですが、それに対応できる税制をと言っていなさる。ちょっと長官、何か所見がありましたら聞かしてください、所得再分配について。
  100. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 既に先生、国民生活白書その他御案内のとおりでございまして、私どもの国民経済計算によりますと、昭和六十二年度末といいますか、株式などを含む金融資産の総額というものは大変な額になっております。二千八百二十九兆円という額でございます。土地等の再生産不可能有形資産といいますか、それは一千六百八十六兆円になってきておりまして、最近の統計でいいますと、六十一年、六十二年では大きな増加を示しておるなと、このように認識をしておる次第でございます。  六十三年に入ってからというものは、地価についての都道府県の地価調査などによりますと、六十二年までと比較しますと鎮静化傾向には必ずなっておると私どもは確信を持って見ておるわけでございまして、株価についてはこれまた時価総額の上昇率は落ちついてきておるのではないかと、このように認識をしておるというのが私どものとらえ方でございます。
  101. 志苫裕

    志苫裕君 だから、そういう状況であるから、経企庁長官、厚生大臣両方にお伺いしますが、今度の税制改革は、私が言いましたように、一言で言うと所得水準が上がって平準化をしてきた、そこで税に期待をする所得再分配効果というふうなものは従来よりも弱めていいんじゃないか、むしろ歳出の方で必要があればやればいいじゃないかと、こういうのが税制のこの考え方になっておる。私はそれに対して、果たして所得平準化というもので左うちわのように喜んでおっていいのかと。むしろ最近における動向は所得の平準化じゃなくて格差、不平等化というふうに動向があらわれているんじゃないかという指摘をしているんですね。一方、国民生活の方から見ておられる厚生省、それからさまざまな統計を扱っている経企庁、両大臣それぞれ皆さんの認識はどうか。
  102. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) 所得の平準化の問題でございますが、昭和二十年代また三十年代に比べますとこの所得の平準化という問題は進んできておるように思いますが、昭和五十年以降でございますが、最近はほぼ横ばいで推移をしておると存じております。御指摘のように、社会保障制度というのは所得の再配分効果を持っておるわけでございまして、今後も年金、医療保険を初め社会福祉、社会保障制度につきましては、高齢化社会においても揺るぎのない制度をつくり、有効に機能していくために全力を尽くしていかなきゃならない、そのように考えておる次第でございます。
  103. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 多少、委員に詳細にお答えしなければならないかとも思いますが、なかんずく……
  104. 志苫裕

    志苫裕君 簡単でいいです。
  105. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) そうですか。  大体、私どもといたしましては、国民生活の選好度調査というものによりますると、所得階層間での生活全般の格差が確かに先生御指摘のように拡大してきておるということだけは否めない事実でございますが、これは近年の地価高騰というものの問題が多くの格差化に影響を与えておる。そういう意味においては所得、資産、消費のバランスというものを考えなければならぬ。これはもう総理がずっと答弁を続けておる問題点でございます。
  106. 志苫裕

    志苫裕君 バランスをとらぬといかぬといって、後ろの方は別に総理に合わせなくてもいい。  じゃ、ちょっと局長、いいですか。これは国民生活白書二百五十六ページです。「第五は、社会全体としての公平・公正の確保である。個人の選択、努力等の枠を超えた外部的な要因で生じるような格差は、国民の不公平感につながるため、前述の物価の安定の維持・適正化や土地対策とともに、公平で均衡のとれた税体系の構築、社会保障の安定機能の維持」云々とあり、「政策対応が必要である」。  あなた、ここで言っておる「公平で均衡のとれた税体系」というのは、これはどういうことを言っているのか。
  107. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) ただいまの御質問は、選好度調査の結果を整理したものでございまして、選好度調査で聞いている聞き方は、生活全般の格差の是正のために望まれる政策として何をあなたは望まれますかと聞いた中に税制改革というのがございまして、それ以上詳しい質問肢になっておりません。ですから、これは税の専門の調査ではないものですから、そこは当然のことながら公正、公平な税制改革を望んでいるというところにたくさんマルがついた、そういうことでございます。
  108. 志苫裕

    志苫裕君 まあいい、あなたのところは税制の専門じゃないから。わかりました。  いずれにしても、厚生大臣答弁も不十分だな。あなたのところの所得再分配調査結果概要、厚生省政策課調査室が出していますが、これは五十九年で切れているわけです。それは、私らも長い目で見て、戦後のあの時期からずっと経済成長の時期を経まして五十年代に入るまで一本調子で改善されているんです。そこから待てよという数字になっているんですね。そして、最近における金余り等を背景にしたいたずらで随分資産による差がついてしまうという状況になっておるときだから、そういう傾向にブレーキを踏むべきなのに、アクセルを踏むような税制改革でいいのかなということを総理とこの間も議論しておったわけです。  ともあれ、余り各省庁の認識も統一されていませんが、総理、残念ながら我が国においては所得再分配を一つの指標であらわすような統計がないんです。それでいて、これはどこかがところどころちょっとずつ皆やっているんですが、それを全部トータルとして表現するようなせっかく家計調査が一番まとまっているんですが、いわば移転所得と資産所得の分で物すごく捕捉率が悪い、申告率が悪いとなりますと、金持ちと貧乏人が除かれた統計、これでジニ係数がよくなったとか、上下が縮まったと言ってもそれは説明にもならぬという懸念を今回の税制論議を通じて私もつくづく感じました。  総理、あなたの方は何か税率を寝かせて歳出でやると言うんだけれども、歳出は当てにならぬですよ。今はちょっと金があるから出すが、金がなければ切っちゃう。今までみんなそうしてきたじゃないですか。金がないといって地方自治体の金を切る、その辺の保険から金を借りてくるというような形で切っちゃっているんだから、その統計だけはきっちりしておかぬと我が国の公平社会の将来を危なくしますからね。これはどうですか。そういうことをひとつよく中で相談して指図してください。
  109. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは統計というものが、いわば定量的なものを示すということについて、問題のとらえ方からして難しい問題がたくさんあります。しかし今、志苫委員がおっしゃるのは、もういろんな難しい点はわかるが、所得再分配機能について最も成熟した統計のあり方を勉強してみろ、こうおっしゃれば勉強いたします、こうお答えすべきだと今議論を聞きながら私も感じたところであります。
  110. 志苫裕

    志苫裕君 言われぬでもやらなきゃだめです。  次に、減税問題に入ります。  十二日の質問で、なぜネットの減税かということで、ちょっと長い視野で見ると、減税なんて言っている状況じゃないんじゃないかなと。膨大な長期債務はあるし、税の伸びは恐らくこれからは寝ていくんだろうから伸びも悪いだろうし、お年寄りがふえてくれば銭はかかってくるんだしというようなことを考えると、何か威張って減税というふうなことでもないがなと。減税は減税で別の財源があるのに、ましてや法人税なんかは、高くもない税率を下げるために、減税財源がないといってお年寄りや生活保護者から巻き上げた消費税を一兆二千億円も法人の方に回してやる、個人から法人に所得を移転するというのもいかがなものかという指摘をこの間しました。ですから、さしずめ今度の減税というのは消費税の導入を和らげるための見せ金じゃないか、渡辺政調会長の言葉をかりれば毛針じゃないかということをこの間言ったんです。  そこで、減税先行とまず言いますね。私はこれから少しデータでやりますが、総理、減税先行というのはどういう意味ですか。
  111. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この減税先行というのは、今回の税法の構築の中では、施行日がまず減税が早くなっておる、これが減税先行という一つの見方だと思います。
  112. 志苫裕

    志苫裕君 いや、何か減税を強調するからね、先行というのは、だれかが後から来るという意味なんで、減税が先に行って増税が後から来るでしょう、これを減税先行と言うんです。私は競馬のことはよく知らぬけれども、先行するとすぐ第一コーナーあたりで追い抜かれるじゃないの、増税に。(「逃げ切りというのがある」と呼ぶ者あり)いや、逃げ切りなんてないです、増税が本命なんですから。先行馬は穴馬にもなっていないんですから。そういう意味でまさに減税先行だ。第一コーナーあたりで増税が来る。実は減税でないということを私は申し上げておる。  資料を配ってください。    〔資料配付〕  主税局長、今度の減税をもう少し専門的にやってみましょう。三兆一千億円は大まかに分けると税率と諸控除に配分されているんです。税率と諸控除はほぼとんとんぐらいですか。
  113. 水野勝

    政府委員水野勝君) 政府で御提案申し上げておりますのは、三兆一千億の減税、これを今の御指摘のような分け方で見ますと、税率一兆七千億円、諸控除一兆四千億円でございます。先般、衆議院修正でいただきました退職所得控除、これはある意味では控除額の引き上げでございますから、この二千億はどちらに行くかといえば、諸控除の方に入ろうかと思うわけでございます。
  114. 志苫裕

    志苫裕君 そうすると三兆一千億円は、税率がほぼ半分以上、五割五、六分になりますね。あとの諸控除が残りの四五%ぐらい。そのうち、配偶者特別控除という特別のやつが入ってきたので、これが恐らく一九%ぐらいかなというふうに言われておるんです。  そこで、総理、よく聞いてくださいよ。実は今度の減税は本格的な減税だと言うわけですね、五十二年以来。まず減税の規模から見まして、本格的と言うんですが、国税で見ると、所得減税の規模は二兆二千五百五十億円ですね。前の数字でいきます。六十三年の予算規模からいきますと、これは四%に当たります。しかし今度のこの税率、諸控除の改正問題は六十二年とセットですから、これは一緒にしてみましょう。そうしますと今回が二兆二千五百五十億円、六十二年改正が一兆五千四百億円、合わせますと三兆七千九百五十億円の減税なんです。だけれども、予算の大きさから見ますとこれで六・七%、減税が。ところが、あなたは大型大型と言いますが、そんな大型じゃないですよ。例えば昭和三十二年は一〇・六%です。昭和四十九年は一〇・一%です。まず規模はそんなに大きいものではない。幾つか言います。  二つ目、諸控除。四五%の諸控除の引き上げ、これが減税だという。五十二年から六十二年までの物価上昇率は約五〇%です。五十二年の人的三控除は二十九万円ですね、それぞれ。——そこでうなずいてもらえばいいです。物価上昇を考慮に入れますと、現在の人的控除はそれの一・五倍、四十三万五千円に相当いたします。改革案は三十五万円でありますから、標準家計四人ですから合計三十四万円の物価調整がなされていなければならない計算なのに、改革案は三十五万円の配特を加えても一世帯で一万円の減税しかないです。標準家計というのは一方が休んでいる場合ですから、片方が稼ぎますと減税になりません。したがって、諸控除は減税でないんです。五十二年の物価調整をすると、とんとんなんです。三十五万円の配偶者特別控除という普遍的でない税制を取り込んだので、それに該当する者だけが諸控除一万円の減税、こういう実態になっているんです。  次に、五割六分を占める税率、お手元に上げました。これごらんください。下の欄です。五十二年の課税所得と一・五倍で物価調整をした税率をそこに書きました。そして、今度の改革案の税率をそこに当てはめました。物価調整という一・五倍の税率のところに、例えば一六%、二百七十万から三百六十万、三百六十万のところに私が線を引いてあります。以下、線をところどころに引いてあります。この線を引いてあるところは従来よりも税率の上がるところなんです。  中堅所得層という、皆さんの言う所得六百万円前後、あるいは課税所得で六百万から一千万、これはちょっと高過ぎるかな、六百万からその上のあたりを見てごらんなさい。ほとんど五十二年と比べれば税率による減税はないんです。総理、これが何で減税ですか。諸控除減税なし、逆に税率は高くなる。そして税率の下がるところは上下です。所得三百万円以下と所得二千万円以上、ここのところが、特に所得二千万円以上のところを見てごらんなさい、七五から五〇まで下がる。総理、中堅サラリーマンのライフステージにおける税痛感、累増感を取り除くために税率のフラット化、ブラケットを広くするというのがうたい文句じゃないの。そうなっておらぬじゃない、どういうわけ、これ。答えてください。
  115. 水野勝

    政府委員水野勝君) ある意味では御指摘の点もあるわけでございます。まさに昭和五十年までは財政も特例公債を発行しないということのもとでまず予算編成税制改正に当たりましては、自然増収があればその自然増収の相当部分を減税に充てるということでやってまいりましたが、五十年の特例公債発行後はそういう状態、環境ではなくなったわけでございますので、五十一年以降はほとんど本格的な減税は行われてこなかったわけでございます。  一方、御指摘のように、所得水準が上がり物価も上がる、そういう現象は十数年ある。それが本格的な減税を十数年行ってこなかったということから負担が勤労者の稼得所得に偏る、そういうことから今回、所得税減税一つの大きな柱とする税制改革を御提案申し上げているところでございます。  その際、御指摘のように、例えば控除でございますと、物価水準とそのとおりに調整をいたしますと、必ずしもそこまで達しているということはやや足りない面はあることはございます。しかし、まさにこの十数年間、その間、福祉を中心とする歳出の方も、やはり経済成長あるいは物価上昇、そういったものに合わせて歳出もふえるわけでございますので、その程度にふえる所得税負担、これはすべて調整しない、それ以上でないと減税ではないというふうに御定義をされれば、それは減税が不足だ、大きくないという御指摘もあろうかと思いますけれども、そうした歳出面におきましてもやっぱりインデクセーションといったものはあるわけでございますから、そこは御理解を賜りたい。しかし、御指摘のように計算をしてまいりますと、控除も税率も五十年代の初めのころに近づいたかなということでございますが、まさに十数年間そうした調整を余り行ってこなかったのが、今回の税制改革におきまして思い切って御提案を申し上げているということだろうと思います。
  116. 志苫裕

    志苫裕君 そのとおりですね。  局長、私がここで言いたいのは、総理も聞いてほしいんですが、皆さんは何か税体系の改革をしてとかいろんなことを言っています。我々は、負担累増感とかそういうふうなものは、インデクセーションと税率区分の変更で賄えるじゃないのと、何も税体系というふうに大げさなことを言わぬでもと、こう言っていたわけですね。そこのところはいろいろ議論になっているわけです。  これを見ますと、今、局長の御答弁があったが、私もこれやってみたら、まさに五十二年から六十二年までの物価調整減税なんですね。これはつじつまが合っています。ちょうどそれぞれのブラケットの中間点、三百万から六百万の中間点というふうなのは、これは四百五十万になりますか、それぞれの中間点で見ますと、くしくも五十二年と同じですから、その中間点の金額よりも下が少し増税になって上が減税になる。どのブラケットもそのようにつくられています。その限りにおいてはこれは物価調整減税としては成り立っていますが、やれライフステージにおける何とかがどうかとか、何か難しい、新しいようなことを言っていますが、新しいものじゃない。我々が主張する物価調整減税や若干のブラケットの変更でやれるじゃないか。不公平感あるいは累増感を除くために何も税体系までさかのぼらなくたって、これでもやれるじゃないかということを皆さんにもやっとこれで私証明したんです。そうじゃないですか。
  117. 水野勝

    政府委員水野勝君) まずは稼得所得の負担の調整、合理化軽減でございますので、そういうふうな物価調整的、インデクセーション的な部分もあるわけでございますが、やはり今回お示しのものでございましても、課税所得で三百万まではこれは一〇%とする。そういたしますと、収入金額では七百万円ぐらいになります。その収入七百万円ぐらいまでの部分ではやはり三段階、四段階の税率が従来は適用されておる。  しかし今後は、収入七百万円、課税所得三百万円ぐらいまでは勤労者の方はとにかく一〇%一本の税率をお願いする。そういうことでまいりますと、今後はほとんどのサラリーマンの方、九〇%近くの方々は所得水準が上がる。こういうことがございましても、負担率として上がっていく、適用される限界税率が上がっていって累増感、重税感がそこに生じてくることはなくなる。そういう面での所得税につきましての課税、負担のお願いの仕方を今回大きく変えておる。そこは物価調整減税の足らざる部分をこの際どんとやったというだけにとどまらない御提案を申し上げているつもりでございます。
  118. 志苫裕

    志苫裕君 同じ表を見るにもどっちの方を見るかで、見方によって違うんだ。私は二千万以上が下がったなと、こう見るんですよね、この表見るときに。あなたは三百万以下が下がったなと見るわけだな。そうでしょう。見るときは両方見なさいよ、あなた。片方ばりかり見てないで。これがやっぱり今度の税体系全体のフラット化の特徴になっているんだ。それで一番おためごかしに言うておった真ん中は、物価調整減税と変わっていませんよ、何も新しいことをしてくれたんじゃありませんよということをこれは言いたいわけだ。その点お認めになるでしょう。いかがでしょうか。
  119. 水野勝

    政府委員水野勝君) そういう面が皆無とは申しませんが、先ほど申し上げましたように、所得水準が上がれば負担も上がりますが、一方この十数年間の歳出の増加というものもまたかなりあるわけでございますから、全くそこの負担が上がらないようにすべて所得税の世界ですべきだということになりますと、これはまた別の問題が生ずるわけでございます。この間、間接税のウエートはどんどん下がる。それはまさに間接税の伸びは非常に低い。そうしますと、それは本来、経済の伸びとともに間接税をずっと同じ率だけ増税をしてこないと歳出としては賄えなかった、そういう面もまたあるわけでございます。
  120. 志苫裕

    志苫裕君 こういうものが積もり積もって将来の社会の公平を乱す要因になりますよ。私らは物価調整でいいじゃないのと言うておる違いをちょっと一つ証明したわけです。  もう一方、今お配りした資料の上の方を見てください。これは我が調査室がちょっと勉強してくれたんです。いろいろ大蔵省のさまざまな資料がありましたね。税制改革の家計負担に与える影響、仮定試算ですか、そういうものを資料を使いまして所得階層ごとに今度の減税と増税を分配してみたわけですね。その結果、総理、この計算が誤りないと思いますが、一番下の同構成比をごらんになってください。第五分位に減税の七割が割り当てられているんです。第五分位に、七割が。第一分位にはたった〇・五。金持ち減税なんて大仰なことは言いませんけれども、第五分位というのはこれは普通の人から随分金持ちまでいるんですが、大まかに言って高所得層といいますか、やっぱり高額所得者に七割の減税原資が割り当てられるということについて何か所感がございますか。
  121. 水野勝

    政府委員水野勝君) この基礎数字は私どもがお出ししている数字でございますから、こういう計算をするとこういう数字が出ることは確かでございますが、この差し引きの欄を私どもが計算しております各階層分位の増税と減税との差額の案分比でまいりますと、またこれは違う数字になるわけでございますので、どうも委員一つの局面の数字を極端にお示しになるようなものではなかろうか。逆に私どものお出しした数字の案分でまいりますと、委員のお示しの〇・五というところは六%になるということで大分変わってまいるわけでございます。  それからもう一つ、この欄にはございませんけれども、じゃ現在、所得税、住民税をお払いになっている金額、それの構成比をとり、それに対するネット減税比、いわば減税率を見ますと、これは明らかに下の方が大きくなるわけでございますので、もろもろの縦横いろんな数字の計算の仕方はあろうかと思います。この数字はこの数字として確かにこういう数字は計算が出ますが、いろいろのまた計算の仕方もあり、私どもとしては減税の額の構成が上に偏ってくる、これは否定できないと思います。しかし、現在御負担になっておるその構成比、これはやはり第五分位が半分ぐらいを構成比として持っているわけでございますから、その減税額としてはやはりかなり大きなウエートにはなるわけでございます。
  122. 志苫裕

    志苫裕君 あなた長々言ったけれども、やはりそういうことだ。そうでしょう。  総理、この問題を通じて、私はどうしても改革のありようについて申し上げたいんですが、百歩譲って、今度の改革の一つの柱で、水平的公平の回復というのが改革の目的であるならば、垂直的な分配構造を変えないで改革を行うべきです。垂直的公平というのは、同じその階層間という意味ですからね。そこでのいわばでこぼこのことなんですから、そこで等しからざるを憂えておるわけですから、これが水平的公平の回復という皆さんの所得再分配機能を軽視する一つの主張になっているわけだ。それをおやりになるんでしたら、垂直的分配構造を変えないでやりましょうや。このように減税すると言えば第五分位に皆集まる、税率を変えると言えば二千万以上だけが全部寝てしまう。これは階層間の分配を変えることなんですよ。これでは今のもののいい悪いを抜きにして、ある階層が得をして、ある階層が損をするという改革になるんですね。これは当然損をする階層が改革に対して反逆をするのは当たり前なんです。こういう改革の手法をとるべきじゃないということをこの件に関して強く主張したいんですが、いかがですか。
  123. 水野勝

    政府委員水野勝君) 先般も御議論ございましたレーガン税制改革、これは階層別の負担を大きくは動かさないという理念があったようでございます。  一方、我が国の場合におきましては、先ほど申し上げましたように、昭和五十年代以降所得税減税を本格的なものは行わなかった。そのために負担が勤労者を中心とする稼得所得に集まる。一方、消費課税、間接税課税は当時としては三〇%前後のものがございましたのが、今や二〇%を切ってくる。そういう税体系全体としての大きなシフトがあるわけでございます。シャウプ税制のころでも間接税は四五%ぐらいございました。そういう大きな脱体系の変化がございますのを受けて、基本的に改革を行うとすれば、やはりこの大きな枠組みもまた見直して改革をお願いを申し上げたい。  そういたしますと、やはり階層別のものは、現時点から比較いたしますと、それはそういう方向も否定はできませんけれども、シャウプ税制のころ、昭和五十年代に入る前のころ、そうしたものから比べますと、かなりまだ現時点、改革後におきましても累進性は確保されておる。また、今後の将来の展望も考えますと、今後やはり福祉を中心として歳出需要は増大をするであろう。そういうときに勤労者を中心とした所得税の負担はやはり今後の税制の中心ではございます。それが累増感なく不公平感なく御負担願えるような税制改革をここでお願いをしておく必要がある。  そういうことからいたしますと、全く今御指摘の階層別負担の変わらないもの、現時点のものを全く変えないものということになりますと、なかなか我が国の場合では、これはやはり抜本的改革となりますとそこの変動は伴わざるを得ない。しかし、我が国の税体系全体が所得税の税率構造を一つとりましても、諸外国に比べればなお累進性と申しますか、再分配機能はかなりのものを持っておるということは申し上げられると思います。
  124. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私も、志苫委員論理というのは、やっぱり一つの税の仕組みの中での不公平感というものを念頭に置きながら、いわゆる階層別の変化ということを前提に置くべきでないという考え方ではないかなというふうに考えます。  しかし、やっぱり新税が導入されるようなときを考えてみますと、これは途中で、途中というか、わずかな期間でやめになりましたが、昭和二十三年の取引高税のときの議論、今志苫先生がおっしゃっている議論を、当時の若手であった自由党の、今は衆議院議長であります原健三郎先生がなさっております。それをお答えになったのがあの当時の労働大臣加藤勘十先生でありまして、それはそのとおりなんでございます。  それを読み返しながら、何か攻守ところをかえたという感じが率直にしないまでもございません。あのときは、取引高税というものが一%で各種の取引の段階においてかかってくるから、したがっていわゆる各分位における構造が変わってくるんじゃないかという御質問で、加藤勘十先生がお答えになっているのが、いや、それよりも勤労所得税の重圧感を除くための減税が必要だ、こういうお答えをなさっておるのと、古い話して申しわけありませんが、ちょっと攻守ところをかえたような感じがいたしますが、確かに分位別の一つの構造の変化をもたらすものであるということは私も、どちらが絶対かは別として、認めます。
  125. 志苫裕

    志苫裕君 総理と話しているとつぼを外されちゃってね、へたなマッサージみたいにつぼが外れてますね。  次に、資産課税へ入りますが、先ほどちょっと経企庁長官も資産がこれだけのことになりましたというお話をいただいたし、きのうかおととい発表になったんでしたね、国民経済計算、それなどを見ましても、随分大きい資産だな、それにしちゃそれが所得として捕捉されている割合はまことに小さいものだなという思いがひとしおしまして、私はこの間以来、百歩譲って消費一般に対する課税というものを税体系に取り込もうというのであれば、これは所得というのは消費と資産なんですから、もう一方の資産がしり抜けになっておってはこれはだめだ、資産の適正な捕捉と課税、特に世代間にわたっていく相続、贈与というふうなものに抜け穴があったんじゃこれはとても税法云々なんというものじゃなくなってしまうということを言いましたね。そういう意味で、私は公平課税の第一にまず資産を挙げます。  で、資産課税の一番の問題点というのは、一番も二番もないんですが、所得の捕捉が面倒だということでしょうね。それから保有というか、増価益にどう税金として取り込むか、増価益をどうするか。キャッシュローンの問題がありますから、そこのところがどうしても問題になる。三番目に、資産の評価をどうするのかという、この三つが恐らく一番の問題点で議論の分かれるところだと思うんです。  私は、まず捕捉のことから言えば、これは執行体制を充実する。やたらと税務署の職員もふやすことはできぬだろうが、さりとて、一方に不公平が目の前をまかり通るというのも社会にとってはゆゆしい問題であって、税務署の職員の増員も含む執行体制はきちっとしなきゃならぬが、人間だけではない、番号制というふうなのも今日大いに課題になっているんです。  総理、ずばりといきますが、もう時間がないので、まあ番号制にもいろいろ問題があるというんですね。まず、資産取引番号から入っていきませんかね、どうですか。
  126. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 番号制の問題があるというのは、やっぱりグリーンカードが一番一つのいい例としてあるのではないか。本院において成立しましたのが昭和五十五年三月三十一日でございましたが、五十九年一月一日から実施すべきものが結果としてなくなった。そこで、後からあるいは出てくるかもしれませんが、資産取引番号制というものは、私自身ちょっと具体的な仕組みがイメージしてこないわけでございます。国民総背番号制という考え方はイタリア方式でございますが、これでもないし、そしていわゆる……
  127. 志苫裕

    志苫裕君 ちょっと専門家のイメージを聞くかね。
  128. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 専門家のイメージをちょっとやらしてみましょう。
  129. 水野勝

    政府委員水野勝君) 納税者番号制度につきましては、税制調査会が小委員会報告、十三日の日に総会になされてございます。今後、総会におきまして税制調査会としてどのように扱うか、早い機会に決定をされると思います。でございますから、現在は小委員会の報告に限られるわけでございますが、その中で御指摘のような観点に関連いたします部分といたしましては、例えば株式の譲渡所得といったこうした資産、特定の資産の中でも特定の取引の把握に限定して番号制度を考えるということになると、どうも課税の中立性の見地からは適当ではない。資産の差異によって実質的に税負担が異なってくるので、公平の見地からも適当でないというような記述がございます。  委員の御指摘が何らかの特殊な資産に限定しての番号制か、あるいは資産所得に限ってのものであるかということになりますと、後者の場合でございますと、これは一つ考え方になろうかと思うわけでございます。  小委員会議論におきましても、番号制をお願いをしたときには、普通の事業所得、営業所得につきましてもすべてあらゆる取引、これを全部番号を付記して行うようにする、そこまでいきますと少し番号制としても行き過ぎではないかというような議論も多かったようでございます。結果として、納税者番号制度といったものが導入される場合には、資産取引の面での処理がやはり中心にはなろうかと思うわけでございますが、せっかく番号制を導入する場合には、それではまたコスト的に見てかえって不効率ではないかという議論もまたございます。今後、ここらの点をどのように考えて、税制調査会が調査会としての方向を議論し、扱いを決めていくか、今後の審議の動向によるところでございます。
  130. 志苫裕

    志苫裕君 ですから、できません議論を長々やっているだけ損失ですから、私は確かに幅広の番号、何でもかんでも番号の中にほうり込むというと、プライバシーがどうのこうのという問題も出てきますから、資産持ちというのは大体お金持ちの方にいるわけですから、金融資産、土地資産を含めた資産取引から始めていって、番号制というものはそう余り邪魔にならぬものですよというふうになっていけば、それがあらゆる番号になっていくということだってあるわけで、一つの検討材料になるのかなという意味で申し上げた。しかも、一番捕捉率の悪いのはここなんですから。  ただ、キャピタルゲイン問題でも、これから私が取り上げる実現をしない増価益の問題になりますと、いつ資産を手に入れたのかわからなくなってくると、いつからいつを比べて幾らもうけたかということになるんですから、手に入れた時期がわからなきゃもうけ勘定できないという問題も起きてきますね。ですから、資産取引番号を入れて、ある一定の時限から前のものはまあそれこそみなしで、何年持っておったというふうにみなす以外にない。あとのものはその日から全部もうはっきりしますからね。そういう意味では資産取引番号というものがあると、少なくとも資産課税はきっちりやれる。それが同時に遺産までいく。遺産相続という一番世代間にわたる不均衡の是正に寄与していけるという提案を一つしたわけですね。  二番目は、それでも増価益が出た、持っているものが価値が上がる。今度の経済企画庁の発表によりますと、土地だけで三〇%ふえて千六百三十七兆円になったという御報告がございましたね。これは言うまでもないんですが、所得というのは持っておって、いわば資産の価値が上がったというのもこれは所得なんですから。実現をしようとしまいと所得なんだ。ただ、現実に今実現をしないものからは取れない、取りにくいという問題があって、実現をしたものから取っておるわけですね。  これが今のあれなんですが、しかし、この資産を持っておる実現をしない増価益というふうなものが、現実には実現をしたと同じように世の中に出回ってその格差を広げておる、さまざまな現象を生んでいるんですから、私はどうしても資産課税で大事なのは、持っていて価値が上がっている分にどういう課税ができるかという工夫だと思うんです。これは租税当局も大変憶病だけれども、所得は所得なんだ、あれは。所有していて価値がふえたんですから、それは所得なんだ。ただ実現をしないものだから取れぬという問題になるんでしょう。そういう性質の問題でしかない。現に取っている国だっていっぱいあるんですからね。日本はそういう習慣がないだけの話なんだ。習慣をつければいいんだ。習慣というのはつけていけばいいんですからね。  この実現をしない、いわばストックの所得に対してどう課税するかということを総理、これは真剣に考えましょうよ。持っていて、それを担保にして現実の金は動くんですから、それを倍々ゲームに働かしていけるでしょう。それができるから土地も売らぬでしっかり持っているんですから。その税金、長く持っていれば安くするというものだからますます持っているんですよ。ますます土地は出てこない。国土庁あたりはあべこべのことをやっているわけだね。土地持っていても全く意味がない、土地を持っていたらひどい目に遭うということになれば土地は出回るわけですよ、あべこべに言えばね。土地を持たぬでも同じ効用ができるということになれば土地をばかにあれしなくていいわけでしょう。  そういう意味では土地の保有に対する課税、保有から生まれる増価ですね、増価益税というふうなものを実現しないものにもかけるということを真剣に考えない限り、消費税を取り込んだ税の体系のもとでは不公正が拡大するということを主張するんですが、ちょっとそれやりましょう、これから。真剣にやりましょう、これ。
  131. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今の増価益の問題です。よく言われます、個人の場合は最終的に相続税の段階において社会に還元する、法人の場合はそれがないではないか、だから増価益も法人に限っての考え方一つはあるではないかと、これは一つ論理でございます。それに対して、法人の所有する増価益というものはまさに未実現の所得であること。これは実現してない所得ですから、したがって、これを課すことによって結果として出てくるものは法人税の言ってみれば先払い、こういう議論にもなるではないかと。いろんな議論がございますが、いわゆる固定資産税、それから保有税との問題でございますから、それこそかなり基本的な議論からこれは構築していかなきゃいけませんから、たゆまざる私は勉強課題だとは思いますが、すぐイエスと、こう言う状態にはないと言わざるを得ません。  確かに、ただ感心しましたのは、決して御発言を利用するわけじゃございませんが、若干利用する感じもないわけじゃございませんが、すべての税制は習慣、習熟の中に国民の中に入れられるということは私も同感でございます。
  132. 志苫裕

    志苫裕君 社会党、我々は、再評価をしまして再評価税。それは法人の場合には法人資産税にして、少し二段階ぐらいの薄いものでいいんじゃないか。個人の場合には保有税として、特に今度は税率をフラットにするわけですから、二千万以上はもう上の税率がないんですから。それにしても急に何も天井下げることはないんじゃないか。それがある意味では、二千万から以上に、ある期限つきでもいいですね、一種の付加税として富裕税のようなものをつける、それは資産から得られるものをベースにしてもいいじゃないかということを我々は提案しているんですよ。  だけれども、それについては例えば大阪大学の八田教授なんかは大変保有税に熱心で、いい提案してますよね。本来増価、いわば価値が発生した。それに対して国に税金を納めぬといかぬのだけれども、売ってないから今納めてない。納めてない期間は納めるべき税金を延納してもらっているわけですから、だから、実現をしたときにそれまでの利子をつけて払うということだと、長い目で見ますと実現をしたときにそれで公正になる。死んだときも実現をしたとみなせばいいわけですね。死んだとき増価益税をまず取って、残りの部分を相続税に回せばいいわけですから。  法人というのはいつまでも死なない。それはどうするのか。いつかは死ぬかもしらぬが、それは、じゃ元金は永久に払わぬかもしらぬが、利子だけは毎年払っていきましょうという提案をしていますね。これは国税当局も検討していいと思うんですよ。非常に理にかなった提案だと思うんですが、それはひとつ検討してくださいよ。あなた方いつでも未実現のものは課税は無理だといってもう思い込んでおるんだな。それでいて、私が引当金なんかのことを言うと、実現もしない費用をあらかじめよけておいて、それはだからつじつまの合ったことをしましょうと、こう言っているんです。こっちを検討してくださいよ。いいですか。
  133. 水野勝

    政府委員水野勝君) 現在の土地でございますと、例えば譲渡所得は五年を境に早く売った方が高い、遅く売った方が低い税率で課税される、こういうことでございますので、今の御指摘の八田先生のとは逆になるわけでございます。そういう考え方も確かにあり得るわけでございます。  例えばシャウプ税制でできました相続税と譲渡所得税の関係をとりますと、まさに御指摘のように、相続があったときにはそれまでの譲渡益も実現したものとして課税するということでございました。しかし、実現していない、それによるお金が入ってこないのに御負担をいただく、譲渡所得税をいただくというのは日本の習性にはまだなかなかなじまないということで、昭和二十五年から数年でそれはやっぱりちょっと無理かなということでもとへ戻ったということもございますので、これはなかなか簡単な問題ではない。しかし、土地税制の中のまさに御指摘の保有税との関連があろうかと思います。保有税の点も含めて今後土地基本法の御議論の中で御議論される一つの課題ではあろうかと思いますが、そうした歴史的経緯から見ましてもなかなか八田先生のおっしゃるようなわけにはいかぬような気がします。
  134. 志苫裕

    志苫裕君 ただこれだけは、十億円なら十億円、百億円なら百億円をお金で持っています、貯金しておるとこれは年々利子分が取られていきますから五十年も百年もすると半分になるわけです。土地で持っているとどんどん価値が上がっていって、今の評価制度ですと実現をするときには評価額も半値になるんです。あべこべになるわけですね。ですから、お金で持っているよりは借金してでも土地を持っていた方がいいという形になる。これが現行の土地にまつわる税制なんです。そのことをそのままにしておきますと土地は出てこないんです。持ってりゃいいという形になっちゃう。そういう意味では土地税制も少し間違っておった。きょうは時間がないんで国土庁長官せっかくおいでになっていて質問しませんが、これから土地問題の税制、法制をやるんですが、ぜひこれは長く持っていると安くなるというのは考えものだなということを、どうぞひとつ留意していただければと思うんです。  ここでどうしても、総理、土地に関連をして私の持論なんですが、国、地方合わせて三百兆円の長期債務があるでしょう、国だけで百五十兆円ですな。それの毎年の利子というのは国の予算の二割なんです、二割。せめてこの分でもなければ国家財政は楽なんです。これがどかっと二割あぐらかいているので、社会保障を削れとか言われるわけです。この邪魔者の二割ですが、この邪魔者の二割も、考えてみるとあれはだれかの資産なんですよ。国債を買っている人の資産なんです、あれは。その国債を買っている人というのは所得二、三千万円以上の人なんです。小さい者も持っていますが大部分がそうなんです。そうすると、国債を発行した、それはお金持ちの資産になる、その資産の運用益というものは国の財政を通じて毎年二割ずつ払われていくということになる、財政がますます所得逆配分をする。国は金がないから借金する、それはだれかの資産になる、金持ちの資産になる、その資産に貧乏人から集めた財政の中から利子をつけてやる。こういう構造が、財政そのものが所得逆配分の作用をしているんです。どこかで悪循環を断たぬといかぬ。  国、地方は三百兆円もつぎ込んで、その結果はどうなったかというと金余りですね。土地余りでもないが土地、株式の高騰という結果であらわれておる。そうしますと、土地とか株とかこういうものを持っておる者からあの十兆円を肩がわりしてもらう方法がないかということを考えたっていいわけです。ストレートに取れぬだろうからというので、頭のいい人が考えたのはそのような含み益ですね、土地とか株、有価資産の含み益、そういうのを持っておるから、もし含み益の課税ができないのであれば、ああした人たちに無利子の国債を買ってもらえと言うんだ。無利子国債なら発行してもあの予算の中に十兆円入ってきませんわな、これは財政運営は楽になる、万事めでたしじゃないかという意見があるんですが、どうですか。
  135. 竹下登

    国務大臣竹下登君) よく無利子国債論というものはございますが、この無利子国債論というのは当面それは利息はない。しかし、相続税も無利子であるとしたらすべてが無利子国債に肩がわりされて、ずっと永久にもたれ切っていくという矛盾がございます。それと同時に、利子を払う払わぬにかかわらずやっぱり負債そのものである、このように思わざるを得ません。
  136. 志苫裕

    志苫裕君 また、つぼ外れちゃったから……。  私は、何らかの形で、今のままに国債を発行する、それが高額所得者や資産家の資産になる、それの運用益を財政の中からまた払うというこの繰り返しを続けていくと、ますます財政が果たすべき——所得逆配分になってしまうと、こういうことにはまり込んでおるんだから、そこで、そういう国債を何百億も出してまで、出したものはどこかにそれは蓄積されているんですから、ストレートにそこから取れぬにしましても、それとの見合いで国債を減していくということを考える知恵があったっていいというので、それがまず日本の場合には土地にあらわれている、株にあらわれているという認定が立つならば、それの保有によって生ずる増価益というふうなものは一つの目のつけどころになるということを言った。本来ならば、キャッシュローンの問題がなければ取っちゃうんですから、実現すれば。大蔵省だめだ、だめだと言うから百歩譲って、増価益税を取れぬであれば、そういう別の知恵ぐらい考えるという提案はしたので、これは私も長々とやります。  時間がなくなりました。時間の配分がどうも僕は下手なんだな。いろんな問題がありますが、また後日、二十八日までの間にまたお目にかかってやることにしますが、最後にあなたにとって気分の悪いことをもう一つやりましょう。  総理、これはちょっとやっぱりけりつけておこうと思う。十二日に、いわゆる竹下さんサイドに行った株、それの物証を私は示してもちっとも構いません、ただ、私的経済行為のものを一体ほいほいと言って公の場に出していいものかどうか、その辺は若干私にも判断し切れないところがあるので、国会皆さんで、委員会で相談してくださいよというニュアンスだった。だから、私も梶木委員長のもとの理事懇でもそういう問題を整理して相談しましょう、隣にも相談相手いますがね、と思っていたんだが、何だかだんだん日がたつに従ってちっとずつ言い分が変わってきて、きのうの上田委員のところへ来たら、じゃ、あなたひとつ自分で判断して出してくださいよと上田委員が聞いたら、いや出せば出せぬわけでもないが私には出す意思がありませんとこういう御答弁になる。私のときには、出すべきか出すべからざるかというのを、私判断に迷うから相談してよと、こう言っている。十日たったら、いや私は出す気がありませんというふうに心変わりをしたんだな。これちょっとどういうことなのか説明してくださいな。
  137. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは今、志苫委員おっしゃいましたように、いいこと、まあいいことを言っていると申しますか、正確に読み上げてみますと、「私は、信頼関係のある皆さん方に個人的にお示しすることに何ら抵抗を感ずるものではございませんが、その辺は皆さん方の方で御判断いただければ、私も意見を述べる機会があれば述べましょうし、それに従うことに決してやぶさかではございません」と、これでございます。  その流れとしては、経済行為の問題を自分から調査してそれを国会に報告するというような考えはありませんが、国会でお決めになればそれに従うにやぶさかではありませんというのが上田さんに申し上げたことでございますから、大体整合性の延長線上にあるお答えをしておるんじゃないかなと思っております。
  138. 志苫裕

    志苫裕君 いやいや、確かに上田委員には、私には出す意思がありませんがということを言っている。しかし、これは私のときには、私には判断しかねるから皆さん相談してよという言い分でしょう。ところが上田さんのところでは、おれはそう言われても出す気持ちはないと。これは大分違うわけよ。ですから、あなたもいろいろやっているうちに心変わりしているんだろうが、これはやっぱり政治の浄化のためにも、また、ましてや、あなた今大蔵大臣として税に不可欠の信頼を国民に求めているわけですから、やっぱり出すものは出していただくということを要望して、質問を終わります。(拍手)
  139. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 次に、峯山昭範君の質疑を行います。峯山君。
  140. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 総理、きょうも朝から消費税法案審議されているわけでございますけれども、とにかくこれは聞けば聞くほどこの法案は問題が多いというのがわかってまいります。実は、私自身は特に税制の問題については大変弱い、余り勉強したことのない私でございますが、皆さんの質問を聞きながら、私が思っていた以上に大きな問題点がたくさんあるというのがだんだんわかってまいりましたし、そういうふうな意味では、私は税の専門的なことがわかりませんので、総理ももうちょっとわかりやすい言葉で、専門的な言葉は余り私も使いませんし、使ってもわかりませんので、できるだけ簡単にお答えいただきたいと思っております。  そこで、昨日もそうでございましたが、その前にもいろいろと議論がございました。税とは何かという議論もきのうもありましたが、私もきょうはその議論を少しやりたいと思っております。  国民が納める税金、それが本当に国庫へ納まらない、あるいはどこかへ消えてなくなってしまう、あるいは中小零細企業の皆さん方の立場からすれば三%の税すら取れない、仕入れ先からはさんざんたたかれる、上と下からたたかれて、もう本当に中小零細企業はやめてしまえというような法案に、今度のこの消費税法案というのは、そういうふうになっているんじゃないか、そういうふうに私は感じるわけであります。そういうふうな意味から考えてみますと、一体税金というのは何だと、そういう疑問にぶち当たるわけであります。そういうふうな意味で、総理に初めにお伺いしたいのでありますが、この税金の税というのは一体何でございましょうか。
  141. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 国家というものが存立する限りにおいては、国家の基本的共通経費とは何ぞやというと、私は外交、防衛、治安、教育、社会保障、社会資本とおおよそこれに分類できるではないか。その共通の費用を賄う財源というものが租税であると、このように私は定義づけております。
  142. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 非常に難しいことを言うておりますけれども、もう少しわかりやすく言うてくれませんか。もうちょっとわかりやすく。
  143. 竹下登

    国務大臣竹下登君) およそ集団社会をつくりますと共通の経費がかかります。それを賄うものが個々人がそれぞれ負担する税というものであると、このように思います。
  144. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 主税局長さんにお伺いします。税とは一体何ですか。
  145. 水野勝

    政府委員水野勝君) 総理の申し述べられていることのとおりでございますが、財政学で言われる定義といたしましては、国、地方公共団体等がその一般的な経費を賄うために個別の対価関係、受益関係のない形でもって強制的に金銭の納付をお願いをするものであるという、ぎりぎり財政学でよく定義されるのはそういうことでございます。
  146. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 わかりにくいですな。実は私も総理に税とは何かということをお伺いしたいと思いまして、これはもう既に主税局長さんがおっしゃいましたが、皆さんの先輩でもございます泉美之松さんの「税についての基礎知識」という本がございまして、その本の中の第一章に「税とは何か」というところから始まっております。  それで、租税とはということで、だんだん進化過程を経て、初めに「租税は、国家・公共団体が徴するものであること」ということから始まりまして、二番目に「租税は、国家・公共団体が強制的に徴するものである」というふうになりまして、その後「租税は、国家・公共団体が財政権により強制的に徴収するものであること」、そしてその次には「租税は、国家・公共団体が財政権により何等の対価なくして、強制的に一般人民から賦課・徴収するものであること」、ずっとまだあるわけですけれども、だんだん移り変わりがありまして、結局、最終的には、租税とは、国及び地方公共団体が、地方自治体が国家権力に基づき国民から直接的な対価、給付なしに強制的に徴収するものである、こういうふうにあります。これは、文章はわかるんです。わかりやすく説明してくれませんか、これ。
  147. 水野勝

    政府委員水野勝君) 今、委員のお示しのとおりのものでございます。国、地方公共団体、これはやはりその運営のためにはと申しますか、そのもろもろの福祉その他の施策を講ずるために経費、費用が必要でございます。その費用を賄うためにその横成員である国民、地方公共団体の住民に対していろいろな形でお金出していただく、それはこの経費に充てるためにということでなしに、とにかく一般的に対価関係、個別の対価関係なく、対価関係があれば手数料とかそういうものでございますが、そういう関係なしに一定期間の何らかの標準を基準にいたしまして、一般的にお金を集めさしていただく。易しくと申しますか、わかりやくと申しても、どうも税金の話でございますので限界はございますが、そういうことではなかろうかと思います。
  148. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 要するに、国家権力が強制的に反対給付なしに徴収するということですね。これはもうちょっとわかりやすく言うと、どういうことですか。
  149. 水野勝

    政府委員水野勝君) 一定の要件に該当いたします場合には、御本人の申告納税ではございますけれども、もしその申告納付がいただけなければ国の、今お話しの権力、財政権なりそうした権力、権能を持って一方的に出していただく、こういうことではないかと思います。  しかし、現在はすべて申告納税制度が原則となっておりますので、そうした権力的な面というのは現在は現象的には余り表にはあらわれておらないところでございます。
  150. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 その税の基本に国家権力、強制的というのがありながら、申告納税制に変わってきたと今おっしゃいましたね。なぜそうなったんですか。
  151. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは昭和二十二年でございますか、いわゆる賦課するということから、申告制というのは占領下でありましたが、民主主義体制というものの基本的な考え方がかくあらしめたであろうというふうに私ども教わっております。
  152. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 主税局長、どうですか。
  153. 水野勝

    政府委員水野勝君) 総理から申し述べられました昭和二十二年に所得税、法人税、直接税につきまして申告納税制度が導入されました。その後、昭和三十七年におきましては間接税にもこれが広げられ、昭和四十二年でございますか、関税にも広げられて、今の我が国の税制は国税としてはほとんどが申告納税制度をとってございます。  その考え方としては、総理からお話のございました戦後の占領下ではございますが、民主的な租税制度としての体系を整えるということ、それからまた、技術的に申し上げれば、やはり多数の納税者の方々一人一人につきまして国、地方公共団体がこれを賦課決定して、通知して納めていただくということでなくて、まずは御本人の申告によってその税額が確定していくということがより近代的、効率的な納税制度でもあるということが言えょうかと思うわけでございます。  しかし、それは個々の納税者が御自分で計算し申告をしていただく、そうした計算技術能力、それからもう一つは近代国家として個人個人の方の納税意識と申しますか、そういったものの発展という、そうした要素がなければなかなか難しいことでございますので、世界的に見ますと申告納税制度というものがそれほど一般的であるというふうにはまだ言えないようでございます。
  154. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 だから、一般的でない申告納税制度が何で日本では一般的になり、所得税にしても関税にしてもほとんど申告納税制度になったか、その理由が総理から説明がありましたけれども、なぜ申告納税制にしたのか、もう一回説明してみてください。
  155. 水野勝

    政府委員水野勝君) 昭和二十二年でございます。これは総理からも申し述べられました占領下でございます。その指導ということもございましたが、民主的な税制におきましては納税者御本人のまず申告と納税によって税額が確定し、自主的な納付をお願いするというのがあるべき姿であろうということであったのではないかと思うわけでございます。
  156. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 要するに、徴収する方は国でしょう、納める方は国民でしょう。国家と国民のやはり信頼関係という問題が私はあると思うんですよね。申告納税という問題からいけば、要するに信頼関係が成立してなきゃ、やっぱり強制的に徴収をするなりそれなりのことをやらなくちゃいけない。日本が少なくともいろんな先進諸国の中でも申告納税制度をとっているということは、それだけやっぱり国家と国民の信頼関係が成り立っておると、そういうことになりませんか。
  157. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 当時の議論を読んでみますと、性善説というものが一つは根底にあることは事実でございますが、やはり民主主義国家というものは、おっしゃるとおり国家というものも選挙によって存立するわけでございますから、国民との信頼関係ということが基礎にあることは事実であります。
  158. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 したがって私は、性善説、性悪説いろいろあるかもしれませんが、総理、租税の定義あるいは税というものをいろんな角度から随分読んでみました。みましたが、結局は税制の基本は、先ほど局長お話しありましたけれども、いわゆる何で申告納税制度にしておるか、そういうふうにしている国は少ない、日本はいろんな税制全部申告納税制度になっておる、なっておる理由は結局は国と国民との信頼関係あるいは国民との合意というものがある程度進んでいる、それがなければこの税制あるいは租税の基本が崩れる、こういうふうに私は思うんですけれども、総理、いかがですか。
  159. 竹下登

    国務大臣竹下登君) そもそもそれは占領下にありましたものの、日本を民主国家としてこれを位置づけようというときには、当然のこととして、いわゆる選挙で選ばれた国会議員皆さん国会による指名によって行政府の長が決まっていくという民主国家の体系を整えたわけでございますから、一番その底にあるのは信頼関係であるというのは正しいと、私は今も思っております。
  160. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 総理は、今いろいろおっしゃいましたけれども、きょうは税のところに焦点を絞って申し上げますと、重ねてもう一回申し上げますが、租税という問題ですね。税制という問題のところから考えますと、やっぱり税制の基本は国民の信頼と合意に基づいて成り立っているものであると、私はこういうふうに解釈をいたしているわけでございますが、いかがですか。
  161. 竹下登

    国務大臣竹下登君) そのとおりだと思います。
  162. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そこで総理、今回のこの税制改革は、従来の国民の税負担の態様を根本的に大きく改めるいわゆる税体系の変更なんですね。  例えば、今まで所得税を払っていた人たちが一〇%が二〇%になつた二〇%が一〇%に減ったとか、そういうふうなものとは全く違うわけです。今まで全く払っていなかった人たちも払わにゃいかぬと、こういう税体系の抜本的ないわゆる改革に当たるわけですね。総理もシャウプ税制以来の改革とおっしゃっておりますから、これはもう当然そのことは御存じのことだろうと思います。したがって我が党も、総理も何回かおっしゃっておりますが、この税制改革には手順が必要だと、またその手順をきちっと踏む必要があるということで、今我々は何をやらなくちゃいけないかということについても我が党としてはきちっと提案をいたしているはずであります。  そのことはこちらへ置きまして、そういうふうに考えてまいりますと、当然私は、これだけの大きな内容の変更、税負担の変更があるわけですから、そういうふうな意味ではこの国民の信頼と合意というのがどうしても私は必要になってくる、国民の信頼を裏切って、また国民の合意を得ないでいわゆる税制改革をやってしまうと後でやっぱり大きな問題が出てくるんじゃないか、こういう心配があるんですけれども、この点に対する総理のお考えをお伺いしておきたい。
  163. 竹下登

    国務大臣竹下登君) そこで、ぎりぎりした議論になるわけでございますが、きてはて、国民皆さん方は現行税制というものに対してどうお考えになっておるかというと、やはり個人の稼得所得に偏っておるということからする重税感、不公平感が出ておるから税制を改革しなければならないというところにまでは私はコンセンサスができておるではなかろうかと、まずこのような土台の上に立って物を考え、提案をいたしておるわけであります。
  164. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いや、総理、よう聞いておいてもらいたいのですが、話はそこまで行ってないんですわ。今回の税制改革というのは、要するに従来の税負担の態様が全く変わってきている。全く負担しなかった人たちも負担しなくちゃいかぬし、また、そういうような態様が全部変わってきているわけですから、大変な税制改革である。    〔委員長退席、理事斎藤十朗君着席〕 そういうふうなときには先ほどの考え方からずっと推してまいりまして、やっぱり国民の信頼を得ないといけないし国民の合意を得なければいけないんじゃないかと、こう言うているわけです。いかがですか。
  165. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 少なくとも消費一般にかかる税制消費税という新税が入っておる、これはまさに事実でございます。その意味においては大きな改革であるということも私は十分承知をいたしております。しかし、そこまでなぜ踏み切らなければならなかったかといえば、国民全体の税制改革そのものに対するコンセンサスというものはあるというところから踏み切っておるわけであります。
  166. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ですから、総理、何か知らぬけれども、やっぱりここははっきりしておきたいのでもう一回言いますけれども、総理がおっしゃることはわかるんです。これから私は言うんです。私がこれから言おうとしていることを総理が言うておるわけです。  その前提として、総理、今やろうとしている税制改革というのは、要するに従来の税体系の改革とは全然違う。全く税を負担していなかった人たちも負担をしなくちゃならない。そういうふうな意味では、やっぱり消費税というのは大変な税制改革であります。したがって、これだけ大きな税制改革をやる場合には、当然国民の信頼を裏切ってはいけないし、また国民の合意が必要ではありませんかと、こう言うているわけです。
  167. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 一億二千万国民ことごとくに意見を問うということは、これはなかなか難しいことだと思いますが、大筋、峯山委員のおっしゃいました論理というものは、私も決して否定するものではございません。
  168. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 総理、それはその答弁でも結構ですけれども、そんなところへ何で一億二千万が出てきてどうのこうのと、そんな問題じゃなしに、これだけ大きな税制改革の場合には当然私は国民の信頼を裏切ってはいけないし、国民の合意が必要だ、当然それを基本にして考えていくべきである、そういうふうに答弁が返ってくるんじゃないかと思っていたんですが、三回も四回も言わなきゃなかなか返ってこないので本当にもうしんどいです。  そこで総理、やはりこれだけ大きな税制改革をやるわけですから、国民の信頼という観点から考えてみますと、いろんな問題がたくさんあるわけです。  まず一つは、昭和五十四年の十二月二十一日、衆参本会議におきます財政再建に関する決議というのがあります。これは総理がたびたびおっしゃっている問題でございますが、この決議に対する総理のお考えを初めにお伺いしておきたいと思います。
  169. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この国会決議が行われましたときも、私が大平内閣の大蔵大臣であった当時でございます。これはいわゆる一般消費税というものについて、昭和五十三年のたしか税制調査会から、五十五年度からこれを導入すべく検討を始めよ、こういう答申に基づいて、そのときに選挙がございましたが、そうして国会で相談をいたしまして、これはその仕組み、構造等について国民の理解を得るに至らなかった、こういう結論に到達いたしましてなされた財政再建に関する国会決議であります。したがって、当時のいわゆる一般消費税(仮称)というものは財政再建の手法として位置づけられておった。そして議論の中の書き出しから、国民福祉充実のために安定した財源が必要であるという言葉は、あのときに集まった先生方あるいは私も含め、福祉目的税的な考え方を将来念頭に置いておったかの印象は、これは印象として私自身が持ち続けて今日に至っておるわけでございます。
  170. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 財政再建は一般消費税(仮称)にはよらないということは、そこのところだけはずっと我々何回も国会でも議論をしてきたわけであります。  そこで、これは事務当局にお伺いいたしますが、大平内閣で計画をしたこの一般消費税、これは簡単に申し上げますと、今回の消費税の帳簿方式だったのか、売上税の伝票制、いわゆるインボイス方式を考えていたのか、どっちだったんですか。
  171. 水野勝

    政府委員水野勝君) 法案として仕組んだというところまでいっておりませんので必ずしも明確ではございませんが、帳簿方式というものに近いものであったと思われます。
  172. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 結構です。  総理、この財政再建の決議による一般消費税は、これは帳簿方式であったということだけ頭に入れておいてください。  そこで、これはこの程度にしまして、次に総理、もう一つは中曽根内閣は選挙の前に大型間接税は導入しないということでさんざん国民に公約をされました。そして、国民からは公約違反だということで、昭和六十二年の春に提案されました売上税が結局廃案に追い込まれました。そういうふうな事実があったわけでございますが、中曽根内閣であれだけ導入しないと言って国民からもさんざん非難をされ、しかもあの年の春の統一地方選挙では自民党さんは惨敗されました。結局、売上税がその根幹にあった。これは総理も御存じのとおりであります。  そこで、その公約違反の大型間接税、結局売上税の名前だけを変えて今度総理消費税を導入しようと今しておるわけです。国民の立場から見ると、やはり六十一年の七月の同時選挙というのが国政レベルの大きな選挙であるわけです。あの選挙は大型間接税は導入しないと、当時の総理であった中曽根さんが、それこそもう新聞紙上ずっと私も記録を随分見てみましたが、総理も覚えていらっしゃると思いますけれども、「国民、党員の反対する大型間接税をやる考えのないことをはっきり申し上げておく」とか、とにかくいっぱいあります。当時大蔵大臣でありました竹下総理も、「「今後、政府税制調査会審議する問題なので、予見を与えるべきでない」としながらも」「「一般消費税のようなものは取り上げない」と明確に答弁している」「同趣旨国会決議も行われている——と、一般消費税導入の考えのないことを改めて強調したうえで「そうした点を整理すれば問題はないと思う」」と、当時から非常に回りくどい答弁をしていらっしゃいますが、やっぱり当時の記録を見てみますと、いろんな点で明確なわけです。  しかも、中曽根総理は、自民党員が反対している大型間接税は私は反対だと、そういう性格のものは一切やらない、こういう議論は随分ありました。こういうふうな議論があって、その後国政レベルの選挙は一回も行われていないわけです。そんな中でこの消費税を導入するということについては、総理はここでいろんなことをおっしゃっておりますが、国民の立場からすればやはりそれは公約違反だ、国民の信頼を裏切るものではないか、こういうふうに私は聞こえるわけでございますし、見えるわけでございますが、この点に対する総理のお考えをお伺いしておきたい。
  173. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、確かに中曽根総裁の発言がありました後、一つ国民が反対し、党員も反対するような大型間接税と称するものはやる考えはない。二番目、いわゆるマル優制度については老人とか母子家庭とかの社会的に弱い人は対しては、これを維持していく。しかし、不正を行っている者については是正しなければならぬ。これが文章で選挙対策本部から出しましたものでございますから、公約というならばこの点であろうということが言えないわけでもございませんが、峯山委員おっしゃるのは、それよりもムードとしてもう大型間接税反対というのが公約かのごとく映っておったではないか、こういう御指摘であるならば、私もそういうムードとしてそうしたことがあった、映っておったではないかという感じがないわけでもございません。その前に、六十年の二月でございましたか、前総理が発言をされたことも承知いたしております。  したがって、今回の消費税は大型間接税とは何ぞやというところから、大型とは、それは中型よりも大きいとか、いろいろ議論がありまして、結局、私としては懸念というところでひとつイメージしていただこうではございませんかと、大型間接税の定義というとなかなか難しいというので、最初いわゆる六つの懸念、七つの懸念、八つの懸念と、そして懸念という言葉を本院でもお使いいただいて、私はうれしゅうございます。中和という言葉と懸念ということは私自身考えて、自分の口で言ったことでありますだけにうれしゅうございます。したがって、そこで大型間接税というのは懸念の中にイメージされてきたというふうに思うわけでございます。  そうして、今度は今おっしゃいましたように、確かにこれから売上税というものが昨年提出されて、結果として御承知のとおり廃案になりました。そのときの、さればもう一度反省をしようではないかというところから出発いたしまして、したがっていつも私は正直に申し上げておりますが、いわゆる多段階、網羅的、普遍的というようなことが念頭にあっただけに、免税点の問題とかいわゆる例外品目をたくさんつくりました。それがまたかえって批判を受けましたので、今度の成案を得たものは、売上税よりはいわば普遍性というものは近づいておるのではないかという印象があるとおっしゃれば、私はそのとおりでありますと正直に申し上げて今日に至っておる。  少し長くなりましたが、以上のような経過であります。
  174. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 総理、六つの懸念、八つの懸念とおっしゃっておりますこと、あるいは中和ということ、この法案審議する我々の立場から言えばこれはわかるわけです。そして、その六つの懸念、八つの懸念を総理がどういうふうに克服されているかということを聞きたいわけですが、これは後で聞きます。  しかし、国民の立場からすればそんなことわからないわけですよ。国民の立場からすれば、今回導入しようとしております消費税というのはやはり大型間接税である、こういうふうに映っておるわけです。そして、これは選挙で約束した公約違反である。公約違反のこの法案をごり押しするというのであれば、これはやっぱり国会を解散して選挙をやるべきだ、国民の信を問うべきだ、それが原則であり、そうでないといかぬと私は思うんです。  また、税の国民の信頼関係という点からいきましても、国民の立場から言えばやっぱり我々の信頼関係を裏切っておる。特に、逆進性という問題が総理のこの八つの懸念の中に一つあるわけでございますが、いわゆる零細な庶民の中からは、今まで税を払わない、払わなかったというよりも払えなかったわけですよ、生活が苦しくて。先ほどから年金生活者の問題がいろいろ出てまいりましたが、そういう方々は自分で税を払いたくても払えないような状況にあるわけですから、そういうような人たちまで結局税を払わなくちゃならないようなことになったわけですから、やっぱり総理は前々の我々に対する公約を裏切った、こういう観念しかないんじゃないかと私は思うんですけれども、ここら辺のことに対して総理はどういうふうにお答えになりますでしょうか。
  175. 竹下登

    国務大臣竹下登君) イメージとして大型間接税という言葉があったことは事実でございますが、定義は確かにございません。したがって、大型間接税をイメージする意味においてこういう懸念を持つ、こういう形で私は整理整とんをさせていただいたわけでありますが、国民の皆様方の中に、あのときいろんな話を聞いたがそれと今度の新税との問題は違うじゃないか、こういう意見があることも十分承知しております。  しかし、四年間という、反復するようでございますが、大事な大事な任期というものがあります。そこには国民のニーズの変化もございましょう、そして我々のコンセンサスを得ようとする努力のいろんな角度からの変化も生じてくるであろうと思いますので、私は今次税制で総選挙でもって国民の信を問うという考え方はございませんので、このようにして一生懸命お答えをいたして今日に至っておるわけでございます。
  176. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私の質問には答えていないように私は思います。  やっぱり総理総理がおっしゃる四年間の任期が大事で大事でというふうな、大事な大事な任期という意味、これはよくわかります。わかりますが、それと同じぐらい税の抜本的な改正をやられるわけですから、国民の立場からすれば、前のあの選挙のときには少なくともやらないということで約束して選挙をやられたわけですから、その結果が現在の三百議席という議席になっているわけですから今回は少なくとも選挙をやって、そして国民の信を問う、そして国民の信頼と合意を得てやるというのがやっぱり基本じゃないかなと私は思うんですけれども、再度お伺いしておきたいと思います。
  177. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 峯山委員のおっしゃるような議論があるということは十分承知をいたしております。  ただ、私の考えは先ほど申し上げたとおりでございます。
  178. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは総理、この国民の合意という点を総理に再度お伺いしてみたいと思います。  こういうふうな選挙はやらないでこのまま今回の税制の導入をやりたいという総理の御意向はわかりましたが、何でかという意味は、そこのところはわかりませんが、やっぱりやりたいということはわかりました。  そこで総理総理が私の質問の初めに、税制の問題については国民の合意が大事だというのは総理もおっしゃいました。そういうような意味で、それじゃ、消費税の導入について国民の合意が得られているのかどうかという点については、総理はどうお考えですか。
  179. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 基本的には税制改革は必要だというコンセンサスはあるんじゃないか、こういうふうに思います。  それで、今度はいわゆる消費税そのものにつきましては、理解の度合いというものは大変深くなっておるというところまではなかなかいってない。しかし、こうして国会で真剣な議論をしております中で、審議しつつ理解を求め、理解を求めつつ審議してきた、それが徐々にあらわれつつあるであろうというふうに私は思っております。
  180. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いや総理、実はきょうもこれ、こんなことばっかりやっていたら時間がないというのがようわかってまいりましたが、いろんな新聞社の世論調査等を全部持ってきたんです。そして総理は、この世論調査のこれを見ていらっしゃると思いますけれども、理解が得られるに従って反対がふえておる、これは事実です、世論調査の中で。  もう詳しく一つ一つ申し上げませんが、例えばいろんな新聞社の世論調査、とにかくまあ日経が六一・六%です、反対ですね。そのほか朝日も東京もありますし、ほとんどがもう六割、七割です。それでしかも、こういうふうな反対は消費税というものが国会の論争で理解が深まれば深まるほどふえておる。そしてしかも、もう一つ大変なことは、竹下内閣の支持率もだんだん落ちてきている。これはどういうことなのか、どういうふうに御理解をしていらっしゃるかということをお伺いしておきたいと思います。
  181. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず後者の方。すなわち私、竹下内閣に対する支持率の低下でございますが、これはもう挙げて竹下登の不徳のいたすところであると、こう思わざるを得ません。  それから前者の問題につきましては、やはり税制というのは、それこそ古い学者も言うように、新税はすべて悪税であるというところから入っていくであろうという感を深くいたしておりますから、一生懸命このようにして、きょう世論調査があったらどうなるかはわかりませんけれども、一生懸命理解が進んでいくことをまあ期待しながらこうしてお話を申し上げておるところであります。
  182. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは総理、それだけじゃないんですね。もう一つは、今度の消費税のいわゆるこの税調の特別委員の中に、リクルートの関係者が税調の委員の中に四人も出てきている。しかも前大蔵大臣の宮澤さんも、提案者であった宮澤さんもリクルートの関係者であった。しかも、総理もそれにかかわり合いがある。ここら辺のかかわり、いわゆるリクルート絡みの問題、これは消費税に対する大きな国民の不信、政治に対する国民の怒りというものがやっぱりこういう世論調査にも私はあらわれているんじゃないかと思うんです。  そういうふうな意味で、こういうふうな問題をやっぱりきちんと一つずつ解決をして、そして国民の合意を得られるような努力をしなきゃいけないと私は思うんですが、いかがですか。
  183. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 税制そのもので見てみましても、貴党から出された基本法というのは特に手順を大切にしたものでありますから、それ自身考えの一端があの基本法にあらわれておるではないかと思います。  それから、リクート問題というものの御指摘でございますが、一体竹下登に提案する資格があるかというようなことを国民の皆様方の中に思っていらっしゃる人は、私はあるであろうというふうに思っております。
  184. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 総理答弁を聞いておりますと、何かこうちょっとどこか外れているような気がいたしましてなかなか次の質問にすぱっと入りにくいところがあるんですね。  時間がございませんので次の質問に入ります。  そこで総理、先ほどから総理税制改革については国民は反対はしていない、こうおっしゃっていますね。私もそのとおりだと思うんです。税制改革については国民は反対していないであろうし、それを望んでいると私は思います。それは何を望んでいるかということを、総理、一遍お聞かせいただきたいと思います。
  185. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、基本的には税が今の社会にどうも適応しなくなったことから来る重税感、不公平感、これを基本として、やはりそれの集約したところは中堅給与所得者の方の中に一番存在しておるではないか、こんな印象を持っております。
  186. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 端的に言えば、総理がおっしゃるとおりだろうと思いますね。国民サイドからの税制改革の要請、その内容につきましては、今、総理がおっしゃいましたように所得税、この減税の問題なんですよね。もともと所得税というのは、実質所得の上昇がなくても名目所得の上昇がありますと、税負担はどんどんふえていくわけでございますから実質増税になるわけですね。そういうような意味で、特に五十年代に入りましてからは、私が調べましたところ昭和五十二年と五十九年、そして六十二年、三回だけですね、減税がありましたのは。したがって、それ以外は減税が行われていないわけです。したがいまして、その間ほとんど実質増税が進行した、そして中堅所得層に税負担が増加をした、そういうことだろうと私は思います。  そういうような意味で、特に家計負担がふえる中堅所得層にこの所得税、住民税の大幅減税をしてもらいたいという要望がだんだん強まってきたわけです。そんな中でクロヨン問題や資産所得、今回問題になっておりますキャピタルゲインの非課税の問題、こういう不公平税制の問題、そういうふうな問題がいわゆる一般納税者の重税感をだんだん高めていっている。したがって、中堅所得層を中心とする大幅減税をぜひやってもらいたい、と同時に、不公平是正をぜひやってもらいたいという、そういう形で国民の声は出てきたんじゃないか、要請が出てきたんじゃないかと思うんですが、いかがですか。
  187. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに、名目所得、実質所得おっしゃいました、そのとおりです。したがって現実問題としては、いわゆる所得税の所得の種類十種類の中、なかんずく給与所得者、その中堅所得者というところに重税感というもの、それが不公平感になっておるというのが一つです。  それからいま一つの問題は、同じ税目の中などにおける不公平感もございます。それが中には情緒的不公平感というものもあろうかと思いますが、今峯山委員の御指摘のとおりであると私も思います。
  188. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ですから総理国民が要望いたしております税制改革の要請というのは、政府が言っておりますように、いわゆる薄く広く負担を求める消費税を導入してくれということとはちょっと違うわけですよ、これ。ですから、国民の要請をそれこそ逆手にとって、国民が反対しているこの消費税を導入しよう、こういうふうにしている。結局これは、国民の信頼と合意という関係や税の基本に関するいろんな行為からも全く反している、そういうふうに言わざるを得ないと私は思うんですよね。ここら辺のところについてはいかがお考えですか。
  189. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 消費税というのは、確かにこれは新税でございます。したがって、それに対する国民の皆様の反応というのは私もよくわかります。確かに、今おっしゃいましたように、税制改革、税理論からする税の構築の仕方というもので所得、消費、資産、こう言っておりますが、いわゆる不公平感の問題というのは、その所得、消費、資産のバランスの不公平感もございますけれども、一番情緒的にわかる不公平感というのは、今御指摘なさったような不公平感というのが税制改革の機運を盛り上げたものだということは私にも理解できます。
  190. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ですから、理解できているんだったらやめてくれたらええんやがな、片っ方は。理解しながら消費税導入するというのは、そんなのは答弁になっておりまへんで。やっぱり何やこれおかしいですな。  今の国民の要望という点からいいますと、不公平感と総理はおっしゃいますけれども、要するに重税感、不公平感というふうな総理の言葉をとっていいますと、それは非常に強いわけですよ。そこのところをしっかりやって、そしてああよくやってくれたというふうな、そしてしかもその上にどうしても財源的にもいろんな面でもどうしようもない、これはどうしても何か新税を持ってこなければしようがないというところまでいけば国民もそれなりに納得するわけですけれども、そういう理由が全くなしにいわゆる逆手にとってこの新税を導入するからそこが問題なのであって、そこのところはやっぱりわかりやすく御説明いただきたいと思うし、またはこの消費税のところだけを今回の六法案の中から外していただくとか、そういうことをやっていただかぬと私はいかぬと思うんですが、いかがですか。
  191. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 消費税のところだけ外すという問題は後にお答えするといたしまして、その他の問題というのは、まさに貴党の御提案いただいた基本法そのものであろうと思うのであります。とにかく、幸いにして環境からいえば税収も比較的いい今日の状態ではないか、何で急いでやらなきゃならぬのか。したがって、まずは俗に言われる不公平税制というのを徹底的に議論し、それを改正し、さてというので財源とかそのときに改めて、消費、資産、所得等のアンバランスという問題を時間をかけて議論してこれを実行に移せばいいじゃないかというのが貴党の提案されておる手順法でございます。  私が申しておりますのは、そうした手順を踏んでも恐らく今私どもが考えておるような結論に帰結するではなかろうか。さようしからば、できるだけ早くこれが実行に移されることが好ましいではなかろうか。したがって、矢野さんの手順法と私どもの改革法というのはそこのところの相違があるなという、終局点は別として、そんな感じで、といいましても余り大きな声で言うほど勉強したわけじゃございませんけれども、三時間ほどは本当にすっぽり勉強さしていただいて、そのように理解さしていただいておるところでございます。  それから、外すという問題、これはやっぱり税収というのはいわゆるそういう総合性の中で議論されるわけでございますので、これを外して減税の部分等だけを始末して次の段階へ進もうというのは、整合性の上からこれにイエスというわけにはまいらないということでございます。
  192. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 総理も、現在の財政状態や税収の問題等から考えて、そんなに急がないということは、先ほども私聞きませんでしたが、総理自身がおっしゃっているわけでございまして、そこのところにまいりますと、やはりいろんな問題がまた別の議論として出てくると思います。  我が党のいろんな手順等の問題の話が出てまいりましたが、我が党は要するに不公平やそこら辺のところをがっちり時間をかけて検討をしましょう、その上でどういう税制にするかはまたその後検討しましょうということですから、大分違うんですよ、これは中身としてはね。  そこで、それは別にいたしまして、これは総理、ちょっと論点を変えまして、時間も余りありませんので、要するに消費税を何でそんなに急いで導入しなくちゃいかぬのか、そこのところに論点を絞ってお伺いしたいと思うんですが、何のためにこんな急いでやらないといかぬのですか。
  193. 竹下登

    国務大臣竹下登君) そんなに急いでどこへ行く、こういう趣旨の御質問でございましたが、それはやっぱり世界の税制の中で考えてみましても、本当に近代国家がいろいろな経済的、社会的変化の中で今来ておるのが、まさに所得、消費、資産というものに着目した税制というのが相対的にいかにあるべきかというところへ私は来ておるというふうに思えます。それには今のように社会的、経済的安定があるときにこそ導入するべき時期ではなかろうか、このように考えております。  すべてにおいて世界一がたくさん我が国にございますが、税制だけはいわゆる先進国の中で消費一般にかかる税制というもののないという姿、これは外国がやっていれば皆いいというものじゃございません。日本はもっといい税制考えるだけの能力があるというぐらいなプライドは持つべきでございますが、やはり世界全体の状態を見ますときに、人類社会の近代国家へと移行する推移の中で当然出てくるのが今度御提案しておる税制ということに帰結するではなかろうかというふうに思います。
  194. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 総理、今のお話を聞いておりますとますます何でということがわかりにくくなってきたんですけれども、いわゆる今余裕がある、安定しているときにとおっしゃっておりますが、まず国民の要望は大幅な所得減税でしたね。そのためにやるわけじゃないんでしょう、総理ね、余裕があるわけですから。その余裕の問題として事務局へお伺いしておきますが、六十一年の決算、六十二年決算で自然増収はどの程度になりますか。
  195. 水野勝

    政府委員水野勝君) 六十一年度におきましては、補正後予算額に対しましては二兆四千億円程度の増収となってございます。ただ、年度途中、補正で減額をいたしましたので、当初予算に対しますと一兆二、三千億でございます。  六十二年度の決算といたしましては、こうした土台増を受けてございましたので補正後予算額に対して三兆七千億円程度の増収となってございます。ただ、この中の相当な部分は土地、株式等の譲渡によりますところの税収増加といったものが多いわけでございますので、これが定性的に定着したものなのか、一過性的なものであるかにつきましては十分考える必要があるわけでございます。
  196. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 当初予算額、六十二年の、片一方だけ言わないでみんな言ってよ。
  197. 水野勝

    政府委員水野勝君) 六十一年度はただいま申し上げた二兆四千億円でございます。六十二年度は三兆七千億円でございます。
  198. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 六十三年度はどの程度になりますか。
  199. 水野勝

    政府委員水野勝君) ただいま申し上げました六十二年度は補正後に対して三兆七千億円でございましたので、六十二年度決算額と六十三年度予算額とを対比しますとむしろ九六・四%でよいという形になってございます。これに対しまして六十三年度の判明しております十月末まででございますと、累計で五・一%の増加となってございます。したがいまして、現時点での趨勢からいたしますと、六十三年度におきましてもある程度と申しますか、相当な規模の増収が生ずることは確かでございます。  こうしたこともございまして、今国会冒頭におきまして六十三年度としての減税を御提案しと申しますか、処理をされたことにつきましてもこうした背景が背後にあったものと思われます。
  200. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 総理、今、局長の方から説明がございましたように、税収だけで見ますとこれは今の消費税を導入する必要は全くないと私は思うんですね。財政的にもいろんな面で余裕がある。したがって、これは消費税を今やらなくてもいろんな対応で十分やっていける、私はそういうふうに思うんですけれども、総理のお考えはいかがですか。
  201. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 税制そのものは全体として整合性を持って包括的にやるべきものでありますが、自然増収等の問題がございますから、したがって、相続税を今年一月にさかのぼりますとか、所得税は一月実施であるとかという組み合わせになっておりますわけでございますが、元来包括的一体的に行うものである。したがって、仮に今の自然増収がありましても、それこそ私どもは赤字公債脱却というようなことを念頭に置いてこれは財政改革の面から進んでおるわけでございますから、それがあるから単年度の減税財源に不自由しないというだけでやるわけにはまいらないというふうに考えます。
  202. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 今、総理がおっしゃいましたように、結局は財政改革ということもあるからということでありますから、総理、先ほど私は一番先に昭和五十四年の決議の話を申し上げましたが、これからの長い将来、例えば二十一世紀の財政状況の展望、そういうような点をいろいろと考えてみますと、そういうような将来のことも考えながら、あるいは総理は先ほど福祉目的税的な問題も一言発言になりました。そういうようなことを考えてみますと、結局、今総理が小さな声でおっしゃった財政改革というふうな点にもやっぱり焦点が当たっているんだろうと私は思うんですが、いかがですか。
  203. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 全体の流れから申しますと、基本的にいわゆる一般消費税(仮称)、昭和五十四年度の財政再建に関する決議で否定されたわけでございますが、あのときはまさに財政再建というものが大きな背景に存在しておったと私は思います。  そこで、決議をつくりますときの書き出し方が、国民福祉充実のためには安定した財源が必要であるというのは、財政再建税的な考え方ではなく福祉目的税的な考え方というのが何となく作文するときに精神的には一緒に存在しておったなという感じが素直な私のこれは印象、さかのぼって感ずるところでございます。    〔理事斎藤十朗君退席、委員長着席〕
  204. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 結局、総理はいろんなことをおっしゃっておりますけれども、今、総理がおっしゃっていることは昭和五十四年のあの決議のとおりになってきているわけですよ、総理の今の目的は。今いろいろやろうとしている、消費、所得、資産にわたっていわゆる税制改革をやろう、消費税を導入しようという理由を先ほどからいろいろ説明されました。それは結局は五十四年当時のことをそのままやろうとしていらっしゃるわけです。しかもこの点については、総理、ことしの二月二十二日のこれは衆議院の予算委員会でこの問題について相当議論をしていらっしゃる。その中で総理は、「いわゆる一般消費税(仮称)は財政再建の手法としてはとらないことになっておりますから、財政再建の手法としては、それはこの決議が存する限りにおいては私も主人の決議に対して忠実であるべきであるという線は守っていかなければならぬなと思っておるわけであります」と、こういうように総理は述べていらっしゃいますけれども、要するにこの決議ある限りは一般消費税(仮称)は守っていかなくちゃいけないと言いながら、実際はもう片っ端からげ飛ばしていっているというのが現状じゃないかと私は思うんですが、この点についてどうですか。
  205. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは決してへ理屈を言うつもりはございません。この決議をつくりますときに私がいわゆる一般消費税(仮称)と言ったのは、税制上から消費一般にかかる税制を未来永劫に否定することをやったとしたならば、一時期であろうとも財政を担当した者としてこれは未来永劫に抹殺されるという気持ちがあったものですから、お願いをしていわゆる一般消費税(仮称)という書き方をしました。そうして今御指摘のように、その仕組み、構造等について理解を得られなかった、したがって財政再建は一般消費税(仮称)によらずまず行政改革をやろう、経費の節減をやろう、歳出の節減合理化をやろう、そうして税負担の公平の確保、基本税制の見直しなどを抜本的に推進することによって財源の充実を図るべきであるというところから見ますと、このとおりやらしてきていただいて今に至っておるというふうに言えないこともないなと。しかしそう大きな、肩怒らして言おうなどという考えはございませんけれども、本当は私はこの決議にはある程度、同じ人間が長いことその衝にありましたから、忠実であったなと思ってみずからを慰めております。
  206. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いずれにしましても、国会の決議に反したいわゆる消費税を導入しようとしているということだけは、これはもう明らかであると私は思います。  あと、いろんなことをやりたいと思っておりましたが、本当に時間がなくなりましたので多少はしょります。  そこで、これは午前中の同僚議員の質問の中にもありましたが、消費税の問題に入りたいと思うんですが、いわゆるこの弾力運営という問題ですね、これは総理、朝から私も何遍も聞いておりましたが、わかりにくいですな、これ本当に。これは総理、どういうことなんですか。これは総理の朝の答弁を私もいろいろメモしてありますけれども、もう本当にわかりにくい。これは例えば新聞にもいろんなことが書いてあるわけです。実質上六カ月延長を意味するとか、または消費者には三%の上乗せで販売してもその間の納税はしなくてもよいとか、あるいは期間中の過少申告や無申告があっても加算税は課さないとか、あるいは税務署の判断で過少申告等を大目に見るとか、いろんなこと書いてますね、これ。それできょう朝の議論はこれと全然また違うんですよ。結局この弾力運営というのは一体どういうことなのか、要するに我々素人でもちゃんとわかるように一遍御説明をいただきたいと思います。
  207. 水野勝

    政府委員水野勝君) まさに、消費税法案を含む税制改革法案全体につきまして御審議を願っておるところでございまして、この御審議税法法律が確定をいたしますれば、それを受けて国税当局はその執行に当たるわけでございます。その精神といたしまして、衆議院でいただきました、国税当局は、九月三十日までは、その執行に当たり、広報、相談、指導を中心として弾力的運営を行うものとするということでございますので、当委員会、当参議院での御審議も踏まえまして、この法律条文趣旨に即しましてその具体的な運営を考えていくということではなかろうかと思います。
  208. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 要するに消費税執行に当たっては、広報、相談、指導を中心として弾力的運営を行うというのであれば、総理、これは売上税のときにもこれと同じようなことがあったんです。あのときには、きょう公正取引委員会委員長さんが国税庁長官で、あのときの発言があるんですけれども、それはどうなっていたかといいますと、これは実はここにもあるんですけれども、売上税の執行に当たっては、納税者の方々の理解を深め、無用の混乱や不安を生じさせないよう配慮し、新制度導入後両三年の間、指導、広報を中心とした運営を行いますと、こうあるわけ。これは三年ですのや、半年えらい短くなっているんだ、ほんま。しかも、その中身がどう違うかということ、これは相談という字が一つ抜けているだけなんですよね。  だから、そこら辺のところを考えてみますと、ここら辺の中身の違いもありますし、先ほどから申したとおり、参議院のいわゆる審議を見て云々というお話がありますけれども、大体こういうようなものは参議院の運営を見なくたってやっぱり根本的にきちっと決まっているものだろうと私は思うんですけれども、そういうことも含めましてもう少しわかりやすく、例えば六カ月間は税務署の調査が会社へ入らないということなのかとか、あるいは実質上集めた税金は納めないでいいとか、あるいはもっとわかりやすくちゃんと言っていただきたいわけですよ。そこら辺のところがはっきりしないと非常にわかりにくい。もっとわかりやすくお願いしたいと思います。
  209. 竹下登

    国務大臣竹下登君) あるいはもっとわかりにくくなる危険性もございますけれども、誠心誠意お答えをいたします。  まず、この改革法で第十七条二項というのが入っております。当然これは衆議院修正でございますが、衆議院にも内閣法制局と同じようにいわゆる法制局がございますので、法律上瑕疵はないということは十分私どもも信じております。しからば何ぞやということになりますと、まさに読んで字のごとくでありまして、その執行、だからやっぱり執行でございます、その執行に当たり徴税事務等がございますが、執行に当たり、広報、相談、指導を中心として弾力的運営を行うものとすると。で、安倍幹事長の記者会見でございましたか、まさに読んで字のごとしであると、こういうことでありましたが、私も言わしてもらえば、そういうことであろうと。  そこで、今わかりやすく、恐らく念頭にあるのは四月決算、六月決算等々が、いわゆる納める期限が延ばせるかどうかとか、そういうような具体的な問題を今最終的に詰めを行っておるという段階には今の時点ではないわけでございます。それと、やはりそれに基づいて参議院で御議論をいただいておるわけでございますから、まさに衆議院のアバウトさを補うとでも申しましょうか、いわゆる足らざるを補う意味における議論をやっぱり聞く耳を持ってその執行に当たらなければならないということは当然であろうかと思います。
  210. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 その衆議院のアバウトさを補うため、これは非常に大きな問題だと私は思いますが、今のこれはいろいろと問題があると思います、総理。この今の執行に当たりという問題からいきますと、まず一つは、売上税のときの、売上税の執行に当たってはやっぱり納税者の方々の理解を深めるために新税導入後三年というあれがあるんです、両三年。それからしますと、半年というのは非常に短いということもあります。それから、それだけじゃなしに、これはアメリカでも税制を運用できるように実際なるまでには法制定後少なくとも十八カ月を必要とする、そういうふうなアメリカの先例もあるわけですね。  そういう点からいきますと、これは細かいこと国税庁にお伺いしてもいいわけですが、準備のことや何やかやいろんな点からいきましても、これはやはり無理じゃないか。やっぱり来年の四月一日施行なんというのは、これはもういろんな問題点を提起する。朝の議論にもありましたけれども、ガイドラインがはっきり決まっていないわけですから、これからつくってちゃんとするためには相当時間もかかるであろうし、またいろんな理解を深めるといいましても、これはいろんな問題が出てくるんじゃないか、私はそういうふうに思うんですが、御見解をお伺いしておきたいと思います。
  211. 水野勝

    政府委員水野勝君) 新税でございますので、その当初は弾力的に指導を中心にして対処していくという執行面の配慮は、ある意味では当然のことであろうかと思います。そうした意味で、御指摘の両三年の間はということが前回もあったわけでございますが、しかし、そういうような当然のことでございますものを法律条文としていただいたということは、それはやはり重大な意味があるものと受けとめて、それにつきましてその趣旨が生かされるように、単に精神としてそういったものでないということで最大限に対処していくべきものと、修正条文をいただいた国税当局としては対処していく必要があろうかと思うわけでございます。  アメリカは税制、例のレーガン税制改革の中の財務省報告の中にそういう記述もございました。ただ、アメリカはもう連邦税ではほとんど間接税というものが現在ないわけでございます、州税、地方税の段階ではございますが。一方、我が国といたしましては、一応現在まさに物品税を中心とする個別消費税はかなりのものがございまして、そのための執行体制もあるわけでございますので、そうしたものが執行面でも移行をしていくという面もありますから、アメリカの場合とはかなり違うだろうと思います。  売上税につきましてのいろいろな御指摘をいただきまして、納付の面につきましては極力納付を中心とする手続面等につきましては思い切って大幅な簡素化を図ったものでございますので、その点につきましての実施段階につきましてはかなりお手数を煩わせないようになっているつもりでございますけれども、その準備に当たりましては万端を期する必要があるわけでございまして、そうした意味を含めてこの十七条もいただいたものと思っておるわけでございます。
  212. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 先ほど行いました答弁で私アバウトという言葉を使いましたが、極めて不適切な言葉でございましたので、これは取り消させていただきます。  私が申しますのは、これは最終段階衆議院委員会でこの点の議論がなされておりません。したがって、この執行につきましては、公党間において再確認された合意の趣旨に沿った実のあるものをお示しするよう、本委員会での御審議を踏まえつつ積極的に検討を進めてまいる所存であります。今も検討の途中にあります。
  213. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 総理、これは売上税のときに両三年というのがあるんですよね。これはどうですか。
  214. 水野勝

    政府委員水野勝君) 雑誌に御指摘のそういうものがございます。また、当時の国税の執行体制としてもそのような方向で準備、勉強をしておったということはございまして、これはこうした新税でございますので、そのくらいの期間執行の心組みとしてはそうした心構えでいくべきだということを当時の執行当局でおまとめになって、まだもちろん立法化されていなかったわけでございますから、内々の心組みでおっただろうと思われるわけでございます。  今回のは法案、法文としていただいておりますから単なる心組みでなくて、その法案に書かれたということのその趣旨を踏まえて、両三年は当然のことながらそういう指導体制を持つと思いますけれども、その九月三十日までを特に明記して修正をいただいたということは、これは単なる心組みとしてこういうことで対処していくということではやはり法の趣旨には沿わないと思いますので、その両三年とはまた意味は違うものとして受けとめる必要があるものと考えます。
  215. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 時間が本当に短くなってまいりましたので、もういろいろとはしょって質問さしていただきたいと思います。  総理、この消費税の税率三%の歯どめの問題であります。総理も八つの懸念の一つに挙げていらっしゃるわけです。やっぱり八つの懸念については、国民が心配するであろうということを総理は挙げられたわけでございますから、どういう歯どめをお考えでございますか。
  216. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私が申してきましたことは、いわゆる租税法定主義の建前からいえば当たり前のことでございますけれども、要するに国会というものが存在するから容易に上げられるものではないという趣旨のことを申しました。それについては、それは租税法定主義の立場から当たり前のことではないか、こういう御指摘がございました。したがって、私が申し上げましたのは、さらにこれを提案するに至ってぎりぎりの議論をした三%でございますから、そういうものを変えられる環境にあろうはずがない、そのように申してまいりました。なお、それに対して申すべきだということからして、私がこのいわゆる竹下内閣においてそれの提案をすることはいたしませんと申し上げてきたわけでございます。  そこで、それをさらに私がきょう申し上げるといたしますならば、税率を引き上げるかどうかという問題は、引き上げも引き下げも含めて、結局は財政需要と税負担の関係などについて将来の国民がそのときどきに与えられた条件のもとで選択する問題であります。私の内閣においてこの税率を変える考え方はございませんが、国民の意識の変化の中で後世代の国民の選択権を縛るようなことだけは避けるべきだということをいつも申し上げておるところでございます。
  217. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 総理、きのうも私、総理答弁を聞いておりましてちょっとぞっとしたことがあるんですけれども、それは税率の引き上げの問題について、総理答弁の中でヨーロッパ諸国の例を挙げられました。いわゆるヨーロッパ諸国がこの付加価値税がどんどん上がっていったのは、いわゆる所得減税とペアで、それでどんどん上がっていった。そして最後に気がついてみたらあんなに高くなっていたと、こういうようなお話がありました。総理、これはもう大変なことでございまして、現実に我が国でもそういうことがある可能性があるわけですよ、これは要するに、先ほどから議論してまいりましたように、所得減税というのは、これはできるだけ毎年やらないと実質増税になる可能性があるわけです。それがたまってきて片っ方で減税をする、消費税を上げろと、こうペアでやられたんじゃこれはたまったものじゃないわけです。そういうような意味で、私はこの点について総理のお考えを再度ただしておきたいと思います。
  218. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに、歴史をひもといてみますと、今御指摘のとおりでございます。したがって、そういう気がついてみたときには国民負担率がこのようになっておったというあしき一つの先例というものがあるじゃないか、だから容易にそういうことをやるはずもないことだという意味で申し上げたわけでございます。ヨーロッパはこうなっているから将来そうすりゃいいじゃないかとかというような気持ちで申し上げたわけじゃございません。むしろ、非礼に当たるかもしれませんが、そういうあしき先例というのを踏んではならないなという考え方があるから申し上げたわけでございます。
  219. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 わかりました。総理は、ヨーロッパがペアで上げてきたこのことをあしき先例とおっしゃっているわけでございますから、そういうことはしないということであろうと思います。わかりました。その点は承っておきます。  それでは次に、少しずつこれもはしょりますが、いわゆる衆議院から積み残してまいりました石油諸税の問題があります。  この問題については新聞でもいろいろと報道されておりますが、これは、特に軽油につきましてはトラックの業者とガソリンスタンドとの問題でありますし、ガソリンにつきましては一般消費者がもろに受けるわけであります。しかも、庶民がタックス・オン・タックスのいわゆる二重課税という苦難に満ちた負担をしなくちゃならないというんじゃ困るわけでございまして、この点についての対応をお伺いしておきたいと思います。
  220. 水野勝

    政府委員水野勝君) タックス・オン・タックスという御指摘がございましたが、タックス・オン・タックスという意味におきましては酒、たばこ等、関税等もそうでございます。しかし、酒、たばこ等につきましては調整減税が行われて税率が引き下げられている、まさに石油諸税は特定財源でございますので調整減税がまともに行われなかった、そこが違うところでございます。したがいまして、石油諸税につきましては、この夏にこの点を念頭に置いて総合的になお引き続いて検討するということにされてございました。  この問題は、昭和六十四年度予算、昭和六十四年度税制改正の中で解決を図る方向でございますが、もうすぐのことでございますので、鋭意関係者で詰めておりまして大詰めになってきておるところでございます。適切な解決策を決定いたしたいと思っておるところでございます。
  221. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いずれにしましても、庶民が困らないように、またそういう二重課税というような、今、酒、たばことおっしゃいましたが、酒、たばこはそれなりにそれぞれ調整をしているわけでございまして、全く調整されていない部分でございますので、よろしくお願いをしておきたいと思います。  それからもう一点、軽自動車の問題であります。  これは、今回の三%の消費税導入に当たりまして普通乗用車が非常にたくさんの減税になるのにかかわらず、いわゆる軽自動車が物品税の問題で大きな差があるために、今まではその物品税が販売にいろんな面で寄与してきたわけでございますが、今回の消費税の導入によりまして減税がほとんどなくなった。そういうような意味では軽自動車業界にとりましても大変大きな影響が懸念されるわけであります。  そういうような意味で、軽自動車についての影響を緩和するためにどういうふうな措置を講じようとしていらっしゃるのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  222. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 去る十六日に日本自動車工業会から軽自動車の規格拡大の要望がございました。  ちなみに、全長五センチから十センチの増加、幅が五センチの増加、排気量が百ccから百四十ccの増加の要望でございますが、いろいろな社会事情の変化もございますし、それを勘案しながら運輸省としましても、軽自動車の規格改定につきましては、安全と公害上の観点から関係各省と相談して検討することにしております。
  223. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それから、まだいろいろとあるわけであります。逆進性という問題については、きょうここで随分議論をしたいと思っておりましたが、残念ながら時間がなくなりました。しかしながら、これはほうっておくわけにいきません。  特に、午前中にもいろいろな議論がございました年金生活者の皆さん方のいろいろな状態を、データ的にもきょうはいろいろとお伺いしたいと思っておりましたが、実際問題として、厚生年金で食える皆さんというのは大体二〇%前後、結局八〇%の人たちは食えないということになります。そういうような意味からも、この年金の、現在給与と同じように五%条項というのがあるわけでありますが、五%の条項を、高度経済成長時代までは五%条項というのは随分生きていましたけれども、人勧でもそうですね。ところが、高度経済成長以後は五%以下のことがかえって多いわけです。  そういうような意味では、私は、この五%条項というよりも、逆に物価スライド条項というのを設けたらどうかという考えを持っているわけでございますが、この点についてのお考えをお伺いしておきたいと思います。
  224. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) 毎年物価スライドを実施することにつきましては、先般の年金審議会におきまして完全自動物価スライドの御提言をいただいたわけでございまして、その御提言を踏まえまして、次期制度改正におきまして前向きに検討する所存でございます。
  225. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いよいよ時間がなくなりましたので、もう二点だけお伺いをしたいと思います。  一つは、これは厚生大臣、個人年金保険料の控除の引き上げ問題であります。これは大蔵とのかかわりもあると思いますが、現在個人年金の控除額というのは五千円ですね。これを二倍ぐらいに引き上げたらどうか、こういうふうは考えておりますが、この点に対するお答えをいただきたいと思います。  それからもう一点、通勤手当の問題であります。これは非常に大きな問題でありまして、最近、新幹線とかいろいろな電車の長距離通勤者が非常にふえてきたわけですね。そういうような意味で、二万六千円を超える部分には現在所得税がかかっているわけでございますが、通勤手当につきましては全額非課税にしたらどうか、こういうふうな考えを持っているわけでございますが、これに対するお考えをお伺いしておきたいと思います。
  226. 水野勝

    政府委員水野勝君) 個人年金保険料につきましては、ほかに普通の生命保険をやっておられますと五千円でございますけれども、その普通の保険料控除は五万円ございます。その五万円も個人年金の方に使うことはできるわけでございますので、そういう意味におきましては、五万五千円までは年金のためだけに使うということも可能でございます。  一般的に、生命保険料控除拡大ということでございますと、昨年は利子課税の改正をお願いいたしました。ことしはキャピタルゲイン課税等々の資産課税の見直しを行わさせていただいておるところでございます。生命保険料というのも一種の貯蓄でございますので、現時点でこれを拡充していくということは、他の金融資産なり貯蓄形態とのバランス等から見ると問題が多いと思われるわけでございます。  それから通勤手当につきましては、毎年人事院勧告におきまして公務員につきましての支給金額の引き上げが勧告をされますと、それにスライドして非課税限度を上げてきているところでございます。今年度におきましての勧告ではこの勧告がございませんでしたので、引き上げてございません。しかしながら、御指摘のような最近の状況を踏まえまして、これは六十四年度改正におきまして限度額の引き上げを行う必要があると考えているところでございます。  しかし、御指摘のように、これを全額非課税となりますと、これはサラリーマンにおきますところの給与所得控除を中心とする必要経費論といったこととも基本的に関係いたすので問題でございますので、そこは少し問題でないかと思います。
  227. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 終わります。
  228. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 次に、上田耕一郎君の質疑を行います。上田君。
  229. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 まず、リクルート問題の中でNTTの問題を取り上げたいと思います。  真藤会長の辞任で、リクルート疑惑はNTT問題を焦点として重大になってきました。多くの新聞が、前首相周辺が焦点、つまり中曽根前首相・NTT・リクルートライン、ここが疑惑解明の焦点だと指摘しています。池田首相の元秘書官で、大平首相のブレーンで日本の権力のメカニズムや動きについて最もよく御存じで、また内閣の最高機密にかかわった経験もあると思われます政治評論家の伊藤昌哉氏、もちろん左翼ではございませんが、こうコメントされている。当時のレーガン大統領と中曽根首相の外交問題にまで発展せざるを得ないだろう、完全にロッキード第二波だと、そう新聞で伊藤さんもコメントしている。  外務省からいただいた資料を見ますと、政府の外国からの物品調達額、五十九年、六十年、六十一年、そのうちのNTT物品調達額は大体五分の一程度です。六十年はNTT七十七億円ですが、六十一年には政府調達の四百十六億円中百六億円、約四分の一NTTの調達があり、前年度と比べて約三十億円ふえています。  それで問題は、六十年の中曽根・レーガン会談、六十二年の中曽根・レーガン会談、それに伴うNTTの機器購入、それのリクルートへの転売が問題になり、何回も国会で問題になってきました。私一々もう繰り返しません。  ただ、六十二年の会談でレーガン大統領が、スーパーコンピューターの日本の公的機関の調達を期待しているとはっきりスパコンの名前を挙げているんですね。クレイ社というのは世界のスーパーコンピューターの七割のシェアですから、コピー機といえばゼロックス、スーパーコンピューターといえばクレイというぐらい有名なトップメーカーなんですね。その名前、だからスーパーコンピューターとレーガンさんが言えばクレイ社のことだとアメリカでは思われる。中曽根さんがスーパーコンピューターについてはNTTが一台追加購入すると答えられていて、当時も報道されましたが、十六日、我が党の児玉議員に対する答弁で外務省もその事実を認められました。  そこで、NTTにお伺いしますが、六十年以降、アメリカの企業、クレイ社またダイレックス社からどういう機種を何台、総額どのぐらい、これまでNTTを通じて輸入していますか。
  230. 村上治

    参考人村上治君) お答え申し上げます。  NTTといたしまして今御指摘のスーパーコンピューターでございますが、私どもといたしましては最初に買いましたのが五十九年だったかと思いますが、これは研究所の研究開発用……
  231. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いやいや、おたくがリクルートに転売したものだけでいい、それだけでいいんです。
  232. 村上治

    参考人村上治君) 転売でございますか。失礼しました。  これは、先生御指摘のように、リクルート社のRCS事業のために御依頼がございまして、一台目を六十一年五月に契約いたしまして、私どもの横浜の西局に設置工事をいたしました。さらに六十二年六月に契約をいたしまして、これは私どもの大阪の堂島のビルに設置工事をいたしましてお納めいたしております。  さらに、リクルートのリセール事業がございまして、このためのいろいろなTDM装置、モデムあるいはこれらの監視装置というふうなものを購入いたしておりまして、これもまた設置あるいはその後の保守等に私ども携わっております。  したがいましてスーパーコンピューター二台、それから回線リセール用の各種のTDM、モデムの装置、こういったものでございまして、ただいま、TDM等につきましては約百台、モデムの装置については約七千台と私承知しております。
  233. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 総額は。
  234. 村上治

    参考人村上治君) 総額、これは個別の契約でございますので、再々この場でも私お答えを御容赦願っているわけでございますが、スーパーコンピューター二台あるいはただいま申し上げましたものを含めまして、おおよその大台といたしまして約百億前後というふうにお考えをいただきたいと思います。
  235. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 資料配付をお願いします。    〔資料配付〕
  236. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 この配付いたしました資料はNTT関係の社内資料です。六十一年四月のものです。  これは、リクルート関係についての説明会をNTTのあるところが行って、その説明の中身と、いろんな質問が出ますから、その質問についての報告書です。今度はNTTがリクルートとギブ・アンド・テークで仕事やることになった、建物も建てる、それでいろいろ説明をして質問が出て、それが出ているんですね。  きょう私が取り上げたいのは冒頭の部分。まず冒頭は、「リクルート(以下R社と記す。)」となっています。今の「TDM・MODEMの設置」なんて書いてある。再販業者、リセールの業者は敵か味方か、味方だと。リクルートのR社、それから日本通信ネットワーク、NTN、これは味方だから、「積極的に前向きに処理する」。次の一番大事なのは(3)の「経緯」です。「ア、六十年四月 R社は第二種業者として登録」「イ、六十年八月 回線リセールの動き始まる。全国五十か所に拠点を置きネットワーク構築計画策定」。その次のウです。「ウ、六十年九月 NTTの日米国際調達問題とR社の全国展開計画と係わり発生」、かかわり発生です。「(百億とも二百億ともいわれている。)」、今、村上社長は約百億円ということを言われた。ここには二百億という数字も出ている。「NTTが設備を調達し建設し、R社に売りNTTが保守するギブアンドテイクの関係が発生」、発生というのですね。何で発生したかというと日米首脳会談で発生したと。明らかです、「日米国際調達問題と」というのですから。  そういうことで生まれたんですけれども、村上さん、この「経緯」は大体このとおりでしょうね。
  237. 村上治

    参考人村上治君) 今御指摘の発生というのは、どうして発生というふうな表現になったのかはよくわかりませんが、当委員会でも前に御説明したかと思いますが、六十年の七月からリクルート社の社内のシステムの余裕分を使いましてほかのお客様にも貸すというふうなことを始められまして、これがリセール事業の開始の時期だというふうに言われております。  その後、これがだんだん商売になるんではなかろうかというふうな御判断がリクルート社にございまして、そこで全国的な展開をいたすというふうなことになりますと、大量の私どもの専用線、それからそれをいわゆる小束に分割いたしますためのTDM装置あるいはお客様との間を結びます変復調装置、こういったものが大量に必要になるわけでございまして、そういったことから、これの建設工事あるいは保守受託というふうなことが私どもに御依頼がございまして、私どもといたしましても、全国的に展開いたしますそういった機器を一カ所で集中監視いたしたいというふうな、これはリクルート社もそうでございましょうし、私どももそう考えておりまして、当時そういった機能を持っておりますのが米国製のものにございましたので、こういったものを購入し、そして設置工事あるいは保守を行おうというふうなことでビジネスを進めたわけでございます。  これは、結果的にビジネス上のギブ・アンド・テークといいますか、そういったことになったわけでございまして、先生御指摘のような日米首脳会談の結果云々ということではなくて、事業の流れからそういうふうな時期にそういうふうなものが必要になったというふうに理解いたしております。
  238. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いや、発生というのは、つまり社内的には当然発生と、びっくり仰天してみんな受け取るわけです。  例えば、いろんな報道があります、強引に社内の反対を押し切り、リクルート社及び真藤前会長と社内の反対を押し切ってやったという記事もあります。  それから、さらに重要な記事がきょうの毎日新聞に載っている。今の社長の山口さんですが、当時は常務で、国際調達担当だった。それで、江副氏が六十年六月初めにNTTの仲介でコンピューター購入を山口常務に申し込んできて、断るんですよ。これがNTTの基本方針だった。ところが、これを真藤さんがひっくり返すわけだ。  おもしろいのは、六十年九月十二日にアメリカで調達セミナーがあった。それで当時の新聞を調べてみますと、日経には、山口常務が出席と書いてある、予定記事では。ところが、九月十二日の渡米直前に江副さんが真藤さんに会いに来て、これは真藤前会長も認めている、江副さんに頼まれたと。それで、セミナーには九月十二日から真藤さんが行くんですよ。つまりそれまでは、NTTからリクルートに転売なんてとんでもないこと、反対だと言っていた担当の最高責任者がかえられて、方針を切りかえた真藤さんがセミナーに行くんですよ。行く前に江副さんに頼まれたわけだ。  どうですか、こういう事実、すべて報道があり、これはNTTの関係者が証言しているというので大きな報道になっている。
  239. 村上治

    参考人村上治君) ただいま御指摘の本日の毎日新聞でございますが、私もこれは読みまして、大変驚きまして、山口社長にも直接確かめてまいったわけでございますが、これらについて真藤会長に会う以前に、山口、当時常務でしょうか、スーパーコンピューターをNTT経由で買うというふうな話があって、これを拒否したというふうなことがこの新聞に載っておるわけですが、そのような事実は全くございませんということでございます。  それから、その後の六十年九月でしょうか、御指摘の日米調達セミナーでございますが、これも、当時真藤社長は出ておりますが、山口常務も同行をいたしておりまして、むしろ実務的には山口常務以下がこういったセミナーを実施したというふうに理解いたしております。
  240. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 村上さんも、あるいは証人に出ていただかないと本当のことを言ってくださらないかもしれませんけれども、次へ進みます。  今の新聞報道の、責任ある報道だと思いますけれども、つまり真藤・江副ラインというのがここに一つあるんですね。山口常務の方針とは違う方針を強引に推し進める江副・真藤ラインというのがまず第一にある。二番目に、江副・中曽根ライン、これは真藤ラインともつながっていくルートがあります。  中曽根首相は、六十年の会談でレーガン大統領に、通信機器を初め他の問題も私自身がチェックすると約束している。これは新聞報道で共通です。一々チェックするというんですから、自分で。それで帰国後、三月二日に江副氏が公邸で中曽根首相と面談しているわけだ。真藤氏は、中曽根首相から働きかけがあったかという質問に対して、何とも言えないと。ちょっと趣旨は似ているんだけれども、何とも言えないと。否定していません。  郵政省、当時中曽根首相はこの問題でどういう指示を郵政省にしましたか。衆議院でも問題になりました。
  241. 塩谷稔

    政府委員(塩谷稔君) お答え申し上げます。  六十年四月当時でございますが、これは私ども対外経済対策を取りまとめるに当たりまして、特に電気通信関係の機器類も含めまして、「外国企業の参入機会が増大するよう努める」、これは六十年四月九日決定の対外経済対策でございまして、この点がNTTの資材調達に関係しまして決められた内容でございます。  それでこの折に、私どもの郵政大臣からもNTTの社長に対しまして外国企業の参入機会の増大の要請を行っております。ただ、これは一般的な要請でございまして、特に特定の機器を買えというふうに要請したことはございません。
  242. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 今、衆議院の佐藤議員に対する答弁より少し薄められました。  十月二十五日の議事録を読み上げます。「六十年の四月四日の経済対策閣僚会議で、総理から、」、中曽根さんです。「NTT調達と衛星が四月九日の対外経済対策の目玉だ、」、目玉というのは二つありますが、一つです、NTTは。「NTT調達については実績額を昨年以上にするようにできたらいいということの発言が」あったと、昨年よりふやせと言うんです。「明くる日、私どもの左藤郵政大臣からNTTの社長に、外国企業からの購入実績をふやすようというように要請をした」、つまりアメリカから買えということですよ。左藤郵政大臣が総理に言われて、翌日NTTに言ったんですよ。これ議事録ですからね。そういうことがあったと。  そうすると、これは江副さん、中曽根さんそれから真藤さん、そういうルートで政府をも通っていったということは確定です。確定的事実だ。  三番目に私は、真藤氏とレーガン大統領のライン、これがある、そう思います。五十八年にも電電公社、当時まだ電電公社ですが、資材調達セミナーがアメリカで開かれて、六月、真藤総裁はアメリカに行きます。当時の六月七日日経夕刊、「ホワイトハウスでレーガン米大統領と約十五分間会談した。真藤総裁は席上、中曽根首相から電電公社の資材購入に当たって積極的に窓口を開放するよう指示があり、公社としては努力するつもりであることを伝えた」。レーガン大統領はボルドリッジ商務長官から成果の報告を受けている、訪日の。問題解決へ向けて前進を喜んでいると電電公社の姿勢を評価した。「電電公社の資材調達問題は、ことしに入って日米貿易摩擦の焦点の一つになりつつある」。この五月にボルドリッジ商務長官がやっぱり日本に来ている。だから、真藤・レーガン会談が五十八年にあるんです。  そこで、通産省にひとつお伺いしたいと思います。  その後、六十年三月十五日、ボルドリッジ商務長官から村田敬次郎通産大臣に手紙が来ている。これはNTTじゃないんですけれども、日産自動車のことで、こういう内容だそうです。日産自動車がスーパーコンピューターを買う予定だと、ところが、どうも財閥の関係で日立のものになっているらしいが、スーパーコンピューターはクレイが世界一だ、品物本位でクレイを選んでくれという手紙が商務長官から村田さんのところへ来たと。五月十五日村田通産大臣は、民間の取引にとやかく言えない、日産はクレイを買うらしいという返事を出したと。こういうことを我々はレクチャーで受けたんですが、通産省、どうですか。こういう事実はありましたか。
  243. 鈴木直道

    政府委員鈴木直道君) 御指摘のございましたのは、村田元通産大臣に対する私信でございまして、その内容は、スーパーコンピューターの自動車会社におきます購入計画に関する調査依頼でございまして、その調査をいたしました結果を八五年の五月、御指摘の日付でしているというものでございます。
  244. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 じゃ、一つだけでいいよ。そのボルドリッジ商務長官の手紙の中には、クレイのスーパーコンピューターという言葉は、なるべく日本で買ってくれと、クレイ社の名前はありましたか。
  245. 鈴木直道

    政府委員鈴木直道君) 例示として書いてございます。
  246. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 例示として書いてあるんです。そういうふうなことをやるんですよ、アメリカはね。  そこで私は、第四に、小原泰治氏という、国際PR社の有名なロビイストのことを取り上げたい。  NTTは、去年小原さんはがんで亡くなられたんですけれども、小原さんを顧問として契約して雇っていた、そう言われているんですが、いかがでしょうか。
  247. 村上治

    参考人村上治君) 顧問として委嘱しておったという事実につきましては、私承知いたしておりません。
  248. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 顧問としてでなくても、真藤前会長はこの小原氏といろいろ、アメリカからの購入その他で、相談その他は受けていたわけですか。NTTと何らかの関係がありましたか。
  249. 村上治

    参考人村上治君) 国際PR社というのは、国際的な広告代理店といいますか、そういった国際的な活動に豊富な経験を持っておるというふうな会社と聞いておりますが、私ども、先ほど先生御指摘の国際セミナーといいますか、調達セミナーとか、そういった国際活動をいたします際に、そういった国際的な活動についての一部を委託するというふうなことはいたしております。そういう会社でございます。
  250. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 小原泰治氏は経歴がなかなかよくわからない方だそうですが、毎日新聞政治部編の「自民党——転換期の権力」を見ますと、最も実力あるロビイストの一人と見られている。対米関係に詳しいある自民党幹部は、彼のセッティング能力は大使館以上だと言っている。どうも五十八年のレーガン大統領と真藤総裁の会見も異例だと言われているんですね。このセットも小原氏がした、こう言われているんです。小原氏は、ロックフェラーさんと特に親しい司法長官のミースさん、IBMのエーカーズさんなどとも真藤さんとの間をつないでいる等々、そういう話であります。  それで、これを読みますと、こういうアメリカで動いているこのロビイスト、すごいことをやるんですね。ある日本の外交官が、アメリカ政府高官に会わせるために数十万ドルという大金が動いたことがある。このロビイストに、政府高官と会うのをセットしてくれと、数十万ドルというと数千万円ですよ、会うだけで。  それで、自民党で有数の外交通と言われる平泉渉国際局長は、六十年七月二十日の記者会見で次のように語っている。アメリカのロビイストに我が国が支払っている金額は世界最高で、まさに天文学的数字だと。自民党の平泉さん、前参議院議員でしたね。平泉さんがこう言っているぐらい大変な金が動いていて、その代表的人物がこの小原氏なのであります。  これを見ますと、こういう事実もある。彼は官邸に乗り込んできたと。六十年春、政府が対米通商摩擦打開策として、夏までにアクションプログラムを発表する方針を閣議決定直後、内閣官房に対して、対米PRのため大キャラバン派遣を企画したいと持ち込んだ。外務省に持ち込まなかったのは、それではアメリカに対しインパクトが弱い。首相じきじきの企画という体裁をとった方がいい。この話は、行動計画そのものの内容が煮詰まらなかったので保留扱いだったそうですが、官房内では、企画自体はさすがだとの声が起きたと。こういうことでやっぱり官房にも乗り込んで、いろいろ日米間のことをしておられる方であります。この延長線上にスーパーコンピューターの輸入問題が乗ったんですよ。先ほど村上社長はお認めになった、セミナーを開いたりいろいろやるので、この小原氏とやっぱり関係があることを。  そこで私は、村上社長に、私どもの調査はまだ十分じゃございません。これはむしろ、私どもが調べてもこれだけわかるんだから、大問題ですからね。政府ももっと調べる必要がある。この小原泰治に対して、NTTは莫大な金額を顧問料として支払っている。年間数千万円に上るのではないかということが言われているんです、表の帳簿じゃないかもしれぬけれども。ロッキードのときの児玉誉士夫などの例もあるんですよ。調べてこの委員会に提出してください、今わからなければ。
  251. 村上治

    参考人村上治君) 先ほど御説明いたしました委託関係以外には、私承知いたしておりません。
  252. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いや、あなたは今、国際調達担当の副社長だけれども、当時のことは御存じないでしょう。あなたも知らないことだろうと思うんです。だから、調査してください、調査して。ただで仕事しているわけはないですよ。こういうふうに天文学的数字のお金をもらっているロビイストなんですから、調査して提出してください。いかがですか。なければなかったで、あればあったで金額も。
  253. 村上治

    参考人村上治君) 御指摘のことでもございますので、調査はいたしてみたい、このように存じます。
  254. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 それは、じゃしっかりやっていただきたいと思います。  そこで、この問題がいよいよ重要な問題になってきましたので、私どもはこういう疑問を抱いた。ロッキード社、あれ公判で明らかになった金額は、田中ルート五億円、児玉ルートで二十四億円、合わせて総額三十一億八千万円、これ全部確証にはなかったけれども、これだけの金額が問題になったはずなんです。検察庁、どうですか。総額どのぐらいが、確定は別として、問題になりましたか、ロッキード公判で。
  255. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) ロッキード事件で検察側が把握した金額は約二十八億円でございます。
  256. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 二十八億円です。膨大なものです。コーチャン社長、これは特別経費だと言っている、販売のために必要な。  ですから、どうもアメリカの企業というのは、対外売り込みをする際に、こういう費用の支出は、ロッキードの例から見ても、ダグラス・グラマン問題を見てもあり得るんですな。かつてあった。で、今度はどうだったか。クレイ社、スーパーコンピューター二台でしょう。それからTDM、モデム。モデムは七千台、総額七十億円ですか。ダイレックス社、こういうところがこの購買費用を、いわばリベートですな、手数料を払わなかったかどうか。  私ども、赤旗のワシントン特派員にこの問題の調査を頼みました。クレイ・リサーチ社のロバート・ガードナー副社長を電話でつかまえて聞いたところ、次のように答えたという報告が今月の初めにありました。  一、売却経過は一切話したくない。二、我が社は金を払ったロビイストは雇っていない。金を払わない人はいるんでしょうな。スーパーコンピューターは非常に目立つものだから、アメリカ政府は当然関心を払っている。我々がワシントンに行ったとき、あるいはワシントンから我が社に来たとき接触する。相互利益となることだ。つまり、アメリカ政府とクレイ社はもちろん接触してやっているというんです。三、日本への売り込みには大いに関心を持っており、成功している。このために日本政府に働きかけるのも当然だ。四、中曽根首相訪米時、首相あるいは首相一行に働きかけるか接触したか私は言えない。そうした事情に詳しく、イエスあるいはノーと言える者はいるであろうと。  大体これがクレイ社の副社長の答えなんです。これを見ますと、アメリカ政府にも働きかけ、日本政府にも働きかけて成功している。これはやっぱり商売の世界ですから、今までの実例からいうとあり得るわけですよ。何らかのリベート、特別経費、販売促進費、これが日本側の政治家や真藤氏等々に支払われたのではないかという疑惑が当然出てくる、これまで無数の例があったんですから。ですから私は、検察はリクルートから流れた政治家あるいは真藤氏——真藤氏はもう出ましたけれども、そういう側面だけじゃなくて対米関係も当然関心を持つべきだ。持っているだろうと思いますが、いかがですか。
  257. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 一般的に申しまして、いろいろそういう点については興味はあると思いますけれども、御指摘の点だけですぐ検察庁にいろいろ期待されても立場は非常に困ると思うんです。そういう点を申し上げておきます。
  258. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 僕は余り期待はしていないんですよ。期待はしていないけれども、やるべきだと、勇気がないから。また政権についてはいろいろやりますから、余り期待はしていない。  そこで、一つ聞きたい。朝日新聞の十二月十七日付に興味ある記事が国正編集委員の記事で載りました。「ロッキード事件摘発で新証言」と。田中角榮前首相が逮捕される一週間前に、当時の布施健検事総長の依頼で前尾衆議院議長が議員をやめたらどうだと電話したというんです。田中氏はばかなと拒否したというんですね。それで、こういうことがあったんだけれども、これは、「布施検事総長には、田中元首相が、政治責任をとって国会議員辞任するのであれば「最高権力の座」にいた名誉と、国家への寄与などの立場から、身柄を拘束する強制捜査は差し控えてもよい、と配慮があったのではないかと見られている」と、大きな記事が載った。検察庁、法務大臣、こういう事実はあったんですか。
  259. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) そういう事実は全然聞いておりません。
  260. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 聞いておりません。しかし、これだけ大きな記事が載るんですから、かなり詳しい事実であり得ただろうと思うんですね。  そこで、法務大臣にお伺いしたい。  今度のリクルート疑惑についても、もし首相経験者が、これはいろいろ言われている、問題になった場合、その疑惑に関して、国家への寄与などを考慮して、議員をやめれば、身柄拘束の強制捜査はしないという配慮もあり得るんですか。
  261. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 仮定の問題にはお答えいたしかねます。
  262. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 しかし、こういうことがやっぱり問題になるような事態にまでリクルート疑惑は発展しつつあるということを私は指摘しておきます。ですから、国政調査権を発動してこの大きな疑惑を解明する国会の責任は極めて大きいと、改めて強調しておきたいと思うんです。  次に、消費税問題に移ります。  私は、ことしの四月七日の予算委員会で、首相とはマルクスや社会主義の話などの議論も出ましたが、大型間接税の内外の歴史を取り上げました。これは、ヨーロッパでは第一次大戦のときの戦費調達、二九年の大恐慌のときの大企業救済、こういうことのために生まれ、戦後EC型付加価値税として発展したものだ。日本でも戦前、広田内閣の取引税、これは日中戦争の戦費調達のためでした。戦後の取引高税はアメリカ占領軍の占領費、終戦処理費、当時予算の三分の一に達した、こういうものを賄うためのものであった。いずれも国民の反対で失敗しました。その歴史を取り上げました。  きょうはそれ以後の話、政府税調の答申で消費税、一般売上税問題がどういう経過をたどってきたかを若干取り上げたい。  実は私は、政府税調の答申なるものをかなり勉強しましてメモをつくってあるんですけれども、きょうはもう時間がないので本当にはしょります。  まず、大蔵省にお伺いしたいのは、当初、導入慎重論ないし反対論だった。それが検討論から導入論に変わっていくんですね。この変化した時期はいつごろだったんですか。
  263. 水野勝

    政府委員水野勝君) 昭和三十年代、四十年代の初めぐらいは高度成長期でございました。自然増収も毎年かなり発生をいたしました。その相当部分は毎年減税に充て、しかも歳出需要を賄うことができたわけでございます。そうした中におきましても、租税負担率は二〇%を超えることなく一八、一九%ぐらいで推移をいたしておりました。一方、昭和四十年代の後半になりますとオイルショック、それに伴います一時的なインフレ、それによりますところの税収が急激にふえました。そういったものを背景にいたしまして、抜本的な福祉の拡充、それからまた四十九年には所得税の大幅減税が行われました。ところが、一転いたしまして昭和五十年代に入りますと、特に五十年は税収が激減したわけでございます。  こうした全体の情勢を背景といたしまして、四十年代初めごろを境にいたしまして、こうした問題についての考え方は若干変化している、そういう傾向が見られるのではないかと思うわけでございます。
  264. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 昭和四十年代ですね。最初に変わったのは四十三年答申、長期答申と言われるものです。検討を加えるべきだというふうになっている。四十六年答申、これも「長期税制のあり方についての答申」。これがさらに積極的にこの問題を取り上げていかなければならないというふうに、つまり六〇年代後半、六八年、七一年、一九七〇年前後で変わるんですね。それまではかなり断固としたことを言っていますよ。今の共産党と同じようなことをよく言っています。  もう時間がないので、私自分で読み上げます。水野さんに読み上げてもらおうかと思っていましたが、私が水野さんに頼むと、水野さんは私の言うところでないなるべく薄いところを読み上げるから、私は一番濃いところを読み上げます。  三十九年の答申、「「今後におけるわが国の社会、経済の進展に即応する基本的な租税制度のあり方」についての答申」では、売上税の欠点についてこう述べています。  売上税は、その性格上きわめて逆進性が強く、いわゆる大衆課税となり易いほか、税務執行上にも幾多の困難な問題がある。また、その新設は、垂直的企業結合の促進等により中小企業に強い影響を与えるばかりでなく、一般的に物価騰貴と賃金引上げを誘発するおそれがあるところから、輸出品のコストの上昇を招来し、かえって国際競争力を減殺することとなることも考えられるので、たとえ輸出取引について売上税の還付制度を創設したとしても、はたして輸出の促進に寄与することができるかどうかについては疑問がある。  首相、八つの懸念を言われましたけれども、逆進性トップにしてね。こういう欠点を列挙している。現行の個別消費税体系についてはこう述べています。  現行の個別消費税体系は、特定の物品を課税対象として選択し、個々の物品の消費に示される担税力に応じて課税することができるという点で、総合消費税体系にまさつていると考えられ、売上税の創設は適当でないと認めた。  だから、今の個別の物品税の方が一般消費税、一般売上税よりはまさっている、だから適当でない、こう言っています。  そして、四十三年の長期答申では、直接税中心、個別間接税併用の現行税体系でいくのが基本方針である。そういう基本方針。  前に言った三十六年答申もこう言っている。  租税体系論からいうと、直接税を中心として個々の消費の態様に応ずる個別消費税を配する現在のわが国の体系のほうが、負担の公平上、より合理的であるとも考えられ、特段の財政需要が生ずればともかく、現段階においては一般売上税の採用については、にわかに賛成しがたい。  水野さん、どうですか。私が、政府税調でさえこう言っていたんだなというので抜き書きしたところを読みました。当時は大体そういう考え方だったんでしょう。
  265. 水野勝

    政府委員水野勝君) 先ほど申し述べましたように、三十年代から四十年代の初めまでは高度成長期で税収もかなり伸びるところ、かなりまた歳出面も割合伸びは抑えられておりましたので、負担率も低い割に減税もできた。また一方、当時の間接税といたしましてはなお酒税収、たばこ税収あたりが全体の税収の二割前後を占め、賄うことができた。こうした中にございましては、所得税を中心とし、しかも毎年かなりな所得税減税もしつつ財政需要を賄えることができたという、極めて今から思うと割合平穏な時代でございました。  その時代と現時点とでは、先ほど申し上げたオイルショック前後の財政状況、歳出状況の変化があるわけでございます。
  266. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 首相、七〇年前後ですと、ちょうどニクソン・ショックが七一年で、七三年が石油ショックですからね、そこで世界資本主義も日本資本主義も低成長に移っていく。日本は特に超高度成長が変わってきますからね。そこが確かにきっかけなんですよ。  だけれども、この答申で「特段の財政需要が生ずればともかく」というのだが、その後どういう特段の財政需要が生まれた、そのためにこういう消費税問題が生まれたとお考えですか、一般消費税の必要性が。
  267. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 水野主税局長
  268. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 委員長、ちょっと。いや、首相と。もういいですよ、時間もないのだから。
  269. 水野勝

    政府委員水野勝君) 御指名でございますので。  その点は、やはり四十年代の福祉充実がその最大というか、主要な原因であろうかと思います。
  270. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 一つは、福祉元年というものとちょうど見合った時期であったと思います。  ちょうど七一年、私、内閣官房長官でございました。確かにニクソン・ショック、それから七三年は石油ショック、御案内のとおりであります。そこから安定成長路線へ移行してきたということであります。福祉元年というものからする財政需要というのが一つ出てまいりました。それから安定成長になりましたので、自然増収即減税というような体制が変化してきた。したがって、やはり今度はそれが公債増額につながっていく、これは第一次石油ショックの後のやっぱり七五年、赤字公債発行した初めての年でございますから、大体そういう経済的な歴史とまでは申しませんが、そういう経過ではなかったかと思います。
  271. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 首相は今、福祉元年の問題とそれから最後に赤字公債、七五年大平さんが大蔵大臣のとき、そのことに触れました。この赤字公債問題がいわゆる特段の財政需要として非常に重要な一般消費税を大平首相が必要だとしてあのとき提起しましたね、政府税調も出して。その原因になったと思うんですね。  それで、ちょっと指摘しておきたいのは、三十六年答申にはこう書いてある。一般売上税問題、沿革です。「これを採用している諸外国の例をみても、たぶんに沿革的な戦費調達等の財源上の必要から生まれたものといえる」。だから、私が四月に述べましたように、これは戦費調達の財源の必要から生まれた税制だと、これは政府税調の答申でもちゃんと認めていたのでそういうことを指摘した。  ところが、この赤字国債、これは当時日本は先進諸国と比べて非常にとんでもないやり方をとった。石油ショックの後、どこの国も国債依存率が二五%ぐらいになったんですが、ほかの国はずっとこれを下げていくんですよ。日本だけ上げていくんです。  一々経過は省きますが、一つ紹介しておきたいのは、これは私五十五年三月十一日の予算委員会で取り上げた。当時の田中主計局長答弁、こう言っています。  五十四年度における国債依存度というものが約四〇%に及んでおる。過去の日本の歴史を振り返ってみますと、国債依存度が四〇%以上であったのは、日清戦争、日露戦争のとき、それから後は日中、第二次大戦を通ずる昭和十二年から二十年、この際は国債依存度が四〇%だった。今は「財政戦争」だと言うんですよ、赤字国債で。そういう財政戦争を経験したという状況で「”火薬なき戦争”」。「”火薬なき戦争”」という言葉を田中主計局長は使ったんです。私がなぜあなたは「”火薬なき戦争”」という言葉を使うかというのに対して、こう答えられた。  つまり、当時の赤字国債は、サミットでもアメリカ政府から日本だけ七%の成長をやれというのを押しつけられまして、それで公共事業を三十何%前年度からふやしたりね、私、建設委員をやっているが、建設省なんかげっぷが出るほどいただいたということで、赤字国債はどんどんふえていくんですよ。戦争中以外にはないような、国債依存度が四〇%というような火薬なき戦争。アメリカから言われて、大企業救済のために始めるわけです。列島改造型プロジェクトが全部また息を吹き返してくる時期です。大企業救済と火薬なき戦争の、その財源調達です。これで大平さんは一般消費税出してきて国民の反対でつぶれた。  さて、次の中曽根売上税、竹下消費税、今度は火薬なき戦争じゃなくて火薬のある戦争、核兵器まで、日本が核基地化になる危険のあるそういう戦争準備のための財源調達としてレーガン政権から押しつけられ、始まっておるんですよ。(「いや、そんなことはない」と呼ぶ者あり)ちょっと不規則発言がありましたが、一番痛いところをつかれると人間は声を発するんです。  私は、代表質問でも取り上げたんですけれども、一月十四日の首相のナショナルプレスクラブの演説、こう言われている。国際社会に貢献する日本にふさわしい、しかも我が国の社会変化に対応し得る安定的な財源を確保するための抜本的税制改革に着手しましたと。八六年の中曽根売上税の抜本答申、政府税調。この抜本答申に初めて政府税調の中でこういう国際的役割が出てくるんですよ。高齢化、出ますよ、高齢化も一応言って、「経済社会の国際化の進展に伴う我が国の果たすべき役割と責任の増大」という言葉が八六年の政府税調答申にも出るんです。それで竹下さんはナショナルプレスクラブの演説で、日本の国内のこともちょっと言っているけれども、まず何よりも国際社会に貢献する日本にふさわしいと、そう言っている。  それで首相、正直に言ってほしい。もう高齢化社会のことやなんかは、あなた方の言うの決まっているから一々聞かない。私たちが、専ら軍備のためだろうとか、あるいは世界一になったODA、アメリカの戦略援助に対応する海外経済援助のためだけだろうと言うと、あなたは否定するだろうから少しやわらかく聞きますが、この抜本的税制改革に必要な国際社会の貢献の中には、もちろん防衛費の問題それからODAの問題、これは除外されていないんでしょう、いかがですか。
  272. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず申し上げますが、戦争につながるというような感じは持ったことがございません。  非常にユニークであるし、ある種のウィットがありますので、上田委員の質問に引き込まれないようにじっと構えていますけれども、それで、むしろ「前衛」の論文の議論でもするのかなと思っておったわけでございます。  この全文をお読みいただきますならば、国際性を持った税制というのは必要でございます、それが目的税的な、確かに今まで目的税的な議論がなされたものは財政再建税、それから福祉目的税、それから海外協力税と、こういう議論がなされたことは私も承知いたしておりますが、まさに国際性を持った税制の構築をしたんであって、この消費税というのが目的意識につながるものではない、こういうふうにお感じください。
  273. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いや、違います。アメリカに行って、国際性、国際的なものをと、アメリカのは州税にはあるけれども連邦税にはないんですから、レーガン税制でも何度も検討して一般消費税はやめたんですから、そこへ行って国際性になんて言ったってだめなんです。そうじゃない、そう言っていない。国際社会に貢献する日本にふさわしいと言っている。だって毎年の予算を見てごらんなさい。突出しているのは軍事費とODAですよ。これが毎年マイナスシーリングでカットされているほかの予算と比べてこれだけ伸びているんだから。  それで、新しいブッシュ政権はODAプラス防衛費でGNP三%、これを要請すると。首相は一月五日にアメリカに行かれるんだそうですけれども、まずこれが必ず問題になりますよ。あなたはブッシュ新政権に応じて新政策を考えておられるかもしれないけれども、その新政策の中には、ブッシュ新政権の軍事費並びにODAのGNP三%、この方向が必ず盛り込まれるんですよ、そのための財源の安定したシステムをアメリカへ行って約束しているんだから。  この問題は国会で我々も取り上げたんですが、渡辺政調会長が「THIS IS」という雑誌六月号で、外国人記者に対して非常に細かく、日本の国民にこんなに詳しくなぜ消費税が必要かと、シェアを、間接税をふやさなきゃいかぬかと説明したことはない。外国人に対してはまことに詳しい。この中で、軍事費を毎年五・四%伸ばすという約束があるからだということも触れている。まあ高齢社会も言っていますよ。それから海外経済援助もやらなきゃならぬ。五・四%アメリカに必ずふやすという約束をしているからこれで財源が要るんだと、そういうことまで説明しているんですから。  私は、もう経過から見ても、首相や渡辺政調会長の発言、また安倍幹事長の、この消費税は六〇年の安保条約改定に続く内政上の安保なんだと、そういう新聞紙上並びにNHKでの発言、こういうのを見れば、この消費税がいかなるものであるかは極めて明白だと思うんです。  日本国民は戦前も戦後も今まで五回つぶしてきたんですから、またこれはつぶさなきゃならぬ。こういう戦費調達のような大型間接税がないというのは日本国民の誇りなんですよ。こういうものはなくさにゃいかぬのです。核兵器をなくすと同じように、大型間接税をなくす日本の国民の闘いの先頭に立たなきゃならぬのです。それを首相は、公約違反も平然と、国会決議違反も平然と、こういうことになると非常に雄弁だけれども、リクルートコスモス株の問題については途端に私は貝になったというように口をつぐんでしまう。これではアメリカに対しては雄弁で、日本国民議論に対してはまことに無口であり過ぎる。これであなた、いいと思うんですか。  世論調査を見てごらんなさい。いろんな世論調査が最近出ています。内閣支持率が非常に急落していることは御存じです。理由、ダントツが四つあります。税制改革がよくない、三六%、これは毎日です。指導力がない、三三%。政治の浄化に消極的、三二%。言動が信頼できない、二九%。日本経済新聞、「竹下内閣を支持しない理由は何ですか」、人柄が信頼できない、トップです、三一・一%。実行力がない、二八・八%、二番目。政策が悪い、二四・七%、三番目。清潔でない、四番目、二一・六%。やはり国民はじいっと見ているんですよ、国会をも、あなたの言うことをも。  そこで私は、もうあと時間が余りございませんけれども、最後に、私も何回も取り上げてまいりました首相のリクルート疑惑問題、もう簡潔に取り上げます。まず首相、貝では困るんです。  そこで、まず憲法六十三条、これは大臣の国会出席答弁、これについての義務を規定している。明治憲法には出席権だけあった。必ず出席しなきゃならぬように要求された。そういう義務はなかった。今の憲法では、出席権と同時に、出席して答弁する義務、これがあるんだ。「註解日本国憲法」を調べました。こう書いてある。「出席とは、無言でそこに列席していることではなくして、議院の審議に参加すること、特に議会の質問に説明及び答弁を与える大臣の義務を意味する」、義務を意味する。それから、政治倫理綱領がありますね。「われわれは、政治倫理に反する事実があるとの疑惑をもたれた場合にはみずから真摯な態度をもつて疑惑を解明し」と。  だから私は、慶法六十三条に基づき、政治倫理綱領に基づいて、首相に疑惑が提起されているんだから、だから真摯な態度をもってお答えいただきたいと思うんです。  もう一々細かくやりません。いろんなことを首相は言われましたけれども、その中で非常に重要なのは、結局リクルートコスモス株の名義人となっている福田勝之氏、これに関する取引の真実です。首相は二つの重要な点を言われました。  十六日、衆議院で社会党の村山議員に対し、確かに売買約定書を青木君が保管しているのを見たことがございますと。福田勝之名義の九月三十日付の売買約定書を青木元秘書が保管しているのを見たと。これが一つです。重要な事実です。二番目、十五日橋本議員に対して、十六日同じく社会党の村山議員に対して、橋本さんに対しては最初二千二百万と言い、その次に五千二百万円に変わりましたけれども、金額の問題、先日やりました。金額は別として、福田勝之名義の通帳で五千二百万円の入金を見たような気がすると。そうすると、売買約定書それから通帳、福田勝之名義、これを見た気がすると、二つの重要な答弁をされた。  これは首相、国会での答弁なので、訂正せずにお認めになりますね。
  274. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ちょっと今、速記を起こして御研究いただいておりますので、私も速記を見ながらお答えしないといけないと思いますが、ちょっと見当たりませんが、見たような気がすると言ったことは事実でございます。
  275. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これは十五日、十六日の答弁なんです。  ところが、十九日に私が質問をした。福田勝之名義の株を実際に取得した、売却したというお父さんの福田正氏、福田正氏の新潟での十一月十日の記者会見をこの場で明らかにします。どう言っているか。六十一年九月三十日に自己資金三千万円で購入、十一月初め公開直後に五千二百万円で売却した。すべて私個人の判断で運用したもので、利益は全部私が預金し、ポケットマネーとして随時利用している。  ここで矛盾が生まれちゃったんです。これは新潟の新聞です。東京の新聞にはここまで詳しく出ていない。首相は、福田正社長がこういう説明を新潟でしたことを御存じなくて、十五日、十六日、約定書、口座を見た、青木氏が保管していると、こう言ってしまった。おかしいでしょう。新潟の福田正さんが持っていつも随時ポケットマネーとして使っていると言うんですから、その通帳が東京にあって青木さんが保管していて、首相が見るはずないじゃありませんか。どうやって見たんですか。これはもう完全に矛盾している。
  276. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いや、どういうことをおっしゃったか存じませんが、見たような気がするということは事実でございます。
  277. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 もう真相は明白なんです。つまり、福田正氏は頼まれて宮澤蔵相のダミー役河合さんと同じ役割を果たしたんですよ。それで言われて、ああそうかと、じゃおれが預かって息子の、次男の名義にしたようにしようというので記者会見をされたんですよ。だから矛盾がどんどん出ちゃう。五千二百万円。十一月初めは、この間言いました。安値五千四百円なんだから五千二百万円であるはずはないと。これデマだったんです。ポケットマネーで随時使っているなんということは、そう言ってくれと恐らく言われないので、つい積極的にリアリティーを出そうと思って思わず言っちゃうんですね。作り事でリアリティーを出そうと思うと必ず矛盾が出てくる。河合さんだってそうです。結局日にちも違っちゃった。あれはたしか田中六助さんが亡くなったころで、忘年会か新年会のころなんで、そういうリアリティー、全然違っちゃったんですから、年度も。六十年一月、そう言ったんです、最初。六十一年九月だった。だから、今度も福田正さんが作り事を言うと違っちゃう。  私は、首相をこの点では信じます。あなたが見たのは本当なんですよ。青木秘書が保管していた約定書と福田勝之名義の通帳を首相は見たんですよ。そうすると、福田正氏、彼は虚構を述べている。いかがですか。
  278. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 人様のことを憶測で言うことは私、嫌いでございます。
  279. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 もうそういう答弁は通用しないんです。人様じゃないんです、あなたの弟の奥さんのお父さんなんだから。あなたの弟さんの結婚式の写真が「DAYS」に載っています。田中角榮さんが媒酌人で、我々も見ました。そういう関係にあるんでしょう。しかも、あなたあてに来た一万株を青木秘書の判断で渡したと言われる人物なんだから。青木秘書は幹事長の名前じゃまずいなと思って、これは宮澤さんの秘書と違うんだけれども、福田勝之名義にしたんです、東京にお住まいということもあって。ところが、これが表ざたになったので、福田勝之名義が最も自然に見える人を探してお父さんを選んで、依頼して記者会見させたんですよ。ところが、矛盾してきちゃったんです。  もう私は、こういうことをそのままにして、あなたは一国の首相ですよ、リクルート疑惑の解明の大きな責任を持っている。あなたは四つの問題、四つ目は道義的責任だと。その道義的責任を一つ一つ明らかにするのは私の責任だと言われたじゃありませんか。  私はきょう二つ取り上げました。NTT問題、それから竹下首相周辺の株の問題を取り上げましたが、真実を明らかにするためにはNTTの真藤前会長はどうしても証人喚問をする必要があります。それから竹下首相にまつわる、一国の首相にまつわるこの大問題を明らかにするためには、青木元秘書、福田正福田組社長を我々は要求しておりますけれども、このお三人の証人喚問並びに資料提出を要求したい。そして私、先ほどNTT問題で小原泰治氏に関する顧問料の調査を要求して、後で調べるという答弁村上社長から約束がありました。私は、こういう証人にまだまだ聞きたいことがあるので、証人喚問され、その調査がここに届くそれまでこの問題では質問を保留したいと思います。  それで竹下さん、最後にもう時間が余りございませんので。  あなたは内閣改造をされると言う。その内閣改造では、新聞報道によりますと、リクルート疑惑の議員は入れないと、そういう報道がありました。ある新聞に内閣改造という題で読者のジョークが載りました。「私以外コスモス議員は入閣させません 竹下首相」。国民はこういう目で見ているんですよ。  今度、綱紀粛正も出しましたね、閣議決定で。それで通達には、未公開株を譲渡された人は、これは特に配慮しなきゃならぬと書いてある。小渕官房長官の記者会見によると、これは事実上禁止だという。閣議で決めた綱紀粛正の通達で、未公開株をもらっちゃいけないよと。その対象にあなた自身が、あなたの周辺がなっているじゃありませんか。このリクルート疑惑の議員を省くのか省かないのか。省く場合、本人、秘書、親戚、この株が渡った人はリクルート疑惑の議員と認めるのか。
  280. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 上田君、時間が超過しました。
  281. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 認めるなら、あなた自身辞任すべきだと思う。
  282. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 上田君、時間が超過しました。
  283. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 はっきり答えていただきたい。(「答弁不要」と呼ぶ者あり)だめだめ、何を言っているんですか。
  284. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 内閣改造など考えておりません。いつも申しますように、人事というのは、ある日あるとき、卒爾として決めるべきものであります。
  285. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 終わります。
  286. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 次に、栗林卓司君の質疑を行います。栗林君。
  287. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 総理にお尋ねをいたします。  何も他院のことを引き合いに出すわけではありませんけれども、当参議院では、もちろんリクルートの疑惑解明も熱心に取り組んでまいりましたけれども、また、あわせて税制改革六法案、なかんずくその中核となっております消費税法案についても熱心な審議を重ねてまいりました。  その結果、同僚議員もそれぞれ申しておりますように、審議を重ねれば重ねるほど消費税法案というのは不透明さを増す一方なんであります。私どもの質問がおおむねそこに集中していることは総理もお感じだろうと思います。審議を重ねればおのずから不透明なものは晴れて実態が明らかになるはずであります。それが、重ねれば重ねるほど実態が不透明になり、疑惑に包まれてくるというのは、まことにけげんなことであります。  なぜこのようなことになるのか、総理なりの御所見をまずお尋ねしておきたいと思います。
  288. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 我が国におきましてはなじみの少ない税制であることは事実でございます。    〔委員長退席、理事斎藤十朗君着席〕 したがって、審議の中でいろいろな懸念が出てきておることも事実でございます。それに対して可能な限り的確に御答弁するのも当然のことであり、努力をしてまいりました。しかし、新税でありますだけに、いわゆる執行の問題等につきまして若干詰まってないと申しましょうか、政省令その他についてそういうことがあるというようなことを私は審議を通じながら感じさせていただきました。
  289. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 今まで明らかにされてまいりませんでした点、幾つかに絞って以下お尋ねをしてまいりたいと思うんです。  まず第一は、消費税の税としての性格でありますけれども、これは消費者が負担をする税金であります。ところが、消費者が負担をした税金がそのまま丸々は国庫に納入されない。これは税理論として確かに問題でありますと、この間私がお尋ねをしたら、総理自身お認めになりました。その税理論として問題であるとおっしゃったこの税法が、なぜそのまま実現に向かってひた走りに走っていくんだろうか、これがわからないんです。  税というのは、血税という言葉が示しておりますように、国民がいわば血を吐く思いで負担をしたお金でありまして、それをこの間はテレビで聞いておられたものですから、言葉をいわば穏便にしまして、消えていくと使いましたけれども、本当は消えていくんじゃなくて、ピンはねをされるんですね。この血税のピンはねが起こるような、しかも合法的なピンはねが起こるような税制を何でおやりになるんだろうか。  これは、消費者事業者、この間の信頼関係を根底から崩します。日本の社会の連帯感の上に日本の社会の発展も安寧もあるのでありまして、そうしますと、総理のおっしゃる「ふるさと創生」にしても何にしても、この消費税という新しいわけのわからない税金の合法的ピンはねをもたらす制度によって根底がおかしくなるんではないか、そう感ずるものですから、なぜこんな制度を無理におやりになるのでありましょうか、重ねてお尋ねしたいのであります。
  290. 水野勝

    政府委員水野勝君) まさにこれはなじみのない税でございます。ただいままでの我が国の個別消費税はまさに一品一品で課税をいたしておりました。その一品におきましては免税点等がございますが、それは税金はいただかない。今度はそうした偏った個別消費税でなくて、消費一般と申しますか、事業全体の売り上げとしての行為に着目させていただく。こうなりますと、個別消費税で免税点がありましたように、それはやはりある程度の水準の事業者からお願いをするのはいろいろ無理がございます。こうした種類の税金をお願いしている各国それぞれ免税点あるいは簡易課税等がございます。確かに我が国はそうしたものがございませんでしたので、いろいろ御論議は集中するところでございます。  しかし、新しい税であるだけに、そこはいつも申し上げております若干の精緻さは欠くことがあるとしても、こうしたものを円滑にお願いする以上、そこは踏み切らせて提案を申し上げているところでございます。
  291. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 何によらずそうでありますけれども、とりわけ税というのは国民皆さんの理解と納得を得られなければ、一日も生き長らえるものではございません。そのときに、税というのは、御提案の法案にもありますように、社会共通の費用をみんなで負担し合うものであります。それをピンはねするというのは日本人が持っている道徳律をまるで逆なでするような行為であります。したがって、どんな理由があったにもせよ、絶対にとってはならない道だと私は思うんですね。  今、水野局長は、外国を見ると免税点があるなんて言いましたけれども、よく比べてみると、事業免税点、課税売上高三千万未満のような、あんな高い水準で事業免税点の線を引いているような国はそんなに私は知らないのであります。それも低い水準だからいいということを私は申し上げているのではありません。今私が申し上げているのは、日本人が持っている道徳律、これは大切にしなければいけない。それはもう税制などというものにはかえられない日本人の生きざまそのものですから、したがってこの点は、仮に、例えばその結果として事務コストがかかろうと何だろうとかんだろうと、やっぱり日本人の道徳律、この生きざま、日本人の心というものは大切にしていくのが本当だと思いますし、「ふるさと創生」を唱えられる総理として、一番この点については日ごろ心を配っておいでになるところだと思うのに、何でこのような道をお歩みになるのか、どう考えてみても理解ができないのであります。重ねてお尋ねいたします。
  292. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 一つは、間接税の持つ本質的な問題がございます。それからいま一つは、いわゆる今御指摘になっておりました免税点制度、簡易課税制度というようなものをはらんでおる問題点があると私は思っております。転嫁の定着状況等制度の適切な見直しというようなことが、この修正されましたゆえんのものもそのような背景においてなされたものであろう。  何分、申しましたように、我が国になじみの薄い税制であるということからする精緻さというものが多少欠けるという点は私もお認めしておるとおりでございます。
  293. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 日本人のことですから、器用さをもって天下に鳴った我が民族のことでありますから、精緻な税制ぐらいこなせないはずはないのであります。恐らく総理がここまで出ていてもおっしゃれない本当の理由というのは、売上税の二の舞は何としても避けなければいかぬ、この一点だと思うんですね。ところが、この売上税というあつものに懲りてなますを吹き過ぎたのが今回の消費税ではないのか、これは私の率直な印象なんであります。  売上税のときには、若干変形ではありましたけれども、複数税率も採用し、あるいは非課税も考え、それが結果として過度に複雑な税制をつくってしまった。しかも、自分の業界だけがばかに不当に扱われたんではないかという各事業者の方々のお互いのせめぎ合い等から、御党内部においてもなかなかの騒ぎになりまして、でき上がったものは、御苦労にもかかわらず、大蔵省の人たちでさえみずからお認めになるように、まことに問題の多い制度に相なりまして、それが結果として、大多数の国民を加えての大きな反撃となって無残ついえたのであります。  ところが、その売上税の失敗を繰り返すまいということの余り、今度の消費税というのは、先日ここにおいでになった参考人の方がおっしゃっておりました、今度の消費税というのはばか事業者に甘い制度になっちゃったんじゃないか。これは以前の売上税に比べての御所見であったろうと私は聞いておるのでありますが、どうもその点が目立つのが今度の消費税であります。  したがって、なれていないから精緻な税制が導入できないのではなくて、本音を言うと、間接税を導入するためにあっちにもこっちにもあめ玉をしゃぶらせなければならなかったという事情があっただけではありませんか。それが結果として血税のピンはねという、どの日本人から見ても絶対心底から許せないような税制になってきたのではありませんか。  そこで、ではこの際どうしたらいいか。大型間接税を導入することの是非について私には私なりの意見がございます。ただ、このような中でこの消費税というものを短時間のうちに通してしまうことには何としても賛成ができかねる。  そこで、この間参考人の方もおっしゃっておられました。なぜ急ぐんですかと聞きますと、将来は直すんだとおっしゃっている。将来直すぐらいだったらなぜ今直さないのでありますか、そのために半年、一年かけていいではありませんか。これがおいでになった公述人の皆さんの大体異口同音の声でありまして、この委員会では正規の公聴会と参考人皆さんを多数お呼びした、いわば公聴会に準じたものと二回やりましたけれども、ごく丸めて言いますと、この消費税に心底賛成とおっしゃる方々は一人もおいでになりませんでした。したがって、この法案、やろうと思えば、数だけでやれば、もちろんそれはやれないことはございませんよ。ただ、そんなことで果たしていいんだろうかと自問自答せざるを得ないのであります。  そこで、実はほかの国の例を引きながら総理の御所見を承りたいのでありますが、イギリスでは大型間接税を導入したとき、これは付加価値税でございました。そのときには英国の保守党は、総選挙の公約に大型間接税すなわち付加価値税の導入を掲げて、しかも勝ちました。選挙で決着がついたんです。ついてなおかつ二年間を使って国民各層の意見を聞いたのであります。これが英国の付加価値税導入の歴史でございました。  一方、アメリカでレーガンの税制改革はどうかといいますと、二年半の期間をかけて、しかも上下両院の公聴会は七十数日をかけました。しかも、公述人は我が国と違いましてすべて公募でありました。この公募の公述人に、そのすべてに発言の機会を与えたのであります。  日本に比べて、国民意見を酌み取りながら、国民のための税制をつくろうという姿勢が、国は違いながらもひしひしと胸に伝わってくるのであります。  そこで私も、大型間接税を日本の税制に導入しないで果たしてこれからの税制の設計ができるかどうか、私なりの意見があります。であればあるほど、今回の消費税というものを無残な形で巣立ちをさせてはならぬ、この際やはり時間をかけるべきではないか、こう思っておりますので、同僚議員も申し上げておりますとおり、なぜ半年待てないのか、なぜ一年待てないのか、この点について総理の御所見を承ります。
  294. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私なりに、栗林委員とこうしておりますと、十年間議論をいたしました。したがって、私も反省しなきゃならぬのは、自分が十年間その議論の世界におったから、したがって国民の大多数の皆様方もそうじゃないかというようなことを思ってはならぬという気持ちはございます。しかし、十年間まさに濃密な議論を重ねてきたことは事実と思っております。  それから、税制調査会等におきまして地方公聴会等、これも私は濃密な計画でやられたと思っておるところでございます。したがって、やっぱり整合性を持った包括的なものであらねばならぬというのが一つございます。これは、今の財政状態からして、いわゆる分割することがいけないという意味で整合性を持った包括性ということを申し上げたわけでございます。  それからもう一つの問題は、私は、新税でございますことを十分承知しておりますが、これほど濃密な議論をしていただいて、今後その執行準備、そして執行に当たって今度は税務当局そのものが、これは法律に示されておりますように、本当にPR、指導、相談等に徹底的に参加するならば、この税はやがて習熟するに至るならば良税と化するであろうという期待を持ちながらお願いをいたしておるところであります。
  295. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 日本の政治社会風土というものを考えてみますと、やはり日本の特徴というのは、長い江戸幕府以来のああいった社会環境の中でつくられてきたのでありましょう、あるいはこれは鎌倉時代の地頭制度にまでさかのぼるものなのかもしれません。泣く子と地頭には勝てないという我々の先祖の胸に焼きついた生活経験があるものですから、どうしてもお上にはお上の顔を冒して物が言えないというやっぱり率直に言ってこういったものがございます。そして、一般にできてしまいますと、すべてのものは国家権力を背中に着て歩いていくのでありまして、そのうちになれてくれるだろう、やがてはいい子に育つだろうといってもなかなかそういかないのであります。したがって、まず最初にきちんとした形でつくることが先でありますし、そのためには、先ほど来私が申し上げておりますとおり、今ここで急ぐよりも腰を据えて、国会諸機能が十二分に働きながら、まさしく二十一世紀に結びつくような国民とともにある税制を求めて努力するのが本当ではなかろうか、このことをまず申し上げておきたいと思います。  そこで、いまだに解明されなかったもう一つの問題点に移りますけれども、実は、衆議院段階で見直し条項の修正がつけられてまいりました。これは、中小事業者等に関する納税事務の負担等に配慮した諸措置については、消費税の浸透度合い、適応度合い等々を勘案しながら見直すものとするというような書き方でございました。いかにもこの消費税を実現するために、実際に納税事務の任に当たる事業者にいろいろ配慮をするために、いわば税理論としてはおかしいものを無理に押し込んできた。これは事業免税点制度もそうであり簡易課税制度もそうであります。これは税理論として余りにおかしいものでありますし、だれが見てもそうでありますから、このようなものは残しておいてはならぬ。したがって、消費税の社会への適応状態等を考えながら早く是正を図るべきだということが衆議院段階でついた見直し条項の真意であろうと私は思います。  ただ、問題はそれだけなんだろうかということなんですが、実は、売上税の失敗に懲りて、あつものに懲りてなますを吹き過ぎたものですから、非課税の問題にしても複数税率の問題にしても何にしてもかんにしても、今度の消費税というのは、恐れ入ったことに全部持たないまま案をつくってしまいました。  ところが、逆進性について言うまでもなく、生活必需品については、低い税率をつけてその税制そのものの中に生活への配慮をしていくというのが、これはもうヨーロッパの例に見るまでもなく、当たり前でありまして、そして、今回の消費税みたいにもう一切その配慮なし、水から何から全部消費税をつけておいて、あとは予算措置で講ずるからいいわいという、こんなひどいやり方はないのでありまして、税制の中に生活への配慮を当然それは組み込んでいくべきであるし、また、産業への配慮にしても、ところによって非課税という分野があってもこれは何ら差し支えはありません。これをやろうとすると帳簿方式では到底できませんし、ではそのためには、帳簿方式を根幹にした今回の消費税制度でありますけれども、それを大胆に変えていかなければいかぬ。  では、どのようなスケジュールと方向でこの見直しをなさるのか、また、この見直しはあくまでも中小事業者に対する納税事務負担の排除の恩典だけに限ってしまうのか。この点について、まず大蔵当局のこれからの見通しと計画をお尋ねしておきたいと思います。
  296. 水野勝

    政府委員水野勝君) 衆議院でいただきました修正は、端的には中小事業者向けの措置は書かれているものと思いますけれども、「中小事業者の事務負担等に配慮した諸措置」とございます。したがいまして、これを全体としてお読みするときには、ただいま御指摘のような帳簿制度、帳簿方式等といったこの税制全体につきましてのものも含まれていると解釈をいたさせていただいているわけでございます。  それから、そのスケジュール、タイミング等でございますが、これはまさにまず新税をお願いいたしておるところでございます。まずはこの制度の円滑な執行、定着化をお願いしたいという気持ちでございます。したがいまして、この転嫁の定着状況が中心でございます。そうした点を踏まえまして、各界各層いろんな方々のお話を承りながらそうした見直し作業を行うことになろうかと思いますけれども、今ここで御審議をお願いしている段階で、どういうスケジュールで見直すかということは到底私どもとして申し上げられる段階ではなく、この趣旨、法文のとおりに執行後対処していくということで申し上げるまででございます。
  297. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 総理にこれはお尋ねをしなければなりません。  今、主税局長はああいうことを言っていましたけれども、なるべく早く帳簿方式にしても見直した方がいいとお考えになっているはずでありますし、それこれ胸の中にこうするのが本当なんだがなというお考えはあるに決まっているのであります。  そこで、問題はこうすればいいんだがなと、インボイス方式がいいに決まっているんですね。そうすると税金の別建て表示もできる、税制とするとすっきりした税制になることは理屈でわかり切っている。問題は、その内容で消費税の案ができなかったんですね。消費税がそういったものとして立案されたとして、こういった言い方は非常に立ち入るようで失礼な質問かもしれませんが、そういった案が自民党税調の審議を経て、なおかつ浮上したとお考えになりますか、その点はいかがでありましょうか。
  298. 水野勝

    政府委員水野勝君) 政府の税制調査会で御審議をいただいているときには、帳簿方式それからインボイス方式、並べて議論をいただいていたところでございます。そのときの議論がどちらにまだ決まったということはございませんでしたけれども、一貫して売上税の議論をしてきたところからすれば、やっぱり税額別記のインボイスということにつきましての方向は強かったようにも思われますけれども、まさに売上税につきましてのもろもろの批判、御指摘、こういったものに対処するということではなかなかその方向に踏み切るということもできなかったわけでございまして、二つが並列して中間答申となりました。  これを受けまして、与党を初め各方面といろいろ審議、検討を願ったところでございますが、この経過におきましては、御承知のような帳簿方式がまとめられたわけでございます。これを受けまして、政府税制調査会として最終答申をまとめられました。この中では、この大きな方向としてこれは結構であると、ただ、この税制が今後定着していく状況の中で帳簿方式からインボイス方式へのまた見直しも念頭に置くべきであるという答申で取りまとめておるところでございまして、現時点でこの方式、この方向はそれはそれとして適切なものであるというのが税制調査会の現時点での判断でございました。
  299. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今の問題、大筋そのとおりでございますが、たびたびお使いになりました売上税からあつものに懲りてなますを吹くと。私の方で言葉を整理することをお許しいただきますならば、売上税の反省の原点に立ってと、この言葉を私が選んで使っておる言葉でございます。  そうして、最終的に今よかれと思って提案しておるわけですが、心の中では、最終答申に現状はこうだがという税制調査会の御意見がついてきております、今もちょっとそれに触れましたが。あれが偽らざる心境でございます。まさに定着状況を見ながらという気持ちがそこに存在しておるわけでございます。
  300. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 立ち入ったことをお尋ねするようでありますけれどもと前置きをしてお尋ねいたしました。人の家庭の台所の話ではありますけれども、遠くで透かしておりまして台所の状況もわからないではございません。  それを考えますと、さて、将来の見直しといってみても、それ自体なかなかの問題ではないんだろうか。しかも加えて、先ほど来税の仕組みとしては問題が多いとおっしゃった事業免税点の問題、簡易課税制度の問題にしても、いざ実施をしてみると、それにうまみを感じたりするところも出てまいりますでしょう。それに対して、今度は正しい方向にということは、苦い丸薬を飲む方向に船を振っていかなきゃいかぬ。それが果たしておできになるであろうかという不安があるものですから、そこで将来の見直しの方向について、さっき局長に一応の大まかな御回答をいただきましたけれども、実は、これは政治問題そのものだと思うんですね。  そこで問題は、総理自身がお認めになる問題を大きくはらんだ税制、これは今のお言葉をそのままおかりしますと、売上税の反省に立っての品物かもしれませんけれども、やや反省が強過ぎてつまずきかけているようなありさまに見えるのでありまして、そこで将来これをどう持っていくのか。  あわせてお尋ねをしておきましょう。実は、キャピタルゲイン課税の問題にしてもあるいは納税者番号にしても、一つ一つどれをとってみましてもこれは大事業であります。こうしたものについていかなるお覚悟でお取り組み願えるのか、御所見を承りたいと思います。
  301. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに、納税者番号制度の問題にしても、本当にキャピタルゲイン課税の問題にしても、それから今のいわゆる定着状態を見ながらという問題にしても、私は問題があるということは御指摘の考え方と一致しております。  したがって、これらのまさに定着を見ながら、客観的に見て感じた問題につきましては可能な限り早い機会から国民の皆様方の理解を得る努力をしてやらなきゃならぬなと思います。これは特にこの見直し問題であります。    〔理事斎藤十朗君退席、委員長着席〕  それから、番号問題につきましては、本当に北欧方式やアメリカ方式等いろいろございますが、これとてプライバシーの関係もございますだけに、これも今、税調において審議されておるさなかでございますので、予見めいたものを申し上げる考えはございませんが、可能な限りいわゆる利子課税の問題とキャピタルゲインの問題についての見直し時期が明示されておるところを念頭に置きながら対応をしていかなきゃならぬ問題だなと、こういう覚悟をいたしておるところでございます。
  302. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 総理は、国民の皆様の御理解を得つつ消費税の定着を図って云々とおっしゃいました。その国民の皆様という中に一番大きく占めているのは、もう総理のことですから、当然消費者だと私は信じたいんです。それは、いかに事業者が特定政党にとっての支持基盤であろうとなかろうと、国民皆さんというのは、頭の中になければいかぬのは一億二千万の消費者でございます。  そこで、消費者の立場に立って考えますと、自分たちが負担をした税金がピンはねされるんだったらとてもそんな税金は負担をする気にならぬ、こう思って当たり前。それを裏返して言いますと、この税金の転嫁は非常に難しいということにもなるわけであります。  そこで、消費者皆さんが恐らくそう感ずるだろうなということを素直にお認めになって今後の対応を模索されますかどうか、お尋ねいたします。
  303. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに、先ほども申し上げましたが、どんな生産をする立場にあろうとも、最終的には一億二千万国民ことごとく消費者であります。しかも今度の税制は、納税義務者は事業者でございますが、負担する者は消費者そのものでありますので、原点はそこに存在して対応をしなければならない課題だという問題意識だけは持っておるつもりでございます。
  304. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そこで、消費者並びに国民各層の気持ちを代表させていただいて、一言重ねてお尋ねをしたいんですが、実はリクルート疑惑なんです。  あれは国民の気持ち、消費者の気持ちにはどう映っているんだろうか。私はこう思うんです。ぬれ手にアワのぼろもうけなどと言われますけれども、あれの一番いけないのは、あれが合法的に行われた点だと思うんです。罪を犯してでももうかっちゃったというんだったら、これは司直の手に触れますから、逮捕されて刑務所に行っちゃう。これは見ておりまして、うん、あれでバランスがとれている、こうなるんだけれども、リクルート事件の一番いけないのは、合法的にあれだけの大金が懐に入っちゃった。入った人たちは何かと見てみますと、その前に、あの人たちはどういうポジションにある人たちかというと、法律を直す人、制度を直す人なんです。そこであれだけの大金が合法的にポケットに入るというのは、法律と制度がよっぽどおかしいに違いない、それを考えて直す立場にある人たちが、直すどころか、こうやっちゃった。そこに私は国民の怒りがあると思うんです。  それは、単なる商行為として片づけてしまってはいけないんであって、やっぱりそれだけの重いものを我々国会議員というのはしょっているんです。あんなうまい話が来たら、あっ、これはどこかに問題がある、まずそれは直さなければいかぬと思って、立法府の一人としての任務を果たした上で、結果として利益が訪れたとしてもまだ国民は許すでしょう。合法的に、そういう義務違反から来る不浄な金が帰属した、これに対する国民の怒りがあるんです。こんな怒りがあるところにもってきて、今度みたいに税金の合法的ピンはねを御提案になったのはだれかれと、もうこうなれば言いません。この法律案国民の目から見てどんな目で見られているか、これは十二分に御自覚をいただきたいと思います。  これは、御返事をお求めすることはありませんけれども、ただ、私はリクルート事件というのをこういった目で見ておりますので、総理としてこの問題、国民から見てどう見えるんだろうかという点について御所見がございましたら承ります。
  305. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これが問題点としては、私は四つのことを指摘しております。  これは幾度も申し上げたとおりでございますけれども、栗林委員おっしゃいましたように、いわば現行の制度下で、株式の売買という譲渡所得の関係における問題からすれば、それは合法的でございましょう。しかし、今おっしゃったように、それらを入手することの可能な者は特定の者に限られておるところに大きな不公平感があるというふうに思います。なかんずく、今、政治家という御指摘がございましたが、政治家は私を含めいろんな情報の大変集まりやすい立場にあることも事実でございます。  したがって、基本は倫理綱領そのものにのり立つわけでございますが、それらが合法性の中に機能していく環境を整備するというのがあるいは第一の証取法上の問題であり、第二の税法上の問題であろう、こういうふうに私なりに分析をいたしておるところでございます。
  306. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 私が初めて大蔵委員になりましてから、もう十数年前でありますが、そのころから一貫して、しかも同僚委員とともに言ってまいりましたのは、キャピタルゲインの強化でありました。なかなか実らずに今日まで来てしまいましたけれども、キャピタルゲインの強化ということが法制化されていたら、ああいう惨めな事件として国民の皆様にお目にかけることもなかったんですね。証取法にしても、やはり抜け穴が随分あった。したがって、あれがきちんとしていれば——それを直さなければいかぬ立場にいる人が直さないで、ぬれ手にアワのぼろもうけとしか映らないような行為をしてしまった。それに国民は怒っているんであって、私はそれはまともな怒りであると思うんです。今、政治そのものがリクルートに全面的に汚染されているような印象で国民は見ております。  そんな中で、こういう血税をピンはねするような、それを公然と認めるような法律が出ていくということは、私は心から悲しいのであります。その意味でも、決してこれは急いではならないということを申し上げておきたいと思います。  税制改革法の第五条だったと思います。消費税の円滑な推進に資するために国は努力をしなければいかぬという条項がございます。この円滑な推進に資するために国は何をしなければいけないのか。私が先ほど来申し上げてまいりましたのは、そこに結びつく実は質問でありました。  そこで、総理も政治改革ということを御自分の重要な政治課題の一つとして御認識なさっておられるようであります。私は、まさに問題はそこに行くんだろうと思います。これは選挙制度の問題、政治資金の問題、もうこれは避けては通れません。かつてのキャピタルゲインがそうであったように、理屈はわかるけれども君それは無理だよと、そう言っているうちに十数年がたってしまったんです。したがって、選挙制度の問題にしても政治資金の問題にしても、今こそ腰を据えて国民皆さんに胸を張って物が言えるような国会にならなかったらどうしようもないと思うんですね。  そこで、消費税の円滑な推進に資するため、一体、では国として総理として具体的にどのようなことをお考えでございますか、お尋ねいたします。
  307. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、法律のことを申し上げる必要もなかろうかと思いますが、この税制改革法案におきまして、円滑かつ適正な転嫁を実現するため、消費に広く薄く負担を求めるという消費税のまず性格を明記いたします。そして、事業者や国はその実現に努める旨の規定をしたと。ところが先般の衆議院本会議におきまして、円滑かつ適正な転嫁に関する事業者の義務とか必要な施策を講ずべき国の義務をより明確化する議員修正というものができたと。  まず、そういう経過の上に立ちまして、政府としては、この法案に書かれておりますこのような考え方修正趣旨というものを踏まえて、消費税の円滑かつ適正な転嫁が実現するようにするため、まず一つは、消費税の性格や仕組み等について消費者事業者の理解を得るように努めますとともに、第二番目としては、一定の要件のもとで、これもたびたび御議論いただきましたが、消費税の転嫁方法や表示方法の決定に係る共同行為を認める暫定的な立法措置を講ずる。そうして三番目には、中小企業者の転嫁円滑化のため、下請企業等に対する不当な買いたたき等の防止に努めますとともに、転嫁に関する指導、相談、PR、それから転嫁力を強化するための需要開拓等に係る、これは歳出面になりますが、予算措置を含めて対応していこうという考え方で、これは税務当局あるいは大蔵当局だけで言えることではございませんので、関係各省庁とも密接な連絡をとりながら、今の趣旨を生かすように最大限の努力をしよう、こういうことでございます。
  308. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 若干時間がございますので、質問通告もしてあると思いますので、あと一問だけ大蔵当局にお尋ねをいたします。  年金の社会保険料控除の問題でありまして、サラリーマンの厚生年金基金、厚生年金等につきましては社会保険料控除が認められておるのであります。ところが自営業者の場合国民年金で、これも年金基金と国民年金と二階建てでできておりますし、その点ではサラリーマンの場合と同様にはやっとなったのでありますが、年金の積み立てに関して国民年金基金の方は社会保険料控除が認められておりません。したがって、これをぜひ認めてほしいという強い要望もありますので、この際大蔵当局の御見解をお願いを込めてお尋ねしておきます。
  309. 水野勝

    政府委員水野勝君) 現在、国民年金基金制度の改正の問題が提起されておるところでございます。現在の国民年金の保険料は、もちろんこれは社会保険料控除の対象になってございます。これが年金基金制度の改革によりまして二段階なりなんなりになった場合、これはまさに現在の厚生年金基金等と類似するわけでございます。まだ具体的な御提案の内容がはっきりいたしませんので申し上げることはできないわけでございますが、厚生年金基金等との横並びで対処すべきものではないかと考えてございます。
  310. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 終わります。
  311. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 次に、野末陳平君の質疑を行います。野末君。
  312. 野末陳平

    ○野末陳平君 今回の税制改革法案は余りにも膨大なもので、あれもこれもと中身がたくさん詰まっておりまして、我々が毎年審議してきた税関係法案に比べると、これはもう非常に審議の時間もかかるし、また中身も複雑多岐にわたるという、疑問もまた多い、こういうことが、やはり今までかなり長くここで審議をやってまいりましたが、それでも税革法案の一部しか、なかんずく消費税に関する部分が主に審議になっているということで、まだまだとてもでないが全部には行き渡っておりませんね。しかも、この消費税に関してもいろいろ疑問も当然多く出まして、前回、私は消費税の持つ欠陥について質問をしたんです。  税制改革全体から見ますと、もちろん減税もありまして、この減税にはだれもが反対できないんですけれども、中堅所得層などは今回の年末調整あるいはボーナスなどを見て、源泉される税金が今までよりもぐっと少ないということには気がついているからそれなりの理解は示していると思うんですね。  しかし、総理に伺いますが、そういう中堅所得者層すらも消費税には何か問題を感じる、不安を感じるし、ましてやいわゆる不公平税制については是正がまだまだこれではだめだ、もっときちっとしなければと、そういう不満を中堅所得者層すらも持っている。私は大体そういうふうに受け取っているんですけれども、総理の感触はいかがでしょうか。
  313. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 例年のいわゆる年度改正というものから比べれば、抜本改正であるだけに、それだから本院におかれていわゆる税制問題等に関する調査特別委員会が設置されたのであろうというふうに私も感じておるところでございます。  さてそこで、消費税というものが中心のいろいろな議論は確かにございました。しかし、議論がどの税にどれぐらい触れたかというような評価は、これは国会自身がおやりになる問題で、私から評価すべき問題ではなかろうかと思います。  だが、御指摘なさいましたように、中堅所得者の方々のいわゆる控除額の引き上げ等の問題についてはこれは理解を示していただけると思うわけでございますが、その方々とてやはり新税でございますだけに、これらに対してもろ手を挙げて万歳を叫ばれるような性格ではないということは、私も税というものの現実性からして感じておるところでございます。
  314. 野末陳平

    ○野末陳平君 この消費税については私自身も、欠陥があるから、これが定着するのかどうか非常に心配である、こういうようなことを質疑いたしましたけれども、しかしそれ以上に、今まで毎年予算委員会、大蔵委員会などを通じて指摘してまいりましたいわゆる不公平税制ですね、これが私の期待とはまるで違う程度の、もう微々たる前進しかない、是正面でこれが非常に不満なわけですね。これで不公平税制はもうある程度手をつけたんだと言われるとこれは困る。これからどういうふうに直していくのか、あるいはここを次はこうやるんだとか具体的な方針が明らかにされないと、これは私だけでなくて、やはり国民一般も相変わらず不公平はちっとも直っていない、こういうふうに思うと思うんですね。  具体的にお聞きした方が早いわけですから、大蔵当局も含めて聞きますけれども、いわゆる医師優遇税制ですが、あれも、どこが不公平なんだということになりますと非常に議論が深入りすると難しくなる、それはわかっているんですが、しかし国民の中にはもう医師優遇税制というのは不公平なんだと、こう思い込みがある。それはどこにあるかというと、七二%というあの数字が残っているところだと思うんですね。その沿革は、もう何十年の歴史をしょっているんですから、いろいろありますけれども、しかしここまで来て、総理の今のお言葉ではないが、消費税という新しい荷物を国民にお願いするのに、この既得権の切り込みがほんのちょっとだというのは、やっぱりバランスがとれないと思うんですね。  そこでお聞きしますが、総理でも主税局長でもいいんですが、この医師優遇税制のうちの七二%というしっぽをいつまで引きずっていくんですか。もう近い将来と言わずに、これがなくなるのが当たり前で、この辺の既得権というのを残していくということ自体が非常に不愉快であるし時代に合わないと思っているんですが、いかがですか。
  315. 水野勝

    政府委員水野勝君) 御承知のように、昭和五十四年度の改正で、五段階の刻みの改正をお願いいたしました。今回その中の第一段階はこれを廃止、いわば第一段階を廃止するということで措置をお願いいたしておるところでございます。この点につきましての衆議院段階での与野党の御協議によりますと、その中での与党からの回答でございますと、今後の医師税制のあり方につきましては、「引き続き検討し、四〜五年を目途に結論を得ることとしたい」というふうな御回答がされてございます。今回五段階のうちの一段階だけ廃止させていただいたわけでございますが、この第一段階の廃止というのが非常に影響するところは大きいようでございます。これによりまして従来の、例えば適用人員は半分ぐらいになり、それからまた、これによりますところの減収額も三分の一ぐらいになってございます。  したがいまして、この五つのうちの一つを廃止させていただいただけではございますが、基本的には今回かなり前進はいたした。しかし、なお御指摘のように四段階残ってございます。先ほどの与党からの回答でございますと、四、五年を目途にさらに検討して結論を得ることとしたいとされているところでございます。
  316. 野末陳平

    ○野末陳平君 専門的にはやはり前進だと、それはそのとおりなんですけれども、しかし一般の人から見れば、やはりこの象徴的な数字である経費七二%というのが残っているのは、何が何でもこれは不公平なんだと、この考えはずっと続くと思うんです。  ですから、四、五年を目途にと、そんな先じゃなくて、もう二、三年あるいは一、二年であるべきなんで、この七二を残すという方向をはっきり打ち出さないと、不公平の是正、特にお医者さん関係ではこれでいいとは言えないと思うんです。どうでしょう。それが一番大事なポイントだと思います。
  317. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 率直に申しまして、七二プロの問題というのは、私が国会へ出る前、たしか最初通達であったと思うのでございますが、二十九年でございますか、たしか法律になったという経過は勉強さしていただいておるところでございます。ただ、七二プロの理論的根拠を示せと言われると、いつも実際問題でございます。あの当時のこの議論ないしは資料を全部読んでみましても、私が整然とここで何が何ぼという説明をするだけの能力は率直にございません。  ただ、私なりの実感として申し上げますならば、今度は確かにプロの世界では相当な前進だと私も思っておりますが、七二プロというものを念頭に置いたとき、一方、過疎地帯の問題でございますとか、そういうことを考えたときに、私も七二プロをまず廃止ありきという前提から物事を進めたいと思いますというところまで申し上げるだけの勇気はございません。
  318. 野末陳平

    ○野末陳平君 私はやはり七二プロをまず撤廃した上で、そういう過疎の本当に必要な、いわゆる昔ながらの医は仁術のお医者さんですね、そういうところに対する配慮を考えるのが筋道だと思うんですね。  それからもう一つ、税調で何度も答申をいただいておりながら、今回も手がつかないというか、地方税における事業税の問題ですね。これも当然何とか今回盛り込まれるかと思ったんですけどね、全然これが影も形もないという、これもおかしいという気はしますから、これについても今後どうするのか。やはり近い将来じゃなくて、もうこれは、何で今回だめなんだ、そんなに気を使う必要はないじゃないか。それは確かにお医者さんの方だっていろいろやってくれていますよ、学校医とかいろんな問題もあったりする。そういうのをすぐおどかしの材料に使われるなんということがそもそもおかしいんですね。  ですから、この事業税の面も今後どうするんですか、速やかにこれにもメスを入れなければ不公平是正なんて言えませんよ。これはどうでしょう。
  319. 湯浅利夫

    政府委員(湯浅利夫君) 社会保険診療報酬に関する特例措置につきましては、ただいま御指摘の所得課税に関する特例とそれから事業税に関する特例と二つあるわけでございます。  所得課税に関しましては、地方税では住民税がこれに関するわけでございますが、この住民税につきましては所得税と同じような取り扱いを今回改めまして、五千万円以上の分につきましては、これは今回は特例をやめるということにしたわけでございます。  今回の社会保険診療報酬の取り扱いにつきましては、全体を見まして、その中でどれをやっていくかということで、当面は所得に関する特例措置に関して特例措置の一部を是正したということでございまして、事業税につきましては、今後のいろいろな地域医療の体制の問題でございますとか、あるいは最近の医業経営の実態というようなものをよく勘案すべきであるというような御意見も強く出されておりますので、これらを含めまして今後の検討課題といたしまして、引き続いて検討してまいりたいというふうに考えております。
  320. 野末陳平

    ○野末陳平君 いわゆる医師優遇税制に関して、今回不公平是正という面で確かに少しは前進していますが、それは例年の税制改革であれば、この程度でまあ今回はと言えるんだけれども、今回抜本改革と銘打ち、しかも消費税という新しいお荷物をお願いしなきゃならぬと言いながら、この程度ではこれはもう足りないと僕は思うんですよ。  それから、もう一つ大きな不公平の中の例の公益法人、宗教法人を中心にしておりますけれども、これも収益事業にかかる税率を全然いじっていない。もちろん大蔵当局は、中小企業の軽減税率、これを落としていく、だから差は縮まったということらしいんですけれども、それは不公平の是正にはちっともなっていないんですね。  まず、具体的に聞きますけれども、宗教法人を中心としたこの公益法人の収益事業に関する税率をどうして上げないんですか。課税強化をするなら、ここをやはり上げないと目に見えない。不公平是正が前進したというの。その点をお聞きします。
  321. 水野勝

    政府委員水野勝君) まさに二七%がそのままでございますので目に見えない、目でお示しすることができないということは非常に残念でございますけれども、全体の法人税の税率、去年までは四三・三%、この一・三が去年廃止になりまして現在四二%、これが三七・五%まで引き下げさしていただくことを提案いたしておりますが、宗教法人等公益法人につきましては、二七%そのままの継続をお願いしているわけでございます。  こうした相対関係からすれば、これは今お話しの格差是正、格差を縮めるという中の一環といたしまして、全体の大きな引き下げの中で二七%にとどめさしていただくことを御提案しているということで御理解を賜ればと思うわけでございます。
  322. 野末陳平

    ○野末陳平君 これは大分一般の納税者の感触と違いますね。やはり一般の人は実情をよくわからないがゆえに、非収益事業に対しても課税があるのが当たり前だという意見だっていっぱいあるわけですね。そこまでは私も言いませんし、また憲法の信教の自由とかいろいろありますけれども、しかし収益事業ですからね、これは。民間と全く同じことをやりながら低い税率でもって優遇されていると、その他も幾つかあるわけですけれども。  しかし、この二七%というのが差が縮まったといったって、それはあなた別に何ら優遇が変わったことになりませんから、この二七を二八%にせめて今回上げてもらわなければ不公平是正とは言えないしね。宗教法人からもっと税金取れよと無責任に言う人はたくさんいるんだよ。その人たちに対する説明のしようがないじゃありませんか。ですから、二年がかりで中小企業を三〇から二八に落とすのならば、二年がかりで結構ですけれども、この二七というのを八にして並べると。収益事業は平たく言えばお金もうけなんだから、それは同じ税率を負担していただく、そこまで提案したって別に公益法人あるいは宗教法人は怒りませんよ、本体が揺らぐわけじゃないんですから。  それで、改めて総理に伺います。そこまでやったって別にいいんじゃないですか。それでこそ不公平も直しました、消費税についても御理解をと、こう言えるんじゃありませんか。
  323. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今、主税局長からお答えしましたとおり、要するに、これだけの言ってみれば格差があった、これは下げた、これは据え置いた、よってこの格差そのものが縮まったと、こういうことですから、これは本当は目に見えるためには、数字が変わっておった方が目に見えやすいということは私もわかります。そうして、仮に一%とかあるいはそれが〇・五%であっても、そういう目に見えたやり方というのは国民受けのすることの一つではないかという考え方、私にもわからないわけではございません。が、私もこの問題について種々議論を行ってまいりました。私もそれから野末委員も同じことに、心に税をかけるわけにはもちろんまいりません。  収益事業の分野でございますが、この収益事業そのものの分野についての引き続き検討というのは、それはなされるべきでございましょう。  と同時に、この問題は、宗教法人二十四万でございますか、その中において本当に新聞に出てまいります特殊なのが幾つかありまして、それがいわゆる不公平感を増幅しておることであるだけに、やはり立派な法人というものは、それは国民の中に存在するのは当然のことであって、そうでないものに対する主管官庁あるいは都道府県もございますけれども、これが認可の基準等がございますので、これらに指導監督を求める、それがためには実態調査をお願いするというような一方にも手をつけなきゃいかぬ問題があるだろう、このように感じておるところでございます。
  324. 野末陳平

    ○野末陳平君 そういう面も遅まきながらそろそろ始めているというので安心していますが、要するに、まともな宗教活動をしている宗教法人が迷惑するんですよ。ですから、そういう人たちを守るというか、そういう宗教を守るためには一%ぐらい上げることによっても全体ではプラスである。ましてや、それで不公平是正が前進したとなれば僕はいいと思ってあえて意見を言っているわけですね。  まだたくさん不公平はありますが、じゃ、もう一つ限られた時間の中でやりますと、例のキャピタルゲイン課税ですね。これも要するに、みなしで一%の方をとるだろうとは思うんですけれども、しかし同時に有取税を落とす。となると、結果的にはそれほどの負担にならないような形で課税強化になっているわけですね。ただし原則非課税が原則課税と、これは確かに前進です。しかし、これははっきり言って、さっきから言うように見えないところなんですね。やっぱり売却の一%を税金で納めていればいいんだ、片一方で有取税を下げてあげるからと、こういうようなこそくな手段でこれも不公平を直したんだというふうに言われたらちょっと困るんですね、この程度じゃ。  ですから、一%はだめだと。もうちょっときちっと負担になるような形でなぜしなかったのか。四、五年先の納税者番号とかそういうのは待っていられない。至急これについても見直しをしてもうちょっと課税強化しないと、そもそも五%ぐらいの利益だなんていってみなしていく、そんなところからがもうそもそも間違っているんだと思うんです。  ですから、キャピタルゲイン課税強化も不満です。これでは不公平是正とも言い切れないんで、どういうふうにするかをお答えいただいて、終わりにしましょう。
  325. 水野勝

    政府委員水野勝君) 昭和二十八年の原則非課税を三十五年ぶりに原則課税にしたという点は、目に見えないというお話はございますけれども、とにかく原則課税に改めたということは御理解を賜りたいと思います。  一%は確かに低いわけですが、十年間の平均の値上がり率、回転率等を計算いたしますと、一%というのは平均的な課税水準になるわけでございます。それから最近非常に問題になりました公開前後の部分、これは一%は適用はできない。申告分離課税ではございます二〇%の課税率でお願いをするわけでございます。しかし、衆議院でも修正をいただきました。これは利子課税の見直しの時期とあわせて検討をするということになっておりますので、その方向で鋭意勉強し適切な方向を見出したいと思っておるところでございます。
  326. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 次に、喜屋武眞榮君の質疑を行います。喜屋武君。
  327. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いつにない緊迫した空気をひしひしと感ずるわけでありますが、私がきょうの最後の質問者でございますので、よろしくお願いいたします。  まず、連日の各委員の質疑を拝聴いたしまして、そして私の意見も含めてこのように一応まとめてありますが、一つ、欠陥だらけの法案である。二つ、もっと時間をかけて審議すべきである。三つ、もっともっと国民のコンセンサスを得べきである。四つ、国民世論に背を向けた法案である。五つ、拙速強引に押し切ろうとの焦りを感ずる。  これが私の率直な気持のまとめであります。実は、このように私も用意をいたしておりますが、到底与えられた時間でお尋ねするわけにはまいりません。また、する必要もございません。でも一、二ぜひこの機会にお尋ねしたい。  第一点は、まず最初に、増減税ゼロ型の税制改革を進めようとした中曽根改革と異なり、竹下総理は、所得税を大幅に減税、消費税を創設するが、税制改革全体でネットの減税額が二兆六千億円に達するということを重視した姿勢を見せておられます。そして、大蔵省が六月に公表した税制改革の家計に与える影響によると、全世帯で減税の恩典に浴するとしておりますが、これを五分位階級別で見た場合、高収入ほど減税額が大きくなることを示しております。  そして、これも議論されてまいりましたように、消費税の負担増については、生活保護等の社会的弱者に対しては生活保護費のアップ等で救済され、また、ある程度の収入を得ているサラリーマンなどは所得税減税消費税の負担をカバーできるようでありますが、しかしながら、課税最低限すれすれのサラリーマン世帯では、減税の恩典に浴することなく消費税の負担増だけが家計を圧迫することとなります。特にこのことは、我が国で一人当たりの県民所得の一番最下位にある、びりにある沖縄県の場合、このように消費税の負担が家計を圧迫する世帯が殊のほか多いと思います。それは必ずしも沖縄だけではありませんが、私が沖縄出身であるがゆえに一例として申し上げたわけであります。  このような所得税減税の恩典を受けることなく消費税の負担増だけが課される世帯に対する配慮として、何らかの措置を当然講ずることが必要であると思いますが、総理、いかがお考えでしょうか。
  328. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず、生存権の最低保障、すなわち生活保護世帯、ここのところは今、委員もおっしゃいましたように、いわゆる保護基準そのものが上がることによって中和できると考えております。  それからもう一つは、いわば課税最低限は各種控除が違ってまいりますから、したがって課税最低限が上がってまいりますから、いわゆる独身者の方とかそんなようなところが中和されてくると。  さて、そこで今おっしゃった課税最低限とそうして生活保護基準との中間、こういうことに何らかの配慮をしなければならないではないかというところで、在宅福祉でございますとか、いろいろなそうした形のものを対象にして、ちょうど昭和五十三年度減税のときに随分議論いたしました、そうした措置等が念頭にあるわけでございますが、財政措置といたしましては、六十三年度補正予算あるいは六十四年度予算という中で何らか工夫をしていかなきゃならぬというので、鋭意詰めておるというのが今日の段階でございます。
  329. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 欠陥だらけということは最初に指摘いたしましたので、推して知るべしでありますので……。  次に、総理、良薬は口に苦しということわざがございます。消費税は今後の高齢化社会を展望した税体系の中で良薬たり得るかということには、これまでの各委員皆さんの御質疑の中から、審議によっても明らかに否定されたものと喜屋武は理解いたしております。むしろ懸念されるのは、このような改革案の矛盾点を改めることなく会期内に成立するようなことにもなるとするならば、税の実質的な負担をする消費者と納税事務のみを課せられた事業者との間に不信感を招き、かつ、それを増幅させるのではないかということであります。  そこで私は、これまでの国会審議や世論調査から見て、消費税は、国民に受け入れがたい悪税であり、高齢化社会を展望した税体系の中で、どんなに修復しても良税に転化し得ない悪税にとどまるものと断ぜざるを得ないのであります。総理消費税を良税に転化できるという言葉の意味をまず明らかにしていただきたい。  欠陥の多い消費税を含む税制改革は、成立すればそれが国民税制という面から足かせをはめることになります。そのような重大な事柄を今期末で強引に成立させようとするのは、政府・与党の暴挙と言わざるを得ません。  総理国民生活に重大な影響を及ぼすことになる税制改革について十分な質疑時間を保証すべきであり、これら改革案は撤回するか、それとも継続審査をして十分な論議を尽くすべきであると思いますが、総理の率直な御所見をまず承りたい。
  330. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 良薬は口に苦しとおっしゃいました。私もその言葉を、これ先生よりもはるか後輩でございますだけに、先生にまた教わっておるような感じがいたしております。が、私が申しておりますのは、確かに新税というのはカナールの租税原理ではございませんけれども、そればかり言うようでございますが、新税は悪税であるという本来的な性格があることは事実でございます。それがきょうも議論になりましたが、習慣となるならばという議論もありましたが、私は習熟という言葉を使わしていただいておりますが、習熟することによってこれまた良税になるであろうということを皆様方に申し上げておるわけでございます。  したがって、きょうのようにこのような濃密な議論を積み重ねることによって、まさに審議しつつ理解を求め、理解を求め審議して、今日に実りある議論が行われておることに対して、私は心から感謝を表しておるところでございます。
  331. 斎藤文夫

    斎藤文夫君 委員長……    〔発言する者多く、議場騒然、聴取不能〕    〔委員長退席〕   午後六時五十九分