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1988-12-20 第113回国会 参議院 税制問題等に関する調査特別委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十二月二十日(火曜日)    午前十時十分開会     ─────────────    委員の異動  十二月十九日     辞任         補欠選任      上田耕一郎君     吉井 英勝君      井上  計君     柳澤 錬造君      下村  泰君     喜屋武眞榮君  十二月二十日     辞任         補欠選任      仲川 幸男君     鈴木 貞敏君      対馬 孝且君     矢田部 理君      秋山  肇君     野末 陳平君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         梶木 又三君     理 事                 斎藤 十朗君                 林  ゆう君                 平井 卓志君                 降矢 敬義君                 吉村 真事君                 志苫  裕君                 安恒 良一君                 峯山 昭範君                 近藤 忠孝君                 栗林 卓司君     委 員                 井上 吉夫君                 井上  孝君                 板垣  正君                 岩本 政光君                大河原太一郎君                 大木  浩君                 岡部 三郎君                 加藤 武徳君                 久世 公堯君                 後藤 正夫君                 斎藤栄三郎君                 斎藤 文夫君                 下稲葉耕吉君                 鈴木 貞敏君                 田辺 哲夫君                 谷川 寛三君                 藤井 孝男君                 松浦 孝治君                 村上 正邦君                 森山 眞弓君                 及川 一夫君                 千葉 景子君                 福間 知之君                 矢田部 理君                 山口 哲夫君                 山本 正和君                 太田 淳夫君                 塩出 啓典君                 和田 教美君                 橋本  敦君                 吉井 英勝君                 柳澤 錬造君                 野末 陳平君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        内閣総理大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君        法 務 大 臣  林田悠紀夫君        文 部 大 臣  中島源太郎君        厚 生 大 臣  藤本 孝雄君        通商産業大臣   田村  元君        郵 政 大 臣  中山 正暉君        労 働 大 臣  中村 太郎君        自 治 大 臣  梶山 静六君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       中尾 栄一君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  内海 英男君    政府委員        内閣法制局第三        部長       津野  修君        公正取引委員会        委員長      梅澤 節男君        公正取引委員会        事務局官房審議        官        糸田 省吾君        警察庁長官官房        長        森田 雄二君        警察庁刑事局長  中門  弘君        経済企画庁物価        局長       勝村 坦郎君        経済企画庁総合        計画局長     海野 恒男君        国土庁長官官房        長        公文  宏君        国土庁土地局長  片桐 久雄君        法務省刑事局長  根來 泰周君        大蔵省主計局次        長        篠沢 恭助君        大蔵省主税局長  水野  勝君        大蔵省証券局長  角谷 正彦君        大蔵省銀行局長  平澤 貞昭君        国税庁次長    伊藤 博行君        文部大臣官房長  加戸 守行君        文部省初等中等        教育局長     古村 澄一君        文部省高等教育        局長       國分 正明君        厚生大臣官房長  黒木 武弘君        厚生大臣官房総        務審議官     末次  彬君        厚生省健康政策        局長       仲村 英一君        厚生省生活衛生        局長       古川 武温君        厚生省保険局長  坂本 龍彦君        通商産業省産業        政策局長     児玉 幸治君        資源エネルギー        庁長官      鎌田 吉郎君        郵政省電気通信        局長       塩谷  稔君        労働大臣官房長  清水 傳雄君        労働大臣官房政        策調査部長    甘粕 啓介君        労働省職業安定        局長       岡部 晃三君        自治大臣官房総        務審議官     小林  実君        自治省行政局選        挙部長      浅野大三郎君        自治省財政局長  津田  正君        自治省税務局長  湯浅 利夫君    事務局側        常任委員会専門        員        竹村  晟君        常任委員会専門        員        片岡 定彦君        常任委員会専門        員        保家 茂彰君    説明員        会計検査院事務        総局第一局長   疋田 周朗君    参考人        日本電信電話株        式会社代表取締        役副社長     鴨 光一郎君        日本電信電話株        式会社理事考査        室長       西脇 達也君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○税制改革法案内閣提出衆議院送付) ○所得税法等の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○消費税法案内閣提出衆議院送付) ○地方税法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○消費譲与税法案内閣提出衆議院送付) ○地方交付税法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 梶木又三

    委員長梶木又三君) ただいまから税制問題等に関する調査特別委員会を開会いたします。  まず、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  税制改革法案ほか五案審査のため、本日、日本電信電話株式会社代表取締役社長鴨光一郎君、同理事考査室長西脇達也君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 税制改革法案所得税法等の一部を改正する法律案消費税法案地方税法の一部を改正する法律案消費譲与税法案及び地方交付税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題とし、これより矢田部理君の質疑を行います。矢田部君。
  5. 矢田部理

    矢田部理君 総理にまずお伺いをしたいと思いますが、リクルート問題、総理は、問題点一つ証券取引上の問題がありという御指摘でありましたが、中身的にはどんな御認識でしょうか。
  6. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 一回申し上げたことがございますが、要するに、我が国の経済の発達証券市場発達のスピードにちょっとおくれがあったのではないかとかねて思っておった。しかし、今回の問題でいろいろ御質問等を受けながら、今それを改革する時期だというので、証取審に対して諮問をして、ここでできるだけ早くできるものは早くできるような形でもって答申をちょうだいして、そして改正に手をつけようと、今次の税制なんかでも若干の改正がございますけれども、さらに進めていこうというところでございます。その中身につきましては、正確を期するために専門家の答えを……
  7. 矢田部理

    矢田部理君 いや、認識だけ。
  8. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 認識だけでは、そのことでございます。
  9. 矢田部理

    矢田部理君 問題意識はおありのようですが、中身的にはまだ深めていないようでありますから、私の方からリクルートに関連して幾つかの問題点指摘しておきたいと思います。  その前提として大蔵省は、コスモス株の今回の流れについて、どの程度把握をしているでしょうか。少なくとも役員持ち株有価証券報告書記載真実性とのかかわり、あるいはまた証券業協会中心になって進めているようでありますが、その自主ルールとの関係で、その流れに問題はないかというようなことを監督行政立場から相当程度詰める必要があるというふうに思われますが、いかがでしょうか。
  10. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) 例のリクルートコスモス事件に関する事案に関しますところの証券取引法上の問題といたしましては、現在の証券取引法を執行する立場から、これに問題があるとすればこれに的確に対応するということと、それから再発防止のために、今後株式公開制度あり方等をめぐってどう改善するかという問題と二つあるわけでございますが、ただ、今、委員指摘の点は、前者に関連する問題でございます。  この問題につきましては、今御指摘のように、個々取引そのものについては、これは現在の証取法そのものがどうこうということではございませんが、少なくとも役職員株式移動につきましては、一つ証券業協会自主ルール違反の問題が生ずる、あるいはもう一つは、それに関連いたしまして、有価証券報告書役員持ち株記載欄にこれは記載されていないということの関係で、有価証券報告書記載が真正ではないのではないか、そういった観点から、役職員持ち株移動に関しまして現在事実関係調査中でございます。
  11. 矢田部理

    矢田部理君 きょうリスト2というのを資料として配付をいたしました。これは過般の衆議院リ特の発表といいますか、ここを土台にして、マスコミの協力などもいただきながら私ども調査中心にまとめた結果であります。  最初に私どもはドゥ・ベストリストを明らかにしました。引き続きビッグウエイリストを公表し、過般ワールドサービス関係を明らかにしましたが、ワールドサービス関係で二名ほど残っておりました。これを埋めて、さらに私どもの現在調査中の人も何人かおりますが、この段階で発表できる人々についてそれぞれの欄に当てはめてみました。少なくとも私どもでもこれだけの作業をしているわけであります。  そして、問題点幾つかがあるわけでありますが、第一番にやっぱり問題になるのは政治家と官僚です。あるいはその関係者であります。それから二番目には、評論家方々がいろいろ言っておられますが、税調の特別委員などになっておられる方については、これまた問題にしなければならぬと思っておるのです。民間人一般あれこれ是非について言うつもりはありません。民間人だからといって全部無罪放免というわけにはいかないのでありまして、新聞に関係する方々は、その自主性という立場から内部的にもいろんな批判にさらされておりますし、同時にまた、民間の中で問題にされなければならないのは信託銀行関係者であります。  この四行につきましては、大がかりな融資をしております。融資をするに当たっては、少なくとも内部財務状況なり仕事の見通しなり担保能力なりについて相当程度内部情報に通じているわけでありまして、こういう会社役員が、特に不動産担当者が多いわけでありますが、コスモス株を取得するということはいかがかと思うのですが、この点について大蔵省はどうお考えですか。
  12. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 今、委員が御指摘のように、銀行役職員取引先株式を保有することにつきましては、従来は銀行界においても必ずしも明確なルールがなかったところでございますけれども国会等における問題の御指摘等もございまして、本年八月、金融機関は、その公共性にかんがみまして、各協会等において、内部者取引未然防止対策整備について自主ルールを決めたところでございまして、したがって、現在これをもとに各銀行において、その自主的判断に基づいていろいろ社内体制整備その他を図っているところでございます。  したがいまして、大蔵省といたしましては、このような金融機関における現在の措置を見守っているというのが現状でございます。
  13. 矢田部理

    矢田部理君 具体的に信託銀行協会なり銀行協会はどんな定め、ルールをつくったでしょうか。
  14. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 例えば信託銀行でございますが、本年の八月二十三日に信託協会におきまして、「内部者取引未然防止体制整備についてのガイドライン」というものを制定いたしております。その中身といたしましては、大きく申し上げますと、一つ取引先重要情報の管理、これを適切に行うということでございます。  それから二番目に、株券等投資部署あり方といたしまして、例えば法令で認められた場合を除き、取引先重要情報を知りつつ株券等売買をしてはならないというようなこと等を決めているところでございます。  それから三番目に、信託銀行役職員自己売買あり方について決めているところでございまして、これにつきましても厳しい規制をかけることといたしております。  あと四番目に、書面による取次業務あり方等につきましても規制をしているということでございます。  以上でございます。
  15. 矢田部理

    矢田部理君 その三番目に、今指摘をされた三番目でありますが、「役職員は、法令で認められた場合を除き、取引先重要情報を知りつつ株券等売買をしてはならない」と明確に規定をしているわけですが、この信託銀行関係者取引ワールドサービスのところに四名出てくるわけですが、この自主ルール違反することになりますね。
  16. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 先ほども御答弁申し上げましたように、この自主ルールは本年八月に決めております。したがいまして、ここで決められました内容につきましてさかのぼってどのように考えていくかという点につきましては、各金融機関の自主的な判断に任せるということでございます。
  17. 矢田部理

    矢田部理君 さかのぼって適用するかどうかではなくて、当時の行為をこの規則に当てはめてみればそれは違反ということになりますねと、それはいいでしょう。
  18. 平澤貞昭

    政府委員平澤貞昭君) 個々の個別の取引内容については詳しくは存じませんが、場合によっては、今、委員が御指摘のように、八月に決めました自主ルールに当てはめまして、問題のある場合もあり得ると考えております。
  19. 矢田部理

    矢田部理君 問題があるどころじゃなくて明白に違反をしているんですよ。  そこで二番目、今度は証券局に伺いますが、まず証券業協会が自主的に決めている内部ルールがございます。したがって、これは証券業界自身が自主的に調査をしたり判断をしたりすることが基本ではありますが、しかし証券行政監督立場からこれを黙視するわけにはいかないのでありまして、いろいろ報告ども、受けているようでありますが、このリストからどんな問題点を感じておられますか。
  20. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) 証券業協会自主ルールにつきましては、基本的にまず第一義的には証券業協会において調査し、しかるべき措置を講ずるのが基本であると考えておりますけれども、同時にこの問題につきましては、先ほどお話しございましたように、役員持ち株記載といった点で証取法にも関連してくるということで、並行しまして今調査しているところでございます。  証券業協会ルールとの関係で申しますと、個別の事案につきましては現在その詳細は調査中でございますけれども役員持ち株リクルートコスモス社役員がいわば第三者割り当て先から株式を取得した行為といったそのものにつきましては、行為そのものはこれはいわば協会自主ルール、つまり、一定期間内におきまして特別利害関係人等が「株集め又はこれに類する行為」を行ってはならないといったルールに抵触する行為であるという判断を我々も一応現在のところしているわけでございます。
  21. 矢田部理

    矢田部理君 ここに、このリスト記載されておりますように、第三者割り当て先、特にこのエターナルフォーチュンとかワールドサービスでありますが、この第三者割り当て先からコスモス社役員が購入をしている、これは江副氏も証言で認めているところでありますが、これは明白に証券業協会が決めた自主ルール違反することになりますね。いかがでしょうか。
  22. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) 違反する行為になると思います。
  23. 矢田部理

    矢田部理君 そうだとすれば、エターナルフォーチュンのところが少しく空白でありますが、これは江副証言などによってもおおむねコスモス社役職員というふうに考えられるわけでありますが、その内容はお調べでしょうか。
  24. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) 協会調査によりましても、十数名の役職員につきまして六十一年九月に株集め等行為があったということでございまして、そういった意味では、十数名というものが一体どういうところに該当するかといった点につきましては、委員と同様な関心を持って現在調査しているところでございます。
  25. 矢田部理

    矢田部理君 調査はいいが、把握をしているかと、それぞれの名前を把握していますか。
  26. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) 現在、だれからだれに何株程度株移動したのか、あるいは有価証券報告書等記載がないということとの関係で、一体だれの名義になっているのかということを含めまして、いろいろ具体的な事実関係調査中でございますが、まだその全体について申し上げられるような状況にはなっておりません。
  27. 矢田部理

    矢田部理君 この内容はいずれ明確にできますか。
  28. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) 役員持ち株につきまして、その実態がわかりました段階で、これは各期の有価証券報告書に対しまして訂正してもらおうと思っておりますので、その段階におきましては有価証券報告書訂正報告書という形で明らかになるものと考えております。
  29. 矢田部理

    矢田部理君 それからもう一つリクルート本社役員からコスモス社役員に、この時期、つまりこの自主ルール取引禁止をされている時期に譲渡をされている事実があるわけですが、その点はどう把握しておられるでしょうか。
  30. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) このリストとは別に、リクルート社役員からリクルートコスモス社役職員、これは相当数が多いようでございますけれども、そういうところに対しましてやはり株の譲渡が行われているといった事実がございますので、この点につきましても現在調査中でございます。
  31. 矢田部理

    矢田部理君 その事実関係については麻野忠雄氏が既に指摘をされているわけでありますが、そのほかにリクルート社役員数名からコスモス社役職員相当数株式譲渡がなされているという状況について証券取引業協会報告大蔵省に上がっているのではありませんか。
  32. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) 御指摘のとおりでございますが、まだ証券業協会からもその詳しい内容等につきましての報告は受けておりません。また、私どもの方も、その役職員の中の役員につきましては、これは今のリストの人とあるいは一部ダブる可能性もあるわけでございますが、やはり有価証券報告書記載との関係で現在調査を進めているところでございます。
  33. 矢田部理

    矢田部理君 これは極めて重大なことなんですね。第三者割り当て先からもリクルートコスモス社役員相当数を買い戻している。リクルート本社からも行っていると。その株の総額はどのぐらいが見込まれますか。
  34. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) 今のところ、まだどの程度の株ということをはっきり申し上げられるほどの調査が進んでいるわけではございません。
  35. 矢田部理

    矢田部理君 私ども指摘をしました第三者割り当て先からコスモス社役員が購入している分、このワールドサービスなどを中心にしてざっと計算をしても、ワールドサービス、高島さん五万五千株、館岡さん二万五千、重田さん二万、これで十万株です。さらに、松原さん、米津さんなどなどを入れますと二十万株前後がざっと足し算をしても出てくる。その上にリクルート本社役員からコスモス社役員にということになると、これは私ども調査では数十万株がこの禁止期間中に自主ルールに反して動いているのではありませんか。最終的な数字は出ないにしても、かなり莫大な数に上るということを大蔵省としてはつかんでおりませんか。
  36. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) 第三者割り当て先からの問題は、今御指摘のあるだけでも二十万株を超える状況になりますので、私どもとしては、対象としてはもう少し多い可能性があるというふうに考えておるわけでございます。  それから、リクルート社からのリクルートコスモス社役職員に対する株の移動でございますが、これはどうも職員等に対して千株単位で細かくいろいろ分けたような方も相当あるようでございまして、そういった意味では、株数としては、例の第三者割り当て先からのいわゆる還流株の一部に比べますと、かなりこれは株数としては少ないんじゃないだろうかと、大体そんな感じを持っておりますけれども、まだ具体的な株数についての全体を把握するような状況に至っていないわけでございます。
  37. 矢田部理

    矢田部理君 このリクルート本社役員からコスモス社役職員に渡った株というのは全く新しいコースでありますから、具体的になっているのは麻野忠雄氏の一万株だけでありますから、この点もやっぱり早急に明確にして報告していただきたいというふうに思います。  それからその次に問題なのは、第三者割り当て先から江副自身が買い戻す、あるいはリクルート社リクルート関係者が買い戻しをして再譲渡する、これも江副氏の行為は当然のことながら自主ルールに反するということになるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。これはまあ実質論中心に立てるわけですが。
  38. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) その点につきましては、現在、協会におきまして調査している段階におきましての中間報告では、江副氏など特別利害関係人がどの程度この株移動に関与して、協会自主ルールにどういう形で違反していたか、あるいはいないかといった点については、なおまだ確証が得られないので引き続き調査したいということになっているわけでございます。  といいますのは、基本的には、基本的といいますか形式的に見ますと、それぞれの第三者割り当て先からそれぞれの譲渡人に個別に取引が行われ、江副さんはいわばあっせんをしたというふうなことを、証人喚問段階ではそう江副さんはおっしゃっている。ただ、実質的にこれが果たしてどういう形で具体的に関与しているのか。ある意味では江副さん自身行為とみなし得るような実体関係があるのかどうかといった問題等々につきましては、これはなおその事実関係の究明を待たないとわからない点がございますので、この点については私どももまだ特定の判断を得るような状況にはないわけでございます。
  39. 矢田部理

    矢田部理君 このような自主ルール違反とあわせてもう一つ問題点ではありますが、有価証券報告書コスモス社役員が株を購入した場合には当然記載をしなきゃならないわけですが、記載がない。少なくとも事実と大部分はそごしている。この状況はどういうふうに見られますか。
  40. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) 確かに、株が移動したにもかかわらず、有価証券報告書記載がないことは事実でございます。したがいまして、記載がないということは、だれの名義になっているのであろうか、あるいは他人名義になっているといたしました場合には、果たしてその名義と本人との関係、譲り受け人との関係はどうなっているのかといったことも私ども調査内容一つでございます。
  41. 矢田部理

    矢田部理君 そこで問題なのは、コスモス社役員などは、ほとんど他人名義になっている。例えば高島氏、館岡氏、重田氏、これはいずれも有価証券報告書記載がございません。この十万株、これだけをとってみましても、一体どこに行ってしまったのかということが大変問題なのでありますが、その点の調査はどうなっていますか。
  42. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) まさに現在その辺を調査しているわけでございます。  ただ、これにつきましては、株主名簿との関係で果たしてどういう名前になっているのか、あるいは名義を借りているとした場合に、その借りられている人と御本人との関係が一体どうなのかといったことでございますけれども、実際問題といたしまして、実は株主名簿が捜査当局に押収されているとか、あるいは松原さんのように、人によりましては現在収監されているといったふうなこともございますので、一つ一つ調査というのはかなり時間がかかっておるといったことは間違いない事実でございますが、私どもとしましてもなるたけ相手方から資料をできる範囲で出してもらいまして、その点の事実関係の確認を急ぎたいというふうに考えているわけでございます。
  43. 矢田部理

    矢田部理君 今まで明らかにされているのが、例えば麻野氏の場合には、親戚二人に渡すというか、親戚二人の名前になっている。その他の人もほとんど自分の名前になっていないということが大蔵省等に対するコスモス社の説明であるというふうに伺っておりますが、そのとおりでしょうか。
  44. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) 麻野監査役につきましては、これは割合御本人自身が株券を持っておられたものですから、御本人からも出していただきまして確認できたわけでございますけれども、九月三十日に当時のリクルートの専務取締役であった田中さんから一万株を贈与されまして、これを現在親戚の者二人のお名前でそれぞれ五千株ずつ持っておられる。株券も現に持っておられるようでございまして、この点について確認させていただきました。
  45. 矢田部理

    矢田部理君 そのほか。
  46. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) そのほかの方々につきましては、先ほど申し上げましたような事情で現在調査中でございますけれども、まだそこら辺の具体的な事実について御報告申し上げられるような状況にはなっておりません。
  47. 矢田部理

    矢田部理君 この間大蔵省が私のところに説明に来て、ほとんどの人が自分の名義になっていないと、第三者名義だという説明だということですが、そうじゃありませんか。
  48. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) 要するに私ども調査は、だれからだれに何株ぐらい株が動いているのか、あるいは有価証券報告書記載がないわけでございますので一体だれの名義になっているのか、あるいは他人名義になっているとした場合にそれは本当に他人名義を借りたものであるかどうか、それから株式の取得にかなり多額の資金を要するような場合には、その裏づけといたしまして、その資金が一体どこから出てきたのかとか、そういったことを一つ一つこうやっておるわけでございます。  そういった意味では資料の関係、例えば相手方の申し立てそのものの裏づけをとるといいましても、関係資料が捜査当局に押収されているものも多いといったふうなこともございますので、実は調査そのものが非常に難しいということは間違いない事実でございますが、現在そういったことについて鋭意調査中であることを御報告させていただきたいと思います。
  49. 矢田部理

    矢田部理君 調査中じゃなくて、大蔵省自身が言っているわけでしょう。  問題は、なぜ他人名義にしたのか、なぜ有価証券報告書記載をしなかったのか、そしてその他人の中に政治家や官界者がいないのかどうか、この点はいかがですか。
  50. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) そもそも何の目的で取得し、何の目的で他人名義にしているかということが一つのやっぱり調査内容であることは間違いないわけでございます。  向こうの言い分によりますと、やはり証券業協会ルールというものがございまして、それが表に出ないような形で株式を他人名義にしているというふうなことを言っているわけでございますが、現在そこら辺につきましても、例えば有価証券報告書につきますと各期末の役員持ち株残高を記載させますので、その後の株式移動状況も含めまして現在そこら辺は調査しておるわけでございますけれども、現時点におきまして私どもが調べている範囲内で申しますと、これが店頭登録前に他の第三者に、政官界等第三者に譲渡されているという事実は現在までのところ私どもは確認しておりません。
  51. 矢田部理

    矢田部理君 冗談じゃありませんよ。現に加藤氏の兄弟御夫妻がその名前で株を取得している、株を持っているということを認めているじゃありませんか。
  52. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) 加藤先生のことにつきましては、確かにそういうこと——松原さん自身が現在収監されておりますので、実は私どもは具体的な事実関係について調査、裏づけをとるに至っていないわけでございますが、一方の申し立てによりますと、これは加藤先生に差し上げたのではなくて、まさに友人である加藤さんのお兄様ですか、そういった方に名前を借りたということを申し立てておられるようでございまして、そういった点の事実関係はなお調査しなければいけないと考えておるわけでございます。  ただ、正直に申しまして、松原さんのケースにつきましては、御本人自身が収監されているということもございまして、この点についての私ども調査というのがおくれているということは間違いない事実でございます。
  53. 矢田部理

    矢田部理君 ですから、政界関係者がいないなどというわけじゃなくて、経過についてはいろんな弁解は出ているようでありますが、きちっといるじゃありませんか。加藤紘一氏の兄弟が持っているという事実があるじゃありませんか。その点では他の数十万株、この行方を徹底的にやっぱり解明しなきゃならぬというのが新しい課題だと私は思っているわけでありまして、その点で大蔵省も、単に有価証券報告書記載状況だけではなくて、少なくともそれに関連して株の動きについては全面的に明らかにすべきだ。そうでなければ報告書の記載の真偽についても明確にできないというふうに考えますので、これからその点をやっていくべきだというふうに思います。特に、証券局長の話を私が信用していないのは、かつて四条違反の届け出があったかなかったかだけだ、それ以外には証券取引法上の問題は何一つない。今度の国会の前半は全部その弁解であなたは終始してきた。その点で言えば、今度の指摘についても政界、官界関係者はなさそうな物の言い方は私は大変問題だ。現に加藤紘一氏がいるということを指摘しておきたいと思います。  それから、警察にお聞きしますが、先ほど出ました麻野忠雄氏、これは兄弟二人の名前になっている。なぜそうしたのか、その兄弟はだれなのか、いかなる職業の人なのか、かつて官界や何かにいたことがないのかというようなことを含めて全容を調べて報告をいただくことに同僚議員の質問でなっておったのですが、いかがでしょうか。
  54. 森田雄二

    政府委員(森田雄二君) 先般の当委員会の審議におきまして、麻野監査役にかかる名義人親戚二人の話を承ったわけでございます。また、その際に今お話ございましたように、警察庁としてもできるだけ調査をいたしましてその結果を御報告するというお約束をさせていただきましたので、あれの直後から警察庁におきましては再三にわたりましてリケルートコスモス社の責任者に接触をして照会を行ってきたところでございます。  同社側が私どもに申しましたところによりますと、株の譲り渡し人はリクルート社の田中専務であること、五千株ずつ麻野監査役の二人の親戚の名義にはなっているけれども、実質的な保有者はあくまで麻野監査役であること、それから名義人となっております二人の親戚は警察とは縁もゆかりもない、何の関係もない人物であること、これだけの回答を得ているところであります。  私どもといたしましては、名義人が一体だれであるのか、その住所、氏名はどうだ、あるいは名義人が別でありながらなぜ実質的な保有者が麻野監査役だと判断できるのか。逆に言いますと、なぜ保有者が麻野氏でありながら名義人を二人立てなければいけないのかその理由、あるいは譲り渡しのいきさつ、その価格などについて十分に問いただしたのでありますけれども会社側は依然として、権限のある官庁以外にはそのようなことは明らかにすることができないということで回答を拒否しておるというのが今までの実情でございます。
  55. 矢田部理

    矢田部理君 官房長が前回、内容を明らかにして報告すると言ったにもかかわらず、いまだに明らかにできないのは大変遺憾でありますが、引き続き調査を求めておきたいと思います。  そこで、大蔵省に戻しますが、先ほど有価証券報告書の虚偽記載ということが出ました。しかし、証券取引法上の問題はそれだけにはとどまらず、どうもまたまた証券取引法の第四条違反ということになりはしないかと私は思うのであります。これは御承知のように還流株と言われるもの、江副氏の行為があっせんなのか、みずから売買をしたのかというあたりの詰めが基本にはなるわけでありますが、私ども調査では、単に第三者割り当て先から次の譲り受け人にあっせんをしたのではなくて、江副氏ないしリクルート側が引き取って、そしてここに書かれてあるような第三者にずっと割り振っていった、売っていった、こういうことになるわけでありまして、しかもその時期は六十一年の九月、これは竹下さんの関係者や大臣の秘書の方なども皆一緒の時期であります。いずれも同じ値段、一株三千円で、そして五十人程度以上というのが基準でありますが、私が実質上計算をしますと七十九名に上るわけですね、このリストの同一者でダブっているのがおりますから。しかも一億円以上の売り出しということになれば、当然この証券取引法上届け出なしには売り出せない。四条違反ということになりはしないかと思いますが、その辺の調査はどんなふうに進んでいるでしょうか。また、そういう観点で問題に対処しているでしょうか。
  56. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) 今、御指摘の六十一年九月に行われました三者割り当て先からの株式譲渡先が延べ八十三人、若干のダブりを差し引いても七十数名になるということでございますので、この場合、証券取引法第四条第一項の売り出しに該当するかどうかということが当然問題になるわけでございます。  そこで、証取法の四条の売り出しに該当するかどうかということは、これは先般から御説明しましたように、不特定かつ多数の者に対し均一の条件で売りつけをする、申し込みを勧誘するということでございますが、不特定多数は御承知のように五十名程度以上ということでございますが、ただ売り出しにつきましては、売り出しの主体とか売り出し価格あるいは払い込み期日、そういったことが異なる売り出しは均一の条件に該当しない、それぞれ別個の売り出しであるという扱いをしているわけでございます。  そこで、十一月二十一日と十二月六日の江副さんの国会証言を私ども聞いていたわけでございますけれども江副さん自身は、直接自分は買い戻したのではない、あっせんを行っただけである。それから、五社の第三者割り当て先の数は、少なくとも形式的には五十名程度を下回っているといったふうなことで、売り出しに該当しないという趣旨のことを、そこまでおっしゃったわけではございませんが、そういう含意を持ったような発言だったということは承知しているわけでございます。しかし、ここら辺の事実関係につきましては、まさに先ほど申しましたように、江副さん自身が、あるいはリクルート社関係者等が、果たして具体的に事実関係としてどの程度まで関与していたかどうかといったことにかかわっているわけでございますので、これにつきましては現在行われておりますところの証券業協会あるいは私ども調査結果といったものを踏まえて検討してみる必要があるわけでございます。そういった意味で、今後大蔵省といたしましては、この調査結果を踏まえまして、法律適用上の問題を含め今後検討してまいる必要がある一つの問題であろうというふうな認識は持っているわけでございます。  それから、もう一つ先ほど加藤紘一先生のお話が出ましたけれども、これは加藤紘一先生のところに再議渡されているといったふうなことが確認されているわけではございません。たまたま加藤先生のお兄さまの名前が使われているといったふうなことでございまして、それが再譲渡があったといったことについての事実関係は全く私どもには確認されていないわけでございます。
  57. 矢田部理

    矢田部理君 加藤さんのことを余計につけ加えることもいかがかと思うのですが、少なくとも加藤さんの兄さん夫婦は自分の名義に株がなっていることを認めているわけです。その経過については、一万の当事者は拘置所にいるわけですから調べがついていない。しかしながら、少なくとも政治家筋に渡っていることだけは明白なんでありまして、今の弁解は聞きにくいわけであります。  それから、次の質問に入りますが、いずれにいたしましても、証券業協会自主ルールに次々に違反をしている。禁止期間中の株取引がある。そして当然のことながら、有価証券報告書に、仮にその人たちが名実ともに株を持ったということになるならば、正確に記載をして報告書を出さなければならないのに、その記載がない。一回だけないのではなくて、ずっと今日までないのでありまして、単なる事務上のミスだなどというふうな弁解は聞くわけにはいかない。加えて前回、今第四条違反ということをようやく大蔵省は明らかにしましたが、またまた第四条違反の疑いが濃い売り出しをやっていると。次々にこの証券取引法上多くの問題を投げかけたのが、実はこの未公開株のばらまきにかかわる問題点なのでありまして、それが問題の焦点になってくるだけではなくて、その株が官僚や政治家及びその周辺にずっと向かっていった。この点は、やっぱり国会でその政治責任や事実経過をもっともっと明らかにしていかなければならないと思うのであります。  その観点から何点かお聞きをしたいと思いますが、関係する省庁の大臣に御出席をいただいております。文部省、労働省、それから郵政省でありますが、いずれも内部調査をおやりになって、株をもらったのは違反だが内部調査の結果ではそれぞれが職務権限などとは関係がなさそうな言い方をしておりますが、各省庁各大臣、そのように断言をすることができますか。
  58. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 文部省のお名前がありましたので私からまずお答えいたしますが、未公開株の譲渡は六十一年の時期でございます。そして、それにかかわることといたしますと、当時、六十年並びに六十二年に審議会委員の任命がございまして、この点の御質問が幾つかございました。これは、それぞれ関係法令がございまして、その関係法令に従って任命をされた、こういうことでございます。  そこで、二つお答えをいたしますが、当時それぞれの時期におきまして、高石氏はその委員を任命するに当たりまして、仕事上タッチし得る立場にあったということは事実でございます。  ただ、その任命に当たりまして影響力を行使したかどうかという点につきましては、私どもの調べでは特段に行使したとは承知していない、このようにお答えをいたしておりますが、現在でもそのように考えております。
  59. 中山正暉

    国務大臣(中山正暉君) NTTを自由化した後の民間会社として、社内的に所要の手続を経て、合議制によって決定をしていろいろな行動に出たものであり、個人の意思が働く余地はないというような私ども報告を受けておりましたので、そのように今日までNTTからの報告で私どもが国会に対して報告をしてきた、かようなことで、職務権限に対してはいずれ司直の判断その他がどういうふうな傾向になるかわかりませんが、今のところ私どもはそのNTTの報告に従って国会に御報告を申し上げている、所管官庁として国会での皆様方に対する御報告を申し上げたというのはその経過によってでございます。
  60. 中村太郎

    国務大臣(中村太郎君) 労働省におきましても、御承知のように十月の十一日、加藤前次官の問題が初めて報道されたその直後から一貫いたしまして内部調査を実施しておるわけでございます。  御案内のような就職情報誌業界の不適正なことに対する改善につきましては、当時二つの流れがあったわけでございます。一つは業界の自主規制に依存する、一つはやっぱり省として何らかの法的規制も考えるべきだということであったわけでございます。  法的規制につきましては、いろんな面からそれぞれが検討されました。しかし残念ながら、結果的には省としてまとまった煮詰めを行うことができませんでした。それは、例の労働者派遣法等のことがありまして、その方に追われまして、特に中身につきましては新聞広告との整合性、これがなかなか難しくて煮詰まらないということで、結果的には法的規制に対する一つの方針というものがまとまらなかったということでございます。  そういう中で、一方におきましては臨調の新しい規制に対する抑制の御意見等、また一方におきましては自主規制というものが非常に進んでまいりまして、その目途も立ってきたということで、職業安定法の一部改正、つまり業界に自主努力義務を課すということで最終的な結論がまとまったわけでございまして、ずっと新しい情報を得次第、省としてもその当時の関係者を呼びまして内部調査を十分行ったわけでございますけれども、少なくとも労働省の内部調査の限りにおきましては、加藤さんが特定の人たちの利害に影響を受けて行動をしたというような事実は見当たりませんでした。それが労働省の調査の結果でございます。
  61. 矢田部理

    矢田部理君 三大臣から御説明をいただいたが、全部無罪みたいな話をしている。それなら何のために検察庁が捜査をしているのかということにもなるわけでありますが、検察庁に伺いましょう。法務省どうですか。
  62. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 今まで大臣がお答えになった話に割り入ってお答えする立場でございませんけれども、前から申し上げておりますように、株式譲渡問題というのは、先ほど委員からいろいろ御指摘がありましたように、実質がどうかという問題がございます。実質いかんによってはいろいろまた刑法上の問題が派生することもあり得るわけでございます。  したがいまして、まずその株式の実質がどうかということ、あるいはその他の株式譲渡が行われていないかということ、そういうことを中心に現在検討中でございまして、その検討が終わってから、いよいよその中に犯罪の嫌疑があるかどうかという点で検討すべきものでございまして、今の点について、繰り返すようでございますが、話の中に割り入ってお答えすることはできませんので、御容赦願いたいと思います。
  63. 矢田部理

    矢田部理君 大臣の方々、いずれも調べた結果、職務権限とは関係がないとか、あるいは大勢でみんなで決めるんだから一人だけ云々したことはないとか、全部部内の立場を弁護するような対応をしているわけですね。それがもし検察庁の捜査の進展いかんでそうでないことになったら、あなた方責任をとりますか。
  64. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) せっかくのお言葉ですが、私どもは弁護する気は毛頭ございません。また、特に私は文教行政をお預かりをいたしておりますので、教育は、政治的な中立性を含めまして教育についての国民の信頼は最も必要なものと自戒をいたしておりまして、対処するには内から厳しく対処すべきである、みずからの自戒も含めて行うべきである、こういう考えを持ち、現職員にもその旨を徹底せしめつつ行っておりますので、決して弁護する気はございません。したがって、つけ加えれば、最終的には法務当局の御判断によるところも出てまいりましょうと思いますが、私どもは真剣に今まで聴取いたしましたところをそのまま申し上げているということでございます。
  65. 中山正暉

    国務大臣(中山正暉君) 仮にもかつて電電公社という国の公社としてそこに就職をした方々でございますので、国家国民のためにという使命感を持って仕事に従事していらっしゃる方で仮にも涜職の罪に該当するような行為をなさるはずがないという、私どもは所管官庁としてその性善を信じて御報告どおりに受け取っておるわけでございまして、もしこれが司直の手でいろいろなことが判明してくることになりましたら、私どもは所管官庁として的確なその改革、内部の規律を正していただくための処置を講じなければならないと、先生のお話を聞きながら、時間の経過を私どもは見守ってまいりたい、かように思っております。
  66. 中村太郎

    国務大臣(中村太郎君) かねてから申し上げておりますように、一つの事柄が犯罪に当たるかどうかということを定かにするだけの労働省は能力を持っておりませんし、それはまた専門の機関にゆだねるべきだと思っております。  ただ、今回のことにつきましては、労働省におきましても著しく国民の信頼を損ねたわけでございますので、その名誉回復の意味におきましても極めて公正に、しかも客観的な立場でできるだけの調査を行ったわけでございますけれども、今のところそれらしきものが見当たらなかったということであります。
  67. 矢田部理

    矢田部理君 文部大臣、結構です。  そこで、捜査の状況を伺いたいのですが、きょう十時から松原氏に対する裁判がありました。本人は全部認めたそうです。あとは情状論ということになって、裁判の結末は意外に早いというふうに思われるのですが、松原関係の事件の経過を見ますと、個別事件についての論議は慎重にしなきゃなりませんが、家宅捜索の段階ではたしか数名と共謀の上と書いてありました。起訴の段階では単独犯。その裁判がきょうから始まって、本人は認めた、単独犯行として認めたんだろうと思われますが、そうなると、これは共犯関係の捜査はどんなふうに受けとめるのか、どんなふうになるのか、御説明をいただきたいと思います。
  68. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 仰せのように、きょうの公判で松原被告人は事実を全部認めたようでございます。  まず、その告発でございますけれども、この告発については楢崎議員が松原外二名を告発しているわけでございます。松原を起訴した時点におきましてその二名については処分留保ということでございまして、そのときの検察庁の発表ぶりといたしましては、なお共犯については慎重に捜査をする、こういうことでございまして、仮に松原氏が公判で認めましてもその態度については全く変更はございません。
  69. 矢田部理

    矢田部理君 共犯関係について引き続き捜査を進めるということですね。
  70. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) そのとおりでございます。
  71. 矢田部理

    矢田部理君 それから、今後の捜査の見通し、そう確たるものは出ないとは思いますが、随分時間がかかっているものだなと。株の流れの解明、それからその次は実質と名義人との仕分け、もうそろそろ次のステップがあっていいのではないか。何か国会でも終わるのを待っているんじゃないかという説もありますが、それはそれといたしまして、どんな展望、時期的見通しを持っておられるか、御説明いただきたいと思います。
  72. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 少し長くなりますけれども御説明いたしますと、本件はいわゆる川崎の助役の事件から端を発しまして、ことしの八月初めから衆議院の予算委員会でいろいろ御指摘がございました。うかつといえばうかつだったわけでございますが、そのときには事件の全貌というのは全く判明していなかったわけですけれども、九月の初めごろに、先ほど御説明いたしました楢崎さんの告発の事件が、イレギュラーといいますか、全く思わない展開で検察庁に告発されたわけでございます。  そういうことで、検察庁でその問題を中心にいたしましていろいろ捜査をいたしまして、十月十九日から二十日にかけまして強制捜査を行い、十一月十日に起訴という段取りになったわけでございます。そして本日、第一回の公判ということになったわけでございますが、その間に国会でいろいろ御議論がされ、また報道でもいろいろ報道されまして、話が大体わかってきたわけでございますけれども、その内容は非常に広範にわたりまして、また御指摘にもいろいろ問題がございました。そういうことで、一つは十分内偵をしていなかったということもございますけれども、そういうふうにいろいろ問題が広いものですから、やはり検察庁としても非常に手間暇をかけて内偵から調査をしておると、こういう状況でございます。  したがいまして、この前衆議院でも御説明いたしましたが、現在、延べ三百人以上の者にいろいろ御協力いただいて調査を進めているところでございますし、また、検事も二十五人を投入いたしましてやっているところでございますので、なお少し時間をかしていただかないと全貌がはっきりしないのではないか。  ただ、その捜査の見通しということになりますと、これは事実と証拠の問題でございますので、非常に私どもも不透明という感じを持っておりまして、どういうふうな成り行きになるか、その辺はっきりわからないというのが実情でございます。
  73. 矢田部理

    矢田部理君 捜査体制も新検事正の着任などで特捜関係者が全部あそこに結集するというようなことで、世間の注目の一つは少なくとも東京地検特捜部に向いているわけであります。  もう一つ、今話が出ましたが、警察としてはどういう調査なり捜査なりをしているんでしょうか。その経過と今後の見通しについてかいつまんで御説明をいただきたいと思います。
  74. 中門弘

    政府委員(中門弘君) 警察におきましては、現在、神奈川県警察におきまして、川崎市に関係いたします事案につきまして必要な関係者からの事情聴取等を含めまして、事実関係の解明をしているところでございます。  見通しにつきましては、現在のところまだどうということを申し上げる段階には至っておりません。
  75. 矢田部理

    矢田部理君 非常に複雑なケース、あるいはまたいろんな問題を含んでいるケースですから、そう容易ではないと思いますが、これだけ世間で注目をされている、国会等々でもやっぱり議論になっている事件でありますから、検察庁はもとよりでありますが、警察関係でも早急に結論が出るよう捜査に力を注いでほしいというふうに考えております。しかし、この辺は司法の分野でありますからこの程度にいたしまして、もう一度国会本来の話題に移りたいと思います。  きょうは、NTTからおいでいただいておりますので、その関係を少し伺いたいと思いますが、先ほど郵政大臣は、NTTの報告によればNTTは心配ないという御報告でした。ところが、NTTの調査というのがどうも次から次へと事実に沿っていない。本人たちの説明が土台なのでしょうが、うそにうそをこれまた重ねているということを率直に指摘せざるを得ないわけであります。きょう参考人に伺いたいのは、どうも式場さんとリクルートというのは我々の予想以上に癒着をしていたのではないか。幾つ指摘ができます。  きょうの毎日新聞にも出ておりましたが、広域内線電話の拡販用ビデオをつくっていた。このリクルートがつくったビデオに、式場氏が、NTTとリクルートは一体だ、全面的にこれをバックアップするんだというようなことで特別の便宜供与というか後押しをしている。後押しどころか一体だと、こうまで言っておるわけです。そういうビデオの存在はあったのでしょうか。
  76. 鴨光一郎

    参考人(鴨光一郎君) ただいまの御質問の点でございますけれども、ビデオの存在そのものにつきましてはリクルート社のお持ちのものであろうということで、私ども実はけさその記事を見たわけでございますけれども、事実そのものについては確認をいたしておりません。
  77. 矢田部理

    矢田部理君 ビデオだけじゃないんですね。同じような趣旨のパンフレットをリクルート社がつくっている。リクルート社はNTTと保守契約を結んでいる。盛んにNTTを後ろ盾にして仕事をしているんだということを強調されるパンフレットが方々にまかれている。これは御存じですか。
  78. 鴨光一郎

    参考人(鴨光一郎君) パンフレットにつきましては、私どもの社といたしましてもその存在を承知いたしております。
  79. 矢田部理

    矢田部理君 そのパンフレットと先ほど指摘をした拡販用のビデオを、式場氏に株の譲渡が明らかにされた直後、一斉に回収させているんじゃありませんか。その点はいかがですか。
  80. 鴨光一郎

    参考人(鴨光一郎君) 先ほど申しましたように私どもパンフレットの存在を承知いたしておりまして、その内容につきましては、これはあくまでもリクルート社のセールスのためのパンフレットというふうに承知をいたしておりますけれども、私どもの社の立場からいたしましてその内容が行き過ぎた部分があるというふうに思われた部分につきましては、ちょっとただいま申し入れをした正確な事実につきましては定かでございませんけれども、私どもの社からリクルート社に対しましてその内容について修正を求めたという事実はございます。
  81. 矢田部理

    矢田部理君 どの点が行き過ぎており、そしてしたがって修正を求めたのでしょうか。具体的に明らかにしていただきたい。
  82. 鴨光一郎

    参考人(鴨光一郎君) 趣旨といたしましては、私どもはあくまでもリクルート社に私どものサービスでございます高速ディジタル回線をお客様として売った。したがいまして、それをどういう形でリクルート社がそのリクルート社のお客様に売るかということに関しましては私どもが直接にタッチをするところではございませんけれどもリクルートのお客様の方から見ましてNTTとの関係について誤解を与えるようなことがあるとしますと、これは私どもの本来のサービスあるいはセールスということから逸脱する部分がございますので、その点に関しての注意喚起をしたということでございます。
  83. 矢田部理

    矢田部理君 もう少し具体的に、こういう表現があるからこの部分を削らせた、あるいは困るといって修正をさせたということがあるでしょう。
  84. 西脇達也

    参考人西脇達也君) 具体的な事例でございますので私から御答弁申し上げます。  セールス用のパンフレットの中に、例えばNTTよりの出向とかNTTとの提携とか、あるいは保守の中身についていろいろ書いてございますが、私どもから直接出向している事実もございませんし、またいろいろな契約を結んで、例えば保守契約等もやっておりますが、業務提携というような形ではございませんので、その辺を訂正するように申し上げたところでございます。
  85. 矢田部理

    矢田部理君 そのいずれにもビデオの方に見られますように式場氏が関与していた疑いが非常に強い。特にビデオについて言えば、式場氏がインタビューの形で登場して一体感を強調している。それがパンフレットにもあらわれるということなのでありまして、式場氏のリクルートとのかかわりは極めて重大だと言わなきゃならぬです。郵政大臣の言うような状況じゃ全くないのでありまして、そのためにビデオの回収も求めたのじゃありませんか。どうですか。
  86. 鴨光一郎

    参考人(鴨光一郎君) パンフレットに関しましては、先ほどお答えしましたようにNTTといたしまして申し入れをしたところでございますけれども、ビデオに関しましてはこれまでそういったことを行っておりません。
  87. 矢田部理

    矢田部理君 リクルートが勝手にやったというのにしては、そうは受け取れない事実関係もあるわけであります。  もう一点、西脇さんが中心になって調査委員会を持ち、いろんな調査をしてきたようでありますが、どうもいま一つこの調査内容が漠としておったり、事実に沿わなかったり、うそで固められたりしておって信用ができない。それを前提にして郵政大臣は物を言ったのでは、ここの答弁も間違ってしまうことになるわけであります。  もう一つ問題点は、本社リクルート社株を式場さんなりあるいは長谷川さんが譲り受けておった。NTTの人間というよりも、もうリクルートの身内みたいな格好でNTTで仕事をされておった。これは少しく問題だと思うわけでありますが、そのリクルート株も本社株であります。時価にすると少なく見積もっても七、八千円はする。これを四百円程度で譲り受けておる。そういう事実関係については、NTTとしては事実関係問題点については調査をされておるでしょうか。
  88. 西脇達也

    参考人西脇達也君) 私ども調査委員会で式場前取締役から事情を伺いましたときに、六十年十二月に江副氏からお話があって、額面五十円の株を一株四百円で一万株譲り受けたということについては私ども調査でも本人が述べているところでございます。
  89. 矢田部理

    矢田部理君 前のコスモス株についても本人の言い分だけを口移しに発表しただけで、自己資金で買ったの、株式は持っているのと言ったのは全部うそだったじゃありませんか。この事実も指摘をされて初めて出す。それが単に四百円程度の株ではなくて、実質大変な価値、値打ちのある株だという状況については調査していないのかと、こう申し上げている。
  90. 西脇達也

    参考人西脇達也君) お答えします。  本人からのお話で四百円で取得をしたということでございまして、その株券の取得時の価値がどのくらいかということについては私どもなかなか判断ができませんので、とりあえずその本人の言い分を聞いて株券を確認したところでございます。
  91. 矢田部理

    矢田部理君 調査というのは、長谷川氏ないし式場氏が株式を含めて実質的にどのような利益供与をリクルート社側から、コスモスも含めてでありますが、受けておったのか、そんなに多くの利益を得ておったのはなぜだったんだ、どういう便宜供与なりサービスをしてきたのか、そのサービスの異常性、過剰性については問題なかったのかというようなことを調べるのが調査委員会でしょう。本人の言い分だけ書きつづって郵政大臣に報告すればいいというものでもない、外に明らかにすればいいというものでもない。その点は、どうしてこんなに多額の利益が彼らにもたらされたかということについては、どんな調査をし、どんな結論に達していますか。
  92. 西脇達也

    参考人西脇達也君) 私どもは、社内の調査でございますので、まず本人から事情聴取をいたしまして、裏づけのとれるものは裏づけをとる。さらに一番最初には、私どもは契約関係調査から始めまして、それから順次本人の行動あるいはそれに関連して起こってまいりましたいろんな事象等について調査も進めておりますが、ただいま先生の御指摘にありましたような契約の面における調査におきましては、契約自体は適正な手続で行われておりますし、また、いろいろな行動等につきましても、私どもの見る限りにおきましては、営業行為として通常のうちのお客様に対する営業行為の位置というものから大きくはみ出したものではないというふうに、これまでの調査では理解をいたしております。
  93. 矢田部理

    矢田部理君 行ったり来たりしたくありませんがね。  ビデオで式場氏がインタビューで、NTTとリクルートは一体だと、NTTが全面的にバックアップするというような発言をしているのは、それは当然ですか、まずいとは思いませんか。先ほどのパンフレットの修正から考えれば、少なくともこれは異常な対応、異常なサービス、過剰なそれというふうに考えませんか。
  94. 西脇達也

    参考人西脇達也君) 先ほど鴨から申し上げましたように、ビデオの内容についてはまだ確認はできておりませんので、ただいまの御質問についてお答えいたしかねますが、社内で使うビデオというものか、あるいはお客様の方で持っていって使うビデオかによってまた違う点もあろうかと思いますので、ちょっと判断を差し控えさせていただきます。
  95. 矢田部理

    矢田部理君 事実確認でこういう事実が仮にあったとしたらどうしますか。それは行き過ぎと見ますか。
  96. 西脇達也

    参考人西脇達也君) ビデオをリクルート社側に見せていただくように依頼をいたしまして、見た上で今のような点がございますれば、やはり多少行き過ぎではないかと思います。
  97. 矢田部理

    矢田部理君 明日に行き過ぎなんですね。  スーパーコンピューターの問題もお聞きしたいが、きょうはこの程度にとどめます。値段についても公表しない。  一点だけ聞いておきましょうか。このスーパーコンピューターの値段については公表しないという契約がクレイ社なりとあるんでしょうか。
  98. 鴨光一郎

    参考人(鴨光一郎君) 契約の内容そのものではございませんけれども、私ども民間会社という立場で、一般的な商業上の、ビジネス上の規律という問題の一般的な概念の中から、そうした中身に関しては公表を差し控える。これはリクルート社に限りません。一般のお取引先全般との間でそういうことをいたしているところでございます。
  99. 矢田部理

    矢田部理君 これだけ疑惑に包まれておって、一般に公表しないから公表できませんと。最初は何か公表をしないような特約があるからだめみたいな話をしておった時期もある。そういう体質がこういう問題を派生させる。問題が出てもなおかつこれをかばってつぶしてしまう。これではやっぱりうみは出ないのであります。これから先NTTに対しても厳重な調査をし、国会に正確な報告をしていただきたいということを要望しておきたいと思います。  最後に郵政大臣、どうもNTTの調査は、私は幾つかの疑問、問題を感じるのでありまして、その点は郵政大臣としても何か指示をされたようにも伺っておりますが、先ほどの答弁を聞いておりますと、NTTの説明によれば、職務上とか職務権限上は問題ありませんかのような説明は、やっぱり郵政大臣、撤回をして、もう一回全体を見きわめ直すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  100. 中山正暉

    国務大臣(中山正暉君) 郵政省内部の郵政監察局のような逮捕権はないけれども捜査権があるという、そういう権限を持った機関での調査ではございませんので、あくまでも本人からの聴取というものを前提にしておるという実態から、先生からそういう御指摘を受けるのではないかと思いますが、業務内容に対して我々も指導監督をする権限がございますので、今後とも厳しく、今までも社長にお目にかかるたびに、私から厳重な内部調査をしてほしいということを御依頼いたしておりますが、今後とも先生の御意思を体してそういう管理、監督を行き届かせていきたい、かように先生にお誓いをしておきたいと思います。
  101. 矢田部理

    矢田部理君 結構です。御苦労さまでした。  最後になりますが、これは竹下総理に伺わなければなりません。  福田さんの問題でありますが、私どもが最初福田さんの問題を指摘した。その後ここで私も質問し、志苫さんも質問しているわけでありますが、同僚議員の質問をずっと聞いておりますと、質問をすればするほど竹下さんは後退しているような印象を受ける。我々に対する説明と大分食い違っているようにも思われる。その点で、総理のみずからにかかる問題についての受けとめ方をまずお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。
  102. 竹下登

    国務大臣竹下登君) お尋ねに対しては、私は私なりに誠心誠意お答えしておるつもりでございます。が、よしんば、それが純粋な経済取引であったにせよ、私の周辺にかかわる問題でございますから、私自身の身を律しなければならないということを大前提に置きまして、みずから対処してまいりたいというふうに思っております。
  103. 矢田部理

    矢田部理君 時間があれば詳細に事の経過、成り行きを伺いたいのでありますが、同僚議員というか他の議員もいろいろ聞いておるようでありますから、ポイントについてだけ伺っておきます。  青木さんのところに最初リクルート側から話が持ってこられたというんですが、そのときに、結果としては青木さんの二千株、それから福田さんの一万株になるわけですが、一緒に同じ話として持ってこられたんですか、それを青木さん御自身が振り分けられたのでしょうか、その点はいかがですか。
  104. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 一万二千株を持ってきてということであったのか、一万株はしかるべき人に、二千株はあなたにと言ったのか、そこのところは月日まで正式に調べておりません。
  105. 矢田部理

    矢田部理君 話の趣旨でございますが、二千株についてはこれは青木さんに引き受けてほしいというお話だったわけですね。他の一万株については総理竹下さん御自身というふうに言ったかどうかは別として、いわば竹下さん方でお引き受けをいただきたい、持っていただきたい、こういう趣旨の話し向きではなかったのですか。
  106. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 相手方さんの御意思を私が推しはかることは避けなければならないと思いますが、普通私が常識的に考えて、どなたか適当な方にお譲りしたいという方がいらっしゃる、そういうふうに、私も当時は幹事長でございましたけれども、そういう表現でお越しになるのが普通だろうと思います。
  107. 矢田部理

    矢田部理君 私は、その説明に必ずしも納得しないのですが、それぞれの政治家のところに、秘書のところに持っていけば話も通じるだろうという考え方もあって株は近づいていったし、そういう向きで持ってこられたと見るのがむしろ常識なんでありまして、そういう話で来たのに幹事長名義にするのもなんだからとか、いかがかと思って青木さんの采配で、事によったら福田さんの名前にしたんじゃありませんか。  だれか適当に人がいたら探してくれと、株の売買のあっせんをしてくれという趣旨で持ってきたというのには、少しく話の説明に無理がありませんか。
  108. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 普通の場合でございますが、この株をお譲りしたいという人がおると言ってきますと、善意に考えれば、その会社にもまたそれを持たれる人にも、双方のためにいい人をあっせんするというのが普通じゃないか。その場合、直ちに売却するという前提は、私は受ける方にはなかろうと思います。あるいはお売りになろうとどうしようと、その方がお持ちになっておって、双方のためにいいことだという人をあっせんするのが正しいあり方じゃなかろうかと思います。
  109. 矢田部理

    矢田部理君 うんと親しくて、株のあっせん業でもやっているなら話は別ですよ。そうじゃないんですね。総理も少しつくり過ぎている。だれがつくったかは知りません。だれでもいいからというのであれば、先ほど私はリスト2というのを示しました。これは衆議院で出された文書、コスモス社などが中心になってつくった文書ですが、福田勝之さんが政治家関連の名前として出されているわけです。つまり、竹下さんの縁戚、関係者としてリクルート社も思っているからこのリストに載せたのでありまして、だれでもいいから適当に書いて探してくれという話では、少なくとも向こう側の立場はなかった。  したがってまた、青木さんのところに説明に来られたときに、適当にだれか見つけてくれということではなくて、やっぱり竹下さん、あるいはその名前でいかぬとすれば、その周辺で買い取ってほしいと、特定の目的、意味内容を持たせて青木さんのところを訪ねたんではありませんか。
  110. 竹下登

    国務大臣竹下登君) したがって、私も相手方さんの意思を推しはかることは避けるべきだと思いますが、普通、株式譲渡というものがあるとすれば、片や建設業でありますし、片やもどんどんそういう建物をお建てになるところでございますから、やはり信用のできる相手方として、平素信頼しておる福田さんということが念頭に浮かんだろうと思います。
  111. 矢田部理

    矢田部理君 少なくともリクルート側はそういう立場ではない。したがって話としては、その向きで話をされたというのは少しく真実性に乏しいというふうに私は思います。  いずれにしても、形としては福田さんのところに落着をした。その後の株の売買の手続、約定書の作成とかお金の振り込みとか、一連の手続はどなたがおやりになったんですか。福田さん、親御さんの方ですが、御自身ですか、それとも青木さんが仲介したのでしょうか。
  112. 竹下登

    国務大臣竹下登君) その点については確認しておりません。
  113. 矢田部理

    矢田部理君 売却にかかわる手続は、具体的にはどなたが指示をされ、どなたがおやりになったんでしょうか。
  114. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 売却の指示というのも、ちょっと私存じておりません。
  115. 矢田部理

    矢田部理君 株を購入するに当たって、お金の振り込みはいつごろ、どなたが、幾ら、だれに向けて振り込んだのでしょうか。
  116. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 青木君自身の問題につきましては私なりに確認いたしておりますが、福田さんの問題について話を聞けない間柄にあるわけじゃございませんけれども、そこを国会で報告しなきゃならぬから聞かしてくれというような考え方には立っておりません。
  117. 矢田部理

    矢田部理君 この株は竹下さん方に割り振られた株なんですよ。受け皿の名義人がたまたま福田さんであって、あたかも人ごとのように言うのは、私は間違っていると思う。個人的な問題でも私経済でもない。  これだけ重要な疑惑に包まれているわけでありますから、特に皆さんに綱紀粛正を求めるのであれば、総理自身が全部自分のかかわる内容を明らかにして、その上で事に処すべきではないかと思いますが、いかがですか。
  118. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私の事務所で話があって、青木君が福田さんに振った、振るという言葉はおかしいですが、紹介したわけでございますから、もちろんそういう意味における責任は私に所在していると思っております。  したがって、矢田部委員には申し上げたことございますけれども、個人的にこれはどうなのと言われれば、信頼感があるから幾らでもお見せしてもいいと、本当は私そんなことをお話ししたことは確かにございますが、いやしくも立派な経済人のお方のものを公の場で御説明するということはやはりプライバシーの問題、プライバシーの問題と申しましょうか、私が信頼、尊敬しておる人でございますだけに、そこまで出すという考え方は私にはございません。ただ、国会でお決めになることに対して拒否する気持ちも全くございません。
  119. 矢田部理

    矢田部理君 福田さんと江副さんが特別な関係にあったわけじゃないんですね。そうでしょう。うなずいておられるわけですが、江副さん方にしてみれば、この株でもうけさせてやろうと思って方々へ配ったわけですよ。福田さんにもうけさせる理由はないのでありまして、竹下さんの関係者で少しいい思いをしていただきたいという趣旨で持ってきたんですよ。だから、私経済の行為とか単なる通常の株の取引とは全く違うのでありまして、その点では総理みずからが、私の行為とかプライバシーとか経済行為だということではなしに、疑惑に包まれている渦中の人なんでありますから、その疑惑を解明する責任が倫理、公理上もあるわけであります。  総理のお話を伺っておりますと、私は個人的に見せてもいいと。私は何も趣味で見せてもらいたいとのぞいているわけじゃないんです。やっぱり政治の疑惑解明に総理みずからが先頭に立つべきだ。ですから、志苫委員も当委員会の早い時期に総括質問で総理に求めたら、あのときには見せてもいいふうな向きの答弁をされた。その後、他党への答弁ではどんどん後ろへ後ずさりしてしまった。そろそろ先の見通しがついたからなどといって安心されては困るのでありまして、リクルート疑惑はこれはやっぱり年を越さなきゃならぬ。検察庁もそう言っていました。となれば、総理自身が身のあかしを立てる一連の資料等も提出をするということをここで約束すべきだと思いますが、いかがですか。
  120. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 平素、信頼関係を基礎にして私は今日まで来たつもりでございますので、個人的信頼関係の上に立てば、本当は約定書なんというのは幾らお見せしてもいいものだと昔から、昔と言うとちょっと表現が悪うございますが、そういう考えがございます。  それで、志苫委員の質問に対する答弁を精細に読み返したわけではございませんが、気持ちの上でそうした気持ちは今でもございます。他党の答弁とおっしゃいましたが、そういう印象を与えたとしますならば、他党のお方に失礼しましたということをまたおわびをしてもいいと思っておりますが、答弁書を精査されまして、何か間違っておると一つ一つということになりますと、これはやっぱり言わない方がいいというような気持ちが私にもあるいはあったので、ちょっとそういう印象を与えた答弁になったかもしれません。  しかし、そもそも私は、お互いが選挙ということで選ばれておる者同士が信頼関係にあるということが私にとっての財産でもあるような気がいたしますので、それは今後も守っていきたいと思っております。
  121. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 矢田部君、時間です。
  122. 矢田部理

    矢田部理君 はい。あと一問で終わります。  ですから、その信頼が総理に対して疑われているわけですね。そのあかしを立てる必要がある。そのためには総理はここで、私に対してもそうです、そこは聞いておりません、そこは調べておりません、それは私経済だ、個人の問題だと、これではやっぱりいかぬのであります。そして、総理の最後の逃げはといってはなんでありますが、個人的ならばと言ってみたり、国会が言うのであればとおっしゃってみたりするのでありますが、どうもやっぱり総理は国会に逃げ込む、そうしますと、委員長は理事会で協議しますということになる。この前もたしかそうでした。理事会は自民党の多数の力で、これは見せないことにするといってお開きにしてしまう。  そういう仕掛けの中で総理は逃げ込もうとしているということだとすれば、これはやっぱり政治のあり方、ありようにとって大変なことなんでありまして、総理としてみずから政治倫理綱領に基づいて、疑惑を受けているわけでありますから、事実関係、全容を少なくとも自分にまつわる部分については明らかにして、今後の政治に処していくということが基本ではないかと思いますが、そのことを特につけ加えて、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  123. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 次に、大木浩君の質疑を行います。大木君。
  124. 大木浩

    ○大木浩君 当委員会における税制論議も既に四週目でございますか、とにかく委員会といたしましては相当の時間を持たれておりまして、既に税につきましていろいろと多くの議論、今回の政府税制改正法案については、賛成、反対それぞれの立場からいろいろと御意見があったわけでございます。そしてまた、御質問の過程におきましては、今度の改正法案ばかりではなくて、そもそも一体税とは何ぞやというような、言うなれば哲学論議もいろいろと行われました。一昨日でございましたか、志苫先生は国語辞典を片手に、そもそも税とは何ぞやという議論を展開していただきましたし、また竹下総理の方からも、遠き昔、我々の本当に遠い遠い御先祖様が、トラと言われたかクマと言われたか忘れましたが、そういった外敵から守るためにみんなで共同作業をした、そういったところからまた税の必要性と申しますか税という考え方も出てきたというようなお話もあったわけでございまして、大変私も勉強をさせていただきました。  そこで、個別的な問題につきましていろいろと御質問する前に、そういったいろいろな基本的なお考えも聞きながら、私なりに今感じておることを申し上げたいと思うんです。  遠い昔は別といたしまして、近代国家、特に民主的な近代国家というものにおける税というのは、やはりこれは一昔前の専制君主が例えば農民から血税を取り上げる、そういったものではないんではないか。つまり、国家が国民にかわって行ういろいろな公共の事業あるいは社会福祉、教育、医療といったような、国民の一人一人が直接の受益者となる支出を賄うための費用を政府が徴収する。つまり国民は、タックスペイヤーでありますと同時に、タックスのエンドユーザーでもあるというふうに考えます。  そういうことからいいますと、身体障害といったような理由でどうしても本当に働けない、こういう方は別といたしましても、やはり基本的な考え方としてはすべての国民が、もちろんその能力の範囲内ではありますが、税を払うというのが本来の望ましい姿ではないかというふうに考えるわけでございます。  したがって、今回の税制改革は、サラリーマンなど限られた層に過大な比重がかかった所得税を中心とする税体系を改めて、できるだけ広範な国民に消費の時点で税の負担を求めるという、言うなれば二本立て、もちろんそのほかに法人税等々ございますが、そういった直接税、間接税を含めての二本立てという方向への動きだということからすれば、私はこれは基本的には望ましい方向ではないかというふうに考えるわけでございます。  そこで、もう一つ視点を変えて考えてみますと、これは先般来言われておるところでありますけれども、高齢化社会を迎える日本といたしましては、すべての国民がそのライフサイクルを通じて、生産者としてもまた消費者としても充実した生活を送ることができるような社会体制、そういうものを整えるとともに、また現在のような国際化時代でございますから、国際競争にも十分たえ得るような日本経済を維持することが必要と考えるわけであります。  すなわち、民主主義社会における政策目標として、税自体の持つ性格が公正かつ合理的な配分に寄与するというものであることは当然でございますけれども、その他もろもろの国家としての広範な経済政策、例えば現在で言いますと内需拡大というようなこともこれは相当長期的に私は追求しなきゃならぬかと思いますし、また、もちろん今は所得の分配ということを考えておるわけですけれども、所得のもとになります日本経済全体の力というものをこういった国際化時代の中でさらに発展させなきゃならぬというふうに思うわけでございます。  そこで、いろいろと政府側から細かい資料もいただいておりますけれども、まず、そういった基本的な、今回の税制というものはこれからの日本経済の発展、あるいはもろもろの経済政策全般と矛盾したものではないんだ、いや、やっぱりそれと整合性があるんだということにつきまして、ひとつ総理の方から一般的な御見解を伺いたいと思います。
  125. 竹下登

    国務大臣竹下登君) おっしゃいますように、国家の基本というのは、外交、防衛、治安、教育、社会保障、社会資本、よくそういうことを申すわけでありますが、それに対する共通の経費というものをみんなで負担する、こういうことが基本にあろうかと思います。  したがいまして、負担するのも国民であれば受益者もまた国民であると、おっしゃる本筋でございます。それが税という形の中であらわされ、それをどういうことに構築していくかということから、近代国家、ちょっと以前の段階というのは物の値段の中にすべてが含まれておりますから、ある意味においてはオール間接税であるというふうにも言われます。そこにいわゆる応能主義的な物の考え方が起こってくるのは当然のことであろうと思います。  それが私は、シャウプ税制などはいわゆる所得税を中心とした応能主義的な富の再配分をも含めた税のあり方ではなかったかと思うわけであります。そうして先進各国に見られますように、その応能主義的なものが努力と報酬の限界というところに達して、いわゆる重税感とか不公平感が出ました場合に、そこに新たにまた消費、所得、資産というものに対して均衡のとれた税制の構築ということに変化をしてきておるというのが今日までの近代国家の税制の歴史ではなかろうかと思います。  その中に、またいま一つの要素としまして租税歳出というものがありました。すなわち租税を納めることでなくして、それを各種の特別措置によって歳出のかわりの機能を果たすという意味で申し上げたわけでございます。これが経済政策の中で各種のインセンティブというものになっておるかと思うわけであります。  したがって、今回の税制で〇・二%ぐらい成長率に対して影響があるではないかということは、所得税の減税の面等々各般のものを総合いたしましたときに、いわば安定的インフレなき持続的成長とでも申しましょうか、そうした路線の中にこれは役割を果たす税制構築になっておるであろう。  内需拡大の問題につきましては、税制のインセンティブというようなものはなお残されて、そして生かされておる形態になっておるというふうに私も理解をいたしておるところであります。
  126. 大木浩

    ○大木浩君 今回の税制改革は、これは昭和二十五年のシャウプ税制以来の最初の基本的な税制の手直しであると言われておるわけでございまして、もちろん昭和二十五年と今とを比べれば、一昔前の姿と今の姿というのは全然変わっているわけでございますから、何となく手直しが必要であるということは常識的にわかるわけでございまして、またその社会的、経済的な背景といたしまして、もちろん国内的な要因、国際的な要因、いろいろあろうかと思いますけれども、政府側の御説明としまして、例えば、いわく所得レベルの上昇と平準化、あるいは所得税の中に見られる水平的な不公平の増大、あるいは高齢化社会の到来、あるいは日本経済、日本の企業を取り巻く国際環境の激化と申しますか、そういったようなもろもろの要因が述べられておるわけでございます。そういった御説明を聞きますと、何となく改革の必要性というものは理解できるという感じがするわけでございますけれども、ただ、言われておられますいろいろな理由、社会的、経済的な変化というものは、言うなれば中長期的なものとでもいいますか、そういったものが多いのではないか。これが一つ。  それともう一つは、改革案の細目について、これは実は冒頭委員会におきましてもいろいろと御議論がございまして、まだまだ多くの問題が含まれているというような感じがするわけでありまして、改革の必要性はわかるけれども、現段階で特に立法化しなきゃいかぬ、その必要についてはどうだろうか、こういう御議論が多いというような感じがするわけでございます。  この点につきまして、これもひとつ総理からまとめて御説明いただきたいと思います。
  127. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今の御議論を承っておりますと、税制改革そのものは必要だということは国民のコンセンサスになっておるかの感がある。がしかし、緊急性、こういうことになると国民にぴんと来ないではないか、こういう基本的な意識のもとにお尋ねがあったことだと思うわけでございます。  その背景にありますのは、一つは税収のぐあいがいいじゃないか、だから何も急いできょうやらなくてもいいじゃないか、こういう背景が一つはございます。私は、このような状態において、今、失業率を見ましても、あるいは有効求人倍率を見ましても、物価、成長率等を見ましても、確かに先進国の中ではずば抜けた、数字で見ます限りには指標があらわれてくるわけでございます。言ってみれば、経済環境というのは比較的いい状態にある。そういうときだからこそ、私は大きな変化というものをもたらさないというところに一つの時期としてとらえておるわけでございます。  いま一つは、いつも申し上げておりますように、十年間の議論の中で基本にあるものは何かといえば、やはり稼得所得を課税対象とする、なかんずく源泉徴収される勤労所得者の皆さん方の少なくとも重税感というもの、これをクロヨンとかトーゴーサンとかいろいろ申しましても、一番先に払拭する一つの時期にまさに到来しておるではないかという意味において、十年間の歴史とその中における勤労所得者の方々の重税感、ある意味において不公平感ということにもなるでありましょう、それが機が熟した時期として緊急性の土台に存在するものであるというふうに考えております。
  128. 大木浩

    ○大木浩君 次に、所得税についてお伺いしたい。  これは事務方からお答えいただいても結構でございますが、現行の所得税システムにつきまして累進税率の簡素化等々、いろいろと内容として盛られておるんですけれども、この改定案が一つは高齢化社会への対応だ、こういうことを言っておられます。これが一つ。  それから、それとも関連いたしますけれども、中堅勤労層や高齢者の負担軽減だというようなことを言われておりますので、この辺をひとつ御説明願いたいと思うんです。  実は、その御説明をいただく前に、ちょっとひとつお願いしておきたいんですが、最近標準家庭というようなことで夫婦二人とかあるいは夫婦二人プラス子供二人とか、いろいろなのが書いてございますが、私は、現在というか、これから五年、十年先のことを考えますと、標準家庭というのは、老人が必ず一人や二人おるぞというのがむしろ標準家庭じゃないか。法律的に同居家族であるとかあるいは扶養家族であるとか、その辺の問題はありますけれども、現実にはやっぱり夫婦と子供と、それからおじいさんかおばあさんが住んでおる、こういうのがむしろ標準家庭じゃないかと思います。  ということでございますので、これからいろいろと御説明のときに、今すぐとは言いませんが、標準家庭というのはどういう標準家庭であるかというようなことも、そしてまたそれに基づいてどういう影響が出てくるかというようなことを、ひとついろいろな資料をつくっていただくときに頭の中に入れていただきたいと思うわけでございます。  そういうことで、今申し上げました質問について、局長ですか、ひとつよろしくお願いします。
  129. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 総理からも申し述べられましたように、今回の税制改革の、またその緊要性の発端をなすのは稼得所得、特に勤労者の給与所得につきましての負担の軽減合理化でございます。  昭和五十年に本格的な減税が行われまして以来、特例公債の発行ということになりましたので、本格的な減税が昭和五十年代以降ほとんど行われなかった。そのために、勤労者の例えば家計調査等で見ますと、昭和四十年代は勤労者のマクロとしての負担率、これは二、三%でございました。これが六十年代初めには倍ぐらいになってございます。こうしたところから重税感と申しますか、累増感と申しますかというものが強くなってきているところでございます。  したがいまして、サラリーマン、勤労者の方につきましては、一つは重税感、累増感、これは二十代、三十代から四十代、五十代になって社会の中堅としてお働きになる。そのときに給与も確かにふえるわけでございますけれども、子弟の教育とか住宅あるいは世の中との交際、そういったところから支出もまた急増する。そういう急増する、逼迫する家計の中で、所得税もまた累進課税でございますので負担が増加する。これが累増感、重圧感を生んでおるのではなかろうか。  そういうことから、今回の所得税におきましては、九割ぐらいのサラリーマンが所得税としては一〇%の比例税率で済む、給料がふえても負担率は上がらないというふうな基本的な税率構造にいたしておるところでございます。また、十六歳から二十二歳、これは高校、大学にちょうど通っておられるころの年齢でございますけれども、そうした扶養親族をお持ちの場合には割り増し控除をするということで、特に中堅の勤労者、サラリーマンにつきまして御配慮を申し上げている。  一方、高齢化の問題でございますが、今後高齢化をいたします。当然社会の費用はふえてまいりますが、やっぱりこの中心となってその費用を負担していただくのは現役のサラリーマンでございます。そうした現役のサラリーマンの方が給料がふえても無理なく御負担いただけるような所得税体系にしておくということが、やはり高齢化社会を迎えるに当たりまして、その費用をお願いするに際しましては基本的な所得税としての構造ではなかろうか。  またあわせて、所得の稼得とともに、所得の消費の段階でも広く薄く間接税の御負担をお願いする。それによりまして歳入も安定的に確保され、これが福祉を中心とする安定的歳出を支えるものになるのではないか。  これがいわば今回の所得税を中心とした税制改革、所得税の方から見ました改革のポイントではなかろうかと思うわけでございます。  なお、先ほどございました標準世帯の話、これはかつては夫婦、子三人というのを昭和四十年代初めまでは用いておりましたが、実態に応じまして、現在は夫婦、子二人ということでお示しをしています。今御指摘のその中にお年寄りを一人抱えておられる場合、こういう場合はどうだろうかということを御指摘でございます。私どもはそうした数字も含めましていろいろ分析し、統計数値もお示しし、減税、負担状況等もお示しすることにしております。  そういったところから見ますと、今回、お年寄りを一人養って同居しておられるサラリーマンの方についての負担はかなり軽減されることになってございます。
  130. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時に委員会を再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時二分休憩      ─────・─────    午後一時三分開会
  131. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 税制問題等に関する調査特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、各案について質疑を行います。大木浩君。
  132. 大木浩

    ○大木浩君 せっかく通産大臣もおいででございますので、今、大変激動の国際経済社会の中におきます日本の企業の立場というようなことについて、若干お伺いしたいと思うわけでございます。  政府ないし大蔵省の方から、今回の税制改革の一つの背景としまして我が国の法人税、実効税率と言った方がいいかもしれませんが、非常に過重になりつつあって、国際競争でなかなかきつい立場にある、このままじゃ企業の海外逃避も出てくるであろうし、日本経済の空洞化云々というような話があるわけでございます。他方、野党の先生の方から、いやいや、まだ日本の企業には余裕があるぞ、いろいろと引当金制度等も十分に活用されていないじゃないかというような御意見もあったわけでございます。  ただ、私なりに考えてみますと、戦後の日本経済の中でやはり大企業が、何と申しますか、リーディングセクターとして経済の発展に果たしてきた役割というのはこれはやっぱり考えなきゃいかぬと思うわけでございます。そういうことから、税制ばかりじゃなくて、これから政府としてはどういうふうに企業を国際社会の中で負けないように、これはもちろん大企業ばかりじゃございませんので、最近は海外へ進出する中小企業もたくさんございます。  そういうようなことで、まずは一つ税制との関係で日本の企業がこれから国際競争力を維持するために税制の中ではどういうことが必要か、これは大蔵省の方でも結構でございますが、ひとつ簡単にまとめて御答弁を願いたいと思います。
  133. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 国際的な側面から法人税を考えます場合には、一つはその税率水準につきまして諸外国との間に極端な差が開くことのないよう、それが経済取引のゆがみをもたらすことのないように配慮をするということがまず一つあろうかと思います。  第二点といたしましては、国際的な経済取引が活発化するに従いまして各国それぞれその領域内で行われる経済活動には課税をするわけでございますから、そうした場合に二重課税になり、あるいは逆に不当に負担が軽減されてそこに取引が集中するとかいったような点がないように配慮をする必要がございます。  そうした面におきまして、経済取引に二重に、過重にならないよう、不当に軽減されることのないよう、一つは租税条約等に基づきまして国際的に対処する。一方、不当に軽減されるということのないようにということは、国内法制におきましてタックスヘーブン税制、こういった税制整備しまして、そこにゆがみが生ずることのないようにいたしたい、これが国際的な側面から見た法人税の考え方でございます。
  134. 大木浩

    ○大木浩君 ただいま税制中心にして日本の企業に対する政府の協力と申しますか、促進策と申しますか、御説明がございました。税制にもいろいろあるわけでございまして、一般的な今の法人税というような話もあるし、それからあるいはいろいろな個別の目的を焦点に置いた優遇税制、準備金制度等々、例えば昔で言えば海外投資準備金、今でもあるわけですけれども、あるいは保険制度、昔の輸出保険、最近は貿易保険というふうに名前が変わっているようでございますけれども、貿易保険あるいは海外投資保険、そういったいろんなものがあるわけで、そういったものを全体としてまとめて果たして現行体制で十分なのか。  私も長年外務省に奉職させていただきまして、よく言われるのは、日本の政府の海外へ出ていく企業に対する協力がちょっと不十分じゃないか。それは制度として不十分、あるいは海外の大使がいろいろとよその国なら個別企業の話でもちゃんと相手の政府にかけ合ってくれる、しかしなかなか日本の場合には、何といいますか、いやいや個別企業のことまでやらないぞというようなことで、やってくれないというような批判もあるわけですけれども、大使の話は別といたしまして、現在あるいはこれから日本企業が海外に進出するに当たりまして現行の制度で十分であるのか、あるいはこういったことについてはこれからさらに強化していかなきゃいかぬのじゃないかというような面がございましたら、これは通産省の方からひとつ御説明願いたいと思います。
  135. 児玉幸治

    政府委員(児玉幸治君) 我が国の海外投資、最近どんどんふえているわけでございますけれども、ただいま先生御指摘のように、海外に投資をするにつきましてはいろいろ企業にとりまして難しい問題があるわけでございまして、殊に発展途上国に出てまいります場合にはいろんな意味でのリスクがあるわけでございます。  そういった事態に備えるために、現在税制の面では海外投資等損失準備金制度というものがございます。また、企業が投資をしました海外の子会社などが相手国の政治、経済的なリスクあるいは事業の失敗によりまして損失をこうむったときに、これを補てんするための海外投資保険制度というものもあるわけでございますけれども、現実にはこれで十分かということになりますと、例えば累積債務国に対してはどういうふうな対応をしたらいいのかというふうな問題もございまして、新しい事態に対応いたしまして、これらの税制あるいは保険制度につきましての拡充調整が必要なんではないかというふうに認識いたしているところでございます。  そういった事態を踏まえまして現行の制度の手直し、拡充等につきまして現在財政当局と種々調整を行っているところでございます。
  136. 大木浩

    ○大木浩君 今のお話で、事務当局からお話がございましたが、田村大臣、やっぱりこれからボーダーレスエコノミーというのはだんだん拡大していくわけでございますけれども、大臣のお立場からも今のようなことでひとつ御努力願えるか、一言。
  137. 田村元

    国務大臣(田村元君) 今、産政局長が種々申し上げました。また、大木委員からもお話がありました。我が国は率直に言って法人に対する税制というものは先進国の中では立ちおくれておると思います。法人税等も先進国の中では高い方でございます。でございますから、今度の税制改革で実効税率が五〇%を切るのは、ほんのわずかではありますけれども五〇%を切るということは画期的なことでございますが、これからも法人税のみならず、今おっしゃったように個々税制につきましても配慮をしなければならないと思います。  同時に、貿易保険等、これは単に企業のためのみならず、途上国等において日本の企業の投資というものを迎え入れる、つまり、日本は経済大国としての立場をどんどんといい意味で進めていく、そういうことを考えますと、企業のためにも安心して進出できるようにすることはもちろん必要でございますけれども、また途上国においても日本の企業が安心して来てくれることを望まなきゃならぬのですから、そういう点で、貿易保険等の拡充、これは画期的な拡充が必要だと思いますけれども、これも大切だと思います。  いずれにいたしましても、私は、今度のこの税制改革だけで熊事終われりとするものではない。抜本的に今の竹下内閣の間に、この日本企業の海外進出も含めて、税制あるいは保険等々のあり方というものを一度洗い直しをしてみる必要があるんじゃなかろうか、このように考えております。  感想を述べろということでございましたので、ちょっとそういうことを申し述べさせていただきました。
  138. 大木浩

    ○大木浩君 本論の消費税の方へ移りたいと思いますけれども、消費税につきまして、今までは個別の物品税であった、それを廃止して一般の消費税を導入というのは、これはやっぱりどうも金持ち優遇で弱い者いじめじゃないか、逆進的効果を生ずるんだ、そういった一般論もございますし、それから今回、昨年の経験を踏まえまして、今度はいろいろと中小事業者への配慮というのをやった。ところがあに図らんや、その配慮が非常に裏目に出ましていろいろと御批判を招いておるという面もあるようでございます。  そういった二つの反対論があるわけですけれども、まずその前半の一般論でございますけれども、やはりこれはぜいたくなものには高い税金をかけるというのはわかるわけですけれども、じゃ何がぜいたくかという議論になると、これは非常に意見が分かれてくるわけでございます。価値観の多様化が進んでいるから人によってあるいは状況によって変わるものであるということで、それを政府が一遍決めて、あるいは法律で一遍決めて当分直さないといっても、だんだんまた状況が変わってくると違った要請が出てくるんじゃないかなというような感じもするわけであります。先般来いろいろと参考人の方もたくさんおいでになりまして、何かダイヤモンドと毛皮の製品がぜいたくの象徴みたいに受け取られているわけでございますけれども、ダイヤモンドだって、それこそ金色夜叉のお宮さんのころはダイヤモンドの指輪はまず庶民の手には届かない高ねの花であったんでしょうが、現在では普通のサラリーマンでもこつこつとお金をためて婚約者に指輪の一つも買ってあげようということはできないことではない。やっぱり私は、ぜいたくというものはなかなか判定が難しいと思うわけでございます。  また、現在のいろんな消費経済というものを見ておりますと、高い物がよく売れるというと変ですけれども、いろいろと人間の感性に訴えた付加価値を加えた物がよく売れるということですから、普通の生地をただ生地だけで売っておっては余り値段がつきませんけれども、それこそカルダンだか三宅一生だか、そういった人がちょっとはさみを入れますと、途端に高くなる。いろいろあるわけでございます。  そういったことからいうと、どうもこれやっぱり一般消費税ということで、そして全体の日本の経済をこれからも伸ばしていくということに力点を置いた方がいいんじゃないかなという感じもするわけですけれども、その辺、政府はそういう考え方で今度の消費税法案を出しておられるような気がいたしますけれども、一応取りまとめて御説明をいただきたいと思います。
  139. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 今回消費税をお願いをしております。これは三つの観点からでございます。  一つはまず、現行の個別の消費税が抱えておりますところのいろいろな問題点を解決するということでございます。それからもう一つは、税体系全体を通ずる公平の確保。これは所得の稼得の段階で課税をお願いをする、その所得の支出、消費の段階で課税をお願いする、その均衡のとれた公平感を得られるような税体系をつくるということ。それから三番目は、国民福祉充実等に必要な歳入構造の安定化に資する。これが三番目の目的と申しますか理念でございます。  やはり、最初に申し上げました点が委員指摘の点でございます。現在の物品税を中心とする個別消費税、これはほとんどの部分が昭和十二年の北支事件特別税として発足したものでございまして、いわば当時の消費抑制と申しますか奢侈抑制というか、こうした観点から始まったものでございます。それが、戦後はややその点につきましては性格は変わった点もございますけれども、根底にはそういうものが思想としてございました。  この点につきましては、昭和五十年代に入りましてからは、もはやこうした個別の消費税というのは限界があるのではないかということから、一般的な消費税をお願いする方向で、最初は見直しは余り行われませんでしたが、やっぱりそこはまず現行の個別消費税の中で極力できるだけやるべきじゃないかということから、昭和五十六年の改正それから昭和五十九年度の改正、やはり物品税で申し上げれば個別に品目の洗い直しをいたしたわけでございますが、しかし五十九年度の改正で、ファクシミリ、パソコン、こういったものをどうするかと。そこまでいかないともう現在の消費の実態に即した課税ができないということから、そうした品目まで具体的に検討してまいったんですが、結局二年がかりで検討しても、こうしたものがいわゆる奢侈抑制の観点から出た物品税の体系の中で課税できるものなのかどうか、議論がそこらの点に終始しまして、結局個別の消費税は今やもう具体的に検討してもどうにも限界がある。こうしたことから、消費に広く薄く課税をお願いをする方向に踏み出したらどうかというのが今回の税制改革の一つのきっかけでございました。  委員指摘のような観点から、今回の間接税の改革なり税体系全体の見直しが始まっているところでございます。
  140. 大木浩

    ○大木浩君 先般来、今度は三%ということで消費税を御提案いただいているわけですが、これが三%で本当にとどまるのか、歯どめがないじゃないかという御議論がございまして、総理からは、いやいや竹下内閣がある限りはちゃんと三%で守るんだという公約をしておられるわけでございますから、それはそれで私どもはそう理解しておるわけですけれども、考えてみますと、この三%がいいか悪いかという議論は、ちょっとそれだけを切り離して議論するのはおかしいので、やはりどういう計画があるから、どういう目的があるから三%だというようなお話でないといけないということで、今回の消費税導入の一つのというか大きな目的といたしまして、高齢化社会が近づいたからそれに対する福祉政策をきちっとやるためには消費税だと、三%だと、こういう御説明があるわけでございます。  ただ、もう当委員会でもいろいろと既に厚生大臣等からもお伺いいたしましたけれども、その三%なり新しい税制のもとでどういう二十一世紀に向けての福祉政策をやっていくのか、どうもまだ抽象的なお話が多いようでございますが、厚生省、もう一つ踏み入った御説明をいただけるとありがたいと思います。
  141. 末次彬

    政府委員(末次彬君) 今後の長寿社会対策の指針といたしましては、いわゆる長寿社会対策大綱、これは六十一年に決定したものがございます。また、十月には国会の御要請に応じまして、税制改革関連法案の審議の御参考といたしまして、「長寿・福祉社会を実現するための施策の基本的考え方と目標について」というものを出しております。これで目指しておりますのは、二十一世紀に向けまして、長い生涯を国民だれもが健康で生きがいと喜びを持って過ごすことができるような、明るい活力に満ちた長寿・福祉社会を実現するために、これに必要な年金、医療保障の水準、福祉の供給体制の整備目標等、各施策の目標と方向を現時点で可能な限り具体的にお示ししたところでございます。  より具体的にというお話でございますから、若干敷衍して申し上げますと、年金につきましては、これは所得保障の根幹でございます。長い高齢期を経済的に安定した暮らしができるようにするため、その支柱といたしましての公的年金につきましては、おおむね現在程度の給付水準を維持するということを目標にいたしております。  また、医療につきましては、良質で効率的な医療の供給体制づくり、これに努めていくところでございますが、この必要な医療を確保しつつ安定した医療保険制度の運営ができますように、制度間の給付と負担の公平化に向けた措置段階的に講じますとともに、全体といたしまして医療保険の給付率をおおむね八割程度にすることを目標にいたしております。  また、福祉サービスにつきましては、これは高齢者が可能な限り家庭や地域の中で生活できるように、特に寝たきり老人と介護を要する老人対策に重点を置きまして、ショートステイ、家庭奉仕員、デイサービス等につきましては具体的な整備目標を掲げまして、在宅サービスを充実いたしますとともに、特別養護老人ホームあるいは老人保健施設の整備目標数につきましても昭和七十五年度を目途にした目標を掲げまして、その体制整備を図っていきたいというふうに考えております。
  142. 大木浩

    ○大木浩君 消費税をめぐっての一番議論がございましたのは、転嫁の問題だと考えるわけでございます。もう既に、いろんな委員の方から転嫁について賛否両論というよりは、よくわからない、どうするんだというような御疑問が提起されておるわけでございます。  企業相互間、あるいは消費者に対する消費税の転嫁をはっきり、しかも容易にするというためには、明確なガイドラインあるいは法的措置を定めてもらいたいというのは、これは中小企業者あたりの大多数の意見のように思いますけれども、他方、転嫁のための共同行為が便乗値上げを招くんじゃないか、あるいは大企業と中小企業とが一緒に共同行為をとるとどうも大企業主導になってしまって中小の方が不利になるんじゃないかというような、これはきちっとやれというのと、緩めろといいますか、両方の議論があるわけでございますが、これはどういうふうな現段階か、どちら側にお聞きしますかね、まず大蔵省、あるいはどちらがよろしいですか。
  143. 児玉幸治

    政府委員(児玉幸治君) 消費税の転嫁の問題につきましては、企業の大小を問わず産業界が広く非常に懸念をいたしておるところでございまして、最近私どももそれぞれの業界の実態に即しまして、どういうような転嫁の方法を考えるのかというふうなことについてのお話もいろいろお聞きしているところでございます。  いずれにいたしましても、この転嫁につきましては、税制の趣旨につきましての広報を十分に政府といたしましても行わなければならないことは当然でございますが、それ以外にもただいまお話しのございましたような、例えば共同行為をどういうふうに扱っていくかということがあるわけでございまして、これは消費税法の附則で転嫁の方法及び表示の方法につきましても共同行為を開く道が講じられておるところでございます。  もう既に何回も当委員会でも御議論になっておりますように、何しろ産業界にとりましてはこれは非常に新しい経験でございまして、どういうふうにやっていけばいいのか、あるいはそのやり方を間違うと現実のその取引ルールにいろいろ混乱が生ずるのではないかとか、あるいは仲間同士の間で隣はどういうふうにするんだろうというふうなことで疑心暗鬼が生ずるというふうなことがございまして、そういった点について問題を解消するために、今回の共同行為の道を開くことになっておるということだろうと思うのでございます。したがって、それぞれの業界で自分たちがこういうふうにやれるといいなと思っているようなことにつきまして、今回の法制でどこまでが可能でどこから先はだめなのか、こういった点につきましてはできるだけ早くガイドラインを公正取引委員会の方からお示しをいただいて、それを踏まえながら私どもとしては個々の業界の御指導もし、準備をしていきたいと思うわけでございます。  それから、ただいまのお話の中で中小企業と大企業の関係、この共同行為の中での問題についての御議論がございました。今回、中小企業についてその共同行為を認めます場合にも三分の一までは大企業が入っていてもいいんだということになっているわけでございますけれども、これは、これまでやってまいっております各種の中小企業税関係の政策の体系にのっとったものでございまして、例えば同じ業種の中にも中小企業、大企業が混在しているケースが非常に多いわけでございます。そういった場合には、むしろある意味で大企業も巻き込んだ形で申し合わせをいたしませんと、中小企業だけでは実際に十分な効果が上がらないということにもなるわけでございますし、また現実にでき上がっております各種の中小企業団体も、これはただいま申し上げましたようなそういう定義に即しましてその組織ができているわけでございまして、団体として共同行為をいたします場合にもそれを前提にいたしませんとかえって共同行為自身の意義がなくなってしまう、実態に適合しないというふうなことでございます。そういった意味で今回の措置は、取引立場の弱い中小企業が実効のある申し合わせができますように手当てをしたものでございます。  それからなお、便乗の問題もお話がございましたが、これは便乗的な値上げがあってはならないことは当然のことでございまして、そういった点につきましては関係の官庁等との連携もよくとりながら、きちんと対処してまいる所存でございます。
  144. 大木浩

    ○大木浩君 昨日の井上議員の御質問にあったと思いますけれども、やはりいろいろと業界によって勝手に、勝手にとは言わないですけれども、それぞれに考えろということじゃ混乱が生ずるんじゃないか。むしろ現行の物品税法四十二条ですか、やっぱり外枠ということを原則にして、あと例外のものは例外を考えるというようなことの方がいいじゃないかというようなお話もあったわけでございますが、たしか公取委員長のお話は、いやいや、やっぱりその業界によっていろいろ違うんだから、そう一律に、あるいは原則にというようなことも難しいんだというようなお話がありました。  ただ、私きょうの朝刊、私の手元には日経がございますけれども、各業界によっていろいろ既に話し合いを進めておるということで、むしろ公取委の御判断としても、例えばここに再販売価格製品についての御説明がありまして、化粧品は外枠だとか書籍は内枠だとかいろいろなことがかなり具体的に出ておるんですけれども、公取委員長として現段階どういうふうにこの状況把握しておられますか、御説明いただきたいと思います。
  145. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 私どもの事務局の方にも各業界からいろいろ問い合わせあるいは御相談もあるように聞いております。私、詳細は存じないわけでございますけれども、昨日井上委員から御質問がございましたのは、独禁法上特別な扱いが認められております再販商品の扱いでございまして、あのときにも申し上げたのでございますけれども、例えば化粧品について税額を内書きにするか外書きにするか、これはやはり私は業界の判断に任せた方がいいと考えております。  いずれにしても、どちらか決められた方法で、ただし、その消費税額分はきちんと消費者にわかるように表示してもらう。同じ再販商品でも著作物になりますと大体これは定価販売、全国どこの書店へ行っても同じ価格で売られておる商品でございまして、消費税が導入されました後も全国どこの場所でも、売っている人が課税事業者であろうと免税事業者であろうとを問わず、統一価格で売られるということは、公正取引委員会としても、その価格づけが著しく消費者の利益を不当に害するものでない以上、認められるべきであろうと考えております。  ところが、こういった商品につきましては、例えば商品の定価に一々消費税額幾らというふうに書くよりも、むしろ定価販売というものが定着しておるわけでありますから、その価格改定が妥当なものであるとすれば、価格改定されるときに、消費者といいますか読者に、こういうことで今回消費税相当分定価が上がりますということをきちんと周知をされれば、例えば書物の定価に消費税分を幾らとあえて書く必要もない。したがいまして、商品によりましていろいろあるわけでございます。  今、再販商品のことを申し上げたわけですけれども、それ以外の商品につきましても、各業界で内書きにするか外書きにするか、あるいは場合によっては消費税込みという表示でいくのか、いろいろ御相談になっておるようでございまして、私どもはそういうことをきちんと決めていただいて届け出が行われれば、それがまあ取引の中に溶け込んでいくということを期待をしておるわけでございます。  いずれにしても、事業者の方から見れば転嫁部分、転嫁部分と申しますか消費税部分を価格に転嫁したいという思考を持ってお話をされるわけでありますから、私はそれぞれ商品、業界に応じたところで、実施の段階までにおよそ妥当な慣行というものができていくんではないかというふうに観測をいたしております。
  146. 大木浩

    ○大木浩君 今いろいろと御説明がございまして、いずれにいたしましてもこの転嫁の問題についての対応というのは、これは公取もありますし、大蔵省もありますし、それからまた各業界ということになれば通産省もある、農林省もあるかもしれませんが、ということでございまして、どうぞひとつ各関連の機関におきまして円滑なる連係プレーをとっていただきまして、少なくとも一般国民によくわかるようにひとつ体制をつくっていただきたい、これは要望を申し上げておきます。  次に、外国との税制の調整と申しますか、最近いろいろな貿易摩擦というか経済摩擦というのが出てまいりまして、今まで余り考えなかったことまで摩擦になってくるような話も多いわけでございますけれども、たまたま私これもまたけさの新聞を読んでおりますと、ECの中では、あそこは日本と違いましてECの中で一つの共同体と申しますか、普通の国の間の関係とはちょっと違うと思いますけれども、間接税をもう少しお互いに調整してきちっとしたものをつくろう、こういうような動きもあるというふうに理解しております。ですから、日本の場合にもだんだんそういったことを少し考えておかなければいかぬのじゃないかなという感じがいたします。  また、日本自身といたしましても、例えば先般の米国との間におきましては、これは州税だと思いますけれども、ユニタリータックスというようなことが出てきて大分日本の業界が苦労をしたということがあるわけでございますし、アメリカの方もいろいろと税制を手直しするとよくわからないというような面もあるわけでございますから、この辺ひとつ行政当局においても十分に勉強していただきたいわけでありますけれども、これは大蔵省、現在は税制について諸外国との間に摩擦があるのかないのか。  それから、仮にこれから摩擦といいますか問題点があるとすれば、例えば二重課税防止条約というのを今三十五、六の国と結んでいると思いますけれども、そういったものをもっと広げた方がいいのか。あるいはたしか米加、アメリカとカナダの間の自由貿易協定の中ではそういった税金といったような法律上の問題についてもいろいろ問題が起こったら二国間の仲裁機構といいますか、協議機構をつくって議論をするというようなこともあるようでございます。  ひとつその辺の外国との税制調整の問題について、現状とこれからの見通しということについて御説明いただきたいと思います。
  147. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 国際的な税をめぐる諸問題として、我が国の方が外国からいろいろ要請を受けているといった点につきましては、一昨年来たばこの問題がございました。この問題はたばこの関税を廃止することで決着を見ております。それからおととし、あるいはもっと前からでございますが、イギリスとECからウイスキー、ワインにつきましての税率のあり方につきましていろいろ問題がございました。この問題に答えるための回答を今回抜本改革案の中の一環として盛り込まさしていただいてございます。こうしたことで、おおむねそうした間接税の問題につきましては対応できているのではないかと思います。  一方、直接税につきましては、これはおおむね御指摘のございました三十六カ国と租税条約を結んでおりまして、その条約によりまして二重課税の防止、あるいは個々に問題がございますときは権限ある当局間での協議ということで解決に努めてきております。個別にこうした条約ベースに乗らない国際的な問題としては、御指摘のございましたアメリカとの間ではユニタリータックス、これは地方税でございましたけれども、この問題がございました。この問題につきましては、事務的にも現地にいろいろお願いし、また私どもからも直接お願いをしたり、いろいろ手だてを尽くしてまいりまして、現在カリフォルニア州ではユニタリー方式とウオーターエッジ方式、この間で選択をすればよいということで一応は落ちついているのでございますが、その選択手数料がかなり高いといった問題がやっぱり残っているといえば残っているのではないかと思うわけでございます。  それから、アメリカの例のレーガン抜本改革の中の一環として支店税というのが設けられておりますが、その適用いかんによりましては、我が国の進出している企業に不利益をもたらすおそれもかなりございます。この点につきましては、その内容につきましても十分確かめまして、現時点におきましては、これは我が国からの支店には何とか支店利益税が課税されることがないように処理というか、おおむねそうした方向で対処されることが見込まれてございます。  それから、ドイツにおきましては、利子につきまして源泉徴収の導入が現在大きく議論されておりますが、その中で本支店間の支払い利子につきましても源泉徴収を行いたいというような動きがございました。こうした点につきましては、これは国際取引上問題であるということからこうした課税は行わないように申し入れを行い、おおむねその私どもからの要望は受け入れられて処理されているようでございます。  こうした個々の問題につきまして、御指摘のように何らかの仲裁機構的なものをという考え方もあるわけでございますが、現時点におきましては、一応租税条約でもってまず大筋課税関係の調整が行われ、個々に問題がありますれば条約に基づく協議、さらには制度上の問題については個々の政府間の協議で現在おおむね対処されているところでございますので、こうした税制上の仲裁的な機構をつくるというところまではまだ世界にも余り例がございませんので、ちょっとそこまで具体的に構想を練るというところまでの段階には至っておりません。しかし将来、経済取引がかなり活発化し、税制上も複雑な事案が頻発するというような事態になれば、そういうこともまたさらに具体的に議論されるかと思いますが、まだ現時点ではそこまでは行っていないようでございます。
  148. 大木浩

    ○大木浩君 今回、新しい税制改正法案というのが出てきたわけでございますけれども、現在の日本の社会あるいは日本の経済は非常に変化が大きいわけでございまして、生活水準、ライフスタイル、価値観等々急速に変わる世の中でございます。そういうことになりますと、これは今回は三十年ぶりに一回というようなことでございますけれども、やはり税制というのは何十年に一回ということではなくて、それぞれその時々の状況に応じて見直しもするし、改革もするということでないといけないんじゃないかと思うわけでございます。  今回の法案につきましても、大体はわかるけれども、やっぱり細かいところでは何か問題があるな、こういうような議論もあるわけでございますし、将来に向かって基本的な政策あるいは実施の方式と申しますか、例えば消費税の算定に用いられる帳簿方式などというものについては大分議論もあったようでございますから、そういったようなこともございますし、中小企業に対するいろんな特例というのもかえって議論を引き起こしたというような面もございますから、そういった将来への改正のお気持ちと申しますか見通しと申しますか、そういった点も含めて総理にひとつ取りまとめの御発言をいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  149. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今般の税制は、それはそれなりの抜本改正の位置づけであろうが、やはり経済社会の移り変わりに従って絶え間なく理想の税制を追求すべきである、総じてこういう御意見であったと思います。税というものはまさに生き物でございますから、私はそのとおりであろうというふうに思っております。  したがって、今も例示として出されました簡易課税、そうしたものに対して、一つのなじみの比較的薄い税制であるから、現段階においてはこれもやむを得ない措置。こういうことがあろうとも、それそのものがかえっていわゆる税を負担する消費者の側からはいろんな問題を持って見られるという結果にもなって、それが本院においても随分議論もされたところである。したがって、やはり総対的には見直しを絶えず行っていくべきものであるが、衆議院の修正点そのものを見てみましても、税制というのは絶えず見直しの対象として置くべきであるという意思があらわれておるというふうに私も考えております。たゆまざる理想的税制の追求というものは、いわゆるたゆまない見直しとともに存在するであろうという考え方は、私も同感でございます。
  150. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 次に、山口哲夫君の質疑を行います。山口君。
  151. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 十四日の私の行いました質問に続きまして、きょうもまずリクルート問題から入りたいと思っております。  十四日の質問のときには、五十九年の十二月に一株二千五百円のものを千二百円で譲渡をした、したがって、その差額である千三百円は、これは課税の対象になるのではないか、こういう問題を質問いたしまして、証券局長と私との間に若干の食い違いがあったようであります。しかしいずれは、私が有価証券報告書に基づいてずっと追ってまいりましたので、必ず私の言ったような形で将来一致するのでないかなというふうに思っているわけでありますけれども、きょうは、そのときに私の方からちょっと意見として出しておりました六十一年の九月三十日付で第三者割り当てからの還流株が今わかっているだけでも七十六万株、八十三人に譲渡をされまして、その価格は一様に一株三千円であった。それは本来四千五十円であるべきだったのを三千円で売ったのだから千五十円の差額がそこに生じている。こういうことについて意見として申し上げたわけでありますが、この問題は、前段の問題と違いまして、証券局と私との間に解釈の違いは生じない問題であります。  なぜならば、江副氏が証言として四千五十円であるということを述べているからであります。それは、我が党の矢田部議員の十二月六日の当委員会におけるこういう質問であります。六十一年の九月三日に店頭登録の申請をするんですけれども、そのときに、「会社として分売価格、最終的には四千六十円に決まるわけでありますが、およその数字を決められた、相談されたのはいつごろのことでしょうか」という質問に対しまして、江副証人は、「四千五十円でございますか」と、十円違いますけれども大勢に影響ないと思うんですが、「四千五十円でございますか、それについては、恐らく九月半ばごろにそういうふうな話があったのではないか、そういうふうに記憶しております」、証言としてもう九月半ばころに、十月の店頭登録時におけるその価格は四千五十円であるということをはっきりと証言として述べているわけであります。そして、そのことは裏づけになるデータもそろっておりますし、証券局もそのことを大体認めている答弁を今までも続けております。  したがって、前段の問題と違いまして、本来四千五十円であるべきものを三千円で売ったということについては証券局と私との間に何ら食い違いはない、そういうふうに思います。そうしますと、この差額は一株について千五十円で七十六万株ですから約八億円という、このお金はリクルートコスモス社といたしましては収益に加算しなければなりません。益金に算入すべきもの、そういう性質の金だと思うんですけれども、その点いかがでしょうか。
  152. 伊藤博行

    政府委員(伊藤博行君) お答え申し上げます。  先生の御質問は、本来四千五十円のものを、もしその時点で時価が四千五十円であるということが確定できるという前提のもとで、そういったものを三千円でもし譲渡するとしたならば、それはしかるべき課税関係が生ずるんじゃないかという御質問かと思います。私どもも一般的に本件につきましてはいろんな情報等を関心を持って見ております。  ただ、具体的にその特定の事案でこういう事実関係だということを認定する状況にはございませんけれども、仮定の問題として、今先生がおっしゃったような議論が前提になる場合には、しかるべく課税関係は生じ得る可能性はあるのかなというふうな感じはしておりますけれども、いずれにしましても、ちょっと具体的問題でございますので、それに即してという点につきましては答えを留保させていただきたいと思います。
  153. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 仮定の問題ではないんです。江副証人が十月の店頭登録のときの時点で四千五十円になるであろうと、それは証言としてきちっと言っているわけですね、四千五十円になると言っている。ですから、仮定の問題ではないんです。そして一方では、ちゃんと三千円で売っているわけです。だから、仮定の問題じゃないでしょう。
  154. 伊藤博行

    政府委員(伊藤博行君) 少し前段を省略いたしましたものですからあれでございますけれども、一般的な税制の建前といいましょうか、これは先般、ちょっと日にちは忘れましたが、たびたび申し上げましたけれども、一般的な課税関係は有償取得したものをその後譲渡したときの課税の規制の仕方は、基本的にはキャピタルゲイン課税という格好で整理される。ただ、もし一時所得なり贈与という問題が生じ得るといたしますならば、譲り受けの段階における問題がみなし課税の議論として出てくる可能性はございますということを申し上げたつもりでございます。  今、先生のおっしゃっておられますのはその後者の部分、その部分でみなし課税を行うようなケースに該当するんではないかという御趣旨かと思います。私どもが確定的なことを申し上げかねると申し上げておりますのは、やはりみなし課税という事柄の性質上、その譲り受け時点における適正価格をどう見るかというところに一つのいろんな前提が入ってまいります。したがって、四千五十円というものがそのときの適正価格ということを前提に仮定を置けばおっしゃるような議論になりますけれども、その部分について税の観点、いわばみなし課税を行うという観点からそれが妥当かどうかというのは一概に今この時点で断定し得るものではない、そういう意味で仮定を置けばというふうに申し上げた次第でございます。
  155. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 四千五十円というのは、江副氏の証言でもはっきりしているわけですね。だから仮定ではない。それからもう一つは、証券業協会でも十月の十五日に四千六十円ということを確認をしているわけですね。大蔵省の説明によっても類似業種方式の算出基準、あるいは同業他社の株価の時価との比較、そういったすべてのものが大体四千六十円程度ということはみんな一致しているわけですよ。だから、これは決して推測とか仮定の問題ではない、これだけはもうはっきりしているんです。  だから、あなた方がどうしてもそういうふうにおっしゃるのであれば、今そこまでわかっておっても仮定という言葉を使わざるを得ないのかもしれませんけれども、まあいずれにいたしましても今国税庁の方で認めたのは、もしそれが正しいとすれば当然経理上は収益として加算していかなければならない、益金として算入すべきものだということだけは認めたわけですね。そうすると、その場合にこの課税関係はどうなんでしょうか。
  156. 伊藤博行

    政府委員(伊藤博行君) 今のお話は、先生がおっしゃるのを仮定の前提としてということかと思いますが、その場合に譲り渡した法人の方にみなし収益を加算しろという御趣旨かと思いますが、おっしゃるようなのが事実認定の前提になるのであれば法人サイドにもそのような問題が出てこようかと思います。
  157. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 そうしますと、当然その場合には税務調査が必要になりますね。
  158. 伊藤博行

    政府委員(伊藤博行君) 常々申し上げておりますように、私どもいろんな資料の集積を図っておりますけれども、そういったものの結果、課税上問題があるということであれば必要に応じて調査をするということを申し上げておるところでございます。
  159. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 必要に応じてと言うけれども、これだけはっきりした問題が出てきているわけですよね。そして、政治問題になり、社会問題になって、今言ったように大体確証が全部そろっているわけでしょう。これだけそろっておって、必要があればということにはならないと思うんです。当然これは査察を行ってもいい問題ではないかと思うんですけれども、どうでしょう。
  160. 伊藤博行

    政府委員(伊藤博行君) いろいろ仮定をたくさん置いての議論でございますので、先ほど申し上げたような一般論での答弁でお許しいただきたいと思います。  それから、査察云々という場合には、また通常の調査とは異なりまして主観的な要素、故意といったような問題、犯意といったような問題、それから構成要件的には偽りその他の不正の行為といったようないろんな通常の調査にプラスした要件がございます。そういった問題がございますので、一般的に言って査察を発動するというのは相当慎重に行っておるというのが一般論でございます。
  161. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 答弁のたびに仮定仮定と言うんですけれども、これはどうして仮定になるんですか。そういう証言がはっきりして、大蔵省としても大体四千五十円になるということをある程度認めてきて、それでも仮定ということになるんですか。だから、そういうことが正しいとすれば、ということだったらまだわかりますよ。何で仮定ですか、これは。
  162. 伊藤博行

    政府委員(伊藤博行君) たびたびで恐縮でございますけれども、税の観点というのは、やはりそれぞれの行政目的によって見る見方が多少違うんじゃないかという部分もございます。したがいまして、私どもはあくまでも税の観点で申し上げるときには、あらゆる諸要素を総合勘案してということを常に考えておるものでございますから、先生がおっしゃったお話があるいは重要な要素の一つかもしれませんけれども、総合勘案してというときのあるいは一つの要素にすぎないかもしれません。  そういう意味で、いろんな意味で一般論で申し上げて大変恐縮でございますけれども、その辺は御理解を賜りたいというふうに思います。
  163. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 それじゃお聞きしますけれども、四千五十円になるということをはっきり決めておいてそれを三千円で売ったという、その差額の問題についてあと何の問題があるんでしょうか。
  164. 伊藤博行

    政府委員(伊藤博行君) 一般的に申し上げまして、先ほど来申し上げておりますように、一時所得とかみなし贈与といった場合には、あくまでも譲り受け時点での時価といいましょうか、適正価格というのがベースになるわけでございます。その際の価格というのはあくまでもその時点でございます、譲り受け時点でございまして、そのとき以後の値上がり益とかあるいは値上がり見込み部分、そういったものが仮に加算されておりましても、そういったものを除去したところで評価していくというのが評価の原則でございます。  したがいまして、その辺の問題をどう評価するかという点もございまして、たまたま将来の売り渡し価格が幾らというふうに仮に予定があったとしても、そのことだけでもって直ちにそれよりも前の時点の適正価格であるということには必ずしもならないということを申し上げているわけでございます。
  165. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 だって、九月三十日で三千円で売ったわけでしょう。その九月三十日の時点の価格というものは、これはいろんな評価からいたしまして四千五十円だということを本人も証言として言っているし、大蔵省だってそれを認めているわけでしょう。そのほかに何か問題があるんですかね。
  166. 伊藤博行

    政府委員(伊藤博行君) 取引というのはいろんな要素を総合勘案しながらなされると思います。私どもは、あくまでも税というのを本来はキャピタルゲイン、通常の場合ですとあるものを有償で取得し、ある程度継続的に所有して将来売るといった場合のその差額というのは、原則キャピタルゲイン課税の法制に従うという前提に立っておるわけでございます。したがって、もし取得時点における価格が低廉譲渡であるということをみなして課税していくためには、それ相当のいろんな要素を総合勘案して、やはり低いということを認定した上でないと難しいということから先ほど来申し上げておるわけでございます。  ただ、いずれにいたしましても、先生がおっしゃる御趣旨も非常に私どもわからないわけじゃございません。十分そういったことも念頭に置きながらいろんなことを資料収集等をやっていくことに相なろうかと思いますけれども、ただ、今おっしゃったことだけでもって直ちにと言われますと、やはり一般論としてお答えせざるを得ないという点は御賢察いただきたいと思います。
  167. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 私の言っていることもわからないわけでないし、ある程度念頭に置かなきゃならないとおっしゃっているんですから、当然これはこれだけ重大な問題になっているんですから、ぜひひとつ税務調査の対象にしてほしいし、場合によっては査察に乗り出すべきだということを強く要求しておきます。  それで、譲渡された個人もこれは一時所得になるんでしょうね。
  168. 伊藤博行

    政府委員(伊藤博行君) またまた仮定という言葉を使うとおしかりを受けそうですけれども、先生がおっしゃっていることを前提にしてのいろんな法律関係を考えれば、もし低廉譲渡の認定ができるという前提、その仮定のもとでのその受け手の方、それは法人から低廉譲渡で受けた場合には一時所得になると思います。
  169. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 そうしますと、八十三人がその対象になるんですけれども、これは一時所得として八十三名の方は当然確定申告をしなければならないと思うんですが、この八十三人の中で申告した者はいるんでしょうか。
  170. 伊藤博行

    政府委員(伊藤博行君) 一般的に、個別の問題ということのほかに全体をまだ十分承知しておりませんので、ちょっと答弁を差し控えさせていただきます。
  171. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 これはもう一年以上たっているんですね。確定申告しなければならない時期から見ますと、六十一年の問題ですから六十二年の三月十五日までには当然確定申告しなきゃならないですね。だから、一年以上たっているんですけれども、これは今から税務調査をしてもいい対象だと思うんです。これだけの政治問題になっている以上、当然これは譲渡をされた者の課税関係についてもぜひひとつ税務調査をしていただきたい、こう思っております。  そこで、総理にお聞きしますけれども、青木秘書が二千株を譲渡された。そうすると、この計算からいきますと、一株千五十円の差額があるわけですから一時所得として二百十万円の所得があるわけですね。それから、福田勝之氏は一万株ですから千五十万円の一時所得があるということになる。今までの論議の中から当然この青木さんや福田さんというのは今の一時所得が課税されなければならない。大蔵大臣としてどういうふうにお考えでしょうか。
  172. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これこそ専門的知識があるわけではございませんが、所得税法上における譲渡所得の分野に入りますと、いわゆる株式の場合でございますから、従来の法律でいけば五十回の二十万株以下ということになろうかという感じでございます。
  173. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 全然論点が違うんですよ。  私の言っているのは、これは一時所得になるんだと。当然四千五十円であるべきものを三千円で譲渡を受けた、そうするとその差額というのは一時所得になるということなんです。会社であれば益金として算入しなければならない。個人であれば当然これは一時所得なんです。一時所得ということになれば課税の対象になるでしょうねということなんです。
  174. 伊藤博行

    政府委員(伊藤博行君) 先ほどの議論に戻るわけでございますけれども、一般的に、株を有償で取得してしばらく後に譲渡した、その場合の差額については一般的には譲渡益課税の規制を受ける。個人について生ずる譲渡益については、御案内のように、一定の五十回等々の要件のもとでの法制下にありますというのが大原則でございます。今、先生がおっしゃっておられるのは、そういう一般的なキャピタルゲイン課税のほかに、譲り受け段階の価格が適正価格を下回っているという場合には、キャピタルゲイン課税とは別個に一時所得課税の問題が出てくるのではないかという御質問かと思います。  私、先ほど来申し上げておりますのは、いろんな仮定を置けばそういう場合があるかもしれませんけれども、あらゆる事情を総合勘案するのは今後の話であって、今この段階でどうこうということを申し上げるのは御容赦くださいということを申し上げておりますので、そこはそういう前提のもとで御議論いただいているというふうに理解しております。
  175. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 だから、いろいろなことを勘案しながら、そして検討すれば、それは一時所得になるというような前提に立てば当然このお二人もその中に入るということは間違いないでしょう。もう一回質問しましょう。  だから、いろいろとあなた前提を置かれているよね。立場上、私の言っていることを正しいと思っているのでしょうけれども言えないだけで。だから私の言っていることを前提とした場合には、それは一時所得に入れば当然課税の対象になるでしょう、こうおっしゃったわけでしょう。そうすると、今名前を出した青木さんと福田さんというのもこれは一時所得の中に入るでしょうと。
  176. 伊藤博行

    政府委員(伊藤博行君) 個別問題としてお答えしているつもりじゃなくて、一般論として申し上げているつもりですが、今、一般的な条件を満たすケースであればおっしゃるようなことになろうかと思います。
  177. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 そこまで認められたので結構だと思うんです。  だから私は、これだけ問題になっているし、はっきりしているので、これは決して推定で物を言っているのではなくして、証言もあるし、大蔵省も四千五十円程度ということを認めているし、証券業協会もその時点では四千五十円ということを認めている。みんな認めているんです。それを三千円で買ったんだからその差額というのは間違いなくこれは会社では益金に入るし、個人であれば一時所得になるということははっきりしているんですよ。そこまではっきりしているのにまだ税務調査をやらないなんというのは、余り言いたくないけれども、前の質問で言ったように、会社の税理士に国税庁の天下りがいる、そんなことで自分の先輩が税理士やっているからできないんだろうとそう言ったんだけれども、そういうふうに勘ぐられたってしようがないんです。  これだけはっきりしている問題を税務調査にも入らない、査察にも入らない、こんなこと許されないですよ。これがもし一国民であってごらんなさい、普通の人で。我々と同じような普通の人であってごらんなさいよ。それこそ大変な税務調査でしょう、根掘り葉掘り。何でそういう不公平なやり方をするんですか。これはきちっとあなた方真剣に考えて直ちに税務調査に入るべきです。どうですか。
  178. 伊藤博行

    政府委員(伊藤博行君) 私どもも国会での御議論あるいは新聞報道等にいろんな情報等々が行われている、あるいは議論がなされておるというのは十分承知しております。また同時に、私どももいろんな形での情報収集にも相努めているわけでございます。そういった集積された情報と申告されておるものとの対比において問題があれば必要に応じて調査するということを先般来申し上げておるつもりでございますけれども、同じことをもって御答弁とさせていただきたいと思います。
  179. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 いろんな情報を収集するのも結構、それを分析するのも結構です。だから急いでやりなさいと言っているんですよ。我々普通の人間だったらそんなこと容赦なくやっているじゃないですか。だから、きちっと整理するものはきちっと整理していって、そうしてやっぱりこの問題の核心にきちっと入っていって、国民を差別するようなことをしないでちゃんとやってもらいたい、これが私の要求です。  そこで、検察庁にお聞きしますけれども、当然これは捜査の対象として頭に入れていらっしゃると思うんですけれども、いかがでしょうか。
  180. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 税法の問題は、一次的には大蔵省なり国税庁の御所管でございますが、具体的案件はともかくといたしまして、捜査の過程におきまして税法違反の事実がありますと、従来から国税当局の査察部門と警察は密接な関係を保っておりますので国税当局に御通報申し上げる、その上で国税当局がいろいろ調査をされまして、それが逋脱犯であり、刑事処分相当ということになれば告発で検察庁に処分を求めてくるというのが従来の慣行でございます。そういうことで、具体的な話でございませんけれども、一般的にそういうことになろうかと思います。
  181. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 ぜひひとつ真剣にこれは行っていただきたいと思います。  それで、会計検査院にもお聞きしますけれども、当然これは会計検査院としては一年に一回国税庁に対する検査もやっていらっしゃると思うんです。その検査のときには、国税当局がやっているこういった問題についても当然頭に入れて検査をしていくべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  182. 疋田周朗

    説明員(疋田周朗君) お答えいたします。  私ども会計検査院といたしましても、この問題につきましては関心を持って事態の推移を見守っているところでございます。ただいまの御議論を十分踏まえながら、今後国税当局で処理が行われました結果を待ちまして適切に対処してまいりたい、このように考えております。
  183. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 ぜひ適切に対処するように要望しておきたいと思います。  この問題は、一大贈収賄疑獄事件であると同時に、大面な脱税事件でもあります。しかもこれはリクルートリクルートコスモス社だけではありません、株の譲渡を受けた個人のほとんどすべてが脱税にもつながっている、そういう非常に大きな問題ですから、今後真剣に対処されることを強く要望してこの問題を終わります。  次は、地方税法改正と地方財政の問題に入ります。  まず、今度の税制改革の後、地方の歳入に占める地方税の割合は、この間も触れましたけれども、非常に減ってまいります。そして百歩譲って地方交付税、譲与税を含めましてもこれまた地方の一般財源が減ります。ですからそういうことからいきますと、先ほど総理は理想の税制を追求していかなきゃならないというそういうことをおっしゃいましたけれども、少なくとも地方に限ってみますと、理想的な税制の追求ではないと思うんです。自治体の税源が減ってくるわけですから、自主財源が。そういう意味では決して理想的な税制ではない、そういうふうに思います。  そこで、どうも理解できないんですけれども、今度の消費税、交付税の対象にしているんですけれども、交付税の対象ということになりますと当然三二%でなければならないのが、なぜ消費税に限って二四%にしたんでしょうか。
  184. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 委員御承知のとおり、今回の税制改正は、国、地方を通じていわば税制のあるべき姿を追求したわけでございます。ですから、今回の税制改革において国税三税の減収に伴う地方交付税の減収分、それから地方間接税の減収分の一部について、また住民税の減収の一部について消費税を地方交付税の対象税目として措置することとした結果、消費税に係る交付税率が二四%になったわけであります。これは御案内のとおり、地方交付税のいわば国税三税の減収分と、それから一部住民税の減税に伴う減収額を補てんしたわけでございますし、それからもう一つのいわゆる間接税の調整でございますが、これに伴う消費譲与税、これにおいていわゆる物品税の個別間接税の減収を補ったものでございますので、結果的に二四%になったということであります。
  185. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 そうしますと、逆算していって二四%という数字をつくったわけですか。
  186. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 今回の税制改正は、国と地方のバランスを変えるという大きな問題ではなくて、今回の税制改正に伴って地方税財源が減収になるわけでございます。ですから、国の原因によるいわゆる減収分、それは交付税の減収分が国税三税においてあります。それから、個別間接税も消費税との関連において改廃をいたしましたからこれがあるわけでございますから、これは一〇〇%充当しなければならない。そして、ちょうど国のいわば所得税に対比をしてという言葉は大きいかもしれませんが、住民税は、もちろん国、地方を通ずる直接税の減税を行っているわけでございますから、いわば心意気、地方も応分のそれに努力をしている、いわゆる減税を行ったということであります。
  187. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 いろいろとおっしゃってるけれども、どうもこれは逆算して二四%になったというそういう感じは受けますね。私これは自治大臣の本心じゃないと思うんですよ。だって、地方財政をある程度考えなきゃならない大臣として、この間も言ったように、今度の税制改革で八千八百億も不足財源出るわけでしょう。そうすると、一般消費税入れますと地方自治体で一般消費税の負担分というのは六千億あるわけ。足しますと一兆四千八百億もあるわけです、不足する財源が。それに補助率の問題がまだはっきりしないけれども一兆六千五百六十億でしょう。合わせて三兆円超える自治体には財源不足が生じるんです。逆算して二四%だからといってそれで納得されたんですかね、自治大臣が。
  188. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 逆算して二四%ということではなくて、今までいわば国税における基幹的な税目である国税三税、これにおいて今までの交付税率は三二%、これは皆さん御案内のとおりでございますが、今回新たに消費税をいわば同様の基幹的税目と見定めてこれに新たな交付税の税率を設けたということでございます。
  189. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 ちょっと答弁がわからないのですが、税制改革で八千八百億の不足財源が出るわけでしょう、簡単に言いますと。そして、六千億消費税でさらに加算されると一兆四千億地方財政が足りなくなるわけでしょう。それであればこの一兆四千億埋めるためには二四%ということにならないのじゃないですか。当然三二%、普通の交付税と同じようにやればここだけでも約四千億円以上ふえるわけです、三二%入れますと。そのくらいのことは、交付税率は三二と決まっているんだから、これを対象にするんであればそれだけ入れただけでも、私はいいとは言いませんよ、三二%でいいと言わない、もっとたくさん上げなければならないと思うけれども、少なくとも決まっている法律どおりに三二%掛けただけでも四千三百五十二億円だけはふえるんでしょうと言うんです。自治大臣として、そのくらいのことを大蔵省に主張したって何にもおかしくないと思うんです。
  190. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 三二%という今までの国税三税の中の交付税の率は当然のことでございますが、今回新たに消費税を交付税の算定税目に加えたわけでございます。そして、もちろん地方税財源に全く影響のないことは望ましいことでございます。前回も申し上げましたけれども、自然増収もある中で国税にも国の財政にも穴があくというか、減税超過額があるわけでございます。ですから、地方においても地方のいわば自主的な住民税を中心とする減税、これは自前で対応していく、そういう姿勢をとったわけでございます。
  191. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 自治大臣に質問したってどうせ腹の中は我々と同じだと思うので、これは言っても無理なことだと思うんですよ。問題は大蔵省なんでね。  国の政策に全部地方の自治体が従わなければならないということにならないと思うんです。地方は地方の政府ですよ。地方自治というのは地方政府という考え方で進まなきゃならないんですよ。何でも国の方が決まったからそれに右へ倣えせいと言う方が無理なんで、それだったら地方税制は地方税制でもって独立した考え方でどうするべきかということを改革の中で考えればいいのであって、まるっきりほとんど国の政策をそのまま自治体の中に当てはめてきて、結局は逆算していってまあ二四%くらいでいいだろうといって交付税率の法律で決まっている税率までも変えてしまうというやり方は、余りにもこれは地方を私は無視していると言わざるを得ないんです。  そこで、これは自治大臣と話していたってしようがないので大蔵大臣にお聞きしますけれども、ことごとく地方財政の問題はそうなんです。ですから、これは交付税法の六条の三の二という有名な法律がありますね、総理は長く大蔵大臣をやっていらっしゃったのでもうよくおわかりだと思うんですけれども、簡単に申しますと、毎年度分として交付すべき普通交付税の総額が引き続き著しく異なる場合には、地方財政もしくは地方行政に係る制度の改正または交付税率の変更を行わなければならない、という地方自治体にとっては有名な法律ですわね。これが守られていないんですよ、何年も。  当然、去年の段階でこれは交付税率を上げなければいけなかったんです。なぜならば、この「著しく異なる」というのは、簡単に言うとパーセンテージでいけば何%以上かというのは、これは一〇%以上というもう何十年と続いてきている解釈です。それを見ますと、六十一年で一二・四、六十二年で二六・二、六十三年で一七・三、いずれも一〇%以上超えているんです。そうしますと、この法律を素直に解釈しますと、当然交付税率を上げるか税制の抜本的な改革をしなければならないんです。それを言を左右にしてやろうとしない。どうしてこういうふうに守られないんでしょうかね。六十三年度の予算の編成の時点でもうこれは改正しなければならなかったんです。二年以上続いて三年目も続くであろうという場合においては、その三年目で交付税率を上げなければならない、こういうことになっているんです。  ところが、去年やろうとしないんです、大蔵省は。今度六十四年度の編成をやる場合には、当然これはまた一〇%を超えると思うんです、今の状況からいきますと。どうですか、法律どおり解釈して交付税率を思い切って上げる、消費税なんかやめてまず交付税率を上げる、そういうことを考えるべきでないんでしょうか。
  192. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 毎々地行委等でもお答えをいたしておりますとおり、確かに一〇%以上の乖離があることは認めております。ただ、それはいわゆる補助負担率の暫定的な引き下げによる結果でございまして、これを除けば地方財政は収支とんとんになります。  そういうことを考えますと、今のいわゆる補助率カットの問題は三年間の暫定措置でございますから、交付税率をこれによって左右するということはこの補助率カットをいわば恒久的に認めてしまうことにもつながる可能性がある。ですから私は、やはり暫定措置が六十三年度までのあくまでも暫定措置であるとするならば、六十四年度にはこの乖離は解消するわけでございますから、あくまでも暫定措置の結果として財政的な乖離がある、そういうふうに理解をし、要求をしてないところでございます。
  193. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 補助率をもとに戻せば健全財政になる、そんな甘いものじゃないんですよ。総理、ぜひお聞きしてほしいんですがね、予算編成されるんでしょうから。そんな甘いものじゃないんです。さっき言ったように、不足財源八千八百億円、消費税六千億、一兆四千八百億というのはこれは補助率をもとに戻したって当然出る金なんですよ、そうでしょう。
  194. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 今回の税制改正に伴う結果として新たな観点が出るわけでございます。ですから、それに対応してどうするかということで、今例えばいわゆる減税超過額、これについては一部交付税、一部いわゆる自然増収、これをもって充当していくという基本方針を定めているわけであります。
  195. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 自然増収が出ると言うけれども、この間もちょっと触れましたけれども、自然増収というのは一体それじゃ何に使うべきかと言うんです。この間も言いましたけれども、交付税で特別会計から借金しているのが六兆円あるんですよ。それに利子が二兆六千億あるんです。財源対策債等償還金が何と十五兆円もあるんです。全部足しますと二十三兆円もちゃんと返してもらわなければ地方財政というのは健全化されないんですよ。総理、たしかきのうもお答えになったと思うんですけれども、ある程度そういった財源があればそれはまず借金を返すべきですと、こうおっしゃっていましたよね。地方財政だって同じですよ。それだけの収入、自然増収がふえたなら、まず借金を返すことから始めなきゃならない。  それともう一つあるんです。基準財政需要額というのがありますね。この基準財政需要額というのは、本来当然あるべき行政水準というものを想定していろんな細かな計算をしてつくっていきます。そのあるべき水準が全然今なってないんですよね。例えばたったの一例ですけれども、時間が余りないからごく簡単に申しましょう。  保育所の経費というものは、それぞれの市町村でどのぐらいかかるのかということで厚生省が物すごい細かな計算をするんです。一度その算定基準を見せてもらったら、大変私びっくりしたんですがね。三歳未満児は一カ月七千七百八十四円です。三歳以上児は五千二百七十円です。何で二千五百十四円の差があるのかと厚生省に聞きましたら、三歳以上の子供というのは弁当を持ってきてくれと言うんです。三歳未満以下の人は保育所で弁当を出す。何で三歳以上と三歳未満と分けるんですかと。何にも変わらないでしょうと。私は幸いに全国区ですから、随分いろいろなところを歩かしてもらって、保育所へ行くとほとんどみんなちゃんと出してますわね。三歳以上は家から弁当を持ってこいと、そんなことを言っているところはごくわずかですよ。どうしてですかと言って突っ込んでいったら、厚生省は、いや、財政的なことを考えてやらざるを得なかったと言うんです。そうすると、交付税の算定基準というものはあるべき水準というものを考えて計算するんですよ。ところがこれ、あるべき水準じゃないんですよ。金がないから三歳以上児だけは家から弁当持ってこいと言っているんですよね。こういう矛盾がたった一つですけれどもあるんです。  そのほかまだまだありますよ。当然法令を守らなきゃならないと言っている、国の基準を守らなきゃならないのに、その国の厚生省が出した基準さえ守らないで、そして人数を少なくして計算をするとか、ありとあらゆる中にそういう基準財政需要額の計算が出てくるんです。地方自治体の交付税をはじき出す基礎になる一番大事な基準財政需要額の計算、もっと細かく言うと単位費用ですよね。今言ったように、この子供には幾ら金かかりますかというそういう単位費用が、あるべき水準よりぐっと低く見積もっているんです。だから、地方財政というものは水準も上げなければならないとなれば、それだけ自治体の負担が多くなるということになっているんです。こういうからくりを大蔵省はやらせていると私は思うんです。  そういうことを考えたときに、こんなものは、私はやっぱりきちっと法律どおりあるべき水準のものをはじき出すためにも、やっぱり金はそっちの方に使うべきであって、自然増収がふえたからそれを埋めるなんということにはならないと、そんなふうに思うんですけれども、どうでしょうか。
  196. 津田正

    政府委員(津田正君) 交付税の基準財政需要額は、先生御指摘のとおり各地方団体の財政需要を合理的に測定するために算定するというような考え方でございます。合理的に測定するためにという場合の水準が不当に低いのではないかというのが先生の御意見でございますが、地方団体の行政水準というものはそのときどきによって合理的に算定すべきものでございまして、もちろん先生おっしゃる理想的なものにはなかなかならないかもわかりませんが、現実的に対住民サービスが支障なく行われるように考えて、毎年私ども改定を行っておるところでございます。具体的におっしゃられました保育所の三歳児以上弁当云々という話は実は私まだ聞いたことがございません。今後また厚生省等ともそこらの事情というものは聞いてみたいと思います。  それから、自然増収の考え方でございますが、今回の税制改正におきまして、個別間接税の問題は、これは課税ベースが国税である消費税に移ったものであるからこれは譲与税で返してもらう。それから、交付税はもともと税収入が少ない団体に対する補てん措置でございますから、それで返してもらう。あとのいわゆる個人住民税、それから若干法人関係がございますが、これはまさしく地域住民の税負担と、それからそれを減税超過ということで純負担が八千億ばかり残るわけでございますが、これはまさしく行政サービスと税負担がどうあるべきか、こういうような判断でございますが、自然増収六十二年度に約二兆円ぐらい出ておりますので、それで対応できるであろう。  なお、自然増収が少ない団体につきましては、減った交付税よりも若干多く交付税を確保しておりますので、そのような自然増収のない団体についても交付税の配分を通じまして財政運営に支障のないよう措置する考えでございます。
  197. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 とにかく、地方財政を根本的に見直していかなきゃならないことだけははっきりしているんです、これは。  きょういらっしゃいますね、加藤元自治大臣がね。これは昭和五十三年の参議院の地方行政委員会でこう言っているんですよ。今の問題とちょうど同じなんですがね。昭和五十一年、五十二年度の制度の改正は暫定的で理想的な改正はまだなされていないという社会党の質問に対しまして、当時の加藤自治大臣はこう言っているんです。なるべく早い機会に基本的な改正を行うべきだと考える、なかなか立派な答弁だなと私は思うんです。実行してくれれば今ごろそれこそ大変なものなんですけれども、実行してくれないんですよね。  それで、これは総理、本当に大体変だなとお思いになりますでしょう。疑問はあると思うんですよ。ですから、もう少し我々の言うことも聞いてほしいし、自治省の本音を聞いてみてくださいよ。大体我々と変わらないんですから、予算要求のときには。委員会で出てくると全然違うことをしゃべるんだから、私も本当に大変なものだなと思うんです、自治省の幹部というのは。本心と全然違うことをしゃべらなきゃならないんだから。そういうことを真剣に考えて、これは抜本的な改正をするためにはこんな消費税なんかやめて、きちっと交付税というものを確保する、地方税源を確保するというそういう観点に立って私は対処してほしいと思うんです。この問題はこの辺でやめておきます、まだいっぱいありますので。  それで、総理のお得意の「ふるさと創生論」に入ります。  地方自治体に一律一億円というこの発想、私は発想としてはちょっとおもしろいなと思ったんです。しかし、よくよく考えてみると疑問が非常に多いんですね。まず、二百人の村にも一億円、(「そんな小さな村なんてないよ」と呼ぶ者あり)百万人を超える市にも一億円、これは不公平じゃないですかね。
  198. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 「ふるさと創生」という具体的な手法についてでございますが、その思想論についてはいずれ総理からも御答弁があろうかと思いますが、その具体化に向けてひとつ頭をひねってみろ、そういう御下命もございましてやったわけでありますが、背景論として考えられることは、近代国家が生まれて百年間あるいは戦後も自治法が制定されてから四十年間、確かに中央主導というか、そういう中で地方自治体も効率化や能率化あるいは機能化が進んでまいり、ある意味で画一的にもなったと思います。これが日本の近代化や経済活動のいわば基盤になったこともまこたれは御案内のとおりであります。しかし現在、今日までまいりますと、やはり地方自治体も行政能力は抜群に成熟をいたしましたし、それから中央から地方へという発想だけで果たしていいのかどうなのか、私はそれに疑問を持っている一人でございます。  そういうことをあれこれ考えますと、むしろやはり地方から中央へという発想があってしかるべきだ。これは、私は片方がよくて片方が悪いとは申しません。その双方がかみ合って初めてそういうことになるわけでございますから、今回それぞれの地域で、ある意味で交付税的な算定をすれば、面積もあるいは人口も税収も全部勘案をされて、今までの交付税が算定をされ配られているわけでございますが、一地方自治団体、どんな小さい村でも大きい市でも一律にやはり市町村という一つの独立体、これを考えますと、ソフトの面で考えるならば、ここにいろんな差を設けるべきではない。私の村が六千万円、お隣の町が八千万円ということであっては、これはなかなか合意を得づらい。  一律一億円というと、どうもその発想が単純に考えられがちでございますし、私自身の発想ももともと単純なのかもしれませんが、そういう意味で考えますと、やっぱり力強さというか、本当に町村を重視している、極端なことを言うと、一人前という表現はいいか悪いかどうかわかりませんが、そういうことを行うべき時期に来ている。そういうことで、地方自治とは何か、それぞれの地域の特性を生かす方法はどういうことかということを模索すべき時期に参れたという気がいたします。そういうことから、今回のいわば総理の諮問に対して具体案を今一生懸命自治省としてつくって、まだ成案にはなっておりませんが、近い機会に成案をつくりたいと考えております。
  199. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 これは、今そんな小さい村あるかと言ったけれども、伊豆諸島に青ケ島という、百八十七人という村があるんです。  そうすると、総理に言わせますと、例えば一億円渡すと、利子だけでも奨学金に使えるわなと、そんなことまで言っていらっしゃる。どっかで言っていらっしゃったですね。これ「ふるさと創生」なんだから、それぞれの町で村おこし、町おこしをして、将来長くどういうふうに発展させようかということを考えたときに、いろんな発想があるかもしれないけれども、そんな単純に、それをどんと積んでおいて奨学金に使えばいいわなんてことにはならないと思うんですよね。そういう意味で、ちょっと発想が単純じゃないんだろうかなと思うんです。  それよりも問題にしたいのは、これは交付税の中で出すんですよ、そうでしょう。交付税というのは一つの枠があるんです。さっき言ったように、あるべき水準というものをまず出さなきゃならないんです。そのあるべき水準にまで全然至っていないのに、削ってさえいるのに、その枠の中でさらに三千億ここからとっていくというんですよ。これは残された地方交付税の額どうなるんですか。それぞれの自治体三千億分ずつ減っていくんですよ。それは一億円ふえるからいいだろうと言うけれども、交付税としての計算としては枠が狭められるということになるわけですね。だから、これもちょっと単純過ぎるんじゃないかと思うんです。当然これは交付税でやるのであれば、算定基準というのはちゃんとあるんだからそういうルールに従ってやるべきだし、こういう一つの新しい発想としてやるのであれば、これは特別臨時交付金というんですか、そういうものだってあるわけでしょう、そういうもので別枠でやるべきですよ、これは。総理の発想でやられるんですから、せっかくいいことをやろうと思っていらっしゃるなら、そういうもので私はやるべきだと思うんです。いかがですか。
  200. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 総理からも御答弁があるかとも思いますが、やはり地方自治の原点に立ってということでございますから、極端な言い方をすれば、ひものつかない、いわば条件のつかない性質のものがいいはずでございますし、それから臨時異例のことでございますけれども、幸いに国税三税の増収もあるわけでございますから、六十二年度いわば交付金の未配分の分もございます。これを一律借金返しにするとか、あるいは一律上乗せをするということも一方法ではございます。  しかし、この時期にちょうどみずから立ち上がろうという機運を助長するという起爆剤にしたい。そういう中からいわばひものつかない、交付税の枠内、当然地方のこれは権利でございます。しかし、基準財政需要額に見込むか見込まないかというのが一番基本でございます。ですから、今年から明年にかけてそういうものができ得るならば、私は、地方のいわば活性化の起爆剤になるということで、いろんな御批判もあろうかと思いますが、それをとったわけでございます。
  201. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 各自治体もいろいろと評価がありますよ。小さいところは、おお一億円もうけたと。しかし、本当に地方財政のことを考えると、何と単純なことなんだろうと、ちょっと思いつきもひどいんじゃないかという意見もあるんです、意見ですよ。そして中には、来年の六月、そういえば選挙だなと、参議院選挙を意識してこういうばらまきをやったんだな、そういう意見もあるんですよ。ですから、あなた方はそんなことはありませんと、そうおっしゃるであろうけれども、しかし誤解されていることは事実ですよね。もう少し私は緻密に検討していただきたいということだけを申し上げておきます。  次に、厚生大臣にお願いします。  この年金者の国民健康保険税、これが大変に増額になるんですね。六十二年度の税制改革の中で所得税法が改正になりました。それで、給与所得の控除と、それから老年者の年金特別控除、こういうものに今度は変わりまして、公的年金等控除の新設、それから老年者控除の引き上げ、こういうふうに変わったんですね。ところが、この国民健康保険税の算定というのは四つの方式があるんですけれども、大部分の自治体ではいわゆるただし書き方式というものを使うわけですね。そのただし書き方式を使っている自治体は、この公的年金等控除というのは、これは控除できなくなるんです。そのために、年金者の中で相当の人たちが物すごい増額になるんです。  例えば、A氏の例をとってみますと、年収二百十七万円で何と一万一千九百円、三二・六%も国民年金のこの額がふえる。それから、B氏の場合には六十五歳で、これは国保税の控除方式をとっているんですけれども、年収三百万で二万四千九百二十円、二五・七%。そういうふうにいろんな例をとってみましても、これはちょっと考えられないくらい国民健康保険の負担金がふえるんです。これは何とかしてもらわなければ年金者はたまったものじゃないと思うんですけれども、いかがいたしますでしょうか。
  202. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) 昨年の税制改正に伴いまして、今御指摘のような年金受給者の国民健康保険税がこれまでの取り扱いに比べまして有利になった方と不利になった方がある、これは承知をいたしております。ただいま御指摘の点は、十一月、衆議院の村山喜一先生からも御指摘がございまして、あれはたしか丸山さんという方の新聞投書が、三〇%ぐらい不利になると、こういうことでございました。  御指摘の点はそれのことであろうと思うわけでありますが、そのとき御答弁申し上げましたのは、これは大変な問題でございますから、自治省とよく協議をして検討、対策を進めてまいりたいというふうにお答えをいたしておるわけでございますが、その後関係省庁とも検討を進めておりまして、改善策をとるように処理をいたしたいと考えております。
  203. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 それじゃ、来年度はもうこういった問題が生じないように改善策をとることをお約束していただける、そういうことでよろしいですね、自治大臣もよろしゅうございますね。いいです、どうせ両方で話し合いして前向きにやると言っているんですから、いいです。  最後になるんでしょうか、この間公聴会がありました。その中で、全国の水道労働組合の委員長の斉藤さんが公述人として公述をされておりました。その方が、これは大変消費税というのは水道料金とか下水道料金まで上げてしまう、これはぜひやめてもらいたいというような公述がございました。  それで、まず大蔵省と自治省にお聞きするんですけれども、この公営企業の消費税の影響額はどのくらいでしょうか。売上税のときには数字が出ているんですけれども、今度どうして出さないんでしょうか。
  204. 篠沢恭助

    政府委員(篠沢恭助君) 国の企業の分といたしまして特別会計ということになろうかと思いますが、特別会計におきましても、財貨サービスの購入者、あるいは受益者といったようなことで負担増が生ずるわけでございますが、予算編成中の現段階で、六十四年度予算に対しましてどの程度の影響が生ずるかということを見込むのはちょっと困難かと思います。売上税のときに、創設されました売上税及びでき上がりました予算、これを踏まえましての全体としての影響額は資料として提出をさしていただいたところでございますが、現段階はまだ予算編成前でございますので、六十四年度予算のいわゆる基礎的な計数が固まっておらないこともございますので、そのような推計をいたしておりません。  実は、一般会計につきまして、財貨サービスの関係に……
  205. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 出てないなら出てないでいいです。数字だけ挙げてください、時間の関係があるから。
  206. 篠沢恭助

    政府委員(篠沢恭助君) はい。  以上のような状況でございまして、どの程度の影響が生ずるかを見込むことは今のところ困難でございます。
  207. 津田正

    政府委員(津田正君) 水事、下水道料金に対する消費税の問題でございますが、売上税法案をめぐるさまざまな批判を踏まえまして、広く薄く公平簡素にと、こういうような観点から、今回の消費税につきましては水道、下水道についても課税することにしておるわけでございます。  影響額の計算でございますが、公営企業につきましては、事業自体が上水道、下水道あるいは宅造等いろいろな種類にわたっておるわけでございまして、的確な推計を出すのが難しい状況でございます。
  208. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 ちょっと不誠意だと思うんですよ。売上税のときにはきちつと数字を出してきたんですからね、消費税のときには出ないということはないと思うんですよ。私はちょっとその点は注意しておきたいと思うんです。もう少し公平にやってほしいと思うんです。  それで、水道料金いろいろ聞きましたら、時間がないからちょっと一方的に言いますけれども、例えば料金通知を出すでしょう。そのときに、料金通知には税額を書き込んでも書き込まなくてもいいと言っているんですよ。これはもう税金が例えば水道料金、下水道料金払ったときに幾らなのかということを全然払う人にも知らせないというこんなやり方というのは恐らく世界じゅう探したってないと思う。当然これは明らかにするべき金額なんです。  これは私は、いわば税痛感というものをなくしてしまう非常に危険な問題だと思うんです。消費税というのは、大体そういう税痛感をなくするものだ。本来国民というのは、税痛があって初めて使い道に対して関心を持つんですから、これは総理と私と同じ意見だと思うんです。だから、中曽根さんが言ったように、羊の毛をむしるように痛みを感じさせないで税金を取るのが一番いいんだというけれども、全く逆ですね。  そういう点からいっても非常に問題があるし、そして水なんというのは、この間、斉藤さんが、人間生活にとって欠かせないものなんだから、そんなものから税金を取るというのはけしからぬと言っていたけれども、全くそうなんだ。そして公共料金を物すごく高くするんですけれども、例えば水道料金一つとってみましても、一番安いところが十トンで三百円なんです。そうするとここへ九円の消費税がかかる。高いところは十四、五倍するんです。十トン四千二百円もするんです。百二十円も税金がかかる。だんだん水道料金の格差が広がってくるんです、全国。下水道も同じなんです。一番安いところは、これは兵庫県の高砂というところですけれども、四百二十五円です。高いところは、あえて名前を伏せておきますけれども何と約十倍ですよ、四千七十円です。まともに消費税をかけるとそれだけまた差がふえてくるんですよ。  だから、そういうように消費税というものは公共料金そのものを非常に高めていく。公共料金を高めますと当然それだけやっぱり物価に対するはね返りも出てくると思うんです。だから私は、そういう物価値上がり、特に自治体としては公共料金を自分たちのところではできるだけ下げていこうとさえ考えている時代なんですから、それを逆に政府の政策によって地方財政を非常に悪化させるような、公共料金の値上げまでさせるようなそういうやり方、まさに住民の懐に手を入れて取るようなそういう消費税というものは私はやっぱり見直すべきだろうと思うんです。イギリスなんか見ますと、もちろんこんなものは全部ゼロ税率ですよね。公共料金に三%かけるなんてやっているところはありません。  あともう時間がありませんので、最後に厚生大臣にもう一つお聞きしますけれども、社会保険診療報酬、事業税ですね、これはこういう答申ですよ。「既に累次にわたる答申において指摘してきたところであるが、いまだその実現をみていないことはまことに遺憾である。税負担の公平を図り、税に対する国民の信頼を確保する見地から、この特例措置については、直ちにこれを撤廃することを強く要請する」というのが、これは税制調査会の答申です。そして税制調査会でも何回となく毎年これは早くやめなさいと言っているんです。ぜひこれをやめるようにしていただきたい、そのことを特に厚生大臣、総理大臣にお願いしたいと思います。御意見があったらぜひ聞かせてください。
  209. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) 社会保険診療報酬につきまして税制の特別措置があるわけでございますが、そのことにつきましては、先生御承知のように、昭和二十九年来長い経過、経緯がございます。一言で言えば、医療の持つ高い公共性、それを社会的に評価をして、その結果として税制の特別措置が行われているというふうに考えておるわけでございまして、厚生大臣の立場から申し上げますと、その高い医療の公共性を医業の関係者がますます自覚をすることによって良質の医療が国民に提供される、そういうことのためにも、今後特別措置が継続してまいることが望ましいというふうに考えておる次第でございます。
  210. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ありがとうございました。今の問題につきましては税制調査会の答申、先生お読みになったとおりですよ。俗にお医者さんの事業税と、こう言いながら毎年毎年議論してきておる問題でございます。ことしの場合、医療本体に手がつきました。将来の課題として検討課題であるということは私どもも自覚の中にございます。  それから、その前ちょっと答弁の機会を逸しましたが、「ふるさと創生」の問題、自治大臣から申し上げたとおりでございますが、ただ、一億円の金利の話が出ておりましたのでそれだけ申し上げますと、離島の医療について自治医大等へ子供さんを委託してそういう奨学金を考えたらどうだというようなことを言ったことがありまして、それも私なりに、その場合、巡回医療もございますので一カ村じゃなくてみんな一部事務組合のような形で寄っていったらどうだとか、あるいは全逓の方にこの間お願いしたのは、郵便局を中心にしてひとつ「ふるさと創生」を考えたらどうだとか、いろんなことから問題を提起しておりますのが一つの話題として囲みに出たことでございますので、またアイデアを教えていただきますようにお願いいたします。
  211. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 もう少し知恵を働かせてください。  どうもありがとうございました。
  212. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 次に、塩出啓典君の質疑を行います。塩出君。
  213. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 総理にお尋ねしますが、非常に限られた時間でございますので、答弁を率直に、簡単で結構ですから、今回の消費税には国民の反対が非常に強いわけですが、なぜこんなに強いのか、総理は率直にどのようにお考えでしょうか。
  214. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 原則的に申しますならば、カナールの理論じゃございませんが、新税は悪税なりという問題が根底には存在しておるだろうと思っております。  それから第二、私どもがやはり周知徹底することをさらに努力しなければならないという前提のもとにおいて、PR不足ということもいえると思います。
  215. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 総理は率直に国民の理解を求める努力が足りないということを認めたわけですが、中曽根さんのときは売上税はいわゆる増減税半々でございました。今回は二兆六千億、衆議院で二兆八千億に修正になりまして、だから六割以上の人が減税ですから、それでなお中曽根さんのとき以上の反対があるということを私はやっぱり……。  お尋ねしますが、このように世論調査をしてももう三分の二以上が反対をしておる、そういうものをあえてやろうとされておるわけですが、竹下さんの今日までの政治の歴史において、こういう国民の三分の二が反対するのを押し切ってやったという例はございますか。
  216. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 三分の二の反対、まあそれは基礎は世論調査であれ何であれ、反対が多いことは私も承知いたしておりますが、今まで何かやったことはあるかと言われますと、思い出せません。
  217. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は、自由民主党というのは非常に柔軟な政党で、いろいろな反対があれば根回しをして説得をしてですね、そして、たとえ野党が国会においてどんなに反対しても、国民の大多数、自由民主党を支持する人たちにはまあまあ説得をしてやってきた。今回は、そういう点では従来の自民党とは変わっておるわけですけれども、なぜ変えたんですか。
  218. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 自由民主党が根回しが上手だとは必ずしも思えませんけれども、やはりそこが税制というものではないだろうかなと。やっぱり、税制というのにはこれだけの、それはよしんば情緒的不公平感であろうと感情的不公平感であろうと、そういうものがあり得るということは、もとより私どももある程度の覚悟はしておりました。しかしこの問題というのは、私は、これが実施に移されることによってなるほどなと。それこそ審議しつつ理解を求めと言っておりますが、実施に移し、さらに理解が深まっていけば、これまた先ほどの理論じゃございませんが、この新税といえども習熟することによってまた良税となるということをこいねがっておるところでございます。
  219. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そのこいねがう気持ちはわかるんですけれども、無理やり導入をして、そうして時とともにわかってもらうという、これも一つの手法かもしれませんけれどね、今回は六割以上が減税なんですから、私はその前に努力をした方がいいんじゃないかと思う。従来の自由民主党は私はそういう方向だったと思うんですけれどね。  今回のようなことはこれからもやりますか。
  220. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 税法などというのを国会でお願いするということは、そうたびたびあることじゃなかろうと思っておるところでございます。  確かに、減税という部分がございますだけに、より理解をいただかなければならない問題であろうとは私も思いますけれども、この問題については、貴党が私に提示されましたいわば基本法の考え方というのは、今おっしゃっている手順を踏みながら、今考えておると同じこととは言いませんけれども、そういう改革の方向へ進めるのだというのと、実施をしつつそういう理解を求めていくのだという、まあ手順の相違というのは、貴党の基本法と私どもの改革法に相違があることは私も十分承知しております。
  221. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私たちも、こういう消費税あるいは付加価値税というものを未来永劫に反対しているわけではない。やはり、いずれかの時期にはあるいは必要ではないかという、そういう考えの人も我が党にもたくさんいるわけです。しかしやっぱり民主主義というのは、手続というのは私は大事だと思うんですね。国会は多数決ですから、私たちも国会でいろんな法案を審議して、いつまでも審議するわけにはいきませんから、国会も終わりに近づけばある時期において質疑を終え、廃案にするのか継続にするのか、可決するのか否決するのか、採決をしていくという、これは私たちも決して反対しているわけじゃないんですけれどね。ただ、自由民主党が大多数を占めているということは、国民が全体で評価をして自由民主党が大多数を占めておるわけで、だからといって、消費税の強行についても国民の大多数は支持していないわけでありまして、そういう点、私は非常に残念に思います。  ここでやめろということは無理であるならば、私は、今後このような国民の大多数が、世論調査を見ても三分の二が反対しているようなことをやるべきではない。やっぱりそういうものをやろうとするならば、やって国民に理解を得られるようなそういう内容であるならば、私は、少なくともこの良識ある国会における委員会の代表にはやはり理解を求めることはできると思うんですね。そういう人たちにも理解を求められないようなこういうことでは、私は新しいものを改革していく価値はないと思うんです。  そういう意味で、再度、今後竹下内閣はもとより自由民主党においても、国民の三分の二の反対を強引に数で押し切るようなことは今回で懲り懲りだ、もう今後は二度としないと、そういう決意をひとつお述べいただきたいと思うんです。
  222. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 基本的には、民主主義の原点についての考え方を述べると、こういうことに帰一するんじゃないかと思うのであります。  多数というものは、最終的に議会制民主主義が議論の末多数決に従うものであるということは原則的にございましょう。しかし、その多数がいつも考えなければならないのは、少数党の意見を参考にすることであり、そして行政府としてまた考えなければならないことは、もろもろの世論調査等には絶えず耳を傾けていくことであると、このような考え方で今後政局に臨みたいと思います。    〔委員長退席、理事斎藤十朗君着席〕
  223. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私たちは別に少数党の意見を聞いていただかなくても、大多数の国民の声を反映した政治をやっていただければいいわけなんです。  そこで、私は先般の委員会でも申し上げたんですが、どうしてもやるなら一年延期したらどうか。急ぐ理由は私はないと思うんですが、一年延期するということはなぜできませんか。
  224. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 仮にもし、減税面だけはやって、あと時期をずらすという一つの意見があるとすれば、これは税体系全体の整合性をなくすることになります。いや、そうでなくて全体を、減税も増税も含めて全体を一年ずらしたらどうだと、こういう意見に対しては、私は、今ほど税制改革というものに対して国民のコンセンサスができて、そして経済情勢が一番安定しておる今が一番適当な時期ではなかろうか、こう判断しているからこそ税制国会というものを召集申し上げて、このようにお願いしておるところでございます。
  225. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は、そういう理由には納得はいたしませんが、四月一日施行という、強引に施行することは大変混乱を心配いたしますし、国民に対する税の不信感が生まれるのではないか、そういうことを私の意見として強く申し上げておきます。  次に、総理は消費税八つの懸念と。まあ消費税については六つの懸念が七つ、八つの懸念になって、大変これは有名に、消費税の懸念を全国にPRしたわけでありますが、しかし懸念だけで、じゃ一体どこがメリットがあるのかと、そういう点を、これは三つのメリットでも八つでもいいんですけれども、箇条書きに言えばどういうところなんでしょうか。
  226. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 箇条書きに言えと言われますと、一というのは、大きな字で一と書きまして、勤労所得が減税になると、これが一つのメリットではなかろうかと思います。今度は、それの精神的部分といたしまして、括弧をいたしますならば、いわゆる所得、消費、資産の均衡というものがやがて国民に安定感を与えるであろう、こういうことではなかろうかと思います。
  227. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は、ほかに法人税が安くなる、それからこの前から言っているように不公平感を払拭するという、そういうことも総理のねらっているところじゃないかと思うんですが、結局、今回の税制改革法案、いろいろ何回も読んでみたんですけれども、なかなか何をねらって消費税を通そうとされているのかということがよくわからない。高齢化社会に備えて財源は必要である。特定のところに財源を求めては負担し切れない。だから広く薄く、そうして所得だけに偏らず、消費にも資産にも負担を求めていく。要は、将来の財源対策として消費税の導入が重要である。これだけではありませんけれども、これがやはり重要な柱であるというように私は理解をしているわけです。必ずしも税制改革法案の中にはそういうことは書いてないわけですけれども、精神はそういうところにあると理解してよろしいでしょうか。
  228. 竹下登

    国務大臣竹下登君) やがて高齢化社会の到来にということも税制改革法案に書いておりますが、そもそも昭和五十四年の十二月に国会で決議をいただいたとき、各党の皆さん方と当時大蔵大臣でありました私、一緒にあの決議をつくりましたときに、国民福祉充実のためには安定した財源が必要であるという書き方にいたしましたことそのものは、今塩出委員のおっしゃっておる大きな目的がそこにあったと私は思っております。それが若干私自身オーバーに考えておりましたのは、さらに福祉目的税というようなものも一遍、もちろん頭の中の運動としては、体操とでも申しましょうか、頭にあったことも事実でございます。
  229. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは大蔵省にお尋ねしたいんですが、私は、やはり資産、消費、所得、そういうところから税金を取るというのを、余り偏らない方がいいということはわかるんですけれども、例えば現在の法人税あるいは事業税、そういうものも、結局はお客様が品物を買ってその利益の中から法人税、事業税を払うわけですから、そういう点ではやはり消費者も担税をしておる、税金を負担している。いやサービスが課税されてないという、確かに物品税はかかっていないかもしれませんけれども、例えば喫茶店のサービスでもうかれば喫茶店はやはり事業税なり法人税を払ってなさっておるわけですから、そういう点から考えれば、何も消費税を導入する必要はないんじゃないか。  消費税を導入すれば、今心配されているのはやはりこの三%がアップできるかどうか。強い企業はそれ以上アップできるけれども、弱い企業はアップできない。アップできないところは払わなくていいかというと、やはり仕入れの中には三%の税金が入っているわけですから、その分は自分が自腹を切らなくちゃいかぬ。その残りでまた法人税なり事業税を払っていくわけですからね。税の簡素化という点から見て、これは今までの法人税やあるいは事業税、こういう体系ではなぜいけないのか、その点はどのようにお考えでしょうか。
  230. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 法人税も含めてあらゆる租税は結局は家計の負担に帰着する。その負担軽減はすべて終局的には個人家計に帰着するということは、これはマクロ経済的に言えばそういうことでございます。  そういう意味からいきますと、租税というのはどこか一つの局面をとらえて、その一つの税に依存するのが最も簡素になることは理屈としてはそのとおりでございますが、やはり現実の租税、これはどのような租税でございましてもメリットもあればデメリットもある。やはり歴史的に見ましても、一つの税にだけ極端に依存するということは、いろいろその税の持っておる問題点が増幅される。そういうことからいたしますと、所得、消費、資産それぞれの局面で、所得の稼得の段階、消費支出の段階、個人の段階と法人の段階それぞれにつきまして適切なバランスと申しますか、そうしたもので均衡のとれた負担をお願い申し上げるというのが税制としてのこれまでの考え方であろうかと思います。  昔から単一税論というのはあるわけでございまが、そこはやはり理論の世界の中にとどまっているようでございまして、現実には均衡のとれた税体系としてお願いをしたいところでございます。
  231. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 総理、私は、やはりこの消費税等はいわゆる法人税とか事業税等に比べれば、ある程度景気の変動に対しても変動が少ないというそういうメリットはあると思うんです。  それで、我が国の財政は、ここ数年は税収も非常に自然増で好調ですけれども、莫大な国債も抱えておるわけでございます。六十五年赤字国債脱却の看板はおろしていないわけですが、そういう点で私たちも、三%の税率アップは目に見えておるんじゃないか、このように心配をしているわけですが、何年ぐらい三%で行けますか。この財政再建の見通しの上からはどのような見通しをお持ちでしょうか。
  232. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ぎりぎり議論した三%でございますから、今は上げも下げも考えておりません。  これは一方、今、塩出委員の御質問、最初いわゆる福祉に対する薄く広い税制という議論、それから今おっしゃいました議論というのも、これも百も承知の上の御質問でございますが、財政再建税としてこれを位置づけたらどうだという議論があったことはございます。そのときの計算を、ちょっと抽象的な話でございまして、財政再建税としてこれを位置づけた場合どれぐらいになるかという実は定量的な計算をしたことはございません。
  233. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 では、まだ先のことは全然見通しがないと。今国会の答弁では、竹下内閣では税率アップはやらない、このように断言されたわけですね。そう確認していいわけですね。
  234. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 税率の歯どめについての議論の経過から見ますと、まずは国会というものがあるではないですか、こう申しました、最初の段階。しかし、租税法定主義は当たり前じゃないかと、そのとおりでございます。そうすると、いろんな客観情勢の説明はできます。これだけ議論したもので、上げられようはずがないではないですか、こう言っても、やはり理論性がないと。そうすると、私が総理大臣である間はこれを上げる提案をする考え方はございませんと、こう申すと一つの証左、証明にはなるのだろうと思います。  ただ、私がなぜ未来永劫上げないと申しませんのは、塩出委員いつも御承知のとおり、あの五十四年暮れの決議のときも、いわゆる一般消費税(仮称)ということを十年使い続けてまいりました、それはあのときに、消費一般に係る税制そのものが否定されてはいかぬ。やっぱり後の世のお方様の手を縛っちゃいけない、これがあるからでございますので、この未来永劫という点につきましては、こういう税制などで後の世の国民の皆様方の手を縛ってはならぬという気持ちがありますので、あえてそのことは申さないで、私の内閣ではというのが私の申し上げる、やっぱり良心からいっても限界であろうと思っておるわけでございます。
  235. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは大蔵省にお尋ねいたしますが、今回のこういう改正をいたしますと、いわゆる税収の弾性値と申しますか、GNPに対する弾性値というのは所得税の税率のカーブがずっと緩やかになるから、弾性値としては非常に今までより少なくなるんじゃないかな、このように思うわけですが、その点は何かデータはございますか。
  236. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 確かに所得税については、税率が若干フラット化するという点がございます。しかし、所得税の弾性値、この弾性値に影響を及ぼす要素としては課税最低限の高さ、それはいわば所得税率がゼロの所得階層、所得部分でございます。その部分の影響というのが非常に大きいわけでございます。その課税最低限については二百六十一万円から三百十九万円に上げさせていただくということでございますので、その点からいたしますと所得税としての弾性値がどちらに動くのか、これはいろんな方向が考えられるわけでございます。  それから一方、消費税をお願いしているわけですが、この反面、物品税を廃止し、酒、たばこにつきまして調整をいたしております。どちらかというと、今の間接税は弾性値が〇・六とか七ぐらいのところにあるわけでございますが、消費税は消費支出に並行するとすれば割合弾性値は一に近い、こういう点もあるわけでございますので、必ずしも全体の改正で弾性値が下がるというだけの方向でもない、両方の面がある。  したがいまして、これからなおよくそれは分析をする必要があるわけでございますが、所得税を減税し間接税をお願いしたとしても弾性値が下がるというふうにまだ私どもも考えを決めておるわけではございません。
  237. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それで総理にお尋ねしますが、先ほど申しましたように、今回は六割以上が減税の恩恵を受ける。にもかかわらず、国民が世論調査等を見ましても強く反対をしておる。この理由は、私は一つには、今回は多少減税になるかもしれませんけれども、この一%二兆円という痛税感のない税制は安易に税率引き上げをされるという、そういう点のやはり心配が私はあると思うんですね。何も未来永劫に上げないとか、そういうことが本当であるなどとはだれも思っていないわけで、やはり高齢化社会にそれだけの理由があれば私は増税もそれはあり得ると思うんですけれども、ただ安易な増税はないという、これを、やはり国民の皆さんを安心させてもらいたいと思うんですけれども、これはどうですか。安心させる方法はありますか。
  238. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 歯どめ議論で、されば国民負担率でいくかとか、それこそいろんな議論をいたしてみましたが、安易に上げてはならないということは、私自身思いますのは、ヨーロッパのいわゆるこの種の税の歴史を見ますときに、所得税減税というものと必ず一緒にではございますけれども税率は上げてきた。結果として五五%を超す国民負担率になってきた。そうして気がついてみたらこれは大変な税を払っているなということからして、今度はいわゆる勤労意欲が失われ、できるだけ早い機会に社会保障の方へ元を取ろうというふうな思想が出てきた。そういう歴史を考えてみますと、安易な引き上げとかいうことはやれるべきものではないではないかと、こういうふうに私は考えておるところであります。
  239. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは結局、国民の皆さんに安心してもらうには消費税を導入しないことが一番安心してもらえるわけなんで、消費税が導入された以上はなかなか安心できる歯どめはない。総理、例えば将来いろんな理由でこの税率を上げなきゃならないというそういう場合が出るかもしれませんけれども、そのときにはやっぱり今回のように国民への十分な根回し、理解も得ないで、こうこうの理由でどうしても必要なんだという、少なくとも国民の大多数の世論の協力を得る、また選挙においてもちゃんとやはり堂々と公約してやる、今回の消費税に見られたようなことは繰り返さない、そのことは約束はしていただけますか。
  240. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは塩出委員の御意見に対して本当に心から承らしていただきました。
  241. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そういう方向で、もちろん竹下総理が未来永劫自由民主党の総裁をいつまでもやるわけじゃありませんけれども、その精神でひとつやっていただきたい。  それともう一つは、今回逆進性が非常に憂慮されているわけです。三%であればまだ許せる面もあると思うんですが、これが将来五%とかあるいはそれ以上に上がることがもしあるとするならば、そういうときに今日のように、今さっきも質問がありましたように、水にもまたほかの高級なものにも同じように税金をかけるというようなことはやっぱりやるべきではない。三%を上げる上げないということとともに、やはり特にそういう生活に必要な必需品、そういうものはもう三%は上げない。どうしても上げなきゃならぬときには、ヨーロッパの国々がやっているように複数税率とかそういうものに私はすべきだと思うんですが、この生活必需品、そういうものの税率をこれ以上上げることはないと。この点はどうでしょうか。
  242. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは大変お考えになった御質問でございます、将来のいろんなことを前提として。しかし今、単一税率でお願いして、そしてこれを上げも下げもいたしませんというところで国民の皆様方の協力を仰いでおるところでございますので、生活必需品に限っては上げませんと言えば、他のものは上げることがあるかと、こういう議論になりますので、塩出委員は随分この種の税がいわゆる成熟をした時代を考えてお話しいただいておることだということは私にも理解できますけれども、今そういう成熟した時代などということが私の念頭にはまだ入っておりません。
  243. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 次に、簡易課税制度の問題でございますが、この簡易課税制度が非常に矛盾が多い、そういう意見がこの委員会でも指摘されました。特にマージンの高い産業、例えばビルメンテナンス業界等は、高齢者を大変雇用しておるわけで人件費が七割近いのじゃないかと思うんです。ところが人件費は消費税がかかりませんから、したがって控除もできない。だから、結局七〇%もマージンがありますと、三%といいますと売り上げの二・一%は消費税に持っていく。ところが一方、売り上げ五億円以下の場合は簡易課税制度で結局〇・六%となる。五億円以上は二・一%、それ以下は〇・六%。そうなるとやっぱり企業分割のおそれがあるのではないか、この点はお認めになりますか。
  244. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 今回御提案しています法律では、三千万あるいは五億円に関連いたしまして、分割が行われた場合の対処する措置も設けているところでございます。一定の場合にはそれが分割された場合でも、それは合計して三千万なり五億円といったカウント、計算をさせていただくということでございます。しかし、これにはいろいろな要件があるわけですから、その要件に該当しないようにすれば分割して対応することもそれは可能でございます。しかし、分割にはまた分割の企業のもろもろの御事情もあるかと思いますので、税制上のメリットということからだけでもって分割が非常にふえる、あるいは若干増加する、そこはなかなか予測しがたいところでございます。
  245. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それともう一つは、簡易課税制度ができたために、五億円以下の場合でマージンの高い企業がこれを採用した場合は〇・六%の税率、これはちょうど昭和二十三年、二十四年に我が国でも行われました取引高税に非常に近くなってくると思うんです。そうしますと、結局垂直の方向での合併が起こりやすいのではないか。西ドイツにおきましては取引高税というものが昔あったわけですが、これが一九六六年の十二月の連邦憲法裁判所で、流通過程を減らすことにより税負担が軽減できるために企業の垂直的統合を促すなど企業間の競争に対して干渉的作用を持つ、したがって取引高税は税制の経済的中立性、公平の観点から好ましくないという、こういう判決を示して、結果、取引高税は御存じのようになくなったわけですけれども、こういう簡易課税制度は、先ほど申しました企業の分割、さらには縦方向の企業合併を促進し、今回の税法にありますように、「税制の経済に対する中立性を保持し」というこの趣旨に反するんではないか、このように思いますが、この点お認めになりますか。
  246. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 仰せのとおり、西ドイツにおきましてはそういったこともあったわけでございます。それは、西ドイツの場合は付加価値税に移行する前は四%の累積的取引高税であったわけでございまして、これはある程度と申しますか、相当程度そうした経済的圧力が生じていることはたしかだったろうと思うわけでございます。それに対しまして我が国の場合は、原則課税の場合は三%で、しかもこれは前段階控除でございますからそういうことは関係はないわけでございます。  御指摘の点は簡易課税の点であろうかと思いますが、この簡易課税に伴いますところの付加価値額ベースで申します、そうした適用を受けます規模のものは、全体からいたしますと数%でございますので、これが大きくそうした方向に動かすということは、全体のウエートから見てそれほどないのではないか。しかし、そうした傾向が皆無であるということは私どもも申し上げる立場にはないわけでございますが、そういった点が若干あるといたしましても、とにかく納税者として御協力をいただける事業者の方、特に中小零細事業者の方々に簡便な手続をお願いするという点から、若干の精緻さといった点につきましてはあえてそこは忍びまして、こうした方式を御提案申し上げているところでございます。
  247. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 総理にお尋ねしますが、この簡易課税制度は、いわゆる三千万以下の非課税制度あるいは限界控除制度あるいは帳簿制度等々、そういう事務の合理化とかいろんな点に配慮したために精緻さを欠いてきておるという、消費者から見れば我々が納めた税金は大蔵省へ入らないじゃないか、こういうことにつながっていくわけですけれども、先般の委員会で主税局長は、今回の帳簿方式は、これはEC等で行われておる伝票方式への一里塚というか、あるいはまずこれを導入して、その結果次の伝票方式への方向も当然射程に入れておる、そういうニュアンスの答弁をいただいたわけでありますが、これはそのように理解してよろしいでしょうか。
  248. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは、六月十五日の税制調査会の答申におきまして、今後の消費税の定着とともに、将来は税額別記の書類により累積課税を排除する方法としていくことが望ましい、このように税制調査会からもきちんと言われております。そうした指摘を踏まえながら、まずは消費税の定着ということに努めていくことが肝要であろうというふうに考えております。
  249. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 第一段階としては現在の消費税の定着を考えている、そういうお話と承ります。  それから、四月一日から施行になることを政府は望んでおるわけでございますが、この法案が施行された場合、すべての業者に三%アップをするように指導する。厳密に言えば、非課税業者は二・何%のアップでありますけれども、それは規模の小さい業者はコストもかかるでしょうし、そういう意味で三%までは便乗値上げとは認めない、したがって三%上げるように業界も指導する、このように聞いておるわけでありますが、そのように理解してよろしいんでしょうか。
  250. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 御指摘のように、免税事業者、限界控除を適用される方々、簡易課税を選択される方々の問題はございますが、再々申し上げておりますように、そうした方々は例外的な小さな部分でございます。一般的原則的な立場、考え方からすれば、三%をお上げいただければと考えておるところでございます。
  251. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そこで、経済企画庁にお尋ねをしたいわけですが、先般当委員会におきましても、経済企画庁の物価上昇が一・二あるいは一・一と、こういう見通しを立てておるわけで、これが他の、例えば政策構想フォーラムの約一・三%と食い違いがあるわけでありますが、どうもそのあたりが、いろいろお聞きしたところ、政策構想フォーラム等はそういう非課税業者の品物も全部三%アップすると、こういうことで計算をしておる。経済企画庁の場合は、課税業者は三%上げるけれども、非課税業者は税金のふえた分だけ上げる、こういう見通しに立っておるとお聞きしたわけでありますが、そうしますと、ただいま大蔵省の指導あるいは先般経済企画庁も非課税業者の三%アップは認めるという、あるいは再販商品とかタクシー会社はもう三%アップを課税、非課税とも認めていく、そういう点からいいますと、経済企画庁の物価上昇の見通しは非常に低過ぎるのではないか、今さっき言った大蔵省の指導に反して。やっぱり政策構想フォーラムの方が正しいんじゃないか。これは訂正しますか。
  252. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 先生御指摘でございますが、私どもの一・一%というのは、これは政策フォーラムあたりで最初打ち出したころと多少ちょっと現象面が違ってきておる面がございまして、前段として申し上げさせていただきますならば、先ほどヨーロッパの例なんかも出ましたけれども、このパーセントをそのまま的確にとらえるということはなかなか難しいという想定があるものでございますから、例えばイギリスあたりなどでは御案内のとおり七三年度にやっておりますが、このときは〇・七%。また西ドイツ、これは確かに先生御指摘の六六年には取引高税を一回廃止しております。しかし六八年に取り入れたときには大体〇・五%から一・五%というフレキシビリティーを持たしております。こういう格好でやってきておるわけでございます。  私どもの一・一%というものの裏づけの中には、幾つか別表がございますが、例を出すまでもなく、先ほどのフォーラムだけでなく住友銀行、日本興業銀行、住友生命、三井銀行等々二十幾つかにわたってリサーチをしておりますけれども、大体今CPIは一・一あるいは一・二、あるものは〇・六、一・二、〇・六、一・六、一・五、一・〇というぐあいにずっと出ておりまして、昨今のあれでは大体一・一というのは必ずしも低い読みとして出されておるというようには判断をしないわけでございまして、先ほどのような便乗値上げとかそういうことを十分に注意をした上で私どもはそういうキャンペーンを張っていく。モニター制度であるとかそういうものにおいての的確なる増大によってこういうものを防いでいくという点における考え方として一・一%と、こう申し上げておるわけでございます。
  253. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この点余り論議をする時間もございませんけれども、一・一%という物価上昇の見通しは故意に一番低いのを出したデータである、現実に合わない、その点を申し上げておきます。  それから次に、いわゆる国民の皆さんの世論調査の中で不公平税制の是正が先ではないかという意見が非常に強いわけでございます。したがって、消費税を導入なんかしちゃうと不公平感がなくなって、不公平感がなくなっちゃうと結局不公平税制を是正しろというそういうことはおろそかになるんじゃないかと、それを心配している点も多分にあると思うんであります。ところが、不公平税制とは一体何かという点については、いろいろな人がいろんな意見を言っておるわけでございますが、なかなか大蔵省の見解はわからない。クロヨンという問題についても、渡辺美智雄大蔵大臣等が大蔵委員会では、そういうクロヨンは存在しないんだと、こういうようなこともいろいろ言われたわけですけれども、やっぱり大蔵省として、今回一部不公平税制の是正も行われておるわけですが、何が不公平税制とお考えであるのか、大蔵省の見解をお尋ねいたします。
  254. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはまず私からお答えした方が適切かと思います。  率直に申しまして、私はいつも不公平税制という言葉を使うことを大変悩んでおりました。と申しますのは、税制そのものは租税法定主義で、国会でクリアされたものが不公平ですということに対しての発言は慎むべきだと思っておりました。ただ、今も御例示にありましたクロヨンとかいうような問題は、あるいは徴税上の理由によってできた不公平と言うならば、また一つ言えることができると。したがって、いつも不公平感という言葉をつけてお答えしておったわけでございます。やはり先般与野党で随分協議が重ねられましたが、あのような指摘されたものをして不公平税制ということが言えるんじゃなかろうか。政府で、今の既存の税制でこれとこれとこれとが不公平ですと議会をクリアしたものに対して率直に言うことはなかなか難しいなと、こう思います。  そこで、その指摘されておる中でも、今回の改革案の中で有価証券譲渡益の原則課税化あるいは社会保険診療報酬課税の特例等々が、言ってみれば不公平是正の策として明らかにしたものであるというふうに整理をいたしておるところでございます。
  255. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そうすると総理は、結局、今回の税制改革案で提案されておるキャピタルゲインあるいは医師社会保険診療報酬、それ以外には不公平税制はないと、そのようにお考えですか。
  256. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今回提出しておりますのは、まさに土地、株式等を含めてのキャピタルゲイン、それから今おっしゃいました医師税制とでも申しましょうか、そういうことであるなと。これに対して不公平税制として与野党で協議されておるものについての方向というのは、それぞれ今、協議途中である問題、あるいはある種の結論が出つつある問題というふうに整理されていって、最も早い時期といたしますならば六十四年度税制の中でそれが組み入れられていくべきものであろうというふうに考えております。したがって、今回の改革の際の御提示申し上げたもので終わったという考え方はございません。
  257. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 いろいろな税務に関するデータを持っておるのは大蔵省であり国税庁なんですから、したがって、どこにどういう点が公平であり不公平であるかと、そういう点、やっぱり政府としては、もっとはっきり不公平でない点はこういう理由でないんだ。例えばクロヨンの問題とかあるいはみなし法人の問題とか、そういうのをいろいろ言われているわけですけれども、そういう点をもうちょっとはっきり物を言う。何となく今まではどこが不公平か不公平でないかということはもうはっきりさせないで、結局知らぬ間に足して二で割ると、こういうことではなかなかやはり国民の納得も得られないんじゃないか。そういう点で、政府としても公平な税制はいかにあるべきかという点を、ただ不公平感をなくするもの、消費税の導入だけで満足するのではなしに、もっと不公平をなくする、そのためにまず努力をしてもらいたい、このことを強く要望しておきます。  それで総理は、衆議院段階において総合課税を目指すと、こういうように衆議院で修正が行われたわけであります。総合課税をやるためには当然納税者番号制度も導入しなければならないわけでありますが、これについては必ずしも国民のすべてが賛成しているわけではない。いろいろな反対意見も当然あると思うのでありますけれども、かつてのグリーンカードのようなことにならないように、この場合はひとつよく根回しをして必ずやってもらいたい、この点御決意を承っておきます。
  258. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 経過的に申しますならば、今お話がございましたように、去年の所得税法の一部改正の際に「利子所得に対する所得税の課税の在り方については、総合課税への移行問題を含め、必要に応じ、この法律の施行後五年を経過した場合において見直しを行うものとする」、こういう附則がございます。それのことが念頭にあって、このたびの衆議院修正というものも「株式等の譲渡益に対する所得税の課税の在り方については」「利子所得に対する所得税の課税の在り方の見直しと併せて見直しを行うもの」、したがって四年、こういうことになるわけであります。  そこで、納税者番号につきましてのことになりますが、政府税調で小委員会がつくられて、そしてその報告が税調総会に行われたというのが先日の問題でございます。中身は、イタリア方式、北欧方式、アメリカ方式、こうございますが、イタリア方式は別といたしまして、そういうものが出ております。そこで今度は、税調としてそれをさらに検討されていくという段階にあるわけでございますので、税調も、国会での御議論は逐一報告することになっておりますので、よく存じておられますので、その辺のことを勘案しながら総体的な結論が出てくるであろうことを私も期待しております。  さて、それを受けて移すということになりましたら、塩出さんの念頭にはグリーンカード法案が、昭和五十五年の三月三十一日でございます、本院を通過いたしましたのは。忘れもいたしません、時の大蔵大臣は竹下登でありました。それをまた廃止したときの大蔵大臣も私でありました、途中若干の休憩時間はございましたが、あの轍を踏まないような世論、プライバシーの問題、いろいろございます。これらに対しては十全を尽くさなきゃいかぬと思っております。
  259. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから通産大臣にお尋ねしますが、先般来、私たちはこの消費税の導入はむちゃである、だからどうしてもやるならば一年延期ということを業界も要望していると。そういう意味で、その例としてレジ等が準備できるかということで、納税時までには間に合うという答弁があったわけですが、納税時というのはいつなんでしょうか。
  260. 児玉幸治

    政府委員(児玉幸治君) 今回の制度の中では、各企業によって事業年度がそれぞれございますけれども、その事業年度終了後二カ月というふうになっていると承知しております。
  261. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 だから、個人の場合は六十五年の二月、法人の場合は事業年度がいつになるかということによって違いはありますが、いずれにしても六十五年以降になるわけですけれども、そうすると六十四年四月一日からやった場合に、来年の四月一日にはレジが間に合わない、そういうところはどうしますか。
  262. 児玉幸治

    政府委員(児玉幸治君) 今、このレジスターというのは小売業で非常によく使われているわけでございますけれども、私どもの方でその利用実態についていろいろ推計も交えまして実態を調査いたしております。それによりますと、大型の小売店舗にはレジスターが三十万台程度ございますが、一口にレジスターと申しましても、いわゆるPOSレジスターという非常に技術的に進んだレジスターもございます。それから通常の電子レジスター、それからやや昔風になりますが、メカニカルレジスターと申しましょうか、機械的な操作で行うもの等もございます。したがって、例えば大型小売店舗の場合この三十万台と言っておりますレジスターのうちでPOSの関係のものは、これはもう今のままでもそのまま使えるわけでございます。それから電子レジスターでも、程度の高いものにつきましてはこれまた若干の手直しをして使えるわけでございまして、新しいのが入った方がいいなという感じがいたしますのは、どうもこの三十万台のうちの六割程度かなということでございます。  それから、年間の売上高が三千万円を超えます中小の小売店にレジスターがどれぐらい入っているだろうということでございますけれども、ことしの春行いました中小企業庁の電子レジスターの普及状況実態調査によりますと、三千万円超の小売店は四十四万軒ございますけれども、大体普及率が五割程度というふうになっております。したがって、もし一軒に一台しかなければ二十万台、二台使っておりますれば四十万台ということでございますが、これは電子レジスターの普及状況調査をしたわけでございますので、これにつきましてもただいま申し上げましたように程度の高いものについては買いかえないでいいというふうなことが起きるわけでございます。  そういう実態を踏まえまして、一方今度は供給の方はどうだろうということでございますけれども、現在電子レジスターの年間の生産は大体百四十万台前後でございます。月に直しまして十二万台でございますので、ただいま私が申し上げました事情を踏まえました場合に、どれだけが本当の買いかえ需要になって出てくるかということはございますけれども、月に十二万台というのはやはりそれなりの数字であるというふうにも思っております。  それで、来年の四月一日にもしこの税法が導入ということになりましたら、確かにあと三カ月ぐらいしか時間はないわけでございますけれども、もう既にいろんなところから電子レジスターの業界の方に引き合いも行っているようでございますので、私どもといたしましてもこの買いかえ需要に対する円滑な供給が何とか進みますように、これから電子レジスターのメーカーとも十分相談をしてまいりたいと思っております。
  263. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 通産大臣、新しいPOSレジとかそういうところはもう必要ないわけですけれども、古い型のところは買いかえなければならない、それが昭和六十五年に間に合うというのではこれは遅いわけでありまして、いやしくもこういう一つのシャウプ以来の大改革をやるというのであれば、それが業界にどういう影響を及ぼすのか、そういう点も事前にいろいろ調査をしてその対応を整えてやるのが私は当然じゃないかと思うんですね。税金というのは、取る側の論理だけではなしに納める人たちの立場も考えていかなければいけないと思う。そういうことも余りやらないで、ここの委員会での通産大臣の御答弁も、もう事務局から聞いた話を答弁しておるようですね。通産大臣みずからがそういう業界の代表にも会っていろいろ彼らの意見も聞く、私はそういうことを経てしかる後にこの税制の導入を論議していくと、こうあるべきだと思うんですが、その点どうでしょうか。
  264. 田村元

    国務大臣(田村元君) まことに耳の痛いお話なんですが、多くの場合は私は、特に再任されてからはイニシアチブを相当握ってきたつもりでございますけれども、このコンピューターとかレジスターということになりますと、私もさっぱり知識がないものですから、やはりどうしても専門家の意見を聞くということになります。でございますから、まあ大丈夫だろうな、いけるんだろうなと、こういうようなことで確認をしていくということになります。確かに、塩出委員のおっしゃったことは私にとって耳に痛い話でございます。今からでも遅くないわけでありまして、十分の対応をいたしますように、なおも部下を督励いたしたいと思います。
  265. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 今回の消費税の一番大きな懸念の一つは逆進性でありますが、これは御存じのように減税の恩恵を受けない世帯、例えば現在老人世帯が日本全国に約一千万世帯はあると思いますが、その約半分は税金を払っていない世帯であります。そういうところは減税の恩恵はない、そして三%の増税がある。先ほど経済企画庁長官が一・一%と言いましたけれども、これは車とか宝石とか、そういうものを全部平均して一・一%。それで、やっぱりお年寄りの消費構造から考えれば、私たちが常識から考えても三%に近いんじゃないか、こういう点が一番心配されるわけでありますが、それに対して、昨日の我が党の和田委員の質問に対して一時金を支給する等のお話があったわけでありますが、これはどういう内容でしょうか。
  266. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今、折衝中でございますので、このようなものになりましたという状態ではございませんが、申しておりますように、いわゆる課税最低限から今度は生活保護者のお方、これは最低限が上がったり生活保護基準が若干上がるとかいうことができますが、その間の人が確かに今おっしゃった老人、母子世帯等に多数あることは事実でございます。それの対応策として、一つの考え方として目下鋭意詰めておると、こういう段階であると承っておりますが、場合によっては事務当局からお答えしましても、あるいはまだ中途の段階ではっきり申せないかもしれませんが、そういう段階でございます。
  267. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 福田内閣のときには三千億の戻し減税がございまして、そのときに税金を納めている人たちは本人は六千円、家族は三千円の減税になる、ところが税金を納めていない人は全然戻ってこない、そういうことで、たしかあの当時六千円、課税最低限以下の人にはそういう一時金が出たわけでございますが、今回はあのときと違うのは増税になるんですよね、結果的には。だからその増税になった分を埋めると。本来は、消費税はずっと未来永劫に続くわけですから、もうずっと消費税が続く限りは毎年その差額を補給していくというのであればまだ話はわかると思うんですけれども、少なくとも消費税に伴う支出増の分を本当に賄うことができるのかどうか。それを僕は賄うべきだと思うんですけれども、その点はどうでしょうか。
  268. 竹下登

    国務大臣竹下登君) たしか昭和五十三年度減税でございました。ばらまきという批判も受けたことはございますが、結果としてあのことはある種の評価をされたと思っております。そのことが私どもの念頭にあることも事実でございますが、あのときは所得税減税で、しかも新税が入っているわけではございませんから、国民全体、税金を納めている人は例外なく減税になる。そうすると納めていない者はどうなるんだと、こういう議論から一時金を支給したことがございます。その次は五十九年度税制改正のときの減税でございまして、各種控除が上がりましたけれども、単身の人で、その控除だけでは、税率を一〇から一一にいたしましたかなんかで、それだけがひっかからないので一〇・五という刻みができたのが五十九年でございます。  今、御主張なすっているのは、五十三年減税のことを思い出して、それであのときは全体が減税になる年でございまして、今度は増分があるんだから、ばらまきとかいろいろ言われようともその辺に配慮してやれと、こういう趣旨だと思います。そういう趣旨を体しながら詰めていく問題であると私も思っております。
  269. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは余り時間もございませんので詳しくやる時間はございませんが、厚生省にお尋ねいたします。  いわゆる消費税の導入をした場合に本当に支出増になる、そういう世帯に対して十分な手は打てるのかどうか。それは打てますか。
  270. 末次彬

    政府委員(末次彬君) 消費税の導入に伴いますいわゆる低所得者への影響につきまして、厚生省としても重大な関心を持っておるわけでございまして、基本的に申し上げますと、今後の予算編成過程の中でいろいろ配慮をしていきたいというふうに考えております。  個別に申し上げますと、生活保護につきましては、消費税の導入による影響分、これを来年度の生活扶助基準の改定の際にその分を織り込んで反映させたいというふうに考えております。  また、老人ホームあるいは保育所などの福祉事業、これにつきましては、この事業そのもの消費税法案で非課税とされておるところでございますが、こういう非課税とされた事業につきましても消費税導入によるコスト上昇というのがございますので、こういう影響につきましても極力この利用者でございます老人、障害者等の方々に対してサービスに支障が生じないように財政面でこれも配慮していきたいというふうに考えております。  それから、年金受給者につきましては、従来から御案内のとおり物価スライド制ということで対応してきたところでございまして、今後の対応につきまして今後の予算編成過程の中でこれも具体的に検討していきたいというふうに考えております。  また、児童扶養手当、特別児童扶養手当等の手当につきましても、同様に今後の予算編成過程の中で具体的に検討していきたいというふうに考えております。  ただいま総理から少しお話のございました一時金の問題でございますが、これはこういう問題と並行して現在話し合いが行われておるというように承っておりまして、その推移を見守りながら予算編成過程の中でどういう対応をすべきか検討していきたいというふうに考えております。
  271. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 総理、やはり消費税はそういう逆進性が強い。それをいろいろなことで中和をするとおっしゃいます。それは中和をしないよりはいいかもしれませんけれども、やっぱり本質的にどうしてもこの消費税というものは逆進性があって財政措置ではどうしようもできない部分がある、これは認めますか。
  272. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 本来、消費税、あるいは間接税と言った方がいいかもしれませんが、間接税にはそうした逆進性というものは否定できない、そういう性格の税だと言わざるを得ないと思います。それをまさに中和するのが財政措置であり、そして税制全体の構造等でこれに対応すべきじゃなかろうかといって一生懸命努力しているところでございます。
  273. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 当委員会でもほかの委員からも問題になりました石油税一千億の点は、結論は出たんでしょうか。
  274. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 当委員会でもいろいろ御議論をいただいております。そのたびに御答弁申し上げております。問題点は既に申し上げているとおりでございまして、その問題点に適切に対処すべく目下最終的に詰めておるところでございます。
  275. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 最後に申し上げます。  この問題にいたしましても、政府として衆議院での話があってからもう一月たっているのにまだ結論が出ない。もう非常に怠慢である。またこの消費税につきましては、今申しましたように数々のやはり懸念がある。そういう懸念が解消されていない。逆進性をいろいろ予算措置でやると言ってもこれにはやっぱり限界がある。しかも、そういうものを国民の反対を押し切って導入するということは、私たちは末代に悔いを残すことにもなると思いますし、そういう点で竹下総理として断固思いとどまってもらいたい、このことを強く要望いたしまして質問を終わります。(拍手)
  276. 斎藤十朗

    ○理事(斎藤十朗君) 次に、吉井英勝君の質疑を行います。吉井君。
  277. 吉井英勝

    吉井英勝君 私は、半年間の弾力運用の問題についてまず伺いたいと思います。  衆議院本会議における修正条項についてですが、税制改革法案第十七条二項で、国税当局においては、六十四年九月三十日までは、その執行に当たり、弾力的運用を行うということになったことについて、十一月二十四日付の日経によりますと、安倍幹事長は、この「趣旨は半年間の実施延期に等しいような効果が出るようにすることだ」というふうに語っております。  そこで、まず端的に伺いたいと思うのでありますが、この半年間の弾力運用ということは、つまり消費者の側からすると消費者はこの半年間三%の消費税を払わなくてもよい、こういう意味なのかどうか、まずこの点を伺います。
  278. 水野勝

    政府委員(水野勝君) ただいま御提案申し上げております消費税は昭和六十四年四月一日からの実施、適用をお願いいたしておるところでございます。したがいまして、四月一日からの取引に当たりましては三%を乗せていただいて、その売り上げの三%を納税いただくというのが基本でございます。
  279. 吉井英勝

    吉井英勝君 ですから、今答えられたように、消費者は四月一日になればこの法案が成立した場合にはまず三%を納めなきゃならぬと。納税義務者となる業者の方も、これは半年間分の消費税は納税しなくてもよいことじゃなくて、やはりきちっとこの分も納税するということですね。くどいようですが、ちょっと再確認しておきたいと思います。
  280. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 四月一日から納税義務額が発生し、納付をいただくということでございます。ただ、その納税義務が発生しておるところでございますが、その納付税額の計算に当たり、あるいは納付方法につきまして、あるいはこれにつきましての国税当局の対応につきまして、この十七条第二項の御趣旨に即して弾力的に対処するというのが、この修正の案文の意味であろうかと考えてございます。
  281. 吉井英勝

    吉井英勝君 ですから、まず前段の方ですね、改めて確認いただきましたように消費者も三%を納める、それから納税義務者たる業者もちゃんと納めるということ、これはまずはっきりしているということですね。  それでは、この修正の実態は一体何なのかということなんですね。六十四年の四月一日から九月三十日までについては申告の瑕疵あるいはミスがあってもこれは無視するということなのか、一切国税通則法十九条等にあります修正申告とか、あるいは二十四条から二十六条にあります更正などの対象にはしないということなのか、この点についてはどう扱うわけですか。
  282. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 国税通則法、それから御提案申し上げております消費税法案、そうしたものを前提としつつそのそれぞれの条項におきましても政令、省令等あるいは通達等で運営している部分があるわけでございます。そういったものを全体ひっくるめまして、そうした全体の中でこの条文に則した対処をいたすということであろうかと思います。
  283. 吉井英勝

    吉井英勝君 いろいろおっしゃったんだけれども、私が一番ずばり聞いていますのは、申告に瑕疵がある、あるいはミスがあってもそれは無視するのかどうか。順番に一つずつ伺いましょうか、これを無視するんですか、どうですか。
  284. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 申告に瑕疵がございますれば、それは直していただくということでございます。
  285. 吉井英勝

    吉井英勝君 つまり、それは修正申告または更正の対象にするということですね。
  286. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 基本はそういうことでございます。  しかし、こうした法律の運営に当たりましては、従来とも、どのような場合まで修正をお願いし、あるいは更正をするか、それは従来からの国税当局の運営の大きな考え方というものがございます。この新税だけに限って、すべて国税通則法を含めまして、ぎりぎり執行するということはないわけでございます。
  287. 吉井英勝

    吉井英勝君 つまり、四月一日からの実施もこの法律どおり、その他の扱いについても従来どおりと。何らこの修正というのは意味を持っていない、こういうことを今、主税局長おっしゃったことになるわけですが、同じくこの弾力運用の期間については、将来とも帳簿を全く見ない、調査しないという、こういうことを意味しているのかどうかということも、くどいようですが、これも重ねて伺います。
  288. 水野勝

    政府委員(水野勝君) ただいまのお話ですと、この修正がおよそ意味がないというふうに私が申し上げたというふうな御発言がございましたが、そういうことは申し上げてないわけでございまして、こうした条文をいただいたということを真剣に受けとめまして、しかも現行法令の範囲内、あるいは従来の執行の対応の仕方の中でこの趣旨が生かされる対応をする、それは意味のないということを私は申し上げてないわけでございます。
  289. 吉井英勝

    吉井英勝君 後段の調査はどうですか。
  290. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 国税当局の対応といたしましては、当然調査もあるわけでございますが、この九月三十日までにつきましては、この条文にあるような対応をするというのが国税当局のあり方ではないかと思うわけでございます。
  291. 吉井英勝

    吉井英勝君 その条文にあるようなやり方というのは、なかなか切れ者の水野主税局長は途端にトーンがおかしいわけですが、要するにこの弾力運用の期間については将来とも帳簿を全く見ない、調査をしないということなのかどうかということを伺っておりまして、その弾力運用ということは調査をしないのか、弾力運用ということはやっぱり調査をするのか、あいまいなままの答弁じゃさっぱりわからないですよね。その点、わかるように御説明ください。
  292. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 現時点におきましては、この条文を衆議院から修正でいただいたわけでございます。これを執行するに当たりましては、この趣旨が生かされるように対処するということでございます。  その中身につきましては、それは明確を欠くことでございますと納税者にも執行当局としても適切なことではございませんので、その対応ぶりはやはりそれは明確にいたす必要があろうかと思うわけでございます。  ただ、再々申し上げてございますように、その具体的な内容につきましては、当参議院での御審議も踏まえて確定してまいりたいと考えておるところでございます。
  293. 吉井英勝

    吉井英勝君 本当に変な話なんですね、今のことは。衆議院で修正したこの法文の内容に基づいてやるんだと言いながら、どうやるかということはさっぱり明らかじゃないんですね。    〔理事斎藤十朗君退席、委員長着席〕  例えば、理念法であるこの税制改革法案の中で、三%の価格転嫁の問題については、これは実体法の方でも独禁法の適用除外というのをちゃんと理念法と実体法でセットでやっているわけですね。今の場合については、これはこの弾力運用という条項だけは決めたんだが、具体的にどう執行するかについてはさっぱりその実体が明らかじゃない。これはもう局長一番よく御存じのことで、租税法律主義だということで今までもやってこられた。ところが、今回のこの修正の内容についてだけは中身はさっぱり明らかじゃない。それは本当におかしいと思うんですよね。ですから私は、くどいようですが、改めてこの点伺いたいんです。弾力運用の期間については調査をするのかしないのか、この点どうですか。
  294. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 現時点でお答えを申し上げるとすれば、この十七条の条文でお答えをするほかはないと思うわけでございます。この趣旨を踏まえまして、国税当局におきまして適切に対処することになろうかと思うわけでございます。
  295. 吉井英勝

    吉井英勝君 今の御答弁ではっきりしてきたことは、要するに四月一日から消費者は三%を納めるんだ、これははっきりしたわけですね。この納税義務者たる業者も半年分ごまかしてしまうとか、これはできないんだ、ちゃんと納めるんだ、そういうこともはっきりしておって、じゃ具体的に何なのかといったら、申告に瑕疵、ミスがあっても無視するかといったらこれは無視しないともおっしゃる。修正申告や更正の対象にもするんだと。調査をするのかしないのかと、ここになりますと途端に、いや弾力運用だ弾力運用だということで、もし調査をしないとおっしゃるならば、これは徴税をしないということですよ。調査をするということであればこれは弾力運用の意味は全くないわけです。だから私はここのところをしっかりお聞きしておかないと、どのように執行されるのかわからないですからね、この法律は。  改めて伺うんですが、調査をするのかしないのか。
  296. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 消費税も申告納税制度をとってございますので、調査の有無にかかわらず、納税者とされましては二カ月後に申告をし納付していただく、それは調査とは特段関係ないわけでございます。
  297. 吉井英勝

    吉井英勝君 いずれにしろ、弾力運用弾力運用と言ってきたわけですが、しかしそれは実体としては全く何もない。特に消費者にとっては全く何もないものだということが私は明らかになったと思うんです。これまで、各議員への答弁など伺っておりますと、結局弾力運用というのは、納税者がなれるまで納税事務などで相談や指導を行うということだけがどうも具体的なようですね。  ところで、こういうことはいつもやっていることでありますし、政府が出した売上税導入にかかわる徴税体制というのにおいても、広報、指導、相談は実施すると明記されておりました。しかも、当時の国税庁長官が、私ここに持ってきております週刊国税広報ですね、この中で、売上税のときには、新制度導入後両三年の間、指導、広報を中心とした運営をすると。これは売上税のときは両三年の間、今度はこの法律では半年間、この間弾力運用ということで広報、指導、相談ということらしいんですが、さて百歩譲って何らかの意味がこの弾力運用にあるとしても、この弾力運用なるものの適用を受ける納税者はありますか。
  298. 水野勝

    政府委員(水野勝君) ただいま御指摘のございましたように、売上税のときにもそういう方針が明らかにされているところでございますが、特に税法としてこのような条文をいただき修正をいただいたということは、それだけに私どもとしては重く受けとめて、この趣旨を体して対処すべきものだと思うわけでございます。  すべての納税者が、四月一日から九月三十日までの間の課税期間というのは持つわけでございますので、これはすべての納税者に関係してまいることであろうかと思うわけでございます。
  299. 吉井英勝

    吉井英勝君 消費者には全く関係ない、こういうことははっきりしておりますし、すべての納税者に関係するとおっしゃるんですが、個人の場合には課税期間は暦年であり、申告と納付というのは課税期間終了から二カ月でありますから、それは昭和六十五年二月ですね。弾力運用というのは六十四年九月三十日まででありますから、これは庶民には全くメリットがない。簡易課税制度を選択した業者は六カ月間の区別というのはないわけですね。弾力運用が辛うじて適用になるのはどういう業者かと、これは納税義務者の選択によって三カ月ごとに申告ができる法人だけとなるわけですね。その法人も、四月、五月、六月の決算期の法人数を調べてみますと、四十六万七千三百三十三と全体の二四%にすぎない。これが九月まで猶予扱いにせいぜいなるだけのことであって、結局自民党安倍幹事長が言っている半年間の実施延期に等しいような効果が出るようにするというのは全く意味がない、こういうことになろうかと思うんですが、総理、いかがですか。
  300. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 技術的な点もございますので、ちょっと御説明、お答えさせていただければと思うわけでございますが、六十四年九月三十日までに申告期限が到来する、あるいは六十四年九月三十日までの課税期間についてとございますれば、委員指摘のようなことも起こるわけでございますが、あくまでことは「九月三十日までは」としてございますので、私どもとしてもそういうふうに果たして読むべきものかどうか、必ずしもそうも考えないところでございます。
  301. 吉井英勝

    吉井英勝君 大体、主税局長からしてこの法律の条文を、ただいま提案されているものについてどう読むべきかわからない、これは本当に大変な問題だと思うんです。改めて総理の見解を伺いたいと思います。
  302. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 委員のお話でございましたので、そういうふうに読む必要はないというふうにはっきりお答えをすべきかもしれませんけれども、そこはそのように読むこともないのではないかと申し上げたわけでございまして、決してこの言葉から離れた、この言葉が不明だということを申し上げているわけではないわけでございます。
  303. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今の主税局長のお答えは、丁寧に申し上げたというふうに御理解をいただければ幸いでございます。私もこの間の事情を承知いたしております。十七条でございます。基本的にはこれを重く受けとめるというのは、この条項が入りましたということにおきまして、まさに今御指摘なすったような事態が起こらないように、それこそ広報、相談、指導等について力をいたせよという私、徴税当局に対するいわゆる重い物の考え方をことにお書きになったものであるというふうに今考えております。したがいまして、いつも申し上げますように、本委員会の審議等を十分聞きながら適切な対応をいたします。
  304. 吉井英勝

    吉井英勝君 審議するべき法律案中身が実体として全く中身はない、そういうものは本来こういうところへ出すべきものじゃないということを申し上げておきたいと思います。  この問題については、結局大多数の納税者、特に三%支払う消費者には何の関係もないことが明らかでありますし、そして十一月十六日の件については、日経新聞によると、塚本氏も弾力運用はごまかしだと講演したということですが、まさにそのとおりだと言わざるを得ないと思います。こうしたやり方で国民や業者を欺くというのはこれは許せない、そのことを一言指摘して、次の問題に移りたいと思います。  委員長、資料配付の方をお願いいたします。    〔資料配付〕  それで、次は家計支出に対する消費税負担率についてでありますが、過日の近藤委員の質問に対して水野主税局長は、三%掛ける五兆四千億分の二兆円、この計算で一・一%というのを出しておられたんですが、これは間違いありませんか。
  305. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 基本的には仰せのとおりでございますが、なおもう一回正確に申し上げますと、課税支出割合、これを〇・九程度と置き、それから五兆四千億分の二兆何がしといったものを掛け、それに三%を掛けた、こういうことでございます。
  306. 吉井英勝

    吉井英勝君 それでは、大蔵省の方も家計調査年報に基づいて出しておられるわけですが、調査年報の具体的な支出項目ごとに計算をして出された消費税の負担率というのはどういうふうになるのか。これを計算しておられたら出していただきたいと思います。
  307. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 家計調査年報をもとにいたしまして、その消費支出の中から課税になるものを取り出し、それが先ほど申し上げた割合でございます。したがいまして、全体として家計支出からの課税支出を拾っておるという意味では、家計調査の中の係数をもとにしておるということでございます。
  308. 吉井英勝

    吉井英勝君 家計調査年報を使って計算するからには、やはりこの調査年報の各項目ごと、これについての、これは課税になるもの、これは既存間接税がなくなるものとか、きちっと一項目ずつ全部引っ張り出して計算しないと答えは出てこないわけですよね。そういう丁寧な計算をしておられるのか。しておられたら後ほど資料を出していただきたいんですが、まず、されたのかどうかですね。
  309. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 委員の御指摘のような方法もあると思います。  私どもの今回の計算は、そのような方法でございますと、既存間接税が大幅に廃止、調整をされます。そうしたものが家計にそのまま消費支出項目として上がってくるもの、それの税率の変化分だけが算入される。現在の間接税は、それは確かに消費支出として直接消費の対象になる部分が多いわけでございますけれども、しかしそれは全体として製造、卸、小売の段階を通じて経済全体の中で波及するわけでございますので、そうしたいわば直接的な影響とともに全体を通じた影響を個々に算出するとすれば、私どもとしてはむしろ正確な姿としては、先ほど申し上げました全体の消費税の税収それから廃止、調整される既存間接税の税収、それでもって対比して、その割合でもって影響額を算出するのが合理的ではないか。そういうことから、ただいま申し上げたような方法で算出をしているわけでございます。
  310. 吉井英勝

    吉井英勝君 今のお話は、結局初めに五兆四千億円ありき、初めに二兆円ありき、したがって計算すれば一・一%が出てくるという計算であって、家計調査年報を使っているんだということで大蔵省は資料を出しておられるんですけれども、ところが実は肝心なところでは少しも使って計算していないということが明らかになったわけです。  そこで、時間が迫ってまいりましたので、私お手元に配らせていただきましたこの計算というのは、これは総務庁統計局の家計調査年報により、ここまでは大蔵省と一緒なんですね。第十二表の標準世帯の「年間収入階級・年間収入五分位階級別一世帯当たり年平均一か月間の収入と支出」、これと、もう一つは十七表の「都市階級・地方・都道府県庁所在都市別一世帯当たり年間の品目別支出金額、購入数量」、これは全部載っておりますから、よく御存じのとおりで、そして大蔵省の新設、改定及び廃止となる税目別の税率を掛け合わせて、しかもできるだけ大蔵省がよくやられるような方法に近く、本当は社会保険医療も当然上がるんですが、一応ゼロとみなしてとか、随分そういう配慮も加えてやりますと、最後に出ておりますが、一番下の段ですね、一・八%台になるんですね。  一・一%と一・八%ではこれは随分大きな違いであるだけじゃなしに、意味が全く異なってくるわけなんです。それは、大蔵省の方が出しておられる資料では、例えば第一分位で消費税は年間二万七千円だと。しかし一・八%台のこれでいきますと、一・八八でいきますと四万六千円。全く消費税負担も変わってくるわけですね、大事な数字が全然違ってくるわけでありますから。これまで大蔵省は一・一%だと宣伝してこられたんだが、それはあくまでも消費税収入を五・四兆円とし増減税二兆円として、この数字を前提としたものでありますから、しかし実際の家計に及ぼす影響、これはそんな粗っぽいやり方でやられちゃ困るわけで、やはり一・一%と一・八%の負担は随分違うわけですから、一・八%も、この大蔵省に合わせて随分こっちの方でやった数字を示しておきましたが、実は一・一%の増だということで、例えば生活保護の基準アップについても、スライド分の一%に一・一を足して二・一%を考えようとか言っておられるが、一・八八、第一分位ですね、この数字でいけば、それはそういう基準アップをしたとしても、なおかつ生活保護世帯にとっては負担増になるということは明白でありますし、この点につきやはり厳密な計算が必要なわけですね。  ぜひ、この点では、こういう家計調査年報等を大蔵省が言われるからには、そういうものに基づいてきっちりした資料を出すべきだ。そうして議論をしないと、もし一%が狂ってくると、消費税収の五兆四千億も狂うし、増減税の二兆円もすべてうその数字になる。マクロ的にはこれは既に衆議院で工藤議員が指摘しておりますが、こういう点ではやはりこの一・一%問題をきちっと根拠を示した数字でやってもらわないと、資料そのものが狂ってくると審議そのものが狂ってくるわけですから、この点について、もう時間がなくなりましたので総理に一言、一・一%問題をはっきりこの場で審議できるように、もう一度大蔵は大蔵として計算をしてこういうものを出していただきたいし、大蔵大臣としての総理の方からもきちっとそれは対応していただきたいと、私はこの点だけ一点伺って終わりたいと思います。
  311. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 生活保護基準というお言葉もありましたが、予算編成の段階で適切な対応をいたします。
  312. 吉井英勝

    吉井英勝君 いや、資料の提出です。資料のことです。計算している資料。
  313. 水野勝

    政府委員(水野勝君) やはり先ほど申し上げましたように、例えばこの中で電気代と申しましても、電気税が六千億あってもその六割内外は産業用、産業用が減税、調整になってそれが家計にどう響くか、いろいろな生産過程を通じて。そういうことを、これをいたしましてやはり計算をする方が私どもとしては正確ではないか。したがいまして、私どもとしての数字は十分おこたえできる資料ではないかと思っているわけでございます。
  314. 吉井英勝

    吉井英勝君 そのやり方じゃだめだということを申し上げて、終わります。
  315. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 次に、橋本敦君の質疑を行います。橋本君。
  316. 橋本敦

    ○橋本敦君 まず、NTT問題からお伺いをいたします。  式場氏は、先日の証人喚問で、リクルートに交換機とTDMという多重化装置、これを置くために局舎を貸しておりますのは全国四カ所、新潟は女池局だということを明らかにしたわけでありますが、この女池局で、六十一年にこれが設置された後、六十二年に増設の工事が行われておりますが、まずこの点間違いありませんか。
  317. 鴨光一郎

    参考人(鴨光一郎君) 新潟ネットワークセンターの女池ビルにつきましては、御指摘のように、昭和六十一年の八月からリクルート社との間で局舎賃貸契約を締結いたしておりましたけれども、同社から賃貸スペース拡張の要望がございまして、六十二年二月にその要望を受け、六十二年十月に変更契約を行ったところでございます。
  318. 橋本敦

    ○橋本敦君 このリクルートの要求について、NTTの本社ネットワーク本部、さらには現場である信越の総支社、ここでは当初は反対の意見であったと思いますが、間違いありませんか。
  319. 鴨光一郎

    参考人(鴨光一郎君) 私どもといたしましては、お客様であるリクルート社からの御要望に対しまして、当社として御要望にこたえ得るか否かという点についての検討を加えた上で、私どもの変更契約をすることについての内容を決定したところでございます。
  320. 橋本敦

    ○橋本敦君 質問に答えていないんです。  当初、反対意見が現場、NW本部にあったのではないかという質問です。事実だけ簡単に答えてくれませんか。
  321. 鴨光一郎

    参考人(鴨光一郎君) そのような事実は承知をいたしておりません。
  322. 橋本敦

    ○橋本敦君 それでは委員長、資料配付を許可願います。
  323. 梶木又三

    委員長梶木又三君) はい。    〔資料配付〕
  324. 橋本敦

    ○橋本敦君 ただいまから配付します資料は、我が党の調査で入手をいたしました「リクルート社通信機器の女池局設置について」と題する議事録のコピーであります。念のために、担当者の固有名詞は黒く塗ってございますが、これはいつでも明らかにできます。この文書をごらんになれば、NTTの文書であることはおのずと明白になることを参考人は御認識いただけると思います。  これによりますと、NTTがこの問題で最初にリクルートからの申し入れを受けましたのは、二枚目の冒頭を見ていただきますと、十二月十五日、これは六十一年であります。そして、二つ問題がありまして、リクルートの要求は、その上段、アンダーラインしてございますが、導入予定の機械は、これはNEC、つまり日電のAPEX二四〇〇L、これを使いたいということであります。TDMは富士通の機械を使いたいということであります。これがリクルートの要求です。そして、これの建設と保守については、リクルートの要求は、オというところにございますけれども、これはアンカーボルトの工事はNTT委託も考えられるが、その他はR社側で施工したい、こういう要求であります。  そこで、この問題がどのように審議されたか。この議事録は、こういうリクルートの要求に対して、まず現場では反対意見があったということを明日に示しているのであります。  そこで、四ページを参考人ごらんください。この四ページの下の方の十二月十七日、(4)というところにどう書いてあるか。リクルートへの電話連絡として、基本的なあり方としては応諾できないという考え方もある。そういうことでしばらく時間をかしてもらえないとだめだと、こういうことで返事をしている。リクルートは早く返事をくれというわけであります。  次、十二月十八日、ここのところで、ごらんいただきますように、この十八日は今度は企通本部の課長へ連絡いたしまして、リクルートが建設、保守を行うという今回の新機器導入については、NTTとしての基本的な考え方を整理して回答する必要があるけれども、承諾しない方向で回答したい、こう現場は企業通信システム本部に言っているのであります。  したがって、現場の考え方は明白であります。参考人、この事実を知らないのですか。
  325. 鴨光一郎

    参考人(鴨光一郎君) ただいま資料をいただいたところでございますけれども、私どもこれまでにあの中身につきましては承知をしているものはございません。
  326. 橋本敦

    ○橋本敦君 調べが足りません。  それでは、ネットワーク本部はどういう見解か、三ページを参考人ごらんください。  「本件に関する本部・本社の指導」です。ここで「結論として」というところをアンダーラインしてございますから見てください。当然のことが書いてある。「建設工事は、セキュリティを守る意味から精通しているNTTがやること」。リクルートに任せられぬというんです。当然ですね。それから(イ)のところをごらんください。メンテナンス、保守はリクルートがやるならやむを得ないというけれども、なぜNTTはだめなのか、その理由を聞く必要がある。こうはっきり言っているのであります。  したがって、NTTのNW本部も現場の信越総支社も、このリクルートの増設要求には基本的に反対という姿勢が明日であります。この点について調べますか。
  327. 鴨光一郎

    参考人(鴨光一郎君) 私どもが掌握いたしておりますところでは、このシステム建設受託に当たりましてリクルート側から日本電気製の交換機の使用を条件とされたということがございまして、私どもはお客様であるリクルート社のその御要望に従ったというふうに理解をいたしております。
  328. 橋本敦

    ○橋本敦君 一部事実を認めましたね。それは後で触れます。  四枚目の一番上をごらんいただきますと、この建設工事につきましてNTT本社のネットワーク本部と違う回答を実は式場氏のいる企業通信システム本部は言ってきているんです。アというところをごらんください。現場は、建設工事はセキュリティーの関係があるからリクルートに任しちゃいかぬという。ところが企業通信本部はNTTの工事でなくても監督をさせる、あるいは指導する、そういうケースもあるから、それでセキュリティーを保持することは可能だとリクルート側の要求に沿う指導を現場にしてきておる。おかしいです。  その次、イをごらんください。メンテナンスについても同じです。現場では、メンテナンスはリクルートじゃなくてNTTがやりたい、こう言っているのに、NTT保守でなくてもNTTによる一次保守は可能である、こう言っている。一次保守というのはどういうことかといいますと、結論が出た一枚目の紙に書いておりますけれども、保守業務とは、要するに一次保守は機器のボタン操作とか機器のランプ確認等だけなんです。全面的なメンテナンスとはほど遠い話で、リクルートの要求がここでも通っておることが明らかなんです。ここで企業通信本部のこういうようないきさつが明らかです。  次に、今あなたがおっしゃった機器についても見てみましょう。機械については、この会議録の五ページをごらんいただくとわかりますが、上段の方でアンダーラインをしてございますけれども、NTTがリクルートと提携をしてきたということの基本的な理由は、これによってNTTも自社製品の販売、自社業務範囲の拡大という営業上のメリットがある。ビジネスチャンスがふえる、ここにある、こう言っているんです。だから、リクルートがNTT以外の機械を入れる、NTTに保守業務を全面的に委託しないとなったらNTTのビジネスチャンスどころじゃないんです。  そういうわけですから、先ほど指摘したように、この機械については現場はどういう態度かといいますと、一月七日、R社とあるところのA2、A2というのはR社に対する返答です。ごらんください。原則的にはNTT仕様の製品である機械、TDMで言えばM2、これの設置をしていただきたいと、こう言っているんですよ。これは現場の要求です。書いてあるでしょう。それに対してリクルートはどう言っているかといいますと、ここが問題です。その下の方のR社の返答のA2を見てください。あくまでNTTがリクルートの言う機械を使うのを認めないで、NTT仕様の機器でないと設置を認めないということならば、これについての話し合いはリクルートの上層部とNTTの本社との話し合いとなろう、こう言って、いわばおどしをかけているんですね。現場で話して反対だというんなら、私の方はトップクラスのルートで話をするぞと、こう言っているんです。  結局、その結果どうなったかといいますと、重大なことはそのページの下の一月七日、最後の企通部、つまり企業通信システム本部からの連絡でどうなったかといいますと、A2を見てください。リクルートがこの機械を入れたいという富士通のDMIXについては、NTTマークをつけて、NTT仕様のM2TDMということで出荷させたい、これはR社に話してある、リクルートに話してある。ひどい話じゃありませんか。富士通の機械ですよ、リクルートが要求する。企業通信本部は、それにNTTのマークだけを張って出してやるようにしようじゃないか。現場で私は確認をしてもらいましたが、そのとおり富士通の機械が女池に入っておるんですよ。調べてください。調べますか。今、あなたは富士通の機械、認めましたね。
  329. 鴨光一郎

    参考人(鴨光一郎君) 私どもは、今回の女池絡みの点につきましては建設受託を行っているわけでございますけれども、富士通の機械につきましてはモデムと称しております機械につきまして富士通製のものが入っております。
  330. 橋本敦

    ○橋本敦君 NTTのマークをつけて入っていますか。
  331. 鴨光一郎

    参考人(鴨光一郎君) これは、ただいま御指摘をいただきましたところで、明確に把握をいたしてはおりませんけれども、私ども会社のサービスの運営、一般論で申し上げますと、私どもが回線等をシステムの中に取り入れて構築をいたします中に入ってまいります機械につきましては、NTTブランドのものもございますし、それからお客様が御指定になる一般メーカーのブランドのものもあるというのが事実でございます。
  332. 橋本敦

    ○橋本敦君 私の言っていること、調べますか、答えになってないので聞きます。NTTマークがついているかどうか、調べなさい。
  333. 鴨光一郎

    参考人(鴨光一郎君) 若干の時間をいただいて調べたいと思います。
  334. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで問題は、この文書で明らかにされたリクルートの言う、上層部を通じての話し合いは一体だれとだれか。江副氏と真藤氏という可能性もあれば、まさに回線リセール事業の責任者として皆さん御存じの人は式場さんでしょう。そして、その式場さんはコスモス株五千株、リクルート本社株一万株を手に入れておられる。  ですから、今私が指摘したこの内部文書で明らかな事実を調査すれば、まさにそれは重大な贈収賄ということにつながっていく可能性もあれば、NTTの利益、便宜をリクルートの要求で抑えてまで企業通信本部が指導、指示したとすれば、商法上の特別背任が成立する疑いも出てくる。刑事局長、厳しく調べるべきですが、どうですか。
  335. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) ただいまの御指摘は、初めての御指摘でございます。その御指摘と今の資料は検察の方に届けまして、検討すると思いますので、御指摘は御指摘として検察としても研究するものと考えております。
  336. 橋本敦

    ○橋本敦君 厳しく調べてもらいたいと思います。  そこで郵政大臣、お聞きのとおりの経過です。参考人は、時間をもらったら調べると、こう言いました。私が指摘した疑惑について、監督上の立場からもNTTに厳しく調査を命じていただきたいのですが、いかがですか。
  337. 中山正暉

    国務大臣(中山正暉君) 承知いたしました。
  338. 橋本敦

    ○橋本敦君 それじゃNTTと郵政大臣、終わります。  次、文部大臣にお伺いいたします。  江副氏が六十二年に大学審議会の委員に任命された件についていろいろと議論をされてまいりました。これについて文部省の國分高等教育局長は、先日の本委員会における佐藤議員の質問に対して、審議会等の委員の選定について、一般的に上司、つまり局長、次官が意見を述べることはあり得るが、教育課程審議会と大学審議会に限ってはそういうことはなかったと答えておられますね。私は不思議だと思うんです。たくさんある審議会ですが、この二つだけ、次官、局長が意見を述べられることはなかった。これは高石氏をかばわれた発言ではないかと疑いたくなるんです。  そういうことだとして、それではだれが決めたかと、こうなりますと、これは昭和六十二年九月十八日の新聞の夕刊ではっきり書いておりますが、大学審議会の十八人の人選については、最終的に中曽根総理と当時の塩川文部大臣が協議して決めたと、こう書かれております。この事実は間違いないんですか、文部大臣。
  339. 國分正明

    政府委員(國分正明君) 事実関係ですので、私の方からお答え申し上げたいと思いますが、一般的にこの人事も、閣議の承認を得て任命するということで、閣議了解人事ということになっております。  したがいまして、他のいろいろな重要人事案件もそうでございますけれども、閣議にかかります場合には、事前に担当大臣が総理のお耳に入れる、あるいは御理解、御了承を得るという手続をとるわけでございまして、本件についてもそういう手続をとっているわけでございまして、御指摘の御報道も恐らくそのことを指しているのだろうというふうに思います。
  340. 橋本敦

    ○橋本敦君 それでは、局長あるいは大臣に聞きますが、塩川文部大臣が十八日、中曽根首相と協議をされた、その文部省が持っていた名簿に大学審議会委員江副氏は入っていましたか、入っていませんでしたか。言えますか。
  341. 國分正明

    政府委員(國分正明君) 具体の人事については一般的に差し控えるべきかと思いますけれども、先般来の御指摘でございますのでお答え申し上げますと、文部省の原案には江副氏は入っておりました。
  342. 橋本敦

    ○橋本敦君 そういうような原案について文部大臣と協議するのに私は疑惑があるのですけれども、首相官邸で塩川文部大臣は、これは九日ですが、三時五十七分から五時五十八分まで異例の長時間協議をされた。なるほど人数がいろいろあったということもあるでしょう。しかしあなたは、別のところで、先ほども答弁されましたけれども、こういう人事については閣議の了承を得るという、こういうことで、文部省だけではなくて、閣議の案件にかかる前に大臣から説明して了承を得るというのが普通の運びだ、こう言っていますから、当然中曽根総理も、そのときに総理ですが、意見を言われたに違いない。そういうことで、中曽根総理から江副氏を強く推薦する指示があったという、こういう疑惑があるのですが、大臣、真実はどうですか。
  343. 國分正明

    政府委員(國分正明君) 当時、文部省におきましては、ポスト臨教審の構想の問題あるいは総理主宰のスポーツ振興に関する懇談会の問題等々いろいろな案件を抱えておりまして、塩川大臣が当時の中曽根総理といろいろお話しになったということは事実であろうというふうに思っております。  具体の御指摘の点については、先ほど申し上げましたように、文部省の原案に江副氏は入っており、それについて御了承を得た、こういうことでございます。
  344. 橋本敦

    ○橋本敦君 中曽根前首相がもちろん反対意見など言わなかったことは明白です。中曽根総理のところへ秘書名義で二万九千株がなぜ行っているか。これは疑惑の追及をするのは当たり前じゃないですか。高石氏でないと言うから疑問が起こってくるんですよ。次官やあるいは局長が何にも関係していないと言うから、それじゃ文部大臣と首相だな、こういう結論があなたの答弁から明らかだから言っているんですよ。笑い事じゃない。  そこで、次にまた論点を移しますけれども竹下首相にきのうも上田議員が質問しました。しかし総理は、大事な基本的なことについては、きょうも社会党の矢田部議員も伺いましたが、これはわからない、知らない、こういう御答弁でありました。竹下首相は、言ってみれば、もうこれには口をつぐまれたという政治姿勢かということで、私どもはそのこと自体が厳しく政治的に批判されねばならない、こう思うんです。  それで、さらに重ねて聞きますけれども、ただ私の質問に対して一つ大事なことをおっしゃった。それは、服部さんの子息名義の預金通帳は見た、こう言われたそのことですね。この事実についてお伺いしますけれども、これは、いつだれから見せられたのか。首相官邸の動向欄を見ても、十一月九日深夜二十三時五十九分、つまり午前零時から小沢副長官と青木秘書がお伺いしておりますけれども、そのときだったのかどうなのか御記憶ございますか。福田名義です。
  345. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 見たような気はすると申し上げたことは事実であります。今もそういう気がしております。
  346. 橋本敦

    ○橋本敦君 それは、青木さんがあなたに事態を説明するために深夜それを持っていって説明された、こういうことですか。
  347. 竹下登

    国務大臣竹下登君) そのときではなかったような気がしております。
  348. 橋本敦

    ○橋本敦君 その当日は小沢官房副長官が、首相官邸動向を見ますと、たびたび訪れていらっしゃる。午前の定例のとき以外、午後も三回、夜中を入れて四回お伺いされておるので、いろいろお話があったのかと思うんですけれども、そのときでなかったとしますと、首相官邸動向で、青木秘書はその後幾ら調べても総理官邸に行かれた記録が出てこないんですね。そうすると、どこでごらんになったのかなと私は思うんですが、御記憶ありますか。
  349. 竹下登

    国務大臣竹下登君) そういう気がしておると申しますのは、何月何日場所どこということを、記憶を呼び戻すことができないからでございます。
  350. 橋本敦

    ○橋本敦君 御記憶がないということでございました。しかし、これは非常に大事な事実で、唯一と言っていいぐらい、総理がこの関連した問題についておっしゃっている事実に関する部分ですね。ですから、これを松本議員には、その後一カ月ほどしてということでお答えもあるんですけれども、場所はどこでごらんになったかということは、これは大事な事実として明らかにしていただきたいんです。竹下事務所であったのか御私邸であったのか官邸であったのか、その三つのどっちかだと私は思うんです。  もう一度伺いますが、御記憶は思い起こしていただけませんか。
  351. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 竹下事務所というところは行ったことがございません。
  352. 橋本敦

    ○橋本敦君 そうするとあと二カ所ですね。で、官邸記録にはない。そうすると御私邸か、こう思いますね。やっぱり御私邸までわざわざその後説明に行かれて、大問題になっている中での話だから、私は、御記憶がないというのは、どうも不自然に思えてなりません。  もう一つ総理の答弁でどうしてもお聞きしておかなければ釈然としない問題は、私どもは、青木さんは二千株を自分名義にされていますから、後からリクルートが持ってきた一万株は、東京新聞等も報道したように、総理あてだと、こう思います。総理は否定されますが、私どもはそう思っておりますよ。  しかし、まあ否定されるとして、総理は私に対する答弁でも、また一日の矢田部委員に対する答弁でも、会社にとってもそれからまた引き受ける人にとっても、株のことですからどちらもよいようにと、こういう判断で青木秘書がお世話をした、こういうふうにおっしゃっていると思うんですね。で、どちらもよいように、つまり、リクルート側にも引き受ける側にもよいようにというあっせんをしたという、この、よいようにという意味ですね。これはどういう意味でおっしゃったんでしょうか。
  353. 竹下登

    国務大臣竹下登君) そのとおりのことでございます。
  354. 橋本敦

    ○橋本敦君 わからないんですね。わからないから聞いているんですけれどもね。  福田さんにとっては、つまり引き受けるようにと言われた方にとってよいようにというのは、なるほど利益が出ましたからね。会社にとってよいようにというのは意味がわかりませんね。ひとつそこから聞きたいことは、福田さんによいようにということで話を青木さんがなさったとすると、私は、青木さんはこの九月の終わりごろには、この話を受けたときにはといいましょうか、このリクルートコスモス株はやがて店頭公開されて必ず値上がりするという、値上がり確実であることを知っておられたと思うんです。いかがですか。そうでないと、仮に総理のお話が本当だとして、おっしゃったように、総理の御親戚によかれとお話をするのに、値下がりする可能性のある株だとか全然信用できない株ならお世話できませんからね。青木さんは、店頭公開値上がり確実であることを知っておられたということは間違いないと思うんですが、総理、どうですか。
  355. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 値上がり確実ということをどうして知る由があるかということを私自身が知っておりません。
  356. 橋本敦

    ○橋本敦君 それは、リクルート関係者が青木さんに、来たときにその旨話したに違いないと私どもはいろんな調査から言っておるわけです。  例えば、加藤前労働事務次官は、話があったときに値上がりすることは認識していたと、こうおっしゃった。また、民社党の塚本委員長、例に引くつもりはなかったんです、あなたがおっしゃるから言うんですが、記者会見で、二、三カ月すれば値上がりすると、これはリクルート関係者から言われたと率直に述べられておるでしょう。  だから、その当時、九月三十日直後の十月に入れば江副氏はみずから公開価格四千六十円を決める、そして証券業協会でも十五日に協議して値段を決めていくという経過をたどりますから、持ってきた者は話したに違いないと、こう思っているから、青木さんは聞いたに違いない。  この点調べましたか。青木さんに問いただされましたか、総理は。いかがですか。
  357. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 一般的に申しまして、私どものところへそんな話があろうとは思っておりません。
  358. 橋本敦

    ○橋本敦君 私は、青木さんに問いただされたかと、こう聞いたんですが、お答えにならないというのは事実上の答弁拒否ではないかと思いますよ。  私は、この問題はなぜあなたにお伺いするか。前回もたびたび申し上げました。素直に答えられないというところが問題なんです、質問に対して。これは一層疑惑を深くするだけです。もしも総理が本当にこの疑惑を解明するという、そういう姿勢に立たれるならば、青木さんにもっと厳しく聞かれるべきです、あなたの秘書だったんですから、今も聞ける範囲なんですから。そうじゃありませんか。それを聞かずに今のようなお話をされるということは、私は、総理が真相を明らかにしようとされないそういう政治姿勢だと、こう言わざるを得ないと思います。  六十一年九月のころといえば、これは同日選挙が終わり、いよいよ総裁戦レース激化、総理も総裁戦を目指して立たれようというときでしょう。そして創政会結成を目指して頑張っていかれるころでしょう。資金がたくさん要るという、そういう政治的な時期にかかわっている。私は、この株の利益を青木さんが私的に使われた、福田さんがちびちび使われた、信用できません。この先は青木さんは自分の処理で、あなたのためにあるいは竹下派のために使われた。青木さんの手元に預金通帳があったからあなたはごらんになることができた、これが間違いない事実ではないかと思います。  時間が来ましたので最後に伺いますが、青木氏にこの点厳しく聞いて、調査をして国会に報告してくれますか。
  359. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 国会で報告するということについては、私自身判断をゆだねていただきたいと思っております。
  360. 橋本敦

    ○橋本敦君 時間が来ましたから終わります。
  361. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 次に、柳澤錬造君の質疑を行います。柳澤君。
  362. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 最初に、総理にひとつお聞きをしたいことがあるんですが、こと二、三日の新聞を見ておりますと、もう内閣改造の記事ばっかりなんです。総理は、この税制改革の審議と内閣改造のこととどっちが大事だと思っていらっしゃるのかということなんです。
  363. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 税制の審議が大変大切でありますし、内閣改造というようなことは口にしたことはございません。
  364. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 それ以上申し上げてもお答えは出てこないと思いますけれども、でも総理、率直に言わせていただくと、あの日曜日の朝の新聞を見たときに愕然として、いささかもって不見識じゃないかと思ったんです。重要な税制改革の審議をしているときですから、そういう点はぜひ慎重にしていただきたい。ああいう記事を見せられますと、もう税制改革の審議はどうでもいいと思っているのかと思いたくなるんです。ですから、その辺は慎重にしていただきたいということを申し上げて、それ以上追及はいたしません。  次に、石油税の問題で若干お尋ねをしていきたいと思います。  これはもうおわかりのことだと思いますけれども、石油諸税は税込みでもって十兆円の売り上げの中で三兆二千億の税金が課せられているわけです。要するに、税抜きの価格では六兆八千億に対して三兆二千億の税金を課している。四七%からの税負担をしているわけなんです。間接税の収入の中でも二〇%を占めて第一位になって、財政に大きな貢献をしていることももう総理は御存じだと思うんですね。  ところが、今回のこの消費税の導入に当たって、この三兆二千億の税金にも三%の消費税をかけるというんです。衆議院でもって十月二十五日、我が党の米沢議員がこのタックス・オン・タックスはやめろといって要求したんです。当時の宮澤大蔵大臣も、そこのところが泣きどころである、米沢委員の立論には理があると答弁されまして、この実現に向けて強い意欲を示されておりましたんです。  ところが、なかなかその後はこの問題が進まないわけなんです。難しいことを言っているんではなくて、課税ベースを変更して税抜き価格で課税するようにしてくださいということなんですけれども総理、その辺をもうそろそろ明確に御答弁いただきたいと思うんです。
  365. 水野勝

    政府委員(水野勝君) この六月に、消費税を含みます全体の税制改革の大筋を関係方面と与党とで決定いたしましたときに、酒、たばこ、これはタックス・オン・タックスではございますけれども税率を調整した。石油につきましては単純併課となった。しかし、その点につきましては、石油関係諸税に加え消費税が併課されることによる石油にかかる税負担については引き続き総合的に検討するものとするとされたところでございまして、現時点まで関係者と鋭意検討しているところでございます。  これは、昭和六十四年度予算、昭和六十四年度税制改正の中で適切に対処するということで、現在最終的な段階の詰めを行っているところでございます。
  366. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 この段階へ来て、そういう答弁で納得するような状態じゃないんです。  それで、今も酒、たばこなんかもタックス・オン・タックスをやっているんだというけれども、これはもう総理も御存じのように調整しているわけですよ。それから料理飲食税の方になるとタックス・オン・タックスをやっていないわけで、もとのあれだけにしかかけてないわけなんです。何で石油だけそれができないか。したがって、あれこれ難しいことを言っているわけではなくて、三兆二千億の中のそれに消費税三%かけるのだけはやめろと言っているわけですよ。  それで、これは通産大臣に私はお聞きした方がいいんだけれども、そういうことをここで議論しているときに、十七日の日経新聞に「原油関税5割下げ」云々、いろいろ読んでいるとあれですから省きますけれども、これは政府は決めたんですか。今の局長の答弁とはまた違ってきているわけなんで、その辺について通産大臣、お答えいただきたい。
  367. 田村元

    国務大臣(田村元君) いや、実は私もあの新聞を読んで驚いたのであります。  この消費税導入に伴う石油にかかる税負担、この問題につきましては、通産省といたしましては、総合的検討の中で、石油製品関税を石炭勘定に法律上直入し、それに見合う分の原油関税を軽減する案を含めまして、現在財政当局と鋭意検討していることは事実でございます。恐らく、極めて近いうちに原案は詰まるものと確信をいたしております。  今、結論に達しておりませんけれども、あの新聞報道といいますのは、原油関税を五割下げることで結論を出したとか、全くその事実はございません。五割なんて大きなものをいじくるということには、第一私を初め皆反対でございます。どうも、そういう事実は全くないというふうにお答えをした方が正確かと思います。
  368. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 総理、ですから、特定財源に手をつけていったらこれはなかなか複雑になってくると思う、もう難しくて。だから私どもも、特定財源には手をつけなさるな、そして石油諸税三兆二千億の中のいわゆる税抜きの方のそちらへだけ、言うならば二千億の方だけは課税はよろしいですよ、三兆二千億の税にかける一千億、それだけはやめなさい、こういうことを言っているんですから、この辺は総理、この辺で明確にそういう方向でもって対処をいたしますというぐらいの御答弁をいただきたいです。
  369. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今、田村大臣からお答えがありましたように、私もきょうこの委員会に出なきゃなりません。したがって、四時間ぐらい今までの、リクルートを除いてでございますけれども、本体の仕事の整理をけさ四時ごろからやらしていただきました。田村大臣がお答えのニュアンスで、本当に間もなく結論が出るのではないかという期待をしておるところでございます。
  370. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 じゃ、先ほどから言っているように、私たちが希望しているような方向でこれは結論が出るんだという、そういう認識をしてこの問題は終わっておきたいと思います。  せっかくの機会ですから、通産大臣、これは大臣でなくてもよろしいんですけれども、石油の備蓄、これはもう十年前から私、百日というときから、もうふやしません、そんなことでいいのかと言ったら、翌年になったら百十日になって、もうふやしませんで、何だかんだ言って今は百五十日になったわけです。  それで、これから先、アメリカなり西ドイツと比べて現状はどういうことになっているのか、それでもうふやさないでいいのかどうなのか、これは現状と将来展望で、そこのところだけお聞きしたいです。
  371. 鎌田吉郎

    政府委員(鎌田吉郎君) まず、日本の石油備蓄の水準でございますが、現在IEA、これは国際エネルギー機関でございますが、この加盟国平均が百六十二日でございます。それに対しまして日本は、これはIEAの計算方式でございまして、現在日本で使っている備蓄日数より若干少な目に出ますが、百二十九日ということでございまして、百六十二日の平均に対しまして百二十九日ということでございます。  こういった状況でございますが、私どもとしては、石油備蓄は、御案内のとおり、我が国のエネルギー供給構造の脆弱性を踏まえますとエネルギー安全保障上の最重要施策でございます。そういったことで、本年度末三千万キロリットルを目標に国家備蓄の増強を図ってきているところでございます。  こういうことでございますが、今後、一九九〇年代に入りますと石油供給の不安定化が再度予想されるわけでございます。そういった中で、石油備蓄の重要性は今後一層増大する。それから、先ほど申し上げましたように国際的な比較もございます。そういったこともございまして、実は昨年の十一月に総合エネルギー調査会の御答申をいただきまして、国家備蓄を一九九〇年代の半ばまでに五千万キロリットルまで増強することとするという方針を固めている次第でございます。通産省としましては、この方針に沿いまして今後とも石油備蓄政策を推進してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  372. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 石油は、私が言うまでもなく、エネルギーの中で大変大事なことなんですから、そういう点で、将来どういう事態が起きるかわからないだけに、やはり考えて備蓄は進めていただきたいと思います。  次に、これは衆議院でもって、最後の段階で修正追加されました税制改革法案第十七条三項の問題で、その解釈で確認をさせていただきたいと思うんです。  この十七条三項というものの文章は、もう読み上げなくてもおわかりだと思うんですけれども、「消費税の中小事業者の事務負担等に配慮した諸措置については、納税者の事務負担、消費税の円滑かつ適正な転嫁の実現の状況、納税者の税負担の公平の確保の必要性等を踏まえ、消費税の仕組みの定着状況等を勘案しつつ、その見直しを行うものとする」と、こうなっているわけなんです。  ここでお聞きしたいのは、このままの条文でこの法律がひとり歩きを始めましたときには、見直しの対象というのが中小企業に関するものに限られるという解釈をされるおそれがあるわけなのでございます。この際、修正交渉のいきさつにかんがみ、この条文は、ひとり中小事業者向けの措置のみを指すのではなく、事業者全体に配慮した措置も当然含まれているんだということを総理にぜひ御確認していただきたいと思うんです。
  373. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 衆議院本会議におきますところの修正によって追加されました税制改革法の十七条第三項、これはまさに今お読みになったとおりでございます。対象となる諸措置には、免税点制度とか簡易課税制度等のほかに、全体としての事務負担に配慮した帳簿方式などの措置、これらも含まれるのではないかというふうに受けとめております。  いずれにしましても、当該条項に規定されておりますように、消費税のまさに定着状況等を踏まえまして全体的に対応すべきものであるという基本的な認識でございます。
  374. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 じゃ、今私申し上げたように、事業者全体を配慮して措置していくんだという理解をしていきたいと思います。  次には、消費税の転嫁が困難な事業者に対する納付義務の免除に関する特別措置の創設について提言をしたいと思うんです。  消費税が導入された場合、ある業界や業種によっては、事業者が転嫁について万全の努力を行ってもどうしても転嫁できないものが出てくることはほぼ確実であると思われるんです。転嫁できない消費税は本来消費税ではないのでありますし、これは納税義務を免除するのが理論的には当然必要なものであると考えますけれども総理のお考えはいかがでしょうか。
  375. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 消費税そのものは転嫁を前提としたものである、こういう御指摘でございました。消費税は、物やサービスを販売する事業者を納税義務者として転嫁を通じてまさに消費者に負担を求める間接税であります。御指摘のような転嫁不可能分についての納税義務を免除するという考え方は基本的にとることはできないというふうに言わざるを得ません。このことは現在の物品税等においても同様であるということでございます。  消費税の円滑かつ適正な転嫁の実現を図りますために、税制改革法案におきましては、「消費に広く薄く負担を求める」という消費税の性格をまず明記いたしますとともに、先般の衆議院本会議において、円滑かつ適正な転嫁に関する事業者の義務や必要な施策を講ずるべき国の義務が明確化される議員修正が行われたという経過にあるわけでございます。  政府としましては、この法案におきまして、このような考え方や修正の趣旨を踏まえ、消費税の円滑かつ適正な転嫁が実現できますように、一つには、消費税の性格、仕組み等について消費者や事業者の理解を得るように努める。二番目は、一定の要件のもとで消費税の転嫁方法や表示方法の決定に係る共同行為を認めます暫定的な立法措置を講ずる。それから三つ目には、転嫁の円滑化のために、下請企業等に対します不当な買いたたき等の防止に努めますとともに、転嫁に関する指導、相談、PR、転嫁力を強化するための需要開拓施策等に係ります予算措置を含めて所要の措置を講ずるなど、関係省庁と緊密な連絡をとりつつ最大限の努力を払うという考え方でございます。
  376. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 総理の今の段階の御答弁はそういうことだと思うんですけれども、今度は、将来、今私が言ったような事態が起きたときに、そのときは検討していただくということはお約束できますか。
  377. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 免除措置ということをあらかじめ前提に置いて検討するというのは性格上非常に困難な問題であろうと思います。  今、柳澤委員おっしゃったのは、そうした問題が生じた場合、絶えず税制というものはこれを正確に眺めて対応しなけりゃならぬという趣旨であるといたしますならば、私もそのとおりだと申し上げて結構だと思います。
  378. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 もう一つ総理、さらに難しいことをお聞きするわけですけれども、転嫁できない、それでそういうふうな事業者は消費税の納付義務を免除していただきたいと言ったらそういう答弁があったわけですけれども、将来それは検討していただくことにして、そういう事業者ができた場合に、今まで納付しておった消費税、その後もう転嫁できないような状態になったときには既に納めておいた消費税についても還付をするぐらいの特別措置をお考えいただきたいと思うんですけれども、その辺はいかがですか。
  379. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 総理から申し述べられましたように、間接税であるこの消費税につきまして、転嫁ができなかったときにそれを免除する、あるいは今御指摘のような、それを還付するということは、消費税、間接税の性格になじまないものであろうかと思われます。  しかし、消費税、間接税というのは消費者への転嫁を予定している税でございます。そうした円滑な転嫁が期待されるものでございますから、今後、この消費税の定着状況等を見ながら、先ほど御指摘のございました中小企業面から見たもろもろの諸措置とともにその帳簿方式、さらには先ほど総理から、全体としてこれは対処すべきものとされたお答えがあったわけでございます。そうした中で転嫁が無理なく行われるような税制に極力整備をしてまいるということではないかと思うわけでございます。
  380. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 総理、ここのところは消費税全般にわたってもう少し議論していくと、転嫁できる場合、できない場合、いろいろのことについてわかっていただけると思うんですけれども、きょうは時間がないですからこの程度にいたしますが、実際にこれが決められていって実施に移った場合でも、今言ったような事態が起きることはこれはもう明らかなんですから、そういうときには謙虚に政府の方でも御検討していただくということ、この点だけはどうか心しておいていただきたいと思います。  それから次には、相続税関係で少しお聞きしていきたいんですけれども大蔵省のパンフレットの中の相続税のところを見ますと、小規模宅地の課税特例として、「相続税の課税価格の計算上、通常の評価額からの減額割合を引き上げます」ということになっているわけなんです。それで、これは二百平方メートル以下だというわけです。これは事業用も居住用もすべて適用されるというふうに理解をしてよろしいでしょうか。
  381. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 事業用、居住用いずれでも結構でございます。  ただ、二点申し上げますと、それは合わせて二百平米、とにかく一人の相続税につきまして、案件につきまして二百平米でございます。また居住用、事業用でともに適用はされますが、事業用の方が減額率が高いわけでございます。
  382. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 これは国土庁にお聞きするんですけれども、東京を例にとって、昭和五十年に対して六十三年、本年の土地の価格の値上がりというのはどのくらいになっているのか。商業地と住宅地と分けてお答えいただきたいのです。
  383. 片桐久雄

    政府委員(片桐久雄君) 昭和五十年から六十三年まで十三年間の土地の公示価格の上昇率を累積して計算いたしますと、東京二十三区だけで取り上げますと、商業地が約五・一倍、それから住宅地が約五・二倍というふうになっております。  ただこれは、東京都二十三区が突出して高い上昇率を示しているということでございまして、同じような条件で全国平均で申し上げますと、商業地が二・一倍、それから住宅地が二・三倍という程度でございます。
  384. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 今度は、大蔵省の方にお聞きしていきたいのは、相続税を納めた人たちが、死亡者百人に対して昭和五十年が二・一人、六十一年が六・九人、こうなっている。東京国税局だけだったならば十二人。それで、今度のこの改正でもってやったらこの数字がどのくらいのところに落ちつくんですか。
  385. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 御提案申し上げております案によりまして大ざっぱに推計いたしますと、六・九人というのは三・八人程度になろうかと思います。  また、御指摘の東京管内一二%、百人で十二人でございます。これは七人程度になろうかと見込んでおるところでございます。
  386. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 全国平均ならば二・一倍なり二・三倍ということですから、今度の相続税の引き上げでバランスがとれるけれども、東京だけだったらば五・一倍なり二倍ということですから、この程度の相続税の引き上げだけでは十分じゃないということになると思うんです。  それで問題は、土地の値上がりが一番問題で、また日本経済の秩序を乱しているのもここにあるわけなんで、これは私が言わなくても皆さん御存じのとおりに、昭和六十一年末をもって土地の総価額は日本が千二百六十二兆円、日本の二十五倍の面積を持っているアメリカがわずか五百兆円、異常というか、もうこれは気違いざただと思うんです。  それでお聞きをしたいのは、これも政治の責任であって、早いところ土地基本法をつくって対策を講じてきたならばこういうことにならなくてよかったんじゃないかと思うんです。といって今からでもおそくはないんで、土地基本法をつくって抜本的な対策をおとりいただけるかどうか、お聞きしておきたい。
  387. 内海英男

    国務大臣(内海英男君) 先生御指摘のように、土地対策を強力に推進するためには、土地の公共性、社会性を明確化いたしまして、土地についての共通の国民認識を確立することと、広範な分野にわたる各般の施策を総合的に実施することが必要であると考えております。このため、土地基本法を制定する方向で目下検討を進めているところでございます。  国土庁といたしましては、さきに閣議決定をいたしました総合土地対策要綱を踏まえまして、既に国会に提出されております野党四党の土地基本法案というものも参考にさせていただきまして、現在最終的に整理を行っております。  また、十月から五回にわたりまして国土庁長官の私的諮問機関みたいな形で土地基本法に関する懇談会を開催いたしてまいりました。この十二月十五日に五回目の懇談会を終わりまして、いよいよ取りまとめに今入っておるわけでございまして、各界各層の学識経験者、有識者の方々の御熱心な御議論というものも活発に行われまして、その取りまとめを二十三日ごろに、座長の元法制局長官の林修三先生の方から御報告をいただけることになっております。  それを踏まえまして早急に法制化の準備をいたしまして、法律に盛り込むべき事項あるいは法律制定の意義、こういったものも踏まえまして準備をさしていただいて、次期国会に提出をして御審議いただきたいと、今、努力をいたしておるところでございます。
  388. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 総理、これは本当に深刻な問題で、昨年も春の予算委員会で私取り上げまして、取り上げましてというよりか、もう東京のあちらこちらの人たちから、私が総括質問をやるというのを新聞で見て電話をかけてきたんです。今のように土地が値上がりしたんでは、もう私が死んだら子供たちはとてもじゃないけれども相続税は納められませんと言う。今住んでいる家、土地を売って相続税を納めて、どこかその辺の安アパートにでも住むことになるのかと思うと死ぬこともできませんと言っている。  春の予算委員会で私がこの問題を取り上げたときには、中曽根総理は明確な答弁はしてくれなかったんですが、竹下内閣になって、あの年末の代表質問のときにもう一回私はこれを取り上げてやったんです。それで、当時宮澤大蔵大臣は、御指摘のとおりで、もう五十年以来やっていないから抜本的な改正をいたしますと、来春はとても間に合いませんから秋まで待ってください、そのかわり抜本的なあれをやってさかのぼって適用するように必ずしますと言って、今、案の中にあるわけです。  ですから、私がお願いしたいのは、先ほどから言っているように、二百平方メートル以下のいわゆる普通の庶民の人たちが住んでいるようなそういう生活をしている人たち、この人たちがそういうふうな苦しみをしないで済むようにぜひやっていただきたいと思うんです。だから、そういう点でもって大蔵省の方でもってもし計算しておって、その程度の人たちは心配ありませんということの御返事がいただければ一番いいと思うんですけれども、いかがなものですか。
  389. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 今度の御提案しているものでございますと、課税最低限は六千四百万円になります。一方、二百平米、これを御提案しているのでは五〇%減額、要するに半額に評価する。これは市価の半額ではございませんで、相続税の評価をいたします際の路線価の評価でございますから、これは実際には東京都内でございますともう市価の相当低い水準にあろうかと思いますが、そうしたその路線価の基準をとりました場合におきましても、この六千四百万円の課税最低限、二百平米は評価額を半分に減額する、こういうことからいきますと、平米六十四万円までの土地でございましたら、二百平米の半分減額によって課税最低限でカバーされる。路線価で平米六十四万円でございますと、これは坪でございますと二百万、それはまた今申し上げましたように相続税の路線価の評価というのは市価の数分の一でございますから、そういたしますと坪でございますと四、五百万ぐらいのところまでの評価の取引価格のところはおおむねカバーはされる。二十三区内全部ということはそれはちょっとできかねるかと思いますけれども、都心から十キロ圏から二十キロ圏、このあたりは、二十キロ圏を超えればもちろん大丈夫かと思いますが、十キロ圏内でも相当部分はカバーをされるのではないかと一応見込みは立ててございます。  ただ、御指摘のように、二百平米でございましたらすべて相続税非課税というお考え、これもあるわけでございますが、そうなりますと一平米百万、二百万という土地を二百平米お持ちになっているということ、これはこれでやはり相当な資産の持ち主であろうかと思います。地方におきましては、そうした百万円のものが百平米、二百平米あれば一億、二億でございますから、それは、そこまでいくのはということで五〇%でもって今のようなカバー率でまずまず御理解をいただければと思うわけでございます。
  390. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 主税局長は税金を取ることばかり考えているからああいうふうになっちゃう。  それは総理も、私が予算委員会でもやったりなんかして聞いていたはずだと思うんだけれども、アメリカのニューヨークの住宅地は三万五千円ですという、それはもちろん郊外へ行くけれども。この東京のどこにそんな土地がありますか、あったら教えてくださいと言ったくらいなんだ。ああいう今の答弁が出てくるところがいかに東京の土地というものが異常かということなんで、どうか総理、本当に資産を持っている人はこれは別として、普通の庶民の人たちだったならば相続税なんかを納めないでやっていけるようなそういう政治にしていただきたいと思うんです。その点総理の御見解をお聞きしておきたいんです。
  391. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは私見にわたることになりますが、アメリカの二十五分の一、それから可住地面積、私の個人的勉強でございますけれども、大体八十分の一。そうしますと、五万円であれば二百万までは、人口が半分でございますから、そこまでは経済原則だけからいえば一応成り立つ。が、それ以上に今度は東京という局地的にこれをとらえてみますと、私の島根県などと比べますとまるで体制の違う国家が二つ存在しているんじゃないか、こんな感じを持っておりましたときにできたのが土地特別委員会であり、そして本会議等で御質問をいただいた相続税の問題、それが五十年以来本格改正をやってなかった、しかしそれに間に合わすためにはやっぱりさかのぼることも必要だぞと、こうおっしゃった趣旨に沿って言ったわけでございます。  しかし、今、主税局長は取る側からの立論ではございません。やはり一千万もするところは相当な資産でございます、実際問題として我々の感覚から見ますならば。したがって、可能な相当な部分が、この中で、二百平米以下は対象にならないところへ位置づけができるというのはなかなか苦心をした結果ではないか。承継税制との開きがまだあることも事実でございますが、そういうふうに理解していただきたいものだ、こういうふうに考えております。  基本的な考え方というのは、私と余り変わらぬなというふうに聞いておりました。
  392. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 本当に総理、これはお願いをしておきます。先ほどの主税局長が言っているのは全然けたが違うから、世界じゅうどこへ行ったってこんな土地のところはないんです。  最後に、これは大蔵省の方も総理もお聞きいただいてお答えをいただきたいんですが、この税制改革というものは公平、中立、簡素を基本原則として、一つは、直接税が重いので所得税減税をして直間比率を改正する、それからもう一点は、所得、消費、資産のバランスをとって高齢化時代に備える、こういうことになっているわけです。  ところが、いろいろ資料を調べておりますと、消費税によって入ってくる五兆四千億というお金がどこへ行ってしまうかといえば、その六割強の三兆四千億は間接税の廃止のために使ってしまう、あと四割の二兆一千億ちょっとは地方交付税と消費譲与税で地方公共団体に配分してしまう。これで直間比率が改善されるんですか。大体どのぐらいの比率になるんですか。
  393. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 現在の国の直間比率は七二・二%対二七・八%でございます。今回の改革によりまして、いろいろ御指摘のような配分になってございますが、そうした配分の結果といたしまして、国の場合をとりますとおおむね二対一、六六対三四、この程度の比率に相なろうかと見込んでおります。
  394. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 もう時間ですから、総理、今の税制改革の目的ということと、実際にそういうことになるのかどうなのかというところが私としてもかなり疑問に思っているところで、これは宿題に残しておきますので、また次の機会にやらせていただきたいと思います。  終わります。
  395. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 次に、野末陳平君の質疑を行います。野末君。
  396. 野末陳平

    野末陳平君 税制改革の基本的な方向は私もずっと支持してきているんですけれども、しかし、ここで審議が重なるうちにいろいろな問題があると。いずれにせよ、その問題点は尽きているとは思うんですが、私個人で言うと、いわゆる不公平税制というものに対する切り込みが期待ほどじゃないというのは、これはもうはっきり言えることなんです。それが今回の税制改革に関しての不満の大きな一つです。  それから、消費税についてもいろいろと問題点が出てきていて、弾力的運営なんというのは後から加わったことで、非常にわかりにくくて何のことか見当がつきませんが、それよりも基本的な消費税の仕組み、この仕組みそのものにもやはりまだ納得できないといいますか、果たしてこれで定着するのかどうか非常に不安な点があるんですね。  まず、総理にお伺いしますけれども、不公平ということがしきりに言われまして、この不公平税制をどうしても直さなきゃいかぬというのが一番大きな眼目だったんですけれども、不公平税制と言われる、あるいは不公平感と言いかえてもいいんですが、その中でもいわゆるクロヨンというものが今度の消費税によってどのくらい是正されるのか、その辺の総理の御見解はいかがでしょうか。
  397. 水野勝

    政府委員(水野勝君) クロヨンを端的に前提といたしまして税制改革を仕組むということは、率直に申し上げて難しいところでございます。クロヨンという表現で十把一からげに議論をいたしますと、現行の執行体制の問題にもかかわるわけでございます。執行体制の面につきましては、制度面も含めましていろいろその環境整備に努めておるところでございます。  クロヨンという点につきましての端的な、関係いたしますかどうか別といたしまして、今回の税制改革におきましては、所得の稼得の面に課税をお願いするとともに、所得の消費、処分、所得の支出の面、こちらの面への税につきまして広く薄くお願いするということでございます。所得の稼得の面に仮にクロヨンその他いろいろな問題があるとされましても、そのライフサイクルに応じてでございますが、それは必ず処分され消費に向けられる。その消費につきましては、今回、物につきましては基本的に例外なく三%の御負担をいただくという、そのような税体系全体としての効果はあろうかとも思うわけでございます。
  398. 野末陳平

    野末陳平君 じゃ局長、言葉をかえて再度聞きますが、クロヨンというのは捕捉率の問題でしたね。そうすると、サラリーマンにとってこの消費税は捕捉率の上昇、つまりサラリーマン以外の職業に関する捕捉率の上昇にどのぐらい役立つんですか。
  399. 水野勝

    政府委員(水野勝君) クロヨンと申します厳密な定義は必ずしもはっきりしないわけでございますけれども、それが所得の種類別あるいは業態別、所得水準別での把握にアンバランスがあるという意味におきましては、今回の税制改革がそれを格段に改善するというものが含まれていると言うことはなかなか難しいかと思うわけでございます。ただ、所得税の税率の累進、まだまだ諸外国に比べるとかなりきついわけでございますが、そうしたものが緩和されるというのも、一つの間接的な効果はあろうかと思いますけれども、これが端的にそうした問題の解決に資すると申し上げられるほどのものではなかろうかと思うわけでございます。したがいまして、稼得段階の所得につきましてのいわゆるクロヨン問題というのが、今回の改革の中で改善につき抜本的に前進を見ているということはないかと思うわけでございます。  先ほど私が申し上げましたのは、その所得が、どんな形であれ稼得されたものが消費に向けられる、処分される、その場合におきまして今回は広く薄く御負担をお願いする制度としてそこの点は御提案を申し上げているということを申し上げたところでございます。
  400. 野末陳平

    野末陳平君 いろんなことをお答えになりましたが、サラリーマンにとって所得税の部分はまだいいとしても、いわゆる捕捉率という点でサラリーマンは一〇〇%だった、つまりトーゴーサン、クロヨンですね。それが今回の税制改革全体の中の、なかんずくこの消費税という目玉という部分で一向に捕捉率の上昇にはつながりそうもない、一向にとは言わなかったけれども、上昇につながりそうもないと言われちゃうと、これは何か白けちゃうという気がするんだけれども、どうなんでしょうか。
  401. 竹下登

    国務大臣竹下登君) クロヨンというのは確かに定義はありませんが、幾ばくか情緒的な面もございますが、やはり私も大蔵大臣をしておりました、今もしておりますが、確かに捕捉率、実調率というようなところから本当は議論をしてまいりました。したがって、消費税の導入によってそれは幾ばくか相互牽制、いろいろあるでございましょう、消費の段階におきまして。それが、クロヨンの六が八になりますというようなものではないだろうというふうに思います。消費税そのものは、クロヨンというものが存在しない税制だということは言えるんじゃないかなというふうに思っております。
  402. 野末陳平

    野末陳平君 そうなると、一向に捕捉率というのは変わらない。サラリーマンから見ると相変わらずごまかす人はごまかしてと、こういうことになろうかと思うんですが、そこへこの仕組みがまた非常にアバウトなので二重の問題が出てくると思うんです。  この間もちょっと聞きましたけれども、もう一度説明してください。売り上げが一億円あった業者が、納税義務者ですから、そうすると〇・六%を掛ければいいんですから、納めるべき消費税は六十万ですね。ここまではいいんです。しかし転嫁を完全に行う。だって政府が転嫁をしろ転嫁をしろと言ってサポートするぐらいですから、その業者は転嫁を確実に行う。そうすると、一億の売り上げに対して三百万円ですから、三百万円というものは転嫁による消費税でお客様からいただける。いただけるが、しかし納めるのは六十万円である。さて、この二百四十万はどういうふうに解釈しますか。
  403. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 御指摘の例は、全く仕入れがない、すべてマンパワーでやっておられるというようなケースでございますとそういう結果は出てまいろうかと思うわけでございますが、全体としての業種を平均いたしました付加価値率と申しますか、マージン率と申しますか、それは一七%程度でございますので、本来は二〇%でそれよりはちょっと上回っておる。そういうことからいたしますと、極端に御指摘の仕入れゼロのようなケースは、計算上はそうなりますが、経済取引全体としての中ではこうした現象というのは小さなウエートのものでなかろうかと思うわけでございます。
  404. 野末陳平

    野末陳平君 まさにそのとおりでして、今のは二百四十万円が全部浮いて、預かった消費税が懐に入ると言っているんじゃないんですよ。しかし、この〇・六%を掛けるというのが、そもそも小売の場合だったらみなしですから、このみなしが一億の売り上げに対しては八千万円であると、いろんな仕入れがありますが。八千万円であるという人は数字が合いますよね。だけれども、そこから上、そこから下という部分を全部みなしでやってしまいますとどういう問題が起きるかということを聞いているんです。  ですから、完全に転嫁して三百万円を預かります、さて、それで六十万円を納めます、その間のいわゆる乖離ですね。これは業種あるいは業者によって若干の違いはあるものの、納めなくて済んでしまうというお金になりますね。
  405. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 先ほども御答弁申し上げたところでございますが、消費税の導入によりまして、原則としては三%値上げをしていただきたい、転嫁していただきたい。その中で免税点業者、限界控除の適用を受ける人、簡易課税の人、こうした人たちは、三%は原則でございますから、三%値上げされてもあえてそこは不当であるというふうに申し上げることはないのではないか。しかし、その三%をお上げになるのか、仮にその方の仕入れが八割でなくて六割であり四割であるという場合には、丸々転嫁しなくてもその方がめり込んで御負担をされるということはない。  とすれば、事業者としてももろもろの値つけ政策は考えられるわけでございまして、そこは、その事業者の御判断で三百万まるまる転嫁されるのではなくて、その相当部分を消費者に還元されるということもあり得るわけでございまして、税制といたしましては、そこまで必ず三%は限界控除適用者でもしてくださいとか、あなたは六十万円までですよということは申し上げない。そこはその方の政策にお任せをしている。  しかし、そこがあいまいではないかという御指摘はございますが、その部分は経済取引の中では小さな部分でございますので、あえて小規模事業者につきましては新しい税をお願いするところから、その点につきましては、そうした仕組みをお願いして、ある程度の精緻さの点は、御指摘の御批判に当たっては、その点は御理解を賜りたいということで御提案しておるところでございます。
  406. 野末陳平

    野末陳平君 ですから、三%転嫁しなくてもいいんですよ、あなたの業務内容によってもっと低くてもいいし、しかし三%でももちろんいいんですよと、こういうことになっていますから、それだったら三%転嫁できるような自信のある業界だったら当然しますよね。消費者は三%は消費税だからと納める。結果的には取り過ぎちゃう、もらい過ぎちゃう、預かり過ぎちゃう。ここを初めから認めているという仕組みなんですよ。  そうすると、それはそれでいいんだ、業者はもうけてもいいんだというならば、業者にとっては非常にありがたい理屈だけれども、納める消費者にとっては業者のもうけのために三%の負担をしたのでなくて、税金だと思って負担している。その税金が一部は業者の懐に合法的に入る、これを許すことになりますでしょう、今のお答えは。そこが気になって、そんなことがわかってきたら非常にごたごたするだろうと思うんですけれども、そういう心配は全然していないですか。
  407. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 消費税ではございましても、事業者に納税義務者になっていただいて、転嫁をし申告をし納付をしていただくという事務をお願いしておるわけでございます。単に事務的に処理できるというものではなくて、その転嫁のためにはやはり相当な御尽力も営業上いただくわけでございます。そうした面の御負担をお願いする、そのいわばコストとしての面もあろうかと思うわけでございます。  そうした点も踏まえまして、その点は、制度を仕組むときにはそこまでの精密さをお願いするのは控えたということでございます。別に懐に入れてくださいということではございませんが、そこはあくまで納税につきましての御協力のいわば結果といたしまして、あえて国に納めていただくことは結構でございますとしたところでございます。
  408. 野末陳平

    野末陳平君 わかりました。  そうすると、コストかもしれないし、あるいは御苦労賃かもしれないが、それは今度は所得なんでしょう。所得税の対象にその部分はなるということですか。だけれども、一方消費税として預かっているんですから、必ずしもそういう申告にはならないんじゃないですか。そこがあいまいでちょっと僕はわからないんですけれども
  409. 水野勝

    政府委員(水野勝君) ぎりぎり申し上げれば、そこは預かり金でございまして、もう永久にその方が預かり金として置いておかれるということであれば所得にはなりませんが、まさに簡便に計算をされようとする事業者でございますと、それはもう収入金額に計上されると思います。したがいまして、個人の場合には所得税、法人の場合にはその分は法人税の課税対象になろうかと思うわけでございます。
  410. 野末陳平

    野末陳平君 とにかく、この簡易税額というのが業者への配慮が過ぎて、結果的に消費者にとってはあいまいな不公正な税金になっているという面が非常に気になるわけです。それは大蔵省総理もある程度お認めなんだろうと思うんですけれども、これは今、反対する業界、業者は転嫁ができないんだできないんだの一点張りですが、そんなことはないと思うんです。かなりいろんな転嫁を考えると思うんです。    〔委員長退席、理事斎藤十朗君着席〕 そうすると、転嫁を考えてくれば、今言ったように業者の懐が幾らかでも得になるような面も当然ある。  それから、みなしの〇・六%を掛ける、あるいは〇・三%を掛ける。小売、卸というのは今言ったようにアバウトですから、それ以下の仕入れ、つまりサービス業などは仕入れはそんなにかかっていないとか、そういうところへいくと、ますます今言ったようにうまみが出てくる、まじめにやればやるほどうまみが出てくる。  こういうことで、この仕組みに気がつきますと、僕が思うには、業者は今反対しているけれども、わかってきたらこれは悪用して、結果的に仕入れの部分をたたいてくればますます得するし、結果的にいろんなまた弊害が出てくるんじゃないか。  この簡易税額というのは、限界控除方式も含めて非常にまずいという気がするんですけれども、いかがでしょうか、そこら辺は。
  411. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 現在、いろいろな局面で御説明し、お願いをするときには、まさに転嫁が非常に難しいのではないかという声が圧倒的に多いわけでございまして、そのためには全力を挙げて御支援申し上げるということにしているわけでございます。  御指摘のように、転嫁は割合簡単で、中くらい、小規模の事業者でもそこは大丈夫だということになりますれば、まさにこの税制の定着状況を見て見直すという衆議院の修正をいただいたところでございますので、その点が際立った問題になる。  また、先ほど申し上げたように、この部分はシェアはわずかなものでございますから、経済を大きく混乱させるということはないと思いますが、その点が大きな問題として取り上げられるというようなそうした事態におきましては、この見直し規定、先ほど総理からも申し述べられました、全体として見直すということで、そうした中で対処されるものと思いますが、現時点におきましては、とにかくこの新税が円滑適正に転嫁されるということが確保される、それが混乱なく定着するというのがまずは最大の急務と考えられますので、そこのところはぜひこれで出発をさせていただいて御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  412. 野末陳平

    野末陳平君 それは定着してもらわなきゃ困るんですけれども、何しろ五億円以下の簡易税額を選ぶであろう、あるいは選べる業者はもう九十何%もいるということになると、まさしくその人たちの問題になりますので、これは非常に消費者にとってもはっきりしない税金だな、負担して業者に預けたはずなんだけど、そこから先が全くわからないような税金。  それからもう一つは、この間もちょっと言ったんですけれども、やっぱりこれは限界控除方式も含め、それから簡易税額方式も含め、帳簿方式も含め、売り上げというものが常に正確であるという前提に立っていますからね。そうすると、この売り上げは所得税、法人税の方で調査をして、そこでチェックが働く部分もあるとは思いますが、そもそもこの売り上げに基づいて計算される消費税というのは、正確だと信用できるのかというと、やっぱり売り上げをかなりいろいろと細工することによって消費税はさらにまた細工される。不公正というか不公平というか、二つ出てくると思うんですね、今みたいに。それがやっぱり欠陥だ。やはり税額票とかインボイスとか、何かきちっとしたものがあってこそ消費者にも業者にも、別に相互牽制がどうということでなくて、はっきり税の名がわかるということが大事なんじゃないか、この消費税は、というふうに考えているんです。  ですから、欠陥あるがゆえに、どうもこの消費税はうまくいくだろう、すぐ定着するだろうというふうには思えない、そういう不安を強く感じているんですが、最後に総理にお答えをいただいて、終わります。
  413. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 実際問題として、こういう帳簿方式そのものは、本当は売上税がだめになったときからくる一つの反省から仕組んだ形であります。基本的に幾ばくかの精緻さを欠くものでございますから、その精緻さを欠くということは認めた上でお願いをした税制であるわけでございます。  しかし、例えば、私が七つの懸念とか八つの懸念とか申しましたが、それらは説明して理解をしていただく問題。ところが、この問題は説明して理解していただくよりも、やはり我が国になじみの少ない初めての税制でありますから、多少の精緻さは欠くということそのものを理解してもらう、こういうちょっと変わった理解なんですね、これは。そのことを私は十分感じながらも、しかし、これが定着するまでの間この方式というのは、最初申しましたように、売上税の反省からきたものでございますが、今の時点で、まずひたすら理解を求めていくしかないのかなと、こういう感じでおることは事実でございます。
  414. 斎藤十朗

    ○理事(斎藤十朗君) 次に、喜屋武眞榮君の質疑を行います。喜屋武君。
  415. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 総理だけおいじめして申しわけありませんが、ひとつ忍の心で我慢してください。  私は、前回リクルート問題を中心として文教行政、それから政治資金の基本的なあり方、政治倫理等についてお尋ねしたわけですが、その後リクルート問題は、宮澤大蔵大臣の辞任、さらにはNTT会長の辞任、NTT会長のリクルートコスモス株譲渡益の政治家工作資金活用など芋づる式に果てしない広がりを見せており、一般庶民にとって新たな憤りを招いておる、これが私は実情だと思います。  そして、今ちまたに、かつてのロッキード事件のころは構造汚職という言葉がはやりましたね。ところが、このリクルート事件をめぐって多目的汚職と、こういう言葉が私の耳に入ります。ところが残念なことに、政府は、宮澤大蔵大臣辞任リクルート疑惑解明はもう終結したんだと、こう位置づけて、次なる目標としての、国民に税負担の大きな変更をもたらす税制改革法案の成立に、竹下総理はもうそれこそ執念を燃やしておられると私には見受けられます。  ところで、リクルート疑惑は国民に大きな不公平感を植えつけたものであり、その不公平感等を解消してから税制改革を進めるべきである。これだけの国民の疑惑を招き、しかも、特権的地位にある一部の政治家や官界の指導者が楽々と巨額な利益を得たリクルート疑惑の解明について、総理の御決意のほどと、今後の方針を国民の前に明らかにしていただきたいというのが私の第一の質問であります。
  416. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私は、私なりに四つの点についてこのことを整理さしていただいてまいりました。  一つは、申すまでもなく証取法上の問題でございます。二つ目には、これは税法上の問題でございます。三つ目には、刑法上の問題であります。四つ目には、いわゆる政治道義の問題であります。  したがって、こういう問題が起きました、それはやっぱり証券取引法上の問題が、今、喜屋武委員おっしゃいましたように、特定の者にのみ非公開株等が渡っていくというようなことに対しての、いわば環境を整備しなければならぬということであろうと思うわけでございます。したがって、確かに株式市場というのは、これはニューヨークを超しました、東京が。それは本当に急激な発展を遂げた。それに法律の整備がついていかなかったところがあろうかと思います。したがって、専門家の皆さん方でありますいわゆる証取審にお願いをいたしまして、これらの問題は早急に結論を出していただいてまずひとつ対応していこうと。  それから、二番目の税法上の問題でございますが、これは有価証券譲渡益課税ということで、本当に昭和二十五年のときには御案内のように原則課税でございましたが、昭和二十八年原則非課税になり今日に至っておる問題でございます。    〔理事斎藤十朗君退席、委員長着席〕 これを政府としては原則課税という原則からしてお願いをしたが、さらに修正等が行われまして、課税強化の修正が行われたわけでございます。しかし、これを本格的にやるためには、いわゆる総合課税への問題等というものが今後の検討課題として残っておることは事実でございます。そこには納税者番号というような問題も当然出てくるわけでございます。  刑法上の問題につきましては、これは検察当局を信じております。それぞれの情報を収集し、適切な判断のもとに検察で対応される問題だというふうに思っております。  そこで、最後のいわゆる政治家の倫理、道義、そして国民に与えた不公平感、こういうものに対応するためには、究極的には、両院でつくられたそれこそ倫理綱領というものを本当に反復、復唱いたしまして、一人一人がその身を引き締めていかなければなりませんが、それについては、やはりそれらができやすい環境の整備のためには、これは具体的な問題になってまいりますと、公職選挙法上の問題あるいは政治資金規正法上の問題等が出てまいります。これらをきちんと可能な限りの整備をすることによって、そういう不公平感が法律の上でも環境整備という名のもとに整備されていくようなことをしていかなければならない。基本政治家一人一人の心構えにあるということは言うまでもないことでございます。  少し話が長くなりました。
  417. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 一部の特権的な地位にある者が短期間のうちに何千万、何億円といった、いわゆるぬれ手にアワとも言える巨額のキャピタルゲインを得ても、現行制度では原則として非課税ということであるわけです。政府は、所得が平準化してきているので、改革案で税率構造をフラット化し、広く薄く課税する方針を打ち出しておりますが、所得が平準化したというのは目に見える所得であり、陰ではむしろ所得格差が拡大しているというのが実態ではないかと私には思われてなりません。  そこで、総理の言われる所得の平準化とは、総合課税対象の勤労性所得に限定してそれが平準化していると言うのであればわからないわけでもありませんけれども、何をもって総理は所得の平準化が進んでいると言われるのか、お伺いしたい。
  418. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 所得の平準化は、これは私どもの課税所得ベースでもって申し上げているということよりは、例えば経済企画庁の国民生活白書、こういったものの中での家計調査、それから消費実態調査、もろもろの調査の中から出てくるものでございまして、したがいまして、全世帯をとりましてのそうした、例えばジニ係数等をとりますと、これは長期的には戦後一貫して平準化してきているということが述べられているところでございます。  ただ、平準化の動向は、これは景気にも左右されるところでございまして、不況期には不平等化が若干進み、好況期になりますと平準化が進むと、そういう大きな方向はあるようでございますが、大きな流れとしては平準化をしてきている。これは課税にあらわれる所得ということではございませんで、全体としての家計にあらわれます所得の話のようでございます。
  419. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 さらにお尋ねしたい気持ちもありますが、次へ移ります。  今度の改革は、垂直的な公平よりも水平的公平を重視しておると総理はおっしゃるわけですが、課税原則から見た場合、担税力に応じた負担を実現することがより重要であると考えられます。それというのも、垂直的公平は税制面からの所得再配分を達成することとなり、租税民主主義が達成されるからであります。したがって、今回の税率緩和は所得再配分機能を喪失せしめる最たるものと考えられます。特に、地方税の税率は、所得五百万円以上は一律一五%であり、そして二千万を超えると五〇%ということであります。  ところで、五十九年から六十一年にかけて所得税の最高税率は七〇%で、わずか三カ年間で二〇%も引き下げられることになるわけです。最高税率を急激に引き下げることは、税の所得再配分機能を重視する点から軽々しくすべきではないと思いますが、総理の見解はいかがでしょうか。
  420. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに税制の経緯を見てみますと、例えば昭和九年から十一年ということになりますと、間接税が六五、直接税が三五と、こういう時代がありました。そして、シャウプ勧告そのものは今、先生のおっしゃった所得税を中心にした物の考え方でございます。  だが、近代国家の初期の段階は、やはり間接税一本のような感じでございます。特に、初期の社会主義社会は、物の値段の中に共通の経費が入っておりますから、あるいは全部間接税だったとも言えるでございましょう。しかし、そこに富というもののいろいろな変化が出てまいりまして、そこに応能主義である所得税というものが加わってくる。  ところが、昔から五公五民とか四公六民とか、こういうことが言われておりますが、そこで最高税率等からいいまして、努力と報酬の一致の限界に達したときに所得税率というものがいわば可能な限りフラットな形になっていくと、シャウプ勧告のときも最高税率は五五でありまして、刻みは八段階でありました。それが日本のずっと税制の感覚で、私どもが代議士で十四年間ぐらいが十九段階のことがございました。今の米欧の先進国の二段階というところまでにはできませんが、今度の五段階というようなもの、あるいは依然としてまだ五公五民にまではもちろんいかないわけでございますが、この辺が大体日本の税制の推移の中で妥当なところではなかろうかと思います。  しかし、先生のおっしゃった考え方の基本には、恐らく所得税の総合課税という考え方というものもあろうかと思いますが、これは基本的に今後ともいわば維持すべき考えであるというふうに考えております。
  421. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 もう一つお尋ねします。  所得の平準化が進んでいると言われておりますが、資産保有の格差が拡大していることは私は否めないと思います。最近の地価の高騰、株価の異常な上昇などから、これらの資産を持つ者と持たざる者との格差から見ても明白であります。改革案では、地価の高騰などに配慮して相続税の大幅な減税を行うということでありますが、地価の高騰は大都市周辺に限られ、その他の地域ではそれほど地価上昇が見られたわけではないと私思っております。  そこで、相続税については、たまたま祖先や親族に高資産家がある、あるいはその資産を相続によって受け継ぐ僥幸を得るという恵まれた人々と、逆に祖先に資産がなく、受け継ぐべき財産がない人々との格差を是正するものである。今回の相続税の減税により、地価高騰の現象が余り見られなかった地域によっては、かなりの資産を受け継ぐ者も、ほとんど受け継ぐべき資産がない者と同じように相続税を納める必要もなくなった、こういう見方もありますが、相続税に課せられた所得再配分機能が働かない、いわゆる影響しないことになって、税の不公平感を招きかねない。  そこで、相続税について、全国一律に改めるのではなく、地域的な特性を考慮する必要があると考えますが、そのようなことについて総理の御見解を承りたいと思います。
  422. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 確かに相続税は、特に地価との対比で申し上げるとそのような現象はあろうかと思うわけでございますが、とは申し上げても、じゃ地域別に控除額なりを変えるということは、全国一律に適用されるべき相続税としては、そこはなかなか限界があるのではなかろうか。  先ほども、二百平米までは五割減額ですが、本来こうしたものは非課税でもいいということになりますと、大都市と地方では相当な有利さが偏ってくる。そういった点もあって、減額は五割までしたところでございます。  理屈としては、地域別の控除額ということは考えられましても、税制といたしましては、お気持ちはわかりますが、日本で多種多様な地域的控除区分をするということは、やや技術的にもまた税制としても難しいのかなと考えるところでございます。
  423. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今お話しなすっておりました資産の保有、すなわちそれが相続税の問題で御議論がございましたが、私もよく講演等で言っておりましたが、日本のそもそも相続税の思想自体は、先生のおっしゃった思想に近い点があるわけでございます。  西郷南洲児孫のために美田を買わずと、こういうことを僕はよく言って歩いたわけでございますが、いわば教育を受けさす義務とか、そういうところまでは親の責任であると。しかし、親がこの世から卒業した場合は、この世から卒業するという表現はちょっと適切ではございませんが、そうした場合におきまして、残った人に対してはそこまでは親の義務であって、そうしたものは社会に還元さるべきものだというのがいわば相続税の思想であるということは事実でございます。  しかし、税法上において、個々にわたっての地域に控除の特別格差をつけるというのは、これは組み立てが事実上難しい問題である。  しかし一方、今度議論されておりましたのは、中小企業の方が承継税制、その企業をおやじの時代から引き継いだ場合に、事業承継ができるようにしなきゃならぬという問題と、特別に地価の高い地域における二百平米までの方の居住用の問題というようなところに特別の配慮がなされたと、こういうことでございます。
  424. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 もう一問残っているが、あしたに譲ります。  終わります。
  425. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、明日は午前十一時に委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後六時二十七分散会