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1988-12-12 第113回国会 参議院 税制問題等に関する調査特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十二月十二日(月曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  十二月九日     辞任         補欠選任      喜屋武眞榮君     下村  泰君  十二月十日     辞任         補欠選任      小野 清子君     田辺 哲夫君      関口 恵造君     井上 吉夫君      吉井 英勝君     諫山  博君  十二月十二日     辞任         補欠選任      及川 順郎君     塩出 啓典君      諫山  博君     吉井 英勝君      野末 陳平君     秋山  肇君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         梶木 又三君     理 事                 斎藤 十朗君                 林  ゆう君                 平井 卓志君                 降矢 敬義君                 吉村 真事君                 志苫  裕君                 安恒 良一君                 峯山 昭範君                 近藤 忠孝君                 栗林 卓司君     委 員                 井上 吉夫君                 井上  孝君                 板垣  正君                 岩本 政光君                大河原太一郎君                 大木  浩君                 岡部 三郎君                 加藤 武徳君                 久世 公堯君                 後藤 正夫君                 斎藤栄三郎君                 斎藤 文夫君                 下稲葉耕吉君                 田辺 哲夫君                 谷川 寛三君                 仲川 幸男君                 藤井 孝男君                 松浦 孝治君                 村上 正邦君                 森山 眞弓君                 及川 一夫君                 千葉 景子君                 福間 知之君                 矢田部 理君                 山口 哲夫君                 山本 正和君                 太田 淳夫君                 塩出 啓典君                 和田 教美君                 諫山  博君                 橋本  敦君                 吉井 英勝君                 柳澤 錬造君                 秋山  肇君                 下村  泰君    国務大臣        内閣総理大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君        法 務 大 臣  林田悠紀夫君        外 務 大 臣  宇野 宗佑君        文 部 大 臣  中島源太郎君        厚 生 大 臣  藤本 孝雄君        農林水産大臣   佐藤  隆君        通商産業大臣   田村  元君        運 輸 大 臣  石原慎太郎君        郵 政 大 臣  中山 正暉君        労 働 大 臣  中村 太郎君        建 設 大 臣  越智 伊平君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    梶山 静六君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  高鳥  修君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (沖縄開発庁長        官)       粕谷  茂君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  田澤 吉郎君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       中尾 栄一君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       伊藤宗一郎君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  堀内 俊夫君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  内海 英男君    政府委員        内閣官房内閣広        報官室内閣広報        官        兼内閣総理大臣        官房広報室長   高田 朗雄君        内閣法制局長官  味村  治君        内閣法制局第三        部長       津野  修君        公正取引委員会        委員長      梅澤 節男君        公正取引委員会        事務局官房審議        官        糸田 省吾君        総務庁長官官房        審議官        兼内閣審議官   増島 俊之君        総務庁人事局次        長        兼内閣審議官   服藤  収君        総務庁行政管理        局行政情報シス        テム参事官    重富吉之助君        防衛庁参事官   福渡  靖君        防衛庁参事官   鈴木 輝雄君        防衛庁長官官房        長        依田 智治君        防衛施設庁総務        部長       弘法堂 忠君        防衛施設庁建設        部長       田原 敬造君        防衛施設庁労務        部長       吉住 愼吾君        経済企画庁調整        局審議官     長瀬 要石君        経済企画庁国民        生活局長     末木凰太郎君        経済企画庁物価        局長       勝村 坦郎君        経済企画庁総合        計画局審議官   田中  努君        経済企画庁調査        局長       冨金原俊二君        科学技術庁長官        官房審議官    須田 忠義君        国土庁長官官房        長        公文  宏君        国土庁土地局長  片桐 久雄君        法務省刑事局長  根來 泰周君        外務省条約局長  斉藤 邦彦君        外務省国際連合        局長       遠藤  實君        大蔵省主計局次        長        篠沢 恭助君        大蔵省主税局長  水野  勝君        大蔵省証券局長  角谷 正彦君        大蔵省銀行局長  平澤 貞昭君        国税庁次長    伊藤 博行君        厚生大臣官房総        務審議官     末次  彬君        厚生大臣官房老        人保健福祉部長  多田  宏君        厚生省社会局長  小林 功典君        厚生省年金局長  水田  努君        農林水産省経済        局長       塩飽 二郎君        通商産業大臣官        房商務流通審議        官        高橋 達直君        通商産業省産業        政策局長     児玉 幸治君        通商産業省生活        産業局長     岡松壯三郎君        資源エネルギー        庁長官      鎌田 吉郎君        中小企業庁長官  松尾 邦彦君        中小企業庁次長  三上 義忠君        運輸大臣官房審        議官        兼内閣審議官   金田 好生君        運輸省運輸政策        局長       塩田 澄夫君        運輸省地域交通        局長       阿部 雅昭君        郵政省郵務局長  田代  功君        労働大臣官房長  清水 傳雄君        労働大臣官房政        策調査部長    甘粕 啓介君        労働省職業安定        局高齢障害者        対策部長     竹村  毅君        建設大臣官房総        務審議官     木内 啓介君        自治省行政局長  木村  仁君        自治省行政局選        挙部長      浅野大三郎君        自治省財政局長  津田  正君        自治省税務局長  湯浅 利夫君    事務局側        常任委員会専門        員        竹村  晟君        常任委員会専門        員        片岡 定彦君        常任委員会専門        員        保家 茂彰君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○税制改革法案内閣提出衆議院送付) ○所得税法等の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○消費税法案内閣提出衆議院送付) ○地方税法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○消費譲与税法案内閣提出衆議院送付) ○地方交付税法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 梶木又三

    委員長梶木又三君) ただいまから税制問題等に関する調査特別委員会を開会いたします。  税制改革法案所得税法等の一部を改正する法律案消費税法案地方税法の一部を改正する法律案消費譲与税法案及び地方交付税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  右六案につきましては、既に趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。志苫裕君。
  3. 志苫裕

    志苫裕君 宮澤大蔵大臣辞任は、国会国民食言を繰り返した責任をとったのは当然のことでありますが、税制法案を成立させるために身を引いたという弁解は引かれ者の小うたのようでありまして、決して国民を納得させるものではありません。私は、宮澤氏に政治家として廉潔の心があれば、政治倫理に反したことの責任をとり、幾らかでもリクルート疑惑解明に寄与する形でやめてほしかった。宮澤さんは最後釈明あかしを立てるかわりに辞任しましたが、そのことによって疑惑解明は進みませんでした。言いかえると、辞任することで疑惑解明にふたをしたわけであります。宮澤さんは結局腐敗共同体から足を抜くことができなかったわけであります。現に永田町では、宮澤の首でリクルートは一件落着、税法は上がりとささやかれておりまして、国会理性から古臭い情緒の世界に変身しようとしている。国民にとってこれほどおぞましいことはない。  総理は、宮澤さんの責任をどのように受けとめられておりますか。まさか大井夫人ではあるまいし、リクルート追及はこれまでにいたしとうございまするというわけにいかぬです。いかがですか。
  4. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず最初に、宮澤蔵相辞任に伴いまして私が、行政組織法第五条でございますか、みずから大蔵大臣の職に当たることといたしました。当面の課題であります税制改革法の成立に全力を尽くしますとともに、財政金融の任に万全を期する考えでございますので、初めに心からよろしくお願いをいたします。  さて、ただいまの質問でございます。  宮澤蔵相は、リクルート問題に秘書官が関係をし、これについての国会での説明が的確でなかったことに深く責任を感じており、参議院での税制改革審議に当たってみずからが障害となってはいけないと、その責任を明らかにするために辞任されたというふうに私は理解をいたしております。したがって、御信頼申し上げて大蔵大臣をお願いしておった私でございます、そのお考えを御信頼申し上げて、素直に辞表をお受けいたした次第であります。  宮澤蔵相は、今次税制改革責任者として、二年有余にわたりましてその職にあって努力を傾けてこられました。この志を受けまして、私にも考えがなかったわけでもございませんけれども、やはり内閣一体責任法案を御提出申し上げましたその最高責任者は私でございますので、私がその任に当たることにいたした次第でございます。今お言葉にありましたが、理性から情緒へというようなことでなく、私は、志苫委員の御指摘もそのまま素直に理解しながら、その任に当たりたいと考えております。
  5. 志苫裕

    志苫裕君 今もお話がありましたが、宮澤さんは総理信頼をした副総理大蔵大臣でありましたが、その者が疑惑にまみれ国会国民食言を繰り返して不信を招いた、内閣の信用も台なしにした、こういうときに総理、あなた自身は表立って何もしなかったように見えました。解任ではなくて熟柿が落ちるように辞任を待った。これも竹下流というのでしょうか。国民は、副総理辞任竹下総理にも責任なしとはしていません。マスコミの世論調査が底なしの内閣支持率を示すのもわけあってのことだ、こう思いますが、いかがですか。
  6. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず、だれに一番責任があるかと申しますと、やはり国会で指名していただいて内閣を組織しておるその長たる私自身に、責任世論調査の動向をも含め私自身に帰するものであるというふうに考えておるところでございます。したがいまして、今、責任において提案いたしたものの御審議に当たり、誠心誠意その御質疑等お答えをしていくことが私に課せられた使命であると考えております。
  7. 志苫裕

    志苫裕君 そう往生際の悪いことを言われても私は困るのでありまして、竹下内閣発足以来もう既に二人の閣僚と、二人でしたか与党常任委員長が更迭されているでしょう。二人の閣僚に二人の与党常任委員長でしょう。そこへもってきて副総理辞任、不祥事、こうなるんですから、これは紛れもなく内閣として責めを負うべきもので、税法の方は税法の方で国会がしかるべく始末しますから、それこそ総辞職解散というのが責任とりようじゃございませんか。
  8. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 憲法六十九条の定めによりまして総辞職とか解散というような責任のとり方も私は理論上よく承知しておるところでございます。しかし、今日私が考えておりますことは、長年にわたって御議論をいただいた税制改革そのもの環境が熟しておる今日、この与えられた任期を大事に大事にしながら国会の御審議に当たっていくというのが、私に課せられた責任であると考えております。
  9. 志苫裕

    志苫裕君 ところで、宮澤さんの最後釈明あかしとして求められておりましたのは、総理も御存じのように、コスモス株の購入及び売却に関する金の流れを証明する記録でありましたが、ついに提出されませんでした。辞任してまで記録提出を拒んだ理由は何でしょうね。私は、その記録宮澤さんの釈明をみずから覆すものであったばかりではない、ほかに及ぼす影響が大きいからであった、こう容易に推定できます。  ということは、共同体の仲間である総理、あなたも安全じゃないということでしてね、青木秘書そして青木秘書を介したとされる福田氏のコスモス株売買に関する約定資金流れなどを証明する記録、これをあなたも進んで提出されてしかるべし。いかがですか。
  10. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私の周辺におきますところのリクルートコスモス株取引、これは今御指摘があったとおりであります。私がこれに関知したものでないということにあるといたしましても、周辺で行われた行為に対してはまことに残念であり反省すべき問題である、このように考えております。  そこで、これらの取引に関する物証につきましては、実は衆議院におきまして坂上委員の御質問にもお答えをいたしたことがございます。例えば銀行口座等個人的になら、お示しすることは、信頼関係にあるお互い同僚としてできぬことではないと思います。しかしながら、やはりこういう経済社会におきまして、国会一つ一つ私経済行為物証提出することがいいか悪いかということは、私なりに判断をいたしかねますので、これはむしろ国会で御相談していただく問題ではなかろうかなというふうに思っておるところでございます。  したがって、公の場に示すかどうかという問題については、私個人意見は控えさせていただきますが、いわゆる株式売買約定書でございますとかあるいは金の出とか入りでございますとか、そういうものに対して資料というようなものがないわけではもちろんございません。
  11. 志苫裕

    志苫裕君 あることはわかりましたが、それはあなたは出せない、国会で相談してくれ、こういうことなんですが、私経済取引だという認識が少し違うんでして、今まさに民主主義の威信さえも問われて、挙げて解明に乗り出しておる、国民が注視のもとで、私経済もさることながら、本当にこの国の行く末まで心配しておるという状況のときですから、総理私経済と言いますが、身内のことですから、いや、うちの身内はこうだといってお示しになることは何もそういう取引関係の邪魔になるものでもない、市場を混乱させることでもないでしょう。これはひとつあなた、いろいろ今話がありました、おありになるんですから、これはやっぱりお出しになるようにしてください。
  12. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私は、信頼関係のある皆さん方個人的にお示しすることに何ら抵抗を感ずるものではございませんが、その辺は皆さん方の方で御判断いただければ、私も意見を述べる機会があれば述べましょうし、それに従うことに決してやぶさかではございません。
  13. 志苫裕

    志苫裕君 今のお話を伺っておきまして委員会でも相談しますが、ただ、個人ではなくて国民が知りたがっているんですね。そのことだけは指摘をしておきましょう。  前政権ですが、一つ政権の中枢をシラミつぶしのように、一万株、言いかえれば数千万だ、こういうものを配るというのは例のないことですよね。ロッキードのような古典的なタイプの汚職とはちょっと違いまして、税法、証取法、政治資金規正法、そういったものの抜け穴をちゃんとうまく使ったやり口でありますだけに、再発防止のためにはこの事件の解明がどうしても不可欠だということになってくるわけでして、政府与党がこれを妨げることは大変遺憾なことだ。自分自身も含めて、この政治の浄化というようなものに禍根を残すことになるということだけは強く主張をしておきましょう。  ところで、竹下総理は、何か臨調方式による政治改革というようなものを提唱しておるようですね。国会自浄力を放棄して、この疑惑追及とか金権腐敗政治に対する国民の批判をかわすような手法。よくやるんだね、立場に窮したやつがこういうやり方を。ですから、私先ほど言いましたように、そっちの方に目を向けようというんじゃなくて、総理はまず進んで身内から洗う、行政府機能を発揮する、こういう形で解明に当たる。また、国会政治倫理審査会機能するように、これは党総裁としても采配を振るってもらわぬといかぬ、こう思うんですが、いかがですか。
  14. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 国会政治倫理審査会機能するようにということについては、私も国会に身を置く一人でございますので、それが一番大事なことであるというふうに私自身考えておるところでございます。私が政治改革ということを申し上げておりますのは、確かに行政改革あるいは財政改革あるいは教育改革税制改革と、そういうもののやっぱりベースには政治改革というものが一番必要ではないかということを私自身が一番よく今承知しておるつもりでございます。  さて、しかしながらその政治改革というのは、確かに長い間いろいろお互い議論をしてまいりましたが、一体それが行われる環境をどうしてつくるかということになると、今いみじくもおっしゃいましたまずは自浄能力の問題でございますが、その自浄能力を発揮するためにもいろいろな法律整備等環境整備が必要であろうと思います。  したがって、私は公職選挙法そのものに起因する問題あるいは政治資金規正法そのものの出と入りの問題、それから政治倫理審査会機能につきましてもまだ議論する点があるではなかろうか。したがって、行政府はもとよりでありますが、私も国会議員の一人としてその位置づけをして、言わしていただきますならば、国会全体の問題としてもこれに取り組まなければならない緊急な事態であるというふうに考えておるところでございます。
  15. 志苫裕

    志苫裕君 ロッキードの後にもこういうたぐいの、目をそらす、目をそらしてまとめたものは実行せずという前例もあるので、私は余り感心しない。しかし、この問題はいずれ我々の方でも必要なものは提起をしたいと思っています。  そこで、ちょっと総理の方を離れますが、リクルート関連一つ二つお伺いしておきましょう。  社会党のリクルート調査委員会は十日、ワールドサービス社コースと推認される還流株譲渡先を発表しました。この中にはコスモス社役員三人で合計十万株が含まれております。この売買が、特別利害関係人売買を禁じた証券業協会自主ルール違反に当たることは明白ですが、不思議なことに、同社の有価証券報告書によりますと、六十一年四月から六十二年四月までの間にこの三名の株式保有数には変動が余りありません。したがって、還流株十万株の行方が不明なんであります。これはエターナルフォーチュンのコース松原弘氏の例もあるので、この行方に重大な疑惑を我々は持っています。  そこで、もしこの株を彼らが保有しているのであれば有価証券報告書虚偽記載に当たりますね。そうではなくて期間中に売買したんだということになりますと、その売買にかかわる課税の関係とか、そういう問題が適切であるかどうかという問題が生じてまいりますが、大蔵省、これほどの騒ぎになっている問題ですから、恐らくこういう問題はもう既に調査などをしているんじゃないかと思うんですが、どうですかな。
  16. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) 先般、証券業協会中間報告で申し上げましたように、リクルートコスモス社役員十数名がいわゆる還流先と言われるところからどうも株式を取得している模様がある。これは今、先生御指摘のように、証券業協会ルールに違反する行為であるというふうに思われるわけでございますが、他方、今御指摘のように、有価証券報告書上、こういった株式の所有についてはどうも記載がない模様でございます。そういった問題につきましては、私ども現在事実関係調査いたしておるわけでございます。調査の結果を踏まえて、もし仮に持っていて記載していないとしますと記載漏れがあるということでございますので、そういったことにつきまして適切な対応をしてまいりたいというふうに考えているわけでございます。  いずれにしても、現在調査に着手しているということでございます。
  17. 志苫裕

    志苫裕君 それじゃ、調査に着手したというふうに理解をしていいですね。
  18. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) さようでございます。
  19. 志苫裕

    志苫裕君 いずれそのことは報告を求めましょう。  検察庁、あなたの方もそういうことは抜かりなくもう調べているのだと思うんですが、何か感触を聞かせてくれませんかな。
  20. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 東京地検では、いわゆるリクルートコスモスの非公開株式の譲渡についての事実関係に関して多角的に調査中であり、その上で犯罪の嫌疑があるかどうかについて検討するとしておるところでございます。  いまだいずこに焦点を置いているか申し上げる段階ではございませんけれども、御指摘の事実については御指摘として十分念頭に置いているものと思います。
  21. 志苫裕

    志苫裕君 どうも検察庁、根來刑事局長の答弁は、一遍原稿に書いてあるといつでも同じだね。  ところで、江副証言でも問題になったのですが、例をとりますよ、ワールドサービスが江副氏の申し出で割り当て二十万株をリクルート側に売り戻した、手続は、ファイナンス社から一株三千円で購入代金六億円の払い込みがあったから株券を一括してファイナンス社に渡した。というと、買ったのはファイナンス社、売ったのはワールドサービス、こうなりますね。もちろん有取税もそのとき払ったとこう言うんですね、ワールド側が。そのファイナンスからさらに二十四名に対して細かくこう譲渡をされていったというのが実態なのですが、この場合に言う売り手であるファイナンス社、これは今度は売り手になっていますから、当然有取税などを納めなければならない立場にある。流通税というのはそういうものだとこう思うんですが、これはどうなんでしょうね、大蔵省、そのようになっていますか。江副証言ですと、いやそうじゃないので、おれのところは仲介しただけだ、売りと買いは、その割り当て先とそこからまた隣へ行った小口に分けたものとの売り買いだから課税関係はそっちの方だと、こういう言い方をしているんです。  ところが、きのうの一部の報道にありますように、売買契約はやっぱりワールドサービスとファイナンス社の売買契約になっているという報道がございました。そうなりますと、ファイナンス社から小口に分かれていった譲渡先との関係は当然また次の売買になる、これはこう理解していいんですね、証券局長。どうもここのところは、あなたのところはいつもはっきりさせていないので困っているんだ、これ。
  22. 角谷正彦

    政府委員角谷正彦君) 有価証券取引税の課税関係について私どもはちょっと承知しておりません。
  23. 志苫裕

    志苫裕君 国税、どう。
  24. 伊藤博行

    政府委員伊藤博行君) 有価証券取引税の納税義務者につきましては、有価証券を譲渡した者ということに相なっております。これは自己の計算において有価証券の譲渡をした者というふうに理解しておりますけれども、先生がおっしゃるケースは具体的な事実関係においてどう認定すべきかといったような点につきまして、私どもも個別問題全体を承知しておりませんが、法律の一般的な解釈としては今申し上げたような前提になっておるということで御理解いただければというふうに思います。
  25. 志苫裕

    志苫裕君 国税庁、この問題が始まって大騒ぎになって、衆議院だ参議院だとわいわい騒いで、そして問題になっているときに一般論聞いたって意味がないんだ。  この売りと買い、課税はすべて実態に対してかけるんですから、実態は、ワールドならワールドとリクルート側、これがまず売り買いが一つ関係するわけ。それから、その買い戻したリクルート側、ファイナンスならファイナンスですね、そこと某政治家とか某社長とかの間がまたこれ売り買いになるわけ、そうすれば、流通税というのは、何遍であれ同じ物件でも十遍通れば十遍かかるというのが流通ですから、当然これは二度にわたってかかるでしょうと。  これは東京新聞でしたかね、これを読みますと、「ワールドサービスが納める有価証券取引税はファーストファイナンス社を買い主として納税されていたことがこの日までにわかった」と。その際、いわば譲渡をした者はワールド、譲渡を受けた者はファイナンスと、このように有価証券報告書でしたかね、何かそんなもの納税につけて出しますわな、それにはなっておるという報道があります。  こうなりますと、仮にこのとおりだとすると、今度はそのファイナンス社から二十四人に売買が行われた場合には、ファイナンス社が売った側ですから有取税を納めるという立場に立ちますね。あなたはもう調べているだろう、このぐらいのことは、大騒ぎになっているんだから。
  26. 伊藤博行

    政府委員伊藤博行君) 有取税は、先生おっしゃるように、それぞれの取引におきまして自己の計算において行ったかどうかというところがポイントでございます。  で、今お話しのような報道がなされているというのは私ども承知しておりますけれども、具体的な事実関係がどうかということに基づいての事実認定になっていく話かと思いますが、一般論として申し上げれば、今、先生おっしゃったように自己の計算においてという前提が満たされるような場合であれば、当然有取税はかかってくるというふうに申し上げ得るかと思います。
  27. 志苫裕

    志苫裕君 次長、あなたが言うているぐらいの法律は私も読んでいるのよ。そんなこと聞いているんじゃないんだ。現実に私は事案を指摘している。個別具体は答えにくいというのなら、その件についてはちゃんと調べています、把握をしていますというのならそういうふうに言いなさいよ、適切に対応しているのならしていると。一般論ばかり言うなよ、実際。
  28. 伊藤博行

    政府委員伊藤博行君) 有取税につきましても私どもとしては適正に対処しておるつもりでございます。
  29. 志苫裕

    志苫裕君 まあ個別はなかなか言わぬのだろう。  私の言うたのが事実だと、どのケースもそうなっているんですから。なぜ私がこれを厳しく言うかというと、江副氏は、あれは偽証しているんですよ。それは矢田部委員質問しましたように、なぜ仲介の位置にいるかというと、一つ自主ルール違反から避けたい、安全な位置にいたいということが一つ。それからもう一つは、できることなら税金一遍払えばいいわけで、骨折って二度払うことはないと。あれは随分けちな男だね、実際。そういうことだろうということが出ているものですから、ちょっとしつこくここのところを聞いているわけで、これはひとつあなたの方もちゃんとやっているでしょう。それはそれで、ひとつ報告をするように注文をしておきます。(「大蔵大臣、答弁」と呼ぶ者あり)  この大蔵大臣はなったばっかりですから、この部分はいいことにしておきましょう。  次に、これは高石さんの話なんですが、文部大臣、質問通告に入れてなかったんだ、これ。なくてもできるくらい心構えはあったと思うんですが、まあ教育行政のトップにあった者がリクルートに汚染されて、事もあろうに細君を犯人に仕立て上げようなんというのは、これはもう人倫に反する行為だ。その上職権乱用と思えるような行状が次々と明らかに出る。パーティー券を事もあろうに地方の教育委員会や、取引関係で言えばその立場の弱い教科書会社等に割り当てて、しかも文部省の担当部局が直接かかわった。何事です、これは一体。これが道徳性、倫理性を求められておる教育分野のやることか。パーティー券は中島文部大臣、あなたが在任中直接配下の者がやったことだ。部下の不始末はトップの不始末でもありますよ。責任が問われておるんじゃないですか。
  30. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 先生からの御指摘は、全体の点とそれからパーティー券の件とがあろうと思います。  私は再々お答えをしておりますように、文教行政全般から見ますと、この文教行政の信頼が損なわれるというようなことは一番心に痛いことでございまして、長い間文部省に勤めてもらったOBとはいえ、文教行政が今ほど教育改革を推し進めようという大事なときにありますだけに、少しでも文教行政の信頼が損なわれることがあれば、これをできるだけの努力をして取り戻さなければならぬと、このように考えておるところでございます。  後段に御指摘をいただいたパーティー券の件、これはいろいろ報道されますところを見ますと、実際にどのような形でパーティー券を紹介したのか、あるいはどのような形で外部の方に接したのか、これは私もこれから精査をいたしたいと、こう思っておるわけでございますが、少なくともそういう外部から見て一個人のパーティー券を紹介されたということにとどまったといたしましても、その行為はやはり教育の中立性をとうとぶ文部省といたしましては、甚だ軽率、不適切な行為であったであろうと、このように考えております。さらに後段の御指摘につきましては私としては精査をいたしたいと、このように考えておるところでございます。
  31. 志苫裕

    志苫裕君 後段の指摘はあなたの責任を問うたんで、精査することもないでしょう。まあひとつそれはこれぐらいになりますと、やっぱりトップがそういう責任を果たしていかないとだめですよという意味で指摘をしておきましょう。  さて、当委員会は、これが自民党らしいんだな、宮澤辞任の手向けの花みたいな形で、無理やり日程にのせられて税制改革法案審議に入ったわけですが、この法案衆議院でどんな審議経過をたどってここまできたか、通過後なお消費税の導入に対する国民の拒否反応が強いということについては、総理もよく承知をしておると思うんですね。まあ知らぬなんということになれば、身内の事情にこだわってどうも政権への妄執で目がくらんでいるんじゃないかなと、こういう感じもいたしますけれども、総理、租税は国家の根幹でありまして、言うまでもないことだと思いますが、大きな税制改革政治あるいは政治家に対する信頼がなければつくり上げられないものじゃないんでしょうか。政治家が社会の悪人のように言われておっていい税制がつくれるわけがない。  そのような視点からいえば、売上税の廃案の後、改めて民意を問うこともなく消費税の導入にこだわっていることがまず国民の不信であります。リクルート疑惑がそれを増幅しています。そして事もあろうに提案者たる大蔵大臣、ひいては竹下内閣そのものが疑惑に包まれたことによって信頼は完全に失墜しました。政府の公正が疑われて、提案者の資格を失っておるんであります。言うまでもありませんが、税の公正というのは倫理的正義を追求したものでありまして、税を定める者が公正でなければならぬという意味なんです。どうぞそういう意味ではこの際はやっぱり無理をせぬで、撤回といっても衆議院を通っちゃったんだから、せめて廃案にして改めて衆知を絞る、再構築を図る。僕らも提案しますよ。国民から見てそれは決して竹下内閣の失点とはならない。いかがですか。
  32. 竹下登

    国務大臣竹下登君) お述べになりました政治信頼が基礎にあってこそ税制改革というようなものはできることである。また、これまたお話にありましたように、そもそも国会というものができたその経緯を見てみましても、税というものをどのように配分するか、どのように徴収するかというところから国会ができてきたということは私も十分承知しておるところであります。したがって、今言葉としてリクルート等にそういう不信感が増幅されたということを私は否定する考えはございません。  しかし、そもそも我が国の税制改革というものは昭和五十三年政府税制調査会から、いわゆる一般消費税(仮称)を昭和五十五年から準備すべきであるという答申の時期から始まりまして、その間、志苫委員と私は何度かここで税の論争といいますか、問答をいたして今日に至っておりますが、諸般の経済情勢等々を考えますときに、今のような落ちついているときにこそ税制改革をなし遂げるということがむしろ行政府の私どもに与えられた責務ではなかろうかと、このような考え方に基づいてそのお願いをいたしておるところでございます。  したがって、廃案などということはこれは国会でお決めになることでございますが、提案者といたしましてはひたすら慎重御議論を賜ることによって理解を深め、一日も早く成立することを心から期待を申し上げておる。それに対して我々も誠心誠意お答えを申し上げなければならないというふうに考えておるところであります。
  33. 志苫裕

    志苫裕君 いや、あなたまだ税に対する、あるいは提案者に対する信頼があるように考えていれば誤認だね、それは。  そこで、今ちょっと総理も触れたけれども、税制改革が論じられてまあ十年と言っていいでしょう。残念なことにいつのときも減税もしくは増税の規模をめぐる論争に終始して、国会対策上の観点でしか処理をされることがなかった。そのためにそれぞれの税目とか税体系の内容に立ち入った論議の場所さえできなかった。で、税制のゆがみ、ひずみはどんどん拡大する、こういうことのように思います。これは我々にとっても反省材料でありますが、政府与党が支持基盤の個別的利益のみを優先させて本格的な論議を避けてきたことがまず最大の原因だ。総理、そういう認識をお持ちになっていませんか。
  34. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私は、いつも比較して思うのでありますが、確かに日本の税制をひもといてみますとき、昭和九年から十一年というのが一つの参考になるいろいろな数値であるのかなと、こう思います。その次は、やっぱりシャウプ勧告に基づく昭和二十五年税制改革というものではなかったかというふうに思うわけであります。  今も御指摘がありましたように、戦前の法律はしばらくおくといたしまして、シャウプ以来、やはり国会議論というものが、結果としては税制というものは、そのときどきの政策需要に基づきまして特別措置でございますとかいろんな形で変遷を繰り返してきておるわけでございます。しかし、それは決して私はその時点時点における間違った選択であるとは思っておりません、それなりの理屈が整っておるというふうに私は見ております。長い間税制調査会の委員の先生方もここにはいらっしゃいますが、しかし、長期で今度見てみますときには、確かにそれがより大きなひずみというものを生じたのが現行の稼得者中心の、言ってみればサラリーマン、勤労所得中心の税というものに偏りができたという結果をもたらしておるではなかろうかというふうに思います。  したがって、やはりシャウプ以来の改革というものに、平たい言葉で申しますならば、薄く広く社会共通の経費を負担するという税体系でございますが、これが万全なものであると私も思っておるわけではございませんけれども、二十一世紀に向かってそうしたものを構築していくまさにその時期に到達したということを感じておる次第であります。  いま一つつけ加えますならば、今、委員が御指摘になりましたように、そのときの財政需要に見合う増収が必要であるとか、あるいは減税が必要であるとかいうような議論があったことも事実でございますが、このたびは幸い、いわば税収等は追い風にあることも事実でございますので、修正部分も含めますならば総額二兆六千億の減税、こういうことになっておりますけれども、これそのものが二十一世紀に向かっての一つの税制の新しい構築の姿を示していくための環境も今が一番熟しておるところではなかろうか、私はこのように感じておるところであります。
  35. 志苫裕

    志苫裕君 私の聞いていることに答えてくれればいいんです。私はここ十年の話をしているのに、あなたは昭和の初めから答弁しなくたっていい。  今も出たように、あなたは、昨今の財政環境などから見て静かな雰囲気で税制改革の論議ができる、こういうことを言っておるんですが、そうじゃないでしょう。初めに消費税ありきで、その導入に固執したために静かな雰囲気どころか暴風雨になっているじゃないですか。ために、各税目の中にあるゆがみとかひずみ、すなわち不公平、そういうふうなものを取り除こうとする共通の土俵さえも失ってしまったじゃないの。そういう感じがしていませんか、あなたは。
  36. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 失礼いたしました。  十年にさかのぼってみましても、例えば五十三年の政府税調でそういうことが出まして、五十四年にいわゆる一般消費税(仮称)というものを取り上げようと意図したことは事実でございます。しかしながら、これは国会決議にありますように、申すまでもなく、そのときは財政再建ということが税制改革一つの大きな眼目でありました、国民福祉の充実のためには安定した財源が必要である、しかしながら、いわゆる一般消費税(仮称)はその仕組み、構造等について国民理解を得るに至らなかった、よって、その手法をとらずして、行政改革、財政の節減合理化、そして税の不公平の是正、さらには抜本改正をもってこれに当たるべきである、こういうとうとい決議を、私も当時大蔵大臣でございましたので、参画させていただいてつくらせていただいたわけであります。  しかし、そのときのお互いの考え方というのは、国民福祉充実のためには安定した財源が必要であるといったときには、あるいはおつくりいただいた皆様方の中にもあるいは私の頭の中にも、福祉目的税的な考えがあるいは幾ばくかあったかと思うのであります。そして、その後いわゆるグリーンカード法案というものが皆さん方の合意で出まして、それが五十九年の一月一日実施ということになっておりますから、あるいは五十九年の税制改革というのがお互いの念頭にあったろうと思います。しかし、なかなかその時期を得ることなく、昨年売上税、そしてこれまた国民理解を得るに至りませんでした。  その反省に基づいて今度一生懸命で出しておるわけでございますから、その間の議論というのは志苫さんも、確かに共通の土俵としては各党協議会というのが一つございましょうが、国会議論というのはやはり不公正税制というところから、例えば専門の大蔵委員会の七〇%が税制の不公正議論であると言われたように、この議論が続けられて今日に至っておるのではないかなと。  ただ、あなたと私と議論しておりますと、その間に一緒に議論してきておりますから、何だか国民皆さん方より二人の議論の中であるいはそんなことを言っているような感じがしないわけでもございませんけれども、どうも私はそんな気持ちになりがちでございます。お互い十年一生懸命に不公正問題をやってきた。その不公正問題が、まさに今日の税制改革を行わなければならないという一つの共通の土俵でもつくろうじゃないかというある種のコンセスにまでは至ってきたのではないかというふうに、いささか独断でございますが、私はそう考えております。
  37. 志苫裕

    志苫裕君 私の聞いていることに端的に答えてくれればいいんだ。各税目の中にあるさまざまなゆがみ、ひずみ、不公平を正そうという、これが共通の土俵のはずなのに、いきなり頭の方に、入り口に消費税などという、まるっきり意見の分かれたものを置くから世の中が暴風雨になっちゃって、その共通の土俵まで壊してしまった。静かな雰囲気で税金を論議するなんという状況じゃないじゃないかということを私は言っている。そういうときには入り口にある邪魔者を取るんですよ。そういう手法というのが大がかりな税制改革の論議のときには必要でしょうということを述べた。あなたの顔から見ると、とてもじゃないがその邪魔者を取りそうもないから、次へ行きましょう。  竹下総理は、政府税制改革要綱をお決めになったときに談話を出しまして、国民の税に対する重い負担感、不公平感の解消を図ることが最大の目的だと、こうおっしゃった。この談話は、政府税制改革の本質をあらわしていると私は思わない、おいおいそのことはやっていきますが。総理のおっしゃる重い負担感、不公平感というのは一体どんなものなんですか。その負担感または不公平感というのは、具体的にどの税目あるいは税体系のどの部分から来ておるのかお示し願えますか。これは大蔵でもいいですよ。
  38. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 足らざるところは専門家の助けをかりなきゃならぬと思いますが、私自身税制改革の必要性というのは、今おっしゃいましたように、個別の税目の中のいろんな不公平感というようなものを共通の土俵の中で議論してまいりました。ところが、お互いやっぱりいつも所得減税ということをどうしても優先的に考えます。そのことから見ますと、やはり税負担が給与所得を初めとする個人の嫁得所得に偏って、その裏腹として消費課税のウエートが著しく低下したというところに一番の重税感と一番の不公平感というものが募ってきたというのが私は集約して言えるんじゃないかな、こういうふうに考えております。  それから、不公平感のいわゆる水平的不公平感と垂直的不公平感というような具体的な問題はたびたび議論しましたが、その中に個別税目ごとに含まれておることも事実でございます。それが言ってみれば、このたびの税改正の中におきましても若干の改正がなされ、さらに衆議院でそれに修正がなされたというような点に個別不公平感問題等が浮き出しになっておるんじゃないか。  基本的には、やはり給与所得を初めとする個人の稼得所得に偏って、消費一般にかかる税制というものとに偏りができたというのが一番の不公平感じゃないかなというふうに考えておるところでございます。
  39. 志苫裕

    志苫裕君 総理の租税認識はまるっきり違うね、我々とは。まあその証明をだんだんしていきましょう。  負担感、感じですな、負担感というのと実際の負担は違うんです。不公平感と不公平とは違う。総理がわざわざ不公平感、負担感と言って区別して言うのはなぜなんでしょうね。感じはあるが実際の重税はない、不公平感はあるが実際の不公平はない、こういうふうに言っているんですか。
  40. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いつも私が、本当は、これは志苫さんも御案内のとおりでございますが、不公平があるということを断定することは、長い間大蔵大臣をしておりましたが、非常にちゅうちょを感じてきました。なぜならば、いわゆる国会で決められた仕組みそのものに不公平がありますということはやっぱり行政府としては非常に使いにくい言葉でございます。したがって、私は整理いたしまして不公平感ということで、これもややアバウトな表現でございますけれども、言い続けてきたという実績を私自身認めなきゃいかぬかなと思っております。  しかし、現実おっしゃった問題で、水平的不公平感というようなものに、同じ所得がありながらあの業種とこの業種とに違いがあるというのは、やっぱり金額的な現実的不公平ということもあるということは私も承知しております。  もう一つ不公平感の前提にありますのは、どうしても納税者個々を主体としました比較対照の不公平感ということもあるということをいつも議論しながら感じておるところでございます。
  41. 志苫裕

    志苫裕君 例えば消費税というのは、低所得者や非課税世帯に新たに重い負担を強いるものなんですが、負担感には乏しい性質を持っているんですよ。だから、税制の国民主権原理になじまないということであくまでも直接税が中心だという税理論、税体系をつくって今日まで来たんじゃないですか。  それで、きょうは口に出なかったけれども、中堅サラリーマン層の重税感を取り除くのが税率構造のいわゆるフラット化の意味なんだというようなことをよくおっしゃっていましたね。もし中堅サラリーマン層の重税感、不公平感の解消というのが、あなたが談話になさったように最大の目的であれば、その原因は、課税ベースの狭くなったいわゆる不公平税制あるいは所得捕捉の違いからくる、俗に言うクロヨン問題あるいはまたライフステージにおける負担累増感、この三つなんですよ。しかし、この三つは税体系の問題じゃないんですよ。税体系の問題ではなくて、いずれも個人所得税の構造上の問題なんです。したがって、所得税改革を正面から取り上げれば解決する問題なんです。それをしないで消費税の導入というからめ手からのアプローチをしたのはなぜなんです。このことを聞いているんです。
  42. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 基本に関する御議論でございます。  今、志苫委員おっしゃいましたいわば消費税というのは、所得に対するある種の逆進性がある。しかしながら、これは、ある種のなれというものを生じたら負担感を感じないで物価の中へ入っておりますから、イージーに対応していく性格の税制でもある。だから、やっぱり所得税中心の税制というものが根幹にあって今日までそれをもとにやってきたのじゃないか、こういうふうに私はとらしていただきました。その所得税中心のいわゆる富の再配分の大原則というものに立った所得税中心主義の税制をやってまいりました。しかし、それの結果として今日出ておりますのが、いわゆるサラリーマン、個人の稼得所得に偏り過ぎた重税感をみんなが感ずるようになったから、広く、薄く社会共通の経費を負担していただく消費税というものと、所得、消費、資産というものとに適切な配分の行われる税体系というものに直したらいかがでしょうか、こう申し上げておるわけでございますから、一通りの合理性というのは私も今日に至る経過の中で御理解が賜れるものではなかろうか。  しかし、さらに御追及なさいましたところの税体系そのものの中に、ライフサイクルから考えたらこうなるじゃないかとか、あるいは捕捉の関係からのクロヨン問題とか、そういうものが存在しておるからこれらに対してもやはり手をつけていかなきゃならぬということも私は事実ではないか。したがって、全部が全部ではございませんが、今次の税制改正の中にそうした面における、いわば所得の種類は十種類でございますか、利子所得、配当所得あるいは不動産所得、譲渡所得そして給与所得、事業所得というようなものの中で直されたものが、譲渡所得の、なかんずく土地と株式の問題とか、そういうようなものを直しながら御提示申し上げて御審議を賜っておるというふうに考えておりますので、まるっきりアプローチの仕方が違うとは私は思えません。  志苫さんが随分主張されたことを、私どもなりにそしゃくしてお出し申し上げておるメニューだというふうに私は思っております。
  43. 志苫裕

    志苫裕君 総理、あなた大蔵大臣を長くやっておってよく御存じのはずなんだが、これは少し混乱をしておるようですね。あなた、個々の税目の問題と、税目の組み合わせである税体系の問題をごちゃごちゃにしちゃっている。それはもちろん、今度の改革は組み合わせの問題を出しているんで、それぞれの税目の中にあるゆがみ、ひずみというようなものをなかなか直し切らぬから、薄く広いと称する消費税を持ってくれば、今まで比較的税の軽かったやつ、税金を逃げておったやつ、ごまかしておったやつ、こういうのも消費を通じて税金を納めることになるから、納めぬやつが納めるようになる分だけ公平だろうと、恐らくその論理なんでしょう。  しかし、我々の主張というのは、個々の税目自体にあるゆがみ、ひずみ、すなわち不公正というものを取り除かないで、それはもうしようがないと言ってあきらめて、その上に新しい税目を加える、税体系を変えるということは不公平の上塗りになる。税制改革の手法として間違っておるということを強く主張しているんですよ。消費税を入れると公平になる。税制改革法十条では、消費税を入れると「税体系全体を通ずる税負担の公平」になると、こう言うんでしょう。そんなばかな話がありますか。  早い話が今まで憲法の要請に基づいて課税最低限以下の者は税金を納めなかった。それが紛れもなく取られるんですよ。何で公平ですか。あるいは消費税を入れることによって税率をフラット化とセットにして上の方を下げるんでしょう。そうすれば相対的に消費税はほぼ平らなものですから、税体系全体としては低額所得者に不利に作用するでしょう。資産課税は緩やかにして税率をフラットにして、比例税率である消費税を持ち込めば上の人が楽になって下の方が苦しくなるのは、これは当たり前なんで、計算する前からわかっておるのに、いやそうでない、そうでないと大蔵省あたりがつまらぬ計算をして、理屈からいって、計算する前からわかっているじゃないの。  なぜ消費税を入れると税全体の公平が確保されるんですか。きょうは国民が聞いてなさる。わかるように言うてみてください、これ。
  44. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まさに消費税の持つ基本的な懸念というものにだんだん議論が入ってきたような気がいたしております。  確かに、私は今、所得税中心主義の体系ということで一つだけ落としましたのは、課税最低限にもたまたまお触れになりました。本当はこの所得税の範囲をうんと広げる、すなわち課税最低限をうんと下げていくというような一つ考え方も、これは所得税中心の議論をする中にあることはあるんです、納税者の数をふやしていくという意味におきましては。しかし、今日までの過去の議論は、課税最低限は必ず上げるべしと、こういう議論であったと私は思うのであります。その都度若干の矛盾を本当は感じないわけでもございませんでしたが、その筋に沿って今日やってきたわけであります。そこで、課税最低限というものも上がりました。そうして、国民の生活の最低保障であります社会保障の面における生活保護費というようなものもある程度上がってまいりました。  ただ、これは言葉じりをとるようなつもりじゃ決してございませんが、さればとて、今まで税金を納めていらっしゃらないとは思いません。生活保護のお方も、課税最低限のお方も、たばこをお吸いになりますと、松下幸之助先生がお吸いになりますたばこもそれはみんな同じ税率でございますから、税というものはみんなが払っていないわけじゃございませんが、いずれにせよ、いわゆる勤労所得、そういう稼得所得、稼得に着目したものの比重が消費に着目したものの比重と大変な変化をもたらしてきたということは事実でございます。  国民の所得の平準化問題、そうすると、その計算の問題でまた御議論もあろうと思うのでありますが、これらを見ましても、確かにこの均等化した今日、社会共通の経費については、しょせん納税の義務というものを考えてみましたとき、所得の段階でお支払いするか、消費の段階でその義務を果たすか、その選択と構成の問題というのが新たなる議論として今日持ち上がっておるのではなかろうかというふうに思います。  少し長くなりましたが、もう一つおっしゃいました、しかしそうは言っても、消費税の持つ本質的な欠陥というのがあるじゃないかと。いささかであろうとも、たばこのお話をしましたが、松下幸之助先生のたばこもだれのたばこも同じ税金だというならば、所得に対する逆進性は幾ばくかあるじゃないかと、この議論は確かにある議論でございます。したがって、このたびは、在宅福祉でございますとか、真に手を差し伸べなければならないところは税の問題ではなくしてそれは歳出の問題でカバーをしましょう、そして、若い人の税制につきましては課税最低限を上げることによってこれをカバーしましょう、中堅所得者の方は所得減税の刻みと、あるいは十六歳から二十二歳でございましたかの方に対する割り増し控除等の他の税体系の中でこれを中和いたしましょう、そこで、消費税が本質的に持っておりますところのいわゆる所得に対する逆進性というものは、それらを中和することによって国民の皆様方の懸念を解消することが、こうして議論していきますと恐らくできるんじゃないかなというふうに私は思っております。
  45. 志苫裕

    志苫裕君 総理ね、もうちょっと私の言うことをよく聞いておって。  あなたの頭の中は消費税しかないの。何聞いても消費税を答える。私はもう少し、間接税ももちろん税体系を考える場合に主要な課税物件ですよ、それは。だけれども、今はいわば現行税目のゆがみ、ひずみをどうしようかというところに国民の関心が集まっている。これがゆがんでおるから何とかしてくださいよと言っているときに、あなたの方は別のものを持ってきて、これとがらがらまぜるとよくなるよと、こういうことを言うておるのが税制改革法案十条にある「税体系全体を通ずる税負担の公平を図る」と。私が聞いているのは、何遍聞いてもこれでは人はわからないですよ。  今、税制にゆがみ、ひずみがある、不公平がある、みんな思っていますから、あなたもそう言っているんだから。それに消費税にいろいろ問題がある。消費税のいろいろな問題点を言っているんじゃないんですよ。消費税という薄く広い生活消費一般にかける税金を持ってくると、どうしてこっちの方のゆがみ、ひずみ、不公平が直るんだって聞いている。どうして消費税を持ってきたらおなかの痛い患者の薬になるんだって聞いているんですよ。
  46. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 消費税というものは、いわば所得、消費、資産、その三つに着目をして税制というものが成り立っておる今日、所得に着目をしたものが余りにも重税感を感ずるようになったではないか、したがって、バランスのとれた消費税というものがここに必要ではないか、これが一つ議論です。  それからいま一つ議論は、既存の税目の中におけるいろいろな不公平があるではないか、それはそれとしてやはり取り上げていかなければならない。それが所得税法で言いますならばキャピタルゲイン課税、土地、株式を対象にしたいわゆる譲渡所得でございます、等についてゆがみ、ひずみを、なかんずく資産性所得に対するひずみ、ゆがみというものをひとつ是正していこうじゃありませんかというのが大筋の合意になって、だから与野党の不公平税制のおよその問題点というのもだんだん合意に近づきつつあるわけであります。  議論を聞いておりますと、少し踏み込み過ぎた表現になるかもしれませんが、志苫委員と私の相違というのは、なるほど今日の税制にはいろんなひずみもゆがみも生じておる、しかし、おまえはとにかくまず消費税ありきというような考え方ではないか、おれの方はまだ既存税目の中における不公平等々を是正しつつ国民理解を求めてこれから進んでいくんだという手順の相違というようなところで、論理の相違はだんだんないようになってきたんじゃないかな、こんな感じがいたしたわけでございます。
  47. 志苫裕

    志苫裕君 それはだめだ。 これはね、そうではないんですよ、総理。あなたはそればっかり言うとるがね、いろんな、政府税調とかそういうところから出ておるものを読んでごらんなさい。  私は、端的に言えば不公平はある。直したい。しかし、今のこの執行体制やそういうものでは直せない。直せないということは、税金逃れをしている人や、うまく脱税している人や、そういう人が世の中にはおるということなんです。それが、等しからざるを憂うというのがいわば不公平の根源ですからね、そういう人たちの気持ちを満足させられないんですよ。しかし、できない。こういうことになりますと、税金を逃げている人、うまくやっている人、ごまかしている人、そういう人からも幾らか税金取りゃせめて公平になるじゃないかという論理が消費税公平論なんですよ。  現に、自民党の「なぜ。今税制改革か?」というところには、直接税にはよい面もあるが、執行面で限界があり、不公平感を取り除くことは難しい、こうなっているんです。そこへ単純に税率等を上げていきますから、不公平感の増幅になる。我々が不公平税制と言っているのは、そんな面倒なものじゃないんですよ。課税ベースを広げようということなんですよ。法人税にしても、所得税にしても、資産課税にしても、課税ベースがどんどん狭まっておるでしょう。いや、これは分離課税、これは何とか、これは特別措置ということで、これくらいの広さがあるところがどんどん狭くなっているでしょう。狭くなる、しようがないから、財源が欲しければ税率を上げる以外にないでしょう。百坪のところに百坪の建物を建てれば一階でいいのに、課税ベースが狭くなって五十坪になっちゃったから、また業界の要望で二十坪になるから、どんどん税率という建物の天井を上げていかなければならなくなったんですよ。それが今日の日本の税制なんです。いや、世界に比べて法人税が高いの、上の方が所得税率が高いの、それは結局は課税ベースを狭めるから高層建築にしなけりゃならなかったというのが今の不公平税制と言われるものの根源なんです。  国際的な潮流から言うても、課税ベースを広げて、敷地、いわば一階を広げて、できるだけ高さを低くしようというのが今のいわば税制改革の潮流でしょう。そのことをやろうじゃないかと言っているのが不公平税制を是正しようという世論であり、我々の主張なんだ。それをそのままにして新しいさまざまな問題点を持った別の税目を組み合わせて税体系をつくろうというから、不公平は半永久的に残るじゃないか。逆に、新しい税目を持ってくる税体系が、不公平税制という各税目の改革の邪魔になるじゃないか。これが世の中に出ておる声なんですよ。何でそれにこたえられない。大蔵省、それにこたえられるかね。
  48. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 一つの面は、委員指摘のとおりであろうかと思うわけでございます。  戦後我が国は、シャウプ勧告以来、所得税というものを中心としてやってきております。そのシャウプ税制のときにおきましても、直接税は五五%程度で、半分近くは間接税であったわけでございます。しかし、その後我が国の経済成長等もございまして、直接税のウエートはもっとふえました。この直接税の中での不公平をまず是正すべきであるという点につきましては、おっしゃるとおりでございます。  昨年国会にお願いをいたしました利子課税、これは十四兆円ぐらいのものが課税除外になっておる、これを基本的に見直しをしていただいたわけでございます。また、今回は株式のキャピタルゲインにつきましても原則課税ということで、資産所得の面で課税ベースの逃れている分をお願いしようとしているわけでございます。  しかし、一方におきまして、委員もお触れになりました不公平感、負担感の問題は、これはクロヨンの問題であるとともにまたライフサイクルの問題もある。それは基本的には、やはり課税のベースとしては所得、これが中心であろうかと思いますけれども、いかなる場合においても、その所得を稼得する段階と支出する段階とで適宜組み合わせを行うというのがどこの税制でもその姿でございまして、これは総理からも御説明をしているところでございますが、例えば委員指摘のライフサイクルでございますと、若い独身者のころは、割合給与水準は低くても消費は豊かである。一方、所得水準が上がるに従いまして責任も地位も重くなる。給与はふえますけれども、また住宅や教育の面で支出もふえる、逼迫する。一方、さらに高齢者になられますと、収入水準というものは落ちますけれども、割合教育問題、住宅問題等がない。これによりまして生活は割合中身が豊かである。こういうライフサイクルを通じまして、所得課税と消費課税をどのように組み合わせていくかという問題、こういった点は、まさに所得税、直接税の範囲を超える税体系の問題になろうかと思うわけでございます。  それから、把握の点にもお触れになりました。この問題があるということは否定できないと思いますが、しかし、所得に稼得の段階で課税を、負担をお願いするのか、支出の段階、消費の段階でお願いをするのか、それをどのように組み合わせるかという、こうした哲学的なと申しますと大きな話になりますが、基本的な考え方が根底にありまして、そこにそれぞれの地位に応じ、意味に応じた課税をお願いすべきであるという考え方があるものですから、そのクロヨンの問題も、そこにある意味では思考されてこうした税体系の見直しの一つの根拠にされる。やはり根底には所得か消費か、所得か支出かという問題があり、これは所得税の中で御指摘のような不公平の是正を推進するという問題とともに、やはり税体系の問題としての大きな改革の方向がそこに意味される。 これが先ほど御指摘になりました、この十年間ほとんど減税らしい減税は行われない、そういったことによりまして、この所得と消費のバランスの問題も大きく崩れている。  そういった点を踏まえまして、今回所得税の中におきましては、もちろん不公平を是正する、しかし税体系全体の問題としてのバランスのとれた税制の御審議もぜひお願いをしたいという両面から御提案を申し上げているところでございます。
  49. 志苫裕

    志苫裕君 じゃ、今の局長の話も私は後ほどのあれにいたしますが、それはやはり税の哲学とか税の理念をどこに置くのかということとも関連しまして、何か直接税のウエートが高くて、それは悪いことのように言っていますが、直接税一本でいくべきだという国もあるし、そういう理論もある。それは、直接税のベースをもっと広くとれば、間接税は今の個別間接税の調整程度でいいという議論もある。財源試算も成り立つ。ですが、そのことは後ほど言います。  ただ、今ライフステージの問題、フラット化の問題がありましたけれども、これは後ほどまたあなたとやりますが、なるほどフラット化の問題はある一人の人間の生涯所得の分配にはなりますよ。しかし、生涯を通じて高い所得の人と低い所得の人との分配にはならない。何にも解決にならない。所得分配というのは、一人の人間の若いときと年寄りのときの分配をどうしようかという話じゃない。世の中の高い所得の者と低い所得の者との分配をどうしようかというときに、何でフラット化の問題が寄与しますか。そういうあなた、日本で税金のことについて一番偉い人がそんな理論にもならぬことを言っちゃだめ。  そこで私は、ここではいわゆる現行制度の不公平をそのままにしておいて、現行制度の不公平というのは、税体系の問題じゃないんだ。それぞれの税目の構造の問題なんだ。この問題が不公平の根源となって国民の関心を集めている。こういうときにいきなり税体系の問題、いわゆる税目の組み合わせの問題になってしまうと、根源になっておるところの解決の邪魔になっちゃう。逆に解決しなくなっちゃう。今度の消費税の導入によって本来なれば、薄く広い消費税を導入するというのであれば、税制の常識としてそうなっていけば、当然相続税とか資産税とか、そういうようなものの重課をしなければ、生涯所得もしくは世代間の所得再配分はできなくなっちゃうでしょう。百歩譲って一般消費税を持ち込むというのなら、そっちの方とセットでなきゃだめですよ。一方はさわっていないじゃない。相続税は逆に下げているじゃないの。物価調整なのに何で天井を下げるんだね。こういう問題を私は指摘しているんで、また後ほど各税目でこれはやりますよ。  ところで、この次に私は、どうも今いろいろなあなたの話を聞いて気になる。それは、大平内閣の一般消費税から十年ですわね。そして、税制改革論議というのは中曽根内閣を経てあなたの内閣に引き継がれ、中心課題はいつでも消費税だった。しかし、あるときは一般消費税と言い、あるときは売上税と言い、今度は消費税。浜の酒場にいたときは何とかという名前というのと同じだ、これは。名前ばっかり変えているが、中身は変わっちゃおらぬのよ。  しかし、そうこうしているうちに、財政環境の変化に応じて財源的な意味合いが薄れてきました。中曽根内閣のレべニュー・ニュートラルから、ついに竹下内閣の減税先行へ、ネット減税へというふうにアピールの仕方も変わりましたね。しかし、高齢化社会すなわち二十一世紀論が税調答申、政府の改革要綱で強く意識されているでしょう。ということは、中長期的に見ると、消費税の導入は財源問題、二十一世紀論というのは財政需要ということなんだ。そうですね。それが事の本質じゃないんですか。いかがですか。
  50. 竹下登

    国務大臣竹下登君) このたびの税制改革に至る経過につきましては今志苫委員おっしゃったとおりでございます。  ただ、財源論、こういうお言葉でございますが、結局、財源すなわち社会共通の経費というものは租税をもってこれに当てるという、これは大原則でございますから、それには歳出がいかほど、国民の選択の合意がどこにあるかによって歳入すなわち財源というものは決まってくるという意味におきましては、財源問題であるということは存在しております。しかし、このたびは財源としての位置づけではなくして、いろいろな将来目標等十分御理解のいただけるものが出されて、完全なものが出されておると言うつもりはございませんけれども、およそ現行の体制を考えながらのこの税そのものの不公平感の払拭から新しい税体系へ移行しようというところに物の考え方がありまして、税というものは財源論にこれは直通するものでありますが、この改革案そのものは財源論というふうには思っておりません。
  51. 志苫裕

    志苫裕君 それはあなたそう言いますが、不公平税制の是正をやっているんならいいですよ。やらないんですから。そして、新しく持ち込もうとする消費税、これは我が党の委員がその次やりますが、これは税法なんて体をなしていない。めちゃくちゃだ。そして租税当局の責任者まで、不公平といえば不公平、こう言う始末なんだ、これは。それでも歯を食いしばって、めちゃくちゃなものでも、三%で役にもまた金の足しにもならぬものでも入れておきたい。やるべきことも全部やめて、後世名折れになるようなものを目をつぶってつくろうというのは二十一世紀論を抜いたらないでしょう。二十一世紀論というのは高齢化社会を展望した、突き詰めて言えば財政をどうしようということでしょう。そうでしょう。ならば、二十一世紀論ならまだ時間がある、不公平を直して、信頼を回復して二十一世紀へ向けた税制の積み重ねをする基礎を今つくればいいんですから。それには我々も提案がある。さまざまな方がそういう問題を提起していますよね。  ですから、方法論として今必要なのは、直間比率の是正とか所得、消費との組み合わせの税体系論というものじゃないでしょう。税体系論ならまだ時間をかけてもいいんじゃないか。そうではなくて、所得、資産、法人及び個別間接税というものの中にある税目内部の構造改革をしようじゃないか——一般消費税が間接税改革に寄与することは私も否定しません。特に個別間接税で物品を出し入れするというのは、今日これぐらい権利意識も強くなったり、消費生活も多様になっていると、大蔵省ならずとも線引きは面倒だという意味で、それの合理的な解決方法はないか。その場合に、それの解決策として消費税を持ち込むのであれば、課税最低限、非課税原則をどうする。それは何ぼ何でもダイヤモンドと石ころを同じ値段ということはないだろうから、それくらいの大まかな区分けのつけ方はどうするという議論をしたっていいじゃない。そういう各税目内部の構造問題を今真剣にやって、不公平感も取り除かれて、二十一世紀論は、みんなお互い二十一世紀に、まあおれは行かぬかもしらぬが、行くんですから、それは与党野党の問題じゃないんですよ。それは幸いまだ五年、十年、二十年あるんですから、という税制改革の手順に、私の言っていることはそんなにむちゃですか。私は、国民はこれは同じ気持ちじゃないかと思う。どうですかね。
  52. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今、志苫委員は、例えば個別間接税一つとってみれば、個別間接税そのものはぜいたく品、いわゆる奢侈品とかそういうところから税率がそれぞれ決められておるわけでありますが、生活が多様化した今日、高いものを買えば率は同じであろうとも少なくとも高い税を支払うわけでございますから、ある種の公正さというものがあるというふうに考えておりますから、種々議論の上いわゆる個別物品税からの移行の若干の期間を考慮に入れてはおりますものの、このフラットな消費税率ということを基礎に置いておるわけでございます。そこまでは議論の対象に将来してやろうと。  しかし、今二十一世紀の人口構造を展望して、そう急ぐことはないじゃないかと。しかも六十二年、六十三年——六十三年は今後の問題でございますが、いわば自然増収等も見込める環境にもあるではないか。したがって、今二十一世紀といえば、お互い二十一世紀、ちょうど私は完全に今の男性の平均寿命に達しますが、志苫さんはまだちょっとお達しになりませんけれども、いずれにせよ二十一世紀はまだ時間があるじゃないか。しかし、そこです。時間があるあるといって議論しておるよりも、過去あなたと私と十年議論したじゃございませんか。だから、まさに今こそそれに手をつける機会が到来したんではないか。その手順論に若干の差があるというのは、これは国民の皆様方にも手順論についての差はあろうかと思いますが、今の税制改革そのものの必要性につきましては、私は国民の皆さんにも御理解をいただけるものであろうと。だからこそ、こうした問答がブラウン管を通じて出ていくというのは大変好ましいことだというふうに思っておるところであります。
  53. 志苫裕

    志苫裕君 税制改革というか、あなたが言うているのは税制改革なのか税制改正なのか、手直しなのかさっぱり区分けができませんが、また今のお話で、主税局長も不公平といえば不公平。税調会長は堕落型。不公平であっても堕落型であっても、一たん租税は取り入れられますと、それに基づいて国民の暮らし方も商取引もみんなどんどん変わっていくわけでありますから、ほいほいと直せるものじゃない。やっぱり二十年、三十年の安定性が要るんですよね。それだけに、何か促々とつまらぬものを持ち込んで、なかなかそう簡単に直せるものでもないですよという意味で私は手順のことを言っているんですが、次に行きましょう。  ちょっと租税理念の問題に入りましょう。あなた、税制改革について所得階層間の上と下がくっつき過ぎたから離す、これは六十三年五月二日の新聞に載ったことですが、そうおっしゃった。事実、政府案はそのように組み合わされております。一口に言えば高額所得者優遇、公平よりも効率の重視というのがこの税制改革の姿であります。一体どのような租税理念があるのかなということを以下ただします。  中曽根内閣以来、税調答申、自民党あるいは政府には、今私が引用した総理の発言に象徴されるような租税理念の転換がうかがえます。この改革法第二条「今次の税制改革の趣旨」、いろいろ難しいことが書いてあるが、これを今まで税調が出した文書、自民党政調の「なぜ。今税制改革か?」というふうなもの等から私がわかりやすく解説しますと、こういうことです。日本は所得水準が上がった、一億総中流で上下の差もなくなった、社会保障もほどほどに整った、したがって税制に今までのような所得再配分の効果や限界効用逓減の役割を持たせる必要はなくなったというのが、わかりやすく言うと、第二条の「今次の税制改革の趣旨」の頭の方なんです。そのような認識があれば、広く薄い負担、間接税にシフトした税制、すなわち消費税というのが法案に盛り込まれてくるのは当然ですね。各税目の税率のフラット化、資産課税の不徹底、これもその一環として非常に理屈が合います。総理、これは財政当局でもいいが、そういう租税理念の転換を始めたんですか。
  54. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 租税理念は、御指摘のように、公平が何と申しましてもその基本的な要請でございます。一方、ただいま御指摘いただきましたような第二条にもございますように、戦後あるいはこの十年をとりましても我が国の社会経済情勢の変化は著しいものがあるわけでございます。一つ指摘になりました所得水準の平準化ということもございます。それから、先ほども御指摘ちょっとございましたけれども、平準化いたしましても、それは所得水準に差があることは否定できない。そこの再分配効果というものは必要ではございますが、我が国のように社会が非常に流動的でございますと、そこに所得水準に差がございましても、それは身分とか階級とかによります差ではございませんで、これだけ流動化、自由な社会でございますから、それはその人のライフステージに応じた所得水準の差であるという場合が多いわけでございます。したがいまして、全く身分、階級が違う所得水準の間での再分配ということも必要でございますが、そうした自由な流動化した社会の中でのライフサイクルに応じました税負担の配分ということも大きく考えられてもいいのではないかと思うわけでございます。  したがいまして、租税理念の公平ということは、これは特段最近大きく変わったということはございませんが、御承知のように、御指摘のように水平的公平と垂直的公平がある、そういう中におきましては、これだけの平準化した社会、流動化した社会におきましては、やはり水平的公平という面の要請が大きくなってきている。そうした点はやはり今回の税制改正の背景にはあろうかと思うわけでございます。しかしながら、租税の理念が公平であり、また中立性であり簡素化であるという、その基本理念は特段大きくは変化していない。しかし、その背景となる社会情勢や考え方の中には相応の変化がある。そうした変化に応じた税制改正の御審議をお願いを申し上げているところでございます。
  55. 志苫裕

    志苫裕君 今、所得が平準化したかどうかというのは、いろんな資料も出回っておるし、その資料の使い方も違っているようだし、資料の中身も違う。早い話が、第一分位から五分位までとりますけれども、天井の方の人というのは夫婦共稼ぎ、子供も一緒にという人は少ないんですよ。あるいは一人なんですよ。あるいは人の家庭へ行きますと、父ちゃんも母ちゃんも子供も働いて稼得者が数人いるんです。数人もいる世帯の稼得と一人でえらいこと稼いでおる稼得とを比べてみたって、一人当たりの比較になりませんな。こういうふうなめちゃくちゃなデータを皆持ってきて所得平準化論をやるんですが、この平準化は、ここでそう数字をあげつらってもしようがない、感じとして皆そう思っているかどうか。それは昔の二層分化をしていったような御時世から比べりゃ、貧乏人と金持ちじゃない、真ん中も結構いますわな、という意味で否定しませんが、しかし、所得配分効果を持たせる租税理念を変えるほどの状況じゃないということだけは申し上げておきます。それで、この租税理念の転換というものをもうちょっと総理と一緒に私も議論してみたいんですよ。  中曽根さんの行革路線というのは、国の財政難という問題も絡んではおりましたけれども、やっぱりヨーロッパの一つの潮流である新保守主義の思想とでも言うんですか、そういうものを酌んで、市場原理の尊重あるいは政府介入の排除、個人の自立、自助努力の重視、福祉国家の見直し、福祉財政の見直しというふうなものがその新保守主義と言われるものの総枠ですけれども、そういった改革が中曽根さん特有の個性的な情念で進められてきたことは、大体そう理解の違いはないと思う。中曽根税制改革というのもその一環で出てきたものなのでして、竹下改革がそれを継承したと。ただ、財政環境等が変わったので少しアピールの仕方が変わっておるということで、流れは変わってもいいんじゃないかなというふうに思いますが、大体そんなところですか。
  56. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 大体そんなところじゃないですかと言われますと、一つ一つの表現の問題は別として、私は新保守主義というものがどれだけ土台にあったかとかいう評価は別といたしまして、財政事情が変わってきて若干の変化をもたらしておるがゆえにこそ、修正分も含め二兆六千億のこの減税超過というような形には変化し得ることができたと思っておりますが、もう一つ、やっぱりちょうどその十年目とおっしゃいましたが、一般消費税(仮称)を国会で財政再建の手法としてこれを使わないという決議をいただいたときの大蔵大臣も私でございますし、中曽根内閣のとき四年間は私が大蔵大臣でございましたので、いろいろなニュアンスの変化もありましょうとも一貫して税制改革の中に私自身がおったという意味においては、私自身考え方の継承でもあるというふうに御理解をいただいた方が自分に対して素直なのかなと、こう思っております。
  57. 志苫裕

    志苫裕君 変わっているんですよ、大分ね。  それで、上と下を引き離すというその税制の考え方というのは、あなたはどういうふうに意識してお使いになったかわからぬが、やっぱりこれは新保守主義の受け売りでして、高額所得者あるいは資産家にインセンティブを与えてこのパイを大きくしようと、そういう効率重視の考え方なんですね。しかし、これは日本のような働き過ぎの社会に通用しないんですよ。中曽根さんは新しがり屋で随分やりましたが、こんなにあくせく働いて、何かイギリスあたりみたいにそろそろ枯れて社会が沈滞しているというようなところの効率重視の考え方とわけが違う。違った土壌に違った作物を植えるようにしたというのが、私は大きい間違いじゃないかと思いますね。  上と下を引き離す税制、すなわち税率をフラット化する、資産所得を軽課する、消費税を導入する、こういうことをしますと高額所得者にそれは有利に作用するでしょう。世代間の資産の不平等化が促されることになるでしょう。富の集中が起こるでしょう。機会の均等が失われるでしょう。公正な競争環境が破壊されていくでしょう。どうでしょうね。平準化論議があったが、地価高騰、金余り、財テクで株高騰、資産格差が拡大をしてマル金とマルビの二層分化で下手すれば社会の連帯が失われるかと、こういうときにアクセルを踏む選択でいいんですかね。地価高騰でマイホームの夢を捨てなきゃならなくなった世の中で、所得水準が上がった、平らになった、消費税を入れる、所得配分効果を期待する税理念はやめる、これが説得力を持つとあなたはお思いですか、本当に。所得再配分機能を放棄する今次の税制改革が日本の活力の源泉である平等化社会を壊してしまわないか、これが今、今度の税制改革にかけられておる正念場の問題なんですよ。いかがですか。
  58. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私は消費税というものを考えますときに、これは確かに先ほど来申しておりますごとく、所得に対する逆進性というのを全く否定する考えはございません。しかし、所得というものを収入の段階か消費の段階か、いずれかの段階でそれを税として義務を行使する際、消費税というものはその消費の多寡によって比例的な公平性をもって寄与するわけでございますから、一概に消費税、すなわちこれは所得の再配分機能を損なうものであるという御指摘は当たらないものではなかろうかと思います。がゆえにこそ、日本を除く先進国、最近におきましてはNIES等ことごとくが消費税そのものを導入した、導入して今日に至っておるという現実が存在するわけではなかろうかというふうに思うわけであります。  私自身も長い間、大蔵大臣会議で税の議論をしてまいりました。確かに税の議論というものにはいろんな変化がございます。昭和二十三年の、いわゆる取引高税のときの質疑応答も私は読んでみました。時の野党の原健三郎、四十一歳の代議士が予算委員会質問をされておりますが、いわゆるこの取引高税のときでございますから、千万長者という言葉も使っていらっしゃいました。千万長も者も貧乏人も同じような税金を払うのは、これは富の再配分を妨げるものではないか。時の労働大臣の先輩が、いやしかし、それよりも勤労所得得の減税が今は大事だ、こういうことを読ませていただきました。やっぱりいろんな変化ということがあってくるわけだなと。そして今度はヨーロッパで私がいつも問い詰められましたのは、日本の貯蓄制度の問題における、いわゆるマル優制度の問題であります。日本は資産所得の中に税の枠外に存在するものがある、こういう議論でありました。私はそのときいつも答えておりました。いや、これは勤労所得を勤倹貯蓄してためたものであるから、一度税の世界をくぐったものであるから、こういうものはやはりマル優制度として存続するんだ。こんなお話をしておりましたが、それを私が攻守所を変えた答弁をしなきゃならぬようにもなってきておるということが、やはり世の中の推移の中において適切な税体系を構築していくという一つの過去の反省から来るものではないか。  だから、一概に断ずるわけではなく、志苫委員が現実的ないろんな御意見を述べていらっしゃいますが、そういうものも議論の中で中和、融合していくのが税制改革の進め方ではなかろうかというふうに感じておる次第であります。
  59. 志苫裕

    志苫裕君 どうも総理大蔵大臣と話していると、何か雑炊みたいになっちゃっていろんな話がまじってしまうんですが、ならば総理、ちょっと私は休憩前に確認しておきましょう。  税に所得再配分の効果を期待するというその税理念はやめたんじゃない。公平という場合に伝統的に日本に根づいている場合には能力に応じて公平と、ちょうど憲法十四条の「平等」が、画一的な平等を言うているのじゃなく実質的な平等を言っっていると同じように、公平というのはそういう実質を持つんですね。大島訴訟最高裁判決は、実はその公平とかなんとかというのは日本の公文書で定義したものがないもので、明治の地租改正のときに公平という文字が政府の何か告示なんかの中にありまして、それからその次にぼんと飛んでシャウプ勧告に出てきて、それからまたぼんと飛んで今度出てくるのですかね。それ以来、法律上の文言で公平というのはないんじゃないですかな。とまれ、そこでは税制の役割を判示していますね、四つ言われていることですが。 いわゆる所得再配分機能は、当然重視されるべきものであるということは確認できますか。
  60. 竹下登

    国務大臣竹下登君) その議論があるいは総合所得課税の推移にもつながる議論かとも思いますが、所得再配分機能というのは、税そのものの持つ本質的な機能であるというふうに私も考えております。
  61. 志苫裕

    志苫裕君 では、第三条の「基本的認識」に今度は入りますが、「租税は国民が社会共通の費用を広く公平に分かち合うためのもの」とする、いわゆる基本認識をうたっておりますね。この基本認識というのは、租税法律主義の近代的な発展過程であるとかあるいは憲法、シャウプ税制によって国民に受け入れられてきた税負担の実質的平等、すなわち応能負担原則、国民の生存権保障、すなわち最低生活費非課税原則及び公正手続の原則とはこの理念は違うものですか、同じものですか。
  62. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この三条に書かれてありますことは、今おっしゃいました御議論と背馳するものではございません。  ただ、私一つだけ、いわゆる所得の平準化の中におけるシャウプ勧告そのものの最初は八段階でございましたが、それがその後十九段階の時代がたしか十四年間続いておったと思います。そうして去年の六段階、今度五段階でお願いしておりますが、これの基礎的考え方というのはやっぱり努力と報酬というものが一致すべきであるという公平理念というのがその基本にはあるではなかろうかと、こういうふうに考えております。
  63. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時に委員会を再開することとし、これにて休憩いたします。    午前十一時五十四分休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  64. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 税制問題等に関する調査特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、各案について質疑を行います。志苫君。
  65. 志苫裕

    志苫裕君 ちょっと税制の中休みというわけでもないんですが、幸いきょうは国民の皆さんも直接聞いておられるので、一つだけ税制以外のことを伺っておきましょう。  総理、去る七日にニューヨークの国連総会のゴルバチョフ演説について、ちょっと総理の評価を伺っておきたいと思います。  ソ連に何か動きがあるとまず疑って身構えるといいますか、そういうパターンは二極冷戦構造の古い思考ではないかなというふうに思います。なぜそんなことを言うかというと、どうも日本の外交当局にはそういう習い性がございまして、この手のものが割合に多いわけですね。官房長官談話が出ましたが、やっぱりそれもその例に漏れないという印象を受けましたので、改めて総理また外務大臣、もし御見解がありましたら伺っておきましょう。
  66. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この問題、後ほど外務大臣からも御報告した方が適切であると思っております。  従来のソ連の政策、主張を集大成した包括的な演説であるということは言えると思うのでありますが、政治対話の要を強調しましたということは、私は前向きなトーンであるというふうに思っておるところでございます。特に軍縮分野における通常兵力の一方的削減の発言、これはやっぱり目玉であった。目玉という表現を人様の演説でするのはいかがかと思いますが、目玉ではなかったか、基本的に歓迎すべき動きであるというふうに今考えております。  外務大臣は今お帰りになったばかりでございますからお答えを、補足というよりも、その方がもっと正確だと思います。
  67. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) ちょうどガット総会の最中に演説がございまして、私もカナダでその素案を手にした次第でございますが、今総理お答えになられましたとおり、ゴルバチョフ書記長は常にダイナミックな政策をおとりになってきた。しかも、ペレストロイカ、グラスノスチ等々、従来の指導者の考えにはなかったような新しい面を開拓された。私は、これは非常に国内においても勇気のあることだろうと思います。特に今回兵力を削減すると大きな数字を発表されておりますが、総理も申されましたとおりに、今回のスピーチの中のこれは中軸をなすものではなかろうか。だから我々も、そうした面は今後実施ぶりを十分考えさせていただき、また見させていただくけれども歓迎すべき言葉である、こういうふうに我々は考えております。  特に、地域における紛争が解決しつつあるようなものの、まだ完全な解決を見ていないという面もございますが、そうした面におきましても国連機能をさらに発揮しよう、さらに国連の復権を望もうという点におきましては、やや具体性が乏しいかもしれませんが、熱意は我々といたしましても大いに歓迎すべきである。既にしてアメリカ、ソ連との間におきましては対話の継続、これが今後の世界の安定のために大切だということが認識されておりますから、私はそうした面におきましても評価すべきことであると考えております。  最後に、やはり日本を含めいろんな国々に対しましても対話の継続ということをおっしゃっておりますが、近く外相会談がございますから、そうしたことを考えますと、今回の演説のトーンはいかに政治対話が重要であるかということを話されたものであるとして歓迎いたしたいと思います。  以上であります。
  68. 志苫裕

    志苫裕君 それじゃまた税金に戻りまして、先ほど公平論のところに入ったんですが、広く公平な負担、これは第三条の「税制改革の基本理念」、根本的な考え方ですね。十条の消費税の方は「広く薄く負担を求める」、さすがにここは公平に欠けますから「公平」はないわけですね。総理、何となくごろ合わせで使っておればこれでもいいように感じますが、もう少し詰めてみますと、広くと公平とは背離ではないか。広い負担配分ということを法律をもって強調することは、公平すなわち応能原則を理論的に否定することにならないか、この点はいかがですか。
  69. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 公平という点につきましては従来からいろいろ議論されているところでございますけれども、それは水平的公平と垂直的公平——水平的公平と申しますのは、同じ状態にある人につきましては同じように取り扱うということ、垂直的の方は、違う人については違うようその状態に応じた扱いを行うということであるというふうに一般的に言われておるわけでございます。したがいまして、同じ状態のもと、状態というのは所得水準なりあるいはもろもろの経済環境を申すことであろうと思いますけれども、同じ人につきましては同じように取り扱うという公平の観念からいさますと、ここは広くそうした例外と申しますか、同じ人については広くそうした同じ扱いをするということに相なろうかと思うわけでございますので、広くということが公平と矛盾するということはないものと考えておるわけでございます。
  70. 志苫裕

    志苫裕君 局長、先ほど私は租税理念の転換があったかということを伺っておったんですが、所得再配分機能よりも水平的公平を重視するという考え方に立てば、広くと公平とはそんなに背離をしなくなります。しかし、午前中いろいろやりましたように、租税の持つ所得再配分機能、大島判決の二番目にも載っておりますが、それを税の役割に期待をするということが基本理念であるんだ、それは変わってないんだということになると、この点は背離になるということを主張しているんですが、どうですか。
  71. 水野勝

    政府委員(水野勝君) もちろん公平の第二の点でございます垂直的公平につきましては、再分配機能ということがより大きく期待されるわけでございますけれども、水平的な場合でございましても、その能力に比例的に応じた御負担をお願いするとすれば、それは再配分にも寄与できる面もあるわけでございます。  また、垂直的な公平、端的に所得再分配を念頭に置きますところの公平の場合につきましても、やはりそこは、その出発点といたしましては、その対象につきまして幅広くそうした垂直的公平を図る分野につきまして広く視野を広げさしていただくということはやはり必要ではないかと思うわけでございます。  そうした点からいたしまして、先年は利子課税の見直しをお願いいたしましたが、今回キャピタルゲイン課税につきましても課税分野に入っていただく。それからまた、消費課税の分野におきましても、従来の酒、たばこ、ガソリン、こういったものは端的に個別の物資のみに着目する消費でございませんで、広く視野に入れさしていただいて課税をお願いする。その課税のお願いの仕方は、水平的公平それから垂直的公平、それは背後には所得再分配があるわけでございますが、やはり所得再分配の場合におきましても視野を極力広げさしていただくという意味におきましては、広くということは再分配と矛盾するものではない、このように考えているところでございます。
  72. 志苫裕

    志苫裕君 これは恐らく法律論争をすれば、どうもあなたは専門家にしては余り専門家らしくないという感じがちょっとしますが……。  これ基本認識というんでしょう。基本認識、字引を引くと認識というのは根本の考え方というんだそうですがね。だけれども、税の根本的な考え方、今消費税の導入というふうなものを念頭に置いておりますからね、それはすぐれて公平という観点から見れば水平的というふうなものにウエートを置いて考えるんでしょう。しかし、何も消費税だけが税じゃないので、仮に消費税が入ったところで基幹税目は所得税になる。これがなぜ選ばれているかというと、垂直的公平を実現しやすい、しかも国民主権原理に見合っているというところから採用されているわけでしょう。  ですから、私が先ほど言いましたように、広く負担配分を法律で強調するのは、これはやっぱり理論的には応能原則を否定する。租税法律主義においては、理由のいかんを問わず、収益ないし所得を課税物件とする租税において、結果的に健康で文化的な最低限度の生活を下回る国民に負担を求めることは理論的にもあり得ず違憲行為というふうにしておるんですが、消費において許される根拠は何ですか。
  73. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 端的には租税を納付する能力、これは究極的には所得であろうと思うわけでございます。ただ、その所得を基本的な課税対象、それを支払い能力の原点としつつ、それに到達する手段として端的に所得の稼得段階でお願いをする課税方式と、それからその所得が処分される、それが貯蓄になり消費になるという局面、その局面から課税をお願いする観点とがあるわけでございますので、究極的に所得といったものが原点にある、その原点への到達、支払い能力への到達の方法としてもろもろの局面がある、このように考えるものではないかと思うわけでございます。
  74. 志苫裕

    志苫裕君 いや、それはあなた、仮に支出税の立場に立つにしましても、支出税で非常に大事なのは、所得は必ず消費と資産に分かれるわけですから、皆使っちゃうんじゃないんですから、資産課税というものにきっちり的確に対応できない消費税というものはないでしょう、これは。そういう意味で消費税の問題点を指摘したんです。  いずれにしましても、やっぱり租税法律主義の発展過程をたどれば、担税力というのはなかなか計測しにくいですからね。だけれども、担税力を直接表現できるものは所得だ。間接的表現である消費にウエートを置くということも不可能じゃないが、担税力の弱い者に課税するおそれがあるから補完税としか位置づけないというのが今までの租税理念じゃなかったんですか、どうなんですか。
  75. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 御指摘のように所得課税、所得に対する課税、これが支払い能力に応じた課税の原点であることはそのとおりでございます。また、そうした観点に立って、先ほども申し上げましたけれども、シャウプ勧告が成り立っておる。その成り立っておるシャウプ勧告におきましても、それは所得課税なり直接税としては五五%程度のものを賄い、その他のものは酒、たばこといったものが当時の間接税の中心でございましたが、そういったもので補完をする。しかし、五五%と四五%でございますと補完するという以上の働きはやっぱりしていたんだろうと思うわけでございます。  所得税、法人税を中心とした直接税の方がどうしても我が国はシャウプ以来一、二の年の例外を除いては期間のより多いシェアを占めておりましたので、そういう意味におきましては補完をするという表現もできようかと思うわけでございますが、昭和二十年代、三十年代を通じましては必ずしも補完という、補助的な役割というところまで言っていいかどうか、かなりなシェアを占めかなりな役割を果たしておった。そういう意味におきましては、現時点と比べますと間接税なり消費税のウエートはかなり低下してきている、そういうことが言えようかと思うわけでございます。
  76. 志苫裕

    志苫裕君 私ちょっとここのところをしつこくやっていますのは、なるほど大きい規模の税制改革をしようとする場合に、理論的にすぐれておってつじつまが合ったものが個別利益を優先するような政治過程に受け入れられるということは少ないんですよ。だけれども、理論的にも合ってないし、つじつまも合ってないというものもなかなか受け入れられないんですよ。しかも、一つの税は長続きしますから、理論的にも合ってないし、つじつまも合ってないというふうなものができ上がると、それは長い時間かかって社会の秩序を壊すんですよ。そういう意味で、やっぱり租税の理念というふうなものはしっかりしておいて、それを組み立てる税体系というふうなものをやっぱり長い目で見てつくっておかぬといかぬ。我々がいなくなった後はなお税制は生きているんですから、今の税制論議というのは将来どういう社会をつくるのかということを議論しているんですから、あした幾ら金が入ってくるかということをやっているんじゃないんですよ。  そういう意味では、せっかくの局長の答弁ですが、局長もやっぱり消費税の導入にこだわっておる。あなた自身が、あま不公平と言えば不公平、しかし今の政治過程に受け入れられるにはそれしかなかったんですよと。これを政府税調の小倉会長の言葉をかりれば、堕落型と言うんですね、堕落型。消費税の型が堕落したばっかりじゃない、大蔵省まで堕落しているんだな。よくないですよ、これは。そういうところはしっかりしておらぬといかぬですよ。そうでなくてもあっちの利益代弁、こっちの利益代弁というので寄ってたかっていじくり回してゆがむんですから、税金というものは、だれかどこかしっかりしていなければと、そういう意味で申し上げたわけであります。広く薄く、あるいはそういうときにやっぱり税制改革のアプローチとしては各税目の課税ベースを広げるという、それがそういうふうに振り向けられる論理構成をすべきなんじゃないんですか。  分離課税で狭くなる、税額控除で狭くなる、特別控除で狭くなる、引当金で狭くなる、あの手この手でずうっとベースが小さくなっているわけですから、それを広くとる、そのかわりに税率は下げていくという、これが広く公平という概念なら私は立派な基本認識だと思いますよ。だけれども、同時に後ろの十一条にある消費税の導入を念頭に置いて広く薄くということになると、それは背離するということを指摘したんですが、どうですか。
  77. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 志苫理論というのは理論としては……
  78. 志苫裕

    志苫裕君 志苫理論じゃない、これは世の中の理論なんだ。
  79. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 世の中の理論にはもう一つ竹下理論というのも存在するわけでございますが、いわゆる応能主義による所得税中心主義に対する補完の役割というところから申しますと、ちょっと古い話になりますが、昭和九年から十一年の平均を見ますと、確かに直接税が三四・八、間接税が六五・二。そこで一九五〇年のいわゆるシャウプ勧告で、これで直接税が五五、間接税が四五と、こういうことから今日七三・三と二六・七というふうに変化してきたわけでございますが、私は応能主義というものからしての所得税、なかんずく直接税というのを否定する考えは全くございませんが、消費税とていわば比例的公平性の中において消費の多寡によって課税されておるわけでございますから、私はこれは応能主義的な物の考え方はこの中に十分包含されるものであるというふうに考えておるところであります。  そこでもう一つは、今度はもう少し古い話になりまして、租税というのは何でできただろうかと思いますと、やっぱり最初は外敵からの防衛ということではないか。それも外国が攻めてくるとかいうことじゃなく、ライオンとか象とか、私の田舎で言えばクマとか、そういうことから恐らくお互いが労役を出して、労役のかなわない者は、では物として米を出すとかいうところから租税というものは出発してきたんじゃないか。そうして、初期の社会主義社会になりますとこれはみんな間接税じゃないかな、こういう感じでございます。すなわち、企業は国有であり、物の値段は公定価格でございますから、すべてが価格の中に包含されておるならば、これはすべて間接税であるというふうに言えるんじゃないか。  それから今度は、応能主義の思想が発達してきて所得税というのが入って、その所得税が能力と報酬、努力と報酬の一致の限界を超したときに、またそこに間接税の世界というのに移っていくというのが税の近代的推移で、ちょうど今そこへ差しかかったということで、早いか遅いかという議論志苫理論と竹下理論とに若干の差はありますけれども、大体近づいてきておるんじゃないか。失礼ながらそんな感じを受けさせていただきました。
  80. 志苫裕

    志苫裕君 いや、間接税が中心の税体系が何か潮流であるかのようなことを言っていますが、それはあなたの認識が間違いなんです。かつて間接税が高かったというのは、それはそれなりの歴史的発展過程があるからでしょう。それは、あなたと話していればアダム・スミスからやらぬといかぬが、そんなことをやっている暇はないからやめますが、ちょうど今出ましたように、局長もすぐ間接税の割合のことを言うが、それはなかなか混乱をしておりまして、課税体制が整っていないとか、そういう状況のときには消費一般にかけるのが楽ですから、間接税のウエートが高くなるのは当たり前なんですよ。何か間接税の割合が高いのが現代進歩の象徴のようなことを言っていますが、そんなことはありませんよ。あなたがそんな議論をするんなら、諸外国の比較をあなた方は言うでしょう、アメリカと並んで日本の直接税の割合は確かに高いですよ。逆に言うと、間接税の割合が低い。しかし、租税というのはそれぞれの国の思想とか沿革とか、社会的背景があってでき上がるものなんで、絶対的なものはないです、これは。  国際比較のことを言うならば、外務大臣が一生懸命担当しております発展途上国は全部間接税が高いんです。全部高い。それはなぜかというと、課税主体の能力を初め課税要件が整っていないからなんです。そういうところは間接税が高いんです。日本のようにコンピューターが入って所得捕捉だってやろうと思えばやれるという状況のものとはわけが違うんですよ。国民所得の高い国を順番に並べまして、いわば一人当たり国民所得の高い国を順番に並べてみますと、それらの国はおしなべて間接税の割合が低いんですね。これはあなた、世界百幾つありますから、国民所得が一番高いスイスから始めて、一人当たりですよ、並べて上から十番、国民所得の低い方を下から十番並べてみますと、国民所得の一人当たりが高いところは全部間接税が低いんです。発展途上国のようなそういうところは高いんです。それはそれなりの歴史的発展や社会環境がある。だから高い低いの意味は余りないんです。  なるほど先進国で即決率先をして付加価値税を採用した間接税の非常に高いフランスとかイタリアとか、これは租税当局わかるでしょう、我々の知る限りではOECD諸国の中で最も税引き後所得の不公平な国はフランスとかイタリアです。これが一番間接税割合が高い。ですから、高いとか低いとか、そういうふうなものはその国の経済社会状況に応じてさまざまな課税物件を選んで、それぞれの税目を整えて、その結果としてあらわれる。日本のように、世界は狭いというのでアメリカの土地まで買ったり、そういうふうに金余りが資産に形を変えているようなときには、何で間接税が公平に寄与しますか。直接税である資産所得とか、法人だってそうですよ。後ほど法人をやりますけれども、法人がこれほど世界をまたにかけておる、いや法人税が高いとかなんとかいろいろなことを言っていますが、法人税が高くていづらいものであれば、何で世界の一番目になるんですか。  こういうことを考えてまいりますと、この改革法第二条で言う所得、消費、資産を適切に組み合わせた税体系、いわゆる課税物件のバランス論、直間比率論というふうなものがいかに空疎なものであるか、意味のないものであるか。大体古典的な手法でこれは直接税、これは間接税というふうに日本の経済構造を分けられないじゃないの。何でそれでバランスにきゅうきゅうとしてバランスを失っておるんだね、皆さんは。ちょっとこの点を大蔵省答えてください。
  81. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 経済発展の低い国々におきましては、間接税の割合が高いことは仰せのとおりかと思います。 やはり所得税なり法人税といった租税は、その国の文盲度と申しますか、読み書き能力と申しますか、そういった水準が一定水準以上でないと所得税といったものが適正に行われにくい。また、企業経理なり会計経理といったものがある程度発展いたしておりませんと行われにくいということは、これは財政学の世界におきましても共通の基本的な認識とされているところでございます。したがいまして、所得水準の低い国をとりますと当然間接税のウエートが大きいわけでございます。近代的な所得税が行われますのは、やはり近代的な国家でないとなかなかうまく行われない。そういう意味におきまして、そうした御指摘のような現象は起きるわけであろうかと思います。  先進諸国の中で直接税なり所得税のウエートなりシェアなりの問題というのは、それはまさに御指摘のようなその国、その社会のもろもろの要請、特性に応じて形成されてくるわけでございます。また、それはその国が単一国家か連邦国家かということによりましてもまた変わる。例えばアメリカのような国でございますと、州なり市町村に一般的な消費税が行われておりますと、連邦段階ではそういったものは行われないといったような事情もあろうかと思います。  したがいまして、ほかの国の比率等をとりましてどうというような御議論は、私どもも端的に申し上げる意図はございませんが、我が国の場合をとりましてシャウプ勧告、これは少し古いといたしましても、本格的な減税と申しますか、税制改正は昭和五十年以来、特例公債発行下では行われてきてございません。したがいまして、その間におきましては、勤労者の所得税の負担と申しますのは、おおむね負担率水準としては倍ぐらいに上がってきている。それがまた税制の中での所得税、それからまた勤労者の給与所得税の占めるウエートがかなり上がってきている。そうしたこの十年、二十年の変動を背景にいたしましてその点の見直しを行いたい。一つは外国の大勢、外国の流れということもございますけれども、端的には、やはり我が国それ自身の社会におきますところの税負担の変動を振り返りまして御提案を申し上げているということでございます。
  82. 志苫裕

    志苫裕君 局長、それを言うんなら、先ほど私言いましたように、課税べースの拡大というのが世界の潮流だとさっきから言っているんですが、そこのところを狭めたままで広く薄くもないものだということを何遍も申し上げているので、どうもあなたは大事なところを抜いておっしゃっている。アメリカのレーガン改革を見たって何見たって、どこだって最近は、それは公平と活力、公平と効率重視というふうなものを非常によく調和さして、そこのところに苦労しているようですが、それにしても今度の日本の税制改革は、公平と効率が調和されているどころか、めちゃくちゃに効率だけ重視しているというふうに諸外国の方では言っているんじゃないですか。私は言葉がわからぬから聞いておらぬが。それは言うているのは当たり前ですよ。どこの国でもその議論をした上で、例えばレーガン改革にしろサッチャー改革にしろできているわけですから。  それはともあれ、いわゆるバランス論あるいは組み合わせ論というのがわざわざ法律にうたってありますが、大して意味のないことだ。それは、その国にいいものをやって、その結果としてそれが計測できるだけであって、最初から計測すべき標準的なものは何もないわけですから。何か直接税の割合が高いのが悪いかのような、例えばライフステージにおけるサラリーマンの負担感が強いとか、あるいは単一税目がそれを増幅するとかというお話がありましたね。単一税目というのは、いわば所得税なら所得税が多いという意味なんでしょう。  だけれどよく考えてごらんなさいよ。これは直間比率の問題じゃないんですよ。資産課税が適正かどうかという問題であり、所得税率の区分の仕方が適当かどうかという問題なんであって、何も税体系の問題じゃない。組み合わせの問題じゃない。これは専門家ならすぐわかることなんです。わかる者が言わぬでわからぬ者に任せるからこんな理論が出てくるんです。私はこのことだけは強く主張しておきます。本当は英国も、高名な学者なんかは帝国主義財政の特質は間接税だと、サッチャーさんの足元にいる偉い先生がそのぐらいのことを言うぐらいですから、そう褒めたばかりでもないんですね。この点は強くどうしても指摘をしたい。  私はまたしてもこれは最初と同じ主張に戻りますけれども、この現行税制はそれぞれの課税対象とか課税標準あるいは税率などの課税要件、非課税要件、減額要件というふうなものが大きくバランスを崩しておるから、そのバランスをもう一遍とり直すというのがやっぱり租税バランスの回復というふうに私は解したい。また、そうしなければならない余地がたくさんございますからね、その点は申し上げておこうと思います。  同じ所得でもそういう違いがたくさんございます。それは、税金を逃れる人と逃れない人、個人と法人、給与所得者と資産所得者、こういうものの間にアンバランスがある。だから、バランスをとろうというのが本来のバランス論じゃないかと思うんです。直接税と間接税などという意味のないバランス論は不毛の論議だということを申し上げておきたいというふうに思います。所得というのは消費と資産という単純な算式を考えますと、所得税から消費税へシフトをするという場合には、当然その分を資産課税を強化しなければ合わない。ところがどうですか、合算課税廃止、生涯にわたっていく相続税も緩和、こういうことじゃバランスはかえって逆になっていくんじゃないですか。これはひとつやっぱり考え直してもらいたいということを主張します。  どうも抜本改革と書いてあるんですね。ここに第一条「目的」の「抜本的な改革」、一言だけ聞いておきますが、総理、今私はこれを読んでみますと、抜本改革というのはどこを見てもわからないですね。消費税を取り込むことが抜本改革ですか。  大蔵省の何か財源試算なんかを聞いていると改革期間というのがあるようだけれども、この法律を読んでみてもどこにも期間はないんですよ、これ。で、じわじわ直すということになっているわけじゃない。個別の法律を見ますと、やることは決まっている。追加項目が予定されているわけじゃない。ということになりますと、抜本改革というのは今見えているものが全部ですからね、今見えているものを抜本改革という。その抜本改革で税体系に関して言うなら、消費税という税目ですね、この課税物件を少しウエートを上げた組み合わせにするということ以外に抜本改革は一つもないでしょう、どこが抜本改革ですか。
  83. 竹下登

    国務大臣竹下登君) あるいは専門家の助けをかりなきゃならぬかと思いますが、今次の「抜本的な改革」こういう言葉を使わしていただいておりますのは、やはり戦前の話はもうやめまして、昭和二十五年のシャウプ勧告から、部分的な改正はその都度国会でやってまいりましたが、やはり今日の状態を考えて、少なくとも消費税という新税を入れるわけでございますから、私はやっぱりこれは抜本改革であるというふうに言わざるを得ないと思います。  そこで所得と資産と消費というものに着目したバランスをとろう、こういうわけであります。ただ、志苫委員議論はいろんなことをもちろん消化の上おっしゃっておりますが、課税ベースを広げることによりというのは、やっぱり一番私どもが考えますのは、税制調査会等においても議論いたしますが、少なくとも住民税の人頭割ぐらいまでは全部入れたらいいんじゃないかと、生活保護費の中へ、あるいはこの支給をしておいてでも入れた方がいいんじゃないか、こういう議論もある。それから、所得税にしても最低税率を低くしてもっと課税ベースを広げたらいいんじゃないか、こういう議論もある。しかし、そこのところは従来やっぱりいろんな議論の積み重ねというものからして、適切な課税最低限というものもできておるんじゃないかなという感じをいつも深くいたしておるところでございます。  それから、当然私は税法というのはなかなか絶対というものはあり得ないと率直に思います。それは、こういう実りある議論を積み重ねながらやはりその都度改正していくからこそ昭和何年の改正、何年の改正というものが行われて、それがまたひずみになって今もう一遍見直そうと、そういう歴史というものを繰り返していくものではなかろうかな、こんな感じでもって税制の議論に対応しようと思っております。したがって、私が言うことがすべて正しいなどと言うつもりは全くありません。
  84. 志苫裕

    志苫裕君 いや、私も私が言っているのは正しいと言わない。ただ、あなたの言っているのは時々十七世紀ころのことを言っているから、そこから近代税法が集大成してくるわけですからちょっと……。確かに、総理今おっしゃったように、これが最良だというようなものはなかなかないんですね。それだけに、一番最後に何か最良なのかというと、そのときにおける国民の合意だという話もあるわけで、望ましいものばかりができるわけじゃないが、しかし折り目、けじめぐらいは必要だということで申し上げました。  だんだん時間もなくなりましたのでちょっと個別な話になりますが、今度の税制改革の特徴、これを見ますと、ネットで減税、税率のフラット化、消費税の導入とこの三つになっているようですね。消費税の方は、私の後に出ます同僚委員がこれ専門にやりますから外しておきます。  まず減税ですが、私は減税は減税で別の方途を持っているんですが、ただ、今二十一世紀論を掲げて税制改革に取り組んでおるんですが、中曽根改革はレべニュー・ニュートラルでしたね。日本の財政は国、地方合わせて三百兆の長期債務、歳出の二割は国債費、今度の改革で税率はフラット化されますから、税率、租税の弾性値は小さくなる。そして、政府のたび重なる説明によれば、諸外国よりも租税負担は日本は高くない、低い。消費税の税率は元も出ないような三%。  さて、こういう条件を全部並べてみますと、論理的にはネットの減税というのは答えは出ませんが、なぜネットの減税ですか。
  85. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 委員指摘お話は、今回の税制改革だと全体として間接税がふえると弾性値が落ちて税収の伸びが小さくなる、そういうことからいたしますと、ネット二兆四千なり二兆六千と言っておるのが危なくならないかというような点を踏まえての御議論かと思うわけでございます。  所得税といたしましては、税率はややフラット化しておりますけれども、課税最低限は上げる。これが弾性値を小さくする方に働くか大きくする方に働くかいろいろ議論がある。それからまた、間接税が特に弾性値が低いわけですけれども、これは酒、たばこ、ガソリンとか限られた物資を対象にしている間接税でございますが、これが消費税といった一般的な消費税になりますと、間接税の弾性値はむしろ大きくなる。したがいまして、今後全体としての弾性値がどうなるか、これは両方の議論があるところでございますので、これが弾性値が小さくなって税収の伸びが鈍化するというふうに考えることもないのではないか、このように考えております。
  86. 志苫裕

    志苫裕君 いやいや、もう少しマクロの意味で。なぜ今減税かと、直接的に減税をしなければならない、経済を刺激しなければならないとか、あるいはわかりませんが、強いてネットで減税の意味を政府が認めたとすれば二つだと。それは売上税なんかのときに、これが消費を抑制して内需拡大にならぬのじゃないかという諸外国、外側からの圧力、もう一つは消費税というでっかい魚を釣らぬといかぬので減税というえさを出している。これはえさじゃないの。渡辺政調会長得意の毛針だ。それ以外にネット減税論というようなものが成り立つ根拠は余りないような気がするのでちょっと伺ってみた、この点は。  私は減税政策を批判しているのじゃないですよ。所得税の内部において資産所得の強化とか、事業所得の適正化とかそういうふうなものによって企業所得の減税はこれよりも大きいものができる、法人減税は必要がない、マクロ的には増税しなければならぬという立場で物を申し上げているんです。ただ、増税か減税かという議論になりますとなかなか税の構造問題に行きませんから、余りそれに行かぬ方がいいと思うんですが。  それで政府の増減税試算、ちょっと大蔵省に聞きますが、衆議院修正の二百億円はちょっと抜きまして、もとから出てきたので言ってみましょう。大まかに減税九兆円、増税六・六兆円、差し引き二兆四千億円の減税と、こういう話ですね。ところが、村山税調副会長が「税経通信」で、これによりますと減収九兆円、増収消費税で五兆四千億円、差し引き三兆六千億円の不足、これに二兆円から二兆二千億ぐらいの消費税はね返り分を足すと五兆八千億円の不足、これを埋め合わせるために課税の適正化で一兆二千億円、建設国債の発行で一兆円、こうしますと差し引き不足額は三兆六千億円、何のことはない、これは税率五%ということですね。今、少し税収が好調ですからすぐ破綻はないにしても、最低限税率五%というのが増減税試算のフレームになっているんじゃないですか、皆さんの方は。
  87. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 全体としての税制改革の骨格、最終的に詰めます詰めの段階に至ります途中の段階では、いろいろな御議論がされておったところでございまして、ただいま御指摘のような数字を根拠にしての議論もございましたが、最終的にまとまりましたのはネット二兆四千億という数字でございまして、途中の段階での御議論、それはいろいろあったことは否定はいたしませんが、最終的なもので私どもは御提案をいたしておるところでございます。
  88. 志苫裕

    志苫裕君 いやいや、そういう枠組みになっているんですよ。ただ、歳出に回ってくる二兆円とか、そういうふうなものは幸いにしてことしも三兆円とか四兆円伸びそうだとかというようなことがあるから、そこで内部でいろいろつじつまを合わせていくが、これの組み立てはそうなっている、やっぱり五%になっている。最低五%でないというと勘定合いませんといって大蔵省が自民党税調にわいわい言ったというような記事もありましたけれども、そこの構造は変わってないんですよ。だから内容から見れば、総理、三%でない、これはやはり五%なんです。その分の足りない分は今のところは税収が伸びる、足らなければ歳出が縮むという関係でしかないと思いますけれども、やはり物の考え方はそうなっているんですということだけは指摘をしておきます。  ところで、これだけちょっと伺って次へいきますが、果たして減税なのかなという議論もあるんですが、課税ベースで百八十兆円消費税、それに対して大蔵省と同じ試算をした結果、静岡大学の方であれは全部で三十何兆円ですかね約三十兆円、ベースが違いますと税収で一兆円、実は二・四兆円の減税で皆さんは収支の計算をして、無理してここからは減税になりますよということを言っているんだ。私は余りあの試算は意味ないと思いますけれども、一年たったら変わりますから。だけれども、二兆四千億円が実は一兆違うとなりますと、これはまるっきり物の考え方も世の中の風も変わりますよ。これはどっちなんですか、簡単でいいですから。
  89. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 静岡大学での試算、そのほかいろんな方なり機関の試算はございますが、それぞれ私ども分析をいたしておりまして、この点は私どもと少し計算が違うということで、それぞれの数字は承知いたしておりますが、私どもの積算といたしましては、これは間違いのないものであるというふうに考えておるところでございます。  なお、先ほど五%の枠組みでできておるというお話がございましたが、五%ということをお願いしたということがないということは否定はいたしませんけれども、その後の税収動向等を勘案いたしまして、とにかく財政再建に反しない範囲で三%で組めるということで発足をいたしておりますので、骨格は三%で、五%というものが骨格になっているということはございませんので、申し上げたいと思います。
  90. 志苫裕

    志苫裕君 果たして減税かという点でちょっと私申し上げてみますと、所得税、住民税減税で三兆一千億円ですね、うち税率で一・五兆円、諸控除で一・六兆円、合計三・一兆円と、こうなっていますね。そこで、これは減税なのかなというようなことで、一方あれですか、これは配分してみると、税率で五六%に当たっている。配偶者特別控除で一九%、三控除で二五%という数字もあるんですが、この数字は相互にどういう関係があるんでしょうね。低いところの給与所得控除の引き上げ、諸控除の引き上げのところでかぶる部分というのは税率の部分に入るんでしょうか、諸控除の部分に入っているんですかな、この計算は。ちょっとわかりますか。——わからなきゃいいです。いずれまたやるでしょう。  各税目の問題、あとフラット化の問題もありましたが、私の時間配分がまずくて、税目の問題にちょっと入ってみます。全部通告しましたが、所得税もやめまして法人税にこれからちょっと絞ります。  実は我々は、不公平税制と言われるものは、日本で不公平税制という場合には、一口に言ってそれは課税ベースを広げることだということを言いましたが、所得税の中にもございます、資産もございます。ですが、きょうは法人一本に絞っておきましょう。総理、法人の神学論争と呼ばれる法人税の性格あるいは負担の問題がありますけれども、どうもこれはシャウプは完全な擬制説をとっておりましたが、五十五年の政府税調の答申以来、政府大蔵省も実在説でもなし擬制説でもなし、その辺は諸外国並みにうまく調和してというふうに動いているように見えます。村山税調副会長はアメリカのようになるよと、なると言い切っていますから、アメリカは御存じのように実在説ですね、そういう立場をとっておる。それはそれで我々の多年の主張で結構なことです。この法人の我々が不公平だと言っているさまざまなものがありますが、引当金にきょうは絞ります。  私の方から数字を言っておきますが、引当金は貸し倒れ、退職、賞与三つを合わせまして約十八兆円ですね。十七兆八千三百五十六、これは私の数字が古いでしょうかね、六十一年の数字なので一応それで議論さしてください。課税ベースから外れているわけです、約十八兆円。これが課税ベースに含まれておればそれの四二%ですか、というふうなものですから約半分、これだけで十八兆円の四割といえば七兆円ですね。あなた消費税は五兆幾らですよ、これだけで七兆円ですよ、丸々いかぬにしましても。とにかく大きい課税ベースの縮小だということは念願に入っていると思いますが、これが企業会計上貸し倒れとか従業員の退職金に備えて引当金を計上していくということは我々も肯定できます。ところが、課税所得計算上そうしなければならぬ理由はない。この点は大蔵省どうですか。簡単に答えてください。
  91. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 退職金をお払いになる、あるいは賞与をお払いになる、貸し倒れは損失に計上するという、これは最終的には損金に計上せざるを得ないわけでございますが、所得税なり法人税の世界としては、どのときの所得にそれを対応させるのか。やはり経済活動の実態からいたしまして、所得とそれにかかわるところの損金、費用、収益、これを対応させて合理的にそうした損金なり損失なり費用を配分するというのが、企業会計上の健全な法則ではないかと思うわけでございます。いずれの時期におきまして損金に算入する、それを合理的に計算をいたしますということから税法上も所得から実際の損金発生の前に引いておる、これが企業経理上からくる要請でございます。
  92. 志苫裕

    志苫裕君 いや、それはあなたは今までいつでもそう言っていたんだ。だけれども、企業会計は発生の概念でしょう。法会計は帰属の概念でしょう。ぴったり一致しなきゃならぬというものでもないわけですよ。このことをもって争われて、企業会計よりも法会計は広い概念であるという考え方が確立してきているんでしょう。もともと企業会計原則といったって、民間の商慣習を取りまとめしたものであって、法的効力を何も持っていないんですよ。  ですから私は、法人税でいけば、課税物件である法人の所得の金額は各年度の利益だというふうに決めてしまうことはない。なるほどあれは二十二条でしたかね、一項で収益から損金引けばこれが所得だと、損金と益金の計算の仕方が載っています。これは抽象的などういう表現でしたか、合理的に何とかされる方法で、こうなっている。だけれども、もう少しこの点聞いておきますが、どうなんですか、皆さんの方は今も費用収益対応の原則と言いましたが、課税要件明確主義の原則からいくとあんなあいまいな表現はないと思うんです。法人税法の二十四条の第三項でしたかね、三項によって企業会計原則がある意味では法的な地位を与えられたという解釈をする者と、依然として法会計と企業会計は別だという議論は行われておるわけですが、それであなたの方は費用収益対応の原則ということをおっしゃっておるんですが、じゃ発生主義をとっているの、確定主義をとっているの。  川上で毒を流したと、いつかわからぬが川下で公害が出るかもしれないというので、公害が出たときの用意をして積んでおくというのがいわば引当金ですね。しかしもう一つ、川下で発生したときにそれに応じて損金を計上するということもできますね。なぜ未実現の実現をしないものを引当金として計上をして損金経理をするのか。損金経理というのは税金かけないということですから、税金かけないのが十八兆円あるということですから。実際に起きたら計上すればいいじゃないですか。一方、我々が保有資産について税金かけろと言いますと、大蔵省はどう言うんですか。それは実現をしない利益の方は課税せず、実現をしない費用はちゃんと認めて、まるっきりあべこべじゃないですか。未実現の損金を計上するのであれば未実現の利益も計上しなさいよ。それでつじつま合うじゃない。どうなんですか、一体。
  93. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 御指摘は法人税法の二十二条の四項であろうかと思います。課税所得は「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする」ということでございまして、やはり法人税の世界で、法人税の世界だけの会計慣行、会計処理方法を経済界にお願いをするというのはいかがかと。やっぱり一般的には会計処理の基準、公正妥当なものと認められているもの、これに従って課税所得の計算を行いたい。しかし課税上の要請から、もちろんすべてこれに従っているわけではございませんが、大きな方向としてはそれが合理的な法人税のあり方として認められるのではないかと思うわけでございます。  すべて現金主義と申しますか、実現主義と申しますか、そうした慣行によって処理をするとすれば、機械や建物の減価償却も、これは実際に処分をしたときに損失として差額を計上すればいいというところまでいきますと、そこまでいきますとやはり企業経理としては行き過ぎではなかろうか。したがいまして、そうした全体の要請からの企業経理の会計処理の基準に従って計算をするというのは妥当なことではないかと思うわけでございます。  恐らく委員の御指摘は、含み益課税につきましてよくキャピタルゲイン、未実現のものを課税しないのではないかという御指摘でございます。これは、個人のいわばキャピタルゲインが多いわけでございますが、法人におきましてもそうしたものを含み益課税につきまして課税をということでございますが、これはまた公正妥当な企業会計処理の基準から申しますと、それは企業経理の健全性と申しますか、そういった点からいたしますと、やはりそれはなかなかそこまで会計処理としてはいきがたい。課税上も、それはいつも申し上げましておりますように、難しい問題だと思うわけでございます。
  94. 志苫裕

    志苫裕君 ですから、租税法律主義をとっておるのですから、法会計のやっぱり一般的な基準というものは定める必要がある。その個別の企業の損益計算というふうなものを一応信用した上でやるわけですが、これはアメリカの何でもまねする。アメリカの場合には、企業会計は一応認めないんですから、税務会計一本でやるわけですから、日本でそれができないわけじゃない。それで私、きょうは国民の皆さんも聞いておられると思うから、これは私も勉強したらひどいものだなと思うんですが、何かあったら困るから用意しておく、積んでおくというのはあり得ることなんですが、個々の企業の実績なんというようなものと関係ない、かけ離れた金額で損金算入を認めておるんですね。ですから私は、現実に貸し倒れとか退職金があった時点で損金算入を認めればいい、企業会計は企業会計、税務会計は税務会計、必要があれば還付すればいいんですから、そういうやり方でいくべきだ。  それで、現行税法は企業の利益を費用として認めるものなんですよ、これ、引当金というのは。だから引当金が、これが全企業に同じように行われているんならばそれも一つだと思うんです。公平の原則からいきますと、引当金制度を利用している企業はごく一部なんです。この引当金制度、税が企業の大きさに対して非常に中立的でないんですよ、これはね。これはもう一番皆さんが御存じのとおりなんです。ですから、そういう意味ではやっぱり税務会計は税務会計として独立をしないと不公平という問題が出てくる。現実に利用率を見ますと、全法人で例えば貸倒引当金、準備金がたった二六・二%でしょう。資本金百億円以上になると四割。それで、退職引当金になりますと全法人で六%ですが、大法人になると五割。六%ということは、あとの残りは使っていないということ、使えない。それを認めておくということは、一面不公平でございますね。だから、発生主義か確定主義かといったら、確定主義をとるのが法会計の原則だろうというふうにこれは主張しておきます。  それで、これね、退職引当金について言うと、あれでしょう、継続企業である大法人に四〇%の人が一遍にやめるかもしれぬというんで積んでおくんでしょう。貸倒引当金について見れば、絶対つぶれない政府に貸した分もこれ引当金なんですよ。こういうことを考え、しかも退職金の場合には貸方勘定であって、それ自体は退職金に回らない。九兆円あるんですよ。そうでしょう。貸倒引当金に例を引いて言えば、安宅産業がつぶれたとき、倒産したとき従業員は首だ。退職引当金はあるんだけれども、それは一つも崩さないで全部損金経理、それはそれでやるんでしょう。こういうことを考えてみますと、これは引当金というのは本来の目的からそれて、節税の道具に使われておるというのが現実なんですよ。これが準備金も入れますと、準備金、引当金は同じ性格ですから、そしたら皆さんの方は特別措置が大きくなると困るというんで引当金だけは本法に入れて所得じゃない、所得じゃないと言っているだけなんです。同じものだ、こんなものは。これは最後にしますが、見直しをしましょうよ。税務会計と企業会計は分ける、それで法会計の方はそれはやっぱり一定の物差しをつくってその範囲以内で企業が選択をできるというやり方にすべきだ。総理最後にどうですか。
  95. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 税務会計と企業会計を分別すべきである、こういう議論でございます。  それで、従来も準備金、引当金の関係につきましてはその都度御議論をいただきながらこの廃止なり縮小なり、いろいろな手段を講じて今日に至っておりました。しかし、率直に申し上げまして、企業会計原則から言いましたときに、それを論理的に、何と申しますか、なくしてしまうという議論は私どもも随分議論いたしましたが、なかなか難しい問題でございます。いろいろ法人税の際に議論がございます。法人税率は下げても各種引当金とかいうようなことをみんな取っ払ったらいいじゃないか、こういう議論がよくあることは十分承知いたしておりますが、それはその都度議論されて今日の経緯に至っておるということを御理解をいただきたいと思います。
  96. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 次に、降矢敬義君の質疑を行います。降矢君。
  97. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 今、同僚議員のいろいろ質問と回答を拝聴しながら、重複することは避け、なおかつ意見の違うところは鮮明にさせていただきたいと思います。  最初に、総理が七月二十九日の所信表明演説の中で、公平でしかも活力のある社会、こういうものを今後の日本のあるべき姿として建設をしていくことが非常に望ましいことである、大切なことであるということを申されました。一体公平で活力ある社会というのは何だろうか。我々は今、税制の抜本的改革、まさに公平を中心にした議論を展開しようとしているわけでありますし、そういう税制体系を構築しようとしているわけでありますが、その前提になる我々の社会というものがそれ自体やっぱり勤労の汗が報われるような、正当に評価されるような社会でなければ、先ほどもお話がありましたように、私はどんなにいい税制をつくっても決して適応はしないな、こう思っております。  まして、総理の演説の中にもその点は触れられておりまして、お互いに人間を尊重する社会でなけりゃならぬということもおっしゃっていますが、それは我々がこれから本当に迎えていかなきゃならない高齢化社会においてお互いにいたわりを持って社会を支えていく、そのために必要な金も出す、同時にまた、いたわり合って、助け合っていくんだ、そういう社会でなければならぬと私は思っています。  プラスとマイナスだけが存在し、財テクが横行するような社会では、私たちの税制改革はしょせんは水泡に帰するのじゃないかなというのが私のこの議論のスタートでありますので、その点について端的に総理の御意見を承りたいと思います。
  98. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 先ほど来私が努力と報酬が一致するというようなことを所得税の問題で触れております。そのことは、今平たくおっしゃったように、勤勉な人々が報われる社会ということに帰するではなかろうかというふうに思うわけでございます。そうして、やがての長寿社会を考えてまいりますときに、そこにお互いが生きとし生ける生きがいを感ずるためには、お互いのいたわりの精神があることは当然必要でございます。    〔委員長退席、理事斎藤十朗君着席〕  その意味におきまして、プラス、マイナスにお例えになりました、いわば法制上そういうことが許されるような環境をなくすために、一例として挙げますならばあるいはキャピタルゲイン課税の改正もそこにあったのでございましょうが、いわば勤労に汗したものではなくして、そうした勤勉な人が報われるということではなくして、一つの手法を使ったり、あるいはまたただ環境が変わっただけで不労所得が得られていくというようなところには私は活力というものを望むことはできないというふうに考えております。
  99. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 総理にお願いいたしたいのは、今の御見解全く賛成でありますが、所信表明の中でもおっしゃっておることでありますし、ぜひ内閣の長としてリーダーシップをとっていただいて、何としてもそういう社会の実現にあらゆる政策を集中していただきたいな、こういうことを冒頭にお願いしておきたいと思います。  税制の論議に入りたいと思いますが、非常に簡単に質問いたしますと、なぜ今税制改革を必要とするのかなということであります。  NHKの最近の世論調査を見ましても、税制は不公平である、高い、そういう意味においてどうしても税制改革が必要だという意見も圧倒的に強いわけでありますし、それから総理もやはり施政方針演説やその他いろんなところにおきまして、税制改革こそ現在の内政の最大の重点課題だということを何回もおっしゃっています。なぜ最大の重点課題であるのか、どういう問題意識を持ってそうおっしゃっておられるのかということを国民の前に明らかにしていただきたい、わかりやすく言っていただきたいのであります。  人生五十年の時代が今や八十年になりました。非常に端的に言えば、我々の社会はそういう社会であります。したがって、いろんな意味のシステムは当然変わってくるわけでありまして、変わらないのがむしろおかしいと私は思います。そういう中で我々は社会保障の問題もそういう視点に立った対応を考えなきゃならぬし、また同時に、もっと私たちが大事にしたいのは、今文部省が昨年の改革で生涯教育というものを中心に据えました。なぜか。要するに、人生八十年というものを生きがいを持って生きるために生涯教育というものを社会の中でも自分の中でもやっていくようなそういうシステムをつくっていかなきゃならぬ。そういう中においてやっぱり税制の問題もあわせてシステムとしてどうあるべきかということが本当に問われているんじゃないか。  経済のソフト化、生涯教育で言えば、私たちの家計における消費支出の中でサービス部門、サービス消費に対する支出が今五〇%を超えていることは御案内のとおりであります。それは何か。やっぱりそれはカルチャーセンターへ行くのもそうでありましょうし、あるいはスポーツに身を入れるのもそうでありましょうし、あるいは社会奉仕に尽くすのもそうでありましょう。それは人々の生涯教育の選び方でありますが、いろんな意味で私たちの消費支出がそういうふうに変わってしまったということは、実は私は、生涯教育、人間の生き方と非常に関係しているんだな、こう思っております。  そういう中で、経済的に見れば就業構造が変わったとかいろんなことが言われますが、要するに、もとに返りまして、今の税制というものが人生五十年から人生八十年というものに変わってきた今の社会経済のシステムにうまく合っているのかなということが基本的に疑問じゃないかなと思います。そういう意味におきまして、総理はどういう問題意識のもとに税制の抜本改革が我が内政の最大の重点課題であるとお考えであるか、重ねて平明に御説明いただきたいと思います。
  100. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今おっしゃいましたが、人生五十年、五十歳を男性が超したのはたしか昭和二十二年、五十・二歳であったと思っております。私が国会に議席を置きましたときからちょうど今男女ともにそれぞれ十一歳平均寿命が延びてきております。したがって昭和二十五年、シャウプ勧告を基礎にして行いましたいわば税法上の社会経済構造に関する変化のほかに、基礎的に今おっしゃった五十年人生から八十年人生へというライフサイクルそのものが変わってきておるということを基本的にまず考えなければならないと思います。  ところが、税の問題でこれを見てみますとき、我が国の所得税というのはこれは一部よく言います職能給というものもございます。例えばお互い国会議員でありますならば、三十歳の方も九十歳の方も報酬は一緒でございます。あるいは大工さん等の技能者の方で職能給で年齢に余り変化のない給与体系もございますが、我が国の大筋の給与体系というのはいわば年齢給になっておるわけでございます。ところが、その年齢給というものと所得税の今日までの刻み等を考えてみますと、ちょうどお子さんの教育出費でございますとかあるいは住宅ローンの出費でございますとか、そのようなものが集中するときにいわば一番働き盛りの中堅の時代を迎えられるわけでございます。したがって、今日所得税のなかんずく刻みの問題等から来る不公平感というものあるいは重税感というものは、私はやはり中堅の方々のそこから出てきた声ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。  したがって所得税の構造の中におきまして、あるいは十六歳から二十二歳、かつて教育減税という言葉、本当に耳ざわりのいい言葉でございますが、しかし我々大正、明治の者からいたしますと、若くして学校へ行かないで所得税を納めておる方から見るならば、自分よりもできの悪かったお子さんのお父さんが減税になられるということに対する抵抗感というものが私の時代にはありました。少し古いかもしれません。  しかし、やはり税制調査会あるいは本院等の議論の中で、それが教育減税として、結果としてそうなろう、その位置づけをいわば育ち盛り減税とでも申しましょうか、ある人は大飯食い減税とも申しましたが、そういう年齢の中で割り増し控除を行う等によって、これらの方々の重税感を少しでも少なくしていくというようなことがライフサイクル全体から考えて最も適切であるという、私は減税要求の一番大きな要因はそこにあったではなかろうかと思います。  いま一つは、所得税とそして所得に着目する税と消費に着目する税の問題でございます。先ほど来議論がございました。あるいは戦前六五%を占めたのが間接税であったかもしれません。しかし、そのころは、あるいは所得税を払う方の数が少なかったといえばそれまででございましょう。しかし今日、結果としてできておる直間比率そのものを見ましても、やはり社会共通の経費、いずれ国民の義務として税をお支払いする立場にありますならば、消費の段階で、そして所得の段階、そのバランスというものを著しく重税感を感じない形の中に位置づけようというのが、このたびのまた消費税導入の考え方であります。  しかし、いま一つないがしろにしていけないのは資産性の所得でございます。この資産の問題につきましては、自分の努力によって資産が上がっていくもの、これはもちろんございましょう。しかしそうでなくして、いわば客観、環境の変化の中で、自分の努力とは別の角度から値上がりをしたものとか、そういうものの譲渡所得等についてのまた不公平感というものがあるのは当然でございます。  したがって、総じて申しますならば所得、そして消費、さらには資産所得の適正化と、こういうところにバランスをとった二十一世紀をにらんでの長寿社会への対応というものを、絶対的なものでないといたしましても、今から構築しておくべき、しかも経済諸指標等を見ますと、安定した時期でありますだけに、今こそその必要性、今こそ実現するための環境がむしろ整っておると国民の皆様方に御理解を賜りたいと思っておるところでございます。  いささか長くなり過ぎましたが、お答えを終わらしていただきます。
  101. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 総理はつじ立ちということで、何回か地方に講演に行かれております。恐らく今おっしゃったようなことを訴えられたのだと思いますが、一部には総理の、あるいは今回政府が提案した政府案につきまして、例えば改革の理念、目的、そんなものが明確でないとかいう主張がありますし、もっとひどい言い方で非難されていることもあります。しかし、私はやはり現在の置かれている情勢を将来の展望を見ながら考えれば、まさに総理がおっしゃったような改革こそ必要だろうと心から思っております。  そこで、多少踏み込んだ話でありますが、今回の税制改革のフレーム、主なポイント等について主税局長から簡単に五つの柱を中心に、そして同時に増減税の平年度の数値、それから結果としての直間の比率はどんなことになるのかということについて簡単に触れていただきたいと思います。
  102. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 今回の税制改革の骨格といたしましては、所得税の減税、これは所得課税で所得税の税率構造一〇%を基本として大半のサラリーマンには一〇%の課税をお願いをするという改正が柱でございますが、住民税すべて含めまして三兆一千億円の減税ということを御提案をいたしました。この点につきましては、衆議院の段階におきますところの修正によりまして、これが三兆三千億円に増加しております。  相続税につきましては、これは昭和五十年以来、その見直しが行われておりませんので、その間の所得水準、地価水準の動向等を勘案いたしまして、課税最低限を倍にするなどによりまして、七千億円の減税を予定いたしてございます。  法人課税につきましては、昭和四十五年以来十数年にわたって税率引き上げの方向で対処してまいりましたところ、国際的にこれが一斉に諸外国におきまして引き下げが行われるということでございますので、地方税をあわせまして、法人につきましてはその実質的な課税水準を五〇%を切るようにする。端的には、法人税率におきまして三七・五%まで引き下げるということでございますが、これによりまして一兆八千億円の減税となってございます。  次に間接税でございますが、消費税の創設をお願いをいたしております。これによりますところの増収額は五兆四千億円でございますが、一方、物品税等八税目が廃止になります。また。酒税、たばこ税につきましては税率の調整が行われます。こうしたものによりまして、現存間接税の廃止、軽減によりまして三兆四千億円の減収が見込まれるところでございますので、間接税におきましては、ネット二兆円の増収と相なるわけでございます。  それから最後の柱といたしまして、今回の税制改革、所得課税を中心にいたしまして課税の適正化、いわゆる不公平税制の是正を行わさせていただいております。これによりますところの今回御提案をいたしておりますのは九千億円の増収となってございます。  なお、別途お示しをしております「税制改革の骨格」といたしましてはこれに三千億円をプラスいたしまして一兆二千億円の規模の増収を見込んでおるということでございます。  こうしたものを全体合わせまして、衆議院におきます修正後のフレームといたしましては九兆二千億円の減税、減収でございます。一方、増収はこれに対しまして六兆六千億円でございまして、差し引き二兆六千億円のネット減税と相なってございます。  ただ、先ほど申し上げました課税の適正化の三千億円は、これは具体的な御提案を申し上げておりませんので、その点を加味いたしますとネット二兆九千億円の減税となるわけでございます。  こうしたフレームを前提といたしまして、国税ベース、地方税ベースの税体系の動向でございますが、まず国税でございますと、六十三年度の直接税と間接税の割合は七二%対二八%程度となってございますが、今回の改革案を御提案いたしておりますこれによりますところの変動によりまして、おおむね直接税と間接税の割合は二対一程度になろうかと見込んでおるところでございます。  一方、これに地方税を含めましたところの全体としての我が国の税体系といたしましては、国税、地方税を含めましたところの直接税の比率は七七%、間接税の比率は二三%程度となってございますが、今回の御提案申し上げております改革案によりますと、これが直接税七四%程度、間接税二六%程度、このような体系と相なるかと見込んでおるところでございます。
  103. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 ただいまの主税局長のフレームでありますが、減税先行で二兆六千億というお話でありますが、全体として見ますと、シャウプ以来の枠組みを変えるという、そういう改革だと私は受けとめております。つまり、この枠組みを変えるということは、言うなれば地震みたいなものでありまして、揺れが非常に大きいだろうと思います。そのことは、総理が今度の改革を説明するときに、消費税というものは、これは新税ではそれ自体が絶対的増税であります、差し引き幾ら残ってもこれ自体をとれば増税になるわけでありますが、こういう増税を含んでいる、これはみんなが万歳万歳と言って祝福できるものではない、しかしなれればまたそれなりに定着するものだということをどこかの演説で話したのを私は記憶しているわけであります。  要するに、シャウプのときにつくった、約四十年前の我々の住んでいる一つの税制の枠組みというものがかなり四十年たって緩んでしまった。それが例えば不公平税制とかあるいは直間比率という表現があるように、先ほどお話がありましたような直接税に非常に偏ったような姿になってしまった。したがってそういう枠組み、例えば住宅に例えれば、すき間風が入り、たてつけが悪くなったところを少し直してもう少しもたせるか、それとも今の時期にやはりきちっと建て直しをしておくことが我々の子孫のためになるのかなという選択の問題だと私は受けとめております。  そういうときに、揺れが大きいだけに、先ほども総理がおっしゃっておりましたが、今経済の姿というものは物価にしても非常に落ちついておりますし、雇用情勢もいいわけであります。したがって、こういうときにこそ地震に等しいような枠組みの変更は軟着陸させなきゃいけませんので、既に我々はそれを昭和六十三年所得税減税を自然増収を当てにして一兆三千億を先行させてしまいました。しかし、それも我々はこの税制改革をちゃんと軟着陸させるための一つの手だてであったのではなかったかなと私は思っております。  そういう中で、今私が申し上げましたような環境ということは、そう二度と来るものじゃありませんし、また国際的に見ても、石油も非常に安定した値段でありますし、円もある程度安定した状況にありまして、経済の変動というものを受けないで済むような状況じゃないのかなということを思っておりますので、重ねて総理に、今こそやはり必要なんだということを私は思っておりますので、御答弁をいただきたいと思います。
  104. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに、シャウプ勧告に基づいて二十五年に税制改革が行われましたときにもその言葉が引用されておるわけでございますが、税の理論が終わって、「その租税の本調子が出てくるなら、どんな租税もまた良税となる」という言葉でございます。旧税はすべてよく、新税はすべて悪いという理論から引き出された論理でございます。したがって、私はこの税というものは、なれという言葉を今お使いになりましたが、ただよく言われるけものへんに甲と書いたようななれであってはならぬと思っております。国民理解の度合いが進んだ場合には、これは必ず良税になるものであるという考え方を私も常日ごろ主張したことがございます。  したがいまして、こういう税改革を行う場合は、今御指摘がありましたとおり、確かにこれは国民の英知と努力のたまものであります。一九八五年九月二十二日のいわゆるプラザ合意による円の急激な為替調整局面というようなことから今日時間を経まして、今為替調整も落ちついてきております。苦しい中小企業の輸出産業の皆さん方も歯を食いしばって頑張って今日に至っていただいております。そうした関係から為替局面も、まあ国際的政策協調のことがもちろんあってのことでございますが、安定局面にあります。そして、有効求人倍率等を見ますと、なるほどこれは有史以来の倍率でございます。失業率につきましても、およそ世界の先進国の中でずば抜けた安定した姿をとっておりますし、インフレなき持続的成長というのが、私ども言ってみれば経済閣僚の共通の理念といたしますならば、それが一番落ちついた状態で行われておるのも我が国でございます。  そしていま一つ国民皆さん方の努力によって、いわば見積もり違いという批判はまた受けますけれども、自然増収の局面にあることも事実であります。したがって、今こそ落ちついて税の改革を行う絶好の機会であろう。もう年金財源がこれだけ足りなくなりましたとか、そうした急場の税制改革でないところに、私は国民の皆様方の理解を得る絶好の機会としてこれをとらえたいというふうに思っておるところでございます。
  105. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 経済企画庁長官にお伺いいたします。  今、総理の御説明があり、主税局長から改革のフレームの話がありました。そこで、全体をまとめまして私は企画庁長官に、今回の税制改革というものが我が国の経済成長、特に経済、物価あるいは経常収支というものに一体将来どんな影響をもたらすのであろうかということについて御質問いたしたいと思います。  消費税は、確かに見方によっては物価を押し上げるからインフレになると言い、あるいは消費税は物が上がるから消費の抑制になるという言い方もいろいろあります。しかし、それだけですべてが解決されるわけではないし、世界的な影響も当然あるわけであります。  そういうことを踏まえて、企画庁長官にどんな影響を及ぼすのかなということをまとめてお聞きいたしたいと思います。
  106. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) ただいま大局面において総理からるるお話を賜りました。  現在の日本の経済は、もう既に委員御案内のとおり大変な拡大局面を迎えておりまして、先ほど個人所得の問題も出ましたけれども、今やスイス、アメリカという順位に並んでおった日本が、もう日本が一位、二位がスイス、アメリカが三位ではないかとさえ言われているわけでございます。  そういう中にありまして、世界的な経済の規模からいきましても、大変な個人消費の堅調さは言うに及ばず、先ほど有効求人倍率の倍増率を総理も御指摘でございましたが、そのような中にあって失業率も世界一低い、二・四%という状況でございます。  そういう中にありまして、今回の税制改革案においては、個人所得の課税及び法人課税というものに総額大体五・八兆円、五兆八千億円の課税を行うのに対しまして、消費税の導入、課税の適正化等による増収は三兆二千億円にとどまっておる。すなわち五兆七千億という、これは衆議院の過程でございましたが、たしか私の記憶によりますると、二千億円くらいは退職者並びにその他の問題がございまして減税をしたのでは——寝たきり老人の問題でございましたか、その問題などで減税方針に二千億を切りかえたところでもございまして、三・二兆円ということにとどまっておるわけでございますが、差し引き二・六兆円。以前二・四兆円という形でございましたが、二・六兆円の大幅な減税になった、このように御理解を願いたいと思うわけでございます。  したがいまして、税制改革全体では消費、設備投資、内需などを中心に、先ほども御指摘ございましたように経済に対しては相当好ましい方向でアップライズしている状況で伸びておるということは間違いないと思うのでございます。  また、中長期的観点からだけ申し上げますると、個人所得課税の累進緩和あるいはまた法人税率の引き下げというものは勤労意欲につながるわけでございまして、そういう意味で事業意欲には大変に好ましい影響をもたらしていることもこれまた否定すべからざる事実であるということも御指摘申し上げたいと思うのでございまして、民間部門を中心にしました経済の活性化に資するところが大きいと考えられるわけでございます。  なお、今回の税制改革そのものが我が国経済に与える中期的な影響はどうか、大変に委員の御指摘をそのまま受け売りするような面もございますけれども、申し上げさしていただきますると、大幅な減税超過によります消費などの内需拡大というものの中心勢力というものは、実質成長率で見ますると年平均大体〇・二%程度の成長促進効果があるのではないか、このように踏んでおるわけでございます。また、経常収支に対しましても、内需の拡大等通じました輸入の拡大によりまして大体二十億ドル程度の経常黒字削減効果をもたらしておるということも言えるのではないかと思っておるのでございます。  さらに、消費税の導入に伴いまして、何といいますか、経済全体のことでございますから物価の問題についても申し上げなければなりませんが、物価上昇になることにならないかという御指摘もあろうかと思いますが、これはインフレ的な物価上昇とは当然のこと性格を異にする、一回限りのものであることは申すまでもございません。したがいまして、そういう認識の上に立ちますると、消費税の導入等が消費者物価に与える影響につきましては、物品税の廃止などの影響も考慮して試算いたしますと、消費者物価の水準を一・一%くらいは上回るであろう、こういう見込みを立てておる次第でございます。  以上でございます。
  107. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 この税制改革経済の成長あるいは経常収支に、今企画庁長官が御指摘になったようなぜひいい影響があることを私も期待しているし、心から願っておる者の一人であります。
  108. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 訂正さしていただきます。  先ほど、課税と言いましたが、減税でございますからその点御承知を。
  109. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 わかりました。  所得税、法人税につきましては先ほども御議論がありました。私、消費税で時間を少しとりたいと思いますので、もし時間があれば所得税、法人税に触れたいと思いますが、その前に一つだけ土地税制についてお伺いいたしたいと思います。  先ほどもお話しありましたように、課税のバランスの中に資産課税をどうするかということは非常に大きな問題でありますし、今回株の譲渡所得についての衆議院修正も含めて改正がございました。利子課税も先ほど御説明がありました。しかし、残されているのは土地に対して税制としてどう対応するかということであります。もとより土地対策というものは、それは税制だけでこたえられるわけじゃありませんし、需要と供給のバランス、住宅政策、いろんな土地政策、そんなものが絡んでその中の一環として土地税制があることは承知しておりますけれども、最近の国民生活白書の指摘によりましても、つまり自分が何ら努力をせずに地価だけ上がって金持ちになった、そうすれば土地を持っていない人と持っている人の間の格差が非常に広がってきたということの指摘があります。これこそ冒頭に申し上げました公平で活力ある社会にとっては全く大変な病害虫でありまして、このことに対しての対策につきましては既にもういろんな方面で指摘がありまして、この土地税制、土地対策が緊急の課題であるということはもうだれもわかっているわけでございます。  ところが、私たちも去年は土地の短期譲渡についてはいわゆる地上げ屋の連中がもうけた金については九八%まで税金でちょうだいする、買いかえ資産についても特例を圧縮する、もういろんなことをやってまいりましたが、しかし、なおかつ最近の地価高騰に対しては十分ではございません。それで国土庁を中心にいろんな土地基本法の議論がされておりまして、その中に例えば土地保有税を強化するとかいろんな議論もされているやに承知しております。  そこで、一つだけこの問題について私は事実をはっきり踏まえてぜひ対処していただきたいことを申し上げたい。  それは「土地問題に関する世論調査」というのを総理府で六十三年の十月二十三日に発表しております。これは六月現在ぐらいの調査でありますが、発表は十月二十三日です。その結果を私なりにまとめてみますと、土地に依存する、執着、これは大変なものでありまして、全国で土地と家屋を持ちたいと答えた人が七〇%、大都市圏で六〇%です。それから、土地利用についての公共優先に賛成するか、三八%しか賛成する人がおりません。東京圏では四一%であります。それから、例の開発利益の還元、いろんな都市計画をやったり池をつくったり我々の税金を投資して地価が上がる、それは自分の努力とは何ら関係ない、したがってそれを開発利益の還元という形で、例えば固定資産税をそれなりに納めていただくということについてどう考えるかという質問に対して、そんなことはだめだ、そんなことに賛成しない、逆に言えば賛成する人がわずかに二四%しかいない。それから保有税の強化、つまり固定資産税や特別保有税を強化してそれなりの負担をしていただく、それはどうだということに対して賛成者がわずか一七%しかないのであります。  この世論調査の結果が、少なくともこの私が見た数字は間違いないかどうかだけ総理府の担当官に確認をいたしたいと思います。内容は要りません。間違いないかどうかだけ確認いたします。
  110. 高田朗雄

    政府委員(高田朗雄君) お答えいたします。  今の委員の御発言を数字を追って見ておりましたが、そのとおりでございます。
  111. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 したがって、土地基本法の中で税制というものをどういうふうに位置づけて、しかもそれは資産課税の中の一つとして位置づけていくかということは、この世論調査を見ても極めて難しいんですね。それで日本の税制というのは、持っているときは高くない、余りたくさん取らない、そして譲渡するときには譲渡所得の控除額を多くしたり、一部には分離課税を認めたりする。したがって、持っている人だけがいつまでも持って、何となく資産価値が上がればそれだけ裕福になるという税制の態様じゃないかなと思っているわけであります。  開発利益の還元なんというのは言われて久しい。しかし、具体的にどうするのかねということになりますと、こういう認識でありまして、国土庁長官にお尋ねいたしますけれども、これから土地基本法を制定して土地税制に対してどういう基本的な姿勢でお臨みになるのか。もちろん税制だけではありませんけれども、土地対策の一つとしてどういう考え方で臨まれるのかだけをお聞きいたしたいと思います。
  112. 内海英男

    国務大臣(内海英男君) お答えします。  最近の地価高騰による土地の資産価値の上昇は、土地を所有している者と所有していない者との間の格差を拡大する結果となりまして、両者間に不公平感を生じさせる等、経済の円滑な運営のみならず社会問題としても非常な問題を提起いたしておると認識をいたしております。  国土庁といたしましては、現在、土地基本法制定の作業をしているところでございますが、その検討に際しましては、先生御指摘のように、先般閣議決定をいたしました総合土地対策要綱にうたわれております「開発利益はその一部を社会に還元し、社会的公平を確保すべきこと」、土地の利用と受益に応じた社会的な負担の公平等の基本的認識を生かす方向で関係省庁とも十分協議してまいりたい、こういった考え方で有識者の御意見を承り、今まで四回会合をやりました。また、さきの国会提出になっております野党四党の御提案になっておる土地基本法をも参考といたしまして、いろいろと御検討を願っておるわけでございます。この十五日に最終的な結論を得るように努力をいたしまして取りまとめにかかりたいと、次の国会にぜひ提出をして御審議を願って、国民の土地に対する共通認識というものを確立する方向に持っていきたいと、こう考えておるわけであります。  土地税制のあり方につきましても、この土地基本法における土地についての基本的な理念を踏まえまして、土地政策の観点から、国土庁といたしましては、大蔵省その他関係省庁とも税制上の問題でございますので十分協議をし、御検討を願いながら決めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  113. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 今の段階ではその程度の抽象的なお話だろうと思いますが、私は、土地対策の中における土地税制というのは、土地に対しては公平な課税が行われている、そこが一番ポイントだと思うんです。  そこで、先ほどから何回も総理もおっしゃっているように、労せずして地価が上がって何となくもうけたなというような感じはなくさなきゃいかぬわけであります。ところが、私があえて世論調査の数字を出しましたように、公共優先の考えすら三割しかない、肯定する人が。ましていわんや、保有税を強化してちゃんと開発利益を還元するかと聞いたら、一七%しか賛成者がいないんですよ。したがって、いつでも議論はどこかで終わっちゃって、そして持っていても税は高くない、売るときには譲渡所得税だけが安くなるという、何となくアンバランスだと私は思っています。したがって、これからもぜひそこのところを、公平な税制があって、土地には公平に税負担が求められておるんだという社会の認識をぜひつくるような土地基本法を御制定をお願いしておきます。  次に、消費税に入りたいと思います。  税体系の再構築を目指されて今回の抜本改正があるわけでありますが、先ほどから御議論がありますように、広く薄く負担を求める消費税の導入はなぜするのかというお話がやっぱりここのスタートでなきゃならぬと思います。  この問題は、この改革基本法にも書いてありますとおり、一つは個別間接税が直面しているいろんな問題を解決したい、非常に時代おくれの個別間接税をやめたい、その問題を解決する。それからもう一つは、体系全体を通じた税負担の公平を図る。これは先ほどからいろんな志苫委員との間にやりとりがございました。それからもう一つ書いてありますのは、「国民福祉の充実等に必要な歳入構造の安定化に資するため」こう書いてあります。  私は、まず第一番に主税局長に簡単にお聞きしたいんですが、現在間接税が当面している問題点、ポイントをごく簡単にお願いします。
  114. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 御承知のように、現在の間接税は、物品税、酒税、たばこ税といったように個別の物品に着目して課税をお願いをしているところでございます。  その大もとにおきましては、課税品目やその税負担にもろもろのアンバランスが目立つわけでございまして、最近におきますような消費パターンの多様化、サービス化の実態には対応できていないという点があるわけでございます。  もう一つ国際的な側面があるわけでございまして、今申し上げました我が国の間接税は、個別の物品に着目してかなり高い負担をお願いしている。そうした点が、そういう物品を輸出しようとしている外国からいたしますと、差別扱いに受け取られるわけでございます。その中心が酒税でございます。  これだけ経済の国際化が進展する中では、諸外国と著しく異なる間接税制度を維持し続けるということは、やはり国際的な摩擦を生じかねないところでございます。こうした問題点を解決するというのが今回の御提案の一つの眼目でございます。
  115. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 要するに、一番端的に言われておりますのは、私はテレビを見ている方に知っていただきたいために言うんですが、コーヒーは課税されても紅茶は課税されていないのはなぜか、それから桐のたんすは課税されてないけれどもケヤキのたんすはなぜ課税されているんだというような個別物品税の世界があります。それからもう一つは、我々の個別物品税は約二兆円でありますが、そのうちの七割は自動車と家電製品であります。しかも、その品目はわずか八十五品目。そして、私たちの生活の中の消費に対する支出の部分は、冒頭申し上げましたとおり、五〇%以上になっている。それが全く課税ベースから外れておって本当にいいのかな、そういう間接税というのはいいんだろうかという問題があると思います。御指摘の国際的な問題、まさにウイスキーをめぐって酒税が国際的に問題になって今回改正されるということは御案内のとおりであります。  そういう間接税自体の問題のほかに、これは志苫委員総理の間のやりとりの中にありましたからつけ加えませんけれども、私は税体系の公平という問題がやはりここの中に潜んでいる一つのポイントではないかなとかねがね思っております。もうそこは触れません。  ただ、参考のために、六十年にニュージーランドで、グッズ・アンド・サービス・タックス、財貨アンドサービス課税、つまり付加価値税を労働党内閣が出しましたときのダグラス大蔵大臣の提案理由を見ますと、まさに今、日本が当面しているように、所得税、中堅給与所得者の所得税が非常に重い。反面、したがって課税逃れも出てきている。この際、やはり抜本的に見直す必要があるというところから付加価値税、いわゆるサービスタックスを提案しているわけでありますが、同じようなことが、先ほどから総理説明の中にも、もう給与所得者の八五%以上が所得税を納めて、しかもほとんどが毎年毎年上がっていくような状況は耐えられないんじゃないかなと、つまりそういうふうなことが租税逃れとか租税回避につながってきている、こういう問題があるんじゃないかと私は思っております。  それからもう一つは、やはりここにあります歳入の安定的構造ということは、やはり私は福祉目的税かなと、昔は私も福祉目的税を提唱して持って回ったことがありましたが、何となくそういう考え方が私の頭の底にあります。それは、私が選挙区で若い人に説明するときに一番わかりやすい、わかってもらえる説明がまさにそれなんですね。難しい議論よりも、君たちもやがてお年寄りになるよというときの今のレールをどこに敷くよという話をして、こういう話を感じといたしましてよくわかってもらえるんです。  ここで特に私は総理にお聞きしたいのは、国民福祉の充実等に資するための歳入構造の安定化ということがわざわざ入れてありますが、そのねらいとするお気持ちは何ですかということをお聞きいたしたいと思います。
  116. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 昭和五十四年の本院の決議を見ましても、国民福祉充実のため安定した財源が必要であるというのが財政再建決議の第一項目に書かれてございます。  私も今の降矢委員とやや同じ感触で当時与野党で共通した土俵の中で議論しましたのは、昭和五十九年度改正ぐらいのときにいわば高齢化社会を迎えての安定的財源としての福祉目的税的な考え方があったと私は思います。しかし、今度は税理論そのものからまいりますと、税とは可能な限り、目的税もございますけれども、可能な限り色のつかない税をいただいて、そしてそれをいわば社会の、国民のニーズに応じて歳出に回していくというのがこれは理想でございましょう。その意味におきまして、私もその後のいろんな議論の中から、福祉目的税理論というものは私なりに一応頭の中で消しました。しかし、言ってみれば、今降矢委員が御説明なさって若い人が共感を覚えるというのは、まさにそういう時代を想定したときの安定的歳入としての税金は、福祉社会というものをほのぼのとながら念頭に置いて見詰めていらっしゃるであろうという、精神的福祉目的税という表現は適切でございませんが、そういう考え方は底辺には存在するだろうというふうに私自身も感じております。
  117. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 消費税の導入に関連しまして二、三お伺いいたしたいと思います。  消費税の導入に反対する方々の意見として、少し時間をかけて慎重に検討する、その間に個別物品税の改革を再構築も含めて考えてやるべきではないかという御意見がございます。それが一点。そういう意見についてどうお考えになるのか。  それから、消費税の今度の導入は、ょかれあしかれ、超過減税二兆四千億はやっておりますけれども、しょせんは増税でありますし、それは財政の立場からいえば、減税財源の一部になっておることは間違いありません。減税財源の一部であることは間違いありません。そういう観点からいいますと、先般来衆議院の与野党協議の席におきましても、いわゆる不公平税制というものはたくさんあるじゃないかと。先ほどもありました課税ベースを広げたらいいじゃないか、そうすれば財源が出るんじゃないかというお話。それはどのくらいの財源かわかりません。今度は三兆一千億という大きな所得減税もやり、法人税も一兆八千億もやるんですから、それはともかくとして、そういう御意見がありまして、消費税の導入については否定的な、必要ないじゃないかという御意見がありますが、それについてどういうふうにお考えでしょうか。
  118. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 間接税には、先ほども申し上げましたようなもろもろの問題点がある、その点につきまして改革をまず始めるべきだという御意見のあることは承知いたしてございます。ただ、今回この抜本的な税制改革を始めますときの最初の動機と申しますか、それは昭和五十九年度改正、この年に久方ぶりに相当規模の所得税減税を行うというときに、当時の財政事情からいたしまして、どうしても間接税に増収措置をお願いせざるを得なかった。そのときにお酒の増税をお願いをしたわけですけれども、結果的には消費が減少して増収にならなかったという点がございますが、もう一つ、物品税につきましても、何らかの品目の拡大をお願いするということでお願いをいたしたわけでございますが、ワープロ、ファクシミリ、そうしたやや事務的な面もある物品しか増収措置としては対象が考えられなかった。しかし、それが現行の間接税の考え方に即するのかということが大議論になりまして、結局五十九年度では決着がつかず六十年度まで議論が持ち越されましたが、結論としては、個々の物品を洗い直し見直しをいたしておりましても限界がある。間接税といたしましても、これは抜本的に見直す必要があるとされた。これが今回の税制改革、抜本改革の一つのきっかけでもあったわけでございます。  現在の物品税は、奢侈品、便益品、こういったものに限って課税をお願いするということにいたしておるわけでございますが、奢侈品という基準を一つとりましても、なかなか合理的な基準を見出すことが難しいわけでございます。奢侈品、便益品という基準でもって課税をお願いするということにこだわっておりますので、例えばこの部屋におきましてもシャンデリアがある。シャンデリアは奢侈品だということで課税になっていますが、その周りには、これは十五個ぐらいの電灯がついておる。五個以上のものがついているのは奢侈品である。そうすると、この部屋の周りにございます二つずつついておるもの、これはぜいたく品ではない。これは五つという基準でもって奢侈品かどうかを判定しようとしている。それからまた、螢光灯が光源になっておりますものはこれはぜいたく品ではない。このような極めてきめ細かな奢侈品、便益品というところに基準を求めようとしますと、もうエンドレスな議論になるわけでございます。  それからもう一つの問題点は、現在の物品税を中心とする個別の消費税では、先ほど委員の御指摘もございましたサービスといったものが消費の半分以上を占めるようになってきている。こうした点からいたしますと、現行の間接税そのもの、個別消費税そのものにつきまして見直しを進めるといたしましても、そこはもうサービスには課税をお願いすることができないという現行の消費のパターンに応じた見直しができないという、いわば致命的な限界があるわけでございます。これが第一点でございます。  第二点の、こうした所得税の大幅な減税をいたしますその財源といたしまして、消費税にお願いをしなくても、不公正是正という問題が確かに御指摘がございます。確かに現在一兆六千億円の租税特別措置による減収がございますけれども、この大半は所得税関係、老人、マル優等の、あるいは保険料控除等の、あるいは住宅対策等の特別措置でございまして、言われます企業関係は四千億円程度でございます。これもまた公害対策、住宅対策等のものでございますので、こういったものを全部廃止するといたしましても四千数百億円程度でございますので、大きな財源には到底及ばないところでございます。
  119. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 導入についてさらに二点お伺いいたしたいと思います。  一つは、消費税の仕組みにつきまして、「我が国における取引慣行及び納税者の事務負担に極力配慮」をしたというふうに税制改革法にも書いてございます。その点について、恐らく簡易課税方式とか、あるいは限界税率とか、あるいは帳簿方式をとったとか、当然そういう御説明になるとは思いますが、それに関連してこの点で二つだけ私はあえてお聞きしたい。  一つは、納税の期間、納税の時期の問題なんですが、法人は決算が終わってから法人税を二カ月以内に納める。したがって、こちらも二カ月以内に消費税を納める。しかし、個人の場合は十二月に終わりまして二カ月というと二月の末に納税義務になるんですが、確定申告は三月十五日になっているんです。確かにそれは国税の事務当局の方から考えれば、二月の末で終わって三月十五日は確定申告を受けるのでいいんだなという感じはわからぬことはないけれども、実際回って聞いてみますと、確定申告の時期と一緒に納めてどうして悪いのだろうかと。同じ経理でできるのだから、それは我々にいいんだという話を率直に聞きます。その点が一点。それはぜひお答えいただきたい。  それからもう一つは、帳簿方式でありますけれども、会計処理は、ソフトを新しく開発して、そして処理するようになる会社が私の選挙区にもかなりあります。ソフトを開発すればそれは投資になりますが、この減価償却をどういう方法でやってくれるのか。要するに、消費税ができたためにソフトをつくる。結局それは会社にとっては投資。その投資について一遍で落としてくれるのかどうかということがかなりの関心事であります。したがって、ここもぜひ商取引云々の中の一点としてお考えいただきたい。    〔理事斎藤十朗君退席、委員長着席〕  それから次は、これは総理にお聞きしなきゃならぬのですが、同様の問題は、導入に関連しては、税率の歯どめの問題というのは際限なく続くわけであります。これはしかし本当は極めて大事な問題であります。先ほども、これは十一月十六日の衆議院における自公民三党の共同項目というのにも、「行財政改革推進などの趣旨を踏まえ、所得、消費、資産等の間の均衡がとれた税体系の確保の必要性に配慮しつつも、極力その維持を図るよう努める」という何か合意文書もあるようでありますが、この点はぜひ総理の口からお答えいただきたい。  もちろん、竹下内閣の時代は上げないということも承知しておりますが、問題は、先ほども社会党の委員の方から御指摘がありましたように、私も同じなんでありまして、所得税の税率がフラット化し、課税最低限が三百十九万、かなり標準世帯が上がる、そういう中で消費税がかみ合ってくれば、まさに消費税導入のところに書いてあるとおり、歳入の安定的構造になって、税の伸び、いわゆる弾性値といいますか、伸び率といいますか、それが従来よりも低くなることは理論的にはだれでも考えられることであります。しかし、歳出は伸びていくわけでありますし、特に社会保障費の伸びというのはある程度予想されている伸びでいきます。そのときにやっぱり大事なのは、税率は確かに簡単に言えば一%、一兆円ですね、消費税というのは。だからちょっと誘惑に駆られるようになると思うんですが、それはやっぱり行政改革なり歳出のカットなり思い切ってやっていかないと、ここのところはなかなか言うべくして難しいんじゃないかなとざっくばらんに思います。  そこで、この税率の歯どめの点については、総理に重ねて国民の前でぜひ決意のほどを示していただきたいと思います。
  120. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 最初の二点につきましてまず御答弁させていただきます。  第一点の納付時期でございます。  法人の場合も二カ月といたしておりますので、個人の場合も二カ月としてお願いをしたわけでございます。個人、三月十五日確定申告ということはございますけれども、また一方、その三月十五日に今までの所得税事務と新税事務とが重なって錯綜するという点もあろうかという議論もございまして、現時点では二月目に、二月目の申告をお願いいたすということで御提案をいたしておるところでございます。  それから第二点目のソフトウエアの開発でございます。  一般原則から申しますと、これは繰り延べ資産として五年以上の期間にわたって償却をするということでございますが、今回新税をお願いする、そのためのいわば臨時的な経費でございます。そうした点を考慮いたしまして、発足時におきましてどのような特例が考えられるか。こうした特殊な性格のものでございましたら一時損金算入という方法も考えられるのではないか、こんな考え方で現在検討いたしておるところでございます。
  121. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ただいまの消費税の税率の問題、これは志苫委員質問の際も一番これがポイントに置かれておった。そして租税弾性値の問題にも触れられましたが、弾性値の見方は必ずしも今統一してかくなると申し上げるほど勉強しておりません。若干まだ議論のあるところでございます。  しかし、その問題は別といたしまして、そもそも私が、私の頭の中だけの勉強でございましたけれども、福祉目的税といった場合に一つひっかかりましたのは、では福祉なら率を上げてもいいのか、こういう議論をむしろ招来する危険性がありはしないかというのが、これは私の頭の中の勉強でございましたけれども、そういう自問自答もしてみたわけでございます。したがって、税率というものは基本的には租税法定主義で、これは国会でお決めになることでございますが、結局は財政需要と税負担の関係など将来の国民が選択する問題でございますから、永遠に縛ってしまうというのは、民族悠久の歴史の中における一こまにすぎない竹下内閣でこれは少し出過ぎかなと。だから限界として申し上げるのは、竹下内閣でこの税率の改正を御提案申し上げるようなことはいたしませんということが私の申し上げる限界であるのかなと、こういうことを感じてそのようなことを申し上げておるわけでございます。  それから、各党協議の中でもありましたが、当然やっぱりそれには歳出削減と行政改革による経費の節減合理化ということが伴っていきませんとイージーに上げがちになるわけでございますから、そのことは、長期ビジョン等十分なものではございませんが、お出ししたものに対して幾ばくかのあかしを立てながら御理解をいただいていくべきことであろうと。ただ、今日三%で提案するまでの間いろんな議論をいたしました。それを、はい上げますと言って皆さん方に御了解いただけるものとも思えませんし、またそういうことをするほど竹下登も愚か者であってはならぬというふうには感じておるところでございます。
  122. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 私の質問の中で、個人事業者の消費税の納期の問題は果たしてそれで局長いいのかねということは、私はどうも回っていて実感としていいのかなということを本当に感ずるんですね。御存じのとおり、大体中小企業の方々は税理士をお願いしているわけですよ。したがって、税理士さんがもう個人の申告のときに合わせてやることが事実多いわけでありますから、私は素直に聞いていただいてもう少し御検討していただく価値がありはせぬのかなと。要するにこれはスタートさせてきちっといかなきゃならぬ問題でありますから、先ほど言ったとおり事務処理の簡素化に配慮するとわざわざ書いてある。例えばソフトの問題で今いい御返事をいただきましたけれども、やっぱりどこかできちっとした対応がないと、ただそれでいいのかなというのは、私は基本的にちょっともう少し考えていただきたいなと思います。  それから、歯どめの問題は総理のおっしゃるとおりでありますが、やっぱり理論的にどうも、いわゆる税で言えば税収の伸長率というものは今までよりも落ちるのが理論的には考えられる。しかし実際はどうかわかりません。私は頭の体操をしているのかもしれませんがね。したがってそれだけに、行政改革の推進あるいは逆に言えば歳入を確保するのに、例えば政府保有株をあるときには放出するようなそんなことも考えながら、少なくとも極力これは三%を維持していくという努力を国民の前に示すことが非常に大事だなと思います。そして定着して本当にこれが安心して行われる。つまり総理のいう、新税はなれればそれなりに通用するというふうな時代になるまでは少し慎重に対応さしていただきたいなと私はお願いを申し上げておきます。  それで、もう一つ最後に逆進性の問題は、理屈はともかくとして、所得に対して考えれば恐らく逆進であることは、消費税の性格上どんな消費税をつくってもこうなることは間違いありません。しかし、先ほど総理お話にありましたとおり、支出の面から見れば、支出に応じて同じような比例税率でありますから、それは公平なんだ。支出する選択というものは支出する人間にあるので、支出する人間が自由に選択できるということは消費税のいい点であると思います。しかし、やはり理屈ということを考えると、逆進だという言葉で表現されるようなことはこれはぬぐい去るわけにはいきません。  いろいろ議論がありますが、この中で一つだけ、もう時間がありませんので事務当局にお聞きをしたいんですが、総理もしばしば、真に手を差し伸べる方にはきちんとした対応をしますと、こうおっしゃっております。そこで一つは、総理もしばしばおっしゃっておりますが、来年の予算で生活保護を受けている方にどういう対応をするのか。  それからもう一つは年金受給者、もちろん高額で高い年金をもらっている人もおります。しかし福祉年金をいただいている方もおるわけでありまして、そういう方々を頭に置きながら年金受給者に対してどういう対応をするのかなということを事務当局にお聞きいたします。
  123. 篠沢恭助

    政府委員(篠沢恭助君) 消費税の導入に伴いまして物価への影響が生じます場合に、生活保護でございますとか、それから当然のことながら在宅福祉でございますとか、特に真に手を差し伸べるべき人々という、法律にもそういう表現があるわけでございますが、これに対する施策につきましてはこれからの予算編成の中でよく考えまして適切な措置を講じてまいりたいと考えております。  これは蛇足でございますけれども、今回の税制改革の中で、老人ホームでございますとか保育所等についてはこれは非課税とされたわけでございます。  それから、公的年金の問題につきましてもお話がございましたのですが、基本的に、拠出制の場合でございますと、物価上昇に応じた年金額の引き上げを行うという物価スライド制が従来からの確固とした仕組みとしてございます。従来これによって対応しておるところでございますが、全体といたしまして、真に手を差し伸べるべき方々というものへの配慮につきましては予算編成過程で具体的にさらに検討さしていただきたいと思っております。
  124. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 その問題は、言うなれば私は総理の公約だというぐらいに受け取っております。やはりそこはきちんとした対応をして、お金の問題でなしに、この税制が抜本税制として二十一世紀に向かって末永く新しい軌道を歩み出すときに、少しのお金で問題をこじらしてはいけないと私は思っております。総理そうですね。やっぱり総理がおっしゃったように、この税金は増税なんですよ。全然納めない人も納めるようになる。簡単に言えば一億二千万人の人が納税者なんですよ、この消費税というのは。したがって、小学校のお子さんも鉛筆を買えばその中に入っている税金を納めているわけですよ。そういう税制でありますから、したがって今までと違った対応をぜひしなきゃいかぬ。しかも、スタートでしないとこの税制に対する不信感を持ちます。  殊に、今言ったように年金の受給者とか生活保護者とか、もっとおりますよね、寝たきり老人の方々等、いろんな要するに社会的弱者という方々もある意味ではこの消費税を知らず知らずとは言いながら負担するわけでありますから、ここにわずかなお金を惜しんでスタートでつまずくようなことがあっては絶対いけない。私は、これは総理の公約と同じように受けとめて、ぜひ適切な対応をしていただきたいと思います。  その次に、消費税につきまして厄介な問題は転嫁の問題であります。どうしてうまく転嫁をするかということがこの消費税を円滑に運転していくためのキーポイントであることはもう言うまでもありません。  そこで、もう非常に端的にお伺いいたしますけれども、消費税の円滑適正な転嫁を実現するために具体的にどんなことをお考えになっておりますか、簡潔に御説明いただきたいと思います。
  125. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 御指摘のように、転嫁は今回の税制の中心的なポイントでございます。したがいまして、税制改革法案の中でもこの点を特に強調いたしておるところでございますが、具体的な対策といたしましては、この税の性格、仕組み等につきまして消費者、事業者の理解を得るようにPRをする、御指導を申し上げるというのが中心的な課題でございますが、さらにそれを具体的なものとして実施いたしますために独禁法の改正も今回一緒に御提案をいたしておりまして、消費税の転嫁方法、表示方法の決定につきましての共同行為を暫定的な措置として認めていただくようにお願いをいたしておるところでございます。  それからまた、転嫁の円滑化のためには下請企業に対するところの不当な買いたたきの防止あるいは転嫁指導、相談、PR等につきましてのガイドラインの設定、それから特に中小企業者を中心といたしまして転嫁力を強化するための需要開拓等につきましての予算措置、こういった各般の措置によりまして、この税制のねらいとするところの円滑適正な転嫁が行われるように、現在各関係省庁と密接な御連絡をとりつつ最大限の努力をいたすところでございます。
  126. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 ぜひPRそれから指導、この点は徹底的に行っていただきたいなと、こう思います。  独禁法の問題はこれから聞きますが、一つだけ実は問題を聞き忘れましたので、ちょっと戻りまして、衆議院の修正十七条の第三項という規定がございます。これは中小企業の事務負担の軽減のために簡易課税方式とかいろんなものを導入しました。それは不公平を拡大するとか、いやどうのとかという水野さんの答弁もございました。しかし、この規定の十七条三項で「消費税の仕組みの定着状況等を勘案しつつ、その見直しを行うものとする。」と、こう書いてありますが、私は恐らく執行してみて見直しをすることはあり得るし、またそれが必要なら当然やるべきことだと思いますが、私がお聞きしたいのは、わざわざこうした規定を修正として書かれたときにその見直しを行う時期、いつごろ、何年ぐらいたったら見直すのかなという議論があったのかどうか、あるいはなかったとしてもこれを修正するときに主税当局としてどんな気持ちを持ってこの修正を受けとめたのか、それをお聞きいたしたいと思います。
  127. 水野勝

    政府委員(水野勝君) これは直接的には衆議院本会議におきますところの御修正でございまして、私どもそれを承っておるところでございます。  この全体の趣旨からいたしますと、この消費税の仕組みにつきましては、転嫁の点をも含めましてもろもろの問題点も指摘されたところでございます。そうした点につきましては、まさにこの条文で書かれておりますところの定着状況等を勘案しながら将来においてということでございます。この点につきましての具体的な期間につきまして、タイミングにつきまして特段の事柄は承知いたしておらないところでございますが、まさにこの新税をお願いし、その実施状況等を見まして、その時点と申しますか、発足後の各界の納税者あるいは消費者、そうした方々の御意見を十分お伺いしながら、その過程におきましてさまざまな視点から見直しをさせていただくということではないかと思うわけでございます。
  128. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 それでは消費税と独禁法の関係について、公取委員長お見えでありますのでお聞きいたしたいと思います。  中小企業に係る価格転嫁のカルテルあるいは表示のカルテルを認める臨時の法律を附則で書いたわけであります。私は、これは要望でありますが、ぜひいろんな意味でガイドラインを早くつくって、そして習熟をさせていただきたいと冒頭に申し上げておきたいと思います。  実際歩いてみまして、中小企業の方々が大企業へ納入する業者あるいは下請業者、いわゆる中小企業の方々が親方や大企業に買いたたかれて転嫁できなくなるんではないかというのがちょっとした心配、これに対する方策をぜひガイドラインできちっとしていただきたい。  それからもう一つは、何回か議論ありますが、全国の皆さんもお聞きになっているので私はあえて質問させていただきますが、当店は税金分はおまけします、あるいは私の店では税金は全然かけておりませんよというような表示をするおそれがあります。しかし、この点は今回衆議院の修正におきまして、改革法の十一条だったと思いますけれども、事業者は、消費税を転嫁するものとするというふうに、するように努めるというのをちゃんと少なくとも法律上の義務として明記いたしましたので、私の店では免税業者といえどもきちんと仕入れには消費税がかかってきているわけでありますから、したがってその点がうやむやになって、税金は全然おまけしませんとかなんとかということを本当に出していいものか。むしろ、これは誤認させる表示、不当表示の例に入るんじゃないかなというふうに私は思うんでありますが、以上の具体の例を含めまして、私は今度の独禁法の問題についての御見解を承りたいと思います。
  129. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 二点にわたって御質問があったわけでございます。  前者の下請事業者の問題でございますけれども、これは言うまでもなく、現在の下請法におきまして、親事業者が不当な買いたたきなり減額をするということは即法律違反の問題になるわけでございます。したがいまして、現在中小企業庁と私どもの事務局で具体的に消費税の導入に当たりまして、そういった親事業者が経済的な優位な地位を利用いたしまして下請事業者に不当なしわ寄せをすることがないように、具体的なケースにつきましてガイドラインの作業をいたしております。  大事なことは、親事業者はもちろんでありますけれども、下請事業者にそうした事例をわかりやすくお示しをいたしまして、同時に問題が起こりましたときに的確に対応する。ただいま計画をいたしておりますのは、消費税が導入になりましたなるたけ早い時点で、私ども現在定期的な下請事業の調査というものをかなりのカバー率でやっておりますけれども、これは中小企業庁と連携をいたしまして、消費税の導入に伴うそういう転嫁の実態といったものをなるたけ早くかなり網羅的な調査を行いたいというふうに考えております。  それから、後者の表示の問題でございますが、これも各方面からいろいろな御質問なり御意見が事務局の方に寄せられておるようでございまして、現在事務局で検討いたしております。いずれ委員会としてきちんとした手引のようなものをつくりたいと考えておるわけでございますけれども、一般論として申し上げられますことは、ただいま委員も御指摘になりましたように、税制改革法の規定からいいまして、今回の消費税というものは基本的には転嫁が予想されておる税である。同時に免税事業者あるいは限界控除適用事業者、いろいろな納税の態様があるわけでございますけれども、免税業者といえども仕入れの段階で何がしかの消費税がかかっておる。理論的に言えばその部分は転嫁されるべきものであるという前提に立ちますと、もちろん価格政策というのは事業者の自主判断にゆだねられるべきものでありますけれども、販売に当たりまして、その消費税の負担の有無、あるいはそういったものを引用いたしまして、価格情報を消費者に提供するということは、消費者に不当な有利誤認を誘発するという観点から、これも具体的なケースに応じまして手引をつくるつもりでおりますけれども、ただいま委員がおっしゃいましたような例というのは、一般的に景品表示法にいう不当表示に該当するという考え方で整理をしていかなければならないというふうに考えております。
  130. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 独禁法の関連でいろんなケースがあると思います。価格の上げ方についても、やっぱり協議をして決めるのにその決め方が独禁法上違反する、いや今度の価格カルテルの範囲外だっていろんなケースがあると思いますし、今ここで一々私は挙げるわけにまいりませんけれども、ぜひ詳細なガイドラインを至急検討されてつくっていただくように各省とも詰めていただきたいと思います。  この問題に関連しまして、実は公取委員長にこういうことをお聞きするのはいかがかという感じもしますが、率直に言って、一つは、こうした独禁法の適用除外規定というものをつくりましたが、これが本当に実効の上がるようにするにはどうしたらいいのか。逆に言えば、相当の努力をしなければなかなか実効が期しがたいんじゃないかなという私は危惧を持っていることが一つであります。  それからもう一つは、この価格の転嫁の方法をめぐって、ひょっとしたら便乗値上げを誘発するおそれがないか。この消費税の転嫁の問題について、どこまでが便乗か、どこまでがいや転嫁したのかということは、なかなか実体経済としてはむずかしいわけでありますけれども、たまたま仕掛けができましてと言うと言葉は悪いんですが、仕掛けができてその仕掛けの中でやったということであれば、それは独禁法に抵触はしない、しかし実際中身は便乗値上げらしいねということになると、これは実はせっかくつくった仕掛けが便乗値上げを誘発したことになるのでありまして、その点がちょっと心配でありますので、この点についての御見解を承りたい。  それからもう一つは、私が聞くところによりますと、付加価値税あるいは消費税を導入する際に、外国ではこういうようなカルテル、つまり表示カルテル、価格転嫁の方法のカルテルでありますが、そういうものを臨時的にでも認めたことかないやに聞いております。事実かどうか、その点は御指摘いただきたいと思いますが、もしそうだとすれば、外国から見て何かまた日本は内国、国内だけで話をして取り決めをしているんじゃないかなという、そういう今、国際関係は非常に市場開放論議で花盛りでありますだけに、その点についても格別のやっぱり留意をする必要がある、この規定の運用については、私はそう考えておりますが、その三点について委員長の御見解を承りたいと思います。
  131. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 幾つかの点にわたりまして御質問があったわけでございますが、順序は先後いたしますが、まず今回の消費税導入に当たりまして、独禁法上の扱いについて、時限的とはいえ特別の取り扱いをするという政策選択をするのは、恐らく我々が承知する限りでは我が国が初めてであろうと思っております。立法過程に当たりましていろいろ議論があった由に伺っておりますけれども、基本的には我が国の近代税制のもとでこれだけあらゆる取引に課税されるという新しいタイプの間接税は初めての経験である。その意味で、消費者の側からは便乗値上げに対する不安、事業者側にとっては果たしてその分が十分に転嫁できるのかという不安というものが現実に存在し、導入の時点でそういう混乱とか不安を解消するために、いわば我が国の歴史的社会的な特殊な事情に基づいての政策選択であろうというふうに我々は承知をしておるわけでございます。  ところで、こういった我が国が政策選択をするに当たりまして、現在の世界における我が国の経済的地位からいって各国の誤解を招かないか、あるいは日本が競争政策の基本を変更いたしまして、国全体がカルテルぐるみになるような誤解を与えないかという御指摘でありまして、これはまさに慎重に対応をすべき問題であると考えております。  特に、先般アメリカの独禁当局と私どもで定期協議をいたしましたけれども、この問題について、もちろんこれは日本の主権に基づく国内問題でありますけれども、そういった不安、懸念が生じないように日本の公正取引委員会としてはアメリカ側にはっきり理由を説明いたしました。現在までのところ、それ以外の国からいろいろな懸念は寄せられておりませんけれども、日本の競争政策の基本は変更を生じることではないわけでございますから、今後とも日本と密接な関係にある諸国の競争当局者には、今回の考え方というものを十分必要に応じよく話し合ってと申しますか、理解させていく努力をしていくつもりでございます。  ところで、今回の政策を実効あらしめるためにはどうかということでございますけれども、基本的には、やはり政府が今一般的な姿勢をお示しになっておりますように、こういった政策が選択された以上は、事業者はもとよりでありますけれども、消費者にもわかりやすく内容を説明する。事業者の方が期待している内容に即しまして十分御活用になればいいわけでございますから、そういったことを一公正取引委員会だけじゃなくて、関係省庁とも十分連絡をとりまして、PRの手段には遺憾なきを期してまいりたいと考えております。  もう一つ、これは言うまでもございませんけれども、今回の共同行為というものは、適正円滑な転嫁ということで限定されたカルテルでございますから、ただいま提案されている法律にもはっきり書いてございますように、価格カルテルとか便乗値上げにつながるものにつきましては本来の独禁法違反のカルテルとして取り扱われるものでございます。したがいまして、我々としてはこの共同行為を行うためには当然届け出があるわけでございますから、届け出の段階でそういうことの起こらないような指導なり御相談に応ずることはもちろんでありますけれども、その届け出等を手がかりといたしまして、そういった違法なカルテルが行われないように、これは我々の使命といたしまして厳正に対応していかなければならない。同時に、そのことによって消費者の便乗値上げに対する不安というものが起こらないようにやっていかなければならないと考えております。
  132. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 便乗値上げにつきましては、恐らく経企庁の物価モニターなんかにも、活躍と言うと語弊がありますが、目を光らせていただきまして、この税制がそういうところから崩れることのないように、ぜひお願いいたしたいと思います。  そこで通産省にお願いいたしたいんですが、消費税問題をめぐって中小企業対策、特に繊維業界とかあるいは中小の小売業界あるいは下請中小業界、こういうところにおきまして、置かれている地位が、例えば過当競争の中にあるとか価格転嫁の能力、交渉の力が弱いとか、そういうことが現実にあるわけでありまして、したがってこういう業界に対しまして通産省として格別の配慮をいただきたい。つまり、財政による配慮をぜひしていただきたいと私はお願いいたしたいんであります。  これは、私が選挙区を回って話をしておるときにもこういう話が出ますし、そこに対して、政府としても、ちゃんと今度税法改正の十条にも修正案として入れてありますし、きちんと施策をやるんだということでありまして、転嫁の円滑化のための対策をどうするか、あるいは事務負担の軽減合理化のためにどんなことをやるのか、あるいは業界のために駐車場を整備してあげるとか、いろんなことも話に出ておりますが、そんなことについての考え方をこの際お伺いいたしたいと同時に、でき得べくんば、この法律行方とも関係いたしますけれども、きちんとした予算を、補正予算の組める時期でもあればそういうものを組んで、今から地ならしをやっていく対策が必要じゃないかなと私は思っておりますので、通産大臣にぜひお伺いいたしたいと思います。
  133. 田村元

    国務大臣(田村元君) もう既に御承知のごとく、消費税というものは消費に広く薄く負担を求めるものでございます。消費者がその最終的な負担者となることが予定されておる間接税でございます。したがいまして、消費税が適切に価格へ転嫁されるような環境を整備することが何よりも重要であろうと思います。おっしゃるとおりでございます。  このために、通産省といたしましては消費税の性格についてのPR、一定の要件のもとに転嫁に係るカルテルを認める暫定的な立法措置の活用とともに、中小小売商業者による消費税の転嫁を円滑にするために、転嫁事例の収集とか提供及び転嫁に関する指導、相談、お客様を集める集客力、そういうものの強化のための商店街の活性化対策に対する財政金融、税制上の措置を総合的に講ずることを検討中でございまして、現在大蔵省と調整を行っているところでございます。  なお、中小企業に同じく下請中小企業の問題がございます。下請中小企業によります消費税の円滑かつ適正な転嫁のために、親事業者に対する特別調査等の下請代金法というのがございますが、この下請代金法の運用強化、取引先開拓のための 下請中小企業についての視聴覚情報の整備提供など、所要の対策を講ずることによりまして転嫁の環境づくりに努力をいたしておるところでございます。  それから、予算の問題でございますが、先ほど申し上げましたように、大蔵省と十分の打ち合わせをいたしておるところでございます。何分にもこれだけの税制改革をやるのでございますから、画竜点睛を欠くようなことになっては何にもなりません。率直に言いまして、この消費税という間接税がうまく成功するかどうかは、おっしゃったとおり転嫁にかかっておると言ってもよかろうかと思います。私どもは、きめ細かい対策を講じますために、所要の予算は必ず確保してまいる所存でございます。
  134. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 中小企業、今挙げたような方々は消費者と第一線でぶつかる方もかなり多いわけでありまして、そういう意味でかなり心配していることは事実であります。そういうことで、先ほどの年金、生活保護者に対する配慮と同じように、この税制を軌道に乗せるために少々のお金は惜しんではならないという部面の大事な一つだと思いますので、ぜひお願いいたしたいと思います。  時間も大分迫ってまいりましたので、あと二問だけ消費税についてお伺いしたい。  一つは、具体的な問題で国民に少し知っていただいたらいいなということでありますが、転嫁をめぐる具体的な問題で郵政大臣にお伺いいたします。  郵便はがきは今四十円でありまして三%で一・二円上がるわけでございますが、封書は六十円でありまして一・八円になります。法律の附則三十一条に郵便料金の封書のことなんか書いてありますが、実は余り詳しくは、ごちゃごちゃ書いてあって一体何を言うのかわかりませんので、郵便はがきは一体幾らになる御予定でありますか。
  135. 中山正暉

    国務大臣(中山正暉君) お答えを申し上げます。  消費税は、広く薄く国民に御負担をいただくということで、郵便料金も例外ではございませんで、今度は消費税ということで御負担をいただく。その中で、今、郵便事業というものは、六十一年に十五億の累積の赤字がございましたが、六十二年に二百六十九億単年度で利益が上がりましたものですから、今、黒が二百五十四億ございます。しかし、六十三年度の予算の中では百六十三億の赤字計上をいたしておりまして、九十一億という黒が残ることになります。その後はこの消費税法案が、今お話のございましたように附則の中で、郵政審議会の議を経てこの法案の成立以後一年以内に一回に限り料金の値上げができるということになっておりまして、全国に二万三千八百四十九あります郵便局で全逓の皆さんとか全郵政の皆さんが大変御努力をいただいたおかげで黒字転換をしたわけでございますが、消費税課税による費用の増加分というのはどうしてもこれは転嫁させていただく必要があるということでございます。  イメージとしては、今はがきが四十円でございますが四十プラス一、それから六十円の封書が六十プラス二というような形になるのではないか。これは外国にもそういう端数を決めました例もございますし、そういうことでぜひひとつ国民皆さん方に御理解を得て、日本の郵便というのは翌日に着きます。歌の中では、三日おくれの便りを乗せてなんという歌がございますが、日本の手紙は全部翌日に着きますので、どうぞひとつよろしくお願いをいたしたいと存じます。
  136. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 それでは、ほかの電力料金とか鉄道料金、運賃の問題、競り売りの場合、いろんなことがありますが、いずれ同僚議員がおやりになると思いますのでそれだけにとどめまして、最後に、消費税が新しく執行されるときに一つはPRがいかに大事であるか、これは税法の中にも十一条の修正として書かれてありますが、それはそれとして二つだけお伺いいたしたいと思います。  一つは、国税当局の執行体制をどうしていくのかなということであります。現在、恐らく五万人ぐらいの徴税吏員がおられるわけであります。もちろん、物品税とか入場税、通行税、そういうものにかかわっている職員は、今度はその税がなくなるわけでありますから、それにしても人員の体制をどういうふうに整えるのかということについての御見解を承りたい。  それからもう一つは、これはなかなか難しい政治的なものでありますのであるいはどなたが適当なのかわかりませんが、今度の衆議院の修正におきまして例の消費税に関する弾力的運営という十七条の二項の規定があります。これはなかなか新聞等を見ましてもよくわかりませんし、いずれは国税当局におきまして個々の具体的な内容をきちんと示していただかなければ、これはやる人も払う人も消費者もだれもわからないというわけでは実は困るわけでありますので、その辺の心組みというかそんなものをお聞かせいただきたいと思います。
  137. 伊藤博行

    政府委員伊藤博行君) お答え申し上げます。  第一点目の消費税の執行体制等についてどうかという点でございますが、今回の消費税の執行に当たりましては、今、先生のお話にございましたように、個別消費税の廃止等に伴う要員の活用あるいは税務事務全般にわたります合理化、効率化あるいは電算処理の一層の推進等を図ることによりまして可能な限り効率的な執行体制で臨むことといたしたいと思っております。消費税を適正かつ円滑に執行するため、庁、局、署を通じまして所要の機構の整備を図る必要があろうかと思いますが、今申し上げました原則で臨んでまいりたいと考えております。人員の点につきましても、今申しましたように可能な限り効率的な執行体制で臨むという大前提でございますけれども、それでもやはり消費税の導入に伴いまして事務量がかなりの程度増加することは当然予想されます。したがいまして、それに要する人員も相当程度になろうかと思いますけれども、合理化あるいは効率化等を図ってもなお必要となる増員につきましては、関係方面の御理解を得ながらその確保に努めてまいりたいというふうに考えております。  それから二番目の点でございますが、先生お話しのような規定が税制改正法案に盛られたということは私どもも十分承知し、また国税当局といたしましても重く受けとめておるところでございます。ただ、具体的な運営の内容につきましては、その修正の趣旨に沿って実のあるものを検討しなきゃならないというふうに考えておりますけれども、今現在では、まだ今後検討させていただくということで、本委員会での御審議も踏まえつつ積極的に検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
  138. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 私はこれ以上十七条は聞くつもりありませんけれども、しかし、これは要するに意味のわかるようにやっていただきたいということなんです。意味がよくわからないんですね。税法が施行になれば消費者が税金を負担するわけでありますから、したがって、負担しているということがちゃんと流れの中でわからなければおかしいわけであります。何かどこかになくなるような話もあるとかないとか聞くので、私は今これ以上追及するとかなんとかする気持ちはありません。ただ問題は、こういう規定が入っておるならば、これに即してこうだということだけは、これは納税者というか、いわゆる事業者だけでなしに、消費者の立場に立って私はある程度きちんとしなきゃいかぬなと、こう思っていることだけを申し上げておきます。  以上で消費税を終わりまして、最後に地方財政についてぜひお聞かせ願いたいと思います。  今回の税制改革は、国、地方を通じての税制改革であります。したがって、八千七百億ぐらいの住氏税の減税は、国税と同じペースで税率も緩和をし三段階にする、控除も上げる、こういうことによって負担の軽減を図っているわけでありますが、しかし、その減税額のほかに国税の法人税、所得税へのはね返りもありますし、さらには消費税を導入したために約一兆九百億ぐらい電気税、ガス税及び木引税がなくなるし、また料理飲食等消費税の調整過程、娯楽施設利用税の調整併課という問題があって、結局二兆七千億ぐらいの減収になることが既に示されております。私は今回の全体の税制改革の一環として国民の皆様にも受けとめていただきたいわけでありますけれども、しかし地方財政、三千三百の地方団体の財政は尋常一様じゃない。それぞれみんな個性があり、今かなりの赤字を抱えております。そういう状況の中で、この税制改革によって生じた二兆九千億に対してきちんとした補てん措置がとられているのかどうかということが一つであります。  それから、そういう補てん措置によって、当面財政運営は支障がないと認識されておるようでありますが、それで間違いないのかどうか。  もう一つは、財政、今度の税制改革がいつ平年度化するか。つまり何年か先に、法人税なら来年、再来年といって平年度化するという、何年間の平年度化の期間があります。そうした平年度化する、つまり税制改革がきちんと落ちつくときまでに経済の状況なりいろんな状況の変化がありまして、果たして今の地方財政の手当てで十分なのかどうか。もしそういうことで地方財政に支障が生ずるような状況であればどうするのか。何か自治大臣と大蔵大臣の覚書もあるやに承っておりますが、その点を私は自治大臣から御説明いただきたいと思います。
  139. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) お答えを申し上げます。  今回の税制改革により生ずる地方税及び地方交付税の減収は、今、先生御指摘のとおり約三兆円程度でございますけれども、これに対しまして消費税の収入額の五分の一相当額、約一兆一千億を消費譲与税とし、また消費譲与税を除く消費税の収入額の二四%、一兆円強でございますが、相当額を地方交付税として確保をし、税収減の現況や財政力等に配意をして譲与税や交付税の配分を適切に行い、地方財政の運営に支障を生じないように措置をいたすことといたしております。  なお、今回の税制改革においては住民税約一兆円の減税については、その一部についてのみ消費税を対象とする地方交付税により措置することといたしたために、衆議院修正後では地方に約八千八百億円の減収超過額が生ずることとなっております。従来においても税の大幅な自然増収が見込まれる際には地方税の減収財源を自然増収等によって賄っているところであり、最近における地方税の自然増収が六十二年度約二兆円程度見込まれることから、純減収額に対しては自然増収により補てんをする等を基本にしてまいりたいというふうに考えております。  なお、御指摘のように、三千三百余の個別の地方団体は財政力が千差万別でございますので、自然増収の少ない地方団体等については、地方交付税の配分を通じて支障を生ずることのないように措置をしてまいることといたしたいと思います。  なお、平年度化するまでの間、万一財政の運営に支障を生じた場合はどうかということでございますが、地方財政計画の策定等を通じて適正に対処をしてまいりたいと思いますし、先生御指摘のとおり、ことしの六月二十七日に消費譲与税また消費税を交付税の対象税目にするということ以外に、「税制改正に伴う増減税措置が平年度化するまでの各年度において、前二項により算出される地方税財源によっては地方財政の運営に支障が生ずると認められる場合には、大蔵・自治両省間で適切な対応措置を検討するものとする」という覚書を締結いたしてこの事態に備えてまいっております。
  140. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 三千三百の団体であります。したがって、大臣もお触れになりましたように、地方財政と国の財政というといつでも一対一の話でありますが、地方財政は、例えはいいかどうかはわかりませんが、我々はアジサイの花だと言っているわけです。一つを見れば確かに一つの花でありますが、一つ一つが花でありまして、三千三百の地方団体があって地方財政というものがあります。したがって、今、大臣がお触れになりましたように、三千三百の団体の自然増収なんというのはまことにアンバランスでありまして、東京都はどかっと入っても山村僻地にはまず皆無と言っていいわけでありますから、そういうところを御勘案いただいて、地方財政としてそういう意味での支障のないようにぜひお願いいたしたいと思っております。  時間があと九分でありますので、あと二つだけ、一つは、例の補助金カットの暫定法律の措置の問題であります。これは六十三年度で期限が切れることはもう御案内のとおりでありまして、金額がどうかとかと申し上げるわけではありません。これは地方と国の信頼関係の上に立った一つの約束事でありますので、この点をきちんと踏まえて今度の当初予算編成では措置をしていただきたいということを私は強くお願いいたしたい。これはこの前の新聞記事を持ってきたんですが、自治大臣もこの問題については、私は来年度予算編成過程で国と地方との信頼関係が損なわれることのないよう補助負担率復元に全力を傾注したいと、こう述べております。  私は、この中で一つだけ実は妙だと思っていることがあります。というのは、生活保護を例にとりますと、生活保護という経常経費であり社会保障のいわば中心的な課題のものが暫定、暫定で本当にいいのだろうかという姿勢の問題がやっぱりあると思うんです。ここは公共事業とは多少ニュアンスが違いまして、どこがどうするのではなくて、そういう国の社会保障の基本にかかわるところが暫定だというのは、もうこの辺できちんとやめていかなきゃならぬ問題だなと、そういうふうに受けとめております。  いずれにいたしましても、この信頼関係の問題につきましては、これ以上こんなことで国と地方の間のトラブルがあってはいけないし、もっと本当に相互に理解を深めていかなきゃならぬ問題であると私は思いますので、これは総理から御答弁をいただきたいと思います。
  141. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今、御指摘のありました補助金等に係る暫定措置期間終了後の問題、私が大蔵大臣であり古屋さんが自治大臣であったときの覚書が今でも存在しておるわけでございます。その事情は十分承知しておるつもりでございます。  今、御指摘がありましたように、何よりもこの信頼関係というものを大事にいたしまして、諸情勢の変化とか、それから国、地方の役割分担とか、財源配分のあり方とか、そういうことを勘案して、予算編成時においてこれは適切に対応すべき問題であるという問題意識をまず持っております。  それから、御意見の中にございましたが、例えば公共事業の場合、いわばこの事業量、事業費の問題の議論もございましょうが、生活保護費の問題等につきましては、昭和二十一年でございましたか、あれ以来の議論も私なりに承知しておりますので、それらのことを踏まえながら対応すべきものであると考えております。
  142. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 今度の予算編成では少なくとも解決の方向に向かってぜひ前進されることを私はお願い申し上げますし、自治大臣もこの前の全国大会では先ほど述べましたようにきちんとした御意見の発表もされておるわけでありますから、総理としてもぜひその点を厳しく受けとめて対処していただきたいと思います。  それからもう一つは、地方行政の問題に関連いたしまして、新聞だけでしか承知いたしておりませんが、いわゆるこの行政改革、あるいは財政改革税制改革の次の課題として総理は「ふるさと創生」という政策課題に取り組むということがしばしば書かれております。まだ、理念や目的やどういう方向に行くのかは私も聞いておりませんしわかりませんが、いずれ総理のお考えでリーダーシップをとっていただいて、ぜひそういう方向をまとめていただきたいと思っております。  新聞紙によりますと、地方がソフトをつくってソフトに対して援助をしソフトを完成するために国も手を差し伸べる、つまりリーダーシップはどちらかというと地方だなと、そのためには金も面倒を見ますということが新聞紙上に出ておりますが、私はお金と同時に、この点はいずれ行革審でもやるようでありますけれども、地方と国の財源配分、税源配分、仕事のやり方、こういうことについてきちんとした御議論をしていただきまして、例えば地方制度調査会の第十六次答申の権限の分配の問題も取り上げていただきまして、やっぱり仕事をやるためには力も必要でありますしお金も必要であります。しかし、いずれも抑えられておって、「ふるさと創生」とは果たしてどうかなという感じを持っておりますので、この点について総理の所見を承りたいと思います。
  143. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 第四次全国総合開発計画という一つの下敷きは私はできておると思います。そして、私が申しておりますのは、今、降矢委員指摘なさいましたとおり、その地方には地方の歴史なり文化なり産業なり伝統なりがある、それらを地方で青写真をおつくりになって、それを国の立場なりにおいていかにしてサポートするかという考え方で、メニューをあらかじめ国の方で示してその選択にゆだねるというような手法はとりたくないという気持ちが一つございます。しかし、御指摘なさいましたように、権限の問題と財源の問題とこの二つを御指摘になりました。まさにそのとおりであります。  権限問題につきましては、地方制度調査会の答申等もございます。また、行革審等におけるいろんな御議論も今日まであっておるところでございます。  それと、今次の税制がいわば当面この地方財政に支障がないようにという考え方で対応されておりますが、真の自主財源とかいう問題は今後の問題として残されておる問題でございます。それだけに、財源問題についても十分検討に値するものであるというふうに考えておるところであります。
  144. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 最後に、税制改革に対する総理の御決意を改めて承りたいと思います。  これまでも何回か命運をかけるとかあるいは二十一世紀に対するかけ橋をつくるというようなことを総理はおっしゃってまいりました。今度の税制改革にかける総理の決意のほどはひしひしと伝わっておりますし、これからもぜひそういうお気持ちでやっていただきたいと思いますが、最後総理のこの税制改革に対する御決意を承りまして、私の質問を終わりたいと思います。
  145. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 本日も御議論をいただいております提案いたしました改革案、これは本当に我が国の経済社会の活力を維持しながら、国民の皆様方が税に対する公平感というものの基本の上に立って国際化に即応した長寿福祉社会をつくっていこうということで、一生懸命皆さん方の御意見を吸い上げながら構築した今度の案でございます。民族悠久の歴史の中においては、しょせん竹下内閣などというものはほんのその一こまにすぎないものでございます。しかしながら、二十一世紀を展望したとき、また経済が比較的安定しております今日の時点こそ、まさにこれを仕上げていただくための環境が整った状態ではなかろうかということに思いをいたしまして、精力的に皆様方の御審議をお願いし、正確な答弁をもってこれに対応すべきものであると考えております。
  146. 降矢敬義

    ○降矢敬義君 終わります。(拍手)
  147. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 次に、福間知之君の質疑を行います。 福間君。
  148. 福間知之

    ○福間知之君 今次税制改革案の立案の過程というものを少しく振り返ってみますときに、過ぐる六月の十四日の自民党税調による大綱の決定、これに対する政府税調の言うならば追認、そして要望事項の提出、その上での最終答申という経過をたどっているわけでありますが、考えてみると、どちらかと言えばこれは異常なと言える形で推移したものと私は思います。素案が示される前の二十回余りの公聴会、素案提出後の公聴会、それらは実質的には一体何だったんだろうかという疑問が残るのであります。当初から、この大型間接税導入というものを企図して消費税創設を目指した竹下自民党内閣の姿勢だけが目立っていると言わざるを得ないのであります。  公約違反関係についても種々申されてきましたが、七九年の一般消費税は財政再建のための増税、八七年の売上税は減税のための財源確保、そして今回の消費税は抜本税制改革の一環あるいは高齢化社会に向けての財源確保ということによって提起をされております。政府・自民党はこの十年間、大型間接税創設のみに腐心してきたと言っても過言ではないかと思います。そして、七九年十二月の財政再建に関する決議、八五年二月の政府統一見解、そして八六年六月の衆参同日選挙における選挙公約、これらは国民に対する政府・自民党としてのいわば三つの公約であったはずであります。今次消費税によって、この越えられないハードルを無理やりに飛び越そうとするのは、税制改革に対する国民理解と合意を得る努力をみずから放棄して、議会制民主主義に背を向けるという姿勢にほかならないのではないでしょうか。  竹下内閣は、中曽根前首相から引き継いだ負の遺産とも言うべき民活路線、特にその悪い部分、さらに税制改革、この二本柱のうち、民活路線につきましてはいわゆるルクルート疑獄によってその正体をあらわにしたとも言えます。そしてもう一つの消費税こそは国会決議に反する一般消費税であって、政府統一見解でやらないと明言した縦横十文字、投網をかける大型間接税そのものであって、もう一つの負の財産とも言えるのじゃないかと考えるのでございます。  私は、税制の抜本約な改革と言う以上は日本の経済国民生活の水準をどうとらえ、その改革目標をどのように設定し、現行の税制全体、また個別のどこに問題があってどのように改革をしていくのか、第一段階に何を実施し、第二段階にはどうするのか、改革に当たっての国民理解と合意をどのように形成していくのか、こうした点について心を配って国民の前にまず明らかにすることが必要だと存じます。  先ほども同僚議員が指摘いたしましたが、竹下内閣は、しかし抜本改正をお題目のように唱えるだけで、高齢化、福祉社会、公平と簡素などを枕言葉に並べ、そして直ちに直間比率是正イコール大型間接税導入という短絡した姿勢をとっておるのであります。私は、そういう点についてまず竹下総理大蔵大臣の所見を伺います。
  149. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今、福間委員の御指摘のような批判に答えながら今日まで来ておるわけでございますので、私の方は私の方なりに一生懸命お答えをしなきゃならぬと思っておるところであります。  まず、御議論の中にありました公約違反問題を避けて通るわけにはまいらないと思います。 この問題につきましては、一つは、今もお話のありました昭和五十四年十二月のいわゆる財政再建決議なるものがあろうかと思うわけであります。これにつきましては、当時も私は大蔵大臣でございましたが、国民福祉充実のためには安定した財源が必要である。が、しかしながらいわゆる一般消費税(仮称)はその仕組み、構造等について国民理解を得るに至らなかった。よって行政改革をやり、歳出の節減合理化をやり、税制の不公平是正を含め抜本対策を行ってこれに当たるべきであるという御趣旨でございました。あるいは当時は、昭和五十九年というのを念頭に置かれての御決議であったかと思います。したがって、その後行政改革路線というものを一生懸命に、前々内閣以来これを継承してまいられました。それが国鉄の分割・民営という一つの出来事に象徴されますように、実効が私は上がりつつあると思います。  なお、これは寸時たりとももう済んだというふうな印象になってはいけないということは十分承知しております。  そして、次には財政の節減合理化でございます。大変きょうもいろいろ議論がございましたが、あるいはつけ回しでございますとか、そういう批判も受けながらいわゆる昭和五十五年予算はシーリング一〇%増しでございましたが、五十六年度七・五%、五十七年度〇%、五十八年からいわゆるマイナスシーリングという厳しいかせをみずからに課しながら努力をしてまいりました。  そしてまた、税制の問題につきましては、不公平の観点、いろいろな観点から御議論がございました。途中、ささやかな所得税減税等は行われましたものの、本格的改正は行われないままに今日に至って、その手順を踏んでみるならば、まさに税制の抜本改正というものを議とし、これを御審議いただく時期に到達したというふうにこの決議の問題については考えておるわけであります。  次の問題は、やはり売上税等の、以前の国会における昭和六十年二月六日の予算委員会等における前総理の発言であろうかと思うわけであります。前総理の発言は、これは大変重いものであるということをよく承知いたしております。したがってその重い発言というものを下敷きにいたしまして、いろんな例外もつくりました。そして、いわゆる売上税というものを提案いたしたわけでございます。しかしながらこの問題は、国民の皆様方の理解と協力を得るに至らなかったわけでございます。  ただ、福間委員に正直に申し上げますことは、この「多段階、包括的、網羅的、普遍的」という表現を使いまして、そして免税点が高くて、それからこの税外品目が多かった。それが少なくなったという点につきましては、あるいは多段階、包括的、網羅的の方へ今度の案の方がむしろ近づいておるではないかという批判は、あえて受けなければならないと思っておるところであります。  その次の問題が、売上税の挫折に伴うところの反省からくる今度の問題になってくるわけでございます。もろもろの意見を集約していただきまして今次の税制改革法を提案したところでありますが、国民の皆様方にその手順等十分御理解を得なきゃならぬという考え方からいたしまして、今手順をお示しになりましたが、地方公聴会等も根を詰めてやりました。そしてまた、いろんな段階に当たって各団体等の御意見も十分に承りました。そうして成案を得て今日御議論をいただいておるというのが現状ではなかろうかというふうに私は認識をいたしておるところであります。
  150. 福間知之

    ○福間知之君 総理の答弁そのまま私は了解するわけにはまいらぬわけでありますけれども、いずれにしても、私たちとしては消費税ありきというのがまず前提になっているということをぬぐい去ることができないのであります。ということは、今次国会における審議一つ見ましても、七月に開かれた臨時国会、初期は七十日であった。第二段階は五十九日延長された。今回は年末二十八日まで三十四日間という都合百六十三日にわたる通常国会よりも長い会期が設定されて審議が行われているわけであります。  本来、アメリカのレーガンさんの減税政策一つとっても、あるいはまたヨーロッパにおけるサッチャーさんを初め諸国の税制議論の実態を見ますと、少なからずこれは他の法案などよりはもっと時間をかけ、濃密な審議というものを行っていると私は承知をしております。そういう意味じゃ、臨時という名のつく国会で二回も会期を延長して、それでもせいぜい半年足らずでございます。そういう拙速主義といいますか、やや強引とも言えるような法案の処理の姿勢にまず私は納得がいかない。先ほどの御質問者への御答弁じゃありませんが、環境が熟したからだというそういうとらえ方、それだけでは国民は必ずしも納得しないのじゃないんでしょうか。  ましてや、今回のようにリクルート問題というのがその前段で大きく世間を覆ったわけでありまするから、そういう中の国会というのは、むしろ政治倫理という竹下総理の姿勢を具体的に示すならば、いち早く国会は終わって出直しということが私は議会制民主主義の筋ではないかと思うんです。決して私たち野党がこの税制問題について考えを及ぼさないというそういうことではないのでありまして、国会はこの年末で終わるわけじゃないんです。来年もあるわけですから、そういう点で、私はどうも強引なやり方が納得できないということを冒頭申し上げておきたいと思うのであります。  さて、税制のあり方ということにつきましては、それぞれ国民の立場でも考え方に相違はあろうとは思うんです。それを究極的には国会議論を通じて与野党間で収れんをしなきゃならない、これは私たちの義務でもあるわけであります。  そういう前提ではありますが、それだけに単にいわゆる政策論というものを優先するということであっては、私たち日本における国会としての責務は果たせるのかどうか、政策論に埋没をしてしまっちゃいけないのじゃないか。ある専門家は、この税制についての理論的な考え方として二つの点を指摘しております。  その一つは、税制というのは、その国の、そしてその時代の国民性や風土、社会、文化等の表現でなければならない。したがって、日本の現段階の諸事情を十分に踏まえて、それに最も適合する税制のあり方を追求すべきである、これはわかりますね。  それからもう一つ大事なことは、今申した日本的な特殊性を踏まえた上で税制を憲法秩序に組み込まなければならないという大事な視点であります。二十一世紀を志向しようとお互いは口にしているわけでありますが、それならば、二十一世紀を志向するところのいわゆる福祉憲法、平和憲法である日本国の憲法の諸原理に基づいて、それに最も適合するような税制を追求すべきではないか。基本的な考え方としてそういう二つを強く指摘する向きがあるわけであります。  私はもちろんこれは同感であります。朝方の議論でも、国民の主権という立場からこの税制というものを考えていくことが大事であるということが言われ、また竹下総理みずからも、そもそも国会というものが生まれたのも、言うならば税金をどう取ってどう使うかということが国民的に大問題だから国会というものが生まれたという歴史を語っておられましたね。私もそれには同感であります。それほど諸事万端、今日の複雑な社会の中で国会が処理すべき政策課題は山積しております。なかんずくこの税制という問題は、国民諸階層に大きな利害を与える関係を持っているわけですから、そもそもの昔に国会はそのことを一つ象徴的に議論する場として発生したということもうなずけるわけであります。そんなことで、私は今回の税制の扱いについて先ほど申したようにまず胸にドスンと落ちない、何だか強引に審議に引っ張り込まれているというふうな印象を払拭できないのであります。  さて、私はきょうは限られた時間でございますから、消費税を中心に幾つか質疑をしたいと思います。その前に、その前提として衆議院段階における改革法案そして消費税法案にかかわる修正項目、これに関してまずお伺いをしたいと思うのであります。  まず最初に、価格の転嫁に関する規定がございます。税制改革法第十一条でございますが、簡易課税制度の見直し規定の挿入、第十七条。そして三つ目は、六十四年九月三十日までの弾力運営の規定挿入、十七条の二項。退職所得控除についての項目、寝たきり老人世帯の扶養控除百二十万円に引き上げ、この五点があるわけでありますが、消費税法ではなく立法形式上はあっても、追徴金をいきなり課すなどとしないという意味、あるいは徴税はあくまでも四月一日から行うとしているようでありますが、このあたりはその後具体的にどのように固まっておりますか。
  151. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 衆議院の本会議におきまして御指摘のような修正が行われ、具体的には税制改革法案の十七条二項といたしまして「国税当局においては、昭和六十四年九月三十日までは、消費税になじみの薄い我が国の現状を踏まえ、その執行に当たり、広報、相談及び指導を中心として弾力的運営を行うものとする」という条文を私どもいただいたわけでございます。まさにこの条文の趣旨に則しまして、それからまた、本日から具体的にお願いをいたしております当参議院におきますところの御審議も踏まえまして、私どもそれから国税当局あわせまして積極的にこの中身につきまして検討をしてまいりたい。  本日からの御審議も踏まえるということでございますので、具体的に今ここで申し上げる中身は固まっていないわけでございますが、この条文の趣旨に従いまして実のあるものを固めるようにいたしたいと考えているところでございます。
  152. 福間知之

    ○福間知之君 特に私は、この転嫁に関する規定について、今も説明がありましたように、事業者が取引に際し課せられる消費税額が明らかになる措置を講ずる場合をも踏まえ必要な施策を講ずるものとする、国の義務を明確化する必要があると思うんです。  それから、弾力的な運営という問題がさらにあります。先ほどの答弁にもありましたが、この転嫁に関する場合の弾力的な運営というのは一体どういうふうに我々は理解をしたらいいのか。この修正におきまして、条文は、他の法律に対して別段の定めをするということにしたものなのかどうか、通則法とか徴収法とか、そして今回の消費税法、いわゆる租税法定主義という立場からいって弾力的運営というものを大蔵省はガイドラインをつくられるようですが、果たしてそれは法律的に有効なものなのかどうか。四月一日から実施をする、これは法律の定めであります。それなればあまねくそれは実施をしなきゃならない。例外は認められるはずのものではありません。どうにもこれは私は納得ができない衆議院における修正というか、修正方向を目指した考え方の合意というか、そういうことなんですね。具体的にはさっぱりわからない。だから、これは納税者側にとってみれば全くもって不可解な問題だと言わねばなりません。
  153. 水野勝

    政府委員(水野勝君) ただいま申し上げましたように、税制改革法案の中にこうした規定が修正によりまして織り込まれたところでございます。税制改革法案と申しますのは、第一条にもその趣旨が述べられておりますが、いわばこの法律の理念、基本的な考え方、それから今回の税制改革で行おうとしておる基本的な事柄の粗筋をお示しをしているというものでございます。したがいまして、この税制改革法案の規定、条文に従いまして具体的な権利義務が発生をするというものではないわけでございます。  しかしながら、まさにただいま申し上げた今回の税制改革の理念、具体的な権利義務関係は各個別法に規定されておりますが、まさにその理念をここで規定をいたしておるわけでございます。その理念法の中でこのような規定の改正をいただいたわけでございます。したがいまして、今後この個別具体的な税制改正法の執行に当たりましては、まさにこの理念に基づきましてこの法案の執行をする義務が国税当局としてあるわけでございます。その理念のままでは具体的な執行はできないわけでございますので、本参議院におきますところの御審議も踏まえまして、必要に応じ、納税者、消費者、こうした方々につきまして、その中身が具体的に明確になるような措置をいたした上で、この趣旨に沿った執行を行っていく必要があると考えているところでございます。
  154. 福間知之

    ○福間知之君 水野さん、先ほどもあなたおっしゃられたけれども、「消費税になじみの薄い我が国の現状を踏まえ」云々、こういう趣旨はわかります。じゃ国税当局の業務の執行というのは、広報、相談、指導、この三点のほかに、私は調査があると思うんです。この調査、まあ査察と言ってもいいんですが、これが落ちているということは、四月の一日から六カ月間は消費税の税務調査が行われないと解釈ができるのであります。しかし、消費税は間接税と言われておりまして、会計年度を締めてみなければ納税額はわからないという、この場合、性格を持った間接税であります。極めて計算方法は法人税と似ておりまして、会計期間中にその期間の消費税の調査考えられない。したがって、何のために調査をしたのか、少しわからないわけであります。消費税の調査はしなくても法人税、所得税の調査は可能でありまして、こうした調査をしながら消費税の指導をすることも十分考えられる。したがって、この修正項目が入ったとしても税務当局の姿勢に変化があるとはもちろん思えません。  それから、九月三十日まで弾力的運営をするとの規定でありますが、しからばこの九月三十日までと十月一日以降の税務当局の取り扱いは具体的にどういうふうな違いが出てくるんでしょうか。
  155. 水野勝

    政府委員(水野勝君) ぎりぎり詰めてまいりますと、四月一日から適用がされる、一番早い企業でございますと、例えば四月決算法人につきましては四月一カ月分につきましての申告が六月末に行われるということでございますので、そうしたケースを頭に置きますと、広報、相談、指導を中心としてということで調査を入れてないということは、そういう字義から申しますと、意味のないことではないというふうに申し上げられるわけでございます。しかしながら、この十七条二項は、そのような一つ一つの言葉の意義として規定をいたしておると申し上げますよりは、先ほど申し上げましたように理念法でございます。ただ、委員指摘のように、四月一日から適用されるということは、四月一日から転嫁をお願いし、消費者にその御負担はお願いをしておく必要はあるわけでございます。  具体的には三%相当分の税を転嫁していただくことは、それが施行されるという意味でございます。ただ、その納税義務はそのように発生をいたすわけでございますけれども、具体的には、その納税額の計算でございますとか、その申告の方法でございますとか、それからそれにつきましての国税当局のそれに対する対応の中身でございますとか、そういった点はもろもろの側面があるわけでございます。そうした側面に着目いたしまして、国税当局としてはこの条文に則した、趣旨に則した運営を行うということでございます。  ただ、現時点でここまでのものでございますということは、これから参議院の御審議をお願いしているところでございますので、具体的にはただいま申し上げる段階にはないわけでございますが、いずれにいたしましても、ただ理念だけでは動くわけではございませんので、この御審議も踏まえまして、国税当局、納税者、消費者にもその中身のわかるようなものをいろいろな形で明らかにしてまいる必要があると考えておるところでございます。
  156. 福間知之

    ○福間知之君 この消費税は、いわゆる納税事業者が要するに一年、まず常識的に一年間の事業内容を精査して計算をして、そしてその結果、売り上げが何ぼで仕入れ税額が何ぼで差し引き納める税金は何ぼだということがわかるわけです。そうでしょう。後ほどこれは触れなきゃならぬのですが、スーパーマーケットではレジをたったったっとトータルして、仮に一カ月なら一カ月ごとにトータルで計算する、そういうことが認められているわけで、どの商品にどれだけの税金が今月必要なんだと、そんなことは関係ないんです、これ。極めてラフなんですね。だから、今言った弾力規定の運用にしましても、まず半年あるいは一年先に計算が初めて納税義務者から上がってくるわけですね。それを四月一日から半年間弾力的運用だといったって、後の半年間どないするんですか、これ。意識的に脱税をしようと思えばできるかもしれぬし、あるいはまた無意識的にぽかをやった、ミスをやって納めるべき税金を計上しなかった、計算上出さなかった、そんなことも全部ほおかむりしましょうということにこれはなるのじゃないんですか。正直者がばかを見るということになることを私は恐れるんです。(「不公平税制やっているんじゃないか」と呼ぶ者あり)
  157. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 先ほど申し上げましたように、こうした税になじみの薄い我が国の現状でございますので、九月三十日を過ぎましたら国税当局ががらりと態度を変えてということはもちろんあり得ないわけでございまして、きめ細かな親切な行政を行うということは、これは変わるべきものではないと思うわけでございます。  ただ、この十七条二項というものが衆議院修正によりまして具体的に挿入をされたというこのことは、私どもといたしまして重く受けとめて、そうした弾力的な親切な運営ということ、プラスしてこの規定が意味のあるようなものとしてはやはり私ども何らか具体的なものを考えてまいる必要があると考えておるところでございます。
  158. 福間知之

    ○福間知之君 応援団から不公平税制やっているんじゃないかという話がありますが、そういうことにつながる危険があるということは否めません。私は、大蔵当局も衆議院でのそういう修正を踏まえて今検討されているだろうと、こう思いますので、これは速やかに明らかにしていかないと国民の不信感が増幅します。そしてまた、まさに不公平な税制だという非常に悲しい出発をしなきゃならぬということにもなりかねません。総理もよくこれは心してやっていただきたい。安倍幹事長と一部の野党の幹部とで大体話がそういうところに行った気配を感ずるんですけれども、お二人で決めたから責任が持てるわけじゃない、国会がこれをちゃんとしなければ責任はとれません。  次に、中小事業者の事務負担等への配慮についてお聞きします。  修正内容は、小規模事業者に係る免税措置、簡易課税制度等の諸措置については、納税者の事務負担、消費税の転嫁の状況、納税者の税負担の公平の確保の必要性などを踏まえて、消費税の仕組みの定着状況などを勘案しながらその見直しを行うということでございますが、何だかもう一つはっきりわからないんですけれども、これはわかりやすく言えばどういうことですか。
  159. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 消費税におきましては、中小事業者の事務負担の軽減、転嫁の円滑化等に配慮いたしまして、具体的には簡易課税制度、免税点制度、限界控除制度といった仕組みを設けているところでございます。こうした仕組みにつきましては、衆議院の御審議の段階でもさまざまな御議論をいただいたところでございます。こうした仕組みによってかえって精緻を欠く結果をもたらしているのではないか、正確な転嫁をむしろあいまいにするという点もあるのではないかといった御議論も少なくなかったわけでございます。  しかしながら、こうした種類の税制といったものになじみのない我が国でございますので、円滑な導入といった観点からは、このような仕組みはやはりぜひお願いを申し上げたいとして御審議をいただいたところでございます。そうした結果といたしまして、このような特例措置につきましては、こうした税制の定着状況を見てその見直しをする必要があるのではないかという御議論になり、これが十七条三項として衆議院修正として加えられたところでございます。  こうした修正規定をいただきましたので、私どもとしても、その規定のまさに趣旨に即しまして今後考えてまいりたいと思っておるところでございます。
  160. 福間知之

    ○福間知之君 この中小事業者の事務負担の軽減を考えて実行するとするならば、私はみなし課税を行うのがまず最初に考えられる方途ではないかと思うのであります。これは、諸外国の例におきましても見られるわけでして、○○業種で売り上げが○○円だ、したがって消費税額は幾らというふうに業種別、売上高別に表をつくってしまえば税額計算をしなくて済むのに、税務当局としても、法人税等のときに把握できる売上高を見ながら納付された消費税額の過不足をチェックすることはできるわけであります。みなし課税なるものを導入すれば、実質的なこれは事業税イコール直接税であります。そういう性格になるわけでありますが、当局は、このみなし課税を含めて見直しを考えていこうとされているのでしょうか。
  161. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 確かに、諸外国の例によりますと、中小事業に限りまして業種を定め、そのみなし課税率と申しますか、みなし納付税率を決めておるという立法例もないことはないわけでございます。  ただ、そうなりますと、じゃ、それぞれの業種をどのように細分するのか、そのみなし税額率をどのように規定するのかといった点をとりましてもこれは大きな問題でございますし、それを現実に執行する際におきましては、それはそのそれぞれの業種がどれに当たるのかといったあたりから大変紛議を起こす可能性もあるのではないかと思うわけでございまして、そうした制度はなかなかどうもとりにくいところでございますし、また、御指摘のように、それは結局は事業税的なものにならないかという御議論もあるわけでございます。  今般、ここで十七条三項としていただきましたこの修正につきましては、この見直し項目の対象としては、その簡易課税制度なりも入っているものと私ども考えております。  ただ、その御指摘の簡易課税制度、こういったものが見直しの対象としては入っておると考えるといたしましても、それを含めて、その点を踏まえてどういうふうな見直しをするのか。御指摘のようなみなし課税、業種別みなし課税的な方法をも含めて検討することになるのかどうか、これはまずこの税制を執行していただいた上での、その時点での納税者、消費者、執行官庁等のお考えをその時点で承って考えていくべき問題ではないかと思いますので、今、御指摘のような点も踏まえて、含めて見直しをするかどうかにつきましてはここで申し上げられないところでございます。
  162. 福間知之

    ○福間知之君 これも不明確でありますね。せめてその方向ぐらいはこの国会開会中に明らかにしていただきたいと思います。  次に、消費税率の歯どめに関する覚書といいますか、一定の合意が行われたと承知をしておりますが、消費税が今後経年的に上昇するのではないかという国民の疑念に答えるために、引き続いて行政改革を推進し、六十五年度特例公債依存体質からの脱却目標の達成を図り、公債依存度を引き下げることに努力し、国債の償還財源について政府保有の土地、株式等の資産の適切な売却に努めるなど最大限の努力を行って長期的に国民負担率の上昇を抑制する。その上で消費税の税率水準については、以上の趣旨を踏まえて、所得、消費、資産等の間の均衡がとれた税体系の確保の必要性に配慮しつつも極力その維持を図るよう努めるということですが、これは総理にお聞きしましょう。  総理は、この文言については、竹下内閣としては引き上げる所存はないと、こういうふうなお話でございましたけれども、いかがですか。国民が一番これにやはり関心を持ってみえると思います。
  163. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 先ほど来御指摘があっておりますように、租税法定主義という建前から、安易に税率が変更できるというようなものではないと、基本的にそう思っております。  ただ、私が先ほども申しましたのは、本当に竹下内閣というのは歴史の一こまでございます。そしてヨーロッパにおけるいわゆる付加価値税の問題というものの歴史を振り返ってみますと、必ずと言っていいほど所得税の減税をしながら消費税率を上げていったと、こういう歴史を持っておる。そういうことから考えてみましても、やはり最終的には国民皆さん方が判断されることであるから、私は未来永劫これに手をつけるべきものでないというのは少しおこがましいんじゃないかと。したがって、少なくとも竹下内閣において、この国会に税率アップなどを提案する考えはございませんというのが、一応政治家としての、ちょっと角度を変えた一つの良心かなというふうにも率直に思っておるわけでございます。  しかしながら、今の御指摘にありましたように、まずそれにはやっぱりちゃんとした姿勢を示さなきゃいかぬじゃないかということになりますと、やはり行財政改革、なかんずく具体的に示されております国債の償還財源、一応六十五年度赤字公債依存体質からの脱却ができたという前提の上に立って考えましても、この国債の償還財源等については、それこそNTT株式を売らせていただいたりいろいろしておりますが、まだこれからいろいろ考えられるものが、政府の土地ももとよりございます。国民の財産を国民の負債の償還に充てていくという立場から、これらに最大限の努力をしなければならぬことは当然のことである。したがって、そもそもは国民負担率そのものの中に含まれるものでございますけれども、そういう努力をやって、そこでこの歯どめの問題を絶えず念頭に置いて努めるべきであるということの申し合わせがなされたものであるというふうに私は考えております。  それから、今日までこのように議論をしてきまして、そう上げましょうかなんという提案はちょっと幾ら何でもできるものではないじゃないかというのが素直な私の気持ちでございます。(「了解」と呼ぶ者あり)
  164. 福間知之

    ○福間知之君 了解という声がありましたが、私は了解いたしません。これはしたがって訓示規定だと。今のつけ足された最後総理のお気持ちは十分しんしゃくはいたしますが、さりとて内閣の権利だとかあるいはまた義務を明定しているわけでもありませんので訓示規定だ、あとは多分に政治的な問題だと思います。国会が今のような状況では非常に危険である、こういうことを私たちは思っているわけであります。  ところで大蔵省、今まで触れましたこの修正あるいは修正合意内容と関連しまして、いわゆるこの消費税導入に伴う歳出面での関連対策の骨格が固まったと報道されております。これはもちろん予算関連という側面がある分野、部分だけだと思うんですけれども、昨日報道されたのですが、そのとおりでございますか。
  165. 篠沢恭助

    政府委員(篠沢恭助君) 一部新聞に報道がございますが、これらにつきましてはすべて現在予算編成の中での検討事項として鋭意検討を進めておる話でございまして、結論を得たというようなことはございません。
  166. 福間知之

    ○福間知之君 しかし、あれじゃないですか、鋭意検討中とはいえ、皆さんの方がリークしたから新聞に出たのじゃないんですか。非常に細かく具体的に載っていますよ。  内容の一つは、「年金給付、生活保護費の引き上げ」、「公共事業など国の歳出への消費税負担分の上乗せ」、三つ目に「納税事務合理化など個別業界向け補助金の創設」など総額で四千億円以上になると。先ほど触れた中小企業のいわば事務合理化のための対策として予算化するのは、「商工会などによる記帳代行のオンライン化助成、コンピューター導入への低利融資など。三百億円程度の一般会計の財源が必要となる見通し」、ここまで詳しく触れているんですよ。想像ではこれは記者は書けません。
  167. 篠沢恭助

    政府委員(篠沢恭助君) 新聞の中に幾つかの項目が出ておりますが、真に手を差し伸べるべき方々、生活保護者等の皆様への配慮といったようなことは、当然のことながら今後の予算編成の中での適切に措置をすべき重要な課題である、これは事実でございます。  それから、消費税の導入に伴いまして、国が消費・サービスの購入者、受益者といたしまして相当の負担増が生じます。したがいまして、こういうものにつきましては、これは予算の編成過程で適切に計上を行うということも前から申し上げておりまして、そういう金額が予算編成過程で当然固まっていく。これまで衆議院段階で六十四年度予算に対しましてどれだけの影響があるかということは、これは予算編成の最終段階でないと固まりませんので困難でございますけれども、六十三年度の成立予算というものを前提として一定の試算を行うということでは、平年度ベースで三千四百億円程度というような数字などは申し上げたことがございます。  それから、中小企業関係で、この消費税の円滑な導入のためにいろいろどのような対策を講ずるかというようなことにつきましては、例えば補正予算の重要な課題として現在検討に取り組んでおるといったようなことでございます。  それらもろもろの検討が現に進みつつあるということは事実でございますので、それらを踏まえて新聞の方で適宜アレンジをされたものというふうに私どもは解釈をしておるわけでございます。
  168. 福間知之

    ○福間知之君 六十三年度の実績等も踏まえてほぼ三千四百億円を下ることはないという印象を受けましたが、そのように先ほど来触れた課題についても早目に前倒しでひとつ政府としての対処策を講じていただくことを要望しておきたいと思います。  次に、同じその修正内容の一つに石油諸税の問題があります。「六十四年度予算編成あるいは税制改正の中で負担軽減の措置を講ずる」となっています。どういうふうな措置が考えられるんでしょうか。
  169. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 消費税の仕組みを構成するに当たりましては、既存の個別の間接税につきましての扱いにつきましていろいろ議論、検討をいたしたところでございます。  たばこにつきましては、その価格を維持することにいたしまして、その分はたばこ税の部分を減額いたしまして、結果として全体の負担が変わらないようにいたしておるところでございます。  酒につきましては、先ほどからの議論のございますようなEC、イギリス等からの強い要請もございまして、ウイスキーを中心にこの減税が強く求められていたところでございますので、その部分の要望にもこたえるような減額措置をする。結果として、酒税といたしましては、消費税を含めまして全体として減税になってございます。  それに対しまして、石油関係諸税につきましては、これは御承知のように、その税収の使途が特定されているところでございます。したがいまして、酒、たばこのようにこれを減額調整いたしますと、そうした特定財源に響くわけでございます。したがいまして、これは御提案を申し上げている税制におきましては、石油は既存の間接税プラスその消費税ということで御提案はいたしておりますが、これにつきましては、なお石油関係諸税の負担につきまして年末までに検討をするという経緯で来ておるところでございます。その点が先般の衆議院段階でも議論がございまして、その結論といたしましても、昭和六十四年度予算編成、昭和六十四年度税制改正の中でこの問題を取り上げるというふうに処理がされているところでございます。
  170. 福間知之

    ○福間知之君 原重油の関税、大体税収一千億円、これが削られるわけであります。これは、要するに石炭対策にそっくり使われているわけですから、心配が関係部門としてもあるわけです。だから、一千億円を一般会計で補てんする、充足する、石炭はやめないんだと、こういうことを私は明確にすべきじゃないかと思うわけでありまして、これは大蔵当局と通産当局にもお聞きをしたいと思うんです。
  171. 田村元

    国務大臣(田村元君) 大変重要かつ微妙な問題でございますので、大蔵省より先に発言をさせていただきます。  現在お世話になっております第八次策、これが計画的に着々と進んでおります。この八次策の方針に変更を加えるつもりはございません。  御質問の原油関税問題でございますけれども、いわゆる石炭三原則、一つは石炭勘定の維持、それから二番目が原油関税にかわる安定的財源の確保ができるかどうかということによって対応がここで若干多様化するかもしれませんけれども、それに石炭対策に必要な歳出の確保、これを我々は石炭三原則と呼んでおります。いずれにいたしましても、石炭に迷惑をかけるようなことはいたしたくございませんし、私としては責任を持ってその遂行を進めるつもりでございます。  なお、こういう場合に原油関税をどうするかこうするかということを決めたわけではございません。要するに、石炭対策に支障を来さないようにということで鋭意折衝中でございますが、こそくな話し合いをするつもりはさらさらございません。私どもとしては、せっかくのこの構造調整等の一つのサンプルとも言うべき石炭対策について、政府もそれから業界も労働者も、すべての人々が意欲を失うようことがあっては大変でございます。これは断じて守っていく所存でございます。
  172. 水野勝

    政府委員(水野勝君) ただいまの通産大臣からの御発言を念頭に置きまして、私どもその趣旨を踏まえながら、ただいま関税のお話もございましたが、私ども大蔵省の中におきましては関係局、主税局、主計局それから関税局、それぞれ関係局がございます。三局一緒になりまして積極的にこの解決を図るべく現在検討中のところでございます。先ほども申し上げました六十四年度予算編成、税制改正の中で適切に対処してまいりたいと考えておるところでございます。
  173. 福間知之

    ○福間知之君 これは今後の対応を見守る以外にはありません。私は、断じて石炭対策をおろそかにするようなことのないように、通産省はもちろんでございますが、大蔵当局、財政当局に対してお願いをしておきたいと思います。  それから、この修正問題の最後にもう一点ただしておきたいと思いますが、いわゆる軽自動者対策について、「規格要件等について引き続き検討する」と、こういうことになっておりますが、これは甚だ微妙なのでありまして、運輸当局、通産当局、大蔵当局、そのどちらもそのものずばり担当だとは言えないらしいんですが、一遍大蔵当局から聞きましょうか。ありませんか。運輸の方はいかがですか。
  174. 阿部雅昭

    政府委員(阿部雅昭君) この問題に対します私どもの考え方を述べさせていただきます。  現在の軽自動車の規格改定につきましては、自動車工業会の内部においてその具体的な検討が現在行われていると聞いておりますので、運輸省としましては、業界の意見が一致してまとまりまして私どもに要望されますれば、その規格の問題について、安全、公害上の観点から関係各省ともよく相談して慎重に検討してまいりたいというのが現在の考え方でございます。
  175. 福間知之

    ○福間知之君 世上いろんなことが言われておりますが、まあここでそれを申し上げてもさしたる意味がありませんから、今後の検討にゆだねなければなりませんが、おっしゃるとおり、業界での意思統一がまず大事ですが、なかなかそれぞれのメーカー間の利害がありまして難しさがあるようでございます。軽自動車は車庫証明が要らないとか定期検査の方法が普通車とは違うとか、いろいろあります。また、その割に高速道路を走る料金は割高だとか、それを下げたらどうだとか、いろいろな議論があるようでございまして、一概にどれがいいとも言えませんが、やはりそれぞれを生産しているメーカー間で、この扱いいかんによっては大手メーカーが軽自動車に進出をするという可能性も残っているわけでありまして、なかなかデリケートな問題だと思うんですけれども、要は国民の利益を第一義にして、一方また今の自動車をめぐるニーズ、そういうこともあわせ考えなきゃならぬだろうと思うんで、せっかくこれは検討を進めてもらいたいと思います。  それから、ちょっと順序を変えまして、公取委員長長くお待ちのようでございますので、消費税と独禁法との関係について承りたいと思います。  消費税法案の中の、流通段階における消費税の円滑転嫁を図るために消費税を上乗せする、いわゆる価格カルテルというものを附則に盛り込んでおりますが、これは消費税の転嫁の方法の決定に係る共同行為と消費税についての表示の方法の決定に係る共同行為、いわゆる価格の転嫁のカルテル、表示のカルテル、こう言われているんですが、これを独占禁止法の適用除外にするということでございますけれども、消費税転嫁カルテルを認めることは、公正競争秩序という消費者利益の確保という側面だけでなく、中小企業にとっても経営の発展を阻害することになりかねないとも考えます。特に中小企業にとっては不利じゃないか。カルテルは中小企業に限っていますけれども、中小企業の組合でもできることになっており、現行中小企業組合法は、その構成組合員数の三分の一以下であれば大企業が入っても構わないことになっております。  したがって、少数で価格決定権のある大企業と数の多い価格決定能力のない弱い中小企業で構成される業界の組合では、結果として消費税の転嫁が容易な大企業にまで転嫁カルテルを認めることになりはしないだろうか。その結果、大企業数社が独占価格をつくり、そこから仕入れざるを得ない川下の中小企業は、三%以上の転嫁を乗せた価格で仕入れることになるんじゃないだろうか。中小企業のためという名目で導入されたこの転嫁カルテルも、大企業がますます有利となって、競争上弱い立場の中小企業がかえって不利な結果になってしまう。こういう危険が実態の経済活動、産業活動の中では十分に予測されますが、公取はどういうふうに御認識されていますか。
  176. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) ただいまの御質問、いろいろ多岐にわたっておるわけでございますけれども、今回のいわゆる転嫁の方法の決定に関するカルテルについて、お説のとおり中小企業者が三分の二以上占めている場合には大企業が混在しておっても共同行為が認められる、それはかえって中小企業に不利ではないかという御質問に焦点を合わせてお答えをいたします。  今回のこの共同行為の制度そのものは、既に御案内のとおり我が国の中小企業助成策について各種の立法がございます。典型的には中小企業団体法等々でございますが、その場合に中小企業と大企業が混在しているような業種につきましては、中小企業に焦点を合わせて助成をする場合に、当該大企業も三分の一以下である場合にはその参加を認めることがかえって中小企業の助成の効果を発揮する、そういう我が国の中小企業の政策体系になっておるわけでございます。今回の共同行為の立法も、ただいま申しました我が国の中小企業助成政策に対する基本的な政策タイプの立法例を踏襲しておるわけであります。  さて、そういうことになるとかえって大企業が強い立場に立って、本来の中小企業の価格転嫁を容易にすべきはずのカルテルがそれた方向に行くんではないかという御懸念かと思うのでありますが、私どもは今回の立法に関する限りそれは当たっていないだろうというふうに率直に考えております。と申しますのは、今回の転嫁の方法に関するカルテルと申しますのは、いわゆる本体価格のカルテルは、これは独占禁止法違反のカルテルとして認められないことになっているわけであります。つまり、それぞれの企業がそれぞれの価格政策を持って対応していく場合に、消費税相当額を上乗せする部分についての共同行為を認める。したがいまして、大企業と中小企業が混在しているような業種につきまして、中小企業が主体となる共同行為に大企業が参加しておりましても、当該企業の価格決定能力というのは共同行為自体には全然関係かないわけでございます。したがいまして、大企業が混在しているからといって中小企業に不利になるということは必ずしも当たらない。  ただ問題は、そういった共同行為に仮装いたしまして、本来法律が予想していない価格カルテルなり便乗カルテルというものになりました場合には、それはそもそも独禁法違反のカルテルとして公正取引委員会として厳正に対処するということでございますので、今回の立法措置は、その意味で必ずしもと申しますか、そのことによって大企業が有利になっているというふうな判断は私は当たらないのではないかというふうに考えております。
  177. 福間知之

    ○福間知之君 いや、価格カルテルの話し合いの対象というのは、今申し上げた三分の二以上が中小企業であること、逆に言えば大企業が三分の一未満であればどれほど大きな大企業でもよいということになります。この場合の三分の一未満とは、転嫁カルテルのために話し合いをした事業者団体の数のことであります。このため数では三分の一未満であっても売り上げシェアでは七〇%以上、八〇%以上持っているところの大企業は何の問題もないということになっております。シェアの大きな大企業が入れば、中小企業者のためといっても大企業の発言力が大きくなるのは当たり前じゃありませんか。結果として税額分を実際の価格に転嫁できることに疑問が生じてくるんじゃありませんか。
  178. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 今、委員がおっしゃいましたように、事業者で三分の一以下であればよい、これはもう御指摘のとおりでございます。問題は、そういった共同行為が行われた場合に、大企業に有利なように決定をされる結果、中小企業が不利になるということでございますけれども、これは繰り返しになって恐縮でございますけれども、本来中小企業が大多数を占める業界についてたまたま大企業が混在している場合に、かえって大企業を切り離すことによってその中小企業の共同行為が有効性を持たないというところにこの政策の基本的な考え方があるわけでございます。  問題は、先ほど申しましたように、これ自体は価格全体の本体価格のカルテルは認められないわけです。ベースにある価格というのはみんなお互いに自由に競争しておりまして、たまたま消費税が導入された結果、消費税相当分をいかに転嫁していくか、それを決めるわけでありますから、大企業であろうと中小企業であろうと、消費税相当額を上乗せするという価格行為については質的な差はないというふうに考えますと、もちろん委員が基本的に御懸念になっているのは、大企業が非常に実質的に発言力があって、実際はその業界に価格カルテルができてしまうんではないかという御懸念があるのかと思いますけれども、それは先ほど申しましたように、本来、今回の制度が認めているものではないわけでございます。したがって、今回の立法措置が適正に運用される限りにおいて、やはり受益するのは、私は数の上で大部分を占めておる中小企業であろうというふうに考えてよいのではないかと思うわけでございます。
  179. 福間知之

    ○福間知之君 公取委員長は本体価格をやるんじゃないとおっしゃいますけれども、実態は私はそういうことではおさまらないのではないかと、こういうふうに思います。  税額分あるいは三%の上乗せ分を現行価格に上乗せをする、あるいはまた税額に相当する分だけ量目を変更したりして価格を据え置く、あるいは端数処理の方法をどうするかを決める、こういう相談が考えられますけれども、もちろんこれは本体価格の話ではありません。しかし、業者が話し合いをするときには、転嫁の仕方についての話し合いだけでは断じて済まないと思います。灯油裁判の例をまつまでもありませんが、話し合い、いわゆる談合の内容が本体価格をどうするかの話になることの方が、むしろ実態の経済の動きでは自然だとも言えるのであります。そうなりますと、この独禁法で禁止されている価格カルテルそのものになるわけであります。  ところで、竹下総理も懸念されていますように、この価格転嫁カルテル、表示カルテルを認めるという独禁法の暫定的な緩和、こういう措置がやはりなし崩し的に将来にわたって拡大をしていく、こういう懸念がないのかと私は懸念を持つわけですけれども、竹下総理もそういうことについては発言されたようです。  しかし、公取委員長、このカルテルは同じ業種だけしか認められないのじゃないのであります。業種別である必要はないということです。例えば○○町の商店会で行ってもよろしいし、大企業と下請、孫請業者で行ってもよろしい。全国至るところで、いろんな形で公取委員会に届け出をしてカルテルの話し合いが行われる、こういうことが予測されますが、公取委員会の現在の職員は五百名前後であります。公取委員会の仕事は数万件をこなしているわけですね、年間に。聞くところによると、消費税が通ってこういうカルテルが認められるようになれば、一件当たり三分から五分でけりをつけにゃいかぬと、そういう実情だと聞いておるんですが、公取委員長、大丈夫ですか。
  180. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 公取委員会の事務体制について大変御心配をいただきまして恐縮でございます。できるかできないかじゃなくて、やらなければならない問題であるわけでございます。  届け出につきましては、先ほど委員が御指摘になりましたように、そういった違法カルテルにならないように事前に届け出制度がとられておるわけでありますから、私どもはこの制度が非常に重要であると考えております。届け出の段階での指導はもとよりでございますけれども、その届け出を中心にいたしまして、事後の監視あるいは指導、これを綿密にやっていかなければならないと考えております。そのためにやはり大事なのは、何といっても事前のPRも含めまして、同時にこれはやはり消費者にも非常に関心を持っていただくということによって、かなり市場の牽制効果もあるということでもございます。  我々としても、与えられました任務を的確に達成できるように努力してまいる所存でございますけれども、財政事情大変困難な状況ではございますが、やはり予算等の面で必要最小限度の手当ては確保していただきたいと考えております。
  181. 福間知之

    ○福間知之君 公取委員長、公取で働いている方々の意見として、とにかく大変なんだ、一件当たりの処理が本当に三分か五分間ぐらいでやらなきゃならないと。今、特許庁は大型コンピューターを入れて、ペーパーレスで、とにかくせめてアメリカ並の処理を短期にしたいと、こう頑張っていられるわけですけれども、公取として、例えばこういう今のカルテル問題などはコンピューターでどうのこうのというわけにはいきませんからね。そんな問題じゃないんですが、そうすると人手ということになりますが、人手もそんなに思うようにはふやすわけにいかぬとするならば、公取委員長としては自信がありますか。
  182. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 先ほど申し上げましたように、やれるかやれないかではなくて、やらなきゃならぬわけでございます。もちろん、人員等の面でも必要最小限の御手配もいただきたいと考えておりますけれども、公正取引委員会は、現在ささやかではございますけれどもコンピューターのシステムも持っております。若干の追加コストをかけることによって、今回相当数の届け出が出てまいりますけれども、そういったものをコンピューターによって処理し、事後の検索に活用するというふうな方法もいろいろ考えながら、現在その対応について事務局で検討いたしておるところでございます。
  183. 福間知之

    ○福間知之君 まあ、これ以上このカルテル問題もやっていられないんですが、諸外国でおおむねこの付加価値税的なものを導入した際には、便乗値上げを防ぐための対策を講じた例はあるけれども、転嫁についての適用除外カルテルを認めた例はないと、こういうふうに承知をしております。諸外国から見た場合の批判、これはないとは限りません。そうでなくても今までは御承知のような関係でございましたので、それに輪をかけた批判が出るかもしらない。これに適切に対処しなきゃならぬというふうに思います。  さらにはまた、今後このカルテルがそういうことで実施段階に入りましても、業界内で競争が激しかったり新規参入者が多かったり、結果として実効性が上がらない、こういうことが考えられるわけであります。  さらにはまた、消費税額分の転嫁の方法をどうするか。例えば、三%にすると端数の何円何十銭あるいは何銭、十銭というふうなものが出た場合に切り上げるのか切り下げるのか、こんなことも相談していいことになっているんですけれども、こういうふうになかなか現場では厄介な事態が出てまいりまして、本体カルテルは認めないけれどもなどと言っても、実際はそれとつながった談合ということが出てくる可能性が十分にあるということを指摘しておきたいと思います。  最後に、公取はガイドラインを出すということですが、早くこれは進めてもらいたい、こういうことを要望しておきたいと思います。  じゃ次に、消費税に入りたいと思います。  一つは、消費税のアンバランスな産業別の影響、これについて、第一次産業、第二次産業、第三次産業に分類して当局はどういう御判断を持っておられますか。
  184. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 消費税の課税の仕組みに当たりましては、これが極力経済活動に異なった影響を及ぼすことのないように、いわば税制改革法案の中でも中立性といった点を挙げておるわけでございますが、中立的な仕組みとなるように考えておるところでございます。  特に、今回の改正に当たりまして、一方におきまして物品税等の個別消費税が廃止され、一方こうしたものが導入されるわけですが、そのように極めて中立的なものとなるように仕組んでおりますので、特段産業別にこれがアンバランスを引き起こすというふうには考えていないわけでございます。
  185. 福間知之

    ○福間知之君 そんなことは私はないと思いますよ。この現行の第二次製造産業を中心にしたいわゆる個別間接税、物品税と言われるもの、これはまずなくなるわけですから、その産業はそれにかわって三%の消費税が対象になる。それだけとってみてもその産業は大きな変化があります。それを他の産業と比較してみたらどうなのかとお聞きをしているんです。
  186. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 今回の税制改革は、産業に対しましては中立的になるようにということを念頭に置いていることは申し上げたとおりでございます。そうした観点からいたしますと、例えば物品税でございますと、八十五品日という品目を限りましてそうした物品に課税をお願いしているというところ、その点につきましては、むしろ産業に対しては、経済に対してはある意味では非中立的な課税であった。そうしたものが今回の消費税といった一律三%のものに置きかえられるということは、そういう意味におきましては私どもは産業に対して、経済に対してはより中立的なものになるとも言えるのではないかと思うわけでございます。  ただ、そうした八十五品日につきまして、かなりな負担の税をお願いしているものがなくなるということが、それが経済に影響を及ぼすということであれば、それはそうした影響が全くないということは申し上げられないわけでございますが、しかし税制全体として見れば、それはより中立性を確保した税制になるというふうにも言えるわけでございます。  ただ、基本的には、そもそも間接税というのは、それは特に今回の消費税はそうでございますが、消費者に御負担をいただく、転嫁されるべき税でございます。現在の物品税等もそうした消費税の本質は変わらないわけでございますので、そうした意味からすれば今回の間接税改正、消費税の創設といったものが非中立的な影響を与えるものとは考えないところでございます。
  187. 福間知之

    ○福間知之君 例えば製造業中心の第二次産業では、消費税額は約一兆七千八百億円、現行の物品税、個別間接税の廃止額が約一兆七千三百五十億円、ほぼとんとんであります。ところが第三次産業になりますと、消費税額は新たに三兆五千億円見込まれております。これは消費税額全体の六五%。第二次産業の場合はこれよりもちろん小さいわけでありますけれども、消費税額全体の額は第二次産業の場合は三二%、約三分の一、第三次は三分の二、こういうことに予想されています。 いち早く日本経済新聞社が六十四年度のベースで予測をしていますが、鉱山業を除く二次産業の納税額は約二兆九千四百億円になる、こういうことを予測しています。これは全産業の三二%、消費税の三分の一、こういうことです。こういうふうにまさに総理じゃないけれども、大きく三次部門にシフトしていくということになっているわけでありますけれども、私は、これがいろんな意味を持っているとは思うんですよ。  かつて、昨年売上税の議論のときに、一年余りで三十兆円を上回るようないわゆる円高差益が出た。予算委員会でも私お聞きをしたんです、どれだけ還元されましたかと。これは七〇%還元されています、ほぼ七〇です、二十一、二兆円ですと。じゃ、あとの九兆円はどこへ行ったんですか、そのときに議論したわけです。予算委員会でも、私の担当の商工でも田村通産大臣とやったわけです。要するに流通部門を中心にした三次産業部門というのは、すぐれて人手に頼っている部分が多い。これは逆に言えば、そこに雇用のかなりの部分が吸収されているということであります。だから、そのことの評価は別にして、この三次部門に今度の消費税というものがかなり強いインパクトを与えるということだけは否めません。特に競争の激しい業界でもありますし、例えば大店舗と中小零細店舗との絶えざる競合、競争関係というものが繰り返されておりまして、厳しさはもう御案内のとおりであります。    〔委員長退席、理事斎藤十朗君着席〕  そういうところにこの税が大きなインパクトを与える、特に中小零細企業に与えるんじゃないかということを私はやっぱり見逃すわけにはいかない。だから、売上税のとき、あるいはまた円高差益の問題のときに、日本の三次部門、なかんずく流通構造というようなものに目をいたしたときに、これは大変厄介な問題だ、単なる流通構造だけの問題じゃない、日本の社会、日本の雇用、日本の経済全体をとらえてこれを近代化していく必要がある、こういうことをあのときに強く意識したんですが、総理は、今私が申し上げたようなことで、この流通部門に大きなインパクトを与えることによって生ずる社会的な摩擦、こういうものについてはどういう御認識を持っていますか。
  188. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 総じて、一番最初の転嫁のお話がちょっとございましたが、この間、ヨーロッパから元フランスの大蔵大臣でありましたオルトリさんがお見えになりまして、私が転嫁論争をいたしましたら、オルトリさんは消費税というのは転嫁が前提とされたものだから、転嫁論争がどうしてありますかと、こんなお話でございました。しかし、だんだん詰めてまいりましたら、あの人が一事務官であったときにやはりその転嫁論争をしたそうでございます。だから、日本において転嫁論争というのが起こってくるのは当然であると、こういう議論を二人の間でしたわけでございますが、その際もやっぱり流通部門における問題をお話しなすっておったことは事実でございます。それによってある種の流通革命が起きましたかと、こういう質問に対しては必ずしもイエスではございませんでしたけれども、流通形態が変わってきたというようなお話はございました。  そういうことを考えるにつけ、やはりなかんずく中小企業の流通部門にインパクトを与える問題について、免税点とかいろんな問題は別といたしまして、今、通商産業省がいろいろ苦心して考えておられる補正予算をも含めての施策というようなものをやっぱりきちっとやっていかなきゃならぬのではないかなという感じを深くいたしたところでございます。  経済全体に対する中立性の問題というのは一応理論的には構築できますが、製造業間におきましても、いわばメリット産業という言葉が適切でございますでしょうか、そういう産業とデメリット産業とがあり得るわけでございますし、なかんずく流通部門における大店舗と中小企業との問題とか、そうした課題に対しては政策的配慮を行っていかなきゃならぬ問題はあろうということを私も承知いたしておるところでございます。
  189. 福間知之

    ○福間知之君 あと半時間ぐらいでございますが、消費税の中身としては、例えば問題が幾つかあります。帳簿方式の採用によって、それ自体非常に基本的な欠陥を持っている、これはもう総理も認識されていると思うんですけれども。あるいはまた単一の税率であるということによる不合理、そういう側面も持っていると思います。あるいは簡易課税制度を採用することによる問題点、種々あるわけでございますけれども、またこれは同僚議員に譲るとしまして、私は最後に、この消費税と歳入と歳出の関係についてお伺いをしたいと思います。  まず、六十一年度及び六十二年度、特に六十二年度の国税収入の見込みについて、大体終わりましたから言えると思うんですが、当初予算と決算の乖離はおのおの何兆円で何%ぐらいありますか。
  190. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 六十一年度は四十兆五千六百億円、当初予算でございます。これに対しまして、決算額は四十一兆八千七百六十八億円、乖離額は一兆三千百六十八億円で、三・二%の乖離でございました。六十二年度は、当初予算額四十一兆一千九百四十億円、決算額は四十六兆七千九百七十九億円で、乖離額は五兆六千三十九億円、一三・六%の乖離でございました。
  191. 福間知之

    ○福間知之君 六十二年度の乖離が五兆六千億円、一三・六%と、いかにも大きいですね。六十三年度における自然増収額は現時点ではどのくらいですか。予算額に対して何%、何兆円の伸びが予想されますか。
  192. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 六十三年度につきましては、ただいままで、十月末までの税収がほぼ判明しているところでございます。これは四十五兆九百億円に対しまして十月末で十八兆千九百十五億円、四〇・三%収納されておるわけでございます。これは前年同期比に対しまして十月分が四・二%、十月分を含めました全体といたしましては五・一%の伸びとなってございます。  他方、今委員指摘のように、六十二年度は決算額と当初予算額とに乖離がございました。その関係から、六十二年度決算額と六十三年度予算額とではむしろ六十三年度予算額が九六・四%という数字になってございます。したがいまして、三・六%少なくてよいという数字になっておるわけでございますが、十月末まででございますと五・一%の増加になっておる、こういう現象になっておるところでございますので、六十三年度におきましても六十二年度の決算額の乖離五兆円以上のものがございました。それは土台に入ってございませんでしたので、そうしたことがこのような数字になってあらわれておるところでございまして、六十三年度におきましても相応の額の自然増収が生ずるということは否定できないところでございます。  ただ、今申し上げましたように、十月末はまだ四〇・三%でございます。したがいまして、この時点で直ちに六十三年度におきますところの自然増収を明確に申し上げることはできないところでございますが、しかし、ある程度と申しますか、相応の程度の自然増収が生ずるということは否定できないところでございます。    〔理事斎藤十朗君退席、委員長着席〕
  193. 福間知之

    ○福間知之君 大体九月、十月で対前年度比五・三%ぐらいの伸び、こういうふうに衆議院で水野さんは答弁をされましたね。まあ今から先、今年度末までもう四カ月足らずでありまするから大きな狂いはないんじゃないか、経済の実態がそう悪くなっていないと思いまするからそういうふうに思うわけであります。その中で特に法人税の伸びが大きいですね、一七・五%。物品税は二〇・三%、こういう伸び方をしております。  ところで、水野主税局長衆議院十一月七日の答弁で、消費税収入のGNPの弾性値につきまして従来の一・〇%を下回るという考え方に対して、消費税〇・七%、所得税、法人税は一・一%。新しい消費税は消費支出におおむねスライドして、国民の最終消費支出はGNPにほぼ連動するものなので、消費税の弾性値が一・〇%より小さいというふうに考えることもない、こういう答弁をされていますけれども、六十二年度決算ベースでマイナス五・六%、弾性値は一・〇%よりも小さいことを前提として見積もられたところの消費税収入の見込みは、したがって課税ベースを百八十兆円、グロスで五兆四千億円、ネットで二兆円という税収見込みはこれは当然修正する必要があるのじゃないか、六十年度及び平年度における課税ベース及び税収見込みを改めて提示すべきではないか。いかがでございますか。
  194. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 今回の税制改革に伴いますところの増減収額は、すべて減税部分それから増収部分、六十三年度ベースとして計算をいたしておるところでございます。  消費税について申し上げますと、六十一年度ベースでの課税標準額を算定いたしまして、これに六十二年度それから六十三年度の民間最終消費支出の伸びを乗じたものでございます。したがいまして、そういうことからいきますと、民間最終消費支出はおおむねGNPと連動をするものでございますので、そういう意味におきましては非常に大ざっぱに言えば弾性値は一に近いということが言えようかと思うわけでございますが、具体的にはただいま申し上げましたように民間最終消費支出の伸びで六十一年度から六十三年度に伸ばしてございますので、そうした意味では六十三年度のものとして私ども適切なものであろうかと思うわけでございます。
  195. 福間知之

    ○福間知之君 適切かどうかは時間がたてばわかりますが、私は過小見積もりだ、こういうふうに思っています。いわゆる税収見積もりにつきましては静岡大学のシミュレーションもありますけれども、向こうでは六兆七千億円、こういうふうに出していますが、いずれにしろ不明確な点が多少は残っております。  問題は、今やりとりをしましたように、当局は、税収の見積もり修正ということが行われると今まで示した増減税バランス、これが崩れる、あるいは勤労各所得収入階層別増減税額、これも崩れる、増減税ラインすべてが再修正を迫られるからすっきりと考え方を改めようとしないわけでございまして、これは甚だ遺憾なんであります。私はこういうことからも、この消費税というもののあり方は、やっぱり重大な判断基準が、価値がそこにあると思っております。冒頭申し上げたように、特に昨年、ことし引き続いて自然増収というものがかつてなく大きいのですから、我々は税制の審議についても十分時間をかけてやるべきだ。また、消費税なるものが必要であればやっぱり修正を思い切ってやるべきである、こういうふうにも思うわけでありまして、当局の言い分だけでは納得できないことがこういう税収面なんかでも出てきているということを示したわけであります。  ところで、GNPに国民最終消費支出が連動し、消費税が消費支出にスライドするならば、消費税収入は上昇して当然であります。そうすると、第一に、大蔵省が提示した収入別増減税バランスによる年収二百七十四万円超では減税になる、二百七十三万円以下では増税という、この限界ラインも当然変わってくる、こういうふうに思われるのですが、いかがですか。  また、二つ目には、生涯収支モデルというのがあります。人間一生働いていくわけですから、その若年から定年六十五歳になるまでの収支のモデル、これで〇・二万円の増税という数値が出ていますが、これも当然変わるんじゃないですか、計算をされますか。
  196. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 先ほども申し上げましたように、今回税制改革で準備いたし、御提出申し上げている数字は、すべて六十三年度ベースのものをお示しして御審議を願っているところでございます。六十四年度ベースという数字につきましては、全体の経済の規模、税収等が明らかになります段階におきましてはそうした検討もできようかと思うわけでございますが、現時点におきましてはこの六十三年度のもので御審議を賜りたいと思うわけでございます。  御指摘のように、消費税の税収も六十四年度ベースになれば、それはそれで増加をすることでございますけれども、一方、給与所得者の給与税額、これはむしろ弾性値は二前後でございまして、その分だけ給与税収はふえる。したがいまして、その減税額というものもその二倍程度の伸びで大きくなるわけでございますので、減税額もやはり相当ふえるという計算になろうかと思うわけでございます。したがいまして、六十三年度をベースにいたしましたところの増減収の試算は、大きな筋としてはこれは動かない、全体の傾向は特に働くものではないと思うわけでございます。
  197. 福間知之

    ○福間知之君 同様の意味で直間比率、税収に占める割合はどうなるのかということも定かにはできませんか。
  198. 水野勝

    政府委員(水野勝君) これにつきましても、六十三年度ベースでの試算は一応いたしておるところでございまして、国税で申し上げれば、六十三年度直接税七二・二%、間接税二七・八%という数字を国会にもお出しをいたしておるところでございますが、これを前提といたしまして税制改革を織り込みますと、おおむね直接税、間接税二対一、六六対三四といった数字になるものと現在試算をいたしておるところでございます。
  199. 福間知之

    ○福間知之君 次に、消費税が導入されたという前提ではないんですけれども、一応の試算としてお聞きをするわけですけれども、歳出との関係であります。消費税が歳出に与える影響につきまして、大蔵省は六十三年度一般会計歳出予算額五十六兆七千億円、課税対象となる財貨・サービスの購入等に係る予算額十一兆五千億円、その三%は三千四百億円、これは国であります。消費税の歳出に及ぼす影響額だというのでございますが、確かでございますか。  また自治省は、同じように六十三年度地方財政計画歳出額五十七兆八千億円、課税対象財貨・サービス額二十兆二千億円、その三%で六千億円としておりますが、確かでございますか。
  200. 篠沢恭助

    政府委員(篠沢恭助君) 先ほどもちょっと触れさせていただいたわけでございますが、消費税の導入に伴います一般会計の歳出への影響額ということでいろいろ考えてまいっておるわけでございますが、消費税の導入に伴いまして、まず国が消費・サービスの購入者または受益者として相当の負担増が生ずるわけでございます。これは適切に見積もりまして計上をして、転嫁を確実ならしめるという意味でもきちっと計算をしてまいる必要があろうかと思います。また、これ以外に物価上昇に伴う歳出への影響というのもあるわけでございます。そういったものが予算編成中の現段階で、六十四年度予算に対してどの程度の影響が生ずるかということを見込むことは現段階でまだ困難でございますが、審議の御参考といたしまして、もう既に成立しております六十三年度の成立予算、これを前提として、また計算できます種類のものとして財貨・サービスの購入者、受益者として負担する額ということでマクロ的に推計をいたしましたのが、ただいま先生御指摘の三千四百億円程度という数字でございます。マクロ的な推計としてはそのようなものがあるわけでございます。  ただ、実際問題といたしまして、その三千四百億というのが、それでは六十四年度予算を前提としたその財貨・サービス購入者としての影響額、負担額であるかと、そのとおりに同じ金額になるのかとおっしゃられれば、そこは多少の異同が当然生じてくるわけでございます。それにつきましては六十四年度の予算編成の中で、消費税法案の成立を踏まえまして、所要の額を総合的に精査いたしまして、予算編成段階できちんと計上していくということになろうかと思っております。ただいまの三千四百億というのは、そういう性格のものであるという意味においてはそのとおりでございます。
  201. 津田正

    政府委員(津田正君) 推計の条件は、今大蔵省説明したものと同様なものでございまして、六十三年度の地方財政計画で、経過措置等を考えない全くの平年度ベースで財貨・サービスの購入者、受益者として普通会計に生じる負担額はマクロで六千億円と、このように見込んでおります。
  202. 福間知之

    ○福間知之君 この特別会計や公営企業関係については示されておりませんか、大蔵、自治、それぞれその影響額は幾らぐらいと見積もりは出ておりますか。
  203. 篠沢恭助

    政府委員(篠沢恭助君) 国の特別会計等におきましても、当然財貨・サービスの購入者あるいは受益者ということで消費税に絡む負担増が生ずるわけでございますが、予算編成中の現段階で、六十四年度予算に対しましてどの程度の影響が生ずるかを見込むことはちょっと困難でございますので、お許しをいただきたいと思います。  特別会計について一般会計と同じようなマクロ推計を考えられないかということも考えてみたのでございますが、特別会計におきましては、御承知のとおりその歳出歳入の内容がまことに多種多様でございますほか、特に特別会計相互間とか特別会計内の勘定相互間の繰り入れとかいう問題がございまして、全体として概数としてのマクロ計算が大変推計が難しいものでございますので、この点につきましては特に行っておりません。
  204. 津田正

    政府委員(津田正君) 地方公営企業関係でございますが、この大部分は恐らく事業者としての立場と、こういうような格好になりますが、先生御指摘のとおり、確かに最終の財貨・サービスの購入者と、こういうような部面があるかと思います。ただ、この地方公営企業を中心といたします特別会計は種々雑多でございますし、先ほど大蔵省から答弁ございましたように、いわゆる会計間で相互に繰り入れたり繰り出したり、こういうようなもの、支出、収入の内容が非常に多様でございますので、現在のところ確度ある計算を行えないような状況でございます。
  205. 福間知之

    ○福間知之君 これは今後の特に問題として、やはり新しい状況に見合って試算をされ直すという必要がありますね。それはまた急いでやっていただきたいと思います。  次に、厚生省と労働省にお伺いします。  いわゆる福祉プランが提示されましたが、消費税導入の条件である福祉の充実に関する方針に基づいて歳出増の計画があると思うんですが、公共投資を含めて全体で幾らぐらいになるのか。計画額と計画年度をお聞かせください。
  206. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) 本格的な高齢化社会を迎えまして、明るい生きがいのある長寿・福祉社会を建設するために社会保障の制度、医療とか年金とか福祉につきまして再構築をしていくわけでありますが、その場合の基本的な考え方なり目標水準等につきまして、先般いわゆる福祉ビジョンとして国会の御審議の参考に提出したわけでございます。  厚生省の施策の中には公共事業的なものもございますし、また福祉関係につきましては、例えて言えば在宅福祉の充実のために七十五年度を目標にいたしましてホームヘルパーであるとか、その他数字を入れました計画も福祉ビジョンの中に挙げておるわけでございますが、医療、年金につきましては御承知のように審議会の御審議であるとか国民のコンセンサスにまたなければならない、そういう特殊な性格を持っておるわけでございますので、定性的な内容はお示しできるわけでございますが、それらの問題につきましては定量的に年次計画であるとか、金額をお示しするということはなかなか困難なわけでございます。今後できるだけ具体的に内容をお示しいたすわけでございますが、この福祉プランの実現につきましては、毎年毎年の予算の編成の中で実現のために努力をしてまいる、かような考え方でおるわけでございまして、御理解をいただきたいと思います。
  207. 中村太郎

    国務大臣(中村太郎君) 御案内のとおり、人生八十年という高齢化社会のもとで今と同じような活力を維持するために一番大事なことは、やっぱりお年寄りが長年培ってきた技能とか知識とか能力、これを本当に十分に発揮するような雇用就業の場を確保するということがこれからの長寿社会における基本的な課題であるというふうに承知をいたしております。したがいまして、福祉ビジョンの中で示しておりまする雇用計画というものは、あくまで骨格だけをお示しいたしたわけでございます。それに基づきまして、これからは具体的な、あるいは総合的な肉づけをいたしまして、よりきめの細かい具体策を実施していかなければいけないというふうに考えておるわけであります。
  208. 福間知之

    ○福間知之君 消費税がいわゆる高齢化社会に備えるため云々ということが言われてきているわけであります。そうであるなら当然これは年金ともかかわってきます。六十四年に再計算が予定されている年金にかかわる保険料などの部分が消費税収入についてどういうふうにかかわっているのか、また福祉の充実策として示された福祉ビジョンにおいて年金支給開始年齢が六十五歳に引き上げられるということが示されているわけですが、それで果たして福祉の充実策と言えるのか、端的にそういう疑問があります。細かい理屈はそれは別として、国民にしてみればそうです。なぜこの際、消費税に反対する声が大きいのに、福祉ビジョンを出して、しかも六十五歳に年金支給開始年齢延期、一体これはどういうことなんだという疑問があることはこれは間違いないですね。要するに高齢化社会に備えるためとされているこの消費税収入というもの、年金の支給年齢引き上げ、おくらすというふうなことがあるというのはなおさらのことでして、今、労働大臣じゃないけれども、大枠を示したというだけじゃ少し無責任だと思うんですね。もっと大胆にここは踏み込んで、政府はこういうビジョンで長期的、中期的な福祉というものを確実にやっていきますよということがなければいけないんじゃないんでしょうか。まして今こういう消費税を入れようなどとしているわけなんですからね、なおさらじゃないですか。日本の政治に足らぬのは、そういう一つの決断が不十分だということです。私は前々からそう思っているのであります。ぜひこれは厚生省、労働省が先頭に立ってこの福祉ビジョンのより具体的肉づけというものをやってもらわなきゃ、暗に国会で精神的な合意だけじゃ何にもこれは国民は納得はいきにくいと思います。  次に、昨年の政府の税制改正におきまして、いわゆる貸倒引当金の圧縮などが政府案には入っておりました。今回は入っていないようなんですね。ところが、衆議院審議におきまして我が党の細谷議員の質問宮澤大蔵大臣が答えているのを見ますと、税制改革大綱における税収見積もりでは二年ないし三年のうちに改正するとして、法人税のうち引当金、宮澤大蔵大臣の答弁をかりると、大きなもの三つぐらいを是正するから入れていたんだと、その額は全体で三千億円、地方税はそのうち九百億円ぐらいの税収になるんだとされています。竹下総理大蔵大臣は、この三千億円の法人税制適正化について、何年度に、何の引当金を、どのような方法で是正することを想定して三千億円を計上したのかお聞かせ願いたいのであります。  それからきょうの朝刊によりますと、それは六十四年はやらないと報道されていましたが、だとすればいつからやるのかということもあわせてお聞きをしたいと思います。
  209. 水野勝

    政府委員(水野勝君) まず、ただいま御指摘の新聞報道は、全く私どもそうしたものは心当たりがないわけでございますので、その点を最初に申し上げたいと思います。  それから三千億円の件につきましては、衆議院の段階でいろいろ御議論をいただき、また、やや紛議を呼びまして私どももおわびしたところでございます。三千億円と申しますのは、六月中旬に、今回の税制改革のいわば骨格というもので一度記者発表したことがございますが、その骨格の中には入ってございます。しかし、今回具体的に六法案を御提案している中での改革の中には含まれていないわけでございまして、したがいまして具体的なものがあるわけではございません。しかし今回の税制改革を通じまして税制調査会の審議の過程、それから結果といたしまして法人税率は引き下げを行う。一方課税ベースの拡大につきましては、この点につきまして努力をするという方向になっておるわけでございまして、そうした点がいわば宿題としてと申しますか、そういったものが残されておるわけでございます。  それから、先ほどお話のございました二、三年中にと申しますのは、衆議院の段階で与野党で企業課税をも含めましていろいろ協議が行われました。その中で野党サイドからの御要請として貸倒引当金を中心に課税ベースの拡大を図るべしというお話があり、それに対しまして与党側からは貸倒引当金を含む引当金制度については二、三年中におきまして具体的に検討を行う、そのようなお答えがなされているところでございまして、そうした点を受けまして、ただいまお話しのような衆議院での議論になったわけでございます。企業税制のあり方については、全体としての法人の負担軽減が図られる中で、引当金等がどうあるべきかについて二、三年内を目途にさらに検討をするというのが、これが与党からのお答えでございました。  それで今、三つの大きなものを対象としてというお話がございました。引当金は六つございますが、御指摘のように大きなものは退職給与引当金、貸倒引当金、賞与引当金でございます。検討をするとすればこの三つのものが恐らく具体的な対象になるであろうという意味で三つのという御議論になったかと思うわけでございます。いずれにしましても、今回は具体的に御提案はしてございませんけれども、二、三年中の検討課題として今後検討を行ってまいりたいと考えておるところでございます。
  210. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 大筋、ただいま水野局長からお答え申し上げたとおりでございますが、あのときのお話を私もそばから聞いておりましたが、年度改正の中で、今後国会議論等を正確に税制調査会にお伝えして、そして御議論をいただくわけでございますから、この二、三年ということがまさに年度改正の中で、抜本改革とはちょっと別でございますけれども、議論されてしかるべき方向が提示されるであろうというふうに思っております。
  211. 福間知之

    ○福間知之君 総理、また大蔵省、これは不公平是正という観点からも、衆議院段階でも与野党寄って議論された中身の一つであります。二、三年先までにはというよりももっと早く手を染めていただくことが必要じゃないかと、こういうふうに要望しておきます。  時間が参りました。最後に私、所見を申し述べたいと思うんです。  今、この消費税と歳入歳出の関係についてもいろいろと見てまいりましたけれども、歳入弾性値は三・三という数値が異常であるのか継続するものなのかは別にしまして、ここ数年は税収の伸びが順調であることは予測されております。そうした意味で、消費税を来年四月から導入するという根拠は私はないということを言いたかったわけです。具体的な財政の裏づけから見まして。だから時間をかけて竹下さん議論しましょうやと、こういうことを言いたかったわけであります。  また、消費税収入の見込みも、ある程度これは不透明なものがあります。大蔵省の増減税バランスも、全くうそだとは言いませんが、それに近いというふうなことを感ずるわけであります。さらに、福祉の充実などと言いますが、その中身はもう一つ判然といたしておりません。年金改悪だけが先ほど申したようにクローズアップした感があります。したがって政府は、改めてこれらの明確な資料を早急に提示をしていただきたい。その間、消費税の導入は見送ることが妥当だということを提言し、要望して私の質問を終わります。(拍手)
  212. 梶木又三

    委員長梶木又三君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、明日は午前十時に委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後六時十五分散会