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1988-09-21 第113回国会 参議院 産業・資源エネルギーに関する調査会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年九月二十一日(水曜日)    午後一時一分開会     ─────────────    委員異動  九月七日     辞任         補欠選任      大木 正吾君     小野  明君      猪熊 重二君     馬場  富君      柳澤 錬造君     橋本孝一郎君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         松前 達郎君     理 事                 沢田 一精君                 宮島  滉君                 及川 一夫君                 飯田 忠雄君                 神谷信之助君     委 員                大河原太一郎君                 沓掛 哲男君                 熊谷太三郎君                 山東 昭子君                 鈴木 省吾君                 添田増太郎君                 田沢 智治君                 田辺 哲夫君                 小野  明君                 対馬 孝且君                 浜本 万三君    事務局側        第三特別調査室        長        高橋 利彰君    参考人        東海大学開発技        術研究所教授   唐津  一君        日立総合計画研        究所取締役所長  守屋 友一君        日本貿易振興会        海外調査部長   菅野 省三君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○参考人出席要求に関する件 ○産業資源エネルギーに関する調査  (我が国企業海外展開に伴う問題に関する件)     ─────────────
  2. 松前達郎

    会長松前達郎君) ただいまから産業資源エネルギーに関する調査会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る七日、大木正吾君、柳澤錬造君及び猪熊重二君が委員を辞任され、その補欠として小野明君、橋本孝一郎君及び馬場富君が選任されました。     ─────────────
  3. 松前達郎

    会長松前達郎君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事補欠選任につきましては、先例により、会長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松前達郎

    会長松前達郎君) 御異議ないと認めます。  それでは理事橋本孝一郎君を指名いたします。     ─────────────
  5. 松前達郎

    会長松前達郎君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  産業資源エネルギーに関する調査のため、本日の調査会東海大学開発技術研究所教授唐津一君、日立総合計画研究所取締役所長守屋友一君及び日本貿易振興会海外調査部長菅野省三君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 松前達郎

    会長松前達郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 松前達郎

    会長松前達郎君) 産業資源エネルギーに関する調査を議題とし、我が国企業海外展開に伴う問題に関する件について、参考人から意見を聴取いたします。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本調査会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査参考にいたしたいと存じます。  議事の進め方といたしましては、まず三十分程度それぞれ御意見をお述べいただき、その後午後四時まで委員の質疑にお答えいただく、このような方法で進めてまいりたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。  それでは、まず唐津参考人からお願いをいたします。唐津参考人お願いします。
  8. 唐津一

    参考人唐津一君) 唐津でございます。  まず、皆様のお手元に二枚のコピーがございます。一つは、イギリスの「エコノミスト」という雑誌の表紙と、いま一つは、ワープロで打ちました海外投資目的、その他書いたものでございます。  まず最初に、この「エコノミスト」の表紙をごらんいただきたいんでございますが、実は投資に関するいろいろな摩擦というのは、日本から行くだけではございませんで、各国についていろいろあります。これはたまたまですけれども、御承知のように、今アメリカは非常にドルが下がりました。そうなりますと、日本だけではございません。ヨーロッパから見ましてもアメリカ会社が大体半値で買えるということで、非常に魅力があるものですから、続々とアメリカ会社の買い取りが始まったわけです。これは南北戦争のころのアメリカの兵隊の絵なんですが、そこにごらんのように、まずイギリスがやってきたと、それから日本がやってきた、ドイツがやってきた、カナダ、韓国がやってきた、こういうことで実は特集号が載っておりました。  この中にあります記事は主としていわゆる会社の、日本流に申しますと乗っ取りでございます。日本では、今アメリカ会社日本が買う、それに対してはいろいろ問題が起きているとよく申しますが、実はこういったアメリカ会社外国会社が買い始めたのは昨年ぐらいからでございます。そのためにいろいろな意味での摩擦があります。ただし、これは主としていわゆるMアンドA、つまり会社を買い取るということでございます。ところが、現在日本海外にいろいろと投資をやっておりますが、その目的は何だろうということを一応一覧表にしてみました。それがいま一枚のワープロで打ったものでございます。  この目的はいろいろございまして、もちろん第一は、これは一般の製造業の場合でございますが、コストを安くしたい。御承知のように円高が始まりまして、特に東南アジアに日本会社が行ったということがよく言われましたけれども、それだけではございません。アメリカにも随分出ていったわけであります。後ほどジェトロの方のお話があるかと思うんでありますが、昨年、日本製造業海外投資した金額というのは既に一兆円を超しております。大変な金額でございます。その行った目的というのは、まず第一は、もちろん低賃金を求めていった、これは当然考えられま す。タイあたりに参りますと、日本の大体五分の一の給料で人が雇える、そういったことです。それからもう一つエネルギーというのがありますが、これは御承知のように、日本ではエネルギー料金が非常に高い。例えば電気料金というのがカナダあたりに比べますと大体四倍以上します。そうするとアルミニウムのような、電力でもうコストが決まるようなものではとても日本では競争力がない。そういう意味でのコスト低減を求めて出ていく、こういうのもございます。  それから土地というのは、日本国内工場を建てようと思って土地を求めましても非常に今高くなっております。そこで安い土地を求める。非常に広い土地が欲しい産業は、日本ではとてもこれはコストが合わない、そういうのもございます。その他たくさんございます。例えば諸掛かり経費、それから税制、これは非常に大きな問題でございますが、御承知のように、日本は非常に法人税が高い。ソニーの盛田さんなんかは、本社をアメリカへ持っていこうかなんて随分恐ろしいことを言っておりますが、これは税制の問題でございます。それからもちろん原材料、それから環境。これはどういうことかと申しますと、例えば乾電池というのをつくりますときに、あれは二酸化マンガンという材料を扱うんでございますが、これは黒い粉が出て、もう真っ黒けになっちゃう。そのために日本では第一若い方が働きたがりませんし、工場を建てるにしても非常に制限がある。そこで日本メーカー台湾あたりでつくる、これは環境の問題でございます。  それから、いろいろ法律制度とか、それから行くとなると治安が問題だ。教育水準インフラ、これはすべてコスト低減でございます。マキラドーラというのは、御承知のように、アメリカメキシコの国境にいわゆる保税地域がございまして、そこで物をつくりますと、アメリカに持っていった場合に加工した付加価値だけに対して輸入税がかかる。品物にかかるのじゃなくて加工した付加価値だけにかかる。そういたしますと非常に有利になりますので、日本会社がもうたしか四百社以上行っているかと思いますが、それはすべてコストの問題でございます。こういった調子でリストをつくってみました。  そうして二番目は、御承知のように貿易上の規制。これはローカルコンテント法が、特にECなんかが厳しいことを言っておりまして、向こうで物をつくらなきゃ売らせない、そういった種類のものでございます。それから割り当ての問題。それからイギリス連邦方式というのは、ちょっとこれ私が勝手につけた名前でございますが、日本のあるメーカーは、マレーシアで冷蔵庫の中に使うコンプレッサーをつくっている。なぜマレーシアでつくるかと申しますと、マレーシアというのは昔のイギリス連邦の中でございます。したがいまして、昔のイギリス連邦の範囲、例えばカナダとかああいうところに持っていきますのには全然制限がないわけであります。日本から持っていきますといろんな制約ございますが、マレーシアでつくる限りは全然制約がないということで、これはイギリス政府一つの政策かとも思いますけれども、そういうやり方をしている、そのために持っていくと、こういう場合もございます。  それから海外資源の利用というのは、これはむしろ積極的でございまして、例えばそこに情報というのがございますが、アメリカ日本会社研究所を持っていく。これはアメリカにいますと、いろんな情報が手に入るという意味での情報でございます。それから設備というのは、日本にない設備がございます。それを向こうにあれば使おうと、こういうのもございます。もちろん人材というのもあります。それから企業誘致というのが、御承知のように海外では日本に対して非常に盛んに行われております。アメリカの州で日本にこの企業誘致のためにもう既に二十幾つ事務所を持っているところがあると申しますが、ヨーロッパも随分来ております。そういう企業誘致に乗っかっていく。もちろん、それに対してはいろんな優遇策もございます。それから地理的条件というのは、こちらからつくって持っていくよりは、現地でつくった方が非常にいろんな意味で有利である。例えば皆さん承知のように、吉田工業という会社がファスナーを世界の約七割つくっておりますが、あれは四十何カ国に工場を持っております。これは現地縫製屋さん、つまり洋服をつくったりする人たち、そのすぐそばでつくるということは非常にいろんな意味で便利でございますので、そういう意味での地理的条件で行く、こういう場合もございます。  それから、Dが非常に問題でございまして、最近日本会社が、自動車メーカーさんがアメリカ工場を建てる、そうすると、その下請さんがくっついていく、これがいろいろとその地区産業空洞化につながるということで問題になっておりますが、これが今申し上げた親会社向こうに行く、それではついていこうと、それが一つございます。  それからもう一つは、市場拡大、シェアを維持していこうという非常に戦略的な立場でやったという例がございます。例えば日本カラーテレビメーカーは、ほとんど全部アメリカカラーテレビをつくっております。現在持っていくこともできるんですけれども、いろんな問題がありまして、そこでアメリカでせっかく開拓した市場を失いたくないということで現地生産を始めた、こういう例もございます。  それから、危険分散というのがございます。これは日本会社はまだそこまで考えておりませんけれども、御存じかもしれませんが、オランダフィリップスという会社がございます。フィリップスというのはヨーロッパで最大の家電メーカーなんですが、あれは第二次大戦前に、アメリカノースアメリカンフィリップスという会社をつくりました。それは第二次大戦が起きることを見越していたわけです。それでドイツ軍オランダを占領いたしました。しかし、アメリカに行っていたノースアメリカンフィリップスは依然として健在でございました。そういう意味でのいわゆるリスクマネジメントと申しますか、そういう危険分散のために海外に持っていく、こういう例もございます。日本会社は、ここを考えているところはまずないと思うんでございますが、ヨーロッパの小さな国になりますと、そういうことをやっております。  それからもう一つは、国際協力として行く、場合によっては赤字覚悟でも行く、こういうケースもございます。したがいまして、海外投資からどういう摩擦が起きるかということを考えます前に、何のために行くかということについてのきちっとした分析をする必要があるかと思うんであります。そういった意味で、まず目的としてここに、これがすべてではございませんので、その他というのを一つ入れておきました。私はいつも報告書を書くと、その他というのを入れるわけです。その他を入れておくと全部入りますから、そういう意味でその他を理解していただければ結構でございます。  ところが、こういうふうに見知らぬ土地に行っても必ず成功するとは限りません。私も実は松下通信工業という会社に長年おりました。自分で会社を、工場海外へ持っていった経験もございます。ですから、それには成功の条件というのをよほど考えておきませんと非常に難しいことになります。そこで、どういうことをやれば成功しただろうかということについて、私なりの経験といろんな会社の例をちょっとここに御披露したいと思います。  もちろん第一の基本は、これは経営力です。会社経営する力でございますが、これは非常に抽象的なことでございます。  二番目にあります仮縫い原理という奇妙な言葉がございますが、これはよく向こうに行った会社日本的な経営をそのまま押しつけた、それが現地で非常に摩擦を起こした、こういう話を聞きます。そういう場合は、日本的な方法をそのまま持っていって成功するわけはないわけでありまして、仮縫い、つまり、我々が洋服をつくりますの に必ず仮縫いをやります。これは体にぴったり合わせるためであります。ですから基本は、日本的なやり方を持っていくのは差し支えないんでありますけれども、現地に合わせて仮縫いをやらないと失敗するだろうということで、私は仮縫い原理という言葉を発明いたしまして、松下の中でもみんなに言っていた、それをここに書いたわけです。  それからもう一つは、やはり向こうに行きましたときに、現地にいいパートナーを見つけるということが成功するか失敗するかの分かれ目になる場合が非常に多いんであります。実は日本から向こうへせっかく参りまして立派な工場を建てたんですけれども、相手としてのパートナーの選び方を失敗したために非常に大きな問題を起こす。問題を起こすということは、ただ単に経営的に失敗するというだけじゃなくて、その国内での摩擦を起こす。こういうケースがよくございますので、一応パートナーということを書いたわけであります。それは当然人間関係にもつながるわけであります。  それからもう一つ、こちらから行く会社というのは、一番優秀な人を出しませんと失敗する可能性が非常に多い。  それから、当然のことでございますが、その地域をよく研究しろ、インフラがどうなっているか。例えば具体的に申しますと、日本が中国に武漢製鉄所というのを建設したわけです。あのときに私は武田会長から伺ったんですけれども、製鉄所というのは、べらぼうな電力を食うわけです。しかもそれだけじゃございませんで、機械をスタートするときに、例えば普通なら二十万キロワットあればいいのが、スタートする瞬間に百万キロぐらいの電気がないとうまくスタートしない、こういう機械があるわけです。そこで、ああいう製鉄所を建てますときは、ただ製鉄所専用発電所があったんではだめでありまして、付近に非常にたくさんの電力需要がある。例えば二百万キロぐらいの需要のあるところに二十万キロの製鉄所を建てますと、スタートの瞬間の百万キロというのは吸収できるわけです。  それで、あの製鉄所を建てるときに、あの周りにどれぐらいの電力需要があるかということについて調べてみたら、非常に心配だったわけです。向こう最新式製鉄所が欲しいというものですから、やむを得ず建てたそうです。ところが、建てたのはいいんですけれども、スイッチを入れますと、周りじゅう停電になるわけです。発電所の能力が足りないわけです。そういう意味で、周りにそういうインフラがちゃんとしているかどうか、これが非常に重要な条件でございます。そういった種類の笑えないような問題が実はたくさんあります。これをうっかりしますと、周りの住民から見ると、あの製鉄所ができたおかげで年じゅう停電するという非常に悪い印象を与えるわけでございまして、お互いにつまらない思いをする。そういう意味での地域研究というのが非常に大事だと、これはおわかりのとおりでございます。  それから、その地区文化習慣、これは前にも新聞に書かれましたけれども、タイに進出しましたある日本会社工場長が、時間が始まっても働かない女性がおりました。腹が立ってひっぱたいたらしいんですね。これが大問題になりまして、侮辱したと。タイでは親でも子供をたたかない、日本人はけしからぬ、そういう話が伝わっておりましたけれども、そういった種類の問題というのは、率直に言いまして、ばかばかしい話でありまして、そういった意味での文化習慣というものの研究が非常に重要だ。  それから、法律とか制度がございます。  これは一つの例を申し上げますと、実は先ほど申し上げたマキラドーラ松下が非常にすばらしいカラーテレビ工場をつくっておりました。ところが、私がその工場へ行ったときにあれっと思ったことは、そこにございますいろんな受像機械が全部アメリカ会社から借りたことになっている。どうしてこういうことをするんだと申しましたら、当時はメキシコでは固定資産税が非常に高い。ですから、会社資産にしておきますと、その税金が大変なことになります。ところがレンタルにしておけば、これは経費で全部落とせるわけです。そういった習慣を知らないで、その前にある会社工場を建てて、もう固定資産税を払うだけで精いっぱいになっちゃった、そういうばかばかしい話もあります。  だから、そういった意味でのいわゆる法律とか制度、それからもちろん人間関係でございますが、そういう意味での地域研究というのがないと成功しない。  それから、その次の適正技術という問題がございます。  これは、特に日本途上国工場を移転するときに非常に難しい問題になるわけです。と申しますのは、工場を持っていった場合に、現地人たち教育水準というのは、もちろん日本より非常に低い。そういたしますと、最新式機械を持っていっても動かないわけです。ところが、向こう誘致運動で行ったというふうな場合、向こうとしては最新式機械というのは欲しいわけです。それで、少し古い機械を持っていきますと、侮辱するのかと、こうくるわけです。侮辱しているんじゃなくて、その地域にちょうどいい機械を持っていこうと思いましても、やっぱり向こうから見ますと最新式と、こうくるわけです。どういう国でこんなことが起きたかというのは申し上げかねますけれども、そのためにえらいもめまして、やむを得ず一番新しい機械を持っていったんですけれども、結局それは全然使い物にならなかった、こういった例というのが案外あるわけでございます。ですから、その地域に一番ふさわしい技術は一体何だろうかと、これはもう感情論ではだめでございまして、技術の問題でありますから、そこが非常に重要なことになります。  それからもう一つは、行政府との関係というのは、国それぞれにつきまして行政機関というのは一つの考え方を持っており、またルールを持っております。ですから、我々の論理が通じない場合というのがいっぱいあるわけです。これはどういう国かということは申し上げかねますけれども、例えばある国に、向こうがこういうことをやってくれということで持っていった。ところがなかなか向こうが、例えば道路を整備しないとかいろいろなことで工場がうまく動かない。それで約束違反ではないかと言ったら、いや、あの男はもうかわっちゃっている。おれはそんなことは知らぬというようなことで痛い目に遭わされたという例が非常にたくさんございます。そういう意味で、そこの土地行政機関行政機関というのは、そういう工場を動かすための枠組みをつくってくれるところでございますから、その辺の関係をよほどうまくやっておきませんと、まあこれ先進国ではそういうことは割と少ないんですけれども、特に途上国は問題を起こす。じゃ先進国は大丈夫かといいますと、実は先進国でもなかなか難しい国がございます。これは名前を名指しにすると皆さん御存じの国ですけれども、非常に難しいので——いつの間にか法律を変えちゃって、法律が変わったんだからしようがないじゃねえかという手でやられますと、もう参っちゃうわけでありまして、その辺のところをよほどうまくやりませんと成功しない。  それから、チームワークという言葉をちょっと使っているんでありますが、これは日本語にもうなっているはずなんですけれども、ちょっと御理解しにくいかと思うんですが、私はこういう説明をしているんです。そういうことをやるには当然いろんなルールを決め、組織をつくって仕事をしていくわけでありますが、特に外国人たち会社の中で使うには、ルールをきちっと決めてやらなきゃ動きません。ところが、実際の会社というのを動かしますと、あらかじめ決めたルールのどれにも属さないようなすき間の仕事がいっぱい出てくるわけです。そのときにこれをどう処理するかというのは理屈じゃございませんで、これはチームワークの問題なんです。  例えば具体的に申しますと、野球をやっている とき球がちょうどファーストとセカンドの真ん中に来た。そのときに一体だれがとるか。そこはおまえの方に一センチ近いからおまえとれなんて言ったら野球は負けるわけであります。瞬間的にどちらかが飛んでいって球をとらなきゃ負けます。これは理屈じゃないんであります。そういった意味でのチームワーク、これがチームワークなんですけれども、これを考えないで、ただ機械的に何かやりますといろんな問題を起こすわけです。それでチームワークという言葉をここへ使った。  それから最後に、最初が肝心という不思議な言葉がございます。これは非常に重要なことでございますので申し上げたいと思うんでありますが、実はメキシコマキラドーラ松下カラーテレビ工場をつくったと申しました。その工場を初めて私が訪問したのがもう五、六年前であります。できて二年目だったと思うんです。それで、行くときに私はあんまり期待しないで行った。なぜかと申しますと、実はアメリカでは、メキシコ人たちというのは必ずしもイメージがよくない。ですから、働くかしらと思って行ったんです。行ってみましたら、実によく働くんです。規律も正しい。私はその前の日にシリコンバレーという有名なサンフランシスコのそばのあるアメリカ工場を見たんでありますけれども、そのアメリカ工場を見たときに、工場を回っていましたら、そこにある機械にみんな鎖かついて、かぎがついているんですね。どういうわけだと言ったら、泥棒が多いというわけですね。一緒に歩いた商社の方が、まるで泥棒の中で物をつくっているような気がしますねと、こう言ったことがある。まあそういったことがあったものですから、メキシコ工場へ行ったときに一番先に心配したのは、泥棒はいないかということです。工場長にそれを聞いたら、全然そんなことはない、考えたこともないと言うわけです。どうしてだろうと思いましたら、その工場は、何にもない農村地帯のど真ん中に建てた。ですから悪い労働慣習がないわけです。  それで、農村の方というのは非常に素朴であります。それから働くことについて一つも抵抗がない。農村の方というのは、もう夜が明けると一生懸命働くわけですね。しかもあの辺は、日中が四十度以上になる暑いところなんです。そうすると、従業員の方が工場が開く一時間も前に来るというわけです。なぜかというと、工場は全部冷房完備ですから、家にうろうろしているより工場へ行った方がよっぽどいいというわけです。それで、朝全員が集まって、松下というのはいつも体操をやって社歌を歌うんですけれども、全くそういうふうにやっている。私はそのとき非常に感じました、最初が肝心ということを。これは、本田技研さんのオハイオの工場へ私行ったことがあるんですけれども、あそこも聞いてみますと、何にもない農村地帯にぱっと工場を建てたんですね。汚染されてないわけです。そこに建てた。そういうわけでございまして、一番最初のしつけと申しますか、これをどうやるかというのが後ずっと尾を引くということでございます。  まあ、これはほかにもたくさんあるかと思うんでありますが、私思いついたまま書いたんですけれども、そこで、あと残された時間を使いまして、摩擦の問題について私なりにいろいろ見たり聞いたりしたことについてお話ししたいと思うんであります。  私は製造業におりました。そのために、向こう日本会社が随分行っているのも見て歩いたんでありますけれども、一般的に申しますと、日本会社が来ることについて歓迎しているケースの方が多いと思うんです。というのはどういうことかといいますと、日本は失業率が二%、今二・三%ぐらいですが、海外は五%だの一〇%はざらでございます。ですから、日本会社を持っていくことにつきましては失業者を救済する、雇用がふえるという意味でほとんどのところでは歓迎されているように思います。ところが、実際に工場が運転を始めますと、当然二つの問題が出てまいります。  一つは、向こうにそういう品物をつくっている会社一つもなければいいんですけれども、必ず競争者がいます。そうすると、当然競争者から見れば、あんなのが来て自分の商売を奪われると。これは当然問題になります。しかし、これは私から言わせますと本当はおかしいわけでありまして、向こうがしっかりやればいいわけであります。例えば私はアメリカの方、特に政府の方にはいつも言うんですけれども、日本カラーテレビメーカーは全部アメリカへ行ってカラーテレビをつくっている。結構利益を上げている。ところが、アメリカカラーテレビメーカーはほとんど全部海外生産ですね。おかしいじゃないか。日本会社アメリカへ行って利益が出るんだったら、あんた方やったってできるはずだ。これは経営力の差だということを申し上げるんですけれども、それは理屈はそのとおりでしょうけれども、しかし、向こうとしては困ることは間違いない。しかし、これははっきり言うと程度問題でありまして、余り問題にならない。  二番目の問題というのは、先ほど申し上げたその土地文化とか習慣とかいろいろなことがあるわけですけれども、それと日本人との食い違いのところから必ず摩擦が起きております。大なり小なり起きております。これはこちら側の対応の仕方、先ほど仮縫い原理というのを申し上げましたけれども、言ってみれば、文化摩擦というやつは、これは心の問題ですから、理屈ではないわけであります。それをいかに我々がうまく調和をとっていくかというのは、こちらの努力が必要だと。先進国の場合は割合に日本人というのは何と申しますか、昔からの伝統で現地に溶け込もうという努力を一生懸命してくれるんですけれども、途上国へ行きますと、ちょっと日本人の悪い癖が出るわけです。これはいろいろとお聞きのとおりでございます。実際私も東南アジアの幾つかの国にも参りましたけれども、向こうへ参りますと、もう日本の銀座と全く同じカラオケバーがありまして、盛大にやっておるわけですね。あれも悪いことではございませんけれども、しかし、これは文化摩擦の原因になり得るという気がいたします。  それからもう一つは、今二つの大きな問題、つまり商売という、つまり企業としての競争というのがあったわけですけれども、もう一つ文化としての摩擦と、こう二つあるわけですが、それ以外にいろいろと日本人のつき合い方につきまして、何と申しますか、非常に下手くそなところがある。具体的な例を申し上げますと、前にある会社アメリカのある州に新しい工場を建てました。日本流にオープニングのお祝いをやったわけです。ところが、そのとき現地のどういう人を呼んだか、その呼び方がまずかったために、呼ばれなかった人は怒っちゃったわけですね。それがだんだんワシントンまで行っちゃって、感情論になってしまったという話がございます。  そういう意味で、やはり向こうへ行ったら、我々はお客さんというか、行かしてもらっているわけでありますから、そういう点での日本側の配慮というのは非常に大事じゃないかと思うわけであります。ただし遠慮する必要はないと思う。  最後に申し上げたいのは、実はこれは私事で恐縮でございますが、昨年十月に私はイタリーのミラノからパリへ行きまして、マドリードへ行きました。女房を連れていった。マドリードへ参りまして現地の駐在の方々と食事をしたんですけれども、そのとき駐在の方の奥さんがこういうことをおっしゃったんです。子供さんを連れていって、スペインの子供と遊んでいるというわけですね。子供だから転ぶことがある。ところが、スペインの子供というのは立ち上がりますと、とりあえず一番そばのやつをつかまえて、おまえがやったと言うそうです。これにはびっくり仰天したと。これはもうおわかりだろうと思う。私はこう言ったんです。それはそうでしょう。ヨーロッパの国々の歴史というのは、お互いに殺し合いの歴史だと。だから、自分が間違っていたなんてうっかり認めると何が起きるかわからぬからだと、こう言 ったんですがね。  ところがもう一つ、こういうことがある。パリでルーブル美術館をゆっくり見たいというので、そばにホテルをとりました。私は仕事で回ったんですけれども、女房は四日間ルーブルへ通いました。パリからマドリードへ飛ぶ飛行機の中で彼女は私にこう言った。今度ゆっくりルーブルを見たけれども、一つ気がついたことがある。ルーブルに掛かっている絵の大体半分が人殺しの絵だったと、こう言った。そう言われてみますと、なるほどルーブルの絵というのは、大体半分が人殺しの絵なんです。私はあれがヨーロッパの歴史だと思うんです。  そういうのか見ますと、日本という国は島国で、長年非常に平和に暮らしましたために、そういう感覚がないように思うのであります。ですから、別に私は日本人が向こうに対して突っ張れなんて言いませんけれども、やっぱりそういう向こうの歴史の中で生まれた物の考え方、交渉の仕方、こういうものは我々もきちっと身につけてやらないと何が起きるかわからない。これが実は日本海外に参りましたときの摩擦の問題ですね。このいろんな摩擦を起こすんですけれども、その根本に今申し上げたような大陸の人たちのつき合い方ですね。これがわからないせいじゃないかなと思うケースが非常に多いんです。  三十分というお話でございましたんで、ここで一応私の話は終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。
  9. 松前達郎

    会長松前達郎君) ありがとうございました。  続きまして、守屋参考人お願いいたします。
  10. 守屋友一

    参考人守屋友一君) 日立総合計画研究所の守屋でございます。御説明をさしていただきます。  お手元に十三枚の資料をお届けしてあるかと思いますが、実はこれは、ことしの初めに私どもの研究所海外現地生産時代における企業の社会的責任という研究書をまとめました。政府のシンクタンクの元締めでございます総合研究開発機構にこういう研究をするんだということで御提案申し上げたところ、助成を賜りましたので、まとめたものがこの報告でございますが、先ほど唐津先生からも貿易摩擦への対応というお話がございましたが、我々はこれを海外生産時代の社会的責任という立場から、具体的にどう考えていったらいいんだろうかということを取りまとめました。きょうはそのエッセンスを御紹介さしていただきたいというふうに思います。  資料の一に、一般的な社会的責任の必要性をお書きしておきましたけれども、ごらんになりますように外務省の世論調査では、唐津先生もおっしゃったように、日本企業の進出を歓迎する人の方が多数ではございますが、それでも国によっては、なお歓迎しない人たちもいるわけであります。ごらんになりますように、その反対理由という中には競争の激化であるとか、あるいは秩序の攪乱であるとか、過度の利益追求であるというところを重要視する国々がございます。これを現地に即して言えば、現地の方から言えば日本企業の行動様式が不安であるとか、現地社会の安定性の侵害であるとかという不安がございます。日本側から言えば、ほっといたら世界的に孤立化するという潜在的な不安がございます。どうしてもその間において進出した企業が現地で本当の意味の社会的責任を果たしていく必要があるんではないかというように考えるわけでございます。  資料二でございますが、資料二は、日立製作所グループの中には既に海外工場を持ち、進出された社長さんもおられれば、現にそこで働いている方々もいらっしゃいますが、そういう人たちにこの研究所に集まっていただきまして、どういったところが問題だろうかということをいろいろ御討論いただいた結果がそこにまとめてございますが、大きく言って三つに分かれる。  一つは、やはり企業の社会的責任をよく知ることだ。具体的には社会的責任というのはどういうことだと、現地にどういうニーズがあるかということ。二番目として、経営戦略への取り込みと言っていますが、企業が本当にどうやったらこれをしたくなるのか、あるいはするシステムはどうかということで、社内外の啓蒙システムの検討、対応組織・窓口の設置、あるいは予算、人員等の配分等々の意見が出てまいりました。また、三といたしまして、何といっても私企業でございますから、そういう社会的責任を果たしていくことが一体何の役に立つのかということを具体化する必要がある。これは言ってみれば啓発された自己利益の実現、単なる短期的な利益ではなくて、長い目で見て本当に社会にお役に立つ、お役に立つ中で利益が実現していく、そういう認識が必要だろう。たくさんの声がございましたけれども、まとめてみるとそんな声が非常に多かったということでございます。  続いて資料三でございますけれども、実は内部でそういう検討を進めると同時に、国際的な企業、多国籍企業を相手にいたしまして、アンケート調査をいたしました。左の方に書いてございますけれども、よく言われますアメリカのフォーチュン誌の五百社、あるいはヨーロッパではフィナンシャルタイムの五百社等々にアンケートをいたしまして、回答企業数も書いてございますけれども、アメリカで四、五割、ヨーロッパで五、六割という回答をいただきました。  そこから、社会的責任とは一体どんなものだろうかということを各社から御回答をいただいた中から考えてまいりますと、まず、その社会的責任のほかに、企業には当然のことながら経済的責任があるわけでございますが、どうもそこは分かれているようだと。横に経済的責任と書いてございますが、これは経済の効率化に資するようなもの、あるいは経済の発展に資するようなもの、社会的責任というのは社会の安定とか、充実に資するものというように分けて考えているようです。  では、その社会的責任というのはどんな構造になっているかといいますと、一番根っこにあるのが強制的責任、以下慣習的、自発的というように積み重ねます。強制的責任というのは、その責任遂行が法制化されておりまして、法律とか条例とかはっきりされた文章になっている。それから、慣習的責任というのは社会体制であるとか、文化・慣習などの上でいろいろな社会的規範が出てきますし、あるいは企業が活動していく上でたくさんの利害関係人がいるわけでございますけれども、その利害関係人が期待をお持ちになる、あるいは権利意識をお持ちになるということにどう対応していくか。  そこに書いてございますように、後でも御紹介いたしますけれども、東南アジアではマイノリティあるいは宗教、もちろんアメリカにもございますけれども、こういうものへの配慮がかなり重要だ。さらには企業自身が活動していく過程で、もう地元の方が御期待になっております自発的な責任がございます。期待されている責任と言っていいかと思いますが、社会貢献活動とか、寄附とかということがございます。このそれぞれをきちんとやっていく必要があると思うんですが、いろいろな会社からのアンケートを見ておりまして、もちろんこういうように分けられますけれども、これはいろいろ国によっても違うし、それから発展段階によっても違うなど、実際向こうをよく知って、何が強制的責任であり、何が慣習的責任であり、何が自発的なものかということを現場で見きわめることが重要だなというように考えております。  企業が活動していく過程では資料四でございますが、いろんな利害関係者がございます。これはアメリカのコンファレンスボードという研究機関の御報告から選んできたものでございますけれども、政府もございますし、コミュニティーもございますし、顧客、取引先、従業員、株主等々、これは国内にもございますればあるいは海外にも同じような方々がいらっしゃるわけでございますけれども、それらに対して責任を果たしていく必要があるわけであります。実は主要な国際企業では、やはりそれらに対して行動原則をお持ちでございます。丸で囲んでございますのが行動原則を持つ会社の割合でございますが、特に注目されるのは、例えば政府に対しましては、自国の政府と 進出先の政府をちゃんと分けて行動原則をおつくりになっているという企業が結構あるということでございます。また国別に見ましても、やはりアメリカは八割の企業が行動原則を持って、その原則に即しながら対応されているということがうかがわれます。  私ども五百社に調査しました後、有力だと思いますか、あるいはこのことをよく実践されていると思われます企業に対してさらに詳しいアンケートをいたしました。それが資料五でございます。  今、強制的責任は法律で明文化されているわけでございますから、これは法律をよく勉強すればわかるわけでございますけれども、慣習的責任とか自発的責任とかいうことになりますと、国によって特性が違います。五百社のうちから特に熱心だと思われます九十五社にさらにアンケート調査をいたしましたところ、例えばアメリカでは一位に挙げられましたものが、その責任の対象でございますけれどもコミュニティー、二位が従業員、三位国益等々になりますし、ヨーロッパでは主として従業員でございます。そして、コミュニティーの地位はやや低いという感じがございますが、実は英国は結構コミュニティーを重要視している面がある。ヨーロッパでは従業員中心であるけれども、いろいろ国によって違うということに注意しなきゃならないということがわかってまいりました。  また、先進国だけではございませんで、途上国へも進出していっているわけでございますから、そこでの対応というのが、自国と違うかどうかということを問いましたところ、右端にございますように、過半あるいは六、七割の割合で、自国とは異なる対応をするというお答えが多くございました。結局一言で言ってみれば、全体のやり方としてはシンクグローバリー、国際的に物を考える。しかし、進出先あるいは自国も含めまして、その地域地域でアクトローカリー、郷に入っては郷に従うという原則が強く認識されているように思われます。  そういうように国別に異なるわけで、シンクグローバリー、アクトローカリーといっても違うわけでございますが、それじゃ具体的にどうかということでございますが、資料六でございますけれども、資料六は、例えばアメリカにおける企業の社会的責任はどう考えられているかということでございますが、各社の資料を整理いたしますと、基本的にはグッド・コーポレート・シチズン、つまりよき企業市民となることによって地元からの雇用・購買、寄附・援助、地域開発、公共機関のサポート等に努力していくわけでございますが、ちょっと日本と違う。それぞれいろいろアメリカに応じたものがございまして、例えばマッチングギフトと呼ばれるものもございますが、これは、例えば従業員が自分の出身校に寄附するということになりますと、企業が同額ないしは倍額の追加援助をいたしまして、一万円出すと二万円になるということかもしれませんが、そういうようにギフトが倍になる、あるいはそれ以上の援助が行われるということが行われておりますし、コミュニティーコミットメント等では、社員が地域内で奉仕活動をするときには、会社が活動中の給料も保障するというようなことがございます。IBM、GB、ヒューレット・パッカード、コダック等々の各社でこういうことが実施されている。なるほどこれがアメリカにおける社会的責任であるかということでございます。また、こればかりではございませんけれども、具体的に申し上げればそういう動きがあるということでございます。  一方、アジアではどうであるかということで先ほど申し上げましたように、ヨーロッパでは従業員中心で、国別にかなり違いがございますけれども、アジアではどうであるかということでございますが、資料七をお開きいただきたいと思います。  資料七では、シンガポールの例を取り上げております。シンガポールでは大学は二校でございますけれども、何といってもスキルフルな労働力を養成せぬといかぬわけでありますが、それがなかなか財源的にうまくできていなかったという事情がございます。そこで高等職業訓練校であるとか、技術訓練校であるとか等々を右にございますように、ヒューレット・パッカードだとかASEAとかいう五社、あるいは西ドイツ、フランス、日本の政府、フィリップス等々が協力いたしまして、シンガポールの政府経済開発庁とも相まちましてこういう会社をつくって、人材育成による工業化の推進という国策に協力しているわけでございます。  平たく言いますと、先ほどアメリカでの自発的、慣習的責任に幾つかの例を申し上げましたけれども、東南アジアの国々では、社会的責任といいましても、社会に対することも重要でございますけれども、やはり経済発展という国策にどう協力していくかがかなり重要なポイントになるのではないか。シンガポールの例ではそれが見られるという気がいたします。もちろん、今申し上げましたように地元の特殊性がございます。  資料八は、マレーシアの例とタイの例でございますけれども、マレーシアでは民族問題への配慮というのがかなり重要になるんではないかと思います。ブミプトラ政策というのが実施されておりますが、これは、ブミプトラというのはマレー人のことであるそうでありますけれども、ごらんになりますように、マレーシアでは、マレー系の方々が左にありますように五九%、中国三二%等々の人口構成になっておりますので、政府はマレー系の人たちを人種構成比率に従って優先雇用するとか、昇進、昇格を重要視するブミプトラ政策を実施しております。こういう線に沿って運営していくことが経営上の大きな課題になりますし、また、タイでは御存じのように、国民の九五%が小乗仏教でございまして、功徳を積む思想、厳しい戒律というのが厳しく行われております。それに対応いたしまして、寺院への寄附でありますとか従業員の信仰への配慮というのが企業の社会的責任として重要視されることになるというのが実態でございます。ほんの一例でございますけれども、こういったところが非常に印象的な各国の状況ではないかと思います。  では、そういう社会的責任を果たすに当たりましてどのぐらい企業がお金を使っておるかということでございますが、資料九でございますけれども、資料九は、アメリカの企業の社会貢献予算をアメリカのある統計に従いまして整理をしたものでございますけれども、大体そこにごらんになりますように、七〇年代初頭七億ドルでございましたのが八五年には四十四億ドルと増加し、税引き前の利益の二%ぐらい、まあ二%ぐらいが一つの目安になっているようでございますけれども、そのぐらいの貢献予算を使っていられるということでございます。企業の中で、GEとかIBMとかいう企業では、この数字が三・四%とか二・二%という高さに達します。  こういうことをやはりきちっと今申し上げましたようにお金も使い、社会的責任を果たす結果として、それが企業の評価につながってまいります。資料十は、ボストン大学で企業を評価したものでございますけれども、アメリカの六十四都市の企業の社会的責任の評価、八七年でございますが、評価項目ごらんになりますように、トップのリーダーシップ、貢献活動、従業員の関与、プログラムの斬新性、官民共同プロジェクト、コミュニティーへの感受性、活動のインパクト、評判等々かなり詳しい項目にわたっておりますが、製造業の順序で今申し上げましたIBMとかGEがかなり製造業の中で高いランクになっていることがおわかりになるかと思います。  今そのように申し上げてきましたが、私どもの研究は、企業が現地で生産をする場合に何をしなきゃならないか、それから何をしてはならないか、同時に、どうすればそういうものをする気になってもらえるか、この研究を読んだ方がどういうようにお考えいただければ社会的責任を果たしていただけるようになっていただけるか、その参考資料を、研究所をつくり上げることも大きな目的でございました。  資料十一は、一つのそのための資料でございますけれども、例えば左にございますように、企業の社会的責任というのをアニュアルレポートで表明し続けた十五社の過去三十年間の平均利益率は一一%でございます。フォーチュン五百社の平均は六・一%でございます。責任を果たしていったから地元にあるいはうまく社会に受け入れられて高い利益率を得たのか、あるいは利益率が高かったからそういう責任を果たし得たのか、いろいろ見方はあろうかと思いますが、三十年間のことでございますから、やはりこういうものをしっかりと維持し続けた企業の活動の重要さというものがうかがわれます。  また、先ほども国によって違うやり方をしているよというお話を申し上げましたけれども、国別実践九十五社アンケートから、現地に合わせて実践している企業、それから自国と同じやり方を進出先でもやっている企業というのを仮に分けてみますと、やはり現地に合わせた実践、つまりアクトローカリーの方が八%ぐらいでございますし、自国と同じやり方というのは五%ぐらいで、やはりシンクグローバリー、アクトローカリーというのをきちんとやって、長年それをやって、右にございますように、社会との共存共栄による企業の長期的存続・発展というものを、本当の意味で啓発された自己利益、エンライテンド・セルフ・インタレストというものをよくわきまえた企業というものが利益にもあずかるということかと思います。  資料十二は、実はちょっと見にくいかと思いますが、この調査ではアメリカにも何回、ヨーロッパにも何回、東南アジアにも何回というように担当の研究員が出かけまして、現地の企業、アンケートから現地調査、それぞれ違いますが、総数でヨーロッパアメリカで五百社、国内で百五十社ぐらいに何らかの形で御接触させていただいたかと思いますけれども、その中でいろんな方々がこれが重要ではなかろうかとおっしゃった、まだ解決はされておりませんが、これが重要ではないかとおっしゃったことをまとめたものが資料十二の日本企業の海外現地生産における実践上の課題でございます。  一つ二つ取り上げれば、米国では当然のことでございますけれども、現地貢献は現地法人組織で、かつ企業として利益が出ていないとできない。したがって、収益力のある企業とならなければならない。まず企業としてしっかりしなきゃならないとか、あるいは人事、総務、広報等の日本人には難しい仕事は、現地人、特に地元に詳しい人に任せることが必要であるとか、あるいはマイノリティー対策が大きな課題であるとかということが言われておりますし、アジアでは、二番目でございますが、各国エリート層を中心に日本及び日本企業について誤解があることもある。ですから、特に日本企業についてよく知ってもらうこと、あるいは教育が必要である等々、お読みいただければおわかりになるかと思いますが——ということが返ってまいりました。  特にこの中で重要だと思いますのは、例えば政府・業界への要望というのが下の方にございますが、米国あたりのところに、本社サイドの理解が不十分な企業が多く、日本側の認識向上のために第三者機関が本社に現地貢献の重要性を働きかける必要がある等々の声がございます。つまり、現地でやる気になっても現地に予算もない。多少はありましても、まだまだアメリカ現地企業ほどもうかっていない。しかし、やはりそこにアメリカ企業並み、ほかの国の企業並みに定着していくためには努力をせぬといかぬ。そのお金あるいは考え方というのを本社に理解を求める必要がある。しかし、本社ではまだまだ十分理解がされてないというようなことがある。本社もしっかりしてほしいという要望などは重要視する必要があるのではなかろうかと思います。  伝え聞いておりますのは、例えば通産省で来年度予算でございましたか、現地の例の寄附行為に対して、現地企業では利益が少なくて対応できない。そこで本社の方でお金を出して、現地で対応していく。現地では、各国とも現地並みのことをやっておるわけでございまして、そういうときに海外直接投資環境整備をよくするような税制を創設するというふうなお話を新聞で見たことがございますけれども、例えばそういうことは、こういうものの背景に必要なものではなかろうかと思うわけでございます。  結局、まとめまして資料の十三でございますが、やや唐津先生のお話に比べますと、何分研究の御報告でございますから、抽象的で恐縮でございますけれども、やはりどんどん日本企業が出ていって、プレゼンスが高まるに伴いまして、一層企業の社会的責任の実践が必要になってくる。三つの課題がある。一つは、現地ニーズに対応した現地会社による実践。それから国内本社での理解と援助。今申し上げました政府・業界による事業環境整備、それを含めて日本企業の国際化を推進し、現地従業員に愛される企業、現地のコミュニティーに受け入れられる企業、以上のことを日本の親会社で理解する等々が必要ではなかろうかというのが私どもの研究の報告の本旨でございまして、やや手前勝手になりますけれども、この報告書大分たくさん刷ったんでございますが、日本の大企業、中小企業あるいは研究者も含めまして御興味をいただきまして、手に入れたいという方が殺到いたしまして、今や我々には一冊か二冊しか残っていない状態になりましたが、むしろそういうことに関心を持っていただいた、今申し上げましたのは抽象的なことでございますが、我々としてはできるだけ具体的なノーハウみたいなことを盛り込んだつもりでございますけれども、そういうものに関心をお持ちいただいたというのは、やはり日本の企業がそういうことを心から必要とするような段階に至っているのではないか、そういうことではなかったかと思っております。  大変簡単でございますけれども、以上でとりあえず御報告さしていただきます。
  11. 松前達郎

    会長松前達郎君) どうもありがとうございました。  続きまして、菅野参考人お願いいたしたいと思います。
  12. 菅野省三

    参考人菅野省三君) 日本貿易振興会海外調査部の菅野でございます。  お配りしております資料は、三枚のワープロの資料と、それから八八年版の海外投資白書でございます。この白書は昨年の暮れにまとめまして、ことしの一月に発表したものでございまして、新しい版につきましては、現在海外調査をいたしておりまして、年末までにまとめて来年の初めに発表する予定でございます。新しくできましたら、また先生方にお配り申し上げたいと思っております。  本日のテーマは、投資摩擦ということでございますが、投資摩擦と申しますのは、海外投資のある一面でございます。その意味で、本題に入ります前に、海外投資につきましてもう一つの面、海外投資海外の出先国における大きな貢献につきまして、一言述べさしていただきたいと思います。  海外直接投資は、御存じのように、投資先国の雇用創出を通じまして、その国の経済発展に寄与しております。また第二番目に、技術経営上のノーハウを移転することによりまして、その投資先の国の経済の効率化を図ることによりまして、その国民の福祉の向上に役立っております。第三番目には、国際収支の改善に役立っておることは申すまでもないことでございます。かかる海外直接投資のメリットの評価が行き渡ってまいりまして、現在では先進国、後進国含めまして、海外投資に対しまして非常にオープンな開放政策が各国においてとられているということは御存じのことと存じます。この件につきましては、中国はもちろんのこと、ソ連、東欧におきましても外資に対しまして開放政策が順次とられてきているということは皆様御存じのことと思います。  他方、こういったメリットがございますけれども、海外直接投資には、先ほど唐津先生並びに守屋先生からお話ございましたように、留意点とい たしまして、投資先国の産業との共存共栄を図るというような配慮がないと、結局は貿易摩擦の二の舞になる危険性をはらんでおります。また、貿易と異なりまして、貿易は商品という非人格のものの交流でございますが、企業の移住、企業という法人格の人格のあるものの移住でございますので、当然受け入れ国並びに受け入れ国の地域社会の一員として受け入れられる必要がある。そういった配慮が必要であらうということでございまして、本日のテーマでございます投資摩擦は、いわば角でございまして、角を矯めて牛を殺さないような慎重な配慮が必要じゃなかろうかというふうに考えております。  以上申し上げまして、まず資料の簡単な御説明から始めさせていただきたいと思います。  第一番日の資料は、日本海外直接投資日本から出ていきます投資の趨勢、流れを簡単に御紹介したいと思います。  八四年から数字を述べさせていただきますのは、八五年のG5のプラザ合意以降、円高ドル安の以降非常に大きく情勢が変わっておりますので、それ以前の段階と比較する意味で八四年からの数字を使わせていただいております。  海外投資は、八四年に比べまして昨年度は三百三十三億ドル、約三・三倍にふえております。非常に大きな勢いで海外投資が行われているということでございます。それを業種別に見ますと、製造業が八四年から八七年を比べますと、一番右端の欄でございますが、三・一倍。しかし、三・一倍でございますが、平均よりも下回っておりますけれども、八六年の前年に比べますと約二倍の大きな伸びを示している。製造業につきましては、八七年から非常に大きな伸びを示しているということがうかがえるかと思います。非製造業につきましては、平均をやや上回りまして三・四倍。その中でも不動産業、これは十二倍、金融業が五倍という形で著しく大きく膨らんでおるわけでございます。  その次の資料は地域別の数字でございまして、大体どの地域にこういった海外投資が行われているかということを示す資料でございます。やはり一番大きなところは北米でございまして、北米が約五割弱の金額を占めておりまして、八四年との比較では四・三倍と大きく伸びております。金額は非常に少のうございますけれども、大洋州も倍率では九倍と大きく伸びております。その他欧州、それからアジアが伸び率ではそれに続いておりますが、昨年度の伸び率、右端から二番目の伸び率でアジアを見ていただけばわかりますが、一昨年から昨年にかけましてはアジアが大きく伸びているということがこの数字からうかがえるかと思います。  この二つの数字から何かわかるかと申しますと、先ほど申しましたように、投資摩擦投資にかかわるものでございますから、投資が多いところにやはりそういったものが多くなるということでございますので、地域的にはアメリカ、大洋州。これは太平洋と書いてありますが、大洋州でございます。失礼いたしました。業種的には不動産、金融業、それから地域によりましては製造業というところにそういったものが発生する可能性があることを示しているわけでございます。短期間に非常に大きな急激な増加を示しておりますので、そこで当然オーバープレゼンス、いわゆる日本の企業、日本投資があふれ返っているというような現象があるように思われますが、これは実際には、例えばアメリカについて見ますと、アメリカの直接投資残、外国アメリカ投資しております直接投資の残高で見ますと日本は三番目でございまして、イギリスオランダに次いで三番目でございます。したがいまして、アメリカ投資している企業の数並びにその資産日本が飛び抜けて多いわけではございませんが、しかし、短期間に急激にふえているというところから日本に対する記事が多くなってくるわけで、注目を引くわけでございます。  このオーバープレゼンスの問題でございますが、先ほど申しましたように、これを業種別、製造業並びに一番よく伸びております不動産並びに金融という三つの業種の中で考察してみますと、製造業につきましては、先ほど申しましたように、東南アジアにおきまして、例えばタイにおきましては、タイの統計資料によりますと、一九八六年に十六件の投資申請があったのに対しまして、八七年には二百四件、それから八八年の上半期には百八十二件と、約昨年の一年分に相当する投資案件が申請されております。また、マレーシアにおきましても、八六年には四十五件、八七年には五十四件、そしてことしの一—七月では四十四件と、いずれもここ一、二年の間に急速にふえております。これは製造業のみならず金融、不動産、サービス業も含まれたものでございます。  しかし、東南アジアにつきましては、このように急激にふえておりますが、過去一九七四年に東南アジアに吹き荒れました日貨排斥運動の時代に比べまして、投資に関する環境は非常にさま変わりでございます。これはなぜかと申しますと、日本海外進出しております企業の貢献度が非常に目に見えて、海外で政府並びにその社会においてその貢献度が非常に認められているというところにあるかと存じます。日本タイとの貿易インバランスはまだまだございますけれども、しかし、進出した企業による輸出が非常に大幅にふえておりまして、それによりまして現在、日タイ間の最大の懸案でありました貿易インバランスは、今や日タイ経済関係では余り重要ではなくなってきておりまして、むしろ日タイ関係で要求されますのは技術移転というような形に変化してきております。  オーバープレゼンスの問題は発展途上国ばかりかと申しますと、もちろん先進国にもございます。先ほど申しましたように、短期間、非常に急激でございますので、アメリカにおきましても、例えば自動車部品等におきまして、一昨年あたり日本の自動車産業に連動いたしまして、部品メーカーが一年間で約百社ばかり進出しておりますが、その当時やはりオーバープレゼンスの批判に類するものがあったように思います。しかし、そうは申しましても、アメリカの部品産業と申しますのは、約七十万人の多くの従業員を抱える大産業でございますし、売上高で一千億の大産業でございます。したがいまして、その中で見ますと、大きなオーバープレゼンスというには余りにもオーバーな表現なんでございますけれども、やはり短期間に、しかも一セクターに集中するというところに問題があろうかと思います。  もう一つ先進国におきますオーバーブレゼンスの問題は、やはり不動産に対する投資の激増、かつ不動産といいますのは非常に社会の目につきやすい、非常に注目を引く案件でございますので、実態以上に大きく注目を浴びているという面があろうかと思います。例えば不動産につきましては八六年、八七年あたりからニューヨーク及びロサンゼルスで次々に非常に大きな代表的なビルが日本の買収に遭っておりますし、またハワイあたりではホテル並びに住宅が次々と日本の不動産業者によって買い占められている等々の報道がございます。またこれは事実でございます。そういったことがございまして、例えばハワイでは非居住者による住宅の購入を禁止するといった法案が提出される、実際には審議されないで廃案になりましたけれども、そういった動きとなってあらわれておりますし、また、先ほど申しましたように、金額アメリカ等に比べて非常に小さいんですけれども、オーストラリアにおきましては、やはり昨年、非居住者による住宅の購入の禁止というような法案がこれは通っております。そういった意味で非常に不動産部門におきましては、何と申しましても不動産といいますのは、その国民にとりまして自分たちの財産という感覚がございますので、非常に感情的な反応を引き起こす分野だと思います。  オーバープレゼンスの問題は、このほかにも例えば金融等におきましてもあろうかと思います。例えばニューヨークあるいはカリフォルニアにおきます日本の金融機関による活動は非常に活発で ございますし、またロンドンにおきましても、最近各国とも金融の自由化を行っておりまして、非常に日本の金融機関の活動が活発でございます。他方、そういったアメリカ並びにイギリスから見ますと、日本の金融制度もまだまだ十分に自由化されていないというような感じがあるようでございまして、そういった意味で、金融面におきましては相互主義という考え方がだんだん強くなってきているように思われます。金融におきます相互主義の考え方は、先ごろアメリカの議会で成立いたしました新通商法の中でも、その相互主義の条項が実現しておりますし、またヨーロッパのEC共同体におきましても、九二年を目標にいたしまして金融制度の統一の動きがございます。その中にやはり相互主義の考え方が入ってまいりますと、日本ヨーロッパにおきます活動も一部阻害されることが懸念されております。その議案はEC委員会で討議中でございまして、まだ成案にはなっておりませんけれども、そういった金融面での相互主義の動きはだんだん強まってきているように思われます。  以上、オーバープレゼンスの問題につきましては、そのような状況にあろうかと思います。  第二番目の投資摩擦のカテゴリーといたしましては、先ほどから両先生方のおっしゃっておられますように、日本経営あるいは現地化の問題、その他日本の進出企業の現地社会への貢献といったような問題がその次のカテゴリーかと思います。ただ、この問題に入ります場合、確かに日本企業は短期間に急激に出ておりまして、その数も多いばかりではなくて、その企業のバラエティーも、中小企業から大企業へとバラエティーに富んだ非常に多様な進出でございますので、いろいろとそういった面の現地社会、現地経済の理解の不足といったものからいろいろな摩擦があることは事実でございます。  ただ、この問題につきましては、かなり歴史的な視野が必要ではなかろうかと考えております。と申しますのは、多国籍企業といいますか、海外投資が一番大きくなりましたのは一九六〇年代でございます。一九六〇年代、ヨーロッパにおきましてECが共同市場をつくるという時期に、共同市場の中でアメリカの企業が成長していくには、ヨーロッパの中に企業をつくらなければならないということで一九六〇年代、現在の日本投資と同じように非常に大量の米国企業の欧州への進出がございました。  皆様御存じのことと思いますけれども、フランスの政治家であり、ジャーナリストのセルバン・シュライバーという人が「アメリカの挑戦」という本を書かれましたのは、やはり一九六〇年の後半、アメリカヨーロッパへの進出が非常に盛りをきわめていた時期でございます。その当時もやはり外国資本の貢献とそれから投資摩擦と両方非常に厳しい、かしましい議論がヨーロッパ及びアメリカではございましたが、それから二十年、現在、ヨーロッパにおけるアメリカの企業のビへービアにつきましては、現在日本の企業が巻き起こしているような注目を集めておりません。もう既に二十年をかけてアメリカの企業はヨーロッパ現地化し、そして融和し、その国のそれぞれの地域の企業として一体化して成長しているからでございます。その間にはアメリカの企業が、アメリカのビヘービアがヨーロッパの気風に合わないという議論は六〇年代非常に厳しかったわけでございますけれども、アメリカの企業もヨーロッパ化するという形で変わりますし、またこの問題は、アメリカの効率という形でヨーロッパ自身が変わってきたというところにあろうかと思います。  現在、我が国の企業もアメリカにおきましてマイノリティーの問題、マイノリティーの雇用、あるいは女性の待遇、処遇等の問題で幾つかの裁判ざたになっていることもございますが、これはいわば習熟の過程ではなかろうかと思っております。そういった意味で、現地化ということにつきましては、ある程度時間がかかるものではなかろうかと思っております。そのほか現地化の問題として非常に重要な問題といたしましては部品の調達、技術移転という問題があろうかと思います。  ワープロ第二番目の資料をごらんいただきたいと思います。部品調達比率ということで、私どもが毎年アメリカ並びにASEAN——東南アジア、ASEAN五カ国の進出日本企業に対しましてアンケートを毎年行っておりますが、その結果を御披露しておりますように、アメリカにおきましては、もう既に五〇%以上が現地の部品を組み込んでおります。ASEANにつきましても、四五%は現地の部品を使っております。もちろん、これはまだ現地の要望どおりの数字ではないことは確かでございます。ヨーロッパにおきましても、やはりこの程度の水準、アメリカよりももう少し低い、東南アジアよりは、ASEANよりはかなり高い、そういう数字になろうかと思いますが、この部品調達の問題にいたしましても、やはり時間のかかる問題かと思われます。  昨年、ヨーロッパにおきまして前年に比べまして部品調達比率が上がっているかどうかというアンケートの項目に対しましては、約五〇%の企業が前年に比べて部品調達が上がっておりますということを答えております。その部品調達が上がっておると答えた企業の、なぜ部品調達がそのようにふえましたかということにつきまして、それは新しくそういう部品を供給する企業が見つかったからですと、こういうお答えが出てきております。もちろん進出する前にフィージピリティースタディーで、どのような部品が調達できるかということは調査をした上での進出ではございますけれども、やはり進出した後の各サプライヤーとの接触の中で新しい供給業者を見つけていくということになるわけでございまして、やはりこの面でも習熟のための時間が必要な問題ではなかろうかと。この現地化の問題につきましては、時間が大きなファクターではなかろうかというふうに考えております。  こういった現地社会への融和、現地社会化と申しますのは、これはもちろん進出企業の企業の問題ではございますが、そういった意味では政府のやれる、お手伝いできる分野は非常に狭いかと思いますけれども、しかし、先ほど日立総研の守屋さんがおっしゃいましたように、現地の寄附行為につきまして、税制面でのお手伝いが政府としてもできるのではなかろうかというような気がいたします。日本の社会では、福祉等の仕事は政府の責任であるというふうに考えが行き渡っております。しかし、ヨーロッパ、キリスト教の伝統におきましては、それは自分たち共同社会が行うという考え方が非常に強うございます。利益の一〇%は神様にささげるという思想が強うございますので、そういった意味で、民間がそういった部門を受け持ってまいりました。したがいまして、日本の企業の場合には税金を納めておればそれで企業の責任はおしまいと、龍事終われりという考え方が強うございますけれども、アメリカなりヨーロッパでは、やはり利益を得た者は寄附を出すというのは当然の考え方でございまして、そういった社会的な風習によりまして、例えば寄附行為に対しましては、欧米におきましては課税前の約一割が税控除の対象になりますけれども、日本におきましてはそれは非常に厳しい現状にあるように思います。  私ども海外に駐在しておりましても寄附を盛んに言ってこられまして、それがどういった寄附はいいのか、非常に寄附の問題は、海外に駐在しておりますと非常に頭の痛い問題でございます。先ほど申しましたように、利益が出ないと親会社に援助を受けなければなりませんけれども、その親会社におきましても、寄附には多くの税金がかかるということであるとなかなか理解が得られないという意味で、そういった意味での行政のやるべきことは、分野は広くはないとはいえ、まだまだあるのではなかろうかというふうに考えております。  とりあえず以上をもちまして意見とさしていただきたいと思います。
  13. 松前達郎

    会長松前達郎君) どうもありがとうございました。  それでは、これから質疑に入りたいと思います。  質疑のある方は、会長の許可を得て順次御発言を願います。
  14. 及川一夫

    ○及川一夫君 大変貴重な資料と有意義な御解明をいただきまして感謝申し上げます。  質問に入らしていただくわけですが、各党との関係もございまして、おおむね私の場合には三十分ぐらいの枠でということですから、先生方との往復を含めて三十分ですから、私は大体十五分ぐらいということになるかと思いますんで、大変恐縮なんですが、まとめて御質問申し上げますので、随時お答えいただきたいというふうにお願い申し上げておきます。  まず最初に、事務的なことになるかもしれませんけれども、菅野先生に、日本海外直接投資の業種別のものが出ているんですが、地域別に見た場合、これをその業種別に分けると、上の段と同じようなことにすると一体どういう数字になるのかなというのが、実は論議との関係で大変重要だというふうに思っていますので、もしありましたらお知らせいただければ大変ありがたいということであります。  それから、次の第二点としては、守屋先生にちょっとお伺いしたいんですが、私もこの日立総合計画研究所でまとめられたものについては大変興味深く読んだんですけれども、我が国にとって、経営者の方々のみならず政治の面からも、海外に出張るというのは一体何を目的にしてということが、私は必ずしも気持ちが合って、認識が統一されて出ていっているとは思わないんですね。いいか悪いかは別にして、やはり海外投資をするとか、海外に出張って仕事をするというのは、ある意味では、日本国内だけでは自分の持っているものが目的が達成されない。したがって、海外に出て、ひとつ一丁旗上げしようかというような意味合いの方が非常に強いんじゃないか。ある意味では殴り込みというような感じすら正直言って実は持っているんですね。したがって、そこで活動する基本はあくまでも我が国、それから我が国の中で自分が持っているキャリアとか、あるいはそのノーハウというものを主体にしながら、どんどんどんどんとやりおおしてしまうと、こういう形のものが大変大きな摩擦の原因になっているんじゃないかと、こういうふうに私は受けとめているわけです。  したがって、今はいろいろ考えられて、守屋先生がまとめられたような形のものが出てきているんですけれども、現状なお利益を上げるために海外に進出していく、あるいはどうも日本国内ではもうからないからひとつ海外へ出ていくという、そういう気持ちがかなり先行しているんじゃないかという現状ですね、現状認識としてそう受けとめていいのか。まあ、これから直していくんですが、そのように受けとめていいのかどうかということ。  それからもう一つ、これは皆さんの方から批判を含めてということで私はいいと思うんですけれども、ならば産業界、経済界のことはさておいて、我が国の政府とか我が国の政治家の姿勢の問題として、やはり同じような問題を抱えて見られているんじゃないか、またやっているんじゃないか、こんなふうに私は率直に思うんですけれども、そういう意味でその辺は、特にこの辺は唐津先生、かなり海外あちこちに行かれていることは存じ上げているわけでして、客観的にも物がずばり言っていただけるんじゃないか、こんな感じがしますので、政府の姿勢とか我が国の外交とか、あるいは政治家の諸外国に行った場合の対応などを見られて、同じような問題点を抱えているんじゃないかというふうに思いますので、御意見ございましたら出していただきたいものだと、こういうふうに思います。  それからもう一つ唐津先生にお伺いしたいんですけれども、アメリカ貿易に対する姿勢ですね。昨今は特に我が国がねらい撃ちされてという言葉が出てくるほどさまざまな厳しい条件が出てくるわけですけれども、通信機器の摩擦問題から私も幾つか体験をしているんですが、国会では、ぞうきん、バケツのたぐいならば何か輸入に応じてもいいような発言をしたことが大きな問題になって、当時の電電公社がえらい批判を食ったという経過が一つあるんですけれども、あれを日本的な感覚で見ていますと、幾ら姿勢をこう変えよう、ああ変えようと言っても、具体的に通信機器というものを買わないとアメリカは納得しない、こういう雰囲気がばあっと出てくるわけですね。それで議論をすると、いや、姿勢の問題だ、姿勢の問題だと言うけれども、姿勢はそうしよう、そうしようと言っても、日本人は空約束ばかりだという実績が余りあるからかもしれませんけれども、どうもそれだけではない。具体的に輸出入のバランスがとれなければ、あるいは輸入をもっと能動的にやってもらわなければという意味で、通信機器の問題は、おおむねそういう具体的な対応になっていますから問題は余り出てきてないんですけれども、建設業界の問題にしても米の自由化の問題にしても、どうもアメリカのああいった姿勢というのは、東洋的に見るとかなり横暴というふうに見えてくるんですよね。その辺が国民の中にもあると思うんですけれども、ぜひこれを、アメリカの姿勢というのはどういうものかということを、何が摩擦の原因になっているのかということを解明するとどういったことが言えるのかということについて御指摘いただけたら大変ありがたいというふうに思っています。  それからもう一つは、菅野先生にお伺いするんですが、先ほども先生自体がお触れになったようですが、不動産業がとにかく総額としては小さいんですけれども、倍率では、この表によると一番倍率が激しいですわね。なぜこういったものに我が国の産業界、経済界が手を出すようになったのか。まあ、もうかるし、もうけるには一番都合がいいと言えばそれまでなんですけれどもね。こんなのは先生方がお話しになっている相手国の経済発展のために寄与するのか寄与しないのかということになれば、お話しのように、どうも逆にとられることの方が大きいというふうに思うんですけれども、我が国の経済界というか投資家というか、こういう人たちが、不動産業者がどうしてこれは、アメリカだけじゃないんでしょうけれども、これほど大きい割合で発展するような形で投資が行われることになったのか。単なる金余り現象だけではなさそうに思うんですけれども、その辺の原因についておわかりであればお願いをしたいというふうに思います。  最後にしますが、やはり菅野先生もお触れになったように、企業の社会的責任というのは、我が国にあっても必ずしも私は確立しているように実は思えないんですよね。ですから、海外に行けばなおのこと違和感を持って私は迎えられるんじゃないかというふうに思うんですけれども、私は企業の社会的責任というのは、個々人よりも先んじて相手国の文化というものを理解をして、相手国の条件の中でまず過ごすという、そういう姿勢というものがないと、いずれにしてもこれは理解されないし、摩擦はどうしても解消できない、こういうふうに私自身は実は思っているわけです。  ですから、そういう意味で言うと、税制上のいろんな問題も配慮はしなければならないのでしょうが、税制のことよりも、どんな厳しい条件でも相手国の社会的条件に沿って、例えば寄附というのがあるわけですけれども、そういう寄附が求められた場合に、企業の収支以前の問題として、それをやり通すというようなやはり姿勢というものが相手に見えないと、幾ら金を出したからといっても金の出し方、それから金を出すまでの経過が相手国の人たちに誤解をされるという場合が非常に私は多いんじゃないかというふうに思うんですね。したがって、先ほども言ったように、相手国の条件の中にどっぷりつかるという、そういう気持ちをやはり持たないと問題の解決になっていかないんじゃないかというふうに私は体験しているんですけれども、その辺のことについて御意見ございましたらお伺いしたい。  以上でございます。
  15. 松前達郎

    会長松前達郎君) 大分たくさんありましたけれども、それでは、菅野参考人の方からひとつお願いいたします。
  16. 菅野省三

    参考人菅野省三君) 一番最初の統計の件でございますが、大変申しわけございません。今直ちには、用意しておりませんので、後ほどその表をつくりまして、先生方にお配りできるようにしたいと思います。  第二番目の、私への御質問の不動産業の件でございますが、やはり基本的には我が国の国際収支、貿易収支の大きな黒字が国内に大きな金余り現象を生じさせておるというふうに私は考えております。それによりまして、それが片や為替の円高というような形で続いておりますので、そういった意味外国の物件が非常に安くなったということがあろうかと思います。  この逆に、また例えばオーストラリア、先ほど申しましたように、オーストラリアは非常に多くなっておるんですが、オーストラリア側にも一つの原因がございます。一九八六年に、それまで不動産につきましては五〇%の制限をつけておりましたけれども、外国投資が一〇〇%でも不動産の購入を認めるというような日出化措置をとっております。これも一つのファクターかと思います。  ただ、私、大変舌足らずで、不動産すべてについて否定的な意見を述べたというふうにお受け取りでございましたら、それについては訂正させていただきたいと思います。不動産につきましても、やはり観光開発等、非常に現地に貢献している投資は多うございます。その面につきましては非常に評価されておりますし、それがために、例えばハワイの場合に、住居購入の禁止の議案が出ましたにもかかわらず否定されたのは、やはり不動産業のハワイ経済に対する大きな貢献が認識されているからでございます。私が言いたいのは、単なる投機のための不動産投資が問題ではなかろうか。例えばハワイにおきまして、不在家主の家の庭の芝が非常に荒れているというようなことで、それも一つの批判の対象になっております。御存じのように、アメリカ人は毎日芝をきれいに刈って非常に大事にいたしますが、不在家主がそういったことを怠っているというようなことも一つの大きな批判の対象になっております。そういった意味で訂正をさせていただきたいと思います。  それから、最後の社会的責任の問題でございますが、私申しましたように、やはり社会への融和というようなものの第一の主体は、もちろん企業の努力というところにあろうかと思います。その企業の努力をしやすいような形で行政がお手伝いをするという余地があるのではないかという趣旨で申し上げたわけでございます。  以上でございます。
  17. 松前達郎

    会長松前達郎君) 続きまして守屋参考人お願いします。
  18. 守屋友一

    参考人守屋友一君) 私の専門はマクロ経済分析の方でございますので、あるいは先生の御質問に対するお答えがやや抽象的なことになりまして、具体的なことから若干遠ざかるかと思いますが、お許しをいただきたいと思います。  具体的なことであるとか、あるいは非常に現地サイドのことは、今多分唐津先生がよく御存じだと思いますので補足をしていただけるかと思いますが、先生からいただきました第二番目の質問は、日本の企業が出ていくのは、要するにもうけのためじゃないか。そのもうけばかりに頑張るからいろんな摩擦が起こるのではないか。簡単に言ってしまえば、企業に対しての一つの問題提起はその点であったかと思いますが、それが全部そうではないと言う気はございませんけれども、やはり最近のというか、ここ十年ぐらいの日本の輸出というのは、日本からの押し出し輸出というよりは、やっぱりアメリカの吸い込み輸出ではなかったかという気がいたします。  統計がはっきりしておりますが、例えば数字で恐縮でございますけれども、一九八〇年、昭和五十五年のアメリカの輸出は二千二百億ドルでございます。そして、八六年のアメリカの輸出も二千二百億ドルでございます。正確に言うと一億ドルふえているんですけれども、つまり、ほとんど輸出はふえてないということでございます。他方輸入は、二千五百億ドルが三千七百億ドルというふうに千二百億ドルふえております。つまり、レーガン政権になって以降ごく最近までは、輸入がふえることによって国際収支が赤字になったのであるということであります。しかも、その内訳としまして工業品輸入、若干統計違うんですけれども、工業品輸入がこの期間中どのぐらいふえたかといいますと、ほぼ工業品輸入の増加額は一千百億ドルでございまして、赤字がふえた千二百億ドルのうち千百億ドルまでが工業品輸入、外国から物を買う。これにはやはりアメリカが貯蓄不足で外から物を買った、空洞化で物を買ったということがあります。ですから、やはりマクロ経済的に言えば、吸い込み輸出ではなかったかという気がいたします。  それから技術的には、例えばこれは唐津先生の方がお詳しいと思いますけれども、日本でなきゃつくれない物、日本がすぐれている物ということになりますと、それを輸出をいたしまして、そういう輸出がまさにいろんな貿易摩擦をもたらしたことは確かでございますけれども、貿易摩擦が今度は水際でとめられるようになりますと、やはりどうしてもその吸い込む力は働いておるわけでございますから、吸い込む力が働いておって入らないようにしておるわけでございますから、現地生産ということにいかざるを得ない。あるいは川下産業、製造実の中の川下産業が出ていったら、その部品供給あるいは原料供給の川上産業も行かなきゃいけないという仕掛けになるだろうと思います。  ですから、何かもうけを目的にしたというのは、企業ですからもうけなきゃいかぬことは確かでございますけれども、やはりアメリカの胃袋が大きくて、どんどんおなかがすくようなシステムがあって、やはりその中で我々が供給責任を持たざるを得ない。責任と言うと、ちょっと言い方は難しゅうございますが、産業構造がそういう形になったんじゃないかという気がいたします。利益を上げることが目的だからそういうことになっちゃったんじゃないかということですが、基本的にはそういうのがあって出ていったとすれば、やはりこれは利益なしにいろんな責任を果たすことはできませんので、もちろん利益のためにいろいろ努力をされたことは確かだろうと思いますが、それであって、ですから利益追求だけに頭がかちかちになって、だからこそ貿易摩擦が起こったということでは決してないと思います。  じゃもう一つ、より深い御質問として、及川先生の御質問として、本当は日本人全体に目的がないんじゃないかというお話でございました。経済的には目的があると思います。なぜなら、向こう需要する物をやはりお売りする、輸出することができなければ現地でおつくりをするというのは、経済的には活動としては入ってくると思います。多分、目的というのは、それを超えて日本に何か本当の意味目的があるかどうかという御質問につながるのではないかという気がいたします。やや個人的な見解でございますけれども、日本は戦争に負けたためにいろんな面で雪辱をいたしました。戦後すぐ経済と文化には努力をいたしました。ほかの部分はできるだけ控え目にしてまいりました。控え目にすることは重要だったと思います。それに悪いところに何も力を入れることはないと思いますけれども、そういう控え目にしたところをもっともう一回現代的に見直していく必要はあるんじゃないかという気がしております。  消費者が日本経済の中で本物志向と言われますけれども、多分おこがましい言い方でございますが、日本経済が本物を世界に御提供できるかどうか、文化あるいは目的としてというようなのが問われているんじゃないか。政治家の方々にもしお考えいただければありがたいと思うのは、そんなことでございます。  それから二番目でございますが、通信機器の摩 察に関連いたしまして、いろいろアフリカが文句を言ってきておりまして、いろいろ受け入れても成果が上がらないと、つまり、具体的でないとまた文句が出てくると。最近ではそれに加えて建設、米等、無理難題と思われるようなのが出てくる。これをどう考えるかということでございますが、アメリカのそれぞれの個別の方々が何をおっしゃっているか、日本の方々が何をおっしゃっているかということは別問題といたしまして、やはり日米相互間には、アメリカには貯蓄不足、日本には貯蓄過剰という問題がございます、先ほど菅野先生がおっしゃいましたけれども。私自身の試算では、個人部門で言いますと、大体アメリカの倍の貯金をしております。総額で年間の貯金をしております。それから、一人当たりで見ますと四倍の貯金をしております。それがいかぬというんではなくて、日本人はそれだけ貯金ができるようになりました。  それが国内で十分うまく使われないということになりますと、やはり外国とのお取引ということになるんではないかという気がいたします。そうすると、日本が出ていけるところと向こうが出てこないといかぬところというようなところがやっぱり議論になってくるんじゃないだろうか。最近は内需拡大策が非常に盛んでございますし、政府の御政策としても盛んでございますし、企業サイドでも内需で買ってもらおうというので一生懸命、私、部内では、内需かしからずんば死かというようなことをちょっと言っている。昔は、輸出かしからずんば死かと言っていたんですけれども、今は内需かしからずんば死かと、内需でしっかり国民に愛される商品をつくらないとおかしくなっちゃうぞと、どんな企業もそういうお気持ちだろうと思いますが——と申し上げているんでございますけれども、そういう努力が政策的にもあるいは個別企業の場でも行われて、その貯金を今度は、そのままではどうしたって外国へ行っちゃうんで、国内で使えるような体制にしていくということが非常に重要なんではないかと思っております。  それから三番目、先生の御質問では四番目になったかもしれませんが、税制の問題でございますけれども、これに関しましては、唐津先生の戦略の中に非常に重要な御指摘がございました。成功の条件の中に、五番目に優秀な人材の派遣というのがございました。確かに現地にどっぷりつかり込んでいくとしますと、なまはんかな人間ではなくて、優秀な人材が行って、本当にそこでどっぷりつかって縦横無尽に腕を振るうということが重要でございます。実は私どもの調査の中でもコンペティティブな、つまり優秀な人間を送れという声は物すごくございました。優秀な人間は、現地に対して優秀であるばかりでなく本社に対しても優秀でございます。本社が金出さぬと言うんなら、本社から金を出すというところまで優秀な人が行けばいいんだろうと思います。しかし、やっぱり組織というのは、どんな優秀な人間でも限界がございます。ですから、そういう優秀な人間が生きるような制度というのもあったらいいんじゃないかというのが偽らざるところでございます。  多少出過ぎたことを申し上げましたけれども、御質問の一部についてはお答えをさしていただきました。
  19. 松前達郎

    会長松前達郎君) 唐津参考人お願いします。
  20. 唐津一

    参考人唐津一君) 非常に広範な御質問ちょうだいしましたので、幾つか私なりに整理して御返答申し上げたいんですが、まず第一の利益の問題からまいりたいと存じますが、今非常にうまいことをおっしゃいまして、向こうの吸い込み型輸出だというお話です。  私は、ミクロの方から申し上げたいんでございます。例えば半導体つくるのに入れ物に二種類ございまして、プラスチックとセラミックがございます。セラミックというのは非常に高級と申しますか、軍用とかそういうものはセラミックに入れるわけでございます。これは御承知かもしれませんが、京都の京セラさんが世界をほとんど一〇〇%独占しております。ところが、あの会長の稲盛さんに言わせますと、最初アメリカでもちろんつくっていたわけですけれども、非常に難しいわけです。それで稲盛さんのところが一生懸命努力してやっているうちに、いつの間にかアメリカが全部やめちゃったというわけです。ですから、日本から買わなきゃ供給先がない。もちろん向こうでつくらざるを得ませんから、向こうでやった。これは極端な例でございます。  それから、それに近い例が工作機械でございます。これは工作機械というのは、アメリカは一九八一年までは世界一だったんです。現在アメリカは世界第四位、四番目でございます。どうしてそういうことになったか。よく新聞紙上では日本と競争して負けたと言いますが、あれはうそであります。実は一九七九年ごろにアメリカでは工作機械産業が非常なブームだったんです。非常にもうかったものですから、アメリカのコングロマリットが片っ端からこれを乗っ取っちゃった。ところが、八〇年ごろから不況が参りました。不況が参りますと、もうからないところは片っ端から切り捨てちゃったわけです。しかも非常に運の悪いことに、そのころちょうどNC化と申しまして、例のコンピューターで工作機械を動かすその技術がスタートした。そうすると、乗っ取った連中はそんな金を出さないわけです。ちょうどその技術革新の真っ最中に大事な研究をやらなかったものでありますから、アメリカは哀れなことに今世界第四位に落ちぶれたんであります。ですから、勝手に自滅したわけであります。自滅と言うとちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、実はそういった例がアメリカ産業には非常に多いのであります。はっきり言います。  ところが、世間ではそういうことを御存じありません。先日も実は外務省のある偉い方とある雑誌で対談をやりました。そういたしましたら、あの工作機械の問題は、ロン・ヤス関係のおかげでうまくおさまったとおっしゃいました。私ははっきり言って腹が立ったわけであります。本当のことを言います。そういった種類の話は非常に多いんでございます。  カラーテレビなんかは典型的でございまして、カラーテレビを発明したのはアメリカであります。RCAという会社が発明いたしました。これはテレビの受像機から送信機から、それからNBCというネットワークも全部RCAがつくったんであります。ですから、RCAがカラーテレビというものを全部つくったわけです。ところが、これがそのために特許料の収入だけでもあの会社は生きていけるというぐらいに金が入ったんです。それをやったのはデービッド・サーノという有名な会長であります。これが死にました。途端にマネーゲームをやり出しました。ハーツなんていうレンタカーの会社を買収したり、それから証券会社を買ったりしたわけです。その次に家電ブームになったのは、御承知のようにビデオでございます。ところが、RCAの研究所はビデオをやろうと思いましても、トップがやらせなかったんであります。したがいまして、ビデオの時代に入りましたときに、RCAは全部日本から買ったんであります。だんだん落ちぶれました。とうとう一昨年、GEという会社に買収されてしまったわけであります。  ですから、妙なことがございまして、アメリカで売られている日本ブランドのカラーテレビは、全部アメリカでつくっております。アメリカブランドのカラーテレビ海外でつくっているのであります。これがアメリカで競争しているのであります。ですから、確かに日本メーカーがつくったマーケットシェアを維持するために日本会社は出ていきました。しかし、これは利益ということよりも向こうが勝手に自滅したんだということを御認識願いたいと思います。これ以外の例がたくさんございます。もちろんアメリカでもそういうことは問題になっておりまして、最近何とかしてアメリカの経済を立て直さなきゃならぬ。で、例のヤングレポートというのは一昨年出ました。昨年レーガン大統領が議会に二月教書を送ったの は、ヤングレポートを基礎にしております。  それから、通信機器についてぜひ申し上げたいことがあります。  御承知のように、電電公社は、今NTTでございますが、電電公社は随契で買っておりまして、競争入札をやっておりませんでした。で、一九八二年に私がワシントンに参りましたときに、例のジョーンズレポートで有名なジム・ジョーンズというのがおります。あれが私にけしからぬと言ったんです。私はすぐ返事をいたしました。実は電電公社の調達方式は、マッカーサーの命令でやったんだと。  御存じかもしれませんが、戦後日本の通信産業は荒廃しておりました。そのときに例のCCS、シビル・コミュニケーション・セクションという役所がありました。競争入札は通信機械にはなじまない、特定のメーカーを指定して、そこからだけ買えと、つまり随契をやれと言ったわけです。そうしましたら、ジム・ジョーンズびっくり仰天いたしました。そして、資料があったらくれと言うので、私は日本に帰りまして捜したんですけれども、今だから申し上げますが、電電公社にはその資料がなかったんです。やっと捜し出しました。で、ジム・ジョーンズに送ってやりました。私のところにジム・ジョーンズのお礼の手紙がございます。しかし、もちろんそれは時代は変わったわけですから、いつまでも随契というわけにいきません。私が申し上げたかったことは、世上いろいろ言われていることと、現実にあったことと食い違っているケースが非常に多いということなんです、日米問題というのは。  もう一つ申し上げたいのは、御承知のように、NTTはアメリカ機械を買おうということで、PBXと私たち申しますけれども、構内交換機、あれをアメリカ会社から買った。ちょうど三年前ごろから買い出しました。ところが故障だらけで動かないんであります。これは東京新聞にすっぱ抜かれたのを御存じだろうと思います。悪い物でも買わざるを得ないのかと、こう言いたくなるんでありますけれども、これは外交上の考慮から、現実に買ったことは皆さん御存じだろうと思います。  そういうわけでございまして、今度NTTの会長に真藤さんがなられましたけれども、アメリカには非常に受けがよろしい。御承知のとおりであります。それは、真藤さんの民間企業における経験から、アメリカとどうつき合うべきかというのをよく御存じなんです。ここが非常に重要なことであります。ちょっとした言葉の行き違いから、どこまで話が暴走するかわかりません。その辺のところは、ですから私は申し上げたいんでございますが、摩擦というのは、心の問題であります。物の問題ではございません。ここが非常に重要なところでございます。ですから、私たちとしては、いかにして心の通い合いをさせるか。これは摩擦解消の基本だろうと思うんであります。  例えば、アメリカの赤字がやかましくなりましたときに、アメリカ日本を含めましてASEAN、NICS、それぞれに対して大分文句言ったことがある。特にシンガポールに対して非常にきついことを言ったことがございます。そうしましたら、リー・クアンユー首相がワシントンへ飛んでいきました。一昨年でございますが、議会で演説をした有名な話がございます。一時間やったそうです。これはエジプトのサダト大統領がやった演説ぐらいに非常に高く評価されたんです。サダトの演説は御存じだろうと思うんでありますが、あの前のナセルがソビエトと仲よくやっておりまして、それでアメリカではエジプトは非常に評判が悪かった。それがサダトになりましたときに、あの人がワシントンへ行って、一時間ぶちまくった有名な演説がございます。それで議会の空気ががらっと変わったという記録がございます。  そんなことでいかに我々が、心の問題なんですから、いかにつき合うかということがこの貿易摩擦解消の一番の基本だと思います。物の問題もございますけれども、物というのは心に火をつけるだけであります。というのが私の見解です。ちょっと私の意見を言い過ぎましたけれども、そういうふうに私は考えております。
  21. 松前達郎

    会長松前達郎君) ありがとうございました。ほかに……。
  22. 沓掛哲男

    ○沓掛哲男君 私も及川さんと同じく持ち時間往復三十分でございますので、十分少々私から御質問さしていただいて、たくさんいろいろ教えていただきたいというふうに思います。  そこで最初唐津さんにお聞きしたいんですけれども、いささかマクロ的な話で恐縮でございますが、今皆様方のお話を聞いておりますと、海外直接投資は近年急増いたしております。通産省の方にも申し込みがことしもたくさん来ておるそうでございますので、恐らくこの海外直接投資というのは相当の勢いで進んでいくのではないかというふうに思います。その場合に、一体どこまでどんどんいってもいいものなのか。特に国内雇用の空洞化というような観点から、どの辺までいいものなのか。  よく例で、ドイツの場合は、いわゆるドイツ国内生産力の二〇%ぐらいに相当する生産力を海外直接投資でしていても問題ないというようなことを言われる方もおります。それから日本の場合は、まだほんのそれが数%だから問題ないと言われる方もおりますが、実はことしの七月に国会から、公明党、民社党の方と一緒に欧州四カ国を国会訪問さしていただきました。そのとき西ドイツで盛んに言われた、特に地方都市、マインツ等の市長さんなどでございますが言われたことは、どうもいい雇用の場がないと。だから日本から我々の国に何かそういう直接投資をして雇用の場を創出してくれないかという意見が大変多うございました。  ということを考えてみると、今確かに唐津さんもおっしゃったように、見ると聞くとはいろいろ大過いだというような話があるんだと思いますけれども、やはりドイツでもかなりの海外直接投資というものが国内の雇用にもいろんな影響をしてきているんじゃないか。今のところは確かに我が国の国内生産力から見て海外直接投資が多いとは思いませんけれども、しかしこのままいきますと、日本人の習性で、A社も行けばおれの社も行くというふうにどんどん行くはずですし、そちらの方が当面何かメリットがあるはずですから急増する。しかしまた、それが余りにも行き過ぎると問題になるはずで、一体どの程度までが限度なのか。これはなかなか定量的に言うことは私は難しいとは思いますが、そういう面での勉強なり研究なりも並行していかなければならないのではないかなと思うんですけれども、そういう点どういうものなのかをひとつお聞きしたいというふうに思います。  それから二番目に、これも唐津さんにお願いしたいと思いますが、海外直接投資したものに対する安全性と申しますか、保障というようなものについて考えてみる場合、世界が平和でうまく機能しているときはいいんでしょうけれども、何かがあったというような場合、そういう場合、例えば昭和四十八年の第一次石油ショックのような、ああいうような何かがあった場合、そういたしますと、やはり外国投資したものの安全性を確保していく、そういうようなものはやはり外交の力とか、軍部的な力とか、そういうようなものが私は大きくあずかるんじゃないか。それにしては我が国は両方ともそれほど決して強い国でもないし、特に軍事力についてはそういうことができるはずもございませんので、やはり非常にうまいときはいいんだけれども、何かあるとき非常に不安があるんじゃないか。そういう問題についてはどういうふうにお考えかということが二番目。  それから三番目でございますが、我が国は国際化に伴って雇用それから社会問題で、私はこの海外直接投資ともう一つは、外国人の単純労働者が日本へ入ってくる、これが非常に大きく問題化していくんじゃないかというふうに思います。特に日本の賃金は高うございますから、労働賃金の安い国の単純労働者は、日本へ来て一カ月も働けば一年も食べられるというようなことでございます ので、そういう単純労働者が日本に非常に入りたがっている。しかし、この問題は、ECにおいて戦後、外国単純労働者を入れたためにいろんな問題が起こっていることを思いますと、なかなかそう簡単にそうだと言うわけにはいかないというようなことで、技能者等はこれから積極的に入れていくけれども、単純労働者については従来どおりの方向でいこうというようなふうに感じられますが、しかし国際社会でございますから、余りにかたくななことを言っていてもいろいろ批判を受ける。といたしますと、この海外直接投資外国で雇用を創出するわけですから、そういうものとうまくリンクして、この単純労働者が日本へ入ろうとするのとうまくリンクして解決していくというような、そういうようなことができないものかどうか。この三つを唐津さんにお尋ねしたいと思います。  それから守屋さんにお尋ねしたいのは、今守屋さんから、外国で我が国の企業は大変な努力をしながら、地道な努力をして、そしていろいろ成果を上げているというお話を承りました。その場合に、私はもっと長期的に見て、よりよくそういう我が国の企業が現地で機能していくために、一体我が国、国は何をなすべきかということをお尋ねしてみたいと思うのであります。  それは、実は今申しましたように、欧州に行かせていただきました際に、欧州では一九九二年の市場統合を目指して、四カ国を私ら歩いてまいりましたが、四カ国とも大変な努力をしておりました。そして彼らが言うには、これから世界の自由主義経済圏は、EC経済圏とそれからアメリカカナダといった北米の経済圏、そしておまえの国の日本経済圏というのか、日本経済圏と彼らは言っておりましたが、三経済圏で、そしてお互いに交流しながら発展していくんだということを言っておりました。  しかし、どう考えてみても、日本経済圏という資源もない、世界の陸地面積の〇・二五%ですか、ないような国で、そんなEC経済圏やアメリカカナダ、北米経済圏との対立というか、対等にやっていくということはなかなかこれは非常に難しい問題で、やはり日本としても東アジア経済圏というようなものを踏まえ、あるいは環太平洋経済圏というようなものを踏まえ、そして世界の経済圏、三つなら三つの経済圏の一つとしてやはり活躍していかなきゃならないんじゃないか。  そういたしますと、仮に私だけの考えですけれども、この東アジア経済圏の中で日本が兄貴分としていくためには、先端的な技術的なものは日本はやるにしても、スタンダード製品的なものは次のNIES、いわゆるかつてのNICSあたりにそういうものを技術的なり資本的にも援助する。あるいはまた、労働集約的なものはASEANとかそういうようなところにいくとか、何かそんなようなことも必要になってくるんじゃないか。とした場合に一体、もう少し全体、マクロ的に見て、今の企業の海外直接投資というようなものに対して国もいろいろ援助して、そういうふうな受け皿になれるとか、あるいはそういうものを踏まえたさらに大きな協調をとっていくような、そういうようなことも必要ではないのかなというふうに個人的には考えて帰ってきたわけでございますが、そういう点で、単に企業が一生懸命やられておられる、それに対して、もっと国が何かうまく将来性のいろんなことをも踏まえてのなすべきこと、そういうようなことがあれば、そういうことをいろいろ教えていただきたいというふうに思います。  それから、菅野さんにお尋ねしたいと思うんですけれども、今お話の中に、かつてアジアで非常に日本製品が排斥されたということでございますが、田中総理がずっと東南アジアを視察されたとき非常な排斥運動を受けたということを当時私らもいろいろ見ていたわけでございますが、それが大変いろんな点を努力されて、現地で今のところ、今うまくいっているというお話でございます。  そこで、私ちょっと今この海外直接投資について感ずるんですが、今のところは確かに日本海外直接投資という形で、そして資本を生かし、技術力を生かして、そういう生産を上げ、利潤を上げていけるんですけれども、東南アジアの方々、特に私は中国で高速道路をつくることにいろいろかかわってまいりました。そのときの体験から申しまして、中国の場合、北京から天津新港、塘沽に世銀の金を使って高速道路をつくっております。そして最初ジョイントで現地の中国の建設会社日本の道路舗装会社とが入札して、そういうものを受注いたしますとどういうことが起こるかと申しますと、現地人たちはその技術を全部私らに移転してくれと、そしてそういう直接投資的でなくて、資本的にお金でいろいろ私らを援助してくれと。要するに、日本のそういう道路建設会社はほんのシャッポだけになって、中身は全部中国の我々にさせてくれという強い要求がございまして、結果的にはそういう方向に今なりつつあります。  そういうことを考えてみますと、開発途上国等で今海外直接投資をすれば、今の時点では彼らもわかりませんから、はい、はいと言っておりますけれども、次第にやはり技術者も出てくるでしょう、経営者も出てくるでしょう。そうすると、その日本技術をおれたちにもう譲り渡してくれと、そして金もないから金は融資してくれと、そして自分らに経営させてくれというようなことが起きてこないのかどうか。そういうことを長期的に考えながら海外直接投資をしないと、今のままで見て、今はうまくいっているからどんどんだといっても、そういう今中国のようなことが、やはりどうしてもナショナリズム的に起きてくるんじゃないかというように思うんですが、そういう点についてはどのようにお考えか、菅野さんに教えていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  23. 松前達郎

    会長松前達郎君) それでは、唐津参考人からお願いいたします。
  24. 唐津一

    参考人唐津一君) 時間も余りございませんので、三項目についてお答えいたします。  第一番目の、日本の企業が海外にどんどん工場を建てる、そうすると国内の雇用は大丈夫かと。私は大丈夫だと思っております。その理由は、私は経済の原点は物づくりだと思っております。物づくりの裏づけのないお金は全部紙くずであります。物をつくるためには技術が必要でございます。その技術の点で、日本が現在の段階では非常にがっちりやっております。現在、日本は物をつくるのに一番世界で恵まれている場所なんであります。と申しますのは、物をつくるには工作機械が必要でございますが、先ほど申し上げましたように、日本の工作機械は世界一でございます。それから金型が要りますが、これがまた幸いなことに世界一でございます。それからいろんな材料が要ります。例えば鉄板、プラスチックその他、これについても日本はほとんどトップレベルでございます。それから技術者、これはいろいろおっしゃる方がありますけれども、私は日本技術者を信じております。それから働く現場の方々、これはお給料高いですけれども、非常によくやってくれます。それでもなおかつ、なぜ海外工場を建てるか。その理由が実は私はここで先ほど御説明したものでございます。したがいまして、そこの現地でやった方が有利なものだけが出ていくだろう。  そういたしますと、私はこういうふうに考えております。日本の生産、物をつくる品物というのは、ハイエンドという言葉がございます。これは一番下の方をローエンドといっておりまして、上の方をハイエンドというのでありますが、日本製造業はハイエンド化しつつある。例えば鉄鋼業というのは、日本では重厚長大で沈むなんておっしゃった方がありましたけれども、あれはうそでございまして、御承知のように、今絶好調でございます。それでは何をつくっているか。そうすると、日本でしかできない鉄板がたくさんございます。例えば韓国で自動車を一生懸命つくりますと、日本から鉄板がいっぱい売れる。なぜかといいますと、高張力鋼というのがあります。高張 力、張力の強い高張力鋼というのがあります。これは引っ張り強さが普通の鉄板より四割ぐらい強いんです。そうすると、自動車の目方が軽くなります。そうすると、燃費の競争をやる場合にはどうしてもあの板を使いたい。あれは日本でしかできない。これはハイエンドでございます。そういったわけで日本製造業がハイエンド化していくだろう。  それからもう一つは、先ほどの京セラさんの例のセラミックパッケージみたいなものでございますが、そういう日本でしかできないもの、そういったものを日本でつくる。こういう話をアメリカ人にすると怒ります。怒りますけれども、現実がそういうふうに走っているわけでございますから、そういう形にいくだろう。つまり、日本付加価値の非常に高いところだけやる。  それから、もう一つ重要なことは、製造業の常用就業人口というのは過去五年ほとんど変わっておりません。ところが、研究者は十二万人ふえました、日本製造業の中で。それで毎年一五%ずつ研究開発投資をふやしております。これは物すごいお金でございまして、現在、日本研究開発投資に使っているお金はGNPの約三%でございます。約十兆円でございます。これのアウトプットが今どんどん出てきております。そういった意味で、ですから働く人の何と申しますか、やる仕事の中身は変わっていくでしょう。だけれどもトータルとしては、余り心配ないというのが私の見通しでございます。これ実は、この間通産省の工業技術院が産業技術審議会というのをやりまして、八月でございましたか、その報告書、こんな厚いやつが出ております。あれの中にそのことにつきましてはかなり丁寧に、私も委員で書いてございますので、ぜひごらんいただきたい。これが一番目。  それから、二番目の投資の安全性です。  これにつきましては、戦争というのはいつ起こるかわかりませんから何とも申し上げかねますけれども、最近の産業というのを見ておりますと、非常に相互依存関係が緊密になりまして、したがいまして、これは途上国は別でございますけれども、どこかを没収するとか切り捨てるということはできなくなっております。早い話が日本のカメラというのは世界一だと申します。あのカメラのレンズ、高性能レンズをつくるには重金属類を入れるんですけれども、これはフランスしかつくってない。ランタンとか、ああいう種類のレンズ材料、これはフランスから輸入しないとできない。だから、フランスがその輸出をとめますと日本ではいいレンズができない。しかし、フランスは輸出をとめません。なぜかというと、それを使うのは日本しかないからなんです。そういう非常な緊密な相互依存関係に少なくとも先進国間はなっておりますので、私は、まあ非常に特別な事態が起きれば別でございますけれども、投資のセキュリティーについては余り心配ないんじゃないか。  それから、三番目の外国人労働者の問題について簡単に申し上げますけれども、これはいろんな御意見ございますが、これは私個人の意見としては、すべて契約労働者にすべきだと私は考えております。やみで入れるから問題が起きるわけです。先日も宮崎県の知事と話をしましたときに、あそこは山が面積の七割だそうでございます。ところが、林業が衰えているのは間伐ができないからだというのですね。私は、それはフィリピンかどっかからじゃぱゆきさん呼びなさい、ただし、これは契約労働者できちっと決めれば恐らく問題ないでしょうということを申し上げたんです。ヨーロッパが困ったのは、あれもずるずるずるずる入れちゃって、自然に社会保険から何からもう本当のドイツ人並みにやっちゃった。それで、ドイツで生まれたら居住権与えるとか、それやっちゃったものですから、ルールなしでやっちゃった。日本は幸いなことにそういう意味じゃ後進国ですから、先進国がどういうことで失敗したかということを全部調べて、きちっとしたルールをつくればいいと私は思っております。
  25. 松前達郎

    会長松前達郎君) 守屋参考人お願いします。
  26. 守屋友一

    参考人守屋友一君) 日本の企業が外地で長期的に現地化しながらお役に立てていくために国や政府が何をやるべきかという御質問かと思いますけれども、四つぐらいあるんではないかという気がします。  一つは、マクロ政策でございまして、やはり日本が何といっても債権大国でございますし、お金余りでございますし、日本の金融政策、これは国の問題ではございませんで中央銀行の問題かもしれませんが、やはり経済政策の根幹となるマクロの金融政策や財政政策を今債権大国にふさわしい形でまず運営していただくことが一番重要ではないかというように思っております。  やや抽象的に申し上げましたが、数日前ある新聞に、日本銀行は普通だったらちょうどオオカミ少年になりかけるところである。といいますのは、インフレになりやすくなってきているから金利を上げなきゃいけないとちょっと言いたくなるところだと。しかし、じっと我慢をされている。よく考えてみると、やはり主要国が金利を上げつつございます。インフレの懸念のある国がございます。しかし、それに追随をして日本が金利を上げるということになりますと、債権大国が上げるわけでございますから世界的に金利を押し上げることになり、途上国が困るということになります。そういう意味では、お金に余裕のある国が安定的な資金を安く供給する、国内でも使えるというようなマクロ政策は重要かと思います。新聞の見出しには、債権大国の金融政策にも哲学が求められるようになったというような趣旨の囲み記事でございましたけれども、新聞の観測ではございますが、一つの見識につながる報道ではなかったかという気がいたします。これが第一点でございます。  第二点は、やはり経済協力の推進をしていただくということではないかと思います。途上国、いろんなところがございますけれども、やはりそういうところへお金をつぎ込むとむだになるという話もございますが、実は日本の中でも外国におくれたところがある。そういうところには根気よく、特に日本国内では根気よくやってきたわけでございます。世界に対しても根気よくやっていかなきゃいけない時代が来ているのではないかという気がいたします。  三番目として、基礎研究をもっと充実させるような方向で政策を腰開していただければありがたいという気がいたします。  先ほど本物と申し上げましたが、いろいろ突き詰めるところ、唐津先生はハイエンドとおっしゃいましたけれども、その背景には日本が自然科学の上でも社会科学の上でもより基礎研究的なものが求められる時代になってきたんじゃないだろうか。普通基礎研究と言ってしまいますと自然科学が中心になりますが、社会科学も含めて、こういう目で本物を、世界にいろんな情報を御提供できるものが必要になってきているんじゃないかという気がいたします。  四番目に、多少さっきの私どもの御報告に関連いたしますけれども、こういう社会的責任に関する研究などを発表いたしますと、大企業の方々はすぐ注目をされます。あるいは中堅企業の方々は注目されます。しかし中堅の下、あるいは最近では中小企業の方々も特に東南アジアにはたくさん出られますが、そういう方たちにはなかなか私どもはこういう研究をしても情報が届かない面がございます。ですから、言ってみれば日本は大きい方も小さい方もできるだけ国際的に活躍しなければならない時代が来ておりますが、そういう情報の届きにくい方々に対して何か情報がつながるように、どういうやり方をすれば外国へ行って困らないか、あるいは成功するかということの御指導がいただけるようにしていただければありがたいと思います。  実際、研究をしておりますと、中小企業のフェードアウト、出たんだけれども、やり方がまずくていつの間にかいなくなっちゃって問題を残しているというような例が幾つか出てまいります。それはやはり細かい何というんですか、教育とい うと小企業の方に失礼になりますけれども、ノーハウを教えてあげられるパイプが必要なんではないだろうかという気がしてなりません。  最後に、三つの経済圏のお話がございましたけれども、これは私今試算で、統計がしょっちゅう変わりますし、古いものでございますし一概に言えないんですが、EC全体で大体世界経済の二七%ぐらい、米加で二五%ぐらい、それから日本が、日本だけではなくて日本とアジア、インドぐらいまで含めまして、それからオーストラリアと中国というのを含めますと二二、三%になるんではないかという気がいたします。そういう意味では三つのブロックというのがそれぞれ世界経済の中で成り立ち得る素地はあるかと思います。しかしながら、この三つがそれぞれ閉鎖的にブロック化してはいけませんので、やはり国際的な自由世界、ブロック化ではなくて自由な市場が続くことが重要でございますけれども、そこまでの規模に来ておりますし、かつ成長率は物すごく東南アジアが中心に伸びておりますし、世界的な生産の供給地域にもなってきておりますし、そういうところも身近でございますので大切にしていく必要があるんではないかと思っております。
  27. 松前達郎

    会長松前達郎君) 菅野参考人お願いします。
  28. 菅野省三

    参考人菅野省三君) ただいまの御質問は、現在はうまくいっているけれども、将来は発展途上国の方から技術をくれ、あれをくれというような形でいろいろ要求が出てきてうまくいかなくなるんじゃないかというような趣旨の御質問だったかと思いますが、現在どうしてうまくいっているかといいますと、日本の企業あるいは日本投資によって利益を得ていると同時に、例えばタイにしましてもマレーシアにしましても投資を受けることによって非常に大きなメリットを受けているという相互の利益が双方に確認されているからうまくいっているのだと思っております。それが第一点。  それから、タイにしましてもマレーシアにしましても、いつまでも現在のような発展途上国にとどまっているわけじゃございませんで、多くの資本を取り入れる、それによって技術者が育っていく、マネージャーが育っていくというような形で人材もそろってまいりますし、技術も向上してまいります。その間におきまして、タイ人あるいはマレーシア人のトップへの雇用等の問題はもちろん出てくると思いますし、そういったことはやはり現地化という観点から許容すべき——そうすることによってまたその企業が発展するわけでございますし、そういう発展段階におきましても、それぞれのその国が発展していくということは進出国の企業にとってもマイナスにならないのではなかろうかというふうに考えております。  現にアメリカヨーロッパに進出している企業を見ましても、アメリカの企業はどんどんヨーロッパ人をトップに起用しております。そういった意味で、タイにしましてもマレーシアにしましても、現在はまだNIESのところまでいっていませんけれども、やがて新興工業国群の仲間入りをしますし、そして現在、新興工業国の中の例えば韓国にいたしますと、やがて近い将来先進国の仲間入りをするというような形でそれぞれ発展してまいります。発展した段階におきましては、例えば韓国におきまして、これまでいろいろ海外投資につきましては、国内を閉ざしながら技術だけをくれというようなことを言ってこられておりましたけれども、先進国の段階になりますと、そういうメンタリティーではなかなか世界の経済社会とうまくつき合っていけないということになりますので、やがてそういった自分の方を閉ざして相手だけに要求するというようなことはできなくなると思いますし、そういった意味では発展段階、それぞれ発展していく過程で、それぞれの相互利益を図っていくことは可能ではなかろうかと思っております。  お答えになったかどうかわかりませんが……。
  29. 松前達郎

    会長松前達郎君) どうもありがとうございました。
  30. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 公明党・国民会議の飯田忠雄でございます。  ただいままでの御質問で私がお尋ねしようとしたことはほとんど尽きておるようでございますが、なお少しく抜けたといいますか、私が特にお尋ねしたい点が二、三ございますので、お願いをいたします。  企業の海外移転ということは、結局、従来我が国が持っておった事業の海外部門は切り捨てる、つまり国内産業としては切り捨てるということにならざるを得ないと思いますが、これによって国内生産の縮小が生じますし、それから生じますところの労働需要の縮小、つまり余った労働力をどうするかという問題が生ずると思います。これは下請企業の処理の問題も含めてでございますが、この点につきましてどのような御見解でございましょうか、お尋ねをいたします。  それから次に、技術移転ということが言われておるわけでございますが、また今後の日本の経済の維持は、技術開発を進めることによって維持するということも言われておりますが、ここで問題になりますのは、研究開発をどのように今後維持していくかという問題でございます。  これは知能の確保ばかりでなくて、経費の確保も要るわけでございますが、この経費は我が国内産業だけで賄うのか、あるいは海外に移転した部門からも徴発して行うのかという問題もあろうと思います。この二点につきましてお教えを願いたいと思います。各先生方の御意見をいただきたいと思います。
  31. 松前達郎

    会長松前達郎君) それでは、唐津参考人から順次お願いします。
  32. 唐津一

    参考人唐津一君) 今三つのお話ございました。  第一の国内生産を海外に持っていけば雇用は減るんではないかということでございますが、単純に考えればそのとおりだと思います。ただし、それはパイ、私どもは経済のパイと申しますが、経済の規模が一定であるとすれば当然そうなります。ところが、御承知だろうと思うのでありますが、日本では売れない物を海外でつくっているケースがあれば、これは余り問題にならないわけでございます。事実、最近の日本海外移転をやっております工場というのは、最初はまず日本でつくって向こうへ出しました、それで今度はそれを向こうでつくる、さらにそれを発展させる、そういうケースが非常に多うございます。それが一つ。  それからもう一つは、最近日本では、海外移転よりもっと大きな問題は自動化でございます。コストダウンのために日本会社は必死になって自動化をやっております。  この前、私NHKテレビでごらんに入れたので、あるいはごらんいただいたかもしれませんが、VTRのヘッドをつくっている工場を紹介しました。日本会社は二十台の自動機械を一人で動かしてつくっている。それと同じものを韓国でつくっております。これは全部手作業で、三百人の女性かつくっているわけでございます。三百人の韓国でやっている仕事と全く同じことを日本では一人で機械二十台でやっている、こういうところを紹介したことがあるのであります。  むしろ日本では、今非常に心配しているのは人手が足りなくなることであります。御承知のように若者が減ってまいります。この若年労働者が減っていくことの恐怖心というのは、日本経営者が全部持っております。それを補うために自動化を必死にやっております。そういうこと全体をバランスとってまいりますと、私は海外移転よりもむしろ自動化が問題だ。しかし、自動化のことは、今申し上げたように若年労働者の不足を補うため、こういうふうに考えてまいりますと、私は余り問題にならぬのじゃないかという気がいたします。これはもっと細かい話が幾らでもございますが、非常に単純に申し上げますとそういうことでございます。つまり、海外移転という前門のトラですか、後門のオオカミは自動化なんです。ですけれども、それは割とうまく切り抜けられるん じゃないか、これが私の意見でございます。  それから、二番目にございました技術移転について申し上げます。  これはどこの国でも物を買うより技術が欲しいとおっしゃいます。ところが、技術移転というのは世間で考えるほど易しくないのであります。と申しますのは、もう昨年になりますけれども、生産性本部の軽井沢のトップセミナーというのがございまして、韓国からおいでになった方が、日本メーカー技術移転を渋ると、技術をもらっても物ができないとおっしゃる。私はそれは当たり前ですよと。例えばここに自動車があったとする。これをベテランのドライバーがやるのとへぼがやるのじゃ違うでしょう。へぼが運転したら、どんなすばらしい自動車でも走らない。ですから技術移転というのは、ただ機械を持っていって、何か教わってやれば物ができるというわけではございませんで、それを動かすためのいろんな細かいノーハウが一つございます。  それからもう一つ重要なことは、技術というのは絶えず進歩しております。ですから、ある機械を持っていって、やっと半年たって動き出したころには、日本はもっと新しい技術をやっております。そういう形での技術移転が今進んでおります。つまり何かといいますと、日本はどんどん新しい技術をつくって、具体的な例を申し上げますと乾電池の機械、最近の日本機械は一分間に大体六百個できます。それで、こういう機械向こうの方がおいでになりますと、あれ売ってくれとおっしゃる。すると、大抵日本会社は売ります。売って、向こうで動くころには恐らく一分間に千個できる機械日本で使われているということで、私は技術移転はそういう形でどんどん進んでいくと思っております。  それで、三番日の研究開発の問題が出てくると思います。おっしゃるとおりに日本研究開発というのは今物すごい勢いで走っておりまして、ただぜひここに先生方いらっしゃいますのでお願いしたいのでありますが、政府支出の研究開発費は過去五年間に〇・一%しかふえておりません。これはもう異常であります。調べてみますと、フランスは年率一六%ふえております。西ドイツは一三%ふえております。アメリカは大体一〇%ふえております。ところが、驚くべきことに日本は五カ年間に〇・一%しかふえていない、政府です。ところが、民間は一五%ふやしている。だから日本はもう、こう言っては失礼ですけれども、政府はもう頼りになりませんから、むちゃくちゃな金使って、自分が生きるために金使っているということをぜひ御理解いただきたいと思うんです。  以上でございます。
  33. 守屋友一

    参考人守屋友一君) 後の二点については唐津先生がおっしゃいましたので、最初の点、労働力の問題でございますけれども、それだけ私見を述べさせていただきます。  基本的には唐津先生がおっしゃったように、パイを一定と考えるか、それとも成長するかというように考えるかの差であろうかと思います。経済成長が十分にできるならば、特にそれが内需成長で十分できるならば、こういう問題は摩擦的には生じるかもしれませんが、基本的にはブレークスルーできる問題ではないかという気がいたします。心配することは重要でございますけれども、だからといって懸念、何というか後ろ向きになる必要はないんではないかという気がいたします。  ここ二年間ぐらいの経験は、日本のような貯蓄率の高い国、つまりお金をため込む国では、やはり内需を中心とした成長が高ければ高いほどみんなハッピーになる、いいことが起こるということでございまして、国際収支の大きな黒字も縮小傾向にございますし、それから輸出産業は内需産業に転換した。むしろ輸出産業で能力あったのが内需開発においても強かったというようなことが伝えられております。また、雇用問題も随分心配されておりましたけれども、今はむしろ、これまた唐津先生がおっしゃいましたけれども、本当に人手不足になってきております。ですから、やっはり内需中心の成長をどれだけやれるかということが基本ではないかと思います。見かけ上、製造業の雇用の伸びは実は余りふえておりません。だから失業率は下がった、有効求人倍率は上がった、人手不足だと言うけれども、製造業はふえてないじゃないかという御意見があるんですが、これはある会社の重役、かなり偉い方でございますが、笑い話と思いますけれども、言っていましたが、いや、もう製造業が人集めに行っても、ほかのサービス業や建設業に人がいっぱいで、人がいないから雇用がふえないんだと。それでもまだまだふやしたいんだという状況でございます。余り過熱化しますと、またインフレの原因になるかもしれませんけれども、ある程度の適正な内需成長をうまくやれれば、今のような状況を、もちろん景気循環はあろうかと思いますけれども、ブレークスルー可能なものではないかと思っております。
  34. 菅野省三

    参考人菅野省三君) 先ほど日本海外投資が大きくふえていると申し上げましたが、なぜふえているかと言いますと、もちろん日本側のファクターもありますけれども、例えば発展途上国におきまして、タイマレーシアにつきましてもどんどんと技術、能力が上がってきて、日本投資が受け入れられるような形で発展しているからでございます。タイマレーシアはやがてNIES、新興工業国に仲間入りするでしょうし、かつ現在のNIESと言われます国々あるいは地域は、やがて先進国に追いつくと思います。私は先週韓国に会議で参りましたけれども、まさに韓国、日本のすぐ後についてきているというような感じを強く持ちました。すなわち、どんどんと発展途上国技術を向上させております。したがって、日本がそのままとどまっておれば、先ほど飯田先生がおっしゃいましたように、発展した国々に企業が進出しなくても、発展途上国の製品によって国内産業はつぶれると思います。したがって、日本の企業が進出しなくてもそういう現象が、とどまっておれば起こると思います。したがって日本としましては、先ほど唐津先生、守屋先生のおっしゃっていましたように、どんどん新しい技術を開発して進んでまいっているわけでございます。  その間、古い技術から新しい技術産業構造が展開していく過程で、古い技術を持っていた方が新しい技術産業に適応できない、そのままでは適応できないという問題が起ころうかと思います。いわゆるミスマッチと言われている問題でございますが、それにつきましては、やはり行政の方でも職業訓練等一生懸命やっていただきまして、そういったミスマッチが起こらないような、労働力そのものは先ほど両先生がおっしゃっていますように、労働力は不足しているわけでございますが、そういった能力のある労働力が不足しているわけでございますから、そういう形で職業訓練等大いに進める必要があろうかと思います。
  35. 松前達郎

    会長松前達郎君) ありがとうございました。
  36. 神谷信之助

    神谷信之助君 三人の参考人皆様、御協力ありがとうございます。共産党の神谷ですが、三人の参考人の方々に同じテーマといいますか、一つの問題で、それぞれのお立場で御見解を述べていただきたいと思います。  それは生産の社会性がどんどん高まってきていますし、したがって、それに伴って企業の社会的責任というのも大きくなってきている。そういう角度から見ますと、企業が企業活動をするという点では、最大限の利潤を追求するというのは、これは法則でもありますが、その中で社会的責任が強まってきていますよね。それにこたえる努力もなされていると思うんですけれども、しかし、本質的にそういうものが存在をする限り、やっぱり一定の社会的規制というものが必要なのではないかという角度からの質問をしたいと思うんです。  先ほど唐津参考人の方で、企業が海外進出する目的の問題で賃金の低いこととか環境という問題が出されまして、汚染されていない農村地域へぽんと工場を出すというお話もされました。私、それを聞きながら、あれ去年だったと思いますが、朝日新聞の取材班が報道したやつを思い出したんですけれども、たしか映画「ガン・ホー」ですか というものを引用して説明していましたが、それは、アメリカの農村に一九八〇年ごろに日本の企業が進出して工場をつくったと。若い青年がそこで働くようになる。それで結婚もする。それで五年ほどたちますと、その労働者は非常に優秀なので係長というか、管理職になっていく。そういう状況になったときに、その新婚の奥さんの方が離婚訴訟を出したと。その裁判で日本のその企業の管理職の人が行って、勤務時間というのは七時半から午後の四時までだと、それから以降は管理者として仲間と一緒にいろいろ研究し、一生懸命いろいろ考えて働いているんだ、日本ではそれは当たり前なんだと、管理職だから超勤手当も何にも出ない、それが当たり前なんだという証言をして、離婚が承認をされたわけですよ。奥さんの方はクレージーだと言ってね、それで承認されたと。こういった話とか、それから、そこで使われたのは、先ほど先生も引用された本田オハイオ工場ですね。これもその記事に取り上げていましたけれども、ホンダウエーという方式が現地では言われていて、常に働き過ぎの状態に置くという労務管理をやっている、それに批判が強まっているというやつを思い出したんですがね。  で、日本における現状とは違って、アメリカでは個人の自由というもの、人生をエンジョイするために働いているんだけれども、日本会社人間と言われるようなそういう状況にある。この日本的な経営方式というか労務管理方式というか、この矛盾というのが提起をされているんですね。その点を考えるのに、我々やっぱりそれなりに企業が生産を上げ、利益を上げ、そしてまた、国民全体の生活の豊かさをつくっていくという点、これ自身はいいですね、また必要なんです。しかし、それがさらに本当に国民生活全体を豊かにする方に使われていくのか、その役割を果たしているのか、あるいは人類全体の進歩と向上を果たす上で一体どうあるべきなのかという社会的責任という点では、社会的なそういう点についての規制というものが必要なのではないかというように一つは思うんですね。  同じ角度から守屋参考人が先ほど言われた、海外現地生産時代における企業の社会的責任ですか、この中で見てみますと、多国籍企業として相手国の主権や利益を尊重することが要請される、欧米の多国籍企業には積極的に遵守するところが多いというように書かれていますね。だから言外には、日本の多国籍企業は相対的に相手国の主権や利益の尊重に積極的ではないというように読み収れる表現になっていますね。そこで、OECD等による例の多国籍企業行動基準ですか、これを守りなさいよということになっています。  それから、菅野参考人が中心になってまとめられた八八年版のジェトロ白書、これでは、五十三ページのところに「タイへの日本企業の進出ラッシュやそれにともなう日系企業間の部品供給先や良質労働力の争奪合戦、国内市場向け販売をめぐる日系企業に対する地元企業からの反発、」などを挙げておられて、現地社会との融和、現地企業との共存共栄の姿勢あるいは互恵の精神など、今後こうした投資摩擦を顕在化させないために日本企業が自覚をしなさいと、そして八七年四月の経済七団体による海外投資行動指針、これが合意されていますよということに言及されていますね。  だから、海外進出企業がそういう点で摩擦を起こさないように、行動基準を守るようにどちらもおっしゃっているんですが、実際に通産省の調査で、OECDの国際投資及び多国籍企業に関する宣言の実施状況という調査を見ますと、OECDの多国籍企業の行動指針、これで求めている価格政策とか、あるいは新規投資情報公開、これらについて当然だという回答をしている企業というのは三七・五%にすぎぬと、だから、企業が強制力のないそういう基準に従ってやりなさいよと言っても、なかなかそうはいかない企業の論理というものが根底には根深く残っていると、こういう状況を酌み取ることができるわけです。だから、お二人の先生方おっしゃるように、そういう行動基準を守りなさいよと言っても、実際に通産省の統計を見ますとなかなか守れない、そういう状況が実際に出ていると。そうすると、やっぱりこれに対して社会的な規制あるいは政府、あるいは国家としての規制、こういったものも必要ではないだろうか、こういうように思う。同時に、それは日本だけでこれができる問題ではないだろう。  そういう意味で、何といいますか、今、国際的にも多国籍企業がどんどん進んで国境がない状態がつくられてきつつあるという、そういう状況が進んでいるし、しかし、一方、現実的には飢餓、餓死をする人がどんどん生まれているような未開発地域も残っていると。そういう状況の中で全地球的な、全世界的な国際経済についての新しいそういう秩序といいますか、こういったものが今求められつつあるんではないだろうか。こういうように思っているんですが、大体こういった点について、それぞれのお立場から御意見をいただきたいと、こう思います。
  37. 松前達郎

    会長松前達郎君) 唐津参考人からお願いいたします。
  38. 唐津一

    参考人唐津一君) 先ほどちょっと誤解があったようですけれども、台湾であれをつくるということは公害を出すためではないんであります。きちっとした健康管理をやっておりまして、患者も何にも出ておりません。ただ、残念なことに日本の若者は、ああいうふうに真っ黒けになって働くのが嫌になっちゃったんですよ。ですから人を募集しても来なくなった、そういうことであります。公害とは関係ありません。
  39. 神谷信之助

    神谷信之助君 公害の話してないですよ。公害じゃなしに、そういうところへ行ってやると日本経営方式といいますかね。
  40. 唐津一

    参考人唐津一君) 日本経営についてお話し申し上げます。これは絶対聞いていただきたい。会社というのは、赤字を続ければ確実に倒産いたします。従業員は全部首になります。ですから、利益のない会社は必ずつぶれるんであります。それは御存じのとおりであります。私はいつも申し上げるんですが、物をつくるということは、毎日が灰色の世界との闘いなんであります。予想しないことが次から次へと起きるんであります。例えば予定した材料が入ってこない、機械が同じように動かない、予定した人間が休んじゃう、設計変更する、これを毎日毎日どうやってうまくやっていくかというのが、これが物づくりというものです。これができないと物ができないんであります。また下手をすると不良品がお客さんのところに行っちゃうんであります。  そこで、この間私はイギリスでお話ししたんですけれども、日本がやっている日本的管理というのは、経営管理のやり方というのは、実はイギリスの海軍から教わったんだと。つまり、会社の人間というのは軍艦の乗組員と同じだと。例えば、あらしに遭って船が沈みかけているときに、みんながおれはこの仕事が責任だからと言って、船が沈むのをほったらかしにしたら本当に船が沈んじゃうわけです。みんなが力を合わせて何としてでも船を守らなきゃいけない。これは実はイギリスですからお世辞言った。ブリティッシュネービーから教わったんだ、そのおかげで我々日露戦争が勝てた、なぜイギリスはこれを忘れたと、こうやったんですけどね。ですから、最後に物を言うのはチームワークでございます。  そういたしますと、今おっしゃったように、時間が来たらもう仕事やりかけてほうり出して帰るというようなことをやったら会社はつぶれるんであります、現実に。つぶれたら元も子もないんであります。で、アメリカでも優良企業ではそんなことは申しません。時間外であろうとですね。例えば本田のお話ございましたけれども、有名な話がございます。オハイオで雪が降りまして、本田の工場がとまっちゃったことがある。そのためにクリスマスセールの車が間に合わない。あそこは御承知のように組合がありません。従業員が大会を開いた。三つの案が出た。従来どおり超過勤務をやらないでそのままやるか。これじゃ車は間に合いません。もう一つは、土曜、日曜出勤するか、もしくは残業でやるかと。この三つの案につ いて決をとった。驚くべきことに九六%の従業員がオーバータイムでやろうと言ったわけです。とうとう物ができて間に合ったという有名な話がある。  これは杉浦さんという当時の本田の社長に聞いた。そうしたら、本田の杉浦さんのところにニューヨーク・タイムズが取材に来たそうです。どうしてそんなことできたのか。で、いろいろ話をした。そのとき杉浦さん、逆にニューヨーク・タイムズの記者に質問したそうです。アメリカ自動車メーカーだったらどうやるだろう。そうしたら、ニューヨーク・タイムズの記者が答えたそうです。知らぬ顔してコンベヤーのスピード上げただろうと言ったそうですよ。これが経営というものであります。会社がつぶれたらそれっきりなんです。  それからもう一つ……
  41. 神谷信之助

    神谷信之助君 今言っているのは、私が言っているのは、ペイをしないんですよ、超過労働について。という問題なんですよ。四時で終わるわけです、仕事は。しかし、四時以後は自分で自主的にやっているんです。働いているんです。だから、これは賃金にはならない。だから未払い労働というんですね、不払い労働というやつがやられている。
  42. 唐津一

    参考人唐津一君) ちょっと私、意味がよくわかんないんですけど。
  43. 神谷信之助

    神谷信之助君 七時半から四時までは働きますね、その時間。これは労働時間ですから賃金の対象になる。四時から以後に残ってやるのは自主的に働く。だから係長になれたんだ。
  44. 唐津一

    参考人唐津一君) そうじゃありませんよ。私は松下にいたからよく知っています。そういう会社もあるかもしれませんけれども、会社によって全部違います。
  45. 神谷信之助

    神谷信之助君 全部違いますよ。だから、そういう企業も出てきているということが報道されている。
  46. 唐津一

    参考人唐津一君) それは会社の社長の判断ですから、そういう会社にお勤めになるのが嫌だったらやめたらいいです。それだけの話です。
  47. 神谷信之助

    神谷信之助君 やめるか、やめないかの問題じゃない。
  48. 唐津一

    参考人唐津一君) 嫌なんだったら、やめたらいい。
  49. 神谷信之助

    神谷信之助君 日本の政府の、あるいは日本の政治の方針として一体どうなのかということを我々は研究するためにやっているわけです。
  50. 唐津一

    参考人唐津一君) ですから、お嫌ならおやめになれば結構です。別に強制されて——日本はどこの会社に勤めるか自分の勝手であります。どこかの国のように強制的に割り当てるということをやっていません。
  51. 神谷信之助

    神谷信之助君 どうも違うんだね。
  52. 唐津一

    参考人唐津一君) どうも失礼いたしました。
  53. 守屋友一

    参考人守屋友一君) 今の神谷先生と唐津先生の論争を聞いていて、ふだん思っていることでございますけれども、こういうことを思い出しました。  それは、イギリス人が、日本人は働き過ぎだと、せかせかしていると、あんなにせかせかしてもしようかない、もっとゆっくりやれと、こういうお話が多いんですが、実は明治維新の後、岩倉卿、岩倉具視さんを中心に欧米使節団が出まして、あの報告書、私は原書では読めないものですから、わかりやすくなったやつを読んだんですが、その中にこういうことが書かれております。イギリスへ来てみると驚いたと。イギリス人はせかせかと足速に歩いていると。何でだと聞いたら、タイム・イズ・マネーだと。つまり、あの当時のイギリスはやっぱりタイム・イズ・マネーで一生懸命働いていたんだということがそこに書かれてございました。今はそのイギリス日本に対して、お前らどうしてそんなに働くのか、働き過ぎだと、忙しくするんだという御批判があるようでございますが、このことはいい悪いは別として、やっぱり経済とか社会には発展段階があるんじゃないかという気がします。で、時間によってそういう国々が変わるということは、国によってやっぱり段階が違うと。国は変わり得るんだということを示しておると思うんです。  ですから、私どものこの研究報告で責任を三つに分けまして、強制的責任、自発的責任、あるいは慣習的責任と分けましたけれども、その節も御説明いたしましたように、これも万国平均のものではない。ある場合には、あるものは強制的責任があるかもしれないけれども、あるときにはその逆にまたなるだろう。だから、あるものが常に固定的であると考える必要はない。ただ、現段階において各国へ行ってやるならば、やっぱり各国の現段階、そのお国柄というのを尊重してやるべきだろう。  私ども内部で一番議論いたしましたのは、今おっしゃったように、経済的効率というのは重要でございます。それを重要視している東南アジアの国々もございます。あるいは国によっては社会的安定の方を重視して、そういう社会的責任を重要視しているのもございます。それは合わせる必要がある。そうしますと必ずこの二つは矛盾が生じます。つまり、そこの国の人はもう少しゆっくりしたいと思っていたのを、もう少し効率を上げた方がいいんじゃないか、こういうことが起こります。実は内部でこの報告書をまとめるのに一番議論したのはその点でございます。そのときに一番重要なのは、彼らが経済発展を望んでいるんなら、やっぱりそういう方向を、多少それは社会的責任の方に矛盾が生じるかもしれませんけれども、こうやればうまくいくんだよということを教えてあげる必要はあるだろう。と同時に、ただしそれを伝える方法は地元流でやらなきゃいかぬ、日本流でやるわけにはいかぬだろう、そういうことはきっちり書いてあるわけでございませんけれども、そういう気持ちがございました。お答えになったかどうかわかりませんが、以上でございます。  最後に、何か私どもが、アメリカヨーロッパの多国籍企業はちゃんとルールを守っておると、日本の企業は守っていないというように書いたもので言外にお読みいただいたのは大変ありがたいのでございますけれども、私どもとしてはそこまでは言っていませんで、むしろまだまだこういう時代が始まったばかりでございますので日本人は知らないであろうと、まず知っていただくことが重要なんじゃないかというのが本当の研究のねらいでございます。
  54. 菅野省三

    参考人菅野省三君) 守屋先生の資料の十一ページをちょっと借用させていただきたいと思うんですが、企業の社会的責任と利益というものをアニュアルレポート等で広く従業員にも、それから株主にも、それからクライアントにも公表して、そういったことを実行している企業は、結局は最終的には普通の会社よりも伸びるんだと、こういうことが明記してあると思います。ここで言われていることは、そういった社会的責任を自己責任でやっている会社は、普通のそれ以外の会社よりもさらによく伸びるんだということが書いてあるんだと思います。  そういった、その社会的責任を自己の責任においてやるのがより効率的なのか、あるいはそれを何らかの規制という形でやるのがより効率的なものになるかというところが問題の焦点かと思いますけれども、私は、こういう形で自己責任においてやる方が最終的にはより効率がいいのではなかろうかと思っております。したがいまして行動、ビヘービアにいたしましても、それを強制力のあるものにするよりも、やはりそういった自己責任においてやれる指針としていく方が長い目で見て社会的により効率がいいのではなかろうかというふうに考えております。  お答えになりましたかどうか……。
  55. 松前達郎

    会長松前達郎君) ありがとうございました。  以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人皆様に一言お礼を申し上げます。  本日は、お忙しい中を本調査会に御出席いただきまして、ありがとうございました。ただいまお述べいただきました貴重な御意見等につきまして は、今後の調査参考にいたしたいと存じます。調査会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)  本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時五分散会