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1988-11-09 第113回国会 参議院 決算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十一月九日(水曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  八月二十三日     辞任         補欠選任      二木 秀夫君     岩上 二郎君  八月二十四日     辞任         補欠選任      岩上 二郎君     二木 秀夫君  八月三十一日     辞任         補欠選任      及川 一夫君     大木 正吾君  九月一日     辞任         補欠選任      大木 正吾君     及川 一夫君  九月九日     辞任         補欠選任      永野 茂門君     増岡 康治君  九月十日     辞任         補欠選任      増岡 康治君     永野 茂門君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         安永 英雄君     理 事                 上杉 光弘君                 大島 友治君                 福田 幸弘君                 吉村 真事君                 菅野 久光君                 峯山 昭範君     委 員                 井上  孝君                 板垣  正君                 河本嘉久蔵君                 沓掛 哲男君                 斎藤栄三郎君                 杉山 令肇君                 寺内 弘子君                 永野 茂門君                 二木 秀夫君                 松尾 官平君                 宮崎 秀樹君                 守住 有信君                 一井 淳治君                 及川 一夫君                 丸谷 金保君                 片上 公人君                 刈田 貞子君                 諫山  博君                 佐藤 昭夫君                 関  嘉彦君                 藤井 恒男君    国務大臣        法 務 大 臣  林田悠紀夫君        外 務 大 任  宇野 宗佑君        大 蔵 大 臣  宮澤 喜一君        文 部 大 臣  中島源太郎君        農林水産大臣   佐藤  隆君        運 輸 大 臣  石原慎太郎君        郵 政 大 臣  中山 正暉君        労 働 大 臣  中村 太郎君        建 設 大 臣  越智 伊平君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    梶山 静六君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       中尾 栄一君         ─────        会計検査院長   辻  敬一君         ─────    政府委員        内閣法制局第一        部長       大出 峻郎君        警察庁交通局長  内田 文夫君        警察庁警備局長  城内 康光君        経済企画庁調整        局長       星野 進保君        国土庁大都市圏        整備局長     北村廣太郎君        法務省刑事局長  根來 泰周君        外務省経済協力        局長       松浦晃一郎君        外務省条約局長  斉藤 邦彦君        大蔵大臣官房総        務審議官     土田 正顕君        大蔵大臣官房審        議官       尾崎  護君        大蔵省主計局次        長        藤井  威君        大蔵省証券局長  角谷 正彦君        大蔵省銀行局長  平澤 貞昭君        大蔵省国際金融        局長       内海  孚君        文部大臣官房長  加戸 守行君        文部省高等教育        局長       國分 正明君        文部省高等教育        局私学部長    野崎  弘君        農林水産省経済        局長       塩飽 二郎君        農林水産省構造        改善局長     松山 光治君        食糧庁長官    甕   滋君        通商産業大臣官        房商務流通審議        官        高橋 達直君        通商産業省機械        情報産業局次長  水野  哲君        運輸大臣官房国        有鉄道改革推進        総括審議官    丹羽  晟君        郵政省電気通信        局長       塩谷  稔君        郵政省放送行政        局長       成川 富彦君        労働大臣官房長  清水 傳雄君        労働省職業能力        開発局長     野崎 和昭君        建設省建設経済        局長       望月 薫雄君    事務局側        常任委員会専門        員        吉田 堯躬君    説明員        労働大臣官房審        議官       若林 之矩君        会計検査院事務        総局次長     秋本 勝彦君        会計検査院事務        総局第一局長   疋田 周朗君        会計検査院事務        総局第三局長   大沼 嘉章君        会計検査院事務        総局第五局長   三原 英孝君    参考人        住宅都市整備        公団総裁     丸山 良仁君        住宅都市整備        公団理事     佐藤 和男君        日本国有鉄道清        算事業団理事長  杉浦 喬也君        日本国有鉄道清        算事業団理事   池神 重明君        協同組合日本俳        優連合常務理事  江見俊太郎君     ─────────────   本日の会議に付した案件参考人出席要求に関する件 ○昭和六十一年度一般会計歳入歳出決算昭和六十一年度特別会計歳入歳出決算昭和六十一年度国税収納金整理資金受払計算書昭和六十一年度政府関係機関決算書(第百十二回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和六十一年度国有財産増減及び現在御総計算書(第百十二回国会内閣提出)(継続案件) ○昭和六十一年度国有財産無償貸付状況計算書(第百十二回国会内閣提出)(継続案件)     ─────────────
  2. 安永英雄

    委員長安永英雄君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和六十一年度決算外二件の審査のため、本日の委員会参考人として日本俳優連合常務理事江見俊太郎君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 安永英雄

    委員長安永英雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 安永英雄

    委員長安永英雄君) 昭和六十一年度決算外二件を議題といたします。  まず、昭和六十一年度決算、すなわち一般会計歳入歳出決算特別会計歳入歳出決算国税収納金整理資金受払計算書政府関係機関決算書につきまして、大蔵大臣から概要説明を聴取いたします。宮澤大蔵大臣
  5. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昭和六十一年度一般会計歳入歳出決算特別会計歳入歳出決算国税収納金整理資金受払計算書及び政府関係機関決算書会計検査院検査報告とともに国会に提出し、また、昭和六十一年度の国の債権の現在額並びに物品増減及び現在額につきましても国会報告いたしましたので、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計におきまして、歳入決算額は五十六兆四千八百九十一億九千四百二十五万円余、歳出決算額は五十三兆六千四百四億三千百八十四万円余でありまして、差し引き二兆八千四百八十七億六千二百四十万円余の剰余を生じました。  この剰余金は、財政法第四十一条の規定によりまして、一般会計昭和六十二年度歳入繰り入れ済みであります。  なお、昭和六十一年度における財政法第六条の純剰余金は一兆七千六百十五億千百十九万円余となります。  以上の決算額予算額と比較いたしますと、歳入につきましては、予算額五十三兆八千二百四十八億二千八百八万円余に比べて二兆六千六百四十三億六千六百十六万円余の増加となりますが、この増加額には、前年度剰余金受け入れ予算額に比べて増加した額五千四百五十七億五千四百六十九万円余が含まれておりますので、これを差し引きますと、歳入の純増加額は二兆千百八十六億千百四十六万円余となります。その内訳は、租税及び印紙収入等における増加額二兆三千五百八十六億八千四百三十六万円余、公債金における減少額二千四百億七千二百八十九万円余となっております。  一方、歳出につきましては、予算額五十三兆八千二百四十八億二千八百八万円余に、昭和六十年度からの繰越額五千四百三十三億五千六百三十五万円余を加えました歳出予算現額五十四兆三千六百八十一億八千四百四十四万円余に対しまして、支出済み歳出額は五十三兆六千四百四億三千百八十四万円余でありまして、その差額七千二百七十七億五千二百五十九万円余のうち、昭和六十二年度に繰り越しました額は五千九十三億三千五百五十四万円余となっており、不用となりました額は二千百八十四億千七百五万円余となっております。  次に、予備費でありますが、昭和六十一年度一般会計における予備費予算額は二千億円であります。その使用額は千九百四十五億七千五百四十二万円余でありまして、その使用内容につきましては、別途国会に提出いたしました予備費使用調書等によって御了承願いたいと存じます。  次に、一般会計国庫債務負担行為につきまして申し上げます。  財政法第十五条第一項の規定に基づき国が債務を負担することができる金額は二兆千九百三億七千三百七十四万円余でありますが、契約等による本年度債務負担額は二兆千二百八十八億五千六百四万円余であります。これに既往年度からの繰越債務額三兆千三百九十七億九千四百二十九万円余を加え、昭和六十一年度中の支出等による本年度債務消滅額二兆六百六億六千百八十八万円余を差し引いた額三兆二千七十九億八千八百四十四万円余が翌年度以降への繰越債務額となります。  財政法第十五条第二項の規定に基づき国が債務を負担することができる金額は一千億円でありますが、契約等による本年度債務負担額は四億六千九百九十万円であります。これから、昭和六十一年度中の支出等による本年度債務消滅額二億四千九百八十六万円を差し引いた額二億二千四万円が翌年度以降への繰越債務額となります。  次に、昭和六十一年度特別会計決算でありますが、同年度における特別会計の数は三十八でありまして、これらの決算内容につきましては、特別会計歳入歳出決算によって御了承願いたいと存じます。  次に、昭和六十一年度における国税収納金整理資金受け入れ及び支払いでありますが、同資金への収納済み額は四十二兆五千八百九億八千九百七十六万円余でありまして、この資金からの一般会計等歳入への組み入れ額等は四十二兆五千六百六十二億八千七百六十六万円余でありますので、差し引き百四十七億二百十万円余が昭和六十一年度末の資金残額となります。これは、主として国税に係る還付金として支払い決定済みのもので、年度内に支払いを終わらなかったものであります。  次に、昭和六十一年度政府関係機関決算内容につきましては、それぞれの決算書によって御了承願いたいと存じます。  次に、国の債権の現在額でありますが、昭和六十一年度末における国の債権総額は百三十三兆四千五百十二億二千七百十六万円余でありまして、前年度末現在額百二十六兆八千百九十七億八十一万円余に比べて六兆六千三百十五億二千六百三十五万円余の増加となります。  その内容の詳細につきましては、昭和六十一年度国の債権の現在額総報告によって御了承願いたいと存じます。  次に、物品増減及び現在額でありますが、昭和六十一年度中における純増加額は四千八百四十四億七百三十六万円余であります。これに前年度未現在額四兆六千四百三十九億二千八百五十四万円余を加えますと、昭和六十一年度末における物品総額は五兆千二百八十三億三千五百九十一万円余となります。その内訳の詳細につきましては、昭和六十一年度物品増減及び現在額総報告によって御了承願いたいと存じます。  以上が、昭和六十一年度一般会計歳入歳出決算特別会計歳入歳出決算国税収納金整理資金受払計算書政府関係機関決算書等概要であります。  なお、昭和六十一年度予算執行はつきましては、予算の効率的な使用、経理の適正な運営に極力意を用いてまいったところでありますが、なお会計検査院から、百二十九件の不当事項等について指摘を受けましたことは、まことに遺憾にたえないところであります。  予算執行につきましては、今後一層配慮をいたし、その適正な処理に努めてまいる所存であります。  何とぞ御審議のほどお願い申し上げます。
  6. 安永英雄

    委員長安永英雄君) 次に、昭和六十一年度国有財産増減及び現在額総計算書並び昭和六十一年度国有財産無償貸付状況計算書につきまして、大蔵大臣から概要説明を聴取いたします。宮澤大蔵大臣
  7. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昭和六十一年度国有財産増減及び現在額総計算書並び昭和六十一年度国有財産無償貸付状況計算書を、会計検査院検査報告とともに第百十二回国会報告いたしましたので、その概要を御説明申し上げます。  まず、昭和六十一年度国有財産増減及び現在額総計算書概要について御説明いたします。  昭和六十一年度中に増加しました国有財産は、行政財産一兆四千九百九十三億九千七百八十七万円余、普通財産一兆四千二百二十三億三千七百五十九万円余、総額二兆九千二百十七億三千五百四十六万円余であり、また、同年度中に減少しました国有財産は、行政財産三千三百六十七億千四百二十三万円余、普通財産六千二百三十九億三千九十四万円余、総額九千六百六億四千五百十七万円余でありまして、差し引き一兆九千六百十億九千二十八万円余の純増加となっております。これを昭和六十年度末現在額四十六兆七億千五百三十六万円余に加算いたしますと四十七兆九千六百十八億五百六十五万円余となり、これが昭和六十一年度末現在における国有財産総額であります。  この総額内訳分類別に申し上げますと、行政財産二十六兆六千四百三十億三千七百六十九万円余、普通財産二十一兆三千百八十七億六千七百九十五万円余となっております。  なお、行政財産内訳種類別に申し上げますと、公用財産十七兆三千四百七十三億七千五百三十四万円余、公共用財産五千三百三十四億四千三百八十三万円余、皇室用財産六千六百六十八億九千九百三万円余、企業用財産八兆九百五十三億千九百四十八万円余となっております。  また、国有財産総額内訳区分別に申し上げますと、土地十三兆五千四百七十二億四百二十八万円余、立木竹四兆六千九百八十六億四千七十六万円余、建物五兆四千七百三十一億三千百二十七万円余、工作物四兆二千八百五十九億六千九百八十四万円余、機械器具八億二千七百一万円余、船舶一兆百三十九億七千三百六十万円余、航空機一兆二千七百六十六億八千四百四十四万円余、地上権等十五億五千六百二十八万円余、特許権等四十五億五百八十七万円余、政府出資等十七兆六千五百九十三億千二百二十四万円余となっております。  次に、国有財産増減内容について、その概要を申し上げます。  まず、昭和六十一年度中における増加額を申し上げますと、前述のとおりその総額は二兆九千二百十七億三千五百四十六万円余であります。この内訳を申し上げますと、第一に、国と国以外の者との間の異動によって増加しました財産は二兆五千三百九十九億七千三十五万円余、第二に、国の内部における異動によって増加しました財産は三千八百十七億六千五百十万円余であります。  次に、減少額について申し上げますと、その総額は九千六百六億四千五百十七万円余であります。この内訳を申し上げますと、第一に、国と国以外の者との間の異動によって減少しました財産は四千十八億千九百六十九万円余、第二に、国の内部における異動によって減少しました財産は五千五百八十八億二千五百四十八万円余であります。  以上が昭和六十一年度国有財産増減及び現在額総計算書概要であります。  次に、昭和六十一年度国有財産無償貸付状況計算書概要について御説明いたします。  昭和六十一年度中に増加しました無償貸付財産総額は千四百億四千七百三万円余であり、また、同年度中に減少しました無償貸付財産総額は千四百一億三千四十六万円余でありまして、差し引き八千三百四十三万円余の純減少となっております。これを昭和六十年度末現在額八千二百三十一億五千八十五万円余から減算いたしますと八千二百三十億六千七百四十二万円余となり、これが昭和六十一年度末現在において無償貸し付けをしている国有財産総額であります。  以上が昭和六十一年度国有財産無償貸付状況計算書概要であります。  なお、これらの国有財産の各総計算書には、それぞれ説明書が添付してありますので、それによって細部を御了承願いたいと思います。  何とぞ御審議のほどお願い申し上げます。
  8. 安永英雄

    委員長安永英雄君) 次に、昭和六十一年度決算中、日本国有鉄道決算につきまして、運輸大臣から概要説明を聴取いたします。石原運輸大臣
  9. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 昭和六十一年度日本国有鉄道決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  昭和六十一年度における日本国有鉄道運輸成績は、旅客輸送人キロはほぼ前年度並みとなりましたが、貨物輸送トンキロは前年度に比し約七%の減少となりました。  運輸収入においては、旅客収入は約三%の増加となりましたが、貨物収入は約一〇%の減少となりました。  以下、収入支出内容勘定別に御説明申し上げます。  まず、損益勘定におきましては、収入済み顔は四兆七千八百三十億五千四百八十六万円余、支出済み額は四兆七千二百八十一億八千八百九十一万円余でありまして、収入支出を上回ること五百四十八億六千五百九十五万円余でありますが、これは予算上の区分による収支決算の結果でありまして、いわゆる損益計算上では、一兆三千六百十億三千六百一万円余の純損失となっております。  この決算額予算額と比較いたしますと、収入予算額四兆八千百二十五億七千四十万円余に対しまして、二百九十五億一千五百五十三万円余の減少となっております。  他方支出予算現額四兆八千二百二十六億七千四百五十万円余に対しまして、支出済み額は九百四十四億八千五百五十九万円余下回っておりますが、これはすべて不用額となっております。  次に、資本勘定におきましては、収入済み額は三兆一千三十七億三千六百七十五万円余、支出済み額は二兆九千八百五十二億二千四百八十五万円余であります。  この決算額予算額と比較いたしますと、収入予算額二兆八千百七十五億六千六百万円に対しまして、二千八百六十一億七千七十五万円余の増加となっております。  他方支出予算現額三兆九十八億五千二百八十二万円余に対しまして、支出済み額は二百四十六億二千七百九十六万円余下回っておりますが、これはすべて不用額となっております。  次に、工事勘定におきましては、収入済み額は七千百二十八億三千二百三万円余、支出済み額は六千九百九十三億五千五百七十八万円余であります。  この決算額予算額と比較いたしますと、収入予算額四千四百七十九億一千七百五十五万円余に対しまして、二千六百四十九億一千四百四十七万円余の増加となっております。  他方支出予算現額七千二百八十三億七千九百二十一万円余に対しまして、支出済み額は二百九十億二千三百四十三万円余下回っておりますが、これはすべて不用額となっております。  なお、主要施策別設備投資額内訳は、輸送設備維持更新三千七百八十八億六千八百四十八万円余、経営の体質改善一千二百十五億四千四百二十一万円余、輸送力整備一千三百四十三億四千六百六十六万円余、新幹線建設百二十二億八千七百六十三万円余、建設関連利子五百二十三億八百七十七万円余、合計六千九百九十三億五千五百七十八万円余となっております。  また、特定債務整理特別勘定におきましては、収入済み額は一千七百二十八億三千五百九十九万円余、支出済み顔は一千七百二十八億三千五百九十九万円余であります。  最後に、昭和六十一年度予算執行につきまして、会計検査院から不当事項として指摘を受けた点がありましたことは、まことに遺憾に存じております。今後とも、日本国有鉄道の経営する事業を引き継いだ旅客会社等事業が適切かつ健全に運営されるよう、引き続き関係者を指導監督してまいる所存であります。  以上をもちまして、昭和六十一年度日本国有鉄道決算に関する説明を終わります。  何とぞよろしく御審議のほど、お願い申し上げます。
  10. 安永英雄

    委員長安永英雄君) 次に、昭和六十一年度決算検査報告並びに昭和六十一年度国有財産検査報告につきまして会計検査院長から概要説明を聴取いたします。辻会計検査院長
  11. 辻敬一

    会計検査院長辻敬一君) 昭和六十一年度決算検査報告につきまして、その概要を御説明いたします。  会計検査院は、六十二年十月十三日、内閣から昭和六十一年度歳入歳出決算の送付を受け、その検査を終えて、昭和六十一年度決算検査報告とともに、六十二年十二月十一日、内閣に回付いたしました。  昭和六十一年度一般会計決算額は、歳入五十六兆四千八百九十一億九千四百二十五万余円、歳出五十三兆六千四百四億三千百八十四万余円でありまして、前年度に比べますと、歳入において二兆四千九百六十六億三千二百六十六万余円、歳出において六千三百五十九億二千七十九万余円の増加になっており、各特別会計決算額合計額は、歳入百四十八兆二千百二十一億三千七百三十九万余円、歳出百二十九兆七千八百八十五億五千七百八十五万余円でありまして、前年度に比べますと、歳入において二十一兆五千三百四十六億千七百三十七万余円、歳出において十八兆百三十三億七千四百七十四万余円の増加になっております。  また、国税収納金整理資金は、収納済み額四十二兆五千八百九億八千九百七十六万余円、歳入組入額四十一兆五千三百八十一億九千二百八十万余円であります。  政府関係機関昭和六十一年度決算額の総計は、収入十三兆八千二十億四千百九十三万余円、支出十三兆五千六百七十八億千六百四十万余円でありまして、前年度に比べますと、収入において九百十八億千八百六万余円、支出において三千八百四十三億六千百十万余円の減少になっております。  昭和六十一年度歳入歳出等に関し、会計検査院が、国、政府関係機関、国の出資団体等検査対象機関について検査した実績を申し上げますと、書面検査は、計算書二十三万四千余冊及び証拠書類六千六百四十一万三千余枚について行い、また、実地検査は、検査対象機関の官署、事務所等四万六百余カ所のうち、その八・一%に当たる三千三百余カ所について実施いたしました。そして、検査の進行に伴い、関係者に対して九百余事項の質問を発しております。  このようにして検査いたしました結果、検査報告に掲記した法律、政令もしくは予算に違反しまたは不当と認めた事項等について、その概要を御説明いたします。  まず、法律、政令もしくは予算に違反しまたは不当と認めた事項について申し上げます。  法律、政令もしくは予算に違反しまたは不当と認めた事項として検査報告に掲記いたしましたものは合計百二十九件であります。  このうち、収入に関するものは四件、二十二億千七百九十万余円でありまして、その内訳は、租税の徴収額に過不足があったものが一件、十一億三千八百五十二万余円、保険料の徴収額に過不足があったものが三件、十億七千九百三十八万余円。  また、支出に関するものは九十一件、十四億四千五百二十七万余円でありまして、その内訳は、工事に関するものとして、設計が適切でなかったり、監督、検査または審査が適切でなかったものが三件、三千七百七十五万余円、物件に関するものとして、計画が適切でなかったため不要の物品を購入したものが一件、三千六百四十万円、保険給付に関するものとして、保険給付金の支給が適正でなかったものが五件、二億二千四百六十三万余円、補助金に関するものとして、補助事業の実施及び経理が適切でなかったものが五十五件、五億九千八百七十三万余円、貸付金に関するものとして、貸付金の経理が適切でなかったものが十九件、四億三千九十六万余円、その他、児童扶養手当の支給及び医療費の支払いが適正でなかったものが八件、一億千六百七十七万余円であります。  以上の収入支出に関するもののほか、被収容者あての差し入れ金や、郵便貯金の預入金、簡易生命保険の保険料等について、職員の不正行為による損害を生じたものが三十四件、二億四千七百七十五万余円ありまして、これらの合計は、百二十九件、三十九億千九十三万余円となっております。これを前年度の百十七件、三十六億六千四百二十万余円と比べますと、件数において十二件、金額において二億四千六百七十三万余円の増加となっております。  次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について御説明いたします。  六十二年度中におきまして、会計検査院法第三十四条または第三十六条の規定により意見を表示しまたは処置を要求いたしましたものは九件でありまして、その内訳は、同法第三十四条の規定により是正改善の処置を要求いたしましたものが五件、同法第三十四条及び第三十六条の規定により、是正改善の処置を要求し及び意見を表示いたしましたものが一件、改善の処置を要求いたしましたものが一件、同法第三十六条の規定により改善の処置を要求いたしましたものが二件であります。  このうち、会計検査院法第三十四条の規定により是正改善の処置を要求いたしましたものは、文部省の医学部附属病院に係る電気税及びガス税の納付に関するもの、医学部附属病院等に係る電気税の納付に関するもの、厚生省の特別養護老人ホームの入所者に係る生活指導管理料の支払いに関するもの、国民年金保険料の免除に係る事務処理の適正化に関するもの、労働省の労働者災害補償保険の年金と厚生年金等との併給調整に関するものであります。  会計検査院法第三十四条及び第三十六条の規定により是正改善の処置を要求し及び意見を表示いたしましたものは、総理府の地籍調査事業の実施等に関するものであり、会計検査院法第三十四条及び第三十六条の規定により改善の処置を要求いたしましたものは、文部省の義務教育費国庫負担金の算定の基礎となる産休等補助教職員に係る共済費に対する国庫負担の適正化に関するものであります。  また、会計検査院法第三十六条の規定により改善の処置を要求いたしましたものは、厚生省の生活保護世帯に対する扶養義務の履行の確保に関するもの、農林水産省の鶏卵価格安定対策事業の実施に関するものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。  これは、検査の過程におきまして、会計検査院法第三十四条または第三十六条の規定により意見を表示しまたは処置を要求すべく質問を発遣するなどして検討しておりましたところ、当局において、本院の指摘を契機として直ちに改善の処置をとったものでありまして、検査報告に掲記いたしましたものは十八件であります。  すなわち、総理府の装軌車の整備用交換部品の納入方法に関するもの、文部省の地域改善対策高等学校等進学奨励費補助金の経理に関するもの、公立の小中学校等の校舎等整備事業に係る積雪寒冷地域の指定に関するもの、外国製医療機器の購入に関するもの、農林水産省の土地改良事業における換地業務に関する国庫補助金の経理に関するもの、畜産振興事業団の補助による畜産特別資金利子補給事業の実施に関するもの、農林水産省・農林漁業金融公庫の自作農維持資金等の貸し付けに関するもの、運輸省のYS11型航空機のプロペラ部品及びエンジン部品の調達に関するもの、郵政省の冬期における郵便物集配委託料に関するもの、建設省の農地所有者等賃貸住宅建設融資利子補給事業の実施に関するもの、下水道工事の設計における鋼製セグメントの材種の選定に関するもの、住宅金融公庫の公庫貸し付けを受けて購入した団地住宅の第三者賃貸等の防止に関するもの、沖縄振興開発金融公庫の農林漁業施設資金の貸し付け方法に関するもの、日本道路公団の土地測量における境界測量等の仕様及び積算に関するもの、舗装改良工事における路面切削費等の積算に関するもの、阪神高速道路公団の高架橋の鋼製けた等の部材接合に用いる高力ボルトの締めつけ費等の積算に関するもの、本州四国連絡橋公団の橋梁点検補修用作業車製作における工場間接経費の積算に関するもの、住宅都市整備公団のみずからの居住の用に供するとして購入した分譲住宅の第三者賃貸等の防止に関するものであります。  以上をもって概要説明を終わります。  会計検査院といたしましては、機会あるごとに関係各省庁などは対して、適正な会計経理の執行について努力を求めてまいりましたが、なお、ただいま申し述べましたような事例がありますので、関係各省庁などにおいてもさらに特段の努力を払うよう望んでいる次第であります。  引き続きまして、昭和六十一年度国有財産検査報告につきまして、その概要を御説明いたします。  会計検査院は、六十二年十月二十日、内閣から昭和六十一年度国有財産増減及び現在額総計算書及び昭和六十一年度国有財産無償貸付状況計算書の送付を受け、その検査を終えて、昭和六十一年度国有財産検査報告とともに、六十二年十二月十一日、内閣に回付いたしました。  六十年度末の国有財産現在額は、四十六兆七億千五百三十六万余円でありましたが、六十一年度中の増が二兆九千二百十七億三千五百四十六万余円、同年度中の減が九千六百六億四千五百十七万余円ありましたので、差し引き六十一年度末の現在額は四十七兆九千六百十八億五百六十五万余円になり、前年度に比べますと、一兆九千六百十億九千二十八万余円の増加になっております。  また、国有財産無償貸し付け状況につきましては、六十年度末には、八千二百三十一億五千八十五万余円でありましたが、六十一年度中の増が千四百億四千七百三万余円、同年度中の減が千四百一億三千四十六万余円ありましたので、差し引き八千三百四十三万余円の減少を見まして、六十一年度末の無償貸付財産総額は八千二百三十億六千七百四十二万余円になっております。  検査の結果、昭和六十一年度国有財産増減及び現在額総計算書及び昭和六十一年度国有財産無償貸付状況計算書に掲記されている国有財産の管理及び処分に関しまして、昭和六十一年度決算検査報告に「法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項」として掲記いたしましたものは、運輸省の巡視艇の係留施設の建設工事の施行に当たり、係留ブロックの設計が適切でなかったため、その耐力が不足しているものの一件でございます。  以上をもって概要説明を終わります。
  12. 安永英雄

    委員長安永英雄君) 以上で昭和六十一年度決算外二件に関する概要説明を終わります。  これより質疑に入ります。  本日は全般的質疑第一回を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  13. 菅野久光

    ○菅野久光君 昭和六十一年度決算に当たりまして、きょうは総括の第一回ということで、当初財政問題から実は入ろうと思ったんですが、外務大臣の衆議院との日程の関係がありますので、順序を変えてODAの問題から入りたいと思います。  日本の経済協力がこの数年急激に大きくなってまいりまして、国際的にも高く評価されるようになったわけでありますが、反面、非難される面も少なくないというふうに思います。例えば、経済協力が商社や企業の輸出戦略に組み込まれていて真に必要なプロジェクトではないものに回っているというようなこと、そして、経済協力対象国の非民主的な勢力の利権と結びついた援助になっているというような批判もあります。また、援助の実質が我が国の経済規模に比べて少ないという国際的な批判もあります。そして、自民党の有力政治家との結びつきなどがあるというようなこともささやかれている。こういった非難があるわけでありますが、それらにこたえて今後ODAの問題についてどのような方向で進めるおつもりか、まずお伺いをいたします。
  14. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 我が国も経済力では世界第二位、自由社会でそうした地位を占めることになりましたので、ODAに関しましてもやはりみずから努力して極力大きくすることが必要だろうと思っております。しかし、委員が御指摘になられましたとおり、現在DAC平均から申しまして、いろいろな面でまだその量も決して多いとは申し上げられませんから、将来はせめてDAC諸国の中の二〇%ぐらいを占めるようにしたいものだ、かように考えておる次第でございます。しかし、それをもし超えますと、おっしゃいましたとおり今度は経済侵略だ、そういうような批判もまた耳に聞こえてくる。非常にデリケートな立場におるのが今日の日本でございます。  しかしながら、一応いろいろと日本はその経済力に比して少ない、内容も充実しておらぬという声が一般的でございますから、御承知のとおり、第三次の中期目標途中で完成いたしましたので、第四次というものに移りまして、それは過去の大体倍額以上だということで五百億ドル以上ということを先般設定して、総理みずからこれはトロントのサミットで表明されたところでございます。これに対しましては各国も非常に大きく評価をしていてくれます。  そこで、やはり今おっしゃるようなもろもろの声が聞こえてまいりまするから、内容もできるだけアンタイドにしたい、できるだけ有償より無償をふやしたい、こういうことで各国の要請にこたえたODAでなければならない、かように私たちも考えておる次第でございます。しかし、時と場合にはいろいろな話、今おっしゃったような面もございますのでやはり行政監察をしていただくということも大切だろう、こういうふうに思っておりまして、実のところは無償に関しましては行政監察をしていただきまして、その報告を受けております。続いて有償に関しましても行政監察をしていただこう、かように考えております。これは非常に有効な手段ではなかろうかと思っておりまするし、同時にまた、その報告書を今後忠実に実行することにおいて今御指摘のような面が少なくとも我が国のODAに関しましては皆無であるというところまで持っていきたい、かように存じておる次第であります。
  15. 菅野久光

    ○菅野久光君 せっかくやるわけでありますから、いろんな批判を受けないようにこれは最大限努力をしていただかなければならないというふうに思います。日本の経済協力については日本の国民も非常に理解が高いわけでありますが、先ほど申し上げたような批判が被経済協力国から指摘されたことを知れば、いずれにしろ経済協力にかかわるお金は国民の血税でありますから、それを聞く国民は血税のむだ遣いではないかという疑問を持つのは、これは当然なわけであります。国会はそれを明らかにする義務があるというふうに思っているわけですが、個々の案件が議会の承認等を要しないように、野党議員から見れば何か脱法的に行われているのではないか、十分国民からの明らかにせいという義務にはこたえられていないのが現状なわけです。年間この数百の案件を議決の対象とすることは困難でしょうけれども、国別の枠だとか、あるいは当該国への援助協力条件等についてあらかじめ、または事後に国会の議決を求めるようにすべきではないかというふうに思うのですが、その辺はいかがでしょうか。
  16. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) そうした今指摘されました面に関しましては、これは与野党問わずいろいろといつも問題にされております。その都度、政府といたしましてはやはり多くの援助国のほとんどが、まず予算をちょうだいし、御承認をいただいたその後でそれぞれの対象国の要請にこたえまして十分交渉して結論を出していくというふうな手段をとっておる、まずこれが第一点であること。  また、我が国自体といたしましても、私も就任後考えておりますが、先ほどいろいろと御指摘のあったような面におきましても慎重を期さなくてはなりませんから、特にあの国には何かしら非常に面倒見がよくて、うちの方には面倒見が悪いというふうなことがあってはならない、私たちはさように思います。  そうした点から考えましても、相手国なり金額なり、そのプロジェクトなり計画なり、いろいろなことが先に承認を得てからやるということになりますと、その後では交渉に際してそのとおりにいくかどうかということ等に関しましてもいろいろ支障を来すのではなかろうか、こういうふうに私も思います。また多くの援助国がさように考えまして、ほとんどが今日本と同じような方式でやっておること等を考えましても、やはり行政権の範囲におきまして、また御承認をいただきました予算の範囲内において私たちが誠心誠意相手国と交渉するというのが現在といたしましては最も適切な方法ではなかろうか。もちろんそうした経緯等に関しましても、資料要求あらば私たちも常に議会の御審議に御協力申し上げることは当然でございますが、予算等々の関係上、予算を定めていただいてからの交渉ということの方が適切だ、私はかように考えております。
  17. 菅野久光

    ○菅野久光君 予算については総枠で国会で議決をしているわけですけれども、個々の案件については正直なところ、行政権の範囲内ということで執行されているわけであります。この経済協力や援助に出される国の予算については、会計検査院検査はいわゆる肩越し検査しか行われていないわけですね。肩越し検査というものの実態を聞きますと、輸銀とか基金、事業団がそれぞれの目的で行うチェックに便乗して一緒に書類なり実物を一覧するということしかできないわけです。ここではやはり二つの点で欠陥があるのではないかというふうに思います。  まず一つ目としては、会計検査院のチェックというものと、それぞれの関係するところがチェックするということの間では目的の違いがあるということです。例えば輸銀ならば債権が確保できればこの目的を達するわけでありますけれども、会計検査の場合にはその実体の有無を含めて真実性の追及が目的であるわけですね。そこでは完全に違うわけです。  二つ目は、便乗検査でありますから、疑惑に関連する書類上の調査ができないということであります。例えば他の部門からリベートを出している疑いがあってもそれを調べるということができない。このようなことからどうしてもこれは院法改正をしなければだめだというふうに思うのです。先ほど外務大臣から行政監察を大いにやってもらったらいいようなお話がありましたけれども、行政監察というのと会計検査というのではまたそこにおのずから違うものがあるわけですから、院法改正の問題について、政府はこれだけODAの予算が大きくなってきたわけですからどのように考えておられるのか、そして会計検査院としてはどうなのか、その辺を、これは官房長官と会計検査院長になりますか、お答えいただければと思います。
  18. 辻敬一

    会計検査院長辻敬一君) 経済援助の検査につきましては、昨年度から検査院として検査体制を整備いたしまして、外国旅費も増額いたしまして本格的な海外検査に取り組んでいるところでございます。援助の現場の調査につきましても、関係者の協力を得まして、目下のところ特に支障があるということは承知していないわけでございます。本年度におきましても引き続き検査を実施いたしております。昨年は七カ国、本年は五カ国ということでございます。検査の結果につきましてはただいま取りまとめ中の段階でございます。  ただ、私ども当然のことでございますけれども、検査の権限は外国の政府であるとか外国の機関には当然及ばないわけでございますので、それは検査の制約と申しますよりは検査についての当然の前提であろう、かように考えているところでございます。
  19. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) いわゆる会計検査院法の改正の問題につきましては、委員かねがね過ぐる国会でもお尋ねがございましたが、政府といたしましては自由な企業活動に対する公権力の過剰介入のおそれがある、こういう立場で、融資先に対しての畏怖心を与え、政策金融が有効に機能しなくなるおそれがある等の問題から法改正は困難であるという考え方でございます。  しかしながら、政策金融に著しい支障を生ずることなく会計検査の充実強化を図ることは当然でございますので、会計検査院内閣、大蔵省の三者で十分協議を行い、その結果を踏まえた上で六十年の二月、いわゆる肩越し検査の充実を内容とした内閣官房副長官通達がなされたところでございます。大蔵省など関係省庁におきまして、この通達の趣旨に沿って会計検査院に対して一層の協力を行うよう政府関係金融機関を指導いたしておるところでございます。この結果、従来肩越し検査の実施されていなかった政府関係金融機関においてもいわゆる肩越し検査が実施される等、会計検査院検査機能が一層充実したものと認識いたしておるところでございます。
  20. 菅野久光

    ○菅野久光君 経済協力が実際に行われる被援助国の中で、直接会計検査院が会計検査をするなんということはできないことは私も十分にわかっております。しかし、肩越し検査というものの持つ限界というものは、先ほど私が申し上げたように、検査院長は少し遠慮をしているんじゃないかと思うのですが、支障がないと言われましたけれども、私はそんなものじゃないのじゃないかというふうに思うのです。  当該国の実施する会計監査について、日本の会計検査院というのはすばらしいノーハウを持っているわけでありますから、そういう点での技術協力をするということを何とか盛り込むことができないのか。日本の会計検査院が直接やることはできなくても、相手国の会計監査について監査の技術協力をするということぐらい、これは何とか盛り込むことができるのではないか。そういう院法の改正というものについてどのように考えるか。これだけ額が大きくなってきているし、また、国民自体もそういうことでいろいろな面で批判を持っているわけでありますから、それにこたえるという意味でもこれぐらいは何とかやらなければいけないのじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  21. 辻敬一

    会計検査院長辻敬一君) 国内の肩越し検査の問題につきましては、ただいま官房長官からお話がございましたような経緯がございまして、政府の方で会計検査院の肩越し検査に協力するという指導方針を明確にされまして以来、それまで必ずしも協力を得られなかった三機関につきましても肩越し検査の実績が出てまいりました。六十一年は九件、六十二年は十件、六十三年は十一件と検査実績が上がっているわけでございますので、当面この肩越し検査の方法によりまして検査の充実を期してまいりたいと考えているところでございます。  なお、ODAに関しまして院法改正を仮に行いましても、それが相手国を当然に拘束するということにはまいりませんので、そこに限界があるのではないかというふうに考えております。
  22. 菅野久光

    ○菅野久光君 それはしかし、援助の条件にするかどうかは別にしても、相手国があるということは私もよくわかっていますけれども、何とかそこのところを克服していかなきゃならないというふうに思うので、一応きょうは総括の最初ですから、なおこのことは古くて新しい課題だというふうに思いますからひとつ検討していただきたい、そのように思います。  竹下総理がASEANの首脳会議のためにフィリピン訪問の際、また中国訪問の際に、あるいはサミット出席の際に、経済協力の約束や借款の利率や期限などの条件緩和等への配慮の約束をされます。大変私どもから見れば大盤振る舞いで、日本という国は大変な力を持っているというふうに一般的には思うのではないかと思います。このサンタクロース的な振る舞いというのは人々を喜ばせはするけれども、自立を本当に助けるかどうかということについてよく吟味する必要があるのではないか。経済協力に伴う各種プロジェクトについて都市や農村の一般レベルへの影響や受け入れ体制の調査、環境への影響等を調査する援助アセスメントを行う必要があるのではないかというふうに思うのです。できれば国連のような中立機関にそうした経済協力のアセスメントの専門家を要請する、そしてそこから派遣してもらって個別プロジェクトを事前評価するシステムをつくってはどうかなというふうに思うのです。その援助する国がそれぞれ個々でやるというようなことではなくて、これだけ経済援助というものが国際的な中での大きな課題になっているわけでありますから、そういう点について日本が何とかイニシアチブをとっていくようなことはできないものかというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  23. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) ASEANの例を申し上げますと、やはりASEAN首脳はまず民生の安定だ、そのためには経済の安定が欲しい、そして政治の安定を図りたい、こうした訴えをそれぞれが一様にされました。私たちもそういう思いでやっておるわけでございまして、決して今の日本といたしましては個々の案件におきましても大盤振る舞いということではなく、相手国の要請に応じましてこちらもそれを厳密に審査をして決定していくという段取りを用いております。もちろん中にはオファーという方式もございますし、あるいは政策等におきましてはいろいろ御相談にあずかればまたその相談にも乗るというふうにいたしまして、とにかく効率的、効果的ということを考えていかなくてはなりません。もちろん国民の税金を預かってそれをそうした面で役立たしていただくわけでございますから、より一層慎重でなければならないと思います。  今のアセス等々の問題に関しましては現在やっておることもございますし、この問題はひとつ政府委員から答えさせますので、御理解を賜りたいと思います。
  24. 松浦晃一郎

    政府委員松浦晃一郎君) 先生御指摘のアセスメントについてお答えしたいと思いますが、私ども援助の入り口とそれから出口のチェックが非常に重要と考えております。先生今御指摘のアセスメントはこの入り口のいわゆる事前審査の段階の点かと思いますけれども、先生御指摘のように国連でもいろいろな動きがございますし、それからOECDの援助問題を扱っておりますDACという委員会がございます。そこでも議論しておりますが、私どもはそういう国際的なアセスメントについての動きを踏まえまして、外務省初め関係省庁さらには援助を実施しております国際協力事業団、海外経済協力基金でそれぞれアセスメントのガイドラインをつくるように努力しております。そういうものに基づきまして事前審査をできるだけ的確適正に行って、先生御指摘のように援助が効果を上げるように努力してきておるつもりでございます。  それから、先生がアセスメントの中に含められたかどうか、ちょっと私よくわかりませんでしたが、出口の段階の評価というのも私ども力を入れておりまして、いわば入り口と出口双方でできるだけ適切な援助が効果的にできるように努力するメカニズムをつくっております。
  25. 菅野久光

    ○菅野久光君 いずれにしろ、ODAの問題については日本の重要な政策でもありますし、また日本の責任でもあるということで大変大事な問題でありますので、せっかく援助をしながら、援助をされた国の国民から非難されるようなことのないように十分今後とも配慮してやってもらいたいということを要望して、外務大臣、何か衆議院の方があるそうですので、結構でございます。  次に、ちょっと財政運営の問題についてお尋ねをしたいと思います。時間の関係がありますのではしょって申し上げますが、きょうからいよいよ六十一年度決算の総括審査に入ることになりました。  昭和六十一年度決算説明を見ますと、当初の経済見通しに対比して実績の数字が掲げられて、例えばGNP名目五・一%、実質四%成長の見通しに対し、名目四・二%、実質二・六%であったこと等を記しております。内需を中心に景気の緩やかな回復が見られたことを述べておるわけですが、経済白書を見ましても、改善が見え始めた経常収支黒字、改善の動きが見られる企業収益、一層安定化した物価動向、着実な増加続く家計支出といった項目が並んで、円高不況の心配は杞憂だったのかとさえ思わされるわけであります。発表されている統計数字を見る限りそういう評価ももっともだと思いますが、私ども政治にかかわる者として国民に接している目から見ますと、必ずしもこのことは肯定できないというふうに思います。  景気調整という観点から見れば昭和六十一年度の経済は、円高不況も無事克服できましたし、昭和四十六年の円切り上げの際に不況を恐れてインフレに突入するという事態も避けることができた。そういう点で大蔵大臣に敬意を表するのにやぶさかではありません。しかし、この間に日本経済のゆがみが非常に大きくなったのも否めない事実であります。その第一は東京一極集中とそれに伴う地価の上昇です。経済白書にもわざわざ一章を設けて東京集中を論じております。六十一年度だけで東京集中が進んだわけではありませんが、円高不況を避けるための財政支出、金融緩和によって生じたエネルギーが東京集中ということになり、地価上昇につながったと言えると思います。  宮澤大蔵大臣は、この年度の途中から蔵相として腕を振るわれたわけでありますが、こうした日本経済のゆがみの発生あるいは六十一年度の経済の実績などについてどのように認識をされているのか、あるいは評価をされているのか、その点をまずお伺いいたしたいと思います。
  26. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま菅野委員から、六十一年度という年は、過ぎ去った後分析してみるとそう悪い年でなかったということをいろいろ研究所あるいは白書等は言っているけれども、政治の現場にあられる菅野委員などのお立場からいえばそんな生易しいことではなかったのではないか、いわば臨場感といいますか実態の感覚はそういうものではなかったという仰せがありまして、私は、その二つのことはいわば多少違った面からのことではございますけれども、菅野委員のおっしゃることに同感する点が多うございます。  すなわち、六十一年といいますと、いわゆるプラザ合意で円が上昇を始めましたのはその前の年、六十年の九月二十三日でございましたが、二百四十二円でありました円が六十一年の半ばになりますと百五十円まで上昇いたしまして、日本経済がこの余りに急で余りに大きな円の上昇に対応できずに、しかもどこまで行けば終わるのかという見当がつかないものでございますから、非常な困難に陥った。殊に、いわゆる企業城下町というようなところを中心に雇用問題に発展をしつつあった、それがお互いが生に経験いたしました六十一年でございますから、過ぎ去って後で回顧して、マクロで言えば比較的穏やかな年であったという感じとは違うとおっしゃいますのは私はごもっともに存じます。  したがいまして、そのような状況になりましたので、政府といたしまして、夏過ぎまして、九月でございましたか、思い切った公共投資を追加いたしまして総合経済対策をいたしたわけでございますが、正直を申して六十一年内におけるその効果は必ずしも十分であったとは申しがたい、一般にはそうは受け取られなかった、なお不足であるというふうに受け取られたのではないかと思います。結果といたしまして実質成長率はおっしゃいますように二・六になったわけでございますけれども、言ってみればその中で内需の寄与度が四・一ございましたから、幾らか数量ベースでの輸出減少、これはいわゆる円高の結果になるわけでございますが、そういうことが始まった、これだけがとってみれば当時の、六十一年における実感ではないかと思うのでございます。  したがいまして、そのような財政の努力は、これはもう国民経済全体が、企業が努力された、国民が苦労されたということが今日に至った基本でございますけれども、財政も一生懸命努力をいたしまして、翌年になりましていわゆる大型の早期の補正、緊急経済対策をいたしましたのは、これは六十二年の五月ごろのことでございますが、そういうことで景気が戻ってまいり、また円高というものについての国民経済の調整が非常な国民の努力の結果、今日まあまあ行われてまいった、こういうふうに回顧すべきかと思います。  そこで問題なのは、確かに御指摘になりましたそういう間に東京一極集中、それから地価の上昇というようなことが起こっただろうと、これは確かに起こったわけでございますから、そのことは否定するわけにまいらない。そこが何から起こったかということでございますが、一つはそういうことで財政が出動した。それからもう一つは、やはり円がどんどん上昇いたしますから介入をいたします。かなり大きな介入をいたしました。そういうこともございましたし、それから対米関係で、あるいは円が余りに急激な上昇をしないようにということから金利をなるべく低く置かざるを得なかった、今日でも低うございますが、といったようなことから、いわば過剰流動性が生じた。私はそのとおりだと思うのでございます。その過剰流動性が地価の上昇に関係があったろうと、私もあったと思います。  それから一極集中のことは、これは多少違う要因の方が大きかったかなと思いますのは、この間に東京の世界における位置、殊に金融市場を中心にした位置が非常に上昇をいたしました。金融ばかりじゃございませんが、世界経済におけると申し上げるべきでございましょう。それで、大変に海外からオフィススペースの需要が起こりまして、したがって仮需要がすぐに追随したということから東京の一極集中が強まり、また地価の上昇にも及んだ。そして他方で、これは私は間違っておらないと思うのでございますけれども、日本経済を開放しようということから、いわゆるデレギュレーションと申しますか、規制緩和をできるだけやってまいりますと、これはいっときは今のような状況に勢いをつけやすいということもあったように思います。これは何年かたってもう一遍振り返ってみませんと客観的には、正確には申し上げかねることでございますけれども、そのような御説に対して、私は十分におっしゃることに理がある、私も片方で、まずまずこの経済状況、おかげさまで回復いたしましたけれども、それはそれなりにいろいろな摩擦を伴ったということを感じております。
  27. 菅野久光

    ○菅野久光君 官房長官、何か時間のようですので、ちょっと端的にお伺いをいたしますが、東京一極集中について、経済白書も指摘しているというふうに言いましたけれども、その内容を見ますと、一極集中の原因として、第一に情報の集中、第二に金融の国際化による集中、第三に教育機関の集中を挙げているわけです。建設省の建設白書、六十三年版にも第一と第二と同じ分析をしておりますし、国土庁の昭和六十二年度国土利用年次報告の分析は、このほかに企業の研究所の設置動向も分析しているわけであります。  ことしの七月十九日に基本方針について閣議決定のあった政府機関の地方移転、これは今のような政府の白書の分析と合っていないのではないか。地方移転は、情報とか金融、教育の三部門を行わなければだめだということをこの白書の中ではっきり言っているのではないか。ここが集中したので、東京一極集中ということが非常に加速度的に起きてきたというわけであります。特に跡地を、例えば公共的なものであってもこの三部門に関連あるところに譲るだとか、あるいは貸すということになれば集中を一層激化することになるのではないか。だから政府機関の地方移転は政策の目標と効果とが全くかみ合わない、そうした、いわば単なる思いつきにすぎないのではないかと思うのですが、この点を官房長官にお尋ねして、官房長官は何か日程がおありのようですから、退席をしていただいて結構でございます。
  28. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 世界の国際都市としての東京の大発展の中には、今先生も分析をされましたし、それぞれの機関でも言われておりますように、教育、情報、金融が集中しておるということは事実であろうと思います。  そこで、政府といたしましては、この一極集中をいかように解消するかということで腐心をいたしておるところでございまして、その一環として国の機関等の地方移転につきまして考え方を取りまとめ、実施に移しておるところでございます。御指摘のように、このことをもってすべて目標が達せられ、効果が期待をされるということになるとは考えませんが、しかしやはり、政府がみずからその範を示していくということが、ひいては民間部門の地方移転への先駆けをなすものでありまして、究極的にはそのことが東京一極集中の是正に資する、こう考えまして、政府としては国の機関等の地方移転につきまして、「先ず隗より始めよ」という精神でスタートをさせているところでございます。  いずれにいたしましても、都市産業機能等の地方分散、地域の活性化、交通、情報の通信体系の整備等、諸施策を総合的に実施いたしてまいりませんと、究極の目標達成に至らないわけでございますので、政府としてはそうしたすべての政策を総合的に立案し、かつ実行することとして今後は進めてまいりたいと思いますが、当面この機関の移転につきましても、これを定めた以上は一日も早く実行いたしていきたい、その効果を期待いたしておるところでございます。
  29. 菅野久光

    ○菅野久光君 官房長官結構ですが、私は一月の代表質問でも申し上げましたけれども、このことが竜頭蛇尾に終わらないように。いまだなかなか遅々として進まないように聞いておるわけですけれども、そのことだけ申し上げておきたいと思います。  次に、財政運営の問題に入りたいと思いますが、この六十一年度決算で二兆八千億円余の一般会計剰余金の発生、これがまず注目をされます。繰り越し等の財源を除いても二兆三千億円余の剰余金が発生しております。そのほかにも特別公債の発行も二千四百億円余減じておりますので、実質の一般会計歳入見積もりにおいては二兆五千億円を超える見込み違いをしたということになります。  経済見通し自体は余り違っていないわけです。むしろ下回っているにもかかわらず、どうしてこのような見間違いをしたのか。一部に売上税の導入のため故意に租税収入を低く見積もった、特に補正予算で減額したのはそのためだというような批判もあるわけですが、この真相は一体どうなのか。それから、経済の実勢が経済見通しより上回ったために多額の自然増収が出たということは過去においても例がありますが、今回のように経済見通しに誤りがないのに税収の見込みの誤りというのは例がないわけです。六十二年度もそれをさらに上回って三兆七千億円の税収増となっております。六十二年度の経済が当初見込みよりよいという一面はあると思いますが、それにしても三兆七千億円の年度内自然増収は、まさに異常というほかはありません。六十二年度の税収見通しの誤りの原因は一体何なんだろうか。また、六十三年度の租税収入ほどの程度の自然増収を見込まれているのか、その点についてお伺いをいたします。時間が余りありませんので、ひとつ簡単にお願いいたします。
  30. 尾崎護

    政府委員(尾崎護君) 六十一年度、六十二年度歳入見積もりにつきまして的確な見通しができなかったこと、まことに申しわけないと存じておりますが、六十一年度についてまず申し上げますと、六十一年度の税収は六十一年の十月三十一日に補正をいたしておりまして、補正予算国会に提出いたしておるわけでございます。その当時、先ほどの大臣のお話にもございましたように、急遠な円高等をバックにいたしまして、製造業を中心に非常に停滞感が強い経済情勢でございました。それから、まだその段階では実は六十一年八月末までの税収しかわかっておりませんでした。見通しに対しまして二六・一%という税収の進捗、そういう実績をもとに見積もりを行ったわけでございます。その際、当初予算の四十兆五千六百億円の見積もりから一兆一千二百億円減額をいたしまして、補正後を三十九兆四千四百億円といたしました。ところが、税収の実績は年度の後半に入りまして上昇に転じまして、六十二年三月以降の四半期におきましては、近来にない高い伸び率となりました。  その結果といたしまして、補正予算額に対しまして二兆四千三百六十八億円という増収になりました。決算は四十一兆八千七百六十八億円という税収になったわけでございます。その中でも特に法人税が一つの主因でございまして、補正予算編成時に、全体的な景況の低迷感から非常に各方面の見通しとも悲観的なものであったわけでございますけれども、実際の決算におきましては、一般事業法人では、金融収支でありますとか有価証券の売買損益等から成ります営業外利益が大幅に伸びました。それから金融取引が大変活発化してまいりまして、銀行等の金融機関が大幅な増益を示しました。それから円高、原油安、この二つの要因で電力業でありますとか卸、小売業に大幅なメリットがもたらされたということがございまして、予測を上回るような増益となったわけでございます。他の税目につきましても、有価証券市場の活発化でございますとか、大都市を中心とした土地価の上昇、高騰、そういう土地取引の活発化等が有価証券取引税や申告所得税、相続税等に影響をあらわしまして、先ほど申しましたような増収を生んだわけでございます。  六十二年度についてもお尋ねがございました。六十二年度一般会計税収の決算額は四十六兆七千九百七十九億円ということでございまして、補正後予算に対しまして三兆七千百九億円という増収となりました。  二年続いてのこのような大きな増差を生じましたその要因でございますが、主たる要因は法人税はおきまして二兆八百八十八億円の増収があったこと、それから源泉所得税で五千百四十六億円、申告所得税で七千三百四十五億円という増収がございました。この所得税と法人税で全体の増要因の九割が占められるわけでございます。このようなことになりましたのは、やはり円高メリットがコストの面や需要面にあらわれてきた。それから、基本的には景気の急速な上昇がございまして、企業の営業収益が大幅に増加したというようなことがございます。それから、いわゆる財テクというようなことで営業外収益が非常によかった。それから金融機関等におきましても利ざやが改善される。また有価証券売却益の増加によりまして、特に都市銀行が大幅増益となったというようなことがございます。  以上が法人税についての要因でございますが、所得税のよかった要因といたしましては、やはり活発な土地取引、そのために譲渡所得、土地申告所得税でございますが、それが見込みを大きく上回る結果となったというのが最大の原因であろうかと思います。  この六十二年度の税収弾性値ということを申しますが、これはGNPの伸び率に対しまして税収がどのぐらい伸びるか、その比率でございますが、三・三三というように異常に高い数字でございました。経験的には大体一・一とか一・二とかその程度でございますが、このように異常な数値となっておりますことは、やはり税収増の相当部分が経済の実体的な生産活動と関係のない株式とか土地等の資産取引、あるいは円高差益というものにゆえんしているのではないかと考えます。したがいまして、先ほど先生からお尋ねございましたように、経済の動きと税収の動きがちょっと違うようなことになっているのではないかというように考えております。  六十三年度は……
  31. 菅野久光

    ○菅野久光君 六十三年度はいい。時間がございませんから、できるだけ簡潔に要領よく答えてください。  税収の年度内の自然増収の税目を見ますと、今お答えがありましたけれども、主たるものは法人税の税収増です。これが六十一年度も六十二年度も最も大きいわけです。増収率を見ましても有価証券取引税とか関税に次いで三位です。しかし、額は一番大きいわけです。法人税の税収見込みが狂いますと全体としての税収見込みが大きく外れることになるわけです。六十一年度の法人税の税収見積もりが最後の段階で大きく伸びたのは、企業の財テクの利益を最後の段階で決算に計上したためだというふうに言われております。税のプロもこれは予想できなかったというのが真実だと思います。六十一年度の場合は税収増でありますから、例えば減税等他の政策に使えるので事後処理は比較的容易であります。しかし、こうした見積もりの誤りは逆の方向にも起こり得るわけです。そうした場合の事後処理はこれは政治的にも実務的にも大変困難だと思います。そうした意味で税収見積もりが狂う要因はできるだけ排除しておくことが望ましいと思います。  ここで指摘したいのは、昭和五十三年度に行った税の年度区分の変更措置です。これによって約二兆円の税の前倒しを行ったわけでありますが、法人税の場合大多数が三月決算、五月末株主総会ということで、五月末に年間法人税の相当額が納付されるわけです。今編成中の六十四年度予算を例にとれば、これは昭和六十五年五月の株主総会に出される企業収益の利益金からの納税を見込む収入予算になるわけですね。世の中、来年のことを言えば鬼に笑われるといいますが二年後の法人決算まで予測しろというのはそもそも制度的に大変困難ではないか。特に経済がこういうような状況でありますから、大変難しいと思うのです。このように自然増収、税収が回復している現在、年度区分というものをやはり正常な形に戻すということが税収の見積もりを誤らせない一番大事な要因ではないかと思うのですけれども、これは大臣いかがでしょうか。
  32. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それも理のある御指摘だと思います。一面では確かに理のある御指摘でございますけれども、実は現実のことを申しますと、この間の五月でございます、六十二年度の最後の歳入の五月には法人税がたしか六兆円近いものが入っておると思います。これは法人税の年間の全収入の三分の一を超える額でございます。それでございますから、この年度区割りを変えるということになりますとそのぐらいの大きな金額が実は動いていくことになります。  理屈を申せば、租税は債権発生主義でございますから、債権は既に三月末に発生しておりますので、それをその年度歳入に取り込むことは筋は十分あることでございますけれども、ずっと先を見て予測するのは難しかろうとおっしゃいますことはそのとおりでございまして、それは歳入見積もりをなかなか難しくする一つの理由だと思います。さりとてこれを戻せるかといいますと、今のような大きな金額が関係しているということもひとつ御理解をお願いいたしたいと存じます。
  33. 菅野久光

    ○菅野久光君 六十一年度から毎年こんなに見通しが狂うということは、先ほどから言いましたように、法人税の前倒しが大きくかかわっているということだけは、これは否めない事実じゃないかと思いますので、その辺は十分検討して、こんなに見通しが狂わないようなそういう財政運営というものをしっかりやってもらいたい。少なく入るよりは多く入った方がいいとはいうものの、これはやはり正常な形ではないわけですから、できるだけ正常な形に戻すべきだという私の主張を申し上げておきたいと思います。  次に、文部省でありますけれども、高石前事務次官の問題。リクルートコスモスの未公開株一万株を譲り受けたということで何か調査をされたら、私は関知をしないことだというようなことを言って、妻が独断でやったことだ、そういうようなことを言われておりますけれども、しかし、これだけ何千万ものお金を動かす、そのことについて主人が全然関知しないなどということがこの世の中に通るとまともに思っているとしたら、私は大変なことだなと思うのです。  何か今世の中で、三浦症候群とかなんとかという言葉が出ているんだそうです。ばれなきゃいい、うそでその場を繕う、他人のせいにする、開き直る、これが三浦症候群というのですね。それから永田町三原則というのがあって、ばれなければ知らぬふり、ばれたら秘書や家族のせいにする、逃げ道がなくなったら居直る、これが永田町の三原則だとかという言葉が出ているわけですけれども、これはまあ大変なことだというふうに思います。とりわけこの高石前文部事務次官、言えば教育行政のトップにあった人だけに、この人の在任中に行った行為については、これは教育関係者はもとより一般の父母もやっぱり許せない。そんな人が教育行政をやっていたのかという思いに駆られるのは私は当然だと思います。  きのうの夕刊を見ましたら、「高石氏設立の財団へ 次官在任中に寄付決定 帝京大が八億全額」、こういう見出しで記事が載っておりました。そして、この財団の設立準備が事務次官室で公然と進められた、また、認可に当たって異常な便宜を図った、さらに、この基本財産八億円を学校法人帝京大学が寄附を決めていたことなどが報じられておりますが、この財団に八億の寄附が帝京大学からあったということについては文部省として確認をされておるかどうか、今の段階でわかれば簡潔にお答えいただきたいと思います。
  34. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) この財団の基本財産六億円、運用財産二億円ということは、福岡県教育委員会の認可いたしました報告を受けておりますが、その資金、資産を出捐した者につきましては福岡県教育委員会は明らかにできないという現段階の回答でございます。
  35. 菅野久光

    ○菅野久光君 明らかにできないというのもこれもまたおかしな話ですね。監督官庁は文部省ですから、いずれにしろできるだけ早い機会に調査をする、明らかにするということについてはお約束できますか。
  36. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) 報道されたような事情等につきまして私どもも重大な関心を持っているわけでございまして、福岡県教育委員会を通じまして実情の把握に努めてまいりたいと思っております。
  37. 菅野久光

    ○菅野久光君 これだけの問題になっているわけですから、できるだけ早く明らかにしていただきたいと思います。  とりわけ、この高石氏の問題については、局長あるいは次官在任中に日本の教育にとって大変なことをやっているわけです。臨教審委員の問題やら教育課程審議会で新たな教育課程をつくるというような問題など、そういう中でリクルートの江副前会長を教育課程審議会や大学審議会の委員に任命するということに深くかかわっていたことだけは間違いがないと思いますし、みずから文教行政のトップにあって采配を振るって、言えば臨教審関連の六法案などについてもその作業の責任に当たってきたということだけは間違いがない。  今度の教育課程審議会なんかも道徳教育の強化ということをうたっているわけです。こんな江副さんだとかそれから高石さんのようなこういう人が加わった審議会で決められた道徳というのは一体どんな道徳だというふうにお思いですか。そういうものを現場で先生たちが子供たちに本当にまじめにやれるとお考えですか。
  38. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 前事務次官に対しますリクルート関連の問題あるいは財団の問題について御質問でございました。  政府委員からお答えをいたさせましたけれども、私からも改めて申し上げさせていただきたいと思いますが、前事務次官のリクルートコスモス未公開株の譲渡、これは御本人は奥様が本人名義でなされたことということでございますが、私は、これが本人であれ夫人であれ慎重さを欠いた行動でありましてまことに残念だ、このように考えております。特に今教育改革を進めております上に、誠心誠意これを進め、また与野党の委員の方々にも熱意を持って取り組んでいただいておるときでございますだけに、なおさら残念でもあり申しわけない、このように考えております。  なお、これにつきましては、高石前事務次官につきましてまだ全くつまびらかにいたしていない部分もございますので、先ほど政府委員からも申し上げましたように、財団その他につきましては県教委を通じましてさらに実情把握に努めてまいりたいと思っておりますし、また私どもといたしましては、それだからこそ今後の文教政策推進に際しまして、省内におきましても厳正な服務を徹底させるということと、私自身さらに誠心誠意文教行政に取り組んでいく決意を新たにいたさなければならぬ、このように考えておるところでございます。
  39. 菅野久光

    ○菅野久光君 誠心誠意やられることは職務から私は当然のことだと思いますが、こういうことにかかわった人が審議会の委員であって、それから実際に仕事を進める責任者であって、そういう人たちがつくった法律、それから教育課程、そういうものを有効だというふうになれば、汚れに汚れたものを現場でやれということにほかならないのじゃないでしょうか。もう一度一から出直す、だって現実的には教育はなされているわけですからね、もう一回一から出直したって現場は何も困らないのです。むしろこのようなものが出されることが現場では困るということになるのではないでしょうか。  非常にいろんな作業をされてきてせっかくつくり上げたものではあっても、文章がちゃんとなってまあそれらしくできているから、つくった人はどうあってもそれでいいのだという論理は私は通らないのじゃないかというふうに思うのです。本当に文部省がこのことを重大なこととして反省をして、そして日本の教育改革をしていく、もっと国民に信頼される、そういうことで教育改革を進めていくというのであれば、もう一度委員にはきれいな人を選任し直してやり直すべきではないか。こんなものを幾ら決められても、現場で、何だこれはリクルートの江副さんが審議会の委員だと。そしてきょうの毎日新聞にも出ていますが、社説で「「信用失墜行為の禁止規定」には当てはまるのではないか。」とか、それから、「高石氏は、教育政策に積極的に発言してきた。道徳教育を推進し、日の丸や君が代も積極的に主張してきた。こんどの学習指導要領の改訂にも、その考えが強く反映している。」、社説にもこういう形で載っているわけです。  だから、それはいろいろやられてきた立場からいえばそれをそうですと言えない部分があるのかもしれないが、しかし、そこまで文部省が踏み切るという強い決意があってこそ国民が文部省の教育行政というものに対して信頼を持っていくのではないかと思うのです。こういう人たちがかかわったもので現場でこれと違うことをやっても、あなたたちのやっていることは指導要領と違うよということが言えるのか。それから道徳の強化ということでいけば、どんな道徳を強化しようとしているのか。高石さんのような人をつくり出すような道徳教育、江副さんのような人をつくり出すような道徳教育をやれということにつながっていくんじゃないか。こんな汚れに汚れた学習指導要領あるいは臨教審関連の法案というものは撤回をすべきだ、もう一度一から出直しなさい、そういう決意をぜひ私は文部大臣に持ってもらいたい。いかがでしょう。
  40. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 今おっしゃいますことに対しまして、私は文部行政を担当させていただいておるという立場から申し上げますと、それぞれ江副氏も大学審議会あるいは教育課程審議会の委員に選任をされておった時期がございます。そのそれぞれの審議会にはそれぞれの関連法規がございまして、その手続にのっとって適正に選任されたものというふうに考えておりますが、ただ私にとって残念なのは、その結果、そういう審議会が存続をしておるにもかかわらず委員として辞任をされなければならない事態、これはやはりどのようなことであっても不幸なことである、また遺憾なことである、このように感じておるわけでございます。しかし、大学審議会には二十名程度の教育関係、学識経験者の方々の熱意ある御意見が反映をしております。また、課程審におきましては八十名近い方々の御熱意が込められておるわけでありまして、私は教育を担当する者といたしまして、微力ではあってもその職にあります間は自覚を持ってこれを推進していく。こういう点からいたしますと、そういう方々の教育推進に対し、あるいは教育改革推進に対する御熱意を胸に置いてこれを推進していくことが現在の使命である、このように考えておるところでございます。
  41. 菅野久光

    ○菅野久光君 大臣の立場として、はいそうですかと言うわけにはいかないとは思いますけれども、しかし国民の多くは、私がさっき言ったようにこんなに汚れ切った人たちが入った、それは全部が全部というわけじゃない、ごくわずかな人ですけれども、しかし特に行政のいわゆるトップ、事務次官ですよ、その立場にあった人がこういうことをやっていて、それで道徳教育の強化だなんて一体どうやって国民に説明できるんでしょうか。  時間がありませんからもうこれ以上は申し上げませんけれども、しかし極めて本当に遺憾なことですし、このことによって教育そのものに大きな問題を生じてきたということは言えると思いますので、これからの文教行政のあり方について大臣もしっかり頑張ってもらいたい。特に大事な問題ですのでそのことを申し上げておきたいと思います。  時間がありませんので、文部大臣結構です。  最後に、運輸大臣、大変お待たせをいたしました。  実は、事業団の雇用対策の問題についてお伺いしたかったわけでありますが、いよいよ清算事業団における職員の再就職の問題です。私は前にもこの決算委員会でこのことについて申し上げましたが、今もって再就職のための対策ということが本当に真剣になされているのかどうか疑わしい面が私には感じられてなりません。とりわけ差別、選別ということで、前にも申し上げましたが国労組合員を大変困難な環境に追い込んで自発的退職を待っているようにも思われる姿勢等々を考えるときに、将来の展望に危惧を持たざるを得ません。国鉄の分割・民営化に際して中曽根前総理は、一人の職員たりとも路頭に迷わせることはしない、このように明言をされました。この決意を前総理は六十一年十一月二十五日の本院の国鉄改革特別委員会でも再確認されておられます。JR発足時、あるいは発足後におけるJR及び清算事業団における組合員差別や選別の状況はもう疑う余地はありません。このような実態を運輸大臣は御承知ではないと思います。  運輸大臣に最後にお伺いいたしますが、まず、組合差別をやめさせて再就職対策になお一層真剣に取り組んでいただきたい。大臣としての決意をひとつお伺いいたしたいと思いますし、国の施策によって行われた分割・民営化である以上、雇用については当然国が全面的責任を負っているというふうに考えるわけです。六十五年三月末までにすべての清算事業団職員の再就職を達成することが目標となっております。大臣として最後の一人の再就職が決定するまで雇用対策を継続する決意はおありになるとは思いますが、その決意もあわせてお伺いをいたしたい、このように思います。
  42. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 国鉄を民営化せざるを得なくなった大きな荒廃が国鉄時代にあったことは否めないと思います。そこで、いろいろな立場の方々が考え方の上から激しく対立されたことも事実でございます。しかし、一たん民営化という形で形を変えて再発足した各JRにあって、そういうわだかまりを超えた労使関係というのでしょうか、そういうものが建設されていくべきだと私は思います。また、おっしゃいましたとおり清算事業団職員の再就職の問題はこれは国鉄改革の最重要課題の一つでもございまして、あくまでも国が最終的には責任を持ってこれを指導しながら、そういう方々の職場の保証というものをしていかなくちゃいけないと思っております。  そういう点で各分野から今までもいろいろ御協力をいただいてまいりましたし、その結果、六十三年十一月一日現在で再就職先未定の方々の数が四千二百九十二人ということになりました。これらの方々の雇用情勢は、場所が雇用情勢の厳しい北海道、九州に集中しているために難しい問題もございますけれども、きめ細かく職員個々の希望あるいはその方々の能力を踏まえまして、さらに教育訓練、個別求人開拓等を行いまして、できるだけ広い範囲で再就職を全部取りつけていくという努力をこれから渾身の力をもっていたすつもりでございます。
  43. 菅野久光

    ○菅野久光君 終わります。
  44. 諫山博

    ○諫山博君 今、天皇の病状悪化をめぐって異常な自粛現象が広がっています。これは既に一つの社会問題です。神田の古本まつりが中止になりました。運動会ではピストルを使うなとか、レースで勝っても万歳を叫ぶなとか、そういう状態が広がっています。京都の時代祭りが中止になったし、長崎のおくんちも取りやめになりました。唐津でおくんちをやったところが、これが珍しい出来事としてニュースだねになるというような状態です。こういう中で国民は楽しみを奪われています。そして、例えば露店商などはもう仕事が上がったりだ、天皇のXデーが来る前におれたちの方が先にXデーだ、こういう言葉が使われているくらいです。そして自粛不況という新しい日本語が誕生しました。このような状態を政府はどう考えているのか、放置していいと考えているのか、政府の見解を聞かせてください。
  45. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 陛下の病極めてあつい折から、国民各界各層におかれまして各種の行事の取りやめ等が行われておりますことにつきましては、報道その他を通じまして承知をいたしておるところでございます。このことは、国民の各位が陛下の御闘病されておられることに対して、みずから行事その他を自粛されるというお気時もそのものは大変たっといものだというふうに考えております。しかし御指摘にありましたように、そのことが国民の社会的、経済的に多大の影響を及ぼすということでありますれば、恐らく陛下のお心にも沿わないものだというふうに考えておりまして、私も九月二十七日であったと記憶いたしますが、記者会見を通じまして過度の自粛は好ましいものではない旨のことを申し上げたところでございます。  現時点におきましてはいろいろ御指摘もございますが、国民各位におかれてそれぞれ自主的な御判断のもとに対応しておるものと存じておりますので、政府がみずから行政的な手段をもって自粛につきましても、それを政府として特に過度の自粛については申し上げましたように、——先ほど九月二十七日と申し上げましたが二十九日の誤りでございますので訂正をいたしますが、そのことをもって国民自身も自主的に御判断をいただけるものだと思いますので、政府としてそれ以上のことをいたす考え方はございません。
  46. 諫山博

    ○諫山博君 今の答弁で二つのことを指摘します。  一つは、自粛の現状に対する認識が甘過ぎるということです。もう一つは、いわゆる自粛現象が国民の自然な気持ちによってつくり出されるという認識が間違いです。  菅原洋一とか伊東ゆかりなどの著名な音楽家を抱えている小澤音楽事務所というのがありますけれども、ここでは既に五、六十本がキャンセルになったと言っています。六千人の会員を擁する日本音楽家ユニオン、このユニオンはたまりかねて九月二十九日付で「天皇の病状悪化にともなう「歌舞音曲自粛」についての声明」を発表しました。これは抗議的な声明です。この中で、「芸術家は表現の場を奪われ、一般市民は芸能を享受する権利を妨げられている。」と述べています。まさにそのとおりです。そしてこのような行事の自粛は、「中央官庁の指示のもと自治体の担当者が陰に陽に迫っている事実があまねく見られる」、このように指摘しています。六千人の会員を擁する日本音楽家ユニオンは、芸術家が自粛するというようなことではなくて、中央官庁の指示のもとにこういう状態が起こっているんだと指摘している。これが国民の常識です。  そこで、この問題に関連して労働大臣に質問します。  雇用促進事業団職業能力開発指導部長が九月二十六日付で全国の職業訓練大学校長、各種職業訓練短期大学校長にあてて「事務連絡」と名づける文書を出しています。表書きは天皇陛下の御病状にかんがみ、訓大、短大での行事について当分次のようにせよということです。  第一に、記念式典等は中止または延期すること。落成式も中止または延期すべきだ。  第二、学園祭等については、極力中止するよう関係者の理解を求めること。ただし、地域の実情により、やむを得ず実施せざるを得ない場合は、華美にならないよう十分に配慮すること。  三、入所式及び修了式等の進め方については五つの項目が挙げられています。式次第においては、校長のあいさつ及び修了証書の授与のみを行うこと。紅白幕は用いないこと。祝辞は行わないこと。来賓の招待は行わないこと。式典終了後のパーティーは一切行わないこと。  これは労働大臣の掌握下にある行政機関が文書で通達した内容です。こうなりますと、自粛現象というのは官房長官が言われるように、国民の自然な気持ちから出てくるのではなくて、行政の具体的な指導に基づいてつくり出されているというふうにならざるを得ません。こういう状況は政府として進めるのがとんでもない間違いであると同時に、直ちに是正措置を講じなければならないと思いますけれども、労働大臣の見解をお聞きします。私はこの通達の撤回を求めます。
  47. 野崎和昭

    政府委員野崎和昭君) まず、私の方から事実関係について若干御説明申し上げたいと思いますが、この通達が出ました経緯でございますけれども、雇用促進事業団におきましては、十月に組織改正がございまして、全国の四十七都道府県に雇用促進センターというものが開所することはなったわけでございます。
  48. 諫山博

    ○諫山博君 経過は結構です。撤回するかどうかだけ答えてください。
  49. 中村太郎

    国務大臣(中村太郎君) 御指摘の文書は、雇用促進事業団がみずからの判断に基づいて出しました単なる事務連絡の文書であると承知をいたしております。  文書の内容につきましては、陛下の御病状を憂慮いたしまして御平癒を願う、こういう率直な気持ちがあらわれているものと受けとめておるわけでございます。各種の行事が過度に中止または延期になりまして、国民の社会経済生活に著しく影響を及ぼすことは好ましくないという点につきましては、関係者も十分承知の上で行事を行っておるわけでございます。この程度のことは私は雇用促進事業団の裁量に任せるべきことであると承知をいたしておりますので、これを撤回する意思はございません。
  50. 諫山博

    ○諫山博君 官房長官にお聞きします。  今の自粛がつくられたものであるということはこの通達を見ただけでも明らかです。この通達の内容は非常に具体的です。紅白幕は用いないこと。祝辞は行わないこと。来賓の招待は行わないこと。これは学校における行事の進め方ですけれども、政府としてはこういう方針をとっているんでしょうか。これは関与しないという政府の説明と違うように思いますけれども、どうですか。
  51. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 本件につきましては、ただいま労働大臣が御答弁されましたように、部内の事務連絡ということで通知をいたしたものだというふうに承知をいたしております。しかるがゆえに、政府として現在の自粛ムードを引き起こしている、またそういう作為があったというようなことでは決してないものだというふうに承知をいたしております。  現実問題といたしまして、国民のまたそれぞれ団体の皆さんが陛下の御平癒を願って、まことに自然の気持ちの発露としていろいろな行事を行うか行わないかについて考慮することは至極当然のことだというふうに考えておるわけでございまして、そうしたときに一体どうしたらよろしいかなというお考えを持つこともこれまた事実でございまして、そういった意味での問い合わせとか考え方とかということをお聞きになるということもないとは申し上げません。しかし、それについては冒頭私が御答弁申し上げたような趣旨として、政府としてそのことに権限としてそれを行使するというものでなくして、それぞれ自主的に判断をしていただくものとして対処いたしておるわけでございまして、本件につきましては先ほど労働大臣の御答弁のとおりと私も解釈いたしております。
  52. 諫山博

    ○諫山博君 重大なのは、こういう自粛現象が国民主権を否定し、天皇元首化を目指す動きと一体をなして進められていることです。そうなると、つくられた自粛現象というのは国民生活に影響を及ぼすだけではなくて、国民主権という憲法の大原則を掘り崩す運動の一環ということになります。労働省の例でわかりますように、自粛現象というのは明らかに政府の主導で行われております。音楽家ユニオンが指摘しているとおりです。ところが、官房長官はこの現実に目をつぶって、国民の自然の気持ちのあらわれだというような言い方をしておりますけれども、これは明らかにごまかしです。私は、国民生活を守る立場からも、憲法の主権在民の原則を崩さないためにも、この問題に対して政府が積極的な是正策を講じるように要求いたしますが、もう一度官房長官の答弁を求めます。
  53. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 再三御答弁申し上げておりますように、政府として、あるいは公権力を行使して、その自粛の問題につきましてこれを取りやめさせるというようなことはなすべきものではないと考えております。
  54. 諫山博

    ○諫山博君 終わります。
  55. 及川一夫

    及川一夫君 六十一年度決算審議するに当たりまして、私はやはりリクルート問題というものを避けて通ることはできないと思っています。ただ、今回は税制改革にかかわる問題が論議をされ、それとの関係でリクルート問題が重要課題というふうになっておりますから、与野党間の話し合いで扱いが決められています。それには従うのですが、気持ちの問題を含めまして、本来この種の問題は決算委員会で論議をされるのが筋だというふうに思います。現実に、ロッキード問題は決算委員会の集中審議から始まった問題であることをお互い想起しなければならないと思っています。したがいまして、具体的な内容に入る前に一、二認識の統一をさせていただきたいと思うのであります。  その第一点は、リクルート問題の持つ本質の問題について、いわゆる未公開株の譲渡があった。株の譲渡は経済行為であるということで、いかにも株、株ということで何となく重さが軽い感じに受けとめられるんですが、私は今回の株の配当は現金を配ったものと同じだと理解したいのであります。したがって、多くの閣僚経験者があるいは政治家が与野党含めて、要するに政治家が現金をいただいたという疑いをかけられている、そう認識をすべきだと思うのであります。そう認識をしませんと、答弁にしても、あるいは我々が問題を提起するにしても、単なる経済行為という立場だけで追及したのでは物の本質に迫ることができないと思うのであります。  このような認識について、一つは官房長官に、一つは大蔵大臣ということではなしに、総理がおられませんから副総理という立場でこの株の譲渡問題、現実に今問題になっていることに対する本質的な受けとめ方について私は先ほど申し上げた立場に立ちますが、認識が一致いたしますかどうか、その点を問いたいと思います。
  56. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 認識を問われましたが、そのことは譲渡された側のお考えが十分承知をされませんので、私としては何ともお答えのしようがないかと思います。  ただ、先生自身がそのような御認識を持っておられるということにつきましてはただいま承知をいたしました。また、それぞれマスコミその他も含めましていろいろな認識のあることもこれまた承知をいたしておりますが、私の立場で現在譲渡された方々のお考えが那辺にあるかを承知をいたしておりませんので、私の認識を申し上げることはできかねますので、御容赦をいただきたいと存じます。
  57. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのこと自身は経済行為であるということでございましょうが、総理大臣がしばしば御答弁なさっているところを承っておりますと、今度のこのような問題になりました本件というものは、一つはやはり証券取引法上の問題点を持っておる。一つは税法上のキャピタルゲイン等の問題を持っている。しかしまた次に、刑法上の問題というものもあるかないか、しかしそれは一つの側面であると思います。そして最後に、やはり政治にかかわりある者にとっては政治倫理上の問題である、そういうふうに総理大臣はお答えしておられまして、それが総理の持っておられますこの点についての見方であろうというふうに私も考えております。
  58. 及川一夫

    及川一夫君 お答えは私と認識がどうしても違う。要するに株という前提に立っておられるだけだ。この問題は株ではない。もちろん株を買ったり売ったりする一般的な行為については、今大蔵大臣から御回答された内容のものもまたそういったことが一般的でしょう。しかし、その中でも政治家が問われる、また問われなければならないという面を考えますと、同じ経済行為だと言われる中で、なぜそれほど政治家が責任を問われるのかということになれば、どうなんでしょう、株以上に株自体が現金だという認識、社会的な常識、社会的な倫理が働くからこそこれほど私は大きな問題になっているんだろうと思う。とするならば、我々自体が現金がばらまかれたという前提に立ってこの問題をどう解明し、どう処理をしていくかということを考えるべきだというふうに率直に思います。ですからそういう前提に立ってきちっと認識を一致させたいのですが、時間が私の気持ちの上では二十分でこの問題を終わろうとするものですから、なかなか詰めることはできません。  次の問題として、しからば、今私が申し上げましたような認識に立って今何が問われているかということを考えますと、一つにはなぜ江副さんという方がこれほど多くの株をばらまいたのだろうか。時と場合によれば法に違反をしないか、あるいは倫理に違反をしないかというような内容を持つものをとにかく多角的にばらまいている。郵政大臣もお聞き及びだと思うけれども、ある新聞には、何ですかあれ、NTTに十二万株というのは、二つの新聞社が書いていますね、おかげでいろいろな人が疑いをかけられている。はっきりしてもらいたいという気持ちがするほど江副さんは株をばらまいておられる、なぜなんだということがどうしても解明できないでいる、これが一つ。  それから二つ目には、政治家を初めとした我々に対して倫理上の問題として責任が問われているということを含めて、いずれにしてもわいろ性のあるものが文部省や労働省やNTTにばらまかれている、これを明確にしろということも私は問われている問題ではないか。  そうして三つ目には、NTTということに一応限定されますけれども、いわば特別の便宜供与というものがなされて、具体的にはリセール業の問題であり、具体的にはコンピューターの時間貸しの問題である。一体これはどうなっているんだ。このような少なくとも三つの問題に対してはどうしても解明をしなければならない問題だという認識を持ちますが、これまた官房長官いかがですか。あるいは副総理としての大蔵大臣にお伺いしたいのですが、このことを解明しなければ政治的な信頼というものはかち取れない、こういう認識に立つんですが、いかがですか。
  59. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 先ほど大蔵大臣からも御答弁申されましたように、いわゆるリクルート問題につきましてはかねがね総理も四つの問題点に整理をし、そしてそれぞれの問題として対処しなければならないということを本院それぞれの委員会でも申し述べておるところでございます。したがいまして、この四つの証券取引法に関連する問題、税法上の問題、これは国会で御議論いただく問題かと思います。また刑事上の問題につきましては、現在検察におきまして取り調べが行われている問題でもございますし、政治的、道義的な問題につきましてはこれまた総理がしばしば申し上げておりますように、一人一人政治家が政治倫理の綱領をいつも反復しているような気持ちで拳々服膺しつつ身を引き締めていく必要がある、こういうことをたび重ねて申し上げておることでございますので、私どもも同様の気持ちで対処していかなければならない、このように考えております。
  60. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほど申し上げましたこと、並びに今官房長官が言われましたことに尽きておると存じますけれども、総理御自身が、やはり政治家というものは一番情報の早く集まりやすい立場にあるということは事実であるので、経済行為であろうとなかろうと、政治倫理綱領という立場から厳粛に受けとめるべきものだというふうに考えておられると承知いたしております。
  61. 及川一夫

    及川一夫君 総理がこう述べておるというお話ばかりなんですが、お互い政治家は個人としても責任を持たなければいかぬし、個人的な哲学を持って、少なくとも政治に処する者はそうあらねばならないと私は思っています。そういった点で総理の立場を述べられただけの答弁になっていることについて極めて残念ですが、いずれにしても参議院では、私は以上のような立場で問題の解明を図っていかなければならないということを強く表明しておきたいと思います。  その上で、特にNTT関係で問題になっていることについて郵政大臣にお伺いしたいのですが、とりわけコンピューターの時間貸しの問題であります。  一体NTT自体が、それから監督官庁にある郵政省が、例えば電電の株というものを見ただけで、一時は三百十七万円まで上がっていってどんどん落ち込んできた。別にNTTの業績が悪くなったわけじゃない。なのに、どんどん下がっていく。全部文句はNTTに行くようになっているんです。そして去年の売り株二百五十万、これが今百八十三万円ぐらいじゃないですか、けさも百八十一万円になっているわけです。きのうは百七十万円ですよ。ところが、こういう問題がなぜ出てくるかというのは、本来二百万とか二百五十万いっているときには、大蔵省は関係があるかもしらぬけれども、NTTなんか関係ない、こう思うほどの値段なんですよ、私らから言えば。ところが、不正とかモラルに関するような問題が企業にかかってまいりますと、それ自体が株値にも影響しないという保証は私はないと思います。これはえらい迷惑です。だから早急にNTTに課せられている疑惑については徹底解明を図られねばならないと思うのです。  そういう上に立って私は郵政大臣にお聞きしたいのは、なぜリクルート社がNTTを介してコンピューターを買わなければいけないのか、ここが大きな問題なんです、リクルート社はコンピューターはゼロではありませんから。六十年の九月に大コンピューター業をやる、こういう大前提で発表されているように、その前から四台、五台、先行きは十六台までコンピューターを買おうという発表さえしているわけです。それがなぜNTTというものを通して二台のコンピューターを買わなければいけないのか。これを明確に見解を述べてほしいと思います。
  62. 塩谷稔

    政府委員(塩谷稔君) お尋ねの問題でございますが、前段でコンピューター調達に当たっての関係につきまして申し述べさせていただきたいと思います。  及川先生おっしゃいますように、これは私推測でございますけれども、NTTがこういう情報産業の分野で先導的といいますか、豊かな経験を積みまして、新たなこういう仕事を始めるときに大変頼りになる存在ではなかったのか。いろいろコンピューターをつけましてそれに通信回線をつけて、そして情報処理をするということになりますとハード、ソフト、いろいろな面にわたってNTTに蓄積がある。それをユーザーであるリクルート社から見た場合、そういった蓄積を借りてやった方がよろしいだろうということで、自分のところで直接コンピューターをあれするよりも、NTTが買って、そしてそれについてこれはリクルート社との関係では建設・設計受託契約ということになっておりますけれども、コンピューターのハードにいろいろな設備といいますか、工事を施して渡している。そして受けた方はそれに基づいてサービスができる、こういうことになるわけでございまして、そういった事情があるんではないかというふうに推測いたしておるところでございます。
  63. 及川一夫

    及川一夫君 局長さんのコンピューターの認識と私の認識が合うかどうか知りませんけれども、そんなものじゃないですよ、これは。時間がありませんから言いませんけれども、それならば少なくとも十一月六日、これは新聞に出ているんですが、「NTTからリクルートへの転売「極めて異例」」。なぜこれは異例なんですか。どう理解しますか。
  64. 塩谷稔

    政府委員(塩谷稔君) 私その新聞の意味合いというのはちょっと存じ上げないのでございますけれども、ユーザーとして、これは非常に高性能のコンピューターを使ってそれを時間貸しするような仕事をやるという場合には、そういうものについて、NTTは私どもに報告があるところによりますと、既にスーパーコンピューターについて自分のところの研究所用に調達して使っておられるようでございますけれども、そういった経験もあるわけでございますので、そういったところが買ったものをまた一連の工事を施した上で買うということは、一つの道理として考えられることではないかと思う次第でございます。
  65. 及川一夫

    及川一夫君 これもみんな表面的にしかお考えになっていないからです。したがって、これは改めて私は皆さんと論議をしなければいけないというふうに思っています。  確かに、商社がアメリカから買って、日本のコンピューターを利用する方に設備をするというようなことは一般的な事柄だし、またNTTだってそういったことが全くないわけではない。なぜこういう異例という言葉が出るのかということについて、私が私なりの情報とかそういったものを考えますと、これはNTTには関係ないことだけれども、リクルート社自体がもう既に、NTTがコンピューターを買うということを申し入れる以前に、ある程度の話が進んで直接クレイ社とリクルート社の取引が成立しかかっているものを、それをほうり投げてNTTに申し込んでNTTから持っていった、こういう形に見えたら、これはクレイ社から見て異例に見えませんか。私はどうもそういう意味合いが含まれているというふうに考える。  同時にまた、昭和五十九年の一月から、新聞記事に載っている総理の動静あるいはリクルート社の営業計画の発表、リクルートとNTTのいろんな会談、文書の交換、そして時間貸しの営業開始、それの強化、発展、こういうものがわずか一年ぐらいの間に集中的に実は行われているんです。しかも我が国は、政府の立場はいわば日米経済摩擦の問題、通信機器の自由化の問題、こういった問題がありましたし、中山郵政大臣じゃないのですが、左藤恵郵政大臣がじかに、政府調達物品でぜひNTTが倍増せい、もっと金額を高めろ、物を買えと、こういう行動のあったことが全部書いてあるわけです、表だけ見ただけで。それをずっと調べますと、極めて異例の行為があったのではないかというふうに見られる面があるし、私自身もそういうことをある程度つかんでいるつもりなんです。ですからこのことは、商行為ではあるでしょうが、株の譲渡がNTTにも行ったというところから逆回転していきますと、いろんな疑惑が正直言って出てくるわけであります。  したがいまして、郵政大臣、この種問題の解明についてぜひ郵政省としてもしっかり対応してもらうということを態度として私は示していただきたいと思うのですが、いかがですか。
  66. 中山正暉

    国務大臣(中山正暉君) 大変御心配をおかけいたしておりますことを心から敬意と、そしてまた傾聴をいたしたい、かように考えております。  経済は心理学、こういう表現がございますが、二十九万五千人のNTTが六十年の四月に民営化されまして、今千五百六十万株のうちで五百四十万株を売りまして千二十万株という大きな株を政府が保有しておる。国民の長い間の財産と申しますか、今百人に五十七台の電話の普及率、アメリカが百人に七十一台と言われております。公衆電話が千人に八台と言われるような大変なインフラストラクチャーと申しますか、そういう基礎的な公共投資をしてまいったこのNTTが若い人たちの就職戦線にも大変な願望を持たせる企業として評判のいい会社であったわけでございますが、これが民営化されて、今第一種電気通信事業はKDDとNTTを抜きますと三十九社、両方入れますと四十一社になっております。それから第二種電気通信事業が六百二社。これは私が就任しましたときは百八十七社、一年前から比べますと大変なふえ方でございますし、特別第二種と言われるものが二十二社。自由化されたから競争をしなければいけないと同時に、新しい新規参入の企業を育てなければいけないというNTTの役員の皆様方の民営化されたいろいろな心理的な面が私は働いたのではないか。  おとといの朝のBBCのニュースを聞いておりますと、日本は税制改革を早くやらなければいけない、それは貿易摩擦というものがどんどん進んできて、コンピューターの購入に対してもそうでございますが、日米関係を何とか維持するためにはコンピューターでも買わなきゃいけないのじゃないか、そういう日米関係を是正するための意識みたいなものがあったように思います。私はそれを考えた政治家の背景に心理的に不純なものは働いていないと信じております。そのために今税制の御審議を衆議院の方で願っているわけでございますが、何かを買うことによってその場限りの黒字対策といいますか、日米経済摩擦を対象に考えたいということが今になって誤解を生むようなもとになっておりますことを私も政治家の末席におります者として非常に残念に思っておるわけでございます。  先生の御指摘のありましたように、日本電信電話株式会社法の第十五条で私どもは業務に関する是正命令を出せるようになっておりますし、十八条では準公務員的に扱われておりまして、職務に関する行為で、もしそこに涜職罪に匹敵するようなものがあった場合には三年以下の懲役ということになっておりますから、それなりの私は自覚を持っていただいて、私ども郵政省としても国民の大切な財産をお預かりしている役所としての監督義務を全うしていきたい、及川先生にひとつ今後ともの御指導、御鞭撻をお願い申し上げたい、かように考えております。
  67. 及川一夫

    及川一夫君 終わります。
  68. 安永英雄

    委員長安永英雄君) 午後二時に再開することといたしまして、休憩いたします。    午後零時十七分休憩      ─────・─────    午後二時十六分開会
  69. 安永英雄

    委員長安永英雄君) ただいまから決算委員会を再会いたします。  休憩前に引き続き、昭和六十一年度決算外二件を議題とし、全般的質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  70. 及川一夫

    及川一夫君 午前中に引き続きまして、議題を改めて御質問申し上げます。  それは、過日、俳優の堤大二郎君が、交通事故が起こりましていろいろと社会的にも、映画を制作する中でもプロダクションさらにはテレビ会社、俳優の皆さんともさまざまな問題が起きているやにお聞きいたしております。  そこで、まず第一に警察庁にお伺いしたいのでありますが、私が認識をしている事故というのはロケーションの撮影中に起きた問題であるというふうに認識をいたします。その中でたまたま自動車を運転しながら演技をする、そういった問題であったようでありますが、自動車そのものについては、どうもお伺いするところ改造車、もっと俗っぽい言い方をすると、よく暴走族の人たちがマフラーを外してみたり、あるいは車高というものを普通の車以上に高くしてみたり、スピードアップのためにいろんな装置を改造した自動車の利用。  さらには、その自動車の定員はおおむね六名ということであったようでありますが、荷台に三名乗っかるというふうなこともございまして、定員より二名オーバーした形で演技を求められた。さらに、自動車そのものに映画撮影用の五百ワットのライトを運転手の前面に据えつけて走らすなど、非常に問題がある形で運転をさせたために、結果として死亡者を含む事故が起きてしまったということだと認識をいたしております。したがいまして、恐らく道交法違反、業務上過失致死という疑いを含めて捜査をされているとお聞きしているんでありますが、事故の概要と現状は一体どうなっているのか、お伺いをしたいと思います。
  71. 内田文夫

    政府委員(内田文夫君) お答えいたします。  御質問の事故は、本年の七月三十日に軽井沢において発生した事故であると思いますけれども、この事故は、テレビ朝日制作のドラマであります「軽井沢シンドローム」のロケ中に俳優の堤大二郎さんの運転する普通貨物自動車が道路の中央分離帯の立ち木に衝突して、これが横転しまして荷台に乗っていた三名が路上にほうり出されて、そのうちの一人が死亡いたし、あとの六人全員が重軽傷を負ったという事案であります。  事故発生以来、長野県の軽井沢警察署で現在捜査をしているわけでありますが、何分にも関係者が一番長い方で五十二日入院していたということで、その後そういう人たちの気持ちの落ちつきを待って、以後本格的な捜査といいましょうか、をしているということもありまして、一応皆さんにお話は聞いているわけでありますけれども、そこらの必ずしもお話の一致しない点をさらに詰めるとか、そういった補充捜査といいましょうか、そういうものを現在続けておるところでございます。  先生おっしゃいますように、このロケーションでこういう自動車を使う問題とか、あるいは定員超過の問題とかいろいろあるわけでございますが、一般論として申しますれば、道路におきましてその使用形態がいわゆる通常の道路の使用と異なった使い方といいましょうか、あるいは人がたくさん集まるような、例えばお祭りとかロケーションというような例を挙げているわけですが、そういうものは警察の許可を受けることになっております。  それと定員外乗車ということでございますが、定員外というよりもこの場合は三人の方を荷台に乗せたわけでございます。本来人が乗るべきではないところへ人が乗るという場合、それから先生の御指摘にございましたようにテレビカメラだとか照明器具などを車の横に取りつけたわけでございますが、これも本来荷物を積むところ以外の場所に置いた。こういうような問題、これも当然許可を受ける問題でございまして、そういうものを含めて現在捜査をしているというところでございます。
  72. 及川一夫

    及川一夫君 そうしますと、これはどなたが考えても意見が一致するだろうと思うのですが、映画を撮るためにはどららにしてもディレクター、監督が存在するわけで、どういう演技を求めるかは、これは監督の要求、同時にまた監督がその場面をどう描くかでいろんな注文が出てくるわけで、車の形とか、あるいはその機能とか、そういうものもすべて監督の方から求められるものだろうと私は思うのです。しかし、事故が起こってしまうと道交法違反、つまり運転をした者だけがすべて責任を負うような形のものになりがちです。  これは通常ですと、確かに高速道路で何人乗せていようが事故を起こせば運転者の責任であることは間違いないのですけれども、こういうロケというものを通じて、一方でプロデューサーとか、ディレクターとか、何かいろんな方が注文して演技をさせる。そのために車を運転して演技をしたということになりますと、案件として考えたときに果たして堤君という俳優一人だけの一体責任なのかどうかということについては、私はそうじゃないのじゃないか、常識的に見ればすべてを管理監督し、要求をしている人の責任は絶対に免れないのじゃないか、こんな感じで受けとめているんです。いまだ結論が出ないというのは、確かにけがをされて相当長い期間病院に入っておられた、あるいは下手をすると生命にかかわる一歩手前までいった病名の方もおられるようですから、それはそれなりに理解をするんです。  問題のポイントとして、堤さんだけが責任を負わねばならないという観点だけなのか、それとも、いや、それ以外の方々にもいろいろ聞いて、これはそれだけでは終わらないじゃないか、こういう観点で問題をとらえられているのかどうか。捜査上の問題とかいろいろあると思うのですけれども、いかがなものでしょうか。
  73. 内田文夫

    政府委員(内田文夫君) これは関係者が多いわけでございまして、そもそも制作のもとはテレビ朝日、それもまたプロデューサーもおるわけでございまして、さらに下請といいましょうか、実際にこれの撮影を進めていた会社のプロデューサーもまたございます。それから現場の監督というのもございます。いろいろそういった方々すべてについて、それがどういう形の関与をしているのかという問題も含めまして、その中において、これももちろん事件としては業務上過失致死罪ということになるわけでございますが、共同過失があったかどうかという点等につきまして、そういうことを念頭に置いて捜査を進めているところでございます。
  74. 及川一夫

    及川一夫君 いずれにいたしましても、法律を厳密に言えばすべてが違反の連続、違反車だけじゃなしにすべて使用許可も何もとっていないというようなこともお伺いしているのでして、これは今警察庁から申されたような立場を十分含めてひとつ早急に結論を出していただくようにお願いをしたいと思うのです。  そういう立場に立ちまして、今度は労働省ということになるんですが、労働省として、この事故者のうちどうも一名だけが労災の適用になっている。そういう立場で物を見ていくと、労働安全にかかわる法律もたった一人の方にだけ適用されてあとはもう全然適用されない、こういうような実態が実は出てきているわけです。したがって、労働省の方にはどんな報告があって、そして今日時点で考えて問題点は何かということについてもし持っておられましたらお話をいただきたいと思います。
  75. 若林之矩

    説明員(若林之矩君) ただいま御報告ありましたような報告を私どもも受けておるわけでございます。このうち、労災保険の適用の問題につきましては、この労災保険制度というものが本来雇用労働者の業務上の災害につきまして死傷者の補償責任をカバーしているというものでございます。したがいまして、雇用労働者であるかどうかということがポイントでございまして、雇用労働者に対しては保険給付を行う、しかし雇用労働者でない方については本来労災保険の保護の対象にならないということでございますが、今回の事故につきましては、七名の被災者の方のうち、先生今おっしゃいましたように、一名の方から労災保険の給付の請求が出ております。この方は雇用労働者でございますので、私ども所定の保険給付を行う予定でございます。他の六名の方につきましてはまだそういったような請求もなされていない段階でございます。それは一般的に申しまして、俳優の方あるいはフリーの方、こういう方はやはり労災保険の適用対象にならないという制度の現状でございます。  それから、安全管理の問題でございますけれども、この事故は、ただいまお話ございましたように、自家用の小型貨物自動車に俳優の方のほかに番組制作に当たる労働者が同乗しているわけでございまして、この労働者を雇用する事業主につきましては、その作業の場所の安全を確保するための措置を講ずべき立場にあるというふうに考えております。
  76. 及川一夫

    及川一夫君 確かに俳優の方々が労働者であるかないかという問題については、俳優の方自身にもそう定義をすべきだというのとすべきでないというのといろんな考え方があると言われますから、そういった点では、現行法律の中に適用できる労働者であるということを明快にばさっと適用するのは確かに問題がないとは言えないと思うのです。  しかし、労働安全衛生法というものを、労働者であるか使用者であるか、そういうものを横に置いて、つまり、安全のために何が必要かということで眺めていきますと、俳優さんだって演技をして銭をいただいて、それで生活している、一匹オオカミであろうが雇用されている労働者であろうが、とにかく命は一つじゃないか。こう考えますと、法律にないから知りませんということだけでいいのかどうかということです。  それと、実際の俳優さんたちがどんな形に置かれているのか。つまり、監督と俳優さんの関係、あるいはプロデューサーと俳優さんの関係、さらには、俳優さんがいろんな事務所をつくっておられるようですが、事務所といっても有名な人と有名でない方がおられる。その事務所と俳優さんの関係はどういうものかとか、我々が知らない問題がたくさん存在しておるわけです。しかし、いつどんなときに命を失う場面に遭うかというのは、これは常に存在をしているわけです。したがって私は、これは法律の一つの盲点みたいなもので、やっぱりこのまま放置しておくわけにはいかないのではないかという気持ちがするんです。しかも、今回の事件を考えますと、安全管理者があの場面に、現地におったら一体どういうことになったんだろうか。あのままで車を走らせただろうか、牽引車でやったらどうだろうかというようなことがさまざまな議論になったように実は思うわけです。  そういった点で、きょうは俳優の皆さんがつくられている日俳運、協同組合日本俳優連合の常務理事をやっておられる江見先生に実はおいでいただいて、参考人として参加をしていただいたわけです。したがって私は、そのほかの方々も非常に関心を持っておられる方がおられるものですから、かなり傍聴の方もおいでになりますので、江見先生にここでひとつ御発言をいただきたいと思うのであります。  お聞きしたい内容は、私も日俳運という組織があるということは正直言って知りませんでした。したがって、日俳運という組織の問題と、それから堤さんがその日俳運の組合員であるのかどうかというような問題、そして安全問題などにもいろいろお話があるようですが、今回の事件をとらえてどんな問題意識を持っておられるかということを中心に江見先生にお話しいただいたら幸いだと思います。
  77. 江見俊太郎

    参考人江見俊太郎君) 日本俳優連合、協同組合でございますが、そこの常務理事をいたしております江見俊太郎でございます。  貴重な決算委員会の場でこのような機会を与えてくださったことを大変私ども感謝いたしております。きょうの結果は全俳優が非常に期待を寄せているところでございます。  組織のことでございますが、現在私ども会員は約千六百五十名が個人として入っております。そのほかに劇団単位というような形で法人組合員として入っている者もおりまして、約千八百から千八百五十ぐらいです。どのくらいの組織率かと申しますと、俳優全体で見ますと、これは大変数限りなくございまして、この間文化庁が文化白書で発表されたところでは八千五百十四名となっておりますが、この中には、古典的な例えば能とか歌舞伎とか文楽の方々も入っておられます。私どもの俳優連合が組織対象としているのはマスコミ関係の出演者でございまして、そこの部分で見ますと約二千五、六百が対象になるわけです。そのうちの約千八百ですから、ほぼ七十数%は組織しているというふうにまず考えております。その中で堤大二郎君も会員の一人でございます。  それで、いろいろ申し上げたいわけですけれども、一般的にその国の文化状況というのはテレビを見ればわかるというぐらいに言われているようでありますが、実際には、私ども俳優というのはそういう表面とは逆にまた何か社会の谷間に置かれているんだというふうにみんなが思っております。そういう点で少し訴えさせていただきたいと思います。  どうも俳優の世界だけに限らず、芸能界一般に我が国では割合契約慣行というのが薄うございまして、なかなかきちっとした欧米のような契約書を取り交わして出演しているという状況がまだありません、おくれております。その上、出演行為、一般で言うと商取引ということになりますか、そういう場合に個人単位で出演しますのでどうしても非常に弱い立場にある。では何とかしなければいけないということで、私どもが俳優連合を団体交渉権のある事業協同組合化したのが四十二年の五月でございます。つまり、先ほどもございましたが、芸術家なのか労働者なのかという論議がいろいろある中で、やっぱりスターさんからエキストラに至るまですべて必要とされている人を対象としなければいけませんので、またそういう人がみんな参加しやすいようにということで団体交渉権のある事業協同組合を選んだわけでございます。  そして、二十年間にわたってNHKを初め民間放送局とも交渉を重ねまして、NHKとは一応の団体協約はでき上がっておりますが、民放さんの方はどういうわけかなかなか団体協約を結ぶということに応じていただけませんで、一方的に局の内規を押しつけられているというのが現状でございます。そこへもってきて、ドラマについては下請化が非常に進みまして、私ども、芸団協というのがございますが、六十一年にそこで調べた調査では、民放ドラマの七九・四%が局外制作でございます。自局制作というのはわずか七・四%。つい最近、今の状況でございますが、ATPという外部のテレビ番組製作社連盟というのがございます。そこが、十月に番組改編になりますが、十月以降のそれを調べましたところ、これは日経に出ましたけれども、プライムタイム、いわゆる午後七時から十一時の間、一番大事な時間ですが、そこで局外制作というのは、在京キー五局をとりますと八千四百分のうち五千二百九分が局外制作でございます。これはパーセンテージでは六二%になります。局制作というのはプライムタイムで三一%しかないということでございます。局外制作になるということはどうしても下請がかなり無理な条件を押しつけられているというのが現状でございます。  今度のキティ・フィルムの「軽井沢シンドローム」の場合はその典型的なことでございまして、かなり苦しい制作条件を押しつけられたようでございます。それでも結局無理な条件下で下請会社は過当競争をしているというのが現状でございます。そういうところから、結果、安全対策も怠るというようなことが出ております。  お話にもありましたように、堤君自身は四WDという車を使わなきゃならないということで、軽井沢へ行く前に晴海でかなり長い時間けいこをしたそうでございます。ところがその車は使わない。現地で暴走族まがいの青年からわずかな金で借りた大改造車をいきなり与えられた。それも、普通の撮影の場合は引っ張りと申しまして前にもう一台車が引っ張って、乗っている本人は運転しなくても、エンジンをかけなくても演技の方に集中しながらやっていけるという撮影方法をとられるのが常識なんですけれども、お話にありましたように、自分が運転して目つぶしのようなライトを食らいながら、カメラをぶつけないようにとか、演技に気を使いながら運転をするというようなことになっているわけで、ワンシーン・ワンカットで撮る。つまり時間がない、早く撮ろう、早く撮ろう、制作費がないからというようなことで、一言で言いますと時間とお金をかけないという状態が今の局外制作の実態だと思います。  そして事故が起きますと、直接ギャラをもらうところはその下請の会社になるわけでございますから、そこに交渉をしますと、おおよその場合は、とてもそんな予算はないよというようなことを言われるのが通常でございます。これは私自身も「水戸黄門」で落馬したときに経験がございますけれども、三日間入院しておりましたが、出していただけたのは要するに入院費だけでございます。あとは何にもないわけでございます。こうやって元気でいるからいいようなものですが、もしかたわになっていたらと思うと本当にぞっとするわけでございます。つまり、そういう堤君と同じようなことが起き得る状況が日常的にあるということです。ですから、俳優はいつでもそういう状況に置かれているんだということです。そして、では元請の局の方へ言いますと、局の方は、それは下請会社の責任だというような責任回避になるのがほぼ現状でございます。  これも私どもの五十九年の調査ですけれども、俳優のうち仕事中けがをした経験著というのが二九・八%、約三〇%です。これは大変な率だと思うのです。そして実際に治療費さえ、私は治療費を出してもらいましたけれども、治療費も出なかったというのが三五・三%もございます。それから、後々後遺症が残ったけれども、それは補償してもらえたかというと、補償してもらえなかったという人は五二・九%、約五三%、つまり半分以上でございます。しかも、堤君の場合はまた特殊な例でございまして、例えば私のように馬から落っこったというけがだけではなくて、自分が運転をさせられていて、たまたま事故につながって今度は刑事上の責任を負わなければならないというような状況に置かれているわけで、もしあの場合、ライトをそんな前からやったらとてもまぶしいから運転できないよ、あれはつけかえてくれとか、カメラは横に置かないでくれとか、監督さん、あんた定員オーバーだからだめですよとか、あるいは荷台に乗っちゃいけませんというようなことを俳優自身が言えるという状況は全くございません。これはもう相当力のある人でも俳優というのはそういう条件を押しつけられるものでございます。  例えば、私どもの理事長の森繁さんでも、ぼけ老人の仕事をなさったときに、いや、怖かったよと。つまり、もう車がどんどん行き交うところをわざわざ横断しなければいけないのですね。横断歩道でないところを無理に通らせられる。いや、おれ怖かったよというようなことをおっしゃっておりました。それとか、ある女優さんもやはり車を運転することがありまして、その人は逃走する、逃げなきゃいけないというので、もうできるだけスピードを出して坂道の曲がりくねったところを、もっと遠く、もっと遠くと言われて本当に怖かったということを言っています。そういうことが日常的にあるわけでございます。  それで、プロデューサー、監督、俳優の関係でございますけれども、プロデューサーというのは予算、企画を初め作品全体についての責任を負うわけで、結局制作する場合の現場での総責任者はやはり監督であると思います。つまり、これだけの予算でこれぐらいの尺でつくってくれ、これには余り金をかけられないよとかというプロデューサーの命令に従って監督さんが芸術上の責任を負う。俳優さんはその監督さんの指揮命令系統下に入って言われたとおりのことをやるというのが現状でございます。  私どもが申し上げたいのは、つまり堤君の場合、彼は非常に真摯な青年でございまして、私は軽井沢の事情聴取にも参りまして、九時間ほどいろいろ今のようなことを御説明申し上げたんですが、そのときに軽井沢署の警官の方が、堤君は実に立派だったよと言われました。自分自身が大けがをしながら、おまえ現場へ行って説明できるかと言ったら、はい行きます、私の責任ですと言って、彼は行ってるる説明をして、その帰りもうよろよろとして倒れているんですね、ああいうことは普通の若者だったらやらない、あれは感心だねということをおっしゃいました。つまり彼は非常に真摯なんです。自分の責任だというふうにもう痛感しているわけです。ですけれども、これは彼がやりたくて別に運転したわけじゃないわけでございます。  そういうふうに堤君と同じような立場に立たされることは日常的にあるわけでございますから、特にああいう若い有為の青年がどうかこのことによって一生涯とんざしてしまう、俳優としての道を断たれるというようなことだけはぜひ救っていただきたい、このことをお願いしたいと思います。もしこれがそうでないということになると、俳優全体が、芸能界全体が何か社会不信というか、政治不信というか、そんなような考えに襲われるのじゃないかと私は思います。それが第一点でございます。  第二点は、私どもには労災が適用にならないとかなんとかいろいろ御議論もあるようでございますけれども、一言で申しますと、社会保障のいろんな面で一般の国民と同じような処遇を受けたいということでございます。就労中の安全の保障とか傷害補償の今の問題とか、それから病気の際でも、別に一般の方のように有給休暇があるわけじゃなし、厚生年金もなし、失業保険もなし、退職金もないわけでございますから、けがをしたり病気をするとそれで終わりになるわけでございます。どうかそういう点について御配慮いただきたいと思います。  第三点は、放送局というのは企業経営体であっても、使っている電波というのは国民のものじゃないかと私は思うのです。その電波を使ってやるドラマの第一線で働く俳優の出演条件のルールがちゃんとできておりませんと結局こういうことになるわけで、俳優の出演条件、いろんなことについて、国民的なレベルから見てそれは公正だなというようなルールができるようにひとつ民放局を初め局外制作会社とも、私どもも努力をしてまいりますけれども、団体協約というようなことがスムーズに成立するように御指導、お力添えをお願いしたいと思います。  ありがとうございました。
  78. 及川一夫

    及川一夫君 江見先生には、時間が非常に限られているものですから、短い時間でお話しいただいて大変恐縮でございました。しかし、俳優の皆さんが常々日常的に危険にさらされているということを生々しくお話しになられましたし、監督、俳優、プロデューサーの関係についても端的ですが指摘をされ、そしていずれにしても労働に対する安全というものを土台にしながら、万が一不幸な事態に陥ったときの補償問題についても、一般の労働者といいますか、国民といいますか、それと同じような措置がどうしても必要なんだということを訴えられたと思うのです。  そこで、労働大臣にお伺いする前に、今のお話の中でテレビ朝日の話が出ました。テレビ朝日はこのところ何か一年間ぐらいにもう三つも事故を起こしておられるんですね。ですから、当然安全管理はもっと確かな方法でやるべきだというふうに思うのですが、それはこれからいろいろ行政指導もお願いすることにして、どちらにしても契約をいずれにしても結ばれる。放送局、プロデューサー関係では基準契約というものがありまして、この中にやっぱり安全ということと紛争処理というようなことが多少書かれてはあるんです。しかし、実際に契約したときに、ではこの基準契約を結ぶかというと、ほとんど結ばれていない実態だというふうに言われているんです。  そして、今回事故が起こったせいかどうか知りませんけれども、内容をよく改善するならいいのですけれども、実は私が掌握した内容によると、これまでの基準契約よりも改悪されているということ、つまり労働安全とかあるいは労災的なものはもう一切契約をして任せたら関係ない、全部そっちの方がやれというように、十七条、十八条を削りまして、そして特約事項というものでもって改めてそのことをもっと明確に厳格にした言葉で書かれて、しかも口頭では、この特約事項を認めなければ契約はしない、使わない、こういうことまでされているということになると、天下のテレビ朝日さんは一体何を考えているのかなというふうに実は思うのです。  私は、労働安全なんかに金をたくさんかけるということは絶対にむだではないと思っているんです。今回だってあの暴走族か何かの車を二、三万で借りてきて、事故を起こしてしまったらまず車を買うために三百万出しているそうです。それと同時に、亡くなった方に対する補償はテレビ朝日が今回はやったそうですが、やはり九千万、一億、要求は一億四千万だという話なんかも聞くわけです。非常に高いものについてしまうのです。ですから私は、労働安全衛生法でもそういったことをやはり一つの思想にしながらつくられているものだと思うのです。  そこで、郵政省にお伺いしたいのですけれども、NHKとは団体協約が結ばれているわけですね、これは御存じですか。
  79. 成川富彦

    政府委員(成川富彦君) NHKとの間の団体協約調印につきましては、先生からお伺いして承知しております。
  80. 及川一夫

    及川一夫君 この江見さんの団体とNHK、日本放送協会との間で結ばれている二十条では、非常に簡単なんですけれども、   乙は番組制作にあたり、出演者に危険を及ぼすことのないよう配意し安全管理を行なう。万一、番組制作作業中(リハーサルを含む。)に組合員に事故を生じた場合には、その事由の如何により補償などの措置につき甲・乙協議して定める。  こうなっている。まあないよりはましだが、これでも私は問題はあると思うのです。つまり、どういう状況を危険と言うのか、どういう状況にすれば安全の保障をしたことになるのかということについては、現場の意見というものが本当の意味で反映しないとできないと思うのです。今の労働省が持っておられるこの労働安全衛生法にしても、そういうものの積み重ねの中で細かく細分化されるところと、あとはくくりながらも安全責任者を出せとか、そういうものが書かれていますね。万全を尽くそうという形なんですよ。  ですから、私は労働大臣にお伺いしたいのですけれども、別に政府が悪いわけじゃないですからね、何か盲点というような感じがしてしようがないのです。したがって、どういう方法でやるかということについてはいろいろ意見もあるんでしょうが、その現状、俳優の皆さんとかエキストラまで含めたロケ関係の方々の状態というのは極めて危険きわまりない。問題が起きたら結局は路頭に迷う人が出てしまうという現状にあるという認識をしていただいて、何らかの措置をしなければならないということをひとつ労働大臣、所管庁の責任者としてお考えいただけるかどうか、それをお聞きしたいと思います。
  81. 中村太郎

    国務大臣(中村太郎君) 今、江見さんのお話もお伺いいたしながら、なかなか大変な現場だなというのが率直な感じであります。そこに出演なさる俳優さんあるいはスタッフの身分がフリーなのか事業家なのかあるいは雇用者なのか、この関係をまず明確にすることが大事だなという感じを受けたわけでございます。  御承知のように、労働省はあくまでも労働災害補償保険法にいたしましてもあるいは労働安全衛生法にいたしましても雇用者が対象であります。したがって、今回の事案につきましても内容をつぶさに検討いたしまして、どこまでが事業家の責任で、それに何人が使われて、その間に安全衛生上の問題があるかどうかということは実態に即して調査しなければ今何とも言えませんけれども、先生の御趣旨もありますので、十分この案件につきまして調査をしてまいりたい。必要とあらば助言もいたしたい、指導もいたしたい、このように考えています。
  82. 及川一夫

    及川一夫君 労働大臣から積極的な御回答をいただいて大変感謝いたしますが、この問題はどちらにしても、私から見ても放置することができないし、できないだけに早くしたいが、簡単に法律を新しくつくってやればいいというものでもなさそうだと思うのですね、そのほかにもいろいろありますから。したがって、私は二つのことも含めて考えていただきたいと思うのは、先ほど江見さんが実態を報告されましたね。これは働いている俳優さんにも問題はあるかもしらぬけれども、契約をするというか、つくってくれと頼む方にも意識の問題として私は問題があると思うのです。つまり、こんな事態になったのにわざわざ安全や紛争処理にかかわることを改悪してしまう。逆じゃないか。改善するのが当たり前なのに改悪するというのは、テレビ朝日ならテレビ朝日の方の物の考え方が一体どこにあるんだろうということを疑いたくなるし、それがそうであればあるほど何か一つ拘束するものがないとなかなかいいところにいかないのじゃないか、こんな気もするんです。  ですから、法律行為として見れば、これを適用するとか準用するとか、そういう一行でもいいからつけないと、なかなか実態がうまく改善に向かわないのじゃないかという気もするし、それから原則は、江見さんが今お望みになった、曲がりなりにもNHKと結んでいるというものがあるわけです。これを民放各社になるのか民放の団体が代表して会うのか、いずれにしても日俳達との関係、同様の立場に置かれたところで話し合いをする、労働安全の問題について一定の結論を出していくというようなことを少なくとも早速、行政指導といいますか、そういったものをぜひお願いできないか、こんなふうに実は労働大臣のお答えをお聞きしながら感ずるんですが、その辺はいかがでしょうか。
  83. 中村太郎

    国務大臣(中村太郎君) いずれにいたしましても、この事案を慎重に精密に調査してまいりたいと思います。その上に立って御趣旨のことにつきましても十分検討してまいりたい、このように考えます。
  84. 及川一夫

    及川一夫君 ありがとうございました。  なお、これは郵政省ということになるんですけれども、郵政省はNHKだけ管理して、管理と言うと怒られるから管理と言いませんが、要するに行政指導の立場にあるわけです。民放も当然放送上の問題では含まれるわけですね。ただ、放送といった場合に、俳優の皆さんの労働条件といいますか、そういったものは全然関係ないのだというものでは私はないように思うのです。しかも団交権を持っている中小企業法の第九条二項ですか、あれに基づいてつくられた団体協約ですからね。したがって、NHKと団体協約は結ばれている、民放が結ばれていないということについて、郵政省として、監督官庁の立場からひとつ見解を聞いておきたいと思います。
  85. 成川富彦

    政府委員(成川富彦君) 放送番組の質的向上のためには、番組の出演者等に安心していただける環境づくりというものも大切じゃないかというふうに考えております。ただ、安全に関する協約自体は放送法上の問題とか電波法上の問題ではございませんで、私的契約上の問題でございますので、両当事者間で積極的に話し合って円満解決をしていただきたいというふうに考えておりますが、機会を見つけて民放の団体でございます民放連にも安全対策についての意識を高揚するように話をしていきたいと思っております。
  86. 及川一夫

    及川一夫君 ありがとうございました。  いずれにしても、俳優さんといえば簡単な言い方なんですが、やっぱり我々の生活の文化の面を豊かにしてもらう大変な役割を持っておられるというふうに思いますので、ぜひきょう労働大臣その他の政府委員の皆さんがお答えになったことを直ちに実行していただくようにお願いをいたしまして、私の質問を終わります。
  87. 大島友治

    ○大島友治君 大蔵大臣にひとつ御質問いたしますが、六十一年度決算の審査に入るに当たりまして、全般的な質疑として、政府の財政執行の評価についてちょっとお伺いいたしたいと思うのでございます。  六十一年度の当初予算につきましては、中曽根内閣において現在の竹下総理が大蔵大臣ということで責任を持って編成されたものでございますが、現在の宮澤大蔵大臣は六十一年度の補正予算を提出した責任者でもあるというふうに私は理解しているわけでございます。そういう観点から、この六十一年度の財政運営について幾つかの問題点を御指摘申し上げて、大蔵大臣の率直な反省と言っては語弊があるかと思いますが、どうであったか、あるいはまた、まさにこのとおりであったじゃないかというような自負的な面が考えられるかどうかというものについてお伺いしたいと思うのです。  まず、六十一年度の経済運営の骨子といたしましては、御承知のように、内需を中心とした景気の持続的な拡大を図る、そしてまた雇用の安定を図るということ。二番目には、調和ある対外経済関係の形成と世界経済活性化へ積極的に貢献するというようなこと。さらに行政、財政改革を強力に推進する、また引き続いて物価の安定をも維持していく。そして、活力のある経済社会と安全で快適な国民生活の実現を目指して我が国経済社会の中長期的な発展基盤の整備を図ることということでやったと思うのであります。これらの政府の目標を今日の時点でとらえたときに、一体どのような評価を下すべきでありましょうか。  今、総予算金額から六十一年度予算というものを振り返って、その当時、ごろ合わせで言えば、いい世を早く迎えるような予算というような一つの数字的なものが五十四兆何がしということであったわけでございます。そういうようなおつもりでこの予算が組まれてまいったわけですが、決算を見まして、これらの目標は十分に達成されて、例えばさすがにいい世の中をつくるようになったとかというような点についてどんなお考えをお持ちであるか。またさらに、全般的に見て、最初申し上げましたように反省してみて、これは本当にこうだったとか、あるいはまたまさに思いのままにいった点もあるとかという点で、率直、明快、簡単で結構ですから、大ざっぱなところの所感をお伺いいたしたいと思います。
  88. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまの時点、と申しますのは、まだわずかな年月しかたっていないという意味でございますけれども、そのただいまの時点で六十一年度の経済を予算を中心に振り返ってみますと、やはり前の年の九月二十三日でございましたかにプラザ合意がございまして、二百四十二円でありました円が合意のとおり、しかし実はそれより非常に急速に大幅に円が上昇を始めまして、夏ごろにはもう百五十円になりました。このことは我が国として初めての経験でございましたので、最初は企業でございますが、やがては家計にということになりましょうが、国全体、殊に企業がこれにどのように対応していくかということについて非常に困難を感じた年であったと申し上げられると思います。しかも、円の上昇がとどまるところを知らない感じでございましたので、これに対応するための対策を立てるめどがつかないというような感じになってまいりまして、よく企業城下町などという言葉がございましたが、やがてそういうところを中心に火の消えたようになる、雇用の問題になるというような大変に厳しい年であった。企業がそうなりますと、労働側もこれは決して楽であるはずはございませんで、そういう年であったというふうに存じます。  後半に補正予算等を中心にこれに対応を始めるわけでございますけれども、何分にも円高という、それも非常に大幅な、急速な、とどまるところを知らないのではないかと思われるような初めての経験でございましたので、振り返ってみてもまことに苦難の年であったという感じが率直なところでございます。  ただ、これをやや客観的にマクロに観察をいたしますと、結局成長率は二・六でございますが、これは、内需が四・一でございましたか伸びておって、外需の方が、これは円高を反映するわけでございますからマイナス一・五という、今から考えますといわばその後年に向かっての一つのいい姿と申しますんでしょうか、のベースセッティングはできておるわけでございますけれども、しかし経常黒字そのものは時間のおくれや何かがいろいろございますから史上最高になった。したがって、日本の対応は大変に遅い、何もやっていないという国際的な批判を厳しく浴びた年でございます。ですから、まさに内憂外患とでも申すべき年であったと存じます。もう一つ、そこまでお尋ねはございませんが、しかしもう一年進んだ後から回顧いたしますと、この苦しみに日本経済がよく耐えて対応して、何とか頑張って、財政もその次の年にはかなり大きな補正をしたりいたしますけれども、一番苦しいところを乗り切る努力を本当に必死になってやった年が六十一年度であったという偽らない感想を持っております。
  89. 大島友治

    ○大島友治君 大変御苦労になって、予想もつかないような経済変動というものは十分あったんだが、その中でも御努力されたことについては我々も敬意を表しているわけでございます。そういう点から、これから二、三点結果についてお伺いをいたしたいと思いますが、詰めてみれば、すべてはただいまの御説明のような経済変動の中での結果ではなかろうかと思います。  ただ、具体的に六十一年度の補正予算の問題についてでございますが、六十一年度は、当初予算においては総額五十四兆八百八十六億円の歳入歳出予算ということで編成したわけでありますが、年度途中において政府の方では、当時の経済情勢というようなことで、ただいまのようなことから税収の不振が見込まれて、租税及び印紙税の収入というものが減収じゃなかろうかというふうに見られた結果、その内容としては、当初予算に比較いたしまして一兆一千二百億円の減収となるであろうというようなことで補正予算を提出したのであります。ところが、決算を終わってみますというと、これが補正後に比較して税収が予想外に増収になったということが主体になりまして、二兆四千三百六十八億という増収に結果はなったということでございます。  少ないよりは、これはまことに結構な話でございますが、プラス・マイナスということの点から見れば大きな誤差というか、見当違いの数字も結果としては出てきておるんじゃなかろうかと思うのでございます。この二兆四千億余の規模の見込み違いを生じたことになるわけですが、これがなぜそうなったかということも先ほどのお話ともこれは関係はするんだろうと思いますが、一応具体的な結果の数字について御所見をお伺いいたしたいと思うのでございます。
  90. 尾崎護

    政府委員(尾崎護君) 御指摘のとおり、六十一年度決算におきまして、補正予算に対しまして二兆四千億を超える大きな自然増収が出たわけでございますが、見積もりが適正でなかったという点につきましてはまことに申しわけなく存じております。  その要因でございますが、全体として二兆四千億のうち法人税が一兆三千億ほどを占めておりまして、これが最大のものでございました。お話にございましたように、当時の経済情勢から見まして、製造業を中心としてかなり景気が停滞するというように考えられていた時期に補正を行ったわけでございますけれども、年度の最終段階におきまして法人税収が非常に伸びてまいりました。  その主な要因でございますけれども、一般事業法人につきましては、金融収支それから有価証券の売買損益等から成りますいわゆる営業外利益が大幅に伸びたというのが一つの原因でございます。それから金融取引が大変活発化してまいりまして、銀行などの金融機関も大幅な増益となりました。それから先ほど大臣のお話にございましたように、急速な円高があったわけでございますが、円高それから原油安、それが電力業でございますとか卸・小売業に大幅なメリットをもたらしたということもございました。その結果、見込みを大きく上回る法人税収の増があったわけでございます。  そのほかの要因といたしましては、有価証券市場が非常に活発であったことから、有価証券取引税が補正後予算に対しまして三千八百億を超えるような税収増となったこと、それから土地取引の活発化、地価の上昇等によりまして土地の譲渡所得が伸びたというようなことが要因でございました。
  91. 大島友治

    ○大島友治君 ただいまの御説明のような要因があったことだろうと思うのです。それと関連もすることですが、予算を組むに当たって当該年度の経済成長はどうであろうというようなことで、次に経済成長率のとり方について若干お伺いいたしたいと思うのでございます。  予算編成に先立って経済見通しは当然考えていかなければならないし、当初、大蔵省としては実質三%程度の伸びということが主体であったんではなかろうかと思いますし、また一方、経済企画庁の方では四%ぐらいじゃなかろうかというような当時の編成に当たっての見通しの見方というのが行われておったんじゃなかったかと思うのでございます。実績としては、先ほども大蔵大臣の方からお話があったんですが、二・六%の成長率ということで、結局は大蔵の三%よりも、まして経企の方で見ました四%よりはずっと下回ったという結果になったわけであります。  経済成長率が低率に終わったということは、その結果としては、税収も通常の経済状態から考えれば伸び悩むということになるのだと思われるのでありますが、先ほど触れましたように、政府としてはこれを見通して減額補正を行ったのでありましょう。ところが予想に反して、ただいま説明がございましたような税収に大変な好結果をもたらしたということになって、大幅な税収の伸びがそこに裏づけられたんじゃなかろうか、そんなふうに考えておるわけです。  日本経済は、円高の影響によって企業の活動の低迷が必至であったというわけでありますが、企業は非常に減量経営の努力もさることながら、財テクを中心とした営業外利益の膨らみ、それから企業業績が意外によかった。したがって法人税、有価証券取引税等が思いのほか増収となったのは先ほどの御説明のとおりではないかと思うのです。  このような状況と、六十一年度から顕著になった地価の値上がり、これもさらに先ほどの増収に拍車をかけておるんじゃないか。したがって、成長率は低くても税収は大幅に増収と結果はなったと言えるのではないか、この異常な状態がこれまで続いてきたものと言えるのではないでしょうか。これは今後とも続いていくかどうかということについては問題があるんじゃないか、こういったことは経済の通常の姿ではなくて、むしろこれは異常な状態ではなかったかと私は思うのでございます。  そこで、この経済成長率の当初の見方、そしてまた結果の問題を見通しまして、経済企画庁長官としてはどのような経済情勢の判断の上に立ってのことであったかをお聞かせいただければ幸いではないか。また、結果的には税の非常な増収になったというようなことから考えまして、大蔵大臣としても経済成長率の見積もりと結果とをにらみ合わせての所見をお聞かせいただければよろしいと思うのです。どうぞよろしくお願いいたします。
  92. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 大島委員から先ほど来ずっと御指摘いただいております、御説明をいただいております問題点は、御質問ではありますけれども、非常に内容を率直にとらえた見方であると私どもも先ほどからむしろ御教示いただいておるというつもりでございます。経済の状況につきましての判断は、先ほど大蔵大臣がそのトレンドをずっとお述べになっておりますから、大体概略は私どももそのとおりであると思っておりますので、ここであえて重ねて答弁するのもいかがかなと思いますが、ただ、経済成長率について、六十一年度の経済見通しについて、当初の内需の寄与度の四・一%程度と外需の寄与度のマイナス〇・二%程度、すなわち全体で四・〇%程度の実質経済成長率を見込んでいたということは、先ほどの御指摘にあったとおりでございます。  ただ、実績を見ますると、内需の寄与度は当初見通しどおりの四・一%でありましたものの、外需のマイナス幅は一・五%と見通しを大幅に上回りましたために、全体では二・六%の実質経済成長率にとどまった、このように御判断願いたいと思うのでございます。  これは、円レートが見通しを大幅に上回って円高となったというようなことなどからもその要因がございますが、輸出数量の落ち込みがより大きなものになったということ、あるいはまた輸入数量につきましては、製品輸入を中心にかなり大幅に増加したということによるものではなかろうかと思うわけでございまして、そういう他面から見ますると我が国の経済の対外不均衡是正の過程というものをそのまま率直に反映した姿なのではなかろうか、このように感ずる次第でございます。  なお、その後の為替レートの動向そのものを判断いたしますると、先進諸国間の政策協調、あるいはまた不均衡の縮小などを反映いたしまして比較的緩和な動きを示しておるわけでございます。政府といたしましては、経済見通しの作成に当たりまして、そのときどきの内外経済の諸指標等に基づきまして、実態に即した見通しになるように努力してきたところでございますが、今後とも内外の経済動向を十分に注視しながら適切に判断すべく努めてまいる所存であることもこの際申し添えておきたいと思う次第でございます。
  93. 大島友治

    ○大島友治君 経企庁長官、非常に御苦労になった予算の編成、また今後の見通しということについてのお話でございますが、今後日本経済を背負って中心になってやる長官として十分御努力をいただきたいと思うのでございます。  なお、長官の方はこれで私の方は結構だと思いますが、お忙しいようでしたらお帰りいただきたい。  大蔵大臣の方から今の経済成長の問題、一言だけお願いできないかと思います。
  94. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今、経済企画庁長官が言われたとおりだと思います。  つまり、最も端的に申しましたならば、プラザ合意の努力というのはそれは一生懸命みんなやろうと思いました。思いましたが、九月二十三日に二百四十円であったものがその年の暮れには二百円になっておるわけでございます。そして翌年の七月に百五十円台になっている。そこのところの急激な動きというものを恐らく何びとも予想しなかった。これは経済企画庁におかれても、私は長官の言われたとおり御無理もないことであったと思います。
  95. 大島友治

    ○大島友治君 次に、簡単で結構でございますから、財政再建の問題について大蔵大臣に一言お伺いをいたします。  財政再建については、もうかねてより御承知のように、赤字解消ということで六十五年度を目標に財政再建に今日まで努力してまいったわけでございますが、いろいろ経済の変動も激しい中で、果たして六十五年度に赤字国債脱却というものができるかどうか。先ほど来予想以上の歳入の増もあった、あるいは税収、あるいは政策上の内需拡大の需要も非常に効果を上げてきたというような点から、かねてより鈴木内閣以来発足しておる六十五年度赤字公債脱却ということに対する見通しを宮澤大臣としてお持ちいただけるかどうか、その点について簡単に御所見を伺いたいと思います。
  96. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これはやらなければならないと思っておりますし、ただいま六十四年度予算編成を一つ一つ事務方では詰めつつあるわけでございますが、それに際しましても、六十五年度には特例公債をやめようということを目標として六十四年度の編成にも努力をいたしております。ただ、ただいま衆議院で御審議を願っております今度の税制の抜本改革が平年度では二兆四千億円の減税になる、歳入中立ではなくて減税でございますものですから、それとの関連では非常につらいところがあるわけでございますけれども、これは何としても達成をいたしたいと思っておるところでございます。
  97. 大島友治

    ○大島友治君 次にお伺いしたいことは、国際収支の問題でございますが、政府の見通しでは輸出入とも減少して、貿易収支が十一兆四千億円程度、それから経常収支が十兆四千億円程度の黒字になるとされていたのであります。しかし結果は、確かに輸出入ともに減少はいたしましたが、その減少の度合いは政府の予想したよりも輸出入とも大幅に減少率が大きかったんじゃなかろうかと思うのでございます。輸出入のうちでも特に輸入の大幅な減少が災いというか、そういうことによりまして国際収支の黒字が減らないで、むしろ政府の予想に反して黒字幅は一層拡大したということも言え、また、経常収支は一時的とはいっても十五兆一千億円の大幅黒字となったのではないかと思うのであります。その後は一本調子の黒字減少が今年の七月まで続いたのであります。  しかし、こうした日本の黒字の減少傾向に対しまして、経済協力開発機構、いわゆるOECDは、八八年対日経済審査報告書の中で、経常収支の黒字はまだ過大だと指摘をしておるわけでございます。このことは、海外では最近の円高ドル安の状況や日本の輸出抑制が働かなくなってきていることなどに懸念をしているということではないかと思いますが、これは六十一年度の国際収支の状況、それに引き続いて今日までの日本の国際収支の状況、また、最近黒字が増加に転じている状況を踏まえて、今後の見通しなどについては、果たしてどんな方向にいくかどうかという点で大蔵大臣の御見解を伺いたいということでございます。
  98. 内海孚

    政府委員(内海孚君) お答え申し上げます。  御指摘のように昭和六十一年度の経常収支でございますが、これは九百四十一億ドルということで我が国史上最高の黒字を記録したわけでございます。この背景には、先ほど大臣の御説明にもありましたように、プラザ合意がその前の年の九月にございまして急激な円高になりました。円高になるということは、とりもなおさず同じ商品について、もし数量が変わらなければドル建ての手取りというのは、ドルの価値がそれだけ減ってしまうものですから、額面上どうしてもドル建ての輸出額というのは計算上ふえてしまいますので、そういう現象が一時的に起こるわけでございまして、いわゆるこれがJカーブというものでございますけれども、これと、それから石油価格の予想せざる下落というものが働きましてこういう数字になったわけでございます。  それに引き続きまして、昭和六十二年度でございますが、ここではようやく為替の調整の効果が少しずつドル建ての輸出入にもあらわれまして、また同時に、我が国の内需拡大も徐々に効果をあらわし始めまして、六十二年度には前年度に比べまして約百億ドル近く、九十七億ドルの黒字の減少ということになったわけでございます。  現在進行中の六十三年度についてのお尋ねでございますけれども、基本的には輸出の伸びよりも、これは数量ベースで見ましても明らかに輸入の伸びの方がはるかに高いベースで行われているということはいまだ基本的には変わっておりません。しかも、輸入の中で製品の輸入比率が八〇年代の初めには二〇%ぐらいでありましたのが、今もう五〇%ぐらいが製品の輸入になっている。そういう意味では為替調整の効果というのはかなりはっきりとした目に見える効果を持ち出していること、それから我が国の内需拡大の継続ということから見まして、基本的には経常収支の黒字を縮小する方向で進んでいるものというふうに判断しております。
  99. 大島友治

    ○大島友治君 次に、二、三同じような内容というか、予算執行上結果として、民間活力の問題につきましては、当初予算編成についても基本的な考え方の一つであったわけでございまして、日本の直接税の偏重と言える税制に対しての抜本的な税制改革が行われないまま今日に至ってはおりますが、慢性的な財源難に悩まされて、財政当局は毎年度予算編成に大変御苦労になっておると思っておるのでございます。速やかに社会資本の整備が必要であり、それを怠ると将来に非常に禍根を残すんではなかろうかというふうに思われる事業につきましても、財源難から断念をしなくてはならぬというような結果もあったんじゃないか、また我慢をしなければならないのじゃなかったかというような実感も我々は持っているわけでございます。  一方、国のこのような財政体質にもかかわらず、民間には資金が潤沢でございますし、またいわゆる金余り現象というか、そういう中で企業、国民、一億総財テクと言われるような様相も呈しておる現状でございます。何とかこのような資金を社会資本の整備に少しでも振り向けていくことができないものか。そういう点から、中曽根内閣当時も民間活力の路線ということでこの問題を導入してまいりまして、それは例で言えば東京湾の横断道路の問題とか、あるいは瀬戸内海というか明石海峡の大橋の問題とか、これらは一つの民間資本を生かした事業ではなかったかと思うのでございます。  そういうことから、今日経過を見まして、最近は、特にここ一年来、NTTの売却益の運用も手伝って、やや民間活力の軌道というものもいい方向にあるんじゃなかろうか、こういうふうに私も感じておるわけでございますが、宮澤大蔵大臣として、この民間活力、民間財源を社会資本整備のために今後ますます大いに進めていくことについて、期待できるものであるかどうかということで御所見をお伺いしたいと思います。
  100. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 我が国は市場経済というものを基本とする国でございますし、また国民の多くが、殊に納税者はなるべくコストの少ない行政というものを望んでおられるに違いない。両面から考えまして、できることは、殊に民間に力がございますので、できるだけ民間にお願いをすべきである。例えば、もう既に関西国際空港であるとか、あるいは東京湾横断道路等がそうでございましたが、またおっしゃいますように、社会資本整備勘定をNTTの売却代金の一部をもちましてつくらしていただきまして、特定の民活事業に対して無利子貸し付けをさせていただく、こういうふうに考えております。  やはり社会資本の中にも、最近はある程度の受益者負担というような考え方も出てまいっておるわけでございますので、その限りにおいて、これは民間の仕事にも、民間がやれないと最初から決めてかかる必要はないということからいろいろ考えてまいりますと、ただいま申しましたような諸例、あるいはこれからもっともっとそういうふうにやっていただくことによって、民間の資金ばかりでなく、やはり知恵、知識、技術もあると思うのでございますが、それを発揮させていただくことができますし、加えて納税者の負担になっております役人でなければできないという仕事は、本当にそういうところへ集約していくということも努力すべきではないかと考えております。
  101. 大島友治

    ○大島友治君 六十一年度の結果、民間活力の問題も編成方針としてあったわけでございますから、今後ともこれは結果を踏まえながら、前向きに日本の社会資本整備のためにひとつ努力していただきたい、こう思っております。  それから次に、決算の結果の一部ではございますけれども、不用額でも特に生活保護費関係の金額で三百八十九億円というのが出ておるわけなんです。この問題について私はお伺いしたいと思うのでございますが、生活保護費の補助金の総予算額というのは一兆一千八十三億円でありましたが、決算で、ただいま申し上げましたように、不用額が三百八十九億円ということになっておるわけです。中身を見てみますというと、六千八十一億円の医療扶助費のうち二百二十二億円の不用額が出ていることがその主な原因であるということであります。この医療扶助費についてその翌年度がどうかと調べてみますと、六十二年度でございますが、六十二年度の六千九十七億円の予算額に対して三百十四億円のまた不用額を生じているということ。これを予算額に占める不用額の割合で見ますというと、六十一年度が三・七%、六十二年度が五・二%ということになるわけでございます。そう決して少ないとも言える数字ではないと私は思うのです。  これはどういうことで一体こうなったか、また、前年度不用額が出ておる費目ではございますけれども、つまり六十二年度、翌年度の場合はむしろ予算が前年度よりも増額になっておる。そして不用額も前年度よりも高率で残っておるという結果を見ているわけでございます。だから予算も、前年度不用が出たんだから若干今度は控えてもいいのじゃないかと我々素人は考えたんだが、そのニーズにこたえられればこれは結構だったと思うのですが、結果的には増額し、しかも不用額まで多くなったということはどういうことであったのか。決して社会福祉の事業費を減らせというわけではございませんけれども、むしろそうした三百なり五百億というお金を他の方向に有効に予算化して使ったらいいのじゃなかったかな、こういう感じを持っております。効率的な予算執行ということから見れば、そういう計数的な結果を見ることは余り好ましいことじゃないと思いますので、この辺どうしてこうなったのかといっても難しいかと思いますが、簡単で結構ですから所見をお伺いしたいと思います。
  102. 藤井威

    政府委員藤井威君) 生活保護費の中のいわゆる医療扶助費につきまして、六十一年度で二百二十二億円の不用が出たという御指摘はそのとおりでございます。ただ、六十三年度予算編成段階、ちょうど六十一年度予算執行中であったときでございますが、予算編成段階では、六十一年度にそれほどの不用が生ずるかどうかということを見通し得なかったというのが実態でございます。またその当時は、従来から医療扶助人員というのは増加傾向にありまして、医療扶助費の六十二年度予算額を、六十一年度にそれほど不用が出るということを承知しないままに、過去の経緯ということで増額予算を組んだわけでございます。  六十二年度も、御指摘のように、三百十四億円の不用を結果的に生ずるということになりましたが、結局、従来の傾向に反しまして医療扶助等で大幅の不用が出ましたのは六十一年度に年金制度の大幅改善が行われ、特に障害者年金等でかなりの改善を行ったものですから、医療扶助人員がむしろ過去の経緯とは逆に減少したというような実態があったわけでございます。そういう実態を把握いたしまして、その後、六十三年度予算においては実態に合わせまして若干予算を減額するという予算編成を行っております。
  103. 大島友治

    ○大島友治君 いろいろ理由はあったんでございましょうが、今後そういうことが余りないように、効率的な予算執行になるようにお願いをいたします。  次に、決算の六十一年度の結果の問題について、会計検査報告書というものから一つだけお伺いしたいと思うのでございます。  それは、きょうも会計検査の方の説明でも出ておりましたが、国立大学の医療機器の購入に関する問題の指摘がございましたが、予定の価格が果たして適切であったかどうか知らぬけれども、結果的には割高な購入をしたんじゃなかろうか。それは円高というような為替相場の中でそういうことが十分考慮されて購入されたかどうか。この問題について会計検査院の方からも指摘されたわけでございますが、予算があるからといってただうのみに高いのを買うばかりが能じゃない。そういう面で、予算不用額を出すことは非常に結構だけれども、あるからといって目いっぱい使ってしまって、適正な見積価格であったか、購入価格が実際それにマッチしたのかどうか知りませんが、会計検査の見方としては、円高の中で若干適正を欠いたんじゃなかろうか、こういうような結果を指摘されておるわけでございます。  これは何も文部省の国立大学の医療機器ばかりではなくて、財政当局として、各省にかかわる輸入品の取り扱いについては関連、連動する問題であろうと思いますが、一例をとって国立大学の医療機器の問題で気がつきましたので、これについては十分そういうことが今後ないように、この結果を見て反省の上に立って、今後各省のこういう取引については十分予算の効率的な執行の上からも喚起を促していただきたい、こういうふうに私は大蔵大臣にもお願いいたすんです。大蔵大臣はそう思っていなかったかどうか知りませんが、簡単に一言御意見の方お願いしたいと思うのでございます。
  104. 藤井威

    政府委員藤井威君) 具体的に御指摘いただきました点、六十一年度決算検査報告におきまして、国立大学の外国製の医療機械の代理店からの購入に際して、外国為替相場の変動が予定価格に十分反映されていない、結果的に割高のものを買ってしまったという御指摘がありました。我々といたしましてもそういう指摘が行われた、あるいはそういう事態があったということについては非常に遺憾だというふうに思っております。文部省の方で直ちに適切な処置がとられたと聞いておりますけれども、それだけにとどまりませず、先生のおっしゃいますように、会計検査院指摘された事項につきまして予算編成等に反映させていくということは非常に重要であり、我々も従来から関係各省の協力をも得つつ予算編成に反映したいというふうに思っております。  また、予算執行に際しましても、各省各庁の責任で適正な効率的な予算執行をやっていただくわけではございますけれども、会計検査院の御指摘等々の問題、従来から我が方からも文書による要請あるいはその他あらゆる機会を通じまして予算の効率的な執行指摘事項の周知徹底等に努めておるところでございます。今後とも御指摘を踏まえて気をつけていきたいと思っております。
  105. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま政府委員から御説明を申し上げました事情でございましたが、今後ともよく注意をいたします。
  106. 大島友治

    ○大島友治君 遺憾のないようにひとつよろしくお願いします。  次に、農水大臣、大変お待たせして恐縮でございますが、二、三伺わせていただきたいと思います。  農政問題でございますが、もう御承知のように、今回の日米農産物自由化の問題の総くくりのような問題に今なってきているような、例の米国の精米業者が日本の米市場の開放ということを求めて提訴した問題がございますが、これについては、結果的には却下をしたということにはなっておるわけでございます。無条件却下を私どもとしては希望、期待を持っておったわけでございますが、農水大臣も同じだったと思うのでございます。しかし、結果的には却下はされたものの条件がついておるということです。もともと私どもは、日米二国間で米の問題を扱うのでなくて、ガット、ウルグアイ・ラウンドということが目標でもあったわけでございます。  ところが、今回の却下につきましては、条件つきというか、十二月に予定されておるウルグアイ・ラウンドにおいて、日本がある程度の弾力的な自由化ということについて何らかの回答を含んだ回答を求めるようなニュアンスじゃなかろうか。これは一つのおどし文句みたいに私どもは感ずるんですが、今、御承知のように、日本の米の基幹作物としての重要性、さらにまたそれに向かって需給バランスをとるために、農民も本当に血眼になって三割近くの減反の生産調整もやっているという中に、大きな追い打ちとしての米の自由化の問題というものは、大変日本農民の大きな関心の的になっている。そこで、もう細かいことはともかくも、結果は却下になったが条件つきのような却下になっておりますので、これに対しての農水大臣の所見というか感じをひとつお示しいただきたいと思うのでございます。
  107. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 既に質問通告をいただいておりました。今の御質問に対しましては、この間の土曜日に私の談話を発表させていただきました。そこにすべてが盛られておるということでございます。ここでまた談話の読み直しはいたしませんけれども、米問題について我が国における米及び稲作の格別な重要性というのはもう委員御承知のとおりでございます。また、国会における決議等の趣旨を体し、今後とも生産性の向上を図りつつ国内産で自給するという基本的な方針に変わりなしとあらゆる機会に申し上げておるとおりでございます。  米の貿易問題について、我が国の立場は、現在進行中のウルグアイ・ラウンドの場で各国が抱える農業問題及び制度について議論を行う段階になれば、米の問題を含むあらゆる農業問題を討議することにやぶさかではない、そういう討議は逃げません、堂々たる論議をやりましょう、こういうことにしてあるわけでございます。  アメリカ政府には、我が国における米の格別の重要性を十分踏まえ、日米友好関係の維持という観点に立って本件について慎重に取り扱うよう求め、また、我が国としましては、これまでのウルグアイ・ラウンドに臨む基本的立場、これは昨年の暮れ、委員も御承知のところでございます、既に出しておりますので、その立場に立ちまして遺憾のないよう対処していかなければならないと考えておるところでございます。
  108. 大島友治

    ○大島友治君 基本的考え方には変わりないし、あくまでもウルグアイ・ラウンドに向かって断固として日本の米の重要性を守ってお臨みいただけるものと感じてはおりますが、ただ、今までの経過をたどっても私どもが一番心配するのは、やっぱり日本の食糧を確保する、特に米の自給度を守って食糧を確保するということは、国家安全保障にもつながる唯一の条件だと信じておるわけです。そこで、一角でもこれを崩されるということは、将来の日本にとっての危険性を非常に含んだ問題である。基本的に変わりないということは、あくまでもECの問題あるいはウエーバーの問題等もかみ合わせて農産物で徹底的にこれはやるんだということであるならいざ知らず、日米間でいやしくも新聞紙上で報道されるような今回の却下はいいけれども、場合によっては若干ずつの枠の拡大でもされながら輸入するような方向になることが再提訴を前提とした含みがあるんじゃなかろうかというようなことで、財界はむしろこれを歓迎しているんじゃないかという報道もされておる。  この辺が私どもとしては非常に危険を含んでいるんじゃないかと思う。日本だって、徹底的に自由化はだめですよ、しかし、一方からいえば、少しずつでいいからすき間風をだんだんあげていくというような国民もおるじゃないかというところに、今までの例もさることながら、その辺が非常に私は将来に向かって危険な点があるんじゃなかろうかというので、このウルグアイ・ラウンド、十二月についてはその辺をどう踏まえて臨んでいかれるかということについて、一言大臣の御意見をお願いします。
  109. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) いろいろ御心配をされての御質問だろうと思いますが、言論も自由であるし出版も自由であるし、国民の中にはいろいろな声、考え方があることは承知しております。しかし、大部分の方々は私どもの従来申し上げておる考え方に賛同してくださるものと確信を持ちたい、私はそう考えております。  このウルグアイ・ラウンドについて、先ほど十二月のことについて申されましたが、これはウルグアイ・ラウンドの中間レビュー、ちょうど四年間を目して作業を進めたその折り返し点でございますので、中間レビューをするという会合でございます。その中間レビューにおいてはいろいろな問題が俎上に上るでしょう。これは推測であります、まだ確定したものは決まっておりません。農業交渉の関連で言いますと、今後の農産物貿易のあり方について長期目標につき論議が行われるとともに、現下の構造的過剰問題の悪化を防止するための短期措置に関する論議が行われるものと考えております。私どもといたしましては既に日本提案を示すなど、従来からウルグアイ・ラウンドの進展に積極的に貢献をしてきているところでありますが、中間レビューの場におきましても食糧自給率の著しく低い大輸入国の立場からの主張が十分反映されるよう努力してまいりたい、こう考えておるところでございます。  中間レビューまでの間にまだ実務的な会合、公式、非公式いろいろと会合が重ねられてきております。今日の段階から起算をいたしましても、十二月初旬に行われる中間レビューとの間にまだ実務的な詰めも予定をされておるわけでございまして、そういう場においても今申し上げた基本的な考え方に立って主張していく、こういうことでございます。今までのことからすると心配だというお気持ちもわかりますけれども、しかるべき議論をする場合には私は当初からの方針を貫き通したい、これもどこの場でも申し上げておるところでございます。
  110. 大島友治

    ○大島友治君 ぜひそういう方向で貫き通していただきたいと思いますが、とにかく十二月の中間見直しの問題に係るわけですから、このときのいかんによってまた方向も変わりはせぬかということでございます。たまたま大統領ももう決まったんじゃなかろうかと思いますが、大統領が決まることに伴ってこれがどういうふうに変化するかということも一つの注目の的じゃなかろうか、こういうことです。
  111. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) どなたがアメリカの大統領になられようとも、私の考え方は変わりません。先ほどニュースによれば大統領は決まったようでございます。
  112. 大島友治

    ○大島友治君 大統領はかわっても佐藤農水大臣の心は一つも変わらないということで貫き通すということですから、ひとつよろしくお願いいたします。  そこで、もう一つだけ。そういう中であっても現実にはアメリカの農産物の価格と日本の農産物の価格、例えば米にしても高いの安いのというようなことにこれはなっているが、では、日本が国際価格に追いつくためには日本の農業はどうあるべきかというのがこれは先決問題じゃなかろうか。そうしますと、私は、頭のいい日本人だから技術的なものについてはこれは世界に伍して戦いができると思う。それからある程度設備については、コンバインならコンバインで一つの例をとってみても、大小の差こそあれこれは設備の問題では競争ができると思う。  問題は、米に関することになれば、土地利用型の農業であるから、土地のいわゆる面積というものについてはアメリカとはとてもじゃないがこれは比較にならない。水田だけとってもアメリカが百十四町というか、日本は一ヘクタール。ヨーロッパにしたって経営面積からいえば二十ないし三十。そういう中でこの土地利用型の日本の水田農業を企業的感覚で言えば早く十五ヘクなり二十ヘクにした方がいいだろうとこれは簡単に言いますけれども、そんなことは到底一朝一夕にはできないということでございます。いわゆる一口に規模拡大、土地の生産性の向上ということが言われますが、これをどの辺でどういうふうに持っていくか、そういった問題の見通しというものに対する農民に明るい気持ちを持たせれば、きょう一つ質問は残りましたが、せっかくの財政投融資なり貸付金というものがあっても十分活用されないという結果になるんじゃなかろうか。この辺の土地利用型日本の水田農業の将来の見通しということについて、一言だけ農水大臣のお考えをお願いします。
  113. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 農林水産委員会の場ではしばしば御答弁を申し上げてまいりました。ここでまた場所が違いますから、改めて御質問でございますし、申し上げたいと思いますが、私どもはかっての農政審報告に基づき段々の取り運びをいたしてまいりました。さらに自由化という問題を控え、またその山を牛肉、かんきつについては乗り越え、その経験に徴して国際化の時代に対応した新しい農業、農山村の活性化についての基本方向というものを去る九月策定をいたしたところでございます。これも委員御案内のところでございます。各界の御批判をいただきながらも私どもはそういう試練に耐えて乗り越えてきたその経験を生かしながら、まずは生産者自体の意識革命が必要である、そういうことで意識革命はある程度終わったという見方をしてもいいのではないかとまで私は申し上げているのでございます。そういう意味で内外格差の是正もございますし、魅力のある将来展望というものは基本方向を一応掲げたところでございますので、その線に沿って土地利用型という側面だけではなく、各面にわたってその物の考え方で取り進めてまいりたい。農業、農山村の活性化あって初めて地域経済というものが活性化していく、四全総の裏打ちもそれがなければできない、こういう物の考え方に立っておることを申し上げておきたいと思います。  残余は、もし何かあれば事務方が来ておりますから。
  114. 大島友治

    ○大島友治君 もう言うことがないほど説明されたようだけれども、ただそれを言うだけでなく、なるほど五年、十年たったときに、あの佐藤農水大臣の言ったことと現実はまさにしかりと、歴史に残る仕事にひとつ専念していただきたいと思います。  以上で結構ですから、これで終わります。
  115. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 六十一年度決算の総括に当たりまして、二、三質問をさせていただきたいと思います。  きょうは皆さんお忙しいところをおそろいいただきましてありがとうございました。  まず私は、大蔵省の主計局長にお伺いをしたい。  この決算審査というものについて、小粥主計局長はどういうふうに考えているのか、御答弁いただきたい。
  116. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まことに恐れ入りますが、本日は政府委員であります主計局の次長がかわりに参っておりますが、私から申し上げます。  決算は、国会の議決により成立した予算執行の実績でございます。その決算審査は、予算執行が所期の政策目的を果たしているかどうか、また不正、不当な事項がないか等について御審査、御検討をいただく場でございますので、極めて重要なものであるというふうに理解をいたしております。  また、政府はこの御審査の結果を重視し、予算編成及び執行に当たりまして十分留意し、これを反映させていくことに最善の努力をいたしておるものでございます。
  117. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は、大臣、局長にお願いをして大臣から答弁をいただいたわけですから、文句を言うことも全くないわけですけれども、きのうから局長出席を求めておるわけです。何で出てこないのですか。そんなに局長は偉いのですか。当決算委員会の理事懇談会でも、いわゆる決算の主管の局長は主計局長である、その主計局長決算委員会に一回も出てこないなんて一体どういうことなんだ、そういうことが議論になりました。我我が要求しないからまずいのだろう、一遍要求してみよう。要求したら、私かがわりに参ります。だから、何で出てこないかということを明確に説明をして、ああなるほどそうかと、それなら納得できるわけです。ところが、大蔵省には次長というかわりがいるんだ、かわりで勘弁してくれ。いや、勘弁しないわけじゃないのですよ、私は。次長さんも立派ですからそれはいいのですけれども、局長さんはそんなに偉い人なのか。  これはもう本当に私はびっくりしました。きのうから言っているわけですよ、一生懸命。自民党の理事の皆さん方が走り回って、何とか次長で勘弁してくれ。いや、勘弁しないわけじゃない。皆さん方一生懸命おっしゃっているわけですから、私は勘弁したい、したいけれども、いまだにどうして来られないのか。例えばこういう仕事が忙しくて来られないのですと、それならああそうかということで納得できるわけです。ところが、かわりが私なんですからというのじゃこれは納得できません。  決算審査の重要性というものをこの間から随分議論をしておるわけです。大臣がおっしゃることもわからぬではない。けれども、担当の主管の局長が、しかも決算審査の総括のしょっぱなの日から顔を見せない、見たこともない。これから我々は、年度の中間に、今年の決算はこういうふうになりそうですという御説明をいただきたい。そういうことも考えているにもかかわらず、その担当の局長が全く顔を見せないというのは一体どういうことなんですか、大臣。
  118. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは、主計局長予算の編成、執行のいわば最終の責任者でございますので、政府各省庁の中で絶えずいろいろございます話につきましては、次長は大体外へ出ておりますので、局長がかわってそれを承り、応対をいたしておる。また、時としては国会の先生方からもいろいろなお話があることもございますが、政府部内でそういう立場におりますものでございますので、主計局には三人次長制を設けまして、その次長が政府委員として一人一人各担当をいたしておるわけでございます。  また、次長は局長ではございません、次長ではございますけれども、それだけの仕事を担当させるだけの経歴、実績を持った者を次長にいたしております。そういうのが私どもの役所の体制でございますけれども、しかし、峯山委員の言われますことも、これはどうしてとおっしゃいますれば謹んでお話を承るというしかどうも私としてはほかございませんで、そのような事情を何とぞ御理解、御了承をいただきたいと思います。至りませんところは次長とそして私が一生懸命いたしますので、ひとつ何とぞ御了承をお願いいたしたいと思います。
  119. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そんなんじゃ大臣、私は納得できませんね、全く。主計局長さんというのは大臣より偉いのですな、結局は。  これは大臣も、予算のそういう取りまとめの段階からもう予算の方が大事で、決算はどうでもよいと。まあ言葉の裏は、裏返して言えばそういうことです、今の大臣がおっしゃっておる裏は。だから、幾ら我々が頑張ってもだめなんですよ。そういうことでは困るのでありまして、この問題はきょう議論する主題じゃありませんから、我が決算委員会の理事会でもう一回検討していただきたいと思います。  例えば、我々が出席の要請をしたら、いや、実はこういうわけなんですと、しかるべききちっとした手続を踏んでやっていただくとかなんとか、そういうようなことはちゃんとあってしかるべきじゃないですか。私はそう思うのです。そのことだけ申し上げておきたいと思います。  それでは次に、きょうはリクルート問題をたくさんやりたいと思うのですが、時間の関係がありますので何点かに絞ってお伺いしたいと思います。  まず第一点は、これは建設省それから住宅都市整備公団の方にお伺いをしたいと思います。  住宅都市整備公団がリクルートコスモスに譲渡をした東京都多摩市豊ヶ丘三丁目五番地の土地分譲に関する問題、これは私どももいろんな角度から調査をいたしておりますが、調べれば調べるほど問題が多い。したがって、この土地のリクルートコスモスに対する譲渡に関して、その経緯の概要を簡単に御説明いただきたいと思います。
  120. 丸山良仁

    参考人(丸山良仁君) 当公団が実施しておりますニュータウンにおきましては、住宅需要の多様化に対応するとともに、ニュータウンの早期完成を図るために、昭和六十年度より民間デベロッパーに宅地を分譲することとし、その分譲した宅地に分譲住宅を建設してもらうこととしたのであります。  多摩ニュータウンにおきましても、この民間デベロッパー向けの分譲事業を実施することといたしまして、多摩市の豊ケ丘地区ほか二カ所、計三カ所におきまして昭和六十一年十二月に民間デベロッパーの募集を行ったのであります。それから、昭和六十二年二月二十七日から三月六日までの申し込み受け付け期間中において、三地区のうちに今問題になっております多摩市豊ケ丘地区の土地につきまして、リクルートコスモスほか十一社からの申し込みがあり、昭和六十二年四月、当公団におきまして慎重審議をいたしました結果、リクルートコスモスを譲り受け人とすることを決定し、処分計画につきまして設建大臣の認可をいただきまして、六十二年五月に土地譲渡契約を結んだ次第でございます。なお、その譲渡面積は二万一千五百三十・七二平米、譲渡代金は四十六億七千二百万円余でございます。
  121. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 今概要の御説明があったわけでございますが、これは今御説明がございましたように、建設大臣も聞いておいていただきたいのでありますが、六十年から始めたわけですね、民間デベロッパーに対して。そのことを頭に入れておいていただきたいと思うのです。  そこで、このリクルートコスモス社というのは一体どういう会社なんですか。会社の経歴とか概要について簡単に説明してください。
  122. 丸山良仁

    参考人(丸山良仁君) リクルートコスモス社は、我々が関知している範囲内では民間デベロッパーとして分譲住宅の供給をいたしている会社でございまして、その分譲住宅の戸数は、昭和五十八年におきましては千六百七十三戸、五十九年におきましては千三百九十八戸、六十年におきましては二千六百二十戸。五十八年が業界八位、五十九年が業界九位、六十年が業界二位、こういう会社でございます。
  123. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大体リクルートコスモスという会社は、昭和四十四年の六月に日本リクルート映画社ということで設立になっていますね。そして、リクルートコスモスという名前に変わったのが六十年の三月、そうですね。これは間違いございませんね。
  124. 丸山良仁

    参考人(丸山良仁君) そのとおりでございます。
  125. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大体、デベロッパーとさっきおっしゃいましたが、もっと日本語でわかりやすく言ってください。
  126. 丸山良仁

    参考人(丸山良仁君) 分譲住宅を建設して譲渡する会社でございます。
  127. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 建設して分譲する会社ですね。それで、これは全部リクルートが自分のところで建設をしたんですか。
  128. 丸山良仁

    参考人(丸山良仁君) 民間デベロッパー、民間分譲事業者でございますが、例えばゼネコン、建設会社が事業を行う場合には、みずから設計をしあるいはみずから建設をして譲渡をするというのが通例だと思いますが、一般には民間デベロッパーと申しますのは、設計あるいは建設事業につきましてはそれぞれの専門機関に発注をして行うというのが通例でございまして、直接ここで建設をしなくてもこれが分譲業者でないということは言えないのではないかと私は考えております。
  129. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 だから、建設業の免許はあるんですね。
  130. 望月薫雄

    政府委員(望月薫雄君) この会社につきましては建設大臣許可あるいは都知事許可いずれもとっておりません。
  131. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 建設業の許可、知事許可両方ともない、どういう免許があるんですか。
  132. 丸山良仁

    参考人(丸山良仁君) 大体民間デベロッパーの場合には建設業の許可はとらないのが通例でございます。許可が必要なのは宅建業法の免許でございます。
  133. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 とらないのが普通じゃなくてとるのが普通なんです。自分たちのやったことをごまかそうとしてそういう言い方はよくない。だから、リクルートコスモスという会社は宅建業法の免許しかない会社なんでしょう。どうですか。
  134. 望月薫雄

    政府委員(望月薫雄君) そのとおりでございます。
  135. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それではお伺いします。  これは宅建業法の免許をとって、リクルートコスモスは宅建業法に違反をして、それで建設省からも随分注意をされましたね。これは要するに地上げ屋です。そして建設省も宅建業法違反で処分をしたはずです。そういう会社ですね。そのときの概要、いつごろだったのか説明してください。
  136. 望月薫雄

    政府委員(望月薫雄君) リクルートコスモス社につきましては、六十一年二月十二日に宅建業法に基づきます指示処分を行っております。  その処分した理由でございますけれども、この会社は六十年の六月から九月にかけまして、日本橋あるいは新宿の物件の取り扱いについて代理人として参画したわけでございますが、その間におきましていわゆるあっせん手数料を規定の率以上にもらってしまった、こういった事実があったことが中心の処分理由でございます。
  137. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 結局、リクルートコスモスという会社は宅建業法の免許をとりまして、今説明がございましたように六十一年の二月にいわゆる四億三千万円に上る手数料、これは要するに法定の倍以上の手数料を取って、しかも行政処分として宅建業法の六十五条第一項の行政処分を受けた、これは間違いございませんね。
  138. 望月薫雄

    政府委員(望月薫雄君) この会社は買い主の会社のいわば代理人として参画した事案でございますけれども、その際に手数料が代理人としては、一つの錯覚というか勘違いもあったらしくて、規定の六%を全額いただいた。ところが、リクルートコスモス社以外にも媒介した業者があって、この両者を合算した結果規定の率を超えてしまった、こういった事情があったわけでございます。  いずれにしましても、一つの物件の取引に関しまして料率はすべて合わせて規定料率の中におさまらなければならぬ、こういったルールを逸脱していましたものですから処分した次第でございます。
  139. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 しかもこのリクルートコスモスは、市街地開発あるいは多摩ニュータウンのような開発を担当する部門は当時なかった。これは私の手元にありますいろんな資料によりますと、昭和六十二年一月に初めて都市建設部というのをつくった。そうですね。
  140. 丸山良仁

    参考人(丸山良仁君) 確かにそのとおりでございますが、その部ができる前からマンションの建設はやっていたようでございます。
  141. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それは当然マンションの建設ぐらいはやるでしょう。マンションの建設をやっていればこういうふうないろんな問題があってもいいと……。  あなた方は、先ほどから出てまいりました少なくとも民間のデベロッパーにこういう仕事を任せる、当然民間の皆さんに任せるわけですから、たくさん業者はあるわけです。例えば御説明いただきましょうか。今の豊ヶ丘地区につきましてはこれは確かに今皆さんがおっしゃいましたようにリクルートコスモスでございますが、そのほか二つの地区はこれはどういう業者になっていらっしゃるんですか。
  142. 佐藤和男

    参考人佐藤和男君) 同時に公募募集いたしました地区は稲城地区で二つございまして、その一つが長谷川工務店と総合地所のジョイントベンチャー、それからもう一区画が木下工務店と淺沼組のジョイントベンチャーでございます。
  143. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは後の二つの地域は、淺沼組にいたしましても長谷川工務店にいたしましてもそれぞれしかるべき業者であります。しかも、これは建設大臣、例えばこういう宅建業法でいろいろ地上げで問題になったり、そういうような業者に、しかも組織的にもまた社内のいろんな情勢においても十分じゃないと私は思うのです、普通はそう判断しますね。それをあえてリクルートコスモスに注文をしなければならなかった、あるいは注文をした理由をお伺いしたいと思うのです。これは当然大臣からは後でお伺いするといたしまして、まず新住宅市街地開発法に基づきまして処分をされたわけでございますが、これはこの法律によりますと一定の要件を備えたものを公募し、これらのもののうちから公正な方法で選考する、そういうことになっておりますが、譲り受け人を決定する場合の手続、そしてなぜ入札の方法がとられなかったのかという問題、あわせてお伺いしたいと思います。
  144. 丸山良仁

    参考人(丸山良仁君) 民間デベロッパーを選定する場合におきましては二つの面から検討するわけでございまして、その一つは、その事業計画が最もすぐれているかどうかということ、それからその事業計画を遂行する能力があるかどうか、この二面から検討するわけでございます。  本件につきましてもこの両面から検討したわけでございまして、まず計画の内容につきましては、法律の規制等に適合しているかどうか、あるいは建設指針への適合性があるかどうか。その中では、例えば周辺環境への配慮、空間構成、景観あるいは住戸の多様性、コミュニティー施設等の事項について慎重審議したわけでございますが、その場合におきましてリクルートコスモスの計画が特に多様な住戸構成を持った計画であること。コミュニティー施設、セキュリティーシステムの充実等の計画がとられていること等ということで、この十二社の中では計画的に最もすぐれている、このように判断されたわけでございます。  なお、事業の施工能力につきましては、先ほどから御議論のございますように、年間一千戸以上のマンションを建設している、こういう実績があったわけでございますからここに決めたわけでございますが、その手続といたしましては、まず南多摩開発局におきまして事前審査を行い、そこで業者を決めました上で本社に対しまして上申してまいりまして、本社で慎重に審議した上で総裁名をもって建設大臣に御承認をお願いする、こういう手続をとっているわけでございます。  なお、入札の方法でやらなかったのはどういうわけかということでございますが、それは一つのお考えだと存じますけれども、新住法の施行令の四条におきまして入札の方法をとることができないように規定されているわけでございます。最もすぐれた計画に対して選定するようにという規定があるわけでございまして、我々といたしましてはその法律の規定に従って選定したわけでございます。
  145. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この問題は後々まで大きな問題であり尾を引くことがありますので、まず、総裁、その十二社から出された計画を資料として提出していただきたい、これが一つ。本当にすぐれていたかどうかはわからないわけですからそれが一つ。それから、選考のときどこで選考したのか。リクルートコスモスに決定した責任者は一体だれなのか。それからもう一つは選考基準の法的根拠は一体どこら辺にあるのか。この三点について御答弁いただきたい。
  146. 丸山良仁

    参考人(丸山良仁君) 十二社の計画につきましては、これは合格しなかったものでございますから、やはり合格したものにつきましては公表しておりますが、公表するのはいかがなものかと私は考えておりまして、この提出は御勘弁願いたいと存じます。  それから、選考の過程その他につきましては資料をもって御要望があれば提出する考えでございますが、最終的に責任はもちろん総裁である私にあるわけでございます。ただ、いろいろの事務手続等はそれぞれの部署部署において行っておりますが、大臣申請をするときは当然総裁名でやっておるわけでございますから、最終責任と最終決定権は総裁が持っているわけでございます。  それから、選考基準その他につきましては、これは必要があれば提出いたしたいと存じます。
  147. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは選考基準等については詳細に提出をいただきたい。それから選考のメンバーも明らかにしていただきたい、よろしいですね。
  148. 丸山良仁

    参考人(丸山良仁君) よろしゅうございます。
  149. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それから、しかも先ほどから申し上げましたが、リクルートコスモスという会社が宅建法の行政処分を受けていた。それから都市開発部を入札のある二月に設置したところであった。一月に設置して二月に申し込んでおるわけです。そういうことは十分承知の上でこれはコスモスに決定をしたんでしょうか。
  150. 丸山良仁

    参考人(丸山良仁君) 宅建業法違反のあったことは承知いたしておりました。しかしながら、先ほど建設省の方から御答弁のございましたように、これは媒介関係に基づく指示処分でございまして、このマンションの建設そのものには関係がないということ。それからもう一点は、指示処分というような形でそれから一年もたっておるというようなことから十分承知した上でやったことでございます。
  151. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大体そういう弁解がましいことをなぜあなたは言うのですか。あなたもコスモスの株をもらっているんじゃないの。大体そういう弁解がましいことを言う必要はないわけです。リクルートコスモスという会社が、よろしいですか、そういう宅建業法違反の事件を起こしている。こういう会社を指名する場合には、そのことがこれは非常に大きなファクターになるはずです。そういう危険のおそれのあるところへ注文しないのが普通です、違いますか。それをあえてそんなことはもう一年もたっているから問題はない、それは問題はないかもしれませんね。だけれども、そういうことをあえて言うほどのことがどうしてあるんですか。  それからもう一点。計画がすぐれているから、そして実行ができるかどうか、この二つおっしゃいました。計画がすぐれているというのじゃ、例えば、どんな小さなデベロッパーでも、自分たちの設計したものじゃなくても、よそから持ってきてやったっていいわけですよ、そういうあなた方の理屈だ、そうはいかないでしょう。しかも十二社の中身をずっと比べてみなさい。リクルートこ設計の技術者が何人いるか知っていますか。
  152. 丸山良仁

    参考人(丸山良仁君) 設計の技術者が何人いるかは存じませんが、大体一般のデベロッパーにいたしましても、マンションをつくる場合には設計は設計の専門の方に委託するわけでございまして、自分のところで設計の技術者をそれほど抱えているということはないと聞いております。  それから、弁解がましいことを言われると申されましたが、私どもは信念を持ってやったことでございまして、別にここで言いわけをする必要はございませんし、何かリクルートの株をもらっているのではないかというようなお話がございましたが、そういうことがありましたら、私は直ちに辞職さしていただきます。
  153. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 当然です。  あなた方は技術者はいないのが普通、そうですか、いるのが普通じゃないですか。今、総裁は技術者はいないのが普通とおっしゃいましたが、いないのが普通ですか、デベロッパーは技術者がいるのが普通なんじゃないですか。
  154. 丸山良仁

    参考人(丸山良仁君) いないのが普通と申し上げたのは言い過ぎだったと思います。それはいる場合が多いと思います。当公団の場合には技術者は非常に大勢おります。
  155. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 だからあなた方がおっしゃっているように、当公団は技術者がたくさんいる、そんなことは何も聞いてない。リクルートはどうかと聞いているんじゃないですか。そうすると、あなたはいないのが普通ですと、そんな答弁があるんですか。
  156. 丸山良仁

    参考人(丸山良仁君) いないのが普通だともし申し上げたとすればそれは言い過ぎでございまして、いるのにこしたことはないわけでございますけれども、もしおらなくても設計会社というのがございますから、そこに発注すれば設計はできる、こういうことを申し上げているわけでございます。
  157. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そういう考え方では私は困ります。自分のところは設計しなくてもブローカーでいいということですね。そんなものなんですか。住宅都市整備公団の仕事のやり方というのはそういう考え方でやっているわけですか。もうちょっとしっかりした考え方を持っていただきたいと私は思います。
  158. 丸山良仁

    参考人(丸山良仁君) 当公団の住宅建設につきましても、自社で設計をする場合と設計会社に発注をする場合と両方ございます。
  159. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いや、だからこれからどんどん民間に発注しようというわけですから、そういう場合に、その会社自身がいわゆる仲介事業、分譲だけでやっているというのじゃ困るでしょう。やっぱりそういう専門の技術者もおって、しかるべききちっとした会社でないといかぬ、そうじゃありませんか。そういう基本的な考え方に立たないとこれから本当の分譲なんてできません。そこら辺のところはもうちょっと謙虚に受けとめていただきたいと私は思います。これから問題はだんだん大きくなりますよ。  問題を変えて、次の問題に入ります。  それでは、この分譲した土地の値段はどういうふうになっていますか。
  160. 丸山良仁

    参考人(丸山良仁君) 分譲価格につきましては、時価ということになっておりまして、その時価が幾らかということは専門の鑑定機関に依頼して出してもらうことになっております。この場合につきましても二社の鑑定をとりまして、それを基準にいたしまして決定したわけでございますが、当時の価格といたしまして、平米当たり二十一万七千円ということになっております。
  161. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それは時価ですか。
  162. 丸山良仁

    参考人(丸山良仁君) 我々はこれは時価だと考えております。なお二十一万七千円というのは、当時の周辺の公示価格に比べてわずかではございますが安くなっております。これは二万一千平米という大規模な大画地でございまして、公示価格で出ておりますのは戸建て住宅の場所の価格でございますから、細街路その他の必要は大規模の場合にはないということから、通常言われておりますのは鑑定価格におきまして三割ぐらいの違いがあるということが言われているわけでございます。当時といたしましては二十一万七千円という価格は適正な価格であったと我々は考えております。
  163. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、まずその二社の鑑定書、資料提出していただけますか。
  164. 丸山良仁

    参考人(丸山良仁君) 鑑定書につきましては、それぞれの鑑定機関のノーハウというものがあるそうでございまして、それはやはり鑑定機関としては出してもらいたくないというお話でございますので、お許しいただきたいと存じます。
  165. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは見せていただけますか。
  166. 丸山良仁

    参考人(丸山良仁君) 先生のところに持って上がるのにはやぶさかではございません。
  167. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 結構です。  私の手元の建設省から提出された資料によりますと、これは公示価格となっています。公示価格と時価の差というのは大体どういうふうになっていますか。現在で結構です、説明してください。
  168. 佐藤和男

    参考人佐藤和男君) ここで公示価格と申しておりますのは、当該画地を評価しました鑑定士が参考にされた公示価格を表示してございます。その価格時点における適正な時価そのものだと存じます。
  169. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 公示価格と時価は全然違うでしょう。どうですか。
  170. 佐藤和男

    参考人佐藤和男君) 先生御高承のとおり、地価公示法において公示価格は適正な時価を表示するということにされております。かつ、不動産鑑定士の評価におきましてもその公示価格に規準して鑑定評価するように法律上定められておりますので、私どもは公示価格はその時点におけるその画地における時価を表示しているものと考えております。
  171. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は時価はもっと高いと思っているんです。それはこの次のときに提示したいと思います。  それで、現在はその時価、公示価格はどうなっているんですか。
  172. 丸山良仁

    参考人(丸山良仁君) 二カ所の地点の公示価格をとったわけでございますが、それは六十二年一月一日に多摩13という地点が平米当たり二十二万五千円でございますし、それから多摩14という地点が平米当たり二十五万円でございます。ただし、残念なことに六十三年一月一日、一年間で二倍以上の値上がりをいたしまして、多摩13が五十四万三千円、多摩14が六十三万八千円となっております。
  173. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 要するに、あなた方が分譲した二十一万七千円と比較をいたしますと、少なくともこれは半年しかたっていないわけです。皆さん方が分譲したのは六十二年の五月二十九日ですから、半年です。六十二年の真ん中五月二十九日に二十一万七千円であったものが、あなたは二倍と今おっしゃいましたが、例えばこれを見てください、三倍じゃないですか。坪当たり14を比較してみると二百十万五千円でしょう。そして13の方は百七十九万。これはいずれにしても二倍じゃなしに三倍に近い。これは当時の観点から見ても、コスモスに対していろんな面から便宜を図っている、やはり問題がいっぱいあるんじゃないかと私は考えております。  それから次に、先ほどいろいろとおっしゃいましたが、住宅都市整備公団並びに建設省含めまして、リクルート並びにリクルートコスモス社並びに関連会社に天下りをしたり再就職した者が何人おりますか。
  174. 丸山良仁

    参考人(丸山良仁君) その前にお許しをいただきまして一言答弁させていただきますが、ただいま非常に値上がりしているから、いかにもリクルートにもうけさせたようなことになる誤解を生ずるおそれがありますから申し上げますけれども、新住法におきましては、民間おろしをした場合には敷地の譲渡価格につきましてはもうけていけないことになっております。個人に再議波する場合には土地の取得費、利息、公租公課、その他通常必要な費用の合計額以下で売らなければならない、こういうことになっておりまして、これにつきましては当公団の審査を受けた上で売る、こういうことになっておりますから、土地ではもうけられないことになっております。  なお、当公団からリクルート関係に就職している者は一名もございません。
  175. 望月薫雄

    政府委員(望月薫雄君) 建設省からリクルート、リクルートコスモスあるいはその関連会社に行っている者は一人もございません。
  176. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 結構です。  それでは、もう一点聞きにくいこともこれは聞いておきます。  先ほどもちょっと私は申し上げましたが、もしコスモスの株を譲り受け、あるいは購入あるいはそういう関係者だったら総裁は私はやめるとおっしゃいました。調査はされましたでしょうか、建設省と公団の方。
  177. 丸山良仁

    参考人(丸山良仁君) 川崎の件につきましては、予算委員会で公明党の及川先生から御要請がございました関係上、調査をいたしました。そして我々は面接をして、関係者に当たったわけでございますが、そういう事実はないということで、私はそれを信じております。  それから、多摩ニュータウンの関係のものにつきましては、建設省の方から御指示がございましたから、これも面接調査をいたしました結果、そういう事実はないということでございまして、私はそれを信じているわけでございます。  それから、なお私がやめると申しましたのは、私がもらっておった場合にやめるということでございますから、どうぞよろしく御了承いただきたいと思います。
  178. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いずれにしましても、これはこれからおいおい明らかになることでございますので、あれしていただきたいと思いますし、総裁もそれは自分でもらった場合はそれは当然だろうとしましても、周りで出てきたらこれはどうなるんですか。
  179. 丸山良仁

    参考人(丸山良仁君) そのときには建設大臣の御指示に従いたいと存じます。
  180. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 最後に大臣にお伺いしておきたいと思います。  これはいずれにしましても、こういう事件は分譲の時点でいろいろ問題がある。問題があるという意味は、このリクルートコスモス社自身が、今一生懸命私どもに弁明をするために資料をつくって、いわゆるマンションをつくってあれこれしているということで、この一覧表をつくって、これだけたくさんやっているんだからと言っていますけれども、会社自身の経歴やらいろいろな点をずっと調べてみればみるほど、やはりこの会社にはある程度問題があるのも事実であります。  そういう点は先ほどから総裁は、例えば技術者はいないのが当たり前とか、宅建業法だけでいいとか、そういうふうなんじゃなしに、もうちょっとしっかりした考え方で、入札やそういう指導をしてこういう問題に取り組んでいただかないと、国民の大事な税金を使うわけですから、そういうような意味では多少一発考えるべきところがある。今後の問題としてもそこら辺のところは十分注意をしてやっていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  181. 越智伊平

    国務大臣(越智伊平君) 先ほど来の問答を聞いておりまして、一点御理解をいただきたいと思いますのは、住都公団で入札で高く、住宅なりあるいは宅地を供給するということはできない、またやらせない、こういう考え方であります。  今の技術者の問題もございましたけれども、これはもうちょっと説明をした方がいいと思うわけでございます。この十二社の申し込みにいたしましても、確かに建設業者もおりますけれども、それでない、例えば伊藤忠であるとか新日鉄であるとか、いろいろそういうところもございます。要は、宅建業者を対象に申し込みを受けた、そしてその中で計画を見て、計画の一番いいのに指定をした。価格につきましては先ほどお答えいたしましたように、四十六億七千二百万、これはもうきちっと、これで譲り渡しいたしますよ、その中にどういう計画で住宅を建てていただけますか、こういうことでございます。でございますから、こちらから指名して建築をさせるのであれば建設業者でなければなりませんけれども、今のようなことでございますから宅建業者を対象にやっておる、こういうことでございます。  それから、価格の点につきましては、今申し上げましたように四十六億七千二百万。これはもう高くも安くもない、一番適当な価格だということで当時としてはやっておるわけであります。その後は確かに値上がりをしたであろうと思いますけれども、値上がりの機関車的役割を住都公団がするということも、これは大変なことでございますから、なるべく安くして、そして土地については、先ほど御説明申し上げましたように、決して値上がりをしてはいけない。でございますから、経費のみということでございますから、それで処理をしてもらえるもの、また、そうでないと認可、承認しないということであります。でございますから、いろいろ今になって思いますれば、リクルートがいいか悪いか、この判断は別といたしまして、その当時としては、公団が決定をいたしましたことにいささかも私は不備はないというふうに信じております。  その後いろいろ調査もいたしましたが、建設省なり住都公団にはこの株の問題もないようであります。今、調べましたところではないという報告を受けておりますので、これは正当なものというふうに判断をしておる次第であります。
  182. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いずれにしましても、この問題についてはきょうはこの程度にしたいと思います。  しかしながら、大臣、先ほどから私申し上げましたように、私が質問したことには大臣は一つも答えてない。要するにこれからの分譲の問題や、こういう問題に対する取り組み。例えば技術者はいなくてもいいのか、あるいは宅建業法だけでいいのか、そういう一つ一つの問題というのは幾つかあるでしょう。これから新しく事業を進めるに当たってそこら辺のところをやっぱりきちっとした方がいいのではないか、これは私は申し上げておきたいと思います。
  183. 越智伊平

    国務大臣(越智伊平君) 今の技術者の問題ですが、先ほど御説明申し上げましたように、こういう建築をということで建築をさせる場合には技術者が必ず必要でありますけれども、計画をして、こういう住宅をどういうふうにつくるかというのを出してくれという場合には、宅建業者としていた方がいいのかもわかりませんけれども、絶対いなくてはならないというものではありません。宅建業法にもそういう建築の技術者がいないといけないということにはなっておりませんので、やはり宅地建物取引業としてやる場合には建築技術者は必要ない、こういうふうに思っておる次第であります。
  184. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は大臣のお考えには賛成できません。そういう考え方ではこれからまた事故が起きる可能性があります。それなりの技術者がおって、それなりのことがきちっとできる——それは設計事務所があるからいいやないか、そうかもわかりませんが、やっぱりいるにこしたことはないわけです。もうこんなことを何回も言たってしようがありませんのでこれ以上言いませんが、大臣の今のお考えには余り賛成できません。  それから次に、ちょっと問題を変えまして、文部省の問題をお伺いしたいと思います。  きょうは、文部大臣、お忙しいところを御出席いただきましてまことに申しわけないと思っております。時間が余りありませんので、端的にお伺いしたいと思います。  今回の例の問題ですが、高石邦男前文部事務次官、これはいろいろと問題があるように思うのです。  一つは九州の帝京短大の認可の問題とか、あるいはその帝京大が生涯学習振興財団に八億円という巨額な寄附をしたとか、これはもう本当に、考えれば切りがないほど問題があるわけでありますが、ここら辺のところについては、現在文部省としてはどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、その概要も含めて御説明いただきたいと思います。
  185. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 委員からは主に九州福岡に対します御質問でございました。ただ、文部省の前事務次官のことでございますので特段に御質問には入っておりませんでしたけれども、直接にはリクルートコスモス株の未公開株の譲渡、これを奥さんが本人名義で譲渡を受けたという事実がございました。私はそれを聞きまして、これは本人であれ夫人であれ大変慎重さを欠いた行為で全く残念だ、こう思っております。その残念だと申します中には、たまたま現在教育改革を進めていきます上で、各党の各委員にも御熱意ある御審議をいただいておるところでありますし、その途上このようなことで汚すようなことがあってはまことに申しわけない、このように考えておるところでございます。それにつきましては直ちに聴取いたせるべきところは聴取いたさせ、そして省内におきましても厳正な職務の遂行を徹底させるということにいたしております。  なお、後段の財団法人の設置その他につきましてはすべて掌握を、つまびらかにしている点、していない点がございますので、急遽この点につきまして事実の確認をいたさせております。今までわかっております点は、お許しいただければ政府委員から御報告をさせたいと思います。
  186. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) 午前中菅野先生からの御指摘がございまして、当時その時点におきましては八億円の寄附問題は、この財団を認可いたしました福岡県教育委員会の方からは出資者の名前を明らかにすることは差し控えたいということでございまして、その後急遽学校法人帝京大学に対しまして直接照会をいたしまして、財団へ八億円の寄附をしたという事実は確認いたしております。
  187. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは財団そのものが、私も詳細に現場へ行って調べたわけじゃないので、いろんな報道や資料等に基づいて申し上げているわけでございますが、やはり選挙運動やそういうふうなものに十分利用されている点があるわけです。しかも財団の設立準備そのものが次官在任中になされている点、あるいは八億の寄附の問題等、これは職務権限の問題やいろんな角度から検討をしなければならないと私は思うのですけれども、検察当局はこの問題について関心を持っていらっしゃるかどうか、お伺いしておきたいと思います。
  188. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) この問題につきましては数日前に新聞で拝見して、また本日御指摘があったところでございますので、現在のところ何とも申し上げかねる点でございます。御指摘は御指摘として十分拝聴いたしていると思います。
  189. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは申し上げれば文部大臣、切りがないぐらいたくさんありまして、きょうはこれからの時間帯でいきますととても時間ございません。  これは、ことしの六月の退官後に生涯学習振興財団というものをフルに活用されているようでございまして、特に八月、九月、十月とそれぞれ選挙区内で記念講演会のようなものをやったり、あるいは入場無料で落語家の皆さんやいろんな方を呼んで会合をやっていらっしゃるとかいっぱいあるわけです。こういうふうなものを聞いておりますと、これは帝京大学の八億の寄附行為そのものにも問題が出てくるんじゃないかと私は考えるわけでありますが、帝京大学は日本私学振興財団から六十二年度には二十四億五千五百六十六万円ですかの助成金が出ているわけです。そういう点から絡んでみましてもこれは非常に大きな問題であると私は思うのですが、ここら辺のことについてはどういうふうにお考えでございましょうか。
  190. 野崎弘

    政府委員野崎弘君) 今御指摘がございましたように、学校法人帝京大学に対しまして私立大学等経常費補助金が出ておるわけでございますが、この私立大学等経常費補助金は、私立大学等の教育研究条件の維持向上あるいは修学上の経済負担の軽減を図るというようなことを目的にいたしまして、具体の算定の方法は、専任教員数あるいは学生数等を基礎にして算定しているわけでございまして、教育研究にかかる経常的経費を対象にしている、いわば教職員の給与費あるいは教育研究費に充当されるという性格のものでございまして、寄附とは関係がないもの、このように考えているわけでございます。
  191. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 文部省にもう一点お伺いしておきたいと思うのですが、高石前次官が退官後、文部省のOB室というのがあるんですかないのですか、私わからないのですが、そこを利用してそこで選挙運動をしているという報道があったわけです。これは文部省の中にOB室とかまたは控室とかそういうようなものが実際にあるんでしょうか、そしてそれはどういうふうになっているのか、そして高石前次官は退官後その部屋にどういうふうに出入りをしていらっしゃるのか、あわせてお伺いしておきたいと思います。
  192. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) 文部省の中に、五階でございますが会議室のそばに応接室という部屋がございます。これは会議室の控室でございましたが、七月の中下旬だったと思いますが、文部省OBの方のお立ち寄りになった場合にお休みになる部屋がないのは不便であるという従来からOBからの御意見等もございまして、そのような応接室ということで部屋を設けさせていただいております。  ただし、ここの部屋の利用につきましては、よく利用されました方で今まで十数回いらっしゃるOBもいますが、高石前次官は二、三回お立ち寄りになった程度ではないかと思います。
  193. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そういう問題について誤解をされないようにしていただきたいということだけ申し上げておきたいと思います。文部省、結構です。  法務省にお伺いいたします。  今回のリクルートコスモスの特に楢崎弥之助さんの問題が出てまいりまして、先月の十九日でございますか、ですからもう二十日になるわけであります。昨日からの報道によりますと、検察首脳会議というのが行われたというふうにも聞いているわけでございますが、これまでの捜査の概要を現在の状況とあわせて御答弁いただきたいと思います。
  194. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) ただいまお話しのように、十月十九日にリクルートコスモス社等を捜索いたしまして、翌二十日に松原前室長を逮捕いたしまして、二十二日に勾留いたしまして、十日の勾留期限が切れる前に勾留延長の手続をとりまして、あした勾留満期になるわけでございます。その間、東洋信託銀行とかその他リクルート関係の場所を捜索いたしまして多数の証拠書類等を押収しております。  現在の見通しといたしましては、内部的にはほぼ方針が固まっていると思いますが、あすいずれにせよ処分という予定になると思います。
  195. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 国民の期待は松原前社長室長の贈賄事件の立件だけではなくて、リクルート並びにリクルートコスモス全体の疑惑の解明にあると私は思います。そういうような意味で特に問題の核心は株式譲渡の会社側の意図であろうと思うのです。この面の解明はこれからの捜査の状況にかかっていると私は思っているんですが、その面の捜査の進捗状況は現在どういうふうになっていますでしょうか。
  196. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 現在、検察庁が捜査をいたしておりますのは楢崎議員告発の事実でございますけれども、その事実の背景をなす事実等についても検討いたしておりますし、私の感じでは国会で御議論のあったことについてもいろいろ検討はしていると思います。したがいまして、あす松原元室長の処分が終わった段階で、検察庁としては今後の方針等を決定して進むべき道を明らかにするものと考えておりますが、現在こう申しましては非常に語弊がございますけれども、報道が先行しておる。そして、国会の御議論があって、検察庁がその後ろをついていくというような感じでございますので、これから着実に証拠の積み上げをしていくものと考えております。
  197. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 きょうは時間の関係で詳細できません。通告はたくさんしておりましたがこの次に譲ることにいたしまして、最後に、特に今背景の事実関係というお話もありましたから、これから着実に積み上げていかれるんであろうと私は思うのですけれども、当然今回の未公開株式の譲渡というのは、その趣旨あるいは職務権限の関係とかいろんな問題がいっぱい出てくると私は思います。そういうふうな関係を見まして、こんなことを今聞いていいのかどうかわかりませんが、捜査終結のめどというのは考えたことはありますか。
  198. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 現在、いつ捜査が終わるか、あるいは検討が終わるかということについて申し上げるほどの資料は持っておりません。
  199. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 終わります。
  200. 諫山博

    ○諫山博君 日本共産党の緒方国際部長宅電話盗聴事件について聞きます。  その前に、法務大臣に質問しますけれども、法務省矯正局長・検事の河上和雄氏が「月刊警察」十月号に「対監獄闘争」という短い文章を発表しておられます。この中で、「裁判所の許可があれば盗聴ができるような国内法制の整備をすべきであろう。」と書いています。重大な内容です。きょうの朝日新聞を読みますと、「法務省局長が盗聴の「勧め」」となっております。これほど電話盗聴が大きな政治問題になり、刑事問題にもなっているのに、法務省の現職の矯正局長が盗聴の勧めと理解されるような文章を発表する。これは不謹慎というにとどまらずに、警察に対する盗聴の励ましだし、これを追及している私たちに対する挑戦だと思いますけれども、法務大臣の感想をお聞きします。
  201. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 大臣がお答えする前に、私から若干法務省としての、事務当局としての考え方を申し上げます。  御指摘の河上和雄矯正局長が書きました随筆といいますか、そういうものについては、何も盗聴を勧めているとか、そういうことではありませんで、いわゆる過激派の内部でいろいろそういうお互いに盗聴事件などを起こしておる。ところが、役所の方はそういう武器を持っていない。したがいまして、裁判所の令状があった場合に、盗聴が許される法制を考えてもいいんではないか。これはアメリカ、イギリス、フランスなどでも既にそういうふうな制度をとっている。これは私詳しくは存じませんけれども、そういうふうな論調でございまして、決して委員の御指摘のあった盗聴の勧めというようなことではございませんで、むしろ立法論を申し上げているわけでございます。  なお、つけ加えて申し上げますと、法務省矯正局はこういう盗聴といいますか、そういう制度について所管をしている局ではございません。したがいまして、これは全く個人的な見解でございまして、こう言うとまたおしかりを受けるかもわかりませんけれども、これは表現の自由といいますか、思想の自由の範囲に属するものではないかという考え方も一方ではあるわけでございます。  そういうことでございますので、これは法務省としては全く関知しないことでございます。
  202. 諫山博

    ○諫山博君 今の説明に納得できません。発表された雑誌は「月刊警察」です。警察官に呼びかけているんです。しかも肩書は法務省矯正局長・検事。一人の学者、研究者が一般的な雑誌に発表をしたのと違うのです。盗聴の勧めというのが私の誤解のように言われましたけれども、これは朝日新聞の表現です。朝日新聞は、これを盗聴を勧めている文章だなと理解してこういう表題をつけたわけです。  私は、大臣にお聞きします。これは不謹慎というにとどまらず、やはり警察官を、盗聴というのは大したことではありませんよと励ましていることになりませんか。客観的にそういう役割を果たしているからこそ朝日新聞は「盗聴の「勧め」」という表題をつけております。警察官という特定な人たちに対する呼びかけです。  二つのことを質問します。これは法務省全体の考え方であるのかどうか。もう一つは、これは不謹慎だし、誤解を招くし、何らかの形で取り消すという措置を講ずべきだと思いますが、どうでしょう。大臣がこの場で取り消していただければそれで結構です。
  203. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 私は新聞によりまして読んだにすぎないわけでありまして、まだその内容につきまして、考え方につきまして本人から聞いていないところでございます。  法務省としましては、法務省全体の考え方ではございません。今のところそういう法律をつくろうというような考え方は持っておりません。
  204. 諫山博

    ○諫山博君 今の問題については、法務大臣は、検討に時間をかしてほしいということのようですから、後日何らかの機会にお伺いしたいと思います。  そこで、法務省の岡村前刑事局長は、衆議院の法務委員会で、盗聴した警察官を東京地検が起訴猶予にした理由を三つ挙げています。  第一は、個人的な利益を図ったものではない、第二は、犯行の首謀者、責任者ではなかった、三番目に、警察は本件について遺憾の意を表し、事件に関与した警察官に相応の懲戒処分を行うとともに再発防止に努める旨の書面が東京地検に提出された、これが盗聴した警察官を起訴猶予にした岡村前刑事局長の公式答弁になっています。刑事局長は交代されましたけれども、これは現在も変わらないと聞いていいでしょうか。
  205. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 東京地検がそういう理由で処分したものと承知しております。
  206. 諫山博

    ○諫山博君 東京地方検察庁が起訴猶予の決定をする直前に、神奈川県警本部から東京地検に書面が出されています。これは東京地検の求めに応じて出されたものであるし、この書面が東京地検が起訴猶予の決定をする上での参考資料になったと理解されますが、そのとおり理解していいでしょうか。
  207. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 先ほど御指摘の六十二年、去年でございますけれども、衆議院法務委員会で安藤委員からお尋ねがありまして、そのとき答弁しているとおりでございます。
  208. 諫山博

    ○諫山博君 私が聞いたのは、これは検察庁の求めに応じて出されたものだし、これが起訴猶予の一つの材料になっているということはいいかということです。
  209. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 求めに応じたかどうかというところの詳細は承知しておりませんが、起訴猶予の一つの要因といいますか要素になっていることは事実だと思います。
  210. 諫山博

    ○諫山博君 これは会議録を詳細に読んでいただくし、さらに伊藤前検事総長の遺稿を見ても検察庁が要求したというふうになっているんです。そこでこの書面には盗聴事件について警察が遺憾の意を表明した、事件に関与した警察官に相応の懲戒処分を行うことが約束された、再発防止に努めるということも言われた、こうなっていますが、これは当然のこととして警察官が盗聴を行った、まことに遺憾である、こういう盗聴はもう二度といたしません、そういう理解をされたんでしょうか。東京地検としてはいかがですか。
  211. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) この書面を正確に読みました場合に、警察がみずから調査あるいは捜査をしてそういう結果を出したということではなくて、東京地検から警察官が関与していたという結果の連絡を受けたということを踏まえまして、警察が行う情報活動について今回の事件の教訓を十分に生かして、このようなことが起こらないように強く戒めてまいりたいというようなことだと考えております。
  212. 諫山博

    ○諫山博君 私が聞きたいのは、東京地方検察庁はどのようにこの書面を理解したかということです。もう少しつけ加えますと、二名の警察官が関与していたことが判明したので、この事実を神奈川県警に通報するとともに、神奈川県警としての対処処分をただした。これを受けて神奈川県警から書面が出された。これが書面提出のいきさつです。みずから情報収集活動のあり方を見直し、これを是正する趣旨で右のような一通の書面が出されたという説明もされております。そして、東京地検としては再発防止に努めるそうだ、遺憾の意も表明している、となれば当然警察は盗聴行為を認めて遺憾の意を表明した、盗聴行為を認めて再発防止に努めるということを誓約したと理解したのでないと筋が通りませんけれども、違いますか。
  213. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) その辺を非常に論理的に御質問になりますと、私も答えに窮するわけでございますが、警察としましては、当時は自分の身内の者がこういう事件をしたというふうに指摘されておるわけでございますので、それは東京地検の捜査にまつという態度であった、こういうふうに理解しているわけでございます。したがいまして、東京地検の捜査の結果、警察官二名が盗聴事件に関与しておりましたよというふうな通報を受けた。それを前提にいたしまして、そういうことであれば今後は十分注意していきますということでこの書面を出されたんであろうと思います。警察がそれを認めたとか、認めないとかということを私どもに言われても少しお答えに困るわけでございますので、その辺は私の理解はそういうところであるというふうに考えております。また、地検の方もそういうふうに考えていたんだろうと思います。
  214. 諫山博

    ○諫山博君 私は言葉を選んで質問しているんです。東京地検はこの書面をどのように理解したかと聴いているんです、警察がどう言っているかじゃないのです。そして、検察庁としては再犯防止に努めると理解した。反省の意も示している、関係者の懲戒処分もする。そうすると、警察官は盗聴を認めて二度とこういうことをいたしませんと約束したから、これが起訴猶予の有力な材料にされたと理解するのが当然だと思うから聞いているんです。  さらにもう一つつけ加えて聞きますと、二名の警察官が関与していたことが判明しましたので、この事実を神奈川県警に通報したと書いてありますけれども、これに対して神奈川県警から反論がありましたか。
  215. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 私どもその当時担当者じゃありませんのでよくわかりませんけれども、そういう反論はなかったのではないかと思います。
  216. 諫山博

    ○諫山博君 警察庁に質問します。  神奈川県警から東京地検に書面が出された。この書面の内容で少なくとも検察官の方では三つのことを理解しているわけです。再発防止を約束した、関係者は懲戒処分にする、遺憾だ、こう理解されるような書面を検察庁に出して、これが不起訴の有力な材料にされたということは伊藤前検事総長の「秋霜烈日」を見ても明らかです。警察は警察官が盗聴行為を行ったことを今認めているんですか。
  217. 城内康光

    政府委員(城内康光君) お答えいたします。  本件につきましては、神奈川県警察が可能な調査を徹底してやったわけでありますが、盗聴について職務命令を出したことはないということでございまして、また内部調査の結果でも名前の挙がっておるような警察官についていろいろ調べもしたわけでございますが、その関係が判然としなかったわけでございます。しかしながら、ただいま御質問で御指摘がありましたように、東京地検からの連絡で警察官がその盗聴に関与をしていたというような認定がされたという通報を受けましたので、神奈川県警察としてそういうことは認定できないし、また組織的に職務命令を出してやったことではないのでありますが、そういうことがいろいろと論議されたということに対してはこれは厳粛に受けとめるべきことであるということで、遺憾の意を表したわけでございます。  そしてまた、相当の懲戒処分と申しますのは、やはり著しく信用を傷つけるという明白な事実があるということに着目いたしまして、そのことについて組織内部における秩序を維持する必要があるので、そういう懲戒処分ということについての言及が第二点にあったということでございます。  それから、また再びかかることのないように努める意味の文言があるという報告を受けておりますけれども、それはやはり情報収集活動というのは適法、妥当にしなければいけない、法に基づき法に従って活動しなければいけない。これは当たり前のことでございますので、そういったことについてとやかく言われるようなことになりますとやはり国民の疑惑を招くということで、警察活動を推進する上で大変障害がある。そういう意味で再びこういう疑惑を受けないようにということについての言及がなされた。  以上三点の言及がなされたわけでございます。そういう文書を神奈川県警から東京地検へ出したわけでございますが、それをどのように評価するかということはこれは専ら東京地検の問題でございます。
  218. 諫山博

    ○諫山博君 法務省に質問します。  警察が再発防止を約束するというのは、再発ですから、一たん盗聴は行ったことを認めた上で再発いたしません、これが筋です。遺憾の意を表明する限りは、自分が犯罪行為をやったことを認めて、申しわけありませんでした、これが常識です。  法務省、検察庁はそういう理解をされたんですか。それとも、今警察が言っているように、警察が盗聴をやったかどうかわからぬけれども、申しわけありません、こういうことはやらないようにします、こういう文書と理解したんですか。
  219. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 先ほど申し上げましたように、東京地検はいろいろ手段を尽くしまして捜査を遂げたところが、この警察官二人について盗聴未遂といいますかそういう事実があって、これは法令に違反する行為だということを断定して、結局は起訴猶予にしたわけでございますけれども、その事実を警察に通報したということでございます。それを受けまして警察は、そういうことがあったなら再発防止に努める、これを教訓にしていきたい、こういうふうに言われたわけでございまして、そこに認めるとか認めないとかという一つの論理構成というものをとらずに、そういうふうな警察の御意思ならばそれも一つの起訴猶予の理由になりましょうということだと考えております。認めたかどうかということになると非常にこれまた難しい議論でございまして、ちょっとここで即座にお答えできないところがございます。
  220. 諫山博

    ○諫山博君 実は前刑事局長に私は問い合わせたんです。そうしたらあなたとは違ったことを言っておられます。明らかに警察が盗聴を認めて遺憾の意を表明している、再発防止を約束している、だから起訴猶予の材料になったんだ、これが常識じゃないですか。盗聴を認めているか認めないかわからぬのに、これが情状の有利な材料になるはずはありません。この問題をめぐって私たちもそう考えているし、マスコミもこれは警察と検察庁のやみ取引だと言っております。今刑事局長が言われたようなことならまさにやみ取引じゃないですか。以心伝心、はっきりしたことは言われないけれども、とにかく反省の色を示している、再発防止を約束している、これはもう文字どおりやみ取引を法務省が認めているという答弁としか理解できません。  今度は警察庁に聞きます。  関係者の取り調べをしたはずですけれども、査察官が調査したそうです。関係者はこの問題について盗聴を行ったと言いましたか、行っていないと言いましたか、それとも沈黙をしましたか、この三種類のどれかだと思いますけれども、どうですか。
  221. 城内康光

    政府委員(城内康光君) 東京地検の処分が出ましたのが昨年の八月四日でございます……
  222. 諫山博

    ○諫山博君 そういうことは聞いておりません。三つのどれであったかを聞いているんです。
  223. 城内康光

    政府委員(城内康光君) そして、そのときに懲戒処分というものをあわせてやったわけでございます。懲戒処分をやったということは、当然それは神奈川県警祭における懲戒審査委員会で審査をしたわけでございます。したがって、その前提として関係者から事情を聞くというようなことについて、いろいろ調べるということは監察官の仕事として当然やるわけでございます。  そこで御質問の核心についてお答えいたしますが、いろいろと手を尽くして事情聴取もしたわけでございますが、関係者は多くを語らなかったということで、判然としなかったわけでございます。また、先ほど申し上げましたように、上司などについてもいろいろ調べましたけれども、一切そういった職務命令は発していないということがわかった程度でございます。
  224. 諫山博

    ○諫山博君 東京地検も東京地裁も東京高裁も、これは組織的な犯行だ、実行行為者よりかもっと上の人がいる、こういう認定をしておりますけれども、この問題に対する警察庁の調査結果はどうなりましたか。
  225. 城内康光

    政府委員(城内康光君) 組織的かどうかというようなことにつきまして私どもが調べたのは、ただいま申し上げたとおりでございます。  東京地裁あるいは東京高裁などで判断がされたというようなことにつきましては、これは検察庁の処分に対するそれぞれの裁判所の判断でございまして、私どもがその一々について申し上げることはいかがであろうかなというふうに思います。  また、現在まだ住民訴訟とかあるいは国家賠償法とか、さらにはまた付審判請求の関係につきまして最高裁に特別抗告がされているというようなこともございますので、その一々について私が申し上げることについては差し控えさせていただきたいと思います。
  226. 諫山博

    ○諫山博君 国家公安委員長に質問します。  警察官が盗聴したかしていないか、警察としてはっきりつかめないというようなことがあり得ることでしょうか。現職の警察官ですよ。査察官の取り調べに対しては真実を述べる責任があるんじゃないですか。どうも聞いていると、やったとも言わない、やっていないとも言わない、黙秘しているんじゃなかろうかというような気がしますけれども、上からの職務命令に基づく調査に対して警察官は答えないという態度をとることができるんですか。私は責任者の国家公安委員長にお聞きしたいと思います。
  227. 城内康光

    政府委員(城内康光君) 多少事実関係に関連いたしますので、私から事務的に御説明をいたします。  関係の警察官にいろいろと問いただしをしたわけでございますが、言われるようなことについては承知をしていないということでございまして、今何も話さなかった、応じないというような状況ではないわけでございます。もちろん組織の一員でございますから、上司からそういう調査を受けるときには当然部下としてそれに応ずるということは私は義務があるんではないかというふうに考えております。そしてまた、当該関係者もそれにはちゃんと応じておるわけでございますが、いろいろと聞かれるようなことについては承知していない、そういう答えであったというふうに神奈川県警から報告を受けておるわけでございまして、そこから先にどうしても踏み込めない、こういうことであったわけでございます。
  228. 諫山博

    ○諫山博君 私が知りたいのは結論です。盗聴をやったとされている警察官は、盗聴をやったと述べたのか、やっていないと述べたのか、黙っておったのか、この三つ以外にあり得ないでしょう。どう言ったんですか。
  229. 城内康光

    政府委員(城内康光君) 今お答えしたりもりですが、答弁が下手で御理解いただけなかったようでございますが、いろいろと聞きましたけれども、そう言われるようなことについては承知をしていないというのが答えでございます。
  230. 諫山博

    ○諫山博君 自治大臣にお聞きしますけれども、大体問題点はわかったでしょう。検察庁も裁判所も検察審査会も現職警察官が盗聴したと言っているんです。当然内部調査がされたわけですけれども、盗聴をやったかどうか警察としてつかめないようです。そんな警察がありますか。自浄能力はゼロじゃないですか。どうですか。今の日本の警察はそういう状況なんですか。——あなたの話は聞きません。国家公安委員長の答弁を聞きます。
  231. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 私もただいま政府委員から御答弁を申し上げたような認識を持っております。
  232. 諫山博

    ○諫山博君 でたらめ至極です。  そこで、法務省にもう一遍聞きますけれども、あなたたちは警察から手玉にとられているんじゃないですか。ペテンにかけられているんじゃないですか。どうして今の態度を遺憾の意の表明と見られますか。どうしてああいう態度が再発防止の態度と言えますか。あの処分がいかに間違いであるかということは東京第一検察審査会が指摘しております。東京地方裁判所も東京高等裁判所も言っております。とりわけ東京高等裁判所は、あの事件は職権乱用とは言いにくいけれども、それでもほかの罪名で処断さるべきだと言っている。そして、東京地方検察庁が不起訴を決定したときに一斉にマスコミは批判の声な上げました。これでは盗聴は野放しじゃないか、なれ合いではないか、自浄能力はゼロじゃないかというのがマスコミの共通した意見でした。あの起訴猶予というのは至極当然だというようなマスコミ論調は全くなかったでしょう。これは国民的な世論です。  そして、検察審査会の結論というのは拘束力はないと言われておりますけれども、本件は情状に関する勧告です。警察官が犯罪を犯したことは検察庁も認めておる。しかし、起訴するほどの事件ではないと検察庁は言っているけれども、そうじゃありません、これは起訴に値する事件ですと検察審査会が言っております。この検察審査会の結論というのは当然尊重されなければなりません。そして、不起訴決定の事実認定についても、さまざまに東京地裁、東京高裁から批判されております。例えば、犯人は二名だと検察庁は言ったけれども三名いるじゃないか、あるいは組織的な犯罪であることは明白じゃないか、検察庁は未遂だと言っているけれども、未遂ではない、あれは既遂だ。さらに、東京の検察審査会は、仮に未遂であっても起訴猶予で罪を逃れさせるような簡単な事件ではない、こう言っている。そして、この不起訴決定の背景に検事総長以下検察庁の首脳陣の極めて高度な政治的な配慮があったことは「秋霜烈日」の中に書かれております。自衛隊とか警察のような実力部隊に対しては検察庁は手が出せません、こういうことを前検事総長が言っているんです。  共産党の電話盗聴事件、今、東京地方検察庁で再捜査がされているわけです。今のような世論、今のような各行政機関の結論を十分尊重して全面的にこれは洗い直さなければならないと思いますけれども、刑事局長と法務大臣の答弁を求めて私の質問を終わります。
  233. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) ただいまいろいろ御指摘がございましたけれども、私どもとしてはとても納得できるような御主張ではないと考えております。検察審査会におきましても不起訴不当という結論が出ましたけれども、起訴すべしとは申していないわけでございますし、また東京高裁の決定につきましても処断されるべきであるというわけでございまして、起訴しろというような話ではないと思います。やはりそういうことで、前検事総長の「秋霜烈日」の文にしてもいろいろ私たちは申したいことはいっぱいございます。しかしながら、ただいま最後にお尋ねになった検察審査会の意見についてどうだと言われることにつきましては、現在検察審査会の意見を踏まえまして東京地検で再度検討中であるわけでございまして、そのうちにその検察審査会の意見を踏まえて結論を出すことと思っております。
  234. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) ただいま刑事局長から答弁を申し上げましたように、現在この事件は、検察審査会の不当とする議決を受けまして東京地検におきまして改めてその処分を検討しておるところでございまして、その上で適切な処理を行うものと存じております。
  235. 諫山博

    ○諫山博君 終わります。
  236. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 きょうは、昭和六十一年度決算についての総括的な質問第一日目でございますので、まず会計検査院に対して総括的な質問をいたしまして、残りの時間を大蔵省に対して質問いたしたいと思っております。  まず最初に、検査院長にお尋ねしたいと思いますが、昭和六十一年度決算検査報告についての院長の総括的な所感、それが第一点。それから第二点として、最近の傾向として会計検査院はどういう点に重点を置いて検査をしておられるのか、その二点をお尋ねしたいと思います。
  237. 辻敬一

    会計検査院長辻敬一君) 会計検査院といたしましては、会計経理の適正を期し是正を図るという本来の使命を全うするために毎年検査を行っているところでございますが、六十一年度報告を取りまとめるに当たりましては特に三点に注意を払ったつもりでございます。  第一は、国民の皆様方の御関心の深い住宅、土地問題でございまして、この点につきましては、公庫住宅、公団住宅が第三者に無断で賃貸されていた事態でございますとか、あるいは学校用地のための補助が目的外に使用されておりました事態等を指摘いたしております。  二番目は、高齢化社会になってまいりますと年金、医療費がますます重要になってまいります。この面では、負担能力がありますのに国民年金保険料の納付を免除されている事態でありますとか、あるいは老人ホームのお年寄りの医療費が過大に支払われている事態を指摘いたしております。  三番目は、内需拡大でありますとか社会資本の充実のために公共事業が注目されてきておるわけでございますけれども、この面におきましては、技術の進歩に伴いまして新しい工事の方法あるいは大型の機械、また新しい材料などが開発、導入されておりますのに、それを設計や積算に反映しておりませんために工事費が不経済になっている事態を指摘いたしております。なお、この不経済になっている事態に関連いたしまして円高差益にも注意をいたしておりまして、外国製の医療機器の購入に当たりまして円高差益を考慮しなかったために割り高になったような事態も指摘をいたしておるわけでございます。  その結果、指摘をいたしました件数が百五十六件、金額が二百十四億円とそれぞれ前年をやや上回ることとなっておるわけでございます。  第二のお尋ねは、最近どのような点に重点を置いているかというお尋ねでございますが、新しい検査の観点、新しい検査の領域あるいはまた新しい検査の手法ということに重点を置いて検査に当たっているつもりでございます。  御承知のように、法令、予算などに従いまして法令、予算などに経理が適合しているかどうかという観点からの検査、合規性の検査と申しておりますが、これは検査の原点でありますからこれをおろそかにするわけにはまいりませんけれども、それだけでは十分ではございませんで、もう少し少ない費用でできなかったか、あるいは同じ費用をかけるならばもう少し大きな効果は得られなかったかという観点、経済性、効率性の観点と申しておりますが、そういう観点からの検査、あるいはまた本来の目的を本当に達しているかどうかという有効性の観点からの検査に重点を置いてきているところでございます。官庁の経理におきましては、とかく節約意識が薄いという問題もございますし、あるいはまた仕事がやりっ放しになって後のチェックが十分になされていないという傾向もあるわけでございますので、特にそういう点に注意を払っているわけでございます。  次に、新しい検査の分野といたしましては、先ほども申し上げましたように、高齢化の進展に対応いたしまして年金でありますとか医療費でありますとか、そういう面に重点を置いております。この面は、率直に申しまして私ども従来手薄だった分野でございますけれども、順次体制を整備いたしまして検査に当たっておりまして、検査の成果も上がってきておると考えております。  それから、国際化の問題も、午前中の御審議にもございましたが、経済協力の検査につきましても昨年以来いわば本格的な海外検査も実施をしておるところでございます。  第三番目の検査手法につきましては、コンピューターを活用した検査を行っております。大量定型的と申してよろしいかと思いますが、年金、保険、租税等の検査にはコンピューターを使いまして相当な成果を上げております。この手法は漸次定着しつつあるのではないかと考えておるところでございます。  なおまた、学者の方に集まっていただきまして研究会を設けておりまして、いわゆる費用効果分析のような新しい手法も研究いたしておりまして、漸次実際の検査に応用してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  238. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 今院長は、お役人は節約の観念が薄いということを言われました。私も前に公立学校で行政の仕事をやっていたこともあるんですけれども、そこで感じたことは、やはりどうも規則にさえ合っていればいいのだというので、節約であるとか効率であるとか、今院長の言われました有効性というんですか、エコノミー、エフィシェンシー、エフェクティブネス、3Eと言っておられるようですけれども、それに重点を置いておられることは、私非常に結構なことだと思います。ただ、この点については多少お聞きしたいことがありますので後でお聞きします。  そこで、六十一年度ではいわゆる特記事項というのが全然なかったのでございますけれども、特記事項というのは一体どういう目的を持っておるのか、それからそれがなかったというのは、検査したけれども事実上なかったのか、あるいは当該省庁との意見が合わなかったために書かなかったのか、その点を質問したいと思います。
  239. 辻敬一

    会計検査院長辻敬一君) 特記事項と申しますのは、不当事項ではない、さりとて検査院法の第三十四条あるいは三十六条による処理にもなじまないということでございまして、例えば事業効果、事業運営などの見地から広く問題提起をさせていただく、そして今後の事態の進展を図るという趣旨の事項でございます。国会、国民皆様方の御判断の素材とするという意味でございます。六十一年度に確かに特記事項として掲記したものがなかったわけでございますが、これはたまたまそういう事例がなかったということでございまして、今後とも必要に応じまして特記事項を活用してまいりたいと考えております。  なお、相手省庁と意見が合わなかったので特記事項に掲記しなかったというようなことはございません。
  240. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 特記事項で問題を提起する、国会あるいは国民に対して考えてもらう、その趣旨は私も賛成でございますが、それについてまた後で述べることにいたしまして、検査院法の三十六条の趣旨、これはつまり既存の法律であるとか制度を合規性を重視する余り規則どおりに実行すると、かえって先ほど言われたところの三Eに反する結果を生む、余りしゃくし定規にやると、かえって節約という点でおろそかになってくる。そのために既存の法律あるいは制度、そういったものの見直しを求めるために三十六条があるというふうに考えてよろしいでしょうか。
  241. 辻敬一

    会計検査院長辻敬一君) ただいま御指摘のとおりでございまして、三十六条と申しますのは、必ずしも不当を前提といたしませんけれども、制度あるいは行政に問題ありと考えました場合に処置の要求あるいは意見の表示をできるようになっている制度でございます。
  242. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 これはお役人が余りにしゃくし定規にやるとかえって経済性の点で効果が出ない。そういう点で、ある意味ではお役所のジレンマを解消するための制度であり、三十六条であるというふうに理解しておりますので、今後大いにこれを活用していただきたいと思います。  先ほど言われましたところの経済性、効率性及び有効性。この中で経済性、効率性というのは比較的客観的な基準と言えるんではないかと思います。つまり、インプットとアウトプットの関係であって、経済性というのは、同じアウトプットを出すのであればもっとインプットの節約ができたんではないか、あるいは効率性というのは、同額のインプットを投入するのであるならばもっと大きなアウトプットができたんではないか。それはあくまで会計でございますから、そのインプット、アウトプットは時価などを参照することによって客観的に検証ができると思うのですけれども、有効性をはかる基準というのは果たして見出せるというふうにお考えでしょうか。
  243. 辻敬一

    会計検査院長辻敬一君) 確かに今御指摘のように、有効性についての判断の基準というのは難しい問題をはらんでいるわけでございます。例えば、施設が何年たっても完成しないとか、あるいは計画に比べて著しくおくれているとか、あるいはまた完成しても全く利用されていないというような場合には客観的に明らかでございますので、有効性の観点から指摘をいたした事例はたくさんあるわけでございます。  しかし、問題はそれなりに利用されているケースでございまして、考えてみると費用をかけた割にはどうも効果が上がっていないのではないかというようなケースが一番難しいわけでございます。そういうような場合にはやはり、費用と効果とを計量的に把握いたしまして比較をすることが必要ではないかと考えております。費用効果分析と申しますか、あるいは費用便益分析と申しますか。そこで、先ほど申し上げましたように、学者の方のお知恵もかりましてただいま研究、勉強いたしております。その結果を道路でありますとか、あるいは農用地開発が果たして目的を達成しているかどうかというような面に順次応用してまいりたいと考えておるところでございます。
  244. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 この点で非常に難しい点があるんじゃないかと思いますのは、例えば山村とか僻地なんかに高速道路をつくりまして、経済的には非常に便利になって、自動車の走行時間なんかも節約できた。しかし、高速道路ができたためにその周辺の地域の商店なんかが寂れてくるということもあるんじゃないかと思う。つまり、そこを通らずにすっと行ってしまうために。  そうすると、例えば山村の開発にしましても、どの範囲をとるかによって、狭い範囲だけとれば商売なんかできなくなっていって、かえって過疎化に拍車をかける。しかしもう少し広い地域をとって考えれば、その広い地域全体の経済の活性化ができるということもあるんじゃないかと思う。原子力船「むつ」なんかの場合は、これは非常に明白ですから問題ないと思うのですけれども、今言ったような場合であるとか、あるいは法律については、第一条に立法の目的が書いてありますけれども、大体複数の目的が書いてあります。  例えば、今申しました山村振興法なんかでは、「山村における経済力の培養と住民の福祉の向上を図り、併せて地域格差の是正と国民経済の発展に寄与する」、この四つほど書いてあるんです。これはお互いに矛盾しなければいいのですけれども、今言ったように矛盾する場合があるわけです。そうすると、会計検査院がその中の一つの観点から問題を提出されましても、当該官庁の方は、いや、おれは法律に書いてある別な方の目的をやっているんであって、その点においては目的を達したから差し支えないのじゃないか、そういう反論が当然あるんではないかと思うのですけれども、そういう場合はどのように対処されますか。
  245. 辻敬一

    会計検査院長辻敬一君) ただいま委員のおっしゃったとおりでございまして、例えば道路にいたしましても、直接の便益をはかることは比較的簡単にできるわけでございます。新しい道路ができますと、ガソリンの消費量が幾ら減るとか、あるいはタイヤの減り方がどのぐらい減るとか、あるいはまた今お示しがございましたように、三十分早く行けるので、それを経済便益に換算すると幾らという直接の効果は比較的簡単に計算できるわけでございますけれども、その周囲に与えます波及効果と申しますか、これになりますとなかなか難しゅうございます。特に、今おっしゃいましたような負の効果まで含めてみますとさらに難しくなるわけでございます。それから大きな開発のプロジェクト等になりますと、おっしゃいましたように複数の目的がございますので、それをどういうふうに評価していくかというのはさらに難しい課題になってまいります。そこで私どもも、先ほどから申し上げましたようにいろいろと勉強いたしておりますが、まず比較的簡単なものから応用してみて、大きなプロジェクトの効果をどういうふうに見ていくかというのは今後の課題にしてまいりたいと考えております。  それから、相手省庁との関係でございますけれども、ただいまのところ相手省庁と非常に議論になってまとまらなかったということはないわけでございますが、また将来どういう問題が起こりますか、その時点におきまして適切に判断をしてまいりたいと思っております。
  246. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 全然そういった意見の対立はなかったですか。例えば土地区画整理事業なんかで建設省と必ずしも同一意見じゃなかった、四、五年前、もっと前ですか、の報告で読んだ記憶があるんですけれども。  それで私が言いたいことは、そういう場合にも両論併記の形で、会計検査院はこういうふうに考える、当該省庁はこういうふうにこちらに重点を置いて考えているんだ、その形で国民ないし国会の判断を仰ぐ、そういう両論併記の形でこれを出されたらどうか。何も会計検査院は行政機関の従属機関じゃないわけですから、意見が違っても一向に差し支えないのであって、そういう形で国民の判断を仰ぐという形をとられたらどうかと私は思うのですけれども、いかがですか。
  247. 辻敬一

    会計検査院長辻敬一君) 検査報告に掲げます途中の過程におきましては、当然各省と折衝がございますのでその段階では意見の対立はもちろんあるわけでございますが、先ほど申し上げましたのは、検査報告に掲げたこと自体につきまして対立があったということは従来ないと考えております。  なお、ただいまお示しのような両論併記ということでございますけれども、検査の性格あるいは検査報告の性格からいきまして両論を併記するというのは必ずしも適切でないのではないかと思っております。ただ、報告の記述におきまして相手省の主張をかなりのスペースをとって書いている例は幾つもございます。そういう形で国会の御判断に資するような工夫はいたしているつもりでございますが、今後ともまたそういう問題につきましては工夫を重ねてまいりたいと考えております。
  248. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私がそれを申し上げたのは、これは新聞の報道なんでそのまま私は信ずるつもりはないのですけれども、去年の十二月十一日の読売新聞に、六十一年度決算で、会計検査院指摘事項は百五十六件、先ほど言われたとおり、そして相手機関に質問した項目は九百以上。ところが、相手機関が指摘内容を承認しなければ記載しないので、したがって相手機関の方では議論を長引かせて時間切れになるケースがある、政治判断が絡む内容については踏み込めない領域もあるんだというふうな記事があるんですけれども、これは事実と違いますか。
  249. 辻敬一

    会計検査院長辻敬一君) 検査報告をまとめるに当たりましては、当然相手方に質問、照会ということをいたします。その照会の過程におきまして、こちらの疑問が解消するということもあるわけでございます。また、確かにこのところ十二月十日前後でございますか、そのころまでに検査報告をまとめなければならないという問題もございますけれども、できる限り各省庁との了解と申しますか、各省庁の理解を得まして検査報告を取りまとめているところでございます。  また、政治的な問題につきましては、私ども中立機関でございますから、高度の政治マターについて余りに深入りすることは従来から慎んでおりますが、そういう問題につきましては、先ほど御質問のございましたような特記事項というような形で、会計検査院としての意見、判断は必ずしも表示しておりませんけれども、こういう事実がありましたということを確認いたしまして、国会の御審議あるいは国民の皆様の御判断に資するという形で特記事項ということで掲記をするということは従来からやっているところでございます。
  250. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 これは今すぐ返事を求めるわけじゃございませんけれども、特記事項は先ほど言われたように、国民に対して問題提起をするんだというのであれば、当該省庁と意見が合わなくても両論併記する。両論併記というといかにもそこで対立したように見えるかもしれませんけれども、解釈が違う問題について意見を二つ並べて書くということも検討していただきたいというふうに希望しておきます。  次の質問に移りますけれども、次は内部監査の問題ですが、各省庁それぞれの内部監査、この機能が充実しておれば、定型的な検査内部監査がしっかりしておれば、検査院としてはそれだけ手が抜けるわけであって、むしろ検査院の力は、今言われたところの三Eのようなマクロの問題に取り組むことができるわけです。ところが、内部監査は十分に行われている、十分に機能しているというふうに御判断でしょうか、どうでしょうか。
  251. 辻敬一

    会計検査院長辻敬一君) 内部監査との連携はこれからもますます重要になってくると思うわけでございます。検査院といたしましては、人員その他の限界がございますので、検査院だけの力で経理の適正の万全を期するということは、これは困難でございます。また、内部監査は検査とは性格が違うわけでございますけれども、一面におきまして機動性に富むとかあるいは弾力性があるというような長所もあるわけでございまして、その面では会計検査と相互補完の関係にあるということも言えると思うわけでございます。  そこで、私どもも従来から内部監査との連携には特に注意をしているところでございます。ただ、検査の一部を内部監査にゆだねると申しますか、これから先は内部監査であって検査は入らないというようにやるのは適当でないのではないかと考えております。  ただいまお示しのございましたようなどちらかといえば定型的な検査、例えば貸付金でございますとか保険料の徴収漏れでございますとか、そういう問題につきましては私ども内部監査の結果を常に参考にいたしておりまして、検査を進めているところでございます。  なお、内部監査の状況については私どももその概略を把握しておりますけれども、各省庁の会計経理はその質あるいは量ともかなりの格差がございますので、それに応じまして要員数や充実状況に相当な差があるようでございますが、概して申しますと必ずしも内部監査の体制が十分であるとは言いがたいと考えております。  本院といたしましては内部監査機能の向上のために、監査の担当職員に対する研修会を本院で開催いたしましたり、あるいは各省で講習会をなさる場合に講師を派遣したりする努力も払っているところでございます。また最近は、出資法人の監事さんに対しまして検査報告説明会をいたしますとか、あるいは公会計の監査フォーラムという形で、内部監査の職員その他公会計の監査を担当している方々にお集まりいただいて意見、情報の交換をするとか、そういう努力を重ねているところでございますが、今後とも内部監査とは一層緊密な連絡を図るように努力してまいりたいと考えております。
  252. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 おっしゃることはよくわかるんですけれども、どうも内部監査というのはそれぞれの省庁の人が二、三年受け持つわけですね。そうすると、また交代するわけです。きょうは監査した身があすは監査される身になる。あるいは顔見知りの間で、友人関係であるので、そういった対人関係を考慮する余り十分徹底して行いがたいのじゃないか。技術の方は講習会とかなんとかでそれは教え込むことできますけれども、どうも今の組織では内部監査というのは十分できないのじゃないか。それではどうしたらいいかと聞かれると私も名案がないのですけれども、何らかのその内部監査をやる人の身分を長期なものにして保障することが必要じゃないかということもあります。具体的にどうすればいいかという考え方は私は持ち合わせませんけれども、やはり何か内部監査がもう少ししっかり行われるようなことを研究していただきたいというふうに考えております。  それに関連して大蔵省にお伺いいたしますけれども、大蔵省は会計法四十六条によって、予算執行状況について監査を行い、また助成金なんかを受けている特定の人について報告を徴することができるという条文がありますね。実際に大蔵省はそういうことをやられたことがあるのかどうか、それから大蔵省としては各省で行っているところの内部監査をどのように評価しておられるのか。決算の書類を国会に提出するのは大蔵大臣ですから、その場合にやはり一応監査して提出されているのか、あるいは各省が報告してきたのを単にまとめて出しておられるのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  253. 藤井威

    政府委員藤井威君) 先生御指摘のございましたいわゆる会計法四十六条によります、我々四六監査と呼んでおりますが、四十六条の監査はこの条文ができましたころ、つまり昭和二十二年から三十年ごろまでの間は、当時財政法、会計法が新しくなったというようなことがございまして、こういう財政法、会計法の施行に伴いましていろいろな予算執行問題等の技術的、制度的な問題がかなりございました。そういう新しい制度をどういうふうに運用していくかというような指導に重点を置きまして、この四十六条のいわばかなり権限的な監査というようなものを行ったことがございます。ただ、その後これらの諸制度が一応各省におかれましても習熟されてきたというようなことがございまして、現在ではいわゆるこの四十六条によります監査ということは実はほとんど行っておりません。  ただし、現実には大蔵省の主計局の中に決算を担当いたします司計課という課がございますが、その中に監査係という係がございます。それで現在では、この四十六条の趣旨に沿いますような、特に補助金などの合理化ということに重点を置きました、いわば実態調査というようなものを毎年行っております。  この実態調査、六十三年度で申しますと、公立学校の施設整備の補助金の実態調査、例えば学校給食施設、共同調理場について実態を調査する。あるいは義務教育費の決算、教職員定数などの実態調査を行うというようなことを、監査という形ではなくて実態調査という形で行っておりまして、それで我々といたしましては、それを予算編成にまた反映させていくという形で、予算の中でフィードバックしていくというような利用の仕方をいたしております。司計課の監査係というところもございますし、四十六条という条文もございますので、こういう実態調査の計画を適切に行い、またその結果を常時予算執行に反映さしていく、あるいはさらには予算の編成に反映させていくというようなことをこれからも続けていきたいと思っております。
  254. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 その問題についてもいろいろ聞きたいことがありますけれども、もう時間がございませんので、あとは会計検査院の方に私の希望を述べておきたいと思います。  一つは、例えば補助金を実際の自治体なんかでどういう支払い方をしているかということの検査をされると思うのですけれども、そういう場合に自治体の監査委員なんかとも十分連絡をとってやられることが必要ではないかと思っております。これは人員とか時間とか制限がありますので、なかなか実際には難しいかと思いますけれども、その点の配慮をしていただければありがたいというふうに考えるのが一つ。  それからもう一つ、第二点は、今度、ことしから会計検査院で「けんさいん」という広報誌を出しておられまして、私は大変勉強になりました。ただ、これは伺いますと九千部出ているということなんで、九千部出ているんであるならば、本当の専門家だけを対象にしたのではなしにかなり広くPR効果をねらっておられるんじゃないかと思うのですが、それにしては内容が必ずしも普通の人が読んで理解できるようにはできていない。例えば、検査院法三十四条と三十六条によってこうこうこうというようなことが書いてありますけれども、普通の人が読んで三十四条がどういう趣旨であるか、三十六条がどういう趣旨であるか、私も大体のことは頭に入れておりますけれども、個々の条文なんかは知りません。  そういう場合にはやはり注釈として条文を入れるとか、あるいはお役所用語だと思うのですけれども、この中に「発遣」という言葉があります。きょうの院長の六十一年度決算検査報告に関する概要説明の中にも「発遣」という言葉が出てきます。私は最初にこれを読んだときに、これはミスプリントじゃないかと思って字引を引きました。そうしたら字引にはちゃんと載っております。どういう意味かというと、差し遣わす意味だそうで、いかにも昔のお役所が民間を見下しているような言葉なんですけれども、こういう言葉はやはり努めて、官庁だけの特殊用語を使うのではなしに、一般の人たちにわかるような言葉を使うべきじゃないか。特殊な自分たちだけでわかる言葉を使っていきますと、どうしても閉鎖的になってくる。そういう言葉の点で十分注意していただきたい。六法全書を横に置いて、あるいは国語辞典を横に置いて読まなければ理解できないようなものではなしに、そういうものがなくても理解できるようなものをつくっていただきたい。これは私の希望ですから返事は要りません。  あと時間がもう十二分しかないので、大蔵大臣にお伺いしたいと思います。  六十一年度の財政運営については、けさほど菅野委員から質問がありまして、私が考えたことと全く同じでございます。つまり、税収が当初見込みを非常に上回った。金額のことまで一々申し上げません。先ほど出ましたから、金額のことは申し上げませんけれども、補正額にして二兆円以上の増収であったとか、そういうふうなことがございました。  予測ができなかった原因としていろんなことを言われたんですが、その中で菅野委員指摘されましたけれども、昭和五十三年度からですか、それまでは当年度決算は翌年の四月で打ち切ったのを五十三年からでしたか五月にそれを延ばして、それで歳入欠陥を補った。そのために、つまり五月あたりの税収の見込みをずっと前に立てなくちゃいけないわけですね。そのために歳入見積もりが非常に多過ぎたとか、あるいは逆に少な過ぎたというふうなこともあるんじゃないかと思うのですけれども、歳入見積もりが正確にできないではないかということを質問されました。私も全く同感でありまして、余り歳入見積もりが狂うということになりますと、やはり国民の財政に対する信頼が揺らいでくるんではないかと考えますので、ある程度狂うということはこれはやむを得ないことですけれども、できるだけそういった大幅な狂いがないようにしなくてはいけない。そのためには、五十三年度に改めさせたものをまたもとに返すお考えはございませんでしょうか。何か返すというと、これは大変なことになる、また大変な赤字国債を発行しなければいけないということを言われましたけれども、いかがでしょうか。
  255. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) けさほどもお尋ねがございまして、例えばことし六十三年の五月だけをとりますと、この一カ月で法人税が六兆円入っております。これは法人税の年度間全収入の三八%に当たります。それから租税全体で申しますと、今度は三月でない四、五と合わせて申し上げますと、租税全体収入のうちで二五%が四月、五月に入っております。  したがいまして、おっしゃることは私はよくわかっておって、管野委員にもけさ申し上げたところでございましたが、これだけの大きなものを今もとに返すということが事実問題として考えられないと申しますか実効性が乏しい。理屈だけから申せば、債権が発生いたしますればそれはその年度歳入になるということは筋道としては説明できるのでやらしていただいておりますが、これが歳入見積もりを一つ難しくしているゆえんだということも、関委員のおっしゃいますとおりということはわかっております。
  256. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 これも最初の年は大変ですけれども、次の年からはもうそういうことはなくなるわけです。最初の年の決断をするかどうか。もともとこれは五十三年度に一カ月延ばしたことが今日までずっと続いてきているわけです。何か五十三年度のもののつじつまを合わせるために無理なことをしたために、そのツケが今日までずっと続いているという点があると思いますので、これはやはり私は何らかの形で是正する必要があるんじゃないか、検討していただきたいと思います。  それから次に、税の増収の原因、これも午前中の質疑に対する答えで大体わかりました。  六十一年度の全産業の経常利益は六十一年度二%の減益であるにかかわらず法人税の税収が八・九%ふえたのは、各法人が決算対策のために株を売ったりして穴埋めをしたとか、あるいは土地が高騰したから登録免許税であるとか印紙収入、これは金額は大したことないと思いますけれども印紙収入がふえたとか、あるいは土地売却の譲渡益の課税の増大という説明がありまして、私もそう思うのですけれども、いわば企業本来の利益ではなしに土地の値上がり、株の値上がり、しかも土地の値上がりの原因はいろいろございます。実際の需要がふえたということもあると思うのですけれども、やはり地上げなんかによる投機的な要素、これが土地を引き上げたことも私は否めないだろうと思います。  過剰流動性を利用しての株の投機が六十一年ぐらいから非常に盛んになってきておりますが、こういった、極端な言い方をすると日本の社会がだんだんカジノ社会になってくるんじゃないかということを言う人もあるんですけれども、それは誇張だといたしましても、こんなスペキュレーションがだんだん広がってくるという傾向をどういうふうにお考えでしょうか。確かにスペキュレーションが一定の経済的な機能を持っていることは私も認めますけれども、その利益よりもむしろ経済の発展のためにマイナスの面が多いのじゃないかということを私は考えるんです。大蔵大臣としていかがお考えでしょうか。
  257. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いわゆる財テクでありますとか、そういったようなこと全体が度を過ぎれば危険をはらんでおることはもとよりのことでございますけれども、そのことはそのこととして、経済発展の次の段階に向かって財をつくるための投資、あるいはサービスを生むための投資がないがしろにされていった場合に、果たして国民経済というのはどのようになるのであろうか。それは、三千円のウイスキーをバーが三万円で売ることがあるいは付加価値ということであると仮にいたしましても、しかし、それで話はおしまいでいいのか。今の話はちょっと飛びましたけれども、そういったようなことにつきましては、私は機会を得てお教えを受けたいと実は思うぐらい心配をいたしております。
  258. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私は、土地を買って住宅を建てるとか、あるいは工場を増設するために土地を買うとか、投資することを決して悪いと言っているわけじゃない。資産倍増論なんかもありますから、そういう意味で、資産をふやしていくことは一向に差し支えない。私が問題にしているのは投機なんです。実際問題として投機と投資の区別というのはなかなかつけがたい、その点はありますけれども、どうも最近、投機社会になりつつあるんではないかということを感ずるわけです。大学を出た優秀な人材が、いわば地上げ屋であるところのリクルート社なんかにたくさん志望者が集まるとか、あるいは優秀な人材がそういった投機のことだけに奔走しているとか、こういうことは国民経済的に見ると非常なマイナスじゃないかと私は思う。  そういった投機熱に対して、政府というのは、過去においてもっと資産を、自己資本をふやさなくちゃいけなかったような時代は別ですけれども、これだけ経済大国になった場合において、投機なんかを余り刺激するような政策はとるべきではない。投機の方に対してはむしろ抑制的な政策をとるべきではないか。これは証券法の改正問題なんかに絡んできますので、また後で別な機会に質問いたします。  例えば、今度のリクルート事件にいたしましても、一部の国民の間にあるスペキュレーションの空気に乗じて、政治家が、これも決して全部とは申しません、一部の政治家が、未公開株の短期売買で金もうけを図っている。しかも、それが何か当然であるかのような空気が永田町あたりにも広がりつつある。私はむしろ、政治家というのは、情報が早く集まるし、時としては産業に対して影響を与え得る立法なんかをすることができる、そういういわば特権的な地位にある。そういった特権的な地位にある者は、責任もほかの人よりもより重い。ノーブレスオブリージという言葉がございますように、責任をもっと自覚しなくてはいけない。ところが政治家の行為は、そういった民間のスペキュレーションの空気に乗ってあるいはそれをむしろ助長しかねないような、ぬれ手でアワ式に金をもうける、そういった風潮を助長しかねないような面が少なくないと思います。  その意味で、これはやはり私は、単に政治家の非常に大きな倫理問題だと思いますけれども、同時に、国民の勤労の意欲にも関係してくる問題であって、政府はむしろこういった投機的な傾向を、例えば税の面であるとかあるいは証券取引法の改正の問題であるとか、そういう面でむしろ抑制的にやるべきではないかというのが私の意見です。それに対しては、経済学者とか実業界におる人たちは反対の意見、私の意見なんかそれは書生の議論だと言う人が多いのですけれども、私は国の将来ということを考えた場合に、これは決して今の問題だけで考えるべき問題ではないのではないか。やはり国民の将来という問題を考えるべき問題だ、将来を展望して現在処すべき問題だと思うのですけれども、最後に、大蔵大臣の私の意見に対する所感をお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
  259. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 額に汗をして物をつくる、あるいはサービスを生み出すということから離れていきますと、私は経済ばかりでなく、国民、経済社会というものは非常に心配なことになるんではないかということは、関委員のおりしゃいますことと全く私も同じことを前からいろいろに考えております。今おっしゃいましたように、それはしかし、制度の上でもある程度抑制ができる、あるいは抑制という言葉はちょっと言い過ぎかもしれませんが、そういうことを奨励しないことができるとおっしゃいますことは、やはり考えていかなければならないことである。例えば今回、法人が土地を買いますために、それもすぐに要らないと思われる一種の投機に近いようなということ、そうは書いてございませんが、土地を買うためにした借入金の利子はすぐには経費には見ないというような制度を今度税制改正の一環として御提案をしているわけでございます。これなんかはやはり一つのそういう考え方を、わずかな方法でございますが、グリーンスパンが言っておるような大きな話ではございませんけれども、やはりそういうことはいろいろなところで考えていくべきではないかと思っております。いろいろ御教示を得たい点が数々その辺ございます。
  260. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 これは、政府全体として私は取り組んで考えていただきたい、そのことを希望して私の質問を終わります。
  261. 安永英雄

    委員長安永英雄君) 本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後六時二十四分散会