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1988-12-08 第113回国会 参議院 運輸委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十二月八日(木曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員の異動  八月九日     辞任          吉村 真事君  九月二十一日     選任          石原健太郎君  九月二十六日     辞任         補欠選任      石原健太郎君     吉村 真事君  十月十九日     辞任         補欠選任      二木 秀夫君     鳩山威一郎君  十月二十一日     辞任         補欠選任      鳩山威一郎君     二木 秀夫君  十一月二十一日     辞任         補欠選任      田渕 勲二君     上野 雄文君  十一月二十二日     辞任         補欠選任      上野 雄文君     田渕 勲二君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         多田 省吾君     理 事                 真鍋 賢二君                 松岡滿壽男君                 安恒 良一君                 及川 順郎君     委 員                 伊江 朝雄君                 高平 公友君                 野沢 太三君                 二木 秀夫君                 森田 重郎君                 山崎 竜男君                 吉川 芳男君                 吉村 真事君                 穐山  篤君                 小山 一平君                 田渕 勲二君                 小笠原貞子君                 田渕 哲也君    国務大臣        運 輸 大 臣  石原慎太郎君    政府委員        運輸大臣官房国        有鉄道改革推進        総括審議官    丹羽  晟君    事務局側        常任委員会専門        員        多田  稔君    説明員        警察庁刑事局捜        査第一課長    廣瀬  権君        厚生省健康政策        局指導課長    澤  宏紀君        消防庁救急救助        課長       蓼沼 朗寿君    参考人        東日本旅客鉄道        株式会社代表取        締役社長     住田 正二君        東日本旅客鉄道        株式会社代表取        締役社長   山之内秀一郎君        東日本旅客鉄道        株式会社常務取        締役       松田 昌士君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○運輸事情等に関する調査  (中央線東中野構内における列車衝突事故に関する件) ○派遣委員の報告に関する件     ─────────────
  2. 多田省吾

    委員長多田省吾君) ただいまから運輸委員会を開会いたします。  まず、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  運輸事情等に関する調査うち中央線東中野構内における列車衝突事故に関する件の調査のため、本日の委員会東日本旅客鉄道株式会社代表取締役社長住田正二君、同代表取締役社長山之内秀一郎君及び同常務取締役松田昌士君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 多田省吾

    委員長多田省吾君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  4. 多田省吾

    委員長多田省吾君) 運輸事情等に関する調査うち中央線東中野構内における列車衝突事故に関する件を議題といたします。  この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。石原運輸大臣
  5. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 中央線東中野構内における列車衝突事故につきまして、御報告申し上げます。  去る十二月五日午前九時三十八分ごろ、東日本旅客鉄道株式会社中央線東中野構内におきまして、西船橋発中野行きの普通旅客列車が停車中、後続千葉発中野行きの普通旅客列車追突して後続列車の一部が脱線し、現時点死者二名、負傷者百十三名、うち現在においても入院している方十五名を出す事故が発生いたしました。  このような事故が発生いたしましたことはまことに遺憾であり、ここに死亡された方々には心からお悔やみを申し上げますとともに、負傷された方々の一日も早い御回復をお祈りする次第であります。  運輸省といたしましては、今回の事故重大性にかんがみ、同日付で東日本旅客鉄道株式会社に対し、一、被害者に対する誠意ある対応、二、原因早期究明、三、同種事故再発防止対策の樹立の三点について通達するとともに、他のJR各社に対しても同種事故に関する注意喚起等について通達いたしました。  これを受けて東日本旅客鉄道株式会社は、一、年末年始輸送繁忙期に向けて現場管理者運転台への添乗指導等全社を挙げての安全体制の強化、二、ATS—P取りつけ工事について、東中野駅付近の来年度中の完成等最大限の繰り上げ実施、三、事故データの分析、新しいATC等の開発を行う安全研究所設置、四、現場安全体制を強化するための地方における総合訓練センター設置の四点について、とりあえず同社としての今後の安全対策に関する方針を決定いたしました。  申すまでもなく、輸送機関最大使命は安全の確保でありますので、運輸省といたしましては、今後とも安全対策にさらに万全を期するようJR各社を強力に指導してまいる所存でございます。  以上、御報告申し上げます。
  6. 多田省吾

    委員長多田省吾君) 次に、住田参考人から発言を求められておりますので、これを許します。住田参考人
  7. 住田正二

    参考人住田正二君) 今回、弊社中央線東中野駅におきまして列車追突事故を起こし、数多くの死傷者を出しましたことにつきまして、心からおわびを申し上げます。  亡くなられた方々の御冥福と、けがをされた方々の一日も早い御回復をお祈りいたしますとともに、御遺族、御被災の方々に対しまして、会社として総力を挙げて万全の措置を講じていく考えでございます。  昨年四月に発足いたしました弊社にとりまして、安全の確保最大使命であり、社員が一丸となって取り組んでまいりました。しかし、このような事故を引き起こしたことにつきまして、社員一同深く反省し、改めて初心に戻り、二度とこのような大惨事を繰り返さないよう最大限努力を払ってまいる所存でございます。  今回の事故原因につきましては、関係機関方々とも密接な連携をとりながら徹底的に究明するとともに、当面、緊急の対策といたしまして、より保安度の高いATS—P型装置設置を従来の計画より半年程度早め、特にこの区間につきましては早急に設置するよう指示いたしました。  いずれにいたしましても、安全確保上の問題点に対しては抜本的な対策を講ずる所存であり、このことが弊社社会的信頼回復する唯一の道であるということを深く肝に銘じていきたいと考えております。  改めて心からおわびを申し上げる次第でございます。
  8. 多田省吾

    委員長多田省吾君) それでは、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  9. 穐山篤

    穐山篤君 ただいまお話のありましたように、今回の列車衝突事故につきましては、ゆかりのある者として非常に驚きました。さらに、死者二名、負傷者百余名という重大な事故でありまして、亡くなられました乗務員乗客二名の方に心から哀悼の意を表します。それから、百何名かの負傷者がおいでになるわけですが、一日も早い回復を祈るものであります。  今、概況につきましてはお話を承りましたが、皆さん方からいただいておりますものはきょうで三通目の書類でありますが、そのほかは、私ども調査なり新聞で公表されているものであります。  そこで、もう一度衝突事故概要についてJR側からお話を承りたい。なお、その後いろんなことにつきましてJR側対応措置をとられましたその内容につきましても明らかにしてもらいたいと思います。
  10. 山之内秀一郎

    参考人山之内秀一郎君) ただいま社長からごあいさつを申し上げましたが、重ねて私からも、民営化後大変大きな事故を起こしましてまことに申しわけなく、重ねておわびを申し上げますと同時に、改めて鉄道輸送の原点である安全について一層努力をしていきたいと思っております。  御質問の、事故概況について御説明を申し上げたいと思います。  事故が起きましたのは、十二月五日月曜日の九時三十八分でございまして、場所中央緩行線東中野構内でありまして、東京駅から十二キロ八百五メーターのところでございます。ぶつかりました電車千葉発中野行きの八三五Bという十両編成電車でございまして、これがその前を走っておりまして東中野駅にとまっておりました八〇一Cという同じく中野行きの電車追突をいたしました。  ぶつかりました結果、電車は三両脱線をいたしまして、大変多くの負傷者と、運転士を含めて二名の方が亡くなられたわけでございます。負傷者は若干その後刻々と数が変動いたしておりますが、きょうの時点では総勢百十三名でございまして、二十一名の方が入院をされましたが、うち六名の方は現時点で退院をされまして、現在十五名の方が入院をされておる状態でございます。関係者は、亡くなられた運転士津田沼運転区の二十八歳、乗務歴四年十一カ月の運転士でございます。  私どもは、事故発生後直ちにJR東日本本社東京圏運行本部並びに現地に対策本部設置いたしまして、まず第一は、亡くなられた方、けがをされた方の救出と援護に全力を挙げた次第でございます。その状況は先ほど申し上げたとおりでございまして、入院された方がまだ残っておる状態でございます。  その後、引き続きまして事故復旧事故原因調査に当たっておりますが、事故復旧はその日終日かかっております。事故調査警察と協力いたしまして、現在も引き続いて実施しておるところでございます。
  11. 穐山篤

    穐山篤君 運輸省にお伺いしますが、事後措置について、JR東日本並びにその他JRに対しても注意喚起した、こういうことになっているわけです。十二月一日からダイヤ改正が行われたわけですが、全国的に見ますといろんな条件もありますけれども東京とか大阪というのは過密ダイヤであります。過密ダイヤであることと同時に、時間帯によりましては十両編成の場合もある、あるいは六両編成のときもある。関西なんかの事情を見ますと、例えば阪和線なんかでも三両、四両編成というものがある。全部車種も違う。そういう意味でいきますと、この運輸省の警告といいますか通達というものは少し機械的ではないかなと思う。もう少しきめの細かい監督官庁としての指示があってしかるべきだというふうに私は印象を持ったわけですが、今回の運輸省措置は、そういう目配り、気配りを含めた注意喚起ということになっているんでしょうか。
  12. 丹羽晟

    政府委員丹羽晟君) ただいま先生の御指摘の私ども通達は、事故直後にJR東日本とその他のJRに対して出した通達でございますけれども、その内容につきましては、原因究明を早急に行うということと、事故再発防止策を策定して報告するということをまずはJR東日本に対して申し上げたわけでございます。それで、その問題に関しまして、年末年始輸送に関します安全総点検に当たっても、今回の事故に似ているような事故再発防止について十分に注意して実施することとということを申し上げております。  なお、先ほど大臣が申し上げましたように、現場での対応あるいは被害者方々に対する万全の措置のことも別途申し上げておりますが、まずはそういう内容JR東日本には通達してございます。ほかのJR各社に関しましては、この事故につきまして簡単に概要を書いたものを添付いたしまして注意喚起をしたというところでございます。
  13. 穐山篤

    穐山篤君 次に、警察に伺いますが、相当の要員を配置してお調べになっているようでありますが、その状況についてお伺いします。
  14. 廣瀬権

    説明員廣瀬権君) 本件事故を認知いたしました警視庁といたしましては、直ちに五百名から成る態勢をもちまして事故対策本部設置いたしました。そうしまして負傷者救出関係者からの事情聴取事故現場検分等を実施いたしました後、中野警察署に八十名から成る捜査本部設置いたしまして、本格的な捜査活動に入ったところでございます。  現在までにJR東日本関係者あるいは乗客方々等七十八名の方から事情聴取をいたしておりますし、また現場検証等を行ったところでございます。  今後は、関係者事情聴取検証鑑定等捜査を進めまして、事故原因究明に努めてまいる所存でございます。
  15. 穐山篤

    穐山篤君 具体的なお話に入る前に、一つだけJR社長に態度を表明してもらいたいんですが、事故が起きました直後、救急車負傷者入院されるとすぐJRも見舞いをされました。私どもその点については敬意を払っているわけですが、けが人のまくら元示談合意書判こを押せというふうなことが何件かあったわけですけれども、この状況について明らかにしてもらうと同時に、こんなことは許されてはならないことである。仮に御本人が判こを押したにしても、将来後遺症がどうなるだろうかという問題もあろうと思うんです。したがって、この件については国民の皆さんに陳謝をしてもらうと同時に、今後さようなことがJR全体であってはならないというふうに思いますので、その点まず冒頭に社長から明らかにしてもらいたいと思います。
  16. 住田正二

    参考人住田正二君) ただいま先生から御指摘のような話を事故の起きました夕方聞きまして、これは大変なことだということで調べましたところ、そういう事実があったようであります。直ちにそういうことはやめろということで指示をいたしております。ただ、ただいま先生お話しのようなまくら元示談書をとったというようなことはなくて、比較的軽微といいますか軽い方で、お帰りになってこれからお会いできないんじゃないかというようなことを考えて示談書をとったということのようであります。しかし、これは国鉄時代のやり方をまねたということでありますが、私どもといたしましては、そういうことは今後一切しないということで厳重に注意をいたしたいと思っております。
  17. 穐山篤

    穐山篤君 そのことは、今後しっかりやってもらいたいと思うんです。  さてそこで、昨年JRが新たに発足をしまして、一面では公共輸送の役割を負って安全輸送をしなきゃならぬ。しかし初年度の経常も黒字を出さなきゃならぬ、そういう意味ではざまに置かれたと思うんですが、昨年の暮れから全国的に非常事態宣言というものが発せられました。従来、非常事態宣言というようなものは、私もかつて経験したことがありましたけれども、そうみだりに出されるものじゃなかった。しかし、非常事態宣言が各地のJRから発表になったわけですけれども、この背景というのはどういうものであったのかどうか。  それからもう一つ非常事態宣言を発したその気持ちを十二月一日のダイヤ改正にどういうふうに生かそうとされていたのか、そのことについて伺っておきたいと思うんです。
  18. 山之内秀一郎

    参考人山之内秀一郎君) 昨年の四月に、大変大きな改革といたしまして日本国有鉄道が分割・民営をいたしまして、私ども鉄道会社が七社発足いたしました。先生お話にもございましたように、ともかく、初年度大変な激動期の中でいかにして安全な輸送を貫徹し、なおかつサービスをよくし、経営成績もよくすることを大変大きな課題として私ども深刻にとらえまして、社員一同も従来とは変わった格好で大変多くの社員努力をしてきてもらったというふうに認識をしている次第でございます。おかげさまで、昨年一年間は大きな事故もなくなりましてよかったわけでございます。  今御指摘がございましたが、会社として非常事態宣言を発したという事実はございません。ただ、一部でそういう趣旨のものがあったという話を聞きまして、その後調査したところ、一部の部門におきまして社員傷害事故が続いたときにそういった表現をした資料を配付したということを聞いたものですから、真意をただしたところ、社員傷害事故に対する取り組みの危機感を盛り上げるためにそういう資料を流したということでありまして、企業といたしまして非常事態宣言を出したことはございません。  また、ダイヤ改正につきましては、この十二月一日に、一つ混雑の大変激しい総武線混雑緩和の大きな目玉として、かねがね旅客運転を進めてまいりました京葉線蘇我—新木場間が開通をいたしまして、その機会に総武線中央線の大時刻改正をやりました。特に中央線につきましては、これも懸案でございました国分寺駅に追い越し線ができたものですから、設備的に余裕ができたものですからダイヤ改正を実施したわけでございます。  従来どおり、安全に配慮しながらダイヤ改正を実施した次第でございます。
  19. 穐山篤

    穐山篤君 次に、東中野構内事故では、昭和三十九年、それから五十五年十月二十七日の事故がございます。時間帯もほぼ似たようなものでありましたけれども、あそこの地理的な条件というのは、カーブもあるし、高低も千分の二十五、それから信号機の数も現在は五つあるわけでありますけれども、線路の状況なり車両構造改善というものが行われないとするならばいつでも起こり得る状況ということを念頭に置かなければならぬと思うんです。  そこでお伺いしますが、前回の五十五年の事故教訓というのはどういうふうに生かされてきたのか。  それから、もう一つ問題の指摘をしたいと思いますのは、ことしの十月十九日に上越線貨物列車重大事故があったわけです。この事故の直後、JR東日本としてはいろんな予防措置あるいは安全対策をとられたと思うんですけれども、そういうものが十分に生かされないままに事故が再び発生した、こういうふうに言わざるを得ないと思うんです。私は、五十五年の同場所事故上越線貨物事故の経験の教訓に学んでどういうふうに生かしてきたのか、あるいは生かそうとしてきたのか、その点をJRにお伺いしたいと思うんです。
  20. 山之内秀一郎

    参考人山之内秀一郎君) 御指摘のとおり、まず大久保—東中野駅間につきましては、過去三十年間に二回ほど事故が起きております。一番最近では八年前の五十五年の十月十七日、ほぼ同じような時刻事故が発生しておりますが、前二回の事故と今回の事故を詳細に見ますと実はやや状況が違っているところがございます。これは今後の事故検証についてもあるいはかなり重要なポイントかなというふうに考えている点でございます。  前二回の事故というのは、今回の事故のようにホームにとまっている電車に衝突したのではなくて、電車がすし詰めになっておりまして、ホームに入る前の電車電車がとまっていない状態のところにある電車追突したというのが前二回の状況でございます。したがいまして、今回の信号冒進というのは、私ども専門語場内信号機と呼んでおりますが、駅の手前にある信号機赤信号を突破してぶつかってしまった。前回はその一つ手前にある信号機のところで、ホームに入れないで待っていた電車の後ろにどんとぶつかった。どっちかというと、前回の方が、乗務員の心理から見ると、ふだん電車がないところに電車がいたという意味では大変気の毒なケースでありますのと、前回はまさしく急勾配カーブのど真ん中、間合いのところにとまっていたのであります。今回の事故は、坂が下りかかって平らになってやや上りになったところにとまっていた電車にぶつかったという点で、同じ区間であることはそうなんですが、かなり微妙なところで違ったということはまず事実として申し上げたいと思います。  したがいまして、前回のときも私ども大変深刻にこの状態をとらえまして、当時の対策といたしましては、当然でございますが、まず関係の職員に対しまして職責の重要性認識徹底を図りますとともに、信号確認についての指導徹底ATSの扱いの厳正を指導したわけでございます。それだけではなくて前回事故場所というのは大変カーブもあり坂も急なものですから、信号機に対して改良をいたしました。  どういうことかと申しますと、前回は、今度の信号機の一本手前信号機のちょっと先にとまっていた電車にぶつかったものですから、前の電車信号機を過ぎた後はその手前信号黄色になるんですけれども、前の電車がある距離行かない間はずっともう一本手前信号も赤でとめておくという措置をする、そうやって赤をダブルにすることによって傷害事故を、こういう見通しの悪いところの事故を減らすということを考えますと同時に、もう一本手前、もうちょっと電車が前へ行った場合についてはその赤信号が普通は黄色に変わるんですが、黄色に変わりますと四十五キロ以下で入っていいんでありますが、ここは黄色二つ出しまして二十五キロ以下に速度を落とさせるような対策前回打った次第でございます。  今回の場所は、前回と違いまして場内信号機と違う信号機でありまして、ここは前回よりもかなり見通し距離がよくなっておりますのと、それから勾配の途中ではない状態でございます。  それから、当時の中央線というのはかなりまだ旧型電車が多かったのでありますが、その後、鋭意、加速性能のいい新型電車に取りかえを進めておりまして、ダイヤ改正の直前にほぼ取りかえは 完了したという状況でございます。
  21. 穐山篤

    穐山篤君 五十五年の十月の事故のことですが、事故の後の処理を見てみますと、業務上過失事故東京地裁から判決があったわけですね。本来こういうものについて言えば有罪というのが従来の慣例でありました。しかし、このときの判決を見ますと、情状を酌量して禁錮八カ月、執行猶予二年というものであります。  どこが情状が酌量されたのかといろいろ勉強してみますと、特にラッシュ時の過密ダイヤのときにATSがあるにもかかわらずATSを切って運転をせざるを得ない。今日でもボタンを押すということになっているわけですが、過密ダイヤというものが情状酌量になった一つの理由ではないかなというふうに思いました。それからATS装置操作の問題も情状酌量一つ原因ではなかったのか、こういうふうに思うわけです。  それはそれにいたしまして、私の聞くところによりますと、事故処理が終わった後で警察方面からも改善の問題について要望が出ておったというふうに聞いているわけですが、その点、警察並びにJRの方から、そういう状況がわかればお伺いしておきたいと思うんです。
  22. 山之内秀一郎

    参考人山之内秀一郎君) 昨日、新聞紙上でそのような記事を拝見いたしまして、早速調査もいたしましたし判決文も読んだわけでありますが、捜査当局からそういったことについての指摘があったという事実は把握いたしておりません。
  23. 廣瀬権

    説明員廣瀬権君) ただいまの点につきましては、昨日の新聞報道がございましたので警察におきましても調査をいたしましたが、現在までの調査結果ではそのような事実は把握されておりません。
  24. 穐山篤

    穐山篤君 それでは、原因究明の問題についてお伺いしますが、いろんな角度から調査、研究をされていると思うんですが、例えば信号機についてはどうであろうか、車両ないしは車両の中の設備についてはどうだろうか、それから乗務員運行上の問題についてはどうだろうか、あるいは運行に当たりまして運転取扱心得を十二分に心得て運転をしているものと思いますけれども運転取り扱いについての通達現場乗務員の意識の上で違いがあるのかないのか、そういうふうないろんな点についての問題があろうと思うんですが、まずJRから、原因究明について、それぞれの角度からこういう状況である、あるいはないというふうな話を伺っておきたいと思うんです。
  25. 山之内秀一郎

    参考人山之内秀一郎君) 事故が発生した後、大変多くの死傷者を出しましたし、車両も大変多くの両数が破損をいたしまして、復旧に長時間を要しましたために事故原因調査は翌日以降になって、本日で三日目にかかったところでございます。  軌条設備につきましては、事故復旧が終わった後、深夜試運転電車を走らせる等の試験を実施いたしましたし、車両につきましては、近くの車庫に事故を起こしました電車を取り込みまして調査を進めておりますし、関係社員からも当時の状況についての説明を聞いておる段階で、現在警察とともに捜査を進行している状況でございます。  現時点におきましては、軌条設備、車両について特に異常は認められておりませんが、大変残念かつ痛ましいことでございますが、一番の関係者であります当該電車運転士が死亡いたしましたのと、運転台が大変破損をしておりますので、そういった意味では詳細な調査はなおお時間を拝借いたしたいと思っております。
  26. 穐山篤

    穐山篤君 警察においても原因究明をされているわけですが、これは刑法を頭に浮かべながらお調べになっていると思うんですが、当然過失往来危険罪とかあるいは業務上過失致死傷、あるいは重過失致死傷、そういう分野からお調べになられているんでしょうか、どうでしょうか。
  27. 廣瀬権

    説明員廣瀬権君) ただいま先生の御指摘のとおりでございますが、警察といたしましては、まずもって事実関係原因究明につきましてしっかりしたところを握って、その後で刑事責任が問えるのかどうかという点につきましてもまた十分検討いたしまして、そして擬律を考えてまいりたいというふうに思っております。
  28. 穐山篤

    穐山篤君 JRに伺いますが、新聞に報道されている範囲で見ますと、乗務員の所持品の中に携帯用のラジオがあった。乗務員のかばんの中にはいろんなものが入っているわけですけれども、携帯用ラジオを持っていたこと、あるいはイヤホンが落ちていたということを見まして、携帯用ラジオを聞いておったのではないかというふうな報道がされているわけです。  乗務員運転台は、いろんなブザーが鳴ったり、信号を確認したり、あるいは自分で声を上げて一々確認をするわけでありまして、乗客がラジオを聞いているのとは全く様子は違うと思うんです。私は、絶対にそういうことはあり得ないし、でき得ないしと思うわけですけれども、その点についてのJRのお調べの方はどうでしょうか。
  29. 山之内秀一郎

    参考人山之内秀一郎君) ただいまの御指摘の件も、事故が起きた後にそういう話が入ってまいりまして早速調査をいたしたわけでありますが、当該の、衝突をいたしました電車の死亡されました運転士が携帯用ラジオを持っていたというのは事実でございますが、また、もしそれが聞いていたとすれば大変これはまずいことだと思いますが、私は、当該乗務員がラジオを聞きながら運転したという可能性は大変少ないだろうというふうに現時点では判断をいたしております。  理由は幾つかございますが、一つは、衝突した後、ほぼ死亡に近い、一時ちょっと蘇生をされたという話がありますが、死亡された乗務員救出をしてその方をお運びした社員からの調査をいたしましたところ、内ポケットに携帯用ラジオが入っていて、その携帯用ラジオはカード型のラジオであって、イヤホンでなければ聞けない構造であって、その携帯用ラジオにイヤホンのコードは巻きつけてあったということから見ますとまずそうではないんではないのかと。もう少し詳細に検討したいというのが第一点でございます。  それから、スイッチが入っていたという話もあるのでありますが、その社員はスイッチが入っていたかどうか確認をいたしておりませんし、仮に入っていたとしても、それがその後の扱いで入ったものか、あるいは前から入っていたのか、あるいは事故の衝撃で入ったのか、その辺がちょっとわからない状態だろうと思っております。  それからさらに、この種の電車運転につきましては、私も国鉄出身でございますから、長年、運転台にたびたび乗ったこともございますし、常に電車に乗るときには運転台を見ておりますが、先生も御案内と思いますが、特に大都市圏の通勤電車というのは各駅を衆人環視の前で走りますので、乗務員の心理としてもイヤホンを耳に挟んで走るということはまず起きないんではないか、見たこともないというのが私の実感、実態でございます。  それから、最近は昔と違いまして乗務員の規律が非常によくなってまいりまして、電車運転台の後ろのカーテンをおろして走るという電車は皆無になっておりますので、そういった意味からも非常にしにくいだろうと思っていますし、それから電車運転台というのはいろんな音がいたしますから、とてもラジオを聞いているような雰囲気でございませんので、そういった意味からも、聞きながら走っていたという可能性は非常に少ないだろうというふうに判断をいたしております。
  30. 穐山篤

    穐山篤君 それから、平野君の勤務の状況ですが、私の聞いている範囲で言いますと、十三行路、朝六時二十分に出勤をして、津田沼の駅を七時二十五分発七四六列車、それで千葉で折り返し、津田沼でまた乗りかえて中野に行くその途中の事故であった。これが平常でいきますと、中野からまた折り返し津田沼、津田沼から折り返して中野中野を昼十三時二十分に折り返して千葉に行き、千葉で折り返して十五時五分に乗務が上がる、こういう仕業であるというふうに聞いているわけですが、私の計算が間違っているかどうか、拘束時間が九時間十六分、それから実乗務時間が五時間十四分、こういうふうに計算をしたわけなんです けれども。この拘束時間なり実乗務時間というのは世にいう超勤込みの仕業になっているんですか、それともこれが正規の労使で協定をした勤務時間ということになっているんでしょうか。
  31. 山之内秀一郎

    参考人山之内秀一郎君) 当該乗務員の勤務は、細部を除きますと大体先生のおっしゃった勤務でございまして、拘束時間は九時間十六分でございますが、実乗務時間は四時間五十三分でございます。  それで、乗務員の勤務というのは、先生が一番御存じと思いますが、出てくる日によって長い短いがございますので、一勤務だけでは到底判断できませんし、超勤の扱いについてもある期間をまとめてするのが従来からのずっとルールでございます。今回の事故にかんがみましてこの運転士の過去一カ月間の勤務状態を調べてみたわけでございますが、御参考までに申し上げますと、過去一カ月間のこの方の勤務日、働いた日の平均労働時間は七時間三十九分、平均乗務時間が四時間十八分となっております。したがいまして、個々には基準を上回った場合には超過勤務をなすということに相なると思います。
  32. 穐山篤

    穐山篤君 そこで、十二月のダイヤ改正前あるいは今回の事故が発生をした直後に、運転取扱心得は変わらないにいたしましても、動力車乗務員の執務標準規則のようなものが改正されたんでしょうか、あるいは改正されなかったんでしょうか、その点をお伺いします。
  33. 山之内秀一郎

    参考人山之内秀一郎君) 動力車乗務員の執務標準を改正した事実はございません。
  34. 穐山篤

    穐山篤君 今、私ここに一通の指導文書を持っているわけですが、最近、運転の責任者に対しまして、例えば「ATSの取扱いにおける、「確認扱い」、「場内及び閉そく信号機の停止信号に対するATSロングの警報の表示があった場合」、「出発信号機の通過列車に対するATSロング鳴動時のチャイムの扱い」」というふうなものが指導文書として流れ、これで徹底をしているというふうなお話を聞くわけですが、そうなりますと、前に出ておったものと、今それぞれの場所指示しているものとの間には相違点があるんでしょうか、ないんでしょうか。
  35. 山之内秀一郎

    参考人山之内秀一郎君) 先ほど申し上げましたとおり、ATSの取り扱いについては最近変更したことはございません。
  36. 穐山篤

    穐山篤君 そこの点についての認識が少し違いますけれども、これだけに時間をとっているわけにはいかないと思います。  乗務員に対する運転指導上の問題ですが、十二月ダイヤ改正でヘッドが短くなった。  そこで伺うわけですが、ダイヤ改正をしますとなれるまではどうしても遅延をしやすい、これはいずれの場合でもそうであるわけですが、当日この電車についても同様であったわけですね。遅延をしていたわけです。乗務員の気持ちからいいますと、自分の前にぶら下がっておりますどこの駅に何時到着、何時出発、これをしょっちゅう見なければならぬ、これは当然のことです。それから、二分三十秒なり何秒かのヘッドはこれも頭の中に入れて運転をしなきゃならぬ。いずれも同様なんですが、遅延をしている場合にどちらに乗務員に対して運行上の重点を置かしているのか。  時刻表というものは、きめの細かい時刻表ですね。それから二分半というヘッドと二つあるわけです。それはJRとしてはどちらに、重点というと語弊がありますけれども、この事故原因一つであろうと思われる過密ダイヤの一環をそこでなしているわけですから、ここが非常に重要だと思うんです。それはどちらに重点を置いて運転をしろというふうに指導しているんですか。
  37. 山之内秀一郎

    参考人山之内秀一郎君) 乗務員運転に際しましてまず一番大事なのは安全でございまして、信号機とか安全の規則、これは言うをまたないんでございますが、個々の列車の連行についての基準になるのは乗務員が持っている運転士用の時刻表でございまして、乗務員電車の間のヘッドについては関知をいたしておりませんので、時刻表を基準に運転をいたしております。
  38. 穐山篤

    穐山篤君 そうしますと、こういうことが考えられるわけです。時刻表を常に確認しながらスタートをする、あるいは到着をする。四分ぐらい前の車もこの車もおくれているわけですね。そうすると、一秒でも二秒でもおくれを回復したい、こういうことになるわけですね。  ところが、列車の間隔というのは二分三十秒なら二分三十秒というヘッドを置きながら秩序を保ち、安全輸送をやっているわけです。ところが、今言われるように、時刻表が優先するということになれば常にそのことを意識するわけですね。遅延しているのを一秒でも二秒でも回復しよう。そして、今度は運転時間が短くなりました。運転時間が短くなったということは、具体的に言えばスタートするときに急激にスタートをしてスピードを上げる、それでホーム手前で制動をかける、そうしないと全体の時間短縮ができない、こういう理屈になるわけですね。ホームにおける客扱いのことも遅延の原因ではありましょうけれども。  そうなりますと、乗務員の気持ちからいうと一秒でも回復しよう、早く回復しよう。それと同時に、相当のスピードで走っているわけですが、正規の停車位置にとめないとこれまた処罰を受ける。そういうことで、常に後ろから追われている感じで皆乗務員運転をしている。非常に複雑な気持ちではないかと思うわけですね。  今回、まだ原因が明確になっていませんから、私はそうだとは言い切りませんけれども、列車と列車との間の間隔を余り重視しないということになれば、常に衝突の危険というのはあり得るというふうに思いますけれども、技術的にはどうでしょうか。
  39. 山之内秀一郎

    参考人山之内秀一郎君) 先ほど冒頭に申し上げましたが、運転士乗務員にとりましてまず一番大事なのは信号でございます。時刻表も大事でございますが、まず第一に信号が安全の基本でございますし、信号を見ることがいわば乗務員の命でございます。列車の間隔というのは信号機によってわかるわけでございます。したがって、仮に信号機とそれから時刻表の利害がぶつかり合った場合、あくまでもこれは信号機が絶対に優先いたしますし、そのことは乗務員になるときから徹底的に教え込んでおります。したがいまして、おまえの電車は前の電車と何分だよということは教えておりませんが、信号を見て、ともかく赤信号であったらとめなきゃいけないということは絶対的条件だということがまず第一でございます。  あとは、その範囲内ではやはり定時運転を守るということが、特に大都市圏のように大変多くの方が短い間隔で走ってくる電車を御利用される場合の円滑な輸送の生命線でございまして、列車がおくれることが即またまた混雑がひどくなって、ダイヤ混乱が波及いたしますし、ひいては列車がすし詰めになって事故も起こしますので、信号を重視しつつ可能な範囲内でもって定時運転を守るというのが、これはあらゆる鉄道がやっておられるところでございますが、運転の基本かと考えております。
  40. 穐山篤

    穐山篤君 私も、かつては危ないと思ったら列車をとめろ、そういうふうに教わってきた一人ではありますけれども東京、大阪なんかのラッシュ時におきましては、どうしても遅延を回復する、そういう気持ちが乗務員の中に起きやすいわけですね。まだ原因がはっきりしませんから、これ以上言ってもしようがないと思いますけれども、しかし、こういうものを予防するためにはいろんな角度から、車両の整備だとか線路の整備、あるいはATS—Pの問題も出ているようでありますけれども、常に追われているような状況運転というのは考えなきゃいかぬ問題だと思います。  そこで、できるだけ冷静な気持ちで乗務員運行ができるという意味で問題の指摘をしておきたいと思うんですが、運輸大臣、今、JRの中に乗務停止処分症候群というのがあるんです。御存じですか。
  41. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 存じません。
  42. 穐山篤

    穐山篤君 それは、ごく最近から非常に規律が 厳しくなった、これは御案内のとおりであります。例えば出勤がおくれる、出場がおくれる。あるいは三十秒以上遅延をすると本人の自己責任になる、それから停車位置が少しずれるとこれも処分の対象になる。  たまたま津田沼電車区の例を見たんですが、例えば機器の取り扱いが悪いぞと言われて八日間の乗務停止、それから停止位置がまずかったよということで五日間の乗務停止、いろんな乗務停止があるわけです。今回のこの乗務員も乗務停止がことしの五月の調べで見ますとありました。  これは、全部の運転区あるいは電車区にあるわけですけれども、それは正確にスタートする、あるいは到着する、停車位置も寸分の狂いなく、これは乗務員はみんなそういう気持ちで安全運転をやっていると思うんです。何かありますと全部乗務停止なんです。私は私鉄も調べてみました。重大事故の場合はともかくとして、私鉄あるいは民鉄の場合にこういうJRのようなものはごくまれであります。津田沼の電車区だけでも十数人が三日とか五日とか、中には三カ月も乗務停止を食らう。それから、例えば三十秒遅延をすると本人の自己責任になる。それが三回続くと昇給がけられる。そういう状況のことを称して乗務停止処分症候群という病です。これはこの際JRに変えてもらわないと、乗務員が本当に気持ちよく運転をする、冷静な気持ちで運転をするということが非常に難しくなる。  かつては、社長さんも運輸省におっていろんなことを研究されたわけですが、この取り扱いについてはどういうふうに考えられておられますか。まず、症候群問題というのを説明してもらいたい。
  43. 住田正二

    参考人住田正二君) ただいま先生から御指摘のケースにつきましては、細部がわかりませんので、どういう行為に対してどういう処分が行われたのかよくわかりませんけれども東京周辺のようなところでは電車がおくれるということはしばしばあることだと思います。本人の朝の出勤がおくれて、そのためにおくれたというケースもあるでしょうし、また車両の整備が悪いとか、いろいろほかの原因でおくれた場合があると思いますが、そういう場合は別といたしまして、ラッシュアワーのためにおくれたということで本人が不利な扱いをされるということはないと思います。事情をまだよく十分理解しておりませんけれども、もう少し検討した上でお答え申し上げたいと思います。
  44. 松田昌士

    参考人松田昌士君) 補足さしていただきます。  先生御案内のように、細かい事故が幾つか起こりますと、その現象が積み重なって大きな事故一つ発生するというふうに統計的に言われております。一対二十九対三百という数字が一般的に言われているのは御存じと思います。そういう形の事故を平素から防止し、安全な体制をつくっていくというためには、事故というものが起こった事柄を常に正確に把握するという必要がございます。その把握するということと、それからその起こした方に対する処分でありますとか、乗務停止でありますとか、どういう措置をするかということとは必ずしも一律ではございません。  といいますのは、実は私どものところにございますデータでも、そういういろいろな事柄が起こった中で一番極端な、例えば信号を見落としたとか、駅を通過してしまったとか、大事故につながりかねないものは処分をすると同時にもう一回再教育をいたします。しかしながら、そうでないものについては、いろいろな細かいことの起こる九〇%は口頭指導という形で終わっておりまして、人事考課等にはそのこと自体を即に反映するということはやっておりません。と同時に、乗務停止というのは、停止という言葉が非常にきつくて、何か物すごい処分をしたように思われるかもしれませんが、これは違うのでありまして、そのまま乗務をさせておくと、もう一回技量を磨かないと危ないという面から再トレーニングをするということでございますから、乗務停止をしたということ自体が即その人の処分であるとか、待遇であるとかに響くということにはなっておりません。ですから、そこのところはいろいろなケースによって違ってくるのだということを御了解賜りたいと思います。
  45. 穐山篤

    穐山篤君 安全に輸送するという任務からいえば、規律が必要であることは十分承知をしますけれども、乗務停止を三カ月間もやる、あるいは五日間、一週間というのは私は異常な規律のとり方ではないかなと思うんですよ。一遍間違いを起こした、それはよくない。本人は反省をする。次からそういうことをやるなということで激励をしながら乗務員を育てていく、こういうことが私は一番望ましいことなんだけれども、何かというと乗務停止、賃金カット、こういう思想はあたら人材をつぶしてしまうのみだろうと思う。したがって、乗務停止処分症候群と世間で言われるようなものを解消しなければいかぬ。それは部内ではそういう気持ちでしょうけれども、運輸大臣どうでしょうか。今私の申し上げたような問題が非常に最近多いんですよ。  私は、冒頭にも言いましたけれども、同じ型の車両をあるいは車種を運転しているのと、車種も違う、連結の両数も違う、地理的な条件も違う、そういうものが全国的にあるわけですね。ですから、機械的に押しつけるというのは事故防止にならぬと思う。  そういう見地からいいまして、例えば出場がおくれた。それで三日間君は乗務を停止する。あるいは停車をする位置が間違った。だから五日間おまえは乗務を停止する。乗務員の気持ちからいうと乗務を停止されるというのは余りいい気持ちはしないんですね、誇りを傷つけられる。一たん起きた事故は二度と起こさないようにという気持ちでいるところに、幾日も乗務を停止する。おまえは蔵に残っていろというふうに言われるのは深刻な気持ちになるわけです。そういうものがみんな相乗して、やはりいつでも後ろから何かに追われる、そういう不安定な気持ちで運転する状況になりやすい。  したがって、私はこの問題についてはもう少し温かい方法が考えられないかどうか検討してもらいたいと思うんですが、どうでしょうか。
  46. 松田昌士

    参考人松田昌士君) 先生指摘のように、私ども今画一的に適用するということはできるだけ避けているつもりでございますけれども、やはり乗務員の気持ちになって、むしろ温かく再教育をしていくという観点からこの問題に対処するということについては私ども同じ意見でございますので、なおよく検討いたしまして、その辺の運用のよろしきを得たい、こういうふうに思っております。
  47. 穐山篤

    穐山篤君 その点は十分検討をしてもらいたいと思うんです。  さてそこで、先ほど山之内副社長からの説明によりますと、地上設備には全く異常がなかった。そういうふうに整理をしていきますと、乗務員または乗務上の問題に聞こえるわけですけれども、その点についてもまだしっかりした根拠はお調べにはなっておられないですね。
  48. 山之内秀一郎

    参考人山之内秀一郎君) 先ほど申しましたとおり、事故が起きた後まだ日も浅うございますし、現在調査を続行中でございますので、現時点で確たる原因を申し上げる段階ではないと思います。
  49. 穐山篤

    穐山篤君 警察に伺いますが、前の五十五年のときには衝突をした乗務員、生命はあったわけです。判決情状酌量して執行猶予つきであったわけですが、今回は不幸なことに乗務員が死亡されているわけです。したがって、これからいろいろ調査をしていった結果、処置が決まるんだろうと思いますけれども、死人に口なしですからそこの部分は欠落をします。当人の業務上過失致死という問題については書類上の処理はできたとしてみても立件がなかなか、なかなかというかできない。そうした場合に、使用者としてのJR東日本というものとのかかわり合いはどうなるんでしょう か。
  50. 廣瀬権

    説明員廣瀬権君) 先生指摘のとおり、この事故発生以来警察といたしましては鋭意捜査をいたしておりますが、現在は何せ捜査が緒についた ところでございまして、原因究明につきましてはなお時日をおかし願いたいというふうに思っております。  したがいまして、今後の警察捜査といたしましては詳細な鑑定をやること、それから十分幅広い事情聴取をやること、これを主にして進めてまいりたいと思っております。これによりまして事故原因究明いたしたいというふうに考えております。したがいまして、現在の段階では事故原因を断定するに至っておりませんので、今後どのように捜査が進むかということは答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  51. 穐山篤

    穐山篤君 それから、先ほど今後の予防対策安全対策としてATS—Pの前倒し設備投資ということを言われて、それも結構なんですが、この過密都市、過密ダイヤ、ラッシュ時についてPが整備されるまでの間、何か特別な措置をされるんでしょうか。  例えば、ラッシュ時には乗務員を二名にするとか、あるいは安全対策のためにいろんな工夫があると思うんですけれども、何かそういう特別な保安対策というものはお考えでしょうか。
  52. 山之内秀一郎

    参考人山之内秀一郎君) まだ原因が明確でない段階でございますが、原因の解明をただ手をこまねいて待っているのでは、日々安全に携わる者としては責任を全うできませんので、先ほど社長から申し上げた緊急の対策を申し上げさせていただいたわけでございますが、まずは、ともかく一番可能性がございますのは、たくさんの電車が走っている線区でのこういった事故でございますから、まず私どもは、第一線の社員であります乗務員に対して、組織を挙げて再度安全と教育の徹底を図ると同時に、安全設備の再点検を早速やってまいりたいと思います。と同時に、今申し上げました人間の注意だけでは限界がある部分もございますので、ATSのP型の繰り上げ実施をなるべく早くやるべく努力をしていきたいと思っております。
  53. 穐山篤

    穐山篤君 運輸省に伺いますが、きょう配られましたこの紙の二ページに、再発防止について具体的な報告をしろというふうに求めていますね。これはどういうことを期待して求められているんでしょうか、お伺いしておきます。
  54. 丹羽晟

    政府委員丹羽晟君) 今回の事故原因究明の結果いろいろな問題が解明されると思いますが、それを踏まえて、当然JR東日本として防止対策を樹立していただくということを考えているわけでございまして、それの全般的な措置を御報告いただきたいと思っているわけです。  それで、一部例えば今お話に出ていますように、ATSの新しい改良型を入れるとか、そういうような話自身もその中に含まれていくのではないかと考えております。
  55. 穐山篤

    穐山篤君 今回の事故を見ますと、一キロ百五十メートルの間に信号機が五つもある、最高の勾配であるし、カーブ、曲線についても同様のことが言える。これからますます年末の繁忙輸送を担当しなきゃならぬ。事故がありますと大変なことになるわけですから、例えばある特定の時間帯、特定の路線について、とりあえず機械が整備されるまで二人乗務をさせるというふうな意味の保安対策はないんでしょうか。
  56. 山之内秀一郎

    参考人山之内秀一郎君) 私ども長年いろんな事故に遭遇してまいりました。  昨年は、幸いほとんど大きな事故は全国的になかったわけでございますが、一昨年は大変記憶に新しいところでございますが、山陰線の余部鉄橋で列車が橋から落ちて大変多くの方が亡くなるという事故に私も当事者として直面をいたしました。その前の年には、石川県の能登線で多量の雨が降ったときに土砂崩壊が起きまして、ディーゼルカーがひっくり返りましてやはり何名かの方が亡くなるという大変痛ましい事故を起こしています。その前の年には、お恥ずかしい話でございますが、山陽本線の西明石という駅で上り特急富士号が夜半脱線転覆をいたしまして、幸い奇跡的に亡くなった方はなかったんでありますが、多くの方がけがをいたしました。その事故の際、当該の乗務員は酒気を帯びていたという大変お恥ずかしい事態がありまして、今回もそういったことがないように祈ったんでありますが、幸い今回はそういうことはなかったわけでございますが、その富士号のときも二人乗務でございました。  過去いろんな事故を見てまいりますと、二人乗っていれば安全ということは決して言えない状態でございますので、私どもはそういったことをとる気はございません。
  57. 穐山篤

    穐山篤君 最後に、運輸大臣社長にお伺いをしておきますが、きょう十二月八日はある意味でいえば戦争にかかわる重大な日であります。それから、事故でいいますと、きょうは余部事故の神戸の地裁が開始をされたわけでありまして、そういう意味では十二月八日というのは私も印象の深い日ではないかというふうに思うんです。  そこで、原因究明徹底的にやってもらう。それから亡くなった方あるいは負傷された方についての補償、援護というものは誠心誠意行って、世間から非難を受けないようにしてもらわなきゃ困る。それから安全対策、予防対策についてよもやと、今回の場合でもあり得ない事故があり得たという意味では相当の警鐘を鳴らしたと思うんです。そういう意味で従来のことにこだわりなく、新しい発想に立って再発防止対策を考えていただきたい。  なかんずく、分割・民営化した後いろいろな問題がJRの職場に起きております。私も承知しておりますが、それはきょうの議題ではありませんから申し上げることはないと思いますけれども、しかし、利益優先ということがどうしても先に立ちます。私も知っておりますけれども乗務員の諸君が東京駅やあるいは新宿の駅でオレンジカードを売っているということも、気持ちはわからないわけじゃないけれども、本来の任務である安全輸送というものがもしそれによって阻害をされるようなことがあるとすれば私は重大なことだというふうに思うわけであります。  それらの点について、運輸大臣並びに社長の決意を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  58. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 私はたまたま運輸大臣をしておりますけれども、運輸のそれほど際立った専門家でもございません。国鉄が民営化されまして一年余たちまして、かつての国鉄時代に比べれば国民から非常に高い評価を得ていることは明らかでございます。しかし、わずか一年でございますからいろいろ過渡的な現象もあると思います。かつて国鉄時代には狂態に近い混乱がございまして、国民全体から非常に強い批判と指弾を浴びたことも事実でございます。それが民営化のきっかけになったわけでございますが、先ほどお聞きしておりまして、国鉄時代に比べて非常に規律が厳しくなったというのもむべなるかなという気がいたします。  私自身乗客として、とまるはずの電車が向こうでとまってしまって、来るかと思ったら、仕方なしに戻っていって乗ったり、行き過ぎちゃった電車が戻ってくるかと思ったら戻ってこないんで、追っかけていく形で乗ったりしたことも何度もございました。そういうものを回復するために非常に規律が厳しくなったというのもむべなるかなという気がいたしますが、しかし、やはり最終的にはもう安全が第一でございまして、それが厳し過ぎてむしろ安全を阻害するならば非常にむなしいイタチごっこでありますから、そういう新しい現象もあるとするならば反省の対象にもなるでしょうし、いずれにしろ、多角的に知恵を出し努力し合って、いかなる状況であろうと安全を確保するために運輸省もまた力をかし、督励もし、最大限努力JRでも労使が上げることでこういった事故が繰り返されないような努力をしていただきたいし、また運輸省もそれを強く指導するつもりでございます。
  59. 住田正二

    参考人住田正二君) 私ども、今回の事故を警鐘として受けとめているわけであります。こういう事故が起きないように、原因究明については徹底的に調査をいたしたいと思います。また、その調査結果に基づきまして十分な対策を講じたい と考えております。  また、御遺族の方に対する補償、あるいはけがをされた方々に対する補償につきましては誠意をもちまして対応をいたしたいと思っております。  また、私どもの仕事、鉄道事業というのは安全が基本でありまして、安全そのものが営業ではないかと考えております。安全について利用者の皆様の信頼を失うということになりますとこれは営業自体が成り立たないわけであります。そういう意味で、収益のために安全を無視するということはこれは絶対にあってはならないことでありますし、今後も絶対ないように仕事をしてまいりたいと思います。今後も御指導のほどをよろしくお願いいたしたいと思います。
  60. 野沢太三

    ○野沢太三君 本日は、参考人の皆様には大変にお取り込み中のところをお越しいただきましてありがとうございました。  まず最初に、去る五日午前九時三十八分ごろ、東中野駅で発生しました列車衝突事故でお亡くなりになりましたお二方に対しまして、謹んで哀悼の意をささげたいと存じます。また、御遺族の皆様には心からお悔やみを申し上げる次第でございます。また、おけがをなさった方が大変大勢いらっしゃいますが、心からお見舞いを申し上げ、入院中の皆様には万全の手当てをいただきますようお願いをいたすものでございます。  私も、かつて鉄道に奉職をしたことがある者といたしまして、北陸トンネルの火災事故の際に亡くなりました方の御家族のお世話を担当させていただいたつらい経験がございますが、この問題につきましてはJRのトップの皆様が率先して善後措置を講じていただきまして、御遺族あるいはおけがをなさった方々に御納得いただきますよう御努力をお願い申し上げたいと思います。  そこで、亡くなられた方の御遺族あるいはけがをされた方々に対しまして、JRとして今どのような対応に取り組まれておられるか、社長さんにお伺いしたいと思います。
  61. 住田正二

    参考人住田正二君) 事故の起きました日の午後、御遺族あるいはけがをされた方々のお見舞いに伺ったわけであります。御遺族につきましては、中野警察におられましたので警察署に伺いましたけれども、残念ながらお会いすることができなかったわけであります。また、病院の方では、けがをされた方皆様にお目にかかりまして、おわびとお見舞いを申し上げたわけであります。  現在、先ほど御報告申し上げましたように、入院されている方は十五人でございまして、マン・ツー・マンということで私ども社員が一人一人お世話を申し上げております。また、遺族の方のお葬式はまだ終わっておりませんで、この次の日曜日にお葬式が行われることになっております。入れていただけるかどうかわかりませんけれども、私が伺いたいと思っております。  今後、一段落いたしましたら、遺族の方々と誠意をもってお話し合いをいたしたいと思っております。
  62. 野沢太三

    ○野沢太三君 マン・ツー・マンというお話でございますが、どうか親身になって、身内のつもりでお世話をお願い申し上げたいと思います。  さて、この種の事故の発生した原因あるいは対策ということに移りたいと思いますが、現場を見てまいりますと、左カーブ、しかも下り勾配ということで電車が相当加速して構内に入っていくという状況で、確かに難しい場所であるということは理解ができたわけでございますが、現場に行ってみますと、下りの閉塞信号機、これは第二閉塞といいますが、それがまず目に入り、さらにはATS信号用の信号機一つ立っております。さらに近づきますと第一閉塞が見えて、構内には場内信号機と、四回近く警告を受けるチャンスがあるということでありますから、これはしっかりやっておれば事故は起こらないし、現にそのような運行が毎日行われているわけでございます。今までの調査、まだ原因がはっきりしないということではございますが、ATSの地上装置等は正常に働いているということでございますので、やはりATSの確認ボタンを押してから何らかの問題が発生したのではないか、かように推察されるわけでございます。  過密問題という疑いもあるわけではございますが、当日は、九時三十八分ということでありますと一時間に十六本というダイヤでありまして、三ないし四分のヘッドで動いているわけでございます。八時台にはこれが二十四本、二ないし三分ということでありますから、その点から見ればこの時刻この場合であれば過密ということにはならないのではないか。やはりこれは運転取り扱い上の問題に相当大きな課題があろうかと思います。  そこで、ATSでございますけれども、ボタンを押して解除をするということがどうも相当数あるようだったと新聞でも報道されておりますし、私も現職中何遍も乗務をいたしまして、添乗いたしましてそういった実態に遭遇しておるわけでございますが、ATSを解除しているという実態、あるいはそうした場合の指導につきましてどのようにやっておられますか、お話をいただきたいと思います。
  63. 山之内秀一郎

    参考人山之内秀一郎君) 冒頭、先生お話の中で、ATS用の信号機というお話があったんですが、そういうものはございませんので訂正をさせていただきたいと思います。  ATSにつきましては、もう先生よく御存じかと思いますが、これは四十年前後に当時の日本国有鉄道が全国的につけた設備でございまして、従来の車内警報装置をさらに改良した設備でございまして、列車が赤信号等に近づきますと車内にブザーを発して乗務員に警告を与えまして、乗務員が五秒以内に確認ボタンを押して確認扱いをしない限り非常ブレーキがかかる、確認扱いをすれば、乗務員は正常な状態にあるという前提に立ちまして、後は乗務員の操作で赤信号手前でとまるということを基本にしたシステムでございます。  確認ボタンを押すということは、このシステムの前提に入っている、いわゆる一種のマン・マシン・システムでございまして、ATSを解放、解除するとか切るという表現をされる方がときどきございますけれども、そうではないんでありまして、これはマン・マシン・システムとしてATSの確認扱いは一種の正常な動作としてシステムとして入っておるというふうに御理解を賜りたいと思います。これが、あたかも警報装置を解除する、切るというような御理解があるやに伺いますが、これはそもそもシステムの構成上、人間と機械と一体となったシステムとして確認扱いという正規の操作があるというふうにまず御理解を賜りたいと思います。  したがいまして、赤信号に一定の距離近づけばこれは必ず動作をするわけでありまして、列車がダイヤどおり走っていればまずは多くの場合そういうことにはならないんでありますが、やはり、列車がおくれた場合、あるいは特に朝のラッシュアワー等列車の本数が非常に多い場合には、ちょっとしたホーム混雑とかお客様の乗りおくれというものが列車の遅延に及びますので鳴る機会がふえるのは事実かと思います。したがって、鳴った場合には乗務員は五秒以内にブレーキ手配をとって確認扱いをして赤信号手前でとまる。赤信号手前でとまるということはこれはすべての絶対でございますから、それを前提にしたシステムでございます。
  64. 野沢太三

    ○野沢太三君 よくわかりました。  続きまして、対策といたしまして、全社を挙げまして対策の強化に取り組むということでお話をいただいておりますが、管理部門の方が総力を挙げて現場へ出る、添乗をする、あるいは設備の点検をなさるということで、これはもう緊急措置としてまことに結構なことと思いますが、運転士は一人で乗ってやっておるということで、添乗をいたしますと大変励みにもなり、また、管理者の温かい一声で大変喜ぶものでございますが、私も添乗中にヒントをいただいてそれを仕事に生かしたということもございました。  何といいましても、人が問題である。機械の話もありますが、やはり機械をこなすのも人間でございます。そして、現場におります職員が何より も問題点について日々接しておるわけでございますので、今後の対策の中に現場の職員の意見も大いに活用するような方法を取り入れていただければありがたいなと思うわけです。これにつきましてひとつ……。
  65. 松田昌士

    参考人松田昌士君) 先生指摘のように、社員一人一人の意見をどのように仕事に生かしていくか。特に安全の面でいいますと、それが実務について実際の日常の仕事をしている人だけに、その意見をどういうふうに取り込んでいくかということは非常に効果的でもあり、必要なことであると思っております。  私ども会社ができましてから、社員一人ずつの意欲というものが非常に向上してきておりまして、例えば国鉄時代からありましたような提案制度というものにつきましても、年間四十万件から五十万件というふうにふえてきております。その中でも二万から三万というものが安全関係の提案として非常に貴重な改善意見が出てきております。さらに、小集団活動というものが盛んになってきまして、参加人員は社員八万人のうちの既に五万四千人という数に上っておるということから、いろいろな機会に社員の意見を取り入れて具体的な対策に結びつけていく、そして全社を挙げてという言葉を具体性と実りを得たものにしていきたいというふうに思います。
  66. 野沢太三

    ○野沢太三君 意欲的に取り組む人というのは、受け身で働く人よりもはるかに力を持つということになろうかと思いますので、どうかその方向で全職員の創意工夫を生かすような御指導をお願いいたしたいと思います。  続いて、またATSの問題に入りますが、今ございますのがS型ということで非常停止のみが自動化しておるということで、先ほどのお話のように確認扱いをした後は専ら手動によって運転を継続する、こういった形になっておるわけでありますが、これを速度照査機能のついたP型に変えようということで既に取り組んでおられるやさきにこのような不幸な事故が起こってしまった。この点大変残念であるわけでございますが、私鉄、民鉄の実態を見ると、昭和四十一年に運輸省からの指示があり、四十二年には設備基準、構造基準というものができまして、五十九年、ちょっと古いんですが、そこで三千八百四十二キロということで営業キロの七四%が設備されておる。特に地下鉄、モノレールは一〇〇%、大手私鉄は九九%こういった装置に変わっておるということでございます。  そこで、東日本は今このような計画で進んでいただいておりますが、これは東海あるいは西日本等も含めてほかのJRも速度照査のついた形でATSを更新していく必要があろうかと思いますが、この点につきまして省の方の御指導を伺いたいと思います。
  67. 丹羽晟

    政府委員丹羽晟君) ATS設置につきましては、もう釈迦に説法でございますのであえて私からくどくど申し上げることではございませんが、先ほどのお話のように、四十年代に国鉄がまずは先駆けてATS設置したわけでございます。今使っておりますATSのS型、B型という段階のものは、国鉄は私鉄と違いましていろいろな車種があっていろいろな線区があるというようなことから、それに対応するにはATSのS型というような形のものが一番対応しやすかったということがあったんだと思いますが、ただ、今先生お話しのように、最近の技術開発がJRのグループのところで完成いたしまして、東日本ATSのP型というものを九月から意思決定をして導入をするということで進めてきたわけでございますが、今回の事故のこともございますので、当該線区につきましては前倒しの導入を決定いたしまして、来年度の末にはこの線区につきましては使用できるというような形を考えているわけでございます。  それで、JRの西日本会社におきましても、今度の新しいP型を導入するということを今検討しているというふうに聞いております。私どもの方といたしましては、この改良型をできるだけ円滑に導入できるように今後とも適切な指導を続けてまいりたい、かように考えております。
  68. 野沢太三

    ○野沢太三君 国鉄が民営化して、もしも安全に瑕疵があってはいけないということでいろいろと配慮したわけでございますが、六十一年の国鉄時代と六十二年度民営に変わってからの事故の件数等を調べていただいたわけですが、いわゆる死傷事故については一、二の増加になっておりますけれども運転事故では十六件の減少、責任事故では三十三件、半分以下の減少ということで、明らかに安全管理については十分な実績が上がりつつあるやさきにこのような事故ということでございまして、一層の反省と対応が望まれるわけでございます。  今回の対策の中に、安全研究所をつくって技術開発も含めた対策を考える、さらには現場には総合訓練センター設置するということで、これもまことに結構なことでございますので大いに進めていただきたいわけでございますが、旧国鉄時代には事故防止対策委員会という形で、総裁以下トップが全員で並んで議論をする場というものがあったんですが、これに相当するものでどんなものがあるか、なければどうするか、省としての御指導、御意見をお願いしたいと思います。
  69. 丹羽晟

    政府委員丹羽晟君) 先生指摘のとおり、国鉄時代事故対策委員会という委員会がございましたが、JRになりましてからも各社ほぼ同様の委員会を持っております。若干名前が変わるとか構成メンバーが変わるとかいろいろございますけれども、例えばJR北海道では事故防止対策委員会というものを本社に置いて、委員長社長JR東日本では鉄道安全推進委員会という名前になっているようでございますが、これも本社に置いております。この委員長は鉄道事業本部長。こんな形で、それぞれ若干の規定の違いとかメンバーの違いとか名称の違いということはございますが、その委員会がやっていることは、基本的には事故の防止、それから万が一にも起きた場合はその原因究明、そういったようなことが基本的に行われていると伺っております。
  70. 野沢太三

    ○野沢太三君 形はいろいろあろうかと思いますが、システムとしてあるいは組織として取り組んでいただき、かつ重役さんを初め責任ある方がその御指導に当たる、かような仕組みを確立していただきたいと思います。  今回の、こういった貴重な事故といいましょうか、人柱まで出たような大事故、これを東日本だけの反省あるいは問題としていたのではまずいわけでございますので、JRの他社も含めこれから検討していただかなきゃいかぬと思います。その意味で、問題をどのように拡大しかつ普及させるかということも含めまして大臣の所感をお伺いしたいと思います。
  71. 丹羽晟

    政府委員丹羽晟君) 先ほどから御説明申し上げておりますように、今回の事故発生当日の私ども通達で、JR東日本の今回の事故概要を他のJR各社につきましても注意喚起をするということで通達したところでございます。ただいま御説明しましたように、JR各社事故防止委員会的な委員会を持っているわけでございますので、私どもの方といたしましてもこれからは各JR事故対策、安全問題の責任者を集めて、私どもの方もそれに加わった委員会的なものを設置して、常設的にその中で事故の発生の防止あるいは起きたときの原因究明、そういったようなことにつきましてこれからも続けていきたい、かように考えているところでございます。
  72. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 安全の問題は、決してJRだけではなくて、他のすべての鉄道事業にかかわる問題でございまして、かつての国鉄の混乱時代に、非常に皮肉なことですが、それまで進んでいた国鉄が安全の技術面でも民鉄に抜かれた形になりまして、それを今逆に追い越そうということでJR努力いただいているわけでございます。衆知を集めまして、場合によっては今先行している他の私鉄のノーハウなどもしんしゃくし、また国民の代表であります委員方々の討論の内容どもしんしゃくして、ともかく多角的に衆知 を集めて十全の努力をしながら安全の方途というものを、なかなか完璧とはいかないでしょうけれども、それに近い形で成就するように努力をしなくてはならないと思いますし、またそれを督励指導していくつもりでございます。
  73. 野沢太三

    ○野沢太三君 どうかひとつ、運輸省のリーダーシップをしっかりとっていただきまして、事故防止の実が上がりますようよろしくお願い申し上げまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  74. 及川順郎

    ○及川順郎君 まず、今回の衝突事故で亡くなられた方々に心から哀悼の意を表しますと同時に、傷を受けられた方々の一日も早い回復をお祈り申し上げたいと存じます。  初めに、運輸大臣にお伺いしたいと思いますが、国鉄が民営化になりましてからの御経験では今回の事故が初めてだろうと思いますが、ことしは東京湾で海の事故があり、そして今度は陸の事故、こういう二つの事故。特に今回の事故を通じまして、民営化という状況の中で運輸省を所管する立場で安全対策その他を含めましての指導体制で、よい面、この点は不都合を感ずるなという点、それがありましたら所感を伺いたいと思います。  それからもう一つは、今回の事故を通しまして運輸省、国と民営化になりました事業主体との安全対策強化のための連絡会議みたいなものの強化というか、この必要性をどのようにお考えになっておられるか、この二点をお伺いしたいと思います。
  75. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) かつて、国鉄はまさに名のとおり国鉄であったわけでありますが、民営化してJRになりました。それはそれで非常によき質的な転化だと私は思います。何といっても、私企業というものは物を合理化しなければ立っていけませんし、同時にやはり客商売でありますからサービスが徹底しなければ立っていけません。同時に、鉄道事業というのは加えてといいますか抜本的に安全が第一でございまして、そういう点では私企業としての主体性が、そういうものをしんしゃくしながら、国鉄時代にはむしろできなかったかもしれない設備投資もし、配慮をしていってくれるものと期待をしておりますし、またそれが実りつつあったと思いますが、たまたま今回こういう事故が起こりました。  先ほどもちょっと申しましたが、現況では、かつての私鉄の方が安全対策というものは技術的にも進んでいるようでございまして、民営化というものの、私企業というものの有利さがむしろそれをあかしとしているんじゃないか。民営化しましたJRはそれに追いつくために今御努力願っているわけでございますが、何といっても、規模も他の私鉄に比べてはるかに大きくありますし、お客様の数も多い。そういうことを一層自覚していただきまして、運輸省もかつてとは違う立場になりましたけれども、しかしやはり所管事項でございますから、多角的に積極的に手をかし、安全の徹底を図るべく努力をするつもりでございます。  また、今御指摘の全国的なと申しましょうか、もっと多角的な連絡会議のようなものが必要ならば、これはもうJRに限らず各鉄道会社すべての共通の基本問題でございますから、そこでノーハウを交換するということがさらに進むならば、そういった機会も持つべきだと私は思います。
  76. 及川順郎

    ○及川順郎君 今度の事故で、人命救助を優先した救急態勢、さらに復旧作業を見ておりまして現場で感じましたことですが、一生懸命やっているんですけれども、やはり少し時間がかかるなということを強く感ずるわけでございます。これは心理的な要素もございますけれども、こうした事態に対する復旧作業への取り組み態勢、それから病院に輸送する、あるいは受け入れる、この態勢で大変に過密の輸送をしている周辺、こういう点については単に交通機関だけではなくて、消防関係やあるいはまた医療関係とのかかわりというものが非常に強いわけでございますが、今回の事故を通じまして消防、さらには医療関係等、まずJR側としてこの点はこれから改善して強化していこうという反省点、それからまた、消防署やあるいはまた医療体制の方でもこれからはこういう点を改善していかなければならないという意見がまとめられてありましたらお述べいただきたいと思います。
  77. 山之内秀一郎

    参考人山之内秀一郎君) 今回の事故は、事故そのものは大変大きくて、多くの死傷者が出ましただけではなくて、復旧にも大変長時間かかりまして、御指摘のとおり当日は中央緩行線は終日運転ができなかったわけであります。今後とも、鋭意復旧方の迅速化についても努力はしてまいりたいと思いますが、何分今回の事故事故の損害の程度も大変大きく、それから大変多くの車両が被害を受けましたものですから、そういった意味においては若干御理解を賜りたいと思っております。  私も、大変多くの事故の経験をいたしたのでありますが、今回のを見て直観的にああこれは一日かかるなと思ったのですけれども、そういった意味ではかなりの規模だったというふうに思っております。  それから、負傷者救出にかかわりましては消防庁、警視庁等に大変お世話になりまして、この席をおかりしてお礼を申し上げたいと思いますし、関係の医療機関につきましても大変多くの病院で迅速な手配をしていただきまして、これまた厚くお礼を申し上げたいと思います。  ただ、まだ事故後日が浅く、取り込んでございますので、今後、けがをされた方を含めていろんな意味の御意見を賜りながら、問題点があれば今後の改善に役立てていきたいと思っております。
  78. 蓼沼朗寿

    説明員(蓼沼朗寿君) 東中野駅におきます東京消防庁の救急救助の概況でございますが、一一九番を九時三十九分に確知いたしまして、直ちに救助特別・救急特別第一出場を行い、十分後の九時四十九分に救助特別・救急特別第二出場を行っております。最終的には、救急隊二十六隊を初め六十四隊出動をしておりまして、従事した職員は消防職員二百六十二名、消防団員五十一名の計三百十三名が出動しております。  現場におきましては、負傷者の応急救護所を駅南口の路上に設けまして、ここで医師等と協力いたしまして応急処置を実施した後、重傷者から順次救急隊により医療機関へ搬送を行っております。救急隊が搬送した負傷者は全部で七十九名。一名は病院で死亡しておりますが、これらを二十二医療機関へ収容しております。  なお、死亡した乗客一名について救出に時間が大分かかったのではないかというお話がございますが、この死亡した乗客は、二両目にかぶさるように三両目が脱線しておりまして、この最前部で左足が床と車両の間に挟まれておりまして、行ったとき既に意識がない状態で動かすことができませんで、救出しようと思ったわけですが、車両の破損が大きく救出が困難でありました。このため周辺の床を切断して救出しよう、こういうことになりましたのですが、これに要する大型溶断機がございませんので、JR大井工場から取り寄せてJRと共同して車両切断を行ったので時間を要した、こういうことでございます。
  79. 澤宏紀

    説明員(澤宏紀君) 今回のJR事故に関しましては、事故発生後直ちに現地に救急車二十六台が派遣され、七十九名の方を周辺の二十二病院に搬送、収容し、適切な医療が行われたものと承知しております。また、現地での医療救護活動に関しましては、中野区より派遣要請を受けました中野区医師会より医師、看護婦が派遣されるなどによりまして現地での医療救護活動が行われたと聞いております。したがいまして、今回の事故に関する救急医療活動につきましては迅速に対応が行われたものと考えております。  今後、このような事故が起こった際の救急医療につきましては、その対策の充実に努めたいと考えております。
  80. 及川順郎

    ○及川順郎君 次に、事故原因究明に関して伺いたいと思いますが、今回の事故が起きまして、現地の人たちの声の中に、やっぱりまたやっちゃった、またできちゃったなという声が聞かれたという。また、JR内部にもそういう声があったとい うようなことが報道されておりますけれども、こういう反応をJRとしてはどういうぐあいに受けとめておられますか。
  81. 山之内秀一郎

    参考人山之内秀一郎君) 事故の後、折に触れてテレビを拝見いたしまして、先生の御指摘のような御意見もテレビの画面で拝見させていただいたわけでございますが、特に運転士の人が、同じ場面を二回見たわけでございますが、魔の場所という表現を使ったのがございました。先生もその件を御指摘かと思いますが、よく聞いておりますと、過去にもあったんだよな、あそこは、魔の場所としか言いようがないよなと、こういうトーンだったと思います。現場第一線の職員の実感としてそういうことだったということに私どもは深く感じておりまして、全く同じではございませんが、確かに似たような場所で三回起きたことはかなり重要な問題でございます。  きょう、この委員会でもたびたびお話がございますように、首都圏の通勤輸送というものは、世界的な大都市の中で、多くの方々を短時間に運ぶべく、私どもに限らず各交通機関が全力を挙げて取り組んでいるところでございますが、やはりその中で安全レベルを上げることが一番肝要かなというふうに考えまして、九月に私どもは新しいATSの導入を決定したばかりでございまして、今回の事故にかんがみまして特にこの区間についてはそれをスピードアップすることによってまずは事故の防止に万全を期していきたいと考えている所存でございます。
  82. 及川順郎

    ○及川順郎君 三十九年、それから五十五年、今回で三度目ということになりますね。いずれの事故でも共通している問題として挙げられるのが、ラッシュ時が一段落した午前九時台、これが一点。  それから二番目が、ラッシュのあおりでダイヤが乱れて二、三分から五分ぐらいおくれている、こういう状況での事故。それから三つ目が、警報や自動停止装置が運転士によって解除されている、そして手動の状況になっている、こういう三点が先ほど同僚委員からも指摘がございましたが、五十五年のときに信号機の位置見間違い、こういう状況が報道機関でもかなり——警察ではまとめた報告はしていないと先ほど答弁されておりましたけれども、そういうことが指摘されていた事実がある。そういう状況の中で、五十五年から見ましてももう既に八年余たっておるわけですが、具体的に事故教訓として改善した点はどういう点であったか、具体的に挙げていただきたいと思います。
  83. 山之内秀一郎

    参考人山之内秀一郎君) 確かに、場所だけではなくて、この場所事故がくしくも三件とも九時半前後の時間に起きた、しかも、ラッシュのピークではなくてその終わった後に起きたということは単なる偶然ではないのではないかということでございまして、今後ともさらに、労働科学の面を含めて私ども勉強していきたいと思います。やはり人間心理の、あるいは人間の生理の問題としてそういうところに一種の落とし穴があるかという問題提起として受けとめていかなければいけないと思うのが第一点でございます。  それから、東中野のこの場所、今回は若干前回とは違うのでございますが、起きましたことについては先ほど申し上げたとおりでございます。前回事故は、今回のようにホームの中ではなくて駅までの途中、しかもカーブが大変多くて、実は私もきのう現地を見てまいったんですが、信号機に関して言えば、信号機が一番生命線でございます。今回の信号機というのはかなり遠くから見えますが、前回事故場所信号機カーブの真ん中にございまして、やや見通し距離が短いかなというところに立っております。(「もうちょっと大きい声ではっきり言ってください、大事なところだから」と呼ぶ者あり)前回事故が起きたところというのはカーブの中にございまして、見通し距離の短いところでございます。  そこで、前回事故の後に急遽検討をいたしました。まず、東中野駅の手前場内信号機というのがございまして、これが今回赤信号でとまらなかった問題の信号機でございますが、その一つ手前に第一閉塞信号機というのがございます。前回事故は、この第一閉塞信号機を過ぎたところに電車がとまっていたところへ次の電車がぶつかっているというのが五十五年の事故でございます。したがって、この第一閉塞信号機がやや見にくい状態なものですから、そこの問題提起がございましたので、私どももそれに対して真剣に検討いたしました。本来ならば第一閉塞信号機を前の電車が過ぎるとすぐその直後に手前信号機黄色注意信号になるんですが、しばらくの距離を行かない限りこの信号機黄色に変わらないような措置をいたしました。したがって、前へ走った電車がこの第一閉塞信号機の直後ある距離にとまっている間は赤信号がダブルになるような措置前回講じたわけでございます。  それからもう一つ、さらにその電車がもうちょっと前へ行っちゃった場合には、今度はその手前信号機が普通ならば黄色になるところを黄色をダブルにいたしました。私どものルールですと黄色一つの場合には時速四十五キロ以下で走るということになっておりますし、黄色のダブルの場合には二十五キロ以下というふうになっております。そのような対策前回講じさせていただいたわけでございます。
  84. 及川順郎

    ○及川順郎君 この三つ目の中で言われておりますATSは、そのスイッチを押して手動に切りかえる、こういう状況で、しかも前方に危険がありながら、それを人為的にとめなければ、操作しなければ列車を、電車をとめることもできない、こういう状況では自動停止装置の役割というのはゼロですね。そういう状況を考えますと、ATSをつけている意味というものは半減されてくると思うんですけれども、こういう点に対する認識はいかがですか。
  85. 多田省吾

    委員長多田省吾君) 速記をとめてください。    〔速記中止〕
  86. 多田省吾

    委員長多田省吾君) 速記をつけてください。
  87. 山之内秀一郎

    参考人山之内秀一郎君) 申しわけありません。なるべくゆっくり、かつ明瞭にしゃべるように努力をいたします。  ATSは、先ほどちょっと別の御質問の際にもお話をしたとおりの機能でございまして、赤信号に近づきますと制動操作をとる。正確に申し上げますと、赤信号にある距離近づきますと、場所によって違いますが、近づきますとまずブザーが鳴ります。ブザーが鳴りますと五秒以内にブレーキ手配をとって確認ボタンを押さないと非常ブレーキがかかるようになっております。  この作動の機能といいますのは、乗務員に、赤信号に近いよといういわば危険予知の情報を与えると同時にブレーキ手配をとらせる。確認ボタンを押すだけではなくてブレーキ操作をやる。要するに二つやらなきゃだめなんです。ブレーキ操作をすると同時に確認ボタンを押すことによって自動非常ブレーキがとまるというわけでございますから、それをかませることによって何を担保しているかといえば、ブレーキをかけたということと、それから乗務員が例えば意識不明とか眠っているとか、そういう状態ではないという確認をとっているわけでございます。したがって、まずほとんどの場合には、あとは当然のことながら、プロが乗っているわけですから、乗務員赤信号を見ながらとめるという前提になっております。  そういったシステムを採用いたしましたのには幾つかの理由がございまして、一つは、昭和四十年前後の当時の技術としてはその辺のレベルが最高のレベルでございましたので、そのシステムを導入したことが第一点。それから第二点は、私鉄との比較がよくなされるわけでありますが、当社の場合にはごく限られた線区以外にはいろんな種類の列車が走っております。貨物列車がありますし、客車もあれば特急電車もあります。特に貨物列車なんかが走っておりますと今の私鉄型のATC、ATSを使うことは不可能なのであります。  そういった状況ですから、国鉄は長年このATSを使ってまいりましたが、それだけではまずいものですから、私鉄と同じような特定の電車がある線区内だけ走っております山手線でございます とか、京浜東北線でございますとか埼京線については、特に新幹線につきましては、私鉄よりももっと高度なATCを採用いたしまして安全に努めておりまして、この種の線区につきましてはこの種の事故は皆無でございまして、新幹線につきましては開業以来二十四年余この種の事故がほとんどなく、世界的にも高い評価を受けているというふうに存じております。  ただ、そういうことだけで放置はできませんので、私どもはもう十年以上前から多くの列車が走っていてもできるようなシステムの開発を心がけてまいりまして、最近話題になっておりますATS—Pというものをやっと手がけまして、この十二月一日に開業いたしました京葉線について数年前から一部テスト的に使っておりまして、ほぼ問題がないことを突きとめ、今回全面的に採用すべく九月に意思決定したばかりでございます。民営・分割して順調にスタートをいたしましたが、我が企業にとって安全こそが一番大事であるという議論に立ちまして、私どもこの問題が弱い点の一つであるという認識に立ちまして、九月に大枚数百億をかけてこれをやるということを決めた直後でございました。  もう一つ、これは私ども大変苦しみますが、新幹線のシステムとフランスのTGV、いわばフランスの新幹線のシステムとの違いでございます。日本の新幹線というのはATCを使ってブレーキはほとんど自動でございますが、フランスの新幹線TGVというのはほとんど人間が操作いたしまして、危ないときだけ機械が作動するという装置になっております。  私ども、深刻にどちらがいいかという議論をいたしまして、これは学者も意見が分かれるんですが、完全自動化というのは——全く無人であればいいんですけれども、かえって人間のあり方として非常に問題がある。人間にどの程度の仕事を与えるかということも大変な議論がありまして、そういうことも含めて今のATSはそういった装置になっております。  先ほどから、確認ボタンを押すことを解放するというお話もございましたが、解放ではなくて、人間と一体となった中でブレーキ操作と確認扱いの一連の操作をかませたというふうに御理解を賜りたいと思っております。  ただ、遺憾ながら今回こういう事態が起きましたし、新しい装置も開発できましたものですから、私ども鋭意これを早く取りつけたいし、首都圏の列車本数が多い線区についてはこういったものをやることが現時点では必要と考えております。
  88. 及川順郎

    ○及川順郎君 仕組みはわかるんですが、運転者の間では、先ほどからもお話がございましたが、少しでもおくれを出すなというのが合い言葉になっているんです。責任事項に対する強迫観念、そういうものと相まって、ATSを解除したまま一時停止をせずに運転するケースが慣習になっている、こういう指摘があるんですよ、現実に。この現実に対してどういうぐあいに認識しておられますか。
  89. 山之内秀一郎

    参考人山之内秀一郎君) ただいま申しましたように、ATSは、まず警報が出た場合にはブレーキ操作をいたしまして、確認ボタンを押さないと非常ブレーキがかかるのをとめることができない機構になっております。したがいまして、まずブレーキをかけないことには非常ブレーキ作動をとめられないということになっておりまして、要はブレーキを緩めない限り列車は自然にとまる状態になっておりますので、前の信号機赤信号からほかの信号へ変わらない限りそのままとまるように指導しているところでございます。  私どもは、そういった基準が守られているというふうに思っておりますが、非常に多数の列車が走っておりますので、今後とも安全第一の体制を組んでいきたいと思っております。
  90. 及川順郎

    ○及川順郎君 現実に、部内規定の中でそういう慣習というものが半ば認められているような文書も出ているというような報道がなされておりますけれども、そうした事実はございませんか。
  91. 山之内秀一郎

    参考人山之内秀一郎君) そういった事実はないと承知をしておりますが。
  92. 及川順郎

    ○及川順郎君 それでは、この問題に対してはそういう事実をもう一回よく調査していただきたい、このことを要望しておきます。  それで、今のATSは使用してもう二十年たっている。さっき、大変な予算をかけて取り入れるということを決めたと。もう遅きに失したという感じを強くするわけでございますけれども、少なくとも東中野の駅、ホームにとまっている列車が左カーブのところに入っていくとなかなか見えない、そういう地理的な状況もございます。そういうような状況を考えますと、信号だけを頼りにするということも大事でありますけれども、前の車両に何メートル以上接近しますと自動的に制御装置が働く、こういう状況がなければ自動制御装置としての本当の機能を果たしているというぐあいには言い切れないんではないか。この点の安全、開発、研究というものに対する認識はどのようにお考えになっておられますか。
  93. 山之内秀一郎

    参考人山之内秀一郎君) 現在の鉄道システムは、あくまでも信号機による安全ということが絶対条件になっておりまして、これはマイカーと違うのでありますが、マイカーの信号機というのは交差点等だけにありまして、前の車両との間隔は目視の運転者の判断でいくのでありますが、鉄道の場合は信号を守るということが絶対的な原則として鉄道のシステムはできておりますし、運輸省から御指導を賜っております安全の基本ルールもそういったことでもって法体系ができております。したがいまして、前の列車の後尾を見ながら運転するということは安全の基本にもとりますので、列車を赤信号でとめるということを前提にシステムを構成していくことに相なるかと思います。  ただ、技術進歩がこれからも非常に大きく期待される世の中でございますから、将来へ向けて今御指摘の件についても勉強を進めていきたいと思っております。
  94. 及川順郎

    ○及川順郎君 事態は急を要しておりますので、ぜひ早急に具体化できるようにお願いしたいと思っております。  列車ダイヤの過密化の問題でございますけれども、これはいろんな議論がありまして、過密が即そうした事故の直接的な要因にはなっていない、こういうような議論もあるわけでございますが、確かに事故原因として直接的な解釈は難しい状況がございます。今回を入れまして三回の共通している中で、ダイヤピークを過ぎた九時から十時に事故が集中しているという状況、そういうことを考えますと、列車ダイヤの編成と今回の事故というものは全然無関係とは言いがたい要因があるのではないか、このように考えますけれども、この点に対する分析はどのようになさっておられますか。
  95. 山之内秀一郎

    参考人山之内秀一郎君) この種の事故が起きますと、古くは三河島事故以来直ちに過密ダイヤ論が問題になります。どこまでが正常ダイヤか、どこから先が過密ダイヤかというところも大変難しい判断かと思いますが、私は、正常なダイヤで走っている限りは、列車がおくれない限りは、後続列車赤信号を受けずに順調に走れる状態というのがやはり正常ダイヤの限界かなというふうに思っています。したがって、今回のようにおくれた場合には赤信号を受けるということに相なるということからすれば、現在の各線の列車間隔というのは、正常な間隔で走っている限りはスムーズに走れる状態でダイヤを編成してございます。  それからまた、過去この種の事故というのは遺憾ながら時々起きているんでありますが、今回もそうでございますが、必ずしも列車の本数の一番多いときに起きているんではなくて、御指摘のとおり、むしろそうでない時間に起きているものの方が圧倒的に多いのも実態でございますし、事故というものは人間もかかわるものですから、その対応が大変難しいというふうに改めて思っている次第でございます。前もそうでございますが、今回は御指摘のとおり、ラッシュのピークが済んで、その後列車の本数が減りかけたところで起きてお りますが、列車ダイヤ編成でもって事故防止をするというのは大変困難かと思いますので、やはり抜本的なシステムの問題で解決をしていただきたいと考えております。
  96. 及川順郎

    ○及川順郎君 再発防止に移りたいと思いますけれども再発防止をめぐる状況の中では、機構改善あるいはまた軌道本数をふやすとか、あるいは運転士の資質の向上、安全運転規則の日常的な訓練、こういうものが非常に大事な要素になってくると思いますけれども、具体的にはどのようなカリキュラムを組んでおやりになっておられますか。
  97. 山之内秀一郎

    参考人山之内秀一郎君) 私ども社員は、昔と比べて大分少なくはなりましたが、JR東日本だけで八万三千人の社員が仕事をいたしております。今回あのような事故を起こした立場からは大変心苦しいとは思いますが、これだけの多くの本数を走りながら、かなりの数の事故が減って、しかも毎日毎日ある程度正常な運転をしていることについては、やはり大変多くの社員が地道な努力をしているというふうに思っておりますが、その辺は御理解を賜りたいと思っております。  社員についての教育訓練というのは大変重要な問題でございまして、かつて労使関係が悪く、労働組合の抵抗が非常にきつかったときには訓練すらままにならないといった事態もあったんでございますが、最近はそういったものがとみになくなってまいりまして、かなり充実した訓練ができているのではないかと思っています。特に動力車乗務員については、これは私鉄にはないというふうに思っておりますが、勤務時間中に正規に二時間の専門の時間もとりまして毎月訓練を行っておりますし、もちろん動力車乗務員を登用するときの訓練というものはかなり長期間をかけて実施しております。それから五十八年以降は医学適性検査等も正規に実施いたしておりまして、そういった意味では万全を期しているつもりでございます。  ただ、この事故にかんがみまして、なお一層この訓練を充実すべく、地方にも訓練センターを設けまして、設備も充実し、動力車乗務員だけではなくて、各種安全に携わる職員に対しての教育の充実を図るべく対策を決めたところでございます。
  98. 及川順郎

    ○及川順郎君 最後に、亡くなられた方、けがをされた方、特に運転士は大変お気の毒なことではございますけれども、亡くなっておるわけでございます。やはり両罰規定の精神の上からも、今回の事故に遭遇された方々に対する誠意ある事後措置をぜひ要望しておきたい。いやしくもお見舞いに行ってそこで示談書をとるなんというようなことは言語道断でございまして、今後、示談書に捺印した人も全部白紙に戻して、そうしてきちっと対応する、この点についての発言を求めまして、私の質問を終わりたいと思います。
  99. 住田正二

    参考人住田正二君) 今回お亡くなりになった方あるいはおけがをなさった方に対しましては、これから誠意を持って対応いたしたいと思います。  先ほど、示談書の話が出ておりますけれども、あの示談書は全部回収といいますか、破棄いたしております。
  100. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 まず最初に、亡くなられた方に心からの哀悼の意を表し、そしてまだおけがをなすっていらっしゃる方が一日も早く快方に向かわれることを祈って、質問に入りたいと思います。  実は私、三鷹にもう何十年住んでいまして、込んでいるから快速でなくて緩行の鈍行に乗っていつもあすこを通っているんです。そして、いい気持ちで居眠りなどしているわけなんだけれども、そこのところで一度ならず二度ならず今度またこういうようなことが起きまして、大変ショックを受けた者なんです。  いろいろ説明があって、決して好きこのんで事故を起こされていないということはわかるんだけれども、安全ということはこれだけやったからいいんだということで許されない。最善の安全というものは突き詰めていかなければならないということですね。そして、不幸にして一つ事故があったら、これから何を反省して、何を今後に生かすかという点が大事だと思うんです。  そういう意味で、この前の五十五年の事故の後に東京地裁判決が出ておりましたね。私は今度改めてこの地裁の判決文書を読ませていただきました。当然、運転した者に対しての責任はあると、過失があるということを言いながら情状酌量をしているという点について、こういうことを後半書いているんですね。   しかしながら、他方、中央線等の国電運転士には、ダイヤの密度が高いにもかかわらず、定時運転確保の強い要請があり、本件においても、ダイヤの乱れを回復すべく先行電車との間隔をなるべくつめようとする意識が被告人の前記運転操作に影響を及ぼしており、単なる暴走等とは異なる点がある こういうことを言っているわけですね、一つの問題として。  それから、二つの問題としては、   場内信号機と第一閉そく信号機の間が約二七〇メートルに過ぎない短小閉そく区間であるばかりでなく、右第一閉そく信号機が一〇〇〇分の二五という急な下り勾配が約四四〇メートルにわたつて続いた直後に建植されているため、従前から追突事故の危険性が指摘されていた箇所であり、 というのが二つ目ですよね。  それからもう一つは何だといったら、「この付近に設けられていた保安設備(ATS—B型)は、その特性上、一定の場合に警報が鳴動しないなどの問題もあって」云々と書いてある。そして、「これらが本件事故の遠因をなし」ていると、こういうふうに書いてあります。  私、これを読み直しまして、じゃあこの三つのうちのダイヤの密度、これはさっきから言われているような問題があると。この密度はその後どうなったのかといったら、八〇年十月改正、三鷹—御茶ノ水—津田沼間、普通のときは五分ないし八分ごとだったですね。今度、八八年十二月、津田沼—中野間二分ないし八分ごと、そして四分短縮したというようなことがある。第一に指摘されている要因というのはより悪くなっているということですね。過密はよりひどくなっている。  第二の信号場所、そして信号の間が短いということはどうなっているかといったら、これも変わっていないんです。信号の位置が変わっていない。短い信号の間隔になっているということですね。  第三番目のATS、これ変わったかといったら、これからATS—P型にするというわけで、この前の事故が起こったときから同じATSです。  裁判所の判決があって、そしてその判決の中身でこういうことが指摘されていることは、ああそうかと言って聞き逃せるものではなくて、私はこれらの指摘に対して責任を持ってどう対処するかというのが本来の姿だと思う。  ところが、今言ったような三つ、よくなっているどころか密度はひどくなっている。三つ全然変わっていないじゃないですか。この責任をまず第一に深刻に受けとめて対処なさらなければ、ここで幾らいい言葉でおっしゃっても私は誠意を疑わざるを得ない。  こういう裁判の判決について、その責任についてどういうふうに考えていらっしゃるか、それを伺いたいと思います。社長さんどうですか。
  101. 住田正二

    参考人住田正二君) 先ほど来、私どもの山之内副社長から申し上げているわけでありますけれども、安全運転というのはあくまで信号によって行うということであります。間隔が短くなったから、あるいは長くなったからそれによって事故が起きるということではなくて、信号に従っていけば事故は起きないということだと思います。  今お挙げになりました三点につきまして、先ほど申し上げましたような幾つかの改善はやっているわけでありまして、その結果安全運転は保たれている。ただ、残念ながら今回事故は起きておりますけれども、これは今お話しの三点に関係ない 問題——まだ事故原因がはっきりいたしておりませんけれども、今お挙げになりました三点に直接関係しているというような受け取り方をまだいたしていないわけであります。
  102. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 その答弁、ちょっといただけませんね。素人の答弁より悪い。まして社長としての答弁であるならば、今までいろいろ言葉でおっしゃったこと全部御破算になりますよ。  信号だけ確認してりゃそれでいいんだ、だからATSがどうなろうといいとか、そしてまた間隔が短いからどうだとおっしゃるけれどもカーブがあって、そして勾配があって、見通しが悪いというようないろいろな条件から考えて、こういうことが指摘されてこれを率直に受けとめる、そういう姿勢がなければ私は社長の責任として全く無責任だと言わざるを得ないんです。私は決して悪いように悪いように言いたくないけれども、せっかくこれだけの判決が出されているのに何らそういうことの反省もなくて今のような言葉であるということは、非常に無責任なJR社長であるというふうに言わざるを得ないと思うんです。  これでやりとりしている時間はありませんけれども、そういう態度で、JR東だけの社長だけれども、これからやられていくとしたら働く者も大迷惑だし乗客も大迷惑だと。そこのところをもう一つ、そうは言ったけれどもやっぱり痛いところがあるなと思っていらっしゃれば、それをじっくりと反省なさって今後のJRの運営に一生懸命やっていただきたいと私は思います。  それから、先ほど山之内副社長さんがいろいろ御説明なさいました。私も大変難しいと思うんです。機械にばっかり頼っちゃいけない、だけれども、やっぱり機械と一緒に人間がどう一体となってそれを生かすかというところに大きな問題があると思うんですね。それで、この事故があってからATSの操作などについていろいろと訓練もして教育もしたというふうなお話しがありました。先ほどおっしゃったのはそのとおりだと思う。ATS信号を発しますね。それを受けたらまずブレーキをかけて、そして信号を見ながら手動で進んでいくわけですよね。  そうすると、おたくの方から「東京運行本部における内規例」というのが出ておりますが、それを私調べさしていただいたわけです。「信号機の停止信号に対する警報の表示があったとき「警報、赤」と喚呼応答すること」と、まあ応答するのは当たり前ですね。そして、「直ちにブレーキ弁ハンドルをブレーキ位置に移し」て、減圧してかかるようにして、停止になったら、ATSの警報が鳴ったら直ちにブレーキというふうにしていかないといけないとさっきおっしゃいましたね。私そのとおりだと思うんです。  ところが、「運転取扱心得」というのがありますね。その運転取扱心得というものをずっと見てきましたら、二百五十一条に、「ATSの警報の表示があったときは、」場内なんかじゃなくて一般のところでATSの表示があったときは、こうなっているんです。「信号機信号の現示を確かめて必要なブレーキ手配をとった後、確認ボタンを押すものとする。」こうなっているんです。ここのところ矛盾していますね。  初めの内規では、山之内副社長さんがおっしゃったように、鳴ったらすぐ応答してブレーキ操作をする、それからボタンを押すわけでしょう。この心得の方では、ブレーキをする前に、まずATSから警報の表示があったら、信号機信号の現示を確かめてから必要なブレーキ手配をとって確認ボタンを押す。こうなっているんですね。この二つややこしいですね。正しいのは、先ほど山之内さんおっしゃったみたいに、ATSが鳴ったらブレーキ作動をやってそれから確認という方が、私はさっきおっしゃったとおりだと思う。この運転取扱心得というのははっきりしていない。  だから、運転取扱心得二百五十一条というのを、先ほどからおっしゃったようにわかりやすく訂正してほしいと思うんです、どうですか。
  103. 山之内秀一郎

    参考人山之内秀一郎君) 今、小笠原先生から御指摘のあったような問題の問題意識を持ったのは今が初めてでございまして、実は余り問題意識を持っていませんでした。目で見る動作と一連の手の動作とは別に考えておりまして、要するに、目で見るやつは見るし、手で動作するものの順番はまずブレーキとそれから確認ボタンという意味で申し上げたんで、いわば同時で考えていたわけでありますが、矛盾があるかどうか、その辺は専門の第一線の職員とも相談をしながら、もし矛盾があれば改正をしていきたいと思います。  ただ、御案内のように、自動車なんかでもそうですが、何かこういうときというのは、ぱっと足ではブレーキを踏む、前は見るということだと思いますので、それで本当にまずいかどうかはちょっと検討さしていただきたいと思います。
  104. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 つまり、ATSの警報というのはすぐわかるから、それですぐブレーキに入りますね。しかし、信号を確認してというと、こういうふうなカーブがあったり、そして列車のすれ違いがあったり、信号場所というのが短かったりすると見落とすこともありますよね。そういうようなことを考えたら、ATSの反応をしたらまずすぐにブレーキ操作をしておいて、同時に信号も見ていくというふうな手順にする方が合理的でわかりやすくていいと思うんです。それはあなた今すぐわからないかもしれないけれども、それちょっと検討してください。  そして運輸大臣、私の言っていることの方が話がわかるでしょう。これはJR東だけではないんです。全国のJRも貨物会社もこういう運転心得になっています。だから、それも含めて、私が言ったように、先ほどから山之内さんがおっしゃったように、心得の方もわかりやすく検討するということを考えていただきたいと思いますが、大臣どうですか。
  105. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 大変専門的なことですが、私今初めてそれをお聞きしまして御指摘はむべなるかなという気がいたします。何といったってエキスパートがおられるのですから、東日本がそれを受けとめて何かよりよき改良を施せば、それはまたほかのJRにも及んでいくと思います。
  106. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 私は、こういう事故が起こったときに、その場その場でなくて、今私は例を挙げたけれども、前の裁判で判決がどうだったんだろう、全体としてどうだったかというのを総括的に分析して、そして今後の方針をとるという姿勢がないと——気持ちは一生懸命にやっていらっしゃると思いますよ。それは否定しない。けれども、本当に有効な、効果的な対策というものが出てこないから、私は今度勉強してみてここのところはちょっと直していただきたいなと思うので、十分に検討していただいて、そして大臣も全国的なJR、貨物会社ども含めて考えていただきたいと思うんです。  それからもう一つは、先ほど警察の方おっしゃっていましたね。裁判でもこういう遠因がある、だから情状酌量したんだということがありますよね。今度の事故についても判決指摘された三つの問題、そのままで今事故調査されているわけですから、そういう遠因もあったんだということも頭の中に入れながら事故調査を厳密にやっていただきたいというのが私の希望ですし、そうすべきだと思うんですけれども、いかがですか。
  107. 廣瀬権

    説明員廣瀬権君) 警視庁におきましては、現在、事故原因究明につきまして鋭意捜査をいたしておるところでございますが、先ほども申しましたように、綿密な鑑定と広範囲の事情聴取並びに過去のいろいろな経緯も含めまして十分に捜査をいたしまして、その結果に基づきまして冷静に判断をしてまいりたいというふうに考えております。
  108. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そういう意味でのきちっとした原因調査をお願いしたいと思います。  それから、山之内さんにもう一つ言いたいんだけれども、きょうもいろいろ答弁なすって、原因調査に入ってまだ結果は出ていないわけです。鋭意調査中だとおっしゃる。鋭意調査中だということは原因がこれだということがまだわからないと いうことでしょう。  そこで、私は言いたいんだけれども、その原因がまだわからない段階で、こんな感じを与えるというような発言は慎まなければならないと思う。事故が起きたが何が原因かわかりません、調査しなければそれこそはっきり言えないと言うべきであるのに、五日の夕刊各紙を見ますと、あなたが記者会見、十一時からなすった中に言っているんですね。「運転士の操作と推測している」というふうにおっしゃったというのですね。これは読売の夕刊です。それから、これは日経ですが、「同副社長は「信号には異常がない」と間接的にATSには問題がないことを示唆し「運転士の操作に何らかのミスがあったのではないか」と語った。」と、こう書いてあるんです。毎日もそうなんで、「信号系統の故障の可能性は薄い」と。事故が起こって調査を始めるという段階でこういう考え方を持って新聞記者に発表して、これ、みんな出るんですよ。  そうすると、さっきからいろいろ言われているみたいに、一つの思惑があってこういう発言がぽっと出てきたと思うんですよ。そういうことは気をつけてもらいたい。調査してからというふうな謙虚な態度でなければならないと思う。例えば、さっきから業務停止症候群の話が出たけれども、だれもこうやりますよなんて言わない。それから、示談判こを押せなんていうことも、問題にならなかったらそのまま済んでいたと思う。  その中身は何だといったら、当局はしっかりやっているんだけれども、何と言ったって労働者が言うことを聞かないんだよとか、労働者がわがまま、それはいろんな点あるかもしれない。そういうような認識があるからこういう発言が出てくるということを私はここで厳しく指摘しなければならない。事故が起こって十一時の記者会見ですよ。そんなときに、そういう事故運転士の責任であるかのようににおわせる発言というのは非常に不謹慎だと思う。そのことをしっかり私は考えていただきたいと思う。  それから、電車を通してみたとおっしゃいましたね。検査なすったわけですね。それは何ともなかった、ATSも何ともなかったということだけでは決められないと思う。私は徹底的に調査してもらいたい。  御存じだと思いますけれども、私がこの委員会で取り上げましたJR東日本の秋田の五能線、あそこで列車が通るのに踏み切りあけっ放しになっちゃって、それで事故になって死んじゃったという問題を取り上げましたね。閉め切らなければならないのに、汽車が通っているのにあけっ放しなんていうのはこれはとんでもないことだといって、大臣もそれはもう大変だとおっしゃってくだすって、そして補償やなんかをきちっとやってもらったんだけれども、これも何度通してみてもほかに原因というのもわからない。それでいろいろ言われている。だから、絶対そういうことはあり得ないということはないんです、この五能線の場合を考えても。あり得ないことです、通るのに踏み切りあけっ放しなんていうのは。  そういう意味からも、今度も簡単に、いや列車を通してみたら何ともなかった、信号ATSも何ともなかったよというようなことで逃すんじゃなくて、やっぱり徹底した原因究明というものをこの際やってもらわなければ、カーブを直してくださるわけじゃないでしょう、低くなっているところを盛り上げて高くしてくれるわけでもないでしょう。そうしたら、よっぽど徹底した究明と、そしてそれらのことができなければ、この過密ダイヤというものを少し考えなきゃならないと思う。四分短くなるというのはありがたいけれども、私は四分短くなるより事故を起こしてもらいたくないんです。  JR東日本は黒字だなんていろいろ宣伝していらっしゃいます。こういうきれいなものを出して、「十二月一日ダイヤ改正」、これにこう書いてあるんですよ。「JR東日本は、生活環境の変化に対応するために、新しいサービスのダイヤを展開いたしました。トータルライフを、より豊かにするための”快適ダイヤ”です。」なんて、縮めてくださる。私、快適ダイヤじゃなくて、これはもう恐怖のダイヤと言いたい。もうこういうことがこれからあってはならないから、だから徹底的に現実をしっかり調査してもらうこと。そして、憶測で物を言わないでいただきたいということ。そして、ほかを改善することが不可能であるならば、過密ダイヤでサービスしたような思い上がりはやめてもらいたい。安全第一でやっていただきたいということを最後の締めくくりとして申し上げたいと思います。  いかがですか。大臣とそのお二人、しっかり責任を持った答弁いただきたい。
  109. 山之内秀一郎

    参考人山之内秀一郎君) いろいろと御指摘をいただきましたが、確かに昨年、五能線の事故先生から御質問を受けていろいろ御答弁を差し上げた覚えがありますし、あの事故も私どもにとっては大変反省の多かった事故だと思います。  それから、この件の事故内容究明につきましては、先ほど来申し上げておりますとおり、今後とも鋭意全力を挙げて解明をしていきたいと思いますし、さっきから申し上げておりますように、原因は最終的にまだ全然判明をいたしておりませんしと申し上げていると思います。御指摘の点も踏まえて解明をしていきたいと思います。  発言の件でございますが、この辺はいつも大変難しいところが実はございまして、あのときも私はたくさんいろんなことを言って、しかもその一部だけが取り上げられますので、いささかある部分は本意でないところもあるんですが、私の記憶では、まだわかりませんけれども過去のいろんな例を考えるとこの可能性が強いのではないかと思いますというようなことを申し上げたような記憶がございます。これは何も言わなきゃ私は一番安全でありまして、いつもはいいんですけれども、なかなかああいうせっぱ詰まりますと、今度はそうは言ったって何かわかるだろうと、よくそういう追及を受けますので、場合によりますとあしたにも事故があるかもわからぬのにおまえらプロとして少しぐらい見当もつかぬのかとも言われたこともございますので、その辺は状況を判断の上、なるべく御趣旨を体しながら対応していきたいと思います。
  110. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 第一には、正確な原因究明だと思います。一方では、都会のライフスタイルも変わってきまして、お客様のニーズもどんどん募り、過密なダイヤも一種の歴史的なというか必然的な要求で、JRとしてもこれにこたえざるを得ない。しかし、それが結果として、これは原因究明によるわけでありますけれども、安全の支障につながるならばこれは根本的な考え直しも必要でございましょう。いずれにしても、まず原因究明し、それを踏まえてあたう限りの再発防止措置をとるように運輸省も強く指導してまいるつもりでございます。
  111. 田渕哲也

    田渕哲也君 本件は、警察等でまだ調査中でございますし、事故原因もはっきりわかっていない段階ですけれども、既にマスコミ等ではいろいろの報道もなされておるわけであります。中には非常に食い違った報道もありますし、これは混乱しますので、私はその意味で、まず警察の方にお伺いしたいと思います。  ブレーキはもう衝突直前にかけたということも報道されておりますし、そのときのスピードは二十キロないし三十キロという報道もあれば、四十キロ以上出ておったという報道もございます。まず、この点の事実はどうかということをお伺いしたいと思います。なお、地上施設には全く問題はないということも報道されておりますが、この点はいかがか。それから、車両の方の調査はまだ進んでいない段階かと思いますけれども車両の設備等に故障その他異常はなかったのかどうか、あるいはATSの確認ボタンの状況はどうか。この点で、現在わかっておる範囲でまずお答えをいただければと思います。
  112. 廣瀬権

    説明員廣瀬権君) ただいま先生御質問の点は、まさに今後の捜査の重要ポイントでございまして、例えば衝突した電車ATSは解除されて いたかどうか、ブレーキをかけたのはどの地点か、電車の時速はどのぐらいかということにつきましては、今後詳細な検分、鑑定、あるいは幅広い事情聴取をやりまして慎重に詰めてまいりたいというふうに思っております。  現在までの捜査によりますと、一応信号機、それから地上にありますATS施設、これについては異常はなかったという報告を受けております。しかし、車両内の計器あるいは資器材等がどうであったかということにつきましては、先ほど申しましたように綿密な鑑定をやって、その結果判断いたしたいというふうに考えております。
  113. 田渕哲也

    田渕哲也君 いずれにしましても、追突の衝撃、車両の破損度から見るとかなりのスピードで衝突しておるわけであります。恐らくあのスピードというのは、前に電車がいるという認識ではなかったと思うんです。電車がいないプラットホームに入っていく、少なくともそれぐらいのスピードはあったと思います。  そういうことがなぜ起きたかということになるわけですけれども、先ほど同僚委員からも御指摘がありましたが、やはりATSにかかわる操作の問題が一つあるような気がします。執務標準で決められたとおりのことをやっておればそういう事故は起こらないということが今までの答弁から考えられるわけですけれども、しかし、現実にはやはりかなり見込み運転というか、この電車が通る時点には赤信号黄色に変わるだろうという見込み運転がかなり行われておるということがいろいろ言われております。  私自身余り詳しくありませんから、そういう点まで注意して見たことはありませんけれども、国鉄で通勤しておる人でそういう点に興味のある人の話を総合しますと、自分もそういう経験は何度もしていると。赤信号のところを通過する寸前に信号が変わるということはもう再々ある。中には赤信号のまま通ることもあるというようなことも言っております。これは、その執務標準でやっておるとダイヤが守れないから見込みでそれをやるようになるのではないかと思われるんですけれども、この点についてJRの方はどう考えられておりますか。
  114. 山之内秀一郎

    参考人山之内秀一郎君) 安全というのはすべてに優先をいたしますし、赤信号に近づいた場合とまるのは絶対の原則でございますから、ATSの動作を含めてこれは絶対原則でございます。見込み運転はしない、ましてや赤信号をとまらずに走るというのは絶対ないように常時教育訓練を繰り返しているところでございまして、私どもは絶対ないという確信をしておったんでありますが、今回の事故が起きまして大変遺憾に思っている次第でございます。改めてまたその指導徹底していきたいと思いますし、それをしなければダイヤが守れないという状況ではございませんで、そこは申し添えておきます。
  115. 田渕哲也

    田渕哲也君 それからもう一つ、この事故の特殊性は、三十九年、五十五年、引き続いて三回もほぼ同じ場所で、しかも同じような追突事故が起こっているということであります。これは何といいましても現地の地形、カーブとか勾配あるいは見通しの問題、その辺に非常に大きな問題があって、いわゆる難所と言われるところに相当するのではないかと思います。それに対して、五十五年の事故以後、信号機の移動とか信号機の性能等を改善されたと伺っておりますけれども、それだけでは十分ではなかったのではないかという気がします。事故というのはそう再々起こるものではなくて、それこそ何万回に一回とか何十万回に一回いろんなミスとも重なって起こるわけですけれども、それが三度も同じ場所で起こっているというのはやはり構造的な原因があると考えざるを得ないわけであります。しかも、五十五年に改善されたけれども、それが十分でなかったからまた今回起こったと考えざるを得ないのでありますけれども、この点はいかがですか。
  116. 山之内秀一郎

    参考人山之内秀一郎君) 確かに、全く同じ場所ではございませんが、同じような近い場所で二十数年間に三回起きたということは、単なる偶然と見過ごしてはいけないというふうに考えるのは私も当然だというふうに思います。確かに、この場所は決していい場所ではないのでありますが、私どもも長年やってまいりますと、特に御利用の方はわかると思いますが、あの程度の場所というのはちらほら実はあるのでございます。  私も、苦い経験をいたしましたのは、四十三年の御茶ノ水駅で同じような追突でもって大変大きな事故を起こしました。あの場所というのは、今の東中野よりかはるかに見にくい場所でございます。ほかにも数えあげれば切りがないのでありまして、代々木から中央線が山手線の上を越して新宿に入るところでありますとか、あるいは中央の快速線が四ツ谷駅のトンネルから四ツ谷のホームに入るところとか、客観的に言うとそういうところは実は東京の中では遺憾ながらたくさんあるのでございます。  なおかつ、ここで起きるということについては、テレビの運転士発言ではございませんが、魔の場所としか言いようがないんだよなということになりますけれども、やっぱりそれではいけないのでありまして、前回のときには、先ほどからるる説明を申し上げましたようなとりあえずの対策をいたしましたが、一つ退治すれば今度はすぐ隣の場所で起きたというのが今回の問題であります。もはやそういうこそくな手段ではいけませんので、従来から申し上げているように新しいATSシステムを入れるように大至急取りかかっているところでございます。
  117. 田渕哲也

    田渕哲也君 国鉄が民営化されて、国民が一番関心を持っておる点というのは、一つは経営状態です。赤字たれ流しであったのが民営化されると改善されるのかどうかということが一つ。もう一つは、やはり安全問題だと思います。安全問題が民営化されることによってよくなるのか悪くなるのか、これはいろいろ論議があったところでありますけれども、それを実証してもらわなくてはならない。  それからもう一つは、やはりサービスという点であります。サービスの点ではかなりよくなったという評価がだんだん定着してきておるようでありますけれども、また業績の面も比較的順調に推移しておる。これはまだ短期のことだけで判断するわけにはまいりませんけれども、とにかく、始まって今までの段階では順調に推移しておるということが言える。  安全の問題も、まだ短期でありますから決定的な判断をするわけにはまいりませんけれども民営化前と民営化後と比べて事故状態についてどう判断されるか、またどういうデータを現在持っておられるのか、お伺いをしたいと思います。
  118. 丹羽晟

    政府委員丹羽晟君) JR発足後の昭和六十二年度でございますけれども、死傷事故を含む全体の鉄道運転事故件数というのが今手元にございますが、それは九百二十七件でございます。前年度の六十一年度というのが国鉄時代でございますが、その六十一年度は千三十五件、比較いたしますと対前年比約一〇%の減少ということでございます。それで、JR発足後これまでのところは踏切事故とかそれからホーム転落、そういったような場合を除きまして、列車内での旅客の死亡事故というものは皆無ということでございましたが、そういう意味では今般のこのような事故が発生したことはまことに遺憾だと考えております。  先ほど来のいろいろな議論を踏まえまして、私どもの方も安全の問題については最大限指導をしてまいりたいと思っております。
  119. 田渕哲也

    田渕哲也君 確かに、発足年度である六十二年度は運転事故の件数も死傷者数も非常によくなってきております。問題は六十三年度でありますけれども、これはまだ終わっておりませんから、はっきりした統計は出ていないと思いますけれども、傾向としてどうなのか、わかっておる範囲でお答えいただければと思います。
  120. 山之内秀一郎

    参考人山之内秀一郎君) 私どもの担当いたしておりますJR東日本の管内だけで申し上げますと、上半期九月までの鉄道運転事故が百五十六件でございまして、前年度が三百七十六件、これを 半分にいたしますと百八十八件になりますから、件数としては鉄道運転事故は六十三年度は六十二年度より減っております。  それから、運転阻害事故は上半期で二百五十六件。前年が五百二十件でございますから、半分にいたしますと二百六十件。ほぼ同じか、やや減っているということでございまして、件数的には以上でございます。  ただ、今回の事故が起きましたし、先ほどちょっとお話がありました上越線事故もあったところでございますから、数字だけではなくて、安全に対しては真剣に取り組まなきゃいけないと存じております。
  121. 田渕哲也

    田渕哲也君 時間もありませんので、最後に一点お伺いしますけれども、今後の再発防止対策、これは先ほどからいろいろお答えをいただいております。ただ、設備の点で今度ATSのP型を採用されるそうであります。五十五年の事故の後、六十年までにATCを入れるというような話もあったというように聞いておるのですけれども、これはさらに将来ATCを採用するとか、あるいはさらに進歩したATOの採用を将来にわたっては考えられておるのかどうか、その辺の構想についてちょっとお伺いをしたいと思います。
  122. 山之内秀一郎

    参考人山之内秀一郎君) 今回開発いたしましたATSのP型は、事安全性に関しましてはATCとほぼ同格と理解をいたしております。ATCとATS—Pの違いというのは、一つは、先ほどちょっと申し上げましたことを踏まえまして、より人間の自主性を強くして機械優先にしなかったという点の違いと、そのためにいろんな種類の列車に対する対応度が強くなったという二点でございますので、現時点ではこれが一番私どもはいいと思っております。ただ、いずれにせよ技術というのは日進月歩でございますから、さらによりよいシステムに向けて今後とも勉強していきたいと考えております。
  123. 田渕哲也

    田渕哲也君 最後に、大臣にお伺いしますが、今回の事故は必ずしも過密に原因があったという結論はまだ出されていないわけでありますけれども、いずれにしましても、JRに限らず、私鉄、地下鉄を含めて都市の交通状況というのは非常に混雑をきわめておりますし、ダイヤも過密にならざるを得ない。そういう中で一遍事故が起こると大変な事故になると思うんです。したがって、これは交通体系というか交通機関、交通施設全体の問題になると思いますけれども、何とかもう少し快適な交通施設が首都圏においてできるようにぜひ御尽力を賜りたいと思いますが、この辺についての抱負をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  124. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 今、田渕委員がおっしゃいましたということで、実は政府も多極分散型国土形成の促進法をつくったわけでございますが、法律だけできてきましたけれども、実は具体的な案が何もございません。これからのことでありますけれども、いずれにしろ、施設をさらに増すことで東京をこれ以上住みやすくするというのは金も時間も非常にかかりますから、やはり東京の機能を分散するなりして、ここに集中している人口をよそへ移すということをマクロに考えなければ、いつも後手後手で、東京で暮らし働く人たちに御迷惑をかけるんじゃないかと思っております。  そういうことで、リニアなんか大いに宣伝しているわけです。よろしくお願いいたします。
  125. 多田省吾

    委員長多田省吾君) 他に御発言もなければ本日の調査はこの程度といたします。  大臣参考人方々は退席してくださって結構でございます。     ─────────────
  126. 多田省吾

    委員長多田省吾君) この際、派遣委員の報告に関する件についてお諮りいたします。  先般、当委員会が行いました北陸、四国及び九州地方における鉄道事業の現状、空港及び港湾の整備状況等、運輸事情に関する実情調査のための委員派遣につきましては、両班からそれぞれ報告が提出されておりますので、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  127. 多田省吾

    委員長多田省吾君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十六分散会