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1988-08-01 第113回国会 衆議院 本会議 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年八月一日(月曜日)     ─────────────  議事日程 第三号   昭和六十三年八月一日     午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑     ───────────── ○本日の会議に付した案件  永年在職議員細谷治嘉君、奥野誠亮君、村山達雄君、鯨岡兵輔君、藤尾正行君、渡辺栄一君、村山喜一君、大出俊君、渡辺美智雄君、武藤山治君、竹内黎一君、小宮山重四郎君、小渕恵三君及び橋本龍太郎君に対し、院議をもつて功労表彰することとし、表彰文議長に一任するの件(議長発議)  国務大臣演説に対する質疑     午後一時二分開議
  2. 原健三郎

    議長原健三郎君) これより会議を開きます。      ────◇─────  永年在職議員表彰の件
  3. 原健三郎

    議長原健三郎君) お諮りいたします。  本院議員として在職二十五年に達せられました細谷治嘉君、奥野誠亮君、村山達雄君、鯨岡兵輔君、藤尾正行君、渡辺栄一君、村山喜一君、大出俊君、渡辺美智雄君、武藤山治君、竹内黎一君、小宮山重四郎君、小渕恵三君及び橋本龍太郎君に対し、先例により、院議をもつてその功労表彰いたしたいと存じます。表彰文議長に一任されたいと存じます。これに御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 原健三郎

    議長原健三郎君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。  これより表彰文を順次朗読いたします。  議員細谷治嘉君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意伸張に努められた  よつて衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもつてこれを表彰する     〔拍手〕     …………………………………  議員奥野誠亮君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意伸張に努められた  よつて衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもつてこれを表彰する     〔拍手〕     …………………………………  議員村山達雄君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意伸張に努められた  よつて衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもつてこれを表彰する     〔拍手〕     …………………………………  議員鯨岡兵輔君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意伸張に努められた  よつて衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもつてこれを表彰する     〔拍手〕     …………………………………  議員藤尾正行君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意伸張に努められた  よつて衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもつてこれを表彰する     〔拍手〕     …………………………………  議員渡辺栄一君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意伸張に努められた  よつて衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもつてこれを表彰する     〔拍手〕     …………………………………  議員村山喜一君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意伸張に努められた  よつて衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもつてこれを表彰する     〔拍手〕     …………………………………  議員大出俊君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意伸張に努められた  よつて衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもつてこれを表彰する     〔拍手〕     …………………………………  議員渡辺美智雄君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意伸張に努められた  よつて衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもつてこれを表彰する     〔拍手〕     …………………………………  議員武藤山治君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意伸張に努められた  よつて衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもつてこれを表彰する     〔拍手〕     …………………………………  議員竹内黎一君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意伸張に努められた  よつて衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもつてこれを表彰する     〔拍手〕     …………………………………  議員小宮山重四郎君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意伸張に努められた  よつて衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもつてこれを表彰する     〔拍手〕     …………………………………  議員小渕恵三君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意伸張に努められた  よつて衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する     〔拍手〕     …………………………………  議員橋本龍太郎君は衆議院議員に当選すること九回在職二十五年に及び常に憲政のために尽くし民意伸張に努められた  よつて衆議院は君が永年の功労を多とし特に院議をもってこれを表彰する     〔拍手〕  この贈呈方議長において取り計らいます。     ─────────────
  5. 原健三郎

    議長原健三郎君) この際、ただいま表彰を受けられました議員諸君登壇を求めます。     〔被表彰議員登壇拍手
  6. 原健三郎

    議長原健三郎君) 表彰を受けられました議員諸君を代表して、細谷治嘉君から発言を求められております。これを許します。細谷治嘉君。
  7. 細谷治嘉

    細谷治嘉君 ただいま、私ども十四名に対し、本院永年在職議員として、院議をもって御丁重なる表彰の御決議を賜りました。議会人として、また政党人としてまことに身に余る光栄でありまして、感謝にたえない次第であります。  ここに、年長のゆえをもちまして、表彰をいただいた一同を代表して衷心からお礼言葉を申し上げたいと存じます。(拍手)  私たちが二十五年の長きにわたって国政に参画いたし、今日このような栄誉に浴することができましたのは、ひとえに先輩同僚議員皆さんの御厚情郷土皆さんの多年にわたる温かい御支援のたまものでありまして、この機会に心から深くお礼を申し上げる次第であります。  顧みますと、私どもが本院に議席を得ましたのは、昭和三十五年の第二十九回総選挙昭和三十八年十一月の第三十回総選挙のときでした。  当時、石油エネルギーへの大転換石炭政策の後退、原子力開発推進列島改造に象徴される国土地域開発計画などが次々と展開されました。その裏面で幾多のひずみが生まれ、公害、過疎問題、そして一極集中の弊害すら生じてまいりました。貿易立国を目指した我が国は、国際経済の中で日、米、EC諸国との間にフリクションが生じ、国内産業経済構造漸進的改革が求められ、それらの解決が今や強く政治に求められています。  「ふるさとづくり」は、住民、国民創意と工夫から生まれ、そこからまた地域文化が創造されます。いささか私のこれまでの信念を申し述べさせていただけるならば、終生地方分権・自治の発展エネルギーのすべてをささげてまいりましたのも、ひとえにこのように信じてきたからにほかなりません。  私どもは、今回の栄誉をしっかりと胸に抱き締めまして、必ずや期待と御恩に報いるよう精進する決意であります。  何とぞ、私たちの意をお酌み取りいただきまして、今後とも変わらざる御指導、御鞭撻をお願い申し上げ、お礼言葉といたします。ありがとうございました。(拍手
  8. 原健三郎

    議長原健三郎君) 本日表彰を受けられました他の議員諸君あいさつにつきましては、これを会議録に掲載することといたします。     ─────────────     奥野誠亮君のあいさつ   この度、永年在職議員として院議をもって表彰のご決議を賜わりました。誠に光栄であり、感謝に堪えません。これもひとえに先輩同僚議員のご指導鞭撻郷土奈良県の皆さま方のご理解ご支援によるものでありまして、ここに心から御礼申し上げます。   私が初めて議席を得ました昭和三十八年以後におきましても、日韓条約の批准など戦後処理に類するものの議事運営におきましては、物理的な抵抗がくり返され、採決に際しての速記録には「聞きとれず」と書かれているものが幾つかあります。   幸い、その後、国会運営の混乱は回避される反面、わが国経済は順調な発展を続け、今や先の大戦における勝者と敗者の地位が、部分的には逆転せんばかりになっています。   しかし、私にかかわることで恐縮ではありますが、数年前、法務大臣をしておりましたとき「自主憲法をどう思うか」と問われ、「同じものであってもよいから、もう一度つくり直してみたい」という考えが国民の間に生れてくれば好ましいと思う旨答えました。数時間後には、質問者所属の政党の方々から「法務大臣罷免」の声が上がって参りました。   また先頃、日中間の戦についての所見を求められ「その発端は昭和十二年七月の盧溝橋事件にあると思いますが、ライシャワー氏は偶発的な事情によるものと述べています。私も同じ見地に立っております」と答えましたところ、これまた答弁の当否を論ずることなく、国務大臣罷免の声を上げられました。   敗戦によって、昭和二十年八月から昭和二十七年四月まで、わが国は、戦勝国である連合国占領下におかれ、その間、天皇及び日本国政府の権限は連合国軍司令官に従属するものとされました。そして「憲法と総司令部との関係にふれること」、「占領政策を批判すること」など多数の問題点にふれることは禁止されていました。   極東国際軍事裁判所も一方的なものでありました。しかも戦勝国側、例えばアメリカや中国の事情にふみこんだ調査は許されず、日本国内の調査は徹底して行われましたが、盧溝橋事件は、日本側の謀略と決めつけることはできませんでした。   それだけに、憲法や大東亜戦争にからむ問題については、国会での論議を封じていては、真の戦後は終りません。それなくして日本の展望を正しく切り開いて行くことは困難であります。   国会運営についての希望をつけ加えさせて頂き、また重ねて関係の皆さま方感謝し、今後のご指導をお願いして謝辞と致します。     …………………………………     村山達雄君のあいさつ   このたび、院議をもって永年在職議員として表彰のご決議を賜わりましたことは、議会人としてこれに過ぐる名誉は無く、誠に感謝にたえません。   二十五年の永きにわたり、ひき続いて本院に在職し、本日この栄誉に浴することができましたのは、ひとえに先輩同僚議員各位のご指導、ご鞭撻と、わけても郷土新潟県の皆様方から賜わりました変わらぬご支援、ご厚情のお蔭でありまして、ここに心から厚くお礼申し上げます。   私が、はじめて本院に議席を得ましたのは、昭和三十八年十一月の第三十回の総選挙であります。当時池田内閣は、所得倍増の旗を掲げ高度経済成長の路線を驀進していました。しかし、国際的には先進国の仲間入りをしたばかりで、国民総生産二十五兆円台、一般会計の規模三兆円弱、外貨準備高二十億ドル、また高速道路も名神の一部が供用開始され、新幹線も東京オリンピックを機に、東海道線が開業をみたばかりという有様でした。私は、郷土発展と国の繁栄を請い願い、両者は不可分のものであるとの考え方で微力を尽して参りました。   それから四分の一世紀、世界政治経済の激動の波を国民の英知と努力で乗り越えてきました。   ドルショック、二度にわたるオイルショックアメリカの双子の赤字に起因する貿易摩擦に対処するための先進国間の政策協調——日本にとっては、円高誘導市場開放内需拡大財政再建下積極財政経済構造調整等苦渋にみちた経験を積んできました。そして気がつくと、日本は今や世界二位の経済大国となり、経常収支対外債権外貨準備高は群を抜いて世界一位となりました。   これからの二十一世紀を展望すると、経済国際化がいよいよテンポを速める中で、日本はその地位にふさわしい世界経済への貢献を求められております。また、モスクワにおける米ソ首脳会談を機に東西の相互理解が進み、地域紛争の解決の萌しが見えはじめ、第二次大戦後はじめて、不確かながら世界平和への希望も生まれてきました。これからの日本は、世界の平和と繁栄のために、世界と共に生きねばならない時代を迎えたと言えましょう。そのためには、内を固め、体力をつけることが肝要です。税制改革財政再建はそのためにも避けて通れない道であります。   私は今回の表彰栄誉を機会に、志を新にして山積するこれらの課題にとりくむ覚悟であります。先輩同僚各位ならびに郷土新潟県の皆様の一層のご指導、ご鞭撻を心からお願い申し上げ、謹んでお礼のご挨拶といたします。     …………………………………     鯨岡兵輔君のあいさつ   衆議院議員として在職すること二十五年の故をもって、院の決議表彰の栄に浴しました。   二十五年の永い間、政治家としてご指導鞭撻をいただいた先輩同僚皆様に心からお礼を申しあげます。   連続して九回の選挙に当選させていただいた選挙区の方々に対し何とお礼を申しあげて良いか言葉がありません。その中には既に鬼籍に入られた方も多数ございます。そのお一人お一人が、いま私の目先に浮かびます。本当に有り灘うございました。   二十五年は夢のように過ぎ去りましたが、思えばそれは決して短かい歳月ではございませんでした。   その間、私は政治家として何をしてきたのだろうと考えますと、まことに慚愧に堪えないものがあります。   物質的な面だけに目を奪われ、そこにのみ幸福を求めた結果、心を失った寒々とした社会にしてしまったのではないかと、私は密かに反省するのでございます。そして「われ過てり」の感に身の縮む思いです。   国民の血の出るような努力によって経済的には繁栄し、大変に便利な世の中にはなりましたものの、人の情けはいつの間にか薄くなって、その面では棲みにくい世の中になったような気がいたします。   もしこの私の考えが間違っていないとしたら、世相の水先案内人たるべき政治家の罪であると、お詫びの仕様もありません。   戦争に敗れて生まれ変わったわが国は、二度と戦争はしないと固く誓いました。この誓いを忘れてはならないと、私はこの二十五年間、それを思いつづけ、特に核兵器に反対する運動をつづけて参りました。   空気が汚れ、水が濁り、土は痩せ、森林は減り、砂漠は増える。このようにして地球の環境は悪化の一途を辿り止まるところを知りません。   これを防がなければ人類に明日はないと、私は今日まで叫びつづけて参りましたし、明日からもこれを叫ぼうとしていますが、力不足を嘆かずにはおられません。   力不足と言えば、政治が金力に支配される傾向に歯止めをかけることがでぎず、ついに国民から大きくその信を失うにまで至った今日の政治の姿を思うとき、私はこれに対し申し訳の言葉を知りません。   私は、選挙区に於いて、私の微意を理解していただき、清潔な政治に終始させて下さった有権者の皆様に何とお礼を申しあげてよいか解かりませんが、金力支配政治の罪は私一人清しと免れるものでないことを反省し、残された生涯をこのことに力を尽くしたいと決意しております。   在職二十五年の栄誉をお与えいただいたお礼を申しあげると共に、所懐の一端を述べご挨拶といたします。     …………………………………     藤尾正行君のあいさつ   只今議長から院議で永年勤続の表彰をお受けしました。大変光栄なことだと思います。この光栄は多くの先輩同僚の御指導と栃木県第二区選挙民皆様の二十五ケ年間に亘る変らぬ御支援のお蔭です。今後この名誉を汚すことのないよう、一層御奉公に精進いたします。   いま日本は、敗戦と政治社会経済の混乱の時期から脱け出して、世界一といわれる繁栄を謳歌しております。吉田茂先生をはじめ、指導者の諸先輩が、その時々に多くの苦難を乗り越えて、わが国の再建と近代化に全力を尽された成果でもあります。   しかし乍ら、財界、労働界知識人、その他各団体等国民の中には政治の現状に対して、厳しい批判、提言が相次いでいます。  一、国会の審議は形がい化してはいないか  一、金権体質を一日も早く一掃すべきだ  一、政党にも、国会議員にも自己改革の能力が衰えているのではないか  等々であります。議会制度発足百年を二年後に迎え議会政治抜本改革、出直しを求めるものばかりであります。   私どもはこれらの声に応えなければなりません。   二百年前、産業革命が起りました。人口が四倍にふえ、産業も貿易も広く全世界に拡がりました。世界の歴史が塗りかえられたのです。そして今、私達が迎えるこれからの世界は、交通、電気通信情報化航空技術の発達で、また金融、証券、保険などのサービスの先物化国際化産業革命に匹敵する一大変革を遂げようとしています。政治も、経済も、福祉も、教育制度もこの変革に順応してゆかなければ生きてゆけないのです。   これからはコンピューターの普及、バイオ技術の革新で時代工業化時代から高度工業化、脱工業化時代に向って猛スピードで変ってゆきます。   いま世界の中で日本国際化が叫ばれています。科学、技術が、そして産業経済国際化を果したように、私どもの「政治国際化」が何よりも必要だと思います。   二十世紀の素粒子物理学核エネルギーを開発しました。核兵器の恐怖も生れました。近代化学はいろいろのガスを発見しました。その一つフロンガスは地球をとり巻くオゾン層を破壊しているということです。アフリカ等諸地域で砂漠化が進んでいます。そして六十億に近い世界の人口に、飢え、病い、気象異変、大規模災害が惧れられています。日本の科学、技術経済の力を駆使して、地球、世界のために役立てる必要があります。   伝統ある日本民族の「心」の基礎の上に世界をみる新しい目を見ひらいて、新しいわが国政治への道を同僚皆様とともに進みたいと思います。   私は今後残された政治生涯をかけて、政治改革の大道を邁進いたします。     …………………………………     渡辺栄一君のあいさつ   このたび、永年在職議員として、院議をもってご丁重な表彰のご決議を賜わりました。誠に身に余る光栄であり、感謝にたえません。昭和三十八年十一月第三十回総選挙に初当選以来、二十五年の永きにわたり本院議員として在職し、今回の栄誉に浴することができましたのは、ひとえに郷土岐阜県第二区の皆様の変らぬご厚情ご支援おかげであり、さらに諸先輩同僚議員各位の暖かいご教導ご鞭撻の賜ものと心から厚く御礼申し上げます。   顧みますと、私は故大野伴睦副総裁のご指導を受け、祖国愛に燃えて政治を志しました。私共が初当選した当時は、池田内閣の末期であり、「所得倍増政策」から「高度経済成長」へ前進を開始したばかりであって、政治経済共にその国際的地位は極めて低いものでありました。以来今日までわが国は、ドル・ショックやオイル・ショックなど幾多の試練をのりこえ、世界第二位の経済繁栄を成し遂げ、世界に貢献する日本をめざしております。   私は永年にわたる地方行政の経験を生かし、きびしい財政事情のもと国土保全社会資本の充実と住宅の整備など、内需の拡大と産業構造転換の推進に努力し、心豊かな郷土国政の進展に全力を尽くして参りました。その間議会人として国政の場に参画し、本院においては建設・懲罰常任委員長を、また内閣においては建設大臣をはじめ幾多の要職をつとめさせていただき、誠意と情熱をもって国政に悔いなき精進を尽くし得ましたことは、誠に感慨無量であります。   今や内外の諸情勢は歴史的なきびしさに直面し、最近の貿易摩擦に見られるように、わが国国際的責任遂行の要請は極めて強く、その責務を果たしていくと同時に、真に豊かな国民生活の安定を実現し、当面、税制改革の遂行、行財政・教育改革高齢化社会の対応など多くの課題が山積しており、この難局打開に全力を傾注せねばなりません。   今日の栄誉をいただいた感激を銘記し、初心に帰り、二十一世紀に向け新しい視点からの国づくりに、新たなる決意と覚悟をもって全身全霊を尽くすことをお誓いし、皆様の一層のご指導鞭撻をお願い申し上げて、御礼の言葉といたします。     …………………………………     村山喜一君のあいさつ   ただいま、院議をもって永年在職議員として表彰の御決議をいただきました。誠に身に余る光栄であり、感謝にたえません。   今日、この栄誉に浴することができたのは、ひとえに郷土鹿児島皆さんの永年にわたる御支援先輩同僚議員各位の御指導の賜物であり、ここに改めて厚くお礼申し上げます。   私が初当選できましたのは、昭和三十五年の秋、右翼の凶刃に倒れた社会党委員長浅沼稲次郎氏の屍をのりこえての斗いでありました。「議会制民主主義を守れ」「革新の灯を消すな」の声に支えられ、三十九歳の若さで当選できたのが、つい昨日のように思われます。   第二次大戦に参加し生き残った私達戦中派の責任は、戦争のない平和な世界を築くことであり、そのためには人類皆殺しの核を廃絶し、軍縮を達成することだと思います。戦争を放棄した日本国憲法のもとに、わが国は不充分ではありますが、非核三原則を国是として持っています。軍事大国への誘惑もありますが、軍備増強反対は依然として国民の多数を制しています。日本人は教育、勤勉、創意によって科学技術の力を駆使し、経済力をつよめ豊かな国を創ってさました。GNPが世界の一三%に達した日本国国際的責任も大きくなってきました。外国から、水洗トイレのない国が失業を輸出し、年間三百時間も余分に働く中毒蜂が我々を苦しめていると批判されています。私達の生活の質と価値観が問われています。   いまや時代高度情報化高学歴化高齢化社会を迎えています。顧みますと国内では情報、金融、知識、技術、教育、文化、政治の東京一極集中化が進み、国民の四分の一が首都圏に住みついています。一方、地方では町が、農村集落が消失しています。国土の均衡ある発展が失われるなかで、一坪一億円の狂乱地価が生まれ、億ションと称せられるマンションが現われています。政治がいま国民からその存在価値を問われているのだと思います。国際的には米ソによるINF全廃交渉が成立し、核兵器廃止へのスタートが始まりました。イラン・イラクの十年戦争も中止の方向に動いています。私達人類の生存する共有の惑星=地球が未来に輝きを失わないようにしたいものです。   私は本日の表彰を期して、今後も初心を忘れず頑張りたいと思います。変らざる御指導、御鞭撻をお願いして、御挨拶と致します。     …………………………………     大出 俊君のあいさつ   このたび、永年在職議員として、院議をもって御鄭重なる表彰の御決議を賜り、誠に身に余る光栄であり、感謝に堪えません。   二十五年の長きにわたり、引続き本院に在職し、本日の栄誉に浴することが出来ましたのは、ひとえに郷土横浜皆さんの変わらぬ御支援、御協力のおかげであり、先輩同僚議員各位の御指導、御鞭撻の賜物であり、ここにあらためて心から厚く御礼を申し上げます。そして又、議員各位のお赦しをいただいて、七年前に先だたれた亡き妻に心から感謝致したいと存じます。   私が初めて本院に議席を得させていただきましたのは、昭和三十八年の第三十回総選挙でありました。   立候補に当たりまして三つの目標をもって居りましたが、其の一つは自らの「赤貧洗うが如き」幼い日の体験にてらして「真面目に働く者がむくわれない」のは社会の仕組みがまちがっている。つまり政治を変えたい。其の二つは全逓労働運動の長い経験から「スト権奪還」なくしては公務員の本当の生活改善は出来ない。又あわせて日本の賃金が公務員主導型になっている以上、これなくして日本の労働者の真の生活は守れない。其の三つは私が豊橋第一陸軍予備士官学校の出身であり、同期の見習士官の殆んどが少尉になる前に沖縄で戦死をしているという悲惨な体験から、何としても日本の平和を守り抜きたい、ということでございました。   以来二十五年、内閣委員会、予算委員会に席を置いた私は、人事院勧告完全実施の為に、ILO条約批准と国内法の改正とスト権奪還の為に、更に抑止と均衡の名のもとにふくれ上がる軍拡と予算を抑える為に、又ロッキード以来政治の悪を糾弾する為に懸命に努力を続けて参りました。   今日この栄誉に浴するに当たり、更にこの道を根限り進みたいと申し上げて、御挨拶と致します。     …………………………………     渡辺美智雄君のあいさつ   この度永年在職議員として院議をもって表彰決議を賜り、誠に光栄の至りであります。   これひとえに昭和三十八年十一月の初当選以来、今日まで終始一貫私を御支援下さいました栃木県第一区の有権者及び全国の後援者の方々並びに先輩友人のお蔭であり、心から厚く御礼申し上げます。   顧みれば、私は敗戦の焼土の中に復員して参りましたが、国敗れて山河あり、生れ故郷で行商から計理士に身をおこし、郷土の開発と生活の向上のため、図って県議に出馬。当選二期を半ばにして、国政参加の大望を抱き、衆議院に立候補いたしました。第一回目は見事に落選しましたが、二度目からは前述の如きお蔭により、今日に至りました。   一度は大臣として国政の中枢に入り、自分の日頃の願望を政策に反映したいと念じましたが、幸いにして数度にわたって閣僚にも登用され、個人としては望外の政治生活を与えられてまいりました。   わが国繁栄は私の予想も及ばないほどになりました。しかし、近年に至り、わが国繁栄は一体いつまで続くものだろうかという不安にかられています。   繁栄は原因があってその結果ですが、その原因と経過を我々は忘れかけているのではないだろうか。先人の英知と苦労の上にあぐらをかいているのではないだろうか。深く反省するところであります。   栄枯盛衰はまさにこの世の摂理であります。繁栄した国家民族は数々あれども繁栄し続けた国家民族はありません。ローマは一朝にして成りませんが、一朝にして滅びました。国際競争に負けたものが衰えてゆきます。   私は二十一世紀に向けて、わが国が老化しないように、永い間若さが保てるように、改良改革を積重ね、発明発見を促していかなければなりません。   当面する諸問題は、行政、財政税制、教育等の改革を推進し、国際協調と協力に努め、自分の国は自分で守り、国際平和と繁栄に寄与してゆくことであると信じています。   繁栄が崩壊するほころびは、心のおごり、怠惰、堕落、腐敗に始まり、ものの原理、原則からはずれるからであります。二十五周年を契機に一層心を引きしめ、初心に戻ってあと十年間、国家国民のために御奉公させていただきたく、誠心誠意努力する決意であります。   何卒、後援者を始め先輩友人関係各位の一層の御指導、御鞭撻をお願い申し上げ、感謝と御礼の言葉といたします。     …………………………………     武藤山治君のあいさつ   本日、院議をもって永年勤続議員として、表彰の御決議を賜わりましたことは、政党議会人としてこれに過ぐる名誉はなく、感激の極みで謹んで感謝申し上げる次第でございます。   この間変らざる御支援、御協力を頂戴いたしました栃木県の皆様方及び先輩同僚議員諸賢に心より御礼を申し上げます。   私は、少年時代に立志し、代議士をめざして幾多の辛酸をなめ、十四歳で税務署の給仕となり、中学校に入学させていただけなかったため上京し、アルバイト、そして昭和十八年警視庁少年消防官となり、夜間の上野中学に通い中学卒の資格を得ました。早稲田高等学院、早稲田大学政経学部へと進みましたが、戦中戦後の苦しいアルバイト学生としての生活を体験しました。そんな過去を振り返りますと、今回の表彰が夢のようです。   昭和二十一年四月に故金子益太郎代議士の秘書に採用され、国会の様子を多感な二十歳の頃から見聞してきた私にとっては一層の感激であり、今この表彰を受けるに当り金子先生に真先に報告いたしたいと思います。   昭和三十年四月、栃木県議会議員となり、三十五年に衆議院議員に初当選したのですが、当時は日米安保条約の改定をめぐり国論を二分するような騒然たる社会情勢であり、その年の十月に私が師とあおぐ故浅沼稲次郎先生が凶刃に倒れられたのです。浅沼先生は、死の二日前に足利市まで支援においで下さいました。そうした思い出を脳裏に浮べながら二十五年在職の重みをかみしめております。   この二十五年間に、歴代総理との論戦を通じ幾多の法律の制定や修正を実現させたこと、大臣や局長との質疑を通じて、国家国民のためにと提案した事柄がいくつも実現したことを振り返り、政治家になってよかったと思っております。私は、野党議員でしたから大臣にはなれませんでしたが、その時々に適切な発言、提言を行い政策に影響を与えることが多少でも出来たことで責任を果したと自負しております。   今や、世界一のマネー国家にのし上がり、世界のリーダー国家となりました。それだけに各国からの要請や仕打ちも厳しいものがあり、国際化時代のむずかしさがあります。また、財政は国と地方を含めて約二五六兆円の借金をかかえており、この財政を再建することも子孫に責任をもつ政治家として最重要課題だと考えます。   私は、今回の栄誉と感激を深く肝に銘じ、今後更に一層の精進を重ねたいと決意しております。この上も御指導、御鞭撻を賜わりますようお願い申し上げ、御礼の御挨拶といたします。     …………………………………     竹内黎一君のあいさつ   このたび、永年在職議員として、院議をもって御丁重な表彰の御決議を賜りました。まことに身に余る光栄であり、感謝にたえません。   二十五年の永きにわたり本院に在職し、本日この栄誉に浴することができましたのも、ひとえに諸先輩同僚議員各位の暖かい御指導、御鞭撻、そして郷里青森の皆様方の変わらぬ御支援、御協力のおかげであり、ここに心から厚く御礼を申しあげます。また労苦を共にした妻にも、感謝をささげるものであります。   ふりかえってみますと、私が本院にはじめて席を得たのは、昭和三十八年十一月の第三十回総選挙の時でした。初出馬で当選という幸運なスタートでした。しかしこの喜びも、直後に起ったあのケネディ米大統領暗殺のニュースに、たちまちかき失せ、『民主主義と暴力』を深く考えさせられる出発ともなりました。   さて、この二十五年間、私は微力ながら、我が国が直面した国政上の諸問題に真剣に取り組んで参りました。「郷土青森がよくなることが、日本発展につながる」を政治信条に、私なりの努力を続けた日々でした。しかし、その成果について考えますと、まことに忸怩たるものがあります。果して、青森県はよくなったのか、日本発展に少しは役立ったのかと、改めて反省するものであります。   今日、我が国の内外情勢は極めて多事多難であり、二十一世紀に向けて果すべき政治課題も山積しております。世界的には、核軍縮の促進が、人類の生き残りを賭けた緊急の問題となっております。また自由化の波に洗われる中で、どうしたら日本農業が生き延びてゆけるか、これは農業県にとっては死活の問題です。医療保障、年金の再構築も急がなくてはなりません。   私はいま、国会に籍を置くものの一人として、ある恐れを持っております。それは、私たちの子供や孫たちから、『出来なかったのではない、彼等はやろうとしなかったのだ』の非難を受けることです。この怠慢の罪だけは、絶対に犯すまいと、決意を新にする次第です。   どうぞ、これからも旧に倍しての御指導、御鞭撻のほどよろしく、伏して御願い申しあげます。どうもありがとうございます。     …………………………………     小宮山重四郎君のあいさつ   この度、院議をもって、永年在職議員表彰の議決をいただき、誠にありがとうございます。   四半世紀の長きにわたりまして、有権者の皆様の代表として微力ながら国政に参画し得ましたことは、諸先輩ならびに同僚知友の皆様、地元埼玉の後援会ならびに有権者の皆様の温かいご理解とたゆみなきご支援・ご鞭撻の賜物と心から感謝いたします。   さて、私が衆議院議員に初当選いたしました昭和三十八年は、アジアで初めての東京オリンピックの開催に向けまして、日本中が新たな国づくりに燃えていた時でした。   高度経済成長政策は軌道に乗り、加速の度を速めつつありました。各地に進められたコンビナートの建設、各産業分野で積極的に展開された新技術の導入と研究開発、そして槌音高い新幹線やハイウェイの建設等、総てが来るべき新近代国家の到来を予感せしめるものでした。   敗戦と廃墟の中で多感な青春時代を過ごした私にとって、この新しい国づくりの息吹はなんとも魅力的でありました。そして、当時ジョン・F・ケネディーアメリカ大統領に「日本国づくりは若い力が必要だ。勇気をもって行動してください」と激励をうけ、その感激をもってこの国づくりに参画して、祖国を、郷土をもっともっと素晴らしいものにしたい、いや必ずしてみせるぞ……若い血をたぎらせたその思いが、私をして国政壇上へとますます駆り立てたのでした。   そして今顧みれば、アッというまに過ぎた二十五年間でした。初心忘れずただただ夢中でした。   思えばこの二十五年、政治家としてただ一途、地元のため地味な仕事に励んでまいりましたことを自らの誇りとしております。また政治家小宮山のライフワークとしてひたすら科学技術の振興に努め、併せてその国際交流に微力を尽くし得ましたことを誇りとしております。   今、二十一世紀を展望して、物の豊かな時代から心の豊かさを求める時代が志向されております。政治に豊かな感性と賢い洞察と、そしてなによりも明確な哲学がなくてはならないと固く信ずるものであります。これからも私の哲学と良心に照らして誠心誠意、全力投球してまいりたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。   本日は、どうもありがとうございました。     …………………………………     小渕恵三君のあいさつ   本日、院議をもって永年勤続議員として表彰を賜りましたことは、議会人としてこれに過ぐる名誉はなく、感謝、感激にたえません。   二十五年間の永きにわたり本院に在職し、この名誉に浴することができましたのも、弱冠二十六歳の無名の青年を国政の場に送り込み、その後も心からの声援を送り続けてくださったわが郷土群馬の皆様おかげであります。そして、先輩諸賢、同僚議員各位の暖かいご指導、ご協力があったればこそと肝に銘じております。ここに改めて厚く御礼を申し上げます。   私が、国政に参画する決意を固め、本院に初めて議席を得ましたのは、昭和三十八年十一月二十一日の総選挙であります。私が初陣を飾り、その喜びにひたっている時、遠くアメリカから日米間初のテレビ宇宙中継の映像が送られてきました。しかし、その映像は米国の若き指導者ケネディ大統領の暗殺事件を伝えるものでありました。   私は、初当選の喜びとともに、政治家としての責任、とりわけ青年議員として何を為すべきか、若き指導者の訃報に接しながら深く思いをいたしたことを今もはっきりと覚えております。   翻って国内的には、池田内閣時代で、東京オリンピックを翌年に控え、所得倍増計画が大きな成果をあげようとしていました。あれから四半世紀、ドルショック、オイルショックなど幾多の危機を乗り越え我が国は世界一の債権国の地位を築くに至りました。   しかし、その一方で日米貿易摩擦、産業空洞化に代表される新たな問題も生じております。また、高度成長のハイスピードが国民の間に肌をすりあわせて暮らす感覚を失わせ、孤独な人々を大都市に集中させる現象を生んでおり、「心の豊かさ」を求める政治が強く求められる時代を迎えております。   私は初当選以来、政策面では地元群馬の代表的産業である蚕糸産業の保護、育成、そして未来産業である情報産業の発展等に心血を注いで参りました。それは我が国が固有にもつ古き素晴らしきものと、新しいものとの調和ある発展を求めるという私の考えに根差すものであります。   私は若き頃、ある友人から「誠実であれ、謙虚であれ、勇敢であれ」という言葉を贈られました。これは今も変わらぬおのが信条であります。この言葉を忘れず、今回の表彰をひと区切りとして自らを厳しく陶冶し国家国民の為、議会人としてさらに研鑚を重ねたいと存じております。本日の表彰決議に対し、謹んで厚く御礼申し上げます。     …………………………………     橋本龍太郎君のあいさつ   ただ今永年在職議員として、院議をもって表彰の御決議を賜りました。誠に身に余る光栄であり、感激の極みであります。   憲政史上最年少の二十六歳で初めて当選させていただいた私が、二十五年の長きにわたり、本院に引続き在職し、昭和二桁世代初めての栄誉に浴する事が出来ましたのは、先輩同僚議員の御指導と御鞭撻郷土岡山の皆様の深い御理解と御支援、かげで常に私を支え続けてくれた家族とスタッフの献身のおかげであり、ここに改めて心より御礼申し上げる次第であります。   本来政治家を夢見た事のなかった私が、この道をえらぶ事となりましたのは、本院議員でありました父龍伍急逝の後、佐藤栄作先生をはじめ多くの先輩議員、郷土で亡父の後援を続けて下さっていた多くの方々、わけても母の強いすすめによってでありました。   昭和三十八年暮の第三十回総選挙で初当選、本院に議席を得ました投票日が、亡父の一周忌の当日であり、直後、ケネディ大統領暗殺の報道に驚愕した事が忘れられません。   当時の我国は高度経済成長時代の真只中でした。二回のオイルショックを体験し、安定成長の中で世界経済の重要な役割を各国から期待される今日の日本の姿を、当時の私は想像すらいたしておりませんでした。   同時に、この頃既に、やがて到来するであろう高齢化社会の姿を想定し、その時代に向けての政策立案に黙々と取り組んでおられた数少ない先輩議員の指導を受ける事が出来ました事は、政治家のスタートにおいて本当に幸せでありました。   環境庁創設、スモン患者との和解交渉、臨時行政調査会の答申を受けての行政改革など、大きなテーマに取り組む機会にめぐり逢えた事も幸せでありました。殊に国鉄百十五年の歴史をとじ、民営分割によるJR各社の誕生を自らの手で発足させ得た事は望外の幸せであります。   私達は今指呼の間に二十一世紀を望む時に位しております。この道は私達にとり、いわば手本の存在しない、自らが定め、切り開いて行かねばならぬ道であります。   亡父龍伍より只一つ、「政治は弱い者の為にある」と私は教えられました。初心を忘れず、本日の感激を胸に、今後とも努力研鑚を続ける事を誓い、感謝の御挨拶といたします。      ────◇─────  国務大臣の演説に対する質疑
  9. 原健三郎

    議長原健三郎君) これより国務大臣演説に対する質疑に入ります。土井たか子君。     〔土井たか子君登壇
  10. 土井たか子

    ○土井たか子君 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、竹下内閣総理大臣の所信表明に対して質問をいたします。  まず、質問に入るに先立ち、去る七月二十三日、東京湾の横須賀港で海上自衛隊の潜水艦に衝突されて沈没した第一富士丸に乗り合わせ、亡くなられた三十人の方々のみたまに深い哀悼をささげ、御遺族に心からのお悔やみと、事故に遭われた方々にお見舞いを申し上げたいと存じます。  同時に、国民の安全を守るという建前のもとにある自衛隊が、逆にこのような大事故を引き起こしたことの責任は極めて重大であると言わざるを得ません。(拍手)  総理、総理の所信表明には、国民に対するおわびの言葉の一かけらも聞けませんでした。この事件は、軍事優先の姿勢が国民から問われることになっています。「そこのけそこのけ自衛艦が通る」という姿勢で、自衛隊は民間より優先という特権意識が今回の事故の真の原因とも言えましょう。自衛隊の最高責任者として、総理はこの問題に対してどのようにお考えか、政治責任、自衛隊の責任、そして再発防止、被害者への補償について、具体的な方針をお示しいただきたいと存じます。  さて、私は今回の代表質問で、またもや政治家責任と道義をたださなければなりません。そのような、いわばわかり切ったことを改めて強く言わねばならない政治の現状に、私は今、大多数の国民とともに激しい怒りと悲しみを抱いております。申すまでもなく、それはいみじくもリクルートゲートと呼ばれるようになった事件についてであります。  事件は新聞、雑誌、テレビ等の詳しく報ずるところであって、ここで繰り返すまでもないでありましょう。店頭公開後は何倍にも値上がりすることが明らかであって、しかし一般の人々には触れることもできない未公開の株を、特権を持つ一握りの政治家やその関係者、また財界人、言論人たちが譲り受けた。そして、公開直後に売り払って巨額の大金を懐にしたというのです。しかも、買う資金まで同じ系列の会社から面倒を見てもらった人も少なくない。まさにぬれ手にアワ、いや、手もぬらさずに無から有を生ずる魔法の錬金術であります。(拍手)そのもうけには一円も税金がかからない。政治資金として届け出る義務もない。  総理、今、年収千七百万円のサラリーマンがいるとします。これは非常に高い地位のサラリーマンになりましょう。少なくとも、私たち国会議員が国から受ける歳費より高い収入であります。その人が配偶者と二人の子供を扶養しているとして、所得税を幾ら納めなければならないか、御存じでしょうか。約三百五十万円であります。このほか、住民税が百六十六万円かかります。合計して約五百十六万円、三〇・四%の税金を納めなければならないのであります。しかし、同じ千七百万円でも、リクルートコスモスの未公開株を売ってもうけた場合は税金ゼロであります。ここで千七百万円という額を引き合いに出しましたのは、ほかでもございません、竹下総理の元秘書で今も片腕と言われる方がリクルート未公開株を売ってもうけた金額が推定千七百万円と新聞に報じられていたからであります。千七百万円というお金がどのくらいのものかを総理に御認識いただきたかったからであります。  しかし、総理、一般のサラリーマンはこのような比較さえ不愉快であるに違いありません。初めに申したとおり、給与だけで税込み年収千七百万円のサラリーマンというのはごくわずかしかいない高給取りであって、比較の基準にはならないのであります。勤労者世帯の年間平均給与はそれよりはるかに少なく、国税庁によれば五百二十八万円にとどまります。そして、それでも約三十五万円の税金を納めております。総理、毎日殺人的満員電車に往復二時間、三時間も揺られ、額に汗して働いて得るお金が、普通は年に五百三十万円弱なんですよ。しかも、その中からいや応なく天引きで約三十五万円の税金を納めなければなりません。これに対して、懐手のまま一、二年たてば何百万、何千万、一億何千万円ものもうけがあり、税金もかからないのが自民党の特別の政治家なのでございます。それも一人や二人のことではないのですから、国民はあきれ果てるばかりであります。  こうした利得は、未公開株を受け取った人の職務権限が贈った側の利害に関係していなければ贈収賄にならず、すべては合法的なのだそうであります。しかし、実際はリクルートコスモスの未公開株を贈った江副浩正氏が政府税調の特別委員、教育課程審議会委員、行革審の土地対策検討委員会参与に選任された時期は、総理大臣が中曽根さん、大蔵大臣が竹下さん、いずれも今回リクルートゲートに関係者の名前が出た方々であって、陰に陽に職務上の権限や影響力があったと思われます。(拍手)  折しも、最高裁は、殖産住宅相互会社の東証二部への上場に絡んだ株譲渡事件に関して、一般の人には入手の難しく、上場の際に値上がりが確実に見込まれる株を授受することはお金の受け渡しと同じわいろに当たるという判断を示しました。しかし、リクルートゲートに関しては、今のところ司直の手は及ばず、政治家はだれ一人道義上の責任すらもとろうとしてはいません。  しかし、総理、ロッキード事件の反省として、私たち国会議員国会法を改正し、その百二十四条の二に基づいて政治倫理綱領と行為規範を定めました。政治倫理綱領にも当然同趣旨の定めがございますが、行為規範の第一条には「議員は、職務に関して廉潔を保持し、いやしくも公正を疑わせるような行為をしてはならない。」と定められています。この一連の行為は、国民からすればまさにこの規定に明らかに違反いたします。私たちの常に携帯しております議員手帳には、この政治倫理綱領、行為規範の全条文が載っていることを御存じですか。総理はどのように御判断なさいますか。はっきりしたお答えをいただきたいと存じます。  総理、リクルート事件にやりきれない思いを抱く多くの国民は、一昨々日の総理の所信表明演説で当然何らかのまじめな反省の弁が聞けるものと思っていたに違いありません。ところが、総理の演説には「政治倫理の確立」という通り一遍の抽象的な決まり文句がただ一言あっただけで、リクルートのリの字もなかったのであります。総理の政治姿勢は、当たりのやわらかさとは裏腹に、極めてふまじめだと言わねばなりません。(拍手)  ところで、今臨時国会を政府・与党は税制国会と呼んでいるようであります。政府は税制改革関連法案を提案しましたし、総理はその通過成立に全力を尽くす旨の所信を表明されました。しかし、この法案に特に関係の深い総理大臣、大蔵大臣、自民党幹事長、政務調査会長、税制調査会副会長といった方々やその関係者がリクルート株で利益を得ておられます。そうした方々の手でまとめ、提案される税制改革案なるものを、だれがどうして信用できるのでありましょうか。これらの方々が、総理の所信表明に言われるような不公平感の是正や勤勉な人々が報われる社会、公平で活力ある社会の実現を真剣に考えておられると、だれがどうして信ずることができるのでありましょうか。これこそ厚顔無恥の極致と申さねばなりません。(拍手)  不信を証明する事実のほんの一端は、今問題にしております株式売却益、まさにそれに対する課税の考え方にあらわれております。現行では原則無税の株式売却益に今度は税金がかかるようになると政府・自民党はおっしゃいます。しかし、それは源泉分離課税を選べばわずかに売却額の一%で済むというものだそうであります。先ほどの総理の元秘書のケースである譲渡所得千七百万円について言えば、その一%、十七万円の税を納めれば合法ということになるでありましょう。再び、額に汗したサラリーの場合の税額約三百五十万円と比べていただきたいと思うのであります。どこに不公平感の是正があり、勤勉な人々が報われるものがあるのでしょうか。リクルートゲートは、このように今回の政府・自民党の言う税制改革の本質を国民に教えているのであります。(拍手)  この事件は、政府・自民党の金権腐敗の事実と、税制改革と称するもののごまかしを単に示しただけではございません。その上に、国民政治に対する不信感に加えて無力感を一層強く植えつける効果も持ったのではないかと私は憂えております。多くの人々が怒っていることは疑いありません。しかし、他方で、さめた冷たい目の人々もいます。政治なんてそんなものですよ、わかっているじゃありませんか、すべてはお金ですよ、私たちの手の届かないところであの人たちはいつも好き勝手をしているじゃありませんか、今さら怒ってもどうなるものでもありませんよという気持ちでございます。そこでは、政治をよくしようという国民の真っ当な意思の力が死んでいます。  ロッキード疑獄で田中元首相が逮捕されたのは一九七六年、昭和五十一年の七月二十七日でした。それ以前にも自民党政治に金権腐敗はありました。しかし、ロッキードからでさえもう十二年がたち、その間、事態は何も改善されないばかりか、悪くなる一方ではありませんか。それは、ちょうどこの間に地価の狂乱上昇で、大都市に住む一般人の住宅の夢が遠のく一方であったことと符節を合わせております。  そう言えば、不動産業であるリクルートコスモス株の上昇も、地価の急騰によるところ大でありました。国民の絶望を肥やしに政治家は肥え太る。このようであってみれば、国民の無力感には底深いものがあって当然と言わねばなりません。そして、その無力感と国民の意思の力のなえたところで、遠慮気兼ねなく金力で権力を買う政治が横行します。無限の悪循環であります。総理、あなたはこれでいいとお思いでしょうか。しかし、国民政治意思の弱まりは、民主政治の衰弱を意味します。  そのようにして、この国の政治は深いところでますます病状は悪化しつつあるのです。リクルートゲートの醜悪さにもかかわらず、あなた方は合法の壁に守られて安全かもしれません。長年の自民党政治が自分の都合に合わせて整備した法の網の目です。安全にかいくぐれても不思議はないのかもしれません。しかし、合法非合法で議論が終わるのであれば、道義、なかんずく政治道義などという言葉はなくてもいいことになります。合法であればあるほど、より重い政治道義が問われるのであります。  その点に関して言えば、総理、あなたを初め前総理も、大蔵大臣も、元文部大臣も、自民党幹事長も政調会長も、皆さん全く反省の様子を見せておりません。少なくとも態度にあらわしておられません。値上がり必然の株を贈ったリクルートの最高責任者である江副浩正会長はその地位を退き、もらった側でも、川崎市の助役は解任され、日本経済新聞社の社長は辞任しました。あなた方は、あれは秘書や家族の者がやったことだとおっしゃっていますが、やめた江副さんは、秘書や家族とのつき合いはなかったと言っておいでです。それらの名義は高位の政治家の身がわりであったにすぎないと証言しているわけであります。(拍手)  このように事態を真っすぐに見るならば、総理、国会がただいま全力を挙げて取り組まねばならないのは、まず何よりもリクルートゲートの解明であり、その政治的、道義的責任を明らかにし、真に襟を正す姿を国民に示すことであるということがだれの目にもはっきりしているのであります。そうでなければ、どんなに美辞麗句で飾り立てても、辻説法を繰り返されても、その税制改革なるものに国民は共感を寄せることはないでありましょう。私は、総理が政治生命をかけるとされている税制改革案について、ここで伺う気持ちはありません。総理が政治生命をかけるべきは、リクルートゲートの解明と政治姿勢を正すことであります。この臨時国会は税制国会ではなく、リクルート国会なのであります。  以上私が申し上げたことをまとめて、総理に次のような質問をいたしたいと思います。ぜひ誠実なお答えを願いたいと存じます。  第一は、リクルートコスモスの未公開株でもうけた政治家、もうけた人とつながる政治家の名前をすべて明らかにしていただきたい。  第二は、リクルートゲートの道義的責任を総理自身はどのようにとられるおつもりですか。  第三は、総理大臣として、自民党総裁として、党幹事長、政調会長その他役職者の責任をどのようにとらせるお考えですか。また、副総理・大蔵大臣は道義的責任をどのようにとられるおつもりですか。  第四に、リクルートゲート関係者の国会への証人喚問を含め、事実究明に全面的に協力する用意はおありでしょうか。  第五に、政治道義の回復、金権政治の解消に向かってどのような具体策をお持ちでしょうか。  第六に、こうした事件の再発を防ぐ意味でも、政府案のようなごまかしの対策ではなく、キャピタルゲインや土地暴騰の利益に対して重い税金をかけるなど、まず消費税ありきではなく、不公平税制を抜本的に改めることが税制改革だと思います。(拍手)我が党は既に、総合課税の強化を基本に、租税特別措置の廃止による課税ベースの拡大を図るとともに、不公平税制の徹底的是正のために、キャピタルゲイン課税や土地税制の強化、企業優遇税制や医師優遇税制の適正化、みなし法人課税、宗教法人課税、政治家のパーティーに対する課税など、二十六項目の検討を提起しております。総理はこのことについてどうお考えですか。  そして第七に、リクルートゲートの責任問題を放置したままで消費税を含む税制改革案について国民の信を得られるとはまさかお思いではないと思いますが、いかがでございますか。もし本当に国民の信を得られると思われるなら衆議院解散・総選挙を決断なさるべきだと思います。いかがですか。(拍手)  竹下さん、率直に申し上げて、私は同じ国会議員でもあるあなたにこのような道義にかかわる質問をしなければならないのはつらいことだと思っております。リクルートゲートはもとより、明電工脱税事件、総理府汚職など、政官界の綱紀の乱れは目に余るものがあります。我が党も深く反省しております。私たちは事件の実態をただし、そして本人の自発的な申し出に基づいてしかるべき処置をいたしてまいりました。しかし、今、私たち政治家が襟を正し、政治倫理を確立しなければ事態はますます泥沼にはまり込み、日本政治が心ある国民からも国外からも信用されなくなるに違いないと、本当に深刻に私は心配しているのです。  竹下さん、あなたの先輩、二代目の自民党総裁であった石橋湛山さんは、一九六七年二月に次のような文章を残しておられます。「政治家にはいろいろなタイプの人がいるが、最もつまらないタイプは、自分の考えを持たない政治家だ。金を集めることがじょうずで、また大ぜいの子分をかかえているというだけで、有力な政治家となっている人が多いが、これはほんとうの政治家とはいえない。」この言葉は胸にずしんと響きます。政治家としての識見よりも、国民に対する誠実さよりも、何よりもお金の力で政治が動く世の中にはしたくないものであります。(拍手)  私は、一昨年九月、中曽根総理に対する代表質問で、次のように申し上げました。私たち政治家は、単に教育の制度をつくったり変えたりする役割のほかに、みずからの人格によって教育の根本にかかわっていることを忘れてはなりませんと。今、教育が容易ならざる問題に直面しているとき、未来を背負う子供たちのためにも、今回のリクルートゲートに対して責任ある処理をしていただきたいと切に願うものであります。  以上、私は今回、リクルートゲート問題を中心に政治を正すことに絞って質問いたしてまいりました。今さら言うまでもありませんが、今回政府が提案をした税制改革案は、明らかに大型間接税の導入そのものであります。それは一九七九年の国会決議、八五年の政府統一見解、八六年の選挙公約に違反することは明々白々であります。政府・与党が全会一致の国会決議選挙公約をこのようにいとも簡単にほごにすることは、議会制民主主義の原則に背くだけではなく、国民政治に対する信頼を裏切るものだと言わなければなりません。(拍手)  私は、ここで重ねて申し上げます。竹下さん、あなたがどうしても消費税を導入されたいのなら、その前に解散・総選挙によって国民の信を問うべきであります。あるいは消費税をきっぱりと撤回なさるべきであります。いかがでしょうか。  終わりに、国際情勢に触れて申し上げたいことがございます。  最近、ある国の外交官が、本格的な軍縮や査察問題あるいは地域紛争について米ソが合意するなど、かつては想像もつかなかった、だが、それが現実となった今、皆正気に返らざるを得まいと語ったという話が雑誌に載っておりました。確かにINF全廃条約の具体化、戦略核ミサイル半減交渉の進展、アフガニスタン、カンボジア、南部アフリカの戦闘やイラン・イラク戦争など、地域紛争解決への前進といった米ソ協力のもとでの幾つかの平和への動きは、第二次大戦直後に人類の中に生まれた希望を再びよみがえらせるものがあると申せましょう。このような情勢を後戻りさせるわけにはまいりません。平和憲法を持つ日本は、この流れを一層加速する積極的な役割を果たさなければならないと私は考えるのであります。  そのためには、日本の軍縮努力こそまず先決です。防衛費のGNP一%枠を無理やり突破させるといった、時代に逆らう予算編成をまずやめなければなりません。防衛費を少しでも減らそうというお気持ちは総理にはございませんか。それは難しいことではありません。ペルシャ湾でイランの旅客機を誤って撃墜させ、アメリカの会計検査院からその能力について誇大宣伝と指摘されたような、しかも一隻千二百億円もするようなイージス艦の導入を再検討なさってはいかがでしょうか。  また、日本の平和国家としての金看板である非核三原則については、ファイフ、バンカーヒルなどトマホーク搭載艦の横須賀母港化で、「持ち込ませず」の空洞化を心配する国民が大勢います。安保条約に基づく事前協議をアメリカに申し入れ、核の有無をただすおつもりはありませんか。  近隣の国の問題では、朝鮮半島の平和の進展に世界の耳目が集まっております。三十六年にわたる植民地支配の完全な清算は、民族の道義にかかわる問題です。真の民族の和解、南北朝鮮の自主的、平和的統一に向けて日本が積極的な役割を果たすことを考えればなりません。まず、足元の在日朝鮮・韓国人の人権擁護の措置を推し進める必要があります。そして、朝鮮民主主義人民共和国に対する制裁措置をやめて関係正常化を図らねばならないと思いますが、いかがお考えでしょうか。(拍手)  総理は、今回ODA、政府開発援助の増額を約束されましたが、日本経済協力が相手国の国民生活の向上にどのような役割を果たしているのかが問われています。この際、対外経済協力基本法を制定し、国会の監視、国民理解の中で相手国の自立と生活向上に役立つように見直すべきだと思いますが、いかがでございましょうか。(拍手)  地球環境の問題について最後にお尋ねをいたします。  世界科学者が、オゾン層の破壊、炭酸ガスの増加、熱帯雨林の乱伐などによる地球環境の荒廃に警鐘を打ち鳴らしております。それを防ぐために、日本は資金、技術、マンパワーなどで積極的に貢献することができるはずでございます。総理は、トロント・サミットでそれについて発言しておられます。その責任を果たすために、沖縄の白保のサンゴ礁や尾瀬の自然、知床の原生林を守ることを含めて、日本の環境行政を一層前進させること、そして地球環境保全のための日本の貢献について、ここで具体的な施策を示していただきたいと思います。(拍手)  さて、きょうから八月です。もうすぐ八月十五日がやってまいります。申すまでもありませんが、その日を迎えるためには、八月六日、八月九日の悲惨な国民的体験がありました。四十三回目の敗戦記念日、今日本世界に向けて送る最大のメッセージは、侵略戦争に対する反省と広島、長崎の体験、それに裏打ちされた平和憲法の理念と原理であると信じます。もちろん、その理想が現実に一〇〇%生かされているわけではなく、この現実は冷静に見詰めてみるべきであります。しかし、日本国憲法が目指しているものは、人類の長い歴史の中で試され、確かめられてきたものであり、今人間はその方向に一歩また一歩近づいていると言っても決して過言ではありません。私たち日本人は、そのことに勇気と自信を持つべきであります。世界核兵器の廃絶、全面軍縮の目標に向かって懸命に努力することは、政党政派を超えた日本国民の崇高な責務であると確信いたします。  私は、このことを同僚の議員、そして国民皆さんに心から訴えて、代表質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)     〔内閣総理大臣竹下登君登壇
  11. 竹下登

    内閣総理大臣(竹下登君) まず最初にお答えしなければならないことは、第一富士丸事故についての問題であります。  今回のような痛ましい事故が発生して多数のとうとい人命が失われましたことは、まことに遺憾であります。痛恨のきわみであります。亡くなられた方々には深く哀悼の誠をささげ、御遺族には心からお悔やみを申し上げます。  私といたしましては、自衛隊を一方の当事者としてこのような事故が発生したことを厳粛に受けとめ、かかる事故が二度と起こらないよう、事故原因の徹底的な究明を図って再発防止に万全を尽くす考え方であります。そのため、事故発生の翌日には総理府内に事故対策本部を設置いたしました。関係政府機関挙げてこの問題と取り組んでおるところであります。既に二十七日、船舶航行の安全に関する当面の措置を決定をいたしまして、周知徹底を図っておりますほか、再発防止対策の検討を精力的に進めてまいっておるところであります。  なお、いわゆるシビリアンコントロールという問題でありますが、このシビリアンコントロールというものは、この制度はよく確立されておるところでありまして、また私としても、自衛隊の最高指揮監督権を有する者という立場を踏まえ、その精神を踏まえて問題に取り組んでまいる所存であります。今回の事故における貴重な教訓を生かし、国民から信頼される自衛隊を実現するようさらに一層の努力を行うことが肝要である、このように考えております。  なお、被害者に対する補償についてもお触れでございましたが、政府としては、現在海上保安庁、海難審判庁等が事故原因について調査中でございますので、その状況を見きわめながら適切な対応をしていく考え方でございます。  さて次の問題は、政治倫理の問題、なかんずく政治家と金の問題についての御意見をお述べになりました。  政治には金がかかるという現実が存在することは無視できないところでございますが、やはり根本的には個々の政治家が各人の責任と良心において政治倫理の確立に努めていくべきである、このように基本的には考えております。私ども国会議員は、御指摘がありましたように、さきに議決されました政治倫理綱領及び行為規範を遵守すべきだとのお考えでございますが、そのとおりであるというふうに考えております。  以下、リクルート問題に関する七点についての御質問がございました。まず、この問題についてお答えをいたします。  リクルート株式会社が売却いたしましたリクルートコスモス株式会社の株式の売却先は、リストは入手いたしておりません。単に個々の取引内容を知ることのみを目的に調査を行うことは、証券取引法の趣旨から見て困難でございます。  次に、道義的責任等についての御質問であります。  まず、一般に個人事業ないし小規模事業が成長いたしまして、株式会社として経済社会に認知されて、株式が公開されるに至る過程におきましては、親兄弟あるいは友人、知己などと、株主の範囲が拡大していく現象が見られます。このような過程で取得された株式を公開後に売却すると、多くの場合、かなりの利益がもたらされておる、これは経験的に知らされておるところであります。  いわゆるリクルートコスモスの問題にありましては、株式公開に至るプロセスが投資家保護及び公正な証券取引の確保といった見地から適切な規制のもとに置かれていたかという制度的な問題に加えまして、そうした株主の中に政治家ないしその関係者などが含まれていると言われる点についてどう考えるかという問題がございます。  私は、第一の問題につきましては、まず現行法の定めますところによって本事案について調査検討を進めますとともに、我が国経済社会における健全かつ公正な証券取引の確保という観点から現行制度に欠けるところはないか、関係者の御意見も十分承った上、改善すべき点があればきちんとした対応をしていく考えであります。  また、問題とされている人々の中に一部政治家ないしその関係者が含まれているのではないかという点につきましては、それぞれ取引に当たった人は、政治家の秘書や家族などを含め、現行制度のもとにおいてみずからの責任において行われたものである、このように思います。もっとも、たとえそれぞれの行為は現行制度の中で許された経済取引であるにいたしましても、国民感情として何か割り切れないものがあるという批判は十分これを受けとめ、李下に冠を正さずの教えのとおり、私自身を含め、一人一人の政治家として今後とも十分心していくべきものである、このように考えます。  なお、次のお尋ねは証人喚問といった問題であります。  本院においてこれまでいろいろ議論のあったことは承知しております。いずれにせよ、国会において話し合いをしていただくべき問題である、行政府としての考えはそれにとどめることといたします。  次は、道義の回復の問題であります。  私は、かねてから、清潔な政治こそ政治に対する国民の信頼の原点と考えております。このような見地から、リクルート問題を初め幾つかの事案が続けて発生し、国民政治に対する不信が募っておるということは、これは大変遺憾なことであります。この問題の前には、政治には金がかかるという現実が存在することは無視し得ないにいたしましても、基本的には、個々の政治家個々人が政治倫理の確立に努めていくべき課題であると考えます。この事案を契機に、政治家一人一人が常に襟を正していくということ、これこそ国民の信頼を回復するゆえんのものであると考えます。  次は、不公平税制に対する考え方をお述べになりました。  税制への納税者の信頼の基礎となるものは、負担の公平であります。今回の税制改革におきましても、税制改革法案に述べられておりますように、公平の原則を最も基本的な理念の一つとして、国民の租税に対する不公平感を払拭するとともに、所得、消費、資産等の間で均衡がとれた税体系を構築すべく検討が行われたところであります。こうした見地から、さきに国会に提出した税制改革関連法案におきましては、有価証券譲渡益の原則課税化、そして法人の土地取得に係る借入金利子の損金算入の繰り延べなど、これらの措置を含む税制全般にわたる改革案を示したところでありまして、今後速やか、かつ十全な御審議をいただきたい、このように考えるものであります。  そして次に、税制改革についての国民の信を問うべしという意見もつけ加えての御発言がありました。  今回の税制改革は、現行の税制が著しく変化してきた現在の社会経済情勢との間に不整合を生じておる事態に対処して、将来への展望を踏まえながら行われるものであります。国民の税に対する不公平感をぬぐい去りますとともに、所得、消費、資産等に対する課税を適切に組み合わせることによりまして均衡のとれた税体系を構築することは喫緊の課題である、このように考えております。このような基本認識のもとに提出いたしました六法案について国会で十分な御審議を賜り、私としては、そのような審議を行うことによって国民の一層の理解を求め、また、国民理解を得ながら審議を進めていくという基本的考え方に立つものであります。(拍手)  いわゆるリクルートコスモスの株式の問題につきましても、現行法のもとにおいて調査検討を行うほか、改善すべき点があれば制度的にきちんとした対応をすべきものと考えております。政治的、道義的責任という観点からのお尋ねについては、たとえ個々の取引は許されたものであるにせよ、国民感情として何か割り切れないものがあるという批判は批判として受けとめて、一人一人の政治家が心していくべきものであるというのは申し上げたとおりでございます。  なお、解散の問題に入ります前に、いわゆる決議等についてもお触れになりました。それらの決議なりあるいは発言、公約等々を踏まえまして、いろいろな反省の原点から立った今次の国会でございます。何としても、私どもといたしましては、この国会において国民の代表である皆さん方に十分な御審議をいただきたい、その一念に尽きることでございます。したがって、解散問題につきましては、これは何としても国政全般にわたって責任を負う者として議員に定められた任期は、私はいつも大事に大事にすべきだ、このように申しておりますが、全く今日解散といったことは考えておりません。  さらに、外交問題にお触れになりました。  我が国は、現下の国際社会の平和と安全が力の均衡によって維持されているという冷厳な現実を踏まえ、この均衡水準を可能な限り引き下げるべく、軍備管理・軍縮促進の重要性を訴えてきたところであります。他方、我が国の防衛力整備は、憲法及び基本的防衛政策を踏まえ、我が国が平時から保有すべき防衛力を定めております「防衛計画の大綱」に従って進めてきておるものであります。我が国としては、今後とも軍備管理・軍縮のために努力していきますとともに、大綱のもと、昨年一月閣議決定に従い節度ある防衛力の整備に努めてまいる考え方は不変の考え方であります。  イージス艦問題につきましては、資源エネルギー、食糧などの大部分を海外に依存する我が国にとって、有事の際、国民の生存を維持しますとともに継戦能力を保持するためには、我が国の海上交通の安全確保が重要であることは申すまでもありません。イージス艦は、このような我が国の海上交通の安全確保にとっての近年の経空脅威の増大に効率的に対応するため必要なものでございますので、これを見直す考え方はございません。  次が、非核三原則等の問題であります。  非核三原則は、歴代内閣によって堅持されてきたものでありまして、今後とも堅持してまいる方針であります。御質問のあったトマホーク積載能力を有しております艦船につきましては、そもそもトマホーク積載能力を有することと現実にこれを装備することとは別個の問題でありまして、また、トマホークミサイルは核、非核の両用兵器であります。いずれにせよ、安保条約上、艦船によるものを含め、核兵器の持ち込みが行われる場合にはすべて事前協議の対象となりますので、その事前協議が行われる場合は、政府としては常に拒否するという態度に変わりございません。  さらに、事前協議の制度は、米国が安保条約第六条の交換公文によって定める行動をとろうとする場合に、事前に協議を我が国に対して行わなければならないことを義務づけたものであります。我が方から米側に対し事前協議を行うという筋合いのものではありません。  次が、在日韓国・朝鮮人問題等、また、それらについての御意見を交えての御質問がありました。  在日韓国・朝鮮人の方々は、我が国に生活基盤を有することにかんがみ、その法的地位の安定を図って、また、社会生活の面においてもできる限り安定した待遇が得られることが望ましいという点につきましては、政府としても十分認識いたしております。政府は、従来から可能な限りの努力を行ってきたところでございまして、今後とも努力を続けたいと考えております。  そこで、対北朝鮮措置、これについての御質問がありました。  あたかも日本人が関与したかのごとき偽装がなされた北朝鮮の組織的テロ行為に対する我が国の毅然たる姿勢を示しますとともに、かかる事件の再発を断固防止することを趣旨としてこの措置はとられたものであります。(拍手)したがいまして、オリンピック終了時に、テロ再発防止等の本件措置の目的達成状況、朝鮮半島をめぐる国際情勢等を総合的に勘案して、その後どうするかを検討するとの基本方針に現在変わりございません。また、我が国と北朝鮮との間に外交関係はございませんが、我が国としては、韓国との友好協力関係の増進を大前提としつつ、北朝鮮とも経済文化等の分野における民間レベルの交流を積み重ねていくことが基本方針であります。  なお、去る七月七日の盧泰愚大統領の特別宣言を受けて、我が国としても、関係諸国と緊密に協調の上、韓国と中ソの交流との均衡化に配慮しながら、日朝関係の改善を積極的に進めていきたいとの考えを示したところであります。  次が、対外経済協力基本法にお触れになりました。  我が国は、相互依存と人道的考慮に基づきまして、開発途上国の経済社会開発、民生の安定、福祉の向上に貢献することを目的として経済協力を実施してまいっております。右実施に際しましては、国会に対しても所要の報告、資料の提出等を行いますとともに、情報の公開にも努めてきておりまして、援助に対し国民の一層の理解を得るべく努力していく所存でございます。十月六日を国際協力の日として定めましたのも、この一環でございます。我が国経済協力の実施体制は、全体として順調に機能しておると考えております。経済協力の一層の効果的、効率的実施のためには、現行の関係法令等の枠内で中から改善を図ってまいりたく、いわゆる援助基本法の制定は今のところ必要がないというふうに考えております。  最後に、環境荒廃の問題にお触れになりました。  この環境保全は、国内においてはもちろんのこと、国際的にも極めて重要な課題でありまして、御指摘がありましたように、地球環境問題への取り組みは、世界の共通課題として、さきのトロント・サミットでもその積極的な取り組みが強調されたところであります。我が国としては、沖縄のサンゴの問題や知床の問題を初め、国内の環境問題には今後とも適切に対処してまいる所存であります。  また、地球環境問題につきましては、かねてから環境庁の地球規模の環境問題に関する懇談会を中心として、また本院においても、それぞれ協議会等におきまして鋭意検討が続けられてきております。これらの検討結果を踏まえて、科学的知見の集積と技術開発の強化、国連環境計画など国際機関を通じた協力など、地球環境問題に一層積極的に取り組まなければならない、これが国際的地位の向上にふさわしい貢献である、このように考えておるところであります。  そして、さらに核軍縮努力についてお触れになりました。  政府としては、従来から、全面完全軍縮、なかんずく核兵器の廃絶が人類共通の究極目標と認識いたしております。同時に、現実の国際関係におきまして、核兵器が抑止力として平和と安全の維持のために機能していることは認めざるを得ない現実であります。このような現実を踏まえますならば、実現可能な具体的軍縮措置を一つ一つ積み重ねていくことによりまして、核軍縮を中心とした軍縮の促進に努めていくことが肝要であると考えております。私は、先般の第三回国連軍縮特別総会において、こうした考え方から決意を明らかにしてきたところであります。  以上でお答えを終わります。(拍手)     〔国務大臣宮澤喜一君登壇
  12. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) リクルートの問題につきましては、ただいま総理大臣が詳しくお答えになられましたが、私の場合につきましては、私の事務所の判断が慎重を欠いた点がございます。この点は、私といたしまして監督が不十分であったと反省をいたしております。今後十分注意をいたします。(拍手)     ─────────────
  13. 原健三郎

    議長原健三郎君) 野田毅君。     〔野田毅君登壇
  14. 野田毅

    ○野田毅君 私は、自由民主党を代表して、竹下総理の所信表明に対する質問をいたします。  質問に先立ち、去る七月二十三日午後横須賀沖において発生した、海上自衛隊の潜水艦「なだしお」と大型釣り船第一富士丸との衝突事故により、とうとい命をなくされた犠牲者の御冥福を心よりお祈り申し上げますとともに、御遺族を初め関係者各位に対し謹んで哀悼の意を表するものであります。事故原因の究明はもとより、今後再びかかる事故が起こることのないよう、万全の対策確立を強く求めるものであります。  また、西日本を中心とした局地的な大雨によって被災された方々に対し、心からお見舞いを申し上げます。  さて、現下の内政の最重要課題税制改革であります。  申すまでもなく、戦後今日まで、経済社会の変化、国民の意識の変化、財政構造の変化は著しく、これらの変化に対しては現在の税制ではもはや対応できなくなっており、このため、さまざまの分野でゆがみ、ひずみが発生していることは、つとに指摘されているところであります。こうした状態を放置したままでは、今日の納税者の重税感、不公平感を払拭することは不可能であります。さらに、今後の高齢化の進展、経済取引の国際化、国際社会における我が国の責任考えれば、それにふさわしい新しい税制の確立なくして、活力ある長寿福祉社会を安定的に支えていくことはできないのであります。(拍手)私は、この税制改革の必要性についての認識は、今や国民的に広く深まってきたと思うのであります。この点については、野党の皆さんも否定はできないと思います。  税制改革の入り口論として、今日、さまざまな角度からの不公平税制論議があります。しかし、私は、結論から言えば、現行税制の部分手直しでは本当の是正はできないと考えます。それぞれの措置は、現行税制の中での限界、あるいは他の政策目的との関連で当然に相互に密接な関係を有するからであります。私は、不公平税制論議について、川下の論議も大切であるが、あわせて川上をどう是正するかを論議すべきときが来ていると思います。まさに、税制の抜本改革を論議する中で、初めて不公平税制問題の本質的所在と処方せんの描き方が出てくるのであります。  例えば、サラリーマンから批判の強いみなし法人制度を見ても、もしこれを廃止するとすれば、同じ家族的経営で同じ事業規模でありながら、法人成りをした企業に比べて、個人企業としてやっているところでは税負担に大きな差が出てくることになります。別の分野で新たな不公平が発生することになります。我が国は世界で一番法人の数が多いという事情は何を意味するか。所得税累進構造が世界一厳しいということと無関係ではありません。だれしも、みずからの納める税は低い方がよいに決まっています。法人成りをして税負担を減少できるなら、水が低きに流れると同じであります。  また、税率が高ければ高いほど節税や課税逃れの動きが出るのは、残念ながら事実として認めざるを得ません。先ごろ、私は本院派遣の調査団の一員として欧州各国の税制を調査いたしましたが、イギリスにおいて、所得税の最高税率を引き下げてきたところ、かえって税収はふえたという説明を聞きました。北風と太陽の話を思い出して、参考になりました。私は、所得税の最高税率を含め、累進構造の厳しさが今日の税制のさまざまな問題を発生させる大きな要因ではないか、そして累進構造の緩和こそが納税者の重税感を和らげ、かつ水平的公平を目指す第一歩ではないかと考えるのであります。この点、総理はどうお考えになりますか。  また、有価証券のキャピタルゲイン税制について、今回、原則非課税を原則課税に改める案となっておりますが、それでは不十分との論議があります。しかし、株の取引には、得するときもあれば損するときもあるのは当然であります。課税当局が株の取引を正確に把握できないままに総合課税をすれば、我々が過去に経験したように、結果として、正直に申告した者だけが納税することになり、実質的不公平が一層拡大するだけでなく、税収としてもマイナスになりかねません。しからば、納税者番号という裏づけのない総合課税論議は、不公平是正どころか不公平拡大ではないかと言わざるを得ない。納税者番号の導入について、総理はいかがお考えでしょうか。  私は、もちろん公平なる税負担を求める国民感情を十分反映しない税制は成り立たないと思います。しかし、不公平論議を進める上で最も大切なことは、具体的にどの部分をどのように改めるのか、改めた場合、他の政策面において国民により大きな弊害をもたらさないかなどなど、総合的に、かつ冷静に論議することであると思います。また、所得再配分の角度からのいわゆる垂直的公平論議については、福祉や社会保障関係の経費が格段にふえている今日、単に一つの税目だけを見て考えることは通用しない、他の税制及び国の歳出の姿全体の中であわせて考えるべきは当然であります。(拍手)  さらに、今後の長寿社会における財政の姿を展望すると、従来の所得を基準とする応能的負担だけではなく、これとあわせて、国民が広く薄く消費の大きさに応じて分かち合う応益的負担を取り入れることが、世代間の公平にもつながっていくものと信じます。  今日、税制改革について時期尚早、拙速論を唱える向きもあります。しかし、今や高齢化社会は目睫の間に迫っており、物価や景気が安定し、自然増収の期待できる今こそ絶好のタイミングと言わなければなりません。しからば、この時期を先送りすることによって高齢化の到来がおくれるのか、景気や物価の安定が不変のものとなるのか、しかも自然増収が常に確保できる保証を得られるのか。我々は、責任政党として、かくのごとき不確実な期待感をもとに先送りするわけにはいかないのであります。(拍手)  しかも、不公平、不公正と言われる問題に基本的にこたえるためには、現行税制の小手先の手直しでは困難であります。残念ながら、過去の一般消費税、売上税はさまざまな理由で挫折いたしましたが、基本的考え方としては、直間比率是正の問題は十年も前から検討課題として論議されてきたことは周知の事実であります。拙速という批判は当を得ないと言わざるを得ません。(拍手)  今回、我が党は、これらの反省と経験を踏まえ、今日時点での最善案を税制抜本改革大綱として決定したのであります。もちろん、なお不備な点があるかもしれません。しかし、最初に述べたように、我々は基本において二十一世紀にたえ得る税制の第一歩であることを確信するものであります。直接税を大減税し、あわせて消費税の導入を中心とする政府の改革案は、この考え方に立ってつくられたものであり、私は、その意味において高く評価するものであります。(拍手)先ほど述べた欧州諸国の調査において、各国とも異口同音、付加価値税について、政府にとっても国民にとってもこんなよい税はないと言っていたことが印象的でありました。  ただ、新税を新たに導入する場合は国民に不安感を与えることも事実であります。我々は、国民の不安感をいたずらにあおるのでなく、丁寧に丁寧にその不安を和らげる十分な説明をすることが大切であります。その意味で、政府は、今回の改革の理念を堂々と、わかりやすく説明していただきたい。  同時に、さきの国会で総理が指摘されたとおり、第一に、低所得者層への配慮を税制及び歳出を通じてどのようにするのか、第二に、将来の税率引き上げに対する歯どめをどう考えるのか、第三に、物価への影響がどの程度でおさまるのか、第四に、中小企業者が転嫁できるような保証措置を具体的にどうするのかについて、この際、言語明瞭、意味明瞭に御説明をしていただきたいと思います。  次に、行政改革についてであります。  歴代内閣においても、五十八年度予算以降連続六年間一般歳出の伸び実質ゼロ、過去七年間で国家公務員二万六千人削減、国の出先機関の大幅簡素合理化、特殊法人の整理など、多大の努力を積み重ねてまいりましたが、特に三公社、すなわち電電、専売、国鉄の民営化は歴史に残る大改革でありました。  行政は、放置すれば常に肥大化する傾向にあることは周知のとおりであります。したがって、常に政府は行政をチェックし、簡素で効率的な政府づくりを目指し、国民の税負担の減少を目指して不断の努力をなすべきは当然であります。特に、今回抜本的な税制改革を行い、大幅減税によってカバーされるとはいえ、新たな消費税負担を国民に求めるわけであります。国民理解と協力を得るためには、政府は従来にも増して行財政改革の努力を強めなければなりません。  また、行政の簡素効率化は単に財政面からの要請だけではありません。ややもすれば外国から閉鎖的と見られがちな日本社会経済を、行政による規制の緩和を通じて市場アクセスの改善などを行い、世界に対しても風通しのよいオープンな姿にすることが、総理の言われる「世界に貢献する日本」にもつながるのであります。さらに、来るべき長寿福祉社会を安定的に支えていくためにも、不必要な行政介入を排し、国民の活力と経済の活性を図らなければなりません。  もちろん、行政改革は政府の努力だけでできるものではありません。行政サービスを受ける国民の側においてもある種の痛みを伴うものであって、それだけに、国民理解と協力が不可欠であります。この際、行政改革に対する総理の熱意のほどをお伺いいたします。あわせて、地方行政の簡素化、効率化の推進について総理の御見解を伺います。  総理は、税制改革と行財政改革を、日本が新しい時代に向かって歩むために必要不可欠の車の両輪に例えられました。新鋭導入を伴う税制改革は、国民にとってはやはり不安を伴うものであり、行財政の改革は、そのサービスを受ける国民にとっては喜びを伴うものではないと思います。いわば、我々は新しい時代の扉を開くために、今あえて国民理解と協力を求めているのであります。このようなときに当たって最も大切なことは、政府や国会国民の信頼をしっかりと受けとめることではないでしょうか。かりそめにも国民の非難を受けることのないよう、綱紀を厳正にしなければなりません。  この点において、私は、最近の明電工事件やリクルート問題が、政治家に対する国民の信頼感を形成する上で好ましくない影響を与えることを心から憂うるものであります。また、いかなる理由があるにせよ、審議を尽くすべき国会が何日間も空転することは、議会制民主主義国会のあり方として国民理解を得るには至らないと思います。(拍手)この際、私自身議会に身を置く一人として、「信は是れ義の本なり」という言葉を改めて肝に銘ずるものであります。総理にこの点についての御見解を伺います。  次に、土地対策についてであります。  六十年代に入って東京の都心部に端を発した地価の急騰は、東京周辺地域を初めとして大阪など全国の主要都市に波及し、国民生活に多大の影響を与えております。土地を持った者と持たざる者との間の資産格差を拡大させ、ニュープア、ニューリッチを生み出すだけでなく、勤労者の住宅取得を夢物語にするなど、さまざまな弊害を社会にもたらすこととなりました。今や我が国の土地問題は、税制、行政改革と並んで現下の最重要政治課題一つであります。  竹下総理は、就任直後、土地対策関係閣僚会議の開催を通じ、緊急対策として投機的土地取引の抑制を行い、さらに先般、総合土地対策要綱を策定し、東京一極集中から地方分散の促進、そして住宅宅地供給の推進による土地需給の均衡化など、中長期の観点から土地問題に対する抜本的な解決方策を示されました。また、七月十九日には、この一月に決定した二十機関に加えてさらに五十九機関、計七十九の国の機関等の地方移転が決定したのでありますが、私は、土地対策にかける竹下総理の決意が具体的に示されたものであると高く評価いたします。しかし、要は実行であります。処方せんだけでは病気は治りません。総理は、土地問題、さらに首都移転を含めた行政機能等の地方分散問題について、どのような手順、どの程度の期間を考えておられるのか、御所見をお伺いいたします。  農産物問題に関し、政府の見解をただしたいと思います。  まず、先般決定された米価の問題に関してであります。  二年連続の米価の引き下げは、我が国農業を取り巻く厳しい国際的環境のもとに、三たびの過剰を回避し、食管制度を守りつつ稲作農業の強化を図る必要性を背景に、苦渋の末の選択であったと思います。米は、単なる商品作物ではなく、我が国の二千年もの長い歴史に裏打ちされた文化あるいは精神のよりどころともいうべきものであり、日本民族共通のふるさとであります。それだけに、私は、これが農家や農村に将来への不安と動揺を与えることのないよう、特に日本農業を支える中核的専業的担い手に対して、その体質を強化するための対策を緊急に講ずることが不可欠であると考えます。  そして、今必要なことは、農業後継者に対して将来の確たる展望を示すことであります。そのためにも、私は、自立できる農業を目指して、減反政策について原点から見直す勇気が必要であり、国内の農業生産に対する規制緩和が必要であると考えます。これらの諸点につき、総理のお考えを伺いたいと思います。(拍手)  さらに、今農家の中には、相次ぐ農産物の自由化の波の中で、米の自由化を心配する声が強いのであります。世論調査でも、消費者の大半は米は自由化すべきではないという数字が出ています。稲作農家が将来の生産計画や生活設計を描く上でも、米の輸入自由化は断固やらないということを改めて政府に確認させていただきたい。  次に、牛肉・かんきつの自由化についてであります。  言うまでもなく、牛肉・かんきつは我が国農業の基幹をなし、また、地域経済の支柱ともいうべきものであります。佐藤農林水産大臣が三たびにわたり米国と渡り合い、筆舌に尽くしがたい御苦労をされたことには、心から敬意を表します。生産者も、祈るような気持ちで交渉の成り行きを見詰めておりました。最終的には、これら品目がガット審議の場に持ち込まれた場合の決着の仕方など、内外の情勢をにらみ、断腸の思いで自由化に関する決断を下されたと承っております。  私は、我が国牛肉・かんきつ生産は、これが本格的に開始されてからわずか二十数年であり、長い農業の歴史の中で見れば、揺籃期を脱したばかりであると認識しております。それだけに、今般の協議の結果、牛肉・かんきつ生産に携わる農家の不安は払拭し切れないものがあると思います。しかし、決まった以上は、生産者が自信を持って二十一世紀に向けその発展の基礎を固めることができるよう、政府は生産者に確たる展望と指針を示し、対策を強力に講ずべきであります。現在検討しておられる内容とあわせ、総理の御見解を伺いたいと思います。  次に、外交について伺います。  今日、我が国の国力及び国際的地位の向上に伴い、国際社会における我が国の責任と役割は飛躍的に増大しております。我が国は、今や国際秩序の主要な担い手であると言えましょう。このことを国民一人一人が自覚する必要があります。総理は、「世界に貢献する日本」の建設を竹下内閣の最大目標の一つに掲げられました。先般、そのための具体策として、平和のための協力強化、国際文化交流の強化、ODAの拡充強化の三本柱から成る国際協力構想を取りまとめられました。これは我が国の外交のビジョンを内外に示したものとして注目を集めております。  さて、先般イラン政府が国連事務総長に対し、イラン・イラク紛争の即時停戦を求める国連安全保障理事会の決議を受け入れました。これは和平に向けての重要な第一歩であり、今後できるだけ早く本格的和平が実現するよう、我が国としても相応の役割を積極的に果たすべきと思います。そこで、総理は我が国としてどのような役割を果たすべきとお考えか、お伺いします。  今次トロント・サミットでは、総理は、経済面においても政治問題についても積極的かつ率直に意見を述べられ、特にODAの第四次中期目標や最貧国の債務救済措置について我が国が打ち出した政策は高い評価を得たと聞いております。政治問題についても、西側の一員であると同時に、アジアからの唯一の参加国との立場を踏まえ、対ソ認識、朝鮮半島情勢、カンボジア問題、フィリピン情勢などにつき適切な発言をされたと仄聞しております。サミットにおける我が国の役割について、ニューズウイーク誌を初め外国のマスコミが、従来にないほど好意的な対日評価をしたことは注目してよいと思います。そこで、今次サミットの成果についての総理御自身の評価、感想はいかがでありましょうか。  総理は、今月下旬中国を訪問される予定と伺いましたが、本年は、特に日中平和友好条約締結十周年に当たります。私は、我が国にとって日米関係と並んで重要なのは日中関係であると思います。日中友好協力は、両国の平和と繁栄はもとより、アジア並びに世界の平和のかなめでもあります。この意義ある年に当たり、過去を顧み、将来にわたっての両国間の友好協力の大切さを改めて銘記すべきであります。我々は、日中共同声明及び日中平和友好条約を原点として踏まえ、さらに、両国が社会政治経済の仕組みが異なるという相互理解の上に立って、小異を残して大同を求める不断の努力をしていくことが大切だと思います。この際、日中外交に対する総理の基本的認識をお伺いします。  中曽根前総理が先般訪ソされました。ソ連の国際戦略を決める上で重要な役割を果たす世界経済国際関係研究所メンバーとの直接対話のほか、テレビを通じてのソ連国民への直接呼びかけは画期的なものであったと思います。中曽根・ゴルバチョフ会談では、領土問題を含め、突っ込んだ議論が交わされたようであります。我が国としては、北方領土問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針を今後とも堅持しつつ、ソ連との政治対話や交流を拡大強化すべきであると考えます。対ソ外交を今後どのように進められるのか、総理のお考えを伺います。  開発途上国に対する我が国の貢献は、従来より相当の努力は払われてきたものの、その国力と国際的責任に照らせば、量及び質の両面においてさらに強化すべきであります。先般発表されたODAの第四次中期目標によれば、一九八八年から五カ年間にODA実績総額を五百億ドル以上とし、あわせてODAの対GNP比率の着実な改善を図るということでありますが、それだけの量の拡大を図ることについては尋常ならざる努力を必要といたします。総理の御決意を改めて伺います。  総理は、当初、外交についてみずから控え目な評価をしておられたようでありますが、とんでもありません。世界は期待し、注目しているのであります。大いに国民の輿望を担って御活躍いただきたいと思います。  以上、私は内政、外交について総理のお考えをただしてまいりましたが、私は、総理が所信において述べられた「世界の期待にこたえることができる日本、しかも次の時代に生きる日本人が誇りとするに足る真に豊かな国づくり」ができるかどうか、「公平でしかも活力のある社会、勤勉な人々が報われる社会、そしてゆとりと希望に満ちた人間尊重の社会建設を目指す」ことができるかどうか、それとも単なる夢物語に終わるのかどうかは、まさに今回の税制改革の成否にかかっていると思います。(拍手)国の将来、国民の将来がかかっていると言っても過言ではありません。  私は、税制改革問題について、今日まで「万死を出でて一生の計を顧みず国難に赴く」との覚悟で臨んでまいりました。総理も所信において、この身命のすべてをささげて取り組むと述べられました。我が党も総力を挙げてなし遂げるべく努力する所存であります。改めて総理の御決意をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)     〔議長退席、副議長着席〕     〔内閣総理大臣竹下登君登壇
  15. 竹下登

    内閣総理大臣(竹下登君) まず最初に、今回の事故は、海上自衛隊の潜水艦と民間の船舶が衝突いたしまして多くのとうとい生命を失いましたことは、たびたび申し上げますように、まさに痛恨のきわみであります。政府としては、今後、事故原因を速やかに、かつ徹底的に究明し、再発防止に全力を尽くす所存であります。なお、政府の第一富士丸事故対策本部におきましては、二十七日、船舶の航行安全に関する当面の措置を決定したところであります。本日も、さらに再発防止対策の検討を精力的に進める旨を申し合わせたところであります。  さて、税に対する御意見を交えての御質問でありました。  いわゆる税率の累進構造についての御見解でございます。所得税の税率構造は全体として強い累進度を有しておりますために、働き盛りで収入は比較的多いものの教育費や住宅等の支出がかさむ中堅所得者層に特に負担累増感が強いというのは、私もそのように思っております。税率の累進が強過ぎたり、最高税率の水準が高過ぎたりする場合には、勤労意欲や事業意欲を阻害したり、また、租税回避の誘因となったり、結果的に課税の公平を損なったりする筈の弊害が生ずるというのも、現実御指摘のとおりであります。  このような問題に対処するために、まず一つには、最低税率一〇%が適用されますところの所得の範囲を三百万円までまず引き上げて、これにより大多数のサラリーマンの方々が、可能な限り長い期間税率が一本で済むようにしますことをまず考えました。二番目には、税率構造を一〇%から五〇%までの五段階に改めまして、税率構造全体についての簡素化、累進緩和を図ってきたところでございます。  次は、納税者番号をも伴う有価証券譲渡益等に対する御意見がございました。  今回の税制改革におきましては、有価証券の譲渡益について、これまでの原則非課税から原則課税へ改めることといたしております。その場合に、納税者番号制度といった有価証券取引及びこれに係る譲渡益を把握する体制を十分整備しないままに総合課税を採用する場合には、かえって実質的な公平確保の面で問題が生じますことなどから、少なくとも当面の措置としては申告分離課税方式と源泉分離課税方式との選択制とすることが適当である、このように判断をいたしたわけであります。なお、納税者番号制度につきましては、引き続き税制調査会の小委員会において、制度の導入の問題、導入するとした場合どんな問題が起こるか、そういうことについて検討いただいておるさなかでございますので、その結果を踏まえて政府として検討をすべきである、このように考えておるところであります。  次に、非常に冷静な判断で、税制の改革の理念についての御言及がございました。  今回の税制改革は、現行の税制が著しく変化してきた現在の経済社会との間に不整合を生じております事態に対処いたしまして、将来の展望を踏まえながら、国民の税に対する不公平感を払拭いたしますと同時に、所得、消費、資産に対する課税を適切に組み合わせることによって均衡がとれた税体系を構築をする、これが目的であります。現行税制のゆがみをこのまま放置いたしますならば、納税者の重税感、不公平感は一層深刻化いたしまして、ひいては税制への国民の信頼が失われることにもなりかねません。所得課税におきましては負担の公平を図りますとともに、税体系全体として実質的な負担の公平を保つとの観点から、所得課税の負担を軽減をいたしまして、消費にも広く薄く負担を求め、資産に対する負担を適正化することなどによりまして、国民が公平感を持って納税し得るような脱体系を構築する、これが喫緊の課題であると心得ております。  こうした認識のもとで、消費税の導入を含みます税制全般にわたる改革案を取りまとめた法案をまさに今国会に提出したところであります。今後、速やか、かつ十全な御審議をいただきますとともに、税制改革考え方等について周知徹底を図って、国民皆様方理解を得たいものだ、このように考えております。  それから、私が先般の国会におきまして、いわゆる六つの懸念ということを発表をいたしました。そして、新たに、転嫁できるかどうかという懸念を七つの懸念と位置づけております。これにつきまして、この中には、議論を積み重ねることによって和らいでいくもの、また、税制全体の中で考えていくもの、こういうものがございます。政府税調において、このような私の発言をも考慮されまして、地方公聴会等によって国民の意見を十分吸い上げ、長時間にわたって熱心かつ慎重な審議が行われて、中間答申がまとめられたところであります。政府としては、この中間答申を踏まえまして、この改革案を取りまとめて御提出申し上げたということであります。改革案の検討に際しましては、租税は国民社会共通の費用を広く薄く公平に分かち合うためのものであるという認識を基本としながら種々の対応を考えたところでありまして、これらによって懸念は解消できるというふうに私は考えております。  まず、所得の低い方々への配慮は、当然のこととして消費税そのものの税率が抑制されて三%、そうしてまた非課税取引について、広く薄く公平にという基本的考え方を踏まえながら、医療や福祉等の分野に非課税を設ける、そうして一方、大幅な所得税減税を行うことによって中堅所得者の皆さん方に対して税負担の軽減を行いますとともに、具体的には各種控除の引き上げなどによって課税最低限を引き上げていく、さらに、消費税の導入に伴って物価への影響が生じる場合は、生活保護、在宅福祉等真に手を差し伸べるべき方々に対する施策について適正な配慮を行っていく、これら税制面のみならず歳出をも通じました対応というものによってこれを考えてきたところでございます。  次に、税率引き上げの歯どめ問題についても御論及なさいました。  消費税の税率は法律に規定しておりまして、国会こそが税率引き上げについての最大の歯どめとして機能を果たすものと思料しております。税率を引き上げるかどうかという問題は、結局は財政需要と税負担について将来の国民がそのときどきに与えられた条件のもとで選択する問題であるというのが、原則的な、よく言われる議論でございます。今回、税率三%につきましては、長期間にわたる議論の末コンセンサスが得られた水準でありまして、安易に引き上げられるというような懸念は当たらない、このように考えております。  そうして、行財政改革について、これはまさに車の両輪であると申し上げましたとおり、引き続き粘り強く進めていくというのは当然のことであります。  さて、そこで、消費税の物価に与える影響についてもお尋ねがありました。  消費税の導入によりまして価格の上昇が生じますことは避けられません。これは、いわば価格の一部の形で税を負担するものでありまして、通常の物価上昇とは区別すべき性格のものであります。また、この物価上昇は、消費税の導入時の時点におきましての一回限り生ずるものであります。持続的な物価上昇とは異なるものであると考えております。物価に与える影響は、これを試算いたしますならば、先般の経済企画庁の試算で、水準は一・一%程度上昇する見込みである、このように試算されておるところであります。  そして、第七の懸念とでも申します転嫁の問題であります。  消費税は、消費に広く薄く負担を求めるもので、消費者がその最終的な負担者となることが予定されておる、そもそも間接税であります。したがって、消費税の実施に当たりましては、税負担の円滑かつ適正な転嫁が行われることが大切であって、政府としては、消費税の仕組みの周知を図るなど、法令面の手当てを含め必要な施策を講じ、その環境づくりに努力してまいりたいと考えます。  具体的に申し上げますならば、まずは消費者、事業者等に対する広範かつきめ細かいPRを行うこと、それから第二番目には、消費税についての表示の方法の決定に係る共同行為や、市場における価格形成力の弱い中小企業等に特に配慮する観点から、中小企業等に限って消費税の転嫁の方法の決定に係る共同行為を独禁法に違反することなく行えるように、この旨の暫定的な立法措置を講ずる考えであります。また、不当な買いたたき等を防止するために、所要のガイドラインを定めますとともに、独禁法、下請代金支払遅延等防止法に反する行為が行われないように監視体制を強化するなど、諸般の施策を講じてまいる考え方であります。  さて、行政改革に対する熱意にお触れになりました。  申し上げましたとおり、まさに行財政改革と税制改革は車の両輪であります。政府は、行政改革を国政上の最重要課題一つとしてこれを位置づけて、行革審答申などを最大限に尊重しながら、逐次具体的方法の推進を図ってきたところでありまして、その成果は着実に上がっておると認識しております。今後とも、改革に対する努力をいささかも後退させることがあってはならぬ。先般の新行革審意見等を踏まえまして、経済社会情勢の変化に対応し、簡素にして効率的な政府の実現に向け、行政改革の一層の推進努力してまいる決意であります。  御指摘のように、規制緩和等は、また国際化に向けた努力であると考えておるところであります。  地方行政の簡素化、効率化につきましても、各地方公共団体において、昭和六十年の一月の地方行革大綱を受けて、それぞれ着実に実施されておると考えております。今後とも、地方公共団体の自主性、自律性の強化を図りますとともに、地方公共団体における自主的、総合的な行政改革を推進して、国、地方を通ずる行政の簡素化、効率化に努力してまいりたい、このように考えます。  次に、明電工、リクルート問題にお触れになりました。  いわゆる明電工事件やリクルート問題につきましては、政治家ないしその関係者が何らかの形でかかわっていたのではないかと報ぜられたことから、国民の強い関心が寄せられていることは十分承知いたしております。  明電工事件にありましては、既に所得税法違反容疑で、いわば刑事事件になっております。一方、リクルート問題は、店頭登録前の非公開株式の取引について証券取引法上の問題がなかったかどうかについて行政当局の調査が進められておる。したがって、両事案はその性格を異にいたします。したがって、一概にこれをそういう性格から論ずるわけにはまいりませんけれども、いかに違法行為にかかわってはいないといたしましても、やはり李下に冠を正さずの例えのありますように、国民の不信を受けることのないよう、私ども政治家一人一人が十分に心していくべきことであると考えております。  次に、国会空転に対する御意見がありました。  昨年十一月、私は憲法第六十七条の規定によって国会の多数決をもって内閣総理大臣に指名されました。議会制民主主義のルールに沿って選出されたことを誇りとして、大きな責任を感じております。長年の議会生活を通じて私が最も強く学びましたことは、国会とは、さまざまの案件につき、さまざまの異なる意見を代表する者が議論を尽くし、苦しい選択の中から立法府としての意見を決定していくものだという原理であります。それが国民に対する私たちの責務であるということを常日ごろ感じておるところであります。  所信表明で申し述べましたとおり、私は、現下の最重要課題である税制の抜本的改革につきまして、国民の代表である国会議員皆さん国会の場を通じて十分審議をしていただきたいと考え、このたびの臨時国会の召集をいたしましたのも、また会期を御決定いただきましたのも、まさにそのためであります。したがって、その他重要案件をも含め、何とぞ議論のほどを切にお願いする次第であります。(拍手)  さて、土地対策についての御発言がございました。  土地問題に対する特別委員会が本院にもまた参議院にも設置されました。これは大きな土地問題に対する環境整備というものに私は役立ったと考えております。したがって、この問題は早急に解決すべき問題でありまして、現下の最重要課題一つであるという認識のもとに立って、先般取りまとめました総合土地対策要綱などに基づいて、関係各省間の密接な連絡を図りながら、政府一体となって各般の施策を総合的、積極的に講ずることによって土地問題の解決に努めてまいりたい、このように考えます。施策の実施に当たりましては、土地対策関係閣僚会議を積極的に活用して、準備が整ったものから着実にこれを具体化していくということが大切であると思います。  行政機関等の移転の手順等について申し上げます。  行政機関等の移転につきましては、都市・産業機能等の地方分散の一環として、政府みずからが範を示しますとともに、民間部門の地方移転の先駆けをなすものとして、今回、地方支分部局、研究機関、研修機関等について、移転の基本方針と移転の対象となる機関等をいわば候補者を決定したところであります。今後、具体的な移転の進め方等の検討をこれから行います。それぞれの機関の移転条件が整備され次第、逐次移転を進めていくという考え方であります。  首都機能の移転再配置につきましては、国民生活全体に大きな影響を及ぼして、国土政策の観点のみでは決定できない面がございますが、東京一極集中への基本的対応として重要と考えておりまして、さきの総合土地対策要綱におきましても、政治・行政機能等の中枢的機関の移転再配置については幅広い観点から本格的な検討に着手する、このようなことを決定したところであります。  次に、米作の基本的考え方と今後の展望についてのお尋ねがありました。  現在の稲作をめぐる情勢は、潜在的需給の不均衡の拡大傾向、内外価格差縮小に対する要請の強まりなど、大変厳しい環境にあります。稲作については、米の需給均衡化対策を推進しますとともに、水田というすぐれて我が国の風土になじんだ生産資源を生かすとの観点から、稲作、転作作物等を組み合わせた水田農業の総合的な生産性の向上を図ることが必要だと考えております。このため、土地基盤整備、担い手の育成、規模拡大や生産組織の育成、技術の開発普及などによって、二十一世紀に向けての生産性の高い水田農業を実現してまいる考え方であります。  減反政策につきましては、米の需給ギャップについて、消費の減少、単収の増加等によりまして、引き続き拡大していくことが見込まれているところであります。このような状況のもとで、米の需給の安定を確保することは極めて重要でありまして、需要に応じた米の計画的生産を図っていくことは今後とも必要であると考えます。その実施に当たっては、農業の担い手の育成にも極力配慮しておるところでございます。  さらに、米の輸入自由化問題についてお触れになりました。国民の主食であり、かつ我が国農業の基幹作物でありますお米については、生産性の向上を図りながら、国会における米の需給安定に関する決議等の趣旨を体しまして、国内産で自給するとの基本的な方針でこれからも対処してまいる所存であります。  さて、農産物自由化問題の関連についてのお尋ねがございました。  先般の日米、日豪合意が、関係農家にとり極めて厳しい試練であることは十分認識しております。今後、厳しい条件のもとで牛肉・かんきつ生産の存立を守り、その体質強化を図っていくとの基本的考え方にのっとりまして、所要の国内措置について最大限の努力を傾注してまいる所存であります。  具体的には、牛肉については、国内肉用牛生産の振興合理化を推進するため、肉用子牛の価格安定等に関する立法措置等について検討をいたしますとともに、当面懸念されております価格変動等に対処しますための緊急対策についても、鋭意ただいま検討を進めておるところであるというふうに御理解をいただきたいと思います。  かんきつにつきましては、品質及び生産性の向上を通じまして体質強化に努めますとともに、当面の需給、価格の安定等を図りますため、所要の具体的措置について、これまたただいままさに鋭意検討を進めておるところであります。  さて、外交問題にお触れになりました。  イラン・イラク紛争の終結に向けて現在国連事務総長によります調停努力が行われておりますが、今我が国としては、同事務総長の努力を全面的に支援していくとの方針であります。このため、同事務総長の調停作業を支援すべく、これまでに一千万ドルの特別拠出を行っておりますが、今後とも和平に至る各段階で可能な限りの協力を行っていくとの考えであります。さらに、我が国は、イラン、イラク両紛争当事国と政治対話のパイプを有する数少ない西側先進国の一国といたしまして、引き続き両国との緊密な協議、連絡を保ちながら、和平実現の必要性を訴えていく考え方であります。  トロント・サミットの政治的評価とでも申しましょうか、このサミットは、東西関係の現状と展望を中心に、カンボジア、中東、南アフリカ、朝鮮半島等の地域問題、そしてまた国際テロあるいは麻薬問題など、現在の世界が直面する広範な問題について、率直かつ有意義な意見交換が実施されたというふうに私も思っております。これらの問題に対します西側の対応ぶりにつきまして、広範な合意を得ることができたというふうに考えます。特に、政治宣言において東西関係における一連の動きを正当に評価しました上で、今後ともより一層安定的な東西関係の構築を目指す参加首脳の一致した決意を表明できたことは有意義であったと思います。また、我が国の主張によりまして、各国首脳、外相がアジア情勢についての理解を深めたことも、重要な成果であったというふうに考えております。  それから、国際政治経済上の問題につきまして、もとより率直な意見交換をいたしました。各国が協調してこれらの問題に取り組んでいくことが確認できたわけであります。そのようなことを考えてみますときに、経済面におきましても、マクロ経済政策、ウルグアイ・ラウンドを含む国際貿易、新興工業国・地域、いわゆるNIESでございます、開発途上国の債務問題等について、参加首脳との間で活発な議論が交わされました。その結果、経済宣言として合意されたことは、今後の世界経済運営にとって有意義であったと思っております。我が国の経済につきましては、内需主導型成長が定着し、今後ともかかる努力を継続していく旨の決意を表明をいたしたところであります。  経済協力分野においても、御指摘がありましたように、第四次中期目標、なかんずく後発開発途上国に対する債務救済措置の拡大等については、各国首脳とも高い評価が得られたというふうに考えておるところであります。いずれにせよ、「世界に貢献する日本」の姿を広く印象づけることができたではなかろうかと思っております。  日中問題についてお触れになりました。  隣国中国との間において長期にわたる良好にして安定した関係を維持発展さしていくことは、我が国外交の重要な柱であります。我が国としては、中国の近代化に向けての努力に対し可能な限り協力いたしますとともに、日中共同声明、平和友好条約、日中関係四原則に基づいて、各分野にわたる友好協力関係発展を図ってまいる所存であります。本年は、日中平和友好条約締結十周年に当たる記念すべき年であります。国会の御理解を得て、今月末には私も訪中し、中国指導者との間で忌憚のない意見交換を行いまして、両国関係発展のための一層の基盤強化を図る考えであります。  さて、対ソ問題について、中曽根・ゴルバチョフ会談を中心としてお触れになりました。  中曽根前総理がゴルバチョフ書記長と北方領土問題を含む日ソ関係及び国際情勢の幅広い問題について忌憚のない活発な意見交換を行いましたことは、日ソ間の政治対話の拡大強化に資するものであるというふうに考えます。特に、前総理が北方領土問題に関する我が国の立場を歴史的事実に言及しつつ明確に主張したことは、極めて有意義であると思います。(拍手)  御指摘のとおり、重要な隣国でありますソ連との間に、戦後最大の懸案である北方領土問題を解決して平和条約を締結するということによりまして真の相互理解に基づく安定した関係を確立することは、我が国対ソ外交の不動の基本方針であります。我が国は、このような基本方針を踏まえ、そして先般の中曽根訪ソの際、領土問題に触れること、研究所等の講演に参加したいこと、さらにテレビはノーカットでこれを放映すること等を認められたということは、私は、いわゆる情報公開、グラスノスチの一つではなかろうかという考え方のもとに、今後政治対話の拡大強化を通じまして、バランスのとれた日ソ関係の進展のため今後とも努力してまいる所存であります。  さらに、第四次中期計画実施に向けての決意について念押しのお尋ねがありました。  自由世界第二位の経済力を有して、かつ対外経済依存度の高い我が国にとって、政府開発援助の拡充は、国際社会において果たすべき重要な責務であります。国際協力構想の中で政府開発援助の拡充を取り上げたのも、まさにこの考慮に基づいたものであります。累次の中期目標に基づく我が国の政府開発援助の計画的拡充への努力は、国際的にも評価を受けております。今次第四次中期目標につきましても、トロント・サミット等の場で評価を受けました。今後、今次中期目標の達成に努めて、「世界に貢献する日本」の実現を目指していこう、このような質問者と同じ考え方であります。  さて、最後に税制改革決意を重ねてお尋ねになりました。  税制の抜本的改革の実現は、現下の最も重要な内政上の課題であることは申すまでもありません。今回提案した改革案によって、我が国経済社会の活力を維持し、国際化に即応しつつ、豊かな長寿福祉社会をつくるためにふさわしい、より公平な税体系の構築が図られるものと確信をしております。そこで、野田議員が、私は税制改革問題について今日まで「万死を出でて一生の計を顧みず国難に赴く」という覚悟をお述べになりました。その覚悟をみずからに言い聞かせつつ、この国会の場を通じて、理解しつつ審議を進め、審議しつつ理解を求める立場でこの法律案の成立に全力をいたしたい、このように考えるところであります。  以上でお答えを終わります。(拍手)     ─────────────
  16. 多賀谷真稔

    ○副議長(多賀谷真稔君) 大久保直彦君。     〔大久保直彦君登壇
  17. 大久保直彦

    ○大久保直彦君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、税制改革、リクルート疑惑並びに我が国政治が当面する諸問題について、総理にお尋ねをいたしたいと存じます。  質問に先立ちまして、海上自衛隊潜水艦「なだしお」と大型釣り船第一富士丸との衝突沈没事故におきまして亡くなられた方々の御冥福を心からお祈り申し上げます。あわせて、御遺族の方々に対し哀悼の意を衷心より表明いたすものであります。また、負傷された方々に謹んでお見舞いを申し上げます。  多数の人命が失われました。海上自衛隊史上最悪の不祥事となりました今回の事件には、極めて重大な問題が存在いたしております。公明党は、事故発生後、直ちに矢野委員長を先頭にいたしまして、公明党の対策本部のメンバーが現場に急行し、現地浦費水道海域を視察、調査いたしました。事故発生時、視界も甚だよく、穏やかな昼間の海でなぜこのような事故が起きたのか、多くの疑問があります。本件につきましては、過日、関係委員会の連合審査におきまして審査が行われており、今ここで詳細を繰り返しませんけれども、浦賀水道周辺海域の船舶航行上の問題、さらには自衛隊側により基本的な問題があることが明らかになっております。  そこで、私は、一連の事実関係の公表、自衛隊の責任問題、再発防止と安全航行の確立、事故に遭遇されました方々への補償問題などについて、改めて総理の答弁を求めるものであります。  総理、連合審査におきましては、総理の御答弁は自衛隊の対応が適切でなかったということを繰り返されておりますが、しかし過日の所信表明におきましては、お見舞いの言葉は使われました。しかし、謝罪もしくはそれに類する言葉を何一つ聞くことができませんでした。先ほどの土井委員長への答弁でも、お伺いすることはできませんでした。極めて遺憾に存じます。自衛隊の最高責任者として、再度所感をお尋ねするものでございます。  また、西日本を初め局地的な大雨によって被災されました方々に対しお見舞いを申し上げますとともに、異常低温が続く中で冷害の発生が懸念されております。災害対策とあわせ、冷害対策にも万全を期するよう政府に要請をいたすものであります。  竹下総理、公明党はいわれるところの消費税導入には断固として反対をいたします。したがいまして、その成立の阻止には全力を挙げたいと考えております。(拍手)  総理は、消費税導入にこの身命のすべてをささげると、また政治生命をかけるとも御発言になりました。私は、政治家として政治生命をかける信念を持っておられることに敬意を表しますけれども、その内容には残念ながら賛成することはできません。しかし、総理、私ども野党の反対、国民の反対を押し切ってどうしても消費税を導入しようとするならば、それには前提となる条件が少なくとも二つあると私は思います。その一つは、国民の声をストレートに聞いてみることであります。税制は国の基本であり、国民の合意なくしてその変更はしてはなりません。本院を解散して国民に信を問うことであると思います。そしてもう一つは、この税制の改革は三年以上じっくり時間をかけて審議、検討することではないかと私は思います。  今、人類は二十一世紀の到来を目前にいたしております。二十一世紀とは二十世紀の次の世紀ではない、千年の大台がわりの世紀であると述べる学者がおります。今次の税制改革は、シャウプ勧告以来四十年ぶりの抜本改正と言われ、また、二十一世紀を展望するものであると言われております。その意味におきましても、今世紀の残された期間に我々が行おうとするものは、二十一世紀の重みに耐え得るものでなくてはならないと存ずるものでございます。  竹下総理、総理自身もシャウプ勧告より云々と御発言になりました。それほどの重大な抜本改正であるならば、少なくとも三年程度の年数と時間をかけ、世界の各国に規範となり、後世の国民から非難、弾劾を受けることのない税制をつくるべきであると思います。拙速主義ではなくして、そうした腰を据えた審議を是が非でもやろうではありませんか。御見解をお示しいただきたいと思います。  私ども公明党は、そのためにはまず税制改革基本法の制定を提唱いたします。この基本法は、第一に税制改革の理念、第二に税制改革の手順、第三に高齢化社会へのビジョンの策定、第四に行政改革の徹底、第五には税の自然増収の見通しと配分などを定めるものであります。  総理、税制改革は、正しい手順を踏み、じっくりと腰を据え、この間は不公平税制の是正など、与野党間で合意したものから順次改革に着手していくべきであります。政府は、今回決定した税制改革法案を基本法と位置づけられておるようでありますが、基本法を一括処理するための便法として用いるのであるならば、それは問題であります。基本法制定について総理の御見解を承りたいと存じます。(拍手)  税制の論議は、まず現行税制の不公平感を正すところから始めるべきであります。再三指摘されてまいりましたキャピタルゲイン課税についても、売却額のわずか一%程度の源泉分離課税であり、医師優遇税制の是正と言いながら、場当たり的な措置に終わっております。  不公平税制の是正につきましては、公明党は、第一に、現行所得税を見直し、すべての所得を総合して課税する税制度の再構築、第二には、法人税の課税ベースの拡大と、公益法人、政治資金に対する課税の適正化、第三には、資産課税の適正化により資産の保有による格差を防ぐこと、第四に、脱税や行き過ぎた節税など執行面の不公正を改善することなどを柱として進めるべきであると考えております。  我が国の所得税制は、総合課税の建前をとっているものの、資産所得課税、事業所得課税に対する優遇措置が拡大され、給与所得への税金にしわ寄せをされております。高額所得者ほど有利という、負担に格差が生じております。これは、税構造そのもののゆがみであります。中堅サラリーマンの重税感は、総合課税制度に組み立て直すことによって解消されます。しかし、消費税導入の見返りに税率構造の緩和を図るというのでは、逆に新たな不公平感を生み出すことになります。それだけの理由ではありません。所得の再配分機能が一層求められております高齢化社会への移行を前に、何といたしましても総合所得課税を確立しておかなければなりません。総合課税制度に対する総理の御見解を承りたいと存じます。  総理、先日、年金で生活をされておりますあるお年寄りの方から手紙をちょうだいいたしました。そこには「限られた人生を必死に働き生きてきました。ささやかな年金を得て生活のメドを立て余生をと考えておりました。しかし、ここで消費税の導入の噂を聞き、私の人生は今大きな不安に包まれています。相撲ではありませんが、土俵際でウッチャリを食った心境です」と書かれてありました。この一庶民の言葉をどう受けとめますか、御感想を承りたいと存じます。  さて、総合課税の徹底とともに重要な問題は、資産課税の適正化であります。特に、地価の高騰がもたらした影響は大変大きなものがあります。土地を持つ者と持たない者との格差の拡大は、国民の間の不公平感を一挙にかき立てました。これまで長年にわたって資産課税の強化が叫ばれてきたにもかかわらず、総理、税制改革案では土地所有に係る税負担や相続税のあり方については全くと言っていいほど触れられてなかったのはなぜでありましょうか。  国民経済計算という資料によりますと、昭和六十年末から六十一年末までの一年間での資産の増加額は約三百八十兆円と言われております。六十一年度のGNP、国民総生産三百三十三兆円を上回る状況にあります。この増加額のうち七割に当たる何と二百四十六兆円が土地の資産であると言われております。金融機関を中心に大企業が保有する土地の増加率が著しい上昇を示しております。株や土地資産の増加が、さしたる苦労もなく、国民が一年間総がかりで汗水して働き稼いだ合計のGNPを上回り、そうした所得に対する税金が抜け穴だらけの現状を放置して消費税を導入するというのは、余りにも飛躍が過ぎるのではないでしょうか。五十歩譲っても百歩譲っても認めるわけにはまいらないのでございます。(拍手)  総理、我が国は今世界一リッチだと言われております。確かに法人、企業は豊かであるかもしれません。しかし、その豊かさは国民一人一人に還元されておるのでありましょうか。法人と個人との問題、生活の次元から見れば、これは納得できるものではありません。公明党は、かねてからこうした実情を踏まえまして、社会的公正を確保するための大企業の土地の含み益を社会へ還元する必要があると考えてまいりました。既に土地増価税の創設を提案いたしております。土地増価税の創設によって含み益による余剰資金の供給を抑え、土地の流動化を促進し、地価の安定が図られると強く確信をいたしております。総理、この含み益には何らかの方法で課税すべきではないかと考えますが、総理の御所見を承りたいと存じます。  しかも、ことしの大幅な自然増収は七兆円とも九兆円とも予測されております。にもかかわらず、なぜ今消費税なのか。大型間接税の導入なのか。全く理解できませんし、承服するわけにはまいりません。しかと御説明をいただきたいと存じます。  総理、国会においては、数年前から増税か行革かという論議をしてきたことは十分に御承知かと存じます。財政の立て直し、新しい時代の必要財源を生み出すには行革を徹底して行うべきであります。国債の発行残高は百五十八兆円を突破いたしました。この利息が十二兆円、六十三年度の国の予算の約二〇%がこの利息で占められております。行革を放置したまま、財政が赤字だからといって国民に新たな税を求めることはどう考えても納得がいかないのであります。  消費税導入に突き進む前に、私は、抜本的な行財政改革、例えば国有財産の有効利用や処分までを含んだ国債償還プログラムを考えてはいかがかと提案をいたしたいと存じます。百五十兆円の三分の一が処理できれば十二兆の利息のうち四兆円が、百五十兆の半分が処理できれば六兆円の財源が生まれることに通じます。ある経済研究機関の関係者が、公社公団を民営化してその株を売却すれば、現在の国債発行残高を上回る百七十一兆円の売却益が出ると主張して話題を呼んだことがあります。住宅公団は別といたしましても、そのほかの大半を民営化し、その株式売却益を活用していくという方策は大いに検討に値すべきであります。また、借金財政の克服に最大限の努力を尽くすべきではないでしょうか。総理の御所見を伺いたいと存じます。(拍手)  このように、財源対策の方法はまだほかにも幾らでも考えられます。であるにもかかわらず、なぜ今消費税なのか、私ども理解に苦しみます。しかも、本来、通常国会で処理できなかった案件を継続して処理するはずのこの臨時国会、その臨時国会に新税の導入を持ち出し、わずか一カ月、二カ月の短期間でこの消費税を成立させようとする方針は、決して国民理解と支持を得られるものではありません。(拍手)私どもは、重ねて消費税導入反対を表明いたすものであります。  行財政改革を徹底して行う中には、私は、この国会、衆参両院立法府の議席数を減らすことも検討されてよいと考えます。  六十一年の五月の国会決議に明らかなように、衆議院の議席の抜本改正を速やかに実現することは国民への公約であります。国勢調査の時点から既に三年を経過し、最新の有権者数による一票の格差も既に三倍をはるかに超えました。前国会で与野党理事による定数是正小委員会を設置し、抜本改正の合意を目指し意見交換を行いました。総理、行政府も立法府も痛みが我が身に降りかかる定数是正のこの改正、是正を棚上げにして国民税制改革を訴えても説得力はありません。定数の抜本改正の筋道と時期について、総理の明確な所見をお伺いいたしたいと存じます。(拍手)  外交問題に入ります。  七月十八日、イラン政府は国連安保理事会の停戦決議を無条件で受け入れることを明らかにいたしました。心から歓迎の意を表し、速やかに安保理決議の諸項目が実施されるよう期待いたしたいと思います。我が国政府としても、恒久的な和平の実現、戦後の復興援助なども含め、あらゆる努力を行うべきでありますが、総理の具体的な見解をお伺いいたしたいと存じます。  総理は、さきのトロント・サミットにおきまして、ODA、政府開発援助の倍増計画並びに発展途上国を対象とする五十五億ドルの公的債務棒引きなどを明らかにされました。私は、我が国が経済力国際的地位にふさわしい貢献を果たすべきことは当然であると思いますが、トロント・サミットで総理が公約されましたODAを倍増するためには、毎年の予算を平均で一〇%以上伸ばさなければなりません。ODA予算の増額には基本的に異論はありませんが、年々金額も増加しており、これについて国民理解と支持を得なければなりません。これまでODAについては、総務庁による行政監察でも援助の実態は質的な面で問題が多いなどと勧告もなされております。  公明党は、既に国会に提出いたしておりますが、この際、国際開発協力基本法を制定して援助の理念や基本原則等を明示するとともに、政府機関の一元化など、実施体制の整備を図るよう提案を申し上げたいと存じます。総理の見解をお伺いいたします。  ODAと並んで重要なのが、民間ベースによる経済協力問題であります。現状を見ると、貿易保険特別会計の赤字や累積債務国への保険引き受けの停止などから、民間資金の還流が困難な事態が生じております。貿易保険特別会計の充実、貿易保険の引き受け弾力化についてどう取り組まれますのか、お伺いをいたしたいと存じます。  一方、ODAの増額がいわゆる米国の戦略援助の肩がわりになることが心配されております。経済協力はあくまでも非軍事的な分野に限るという原則を守るべきであります。総理の御見解をお示しいただきたいと存じます、特に、フィリピン、アフガンに対してはどのような方針で行うのかも明らかにしていただきたいと思います。  総理、我が国にとりまして最も大きな外交の懸案は対ソ関係の改善でございます。さきに中曽根前総理が訪ソされましたが、この問題について具体的に何ら大きな進展をまだ見ておりません。見通しも極めて不透明と言わざるを得ません。総理は、ソ連が何かの行動を起こすことを待っておられるのでしょうか。日ソ関係の改善に対する意欲が問題であります。INF条約の調印、アフガンからのソ連の撤退、またイラン・イラク戦争の停戦など、世界的なデタント、緊張緩和の進展の中で日ソ関係だけが取り残されることになりかねません。総理の日ソ関係に取り組む基本的な考え方を、この際明確にお伺いいたしたいと存じます。  総理は、この八月に中国を訪問する予定とお伺いしております。本年は日中平和条約締結十周年の佳節を迎えますが、時として我が国政府の過去の歴史に対する不穏当な認識や発言によって日中関係がぎくしゃくしてきたことは極めて遺憾であります。総理は、国交回復以来今日までの日中関係をどう評価されておるのか。今回の訪中の目的と今後の展望について見解を承りたいと存じます。  さて、この秋のソウル・オリンピックが成功裏に行われるか否かにつきましては、今後の朝鮮半島情勢の動向、アジア、世界の平和にも大きなかかわりを持ち、我が国にとっても重大な関心事であります。ソウル・オリンピックに対し、総理はどのような所信を持ち、どのような取り組みをされるのか、お伺いをいたしたいと存じます。  総理、私は過日ソウル・オリンピックについての一枚のポンチ絵を目にいたしました。ポンチ絵というよりは、政治風刺漫画かもしれません。ソウルのメーンスタジアムの中にはチャイコフスキーのメロディーが流れ、白鳥のコスチュームをまとったバレリーナが優雅な踊りを繰り広げられておりましたが、そのスタジアムの外には、レーガン大統領がブルドッグとドーベルマンを従え、竹下総理が土佐犬と秋田犬を従えてその周りを徘回いたしておるのでございます。世界から集まった国民は、その姿をまゆをひそめて見ておりました。私は、このソウルのオリンピックがこのような風刺をされるようなことにならないよう総理に要請を申し上げたいと存じます。  懸案の日米牛肉・オレンジ交渉は、本年初頭における農産物十二品目に続き、去る六月二十日、我が国が一方的に譲歩する形で決着をいたしました。今回の交渉結果は、国内生産についての明確な将来展望もないまま米国からの法外な要求を受け入れたものとなっております。輸入自由化を迫った米国自身が、食肉輸入法やウェーバー品目等で多くの農産物の輸入規制を行っております。また、EC諸国では穀物や食肉など六十品目に及ぶ輸入農産物に高い課徴金を課し、農業を手厚く保護いたしております。  輸入自由化決定後、我が党の視察団が農村を訪問いたしましたが、多額の借金を抱えた農家も多く、はかり知れない憤り、不安を募らせているのが実情であります。総理、我が国の全面的譲歩とも言えるような交渉結果についてどう説明をされるのか、お答えを願いたいと存じます。  このような現状の中で、公明党は先日、「国際化に対応した牛肉政策の確立について」と題する政策提言を行いました。政府が国内生産の存立を守ろうとするならば、生産農家が明るい展望を持って営農に従事できるよう、国際化時代に対応した強力な国内対策の確立が急務であります。今回の交渉結果を招いた政府には、こうした切実な要請にこたえる責務があると存じます。十二品目問題を含め今国会でどう対応されるのか、今後いかなる具体的な国内対策を講ずる用意があるのかを明らかにしていただきたいと存じます。また、総理の言う「ふるさと創生論」の中に農業の位置づけはどうなっているのか、所信をお尋ねいたします。  さて、鉄道共済年金の問題に一言触れたいと存じます。  既に破産状態となっている鉄道共済年金は、六十五年度以降の対策は全く白紙の状態であります。現時点での見通しは、六十五年度から六十九年度までの五年間、毎年三千億円の赤字が出ると予想されております。共済年金問題閣僚懇談会において検討が進められているとのことでありますが、年内には結論を出すべきであります。御答弁をいただきたいと存じます。  最後に、政治姿勢並びに消費税導入に関連いたしまして、リクルート疑惑についてお尋ねをいたします。  リクルート問題とは、申すまでもなく、非公開株を安く入手した人物が、上場公開の際に高値でその株を手放し巨額の利益を得たというものであります。また、その巨額な利益も、自分の資金で買ったものではなく、先方から貸し付けられて買ったものである。いわば丸抱えでもうけさせてもらっているということであります。しかも、今政治の最高責任者がこの事件にかかわっておる。それも一名や二名ではない。総理を初め主要閣僚、そして自民党の最高幹部であるとさえ言われております。  総理、今、竹下内閣は税制の抜本改革という名のもとに強引に消費税の導入を試み、国民に新税を負担させようといたしております。不公平税制の是正が重要課題になっておる折から、国民に対して新たな税への理解を求め、協力を求めるべき立場にある行政の責任者、特に税金の所管大臣である大蔵大臣周辺までが、一般では手に入らぬリクルート株でぼろもうけをしておると言われておるのでございます。このような状況のもとで、国民に新しい税金、消費税云々を語る資格があるでありましょうか。とてもあるとは思えないのであります。(拍手)  株式譲渡の問題性については、最高裁の判決でも明らかであります。今、多くの国民は、為政者である政治家たちが甘い汁を吸っていい思いをしているのは何事かと、明電工事件ともあわせ、政治への不信が今ほど極度に達しているときはありません。総理は先ほどの答弁で、国民感情として割り切れないものがあると思うと述べておられましたが、そんな生易しいものではありません。国民は激しく怒りをあらわにしているのであります。消費税は前回の売上税よりいいとか、新しい消費税の税率を極力抑制して五%を三%にしたとか、そんなことを国民に向かって言える状況ではありません。この際、国民皆様の心情を思えば、消費税導入を撤回するか、しばらく凍結すべきであります。総理の所信を求めたいものであります。(拍手)  そして、国民に新税を求める前に、政治家として政治的、道義的責任を明らかにすべきであります。株式の譲渡についての法改正も必要でありましょう。しかし、今我々に求められていることは、これらの事件の真相を国会において徹底的に究明し、その政治的、道義的責任を明らかにしていくことではないでありましょうか。リクルート株にかかわる政治家の名前を公表すべきであり、総理を初め関係閣僚の責任問題をどう処理されようとしておるのか、予算委員会を開会して、リクルート疑惑の徹底審議を要求するものであります。リクルートコスモスの責任者を国会に喚問して、疑惑を追及すべきであります。総理の毅然たる決意をお伺いするものであります。(拍手)  この疑惑の究明と政治責任の明確化を行わずして、選挙公約違反、政府統一見解違反、そして国会決議違反の消費税導入を強行するのであれば、私たちは、竹下内閣に対し徹底的に対決することを、その決意を表明して、私の代表質問を終わりたいと存じます。(拍手)     〔内閣総理大臣竹下登君登壇
  18. 竹下登

    内閣総理大臣(竹下登君) まず最初、第一富士丸問題についてでございました。  今回の事故は、海上自衛隊を一方の当事者とする事故であります。この事故によりかくも多くのとうとい生命が失われましたことは、痛恨のきわみであります。まことに遺憾に思う次第であります。  政府としては、この事故の重大性にかんがみ、事故発生の翌日、第一富士丸事故対策本部を設置いたしました。二十七日は船舶航行の安全に関する当面の措置を決定いたしますなど、再発防止対策の検討を精力的に進めているところであります。事故原因につきましては、現在、海上自衛隊自身によりますことはもちろんのことでありますが、海上保安庁、海難審判庁等においてもそれぞれの立場から調査中でありまして、その責任の所在を明らかにしますとともに、事故再発防止に役立てる所存であります。  いずれにせよ、この事故によって揺らいだ自衛隊に対する国民の信頼を一日も早く回復すべく、私としても、自衛隊の最高指揮監督権者の立場から、誠心誠意対処してまいる所存でございます。なお、補償問題でございますが、この状況を見きわめつつ適切な対応をしてまいる考え方であります。  本件につきましては、その重大性にかんがみまして、発生の初期的段階から詳細な報告を受けて所要の指示もしてきたところであります。いろいろな御批判があることは承知しております。しかし、潜水艦側もそのときどきのいわば最善の措置を講じてきたという報告も、私はそれなりに理解できるところであります。しかし、三十名のとうとい人命が犠牲になったという否定しがたき事実を厳粛に受けとめて、得られた反省、教訓を目いっぱい生かして事故再発防止に努めていくことが、犠牲者へのせめてもの供養であるとともに、私どものとるべき責任であるというふうに考えておるところでございます。  次に、西日本の大雨災害対策についてのお尋ねがございました。  被災された方々に心からお見舞いを申し上げますと同時に、一市一町において災害救助法を適用するなど、被災住民に対する救助、救済に全力を挙げているところでございます。  さて、それがゆえの冷害問題にも御言及になりました。  七月中旬からの低温、日照不足により、東北地方、北陸地方を中心に稲などの農作物に生育のおくれなどが見られているところであります。このような状況に対処し、適切な水管理、施肥、病害虫防除等の技術指導に対してこれからも努めていこう、このように思っておるところであります。  さて、税制改革には時間をかけるべきだという御意見でございます。  現行税制は経済社会の著しい変化に対応し切れておらず、給与所得に税負担が偏って、サラリーマンの重税感、不公平感が募っているなど、税制全般にわたってさまざまなゆがみが目立ってきております。こうしたゆがみを放置する場合には、サラリーマンを中心とする納税者の重税感、不公平感、これが一層深刻化しまして、また税制の経済活動に対する中立性が損なわれて、ひいては税制への国民の信頼が失われることになりかねないと考えております。このような状況を踏まえますならば、所得課税において負担の公平を図りますとともに、税体系全体として実質的な負担の公平を保つとの観点から、所得課税の負担を軽減して、消費にも広く薄く負担を求め、資産に対する負担を適正にすることなどによって、国民が公平感を持って納税し得るような税体系を構築することが喫緊の問題であると考えております。  この税制改革問題は昭和五十三年から議論をされ、実に十年の時日が経過いたしておるわけであります。この事実を十分理解され、その間にお互いがいろいろ議論をしたことを想起しながら、感情、感傷にとらわれることなく、本当に国民皆様方の対話の中に解決していきたいと考えるものであります。(拍手)  さて、税制改革法案の問題であります。  今次の税制改革は、国民の租税に対する不公平感を払拭するとともに、所得、消費、資産等に対する課税を適正に組み合わせることによって均衡がとれた税体系を構築するものでありまして、そのため整合性を持って包括的かつ一体的に実施される必要があるわけでございます。こういう認識のもとに、今次の改革の趣旨、基本理念及び方針を明らかにして、かつ簡潔にその全体像を示すことによって改革についての国民理解を深めていこう、こういう考え方で税制改革関連法案と相まって包括的、一体的に行われることに資するという考え方が基本にあるわけでございます。  したがって、いわゆる税制改革基本法の構想につきましては、政府案の税制改革法案と共通する部分もございます。一つ考え方でございますだけに、敬意を表します。税制改革は現下の喫緊の課題でありますので、まさにそれらの基本法も、せっかく御提出いただけるならば、政府提案の税制改革関連法等とともどもに速やかに十全な御審議を賜りますことを心からお願いをする次第であります。(拍手)  そして、年金生活者の懸念というものにお触れになりました。  確かに新しい税はいろいろな懸念を伴うものであります。今の懸念も、まさに私は一つの懸念であるというふうに考えます。いわゆるこれまでなれ親しんできた制度を改めていく際には国民皆様方の間にいろいろな懸念が生ずる、これは当然なことであると思うのであります。その懸念や不安に十分配慮しながら税体系を構築しておるということを、それこそ審議の中で明らかにしていただければ幸いである、このように考えておる次第であります。  次が、総合課税制度の問題についてかねての御持論をお述べになりました。  個人所得課税は、個人のすべての所得を総合してこれに累進税率を適用することによって、負担能力に応じた負担を求めることを基本とするものでありまして、このような考え方は、基本的には今後とも維持すべきものである、このように考えます。ただ、所得によっては、その性格にかんがみまして、実質的な課税の公平を実現するために、あるいは政策的要請に応じて例外的に総合課税によらない課税方式を採用することも、これまた必要であると考えます。  なお、今回の税制改革におきましては、負担の実質的公平確保を図る観点から、有価証券譲渡益課税の原則課税化、社会保険診療報酬課税の特例の縮減を行う、こういうことにいたしておるところであります。  これまたかねて御持論であります土地増価税についてのお尋ねがありました。  土地の含み益に対する課税は、やはり問題がございます。これを現時点で実施することが適当だというふうには私ども考えません。その一つには、所得課税として考えますと、いわば未実現の資産所得に対する課税であるということが一つございます。二番目には、保有課税として考えますと、現行の固定資産税や特別土地保有税との関連を整理整とんする必要があります。それからもう一つは、企業の生産活動に供されている土地への課税は、土地供給の増大にはつながらず、かえって資本集約的な装置産業を中心といたします企業活動に打撃を与えることになりかねない。このような観点から、絶えずの御持論でございますが、いつもそういうことを詳しくお答えをしておる、こういうことにとどまっておるわけであります。  それから、自然増収の問題にもお触れになりました。  消費税の導入を含む税制改革の緊要性につきましては、るる申し上げました。自然増収問題というのは、六十二年度の税収増の相当部分は、財テクと言われる言葉に象徴されますような株式、土地等の資産取引の活発化や円高差益の発生といった一時的要因によるものであることにも留意する必要があります。そこで、六十三年度の税収動向につきましては、こうした事情がありますほか、予算額の一割に満たない収納状況にある現段階において予測をすることは、これは困難であると言わざるを得ません。  それから、行財政改革に対する熱意いかんということからいろいろお触れになりました。  所信表明、そしてまた六月二十八日に談話を発表いたしました。行財政改革と税制改革は、新しい時代に向かって歩むために必要不可欠のもので、いわば車の両輪である、このように申し上げた次第であります。これまで政府は、昭和五十四年の財政再建に関する国会決議の趣旨に沿いまして、国の支出をできるだけ少なくしながら、また行政改革を進めていきながら、むだを省いて、国鉄の分割・民営、電電、専売の民営化、これらを行ってまいりました。これから一層、地味ではございますけれども、この行財政改革の推進には粘り強く取り組んでいくべきであるといつも申し上げておるところであります。  さて、国有財産の処分等による国債償還にもお触れになりました。  国債の償還財源につきましては、当面行財政改革の成果でありますNTT等の株式の適切な売却に努めることなどによってその確保を図ることとしております。今後とも公債の円滑な償還を図るよう、最大限の工夫をしていかなければなりません。現在、さればとて、公団等はそれぞれ固有の政策的役割を果たしております。したがって、まず国の施策や事業をどのように行っていくのか、また、法人の組織形態の変更がいかなる影響を国民生活に及ぼすか、そういうところからまず幅広い観点から勉強していかなきゃならぬ課題だというふうに思っております。  次には、借金財政の克服についてもお触れになりました。  我が国財政の極めて厳しい状況にかんがみますならば、一日も早く財政の対応力を回復することが必要であることは言うまでもありません。また、今回の税制改革国民理解と協力を得ますためには、行財政が効率的に運営されることが、これはその裏腹としてぜひ必要であります。このため、まずは六十五年度特例公債依存体質脱却、この努力目標の達成に向けて引き続き行財政改革を強力に推進して、そして公債依存度の引き下げ等財政の体質の改善に基本的に取り組んでいかなければならないという考え方は今も同じであります。  それから、衆参両院の定数是正についてお触れになりました。  重要な問題であります。私も、院を構成する一人として、重要な問題であるという問題意識は十分持っております。この問題は、御指摘の議員総定数など、国会の構成にかかわる選挙制度の基本問題であります。したがって、いろいろ考えました。まず各党間で十分論議を尽くしていただく、これがやっぱり一番基本にあるところではなかろうか。そして、政府としてもその論議を踏まえて努力する、こういう基本的考えを持っておることを重ねて申し上げておきます。  さて、外交問題にお触れになりました。  イラン・イラク紛争、これは終結に向けて現在国連事務総長による調停努力が行われておりますが、我が国としてはこの事務総長の努力を全面的に支援してまいります。したがって、いろいろな段階で、何ができるか、可能な限りの協力を行ってまいります。そうして、重ねて申し上げますように、両国に対して政治対話のパイプを有する数少ない先進国でございます。それらの立場を生かしながら、和平実現へ努力をする所存であります。  それから、国際開発協力基本法、前々からの御議論でございます。  我が国経済協力の実施体制は、全体として順調に機能しております。開発途上国からも高い評価を受けておるというふうにも思います。しかし、私どもがかねて申しますように、今後は、量のみならず、御指摘の質的改善、こういうことを念頭に置きながら現行体制の運用面での改善を尽くしていくべきである、このように考えております。  さらに、貿易保険特会へお触れになりました。  御指摘のとおりであります。貿易保険特別会計の財政基盤の充実、これにつきましては、発展途上国からの債務繰り延べ要請の多発によって収支が悪化しておるという現状等を勘案しながら、これは総合的に検討していこう、こういう考え方の上に立っておるわけであります。  次に、フィリピン、アフガン問題についてお触れになりました。  我が国は、相互依存と人道的考慮という基本的考え方に基づきまして、開発途上国の経済社会開発、民生の安定、福祉の向上に貢献することを目的として経済協力を実施いたしております。したがって、軍事的な面は考えたこともございません。フィリピンに対する経済協力につきましても、アキノ大統領のリーダーシップのもとでフィリピン政府、国民が進めておる新たなる国づくり努力支援するとの基本方針のもとに行っていくわけでございます。アフガニスタンの問題につきましては、当面は、人道的観点からアフガンの難民の帰還支援のため国連等を通じ積極的に協力をしていく、こういう考え方であります。  日ソ関係に言及されました。  最近の日ソ関係は、貿易経済、漁業、文化等の実務関係の諸分野では着実に進展しております。むしろ北方領土問題のみが進展を見ていないというのが実情であると言わざるを得ません。我が国としては、実務関係については今後とも可能な範囲で互恵ベースで努める考えでございますが、真の相互理解に基づく安定した日ソ関係を確立するためには、北方領土問題を解決して平和条約を締結することが不可欠だ、この考え方の上に立ちまして、ソ連のダイナミックな政策展開が対日政策にも及ぶことを心から期待をいたしておるところであります。  日中関係の評価と展望についてのお尋ねでございます。  日中両国の関係は、政治経済文化等の各分野において着実な発展を遂げてきております。良好かつ長期的、安定的な日中関係の存在は、単に両国のみならず、アジア、ひいては世界の平和のために大いに寄与しておると考えます。ことしは日中平和友好条約締結十周年に当たる、記念すべき年であります。国会の御理解を得て、今月末には私も訪中し、中国側指導者との間の率直な意見交換を通じて、両国関係発展のため一層の基盤強化を図る考え方であります。今後とも、日中共同声明、日中平和友好条約、日中関係四原則に基づいて、各分野にわたる友好協力関係発展のため尽力してまいる所存であります。  ソウル・オリンピックの問題でございます。  ソウル・オリンピックが世界の大多数の国の参加のもとに成功裏に開催されて、朝鮮半島の緊張緩和に資することになること、これも私は同じように大変期待しておるところであります。したがって、この成功は我が国にとっても極めて重要でありますので、最大限の協力をしていこう。先般、トロント・サミットにおきましても、ソウル・オリンピック成功へのお話を私からいろいろ申し上げたゆえんのものもそこにあるわけであります。  牛肉・かんきつ交渉の決着でございますが、佐藤農林水産大臣を初めとする関係者が米側と粘り強い交渉を行って、最終的には日米間の共同作業で決着を見たところであります。  我が国といたしましては、厳しい世論、我が国の置かれておる国際的立場等を考慮して、国境措置と国内対策を講じることによって生産の存立を守り得るとの判断に立って決断をしたものでございます。したがって、これら自由化関連対策ということになりますと、これは今後厳しい条件のもとで牛肉・かんきつ生産の存立を守って、その体質強化を図っていくとの基本的考え方にのっとりまして、所要の国内措置について最大限の努力を傾注してまいる考え方であります。  具体的にも、牛肉につきましては、国内肉用牛生産の振興合理化を推進いたしますために、肉用子牛の価格安定等に関する立法措置などについて検討いたしますとともに、当面懸念されます価格変動等に対処するための緊急対策について、ただいままさに鋭意検討を進めておるという段階であります。かんきつにつきましても、品質及び生産性の向上を通じ体質強化に努めますとともに、当面の需給、価格の安定等を図るため、具体的措置を鋭意検討中であります。  そして、農業の位置づけについてお触れになりました。  農業の役割は、食糧の安定供給を初め、活力ある地域社会の維持、国土・自然環境の保全等、極めて重要であります。現在、いわゆる東京一極集中を抑制し、その機能を地方へ分散して国土の均衡ある発展を図ることが要請されております中で、農業、なかんずく農村、この言葉に象徴される地域の有する役割、機能はこれまで以上に大きなものとなっておると考えます。このため、農政審議会報告を踏まえまして、構造政策を推進して、国民の納得し得る価格での食糧安定供給を進め、農業の振興を図りますとともに、農村社会の多様な構成員の間における適切な役割分担等を通じて所得機会の確保及び農村社会の活性化を図る所存であります。  鉄道共済への緊急な問題だとしての御発言がございました。  この問題は、大蔵大臣、運輸大臣、年金問題担当大臣、内閣官房長官、この四閣僚によって閣僚懇で検討しておりますが、現在、この問題の検討に資するために、鉄道共済年金問題懇談会を開催して御議論をいただいております。本年秋ごろまでをめどに御意見をまとめていただきまして、それを踏まえて適切に対応しようという基本的考え方でございます。そうなれば、当然そこに鉄道共済年金問題の具体的対応策についての一元化問題が議論されてまいります。現在、有識者による懇談会において、御指摘のような点も踏まえて多角的に御議論をいただいておるところでございますので、この懇談会の御意見等を踏まえながら具体的に策定していきたい。当然、公的年金一元化問題も念頭に置いて御議論をいただいておるというふうにお考えいただければと思います。  それから、消費税の導入を撤回せよ、こういうことでございました。  せっかく国会で各党の御議論を昭和五十三年以来たびたび繰り広げていただきまして、それらのことに基づいて、昨年私が政府税調に諮問して得た案を、各党、なかんずく自由民主党の税制調査会において念には念を入れて議論されたこの原案であります。撤回する考えはございません。(拍手)  それから、リクルート問題について、徹底審議、証人喚問等についての御議論がなされました。  この問題につきましては、これは企業の発展過程におきましていろいろな問題がございます。しかし、この問題が予算委員会で審議される、あるいは証人喚問問題ということになりますと、これはまさに国会でお決めになることでございますので、今、行政府の立場としての私からは、それについては言及を差し控えたいと思います。  最後に、日中関係の評価と展望ということについて、重ねて申し上げますが、お許しをいただけるならば私も訪中をいたしまして、忌憚のない意見の交換をし、日中友好の一層の前進に資したい、このように思っておるところでございます。  以上でお答えを終わります。(拍手)      ────◇─────
  19. 自見庄三郎

    ○自見庄三郎君 国務大臣演説に対する残余の質疑は延期し、明二日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。
  20. 多賀谷真稔

    ○副議長(多賀谷真稔君) 自見庄三郎君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 多賀谷真稔

    ○副議長(多賀谷真稔君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決しました。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時十一分散会