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佐藤(徳)
委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、
教育職員免許法等の一部を
改正する
法律案に反対の立場から討論を行います。
まず、討論するに当たり、
教育職員免許法の根幹にかかわる基本的な事柄について申し上げます。
教育職員免許法は、戦後初期の民主的改革の一環として一九四九年に制定をされたものであります。戦前の
師範学校を中心とする閉鎖的
教員養成制度を否定し、
大学における
教員養成、
開放制免許主義、教職の
専門職制と
現職教育の重視などを原理として成立したものであります。それが、戦後の
教育の発展、とりわけ教師の力量形成や連帯の強化に果たした役割は極めて大きかったと言えるでありましょう。したがって、
学問の自由と
大学の
自治を根幹に据えた
大学で
教員を
養成するという戦後の
教員養成制度改革の
理念をなし崩しにしてはならないということであります。
開放制の
原則は、広く一般
大学の卒業者にも教職への道を開くものとしたものであります。教科の専門性や
指導技術にのみ偏った画一的な
教員であるべきではなく、幅広い教養と広い視野を身につけていることが期待されていたからであります。
しかるに本法案は、
教育職員免許状を三
種類に
種別化し、
階層化し、その
修得単位数を引き上げることによって、戦後長年にわたって続けられてきた
開放制の
原則を踏みにじるものになっていることは厳しく指摘をしておかなければなりません。
偏差値の輪切りによる受験競争の激化によって、知識偏重
教育の中に子供たちは押し流され、さらには、いじめや非行等が
教育荒廃に拍車をかける結果を引き起こしてきたのであります。こうした問題を断ち切るためにも、
教育基本法が求める人格の完成へと子供たちを導くことこそが改めて大切になってきているのであります。教師間の相互連帯とたゆみない自己
研修の積み上げは、毎日の授業や生活
指導に必ず生かされます。そして、子供たちが持っている無限の可能性を引き出してやることが
教育なのではないでしょうか。それは
免許状の
種類によって変わるものではないのであります。それだけに
開放制の
原則はますます重要視されなければなりません。
本法案は、
免許状を三
種類化し、教職科目の
単位数をふやすことにしております。このため、
専修免許状は極めて限られた
教員養成機関でしか
取得できません。
単位修得に対応できるのは、国立の
教員養成専門の
大学院ですら二十九
大学院に限られることは、
文部省も
委員会答弁で認めたところであります。これでは、私立
大学に至ってはその
単位修得は絶望的と言っても過言ではないでしょう。これまた
開放制の
原則に反することは明らかであります。
次に、
免許状の
種別化は
教員の格付になり、
教員を
学歴で判断することになりかねないという点であります。
免許状の
階層化は、教師の
単位取りや
進学、昇進志向をあおり、正常な
研修、研究による教師の力量形成の努力を妨げ、教師の日常不断の努力に対する評価を誤らせることになってしまいます。
本法案は、上級
免許状の
取得を義務づけております。問題はその内容と方法であります。現行法では十五年間を問題なく勤め上げた二級
免許状所持者には無条件で
一級免許状が授与されていましたが、
改正案では十五年間に所定の
単位を
修得しないと
経験年数による評価はゼロにされてしまうのであります。このことは
教育の
現場主義を否定し、
教育経験を軽視するものであります。既に触れましたように、教師にとって重要なことは、教科
指導や生活
指導を通して子供たちと真剣に取り組むことであり、そのために必要な研さんを積むことであります。まさに
教育現場を無視したやり方と言わなければなりません。
さらに上級
免許状を
取得するために
大学や
大学院で
単位を
修得しなければなりませんが、教師の自発的意思で自由に通学できることにはなっておりません。入学には
任命権者の推薦が必要であり、入学先も
任命権者によって制約されることは
委員会審議でも明らかになっております。上級
免許状の
取得義務が教師の差別と選別に利用され、教師が子供たちの
指導に情熱を持つ以上に
任命権者の顔色をうかがうことになります。これでは到底まともな
教育は行い得ないのであります。
次に、
特別免許状の問題であります。社会で活躍する人々の協力を得て学校
教育を運営することは極めて有意義であると思います。しかし、そのことは
社会人に簡単な
単位数で
免許状を与えるということではないはずであります。一方で教職
単位を引き上げなければ
教育の専門職として不十分であり、初任者
研修をも義務づけるとし、他方では
教育の素人に
免許状を出すとする
文部省の論理は、明らかな矛盾であります。
最後に指摘したいことは、本法案の提案に当たって
文部省が
関係者からの
意見を余り聞いていないということであります。少なくとも
教職員団体や
教員養成に当たっている
大学の
関係者の
意見を聞くことは当然のことであります。このまま本法案が成立することになれば、教職
単位を認定している一般
大学はそのカリキュラム編成を変えなければなりません。しかし、一般
大学は
教員養成のみを目的としていないだけに、その対応は容易ではありません。私立
大学では事実上、
教員免許状が
取得できなくなることさえ考えられるのであります。
憲法と
教育基本法に基づく豊かな
教育を進めるためにも、本法案は内容面でも手続面でも問題が多過ぎるものであり、断じて認めるわけにはいかないのであります。
最後に申し上げなければならないのは、リクルートの問題であります。
昨日の新聞、テレビ等で
報道され、既に明らかになったように、
文部省の
高石前
事務次官がリクルート社から公開前に一万株を譲渡されていたという問題であります。このことは、
教育関係者から出たというだけに極めて重大な問題であります。しかも、
文部大臣は、本
委員会の席で我が党
委員の追及に対し、ないと言い切ったことは明らかに覆ったばがりではなく、その責任もまた重大だと言わなければなりません。元
文部大臣もリクルートに
関係しており、今度の前
事務次官らの
行為はまさに許されない
行為と言わなければなりません。証人喚問を含めて、
徹底的な究明を求めるものであります。
本法案の撤回を要求いたしまして、反対討論を終わります。(拍手)