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1988-10-19 第113回国会 衆議院 文教委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十月十九日(水曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 中村  靖君    理事 愛知 和男君 理事 岸田 文武君    理事 北川 正恭君 理事 鳩山 邦夫君    理事 町村 信孝君 理事 佐藤 徳雄君    理事 鍛冶  清君 理事 林  保夫君       逢沢 一郎君    青木 正久君       井出 正一君    石破  茂君       石渡 照久君    工藤  巌君       佐藤 敬夫君    斉藤斗志二君       杉浦 正健君    谷川 和穗君       渡海紀三朗君    前田 武志君       江田 五月君    嶋崎  譲君       中西 績介君    馬場  昇君       橋本 文彦君    山田 英介君       北橋 健治君    石井 郁子君       山原健二郎君    田川 誠一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 中島源太郎君  出席政府委員         文部政務次官  船田  元君         文部大臣官房長 加戸 守行君         文部省初等中等         教育局長    古村 澄一君         文部省教育助成         局長      倉地 克次君         文部省高等教育         局長      國分 正明君         文部省高等教育         局私学部長   野崎  弘君         文部省学術国際         局長      川村 恒明君         文部省体育局長 坂元 弘直君  委員外出席者         文教委員会調査         室長      松原 莊穎君     ───────────── 委員の異動 十月十九日  辞任         補欠選任   渡海紀三朗君     石破  茂君   松田 岩夫君     前田 武志君   有島 重武君     山田 英介君   市川 雄一君     橋本 文彦君 同日  辞任         補欠選任   石破  茂君     渡海紀三朗君   前田 武志君     松田 岩夫君   橋本 文彦君     市川 雄一君   山田 英介君     有島 重武君     ───────────── 十月十九日  臨教審関連法案反対教育条件整備に関する請願(石井郁子紹介)(第一七二四号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第一七二五号)  同(金子満広紹介)(第一七二六号)  同(経塚幸夫紹介)(第一七二七号)  同(工藤晃紹介)(第一七二八号)  同(野間友一紹介)(第一七二九号)  同(藤田スミ紹介)(第一七三〇号)  同(正森成二君紹介)(第一七三一号)  同(松本善明紹介)(第一七三二号)  同(村上弘紹介)(第一七三三号)  同(山原健二郎紹介)(第一七三四号)  同(河上民雄紹介)(第一七七四号)  同(新村勝雄紹介)(第一七七五号)  同(土井たか子紹介)(第一八一六号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  学校教育法の一部を改正する法律案内閣提出、第百十二回国会閣法第三九号)  文教行政基本施策に関する件      ────◇─────
  2. 中村靖

    中村委員長 これより会議を開きます。  第百十二回国会内閣提出学校教育法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林保夫君。
  3. 林保夫

    ○林(保)委員 中島文部大臣初め皆様御苦労さまでございます。きょうは、学校教育法の一部を改正する法律案につきまして、それと関連する問題も少々触れまして質問さしていただきたいと思います。  縁起を担ぐわけでもございませんが、きょうはとりわけ一年前のブラックマンデー、竹下内閣もそうでございましたか、ちょうど大臣も一年、こういうことでございます。天皇陛下の御不例も一カ月になるかと思いますが、一般質問ではございませんので、その辺は配慮いたしながらも、なおひとつ大臣の御決意を含めましての御答弁を改めてお願いしながら、今回提出されております学校教育法の一部を改正する法律案、久しくたなざらしになっておりましただけにじっくり読ましていただきました。そしてまた、皆さんの御意見も聞きました。そして、陳情もまたたくさん来ております。もう来年四月を待ち切れないんだ、こういうようなことでございます。  もう今十一月に近づいております。これで私どもははっきりと賛成いたしますが、通りましてからなお時間がございませんので、いろんな対応を現場ではやらなければならなくなっていると思います。ついては、そういった視点も踏まえて、事務局の方からこれもある、あれもあるという形、こうしなきゃならぬということがございましたら、私の足らざる質問をひとつ補っていただきたい、このことを冒頭特にお願いしておきたいと存じます。  まず第一に、私ども臨教審答申、昨年でございましたがございまして以来、教育改革は進めなければならない、これが国として、国民としての課題であるという視点でいろいろやってきており、また御提起も内閣の方からあっているわけでございますが、これについて大臣、今先ほど申し上げましたような、一年を踏まえましてどういう御感想をお持ちなのか。私どもからいたしますと、ポスト臨教審もまだああいう状態でございますね、上がっていない。ということは、何かこう大変停滞をし、しかも教育改革はもう言うならば前国会で済んだということを言う人もおるような雰囲気になっておるんじゃないかということを危惧するわけでございますが、その辺、担当の大臣としてどういう決意をお持ちで、そしてまたどうそれを推進されようとしておるのかをまずひとつ承りたいと存じます。
  4. 中島源太郎

    中島国務大臣 林先生から教育全般について御提言がございました。振り返りましてこの一年、特にことしは教育改革本格実施第一年目というように位置づけられた年でございまして、特に百十二国会では八法案を用意をいたしまして御審議お願いいたしたところでございます。そういう中で皆様方委員の御理解を得まして、初任者研修を初めといたしまして着実に御理解を得てまいりまして大変ありがたいことであると思っておりますが、しかし、法案の数で申し上げるわけではございませんが、教育改革のこれからなさなければならない提出法案の御審議もまだまだこれからお願いをいたさなければならない点が多々ございます。ぜひこれを御審議を進めていただきたいといちずにお願いをする次第でございます。  また、一方におきまして、特にことし、文部省は、教育改革推進大綱の第一に挙げられました生涯学習の面におきまして、この七月には生涯学習局を発足をさせていただきました。そして、生涯にわたった学習という観点から学ぶことを考えるべきであるということはこの一年で相当御理解を得つつある、こう考えておるわけでございます。その中で、学校教育というものは生涯学習の中の重要な基礎部分である、したがって、これから学ぶ青少年はまさに時期的にもちょうど二十一世紀を目指して学んでいただくわけでありますけれども、新しい時代はどういう時代であろうか、前にも林先生からも御質問いただいたわけでございます。二十一世紀に向けまして既に社会そのもの成熟度を増しております。多様化個性化国際化に向かっておるわけでありまして、その社会変化にみずから対応できるような青少年を育てますためには、教育あり方自体がやはり生涯学習という観点をしっかり踏まえていくべきであろう。おかげさまで生涯学習という観点は徐々に着実に定着をさせていただいておるのではないか、こう思っておるわけでございます。  さらに付言をさせていただければ、きょうの御質問に供しております学教法改正も、まさに今までの勤労学生の方々に対するあり方、それから履修の多様化に対するあり方、と同時にもう一つ、やはり生涯学習という観点を踏まえまして四十五条の二、四十六条の改定をお願いいたしておるところでございます。  一年を振り返りまして、ぜひこれからも着実に進めてまいりたいと思っておりますので、御指導、御協力をお願いいたしたいと思います。
  5. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣から格別なお言葉で生涯学習の問題を提起されましたが、まさにおっしゃられるように、これは学校教育ばかりではなくて、全体的な、国民的な、民族的な視点からもやはり大事になってきていると思います。そういった中で、いろいろ問題はあろうけれども、今回御提案になりました学校教育法改正などは、これはやられるべきことですので、早くやってあげるということがやはり非常に大事だ、このように私どもははっきりした立場を持って御質問申し上げている次第でございます。  そういったことで、原則論に振り返りますけれども高等学校教育に係る制度弾力化ということが臨教審の第二次答申、そしてまた今回の改正案はまさにそのことでございますが、高等学校教育について、私どもはどのような認識をしておいたらいいのか。特に、生徒の多様なニーズ社会的な変化への対応ということがございますので、事務当局の方からひとつ現状を御説明お願いいたしたいと存じます。
  6. 古村澄一

    古村政府委員 高等学校教育も戦後四十年を経たわけでございますが、現在九四%の進学率を示しているということは、もうほとんど全体の者が入っているということになりますと、これについては子供のいわゆる能力あるいは適性、いろいろな考え方、さまざまな子供が入っている、多様化しているというふうに言われようかと思います。と同時に、片方学校状況を見ますと、普通高校職業高校という二つの学校が典型的にあるわけでございますが、普通高校というのはまさに大学進学の予備学校的になっているのではないかというふうなことを言われますし、職業高校につきましても、果たして社会ニーズにこたえている学校であろうかというふうな批判もあるわけでございます。そういうことから考えますと、今後やはり今おっしゃいましたように、高等学校教育弾力化ということを考えますときに、今の高等学校普通高校職業高校、それぞれのあり方がいいのかどうかということは十分検討すべき問題だろうというふうに思います。  そこで、七月に高等学校個性化に関する調査研究会議というものを学識経験者お願いいたしまして発足いたしました。そこにおきましては、高等学校全体について今後のあり得べき姿というものをひとつ十分えぐり出していただきたいという願いを込めてそういった会議お願いいたしましたので、そこで十分御審議お願いしたいというふうに思っておるわけでございます。
  7. 林保夫

    ○林(保)委員 それで、古村局長さんが戦後四十年で高校教育がもう完全に定着した、私も同じ思いでございます。そういった中で、戦後顧みますと、昭和二十年、終戦に始まりまして、私どもが知っておりますデータによりますと、たしか進学率は四割台であった、それがだんだん上がって、ただいまお話しの九四%まで上がった、これはすばらしいことだと思うのです。  しかし、これは日本だけではなくて、国際的にも今、近隣諸国、そして低開発国発展途上国あるいはNIESを含めまして、おくれているという評価を得ているところほど進学率が高くなってきているという現状を踏まえますと、一〇〇%いくことはともかくといたしまして、必ずしもベストだとは言い切れない。問題は内容にあると思いますが、本日取り上げておりますところの定通制学校、この戦後の学校数及び生徒数について大体どういった傾向があるのか、御説明願いたいと存じます。
  8. 古村澄一

    古村政府委員 定時制高校が発足いたしまして、二十五年から発足してまいっておりますが、生徒数状況を見ますと、二十五年で定時制で四十万人の子供がおりました。そしてピーク昭和二十八年の五十六万人という生徒数でございます。現在は、六十二年度においては十四万八千人ということで徐々に減ってまいっております。片方通信制を見ますと、これは昭和四十五、六年以降余り変動はございません。昭和六十二年度においてこれも十四万八千人ぐらいの子供がおりますが、これについては減っていくという状況が顕著には見られていないというふうに思います。  そこで、結局それがどういうことかということを考えますときに、片方高等学校進学率がどんどん上がりながら定時制の実数が減っているということは、その分だけ全日制の方に進学が回っているんだろうというふうに思うわけでございます。このことは結局いろいろな形で、日本におきます経済状態でありますとかそういった社会状態が変わってまいりましたので、そういった全日制へ行く子供がふえてきたということが定時制子供が減っていったということにつながったのではないかというふうに思っております。
  9. 林保夫

    ○林(保)委員 ついで学校の数はどうなっているかも概況お伝えいただきたいのでございますが。
  10. 古村澄一

    古村政府委員 学校の数から申し上げますと、本校、分校という区分けがございますが、これをあわせて学校というふうに押さえて考えますと、定時制高等学校については、昭和二十五年には二千九百五十校でございましたが、いわゆる子供が一番ピークになったと申し上げました昭和二十八年には三千百九十校でございます。その後、三十年代に大体二千校台を維持しながら、それでも学校数はずっと減ってまいりまして、六十二年には一千二十四校というふうに相なっております。それから通信制課程におきましては学校の数は余り変わっていない。現在、六十二年におきまして八十六校でございますが、学校そのものの数はそんなに変わっていないというのが現状でございます。
  11. 林保夫

    ○林(保)委員 それで、これを実際に受験し入学する、そういうチャンスという点から見まして、各都道府県別に見た場合、文部省がごらんになってアンバランスがあるのかないのかという点と、それからついで一つ勤労学生を対象としたものとしてこの制度終戦直後に発足したと私は思います。しかし、なお世間で言われているように、今、全日制の落ちこぼれとかあるいは中退者がかなり入っているということも言われておりますし、統計上も出ていると思いますが、その辺の実態についてどういう御認識を持っておられるのか、数字がわかりますれば、その辺も一緒にお答えいただけたらと思います。
  12. 古村澄一

    古村政府委員 先ほどの定時制高校あるいは通信制高校の全体的な現状で、各都道府県でいわゆるアンバランスがあるのかどうかというお話でございますが、私ども認識では、それについては各県軒並み大体同じような傾向になっているだろうというふうに思います。  そこで、もう一点のいわゆる勤労青少年でない子供定時制通信制に行っている者の数ということで私どもの方で調べました結果、定時制高校におきます有職者は七八%ぐらい。ですから残りの二二%が無職者ということでございます。それから、通信制におきましてもまさに同じ数字でございまして、有職者の数が七八%、無職者の数が二二%ということで、いわゆる勤労青少年ではない二二%の子供定時制通信制に行っていると認識いたしております。
  13. 林保夫

    ○林(保)委員 それから、全日制から定時制へ編入してくる生徒がどのくらいおるのかということと、定時制高校から中退する生徒も当然おるわけですが、ついでにその辺の御説明をお願いいたしたいと存じます。
  14. 古村澄一

    古村政府委員 定時制通信制課程への全日制からの編入の数は、年間四千人ぐらいの者が全日制から定通の方へ編入していくというのが現状でございます。  もう一点、中途退学者の数で申し上げますと、定時制生徒のうち中途退学をいたしておりますのは六十一年で二万三千八百七十九人という数字を持っております。在籍者との比率で見ますと、この数字は一六%という高い比率でございます。ちなみに全日制中途退学者の数が九万人ということで、在籍者に比べますと一・八%のドロップという現状でございます。
  15. 林保夫

    ○林(保)委員 今おっしゃいました全日制の一・八%のドロップ定時制の一六%のドロップ、これの行く先はどうなっているのでしょうか、もうやめたということになるのでしょうか。  あと一つ古村局長にお聞きしたいのは、こういう傾向がこれから一九九〇年代あるいは二十一世紀にどのようにつながっていくとお見通しになっておられるのか。このことが今回の制度改正及び生涯教育あるいは高等教育弾力化とかに非常に関係すると思いますので、統計がなければこんな感じだということでも結構でございますが、認識をお示しいただきたいと存じます。
  16. 古村澄一

    古村政府委員 中途退学者についての追跡調査は、定時制については資料がございませんが、全日制資料はございます。  全日制資料で答えさせていただきますと、ドロップした後もう一回学校に行っているという者が二二・四%、それは仕事をしながら学校へ行く、あるいはもう一回学校に入り直すというふうな現状でございます。  そこで、こういった傾向が今後どういうふうにつながっていくのかということでございますが、これから後ずっと見ていったときに、日本社会構造経済構造がもっともっと進展するとすれば、定時制通信制子供はもっとふえるということは予測しにくいのではないか、現実に減っていくのではないかと思います。しかしながら、私たちといたしましては、少なくとも勤労青少年学校に通うということは奨励すべきことでありますし、そういった形がある以上、それについてはより奨励措置をとっていくというスタンスには変わりがございません。だから、それについては各都道府県が具体的にどういうふうにやっていくかということが基本になりますけれども文部省としては、そういった勤労青少年がより就学しやすい状況を醸し出していくことについて今後も努力していくべき問題だろうと思うわけでございます。
  17. 林保夫

    ○林(保)委員 今おっしゃられたように、本当にまじめに働きながらなお学ぶという人に対するチャンスは、経済効果あるいは資金効率といったような問題を離れてでもやっていかなければならぬ問題でございますので、局長さんのお話、そのとおりで結構だと思うのでございます。  ただ、政治、行政立場から見ますと、今定時制通信制とも十四万ずつの数字になっておりますが、これがふえるのでしょうか、減るのでしょうかという問題。今度の法改正によって修業年限弾力化があるし、これからいくと意欲さえ持てば早く卒業できるというようなこともございますので変わってくると思いますが、その辺のお見通しをどのようにしておられるかを承りたいと存じます。
  18. 古村澄一

    古村政府委員 先般、この法案を提案いたしますためにも、今定時制通信制に通っています子供意向調査というものを学校を通じてお願いいたしました。  そのいろいろな学校から上がってきました調査票の中を見ますと、なるべく早く学校卒業してきちっと職に専念したい、そういった意見が多いということを見ますと、四年を三年にという道を開いて無理なく卒業ができる、三年で卒業ができるということであれば、そこへ向かってくる子供意欲というのはもっとふえるだろうと思うわけでございます。
  19. 林保夫

    ○林(保)委員 十四万が幾らになるかという数字は出ないと思いますが、私ども実際問題として考えまして、四年よりも三年で卒業できればなおいいのだということで学業への意欲がわくこともまた事実だと思いますが、問題は教育内容、教師の資質、そしてまた教科の組み方、いろいろあろうかと思います。  それはそれといたしまして、今回の改正によって四年の修業年限が三年以上となっておりますね。そうすると、各学校によって選択的に四年も当然あり得るし、もっと長いのもあるのでしょうか。今おっしゃられた千二十四校のうち即座に三年で対応できるというのですか、無理してでもやるといいますか、それはどの程度見込まれるとお考えになっておられるのでしょうか。当然のこととして、職業などを中心に教える学校ですと職種によってかなり違うと思いますけれども、その辺のところも御見当がついておるならばお話しいただきたいと思います。
  20. 古村澄一

    古村政府委員 私たちが調査いたしております数字で見ますと、高等学校は三年間で八十単位以上を取得することが卒業の要件でございます。そこで、多くの学校は、今は四年以上となっておりますから無理して三年で八十単位というふうなカリキュラムを組まないで、四年間で八十単位というものですから三年間での単位数は余裕を持ってやっておりますが、その現在の状況で見ましても、七十単位以上の単位を履修可能な学校という数で見ていきますと、定時制普通科で六十校、それから定時制職業科で九十校、通信制普通科で十校、職業科で十四校というのが、現在でも七十単位以上、既に三年間で八十単位とっている学校もございますけれども、この数の学校は大体そう無理なく三年間で八十単位を取り得る学校だろうというふうに思っております。
  21. 林保夫

    ○林(保)委員 それで、可能性があるということであれば少しでも目を開くことは結構ですが、もう一つ、私ども外立場から見まして、一つ学校の中で修業年限を三年と四年とするということは可能なんでしょうか。あるいは、最終的には教育委員会がそのことを認めるかどうかになるのだと思いますが、その辺の手続なり決定の手法はどうなるのか、この際ひとつ教えていただきたいと思います。
  22. 古村澄一

    古村政府委員 当該学校におきます修業年限をどう決めるかというのは、いろいろな学校の御意見、それから学校状況等を踏まえて教育委員会設置者として最終的に決めることだろうというふうに思います。  そこで、おっしゃいますように一つ学校で三年コース、四年コースというものはできるのかということでございますが、これは三年のカリキュラムを組むコースとそれから四年のカリキュラムを組むコース一つ学校で置くことは何ら差し支えないというふうに考えるわけでございます。
  23. 林保夫

    ○林(保)委員 ついては、そういうふうに三年以上ということになりますと、延びるよりは短くなるとすると、教育内容の問題がいろいろと心配されもし、懸念もされるわけですが、いわゆる技能連携という形での技能教育施設指定、そしてそれとの連携というのが非常に大事になってくるだろうと私は思いまして、実は指定技能教育施設一覧表を要求いたしまして、ただいま手元へ見せてもらっております。この実情をどのように認識され、それとの連携をこれからどのようにしていかれようとするのか、文部省なりの方針をお聞かせいただきたいと思います。
  24. 古村澄一

    古村政府委員 申すまでもなく、技能連携制度昭和三十六年に創設いたしました制度でございまして、勤労青少年学校技能教育施設で同じような教育を重複して受けるということはむだであろう、二重負担を軽減するためにも、特に働きながら学びます青少年高等学校における学習を効果的に行うということからすれば、技能教育施設で受けた教育学校単位としてみなすという制度の方が実際的だろうということで創設されたものでございます。  そこで、現実実態といたしましては、指定技能教育施設というのは全部で三百二十五施設ございます。その中で、いわゆる指定技能教育施設種類別に申し上げますと、専修学校各種学校範疇に入りますのが百五十四施設でございます。それから職業訓練所の中に入りますのが六十七施設、それから准看護婦養成所範疇に入りますのが百二施設、農業大学校高等科という範疇に入りますのが二施設ということで、総体が三百二十五施設でございます。専修各種学校の中で一番多いのは家庭科系連携教育をするところということになっております。  現在、そういった職業に関する教科連携ということでやっておりますけれども、今後この連携する教科をどう考えるかということに相なりますと、私たちは、片方高等学校基本というものを、高等学校生徒でございますから基本については高等学校教育でしっかりやる。しかしながら、社会にはいろいろな教育施設がございます。ということになりますと、例えば音楽でありますとか美術でありますとか、そういったものは専修学校各種学校によりよき、すばらしき施設があるとすれば、そことの連携というものを考えてしかるべきではないか。  現在は職業に関する教科ということでくくっておりますけれども、将来はそういったところまで延ばしていいのではないかということ。これはちょっと粗いですが、将来の発展のお話でございますけれども、そういうふうに教科を広げていく。と同時に、技能教育施設指定の権限を現在提案しておりますように文部大臣から都道府県教育委員会におろすということになりますと、都道府県教育委員会は自分の県の中のことですからいろいろな施設について情報も入りますし目配りができます。そういった点で、よりきめ細かい学校とそういったものとの間の仲介役を都道府県教育委員会に対して期待できるというふうに思いますと、勤労青少年単位の取りやすさというものをより発展的にできるのではないかと考えるわけでございます。
  25. 林保夫

    ○林(保)委員 このリストを拝見いたしますと、非常に多いところと少ないところがございますね。これは今局長がおっしゃったように、出してきたものについての指定をやるわけだろうと思いますので、こちらから指定するわけじゃないと思いますので、こういう結果にもなっているんだと思うのです。例えば北海道ですと八つ、青森県は三つ、岩手県に至りましては十七ですか。私の地元もかなり少のうございます。そういうアンバランスを今度の法改正によって、必要に応じてやる、こういうことになるんだろうと思いますが、二つお聞きしたいのです。  こういうふうに指定になった指定技能教育施設が今まで本当に有効に活用されてきたのかどうか。これから教育委員会指定するとすれば、今度の定通制三年以上という制度と関連してどういう視点に注意を払いながら都道府県教育委員会指定していくべきか、文部省としてはその辺のところをどのようにお考えになっておられますでしょうか。
  26. 古村澄一

    古村政府委員 指定技能教育施設が今まで果たしてきたことについては評価すべきものがあるというふうに私は思っております。と同時に、現実問題として、指定技能教育施設のところに先生が巡回に行ったり、いろいろなことで学校として技能教育施設との接触というものを非常に強めているというのが現状でございまして、指定技能教育施設でやっておけばそれで学校は知らぬ、向こうでやった単位はこっちで自動的に認定するということではないというのが現実学校あり方だろうというふうに思います。  したがって、こういった点で今後なるべく子供の二重の学習負担をなくしていくという観点から見ますれば、県によって先ほど申し上げましたようにいわゆるアンバランスが非常にある、ある県では三つの施設しかない、ある県では十を超える施設があるということについては、都道府県教育委員会指定権限を持つことによっていろいろな子供状況を見ながら施設との連携というものを積極的に考えていくことになるだろうというふうに思います。それはもちろん指定技能教育施設側の申請というものが必要でございますけれども、そういったことについてよりよきアドバイスをしてもらって、そしてそのことについて教育委員会としても指定技能教育施設学校との結びつきがしっかりといくように積極的に指導をしていただけるように私たちは期待をしておるわけでございます。
  27. 林保夫

    ○林(保)委員 お説のとおりだと思います。  それで、一番卑近なところをいいますと、私どもの岡山県ですけれども、三つのところもあるというのじゃなくて、岡山は二つしかないのですね。しかも岡山看護専門学校と倉敷看護高等専修学校で、いわゆる医療系統のものでございますね。隣りの広島を見ますと、広島県立呉高等技術専門校、同じく県立の福山高等技術専門校、広島市医師会看護専門学校、広島計理専門学校、広島加計ビジネス高等専修学校、こういうふうにございます。それから隣りの山口を見ますと、准看学校、看護婦の学校が多くて、一つだけ文化服装専門学校がある。それから四国へ渡りますと日清紡、東洋紡、それからさらには倉敷紡績とか、まあいわゆる産業面に直接関係しておるところがある。  こういうようなことでございますが、古村局長、モデル県といったらこの中でどの辺のところになるのでしょうか。これからいろいろ対策を考えられての指導もされるのだろうと思いますが、これを見て各県非常にばらばらだという印象、これは必ずしも文部省の責任じゃなくて、下から上がってきたのを指定するわけですから責めるわけではないのですが、これからの問題としてどのようにお考えになっておられるかを承りたいと思います。
  28. 古村澄一

    古村政府委員 おっしゃいますとおり各県にばらばらでありますということは、各県におきます施設を持っている施設管理者側の考え方、それから高等学校側の考え方というものもそれぞれあるということからくるんだろうと思いますが、もう一つ、やはり先ほど御指摘になりました企業内の職業訓練所を持っておりますところは、そこの子供がある程度数多く一つ学校に行っているとか定通に行っているというような実態があるからそこの学校との結びつきができたのだろうと思うわけでございまして、具体的にどの県が模範的だろうかと言われてもなかなか私も判断いたしかねますけれども、やはりこういったたくさんの施設とある程度連携を結んでいるところについては、そのことによって子供は非常に二重負担がなくなっているわけですから、それについてその県の教育関係者がかなり努力をした跡だろうというふうに思います。  そういった点で、今後そういった高等学校側の先生の意見を聞きながら、そして技能教育施設を持っている管理者側の意見都道府県教育委員会の段階で十分聞いて、可能なものはそういった形でやっていくということがいいことではないかというふうに考えているわけでございます。
  29. 林保夫

    ○林(保)委員 これを見てまいりますと労働行政とも関連する問題も多々あるように思いますので、いろんな面でこれを機会に検討されるのだろうと思います。  私ども、あちこち歩いてみまして、つまり田舎と東京を往復してみましても、本省の本旨あるいは教育行政に対する本旨がわかっていない面がかなりありますので、具体的に問題を出していただきませんと、過般の私が質問した議事録の中にもございますけれども、前塩川文部大臣は、もう困ってしまうんだということで、一つ教育委員会の問題を御答弁なさったことがございました。そこらあたりで法改正を機会にいわゆる単位の交換というのですか、これらの問題をひとつしっかり、せっかくこういう改正ができたのを機会にやっていただいて、学ぶ方が学びやすいようにひとつ御要望をしておきたいと思いますが、いかがでございましょうか。この辺は大臣にちょっと伺いたい。
  30. 中島源太郎

    中島国務大臣 林先生御指摘のとおりでございまして、地域を見てまいりますと、三十六年から、当初は技能連携制度がある水準、ある基準を保つことが必要であろうということで、文部大臣が基準をつくりまして、そして連携施設はそれぞれ個々に指定を申し上げたところでございます。ただ、地域には地域の多様なまた個別的な特性がございます。それからまた地域の住民の方々のいろいろな御希望もおありだと思います。  そういう地域の特性というのは、やはり産業別にも特性がありましょうし、今までの歴史的な伝統もございましょう。例えば被服その他が非常に関連施設が多いところ、あるいは先端、コンピューターなどが多いところによって多少の差はありましょうけれども、そういうものが平準化するように、それぞれの地域の声を速やかに直接耳にできる各都道府県教育委員会指定をお任せした方がよりよろしいであろうという発想でこうさせていただいたわけでございまして、先生の御趣旨を体した改正というふうに考えておりますけれども、この点、もとの基準は私どもしっかりと踏まえまして、できるだけ地域の声が反映できるように、そして学ばれる方が学びいいように、これをぜひ進めてまいりたい、このように考えております。
  31. 林保夫

    ○林(保)委員 まさに大臣のおっしゃるとおりでございまして、弾力化していくことによって地域と結びつく、生徒も学びやすくなる、この方向をひとつ……。ただ、地方だとわからないことがいっぱいありますので、その辺は少々、モデル県なりをつくられて、こういうこともあるんだ、強制するのではないけれどもというようなものをこれからいろいろと実際の行政面でお示しいただくことも一つだろうかと思いますので、御要望申し上げておきたいと思います。  続きまして、三月三十一日付になっておるのでしょうか、単位制高校の省令が出ておりまして、これも事務局の方へお聞きしたいのでございますが、これは定通制の一環だ、こういうことでございます。法改正まで必要ないということでおやりになったのだろうと思いますが、それらの理由及びこの学校のねらいとするところ、御説明をまず事務局の方から承りたいと存じます。
  32. 古村澄一

    古村政府委員 単位高等学校につきましては、御承知のとおり臨時教育審議会の第一次答申におきまして生涯学習観点に立って提言されたものであります。臨教審答申を若干引用させていただきますと、「学習者の希望、学習歴、生活環境などに応じて高等学校教育が容易に受けられるようにするため、個別的に教科・科目の単位の取得の認定を行うとともに、単位の累積加算により卒業資格の認定を行う機能をもつ新しいタイプの高等学校」を考えたらどうだというふうな御提案でございます。  そこで私たちといたしましては、文部省において具体化するために、中等教育改革の推進に関する調査研究協力者会議を吉本二郎大正大学教授の座長のもとに開催をいたしまして検討を行ってまいりました。学校教育法の施行規則を昭和六十三年三月三十一日に改正をいたし、と同時に単位高等学校教育規程の制定を行ったという経緯になっておるわけでございます。この高等学校構想といいますか、現在既に実施しております単位高等学校は、定時制通信制に限ってこういった高等学校をするということで、言ってみれば定時制通信制課程の運用の一形態であるということから、定通課程の特別な課程ということで発足させたものでございまして、その観点からいけば学校教育法の法律改正まで必要ないものであるというふうな認識をいたしたわけでございます。  それで、具体的にそれじゃどんな高等学校かというお話でございますが、いわゆる従来の高等学校でございますと学年制というのがございます。したがって、学年で修得すべき単位を落とせばもうその子供は原級留置ということになって、昔の言葉でいえば落第ということになるわけですね。ということは、やはり働きながら学ぶ子供にとっては非常に難しいんではないか、一単位や二単位落とすんではないかということから考えれば、取った単位はしっかり認めてやることが必要ではないかということが基本にあるように私たちは思います。  そこで、そうなりますと、学年制というものを取っ払っていくということが一つ。そして、その取った単位というものを集積していって八十単位までくれば卒業の認定をするという基本的な考え方のもとにそういった単位高等学校というものを発足させたわけでございます。
  33. 林保夫

    ○林(保)委員 資料によりますと、既に岩手県立杜陵高校、石川県立金沢中央高校、それから通信制単位高校として長野県立松本筑摩高校がスタートしている。  これは聞きたいのですが、学齢期と見られるような生徒とそれからかなり年配で生涯学習の一環として来ているのと、どんな実情になっておりますでしょうか。
  34. 古村澄一

    古村政府委員 この高等学校はことし四月に発足したわけでございまして、従来から都道府県教育委員会教育長協議会等でこういった方向性をずっと模索していまして、そして臨教審答申が出た、文部省の協力者会議の方針が出たということで、そういった学校を三校開いてといいますか、従来からあった定時制高校通信制高校を切りかえたわけでございます。  したがって、この単位制高校について、まだPRそのものが十分いってないということもあるのでしょう、従来と余り変わってない、大部分がいわゆる学齢期、高等学校の入学者相当の年齢であって、いわゆる成人教育といいますか生涯学習といった観点からのリカレント教育のようなものは数が少ないというのが現状でございます。
  35. 林保夫

    ○林(保)委員 それで、こういう期待というのは、事実私の地元の岡山でも、法改正ができてそれとの連係で単位制高校が認められているのだから早くやろうということで、えらい熱心な運動が起きております。全国的に同じような傾向にあるかと思いますが、いろいろ聞いてみますと三、四県ぐらいは出ている、いやもっと多いんだということもございますが、大体どういった見通しにあるのか、六十四年度とその後について展望を、文部省の期待というところでも結構ですけれども、せっかく制度をつくったわけですから承りたいと思います。
  36. 古村澄一

    古村政府委員 ことし四月にできた制度でございますので、それを実施していくのに、各県としてはやはりいろいろな御意見を聞いてそしてまとめていくということが必要なんでございましょう。したがって、そういう観点から若干私たちが思うよりもあれでございますけれども、現在聞いておりますのは、埼玉県、東京都というのが具体的な構想をやっているということでございまして、具体的に着手したというのはこの二つの県というふうに認識をいたしております。  そのほかの県については、どういうことをやればいいのか、ほかの先進の県の状況を聞いたり勉強しているのが現状だというふうに認識いたしております。
  37. 林保夫

    ○林(保)委員 せっかくの機会でございますので、東京と埼玉の例を知っておる課長さんがおられたら、詳しく御説明いただければほかの県にも非常に参考になると思いますので、わかる範囲で結構ですけれども局長さん、どなたか御指名をお願いします。
  38. 古村澄一

    古村政府委員 埼玉県につきましては、定時制通信制を併置する高等学校で、それを単位高等学校に六十四年度からやっていきたいということでございます。具体的な名前といたしましては大宮中央高等学校というふうに聞いております。  それから、東京都につきましてはまだそこまで進んでいませんで、六十六年度から発足いたしたいということが決まっているようでございます。
  39. 林保夫

    ○林(保)委員 しつこいようですけれども、定員は大体どのくらいでやっておられるのでしょうか。それから、教科内容くらいもしわかっておればひとつ御説明いただきたい。
  40. 古村澄一

    古村政府委員 埼玉県の単位高等学校は、定員を当面二百四十人、完成時には三百二十人ということでやってまいりたいというふうに聞いております。  それから、選択科目群として、文系コースでありますとか理系コース、国際教養コース、経理コース、情報処理コース、生活技術、工業技術コースというふうなコースを設けて、選択科目をある程度幅広くとらせていったらどうかという構想を持っているように聞いております。
  41. 林保夫

    ○林(保)委員 これからの問題で、まさに多様な対応をこのあたりではできると思いますので、これまた同じような御要望をしておきたいと思うのでございます。  いろいろ制度をつくりましても、教師の問題、財政上の問題、しかもこれらが自治省との関連あるいは大蔵省との関連、いろいろございます。本日も委員会附帯決議の中で出ておると思いますが、それらの問題について、私ども一般に聞いておる限りではこういうところが不足ぎみだという学校が非常に多いと思います。文部省がそれらをどのような御指導をもっておやりになるのか。校舎の問題等も関連しましょうし、いろいろございましょうが、今の状況をどうとらえられて、それをどのように充実されるべく指導していかれるのか、その辺を承っておきたいと思います。
  42. 倉地克次

    ○倉地政府委員 単位制高校の条件整備についてのお尋ねであろうかと思うわけでありますけれども、私ども、教職員定数に関しましては、本年の七月十五日に高校標準法施行令の改正を行いまして、一定規模以上、これは具体的には一学年三学級以上ということになりますけれども、そうした単位制の定時制課程におきましては、開設科目の授業時数が高等学校の標準的な授業時数を超える事態であります場合には教員の一定の加配を行えるようにしたわけでございます。特定の学校につきましては、この制度のもとに早急に措置するように今努力しているところでございます。  それから、施設の点でございますけれども高等学校定時制通信制課程の校舎の新増築に要します経費につきましては国が三分の一の国庫補助を行えることになっている次第でございまして、都道府県単位制の定時制通信制課程高等学校を建設する場合にはこの国庫補助の対象としていく所存でございます。ただ、現在まで設置されている単位制の高等学校について見ますと、既存の建物の転用等で対処しているのが実態でございまして、補助金の交付が行われていないところでございますけれども、今後設置を予定している単位制の高校につきまして補助の申請がありました場合には、これを十分勘案して適切に対処してまいりたい、そのように考えている次第でございます。
  43. 林保夫

    ○林(保)委員 それで、さっきもう一つ聞き忘れていましたけれども、経営形態の問題を文部省はどのように考えておられるのか、お示しいただきたいと思うわけです。既存校の併設あるいは単独、全寮制高校でも設けようかというようなところもあるやの話も聞いておりますし、県、市が関与する、あるいは私学でやる、あるいはそれを新しく起こすというような問題がありますが、どういう展望を持っておられるのでしょうか。
  44. 古村澄一

    古村政府委員 経営形態につきましては、おっしゃいますとおり、公立でやる、あるいは私立でやると、大きく言えば二つあり、そして公立の中でも私立の中でもそうですが、いわゆる全日制併置あるいは単独校、こういった四つのカテゴリーがあると思いますが、これは私たちとしてこれがいいということはなかなか申し上げにくいことでございます。やはり全定併置であれば、そういった形でやればある程度の施設設備というものは全日制の分が使えますから、かなり充実したものがある。しかしながら、弾力的にその授業時間を昼に回したり云々ということはなかなかしにくいというふうなこともありましょう。  ということからいいますと、どれがいいというのはまさに言いにくいことでございまして、そこの地域におきます実態、いわゆる設置者側の考え方、それから子供の通学の状況といったものを総合的に判断して、そこでどういった形態がいいのかということを御判断いただくのが一番いいのではないかと思うわけでございます。
  45. 林保夫

    ○林(保)委員 以上、いろいろと多様化弾力化ということ、そしてこれが臨教審答申にもあります国際化とか個性化という方向で、私なりに申し上げますと、まだまだ化というお化けの連続みたいな感じになっておりますけれども、非常に大事な方向性だと思うわけです。  これらについて、やはり表現はしにくいのですが、きっちりとした姿勢と、さらにそのほかの多様なと、こういうようなものがあると思いますが、つきましては、ひとつ先に事務局の方に、今回の法の改正、そしてその後に免許法の問題もございます。地教行法の改正の問題も出ている。まだ臨教審答申を得ての教育改革は道半ばのように思いますが、どういうものが今臨時国会、そして次の通常国会、来年にわたる課題としてありますか、どういうことを考えておられるかを承りたいと思います。
  46. 古村澄一

    古村政府委員 教育改革、いわゆる教育改革は非常に幅が広うございますから、私、初中局長として全体をフォローアップするわけにまいりませんので、私のところの管轄ということから見て、現在議題になっております後期中等教育の関係ということから見ますと、数点あるわけでございます。  一つは、高等専修学校卒業者に対する大学入学資格の付与というのが第一次答申に出ました。これはある程度既に文部省告示の改正をもちまして六十年九月に実施をいたしております。  それから二番目に、六年制中等学校の創設というのが第一次答申に出ておりますが、これは文部省におきまして調査研究協力者会議を開きましたが、なかなか結論が出ません。これについては今後もう一回よく検討しろというふうなことで、検討課題としてまだ継続検討中でございます。  それから、単位高等学校は今のお話でございます。  それから、教育内容の改善をしっかりやれというのが第二次答申でございましたが、これは小中高等学校、幼稚園まで含めまして、学習指導要領の改定ということで現在作業をいたしております。既に教育課程審議会の答申もいただいておりますので、具体的な学習指導要領の告示の作業を急いでいるのが現状でございます。  それから、高等学校修業年限弾力化は、定通についてはただいまの提案の内容でございますが、臨教審では、全日制についてもある程度考えたらどうだ、高等学校は三年というふうにはっきり決めないで、四年をやってある程度じっくりと勉強させるといったコースも考えたらどうかという御提案もございますが、これについては今後検討することになります。  それから、高校生の海外留学の制度化をしろというのが第三次答申にございましたが、これはことしの二月に学校教育法施行規則の改正をいたして処理をいたしました。  それから、帰国子女の高等学校への入学、編入学の機会を拡大しろというのを第三次答申で出していただいておりますが、これにつきましては、ついせんだって、六十三年の十月に学校教育法の施行規則の改正と指導通達をもって実施をするようにいたしました。  あと、いわゆる後期中等教育の再編成の検討ということで、先ほど一番先から御議論になっておりますように、高等学校というものを今のままでもうちょっと弾力化したり、国際化の問題もいろいろなことがあるだろう、それを検討したらどうかという包括的な御提言をいただいておりますので、これについては七月に高等学校教育個性化等の推進に関する調査研究協力者会議を発足いたしまして、高等学校全般について調査研究に着手いたしたという現状でございます。
  47. 林保夫

    ○林(保)委員 おいおいそういったことで法案なりいろいろな形で御提議いただけるのだと思いますが、今お話しになられた中、及び際立って今いろいろな形で議論されている問題について関連してひとつ質問させていただきたいと思うのでございますが、六年制中等学校の問題です。  これは今おっしゃられたようになかなか難しいと思うのですが、しかし、なおやはり希望の多い分野でもあるし、理屈づけによっては大変すばらしいことだということにもなるわけですが、文部省としてはこれをどの辺で結論を出そうとしておられるのか、賛成、反対の理由もはっきりときょうお教えいただければありがたいと思います。
  48. 古村澄一

    古村政府委員 六年制の中等学校をどういうふうに認識するかということでございまして、臨教審答申の考え方というのは、美術でありますとか音楽でありますとか体育でありますとかというものを例示に引き合いに出して、こういったものについては早期教育、いわゆる一貫性教育になじむのではないかという御提言でございます。  ただ、片方いろいろな方の御意見というのは、いやそういった専門教育ばかりでなく、普通科も六年制をやったらどうかというふうな御意見もございます。  具体的に高等学校の六年制の問題は、結局、主として都道府県設置者で、そこでやっていく話でございますので、都道府県教育委員会の考え方というのが非常に重要だというふうに私たちは考えておりますが、現在都道府県高等学校行政に対する考え方は、生徒の受け入れが現在来年までピークに入っております。そういったことから、生徒の受け入れがピークで、その後のずっと減っていくときに、高等学校というものの体質改善といったことも含めた形での検討をしたらどうかというのが、都道府県教育委員会のかなり大方の意見であろうというふうに思いますと、やはりもうちょっと私たちもそういった情勢というものを見た上でこれについては判断を加えるべき問題かなと考えております。
  49. 林保夫

    ○林(保)委員 それから、際立って近ごろ議論として聞くわけですが、あれはたしか東京都から始まったと思うのですが、高等学校学校制度の問題ですね。あれが非常に安易な教育に流れやすい状況、それから、生徒としてもねらった学校へ入れませんので、非常に意欲をそぐ結果になっているという批判をあちこちでよく聞くわけですが、これについて文部省はどのように、都道府県の問題でありますけれども、指導され、お考えになっておられるかを承っておきたいと思います。
  50. 古村澄一

    古村政府委員 これは東京都の固有の問題でございますが、私たちも東京都の状況を見ていまして、学校制度を創設いたしましたのはたしか昭和四十年代の前半だったというふうに思います。いわゆる進学競争というものがかなり公立学校において激化したということから、学校群ということである程度機械的に子供を割り振っていったというのが始まりだったわけでございまして、その後、父兄の側、生徒の側から、いや、それは希望を入れてもらわなければ、学力で機械的に割り振ってもらっちゃ困るというふうな意見があって、若干希望が入るようになりました。  しかしながら、それでも今現在東京都においては入学者選抜制度というものについて検討を加えておりますが、その検討を加えている視点というのは、一つは、こういった制度というのは受験競争の緩和という点はあっただろうけれども、いわゆる個性、子供の個性に応じた教育というか、そういった面では非常に一糸同列になったというふうなことが言われている、そういった角度からの検討がなされているというふうに聞いております。
  51. 林保夫

    ○林(保)委員 今局長は東京都だけと言われましたけれども、私ども岡山にもあるわけですね。それが全国どれくらいあるのかというのが、もしおわかりになっていたらちょっと教えてもらって、いい方向に、個性化多様化といえばやはりそれなりの学校にあこがれて入るという雰囲気をつくりませんといかぬのじゃないかという気がいたしますので。
  52. 古村澄一

    古村政府委員 いわゆる総合選抜制度の実施状況という観点からの御質問でございますので、そういった制度で全国どういうふうになっているかと申し上げますと、六十年度で十三の県が総合選抜制度というのを実施いたしております。一番多かったときで五十年度が十五県でございましたが、十五県が十三県になったというふうな、現状はそういうことでございます。
  53. 林保夫

    ○林(保)委員 いろいろとありがとうございました。  それで、大体質問時間も来ましたが、やはり教育問題に寄りかかっている問題で、大臣、天皇の御不例の問題がございますね。きのうの新聞で大きく出たからというわけではないのですが、ごらんになったと思いますが、豊中市でこういうような問題が提起されております。学校行事についても、運動会あるいはまた学芸会もそのうちに入るんでございますか、全国的にいろんなどうしたらいいのかというのが文部省にはたくさん来ていると思うのですが、私どもにまで来るような状況でございますが、御不例一カ月、文部省は何かそれらについてのお考えなり指導なりがあったかどうか、事務局から先にちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  54. 古村澄一

    古村政府委員 そういったことについて、都道府県からの御照会もありませんし、私の方からまだそういったことについて申し上げる段階ではないというふうに思っております。
  55. 林保夫

    ○林(保)委員 事務局はそういうことなんでしょうけれども、見方によれば現場の学校が萎縮する状態というのももう既にお聞きになったことあると思いますので、私どもは御平癒を心からひたすら祈りながらも、外交をとめちゃなりません、内政をとめちゃなりません。余り派手なお祝い事は控えながらも、なおやはり日常生活にかかわる問題、経済活動にかかわる問題はきちんとやるのが当然のことだろうと思いますが、大臣、その辺をどのようにお考えになっておられますか。この機会に、こうありたいなということでもございましたら、本当、私は文部省あたり一本指示出していいと思うのですけれども、先々をどうせいというのではなくて、現状はこうしなければならぬというぐらいあっていいと思うのですが。
  56. 中島源太郎

    中島国務大臣 林先生からせっかくの御指摘でございます。林先生同様、私どもも天皇陛下の御病状に対しましては一日も早い御快癒をともに心からお祈りをしているところでございます。そういう中で、たまたま官房長官も日常活動に支障のないように整々と進めることが望ましいのではないか。特に教育に関しましては、この秋、たまたま運動会あるいは学芸会の季節を迎えております。こういう面では特に伸び行く青少年の体育、スポーツに関する意欲のある催しが運動会でございますし、また学芸会は、学校教育の中で文化活動に際しまして多くの生徒諸君が集団の中で、そしてある期間を通じまして学芸会のためにともに練習をする、これはまた意義あることだと思うのです。またその発表も意義あることである、そういう面は整々と行われることが望ましい、私どもはそう思っております。  そういう点に関しまして、特段の問い合わせがあったかどうか、内部では特段の問い合わせを受けておらないということでもございますし、また、今のところはそれぞれの判断におきましてやっていただいておるところでございまして、したがって、文部省として特定の指示を出したこともございません。また、特に問い合わせはないようでございます。そういう点でございますので、今のまま御病状を見守りながらぜひとも御快癒の早いということをひたすらお祈りをしておる段階である、このように申し上げさせていただきたいと存じます。
  57. 林保夫

    ○林(保)委員 わかりました。いろいろな問題が次々と出てくる時代でございますが、どうか教育現場を荒らさないように、むしろ積極的な対応を御要望申し上げたいと存じます。  本法案につきましても既に御説明もいただきましたし、どうか本法の趣旨を踏まえられまして、しっかり対応していただきますよう心からお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  58. 中村靖

    中村委員長 次に、石井郁子君。
  59. 石井郁子

    石井(郁)委員 学校教育法の一部改正について質問をいたします。  まず、定時制通信制課程の設置目的について、またこれまでその果たしてきた役割について文部省はどのように評価をしておられるのか、伺いたいと思います。大臣の所見もあわせてお伺いできればと思います。
  60. 中島源太郎

    中島国務大臣 学校教育そのものが生涯学習の重要な一環であるということは再三申し上げておるわけでございますが、その中でも学校教育ということになりますと、特に後期中等教育、これはあらゆる面で一番重要な時期であろう、こう考えます。そういう中で、特に御指摘の定時制通信制ということにつきましては三つの観点があろうかなと考えております。  一つは、もちろん勤労学生の方々によき学習の機会を与える、そういう意味での後期中等教育である。もう一つは、多様な履修形態にできるだけ沿うようにしていくべき後期中等教育である。三つ目は、言うまでもなく生涯学習の一環としての後期中等教育、そういう三つの要点を含んでおるものだ、こう思うわけでございます。  それだけに、その三つを包含いたしますと、定時制あるいは通信制、こういう中で特に通信制の方は社会人になられた方々が再び学び加えたいという方々も多いようでございます。人数でいけば大体この数年間は平準化した推移をたどっておりますけれども、そういう中でできるだけそういう方々にとって学びやすい方向を模索し、そして改善をしていくべきであろう、こう考えておるところでございまして、まさに今回学教法の四十五条の二あるいは四十六条で御提案を申し上げておりますのはこの趣旨に沿って御提案を申し上げておるところというふうに御理解をいただきたい、このように存ずる次第でございます。
  61. 石井郁子

    石井(郁)委員 今回の改正一つ定時制通信制修業年限の短縮ということでございますね。これまで定時制通信制課程が四年で修了ということになっていたわけですけれども、その根拠はどういうことだったのでしょうか。
  62. 古村澄一

    古村政府委員 定時制通信制教育は、いわゆる働きながら学ぶ者を戦後想定してできたわけでございまして、そうしますと、やはり勤務というものは二方あるということになると、全日制高等学校で三年間であったものでありますが、定時制では三年では無理だろうということから四年以上というふうになっていたわけでございます。
  63. 石井郁子

    石井(郁)委員 単にそれだけで考えるのはちょっとどうかと思うのですけれども定時制が発足したときの文部省の最初の見解を振り返ってみますと、やはり全日制と同等の教育を保障するという点で、全日制は三年であるけれども、勉強の時間等々勤務条件とか考えますと、あるいは精神的な肉体的な疲労等々考えますと、四年はかかるということだったと思うわけです。  そういうところを押さえていただきたいわけですけれども、伺いたいのは、それでは今日の定時制について、夜間、昼間、多部制といろいろあると思うのですけれども、その設置形態の数と割合がどのようになっているでしょうか。それから、働きながら学んでいる生徒、その勤務状態というか、特に労働時間の問題について文部省として調査などでつかんでおられることがありましたら伺いたいと思います。
  64. 古村澄一

    古村政府委員 まず、定時制の昼夜別の学校数、それから生徒数ということで御説明をいたします。  昼の学校数が百五校、生徒数でいきまして一万二千人。それから、夜の学校が八百四十八校、生徒数で十一万九千人。それから、昼夜併置が三十四校、生徒数で九千九百人。それから、昼間やったり夜間やったりというのが三十三校、生徒数で四千八百七十九人というような概略でございます。  それから、学ぶ者の勤務形態ということでございますが、まず生徒の有職状況ということで見ますと、定時制子供につきましては大体七八%が職を持っております。その職の中身を見ますと、正規の社員というのが三五%ぐらい、それからパートのアルバイトというのが三七%、それから自営あるいは家業の従事というのが六・四%、無職が二一・四%ということでございます。  それから、勤務日数別の生徒数ということで見まして、一番多いのが一週間に六日間働くのが大体七九%、次が五日間働くのが一〇%、その他が残りの一〇%強でございます。  それから、一日の勤務時間別の生徒数ということで見てみますと、一日八時間労働が一番多い四七・八%、それから七時間が二二%、それから五時間、六時間というところが一五%、大体そんなような状況でございます。
  65. 石井郁子

    石井(郁)委員 やはり圧倒的に夜間部設置が多いというふうに考えていいですね、定時制というのは。今、生徒の勤務状態、勤務時間も伺ったわけですけれども、どうですか、八時間以上の労働が大変多いということも実態だろうというふうにわかるわけですね。働きながら学ぶという生徒がこのように現実定時制に通っているということで言えば、こうした生徒教育を保障するという定時制高校の役割というのは決して変わらないというふうに考えていいでしょうか。そうだとすれば、夜間部の生徒が三年で卒業するというのは大変困難なことだというふうに思わざるを得ないわけですが、いかがでしょうか。
  66. 古村澄一

    古村政府委員 私たちが今御提案申し上げております学校教育法改正案は、定通については、現在四年以上とありますのを三年以上ということでございまして、すべて三年ということで一律に規制するものではございません。したがって、現状、全国でかなりの学校の数が三年で卒業できるだけの教育課程を組み得るというような現状にありますときに、やはりそういった三年で卒業できるという道を開いてやる。私たちは何もすべてをそういった形で、三年でやれ、やれというふうな形で旗を振っていくつもりはございません。そういった生徒の勤労状況というものを十分見た上で、それが可能であればそういったことについて道を開くのが生徒側にとってよりベターではないかという観点から御提案申し上げているわけでございます。
  67. 石井郁子

    石井(郁)委員 全日制課程と同じ教育水準を保障するために四年が必要だということは変わらないと思うわけですね。しかし、三年で単位修得が可能だという学校も出てきているという話が再三言われているわけですけれども、三年に短縮して卒業できる場合のカリキュラムとか履修形態というのは具体的にどういうことになっているのでしょうか。
  68. 古村澄一

    古村政府委員 若干敷衍して申し上げますが、履修形態から申し上げますと、三年であるからどうかということとストレートに結びつく問題ではございませんが、履修形態がかなり弾力化してきた。戦後の定時制通信制が発足して以来四十年の中で、例えば定時制通信制の併修でありますとかあるいは定時制通信制技能教育施設との連携でありますとか、そういった点で学校へ来て学ばなければならぬという授業時間がかなり減ってきた、そういった履修形態弾力化による可能にする道というのが一つございます。  それと同時に、労働条件というのがかなり変わってきている。先ほど私が申し上げましたように、いまだにそれは八時間労働あるいは一週間六日間の労働が多いわけですが、やはり世の中はこれからかなり動いていくと思います。そういった中で、労働時間が少なくなれば余暇が出てくる、余暇が出てくればなるべく学校へ行って、従来四年であったものが三年で卒業できればなおいいのではないかというふうなことから、そういった点で考えているわけでございます。
  69. 石井郁子

    石井(郁)委員 私もちょっとデータを見たのですけれども、これは東京の定時制高校実態ということで、ことしの夏発表されたものですが、ここでもやはり六時間以下という勤務時間というのは三割ですね。だから、七時間以上、八時間以上、もっとということですね。事実、定時制に通われる生徒は零細企業ですとか非常に不安定なところに職場を持っているということからしても、そうだと思うのですね。この東京の定時制高校生徒八千五百人の調査でありますけれども、健康と感じている生徒が半分以下です。三分の二以上の生徒が睡眠不足で慢性的な疲労を訴えているということです。  今の話では、結局三年で卒業になると、定通併修とか技能連携だとかそういう形で学校教科以外に単位を集めてこなければいけないということになるわけですね。定通併修というふうに簡単に言われますけれども、こういう状態にある生徒たちにとっては、通信制のレポートを課されるわけですから、レポートを書かなければいけないということでは一層負担が過重になるということでもあるわけですね。  こういうふうに考えますと、そういう条件があれば三年でできるということであって、本来働きながら学ぶ生徒教育を保障するという定時制の設置目的、最初に第一に言われましたけれども、そういうことからすると相入れないものになっていくのではないか、結局働きながら学ぶ生徒は三年では続かなくなるということになるのではないかと思うわけですが、大臣、いかがでしょうか。
  70. 中島源太郎

    中島国務大臣 先生の御指摘のように、私どもも現在働く方々の就業形態も多様化しておるとは思います。しかし、やはり今御提示したように八時間あるいは週六日という就労形態も多い中でございますので、そういう方々に焦りを生ずるような、あるいは過重を生ずるようなことはできるだけ避けていかなければいけない。したがって、その点が私どもは三年以上としたところでございまして、局長答弁を繰り返すようでございますけれども、中には七十単位、八十単位以上を三年間で修得することが可能な部分がある、そういう方々にもう一年待てよというようなことは、かえって社会人のあり方としてもあるいは御自分の生き方としても一年待たせるということは逆にどうであろうか、その方々に新しい道を開いてさしあげるということも一つの改善であろうということで、四年以上というのを三年以上にさせていただいたわけでございます。  そうなると、また先生御指摘の、一方では要するに技能連携というようなものが盛んになるであろう、そういう点でさあその技能連携制度というものがうまく作動するかどうか。こういう点で今までは文部大臣がその施設指定まで所掌しておったわけでございますけれども、一定の基準さえ定着しておればそこだけを私どもが持たせていただいて、あとは地域で地域の実情に応じて、そしてそこに通われる方々あるいは履修される方々のよりよい御意見が反映できるような都道府県教育委員会にその施設指定はおろした方がかえって履修される方々にとってもプラスであろう、そういうことを含めて施設指定と三年以上という修業年限を一緒に御提案をしたのはまさにそういうところにあるわけでございまして、私どもは新しい道を開くという方に重点を置いて御提案を申し上げておるところでございますので、御理解をいただきたいと存じます。
  71. 石井郁子

    石井(郁)委員 少し立ち入って伺いますが、三年卒でできる課程というのは、先ほどの林議員の質問にもちょっとございましたけれども学校ごとになるのか、それとも一つ学校に三年コース、四年コースというふうにあるのか。大体両方、一つ学校の中にも三年で卒業できるコース、四年で卒業できるコースがつくられると考えてよろしいですね。  そうしますと、そのコースに入学する時点で、私は三年で卒業するとか四年で卒業するコースを選ぶと決めるわけですね。このことも、定時制などの学生は非常に職場もいろいろ変わる条件が多いということを考えますと、選ぶ方からしても最初からそんなふうに決められるだろうか。だから、最初は気持ちとしては三年で卒業したいというのがあったとしても途中でやっぱり四年かからなければ出られないということもあるのではないでしょうか。そういうことは考えていらっしゃるでしょうか。
  72. 古村澄一

    古村政府委員 学校教育でございますから当然カリキュラムというものを生徒に対して提示するということになりますと、この学校はこういったカリキュラムを持っております、これでいけば三年で卒業するコースあるいは四年で卒業するコースと一校で二つあれば二つあるということは当然公になるわけです。ですから、そのときにそれがはっきり決められるかとおっしゃいますが、やはりそれは中学校での進路指導あるいは雇用主との関係というもので、中学校の進路指導の先生等が十分そういった点で御指導をいただければそういった入学時においてそこの選択はできるものだと私は思っております。
  73. 石井郁子

    石井(郁)委員 先ほど三年卒の課程設置者が決めるということでございましたけれども設置者が決めるに先立って学校の主体的な判断、自主的な判断がどこまで保障されるのかという問題。  それから定時制に三年制で卒業できる課程をつくるということについて文部省として都道府県教育委員会にその促進を大いにしていくというお考えやおつもりがおありなのかどうかということを伺っておきたいと思います。
  74. 古村澄一

    古村政府委員 何年の定時制とするかということは権限的にいえば設置者の権限であろうというふうに申し上げましたが、もちろんそれはその学校におきます生徒状況というものを十分頭に入れて学校側との間で御相談なさるべきことだと思っております。  なお、文部省としてなるべく三年にというふうに積極的に奨励していくというつもりはございません。
  75. 石井郁子

    石井(郁)委員 先ほど大臣の御答弁をいただきまして、これは新しい道を開くものだ、三年で卒業したいという子供もいるのではないかという話がございました。しかし多くの定時制に学ぶ生徒は、また逆にやはり四年じっくり勉強したいという生徒もおられると私は思うわけです。私はちょっと生徒の声を聞いたのですけれども、今まで勉強が十分わからなかった、定時制で四年間じっくり時間をかけてわかろうとしているのに三年間で出ていけというのか、僕たち学校から追い出すのか、こういう声もあるわけでございますね。  そういう点で、定時制の発足の趣旨、設立の目的、こういう点からしても、今日なお働きながら学ぶという生徒たち教育の保障ということは非常に大事な課題だと私は思うわけです。教育の機会均等を壊してはならないという立場からも、先ほど大臣も勤労青年というか働きながら学ぶ子供たちの条件をよくするためのものだ、こういうふうに言われたわけですけれども、その点で再度、定時制の充実という観点を踏まえていただきたいということでお願いしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  76. 中島源太郎

    中島国務大臣 御指摘のとおり、後期中等教育の重要な部分でございますこの定時制通信制高等学校というものがまさにまず第一に働きながら学ぶ勤労学生の方々にとってよき学びやでありますように、私ども最善の努力をいたしてまいります。なお、つけ加えれば、履修の体系あるいは生涯学習という意味で、一度社会に出られた社会人の方々が年齢を問わずまたそこで学んでいかれるという意味におきましてもよき学びやでありますように、これまた最善の努力をいたしてまいります。
  77. 石井郁子

    石井(郁)委員 技能連携について伺います。  技能連携が現在職業科普通科でそれぞれ行われているという話でございますけれども、ちょっとその実態をもう少しお聞かせ願いたいと思います。
  78. 古村澄一

    古村政府委員 技能連携についての実態ということでございますから、数点にわたって御説明をいたします。  まず第一に指定技能教育施設の数ということで御説明いたしますと、全体で三百二十五施設でございます。類型別に見ますと、専修学校各種学校の系列に入りますものが百五十四校。その中でいわゆる教科、科目別といいますか、そういった関係で見ますと、家庭科系が九十施設、商業系が五十四施設、工業系が十三施設ということになります。それから職業訓練所の類型に入りますのが六十七施設、その中で公共職業訓練所が四十一、企業内職業訓練所が二十六ということになります。それから准看護婦養成所は百二、農業大学校高等科というのが二、合わせて三百二十五施設指定されているわけでございます。  なお、連携措置の対象となっております生徒数ということで申し上げますと、定時制課程生徒は二千七百五十二人がその連携措置の対象になっております。それから通信制課程は三万三千二百五人ということで連携の対象に相なっております。  それから技能連携単位数別の、どういったどこまでの単位技能連携しているかということで申し上げますと、一番多いのは三十単位から三十九単位連携しておりますのが百六施設でございまして、全体の四四%、その次が二十単位から二十九単位が五十一施設、四十単位以上が五十施設というふうな現状になっております。  それから施設別の連携生徒数といたしまして見ていきますと、全体で三万五千九百五十七人の子供が、先ほど連携生徒数というふうに定通分けて御説明いたしましたが、その中で専修学校各種学校との連携に入っておりますのは三万八百八十、それから職業訓練所との連携が四千百二十五、准看護婦養成所が八百七十六、農業大学校高等科については七十六というふうなのが全体の状況ではないかというふうに思っております。
  79. 石井郁子

    石井(郁)委員 伺いたかったのは、やはり職業科技能連携が多くあると思うのですね。普通科の場合にはこの技能連携というのはそれほど多くないのではないかということなんです。それは後で御答弁いただきたいのですけれども、やはり制度としては昭和三十六年からずっとあると思いますけれども現実技能連携というのは非常に少ないのですね。指定施設はありますけれども、そこで単位を取って云々というのは少ないのではないかと思うのです。それは技能教育施設との連携について、高校教育立場からいろいろな批判もあると思うのですね。もともと企業の要求を受けて設けられたという点もありますし、全日制と同様の教育水準を本当に維持できるのかどうかという問題点があると思うわけです。  そこで、今回の改正は単に技能教育施設指定文部省から都道府県にかえたという問題なのか。それとも、今後この技能連携を一層拡大、促す方向に道を開くものなのか。その点、いかがでしょうか。
  80. 古村澄一

    古村政府委員 技能教育施設との連携が始まりました昭和三十六年のときの考え方は、生徒学習負担をなるべく軽くしたいということがメーンのポイントであったというふうに思います。したがって、そういった角度からすれば、ある程度技能連携というものは進んだ方が生徒学習負担の軽減になるということは基本的にあろうかというふうに思います。  そこで、今度の改正の中身は、権限を文部大臣から都道府県教育委員会におろすということでございまして、考え方として前から申し上げておりますように、文部大臣指定の基準というものを示しまして、その基準に沿って都道府県教育委員会は具体的にこの施設連携施設として認めるということを、具体的なことを都道府県教育委員会お願いするということでございまして、それはなるべく近回りのよくわかった人がよくそこのところを調べて指定をした方がいいだろう、その方が実態に合うだろうということで御説明いたしておりますが、現実問題、都道府県教育委員会指定するということになりますれば、子供の二重負担を軽減するためにどういうことを考えればいいかというのは、きめ細かく行政が行われるだろうということを期待いたしておるわけでございます。
  81. 石井郁子

    石井(郁)委員 先ほどの技能教育施設指定校の中身を見ますと、やはり准看護学校であるとか各種専門学校、そういうところが多うございます。後で単位制高校に触れるわけですけれども単位制高校のカリキュラムで、技術コース生徒がある一年間技術学校へ行って電気工事、デザイン、建築等々の専門的な技術を学ぶということが出てきておりますね、これは金沢中央高校ですけれども。そうなりますと、こういうのは普通高校からすると随分変わったものになっていくのではないか。高校の専門学校化に近くなっているというふうに言わざるを得ないわけですね。  ですから、局長学習負担を軽くするというふうに言われましたけれども学習負担の重さ、軽さという問題だけではなくて、高校の教育内容をどう保障するのかという問題を抜きにしてこの技能教育施設を語ることはできないわけですね。その点で、まだ御答弁をいただいていないわけですが、普通科にもこの技能教育施設との連携を広げていくというお考えがおありでしょうか。
  82. 古村澄一

    古村政府委員 普通科といいますか、いわゆる教科としての普通教科技能連携の対象にはいたしておりません。ただ、普通科の中でもいわゆる情報処理というふうな教科を教えるということになれば、情報処理についての各種学校との連携というのは考えられる。いわゆる国語とか社会とか数学とか、そういったものとの連携ではなくて、いわゆるそういった職業科目との連携ということは普通科でもあり得るということでございます。
  83. 石井郁子

    石井(郁)委員 やはりそういう方向が非常に強まっていくというか、技能教育施設での単位履修の比重がふえていくということになれば、大変問題を持つというふうに思うのですね。その辺は、単に指定都道府県におろしたら済むという問題ではなくて、やはり文部省としても教育内容の水準をどう保つかという点で目配りが要るんではないでしょうかということを申し上げておきたいと思います。  さて、単位制高校なんですけれども定時制通信制の中の特別なものという位置づけで単位制高校がこの春からスタートをしております。文部省が省令で学校教育法施行規則の一部を改正しまして、定時制にも通信制と同じく「学年による教育課程の区分を設けないことができる。」というふうにいたしました。私どもは、単位制高校が今回の法案にかかわるものでありながら、この審議に先立って三月、一方的に省令が改正なされたという点で単位高等学校教育規程が制定されたわけですけれども国会審議を非常に無視したものだという点で、まずこういうやり方にひとつ問題を感じているわけでございますが、それを申し上げた上で質問に入りたいと思います。  臨教審の言う単位制高校、既にこの春三校ほどスタートしているわけですが、その場合でも結構ですけれども、それと従来の高校とどこが異なるのか、ちょっと具体的にお示しいただきたいと思います。
  84. 古村澄一

    古村政府委員 単位高等学校は現在三校できておりますが、これは定時制通信制課程範疇に入ります。入りますが、いわゆる学校運営の方法として、単位の累積で卒業ができるとかいろいろなことがあるわけですが、例えば具体的に申し上げれば、学校としては単位を学年制であれば一学年において二十単位取りますということに決まっているわけですね。ところが、二十単位取れなければその子供は落第、いわゆる原級留置ということになるのが学校の運営のやり方だろうというふうに思います。しかしながら、今度の単位制高校は、単位を落としてもそれは何も原級留置という考え方を持ち込まない。ですから、学年の枠を取り外していますから、ほかの単位は生きてくるわけです。学年制の高等学校ですと、ほかの取った単位も全部もう一回もとからやり直すというのが、今の学校運営の仕方との非常に大きな違いの一つです。  それからもう一つは、単位の集積によって卒業資格を認めるということでございますので、例えば中途退学、一回高等学校に二年まで行って四十単位取ったけれども中途退学をいたしました。そして社会に出てみたけれども、もう一回学校へ帰りたいということで帰ってきたとき、残りの四十単位を取れば合わせて八十単位ですから、高等学校卒業資格ができる。これが一番ここでのほかの高等学校との大きな差であろうかというふうに思っておるわけでございます。
  85. 石井郁子

    石井(郁)委員 今、二点おっしゃられたわけですけれども、学年制をとらずに単位制をとるという高校ができるわけですね。それは単位の累積加算で、昼夜開校、土日開校などいろいろ考えられておりますね。そういうことになりますと、一体、生徒にとってその高校というのはどんな教育機関になるのだろうか。ちょっと文部省として、学校としてのまとまりというような点でどういう見通しを持っていらっしゃるのか、伺いたいと思うのです。
  86. 古村澄一

    古村政府委員 高等学校とはどういうものかということになりますと、これはかなり哲学的な話になりまして、私も一概にこれはこうだということを申し上げるあれを持っておりませんが、いずれにしてもいろいろなパターンの高等学校があっていいではないか。非常にかたい形でできている学校、そして、非常に緩やかな形でできている学校、とにかく生涯学習ということが言われておりますときに、ある程度入学について特別な特例を設けたり、入学の時期についても特例を設けたり、言ってみればある程度いつでも入れるような高等学校というものが社会に提供されて、そして将来、会社に勤めていても勉強の意欲があればそこへ戻ってくるというふうなことがあってしかるべきではないかというふうに私は思うわけでございます。したがって、高等学校一つのパターンではなくて、いろいろなパターンの中の一つ単位制高校として発展してくれることを私たちは期待いたしたいというふうに思います。
  87. 石井郁子

    石井(郁)委員 私も金沢中央高校には現地へ行ってまいりました。いろいろ先生方に伺ってみたわけですけれども、半年経過した段階で既にいろいろな問題が出てきております。先生方は純粋の単位制は物理的にも生徒の質からも不可能だというふうにおっしゃって、単位制を修正という方向で考えざるを得ないとおっしゃっているのです。文部省、つかんでいらっしゃるでしょうか。  具体的にちょっと申し上げますと、前期を終了した段階で既に留年確定の生徒が出ているのですね。もう単位が取れない。学年制をとらないために留年にもならなくて救済措置ができないのですよ。生徒の方は、ここは学年制がないのだから、単位を取らないけれども何年かここにいてもいいのでしょう、そういう生徒の方が出てきているということです。だから、四年たっても卒業できない卒業延期の生徒が大量に出るのではないかと心配されているわけです。つまり、現実には定時制に来る子供たちは高校中退、あるいは偏差値の輪切りの底辺の子たちが来ている。とりたい科目を好きなようにという話は、逆にとれない状況をつくり出している、その授業を投げ出すようなことになっているわけですね。大変な問題が起きているわけです。  文部省は、この単位制高校については中等教育改革の推進に関する調査研究協力者会議をつくりまして、先ほど来六年制中等学校とこの単位制高校ということで検討されていると思うのですが、現場の方からも単位制導入については賛否両論併記があったという中で、いわばもう問題がわかっていたのか、わかってないのかがちょっと私はわからないのですけれども、とにかく踏み切ってしまっているということがあるわけですね。文部省は、今金沢中央高校などで起きているこういう実態は予想していたのでしょうか。
  88. 古村澄一

    古村政府委員 金沢中央高校につきましては、具体的に私ども詳しいことを知っているわけではございませんが、石川県の教育委員会が金沢中央高校を単位制に切りかえることについて大変熱心であった、私は、その意気あるいは努力というものは非常に評価すべきだというふうに思います。  そこで、今おっしゃいましたいろいろな問題点というのは知っているか。私は、新しい制度でございますからいろいろな問題点が出るだろう、それは出ても、そこをどう克服していくかという問題があろうかと思いますが、大きな流れとしては、この単位制高校というのは国民の、いわゆる勤労青少年、あるいは生涯教育という観点から期待されるものになっていくだろうというふうに思います。したがって、いろいろな問題点というものについては、それはそこでやはりちゃんと対処していくべき事柄であろうというふうに思っておるわけでございます。
  89. 石井郁子

    石井(郁)委員 ただきれいごとに、単位制は単位の加算ができますとかこれまでの単位が生かされますとかいうことでは済まないという現実が出ているということを今申し上げているわけです。非常に個々の興味と関心による選択というようなことで言われますけれども、今の高校ではそれ自身が大変なんです、特に定時制高校では。だから、先生の方が非常に手厚い学習の指導または生活指導をしなければとてもそういう学習などやり切っていけない、そういう子供たちが来ているわけですから、ただ好きな単位が取れますという言い方では、単位を取らない子供は結局放置されていくということにもつながるのですね。その辺を本当にどうお考えになるのかということが大事だと思うわけです。  ここで私は、ちょっとアメリカの例で申し上げたいのですけれども、実はこういう単位制高校に似た考え方は、もう文部省は御存じだと思いますが、七〇年代世界の先進国で一時はやりましたね。アメリカでも、子供に適合した内容と彼らの自主性に任せた学習方法、こういう文句でカリキュラム多様化しました。そうしますと、カリキュラムのアラカルトで、いろいろなメニューはあるけれどもメーンディッシュがわからないということが出てきているわけです。生徒の方は、とにかく幅広く選択できるようにとしましたけれども、結果として、国語、数学といった基礎的な科目をとる生徒が減りまして、料理、運転、そういう科目がふえました。この点で日本の共通一次に該当するような進学適性テストがあるのですけれども、それによりますと、成績が十五年にわたって低下をする、社会問題になりました。それで七〇年代後半からアメリカでは、逆にベーシックに帰れということが言われるようになっているわけですね。  だから、子供たちにはしっかり学習させるということを教育機関としてやはりどう保障するかという観点が抜けますと学力低下になるのです。勉強をしない子供はもう放置されていくということになるわけですね。こういうことを文部省は当然御存じだと思うのですけれども、私は、今回の法改正は、まさにこういうことに行き着くという結果が見えているような点がありますし、アメリカの轍を踏まないとは言えないという点で文部省の御見解を伺いたいと思います。
  90. 古村澄一

    古村政府委員 先生おっしゃいますように、アメリカは確かに非常に自由なカリキュラムに対する反省から必修教科をぐっと締めてきた、締めていこうというふうな傾向がございます。同時に、今度は日本側を見ますと、日本はちょっとかた過ぎるのではないか、もうちょっと選択の幅を広げた方がいいではないかということを日本の中では言われている。ですから、私たちといたしましては、高等学校教育水準をきちっと保つということは当然考えなければなりません。  したがって、必修教科というものをきっちり置いて、必修教科の水準というものをやり、そして選択教科の幅をある程度広げるということで選択の問題は処理をいたしたいと思っておりますけれども、今言っておりますのは、単位制高校は単位の修得によって積み重ねるということですから、一つ一つ単位というのは、これは必修教科であれ選択教科であれ、一定の水準を修得したということを証明することになるわけでございます。したがって、そのことが直ちに学力水準につながる話ではない。学力水準を決める問題は、学習指導要領の中での教科の決め方だろうというふうに思うわけでございます。
  91. 石井郁子

    石井(郁)委員 その多様なカリキュラムの中に先ほど来の技能連携もございますし、これは驚いたことに、実務代替というのが入ってきておりますね。この実務代替についてちょっと伺いたいのですけれども職業一般あるいは家庭一般という科目の中で自分の職場にいる勤務も単位として認めるという中身ですね。家庭一般の例で言いますと、結婚している方は家事もその単位の一部として認めるということがありまして、私どもちょっと驚いたわけですけれども、こういう実務代替、ここまで広げられますと、一体そういうものをどうやって単位として認定するのか、非常に難しいのではないか。また、それを教育をしている高校の側が教育をしてないのに単位として認めなければいけないということになりますと、単位の考え方自身も非常に変わってくるのではないかというふうに思うわけです。  実務代替について、特に家庭一般の例で、一体家事なんというのはどういうように単位として評価されるのですか。文部省、いかがですか。
  92. 古村澄一

    古村政府委員 一般的に実務代替というのはどういう考え方かということを申し上げますと、定通課程におきまして職業科目を履修する生徒が現にその教科、科目と密接な関係を有します職業に従事している場合で、その職業における実務等がその各教科、科目の一部を履修した場合と同様の成果があると認められるときは、その実務をもって一部にかえることができるというのが実務代替でございます。  したがって、具体的には、家事というのは私もちょっとあれでございますが、一般的に考えられますのは、工場に勤務いたしております、そのときにその工場におきましてやっております仕事と高等学校におきます工業実習というものとの兼ね合い、その共通性というものを学校側が十分認識をしてやっていく。単に工場に勤めていますというだけではなくて、その実務の実態も評価をした上で認定をするというのが現実にとられております実務代替の制度でございます。
  93. 石井郁子

    石井(郁)委員 この点で多様なカリキュラムという形でいろいろなものが入ってくるということが考えられるわけですけれども、私はやはりそういう方向を進めると全日制とは異なった高校教育のレベルダウンということになるのではないかというふうに思うわけです。  その点で、ぜひとも文部省がこういう点でのしっかりとした高校教育の理念をゆがめないというお考えに立っていただくことが大事だというふうに思うわけです。また、高校としての、学校としての教育をいわば一部崩していくということにもなっているわけですね。だから、そういう教育の責任のいわば放棄と、強く言えば言わなければならないような中身になると思うわけです。その点、ぜひ大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
  94. 中島源太郎

    中島国務大臣 御意見を伺っておりまして、私も教育に関しまして、できれば教育の系統性あるいは集団性、そういう中での教育の意義というものは十分認める一人でございます。しかし、系統的、集団的な教育体系をたまたま受ける環境におられない方、こういう方々に教育の機会を失わしめるということは教育の機会均等に相反する、こう思うわけでございまして、いろいろな形で就労されておられる方々がいらっしゃるわけでありまして、そういう方々に教育の機会をできるだけ広める、これが教育の機会均等の一つの思想であろうと思うのですね。  そういう意味で、私は二つ申し上げたいのですが、全日制の中でも、それではそういう環境にありながら二%の十一万四千人の方々が中退される、これについてはやはり高校そのものがもう少し個性的になって、それぞれ学校を選ぶのと同時にその教育内容を選べるというところまでいくのが一つの理想だと思っております。また一方で、そういう環境にない方々のために、先ほどから高校の教育あり方というのは何かという御指摘もありましたけれども高等教育におきましては、優秀な研究者を輩出すると同時に質の高い職業人を世に送るということがありますし、じゃ高等学校教育はどうかと申しますと、よりどころとしては、教育の目標としては学教法の四十二条にありますように、これはやはり社会人としての自覚をまず持つということが前提にあると思うのです。  そういう中で自分の進路を定め、その中で一般教養あるいは専門教養を修めせしめる、そういう中に一致させていくということが大事なことだと私は思いますので、今進めておりますのは、そういう中での、特に先生おっしゃいますように勤労学生の方々により機会を与えよう、それで定時制通信制一つの形態としてこの単位制も考えたわけでありまして、この出発に際しましては当然長所もあれば改善すべき点ももちろんあると思います。しかし、これを進める上にやはり目標というものは掲げていく必要がある。それには、先ほどから再三申し上げておりますように、そういう方々への機会の拡大、こういうものの上で新たに発足をさせていただきました単位制高校というものは必ずやよき学校教育の一環として発展し得るもの、その長所を今後精いっぱい伸ばしていきたい、そのように私どもは考えておるところでございます。
  95. 石井郁子

    石井(郁)委員 大臣が高校中退の問題にお触れになりましたので、その点でも私ども再度伺いたいと思うのですが、現場の方でもこの単位制高校が高校中退者対策としての意味はある、あるのではないかというふうにつかんでおられるわけですね。現実にそういう生徒たちも入ってきているというのはそうだと思うわけです。しかし、先ほどの金沢中央高校では、もう前期の単位が取れなくて卒業延期になりそうな生徒、そういう生徒に対して学校側が、一度学校をやめてまた勉強したくなったら来なさい、こういう指導をせざるを得ないというわけですね。これだったら単位制の理念そのものが少しも生きてないということになりませんか。単位も取らずに学校でぶらぶらする生徒が出てくるのが困るという話なんですね。  そこで、局長の御答弁もありましたけれども、この単位制高校というのは、今十一万人という高校中退者、異常なわけですけれども、そういう全日制からの中退者を通学させやすい学校、そういう形で考えておられるのでしょうか。そういう中退者の対策として本当に有効だというふうにお考えになっておられるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  96. 古村澄一

    古村政府委員 専ら単位制高校が高校中退者に対する対策であるというふうには考えておりません。しかしながら、高校の中退者単位制高校に入っていけば、普通の学校であればもう一回高等学校の一年からやり直すということが、そうでなくて残った単位を取ればいいということになれば、それはより社会的に評価されるものになるのではなかろうかと思うわけでございます。
  97. 石井郁子

    石井(郁)委員 ちょっとまた角度を変えまして、単位制という考え方は全日制にも導入していく方向で文部省としては検討が進められていますか。
  98. 古村澄一

    古村政府委員 先ほどから私も申し上げておりますが、高等学校の今後の行き方というのはやはり十分検討すべきだろうということで七月に高等学校個性化に関する調査研究会議というものを発足させたというふうに御説明を申し上げました。その中で、今後高等学校の運営の中で単位制でいくのか、学年制をどういくのか、その間の接点があるのかというものは検討の課題になると私は思っております。ただ、今その方向性についてはっきり申し上げるつもりはございませんが、それは十分検討してもらいたいというふうに思っております。
  99. 石井郁子

    石井(郁)委員 大臣の御見解も伺いたいと思いますが、続きまして、先日来のこの審議の中で大臣の御答弁もありましたけれども単位制高校の設置の趣旨が生涯学習としての観点からだということが強調されているわけですね。そうして今のお話のように、単位制は全日制にも適用する方向で検討ということになりますと、高校が限りなく社会教育へ接近することにならないでしょうか。生涯学習としての観点という点で、高校に社会人の受け入れとかが非常に進むわけです。それは今までの高校からすると全く違ったものに変わっていくと考えられるわけですが、その点で大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  100. 中島源太郎

    中島国務大臣 これについては、二つまた申し上げたいと思うわけでございます。  後期中等教育が変わっていってしまうのではないかという御懸念が一方にあると思うのですが、私が生涯学習観点で考えるべきだと申し上げるのは一つありまして、具体に先生おっしゃいますように、一度社会に出た方がまたそこで学ぶところという意味もございますけれども、もっと正しくは、私がさっき申しましたように、生涯学習観点と申しましたのは、限られた八十年の生涯をいかに意義ある社会人として過ごすか、その中の重要な教育の一環である。それではそこで限られた高等学校教育は何を目指すのかと申しますと、中学校教育をもとに置きましてその上に普通教育、専門教育を学ばしめるところであるというのが四十一条でございます。四十二条の二号にまさにその目標としては「社会において果さなければならない使命の自覚に基き、個性に応じて将来の進路を決定させ、」というのが前提にありまして、そして一般的教養、専門的技能を習熟せしめる、こういうことでございますので、私はそのものをつまり生涯学習視点でとらえていった方が正しいのだ、これがそれぞれに御自覚があれば私は単位制高校に学ばれる方が自分の自覚がしっかりしておれば、単位制高校というものをよりよく活用していただきながら学んでいただける、こう思っておるわけであります。それが一つです。  もう一つ、お答えしなければならぬと聞いておって思いましたのは、では一般の全日制高校に単位制というものを考えていくということは、これも高校教育というものを変形させてしまうのではないかというお気持ちはわからないではありません。しかし、先ほど私が、わざとと言っては失礼ですが、こちらから提起をいたしましたのは、全日制高校の中にも十一万四千人という中退者の方々がおられるではないか。それは高校そのものがもう少し個性化弾力化があることによってその方々をより学びやすくすることができるのではないか。その中の一つに学年制というものがこのまま固定していていいのだろうかという議論があるわけでありますので、そういう意味で学年制の中にも単位制というものをもう少し弾力化して考えていくべきではないかということでありまして、決して今の高等学校教育を変形し、あるいは失礼ながら破壊するということではなくて、むしろそういう実態面からして弾力化していこうという考えの一環であるということを申し上げたいわけであります。
  101. 石井郁子

    石井(郁)委員 中退者の問題について言いますと、学年制があるから中退者がふえるということではないと思うのです。というのは、大体どのデータを見ても、高校へ入学して前半で間もなくこの高校が合わないということでやめておられる方が多いわけです。それから普通科職業科で分けますと、二対一の割合で職業科生徒が退学しているのです。やはり入るときに問題があるわけです。不本意入学しているわけです。だから、そこのところを見ていただかないと中退者の問題で単位制をつなげたら違うのではないか。それから、現実の高校でもやはりもっと入退学についての条件を緩和というか、それこそ弾力的に考えれば救えるという問題があると思うのですね。そちらの方こそ私はぜひ手をつけるべきだ。中退者を何か救う措置として単位制高校が非常にメリットがあるみたいに言われますと、これはやはり解決の方向を誤るのではないかということが申し上げたい点です。  それから、大臣に反論するようですけれども、まさに単位制というのは自分の自覚があればそこで教育が有効に行われるという話ですが、今の高校で一体生徒が――自覚を持って学ぶような生徒がいれば本当に問題はないと思います。そうでないから今の高校教育は現場が大変混乱をし、先生方も悩んでいらっしゃるわけですね。だから、何かそういう現実と離れたところで条件を設定してもやはり現実にはそれが適用できないという問題があるように思うわけです。  そういう点では、話が全日制の変換も含む高校教育の全面的な問題として私ども考えているわけですけれども、ぜひこの点で、今文部省内で進めておられると思いますけれども高校教育個性化等の推進に関する調査研究協力者会議ございますね、その議事録といいますか会議録についても逐次公にしていただいて、大いに議論を進めていただきたいというふうに、この資科の提出を要求しておきたいというふうに思います。  次に、最後に今高校教育全体の問題ということになってきましたので、特に高校中退と関連いたしますし、全日制高校の問題についてお伺いをしたいというふうに思います。  定時制に来る生徒も全日制に落ちたから定時制にという生徒たちが六割から七割だというふうに言われております。私どもは、そういう意味で全日制高校の増設という問題がやはり最重要の課題だというふうに思うわけです。高校の建設補助費の問題でまず伺いたいのですが、ことしで切れるのではないでしょうか。その点で、どういう状況になっていますか、ちょっと御説明いただきたいと思います。
  102. 倉地克次

    ○倉地政府委員 高校の急増対策を目的といたしまして設けました新設高等学校施設の整備の補助金でございますけれども、これは本年度限りということになっておる次第でございます。
  103. 石井郁子

    石井(郁)委員 文部省内では来年以降どのようにされますか。
  104. 倉地克次

    ○倉地政府委員 先ほど申し上げましたように、高等学校の急増にどのように対処していくかということついて設けられた補助金でございまして、今までやっておりました高校建物についての地方債とか交付税による措置の例外措置として設けたものでございます。高校急増に対する施設の整備は各都道府県でおおよそ終わっているわけでございますので、今後急減するような事態が来ております関係もございまして、さらにこの措置を継続していくということは極めて困難ではないかというふうに考えている次第でございます。
  105. 石井郁子

    石井(郁)委員 学級定数について伺いますけれども、世界の教育改革が進んだ中では、まさに学級定数の改善こそ進められてきたわけでして、上級学年に行くにつれてクラス定員は少なくなるというのが大体世界の趨勢だと思うのですね。  これはアメリカの例でも、インディアナ州は、一年から三年生、三十人、四年生―八年生が三十四人ですけれども、九年、十年、十一、十二学年、上級学年というのは二十八人以下ですね。ちょうど米ソということで比較をしますと、ソ連もそうですね。一年生から九年生までは三十人、十年、十一年生は二十五人。そういう点からすると、私は日本の高校が一クラス四十五人だ、これは本当に後進国並みですね。私立では五十人を超えるというクラスがざらにあるわけですね。私はどうしてこういうことが放置されて、世界の中の日本、二十一世紀教育改革ということが言えるのだろうかというふうに思うわけです。  高校の生徒はちょうど九〇年をピークに激減期を迎えるわけですけれども、そういう時期こそ高校で四十人学級、三十五人学級という体制をとるべきではないかというふうに思うわけですが、この対策は考えておられるでしょうか。
  106. 倉地克次

    ○倉地政府委員 高等学校の教職員定数、学級編制の問題であろうかと思うわけでございますが、この問題につきましては、現在、五十五年度を初年度といたします第四次の教職員定数の改善計画が進行しているところでございます。私どもといたしましては、この計画の着実な推進に十分努力してまいりたいと考えておりまして、この計画終了後に、今御指摘のありましたことにつきましては臨時教育審議会の答申も踏まえまして種々検討すべき課題ではないかというふうに考えている次第でございます。
  107. 石井郁子

    石井(郁)委員 今のままの学級定員でいきますと、一九九五年には高校がどのぐらいだぶつくことになるんでしょうか。高校廃校とか教諭の首切りというような事態は予想されませんか。
  108. 倉地克次

    ○倉地政府委員 先ほど申し上げましたように、私どもまだ現在の定数改善計画の実施に十分努力しているところでございまして、今御指摘の点についての試算その他の検討について具体的にまだ着手していない状況でございまして、そうした数字を申し上げる段階に至っていないのが現状でございます。
  109. 石井郁子

    石井(郁)委員 第四次定数改善計画は六十六年度で終わりますね。その後についてというのは、もう今から着手しないと間に合わないんじゃないでしょうか。今、何も検討されていないというのは――では、六十六年度以降どうされるおつもりなのかですね。
  110. 倉地克次

    ○倉地政府委員 御指摘ではございますけれども、大変厳しい財政事情の中で、この五十五年から始まりました定数改善計画を今着実に実施しようと努力しているところでございまして、いろいろ個人個人が勉強はしておりますけれども、まだ、ここで申し上げるような検討をしているという段階には到達していない状況でございます。
  111. 石井郁子

    石井(郁)委員 私どもがちょっと調べたところでは、ピーク時と比べますと九五年度の入学者数が約二十八万二千人減るわけですね。普通科職業科の割合が現在と同程度の七対三、適正規模を一学年八学級として計算すると、四十五人学級のままですと、普通科で六百校余る、こういうことになりませんか。ピーク時四十五人学級の必要高校数と、今度は九五年三十五人学級にした必要学校数が大体つり合うんですね。この計算が合っているかどうかを含めて、私は、文部省は当然急減期対策を考えていなければおかしい、いらっしゃるはずだと思うわけですが、世界的に見ても本当に日本高等学校の定員が異常だというか恥ずかしい状態だと思うのですけれども、この時期に解消に向かうということでぜひとも文部省決意をお聞かせ願いたいと思うわけです。
  112. 倉地克次

    ○倉地政府委員 御指摘の点は、私どもといたしましても大変重要かつ重大な課題だというふうに考えている次第でございます。今後鋭意いろいろと勉強を続けてまいりたい、さように考えている次第でございます。
  113. 石井郁子

    石井(郁)委員 大臣、いかがですか。
  114. 中島源太郎

    中島国務大臣 御指摘の点は確かに重要なことだと思いますので、具体に局長等と検討いたしまして最善を尽くしてまいりたいと思います。
  115. 石井郁子

    石井(郁)委員 非常に具体的に何か一歩も踏み出ていないような感じがして残念でならないわけですけれども、高校進学率が九四%、しかも圧倒的にやはり全日制への進学を希望していらっしゃるわけですね。やはり文部省はそういう国民の願いというか声にきちっとこたえる、それが文部省としての教育条件の整備という第一の優先課題だと思うのですね。それが一向に何かあいまいで、それで盛んに単位制高校の方が何か持ち上げられるという点ではとても納得しがたいわけです。  先ほどの建設費補助費の来年度の問題もはっきり考えられていない。大阪で言いますと、マンモス校、一学年十六クラスというのが二校あります。十四クラスは十二校です。十三クラスが六校もあります。とても先生は生徒の顔も覚えられないという詰め込みになっているわけですね。そういう状態を本当にどのように変えていくのかという点で、再度文部省決意を伺いたいわけです。  ぜひ委員長にもお願いしたいと思うのですが、この高校問題では、やはり文教委員会としても小委員会なりをつくるなりしてもっと積極的な対応を考えるべきじゃないでしょうか。
  116. 中村靖

    中村委員長 今の石井委員の御指摘につきましては、理事会で各党協議させていただきます。
  117. 中島源太郎

    中島国務大臣 繰り返すようでございますが、最善の努力をいたしてまいります。  また、先生おっしゃるように、その前の御質問でございますが、単に全日制単位制というのでなくて、その前に私申しましたように、ここは全く先生と同感なんですが、理想的に言えば、高校そのものがそれぞれ多様化個性化をいたしまして、履修する生徒諸君が学校を選ぶというよりは教育内容を選んで履修の機会を持てる、そういうことになるのが理想的である、私もそう思います。それに向かいまして最善の努力をいたしてまいりたい、これもつけ加えさせていただきます。
  118. 石井郁子

    石井(郁)委員 議論が十分ではなかったわけですけれども、先ほど来の単位制高校をめぐる議論でも、私は、やはり限りなく社会教育の方に近づくのではないかというふうに言ったわけですけれども学校教育法で定めている高校教育の理念、義務教育卒業者に対して高校教育を保障する、それはすべての国民に開かれているものだということからしても、やはり学校教育法の高等普通教育の理念、内容あるいは専門教育の完成、またそういう将来の子供たちの育成、そういう目的から見ても、今回の問題というのはやはり高校教育の全面的な転換につながる、その一歩になるというふうに思わざるを得ないわけですが、その点で、学校教育法上の高校教育の目的、それを文部大臣に伺っておきたいというふうに思います。
  119. 中島源太郎

    中島国務大臣 学校あり方教育あり方、これは重要でございます。したがって、繰り返すようでございますが、そのよりどころと申しますか、その目標というものは何かと問われれば、学教法四十一条、四十二条に掲げられておる高等学校あり方、これを胸に置きまして、そして後期中等教育の充実をこれからも全力で図ってまいりたい、こう考えます。
  120. 石井郁子

    石井(郁)委員 本法案定時制通信制課程の問題ということにとどまらない問題を含んでいるというふうに私ども認識しているわけです。高等教育全体のあり方にかかわって幾つかの質問もしてまいりました。しかし、残した問題も大変多いわけですね。そういう点で、あと幾つか課題を申し上げまして、私はやはりこの学校教育法の一部改正案にもっと徹底した審議をということを要求したいというふうに思うわけです。  一つ技能連携についてですけれども、この問題は、やはり昭和三十六年、そしてその前後にいろいろ議論されましたように今日新たな議論も必要だというふうに思うわけです。企業が行うべき職業訓練教育、それを高校教育、そこには専門教育を含むわけですけれども高校教育でどうそこをリンクさせるかという問題は、その区別と関連があるように思うわけですね。そういう点でもっと突っ込んだ議論が必要だというふうに思っております。  また、単位制高校については、私はきょうは主として教育の水準という教育内容の面から質問をいたしましたけれども、たくさんの問題点がまだ残されていると思います。先生方の勤務条件もあると思います。それから、学校施設設備の問題もあると思います。生徒指導という問題もあると思います。また、この単位制高校には社会人の講師ということがうたわれておりますので、そういう点でも社会教育との区別という問題をどうするのかという問題があります。このことは私は触れることはできませんでした。  それから、大きな問題点は、まさに今の後期中等教育をどうするかということですけれども、高校の多様化という政策は、文部省、戦後ある時期からずっと進めてまいりましたね。今度の臨教審の後期中等教育多様化弾力化というのは、高校教育を新たな段階で多様化を進めるというふうに考えられるわけです。そういう意味で、この高校の多様化政策は、過去進めてきたものは一体どういうものであったのか、高校の現場に何をもたらしたのかということの総括や評価も必要だと思うのですね。そのことは私ども時間的に一切触れることができませんでした。  最後に、大変大きな問題は、生涯学習という問題です。生涯学習観点から後期中等教育多様化というふうに言われているわけですけれども、このことは今この文教委員会では議論が始まったばかりですよね。臨教審答申はあったと言えばそうですけれども、そうなりますと、初めに臨教審ありきで、臨教審教育改革は既成事実としてどんどん進んでいる、文教委員会ではその後追いの法改正をしていっている、私は何かそういうように思われてならないわけです。だから、文教委員会で議論もしてない生涯学習というのが大前提でいわば押しつけられてきたのでは、これはちょっと議論が本末転倒ではないかというふうに思うわけです。審議会決定を国会に押しつけるという点でも、私は国会審議の軽視につながるという点で重大な問題を持っているというふうに思っています。  いろいろそういう点で、この学校教育法はここで後で採決ということになるのでしょうけれども審議時間にしては八時間ですね。この単位制高校も新構想の高校として麗々しく打ち出しているわけですから、私ども、かつて新構想と言えば筑波の新構想大学を思うわけですけれども、あの筑波大学のときには、伺いますと文教では五十数時間議論をしたということであります。それから見ると、何か高等教育を軽視していることにもつながるのではないか。八時間くらいで戦後四十年続いてきた定時制教育の問題が根本的に変換されるということになりますと大変問題を残さざるを得ないというふうに思うわけです。  そういう点で、慎重に徹底した審議をあくまでも要求をいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  121. 中村靖

    中村委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  122. 中村靖

    中村委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。逢沢一郎君。
  123. 逢沢一郎

    ○逢沢委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、学校教育法の一部を改正する法律案について、賛成の立場から討論を行います。  現在の我が国の高等学校は、九四%の者が進学する国民的教育機関となっており、平均的にはおおむね良好な状況にあると言えます。しかし、個々の生徒状況を見ると、中退者問題などにあらわれているように、現在の高等学校はともすれば制度と運用の両面で画一的、硬直的と言わざるを得ない面があり、極めて多様化している生徒実態に必ずしも適合していないという問題があります。  これからは、生徒一人一人の能力・適性、興味・関心等に応じた教育を選択できるようにし、その個性の伸長と多彩な才能をはぐくむことが重要であり、そのためには、高等学校がそれぞれ特色を持つこと、すなわち学校自体の個性化を推進するとともに、高校間における連携等によって、生徒実態に応じ、多様な教科・科目を選択し得るようにすることが必要であります。  このような全体的な高等学校教育変化の中で、特に定時制通信制教育生徒変化等によってさまざまな問題が生じており、多様化弾力化の方向に沿ってその改善を図っていくことは今や緊要な課題であります。  したがって、こうした実態上の変化に応じ、今後は、より学びやすい、より魅力ある定時制高校通信制高校になるように改善することが重要であり、今回の法改正は、その一つの方策として極めて重要と考える次第であります。  まず、修業年限弾力化については、今日においても既に三年間で高等学校卒業するために必要な単位を履修しているにもかかわらず、修業年限が四年であるために卒業できずにいるという実態が生じており、そのことが定時制高校通信制高校を敬遠させている面があるのではないかと思われます。その意味で修業年限弾力化は、一日も速やかに措置すべきであります。  なお、この修業年限弾力化について、勤労青少年学習することが困難となるのではないかと懸念する意見もありますが、今回の改正は、今日の生徒実態等にかんがみ、特段の支障がないと認められる者については、三年でも卒業し得る道を開くところにその意義があるのであり、そのような問題は生じないものと考えます。  また、技能連携制度については、これにより、定時制通信制課程に学ぶ勤労青少年学習負担が軽減されるとともに、それらの生徒職業教育において実践的な技術・技能教育が行われることになったものと評価するものであります。  今回の改正案は、指定の基準は従来どおり国が定めることとしてその水準を担保しつつ、技能教育施設により近いところにある各都道府県において施設実態を踏まえた運用がなされるものと期待されるので、国と地方の役割分担の見地からも極めて妥当な案であると考えます。  以上の理由で本案に賛成するものでありますが、最後に、高等学校における定時制通信制教育の振興が図られるとともに、学校教育が一層充実発展していくことを期待して討論を終わります。
  124. 中村靖

    中村委員長 次に、山原建二郎君。
  125. 山原健二郎

    ○山原委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、学校教育法の一部を改正する法律案について反対討論を行います。  まず、本委員会に課せられた責務について一言触れなければなりません。それは、法案の基礎になっている臨教審答申が、ただいま国政上の最大の課題になっているリクルート疑惑に深くかかわっていることであります。江副氏が臨教審の専門委員に対して非公開株を譲渡し、また、江副氏自身も教育課程審議委員、大学審議委員になっているのであります。まさに、今日政府が進めている教育改革の根本が汚されていたという疑惑が持たれている重大問題なのであります。私は、この解明こそが法案審議に先行して徹底解明されるべきものであることをこれからも強く主張するものであります。  この法律案は、約四十年の歴史を持つ定時制通信制の全面的な転換につながる内容を持つものであり、その重要性から見て、定通制関係者等を招いて参考人質疑をすることなども当然でありながら、それすら行われなかったことについては極めて残念と言わなければなりません。  反対理由は、第一に、定通制修業年限の短縮は、働きながら学ぶ勤労青少年の後期中等教育の保障ができなくなるということでございます。しかも、定時制課程を三年で卒業するためには、通信制との併修、専門学校等での技能連携などが不可欠となり、生徒にとっては過重負担になることは必至であります。また、技能連携施設指定大臣から都道府県教育委員会に移管することは、高校と専門学校等の技能連携が安易に拡大されるおそれもあり、定時制通信制高校で学ぶ生徒に対し、全日制課程生徒と平等の教育内容を保障せず、低い水準の教育に押しとどめることになると言わなければなりません。  第二に、法案審議に先立ち、既に省令改正により単位制高校が発足していますが、これは学校教育社会教育の差をなくしていくもので、学校としてのまとまりを全く欠く結果となり、容認することはできません。この単位制高校を全日制高校にまで拡大しようとする意図が感ぜられますが、このことは戦後、総合制をとってきた高校教育に複線化の道を開くものであり、断じて容認することはできません。したがって、後に提出されるであろう附帯決議につきましても、単位制高校については削除を求めるものでございますが、他の部分は改善に当たりますので、賛成する意思をここで表明をいたしておきます。  最後に、今求められているのは、勤労青少年教育機会を保障する定通制高校の充実であり、後期中等教育の条件整備であります。その方向に逆行する本法案の廃案を強く要求しまして、反対討論を終わります。
  126. 中村靖

    中村委員長 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  127. 中村靖

    中村委員長 これより採決に入ります。  第百十二回国会内閣提出学校教育法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立)
  128. 中村靖

    中村委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  129. 中村靖

    中村委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、鳩山邦夫君外三名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合の四党共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。佐藤徳雄君。
  130. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 私は、提出者を代表いたしまして、ただいまの法律案に対する附帯決議案について御説明を申し上げます。  まず、案文を朗読をいたします。     学校教育法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、高等学校教育の重要性にかんがみ、次の事項について、特段の配慮をすべきである。  一 定通課程教育について、その充実を図るため、単位高等学校等の教職員定数、施設・設備などその条件整備について、所要の財政措置を速やかに講ずること。  二 技能連携制度については、学校教育法に規定する高等学校の目的に即した適正な運用に努めること。  三 定通課程制度創設の趣旨にかんがみ、今後とも勤労青少年の修学奨励策の充実に努めること。  四 第四次公立高等学校等の学級編制及び教職員定数の改善計画について、その計画期間内達成を図るとともに、その後の改善計画について検討を進めること。 以上でございます。  その趣旨につきましては、本案の質疑応答を通じて明らかであると存じますので、案文の朗読をもって趣旨の説明にかえさせていただきます。  何とぞ御賛同くださいますようお願いを申し上げます。
  131. 中村靖

    中村委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  132. 中村靖

    中村委員長 起立総員。よって、本動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、本附帯決議に対し、文部大臣から発言を求められておりますので、これを許します。中島文部大臣
  133. 中島源太郎

    中島国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。     ─────────────
  134. 中村靖

    中村委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  135. 中村靖

    中村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  136. 中村靖

    中村委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十五分休憩      ────◇─────     午後一時三十五分開議
  137. 中村靖

    中村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石渡照久君。
  138. 石渡照久

    ○石渡委員 オリンピックが終わりました。東京オリンピックがすばらしい秋空であったように、ソウル・オリンピックがすばらしい青空であったことを本当にうれしく思いました。本当によかったなと思いました。  さて、スポーツの振興について、特に主として競技スポーツについて御質問をさせていただきます。よろしくお願いを申し上げます。  過日、韓国で行われたソウル・オリンピック大会は、オリンピック史上最大の規模を持って成功裏に終了しました。我が国からも、隣国での大会として東京オリンピック大会に次ぐ規模の選手団が派遣され、国民に感銘を与える活躍も幾つか見られたのでありますが、全体の成績としては金メダル四個、銀メダル三個、銅メダル七個と前回のロサンゼルス大会より大きく後退し、国民の期待に十分こたえられなかったのであります。  その要因としては、幾つか考えられると思いますが、その一つとして諸外国が選手強化のため多額の国の資金を注いでいるのに比べ、経済大国日本の選手強化予算が余りにも少ないのではないか。ソ連では金メダリストに二百六十万円の褒賞金を支給するなど、諸外国のメダリストに対する処遇には大変なものがあると聞いているわけです。一方、日本選手の多くは仕事や学業と練習との両立に悩んだり、練習場所の確保にも困るなど、厳しい条件の中で励んでいるのであります。これらの解決のために、まず日本体育協会や各競技団体の選手強化事業に十分な資金援助が必要であります。  次に、より根本的な問題として、日本のスポーツ界の体質が、選手が最大限の実力を発揮するのを妨げている面があるのではないか。例えば、日本のお家芸ともいうべき柔道の予想外の不振は数年来の内紛が原因の一つとなっているのではないかと思われます。また、自転車のある選手も、国民に期待されながら実力を発揮できずに終わったのは、競技団体のコーチ陣に対立があったのも一因ではないかということも聞いております。このように日本のスポーツ界における指導、協力体制の問題があり、日本体育協会そのもののあり方も含め根本的な見直しが必要ではないか。そのための一方策として、体協及び競技団体の運営やスポーツ行政に対し若手指導者や現役選手の意見を反映させることも考えるべきではないかと思うのであります。  さらに、今や世界のトップレベルのスポーツは科学の戦いとも言われているときになっております。我が国のスポーツ医学、科学への取り組みに立ちおくれがあるのではないかと思うわけであります。  以上の点を踏まえて御質問をいたします。  ソウル・オリンピックにおける日本選手団の成績についてどうお考えでありましょうか、その不振の原因は何であったのでありましょうか、大臣にお尋ねをいたします。
  139. 中島源太郎

    中島国務大臣 まず、お尋ねの冒頭にソウル・オリンピックの成功を祝っておられました。私もともどもに一番近い国で多くの参加国を得て成功裏に終わられたことを心からお喜びを申し上げる次第であります。  そういう中から的確な御指摘をいただきました。その中でソウル・オリンピックの成績をどう思うかということでありますが、先生が冒頭に言われました幾つかの御指摘は非常に当を得ておると思います。翻って、選手諸君の努力、これは私はよくやったと言って褒めてあげたいと思っております。  どこに問題があるかというと、言うなれば私どもに問題があったのではないだろうか。とするならばどうしたらいいのかという観点とあわせてお答えをしたいと思うのですが、たまたま総理のもとにスポーツ振興に関する懇談会が持たれまして、この春先に一応の御意見をいただいたわけであります。しかし、これは私的懇談会でございますので、正式な審議会としては文部省におきまして保健体育審議会でお預かりをして審議をしていただくのが一番よかろうということで進めておりまして、この八月に中間のまとめをいただいておりますので、これをお読みのことと思います。  その中で、強いて私が言葉で言えば、これからは四つの方向に従ってスポーツを振興させていきたい。その一つはジュニア対策でありまして、小さいときから、幼児のうちから才能を発見する。第二は、それなるがゆえによき指導者の育成が必要だ。コーチその他でありますが、これを進めなければいけない。第三番目には、さはさりながら、これは根性論だけではいけないのであって、おっしゃるようにスポーツ医科学との連携がぜひ必要である。それから第四番目には、各年齢あるいは各種目によりまして適正なカリキュラムを組んでいく、こういうことが必要であろう。これを私どもは四つの柱として進めていくところでございまして、振り返って、その面で今まで欠けておった面があったのではないかな、まずそういう反省は私どもいたしておるわけでございます。  これから取り組んでいきますにつきましては、今申し上げた保体審の中間答申、あるいはまた今さらに御審議をいただいておりますので、それを的確につかませていただいて、そして今おっしゃったようなインセンチブの問題あるいは体協に対する資金面での援助の問題、この点も今まで八億数千万をソウルの強化資金で出しておりますけれども、六十四年度ではこれを大幅にふやしたいというようなことは概算要求で要求はいたしておりますが、さらに皆様方の御鞭撻を得て充実させてまいりたい。  以上、冒頭それだけをまず申し上げさせていただきます。
  140. 石渡照久

    ○石渡委員 ローマ大会が十七個、東京二十九、メキシコ二十五、ミュンヘン二十九、モントリオール二十五、ロサンゼルスは三十二、ソウルが十四、メダルの獲得数であります。大臣、この次のバルセロナにおいてメダルがどのくらいとれるとお考えでしょうか、あるいはどのくらいとりたいとお考えでありましょうか。
  141. 中島源太郎

    中島国務大臣 これは過去のことを申しますと、決して言いわけをするわけではございませんが、ソウルの意義と申しますのは、前回のロス・オリンピック、これは表現は悪いのですけれども、東側の国が参加しておらなかった、その前のモスクワ・オリンピックには西側の国が参加できなかった、そういう面ではよい選手が一堂に会せなかったという不幸な面がございまして、そういう面でそのときのメダルは多かった。しかし、今度は非常にスポーツ水準の高い国が集まった。そういう中でいい成績を残すということは非常に困難な状態であったということはあるわけであります。  恐らく次のバルセロナもソウルに負けないような参加国を得たよきスポーツの祭典として持たれると思いますので、これを幾つというような限定したことは申せませんけれども、私どもははっきり申せば、スポーツ全般の底辺を広くしたいという中で可能性の強いものはより徹底的に競技スポーツとしては伸ばしていく必要があるのではないか。これを言うと、ではほかはどうなるかということでありますが、底辺は広く、生涯スポーツとしては全国民がスポーツに親しみ、その中からエキスパートというものは確実に育て上げていく、こういうことで幾つということは申せませんけれども一つでも多く、そしてスポーツ大国ということは世界に申し上げて何ら摩擦の起きない面でございますので、大いに充実をさせていきたい、このように考えます。
  142. 石渡照久

    ○石渡委員 私は、二十五個ぐらいこの次とれればいいのじゃないか、こう思っておるわけでございまして、それは、東京が二十九、メキシコが二十五、ミュンヘンが二十九、そしてモントリオールが二十五という、まことにごろ合わせではありませんが、そんなように個人的には考えておるわけであります。  しかし、今大臣おっしゃるように、確かに底辺を広げるということ、ここら辺が外国の取り組みとちょっと違うのかなと思う点があるわけであります。ソビエトの小中学校ですか、金づちの子供が八割だというようなことで、いわば選手強化ということに国が偏り過ぎているというようなことも一つの証左としてそんな話題もあるくらいでありますから、そこに日本の成熟社会に近づいている点の難しさがあろうかと思うわけでございますが、いずれにいたしましても官民挙げて努力しなければならないことであろうかというふうに考えるわけでございます。  次に、体協に対する補助金のことでありますが、先ほどもちょっとお触れになりましたけれども、大幅な増額が必要だと考えるわけであります。シーリング枠を外すというぐらいの決意で予算獲得に臨まなければならないのではないかと思います。それからまた、もう一つ、民間資金の導入を図るなど体協予算の大幅な増額について積極的な工夫をすべきだと考えます。補助金並びに民間資金の導入について御意見をいただきたいと思います。
  143. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 確かに諸外国に比べますと若干国の手当てが少ないじゃないかという御指摘も受けるわけでございますけれども、来年度の体協に対する補助金でございますが、体協に対する補助金をちなみに申し上げますと、金額として一番多い年というのが五十六年度でございまして、この年が十六億八千万円でございました。五十七年度から御承知の例の臨調答申に基づく緊縮財政予算が始まったわけでありますが、その後だんだんその影響を受けまして徐々に減額されてまいりまして、六十三年度、本年度でございますが、十三億円でございます。そのうち選手強化事業というのは八億七千万円でございますが、来年度は、特に選手強化事業につきまして今年度より五億円増の十三億七千万円、トータルで十八億二千万円の概算要求を今財政当局にぶつけているところでございます。そうしますと、我が国の中での総体的な体協に対する補助の推移から見ますと、ピークを迎えました五十六年度より約一億五千万ばかり大きい増額要求になるわけでございまして、この要求額につきましては最大限の努力をして確保してまいりたいというふうに私ども考えているところでございます。  それから、民間資金の導入の点でございますが、現在でも体協に対する補助金は、特定公益増進団体に体協が指定されておりまして、税制上かなり有利な取り扱いができるようになっているわけでございます。この制度に乗りまして体協に入ってまいります民間資金、寄付金というのが昨年度のベースで申し上げますと約六億六千万円ございます。  それから、先生も御承知の「ガンバレ!ニッポン!」キャンペーン、いわゆるオリンピック選手をPRに使って企業がテレビ広告などをするという、それの広告収入でございますが、六十一年度から六十四年度までの三カ年にわたって体協としては十億円の募金目標でスタートさせましたが、これが現在の六十三年度が全部終わらない段階で十一億円以上の収入が上がっておりまして、最終的には十二億円台に上るんじゃないかというふうに私ども期待はいたしております。そういう形で体協自身も民間資金の導入については鋭意努力をしているところでございます。  一方、先ほど大臣が申し上げました総理のスポーツ振興懇談会、それから私どもで今審議お願いしております保健体育審議会のさきの八月の中間報告の中にも、相当規模の民間資金を導入したスポーツ振興基金というものを創設して、そしてその果実でいろいろな事業をやるべきではないかという御提言をいただいておるわけですが、相当規模の資金を有するスポーツ振興基金を私どもはぜひ早急に創設したいという考えのもとで、来年度はどういう規模でどういう中身の事業を行うかという点について、それからどういう集め方をするかということを十分検討するということで調査会を開きたいということで調査費の要求を現在しているところでございます。この調査費を獲得しまして、この調査に基づきまして、できるだけ早い近い将来にスポーツ振興基金をつくりまして、その果実でスポーツ振興のための事業を行ってまいりたいというふうに考えているところでございます。
  144. 石渡照久

    ○石渡委員 六十三年の二月二十七日の衆議院予算委員会で田中慶秋委員が体協の予算について触れられておりました。「日本が十一億台、」これは十二億の間違いじゃないかと思いますが、「お隣の韓国が八十億、中国が百十億」というような指摘がされたことにつきまして、「総理大臣のもとに」スポーツ振興に関する「懇談会が過般設けられました。」「答申も出てまいりますと思います。」「そんなに大きな金のかかる話じゃ実はございませんので、意義のあることであれば、それはお金を惜しむことはないと思っております。」こう宮澤大蔵大臣が答えられております。ぜひそういうことで、大蔵大臣もはっきり予算委員会でそう言っておられるわけでございますので、ひとつ文部省にも頑張っていただきたい、私どもも一生懸命やらせていただくということを申し上げておきます。  先般、自民党のスポーツ振興に関する特別委員会とスポーツ振興議員連盟の合同会議がありました。お聞き及びだと思いますが、大変厳しい意見がこのときに出されました。それは、体協や文部省頑張れ、こういう意味もあろうかと思うわけでありますが、いずれにしても再建の抜本策を練らなければならないというあらわれだと感ずるわけであります。競技スポーツ関係団体やスポーツ行政に若手指導者を登用して現場の意見を選手強化に生かす方策を考えるべきだ、積極的にそんなふうに考えるわけですが、御所見をお伺いいたします。
  145. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 まさにそのとおりだと思います。一般的に私どもいろいろな審議会を持っておりますが、スポーツ振興に関する審議会でも委員を選ぶとなりますと、各界各層の代表者を集めてやるということになると、どうしてもある程度の年齢の行った人が代表者として出てくるというのが通例でございます。したがって、私どもはなるたけ実際に競技をし、ついこの間まで現役であったというような方々から実際の競技者としての国なり競技団体に対する言うべき苦情と申しますか、要望というものを直接聞いて行政に反映させていくことが重要だろうというふうに考えております。  そういう観点で、私どもの保健体育審議会の委員に、例えば柔道の山下選手、それからバレーの三屋選手あるいは水泳の田口選手など三十前後の比較的若い委員にも委員お願いいたしまして、随時いろいろなことを伺っているわけでございますが、それだけではなくて、私どもは来年度からは文部省にスポーツアドバイザーという形で若手のメダリストにスポーツアドバイザーとして委嘱いたしまして、直接その方々からストレートに、先ほど申し上げましたような競技者としての要望というようなものをよく聞いて、そして行政に反映させていきたい、そういう予算を概算要求いたしておりますので、これまた私どもぜひ概算要求で取りまして、来年度からそういう制度を発足させていきたいというふうに考えているところでございます。
  146. 石渡照久

    ○石渡委員 体協の役員の年齢構成をちょっと調べたのでありますが、理事、監事の平均年齢が六十四歳、評議員が約六十六歳ということで、最高年齢が理事、監事が八十一歳、評議員が八十五歳ということでございます。年代別の方も調べたのでありますが、やはり六十代が中心くらいの年齢構成になっておると思います。ロサンゼルスあるいはベルリンの栄光を担われた方々はそれなりの大変貴重な存在でありますけれども、戦後も四十三年たっております。やはり戦後のいろいろ活躍された方々、あるいはそういう考え方等の人たちによってもうそろそろ中心的な構成がされていいのじゃないかと思っておるわけでございます。  続きまして、現在計画中の国立のスポーツ科学センターの進行状況についてちょっとお尋ねをいたしたいと思います。
  147. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 スポーツ医科学を中心にして競技力向上を図るという国立スポーツ科学センターにつきましては従来から私どもいろいろな調査等を行ってきておったわけでございますが、本年協力者会議を開きまして、どういう構想で国立スポーツ科学センターをつくっていくかということを検討していただきまして、場所は、先生も御承知かと思いますけれども、旧教育大学の体育学部の跡地であります渋谷の西原地区にスポーツ科学センターをつくるということにいたしております。来年度は基本設計料を八千四百万ばかりですが要求いたしまして、再来年度に実施設計、そしてさらに翌年度から二年間にかけて実際の建設に入りたいと考えているところでございます。  一方、これは競技によって、例えばシンクロナイズドスイミング、飛び込み、柔道、レスリング、競技によってはこのスポーツ科学センターが実質的にナショナルトレーニングセンターとしての機能を果たせるように宿泊、合宿施設等もつくりまして、広い場所を必要とする陸上、それから水泳の競泳などを除いて、比較的小さな場所で競技できるスポーツについてはそういうナショナルセンター的な機能も果たさせるという前提で現在調査研究を進めておりまして、先ほど申し上げましたとおりに、来年度は基本設計料八千四百万円を要求いたしておりますので、ぜひこれも確保いたしたいと考えているところでございます。
  148. 石渡照久

    ○石渡委員 今プールについてお話がありましたけれども、これは要望といいますか、お話をしておきたいと思いますが、何か二十五メートル掛ける二十二メートル、こういうことのようであります。関係者に聞きますと、やはり五十メートル掛ける三十三メートルということで、この三十三メートルというのは、シンクロとか水球でそうしていただくと大変ありがたい、こういうことのようであります。ですから、五十メートルが無理ならば、二十五掛ける三十三ということにならないかというようなことをプールの方の方から専門的にお聞きしたわけでございまして、お伝えをしておきます。  国際化時代と言われております。外国との交流の中で最もさわやかであり、最も活力に満ちたのがスポーツ交流であると思います。しかしながら競技施設が老朽化しているため日本に招脂できないという種目があるわけです。例えば水泳などはどうもそうだというふうに聞いておるわけでございます。外国から見れば、経済大国日本でなぜそうなんだというようなことになると思いますし、残念でもありますし、またある意味では情けないなと思うわけであります。やはり私たちは、文化、スポーツにも十分通ずる平和な日本を進めていきたいと考えておるわけでございます。  飛躍するようですが、ODAの予算は昭和五十三年二千三百億、昭和六十三年七千億であります。十年間に三倍であります。六十三年度、文部省の体育スポーツ予算は二百六十六億、文部省の全体の予算の〇・五八%、一%にも満たないということになっております。十年前と比べても実額で少なくなっているというような実情であります。  ODAの予算は世界から求められているものに誠意を持ってこたえる、そういうものであろうと考えるわけでありますが、生涯スポーツあるいは競技スポーツ振興は日本が世界に対する平和国家へのあかしであるとも言えると思うのであります。スポーツ外交によって日本が世界から平和文化国家であるということを認識してもらう、そういうようなことが必要だろうと考えるわけでございまして、そのような考え方に立脚して、最後に大臣決意をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  149. 中島源太郎

    中島国務大臣 大変いい御指摘をいただきました。先ほど政府委員からお答えをさせました中で私が一つ補足したいと思いますのは、少なくともこれからの選手、コーチに若手を起用したらどうか、そのとおりでございます。さらに今回のソウル・オリンピックを見ましても、そういう選手諸君を育てられた、手塩にかけられたコーチの方々の大変な御苦労があるわけでございますね。シンクロでも練習場を探し探して早朝から練習しなければならない。これは私ども非常に反省すべき点でありまして、そういう施設もつくっておく必要がある。また、コーチのそのような御苦労を日ごろから私どもがくみ上げていく必要がある。今度ソウルからお帰りになりましたときに、選手のメダリストと同時にそれを育てられたコーチの方々にも感謝を申し上げたところでございまして、そういう方々の御意見をぜひ反映をさせていきたい。  それから、プールにつきましても、おっしゃるとおりでございます。また、私が私見を交えて言わしていただくならば、学校プールも相当広く行き渡ってまいりました。ただ、これからはできれば地域地域で各学校にと、その御要望はわかるのですけれども、できれば五十メーター温水プールなどを、地域のごみ焼却その他の新施設も拡充しておるところでございますから、それとうまくタイアップいたしまして余熱利用の温水プール、五十メーターでつくっていくことの方が、むしろ地域あるいはスポーツの振興には役立つのではないか、そういう御理解を得つつ進む時期に来ておるかもしらぬな、そういう感じがいたしております。  また、今おっしゃるようにODAその他の問題につきましても、我が国が先進国と言われる中で、やはりスポーツ面でいかに充実をいたしましても、これはもう皆さんから親しまれこそすれ、先ほども言ったように摩擦が起きるような問題ではございません。先生のおっしゃることを体しまして、精いっぱい努力をいたしてまいりたいと思っております。  また、党の方のスポーツ特別委員会あるいはスポーツ議連その他の方々の御意見も拝聴いたしております。今後とも一層ひとつ御鞭撻をいただきますようにお願いを申し添えまして、万全の努力をしてまいることをここで決意として申し上げさせていただきます。
  150. 石渡照久

    ○石渡委員 ありがとうございました。  オリンピックの現況を一つのばねとして、競技スポーツを初めとして、もちろん生涯スポーツ、国民の体育向上のために文部省が御努力をしていただかなければなりませんし、やはり一つの国論というようなものがあろうかと思います。そういう中で、今回のソウル・オリンピックの成績は悲観するようなことでは決してないと私は思っております。そういうものをばねにして、今後とも精いっぱい、お互いさま努力を重ねてまいりたいと思うわけでございます。  以上で私の質問は終わります。
  151. 中村靖

    中村委員長 次に、中西績介君。
  152. 中西績介

    ○中西(績)委員 私は時間が大変制限されておりますので、二、三の点について質問を申し上げたいと存じます。  一つは、リクルート問題です。このリクルートにかかわる江副氏と文教行政とのかかわり、いろいろあると思うのですが、この点について一つずつ確認をしていきたいと思っておりますので、簡単にお答えいただきたいと思います。  一つは、リクルートというこの言葉が新卒学生の求職の代名詞になるほど「リクルートブック」というのは就職戦線に食い込んでおるわけでありますけれども文部省はこうした問題についての指導はどのように行っていったのか、この点まずお聞かせください。
  153. 中島源太郎

    中島国務大臣 ちょっと御指摘の点が視点が違うかもしれませんけれども、一般論で申しますと、やはり学校教育というものが生涯学習の重要な基礎的部分であるという位置づけからいたしますと、少なくとも前期中等教育から後期中等教育、そのあたり、それから高等教育、これはまさに先生には釈迦に説法でございますけれども高等教育の部分の一面ではより質のよい職業人を育てるという点もございます。また、後期中等教育にも、学教法の四十二条にありますように、やはり社会的な責任を自覚しつつ、自分の進路を見定め、そして一般教養や専門教育を受けていくという点からいたしますと、自分の進路を定めるのにできるだけ多くの情報を得る、また自分が社会に出るときにできるだけ多くの情報を事前に知るということは必要でありますし、そういう情報を与えるということについては、これは一般論として意義のあることだと思うわけでございます。  ただ、今おっしゃるのがそういう一般論であれば私はそう申し上げるところでございますし、また具体に御質問があれば政府委員からお答えをさせます。
  154. 中西績介

    ○中西(績)委員 一般論でなしに、私はリクルートという特定をした話を今からしようとしておるわけですから、その点で明確に言ってもらわないと困るのです。  じゃ、聞きますが、特定のリクルートという企業の就職広告誌あるいは進学広告誌のみを学校を通じて配本することの是非、この点、どうお考えですか。
  155. 古村澄一

    古村政府委員 学校は進路指導をやります上で就職、進学に関する資料というのはいろいろなところからたくさんあった方がよりベターだろう、そういうふうに思いますが、リクルートのみ一社の本をそういうふうにして学校へというお話でございますが、それは学校側がリクルート一社という形でなくて、学校へ対してリクルート側からそういうアプローチがあってそういう情報を提供された、その情報を学校側として利用しているというのが現状だろうと思います。
  156. 中西績介

    ○中西(績)委員 それで、またもとに返るわけですね。それではこうした問題について、各企業から行くやつはもう全部やれと言って指導しておるのか。やはりこの種問題については学校が主体になって、どうするかという問題を本格的に追求をしていかなければならぬわけですよね。情報が必要だというのはこれはもうみんなわかっている。しかし、それが特定のものに限られていくということになると問題があるのではないですか、こう私は聞いておるわけです。  特に、例えばリクルート社が学生名簿を転売をして問題を起こしたことだってあるわけだ。こういうように学生名簿を大学を通じて入手しておるのではないかという問題があるし、むしろ今度は、高校などに対していろいろ積極的な働きかけをすることによって、それが全部リクルートとのつながりを強めていったという経過等があるのではないかと私は思うのです。  一つの例を挙げますなら、リクルートリサーチ調査の問題がありますね。これを見ますと、「『六十二年度三月卒業生の専修各種学校入学状況調査』に協力、監修することになった」ということが明らかになってきておるわけですよ。「「昭和六十二年三月卒業生の専修各種学校入学状況調査」ご協力のお願い」として、全国高等学校長協会の会長小田島という人の名でもって五千百七十八校の高校長に出して、そしてこの中にこう書いてますね。「リクルートリサーチ企画・実施の「昭和六十二年三月卒業生の専修各種学校入学状況調査」に協力、監修することとなりました。」  これだけじゃありません。会議などは、これを見てみますと、高校の進路指導の団体がリクルート施設を使うことはもう周知の事実になってきているのですよ。これは、高校に幾つもそうした会議の部屋があるのにこういうところを使っておるし、近くはこういうときがあるのですね。七月八日に関東地区高等学校進路指導協議会の理事会が東京銀座のリクルート本社内の会議室で開かれることになっておった。ところが、ちょうど株ばらまき事件が表面化いたしまして、新聞記者だとかテレビのカメラマンが本社を取り巻いておったので、場所を急遽変えたところが、これまた丸の内のNKKビルの中にあるリクルートの会議室に移されておった。こういうように就職関連だとか進路指導だとかいうものが非常に癒着をしたような状況で、しかも高等学校の校長会から正式にそういう文書が流されて、調査まで一緒にやっていくという状況等が出てきていますね。  ですから、そういう経過を見て、こういう一つの特定の企業との関係を強めることがどうなんですかということを聞いておるわけです。一番最初から私言っておることは。その点、どうなんですか。一般論ではなくてリクルートの関係ですよ。
  157. 古村澄一

    古村政府委員 教育関係団体が一つのそういった情報を出していく企業と非常に近い関係で処理をしているということについて、普通に言えばもっと開かれた、そういった教育関係団体であってほしいというふうに私は思います。  ただ、その経過としまして、就職情報あるいは進学情報というものを手広くやっているかなり大きな会社の一つである、現在社会的にはそういうふうに認知されているのだろうと思います。したがって、校長会あるいは全国進路指導協議会等が一社とだけの関係を持つということについては、それはもっといろいろなことがあった方がいいのではないかと思いますが、過去の経過を見ますとそういう形になっているというふうに理解いたしております。
  158. 中西績介

    ○中西(績)委員 答弁がわからぬね。はっきりしてもらわぬとちょっとわかりにくいですね。  では聞きますけれども、高校の進路指導が何でリクルートでやらなきゃならぬか。各学校なりなんなりには、あるいは東京都なら東京都の教育委員会関係だとかそういうところに会議室などがないのですか、あるのですか。
  159. 古村澄一

    古村政府委員 新聞といいますか週刊誌の情報によりますと、そういうふうにリクルートの会社の会議室をずっと使ってきたということが載っております。それについて私の方もはっきり何回使ったかというふうな調査をいたしておりませんが、やはり会議というのはそういうところでするものじゃなくて、学校にも会議室があるでしょう、公の施設にも会議室があるでしょう、そういったところでやるのが普通のやり方だろうというふうに思うわけでございます。
  160. 中西績介

    ○中西(績)委員 だから、そのことの是非を明確にしておかぬと、このような癒着状態というのが平気で見過ごされていったという過去の経緯があるわけですね。ですから、そのことに対する判断を明確にしておかなきゃならぬと思うのですよ。文部省、どういうとらえ方をしていますか。
  161. 古村澄一

    古村政府委員 全国高等学校進路指導協議会というのは進路指導を担当する先生方の集まりでして、自主的な団体でございます。したがって、文部省はどこまでの行政指導、そういった具体的に会議室をどう使うかということまでなかなか私の方では指導をしにくいのですが、一般的に言えば、やはりいろいろな進路指導というものが公正に行われるというふうな外見的なスタイルも持つべきであろうというふうなことで申し上げるということに相なろうかと思っております。
  162. 中西績介

    ○中西(績)委員 はっきりしてもらいたいと思うのですね。こういう特定の企業と関係を深くすることが、結局、自分たちが都合よく――例えばこれをやろうとすると、結局、弁当の手配だとか受付だとか雑用というものから一切をリクルートが引き受けてやっておるわけですよ。だから、自然にそういうところに足が向いてしまって、今度そこから要求される、例えば「『広告のイメージ調査をしたいから協力してほしい』といわれ、調査用紙を生徒五十人に配って回収したことがある。生徒は一人五百円の図書券、私は一万円の図書券を謝礼にもらった」というように、学校の中にまで全部そういうふうに食い入っていく、こういう状況が出てきているわけですね。  ですから、さっき申し上げたような安易に特定の企業と関係を結んでいくということが今大きな問題として出ておるのではないかと思うのですが、このようなことに対する評価、こういうことはしてはならないと思うのかどうかをはっきりしてもらわなければいかぬわけですよ。そうしなければ、今の答弁を聞いておったら何を言っているのかわからないのです。だから簡単におっしゃってください。
  163. 古村澄一

    古村政府委員 自主性のある団体のおやりになったことでございますが、そういった誤解を招くようなことがないように指導をしてまいりたいというふうに思います。
  164. 中西績介

    ○中西(績)委員 それじゃ今までは指導はしておらなかった……。
  165. 古村澄一

    古村政府委員 そこは行政官庁が全国の進路指導協議会に対してどういう指導をするかというスタンスの問題になりますが、そういった会議室をどうするかなんということまで今まではやってまいっておりません。
  166. 中西績介

    ○中西(績)委員 だから放置してあったし、各学校にそういう特定の企業がどんどん食い入っていっても放置しておった、こういうふうに理解してよろしいですか。
  167. 古村澄一

    古村政府委員 放置といいますか、それはまさに学校が主体的におやりになることであるというふうに私たち認識いたしております。
  168. 中西績介

    ○中西(績)委員 学校でそのようなことがずっと行われてきたということでありますが、それじゃ、もうちょっとお聞きしましょう。  先ほどから私が何回も言っておるように、特定企業の発行する広告誌のみが学校を通じて配布されているのではないかという声が今までも非常にたくさんあったわけですね。このような点については、例えば「リクルート進学ブック」だとかあるいは「リクルートブック」だとかいうようなものが次々に入っていったわけでありますけれども、これについては特別気にもとめなかったし、指導もしておらなかった、これでよろしいのですか、確認をして。
  169. 古村澄一

    古村政府委員 従来から進路指導なり就職指導というものについての情報をどう集めるかというのは、まさに学校生徒との対応についての情報を集めることでございます。したがって、それがどの社からどういう本、雑誌を買った方がよろしいといったような、そういった具体的な指導はいたしておりません。
  170. 中西績介

    ○中西(績)委員 私は、どういうものを買えとか何だかんだということを聞いているわけじゃないのです。特定の企業がそういう現場まで入っていって全く現場の人と癒着をしてみたり、あるいは県教委なり何なりが見過ごすように癒着をしてみたりするような形が出てくるから私はこれを聞いているわけです。  じゃ、もう一つ聞きますが、スーパーコンピューター研究所というのは御存じですか。どなたでも結構です。
  171. 川村恒明

    ○川村政府委員 ただいまのスーパーコンピューター研究所でございますけれども、これはリクルートの会社の内部組織として昨年の四月に設けられたというふうに承知しております。
  172. 中西績介

    ○中西(績)委員 そのスーパーコンピューター研究所は日米の大学と企業の研究所をネットする共同利用研究機関と言っておるそうでありますけれども、そこでお聞きしますが、江副氏は大学審議会でこのコンピューター研究所などについて、あるいはこの日米の大学と企業の研究所をネットする共同利用研究機関とするというようなことを含めて民間の共同利用研究機関と総合大学院の関係等について何か発言しましたか。
  173. 國分正明

    ○國分政府委員 江副委員の大学審議会における発言というふうに承ったわけでございますが、私どもそういうような御発言があったということは承知いたしておりません。
  174. 中西績介

    ○中西(績)委員 それじゃ、こういう共同利用研究機関構想等については江副氏からは発言はあっておらなかった。それは、そのときの議事録か何かいただけますか。
  175. 國分正明

    ○國分政府委員 大学審議会におきましては議事録をとっておりませんが、議事要旨ということでおおよその議論というものをまとめておりますが、議事録は用意しておりません。
  176. 中西績介

    ○中西(績)委員 そういたしますと、そこで私が指摘をいたしましたように、リクルート社というのは土地転がしだけでなしに文教分野における相当いろいろな業務があったわけですね。例えば「リクルートブック」、これは一般大学生あるいは有名大学生、高校生、高専生向けにあるいは各種学校生向けに、企業から広告をとって生徒に無料配布する。その際に、学校を通じて配本をしていく、そのときに、先ほど申し上げたように生徒の名簿まで取り出してそれを今度他の企業にまで売りつけるというようなことまでやってのけた。ここら辺に大変な問題があるということが一つあるわけですね。  それから「リクルート進学ブック」、これは高校生向けの大学案内広告誌であるようでありますけれども、これは大学から学生募集の広告をとって高校生に無料で配布するというものですね。  それと、三つ目にリクルートUSAあるいはリクルート国際バン、この二つの会社をベースにしましたさっき申し上げたスーパーコンピューター研究所を設立しまして、ラウル・メンデスという米国海軍大学院の助教授を所長に招控をしておりますね。そして、そこでもって大学及び企業の研究所の共同利用研究ということを盛んにやっておるようですね。  こうした中から江副氏は六十年九月十日からさきの七月十一日まで教育課程審議会の委員をやったわけですね。同時に、六十二年九月十八日から同じく七月十一日まで大学審議会の委員をやっています。これを見ますと、今、大学審議会は十八人おって、江副氏がやめたから十七人でしょう。この大学審議委員の選任をする基準か何かあるのですか。
  177. 國分正明

    ○國分政府委員 大学審議委員の選任の問題でございますが、御案内のとおり、法律上、これは学校教育法で定めておるわけでございますが、文部大臣が大学に関して識見を有する者の中から内閣の承認を経て任命する、こういう法律上の手続があるわけでございますが、具体的には大学等のあり方社会全体に深くかかわっているというようなことから大学関係者を中心としつつも広く各界の有識者を求める、こういうことで選任した次第でございます。
  178. 中西績介

    ○中西(績)委員 そうしますと、江副氏というのは文部省なりあるいは文部大臣がそうしたことを認めてなされたわけですね。今あなたがおっしゃったようなことを認められてやられたということになるのですか。
  179. 國分正明

    ○國分政府委員 お尋ねの趣旨を取り違えておりましたら御指摘いただきたいと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、大学審議会というものの人選につきましては、大学人といわゆる一般社会人と申しますか、ほぼ半々程度で構成する、こういう基本方針で選任をしたわけでございますが、江副氏は企業人であり、そしてまた学生の事情等にも詳しいということを勘案いたしまして選任した次第でございます。
  180. 中西績介

    ○中西(績)委員 では、いずれにしましてもそういう選考の目からすると、江副氏ぐらいしかいなかったということになるのですか。この名簿を見ますと十八名になっておるわけでありますけれども、あれを見ますと、今あなたがおっしゃるように、半々だということを言われていますね。そうすると、財界人というのは数少ない数になるわけですね。そうなってまいりますと、大変多くの財界人がいる中からこの方が最も大学について適した人だということになってくると、よほど何か特徴的なものがあったということでなければそうはなりにくいのじゃないかと私は思うのです。  そうした意味で、この基準というものがはっきりしないわけですから、この点、どうなんでしょう。ちょっと私たちうなずけぬわけです。たくさんおる中で二人か三人を選ぶのにこの人が当たっているわけですから。
  181. 國分正明

    ○國分政府委員 大学関係者あるいは社会人から委員お願いしたわけでございますが、どなたが最も適任かという点については客観的な物差しがあるわけではございません。私どもは江副氏も適任であるというふうに判断して委員に御就任いただいたということでございます。
  182. 中西績介

    ○中西(績)委員 これを見ますと、大学審議会のメンバーを見ますと、教育関係法にかかわる専門家もいませんし、あるいは国で認めておる日本学術会議のメンバー一人がいるわけじゃなし、ですから、選んでいったその経緯がよくわからないものですから、財界人ということになりますと、秩父セメントの諸井さんでしょう、それから野村総研の中川さん、それと江副さんぐらいではないのですか。ウシオ電機株式会社の社長ですか、これぐらいですよね、財界人と名づけられるような人たちで指名されるような人たち。それぐらいにこの人でなくちゃならなかったということになるのでしょうね。
  183. 國分正明

    ○國分政府委員 社会人と申しますのは必ずしも財界人だけでなくて、文化関係者あるいはマスコミ関係者等も入った意味で申し上げているわけでございますが、ただいま御指摘の財界関係の委員の方、それぞれの活動の様子等を拝見しまして、適任である、この方が一番日本の中で最適任かどうかという点については御議論あろうと思いますが、私どもは適任であるというふうに当時判断したものでございます。
  184. 中西績介

    ○中西(績)委員 適任者であるという判断をするに当たって、私はちょっとあなたたちにお聞きしておきたいと思いますのは、森元文部大臣がリクルートにはかかわり合っておるということがはっきりしましたね。これは御存じだと思いますが、五十九年十二月に三万株を取得をして六十一年十月売却をいたしまして、取得の価格が一株千二百円で三千六百万円、しかもこれはファーストファイナンスというリクルート関係の子会社から金を借り受け、そして公開されたときに売って一株五千二百七十円、一億五千八百十万円、その差益は一億二千二百十万円ということになっていますね。  このように、やはり江副という人は何も無関係で、利害関係なしにこれほどたくさんの金を一挙にもうけさしてやるということにはなり得ないのではないかという気が私はするのですね。ほかはたくさんおりますよ。おるけれども、文教関係で出てきたのは、これが明らかになり、しかも五十九年に取得をし、六十一年にこれを店頭公開されたときに売却をしたということが言われておるわけですね。関係のないそういう方に売るだろうかということを私が非常に疑心暗鬼の目で見ざるを得ないようなことがここに具体的に出てきておるわけですね。  しかも御存じのように、七月二十一日に報道された最高裁の決定の中で、殖産住宅事件で、上場前の非公開株は通常だれでも買えるものでないこと、上場されれば容易に値上がりが期待されることを指摘し、非公開株を購入し得た事実が利益の供与であるとして有罪決定を言い渡したわけですね。また、これは法学者あるいは検察関係者から見ましても、利益の供与は前々からわかっていた、有罪であるか否かは職務権限が関係していたか否かだけであると言っておるわけでありますから、政治家の非公開株の取得というのは利益供与、職務権限が絡めば汚職になるわけでありますが、汚職だとかなんとかいう前に利益供与されておるということは、これはもう事実なんです。何の利益目的もなしに公開予定の非公開株譲渡はあり得ぬ、私はこう考えるわけなんですね。  しかし、三十七社プラス一個人というのを除けば、今明確になっている中では個人で三万株というのは一番大きいのです。これを譲渡されておるわけです。ですから、この江副氏が何も関係のない人に、わざわざ行って本人が説得をして、金がないと言ったら金まで出してやるなんということはあり得ないんじゃないか。ということになってまいりますと、この後に出てきた教育課程審議会の委員だとかあるいは大学審議会の委員だとか、こういうものとのかかわりが全く無関係の中でこれがなされるなどということは到底考えられない。どうですか、大臣
  185. 中島源太郎

    中島国務大臣 伺っておりました。三つばかりいろいろありますが、その中で最後におっしゃいました証券取引につきましては、これは私の先輩大臣ではありますけれども、今おっしゃった点は今の現行法上の中で個人の責任においてなされております経済取引でございますから私どもが言及する立場にはございませんし、そのような種類のものではないと思います。  ただ二番目の、江副氏が大学審その他の審議会に五十九年、六十年に委員になっておられたわけですね。それは私はその時点で公正に判断されたものと思います。またこれは、今の証券取引とは全く同列に考えられるべきものでもありませんし、別個のものであります。それは時期も違います。五十九年、六十年の時点のことでございます。私はそのように思います。また、そういう背景は当時あったであろうと思うのです。  ただ、強いて私が遺憾だと思う点を挙げれば、現在大学審、それから教育課程審議会、これは審議会自体はまだ存続しておるわけでございます。ただ、ことしの七月に、私が文部大臣をお引き受けいたしましてから江副氏からこの両審議会の委員辞任をしたい、こういう申し出がありまして、直ちにこれは事務手続をとりましてそのようにさしていただいたわけでありますが、理由はともあれそういう審議会が存続しているうちにその審議委員がおやめになるということ自体は遺憾なことである、私はそれだけは申し上げさしていただきます。
  186. 中西績介

    ○中西(績)委員 辞任をしたことが遺憾であるのですか。ちょっと確認しますが。
  187. 中島源太郎

    中島国務大臣 やはり一つ審議会が審議を続けております間には系統的に、そしてその方々が、異動なく委員の方々が審議を終了されるということがいいのでありまして、その中で、理由はともあれその中の委員の方々が審議会存続中におやめにならなければならない事態ということは遺憾なことである、こう申し上げたわけであります。
  188. 中西績介

    ○中西(績)委員 それじゃ、何でこの人は辞任したんでしょうかね。
  189. 中島源太郎

    中島国務大臣 辞任の届け出は私あてにあったわけでございます。辞任の理由は明記されておりません。
  190. 中西績介

    ○中西(績)委員 遺憾に思うということであるならば、何か慰留かなんかしたのですか。
  191. 中島源太郎

    中島国務大臣 日にちは忘れましたが、たしか七月の金曜日であったと思いますので、その御連絡を受けまして直ちに手続をとりまして、翌週の月曜日にそのように事務を終了させていただいたというのが事実でございます。特に慰留は申し上げておりません。
  192. 中西績介

    ○中西(績)委員 遺憾であるけれども慰留はしていない。だから、本人がこうしてやめるということになったのは、結局非公開株をこのようにたくさんの人に配って、しかもやめる大きな一番の原因は何かといったら、日経新聞の社長がおやめになるということでもって大変なショックを受けたと本人も言っておるし、本人は大変責任が重いということを自認をしてやめたわけですね。あなたが今言われる商取引云々ということで片づけてしまえば、今の大蔵大臣が三回も委員会でうそを言ったりなんかしても平気でおれるという、その図太い神経であれば商取引云々で片づけてしまうでしょう、それは。  しかし、その裏に隠されておる、私がさっき申し上げたように、理由なしにこの人が三万株も、しかももうかるからといってやっているのだから、これはもうはっきりしているのですよ。殖産住宅事件にいたしましても、全部、非公開の株を店頭公開するときには、上場されるときには必ずもうかるということははっきりしている。ところが、実際にそのことをもってしても、五十人以上だって違反をしているわけですから、挙げれば幾つもほかに理由はありますよ。そういうことをやりながらこうした事態を引き起こしてしまっておる。だから、これはもう非公開株を購入するということは利益の供与、このことを前提にしてやったということはもうだれしもが言っている。最高裁の決定でそのことがはっきりしておるわけですね。そして検察庁あるいは法学者、こういう皆さんだって供与についてははっきりしている、動かしがたい事実なんだ。ただそれが汚職になるかどうかということは別にいたしましても。  それがしかも文部大臣であった方が、そして現在なおかつ教育改革に関する調査会長をやり、今自民党の中における文教にかかわるところで大きな発言権を持っておられる方に、たまたまそのときの所轄の大臣でなかったというだけであって、大臣に匹敵するぐらいの発言権をお持ちだということを私ら聞いておるからそういうことがなされたのではないか、こう認めざるを得ないわけなのですね。しかも、さっきから論議いたしましたけれども、冒頭にやりましたように、いろいろ学校教育の中に大きな分野を占め、そこから大変な利益を得るというためには、何かそういうものを求めていくということがもう今の社会の中では常識めいて考えられておるからです。  そこでもう一点、労働省の加藤事務次官が九名の中に入っておりました。私はそのときに一番先にぱっと浮かんだのが、リクルートと文部省との関係からいたしますと、ちょうど労働省との関係に近いものがある。ということになれば、文部省の高官がこれに関与しておるのではないかということを、その九名ということを聞いたときに私はまず一番最初に聞いたのですよ。労働省というのがあって、そして一番下の大蔵省というのがあって、中の方は余り明確に聞き出し得なかったから、文部省おるのじゃないですか、こういうふうに聞いたのです。  なぜかというと、かかわりが、特に大蔵省の関係で言うなら政府の税制調査会の第三部会に、しかも問題になっておるキャピタルゲインだとか関係のところにこの人は位置づけされておったのですね。労働省は就職関係で全く同じようなあれを持っておるのですよ。そうすると、文部省にもこのことがなかったかな、こういうことが私は一番先にぴんときたのです。それで聞いたのですけれども、その九名の中には確かに入ってなかった。しかし私は、そうしたことにならないことを望むけれども、今明確になっておらずとも、大臣はいち早く政府高官の中にそうした問題がありはしないかということを、二つの委員をやられておるということもありまして非常に深い関係があるわけですから、十分検討しておく必要があるのではないか、こう思っております。ですから、ぜひこの点を当たっておいてもらいたいと思うのです。  そこで、もう一つそれとのかかわりで、先般、五月でしたか、衆議院に立候補するということでもって問題を醸し出しました前の高石事務次官、私たちはすぐやめてほしいということをあれしたのですけれども、聞くところによりますと辞表を大臣のところに預けておったのですか。
  193. 中島源太郎

    中島国務大臣 高石個人のことでございますので、記憶のある限りお答えをいたしますが、当時、衆議院の文教委員会でございましたか、御発言がございました。そのときに、私は、行政職にある者はその職を全うすることに全力を傾けるべきであるというお答えをいたしました。その後、当時の高石次官に確かめまして、そのようなことはありませんということでありますが、少なくとも行政職にある者が誤解を与えるようなことがあること自体がいかぬ、少なくとも今、今というのは、当時第百十二国会のまさに中盤から終盤にかけて御論議をいただいておったときでございますので、全力を挙げるべきである、他のことは考えるべきでない、しかし私自身もそれに徹して、今与えられておる行政職に全力を傾注しよう、あなたもそうあってほしいということは重々申しました。  そして、その後百十二国会が終了するまで一切高石次官から私は、当然のことながら職に全力を挙げる、専念するということを二人で申し合わせをいたし、私からも伝えましたものですから、当然のことでありますが、その間二度とそのような相談も受けておりませんし、話し合ったこともございません。今記憶をただしますとそういうことでございます。
  194. 中西績介

    ○中西(績)委員 私は、辞表を提出したものを大臣が預かっておったのじゃないですかとお聞きしたのです。それにはお答えないけれども、少なくともあれが間違いだなんということはあり得ぬですよ、ちゃんとしゃべっているわけですから。そうしたことをしでかしておる人を大臣がもしとめるということになると、大臣もおかしいということになる。  なぜ私が今改めてこのことを聞き始めるかというと、これは九月十六日の新聞ですが、県教委が選挙パーティー券を購入要請したというのが出ております。三重県の県教委の黒川春夫という総務課長が、ここに出席をしておった教育長に、二十七人出席をしておったようでありますけれども、六月に退官して、九月十六日、東京で開かれるパーティーに「学校整備などに尽力していただいた功績にかんがみ、せんべつの意味も込めて協力いただきたい」と二万円のパーティー券購入を求めていった。そして、「今年度の文部省関係補助金が二千万円を超す市町村についてとくに協力を求め、同県内十三市全市と、五十六町村の半数近くの名を読み上げ」、「協力いただきたい」ということまでも言ったということが明らかになっているのですよ。  だから、こういうように中央で行われる、何か知らぬけれどもパーティーで、これでは三重県だけではないと書いてある。売り込みは他県にもあったけれども、県教委が市町村に直接こうして名前まで、町村名まで明らかにして買うてくれなんということはなかった、こう書いてあるのですね。これをどうお考えですか。
  195. 加戸守行

    ○加戸政府委員 ただいま中西先生御指摘なさいました件は、新聞で報道されたことでございますが、私ども、三重県の方に確認をさせていただきまして、確かにそのような公的な会合の間の休憩時間かあるいは懇談会の席、そのような形でそれに近いようなお話があったことがございますが、御指摘を受けたその直後にその担当の説明した課長がすぐ話を取り消されたということでございます。  それから、名前を読み上げた市町村名につきましては、確かにそういった事実はあったようでございますけれども、いずれにいたしましても、そのような行為につきましては、直ちにその直後話を取り消されているというぐあいに承知いたしております。
  196. 中西績介

    ○中西(績)委員 私が聞いているのは、こういう県教委の皆さんがこのようにだれが要請したか知らないけれども、しなきゃならぬようにだれが追い込んだかというのが問題なんです。そしてこれを実際にやったんだから。取り消せばいいという問題じゃないでしょう。そうお思いになりませんか。あなたの今の御答弁であれば、取り消しましたと、その事実だけを言っているだけであって、このような行為をしてはいけないのではないですかと私は言っているのです。どうですか。
  197. 加戸守行

    ○加戸政府委員 各自治体におきますそのような職員の行動、たとえそれが善意によったものであったとしても、行動自体は適切なものでなかったと私ども思っております。
  198. 中西績介

    ○中西(績)委員 それからもう一つ、今度は私のところに手紙が来まして、これは久留米の教育大学附属久留米小学校じゃないかと思うのですけれども学校通信九月一日号にこう書いてある。「プールの全面改築」という欄がございまして、各家庭に配ったものだと思いますけれども、「完成は、来年の二月の予定です。特に、前文部事務次官の高石邦男先生(山門郡出身)のお力添えがあったことを紹介します。」こういうぐあいに国立小学校学校通信で、高石前文部事務次官のお力添えによってこれができたというようなことを通信欄で出しておるのですよね。これは、こういうことは果たしていいんでしょうかと私のところに手紙が来た。こういうようなことが次々に出てくるのですね。  言ってはならない立候補の問題、そして本人に聞けばそういうことは言ってないなどというけれども、新聞記者に言ったから新聞社はみんな書いたのですよ。そしてそのときに私はこういう事態、しかも参議院をべっ視するような発言だってしているわけですから、大変な問題になるわけですよ。こういうような状況の中で出てきて、しかも今言うように、県教委に全部これを配った。だから、これは全国にパーティー券を配ったということでしょう。みんなに配ったんですよ。だから、それをやはり文部省なり何なりが後ろで支えてやっておるとしか私はとらえることができませんよ。やめた方が個人でどうだこうだと言って全国走り回っているわけじゃないのですから。だれかがやはりそういう事務的なことをやっておるんじゃないかという感じが非常に強いのですね。この点、感想どうですか、大臣
  199. 中島源太郎

    中島国務大臣 お二つありまして、前の辞表の件がございましたから、ちょっとつけ加えさせていただきます。     〔委員長退席、鳩山(邦)委員長代理着席〕  これは先ほど申しましたように、職にあるうちはそれに専念することが当然であると申し渡しましたので、当然のことでありますが、辞表は、国会終了後に私は当人から辞意は受けた、こういうことでございます。  それから、今二段目の御指摘でございますが、今のお手紙の点その他につきましては、当然というか残念ながらというか初めて聞いた面もございます。また新聞で見た面もございますが、実際に直後に取り消したかどうか、これは政府委員がお答えをしたとおりであります。しかし、それはいずれにしても好ましいことではない、私はそう思います。今後よくそれは内部的にも指導いたさなければならぬ、このように考えます。
  200. 中西績介

    ○中西(績)委員 これを取り消したからいいのだとかなんとかという問題じゃないのですよ。これは一県だけの問題でなくて、ほかにも、他県にもそういうことはあったと書いてある。だから、全国にこれをばらまいているというそのことがこの裏からうかがい知ることができるわけですよ。だから、最初の軽率な発言を平気でやっていく、そしてこういう行為をやっていく、そしてしかも今度は国立小学校でそういうふうなことが学校通信で流される。  なぜ私がこのことを言うかといいますと、九州産業大学の問題のときに、一番最初問題が派生をしたときに、あの有名な鶴岡という理事長が、いや簡単なものです、文部省だとかそういうところは。もうその中身は言いません。えらいことを言っているわけですから、いろいろな手だてをするとちゃんと聞いてくれます。その中に高石さんの名前が入っておったのだ。だから、一番最初僕ら問題にしたでしょう。あるいは私学財団の部長なんかそれでやめたでしょう。だから、そういう過去におけるものから、そしてここ半年間くらいの間におけるいろいろな問題等を考えてみますと、文部省というところを政治的に極めて悪用しておるとしか私は考えられない。極めて政治絡みで物が動いておるということをこのことは象徴しておると思うのです。  極端なことを言うなら参議院はだめだから衆議院におれは出るのだという、そういう話から始まってこういう中身までずっと見ますと、全国的に手を広げて、恐らく東京に事務所があって、そこに文部省からいろいろな資料が全部提供されて、それによって全部配られたりいろいろやられているのじゃないかと私は思うのですね。こういう政治絡みをやってはいけません。それで私が先ほどぴんときたというのも、そういう前のいろいろなこういうことがあってあれしてますから、リクルートというのは文部省をゆがめたり侵したりしておるのではないかということを強く感ずるのです、この委員であったゆえに。この点は私はよほど注意をしておかぬと後々になってまた出てくる可能性があるのじゃないか、こう考えます。  そこで、政治的絡みでもう一つあるのです。それはさっきの大学審議会の問題でありますけれども、この中に田中健蔵という方が委員におりますね。この方はどういうことをやられたか、文部省御存じですか。
  201. 國分正明

    ○國分政府委員 田中健蔵氏は大学審議会の委員になっておりますが、元九州大学の学長でございます。
  202. 中西績介

    ○中西(績)委員 福岡県の昨年四月十二日投票の知事選の候補者であったことを御存じですか。
  203. 國分正明

    ○國分政府委員 承知いたしております。
  204. 中西績介

    ○中西(績)委員 そうなりますと、知事選ということになると、その立場をはっきりして、政治的に中立だとかなんとかということでなくて、明確にしていたと思うのですよ。私が今非常に印象づいておるのは、この方が、福岡県の今の奥田知事が最初出るときに、九州大学の学長であった時分にあいさつに行ったのです。そうしたら、学者は知事などという政治家になるべきでないということを彼は説得をしたのですよ。ところが、四年たったら、出るべきでないと言った本人が、学者は学者として通すべきだと言った人が今度は対立になって出てきて、しかも戦後の、あるいは戦後からごくわずかのときならいざ知らず、四十数年たった今、テレビで討論をやったときに、共産党と言うのですね、企業などを破壊してしまって企業誘致などは絶対できないということを言ったのがこの田中さんなのです。これは本人の意思ではなくて、学者であるなら貫き通すべきだとも他から言えと言われて言ったなら、しかし、本人の意思でそれを言ったというならなおまた問題がある。そういう人なので、わずか十八人の中に、しかも政治的な位置づけが明確になった人をこの中に入れなければならなかったのか、お聞かせください。
  205. 國分正明

    ○國分政府委員 田中委員につきましては、先ほどお答え申し上げましたように、元九州大学の学長をされておったわけでございまして、大学の運営について十分な経験を持ち、また国際的な視野も持つというような、その学識に着目してお願いした次第でございます。
  206. 中西績介

    ○中西(績)委員 それでは、これにかわるような人がいなかったということですか。もうこの人が最高の人であったということですか。政治的にそのように明確にしてあって、ひとつチェックをしなければならぬ点があるのに、わざわざ何でこの人にしなければならなかったのか。これにかわるべき人はいなかったのですか。国立大学のかつての学長だとか国立大学の学長だとかにこういう人がいないということですか。すべての人はこの田中健蔵氏よりも、また経験からいたしましても、人格、識見からしても以下だというように文部省はお考えになった、こう理解をしてよろしいか。
  207. 國分正明

    ○國分政府委員 個々、具体の人事にわたるわけでございますが、この方がこの人よりいい、この人はどうして落ちたのかというようなことは差し控えたいと思いますが、先ほど申し上げましたように、田中委員の学識というものに着目してお願いした次第でございます。
  208. 中西績介

    ○中西(績)委員 いや、それでは答弁になりません。知事選が終わって半年もしないうちですよ。全く無傷と言えますか。お答えください。
  209. 國分正明

    ○國分政府委員 知事選に出たから一切この種の職についてはいけないということもないのではないかというふうに考えております。
  210. 中西績介

    ○中西(績)委員 絶えず政治的には中立だとか、そういう無色の人ができるだけ望ましいと言うなら――あなた方はこうした選任をするときに、これは国会議員であってもよろしいでしょうから、そう言えばだれだっていいということになるのですよ。しかし普通、常識として、あなたが今識見が高いと言うけれども、共産主義者が企業を破壊し、企業誘致ができないなどと言って、大衆の前の討論集会でそういうことをやった人をこういうような大学審議会という、大学審議会というのは大変なことを決めるところです、ここの委員として選任をするなどというのは、それにあなたが何も問題ないと言うのなら、政治的に極めてあなたのところは偏向しておるわけですよ。  そして、さっきの例えば高石前事務次官だって、あのような発言をしておっても全く本人には罪の意識がない。そして、後になったらこういうことを次々に問題を起こしている。平気でやっているじゃないですか。そうした下地が文部省の今の政治的な感覚としてあるのではないか、そう私は思います。ここが私は問題だと言っているのです。これに全然奇異を感じないというのですから、今の高等教育局長の答弁は。大臣、そのように私は理解してよろしいですか。
  211. 中島源太郎

    中島国務大臣 いろいろ御指摘がございました。そのような形でというのはいろいろ御指摘があったものでございますから、その中で私は率直に、改めて初めて伺った点もございますが、正すべき点は虚心に正すべきである、これははっきり申し上げます。ただ、その他の点で、文教委員会の重要な中西委員の御発言でありますから虚心に傾聴いたすべきでありますけれども、御心配をいただく余り老婆心ながらおっしゃっていただくことは本当に虚心に伺います。  しかし、だからといって関連づけて、関連があると認ぜざるを得ないとおっしゃられると、そこまで私どもは関連があるとは申し切っておらないのです。したがって、先生の御心配を友情として虚心に受けとめさせていただいて、私どもの周りで正すべきものがあれが虚心に正してまいります、こうとだけ申し上げておきます。
  212. 中西績介

    ○中西(績)委員 例えばこの田中健蔵氏の場合だって、福岡に流れてきているいろいろなあれはありますよ。国会議員のだれだれが中にあって、前の総理がどうだとかいろいろなあれがあるのですよ。だから、全部政治絡みになっておるというところに問題があるのですね。だから、先ほど言った衆議院に立候補しようかという人だって、その職を忘れて政治家的な発言を平気でしているのですから、先に。政府高官であるということを既に忘れちゃっている。  だから、こういう状況というものを考えますと、私は、今の文部省の中における政治絡みということが、このリクルート問題だってそうです。多くを出すからわからぬと言うけれども、リクルートで、例えば森元文部大臣がなぜ三万株を融通してもらったのか。みんなそうでしょう。政治絡みで平気でおられるような状況に省内がなっておるとしか思えぬようなことが、答弁を聞いておりますと、特にこの大学審議会などについてはそのことを特に感じますね。ですから、私たちはその点が、今、政治的には中立でなくてはならぬとかなんとか一番言うところは、自民党の皆さんも一番言うのです、そのことは。言うくせに、そういう立場に立つと忘れてしまう。権力の座にある者はそうなりやすいということを私は提起しておきたいと思うのです。ですから、この点、ぜひ私はこの後の問題としても十分皆さん方で自戒していただければ、こう思っておるわけであります。  じゃ、時間が余りありませんから、ほかにもありましたけれども、予算問題についてお聞かせいただきたいと思っています。  一つは、ことしの概算要求を見てみますと、総枠の上でわずか〇・二%程度しか伸びがないということになっています。ですから、前から私たちが指摘をしておるように、この来年度の予算というのは大変な状況になっていく、そのことを強く感じておるわけでありますけれども、簡単にひとつお答えいただきたいのは、補助率などの引き下げで千四百九十四億円、これは六十三年度までということになっていますから、この編成過程におきまして今後の取り扱いをどうするかということを検討していただきましたか。
  213. 加戸守行

    ○加戸政府委員 御指摘の補助率の問題につきましては、昭和六十四年度の概算要求に関します閣議了解におきまして、昭和六十三年度まで暫定措置が講ぜられてきた事業に係る補助率等については、予算編成過程においてその取り扱いを検討するものとするとされております。文部省におきましても、今後の予算編成過程の中におきまして関係省庁と十分協議しながら、政府全体の方針に従いまして適切に対処したいと考えているところでございます。
  214. 中西績介

    ○中西(績)委員 そうしますと、これは政府全体でということになりますが、こうした問題というのは、文部省としてはどのような見解を持ち、今後どのような対応をしていこうとしているのですか。
  215. 加戸守行

    ○加戸政府委員 先生先ほどおっしゃいましたように、この補助率の問題につきましては、これを自動的に復元いたしますとすれば千四百九十四億円という財源が必要になるわけでございまして、文部省単独でこの事柄が解決できるわけでございません。あくまでも政府全体の中で、これは文部省のみならず他省庁もすべてこのような問題を抱えているわけでございますが、そういった政府全体の中におきまして国、地方の役割分担その他総合的な視点に立ちまして今後財源を含めましたいろいろな検討がなされるものと思いますし、その中におきまして、文部省文部省としての考え方を申し上げながら適切な対応をしたいという考えでございます。
  216. 中西績介

    ○中西(績)委員 文部省の考え方はどうなのですか。文部省の考え方を申し上げながら対応すると言っているから、じゃ文部省はどういう考え方をお持ちですか、こういうことです。
  217. 加戸守行

    ○加戸政府委員 先ほど申し上げましたように、これは政府全体の問題でございます。そして、文部省の占めるウエートも高うございますけれども文部省独自の主張ということではなかなか難しいと思いますが、ただそういった総合的な財源の問題、政府全体の問題を純粋に離れて、文部省のみで申し上げれば、当然補助率の復元ということをお願いしたい立場にございます。しかしながら、申し上げた総合的な状況の中にありまして、具体的な取り扱いは政府全体として関係省庁協議のもとに定めるわけでございますので、その結果には従わざるを得ないという場面も出てこようかと思います。
  218. 中西績介

    ○中西(績)委員 いろいろ言っておりますけれども文部省の考え方は言っていないのです。みんなと迎合してやりましょう、こういう話です。文部省はどうしたいのかと、こう言っているわけです。これはもう後でまとめて答弁してください。  じゃ、次に留学生問題で、大臣、ODA予算で枠外にすべきではないか、そうしないと、これがどんどんふくらんできますと、例えば六十四年度を見ますと、トータルしますと四十億二千九百万円増額しておるわけですね。留学生に特定いたしましても三十九億四千六百万になっています。ところが、枠外にするようにあなたはいろいろ戦術を練って云々というようなことも言っておりましたけれども、これを見ると、どうもまた六十三年度と同じような結果に陥ったのではないか、こう思います。枠外に出てきたのは、外務省関係で六億七千三百万という額は出てきましたけれどもね。六十三年度分の一億七千万を超してますから、約五億程度増額はしておりますけれども、これじゃどうにもならないという中身ですね。この点についてはどう対応されて予算をお組みになったのですか。
  219. 加戸守行

    ○加戸政府委員 六十四年度予算要求、先生御指摘の例えば留学生経費に関して申し上げますれば約四十億程度の差増をさしていただいたわけでございますが、対前年度比にいたしますと約二〇%の増でございまして、御承知のように概算要求基準は、要求枠はODA経費が九・四%でございますので、いわゆる別枠として増額が認められたものを上回る経費を文部省が独自に留学生経費に充当して要求をさせていただいたという形になっておるわけでございます。これは、文部省予算全体の中におきます総合調整の結果として留学生を重視するという視点に立った組み方をしたわけでございます。
  220. 中西績介

    ○中西(績)委員 私が言っているのは、この前大臣が答弁しているのですよ、枠外にどう持っていくか戦術的にいろいろ検討しなきゃならぬと言っている。だから、どうしたのですか、これはまた従来と全く同じじゃないかと言っているのだ。だから大臣に聞けばあなたが出てきて、答弁にならぬようなことを答弁してもらっては困るのです、時間がないから。大臣、どうですか。
  221. 中島源太郎

    中島国務大臣 この予算につきましては中西委員から大変な激励をいただいておりまして、私自身も申し上げたのがいまだに鮮明に記憶にございますが、文部省文教行政を進める上に今のシーリング枠内では実際問題では非常に厳しい。できれば枠外で取っていくことを考える必要がある。私自身の率直な意見を言えとおっしゃられれば、文教予算そのものをもう枠外に置いてもらいたいというのが本心でございます。  しかし、今の財政状況でございますから、その中で与野党一致で進めるべきもの、そのくらいはせめて局部的にでも枠外を取得していく、あるいは枠を突破する手だての一つに共同でひとつお力をかりたいものだ、これは私、申し上げた記憶がありますし、また今でもそう思っておるわけでございます。まさに留学生対策などは与野党一致してこれを推し進めるべきであるという御意見もいただいたわけでございますので、このODA予算をこの方に重点的にもらうことによりまして、せめてこの辺で枠外という実績をとりたかったというのは、本心言って私の実感でございました。  しかし、概算要求時点では、その概算要求のシーリング枠というものを我が文部省だけが大手を振って拒否するという立場にもございませんので、せめてこのODAはと思ったわけでございますが、実質的には微々たることでございますので、総じて言えば枠内やりくりにとどまったとおっしゃられれば、まことに残念という言葉を使っていいのかどうかわかりませんが、私個人で言えば残念だとは思っております。ただこれをぜひとも、概算要求時点はそのとおりでございますけれども、何とか最善の知恵を絞ってまいりたい、このように率直に考えておるわけでございます。
  222. 中西績介

    ○中西(績)委員 だから私は、大臣がこれを編成するに当たって、概算要求をつくり上げるに当たってどういうようにされたんだろうかというのがどうしてもわからないのです、これ一つをとってみても。  そこで、六十四年度義務教育学校教職員定数の改善、これは文部省の方からいろいろいただきましたけれども、これを見ますと、六十三年度が二兆四千六百二十億五千四百万で六十四年度概算要求が二兆四千四百六十六億六百万、その差は百五十四億四千八百万なのですね。マイナスになっているのですよ。マイナスになることによって、単純計算をすれば六十六年までに三千名ずつぐらい割り当てていけば完成できると思っておったものが、今度四千人ぐらい毎年加えていかないとならなくなってきているのです。こうなってまいりますと、百五十四億四千八百万という額を減額しておるというのは大変問題だと私は思うのですね。確かに、これを見ますと自然減である一万四千四百人分をそのまま定数改善の中に組み込んでしまってできております。しかし、これは大変だと私は思います。  なぜこのようにしなければならなかったかということを、概算要求を全体的に見ますと、一番下の方に、六十三年七十六億であったものが六十四年二百五十四億、初任者研修のところに出てくるわけですね。その差額は百七十八億三百万になっているのですね。ですから、本格実施するだけで、この分だけでは二百七億六百万になっているのですね。これをするためには、去年よりも金が余るのにここのものを抑えてこれにつけておるのではないかという気がしてならぬわけですが、どうですか。時間がありませんから、簡単にやってください。
  223. 加戸守行

    ○加戸政府委員 義務教育負担金の減額要求の主たる理由といたしましては、退職手当見込み額の減少等に伴うものでございまして、教職員定数に関しましては、自然減に見合う増員の要求を行わせていただいたほかに別枠で初任者研修に要する定員増も要求させていただいております。
  224. 中西績介

    ○中西(績)委員 だから、減員分だけを割り当てしてあるわけですが、今言うように実際予算面では金が余っているのですよ。去年よりも少なくなっているわけですね。理由は今申し述べられましたけれども、そうであれば来年以降における順調な伸ばし方を、この前指摘をしましたように三年間で三千人ずつ、それを今度は、もし来年このままでいくとすると、その次は四千人ずつ上積みをしていかなければならないという厳しさがあるわけですよ。ですから、私はこのことを聞いているのです。そうした点あたりが絶対にこれを入れるためにとしか私は思えないわけですが、これは時間がありませんから、きょうは打ち切ります。また後日こうした問題について徹底していこうと思っております。  ただ、ベア分については七百五十億要るわけでしょう。まさかこれを義務教育国庫負担制度の中の事務職員あるいは栄養士、ここから持ってくるということはないと断言してください。それで終わります。
  225. 加戸守行

    ○加戸政府委員 ベースアップ分の手当ての問題でございますが、年末予算編成でも最大の問題になるところでございます。当然財政当局としても今申し上げたような負担金制度の見直しを迫ってまいると思いますが、事この制度につきましては、文部省といたしまして、義務教育の基幹的な職員であるという基本に立ちまして折衝をしてまいりたいと思います。
  226. 中西績介

    ○中西(績)委員 概算要求、まだ細かく指摘するところがありますけれども、時間がありませんでしたので、これで終わります。  同僚議員にかわります。
  227. 鳩山邦夫

    ○鳩山(邦)委員長代理 次に、嶋崎譲君。
  228. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 時間が十分しかございません。したがって、簡潔に聞きますので、簡潔にお答えを願いたいと思います。  私の質問の要点は、来年度四月以降の高等学校二年生の英語教科書が見本本の段階で内容の訂正を行った件について質問をいたします。  この件に関連して、十月三日、文部省は二項目の記者会見をなさいました。一は、十月三日、三省堂より、検定規則第十六条第四号に該当するものとして、現在の「戦争」という教材を全面的に削除し「マイ・フェア・レディー」に差しかえたい旨の正誤訂正申請書が出された。二は、文部省としても、三省堂の申請は正誤訂正の要件に該当するものと判断し、教材全体の差しかえを承認した。  この二点について文部省が記者会見なさったのを確認できますか。
  229. 古村澄一

    古村政府委員 ただいま先生からおっしゃられたとおり、記者会見をいたしております。
  230. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 三省堂から提出されました正誤訂正申請書、その写しをいただきたいという趣旨の要請を文部大臣室で文部大臣にしておきましたが、その写しはいただけますか。
  231. 古村澄一

    古村政府委員 正誤訂正申請書というのは、出版社と文部大臣との間で行政事務を行うために出された申請書でございます。いろいろな申請書が役所に向かって入ってくるわけでございまして、通常はそういった申請書というものは外に出さないという扱いをいたしておりますが、内容について御質問がありますれば、その内容について十分お答えいたします。
  232. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 この手続は、教科書検定規則の十六条に基づいて行われたということになっているわけでありますが、この十六条は検定を経た図書についての規定でございます。検定を経た図書というのは、見本本の段階は検定を終えた図書というのかどうか、その点についてどう思いますか。
  233. 古村澄一

    古村政府委員 見本本の段階で、見本本を決定する、検定を終わりましたということを相手方に通告した段階で検定を終わっております。したがって、今度の場合は検定を終わった後でございます。
  234. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 初中局長が記者会見の中でも、既に検定の終わったものであって、法的手続は簡単ではないということを自民党の正副部会長に御発言になっておるという報道がありますが、それはそのとおりですね。
  235. 古村澄一

    古村政府委員 私は記者会見でそのことを申し上げたということではございませんで、新聞記者の方の取材によって新聞記事に出たということでございます。
  236. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 その事実は確認できますね。
  237. 古村澄一

    古村政府委員 検定を経た教科書でございますから、再検定というのは非常に困難であるということを申し上げたわけであります。
  238. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そうしますと、第十六条に言うところの正誤訂正は検定を経た図書ということでございますので、今回のものは十六条の第四号を適用したという理解でよろしいですね。
  239. 古村澄一

    古村政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  240. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 さて、十六条の第一号、二号、三号、四号は、見ればおわかりのように「誤記、誤植、脱字又は誤った事実の記載があることを発見したとき。」「客観的事情の変更に伴い、明白に誤りとなった事実の記載があることを発見したとき。」「統計資料の更新を必要とするとき。」この三つが具体的な要件と書いて、「その他」「緊急に訂正を要するものがあることを発見したとき。」とありますが、一、二、三に関連して、検定済みの教科書の内容を根本的に変えるというものも含まれるように四号を理解してよろしいですか。
  241. 古村澄一

    古村政府委員 四号は「学習を進める上に支障となる記載で緊急に訂正を要するものがあることを発見したとき。」こういうことでございますから、私は今回の場合についてはこの中に入ると考えております。
  242. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 十六条の一、二、三号から判断して、しかも第三段階の見本本の段階ですから、その段階における誤記、誤植、脱字、誤った事実というのは、例えばスペルの誤りとか日本字の漢字が誤っていたとか、つまりそういう不測の事態、人間としての能力の限界みたいなもの、そういうことを想定した十六条というふうに理解すべきだと思います。したがって「その他学習を進める上に支障となる」事項でも、そのような内容の限定があると私は理解しますが、そう理解いたしませんか。
  243. 古村澄一

    古村政府委員 第十六条は各号列記になっておりますので、各号は各号で読むということになりますと、今御指摘のようなそういった誤記、誤植というふうな範囲よりも超えて内容は正誤訂正でやれるというふうに思っております。
  244. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そうしますと、今度の正誤訂正申請書の中身が非常に重要です。その中身には「マイ・フェア・レディー」の文章と、それから「戦争」というものを削除するというのと、そして「マイ・フェア・レディー」の全文が英文で書かれた申請書になっておりますか。
  245. 古村澄一

    古村政府委員 今度の新しい教材として入るもの全体が入っておりますから、英文で書かれたものが入っております。
  246. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 こちらを削除してこれを入れるというふうな書き方ですね。
  247. 古村澄一

    古村政府委員 差しかえるということでございます。前の「ウオー」というのをやめて「マイ・フェア・レディー」にかえるという申請でございます。
  248. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 これはページ数にしたらどのくらいですか。
  249. 古村澄一

    古村政府委員 五ページでございます。
  250. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 五ページにわたって内容を差しかえるというようなことは、検定の第二段階、つまり原稿本の段階から内閲本の段階で既に処置すべき事項と思いますが、いかがですか。
  251. 古村澄一

    古村政府委員 ページ数の問題、量の問題というお話でございますが、結局、その「ウオー」というものの学習を進めるについての支障があるというところを手直しするとすれば、なかなか文章全体として構成ができないということで全体を差しかえたわけでございまして、そのことが正誤訂正を超えるということにはならないのではないかと思います。
  252. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 見本本の段階での「戦争」という項目と「マイ・フェア・レディー」という内容は全く異質です。皆さんのやることは、私たち政治家は、内容についていい悪いということじゃないです。検定制度の検定のプロセスとしてその行政措置が正当であるかどうか、これが非常に重要なんです。  その内容については著者の見解があります。内容がいいか悪いかは三省堂が判断されたので、文部省が判断したのじゃないでしょう。
  253. 古村澄一

    古村政府委員 著者といいますか出版社の方から、いろいろと誤解を招く教材の内容を含んでいるからこの方に差しかえたいということでございましたので、私たちもそういうふうに理解をいたしまして承認をいたしました。
  254. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 出版社が、見本本の段階で「戦争」という項目の入った内容を「マイ・フェア・レディー」という項目の内容にかえていいという判断ができると思いますか。
  255. 古村澄一

    古村政府委員 出版社が正誤訂正の申請をして文部大臣は承認をするという手続になっておりますので、出版社側としてそういう意思を持って申請をしてきた、したがって文部省はそれによって承認をしたということでございます。
  256. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 では、初中局長は、行政的には既に教科書検定の手続は終わっている、法律的には再検討できないとおっしゃった。そのできないとおっしゃった文部省が、出版社の権限の枠を超えたと思われる、予想される内容の変更について、それを承認したというのです、記者会見で。承認したというのは、検定されたということですよ。文部省が検定できるのですか。文部省が承認したのなら、もう一度検定審議会にかけるとか、内容について前の教材がふさわしくないということについてきちんとした手続を踏まなければ、承認したといって書きかえるというような単純な内容ではないと思います。どうですか。
  257. 古村澄一

    古村政府委員 これは十六条、そして十七条という検定規則の規定によりますと、申請者から出てきて、そしてそれに対して文部大臣は承認するということに手続上なるわけでございまして、文部省としてはそれを承認いたした、こういうことになります。
  258. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 文部省の検定制度、その制度そのものに大変疑問があるということで、我が党は制度そのものの承認はしておりません。しかし今三段階の検定制度でもって教科書検定に問題があるときに、三段階で完了してしまってもう七月には全部公開し、来年使う教科書を注文したり印刷にかかる段階です。そういう段階で内容基本的な更迭を行うということはこの規則の精神から見て明らかに逸脱であると私は判断せざるを得ないと思う。文部省は法律的にはできないと言いながら、結局、規則の承認事項だけを適用して、あとは審議委員によって回し読みで承認という手続をとったにすぎない。  さて、十分ということですからもう議論になりませんが、今度新たに教科書の検定制度が変わりますな。三つの段階を一つの段階にするのです。今の原稿本の段階、内閲本、見本本の段階が一段階で行われる。  今回の場合も文部省自身が自民党の圧力に屈したということになっていない。そうでしょう。言われたときは、法律的にはできませんと答えたのですから。ところが、下から上がってくる出版社は何を基準にして内容の変更をやったかは、言うまでもなく自民党文教部会その他の圧力を恐れて手続を踏んだと理解せざるを得ない。したがって、三段階の今の検定制度を一段階に持っていくということになれば、これから先は最初の段階、第二段階、第三段階の中で今までクリアされてきた過程が非常にあいまいになるという意味で、今後とも教科書問題に問題点を残しやすい。過去の経緯から見てたくさん教科書問題について内外が注目しているときですから、それだけに、改定に当たっても今のような事件が再び起きないようにするべく、この措置についても今後委員会において議論をすべきだと思う。どうですか。
  259. 古村澄一

    古村政府委員 教科書検定制度については、今の三段階の手続等についてはいろいろと批判があったところでございます。したがいまして、教科用図書検定調査審議会におきまして去年から一年間ぐらいかけてこういった手続についてどうすればいいものになるかということでやってまいりましたその結果を先日公表いたしましたが、そういった審議会のそれまでの審議のまとめの報告でございます。したがって、その報告については私たちは十分吟味しながら、具体的には検定規則の改正でありますとか検定基準の改正でありますとかといったことに取り組むことに相なります。
  260. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 見本本の段階で原稿料、ページ数に即してお金を払っていますね。お金は既に出版社が渡しておりましたか。つまり見本本の段階で小学校から高等学校教科書についてページ数に応じてお金を払うことになっているでしょう、手続的には審査料というものを払うでしょう。それを終了しておりましたか。
  261. 古村澄一

    古村政府委員 審査料は最初のときにはいただいております。正誤のときにはこれは関係ございません。
  262. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 これは支払い追加になりますな。
  263. 古村澄一

    古村政府委員 正誤訂正には審査料は要らないということになっております。
  264. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 これはオーバーしても構わないのですか。  それはまた議論になるところですが、いずれにいたしましても、今のような趣旨で、今後ともこのようなゆゆしき事態が二度とないように、文部大臣の所管事項ですから、その責任において慎重な対処をしていただきたいということを要求して、終わります。
  265. 鳩山邦夫

    ○鳩山(邦)委員長代理 次に、鍛冶清君。
  266. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 私は留学生、帰国子女問題、それから大学、高等教育の関係で私学補助金の問題、それから大学の入試の問題、さらにはいろいろな改革のあり方等についてお尋ねをいたしたいと思います。よろしくお願いをいたします。  最初に留学生、帰国子女問題でございますが、特に留学生問題につきましては、我が党は昨年から竹入委員長を先頭に全国的な募金活動を始め、留学生が円高とともに大変な苦況に陥っているということで、その救済を含めて、日本の国へ留学をされた方々が本当に喜んでお国に帰られ、そして国の役に立ち、さらには日本との友好関係が持続できるようにという長いスパンでの考え方に立ちましてもろもろの施策、実際の運動を含めて、また国会でも当委員会質問等を重ねてまいりました。  そういう中で来年度につきましてのこの留学生問題についての概算要求等もなされておるわけでございますが、昨年と比較してみますと、文教予算も残念ながらシーリングがかかって伸びがほとんどない中で、この問題については予算が非常に大幅に増額されておる。この点に関する限り私どもは大変高く評価しているわけでございますが、しかし、先ほどからも指摘があっておりましたように、十万人の留学生を受け入れるという、こういう流れの中で現状を見てみますと、まだまだ十分とはいえませんし、これまで以上に強力にこの施策を推し進める必要がある、こういうふうに思っております。  そこで、総務庁の行政監察結果報告というものが出されておりまして、この留学生、帰国子女問題で幾つかの点を指摘をし、その改善の勧告がなされておりますが、これを中心にしていろいろとお尋ねをしたいと思います。  質問に入ります前に、留学生、帰国子女の問題につきまして来年度の概算要求の中でどういうふうな組み方をしてあるのか、この点についてまず御説明をいただきたいと思います。
  267. 川村恒明

    ○川村政府委員 ただいま御指摘をいただきました留学生問題への取り組みでございますけれども、来年度の留学生関係の概算要求でございますが、いろいろな事項がございますけれども、総額二百三十四億九千六百万円ということで前年度に対して約四十億円の差増、率にいたしまして二〇・二%ほどの増額のお願いをしている、こういうことでございます。  内容的にはいろいろの事項がございますけれども、主なる事項を簡単に御報告申し上げますと、一つは国費留学生の受け入れの計画的な整備ということでございます。総数のベースにおきまして本年度より約五百人増ということで、五千三百七十三人ということで五百人ほどの増を図ってまいりたいということが一つ。  それから、来年度の概算要求におきましては特に私費の留学生に対する援助方策を抜本的に拡充していきたいということでございまして、具体的には特に私費の留学生に対する学習奨励費でございますけれども、現在学習奨励費は予算上五百人の留学生に対しまして月額で学部レベルが四万円、大学院レベルが六万円ということにしておりますが、この単価を引き上げると同時に、この五百人を二千五百人にふやしたい、一気に五倍にふやしたいということでございます。  さらに、前年度から引き続いておりますが、私学におります私費留学生に対する授業料の減免措置でございますけれども、これが現在八千四百人というものをさらに千人ほどふやして、九千四百人の方々に対して授業料の三割を限度とする減免措置を講じたいということでございます。  それからもう一つの大きな柱といたしましては、留学生の宿舎の確保の問題でございます。現在の留学生の受け入れ態勢の中でやはりこの宿舎の問題が大変に大きな問題でございますので、幾つかの工夫をさせていただきまして、例えば、現在の財団法人学徒援護会という団体がございますけれども、そこが新しく留学生のための指定宿舎制度というものを設けたいということ。あるいは、民間の方あるいは地方公共団体等が留学生のための宿舎を建設する場合に、その建設の奨励金を新規に計上するというようなこと。それから、特に民間の企業等で社員寮を提供したいという動きが大変盛んになっております。そこで、そういう社員寮提供を目的とする公益法人を新しくつくりまして、民間の企業の社員寮の開放を全面的にバックアップするための新たな助成措置を講じたいというようなことがございます。  なお、前年度から引き続いております国立大学の留学生宿舎の新設でございますとか日本国際教育協会の新しい祖師谷の宿舎の建設、そういうものを引き続いて進めたいというようなことでございます。  その他、受け入れの基幹団体でございます日本国際教育協会に関する組織の充実でございますとか、国立大学または私立大学における留学生の教育のための諸経費の充実というようなことをそれぞれ内容といたしておりまして、先ほど申し上げましたように総額で二百三十四億九千六百万円の概算要求をさせていただいているという状況でございます。
  268. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 では、行政監察結果報告書の勧告に従って、私どもの考え方もつけ加えながら、関連させながら御質問をいたしますので、お答えをいただきたいと思います。  最初に、入学選考方法の改善についての勧告がなされております。それにはこうあります。「文部省は、各大学に対し、留学生の大学入学選抜に際しては、共通一次試験を免除し、「私費外国人留学生統一試験」及び「外国人日本語能力試験」の活用を含め、その特性に配慮した選抜方法をとるよう指導する必要がある。」こういうふうになっております。  確かに、共通一次を取り上げて試験として生かして使っている大学におきましては、実際上は留学生の皆さん方が受験していないという現状もあるようでございますし、共通一次によらなくても留学しようとする人たちの基礎学力とか日本語能力というものは別の角度から知ることができるということも言われておりますし、この改善方はぜひ必要であろうと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
  269. 川村恒明

    ○川村政府委員 御指摘のように、国公私立を受験する留学生に対して共通一次試験を課するということはやはり現実問題としてはなかなか適当なことではない、この勧告のとおりでございまして、私どもも各大学に対してその点について改善を求めているわけでございます。  そこで、この勧告をいただきましたときに共通一次を課している大学あるいは学部の数を見ますと、その時点では三十二の大学で五十二学部でございます。主として医学部でございますとか教育学部でございますとかそういう系統の学部でございまして、学部の数でいえば全体の一五%の学部がそういう状況でございました。こういう勧告もございましたし、私どももかねてその点の改善を求めておりまして、その後、現時点までに、それじゃ六十四年度からそういう共通一次を課することをやめようということで意思決定をしていただいたのが十大学の二十学部ほどでございます。でございますから現時点では、来年度の入試でなお共通一次を課そうというのが二十二大学で三十二学部ということでございます。学部の数でいえば全体の一〇%足らずでございますけれども、この点につきましては、私ども、なおできるだけ早い機会に共通一次は免除していただいて、それは私費統一試験でございますとか日本語能力試験でございますとか、そういうものでもって本人の能力を確かめていただくということで今後ともお願いをしていきたい、こういうことでございます。
  270. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 その問題はひとつ推し進めていただきたいと思います。  二番目に勧告されておりますのは「日本教育の充実等」についてでございます。この中には「文部省は、留学生の日本教育に関し、次の改善措置を講ずる必要がある。」こういう指摘の中でアとして「日本学校実態把握・情報提供」、これは内容的にはいろいろと書かれておりますが、端的に言いますと、現在の日本学校の実情把握というもの、情報の提供というものが極めてよくないという指摘でございます。  日本学校についてはことしだったと思いますが、私も特にこれだけを取り上げて大分やりとりをさしていただきました。文部省サイドも日本学校についての取り組みを強化するという方向を打ち出されておったようでございますが、やはりこれは法務省、入管関係との絡みもあり、さらにはこの勧告の中で指摘されておるのは財団法人の日本国際教育協会、ここで日本学校紹介がなされており、これは海外の人たちが得る唯一の情報であるわけですが、この協会が出しておる日本学校紹介は、文部省、法務省両当局とも全然話し合いがないままに掲載をされておって、非常に不十分だということも指摘をされておるわけです。こういう点についての改善は早急にする必要がある、こう思うわけでございます。  次に、「日本語予備教育機関の有効利用」ということで、「教育条件が整備されながら非効率な運営となっている国立大学の日本語予備教育機関については、国費留学生のみでは受講定数を下回る場合、私費留学生もできるだけ受け入れることにより、教員、教材等の有効活用に努めること。」こういう指摘がなされております。確かに定員以下の場合で、席も非常にあいているということがあるようでございますので、この改善はすべきであろうと思います。  さらには、「大学の日本教育の実施」ということで、「留学生への日本教育を実施していない大学に対し、既に日本教育を実施している大学との連携により実施することを含め、日本教育の実施について指導を行うこと。」こういうふうになされているわけでございますが、この点についてお伺いをいたします。
  271. 川村恒明

    ○川村政府委員 幾つか日本語の問題について御指摘をいただきましたけれども、最初の日本学校実態把握の件でございますが、このことにつきましては、実はそもそも文化庁で昭和四十二年以来毎年日本学校実態調査を実施してまいりました。日本教育の振興を図るための基礎資料を得るということで毎年実施しておったわけでございます。その限りでは四十二年以来実態把握に努めておったわけでございますけれども、他方、法務省の方でも、これは実際問題としての在留資格を付与するかどうかというような観点から、やはり日本教育機関についての調査をしてこられた、こういうことでございます。  そこで、たまたまその両者の調査を突き比べてみると、そういう調査の視点が違うということもございまして、学校が必ずしも一致していなかった。その当時のあれで申しますと、文化庁の調査で対象になっていたものが百二十一校、法務省の方では百五十校ほど、こんなことでございまして、実態として日本学校は民間で自由に設立をされておりますから正確な形で学校を把握することはなかなか困難でございますけれども、いずれにしてもこういうような食い違いがあるというのはぐあいが悪いじゃないかということでございます。それは御指摘のとおりでございますので、毎年文化庁の方では調査をいたしておりますが、実は六十二年十一月一日現在の調査のときから、法務省の方でつかまえておられるものも含めて全体漏れなく、わかる範囲のものを調査対象としてやろうということで調査を実施することにしているわけでございます。これは毎年十一月一日あるいは十月一日に調査をいたしますので、本年度分につきましても当然法務省とよく相談をいたしましてその辺は漏れないようにして今進めている、こういう状況でございます。  それからなお、国際教育協会が対象としている日本学校がまた違うじゃないか、こういうお話、御指摘のとおりでございまして、日本国際教育協会が英文で日本の大学情報といいますか大学案内というものをつくっております。これは二年に一遍つくっておるわけでございますけれども、一九八七年版の大学案内の一番しっぽに日本学校の案内を掲載した、これに載っかっている日本学校の数が四十三校ということで、先ほど申しました百何十校とはかなり違う数字が出ておった、こういうことでございます。  これは国際教育協会の方で一番確実と思われる日本学校をつかまえたということでございますけれども、やはりこういうことでも困るわけでございます。この大学案内は二年に一遍でございますから来年の三月に新しい版を出すわけで、現在その編集をしております。それで、来年の三月に発行予定の案内におきましては、最新の、ことしの秋の文化庁の調査結果を活用し、また、法務省と十分御相談をいたしまして、内容を充実し、相互に食い違いがないようにしていきたいということでございます。  なお、つけ加えて申し上げれば、この日本学校の問題は大変重要で、今度の概算要求におきましても、そういう日本学校による新しい自主的な団体をつくっていただいて、そこで日本学校についての正確な情報をもっと頻繁な形で出すということについても現在検討している、こんな状況でございます。これからも引き続いてまいりたいと思っております。  それから、日本語の予備教育機関の問題につきまして、国立大学の留学生教育センターでございますとかそういったところで若干あきがあるから、国費留学生だけを相手にしないで私費留学生も入れる、あるいは大学院生を主たる対象にしておっても、あいておれば学部の学生も入れるという運用をした方がいいじゃないかという御指摘、おっしゃるとおりでございまして、御指摘をいただく以前から実は一部私費留学生を入れたり、そういう弾力的な運用をしております。こういう勧告をいただきます時点では、全体として、日本教育機関、九大学に置かれておりますところで定員の充足率がかなり低かったわけでございますけれども、その後現在では約七四%ぐらいまでこれを引き上げてきておりますが、なお、そういうことでせっかくのものでございますから活用していきたいというふうに思っております。  それから最後に、大学での日本教育でございます。  大学で日本教育をやるやり方はいろいろございます。正規の授業科目として日本語、日本事情という授業科目を開設するという方法もございますし、あるいは先ほどの留学生教育センターのような予備的な教育機関を設置するというやり方もある。あるいはそういう正規のものでなくても、補講をするとかいろいろな形の進め方があるわけでございます。  そこで、国立大学の状況を見ると、現在何らかの形で留学生に対する日本教育の機会をつくっている大学が全体で七十大学ほどございます。ですから、全大学数でいえば約四分の三、七五%程度の大学はそれをやっているわけでございます。ですから国立の場合はまずまず日本教育の機会はつくっておりますが、ただ、私学の状況などを見ますと、私学ではやはりまだ非常に低い。何らかの形でそういう機会を確保しているというのが全体の四分の一にも満ちていない、二〇%ちょっと、こんな状況でございます。この辺につきましては、これからさらに留学生の受け入れ数がふえるということもございますので、私学の方にもさらに御協力をお願いしてまいりたい、こういう状況でございます。
  272. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 特に、実情把握と情報提供ということと絡んで、日本学校というものが、一部のものでありましょうが、非常にいかがわしい形でこれを利用して、金もうけのために留学生ないしはこれは就学生も相当かんでいるようでございますが、だまされたといいますか、非常に迷惑をこうむって、日本に対する印象を悪くしておる、こういう実態もあるようです。昨日の朝日新聞の朝刊にも、マレーシアからことしの春入学したばかりの、これは就学生でございますが、男女四人のことが報道されておりまして、マレーシアにおいてその日本学校の概要等についての紹介を受けて、それをそのとおりに受けて、お金も払ってこちらに来て寮にも入ったそうでありますけれども、結局、当初聞いておったのと随分と違っておる、そしてまた授業もまともにやられてないとかいろいろなことで、とうとう自主的に退校した、そして、東京都のアジア学生文化協会に救いを求めてきた、こういうふうな記事が出ておりました。  こういう記事を読むと、大変悲しい思いがすると同時に、こういう問題に対して本当に取り組まなければいかぬなと思うわけでございますが、こういったものがいろいろ横行しておるという実態が相当あるようでございまして、そういうことの解消を含めて、そういう実態の把握、情報の正確な提供というものが必要であろうと思うわけでございますが、こういった記事について、こういう実態というものは掌握をしておられるのか、またこういうことがないようにするためにはどういうふうな方策を講じていこうとお考えなのか、これは法務省、入管の関係もあるかもわかりませんが、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  273. 川村恒明

    ○川村政府委員 昨日、新聞で報道されました件でございますけれども、ことしの春、日本学校に入学したマレーシアの四人の学生に対して、その受け入れ日本学校の方でいろいろな不行き届きがあってということでございます。それで、この件につきましては、私ども早速、きのう新聞に出たこともございますし、その新聞にも名前が出ておりましたが、アジア学生文化協会というところに問い合わせをしております。それでまた、これは入管関係のことでもございますから、関係の当局の方を通じてその事実関係の確認を現在急いでいる、こういう状況でございます。  現時点で申しますと、アジア学生文化協会の方から聞こえてくる話と関係当局の方で調べてみた話とがかなり食い違っておるという状況でございますので、このことについてどうかと具体的に申し上げるのはもう少し事実関係を確認させていただきたい、それからにさせていただきたいというふうに思っております。  ただ、一般的なことで申し上げますれば、この問題、こういうことはよく新聞にも出てくるわけでございますけれども基本的には外国人の日本社会への受け入れの問題であろうかと思っております。いわゆる就学生問題と我々言っておりますが、正規の留学生として来ているのではなくて、いわゆる就学生として半年間のビザをもらって来ている者について、その中には実は日本日本語を勉強するというよりも職について働くというのが目的だという者もかなりある。また、そういうことで、日本に行けばお金がもうかるということでそれをあっせんするブローカーがいるということがよく報ぜられております。今回の件でも、新聞に、マレーシアにおけるいわゆるブローカーと申しましょうか、仲介業者のことが出ておりまして、そうすると、本件はやはり不法就労の目的で留学という名をかりて来たのか、こういうふうにも思いますけれども、そこは先ほど申しましたようにまだ実態がよくわかりません。  そういう就学ということで実は労働が目的だということで外国人が入国をするということになりますれば、これは日本での労働政策の問題、雇用政策の問題にもかかわってくる。もちろん基本的には入国管理の問題でございますけれども、これは国内の雇用政策ともかかわってくる問題でございます。  また、これが教育の方から申し上げますと、日本学校というものがそういう不法就労等の名目に使われるということは決して好ましいことではないので、教育立場あるいは文化の立場から申し上げれば、やはり日本で大学に入って勉強したい、あるいは日本語というものを勉強して日本文化を知りたいということは、これは大いに歓迎すべき事項でございます。大いに歓迎すべき事項でございますけれども、実はその日本学校が今御指摘のような非常にあいまいな経営をやっている、問題があるということでは非常に困る。やはり日本学校というものの質をよくして、そういうトラブルの入り込む余地がないようにするということが、多少回りくどい方法ではございますけれども、やはり一番必要なことではないかというふうに思っております。  そんなことで、実は本年度、日本学校の基準をつくろうではないかということで協力者会議お願いいたしまして、現在文部省の方で、もちろんこれは外務省、法務省さんにも入っていただきまして、三省で緊密に連携をとりながら日本学校の基準というものをできるだけ早い機会につくりたい。そういう基準ができますれば、現在いろいろ設置されております、一口に約五百校ほどあると言われておりますが、日本学校について、そういう基準のもとにこれを内容の質的な充実について十分に指導していく。そういうことを通じて、こういうふうな不祥事がだんだんとなくなっていくということを目指していきたいと考えております。
  274. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 三番目に勧告をされておりますのは、留学生の住まいの確保等の問題でございます。  これについては、  文部省は、留学生の住居の確保等に関し、次の改善措置を講ずる必要がある。  ア 住居の確保   留学生宿舎の整備を引き続き進めるとともに、留学生の住居の確保のため、下宿・アパートへの大学職員の同行、地方公共団体及び企業の独身寮の貸与要請などの積極的な努力を行っている大学の例をも参考として、各大学に対し、留学生の住居の確保に一層配慮するよう啓発指導を行うこと。  イ 留学生宿舎の管理運営の効率化   補助金の交付を受け留学生宿舎の設置・管理を行っている財団法人に対し、留学生宿舎の管理運営の効率化を図る観点から、職員配置の合理化、共通役務業務の外部委託化等を更に推進するよう指導すること。 こういう指摘があるわけです。  これについてお伺いしたいのですが、あわせて関連してやはり宿舎の確保の中で、特に私費の留学生の方々は、アパートを借りに行ったり連名で家を借りに行ったりというようなことがあるようでございますけれども、留学生であるということがわかるとこれを拒否される、こういう傾向がある。これは御承知のようにアルバイト等を見つけて働こうというときもこういうことがよくあるようでございまして、これは私どもとしては大変残念な状況であると思いますが、そういう底流がまだまだ我が国にも多いのかなというような思いもあるわけです。こういうものに対しては速やかに解消していく方向の手だてを講じなければならないと思いますが、こういう対策についてあわせてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  275. 川村恒明

    ○川村政府委員 御指摘をいただきました宿舎の確保の問題というのが、先ほど申し上げましたように、やはり現下の留学生対策で非常に大きなウエートを占める部分であろうかと思っております。そこで、勧告でも、そういうことで宿舎の整備を進めるようにということでございまして、幾つかの施策を進めたい、こういうことでございます。  そこで、まず従来から進めております国立大学の留学生宿舎の整備でございますけれども、これは新規着工分で申しますと前年度が二百四十七戸でございましたが、概算要求ではこれを二百七十二戸ということで、約三十戸ほどの増ということで引き続き進めてまいりたい。それから、日本国際教育協会の新しい留学生会館が約三百五十戸でございますけれども、三年計画の最終年度でこれの完成を目指すということが、以上が既定の施策の継続でございます。  それから、新しい事項として、先ほど申し上げましたがいわゆる社員寮の提供問題でございますけれども、これにつきましては経済同友会の御協力も得、通産省と一緒になって新しく財団法人として留学生支援企業協力推進協会という新しい公益法人をつくり、そこで当面は五百戸ほどの社員寮の開放を求めていきたいということでございます。それを当面五百戸、将来的には一千戸ほど企業からの社員寮の提供を求めるということで、これは新規に予算を計上さしていただいております。  それから、留学生宿舎の建設奨励金でございますけれども、地方公共団体、民間団体等が新しく留学生のために宿舎を建設してやろうという動きが最近大分出てまいりまして、そういうものに対して、国際教育協会から建設奨励金を交付をするということを新しくまた計上する。  それから、学徒援護会が新しく指定宿舎制度を設けたい、約二百戸ほどの確保を目的としておりますけれども、民間の優良な下宿、アパートを留学生の専用宿舎として指定をするわけでございます。そのための保証金でございますとか、若干バス、トイレ等の改修の助成金をそこにつけるとか、そんなことをして留学生のための宿舎を確保するというようなことで、いろんな方法を通じて宿舎を確保することに努めてまいりたい。  それから、各大学でやはり具体的には宿舎のあっせんをする場合が多いわけでございますから、留学生の宿舎の確保にきめ細かく対応してもらいたいという指導をしているわけでございます。  なお、勧告の中でもう一つ、留学生の宿舎の設置・管理を行っている財団法人において、さらに職員配置の合理化等に努めよ、これは御指摘をいただくまでもなく当然のことでございまして、現在そういう宿舎の設置・管理をやっております財団法人につきまして共通役務の外部委託等の極力合理化は進めてまいりたいということでございます。  それから、これに関連をして留学生がなかなか現実問題として宿舎等が確保できないのではないか、これはやはり我が国に来ております留学生の八割以上が東南アジアからの留学生でございますけれども、アルバイトの先の確保にしても、宿舎の確保にしても現実問題としてなかなか難しいことがある。それは留学生の方のリクエストと、それから現実の民間の宿舎の状況なり、あるいは企業での受け入れの雇用主側の意識というものがどうしてもずれてくることが多いわけでございます。  そこで、そんなこともありまして、ひとつ本格的にこういうものについて取り組みをしなければならぬということで、財団法人の学徒援護会というのがございますが、これは戦後以来ずっと主として名前のとおり学生の援護をしてきた団体でございますけれども、従来は日本人の学生を対象にしてきました。そこで、この学徒援護会が本年度から留学生相談コーナーというものを全国に十一カ所つくりまして、そこで、アルバイトのあっせん、それから宿舎の確保ということについて本格的に取り組むということにさしていただいたわけでございます。それで、これは六十三年度から、つまり本年度から店を開いたわけでございますけれども、非常に好評でございまして、これはつまり留学生のために専らそういう相談に乗るということで、いずれも無料でやっておるものですから、現在のところ非常に好評でございます。やはり普通の日本人並みの扱いということではなかなか現実問題、困難でございますから、こういった窓口もこれから大いに活用さしていただいて留学生のそういった面の充実に努めてまいりたい、こういうことでございます。
  276. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 この住居の問題は最も大切な一つになると思いますので、当面の対応の中から将来展望の上で相当な予算を突っ込みながらまた進めていただきたいと思います。  次に、四番目に「留学生に対する奨学金の充実」ということの指摘があります。  これは最初の予算の概算要求の説明の中でありました施策、これを進めていくということが強力に指摘されているわけでございますが、これは当然進めていかれると思うのです。これに関連して私どもこれは提案として申し上げたいのですが、どういうふうにお考えになるのか、お聞かせをいただきたいのです。  留学生は最終的には十万人受け入れ計画というものがなされておりまして、それで順次ふやしていっているわけですが、十万人を受け入れた際は、これは計画の中では私費留学生が九割である、いわゆる国費の留学生は一割ということでお考えになっておられるわけでございますけれども、今までの指摘の中にもありましたように、やはり国費留学生はまあまあでございますが、私費留学生の方に大変問題がある。そしてここらあたりから、せっかく日本に留学しに来ておりながら、過去中曽根総理が首相時代に東南アジアに行かれたときに、日本に留学させた人から、もううちの息子は二度と、二度とじゃない、初めてかもわかりませんが、絶対にもう日本には留学させたくない、こういう話があった。  これはいろいろな事実が指摘があったそうでございますけれども、こういうお話を聞くと、かえって留学生を受け入れたがためにマイナスになるという部面ができたのではこれはどうにもならない。特に、私費留学生の方にそういう感じで帰られる方が多いのじゃないかというふうな気もしているわけです。そういう意味合いから、これは思い切って、予算も要ることですけれども、むしろこれからいろいろ国際化していく中で、日本が生きていく中で最も基本的な大切な問題であると思いますので、この十万人の中で国費留学生を九万人にする、私費を一万人程度に抑えてやるぐらいの財政措置を考えながら推し進めていく方がいいのではないか、こういうふうに私どもは思うわけです。  現状の中で、国費で来て留学していらっしゃる方々と私費との差が余り激しくて、私費留学生の方々の世論調査なんかも各所で行われているようでありますけれども、その中ではびっくりすることに、国費留学生の今支給されている額を減らしてでも、極端に言えば少し多いのじゃないか、それを減らして国費留学生をふやすとか、私費の留学生の方に回すとか考えた方がいいのじゃないかというふうなアンケート調査の結果なり、またマスコミ等の報道の中にも、留学生自身の中からそういう声が上がっておるというふうなことも言われておるくらいでございまして、これは私費というものよりも国費の留学生をふやすという中で考えていくのが本筋ではないか、こういうふうに思っているわけですが、これについてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  277. 川村恒明

    ○川村政府委員 現在の十万人計画では、二十一世紀初頭において十万人を受け入れる、その際に国費と私費は、国費が一割、私費が九割、こういうことでございます。それはこの計画をつくりました際に、諸外国の状況等も見ると、大体よその国でも国費留学生の数というのは全体の一割足らず、これができた当時と若干状況が違いますけれども、これは現在でもフランスでは約九%ぐらい、アメリカでは国費学生の数は二%ぐらいというようなことでございます。そんなこともありますし、そういう国費を受け入れるということ、これを牽引車として私費の留学生を受け入れるというふうな考え方でやった、こういうことでございます。  ただ御指摘のように、現在の国費と私費のあり方というのがそのままでいいのかという大変鋭い厳しい御質問でございますけれども、現在の国費留学生に対する処遇というのはよ過ぎるではないかというお話もいただいて大変ありがたいわけですが、現在のレベルというのはやはりよその国の状況、あるいは大学以外に日本国内でもいろいろな、例えばJICAでございますとか海外技術者研修協会でございますとか、いろいろなところで海外から留学生に類似した研修生を受け入れている状況、そういうものを見ると、現在の国費留学生の手当が多過ぎるということはないんだろう。やはり国が責任を持ってお呼びをして安心をして勉強ができるというためには、現在程度の処遇というものはどうしても必要だというふうに思っているわけでございます。  でございますので、むしろ国費と私費の問題というのは、国費を切り下げてでもというのは比喩的におっしゃったことだと思いますけれども、やはり私費というものをもっと大切にするということが重要じゃなかろうかということでございます。さらに言えば、国費と私費というものが国費か私費か、黒白いずれかというふうに分かれるということよりも、もっとその留学生の経済状態なりそういったものに的確に対応して幾つかの段階があった方がいいんじゃないか。現在、先ほど申し上げましたように新しく学習奨励費を大幅に増員をする、それによってまたその単価も増額をするというお願いをしておるのは一つはそういうことがございまして、この制度ができますと、いわゆる私費留学生にもその学習奨励費という国費を一部もらう学生とそれをもらわない学生、こうなって、現在の国費と私費という二段階が少なくとも三段階に分かれるようになるわけでございます。  そんな形で、やはり私費留学生はもっと大切にする。それはそれぞれのその人たち経済状態その他を見ながら実情に応じたきめの細かい対応をしていく。先ほどの宿舎の問題もそうでございます。そんなことで、私費留学生に対する対応というものをきちんとしながらこの十万人計画の達成を図っていきたい、こういうふうに考えておりますので、よろしくお願いを申し上げます。
  278. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 誤解のないように申し上げておきますが、私は国費留学生の金額を削れとは思っておりません。そういう現在私費で留学している方々がそれほど苦しくて、財政的な枠がそれだけしかないのならばむしろそこを削ってでも我々の方に回してもらえないかという切実な悩みであろうかと思います。私はむしろ国費の方に私費を引き上げていくというのが当然であろう、こう思っておりますので、その点は誤解のないように御理解をいただきたいわけです。  九万人の国費、どうもお答えがなかったような気がしたけれども、そういう方向で進めるという考え方はいかがでしょうか。これはもう一度お尋ねをしたい。  それから五番目に、「地域住民等との交流の推進」ということが指摘されております。各大学にいる留学生と地域の住民の方々との交流がいろいろな形でなされることがまた非常にいい結果を及ぼしておるし、友好のきずなが深まっておる、こういうふうなことで指摘があっているようでございます。  こういう中で、私どもは、ホームステイ制度等もございますが、これを長期にわたってというのじゃなくて、一日、一晩ぐらいはそういう留学生の方々を我が家に迎えて案内してもよろしいというようなことを大きく呼びかけて広げていくというようなこともいいんじゃないかな、こういうふうな考え方も持っておりますが、こういったことを含めてこの問題についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  279. 川村恒明

    ○川村政府委員 先ほど失礼いたしました。  その九万人、一万人の問題につきましては、先ほど申し上げたようなことで、ただいま先生御指摘いただきましたように、私費をさらに大切にするという方向で進めてまいりたい。でございますから、現在の一万人、九万人という比率につきましては、これは将来どこかの時期であるいはそれを見直す必要があるかもしれません。しかし、現時点ではそれの比率云々というよりも、国費を大切にしながら私費に対する施策をさらに充実をしていくという方向で進めさせていただいてはいかがか、こういうことでございます。  それから、ただいま御指摘のございました地域住民との交流の問題でございますけれども、これはやはり大変大切なことで、留学生が将来国に帰ったときに日本社会に温かく受け入れてもらったということが何よりの財産、必要なことであろうということでございます。  そこで、私どもとして、それぞれの地域ごとにその地域の国立大学等が中心になって、自治体でございますとか財界でございますとか、その他社会教育関係の団体でございますとかいろいろな団体に入っていただいて、その地域ごとに留学生の推進協議会といった組織をつくるというようなこともお願いをし、現在既に全国で四カ所ぐらいそういうものもできております。そういう形で受け入れの態勢を整える、それから実際に留学生が日本人家庭との積極的な交流を進める、そういう留学生推進協議会のようなものができればそこでボランティアの家庭も大いに参加していただこう、こういうことでございますけれども、現在でも例えば国立大学について申し上げれば、日本人家庭の寄宿謝金というものも予算的には計上し、留学生が二年ないし四年間日本にいる間に一遍ぐらい、一泊ぐらいはホームステイができるようにというふうに予算的にも計上いたしております。  それから、関係者の話を聞きますと、実際問題としてなかなかそういう家庭が少ない、いざとなると家庭が少ない。でございますから、ホームステイというかけ声でもやってみると、一日だけのホームビジットで、泊まらないで晩御飯ぐらいごちそうしてさようなら、こんな感じになっております。それでもやらないよりははるかに効果的でございますけれども、やはりもうちょっとホームステイをする、文字どおり一泊するというようなことも必要なので、そんなこともございまして、現在ロータリークラブでございますとか日本青年会議所でございますとか、いろいろな民間団体が協力をしていただいておりますが、さらにそれぞれの地域でその協力の輪を広げていくということが大切であろう。そんなことで、特に大学でのそういう関係の部局に対してそういう協力の輪を広げるように、さらに活動、活躍をしてもらいたいということでお願いをしているという状況でございます。
  280. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 次に、「学位取得への配慮」ということでの勧告があっております。これも今までと同様、再々御質問申し上げたのですが、的確な勧告があっておりますので、これについてどういうふうに取り組みをされるのか、またお尋ねをしたいと思います。  この中で、   文部省は、留学生に対する学位授与、特に文科系の博士号の授与が極めて少ないことは国際的通念からみて異常であることにかんがみ、国際交流を促進する観点から、  ① 留学生に対する学位授与につき一層配慮する、  ② 研究科における専攻内容等を勘案して、専攻分野が日本語・日本文化研究等日本語に関する知識が必要なものを除き、論文使用言語を日本語以外でも差し支えないものとする、  ③ 外国語試験科目に日本語以外の二か国語を要求する必要がないものについては言語上の一層の配慮を行う  など所要の措置を講ずるよう各大学に対して促す必要がある。 こういう指摘があっておりますが、この点についてはいかがでしょう。
  281. 川村恒明

    ○川村政府委員 ただいま御指摘の学位の授与の問題でございますけれども、これは基本的にはそれぞれの大学での教育指導の問題でございます。大学の自治とも関連する問題でございますから、我々がにわかに強制的にああしろこうしろと言うわけにはいかないわけでございますけれども、ただいま御指摘がございましたように、留学生の学位の取得の状況を見ると、特に博士課程の文科系で非常に著しい落ち込みがある。六十一年度現在で博士課程状況を見ると、文科系は取得率が二六%、それに対して理科系は八四%でございます。また、修士課程で見れば、文科系も理科系もほとんどが一〇〇%近い取得率でございますから、ここはまず問題はないであろう。でございますから、その理科系の一部と文科系について、これは大学でもよほど腰を入れた取り組みをしていただきたいということでお願いをしているわけでございます。  現在、学位制度自体は国の制度でございまして、制度的に文科系の学位が取りづらいということになっているわけではございませんけれども、こういうふうな御指摘もございます。そこで、現在大学審議会の方で学位制度についても御審議をいただいているという状況になっておりますし、制度的な面で取りづらいということがもしあるとすれば、それはそういう審議の中で当然進めていかなければなりませんけれども、私ども実態を見ると、むしろ今御指摘がございましたように、例えば論文の執筆で、日本語で書かにゃだめよ、英語で書いちゃだめよとか、あるいは大学院の卒業要件として外国語試験を課す。これは別に課さなくてもいいし、課す場合でも一つの外国語で済むわけですけれども実態を見ると二カ国語はどうしてもやれということにする。そのときに日本語は外国語じゃないよなんという扱いになるとこれは留学生の方にとっては非常な問題でございますから、この勧告をいただきましたような点を中心にさらに大学に対して積極的な指導を進めてまいりたい、こういうことでございます。
  282. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 この留学生問題で、勧告を受けておる内容ではございませんけれども、私はここでひとつぜひお取り組みを願いたいということでお尋ねをするわけでございますが、これはできましたならば大臣にお答えをいただければと思います。  前も一度塩川文部大臣のときにお尋ねをしたという記憶がございますが、留学生問題で我が国においてのいろいろな今まで指摘されたような問題についての取り組み、これを積極的にやることは非常に大切ではございますけれども、やはり留学して日本から母国にそれぞれがお帰りになって後に、それからの対応というものが今まで非常に欠けておったのではないか。これは読売新聞でしたかの社説にもちょっと出ておりまして、私も同感なんですが、帰られた方々の本当に本音のところで日本に留学したときの様子がよくわかるということができると思うのです。だからそういう意味も含めまして、お帰りになった皆さん方、日本にもいわば同窓の者もおるわけでございまして、そこらあたりとの連携もとりながら、また国としてそういう方々がお帰りになってどういう立場でどういうふうな仕事につき、また日本で留学していろいろ学ばれたことがどういうふうに役に立っていっているのか、こういったようなことも追跡調査等もしてみる必要があるのではないかと思うのです。  しかし、実態としてはわずかに京大の経済学部などが調べられたそのわずかな調査結果があるぐらいで、大きな取り組みをしてこれを行ったということはないようでございまして、これは早急にやるべきではないかな、また、それぞれの国に帰った日本に留学した人たちのいわば同窓会みたいなものもどんどんつくってやるとかもあっていいのでしょうし、これはやはり大切なことじゃないかなと思うわけです。  これも一度申し上げたことがあるかもわかりませんが、昭和五十八年にIPUの会合でソウルに参りましたときに、ちょうど前の全斗煥大統領がラングーンに飛ばれて、そのちょうど立たれた直後に空港に着いたのですが、厳しい警戒で、聞きましたらそういうことを言っておりました。ところが間もなくあそこで大変な事件が起こったということですぐに大統領は帰ってこられておったわけですが、そのときにいろいろ現地で大使館の人やいろいろな方に遠慮なく聞いてみたのですが、あの当時韓国の中で一番中枢で韓国を実質的に牛耳っておるといいますか、役人、官僚として動かしておる、実力者として動かしておる方々というのは、聞きましたら日本に留学した方というのはほとんどいないのですね。  いろいろ議論をしておりましたら、結局、日本に留学してくる人が韓国でも数としては多いのでしょうが、こういう言い方がいいのかどうかわかりませんが、当時出た話としては、いわば一流と言われる方々は大抵アメリカのハーバードとかイギリスのオックスフォード、ケンブリッジとありますが、どうしてもあそこらあたりのアメリカ、イギリスに行っておる。そして日本にはそこからこぼれた、こぼれたかどうかわかりませんがランクが一つ下の人たちがどうも留学を希望してこられるというふうな話もございました。東南アジアも大体同じような感じである、こういうような話もありまして、非常に残念な思いをしたことがあるわけでございます。  それは今までいろいろと勧告を行われました点、私ども意見もつけ加えて今お尋ねをしたわけですが、確かにそういった点のまずさというものもありますけれども、やはりそういう以後のアプローチもしっかりしながら、そして長いおつき合いの中で日本というものを国際化の中でいい形に地位を確保しながら世界にお役に立っていく、また留学生の方々も大いに活躍をして、我が子も孫も場合によっては隣近所の人含めて優秀な人は日本にやるぞというふうなことぐらい出てこなければいかぬだろう、そういういろいろな意味を含めて、留学以後のいろいろなアプローチをし、追跡調査をし、いろいろな形での取り組みをするということは大変大切だ、こう思っておるわけですが、こういうことについての取り組み等含めて留学生問題、大臣のお考えを承りたいと思います。
  283. 中島源太郎

    中島国務大臣 御指摘の点は大変重要なことでありまして、帰国留学生の名簿の作成とか一度国へお帰りになってからまた短期研修のための招聘とか、こういうことをやっておりまして、具体のことはまた政府委員からお答えをいたさせますが、おっしゃる点はよくわかりました。  私も数年前にASEAN諸国を回りまして、先ほどおっしゃっておられました中曽根総理に直言をなさった方々とちょうどその後にお会いをいたしました。私がお会いしたのはシンガポールの方でございましたけれども、その方々がお帰りになって、その帰国後の国の状況、それからその方々が就労された企業の形態ですね、日本の企業に勤められた方もありますし現地法人の方もある、それから地元の御自分の仕事に自営でつかれた方もある、それぞれの形におきましていろいろなアフターフォローをしなければならない、あるいは御相談に乗るだけでも解決できる点が随分あったわけでございます。  今御指摘の中の学位の問題も出ておりましたし、それからそれぞれの国の立場、産業の状況でその方々がこれでいいんだろうかという、迷われてもう一度日本の方に相談をしていただければそういう意味での、私の意見としては行政的なアフターフォローと同時に、もう一方では友人としてのアフターフォロー両方相兼ね合っていければ随分違ってくるであろう。要するにせっかく日本で学ばれた方々が両国の精神的な融和のかけ橋になっていただけるかどうか、まさにその後の方が重要だと私もつくづく常々考えておりますので、先生の御指摘には我が意を得たりという面と同時に、この点十分アフターフォローに対策を十分の上にも十分やっていかなければいかぬなということを改めて感じた次第でございます。  具体に補足があればつけ加えさせていただきます。
  284. 川村恒明

    ○川村政府委員 留学生のアフターケアにつきまして事務的に補足をさせていただきます。  現在アフターケアの事業といたしましては、財団法人の日本国際教育協会におきまして帰国留学生につきまして名簿を作成をする、それで動向を把握するということが一つ。それからもう一つは、それらの留学生に対してその希望に応じて再度日本に来たいという方に対する短期研修のための招聘事業を行うとか、あるいは帰国後三年間でございますけれども、それぞれの専門雑誌でございますとか学会誌を送付をするというふうな事業をいたしております。ただ、ただいま先生御指摘のございましたその本音の話を聞くんだよという部分のところは実はちょっと今のやっておる事業では必ずしも十分ではないということでございます。  ただ、これは外務省の方でございますけれども、外務省さんの方でやはりそれぞれの国で日本留学者の同窓会というものをつくっておられますし、その中の何人かの方は年に何回か日本に短期で、それこそ一週間ぐらいでございますけれども呼んでおられる。そういう会に私どもも呼ばれて参るわけですけれども、確かにそういう会で伺いますと、今先生おっしゃった日本にいたときの実はこうなんだよというお話なんかが伺えることがございまして、これまた大変重要なことであろうかと思っております。やはり日本留学というものを実りの多いものにするために、そういう帰国された方の御意見も十分聞くということにつきまして、これから何らかそういうものにつきましても対応について工夫をしてまいりたいというふうに思っております。
  285. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 あと勧告は帰国子女等の問題について三点ございますが、これは一括してまたお尋ねをいたします。  第一番目は、帰国子女の円滑な受け入れ等についてでございますが、これにつきましては一番目に、「帰国子女の我が国の高等学校への円滑な受入れ」ということでございますが、これはもう既に対応策を練られて、具体的に施策を、手を打たれているようでございますから、これは非常に結構なことだと思います。  二番目に、「帰国子女の受入校に海外経験教員を重点的に配置するとともに、帰国子女が海外で身につけた長所の保持・伸長に一層配慮した教育を実施する等の方策を講ずること。」こういうことが言われております。これは私は非常に大切ではないか。やはり今の日本で育った子供たちにはないいろいろないい面を身につけて帰ってきたのが、日本の国内における学校の中の子供たちのやり方となじまないということで、そういう個性ある教育を受けてきたのをむしろ教員やその他が抑えてしまうという傾向も随分あるようで、それによってせっかく伸び伸びとした子供がだめになるというケースもないことはないというふうなことも言われておりますので、大切な指摘であろうかと思っております。この点についてどのように対応なさるのか。  次に、「外国人子女の受入れの促進」ということで勧告がなされております。「文部省は、外国人子女の我が国の学校への円滑な受入れ等を図るため、外国人子女を多く受け入れている学校を外国人子女の教育研究を推進する学校として指定する等により、その受入体制の整備とこれらの子女の教育方法・教材等の開発等を進める必要がある。」  次に、「日本学校国際化」ということで勧告があっておりますが、これは「外務省及び文部省は、」ということになっておりますけれども、続いて「日本学校をより国際的に開かれたものにするとの観点から、日本学校の運営に当たっては、所在国の事情等をも勘案しつつ、現地の歴史・地理・文化等に関する教育の実施、現地校等との交流の活発化及び現地の子女の受入れの促進につき、一層配慮するよう日本学校を指導する必要がある。」こういう勧告であります。  私も全く同感でございますが、以上についてどういうお考え方を持っていらっしゃるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  286. 倉地克次

    ○倉地政府委員 私どもの方の点につきまして、三点お答え申し上げる次第でございます。  まず第一は、帰国子女の受け入れ校に海外経験教員を重点的に配置してはどうかということでございますけれども、これにつきましては、さきの帰国子女の受け入れにつきます学校教育法施行規則の改正に伴います十月八日付の通知をもちまして、各都道府県に対しまして、帰国子女の受け入れ校に在外教育施設経験教員等海外経験教員を重点的に配置するよう、改めて指導をしたところでございます。それからまた、「帰国子女が海外で身につけた長所の保持・伸長に一層配慮した教育を実施する」ことの問題でございますけれども、これにつきましても先ほどの十月八日付の通知をもちましてそういうことにつきまして一層配慮するよう各都道府県に対して通知を申し上げておるところでございまして、この二点につきましては、私どもといたしましても今後十分留意して指導の徹底に努めてまいりたい、そのように考えておる次第でございます。  それからもう一点でございますが、それは「日本学校国際化」の点でございますけれども、これは従来から各日本学校に対しまして、現地国の法令上の制約等のいろいろな事情を踏まえまして、できる限り国際理解教育に取り組むよう求めてきたところでございます。  このたび総務庁の勧告においても、国際的に開かれたものにするために一層配慮したらどうかということの御指摘があったわけでございますけれども文部省といたしましては、今まで指導はしてきておったわけでございますけれども、さらにその趣旨の徹底を期するため、現在、現地の歴史、地理等の事情に関する指導の導入、二番目には現地の子供との交流の促進、三番目には校外活動の実施、四番目には現地の子供の受け入れ、それから五番目には校内の教職員の協力体制の充実等ということに関しまして具体的な指導を行ってはどうかということで種々検討しているところでございます。各日本学校がそれぞれの所在国の実情に応じまして積極的な対応を図られるよう、今後とも十分指導に留意してまいりたい、そのように考えております。
  287. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 これらの問題はこれで一応終わらしていただきまして、次に進みたいと思います。  次に、大学等の問題でいろいろとお尋ねをしたいと思います。最初に私大の補助金、それからいろいろこれに関連してお尋ねをする中で私大の生き残りの問題、こういったこともお尋ねをいたしたいと思います。  この私大の補助金については年々減ってきておる。これは何回も何回も各党の委員からも御指摘があり、要望があったことでございますので、詳しい内容をいろいろと申し上げることは省かせていただきますが、確かに昨年度におきましては、文部省資料を見ましても、昭和五十年に私学振興助成法が成立して以来、経常経費と補助金との比率は最低ということになっているようです。概算要求が今度なされておるようでございますが、これも最終的にどうなるかまだ確定はしていないわけでございますが、どうやらまたそれも昨年を下回るのではないか、こういう気がいたします。  こういう状況の中で、今非常に私学の経営が困難になってきておる、特に財政的には悪化しておるという声が非常に大きくございまして、国の財政的なものは確かに限界があるとしましても、これは中西委員でしたかの質問の中でも大臣がお答えになっておられましたが、むしろ文部予算を別枠にしてもらいたいくらいだというようなお話があっておりましたが、私どももまさにそういう思いでございまして、特に私大補助の総額についてはもっと高めるということが必要であろうと思います。こういう点について、これは文部省よりもむしろ大蔵省を呼んでわっと言っておいた方がよかったのかもわかりませんが、玉突きみたいになるけれども、とにかく文部省として今の形ではよくないと私ども思うのです。こういうことに対して、こういうことにならないよう拡大する方向で取り組んでいただきたい、こう思うのですが、この点についてまずお尋ねいたします。
  288. 野崎弘

    ○野崎(弘)政府委員 確かに先生御指摘のような状況でございますが、六十二年で五億の増、六十三年で十億の増ということで、ここのところ私大経常は上向きの形になってきておるわけでございます。ただ、全体の経常的経費の増が年々多いわけでございますので、御指摘のように、その経常的経費の中に占めます割合というのは年々落ちておりまして、六十二年の場合ですと、一七%というような数字になっておるわけでございます。  私どもとしてはこのことを大変深刻に受けとめておりまして、来年度概算要求におきましては、私大等の経常費補助金について対前年度三十七億の増、私立大学・大学院等教育研究装置施設整備費補助金につきまして対前年度十三億円の増、それから私立大学研究設備整備費等補助金につきましても対前年度七億円の増ということで要求をしておるわけでございます。私どもとしてはこれをぜひ満額確保したい、こういう姿勢で今折衝しているわけでございまして、今後とも私学助成の確保に努力をしてまいりたい、こう思っております。
  289. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 これはさっき申し上げたように、本当に各党からも何回も何回もやりとりしている問題ですから、性根を据えて取り組んでいただきたい、こういうふうに御要望申し上げておきます。  その反面、こういうことになってきておるという現実の中から考えたときに、やはり私大自体のあり方というものも非常に考えなければいかぬ面があるのかなというようにも私は思うわけです。その中で、特に財テク問題というのが参議院でしたか、ことしの春に取り上げられておりましたし、新聞報道にもなされておりました。だから、常識的に考えますと、私大の財政状態が悪化しておるという中で、国の補助金を増額して私大の財政を少しでもよくしていこうというのは一番根本の問題であると思うのですけれども、その減っていく中でふやしてくれ、ふやしてくれという要望の中でなおかつ財テクに励んでおる。特に私立医大等が中心だと書いてありましたが、全部が全部ではないのかもわかりませんが、相当余裕金を持っているかなというふうな感じもあるわけですね。  こういう点も含めて、確かに私どもは私大の補助金増額について、またいろいろな点で我々がかゆいところに届くようにして応援をし、いい学校づくり、これは日本の大学なんかも特に七、八〇%近く支えているわけですから私は必要だと思いますけれども、同時に、私学のあり方自体というものも私はやはり真剣に考えていかなければならぬ時代になっているのではないかな、こういう気もしているわけですね。  この財テク問題について、私大の経営についての学内、学外を含めた抗争問題とか、それから私の地元の方でも、これも中西委員がよくいろいろこの文教の中で指摘をされ、議論をされておったようでございますが、いろいろと私どもの地元の方の私立大学でも問題が出てきておる。ところが、中へちょっと入ってみると相当お金が動いておって、それがためにむしろいろいろな抗争が、それは別に本人自体が余りプラスにもならない、もうけにもならない、収入もないということであると見向きもせぬのでしょうけれども、どうもそこに、ポストに触っておくと大変いいことがあるというふうなことが中心で何か抗争があっているような、外から見た感じですが、受けることが多いのですね。  そして、検察関係に聞いてみても、私大関係の経営者たちはそういう点で経済的にも非常に恵まれておる。むしろ状況としては非常にいいのではないかというふうな話も伝わってくる中で、私大の補助金をふやさなければいかぬけれども、全体ではないでしょうが、そういう関係がある。私大としての今後の取り組みの中で非常にやはり真剣に考えていただかなければならぬところもあるのじゃないかな、こういうことが考えられるわけですが、文部省ではこういう点についてはどういうふうなお考えをお持ちなのか、お聞かせをいただきたい。
  290. 野崎弘

    ○野崎(弘)政府委員 資産運用のことにつきまして御指摘があったわけでございますけれども、やはり私学におきます教育研究の向上、あるいは将来に備えまして資産をできるだけ確保しておくということは、これは私学の発展のために大切なことだと私ども思っておるわけでございます。その資産をどのように運用するかということにつきまして、それを遊休状態で置いておくというより、やはりこれをいかに効率的に運用していくかということが大変重要なことではないかと思っておるわけでございます。  ただ、そうは申しますものの、その資産というものが今後の学校法人の将来を支えていくわけでございますから、その資産が将来目減りするというようなことになっては大変問題がある。やはり安全性を旨といたしました慎重な取り組みが必要であると思っているわけでございまして、そういう点につきましては、効率的な資産運用は必要だけれども、同時に十分慎重な取り組みをしていただきたいということはかねてから指導しておるところでございます。  それから、先生今御指摘ございましたように、私学がそういう社会的な非難をこうむり、社会の信頼を損なうというようなことは、これは今後の私学の発展にとりましても問題でございますし、また私学助成という形で国が助成していることからいたしましても大変大きな問題でございまして、実はこの点につきましては、昭和五十八年に当時いろいろな不祥事等がございまして、学校法人の管理運営の適正確保についてということで既に通知を出しておるわけでございまして、私学法、学校教育法等の関係法令の遵守あるいは必要な学内諸規定の整備とか、理事、監事、評議員の選任の適正化、監事の職責とか、それから、学校法人会計基準に沿っての適切な会計処理というような点の指導をしているわけでございまして、そういう指導をさらに徹底いたしますと同時に、各私学に対しまして社会からのそういう非難あるいは社会の信頼を損なうようなことのないよう十分指導してまいりたい、このように思っております。
  291. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 またもう一歩進めてまいりますと、昭和六十八年以降というのは大学に入学する適齢者が減ってくる時期に差しかかるわけですね。そうしますと、今確かにまだ大学に入学する適齢の人たちがふえていくところですから、大学定員の増になったり、学部、学科の増というものも厳しいチェックの中で認めていっているという方向もあるようですけれども、実際問題としては、生き残れる自信のある私大はいいのでしょうけれども、全般的に見て、この六十八年以降大学をどうしたらいいのかということについては、非常に真剣な取り組みをもう既にしているところも随分あるようですけれども、私どもは、せっかくできた大学、これが自助努力というものは当然必要ではございましょうが、何とかこれは生き延びるという方向でのことを考えていかなければならぬだろうというふうに思っておりますが、文部省としては、こういう時期、私大が乗り切るにはどういう考え方に立って取り組むといいのか、何かお考えがあるようでしたらこの際お聞かせをいただきたい。
  292. 野崎弘

    ○野崎(弘)政府委員 御指摘のように、十八歳人口が昭和六十七年をピークに六十八年以降急減をしていくわけでございます。そういうようなことを踏まえまして、現在、六十一年から六十七年までの新高等教育計画が動いているわけでございますが、この計画の中でも、恒常的な定員増のほかに、期間を限っての定員増という手段を導入して急減期に可能な限り適切に対処できるように文部省では考えておるわけでございます。  文部省といたしましては、当面この計画に沿いまして、国公私を通じての適切な配置に対処することとしておるわけでございますけれども、特に私立大学等におきましては、このような十八歳人口の急増、急減を踏まえまして、長期的な見通しのもとに従来にも増しまして経営努力が行われるということが期待されておる、こう思っておるわけでございます。
  293. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 ちょっと余り具体的でないのですが、私見でもいいのですが、大体どういうふうな方向にしっかり目を向けて取り組むのか。確かに経営努力といえば全部入っちゃうわけですが、具体的な取り組みのあり方としてどういうふうなことがあればいいのか。  では、もう一つ踏み込んでみましたら、そういう時期に対して、文部省としても一つの計画を立てておられるようですが、具体的な施策としてどういうものを考えていらっしゃるのか、これをちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  294. 野崎弘

    ○野崎(弘)政府委員 具体的な姿というのはなかなか難しいわけでございますが、現在大学審議会で、特に大学設置基準のあり方等を含めまして大学教育あり方というものの検討が進められているわけでございますが、そういう中でできるだけ今後、大学の創意工夫が生かせるようなことが考えられていくべきではないか、こう思っております。もちろん、先ほど御指摘ございました私立大学の経常費助成を初めとしました国の助成措置、こういうものにつきましても我々としては今後も十分努力をしていかなければならぬ、このように思っております。
  295. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 こういう考え方はどうなんですか。今、確かに努力するということがありましたけれども、やはり各大学が特色を持った、要するに魅力ある大学に努力をして今から変えていく。確かに、そういう急減期が来ても、あそこの大学ならばぜひ行きたい、こういう魅力あるものにするというのが一つあるのだろうと思うのですね。同時に、十八歳人口が減るということ、現実的にこれはどうしようもないわけです。どんな手を打ってもどうしようもないわけでございますから、そうなると、それに対して、今までつくった大学が生き延びる道としては、やはり十八歳の人たち以外に目を向けざるを得ない。それは社会人ということになるのかな。生涯学習という立場から社会人入学、リカレント教育ということが盛んに言われておりまして、これは当然やらなければいけないだろう。  そうすると、やはり大学の中でそれは一応認めているとはいいながら、何か制度的になじまないのか、それとも何となく入りづらいのかわかりませんが、全体的には、全国的に見てちょっと人数は覚えておりませんが、たしか三けた台くらいで、本当に私が考えておるよりは意外に少ないなという印象がございました、数字はちょっと覚えておりませんが。やはりそういう人たちをどんどん入れていくという方向づけ、これは文部省の方でも行政的な施策の中で指導もし、またそういう行政的施策も何らか手が打てるのではないかな、大枠な話ですが、そんな気がするのですね。  それと同時に、やはり外国の留学生をしっかり受け入れちゃう、これもどんどん入れちゃう、そういうことによって十八歳人口の減ったところをそこで補っていくし、それがなおかつ日本の国内におけるいろいろな二十一世紀を目指しての繁栄とそれから生涯学習という立場からのプラスにもなる、また国際化にも役立っていく、こういう施策が大枠で言えば考えられるのだろうと私なりには思うのです。  そういったところのお話をちょっと聞きたかったのですが、私の方から申し上げたのですが、こういうことに対して文部省としても、その生き残りの方法として自助努力が一番だと思います、さっき指摘があったように経営努力を学校当局が真剣にやるというのがまず第一だと思いますが、その中でそれをフォローするという形で今申し上げたような施策をよりやりやすくするための方向性というものを文部省でも政策としてお考えになる必要があるんじゃないか、こういうことをお聞きしたいわけですが、この点についてはいかがでしょう。
  296. 野崎弘

    ○野崎(弘)政府委員 先ほどお答えした大学の創意工夫の中に、当然先生の御指摘のありました点も含めて各大学が今後検討を進めていくことになろうかと思います。現在、なお私どもとしては特色ある私学を育成をしていくということで特別補助というものの充実を図ってきておるわけでございますが、その中で既に社会人の受け入れなり、あるいは大学院教育とか、それから今御指摘ございました留学生の受け入れ、こういうところにつきましては現在特別補助という形でさらに上乗せ措置をしておるわけでございまして、先生の御指摘の点を十分踏まえて今後検討させていただきたいと思います。
  297. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 私が申し上げるまでもなく省内では随分と御検討されておったんだと思います。私の聞き方もちょっとまずかったのかわかりませんが、いずれにしても、私学自体今までせっかくつくってきて頑張ってきているわけですから、そういう時期にも生き残って、また繰り返すようですが、日本の将来発展のために、また国際的にも寄与できる人材をどんどん出していけるような、そういうバックアップはぜひしていただきたいな、こういうふうに思います。  それから、これは国公立、私立も含めてだと思いますが、大学に対する後援会づくりというものを開かれた大学の資金づくりというもののためにやってよろしいというような、積極的に認める通知を出されているようでございますけれども、この内容はどういうふうに通知を出されたのか。また、通知以降どこかの大学でぜひそれを運用して私どもが後援会をつくりたいという申請等があったところがあれば、そういう状況についてもお聞かせをいただきたいと思います。
  298. 國分正明

    ○國分政府委員 大学の教育、研究を後援いたしますいわゆる大学後援法人でございますが、これにつきましては、一般的に申して高い公益性を有しているということで従来からも設立許可してきたわけでございますが、かつて設立したものの中には実態としまして関係者の福利厚生とか親睦活動とかというのに流れるというような傾向がございまして、これは政府全体の方針としてそういうものについて設立許可に臨むについては抑制的に対処するというような方向で実は来たわけでございます。しかし、臨教審の提言にもございますように、大学が社会との連携を充実するとか、あるいは御指摘のように外部資金を導入するとかというようなことについてはむしろ積極的に進めていくべきだろう、ただ、従来のようなややもするとそういうふうになるものは、ならない形で進めていくべきであろう、こういうようなことから、御指摘のように昨年の六月に通知をしたわけでございます。  要点を申し上げますと、まず、当然のことでございますが、大学の教育、研究活動を後援するものであること、そして一部関係者の福利厚生あるいは親睦等のためでないこと、あるいは公平、公正な運営を確保し得る仕組みを有している等の適切な要件を備えているものというようなものについて積極的に設立許可していこう、こういう方針を示したわけでございます。  現在のところ、これに基づきまして設立許可の申請があったものはないわけでございますが、京都大学におきまして、この通知の趣旨に沿いまして既存の法人の目的、事業を変えまして、財団法人京都大学後援会としてこういう積極的な公益活動を開始した、これは本年の八月二十六日に認可しておりますが、そういう実例はございます。
  299. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 それでは、大学入試の問題についてお尋ねをしたいと思います。  大学入試については一般の方々、父母の方々とお会いしてお話しする機会がございますが、大変評判がよくないですね。くるくる変わる猫の目入試とかなんとかいってマスコミでも言っておりますが、そんなことを言って本当に悩んでおられる受験生、父母の方が多いようでございます。  これは今度新テスト、要するに大学入試センターテストという名前になっているわけですが、なかなかちょっと言いにくいですね。新テストの方が言いやすいんだけれども、どういうわけか大学入試センターテスト、こういうことになっておるわけですが、この導入が六十五年からされる、こういうことでございます。これは私大の参加を望まれておったのですが、文部省も相当努力はなさったようだけれども、結果的には参加数が非常に少ないというふうなことで終わったようです。  そういう中でいよいよ来年度からそれをやっていくようになると思うのですけれども、最終的にはどういう形で行うようになるのか、そのアウトラインをお聞かせいただきたいと思います。     〔鳩山(邦)委員長代理退席、委員長着席〕
  300. 國分正明

    ○國分政府委員 ただいま御指摘の大学入試センター試験でございますが、現在までのところ、国公立の全大学のほか、私立大学につきましては十三大学十四学部というのにとどまっているわけでございます。これについてはいろいろな見方ができるわけでございますが、私学の立場といたしますと、やはりもう少しいろいろ検討したいというようなことであろうと思いますが、その検討の中身としては、やはり建学の精神というものとこのセンター試験とのかかわり合い、あるいはこれを利用することによって受験者がどう動いていくであろうかというような、これは主として財政上の理由も伴うかと思いますが、そういうようなこと、さらには初年度からどうしても参加しなければならないという具体的なメリットもない、である以上もう少し時間をかけて検討しよう、こういうようなことではなかったかと思うわけでございます。  しかし、この試験の導入と申しますか、というものを機会に、各私学におきましても自分のところの入学試験はどうなんだろうかという検討をする非常にいい機会ができてきたというふうに承っておりまして、私どもも、今後私学も含めまして大学入学試験というものが多様な形で、各私学が特色を出して展開されるということのためにこの入試センター試験を御活用いただくというのは大変意義が深いのではないかという観点から、各私学に十分な説明をさらに徹底してまいりたいというふうに考えておりますが、当面、現在のところ国公立大学と私学の十三大学という形で六十五年度の入試センター試験は行われる、こういう形になるかと思っております。
  301. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 これに絡んで東大が昭和六十五年の新テスト、これはもう新テストとは言わないですね、どうも長いな、大学入試センターテストですか、その時期から分離分割方式の採用を打ち出しているようですね。結局これはA、Bグループ連続方式にプラスして分離分割方式を併存させる形になるのだろうと思いますが、これによってまたまたいろいろと大学入試のあり方が変わるのではないかということが言われておるのですが、現実的にはどういう形になる可能性があるのか、そういう点についてお聞かせをいただきたい。
  302. 國分正明

    ○國分政府委員 分離分割方式についてのお尋ねかと思いますが、御案内のように、現在の共通一次試験を導入しました際に、従来の一期校、二期校というものを廃止しまして、いわば国立大学は一つだけ受けられるという仕組みになったわけでございますが、受験者の立場といたしますと、やはり複数受けたいという声があり、また臨教審からもそういう提言がございまして、国立大学の受験機会を複数にしようということになったわけでございます。  そのための方式として現在いわゆる連続方式というもので来ておりますが、御案内のように、これにつきましてはグループ分けについて地域別あるいは専門分野別に偏りがございますし、入学者の決定についても非常に難しい問題があるということで、国立大学協会におきまして六十四年度から現在の連続方式に加えていわゆる分離分割方式を採用しよう、こういうことで六十四年度から幾つかの国立大学でこの分離分割方式を採用するところが出てきたわけでございます。  東大につきましても、新聞報道にございましたように、六十五年度からということでございますが、分離分割方式に参加する。ただ、具体にどういう形で実施するかというのは明年までかかるようでございますけれども、東大がこういうものをやったということになりますと、やはりそれは事実上関東近辺のみならず幾つかの国立大学に大きな影響を及ぼすわけでございまして、現在関係大学等において協議がなされておるということで、最終的にどういう形になるかというのは目下のところちょっと予断をもって申せない状況であろうかと思っております。
  303. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 それはそういうことになるのだろうと思いますが、その中で特に私が非常に疑問に思っておるのは、大学入試センターテストの試験日は、当初十二月ですか、に予定されておった。それが結局翌年の一月にまた前と同じような形で、新テストですか、大学入試センターテストを行うというふうに、一年限り、似たようなことがあった記憶もありますが、にしているわけです。これはどういうわけでこういうふうにしたのか、ちょっとお尋ねしたいと思います。
  304. 國分正明

    ○國分政府委員 大学入試センター試験の実施期日の問題でございますが、ただいまお話がございましたように、大学入試改革協議会の最終報告におきましては十二月下旬に実施するという報告がなされておったわけでございますが、その後、私学の参加状況ということもございまして、高等学校サイドから、そういうことであるならば極力高等学校教育に悪い影響が生じないように一月下旬、それが無理ならばそれに近い時期にしてくれないか、こんな要請が実はあったわけでございます。  そもそも十二月下旬というふうに最終報告いたしましたのも、私学が参加するということになると、私学の入試はかなり早い時期にございますので、それへの提供に間に合うようにという配慮からであったわけでございます。現実にそういう具体の要請がございましたので、大学の入試センターを中心にいたしまして、問題の輸送、保管、仕分けあるいは成績の処理、提供というような期間がどのくらい要るであろうかというのをかなり綿密に再度点検いたしました。私学側の要望としては一月末にはぜひ欲しいということでございましたので、いわば逆算いたしまして、どのくらいの日数があればやれるかというようなことを考え、その検討をもとに国公私立大学関係者で設けております大学入試センター試験協議会というところにお諮りし、さらに文部省の中に設けられております入試改善会議に諮りまして六十五年度は一月の十三、十四に実施しよう、こういうふうになったのが経緯でございます。
  305. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 これで実質的、事務的には間に合うのかどうか、今のお話では間に合うというようなことですが、それができれば十二月下旬に行うとしたと同じ効力を発することになりますか。
  306. 國分正明

    ○國分政府委員 そのとおりでございます。
  307. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 それならばそれで、私はやはり一番いかぬと思うのは、私大参加のためには必要だということで大枠計算されて十二月下旬とされたのでしょうね。だけれども、いよいよ反対が多くて、やってみたらそれでなくて一月でもできた、そして高校側の要望もある程度受け入れるような態勢ができたというようなことでしょう。何でそうなるのでしょうかね。私はそれが不信を買う一つだと思うのです。  大枠の新聞論調やら一般の人の考え方は、結局私大参加が少なかったから高校側の要望に押されてまた一月にしたのだろうという認識なんですね。ここではそういうふうにお尋ねすれば、そういうことを含めて私大参加ということが――それにしてもちゃんと十二月下旬にしたと同じような形でやれるのですよというようなこと、これは私も今確認をしてなるほどと理解をしたのですけれども、大方の人とか新聞論調というのは、読んでごらんなさい、そんな書き方はしておりませんもの。またまた節を曲げて妥協してしまったというふうな感覚なんですね。  要は、これは一事が万事であって、この何年かの間はそういうふうにどこかで何かがあったら猫の目のようにくるくる変わっている。これはいかぬと私は言っているわけです。それができるのなら、もともと一月ということでやっておけばいいじゃないか。それを私大参加のため必要だから十二月としておいて、やってみたらできたからこうしましたと言う。しかし、それは外には余りPRされていない。  だから、これで私大参加の様子を見ているグループがあるだろう、善意に解釈してですよ、この次には参加するだろう。私は、私大の入試も難問、奇問も随分あるようだと実際聞いたりしておりますから、そういうのを直すためにはやむを得ないのかなと思ってみたり、どうなのかな、いろいろとやってみなければわからぬ向きもありますから、私自身も多少迷いがないとは言いませんけれども、しかし、やる以上はやはりきちっとした形でこうだということで貫き通さなければいかぬと思うのですね。確かに内容的にはもうその線は通っておるという話にはなっておるのだけれども、やはりそういう問題についての配慮とPRを含めてのあり方がよくないのじゃないか。また、マスコミに対しての説明とかいうことも不足しているのじゃないか。  しかし、それができたということは、高校側は十二月は前から反対していたわけですから、本当に努力をしていれば当初から一月でやれていたわけでしょう。そこらあたりも、これだけ人材をそろえておりながら、スタッフもいてどうしてそんなことがころっと変わるようなことをして、これでもう十分ですということになるのかな、そこはやはり私は今不信を持たれている大きな原因じゃないかなという気がしますよ。結局、今までの何年間、この三、四年の流れというのはどうもそこで軌を一にしているみたい。どこかで圧力がかかる、どこかで声が上がるとそれにひょろひょろと変わっている。  これは確かに私大側の対応というものがむしろ大きく影響しているのかもわかりません。文部省がなかなかそこに首を突っ込めないということもあるのかもわかりませんけれども、しかし、これはやはり受験生の立場で私は毅然として取り組んでいただきたい。共通一次を導入したときも私は申し上げたことがあるのですよ。共通一次だけではないのじゃないか、共通二次の方と抱き合わせだ、そうしたら大学はほっておいたら二次にいい形で今のようにだんだんバラエティーに富んだことになりましたけれども、そういう形を最初からとってもらわなければいかぬのだから、むしろ文部省がこういうときこそ少し強硬でもいいから、大学の自治、学問の自治ありましょうけれども、大学の尊重ありましょうけれども、受験生の立場からこう言わなければならぬということは強く言うべきだぞというようなことを私は申し上げたことがある。だけれども、それはなさらなかった、やはり大学を尊重するということで。  私は強く言っていいときとそうでないとき、大学自体の考えを尊重しなければならぬというときはやはりあると思います。そこのけじめというものをもう少しおつけになった方がいいんじゃないかな、この大学入試問題では本当にそう思っています。だから、そういう大学入試センターテストでいくというならばこれでもう押し通してしまうというような線がないと、受験生は、何か見ているところころ変わるな、文部省は何をやっているのだというふうな評価なんですよ、確かに。これはひとつ、私が痛切にそういうことも感じておりますし、我が党の議論の中でもそういうことが出てきておりまして、ひとつ受験生の立場を尊重しながら、大切な大学に入るお子さんの問題ですし、またそれを含めて父母の問題でもございますし、ひとつ厳に取り組みをやっていただきたいというふうに思っております。  それじゃ、時間がそろそろ来ていますが、最後に、大学改革の一環としていろいろ考え方があるのですが、私たちが従来から申し上げていたことをひとつ確認しながらお答えいただきたいのです。  やはり日本の大学、大学院のあり方の改革というものは、これは日本教育の中で一番取り組まなければならない問題だろう、その中でも入試のあり方というものを考えなければいけぬのだろうと思いますが、その中で私ども特に二つのことを議論をしつつあるのです。  これに対する文部省のお考えをお聞かせいただきたいと思いますが、よく、入るはやすく出るはかたい方向に日本の大学は考えるべきであるというようなことが言われます。これはいろいろ技術的にも、また財政的にも現状をそう変えていくということは非常に困難なこともあろうかと思いますが、大枠でこういう形の方向はやはり大学改革の大きな一つの考え方として持つべきではないかなということも思っておるわけですが、文部省はこういう考えに対してはどういうふうなお考えを持っていらっしゃるか、ちょっと承りたいと思います。
  308. 國分正明

    ○國分政府委員 現在、大学改革全体につきましては、御案内の大学審議会で御審議いただいているわけでございますが、現在まで大学院とそれからいわゆる学部教育について議論をしているところでございます。  そのうち、お尋ねの点は特に学部教育に関連する点でございますが、学部教育につきましては部会を設けて検討しようということで既に会合を持っておりますが、その中での主要テーマの一つに学生の学習の充実、こういうのを大きな主要テーマに掲げておるわけでございます。そのためには、やはり大学自体が努力して、学生が意欲を感ずる、こういうことが必要でございますし、先生のおっしゃっている、入るはやすく出るはかたしというのもそういう趣旨であろうと思うわけでございまして、同様の問題意識を大学審議会あるいは私どもも持って現在検討しておる、こういう段階でございます。
  309. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 その方向はぜひ御検討いただきたいと思うのですが、また、これからも具体的に私どもも論議は交わしながらいい形で方向性をやはり考えなきゃならぬな、こう思っております。  もう一つ、私はやはり大学、これは学校教育いずれの場合でも同じですが、教員というものが非常に大切だろう、こう思います。そういう意味で、大学教員の任期制というものもこれはある程度真剣に考えていいのではないかな、こういうふうに思っておるわけですが、この点についての御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  310. 國分正明

    ○國分政府委員 確かに御指摘のとおり、大学教員につきましては我が国の場合ややもすると閉鎖的でございますし、また流動性に乏しいということが言われているわけでございます。大学の教員もある程度安定した姿で大学教育、研究に当たる、これは望ましいことでございますが、ややもしますとこれが閉鎖的というような批判を受けるわけで、逆に痛烈に、その地位に安住しているのではないかというような御批判も出ているわけでございます。  この点については、ただいま御指摘の任期制というようなことについても臨教審答申で提言がございますので、ただこの問題は我が国全体の雇用慣行というような問題でございますとか、国公立については公務員制度との関係等もございます。あるいはまた、教員人事ということでございますから大学の自治との兼ね合いも出てこようかと思いますけれども、しかし、そういう御意見が大変強い、臨教審から御提言もいただいているということでございますので、まだ具体的な検討は行っておりませんが、この点についても、大学審議会での検討事項ということで諮問申し上げ、いずれ近くこれらについての議論というものも触れて行われるものであろう、こういうふうに考えております。
  311. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 うちの方の地元にぬかみそというものがありまして、あのぬかみそというのはかき回せばかき回すほどおいしい漬物ができるのですね。あれをかき回さぬで置いておきますと、大体ぶくぶく腐ってにおいが大変なものなんですね。私は、大学の中もそうあっていいのじゃないか。大学の自治、学問の自由、これはもう本当に大切ですから守っていかなければならないと私も思います。しかし、やはりそれを守っていただくためには、また私たちもそれに御協力するためには、バックアップするためには、やはりそれなりの責務というものも果たしていただかなければならない、こう思うわけですね。  そういう意味でやはり大学の先生が――私はかつて、大学教授というのは一年を三日で暮らすいい男と言ったことがあるのですが、大分あちこちでおしかりを受けたりしましたが、私はいまだにそれは本当だと思っております。いい先生はいいのですが、教授になることが目的で教授になったらば研究もしなければ教育もしない、こういうことで、チェックする機関もございませんし、それで授業に遅刻して、うちの息子なんかにちょっと聞いたことがあるのですが、授業だってもう三十分ぐらいおくれるのは当たり前だというのがほとんどだとかいう話があってみたり、それはまあいろいろなことの理由があるのかもわかりませんけれども、やはり研究と教育という両方をしっかりやっていただかなければならない。そういう中で本当にいい先生方は、勉強しない先生が多いといってむくれていらっしゃる方も随分あるのですね。  だから、やはり大学の先生自体からよくなっていただかなければならぬというようなことであえて私がこの文教委員会の席上で議論申し上げたことがあったのですけれども、いよいよそういう時期が来ているのじゃないかなというような気がいたします。私はやはりこれからはまた、本当に大学の先生方にも御苦労は願わなければなりませんが、いい教育をするためにも、任期制の導入を含めてやはりある意味での競争原理も取り入れるという方向は必要じゃないかなというようなことも思っておりまして、これはまた我々も議論もしていきたいと思いますが、そういう観点での考え方もぜひ推し進めていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。  大体時間が来ました。もう一つ二つ質問することがございましたが、ちょっと時間前ですけれども、ちょうど切りのいいところになりましたので、これできょうの質問は打ち切らせていただきますが、最後に、きょう御質問申し上げたことについて大臣の御感想なりお考えを聞かせていただいて、これで終わりたいと思います。
  312. 中島源太郎

    中島国務大臣 鍛冶先生の御質疑を拝聴いたしておりまして、大変幅広い中で適切な御指摘をいただいてありがたい、こう思っております。特に、個々に御質問なさっておられましたけれども、底に流れる一貫した思想としては、たまたま高等教育の活性化、これに今取り組まなければならないときに、一方では六十八年から履修者の減少期に入ってくる。そういう中で大学がどうあるべきかというのはちょうど今真剣に考えなければならないときではないのか。  そのためには大学審で、今やっておりますように飛躍的な改革、大学院大学の改革の中に、今申されました選択的な任期制の問題もこれは真剣に考えていくべきであろう。それは教授陣自体の活性化と、それからまた、これから受け入れるに際して、おっしゃるように入るはやすいが出るのは難しいという中で、まず入ることの魅力ということにつきましては、内容の充実と同時に、それぞれ、それぞれの建学の精神に基づいて大学入試のあり方にこれから真剣に取り組んでいかれるであろう。そういう意味で、今回手を挙げられたのが十三大学十四学部の私大でございますけれども、これは今後どうあるべきかということは、相当幅広い範囲で御検討いただいたよい機会であったと私は思うのです。必ずやこれは大学入試センター試験をよりよく活用していただく大学、学部はふえていくことと思うわけでございます。  そういう意味で、大学が魅力ある大学であり、しかも私が感服いたしましたのは、そうであるならば、大学自体が、今までの高等教育と同時に、生涯学習の面と海外の国際化の面で、開かれた大学であるにちょうどいい時期に来ておるのではないか。そういうことを自信を持って推進していったらどうかという御指摘にも大変我が意を得たりという感じはいたしました。  最後に、大学入試センター試験の期日につきまして、これもよりよき改善のためにいろいろ考えてはいるのであろうけれども、やはり受験者にとっては猫の目のように変わるということは親切とはいえない、こういう御指摘も適切なものと思います。私どもは、たまたま六十五年度は一月十三、十四が土日に当たりますので、いろいろなシミュレーションをしてみまして、もう最短の時期でその年には一月十三、十四でいけるな、しかし翌年の曜日のあり方によってはなかなかお約束するわけにもいかぬということで善意で発表しておりますが、なるほどこれから先のことを考えますと、もう少しやはり固定した自信を持った発表をしていく心がけも必要かな、つくづくいろいろな面で感じながら御質疑を拝聴いたしておりました。  幅広い御指摘を改めて感謝を申し上げます。ありがとうございました。
  313. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 どうもありがとうございました。
  314. 中村靖

    中村委員長 次回は、来る二十一日金曜日午前九時四十五分理事会、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十二分散会