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1988-12-20 第113回国会 衆議院 農林水産委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十二月二十日(火曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 菊池福治郎君    理事 笹山 登生君 理事 鈴木 宗男君    理事 月原 茂皓君 理事 保利 耕輔君    理事 松田 九郎君 理事 串原 義直君    理事 水谷  弘君 理事 神田  厚君       阿部 文男君    石破  茂君       衛藤征士郎君    遠藤 武彦君       大石 千八君    小坂善太郎君       田邉 國男君    武部  勤君       玉沢徳一郎君    中島  衛君       保岡 興治君    柳沢 伯夫君       石橋 大吉君    沢藤礼次郎君       田中 恒利君    竹内  猛君       安井 吉典君    武田 一夫君       藤原 房雄君    吉浦 忠治君       木下敬之助君    藤田 スミ君       山原健二郎君  出席国務大臣         農林水産大臣  佐藤  隆君  出席政府委員         外務省経済局長 佐藤 嘉恭君         農林水産大臣官         房長      浜口 義曠君         農林水産省経済         局長      塩飽 二郎君         農林水産省構造         改善局長    松山 光治君         農林水産省農蚕         園芸局長    吉國  隆君         農林水産省畜産         局長      京谷 昭夫君         農林水産省食品         流通局長    渡辺  武君         農林水産技術会         議事務局長   谷野  陽君         食糧庁長官   甕   滋君         林野庁長官   松田  堯君         水産庁長官   田中 宏尚君  委員外出席者         議     員 田中 恒利君         議     員 水谷  弘君         議     員 神田  厚君         大蔵省主計局主         計官      水谷 英明君         厚生省生活衛生         局乳肉衛生課長 難波  江君         厚生省生活衛生         局食品化学課長 内山 壽紀君         資源エネルギー         庁石油部精製課         長       田村 修二君         資源エネルギー         庁公益事業部業         務課長     稲川 泰弘君         運輸省港湾局計         画課長     堀井 修身君         建設省道路局高         速国道課長   玉田 博亮君         自治大臣官房企         画室長     古居 儔治君         農林水産委員会         調査室長    羽多  實君     ───────────── 委員の異動 十一月十八日  辞任         補欠選任   玉城 栄一君     正木 良明君 同日  辞任         補欠選任   正木 良明君     玉城 栄一君 十二月十六日  辞任         補欠選任   石破  茂君     稻葉  修君   衛藤征士郎君     木部 佳昭君   遠藤 武彦君     加藤 紘一君   川崎 二郎君     佐藤 一郎君   近藤 元次君     塩川正十郎君   杉浦 正健君     丹羽 兵助君   保岡 興治君     塩崎  潤君   山崎平八郎君     宮澤 喜一君 同日  辞任         補欠選任   稻葉  修君     石破  茂君   加藤 紘一君     遠藤 武彦君   木部 佳昭君     衛藤征士郎君   佐藤 一郎君     川崎 二郎君   塩川正十郎君     近藤 元次君   塩崎  潤君     保岡 興治君   丹羽 兵助君     杉浦 正健君   宮澤 喜一君     山崎平八郎君 同月二十日  辞任         補欠選任   佐々木良作君     木下敬之助君 同日  辞任         補欠選任   木下敬之助君     佐々木良作君     ───────────── 十二月二十日  果樹農業振興特別措置法の一部を改正する法律案田中恒利君外四名提出衆法第四号) 十一月十日  土地改良事業償還金農家負担軽減に関する請願五十嵐広三紹介)(第二五一八号)  同(五十嵐広三紹介)(第二五六九号)  同(五十嵐広三紹介)(第二五九六号) 同月十四日  土地改良事業償還金農家負担軽減に関する請願五十嵐広三紹介)(第二六二七号) 同月十七日  アメリカ米輸入反対に関する請願佐藤敬治紹介)(第三三九七号)  米の輸入反対に関する請願佐藤敬治紹介)(第三三九八号) 十二月二十日  米の市場開放反対及び冷害などによる被災農家救済対策等に関する請願藤田スミ紹介)(第三七四九号)  同(藤田スミ紹介)(第三七六六号)  農林水産業における改良普及事業交付金一般財源化反対に関する請願緒方克陽紹介)(第三七九七号)  同(清水勇紹介)(第三七九八号)  同(中沢健次紹介)(第三七九九号)  同(安田修三紹介)(第三八〇〇号)  同(石橋大吉紹介)(第三八四二号)  同(水田稔紹介)(第三八四三号) は本委員会に付託された。     ───────────── 十一月十六日  米穀政策の確立に関する陳情書外一件(第一八一号) 十二月二十日  米市場開放阻止に関する陳情書外八十五件(第二一四号)  米価新算定方式の導入に関する陳情書外一件(第二一五号)  日本農業を育成・強化に関する陳情書外二十六件(第二一六号)  水産業振興対策強化に関する陳情書(第二一七号)  農薬使用適正化の推進に関する陳情書外一件(第二一八号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  果樹農業振興特別措置法の一部を改正する法律案田中恒利君外四名提出衆法第四号)  農林水産業振興に関する件      ────◇─────
  2. 菊池福治郎

    菊池委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  この際、佐藤農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。佐藤農林水産大臣
  3. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 先般開催されたガットウルグアイ・ラウンド貿易交渉委員会閣僚会議への出席について御報告いたします。  今月の五日から九日までカナダのモントリオールで開催されたガットウルグアイ・ラウンド貿易交渉委員会閣僚会議に、会期半ばからではありましたが、宇野外務大臣とともに出席してまいりました。国会会期中ではありましたが、このモントリオールでの会議の結果が今後の我が国農政の展開に多大な影響を与えるものであることにかんがみ、関係皆様方の格別の御配慮をいただきまして、今月六日に日本を出発し、十日に帰国いたしました。  農業問題につきましては、従来からの我が国立場を踏まえつつ、農産物貿易の一層の発展に向けてのできる限りの貢献、食料安全保障などの農業の有する純経済的でない役割への十分な配慮が必要、ということを基本として積極的に参加し、最大限の努力をしてまいりました。  しかしながら、交渉において目指すべき長期的な目標をめぐり、主要国間の考え方に大きな隔たりがあり、議長を初めとする関係者努力にもかかわらず、歩み寄りを実現するに至りませんでした。その結果、本件については、知的所有権など他の若干の項目とともに、明年四月上旬開催予定貿易交渉委員会に向けてさらに協議を行うこととなりました。  また、モントリオールにおきましては、アメリカリン農務長官と個別の会談を行い、食料安全保障等農業の純経済的でない役割について理解を求めるべく、明確な主張をいたしました。この場で、日米の懸案である米も話題になりましたが、これまでの双方立場を確認し合っただけで、新たな話は出ませんでした。  いずれにしても、ウルグアイ・ラウンド農業交渉の今後の対応といたしましては、我が国としては、従来の基本的立場を踏まえつつ、交渉の進展に向けて引き続き積極的に対処してまいりたいと考えております。  以上で報告を終わります。
  4. 菊池福治郎

    菊池委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松田九郎君。
  5. 松田九郎

    松田(九)委員 最初に、ただいま報告のありましたガットウルグアイ・ラウンド中間見直しにおける佐藤農林水産大臣を初めとする関係各位の大変な御努力に敬意を表します。本当に大臣、御苦労でした。  ところで、今度のウルグアイ・ラウンドにおける交渉過程の中を、我々が門外漢というから国内におってこれを眺めてみたときに、言うなればアメリカECとの長期対策あるいは短期対策等関連の中で、要するにこれに便乗した形の日本の米問題その他についての切り込みが、幸いというか、なかったのではないかという印象を受けてならないわけです。関連をして、今次のいわゆるウルグアイ・ラウンドにおける交渉あり方から見て、我々から言えば農林水産大臣主軸交渉でなければならぬと思うのだけれども、主として外務大臣外務省サイド交渉経過になっておったのではないか、そういう嫌いがしてならないわけです。  そこで、今度の交渉というものが外務省主軸交渉であったこととあわせて、来るべき次の機会、四月のジュネーブ会議においても、再びそういうようなあり方をとろうとするのか。次の質問の関連もあるので、まず外務大臣出席を求めて質疑をしたかったのだけれども外務大臣出席をできないということだから、責任ある外務省の係のこのことについての基本的な考え方を、まず冒頭に聞いておきたいわけであります。
  6. 佐藤嘉恭

    佐藤(嘉)政府委員 外務大臣が、ソ連外務大臣接遇のために欠席せざるを得ませんでしたことをお許しいただきまして、私から御報告をさせていただきたいと思います。  ただいま先生の御指摘のありましたウルグアイ・ラウンド農業問題につきまして、日本政府としてどういう対応をしていくべきかということについてのお尋ねであろうかと推察いたします。私ども外務省といたしましても、農林省と緊密な連絡あるいは政策協議をいたしまして、歩みを一にしてこのウルグアイ・ラウンド農業交渉に臨んでいる次第でございます。  今回のモントリオールにおきます中間見直しの場におきましても、先ほど農林大臣からお話がありましたように、私どもといたしましては、従来の日本農業交渉におきます基本的な立場、すなわち日本という国は最大の農産物輸入国であります、また同時に自給率におきましても先進諸国の中で非常に低い、こういう事情を踏まえながら、日本としての農業貿易発展を願う気持ちも含めまして、きちんとした対応をしてまいった次第でございます。かような基本的な考え方につきましては、私ども農林省ときちんとした政策協議をしながら、今後とも対応していく所存でございます。そのことをまず御報告申し上げたいと思います。
  7. 松田九郎

    松田(九)委員 四月に向けての我が国態度の中で、外務省経済局長が今いろいろと意見を言っておるけれども、従来我が国アメリカは、いわゆる日米協調基軸であることは言うまでもない。しかし、問題によっては、この考え方というものを残念ながら是正をせざるを得ないという状態になることもある。米の問題について言うならば、アメリカ態度いかんによっては断じて——日米親善友好だけの従来の外交姿勢、これを我々は妨げるものではない。というのは、この交渉の後、ヤイター通商代表などは、米問題については一歩も譲れない、基軸だ。また松永大使ども、米の自由化についてはいささか歩み寄らんとするような、そういう意味にとれる発言をしばしばいろいろの機会に繰り返しておる。そういうときにECは一体どうか。ECは、今度は断じてアメリカの言いなりに屈服をしない、親善が損なわれようともEC利益を断じて損ない譲るものではない、そういう毅然たる態度があったればこそ、今回はこの問題を中心に流れておると我々は受けとめておる。  幸いに個々の問題について切り込みがなかったから、具体的な米問題には入ってきていないけれども、今後ECアメリカの間に、この四、五カ月の間に内々の対策についての折り合いがついて、再び四月を迎えたときには、急転直下、アメリカの強硬な米自由化問題についての主張というものが出てくると思うのだが、従来のような外交姿勢の軟弱なやり方ではどうにもならぬと思う。だから、日本国民利益を代表する政府としては、毅然たる態度でもって臨んでもらわなければならぬ。たとえ、この問題についてアメリカとの親善が損なわれようともやむを得ない、そういう考え方を私は持っておるのだけれども、再び外務省見解を聞いておきたい。
  8. 佐藤嘉恭

    佐藤(嘉)政府委員 日米関係我が国外交基軸であるということにつきまして、先生の御見解も御披露いただきましたが、私ども、まさに日米関係我が国外交関係の中で基軸であるという基本に立ちまして、農業貿易問題も議論をしているわけでございます。確かに、日米農業事情をめぐります環境は大変大きな違いがございます。したがいまして、かような環境の違いから来るアメリカ主張あるいは日本主張というのは、それぞれの視点に立った主張であることは、全く御指摘のとおりであろうと私ども考えている次第で あります。  しかしながら、この日米関係基軸という中にあってこそ、我々のこの主張アメリカ理解させることができるし、またそういう努力を重ねていくことによって日本農業関係利益を確保していくことが重要ではないかと思う次第でございます。そういう意味におきまして、私どもも毅然たる態度を持って日米交渉対応してまいりたい、こう思うわけでございます。  ウルグアイ・ラウンドの中でこの多国間の貿易交渉というのが進むわけでありますが、ECアメリカがどのような対応をしてまいるか、その点については先生指摘のとおり、私どもとしても十分見通しを持った対応をしていかなければならないと思いますし、そういう見通しをはっきりさせながら我々としても日本主張を展開していかねばならない、かように考えている次第でございます。
  9. 松田九郎

    松田(九)委員 今後の世界情勢、この問題についての関係各国情勢変化がどうあろうとも、いわゆる四月の交渉というものは、これはもう設定をされておる。そこで、今後我が国は、再び外務省サイド外務大臣主軸とするこの種の討議にしようとしておるのか、農林水産大臣農林省サイドでこの問題について対応しようとしておるか、そこら辺をはっきり聞いておきたい。  というのは、アメリカでもECでもすべて、このほどの会議についてもそうだったが、農林水産がいわゆる主軸交渉となっておる。アメリカにおいてリン農務長官あるいはヤイター通商代表、これが全力投球で取り組んでおる。加えて来るべき四月には、ヤイター農務省長官になって再び首席全権で乗り込むことが既に確定をいたしておる。そういうときに、我が国は毅然たる態度でという言葉を使っておっても、そういう片りんも見られない。今の外務大臣、だめだとは言わぬけれども日本農民安心感信頼感を与えるために、次の会議には農林水産大臣主軸外交交渉であってしかるべきだと私は思うが、これについて外務省見解を聞いておきたい。
  10. 佐藤嘉恭

    佐藤(嘉)政府委員 ただいま松田先生の御指摘がございましたが、私どもは、農林省意見を異にして外交交渉を進めているつもりは全くないのでございます。ただ、外務省立場ということがございまして、時に応じまして私どもアメリカ事情日本側に御理解いただかなければならないという事情も、状況によっては生じているわけでございます。それは、何も私ども利益を放棄してしまうということではなくて、先ほど御報告申し上げました日米関係基軸ということに立ちまして双方利益をお互いに確保していく、こういう視点から申し上げている経緯があろうかとも思います。しかしながら、外に向かいまして、アメリカあるいはウルグアイ・ラウンドの中で交渉いたしますときは、当然農林大臣外務大臣との間で御意見交換もあっているように理解をしております。また、私ども事務当局におきましても十分意見交換をし、対外的に折衝の方針をきちんとした上で交渉に向かうということを御理解いただければと思う次第でございます。
  11. 松田九郎

    松田(九)委員 今の答弁では全くあいまいもことして、次の機会にどういう基本的な戦略でやっていこうとしているのか、私にはよくのみ込めない。今、日本農民あるいは関係生産者が危惧しているのは、農業に対する先行き不安、特に日本民族の文化と伝統と歴史をつくり上げた米については、にっちもさっちも譲れないという不安と切迫感がある。次の機会に米の問題、自由化を求めてくることは間違いがない。そういうときに、いわゆる外務省サイドにおける交渉では、日本農民に、本当に国力のすべてを傾けて対米を中心とする交渉に踏み込んでいっているということを説明するには迫力がなさ過ぎると私は思う。佐藤農林水産大臣のように、すべてを超越して勇断ある対処をしていけるような大臣が先頭に立ってこの問題に取り組むべきであると私は思うが、ここで農林水産大臣の所見を聞いておきたい。
  12. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 先ほど来お説を伺っておりましたが、まずは農民あるいは農業団体の信をつないでいくということについては、農林水産省責任を負わねばならぬことであります。いかに外交交渉といえども、自分の国の中がまとまっていなくて何が外交であろうかと、私は常日ごろ、農産物だけではなくてそう思っております。したがって、米の問題等農産物の問題につきましては、私ども国内世論というもの、また国会における御決定というもの、御決意というものを頭に置いた上で、そしてなおかつ、国際化の時代でありますから国際的に孤立をしてはならぬが、我が国我が国としての食糧政策を、また農政を全うしていくという決意基軸となっていかなければならぬのは当然のことでございます。  かく考えますと、外務省外務省役割があるでございましょう。しかし、内閣それ自体の責任として、その中心は、農業問題については農林水産省が事に当たらなければならぬ。そのことは、宇野外務大臣もよく承知をしておられるはずでございます。私自身は、そういう考えを持っておるところでございます。
  13. 松田九郎

    松田(九)委員 農林水産大臣の毅然たるいわゆる所信表明は了といたしますけれども、では一体、この間のウルグアイ・ラウンドにおける交渉過程の中で、我々は門外漢だからその間の事情についてはつまびらかでないけれども、受けておる印象としては、外務省外務大臣が何だかんだやっておって、言うなれば農林水産大臣はオブザーバー的で、助言者的な立場で私は終始したのじゃないかという感じがしてならない。これに対してアメリカは、リン農務省長官ヤイターがいわゆる全権として乗り込んできておる。次はヤイターがまた主役となって、四月のいわゆるウルグアイの交渉には臨んでくる。まさに一貫して、農林サイドの総力を挙げてアメリカはこの問題に取り組んでおるというときに、日本軟弱外交と日ごろから言われておる外務省だけにこれを任せてやっておるわけにいかぬ。この際、次の機会には交代してもらわなければいかぬと思うのだが、一体農林大臣はこの間どういう役割をしたの、あなたは。オブザーバーで、あるいは助言者でおったのじゃないの。何か主役を果たしたのか。どうか、そのことを聞いておきたい。     〔委員長退席笹山委員長代理着席
  14. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 私は、ウルグアイ・ラウンド中間レビューに当初から出席をし、そして多国間におけるいわゆるウルグアイ・ラウンド会議の場に臨みたかったという願望は持ちつつも、実は国内対策としてことし重要課題であった牛肉・かんきつの交渉、特に牛肉の問題につきましては畜産二法、これを参議院に審議をお願いしておりまして、私の出席のところでなければ審議は進まないという状況も実はございました。当然のことでございましょう。それをまずやらねばならぬ。そして、ぎりぎり理解を仰ぎまして後半を出席したということになっておるわけでございます。  なおまた、二国間で日米農産物交渉をやる場合は私が主体でございました。しかし、ウルグアイ・ラウンド中間レビューウルグアイ・ラウンドの場におきましては農業問題だけではなくて、知的所有権の問題であるとかいろいろな問題があるわけでございます。その中にまた農業問題もあるということで、ちょっと二国間の場合とは——これ、私も十分に事前に説明しておけばよかったですけれども言葉の足らないところはお許しをいただいて、そういういろいろなグローバルな問題があった。外務大臣通産省の分までも仕事をされたということでございまして、しかし、そうは言いながらも、我が方の農産物に関する主張は十二分にのみ込んでもらって、いろいろな誤解やらあるいは心配を受けないように常にフォローをしてきた、中間レビューに向けてフォローをしてきたというふうに思っております。
  15. 松田九郎

    松田(九)委員 今の大臣の御答弁は了とするわけです。私も、二国間協議の問題と違って、通産省サイドにおける問題、外務省サイドにおける問題等もあるから、複雑なるさきのウルグアイ・ラウンド会議であったことは承知をいたしておるわけです。しかし、今国民大多数が関心を持って その成り行きを注目しておるのは、通産省関係外務省関係の問題ではなくて、米を中心とする農業基本的な国家間の問題がどう決着を見るかという、そういう問題に耳目が一点集中されておると思うのだから、その場合にこそはやはり農林大臣、首相のサイド交渉でなければならない、それが政治だ、それが期待と安心感国民に与えるすべであるという見解から、次の機会にはそういう方向が私は好ましいのではないかというのを申し上げておるわけでありますから、その点について今一たび、くどいようだけれども大臣所信を承っておきたいのであります。
  16. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 おっしゃるように、確かに農産物問題、また米を含めて、これは大変な問題であると私も認識しております。十二月の中間レビューが、一口で言えば来年の四月に持ち越されたようなことに結果なりました。そこで米を含む農産物問題がどのように取り扱われるか、もう目を離すことはできないと思っております。目を離さずに、そして四月の上旬に至りますれば、当然のことながら、農林水産大臣外務大臣とともにその交渉に当たるべきである、そしてウルグアイ・ラウンド交渉の場において、あらゆる国々が困難な問題を持ち出したときは持ち出して堂々と議論する、二国間の問題はあり得ない、かように考えておるところでございます。
  17. 松田九郎

    松田(九)委員 基本的な問題ばかり触れておるというと時間がありませんから、取り急いで次の問題に移ります。  米の自由化問題について、具体的に個々の問題だけれども経済局長かだれかひとつ聞いておきたいのだが、ヤイター通商代表は再提訴の意思はないやに言っておるけれども、そう言いながらも米の自由化に向けては並み並みならぬまた意欲と動きをしておる。こういうときに、国内生産者については大変な不安感を与えておるが、これについては農林水産省としては今後どのように国内生産者に向けての指導をしていこうとするか、その考えを聞いておきたい。
  18. 甕滋

    甕政府委員 ただいま大臣から申し上げましたように、米の問題につきましては、日米の二国間でなくて、ウルグアイ・ラウンドでしかるべく論議の段階になりました際には、討議するのにやぶさかでないという基本方針でございます。その中にありまして私どもの米についての方針は、再々本委員会においても申し上げておりますように、その格別の重要性にかんがみまして、国会の決議等の趣旨を体しまして、国内で生産性の向上を図りながら国内産で自給する、こういうしっかりした方針のもとに対処してまいるつもりでございます。また、そのラインに沿いまして関係団体にも、国内の生産性向上、構造改革等の努力をともどもに進めてまいりたい、こう考えておるところでございます。
  19. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 私もしばしば考えておるのでありますが、お答え申し上げておるのでございますが、改めてのお尋ねでございますので申し上げておきたいと思います。  食糧庁長官の言うことに一言つけ足すとするならば、我々は米を自給する方針には変わりない、各国が持ち出すその議論は避けたい、しかしその場において我々の主張主張し貫き通したい、こう申し上げておきたいと思います。
  20. 松田九郎

    松田(九)委員 ただいまの農林水産大臣決意について、大変感謝をいたします。  ところで、世界の米を中心とする流動多難な中で、我々もまた自主的な努力をしていかなければいかぬが、今後農林水産省として具体的に米麦価引き下げの問題、生産性向上の問題、特に生産性向上問題については、基盤整備あるいは負債整理等の問題を含めて、前向きに対応していかないことにはどうにもならないのだけれども、そのことについてこの際構造改善局長等の意見を聞いておきたい。
  21. 松山光治

    ○松山政府委員 厳しい諸条件の中で、国民の皆さんの理解と支持のもとに我が国農業の健全な発展を図っていくという観点からいたしますれば、できるだけ地域の実情に応じながら、効率的な生産構造をできるだけ早くつくり上げていく、こういうことが喫緊の政策課題である、このように考えておる次第でございます。いろいろと地域の事情も違いますから、やり方についてはいろいろとありましょうが、できるだけ早く各地域でこういう方向へ持っていこうという合意の形成をやっていただく。それに向かって関係団体が一致して努力していく。また、お話のございました基盤整備の問題につきましても、これは基礎的な条件の整備でございますので、できるだけの推進を図っていく等々、いろいろな条件整備を重ねて頑張っていくように努力していきたい、このように考えておる次第でございます。
  22. 松田九郎

    松田(九)委員 食糧庁長官、簡単に伺う。  今、巷間一部消費者の間を中心として、いわゆる米、麦価等についての俗に言う消費者価格引き下げの動きがあるやに見受けるのだが、このことについて、来るべき機会におけるこの種の問題にどう食糧庁は対応しようとしておるか、その基本考え方を聞いておきたい。
  23. 甕滋

    甕政府委員 お尋ねの消費者米価の問題でございますが、これは麦価についても同様でございますけれども、本年生産者価格をいずれも引き下げております。それに基づきまして、その効果は消費者の目に見える形でこれを及ぼしていくという必要があるように私ども考えておりまして、それがまた、国民各界各層の支持を得ていくゆえんであるというふうに思っております。  そこで、この場合、米につきましては、古米の持ち越し在庫水準が高いといった状況もございます。その円滑な売却を図る必要もございます。また麦につきましては、このところ製品輸入が増加傾向にある、こういうことも十分念頭に置きまして対処する必要があるということで、現在鋭意部内におきまして検討しておるところでございます。
  24. 松田九郎

    松田(九)委員 この際、ひとつお互いが努力しなければいかぬ。だから国内対策の一環として、農業者団体というものについての適切な健全な指導、あるいはあり方というものを我々は求めていかなければいかぬ。最近の農業団体は事なかれ、自己保身、その組織は金融と経済面だけにややもすれば偏向しがちである、営農なんというのは全くなっていない。そういうものについても、我々厳しく監視を今後しながら、健全なる農業者団体の育成を図りながら生産者の期待にこたえる、そういうニーズは必要であると思うが、この点について見解を聞いておきたい。今でいいと思っているのかどうか、そういうことだ。
  25. 塩飽二郎

    ○塩飽政府委員 厳しい農業を取り巻く情勢の中におきまして、農業者の自主的な組織でございます農協に対する注文あるいは期待も、今先生の方からお話のございましたように、非常にあるというふうに我々も認識をいたしておるわけでございます。  この問題につきましては、ことし総務庁からも農協のあり方について勧告が行われたところでございますし、また農協自身におきましても、去る十五日に全国農協大会において、二十一世紀の農業を展望する中での農協の基本戦略につきまして決議をし、自主的な改革のスタートを切ったところでございます。私どもは、農協に対する農業者みずからのいろいろな期待、注文あるいは世間の評価、そういう問題につきまして十分に率直にそれを受けとめまして、農協に対する農林水産省としての対策についても従来もいろいろな取り組みをしておるわけでございますが、それをさらに一歩も二歩も進めて、農協の対応について農林省サイドからの対策に万全を期したいというふうに考えております。  特に、農協は経済事業に非常に偏っているのではないかという御意見が、今松田先生の方からお話があったわけでございます。確かにそういう見方もございます。  これは申すまでもないわけでございますが、農家の所得水準も向上しておりますし、営農の形態も組合員の経営内容も非常に変化をしてきておりますし、生活も多様化するということで、そうい った組合員のニーズをくみ上げていかなければいけません農協の対応についても非常に困難があるわけでございますが、そういう多様な組合員のニーズのくみ上げに当たりましても、ただ漫然と事業を全面的に広げていくということではなくて、組合員のニーズを的確に把握した上で、優先度にめり張りのついた事業の展開をする必要があるのではないかというふうに私ども考えております。特に、低コスト農業の実現のために営農の指導の強化が求められているわけでございますが、この点につきましても組合長が先頭になりまして、営農指導に重点を置いたような展開を図っていただきたいというふうに認識をいたしております。  申し上げなければならぬ点多々ございますが、これらも含めまして、近々農協に対する農林省としての指導方針について対策を打ち出していきたいということで、準備を進めている段階でございます。
  26. 松田九郎

    松田(九)委員 時間が参りまして委員各位に申しわけありませんが、一分間お許しを願いたい。締めくくりとして申し上げたい。  先ほどから提言をいたしておるように、来るべき四月の交渉には、我々としては経験、勇断、そしてすばらしい行動力を持っておる佐藤農林水産大臣を再び送りたい、そういう気持ちでいっぱいだ。もう内閣改造なんて言っておるけれども、役立たずが出てきたって困るのだ。だから、そういう意味を含めてそういう意向を、当委員会においても何らかの形においてそういう方向づけを、私は意思表示はすると思うが、これを私の提言としてひとつ皆さんにお諮りをしておきたいのであります。  同時に、佐藤農水相、ひとつあなたは自信を持って、我々が期待を持っておるということを考えて、最後に一言所見を承っておきたい。  以上。
  27. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 いろいろ御提言をいただきまして、また御激励をいただきまして、恐縮に存じております。  だれがその衝にあろうとも、やはり農業協同組合が果たす役割、これは農協のためのものでなくて、国民のための食糧政策のためのものである、日本農業のためのものであるという考え方を忘れてはならぬのではないかと、みずから言い聞かせておるところでございます。そういう打ち方をコンクリートしながら、その上に立って外交交渉というものは毅然として進められるべきものである。国際化に伴う農業、農山村の活性化に対する基本方向も、各般の批判をいただきながら、御理解をいただきながら、その基本方向に基づいて農政は粛々として進められるべきものと心得ておる次第でございます。
  28. 松田九郎

    松田(九)委員 ありがとうございました。終わります。
  29. 笹山登生

    笹山委員長代理 安井吉典君。
  30. 安井吉典

    ○安井委員 佐藤農林大臣モントリオール会議、大変御苦労さまでした。佐藤さんの留任待望論まで今松田さんから出たわけでありますが、いずれにいたしましても、ことしは農産物貿易交渉当たり年で大変な御苦労をされたこと、本当に御努力には敬意を表する次第でございます。  ただ、今度のモントリオールのニューラウンドの中間見直しの閣僚会議は、会期を一日延長はしましたけれども農業など四分野についての基本的な合意がついにならず、そのまま終わったというふうなことがあります。その中で我々は最大の問題視をしておったのは、米の市場開放の問題であります。しかし、これもアメリカECとの激しい対立論争の中で、ほとんどこれに触れないで終わってしまったというふうなことで、まあここで妙な結論が出たら困るのだというふうな気持ちからすれば、胸をなでおろすような思いをした向きもあったのではないかと思うのであります。  ただ問題は、日本側が食糧安保だとか環境保全等の経済外要因を述べて米を守るということ、言いかえれば非経済的な役割への配慮を要求するというようなこと、そういうようなものに対して十分な理解会議の中で示されて、その結果、こういう結論に達したというのなら喜ばしいことだと思うのでありますけれども、どうもその経過というのはさっきもお話がございましたが、アメリカECの大激論のぶつかり合いの中でかすんでしまったというふうなことで、問題は何も解決されていないということ、その点が私ども、これでいいのだろうか、これから先どうなるのだろうかという疑問を持たざるを得ないわけであります。私の率直な疑問提起に対する大臣のお考えをお聞きいたしたいと思います。
  31. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 ある種の見方によれば、このたび米のことが議論にならなかったということは胸をなでおろしているのではないかということを冒頭に申されたわけでございますが、決して胸をなでおろしているわけではございません。また、問題を避けようとしているわけではございません。従来から答弁をしてきたとおりでございます。特に、日米間二国間では米の問題は論議はしたいということについての取り扱いについて合意をされておったことは、御案内のとおりでございます。にもかかわらず、いろいろな報道がなされてまいりました。極めて遺憾であると思っております。  それじゃ、中間レビューで米だけ出てくるのか、それがすっきりしてないではないか、埋もれてしまっているではないか。そうではございません。先ほど来申し上げているように、また従来も申し上げたように、ウルグアイ・ラウンドの場で各国が困難な問題を持ち出した場合には、日本も持ち出して一緒に議論することはやぶさかでない、こう言っているのですから、中間レビューには絶対その話が、米が出てこなければおかしいじゃないかという一つの認識があったとするならば、ひとつお改めいただければ幸いだと思っております。  しかし、アメリカECとの関係は極めて深刻なものがあるなということも、実感として私も体験をいたしました。そういう中にあって、日本日本なりの従来の方針を、ひとときも目を離すことなくこれを守り続けるために我々は努力を続けていかなければならない、こういうことを申し上げるわけでございます。
  32. 安井吉典

    ○安井委員 私が今言ったのは、日本の非経済的な配慮を米を初め農産物に払うことを忘れてはならぬという、これが日本主張だったと思うのですが——それを言わなかったという意味ではないのですよ。それが、全部の国が了承して、いや、そのとおりだ、だからもう米は除こう、こういうふうな合意で最終的な結論になったんじゃない。言ったことは間違いないでしょうけれども、それが論議の中で全体から了承されたということで、米の問題が事なきに終わったということではないということを私は申し上げたわけです。
  33. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 私が申し上げたのは、しかし中間レビューでは、米だけを抜き出して多国間であろうとも議論をする場ではない、各国が困難な問題を持ち出したときに、我が方も持ち出して議論することはやぶさかでないよということを言ってきたわけでございまして、しかしまた後段言われた非経済的要因、これをやはりアメリカもある程度理解してくれたのではないかという感想は十二分に持っております。そしてそれは、活字としてはあのような状況でございますから残りませんでしたけれども、食糧安保というものの考え方も、私どもが粘り強くやってきた一つの成果と言うと余りにも満足したような言い方になるかと思いますけれども、一つの実績をつくり上げることができた、だから食糧安保ということもある程度理解してもらえたのだな、そういう感想は率直に持っておる次第でございます。
  34. 安井吉典

    ○安井委員 ただ、結論は何もなしに終わったということなものですから、主張はされたわけですけれども、その主張で米は除きますというふうなことになったのではないのだ、そういうはっきりしたもので終わってないということについて、私どもはよかった、よかったと言えない思いを持っているということを申し上げているわけであります。  そこで、そのアメリカとの関係なんですけれどもアメリカ側は会議全体を通して日本アメリカに対する協力的な態度を非常に評価する、日本は立派だったというふうな言い方をヤイターがしたとかというふうな報道があるわけでありますが、その点について伺っておきたいわけであります。  宇野外務大臣モントリオールへ行く前に、レーガン大統領その他と事前に話し合っているわけであります。そして、アメリカと協力をしてモントリオール会議を成功させようという約束をしたと伝えられています。アメリカの方はECとの激しい対立の中で、日本アメリカ側についてアメリカの味方として働いたのでそういう評価が行われたのではないか、その辺がよくわからないのでありますが、日本はそのアメリカECとの対決についてどちら側についたというふうなことになっているのですか。これは外務省経済局長も残っていただいておりますが……。
  35. 佐藤嘉恭

    佐藤(嘉)政府委員 ただいま御指摘がございました日米間で協力的にウルグアイ・ラウンドモントリオール会議対応しようという点でございますが、ワシントンにおきます宇野外務大臣の一連の米国首脳との会談におきましては、いろいろな問題が議論されましたが、ちょうどこのモントリオール会議へ臨む直前でございましたので、話がこのモントリオール会議に及んだわけでございます。その際、私どもとしても、世界の貿易の発展ということがいろいろな形で実現をしていかなければならないという認識に立っておったわけでございます。したがいまして、アメリカ側との懇談におきましては、ウルグアイ・ラウンドあるいはモントリオールにおける会議というのがこういった世界貿易の発展という見地に立った会議であるという立場に立ちまして、お互いの協力を確認し合ったということでございます。これは何も今回のワシントンの会議におきましてだけ私どもは話しておるわけではございませんで、一般的に日米間のいろいろな対話の中で世界貿易の発展のための日米協力ということを話題にしている次第でございます。  そこで、御指摘になりましたどの問題について日本がどういう態度をとったからアメリカ側が協力的と判断したかという点でございますが、確かに農業問題につきましては、非常に難しい問題がいろいろ提起されたことは事実でございます。同時に、今回のウルグアイ・ラウンドモントリオール会議におきましては、先ほども農林大臣からお話がございましたように、サービス貿易の問題あるいは知的所有権の保護の問題あるいは繊維に関する貿易の問題あるいはガットのたがが緩んでいる規則をきちんと確認をし合う問題、そういう一連の問題がございました。私ども、先進国と申しますか、日米のみならずヨーロッパの国々もそうでありますけれども、かなり多くの問題につきましてお互いの立場は非常に近いわけでございます。そういう意味で、会議の中では先進諸国間同士の意見交換というのが頻繁に行われましたし、また日米間でいろいろな問題について相談をしながら会議の積極的な運営を図った、こういう状況を全体として評価をされてヤイターさんの会議後の御発言になったものというふうに、私ども理解をしている次第でございます。
  36. 安井吉典

    ○安井委員 これは、国際的な話し合いの中で自国を有利にするということなんですから、お互いが戦略、戦術、権謀術数をたくましくするという言葉は言い過ぎかもしれませんけれども当然だと思うのですが、レーガン大統領は竹下総理に書簡を送ってきたわけですね。日本の米の開放を迫るという内容であったと伝えられています。そういうふうな状況の中で宇野外務大臣は訪米をする。モントリオールに行く前にまずアメリカと話し合いをするということであったと思うのです。しかしそこでどうも、米の問題で日本アメリカは人質にしたと書いた新聞もありますけれども、そういう言い方は別として、自分の方の仲間に入れてしまって、それでアメリカECの戦争が始まったというふうに見る向きもあるわけであります。  そして宇野外務大臣が、これはどこの場だったのですかね、農産物の貿易の一層の自由化を進めなければならないというふうな意味の言明をされているという報道もございました。この内容は、アメリカとのいろいろな駆け引きの、こっちを味方にして向こうと闘うとかいうふうなことならいいのですけれども農産物の貿易の一層の自由化を進めるというふうな本質にわたる問題までを言明する中で向こうにすり寄ったということでは、私はこれは問題があると思うのです。その辺はどうなんでしょうか、経済局長
  37. 佐藤嘉恭

    佐藤(嘉)政府委員 ただいま御指摘の報道がいつの時点であったかというのは、私も記憶が定かではございませんが、先生御案内のとおり、私ども日本ガットの締約国の一つでございます。したがいまして、ガットの締約国の一国として貿易を一層自由にし、自由化された貿易を確保することによって世界貿易の発展を図っていこうという趣旨は、このガットの規約にも述べられているわけであります。  そういう関係で、ただいま御指摘のありました外務大臣発言理解するとすれば、私どもとして、農産物の貿易ということもこのガットの枠の中でいろいろ議論をされていることは御案内のとおりでございますが、一般的に貿易の自由化ということの関係の中で御発言をされているもの、そういうふうに理解をさせていただきたいと思います。
  38. 安井吉典

    ○安井委員 その言葉の中に、保護農政をもう少し削減するということの約束だとか米の市場自由化はしないけれども若干の開放はしなければいけない、そういう思いが入っているとすれば私どもこれは大変問題だと思うのですが、その辺はどうですか。
  39. 佐藤嘉恭

    佐藤(嘉)政府委員 私どもとしましては、その具体的な例えばお米の問題についての措置あるいはその他の農産物の市場開放についての措置といったことについては、それぞれの方針をきちんとした上で考えていかなければならないと信じているものでございますが、外務大臣が言われました一層の自由化という言葉の中に、個々の問題について日本立場を約束しているという趣旨ではないことを御報告をしておきたいと思います。
  40. 安井吉典

    ○安井委員 その辺さっきも外務省態度についての議論がありましたけれども、その部分については私どもも同感であります。ですから今の御答弁、そういう形だけで私どもは了承はできません。やはりこれからの交渉もあるわけでありますから、最小限度国会自由化をしない、完全な自給を進めていくというその決議の線だけは、農水大臣だけじゃなしに外務大臣も常にそれをしっかり胸におさめた対応をぜひしていただきたい。予定外に外務省経済局長にお残りをいただいたので悪かったのですけれども、これだけひとつ念を押しておきたいと思います。  そこで、これは農林大臣で結構なんですけれどもEC主張の方を聞きますと、アメリカ農業保護の全廃だとか完全自由化の要求に対して、それは非現実的だとECは言って反対をしているわけですね。だから、それの主張の方がむしろ日本主張に近いような気がするわけです。ですから、日本がこの間の会議の中でとった態度というのはECの心証を非常に悪くしていやしないのか、後の四月からの会議もあるわけでありますけれども、これがそういうところに影響はないのか、その辺はどうとられておりますか。
  41. 塩飽二郎

    ○塩飽政府委員 今お話がございましたように、ECアメリカと対照的に、農産物交渉の長期的な目標につきましてはアメリカが完全に農業保護を撤廃まで持っていくべきであるという主張対応しまして、EC主張は極めてあいまいな主張をやっているわけでございます。が、強いて言いますと、完全撤廃までいくべきではないので、せいぜい現在の保護をある程度軽減するのが精いっぱいだという立場をとっております。  日本立場といたしましては、農産物の持つ多面的な役割というものを踏まえつつ、農業についても基本的な方向としてはより自由化が進めら れ、市場の動向というものが生産の行動を決定する要因としてより働くような方向にいくべきであるということは当然としても、農業の果たす多面的な役割、食糧の安全保障でございますとかあるいは環境の維持に果たしている農業役割というものを無視できないし、そういうものを正当に評価して反映したような農業のルールをつくるべきであるという日本主張、そういう主張EC基本的にはそうだということで同調いたしておるわけでございますが、EC主張というものが必ずしも日本と完全に同じというわけではございませんで、私どもは、そういう基本的な農業主張が共通のものを持つという点ではECとの協調というものを図る必要がございますが、やはりECは現在では既に純輸入国から輸出国に変貌しているわけでございますから、ある面では日本主張が異なってくる面もございます。極端に言いますと各国それぞれの立場がございますので、私どもとしては、やはり日本の独自の立場というものを失わないように対応していく必要があると考えております。
  42. 安井吉典

    ○安井委員 ガットの今の枠組みそのものを切り崩していく必要があるのじゃないか、新しく立て直す必要があるのじゃないかというふうな考え方も我々は持っています。あるいはまた、ウエーバー条項に対するECの闘いが展開されでいるわけでありますけれども、これなどももっとアメリカの理不尽な態度を追及していくという上において強めていく必要があるのではないか、そういったようなさまざまな問題がありますけれども、きょうはもう短い時間しかありませんので、これから後の対応についてちょっと伺っておきたいと思います。  今度、ヤイターが農務長官になったというふうなこともあって、次期アメリカ政権がどういうふうに出てくるかというふうな見通しが非常に気遣われるところであります。あるいはまた、二国間交渉というようなものをもう一度持ち出してくるのではないかという心配もないわけではありません、これはないというふうに先ほども農林水産大臣は言われましたが。それから、まだ若干時間がありますけれども、来年の四月の会議にはどう対応するかという問題があります。これらの点についてお考えをひとつ伺いたい。
  43. 塩飽二郎

    ○塩飽政府委員 先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、また外務省の方からも御説明がございましたように、今回のモントリオールの会合でアメリカEC農業基本的な長期目標についての立場の相違が解消できませんで、それが原因で当初期待したような内容での各国大臣の合意にまでは至らなかったわけでございます。来年の四月まで調整の場が延長されたわけでございますが、アメリカEC基本的な対立は今に始まったわけではございませんで、これまでの多国交渉、ケネディ・ラウンドあるいは東京ラウンドの際にも、全く同じではございませんけれども、同性質の対立でかなり交渉がブロックされる事態がございました。  そういう意味では、今回も似たような構図にたっているわけでございますが、基本的な対立は対立として、何らかの形で妥協を図っていく場面も十分想定されるわけでございます。  私どもとしては、これまでも主張してまいりました日本立場、これはモントリオールでも大臣からいろいろな場面で主張していただいたわけでございますが、農業が果たしている多様な役割にかんがみて、農業と工業を同列に置くことはできないのだ、農業については、農業の果たしている役割を踏まえた取り扱いをしていく必要があるのだという基本を踏み外さないで、米、ECの合意がいかようになろうとも、我々日本立場は今申し上げたような立場対応していく必要があると考えております。
  44. 安井吉典

    ○安井委員 大臣何か、今後の対応……。
  45. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 今経済局長から御答弁申し上げましたように、輸出国と輸入国の差異というもの、これも従来から、トロント・サミットにおいても議論になっておるところでございますし、我々は我々の主張基本にして貫き通したい。  一方、国際化の中で孤立してはならぬのでございますから、それは頭の中に置かなければならぬ。しかし、中間レビューが十二月から来年四月に持ち越されたことによってひとときも目を離すことはできない、真剣に対応していかなければならない、こういう考え方でございます。少なくとも、アメリカ日本をどう評価しようと、またECがどう評価しようと、もとは日本の国自体の考えがどうであるかということを常に頭に置いて交渉は進められるべきものである、さよう心得ておるところでございます。  以上です。
  46. 安井吉典

    ○安井委員 いずれにいたしましても、繰り返すようですけれども国会のしっかりした態度があるわけですから、ぜひその範囲内で問題を処理できる形での御努力をこれからもお願いしておきたいと思います。  もう一点、食糧事務所の職員三千人を削減という記事が十二月十七日の夕刊に出まして、数字がはっきりした具体的な提案を大蔵省が新五カ年計画として提示する、こういうことであります。  これまでも食糧事務所の定員削減、たしか五カ年計画で四千人ぐらい減らしたはずです。そこへもってきてさらに大幅な削減を大蔵省が出してくる、そういうありように対して私ども大きな疑問を持たざるを得ないわけであります。そういうようなことで、食管制度そのものが崩壊する、これを認めるか認めないかがそういう一つの重大な試金石にたっていくのではないか、そういうような思いをせざるを得ないわけであります。臨時行革審議会さらにまた政府の規制緩和推進要綱、そういったようなものの最後にこの食糧事務所と、こういうふうな形になってきている点で問題が非常に大きいと思うのでありますけれども、これに対する農林水産省対応について伺います。
  47. 甕滋

    甕政府委員 最初にお話のございました新聞報道につきましては、現在六十四年度予算の一環といたしまして、食糧事務所の定員問題をどうするかということは一つの問題点でございまして、現在政府の部内でも検討中でございます。ただ、具体的にどうするかといった点につきましては、現時点では何らまとまっておりませんけれども、今後予算編成の中で検討していかなければならないと思っております。  食糧事務所の定員につきましては、お話の中にもございましたように、これまで定員の削減計画に基づきまして計画的な削減を行ってきております。  六十四年度以降をどうするかということが現在の問題でございますけれども、これにつきましては、例えば米の検査につきましてバラ抽出検査をさらに拡大する。六十三年までバラ抽出検査が約七五%というようなことで進めてまいっておりますが、一層この拡大を図る。あるいは検査場所の集約整備を図る、さらには業務の改善合理化を図る、食糧検査士の活用を図る、こういった改善を進める考えでございまして、これらを通じてその運営の効率化を図ってまいりたいと考えております。  ただ、食糧管理制度の果たしている役割、その業務に必要な人員の確保に努めることは当然でございまして、その縮減の中にありましても要員の確保、また一方ではそういった合理化の中におきましても、行政需要の変化に対応して充実強化を図る部門もございましょう。そういった業務については、必要な組織・定員の整備についても検討してまいりたい、こういう姿勢で今後の要員問題に取り組んでまいりたいと考えております。
  48. 安井吉典

    ○安井委員 時間だそうですからこれで終わりますが、食管制度の基本をあくまでも守るという方針があります。これは単なる定員問題かもしれませんけれども、それを逸脱するような形で処理されては困ります。そのことだけ明確に申し上げまして、終わります。
  49. 笹山登生

    笹山委員長代理 竹内猛君。
  50. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は、ここで三点にわたって質問いたしますけれども、この質問に対するお答え は、きょう十分に答えられない面が多々あると思います。したがって、ここで問題を出して、その不十分な分については通常国会でなお質疑を続けていくということを前提にして、三点にわたって質問します。  第一点は乳価決定の全国生乳連関係のことでありまして、これは物特の委員会でも本委員会でも、あるいは文書による質問も出してまいりましたが、その中で文書による契約がなされているという報告があるけれども、これについては明確にこの文書の報告は見ていないわけでありまして、この点は現状どうなっているのかということについて、ここで出さない面があるとすればやはりコピーなどというものは見せてもらわなければ、これは対等のものにはならない。業者一辺倒ではないかということを言われておりますから、その点は生産者に対しても当然一定の権利を保障していくべきだ、こういうふうに思います。  それから、生乳連に関連をしてのその次の問題は、この生乳連の機構、組織が乳価決定に占める全体の位置づけと将来の展望について若干の問題を提起してまいりましたが、これはどうなっているのかということについてお伺いをしたいわけです。この二点。
  51. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 まず、生乳取引に係る契約の文書化の問題でございます。  従来より先生から問題の御指摘をいただきまして、私ども、この契約の文書化を関係者に対して指導を進めておるところでございます。本年度の状況を概略申し上げますと、実体的に本年度の生乳取引にかかわる合意というのは大体できておるわけでございますが、今月九日現在で大手三社との間で結ばれております契約の文書化の状況を見ますと、残念ながらまだ六〇%程度という状況でございまして、実体的合意ができている中で文書化の作業がおくれておりますことは大変残念でございます。私ども関係者をさらに督促をいたしまして、生乳取引の近代化の要諦になります文書化の問題に引き続き努力、対処してまいりたいと考えております。  また、具体的な契約書の公表問題につきましては、御承知のとおりやはりこれは生産者を代表した指定生乳生産者団体と乳業メーカーとの間の私的な経済行為にかかわる問題でございますので、契約書そのものを公表するということは大変難しい問題でございます。その点、ひとつ御理解を賜りたいと思います。  それから、生乳取引問題に関連しまして、御指摘のございました生乳連の機能の問題がございます。  御承知のとおり、生乳取引は基本的には指定生乳生産者団体と乳業メーカーとの間の自由な取引、交渉によって決められるものでございますが、これは補完する意味で、指定生乳生産者団体が構成をしております全国団体がいろいろな形で補完的な役割を果たしておるわけでございます。そういった全国団体の一つとして全国生乳連があるわけでございますが、そういった全体の全国団体の機能調整という意味で、この全国生乳連の活動のあり方をどうするかという問題が従来から議論されておるわけでございます。基本的にはやはり生産者団体同士の調整の問題である、関係当事者の話し合いの中で解決されていくべき問題であろうかと考えるところでございますが、それぞれの全国団体の持っております性格、機能あるいは実体的な役割を踏まえた上でその間の調整が行われるよう、私ども関係団体に注意を喚起してまいりたいと考えておるところでございます。
  52. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 もう一点、自由化がどんどん進んでくると、あと四、五年したら不足払い制度はやめちまうんだというようなことをちまたで言いふらす者がいる。これについて、そういうことはないということが言い切れますか。
  53. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 御承知のとおり、現在加工原料乳について不足払いが行われておるわけでございますが、この制度のあり方について、世上いろいろな議論があることは私も承知をしておりますが、私どもとしては、この制度の改変について現時点で具体的なプログラムは全く考えておりません。基本的には加工原料乳向けの生乳について、乳業者が支払い可能な価格と生産者が再生産を確保し得る価格の間にはギャップがある。その間を補正するために現在の不足払い制度があるわけでございますが、現状におきましてはこの必要性があるというふうに私ども認識をしておるところでございます。
  54. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そういう大事なものがもう既に二十年以上続いているのですから、これを堅持してもらいたいということを要望して、この点については終わります。  続いて、これは農林水産省の園芸等の関係通産省、エネルギー庁、こういうところに関係をするものでありますが、農林水産省もこれからの農業の方向というものは、規模拡大による生産コストの引き下げということを強く言われているし、一方においては機械化、近代化をしながら、あるいはハイテクノロジー、そういうものが問題になっている。特に、施設園芸についてはこのことが言えるわけです。  規模拡大の問題は農地の問題ですから、これは一応横の方に置いて、石油を使ったり重油を使ったりするこの施設園芸の方面では、最近すべての農産物が値下がりをしているときに、依然として資材の値段は下がっていない。これは油だけではありません、電力にしても機械にしても問題です。ここでは、まず農機具の問題から質問したいと思うのです。  私は、幾つかの施設園芸を訪問いたしました。これは国が、あるいは農協でも先般の大会で指導しているように、これからの農業あり方についてどうしても必要だという形で、コスト低減の中の大事なものになっております。それで、機械についての値下げをするということを農水省も言うし、農協も言っているわけです。値下げをするための手段としては、一体何を値下げをするために指導されるのかという点について聞きたい。  ある施設園芸に行きますと、全生産の中の六割が資材費になっている。その中でウエートが一番大きいのが機械である、それから重油であり、電力が三番目だ、その他もありますが、こう言われるところがある。逆に重油が一番で、機械、電気が二番、三番というところもありますが、それはイチゴであるとかキュウリであるとか、内容によっていろいろ違うわけですけれども、とりあえず機械の値下げを具体的にどういうぐあいに指導をしようとしているのか、それを聞きたい。
  55. 吉國隆

    吉國政府委員 農業機械の機械費の節減の問題が、農業にとりまして、土地利用型においても無論そうでございますし、その他の農業の分野におきましても非常に大切な課題であるということは、全く御指摘のとおりであると思っております。私ども、機械費の節減という観点からは、生産面、供給流通面、利用面、それぞれの分野で合理化を進めていくことが基本であろうと考えております。  利用面におきましても、これまでいろいろな努力を行ってまいっておるわけでございますが、特にこれは主として土地利用型の場合かもしれませんが、農業機械の共同利用という形をうまく進めまして機械費の節減を図っていく、さらには中古農業機械の流通の円滑化あるいは利用年隈の延長ということで実質的に機械費を下げていくことも、一つの対応として努力をいたしているところでございます。また、流通面におきましても、農協の方も単なる農家の注文取り販売ということから脱却いたしまして、営農指導と組み合わせたいわゆる提言型販売ということで方針を切りかえて進めようとしているところでございます。また、農業機械の製造段階におきましても、最近の課題といたしましては機械の基本的性能を重視いたしまして、できるだけシンプルな農業機械を開発、供給していくという面でも指導を行っておるところでございまして、こういった面での努力強化してまいりたいと思っております。  また、機械の部品の共通化ということによりまして、機械全部を買いかえる必要が少なくなると いう面における努力も、機械費の節減ということで必要であろうかと思っております。さらにまた、いろいろな資材共通の問題でございますけれども、輸入品の活用も含めまして、競争原理の作用にも意を用いていく必要があるだろうと考えているところでございまして、こういったいろいろな面におきまして関係業界あるいは団体の指導に努めてまいりたいと考えているところでございます。     〔笹山委員長代理退席、委員長着席〕
  56. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 本来、機械の問題については、原価の公表が一番望ましいことであります。原価がわからずして最終消費者の価格が決まるということに本来問題があるわけだから、原価の公表をすることが一つの問題。  それから共同化と言っても、土地利用型の規模拡大の農業では共同化や集団化ができるにしても、施設園芸のようなところではそれは無理だ。そういうところでは機械が長もちするような方向で、一部の部品が壊れても、今話があったように共通の部品をつくって、例えばこの蛍光灯がだめになっても、松下がつくろうが沖電気がやろうが日電がやろうが、どこでつくったものでもちゃんと使える。それぐらいのことは、本体は井関であり久保田でありヤンマーであったとしても、部品については間に合うようにする。自動車のタイヤでもそうでしょう。そういうふうにして機械が長もちできて、収益が還元されるような指導をしてもらいたいということで、これは要求です。またいずれ、そのことについてやったかやらないか改めてただすから、注文をしておきます。  続いて今度は電力。電力については、高いという声が依然としてどこでもあります。確かに、私が今住んでいる宿舎の電力については、これは都市用の電力だ。非常に細かい料金の決め方がある。これは専門家でなければわからない。同じようなことが恐らく農業用の電力にもあるはずだ。ところが、電力が最初に水力発電になり、だんだんそれが変化をしてきた中で、農業用の電力というものは安くしてあるんだという話はするけれども、現在のように季節的に見て、ハウスというのは太陽の照っているときには有機質を入れて土地をつくる。季節の寒くなったときに、そんなことをやらなくてもいいじゃないかということを言う人があるかもしれないが、それをやらせるように指導しているのが農水省であり、農協もそれをやっている。そこでまた、一国民も消費者も、キュウリにしてもナスにしてもトマトにしても一年じゅう欲しいわけですから、それに応じている。  そうなると、どうしても重油や電気を使わなければならない。そうすると、やはり三カ月なり四カ月というものは地力をつくり、その他は電力を使い、重油を使っているわけですから、これの決め方について不満があり、不明朗なものがある。確かに、水力のときには夏については安くしたけれども、今のようになってくるとそういうふうにはなっていないという点で、いろいろな資料をもらいましたが、私はまだ納得がいかないわけですから、この点については通産省関係資源エネルギー関係は十分に調査をして、いずれの日にかひとつ資料を出して十分に説明をしてもらいたいということについて、ひとまずそれぞれから、重油と電力についての経過と現状を説明をしていただきたいと思います。
  57. 稲川泰弘

    ○稲川説明員 電力の関係についてお答え申し上げます。  農事用電力は、先生指摘のとおり、我が国の電力需給構造の中で供給構造が水主火従、水力が主で火力が従でありましたとき、あるいは需要構造において冬が大変なピークでありました当時に、これは戦後の間もなくでございますが、豊水期の余剰電力の活用をねらいといたしまして、かんがい動力用等に設定されたものでございます。他の契約種別に比べまして、基本料金その他で二分の一強の割安な水準を設定いたしました。  しかしながら本制度は、現在のような電力需給構造が両面から変わってございまして、先生も御指摘のとおり、現在は火力が主であり水力は全くの従でございます。また需要構造は、夏が大変なピークになってまいっております。このような変化をいたしてきましたところから、現在では必ずしも原価の実態がこの制度の沿革に沿ってないという状況になってまいってございます。このため、本制度につきましては、農事用電力の需要家への影響を考慮いたしまして現在も存続いたしていますものの、適用範囲の拡大あるいは今後の制度の拡充といった面は、国民一般の公平の原則という観点からいささか困難ではないかというのが現在の考え方でございます。
  58. 田村修二

    ○田村説明員 先生今御質問の、電力に並んで大きなウエートを占めているという燃料の関係、お答えいたします。  特に、農業用の燃料といたしましては、現在、A重油というものがたかれておりますが、日本の産業全体で消費されているA重油のうちの約二五、六%という非常に高いウエートを実は農林水産業で消費していただいております。そういう点では、石油産業にとっても非常に大切な需要家であるという点がございます。したがって、特に我が国農林水産業振興を図る観点から、A重油に関しましての関税及び石油税の免税措置というのが現在講じられております。これは、海外からの輸入品が非常に安く入るような制度ということでございます。同時に、国内で生産されておりますA重油というのも、ほとんど海外と同じ免税価格で供給されるような仕組みに現在なっておりまして、そういう点では国内の供給価格というものは、海外の輸入品を安くした上で、それに等しいような価格で国内の生産品も供給されているというような現状でございます。  特にエネルギーの場合、石油は国際的な商品でございまして、産油国での値段によって非常に値段が変わってくるという石油の場合の基本的な価格がありまして、現在は、昨年から石油価格というのが国際的に下がる状況にありますので、非常に幸いなことに、昨年の今ごろに比べていただきますと約三割程度、三〇%程度油の値段というのは一般的に安くなっております。そういう点で、現在は農林漁業用の経費負担というのはかなり削減されているとは思いますが、基本的にはエネルギーというのは使うとなくなっていくということで、常に供給していかないといけない商品でございますので、今後のそういう国際市況、それから国内での競争による合理化を通じて、できるだけ低廉に安定した供給ができるようにということで業界を指導してございます。  あと、そういう点ではエネルギーの使い方というのは非常に多種多様にわたっておりますので、ぜひいろいろな使い方を合理的に工夫して、大切にエネルギーを使っていただけたらということでございます。
  59. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 二つの御答弁をいただきました。電力については、歴史があるけれどもこれからも非常に困難だという結論ですが、困難であるかどうかということについては、この今の答弁をまた現地に持ち帰って十分に話をして、それから次の機会にもう一度御苦労でもまたここで話をする、こういう場面もつくりたいし、それから石油については、きょうの日本経済新聞を見ると「揺れる新エネルギー開発 開発予算減る一方 長期的な基本戦略必要」というふうな形で、かつては安かったけれどもやがて一バレルが十八から二十五ドルぐらいになるのじゃないか、そういうことを新聞では既に予告をしている。こういうことも踏まえて、これからまた同じような形で相談をして話をしたい、こういうことに思いますから、この点はこれで終わります。  三番目は、少し生々しい話ですけれどもふるさと創生論。農村というのは、まさに都市の人々のふるさとであります。私のふるさとも山の中だ。その中で、ふるさと創生論というものが竹下総理によって出発をした。これは、一市町村一億円をくまなく配付する、目的はどうでもいいけれども金を配る、こういう形になっていて、やがて大蔵省と自治省はふるさと財団というものをつくって、そこに二百五十億ぐらいの金でこれについて 将来運営をしていこう、こういうわけですね。総理大臣が公約をされた、法律の基礎は何にもない。三千二百五十億円、かなり大きいですね、これは。こういうものを好き勝手に使え、これは大変なことなんですね。  ある新聞は、消費税やリクルートでぐあいが悪いから次の参議院選挙の運動じゃないか。物と金によって今政治倫理が問われているときに、政治倫理の上からいってもまずいですよ。今ふるさとは過疎地帯になり、つくった農産物は非常に売れなくて、安くて困っている。嫁の来手がない、跡取りがない。これで、一億円で嫁が来たり、跡取りが来るようなことになりますか。大蔵省と自治省は、この問題について現在どういう進行になっているのか、ぜひ説明をしてもらいたい。
  60. 古居儔治

    ○古居説明員 活力と潤いのあるふるさとづくりは、国、地方を通じまして、内政上最も重要な課題の一つだというふうに考えておりますけれども、国におきましても、御承知のように四全総とか新経済計画の中で自主的、主体的な地域づくりの必要性を明確にしておりますし、また全国各地の地域におきまして、地域づくりの機運が盛り上がっているところでございます。  そこで、自治省といたしましては、この機会をとらえまして従来の発想を転換いたしまして、地方が知恵を出し国が支援するという仕組みの一つといたしまして、これは仮の名前でございますけれども、「自ら考え自ら実践する地域づくり」事業というものを実施することを検討いたしておりまして、全国各地における自主的な、主体的な地域づくりへの取り組みを支援いたしまして、ふるさとづくりの起爆剤となることを期待しているわけでございます。  事業内容につきましては、地域づくりの原点であります市町村におきまして、地域みずからの知恵と情報を結集いたしまして、みずからその地域に本当に必要な地域づくり施策を考えていただきまして、また、みずから実践するということを基本といたしているわけでございます。財源といたしましては、六十三年度及び六十四年度に交付いたします地方交付税を充てることといたしております。  具体的な進め方あるいは財政措置の内容等につきましては、現在自治省で検討しておりまして、今後、国の補正予算に合わせまして地方財政の補正措置を行う中で決定することとなるわけでございます。
  61. 水谷英明

    水谷説明員 お答えいたします。  今、先生の御指摘は二点だったと思うわけでございますが、まず、今自治省さんの方からもお答えがありましたいわゆる一億円構想と言われている点でございます。この点は、六十三年度の地方財政補正措置の検討に関連いたしまして、今自治省さんからも御説明がございましたように、地方団体が自主的にこれまでの地域振興策を点検する、とともに、将来の地域の発展のための諸方策を講じていくことによりふるさと創生を推進することとし、このため交付税により財源措置を講ずるということにつきまして、自治省から御相談を受けているところでございます。本件につきましては、今後具体的な内容等につきましてさらに聞かせていただきながら、六十三年度補正予算及び地方財政補正措置全体の検討の中で適切に対処してまいりたいと考えております。  それからもう一点、先生指摘のふるさと財団の問題でございます。このいわゆるふるさと財団の問題につきましては、昨年来、各種の問題につきまして政府部内で鋭意検討、調整を進めてきた問題でございます。当初案では、新たな財団をつくり、地域活性化のために低利の融資を行おうという御発想でございまして、ここで詳しくは申し上げませんけれども、いろいろな問題点があったということで調整を進めてまいりました結果、新たにつくる財団につきましては、地方公共団体が実施する融資事業につきまして助言、あっせん、仲介等の業務を行うということにいたしまして、昨年来の財団構想をめぐる経緯も踏まえまして、財団は金融機関的な業務は一切行わないということで、大筋合意を自治省と大蔵省の間で見たものでございます。  大蔵省としては、この財団が地域の創意工夫を十分に酌み取るということによりまして、地域の振興、活性化に資する融資事業を支援するということは、総理が提唱しておられるふるさと創生にも資するものという考えでございますが、何分関係省庁も多うございますし、各省庁を通じた各種の地域振興開発政策あるいは国の政策金融諸制度との間で十分な調和を図りながら本構想が進められることが、何よりも非常に重要な点だと考えておるわけでございまして、このような観点から当省といたしましては、地方公共団体による融資事業及び財団の業務運営が適正かつ円滑に実施されるよう、自治省及び関係省庁との間で必要な調整をさらに進めてまいることとしたいと考えておるわけでございます。
  62. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 ちょっと時間がオーバーしますが、一点だけ、これは大臣意見をお伺いしたいと思います。  これは、本来行革で公社、公団、事業団というものを圧縮していこうというときに、新しく一つそういうものをつくっていくということについては、その趣旨にも反するし内容も余り適切なものではない。だから通産、建設、郵政、運輸その他がまた文句を言う、こういう形になる。それから、せっかくそういうことをやるのなら、許認可権あるいはいろいろな問題の権限の移譲、財源を自治体の方に移譲しなかったらこれは焼け石に水になっていく。やはり上からの天下りの指導にならざるを得ない。東京の伊豆の百八十七人の村、横浜のように三百十二万もある市、こういうものを一つに扱って、一体一億というものがどういう役割をするかということはだれが考えたってわかる話だ。こういうようなことは全く問題があると言わざるを得ませんから、これについては大いに検討をしなければならない課題である。  ふるさとが再生し、よくなることについてはだれも反対する者はいないんだから、そういうような今のやり方、手法、物と金と力で上から押しつけていくようなやり方に対して、下から何か考えるのはそれは無理だから、そういう点で農林大臣は就任以来大変御苦労されて、再三にわたってアメリカ交渉したりそれぞれ苦労されましたが、今度聞くところによると、間もなく内閣は改造する。残ってもらいたいわけだけれども、この際、御苦労に感謝をしながら、今の日本農業の何をどうするかということについて一言だけお伺いして、私は終わります。
  63. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 ふるさと創生、ふるさと財団に関連をしてのお尋ねでございます。許認可権のことについても触れられましたが、私の感想を一口で申し上げるならば、第四次全国総合開発計画、これを生かして内閣全体で取り組む、そういう中にあって、やはり我が農林水産省から言わせれば、このふるさと創生というものが地域農政を改めて見直す時期、その地域の活性化、地域経済の発展考えれば、地域農政の活発な進みぐあいによってでなければなかなか容易ではない、そういう面で生かすことができるのであろう、こういう期待を込めておるわけでございまして、私自信の感想からいけば、中央においてリーダーシップをとる、その必要もあろう、しかしそれをまた土台にしながら、地域の活性化、地域農政の新たな前進ということにつながることを期待をいたしております。
  64. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 終わります。
  65. 菊池福治郎

    菊池委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十四分休憩      ────◇─────     午後一時一分開議
  66. 菊池福治郎

    菊池委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。田中恒利君。
  67. 田中恒利

    田中(恒)委員 きょうは果樹の問題に絞って、短い時間でありますから、要点について御質問を いたしたいと思うのです。  実は最近、土曜、日曜田舎へ帰りますと、私の家に若いミカン農家や農協や農業委員会、役場の担当者などが押しかけてきて、ミカンの再編対策についていろいろな細かい質問をするわけですが、私も実は十分なお答えができなくて、いろいろあちこち話を聞きますと、今全国的に、ミカンの生産地約二十県、西日本中心でありますが、愛媛県などでは四千三十ヘクタールのいわゆる転換、廃園の面積がおろされておりますね。全国で二万二千ヘクタールと相当大きい。多分これは、十万一千ヘクタールのミカンの園地を七万九千ヘクタールに昭和六十六年度にはするということで、一期、二期、三期に分けて、この県はこれだけと、県は今各町村の推進本部をつくってその体制に入っておるということで、この問題で果樹地帯、特にミカン地帯は非常に大きな動きが今見られるわけであります。  この国会は、農林水産委員会としては、一つは自由化後に伴う畜産二法の取り扱いの問題、それから牛肉・オレンジ自由化後に伴う国内対策の問題、この二つが我々の重要な政策課題でありますので、牛肉関係は二法が成立をいたしましたので一定の議論をさせていただいたわけでありますが、この果樹対策について、わずかな時間でありますが、御質問をさせていただくわけであります。  まず、温州ミカン園地再編対策というもののねらいを、要約してお答えをいただきたいと思います。
  68. 吉國隆

    吉國政府委員 かんきつ園地再編対策のねらいでございますが、一つは、依然としてミカンの需給が緩和基調にあるということでございまして、自由化を迎えるに際しまして需給均衡を早急に図っていきたいということでございます。二番目として、その際に、単なる需給均衡ということではなくて、この際、適地適産の考え方によりまして、高品質時代でございますので、そういったいいミカンの生産が可能な優良園地を残していくということによりまして全体の体質強化を図ってまいりたい。この二つのねらいを持って園地再編対策を実施することとしたいと考えております。
  69. 田中恒利

    田中(恒)委員 私は、吉國局長の御答弁に異議を申し立てるわけではありませんが、順序としては、この自由化に伴って日本の温州ミカンの国際競争力を強めなければいけない、そういう意味で、日本の果樹産地の新しい近代的な体制を確立しなければいけない。そういう意味では、従来から適地適産という言葉を使っておりますが、つまり生産性の高く、そしてうまい品質の果樹をどうつくっていくかというところが、自由化後に伴って当面急務になってきた。その次に、この数年来需給のバランスが崩れておりますから、需給均衡というものをあわせ持つ。  こういう二つの考え方で進むのが妥当だと思って、私は、実は事前対策をお決めになる際にもそんな意味主張を大分したつもりでありますが、例えばこの対策費を見ても、これは今まだ折衝中ということを聞いておりますが、少なくとも閣議では、大ざっぱにこの転換の金が五百四十億ですか、それから生産近代化対策が二百二十億、こういうふうに大きく決められておりますね。この二つがうまく組み合わせられないと日本の果樹地帯の近代化というものはできない、こういう認識に立って進めておるんだと私は理解しておるわけですよ。  ですから、今言われた適地適産、私の方から言わせてもらったら、第一が適地適産のいい果樹園地づくりをするんだ、これが一つであります。そして二番目に、需給均衡をこの際やっていくんだ。こういうつながりで事を進めていくというふうに理解をしていいのか。ただ需給均衡だということになれば、減らせばいいということになるわけですからね。ですから、後でこの議論をいたしますが、先の方だけばんばん助成金を幾らか上げますとこれでもってやられたのでは、結果的にいい産地ができるかどうか心配な面もあるわけでありますので、そういうふうに私は理解しておりますが、それでいいですか。
  70. 吉國隆

    吉國政府委員 若干御説明が舌足らずであったかもしれませんが、園地再編対策は、先ほどのように体質強化を進めるねらいを持って進めたいわけでございまして、一方におきまして、ただいま先生指摘のような、生産対策としまして、生産性の向上なりあるいは品質の向上、こういうものを進めていくための各種の対策、優良品種への転換でございますとかあるいは園地の整備あるいは合理的な集出荷対策、こういったものを進めていくことが並行して必要になってまいるというふうに考えております。  そういった意味で、産地段階、まあ市町村段階でございますが、ここで園地再編計画を作成していただくに際しまして、園地転換についての適地、不適地の区分というようなこととあわせまして、産地の体質強化方策ということについてもできるだけ明らかにしていきながら、これを踏まえまして、将来ともに生産を継続すべき優良園地におきまして、先ほどのような諸対策が重点的に、有効に実施をされていくというふうに努力をしてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  71. 田中恒利

    田中(恒)委員 そこで、この再編対策の現在の状況は、どういう程度まで全国的に取り組まれておるのか、そして、目標として掲げていらっしゃる二万二千ヘクタールのミカン園の転換、こういうものについての見通しはどの程度持っていらっしゃるのか、この点をお示しいただきたいと思うのです。
  72. 吉國隆

    吉國政府委員 対策の現在までの進捗状況でございますが、私ども、この対策の推進体制といたしまして、府県段階並びに産地段階におきまして、それぞれ行政と農業団体とで構成をする対策本部をつくって、推進指導に当たっていただきたいというふうに考えておるところでございます。これを受けまして、現時点におきまして、ほとんどの府県で対策本部が設置済みでございます。また、産地レベルの対策本部につきましても、既に相当数の産地でこれが設置をされております。  また、転換等の目標面積でございますが、これにつきましては、府県別、産地別におろしていくということを考えておるわけでございますが、府県別の面積につきましては、既に全国果実生産出荷安定協議会におきまして決定がされ、通知が行われているということは、先ほどお話のあったとおりでございます。また、県内でこれを受けて産地別の目標面積を定めていく手順になるわけでございます。現在、各府県の対策本部におきまして、配分に向けての準備作業が進んでいる段階であるというふうに承知をいたしております。  私ども、今後こういった産地対策本部におきまして園地区分の問題、あるいは先ほど申し上げましたような計画の作成等を進めてまいりまして、予算措置が終わり次第実行に取りかかれるような準備を急いでまいりたいというふうに考えている次第でございます。  また、見通しというお話がございましたが、現時点で見通しを申し上げることはなかなか難しゅうございますけれども、現在のミカンの置かれている状況からいたしまして、全国の農家の方々の主体的な協力というものをぜひ期待をして、成果を上げてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  73. 田中恒利

    田中(恒)委員 予算ができてこれを実行するということですが、農林省、行政側のこれの実施要綱というのですか要領というのですか、そういうものもまだ示されておりませんね。私がこれはどういうことになっておるのかと思って調べてみると、ある資料は、「かんきつ園地再編推進の手引」というのを全国果実生産出荷安定協議会の名前で出しておる。会合なども何回か各県や全国、全国は農林水産省承知をしておるのでしょうが、あれは農林水産省だけじゃないのですよね、やっておるようだが、いずれもこれは団体が呼びかけということになって、行政としての責任ある主体的な対応になっていない。それは予算が補正予算ということになっておるものですから、補正 予算がまだ国会で承認をされていないというところが一番の大きな原因のようであります。  ところが、現実問題としては、六十三年度が第一年度であります。六十三年度というと、もう十二月が終わるわけでありますから、一月、二月、三月三十一日までしかないわけでありますね。いわゆるギリギリに来ておりますが、この補正予算がどうなっていくかということが、これは政治問題ですから、私は大臣にもし大まかな予定がわかっておればお聞かせいただきたいのだが、補正予算がいつになるのかという問題が、実はこの事業というか、この対策を進める上に非常に大きなポイントに今なっておると私は思うのです。去年の場合は補正予算はいつでしたかね、たしか二月の初旬に成立しておるのですが、今度の場合、今の見通していくと相当おくれる、こういう心配がある。二月中にできればいいんだと思うが、ひょっとすると、ひょっとするとじゃない、三月へ入っていく可能性が強い。そうすると、それができて、二万二千ヘクタールのうちのどれだけやるかは別にして、第一年度、第二年度、第三年度、三回しかないわけですから、少なくとも三分の一をこの短い期間で果たしてやれるのかどうかという心配が現実問題としては起きてくると思うのです。それだけにいろいろ準備はやられておるのでしょうが、やはり予算が確定しないとやれない問題もいろいろあるようであります。そういう意味で、実は産地では大変混乱をしておることは事実ですよ。  私は、この際、大臣の方から補正についての見通し、既に閣議などで決められておるわけでありますが、そういう方向に沿って事業が進められておると思いますが、補正予算を国会にいつ出すのか、国会はこれをどう取り扱うということは私どもがこれから十分検討しなければいけないわけでありますが、この見通しについてお聞かせをいただきたいと思うのです。
  74. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 牛肉・かんきつ交渉の結果を、外交折衝を受けて国内政策に全力を挙げて一つの締めくくりをしたことは、御案内のとおりであります。しかし、おっしゃるように、財政措置の裏づけがなければこれもいかぬわけでございまして、そういう意味ではみんな、財政当局の最高責任者も含め、書面をいただきながら外交折衝を決着をつけ、今日に至っておるわけでございます。  ところが、国会事情等もいろいろな事情がございまして、私は年内にできれば補正がちゃんと、あれだけ困難な問題を一応の処理を外交交渉ではつけたわけでございますから、直ちに国内措置をもって補完して、双方あわせて、それぞれの関係の方々が生活の見通しがつくようにちゃんとしなければならぬと思いながら、日にちが決まらないうちは補正予算云々という言葉は財政当局でも出せないということを承知しながらも、私自身は、補正でこれはやらねばならぬ、大部分は補正でやるんだ、こういうことを言い続けてきたわけでございます。  しかし、ここへ来ますと、年をまたがることはやむを得ない。年が明けましたならば、六十四年度の政府原案もいろいろ策定することになるのではないかなと想像をいたしておりますけれども、おっしゃるように、では補正予算の関係は一月の末にできるのか、二月に入るのか、二月の末になるのかということになると、私自身で答えられる状況にはございません。しかし、せっかくそういう経緯で、当初申し上げましたような経緯でございますから、なるべく早く補正でもって対応し、そして関係する方々に御安心をいただく、また、それぞれの見通しをつけていただくということにしなければならないということは、竹下内閣共通してそれぞれが頭の中にあることだと私は想像をいたしておるわけでございます。
  75. 田中恒利

    田中(恒)委員 これは大臣、あなたの言うこともわからぬことはないのだけれども、しかし新聞の報道などを見ると、読売新聞は二月九日ごろだ、日経は二月六日ごろだと。これは一般会計の予算と一緒に補正を出す、一緒になるだろうと思うが、しかし、いずれにせよ内閣改造をやって、新しい閣僚の手によって補正予算を組んでいくということですから、私は相当おくれると思うのですね。私などは素人なりに、二月中に何とかなるだろうということで、少なくともこの転換対策についての説明は事前でやっておるが、二月中に私はできると確約できない情勢、三月も中ごろまでかかるんじゃないかというような気持ちもあるわけです。  そうなると、三月三十一日までもう半月あるか、少なくも一カ月ないという状況になっていく可能性が強いのですね。そうすれば、これは一年度を六十三年度というものに設定するのがいいのかどうか、これも問題でありますが、もし仮にそれを動かすことができないなら何らかの形で特別な措置を考えなければいけない。地区では、翌年度のある時期まで延ばしていくようなことが考えられないのか、繰り越しですね、あるいは事前の着工というものができないのか、こういう声などもあるのであります。これは今、大臣の方から、どうします、こうしますとは言えぬ状況にあるのだろうとは思いますが、しかし、いずれにせよ何かやらなければ、補正予算が決まってでないと事業の着手ができないということが現実の問題である。  ところが、例えば落葉果樹などに転換をする、ミカン園を落葉果樹にする、これは相当ありますよ。そういうところは、落葉果樹の植えつける時期というのはもう決まっておるので、これはぎりぎり二月までなんですよ。もう三月ではこれはだめなんです。三月に入ったらもう落葉果樹は植えられぬ。そうすると一年おくれるわけです。一年おくれると、奨励金というのは反当五万円くらい違うということで、どうせやるのなら早くやった方がいいという気はみんなあるんだけれども、それができないということになるのですね。そういう問題は随所にあるわけですよ。これについては私はぜひ特別な措置を、農林水産省としては、大臣が決めて大蔵省の折衝なども要るでしょうし、いろいろな関係があるのでしょうけれども、措置をしてもらう必要がある、こう思います。いかがでしょう。
  76. 吉國隆

    吉國政府委員 この予算措置と対策の実行との関係について、いろいろな面からお話がございました。私ども、先ほども申し上げましたように、予算措置が行われ次第着手できるように、現段階で準備を急いでおります。公式の要綱等をつくって流すわけにいかないということは御指摘のとおりでございますが、事実上の指導という形で都道府県団体とも相談をしながら、対策の進め方についての情報が流れるように工夫をいたしているところでございます。  ただいま最後にお触れになりました落葉果樹の植えつけ適期の問題につきましても、事実上問題が解決されるように指導を既に行っているところでございます。  また、予算の計上の仕方と対策の実施時期との関係をいかにうまく調和させるかという点につきましても、いろいろ工夫をしていく必要はあろうかというふうに考えておりますが、私ども基本的には、この園地再編対策をできるだけ早く進めるべきであろうというふうに考えておりまして、そういう意味から緊急の予算措置も講じてまいりたいということで考えているわけでございましてそういう趣旨から今年度中にも取りかかれるように準備を急ぎたいというふうに考えている次第でございます。
  77. 田中恒利

    田中(恒)委員 局長、今の御答弁をお聞きすると、今年度中からもう取りかかれるというのは、事業の実施をことしからやっても構わないというふうに理解していいのか。  それから落葉果樹の転換については、やれるように特別な通達か指示か何かしておると言うが、それは具体的にどういうことですか。
  78. 吉國隆

    吉國政府委員 第一点につきましては、この六十三年度、来年の三月末までに初年度の伐採が可能となるということを目標にして準備を急ぎたいということでございます。  それから第二点の落葉果樹につきましては、植 えつけ適期に確認を受けて落葉果樹を植えつけたというものについて、伐採の時期に先行いたしましても、それは伐採に伴う他果樹への転換として扱えるようにするという趣旨の指導を行っているところでございます。
  79. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 一口で言うならば、実利を伴うようなやり方を考えておる、こういうことでございますから、御心配は御心配として、ベテランの先生がお考えになっておるように、こんなことをしておったのじゃ二月じゅうには無理だよ、三月に入り込むじゃないか、そうなればもう来年度近くなるじゃないか、こういう御心配はそれなりに心配されるのはわかりますけれども、それではまさに遅過ぎるわけでありますから、実効が上がるように考えておるということでございますので、ひとつ御承知おきをいただければありがたいと思います。
  80. 田中恒利

    田中(恒)委員 特別な措置をしていただければ、例えば落葉果樹の場合は、植えつける時期に早く植えつけておって切るのは後でもいい、切った後で植えるという方式でなくて、先に植えて後で切る、こういう方式でもよろしいというなら、それも一つの取り扱い方であります。あるいは、これは一つの計画書、基本方針があって、計画があって実施がある、それを全部確認した上でやっていくということになっているわけでしょう。そういうことじゃなくて、もう計画書ができたら、それに基づいてやっておったものは後でも認めるというのだったら、それでもいいのです。そういうおおようさを持っておればいいですよ。  しかし、予算ができてきちんと予定どおりのおぜん立てができなければやりませんよと言われると、現地は非常に混乱をしてくる可能性が強いですから、期間がありませんから、特にこの点は留意をしておいていただきたいということであります。そういうように理解していいですか。
  81. 吉國隆

    吉國政府委員 そういった御心配がないように、事前の指導というものを事実上十分にやってまいりたいと思っております。
  82. 田中恒利

    田中(恒)委員 時間がありませんから一緒にいろんなことを聞いておきますが、一つは、今度の目標が、できた場合とできない場合とがあるのですね、目標を達成した場合と未達成の場合と。そういう場合の措置は別途に何か考えられておるのか。特に、正直言って、目標ができなかった場合には、後で補助金やいろんな問題で嫌がらせを受けるのではないかという意味の心配もあるから、そんなことは恐らくこの事業には断じてないと私は言明しておる、どこへ行っても問われたら。米は食管で政府が買っておっても、ペナルティーなんかは基本的にないという解釈に立っておるわけだから、こういうものは自由な作物なんだからそんなことはあるはずはない、こう言っておりますが、未達成の場合もどういうふうにしていくのか、こういうものもあるのでこの措置をひとつ……。  それから、きょうは時間がないから私はいろいろ詰められませんが、やはり一番最初に申し上げましたように五百四十億の金と二百二十億の金があって、五百四十億は、いろいろありますが、集団もあるし時期にもよりますが、いずれにせよ、三十万、五十万ぐらいまで反当の助成金がある。これに今があっと向いておるような感じがするが、ねらいはやはりいい園地をどうつくるかということでありますから、そういう意味でいけば、この二百二十億の生産近代化の予算をバックにした取り組みにも同じくらい力を出して、農林水産省としては表へ出してもらいたいと思うのですが、これは下ではまだ余りかけ声は出ておりませんよ。  例えば、これはあなたのところも一つの考えをまとめられておるようだが、果樹園というのは傾斜地であります。段々畑であります。その段々畑がある人の名義で五つも六つもあるわけです。その中に一つ作業道を抜く。抜くというか、その段々畑は作業道にする。そこは、ある木を全部切ってしまう。これはかん排水作業をやる、運搬の際の合理的な労働時間の短縮というか合理化に向けて活用していく、あるいは園地の水はけの措置をこういう作業道につけていく、こういう形にしていきますと、非常にいい園地が出てくる可能性が非常に強いですね。そういう施策については減反のカウントの中に入れて対象にして、そしてそういう近代的な園地づくりを前に出してやっていただきたい。  ともかく、いい園地と悪い園地とある。悪いところはつぶせ、いいところは残せということでありますから、これは人によっては、私などもそうですが、私自体はつぶしたいと思っても、いい園だからそれは残さなければいけないという基本計画が出てきますね。そういう矛盾がありますから、いや応なしに果樹園地の流動化というものが同時並行的に相当強く進められないと、そういうものはできないのですよね。そうでないと虫食いになって妙なことになりますから。そういう施策についてもっと大胆に農水省の方針を下へ出して、そういうものを積極的にやらせていく、それに関連するさまざまな生産対策をつけていく、こういう方針で臨んでいただきたい、こういうふうに私は考えておりますが、この二つについてお答えをいただきたいと思うのです。
  83. 吉國隆

    吉國政府委員 第一点の目標達成、未達成の場合の取り扱いの問題でございますが、現時点におきまして、私ども、未達成の場合にどうこうするというようなことを具体的に決めていることは決してございません。私ども、あくまで全国の生産者の主体的な協力のもとに、この対策が各県で的確に実施をされるということを考えております。今後、状況の推移に応じていろいろと検討していく必要が生ずるかもしれませんけれども、私ども、現時点ではそのように考えている次第でございます。  それから第二点の、作業道等と園地転換との関連でございますが、御指摘のように、この作業道が傾斜地におきますミカン栽培において非常に重要な役割を果たしているというふうに私ども考えておりまして生産対策の面で充実を図ってまいりますと同時に、先ほども若干申し上げましたが、産地ごとの園地転換計画の中で、残る園地の整備というものもできるだけ一体として計画に織り込んでいただくようにしたいと考えているわけでございます。  お尋ねの、そういった作業道整備との関連で切った園地の取り扱い、カウントできるかどうかという問題でございますが、私どもそういった具体的な、どの園地を切るということにつきましては、基本的には産地におきます計画というものをできるだけ尊重しながら、全体として体質強化、優良園地を残し、不適正な園地を整理していくという趣旨なり、そういった生産性向上といった趣旨というものを考えまして、計画の承認が行われるように努力をしてまいりたいというふうに思っております。
  84. 田中恒利

    田中(恒)委員 私、ちょっと、今の果樹園地のあれは、間伐はあなたのところはだめだと言っておるけれども、斜面地のそういうものについては、これはやはり認めていくというのがあなたのところの方針じゃないのかね。平たん地については、間伐と同じような理解に立つのでしょうな。今のところ無理だ、こういう解釈をしているようだが。そういう解釈だと私は聞いておるのだが、違うかね。そこだけちょっと違うから。
  85. 吉國隆

    吉國政府委員 全体としてそういった作業道の整備と認定できるという性格のものであれば、そのために切った樹木につきまして、これを園地転換として扱えるのではないかという考え方に立って指導をいたしているところでございます。
  86. 田中恒利

    田中(恒)委員 終わります。
  87. 菊池福治郎

    菊池委員長 串原義直君。
  88. 串原義直

    ○串原委員 先ほどからふるさと創生論、議論になっているところでございますし、巷間、このところふるさと創生論が大変にぎやかでございます。そのこと自体は結構でございますが、日本の古来からのふるさとに根差してまいりました養蚕、つまり蚕がこのふるさとからいよいよ消えようとしているのが実態でございます。  ちょっと、農林省の資料に基づきまして数字を検討していますけれども、まさに産繭額がこのところ急減しているのであります。昭和五十年、繭生産は九万トン生産をされた。その十年後の五十九年は、およそ半分の五万トンに減った。それからその五年後の今年度、六十三年ですね、三万トンに減ったというのであります。  どうして、これほど養蚕の熱を下げたのであろうか。要因はいろいろあるでしょう。あるでしょうけれども、前回つまり昨年の三月、一万二千円の価格から一挙に九千八百円まで安定基準価格を大幅に引き下げたことが大きな要因であろう、こう私は思うのであります。あのとき私は、この農林水産委員会で強く指摘をいたしました。こんなむちゃなことをすれば、日本の養蚕農家は半分以下に減るだろうし、それからさらに産繭量は農林省の予想を大幅に超えて激変をするであろう、必ず強く反省するときがありますよ、こういうふうに反対をいたしました。しかし政府は、私どもやあるいは多くの生産農家、団体の反対を押し切って、大幅値下げを断行いたしました。だが結果は、私たちが指摘したとおりになってしまったと言わざるを得ないのであります。  簡単に申し上げますというと、養蚕農家は採算を無視して蚕を飼うというわけにはいかないというのが実態なのであります。したがいまして、前回の基準価格の大幅値下げを初めといたしまして、ここ数年の蚕糸政策というものは適切でなかった、こういう結果であろうというふうに私は見るわけであります。したがって、ただいま申し上げてまいりました実態を踏まえて今日の事態を農林省はどう見ているのか、見解を伺います。
  89. 吉國隆

    吉國政府委員 ただいま御指摘のように、繭生産量は近年減少の傾向が続いておりまして、六十三年の生産量はおおむね三万トン程度という状況になっているわけでございます。養蚕業、私ども生産性の向上に努力しながら、需要に見合った安定的な生産を確保したいということを念願いたしている次第でございますが、生産性の伸び悩みということが一方においてございますし、また従事者の高齢化ということによりまして、養蚕農家数あるいは桑園面積、繭生産量ともに減少傾向をたどっているところでございます。  私ども基本的には、需要に見合った安定的な繭生産を確保してまいりたいということから、できるだけ最近のような大幅な減産傾向に歯どめをかけてまいりたいというふうに考えているところでございますが、ことしもそういった取り組みが各地で行われたわけでございますけれども、気象災害ということの影響もあったかと思われますが、ことしも残念ながら減産になっているという実態でございます。私ども、今後とも生産性の高い養蚕主産地の育成を図っていくということを通じまして、できるだけ需要に見合った安定的な生産体制を確保してまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  90. 串原義直

    ○串原委員 需要というお話がありましたけれども見通し得る限り、この需要、内需はどのように推移するというふうに考えておりますか。このあなた方のつくった資料によりますと、これは近いところで見ますというと、昭和六十年十七万四千俵、六十一年が減りまして十四万三千俵だったけれども、六十二年は十八万六千俵、今年度、六十三年は二十万俵近くに回復をするのではないかと言われておりますが、この傾向の中で皆さんは、内需というのは見通し得る限りどんなぐあいに推移すると考えているわけですか。
  91. 吉國隆

    吉國政府委員 生糸の需要につきましては、御承知のように国内の需要が長期的には減退傾向をたどっております。最近、絹全体の消費という次元では、シルクブーム等もございまして絹製品の需要が伸びている面はございますが、これは織物等の形で輸入をされるというもので伸びているという傾向がございまして、生糸という形で国内で消費されるものは、ただいま先生おっしゃいました年々の数値は、流通段階におきます仮需と申しますか、引き渡しの数量でとらえておりますので、仮需的な要素も含まれた数値でございますので年変動があるわけでございますが、国内の生糸の主たる供給先に現状でなっております着物の需要、末端需要につきましては、残念ながら長期的には減退傾向が続いているように見受けられるわけでございます。  そういう意味におきまして、私ども、一方におきまして絹製品の消費の拡大を図っているところでございますが、あわせまして、これからの消費者のニーズというものを考えました際に、ハイブリッドシルク等の新しい分野というものを切り開いていく、これによりまして洋装品等の世界におきましても国産の生糸が有効に消費されるよう努力していく必要があると考えている次第でございます。また、我が国の進んだ工業技術との組み合わせによる製品でございますので、そういった意味で、よその国になかなかまねをされない、競争にも耐えていける先進国型の養蚕業の確立ということにも努めてまいる必要があるというふうに考えている次第でございます。
  92. 串原義直

    ○串原委員 絹、生糸全体の内需については、さっき私が若干数字を挙げてここで指摘をいたしましたが、今の御答弁に基づいてでございますが、国内生糸の内需は具体的に今後どのように見通しておりますか。
  93. 吉國隆

    吉國政府委員 先生承知のように、ただいま全体の農産物の需要供給の長期見通しの作業中になっております。従来の長期見通しにおきましては、ただいまちょっと具体的な数値をお持ちいたしておりませんけれども、長期的には和服需要の減退傾向というものがあるということを前提に、現在の長期見通しは組み立てられているというふうに承知をいたしております。
  94. 串原義直

    ○串原委員 それでは逆に伺いましょう。今後の国内需要を見通しながら、内需に見合って、国内の繭生産というのはどの程度のところまで持ち直したいと考えておるのか、あるいは繭生産は何万トンくらいが国内で最低限確保されなければならないとお考えになっているのか。現時点で結構です、お答えください。
  95. 吉國隆

    吉國政府委員 国内での繭生産量というものをどの程度に考えるかということを数値的に特定して申し上げるのは、いろいろな要素がございますのでなかなか難しい問題でございますが、先ほど申し上げましたように、長期見通しの問題としては現在作業を進めている段階でございます。  総体的に申し上げますと、やはり生糸は国際競争商品であるという性格も持っているわけでございます。したがいまして、国際需給というような点からいたしますと、中国が今唯一と言っていいぐらい飛び抜けた輸出供給余力を持った国になっているわけでございますが、そういうところの供給というものがどうなっていくか、あるいはコストがどうなっていくかというような問題も、関連をしてこようかと思うわけでございます。  そういった意味におきまして、我が国の生糸の生産につきまして、政府の長期見通しとしては一定の作業を行っていくわけでございますけれども、どういった量の生産が適切であるかということについては、やはりその時点、時点におきましてそういった国際供給事情というようなことも考慮に入れながら、蚕糸と絹業とが一体となって発展をしていく図式というものを求めていく必要があるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  96. 串原義直

    ○串原委員 長期見通し、長期計画というのは、今検討中だという話ですけれども、いつ決めますか。
  97. 吉國隆

    吉國政府委員 ただいま農政審議会に小委員会を設けていただきまして、検討に入っております。全体の作業をどの時点で終結するかということにつきましては、まだ確たる見通しは定まっていない段階ではないかというふうに承知をいたしております。
  98. 串原義直

    ○串原委員 それでは伺いますが、先ほどお答えもあったけれども、今年は三万トン程度まで繭生産が激減してしまった、私はこんなに減っては大変だと考えているのでございますが、あなたは来年はどのくらいにしようと思っているのか、お答 えください。
  99. 吉國隆

    吉國政府委員 関係者の声としましては、今の国内の需要の規模等からして、四万トン程度の生産を確保したいという願望があるというふうに承知をいたしております。そういった数値について現実的に可能性があるかどうかについては、私ども必ずしも確信はございませんけれども、先ほど申し上げましたような国産の繭の需要の範囲内での安定的な供給体制ということにつきましては、そういった数値を頭に置いた関係者努力というのも、それなりの合理性を持っているのではないかなという感じはいたしているところでございます。
  100. 串原義直

    ○串原委員 今局長は、関係者の願望、意見等を中心にして四万トンという数字を挙げられましたね。そういうことも私は若干仄聞している。けれども行政の立場から、日本の繭生産はもう少し増産傾向でなければならぬとお考えになっているのだろうけれども、あなたとしては、その四万トンをぜひ確保したい、繭生産が減ってきて、今年は三万トンに落ちた繭生産を来年は少なくとも四万トンに、増産体制に軌道修正をしてもらいたい、あるいはしたい、こういうことを農林省としては考えないのですか。
  101. 吉國隆

    吉國政府委員 現時点での判断としましては、昨年、ことしと急激な減少が続いているということは、必ずしも好ましい状況ではないというふうに考えているところでございます。ただ、役所として公式に幾らの生産を目指すというようなことを確定的に申し上げるには、やはり先ほど申しましたような国際競争商品としての性格というようなことも視野に入れて考えなければならない点があろうかというふうに思っている次第でございます。
  102. 串原義直

    ○串原委員 局長、だから関係者の願望としては、来年は四万トンくらい欲しい、そう言っている。農林省は、その増産意欲、目標、数字というものを支持して考えたいと思う、こういうことなんですか。
  103. 吉國隆

    吉國政府委員 ここ一両年ございましたような急激な減産というのは、好ましい状況ではないというふうに思っておるわけでございます。そういった意味で、冒頭申し上げましたように、生産性の向上を図りながら需要に見合った安定的な生産体制というものが望ましいという見地で、養蚕農家にも少し元気を出してもらいたいものだなという気持ちは正直言って持っておりますけれども、役所としてどれだけの生産体制が必要だということを公式に明らかにするということにつきましては、そういった生産性の問題なり国際競争との関係を総合約に判断して考えていく必要があるだろうと考えている次第でございます。
  104. 串原義直

    ○串原委員 農林省として、ことし三万トンになった、来年は四万トン増産に向かってばく進をしたいと思いますというような答弁がなかなかできないであろうことも理解をいたしますが、あなたは今の答弁でもう少し元気を出してもらいたい、こういう表現を使いましたね。御答弁のように元気を出してもらいたいということは、もう少し産繭量を多くしたい、こういうことであろうと思う。そのためにはいろいろな施策が必要です。  そこで伺いますが、一点は冒頭に指摘をいたしましたように、昨年春の一万二千円の安定基準価格、九千八百円に下げ過ぎた、これで養蚕熱が冷めてしまった。このことを少しでももとに戻す努力をしなければならぬ。したがって、来年の春、価格改定期に基準価格を少し上げるべきではないのか、そして養蚕農家に元気を与えるべきではないのか、こう私は思う。この点はいかがですか。  いま一つ。来年度、養蚕農家、生産者団体、この諸君が元気が出るように、予算上でもある程度の対策を示さなければいけないと思う。この点についてどう考えておりますか。この二点について伺います。
  105. 吉國隆

    吉國政府委員 繭の行政価格についてのお尋ねでございますが、法律の文言を申し上げるようで大変恐縮でございますけれども、私ども、今の制度に従いまして、生産条件、需給事情その他の経済事情を総合的に判断いたしまして、蚕糸、絹業ともに発展していける姿を基本としながら、審議会にも諮って適切に決定をしてまいりたいという以上のことは、なかなか申し上げにくい段階でございますので、お許しをいただきたいと存じます。  それから、予算上の問題でございますが、できるだけコストの低い養蚕経営を育てていく、また主産地を形成していくという観点に立ちまして、各種の事業を予算化いたしているところでございます。そういった面につきまして、予算上の努力を精いっぱい行ってまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  106. 串原義直

    ○串原委員 最後に大臣、一言。  きょうは養蚕問題を取り上げさせてもらいましたが、ふるさと創生論という大変好ましい意見が今交わされているところでありますが、ふるさとの中から生糸がいよいよ消えかかっておる状態であります。  そこで、若干の時間をいただいて今農林省とやりとりをしてまいりましたが、これは日本の将来にとっても農村にとっても、日本は生糸をなくしてはならない、より大事にしなければいかぬ、こういう観点で心配をしているわけでございますが、冷えてしまった養蚕熱を高めてまいりますために、基準価格の改定、いま一つは来年度の予算についての具体的な対策、昭和六十四年度予算において具体的な元気の出る対策を立てるべきだ、こういうふうに考えますが、大臣の所見を伺いまして、質問を終わらせていただきます。
  107. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 生糸、繭生産の問題は、私自身、今の立場にある前から非常に苦労した事実はございます。そして、その見通しをつけるのに非常に困難であるということ、表現を変えれば事業団のストックの金倉、そういうものが国家的に考えてみてもなかなか容易ではない状況、そういうことで、繭生産農家の意欲も喚起しながらも、また国の財政措置をもって、あるいは事業団の名においてストックする部分の効率というものをあわせ考えて、一体どうしたらいいのだろう。  まずは、繭生産農家の活力というものを出していかなければならぬわけでありますし、ふるさと創生論を言うまでもなく、それぞれの地域において、繭生産可能なところでは繭生産について活力を興してもらわなければいけませんし、中高年層の方々の繭生産というものが昔よりは随分変わってまいりました。そういう中にあっていよいよ活発でなければならぬ。一方、事業団の在庫は随分減ってはまいりましたけれども、むだがあってはならない。そういう考えがこもごもでありまして、そしていわゆる行政価格と裏腹に商品相場というものがまたあるということで、いよいよ難しくしておるということで、繭生産、生糸の在庫というようなものが適正な事業団の運営についての足を引っ張っておるという部分もありまして、行政が関与しながら商品相場というものが一体どういうことになっていくのであろうか、なかなか面倒な話だなということで非常に苦労してまいりました。依然としてその苦労は残っておりますけれども、ここで価格を来年度引き上げたらいいのかというと、なかなかそういうわけにはまいらぬのではないか。  それでは、そうは言いながら、活力をどうしてなにするのだということになりますれば、やはり六十四年度予算でそれぞれの養蚕農家が活力が出てくるような配慮を当然しなければならぬ。日本が絹業を活性化していくためには、その原料である繭、生糸というものを考えずして、また和装需要だけではなくて洋装需要にもいろいろな工夫がなされているときでありますから、そういう意味で活性化も図っていかなければならぬ、それに伴う予算措置も考えていかなければならぬと思っておるところでございます。日本から養蚕をなくしていいとは絶対思っておりません。
  108. 串原義直

    ○串原委員 時間が来ましたから終わります。
  109. 菊池福治郎

  110. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 大臣、ちょっと調子が悪いようですからお休みになって結構です、局長と長官とやりとりいたしますので。  私は、きょうは時間が非常に限られております ので、二つの点についてお聞きしたいと思います。一つは、前回に引き続いて冷災害対策の中で他用途利用米の対応についてであります。二つ目は、今後息長く討論していかなければならないと思う土地改良事業のあり方についてであります。  まず最初に冷災害対策でありますが、十月の本会議あるいは各種委員会等を通じましていろいろ要望申し上げておりました点について、共済事業の適正、早期の推進であるとか、いろいろ御努力を願ったことに対してその労を多といたしたいと思います。御苦労さまでございました。  冷災害対策、数多くいろいろお話があった中で、私は十月六日の本会議で、農水省に対して他用途利用米の取り扱いについて、「米の減収によって政府買い上げ限度数量に達しない農家については、他用途米契約を解除もしくは変更して限度数量枠を優先して買い上げ」てほしいと申し上げたことに対して、佐藤農林水産大臣からは、作況調整により契約数量の変更を行う道は開いている、しかしその率は飯米と同率ということでやっているのだ、他用途利用米を主食用へ転用することについては制度本来の趣旨に照らして困難な問題もある、しかし特別に被害が著しい農家に対しては、何らかの措置を講ずることができるかどうか、今後検討したいというふうに答えられているわけであります。これは十月段階の答えであります。このことについて、その後。どのような検討がなされ、どのような措置がなされたかについて、まずこの委員会の場で明らかにしていただきたいと思います。
  111. 甕滋

    甕政府委員 お尋ねの冷災害対策としての他用途利用米の取り扱いの件でございますが、ただいま先生からお話がございましたように、御質問があり、大臣からも答弁をいたした経過がございます。その中でも、大臣から申し上げましたように、一般的に災害により他用途利用米の出荷が困難という事情がある場合には、主食用の限度数量の扱いに準じまして、通常は地域の作柄状況等を踏まえ、主食用の出荷比率と同率で出荷の減免を行うことができる、こういうのがいわば一般的なルールでございます。  しかし、今回の東北地方を中心といたしました著しい災害にかんがみまして、特に著しい被害を受けた地域の被害農家に対して何とか方法はないだろうか、こういう検討をいたしたわけでございますが、その後、通常の作況調整以上に災害の実態を反映した特例的な作況調整を行う、こういう措置を決定したところでございます。中身を一口で申し上げますと、米の減収率が三〇%以上である市町村を対象にいたしまして、その中の米の減収率が三〇%以上の生産者につきまして、減収率に三〇%程度上乗せした率まで他用途利用米の出荷の減免を認める措置を講ずるということにいたしたわけでございます。したがいまして、例えば七〇%の減収ということになりますと、三〇%を加えまして一〇〇%、すなわち全量の減免、全量の免除、こういう措置を講じたわけでございます。  これは十一月二十五日付の通達でこの方針を決めまして、直ちに説明会等も開き、三〇%以上減収率のある市町村、これは旧市町村単位でとらえますけれども、この町村の指定等とそれに引き続く事務に現在取りかかっておる、来年になりましたらなるべく早いうちに実際の農家等も認定をいたしまして具体的な措置も講じてまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  112. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 御配慮については多といたしたいと思いますし、実は、十一月二十五日付の通達が出たということをきのう知ったわけであります。早速現地の方に聞いてみたら、県段階、市町村段階での説明会が始まっている、大変喜んでいるということでしたので、これは結構だったと思うのです。なお、国会の本会議なり委員会で出てきたこのような問題についてせっかく対応なさったのですから、実はこういう対応をしましたということを私たちに、文書の写しか何かでもって教えていただければなおありがたかったと、今後のこともありますからひとつ注文しておきたいと思います。  この際、他用途利用米について一つ追加をしてお聞きしたいわけですが、この制度そのものについては、余り評判がよくないということは御存じだろうと思うのです。一物二価というのですか、飯用米としては一俵当たり一万六、七千円になるのに他用途利用米は九千円台であるというようなことで、大変減収になるわけでありまして、これは農民の間にも、生産費を補償するという食管法第三条の精神にも合致しないんじゃないかという声もあるわけであります。  と同時に、この他用途利用米は、一体どのくらいの量がどういうふうに使われて流れているんだろうかという疑問の声もないわけではありません。私が聞いた範囲では、大きく三つか四つの方に流れていくんじゃないかというのですが、一つは酒米、二つ目が調整保管米、古米とか古々米を出す、それに見合った分を補てんするというふうなことに使われているというふうにもお聞きしております。三つ目はストック、備蓄ですね。ところがもう一つ、主食に転用するという話を聞くわけであります。私は数字も聞きました。この点についてはどうなんでしょう。
  113. 甕滋

    甕政府委員 他用途利用米の制度でございますけれども、これは主食用よりも低い価格であれば加工用等の一定の需要が生ずるという点を考慮いたしまして、米需要の拡大あるいは水田の有効利用といった観点で意義があるということで進めておるものでございまして、五十九年から転作の一環として導入したものでございます。  これは今お話がありましたように価格は低い、その意味では農家も我慢していただかなければならないというものでございますけれども、主食用米についてその一定の価格水準を維持します一方、米の内外価格差の拡大によりまして諸外国からあられでございますとか米の加工品の輸入がふえておりますので、それに対処して国内需要を確保していくといった観点で、一定の低価格で安定的に供給しよう。農家の方も、安い価格ではありますけれども、同じ米がつくれる、こういうメリットもあるということで、これが次第に定着してきている、農家の皆様方の御理解を得てきていると考えているところでございます。  次に、他用途利用米の使途と申しますか、何に使われているかといった点についてでございます。  これは六十三年産の生産予定数量で申しますと、四十六万八千トンとなっております。その用途別で申しますと、これは生産計画の数字で申し上げますが、みそ、せんべい、しょうちゅう等の一般用に二十八万五千トン、酒造用に六万トン、モチ米が使われる即席包装もち、あられといった用途に四万三千トンといったものが主なものでございますが、加工米飯用一万トンというものも新たに始めております。それからことしの計画では、在庫造成七万トンというものも需給均衡化緊急対策の中で措置いたしましたけれども、これは相当量が今回の災害に伴います在庫調整によりまして、そちらの方に充てられたという実態になっております。  それから、先生がお触れになりました主食用に回っているのではないかというお尋ねは、これはもちろん加工用という特定の用途に回っております。なかんずく価格差も大きいということで、主食用に流れることがないようにということで、その流通といたしましては原則として変形加工した上で供給をする、また加工工場への立入調査等を行いまして、いわゆる横流れということがないような措置を講じておるわけでございます。  ただ、先生のお尋ねの中で感じましたのは、実は他用途米と主食用の交換という措置が一つあるということでございます。これは、本年の米穀年度末の在庫調整の一環といたしまして、政府が持っております六十一年産の古米につきまして、指定法人の自主流通米が予定以上に売れましてその分が六十一年産米として政府に残った、こういう関係に基づきまして、指定法人にその政府に残りました分を買い受けさせまして販売をするという 措置を講じたわけでございます。その措置を円滑に実施するために、指定法人が買い受けた六十一年産の政府米と、六十三年産のもともとの予定されております他用途利用米とを交換をした、こういう措置がございます。  これは物量としてそういった措置を講じたわけでございますが、農家レベルにおきましては、もともと加工原材料用ということで価格があらかじめ明らかにされておったところでもございますし、そういった交換もその了承のもとに行われているということでございまして、手取り価格等に不利益が生ずるものでは何らございませんので、今後他用途利用米の円滑な展開を図ってまいります上で、そういった事実関係についてはよく農家にも説明し、納得を得た上で進めるように指導しておるところでございます。  なお、最後に冷害対策につきまして、もっと早く的確な連絡をするようにという御注意につきましては、当方としても今後そのように行いたいと思っております。
  114. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 時間の関係でこの問題は打ち切りたいのですが、他用途利用米につきましては制度として定着しているというふうにおっしゃったのだけれども農民の心情はやはり定着していないのです。これはひとつ、第一線の農民の声だということでお聞き取り願いたいのですが、他用途米といえども全く一般米と同じ条件で我々はつくっているんだ、選別も包装も乾燥も変わりなくつくっているんだ、こういうのに一物二価という事態についてはどうしても納得できないという声はあります。これは消えておりません。主食転用云々という問題もありますが、いずれまたいつかこの問題について時間をとりたいと思っていますので、きょうはひとつこういう声があるということをお聞き取り願って、この問題は打ち切らせていただきたいと思います。  次に、土地改良事業でありますが、土地改良事業というのは、農地開発にしろ圃場整備にしろ、大変重要になってきているし、困難な時期になっているなという感じがするわけです。重要という意味は、私が申し上げるまでもなく、生産者米価の問題等にかかわりまして構造政策が進められる。水田農家一戸当たりの耕地水田面積が一・五ヘクタール、あるいは行く行くは五ヘクタールというふうなことを想定しながら米価がこれから決定されていくということもありますし、土地改良をやる。本来的には生産性を、生産量を上げ、農家の経営が豊かになるという目標のためにやるわけなんだけれども、結果的に負担が大きくて、つくった水田いっぱいに米をつくらせてもらえないというふうな減反という政策にぶつかっているということもありまして、非常に重要な事業なんだが、困難でもあるという面を持っておるわけであります。  そこで、冒頭お聞きしたいのは、圃場整備事業という事業が、農業近代化政策推進の柱としてクローズアップされてから恐らく四分の一世紀くらいになるのじゃないかと思うのですが、この事業推進の現時点における総括と申しますか、どういう点の特徴があった、あるいはどういう点に困難な問題が起こっているかということを、時間の関係もありますから、ごく簡単にひとつお聞かせ願いたいと思います。
  115. 松山光治

    ○松山政府委員 土地改良事業の必要性がますます強まるという事情、同時にそのことが、これから土地改良事業の円滑を期していくために克服すべきなかなか困難な課題が出てきておる、私どももそのように考えておりまして、これから土地改良事業の円滑な推進を図っていくためにどのようにしていくか、いろいろと検討していかなければいかぬ、このように考えておるわけでございます。  お尋ねの圃場整備事業につきましてのいわば総括的な点はどうだ、こういうお話でございますが、御案内のように、圃場整備事業、機械の導入あるいは適正な水管理を通じまして農業の生産性向上なり近代化を図るという観点で、耕地の区画、形質の改善あるいは用排水路、農道等の整備といったようなことを総合的に実施する事業ということで、昔の耕地整理というのもございましたけれども、そういった各種の工事を総合的に実施する事業といたしまして、昭和三十八年から始まったわけでございます。  その後、この圃場整備事業、単独の事業だけではございませんで、いろいろな各種の事業がございますが、そういう事業の中でも実施されてきているわけでございます。一区画おおむね三十アール以上の区画に、整備された田ということで整備済み水田をとらえてみますと、大体百二十五万ヘクタール程度に達してございます。いずれも、農業の生産性の向上あるいは経営規模の拡大によります構造の改善、農業の近代化といったようなことに多大の貢献をする、そういう基礎的な条件の整備としての役割を果たしてきたものというふうにまずは評価しておるわけであります。  ただ、今申し上げました圃場整備済みの面積でございますけれども、六十三年度末で全水田の四二%ちょっとという水準にとどまっておるわけでございます。ただいま申しましたように圃場整備事業は、これからの農業あり方考えていく上で基礎的に重要な事業だというふうに、考えておるところでございまして、そういう意味ではこれからますますその円滑な推進に努めていかなければならぬ、このように考えておる次第でございます。
  116. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 土地改良事業あるいは今圃場整備事業あるいは農地開発事業ですね、これからも引き続き解決しなければならない課題、問題というのはかなりたくさんあるような気がするのです。  そのことについては、また時間の終わりの方に触れることにいたしまして、この問題と関連して、前回の災害対策特別委員会で触れたのですが、一つの事例として、岩手県の国営須川パイロット事業、農地開発事業ですけれども、あの問題についてこの前指摘をし、質問をした際に、当初計画から比べると四倍に事業の額が膨れ上がっている、結局、農家の負担もそれに応じて大変膨大なものになっている、計画期間に比べて実際の事業の行われた期間も大変長くなっているという、数々の問題を生み出しているわけです。ただ、それを今ここで過去に戻るわけにいきませんで、現実に償還の時期を迎えているという現時点において、何らかの軽減措置というものはあっていいのじゃないか、こういうことをこの前提起したわけです。  その際に、いや、農地開発事業というのは、やはり高率の補助事業でもあるし云々というお話がありまして、ただ、いろいろ県それから組合と国という関係もあるので、今後県ともよく相談をしていきたいというふうな意味のお答えをいただいているわけです。その後、確認をしたのですが、農道、道路に関してと排水路に関して、地元の一関市と花泉町が合計二億五千万ですかの負担をする、これは償還に合わせてということなんですけれども、そういうことを進めておるようであります。一関市が二億円、花泉町が五千百万円ということであります。これは、農道も生活道としての役割を果たす、排水路は生活排水路としても役に立つというふうな観点から、地元市、町とも負担ということに踏み切ったと思うのですが、県は一体どうなんだ、国はどうなんだ、責任はないのかということになりますと、これはやはり論が出てきますね。  もともとの計画でいったら三十億で済んだはずだ、それが百十億まで事業量が膨らんできた。計画が途中変更になる、工期が当初よりも延びてくる、物価が高くなる、大変ロスも多かったと思うのですが、こういった点については、今までのやり方の反省と同時に、何らかの形で農民の負担を軽くできないかということが論議されまして、岩手県の十二月県議会におきまして意見書が採択されて、内閣総理大臣農林水産大臣提出されておる文書があるはずです。ごらんになったと思うのですが、その中には「農業基盤整備事業の補助金カットの早期復元」という点と既に借り入れている「既借入金の償還条件の緩和」、こういうこ との項目があるわけです。これについてのお考えがあればお聞かせ願いたいと思います。この二点について。
  117. 松山光治

    ○松山政府委員 須川地区の問題につきましては、前回にも御指摘いただきまして、御心配いただいておりますことを恐縮に存じておるわけでございます。  あのときにも申し上げましたように、二度のオイルショックを経たというような事情でありますとか、あるいは地元の要望も踏まえながら整備水準の向上等があったというようなやむを得ない事情の中で、工期の遅延なりあるいは事業費の増高、こういうことが生じておるわけでございます。あのときにもたしか申し上げたかと思うわけでございますが、現在、国営事業のやり方の問題といたしまして、負担金を県からまず国がいただく、後、県の方が地元からいただいていくという仕組みになってございまして、県の方がまだこれからどうするかということで結論を得ておらないようでございます。これからも引き続き、県といろいろと御相談してまいりたいと思っておるわけでございますが、今具体的にお尋ねのございました補助率カットの問題でございます。  これは御案内のように、六十四年度予算の編成をどうするかという問題の一環として、関係省庁の間でいろいろと御議論をいただいている問題というふうに承知しておるわけでございますが、今までのところでも、カットになっております分は地方債によって対応して、受益農家には響かないような工夫がされておるということだけ私の方からは申し上げておきたいと思います。  償還期限の問題でございますけれども、既にかなり有利なといいましょうか、償還の形をとっておることでもございます。そういうことも踏まえて考えますときには、私どもこれを一般的に考えていくことにはなかなか無理がある。そこで、前回もたしかお答えしたところでございますが、本地区につきましては御案内の、償還に充てるために土地改良区が一部農協等から金を借りてそれを充当していくという場合に、国と県で利子補給をするという償還円滑化対策というものを既に六十三年度から実施いたしておりますので、必要があればそれを御活用いただくということで、償還の円滑化問題にひとつ御対応いただけないものだろうか、このように実は考えておる次第でございます。
  118. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 既にもう時間が迫っておるので、大変残念ですが、二、三、項目的に質問申し上げてお答えをいただきたいと思います。  今の償還の問題ですけれども、おっしゃることもわかるのですが、やはり基本になるのは計画がどんどん延びてきたということですよ。しかも、全国的に手をかけている件数はふえる、工事期間は長くなる、物価は上がる、したがって回り回って一年間の事業量は少なくなる、また工期が延びる、その分農民の負担がふえるというような循環があるわけですね。これはやはり政策的な要素もあると思うのです。ですから、このことについての国あるいは県営の場合は県の総括、反省というものは、厳しくやっていただかなければならないと思います。そして、その部分の責任分担という、表現は適切かどうかわかりませんけれども、あとう限りの政策というものを考えていただきたい。例えば補助金の問題もありましたし、償還条件の利率の問題もあるのです。土地改良法によって定められている利率というものがあるわけですけれども、これは事業によって違うのじゃないですか、農地開発の場合と圃場整備の場合とでは。何か率が違うように記憶しているのですが、いずれそういった率の問題を含めて、国として農民に対して何ができるかということの御検討を今後とも続けていただきたいということが一つ。  それから、さっきお答えの中で圃場整備事業が全水田の四二%進んだとおっしゃっているわけですが、今後の問題も含めまして、平たん地の場合と傾斜地の場合とでかなりパーセントが違うはずです。もしわかればですよ、わかっていればそれをちょっと明らかにしていただきながら、今後の構造政策を進める、そしてそれに基づいて生産者米価が決まっていくというふうな仕組の中で、平たん地を抱えている地域と傾斜地の多い地域と同等に扱われるということについては、これは大変な問題になるわけです。平等に見えて不平等になる。こういうことも農業政策の中で今後考えていただきたいということが二つ目。  それから、水田の圃場整備事業の中で特にお願いしておきたいことは、区画とか広さとか農機具が入るとかというふうな目に見える部分に意識が集中し過ぎて、土壌そのもの、水田そのものの生産力、生産能力というものが——土地改良長期計画、五十八年にスタートしたものですね。この中では大変いいことを書いておると私は思うのだけれども、その中では「田については、田畑輪換が可能な汎(はん)用田としての条件整備を進める」のだ、これを忘れた圃場整備事業というものは邪道だと私は思うのです。広くすればいいとか格好よく整えればいいとか水道が立派になったらそれでいいということじゃない。そのことによって生産力が高まる、そのことによって農家が潤う、それが大目標であるべきであって、区画とか広さとか機械とか道路が立派だというのは付随的な目標だと思うのです。その基本を忘れないで進めていただきたいということを申し上げて、以上三つほど申し上げましたが、お答えがあれば承って、質問を終わりたいと思います。
  119. 松山光治

    ○松山政府委員 まず工期の問題でございますけれども、やむを得ざる事情があったとはいえ、ここのところ工期がかなり遅延してきておるということについて、私どもも率直にこの実態を反省しておるわけでございます。農家負担のことも考え、できるだけ重点的な予算配分を行いまして既存地区の管理を急ぐ、また新規地区についてはそういう意味での政府計画的な採択を行っていく、こういうことでこれから臨みたいというふうに考えておる次第でございます。  それから工期の遅延に伴う農家負担の増大対策、何かないのかというお話でもございました。工期の遅延に伴いまして事業費がふえる、そういたしますと一定の補助率でございますから、国の負担額もおのずからふえるという意味では実はなかなか制約の多い話でございますけれども、そういう制約の中で、先ほどもちょっと申し上げましたような償還円滑化対策を六十三年から講じたとか、あるいは六十二年には計画償還制度を入れたとかいうようなことで、私どもなりの農家負担の軽減ないしは償還の円滑化という観点からする努力はしてきたつもりでもございます。今後とも引き続き可能な道をいろいろとまた検討してまいりたい、このように考えております。  それから、今手元に中山間の圃場整備率の数字がちょっとございませんので、失礼でございますけれども、御指摘のように、先ほどの四二%余という数字は全国平均でございますから、平場に比べて中山間の整備率が低いという実態にあることは私ども承知をいたしております。条件の悪い地帯でありますだけに工費の点も気になりますし、これから事業を進めていく場合には、よほどお互い注意しながらできるだけ経済的な工法の採用を工夫するとかといったような知恵をいろいろと出していかなければいかぬだろう、実はこのように考えておるわけであります。  その次のお尋ねとも関連するわけでございますけれども、私どもやはり圃場整備の実施というのは、その地域地域の営農の実態を踏まえながらその展開方向に即してやっていくということが基本でございます。もちろん、今の日本農業の課題ができるだけ効率的な農業生産構造をつくっていくといったようなことになりますれば、やはり区画の大きさの問題でございますとか機械が円滑に稼働されるかどうかといったようなことが一つ頭にあることももちろん事実でございますけれども、御指摘のような水田の汎用化ということも非常に重要な課題だと考えて取り組んでおるつもりでございます。  かつまた、基準ができるだけ画一的に適用されないように、地域の実情に即し、かつ関係農家の 意向というのも十分踏まえたがら事業の実施に当たっていく、こういう考え方基本としてこれからも取り進めていきたい、このように考えておる次第でございます。
  120. 沢藤礼次郎

    ○沢藤委員 終わります。
  121. 菊池福治郎

    菊池委員長 水谷弘君。
  122. 水谷弘

    水谷委員 まず最初に、ウルグアイ・ラウンドにおける中間レビューについて、大臣、大変御苦労さまでございました。他の委員からの質疑の経過の中で大要は存じておりますが、若干重複するところがあるかもしれませんが、御質問をいたします。  今回の閣僚会議における農業交渉、これが実質的には多くの成果をおさめることができなかった。その舞台が来年四月ジュネーブで開かれるガット高級事務レベル協議、その場所に移されていくわけでございます。そこでヤイター発言が大変注目をされているわけでございます。長期目標の議論が決着し、短期措置の交渉に入れば、当然日本の米市場開放問題が討議されることになるだろう、このようなヤイター発言があるわけであります。従来からの我が国政府方針は私もよく存じております。あくまでもその方針に基づいて対処されることと信じております。その上で、あえて確認をする意味で、このヤイター発言をどう評価をしておられるか、どう受けとめておられるか、そしてまたこの日本の米市場開放問題がヤイター氏が言われるとおり討議をされた場合に、我が国はどういう態度でこれに対応をされるのか、この二点について大臣にまずお伺いをしておきます。
  123. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 今先生おっしゃいますように、中間レビューはこの十二月のものが来年の四月に移行せざるを得なくなったということは極めて遺憾でございまして、国際化の中でウルグアイ・ラウンド、新しいルールをつくろうということで話が始まっております。一方では、日米間で米の問題など二国間でいろいろ話し合ってきたけれども、昨年来、米の問題の取り扱いについては二国間では扱わない、それをその都度確認しながら、一方では一部報道によれば、いや、やっぱりあるんだあるんだ、そしてまた大統領選挙が迫るに従ってRMAの提訴の問題が出てきたり、非常に不確定な要素をもとにしての論評なり報道が非常に多うございまして、極めて遺憾でございます。そういうことに私どもは困惑しておったのではいかぬわけでありまして、私ども牛肉・かんきつ交渉、東京交渉の際もその扱いについて二国間ではもう話し合わないと言っておったわけでございます。  したがいまして、このモントリオールにおきましても、各国が困難な問題を持ち出す場面でもあれば別でございますけれども、私ども出かける前から聞き及んでおったところによれば、結果的には全くそのとおりに、あるいはそれ以上にということになったのでございますけれどもアメリカECという主要国の間で長期目標についてまず意見が合わないということで、今おっしゃいますように短期目標については全く話は出ず、そして逆に私がリン農務長官と会ったときには、従来私の方で言っていたことを、今度は場所が変わり時期が変わると、まるで自分たちの方が言い出したがごとく錯覚を受けるがごとき発言もございまして、佐藤、米の問題は二国間では、我が方とあなたの方では話し合わないことになっているんだよ、こういうことで、私にすれば当たり前の話であって、改まって言われるまでもない、私の方で言っておってその扱いが認知されておった経緯にございますので、おやっと思ったようなこともございました。  しかし、これが四月に向かいましてどのようなことになるかということになると、やはり油断は許されない。各国間が困難な問題を一つテーブルにのせた場合は、我が国も米を含む農産物問題について議論をすることはやぶさかでない。そしてその結果は一体どうなるのであろうかという推測にお答えするとするならば、我が国の従来からの主張、すなわち国会での御決議の問題もございますし、また経済性だけの問題、コスト面から見たあるいは価格だけから見た経済的な問題だけではなくて、非経済的、例えば食糧安保論等の問題、あるいは国土保全上の問題、そういうことについても幅広く米について理解をしてもらわねばならぬわけでありますから、議論するにやぶさかではない。しかし私は、我が方の主張を貫き通したい、こういうことをこの場でも実は申し上げてきたことでございまして、ニューラウンドに向けての米の論議のレールは敷かれたもの、決して身勝手で言うのではなくて、私はそうであるというふうに自負をいたしておるわけでございます。  しかし、決してその議論を逃げようとはしない、そういう議論になれば整々として私どもも議論を申し上げたい、こういうことを言っていることについてはアメリカ側も相当理解をしたのではないか。我が方が粘り強くやっておる間に初めとは大分変わってきたのではないかという感想を持っております。だからといって、さっき申し上げるようにこれに甘んずるわけにはまいらぬ、やはり注意深くこれを見守り、その時期が来ればまた議論もしなければならぬ、こう思っておるところでございます。
  124. 水谷弘

    水谷委員 端的に伺います。  国会決議、それから自給方針、こういう言葉があるわけでありますが、明確にしていただきたいのは、自由化と市場開放は違うわけであります。米に対する市場開放は行わないというその立場を一貫して貫く、そういう考えで今後とも対処をされるのか、自由化は認めないが市場開放は若干認めざるを得ない、このような考え方で対処されるのか、簡潔に答えてください。
  125. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 市場開放はしないという、米を自給する方針我が国の米は我が国で自給をするという方針、これには変わりございません。
  126. 水谷弘

    水谷委員 もう一つ、この米問題は日米それからまた多国間の問題というよりも、米問題は国内問題である。我が国国内において、米に関しては、先ほどもおっしゃったとおり食糧安保の立場から、また基礎的食糧という立場から、これだけ自給率の低い我が国として断じて市場開放は認めないという国民的合意が形成をされていかなければ、今日のように一部マスコミまたは財界のように、いろんな農業批判の中から米の自由化の議論まで無責任に飛び出してくるようなこういう風潮の中で、私は、対外的な交渉というのは非常に基盤のもろい交渉になるのではないかと大変危惧をするわけでありますが、より一層国民的な合意を形成をしていくための農水省としての決意と御努力、どのようにしてこれを真剣に形成に向けて努力をされるか、そのことについて御決意を伺っておきたいと思います。     〔委員長退席、月原委員長代理着席〕
  127. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 先ほど来申し上げるように、国会での決議、これは相当重いものでございます、相当に重いものであります。それに加えて、先ほど申し上げておった非経済性の問題もございます。そういうことが粘り強くやってきた結果、アメリカ側にはある程度わかってきたものと私は推察をしておりますし、とにかく外交交渉というものは、私、外交の専門家ではございませんけれども、しかし、うち方が意見がまとまっておるという上に立っての外交交渉でなければならぬ、そう私も考えておりますし、うち方はどうなのかと言われれば、一部には確かにおっしゃるようにいろんな声があることは事実でございます。私がモントリオールに参りましても、日本側の一部の報道関係者からマイク突きつけられて米はどうしました、どうしました、米は出ないと言っているのに米はどうしました。これがまたいろんな思惑を買うということで、これがまた国内世論にはね返ってくるということで、日本の国はばらばらになるような印象を与えたのでは大変だ。しかし、大方の御理解は、生産者も消費者も大方の合意をしておるものと私は判断しております。さらにこの理解を深めていく必要がある、国内的にも。国外でだんだん粘り強くなにしていったら食糧安保論まで出てそしてわかってきてくれているのに、国内で もってわからぬのがどんどんふえていくというのは、これは私どもにとって耐えられないことでございますから、そういう点についても注意深く、丁寧に国内食糧政策、特に米については私どもは真剣に対応していかなければならぬと心得ております。
  128. 水谷弘

    水谷委員 政府部内における、また農水省の幹部等がいろんな発言をしているという、私はそのまま信用するわけじゃありませんが、そんなことがマスコミを通じて漏れ伝わってくるわけであります。そのようなことのないように、今大臣がおっしゃったその意思が内閣の統一した考え方であり、農水省の至るところにおいてもそのような決意と覚悟で米の問題について対応をなさるように、一言申し上げておきます。  次に、十二月一日に「公的規制の緩和等に関する答申」が出されたわけでございますが、これに対して十三日、規制緩和推進要綱が閣議決定をされておるようでございますが、この中の農産物の項目について何点か御質問をしておきたいと思います。  この推進要綱を受けて今農政審等において具体的なこの具体化についての討議、検討をされておられるわけでございますけれども、この推進要綱の具体化についての取りまとめをするその基本的な取り組み方、この推進要綱を受けての基本的な取り組み方について、まず一言お伺いをしておきたいと思います。
  129. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 ただいま先生から御質問の今般の規制緩和推進要綱でございますが、先ほども先生お話しのように、新行革審の答申を受けまして政府として閣議決定を十二月十三日行われたところでございます。したがいまして、当省といたしましてもその実施に努めてまいるというのが基本考え方でございます。  ただ、規制緩和推進要綱につきましては、農政基本的展開にかかわる困難な問題も含まれているというふうに考えておりまして、これを具体的な施策として実施に移すに当たりましては、農業農政の持つ基本的かつ多面的な役割配慮をしながら、これまでと同様に関係各方面の御意見を十分お聞きをいたしまして、論議を尽くしながら進めていく必要があるというふうに考えているところでございます。
  130. 水谷弘

    水谷委員 大臣にも一言。今官房長が申されたように、農政基本的な立場から見ますと、この推進要綱そのままがひとり歩きするようた形になってしまっては大変心配をするところも多々あるわけであります。これが推進をされる以前に乗り越えなければならない前提や、またそれ以前に手を打たなければならない、環境を整備し、条件を整えた上でなければ手をつけられない問題も推進要綱の中には出てきているわけであります。そのことをよく踏まえられて、具体化については十分慎重な上にも慎重をもって対応をしていただきたい。  特に何点か指摘をしておきたいと思いますが、この推進要綱を具体化していくその大前提として、先ほど私が大臣との議論の中で申し上げたとおり、米の市場開放が行われてしまうような状況の中ではこれらの推進要綱は何一つ効果は出てこないのであり、これは推進できないわけであります。そういう意味でも、重ねてこの自給政策の堅持というものをしっかり貫き通していただきたい。  もう一つは、いわゆる低米価政策、これは政策として位置づけてよろしいかどうかという議論はまた別でありますが、多くの国民の求めるところ、国際価格比を中心にして我が国の米価に対するいわゆるコストダウンを図られながら、これがより一層消費者米価に連動をし、これが引き下げられることを多くの国民は望んでいるはずであります。当然、方向性はいやが上にもその方向へ向かわざるを得ないし、また、生産者もコスト低減のために多大な努力をしておられます。  しかし、どんなに努力をしてもその努力が現実に結果としてあらわれないというそういう地域も実はあるわけであります。御存じのとおり、中山間地帯、こういう地域においては大規模な経営規模の拡大等々は不可能であります。そういうことになれば勢いコスト低減の成果というのは限定された成果しか出てこない。規模拡大が大変困難な地域、それからまた栽培品種の上からいって良質米生産地帯ではない、ほとんどが政府米のみ生産をされているような地域、こういういわゆる地域間格差と同時に地域間競争という非常に過酷な現象が将来予測をされてくるわけであります。そういうふうになってきて強力な形で市場原理を導入をされたとき、これらの地域に対しては農政の中においても特別な位置づけをし、その地域の活性化の対策やら、またその地域の所得確保の対策、こういうものを講じていかなければならなくなってくるわけであります。この点についてもどのように対応されていくか、非常に重要な問題でありますので、お答えをいただきたいと思います。  またもう一つ、生産調整、これはもう今全面積の三分の一にまで及ぼうとしておる。これほどの大変な生産調整は、現場では我々が表現をする以上に大変過酷な問題として、皆様方、それこそ血を出すような思いでお取り組みをいただいているわけであります。しかしながら、この推進要綱の中では、水田農業確立対策終了までにこのいわゆる転作奨励金依存からの脱却ということを明確に出してきておる。しかしながら、転作はその時点でやめてしまうわけにはいかない。考えようによっては、今以上の転作面積が要求をされてくるような事態になるかもしれない。そのような場合に、生産調整を有効に推進するためには、片方でこの転作奨励金を取っ払ってしまった場合、一体どういう手だてがあるのか。有効にこの生産調整が推進されるための手だて、生産調整に参加した人たちに対するメリットが出てこなければ、このような生産調整は現場では有効に働かない、そういう時代がやってくる。一部では、農政審の中には、既に選択性という言葉で議論にのせていろいろ取り組みをしておられるという話も承っておりますけれども、一体これをどういうふうに対応をされていくのか、基本的なお考えをお伺いしておきたいと思います。
  131. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 簡潔に一つ一つ答えてまいりたいと思います。  推進要綱の問題について官房長からお答えを申し上げましたが、一口で言えば、私どもは手順を尽くして運ばなければならない、これはもう強くそう考えております。  また、先ほど米の点についても触れられましたし、今もまたちょっと触れられたわけでございますけれども、総理も、我が国で自給する方針に変わりはなし、こういう答弁で、私も全く同じような答弁をしておるわけでございますから、この国際化の中にあっても一つのレールは敷かれた、この環境下に一つのレールは敷かれた、米を自給する方針に変わりなし、このレールの上にこれからいかが走っていくかということであって、このレールが簡単になくなるというようなことは、予測を全くしておりません。  それから、消費者米価を下げる問題でございますけれども生産者米価を切り込んでおって、そしてあの米審におきましても、私も常時立ち会っておりましたけれども、米価審議会という重い意味審議会で意見が付されまして、そして、生産者米価下げが消費者に及ぶように、消費拡大もありますし、そういう意味でのことが盛られておりますし、なお書き、追って書きでは、いやまあそうはいっても慎重にという意見もあったことについてちょっと触れておりますけれども、主体は消費者米価下げという附帯意見がついておると私は承知をいたしておりますので、これもここへ来ると年内というわけにはまいりません。けさほど来お答えをしておりますが、年が明けて、これは予算編成絡みのことでもございますので、大蔵省筋と言うと言い過ぎかもしれませんけれども、どの筋かは定かではないにしても、新聞報道に載せられておる、切り下げにでき得る限り近づく考え方で私どもは消費者米価下げを行っていかなければならぬ、かように考えております。  なおまた、委員が年来の主張でございます、山 間部と平場とに分けての政策の推進についてのお話がございました。規模拡大といってもできないところはできないのでありますから、できるところはやってもらう、そしてコストを下げてもらう。できないところはどうするか。いわゆる今までの農政のカテゴリーではなくて、それを超えた社会政策ともいうべき範疇で考えでいくのがまた必要ではなかろうかなと私は心組んできたことも、委員承知のとおりでございます。それぞれの地域の個性を生かしたいわゆる地域農政というものが本当に始まらなければならぬな、かように考えておるわけでございます。  さらに、生産調整に関連をいたしまして、生産調整を本当に汗と血を流した形で協力してくださった市町村行政あるいは農業者団体等に対して、私は敬意を払ってまいりました。今後とも、生産調整というものをやった結果が有効に機能する結果になるように私ども努力を重ねてまいらなければならぬ、かように思っておるところでございます。
  132. 水谷弘

    水谷委員 私のお尋ねしたことに対して、若干角度が変わった答弁でありますが、ちょっと時間がございませんので、一点だけ。  今、生産調整のことは、水田農業確立対策終了までにこの奨励金依存から脱却をすべきだという推進要綱なんです。これではどうしようもないだろう、こんなことはできないだろう、こういう質問をしているわけでございますので、御答弁をお願いします。
  133. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 先般の農協大会にもその方針が決定をされているがごとく、ある程度の年数はかかってもコストの切り下げに向かっていく。その最中にこれをまた、せっかくそこまで意識革命をし、具体的な対応考えておる農業者団体に対して、さらに追い打ちをかけるとか、おまえはだめだというような言い方は、我が農林水産省、してはならぬと私は考えております。
  134. 水谷弘

    水谷委員 厚生省、おいでいただいておりますので……。  私がことしの二月二十四日、予算委員会においてポストハーベストの問題を取り上げて、政府対応についてただしました。その中で藤本厚生大臣はこの問題について、六十年から「調査研究に取り組んでおるところでございます。関係省庁の御協力を得まして、早急に整備を図ることを考えております。」このように答弁をされておるわけでございますが、これだけ我が国農産物輸入総量が大変に今大きくなってき、国民の関心は、輸入農産物に対する安全性、この安全性の確保の問題は、いまだかつてない大変な関心と、また、それに対しては非常な不安を持っているわけであります。  そういう意味では、そんな悠長に構えておられたのでは困るわけでございまして、これはもう早急にその体制を整え、一刻も早く、明確に我が国の水際でこれらは、本当に国民が安心して食品を手にすることができるようなあらゆる対策を講じなければならない。ポストハーベストだけの問題では決してないわけでありますが、とりあえずまずこれを真っ先に対応すべきであるという見地から質問をしたわけであります。  現在、どのようにこれに対して取り組みをし、今後、どういう結論を見、どのように結果を出していかれるのか、はっきりした厚生省における取り組みについてお答えをいただいておきたいと思います。
  135. 内山壽紀

    ○内山説明員 ポストハーベスト農薬につきましては、本年二月の予算委員会におきまして先生から、早急に衛生対策を進めるべきとの御指摘を受けたところでございまして、厚生省といたしましても、輸入食品の安全性確保を図る上で、ポストハーベスト対策は極めて重要な問題と認識しております。  したがいまして、私どもとしましては、関係省庁と協力しつつ、ポストハーベストの残留農薬基準を整備して安全確保を図っていきたいと考えておりまして、私ども考えといたしましては、穀類等の主要な農産物につきましては向こう三カ年間ぐらいにはその主なものにつきましてのポストハーベストの基準をつくりたいという計画で進めておるところでございます。
  136. 水谷弘

    水谷委員 よくわかります。そう右から左と簡単に結論の出る問題ではないということはよくわかりますが、向こう三カ年、そんな悠長なことをおっしゃらないで、そんな三年先の話なんというのは私どもとしては非常に聞いていられない。今のこの時代の三年というのはかつての三十年も四十年もに匹敵するぐらいな年数です。そうではなくて、あらゆる努力を結集されて、本当に早い時期に明確な基準設定をなさいますように申し上げておきたいと思います。  長官に消費者米価のことでお伺いをしようと思っておったのだが、長官は、話のストーリーが先へ行ったもので、もうないなと思って帰られたのかな。先ほど大臣は私が質問しないのに答えられたので、質問の項目が別なんだ。どうしたんだ。——では委員長、時計をとめてください。
  137. 月原茂皓

    ○月原委員長代理 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  138. 月原茂皓

    ○月原委員長代理 速記を起こしてください。  水谷弘君。
  139. 水谷弘

    水谷委員 先ほど大臣から他の質問の中で挟んで答弁がございましたので、概要は了といたしますけれども生産者米価が二年連続で大幅に引き下げになったわけであります。この生産者米価の二年連続引き下げというのは、当然消費者米価に連動をされていくべきであると考えるわけであります。既に一部の報道では、その消費者米価の引き下げ幅等までいろいろな形で伝えられております。国民的な米問題に対する合意を形成する上からも、あれだけ、それこそ身を切るような思いでの生産者米価の引き下げを生産者は受けておられるわけであります。そういう中で消費者米価が、消費者が本当に納得できる形で引き下げが明確にされていかなければ、いわゆる米政策に対する一貫性という上から大きな問題になってくると考えるわけであります。  その消費者米価の問題についての見通し、それから基本的な生産者米価、消費者米価の位置づけ、これについて改めてお伺いをしておきたいと思います。
  140. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生お尋ねの消費者米価につきまして、私からお答え申し上げたいと思います。  本年産の生産者米価を引き下げております。その効果を消費者に目に見える形で及ぼし、先生指摘のとおり、国民各界各層の支持を得ていく必要があるというふうに考えております。この場合、古米の持ち越し在庫水準が高いということから、その円滑な売却を図る必要があること等の観点をも配慮いたしまして、現在食糧庁におきまして検討をしているところでございます。この決定時期につきましては、まだ具体的に決めておりません。
  141. 水谷弘

    水谷委員 以上で終わります。
  142. 月原茂皓

    ○月原委員長代理 吉浦忠治君。
  143. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 私は、第三海堡の撤去問題についてまず最初にお尋ねをいたしておきたいと思います。  去る七月に起きました海上自衛隊の潜水艦「なだしお」と遊漁船の第一富士丸との衝突事故に対しまして、政府の事故対策本部が十月十四日に「船舶航行の安全に関する対策要綱」というものを取りまとめて発表いたしたわけでありますが、我々農林水産委員会でも、遊漁船業の適正化に関する法律案を与野党一致で提出、成立いたしたわけであります。結果としてこの要綱の趣旨に沿うことになったわけでありますけれども、この要綱の中の3に、「浦賀水道航路に隣接する第三海堡の撤去及び中ノ瀬航路における浅所浚渫を推進する。」こうあるのです。この点について千葉県の漁業者は一斉に反発をして、応ぜられないというふうに態度を硬化しているわけであります。  そこで、まず運輸省にお尋ねをいたしたいと思いますが、昭和五十三年にこの水域を港湾法に基づきまして開発保全航路区域に政令指定する際に、第三海堡撤去及び航路整備については関係漁 協の同意が得られない限り絶対工事に着手しないことを約束する、こういう一文があるのです。にもかかわらず、なぜその推進を対策要綱に織り込んだのか、これが第一点。第二点は、この要綱が出されたことによって従来の考え方以上に工事を推進していくということになったのかどうか。この二点をまずお答えをいただきたい。
  144. 堀井修身

    ○堀井説明員 お答えをいたします。  第三海堡の撤去等につきましては、昭和五十三年四月に漁業者等の関係者調整を得まして、ただいま先生からお話ございましたように開発保全航路に指定をしておるわけでございますが、本格的な工事の実施につきましては漁業者の同意を得るべくということで漁業者との調整をこれまで進めてきたところでございます。  今回の対策要綱と申しますのは、船舶航行の安全の確保を図るという観点から今後実施あるいは検討すべき対策を盛り込んでおるものでございまして、第三海堡の撤去等の推進につきましても、このような立場から従来からの考え方を改めて記述したというものでございます。運輸省といたしましては、今後この対策要綱を踏まえて引き続き漁業者との調整を積極的に進めていきたい、その同意を得た上で早急に工事にかかっていきたいということでございまして、従来からの方針に変わりはございません。
  145. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 この撤去の目的でありますけれども、安全な航行ということについては理解できるわけであります。この航路整備計画が立てられたのは昭和四十六年でありますから、この当時はいわゆる高度経済成長期の真っただ中にあったわけですね。その後、東京湾に対する国民のニーズというのは大きく変わってきていると私は思うのです。最近では、開発優先よりも自然の回復なり保護に国民の目が向けられていると思うのです。漁業面から見ても、二百海里時代に入りまして、いわゆる日本の沿岸資源を大切にしようという機運が盛り上がってきておりますし、東京湾の漁業というものを改めて見直さなければならぬときが来ていると思うのです。  そこで、大型船舶の航行につきましても、巨大船の東京湾への入港というものは考えなければならぬときが来ているのではないかと私は思うのです。とめるべきであるというふうな考え方もあるわけです。このような社会経済環境の変化を考えてみますときに、第三海堡を撤去するということを時期的に見直さなければならぬというふうに私は考えておりますけれども、運輸省、この点についてはどういうふうに考えているのか。
  146. 堀井修身

    ○堀井説明員 お答えをいたします。  御指摘のように東京湾口の航路計画につきましては四十六年当初から検討してまいったところでございます。確かに経済情勢等大きく変化をしたということではございますが、現在の湾口部の船舶の交通量でございますけれども、一日当たり平均で七百隻強ということは、従来とは変わっておらないわけでございます。このようなことから、今後の推計でもこの数は余り変わらないだろうというふうに考えておりまして、当初計画どおり航行安全の確保の観点から第三海堡の撤去は必要であるというふうに私ども考えておるところでございます。
  147. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 運輸省の考え方と我々の考えが違いますけれども、第三海堡を撤去すればどのようなことになるか。確かにおっしゃるように船舶の航行は円滑になるかもしれません。スムーズになるかもしれません。しかし、そのために浦賀水道等を通り抜ける場合に物すごくスピード化されてしまうような危険性もある。したがって、湾が狭ければあるいは衝突事故を起こすということになれば、十分その注意をして航行するわけです。また、そこには流し網等の漁業をしている漁船も操業しているわけです。そこで、そういうところをすべての船舶はゆっくりと注意深く航行することに現在もなっているし、またこれからもなるわけです。住宅地で自動車をスピードを落として安全運転させるためにわざと障害物を設けるかのごとく、ちょうどこの東京湾の第三海堡はそういう意味の障害物であると考えた方がいいと思うのです。  したがって、その周辺が優良な漁場になっているわけでありまして、これは後で水産庁にお尋ねをいたしますが、この役割というものを改めて見直してみなければならぬのじゃないか、ただ一方的に運輸省が考えられるようなことだけで計画を進められては困る、こう思うのです。お答えをいただきたい。
  148. 堀井修身

    ○堀井説明員 お答えいたします。  第三海堡の姿と申しますのは、現在、干潮時におきましても上部の残骸が見える程度でございまして、ほとんど暗礁化の状態にあるということでございます。それで、付近を航行いたします船舶にとりましては極めて危険であるということでございますし、また海事関係者からも強く撤去といったことにつきまして要望があるわけでございまして、私どもとしては船舶航行の安全確保の観点からはやはりない方がいいと考えております。ただ、今先生指摘のように付近は非常にいい漁場であるということを私どもも十分認識をしておるわけでございまして、そういう意味で漁業者の御理解を得て撤去に努力していきたい、こういうことでございます。
  149. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 次に、水産庁に伺っておきたいと思うのです。  対策要綱にあります第三海堡の撤去推進ということについて、水産庁は対策本部の一員としてこれに同意されたわけでありますけれども、水産、漁場を守る立場の水産庁として、漁業関係者の意向を十分に承知してこのような決定となったのか、どういうことでこの決定をなされたのか、この点をまず伺っておきたいと思います。
  150. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 第三海堡の問題につきまして若干経緯から御説明いたしますと、水産庁といたしましては、昭和四十八年の港湾法の改正のときから開発保全航路の区域指定にかけまして漁業者の意見を十分踏まえました結果、工事の実施についての関係漁業者の同意、それから工事の影響を最小限にするということをあくまでも前提といたしまして、昭和五十三年に第三海堡を含みます開発保全航路区域の政令指定というものに同意したわけでございます。その後、港湾サイドの地元漁業者等との協議あるいは計画をどういうふうに実施に移すかということを見守ってきたわけでございますけれども、今回ああいう対策要綱ができましても、従来の関係漁業者の同意、それから工事の影響の最小限化ということについての基本的立場は全く変わっておりません。
  151. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 長官、第三海堡周辺の漁業の現状というものをどういうふうにとらえていらっしゃるか、この点からお答えいただきたいと思うのです。
  152. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 第三海堡の周辺につきましては漁業権漁業は現在存在いたしておりませんけれども、小型底びき網漁業でございますとか小型、中型のまき網漁業あるいは船びき網漁業、さらには刺し網漁業というようなものの好漁場でございまして、こういう好漁場であるという点から我々といたしましても、先ほど申し上げましたように第三海堡の問題につきましてはあくまでも関係漁業者の了解なり工事の影響の最小化ということを念願している次第でございます。
  153. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 そうなると、もし撤去作業が行われてその作業に伴って海堡がなくなる、こういうことになると、漁業にどのような影響が生ずるとお考えなのか、その影響をどういうふうに受け取っていらっしゃるか、お尋ねをいたしたい。
  154. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 第三海堡の周辺はいわば人工魚礁という感じでございまして、その魚を集めます効果というものも相当大きい、したがって先ほど申し上げましたいろいろな漁法が営まれておる好漁場ということを当方としても理解しているわけでございます。したがいまして、その撤去によりまして漁業への影響が出るということも予想されるわけでございますけれども、水産庁といたしましては、漁業への影響というものをあくまでも最小限度にするということを前提といたしま して、先ほど申し上げましたように開発保全航路区域指定に同意してきたということもございますし、今後ともあそこの漁場を守っていきたいということでございますので、具体的な影響につきましては事業主体がこれから調査なり予測たり評価ということを行うことになろうかと思いますので、こういうものを十分見守りながら対処してまいりたいと思っております。
  155. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 この第三海堡が撤去されることとなりますと、まずここでもって操業している漁民の行き先はなくなるだろう、こう思うのです。そこで私は、この第三海堡が撤去されるには、河川による汚染物質流出量の削減とか海底の改善とか東京湾浄化対策等を講じまして漁場を回復させることがまず第一じゃないかなと思うのです。また、昭和五十三年に第二港湾建設局長から千葉県知事に文書が提出されたわけです。それを読んでまいりますと、東京湾の漁業の長期安定操業が確保されることが前提であろうというふうにきちっと書いてあるわけです。この点については長官はどういうふうに受け取っていらっしゃるのかどうか、お答えをいただきたい。
  156. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 東京湾の漁業につきましては、ひところに比べますとその規模は若干縮小してまいっておりますけれども、最近でも全体で五万トンから六万トンという漁獲量を上げておりまして、マイワシでございますとかカタクチイワシそれからスズキ、コノシロ、それから貝類というようなものを比較的安定的に漁獲してきているわけでございます。それと同時に、現実に多くの漁業者が東京湾で操業しているということもあるわけでございまして、ただいま先生から御指摘がございましたとおり、このような漁業実態というものがあくまでも尊重されまして長期的に東京湾が漁業生産の場として維持されていくということは我々といたしましても必要と思っておりますので、水産庁といたしましても、こういう東京湾の漁業の振興というものにつきましていろいろな形で努力を重ねてまいりたいと思っております
  157. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 この第三海堡の最後のお願いですけれども、私は、東京湾における漁業の役割というものを関連して提案も申し上げてこの対策を講じていただきたい、こう思って質問しているわけですが、東京湾周辺につきましては従来からいろいろな開発計画があったわけでありますが、それがそれぞれに実施に移されてスプロール的な開発が進んでいると言っても過言ではなかろう、こう思うのです。そのような中で、昭和三十八年には漁業権の放棄があり、その後も漁業は衰退の道を歩んでいるのではないかと思うのです。一方、東京湾の漁業には消費者の根強い需要によって支えられたものがあるわけですね。すなわちいまだ江戸前の魚、こういう言葉で言われている。また浅草ノリの生産といったもの、こういうふうに東京湾に関係あるものが今日まで言い残されているし、生き残っているわけですけれども、最近ではまた遊漁などの住民と漁業との新たな触れ合いの場も求められたりしているのが東京湾です。いわゆる都市型漁業の振興というものもこれから必要ではないか、こう思っております。  そこで、水産庁に伺っておきたいのですけれども、東京湾の漁業の役割についていかに考えておられるのかどうか。特に東京湾の開発は、総合的な将来指針のもとで行われるべきでありますけれども、水産庁は健全な漁業を維持する、また健全な漁業を発展させる立場から積極的にこれに参画をして、そして大いに発言をしていただかなければならぬ、こう思っているのです。さらに東京湾海洋牧場構想といったものもあるわけでありまして、生産の場として東京湾を見直すことも必要であろう、こう思っているわけです。御見解をいただきたい。
  158. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 先生からお話がありましたように、東京湾は魚を初めノリあるいは貝、こういうような新鮮な魚介類というものを大市場でございます東京市場というものに供給しているわけでございますし、そういう魚の生産の場というだけではなしに、近年増大してきております国民の海洋レクリエーションなりあるいは釣り、こういう新しい需要にもこたえる大切な海なわけでございます。  こういう観点から、水産庁といたしましても、もちろん東京湾の果たしておりますこういう重要な役割というものを今後とも伸ばしていくという基本姿勢でございまして、東京湾におきます漁業が維持、発展できますよういろいろな開発計画のチェックにつきましても積極的に水産行政の立場から発言してまいりたいと思っておりますし、それから、各種の漁業振興施策というものも積み重ねたいと思っておるわけでございます。それに加えまして、特にただいまお話ししましたように、東京湾という都市そのものに立地しているということから申しまして遊漁と漁業との秩序ある共存ということがどうしても必要でございますので、先般成立させていただきました遊漁船業の適正化に関する法律、こういうものの適切な運用というものを図りまして、ぜひその辺の調和というものを図ってまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  159. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 ちょっと時間の関係で水産関係を後回しにしたいと思うのですが、がらりと発想を変えまして、市民農園の普及についてお尋ねをいたしておきたいと思うのです。  最近、新しい言葉として市民農園という言葉が聞かれるようになってまいりました。これは、首都圏では、地価の高騰によりまして庭つきの一戸建ての住宅はもはや庶民の夢、こうなった存在でありまして、この点に対する政府責任は私は重大であると言わなければならぬ、こう思っております。最近建設される住宅はマンションばかりでありまして、土の感触を味わうことができなくなっているのが現状だろう、こう思うのです。そのかわりと言って、土に愛着を持つ市民によって小さな農園、一区画十平米から十五平米ぐらいの、契約期間が一年未満、こういうのがございます。いわゆる小さな農園、これが人気を呼んでおりまして、募集をすると、調べてみますと抽選倍率が二倍から四倍もある。これは恐らく自然志向とスポーツ感覚で畑仕事を楽しむ人が増加しているのが現状じゃないかな、こう思うのです。  そこで、一方、我が国の市民農園は制度的に認められていない。非農家への農地の貸借を禁止する農地法等がネックになっている。ここに来て今以上の供給は難しいのが現状であろうというふうに思います。また、既存の市民農園については、一区画の面積の狭さ、または農園関連施設の貧弱さ、都市景観との不調和などの問題点を指摘する声もあると私は聞いておるわけですが、希望の多い割には市民農園の安定的発展や内容の充実について阻害する要因もあるわけでありまして、定着したものとはなっていない、こう思うわけです。農水省として市民農園についてどのような見解を持っていらっしゃるのか、この点をまず伺っておきたい。
  160. 松山光治

    ○松山政府委員 委員指摘ございましたように、近年都市住民の余暇活用と申しましょうか、レクリエーションというふうな観点から土に親しみたいという希望が非常に広がっておるという事情、そういう中でいろいろな形態のものがあるというふうに理解いたしておりますが、いわゆる市民農園というのがかなりふえてきている、こういう実態にあることは承知をいたしておるわけでございます。また、私どももこういった要望に適切にこたえていくということは、都市の方々に農業に対する理解を深めていただくといったようなことだけではございませんけれども、その他いろいろの観点からかなり意義のあることではなかろうか、このように考えておるわけであります。  今、私どもといたしましては、農地法との関連のお話もございましたけれども、既に都市近郊におきますこの種の農園の扱いの問題につきまして、農地制度上の扱いといたしましては、いわゆる入園契約方式で扱っていったらいいのじゃないかといったようなことを内容といたしました通達を五十年に発しまして、その適正な開設なり運営を図っていくような指導をさせていただいてお る。私ども、やはりこういったニーズに適切にこたえていくにはどうすればいいのかといったような観点から今後ともこの問題を考えていきたい、このように考えておる次第でございます。
  161. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 ところで、都市に農地は必要ではないのかどうかということ、都市に農地は必要かどうかという点をどういうふうに政府はとらえていらっしゃるのか、まずお答えをいただきたい。
  162. 松山光治

    ○松山政府委員 御案内のように、都市におきます土地利用につきましては、都市計画法のもとで市街化区域と市街化調整区域という形での線引きをいたしまして、申すまでもなく市街化区域は十年以内に市街化を促進すべきというふうなことになるわけでありますが、一定の地域合意の中での適切な土地利用を進めるというのが基本的な考え方だというふうに思っております。広い意味での都市というふうな観点からいたしましても、特に市街化調整区域を中心といたしまして一定の農地が維持されるということは、特に生鮮食料品を中心といたしました農産物の安定供給という点からも意義のあることでございますし、かつまた緑の保全という点からも非常に重要な役割を果たしておる、このように考えておる次第でございます。
  163. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 私調べてみますと、全国で市街化区域農地は現在二〇%近く残っているわけですね。東京でも一〇%ぐらいはある、こう言われているわけです。こうした農地について、農水省は積極的に保全しようとする政策を放棄しているのじゃないか、いわゆるまま子扱いにしているのじゃないか、こう私は思わざるを得ない。建設省都市局は、ガーデンパーク整備事業という名称で六十四年度から市民農園を都市近郊に整備しよう、こういうふうにしていると聞いております。似たようなことは、分区園緑地事業という名称で何年も前から実施していると聞いておりますが、農水省はやっと六十四年度予算で市民農園の実態調査を手がける、また市民農園を備えたふるさと体験農園を新農業構造改善事業の中で進めよう、こうされている。これまで市民農園の実態調査もしておられない、今のところ、聞いてみると統計もないという。いわば市民農園といえども農地でありまして、農地は農水省の所管であるはずでありますから、農地のあらゆる有効利用を考えるのは農水省の職務だと思うのです。その基礎となるべき統計もとっていない、こういうのでは怠慢と言わざるを得ないと思うのです。お答えをいただきたい。
  164. 松山光治

    ○松山政府委員 市街化区域内の農地だけではございませんで、全国各地に例えばもぎ取り園だとかいろいろな形のいわゆる市民農園的なものがあるわけでございますが、そういうものも含めまして一応私ども六十二年十月段階で全国で八千三十七カ所、総面積が約三千百ヘクタール程度に及ぶものがそういうものの対象になっているという数字を把握いたしておるわけでございます。  今、市街化区域内の農地についての農林省考え方についてのお話もあったわけでございますが、先ほども申しましたように、市街化区域、都市計画法上はおおむね十年以内に優先的、計画的に宅地化すべき区域である、こういうことになっておるわけでございますので、農政上の扱いも農地転用は届け出にしておる、それから基盤整備等の効用が長期に及ぶような施策をここで実施するのはいかがなものか、ただ当面の農業の継続に必要な施策は実施していく、こういう基本的な考え方をとっておるわけでございます。  他方、現実には都市施設の整備がなかなか進みにくいということの関連もございまして、市街化区域内でまじめに農業を継続しようとする人が存在しておるということも事実でございます。緑の保全というようなこともございます。したがいまして、私どもとしては、このような市街化区域内の本来的な性格というものと現実の状況を踏まえながら、住民の合意のもとに線引きの見直し等都市施設の整備等を行いながら、一方では計画的な宅地化を進めていただくと同時に、市街化区域内に存続いたします農業についてはその継続が可能となるような配慮をすべきものと考えておる、これが今私どもの市街化区域内農地に対する考え方でございます。  なお、市街化区域内に設けられましたいわゆる市民農園につきまして農機具のセットでございますとか、格納舎でございますとか、給水施設といったような一定の条件整備を必要とする場合があるわけでありますが、これについては農業近代化資金の融資対象ということで施設整備のお手伝いをしておる、このように申し上げておきたいと思います。
  165. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 私は、市民農園は都市の住民と農家のパイプ役となって都市の住民の農地に対する理解を深めることができるという点では大変いい面じゃないかと思っております。そうした意味からも市民農園の安定的発展をさせる必要があるのではないかと思うのです。肝心の農地法が阻害要因となっている現状であります。御承知のとおり農地法では非農家の農地所有が認められておりません。そのために市街化区域農地は座して死を待つのみだろうと思うのです。現状では農地法で逆に農地が失われていると言っても言い過ぎではなかろう、こう思うのです。そこで都市住民も目の前の農地を農地として利用する道が閉ざされている。農家が強いて区画農園にして貸し出すとなると、農地ではないと認定されまして雑地の取り扱いを受ける。そうしますと宅地並み課税よりも高い税金がかけられる。農水省はこうした農地法のネックについてどのような考えを持っていらっしゃるのか。  農水省も五十年にレクリエーション農園通達を出しております。これは調べてみますと、入園契約の方式で一年未満の短期のものならば賃貸借やあるいは使用貸借等の権利の設定に当たらないという解釈を示したわけです。要するに一年未満なら農地の貸し借りではなくて単なる入園契約で済む、こういう解釈ですね。そこで、農地法が非農家に農地を貸すことを認めていないために、一年の期限は市民農園を適法とみなすための便法だろうと思うのです。そうなりますと、農水省は市民農園を認めるための解釈上努力を払ったことは認めますけれども、現実と乖離したものでは何の意味も果たさないのじゃないか、こう思うのです。せっかく肥料をぶち込んで十分なよい土壌にしてそして作物を何かつくる、ところが翌年はもうだれかの土地になってしまう。要するに借りられてしまうし、また戻されてしまうということになります。愛着がわかないのは当然だろうと思うのですね。  私は、都市の農地はこれからもできる限り残すべきであるというふうに思っている。こそくな解釈の変更で済ますのではなくて、農地法を改正して市民農園の阻害要因を改めなければならぬ、こういうふうに思うのですが、政府はどのようにお考えか承りたい。     〔月原委員長代理退席、委員長着席〕
  166. 松山光治

    ○松山政府委員 委員からお話ございましたように、現在のレクリエーション的な農地利用につきましては、権利取得を伴わない入園契約方式ということでその適正を期してほしいというような指導を実はいたしておるわけでございます。今法律を変えたらどうかという御提案があったわけでございますけれども、確かに一定の法的な整備を行いますことによりまして権利関係が明確化すると申しましょうか、安定的な利用になるといったようなメリットが一つあるわけでございますが、同時に、現在農政上推進しております中核農家への土地利用の集積といったような方向との関係をどのように整理していくか、また権利取得を認めるとした場合の投機的な土地取得なんかとの関係を一体どういうふうに整理したらいいんだろうかというようなこともございまして、そういう意味ではこれからかなり幅広い観点から検討を深める必要のある問題だというふうに私どもとしては今考えておるわけでございます。  なお、固定資産税の扱いもあったわけでございますけれども、固定資産税の取り扱いについて、現状を若干御説明させていただきますと、農家がレクリエーション農園をみずから開設いたしまして、それを入園契約の形で都市の住民に利用して いただいておるといったような場合の農地で、いわゆる長期営農継続農地の面積要件等を満たしております場合には、現在も農地並みの課税ということになってございます。それから、レクリエーション農園をつくる場合に地方公共団体が借りてつくっているという場合があるわけでありますが、無償で地方公共団体に貸しているといったような場合には非課税になる、そういった一応の扱いはされておるというふうに御説明させていただきたいと思います。
  167. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 東京の板橋区には現在三十一の区民農園があるわけですね。一区画十五平米、七万九百七十四平米の広さがあるわけです。これは二十年の歴史があるというふうに聞いております。ところが、五十八年をピークに数が減少してきているとも聞いておりますし、その理由が、区民農園といっても区の所有ではなくて農家からの借り地で、相続が起きると返還を求められる、こういう形になっている。農家で区民農園として貸していると、農地ではなくなり、先ほど申しましたように雑地としてみなされて宅地よりも高い税率が課せられる。また、相続税納税猶予制度も適用されない、こういうことになるわけですね。ダブルパンチを受けることになるわけですから、私は、農地を農地として有効利用しているのであれば農地として見ないのはおかしい、こういうふうに思うわけです。都市に緑を増すために、相当の予算を組んで公園や斜面緑地等の整備をしておられるわけです。また他方、農地が残らないように市民農園に冷たい税制をしているのは全く矛盾しておりはしないか。何らかの税制上の優遇措置に与えられない限り、市民農園が都市近郊に根づくことは難しいというふうに私は思っているのですけれども、この点どういうふうに考えておられるのか。
  168. 松山光治

    ○松山政府委員 固定資産税の扱いはただいま申し上げたとおりでございますが、お尋ねのございました相続税の関係でございますけれども、農家が自分が経営するという形でいわゆる市民農園を経営しているような形の場合につきましては、現在も相続税納税猶予制度の適用対象になっておるわけでございます。  問題は、今委員から御指摘がございましたように、農地を人に貸して市民農園を開設するといいますか、そういう形態のときの相続税の扱いが問題になるわけでございますが、これは実は単なる市民農園だけではございませんで、農地全体についても実は同じ扱いになっておるわけでございます。結局、みずから営農する、そういうところに力点を置いた現在の相続税の納税猶予制度の扱いとなっております関係上、現状以上にさらに突っ込んだ措置をとっていくといったようなことに相なりますれば、土地税制全体との絡みの中で、恐らくかなり突っ込んだ議論が必要になってくるような問題ではなかろうか、このように理解をいたしておるところでございます。
  169. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 本委員会から本年六月から七月にかけての菊池委員長を団長とする欧州各国農林水産事業調査議員団が派遣されましたが、西ドイツのデルレタールのクラインガルテンを視察された報告書が出ております。私、これを読ませていただきましたらば、一区画当たりの面積は三百五十平米前後のものが多くて、視察をされましたクラインガルテンの賃貸し料は一区画年間百五十マルク、一万一千二百五十円程度である、こういうふうになっておりますが、管理不良等の一定要件がない限り解約ができないということで、永続的な利用が可能となっている等の特色を持っている、こういうふうに記されております。  西ドイツのクラインガルテンは古い歴史を持っておりまして、現在でも国内野菜消費の三分の一はクラインガルテンによって生産されているというふうに聞いております。過去のドイツの緊急時におけるクラインガルテンでの生産が果たした役割は、これは歴史が証明しているところとなっておりますが、農水省はおくればせながら六十四年度に先ほど申しましたように市民農園の実態調査を手がけるほか、また市民農園に備えた新農業構造改善事業の中で進めることにしている、こう聞いております。西独型のクラインガルテンをすぐに我が国に取り入れることは難しいかもしれません。いわゆる都市計画との兼ね合いもありましょうし、あるいは地価の抑制等難しい問題があるわけでありますけれども、もうそろそろ日本型のクラインガルテン法の検討をすべき時期が来ているのではないかと思うわけでありまして、この点について御見解をお尋ねをいたしておきたいと思います。
  170. 松山光治

    ○松山政府委員 御指摘のように、西ドイツのクラインガルテン法ないしはクラインガルテンの制度というのはかなりの歴史もございますし、我が方と大分事情が違っておると思います。そのままそれをまねするというわけにはなかなかいきにくい実態があるということは、委員指摘のとおりでございます。  市民農園法的なものを検討する時期ではなかろうかというお話があったわけでございますが、先ほどの農地法の扱いとの関連でも申し上げたところでございますけれども、要はこの問題は、そういった法制化を進めることのメリットと、現行の農地法体系あるいは先ほど申しましたような土地の投機的取得との関係、その他かなり幅広い観点からの検討を必要とする問題だと思っております。そういう意味では、これからの検討課題にさせていただきたいというふうに考えておる次第でございます。
  171. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 局長立場もよくわかりますけれども、私が今申し上げましたいわゆる農地法のネックの問題、相続税の問題等も含めてこれを十分前向きに検討していただいて、私が要望申し上げているような点をぜひ実現を図っていただきたい、こう思うのです。  市民農園の最後になりますけれども、これから我が国は高齢化社会を迎えるし、もう確実に高齢化社会になっているわけでありますから、その高齢者の方々に生きがいのある生活を営んでいただく、それには市民農園は格好の場所を提供することになろうと思うのです。今後高齢化社会の到来に伴いまして、財政的な理由から、約束された福祉や年金が凍結されたり、あるいは見直されないとも限らないわけでありますから、市民の身近に緑のストックを持つことは、下支えする意義を有しているというふうに私はとっているわけであります。単に農水省のみならず、厚生省なりあるいは政府全体なりということを考えて取り組んでいただかなければならぬ、こう思っております。  最後に、私の要望なり今まで質問をしてまいりましたこれも含めまして、最終的にどういう見解を持ってこれに臨まれるのかお尋ねをしてこの問題を終わりたい、こう思います。
  172. 松山光治

    ○松山政府委員 都市住民に農業についてよくわかっていただくということ、それから今委員から御指摘のございましたような老人の生きがい対策という側面、そういった意味でこの問題はなかなか重要な側面を有しておる問題だというふうに認識をいたしておるわけであります。委員の御質問の中でも御指摘のございましたように、これまでも構造改善事業を活用したり、あるいは近代化資金を活用するといったような形で施設整備のお手伝いもしてきておるわけでございます。  法制上の扱い、その他検討を深めなければならぬ問題が多々あるわけでございますが、私どもとしては、今後ともこうしたニーズに応じました市民農園の開設、運営が適切に行われるよう必要な条件整備を図ってまいる、こういう考え方のもとに引き続き所要の検討を進めていきたいと考えておる次第でございます。
  173. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 最後に、水産関係に戻りまして、一、二問ちょっとお尋ねをしておきたいと思うのです。TBTOの問題をどうしても取り上げざるを得ませんものですから。  TBT化合物によりますところの魚介類の汚染について、昭和五十七年ごろから本委員会でも何回か取り上げてまいりました。また、最近新聞等に報じられておりますが、漁業界にとって漁場の環境汚染の問題は極めて重要な問題でありまして、その取り扱いについては慎重にしなければい かぬ、私はこう思っておる者の一人であります。なぜならば、魚が汚染されるということになりますとマスコミが大きく取り上げまして、そして本来被害者であるところの漁民の被害が魚が売れなくなることによってさらに拡大することになりはしないか、こういう二重、三重の心配をいたすわけです。しかしそれとても、消費者が魚の安全性を信頼して安心して食べてもらえば、これはひいては漁業経営の向上、安定にもつながるわけでありまして、このような角度から私はお尋ねをいたしたいと思うのです。  TBT化合物の慢性毒性についてはいまだ化学的には解明されておりません。しかし、欧米諸国においては一部その使用を禁止しておりますし、また我が国におきましても、養殖用の漁網への使用は全漁連が中心になって自主規制をしているわけです。しかし、漁業ではまだ定置網で使われております。それにも増して大きいのは、一般の船舶、特に漁船の船底塗料に使用されておるのが大部分のようでありますけれども、この点水産庁はどういうふうにとらえていらっしゃるのか、まずお尋ねをいたしたい。
  174. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 ただいまお話ありましたように、TBT化合物の用途は主に漁網の防汚剤、それから船底塗料というものでございます。それで、このTBT化合物につきましては、本来は自然界には存在しないというものでございまして、それが漁業の生産の場である海洋に放出されているという現実は、我々といたしましても非常に憂慮しておりまして、過去いろいろな指導を行ってきているわけでございます。特にTBT化合物を使っております漁網の防汚剤につきましては、従来からその使用を自粛するという指導をいたしてきておりまして、ただいま先生からお話がありましたように、養殖につきましては自主規制という形にもなったわけでございますけれども、この問題の重要性にかんがみまして、改めてことしの十一月に定置網を含めまして使用を自粛するよう関係者に指導を行ったところでございます。それから漁船の船底塗料につきましても、TBTOを含有しない塗料でございますとか、あるいはTBTOを含有するといたしましてもできるだけ含有率の低い塗料を使うようにというような指導を同じく十一月に関係者に対して発出しておるところでございます。  それで、水産庁といたしましては、これらの指導というものがきちんと遵守されますように、これからも指導の徹底というものを図ってまいりたいというふうに考えております。
  175. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 そこで、TBT化合物の危険性が言われながら依然として使われているのは、これにかわるいわゆる薬剤がその効果の面からあるいは経済性の面から発見されていないからではないかと思うのですが、しかし塗料工業界では代替剤の開発に力を入れているというふうに私は聞いておるわけです。この問題は漁業界の問題ではなくて、全国民的な最もかかわりの深い環境問題でありますし、国みずからその開発を急ぐべきであると思うのです。また、薬剤に頼るのではなくて、先ほど毒性の少ないものとかいうふうに答弁されておりますけれども、物理的な方法によって船底等の付着物を除去する機具等があるやにも聞いておるわけでありますが、その開発普及に力を入れるべきであると思うのです。現時点におけるこういう除去の方法なり開発の進捗状況なりをどういうふうにとらえていらっしゃるか、お答えをいただきたい。
  176. 田中宏尚

    田中(宏尚)政府委員 代替漁網防汚剤の開発につきましては、ただいま先生からお話がありましたように、全漁連が学識経験者によりまして委員会を設置して、安全確認防汚剤の登録制度というものをことしの一月にスタートさせたわけでございます。この制度で現在十二品目の代替漁網防汚剤というものが登録されている次第でございます。  それから、いろいろと付着物を除去いたします機具、こういうものにつきましてもいろいろな形で研究なり開発されている事例はあるわけでございますけれども、残念ながら、現時点で効果的な機具というものはまだ開発されてない状況でございます。最近一つのニュースといたしまして、製法が一つ開発された。非常に細かい繊維を立毛させますと、薬剤を使用しないにもかかわらず相当な防汚効果が出るというような繊維のつくり方というものができてきておりますので、この極細の繊維を網に加工したものの防汚効果というものにつきましてもうちの研究所で試験に着手するというようなことも行っておりますので、こういういろいろな努力を積み重ねまして何とか従来のものにかわる安全な防汚剤なりあるいは防汚方法というものの開発に今後とも努めてまいりたいと思っております。
  177. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  178. 菊池福治郎

  179. 木下敬之助

    ○木下委員 先日、カナダのモントリオールガットウルグアイ・ラウンド中間見直し閣僚会議が開かれました。これは大変重要な会議で、私も注目して眺めてまいりました。  その注目していた点の一つに、我が国の米に直接の関係のある問題としてアメリカの精米業者団体RMAの方からアメリカの通商の方にガット違反だという提訴があって、それを却下する折にヤイター通商代表が発表されましたものの中に条件が入っておる。これが、このウルグアイ・ラウンド中間レビューにおいて日本が協力的でなかったりすると提訴の再提出を促す、こういうことが言われておりまして、この点に特に注目をしてまいったのでございますが、報道によりますと、ヤイターさんが対日米(こめ)の提訴を促す考えはない、日本代表団の参加は立派であった、日本政府はあらゆる問題でアメリカへの協力を惜しまなかった、このように評価して再提訴は促さない、こういう決定をしたように報道されております。この点で、政府としてはこれをどう受けとめておられるのか、そしてまたアメリカ我が国のどういった努力を評価してのこういった決定であるのか、この点をお伺いいたします。
  180. 塩飽二郎

    ○塩飽政府委員 ヤイター通商代表が、中間見直しにおける我が国対応ぶりについて、今委員の方からお話がございましたような評価をしたというふうに聞いておるわけでございますが、何を根拠に日本対応についてそのような積極的な評価が行われたのか、必ずしも定かではないわけでございます。  農業以外の交渉分野、これは全部で十四項目くらいございます。その中ではアメリカ立場日本立場がそれほど大きく隔たっているわけではございません。むしろアメリカ日本主張というものは、農業以外の分野では相当共通の部分がございますので、これまでにも同じような立場から交渉の準備に参画をしてきております。したがって、モントリオールでの我が国対応でも、そういった分野ではアメリカが自分たちと同様の立場をとる日本対応ぶりについて評価をする可能性があったのかなというふうに見るわけでございます。  農業につきましては、御承知のようにアメリカ農業保護を完全撤廃すべきであるという立場をとっておりまして、その立場が特にEC考え方と隔たりがございまして、今回合意に至らなかったわけでございます。我が国は、この長期の目標につきましては、食糧安全保障ですとか環境の保全などに農業が果たしている多面的な役割が今後とも農産物貿易を律するルールに反映されるべきであるという考え方をとりつつ、一方では農産物についても一層の自由化の進展のもとでの貿易の拡大を図ることが重要であるという立場でこれまでも対応してきております。このような我が国対応ぶりにつきましては、昨年の十二月の我が国交渉に臨む提案あるいはその後の補足の説明等におきまして我が国立場を説明してまいってきておるわけでございまして、そのような我が国の真剣な対応ぶりについてアメリカとしても評価をしているのではないかというふうに推測されますけれども、具体的な評価の根拠について必ずしも 定かではないわけでございます。
  181. 木下敬之助

    ○木下委員 今ずっといっぱいお話しになりましたけれども、ちょっと何点か確認させてください。  まず、評価はされたけれどもそういう全体的なものなんであって、裏で何か日本の米自由化問題が議論されたとか約束してきたとか、こういったことはないわけでございますね。
  182. 塩飽二郎

    ○塩飽政府委員 そういうアメリカ側の農業も含む日本側態度についての積極的な評価がございましたので、今委員の方から御指摘がありましたような見方が出てくる可能性もわかるわけでございますが、私ども承知している限りでは、決して日本側は今お話のありました例えば米の問題につきましてこれまでの日本主張を変えるような立場は全くとっていないわけでございまして、大臣からも先ほどからお話し申し上げておりますように、米の問題につきましては、国内における米の自給方針を維持する観点に立って、かつ、ウルグアイ・ラウンドの中でその他の国が同様の問題に、ついて討議をする場合には我が国も米の問題に、ついては多国間の場で討議をするという基本的な立場があるわけでございまして、その立場につきましてそれと違った立場をとった経緯は全くございませんで、そういう意味ではヤイター代表の評価がそのようなものに根拠があるということは全くないわけでございます。
  183. 木下敬之助

    ○木下委員 もう一、二点確認させていただきますが、そのヤイターさんが、これはたしか十月二十八日ですか、このときに却下して条件をつけた、この再提訴を促す可能性のあるという条件だったわけですが、これでヤイターさんのつけた条件についてはもう決着がついた、ヤイターさんの方で再提訴を促すことはもうないと考えておられるかどうか確認いたします。
  184. 塩飽二郎

    ○塩飽政府委員 ウルグアイ・ラウンド中間見直し会議の直後にヤイター通商代表がそのような立場を表明いたしております。我が国の代表に対してもそういう立場を表明いたしましたし、記者会見でもそのような発言をしておりますので、三〇一条却下の際の条件でございました我が国対応によっては再び三〇一条の手続に戻る可能性があるという立場であったわけでございますが、少なくともそういうヤイターの明確な表明がございましたのでそういうことはないというふうに理解をいたしております。
  185. 木下敬之助

    ○木下委員 そちらが再提訴を促すことはないでしょうが、RMAの方はまた自分の方で何かの機会に提訴するということも考えられるのですが、その点はどうですか。
  186. 塩飽二郎

    ○塩飽政府委員 RMAの具体的な今後の対応ぶりについては、必ずしも私ども承知をいたしておりません。RMAはRMAとしてのいろいろな立場がありますでしょうが、私どもとして今後どういうような対応ぶりをとられるのか、必ずしも承知はいたしていないところでございます。
  187. 木下敬之助

    ○木下委員 この会議は、結局農業交渉が決裂したわけでございます。世界経済の安定成長等にとってガット役割は非常に重要であり、今回の決裂は、今後公正な農産物貿易ルールを構築するため大変な努力が必要になってくると思われます。特にアメリカEC意見調整が必要と感じるわけですが、先ほどアメリカECの相違点等のお話もございました。こういった点をどう認識して、来年四月まで交渉は継続するようでありますが、政府としては今後どういう見通しを持っておられるか、お伺いいたします。
  188. 塩飽二郎

    ○塩飽政府委員 ウルグアイ・ラウンド中間レビューで、農産物につきまして当初予定をされていました長期目標あるいは短期の措置についての合意が来年の四月までいわば延長になったわけでございます。そういう意味では、今後来年の四月まで貿易交渉委員会を舞台に再度関係国間の調整が行われることになるわけでございますが、アメリカ農産物貿易についての基本的な考え方から農業保護の完全撤廃という非常に強い態度アメリカがとって、それが一つの大きな原因になりまして今回合意が見られなかったわけでございます。今後こういうアメリカ基本的な立場にどのような変化が出てくるのかあるいは出てこないのか、そこら辺が四月に向けての合意の歩み寄りの可能性を判断する上で非常にポイントになるというふうに思われるわけでございます。そういう点につきましては、今後私どもアメリカのそういった基本的な立場にどのような動きが出てくるのか、またECその他の国にどのような変化が出てくるのかどうかという点につきまして十分注目をしながら、我が国のこれまでとってきました基本的なポジションを維持しつつ、そういった各国の状況を的確にとらえつつ、適切に対応していく必要があるというふうに考えておるわけでございます。
  189. 木下敬之助

    ○木下委員 米の輸入自由化問題というのは、これは国民にとっても大変な問題でございます。つくっておられる方だけじゃなくて、食糧の安全保障という観点からも国民みんなが関心を持っておるわけでございますが、政府は米の自給堅持を主張しておられます。政府主張を新ラウンドでの農業交渉の中にどのような形で組み入れて説得力のある論理展開をしていかれるのか。農林水産大臣中間見直しに対しまして、農産物貿易の一層の発展という点と食糧安全保障などの非経済的側面の二点を強調したように思いますが、この提案が受け入れられると考えておられますか。そして、もし受け入れられさえすれば米の完全自給を堅持できる、このように。お考えなのか、お伺いいたします。
  190. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 前々から申し上げておりますように、ウルグアイ・ラウンドの場において各国が抱えておる困難な問題を持ち出すときには、日本も米を含めた農産物について持ち出して議論をすることにやぶさかでない、決して逃げませんということでございまして、その場合米がどうなるのか、ちゃんと主張を通せるのかという意味のお尋ねだと思いますが、私どもは、整々とした論議をもって米の持つ特異な歴史的経緯、日本国民の主食であるということ、それだけではなくて、非経済性の側面も持っているわけでございますし、その中には食糧安保という点もございますし、あるいはまた自然環境、国土保全というような側面も持っておるわけでございますし、そういうことによって我々の主張を貫き通したい、こう思っております。
  191. 木下敬之助

    ○木下委員 ぜひ頑張って主張を貫き通して、説得をしていただきたいと思います。我が国はかつて食糧事情の大変悪かった時代等を経験しておりますから、食糧の安全保障という言葉国内で大変説得力がありますが、そういう経験がほとんどないような国におきましては同じような深刻な思いを持ってもらえるかどうかなかなかわかりにくい点もあろうかと思いますが、どうぞその点も大臣として精いっぱい頑張っていただきたいと思います。  次に、私の民社党では先日我が国の各地に農業調査団を派遣いたしまして、いろいろと農家の実態に即した御意見を伺ってまいりました。それを踏まえまして質問をいたしたいと思います。  私は特に畜産農家やミカン農家、こういったところを重点的に見て回りましたのですが、こういう農家で大変意欲的に、できることならば規模も拡大して将来に備えて頑張っていきたい、こういう希望を持っておられる方も相当におりました。しかし、そういった皆さんが口をそろえて言われますのに、自由化された後は一体どういうふうになるんだろうか、自分は意欲はあるけれども本当にやっていけるだろうか、どういう状況になるんだろうかと、将来がなかなか推測できないためにいろいろと不安を感じてなかなか踏み切れない、こういう状態のように思いました。こういった農家のためにいろいろと具体的にやっていただきたい施策もたくさんございますが、まずは今、日本農業の将来というものに明るい希望の持てるように、こういうことを考えていくことが一番大事ではなかろうかと思います。  とにかく今現在、農業を取り巻く状況というのは非常に、暗いイメージがございます。これは心理 的な面も相当あらわれておるようでございまして、今まで牛肉・オレンジは自由化しない、絶対にしませんと言いながら結局付押し切られて自由化した、だから米だって最後にはそうなるんじゃないか、こういう暗い思いをしておられる方がおられます。その方々の随分露骨な政府非難の言葉もたくさん聞いてまいりました。ここでそれを一々御披露はいたしませんが、皆さんのお耳にも届いていることと思います。農政不信は相当に今現在ひどいと思っていただきたいと思います。  農産物外交の脆弱性とか将来が不透明だとかいろんなことが錯綜して今の農業イメージを形成していると思われますので、私は日本農業というものは将来にわたって絶対不可欠で発展していってもらわなければならないものでございますから、何とかここで踏ん張って政府としては日本農業のイメージを明るいものとするための何か具体的なグランドデザインと申しますか、こうやればできるんだという農業未来像を明らかにしていただきたいと思います。そうすればやる気のある農家は自信を持って農業に取り組んでいってくれるのじゃないか、このように考えますが、政府の御意見をお伺いいたします。
  192. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 ただいまの先生の御指摘の点でございますが、今後の基本的な農政あり方につきましては、生産性が高く、産業として自立し得る農業を確立するために、さきの農政審議報告基本といたしまして、その後の事態の推移を踏まえまして、大臣の指示によりまして去る九月、「国際化への対応農業・農山村の活性化のための政策基本方向について」を農林水産省全力を挙げまして取りまとめたところでございます。今後はこの基本方向に即しまして、関係方面の御意見も十分お聞きしながら諸般の施策を充実し、守りだけではない、より積極的な農政を展開いたしまして先生指摘のように農業者が将来に希望を持ち、営農にいそしめるよう努めてまいる考えに立っているわけでございます。  なお、農業者が将来を見通しつつ営農を展開することができるように、現在の長期見通し、五十五年に作成したものでございまして、六十五年まで見通しているものでございますが、この現行の見通しにかえまして、新たな農産物の需要と生産の長期見通しを作成するために農政審議会の企画部会に需給見通し委員会を設けていただいておりまして、検討作業をお願いをしているところでございます。
  193. 木下敬之助

    ○木下委員 農家の方々に本当に意欲的にやってもらうためには、できるだけ本当のことを言って信頼感をまず取り戻していただきたいと思います。政府はああ言うけどというような気持ちがあれば、今言われた立派なものをつくっても、ついてきてくれなければそれは実現できないわけですから、まずいろいろなことの見通しに、少しぐらいそのときに反響が強かろうと本当の見通しを率直に言われる皆さんの姿勢に変わっていただきたい、これをまずお願い申し上げます。  そして同時に、それについていってそれ相応の投資と努力をするわけですから、見通しが間違ったときのいろいろな補償、これは価格の保証であるとか、もしくは借金が残ったらその借金返済に対するいろいろな手当てとか、そういったものも同時にお約束できるようにしていただいたら意欲的に取り組みやすいのではなかろうか、こう思います。  それから、我が国はいろいろな技術が本当に世界でも最先端をいっておりますので、農業におきましてもそういったものを生かしたよそにない新しいもの、効率のよいものといったものが求められております。品種改良とかバイオテクノロジーとか、こういったことも期待されてもう相当になります。何かこの品種改良、特にハイブリッド米等の情報等もありまして、こういうものが本当にみんなできるようになればすばらしいことだと私も考えますが、これは今どのように進んでおりますか。将来の展望とか見通しのようなものがあれば聞かせていただきたいと思います。また、バイオテクノロジーの成果といったものも、何か未来が明るくなるようなものでもございましたら、この機会にお聞かせを願いたいと思います。
  194. 谷野陽

    ○谷野政府委員 技術開発について二点お尋ねがございましたが、まず第一点のハイブリッドライスの件でございますが、先生指摘のように昭和五十年代の半ば以降この問題が各国で取り上げられまして、私どもも昭和五十八年から超多収稲の開発研究の一環として取り組んでいるところでございます。  ハイブリッド、一代雑種につきましては、日本で蚕についての技術が最初に実用化されまして、トウモロコシにつきまして、アメリカで穀類について大きな発展を見たわけでございますが、稲の場合にはトウモロコシと違いまして雄しべと雌しべが同じところについておる、こういうことでございまして、そういう意味で、一代雑種をつくる上では大変ぐあいのよくない植物の性質があるわけでございます。このため、片一方では雄性不稔、つまり花粉に稔性を持たないようなものを使う、それから片一方は花粉に稔性があるものを使うということでございますが、花粉に稔性を持たないものを使いますと、それが子孫を維持できない。このために、維持系でございますとか稔性回復というような非常に複雑なプロセスを組み立てなければいわゆる一代雑種としてのハイブリッドライスができないわけでございます。この点につきましては各国でそれぞれ苦労、苦心をいたしておりまして、私どもも北陸農業試験場を中心といたしまして北陸交一号といういわば試作品のようなものをつくることに数年前に成功いたしておるわけでございます。しかしながら、この品種はまだ実用的な品種というところには至っていないわけでございます。  そういう基本的な技術はできたわけでございますが、二つの品種が雑種でもっと強い力を持つ、雑種強勢がよく出るような組み合わせをやっていく。遠縁のものをかけますと非常に強くなるのでありますが、一方種が実りにくくなるというような問題もございます。また、日本の稲と外国の稲をかけますと、いいところもございますが味が悪くなる、こういうところもあるわけでございまして、現在それらの問題につきまして取り組んでいるところでございます。また、今申しましたように、雄の系統と雌花の系統を並べて植えまして種をとるという、大変採種コストがかかる、こういうようなことがございまして、その辺につきましての技術的な改善も今後の課題であると考えております。  しかしながら、いずれにいたしましても、ハイブリッドという手法は他の植物につきましても極めて有効な手法として用いられているものでございますので、稲につきましてもさらに研究を進め、この方向での一層の収量が多い、かつ味も実用にたえるという品種の開発に努力をしてまいりたいと考えているところでございます。  また、バイオテクノロジー全般につきましては、数年前に農業生物資源研究所という、バイオテクノロジーを中心といたします研究所を設置いたしましたほか、各研究機関の内容につきましても見直しを行いまして積極的に研究を推進いたしているところでございます。現在まで実用化されたものとしてよく知られておりますものは、成長点培養によりますウイルスフリー苗の供給がございまして、これらは実用からかなり普及の段階になってきているところでございます。また、牛の受精卵移植の技術につきましても、最近では普通の受精卵移植に加えまして、屠場におきまして屠殺をいたしました牛の卵巣を用いまして卵を培養いたしまして、体外受精をする、これを移植卵として使う、こういう技術もほば確立をいたしまして、現在では、近いうちに普及の段階に入っていくのではないかと予測をいたしておるわけでございます。  品種改良の世界でも葯培養、胚培養というような段階での幾つかの試作品が出ております。ハクランでございますとか、最近では民間でも千宝菜というようなものが出ておりますが、まだ非常に有力な品種が出たという段階には至っていないと ころでございますが、この分野は日進月歩でございます。私どもといたしましては、余り遠くない将来に実用的な品種をぜひ出したい、こういうことで国の試験研究機関、公立の研究機関、さらに民間でも一生懸命努力をしておるところでございます。今後ともさらに積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
  195. 木下敬之助

    ○木下委員 政府もやられておるし、一般でもいろいろな研究開発をされておると思います。政府のときは当然国民にみんなに広く利用できるようにしてもらえると思いますが、民間の場合、ある人が開発したものをほかの人が全然その恩恵に浴せないというのも問題でしょうけれども、逆に、せっかく開発した人にメリットがないというわけにもいかないと思います。こういったものはどのように考えておられますか、お伺いいたします。
  196. 谷野陽

    ○谷野政府委員 ただいま御指摘のように、研究開発につきましては、開発者に相応の開発費回収の機会を与えるために一定の保護を加えますとともに、それを公開をいたしまして広くこれを普及をしていく、こういうのが基本であろうというふうに考えております。  現在、いわゆるバイオテクノロジー以外の従来からの研究開発を含めまして、種苗の世界につきましては種苗法がございますし、また一般的な制度といたしまして特許法の制度があるわけでございます。種苗の場合でございますと、種苗の登録をいたしまして、これが認められますと一定の保護があるわけでございまして、その種苗の販売につきましては登録をした人、あるいはそれからしかるべき権利を得た者がこれを行う。一般的には、農家はその種を購入をいたしまして栽培をしていく、こういうことでございます。我が国農業経営の実態から見ますと、開発をされましたものにつきまして、やはりこれは広く農家に種苗を買っていただきまして、それで広くつくるというプロセスを通じて開発費が回収をされていくというのが過去においても実態でございます。今後ともこのような種苗法等のルールに従いましで研究開発が進められ、また登録等が行われたものにつきましては研究開発費が回収をされる、それを通じて農家あるいは消費者に全般的に利益が均てんしていく、こういうことになろうというふうに考えております。
  197. 木下敬之助

    ○木下委員 我が国農業の未来、完全な競争ができるかどうかはおきましても、海外との競争も意識にあってのいろいろな開発ということになります。ただいま言われましたようないろいろなことが我が国の中では相当な法の整備のもとに行われても、外国に対してもしそういったものが持ち出され、向こうでもどんどんやるというようなときに、何かちゃんときちっとした手が打てるのか、こういったことも今後いろいろと問題になってくると思います。どうぞ御検討をよろしくお願いいたします。  もう一点、各地を回ったときに聞いてきたお話をお伝え申し上げまして、政府の御意見を聞きたいと思います。  それは、土地改良区の土地改良のいろんな指導とか、それから農業改良普及所等を通じての営農指導、そして農協でもいろんな指導をなさっている。そのほかにも農業委員会等もございます。こういったものが縦でやられておって、もう少し横でよく連絡をとって何か一つの方向をやられたら、こういう声も出ておりました。そういった意味で、未来の農業、未来像をつくり上げていくという中にそういったことをぜひ考えていただきたいと思います。この点はどうお考えになりますか。
  198. 吉國隆

    吉國政府委員 農家に対します指導の面におきまして、普及組織とそれから関係機関、団体との連携を図っていくことが重要であるという御指摘でございます。私どももその点は非常に大切な問題であるというふうに考えている次第でございまして、現在普及事業に関連をいたしまして基本通達というものを出しておりますが、その中におきましても、普及所段階におきまして農家の代表、あるいは市町村、農協、土地改良区等の関係機関、団体の職員を構成員といたしまして農業改良普及推進協議会というものを設置をしまして、農家の意向もくみ上げながら、また関係機関、団体との協議をして、総合的な指導の効果が上がるように努めているところでございます。今後ともそういった趣旨で一層有効な指導ができるように努力をしてまいりたいと考えております。
  199. 木下敬之助

    ○木下委員 次に、ミカンについてお伺いします。  ミカンの需給バランス調整のため、園地再編計画により減反を実施される場合、減反面積の各県、市町村、農家への配分をどのように割りつけを行うのか、配分の基準はどのように考えているのか、お伺いをいたします。
  200. 吉國隆

    吉國政府委員 ミカンの園地再編にかかわります目標配分でございますが、私ども、この園地再編対策は需給均衡ということとあわせまして適地適産という考え方基本にいたしまして、不適地である園地をなるべく整理をいたしまして全体としての産業の体質強化を図っていく必要があるという見地から取り組んでいるところでございます。そういった意味で、全国レベルでの目標面積の府県別配分におきましても、平均卸売価格でございますとか加工原料用出荷比率、こういった要素も反映をさせまして、全国果実生産出荷安定協議会におきまして決定をして、府県別に配分が行われているところでございます。市町村農協段階におきましても、そういった適地適産ということを踏まえた考え方で配分が行われるように指導をしてまいっているところでございます。具体的には、市町村農協段階におきましてミカン園の適地、不適地を区分をいたしまして、これに基づいて農家に指導をしながら効果を上げていくというような進め方をしてまいりたいと考えている次第でございます。
  201. 木下敬之助

    ○木下委員 地域で聞いてきましたら、ミカン園のうち、現在管理をほとんどせず出荷も行っていない、荒らしたままになっているミカン園というのは今回の園地再編計画に含まれない、こんなふうに聞いてきたのです。適地適産ということで不適地を廃園にするという意味でいうなら、もう使っていないというところこそ一番先に廃園にすればよさそうに見えるのですが、それでは需給バランスへの影響がないということからなされないのかなとなかなか理解に苦しんでおるのですけれども、本来、こういう放置園とも言うべきミカン園も再編計画にちゃんと加えられて助成措置を実施されて、良好なミカン園の維持存続ができるようにする方が当然ではなかろうかと思うのですが、いかがでございましょう。
  202. 吉國隆

    吉國政府委員 今回取り組んでおりますミカン園地再編対策におきましては、全体の需給均衡という観点から全国で二万二千ヘクタールの、ミカン園を削減する、現在有効に生産されております面積のうちからそれだけを削減するという需給計画を基本にしているわけでございます。そういった意味で、先生お話しございましたように、全体としてやはり今まで有効な生産から撤退をいたしております放置園の問題につきましてはそういった需給調整上の効果がないという判断をせざるを得ないという問題がございますし、また、現在ちゃんと栽培をしているというところで苦労しながらミカンの木を切っていくという農家との間の公平上の問題ということにも配慮する必要があるというふうに考えておりまして、今回の対策の内容には含めない方針で進めているところでございます。
  203. 木下敬之助

    ○木下委員 先ほど申しましたように、減すという効果の点から考えればそのとおりだと思いますが、しかし実態として、そういう放置園があるのはいろいろな意味で、今やっても割に合わないからとか、また個別の事情もいろいろあると思いますけれども、そこは、需給の調整がされてよくなればまたそこに手を入れるかもしれません。そんな意味で、今やられてないからといって、この整理するチャンスにちゃんと助成をして、きちっと廃園にさせるということは、今言われた数字の枠の外にこの機会考えられてもいい大事なことで はなかろうかと思います。それは今の需給に関係なくても将来に対してはちゃんとミカンをつくる能力を留保したことになっているわけですから、決して今回の趣旨に全く外れるというわけはないと思います。そして、荒らしたままでほったらかしていると病害虫の巣となるのだそうですね。だから、その近くでミカンをやっている人たちは、隣が全然消毒してなくて病害虫の巣だと、自分のところだけ消毒してもそちらからいろいろな虫が飛んでくるからだめなものですから、わざわざ行って自費で、関係ない、荒らしているところの消毒までやるんだそうです。やはりこれは不自然なことで、今回だけただ場当たり的に今つくっている中から減すんだという考え方だけじゃなくて、この機会に一緒に廃しておけば将来のよくなった状態である程度そのまま計画的に農家がやっていけるわけですから、長い目で未来の見通しというところにそういうあいまいなものをできるだけ残さない方が本当にいいかと思いますし、先ほど申しましたように病害虫の巣となっているところを、今大変な農家、特にミカンをつくっている人がまたよそまでしなければならぬというようなことがないように、公平という意味でいえば、それは荒らしているのですから幾らか助成の考え方や金額等に差があってもしかるべきと思いますが、この機会考えたらよいと思いますが、どうですか。
  204. 吉國隆

    吉國政府委員 放置園になっているものの恐らく大半のものは農家の労働力事情なりあるいは土地条件、ミカンの品質、そういったようなことから放置園という姿になっているのではないかというふうに思われるわけでございます。この対策を進めるに当たりまして、従来からも実はミカン園の減反対策を進めてまいっておりまして、そういった過程の中で他の作物に転換をした、あるいは廃園をした方々もいらっしゃる、そういう施策に積極的に協力をしてやってくださった農家もたくさんいらっしゃるわけでございます。そういった方々に対して、それでは今の新しく決まった対策をさかのばって及ぼせるかということになりますとこれはなかなか難しいということになるわけでございます。そういった方々との関係におきましても、みずからの意思によって放置園とされた農家をこの対策の中で手当てをしていくということはなかなか難しい面があるわけでございます。  ただ、今先生おっしゃいましたような防除等の問題につきましては、周辺の農家が迷惑を受けるというケースもあり得るというふうに考えられますので、こういった問題については地域での話し合い等で適切な対応が行われるように、私ども植物防疫の事業等を通じまして必要な指導なり援助なりはしてまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  205. 木下敬之助

    ○木下委員 今御答弁されたことは、それなりにそういう考え方もわかるのです。過去の経緯やいろいろなものがあるでしょうから、勝手にやったそういうのにこの機会にまたそういうことをやってやる必要はないみたいな部分はあろうかと思いますが、じゃそれで不公平になる人は一体どういう人かというと、ほかの部分は別にして、とにかく一生懸命ミカンをつくってきた人たちに対して不公平になる、こういうことをおもんばかってやられるのなら、その不公平になるとおもんばかっておられる人たちがやってくれと言っているわけですから、決してそれを不公平と思わないわけです。私は、荒らしている人がこの機会に何かしてくれと言っているのじゃないのですよ、逆に、その隣でつくっている側の人がこの機会にあっちを廃園にしてもらったらいいのにと言っているのだということですから、ぜひそういった実態を踏まえて、ただ行政的な考えの中でその人たちに不公平だからと考えるよりは、本当に公平不公平でいうなら一つも不公平なことはないんだという考えを持っていただいてもよかろうかと思いました。  次に、やはりミカンの皆様方が、今後、将来付加価値の高いものをつくっていきたいということで、ハウスでやろうかとか品種をかえるにしても何年間かかかるということで、相当な投資もしなければならない状態にあると伺ってまいりました。それをするためには、こういう状況の中でそういう新しいことを考えていくのですから、無利子もしくは低利の融資等があれば積極的にやってみたいという声を聞きましたので、この点はどのように考えておられるかお伺いいたします。
  206. 吉國隆

    吉國政府委員 先般決定になりましたオレンジ関係国内対策におきまして、ただいま先生からお話ございましたようなかんきつの生産体質の強化に関する施策の拡充強化ということが盛り込まれているわけでございまして、一つは農業改良資金の拡充の関連で、ボックス栽培でありますとかハウス栽培といった新しい資金種類を追加していくということを進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。さらに、他の優良品種に改植をするとその間所得が低下をするという問題に対しましては、低利、末端金利三分の経営安定資金の融通をしていくというようなことを盛り込んでいる次第でございますので、御指摘のような今後のかんきつ農業の方向に沿いまして私どもできる限りの努力をしてまいりたいと思っております。
  207. 木下敬之助

    ○木下委員 それでは牛肉の方をお伺いいたします。  三年後の牛肉自由化に備えて肉用子牛生産安定等特別措置法が成立いたしました。しかし、畜産農家の自由化に対する不安というものは消えていなくて、大変大きい。聞いてみますと、これは子牛の保証基準価格や合理化目標価格などを明示していないことによる、このように思われます。政府畜産農家にできるだけ早く自由化後のアウトラインを明示する必要があると思いますが、いつごろ明示できるおつもりかお伺いいたします。
  208. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 お話ございましたとおり、今国会におきまして肉用子牛生産安定等特別措置法を御審議いただきまして、去る十六日に成立を見たところでございます。  この法律によりまして、昭和六十五年度から子牛生産者補給金制度が発足するわけでございますが、この根幹をなすものとして、生産される子牛につきまして一定の価格差補給をするために保証基準価格と合理化目標価格が決められることになっておりますが、この具体的な価格の決め方あるいはその算定方式によって具体的な額が決まるのはまだ先のことになろうかと思います。法律で規定した趣旨に従いまして、畜産振興審議会等の意見を聞いて決めていく仕組みになっております。  保証基準価格につきましては、法律の規定上、毎会計年度について当該年度の開始前に決める、ただ六十五年度については制度がスタートするときでございますので、いろいろな議論は前年度末までに行いまして、恐らく六十五年の四月一日に決めるという形になろうかと思います。それから、合理化目標価格につきましては、法律の規定では政令で定める一定の期間ごとに決めていくということを決めておりますが、私ども、区切りとしまして大体五カ年程度を考えてはどうかということで現在検討をしております。これも最初の価格水準というものは、六十五年度からスタートをすることになりますので、そのときから五年間という区切りの中で六十五年の四月一日に具体的な基準が決められることになろうかと思います。  御指摘のように、その絶対水準がどうなるかということについて関係者の関心が大変深いことを十分承知をしておりますが、法律の規定に従いまして適切な価格水準の算定、決定が行われていくよう、私どもも今後早急に検討をしてまいりたいと考えております。
  209. 木下敬之助

    ○木下委員 時間が迫ってまいりましたが、最後にもう一問。  農家の方々は今申しましたような不安等がありまして、今の値段が続くものならこれは大いに頭数をふやして頑張りたいのだと希望を持ちながら、将来がわからない。特に自由化された後のことがわからない。その未来のわからないものの一つに、和牛の高級な肉質のいいものならば海外に対抗できる、こういった考えも持っておりますし、私もそのとおりだと思いますが、いろいろな 報道等によりますと、海外の牛肉の方の肉質も、和牛の血統等を向こうに持っていって品質も日本人に合わせたものに変えられるのではないか、こういったことも聞いております。この点の可能性と、幾ら法的に外に出さないことにしても現実にはもう和牛の血統が外に出ておる。それに対して何か対抗措置がきちっととれるのかどうか、こういったことをお伺いいたしたいと思います。
  210. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 お話しございましたように、我が国の伝統的な肉専用種でございます和牛の肉につきましては国内の独自のマーケットがございまして、最近の状況下でも比較的有利な価格形成が行われておることは事実でございます。ただ、このようなマーケットの状態につきまして私どもやはり今後相当変わっていくだろうと思っておりまして、基本的には生産コストを引き下げ、全体としては需給が緩和し、価格がある程度下がっても対抗できるような体質というものを国内で確立をしていくということが必要であると思っております。  ただ、その場合にただいま御指摘のございました国内産のそういった伝統的な和牛の繁殖資源が海外に出る問題でございますが、現在までのところ、さほど顕著な動きは出ておりません。恐らく我が国固有の繁殖資源が海外に出た場合でもなかなか肉牛の体質等も気候、風土等の影響を受けるわけでございまして、単純に生産を海外に移転するということでは和牛の持っている特性が発揮されない、あるいはまた和牛の肥育のための飼料の供給形態なり、肥育期間が大変長くなるというふうな問題がございまして、外国で生産する場合にも一定のコストがかかるというふうなことがございまして、短期的に国内の生産に悪影響を及ぼす事態というのは非常に考えにくいと思っております。ただ、長期的に日本の市場へ向けて海外の対応もあり得る話でございますので、基本としてはそういった動きに対抗できる、国内における生産コストの低減といった形での条件整備というものが必要であろうかと考えております。  なお、こういった繁殖資源の海外流出について法的に規制をするというふうな問題につきましては、家畜の衛生問題として検疫規制を現在でも行っておるわけでございますが、それ以上の規制をすることについては、ガットのルールから見ましてなかなか問題があるという状況と認識をしております。
  211. 木下敬之助

    ○木下委員 時間が参りましたので。ありがとうございました。
  212. 菊池福治郎

  213. 山原健二郎

    ○山原委員 大臣、体の調子がお悪いと聞きましたが、恐縮です。  最初に、重複するかもしれませんが、ガットウルグアイ・ラウンド中間見直し閣僚会議について二、三お聞きしておきたいと思います。  モントリオールで開かれた中間見直しのための閣僚会議は、米国とECとの対立で、結論の得られないまま決裂をしました。この米国とECとの対立は、腕まくりをして非難の応酬をするなど、激烈をきわめたと伝えられております。この米国と徹底抗戦を展開したECの姿勢についてどうお考えになるか。我が国の場合は、昨年来ガット裁定の一括受諾あるいは牛肉・オレンジの輸入自由化の受け入れというふうに米国の要求をのんできた経過をとっておりますが、それと比べまして姿勢に明らかなコントラストがあるのではないかと思います。自国の農業を本当に守ろうと思えば、たとえ相手がいわゆる友好国家であっても、不当な要求には絶対屈しない、そういう構えが当然要求されるわけですが、今回の会議はそのことについて一定の教訓を示したのではないかと思いますが、この点についてどういう受けとめ方をしておられるか、最初に伺いたいのです。
  214. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 私自身、さもありなんという感想を持っております。お言葉じりをとらえるわけではでざいませんが、教訓とまでは考えておりません。私は出発する前にも申し上げました。これは参議院だったかに申し上げたのですが、また記者会見でも申し上げましたが、常識的、冷静に我が方は対応する、こういうことで出かけました。また、アメリカECとの間で相当激しいやりとり、大きい意見の食い違いがあるなということも聞いておりました。それだけに、教訓というよりは、さもありなん。けさほど来私がここでも答弁しておりますように、自分の国でもって意見が分かれておったのではやはり外交交渉にはならない。それじゃ農産物の問題について我が国内が意見が一本がというと、我々の考えと違う方もおられることは事実です。しかし、生産者も消費者も国民の大宗は私ども考え方に相当な理解を示してくれるという背景があればこそ、常識的に冷静に対応し続けられるものと私は考えておるわけでございます。
  215. 山原健二郎

    ○山原委員 教訓という言葉がちょっと、もちろん定義的なものではなくて私も使っているわけですが、二つ目の問題は、米問題は今度の会議には土俵に上らなかったわけです。しかし、多国交渉が難航する中で、米国が米問題を二国間協議に持ち込んでくるのではないかという懸念は、きょうの質問の中でも各議員の中から出されているわけですね。ヤイター米通商代表はモントリオール会議の最中に記者団に対して、RMAが米市場開放で再提訴しても受理しない考えを明らかにしたとも伝えられております。一方で、会議終了後の十三日に日本の米問題について、日本は米欧間対立に乗じてやり過ごすことはできないと述べたとも伝えられるなど、今後とも予断を許さない状況となっているように思います。こうした情勢の今後の動向いかんにかかわらず、米問題での二国間協議には応じない、この政府考え方に変更はないと受けとめてよろしいでしょうか。この点確認をしたいと思います。
  216. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 そのとおりでございます。  リン農務長官と私がお会いしたときも、先様の方から米は二国間では話し合わないことになっているのだ。私は、今朝来申し上げたように、おやと思うような感じもいたしました。私どもが言い出したことでありまして、そして、随分前からそういうことになっておりましたのにわざわざ先様からそういうお言葉があったということは、幸いなことであると同時に、我が方が冷静に粘り強く対応してきたその成果と言ってはちょっとおごり過ぎた言い方かもしれませんけれども、わかっていただいてきたなという感じでございます。しかし、ニューラウンドに向けて米欧中間レビューが四月に持ち越されたのに伴って、どういうことになっていくかということについては、私どもは注意深く引き続き関心を持っていかなければならない、こう思っておりますが、いずれにしても日米二国間で米の問題を取り扱うということはないと信じております。
  217. 山原健二郎

    ○山原委員 三つ目の問題は、同時に多国交渉における我が国政府の今後の姿勢についてでありますが、大臣は先月の八日、当委員会で、これは私の質問だったと思いますが、「米の部分的自由化というようなことは、私は考えておりません。しかるべきウルグアイ・ラウンドの場で議論するときになりましたならば、我が方の主張を貫き通したい」、こう御答弁をなさっておられます。この考え方をもちろん私は支持するものでありますが、これは佐藤大臣のお考えであると同時に内閣としての今後も変わらぬ考えであると思うのでございますが、その点は確認してよろしいでしょうか。
  218. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 さよう受けとめていただいて結構でございます。
  219. 山原健二郎

    ○山原委員 米に対するさまざまなテレビ、評論を通じての攻撃も展開されて今日まで来たわけですね。そういう中でありますけれども国民の世論調査の結果は、やはり食料はみずからの地で生産をすべきであるという世論が圧倒的に多いわけでございますから、そういう意味で今後四月に向けてどのようなことがあるか知りませんけれども、断固としてこれを守っていくという、その姿勢を貫かれるように要請をいたしまして、この問題についての質問を終わりたいと思います。  二つ目の問題ですが、これは私の地方に関する 問題でございまして大変恐縮に思いますけれども、実は、高知市に針木というととろがございます。ここはナシの生産地でございまして、新高梨というナシができるのです。新高梨というのは新潟県と高知県をかけ合わせたナシで、その名前を新高梨、こう呼んでおりまして、七十年の歴史を持っているわけです。この新高梨は各地で生産されますけれども、この針木地区の新高梨というのはダントツの、価格が高くもありますし、贈答品としてもまさに芸術品という性格を持っております。一つの実が一キロ以上、大きいのは二キロ五百グラム、こういう大きなものです。ただ大きいだけでなくて、風味もよくてまさに芸術品、天然記念物的存在であるとまで言われておるものですが、このところを四国横断自動車道が通るという発表がなされまして、地元は大変な恐慌を来しているわけでございます。  建設省おいでいただいているわけですけれども、私はこの路線を見ましたときに本当にびっくりしました。何でこんな有数の特産物生産地の真ん中を道路が通るのかということで驚いたのですが、実は地形的に見ましても、石鎚山から流れてくる仁淀川という川がこの町の向こうを屈曲しておりまして、そこで四国山脈の冷気がこの谷におりてくる。そして、この地域の一日の寒暖の度というのが非常に違うわけです。朝は非常に寒くて昼は暖かい。これが毎日繰り返される中でこの実が長期間に成熟していくという、そういう風土上の問題等もありますし、また、農民自身の今日までも営々として研究を重ねてきた結果がこういう実を生み出しているわけです。ところが、ここを百五十メートルの幅の高速自動車道路が通るということになりますと、現在ここの生産者のほとんど、大体二十八軒程度でありますけれども、最悪のコースを通るということになりまして、生活面においてだけでなくて、我が高知県の最大の特産品がここで重大な打撃を受ける、こういう問題ですね。  それで、まず建設省の方へお伺いしたいのですが、この針木という地域の独特の風土、気候から考えましても、この地を離れて他へ移って畑地を探してそこでつくるなどということのできない条件を持っているのです。成木まで十年、実をとるまでに二十年必要とするわけでございますから、そういう点から考えますと、今八百人の方が反対の意見書を出しております。高知市長も意見書を出しております。また、知事も意見書を出しておりますが、その点から考えまして、私はこの声にこたえるべきだ、何と考えてもこれこそ理不尽な路線の敷き方であると考えるのですが、建設省、この点について路線の変更をする御意思があるかどうか、最初に伺っておきたいのです。
  220. 玉田博亮

    ○玉田説明員 建設省の高速国道課長でございます。お答え申し上げます。  ただいま先生から御指摘のございました高知市針木地区の四国横断自動車道のルートの件でございます。この件につきましては、先生承知と存じますが、四国横断自動車道につきましてただいま建設省におきまして高知県の伊野から須崎に至る延長約二十四キロの区間について——この区間につきましては古く、実は昭和四十五年の六月に国幹道法、国土開発幹線自動車道建設法に基づきまして基本計画を定めたわけでございます。その後、いろいろ事情がありまして、オイルショック等で大変事業がおくれてきたわけでございますが、最近新しい計画を決めようということで、ことしの五月二十五日にこの二十四キロメートルの区間につきまして整備計画を策定するのに必要ないわゆる環境影響評価手続を行っているところでございます。これは間もなく公告、縦覧等を終了いたしまして一連の手続を終了するという予定になってございます。  ところで、このルートの問題でございます。ルートにつきましては私ども地形の状況であるとか土地利用の状況、それから主要な幹線道路等との接続など種々総合的に勘案し、さらに建設省におきまして詳細な現地踏査等も行いまして今回御提案申し上げましたルートについてアセスメントを実施しているのでございます。ルート選定の理由につきましては、いろいろあろうと存じますが、後ほどまた御質問があればもう少し詳細にお答え申し上げても結構と存じております。  それから、路線を変更する考えはないかということでございますが、これは率直に申し上げまして、私ども建設省の方で県それから地元自治体を通じまして十分地元の御意見もちょうだいし、慎重に調査をしてルートを固めてまいったつもりでございます。そういったことから、当該ルートでこれから検討させていただきたいというふうに考えている次第でございます。  なお、先生ただいま百五十メートルの幅の高速道路という御指摘がございましたが、これは若干御説明申し上げますと、現在地元にお示ししておりますのは幅二百五十メートルのゾーンで、このゾーンの中のいずれかにルートが来るという御説明を申し上げている次第でございます。したがいまして、そのおおむね二百五十メートルの範囲の中でこのナシ園に対する影響を最小限に食いとめるよう、私どもとしてはこれから検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  221. 山原健二郎

    ○山原委員 高速自動車道路に対して私は反対しているわけじゃなくて、今までも協力もしてまいりました。けれども、これほど明らかなもの、地元の県や市に聞きましてもこう言っているのですね、本当にこの針木のナシという特産品について実態に即した意見を出したのかというと、そうでもないのですね。やはり高速自動車道を早くつけてもらいたい、後回しにされたら困るというのが優先的に出てきますから、県のとった態度というのは私はわからぬわけではありませんけれども、しかし、調べれば調べるほど重要な果樹園の崩壊につながる可能性がありまして、これは生活する者にとっても重大な問題です。県の方で聞かれたのは、これは高知市の場合ですが、公共事業としてのプロジェクトの有無について聞かれたということで、この土地を非常に軽く見ている結果が建設省の路線をこういう形に許す結果になったのではないかというふうに考えまして、非常に残念に思います。工法をどうしたってやりようがないぐらいのものなんですね。  そういう意味で、農政審の話がしばしば出ますけれども農政審の基本方向を見ましてもこれは明らかに、「現在、農村の各地域において、消費者ニーズの変化に対応した生産品目の多様化、高品質化、高付加価値化等きめ細かな生産の展開や、一村一品運動等にみられるように、地域資源を活用した住民の自主的な取組みによる個性的な村づくり、地域活性化のための諸活動のほか、」こういうふうに書きまして、これを進めていくというのが農政審議会の方針でございます。その点から見ましても、それから竹下さんのおっしゃるふるさと何がしという議論から見ましても、これほどの乱暴な路線というのは私はちょっと見当たらぬと思うのです。これはぜひ、今ここで路線の変更なんということをお答えになることはできないかもしれませんけれども、お考えいただきたいと思うのですね。  特に、国土開発幹線自動車道建設審議会、国幹審といいますか、農水大臣が一番重要なポストを占めておられるこの審議会にもいずれかかると思いますけれども、そのときにはやはり農水相としては農業者の生活権あるいはこういう地域特産品を守るという立場で検討していただかないと、建設省の路線を安く、早くつくろうというこれだけでは今の国民農民の声にこたえることはできない面が出てくるわけでございます。そういう意味で、きょうはあえて取り上げたわけです。こういう問題を起こしておるところが各地にあるのですけれども、これほど明確な県民の気持ちを全く逆なでするようなやり方というのは今まで私は経験したことがございません。そういう意味におきまして、国幹審の審議委員でもございます佐藤大臣の、こういう点についてはどうすればいいのか、本当にみんながお手上げの状態なんですが、ちょっと御見解を伺っておきたいのです。
  222. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 さっき建設省の答弁を私、聞いておりまして、路線変更はするつもりはないとい う意味に私は受けとめております。委員からはこの場では言えないだろうが、こう言われましたが、言っているのではないかな。路線は変更できないのでしょう、私はそういう意味で聞いておりましたけれども……。  まあそれはそれとして、国幹審の場に臨むに当たってもやはり農業、果樹地帯の重要性をわきまえてしかるべく対応せよ、こういうお諭しかと思いますけれども、現場において納得ずくのものでなければならぬ。それじゃ全部が全部ということになると、これはもう私の出身地にもかつて問題があったことがございます。それでもなおかつ理解を仰いで、そしてほとんどの方が賛成してくださる、理解をしてくださっておるというもとにおいて進められるべきものであり、実態はそうなっているのではないかな。私は別に建設省にこの場で味方してあなたに反対するというわけではございませんけれども、ちゃんと地元とは連絡をとりながら、県民全体が反対して大問題だというふうには私も受けとめていないのでございます。  なおまた、新潟と高知とかけ合わせたナシや、こういうことでえらい御理解をいただいて、私両方とも食べたことがあります。どっちがうまいかということは言いません。この場ではどっちもおいしいと言っておきましょう。
  223. 山原健二郎

    ○山原委員 これは八月の段階から急速に起こった問題でして、まだ県民全体の問題にはなっていないかもしれませんが、相当大きな抵抗が出てくることはもう必至だと思っています。また、この問題についてはこれからも取り上げていきたい。私の見解は、これはルートは変更すべきである、変更できない場所ではないのですから、そのことを申し上げて質問を終わります。
  224. 菊池福治郎

  225. 藤田スミ

    藤田委員 大臣、お疲れでしたら最初の私の質問であともうお休みください、とってもつらそうだから。  まず最初の質問は、大臣にお願いしたいと思うのです。私は、いわゆるぐるみ選挙の問題についてまずお伺いいたします。  政府は十六日、リクルート問題を契機に官庁の綱紀粛正について閣議決定をいたしました。これは、お金のことはもちろんでしょうが、役所が不偏不党、全体の奉仕者としての任務を投げ捨て、特定党派、個人の選挙運動を役所の機構、権限を振りかざして行っていたことについても世間から糾弾されたからでもあります。また、真っ先に反省するべきは政治家だという声が常識になっています。この点で、私は農水省でも問題があるのではないかというふうに考えるわけです。  八月三十日に青森市で行われました全国漁港協会主催の第四十回全国漁港大会で、これは大臣にかわって北口政務次官があいさつを代読されました。水産庁の田中長官も参加をされ、福屋漁港部長も参加をされました。委員長も来賓として御参加され、各党の議員も参加をされております。そういうところで前農水事務次官で自民党の比例代表候補の石川弘氏の推薦決議を行っているわけです。そしてその結果は水産庁の漁港部建設課の課長補佐が編集長を務めていらっしゃる雑誌「漁港」最新号に載せて公表、宣伝をしているわけです。ちなみに、この雑誌「漁港」は編集委員が十七人おりますけれども、そのメンバーの内訳を見ますと水産庁から七人、そして地方自治体の方から八人編集委員として参加をしています。漁港協会といえば漁業団体はもちろんですが、主として漁港予算獲得のため中央、地方の行政の漁港関係部署が資金的にも人的にも結集してつくられているものであるということは言うまでもありません。そういう公の場で公務として大臣あいさつまでやっているような会議で特定党派個人の推薦決定をするなどということは、これは私は組織の私物化でありまた公の予算の私物化と、こういうふうにしか言いようがないと思うわけですが、大臣いかがでしょうか。  もう一つお答えいただきたいのです。農林水産関係の団体は大抵国から補助を受けております。その中で特別の部屋を確保したり、業務中に専任の係を置いてあるいは電話を引いて特定候補の選挙活動を行うというようなことは政治資金規正法に違反する寄附行為となり、法的にも許されないものだというふうに私は考えておりますが、この点についても大臣の御見解をお示しいただきたいわけです。
  226. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 八月三十日に全国漁港大会があった。そこで石川前農林事務次官の推薦をやった。私は実は余りそれを聞いておらないのですけれども、もし御指摘のようなことがあるとすれば、団体の設立目的なり趣旨の実現を図るために自主的な意思に基づいてそのような決議を行うことはあり得ることではないかな、かように思っております。  あと電話を使ってというような、ちょっとそれをもう一度教えてください。
  227. 藤田スミ

    藤田委員 農林水産関係の団体は、これは一般的にお尋ねしたいのですが、大抵国から補助を受けている。そういう団体がその中で特別な部屋を確保し、業務中に専任の係を置いてあるいは電話を引いて特定候補の選挙活動を行うということは政治資金規正法に違反する寄附行為となって法的にも許されないものだと私は考えていますが、これは常識の問題だと思いますが、大臣に確認をしているわけです。
  228. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生指摘の政治資金規正法第二十二条の三の寄附の質的制限の規定につきましては承知をしております。各団体がその設立目標なり趣旨の実現を図るために各種の活動を行う場合、その活動については政治資金規正法等の一定の法的枠組みのもとで適法に行われるべきものと考えております。
  229. 藤田スミ

    藤田委員 大臣はあり得ることだという御答弁でしたけれども、私はこれは大変心外でございます。政府資料にもあるように、漁港協会は地方自治体が構成員になっているのです。例えば私の大阪の地元は泉佐野の市長さんが構成メンバーになっています。大会にも職員が派遣されているのです。だから雑誌でも地方自治体がその編集メンバーに参加をしているわけです。この点では行政の公正な運用に著しく反し職員が業務であるがゆえに特定政党の支持決議に動員されるという点で、これは地方公務員法にも違反するものじゃありませんか。  こうした石川氏の違法な不公正な選挙準備は水産関係に限らず農林関係団体でも広く行われておりまして、農業共済協会では党員獲得の指示文書まで出して下部から抗議を受けているわけです。各団体でのやり方は、聞くところでは党費は出さなくてもいいらしい、そして名簿を集めまして判こ集めが行われて、ちょっと大臣恐縮ですが佐藤さんというような名前は大変ポピュラーですからどこにでも判こがあるというので大変重宝がられている、こういうようなことが言われているのです。当然所管の役人も出入りをしている中で行われているわけで、官庁ぐるみ、団体ぐるみの違法、不当な選挙準備に関係労働組合も抗議したり個々の労働者も反発をしている、こういう実態になっています。来年の選挙は一連の自民党政府自由化政策国民農民が審判をする選挙になるわけで、私はやはり選挙というのは正々堂々政策国民が選択できるようにするべきであり、不公正なやり方は民主主義を破壊するものだという点で強く警告をしておきたいと考えるわけでございます。
  230. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 漁港協会のことをおっしゃっていると理解をしておりますが、漁港協会に対しては補助はやってないはずでありますから、法令の目的に合致し違反しない限りにおいては、そうであってもやらない場合もあるだろうしやる場合もあるだろうしという意味で私、先ほどそういうこともあっても許されるという意味発言をしたわけでございます。ただ一般論として言うならば、法的にそうであってもやはりいろいろ言われないようにしなければならぬ。だからそういうところ で推薦するときは推薦団体がみんなの前で、うちは補助金もらってないし法令にも違反しないからこういうことをやると言ってやればもっとはっきりしたのじゃないかな、こう思っております。
  231. 藤田スミ

    藤田委員 それでは問題を次に移します。どうぞ大臣、お大事にしてください。  初めに輸入魚の安全性の問題についてお伺いいたします。  輸入魚の安全性の問題につきましては、ことしの三月三十日の農林水産委員会において私が取り上げました。そして輸入養殖水産物の輸入時のチェックを行うようにただしたわけです。これに対して厚生省はエビの検査について今後検討してまいりたいと御答弁されたわけですが、厚生省、実施のめどについて明らかにしてください。
  232. 難波江

    ○難波説明員 お答え申し上げます。  輸入魚介類の残留物質にかかわります安全性の確保はかねてから重要だというふうな認識を持っておりますし、従来から輸入養殖ウナギについて輸入時の検査を実施してきたところでございますけれども、本年度はさらに輸入エビについても検査を実施することといたしております。
  233. 藤田スミ

    藤田委員 具体的にいつからですか。
  234. 難波江

    ○難波説明員 本年度のモニタリングは一月から三月まで実施する予定でございます。
  235. 藤田スミ

    藤田委員 検査項目はどうなっていますか。
  236. 難波江

    ○難波説明員 エビについて申し上げますと、抗生物質のほかに合成抗菌剤、それから残留農薬について実施する予定でございます。
  237. 藤田スミ

    藤田委員 ウナギも新たな追加がされたというふうに聞いておりますので、これは一々後で忘れずに御答弁ください。  さらに、輸入量としては養殖エビあるいはウナギという、これはもちろん量が多いわけですが、その他の養殖魚の輸入は急速にふえてきています。だから、エビ、ウナギだけでは十分ではないということは衆目の一致するところでありますが、さらに水銀、PCBの輸入時の検査を行う点についても、これも十分検討し、御指摘も踏まえて、今後とも検査体制を整備してまいりたい、こういう御答弁をいただいているわけです。したがって、エビ、ウナギ以外の養殖魚の問題と、水銀、PCBの輸入時の検査の問題について、それからウナギの追加のことと、三つお答えください。
  238. 難波江

    ○難波説明員 お答えいたします。  ウナギにつきましては、抗生物質のほかに合成抗菌剤四種とそれから農薬三種を予定してございます。  それから、エビ、ウナギ以外の養殖の輸入魚介類につきましては、その輸入量でございますとか養殖の実態等、輸出国の状況をよく調査した上で、今後必要に応じて検査を行うこととしていきたいというふうに考えておるところでございます。  それから、三点目のPCB、水銀につきましては、三月の委員会でも御答弁申し上げたのでございますが、今後とも諸外国における残留にかかわる情報の入手に努めるとともに、国内の検査結果等を勘案しながら、必要に応じて対象物質をふやす等、所要の措置を講じてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  239. 藤田スミ

    藤田委員 ぜひ来年度から、またウナギやエビのように新たに追加をしていっていただきたいということを強く求めておきます。  次に、ポストハーベストの問題、先ほども出ましたが、これについてはもう既にさまざまな議論が予算委員会などでも、またけさも行われております。政府としても、基準の整備を行うという点は示されているわけですけれども、基準の整備と一口に言いましてもこれは多くの問題がありまして、果たして国民の健康を守るという観点が厳格に貫かれているのかどうかという不安がやはり依然として根強いというふうに指摘せざるを得ません。  そこでお伺いしますが、二月の予算委員会から見ましても大分日がたっているわけですが、その基準の整備をするに当たって当然の前提となるべきポストハーベストとして使われているアメリカとそれ以外の国の農薬の使用実態についてはどの程度把握されているのか、お示しをいただきたいわけです。
  240. 内山壽紀

    ○内山説明員 農薬の使用につきましては、我が国では農林水産省が農薬取締法に基づきまして規制、監督を行っております。厚生省は、食品衛生法に基づきまして、公衆衛生の観点から農産物に対します農薬の残留につき基準を設定しているという立場にございます。ポストハーベストという形態の農薬の使用方法は、現在国際的に広く認められているというふうに承知をしております。
  241. 藤田スミ

    藤田委員 農水省には確かに農薬取締法がありますが、あれは国内で使用する農薬について範疇を定めてやっているわけでして、そんな無責任考え方というのは私は許されないというふうに思うのですよ。要するに使用実態を調査する気はなくて、その外国の残留基準を調べて、それで基準を設定していこう、こういうことなんでしょうが、大体生産者団体や消費者団体はもう既にアメリカについてはどういうふうな農薬がポストハーベストで使われているかという実態をつかんでいるわけです。政府がそれをできないというはずはないじゃありませんか。私は、きょうはもう時間がありませんので、この点について本当はもっと議論したいわけですが、指摘をするということで残念ながらとどめます。  しかも問題は、アメリカの場合では日本では農薬として登録されていない物質が二十二品目もポストハーベスト用農薬として使われ、そのうちの十六品目については国際的な安全評価も済んでいないというものなんです。そして、これらの農薬が残留している農産物がノーチエックで輸入されてくるわけです。厚生省は一九七五年、ポストハーベストとして使用されていて日本で使用が認められなかったOPPやTBZが残留していたグレープフルーツ、レモン、オレンジなどを食品衛生法違反として積み戻し、廃棄させていますが、とれは国民の健康を守るためには当然の措置であります。ましてや国内で未登録農薬を使用し、農産物に残留した場合は食品衛生法違反でしょう。厚生省として、安全性が確認されていない十六品目を含む未登録農薬が残留している輸入農産物については、当然食品衛生法違反として取り締まるべきではないですか。
  242. 内山壽紀

    ○内山説明員 農薬のポストハーベストという形態の使用方法は、現在広く国際的に認められているというその現状はやはり認識しないといけないと思っております。我が国では、しかしながら現在のところ農薬取締法上そのような使用方法はほとんどございません。そこで、輸入農産物に使用されましたポストハーベストにつきましては、こうした国際的状況から見ましても、残留農薬の問題として食品衛生法上取り扱ってその衛生対策を行っていくべきものと考えております。
  243. 藤田スミ

    藤田委員 残留農薬として取り締まるならなおさら、食品衛生法に違反するそういうものが使用されて入ってきているんです。安全性もわからない物質が残留しても輸入は結構だというような姿勢では、国民の健康は守られないじゃありませんか。しかも、こういった姿勢でこれから取り組もうとしている残留農薬基準です。私は、何もポストハーベストはよその国でやられていないなんて言っていませんよ。日本国民が食べる問題を言っているんです。そういう姿勢で残留農薬基準が果たして国民の健康を守れる視点に立ち切れるかどうか、貫かれるかどうかということを大変疑問に思わざるを得ないわけです。  そこで、もう一つお尋ねしますが、ポストハーベストはその使用実態からして、当然プレハーベストと比べて農薬の残留値は高くなりますね。だからといって、それを前提に基準をつくられては困るわけです。たとえアメリカなどから圧力があっても、我が国の現行の残留農薬基準に準じて基準をつくるべきであります。この点についての基本的な考えを聞かせてください。
  244. 内山壽紀

    ○内山説明員 ポストハーベストの残留基準というものは、そのものの安全性の評価結果と国際機 関や諸外国における残留基準、あるいはさらに農産物中の残留実態等を踏まえまして、公衆衛生上の観点からその基準を設定していくという形になるかと考えております。
  245. 藤田スミ

    藤田委員 大臣にお帰りいただきましたので、かわってどなたがお答えいただくのかちょっと定かでありませんが、農水省から責任を持ってお答えいただく方、おられますね。  大臣は安全でないものは食料とは言えない、そういうふうにいつも御答弁されることは御存じですね。そういう立場に立てば、特に農水省は農薬取締法を管轄しているわけですから、国内農薬使用が認められていない農薬が使われている場合は、これは直ちにチェックされるわけですね。そういう立場からして、輸入農産物についても国内農薬使用が認められていないものが使われていたとしたら、これはやはりとりあえずは輸入を抑えて、そして、安全でないものは食料と言わないというこの大臣の信念を貫いてほしいわけです。農水省としてお答えください。
  246. 吉國隆

    吉國政府委員 農薬取締法は、先ほど先生御自身もおっしゃいましたように、国内におきます農薬の使用に関しての規制でございます。ただいま先生からやりとりのございました輸入農産物の安全性の確保という点につきましては、基本的には食品衛生行政に属する分野の問題であるというふうに私ども考えておるわけでございますが、私ども農薬行政を所管している立場からいろいろ知見の蓄積等もございますので、情報の収集という点も含めまして、厚生省とも協力をして対処してまいりたいというふうに考えております。
  247. 渡辺武

    ○渡辺(武)政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘のように、大臣常々、安全でないものは食料でないというお考えをお答え申し上げておるところでございますが、先刻御承知のところでございますけれども、食品の安全性につきましては、国産の食品であろうと輸入食品であろうとを通じまして、厚生省におきまして、食品衛生法の体系の中で適切に対応していただいておるというように私たち考えておるわけでございます。ただ、私たち農水省といたしましては、国民食料を安定的に供給するということを任務といたしておりますことからいたしまして、この安全性の問題、非常に重要な問題と常日ごろから認識をいたしておるわけでございます。今後とも厚生省とその点十分連絡をとって、安全性の確保に努めてまいりたいというように考えておるところでございます。
  248. 藤田スミ

    藤田委員 時間が参りましたのでこれで終わりますが、私は、このポストハーベストの問題、今回質問するべく、まず最初にびっくりしたのが、とにかくよその国でどんなものが使われて日本に入ってきているのかということを掌握されようとしない、そういう気が全然ない厚生省の態度でした。食品衛生法に基づいて国民の口に安全なものを提供する責任のあるところがそういう姿勢で、何遍も言いますが、残留農薬基準が果たして本当に安心したものになるのかという点で大変危惧せざるを得ませんでした。その点だけ最後に申し上げ、大臣のおっしゃるように、安全でないものは食でない、そういう立場を貫いていただきたいということを申し添えて終わります。  ありがとうございました。
  249. 菊池福治郎

    菊池委員長 これにて本日の質疑は終了いたしました。      ────◇─────
  250. 菊池福治郎

    菊池委員長 次に、本日付託になりました田中恒利君外四名提出果樹農業振興特別措置法の一部を改正する法律案を議題とし、提出者から趣旨の説明を聴取いたします。田中恒村君。     ─────────────  果樹農業振興特別措置法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  251. 田中恒利

    田中(恒)議員 ただいま議題となりました果樹農業振興特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合を代表して、提案の趣旨及びその内容を御説明申し上げます。  牛肉・オレンジ等の輸入自由化問題は、生産農家の自由化絶対反対の要請もむなしく、昭和六十三年六月二十日、日米間において輸入自由化が合意されたのであります。  御承知のとおり、我が国の果樹農業農業における成長部門として期待されるようになったのは、昭和三十年代に入ってからのことであります。  経営規模が零細で、かつ、生産基盤が急傾斜地という極めて劣悪な条件下にもかかわらず、果樹農業が飛躍的な発展を遂げ、国民の食生活の向上と農業経営の安定に大きく貢献できるようになったのは、農業基本法に基づく行政の積極的な振興策に基づき、果樹農家の血のにじむような自助努力があったからであります。  すなわち、果樹農家は農業の選択的拡大という農政基本路線に従い、品種の改良、園地の近代化等に創意工夫を用いるとともに、多大な資本投下を行い、他の部門に先駆けて政府の示す目標を達成したのであります。  しかしながら、果樹農業の現状は、輸入果実等の増大などにより、ほとんどの果実が生産過剰基調に陥り、大幅な生産調整や経営の転換を余儀なくされているという極めて憂慮すべき事態に立ち至っております。  かかる状況の中で、オレンジ及びオレンジ果汁の輸入自由化が断行されたのであります。その際、竹下総理を初め佐藤農林水産大臣は、国内対策を実施し、我が国のかんきつ生産の存立を守ると名言されたのであります。  この立場からすれば、果樹農政中心をなす果樹農業振興特別措置法強化が必要であります。  同法は、昭和六十年の改正で生産対策に需給調整機能が加えられたのでありますが、昨年のミカン大暴落等からしても、その機能を十分に発揮しているとは思えないのであります。  加工原料用果実は、生食用果実の三〇%を占め、需給調整機能と消費拡大に重要な役割を担っているのは御承知のとおりであります。  果樹農業が存続する限りこの機能は不可欠なものであります。  しかも、果樹農業は一日にして構築できるものでなく、十年、二十年と世代を継承して初めて実現し得る農業部門であります。  かんきつ生産の存立を守るとは、世代を継ぐ農業経営の存続であり、あすへの営農意欲を法律制度によって担保することであります。  私どもは、かかる観点から、果樹農業者の責めに帰さない輸入自由化による価格低落に対処し、加工原料用果実の価格安定制度を法制化するため、ここに果樹農業振興特別措置法の一部を改正する法律案提出した次第であります。  その主な内容は、第一に、農林水産大臣は、政令で定める特定加工原料用果実の区分ごとに、保証基準価格と基準取引価格を毎年度定めることとし、国は、当分の間、予算の範囲内で、特定加工原料用果実の平均取引価格が保証基準価格と基準取引価格の間にある場合は、保証基準価格と平均取引価格との差額に、また平均取引価格が基準取引価格を下回った場合は、保証基準価格と基準取引価格との差額に、農林水産大臣の定める数量を限度とした販売数量を乗じて得た金額を、国の負担により生産者に交付することができることとしております。  第二に、現行の各都道府県ごとに定めている加工原料用果実の価格安定制度は、これを継続するものとし、国は、当分の間、予算の範囲内で、これらに対し助成金を交付することができることとしております。  第三に、国は特定加工原料用果実の価格安定制度に係る交付の事務の一部を中央果実生産出荷安定基金協会等に委託することができることとしております。  第四に、この法律は公布の日から施行するものとし、生産者への交付金及び助成金の交付に係る規定は、昭和六十四年四月一日から施行するものとしております。  以上が、この法律案の提案の趣旨及び主な内容であります。  何とぞ委員各位の御賛同を賜り、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。(拍手)
  252. 菊池福治郎

    菊池委員長 以上で本案の趣旨の説明は終わりました。  次回は、来る二十七日火曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十分散会