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1988-11-08 第113回国会 衆議院 農林水産委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十一月八日(火曜日)     午前九時四十二分開議  出席委員    委員長 菊池福治郎君    理事 笹山 登生君 理事 鈴木 宗男君    理事 月原 茂皓君 理事 保利 耕輔君    理事 松田 九郎君 理事 串原 義直君    理事 水谷  弘君       阿部 文男君    衛藤征士郎君       大石 千八君    川崎 二郎君       木村 義雄君    熊谷  弘君       小坂善太郎君    近藤 元次君       杉浦 正健君    田邉 國男君       武部  勤君    玉沢徳一郎君       中島  衛君    長谷川 峻君       二田 孝治君    保岡 興治君       柳沢 伯夫君    緒方 克陽君       田中 恒利君    竹内  猛君       辻  一彦君    早川  勝君       前島 秀行君    安井 吉典君       有島 重武君    遠藤 和良君       藤原 房雄君    吉浦 忠治君       木下敬之助君    藤田 スミ君       山原健二郎君  出席国務大臣         農林水産大臣  佐藤  隆君  出席政府委員         農林水産政務次         官       北口  博君         農林水産大臣官         房長      浜口 義曠君         農林水産省経済         局長      塩飽 二郎君         農林水産省構造         改善局長    松山 光治君         農林水産省農蚕         園芸局長    吉國  隆君         農林水産省畜産         局長      京谷 昭夫君         農林水産技術会         議事務局長   谷野  陽君         食糧庁長官   甕   滋君         水産庁長官   田中 宏尚君  委員外出席者         外務省北米局北         米第二課長   藪中三十二君         大蔵省主税局税         制第一課長   長野 厖士君         参  考  人         (畜産振興事業         団理事長)   今村 宣夫君         農林水産委員会         調査室長    羽多  實君     ───────────── 委員の異動 十一月八日  辞任         補欠選任   石破  茂君     木村 義雄君   遠藤 武彦君     二田 孝治君   石橋 大吉君     辻  一彦君   沢藤礼次郎君     早川  勝君   前島 秀行君     緒方 克陽君   武田 一夫君     有島 重武君   玉城 栄一君     遠藤 和良君   佐々木良作君     木下敬之助君 同日  辞任         補欠選任   木村 義雄君     石破  茂君   二田 孝治君     遠藤 武彦君   緒方 克陽君     前島 秀行君   辻  一彦君     石橋 大吉君   早川  勝君     沢藤礼次郎君   有島 重武君     武田 一夫君   遠藤 和良君     玉城 栄一君   木下敬之助君     佐々木良作君     ───────────── 十一月七日  土地改良事業償還金農家負担軽減に関する請願五十嵐広三紹介)(第二二五九号)  同(五十嵐広三紹介)(第二三〇四号)  同(五十嵐広三紹介)(第二三三八号)  同(五十嵐広三紹介)(第二四三六号)  第八次漁港整備計画促進及び漁港関係事業予算確保に関する請願戸塚進也紹介)(第二三三七号) は本委員会に付託された。     ───────────── 十一月七日  異常気象による農作物被害対策に関する陳情書(第一四七号)  米穀政策確立に関する陳情書(第一四八号)  畑作経営の安定に関する陳情書(第一四九号)  農作物市場開放対策に関する陳情書外一件(第一五〇号)  米の輸入自由化反対に関する陳情書外十一件(第一五一号)  都市農業確立に関する陳情書外一件(第一五二号)  地域林業振興に関する陳情書外一件(第一五三号)  林業育成に関する陳情書外四件(第一五四号)  漁業生産基盤整備促進に関する陳情書(第一五五号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第七号)  肉用子牛生産安定等特別措置法案内閣提出第八号)  遊漁船業適正化に関する法律案起草の件      ────◇─────
  2. 菊池福治郎

    菊池委員長 これより会議を開きます。  内閣提出畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案及び肉用子牛生産安定等特別措置法案の両案を議題とし、審査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  両案審査のため、本日、参考人として畜産振興事業団理事長今村宣夫君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 菊池福治郎

    菊池委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     ─────────────
  4. 菊池福治郎

    菊池委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。前島秀行君。
  5. 前島秀行

    前島委員 私は、牛肉法案に入る前に、最近 行革審等でも米の問題、とりわけ検査制度の問題等々について議論もなされているようでありますので、特にそれに関連して、八月四日の自民党渡辺政調会長予算委員会での発言に伴って検査制度の問題について先に質問をさせていただきたい、こういうふうに思っています。  先週の当委員会で、RMAの提訴却下について串原委員等中心にしていろいろ質疑が行われました。これはいわば米開放食管つぶしの外圧ともいうべきものでありますけれども国内でもこの種の議論がたくさんなされているわけであります。その議論の中には、無責任といいましょうか暴言ともいうべき問題もあるわけでありますが、その八月四日、衆議院予算委員会での渡辺政調会長発言は、いわばそれに該当する発言一つではないか、こういうふうに思うわけであります。  ちょっと議事録を読んでみますと、  食糧検査官の方々は、これは減らしてもいいと思う、僕は。これは検査士制度をつくったんだからね。そのかわり死ぬまで検査士やらせるから。だから検査官はみんなやめてもらう。目が見えればいいんだから、検査士というのは目が見えれば。年をとって耳は遠くなったって米さえわかればいいんだからね、そうでしょう。だからそれは検査士の資格を与えて長くやってもらう、長く。そういうようなことになれば、私は大いにこれはどんどん減らしていって、もう何千人なんかは要らぬから、二、三百人もいればたくさんじゃないか。 これが八月四日の自民党渡辺政調会長発言なんであります。  私は、まず一つ、ここにはいわば差別発言的な要素、要するに身障者、耳の不自由な人の心の痛みを全然感じていない発言であると思うのです。もう一つは、要するに米の検査行為検査官をべっ視するものである、許すことのできない発言だ、こういうふうに私は言わざるを得ないわけであります。大臣、まずこの渡辺政調会長予算委員会での発言についての御見解、御感想をお聞きしたい、こういうふうに思うわけであります。
  6. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 その発言のときは、私もその部屋の中で席に着いておりましたので聞いておりました。極めて遺憾な発言であると私は思って聞いておりました。言葉は慎むべきもの、私自身みずから言い聞かせて今日に至っておりますが、言葉は慎むべきものと重ねて申し上げておきたいと思います。
  7. 前島秀行

    前島委員 こういう発言をしますと、いわば人格を疑われる、逆に発言した人が軽べつされる、こういうのが事実だろうと私は思うのです。現に翌日の新聞では、こんなふうに載っているわけです。「こういう発言で、耳の不自由な人たちがどれだけ心の痛みを感じるか渡辺さんは分かっておられるのでしょうか。自分は人より一段上にいる、と考えてるからこのような発言が出るのです。」というふうに、逆に私から見ると軽べつされているというふうな結果になるだろう、こういうふうに思うわけであります。  そういう面で、大臣は終始農民の心をわかるというふうに言っているわけでありますから、まあ渡辺政調会長にここに来てもらうわけにはいきませんわけですから、もし総理になる御希望があるならこういう失言はしないように、これからもぜひ注意をなさっていただきたい、こういうふうにまず思うわけであります。  同時にまた、渡辺政調会長はこの中で、検査官は二、三百人あれば足りるんだ、こういうことを言っているわけであります。私も過日、食糧事務所の支所のところへ行って、現場の人たちがどういう検査現実にやっているのか等々を伺ってきたわけであります。渡辺政調会長は、こういう検査制度改善は必要なんだということも言わんとしていることはわかるのでありますけれども、私は過去、食糧庁を初めいろいろな面で、この検査制度改善についてはそれなりの努力をなさってきたのではないだろうか、こういうふうに思うわけであります。  そういう面で、検査官検査について、今までどのような改善努力をされてきたのか、現在その人数等々を含めてその実態はどのようになっているのかをぜひ御説明をいただきたい、こういうふうに思います。
  8. 甕滋

    甕政府委員 お答え申し上げます。  米についての農産物検査につきましては、国営検査体制のもとでこれまで国民の主食である米について、円滑な広域流通確保するという重要な役割を担っておると心得ております。そこで、検査の実行に当たりましては、流通実態あるいは時勢の変化等を踏まえましていろいろ改善合理化にも取り組んできておるところでございます。  まず、米のばら検査抽出検査、これを進めてきておりまして、ちょっと数字にわたりますけれども、五十四年度にこれが五%であったものを六十三年度には七五%、これを大幅に拡大をしてきております。また検査場所につきましても、五十四年二万六千カ所から六十三年一万四千カ所へと集約整理も進めております。また、先ほどもお話にございました民間活力を活用した食糧検査士につきましても、五十七年度の二百人から六十三年度には九百人と拡大を図ってきておるところでございます。これに伴いまして、農産物検査官の数でございますが、五十四年度一万三千人から六十三年度末には六千五百人と見込まれておりまして、この縮減合理化を図っております。今後とも検査体制整備検査業務の一層の改善合理化を図りますとともに、自主流通米拡大といった面でも、生産流通変化に応じて消費者ニーズに対応した検査内容見直し等も必要かと思っておりまして、引き続き努力を続けてまいりたいと考えております。
  9. 前島秀行

    前島委員 いわゆる行政改革の一環として食糧庁等の方は、このように渡辺政調会長に言われぬでも検査改善ということはしてきているし、人数的にも目的を達してきている、こういうふうに受けとめる、こういうふうにできると僕は思うわけであります。そういう状況にもかかわらず、その政調会長の言わんとすることは、この自主流通米検査民間に移行しろということが柱ではないだろうか、こういうふうに思うわけであります。過去いろいろな歴史等々考えて、米の安定確保あるいはその検査統一性確保する点あるいは公正の維持等々から見て、私は自主流通米もさることながら、米の検査体制についてはいわゆる民間に任すのではなくして国営検査体制というのを維持すべきではないか、またそのことが食管維持するという食管の精神にも通ずるのではないだろうか、こういうふうに思うわけであります。したがいまして、大臣、この重要な検査体制自主流通米を含めて民間に移行するのではない、国営検査体制を引き続き維持すべきだ、こういうふうに思うわけでありますけれども、その辺の決意といいましょうか、所感をはっきりとお聞かせ願いたい、こういうふうに思います。
  10. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 米の商品特性流通実態等から、米の公正かつ円滑な流通確保するため、検査業務改善合理化を図りつつ、今後とも国営検査制度、その基本維持してまいる考え方でございます。
  11. 前島秀行

    前島委員 国営検査体制維持する、こういうことでありますけれども、同時にまた、改善のという課題片方で言われるのでありますけれども、私は最近この各種世論調査等々から見て、国民食糧安全性関心というのは非常に高まってきている、ある意味でこれからの日本農業安全性確保、これがこれからの大きな課題でもあるだろう、また一つ方向でもあるだろう、こういうふうに思います。現に、有機農業というのが大きくクローズアップされてきている。農林省にもその有機農業についてのいろいろな見解とか研究等々が予算化されて始まっている、こういうふうに聞くわけでありますけれども、こういうふうに安全性有機農業が非常にクローズアップされてきているということも、やはりこういう国民意見の反映だろう、こういうふうに思うわけであります。片方でこういう国民安全性というものの要求を逆手にとったというか悪用して、有機米 というインチキなレッテルを張った米が現実にスーパーの店頭等に出ているのもまた現実だ、こういうふうな形になるわけであります。  このように、安全性要求確保、それと逆にこういうインチキ有機米等々が出回っている、こういう現状から見ると、いわゆるこの検査体制検査官というものはより重要視されてくるのではないだろうか、農産物検査体制要求というのはますます強まってくるのではないだろうか、こういうふうに思うわけです。だとすると、人数的な問題として、これ以上減らすのではなくしてより充実させる、検査官確保ということがより要求されるのではないだろうか、こういうふうに思うわけであります。そういう面で、その人数的なものを含めてあるいは農産物検査体制を含めて、これから減らすのか充実させるのか、その辺のところを今後の方向としてお示しをいただければありがたい、こういうふうに思うわけであります。
  12. 甕滋

    甕政府委員 御指摘にございましたように、最近米の安全性あるいは食味、有機栽培等々といった面で特別の栽培方法などについても消費者関心が高まっておるところでございます。農産物検査の面でそれにどう対応していくか、この縮減合理化といった改善合理化を進めつつも、こういう消費者ニーズにどういうふうにこたえていくかということは私ども課題であると思っております。それに応じまして、今後の要員配置等のあり方についてもあわせて検討してまいりたいと考えております。
  13. 前島秀行

    前島委員 安全の要求というのは強いわけでありますから、検査体制の充実、人的にもその辺のところをぜひ御配慮をお願いしたい、こういうふうに思います。  最後に、これの問題で最後でございますけれども、いわば政調会長検査体制を民営化すること、自主流通米を特に民間に委託する、こういう考え方を主張しているわけでありますが、いわばこれは現行の食管制度根幹に触れるような問題であろう、こういうふうに思うわけであります。片や新行革審等々の中でも、規制緩和の小委員会の中で、この検査制度の問題あるいは食管制度の問題等々について議論がなされている、こういうふうに聞くわけであります。そういう面で、大臣ここでお聞きしたいのは、今後もこの食管制度について堅持すべきだ、こういうふうに思うわけでありますけれども、この検査体制に絡んで食管制度について今後の基本的な考え方をお聞かせ願いたい、こういうふうに思います。
  14. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 今おっしゃられますように、別の機関でもっていろいろな検討もしていただいております。いろいろ私ども勉強していかなければならぬと思っておりますけれども、少なくとも従来も答弁いたしてきたとおり、食管根幹堅持をする、そして今の検査体制については国営検査体制維持、この基本維持するという考え方には変わりございませんので、さよう御承知おきをいただきたいと思います。
  15. 前島秀行

    前島委員 ぜひその方向でよろしくお願いをしたいと思います。  それでは、本題の牛肉問題に入りたいと思うわけでありますけれども我が国畜産は、いわゆる昭和三十六年の農業基本法以来選択的拡大の品目、こういう位置づけをされてきた。特に牛肉生産は、最近の状況で特にほかの畜産物需給調整生産調整ということがされているにもかかわらず、この牛肉生産というのはその心配がない、そういう部門だとして終始生産振興というのを強調してきた。農政審基本方向にも出ているし、一連の農業白書等々にもこのことは非常に強調されているわけであります。一方で、アメリカを初めとする外国からの自由化要求に対して終始、政府自由化は困難という立場を堅持をしてきたわけであります。輸入牛肉については畜安法に基づいて管理をする、こういう体制できたことは御案内のとおりであります。  この生産振興を法制的に明確にした五十八年の酪肉振興法の制定の際の議事録をいろいろ読ませていただきますと、さまざまな振興政策というのが議論をされているわけです。それ以前の反省といいましょうか経験を踏まえて、あるいは、五十五年の六十五年見通しというような問題を立てる中でいろいろな振興策議論をされているわけであります。同時にまた、その際も、国内生産輸入との関係について当時の大臣は、何しろ国内生産拡大ということを最優先するのである、輸入については国内生産の不足の部分を補うだけだ、将来の目標としては一〇〇%の自給を目指すのである、当時の農林水産大臣もこう言っているわけであります。そういうふうにちゃんと議事録に書かれているのです。一〇〇%自給率を目指す、こういうふうに書いてあるわけであります。しかし、現状は、生産需要に追いつかない、あるいは生産コストがなかなか下がらない、思ったより下がらない、あるいは内外価格差が一向に縮まらない。いわば、政府が終始牛肉交渉で言ってきたように、自由化は困難だという状況は一向に変わっていないわけであります。  そこで、これから自由化という事態を迎えるわけでありますけれども、この自由化は困難だという状況が一向に改善されていない、変わっていないという原因は一体何だったのか、また、そういう状況をつくり出してしまったのでありますけれども、過去の振興政策の柱といいましょうか、基本はどこに置いてこられたのか、その点についてまずお聞かせを願いたい、こういうふうに思います。
  16. 京谷昭夫

    京谷政府委員 ただいま御指摘ございましたように、昭和五十八年に、当時改正されました酪肉振興法に基づきまして酪肉基本方針を定めて、我が国肉用牛生産振興についての一定方向示したわけでございます。その中におきまして、お話にございますように、これからの成長部門として位置づけをし、必要な施策を実施していくという施策方向示したわけでございます。その後、私ども草地開発でありますとか既耕地におきます飼料作物作付拡大等飼料基盤整備、さらには、担い手の育成後継者確保等経営基盤の強化、あるいは、畜産振興事業団によります価格安定制度の的確な運用、さらには、各種金融措置等を通じまして国内肉用牛生産振興を図るべく努力をしておるわけでございます。今日におきましても、その基本的な考え方に変更はないわけでございます。  ただ、その過程におきまして、御承知のとおり子牛価格の低迷といったような事態もございまして国内繁殖経営意欲というものが大変停滞をしたということもございまして、必ずしも国内資源増強が進まなかった、あるいはまた、経営規模拡大に当たりまして大変大きな障害要因として、規模拡大前提になります土地利用権の集積といったような大変困難な問題に逢着をいたしまして、意のごとく経営規模拡大が進んでいなかったというふうな問題がございまして、結果的には、五十八年当時に策定をいたしました酪肉基本方針示し昭和六十五年度生産目標といいますか、そういうものの達成の度合いが十分に進んでいない、こういう現状にあるわけでございます。  それらを踏まえて、今回の牛肉交渉の結果も織り込みまして、これからの振興方策というものを考えていかなければいけないというふうに私ども考えておる次第でございます。
  17. 前島秀行

    前島委員 要するに六十五年見通しも目的達成していない、なかなか思うように進んでいないということは認めざるを得ない、こういうふうに思うわけでありますが、そういう困難な状況現実にある、その困難な状況は一向に解決されていないにもかかわらず政府自由化を決定した、これがさきの日米牛肉交渉の結果だろう、こういうふうに思います。その結果、畜産農家に大きな不安を与える、あるいは生産意欲をなくしてしまっているというのが現実でありますから、政府はこの畜産農家とりわけ牛肉生産農家に対して不安を解消するような、さらに基本方針示しているような生産拡大生産意欲農家に満ちあふれるような牛肉生産の指標、方針といいましょうかガイド ライン的なものを示す責任がある、こういうふうに私は思うわけであります。  そこで、まず第一に、生産農家経営を保障する、同時にまた国際競争力自由化が来るわけでありますから国際競争に耐えられるような牛肉生産、そういう牛肉生産をするためにはこれからどういう牛肉をつくろうとしているのか。その辺のところを考え方として、方向としてお示しを願いたい、こういうふうに思います。
  18. 京谷昭夫

    京谷政府委員 先ほど申し上げましたこれまでの我が国におきます国内肉用牛生産状況等を踏まえまして、御承知のとおり本年二月に昭和七十年度を目標にしました新しい酪肉基本方針を定め、公表しておるところでございます。これは、最近におきます国内生産の動向あるいは牛肉貿易をめぐる内外の情勢というものを踏まえまして、今後さらに拡大する需要に対応して極力合理的な国内生産確立していくという方向示しておるわけでございますが、今回の牛肉交渉の結果も踏まえて、この基本方針の実現のために私ども力を尽くしていく必要があると考えております。  その際に、外国産の牛肉国内産牛肉の適正な競争関係確保していくということが必要であると思いますが、まず最初に、私ども日本国内におきます牛肉消費というのは、御承知のとおり米あるいは魚といったような伝統的な食品を中心にしたいわゆる日本型食生活の中で最近継続的に伸びておるわけでございますが、この日本型食生活の中での牛肉に対する国民の嗜好というものは、必ずしも外国産の牛肉が持っております品質と同じものではなくて、やわらかさでありますとか風味でありますとか、あるいは新鮮さというふうなものを求めます大変繊細な内容を持っておると考えておりまして、確かに輸入数量割り当て制の撤廃に伴いまして外国からの牛肉輸入が増大するという一面もございますけれども、やはりただいま申し上げました日本的な牛肉需要の特質というものは今後相当程度継続をしていくと考えておりまして、そこに着目をしながら消費者ニーズにこたえた品質のものを合理的なコスト生産をし、供給をしていくということが、国内生産のねらいどころではなかろうかと考えるわけでございます。そういう認識のもとで、国内牛肉生産を今後進めるに当たりましては、輸入牛肉との質的な優位性を保ちながら、生産性の向上によって、一定品質格差前提にして価格面でも対抗力を持った生産構造をつくっていくということが今後の大変大きな課題であろうというふうに考えておるところでございます。
  19. 前島秀行

    前島委員 要するに、品質格差ということを前提にするということになりますと、まあ和牛を中心にといいましょうか、和牛にウエートを置いて今後も生産拡大生産振興を図っていく、その種の牛肉生産をしていく、こういうふうに理解してよろしいんですか。
  20. 京谷昭夫

    京谷政府委員 御承知のとおり、我が国の肉用牛生産は、伝統的な肉用種としての和牛と、それから酪農部門から提供されます乳用牛資源を使って生産をするいわゆる乳用種をもとにした肉用牛生産、この二つの部門から構成されておりますけれども、最近の状況は、御承知のとおり乳用種から提供されます肉資源が全体の供給量の約七割を占めております。それからまた、残りが伝統的ないわゆる和牛を中心とした肉専用種という構成になっておりまして、私ども国内生産されております国内消費者ニーズに合った牛肉の提供、必ずしも和牛だけではないというふうに考えております。確かに国産牛肉の持っております特質、やわらかさあるいは風味というものは和牛の場合に比較的強く持っておりますが、そういう品種的な違いもさることながら、肥育過程におきます飼料給与の仕方でありますとか、肥育期間でありますとか、そういうことで国内ニーズに合った牛肉の特質というものが形成されておりますので、必ずしも従来から和牛中心牛肉生産というふうに私ども考えておるわけではございませんで、先ほど申し上げましたとおり、乳用種から七割、それから和牛から約三割というふうな構成で国内産の牛肉供給が行われておるわけでございます。  ただ、コスト面で申し上げますと、御承知のとおり乳用種資源というのは、酪農部門からのいわば副産物として資源が提供されておりますので、肉専用種が繁殖部門で資源を再生産しなければいけないというところと若干の違いがございます。それゆえに、価格面で申しますと乳用種からの牛肉生産ということの方が一定の対応力を持っておると思いますけれども国内牛肉のきめ細かい好みに幅広くこたえていくということを考えますと、一方においてまた和牛資源というものの必要性というものもあるわけでございます。  いずれにしましても、そういった国内消費者ニーズの特質を十分に掌握をしまして、従来からある乳用種あるいは伝統的な肉専用種であります和牛からの生産はもちろんでありますけれども、さらにこれからの消費者ニーズ変化等を踏まえて、これらの和牛と乳用種の交雑形態、あるいはまた外国種の導入ということも含めて幅広く将来の消費者ニーズにこたえ、また国内生産コスト低下に対応できるような品種選択というものを考えていく必要があるのではないかというふうに考えておるところでございます。
  21. 前島秀行

    前島委員 若干、動向の面で二点ほどお伺いをしたいと思います。  国際動向との関係の中で、国際的な生産の動向それから価格の国際的な動向、今後どういうふうに見通されているのか、もう一つは、最近の肉用子牛の価格はどんな状況なのか、また、これから自由化という大きな事態を踏まえて、今後の肉用子牛の価格はどういうふうに変化していくのか、この動向の予測といいましょうか見通しについて、二点ほど伺いたいと思います。
  22. 京谷昭夫

    京谷政府委員 御承知のとおり、牛肉の国際需給の状況を概略申し上げますと、年間の世界的な牛肉生産量というものは約三千万トン強、部分肉換算で三千万トン程度のものが生産をされておるわけでございますが、貿易量として市場に出てくるものはそのうち約九%というふうなことで、貿易量というのは非常に制約をされておる状況でございます。特に、また我が国の場合には、悪性の家畜伝染病が国内に侵入することを防ぐために貿易対象国を非常に制限をしてございまして、いわゆる口蹄疫に汚染されていない地域に限定をして貿易を行うことにしておりますので、ただいま申し上げました対象になります市場がもう少し狭まるという状況でございます。その中にアメリカあるいはオーストラリアという我が国への主要輸出国があるわけでございますけれども、それらの国の生産状況を見ますと、御承知のとおり、いわゆるキャトルサイクル、ビーフサイクルというふうなことで、供給量なり価格についての周期的な変動がございますけれども、少なくとも最近までの状況を見ますと、まあ安定的な貿易が行われておるというふうに理解をしております。これから我が国需要がふえ輸入量がふえる、あるいはまた、これから発展途上国の国内需要が増加してきますと、国際市況にはやや強含みの影響を与えるのではないかということも予想されるわけでございまして、私ども我が国としての輸入量に数量的な不安というものはさほどないとは考えておりますけれども価格面ではやや強含み基調というものが今後予想されるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  一方、国内子牛価格の動向でございますが、御承知のとおり、この数年国内需要が大変増加をしております。それに対して残念ながら、先ほど来いろいろ御論議賜っておるわけでございますが、国内の供給は必ずしもそれに十分追いつかないということがございまして、国内における牛肉価格がやや強含みに推移をしておるということもございまして、国内牛肉生産のもとになります子牛の価格というものは、昨年からことしにかけましていわば史上最高レベルというふうな水準に高騰をしております。私ども国内牛肉生産というものを安定的に発展をさせていく場合に、この子牛価格が大変高騰するということは、一面繁殖経営に対して一つの刺激剤にはなるわけでありますけれども、肥育部門にとりまして大変大きな負担なたる。さらにはまた、最終製品の価格を引き上げることを通じて需要の抑制効果をもたらすというふうなことがございますので、やはりこれは適正なレベルにしていかなければいけない。そういう現状でございますが、今後輸入枠撤廃に伴います輸入量の増加あるいは価格の低下ということを通じまして、現在かなりの高水準にある子牛価格というものは中長期的には一定のテンポで低下をしていかざるを得ない。あるいはまた、ある意味では国内生産、肥育経営の適正なコストの実現あるいはまたできるだけ合理的な価格で消費者牛肉を供給をしていくということを考えますと、この子牛価格のレベルについてもやはりある程度の低下をさせていく、また輸入牛肉に対抗していくためには、国産の子牛価格というものもそういった一定の合理的なレベルに収れんをさせていくことが必要であるというふうに考えておるわけでございます。  ただ、その低下の程度あるいはテンポというものが現実の繁殖経営の合理化スピードを超えて行われることになりますと、国内の繁殖経営の再生産が大変困難になるおそれがあるというふうな問題をはらんでおりますので、実は今回の御審議を賜っております二法案におきまして、そういった子牛価格をめぐるこれからの展望というものを踏まえて、そういった過渡期間におきます子牛生産農家に対する所得補てんあるいは資源の再生産ということを可能ならしめるように、新しい生産者交付金制度というふうなものをつくってその橋渡しをしていきたいということで今回の法案を御提案申し上げ、御審議賜っておるという状況でございます。
  23. 前島秀行

    前島委員 要するに、国際動向というのは価格面で強含みだ、子牛の国内見通しは、今は非常に高騰しているけれども自由化という事態になれば下がることは必至である、簡単に言うとそういうことですね。そういう見通しだ。そういうことで、今回の自由化対策としてこの不足払い制度ができた、こういうことだと思うのです。  こういう国際的な価格動向、生産動向、国内の子牛の価格動向、自由化の影響ということを考えますと、これから日本畜産農家、とりわけ一番根幹をなすであろう繁殖農家、子牛生産ということがこれからの牛肉生産の柱だ、こう言われているわけですから、このいわゆる保証価格をどう立てるのか、あるいは合理化目標価格をどう立てるのか、それを政策的にどうリードするかということがこれからの政府としての畜産行政といいましょうか、生産振興方向をすべて表現するだろう、私はこういうふうに思うわけであります。  そういう面で、先ほど言ったような状況見通しの中で子牛の生産、繁殖農家がやっていける、再生産が保障されるあるいは全体として牛肉生産が国際価格に勝てる、こういうことを前提として、そのための保証基準価格というのはどこにどのくらいの額を検討しているのか。先ほど言いましたように、政府は、困難な状況だ、自由化は困難な状況だと終始言ってきた。そして、過去やってきた生産目標というのも実は達成していない。裸になったならば国際価格に勝てないということだから、終始、自由化は困難だ、こう言ってきたわけですね。それを、困難だという状況があるにもかかわらず自由化を決めたわけですから、この保証価格を政府の責任として明確に示すこと、そしてこの価格を示すことによって、自由化によって不安を得た農家、とりわけ繁殖農家、子牛生産農家に安心を与える、生産意欲を与える、そのことが総じて日本畜産牛肉生産拡大につながる、こういうふうに思うわけであります。したがって、この保証価格をどの程度に置くのか、その辺のところをはっきりガイドラインとして、方向として、政府の責任として示してほしい、こういうふうに思います。
  24. 京谷昭夫

    京谷政府委員 今日の我が国国内における肉用牛生産につきまして、いろいろ困難な問題があることは御指摘のとおりでございますけれども、私ども、今回の牛肉貿易をめぐる日米あるいは日豪間の対外交渉におきましては、御承知のとおり一定の経過期間を確保するとか、あるいは枠撤廃後、相当高水準の関税措置等による国境措置をとるとか、あるいは国内対策の実施ということを通じまして、十分困難な状況を克服して将来展望を切り開いていけるというふうに考えておるわけでございます。  その一環として、お話ございました生産者補給交付金制度等を中心とした国内対策を御審議賜っておるわけでございますが、その中で子牛生産農家に対する保証基準価格をどのようなレベルで決めるかということにつきましては、御審議いただいている法案に書いておりますように、子牛の生産費の動向等の生産条件あるいは需給事情等々を考慮してその再生産確保するということを旨として決めることになっております。具体的なこの方式については私どもまだ固定的な方式を持っておりませんけれども、制度が現実に発足をします昭和六十五年度までに、その方式を含めて畜産振興審議会等でいろいろ御議論を賜った上で適正な算定方式を決めていきたいと思っております。  ただ、私ども念頭にございますこの保証基準価格水準というのは、御承知のとおり既に現在予算措置によりまして子牛の価格安定制度がございます。ここで実現をされております肉専用種については全国平均価格、それから乳用種につきましては全国一本の価格になっておるわけでございますが、そういう現在の制度で運用をしております保証基準価格というものが一つの目安になっていくのではないか、そういう考え方を私ども現時点で持っておるわけでございます。
  25. 前島秀行

    前島委員 長たらしい説明は要らぬです。この前の参考人等でも、最低現行水準以上だ、こう言っているわけですし、今見通しを聞かれたように、子牛が下がることは間違いないと言っているわけであります。そして、自由化は困難だという状況の中で自由化をしたということですから、この子牛生産ということはより厳しくなってきている、その中で再生産といいましょうか、保障し、生産をふやさない限りこの肉牛生産というのは拡大をしないわけでありますから、現行というと二十九万何がしですか、これはそんな程度ならば困難という状況が解決してないわけでありますから、ますます厳しいということなんで、再生産になるわけは絶対ないわけであります。乳用牛の方については、換算基準を多少変えるとしても十六万ですか、ということで、これでは全然農家の声というのは、この前の参考人でも、やっていけませんよ、政府自由化責任を果たしてないというのが参考人の皆さんの声だったと私は思うし、また、先ほどの見通し等々からいって成り立つわけがない。大体農家の皆さん等々の要望というのは、肉専用種の方は三十万以上、三十五万から四十万というのが最低の保証だと言われている、あるいは乳用種の方も、十六万じゃ足りない、二十万は欲しい、二十万なければ困る、こういうのが声だろうと思います。  ぴしっと額は言わぬでいいけれども、そういう方向というのは考えているのか、またそのくらいのものを出さない限りは国内生産拡大はあり得なくなる、こういうふうに私は思うわけですけれども、再度その辺の具体的な額的なものの方向を、ぴっちりした額じゃなくていいですから、その辺の見通しというものをぜひお聞かせ願いたい、こういうふうに思います。
  26. 京谷昭夫

    京谷政府委員 保証基準価格の水準について重ねてのお尋ねでございますが、これにつきましては、法律案で規定しておるところを踏まえまして、具体的な算定方式を含めて制度発足まで、現実の運用までの間に関係者の意見を十分参酌をして、適正な方式あるいは適正なレベルというものを決めていきたいというふうに私ども考えております。  その際に、いろいろ御意見はあろうかと思いますが、私ども現在念頭にあります——これは算定方式の議論でありますとか、これからのいろいろな経済事情というものを踏まえて決めていくことになりますが、現時点であえて申しますと、先ほど先生からお話ございました現行制度で決めております保証価格水準、和牛といいますか黒毛和種で申しますと、全国平均で二十九万二千円が全国平均値になっております。それから、乳用種につきましては、これは現行制度で十三万四千円ほどになっておりますけれども、現行制度のもとで体重換算方式を変えて十六万円のレベルにするつもりでございますが、そういったレベルが現時点では頭にあるということを申し上げておきたいと思うわけでございます。参考人の皆さん方もいろいろな意見を開陳されたわけでございますが、そういう現行制度のレベルというものが一つの発想の起点になっているというふうに、私どもも理解しておるところでございます。
  27. 前島秀行

    前島委員 現在の畜産農家、とりわけ肉牛生産に携わっている農家経営が安定しているというふうな状態は、いわゆる規模が拡大されている、二百頭、三百頭等々の大規模のところで初めて現在の畜産農家というのが経営が安定している、価格が保証されるというふうな状況だろうと思うのです。そして同時に、そういう規模拡大をされているところというのは、組織というのは、株式会社とか法人だとかいう企業的な性格、組織を備えたところなんです。そして、片一方で子牛生産をする繁殖農家というのは実際は本当に小規模な状況なんですね。  そういう状況の中で、先ほど言うような現行程度あるいはそれに若干上回る程度の保証価格ならば、この規模の小さい零細な繁殖農家自由化によってひとたまりもなくつぶれてしまうのではないだろうか。生き残るのはそういう規模拡大をしている二百頭、三百頭あるいは企業的性格、組織を持ったところだけが残る、こういう結果になりはしないか。そうすると、この制度というのは、結果論において零細な繁殖農家をつぶすという、本来の目的と逆な結果になりはせぬかというふうな気がしてならぬわけであります。大臣、その辺、本来の制度の目的から見れば、いわゆる繁殖農家零細農家に温かい手を伸べるそのための価格保証であるはずなんです。この程度の価格保証だと、結果としてはそういう零細農家をつぶすことになってしまう。本来の法案の、この制度の目的から外れてしまうのではないかというふうに思うわけですけれども、その辺のところは大臣、どうですか。
  28. 京谷昭夫

    京谷政府委員 お話のとおり肉用牛経営、特に繁殖経営が大変零細な規模で停滞をしているという状況はございます。しかしながら、大変緩慢ではございますけれども経営規模拡大する経営もふえてきておるわけでございます。私どもは今日当面している状況を踏まえながら、やはり一定の構造改善を進めながら足腰の強い繁殖経営というものを育成していくという基本的な考え方のもとで、本制度の適正な運用を図りたいと考えておりますので、そういった考え方のもとで、この保証基準価格の水準についても十分先生の御指摘も踏まえながら長期的な肉用牛生産の強化、合理化ということにも十分対応できるような制度運営に当たってまいりたいというふうに考える次第でございます。
  29. 前島秀行

    前島委員 もう一つの、合理化目標価格です。これは、いわば子牛生産生産コストをどうさせるかということだと私は思うわけであります。先ほど来言ってきましたように、肉牛生産というのは進んでいない、生産コストも下がっていない、こういう現実の中であります。片や国際価格、牛肉自由化の影響ということになってくると、この合理化目標価格とこの保証価格をどうさせるのか。この考え方というのは、要するに、合理化させて生産コストを落として一緒にする、こういう形になるわけですけれども、先ほど来言ってきましたように、生産が進んでいない、あるいは日本の条件等々考えると、かなり政策的に強化しないと、合理化目標価格と保証基準価格を一緒にすると農家がつぶれてしまうということになると思うのです。そうすると、そういう面でかなり生産コストが下がるまで長期にわたってこの制度を維持しなければならぬ、こういうことになると私は思うわけでありまして、そういう面で合理化目標価格についてどういうふうに定めていこうとするのか、その辺の見通しについて簡単にお願いをしたいと思います。
  30. 京谷昭夫

    京谷政府委員 合理化目標価格の決め方についての基本的な趣旨というものは、御提案し、御審議賜っております法文の中にも書いておりますとおり、「牛肉の国際価格の動向、」あるいは「肥育に要する合理的な費用の額等からみて、肉用牛生産の健全な発達を図るため肉用子牛生産の合理化によりその実現を図ることが必要な肉用子牛の生産費を基準として、」決めるということになっておるわけでございますが、保証基準価格等一定の格差が当分の間あるということは私どももそのとおりだと思いますが、現実生産コストをできるだけ早くこの合理化目標価格水準に近づけていくための努力というものはやはり相当必要であると考えております。  そのために、御承知のとおり、今回の関税収入相当額のいわゆる特定財源をもとにした施策内容といたしまして、繁殖経営における子牛の生産コストを引き下げるために必要な各種施策、例えば飼養規模の拡大、あるいは放牧その他粗飼料の生産基盤の整備、それからまた繁殖面でのコスト低下に非常に大きく響きます分娩間隔の短縮、あるいは子牛の事故率の低下等といった手段をもちまして、子牛の生産コストを低減させるための別途の政策努力というものが並行して必要であるというふうに私どもは考えておるわけでございます。  それらの努力、もちろん政策的な努力あるいはまた生産者の皆さん方の御努力をいただきながら、一定の期間は必要でありますけれども現実生産コストをこの合理化目標価格水準に近づける努力をしていく必要があるというふうに考える次第でございます。
  31. 前島秀行

    前島委員 時間が来ましたので最後にしますけれども、ともあれ、大臣、この保証価格の設定、合理化目標価格の設定、それがこれからの政府としての畜産政策のすべてを表現すると私は思います。同時にまた、これは一歩間違うと本当に繁殖農家をつぶし、農家をつぶすという事態になる。生き残るのは企業性を含めた大きな規模だけだという形で、農家を大事にする、農家の心がわかる大臣としてはとんでもないことになると思いますので、くれぐれもその辺の保証価格の設定等々はお願いをします。  同時にもう一つ、事業団のことについて最後にちょっと伺いたいと思います。  先週の質問にもありましたけれども、いわゆる畜産事業団、汚職事件があった、職員が逮捕された、あるいは輸入牛肉の談合事件が報道された、あるいは四億円に上る利子補給というのが不必要に払われていた等々、事業団に対する国民的な不信というのがあるわけですね。にもかかわらず、今度の法律で一千億円にわたるこの経費というものを不足払いでもって事業団さんが取り扱う、こういうことになっているわけであります。したがって、国民的な信頼を回復するという意味からも、この事業団の運営についてはかなりの改善要求されると私は思うのです。同時にまた、それに向かって農水省としては事業団の監督ということをより強化しなければならぬと思うわけでありまして、そういう面で、最後に、大臣、価格保証の問題の基本的なあり方の問題と事業団の問題についてお答え願って、私の質問を終わりたいと思っています。
  32. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 価格保証の問題につきましては、先ほど来畜産局長から重ねて御答弁申し上げておるとおりでございます。  しかし、数字はともかくといたしましても、何としても畜産農家が存立できるということに焦点を合わせてすべてを取り運んでおることには間違いございません。そういう意味において、このたび御審議をいただいている畜産二法もぜひとも早く結論をお願いいたしたい、御可決をお願いいたしたい。同時に、いろいろな意味での予算措置等についても万全を期してまいりたい。そういうことを着実に行っていけば、必ず存立を守ることができる。外交交渉に対しましては批判のあることは承知をいたしておりますけれども国内措置とあわせて国境措置等も考えながら、全部あわせてやっていくことによって、必ずその目的は達せられる、将来はある、ということを、事務方も相当な自信を持って進めておりますし、私も常に督励をいたしておるところでございますので、さよう御承知おきをいただきたいと思います。  なお、事業団の問題につきましては、広範な業務を行ってまいりましたが、輸入牛肉売買業務をめぐって、これはいろいろまた御批判のあることはまことに遺憾に存じておるところでございます。六十六年度からの牛肉輸入枠撤廃までの間における輸入牛肉売買業務の適正な実施はもちろん、今回の法律案によって予定される新たな業務を含めて、畜産振興事業団の任務が円滑かつ適正に遂行されていくよう、綱紀の粛正はもとより、その業務執行について指導監督の強化に努めてまいる所存でございますので、これまたあわせて御理解を賜りたいと思っております。
  33. 前島秀行

    前島委員 終わります。
  34. 菊池福治郎

    菊池委員長 安井吉典君。
  35. 安井吉典

    ○安井委員 畜産法律に入る前に、この間アメリカにおいてRMAの提訴をUSTRが却下したわけでありますけれども、あの一連の動きに対してどうしても私はふんまんやる方なきものを覚えているものですから、そのことをひとつ初めにお尋ねをしておきたいと思っております。  政府はこれまでの対アメリカ交渉では、米の問題については、二国間協議ではなく、他の国々の重要問題と同様に新ラウンドで論議を進める、こういうことで合意をしておりましたということを国会でも御報告されていたわけであります。ところが、ヤイター代表の発表では、提訴は却下はするけれども、十二月の中間レビューの場で米市場開放について前進した姿勢を示さなければ直ちに再提訴を促す、基礎的食糧は市場参入ルールの例外とすべきだという日本の主張は容認しないし、短期的手段にも応じられないという日本の主張も認められない云々と言ったわけであります。これでは、ウルグアイ・ラウンドでいくことにアメリカとの間で話が決まっているんだということを大臣は国会の場でも御報告をされておったわけでありますけれども、その約束がほごにされたわけだと思います。アメリカとの約束というのはそんないいかげんなものであったのかどうかという思いをいたすわけでありますが、この際、もっと明確にお答えをいただきたいと思います。
  36. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 今委員からおっしゃられるとおりの経緯でございます。最後のお言葉にございましたが、では、いいかげんな約束だったのか、こういうことでの御質問でございます。いいかげんであるという表現は、私は友好国に対して使いたくはございませんけれども、条件つきで却下をしたということ、そして早々に何かアクションを起こさなければ再提訴、正確に言えば再々提訴もあり得るというような意味の条件をつけられたことは甚だ遺憾であるという談話を発表したのもそこに意味があるわけでございます。私の方がいいかげんなのでなくて、向こうの方が、ということでございます。
  37. 安井吉典

    ○安井委員 いや、その先方のいいかげんな話を約束してきたのは大臣なんですから、そういう意味で私は申し上げているわけであります。  特に私が理解に苦しむのは、リン農務長官の談話です。ワシントン十一月一日発の共同によりますと、二国間で話し合わぬという約束はしていないと何度も私は言明してきた、こういうわけですね。ですから、今のお話大臣は明確にお答えをされたわけでありますが、アメリカ側の今までの約束というのはまさにいいかげんであったというふうに言わざるを得ないのであります。もう少しそういうところに日本の方も怒らなければいかぬと思うのです。約束を守らないということは重大な問題ですよ。リン農務長官の談話はうそなのかどうか、その辺いかがですか。
  38. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 もっと怒れという話でございますけれども、私の談話を見ていただけば、これは相当なものだと自負をしているわけでございます。  ただ、私はこの場でも触れたくはないと言いながら触れておりますことは、四年に一回の大統領選挙のまた種にされておるという報道もアメリカ側からございますので、私としては他国の大きな選挙の最中にそういうことはなるべく触れたくないんだ、しかし極めて遺憾である、こういうことを重ねて言っておるわけでございまして、リン農務長官がまたどう言った、こう言った、それは一部の報道で承知はいたしておりますけれども牛肉・かんきつ交渉、私が手がけた三回目の東京における交渉の直前にも、リン農務長官の相当な誤解を招く発言があったことをヤイター代表が来日早々マンスフィールド大使とともに私に釈明したというような経験も私は持っておりますので、またかという感じもしないでもない、こう申し上げておきます。
  39. 安井吉典

    ○安井委員 これはやはりきちっとしておいていただかなければ後々影響がありますので、そのことを特にお願いしておきたいと思います。  十二月のモントリオールにおける中間レビューへの対応の問題でありますが、ウルグアイ・ラウンドへの対応については私どももいろいろお聞きをしているわけでありますが、モントリオールの中間レビューで米市場開放策を示せ、こういうふうに向こうが追い込んでいるわけです。政府もそういうことになるとは考えていなかったのではなかったかと思うのでありますが、政府としてモントリオールで米の問題についていかなる主張をするおつもりなのか。特にこれは短期的措置という言い方を向こうはしているわけでありますが、これについて、モントリオール対策ですね、どうでしょう。
  40. 塩飽二郎

    ○塩飽政府委員 お答え申し上げます。  十二月の第一週にカナダのモントリオールで、ウルグアイ・ラウンドの中間的なレビューをガット加盟国の大臣が三日間にわたって討議をするというスケジュールが既に決まっているわけでございますが、ウルグアイ・ラウンドは一九八六年の九月にスタートしたので、ことしの九月でちょうど丸二年経過したわけでございます。これまでの交渉項目が十五項目ございますが、項目によって相当進んだものとそうでないもの、いろいろございますが、とにかく二年間の各交渉分野の進捗ぶりを大臣みずからがレビューをするというのが中間レビューの一つ課題になっているわけでございます。  同時に、そういった過去二年間の交渉の実績をベースといたしまして今後二年間、ウルグアイ・ラウンドが一九九〇年に終結をしようということで、既にプンタデルエステ宣言の中に交渉期間をそのように定めているわけでございますが、今後の残された二年間に、しからばこの十五項目の交渉項目についてどういった方向づけをやっていくのかということにつきまして、大臣会議方向を出そうというのが第二の課題になっているわけでございます。  農業交渉の関連でその点をもう少し詳しく申し上げますと、今委員の方からお話がございましたように、農産物貿易交渉のあり方としまして長期にどういった目標に持っていくのか、これは端的に完全自由化でいくのか、そこまでいかないである程度の保護の削減でとどめるのかということに結局帰着するわけでございます。要するに、完全自由化がそこまでいかないのか、どの程度の長期目標にするのかというのが第一の課題、それがいわゆる長期措置とか長期目標と言われている問題でございます。  それから第二に、農産物については単に長期にどうするかということだけではなくて、最終的な交渉にいく途中の段階で、いわゆる短期的な措置を合意することによってとりあえずの農産物貿易の問題に歯どめをかけようという短期措置の問題も議題になることになっているわけでございます。各国の立場は、今申し上げた長期の問題についても、片やアメリカなどが主張いたします完全自由化に必ず持っていくように合意をしようという主張に対して、農業の特殊な性格からいって長期的といえども農産物貿易を完全自由化に持っていくのはできない、政府の何らかの措置というものが農業には必ず必要であるという立場、これはECあるいは日本、それから北欧などが主張している基本的な立場でございますが、そういう長期の議論についても主張が分かれておるわけでございまして、収れんをいたしておりません。  それから短期措置につきましては、一九八九年、それから一九九〇年の交渉終結までの二年間にとりあえず保護措置をある程度凍結をし、かつある程度下げるという方向が浮かび上がってきておるわけでございますが、それにつきましても一挙に引き下げまでにはいくべきじゃなくて、単に現状を凍結する程度にとどめるべきであるという主張が一方でございます。他方では、単なる現状の凍結だけでは不十分で、ある程度保護水準を引き下げるところまで合意すべきであるという主張もございます。それからまた、我が国も、短期的にとりあえずの緊急の措置を講ずる必要性は認めつつも、各国の政策的な自由度といいますか弾力性を留保した形でそういう措置が合意されるべきであって、各国の政策運営を余りがっちり縛るような内容の合意は短期措置としても望ましくないというような主張を行っておりまして、この短期措置についてもそれぞれの国の主張が必ずしもかみ合っていないわけでございます。  そういった長期、短期の議論をモントリオールの会議におきましてどのように収れんさせていくのかということにつきまして、今後残された一月ぐらいの期間に公式ないしは非公式の会合を通じて相当議論が濃密に行われていくものと思われますけれども、現時点では、モントリオールで合意されるであろう長期あるいは短期の措置の内容がどの程度のものに熟度が高まっていくのか、予測することは非常に困難でございます。  いずれにしましても、私どもは、既に昨年の十二月に出してございます日本農産物交渉についての提案の大枠をできるだけ維持するような形でモントリオールの合意が実現されるように、今後、残された期間の調整及びモントリオールの会議において最大限の努力をする所存でございます。
  41. 安井吉典

    ○安井委員 少し問題が大きくなりましたので、本論がおろそかになっては困りますから、ここらでこの問題については締めくくりたいと思います。  ただ、私は、やりとりする時間はありませんが、大臣に、これからのモントリオールさらにウルグアイにかけての交渉について若干の注文をしておきたいと思います。  第一番目には、友好国アメリカと二言目には言われるわけでありますけれども、今までの約束ほごのやりとりでもおわかりのように、向こうはもう割り切っているわけですから、友好国だから日本に甘くしてやるなんという考え方は彼らはさらさら持っているわけじゃないわけであります。したがって、反論すべきものはきちっと反論していく、不利になるようなことは徹底的に抵抗していくという構えを貫いていただかなければ、日本農業は守れません。そのことが一つです。  二番目には、議論を米だけに限定せず、農産物全体に広げた主張にしていただきたいと思います。日本はかたくなに農産物輸入を拒んでいるというものではさらさらないわけです。小麦、トウモロコシ、大豆等農産物、特に穀物については七〇%も外国から輸入しているという国はないのですから。そして米についてはもう生産過剰で減反をしているわけです。私は北海道ですけれども、北海道は五〇%の減反ですから、これ以上アメリカから米を入れれば、この減反率が五五%になり六〇%になるということになると、これは農民の暴動が起きますよ。そういう事態だということ。つまり、農産物全体から見れば、我々はそう無理な主張をしているわけではないわけですから、そういう立場をぜひ貫いていただきたい。  三番目は、ガットは輸入産品という格好で物を見ていくわけでありますが、もっと食糧問題という観点をその中に入れ込むわけにはいかぬのかということであります。同じ国連の機構の中でもFAOは食糧問題という立場で農業の問題を考えるわけです。ですから、世界の中で飢餓の地帯があるという状態の中で、飽食のアメリカが余っている米を、一方日本も飽食の国で米をもてあましているわけですが、そこへ押し込んでこようとしている。一方では、飢え死にをする人民が全く無視されている。こういう構図になっているのではないかと思います。ですから、ウルグアイ・ラウンドで農業基本問題まで立ち入るということになっているわけですから、農業問題だけではなしに食糧問題という観点で進めていくという問題提起をしてはどうかという点であります。  四番目には、もっと戦術を駆使していただきたい。攻めていくという態度が必要なので、アメリカのウエーバー条項について、今度のウルグアイ・ラウンドではアメリカも裸になると言っているのですが、今度モントリオールの中間見直しでもどこまで見直すのか、中間段階のレビューをアメリカに求めてはどうでしょうか。あるいは問題ごとにECとかケアンズ諸国とか韓国という国々と連帯をしていくとか、もっと多角的な連携、そういうことで米を守るという御努力を願いたいわけであります。  時間がありませんので、御注文ということだけにとどめておきます。
  42. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 お急ぎのようですから簡単に答えます。  私が友好国と申し上げているのは、友好国だから甘く見ようとか甘える気はございません。今、米の問題に関して言えば、アメリカの大統領選挙に私自身の発言が利用されるとか発言していないことまで利用してかかっておるとか不愉快な話が多いわけであります。しかし、それは選挙のときだからという向こうの事情もありましょう。しかし、そういうことに私が結果として内政干渉になるような言い方はしたくない。こういう意味で友好国という言葉を申し上げておるわけでございますから、一般論としての友好国そのもののつき合いの中で話をしているわけではございません。  米だけではなくて農産物全体を議論する、全くそのとおりでございます。しかし、我が国は米は特別な事情にある、特別な歴史的経緯がある。また、我が国の基幹的な農産物ということだけではなしに、環境問題にも理屈づけられる重要なものであるということで米を、また向こうも米だけについて特に改めてRMAが言っておるということでございまして、アメリカの関心品目であったとしても、私どもは米は特別である、その他の農産物もあわせて議論しよう、こういうスタンスでございます。  農産物食糧問題として、農産物問題というよりも食糧問題、おっしゃるように飢餓に苦しむところもあるのだということでございます。そういう認識は私も同じでございます。であればこそ、私自身も人口と食糧という命題に関連をして、また今も私自身そう思っておりますけれども、主要食糧というものはそれぞれの地域で自給されるべきものであるという原則、そして足らざるところは輸出国から安定的に輸入をする、そういうことが正しい考え方であると私は思っております。これもそんなにあなたと違う話ではございません。  それから戦術としてもっと攻めよということでございますが、守るだけは守ってきましたから、今度は攻め、という言葉は平和主義者の私は使いたくたいのでありますけれども、より積極的なということでまさに攻めと言われても結構でございますが、私はより積極的なということで、その積極的な中にはアメリカのウエーバー品目あるいはECの課徴金あるいはケアンズ・グループ、そういうものの主張、提案、それも全部まないたの上にのせて、我が国の問題と一緒に議論する時期になれば米を含めて議論することもやぶさかではない、こういう一貫した主張をしておるわけでありますし、今後もそのスタンスで努力をしてまいりたいと思っております。
  43. 安井吉典

    ○安井委員 大臣の決意表明もございましたが、ウルグアイ・ラウンドの前のモントリオールの見直しが非常に重要さを増してきたわけですよ。だからそこに一つの焦点を当てた御努力をぜひ願いたいと思います。  そこで、牛肉・オレンジの自由化という問題で、私ども非常に心配しておったその事態への一つの対応が今度の法案という形で出されているわけでありますが、自由化拡大という新しい事態に立って生産需要見通しはどういうふうになるのか、そのとらえ方について伺いたいと思います。  二月に第二次「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」というのをお出しになっているわけでありますが、これについての改定をどうするのか、あるいは改定は要らないのか。その他肉用牛生産の問題についてのいろいろな問題があるわけでありますが、その点だけまず伺います。
  44. 京谷昭夫

    京谷政府委員 お話ございましたように、本年の二月に肉用牛生産及び酪農につきまして昭和七十年度を目標にしましたいわゆる酪肉基本方針を定めて公表したところでございます。この中で、牛肉の需給見通しといたしましては、御承知のとおり需要量では、基準年の六十年に比較をいたしますと約一・五倍程度、それから国内生産については約一・二倍程度の見込み数値を出し、その結果自給率が六〇%程度になるであろう、こういう数値を明らかにしたところでございます。この見通しにおきましても、牛肉貿易をめぐりまして国際化の進展がさらに進行していく。さらにまた、国内における生産コストの低減目標というものも示しておるわけでございますが、この需給見通しについて申し上げますと、私ども需要量につきましては、牛肉についての輸入割り当て制の撤廃に伴いまして全体としての供給価格が低下をし、需要量の絶対量としてはこの見通しよりもやや強含みに推移をしていくのではないか。また、国内生産目標値につきましては、この基本方針を策定する時点におきまして今後の積極的な施策前提にしてかなり強気の目標数値を出しておりますので、これが一つの上限値ではないかというふうに考えております。そういう判断をもとにしますと、自給率については表に出しておりますものよりは若干低下をすることを余儀なくされるものと考えております。この数値自体については、公表時においても明らかにしておりますけれども、特に需要については状況変化によって相当程度数値が動くということも示しておりますので、私ども当面この二月に立てました基本方針について直ちに改定する必要はないと考えておるわけでございます。  なお、別途、現在農業基本法に基づいて策定をすることになっております主要農産物の長期需給見通し、現在あるわけでございますが、この改定についての作業を検討を進めておるところでございます。それらの中で、当然のことながら、牛肉につきましてもいろいろ検討すべき点は検討をしていくことにしておる次第でございます。
  45. 安井吉典

    ○安井委員 たくさん問題を準備しているのですが、余裕がないようでありますから少しはしょりながら進みますが、今度のこの法律案の焦点というか、自由化対策のポイントは、やはり子牛の供給についての後づけ、それを関税というきちっとした財源をもって裏づけていく、そういう点ではないかと思います。その点については私どもももちろん賛成でありますが、ただ、先ほどの前島委員が子牛の保証基準価格だとか合理化目標価格の点について提起をされてやりとりがあったわけであります。私もその点、問題意識を前島委員と同じように持っているわけでありますが、やはりせっかくできた法律も、この価格の問題のありようによっては農民の期待を逆に裏切ることになるかもしれない、そういう問題点を持っているのではなかろうかと思います。やはり自由化というふうな今まで経験のないような事態で、先行き不安な経営状況、その安定化を図り農家の再生産確保のための価格ということでなければならぬわけで、それについては現行の制度による基準を上回った価格で設定してもらわなければという声が生産者に非常に強いわけであります。先ほどその辺についてのやりとりがございましたので繰り返すつもりはありませんけれども、その点を私も特に主張しておきたいと思います。  これは繁殖農家が魅力を感ずるような制度でなければいかぬわけで、ただでさえ繁殖農家というのは若い人から見放されて老齢化しています。それからまた乳用種の場合では、現行の乳の安定価格制度における保証価格水準が低いものですから、もうこの子牛の値段が収入源の非常に大きな部分を占めているというふうな状態もあります。そしてもう一つは、現在のこの子牛の安定保証制度の乳雄の場合の価格は二百十キロで十三万四千円でしたか、こういうように安いものですから、なかなか制度に加入しない。加入率は一四%ぐらいだというふうに私は聞いているわけであります。酪農経営の安定のためにもこの水準の大幅な引き上げというものが必要ではないかとも思うわけであります。そして、特に今の加入率については、乳用種の場合においては実際は九〇%までがぬれ子の取引というふうなことであります。それで、たとえ加入費五千円を払って今の制度に入っても新制度になったら五千円は戻ってこないというようなことだから、さしあたり加入するという人はないというようなことになってしまう。あるいは月齢四カ月以上が対象だというふうなことで政令でもお決めになると聞きましたけれども、せめて一月半ぐらい、四十五日ぐらいまで引き下げてほしいなという希望もあるわけであります。こういったようなさまざまな要求に対してどうお答えになりますか。
  46. 京谷昭夫

    京谷政府委員 御審議を賜っております肉用子牛生産の安定制度の中におきまして保証基準価格が大変バイタルな要素であるということ、御指摘のとおりでございます。この価格水準の決め方については、御提案申し上げております法案の規定の中にも一般的な方針を書いておるところでございますが、具体的な運用に当たりましての算定基準あるいはまたそれに基づく具体的な価格水準については、今後現実にこの制度を運用する時期までに関係者の意見等を踏まえまして適切な算定方式あるいはそれに基づく価格の算定を行っていきたいと思っておるわけでございますが、当面私どもの頭にあります水準としましては、繰り返しになりますけれども、現在の価格安定制度で実現をしておる保証基準価格というものが念頭にあるわけでございます。  その中で、特に酪農と大変関係の深い肉用種の子牛の価格安定についての御指摘があったわけでございます。現行制度のもとでも大変支持価格水準が低いというふうな御議論がございます。そこで、新しい制度の発足前に現行制度のもとで乳用種については改善をしておく必要があるだろうということで、実は、先般明らかにいたしました緊急対策の中で現行の価格安定制度の拡充措置といたしまして、価格安定制度の対象といたしまして、肥育に回される乳用雌牛についても新たにこの価格安定制度の対象に取り込むという措置を第一点考えております。  それからもう一つは、価格水準自体につきまして体重換算の方式も織り込みまして、現在の一頭当たり十三万四千円という保証基準価格水準を十六万円というレベルに改定をすることを検討をしておるわけでございます。  それからさらに、酪農経営から肉用牛部門へ出される時点でいわゆるぬれ子取引というものがあるわけでございますが、現在の価格安定制度あるいはまた新たに生産安定制度のもとでも直接このぬれ子を生産者補給金制度の対象にいたしておりません。これは、やはり生後一、二週間で行われるぬれ子自体ではまだ肉用素牛として提供されることが確定をしない段階でございますので、肉用牛の生産振興という観点から見ますと、肉用素牛として飼養されることがもう少し確実な時点になったところで生産者補給金の対象として捕捉することが適当だろうということで、先ほどお話がございましたように、対象になります子牛の月齢の最小限のところを四カ月というふうなことで考えておるわけでございます。  もちろん、いわゆるぬれ子段階からこういった制度の対象になります段階まで哺育・育成をする過程をだれかが担っていかなければいけないわけでございますが、その一環といたしまして、御承知のとおり、乳肉複合経営という形で肥育素畜に確実に提供されるような行程というものを担う担い手を育成する対策を進めることを通じまして、酪農経営に対するてこ入れというものは十分に確保されていくものというふうに私ども考えておる次第でございます。
  47. 安井吉典

    ○安井委員 ぬれ子の取引の問題について今お触れになりましたけれども現実の問題として、そういうふうな形で行われているということだし、特に今度商業系統の大型な肉経営というものが始まるということになればなおさらそういう取引の方向が進むのではないかという見通しもあります。ですから、そういうような意味で、完全なぬれ子という言葉が当てはまるかどうかわかりませんけれども、一月半ぐらいまでに下げてほしいなという意向が出てくるのもこれは当然だし、それから、農業共済の方は対象はたしか六カ月以上ということになっていると思いますが、これも、六カ月以上というようなことになるとほとんど対象がないのです。ですから、これもぜひ引き下げてほしいという要求が出ているわけで、この点についても関係の方からお答えをいただきたいと思います。  とにかく、せっかく制度ができても加入者がいないようなことになってしまってはもうどうにもならぬわけで、今もうわずか一四%ぐらいで、乳雄を中心にして今私申し上げているわけですが、一四%ぐらいのままでそれがふえないなんということになったら、一体何のために我々が苦労してこんな法律をつくったのかということになるわけです。その点についてのお答えをお願いします。
  48. 塩飽二郎

    ○塩飽政府委員 家畜共済制度、特に乳雄の共済対象月齢が現在六カ月以上ということになっているのが実態に合わないのではないかという御趣旨の御質問だったと思うわけでございます。  確かに現在の家畜共済では乳牛の加入資格月齢は家畜の取引月齢を勘案しまして六カ月以上ということになっているわけでございますが、それだけで一律に規制しているわけではございませんで、ちなみに今の六カ月以上という仕組みは農業災害補償法の八十四条に規定をしているわけでございますが、その同じ規定の中に主務大臣が特定の地域について別の定めをする場合にはそれでいけるという規定がございます。具体的には地域の要望、取引の実態等を勘案いたしまして、実情に合わせて月齢を六カ月未満でも、一ないし二カ月若齢のものも対象にする道が開かれておるわけでございまして、この特例措置を適用している地域が、例えば四カ月まで引き下げているのが兵庫、宮崎、それから五カ月まで引き下げている県が七県ございます。これは県一円でもそういう措置がとれますし、特定の県内の限定された地域を対象に今申し上げたような月齢の引き下げを適用する地域を取り上げることもできるわけでございますので、御要望を踏まえて実態を勘案いたしましてそういう可能性を大いに活用していきたいと思っておるわけでございます。
  49. 京谷昭夫

    京谷政府委員 乳用種の子牛につきまして、子牛価格安定制度への加入率促進についてお話ございました。  現在の乳用種全体の加入率が、これは雌牛を含めての数値でございますけれども、一四%レベルであるということは御指摘のとおりでございます。私どもも、新しい制度を円滑に発足させ適正に運用していくためには乳用種の加入率を高めていくということが大変大きな課題であるというふうに認識をしております。そういったことから、先ほども申し上げましたとおり、雌子牛につきましても肥育に回るものについては加入対象にしていきますとか、あるいは保証基準価格につきまして現行制度のもとで新制度発足前に価格改定を実現しまして加入率を高めていくための努力をしてまいりたいと考えておるところでございます。
  50. 安井吉典

    ○安井委員 これはやってみなければわかりませんけれどもなかなか難しい問題ではないかと思いますので、さらに御検討を願いたいと思います。  それから、合理化目標価格の問題も先ほど触れておられますけれども参考人として救仁郷さんも言っておりました。性急に保証基準価格を合理化目標価格に誘導するというようなことになると子牛生産維持拡大を阻害することになってしまう、ですから、かなり長期の期間を目標として設定していかなければいかぬのではないか。長期というのは何年かわかりませんが、二十年か三十年か、それは数字では言いませんけれども、かなり長期間での考慮というものが必要ではないかと思いますが、その点どうですか。
  51. 京谷昭夫

    京谷政府委員 この法案で決めております合理化目標価格水準でございますが、この価格水準を目標にいたしまして国内の子牛生産コストの低減を図っていくことが必要になるわけでございます。実際にこれを達成する期間、どれくらい要するかという問題について、御指摘のとおり、私どもごく短期間にこれが可能になるというふうには考えておりませんし、また、これを実現していくためには、この生産者補給金制度のみではなくて、生産コスト低減のための政策的な援助でありますとか、生産農家自体の各般の御努力というものが必要であるというふうに考えておるわけでございます。そのための財源としまして、実は本制度で予定をしております関税相当額の特定財源の中で、そういった援助に必要な経費も特定財源の使途の対象として織り込んでおるつもりでございます。  いずれにしましても、私どもとしても、できるだけ早く合理化目標価格水準で国内生産コストが賄えるという状況をつくりたいと思っておるわけでございますが、それがごく短期間で実現しがたいものであるということは私どもも認識をしておるところでございます。
  52. 安井吉典

    ○安井委員 これはまだ時間がありますので、あれこれ事情を十分勘案したものとして御検討をぜひ願いたいと思います。  関税収入ですが、子牛価格もこれによって左右されていくわけですし、価格低落というふうな事態になりますと非常に大きな財源が必要になってくるのではないかとも思われます。したがって、十分な財源対策が必要です。特定財源となる関税の水準を、最終段階五〇%ということになっておりますが、その後も引き続いて少なくともその率を保持するということが必要であり、それでも財源不足になるというふうな事態が生じたら、別の財源で補てんをするくらいの構えが必要ではないかと思います。その点どうかということが一つ。  それから、単年度で関税収入が余ってしまうと、それを翌年度に積み増すということが何かできないんだそうですね。その年はその年で何かに使ってしまわなければいけないというふうな仕組みだというふうにも聞くのですが、その点はどうなんでしょうか。次年度にずっと蓄積ができて、後にいかなる事態が起きるかわかりませんので、たとえ一年間で使い余してもその後に使えるような、そういう建前が必要なのではないかと思います。この二点について……。
  53. 京谷昭夫

    京谷政府委員 本法案で予定をしております特定財源としての関税収入相当額につきましては、なかなかいろいろ変動要素がございまして、固定的な予測値を出すのは難しゅうございますけれども、私ども、まずその算定の基礎になります関税率水準そのものをどう考えていくのかという点につきましては、輸入枠撤廃後三年間については逓減をしますけれども、具体的な数値というものが保証をされておるわけでございます。  四年目以降については、御承知のとおり五〇%というレベルを上限にいたしまして、ウルグアイ・ラウンドにおける関税交渉において具体的に決めていくことになろうと思いますが、私どもとしては、やはりその時点における内外の肉用牛生産をめぐる状況というものを十分踏まえて、国内における肉用牛生産の存立を確保していけるという観点に立って、必要な関税率水準を確保していきたいというふうに考えておるわけでございます。そのことを前提にしまして、関税収入の絶対値というものは、おおむね一千億円の総額を下回ることがないのではないかというふうに当面考えておるわけでございます。  一方で、その使途につきましては、御承知のとおり今回の制度でつくります生産者補給金その他の政策経費に充てるわけでございますが、これらに要する経費として十分なものが確保されるというふうに考えておるわけでございます。  また、この関税の収入相当額を特定財源にするということの意味は、先生から御指摘のございました年度間の財源調整の問題にもかかわるわけでございますが、法文の中に、余裕があった場合に使い残したものは、年度を越して通算をして後年度の使用のために、やはり特定財源として算定をされていくという規定を設けておりますので、年度間の調整はこれで十分確保されるというふうに考えておる次第でございます。
  54. 安井吉典

    ○安井委員 まだコストダウンのための飼料の問題とかいろいろあるわけでありますけれども一つ負債整理の問題について、これが畜産農家の非常に大きな重荷になっているわけであります。現在、大家畜についての対策もあるわけでありますけれども、それがもっともっと充実されて強化されていくことが必要ではないかと思います。どうですか。
  55. 京谷昭夫

    京谷政府委員 最近におきます畜産経営の収益性、御承知のとおり規模拡大がそれなりに進展をしておりまして、生産性の向上が見られるわけであります。また、ごく最近少し異なった様相を示しておりますけれども、この数年来、配合飼料価格が比較的安定的に推移をしてきたということもございまして、総体として見ますと収益性は改善をされてきているというふうに私ども認識をしております。  ただ、借入金に依存をして急速に規模拡大を行ってきたというような、経営の一部に負債が固定をしておるというふうな問題が酪農あるいは肉用牛生産双方に見られるわけでございまして、これに対処しまして、御承知のとおり各種の制度資金の貸付条件についての緩和措置でありますとか、あるいは自作農維持資金の的確な運用、あるいはまた、それに加えまして畜産特別資金といったような形で特別の低利資金の融通措置を行ってきたわけでございます。  最近におきましては、御承知のとおり本年度、六十三年度の畜産物価格を決定する際に、この問題に対処するために、六十三年度から五カ年の計画で新たに大家畜経営体質強化資金という形で新しい低利融資の道を開いたわけでございます。本年度スタートをすることにしておりますこの大家畜経営体質強化資金そのものにつきましても、今回の牛肉輸入枠撤廃という事態に対応します緊急対策の一環としまして、当初予定しております融資枠を拡大しますとか、あるいはまた融資対象の条件というものを若干緩和する措置を今回の緊急対策として追加的に行うことを現在検討しておるところでございます。  いずれにしましても、この大家畜生産農家の負債問題は一つの大きな課題であると考えておりまして、今後とも各地域の実情等も踏まえながら、適切な措置をとるべく努力してまいりたいと考えておる次第でございます。
  56. 安井吉典

    ○安井委員 農民の方は今の負債対策についてもこれで満足ということには決してなっていないようです。さらにまた、もっと長期超低利な金利の資金を、これはもう畜産だけじゃありません、農業に導入すべきだという意見も強いわけであります。それらについてのさらなる御検討をお願いしておきたいと思います。  持ち時間が終わりになってまいりましたので、幾つかの問題ははしょりまして、最後畜産振興事業団の問題をお尋ねしてまいりたいと思います。  今度の改正によって事務内容が増減し、非常に大きな変動期に事業団が入ってきたという感じを受けるわけであります。業務内容の変動に基づいて組織運営あるいは職員の数等についていろいろな動きが出てくると思うのでありますが、それはどういうふうなお見通しを持っておられるのか。  それから、特に六十五年までは、新しい仕事も含めてむしろ仕事はだんだん増加していくわけですね。ところが、一定の段階まで来たら自由化ということで様子ががらりと変わってくる。そういうような中で、職員の皆さんが不安なく引き続き仕事ができるように、そういうふうな措置を今のうちから十分に講じておいていただかなければならぬのではないか。雇用の確保の問題について、事業団の側においても、それからきょうは大臣からも伺っておきたいと思います。  それからもう一つは、これは先ほども前島委員指摘にもありましたように、事業団に絡んだ談合の問題だとか、いろいろな形で批判が出ているわけであります。この問題については私どもも、問題を取り上げた朝日新聞の話も聞いたし、それから事業団側のお話も聞いたが、なかなかわからないですね。こちらは調査権を持っていないものですからよくわからないのですけれども、問題がないというような御説明もございました。しかし、いずれにしても何か一つのターゲットになっていることだけは間違いないわけです。こんな高い牛肉を食べさせるのは事業団だ、悪いのはあいつだという素朴な見方も中には加わっているのではないかと思うのですけれども、そういうような問題もあります。したがって、いろいろと改善すべき点がたくさんあるのじゃないかと思うのですが、仕事の内容も変わったこの際でありますだけに、業務内容の徹底的な改善についても御努力を願いたい。理事長からも、それから大臣からも最後に伺っておきたいと思います。
  57. 今村宣夫

    今村参考人 御指摘のとおり、輸入牛肉につきましては事業団の取扱量は急速に増大していくわけでございます。そうして、御指摘のように、六十六年度になりますと輸入牛肉に全くタッチしないという急激な変化をもたらすわけでございます。しかも、その間に新しい業務が並行してスタートするということで、これに適切に対応していくということは事業団としてなかなか大変なことであるという認識を私たち十分に持っておるわけでございますが、どうしてもその期間うまく乗り切って新しい業務に移行する必要があるわけでございます。  そのように容易なことではございませんが、一方、輸入牛肉の増加量の大部分は売買同時入札方式、いわゆるSBS方式によっておるわけでございますので、そういうSBS方式の取扱量が増加いたしますと、事業団としてSBSの部分につきましては、在庫管理だとか、要するに売り渡し事務を行う必要がなくなるわけでございます。  同時にまた、SBS方式が導入されますと、事業団が直接売買を行います輸入牛肉につきましても、売り渡し方法を市場売りを中心にして弾力、単純化することができます。また、取扱部位も代表的なものに集約できる。あわせて電算化の推進その他によりまして、限られた人員の中ではございますが、何とかこれに対応していけると考えておりますし、また対応していかなければならないと思っている次第でございます。  また、昭和六十六年以降の体制につきましては、肉用子牛の生産者補給金の交付業務を担当することに相なるわけでございまして、これは状況の推移を見ながら、十分行政庁の指導も受けながら検討をしてまいらなければならないことであると思っております。  いずれにいたしましても、今後の体制、業務の推移に伴いまして、職員の身分の安定については十二分に留意をいたしまして、雇用の不安を生ぜしめないように十分意を用いてまいりたいと考えておるところでございます。  第二点の談合疑惑の問題等につきましては、先般農林水産大臣の御指示を受けまして私ども鋭意調査をいたしましたが、総括的結論として申し上げますならば、談合があったとは考えられないわけでございます。しかし、輸入商協議会からの改善措置も踏まえまして、今後このような疑惑を招くことを防止をいたし、同時に円滑な自由化への推移という観点から、所要の改善措置をとることにいたしまして、大臣に御報告を申し上げたところでございます。  今後、事業団の業務につきましては李下に冠を正さないという心構えで、職員と一体になってその業務を推進していくつもりでございますし、また改善を要すべきところがあれば、十分検討を加えて改善を進めることにいたしたいと存ずる次第でございます。
  58. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 今ほど今村理事長から答弁がございましたが、私どもといたしましても事業団の引き続き行われる業務、新たな使命を持っての業務、これらが適正に進められていくよう念じておるところでございます。  また、一部マスコミに報道された疑惑問題とか談合問題等につきましては、御答弁をけさほど来いたしておりますように、指導監督の責任を持たされておる私といたしましては、いかに一部であっても疑惑を受けないように今後とも配慮をしてまいらなければなりませんし、適切な指導監督を進めてまいるつもりでございます。
  59. 安井吉典

    ○安井委員 終わります。
  60. 菊池福治郎

    菊池委員長 今村参考人には、ありがとうございました。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十分休憩      ────◇─────     午後一時一分開議
  61. 菊池福治郎

    菊池委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。水谷弘君。
  62. 水谷弘

    ○水谷委員 畜産二法の審議に入る前に、今回の牛肉・かんきつ交渉の経過を踏まえて、冒頭何点か御質問をしたいと思っておりましたが、大臣が他の委員会に今お出になっているようでございますので、それは大臣がお見えになってからお尋ねをしたいと思います。  そこで、まず最初に、牛肉等についての日米、日豪合意内容について、政府見解並びに交渉の中におけるいろいろな経過等も含めてお尋ねをしておきたいと思います。  一九九〇年度までの毎年、総輸入枠六万トンの増加の問題についてでございますが、これは最終的に三年間で十八万トン、プラスをされる。この数量は、大変な輸入数量になるわけでございますが、この枠を許容された背景には、我が国における牛肉の需給動向等も明確に検討され、把握をされた上でこれらの数字が確定をされていった経過があるはずであります。さらには、完全自由化までの間の経過措置である三年間に、この価格水準がどういう形で推移をしていくと判断をされて、そしてこの六万トン総枠、三年間の数字が決着がついていったのか、その辺のことについて経過を含めて、それからこれからの三年間の見通しをどのように設定をしておられるか、最初にそれをお尋ねをしておきたいと思います。
  63. 京谷昭夫

    京谷政府委員 ただいま先生から御指摘ございましたように、先般の日米、日豪間の牛肉貿易についての決着内容一つといたしまして、本年度から昭和六十六年度の輸入枠撤廃までの期間、三年間における牛肉輸入量の拡大数量につきまして、年間六万トンという拡大数量を合意をしておるわけでございます。  このような双方が合意する、決着に至りますまでの間、交渉の過程におきましては、この輸入量の増加テンポにつきまして、輸出国側はもう少し大きな数量を日本国内市場は吸収し得るのではないかというふうな主張が大変強かったわけでございますが、私どもとしては最近の国内におきます牛肉需要量の推移、それに対する国内生産の動向、また牛肉の価格水準について消費者の皆さん方が欲している状況等々を勘案いたしまして、我が国国内牛肉市場において吸収し得る範囲内のものにこの数量拡大枠を設定するという基本的な考え方で対処をいたしまして、最終的にこのような水準で双方の了解を取りつけたわけでございます。  御承知のとおり、当面の需給見通しとしまして、本年の二月に昭和七十年度を目標にしました酪肉基本方針を出しておるわけでございますが、この中で予定をしております牛肉需要量、六十年の基準に対して一・五倍程度の増加という推定値を持っておるわけでございますが、昨今の円高の進行等によりまして、国内での輸入牛肉流通価格というものは相対的に低くなっていくであろう、そのことを通じまして国内需要も、当初この酪肉基本方針で考えておりましたテンポよりもかなり需要量の増加テンポが高まるということが見通されておるわけでございます。  一方、国内生産につきましては、私ども、七十年度の目標値としまして基準年の六十年をベースにしまして一・二倍程度の生産量増加ということを想定しておるわけでございますが、最近の状況を見ますと、国内生産の増加テンポは一%程度という水準でございまして、当面、この経過期間中における需給ギャップというものは平均的な推移よりも大きくなってくるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  そういったことから、今回合意を見ました、毎年輸入量を六万トン増加するという対処の仕方によりまして、このこと自体が国内の需給を大幅に乱すというふうなことはないと考えておりまするし、また、今回の合意で決めましたこの六万トンにつきましては、御承知のとおり、現行制度で畜産振興事業団が一元的な輸入担い手としてその大部分を売買操作をすることにしております。もし不測の事態が生じますれば、畜産振興事業団の持っております調整機能を果たさせることによりまして、この六万トンの輸入量増加に伴う国内市場における不測の事態に対する対応の仕方はあり得るというふうに考えておるところでございます。
  64. 水谷弘

    ○水谷委員 数字の確認の意味で、一九九〇年度の最終で、そうしますと、需要量それから国内生産量、輸入量はどういう数字になりますか。
  65. 京谷昭夫

    京谷政府委員 今ちょっと具体的な数値、資料をチェックをしておりますので、後ほど資料を取り寄せまして、お答えをいたしたいと思います。
  66. 水谷弘

    ○水谷委員 今の答弁でも、国内生産に対する伸び率、これはかなり想定よりもスローダウン、そういう観点からこの輸入の枠の六万トン消化も可能である、そのように明確におっしゃったわけではありませんけれども、そのように受け取れる内容であります。これは輸入自由化へ向かっての三年間の経過措置、そういう背景はよくわかりますけれども我が国農業、いわゆる米と畜産は二本の柱である。特に、この畜産というのは今後拡大をしていくべき、国内農業位置づけとしては大変重要な立場にあるわけであります。そういう意味からいきますと、やはり国内生産量の取り組みについてもそれなりの真剣な位置づけというものが必要であろう、こういうふうに考えるわけであります。どうも生産をある程度積極的に推進するという態度ではないような感じが全体的にしてならない。その点は指摘をしておきたいと思います。  それから、価格水準の変動について、この三年間の経過措置の間、いわゆる輸入総枠を六万トンずつ拡大をされていく中で、国内産のいわゆる乳肉はもちろんでありますが、和牛、この辺の価格がどういう形で推移をしていくだろうと見通しをされておりますか。
  67. 京谷昭夫

    京谷政府委員 先ほどお尋ねのございました、当面の経過期間におきまして年間六万トンの輸入増加ということを考えた場合の需給見通しをどう考えるかということでございますが、私ども最近の国内生産状況あるいは需要の動向を考えますと、六十五年度におきます輸入数量は、毎年六万トン増加ということで三十九万四千トンになるわけでございます。この時点におきます国内生産については、先ほど申し上げましたように国内生産が資源的な制約もございまして大変停滞的であるという状況を踏まえますと、四十万トン前後ではなかろうか、こういう見通しを持っております。したがいまして、需要規模としては、ただいま申し上げました輸入量と生産量合わせまして約八十万トン程度、これは部分肉ベースでの数量でございますが、そういった需給規模を想定しておるところでございまして、最近の国内生産あるいは国内需要の動向を考えますと、こういった形でバランスをすることになるであろうということを見通しておるわけでございます。  それから、ただいまお話のございました国内生産量の増加についてどういう努力をしておるかという御指摘でございますが、私どももかねてから牛肉国内需要については安定的に拡大をしておるということで、農業部門の中でも大変重要な戦略部門であるという観点で各般の施策を進めておるわけでございますが、昭和五十七年ごろに生じました子牛価格の急速な低下という事態の中で、子牛の繁殖意欲が大変停滞をした時期がございます。その際に、繁殖のもとになります繁殖用雌牛の屠殺等が進行いたしましたために、その後の再生産がなかなか思うように伸びない。  それからもう一つ国内の肉用牛資源の大変重要な部門でございます酪農部門におきまして、御承知のとおり、牛乳・乳製品についての需給規模というものが昨年あたりから若干変わった様相が出ておりますけれども、やはり牛乳・乳製品全体の需要規模が停滞をしておる。そういう中で肉用牛資源の生産意欲が非常に停滞をしたというふうな事情が重なりまして、国内牛肉生産量を増加させるもとになります肉用牛資源が非常に停滞的に推移をしまして、今日の国内牛肉生産の停滞という事態を招来をしておると考えておるわけでございます。  ごく最近時におきましては、子牛価格が比較的好調である、あるいはまた牛乳・乳製品についての需給事情がかなり変わった様相を見せておるということもございまして、肉用牛生産についての意欲というものが大分回復をしてきているというふうに思うわけでございますが、そういった中で今回の将来に向けての牛肉輸入枠の撤廃という事態というものが、長期的に国内の肉用牛生産の縮小あるいは停滞ということにならないように諸般の対策を仕組んでいく必要があるというふうに考えまして、大変困難な状況はあるわけでございますけれども、国際交渉を通じて確保しました経過期間あるいは国境調整措置というものを踏まえながら可能な国内対策を講じて、国内生産維持確保に努めていきたいということで今回の法案も御提出を申し上げておるところでございます。
  68. 水谷弘

    ○水谷委員 局長、価格水準の変動をどういうふうに見通していらっしゃるか。
  69. 京谷昭夫

    京谷政府委員 価格の問題につきましては、私どもとして考えておりますところは、今回の国際交渉の結果、輸入枠の拡大あるいはまたさらにその先に輸入割り当て制度の撤廃という事態を控えまして、総体的に見ますと低下をするということを覚悟していかなければいけないというふうに考えております。ただ、そういう輸入牛肉の数量増加あるいは価格水準の影響を受けるその程度というものは、国内の伝統的な肉用牛資源でございます和牛といった肉専用種から生産をされるものについては、かなり外国物との品質格差があるということもございまして、その影響の度合いというのは相対的に低いであろう。それから、酪農部門から生産をされます乳用種の牛肉については、そういった影響を受ける度合いというのは高いということが相対的に言えるわけでございます。  ただ、いずれにしましても、私どもがこの二月に策定をしました酪肉基本方針においても明らかにしておりますように、これからの牛肉市場の円滑な発展を確保していくためには、生産コストの低下の努力を続けながら、消費者の納得し得る価格での生産物の提供というものが必要でございますので、各種の構造改善策あるいは技術改良等を通じまして、生産コスト現状の水準から二、三割程度引き下げていくという国内目標を掲げておるところでございまして、そういった考え方に沿いまして、政策的な努力あるいはまた生産者の御努力をいただくことを通じまして、輸入量の増加あるいは低価格の輸入牛肉の侵入ということに対抗できる国内生産体制を確保していくべく努力をしたいと考えておるところでございます。
  70. 水谷弘

    ○水谷委員 まだその点について突っ込んで御質問したいのでございますが、先に進みます。  一九九一年度以降の通常関税の水準、一九九一年、二年、三年と七〇%、六〇%、五〇%ということで決着がついたわけでありますが、この七〇%水準への移行、これは現行関税二五%でありますけれども、現在輸入牛肉国内における販売価格形成の中を見ますと二五%の現行関税、事業団の売買差益を関税で換算すれば約七〇%と読めるということになりますと、現在は九五%関税という実質関税、そういう形での価格が決定をされておる。それが三年後には七〇%水準へ移行しなければならない。この点についてはどういうふうにこれが着陸できると見通しをされているのか、お尋ねをしておきます。
  71. 京谷昭夫

    京谷政府委員 御指摘のとおり、直近におきます現行制度のもとで輸入される牛肉につきましては、二五%の定率関税に加えまして、畜産振興事業団を通じた一元的な売買操作を通じまして、関税率に換算をして約七〇%程度の売買差益が加算されて国内流通価格が形成される、こういう仕組みになっておるわけでございます。このような保護水準につきまして、私ども先ほど申し上げましたとおり本年二月に策定をしました酪肉基本方針におきまして、安定的な国内供給、消費者に受け入れられる価格形成ということのためにも、この基本方針のもとでできるだけ早く二、三割程度の生産コストの低減を進めていくという目標を設定しておるところでございます。  したがいまして、先般の輸入枠撤廃後の国境措置の交渉におきましても、こういった私ども目標とできるだけ整合性のとれる国境措置を確保する必要があるということで交渉を重ねたわけでございますが、私ども目標として持っております当面二、三割程度の生産コスト低減目標を的確に実施していくということを前提にいたしますれば、輸入枠撤廃後の逓減税率ではございますけれども、七〇、六〇、五〇というレベルでの定率関税を課すことを通じまして、それに国内生産されるものの品質格差を考えれば、国内生産に対する保護水準として十分な機能が果たせるものではないかというふうに考えておる次第でございます。
  72. 水谷弘

    ○水谷委員 次に、緊急調整措置について伺います。  この発動水準について、「発動基準は、前年度の輸入実績又は輸入可能量(高い方)の一二〇%」、こうなっております。ここに言われる輸入実績はわかりますが、輸入可能量というのはどういうことでしょう。
  73. 京谷昭夫

    京谷政府委員 今回の日米、日豪間の牛肉貿易をめぐる交渉の決着内容といたしまして緊急調整措置というものがとられておること、御指摘のとおりでございます。この中で、この緊急調整措置を発動する場合の基準輸入数量を決めまして、そのレベルというのは前年度の輸入可能量、または輸入実績量のいずれか大きい方の一二〇%に相当する数量を超える場合には緊急調整措置を発動する基準数量になるんだ、トリガー数量と呼んでおりますけれども、そういう考え方をとって合意を見ておるわけでございます。  この場合の輸入可能数量と申しますのは、ある特定年度のトリガー数量を決める際のもとになります前年度の輸入数量が実績値と輸入可能数量のいずれか大きい方ということになっているわけでございますが、何らかの要因で輸入実績値の方が観念的に想定されます輸入可能量よりも低い場合には、その翌年度の、特定年のトリガー数量を決める際に、輸入可能量として予定をしたものよりも低い実績値をもとにしたのでは輸出国側の輸出力といいますかそれを過度に抑制することになるということで、何らかの要因で輸入実績値が予定量よりも減った場合には、それを観念的に想定される輸入可能量というレベルまで引き上げた上でトリガー数量を設定する必要があるということを先方が大変固執をいたしまして、これを受け入れたということでございます。  実はこのような取り決めの仕方、要するに現実輸入実績数量とその年に予定をした輸入可能量というものがギャップがある場合には、その高い方をとるんだというふうなトリガー数量の決め方については、例えば日米間で繊維協定を結んでおりますけれども、これは日本が輸出サイド、アメリカが輸入サイドということで一定のルールを決めておるわけですが、その際の考え方としても、実績値が予定された量よりも低い場合に、輸出国側の利益をある程度そんたくしていくという観点で、この輸入可能量という概念を用いましてある特定年のトリガー数量を適正に定めるという方式をとっておりまして、その例も勘案いたしましてこのような概念を使用しておる、こういう経緯でございます。     〔委員長退席、笹山委員長代理着席〕
  74. 水谷弘

    ○水谷委員 アメリカが持っております食肉輸入法、この中でもトリガー数量という決め方があるわけであります。年間の輸入数量が輸入制限数量、すなわち過去の輸入実績を基礎に国内生産状況を考慮して決定する、その輸入制限数量の一一〇%を超えると予想される場合は国別割り当てを行い、輸入制限を行う、こういうふうになっているわけです。私は今回のこの発動基準は大変高い基準を設定をし過ぎているのではないか。これを超えるという事態になったときは、本当に国内生産というのは大変な状況になるのではないかなと思うわけであります。  ちなみに、アメリカの食肉輸入法におけるトリガー数量、例えば国府消費全体に対するパーセントでいくとどのぐらいの数量でこのトリガー数量を決めているか、ちょっと教えていただきたいと思います。
  75. 京谷昭夫

    京谷政府委員 このトリガーレベルを決める考 え方、先生から御指摘ございますように、今回の日米、日豪協議において、前年の輸入実績または輸入可能量のいずれか高い方の一二〇%というトリガーレベルの決め方をしておるわけでございますが、これは、私どもとしては、最近におきます我が国輸入牛肉の推移、それから先ほどお話のございました今後当面三カ年間六万トンずつの輸入拡大をするという、この数値を見てみますと、六十一年、六十二年の輸入数量の推移は年率大体一九%で増加をしております。さらにまた、当面六万トンの増加というものを年平均にいたしますと大体二〇%である。そういう最近の流れをベースにしまして、このトリガーレベルを決める際の年増加率二〇%ということはまあ妥当なレベルではなかろうかと考えておるわけでございます。  一方、アメリカが御指摘のとおり食肉輸入法という法律を持っておりまして、これに基づきまして一定輸入調整措置をとることにしておりまして、その前提としましてトリガー数量を決めることにしております。これは、毎年の増加量というよりも、過去の安定的な時点におきます年平均の輸入量を基本にいたしまして、その後の需給規模の推移で一定の調整を行いまして決める数量。過去のある安定的な時点におきます年平均輸入量をベースに、需給規模に応じて調整をしたある特定年について考えられるいわば適正輸入量を基本にしまして、それに一一〇%を掛けたものがアメリカの食肉輸入法でのトリガー数量として決められておるものでございまして、日本が今回アメリカ、豪州との間で合意をした緊急調整措置の中で使っておりますトリガー数量の決め方と基本的に仕組みが違うわけでございます。したがいまして、どちらが輸入に対して厳しくまた輸入に対して制限的であるかという比較は直接には難しいわけでございまして、私どもとして、日本輸入に対して大変緩やかな規制をしておるとは必ずしも考えておりません。  ただ、アメリカの場合には、このトリガー数量を使った輸入制限措置を発動したのは大変限られておりまして、このトリガーレベルの数量を基礎にしまして具体的な輸入制限措置を発動したのは一九七六年の四分一、四半期、それ一回だけであると承知をしております。  それから、このような食肉輸入法の体系によってアメリカが一定輸入調整措置を発動している制度を持っておりますが、そのもとでアメリカが輸入を許容している量があるわけでございます。それを実態的に見ますと、最近の状況では全体の需要量に対して六%に相当する輸入量になっておる、こういう状況に相なっております。
  76. 水谷弘

    ○水谷委員 厳しいかどうか、これはいわゆる緊急措置でございまして、こういうものはぴしっとした水準でないと問題が派生してくるおそれがあるわけです。そういう意味では私は局長と違う判断をしておりまして、二〇%の輸入の伸び、枠の伸び、そういうものの前提に立った一二〇%という数字、緊急措置の発動基準としては数字が大変でか過ぎる。将来的にこれは一考をしなければならないのではないのかなという感じを持っておりますので申し上げているわけであります。まして、今おっしゃったとおり、アメリカ国内での輸入実績というのはいわゆる国内商品に対して六%と非常に数字が低いわけであります。先ほど一九九〇年の数字をおっしゃいましたけれども国内生産輸入量は大体同じくらいの量、我が国の場合は五〇%輸入という、これよりもさらに二〇%ふえていくという設定をした緊急措置の発動基準というのは余りにも譲り過ぎたのではないのか。これはお答えは要りません。私が指摘をさせていただきます。  それから、この合意の内容の中で、一九九四年度以降はウルグアイ・ラウンド交渉結果及びガットのルールに整合性のとれたものとする、また通常関税の場合はウルグアイ・ラウンドの関税交渉のベースとする、こういうふうになっておりますが、このウルグアイ・ラウンドにおける農業貿易の新しいルールづくりを目指して今やっておるわけでありますから、それを無視することはとてもできるはずではありません。しかしながら、我が国国内における牛肉生産のための必要な措置、国境措置については、十分そこは配慮をして取り組んでいくよということもあわせて明確にしておいていただかなければならないと思うわけでございますが、いかがですか。
  77. 京谷昭夫

    京谷政府委員 お話のとおり、今回の対外交渉の結果といたしまして、牛肉についての輸入枠撤廃後の国境調整措置につきましては、通常税率を確保するほか緊急調整措置を三カ年について確保しておるわけでございます。  四年目以降の問題につきましては、通常税率については五〇%を上限にしてウルグアイ・ラウンドの関税交渉において対処をしていく。それから緊急調整措置につきましては、ウルグアイ・ラウンドにおける交渉あるいはそこで策定されることになるであろう新たなセーフガードというふうなものを踏まえて、それに整合性のあるものにしていくということで、将来の交渉あるいは検討課題に残されておる部分があることは御指摘のとおりでございます。  私どもとしては、この四年目以降の問題につきまして、具体的なウルグアイ・ラウンドにおける関税交渉をどのような形で進めるのかまだ詰まっておりませんけれども、それがいかなる状況に相なりましても、我が国国内におきます肉用牛生産の存立を守っていくという基本的立場に立って具体的な交渉の場に対処し、その基本的な立場を貫くよう最大限の努力をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  78. 水谷弘

    ○水谷委員 大臣、お見えになりましたので、大臣に何点かお伺いをしたい。  率直なところ、今回この二法の審議に入っております、国内対策の万全を期すという観点から我我も真剣に取り組みをしているわけでありますが、その法案の中身はさることながら、大臣に何点か、今回のこの牛肉・かんきつ交渉の経過等を踏まえて、私が感じている感想も含めてお尋ねをしておきたいと思います。  それは、今ウルグアイ・ラウンドにおける農業貿易ルールづくり、もうすぐモントリオールの中間レビューというこういう時期を迎えているときだけに、この牛肉・かんきつ交渉の経過の中で我我が危惧を抱いたり国民がまたいろいろなことで政府に対していろいろな感情を抱かれた。それらの経過をしっかり踏まえて、今後の我が国のいわゆる農産物貿易における理念といいますか長期ビジョンというか、我が国食糧の安定供給、さらには我が国農業、農林水産業の存続、活性化、発展、こういう観点に立ってのしっかりとしたお取り組みをより一層お願いをしたい、こう考えるからお尋ねをするわけでございます。  特に、牛肉輸入制度については、もう言うまでもございませんけれども、ただいまも議論になりましたアメリカの食肉輸入法、カナダでも同じ内容の食肉輸入法、これらを持ち、実質的には明確に、いわゆる輸入制限措置というものをとれるようになっている。先ほどそういう発動をしたことがないとおっしゃいますが、やはり買ってもらう方は弱いものでして、お客様の意向に沿わなければならないというので自主調整をおやりになって、そこまではいかないところでとまってはいますけれども、そういう明確なものをぴしっと持っている。ECにおいても高率課徴金、いわゆる可変課徴金制度を明確に持って、実質的には輸入の禁止的措置を明確に保持している。我が国だけが三年後完全輸入自由化、こういう解決を迫られた。これは、我々がどんなに譲ってもこの交渉結果というのは我が国畜産農業、あらゆるものを見た場合——ましてそれは三年後という非常に短い期間でこれがやってくる。これは、当然納得もできないし、不満であり、怒りがあり、現場では大変なお気持ちを皆さんお持ちになっていることは当然であります。  そこで、私も大臣、そして竹下総理に予算委員会等の席で、交渉のさなかいわゆる牛肉・かんきつの自由化の問題についてはどうするんだ、政府の態度はどうなんですかということで何度もお尋ねを申し上げました。政府の答弁は、大臣も総理も自由化は困難であります、この答弁で終始なされてまいりました。外交交渉ですから、相手があること、こちらの思うとおりに物事が運ぶなどということはあり得ない。しかしながら、我が国政府方針、また国民が期待をされている政府がとるべき方針というのは最後までその方針を貫き通していこうという徹底した姿勢がなければ国民にこたえていくことはできないと私は思うわけであります。  さてそこで、昭和五十九年四月、山村・ブロック会談における交渉の結果、我が国は四年後も枠の拡大の交渉という立場を主張し、その時点で既にアメリカは四年後の交渉はもう枠の拡大の交渉などはありませんよ、完全自由化のテーブルに着く以外にない、こういう認識をお持ちになっておった。昨年私どもがアメリカへ参ったときも、もう枠の交渉などというのは全然考えておりませんぞ、自由化しかないですよ、このような話もあり、また我が党の訪米団が現地に伺った折も、ヤイター代表から、もう四年前にその話は申し上げてあるはずだ、それ以外に我が方では一切交渉に携わる考えはございませんよ、こんなやりとりがあった。これはもう国民すべてがよく御存じのことであります。  私は、こちらはこちらの主張をし、向こうは向こうの主張をする、決着をつけるときになって初めてその結論を出すのだ、これはもう外交交渉で当然のことだろうと思いますが、やはりその場で明確に、常に交渉の中で、区切りとなるその交渉の時点で我が国の主張は明確に、先方も、ああ日本はそういう主張でしたな、我が方はこういう主張でしたよ、こういう明確なものが必要ではないのか。その場所はうやむやにして、まあまあというような感じで、聞きおきましょう、ああそういう考えですか、こういう形で推移をしていく交渉では必ず今回のように——私は先ほど日米、日豪のその合意の内容について何点かにわたって質問をいたしました。私から見れば、これは譲りに譲りに譲った決着内容だな、こういうふうに考え、残念であります。そういう事態が起きてこないためにも、交渉における双方の意見の食い違いであれ何であれやはりそこに明らかにしておく、そして最終交渉の時点に向けてのそれぞれの努力を続けていくんだ、こういう基本的な考え方といいますか姿が必要であったのだろうというふうに思います。  大臣が二度も訪米をされた。大変な御苦労だったと思います。ところが、一説には官邸筋からの強い力で、交渉がもうそういう形で決着をつけざるを得ない。日米友好という大局の中に、またいわゆる貿易の出超、そういう経済全体のマクロの観点から、この牛肉問題については最後まで徹底的に闘うということは許されない国際環境、そういうような高度な判断から今回の自由化の決着がつけられた、こう論評する人たちもおります。私は、それが全部そうだという判断には立っておりません。しかし、先ほど申し上げたように輸入自由化を実施する時期が三年という非常に短い期間、また可変課徴金の問題を出してもとてもこれは受け入れられなかった。EC諸国からすれば、日本がそういう主張をし、ECと同じような立場でともにこのアメリカとの交渉に立つ、そういう姿をECの諸国は願って、陰ながら声援を送られていたのではないのかな、そんな感じもするわけでありますが、これもだめ。また可変関税の導入についてもだめ。また緊急輸入制限の発動条件、先ほど指摘しましたこの条件も、私から見ればこんなことではなかなか発動ができないんではないかと思うほどの水準等々、内容について非常に厳しい厳しい内容であった、このように考えるわけであります。  大臣、今私は、私の感想を含めて申し上げました。事実関係がそのとおりであると主張しているわけではございませんが、しかしながら、今問題になろうとしている米についてのいろいろな交渉における問題についても、発言といいますか両国の立場に違いがあって当たり前でありまして、そんなに簡単に一致するところは出てこないはずです。ところが、それは常に違いを内外に明らかにしながら、そして交渉に当たっていくという——中途半端な玉虫色で、向こうがそう判断するのはやむを得ない、我々はそう言っているのではないのだよ、こんなのではなくて、そうは言ってませんよ、明確なはっきりとした区切りといいますか、そういう姿を出していくべきであっただろう、そういうふうに考えるわけでございます。  大臣、本当に一番御苦労された方にこういうことをお尋ねするのは、大変私も心苦しい点はありますが、しかし、将来のためにと思ってお尋ねをしたわけでありますので、大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
  79. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 牛肉・かんきつ、それでまた米もつけ加えての感想、いろいろ御指摘をいただきました。  幅広な御質問でございますので、順序がどうなるか危惧をいたしておりますけれども、山村・ブロック交渉、そのときの認識、これはアメリカ側と日本側との間に大きなずれがあったのではないかということで、相手は、四年後になればもう完全自由化だと思っていたのではないか、そのずれは一体どうなっているかということからまず申し上げますと、私どもはそうは考えておらない。今日までの山村・ブロック会談、あるいはそれをさかのぼるケネディ・ラウンド関税交渉の当時から数えれば二十年間、中川・ストラウス会談から数えて十一年近く、そしてその後の山村・ブロック会談、こういうものがあって、それぞれの主観が違う。  しかし、言葉の上だけで主観が違うと申し上げるのではなくて、かつてこっちもこう解釈しておったということではなしに、ことしの一月に行われた竹下・レーガン日米首脳会談において、困難な問題で結論の出ていない問題について、特に牛肉・かんきつについてはそのテーブルづくりを、テーブルに着いてそして話し合おう、こういうことが両国首脳の間で話し合われたということは、四月一日からの完全自由化なんということが決まっていたらそんな合意が首脳間でできるはずがたい、私はそう信じておるわけでございまして、いろいろな御批判もございましょうが、とにかくテーブルづくりに全力を挙げてきた。テーブルをつくってみたところがなかなか大きなずれがある。外交交渉でございますので、今日の段階におきましてもその中身についてつぶさに御報告申し上げるわけにはまいりませんけれども、いずれにしてももうぎりぎりの選択。  その間に、官邸筋からのあるいは圧力があったのではないか、強い指示があったのではないかというようなお話も今伺いましたけれども、あるいは世間でそう受け取られておる部分もあるかもしれません。しかし、任せられた私は、一回目、二回目の交渉において、特に二回目の交渉は八十時間に及ぶ長期にわたる交渉でございました。それでもなおかつ大きなずれがあるということで、実質的には決裂をしたかのような形で実は別れてきた。その後、三回目が東京で行われた。こういう経緯にございまして、御批判、御不満は方々にあろうかということは承知をしながらも、私といたしましては本当にぎりぎりの選択をし、そして外交交渉で決着をつけ、あわせて国内措置、これをもって補って、そして肉牛生産の存立を守るということに全力を尽くしたつもりでございます。  その国内措置に、つきましては、財政当局からも今までにない理解をいただくことができた、この点は私も自負いたしております。早々にそういう時期が来ればいいがなと念願し続けております。  追加補正予算、ここにもまたそれがかかわってくる、またいろいろなその他の予算措置にもかかわってくるなど、いろいろな点でひとつフォローをいたしまして、そして将来に向けて、必ず今ある生産農家というものがそろばんがとれていくようにしなければならぬという念願に燃え尽くして措置を進めてきたつもりでおります。  そういう意味で、どうかひとつ、これからもいろいろ問題はあろうかと思いますけれども、しかしいずれにしても、これも当初から申し上げておった国際化の中で孤立をしてはならぬ、しかし我が国食糧政策に将来禍根を残してはならぬ、この二つのことを常に頭に置きながら進めてきたつもりでございますので、そのようなことで御理解を賜れば幸いである。その一連の国内措置の関係で、ただいま御審議をいただいている畜産二法というものがあるということでございまして、またこれが成立に向けて格別の御協力もいただきたい、心からお願いを申し上げる次第でございます。  なお、ウルグアイ・ラウンドのことにつきましてもちょっとお触れになりました。  農業交渉グループの実務的な作業というものは、もう随分いろいろな形で話し合いを進めております。そして、大枠のウルグアイ・ラウンド、新しいルールづくりの中間レビュー、ここにおいて、農業問題だけではないいろいろな問題が議論されることになっております。中間的に、長期的、短期的にどう進めていくかという議論がされる。その中で、米だけ抜き出してまた議論しようとするという手法はいかがなものか。  RMAのことについては直接にはお触れになりませんでしたけれども、私は、条件つき却下というUSTRの結論が出たときの談話でも申し上げたように、今までの明らかな経緯からして極めて遺憾であるということを談話として発表した次第でございまして、いずれ今おっしゃるように、ECの課徴金制度あるいはウエーバーあるいはケアンズ・グループの提案、そういうものが全部一緒になって議論されるときになれば、米を含めた農産物について議論をすることはやぶさかではない、議論を避けようとして逃げの姿勢はとらぬ、そして私は、我々が今日まで主張してきたそのことを貫き通すという決意でもって臨んでおるということを申し上げておきたいと思うわけでございます。
  80. 水谷弘

    ○水谷委員 次に伺いたいと思っておりましたことを、大臣に先にお答えをいただきまして恐縮でございます。  ウルグアイ・ラウンドにおける問題について同僚議員から再三、浜田発言なるもの、さらにまたUSTRヤイター大使発言等を踏まえて、またさらには今おっしゃった佐藤農林水産大臣談話などを含めて、いろいろ議論がこの場で行われておりました。先ほど私が申し上げましたように、ヤイター発言の中を見ても、詳しく申し上げられませんけれども日本が米問題をウルグアイ・ラウンドの議題に挙げて、米の市場アクセスについての交渉にも応じると約束したこと、こういう表現、これは竹下総理大臣初め日本政府の首脳がこうした約束をしたのである、こんなことをヤイター大使の発言の中に見ますと、これは一体どういうことだと。  そうするとアメリカUSTRは、ヤイター大使は、いわゆる市場アクセスということについてあの浜田発言の正確な表現、私が調べたところによりますと浜田発言は、我が国としては、ウルグアイ・ラウンドにおいて、各国の持つ主要な問題とともに基礎的食糧に関する議論が行われる場合には、市場アクセス問題について議論することを回避しようとするものではない、こういう表現であったと思うわけであります。ところが、今御紹介したヤイター大使の発言を見ると、そうではなくて大分踏み込んで向こうはおとりになっていらっしゃる。この辺のこと、先ほど私が牛肉交渉の経過の中で感想を交えて申し上げた点が心配をされる点であるわけである。  今の大臣お話、答弁を伺っておれば、いわゆるウエーバーの問題、ECの可変課徴金の問題、ケアンズ・グループの提案等々、それぞれの国が持っている問題をすべてテーブルに全部出して議論をするのであればそこに、米の問題も議論の中に入ることについてはやぶさかではございませんよ、こういう基本姿勢である、このように今おっしゃったわけです。  ところが、どうも議論の中で突出しているのは市場アクセスの問題なんですね、ずっとこう。この表現だけが必ず出てきている。ここにやはり先方は、中間レビュー、モントリオールではこの市場アクセスの問題について日本は一歩踏み込んだ発言をしてくるであろうし、もしそういうものが全然見られないということになれば、先ほど大臣もおっしゃった条件つき却下ということでありますから、それが見られないときには再提訴を促す、ヤイター大使みずからがRMAに対して再提訴を促すということまでおっしゃるほど、実は大変な期待をお持ちになっていらっしゃる。これはまずいのではないのか、そんな期待を持たせるような発言があったのではいかぬのではないか、そういう意味では明確じゃございませんぞ。米の問題、すべてをテーブルに着いて議論をすることについては我々は決して拒むものではない、しかしながら、米の市場アクセスについての議論のみが突出しているような感触は非常にまずい、こういうことは明確にしておくべきである、こう考えるわけです。そういう意味で御質問をするわけであります。はっきりとしたお考えをここにおいて示しておいていただきたい。  もう一つは、ガットと絡めて、ガットの条項に照らし合わせて今日まで農水省、政府の態度は、あの十二品目のパネル裁定が下るまで、いわゆるIQ、国家貿易品目について市場アクセスを認めなくてよろしいんだ、例外であるという立場をおとりになってきた。ところが、ガットのあの十二品目のパネルの裁定の結果、ミニマムアクセスどころかIQ、国家貿易品目も十一条の義務免除の対象にはならぬのだというようなパネル裁定が出てきた。それに対してでん粉、粉乳・練乳については自由化は困難である、できないという我が国の態度をとり続けていらっしゃるわけですが、これらとあわせながら、この米の市場アクセスについての我が国としての明確なお考えを、ぜひこの国会の場ではっきりとおっしゃっていただきたいと思うわけであります。
  81. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 十二品目問題のときもそうでございますが、外交交渉として真剣に努力を重ねてまいりました。そして、パネルでいろいろ議論をされ、その結果がどうなるか、先行きはどうなるかという見通しも、戦術、戦略にかかわることでございます。先ほど申し上げますように、国際的に国際化の流れの中で孤立をしてはならぬ。同時に、我が国農産物生産体制、そういうものについて我々はどのような措置をとるべきか、こういうことを念頭に置きながら、あわせて今まで携わってきた人たちが迷惑をこうむらないように、どう思っているかということについて頭を痛めながら、努力を重ねてきた結果があのような結果でございます。  引き続き、牛肉・かんきつの問題は先ほど申し上げたとおりでございます。そういう中にあって米の問題は、率直に申し上げますが、東京で牛肉・かんきつ交渉を行いますために来日したヤイター代表が、私に最初に会ったときに、マンスフィールド大使とともにリン農務長官の発言について釈明がございましたし、二国間では米の問題は扱わないという、そのことも取り扱いについてはちゃんと一致しているわけでございますから、私は明確にそのまま国会にも答弁を申し上げ、今日に至っておるところでございます。  しかし、アメリカ側からの報道あるいは日本に駐在しておる報道の一部によれば、何か私どもにも釈然としない報道が一部あるということは極めて残念でございます。そういう報道に雰囲気づくりをされてずるずる巻き込まれるほど、農林水産省は弱腰で構えているわけではございません。議論は整々として、議論を行う場になれば整々たる議論を主張し続ける、主張し貫きたい、こういうことを申し上げておるわけでございますから、どうかひとつ、それをもって私どもの明確な意思表示であると御理解を賜れれば幸いだと思っております。  なお、足らざるところがございましたら、政府委員の方から補足をさせたいと思います。     〔笹山委員長代理退席、委員長着席〕
  82. 水谷弘

    ○水谷委員 私が突出してという質問をいたしましたのは、市場アクセスというこのことです。これはそういうアメリカ側の期待にこたえることは困難である、これはそうとってよろしいわけですね。
  83. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 そのとおりであります。  なぜそのとおりだと言うか、それは国会決議もちょうだいをいたしております。政府を代表して私が、その御決議に対して所信を申し述べております。それ以上もそれ以下もございません。
  84. 水谷弘

    ○水谷委員 それでは、次に移ります。  牛肉の国際貿易について見ますと、一九八六年の世界の牛肉生産量は約四千四百万トン、こういうふうに数字が出ておりますが、その中で輸出、いわゆる出回り量というのが九%程度。また、我が国輸入可能な口蹄疫の非汚染国からの輸出量はその半分。日本輸入できる国は、豪州、アメリカ、ニュージーランド、カナダといった少数の国に限られるわけです。アメリカは、ことしの干ばつの影響により穀物急騰で肉牛が減るのが心配だ、その傾向が出ているようであります。また牛肉生産は、いわゆるキャトルサイクルや気象の影響、こういう問題が片方にあり、さらには価格面でも為替とか外交関係、いろいろ国際経済情勢等においてもかなり変化が出てくる。供給数量そのものも非常に不安定、価格も不安定、そういう中での安定的な輸入確保するという見通しは非常に難しいものがあると思うわけであります。  それらについては、先ほど申し上げましたように、輸入量が需要量の五〇%を超えていくわけでございますから、そういう意味ではこの見通しが確たるものでないと、国民に対しての政府の責任は大変まずいことになるわけでありますので、その見通し。私が今指摘を申し上げましたことに対してどういうふうに見通しをし、そのしっかりした確証といいますか、こういう論点、こういう論拠、大丈夫ですよとおっしゃるのか、お尋ねをいたしたい。
  85. 京谷昭夫

    京谷政府委員 ただいま先生からお話のございました国際的、世界的な牛肉生産事情あるいは貿易事情につきましては、おおむね先生の御指摘にございますように、世界的な生産量の中で貿易に供される量が全体の九%。さらにまたその絶対量は、我が国の立場で考えました場合には、悪性伝染病の国内侵入を防ぐという観点で、口蹄疫の非汚染国に限定して輸入先を選定していかなければいけないという制約もございますので、さらに輸出市場が制約されるという性格を持っておるわけでございます。  現在まで私どもが行っております牛肉輸入につきましては、この口蹄疫の非汚染地域の中で展開されておりますアメリカ、豪州あるいはカナダといった地域からの輸入でございますが、相対的に我が国輸入量がふえていく、あるいはまた今後発展途上国における国内需要もふえて、それに対する供給もしていくという要素を考えますと、この国際的な需給関係というものが、いろいろな変動要素はあろうかと思いますけれども、やや堅調に推移するであろうということが中長期的には予想されるわけでございます。  ただそのことが、我が国輸入が非常に制約されていく事態というものは、これまで直近時点までの対日輸出国の状況を考えますと、そう危機的な状況にあるとは私ども考えられないわけであります。しかしいずれにしましても、その品質問題等も考えますと、一定の規模で国内の消費の動向に応じまして、品質価格面国内生産で可能なものを生産していくことは、国内農業維持発展という点はもちろんでありますけれども食糧の安定供給という観点からも大変大切なことであろうかと考えておるわけでございます。  御指摘ございましたように、アメリカあるいはオーストラリアといった主要な対日輸出国の生産事情、キャトルサイクルあるいはビーフサイクルと呼ばれるような周期変動を持っております。あるいはまた、ことしのアメリカの干ばつに見られますように、非常に短期的な気象変動による影響もあると思いますけれども、全体としての生産量というものは、我が国需要量に比較しますと相当大きなものでございます。  いろいろだ変動要素はありますものの、対日輸出が大変危機的な状態になるような生産状況にこれらの対日輸出国がなることは、非常に想定しにくいわけでございますけれども国内での生産体制の整備強化ということも考えながら、安定的な輸入も含めて、全体としての牛肉需給関係の安定発展というものを考えていく必要があると考えておるところでございます。
  86. 水谷弘

    ○水谷委員 それでは、法案の中身について何点かお尋ねをいたします。  先ほども議論がございました、この制度が、特に肉用子牛生産安定等特別措置法案を本当に実効あらしめるためには、保証基準価格、合理化目標価格、これが実際に実態に即した形、さらには政策誘導目標といいますか、その目的に向かって適切にこれが設定されていく、現状もそこにちゃんとついていく、現状を踏まえられた上でそれが適切に機能していくという形でないと、これはちっとも役に立たない法律、制度になってしまうわけであります。  この保証基準価格の水準について、いろいろ御検討をされておると思いますし、まだこれから検討しなければならない点もたくさんあると思うわけでありますが、保証基準価格の算定要素といいますか、ずばりいろいろ伺ってみますと、現在の水準ぐらいは何とかそのままやっていきたい、こういう発言もあるわけでございます。その点、保証基準価格の水準見通し、どういう算定方法を考えておられるのか。例えば、現行の肉用子牛価格安定事業における保証基準価格の算定方法等と関連して、どういう形での算定を考えておられるのか、まずそれを伺っておきたいと思います。  あわせて、合理化目標価格の具体的な設定の仕方、金額も大体このぐらいかなというふうなところぐらいまで何か見えそうでありますが、その辺まで検討をしておられるのかどうなのか、お尋ねをいたします。
  87. 京谷昭夫

    京谷政府委員 ただいま御審議をいただいております新しい子牛生産者補給金制度の根幹的な仕組みといたしまして、御指摘のとおり保証基準価格それから合理化目標価格という問題があるわけでございます。いろいろ御議論はこれまでもございましたが、この保証基準価格あるいは合理化目標価格の算定の基本的な考え方につきましては、御提案申し上げております法案の規定に書いてあるところでございますが、具体的にこれをどのような算式で算定をしていくかということにつきまして、現時点で私ども、確定的と申しますか一義的な方式を念頭に置いておらない、まだ持っていないというのが率直な状況でございます。  保証基準価格については、いろいろな要素、生産条件、需給事情等々の条件を勘案して、国内の再生産確保していくということを目途に適切な算定方式を確立し、これに沿った妥当な水準を決めていきたいと考えておりますが、その予想される水準についても、決して私どもも固定的な数値を持っておるわけではございませんが、いろいろなこれまでの関係者の御意向等をそんたくをいたしますと、やはり現在の価格安定制度確保しております保証基準価格水準というものがあるわけでございます。  御承知のとおり、肉専用種につきましては、黒毛和種につきまして各県別の数値になっておりますが、それの全国的な平均値が二十九万二千円というふうな水準になっております。また乳用種につきましては、現在十三万四千円というふうな全国統一水準になっておりますけれども、これにつきましても、乳用種についての輸入枠撤廃の影響が大きい、あるいはまた加入率が現状においては大変低いというふうな状況も踏まえまして、新しい制度が発足する前に、本年度から明年度にかけまして現行制度の運用を改善をいたしまして、現行制度の保証基準価格を若干の体重換算を行いまして、十六万円というふうなレベルに改定をしていくということを当面の緊急対策の方針として検討をしておるところでございまして、そういったレベルを一つの目安として、これから具体的な算定方式なりそれに基づく水準の検討をしてまいりたいと考えておるわけでございます。  また、合理化目標価格につきましても、これは、今後輸入量が増加してきます外国牛肉中心にして形成されます国際的な牛肉価格の動向なり、あるいはまた国内の諸条件等を勘案をしながから、国内における最終的な牛肉価格、いかなる水準でこれを安定をさせ、輸入牛肉に対抗できる条件を整えていくかというふうな課題もあるわけでございますが、そういった要素を考えながら、法律に決めてあるような趣旨に則しまして、具体的な算定方式あるいはまたそれに基づく絶対水準というものを検討、具体化をしていきたいと考えておる次第でございます。  いずれにしましても、これらの新しい制度が発足するのが昭和六十五年度と考えておりますので、それまでの間に畜産振興審議会等におきましていろいろな御意見を承って、その上で算定方式の確立、具体的な水準の検討、具体化ということを進めてまいる所存でございます。
  88. 水谷弘

    ○水谷委員 二つ申し上げておきたいと思います。  一つは、五十八年、五十九年、このときも各県で行っている、多少のばらつきがあるとはいえ、肉用子牛価格安定事業があり、保証基準価格二十九万二千円というものがありました。にもかかわらず、和牛子牛が激減をいたしました。そういうことを考えますと、この数字だけの問題ではないなと。まあ、これは基本的な問題でありますけれども、冒頭私も申し上げましたが、国内における大家畜生産いわゆる肉牛生産政府も真剣に今後も振興し、全力を挙げてこれは支援をし、拡大発展をさせていきたい、そういう農業におけるチャンピオンである、頑張れ、自由化のそういういろいろな圧力の中でも見事に育てろ、応援をするぞという安心といいますか、経営者いわゆる取り組んでおられる生産農家の皆さん方が、これから打たれていく国内対策で本当にこれはしっかり取り組めば頑張れるなと、そういうものがなければだめなんです。  この保証基準価格というものは、そういうことも全部ひっくるめて、メンタルな影響力もひっくるめて、現行水準程度というふうなとらまえ方ではなくて、よくこれから先検討していただきたい。私は、二十九万二千円というこの数字では、かつての五十八、五十九のことを考えると、現段階でとてもとてもこれでは難しいな、その辺の価格についてはよく検討をし、そして対応できる保証基準価格を設定をしていかなければならぬなと思うことが一つであります。  それともう一つは、この保証基準価格それから合理化目標価格、特に合理化目標価格については先ほどからも指摘があるとおり、妥当な期間をしっかり定め、そしていわゆる生産対策とかコスト低減のための諸施策が定着をしたかどうか、ここがやはり判断の基準であって、まず価格政策ありき、そこへ先に据えるということのないように、二点申し上げておきたいと思います。  次に、財源の問題でございますが、特定財源としていわゆる関税収入を充て、そしてこの肉用子牛価格安定制度というものを支えていかれるわけでありますが、この財源については、農水省の専門家の皆様方また大蔵、いろいろ交渉されたり数字をはじかれたりしておられますから自信を持っていらっしゃるんだろうと思いますが、万々が一、この関税収入ではとても対応できない、そういうような事態になった場合、財源に不足を生じた場合の対応はどういうふうに考えておられるのか、それを一言だけ伺っておきたい。
  89. 京谷昭夫

    京谷政府委員 お話ございましたように、今回の肉用子牛生産安定等特別措置法におきましては、ここで予定をされております子牛生産者補給金の財源、その他肉用牛生産の合理化及び食肉の流通合理化等に必要な関連施策の経費の財源といたしまして、昭和六十六年度以降、牛肉及び特定牛肉調製品についての関税収入相当額を充てていくということを明示しておるわけでございます。  この措置によって確保される財源規模につきましては、輸入量あるいは部位別の構成がどうなるか、あるいは具体的なCIF価格がどうなっていくかというふうな変動要素がございまして、一義的な数字を予測するということはなかなか難しゅうございますが、現在の状況を踏まえて推算をいたしますと、私どもとしては、一千億円を相当程度上回る額に達するというふうに予測をしておるわけでございます。この関税収入相当額の使い道の方につきましても、先ほど申し上げた使途を予定しておるわけでございますが、そういった財源見通し前提にする限り、財源が不足するという事態は私どもちょっと考えにくいわけでございます。  特に、むしろ収支関係を考えた場合に、若干の超過額が出る場合も予想されますので、その場合の年度間調整を行う規定を設けまして、後年度におきます所要経費の確保に、一定の調整措置も法案の中に織り込んでおるところでございまして、それらを総合的に運用することを通じまして、この関税収入相当額をもとにした特定財源制度を通じまして、関連対策の円滑な実施に支障が起こらないであろうというふうに考えておるわけでございます。  非常に観念的な問題として、恒常的に不足するというふうな事態、形式論として考えられないわけでございますけれども、私ども実体論としては、そういう事態は現時点では予想しておりません。万が一、そのような事態が懸念される状況が生じますれば、その状況を具体的に点検をした上で、その時点で所要の措置を検討していくことが適切ではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
  90. 水谷弘

    ○水谷委員 次に、子牛の輸入の問題についてお尋ねをいたしておきたいと思います。  肥育農家の一部には、現在の関税割り当て制度の子牛二万五千頭、いわゆる関税ゼロの子牛の枠、これらをもっとふやし、輸入について、外国種の非常に肥育しやすい品種とか、それから非常にいろいろな条件に強い肉用牛、これらの子牛をできるだけ多様化した、各国から輸入をしたい、そして不安をとっていきたい、いろいろ肥育、繁殖ともにあるわけです。子牛の輸入については、検疫体制の問題等もあって、それが拡大をするということはなかなか困難である、こんな答弁についてはかねてから聞いております。  しかし、こういう自由化という事態を展望しますと、やはり子牛を輸入し、そして肥育農家がその子牛から徹底的なコストダウンを図った生産体制の中でコスト低下を図られる、いわゆる牛肉を提供されるというこのシステムづくりの中でも、子牛の輸入というものは非常に大事な位置づけになるのではないか、こういうふうに思います。  そういう意味で、もう一つは、保険的に考えて五十八、五十九みたいなことがないために、この子牛の不足、いわゆる通称言われている不足払い制度を導入するわけですから、そんなことがあっては困るんだが、しかし肥育農家の側から見れば、どんな事情であれ、いずれにしてもこの子牛の絶対量が非常に逼迫してくるということは、肥育農家のいわゆる命にかかわる問題にもなる。そういう意味では、子牛の輸入については今までの考え方から一歩進んで、農水省もしかとした取り組みをすべきときに来ているのではないか、こう思うわけであります。  この関税割り当ての数量の問題等も含めて、子牛の輸入について検討されているか、どういうふうに今後していかれようとしているか、お尋ねをしておきたいと思います。
  91. 京谷昭夫

    京谷政府委員 御指摘のございました肥育素牛の一つの供給形態として輸入の問題がありますこと、私ども承知をしております。牛肉と申しますか仕上がった肉用牛の生産費の中でも、素畜費が大変大きなウエートを占めておりますし、その軽減を図るという意味で、比較的安い外国産の肥育素畜の輸入というふうな問題が従来からあるわけでございます。  私ども、こういった外国産の肥育素牛の輸入問題につきましては、基本的には国内の子牛の需給事情を勘案いたしまして、これを処理していく必要があるという考えを持っておりますが、あわせて御承知のとおり生きた牛でございますので、我が国国内における家畜の伝染病予防という観点から、かなり厳正な検疫を実施していかなければいけないわけでございますが、物理的な施設あるいは検疫に当たる人員等にわたりましたいわば検疫能力にも、実は一定の限界があるわけでございます。  大変厳しい行財政事情のもとでございますけれども、漸次検査能力の拡大に努めておりまして、私どもとしては、国内における子牛の需給事情及び検疫能力の状況というものを踏まえて適切な輸入確保していくという意味で、御承知のとおり関税免除によるいわゆる関税割り当て制度の運用を行っておるわけでございますけれども、その割り当て数量につきましては六十二年以降その規模をかなりふやしまして、六十二年、六十三年度にわたりまして二万五千頭というふうな規模に拡大をしてきております。  今後とも、ただいま申し上げました、国内におきます肥育素牛、肥育用の子牛の需給事情あるいは価格動向というものも勘案をしながら、漸次整備を進めております検疫能力の増強も考えながら、関税割り当て制度の適切な運用を通じまして、輸入子牛に対する需要への対応というものを考えていきたいというふうに思っておる次第でございます。
  92. 水谷弘

    ○水谷委員 大変御丁寧な答弁で、しっかり対応する、こういうことだと判断をいたしておきます。  それから、先ほどから一九八八年二月の酪肉基本方針、この中で生産コストを二から三割引き下げるという、そういう目標に向かってすべての方向性を築いているんだということでございます。素畜、いわゆる素牛となる子牛価格が大体肥育牛の、特に和牛でありますけれども、この素畜費が四三・七%、えさ代三七%、両方合わせると八割、これが肥育牛の生産費の中身になっているわけであります。素畜の問題については、先ほど来いろいろな議論の中からこれはよしといたしますが、えさの問題であります。このえさの問題に絡む、いわゆるもろもろのことがございます。しかし、やはりよほどの技術革新といいますか、今までの肥育形態からかなり思い切った技術の転換を図っていきませんと、このえさについての費用、コストの削減というのは非常に難しい。そういう点で、何点かお尋ねをしておきたいと思います。たくさん伺いたいことがありますが、絞ってお尋ねをいたしますので、お答えをいただきたいと思います。  まず一点は、我が国のえさの問題についていろいろ指摘をされている中に、いわゆるえさの事業、飼料事業の新規参入、いわゆる保税承認工場制度という問題があります。農水省が既にもう新聞等の記事によりますと、「配合飼料の生産合理化へ承認工場制見直し」そういう方針を出しておられるようでありますが、これはそのとおりなのかどうか。それから畜産農家の自家配合プラント、これについても積極的に認めていくということになるのかな、こう思います。  もう一つ、これはちょっと質問通告してございませんけれども、現在食管法で麦、大麦等については、これが売買差益でいわゆる輸入価格の三倍、四倍くらいの価格まで高い、これはえさ向けのものについては特別な対応ができないのかな、こういう要望が非常に強い、そういうことをもう大胆に転換しないと現実にはえさの価格を下げていくことは難しい、こう思うわけであります。  もう一つは、私どもがいろいろ勉強させていただいている中に、スイートソルガムの研究を長く続けておられる東北大学の星川先生からいろいろなお話を承っております。このことについては、既に農水省も先生のところから資料をいただかれたやに伺っておりますが、年二作とれるそうであります。十アール当たりで二十トン、一トン取りの話ではなくて二十トンとれるということでございます。これは試験田ですから、どういうことか、私も現地は見ておりませんが、その写真とかスライドとかを見せていただきまして、まさに背の高さ十メートルぐらいあるでしょうかね、大変な育ち方でございます。それも丹念に、本当に精魂込めてつくるんじゃなくて、かなり粗放的なつくり方でも相当伸びる、そういう真剣な研究が今進められているわけであります。  これは、いわゆる転作作物としても採算ベースに合うんじゃないか。日本列島であれば全国各地どこでも、乾田、湿田どういう形でも、ごろごろしている石ころのようなそんなところでもとれる。私もこれを聞いて、すっかりとりこになってしまったわけであります。このスイートソルガムについても、農水省はもっと本気になって試験研究に踏み込んで、現在そういう形での研究でございますから、それが今度はコスト計算とかいろいろなことをしていただかなければならぬし、じゃ、それを飼料としてはどういう汎用の仕方があるのか、そういうことも研究をぜひやっていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。  えさの問題で大きく二つ、そのほかにも輸入穀物飼料とのいわゆる為替レートの問題での価格の問題やら、さらにはマキ牛方式等、また草地の利用、林地の放牧的利用、いろいろ総合的に考えなければならない、それにも政府は積極的に対応してあげなければならぬ問題があるわけですけれども、今大きく二つ伺いました。それについてお答えをいただきたいと思います。
  93. 京谷昭夫

    京谷政府委員 飼料コストが今後の我が国肉用牛生産コスト低減の上で大変大きな課題であるということ、御指摘のとおりでございます。特に、その中で流通飼料の大宗を占めます配合飼料の問題についてお話があったわけでございます。御承知のとおり、現在配合飼料の原料、大部分がトウモロコシでございますが、この原料トウモロコシについては、特定の承認工場制のもとで関税の減免措置がとられておるわけでございます。この承認工場制の運用につきまして、いろいろこれからの流通生産コストの低減を図るという上で検討すべき課題、問題提起されておるわけでございます。また、お話の中にございましたように、大規模な生産者になろうかと思いますが、自家配合というふうな形での利用の仕方についての要望もふえておるわけであります。  これらの問題につきまして、私ども、いろいろ内部での論議を進めておることは事実でございますけれども、まだ確定的な具体的措置の結論を得るに至っておりません。牛肉あるいは肉用牛生産コストの低減を図るという究極目標に沿いまして、こういった配合飼料の生産農家の入手がより合理的な価格水準で実現していくような方途は何が可能であるかということについて、私ども検討を進めておるところでございまして、できるだけ早く具体的な結論を得て必要な措置を具体化したいということで勉強しておるというところが現実状況でございます。  それから、流通飼料の中で特に肥育経営と非常に関連の深い大麦の問題につきましても、問題の御提起ございました。御承知のとおり、食用大麦とあわせまして食糧管理制度の中で扱われておるわけでございます。食糧管理制度との関連もございまして、なかなか具体的な方策を論議するような状況に相なっておりませんけれども、やや中長期的な課題としていろいろ勉強することがあると思います。当面、現行制度の適切な運用を通じて、その安定的な供給、合理的な価格水準での畜産農家への流通ということを運用面でもよく考えていきたいと思いますが、制度面での対応というものは、やや中長期的な課題にならざるを得ないのではないかというふうに理解しておるところでございます。
  94. 谷野陽

    ○谷野政府委員 スイートソルガムの問題について、お答えを申し上げます。  ただいま御指摘がございましたように、スイートソルガムにつきましては、収量につきましては生重量でもTDNでもかなりの水準が見込まれるのではないか、またさらに転換田、つまり地下水の高い圃場におきましても、トウモロコシよりも耐湿性がすぐれているのではないかということが考えられるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、有望作物の一つといたしまして現在研究の対象といたしているわけでございます。  ただいま御指摘のございました星川教授にも、私どもの方から委託研究を昭和五十六年から六十一年の六カ年にかけましてお願いをいたしまして、報告をいただいております。それによりますと、一番よくとれましたので十トン近くというデータがございまして、種類、圃場、その他の条件によりまして七トンから十トンぐらいの収量があるという御報告を星川教授の方からもいただいておるわけでございます。  私ども、農林水産省の試験研究機関あるいは県とも協力いたしまして、この問題につきましては、まだ新しい作物でございますので、さらに栽培の方法あるいは品種の特性を生かすようなやり方がどのようなものであるか、また、えさの利用につきましても、現在のところ余り実際には栽培されていないということで、むしろ現在では使いなれているトウモロコシの方を利用しているという実態がございますので、そういうえさへの使い方の面も含めまして、今後さらに研究を続けてまいりたいというふうに考えております。
  95. 水谷弘

    ○水谷委員 時間が参りましたので以上で終わりますが、東北地方を中心にしましたことしの夏のいわゆる冷害について、農水省統計情報部から昨日、全国で三千六百五十四億円の被害総額、史上三位、こういう発表がなされました。先般もこの問題についてはいろいろ御質問をし、要請も申し上げたところでありますが、天災融資法の発動、激甚の指定等早急にこれを行い、この被害救済のために全力を挙げて政府がお取り組みをいただきますように、これは最後に御要望だけ申し上げまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  96. 菊池福治郎

  97. 木下敬之助

    ○木下委員 米の問題で、まずお伺いいたします。  去る十月二十八日、米国通商代表部は、我が国の米の市場開放を求めた米国精米業者協会、RMAの提訴を却下いたしました。このことは、一応の評価として受けとめられていますが、十二月のウルグアイ・ラウンドの中間取りまとめにおいて日本が市場開放に対する積極的な姿勢を示さない限り、RMAの再提訴を促すとするなどの大変厳しい条件がつけられています。これは、これまでの日米間の信頼を裏切るものであり、許しがたいことであります。政府は、一体どういった取り組みをしてこられ、どう受けとめておられるのかをお伺いいたしたいと思います。  私は、今回の条件つきの却下により、米の市場開放問題はむしろ深刻な事態に立ち至ったと理解せざるを得ないと思います。本問題については、国会においても三度にわたる決議を行い、米の完全自給と市場開放阻止については大多数の国民の合意事項となっています。全国各地で米の市場開放阻止の大会が持たれておりますが、私の出席いたしました大会におきましても、農家の方のみならず消費者の皆さんや一般の人々からも、日本の米は守るべきである、日本人と米というものは特別なもので一粒も入れさせるな、こういった強い声がありました。政府は、RMAの提訴却下に向けて米国政府とどのような交渉を行ったのか、お伺いいたします。
  98. 塩飽二郎

    ○塩飽政府委員 RMAの提訴から却下に至るまでの期間、約四十五日あったわけでございますが、その間、日本政府としては、米の問題について我が国の立場をいろいろなルートを通じてアメリカの首脳部に訴えたわけでございます。  この問題についての我が国基本的な立場は、日本農業あるいは国民の食生活に占める米の重要性ということは当然の前提でございますが、その前提に立ちつつ、ウルグアイ・ラウンドで他の国の同様の困難な農業問題をテーブルの上にのせて議論する場合には、我が国もそういったウルグアイ・ラウンドの議論の一環として米の問題についても議論を行うというのが基本的な立場でございます。その裏腹としまして、この米の問題については、ウルグアイ・ラウンドを離れて二国間の交渉なり協議の対象とはしない、そういうことについて既にアメリカ側との了解があったわけでございますが、そういう了解に言及しつつ、この問題はあくまでウルグアイ・ラウンドで議論すべき問題であって、三〇一条の提訴は却下されるべきものであるという我が国の主張を、あらゆる機会にアメリカ側の首脳部に提起をいたしてきております。  具体的には、例えば提訴直後の九月二十三日には駐米大使の松永大使がヤイター通商代表と会談されたわけでございますが、その際、農林水産省の近長食糧庁次長それから上野国際部長が大使に同行いたしまして、今申し上げたような立場を先方に訴えた。それから九月二十六日には、佐藤農水大臣がマンスフィールド大使と会談をされて、日本の立場を本国に伝えるように申し入れを行った等々、さらにアメリカのワシントンの日本の大使館では大使を先頭に、アメリカ政府の、USTRはもちろんでございますが、国務省、ホワイトハウス、その他の関係省庁の幹部に対し、日本の立場を十分理解されるように主張を行ってきたわけでございます。  そういう主張の結果もあったと思いますが、三〇一条については、先ほど委員の方からもお話があったような結果で一応処理されたわけでございますが、確かに今後、日本のウルグアイ・ラウンドの取り組みによっては再び三〇一条に戻っていくこともあり得べしという条件がついているわけでございまして、その点についてはこれまでの日本の主張、その主張に基づくアメリカとの了解から見て極めて遺憾なことであるということで、我が国のそういった立場については農林水産大臣の、決定がなされた直後に行われました大臣の立場の表明で、明確に先方に伝えているところでございます。
  99. 木下敬之助

    ○木下委員 政府も、あらゆる機会をとらえて日本の立場をいろいろと伝えてきたということでありましょうし、こういう大事なものは国を挙げて、それぞれの人がそれぞれの立場で米国に働きをかけて当然だと思うのでありますが、ちょっとその交渉の経過の途中で、この十月二十八日に決定する少し前に新聞で、全中のアメリカにおけるロビー活動を不法なものであるとして、米連邦地裁の提訴を含めた法的な対抗措置を全米精米業者協会が検討している、こういう記事があったり、またその提訴を正式にやることを発表したとかいろいろな記事がありまして、大変気になっておるのです。これは、全中の方としては届け出た事務所を通じた活動しかしておらず問題はない、指摘されるようなことを一切していない。いわれない言いがかりだと思いますが、我が国ではこういったことが問題になるということはちょっと考えられない。そういう中で、一体、この問題を政府としてはどう事実関係を受けとめてどのように認識しておるのか、まずお伺いいたしたいと思います。
  100. 塩飽二郎

    ○塩飽政府委員 お尋ねがございましたように、十月二十四日、米の三〇一条提訴を行いました機関の一つでございます米国の精米業者協会、RMAが全中に対しまして、全中が三〇一条提訴に関して行っているアメリカにおけるロビー活動がアメリカの政治過程に干渉し、アメリカの国内法である独禁法に違反しているものであるので、速やかにこれを中止することを要求するとともに、違法行為として全中を提訴することを示唆する書簡を送ったということを聞いておりますが、その後具体的な動きがあったというふうには聞いていないわけでございます。  私どもも、全中の三〇一条提訴後のアメリカにおけるいわゆるロビー活動の具体的な一々を詳細に承知しているわけではございませんが、全中としては当然、先ほども申し上げたような非常に大きな日本農業の最も根幹にかかわる問題でございますから、政府とはまた違った立場で、農業団体としての立場からこの問題について、アメリカのいわばカウンターパートと申しますか、アメリカのもろもろの農業団体に対して日本農業団体として日本の米問題についての理解を求める、いろいろな広報活動、いわゆるロビー活動を行ったであろうことは十分理解できるわけでございます。  それは当然、アメリカの法制の範囲内で行われたものというふうに私ども承知をいたしているわけでございますが、やはりこの問題の根源には、日米間の貿易摩擦の高まりの中で、日本関係企業がいろいろな形で対米情報活動をされることが、アメリカの政治に対する介入であるというふうな一般的な空気があることも事実でございまして、そういう背景のもとで、今回の全中の活動もそういう一連の中で見られたのではないかなという気がいたすわけでございますが、あくまでこれはアメリカの法の枠内で行われたものというふうに私どもは理解をいたしておるわけでございます。
  101. 木下敬之助

    ○木下委員 当然私もそう思います。しかし日本での諸外国の活動等を考えまして、それに対して日本が何か法的にそういういろいろな運動を、活動していることを規制するというのは僕としては聞いたことがないのですが、これはアメリカでやるんですから当然アメリカの法律で許されたことをしなければなりませんけれども、こういう大事な問題であらゆるものを挙げてアメリカにいろいろと交渉するというのは当然なように見えます。今回はやっていないと思いますが、一体どういったことをするといけないというような法律がアメリカの方にはあるのか、また、それと同じようなことが日本でも禁止されていると受けとめておるのかどうか、この点についてお伺いいたしたいと思います。
  102. 塩飽二郎

    ○塩飽政府委員 アメリカの国内法のことでございますので、よく理解できない点もあるわけでございますが、RMAが全中の米国におきますロビー活動で問題にしましたアメリカの国内法はシャーマン法、これはいわゆる独占禁止法とも呼ばれておるわけでございますが、その第一条に違反するかどうかということにかかわる問題ではないか。  シャーマン法の第一条では、「複数の州の間またはアメリカと外国との取引または商業を制限するすべての契約、トラスト、その他の形態による結合または共謀は、これを違法とする。」というふうな規定になっておりますので、アメリカでのロビー活動そのものを規制する趣旨ではない。むしろ、ロビー活動の中で外国との取引を制限する共謀が行われた場合には違法とするということでございますので、日本の米の輸入制度についての例えば三〇一条提訴について、アメリカの農業団体がこれに反対をする、あるいは日本農業団体と同調して行動をするということをとらなかった場合に、他の貿易対象産物である例えばアメリカから輸入をしております小麦でございますとかあるいはトウモロコシ、そういった農産物の対日輸入について制約を加えるというような行為が、この条文に照らしてどう判断されるかということではないかと思うわけでございます。  当然この法律の存在というものは、そういうロビー活動をするアメリカにおける全中の事務所なりあるいは事務所と関連のございますいわゆるロビー法人といいますか、そういうものも十分承知しているというふうに理解されますので、今のような非常に具体性を持った法律に違反をするような取引の制限を、この条文に違反するような形で相手方に示唆するというようなことは、当然あり得ないというふうに私どもは理解をしておりますが、今申し上げたのはあくまでシャーマン法の一条との関連だけでございますので、必ずしもその他のアメリカの国内法制について承知をいたしているわけではございませんが、いずれにしましても、アメリカの国内法制との関連で問題のあるような行動はなかったものというふうに理解をいたしておるわけでございます。
  103. 木下敬之助

    ○木下委員 なかったということで当然そう思いますが、向こうの法律はよくわからないので、我我は一生懸命日本の米を守るということで行動するのですから、向こうは向こうで考えていることで日本国内に来てもやっておるでしょうから、どうぞ対等に両方主張できるように、主張すべきことはできるようなことでやれるように、政府としてもやっていただきたいと思います。  次に、今後の政府の対応についてお伺いをいたします。  マスコミ等の一部において、我が国が米の市場開放に取り組む前向きの姿勢としてケアンズ・グループの提案、これは総消費量の三%を輸入、こういったことだと思いますが、これを受け入れるとか、あるいは加工米等に限定して部分的な市場開放は認めるのではないか等の憶測がされております。政府はこうしたことは絶対にない、そのように確約できるのかどうか、お伺いいたします。
  104. 北口博

    ○北口政府委員 今御指摘のように、マスコミの一部にそういうような憶測が記事として載っておることは我々も承知しておるわけですが、先生も御承知のように、米及び稲作の重要性というのは先般の国会におきましても決議をなされておりますし、我々といたしましても、今後生産性の向上を図りながら国内産で自給するという基本的な方針で対処してまいりたい、これが率直なただいまの考え方でございます。
  105. 木下敬之助

    ○木下委員 次に、農家の固定化負債についてお伺いをしたいと思います。  時間もありませんから、質問点だけを申し上げたいと思います。  農家の負債というのは、これは地方にも相当偏りもありますが、特に畜産で大規模にやったところほど大きな借金になっている、大変大きな問題だと思います。そういった意味で、この負債解消のためにいろいろな取り組みをしておられて、それは軽いものにはそれなりのちょっと猶予を持たせれば何とかなるとかいうこともございますし、程度が本当にひどくなると、農地等を処分して経営の健全化を図らなければならないようなところ まで来ているのもありまして、自治体等も通じていろいろな指導がなされていることと思います。  その負債解消のために農家が農地を譲渡してその返済に充てる、このような場合には当該農家の農地に係る譲渡所得税を免税としてもいいのではないかと考えるのでありますが、どうでしょう。どうしてもできないということはないと思いますが、御判断をお伺いいたします。
  106. 長野厖士

    ○長野説明員 お答え申し上げます。  譲渡所得税と申しますのは、先生御承知のとおり、資産を保有している間のいわば値上がり益に対して課税するものでございます。法律上そういったものに対して免税という、非課税という措置をとっておりますケースと申しますのは、資力を失いまして債務を弁済できなくなって、いわば競売といった形で強制換価手続にかかるというような場合には非課税というものがございますけれども、一般的に御自身の借入金を任意で返済なさるというケースにまでこれを広げるということは、借入金そのものが利益となっておるわけではございませんし、税の仕組みとしてはとりがたいところかなと考えております。
  107. 木下敬之助

    ○木下委員 税の仕組みとしてそう言われるのですが、現実にぎりぎりのところになった人は、売って税金を取られれば税金を払った分だけがまだ借金として残るけれども、完全にお手上げになった形で処分すれば税金を取られないから払える。どうしてもその辺は矛盾しているように感じるのですね。やはりちゃんと払ってしまいたいという気持ちのある人が、破産しなくても、そんなに全部お手上げしたくても払える方法があれば、考えたらいいのになと私は思います。特に農家の、ましてや畜産等で大きな負債を抱えた人たちは、これまで政府の指導、政府方向等に従って一生懸命日本畜産のためにやってきて、その結果また今のような形になってきて借金を——責任を追及するというわけにはいかないでしょうけれども、本当に自分ではどうしようもなくてできた借金ですから、この際それを整理して、新しく将来やれるような方向にしようとするときには当然何か考えられてしかるべきだと思いますが、農水省の方はどのように考えておられますか。
  108. 松山光治

    ○松山政府委員 負債問題、地域により、あるいは部門によりましてそれぞれ形は違うわけでございますが、現段階における重要な課題一つ、このように考えておる次第でございます。そういう観点から、金融措置その他各般の施策を講じておるところでございますけれども、今お話のございました負債整理のための農地の譲渡所得税の特例の問題につきましては、この譲渡所得税の特例自体が、言ってみれば譲渡につきましての私権者への制限の要素と、それから使途の公共性という点に着目した制度であるというふうに私ども考えておるわけでございますけれども、ただいま大蔵省の方からもお話のございましたような非常に難しい問題だというふうに理解しておるわけでございます。  ただ別途、ただいま申し上げましたような土地の譲渡所得税の特例の枠組みの中で、御案内のように、農用地の利用増進事業等に乗りまして農地保有合理化のために譲渡されるといったようなものにつきましては、御案内の五百万円の特例がございます。私ども、本件につきましては五十年にこれが設定されたということで、その後地価の上昇も見られるわけでございますので、そのあたりを勘案した所要の引き上げを現在要求しておる、こういう状況にあるわけでございます。
  109. 木下敬之助

    ○木下委員 税の仕組みですから、その根本を変えるようなことはできないと思いますが、今言われましたような農地保有合理化のために農地を譲渡した、こういうことであれば今たしか五百万円が控除されるということですが、せめてこの五百万円の控除額を一千万円に引き上げるとか、また特別控除の適用範囲が農地保有合理化、これだけに限定されないように、もうちょっと適用範囲の拡大も図る等とかでこの問題に対応ができるようなことを考えてはいかがかと思うのでありますが、この点について大蔵省のお考えもお伺いしたいと思います。
  110. 長野厖士

    ○長野説明員 ただいま農林省の方から御説明がありましたように、この五百万の控除というものがございます。できる限り、こういった既存の制度というのはうまく利用していただきたいものだと、まず考えております。  ただ、この拡充というお話になりますと、農業関連で、土地関連譲渡にしましてもあるいは保有にいたしましても相続にいたしましても、農業経営の安定あるいは農地所有の合理化という観点からの措置をもろもろとらせていただいております。そのことがまた他面では、農業なるがゆえに特別に優遇されておるではないかというような別なお立場からの御議論もございます。五百万の控除ということでも、譲渡所得の中からそれだけの課税されないものがあるわけでございますから、また別な観点からはいろいろ御批判がございます。先生の御指摘の気持ちも十分にわかるところでございますが、また違う角度から見ますと違う結論が出てくるという側面もございます。十分に検討させていただきます。
  111. 木下敬之助

    ○木下委員 その優遇という点につきましては、本当にこういう状況の中で借金を抱えて困っているという、優遇じゃない人についてという判断のもとならやれるのじゃないかと思います。農林省のお考えもお伺いします。
  112. 松山光治

    ○松山政府委員 先ほども申し上げましたように、農地保有合理化等のための特例措置につきまして、その後の状況変化を踏まえました所要の取り扱いの改善ということを今要求しておるわけでございますし、私ども、今後とも事態変化を見ながら引き続きそういう努力をやっていきたいと思っておりますが、税法の世界の論理との関係で非常に難しい事情のある問題でもあるという点につきまして、御理解を賜りたいと考えておる次第でございます。
  113. 木下敬之助

    ○木下委員 次の質問に移ります。  当委員会において、二十五日にこの二法案に関して参考人の方々においでいただいて、いろいろお話を伺いました。その中で、この制度は相当長期間にわたって実施してほしい、ほかの方で国際競争力がつくまで今回の制度を存続してほしい、こういう声が強かったわけでありますが、この点、農林省はどのように考えておられますか。
  114. 京谷昭夫

    京谷政府委員 御審議を賜っております肉用子牛生産安定等特別措置法の期間につきましては、法文上「当分の間」としておるわけでございます。この「当分の間」という文言がいかなる期間を考えているのかということにつきまして、私どもも固定的、具体的な期間を現在頭に置いておるわけではございません。基本的には、今後予想されます輸入牛肉に対しまして、価格面あるいは品質面で対抗してやっていけるような国内の肉用牛生産が可能となるような条件が整備されたと考えられる時点と考えておりまして、具体的な運用に当たりましては、国内におきます生産合理化の進展の状況なり内外の価格差等の状況を踏まえまして、慎重に今後判断をしていくべき課題であると考えておるところでございます。
  115. 木下敬之助

    ○木下委員 参考人の方の言われておるように、要は国際競争力がつくまではやってほしい、また逆に言うと、何とかして国際競争力をつけたいということだと思いますが、この国際競争力というのは一体どうやってつけるのか、これは本当にそういう力がつくようになるのか、農林省の考えをお伺いいたします。
  116. 京谷昭夫

    京谷政府委員 私どもとしては、国内の肉用牛生産というものが、輸入枠が撤廃された後におきましては、現実にとられます関税等の国境調整措置あるいはまた内外牛肉の間にある品質格差も加味いたしまして、国内生産が存立をしていける条件を整備していく必要がある、またそれが可能であるという展望を持っておるわけでございます。  もちろん、直ちにそういった状況を短期間で実現していくということは大変困難でございますので、御審議を賜っております生産者補給金制度あるいはまた生産コストの低減等に向けた合理化努力を可能ならしめるような関連施策の実行について、一定の法制度のもとでこれを進めてまいりまして、その実現を図りたいと考えておるところでございます。
  117. 木下敬之助

    ○木下委員 可能である、展望を持っておる、そのように言われますが、農水省の方で考えた展望というのが農家の人には、本当にそのとおりやればなるという実感を持って受けとめられていないですね。だから、そんなふうに言われても、じゃ、やろうという気持ちを持っている農家の方というのは私は知りません。  例えば農水省の考えとしては、牛の値段も下がるとすると、今まで十頭なり二十頭飼っておれば生活が仮にできたとします、数字はあれですけれども。そうすると値段も下がるから、同じ人数でその五倍ほど、百頭も飼うようになればいいのではなかろうかということで、そういうふうな道で農水省は展望を考えているとしましても、農家の方は、将来安くなるというのがわかっておってどうしてふやすのかという気持ちですね。だから、かみ合わないのです。こうやればうまく農家としてやっていけるだろうと思っても、将来安くなるのがわかり切っているものを、数をふやして飼育しようなんという気持ちには農家の方はならないですね。  だから、こういう皆さんが考えて指導しようとしていることが、本当に現場でつくる人の気持ちになったときに、ビジョンがあって意欲のあることなのか。苦労だけはふえて、現状維持もできるかどうかわからないというようなことを、苦労しさえすれば何とか乗り越えられる展望だといって押しつけても、それは不可能なことだと私は思います。そんな意味で、本当に展望を持った未来を切り開こうと思ったら、やはり人間として当然意欲のわくような未来図をかいてあげないとついてこないと思います。  そういった意味で、本当にできるできると言ってできないというのがこれまでの農水省と農家の方々との関係だと私は思っておりますので、今回ここまで至ってきっとできると御指導なさるのなら、できなかったときの責任は持つ、このくらいのことを言ってついてこさせる必要があるだろうと思います。そういう意味で、できなかったときには責任を持つというものの一つが、先ほど申し上げましたような負債等に対する対策も、全部お手上げしなかったら税金はやはり取りますよ、これじゃあんまりだ。先ほどの問題とも絡めて、今後の対策をお願い申し上げたいと思います。  時間も参りましたが、大臣、やっとお見えになりましたので、最後に、先ほど私は米の市場開放阻止ということでお伺いをし、また地元で聞いてまいりました声もお伝え申し上げたところでございます。今後の大臣の御決意をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  118. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 米問題につきましては、我が国における米及び稲作の格別の重要性にかんがみ、国会における決議などの趣旨を体し、今後とも生産性の向上を図りつつ、国内産で自給するという基本的な方針に変わりはございません。  米の貿易問題について、我が国の立場は、現在進行中のウルグアイ・ラウンドの場で各国が抱える農業問題及び制度について議論を行う段階になれば、米の問題を含むあらゆる農業問題を討議することにやぶさかでないということであります。米国政府には、我が国における米の格別な重要性を十分踏まえ、日米友好関係維持という観点に立って、本件について慎重に取り扱うよう求め、また我が国としては、これまでのウルグアイ・ラウンドに臨む基本的立場に立って遺憾のないよう対処していかなければたらないと考えております。  私がしばしば答弁を申し上げておりますように、我が方の主張を貫き通すという考え方で、最善を尽くしてまいりたいと思っておるわけでございます。  なお、大変おくれて来て済みませんが、また決算委員会における貴党所属委員の御質問が待っておりますので、これにて失礼をいたします。
  119. 木下敬之助

    ○木下委員 終わります。
  120. 菊池福治郎

  121. 山原健二郎

    ○山原委員 私も初めてですが、大臣が出たり入ったりしまして、私の時間というのは、最初のうちは大臣がおられるということで質問を考えましたら、今度は後の方だということで順序を変えましたら、また最初ということになって、これは初めてですけれども、決算委員会の方の決議があるそうですから無理も言えないので、また順序を変えなければなりませんが、多少混乱するかもしれませんけれども、お許しいただきたいと思います。  最初に、これは国家貿易品目の問題についての削除の問題でございますが、我が国は国家貿易品目については、ガット第十一条が規定する輸入数量制限の一般的禁止の原則は直ちに当てはまらないとの立場をとってきたはずであります。にもかかわらず、牛肉輸入数量制限は不当であるとの圧力を受けて、国家貿易の根拠規定を今回廃止することになったわけですが、国家貿易に関する我が国の立場、権益をみずから放棄することにつながるのではないかという心配を持っております。  この点について、前回この委員会で藤田スミ議員がただしたのに対しまして、これは畜産局長であったと思いますが、国家貿易であるがゆえにガット第十一条の免除が正当化されるということは認められないというのがガット・パネルの判断だと述べて、藤田議員の質問をかわしております。この答弁はちょっと受け取りがたいのでございまして、今まで認めがたいものとして異議を唱えてきた、我が国の立場を留保してきたはずですね。そのガット・パネルの見解を国会の答弁で無批判に援用するということは、我が国が行ったガット・パネルに対する異議がまさに一時しのぎのポーズでしかなかったと受け取られかねないわけですが、そういうお考えで藤田議員に対して答弁をなさったのかどうか、まず伺っておきたいのです。
  122. 京谷昭夫

    京谷政府委員 牛肉の今回の輸入割り当て制の撤廃問題と絡んで、国家貿易品目についての輸入制限に関する解釈問題について、御指摘のとおり過般の当委員会におきましてやりとりがございました。私が、この国家貿易に関する一つの解釈の仕方が、過般のいわゆる農産物十二品目に関するガット・パネルにおける判断といたしまして、国家貿易品目なるがゆえに、それゆえの理由で十一条の適用がないという判断を当時のガット・パネルとしてはとらないところである、そういう解釈が出ておるという事実を申し上げたわけでございますが、この問題につきましては、本年の二月にこの十二品目のガット・パネル裁定につきまして日本側が受諾をする際に留保をしておるところでございます。その留保したポジションは、今日においても変えておらないつもりでございます。  一方、牛肉につきましては、御承知のとおり先般の日米、日豪間の交渉におきまして、一九九一年度以降輸入割り当て制度を撤廃をするという方針日本政府としてはとったわけでございますが、これを前提にいたしますと、私どもとしては、輸入割り当て制度を前提にして畜産振興事業団が一元的に輸入牛肉の操作を行うという仕組みを従来持っておったわけでございますが、このいわゆる蓄安法第七条に基づく畜産振興事業団による一元的な輸入管理も事実上空洞化するという判断のもとに、今回の法案におきましてはこの第七条を削るための一部改正法案を御提案申し上げ、御審議をいただいておるものでございまして、このこと自体が、先般の十二品目問題について国家貿易に関するパネル判断が出、それを総体として受諾する際に留保をつけた我が方のポジションというものを変更をするものではないと考えておるわけでございます。
  123. 山原健二郎

    ○山原委員 前の答弁によりますと、いかにもパネルの見解をまさに了承したかのような答弁になっておりますので、あえてその問題について注意を喚起する意味で申し上げたわけです。  法案について幾つかお伺いしたいと思います。  肉用子牛の安定対策の問題で、保証基準価格水準について繁殖農家の問題ですが、現行では、和牛子牛第一次生産費が四十一万三千円に対して保証基準価格は二十九万二千円となっています。現行の保証基準価格は、暴落時の下支えとしてわずかに機能しているだけであって、繁殖農家の中ではこれをもっと引き上げてほしいという声が強いわけです。これは、先ほどからも質問の中にも出ておりました。また、先日の参考人質問が行われましたときにも、参考人の方々からまさにこの点で強い要望が出されていたわけでありますが、この点についてどういう見解を持っておられるか。また、いわんやこの保証基準価格水準の引き下げなどは行ってはならないというふうに考えますが、この点についてお答えをいただきます。
  124. 京谷昭夫

    京谷政府委員 御審議をいただいております今回の子牛生産者補給金制度の仕組みの根幹になっております保証基準価格につきましては、法文上一定考え方が示されておるわけでございますが、具体的にこの法文の規定に基づきましてどのような算定方式を用い、いかなる水準の基準価格を設定するかということにつきまして、私ども現時点で固定的な考え方は持っておらないところでございます。方式及びその方式に基づく算定を含めまして、制度を発足する時点までに畜産振興審議会あるいはその他の関係者の御意見を踏まえて十分検討をいたしまして、適切な算定方式あるいはそれに基づく具体的な水準の検討、決定を図ってまいりたいと考えておるわけでございます。私どもも、先般の参考人の方々の御意向をよく承知をしておるわけでございます。それらを踏まえまして、算定方式あるいは水準の適正な決定について今後十分検討をしてまいりたいと考えております。
  125. 山原健二郎

    ○山原委員 農水省からいただいた「立法措置検討骨子」、これを見ますと、説明資料の中で肉用子牛の保証基準価格について「長期的には、合理化目標価格水準へコスト引き下げ努力」をする、こういうふうに書いております。この点について二つ質問をしておきたいのです。  将来的には保証基準価格を合理化目標価格水準へ引き下げるという方針、これはこの法律案ではどのように書き込まれているかというのが第一点。第二点は、「長期的には」とはどの程度の期間を想定しているのか。この二つを伺っておきたいのです。
  126. 京谷昭夫

    京谷政府委員 御指摘のございました今回の措置についての骨子で私ども説明をしておりますところは、今回の制度において保証基準価格と合理化目標価格という二つの価格指標をつくることになるわけでございますが、長期的には、国内実態的な生産コストの引き下げ努力を積み重ねることによりまして、合理化目標価格水準で国内の肉用牛の再生産確保できる、そういう状況をつくっていく、そういう目標を明らかにしたものでございまして、基本的にはそういった努力の進展を踏まえまして、保証基準価格というものを毎年度適切に決めていくことにしておるわけでございます。そういった考え方は法文の中でも、酪肉基本方針に定めております近代化の方向に沿って保証基準価格を決めていくという文言で表現をしておるところでございます。  それから、現実に保証基準価格が合理化目標価格の水準に一致をするような長期的な目標を持っておるわけでございますが、その時期がいつであるかということにつきましては、私どもも特定の固定的な期間というものを持っておるわけではございません。本制度の適切な運用、さらにまた今回の法案の中に織り込んでおります肉用牛生産の合理化のための施策、特定財源を持って充当していきます、そういった生産コスト低減のための努力の成果というものを踏まえて、できるだけ早くそういった状況をつくり出す努力をしなければいけないと考えておりますけれども、なかなかそういった状況、短期間のうちに実現できるとは思っておりませんが、その努力を重ねて、一定の期間をかけてそういう目標を達成していくべきものであるというふうに考えておるところでございます。
  127. 山原健二郎

    ○山原委員 今お話を伺いましても、結局この法制度が、自由化によって予想される牛肉子牛価格の下落に合わせまして保証基準価格の引き下げを誘導するという、いわゆる能動的役割を果たす性格を持っているのではないかというふうに思います。合理化努力を大変強調されるわけですけれども、平均経営規模が三・三頭、あるいは四頭以下の割合が八四%という和牛の繁殖経営の零細性を見てみますと、そう簡単に克服できるものではないわけですね。にもかかわらず、価格政策で近代化を進めるというのは、結局零細農家の切り捨てにつながり、我が国の肉用牛生産基盤を掘り崩すものになりはしないか、こういう心配をせざるを得ないのですが、その点はどうお考えでしょうか。
  128. 京谷昭夫

    京谷政府委員 肉用牛生産コストの合理化、低減目標というものは、私どもとして、国、地方公共団体、生産者団体さらには個々の生産者の皆さん方共通の今後における課題であるというふうに考えておるわけでございます。その方向につきましては、本年二月に策定をいたしました酪肉基本方針におきましても具体的な類型を提示をいたしまして、そういった方向に沿って今後肉用牛生産、これは繁殖経営の場合と肥育経営の場合で若干様相は異なるわけでございますが、そういった目標に向かってお互いの努力をしていく、できるだけその目標を達成していくということを明らかにしておるところでございます。  道が大変容易であるというふうには私も考えておりませんけれども、共通の課題としてその努力を積み重ねていくことが第一に大切なことである、それに対応していかなければ消費者の皆さんの御期待にも沿えないことになるということを大変懸念をしておりまして、私どもとしても一定の制度のもとで、その努力を積み重ねていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  129. 山原健二郎

    ○山原委員 法案そのものに即しての質問をちょっと中断しまして、大臣、お帰りになりましたので、ちょっと聞いていただきたいのです。  私は飛行機の中で、これは最近の週刊誌ですが、十一月八日付のアエラですけれども、たまたま見たわけです。これには「コメ開国へ極秘シナリオ」という記事が掲載されています。週刊誌の話だからというふうにお受け取りになるかもしれませんが、最近週刊誌の記事が何日かたてばそれが事実化するということがかなり多いわけですから、これは軽視できない問題です。その中に食糧庁の中核的幹部が、「食糧庁では、いまやあらゆる議論が、コメの市場開放を前提にして行われている」ということが書かれております。市場開放への幾つかのシナリオを詳しく語った幹部もいるというふうなことが書かれているのですね。  これは、まず食糧庁長官に伺いたいのですが、こういう雰囲気が今食糧庁の中にあるのでしょうか。
  130. 甕滋

    甕政府委員 ただいまお話がございましたアエラという雑誌に記載をされております食糧庁の中核的幹部ですか、その談と言われるシナリオなるものは実際にございません。全く事実無根でございます。また、このような事柄については、通常責任ある幹部に取材があるべきところと思うわけですが、そういった取材は一切受けておりません。  なお、このような記事は、社会一般に大きな誤解を与えるものであると思われますし、私どもとしても多大の迷惑を受ける話でございます。極めて遺憾でございまして、アエラのサイドに対しては強く抗議をしておるところでございます。
  131. 山原健二郎

    ○山原委員 そのような事実はないということですね。この記事の中に、先般本院で行われた米の自由化反対に関する決議、これも米市場開放への軟着陸を目指す布石だとして、その起案に関する事実経過なるものを紹介しております。それによりますと、衆議院事務局委員部から決議案の作成を引き受けた農水省の案では、「米の市場開放反対に関する決議」となっていたのに、外務省の強い反対を受け、結局安倍晋太郎自民党幹事長の裁断で、外務省の主張どおりに「米の自由化反対に関する決議」と変更されたというふうに書かれているのです。  私は、この事実関係を聞くつもりはございません。しかし、ただ一つだけここで確認をしておきたいことがあります。それは、政府は米の部分的開放ならば国会決議には触れないというふうな立場をとっておられるとは思いませんが、その点はどうかという問題です。指摘するまでもなく、さきの国会決議はこう書いております。「よって政府は、二度にわたる本院の決議の趣旨を体し、断固たる態度で臨むべきである。」としております。この二度にわたる決議の一つである第百一国会、これは一九八四年、四年前の七月二十日の決議ですが、これには「国民の主食であり、かつ、わが国農業の基幹作物である米については、その供給を外国からの輸入に依存するというような事態が今後生じることのないよう、国内生産による自給方針堅持すること。」とうたっておることは御承知のとおりです。この趣旨を体した断固たる態度とは、米の国内自給堅持、市場開放には断固反対の態度であることは論をまちません。米の部分的な市場開放といえども、本院の決議とは相入れないものだと私は明確に受け取っているわけです。  これはお互いに決議をした、二度にわたる決議ですから、どなたもそう受け取っておると思いますが、この点について、あえて佐藤大臣にお伺いしたいのですが、米の部分的な市場開放といえども、本院の決議とは相入れないものであるという立場を恐らく大臣堅持されておると思いますが、そのことを明言していただけますでしょうか。
  132. 甕滋

    甕政府委員 この記事の信憑性につきましては、先ほど申し上げたとおりでございます。  国会の御決議につきましては、この中でも引用されております前回あるいは前々回の御決議にも述べられておりますように、我が国における米あるいは稲作の重要性にかんがみまして、輸入によらず自給方針をとるべきであるという趣旨と受けとめておりまして、その趣旨を体して私ども遺憾のないように対処してまいりたいと考えておるわけでございます。
  133. 山原健二郎

    ○山原委員 大臣に一言伺いたいのですが、今の食糧庁長官の御答弁にもありましたが、米の部分的な市場開放といえども、本国会における決議とは相入れないものであるという立場に立っておられると思いますが、そのように理解してよろしいでしょうか。
  134. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 ただいま食糧庁長官が答えたとおりでございます。  なお、私が、私に対する質問ですぐ立ち上がってお答えしたかったのは、あなたに対して大変失礼であったかもしれませんけれども、アエラという週刊誌ですか、これが事実無根のことを書いておりまして、そのことをこうした国権の最高機関であるこの場において議論することすら、私は不愉快な思いでございまして、これはあなたを申し上げておるのではございません、アエラを言っているわけでございますけれども、厳重に抗議をさせたところでございまして、そういうお話から始まったことに対して私が答えることはいかがかな、できればそれに関連して答えたくないなという気持ちがあったことを率直につけ加えておきたいと思います。
  135. 山原健二郎

    ○山原委員 アエラの問題を私が出したからこういうふうになりましたけれども、私はその後の部分においては、アエラの事実関係をいろいろ言っているのではないのですが、こういう記事が出ておる。それからまた、先ほども質問がありましたように、この点については、部分的米の開放という問題がやはりどこからともなく出てくるのです。そういうことについては、これは国会の決議とは違うんだということをおっしゃっていただければいいのですが、その点は大変恐縮ですが再度確認をしたいのですが、よろしいですか。そこのところが何となく不明確になるとちょっと困るのです。
  136. 甕滋

    甕政府委員 私からも申し上げ、大臣からも申し上げたとおり、米については国会の御決議の趣旨を踏まえまして、国内自給方針で対処してまいるということでございます。
  137. 山原健二郎

    ○山原委員 国会の決議の趣旨を踏まえてというお話ですが、国会の決議の趣旨というのは部分的米の開放も許さないのだというものであるかどうかという、この受け取り方というのはやはり大事なところでして、そのことを伺っているのですが、一言で結構です。
  138. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 米の部分的自由化というようなことは、私は考えておりません。しかるべきウルグアイ・ラウンドの場で議論するときになりましたならば、我が方の主張を貫き通したいということで従来とも御答弁申し上げておるわけでございますので、それでよろしゅうございますね。
  139. 山原健二郎

    ○山原委員 大臣のいらっしゃるときですから、もう一つだけ。今回の牛肉自由化方針を受けまして、国内大手商社や食肉業界が一斉に海外牛肉生産拠点づくりに走り出していると言われております。その実態を把握しておられれば資料として農水省出していただきたいと思いますが、そのような把握はされておりますでしょうか。
  140. 京谷昭夫

    京谷政府委員 私どもも御指摘のような事実、情報を得ておりますけれども、新聞等で報道されている以上のものを私ども独自に入手しているわけではございません。
  141. 山原健二郎

    ○山原委員 この点、大臣にも伺っておきたいのですが、こうした事態はある程度予想されたとは思われます。国内大企業のいわばどん欲とも言える行動が、牛肉国内生産基盤の空洞化を予想以上に早めるのではないかという危惧の念を持っておりますが、こういう点は幾つか指摘する文献なども出ているわけでして、これは何とかしてとめなければならぬと思うのです。大臣も同じ気持ちだと思いますが、この点について大臣の受けとめ方を伺っておきたいのです。
  142. 京谷昭夫

    京谷政府委員 新聞紙上等で報道されております状況を私ども承知をしております。これらの動きについての評価の問題でありますが、私ども、こういった海外進出をいたしまして海外で牧場を所有し、また加工工場等を買収をするということが、それがすべて対日輸出、日本に向けての輸出を念頭に置いておるばかりのものとは考えておらないわけであります。進出先におきまして、その国内牛肉市場が相当量の規模で存在をしておるわけでございます。そういった活動に参画をしていくという一面もございますし、また日本国内牛肉市場には輸入牛肉では代替し得ない品質の問題でありますとか、あるいはきめの細かい流通サービスの提供といったような問題がございまして、そういった進出企業が無原則に日本国内に向けて輸出をするというふうなことが雪崩現象的に起こっていくというふうには、私ども考えておらないところでございます。
  143. 山原健二郎

    ○山原委員 大臣、時間がないようですから一言感想を伺っておきたいのですが、今の問題に付随しまして、日本人の味覚を知悉している国内業者が日本人の好む牛肉生産を行う。既に国内業者の介在で、検疫を通さずに和牛精液が海外に持ち出されているという報道もあるわけですね。検疫を通さない精液輸出について、行政上の何らかの制裁措置はとれないのか、あるいはまた国内和牛生産を守るという点で、これの輸出禁止措置をとれないのかという声も出ているわけでありますが、自由化に伴ってこういうことが起こることはある程度予想されたと思いますが、こういうことはもちろん好ましくないことでございますので、この点について総合して佐藤大臣の御見解を伺って、大臣に対する質問はこれで終わりたいと思います。
  144. 京谷昭夫

    京谷政府委員 一部の報道で和牛の精液が輸出されているのではないかというふうな報道が行われておりますこと、私ども承知をしております。委員指摘のとおり、牛の精液の輸出に当たりましては、輸出検疫を受けなければいけないということになっております。また、通常の場合、輸出先であります輸入国と輸出国との間で一定の衛生条件に関する取り決めを行っているのが通常でこざいまして、その取り決めのないままに先方にこういったものが流出をするという状況になりますと、先方の輸入国側の国内法にも触れるというふうな問題があるわけでございます。  最近の私どもの動物検疫の情報で見る限り、少なくとも報道されております、これはアメリカでございますが、そこに和牛の精液が輸出されたという事実は、私どもの輸出検疫記録で見る限りございません。また、アメリカとの間で、現時点では精液輸出についての衛生条件の取り決めというものはまだ決まっておらないわけでございまして、報道されたような事実はないというふうに理解をしております。これに違反をいたしました場合には、家畜伝染病予防法に罰則の規定もございますので、事実がありますれば、その罰則の発動等適切な措置をとっていくべきものと考えております。  また一般論として、国内産の和牛の精液の輸出規制の問題についてのお話があったわけでございますが、現在の諸般の国際情勢のもとでこれを制限するということになりますと、ガット上正当化される理由がなければ、ガット違反という事態をも生みかねない問題を含んでございます。現時点で権力的にこの精液の輸出禁止措置をとるということは、適当ではないというふうに理解をしておるところでございます。
  145. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 実務的なことは、今畜産局長から御答弁申し上げました。  いずれにいたしましても、肉牛生産者、流通関係者、そして消費者、特にそれに加えて、広く言えば安全性にかかわる問題、これは十分に配慮して行政の執行に当たらなければならぬ、心得ておるつもりでございます。
  146. 山原健二郎

    ○山原委員 あと残った時間、肥育農家に関する問題について質問をいたします。  現行の牛肉価格安定制度は、畜産振興事業団による牛肉輸入管理を前提として成り立っております。ところが、今回の自由化措置で、事業団による牛肉輸入管理は全廃されるわけです。したがって、現行牛肉価格安定制度は実効性を失うことになるのではないかと思いますが、この点について御答弁をいただきたい。  そして、安定価格帯は、自由化による牛肉価格低落に合わせて引き下げられ、肥育農家は打撃を受けることになるのではないかと思いますが、この点についての見解を伺いたいのです。
  147. 京谷昭夫

    京谷政府委員 私どもといたしましては、今回のこの特別措置法あるいは畜安法の一部改正措置、その他緊急対策の内容等を御検討いただきますれば、肥育経営についてもそれなりの配慮の結果であるということを御理解いただけると考えるわけでございます。  まず、今回の特別措置法によりまして、肥育コストの中で大変大きなシェアを占めております素畜費の肥育経営の負担については、相当の軽減が可能になるというふうに考えておるわけでございます。  また、御指摘ございました牛肉価格安定制度につきましても、本制度において予定をしております合理化目標価格水準というものを頭に入れて、今後の牛肉価格安定制度の適正な実施をしていくつもりでございますので、畜産振興事業団による輸入牛肉の一元管理なき後におきましても、十分実効性を持った牛肉価格安定制度の運営が図られるものと考えておるわけでございます。  また、御承知のとおり、本法案で予定をしております関税収入相当額の特定財源の使途につきましては、肥育経営の合理化を含む生産の合理化、流通の合理化等のための施策に要する経費の財源としても充当されることが予定をされておりますので、状況に応じて具体的な施策の具体化を図っていくことを通じまして、全体として肥育経営についても十分配慮をしていくつもりでございます。
  148. 山原健二郎

    ○山原委員 もう時間がなくなってまいりましたので、最後に二点ばかり。  一つは酪農家の問題ですが、酪農家の場合、生後一週間前後の乳牛の子牛、いわゆるぬれ子を売って収入を得るという場合が一般的で、その売り上げは、乳価の引き下げなどで苦しい経営を強いられている酪農家にとっては副収入以上の地位を占めております。ところが、この法案の肉用子牛価格安定制度では、このぬれ子は対象外となっております。牛肉自由化で最も直接的打撃を受けるのは乳用牛の肉であり、乳用牛のぬれ子の価格下落も必至ということになりますと、この点での対応を欠いた対策では酪農家への打撃は避けられないのではないかと思いますが、この点についてお伺いしておきたいと思います。  最後に、今度の自由化に伴いまして、私どもも各地の生産地の調査を行ったのですが、その中で一番強く訴えられましたのは、規模拡大などで膨らんだ負債対策です。その深刻な実態に見合った対策がぜひとも必要だということを痛感いたしました。これは、北海道の場合も鹿児島の場合も一緒です。利子負担分の棒引きなど抜本的な措置を講ずべきだという意見もありますし、私どももそう考えるのでございます。また、公庫資金の場合、さまざまな制度的制約のため、低い利率の資金による繰り上げ償還などで負担を軽減する措置さえとれないという意見が出ておりまして、何とかできないかとの声が圧倒的に強いわけです。  この二つについてお答えをいただきたい。
  149. 京谷昭夫

    京谷政府委員 まず、ぬれ子の問題でございます。  今後の酪農経営を考えていく場合に、このぬれ子が適正な価格水準で取引をされるということが大きな要素であることは、私どもも認識をしております。今回の肉用子牛価格安定制度で直接このぬれ子を対象にしてないことは事実でございますけれども、私どもは、肥育素牛として本制度の対象になり得るような乳用種の子牛につきましては、本制度によりまして価格安定を図っていくつもりであります。そういったレベルでの肥育素畜とぬれ子との間にはそれなりの価格相関関係がございますので、今回の価格安定制度によりまして、ぬれ子価格についても相応の適正な価格が確保されていくということを私どもとしては予定しておるわけでございます。  また、酪農経営自体が、ぬれ子とそれから今回の生産者補給金制度の対象にしております肥育素畜として評価される月齢に達するような、そういう状態に哺育・育成していく過程を担うということも、これからの酪農経営一つ方向として大変有用であると考えておりまして、酪肉複合経営確立というふうな方策で、そういった担い手として、本制度の対象になるような肥育素畜の哺育・育成主体として酪農経営育成していくという形で十分対処できるものと考えておるわけでございます。  それから、負債の問題でございます。  これまでも大家畜経営をめぐりまして、この負債問題が大変大きな課題になってございまして、制度資金の運営改善でありますとか、あるいは新たな負債整理資金の供給というような形でいろいろな工夫を凝らしておるわけでございますけれどもお話のような利子の棒引きというふうな形での対応というものは、金融の一般的なルールから見て大変困難と言わざるを得ません。いずれにしましても、御指摘ございました状況も踏まえながら、例えば六十三年度、本年度からは、大家畜経営体質改善資金といった形で新たな負債整理資金の供給も準備をしておりますし、また今回の牛肉に関する問題の発生に伴いまして、既存の融資枠をさらに拡大するというふうな緊急措置も講じようとして検討しているところでございます。  また、公庫資金の問題につきましても、一定の限界があろうかと思いますが、自作農維持資金の融資枠の拡大あるいは融資条件の緩和等々を通じまして、大家畜経営の持っております負債問題に対する対応を今後とも努力をしてまいりたいと考える次第でございます。
  150. 山原健二郎

    ○山原委員 終わります。
  151. 菊池福治郎

    菊池委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。  この際、暫時休憩いたします。     午後四時十一分休憩      ────◇─────     午後四時三十四分開議
  152. 菊池福治郎

    菊池委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案及び肉用子牛生産安定等特別措置法案の両案を議題といたします。  両案は、先刻質疑を終局しております。  この際、両案中、まず、畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案について議事を進めます。  これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。松田九郎君。
  153. 松田九郎

    ○松田(九)委員 私は、自由民主党を代表して、畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案について賛成の討論を行うものであります。  畜産物価格安定法については、昭和五十年にその一部を改正し、牛肉を指定食肉に位置づけるとともに、畜産振興事業団輸入牛肉の一元的な買い入れ、売り渡しを行わせることとしたものでありますが、以来、事業団はその負託によくこたえ、国内牛肉の需給及び価格の安定を図るとともに、輸入牛肉の売買差益を指定助成対象事業に充て、国内畜産振興を図るという重要な役割を果たしてまいりました。  すなわち、この間、国内牛肉需要量が二倍近く伸びる中にあって、国内生産拡大させるとともに、その価格については、安定的に推移させることに成功してきたのであります。私はまず、この十年余の間に畜産振興事業団が果たしてきた役割を高く評価したいと思います。  しかしながら、今や、畜産振興事業団による輸入牛肉の一元的な輸入制度については、輸入数量制限をめぐる厳しい国際世論等を背景として、その撤廃が関係国との間で合意されているところであります。  このことは、我が国肉用牛生産にとり極めて厳しい試練であることは事実でありますが、国際国家たる日本は、諸外国との約束を誠実に履行していかなければなりません。  したがって、今回、我が国肉用牛生産の存立を守るための立法措置を別途用意しつつ、畜産振興事業団輸入牛肉の売買業務を行わないこととしたことは、国際社会に生きる我が国のとるべき道として、時宜を得た妥当な措置であります。  次に、牛肉輸入枠撤廃後においては、牛肉の国際価格の変動が国内に直接及び、畜産経営に悪影響を与えることが懸念されるところであります。今回の改正法案において、畜産振興事業団に主要な畜産物生産及び流通に関する情報の収集、整理及び提供の業務を追加することといたしていることは、このような状況下において事業団の価格安定機能を強化するとともに、畜産農家の適切な経営判断に資するものであり、高く評価できるものであります。  願わくば、事業団は、国内のみたらず、広く海外の情報の収集、整理にも努めるとともに、きめ細かい情報提供を行っていただきたいと思うものであります。  次に、指定助成対象事業については、第二の畜産予算として、既に定着を見ているところであり、国の事業を適切に補完するものとして、今後ともその安定的な実施が望まれるところであります。  しかしながら、その主要な財源が、現在のところ輸入牛肉の売買差益であることから、牛肉輸入枠撤廃後の存続が憂慮されたところでありますが、このことについても、今回の改正法により、国の交付金による安定的な実施の道が開かれたところであり、愁眉を開く思いであります。  以上のように、今回の改正法案は、国際社会の一員たる我が国の国際的な責務を果たしつつ、牛肉輸入枠撤廃に伴う影響の緩和にも最大限の意を払ったものでありますので、本改正案に再度賛成の意を表明して、私の討論を終わります。(拍手)
  154. 菊池福治郎

    菊池委員長 藤田スミ君。
  155. 藤田スミ

    ○藤田委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、政府提出の畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案に反対の立場から討論を行います。  まず、指摘しなければならないことは、今回の牛肉・オレンジの自由化は、この改正案提出に見られるように、法律事項を含む国際約束であり、外務省見解で明らかなように、本来その自由化については当然当否を国会に諮ることが政府の責務であったことであります。  それをせず、国内対策の体裁をとり、自由化の当否についてはもう済んでしまったかのような形で法案審議を短時間に済ませるやり方は、国会審議権の重大な軽視であります。  そこで、本改正案について見ると、牛肉自由化を実施するための障壁になっている牛肉の国家貿易を規定している畜産物価格安定法第七条を削除する内容となっています。その点、ヤイター通商代表あて松永大使書簡で示されているように、今回の一部改正が牛肉自由化の国会承認の性格を持っており、自由化実施法以外の何物でもないことは明らかで、我が党は、その成立に強く反対するものであります。  さらに、削除の対象になっている第七条は、昭和五十年の全会派賛成の議員立法によって盛り込まれたものです。当時、国内牛肉生産は、オイルショックをきっかけとする飼料の高騰そして不況による牛肉消費の低迷と牛肉輸入の増大による肉牛価格の暴落で深刻な打撃を受け、経営破綻農家が続出しました。これを受けて、牛肉輸入の事業団による一元管理によって国内畜産農家保護という現行第七条が全会派一致による修正で実現したものであり、その経緯からいっても削除は到底認めることはできません。  また、今回の改正による国家貿易条項の削除は、ガット上認められている国家貿易の権利をみずから放棄するものであり、ひいては国家貿易品目である米、乳製品の自由化にまで波及するおそれがある、極めてゆゆしきものであります。ガットでは国家貿易が輸入独占として運用されている場合、数量制限廃止義務の例外が成立すると解されています。これに対しアメリカ政府が、生産制限などの要件がなければ輸入数量制限は認められないとの攻撃を行っていることは先刻明らかであります。  このようなとき、二年前に国家貿易品目通報を行った牛肉輸入数量制限をみずから廃止することは、国家貿易品目にかかわるガット上の権利を日本は軽視しているとの国際的評価を招き、ひいては乳製品、米の輸入自由化に道を開くものであり、到底認められません。  以上見たように、今回の畜安法改正案は牛肉自由化承認法案であり、日本農業国民生活に重大な禍根を残すものであることを強く指摘し、日本共産党・革新共同の反対討論を終わります。(拍手)
  156. 菊池福治郎

    菊池委員長 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  157. 菊池福治郎

    菊池委員長 これより採決に入ります。  内閣提出畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。 本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  158. 菊池福治郎

    菊池委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  159. 菊池福治郎

    菊池委員長 次に、肉用子牛生産安定等特別措置法案について議事を進めます。  この際、本案に対し、山原健二郎君外一名から修正案が提出されております。  修正案の提出者から趣旨の説明を求めます。山原健二郎君。     ─────────────  肉用子牛生産安定等特別措置法案に対する修正  案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  160. 山原健二郎

    ○山原委員 私は日本共産党・革新共同を代表して、ただいま議題になっております肉用子牛生産安定等特別措置法案に対し、修正の動議を提出いたします。  その内容はお手元に配付されております案文のとおりでございます。  政府が広範な農民の反対を無視して決定した牛肉・オレンジの輸入自由化は、農産物八品目の自由化受け入れとともに、我が国の経済主権を放棄し、我が国農業に重大な打撃を与えるものであります。各国が自立的な経済基盤を確立するため農業を保護し、食糧自給を目指すことは当然の権利です。これは、既に世界最大の農産物輸入国であり、食糧自給率も最低水準にある我が国にとってとりわけ大事なことであります。アメリカの理不尽な要求による牛肉・オレンジなどの輸入自由化方針を撤回し、我が国農業食糧を守ることを改めて強く要求するものでございます。  我が党は、牛肉生産コストの中で大きなウエートを占める肉用子牛の価格安定対策の抜本的改善要求してまいりました。本法案は、こういう要求に部分的にこたえる形をとって、自由化に対する農民の反発を和らげることをねらったものとしか思えません。本法案牛肉自由化前提とした制度であり、そこに起因する大きな欠陥、問題点を持っております。  我が党の修正案は、この矛盾、欠陥を抜本的に是正し、国内の肉牛生産を発展させ、国民に安い牛肉を供給することを保障するものでございます。  その概要の第一は、牛肉輸入自由化を法的に追認する条項を削除することであります。  第二は、子牛価格安定制度を抜本的に改善し、繁殖農家と肥育農家の双方を不足払いの対象とし、牛肉生産の発展、消費者価格の引き下げに役立つものとすることであります。また、乳牛雄牛の初生牛も子牛価格安定制度の対象とし、酪農家経営を守ることとしております。  第三は、生産コストの中で大きなウエートを占める子牛価格の引き下げを牛肉消費者価格の引き下げに結びつけるため、畜産物価格安定法に基づく牛肉安定価格の決定方法を改めることであります。  第四に、子牛価格安定対策の財源は、輸入牛肉の差益と関税のほか、必要に応じて一般会計からも支出することとし、子牛価格暴落時、暴騰時に肥育農家、繁殖農家が拠出する積立金も財源とすることであります。  第五に、施行期日は公布の日からとし、本制度を来年四月一日からスタートさせることであります。  以上が本修正案の概要であります。委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げまして、提案理由の説明を終わります。
  161. 菊池福治郎

    菊池委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。  この際、本修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見があればお述べいただきたいと存じます。佐藤農林水産大臣
  162. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 ただいまの修正案につきましては、政府としては反対であります。     ─────────────
  163. 菊池福治郎

    菊池委員長 これより内閣提出肉用子牛生産安定等特別措置法案及びこれに対する修正案を一括して討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。松田九郎君。
  164. 松田九郎

    ○松田(九)委員 私は、自由民主党を代表して、肉用子牛生産安定等特別措置法案につきまして、原案に賛成し、日本共産党・革新共同提出の修正案に反対の討論を行うものであります。  牛肉輸入枠の撤廃後においては、安価な輸入牛肉の大量流通により、枝肉価格の低落等による肥育経営の悪化と、これに伴う子牛価格の低落による繁殖経営の悪化が見込まれるところであります。  このような状況のもとにおいて、我が国肉用牛生産の存立を確保するためには、輸入牛肉と対抗できる価格で肉用牛生産が可能となるような措置をとる必要があることは言うまでもありませんが、このためにはいろいろな手法が考えられるわけであります。そのような中で、本法案において子牛段階で生産者補給金を交付する制度としたことにつきましては、零細なために経営基盤が弱く、子牛価格の変動が大きな影響を及ぼす繁殖経営に対して生産者補給金を交付することにより、我が国肉用牛生産のネックとなっている子牛生産の安定を図るとともに、肉用子牛を安価に供給することを可能とすることにより、肥育経営の安定も図ることを可能とするものであり、繁殖、肥育農家の両方の経営の安定を同時に図り得る制度として高く評価できるものであります。  また、この制度においては、生産性の向上の目標として合理化目標価格が示され、肉用子牛の生産費については、この価格への合理化努力が促されることとなっておりますが、このことは、国際化に対応して生産性の向上を図ることが重要な課題となっていることにかんがみれば、適切な措置であると思われます。  次に、この生産者補給交付金等の交付財源として、輸入牛肉等に係る関税を特定財源化することとしたことは、牛肉輸入自由化が今回の対策が必要となった原因であるという因果関係からすれば当然のことと考えられますが、これまでにはとられたことのない画期的な措置であり、このような特別の措置をとることとした政府の姿勢を評価したいと思います。  この特定財源については、昭和六十六年度以降の関税率の水準いかんにより大きな影響を受けるものと思われますので、政府におかれては、今後の関税交渉で全力を傾注していただきますようお願いしたいと思います。  また、日本共産党・革新共同提出の修正案は、牛肉輸入自由化を受け入れることとした我が国方針の否定を前提としたものであり、我が党としては反対であります。  最後に、この法案に基づく新しい肉用子牛生産安定制度については、先般の本委員会における参考人意見聴取において、生産者、市町村行政、実施機関、学識経験者のそれぞれを代表する参考人のいずれからも高い評価を受けたところであり、肉用牛生産者の先行き不安感を一刻も早く解消するために本法案の早期成立が必要と考えられることについて、委員各位の御理解をお願いし、私の討論を終わります。(拍手)
  165. 菊池福治郎

    菊池委員長 藤田スミ君。
  166. 藤田スミ

    ○藤田委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、肉用子牛生産安定等特別措置法案に対する反対の討論を行います。  反対の第一の理由は、繁殖農家にとって、本法案がその経営安定につながるどころか、将来的には安楽死をさえ押しつける可能性が強いことであります。  繁殖農家にとっては、現在の保証基準価格でも生産費を償っておらず、暴落時の下支えとして機能しているだけであって、実態は子牛の販売価格が保証基準価格を上回るときもあるからこそ経営を辛うじて維持してきたのであります。しかし、本法案が施行されれば、子牛価格生産費を償わない保証基準価格以下の水準に頭打ちされることは確実であり、たとえ保証基準価格と販売価格との差額が補てんされるとしても、経営改善につながるとは到底考えられません。  さらに、保証基準価格は、将来的には国内価格よりもはるかに低い牛肉の国際価格に見合う水準、つまり合理化目標価格にまで引き下げられることが法制化されております。これは、零細経営が圧倒多数を占める繁殖農家生産実態生産コストを無視して切り捨てるものであり、我が国の肉牛資源を掘り崩すものであると言わなければなりません。  第二に、肥育農家にとっては、法律上子牛を合理化目標価格で購入できる確実な保証がないにもかかわらず、一方牛肉生産者価格は、確実に合理化目標価格に見合う水準に引き下げられ、赤字経営を押しつけられる可能性が強いのであります。  第三に、我が国牛肉生産の三分の二以上を占め、牛肉輸入自由化によって最も直接的打撃を受ける乳用種に対する対策は極めて不十分であります。特に、乳用種初生牛が依然として価格安定制度の対象外とされ、価格暴落の危険にさらされようとしているのは重大な問題だと言わなければなりません。乳価引き下げや牛乳の生産調整のもとで、酪農家にとってこの措置は重大な打撃となることは必至であります。  以上のように、本法案生産の存立を守るためとの宣伝とは裏腹に、輸入自由化によって存立が脅かされている我が国牛肉生産農家を守るものとなり得ないことは明白であります。しかも、国内食糧生産基盤の縮小と安易な外国依存が安全な食糧の安定的な供給を望む消費者の願いに反し、輸入牛肉が将来にわたって安く供給される保証もないことは政府自身認めてきたことであり、大局的には消費者の利益にもならないことは明白であります。  我が党の修正案が示しているように、牛肉輸入自由化を撤回するとともに、政府案の自由化事後対策としての矛盾、欠陥を抜本的に是正し、国内の肉牛生産の発展に役立つ制度にする以外にないことを申し上げ、反対討論を終わります。(拍手)
  167. 菊池福治郎

    菊池委員長 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  168. 菊池福治郎

    菊池委員長 これより採決に入ります。  内閣提出肉用子牛生産安定等特別措置法案及びこれに対する山原健二郎君外一名提出の修正案について採決いたします。  まず、山原健二郎君外一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  169. 菊池福治郎

    菊池委員長 起立少数。よって、山原健二郎君外一名提出の修正案は否決されました。  次に、原案について採決いたします。  原案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  170. 菊池福治郎

    菊池委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  171. 菊池福治郎

    菊池委員長 この際、両法律案に対し、保利耕輔君外三名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を聴取いたします。串原義直君。
  172. 串原義直

    串原委員 私は、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合を代表して、畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案及び肉用子牛生産安定等特別措置法案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案及び肉用子牛生産安定等特別措置法案に対する附帯決議(案)  政府は、牛肉輸入自由化に対処し、左記事項の実現に努め、我が国肉用牛生産の安定的発展に遺憾なきを期すべきである。      記 一 保証基準価格については、我が国肉用牛生産振興に資するよう、肉用子牛の再生産確保が充分図られる水準に決定すること。 二 生産者補給交付金の交付に要する経費その他の肉用子牛等対策費については、特定財源化した牛肉等の関税収入相当額から所要額を充分確保すること。 三 ウルグァイラウンドに委ねられている一九九四年度以降における牛肉等にかかる関税率等の国境措置については、国内生産に悪影響を及ぼすことのないよう遺憾なきを期すること。 四 新たに導入される肉用子牛の生産者補給金交付事業が円滑に実施されるよう、現行の肉用子牛価格安定事業の拡充・強化に必要な予算の確保、基金財源の充実その他体制の整備に努めること。 五 肥育経営の体質強化に必要な施策の拡充と予算の確保を図るとともに、地域格差や個々の経営実態に応じた指導助言の徹底に努めること。また、繁殖肥育一貫経営を推進すること。   併せて、国産牛肉の価格安定を図るため、畜産物価格安定等に関する法律の適切な運用を図ること。 六 素畜費とあわせ生産費の大宗を占める飼料費の低減に資するため、飼料生産基盤の整備・拡充を図るとともに配合飼料の生産及び流通の合理化等について指導を行うこと。 七 肉用牛等大家畜経営農家の負債等の実態を踏まえ、経営の安定に必要な融資・補助施策を拡充・強化すること。 八 肉用牛経営農家経営努力消費者価格に反映されるよう牛肉流通体制の改善・合理化を図ること。 九 肉用子牛の生産者補給金交付業務をはじめ、畜産振興事業団各種業務が円滑かつ適切に実施できる体制を早急に整備するとともに、業務に従事する職員の雇用の安定を図ること。  右決議する。  以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じて委員各位の御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  173. 菊池福治郎

    菊池委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  保利耕輔君外三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  174. 菊池福治郎

    菊池委員長 起立多数。よって、両法律案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。佐藤農林水産大臣
  175. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検計の上、善処するよう努力してまいりたいと存じます。     ─────────────
  176. 菊池福治郎

    菊池委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  177. 菊池福治郎

    菊池委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕      ────◇─────
  178. 菊池福治郎

    菊池委員長 農林水産業の振興に関する件について調査を進めます。  この際、遊漁船業適正化に関する法律案起草の件について議事を進めます。  本件につきましては、先般来理事会におきまして御協議を願っていただいたのでありますが、本日、その協議が調い、お手元に配付いたしてありますとおりの起草案を作成した次第であります。  その内容につきまして、便宜、委員長から御説明申し上げます。  御承知のとおり、近年、国民の余暇時間の増加等に伴い、遊漁、プレジャーボート等海洋性レクリエーション活動の機会が増大しております。これらの活動は、漁家の所得向上と漁村の活性化に貢献している面もありますものの、一方においては、漁場利用等をめぐり漁業とのトラブルも発生しており、早急な対応が望まれてきたところであります。  加えて最近、遊漁船と海上自衛隊の潜水艦との衝突事故を機に、三万四千人に達すると言われる遊漁船業者の実態把握とその業務内容の向上が求められているのであります。  本案は、こうした要請にこたえるため、遊漁船業を営む者の業務の適正な運営を確保するとともに、その組織する団体の適正な活動を促進し、遊漁船業の健全な発達を図るため必要な措置を定めることにより、遊漁船の利用者の安全の確保及び利便の増進並びに漁場の安定的な利用関係確保に資することを目的とするものであります。  本法は、国及び地方を通じ、遊漁船関係団体に対する指導監督及び適正な漁場利用関係確立等によって、水産資源の維持、増大、生業である漁業の存続、発展に資するよう運用されることが必要であります。  次に、本案の主な内容について申し上げます。  第一に、遊漁船業を営もうとする者は、あらかじめ、その営業所ごとに、都道府県知事に届け出なければならないこととしております。  第二に、遊漁船業者は、気象情報を収集し、営業所ごとに利用者名簿を備え置かなければならないこととするとともに、都道府県知事は、農林水産省令で定める遊漁船業者の遵守事項を遵守していない者に対して改善命令を出すことができることとしております。  第三に、農林水産大臣は、遊漁船業の健全な発達を図ることを目的として設立された公益法人を全国遊漁船業協会として指定するとともに、同協会が定める適正営業規程に従って営業する遊漁船業者は、その登録を受け、一定の様式の標示を行うこととしております。  第四に、都道府県知事は、遊漁船業者等を構成員とする営利を目的としない法人であって、遊漁船業者に対する指導等を適切かつ確実に行うことができると認められるものを、遊漁船業団体として指定することができることとしております。  このほか、立入検査政府の援助、罰則等について所要の規定を設けることとしております。  以上がその内容でありますが、詳細につきましては、お手元に配付してあります案文により御承知願いたいと存じます。     ─────────────  遊漁船業適正化に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  179. 菊池福治郎

    菊池委員長 お諮りいたします。  お手元に配付いたしてあります遊漁船業適正化に関する法律案の草案を本委員会の成案と決定し、これを委員会提出の法律案といたしたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  180. 菊池福治郎

    菊池委員長 起立総員。よって本案は委員会提出の法律案とすることに決定いたしました。  なお、ただいま決定いたしました本案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  181. 菊池福治郎

    菊池委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時七分散会