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京谷政府委員 お尋ねのございました諸点について、順次お答えを申し上げたいと思います。
まず、
自由化された後におきます需要の
動向あるいは
輸入牛肉のシェアの見通しの問題でございます。御案内のとおり、今後の
牛肉の
需給見通しにつきましては、本年の二月に酪肉基本
方針を明らかにしております。昭和七十年度を目途に
一定の
需給推計値を出しておるわけでございますが、まず需要量につきましては、この見通しの中で六十年度に比較をしまして七十年度には需要規模が大体一・五倍程度になるのではないか、また、
国内生産量については
国内での資源的な制約もございますので一・二倍程度にとどまるのではないか、総じて見ますと、
国内生産の占める割合というのは最大限六〇%程度ではないであろうか、こういう見通しを出しておるわけでございます。
現時点で
牛肉の
輸入枠撤廃という
状況を踏まえますと、ただいま申し上げました見通しについては、恐らく今後
牛肉価格が現状に比べまして
低下をしていくという傾向を強めると思いますので、需要量はただいま申し上げましたラインを相当程度上回るテンポで増加し、総量としても先ほど申し上げましたようなレベルを少し上回るのではないかという予測を持っております。
また、
国内生産につきましても、ただいま申し上げましたとおり相当思い切った
生産対策の効果も織り込んで、六十年、七十年比較で一・二倍という数値を私
ども示しておるわけでございますが、どうもこの辺が限度であるということを
考えますと、自給率も相対的に下がらざるを得ない、先ほど申し上げました六〇%というレベルを相当下回ることになるのではないか。需要が相当伸びる、
生産が当初見込んでおるようなレベルであるというふうなことで
考えております。
私
ども、この酪肉基本
方針そのものについては、内容的にすぐさま改定をするつもりはございませんけれ
ども、現在、農業基本法に基づく主要農産物の長期的な
需給見通しの見直しを農林水産省全体の作業として進めております。その中で、こういった
事態を踏まえました
牛肉需給の長期的な展望というものをどういうふうに
考えていけばいいのかをさらに子細に分析をいたしまして、他の作物とあわせて最終的な作業を取りまとめたいというふうに
考えておるところでございます。
それから、
牛肉輸入についての枠撤廃に伴って、関連をする
畜産経営についていろいろな
影響が予想されるわけでございますが、御
指摘のございました各部門ごとに、その程度、内容というものは大変変わった形になるであろうというふうに私
ども考えております。基本的に見た場合には、
輸入枠の撤廃に伴いまして、国産、
輸入物も含めまして
国内における
牛肉価格というのは、
一定程度
低下の傾向をたどっていくということは避けがたいというふうに
考えております。このことを通じまして、
国内の
肉用牛生産にもいろいろな
影響が出てこようかと思いますが、まず乳用種の
肥育経営について見た場合には、恐らく肉質が国産の
牛肉の中では
輸入牛肉と一番近い、そういう
意味で
影響の度合いというのは大変大きいのではないか。
結局は、そういった競合度の高い
輸入牛肉との競争に耐えていくためにはやはり
生産コストを下
げる、下げる場合に一番大きな要素になりますのが
子牛の供給
価格というものになろうかと思うわけであります。したがいまして、相対的に低
水準の
子牛価格によって
肥育経営が
対応していく場合に、逆に素牛の供給サイドがそういった低位の
子牛価格で耐え得るような状態を整備しておく必要があるということで、今回御
提案を申し上げております
子牛の
生産者補給金等に関する
制度を早急に確立をしてまいりたいというふうに
考えておるわけでございます。
一方、和牛経営でございますが、和牛経営からの
最終生産物でありますいわゆる和
牛肉につきましては、いろいろ品質上のばらつきがありますけれ
ども、相対的には、
輸入牛肉との間で相当の
品質格差がしばらくは続くであろうというふうに私
どもは
考えております。したがいまして、
輸入枠撤廃に伴います
輸入量の増加等に伴う
影響というものは、乳用種に比べると程度が軽いのではなかろうかというふうに
考えておるわけでございますが、やはり総体として、一部の高級なものというのはかなり独自のマーケットを保持しておりますけれ
ども、大部分のものについては
輸入、それから国産の乳用種、そういうものの
価格低下の
影響を避けがたいというふうに
考えておかなければいけないと思います。
したがいまして、
肥育経営のサイドにおきましては、そういった
輸入の
自由化に伴う
価格低落に
対応した
生産構造というものをつくって、再
生産構造を維持する方策を
考えなければいけないと思いますが、そのときにやはりコスト引き下げの一番大きな要素として
考えていかなければいけないのは、素牛の
価格であろうというふうに
考えるわけでございます。結局は、相対的に低
水準の素
牛価格をベースに、
肥育行程の
合理化を通じてより安い
生産コストで和
牛肉を提供する。
最終生産物の
価格は、乳用種に比べると比較的有利な
価格形成が図られると思いますけれ
ども、
輸入の
影響は避けがたいということでございますので、それなりの
対応が必要であろうと
考えております。
また、繁殖につきましては、ただいま申し上げましたように、
牛肉価格の
低下、それに
肥育経営で
対応するとすれば、
肥育側の
子牛購入可能
価格というものは相対的に下がらざるを得ないわけでありますから、やはり最終的なしわ寄せというものは
繁殖経営に来る、
子牛価格の低落という形で
繁殖経営に大きな
影響を及ぼすということが
考えられるわけでございます。和牛の
繁殖部門につきましても、したがいまして、今回御
提案を申し上げております
子牛生産者補給金
制度等に関する
法律を通じて、再
生産を確保するための
措置を早急に準備しておく必要があるというふうに
考えるわけでございます。
なお、この和
牛肉の
生産につきまして、ただいま先生から特に島根県の
お話がございましたように、
我が国有数の和牛銘柄を持っている地域でございます。繁殖用の素牛としましても、また
最終製品である
牛肉につきましても、
一定の高級品としての銘柄を持っておるわけでございますが、その伝統的な高級品としてのマーケットというものはかなり強固には残っておりますけれ
ども、それに安住をしていきますと、
市場、需要の方がどんどん変わっていっているという
状況もございます。その辺の変化のテンポというものはよく見きわめていく必要があると思いますけれ
ども、ある
一定の技術、
条件を持った部分については、この高級化による生き残りということもあり得る道であると思いますけれ
ども、余りすべてがこれで
対応できるということを
考えていくと大変大きな間違いを起こすことになりはせぬか。総体としては、やはり
生産コストを引き下げるような方策を全体として進める、その中ででき上がったごく一部の高級なものが、伝統的なマーケットでしかるべき
生産を維持するというふうなことを、大変前広に
考えていかなければいけないのではないかというふうに
考えるわけでございます。
また、先ほど来申し上げておりますように、
輸入枠の撤廃に伴いまして
牛肉の
価格が下がる、そのことを通じて需要がふえるということは、豚肉や鳥肉にも実は
影響が間接的にあり得ると私
どもは
考えております。ただ、豚肉については、現在の需要構造を見ますと、家庭用のテーブルミートとしての役割よりも加工品の
原料として相当の
ウエートを持っておりますので、
影響を受けるにしても
一定の限度があるのではなかろうか。それからまた鳥肉についてですが、これは豚肉に比べますと、
牛肉との競合度合いといいますか、競争度合いというのは低いのではないかというふうに私
ども見ております。恐らく、この豚肉やブロイラー、鳥肉といった範囲にとどまらず、この
牛肉の
価格低下に伴う需要増加というものは、他の動物性たんぱく質、特に魚ですね、そういったもの等にも
影響を与えましょうし、あるいは穀類の需要にも
一定のインパクトを与えることが予想されますけれ
ども、細かい予測については私
どもいろいろなシミュレーションをしておりますが、なかなか断定的な変化の内容というものを読み取ること、大変難しゅうございます。
事態の推移がいかように進んでいくのか、冷静に見ながら所要の判断なり
対策を
考えていく必要があるというふうに
考えておるわけでございます。