運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1988-11-02 第113回国会 衆議院 農林水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十一月二日(水曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 菊池福治郎君    理事 笹山 登生君 理事 鈴木 宗男君    理事 月原 茂皓君 理事 保利 耕輔君    理事 松田 九郎君 理事 串原 義直君    理事 神田  厚君       衛藤征士郎君    遠藤 武彦君       大石 千八君    川崎 二郎君       小坂善太郎君    近藤 元次君       杉浦 正健君    武部  勤君       玉沢徳一郎君    中島  衛君       柳沢 伯夫君    石橋 大吉君       沢藤礼次郎君    田中 恒利君       前島 秀行君    武田 一夫君       藤原 房雄君    吉浦 忠治君       藤田 スミ君    山原健二郎君  出席国務大臣         農林水産大臣  佐藤  隆君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      浜口 義曠君         農林水産省経済         局長      塩飽 二郎君         農林水産省農蚕         園芸局長    吉國  隆君         農林水産省畜産         局長      京谷 昭夫君         食糧庁長官   甕   滋君         水産庁長官   田中 宏尚君  委員外出席者         厚生省生活衛生         局食品保健課長 松田  朗君         参  考  人         (畜産振興事業         団理事長)   今村 宣夫君         農林水産委員会         調査室長    羽多  實君     ───────────── 十月二十六日  土地改良事業償還金農家負担軽減に関する請願五十嵐広三紹介)(第一九一〇号)  同(五十嵐広三紹介)(第一九五五号)  同(五十嵐広三紹介)(第一九九二号)  同(五十嵐広三紹介)(第二〇五〇号)  蚕糸政策に関する請願串原義直紹介)(第一九三一号)  同(清水勇紹介)(第一九三二号)  同(中村茂紹介)(第一九三三号)  同(井出正一紹介)(第二〇二五号)  同(小川元紹介)(第二〇二六号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第二〇二七号)  同(小坂善太郎紹介)(第二〇二八号)  同(中島衛紹介)(第二〇二九号)  同(羽田孜紹介)(第二〇三〇号)  同(宮下創平紹介)(第二〇三一号)  同(村井仁紹介)(第二〇三二号)  同(若林正俊紹介)(第二〇三三号)  異常気象による農作物被害対策に関する請願粟山明君紹介)(第一九九一号)  米の市場開放阻止牛肉・オレンジの輸入自由化に伴う国内対策の強化に関する請願魚住汎英紹介)(第二〇四九号) 同月三十一日  土地改良事業償還金農家負担軽減に関する請願五十嵐広三紹介)(第二〇七〇号)  同(五十嵐広三紹介)(第二一三九号)  同(五十嵐広三紹介)(第二一八五号)  米の輸入自由化反対に関する請願近藤元次紹介)(第二一三八号)  蚕糸政策に関する請願小沢貞孝紹介)(第二二三八号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第七号)  肉用子牛生産安定等特別措置法案内閣提出第八号)      ────◇─────
  2. 菊池福治郎

    菊池委員長 これより会議を開きます。  内閣提出畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案及び肉用子牛生産安定等特別措置法案の両案を議題とし、審査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  両案審査のため、本日、参考人として畜産振興事業団理事長今村宣夫君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 菊池福治郎

    菊池委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     ─────────────
  4. 菊池福治郎

    菊池委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柳沢伯夫君
  5. 柳沢伯夫

    柳沢委員 本日は、今委員長仰せのとおり畜産法案審査を行うわけでございまして、私もこれについて御質問させていただくわけですけれども、その前に、最近の事態の展開にかんがみまして、国民の間に広く大きな関心を呼んでおります米の問題につきまして大臣のお考えを改めてお伺いしておきたい、こういうように思う次第でございます。  九月に全米精米業者協会が、アメリカ通商代表部つまりUSTR日本の米の市場開放につきまして提訴をいたしまして、私ども大変その行方を心配しておりましたけれども、去る十月二十九日USTRは本件を却下する、こういうことを決定いたしました。これは、大統領選挙の真っただ中でこういう提訴却下決定というような行政手続が進められましたので、その対応にいろいろ難しい面があったと思うのですが、大臣等の御努力によりましてこの点についてはとにかく一応却下、こういう決定を見まして、その限りでは大変努力のかいがあったということで、私ども一定評価をいたしております。  ただ、御存じのとおりでございまして、アメリカ側行政処分というのはこういうような、何か我々の方からするとわけのわからないことが行われるわけでございましょうけれども却下であって、しかしこれに条件をつける、その条件もどういう条件なのか、行政処分条件なのか、ただ政治的な意味のことなのか、ようわかりませんけれども、とにかくそこでステートメントというものが発表されて、そして現在進行中のウルグアイ・ラウンド、この中間レビューが十二月にカナダで行われるようだけれども、そういう際に、日本対応にこの問題について一定進展、プログレスという言葉が使われておるようですが、そういうものがなければまたRMAに再提訴を促すというようなことが言われておるようでございます。  まことに、私どもはこんなことは遺憾きわまりないことだ、こういうように思っておりますが、この際私は、このUSTR決定あるいはその際に出されたステートメント等につきましての大臣の御所見、そしてまたこの中間レビューが行われるに当たって、さらに広く今回の農業交渉全体の 中の大臣対応の仕方、対応方針というものについて、できますれば、十二月にカナダにいらっしゃるおつもりがあるのかどうかを含めて、御方針を承らせていただければ大変ありがたい、このように思う次第です。
  6. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 最後の方から便宜お答えを申し上げたいと思いますが、私はこの間の土曜日、USTRRMAの再提訴に対してとった措置、このことについては甚だ遺憾であるというコメントを発表いたしまして、そして、ニューラウンド中間レビューにおきましては米だけの問題を討議する場ではございませんと承知しております、あらゆる問題が、米どころか農業問題だけを討議する場でもございません、あらゆるものが含まれてのことでございますから、私は、私自身が行く予定はない、こういうことを申し上げておるわけでございます。  USTRがこのたび、九月十四日に米の貿易制度について新通商法第三〇一条に基づいて行った提訴却下する決定を行ったわけでありますが、十二月のウルグアイ・ラウンド中間レビューにおいて米の問題について日本政府の積極的な対応を要求し、それが実現されなければ今おっしゃられるようにRMAに対して再提訴再々提訴ということになるのでしょうか、それを促すとの条件を付しておるということは、重ねて申し上げますが、遺憾でございます、今後に問題を残すものであると私は思っております。  これまでも申し述べてまいりましたように、米問題については、現在進行中のウルグアイ・ラウンドの場で、参加する各国がそれぞれの抱える困難な問題及び制度について議論を行う段階になればこれを避けるものではない、それは議論しましょう、こう言っているのでありますから、そして私は、私ども考え方を主張し貫かなければならない、こういう決意を持って私が考えるのは当然のことだと思っておるわけでございます。  決して、議論を避けて逃げるわけでもございませんし、沈黙を守るわけでもございません。あらゆる農業問題を討議するにやぶさかでないということはしばしば申し上げてきたとおりでございまして、既にウルグアイ・ラウンド農業交渉において日本提案を示し、その進展に積極的に貢献しているわけでございますから、今後ともこれらの方針について二国間だけではなくて国際的に理解を求め、遺憾のないよう対処してまいりたい、かように思っておるところでございます。
  7. 柳沢伯夫

    柳沢委員 まことに大臣から力強い、またこれまでの我が国政府がとってきた一貫した態度の再確認がございまして、安心をいたしました。ぜひそのように、農産物の貿易ルールを新しくつくるということの中で我が国の立場を主張し貫く、こういう御方針で行っていただきたい、このように思います。  それでは、もう時間も大変短くなりましたので、端的にこの畜産法案につきまして、特に私は肥育の地帯でございますので、その観点からこの問題について御質問を申し上げたい、こういうように思います。  まず第一に、今回の二法による措置、これにつきまして、これはそもそもが今回のアメリカとの間の牛肉自由化の合意、これに伴う措置として出てきておるわけでございまして、本来でしたら、中長期的な対策と我々伺っておりましたので、もう少し後かな、こう思ったのですが、政府の側で農民生産農家の不安をとにかく一刻も早く解消しておきたい、こういうお心組みから非常に早期にこういう措置を御提案いただいておる、私ども大変ありがたいと率直に言って思っております。  そういうことでございますけれども、とにかく牛肉輸入自由化が起きれば牛肉値段が下がってしまう。そうして、その中で生産農家存立をしていくためにはどうしても、少なくともある一定の期間は政府側からその手だてを、農家生産費あるいは所得まで見込んだところでの手だてを講じていただく、こういうことが必要になるわけでございます。  その場合、私ども考えるのですが、三つぐらいその手だての講じ方としてはあるんじゃないか。一つは、御提案になっているように、子牛段階措置をしていく、それからもう一つは、直接、市場製品価格を競争せざるを得ない形になっている牛肉段階措置をする、それからまた、ある一部の方々の御意見のように、両方でちゃんと措置をしておくべきじゃないか、こういうような考え方が論理的にあり得る、こう思うのです。その場合、そういう中からあえて子牛段階措置をする、こういうことに踏み切られるというか、そういう選択をされておるわけですけれども、私ども肥育農家のサイドから見ますと、枝肉の不足払いをやってくれぬかなという声も正直言って私ども地元農民からありました。しかし、ちょっと待っていろということで、いろいろ考えてみるからということでやってきましたのですが、あえて今度の政府の案で子牛段階での措置にしよう、こういうことに踏み切られた理由を明らかにしていただければありがたい、こう思うのです。
  8. 京谷昭夫

    京谷政府委員 ただいま先生からお話ございましたように、今回の日米日豪間の協議におきまして、三年後の牛肉に関する輸入枠撤廃を決めたわけでございますが、その結果、国内における肉用牛生産存立が大変大きな課題になりますので、今回御提案申し上げております一連法律措置を御審議を賜っておるわけでございます。  この中で、国内牛肉生産存立確保の上でいろいろな考え方があり得ると思いますが、牛肉そのものについてある種の価格差補てんをしていくということにつきまして私ども検討したわけでございます。一つには、御承知のとおり国内牛肉というのは、種類なり銘柄によりまして品質格差が非常に多種多様に分かれている。牛の場合でもありますけれども、それに比べるとその多様さが格段に違う。したがいまして、保護の水準をどういうレベルで決めるかということは技術的に大変困難である。  それからまた、御承知のとおり、牛肉という最終生産物を生み出すための生産プロセス大変多段階に分かれております。したがいまして、最終生産物対象にそのような政策をした場合に、政策対象といいますか経済効果が特定化しにくいというふうな問題がございまして、やはり肉用牛生産の非常に根幹部分をなす子牛段階に着目をして集中的な価格補てんをしていく、かつまたそのことを反映させた肥育面——肥育農家といいますか、牛肉に対する手当てをすることがいいのではないかということで、実は子牛に対する価格差補てんと並行いたしまして、牛肉そのものにつきましては、従来からやっております価格安定制度を安くなった子牛価格をベースにして継続をしていってはどうか、そういう安くなった子牛価格を基本に置いて、価格安定制度の適正な運用を通じて肥育段階のサポートを考えていくのが適当ではないかということで、このような仕組みで今回の一連施策を仕組んでおる、こういうことでございます。
  9. 柳沢伯夫

    柳沢委員 いろいろ御苦心の検討の結果こういうことになったし、またそれを効率的にやり、他方でまた従来どおりの牛肉価格安定措置をやってまいる、こういうお話でございまして、理解をさせていただきます。  それで、次の問題でございますけれども現実に今回の自由化の発表の後で子牛価格が非常に上がっております。前の五十七年から五十九年のころ、子牛価格が下がった。これの背景についてもいろいろな見方はあるようですけれども、その中にはやはり、あのとき枠拡大、それが将来自由化に結びつくんじゃないかということが子牛価格低下に非常に影響した、こういうように見る見方もあるようですが、今回の場合は非常に厳しい。現実自由化が三年後に来るということになったのにもかかわらず、子牛価格が非常に高位でございまして、肥育農家にとってはなかなか厳しい状況で、ちょっと予想と違ったな、こういうような感じも率直に言ってしておるようでございます。  そこで、私どもといたしましては、子牛価格について、今回新しい法律案のスキームにもございますけれども合理化目標価格というようなものを設定していただいておりますので、そういう目標価格でもって何とかこの子牛価格低下を誘導していっていただきたい、こういうようにすら思っております。そのことと、現実子牛価格低下をするというふうに見るのでしょうか、あるいは低下をさせていくんだというふうにお考えなんでしょうか、この辺をぜひ承っておきたい、こういうように思います。
  10. 京谷昭夫

    京谷政府委員 お話のとおり、肉用牛生産過程繁殖部門肥育部門に分かれて分担をされておるわけでございますが、長期的に見ますと、私ども自由化という事態を踏まえますと、最終製品である牛肉価格というのは、これは一つには輸入量の増加なり、あるいはまた国内での生産コスト低下という状況背景にして価格が下がっていく、こういうふうに考えております。したがいまして、そういう動きの中で子牛価格も当然低下をしていく。また安い牛肉国内生産するためには、そういった安い子牛価格が実現されなければならないというふうに考えております。  ただ、そういった状態が均衡がとれて実現するために、やはり繁殖部門合理化というものが進まなければいけないと思いますし、それには相当間がかかる、そのためにその間を今回の法案に織り込んでおりますような子牛に対する価格差補てんということを通じて、繁殖経営の安定あるいは合理化の後押しというものをしていってはどうかというふうに考えておるわけでございまして、この制度運用を通じまして、この制度の中にビルトインしております輸入牛肉に対抗できるような牛肉生産するための子牛価格として、合理化目標価格というものを決めていきたい。それで、むしろ合理的な国産牛肉価格を実現する手段として、この合理化目標価格に近づいた水準国内子牛価格が形成され、その価格をもとにして国内肥育経営が安定的に牛肉生産対応していく、こういう構図を描いておるわけでございます。  ごく最近の子牛価格動きにつきまして御指摘ございましたが、御承知のとおり、自由化そのものというのはまだ三年後でございますし、当面の需給につきましてはやや緊張ぎみのところもございます。また、子牛の中でも和牛につきまして、なかなか品質差をもって一定市場評価がかなり強く残っておりますので、特定の品種の子牛についての需要が当面非常に強く出ておるということで、御指摘のような当座の子牛価格の値上がりという現象はありますけれども、中長期的には、私の申し上げましたような展望に沿って事態が動いていくのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  11. 柳沢伯夫

    柳沢委員 畜産行政のエキスパートであります畜産局長がそういうふうにおっしゃっていただいて、私ども安心をするわけでございますが、子牛価格低下するということ、これがどういう事態で起こるか。肥育農家生産意欲を失ってしまう、あるいは肥育農家が実際に競争に負けてしまって、もう撤退するということになれば、確かに買う人はいませんから子牛価格低下するということなのですが、それが起こってからでは困るわけでございますので、この合理化目標価格等運用に当たっても、ぜひ繁殖農家あるいは肥育農家ともに、この自由化された市場の中でちゃんとした存立ができるように、ぜひかじ取りをうまくお願いしたい、このように思う次第です。  それからもう一つ、次に肥育農家にとりまして生産費の中で大きなウエートを占めるのは、言うまでもなく飼料費でございます。この飼料につきましては、私どもも、いろいろ現実には例えば国有林草地牧草地に変えてもらいたいとかいうようなことで、自給飼料ウエートを増していく、こういうことによって飼料費全体を下げていく、こういうようなことも口では言うわけですけれども、実際問題としては、今のところは流通飼料と申しますか、そういうようなものに大きく依存しているのが事実でございまして、そういう面でこの流通飼料価格動向というものを、あるいは価格の引き下げということを強く望むわけでございます。  この価格については、為替レートその他非常に大きな変動要因がありまして、今、肥育農家が高い子牛でも買えるのは、辛うじて輸入流通飼料が値が若干でも下がっているということが背景にある、こういうことでございますが、これもまた、いつまでもこんなことに依存できるかといえば依存できない、こういうことは明らかであろう、こういうように思うわけでございます。そういう意味合いで、配合飼料等流通飼料価格安定のためにどのようなことを今後考えていかれるか、この点についてお伺いをいたします。
  12. 京谷昭夫

    京谷政府委員 お話ございましたように、肉用牛生産コストの中で飼料費が大変大きなウエートを占めておることは御指摘のとおりでございます。特にその中で、私どもかねてから自給飼料基盤の整備ということを大変大きな課題にしておりますが、お話にもございましたように、肥育経営の場合には、現実問題としては流通飼料に対する依存度が大変高いという状況でございます。  私どもも、この流通飼料安定供給のために、無税による原料輸入等の道を開いておるわけでございますけれども、御承知のとおりその配合飼料原料は大部分輸入でございます。したがいまして、お話にもございましたように、その価格水準というのは、現地の市況であるとか、あるいはフレートというふうな国際的ないろいろな指標に影響を受けやすいということがございますが、ごく最近いろいろな心配が出ておりますけれども、ここ数年の状況を見ますと、お話のとおり、国際市況が比較的軟調に推移したとか円高進行したということで、比較的安定的に配合飼料価格ないしはその流通が推移しているというふうに思っております。  本年に入りまして、お話にもあったと思いますが、アメリカの干ばつの影響配合飼料の主原料でありますトウモロコシの作況について心配状況が出てきておる。現実海外市況も少し強含みに転じております。御承知のとおり、ことしの七月に工場の建て値を引き上げざるを得なかったわけでございますが、この事態対応しまして、私ども業界と相談してつくっております飼料価格安定制度を通じまして、当面はこの値上げが農家負担にならないような手当てをしておるわけでございます。  今後、国際需給あるいは国際価格市況動向を見て、私ども関係業界に対する安定供給指導に努めると同時に、ただいま申し上げました価格安定制度の適切な運用をしていくとか、あるいはまた必要がありますれば、この配合飼料生産流通あるいは原料輸入について関係のある制度について改善する点があるということになりますれば、具体的にその検討を進めて、適時適切な対応をしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  13. 柳沢伯夫

    柳沢委員 とにかく、先般の国際交渉の前の牛肉問題についての論議の際にも畜産局長が御答弁になっておられたように、現行の国境措置というのが関税率に直して大体九五から九六ぐらいの力を持っているんだ、こういうことでございますね。それが自由化後におきましては、国境措置ということになると、最初は七〇だけれども三年後には五〇になるという関税率でしか措置できない、こういうことですから、単純に考えても、それだけの関税率を埋め合わせるだけの生産性向上というものをこちらは図っていかなきゃいけない、こういう勘定になると思うわけでございますが、そういう中で子牛値段それから今言った流通飼料、こういったようなことについての合理化生産性向上というか価格圧縮というのは、肥育農家としてはどうしても必須の条件になってまいりますので、その点の配慮をくれぐれもよろしくお願い申し上げたいと思います。  ただ、肥育農家にとりましても、自分たち自身一定自助努力というか合理化努力は、それこそ必要なのでございます。そういう意味で、こ れをどういうぐあいにしていったらいいか。私ども仲間内の議論でも、例えば牛舎一つとってみても、建築基準法の適用があって人間が住むぐらい立派なところに住んでいるなんというのがあって、これもおかしいじゃないかという議論もして、それも合理化、コストダウンに向けて、もう少し改正してもらいたいという話もしております。  また、コンピューターの世の中ですから、飼養というか個体管理個別管理で、どういうえさをくれたら市場でいい評価をされた肉ができたかということをずっと追いかけていく、そういうことで生産性向上を図っていくことも一部で行われているようですね。  そういうことで、日本技術水準をもって、あるいは日本国民日本農家勤勉ぶりをもってすれば、この合理化も決して実現不可能ではない、私はこういうふうに思いますけれども政府の方の御指導もこれまた格別にお願い申し上げたいと思いますので、生産性向上に関する諸措置について何か御方針があればこの際ぜひお尋ねしておきたい、このように思います。
  14. 京谷昭夫

    京谷政府委員 今後の肉用牛生産について、生産性向上が最大の課題であることを私どもも十分認識しております。その中で現在の生産費の構成を見ますと、素畜費飼料費労働費生産コストの九割を占める実情にありますので、今回の措置によります素畜価格適正化、それから先ほど言及しました飼料費の縮減、それから労働生産性向上によりまして労働費圧縮に努めるというのが大きな柱になろうかと思います。これまでも、草地開発事業でありますとか畜産総合対策という多種多様な施策努力をしてこれらの課題対応しつつありますけれども、御指摘を踏まえまして、各般にわたる生産性向上対策に総合的な努力を傾けてまいりたいと考える次第でございます。
  15. 柳沢伯夫

    柳沢委員 それでは、最後に大臣にお伺い申し上げます。  今、短い時間でございましたけれども、今回の畜産二法に代表されるような、今後の自由化を控えて、あるいは自由化後の日本肉用牛生産存立を絶対に守っていくという見地からの各般の施策についてお伺いしたわけですけれども肉用牛生産の振興に取り組む基本的なお考えを、この際締めくくりとして御披瀝いただければありがたいと思います。
  16. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 肉用牛生産は、農業総生産の拡大や最も大事な地域農業の発展、国民食生活の向上の面で、さらにさらに重要な役割を果たしてきておるわけでございます。土地利用型農業の基軸として位置づけることは当然であり、国際化にも対応し得る肉用牛生産の確立を目指して振興、合理化を総合的に推進してまいる、引き続き推進してまいる、こういう決意で臨んでおる次第でございます。
  17. 柳沢伯夫

    柳沢委員 ありがとうございました。質問を終わります。
  18. 菊池福治郎

    菊池委員長 鈴木宗男君。
  19. 鈴木宗男

    ○鈴木(宗)委員 大臣法案の質疑に入る前に、北海道のことで恐縮なのですけれども、十月二十九日未明から三十日にかけての低気圧による被害が発生したのです。今、私の手元には、北海道の根室、網走、宗谷、後志の各支庁管内の十九市町村、漁船の被害が、破損、流失、沈没が二百十五隻、漁港の防波堤等の被害が四港、あるいは荷さばき所、倉庫、定置網、定置網は太平洋岸、オホーツク海岸、根こそぎ持っていかれたということです。まだ沖に出られなくて、調査も進んでいないと聞いておるのですけれども、漁民は大変な痛手をこうむっておるのです。  水産庁あるいは大臣のところには、どういう被害状況が報告され、またどういう対策を講じるのか、ちょっと先に答弁をいただきたいと思います。
  20. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 おっしゃいますように、先週末の発達した低気圧によって、北海道東部を中心に水産関係の被害が発生しております。  北海道庁からの報告によりますと、現在判明しておる被害は二十市町村に及び、漁船の破損等約二百隻、漁港四港、荷さばき所等共同利用施設約四十件のほか、定置網、養殖施設についても被害があったと聞いております。  今後鋭意調査を進め、被害状況を早急に把握した上、被害の実情に応じ、漁船、漁具等の被害については漁船損害等補償制度等により、また漁港施設等については災害復旧関係法に基づき復旧を行う等、適切に対処をしてまいりたいと考えております。早急に進めたいと思っております。
  21. 鈴木宗男

    ○鈴木(宗)委員 まだ数字が出ておりませんけれども、この被害額ですと、当然天災融資法は適用になるのではないかと私は考えているのですけれども、被害額がわかり次第天災融資法の発動等を速やかにやってもらいたい、こう思いますけれども、いかがでしょうか。
  22. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 おっしゃるとおりでございます。
  23. 鈴木宗男

    ○鈴木(宗)委員 大臣、突然の質問で恐縮ですけれども、十年前の昭和五十三年の九月ごろ、大臣はどこにおったか御記憶でしょうか、九月の六、七、八。——実は大臣、十年前の九月の六、七、八というのは、当時の中川大臣アメリカのストラウス通商代表との第一回目の牛肉交渉があったのです。そのとき大臣は、自由民主党を代表して中川大臣に随行して、日米交渉における大変困難なときに応援団の役をやってくれました。私は、今大臣の顔を見ながらちょうど十年前をちらっと思い浮かべて、この十年の歳月といいますか時の流れを感じつつも、ああ、あのとき大臣は大変よくやってくれたな、当時は佐藤衆議院議員でありますけれども、大変な協力をしてくれたなという感じがしてならぬわけであります。  そして、ことしの六月の大臣とヤイター通商代表との交渉を、私はたまたま竹下総理に同行してサミットに行っておったものですから、日本での交渉のニュースをアメリカでテレビを見ながら眺めておったのですけれども、ああ、苦労しておるなということを感じながら、十年前とオーバーラップさせながら非常に感慨深いものを感じたのであります。  大臣、私は、今回の日米牛肉交渉あるいは日豪の交渉ですけれども大臣は精いっぱいやってくれたと率直に評価をするものであります。そして、ぎりぎりの選択もなされたということも私は考えているわけでありますけれども大臣、今畜産農家が一番心配しておるのは、三年後自由化になる、枠もふえてきた、果たしてこのまま畜産をやっていっていいかどうか、将来、あしたがあるのかということなのです。私は、心配ないなら心配ない、懸念があるなら懸念がある、この辺を明確にしてもらいたい、こう思います。
  24. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 五十三年当時を今思い出させられたわけでございますけれども、当時の大臣秘書官と私どもが目くじら立てて中川農林水産大臣の交渉を見ながら、お互い大変な苦労をしたことを思い出すわけでございます。  ケネディ・ラウンド以来二十年に及ぶと言いますけれども、実際の閣僚交渉、生々しく国際的に報道されたのがあのときでございました。それからもう十一年余たっておるわけでございますけれども、とにかく結論を出さなければならない時期に遭遇をいたしまして、私自身、大変な苦渋に満ちた決断をせざるを得なかった。御不満はございましょうけれども、しかし国際化の進む中で、それはそれとしても、内政として国内的に肉牛生産というものが絶対に存立し得るようにしなければならない。一部では、やがて日本牛肉は輸出までもしようという意欲のある声も漏れ聞いておりますけれども、そういう物の考え方で、前向きに自信を持って肉牛生産者が努力を続ける、そしてそれで生計を営む、地域農業が活性化していくというように、これから自由化をするまでの間、精力的にひとつ努力をしてまいる覚悟でございます。  だめだだめだという声もあると思いますけれども、肉牛生産者が満足する状況が必ず来る、今日汗をかいた分は必ず将来が展望できる、私自身そ う思い込んでおるわけでございますので、この上ともの御支援をお願い申し上げたいと思います。
  25. 鈴木宗男

    ○鈴木(宗)委員 今、大臣から将来があるという話を聞いて私も安心しておりますけれども、この六月に自由化が決まって、短期間でこの法案を出したこと自体、大変評価されることであるし、農家安心感を持たせるものだと私は思っておるのですね。そういった意味では、これからも畜産対策、それとあわせて酪農対策もやっていってもらいたい、私はこう思うのです。特に、大臣御案内のとおり、今我が国牛肉生産量の七割弱は乳用種の牛肉でありますから、この自由化イコール酪農家に対する影響も非常に大きいわけですね。この点も十分配慮してもらいたい、私はこう思っておるのです。  特に、今回ぬれ子の生産者補給金が、ぬれ子は直接対象にならないというようなことも書いてありますけれども、やはり酪農経営をやっていく場合これはなおざりにされては困る、私はこう思っておるのですね。ですから、牛肉自由化イコール酪農対策もやる、特に酪農の場合は負債整理が一番の眼目だという点で、私は負債整理に大変力を入れているわけなんですけれども、この対策等についてもちょっとお聞かせをいただきたい、こう思います。
  26. 京谷昭夫

    京谷政府委員 酪農が我が国におきます肉用牛生産に大変大きな役割を果たしていることは、先生御指摘のとおりでございます。今回の牛肉自由化という方針が、そういった意味で酪農経営にいろいろな形での影響を及ぼすということで、私どももそれなりの対策を講じていかなければいけないと思っております。  今回御提案申し上げておりますこの制度の中で、肉用牛生産のもとになります肉用子牛価格安定制度、酪農部門から提供されます乳用種の子牛を含めて制度考えておるわけでございますが、当面の緊急対策といたしまして、実は、今回法律上の制度として確定をする子牛価格安定制度の前提になっております現行の子牛価格安定制度の中で諸般の改善をまず進めたい。  酪農に関係する問題としては、一つには、肥育のもとになる雌牛についても価格補てん対象にしていく、さらにまた補てんの基準になります保証基準価格水準についても、現行制度の中でその水準をアップしてはどうかというような改善措置を現在検討しております。  それからまた、素畜の生産、哺育、育成を酪農固有の生産活動と一体的に行うような乳肉複合経営というふうな形態を推進するための助成措置を、緊急対策の一環として具体化してはどうかというふうに考えておるわけでございます。  また、負債問題については、酪農を含む大家畜経営の負債問題は大変大きな問題でございますし、従来からもいろいろな手当てを講じてきたわけでございますが、御承知のとおり六十三年度からの新規事業として、大家畜経営体質強化資金というふうなものをことしから五年間にわたって実行していこうということで予定をしておったわけでございますが、今回の牛肉自由化方針決定に関連をいたしました緊急対策としましてこの当初構想につきまして資金枠を拡充するとか、あるいはまた貸付対象を若干緩和するというふうなことを予定いたしまして、現在検討を進めておるところでございます。
  27. 鈴木宗男

    ○鈴木(宗)委員 今局長さんが言われた大家畜経営体質強化資金は、六十三年度の乳価の決定の際に千百億の枠をとりました。自由化決定したということでさらに四百億の枠をとって、千五百億の枠で動くのですけれども、これの運用の仕方は私は大事だと思うのです。非常にいい制度をつくった、金利の補てんもしますよと農家が喜ぶけれども、実際にどうやって使われているかというと、なかなか使いづらい制度になっていますので、この点は特に都道府県等に弾力的な運用を図るようにきちっとした行政指導もしてもらいたい、こう私は思うのですけれども、いかがでしょうか。
  28. 京谷昭夫

    京谷政府委員 御指摘の点を踏まえまして、関係する都道府県あるいは農協関係者等に指導をしてまいりたいというふうに考えます。
  29. 鈴木宗男

    ○鈴木(宗)委員 大臣、今回の肉用子牛生産安定等特別措置法案を読みますと、第一条の「目的」に、「この法律は、牛肉輸入に係る事情の」云々から始まりまして「当分の間」という文言があるのですね。この当分の間の特別措置というのはどのくらいの期間を指すのか。私は、この当分の間というのはいわゆる肉用牛生産コストの低減が進んだ、この法案がなくてもやっていけるんだというぐらいの、輸入に十分対抗できる、その基盤整備ができる、それまでが当分の間という認識を持っておるのですけれども、それでよろしいのでしょうか。
  30. 京谷昭夫

    京谷政府委員 今回の特別措置法の中で肉用子牛価格安定制度を六十五年度から発足させ、またそれらに要する経費の財源として、牛肉等に係る関税収入相当額を特定財源として振り向けるという措置を六十六年から発足させるということで、特別措置を講じようとしておるわけでございます。  この特別措置の実行期間について「当分の間」という表現で法文を決めておりますが、その期間について、私どもは具体的な期間を現在考えておるわけではございません。趣旨としましては先生御指摘のように、国内肉用牛生産が安定した状態でこの特別措置が必要でないという状況ができるまでの間というふうに考えておりまして、それがいつであるかということについては、これからの生産合理化進展状況なりあるいは内外価格差の状況等を踏まえまして、慎重に判断していくべきことであろうかというふうに考えます。
  31. 鈴木宗男

    ○鈴木(宗)委員 そうしますと、足腰の強いいわゆる安定した基盤整備ができるまで、それは当分の間という理解をしていいということですね。
  32. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 そういう願望を強く持っておるということを申し上げておきたいと思います。
  33. 鈴木宗男

    ○鈴木(宗)委員 ありがとうございました。  次に、牛肉等に係る関税の特定財源の問題でありますけれども、今国の財政事情も昭和五十六年以来シーリングという枠があります。農林予算も、残念ながらそのシーリングの枠に入っているわけです。そんなわけで、今関税は一般会計に組み入れられているのですけれども、この関税収入が一般財源として吸い上げられてしまって、肉用子牛対策費が削られるのではないかという心配も一部持っている人もいるのです。安定した財源として入ってくるのかどうかというような懸念もあるわけですけれども、十三条「肉用子牛対策費の財源」という文言を読んでみますと、何か私はすっきりせぬ面もあるものですから、これは間違いなく財源としてはきちっとした枠を確保できるのだという答えを農民に知らしめるべきではないかと私は思うのですけれども、いかがでしょうか。
  34. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 関税収入が肉用子牛対策に必要な経費を上回ることも考えられるわけでございまして、このような場合には、その不用額を後年度において肉用子牛対策に充てることができるように措置をしておりますから、そういう意味でひとつ御心配なく。
  35. 鈴木宗男

    ○鈴木(宗)委員 上回るのはいいのです。根っこのベースから上回るのはいいのですけれども、根っこのベースがきちっと確保できるかどうかというのがちょっと心配としてあるわけです。その根っこのベースは、特定財源は、国の財政事情が何であろうとも心配ないんだということだけは明確にしてもらいたいのですけれども
  36. 京谷昭夫

    京谷政府委員 今回の特定化の対象になるものにつきましては、法文にも明記してありますが、牛肉及び特定の牛肉調製品に係る関税収入額であります。この額は予算、決算の上で明確に把握されておりますので、先生御指摘のような御心配はないと思います。
  37. 鈴木宗男

    ○鈴木(宗)委員 ありがとうございます。  そこで、畜産振興事業団が先般来いろいろ批判もあったり、談合問題など新聞ざたになっておりますけれども、この間畜産振興事業団が果たして きた役割は極めて大きかったし、実際に生産農家が一番恩恵をこうむっているのです。そういった意味努力してきた、やることもやってきたにもかかわらず、余り一般的に評価されないような最近のマスコミ等の報道があるわけです。その点大臣、事業団の果たしてきた役割は、酪農、畜産対策上極めて意義があったし、これからまた新たな任務があるわけですが、先般来新聞等で談合問題云々の話がありましたけれども、あれはもう決着はついたのですか。
  38. 京谷昭夫

    京谷政府委員 畜産振興事業団がこれまでに果たしてきた役割について、先生からそれなりに御評価をいただいたわけでございますが、その業務の一環として行っております輸入牛肉の売買業務につきまして、御指摘のような一部の新聞報道があったわけでございます。八月の末だったかと思いますが、報道が出ました直後、大臣から御指示をいただきまして、真偽の調査を行うとか、関係商社に対する注意喚起を直ちに行いました。  調査結果につきましては、事業団内部において過去の入札記録等の分析を中心にして調査が行われまして、去る十月十九日に報告を聴取しております。それによりますと、過去の入札記録等を中心にした分析結果からすると、報道されておるような談合があったということは考えられないという一応の結論は私ども聞いております。  また、その報告の際に、あわせまして現在予定をされております六十六年度以降は輸入枠の撤廃がされるわけでございますが、これまでの間の事業団業務がより一層適正に行われますように所要の改善措置、例えば今回の日米日豪合意で決められました新しい売買方式、SBS方式と呼んでおりますが、そういうものを定着化していく、それからまた、既存の入札方式についても輸入商社の競争条件を強化をするというふうな形での改善措置をとりたい、こういう報告を聞いております。  私どもとしては、これらの事業団の報告を一応了解をしまして、改善措置の的確な実行に私どもとしても指導監督してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  39. 鈴木宗男

    ○鈴木(宗)委員 今私は、間違った判断がすぐ横行してしまったり、あるいは一方的に悪いんだ、悪いという先入観みたいなもので物が見られる傾向がありますので、こういったことは、いいものはいい、悪いものは悪いということをきちっと明確にする、そしてこういうこともきちっとやってきているんだという実績等も速やかに明らかにした方が、事業団の立場も理解されるであろうし、また評価もされるであろうし、また行政官庁である農林省の立場もより理解されるのではないか、こう思いますので、そういったことは胸を張って公にすべきではないか、こう私は思っております。  最後に、大臣、とにかく私はこの法案を速やかに成立させてもらいたいのが一つと、やはりあくまでも畜産農家並びに酪農家がやっていけるという対策だけはこれからも随時とっていっていただきたい。特に私は、酪農家の負債整理の問題、もうすぐ六十四年度の予算の時期も来ますけれども、そういった予算時期にも新しい融資制度等も講じてもらいたいということをお願いして、私の質問を終えます。
  40. 菊池福治郎

    菊池委員長 月原茂皓君。
  41. 月原茂皓

    ○月原委員 非常に短い時間でございますので、簡潔にお願いしたいと思います。  農林水産大臣が二度訪米されてぎりぎりの選択をされた、そしてその決着を、国内生産者等が安心するような非常に立派な法案を速やかに提出されたことに対して、深く敬意を表するものであります。  そこで、我が自由民主党の同志から質問がありましたが、その他のことについて簡単に御質問したいと思います。今の関税の問題でありますが、まず、この関税の果たす役割というものは、国内肉用牛を防備するとともに、その財源がいろいろ流通あるいは生産合理化に非常に大きな役割を果たすわけであります。そういう観点からいいまして、問題はウルグアイ・ラウンド後の、この五〇%をどのようにするかという問題であろうと思います。そういう点で、ウルグアイ・ラウンドに対する決意が一つ、そして、もしその後にこの関税によって十分確保できない場合に、今鈴木議員からもありましたが、「当分の間」という問題に絡むわけでございますが、農水省としてはどのような財源を考えておるというか、どういう決意でおるかということをお答え願いたいと思います。
  42. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 先般の日米日豪の合意においては、牛肉輸入割り当て制度撤廃後三年間の期間の関税水準について具体的な約束をしておりますが、四年目以降につきましては、五〇%水準を上限としてウルグアイ・ラウンドにおける関税の交渉において論議をすることといたしております。ガットのウルグアイ・ラウンドにおける関税の交渉の進め方については、まだ具体的な話し合いが進展しておりませんが、いずれにしましてもこの交渉におきましては、御指摘を踏まえ、我が国牛肉生産存立を守るという基本的な立場に立って最大限の努力をしてまいりたい、こう考えております。
  43. 月原茂皓

    ○月原委員 今の力強い御発言で、多くの方々も納得したと思います。  繰り返しますが、そのところに今のお話のように強く主張していただくとともに、万一の場合には国内措置については十分お願いしたいと思います。  続きまして保証基準価格の問題があります。これは先般参考人の御意見等もございましたが、再生産ということだけではなくて、プラス意欲を確保するという観点から考えてもらいたい、端的に言えば、現行水準以上確保してもらいたいというのが多くの方々の意見でありました。合理化目標価格との関連で、いま少し議論されたとは思いますが、この点についての算定方式、その水準についてひとつ見通しを明確にお話し願えたら幸いと思います。
  44. 京谷昭夫

    京谷政府委員 今回御提案申し上げております子牛生産安定制度の中で、子牛についての保証基準価格が決められることになるわけでございますが、その決め方については、法文上は「肉用子牛生産条件及び需給事情その他の経済事情を考慮し、肉用子牛の再生産を確保することを旨として、」定めるということになっておるわけでございます。また、それをそのような趣旨で決める際に、酪肉基本方針に則しまして、肉用牛生産の近代化を促進することになるように配慮もしていくべきであるということが明らかにされておるわけでございます。さすれば、それを具体的に算定に当たってどのような方式でやっていくのかということにつきまして、私ども、現時点では固定的な方式をまだ念頭に置いておりません。検討していく必要があると思いますが、制度が発足をいたします六十五年度までに、畜産振興審議会等の意見も聞きながら少し検討を進めて、適切な保証基準価格というものが決められるようにしてまいりたいということを考えておるわけでございます。  したがいまして、具体的な水準はどの辺のことを考えているのだということも大変お答えしにくいわけでごさいますけれどもいろいろな御論議を考えますと、やはり現在の肉用子牛価格安定制度で決めております保証基準価格、これは和牛につきましては都道府県別になっておりますが、乳用牛種については全国一本でございます。それらの全国レベルでの平均値というものが、やはり一つの目安になっていくのではないかなというふうに考えておるところでございます。
  45. 月原茂皓

    ○月原委員 今のお話で十分適切な価格にするということを、そして現行水準国内的な現在の平均というものを考えながら対処するというお話でございましたが、多くの生産者にとってはこれが将来の大きな柱となる、目安になるわけでございますから明確な形で速やかにお願いしたい、このように思うわけであります。  次に、今回のことによりまして、輸入される肉を初めとして、要するに日本の国を支える多くの消費者の方々が、これはどういうふうになってい くのだろうか、生産者の面、そういうことを通じてのことは十分わかるけれども、具体的に現在消費するまでの過程、要するに流通部門、それからさかのぼれば食肉の処理、加工、こういう点についての、必ずしもみんながすっきりした感じは持っていない点があると思うのです。これから大いに努力されなければならないと思いますが、そのことについてどういう考えを持たれておるか、お示し願いたいと思います。
  46. 京谷昭夫

    京谷政府委員 牛肉国内におきます供給、今、輸入牛肉と国産牛肉、両方が混然一体となって供給をしておるわけでございます。これが末端の消費者価格として結果的に比較的高いレベルがございますので、そういった状態についていろいろな御批判もあるわけでございますが、私ども一つには、消費者の皆さんが御納得いただけるような価格で提供できるような条件整備をしていくことが大変重要である、そのために、国内物につきましても生産コストを下げて御納得いただけるような価格レベルで提供できる状態、あるいはまた、輸入物、国内物を通じまして流通合理化を進めて、円滑かつ適正な価格形成の上で牛肉が提供される状態をつくり出すということで、諸般の対策を進めておるわけでございます。  その中にありまして、国産牛肉につきましては、日本国内の伝統的な牛肉嗜好に応じた生産力といいますか生産条件を持っておるわけでございますので、なかなか外国ではまねのできない国産牛肉というものも一定部分あるわけでございまして、そういった状況について消費者の皆さん方の御理解も得ながら、全体として国内生産合理化をされながら一定生産供給を担っていく、その上で足らざる部分を輸入がカバーをしていく。あるいはまた、輸入物固有のマーケットというものもできつつあるわけでございますが、そういった面についてはまた流通合理化を図りながら、全体としての需給の安定に役立てていくという状況を各般にわたって進めていく必要があるのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  47. 月原茂皓

    ○月原委員 今のことでわかりました。先般の参考人等の御意見もありましたが、参考人の話では、すみ分けという言葉も使っておりました。今、畜産局長からのお話で、十分消費者のために取り組んでいるということがわかりました。  最後に、大臣にお尋ねしたいのですが、私は、今度の議論で、基本的な哲学と言ったら偉そうに聞こえますが、要するに、国内で今まで七〇%の肉を生産しておった、今、この肉の生産者を保護するか、あるいは消費者かというもう一つもっと大きな背景として、要するに安定的に供給されるということ、そして、海外において非常に不安定な状況が出た場合に価格が非常に揺れてくる、そういうことに対しても、国内一定生産を確保しておくということは大切なこと。これは何も肉だけの問題ではなく、農業全体についての哲学の問題だと思いますが、その点、今度のもののそういうところの位置づけと申しますか、それを大臣から最後に御発言願ったら幸いと思います。
  48. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 私自身考え方は、今の生産者は昔の生産者と違う、生産者であると同時に消費者であるという部分が非常に大きくなってきておるという考え方に立って、生産者に対する理解も仰がなければならぬが、またそれと同じように、消費者にも理解を仰がなければならない、こう思っておるわけでございます。特に、食料については価格の乱高下があってはならない、こういうことについて私どもは真剣でなければならない、こう考えておりまして、あらゆる措置をとる場合にそのことを頭に置かなければならない、そうでなければ食糧政策というものは前進しないのだ、かような考え方努力をしておるところでございます。
  49. 月原茂皓

    ○月原委員 今の大臣お話で十分わかりました。今、非常に具体的な問題が大きく出てきているわけですが、これからも国民に対して説明するときには、その哲学というものはみんなわかっておると思いながらも繰り返し述べていただきたい、このように思うわけであります。  この立派な二法が速やかに成立し、そしてこれをもとに国民安心するようにしていただきたい、このことを最後に要望しまして、質問を終わります。ありがとうございました。
  50. 菊池福治郎

  51. 串原義直

    ○串原委員 牛肉・かんきつの日米交渉は、自由化という我が国農業にとって最悪の結果で終わりました。大臣は、交渉前に、自由化は困難であると再三、再四、この委員会においても答弁をされました。私は、この大臣のお言葉を取り上げて質問をいたしましたところ、大臣は、困難ということは自由化できないということであります、明確にお答えになった。にもかかわらず、結局は、結論として自由化という結果が出た。我が国農民に対する裏切り行為であると言っても過言でないと私は思っているのであります。  今回の牛肉・オレンジ交渉につきまして、政府は反省すべき点が幾つかあるのではないかと思う。その反省点につきまして、この際、大臣から明らかにしてもらいたい。
  52. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 不敏にして反省することのみ多い私でございます。しかし、我が国食糧政策推進の責任者といたしまして、この国際化の中でどのように対応していく、そして交渉を進めていく、そして、その結果については、やはり国内対策というものもあわせ考えながら牛肉・かんきつ農業の存立を守る、こういうことを重ねて申し上げてきたところでございます。  その結果について特に御不満があるということを私自身承知をいたしておりますし、また反省もいたしております。おりますが、しかし国内政策で補ったそのことについても、また理解も相当仰げる結果になっておる、こういうことでございまして、国際化というものがいかに難しいものであるかという反省にも加え、さらに国内対策というものは、それ以上にやはり真剣でなければならぬなとつくづく思っておるところでございまして、この上とものまた御示唆、御協力をお願い申し上げたいと思います。
  53. 串原義直

    ○串原委員 この畜産法案に関連をした国内対策は後ほど触れることにいたしますが、牛肉・オレンジの日米交渉と関連をいたしまして、今、米が重大なときに来ているわけでございます。関連をして、その点について私は触れさせていただきたいのであります。  牛肉・オレンジの自由化が決着すれば、アメリカの次の標的は米である、それも時を経ずして強く求めてくるであろう、こういうふうに私はときどきの機会に強調してきた者の一人であります。しかし、どうもそのようにこのところ運んできたようであります。  私たち、農林水産委員会のメンバーが昨年十一月訪米いたしまして懇談をいたしました際、アメリカ政府幹部、議員らは、牛肉・オレンジの次は米問題であることをほのめかしておりました。この席にもその同僚議員が幾人かいらっしゃいます。ある議員は、米につきましては日本市場の五%のアクセスが得られればよいのであります、こういう発言をしたほどでございます。もちろん、私たちは一粒も外国から買う気はありません、こういうふうに強調してまいりました。  しかるところ、つい先日、アメリカより、当面三十万トンを輸出をしたい、日本には買ってもらいたい、こういうことを求めてまいりました。この要求も、きのうきょうのアメリカ方針ではなくて、数年前、いやそれ以前からの長期にわたる食糧戦略である、私はこういう理解を持っております。したがって、RMAの三〇一条提訴も、その一環と私は見ているのであります。  そのRMAの三〇一条提訴に対する米国USTR決定が、日本時間の十月二十九日に発表となりました。結果は却下でございますけれども、その発表内容をよく検討いたしますと、むしろウルグアイ・ラウンドでの扱いに重荷を負わされたということであります。  表現を変えますならば、日本に米輸入を要求をして拒否されるならば、日本の輸出品に制裁措置 を科していくというアメリカの従来の戦略、枠組み、これは全く同じでありまして、どこで日本に手を挙げさせるか、白旗を上げさせるか、こういう手段の違いだけではないか。したがって、形式的には却下であるけれども、どう判断をしても私は内容的には受諾というふうに受け取らざるを得ない。そこで、今回のUSTR決定大臣はどう受けとめていらっしゃいますか、お尋ねいたします。
  54. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 私は、去る土曜日の私の談話、これをここで時間をかけて繰り返そうとは思っておりません。しかし、私自身USTRのとった条件づき、いわゆる条件づき、これは甚だ遺憾である、こう思っております。牛肉が終われば米だ、だから注意しなきゃならぬぞという串原議員訪米後の冊子も私ちょうだいいたしまして、読ませていただきました。また、牛肉・かんきつが終われば米に来るということについての、前々からの米国の国家戦略があるのではないかという御認識も今承りました。一九七四年、キッシンジャー時代において途上国における生産性向上、これを言われておったのも、いろいろな方々が言っておられた中にも、キッシンジャーさんの考え方もそこにあったというふうにも私は記憶をいたしております。  そういういろいろな経過があるわけでございますけれども、何としても米は、私は自給する方針を変えてはいけない、こう思っておりますし、食管の根幹は堅持しなければならない、こう思っておるわけでございます。  何か、今アメリカ大統領選挙にこのことがいろいろ取りざたされておる、米の問題にひっかけていろいろあるということが、一部報道によってもちろん私の目にもとまり、耳にも入っております。そういう時期に、刺激的な言葉は私は使いたくございませんけれども、私は、将来とも友好国である日米間において報復だとか何だというようなことに、あるいは力ずくであるとか覇権主義を思わせるような言葉があったとするならば、それは甚だ遺憾である、このこともつけ加えておかなければなりません。整々たる論議を続けていかなければならぬ、かように思っております。
  55. 串原義直

    ○串原委員 大臣は、このUSTR決定を受けまして大臣談話を出された、今それを繰り返す時間がないというのでお話は詳しくはなかったけれども、私はその談話を手元にして、それに基づいて一、二伺いたいのであります。  大臣談話の二項にこう書いてあります。これは大事なところですから、きちっとこの際確認をしておきたい。二項に、「現在進行中のウルグアイ・ラウンドの場で、参加する各国がそれぞれの抱える困難な問題及び制度について議論を行う段階になれば、我が国としても米の問題を含むあらゆる農業問題を討議するにやぶさかでないということでありますが、」というのは、つまりすべての農業問題を取り上げることを反対はしないけれども、その中に、米を輸入しない、輸入をする、日本の米の重要性等々についてそれは触れることもあるでしょう、すべての農業問題に触れることはあるでしょう。ではあるが、大臣のこの言葉に含まれておる大事な点は、ミニマムアクセスも認められない、日本に対する米の参入オーケーなどということは少しも考えていない、含まれていない、つまり、そのことはノーということである、こういうことでなければならないと思うのでございますが、いかがですか。
  56. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 私が一粒も入れないと言っておるということがあったから、RMA提訴があったんだという言いがかりを一部報道しておることについても、私は承知をいたしております。しかし私は、現状を考えますと、一粒もということを私が言えるはずはないわけであります。というのは、現実の問題として沖縄の泡盛の原料用米はタイから輸入をいたしております。国貿品目としての米でございますけれども、毎年一万二千トン程度輸入をしております。そういう中にあって私が一粒もと言えるわけはないのであります。しかし、米を自給する方針には変わりない、これは竹下総理も私もしばしば答弁をいたしておりますので、どうかそれをそのまま受けとめていただきたい、こう思っておるわけでございます。  ウルグアイ・ラウンドにおいて、各国が抱える困難な問題をとにかくテーブルの上に出し合ってそしていろいろ議論しようというのは、去年の四月以降でございますか、既に我が国が先様に明らかにいたしておるところでございまして、その線を逸脱する考え方はございません。制度にも及んでいろいろ議論しよう。ではその際、一体おまえはどうなんだ、こう言われるならば、私は、私が今まで申し上げてきたことを主張し続ける、主張し貫き通すということを申し上げているわけでございまして、これもまたそのまま受けとめていただければありがたい、こう思っておるわけでございます。
  57. 串原義直

    ○串原委員 私は、実は今の大臣が答弁になった沖縄の問題は承知をいたしています。その上で、私はあえてこの問題を取り上げているわけでございます。  そこで、いま一度伺いますが、従来主張し続けてきた態度をこれからも堅持していく、こういうふうに大臣は答弁された。そのことは、つまり米は自由化はいたしません、我が国は完全自給を堅持してまいります、これは国会決議にあるとおりでございますが、このことを毅然たる態度で持ち続けてまいります、こういう理解でよろしゅうございますね。
  58. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 私は、実は文学者ではございませんので、完全という字義についてここで解説をする気はないわけでございますけれども、先ほど申し上げました沖縄の例を挙げると、それも含めて完全と言えるかどうか、字義の点からして内心ちょっと疑問の点もあります。しかし、自給する方針には変わりない、その主張を貫き通したい、こういうことで決意をしながらしばしば答弁を申し上げておりますので、それをそのまま受けとめていただきたい。もとより、この委員会における御論議あるいは国会決議、これは何よりも増して重要なことでございますから、それをそんたくする点においてはこれは忘れてはならないことである、私はこう思っておるわけでございます。
  59. 串原義直

    ○串原委員 私は、大臣とここで文学論議をやるつもりは決してありません。しかし、重要な点でありますからあえて発言をさせていただいているのでありますが、先ほど申し上げましたように私は沖縄の問題は承知をしているつもりであります。そのことをひとつ横に置きますならば、国会決議の文言に使われているところでありますから、我が国としては完全自給を堅持してまいる方針であります、こういう態度は堅持できるでございましょう。いかがですか。
  60. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 先ほども申し上げましたように国会の決議は極めて重要でございますから、これをそんたくするのは当然のことでございます。その意に沿うということを、私も政府を代表してあの決議をいただいたときに所信を申し述べておるとおりでございます。
  61. 串原義直

    ○串原委員 国会では二度ですか、この決議をしているところでありますから、今回もやりましたが、その前の国会決議では、まさに完全自給という文言が含まれていることを大臣承知でございましょうから、そのことを踏まえてやってまいります、こういうお答えを私はこの際きちっと受けとめさせていただきたいというふうに考えております。  いま一つ大臣談話の中の第二項の後段にこうあります。「今回のUSTR決定が、このような農業問題の全体的な議論進展と切り離して我が国にのみ一定対応条件付けるものであるとすれば、これに応ずることは困難であります。」私も、まさに大事な点を大臣は強調されておられる、こういうふうに受けとめました。したがって、この点も重要な点でありますから、この際伺っておきたいのでありますが、日本の米だけ、この言葉は適当かどうかわかりませんが、突出して対応しろというUSTRの要請は受けることができません、こういうことであると受けとめてよろ しゅうございますね。
  62. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 この取り扱いについては、既に相当前から取り扱いについての合意を日米間で見ておるわけでございまして、日米間、二国間では行わない、多国間協議の場であるニューラウンドの場において議論をしよう、こういうことを言っておるわけでございますから、それ以前に二国間で話し合うという気持ちは私にはございません。
  63. 串原義直

    ○串原委員 つまり、この一カ月ほどの間に一定の方向を日本としては表明しなさい、こういうふうにアメリカは言っているわけであります。したがって、米の問題だけを突出させてこの期間内に対応するということはとてもできません、こういうことでしょう。いかがですか。
  64. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 そういうことでございます。
  65. 串原義直

    ○串原委員 この際、この点も重要ですから、食糧庁長官に伺います。  実は、十一月一日の農業新聞もこの問題を大きく取り上げました。「コメにも輸出宣伝費 日本のPR業界も触手」こういう見出しで出ておりました。私の手元にこれに関連するジェトロの資料がございますが、この農業新聞も指摘しておりますように、時間がありませんから詳細な解説はいたしかねますけれどもアメリカの食糧輸出にかかわる、つまり食料輸出奨励補助金ですね、各種の補助金の中にコメ市場開拓協議会という団体があるようでございますが、これに対して対象品目コメと明記をして三百七十万ドル、日本のお金にいたしますと四億八千万円くらいになりましょうか、大変な金が計上されているわけであります。そして、補助金が決定した経緯の中に、とりあえずこの補助金の額は昨年度と同額の支出を決定したもので、残っている二億一千五百万ドルについては年度途中で追加決定がなされるものと見られる、こう書いてあります。お聞きいたしますと、最終的には米に対する、アメリカのコメ市場開拓協議会、これに対する補助金は十億円になるのではないかと伝えられているのであります。  実は私は、これはなかなか放置できない問題だ。そしてこの金は、使途はいかようでもよろしい、協議会の考え方でいかようでもよろしいということであるらしい。それにしても、我が国の米消費の拡大対策費、スズメの涙みたいなことを言っては悪いけれども、その対策費と比べますとまさに十億円、驚くべき数字だと私は思うのであります。そして、考えなければいけませんことは、米が足らなくて困っている国に、そんなに宣伝費は要りませんね。これは当たり前の話、常識的な話。どうやって米を輸出するかということになりますと、膨大な宣伝費を使ってねらいをつけようとしているのは、少なくともその中に日本が加わっていると私は理解するのであります。この動きを私は軽視してはならぬ。そして、聞くところによりますと、日本のPR業界もこのことに非常に強い関心をお持ちになって、連絡を既におとりになっているやにも聞く。これは大変なことだと思う。これはどう見ますか。そして、この動きに対してどう対応しようとお考えになっていらっしゃいますか。
  66. 甕滋

    ○甕政府委員 ただいまお話のございました報道は、私も承知しております。ただ、事実関係、金額等につきまして私どもが確認をしておるものではございません。ただ、御指摘ございましたように、アメリカが米についてほかの産品と同様に、海外に対します販路拡大のための助成制度を持っていることは事実でございます。米についても、相当額がそれに充てられる、計上されているというふうに聞いております。  状況を申しますと、世界の米市場はせいぜい一千万トン程度の、比較的農産物の中では狭い市場に対しまして、アメリカ、それから主体がタイ、こういった輸出国における競争が結構激しい状況にございまして、韓国その他東南アジア各国が自給体制をとってまいります中でその輸出先を開拓しよう、こういう努力を行っているという状況がございます。その中で日本アメリカとの関係について申しますと、先ほど来御質問もあり、大臣からお答え申し上げておりますような日米間の関係というのがごさいまして、日本に対します直接の販売促進費が使われる、あるいは使われようとしているという状況とは私は承知をしておりません。  ただ、おっしゃいますように、そういった中で日本に対する市場開放を意図して、RMA、民間団体でありますけれども、これが提訴まで行っているという実態がございますので、今後のアメリカ側動き等につきましては、私どもも十分注視をしてまいらなければならないと考えておるところでございます。
  67. 串原義直

    ○串原委員 これ、私の手元にありますのは、昭和六十三年十月二十四日、号数は千七百四号、ジェトロの資料であります。その中に、今私が申し上げてまいりました実施団体コメ市場開拓協議会、対象品目コメ、助成額は三百七十万ドルということが明記されていて、先ほど申し上げますように、第二次配分も後刻決まると言われておる。聞くところによると、合計では十億円にこの金が上るのではないかということを伝えられているということでございます。  そこで、私は、日本のPR業界に連絡をとって、このコメ市場開拓協議会の補助金と関連をしながらアメリカの米消費拡大宣伝をするという動きがもしあるとするならば、それは不都合でございます、現在の食管法その他の行政的我が国方針から見て不都合でございます、こういうことをあなたの立場できちっと対応するということは考えませんか。いかがです。
  68. 甕滋

    ○甕政府委員 御指摘のような状況と申しますか、事実関係が果たしてどうなっているのか、私自身承知しておりませんので、その辺は適宜調べてみた上で考えたいと思います。
  69. 串原義直

    ○串原委員 いま一度伺っておきます。確認をしないとわからないでございましょうが、確認をされて調査をしてそういう事実がわかった場合には、きちっとしたそれは困るという対応をいたしますかということを聞いているのであります。いかがですか。
  70. 甕滋

    ○甕政府委員 ちょっと事実関係が確認されません。その仮定の上に立ちまして、どうするこうするということを申し上げるのは適切でないかと思いますけれども状況といたしますと、そういう日本市場を今後どうするかということが政府間でまだ話し合いの途上にある、我が方としてはそういった方針をとっていないということでございますから、御指摘のような態度で、私どもが事実関係を明らかにした上においても対応することになるであろうということを申し上げておきたいと思います。
  71. 串原義直

    ○串原委員 長官、政府間ではそのとおりでございましょう。ですけれども、これは民間団体、コメ市場開拓協議会という民間団体ですね。でありますから、アメリカの民間団体と、日本のPR業界というふうに私は言いましたけれども、民間団体とが連絡をとり合ってアメリカの米消費拡大宣伝をするような動きがもし具体的に出てきたことがわかったならば、これは困りますよという態度で対応していくべきでございます、いかがですか、こう言っているのであります。もう一度確認いたします。
  72. 甕滋

    ○甕政府委員 私ども方針は、先ほど来はっきり申し上げているところでございますので、仮にそういった事態がはっきりしてまいりました場合は、きちんと対応をしたいと思っております。
  73. 串原義直

    ○串原委員 大臣、これも大事なところですからこの際伺っておきますが、各種の新聞にも出ているところですけれども、この際は朝日新聞をちょっと読ましていただきます。この朝日新聞は——これはもちろん朝日新聞以外にも出ておりますよ。この朝日を当面取り上げさしていただくということでありますが、二十九日の朝日新聞は、このUSTR決定を踏まえてヤイター代表は「竹下首相や政府高官が新ラウンドで論議のなかにコメを含めることやコメの」これは重大なところです。「コメの参入問題が交渉可能であることを約束した、としたうえで、「日本はコメ問題を解決するための約束を示す機会を得ている」と述べ、」 日本がモントリオールの会議で米開放策を示すよう促した。「これは、竹下首相が先月末にレーガン大統領にあてて出した親書や、浜田外務政務次官が十月初めにパキスタンのイスラマバードで開かれたガットの非公式閣僚会議での発言などを受けたもの。」そして、総理は「この書簡のなかで、」ということは、竹下総理が先月末にレーガンあてに出した手紙のことでございます。「「日本は新ラウンドの進展のために積極的な貢献を果たすとともに、他の諸国がかかえる農業問題とともにコメ問題を議論し、その結論に従うのはいうまでもない」と述べている。」こうあるのであります。  私は、竹下総理が米問題に触れてレーガン大統領に親書を出したということは知らなかった。そして、その内容が参入問題をも含んでおりますという文言があることも承知をしていなかったので、実はこの新聞を見まして驚いたのでございますが、これは、竹下総理ほか政府高官も何を一体アメリカに言おうとなさっておるのか。この際明確にしておきたいのでありますが、竹下総理のレーガンあて親書なるものは、日本の米の市場アクセス、つまり米の参入問題を了解するという立場に立ったものであるのかどうか、ないしはそういう立場でアメリカに期待感を持たせるようなものであったのかどうか、これは私は、大事なところだと思っているのであります。これは、農林省は何もかかわりがなかったのですか、知らなかったのですか。
  74. 塩飽二郎

    ○塩飽政府委員 お答え申し上げます。  竹下総理が、米の提訴問題につきましての日本の立場を親書という形でレーガン大統領にお伝えしたという事実は承知をいたしておりますが、親書の性格上、私からその内容について申し上げるのはいかがかと思うわけでございます。が、いずれにいたしましても、この米の問題のウルグアイ・ラウンドにおける取り扱いぶりにつきましては、先ほど大臣から御答弁を申し上げましたように、アメリカ政府との間で、本件については二国間では交渉をしない、あくまでウルグアイ・ラウンド農業交渉の一環として、他の国が抱えておる困難な農業問題あるいは制度について同様にテーブルにのせて議論する場合には、我が国の米の問題を含めて、我が国としても農産物の問題を議論するのは回避するものではないという立場をとってきているわけでございます。  また、具体的には、先月のパキスタンにおきます非公式のウルグアイ・ラウンド交渉のための閣僚会議、これは浜田政務次官が日本政府を代表して出席されたわけでございますが、その浜田政務次官の発言といたしまして、ただいま申し上げたような基本的な立場、かつ米の市場参入、アクセスという言葉を使ってございますが、このアクセスの問題も議論が行われる場合には、日本はその議論を避けるものではないという立場を申し上げているわけでございます。これが、現在私ども日本政府の公式の立場でございまして、竹下総理のレーガン大統領に伝えた親書の内容もそのような内容であっただろうというふうに私ども理解をいたしておるわけでございます。
  75. 串原義直

    ○串原委員 親書でありますから、一言一句ここで文言を明らかにと言ってもこれは無理でしょう。常識的に私もそのことは理解をいたします。しかし、私が伺いたいと思いますことは、「コメの参入問題が交渉可能であることを約束した、」ヤイターはこう言っているのであります。だといたしますと、ともかく一国の総理が親書をもちまして米の参入問題の交渉は可能であることを約束した、これは重大問題ですね。  先ほど私が申し上げましたように、このウルグアイ・ラウンドで、米問題は議論はだめでございます、日本は米は買えませんという話も、これは議論対象一つでしょう。米のことを、コの字も触れてはいけないみたいなことを言っているのじゃございませんよ。それはやるでしょう。米は困るという話も、この議論対象一つでございましょう。だから、そのことを言っているのじゃございませんで、「参入問題が交渉可能であることを約束した、」と出ておりますから、事は重大であります、そういうことがあったのか、なかったのかということを伺いながら、このことに対するかかわりが農林省はあったのでございますか、こう聞いているのであります。いかがですか。
  76. 塩飽二郎

    ○塩飽政府委員 RMA提訴に対する二十九日に行われましたUSTR決定の発表の中では、そういう文言が使われていたと思いますが、私どもの本件についてのウルグアイ・ラウンドでの取り扱いぶりについての立場はあくまで、米の市場参入の問題についても討議を回避するものではないということを伝えているわけでございます。アメリカ側がそういう、そのとおりのずばりの言葉を使っていなかったかもしれませんが、日本政府としては、今私が申し上げたような表現で、この問題のウルグアイ・ラウンドの中における日本政府としての討議のやり方について伝えているわけでございまして、今後ともそういう対応で、本件については、議論が行われる場合にはその議論は回避しないということで対応すべきものというふうに理解をしておりまして、それ以上のものではないわけでございます。
  77. 串原義直

    ○串原委員 くどいようでありますが、大事なところですから伺いますが、米問題を議論いたしますということは私はわかると言っているのであります。参入問題ということになりますと事は変わるわけですよ。日本が米を買います、端的に言いますと、こういうことをも含めるということになるのであります。  米の参入問題ということは、そんなことはここで議論しなくてもよく御理解いただいているとおりであります。アメリカからいうならば、参入問題というのは、アメリカから日本へ米を買ってもらうということです。日本でいうならば、日本が米を輸入するということであります。米の参入問題ということになると、そういう理解でなければ正しくありません。そうでしょう。  そうなりますと、米は輸入できないという議論一つ議論対象であります。だから、米問題はコの字も使ってはいけないみたいな、そんなことを言っているのじゃないと私は言っているのであります。米問題も議論になるでしょう、ウルグアイ・ラウンドで、それはおやりください。けれども、参入問題という話になると重大問題、別の問題であります。でありますから、米の参入問題が交渉可能であると約束したということは、実は、報道のようであるといたしますならば事は重大であります。だから、このことは承知をしておりますか、そうでなければ、かかわっていなかった、そんな参入問題なんということを考えておりません、米を日本で買うなんということは考えておりません、こういう立場を踏まえて、親書なりその他の政府高官の発言があったということですかということを伺っているのであります。
  78. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 いろいろな声が聞こえてくる、そういうことについて事実関係を明らかにしなければわからない、ここで政府の立場から、行政の立場からは明確に言えないということは、ひとつ先ほどの食糧庁長官の答弁に補足して私から申し上げておきたいと思います。  ただいまの、総理のレーガンあての親書というお話でございますけれども、私どもは、再々繰り返しておりますように、ウルグアイ・ラウンドにおいて、各国は困難な問題を抱えておることは事実でございますから、それを全部テーブルにのせて、そしてそれぞれの立場からの議論をしようというときに、あらゆる農産物、制度についてということになりますと、米は含まれておる、これももう前々から言っておるわけでございまして、ただ、それを参入という形でアメリカ側がコメントをしたとするならば、それは希望的観測の域を抜けるものではないように私は想像をいたします。  しかし、今ここで議論していることがすぐまたワシントンに報道をされるということも、私は、過去の短い経験ではありますけれども承知をいたしておりますので、しかも米の問題が、RMA自体が大統領選挙に何か関連をしているかのごとく報道されておる部分もあるし、極めて複雑だなという考えは持っておりますので、私はこれ以上申 し上げませんけれども、先様の希望的観測によるものかなという感想を申し上げておきたいと思います。我が国方針はもう決まっておるところでございます。
  79. 串原義直

    ○串原委員 大臣の答弁でいささか明らかになりましたから、これは時間も経過するし、これ以上は申し上げませんが、大臣、御都合があるようですからもう一言だけちょっと伺って、そちらへ行ってください。  一言だけ伺いますが、今の議論をいたしておりまして考えますと、竹下親書、浜田発言ともに、どうもアメリカ側に期待感を持たせたな、私もそう思うし、大臣は今たまたま、希望的観測の立場からの発言もアメリカにあったんじゃないかという意味お話がございましたが、やはり希望的観測をアメリカが持つ、あるいは期待感をどこかで持ったということでありますならば、いま一度、この際我が国の国益の立場から、基本食糧であり、我が国伝統食文化の基礎である米は自由化はできないのだということを、この場で議論したことも貴重な材料になるでございましょうし、今後に悔いを残さないようにさらにアメリカ側に伝えるという手段を講ずべきではないか、こう考えるのですけれども、いかがでしょうか。
  80. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 率直に申し上げますが、先ほど来私が申し上げておるように、どこの国の選挙もそうだと言われればそれっきりでございますけれども、私は、友好国であるアメリカの四年に一回の大統領選挙、その直前にあらぬ種にされては迷惑だなという感じも持っておりますので、私は、従来申し上げておることをしかし申し上げないわけにはまいりません。米は自給する方針に変わりはない、食管は生産者のためにも消費者のためにも必要である、その根幹は堅持をする、ウルグアイ・ラウンドにおいては各国が抱える困難な問題をお互いが議論をするのはやぶさかではない、そのときになれば議論をするのはやぶさかではない、しかし、我が国方針は従来申し上げておるとおりでございますから、その主張を貫き通すつもりである、こういうことを申し上げておきたいと思います。
  81. 串原義直

    ○串原委員 ちょっと米問題で時間をとりましたけれども、以下、主題の法案二件について伺いたいと思います。  まず、畜産振興事業団の問題について伺いますが、畜産振興事業団の輸入牛肉の売買につきましては昨年不祥事件が起きた。これはまことにうまいことでなかった、うまいという表現はどうかと思うけれども、好ましいことではなかった。ところが、また最近談合疑惑が取りざたされております。これも好ましいことではなかったのでありますが、その談合問題に関する調査結果を明らかにしてもらいたいと同時に、農林省としてはこの調査結果を踏まえて今どんな感じをお持ちですか。
  82. 京谷昭夫

    京谷政府委員 まず、畜産振興事業団の輸入牛肉の売買業務をめぐりましていろいろ御批判のございますこと、大変遺憾に存じておるわけでございます。  その中で、本年の八月末に畜産振興事業団が行っております冷凍輸入牛肉の買い入れ業務につきまして、一部に輸入商社によります談合があったのではないかというふうな問題が提起されまして、直ちに私ども、事業団に対しまして、真偽を調査すると同時に、関係商社に対してこういった疑惑を招くことのないように、業務遂行について特段の注意を払うようにという注意喚起を行ったところであります。  調査の結果につきましては、十月十九日に事業団から私ども報告を受けております。  結論をかいつまんで申し上げますと、報道されておるような業務につきまして、過去の入札記録に照らして分析等を行った結果、そのような談合の事実があったとは考えられないという一応の結論を得て、報告を受けております。  また、このような調査結果にあわせまして、こういった疑惑を招いたという状況に応じまして、六十六年から牛肉輸入枠が撤廃され、畜産振興事業団による輸入牛肉の売買業務がなくなるという移行期に入るわけでございますが、これを円滑に進めていく上でもこういう疑惑を招くことのないように、輸入牛肉の取り扱いについては適正な業務執行あるいは現行の諸措置について必要な改善を行う。  改善の内容といたしましては、一つには、売買業務の形態といたしまして、今回の日米日豪合意の中で決められました新しい同時売買入札方式というものがございますので、これを円滑、適正に実行していく。そしてまた、報道の主たる対象になっておりました冷凍牛肉輸入に際しての入札の仕方について、商社間の競争条件が強化されるような若干の改善措置でございますが、そういった措置も具体的にとっていくというふうな方針を私ども承っております。  私ども、この調査結果については一応了解をいたしまして、事業団から提示されました改善措置についても、的確に実行されていくように指示をしておるところでございます。
  83. 串原義直

    ○串原委員 畜産事業団の理事長さんに伺うことにいたしますが、今農林省から、畜産事業団より談合の事実は考えられないという報告をいただいた、そう受けとめていると農林省は言ったのでありますが、そういたしますと理事長さん、これはどうしてこんな談合疑惑が起きたのでしょうか。つまり、そこに疑念を持たれるような根っこというものがどこかにあったのかどうか。一応、事業団の中で御検討、調査をされたのでございましょうが、なぜそんなところに火種があったのかということ、今、理事長さん、お考えですか。お答えください。
  84. 今村宣夫

    今村参考人 事業団の業務につきましては、いろいろ御批判があることは十分承知をいたしておるところでございますが、先般報道されましたいわゆる談合疑惑の問題につきまして、特定紙が集中的に取り上げたわけでございますが、その理由について事業団としてはいろいろと考えてはみましたけれども、こういうことが理由であるということ、思い当たる節はございません。  強いて報道に関連して申し上げますならば、輸入牛肉の買い入れに当たって指定商社、三十六社がございますが、それは競争入札という方法によっておりますけれども、最近の一定期間、六十年から六十二年にかけましてその落札実績シェアが余り動いていない、報道ではほとんど動いていない、これは談合の結果であるというふうに報道されていますが、そういうふうに動きが少なかったというところが直接のきっかけであったのではなかろうかというふうに推測されるわけでございます。そこで、それも含めまして談合疑惑問題につきまして、農林水産大臣から真偽のほどを調査するようにということの御指示がございまして、鋭意事業団としてもこれにつきまして調査をいたしたところでございます。  その調査結果につきましては、先ほど畜産局長から御説明申し上げたところでございますが、あわせて所要の改善措置につきましても畜産局に報告をし、今後適切なる御指導を受けて、業務の適切な実行を図ってまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  85. 串原義直

    ○串原委員 疑惑の根っこがなかなか思い当たらないというお答えでございました。それから、今後諸種の改善策を講じて疑念が起こることのないようにしたい、こういうことでございましたが、その中で指定業者の取扱数量がほとんど変わらないというところにも、一つの疑念の点があったのだろうと思うのでございます。聞くところによりますと、この指定業者が三十六社に固定してずっと長いことやってきた、こういうことであります。その辺にも疑念が生ずる根っこがあったんじゃないかと思うのですけれども、この三十六社に固定してきたという理由、これは何かあるのでございますか。
  86. 今村宣夫

    今村参考人 三十六社になりました経緯につきましてはいろいろございますが、通産省で輸入業者の指定をいたしております。これにつきまして私どもは、その通産省の指定した三十六社を即事業団の輸入牛肉取り扱いの商社として指定してお るのが実情でございます。しかし、これをなぜふやさないかという問題がございますが、一つは、現状で申し上げますならば、だんだんSBSをふやしていく。輸入牛肉そのものはふえていくのでございますが、SBSの数量をアメリカとの約束でどんどんふやしていくということになりますと、一般の数量はむしろ減らしていかなきゃいかぬという実情にございます。また同時に、SBSをやっております状況のもとで、一般の三十六社をふやしていくことは非常に業務に混乱を生ずるのではないか。それから、ふやすとしますと、一体どういう基準でふやしていくのかという非常に難しい問題がございます。  したがいまして、アメリカとの交渉の推移を見きわめておったのが一つの実情でございましょうし、その交渉でSBSという新しい方式で、例えば需割りにつきましては商社がだれでもいい、商割りにつきましては需要者がだれでもいいという形になりましたものですから、特にその三十六社のところをふやさなくても、SBSによって活動の余地があるという形になっておるのが実情でございます。
  87. 串原義直

    ○串原委員 今後の運営については、十二分に注意をしながらおやりを願うようにお願いをしておきたいわけでございます。  そこで、続いて伺っておきますけれども、この畜産二法について審議はこれから進むわけでありますが、結局不足払い制度畜産振興事業団で担当するということになるわけであります。そこで理事長さん、今回の上程されました法律案で、長い間やってまいりました輸入牛肉の買い入れ、売り渡し及び保管の業務を廃止することになりますね。そのかわり、今回の法改正に当たって新しい事業が義務づけられてくる。だから、新しい事業の充実を図っていってもらいたいわけでありますが、その過程の中で、少なくとも定員の縮小や、それによって職員の雇用不安というようなものを来してはならない、これは来すことのないように配慮しなきゃならない、こう思うのでありますが、理事長さんの考え方を伺っておきます。
  88. 今村宣夫

    今村参考人 今後、六十六年をもちまして輸入牛肉の業務がなくなりますが、それにかわりまして子牛不足払い運用を担当いたすことになるわけでございます。したがいまして、畜産振興事業団の体制をどういうふうに仕組むかということは、これは不足払いのやり方その他にも関係をいたしますので、六十六年の状況を踏まえて今後検討すべき問題であると思いますが、いずれにいたしましても、私といたしましては、職員の身分の安定ということについては十二分の配慮を行いまして、いささかも不安、動揺を来すことのないように措置いたしたいと存じておるところでございます。
  89. 串原義直

    ○串原委員 ちょっと理事長さん、くどいようですけれども、いささかも心配のないようにするということでありますが、つまり職員、働く者に犠牲を求めない、求めないで対処いたします、こういうことですね。
  90. 今村宣夫

    今村参考人 仕事が変わっていくわけでございますから、そのポストの配置転換その他のことにつきましては、これは当然のこととして受けとめていただかなければいけませんけれども、そういう仕事の変化によりまして職員の身分に不安を起こすようなことはないように、私としては十分努めてまいりたいと考えておるところでございます。
  91. 串原義直

    ○串原委員 つまり、さっき御答弁いただきましたが、この疑念を抱くことは今後の行政にとって極めて遺憾なことでありますから、畜産振興事業団に対する監督強化、こういうことを考えるべきじゃないのかなと思うのでありますが、いかがですか。
  92. 京谷昭夫

    京谷政府委員 畜産振興事業団が課されております任務、多様にわたるわけでございますが、先ほど来御指摘を賜っておりますように、六十六年以降消滅をすることになります輸入牛肉の売買業務をめぐりましていろいろ御批判ありますこと、私ども十二分に認識をしております。残された期間、実質的にあと二年半なわけでありますが、この間における業務の適正な遂行はもちろんでありまするし、また、現在御審議賜っております畜産二法によって新たに課されることになる子牛生産安定制度の運営に関する業務、それからまた、従来から行っております国産の牛肉、豚肉についての価格安定制度、指定乳製品についての価格安定制度、さらには加工原料乳の不足払いに関する業務等々、各業務につきまして円滑、適正な業務遂行が行われますように、私どもといたしまして畜産振興事業団に対する指導監督に従来以上に配意し、強化をしてまいりたいというふうに考える次第でございます。
  93. 串原義直

    ○串原委員 理事長さん、ありがとうございました。  これは大臣に伺うわけでありますが、牛肉につきましては、昭和六十九年度以降の関税水準国境措置ウルグアイ・ラウンドの場に先送りされておるわけですね。その意味では、日米牛肉交渉は一〇〇%完結ということではないとも言えるわけでございますね。五〇%の関税率や緊急調整措置は私は十分だとは言えないと思っておりますが、我が国肉用牛生産を守る最後のとりでである、こう理解しておりますので、これは死守すべきものである、六十九年度以降課題は残っているけれども、これはとにかく最後のとりでとしてはもう死守すべきものである、こう考えているのでございます。大臣、いかがですか。
  94. 京谷昭夫

    京谷政府委員 お話ございましたように、今回の日米日豪合意の中で牛肉についての輸入枠撤廃後の国境調整措置といたしまして、通常の関税措置及び緊急調整措置を合意をしております。その中で通常の関税率につきましては、輸入枠撤廃の初年度七〇%、二年目六〇%、三年目五〇%、四年目以降については五〇%を上限にして、ウルグアイ・ラウンドの関税交渉において論議をしていくということで、その面につきましては、日米日豪間の協議を了しまして、いわばマルチの関税交渉の場で議論をしていくという道を私どもとしても選択をしております。  それから緊急調整措置につきましても、具体的な内容は御承知のとおりでありますが、輸入枠撤廃後三年間の具体的な約束をしておりますが、四年目以降についてはウルグアイ・ラウンドにおいて確立をされることになる農産物等についてのセーフガードについての一般原則、いわばガットルール、そういうものに適合性のある形で考えていくということで別れておりまして、その具体的な内容がいかようなものになるかということは、今回の、現在進められておりますウルグアイ・ラウンドにおきます農産物に関するセーフガードの論議が、どのような決着を見るかということにも係る状況になっておるわけでございます。  いずれにいたしましても、私ども輸入枠撤廃後の国境調整措置といたしましては、ただいま申し上げた内容で、当面枠撤廃後三年間のものについては、具体的に二国間協議において約束をしておるわけでございますが、その後の問題について、いわばマルチの場で決まるルールの中で私ども国内状況を踏まえて、必要な水準というものを、あるいは具体的な措置というものを十分確保していくように、最大限の努力を払ってまいりたいということでございます。
  95. 串原義直

    ○串原委員 ちょっと時間が詰まってきましたから端的に伺いますが、肉用子牛不足払い、これは輸入牛肉の関税をもって充てるということでありますが、明確にしておきたいことは、関税で不足になるという事態考えられないことはない、こういう場合だってあり得ますよ。万が一ということを考えなきゃいかぬ。不足になったらどうしますか。
  96. 京谷昭夫

    京谷政府委員 御指摘のとおり、今回の特別措置法の中で子牛についての生産者補給金等に関する制度を創設し、その財源及びその他の肉用牛の振興施策等に要する経費については、牛肉及び特定の牛肉調製品の関税収入に相当する額を特定財源として確保するという措置を予定しておるわけでございます。  私ども、それぞれの収入額なり、私の申し上げました特定財源の使途の所要額がどのようなものになるかということについて、現時点で確たる数値を一義的に申し上げることは難しゅうございますが、特定財源として確保される関税収入相当額については、私ども特段の事情変化のない限り、一千億円を相当程度超えるレベルになるのではないかという予測を持っております。また、ただいま申し上げました子牛生産者補給金等に要する経費につきましては、一千億のレベルには達しないのではないかという予測値を持っております、なかなか確定的には申し上げられませんが。そういう状況からしますと、不足をする事態ということは私ども考えておりません。若干の年度間調整を行う措置もこの特別措置法の中で織り込んでおりますので、それをもってすれば財源上の不安はないというふうに考えておるのであります。先生が御指摘になります、まさに不足の事態というふうなことが仮にあるとすれば、そういった事態を具体的に踏まえて、その時点で検討すべき課題ではなかろうかというふうに考えております。
  97. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 今畜産局長から申し上げたとおりでございまして、不確定要素の部分もございますから、これから進めていくわけでございますけれども、とにかく畜産農家存立というものを守るという基本方針はもう変わらないわけでございますから、そういう意味で不足の事態は起こらない、こういうことで自信を持って事務方も組み立てております。しかし、それでもということでのお尋ねでございますが、そういう場合には検討をする、こういうことを畜産局長も申し上げたとおりでございまして、検討し、しかるべき措置をとるということを申し上げておきたいと思います。
  98. 串原義直

    ○串原委員 畜産局長、これは箇条書き的に重点的にお答えください。  この法案子牛対策、つまり不足払い制度にかかわる法案改正ですね。ところが、肉牛の肥育農家全体対策は今度の法案には載っていないわけですね。これは子牛対策ではあるけれども肥育農家経営に対する対策というものはこれからの問題ですね。非常に多くの畜産農家心配している。今後どういう影響があるんだろうか、これが一つ。どう対応するのか、これが二つ目。お答えください。
  99. 京谷昭夫

    京谷政府委員 御指摘のとおり、今回の特別措置法で決めております子牛生産者補給金等に関する制度は、見た目では子牛に関する対策になっておりますが、私ども肉用牛生産を構成するもう一つの重要な部門であります肥育部門についても、大変有効な効果が確保されるものというふうに考えております。と申しますのは、やはり今後牛肉についての輸入枠撤廃という事態になりますと、最終生産物である牛肉価格低下、そのことを通じて、まずその影響肥育部門に出てくるわけであります。その肥育部門がそういった低下した牛肉価格対応していくためには、結局は肥育のコストを安くする、肥育のコストを安くする最も大きな要素として、素牛価格を合理的な水準で入手できるような状態をつくり出す、そのために今回のような子牛生産者補給金制度をつくるという考え方でございます。したがいましてこの制度自体が、肥育経営の安定のために有効な効果を持っているというねらいを持っております。  さらにまた、畜産物価格安定法に基づきまして従来から行っております国産牛肉についての価格安定制度につきましては、今回の生産者補給金制度を前提にして、将来成立するであろう、法案の中では合理化目標価格という形で提示をしておりますが、この合理化目標価格水準で形成される素牛価格、それをベースにした国産牛肉についての価格安定制度による保護を牛肉についてやっていこう、この建前を堅持することにしておるわけでございます。  さらに、肥育経営問題につきましていろいろな問題があろうかと思います。当面の緊急対策といたしまして、肥育経営一定の所得レベルを下回るような事態が起これば、自由化前の時点でも所要の援助措置をとっていくような措置を、私ども現在緊急措置の一環として検討をしております。早晩、これも具体化を図って実行に移したいと考えております。  さらにまた、特別措置の中で、子牛生産者補給金等以外の肉用牛生産合理化のための政策経費として特定財源を使う道を開いております。したがいまして、そういう特定財源をもちまして肥育経営のための対策を、将来起こってきた事態対応して具体化し実行する道も開かれておりますので、肥育経営の安定のためにも私どもとしてできるだけの意を用いておるつもりであることを、御理解賜りたいと思います。
  100. 串原義直

    ○串原委員 時間が参ったのですけれども、厚生省に端的に二つだけ伺います。  これから牛肉自由化になりまして輸入肉がどんどんふえてくる。そういたしますと、検査体制が貧弱で私は心配であります。今二十カ所しかない。聞くところによると、検査官は七十五人ぐらいしかおらぬ。そんなことで、検査はできないではないかということで心配する。これはどうするのか、強化をどうするのか、これが一つ。  それから、このところ大分WHOあたりでも問題になっておるし、私は昨年アメリカへ行って聞いてみてより心配になったのでありますが、牛の肥育ホルモン使用ですね。これは、いろいろな弊害があるのではないかという話も中にはある。ECは牛の肥育ホルモンを使った牛肉は来年から輸入しない、こう決めておるというふうに言われております。この対策、規制等をどうお考えになっているか、お答えください。
  101. 松田朗

    松田説明員 お答えいたします。  まず最初の御質問の輸入食品に対する体制でございますが、先生御指摘のように、現在全国二十の海空港の検疫所におきまして輸入食品の監視体制をとっておりまして、そこで専門に働いております食品衛生監視員、今年度三名の増員がございまして現在は七十八名でございます。ただし、御指摘のようにこの人数では、これからふえ続ける輸入食品に対しまして十分とは私ども考えておりませんので、来年度以降もやはり増員要求をしていくところでございます。  同時に、合理化を図るために常時食品衛生上の指導輸入業者に行う、あるいは輸入届け出書に基づきまして書類審査を行って、必要なものに限り検査を行う。検査を行う場合にも、検疫所みずから行うものもあれば、物によりましては業者の自主検査ということで、厚生省が指定いたしました指定検査官で検査を行うというような形で現在やっておるところでございます。いずれにしても、まだまだ十分とは私ども考えておりませんので、今後とも機器の整備、人員の増等も含めまして、体制の強化に努めてまいりたいと思っております。  二番目のホルモンの問題でございますが、これにつきましては、御指摘のように肥育ホルモンを使用しているということが現在問題になっておりまして、私ども考え方といたしましては、まずその肥育ホルモンが食品として流通しておる食肉に残留しているかどうかということ、残留している場合にはそのホルモン、該当物質が私どもの人体に対しましてどういう影響を与えるか、この二点から検討を進めているわけでございます。  私どもは、現在国産及び輸入牛肉に対しまして、そのホルモンの残留検査を行っておりますが、現在のところ不検出でございます。今後とも必要に応じまして実態調査を行う、あるいは問題になる食肉につきましては検査を行う体制をとっていきたいと思います。  御指摘のホルモンにつきましての国際的な動きでございますけれども、確かにEC諸国とアメリカにおいては対応が違っておりますが、私どもは、FAO、WHOという国際機関におきましてこれについての検討が加えられておりますので、この動向を見ながら、必要があれば残留基準値等の設定も含めて考えていきたいと思っております。  以上でございます。
  102. 串原義直

    ○串原委員 時間が参りましたから、終わりま す。
  103. 菊池福治郎

    菊池委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十五分休憩      ────◇─────     午後一時一分開議
  104. 菊池福治郎

    菊池委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。石橋大吉君。
  105. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 午前中、非常に次元の高い話がありましたが、私は少し地味な質問をしたいと思いますので、懇切にひとつお答えをいただきたいと思います。  御承知のように、私の選挙区の島根県の昭和六十三年現在の肉用牛の飼育戸数は九千八百二十戸、肉用牛総数が四万四千二百頭、うち繁殖雌牛が二万二百頭、肥育牛が六千五百六十頭、その他九千三百七十頭、肉用専用種の計が三万六千百三十頭、乳用種は八千七十頭、一戸当たりの飼養頭数は全国平均の十・二頭に対しまして、島根県内の飼養頭数は平均四・五頭で全国平均の半分となっております。肉用牛生産の圧倒的なシェアを占める北海道、九州、東北の各県などに比べますと、極めて零細な規模であります。  しかし、農林水産省の指導もありまして、島根県の肉用牛は増体、肉質ともに非常にすぐれておりまして、肉用素牛として島根和牛の銘柄が定着し、全国から引っ張りだこの人気が集まり、ことし七月の島根県中央家畜市場子牛市場価格は五十六万八百八十五円と、史上最高位をつけているわけであります。他の全国の主要家畜市場価格に比べまして、一頭当たり十万円から十二、三万円高価格で取引をされているわけであります。大変うれしいことでありますが、繁殖・肥育のいずれにおきましても、島根和牛について全国から高い評価をいただきました。雌子牛は繁殖用素牛に、雄子牛は去勢して肥育素牛として、北は北海道から南は沖縄まで全国各地に移出をされているわけであります。そして、全国有数の過疎県であります島根の農山村を支える最も重要な産業となっているわけであります。  しかし、三年後に始まる牛肉自由化我が国肉用牛経営にどういう影響をもたらすか、なかんずくそれが島根県の和牛生産に対してどういう影響を及ぼすか、今、県内の和牛生産農家肉用牛生産農家とも大きな不安を抱きながら、島根和牛の将来について模索を始めているわけであります。  そういう出身県の実情を踏まえながら、本日は牛肉自由化我が国肉用牛生産、島根和牛の生産の今後のあり方等について、お伺いをしたいと思うわけであります。  少しまとめてお尋ねをしますが、まず最初に牛肉自由化のもたらすいろいろな影響につきまして、四点にわたって質問をしたいと思います。  一つは、自由化された後、我が国内における牛肉の消費の動向と、その牛肉消費に占める輸入牛肉のシェアがどういうふうになっていくのか、自由化の開始時点の一九九一年、約十年後の西暦二〇〇〇年時点ぐらいにポイントを置いて、中長期の見通しができたら明らかにしていただきたい、これが一つであります。  二つ目は、牛肉自由化によりまして一番打撃を受けるのは乳用雄牛の肥育に及ぼす影響ではないか、こういうふうに言われておるわけであります。御承知のように、品質、価格の点等から見まして、国内生産の七〇%を占める乳用雄牛の肥育肉に一番大きな打撃を与えるのではないか、こういうふうに見られておるわけですが、この点はどういうふうにお考えになっておるか。  三つ目、和牛の繁殖・肥育経営に及ぼす影響をどう見ておられるか。先ほど申しましたように、私の出身県の島根県では、自由化に伴いましてより一層の高級化を目指して、いわば子牛から肥育まで一貫経営をしながら、肉そのもののブランド化を目指しながら生き残り策をとにかく追求していこう、こういうことで今真剣に考えておるわけですが、一体そういう生き残り策が功を奏するものなのかどうか、全部やれないような状態に追い込まれるのではないか、こういう心配をしながら、そういう方向を一応目指そうとしておるわけであります。一方で、御承知のように、牛肉消費に対する国民のいわば嗜好の変化も進みつつありまして、脂肪の多いものから脂肪の少ない赤肉に徐々に変化をしつつあるというようなことも踏まえながら、この点の見通し、影響についてお伺いをしたい、こう思います。  それからもう一つ自由化に伴いまして、牛肉はもちろんですが、豚とか鶏だとか小家畜経営にも非常に深刻な影響を及ぼすだろう、こう考えられるわけですが、この点はどういうふうに見ておられるのか。まとめて四点、まずお伺いしたいと思います。
  106. 京谷昭夫

    京谷政府委員 お尋ねのございました諸点について、順次お答えを申し上げたいと思います。  まず、自由化された後におきます需要の動向あるいは輸入牛肉のシェアの見通しの問題でございます。御案内のとおり、今後の牛肉需給見通しにつきましては、本年の二月に酪肉基本方針を明らかにしております。昭和七十年度を目途に一定需給推計値を出しておるわけでございますが、まず需要量につきましては、この見通しの中で六十年度に比較をしまして七十年度には需要規模が大体一・五倍程度になるのではないか、また、国内生産量については国内での資源的な制約もございますので一・二倍程度にとどまるのではないか、総じて見ますと、国内生産の占める割合というのは最大限六〇%程度ではないであろうか、こういう見通しを出しておるわけでございます。  現時点で牛肉輸入枠撤廃という状況を踏まえますと、ただいま申し上げました見通しについては、恐らく今後牛肉価格が現状に比べまして低下をしていくという傾向を強めると思いますので、需要量はただいま申し上げましたラインを相当程度上回るテンポで増加し、総量としても先ほど申し上げましたようなレベルを少し上回るのではないかという予測を持っております。  また、国内生産につきましても、ただいま申し上げましたとおり相当思い切った生産対策の効果も織り込んで、六十年、七十年比較で一・二倍という数値を私ども示しておるわけでございますが、どうもこの辺が限度であるということを考えますと、自給率も相対的に下がらざるを得ない、先ほど申し上げました六〇%というレベルを相当下回ることになるのではないか。需要が相当伸びる、生産が当初見込んでおるようなレベルであるというふうなことで考えております。  私ども、この酪肉基本方針そのものについては、内容的にすぐさま改定をするつもりはございませんけれども、現在、農業基本法に基づく主要農産物の長期的な需給見通しの見直しを農林水産省全体の作業として進めております。その中で、こういった事態を踏まえました牛肉需給の長期的な展望というものをどういうふうに考えていけばいいのかをさらに子細に分析をいたしまして、他の作物とあわせて最終的な作業を取りまとめたいというふうに考えておるところでございます。  それから、牛肉輸入についての枠撤廃に伴って、関連をする畜産経営についていろいろな影響が予想されるわけでございますが、御指摘のございました各部門ごとに、その程度、内容というものは大変変わった形になるであろうというふうに私ども考えております。基本的に見た場合には、輸入枠の撤廃に伴いまして、国産、輸入物も含めまして国内における牛肉価格というのは、一定程度低下の傾向をたどっていくということは避けがたいというふうに考えております。このことを通じまして、国内肉用牛生産にもいろいろな影響が出てこようかと思いますが、まず乳用種の肥育経営について見た場合には、恐らく肉質が国産の牛肉の中では輸入牛肉と一番近い、そういう意味影響の度合いというのは大変大きいのではないか。  結局は、そういった競合度の高い輸入牛肉との競争に耐えていくためにはやはり生産コストを下 げる、下げる場合に一番大きな要素になりますのが子牛の供給価格というものになろうかと思うわけであります。したがいまして、相対的に低水準子牛価格によって肥育経営対応していく場合に、逆に素牛の供給サイドがそういった低位の子牛価格で耐え得るような状態を整備しておく必要があるということで、今回御提案を申し上げております子牛生産者補給金等に関する制度を早急に確立をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  一方、和牛経営でございますが、和牛経営からの最終生産物でありますいわゆる和牛肉につきましては、いろいろ品質上のばらつきがありますけれども、相対的には、輸入牛肉との間で相当の品質格差がしばらくは続くであろうというふうに私ども考えております。したがいまして、輸入枠撤廃に伴います輸入量の増加等に伴う影響というものは、乳用種に比べると程度が軽いのではなかろうかというふうに考えておるわけでございますが、やはり総体として、一部の高級なものというのはかなり独自のマーケットを保持しておりますけれども、大部分のものについては輸入、それから国産の乳用種、そういうものの価格低下影響を避けがたいというふうに考えておかなければいけないと思います。  したがいまして、肥育経営のサイドにおきましては、そういった輸入自由化に伴う価格低落に対応した生産構造というものをつくって、再生産構造を維持する方策を考えなければいけないと思いますが、そのときにやはりコスト引き下げの一番大きな要素として考えていかなければいけないのは、素牛の価格であろうというふうに考えるわけでございます。結局は、相対的に低水準の素牛価格をベースに、肥育行程の合理化を通じてより安い生産コストで和牛肉を提供する。最終生産物価格は、乳用種に比べると比較的有利な価格形成が図られると思いますけれども輸入影響は避けがたいということでございますので、それなりの対応が必要であろうと考えております。  また、繁殖につきましては、ただいま申し上げましたように、牛肉価格低下、それに肥育経営対応するとすれば、肥育側の子牛購入可能価格というものは相対的に下がらざるを得ないわけでありますから、やはり最終的なしわ寄せというものは繁殖経営に来る、子牛価格の低落という形で繁殖経営に大きな影響を及ぼすということが考えられるわけでございます。和牛の繁殖部門につきましても、したがいまして、今回御提案を申し上げております子牛生産者補給金制度等に関する法律を通じて、再生産を確保するための措置を早急に準備しておく必要があるというふうに考えるわけでございます。  なお、この和牛肉生産につきまして、ただいま先生から特に島根県のお話がございましたように、我が国有数の和牛銘柄を持っている地域でございます。繁殖用の素牛としましても、また最終製品である牛肉につきましても、一定の高級品としての銘柄を持っておるわけでございますが、その伝統的な高級品としてのマーケットというものはかなり強固には残っておりますけれども、それに安住をしていきますと、市場、需要の方がどんどん変わっていっているという状況もございます。その辺の変化のテンポというものはよく見きわめていく必要があると思いますけれども、ある一定の技術、条件を持った部分については、この高級化による生き残りということもあり得る道であると思いますけれども、余りすべてがこれで対応できるということを考えていくと大変大きな間違いを起こすことになりはせぬか。総体としては、やはり生産コストを引き下げるような方策を全体として進める、その中ででき上がったごく一部の高級なものが、伝統的なマーケットでしかるべき生産を維持するというふうなことを、大変前広に考えていかなければいけないのではないかというふうに考えるわけでございます。  また、先ほど来申し上げておりますように、輸入枠の撤廃に伴いまして牛肉価格が下がる、そのことを通じて需要がふえるということは、豚肉や鳥肉にも実は影響が間接的にあり得ると私ども考えております。ただ、豚肉については、現在の需要構造を見ますと、家庭用のテーブルミートとしての役割よりも加工品の原料として相当のウエートを持っておりますので、影響を受けるにしても一定の限度があるのではなかろうか。それからまた鳥肉についてですが、これは豚肉に比べますと、牛肉との競合度合いといいますか、競争度合いというのは低いのではないかというふうに私ども見ております。恐らく、この豚肉やブロイラー、鳥肉といった範囲にとどまらず、この牛肉価格低下に伴う需要増加というものは、他の動物性たんぱく質、特に魚ですね、そういったもの等にも影響を与えましょうし、あるいは穀類の需要にも一定のインパクトを与えることが予想されますけれども、細かい予測については私どもいろいろなシミュレーションをしておりますが、なかなか断定的な変化の内容というものを読み取ること、大変難しゅうございます。事態の推移がいかように進んでいくのか、冷静に見ながら所要の判断なり対策考えていく必要があるというふうに考えておるわけでございます。
  107. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 限られた時間でありますので次に進みます。  牛肉自由化に伴う国内対策について、まず一つは、今度の法律改正で中心になっております肉用牛子牛生産者補給金制度に関連をしてまとめて二つ、三つお聞きをしたいわけです。  一つは、算定基準等については、午前中のやりとりを聞いておりますと、自由化までに畜産審議会等で十分議論をして決めたいということですが、これは適用される子牛等についてもやはりひっくるめて全部そういうことは自由化までに畜産審議会で議論して決める、こういうことなのかどうか、念のためにもう一遍聞いておきたいと思います。算定要素、品種別格差、合理化目標価格の算定方法、こういうようなことについて、具体的にある程度示されれば示していただきたい。  それから二つ目に、この保証基準価格の地域差の問題について念のために伺っておきたいと思います。  御承知のように、現行制度のもとでは地域的に保証基準価格が違っておるわけであります。全国的にはほぼ二十九万二千円で、大体農水省としてはこの水準を維持していきたい、こういうことのようでございますが、先ほどから申し上げましたように、島根県などは少し特殊な事情がありまして、現行三十一万円、こうなっておるわけであります。当然のこととして、自由化に伴いましてこれからの保証基準価格が大幅に下がるのではないか、非常にこういう心配をしておるわけであります。逆に言えば、現行水準は最低ひとつ何とか維持してもらえないか、こういうような強い気持ちを持っておるわけであります。この点についてどう考えられておるのか、地域差の問題をどういうふうにこれからは処理をされるのか、このことが二つ目であります。  それから、補給金交付のあり方についてもちょっと聞きたいと思っておりましたが、時間がありませんからこれは省略します。  三つ目の問題は、先ほど来から問題になっております生産者補給交付金の財源と将来の制度運用に関連して、少し聞いておきたいと思います。  先ほど、局長の答弁を聞いておりますと、関税収入は一千億円を下らない、子牛不足払いに必要な財源は一千億円もあれば大丈夫だ、こういうことですから、余りその点では心配はないようにも聞こえるわけですが、自由化が始まって四年後からの関税が五〇%でずっといくのか、かなり下げられるのか、こういう点がウルグアイ・ラウンドでの交渉事項になっておりまして、やや不明確な点もありますが、その辺との関係で長期的に見て本当に大丈夫なのかどうか、こういうことをもう一遍念のために聞いておきたいということが一つ。  それから、余り財政負担がふえたときに関税収入ではとにかく賄い切れなくなったときのことをちょっと心配するわけですが、米価決定が一・五 ヘクタール以上層にされ、さらには五ヘクタール以上層の生産農家でなければ賄えないような米価にしていくというような話もあるわけですが、肉用牛生産の保証の問題等についても、財源のいかんによっては小規模農家は切り捨てられるような制度運用がされるのではないか、こういう心配をしておるわけですが、この点とう考えておられるのか、お聞きをしたいと思います。  以上です。
  108. 京谷昭夫

    京谷政府委員 まず、今回の御審議いただいております法案で予定しております肉用子牛生産者補給金制度の中で予定されております保証基準価格の問題でございます。  この決め方については、法文上一定考え方を示しておりますけれども、具体的な方式については、現時点では私ども固定的な方法をまだ決めておるわけではございません。具体的に私ども六十五年度からこの新しい制度を発足させたいと思っていますので、来年度のしかるべき時期までに関係者の御意見等も踏まえながら、その具体化をしていきたいと考えております。  その際にいろいろ御議論があろうかと思いますけれども、私どもの念頭にありますのは、現在の価格安定制度で御承知のとおりやはり保証基準価格が決められております。これの決まり方というのは、和牛については各関係都道府県ごと、それから乳用種については全国一律という形で現行制度は決まっております。乳用種については若干の現行制度の改善をするつもりでございますが、いずれにしましても現在の制度で使われている保証基準価格の全国平均価格、そういうものが一つの目安として私どもの頭にあることは事実でございます。  その際に、先生のお尋ねの第二の点とも関係をするわけでございますが、県別に差をつけております和牛の状態について、全国一律にするということについていろいろな御議論もあろうかと思いますが、私ども今回の制度考えている生産者補給金の額、いわば単価というのは、若干の差は出ると思いますけれども、私ども、品種ごとに全国平均のいわば保証基準価格と全国平均的な市場価格との差を基礎にいたしまして、一律の補給金額を設定をしていくことになるというふうに考えておるわけでございます。  確かに、現実の取引等は個々の牛によりましていろいろな格差がございます。恐らくその格差というものは、地域的にも違いましょう、その状態というものは、私ども、そのまま市場価格として尊重していかなければいけないと考えております。そういった中で、平均的に全国一律に決められた保証基準価格と全国的な平均市場取引価格、この格差というものを捕捉をしまして、ここで全国一律の生産者補給金単価というものを決める。大体一年を四つぐらいに分けて、その時期ごとにそういう単価を決めていってはどうかというふうに考えております。したがいまして、実際の生産者の手取り額というものは、現実市場価格プラスいわば一律の補給金額というふうな形になろうかと思います。したがいまして、現在あります農家手取りにおける地域差あるいは個体差というものは、現在私ども考えております全国一律の生産者補給金がそれにオンするという形で全体としての手取りが決まりますから、地域差なり個体差というものはそのまま維持されることにはなるのではないかというふうに考えておるところでございます。  それから、三点目のこういった生産者補給金等に要する経費の財源としまして、特別措置として牛肉及び特定牛肉調製品の関税収入相当額を私ども念頭に置いておるわけでございます。そういった補給金等の財源あるいはまた関連諸施策の財源に不足することはないかというふうな問題、確かに課題としてありますけれども、私ども現時点でなかなか一義的な関税収入相当額を断定するとか必要経費の額を固定的に想定をするということは大変難しいと思っております。関税収入につきましては、これからの輸入量の増加等々を考えますと、年間で一千億を下回ることはない、一千億を相当上回る額で確保されるであろうという予測を持っております。  それから一方、生産者補給金等に要する経費につきましても、毎年の子牛生産量等々を考えて推定をしますに、これが総額として一千億に達するようなことはないであろうということで、この生産者補給金制度の運営に関税による特定財源で不足をするというふうな事態が私ども現実には起こり得ないだろうと思っております。ただ、お話にございましたように、自由化後四年目以降の関税率がどうなるかというふうなことが将来の交渉に残されておることは事実でございますが、私どもはいろいろ御議論あろうかと思いますが、来るべきウルグアイ・ラウンドにおける関税交渉におきまして、三年目のレベルとして確保しているものができるだけ確保されるように努力していくべく考えております。したがいまして、私どもとしてはそういうレベルが確保されていくことになれば、関税収入をもって所要の対策費財源に事欠くような事態は起こり得ないというふうに考えておるところでございます。
  109. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 牛肉自由化に伴う国内対策について、二つ目の問題についてまたこれ二、三まとめてお伺いをしたいと思います。  それは国内生産対策に関連してであります。御承知のように、和牛の価格は、玄人筋によりますと上がり千日、下がり千日ですか、非常に価格変動の激しいものだ、こう言われておるわけであります。先ほど申しましたように、島根県の和牛子牛の額も非常に高いわけでありますが、いつまた暴落をするかということで、生産農家も非常に心配をしておるわけであります。肥育農家の方は肥育農家の方で、子牛が余り高いために最盛時の半分くらいに飼育頭数を落として、輸入自由化影響も含めてこれから先どうなるか、こういう模様眺めを今しているところであります。  農水省の参考資料によりますと、「牛枝肉卸売価格の国際比較」の表を見ますと、我が国の乳用種肥育雄牛の「中」で一キロ千二百二十四円、アメリカ牛肉は一キロ三百十二円、オーストラリア一キロ百九十九円、日本価格を一〇〇として、アメリカ二五、オーストラリア一七、いわば我が国牛肉価格の四分の一から五分の一の価格牛肉が入ってくる。実際には輸送費だとかいろいろ関税もかかってきますからこのとおりではないと思いますが、いずれにいたしましても相当安い牛肉が入ってくることは、これは間違いないわけでありまして、そうなってくれば先ほどから畜産局長も言っておられるように、これからの我が国の最大の課題は、いかにしてコストを下げるか、そのためにいかにして安価な子牛を大量に生産していくか、こういうことと同時に、繁殖農家の所得もまた一定水準確保しなければいかぬ、こういうところが最大の問題点になろう、こう思っておるわけであります。そういう立場から、我が国の和牛生産肉用牛飼育の現状などを考えてみますと、特に繁殖経営の場合は非常に小規模で家族で一、二頭飼っている、せいぜい五頭か十頭、こういうのが大部分で、水田や野菜、果樹栽培の中に繁殖を取り入れた複合経営、こういう形になっているわけでありますが、肥育の方はかなり大規模に千頭以上飼育するというような状況もかなりたくさんあるようになっているわけであります。  いずれにいたしましても、そういう意味では肥育経営の規模拡大をある程度しながらコストを下げていくということをどうしてもある程度考えざるを得ないわけですが、しかし、なぜこの肥育経営が小規模で余り発展しなかったかといえば、これまた農水省の参考資料でも明らかなように、繁殖経営の一日当たりの家族労働報酬千百九十三円、肥育経営の一日当たり家族労働報酬一万七千百九十一円、非常に大きな開きがあって、いわば家族労働費さえも賄えない、ここに根本的に大きな問題があるように見られるわけであります。そうなってくると、どうしても相当程度の頭数の規模拡大をした経営をせざるを得ない。そのためには、国土の七割を占める山林資源をどういうふうに利用するかということがこれからの最大の課題 になってくるのじゃないか。急傾斜地が多くてなかなか放牧になじまない、条件に恵まれない、こういうことがありますが、それにしても現状まだまだ利用の余地はあるのじゃないか、こういうふうに考えるわけですが、こういう意味国有林あるいは町などの公有林、また一方では公共の育成牧場なども全国的には一千カ所を越える箇所があるようですが、こういうものを積極的に拡大利用しながら規模拡大をしていかなければいかぬのじゃないか。この辺について、まず一つはどういうふうにお考えになっているか、承っておきたいと思います。  それからもう一つは、和牛の繁殖経営に関連をして非常に肥育繁殖農家で今悩みの種になっておるのは、人工授精の問題なんです。非常に次元の低い話をして恐縮ですが、余りにも人工授精ばかりやってこられたために牛がやる気をなくしてしまって、どうもこのごろ発情が全然わからない、獣医師の仕事の八割は妊娠障害というか、そういうことだという話も聞いておるわけであります。一遍自然交配をさせればかなり効果は違ってくる、こういう話もあるわけであります。濃厚飼料をやり過ぎて卵巣肥大があってだめだ、こういう説もあるかもしれませんが、この辺はかなり深刻な話でありますので、ちょっと農水省の見解をお聞きをしたいと思います。  それからもう一つは、肉が安いばかりでなくて、子牛価格ももし輸入できれば非常に安い。それは我が国子牛、和牛とアメリカなど外国の牛の質は違うかもしれませんが、それにしても十分の一ぐらいの安い価格輸入することが可能だ。かなり根強い需要が国内肥育農家の中にもあるようですが、実際には防疫体制その他の制約もあって二、三万頭が精いっぱいのところだ、こういうような話も聞くわけでありますが、しかし、ますます輸入肉が入ってきて国内生産農家との競争が激しくなっていくと、子牛輸入というようなことも考えながら将来の肥育肉用牛生産の振興を図っていかなければいかぬのじゃないか、こういうようなことも考えられるわけですが、この点についてどういうようにお考えになっているか。  以上三つほど、国内対策生産対策に関連して伺っておきたいと思います。
  110. 京谷昭夫

    京谷政府委員 まず第一点の、肉用牛生産における生産コスト低減のために国有林あるいは公共牧場といったようなものの活用策が大変重要ではないかという御指摘でございます。  私ども結論的に申しますと、先生御指摘の点全く同様に考えておるわけでございます。今後輸入枠撤廃後の状況に向けて国内肉用牛生産存立させていく場合に、その基本になりますのは経営規模拡大等を通じました生産コストの低減ということであろうかと思います。  ただその中で、お話にもございましたように繁殖経営は他の農業部門、稲作でありますとか野菜等との複合経営という形で大部分成り立っておりまして、戸当たりの平均飼養頭数規模が大変零細でございます。私どももこの部門の規模拡大のためいろいろな手を尽くしておりますけれども、最近ようやくその規模拡大の動きが出てきておりまして、繁殖雌牛の頭数規模で五頭以上層が全体の繁殖雌牛の五〇%を占めるという状況になっておりまして、大変テンポは遅うございますけれども繁殖部門における飼養規模の拡大が進展をしていると考えております。なかなか一挙にはいかないと思いますけれども、着実に必要な対策を講じましてこの方向を伸ばしていきたいと思いますが、その中で大変大きな問題、特に自給飼料に対する依存度というものが繁殖経営の場合に大変重要であると考えております。従来からも国有林を含む林野の利用あるいは公共育成牧場といったような形で自給飼料基盤に依存をした繁殖経営ということを進めておりますけれども、今後さらに一層その努力を傾注をしてまいりたいと考えるわけでございます。  それから繁殖経営の中で第二に御指摘になりました人工授精なり自然交配の問題でございます。  御承知のとおり比較的種雄牛が限定された中で、これを効率的に利用していく手段として人工授精方式がかなり普及をしてまいりました。例えば島根県の場合ですと、肉牛について言えば相当、ほぼ全体が人工授精によって処理をされておると承知をしております。ただ、さらに経済性を考えた場合には、条件次第によっては人工授精に比べるといろいろな手間暇がかからないとか、あるいは受胎率も高くなるというふうな面で自然交配の方がいいのではないかというケースも、地域なり条件によってはあり得るということを私ども承知しております。地域の立地条件によりまして放牧飼養が比較的容易な地域においては、多少種牛の使い方としては効率の落ちる点もありますけれども、自然交配の方がどうも経済性がいいのではないかというふうな地域もあるようでございます。私ども機械的に人工授精一辺倒でやるという考え方ではなくて、地域の実情に応じまして適切な繁殖方式を選択をして経済性を高めるという考え方指導に当たってまいりたいと考えるわけでございます。  それから最後に、肥育素牛の輸入の問題でございます。  これからの牛肉生産費低減の上において素畜費を安くするということが大変重要な課題でございますし、肥育農家等においてはそういった考え方に立って、安い牛肉生産するために輸入した子牛肥育するという要望を強く持ってきている一面がありますこと、私ども承知をしております。しかしながら、この肥育のもとになります子牛をすべて外国に依存するということにつきまして、国内にも相当量の繁殖経営がいるという実態、それからまた外国の子牛供給能力も決して無尽蔵なものではないということ、そしてまた——もう一つは、外国から生きた状態の牛これは畜産物でも同様でありますけれども国内畜産を守っていくためには外国から悪性の伝染病が入らないようにするために最大限の努力をしていかなければいかぬというふうな問題がございます。特に動物検疫の問題については、大変厳しい行財政事情のもとではございますが、このところ施設なり人員について順次拡充整備を行ってきておりまして検疫能力を高めつつあります。現在の素牛の外国からの輸入についてはこの検疫の能力が一つのネックになっておるということは事実でございますけれども、やはり悪性伝染病の侵入防止という観点からこの業務については厳正にやっていかざるを得ないというふうに考えておるわけでございます。  いずれにいたしましても、肉用素牛の円滑な輸入を図るために、御案内のとおり関税を免除いたしました関税割り当て制度を現在運用をしております。検疫能力の拡充に合わせて順次頭数の増加を図っておりますが、六十三年度の状態で見ますと二万五千頭ほどの関税割り当てを行いまして受け入れを行っておるわけでございます。今後におきましても、私ども国内における子牛需給事情あるいはまた検疫能力の実情を踏まえまして適切にこの関税割り当て制度運用に当たってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  111. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 次に、この流通システムの規制、合理化、こういうことについて若干お尋ねをしておきたいと思います。  牛肉自由化に伴いまして畜産振興事業団の輸入肉に対する一元的なコントロールあるいは価格調整、こういう機能は失われるわけであります。自由な市場需給関係のみが価格流通を適正にコントロールする、こういう自由主義経済の原則が機能すると言えば非常に聞こえはいいのですが、しかし世界的には全生産量のわずか八%しか国際流通しないと言われる牛肉であります。畜産振興事業団のコントロールはなくなったが、かわって巨大な多国籍企業や大商社などによって事実上の市場支配が成立するとすればこれまた大変な問題であります。そういうことにならないようにしなければいかぬと思いますが、この点をどういうふうにお考えになっているか、これが一つ。  それから二つ目の問題は、国内問題に限って見 ましても、従来はおおむねこれからの生産対策をどうするか、いわば生産対策中心、こういうことでは非常に問題があるのではないか、こういうのが関係者の間で非常に心配をされておるわけであります。今までは一にも二にも生産対策、そのための予算の確保、こういうことにどうしても重点があったわけですが、それではいかぬ。むしろ問題の八割は流通問題ではないか。大量に輸入した肉が安くなるということも含めて流通問題がやはり非常に問題だ。言い方によっては問題の八割は流通問題だ。この点どういうふうに改善をし合理化をするかということが、輸入肉の問題だけでなくて国内の肉牛生産肥育生産動向もかかって最大の問題点ではないか、こういうふうな声が非常にあるわけであります。ちなみに県の対応なんかを見ましても、島根県の場合ですと生産は農林水産部でやるけれども流通は商工労働部でやる、こういうことでは非常に問題があるのじゃないか、やはり生産から消費者の手に渡るまで農林水産行政で一本できちっとやるようにすることがその意味では非常に大事じゃないかというような声も聞くわけでありますが、そういうことを含めて流通問題についてどうお考えになっているか、この機会に承っておきたいと思います。
  112. 京谷昭夫

    京谷政府委員 これからの牛肉供給を考える場合に、この流通対策が大変大きな課題であるということ、私どももさよう考えておるわけでございます。特に、第一点の輸入枠の撤廃あるいは畜産振興事業団による一元的な輸入管理の廃止ということに伴って、いわば多国籍企業等の大企業による市場支配が進むのではないかというふうな問題意識が国内生産者なり流通関係者にも一部あることを私ども承知をいたしております。ただ、我が国牛肉流通、消費形態を見ますと、例えばハンバーグの消費がかなり普及しておりますが、単一の消費形態で大量消費、大量流通をするというふうなものもございますけれども、例えば家庭での購入形態が非常に小口である、かつまた消費する部位が季節によって変動をしていくとか、大変きめの細かい消費者ニーズを構成をしておるわけでございます。そういったきめの細かい消費者ニーズに対応するような流通の担い手としてそういった大企業が本当に機能するかどうかということについては、いささか私どもそう簡単には進出できないのではないかというふうに思うわけでございます。ただ、いずれにしましても、牛肉輸入枠撤廃に伴いまして牛肉流通形態について多様な形態が発展をしてくるということは十分考えておかなければいかぬというふうに思っております。その中におきまして、やはり私ども、末端の消費者のニーズにこたえまして的確な流通なりあるいはまた価格形成が行われていきますように、国内における近代的、合理的な流通の担い手の育成強化ということを考えていかなければいけないというふうに考えておる次第でございます。  それから、第二の点としまして、より広く牛肉流通合理化という問題があるわけでございますが、私ども、従来から国内における生産コストの低減といった効果が消費者の手元にも及んでいきますように、国内流通対策といたしまして、産地段階におきます処理加工施設の整備あるいは大消費地におきます流通拠点の整備、さらにまた卸売、小売業に携わる関係者に対しまするいろいろな指導を行っておるところでございますが、今後におきましても、輸入枠撤廃後において一定国境措置を前提にして入ってくる輸入牛肉は相当量を占めるわけでございます。また、合理化を進めながら国内生産をされた牛肉市場に提供をされるわけでございます。そういったものができるだけ安い経費で流通段階を経由し、消費者の納得いただけるような合理的な価格で末端の価格が形成されるように、流通の担い手の育成なりあるいは流通段階合理化というものを考えていく必要があると考えておりまして、そういった意味では、実は今回の特別措置の中で特定財源の使途としまして子牛生産者補給交付金といったようなものの財源に充てると同時に、食肉の流通合理化のために必要な施策に要する経費も今回の特定財源の対象として織り込んで規定をしておるところでございます。これから起こってくるいろいろな実態の変化に合わせまして、必要な施策が何であるか、またそのために何が必要であるかということを見きわめながら、流通合理化のためにこの特定財源の活用の仕方というものも検討をしていくべき課題であるというふうに考える次第でございます。
  113. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 余り時間がありませんから、次に輸入牛肉の安全対策について、農水省の防疫関係のことについては先ほど触れられましたから省略しまして、厚生省に念のためにちょっと聞いておきたいと思います。  午前中、串原先生の方からも指摘がありましたが、去年の輸入検査体制は、去年は年間四十七万件以上の輸入食品に対してわずか四・三%の検査率だ、こういうふうに言われておるわけでありますが、非常に検査体制が弱体だ。先ほどちょっと、ことしは二名くらいですか、ふやしたという話もありましたが、いずれにしましても自由化される三年後の牛肉輸入量を見ましても、去年に比べれば倍近くもふえるわけであります。自由化されたときにはもう少しふえるのではないかと思うのですね。農薬の汚染、抗生物質の使用、そういうようなことに対して、輸入肉に対する消費者の不安は非常に強いわけでありまして、大量に流入すればするほどやはりきちっとした検査をやってほしい、こういう気持ち、国民の皆さんの要望は非常に強いものがあるわけであります。そういう意味では、さっきの一人か二人という程度でなくて、かなり思い切った検査体制の強化が必要なんじゃないか、こういうふうに考えますが、その点をもう一つ念のためにお伺いしておきたいと思います。  それから、業者の検査などが相当部分を占めておるというふうにも今までも聞いておるわけですが、これらの関係についても、何年かに一遍くらいはきちっとした検査を厚生省が直接やる、こういうことがないと安全の確保はできない、こういうふうにも思うのですが、念のためこれらの点について少し伺っておきたいと思います。
  114. 松田朗

    松田説明員 お答えいたします。  まず最初の、牛肉輸入が増加をするのに対しまして、特に輸入牛肉の農薬、抗生物質等の残留物質問題にどう対応しているかということでございます。  現在までに私どもは、毎年、輸出国におきます抗生物質等の使用状況等の情報を入手いたしまして、それに基づきまして検査対象を特定いたしまして、そして一定期間、輸入時には検査を実施しております。実績といたしまして、例えば昨年以来の例で申しますと、DDT等の有機塩素系の農薬が基準値を超えて発見されたものがオーストラリア産の牛肉、あるいは抗菌性の物質が検出されたもので見ますとタイだとかブラジルからの鶏肉、こういうものが発見されました。それはそれぞれ廃棄とかあるいは積み戻しということで対応してきたわけでございます。しかし、今後ともますますそういう問題は大きくなろうということでございまして、私どもとしては、まず、この問題を解決するためには、一義的には、輸出国におきます残留防止の対策が重要であろうということでございまして、食肉を輸出する相手国に対しましては、まず、相手の国内におきまして十分対策をとってほしいということをお願いしたいと思っておるわけでございます。  と同時に、それに対しまして我が国におきましても、モニタリング体制と申しますか、相手国の情報、すなわち相手国においてどういう農薬、抗生物質が使われているか、あるいは相手国においてそれに対しての検査体制等があるかどうか、法体系はどうか、そういう情報に基づきまして、我が国もそれに対応するモニタリング体制をとるということで、これに関しましても、来年はいろいろ予算要求をしているところでございます。  それから、二番目の検査体制でございますが、御指摘のように今年度現在七十八名ということで ございまして、来年度は例年よりもより一層大幅な増員を要求しておりますし、それから検査機関でございますが、現在五十七の施設を厚生省が指定しておりまして、そこで検疫所と一緒になりまして検査体制をしいております。御指摘のように厚生省が指定しております指定検査機関における検査の精度というのが非常に重要でございますので、それに対しましても精度管理という観点から新たな対策をとっていきまして、その検査の内容につきまして他国からとやかく言われないように精度管理を強化していきたい、こういうように考えているところでございます。
  115. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 時間がオーバーして恐縮ですが、最後に大臣にちょっとお伺いをしたいと思います。  牛肉自由化の問題は、ただ単に畜産政策の観点だけではなくて、地域の経済、特に農山村の地域の経済と非常に大きく関係をしておりますので、そういう意味では総合的な国土政策だとか地域政策と関連をさせて将来の振興政策というものを考えていかなければいかぬ、こう思うわけであります。それに関連をしまして、先般農水省の方から出ました「国際化への対応と農業・農山村の活性化のための政策の基本方向について」、これはまだ完全にでき上がっている文書ではないみたいですが、政策の基本方向が示されているわけですね。あの中に、一つは「農業の長期展望の確立」、それで「経営指標の作成」、具体的な中身はまだ書かれておりませんが、これはやはりきちっとしなければいかぬ。これも非常に大事だと思うのです。これがしっかりとしたものが示されなかったり、あるいは示されても余り実現性がなかったりしたことが農家の皆さんのやる気をなくさせるというようなことでもありますし、将来に明るい展望が持てないという最大の原因でもありますから、ぜひこういう長期展望なり経営指標の作成を急いでいただきたいということと、それからもう一つは、「中山間地帯の活性化」という項のところに「中長期的には、地域社会の維持、国土保全等の観点から、西欧諸国の制度を念頭に置きつつ、価格政策との関連を踏まえた所得の確保のあり方について検討する。」こういうふうに書かれているわけであります。これは私の推測ですが、フランスの青年農業者就農助成制度というものなどを念頭に置きながら、過疎化が進展する農山村地帯を支えるための新たな制度をやはり考えなければいかぬ、こういうことではないかというふうにも考えているわけですが、どっちにしてもこういう政策を具体化することが今非常に重要になっていると思うのですね。この点について最後に大臣の所見をお伺いして、ぜひ考えていただきたいということをお願いして、終わりたいと思います。
  116. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 先般と言っても先々月になりますが、九月でございますが、私が就任をいたしましてから十二品目問題、牛かん交渉等々いろいろな問題がございましたけれども一連の外交交渉を厳しくもまた率直な体験をいたしまして、そういう意味では貴重な体験をしまして、この体験をもとにして今後さらにわかりやすく将来をどう展望することができるか、これは農政審報告を基礎に、二年前のその方針に沿って米流通研究会であるとかいろいろな具体的なものを進めつつやってまいりましたけれども、ここで基本方向はひとつ明確にしておきたいものだということで、今おっしゃるような国際化に対応した農業・農山村の活性化に対する基本方向、これを実はつくらせていただき、また各界の御意見もいただきたいと思っておるところでございます。  その中には、今委員御指摘のように、現行の長期見通しにかえて新たな農産物の需要と生産の長期見通しを策定するために、先般来、農政審に小委員会をつくっていただいて、需給見通し小委員会検討作業をお願いしているところでございます。この結論は年内にでき上がるというわけになかなかまいりません。私どもの見ておる感じではやはり年はまたがる。しかし、相当綿密なものをつくり上げてもらいたいなと願っておるところでございます。そういう意味で、長期的な観点からコスト低減等の目標となる地域ごとの技術、経営の指標、そういうものを作成したいと考えておるわけでございます。特に、後段に触れられました中山間部というものを考えますと、昨年策定をされた四全総、そこにも地域がいかに大事かということで均衡発展を改めて四全総によって位置づけ、そして、私に言わせれば、地域農業の振興が地域経済の活性化につながる、だから地域農業を活性化しなければならぬという考えを持っておりまして、おっしゃるように中山間部におきましてはいろいろな国の考え方制度等も頭に入れながら検討をいたしてまいらなければなりませんし、守りだけではなくより積極的な農政を展開いたしてまいるためにも中山間部のいろいろな、いわゆる今までの農政に考えられなかった組み合わせ、一口に言えば地域社会政策というものも頭に置いた農政の展開を中山間部においてもしていく必要がある。「定住と交流」という言葉にも、四全総、全国総合開発計画にもございますように、そういう意味での活性化をぜひ図っていきたいものだな、地域の特産物の生産振興とか農産加工等による高付加価値の生産の振興、これを推進して農業所得の確保に努めていかなければならぬ、こんな考え方を持ってあの「基本方向」を策定いたした次第でございます。
  117. 石橋大吉

    ○石橋(大)委員 基本的な考え方は大体私も一致しています。問題は、本当に農家の皆さんや地域の皆さんが期待するような魂を入れていただくことを特にお願いいたしまして、時間が来ましたから終わります。ありがとうございました。
  118. 菊池福治郎

    菊池委員長 藤原房雄君。
  119. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 畜産物に関する二法案につきまして、公明党を代表しまして質疑をする次第であります。  最初に、同僚委員からもお話がございましたが、きょうは法案審議ということでございますが、今一番問題になっております、また刈り入れを終わりまして農家の不安、明年の作付等そういうことで一番関心の大きい米問題につきまして、先ほどもいろいろな御答弁がございましたが、私も一言、大臣に決意のほどをお伺いしておきたいと思うのであります。  経緯については同僚委員からもお話がございましたのであれですが、四年ごとの大統領選挙ということになりますといろいろな駆け引きもあるかもしれません。いろいろなことを考え合わせてこれは発言もしなければなりませんし、またこちらの方も考えなければならぬことだろうと思います。しかし、これは日本の農業にとりまして本当に生命線とも言える大事な米の問題でもございますので、このたびのUSTR却下に伴いましてウルグアイ・ラウンド、十二月ですかカナダ検討されることになるだろうという、条件つきながら却下ということでございますが、我々からいたしますと、条件つきなどというのはとんでもない。米については今日までも大臣がしばしばアメリカ関係者とも会ってお話をしておりますし、また日本の態度も鮮明にいたしているわけでありますから、こういう条件つきという問題については、これは今後何らかの発展する可能性がこの中に潜んでいるんじゃないか。こういうことで、却下ということではございますけれども、非常に不安が農民の中に根強くあるのは事実であります。改めて、全米精米業者またUSTRのこのたびの態度、これらのものを含めまして、これらの諸情勢の中で日本の農水省の大臣として、担当者としまして米に対する確固たる決意のほどを、また基本的な考え方をまずお伺いしておきたいと思うのであります。
  120. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 先週の土曜日の私の談話をここで繰り返して詳しく申し上げませんけれども、このたびUSTRRMAの再提訴に対して四十五日たったその期間内においてという措置をあのような形でとられたことは私としては遺憾であるということを明確に申し上げておるわけでございます。しかし、各国が抱えておる困難な問題、特に農業問題については歴史的にいろいろな経緯があってそれぞれの国が難問として抱えておるわけで ございます。それをガットの新しいルールづくりの場になっておりますニューラウンド、その場において議論することはやぶさかではない、各国がそれぞれ議論をするときに我が国はそれを避けようとするものではない。こういうことで、議論はいたしますよ、その中に米も含まれますよ、ここまででございまして、では、あとは一体中身の方針はどうなんだと言われれば、従来とも国会で御決議も賜りました、そのことを十二分にそんたくをする、これは当然のことでございます。それに対する政府を代表しての所信も私から申し上げたところであり、米を自給する方針には変わりなし、生産者のためにも消費者のためにも今日の食管制度というものの根幹は堅持をする。こういうことで、整々たる議論をする場面になれば我々の今日までの主張というものを貫き通すということで対応をしてまいりたい、こう考えておるところでございます。
  121. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 今日まで農産物につきまして自由化が迫られて、そしていろいろな交渉をし、進んでまいりました。そういう経過を考えますと、確かに工業製品の洪水的な輸出ということもあるでしょう。日本の大きな黒字という背景もありますが、今までの農産物の交渉が最初は相当強い姿勢で臨みながら、しかし国際環境いろいろな状況の中で日本の主張はなかなか通し得ないいろいろ困難な状況もこれあり、そういうことである程度の譲歩はやむを得ない、こういうことをたどってまいりました。それはそれなりの状況もあり、また理解できないことでは決してないわけでありますが、しかしこのままずるずる行きますとどうなるかということや、特に米という問題につきましては、今大臣お話のとおり、歴史的な日本の文化ともいうべき、食文化の中の肝心かなめの米ということになりますとほかの農産物とは違った非常に真剣な受けとめ方をしておる、こういうことでございます。そういうことでぜひひとつ、今大臣お話がございましたが、今後の対応につきましてはそういう国民の感情、そしてまた生産者だけではなくして、日本国民として、日本の生命ともいうべき米の問題という観点から真剣にお取り組みをいただきたいと思うわけであります。  さて、今も申し上げましたが、農林漁業の全体が大変に後退を余儀なくされるといいますか、大臣もいつも言われますように、主要農産物についてはやはり自給という基本姿勢を保つべきだろうと私も思います。また、そのために今日までも農水省が一生懸命努力してきたこともよく存じておるわけでございますが、しかしながら国際環境の中で日本がいろいろな角度で自由化を迫られ、そして苦しい選択を迫られる。きょうこの法案の質疑をいたしますのも牛肉輸入自由化に伴います対策ということであります。牛肉といいますと、乳肉一体化ということで新しい制度のもとにひとつやろうじゃないか、五十八年制度もつくってやりかけた、その途上でこういうことになったわけであります。そういうことを考えますと、農業全体としまして非常に一生懸命取り組んでおる一面では、全体として非常に厳しい状況に追いやられているという一面を考えずにはおれないと思うのであります。  三十一日、農林省の「六十二年度の農家経済」の発表があったわけでありますが、難しいことを聞くつもりはないのですけれども、この中に農業所得が二年連続減少しておる、こういうことが言われておりまして、食糧の自給率がだんだん年々低下をしておる、こういうことが言われ、国内の食糧とか農業生産、こういうものについて真剣に考えなければならぬぞ、こういうことを言われておるわけでありますが、ここに参りまして畑作を初め、米を初めとしまして農産物の価格がずっと落ちておることは御存じのとおりです。主要なところでは、このたびの農水省の発表によりますと、全国一戸当たりの平均の農業所得は前年度比で六・七%減ということなんですが、これは米価とか畑作物とか、こういうものの引き下げ率に大体見合うぐらいという感じですか。その一面農家所得は二・三%ふえておるということで、これは景気のよさに支えられておるということですね。こういう農外所得で何とか農家総所得が二・三%増ということで支えられておるという。これも平均値でありますから、全体的に見ますと、やはり特に農外所得の得られないような専業的な立場の方が大変に減収になっておるということだろうと思います。こういう所得の問題。  それからもう一つは、全国の田畑合計の耕地面積、これが全体では二万三千ヘクタール減っておるのですね。現在もなお長期計画の中で改善をしたり草地造成、いろいろなことをやっておるわけですが、その一方では一年間で前の年に比べて二万三千ヘクタールも減っておる。これは都市化とかいろいろなことがございますから一概には言えないのですけれども、その中で田んぼが減反強化のこういうあれもありまして二百八十八万九千ヘクタール、前年比で〇・七%減少、畑とかミカン、こういうものが二百四十二万八千ヘクタールで〇・一%減少、水田の減少率が〇・七%、こういう数字がこの前発表になったのです。こういう数字だけでは論じられないことなのかもしれませんが、農家経済それから耕作面積だけ見ましても、農家の方々は非常に厳しい選択を迫られ、そういう中で大変に苦悩しながら、考えながら明年の営農計画をしなければならないという状況であろうかと思います。これは農林省が発表したのですから、大臣も知らないわけはないのだろうと思いますが、詳しいことは一々頭の中にはないのかもしれません。傾向性は大体頭の中にあるのだろうと思います。  国内的に見ましてもこういう非常に厳しい農家経済の中にあります。これは全国平均ということで、その土地その土地のいろいろな状況もありますから一概には言えない面もあると思うのですが、今までの畑作物や米価の決定等におきましても合理化とかいろいろなことが言われておりますけれども、実質的にやはり合理化できる部分となかなか合理化のでき得ない部分とのいろいろな問題がある。それがいろいろな形で、こういうところに所得の減という形であらわれておるのではないかと思います。  時間もありませんからあれですが、まず国内的な農業施策、明年度の予算、この十二月いよいよ編成、概算はある程度八月にできておりますけれども、明年度に対しまして大事な予算の編成期を前にしまして、今ずっと農林予算は補助金を初めとしまして非常に厳しい予算編成を迫られておるわけでありますが、農林問題に深い造詣をお持ちの佐藤大臣、ぜひひとつこれらのいろいろな状況を勘案して国内対策を強力に打ち立てていただきたい。農家の方々の希望の持てる農業施策といいますか、こういうものについて明年度予算の中にも何らかの芽を出してもらいたい、このように思うわけでありますが、大臣のお考えをひとつお伺いしておきたいと思います。
  122. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 なかなか広範にわたる御質問でございまして、一口に答えにくいように承っておりました。しかし、いずれにしてもその御質問のそれぞれは、厳しい今日の状況というものを認識しながらもさらに足腰の強い農業をどう育てていくか、それについても予算措置等もひとつ十全を期してまいれ、こういう意味にも受け取れたわけでございます。  もともと農家経済自体を考えてみますと、兼業農家の多い我が国でございます。確かに農外収入はふえておる、農業収入は若干減っておる、そういう中にあって農家の経済はどうやらこうやら維持されておるという現状の中で、やはり中核的な担い手として、そしてこれが農業なんだということが目で見てわかるリーダーというものをどう育てることができるか、そこにほとんどの焦点が当てられなければならない。同時に、農地改革後みずからの田畑をみずからの所有権、みずからの利用権を同時に持って、農業というものをどう組み立てていくか、経営をしていくかということについて、採算性の追求もまた必要である。そういうことになってまいりますと、やはりその農地というものを価値あるものにしていかなければならな い。そこにまた農業基盤整備の充実とかそういうことについての予算措置等の点にもいよいよ思いをいたさなければならない問題があり、ことしの生産者米価決定の際にもそういうことについて、米価は米価で厳しい試練を乗り越えて、将来を展望するために御苦労をおかけしたけれども、土地基盤整備等においては一生懸命に努力する。一口で言えば、特に構造政策に真剣に取り組んでいこう。なおかつ、加えて今日の生産者は同時に消費者でもあるわけでございますから、消費あっての生産であるという考え方を忘れてはならない。コストはできるだけ下げなければならないし、効率的なものへの農業投資でなければならぬという考え方も頭の中に置きながら、そして地域農業の活性化が地域経済の活性化につながる、地域農業が沈滞をしていって果たして地域経済の活性化があるかどうか、そういうことに思いをいたせば、今日、地域農政元年ということも言えるだろうし、我々は改めてそういう取り組みの姿勢を打ち出しながら、心に期しながら努力をしていかなければならない、今御意見をお聞きしながらこんなふうに考えたわけでございます。  どうも答えになっているかどうか、非常に広範な御質問でございまして、ちょっと答えにくかったので、また何かあれば……。
  123. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 こんなことばかりやっておると大事な法案の審議ができませんであれですが、もう一つ、農業白書の中に「国際需給動向と農産物貿易」という項目がございますが、この中で「農産物の国際需給と主要国の農業政策動向」とかいろんな項目に分かれておるのです。要するに、不安定要因を抱える国際需給ということで、アメリカとかEC等の先進国では、財政支出削減の観点から農業政策生産抑制とかいろんなことをやっておる、主要国の政策の見直しによる生産抑制とか開発途上国の人口増とか干ばつ等の気象変動等を考えると、現在のような過剰基調が中長期的に続くとは考えられないという項目があるのです。私がさっきから言っておることは、諸外国から見ますと日本の国は工業国みたいに言われるかもしれませんが、日本にも確固たる農業基盤というものをきちっと確立をして、主要農産物については自給体制というものをいかなる時代、いかなる国際環境の中にあろうとも確立しなければならないということを言いたいわけです。  現在は、過剰基調ということでいろんな日本の農業政策も改革を迫られておるわけであります。そういう中にありまして、国際的に見ても開発途上国の人口増加とか干ばつとかこういう気象変動、いろいろなことを考えますと、不安定要因というものを抱えておる国際環境の中にあるんだ、こういうこと等も考え合わせますと、日本の農業というものを確固たるものにしていかなければならぬ。そしてまた、それは諸外国のいろいろな今までの自由化攻勢、これはやはりすることはしなければならぬだろうと思いますけれども、そういう中できちっと自給体制を確立し、そして諸外国に対してもそれもきちっと説明をできるような体制を一日も早く確立をしなければならぬ、こういうことを痛感いたしておりまして、そういうことについてお話を申し上げているわけでありますが、そういう私の考え方について異存はないだろうと思うのですけれども大臣、一言。大臣でなくとも結構ですが、担当の方、どなたかいらっしゃいましたら……。
  124. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 一言、私が経済局長の前に答えたいと思います。  やはり国際的に非常に厳しい中ではございますけれども、最近の風潮を見ると、輸出国の声が大きくて輸入国の声は小さいということを私自身考えながら、守りだけではない、より積極的な農政の展開が必要だ、そこにまた一つの活力が見出せれば、こういう考えを持っておるわけでございます。特に、主要食糧をどう自給していくか。先進国の中でも極めて低い自給率にある我が国、これ以上切り下げてはならぬということで、これを努力目標にしながら私ども自体鋭意努力し、そして生産者にも、生産者団体にも、また消費者にも呼びかけておる次第でごさいます。  残余は経済局長から……。
  125. 塩飽二郎

    ○塩飽政府委員 今大臣の方から非常に広範に御答弁がありましたので、余り追加することもないわけでございますが、確かに世界の農産物の需給は構造的に過剰というふうに言われておりますが、ことしなどは北米地域では非常な干ばつである。在庫も減ってきているわけでございます。日本は世界の農産物輸入国として一番の海外に依存している姿になっておりますので、世界の需給動向には絶えず注目をしなければいけない。ことしのそういう状況でございますが、干ばつでかなり需給が引き締まってきておりますけれども、幸いにして当面日本がすぐ心配しなければいけないという事態にはないわけでございますが、やはり世界の農産物の需給には絶えず注意を払っていかなければならない。日本が穀物の相当部分を依存しておりますアメリカあるいは豪州、カナダ、そういった国々とは主要穀物、大豆等につきまして需給のすり合わせをするという仕組みができておりますので、そういうものを活用しながら安定的な食糧の確保ができるように努力をしていく必要があると考えております。
  126. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 こんなことを言っておってもあれですが、農産物のことについてお話を申し上げたのですが、これは国際的な環境の中にありまして、今問題になっております牛肉の貿易の動向ということも国際的に見ますと非常に不安定要因であるのは御存じのとおりでございます。そういうことからいいまして、約束した国際間での約束でありますから、するべきことはしなきゃならぬといたしましても、国内生産体制というものが後退するようなことがあってはならぬということを私は申し上げたいわけであります。やはりいざとなったときには自国で賄わなければならぬということでありますから、輸入依存体質というものが恒常的であっては、こういう厳しい、厳しいといいますか、農産物というのは国際的にも非常に不安定要因を抱えておる状況なんだということを絶えず私どもは念頭に置かなければならぬ、こう思うわけです。  さて、そういうことから、このたびの法案につきましては、我が党としましてはそれなりの評価をいたしておるわけでございます。ただ、私北海道ですが、北海道等におきましては非常に酪農が先行した形で進んでおりまして、肉牛ということにつきましてはここ十数年の歴史、また基本農政の中の一つの柱として肉牛の生産体制といいますか、こういう肉牛に力を入れるというのは近年になって、近年といいますか最近になってということでありますから、歴史的にも、和牛は別といたしましても牛肉生産体制というものは最近に至ってようやく力が入って、政策的にもいろんな制度ができてそういうものの体制が整いつつあるというところであるだけにいろんな問題があろうかと思います。  きょうも同僚委員からもいろんな問題が提起になりましたが、私はまず今度の法案の中で、肉用子牛生産安定等特別措置法ということでありますが、子牛価格というのが確かに肉牛肥育経営にも大きな影響を与えることは間違いありませんけれども、どっちかというとこのたびの対策は、この法案子牛価格の安定に力点が置かれておる。しかし子牛価格肥育経営の決してすべてじゃないわけでありまして、今回のこの法案に限りますと肥育経営に対する視点という、こういう点からいいますと、肉用子牛も非常に大事なことであろうかと思いますけれども、ここに力点を置き過ぎておる。ほかの諸問題につきましては予算措置やいろんな別な形で対応をしておるんだろうと思いますけれども、今回のこの肉用子牛対象にしたこの法案ができまして、肥育経営にどのくらいの効果を及ぼすかといいますか、肥育経営の中の大きなウエートを占めることは間違いないのですけれども、全体としてどういうように把握していらっしゃるか。ちょっとその点お伺いしておきたいと思います。
  127. 京谷昭夫

    京谷政府委員 ただいま御審議いただいており ます肉用子牛生産安定等特別措置法で予定をしております肉用子牛生産者補給金等は、これ自体確かに肉用子牛生産を行います繁殖経営対象にしたものでございますけれども、実は私ども肉用牛生産を構成している部門として繁殖部門と車の両輪の関係にあるのが肥育経営であるというふうに考えております。  今回の牛肉輸入枠の撤廃に伴う国内肉用牛生産存立ということを考える場合に、私どもはやはり繁殖経営部門と肥育経営両方を守っていかなければいけないというふうに考えておりますが、今回の法案で直接予定をしておりますこの子牛生産者補給金制度、これは繁殖経営対象にするものでありますけれども、この効果というものは肥育経営にも有効に機能をしていくものであるというふうに考えておるわけでございます。  と申しますのは、牛肉輸入枠撤廃後におきまして、牛肉価格低下という形でまず影響を受けますのは肥育経営であろうかと思います。その最終生産物である牛肉価格が下がった状態で肥育経営が立ち行くためには、生産コスト低下させて対応をしていく。その生産コスト低下の最も大きな要因というものが肥育コストの約五割近くを占めます素畜費子牛価格支払い額といいましょうか、そういう要素が最も大きい、その負担を軽減をするために今回の子牛生産者補給金というものをつくっていくんだという考え方を持っておるわけであります。御承知のとおり、法案で予定をしております保証基準価格と安くなるであろう平均取引価格の差額を繁殖経営に交付をいたしまして、そのことを通じて子牛の再生産を維持する、肥育経営の方は安くなった子牛市場価格を前提にしてコストを引き下げていく、こういう構図を私どもとしては予定をしておりまして、決して肥育経営を軽視をしておるというものではないことを御理解をいただきたいと思います。  また、肥育経営生産物であります牛肉そのものにつきましては、同時に一部改正をお願いをしております畜産物価格安定法において規定をしております国産牛肉価格安定制度そのものを、若干の運用基準改正を織り込みまして従来どおり維持をするということにしておりますので、その点につきましては、肥育経営に対する保護が従来どおり維持をされるというふうな御理解をいただきたいわけであります。  さらに、特別措置法の中で、先ほど申し上げました生産者補給交付金のほか、肥育経営合理化を含む肉用牛生産合理化あるいは食肉の流通改善のための政策経費の財源といたしまして、当分の間の措置として牛肉及び特定牛肉調製品の関税収入相当額を充てるという規定を設けておりまして、この特定財源をもとにしました政策の使途としまして肥育経営合理化等に要する経費も含まれておるところでございます。具体的にどういう施策を進めるかということについては、今後起こってくる事態に応じて検討していく必要があろうかと思いますが、そういう、以上申し上げました諸点をもちまして、肥育経営についてもそれ相応の配慮を加えた考え方になっておることをひとつ御理解をいただきたいと思います。
  128. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 肉用子牛の問題ですが、これは範囲としての月齢等については政令で定めることになっております。このたびぬれ子については直接の対象とはなっていないのですが、乳価決定段階でぬれ子につきましては副産物という考え方で乳価の中に含まれておるという、そういういろいろな理由が今回はあるのだろうと思いますけれども対象から外されるということです。乳肉一体化という、こういう物の考え方で五十八年ですか、法律ができてそういうことで進んできておるわけでありますけれども、そういう一体化した政策体系の中でこういう問題も考え合わせることが大事じゃないかなという考えを持っているのですけれども、いかがでしょうか。
  129. 京谷昭夫

    京谷政府委員 御指摘のとおり、御審議いただいております特別措置法で予定をしております子牛生産者補給金の対象子牛といたしまして、いわゆる酪農経営からの副産物でありますぬれ子、生後二、三週間程度のところで流通をするものでありますけれども、そういうものは直接対象にされておりません。私ども、今回の補給金制度対象で捕捉をしていこうとしておりますのは、最終的に牛肉生産に用いられることが確定をした肉用子牛というものを対象にしていくという考え方でございますので、もう少し哺育・育成段階を経た月齢の高いものを予定しておるわけでございます。  しかしながら、先生御指摘のとおり、このいわゆる酪農部門から提供されますぬれ子、実質的には肉用牛の資源として大変重要でございまして、これをぬれ子の段階から本制度対象になる肉用素牛としての評価を受けるまでの間哺育・育成を酪農経営に合わせて担当していただきたいという願望を私ども持っておりますし、相当程度そういった形態での飼育形態が出ております。それがいわゆる酪肉複合経営という形で私どもも奨励措置をとりながら進めておる形態でございまして、そういう酪肉複合経営が酪農経営の中に定着することを通じまして、ぬれ子をもう少し酪農経営と一体になって哺育・育成したものが本制度対象になるものでありますので、決して酪農経営との関連性を無視しているものではないのであります。  私ども、今回の制度とは別に、自由化方針決定に伴います緊急対策といたしまして、酪肉複合経営の推進のための対策も強化をしているところでございます。今後引き続きその努力を続けながら、いわゆるぬれ子というものが酪農経営の中で哺育・育成をされて、その上で今回のこの生産者補給金制度対象になっていくように酪農関係者の皆さんの御努力を願うと同時に、私どももそのような指導をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  130. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 次に、何といってもこの制度の中で大事なのは保証基準価格、これの算定方法ということになろうかと思うのでありますが、保証基準価格合理化目標価格、これがどういうふうに算定されるかということ、これが非常に重要な意味を持ってくるだろうと思うのであります。やはり保証基準価格というのは生産費所得補償方式というものを基準として考えていくべきだ、こう思います。やはり再生産、これは生産の近代化がどんどん進む、それに伴って、長期的に見ますと近代化が進んだということで年々引き下げられる、そういう可能性がある。本法の中にも「当分の間、」ということで記されておるわけでありますが、保証価格の算定方法、これはこの法案の中にも概念的には書かれておるわけでありますが、今の日本畜産農家の現状からしましてやはり生産費所得補償方式的なものが原則としてはじき出されるのでなければならない、こんなふうに思うのですけれども、これはどうでしょうか。
  131. 京谷昭夫

    京谷政府委員 ただいまの法案の中で仕組まれております生産者補給交付金の算定基礎といたしまして、保証基準価格あるいは合理化目標価格という概念が入っております。特にその中で保証基準価格についてのお尋ねでございますが、先生の御指摘もございますように、法文上「肉用子牛生産条件及び需給事情その他の経済事情を考慮し、肉用子牛の再生産を確保することを旨として、」定めるという規定を設けまして、この運用を具体的に制度発足までに決めていく必要があるというふうに考えておりますが、具体的な算定方式について私ども現時点ではまだ固定的な方針を固めておりません。したがいまして、絶対水準について大変物を申し上げにくいわけでございますが、私どもの念頭にありますのは、現在の子牛価格安定事業で設定をしております和牛についての保証基準価格の全国平均値、あるいはまた乳用雄についていいますと、今回の緊急対策で若干の改善措置を予定しておりますけれども、その緊急対策の中で考えておるような全国一本の基準価格水準というものが念頭にあるわけでございます。  機械的に生産費所得補償方式というものをとるべきかどうか、いろいろ御議論があろうかと思いますが、少なくとも従来までの牛肉価格安定におきましては所得補償方式をとっておりません。 需給実勢方式と呼ばれる方式でございまして、一定期間の市場価格をベースにしましてその後の生産費の変動状況によって支持価格水準を決めるというふうな方式もとられております。それからまた、子牛価格自体が自由な市場取引を通じて行われる、あるいはまた子牛の個体差が非常に大きいというふうな実情もございますので、私どもの感じといたしましては、固定的に生産費所得補償方式をとるということには非常になじみにくいのではないかというふうに考えるわけでございます。  いずれにいたしましても、この制度は昭和六十五年度から発足をさせるつもりでございます。それまでの間関係者、特に畜産振興審議会の御議論等も賜りまして、妥当適切な方式を決定してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  132. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 今もお話ございましたが、生産費の変動ということでありますが、肥育牛の生産費調査はしておるようですけれども乳雄の生産費調査なんかはございませんで、そういう点では基礎的なことについてひとつ御検討をいただいて実態に即した形での決定、こういうことで、まだ時間があることでありますから幅広くいろいろ御検討をいただきたい。  それから、そういうことからしますと生産費価格というのはどうしても重要な意味を持ってくるわけでございますが、合理化目標価格ということを考えますと、どこをどう合理化するかという数値的なことになりますと、やはりさっきも申し上げたように実態に即した形でなければならぬ、こう思うのです。農業生産資材の引き下げ、それから林野関係の有効利用、河川敷等の有効利用、これは農林省でできること、また他省庁にまたがること、いろいろありますけれども、私どももいろいろな方々にお会いし、林野庁にお願いしましてもいろいろな条件が厳し過ぎて、とてもあんなことではという条件が多いようです。そういうものもいろいろ聞いておりますけれども、きょうは時間がありませんからあれですが、大臣よく御検討いただきたいのです。それはもちろん急傾斜地や使用不能のところもありますが、まだまだ利用できるところもあるわけです。林野もまた有効に利用してすばらしいなと思うところもあるわけですが、林野は林野としての立場からの条件を付するのは当然だろうと思うのですけれども、これはひとつ御検討いただきたい。  それから、河川敷の草地につきましては、これは建設省ということになるのだろうと思うのですが、北海道の江別でえぞ但馬ということで和牛をやっているのです。石狩川のすぐ近くで一面の草地が目の前にあるのですが、いろいろな条件がありましてなかなかできない。何か難しい問題があるなら別ですけれども、そういう問題につきましても、他省庁にまたがるものも省内でできるものも、低コスト化のためには最大の努力をするということで、大臣、農業生産資材の引き下げ、また有効利用に御努力をいただきたい。  時間もありませんから一緒に言いますが、負債対策等につきましても、家屋につきまして住宅金融公庫等では二世代という考え方もあるわけですが、二世代金融ということ。酪農も、比較的早くになさっている方と五十年代に入ってなさっている方が大変御苦労していらっしゃる。特に肉牛の場合は比較的歴史が浅いということで、大規模化している人ほど負債が高じ大変に苦労している現状はよく御存じのことだと思います。歴史の浅い、そしてまた意欲的にやろうという方々のこういう対策につきましては、この際ぜひひとつ御検討いただきたい。先ほど申し上げたように、兼業の方は農外収入で補いがつくけれども専業の方はそうはいかないという数字を冒頭に申し上げました。そういうこと等を考え合わせますと、一生懸命やる意欲があって、後継者もおる、ただ歴史的に浅いということで一踏ん張りしなければならないというところに対しての金融上の問題についても、いろいろな厳しい問題があることもよく存じておりますが、ぜひひとつそれらのものを一つ一つ、障害乗り越えて実施の方向に負債対策をしていただきたいと思います。  また、生産者は即消費者だという大臣お話もございましたが、安全な食べ物ということから検査体制のことが同僚委員からも言われておりました。厚生省の方からいろいろな説明がありましたけれども大臣は、国務大臣といいますか閣僚の一員といたしまして、消費者のニーズにこたえるための検査体制につきましてもぜひひとつきちっとした体制ができるように御努力賜りたい。
  133. 京谷昭夫

    京谷政府委員 ただいま先生から提起をされました、今後の肉用牛生産対応といたしましてあらゆる手段を講じて生産コストの低減に努めなければならないということ、まさにそのとおりであろうかと思います。  肉用牛生産に関連をします生産資材は、私どもが直接所管しているものもございますし、関係部局と連絡をとっていくものもございますけれども、それぞれの資材につきまして、その利用の仕方なりあるいは流通価格のあり方について私ども最大限の改善努力をしてまいりたいと思います。  また、自給飼料基盤の整備の一環といたしまして、林野の有効利用あるいは河川敷の有効利用につきましても、関係部局あるいは他省庁とも十分連携を図りながら自給飼料基盤としての活用が図られるよう引き続き努力をしてまいりたいと思います。  それから、畜産の負債問題につきまして従来からいろいろな御議論があるわけでございます。それらを踏まえまして、従来からも既存の制度資金の改善強化等を進めておりますが、特に六十三年度からは御承知のとおり大家畜経営体質強化資金といったようなことで、六十三年以降五カ年にわたる融資制度を創設をしたところでございます。それらの金融上の諸施策を通じまして、大家畜経営の持っております負債の整理あるいは体質強化のためにその活用について特段の努力をしてまいりたいと思います。  また、食品の安全問題でございますが、私自身が所管しております食肉部門につきましてもいろいろ話題があるわけでございます。直接この食品衛生を担当しておりますのは厚生省でございますが、そちらの関係部局とも連絡をとりまして、この問題についても消費者の信頼が確保されますよう努力をしてまいりたいと考える次第でございます。
  134. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 今畜産局長からお答え申し上げましたとおりでございますが、特に国務大臣として心せよという御発言がございました。縦割り行政と言われないよう、横の連絡もとりながら対応してまいりたいと思っております。
  135. 菊池福治郎

    菊池委員長 神田厚君。
  136. 神田厚

    ○神田委員 畜産物価格安定等に関する法律の一部を改正する法律案及び肉用子牛生産安定等特別措置法案について御質問を申し上げます。     〔委員長退席、月原委員長代理着席〕  まず初めに、農政審議会の「二十一世紀へ向けての農政の基本方向」、この第三章におきまして「産業として自立し得る農業の確立」として、大家畜生産については「今後、飼料基盤の拡充を図りつつ、経営体質の強化、飼養規模の拡大を進め、生産性向上を図ることが必要である。」このように述べられております。肉用牛に関しては、具体的な対策として「飼料自給度の向上と粗飼料生産・利用の合理化」「繁殖経営の規模拡大」「合理的な肥育の推進」「繁殖肥育一貫生産の推進」「新技術等を活用した改良増殖の推進と肉用牛資源の拡大」が挙げられておりますけれども、現在この点につきましてどのような事業が実施されているのか、具体的な事業の概要と実情はどうなっているのか、お答えをいただきたいと思います。
  137. 京谷昭夫

    京谷政府委員 一昨年十一月でございますが、先生お話ございますように、農政審議会から農政の基本方向についての報告があったわけでございますが、これを受けまして、御承知のとおり私ども本年二月に大家畜経営部門につきましては「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」を策定、公表したところでございます。この基本方針の中で、ただいま先生からお話のござい ました農政審報告で提示された政策課題をよりブレークダウンをしておりまして、これらを受けまして毎年の施策立案、推進を図っておるわけでございます。  具体的に細々申し上げるのは差し控えたいと思いますが、畜産総合対策といった総合的な畜産関連対策を推進をしますとか、あるいは各種の草地開発事業を通じまして飼料基盤の整備を進めるとか、あるいは各畜種ごとに若干の違いはございますけれども所要の価格対策等を講じまして、これらの施策全体を通じて農政審報告の方向に沿った畜産の誘導に努めておるところでございます。
  138. 神田厚

    ○神田委員 次に、今回の肉用子牛生産安定等特別措置法案は、牛肉輸入自由化我が国の「肉用子牛価格等に及ぼす影響に対処して、当分の間、」肉用子牛に対する不足払いを行うこととしておりますが、この「当分の間、」というのは、我が国肉用牛生産が国際競争力を持ち得るまでの間、いわば保証基準価格合理化目標価格との差がなくなるまでの間と理解されますけれども、具体的にはどの程度の年限を目標としているのか、政策目標としておおむねどのくらいの期間を考えているのか、お答えをいただきます。
  139. 京谷昭夫

    京谷政府委員 ただいま御審議いただいております特別措置法におきまして、子牛生産者に対する生産者補給金等に関する制度及びそれらの政策経費に要する財源として牛肉及び特定牛肉調製品に係る関税収入の相当額を充当していくという措置を講じておりますが、この措置がとられる期間について「当分の間、」という定めをしておるわけでございます。  具体的な考え方としては先生からお話があったとおりでございますが、私どももこの「当分の間、」というものの期間について具体的な年数を現在念頭に置いておるというようなことはございません。考え方としましては、牛肉輸入枠撤廃という大きな変動要素のもとで、我が国肉用牛生産が、特別措置法で考えておりますような子牛価格で見た場合に、保証基準価格合理化目標価格というものが、品質格差、外国産牛肉国内牛肉品質格差を頭に置いて大体対抗していけるというふうな状況ができるまでの間というふうなことで、具体的にそれがいつであるかということについては、国内における生産合理化進展の度合いあるいは内外価格差の状況等々を総合的に勘案をして慎重に判断をすべきものではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  140. 神田厚

    ○神田委員 国産牛肉が国際競争力を持つためには、価格面におきましておおむねどの程度を想定しておるのか。昭和五十八年の酪農振興法改正時におきましてはEC並みの牛肉価格一つの目安とされておりましたが、現在の牛肉価格の内外格差の現状と今後目指すべき目標についてどう考えているのか、お答えをいただきます。
  141. 京谷昭夫

    京谷政府委員 将来的に国内肉用牛生産が外国に対して一定の対抗力を持って存続をしていくためにはどの程度の国内牛肉価格が目標になるのかというお尋ねであろうかと思いますが、率直に申し上げまして、なかなか難しい問題でございます。お話にございましたように、昭和五十八年に酪農振興法改正をして現在の酪肉振興法に変えたときに、国内牛肉価格等についてはEC並みの供給価格にするということが一つの目標として示されたわけでございます。  その当時から今日まで実は国内での生産性向上も大変顕著に進んでおりまして、一九八〇年の為替レートを固定をしてECと日本生産コストの比較をしますと、大体日本一〇〇に対してECが九〇台という程度の接近を見ておりますが、これはレートを固定した場合の数値でございます。ただ、現実には円高が大変顕著に進行しておりまして、内外価格差、ECと比較をした場合には、一九八〇年当時の格差よりもむしろ開いておるというふうな状況がございまして、絶対値といたしましてどの程度の格差にしていくかということについては、私どもとしてもう少し慎重な検討をしたいと考えております。  ただ、牛肉についてのこれからの展望をした場合に、御承知のとおり、自由化後も一定の関税等による国境調整をしていく必要があると我々としては考えております。かつまた、外国産牛肉日本牛肉との間には、相当の品質上の格差がございます。もちろんこれは、和牛の肉あるいは乳用種の肉で若干の違いがございますけれども、そういう品質格差をどの程度考えていけばいいのかというふうな問題がございまして、なかなか厳密な目標値というものは言いがたいのでありますが、現時点での私どものめどとしましては、先般の酪肉基本方針の中にも示しておりますけれども、現在の生産コストを二、三〇%縮減をしていくということが一つの目安たり得るのではないかなというふうに考えております。  もちろん、外国からの輸入牛肉価格というものがどういうふうに動いていくかということは、いろいろな要素がございまして、ただいま私の申し上げましたターゲットをもう少し強化しなければいかぬという事態もあり得ようかと思いますけれども、大変平均的で申し上げますれば、この二月に出しました酪肉基本方針で示しておる生産コストの低減目標、これを着実に実現をしていく、それでその上でどういう対抗力を持っていくのかということをよく判断し、また新たなターゲットが必要であれば、それなりの戦略を考えるということが最も現実的ではなかろうかというふうに考える次第でございます。
  142. 神田厚

    ○神田委員 今回の牛肉輸入につきましては、交渉によって、三年後からの牛肉輸入自由化決定されましたが、自由化後の国内における牛肉需給価格動向については、どういう見通しを持っておりますか。一つの例として、農林水産省農業総合研究所のいわゆる大賀試算等については、この予想値などについてはどういうふうに考えておりますか。
  143. 京谷昭夫

    京谷政府委員 牛肉輸入枠の撤廃を三年後に予定をしておるわけでございますが、そういう事情を織り込んで、今後の牛肉需給価格の展望をどう考えるかということでございます。私どももいろいろなシミュレーションを内部作業としておりますけれども、率直に申し上げまして、一義的な展望が現時点でなかなか持ちがたいというのが正直な状況でございます。  大変大ざっぱな言い方になって恐縮でございますけれども、先ほども触れましたが、この二月につくりました酪肉基本方針で、昭和七十年度の需給見通しを出しております。これでは、需要が基準年の昭和六十年度に比較しまして、七十年には需要で一・五倍程度になる、国内生産は一・二倍程度になるという展望を示しておりますが、これにつきましては、これからの輸入枠撤廃という事態を受けますと、恐らく価格低下等を媒介にいたしまして需要量の増加のテンポというのはもう少し大きくなるのではなかろうか、この酪肉基本方針で示しております需要規模よりももう少し大きなものになるのではないかというふうに私ども考えております。  それから、国内生産でありますけれども、酪肉基本方針自体が相当意欲的な内容を織り込んで考えておりますので、どうも酪肉基本方針で示したレベル、六十年度の水準が、十年後の七十年度には大体一・二倍になるというところが一つの限度ではなかろうかなというふうに考えておるわけでございます。結果といたしまして、酪肉基本方針で七十年度六〇%と言っております自給率、ある程度下がらざるを得ないというふうに考えておるわけでございます。  実は今回の牛肉輸入枠撤廃に伴います将来展望についてのシミュレーション、先生から御指摘ございますように、当省の農業総合研究所の研究員でございます大賀さんが一定のモデルをつくりまして、それにのっとって二〇〇〇年にどんな状態になるだろうかということを個人的な作業として行いまして、これを公表しております。ただいま私が昭和七十年度について大変大ざっぱな表現で申し上げたところを二〇〇〇年に少し拡大をしてこれを説明しておりますが、私どもとしては、当然これからまた将来展望を検討していくわけで ございますので、大賀論文というものも一つの参考資料として活用しながら将来展望をできるだけ早く考えていきたいというふうに考えておるところでございます。
  144. 神田厚

    ○神田委員 素畜費と並んで生産費に占めるウエートの高い飼料費の低減についてはどのように考えておりますか。流通飼料及び自給飼料について、それぞれコスト低減の余地はないのかどうか。低コストの牛肉生産を進めるためには飼料自給度の向上を図ることが必要と言われていますが、今日までどのような対策がとられてきたのか。また、その実績について具体的な数字を示していただきたいと思うのであります。  また、流通飼料については、我が国は基本的に海外に原料を依存せざるを得ない立場にありますが、流通合理化等により農家への供給価格引き下げの可能性はないのかどうか。配合飼料産業の現状、輸入商社、企業数、工場数、経営状況、稼働率、飼料生産量、生産額、流通の実態についてはどのような把握をしているのか、これらについてまた改善する余地はないのかどうか、お答えをいただきます。
  145. 京谷昭夫

    京谷政府委員 国内におきます牛肉あるいは肉用牛生産コストの低減を図る場合におきまして、飼料費の低減を図るということが素畜費の縮減と合わせ大変重要な課題であると考えております。ちなみに、飼料コストの生産コストに占める割合でございますが、肥育牛で見ますと、大体これは乳牛と和牛で若干の差はございますが、流通飼料自給飼料合わせまして肥育経営で大体三割から四割、それから繁殖経営で大体四割を飼料費が占める、こういう状況になっておりますので、その縮減問題というのはコスト低減の上で大変重要な課題であるわけであります。  まず、この飼料費の縮減のためには、流通飼料につきましては結局は農家の取得する流通飼料費というものをできるだけ縮減をするために、供給価格をいかに安定、縮減をするかというふうな問題がございますが、残念ながらこの流通飼料原料は大部分輸入穀物であります。最終的には海外市況の変動にどうしても影響をされるわけでございますが、急激な変動を国内にもたらさないというふうな意味で、御承知のとおり配合飼料価格安定基金制度というふうなものを設けて、急激な変動を防止しておるという状況でございます。また、配合工場の生産効率を高めて、あるいはまた流通行程を合理化して最終の農家取得価格というものを安定、合理化をさせていくということにつきましても努力をしておりまして、また今後、これらに関連する諸制度について改善を要する点がありますれば、私どもとして手をつけていきたいと思っておるわけでございます。  それから、飼料費の第二の柱としまして自給飼料がございます。牧草、それから一部飼料作物がありますけれども、これも生産農家の自家労働等を使いまして自分で生産をしていくということでございますが、この飼料作物、牧草の栽培、これは御承知のとおり、経営土地面積が非常に制約をされておるという中でこれらを栽培する場所をどう確保していくかという問題がございます。また、各種の作物栽培技術の中でこの飼料作物なり牧草に関する栽培技術というものは、我が国の農業の中でも比較的歴史の浅い面がございまして、いろいろまた品種の開発でありますとか栽培管理方法について技術的に改善を要する点が多々あろうかと思います。できるだけこういった自給飼料の経営栽培面積というものをいかにふやしていくか、また、そこにおける単収をいかにふやしていくか、さらに、いかに効率的にそういった栽培を進めていくかということで従来からもいろいろな助成策を講じておるところでございますが、今後引き続きその努力を続けてまいりたいと考えております。  具体的に、特に自給飼料の給与の中で、我が国の場合には牧草等を中心にしました良質な粗飼料の供給というものが大変大切でございます。特に、この粗飼料依存度を牛の生理から見ても確保していかなければいけないというものとして繁殖部門があるわけでございまして、いろいろな対策を通じてその改善をしてきておりますが、良質粗飼料への依存率を繁殖経営について見ますと、最近の状況では、昭和四十年度が大体一七%であったものが昭和五十年で三四%、それから昭和六十年代に入りまして、若干年によって変動はございますが四〇%強、これは可消化養分総量に占める良質粗飼料の割合ということで良質粗飼料自給率の計算をしていますが、そういう数値として御理解をいただきたいと思いますが、漸次良質粗飼料の供給率が高まっておる状況がうかがえるわけでございます。  また、肥育経営につきましては、元来、流通飼料に対する依存が中心でございまして、粗飼料への依存率は大変低水準でございます。最近の状況を申しますと、六十年代に入った状況で、和牛で六%強、それから乳牛で四%程度というふうな粗飼料依存率になっておるのが実情でございます。  それから最後に、流通飼料につきまして、国内での生産供給体制がどのようになっておるのかというふうなお尋ねでございますが、全体として国内配合飼料の年間生産供給量は二千七百万トン弱程度でございますが、これらの配合飼料は企業数にして大体二百社弱、それから工場数で三百弱というふうな業態を持ちましたいわゆる配合飼料業界によって担われておるわけでございます。今申し上げました企業数なり工場数でございますが、企業体の約九割は中小企業でございます。それから、全体の生産供給量の六割程度が中小企業に属する配合飼料関係企業によって担われておる、こういう状況でございます。全体としてこの配合飼料業界は、国内畜産業が比較的順調に拡大を続ける過程ではそれに応じて生産量もふやし、漸次発展をしてきたわけでございますけれども、この数年、総体の生産量は頭打ちの状態になってきております。したがいまして、そういう畜産に供給される配合飼料生産供給量も横ばい状態が見えてきております。したがいまして、この配合飼料の製造、流通を担当しております配合飼料産業は、どちらかといいますと不況色を強めつつある。稼働率で見ましても、既存の施設が一〇〇%稼働していないというふうな状況が一部に見られてきておりまして、特に最近におきましては、そういった事態に対処しまして工場を集約化するとか、あるいは企業間で生産の受委託を結んでできるだけ省力化をして、製造、流通コストを引き下げるというふうな動きを示しておるわけでございます。  そういった全体の状況でございますが、いずれにしましても、流通飼料の安定的な供給のためには、この配合飼料業界というものが安定的に産業として活動を進めていく、あるいはまた適正な競争を維持して適正な配合飼料価格が形成されていくことが大変大事であります。安定と競争というなかなか難しい課題があるわけでございますが、関係業界に対する指導なり、あるいはこれらの産業に関係します諸制度について改善を要する点があるかないか、あるいはまたどのような改善をするかということについて、私どもは逐次努力を積み重ねていきたいというふうに考えておる次第でございます。     〔月原委員長代理退席、委員長着席〕
  146. 神田厚

    ○神田委員 今回の牛肉輸入に関する交渉の経過を見ておりますと、我が国の立場としては、当初から自由化は困難ということを言っておりますが、交渉の内容については交渉中であり、相手のあることなので答弁を差し控えたいと言ってきましたけれども、最終的には三年後の自由化という形で決着しました。  そこで、この際、交渉の経過について、その内容と具体的な彼我の主張と結果について明確にしておくべきである、つまり、今後米の問題等もありますから、牛肉輸入自由化に関する経過的なものを明らかにしてほしいと思うのでありますが、いかがでありますか。
  147. 京谷昭夫

    京谷政府委員 牛肉輸入問題をめぐる対外交渉は大変長い経過を持つわけでございますが、今回の決着を見た、やや狭い意味での交渉経過につ いて申し上げますと、御承知のとおり、たびたび本委員会等でも御論議を賜りましたように、我が方といたしましては、国内肉用牛生産というのが我が国農業の基幹をなすものであって、その存立を確保するという立場で交渉に当たってきたわけでございます。常に大臣の指揮のもとで、私ども関係者は相手側と当たったわけでございますが、大臣からも御報告を申し上げておりますとおり、最終的には輸入数量制限をめぐる大変厳しい国際世論あるいは我が国の置かれております国際的な立場というものを総合的に勘案して、交渉の中で展望の切り開けた国境措置あるいは国内での論議で確保される国内措置というものも勘案をしながら、こういうことで国内肉用牛生産が守れるという決断をして最終決着を得たわけでございます。  その経過の内容については、率直に申し上げまして、外交交渉でございまして、先方の言いぶり、我が方の言いぶりの余り詳細なことにつきましては、先方の立場もございますので一定の限度があろうかと思いますが、申し上げますと、今回の交渉の相手は牛肉につきましてはアメリカと豪州双方であったわけでございますが、基本的には両国とも同じような立場をとっておったということが言えようかと思います。具体的な要求の出し方については、アメリカの方が大変現象形態としてはきつい出方をしたわけでございますが、牛肉輸入問題についてはそもそも交渉の対象にさえなる筋合いのものではないという立場を本年の三月末ぎりぎりまで固執しまして、少なくとも事務的なレベルでは話し合いがスタートできなかったというのがまず最初にあるわけでございます。三月末ぎりぎりになりまして、大臣レベルでやはり話し合いをしていくことが必要ではないかということを先方に言ったわけでございますが、その時点で先方が申した主張点というものは、そもそも牛肉輸入割り当て制度というのはガットルールに違反をする、したがって六十三年の四月一日、年度当初から即時撤廃をすべきである、それから輸入数量制限を撤廃した後の国境措置としてガット上認められているのは関税のみである、しかも日本の置かれている国際経済上の立場を考えれば、現行二五%でございますが、そういったレベルを切り下げるような低率の輸入関税で対応するのが日本国のとるべき態度であるというふうな点を大変執拗に先方は主張をしておったわけでございます。  私どもは既に御承知のようないろいろな主張をしたわけでございますが、その後交渉の経過の中でアメリカ側は即時輸入枠撤廃という考え方を若干譲歩しまして、一定の猶予期間を持つことはやむを得ないと思うという姿勢を示したわけでございますけれども、その場合でも枠を撤廃するまでの経過期間中においては相当急テンポの輸入枠の増大が確保されなければいけない。余り具体的な数値はあれですが、一部報道されておりますように、年率五〇%増というふうな大変大きな輸入枠の増加を要求をしておりました。  それからまた、御承知のとおり、この輸入割り当て制度を前提にいたしまして畜産振興事業団が一元的な輸入体制を現在とっておるわけでございますが、畜産振興事業団による一元的輸人を即時撤廃すべきであるというふうな主張をいたしまして折り合いがつかなかった。かつまた、そういった双方の膠着状態のもとでアメリカ側はガット提訴をいたしまして、五月四日にはパネルを設置するというふうなことまでもとったわけでございますが、いずれにしましてもそういう経過を踏みまして、最終決着の内容に示されておるような内容で、アメリカ側の譲歩を私どもとしても確保しながら、最終決着をつけたという経過でございます。
  148. 神田厚

    ○神田委員 時間が来ましたから、終わります。
  149. 菊池福治郎

    菊池委員長 藤田スミ君。
  150. 藤田スミ

    ○藤田委員 私は、最初に米問題を少しお尋ねをしておきたいと思います。  午前中もありましたけれども、十月二十八日に、ヤイター米国通商代表部代表は、RMA日本の米市場開放を求めた提訴却下するに際し、「日本がモントリオール会議で農業討議を前進させない場合、または、同ラウンドでコメ問題を解決する気がないことが明らかになった場合、私はこの決定を再考する用意があり、さらに、三〇一条提訴を即時再提出することを歓迎する。その際に私はレーガン政権下で提訴を受理するかどうかの決定を下す。」と米の市場開放を強要する条件をつけたわけであります。  大臣は、午前中の御答弁の中でも、覇権主義を思わせるような言葉はまことに遺憾だというふうにおっしゃいました。私も同感であります。アメリカ日本の国を一つの州くらいにしか考えていないのじゃないか、私はこれを読みましたときにそう強く感じました。  そこでお尋ねをいたしますが、たとえアメリカからこのような条件がつけられても、加工用米を含めて市場開放はしないとのお考えに変わりはありませんか。
  151. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 米は日本国民の主食であり、かつ我が国農業の基幹をなすものであります。また、水田稲作は、国土や自然環境の保全、地域経済上不可欠の役割を果たしているのみならず、我が国の伝統的文化の形成とも深く結びついており、国民全体にとっての重大関心事であります。このような米及び稲作の重要性にかんがみ、国会における決議等の趣旨を体し、今後とも生産性向上を図りつつ、国内産で自給するとの基本的な方針で対処してまいりたいと考えております。  米の貿易問題についての我が国の立場は、現在進行中のウルグアイ・ラウンドの場で各国が抱える農業問題及び制度について議論を行う段階になれば、米の問題を含むあらゆる農業問題を討議するにやぶさかでないということであります。米国政府には、我が国における米の格別の重要性を十分踏まえ、日米友好関係の維持という観点に立って本件について慎重に取り扱うよう求め、また、我が国としてはこれまでのウルグアイ・ラウンドに臨む基本的立場に立って遺憾のないよう対処していかなければならぬと考えております。
  152. 藤田スミ

    ○藤田委員 大変おっしゃるお言葉は立派なんですが、大臣、竹下総理は九月末にレーガン大統領あてに親書を出して、その中で「日本は新ラウンドの進展のために積極的な貢献を果たすとともに、他の諸国がかかえる農業問題とともにコメ問題を議論し、その結論に従うのはいうまでもない」、こういうふうに述べているわけです。これでは、新ラウンドで米の市場開放を求められたら、市場開放するということではないでしょうか。こういう妥協的な姿勢が、これは浜田外務政務次官の発言でもそうなのですが、米の市場開放に道をつけることになるわけであります。米を牛肉・オレンジの二の舞にしない。そういう点で私はもう一度重ねて聞きますが、この点だけ答えてください。ウルグアイ・ラウンドが終わっても米の市場開放は加工用米も含めて行わない、そういう明確な見通しを示していただきたいのです。
  153. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 加工用米についても、従来言ってきた方針に変わりございません。
  154. 藤田スミ

    ○藤田委員 私はきょうは議論する時間がありませんので言いませんけれども、外務省幹部の中でも、もはやこれまでのように米は絶対に入れさせないなんと言っていられない環境だとか、米のミニマムアクセスを認めなければならないとか、食糧庁は、今やあらゆる議論が米の市場開放を前提に行われていて、当面は加工用米だ、こういうことを言われているわけです。牛肉・オレンジの自由化問題が大変問題になっておりましたときに、政府の姿勢を指して農民の方は、牛に引かれて米が来る、こういう予言をされました。私は、この農民の声を大臣の肝に銘じておいていただきたいのであります。そして、大臣が自給を守ると言われるなら、加工用米も含めて守る、そういうふうに言われている、少なくとも先ほどの答弁はそういうことなんだというふうに理解をいたしますが、よろしいですか。
  155. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 そういうことを言ったつもりでございますが、何遍でも同じことは言います。
  156. 藤田スミ

    ○藤田委員 私ども日本共産党は、牛肉・オレンジの政府による自由化宣言後、北海道、岩手、福島、兵庫、鹿児島の肉用牛生産地や酪農地帯、そして和歌山、愛媛、福岡のかんきつ生産地を訪問し、多くの農民、農協、自治体関係者の意見を聞いて生産の実情を調査してまいりました。そこで出された農民の声は、自由化を決めた政府・自民党に対する厳しい非難にあふれていました。私はここで全部を紹介することができませんが、せっかく聞いてきた声ですから、一言聞いておいてもらいたいと思うのです。  「政府は私たちを人間と思っていないのではないか。私たちは捨てられた。」こう言いました。「肥育農家はぎりぎりのことをやっている。ほっといたら我々の生きる権利さえも剥奪される。」こう言って唇をかみしめました。そして、「自由化や農政の大転換という荒っぽい政策がとられているのだから、我々の対応も荒っぼくならざるを得ない。」こんな言い方もしました。「自民党の一党独裁を許しておいたのでは日本の農業はだめになる。」こういうことも言いました。そして、「農業高校を経て農業短大を今年三月に卒業した青年が、農業を継ぐのを断念した。」長老はこう言うのです。「自分は懸命にとめたが、農産物八品目に次ぐ牛肉自由化、そして米までも自由化が迫られる事態の中で、説得はむなしかった。自由化はやむを得ないと言っていたのでは、死ぬほかない。生き延びるためには、政策を百八十度転換する必要がある。」私はこの長老の声こそ本当に今農民を代表する声だというふうに聞いたのです。そして、農業後継者の若い青年はこう言うのです。せっかく思いを決めて親の跡を継いだけれども、暗いトンネルの中に閉じ込められたような思いがする、明るい展望が見えない、新聞を広げたら思わず社員募集の欄に目が向いてしまう。  大臣、私は消費者の一人として、同時にその生産地で私自身消費者の生きる基盤、それがガラガラと崩れる音を立てているような思いがしたわけであります。この農業荒廃を推し進めるものが今回の牛肉・オレンジの自由化でありますが、大臣はどう受けとめておられるか、もう一度聞かせてください。
  157. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 私もいろいろな現場を歩いてみて、いろいろなせつない思いをしてきたこともしばしばでございます。今日の肩書ある前にも、そういうことで私もあなたほどではないかもしらぬが相当な経験をしてきたつもりでございます。しかし、私は今おっしゃったようなうまい表現はどうもやりにくいのであります。  率直に申し上げますと、先ほど来、外務省ではこう言った、食糧庁ではどうだとかこうだとかといろいろございました。全部覚えていませんが、後で議事録を読みます。そういう中で、あれがこう言うた、これが言うたということがまたは日本全体の意向であるがごとくこの場からワシントンに報道されたのでは、私は小さい声でなくて大きい声も出さねばならぬ。そういうことで、ここでの場は公の場でございます。私も責任ある立場でございます。責任ある答弁をいたしておるつもりでございます。特に一党独裁というお話もございましたけれども、私は先般の超党派による国会決議にも政府を代表して所信を申し述べました。率直にその御見解を頭の中に入れ、それを引用してまた答弁もしておる。決して独裁的なやり方はとっておりません。そういうこともひとつ感じ取っていただければ幸いだろうと思います。いやそんな、佐藤、おまえが言うほど悪う言うてんじゃないと多分あなたはおっしゃるでしょう。そうであってほしいなと思います。
  158. 藤田スミ

    ○藤田委員 そこでまず、今回の牛肉・オレンジの自由化の性格について聞きたいわけであります。  六月二十日に佐藤大臣はヤイター通商代表との間で牛肉・オレンジ自由化の合意をし、合意文書を取り交わされました。これは外交上条約なのか協定なのか、また国と国との関係で決められたものか、立法府を拘束するものか、まず明らかにしてください。
  159. 塩飽二郎

    ○塩飽政府委員 御指摘の文書は、ことしの六月二十日に牛肉・かんきつ問題につきましてヤイター代表、佐藤大臣の間で実質合意に達した際に、佐藤大臣とヤイター代表が署名をした文書のことを言われているのだろうと思います。  この文書は、交渉が実質的に合意されたこと、及び松永大使・ヤイター代表間の書簡の交換を早期に行うことを確認した文書でございます。その後、七月五日に閣議決定を経た上で、同日付のヤイター・松永書簡交換によって正式に合意内容を確定したということでございます。
  160. 藤田スミ

    ○藤田委員 政府が国会及び農民の強い反対がある中で、政府みずから自由化を表明されたとされるヤイター通商代表あての松永大使書簡では、こう書いてあるのです。「本使は、日本政府にかわって生鮮オレンジ、オレンジ果汁、オレンジ混合果汁、グレープフルーツ、牛肉及びその他の品目の輸入に関し、国会の承認を含む所要の国内手続に従うことを条件として、附属書及び同別添に定める市場開放措置を実施する意図を有することを貴官に通報する光栄を有します。」となっています。この中の「国会の承認」とは何を指すのでしょうか。
  161. 塩飽二郎

    ○塩飽政府委員 御指摘の「国会の承認」とは何を指すのかというのは、我が国のとる今回の牛肉・かんきつ、その他の関連の産品につきましての市場開放措置が国会の承認を含む所要の国内手続に従うことを条件として実施されるべきものであるという趣旨を明らかにしているわけでございますけれども、具体的には例えば関税の引き下げ等は当然国会の議決を要する措置でありますから、そういうものについては国会の議決を得られた後に初めて実施し得るものであるということを明らかにしている趣旨でございます。
  162. 藤田スミ

    ○藤田委員 畜産物価格安定法、これはどうなんですか。
  163. 塩飽二郎

    ○塩飽政府委員 今回提案申し上げております畜安法の改正の中で畜産振興事業団の牛肉輸入についての条文の改正が入っているわけでございますが、これまでの畜産振興事業団による牛肉輸入制度が今回の市場開放措置に伴って変わってくるわけでございまして、その法律は当然今回法案の中でお願いしているということで、こういったものが当然含まれるわけでございます。
  164. 藤田スミ

    ○藤田委員 そうすると、関税定率法及び畜産物価格安定法の成立を条件として自由化することを表明したわけですから、当然これらの法律が成立しなければ自由化ができないということになりますね。そうではありませんか。逆に言うと、畜安法と関税定率法は自由化承認法としての性格を持っている。そうではありませんか。
  165. 京谷昭夫

    京谷政府委員 私どもの見解を申し上げます。  牛肉についての輸入数量制限を行うかどうかということは、それ自体形式上は行政府の権限に属しておりまして、貿管令上の手続をとることによって決定をされることと思います。一方、アメリカとの政府間の合意の中で、この輸入制限をやめることに伴いましてあるいはそのことと関連をして、国内措置として日本国がとっております関税率なり畜産振興事業団による一元的な輸入、そういうシステムについてアメリカ側との間で一定の約束を政府間で行いましたので、それを実行する手段として法律改正を要する事項がございますので、その点については国会の御承認を得る必要があろうということで、畜産振興事業団による一元的な輸入牛肉の管理というシステムについては昭和六十六年度以降これを廃止することを織り込んだ法案を今回御提案申し上げ、御審議を賜っておる。それから、関税定率法については大蔵省の所管でございますので、所要の時期に、この政府間の日米合意の内容に即した法律改正について国会での御審議を賜るべく、大蔵省の方からしかるべき時期に御提案を申し上げることになるのではないかと考えておるわけでございます。
  166. 藤田スミ

    ○藤田委員 御答弁は私が聞いたとおり、この法律が成立しなければ自由化は実施できないということを認めていらっしゃるわけです。  今回の牛肉・オレンジの自由化については、我 が党は、国会承認条約と同じ水準のものであると考えています。政府見解によれば、国会承認条約の第一のカテゴリー、概念として、いわゆる法律事項を含む国際約束が挙げられています。議事録を見ますと、「国会の立法権にかかわるような約束を内容として含む国際約束の締結には当然国会の承認が必要であります。」となっているわけです。そして、その前段では「議会制民主主義制度のもとにおいて国会の条約審議権を十分に尊重することは政府の当然の責務であり、なかんずく国民の権利義務に対し重大な影響を与えるような条約につきましては、国会の審議を十分に尽くしていただかなければならないことは言うまでもありません。」と国会の審議権の尊重をうたっています。  大臣、本来、牛肉・オレンジの自由化についてはその当否を国会にかける、それが政府の当然の責務だったのではありませんか。
  167. 塩飽二郎

    ○塩飽政府委員 先ほど畜産局長からも御答弁申し上げたように、今回の牛肉・かんきつの対米あるいは対豪の合意の内容につきましては、関税の改正あるいは事業団の法の改正、畜安法の改正といったような点で国会の承認に係る事項が関連しているわけでございますが、自由化そのものについては貿管令に基づく行政措置対応し得るものでございます。いずれにいたしましても、今回の一連措置については、その必要の部分につきましては、当然国会の御承認が必要なわけでございますが、その決着内容については、大変厳しい輸入制限をめぐる内外の動向あるいは我が国の置かれておる国際的な立場を考慮いたしまして、新たな国境措置の導入と国内対策により現行の輸入数量制限に代替し得る可能性も探求した結果の牛肉・かんきつ生産存立を守り得るぎりぎりの線であるという判断に立って行われたものでございます。
  168. 藤田スミ

    ○藤田委員 私はこれは重大な問題だと思うのです。だれが、大臣とヤイター氏との調印場面を見て、これが国際約束でないというふうに思うでしょうか。牛肉・オレンジの自由化は、それまでの経緯を見、そして決着内容を見るならば、重大な国際約束であることは明らかであります。それをそうでないというのは全くの詭弁でありまして、その詭弁を使って国会審議を免れようとしたら、これは国会の審議権の重大な軽視と言っても言い過ぎではないと思うのですが、もう一度大臣のお考えを聞かせてください。
  169. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 現実政治といたしまして、アメリカとの長きにわたる交渉経緯がある。それを現政府同士で、その責任の衝に当たったのが、日本政府は私である、こういうことでございます。外交交渉権は政府が持っておることは御案内のとおりでございます。その交渉をした結果について、それだけで済むのではなくて、国境措置国内措置を通じて牛肉・かんきつの存立を守るということでただいまこの委員会畜産二法も御審議をいただいておるわけでございます。  そういうことについて、一連の法解釈について法制局の見解がどうなのか、法律的にはいろいろ議論のあるところではないかな、私はそう思っております。しかるべくこれは法制局の見解も聞かなければ、ただ一方的にあなたからそれは国会軽視ではないかと言われても、さようでございますと答えるわけにはまいりません。
  170. 藤田スミ

    ○藤田委員 私は、これは大平外務大臣の発言で、これが私の調べました政府見解の最も新しいものであり、かつ、それ以後このカテゴリーは変わっていないということを確認した上で質問をしているわけであります。  今回の自由化が実際のところ法改正を約束した条約であることは明らかです。そして、この政府の示した見解に基づくならば、ここで言われている「なかんずく国民の権利義務に対し重大な影響を与える」もの、まさに農民の生存権にかかわる重大な問題と言わなければなりません。したがって、この牛肉・オレンジの自由化は、国会でそのこと自体の当否を審議判断すべき性格のものであったと思います。当然、そうなれば大きな政治問題になり、税制国会にも重大な影響を与えたでしょうし、今回のようにわずか十時間三十分余りの審議で済まされるということもできなかったでしょう。政府はそれを避けるために、書簡の文面を技術的に変更し条約の体裁をとらなかった、そして国内対策という体裁をとりながら、自由化の当否についてももう済んでしまったのだ、そういうような形で事を進めていかれたということは、大臣がおっしゃったように議会制民主主義の重大な侵害だということを申し上げて、私は畜産物価格安定等に関する法律の一部改正案についてお尋ねを進めていきます。  この畜安法の改正の中心は、牛肉の事業団による一元輸入を規定している第七条の削除であります。この第七条は、大臣も御承知のように、昭和五十年に全会派賛成の議員立法によって盛り込まれたものであります。  当時の国内牛肉生産は、オイルショックをきっかけとする飼料の高騰、そして不況による牛肉消費の低迷と牛肉輸入の増大による肉牛価格の暴落で深刻な打撃を受け、経営破綻農家が続出した時期でありました。その中で、多大な審議時間を使って国内畜産農家の保護のために牛肉輸入について規制措置が必要であるということで盛り込まれたものです。私はあのときに質疑されたこの委員会での議事録を全部読ませてもらいましたが、大変すばらしい議論が展開されています。このように畜安法第七条は国会の総意として、すなわち国民の総意として位置づけられたものであると言わねばなりません。それを政府が一方的に第七条を削除する改正案を出したということについて、大臣としてどのような御感想をお持ちでしょうか。
  171. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 今の御質問には畜産局長から答えます。  前段の質問というよりも意見について、すうっと法律の審議に入っていかれたので私の出番がなかったので、ちょっと答えさせていただきたいと思います。  日米両国政府で、そういう表現は使われないけれども、いいかげんなことをやった、そしてその後国内措置という名をかりて、こういうことがございましたけれども、それはそんな悪意に満ちた進め方をしているわけじゃないです。まさに農業者であっても、日本国民全体の生存権、それをちゃんと頭の中に置きながら、お互いが生きていくためにはどうするか、難しい国際化の中で孤立をしてはならない、しかし、同時にまた我が国の食糧政策考えると、これは我々は国内措置をもって、そして足らざるところを補って牛肉・かんきつの存立を守る、こういうことを繰り返し繰り返し申し上げて進めてきたことだけはここに念を押しておきたいと思います。
  172. 京谷昭夫

    京谷政府委員 ただいまの大臣の御答弁にかかわる問題について若干補足をさせていただきますと、先般の日米あるいは日豪政府間における合意自体が国会の承認を要するものではないかという御見解については、私どもあくまでそれは行政府同士の一定の約束であるという理解でございます。ただ、それを履行する手段として関税定率法の改正あるいは畜産物価格安定法の改正といったような日本国内措置が必要であるという観点で、順次国会の御審議を賜った上でその決定をしていきたいということを考えておりますことを御理解いただきたいと思います。  それから、畜産物価格安定法第七条の問題でございますが、今回の一部改正案におきましてこれを削除することを御提案申し上げております。この規定が、昭和五十年に行われました畜産物価格安定法の一部改正の際に牛肉を指定食肉の対象に追加をしたわけでございますが、その際に、国会における審議の過程で議員修正により追加されましたものであることは御指摘のとおりでございますが、その趣旨は、あくまでも牛肉輸入割り当て制度が存在しておることを前提として意味のある規定になっておるわけでございます。しかしながら、先般の日米日豪間における交渉の結果、牛肉についての輸入割り当て制度は昭和六十六年 四月から撤廃することとしておるわけでございます。この撤廃自体は、先ほども申し上げましたとおり貿管令に基づきます通産省告示の改正措置をもって行政府が実行をできる措置であると理解しておるわけでございます。いずれにしましても、この輸入割り当て制度が六十六年四月から廃止されることになりますと、事業団が輸入牛肉について一元的管理という形で関与していく実質的な意味が失われるわけでございますので、私どもとしては、それに関連する規定をこの際削るという内容をもちまして今回の政府提案法案の中に織り込んで御審議を賜っておるものでございますので、そういう意味で御審議を賜り、御了解をいただければありがたいと考えておる次第でございます。
  173. 藤田スミ

    ○藤田委員 私が申し上げたことに反論をいろいろつけ加えられたつもりでしょうが、後に議事録を見ていただけば、私が引用したのは私が勝手にしゃべっているのではなしに、時の外務大臣である大平さんが非常に格調の高いお言葉で議会制民主主義という立場で「国会の承認を経るべき条約についてでございますが、」「何々条約という名称を有するものに限られませんが、」ということで、国と国との約束をする場合云々と書いてあるわけです。後で議事録をよく読んでください。  第七条は国家貿易条項とも言われているものなんです。そこでお伺いしますが、政府は昭和六十一年十一月にガットに対して牛肉が国家貿易品目である旨の通報を行ったとされていますが、第七条との関係を含めて経緯をお示しいただきたいわけです。また、国家貿易品目につきましては、我が国輸入数量制限廃止義務の例外になるという立場をとってきたはずでありますが、この際、簡単で結構ですから、アメリカ日本考え方を示してください。
  174. 京谷昭夫

    京谷政府委員 まず、牛肉につきまして、昭和六十一年十一月に我が国がガットに対して国家貿易品目としての通報を行ったことは御指摘のとおりでございます。この通報をその時期に行いましたのは、昭和五十年の畜安法一部改正の際に加えられた畜安法第七条の規定に基づきましてその後の牛肉輸入につきまして畜産振興事業団が一元的な牛肉輸入管理を行うという事態が継続をしたわけでございます。それが定着をするまでの間、国際的に国家貿易としての評価をなかなか受けがたいのではないかということでガット上の手続を行わなかったわけでございますが、その後いろいろな対外交渉の機会等を通じまして一部輸出国から、日本国の行っております輸入牛肉輸入実態というものは形式上ガットで決めておりますいわゆる国家貿易に該当するものではないか、そういう実態を備えているものであればガット上通報義務を負っておるわけでありますから、その手続を実施しておくべきである、こういう示唆もたびたび指摘されたわけでございます。したがいまして、いわば若干手続を行うことを期待しておりましたものを、六十一年十一月にガットに決められております通報の形式を備えまして所要の手続を進めたということでございます。その意味では、畜安法第七条に基づいて行われております畜産振興事業団の一元的な輸入牛肉の管理状態がガットの十七条に決めております国家貿易の要件に該当するものであるということを通報しておるという状態であります。このことに伴いまして、当然のことながら、ガット上のこの国家貿易に該当するものについては、その輸入業務に伴います差益の発生状況でありますとか輸入量状況というものをガットに通報連絡していくという義務をその後履行しておる、こういう状況でございます。  なお、国家貿易という形態を備えた貿易につきまして、数量制限がどういう評価を受けることになるかということについてガットの場でもいろいろ論議がございます。結論的に申しますと、先般の農産物十二品目に関するパネルにおける裁定結果を申し上げますと、国家貿易なるがゆえをもって当然に輸入数量制限が是認をされる、そういうものではないという判断がガットパネルにおいては示されておるところでございます。
  175. 藤田スミ

    ○藤田委員 日本考え方を私が述べたわけですけれども、国家貿易品目はガット上認められてきた権利なんです。そして、国家貿易品目による輸入数量制限については、アメリカ生産制限などの要件がなければ輸入数量制限は認められないという攻撃を行ってきているわけですが、これに対して我が国も毅然と対処しなければならないときであるはずなんです。このようなときにガット上認められている国家貿易の権利をもう自分から放棄するということは、日本は国家貿易の権利を軽く見ているとそれこそ国際的な評価を受けて、ひいては国家貿易品目である米あるいは乳製品への自由化圧力を高めることは必至、こういうことになっていくんじゃないでしょうか。みずからそういう自由化に踏み込まれる危険を招くことになっていくんじゃないでしょうか。私はこのことを大臣から御答弁を求めたいわけです。
  176. 京谷昭夫

    京谷政府委員 ガット上、国家貿易という形態が認められておることは事実でございます。しかしながら、先般の我が国の農産物十二品目にかかわるパネルにおきまして、この問題についてガットパネルの一つの判断が示されたわけでございますが、それを見る限り、先ほど申し上げましたとおり、国家貿易という形態であるがゆえに輸入数量の制限が当然に正当化されるということはガットルールでは認められていないというのがパネルの判断であると私ども理解をしております。
  177. 藤田スミ

    ○藤田委員 そのガットパネルの判断こそ、我が国が従来の見解を放棄し、そうしてアメリカ意見に基づくものだと言わなければなりません。  そこで、八七年六月に農林水産省が出しました「我が国牛肉輸入肉用牛生産について」という文書の中で、「牛肉輸入自由化した場合、短期的には国内牛肉価格低下がもたらされるものの、中長期的には国内生産の大幅な縮小あるいは潰滅の結果、輸入依存度及び国際牛肉市場に占める我が国輸入量の割合が著しく高まり、輸入価格は上昇基調をたどる」という見解を明らかにしております。  もともと牛肉生産量に占める貿易量の割合は八%、口蹄疫汚染地域からの輸出を除きますとたったの四%にすぎません。牛肉の輸出余力は米と並んで非常に低く、世界市場は不安定です。だからこそ他の国々も、価格変動も大きいだろうということで何らかの形で輸入制限をしているのです。いわんや、我が国牛肉自給率が非常に低い、主要国じゅうの中で最低だと言われている中で、あなた方も自由化をすることがいかに危険であるかということを、昨年の六月、わずか一年前に明らかにしたのじゃありませんか。この点の見解を示してください。  時間がありませんから、もう一つあわせて言いますけれども、農水省の農業総合研究所は、日本牛肉輸入を完全に自由化すれば、二十一世初頭の和牛生産は十分の一に減り、牛肉自給率は現在の六九%から一八%に急落するとの試算を明らかにしました。経済企画庁はことし五月発表の「地域経済レポート——構造調整の進展する地域経済」の中で、牛肉・オレンジ、農産物十二品目が輸入自由化された場合、粗生産額で一兆五千百四十九億円、農家数で百二十万戸に影響が及ぶと試算しております。これは農業への直接的影響であります。農業生産額が一〇%、一兆一千六百三十四億円減少すれば、関連産業への波及分としてほぼ同額の一兆二百八十七億円減少するという農水省が昨年行った試算に基づけば、自由化が及ぼす影響は合計で三兆円近くになります。このような農業、国民経済に重大な影響を与える牛肉・オレンジの自由化問題について、この影響の問題についてどういう見解を持っていらっしゃるか、聞かせていただきたい。
  178. 京谷昭夫

    京谷政府委員 まず最初の、昨年六月の「我が国牛肉輸入肉用牛生産について」という文書のことでございますが、これは昨年六月ごろ、牛肉市場開放問題等をめぐる世論動向にかんがみまして、畜産振興事業団が広報事業の一環として農政調査委員会に委託いたしまして、ジャーナリスト等の関係者によって構成される畜産フォーラ ムを形成していろいろな御意見を拝聴した機会に、畜産振興事業団がこのフォーラムの場での議論に供するために提出した文書でございまして、農林水産省の公式見解というふうなものではございません。  いずれにしましても、この中で無原則に牛肉輸入自由化が行われた場合に生ずるであろう諸問題についていろいろな懸念が示されておりまするし、そのような懸念は確かに存在したわけでございます。私ども、今回の交渉の決着に当たりましては、繰り返し申し上げておりますように、輸入枠撤廃後の国境措置でありますとか、あるいは国内対策について、今回御審議を賜っております特別措置法等によりまして所要の対策を講ずることによって、当時表明されており、また、この文書にも示されておりますような懸念が縮小ないしは払拭されるものと考えておりますし、また、そのために私ども今後努力をしていきたいと考えておるわけでございます。  それからもう一つは、農林水産省の総合研究所の研究員が個人的な研究結果としまして牛肉自由化された場合のいろいろなシミュレーションを研究成果の一つとして公表しておること、私ども承知をしております。しかし、これはあくまでも個人的な立場でのシミュレーションでございまして、私ども、そのような事態を招かないように御審議を賜っておりますいろいろな国内措置でありますとか国境措置を実現をしていこうということでございます。恐らく、当時のシミュレーションをつくった同じ当事者が今回の国内措置あるいは国境措置を織り込んだシミュレーションを行いますと、また相当違った将来予測が出てくるものであるというふうに私ども考えております。
  179. 藤田スミ

    ○藤田委員 それだったら、そういうシミュレーションをあらかじめ出すのが筋ではありませんか。  時間がありませんからこれで終わりますが、国境措置国内対策でこれらの懸念を縮小し、あるいは払拭されるかどうかという問題については来週の法案の審議に譲って、きょうの質問は終わりたいと思います。
  180. 菊池福治郎

    菊池委員長 次回は、来る八日火曜日午前九時三十分理事会、午前九時四十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十一分散会