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1988-11-08 第113回国会 衆議院 内閣委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十一月八日(火曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 竹中 修一君    理事 近岡理一郎君 理事 月原 茂皓君    理事 戸塚 進也君 理事 前田 武志君    理事 官下 創平君 理事 田口 健二君    理事 竹内 勝彦君 理事 和田 一仁君       江藤 隆美君    尾形 智矩君       大村 襄治君    河野 洋平君       鴻池 祥肇君    佐藤 静雄君       武部  勤君    平林 鴻三君       三原 朝彦君    宮里 松正君       村井  仁君    森下 元晴君       谷津 義男君    五十嵐広三君       角屋堅次郎君    中沢 健次君       広瀬 秀吉君    井上 和久君       鈴切 康雄君    中村  巖君       川端 達夫君    浦井  洋君       柴田 睦夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総務庁長官) 高鳥  修君  出席政府委員         人事院総裁   内海  倫君         人事院事務総局         任用局長    森園 幸男君         人事院事務総局         職員局長    川崎 正道君         総務庁長官官房         長       山田 馨司君         総務庁人事局長 勝又 博明君         総務庁行政管理         局長      百崎  英君         総務庁行政管理         局行政情報シス         テム参事官   重富吉之助君         総務庁統計局長 田中 宏樹君         経済企画庁国民         生活局長    末木凰太郎君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部外勤課長  西山 正樹君         経済企画庁国民         生活局消費者行         政第一課長   川名 英子君         法務大臣官房秘         書課長     長山 頼興君         法務省刑事局刑         事課長     古川 元晴君         法務省矯正局保         安課長     中間 敬夫君         大蔵大臣官房企         画官      白須 光美君         国税庁長官官房         企画課長    増原 義剛君         文部大臣官房政         策課情報処理室         長       三浦 猛夫君         文部省初等中等         教育局小学校課         長       菊川  治君         文部省高等教育         局大学課長   泊  龍雄君         厚生省保健医療         局管理課長   矢野 朝水君         社会保険庁社会         保険業務セン         ター総務部長  宮島  彰君         郵政省電気通信         局電気通信事業         部業務課長   濱田 弘二君         自治省行政局公         務員部公務員第         二課長     佐藤  信君         内閣委員会調査         室長      岩渕  静君     ───────────── 委員の異動 十一月四日  辞任         補欠選任   井上 和久君     市川 雄一君 同日  辞任         補欠選任   市川 雄一君     井上 和久君 同月八日  辞任         補欠選任   有馬 元治君     三原 朝彦君   石川 要三君     武部  勤君   奥野 誠亮君     平林 鴻三君   河本 敏夫君     鴻池 祥肇君   武藤 嘉文君     佐藤 静雄君   谷津 義男君     尾形 智矩君   大出  俊君     中沢 健次君   鈴切 康雄君     中村  巖君 同日  辞任         補欠選任   尾形 智矩君     谷津 義男君   鴻池 祥肇君     河本 敏夫君   佐藤 静雄君     武藤 嘉文君   武部  勤君     石川 要三君   平林 鴻三君     奥野 誠亮君   三原 朝彦君     有馬 元治君   中沢 健次君     大出  俊君   中村  巖君     鈴切 康雄君     ───────────── 十一月七日  寒冷地手当加算額切り下げ反対等に関する請願柴田睦夫紹介)(第二二四二号)  国家機密法制定反対に関する請願安藤巖紹介)(第二二四三号)  同(中路雅弘紹介)(第二三一七号)  同(松本善明紹介)(第二三一八号)  同(安藤巖紹介)(第二三八五号)  同(石井郁子紹介)(第二三八六号)  同(柴田睦夫紹介)(第二三八七号)  旧軍人軍属恩給欠格者救済に関する請願鯨岡兵輔紹介)(第二三五六号)  旧軍人軍属恩給欠格者救済に関する請願園田博之紹介)(第二三五七号)  スパイ防止法制定に関する請願原田昇左右紹介)(第二三五八号) は本委員会に付託された。     ───────────── 十一月七日  旧軍人軍属恩給欠格者救済に関する陳情書外四件(第一三一号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案内閣提出、第百十二回国会閣法第八二号)  統計法及び統計報告調整法の一部を改正する法律案内閣提出、第百十二回国会閣法第八三号)  行政機関の休日に関する法律案内閣提出第九号)  一般職職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第一〇号)      ────◇─────
  2. 竹中修一

    竹中委員長 これより会議を開きます。  第百十二回国会内閣提出行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案、及び統計法及び統計報告調整法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。広瀬秀吉君。
  3. 広瀬秀吉

    広瀬委員 ただいま議題になっておりますいわゆる個人情報保護に関する法律案に対しまして、若干の質問をいたしたいと思います。  この法案、これは日本にとりましてはまことに新しい分野の問題であるわけであります。世界的にも、大体一九六〇年代から始まって七〇年代に次々に各国でこの種の法律ができた、こういうようなことで非常に歴史も新しいし、日本にとっては長く叫ばれながら今日までこの種の法案が出てこなかったわけでありますが、個人情報保護する、これはマスコミ等ではプライバシー保護法というような言い方もいたしておるわけであります。そういうようなことで、やはり日本国憲法国民主権を鮮明にいたしておりますし、主権者である国民個人として憲法十三条によってその尊厳を保障される、こういう状況になっておるわけでありますから、この種の法律が出てくることは憲法体制の中で必然的なことであると私は思うわけであります。そして、その要請にいささかでもこたえようということで今回この法律が出されたことについて、私は、日本憲法体制における個人尊厳を保障する、個人人格の尊重というような立場にいささかでも立った法案として一定評価をすべきであろう、このように考えるわけであります。  ただ、私ども子細にこの法案を検討してみますると、なるほど世界的ないろいろな経過がございまして、特にOECDのいわゆるガイドライン項目というようなものをある程度法文の中に盛り込んでおるわけでありますが、そういうものに対して余りにも除外規定や不適用という条項が多過ぎてその原則がもろに生かされていない、率直に生かされていない、そういうことで、むしろこれはない方が、まだもう少し練り直して出直した方がいいのじゃないかというような議論も私どもの党内でも率直に言ってございました。  しかし、一定の新しい時代にふさわしい国民権利保護するという立場で、そういう不備な点あるいは極めて不十分な点があるにもせよ、一歩なり半歩なりの前進であるという立場で真剣にこの問題を審議をしていきたい、こう思っておるわけであります。そしてよりよきものをつくっていきたい、そういう立場質問をさせていただきたいのですが、そういう立場を踏まえまして、私は真っ先に、総務庁に一言私の一番不満に思った点を質問しておきたいのです。  去る二十五日この委員会で、我が党と共同会派を組んでおります社民連の江田議員質問をいたしました際に、行政機関電子計算機処理によって保有するデータというのは一体どれくらい存在をするのかということを資料として示してもらいたいということを要求をいたしましたら、それは二週間くらいかかりますというようなことを言われた。こういうことでありましたが、事実はその翌々日各党理事データをお示しいただいたというようなことであります。なぜそういうことになるのかなということに疑問を感ぜざるを得ないわけであります。  これだけの画期的な新しい法案を出すに当たって、それなりの今日まで日本行政機関がどれくらいの個人情報収集し保有しているか、ファイルしているかというようなことについては、この法案をつくろうというのも大体七、八年前にさかのぼっていろいろな審議会が行われたり、加藤委員会があったり林委員会があったり、そして、その間にOECD原則がその後出ておるというようなことなんかもございまして、それなりにそういう問題意識というものは政府部内にも高まってきておったし、また国民世論としても相当高まってきておったはずでありますから、それだけの資料というようなものをきちんと整備をして、現状をきちんと把握した上でこのような法案も出されるに至ったと思うわけでありますから、ちゃんとそれぐらいの資料主管庁である総務庁も準備をしておったに違いない。  本来ならば、この法案提出すると同時にそのくらいの資料は、これだけ今現状日本でも行政機関ファイルを所有しております、個人情報を持っておりますというようなことは率直に資料として出して、こういう状況の中で審議をいただきたい、これが国権の最高機関である国会に対する行政府としての、法案提出者としての当然の立場であったろうと私は思うのですが、随分議論が進んだ後で質問に応じて二週間もかかると言って、そんなにかかるんじゃもう要らぬということを議員の方から言わせるようなという邪推すら行いたくなるような状況でようやく提出をする。こういうことについては私は大変遺憾である。そういう点について総務庁長官高鳥大臣、どのようにお考えでしょうか。そして、今後そういう問題についてどう考えていかれるのかはっきりさせていただきたい、このように思います。
  4. 高鳥修

    高鳥国務大臣 ただいま広瀬委員から御指摘のように、総務庁といたしましては、個人情報保護法案を何とかひとつ成案を得たいということで十年来検討を重ねてきたところであります。  そういう中で、各省庁が持っておりますデータ総数などについてはかなり把握をしておったところでございますが、先般資料要求のございましたのはそのファイル名内容等についても明らかにせよというような御要求でございまして、総数だけでございましたらかなり的確な把握はしておったつもりでございますが、中身につきまして子細にこれを示せと言われることになりますとかなり時間がかかるということで、それらの資料等についての整理に若干の時間をいただきたいということを申したところでございまして、私どもといたしましては、国会審議には最大限の御協力を申し上げるように今後とも努めてまいりたいと存じます。
  5. 広瀬秀吉

    広瀬委員 この問題で多く時間を費やすほど私の持ち時間がないものですから、これ以上しつこく追及はいたしませんが、今度の法案は非常に大事な法案だと私は思うのです。我が国においてもプライバシー保護個人情報保護というものを、個人尊厳という立場に立って個人人格権が尊重されるんだ、そういう中にあって一定前進面を持つ法案を出したわけですから、今長官のおっしゃったことは弁解になっていないと私は思うのです。  先行きの問題についてはそういうことのないようにしたいというそのことには期待をしたいと思うのですが、とにかく二週間ぐらいかかりますと言いながら翌々日にはとにもかくにも、内容的にどういう項目ファイルされているかという項目はこれはまだ法律が通っていないからできないんだという立場でありますが、現状把握できるものはほぼ出していただいたということですから、あったはずなんですよ。あったはずならばなぜ出さぬかということが問題なのであって、そういう態度ではこの法案全体のこれからの問題について、この問題では個人情報がどういう中身でどれだけの量が保有されてプライバシー侵害に結びつくような危険があるかというようなことが非常に問題になるわけでありますから、その辺のところでこれからもしばしば資料要求、最新の資料を求めるというようなことが多くなるだろうと思うのです。  それからこの法案の中で非常に目立つのは、政令委任事項が非常に多い。その政令も、大体政令法案が成立した段階でその条文に基づいてつくられるというのが建前ではあるけれども、少なくとも要綱なり大綱なりというような問題なんかも非常に多い。私が数えたところによりましても、わずか二十七条の法律案ですけれども、その中で二十数項目にわたって政令に委任されている。政令で決めるというようなものが条文の中にも出てきておるわけなんですね。したがって、そういうようなものをもっと要綱段階でも大綱段階でも出してもらいたいというようなことが審議と並行して行われてしかるべきだったと思うのです。  そういう問題も含めて、惜しみなく資料を出していただくということが本当に実のある、そしてまた法案中身を本当に豊富にしていくという立場においてそういう意味での協力というものが極めて必要であろう、私はこう思うのです。そういうことで、将来我々を大変不安にするような今回の措置であったということで、私はまず冒頭にその点をお伺いしたわけです。そういう問題点も、これからのこの法案自体の持つ今日的な評価の問題も含めて、それなりに将来に向かって不安な点が非常に大きいという建前からいって、もう一遍長官答弁をこの問題で求めます。
  6. 高鳥修

    高鳥国務大臣 この法案をまとめるに当たりましては、各省庁それぞれいろいろ意見がございまして、それを調整するのに大変手間取りまして、さきの通常国会提出をいたしますのに本当にぎりぎりの段階でようやくお出しすることができたというような状況でございました。したがいまして、なお詰めなければならない政令上の問題等もあるわけでございますが、それはまた国会における御審議なりあるいはまた附帯決議等の御意見もおまとめいただくようでございますが、それらも十分踏まえましてひとつ適切な対処をしていきたいと考えております。
  7. 広瀬秀吉

    広瀬委員 この問題はそれくらいにいたしまして、将来とも国会の求めた資料は最大限速やかに提出方を御協力いただくようにここで確認をいたしまして、次に進みたいと思います。  この法律目的、これは第一条に書いてあるわけですが、前段を省略いたしまして、「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の取扱いに関する基本的事項を定めることにより、行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、個人権利利益保護することを目的とする。」こうなっておるわけであります。個人情報保護に関する法律案、これがこの法案のタイトルでありますから、この第一条の構成を考えてみますと、「行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、」ということが優先して「個人権利利益保護する」ということが二の次になるというような印象を与えかねないと思うのです。それで、行政管理局で大分前につくった原案の中には、これとむしろ逆の形で、個人権利利益保護するということが主にならなければならぬ、そういうような書き方が素案の段階管理局で立案をされておる資料の中にあるのですけれども、そういうように書かれていると思うのです。  これはやはり、悪口を言う人はコンピューター管理法ではないかということすら言う。個人情報保護というのが何となく二の次にされている、優先すべきものは電子計算機処理に係る個人情報管理法だというような、そしてまた行政の都合が優先をして個人情報保護二の次だ、「目的とする。」と書いてありますけれども、そういう疑いすらあるということであります。ここで言っている個人権利利益というものはプライバシー権一般には称されておるのですけれども、私ども政治家は余りプライバシーを強調する立場にもない、プライバシーなしにあけっぴろげで国民大衆に見てもらっているというような状況からすれば、どうもなかなかぴんとこない面もあるのですけれども、ここで言う個人情報保護というのは具体的にどういう中身なのかということについて、どのようにお考えでしょうか。
  8. 高鳥修

    高鳥国務大臣 この法案を提案いたしましたときに、マスコミ等プライバシー保護法案として極めて不十分であるという御批判を数多く受けたわけであります。それから弁護士会その他各方面、民間団体からもその点についてのいろいろな御意見が寄せられたところであります。  私どもここで特に御理解をいただきたいことは、いわゆるプライバシー全体の保護ということを目的にした法案ではございませんということについて御理解をいただきたいわけでありまして、そうした面については今後さらに法務省なり他の省庁なりで御検討いただかなければならない。私どもは、今とりあえず政府が持っております個人情報であって、なおかつまたコンピューター処理されたものが非常に膨大なものになってきておる、しかもそれが他の機関との間で連結をされ利用されるという可能性も十分に出てきておる、特定の人のデータを得たいと思えば検索も容易にできるというような、そういう状況になってきておりますので、したがって、このまま放置した場合にはやはり個人権利利益プライバシー政府の持っておるデータの中で侵害されるおそれがあるので、この際きちっとしたけじめをつけるような法律をつくっておかなければならない、こう考えたわけであります。  したがいまして、ここで申しております個人権利利益にはどのようなものが含まれるかという御指摘について申し上げますならば、個人秘密が公開されないこと、あるいは誤ったまたは不完全な情報によって自己に関し誤った判断がなされないこと、あるいは自己情報を知ること、これらのことが保障されるということがここでこの法案に盛られた個人権利利益であるというふうに申し上げることができると思います。
  9. 広瀬秀吉

    広瀬委員 重ねて伺いますが、やはり「個人権利利益保護することを目的とする。」この際における個人権利というのは、行政機関収集する段階において、そして保有する場合、何でもかんでも個人秘密というようなものが収集されるというようなことではなくて、収集における一定制限というものをきちんと課して収集してもらいたい、こういう原則。そのためには適正な方法、公正な方法によるべきであるというような原則。さらに、その収集、保有されたものが適当にいいかげんに利用されては困るという、利用あるいは提供などについて適正な制限がきちんと加えられているというようなこと。それから、個人参加原則といいますか、本来ならば個人の承認を受けて、個人の了解を得て、同意を得てやるものであるというような原則。したがって、公示をきちんとやるというようなことや開示を保証してもらいたいというようなことが盛り込まれる。さらに適正な管理安全保証というようなもの。それからまた、収集、保有した機関の適正な管理をきちんとする。まあ大体OECD個人情報保護ガイドラインあるいは加藤委員会の五原則、こういうようなものが保護されることによって個人情報保護されるんだ、プライバシーはそういう中で保障されるんだ、そういうものなこの個人情報保護という名に値するものであると理解してよろしゅうございますね。今答弁も大体そうだったと理解するのですが。
  10. 高鳥修

    高鳥国務大臣 この法律の中で一つ問題点にされましたのは、この法律では目的拘束ということ、つまり、そのデータを集めるための基礎になる法律目的とすること以外には収集してはならないという、目的によって拘束をするということを定めておって、適正かつ公正なという字句が入っていないことが問題にされたわけでありますが、政府行政行為はすべて適正、公正でなければならないことは言うまでもないことでございますので、したがって、わざわざその文言を入れる必要はないという考えに立ちまして、目的拘束をもって足りるとしたところであります。でありますから、当然大前提としては適正、公正ということがあるというふうに御理解をいただきたいわけであります。  その他の御指摘につきましては、そのようにやってまいる所存であります。
  11. 広瀬秀吉

    広瀬委員 大体私の意見と大差はないというように確認をいたしまして、次に進みます。  電子計算機処理個人情報の取り扱いについてプライバシー保護個人情報保護ということは同時にプライバシー保護目的とする、こういうことでありますが、なぜこの電子計算機処理に係る個人情報ということに限定をしているのか。いわゆるマニュアル、手作業処理に基づくものも相当な保有、蓄積もあるであろうと言われているのですが、それについてはどのように考えておられるのですか。
  12. 高鳥修

    高鳥国務大臣 電子計算機処理に係る個人情報、に限りました理由につきましては、先ほども若干触れましたが、要するにコンピューター処理された個人情報というものは、手作業に比べまして記録大量性処理迅速性情報の集中、結合及び検索容易性記録処理不透明性といった点で際立った特徴を持っております。したがって、個人データ目的外に流用されあるいは利用されるおそれなしとしないということからいたしまして、これをきちっと管理する必要があるというふうに考えた次第であります。  反面、手作業によるものにつきましては、そもそも、ここの場でも何回か御答弁を申し上げましたが、日本官僚組織というのは非常に縦割り行政であるということをしばしば指摘されておりますように、それぞれの官庁が持っております、あるいはそれぞれの部局において持っております情報というものは、その部局限りで保存をされておりまして、守秘義務等も課されております。したがいまして、横に流出をするというおそれあるいは目的外に利用されるというおそれは比較的少ないというのが日本特徴でございまして、とりわけ手作業による情報につきましては、そうしたことで今の個人情報が流用されるおそれは余りないのではないか、このように判断をしておることが一つであります。  それからなお、イギリスでもデータ保護法制定に際しまして、個人情報のうち手作業処理によるものを対象にすべしという議論に対しましては、イギリス政府は、手作業処理情報まですべて対象にいたしますと法の実効性が保証されないとか、あるいはまた非常に多種多様なものを法律対象にする範囲を限定することはなかなか難しい等々の理由によりまして、これを対象にしなかったところでございます。  それらも参考にいたしまして、私どもとしては今回対象にしないことにいたしたわけでありますが、もちろん今後手作業による個人情報実態等につきまして私どもとしてもさらに把握に努めまして、問題があるようであれば適切な対処考えたいというふうに考えております。
  13. 広瀬秀吉

    広瀬委員 最後のところで御答弁なさった点をひとつしっかりやっていただきたいと思うのです。手作業だからということで、相当量蓄積もあるはずですから、それがなるほどコンピューターほど悪用されてはならないという危険性は少ないにしても、絶対そういうことがないのだということは言えないと思いますので、同じ考え方に立ってこれも具体的な指導、運営の面でひとつきちっとやっていただきたい、このことを強く求めておきます。  次に、経済企画庁、せっかくおいででございますが、今度の場合には行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護ということなんですけれども、民間では行政機関とほぼ匹敵するあるいはそれ以上の個人情報が商売上、営業上、あるいはまた情報収集すること自体を目的とする企業もあるわけでありますが、そういうものについてこれが野放しになっておる。日本の国家体質の中で、官僚制度にはなるほど弊害もあるけれども、官僚制度、そして行政機関というものには一定それなりの前提になるみずからを慎むというようなものが国民の側からも期待されている。しかし民間の場合には、もう営利主義であり商業主義でありというようなことなんですから、個人情報が悪用されたりプライバシーが侵害されたりというような危険性というものはむしろ高いと見てもいいのではないかと思うのですが、これが今度の法案からは全く除かれて、これからどうするのかということについて極めて不安な分野である。  経済企画庁が担当されて調査等もされておるようでありますが、これら民間企業が個人情報を保有し、そしてこれのプライバシー侵害の危険性というものについてどのような考えを持ち、それらに対してこれと同じようなあるいはこれに準ずる保護国民立場からどう考えていくのか、こういう点についてできるだけ短い時間でお答えをいただきたいと思います。
  14. 末木凰太郎

    ○末木政府委員 経済企画庁も、個人情報すべてについて私どもがカバーする立場かどうかちょっとよくわからないのですけれども、いわゆる消費者保護という観点から取り組んできております。消費者ということですから、物を買うとかクレジットを利用するとか、そういった機会を通じて事業者に渡っていく個人情報といったものが中心でございます。おっしゃるように、これは大変大きな問題でございまして、私ども問題意識を持って、かつて二、三年前でございますが六十年の年末に調査をしたことがございます。  簡単にということですから、ごくかいつまんでその結果を申し上げますと、上場企業等主要企業について調査をいたしまして、約千社から回答がございました。その結果、たまたまこれは保険会社等がありましたので非常に大きな数字が出ましたのですが、個人情報を保有している会社について平均のデータをとりましたところが、一社平均百四十二万人のデータを持っている。そのデータ中身も、氏名、性別、職業、家族等からさらに商品の購入歴等は当然としまして、そのほか、わずかではございますけれども、収入とか趣味とか資産等まで持っている会社も回答社の一割くらいはあったということでございます。これは千社についての回答でこういうことでございますから、そのほか、すべての事業者の持っている情報を仮に調べれば膨大な個人情報を民間企業は持っていることになると思います。  これにつきまして、政府が持っている情報と同じように個人の利益が保護されなければならないことは当然でございまして、私ども、この調査に基づきまして、国民生活審議会の中で専門の方々にお集まりいただいて対処策を検討してまいりました。つい最近その報告が出ました。結論としましては、最終的にはやはりこの問題は法規制できちっとすべきだというのが一言で言って結論でございますが、当面は、大きく言って二つの理由によりましてすぐ法制化というのは難しい、したがって、ガイドラインを示しまして、できるだけその線で事業者を指導していくあるいは自主規制を促すということでございます。  二つの理由と申しますのは、一つは、なお詰めるべき理論的な問題、つまりおよそプライバシーというものの中でこういった取引に伴う情報、信用情報とか顧客情報といったものをどう位置づけるか等々の問題がございます。もう一つは、これは事業者のサイドにおいてもそれから消費者のサイドにおいても、加害者意識、被害者意識がまだ十分でない。もうちょっと議論を活発にしていかなければいけない。大きく言うとその二つでございます。  当面といたしましては、ちょうどこの法案に盛られておりますのと基本的には同じ考え方でございます。詳細は省略させていただきますけれども、それに沿って業界の指導、これは関係各省ともども相談をしてできるだけ努めてまいりたいというのが当面の態度でございます。
  15. 広瀬秀吉

    広瀬委員 商取引に関係するあるいはまた消費者の立場というものがあるわけでございますから、なかなか難しい面があろうと思います。ただ、民間で野方図に個人情報収集され、蓄積され、利用されるという過程の中で、やはり個人情報ができる限りプライバシー侵害にならないような保護措置というものを講じなければならぬという頭を持って、そういう理念を持って懸命な対処をできるだけ早くひとつしていただきたいということを要望しておきます。  次に、質問を変えますが、行政機関というものが保有するということになっておりまして、内閣官房の場合には、参事官室とか内政審議室とか外政審議室、安全保障室、広報官室、情報調査室というような六つの、情報関係に極めて精通している人たち、スタッフが集まっているようなものがあるんですが、この内閣関係では個人情報保護を必要とするような調査などはなされていないという、そういう立場でこの法案から除外をしたのか、あるいはまた内閣の仕事というのは直接具体的な行政に携わるものではない、各省庁に対して、行政機関に対して指導的な立場に立つんだからという、そういう日本の官制の立場でこれを除外されたのか、その辺はどうなっているのですか。  それで、もう一つ聞きたいのは、情報調査室というようなまさに高度情報化時代において情報調査、これは国政レベルのものだけで個人情報なんというのは一切集めないんだという保証があるのならばそれはそれなりに納得できるのだけれども、そういうようなところとの関係でどうなっているのでしょうか。そのことを端的にお答えいただきたい。
  16. 重富吉之助

    ○重富政府委員 お答え申し上げます。  まず第一点の、なぜ内閣官房を本法の対象から外したかという御質問でございますが、これにつきましては、私どもはまず内閣の性格からお答え申し上げねばならぬと思っております。内閣それ自体は先生御承知のとおり、行政権の最高機関として最終的な意思決定を行います各国務大臣の合議体でございまして、実際の行政事務というのは各省庁に分配されておるという建前になっておりまして、そういうところから内閣というのは本法の対象外としたものでございます。  内閣官房につきましても、そのような合議体としての内閣と一体的な性格を有する補助部局であるということから、本法の対象外にしたわけでございます。  それから、それでは内閣官房というのは個人情報を持たないのか、特に内閣情報調査室というのは持たないのかという御質問でございますが、私どもは、現在内閣情報調査室で電算機の処理に係る個人情報というものを保有されているか否かということについては承知しておりません。しかし、内閣情報調査室というのは先生御承知のとおり、一般的に内閣の政策判断をなさる際の情報を集めてそれを内閣に提供するという仕事をなさっているわけでございまして、一般的には各個人権利義務に関するような個人データをお持ちになって、それを具体的な行政事務として遂行されておることはないというふうに考えております。  しかしながら、内閣官房におきましても将来とも個人情報をお持ちになるかどうかということはわかりませんので、もしそういうことが考えられるとしますならば、内閣官房におきまして本法を参考にされながら独自の対策というものをおとりになるということが必要であろうというふうに考えております。
  17. 広瀬秀吉

    広瀬委員 総務庁長官一つお聞きしますが、この二十二条ですね。「内閣総理大臣又は行政機関の長に対し意見を述べることができる。」ということが第二十二条にあるわけであります。今お答えになった後段の問題について、そういう個人情報を持つか持たないかまだはっきりしないけれどもということなので、これはいずれ機会を改めて官房長官にでも来てもらってやらなければならぬ問題だと思いますが、今おっしゃった最後の答弁のところにありました、そういうようなことも含めて内閣総理大臣に対する意見の陳述という考えはございますか。
  18. 百崎英

    ○百崎政府委員 今御指摘のこの第二十二条の規定でございますが、「総務庁長官は、この法律目的を達成するため必要があると認めるときは、」云々「内閣総理大臣又は行政機関の長に対し意見を述べることができる。」ということでございまして、この規定それ自体は、この法律目的を達成するために必要があるということでございますので、この法律の適用対象ということが一応問題になるわけでございますが、先ほど先生から御質問がございましたように、この法律の適用対象行政機関で申しますと国家行政組織法に規定される機関でございまして、内閣あるいはその補助部局である内閣官房というものはこの法律の規定の対象から除かれておりますので、そういう意味ではこの二十二条に直には当てはまらないというふうに解釈いたしております。
  19. 広瀬秀吉

    広瀬委員 この問題はまた機会を改めてということにします。  次に、地方自治体に対しての規定がございますが、「地方公共団体は、」云々「国の施策に留意しつつ、」「必要な施策を策定し、及びこれを実施する」途中飛ばして読みましたけれども、そういうことになっておりますが、地方自治体では、都道府県ではまだこの種の条例なりを持っているところはない。市町村段階で四百三十四ですか、そういうものがある。冒頭申し上げましたように、せっかくの重要な法案ではあるけれども骨抜き、それから不十分な点があるということを私ども指摘したわけですが、この個人情報保護法をさらに上回る立派な条例をつくっている市の条例なんかもあるわけですね。今度これを出したのだからこれに右へ倣えしろというようなことは、憲法上もはっきり地方公共団体は住民自治の原則というのが働いておるわけでありますから、その人たちが中心になってつくった条例をこれに何でもかんでも右へ倣えしろ、そういうような関係ではありませんね。
  20. 高鳥修

    高鳥国務大臣 この法案の検討段階におきまして、地方自治団体につきましてもこの法案の中で一括して規制を考えるべきであるという意見もなかったわけではございません。しかし、私どもといたしましては、地方自治団体はそれぞれ独自の判断に基づいて対処をしていただくことが至当であろうというふうに考えまして、対象にしておらないわけであります。  また、私どもはこの法案におきまして、地方自治団体においても当然のことながら個人情報保護についてはしかるべき対処はなさるべきであるということで、それの促進ということを考えて規定はいたしておりますが、進んだという表現が適当かどうかわかりませんが、地方自治団体におきまして、それぞれの独自のお考えに基づいて、この法律とは必ずしも内容において一致しないいろいろな規定を盛り込んだところがございます。それらにつきまして、私どもがこの法律に右へ倣えして制定してもらわなければいけないなどということを全く考えておるわけではございませんので、独自の御判断に基づいて適切な対処がなされるべきであるというふうに考えております。
  21. 広瀬秀吉

    広瀬委員 次に、特殊法人についての規定も設けておるわけでありますが、この特殊法人についてどのようになさるつもりか。かなり膨大な資料も持っておられると聞いておりますし、国の機関に準じた重要な役割も果たしている。そういう中で個人情報保護という点では、やはりこの第二十七条の規定だけではやや不十分ではないかなという感じがせざるを得ないわけなんで、さらにこれをどう改善をしていくか。個人情報保護という立場でもうちょっと厳しく対処してよろしいのではないか、求めるところはきちんと求めてもらっていいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  22. 百崎英

    ○百崎政府委員 この特殊法人につきましては、先生既に御指摘のように、本法の適用対象から一応外しまして、第二十七条で必要な措置を講ずる旨の努力義務の規定を設けているわけでございます。したがいまして、まず基本的には、私どもといたしましては、各特殊法人がそれぞれの業務の実態に応じて適当な保護措置を講じるものというふうに考えておりますし、また所管の各省庁におきましても、個人情報保護措置の必要性を十分認識されまして、所管の法人に対してできるだけ速やかに所要の指導が行われるものというふうに期待いたしております。  なお、この法律運営されますと、私どもといたしましても、実際のこれからの推移等を見守りながら、必要があれば適切な措置を講じてまいりたいというふうに考えております。
  23. 広瀬秀吉

    広瀬委員 もう時間が八、九分ほどしかないものですから重要な問題をこれから議論しようというところで時間が足りなくなってくるのですが、いわゆる思想、信条、宗教や社会的差別の原因となるような社会的身分に関する個人情報、いわゆるセンシティブ情報などと言われておりますが、こういうものについて随分この委員会でも議論があったところであります。我々の修正意見も受け入れられなかった、受けとめていただけなかったということは大変残念なのですが、なぜそういうものは収集すべきじゃない、保有すべきじゃないという原則的な禁止規定が設けられなかったのか、このことについてもう一遍簡単にお答えいただきたいと思います。
  24. 百崎英

    ○百崎政府委員 この点はしばしばこの委員会でも御議論になり、また一番重要な点でございますので、本来ですと若干お時間をおかりして御説明申し上げたいわけでございますが、ちょっと時間の都合で簡単に御説明いたしますけれども行政機関の場合には、センシティブ情報といいましてもやはり公益目的を達成する上で収集せざるを得ない場合があること、この点だけ御理解いただきたいと思うわけでございます。  修正の御意見の中でも、法律その他の法令の規定がある場合には例外的に収集できる、こういう御意見でございますので、その点の御理解はいただいていると思うわけでございますが、実際に我が国の現行の法体系を眺めますと、行政機関情報収集について個別具体的にセンシティブ情報収集等について規定している法令というのはほとんどと言っていいくらいないわけであります。 したがいまして、その個別の法律に基づかないと収集できないというような話になりますと、公益目的の達成という面からいいまして支障を生ずるおそれがある。それじゃどうするかといいますと、個別法をそれぞれ洗い直してそういうところに必要な条文を置くか、あるいはまたそれとあわせて各省設置法の中の資料収集のところから原則禁止というような規定をその中に盛り込むか。こういう話になりますとこれまた大変な作業でございますし、しかも電算機処理に限ってそういう規定を設けるということになりますと、一体どういう場合にどういうセンシティブ情報を例外的に収集するのかしないのか、こういうような議論になりまして、恐らくこれは収拾がつかないような話になりかねません。これはOECDでも、結局センシティブ情報というのは万人が認めるような定義はできないというようなことで、言葉は悪いのですがさじを投げたような状態で結論が出ているわけでありまして、恐らくそういう問題を議論してまいりますとそういう事態にもなりかねない。  そういうようなことで、結局この法律では、各省設置法が規定しております所掌事務あるいは権限に基づいてその範囲内で収集する場合にはこれは収集ができる、こういうことにとどめたわけでございまして、今考えられる最善の方策というのは、私どもとしてはそれ以外にはちょっと考えられない、こんなようなことでございます。
  25. 広瀬秀吉

    広瀬委員 非常に重要な問題だけにそういう難しさはあろうと思いますが、これは将来にわたって真剣に我々の意のあるところを検討していただきたい、このように思う次第です。  それから、いろいろ収集制限の規定がないとか、あるいは直接収集することが原則であって、収集目的外に利用、提供などがなされてはならぬというようなことをきちっともう少し厳しく規定すべきである。それが非常に底抜けになっているような気がいたします。  それからまた、第三者からも収集するというようなことなんかもあるわけでありますが、これなんかはやはり非常にプライバシー侵害あるいは間違った情報を得やすい、そしてまた虚像がそのことによって形成されるというようなことにもつながるわけでありまして、それらの問題についてこれからどう対処をしていかれるおつもりなのか。そういう点では長官総務庁として、主管庁として適正なガイドラインというようなものなんかをきちんと出していくべきではないかと思うのですが、その点についてお答えをいただきたいと思います。
  26. 高鳥修

    高鳥国務大臣 本法の運用に当たりましては、先ほど御指摘のようなセンシティブ情報などを含めまして、個人情報全般にわたりまして適正な収集、保有、利用、提供、安全確保等に万全を期してまいりたいと存じます。特に、御指摘のような個人情報については可能な限りその収集根拠を明確にする、可能な限りという意味は、これは漠然としたものではなくてできるだけ具体的に、こういう意味であります。  利用、提供や安全確保について特段の配慮をする必要があるという御指摘につきましては、ただいまの第三者提供の情報などを含めまして御指摘のような点について十分配慮してまいるようにガイドラインども設定していきたいというふうに考えております。
  27. 広瀬秀吉

    広瀬委員 我々の意のあるところは附帯決議でも、また修正案として提示をして、議論をしていただいた中で十分おわかりだろうと思いますから、それ以上申し上げませんので、それらを踏まえてガイドラインもきちんとつくっていただくようにぜひお願いしたい。  さらにまた、冒頭指摘いたしましたように、私の教えたところでも二十四項目ぐらい政令委任事項があるのです。あと二、三分しか質問時間はないわけでありますが、まだ時間を少し延長することをお許しいただきたいのでございますけれども、適用除外項目が余りにもあり過ぎたり、また政令委任事項が多過ぎるということですから、特に政令事項について、この法案がこの委員会を通過した後でも重要な部分については積極的にでき次第というか固まり次第資料として提供をしてもらう、こういうことにしていただきたいと思うのですが、この点非常に不満である、もっと早目におおよその考えだけでも示してもらうという態度が必要なんですけれども、そのことは冒頭指摘しましたので、あえてくどくど申し上げませんが、そういうように、今後政令の進みぐあいに応じてこの法案審議が終わった後でも結構ですからできる限り速やかに我々に政令の内容を示していただくように願いたい、この点について御答弁を求めます。
  28. 重富吉之助

    ○重富政府委員 お答え申し上げます。  政令等の作成につきましては、本法施行後一年以内ということで私どもはできるだけ速やかに作成してまいるつもりでございます。また、ガイドライン等につきましても速やかに関係省庁と御相談の上作成してまいるつもりでございます。また、政令ガイドライン等をつくりました際には、できる限り国会の先生方にもでき次第お届けするようにいたしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  29. 広瀬秀吉

    広瀬委員 個人情報、これは何といいましても正確性が保証されなければならない。そういうような点でもなお不十分な点があると思いますので、正確性の中には最新性というものも含んでいるというような立場で、古いもので誤っておるものなどはどんどん訂正をし、廃棄をするというようなことなどが正確性の問題として確保されていかなければいけないだろうし、さらにまた、個人の訂正権というようなもの、これは権利として認められる。行政不服審査だけだ、司法判断憲法第三十二条に出訴権、裁判を提起する権利は保障されているわけですから、それにゆだねるというだけではなしに、これは訂正させ得る権利があるんだというところまでいっていただきたいと思います。  それから、目的外の利用、提供というような場合に、必要と認める場合には行政機関がやられちゃうわけですが、そういう場合に総務庁としてはやはり斉一性、統一性というような立場から、少なくとも協議をしてもらう、協議をしなければならぬという合議のようなものなんかも必要であろう、こういうように思うのですが、そういう点についていかがでございましょうか、お伺いいたします。
  30. 高鳥修

    高鳥国務大臣 この法律におきまして、政府が所有しております個人情報について誤りのある場合には、本人がその開示を受けて訂正の申し出をすることができることになっておりますが、いわゆる訂正権という形で認めておりませんのは、他の法律の例に倣ったところであります。もちろん誤りがある場合には、政府は当然のことながら速やかに訂正をしなければならないということは申すまでもございませんし、訂正権は認めておりませんが、しかし、これの訂正について不服があります場合には、総務庁に対して行政苦情という形で申し出ていただけば、総務庁としてこれに対して適切な対処をすることはできることになっております。  その他、この情報の第三者への提供等につきましても、十分慎重を期するようにさせてまいりたいというふうに考えております。
  31. 広瀬秀吉

    広瀬委員 冒頭申し上げましたように、この法案は非常に若い、日本では初めての法案ですから、最初の法案としていろいろ我々から見れば不十分だらけである、しかし、ないよりはやはり一つ前進であるという見方もできるわけでありまして、これをやはり健やかに育ててまいる、健全な姿で国民の期待するところに従って、この法律が内容的にも豊かな、プライバシーの侵害の起こらないように個人情報を本当に保護する、そういう目的を達成するためには、やはり慎重な運用が必要だろうと思うのです。  したがって、この最初の法案、いろいろ我々が審議して指摘をした欠陥部分というようなものも十分おわかりいただいている、そしてまた、後で附帯決議にもそれらの問題を集約されるということを聞いておりますが、そういう状況を踏まえて、この運営の問題について、一つはやはり主管庁としての総務庁長官の権限がもっと強化されてしかるべきであろうという点を私ども考えておりますし、それと同時に、総務庁長官の諮問機関というような形で実際の運用について諮問を受けたり答申をしたりという、そういう現状を見詰めながら審議をする場というものを設けるべきではないかという点が最後にあります。  それからもう一つ、初めての画期的な法律としての地位が与えられつつあると思うので、これもやはり、よりよきものをつくるという意味では、少なくとも五年ぐらいの運営状況を見て、その間におけるいろいろな事象なども踏まえて、少なくとも五年後ぐらいには抜本的に見直しをする、そういう際にも先ほど申し上げた審議の場というようなものも必要になるであろう、こういうように考えますので、その二つの点をお伺いして、総務庁のお考えをお聞きをいたしまして、若干時間を超過いたしましたが私の質問を終わらせていただきます。
  32. 高鳥修

    高鳥国務大臣 この法律につきましては、しばしばこんな程度の法律ならつくらぬ方がましだなどという批判も受けておったことでありますので、ただいま広瀬委員から、ないよりましだという評価をいただいたことはまことにありがたいところであります。  私どもとしては、今は全くすべてがいわばブラックボックスの中にある、それがこの法律制定によりまして、かなりといいますか八、九割まで少なくともみんなの前にこういうファイルがあり、その内容がその本人に限り開示されるというようなことになりまして、かなりの前進であるというふうに考えておるところでございますが、なお不十分な点が多々あるという御指摘につきましては、謙虚にこれを受けとめて今後また検討してまいりたい。  五年以内見直しということにつきましては、私どもも、実は現在の情報伝達手段というものはもう日進月歩で、毎日毎日いろいろと技術革新が行われておるところでもございますので、この法律の施行後適時適切な見直しはしていかなければならないのではないかというふうに考えております。  なおまた、総務庁はいわば行政改革担当機関でありますので、みずから審議会を創設をするなどということについてはできるだけ差し控えるべきであると考えておりますが、今後しかるべき機会にはそれぞれの専門的な方々にお集まりいただいて、また御意見を拝聴し検討するということもいたしてまいりたいと考えます。  総務庁長官の権限強化ということにつきましても、実はこの法律をつくることにつきまして、そもそも総務庁が何の権限があってというような議論から始めなければならないということもあったわけでございまして、したがいまして、この段階におきましては、総務庁長官総務庁設置法に規定されましたと同様な権限を行使してこの法律の運用に当たるということに規定をいたしたところでございますが、今後とも適切な運用を図るよう勉強してまいりたいと考えております。
  33. 広瀬秀吉

    広瀬委員 五年後の見直しの問題。
  34. 高鳥修

    高鳥国務大臣 五年後見直しということにつきましては、ただいま理事会において附帯決議として御検討されておるというふうに承っておりますが、ただいま適時適切に見直してまいりたいということを申し上げたところでございまして、必ずしも五年にこだわらずに私どもとしては検討を進めてまいりたいと思っております。
  35. 広瀬秀吉

    広瀬委員 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。
  36. 竹中修一

    竹中委員長 この際、暫時休憩いたします。  午後一時から委員会を再開することといたします。     午前十一時七分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  37. 竹中修一

    竹中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中村巖君。
  38. 中村巖

    中村(巖)委員 本日審議になります行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案につきましては既に質疑が進んでいるようでありますけれども、私は私の立場から御質問を申し上げたい、こういうことでございます。  今回、このような法案提出をされたということにつきましては、これは今、国の行政機関が保有する電子計算機処理個人情報というものが非常に多くなった、こういうことの結果、これについて何らかの法律的な保護なり規制なりというものをしなければならぬだろう、こういうことからなされたわけであります。  そこで、まず第一にお尋ねをしたいことは、今一体国がどのくらいの量の行政上の電算処理個人情報を持っているんだろうか、こういうことでございます。私ども若干資料をいただいているわけでございまして、それによりますると、十九省庁にわたりまして合計してデータの量では十一億四千二百万というような膨大なものに上っている、こういうことでありますけれども、お手数でありますが、まずとにかく各省庁、十九省庁というのはどういう省庁であるのか、それがそれぞれファイルの数にしてどれだけ持っておるのか、そのデータ量はどのくらいなのかということについて、数値をお示しいただきたいと思います。
  39. 重富吉之助

    ○重富政府委員 お答え申し上げます。  私どもが昭和六十三年六月末時点で調査した結果の数字で申し上げたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。省庁名、ファイル数、それから所有件数を順次申し上げます。総理府が、二ファイルで二十一万件でございます。警察庁が、四ファイルで五千七百三万件でございます。宮内庁が、一ファイルで二万件でございます。総務庁が、二ファイルで三百十九万件でございます。北海道開発庁が、三ファイルで一万件でございます。防衛庁が、十一ファイルで百四十六万件でございます。科学技術庁が、一ファイルで二万件でございます。環境庁が、一ファイルで三千件でございます。法務省が、三十七ファイルで二千六百三十四万件でございます。外務省が、一ファイルで千三百七万件でございます。大蔵省が、十七ファイルで三千八百五十七万件でございます。文部省は、国立学校を除きまして、十一ファイルで五万件でございます。厚生省が、七十三ファイルで四億一千四十八万件でございます。農水省が、十五ファイルで六百五十一万件でございます。通商産業省が、十ファイルで三千二百九十四万件でございます。運輸省が、九ファイルで六千十二万件でございます。郵政省が、三十九ファイルで四億四千百七十七万件でございます。労働省が、九ファイルで四千九百八十三万件でございます。建設省が、八ファイルで四十二万件でございます。ただいま申し上げましたものを合計した数字で申し上げますと、ファイル数が二百五十四、データ件数が十一億四千二百三万件でございます。このほか、文部省の国立学校分といたしまして、ファイル数が約千二百七十、データ件数が約九千六百六十万件でございます。  以上でございます。
  40. 中村巖

    中村(巖)委員 今お示しをいただきましたけれども、総計で十一億四千二百万件というのは大変膨大な数でございまして、日本国民が一億二千万と仮定いたしますれば、まさに国民一人当たり平均で十件のデータが集められている、こういうことになるわけでございます。私どもは、そういうデータが集められている事実そのものを全く知らないわけでありまして、個々の官庁との間でいろいろな、例えば申告をするとかそういったようなことがあれば、自分自身は申告しているわけですけれども、しかし、それがコンピューターに入って、そしてこうやって蓄えられているんだということは、これは私ども知らない、知らないうちにこれだけのものが累積をしてしまった、こういうことであるわけであります。  行政機関とすれば、それは個人別の情報データがなければ仕事ができないという側面があることは事実であろうかと思いますけれども、しかし、国民の知らない間にそういう情報というものを蓄積をしてしまう、そのこと自体がどうなんだろうかという、まず最初にそういう素朴な疑問があるわけであります。こういうような情報をそうやって電子計算機の中に蓄積をしてしまう、集めてしまうということについては、各行政官庁はどう考えているのだろうかということでありますけれども、まず、総務庁として、これらの行政機関がそれぞれにコンピューターの中に情報を蓄積してしまうことについて、何の制限もなくやられておっていいのだろうか。この点について疑問をお感じにならないのかどうか、お尋ねをいたしたいと思います。
  41. 百崎英

    ○百崎政府委員 今先生御指摘のように、国民立場から見れば、自分の情報がどういう形で行政機関に集められ、どういうふうに使われているかということに対する不安感といいますか、そういうことは非常に大きくなっているだろうと思われます。そういうこともございましてまさに今回この法案を御提出しているわけでございますが、行政機関といたしましては、現在のところは各省の設置法に基づく所掌事務あるいは権限、こういうものに基づいて情報を集めているわけでございますけれども、そこのところを今回のこの法律におきましては、特に電算処理をされる個人情報につきましていわば間接的に収集制限をしている、そういうことでございます。  一つは、個人情報収集につきましては、この法案にもございますように、第四条で「法律の定める所掌事務を遂行するため必要な場合に限り、」個人情報ファイルというものを保有できる、しかも、そこに記録される項目も必要最小限度のものでなければならないというふうに規定しているわけでございます。それからまた、収集の手段についての制限でございますが、この法律には特に明記いたしておりませんけれども行政機関の場合には、これは国家公務員法上の法令遵守の義務もございますし、当然に行政というものは適法かつ公正に行われる、そういう前提で、この法律には規定いたしておりませんけれども、そういったことが行われるものと期待いたしております。  それからまた、この情報収集に当たってよく言われますことは、本人の同意を必要とする、そういうことを原則とすべきではないかというような御意見もございますけれども、その点につきましては、多くの場合には行政機関は本人からの申告とかあるいは本人から直接情報収集するということが多いわけでございますし、それからまた、権限に基づいて第三者から収集するという場合もございますが、そういう場合には一つ法律等に基づいて行われるわけでございますので、ここではそういう規定をいたしておりません。 それからまた、基本的には本人の同意を必要とするということは、結局のところは国民にとって不測の不利益を受けないようにというような趣旨だろうと思いますので、そういう点はこの法律のほかのいろいろな規定、例えば公示制度であるとか開示請求の制度であるとか、そういう規定を援用することによって十分担保されるのではないか、かように考えておるわけでございます。
  42. 中村巖

    中村(巖)委員 今御答弁いただいた中で、国民がそういう情報が蓄積をされ、使用されることについて不安を感じているので今回の法案提出したのだ、こういうお話でございますけれども、私どもこの法案を眺めてみますると、まあそれは全然個人権利利益保護するという側面がないとは言いませんけれども、やはり何か行政機関の便宜のためにこの法律制定されたのではないか、むしろ、例えば今の情報収集、利用というようなことについて、これが今まで一般的な法的根拠がなしになされておったために、こういうような法律をつくって、それは法律の根拠に基づいたところの合法的な収集、利用なのだということを明らかにした、そういう意味で、行政運営の便宜のためじゃないかというような感じが非常にしてならないわけです。その辺、行政運営確保ということと個人の利益保護ということとどちらに重点を置いてお考えになっておられるのか、お聞きをしたいと思います。
  43. 百崎英

    ○百崎政府委員 この問題もこの委員会でしばしば御議論になったところでございますが、基本的には、この法律目的にも書いてございますように、この法律行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、第一義的には個人権利利益保護することを目的とするということでございまして、あくまでもこの法律個人権利利益保護ということに最重点を置いているというふうに御理解いただきたいと思います。
  44. 中村巖

    中村(巖)委員 そうなりますと、この法律はいわゆるプライバシー保護にかかわる法律なのだというふうにおっしゃられるわけでしょうか。
  45. 百崎英

    ○百崎政府委員 このプライバシーと言われるものは、これもしばしば議論が出ておりますが、いわば個人によってもその受け取り方は非常にまちまちでございますし、また電算処理にかかわらないような分野のプライバシーというものもございます。この法律は電算処理に係る個人情報の取り扱いに関連した個人情報保護するということでございまして、一部はもちろんプライバシーの概念に含まれるものもこの法律保護されるわけでございますが、そうでない分野の、いわゆる他人にのぞき見をされないとかみだりに写真を撮られないとかいった電算処理にかかわらないようなプライバシーの分野もあるわけでございます。 したがいまして、この法律がそういうプライバシー全般を保護することを目的とするものではないというふうに御理解いただきたいと思います。
  46. 中村巖

    中村(巖)委員 そこで収集に当たっては、今の御答弁でも、法律条文の中でも「法律の定める所掌事務を遂行するため必要な場合に限り、かつ、できる限りその目的を特定しなければならない。」こういうふうにあるわけでございまして、この規定があるがゆえに各官庁が、行政機関がめったやたらにデータを集めるということが制限をされておるんだ、こういうふうに言われるわけですけれども、この収集あるいは利用を制限されるそういうデータとしてデータを限定をするために、目的ということだけで本当に限定ができるのだろうかということは多大な疑問があるというふうに思うのでございます。  よく論議になっていることでありますけれども目的に合うか合わないかというだけのそういう基準では、いうところのセンシティブ情報というようなものは、これは収集してはならぬのだということは全然出てこない。その意味では、センシティブ情報といえども行政機関の事務遂行の目的にかなうものであれば集めていいではないか、こういうふうな解釈を生み出す可能性を十分に持っているわけでございまして、その辺についてどうお考えになっておられるのでしょうか。
  47. 百崎英

    ○百崎政府委員 この問題もこの委員会でしばしば御議論になりました最も重要な点でございますが、まず基本的に、いわゆるセンシティブ情報と言われるものでございましても公益目的を実現するために行政機関収集せざるを得ない場合があることは、この点は御理解いただけるものと考えております。先般出されましたあの修正の御意見につきましても、その中でも、法律あるいはその他の法令がある場合には例外的に収集ができるというふうなことになっておりますので、それはそういう御理解のもとにああいう御意見が出されたものというふうに理解いたしております。  今の我が国の法律全体を見回してみますと、行政機関情報収集することにつきましての法律の規定というのは、実は各省の設置法に基づく所掌事務あるいは権限規定というものがほとんどすべてでございまして、個別の法律情報収集についての制限とかあるいは可能性といいますか、そういう権限を規定したような法律は実際のところはほとんど見当たらないのが実情でございます。そういたしますと、仮に修正の御意見に従いまして個別の法律に基づいて例外的に収集できるといたしましても、それのよりどころとなる法律が実はないというのが実情でございまして、そうなると、結局行政機関の場合にほとんどそういった情報が集められなくなる、これではまた一方で公益目的の達成に支障が生ずる、こんなようなことになるのが現状でございます。  それでは一体どうするかということになりますと、一つは個別の法律、今千何百件ありますか、あるいは政令まで入れますと三千数百件ぐらいだと思いますけれども、それらを全部洗い直して、かくかくしかじかの場合にはこういった内容のセンシティブ情報を例外的に集められるという規定を設けなければならないことになるわけでございますが、その一方で、今度はまた各省設置法に情報収集といいますか、資料収集に関する規定がございますけれども、これは各省が所掌事務を遂行する上でのいわば基本的な法律でございますので、今度は逆に、電算処理の場合に限ってセンシティブ情報を例外的にしか集められないといった制限規定を設置法の中に設けなければいけない、こんなようなことに実はなろうかと思うのです。  これ自体非常に大変な作業ではございますし、それはさておくとして、センシティブ情報とはそもそも何かという議論から始めて、一体どういう場合にセンシティブ情報を例外的に収集できるのか、あるいは電算処理の場合だけなぜそういう制限を課するのか、そういったいろいろな問題が実はございまして、そういったことは現状では恐らくとても結論が出ないのではなかろうか。  センシティブ情報それ自体の範囲につきましても、先ほど申し上げましたが、OECD理事会でもかんかんがくがくの議論をした上で、結局万人が認めるようなセンシティブ情報は定義づけられないということで、いわばさじを投げたような格好にもなっておりますし、そういったことを考えますと、現在の時点では、今の設置法に基づく情報収集というものを根拠にして、しかも収集できる場合には目的をできるだけ特定しなければならない、そういうようなことしか立法技術的にもなかなかできないのじゃなかろうかというふうに考えて、今回御提案しているような法案を出したわけでございます。
  48. 中村巖

    中村(巖)委員 立法技術的に極めて困難であることは私も理解はいたしますけれども、問題は、そういう情報というものを集めること自体が、例えばこの法律の根幹であるところの憲法に抵触しないかという問題があるわけで、それは大変大きな問題であるわけですね。つまり、憲法上は思想、信条の自由とか信教の自由というものが基本的人権として擁護をされなければならないというふうになっておるわけで、そういう憲法の規範、条規というものと行政庁がその種の人の思想、信条あるいはまた宗教あるいはそれに類するものを集めることとの間に矛盾がないのか、その辺にやはり疑問を感じるわけです。その点はどうお考えでしょうか。
  49. 百崎英

    ○百崎政府委員 実は憲法の規定がよく引き合いに出されるわけでございますが、一般的にこういったいわゆるプライバシーといいますか、そういった問題に関して引き合いに出されるのが憲法の第十三条の規定でございますけれども、この中に「生命、自由及び幸福追求に対する国民権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」こういうことになっているわけでございます。公共の福祉に反しない限り最大限の尊重をするということになっているわけでございまして、いわゆる基本的人権と公共の福祉との調和ということがやはりここでも、憲法上も明記されているわけでございます。  そういった精神を受けまして、今回の法律におきましても一つはその個人権利利益保護、それからもう一つはいわゆる行政の適正かつ円滑な執行、こういったものの調和を図ったということでございます。
  50. 中村巖

    中村(巖)委員 その目的のいわゆる制限ということである程度の制限は果たし得るんだという先ほどの御説明の中で、また、本人の同意の問題についてお触れになったわけでありますけれども、今の御答弁では、行政庁が集める情報というものはそれは多分ほとんどが個人の申告に基づくものであって、本人の同意があるのだというお話でございました。しかし必ずしもそうではなくて、個人の申告に基づかずして、あるいは本人自身がそういう意図で申告をしたのではないというふうに思われる、その意図と違った目的というかそういうもので集められている情報というものもあるのではないか、こういうふうに思われますけれども、やはり本人の同意というものは必要かないというお立場でこの立法をされているわけですか。
  51. 百崎英

    ○百崎政府委員 先ほどもちょっと申し上げましたが、多くの場合には本人からの申告。あるいは本人から直接情報収集するということが一般的に行われていると思いますし、それから行政機関がその権限に基づいて第三者から情報を集める、こういう場合も実はあるわけでございます。例えばよく引き合いに出されます犯罪捜査などの場合にも、目撃者の意見を聞くといいますか、その中で当該加害者といいますかそういったことについての情報を集めるという場合もあるわけでございますが、こういった場合は、これはある意味ではいわば当然認められてしかるべき例外的なことではないかというふうに考えているわけでございます。  いずれにいたしましても、本人の同意を必要とするという趣旨は、結局は自分の情報行政機関にどういうふうに蓄積されて利用されているのかという不安感、あるいは間違った情報に基づいて不利益な処分を受けるということに対する不安感といいますか、そういったことに対処するということが本来の趣旨であろうというふうに理解されますので、そういう点につきましては、例えばこの法律で言っております開示請求を行使して、場合によっては訂正の申し出をするとか、そういうようなほかの規定でいろいろ救済できるのではないかというふうに考えているわけでございます。
  52. 中村巖

    中村(巖)委員 次に、膨大な量のデータが存在をしていて、それが現状では公示もされなければ、かつ本人に対して開示もされていない、こういうふうな状況にあるので、今回この法律をつくってファイルの公示、さらに個人に対する開示ということをやるんだということでございますけれども、先ほど御説明をいただいた膨大な情報のうち相当多数のものは、既にしてその存在、そういうファイルがあるということがわかっており、さらにまた本人に対しても、例えば謄本を請求するというような形で開示がなされる、あるいは例えば社会保険の関係のように申請をすれば明らかにしてもらえるというようなものが相当数あって、実はこの法律をつくっても、これはよってファイルが公示をされるあるいはまた本人に対して開示をされる情報というものは極めて少ないんじゃないか、こういうように言われている部分もあるのですけれども、その辺はいかがでしょう。
  53. 重富吉之助

    ○重富政府委員 お答え申し上げます。  実は、公明党の井上先生からどのくらい開示されるのかという御質問をいただきましたときに、私は、八、九割はデータ件数から見ると開示されるのではないかという感触を得ておりますということをお答え申し上げておりますが、今先生の御質問で、それを少しかみ砕いて申し上げておきますと、これもまだ私たちも確とした実態を把握しておるわけではございませんけれども、感触で申し上げますと、既存の法律で開示されるもの、これが大体八割強ではなかろうかと思っております。  今回、本法によりまして新たに開示請求ができると見込まれるものにつきましては、私どもの感触としては一割弱ではないか。両方合わせまして八、九割という感触でございまして、先生がおっしゃいますように、確かに既存の法律で開示請求ができるといいますか、見せてもらえるものが多いわけでございますけれども、本法によって新しく加わるものも少なからざる数であるというふうに私ども理解しておるわけでございます。  それから、この法律によりまして従来とどこが違ってきているのかということでございますけれども、事前通知とか公示とかそういうことをされない、見せられない個人情報につきましても、保有制限とか安全、正確性の確保とか目的外利用の提供を制限するとか、そういうことをいろいろと規定しておりまして、従来に比べますと個人情報保護というのが画期的に前進するのではないか、こんなふうに考えております。
  54. 中村巖

    中村(巖)委員 それでは、ここでお願いをしておいた各省庁に対して少しお聞きをしてまいりたいと思います。  まず最初に、厚生省いらしていますか。――各省庁それぞれ同じことをお尋ねをするわけでありますけれども、厚生省からお聞きをしてまいりたいと思います。  今厚生省としては、電算処理個人情報ファイルとしてどのくらいのものを持っておって、そのデータ量はどのくらいなのかということをベースに置いて、それが今回この法案ができることによってそのうちのどれだけのものが事前通知がなされ、本人に対して開示がなされるようになるのかということをお伺いしたいと思います。
  55. 矢野朝水

    ○矢野説明員 お答え申し上げます。  先ほど御答弁にありましたように、厚生省全体ではことしの六月の数字で七十三ファイル、四億一千万件、こういうことになっておるわけでございます。  それで、私の所掌の関係から申し上げますと、国立病院・療養所の医療情報、こういうことになるわけでございますけれども、これに限って申し上げますと四十六ファイル、三百三十六万件、こういうことでございます。それで、この医療情報につきましては、実は現在も開示の対象にはしておりませんし、本法案でも開示対象にはされていないわけでございます。  この理由といたしましては、端的な例といたしまして例えばがんのような不治の病があるわけでございまして、こういったものにつきましては現在でも医師は患者に本当のことを知らせない、これがかなり広く行われているわけでございます。本人にショックを与えると治療上マイナス効果を及ぼす、こういうことで病名を伏せておくわけでございますけれども、私どもの医療情報ファイルには当然そういうものが入っているわけでございます。したがいまして、これを開示対象とするということは、そういった医師と患者の信頼関係あるいは治療上から見ていろいろマイナス効果があるのじゃないかということを考えまして、開示対象にしないということでお願いしておるわけでございます。
  56. 宮島彰

    ○宮島説明員 社会保険関係のデータにつきまして申し上げます。  保有状況でございますが、九ファイル、延べ約四億件保有しております。  処理情報の開示状況についてでございますけれども個人データにつきましては、年金証書あるいは年金裁定、支払いの際の通知書などにより本人に交付いたしまして開示しているということでございます。また、必要があれば年金相談等により適時本人からの記録照会に応じておるというのが現状でございます。
  57. 中村巖

    中村(巖)委員 医療情報関係のことでございますけれども、今医療情報関係というふうに一括してお答えいただいたわけですけれども、厚生省としてはいわゆる医療情報と申しますか、何というのですか、カルテに類するようなもの、これが今のところは公開ができないのだ、こういうお話でございます。そのほかにも、厚生省として所管している医療情報外のいろいろなファイルがあるのじゃないかと思いますが、その点はいかがなのですか。
  58. 矢野朝水

    ○矢野説明員 実はこれは私が直接担当しておりませんで、非常に恐縮ではございますけれども知り得ている範囲で御答弁申し上げますと、厚生省関係では医師、歯科医師等の登録管理、こういった身分法関係がございます。それから、先ほど申し上げましたように国立病院関係がございます。それから援護局関係で申し上げますと、中国残留孤児の照会システムですとか、あるいは援護システムということでございまして、これは遺族等援護法の規定に基づきます遺族年金の支給、こういった関係のファイルがございます。それから、先ほど答弁いたしました社会保険関係のファイルがある、こういうことでございます。こういう中で開示対象にされていないのは、先ほども申し上げましたように医療情報ということに限定されるわけでございます。
  59. 中村巖

    中村(巖)委員 そうすると、今のお話では厚生省関係としては、いわゆるカルテといいますか診療緑というか、それを除いては何らかの形で事前通知もし、かつ個人に対する開示も行う、こういうことでございますね。
  60. 矢野朝水

    ○矢野説明員 今おっしゃったとおりでございます。
  61. 中村巖

    中村(巖)委員 そこで、これも何度も議論になったと思いますけれども、いわゆる診療録といいますかカルテといいますか、厚生省がおっしゃっているのは医療情報、こういうことでありますけれども、これについては、これはなかなか一概には決しがたいところがあるのだろうと思いますけれども、将来にわたっても絶対開示ができないものだというふうに厚生省としてはお考えでしょうか。
  62. 矢野朝水

    ○矢野説明員 先ほどがんを例にとってなぜ開示できないかということで御説明申し上げたわけでございますけれども、これはやはり医学の進歩ですとかあるいは国民の意識の変化、こういったものが絶えずあるわけでございまして、この前の当委員会におきます審議の中におきまして、この法律も将来見直しをする、こういう総務庁長官の御答弁もあったわけでございます。したがいまして、そういうときには私どもの医療情報につきましても、医学の進歩ですとか国民意識の変化、こういったものに照らし合わせて見直しを行ってまいりたいと思っております。
  63. 中村巖

    中村(巖)委員 ついでに、厚生省にお見えをいただいておりますので、今これらの個人情報管理のあり方について、個人に開示をできるとしても第三者にこれを見られては困るというものがありますし、今おっしゃられるように、医療情報は現段階ではだれにも見られては困るのだ、こういうことでありますから、十分な管理をしなければ個人プライバシーというものは保たれないわけでございまして、この点について厚生省はどういう配慮をしてどういう管理をしているのか、お伺いをしたいと思います。
  64. 矢野朝水

    ○矢野説明員 これは一般的に申し上げますと、国家公務員でございますので、国家公務員の場合には非常に厳しい守秘義務があるわけでございます。したがいまして、業務上知り得た秘密は漏らさないというのは、これは当然でございます。それからまた医療情報につきましては、刑法におきましても業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない、こういう規定もございます。こういうことから当然高度な専門家としての守秘義務といったものが課せられておりますので、こういった点に配慮して業務遂行に当たっているということでございます。それからまた、先ほど申し上げました医療情報について申し上げますと、これはあくまで目的外に利用しない、こういうことを念頭に置いて処理しておるわけでございます。  そういうことでございまして、これが外に漏れるということは万が一にもあり得ない、私どもはこうかたく信じておりますけれども、この法律ができまするとそういった点がこの法律によっても明確になるわけでございまして、さらにそういった安全保護の内容というものが徹底されるのじゃないか、こう期待しておるわけでございます。
  65. 中村巖

    中村(巖)委員 では厚生省、結構です。  次に、文部省に伺います。同じことを伺うわけでありますけれども、文部省としてはどういう数のファイルを持っているのか、そのデータ量はどのぐらいなのか、具体的にはその内容はどういうものであるのか、そのうち、この法律が成立した後に公示あるいは開示ができるデータというのはどういうものがあり、できないデータというものはどういうものがあるのか、これをお伺いしたいと思います。
  66. 三浦猛夫

    ○三浦説明員 お答えいたします。  文部省におきましては、本省、所轄機関、文化庁の附属機関におきまして、例えば大学入学検定資格事務というものがございますが、その出願に関する記録がされたファイルを含めまして、ファイル数としまして十一、データ量としまして約五万件でございます。  それで、もう一つ具体的にどういったファイルがあるかという御質問でございましたので、一つは、今申し上げました通称大検のファイルでございます。そのほかに、在外教育派遣施設の教員選考のファイルだとか、その派遣されております在勤手当等のファイルといったようなものがございます。それから、あと国費外国人留学生事務といったものがございます。これは開示できると思っております。そのほか、所轄機関の方になりますが、受け入れ団体管理事務とか青少年教育情報システムといったようなものでございます。  以上でございます。
  67. 中村巖

    中村(巖)委員 その中で、今後開示をすることができないあるいはまたこの法律にのっとって事前通告をしない、そういうものというのはあり得るのですか。
  68. 泊龍雄

    ○泊説明員 お答えいたします。  本人開示ができないという形になっておりますのが、学校の成績評価あるいは入学選抜に関する教育情報という形で法案になっております。  これらの理由につきましては、御案内のとおり、教育活動は教師とその教え子である学生生徒という信頼関係に基づく営みということが基本でございますので、例えば学校の成績評価等につきまして本人に知らせることが必ずしも人格形成上あるいは教育指導上好ましくないというような点が考えられます。また、入学試験の選抜に関する資料等につきましても、例えば入学試験の成績の学力試験の表点を知らせたらどうかといったような御指摘をよくいただくわけでございますが、入学試験は学力検査のみならず、実技試験でありますとか面接その他総合的な評価の中の一要因でございます。そういたしますと、御案内のような日本の教育をめぐる諸状況の中で考えますと、入学試験の素いを知らせるということが、いわゆる受験競争の過熱化といったような状況から、それのみがいわば合否のすべての判定の要因であるというふうにもとられかねないといったようなことがございまして、これらについては本人開示の請求権の対象から除外をするという形にさせていただいておるわけでございます。  なお、念のため申し上げれば、これらの学校の成績等の評価につきましては、教育上の専門的な見地から学生に知らせた方が適切であるといったような問題につきましては、もちろん本法案とは別個に、例えばそれぞれの学期ごとの成績であるとかあるいは単位の修得状況であるとかといったような形で既に知らせているところでございます。
  69. 中村巖

    中村(巖)委員 今学校における成績あるいは入学試験の点数等についてお触れになりましたけれども、これは今いずれもマニュアル処理じゃなくて電算機で処理をされている、ころいうことですか。
  70. 泊龍雄

    ○泊説明員 国立大学におきますこれらの処理は、御案内のとおり、まず共通一次試験が大量に処理をいたしますので電算処理をいたしております。また、個別の大学におきましてもそれぞれを電算処理するという形をとっております。
  71. 中村巖

    中村(巖)委員 国立大学以外の、いわば文部省が直接云々ということはないにしても、小中学校あるいは高等学校、こういうものについては成績等の電算化の状況はどうなっておるかわかりますか。
  72. 泊龍雄

    ○泊説明員 国立大学以外で申し上げますと、公立大学あるいは私立大学ということになろうかと思いますが、私、全容を必ずしも正確に掌握いたしておりませんけれども、入学試験、昨今は大量の受験生に対して短い期間に処理をせざるを得ないということで、多くの大学で何らかの意味で電算処理が行われているのではないかと推察いたします。
  73. 中村巖

    中村(巖)委員 今お聞きしたことは、小中高等学校はどういう状況かおわかりになりますかということです。
  74. 泊龍雄

    ○泊説明員 私ども直接所管いたしておりませんので、恐縮でございますが正確には申し上げられませんけれども、学校規模等から見まして電算処理をされているのはそう多くはないのではなかろうかと、私個人的ではございますが考えております。
  75. 中村巖

    中村(巖)委員 先ほど厚生省に伺ったことと同じことを聞くわけですけれども、これらの本人に対する開示ができないというふうに今おっしゃられておる国立大学の学生の成績あるいは入学検定の際の成績等について、文部省としてはその考え方を今後とも見直すおつもりはございませんか。それとも時代の状況によって考え直すことはあり得るということでございましょうか。
  76. 泊龍雄

    ○泊説明員 先ほどお答え申し上げましたように、基本は、教師と学生生徒との信頼関係という観点から、教育指導上どうあった方がいいかという教育上の観点から慎重に判断をしていくべき事柄であろうと思います。ただ、御案内のとおりの日本の教育をめぐる諸状況の今後の動向あるいはまた関係者の意向等を踏まえまして適切に対応してまいりたい、かように考えております。
  77. 中村巖

    中村(巖)委員 次は、大蔵省にお願いをいたしたいと思います。  大蔵省についても同じくその持っておるファイル数、データ量並びに今後それについてどういうものが公示をされるのか、どういうものが事前通知もできないし、または本人開示もできない、こういうことになるのか、その辺を具体的にお答えをいただきたいと思います。
  78. 白須光美

    ○白須説明員 お答え申し上げます。  大蔵省のファイルといたしましては、先ほど総務庁からお答えがございましたとおり十七件、情報量にいたしまして三千八百万ございます。このうちで十五件が税務行政関係でございまして、具体的にはみなし法人の課税の選択者を入れたものあるいは納税猶予の対象者の管理をいたしておりますもの、納期限の未到来債権額の管理をいたしておりますものなどなどが十五件ございます。このほか二件、これは大蔵省に印刷局がございますが、ここの病院がございまして、ここの患者さんのデータを入れたものが二件ございます。  現在の開示状況といたしましては、この十七件いずれも開示いたしておりません。ただし、税務関係といたしましては納税証明の申請などがございますときには、これらから情報を出しまして証明書を発行するということをいたしております。  今後の扱いでございますが、印刷局関係、これは患者さんのデータのものでございますので、国立病院等と同じように開示いたさないということで考えております。税務関係につきましては、御承知のとおり、税務行政上種々問題のあるものも開示しにくいものもございますが、そういうものを除きましては開示をいたしたい。例えば具体的に申し上げますと、みなし法人の課税の選択者のファイルあるいは確定申告書の送付対象者のファイルあるいは納税猶予の対象者のファイル、そういうようなものにつきましては開示をいたしたいというふうに考えております。
  79. 中村巖

    中村(巖)委員 ちょっとまた、大蔵省についてもついでにお聞きをしておきますけれども、大蔵省ではこれらの徴税上のファイル等があるわけで、これが本人に開示をすることはともかくとして、こういうものが第三者に明らかになってしまっては大変に困るわけでありますし、あるいはまたこれが他の省庁等に目的外に利用されるというか外部に提供される、こういうことがあってもなかなか困る問題だと思いますけれども、この辺についての管理あるいは安全についてどういう配慮をしておられるか、お伺いをしたいと思います。
  80. 増原義剛

    ○増原説明員 先ほどの御質問でございますけれども、国税庁といたしましては現在保有している個人情報につきましては、例えば先ほど白須企画官が申し上げましたような納税証明などは開示をいたしておるわけでございますが、そのほか、今公示ではございませんけれども、先生御案内のとおり、その税額が一千万円をお超えになるような納税者の方々につきましては、氏名、住所、税額を公表することになっております。  さらには、地方公共団体の税務当局への資料提供でございますが、こういった法律に定められたもの以外は私どもはやってございません。  ちなみに個人情報の安全措置についてでございますけれども、国税職員には一般の公務員よりも厳しい守秘義務が課せられてございまして、具体的には守秘義務違反につきましては二年以下の懲役、三万円以下の罰金ということで厳しくなっております。そういうこともございまして、個人情報データの外部への漏れにつきましては十分配意しているところでございます。  具体的に申し上げますと、内部で保護管理規程をつくりまして、まず電子計算機室への入室であるとか出入力の帳簿、磁気媒体等の受け払い管理等につきまして基準を設けて厳重にチェックしますほか、アクセスにつきまして、そのパスワード等の使用によりましてシステム的に操作担当者の資格を審査しまして、一定の資格のある職員しか操作できない、こういったいろいろな規制を設けて安全保護に努めているところでございます。今後とも今回の法案の趣旨を体しましてその万全を期していきたいと思っております。
  81. 中村巖

    中村(巖)委員 それでは、引き続き法務省の方にお伺いをしますけれども法務省についても同じように現在の保有しているデータ及びそれが今後この法案が成立することによってどういうものが事前通知ができないものとなるのか、さらにまたどういうものが開示ができないということになるのか、また、開示ができるあるいは事前通知がなされるようなものはどういうものがあるのかということをお尋ねいたします。
  82. 長山頼興

    ○長山説明員 法務省が保有しておりますファイル数は、先ほど総務庁答弁なさったように四十近くございますし、データ量の合計も約三千万件くらいあるものでございます。  そこで、まず、当省の保有しておるマスターファイルのうち、事前通知の対象外とされているものはどういうものかということから申し上げてみたいと思います。それは二つございまして、犯歴ファイルと入国審査ファイルであります。  まず、犯歴ファイル、これにつきましては、先生も御承知のように、検察官の起訴、不起訴の処分の決定及び求刑等の資料、あるいは裁判所での量刑資料として利用するために、検察庁において記録しているものでございますので、本法律案の第六条第二項第二号に言うところの犯罪の捜査または公訴の提起もしくは維持のために作成する個人情報ファイルに当たりまして、事前通知の対象外となります。したがいまして、開示もできません。  もう一つ、入国審査ファイルというのがありますけれども、これも先生御承知のように、上陸を拒否すべき国際テロリスト等を含む要注意外国人等が記録されているものでございまして、これは本法律案の第六条第二項第一号に言うところの「国の安全、」または「国の重大な利益に関する事項を記録する個人情報ファイル」に当たるものでございまして、やはり事前通知の対象外となります。したがいまして、これも開示できないものとなります。  それでは、法務省所管のファイルで開示もしくは公表されているものがあるのかないのかという観点から幾つか拾って申し上げてみたいと思います。  外国人登録記録マスターファイルというのがございまして、これにつきましては、その登載内容と同じものが既に外国人登録証明書をもって本人に通知されております。  次に、日本人出帰国記録マスターファイルというのがございますけれども、これは原則として開示はしておりませんけれども、運転免許証の更新の際に海外渡航期間を疎明する資料として、本人の願い出があった場合に、本人であることを旅券及び運転免許証で確認の上、本人に出帰国の事実を証明しております。  三つ目といたしまして、先ほど申し上げた犯歴ファイルなんですけれども、これは個人一般には開示しておりません。ただ、これも先生御承知のように、データ収集目的に基づいて刑事事件の裁判において必要がある場合にはそのデータを裁判所に提出しているところでございます。  その他矯正とか更生保護関係のファイルも若干ございますけれども、いずれも刑の執行状況とか前科関係などに関係するものでございまして、その秘匿性が極めて高く、それを開示すれば個人の名誉ないし人権に及ぼす影響が大であることなどのために開示されてはおりません。  以上でございます。
  83. 中村巖

    中村(巖)委員 今の矯正関係もいろいろデータがあるようですけれども、私の方の承知している限りでは矯正関係にしても保護関係にしても、こういうものは客観的な事項を明らかにしたものであって、それを第三者に見せれば不都合かもわかりませんけれども、本人に開示をすることは一向に構わないのではないかと思いますが、いかがですか。
  84. 長山頼興

    ○長山説明員 まず、矯正関係でございますけれども、刑務所に入っておるいわゆる受刑者たちなどにつきまして、その前科関係などの処遇の情報という観点からいいまして入っているものでありますので、極めて秘密性が高いということが言えます。したがいまして、それが開示されますと個人権利利益を害するおそれが大きいということにもなりますし、またそれらの情報の用途は、結局その情報の本人に対する処遇というものに限定されておりますので、ほかの目的に使用されるということはございません。  更生保護関係で申しますと、これもやはりいわゆる保護関係と申しますか、本人の処遇に関係するところのデータでございますから、やはり秘密性が非常に高いものでございまして、雇い主とか保護司とかいろいろな関係からそういう情報収集してデータに入れているものでございまして、もしもそれが開示されますと、先生おっしゃる個人ならいいだろうということではなくて、いろいろ問題が生じてくるところというふうに考えられますので、それにつきましてもやはり開示にはなじまないのではないか、こういうふうに考えているところでございます。
  85. 中村巖

    中村(巖)委員 再度聞きますけれども、そうすると、例えば作業賞与金がどうなっているとかあるいは領置金がどうなっているというようなデータについても本人に開示ができないということなんですか。
  86. 長山頼興

    ○長山説明員 確かにそういう面はないわけではございませんけれども、例えば雇い主が本人に言いまして収容時における領置金とか作業賞与金等々についてどういう状況であったかということを調べて教えてくれといったようなことも出てきますと、それをきっかけとしまして問題が生じてくるのではなかろうかというふうに考えております。  ただ、現在、施設におきましてはこういう、先生おっしゃる領置金とか作業賞与金につきましては、必要な情報は当該被収容者に職員から口頭で伝えてあります。
  87. 中村巖

    中村(巖)委員 それでは、次に進みます。法務省ももう結構でございます。  それで、また総務庁へお伺いするわけですけれども、本法案におきましては、「処理情報の利用及び提供の制限」として第九条で規定があるわけでありますけれども、にもかかわらず、一定の場合に収集した個人情報目的外利用あるいは外部提供というものを認めるということにしてあるわけでありまして、これをどういう必要から具体的にどういう場合を想定してこういうふうにしたのかということをお伺いをいたします。
  88. 重富吉之助

    ○重富政府委員 お答えを申し上げます。  第九条を設定しました理由は、まず、処理情報の利用、提供というのは「法律の規定に基づき、保有機関の内部において利用し、又は保有機関以外の者に提供しなければならないときを除き、」原則として禁止するということを規定したものでございます。しかしながら、行政を執行します場合、それからまた社会の秩序を維持します場合、そういうときに行政機関の持つ情報というものが必要になる場合がございます。そういうことを加味しまして、二項で四つの場合に限り目的外の提供を可能にするように規定しているわけでございます。ただし、その場合も二項の冒頭にございますように、「処理情報ファイル保有目的以外の目的のために利用し、又は提供することによって、処理情報の本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められるときは、この限りでない。」という規定を置いて、その前提のもとに四つの場合を規定しているわけでございます。  一つは、「処理情報の本人の同意があるとき、又は処理情報の本人に提供するとき。」本人がオーケーと言ったものはいいですよ、こういうことが一つでございます。  それから第二号で、保有機関の内部で利用、提供する場合、これは「相当な理由のあるとき。」ということで、この「相当な理由」と申しますのは、社会通念上妥当と考えられる場合を指すわけでございます。  それから第三号で、保有機関以外の行政機関、地方公共団体、特殊法人に提供する場合は、その相手機関の使用が正当な場合、「法律の定める事務又は業務の遂行に必要な限度で処理情報を使用」する場合という前提のもとに、使用について「相当な理由」がある場合を規定しているわけでございます。  それから第四号では、それ以外の者に提供する場合を規定しておりまして、この場合は「専ら統計の作成又は学術研究の目的のために処理情報を提供するとき、」それから二番目としまして、「処理情報の本人以外の者に提供することが明らかに処理情報の本人の利益になるときその他処理情報を提供することについて特別の理由のあるとき。」という規定がございまして、これはちょっと御理解しにくいと思いますので、例を幾つか申し上げますと、「処理情報の本人以外の者に提供することが明らかに処理情報の本人の利益になるとき」といいますのは、例えば賞勲などをお受けになるときに、そのことに関連して本人の情報、経歴をその賞勲を決める方たちに提供する場合とか、それから事故にお遭いになったときに、その方が意識を失っておられるというようなときに、緊急にその方の血液型とか病歴等をその病院の院長に提供する、そういうときを考えております。それから「その他処理情報を提供することについて特別の理由のあるとき。」でございますが、これにつきましては私どもとしましては何回も御説明しましたが、例えばどこかのメーカーの車が事故を起こして、それは構造上欠陥があるのではないかということでその車を回収する必要があるようなときに、メーカーに運輸省等から情報を回収に必要な範囲で提供する、そういうときを考えておるわけでございます。
  89. 中村巖

    中村(巖)委員 今御説明を伺いましたけれども、問題は三号だと思うのですね。三号の規定によれば、これはただ単に特定個人情報を提供するという限りでは余り問題が起こらないかもしれませんけれども、これは持っている情報のすべてを他の省庁へ提供するというようなことをも可能にさせる規定ではないかということになるわけですね。そうなると、他の省庁が持っている情報、別の自分の方の持っている情報、それを全部突き合わせて、いわゆる特定の個人でなくて、その情報に入っておるすべての個人についての膨大な情報が一括される、こういうことになってくるおそれがありまして、このことがいろいろな形で相互に自由に一括流通をいたしますと、いわゆるいうところの国民総背番号制というものに帰着をしてしまうのではないか、こういうことの危険を非常に感ずるわけですけれども、いわばその省庁が持っているすべての個人に関する情報を一括外部に提供してしまうというようなこともやはり可能だというふうに解されるのですか。そういう場合にはこれは別の規定によって制限をするということになるのでしょうか。
  90. 重富吉之助

    ○重富政府委員 お答え申し上げます。  まず、我が国の行政運営の実態を見ますと、非常に各省庁が独自で行政を行っておられまして、そのデータも当該省庁内限りでお使いになるというケースが多うございます。そういうことから我が国の場合、目的以外の他省庁への、それからまた地方公共団体への情報の提供というのはほとんど行われていないというのが実態ではないかというふうに私ども考えております。  それから諸外国におきましても、例えばアメリカの場合、州政府から連邦政府情報をいただく場合も極めて限定的な場合にもらっておられる。その場合も特定の目的以外には使わないというようなことを限定して情報をもらっている。逆に連邦政府が州政府に上げる場合もあるわけでございます。そういう諸外国の立法例等をいろいろ見まして、諸外国にもすべて行政機関相互間の情報の提供というのは限定された形で何らかの規定がございます。私どもも、この「相当な理由」というようなものについては運用において厳しく見守ってまいりたいと思っておりますので、先生の御懸念のようなすべての情報を向こうに渡してしまうのではないかというようなことは起こり得ないというふうに考えております。
  91. 中村巖

    中村(巖)委員 すべての情報という言い方をしましたけれども、例えばある省庁が持っているファイルそのものを一括渡すということも理論上は可能だということですか。
  92. 重富吉之助

    ○重富政府委員 お答え申し上げます。  理論上はあり得るかと思います。しかし、相当な理由がなければなりませんので、例えば運輸省が持っておられます自動車の登録ファイル、そういうものを地方公共団体に徴税目的等のために渡すというようなことはあると思いますけれども、現在ほとんどそういう事例はございませんし、それから私どもとしては「相当な理由のあるとき。」ということでその運用については目を光らせてまいりたいと思います。
  93. 中村巖

    中村(巖)委員 この一人の人間に関する情報は、先ほどの賞勲関係の話にもありましたけれども、それは必要な場合も確かにあると思いますけれども、それを超えて、まず各省庁が設置法なり何なりで目的が限定されて集めている情報を、それが情報ファイルごと他の省庁に行くというようなことがあったのではこれはおかしなことなんです。そうすると、目的でもって限定している意味というものが全くなくなってしまうわけでございまして、そうなりますと、今言うように、それは総務庁の運用にもよるかもしれませんけれども、それをどんどん拡大をしていくとやはり国民総背番号制というようなことに帰着をするので、その種のいわゆる賞勲関係のある個人情報を渡すというのではなくて、そういうファイルそのものを結合してしまうというようなことについてはこれはきちっと禁止をする規定を設ける必要があるんじゃないかと思いますが、どうですか。
  94. 百崎英

    ○百崎政府委員 オンラインとかあるいは磁気テープの提供などによりまして他の個人情報ファイルの結合を禁止するということは、一面におきまして行政サービスの向上に非常に大きく寄与しております電算処理の特性そのものを否定しかねない、そういう側面がございます。むしろ、これからの情報技術の進展というようなことを考えましたときに、文明の利器というのはフルにメリットを生かす、そういう中で個人情報保護をどうするかということをやはり考える必要があるのではないかと考えております。そういう意味で、諸外国の規定におきましても、情報の相互結合ということを禁止しているような規定はむしろございません。  それではしからばどうするかということで、この法案にございますように、一つファイルの保有目的制限するとかあるいはその保有目的に即して利用、提供を規制する、こういうような措置をとっているわけでございますし、ただいま議論がございましたけれども、九条の二項にもございますように、非常に例外的にファイルの保有目的以外の目的利用を規定いたしておりますけれども、ただし書きで「処理情報ファイル保有目的以外の目的のために利用し、又は提供することによつて、処理情報の本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められるときは、この限りでない。」そういう規定を実は設けておるわけでございます。
  95. 中村巖

    中村(巖)委員 今局長がおっしゃられるのは、結合を禁止すると電算処理のメリットを減殺することになるのだ、こういうことをおっしゃられる。そうすると、国民には大変危険な感じがするので、今度逆に言うと、電算機というものの機能を最大限に駆使をするとなると、まさにいろいろな情報を統合、結合をして一定の、国民一人一人のそれぞれ財産の状況から税金の状況からあるいはまた医療の状況、教育の状況も全部一目瞭然にコンピューターから出てくるようなそういう社会がつくり上げられてくるのじゃないか、こういうことになるので、やはり原則的には各省庁が自分で押さえておって、そして人には絶対それは見せないのだ、渡さないのだ、こういうことにしておく方が国民としては安心がいくわけですね。そうでないと、情報があっちへ飛び交いこっちへ飛び交い、そして今申し上げるような個人についての総括的情報というものが行政官庁内ではどこでも取り出せるというような状況がつくられては困るわけです。その辺のところについて、もうちょっとしっかり管理をするのだということをはっきりさせていただきたいと思うわけです。
  96. 百崎英

    ○百崎政府委員 いわゆる国民総背番号制の問題につきましては、たしか昭和四十八年ころだったのではないかと思いますけれども、いろいろ国会でも御議論になりましたが、その際の政府側の答弁といたしまして、世界の趨勢あるいは国民意識の推移を見ながら慎重に検討する、こういうような御答弁をたしか申し上げていると思いますけれども、そういった考え方は基本的には今のところ変わっておりません。  それで、先ほど申し上げましたけれども、結局は、この法律にございますように、原則はあくまでも各省庁が所掌事務を遂行する上で必要な範囲の保有の制限をする、それからまた一方で、個人情報ファイルの保有目的以外の利用、提供を原則として禁止する、こういうことはあくまでも一番基本にあるわけでございまして、そのような御心配はないと思います。
  97. 中村巖

    中村(巖)委員 重ねてその点について申し上げておきますと、要するに国民としては、今現状では官庁の縦割り行政のために、セクショナリズムのために情報はこっちにあいていてもこっちには行かないのだなということで安心をしておられるわけだけれども、また事実この法律がなければ、そんなことでやはり役所というものは縦割り行政のもとでお互い情報を流通し合うというようなことがないというふうに信じられるところへもってきて、わざわざこの第九条というような規定を設けて、ある場合にはそれは交流がやれるのですよということを法律で明らかにするというのはどうかと思うのですけれども、何でこの九条が必要なのですか。
  98. 高鳥修

    高鳥国務大臣 今の個人情報保護法案を立案するに至りました過程で、諸外国の例も私ども随分勉強してみたわけでありますが、一番早くデータ保護法制定したのは西ドイツのヘッセン州でございますけれども、そこへ私、参りまして、一体何のためにこういうものをつくったのだというそもそもの動機について尋ねましたところ、彼らの答えて言うには、今委員おっしゃいましたように、個人情報というものがいろいろと電算処理をされている、それらがせっかくあるのならばこれを結合していろいろな面に活用したらいいだろうという動きが強くなってきて、いわゆる大データ法といいましょうか、データ活用という面に着目した動きがあった、それではとてもじゃないが個人の個々の情報についての保護ができないということで制定をするに至ったということであります。現実には、OECD勧告などが出ましたのも、いわば情報の流通というものが先にあって、それに対して適当な規制を加えることが必要であるということで始まったわけであります。  それに対しまして日本の場合には、今現在に至るまで、それぞれ事情聴取をいたしておりますが、省庁間等における情報の流通というものはほとんどございません。ございませんけれども、今後は、電算機処理の発達に伴いまして、それらのデータのうちで許されるものについては活用されていくというようなことが諸外国の例に照らして多くなるのではないかというふうに考えまして、きちっとした規制をこの際設けておくべきであると私ども考えた次第でございます。現に、ヨーロッパにおきましては、臓器移植等のデータについてはもう国境を越えて自由に流通しているというのが現在の状況でございますので、今後の事態に対応するためにも、日本ではこの際この辺できちっとした規制をかけるべきであると考え制定したものでありまして、諸外国では最初に流通ありきということでございます。その点が日本は違っておるということを踏まえて制定した次第であります。
  99. 中村巖

    中村(巖)委員 では、その点はその辺にして次へ進みます。  第十四条は、処理情報の不開示の場合というものを定めているわけですけれども、その中に第二号、第三号という規定がありまして、二号の方は「処理情報が第三者から取得した情報に係るものである場合において、保有機関と当該第三者との協力関係又は信頼関係を損なうこと。」、三号の方は「個人の生命、身体、財産その他の利益を害すること。」こうなっております。  この種のいわば情報としてはどういうものを想定してこういう規定を設けられたのか、それをお示しをいただきたいと思います。
  100. 重富吉之助

    ○重富政府委員 お答え申し上げます。  まず、この十四条という条文でございますけれども、これは「処理情報の全部又は一部について開示をしないことができる。」という規定でございまして、その開示しないことについては、外部から説明を求められたときには当然に説明に応ずる必要がある。それから、行政不服審査法の対象にもなりますし、行政事件訴訟法の対象にもなるという規定でございます。  それをまず頭に置いていただきまして、それでは、十四条の二号というのはどういう例が考えられるかということでございますが、私どもが御説明しておりますのは、交通事故の目撃者、そういう方から証言を得ようという場合に、交通事故の場合はAとBがおるわけでございますから、そのことがBに不利な場合とAに有利な場合、それは客観的に事実をそのまま証言されてもそういうことになるわけでございますが、その場合に、証言をなさった目撃者に不利が及ぶ、Bから恨まれる、またはお礼参りをされるというようなことがないようにする、そういうことが一つは必要であろうかと思います。そういうことを想定してつくっておる条文でございます。  それから、第三号でございますけれども、これは「個人の生命、身体、財産その他の利益を害すること。」という規定でございまして、私どもとしては、当該本人に関係する情報の中に第三者の情報が含まれている場合がある。その場合に、その情報を開示することによって第三者の不利益となる場合があるわけでございまして、その第三者が生命の危険とか身体の危険を感じられる場合があるのではないか。それからもう一つは、代理人が本人にかわって情報を見る場合に、その本人の財産等を明らかにすることによって本人が不利をこうむる場合も考えられる。そういう場合を想定しているわけでございます。
  101. 中村巖

    中村(巖)委員 その種の情報で一体電算処理情報なんというのはあるのかということになると、ちょっと疑問なしとしないわけですけれども、それはその辺にしておきます。  ついでに条文関係のことで、六条二項十一号、さらに七条三項六号、十四条一項一号のホ、それに政令によるということが規定されておりますけれども、この政令としてはそれぞれどういう政令を予定をされているのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  102. 重富吉之助

    ○重富政府委員 お答え申し上げます。  まず、六条二項十一号の政令の例としてどんなことを考えておるかということについて申し上げますと、私どもとしましては、行政機関職員のほか、その家族等を含む個人情報ファイル、または賃金職員等の個人情報ファイル考えております。これは第三号に準ずるものとして考えております。それから、バックアップファイルといいますか予備ファイルを第五号に準ずるものとして考えておる、そういうことでございます。  それから、第七条三項六号の例でございますが、政令事項として現在考えておるものは、「勾留の執行、矯正又は更生保護に関する事務」に準ずるものといたしまして、例えば逮捕された者の留置に関する事務、そういうものを想定しておりますけれども、具体的には政令作成の段階でさらに詳細に検討することといたしております。なお、これらの事務に使用されます個人情報ファイルのすべてが公示除外になるのではなくて、公示しないことができるのは、「ファイル保有目的に係る事務の適正な遂行を著しく阻害するおそれがある」場合だけでございます。  それからもう一点、十四条一項一号のホの例でございますけれども、私どもとして現在政令で規定することになるのではないかというふうに考えておりますのは、「租税の賦課又は徴収に関する事務」に準ずるものといたしまして、労働保険の適用、徴収または不正受給に関する事務、労働省関係でございます。もう一つ労働省関係としまして、公共職業安定所の職業紹介及び職業指導に関する事務、そういうものを考えておるわけでございます。  ただ、最後に申し上げておきたいのは、これらの政令委任事項といいますのは、いずれも本法に掲げております個人情報ファイルあるいは事務に準ずるものでございまして、無限定なものではございません。それから、これらの事項を私ども政令制定するに当たりましては、必要最小限度のものに限るということにしたい、そして運用については厳格に運用してまいりたい、こんなふうに考えております。
  103. 中村巖

    中村(巖)委員 次に参りまして、この情報の開示を受けてそれが間違っておるという場合には訂正を申し出ることができる、こういうことになっているのです。これもずっと議論になっていることと思いますけれども、これに対して訂正請求権は認めないのだ、こういうことでございまして、なぜ訂正請求権を認めないのかということが一点と、そして、間違っている、しかし訂正してくれないという場合において、その本人からすればどのような救済措置というものがこの本法以外の手段としてあり得るのかということをお尋ねしたいと思います。
  104. 百崎英

    ○百崎政府委員 訂正請求権でなくて訂正の申し出というふうな規定を置いたのは、次のような理由によるものでございます。  一つは、行政機関が訂正の申し出に基づいて明らかな誤りを発見したという場合には、これは当然に訂正あるいは削除するということになるわけでございまして、それはこの本法の第五条の正確性の確保という義務からも当然そのような措置が行われるものと考えております。問題になりますのは、行政機関判断あるいは評価にかかわる個人情報あるいはまたその特定の行政処分の基礎になっている個人情報の誤りにつきましては、これは先生御承知のように、我が国の行政救済制度というのは原則としていわゆる事後救済制度というものを建前にしているわけでございますので、行政処分によって具体的に個人権利利益が侵害されたという場合に初めて争えるわけでございまして、その場合には行政不服審査あるいは行政事件訴訟といった既存の争訟制度によって救済を図ることが適当である、このように考えたわけでございます。  そういった既存の争訟制度がある中で個人情報の誤りについて訂正請求権に基づく争訟でも争える、そういう道を開いたらどうかということは、これは研究会においてもいろいろな議論がございましたが、これにつきましては先日林修三参考人も意見を述べておられましたけれども、仮にそういった請求権という形を認めますと、同じ個人情報について二重の争訟制度が併存することになって適当ではない、このような御意見をおっしゃっておられましたけれども、そういった考え方をとらしていただいたわけでございます。  ただ、この訂正請求権を認めるかどうかというのは、ある意味ではまさに立法政策の問題でございますけれども、そういう制度を設ける場合には、今度は一方で立法技術的に非常に厄介な問題が実はあるわけでございます。それは、例えば間違った情報に基づいて仮に行政処分が行われた場合に、その行政処分の取り消しという抗告訴訟でも争えますし、こういう訂正請求権を認めますと、そういった抗告訴訟の例えば出訴期間が切れた後あるいは抗告訴訟で処分が確定したその後でもなおかつまた個人情報の誤りに基づく訂正請求権で争える、そういう道を今度は開くということになりまして、これはまたそれなりにそういった二重の訴訟制度、前の判決の規範力の範囲とかいろいろな問題がございまして、果たしてそういったことは適当であろうかといったような議論が実はいろいろございましたが、そういった道はここではとらずに、と申しますのは、結局そういった道を認めますのは、これは訴訟におきましてもいわゆる無名抗告訴訟というような形で学説としてはいろいろな御意見がありますけれども、今までの判例におきましてもほとんどそういった場合には無名抗告訴訟というような形は認められておりませんので、そういった道はとらなかったわけでございます。  いずれにいたしましても、既存のいろいろな法令も調べてみましたが、六十年に改正されました住民基本台帳法におきましても、恐らくそういった議論を踏まえて訂正の申し出、こんなような形になっておりますので、一つはそういう立法例に倣ったということでございます。
  105. 中村巖

    中村(巖)委員 データとしてファイルの中に誤った情報が組み込まれるということ自体は行政処分でないわけですから、だから、そうなると特別な規定を設けない限りは、その誤った情報に基づいて例えば滞納税金の差し押さえというような行政処分がなされない限りは、申し出て訂正してくれればいいのですが、そうでない限りはできない、こういうことになるわけです。そうすると、その間一定行政処分がなされる前に誤った情報に基づいて何らかの処分がなされるのではないかという不安というのを本人が持つわけで、その不安を解消させる権利というものはやはりあった方がいいのではないか、こういう感じがします。ただ、今立法技術上というかそういう御説明がございましたけれども、そういう不安を解消する争訟の方法というものはないものだろうかという感じがいたしますが、いかがですか。
  106. 百崎英

    ○百崎政府委員 確かに国民立場から見ればそういった不安感がございますが、先ほどもちょっと触れましたように、行政行為の中止請求権といいますか、あるいは行政処分が行われる前の情報の誤りを訂正する請求権、こういうものを認めるかどうかというのは、まさにある意味では立法政策の問題でございますけれども、先ほど申し上げましたような非常に大さな厄介な問題がございますし、特にこの法律の場合には電子計算機処理に係る個人情報保護ということでございますので、そういった場面に限られるわけですが、それでは、手作業処理の場合のそういった問題に対して一体どういう対処の仕方があるのか、ある意味ではそういったほかのいろいろな場合とのバランスの問題とかをまた今後の問題として基本的に考えなければならないかもしれません。
  107. 中村巖

    中村(巖)委員 時間がだんだんなくなってまいりましたので、幾つかの大きな問題についてお伺いをしていきたいと思います。  今、手作業情報、つまりマニュアル情報についてのお話がちょっとございましたけれども、大臣にお伺いしますが、今回は電算処理情報についての立法でございますけれども、マニュアル処理情報についてのこの種の立法というものを今お考えになっておられるのか、あるいは今後は考えようという姿勢がおありになるのか、その辺のところはいかがでございましょうか。
  108. 高鳥修

    高鳥国務大臣 諸外国の立法例あるいは我が国におきましても、市町村等においてマニュアル処理された個人情報についてもその対象にしているところもございます。私どもは今回この法律を立案するに当たりましては、とりあえず電算処理の特性というものに着目して、これに対して速やかな管理体制を確立すべきであるということが個人の利益の保護につながる、こういう観点から立案をいたしたわけでございます。  なお、手作業による個人情報につきましては、今後必要に応じて検討してまいりたい、このように思っております。
  109. 中村巖

    中村(巖)委員 経済企画庁がお見えいただいていると思いますので、お伺いしてまいりたいと思います。  いわゆる行政機関の保有するあるいは地方公共団体の保有する電算処理情報のほかに民間の保有するところの情報があるわけで、なかんずく信用に関する情報が今大量に存在して蓄積をされておりまして、その個人信用情報と言われる情報がいろいろな形で乱用されるというか、そういうことがあり得ますし、一方でまた、そういう情報の中にも誤った情報が蓄積されているということがあるわけです。行政機関情報もそうですけれども国民とすればこの個人信用情報というものについての規制を何とかしてほしいということがあるわけで、この辺について、今個人信用情報の規制問題がどこまで進んでいるかということをお尋ね申し上げたいと思います。
  110. 川名英子

    ○川名説明員 お答えいたします。  割賦販売ですとか無担保貸し付けなどの信用取引が拡大しております。それに伴いまして信用情報収集とか整備が行われてきているのですが、情報が誤っている、誤情報がある、そういう信用情報が不適正に収集されておりますことは消費者に不利益をもたらすものでして、ブラックリストをめぐる消費者トラブルというものがふえてきております。  こうしたことから企画庁では、消費者信用適正化研究会を開催しまして、六十年に報告を公表しております。それから、ことしになりまして、国民生活審議会消費者政策部会で九月に、信用情報を含めました消費者取引にかかわる個人情報保護を内容とする報告をまとめております。それから、特に信用情報につきましては、六十年三月に大蔵省、通産省両省から取り扱いに関する通達が出されているところです。  企画庁としましては、これらの国民生活審議会などの報告の趣旨に従いまして、立法化のためのコンセンサスの形成を図る必要があると考えております。ですけれども、当面としましては、通達の厳正かつ適正な運用をなされるよう十分監視、指導を行っていく必要がありますので、関係各省と連携をとりつつ、個人情報に係る消費者トラブル等に適切に対処していきたいと思っております。  以上でございます。
  111. 中村巖

    中村(巖)委員 そうしますと、まだ立法化に取りかかるという段階までには至っていない、こういうことになりますか。
  112. 川名英子

    ○川名説明員 立法化は必要だと思っておりますが、その前に個人情報に関する国民的なコンセンサスが必要だと思っておりますので、まだ国民的コンセンサスを図る段階だと思っております。
  113. 中村巖

    中村(巖)委員 その点で、国民的コンセンサスがどういうところのコンセンサスかということはいろいろあると思いますけれども、やはり私どもは、今日ではそういう個人信用情報の目に余る横行あるいはそういう情報機関のやり方について何とかしてもらいたいというのは国民的な要望じゃないかというふうに思っているので、早急に立法化の方向でお進みをいただくことをお願い申し上げたいと思います。  次に、大臣にお伺いをするわけでありますけれども、今回こういう法案提出をされまして、そして何らかの形で、今までは公開をされなかった情報個人に対しては一部開示をされるようになる。こういうことになるわけでありますけれども、問題は、一部個人に対して開示をされるという、そんなちっぽけな問題ではなくて、もっと行政情報というものが個人プライバシーを侵害しない限りあるいはまたその国の安全を脅かさない限り、広く公開をされるということが絶対に必要だ。行政というものはやはり多くの情報国民に公開をして、そしてガラス張りの中で行われる、それが本来のあり方ではないのか。国民行政を批判をすることについても情報がなければできないことで、その意味で各国ともこういう行政機関の保有する情報に関するプライバシー保護法律と同時に、その前段階情報公開というものを定める法律を持っているわけでございまして、日本ではまだそこまで至っていない。これはしかし何とかしなければならぬのではなかろうか、こういうふうに私ども考えておるわけでございますけれども、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  114. 高鳥修

    高鳥国務大臣 委員指摘のように、今回の個人情報保護に関する法律個人情報保護するということに主たる目的がありまして、その一環として、正確性を期するために開示を本人に限りするというものでありますが、これに対しましてより一層公正な、民主的な行政を確保するという観点から、政府の持っております情報についてはこれをできるだけ一般に、だれでも見られるように公開すべきであるという御主張があることにつきましては、私どもかねがね承知をし、勉強しておるところであります。  政府として正式にこれを取り上げておりますのは昭和五十五年の閣議了解、これから始まっておりまして、今情報公開問題研究会というのをやっておりますが、この七月までに三十三回、その方面に詳しい先生方にお集まりいただいて御検討いただいているところでございます。私どもといたしましては、そうした御要請にこたえるべく鋭意検討を進めておるところでございますが、なお若干の時間をいただきたいというふうに考えております。
  115. 中村巖

    中村(巖)委員 私はこの問題で何回か質問をしているわけなんですけれども、要するにそのたびに政府の御返答は検討中であるということでございまして、それは慎重に検討されることも必要かと思いますけれども情報公開といってもまず何でも公開するというのではなくて、一部でもこういう部分は公開をする、最初は量的に少なくても、だんだん年代がたつに従って拡大をすればいいわけですから、そういったようなことで早急に立法化の方向へ踏み出していただきたいということをお願いを申し上げたいと思います。  最後に、また長官にお伺いをいたしますけれども、本法案については私どもも必ずしも反対というわけではないわけですけれども、やはり私が今質問の中で御指摘を申し上げましたように、あるいはまた他の委員からのいろいろの御質問の中で指摘がありましたように、まだまだ不十分であるという部分があるわけでございます。また、参考人などのお話を聞きましても、堀部参考人はとりあえずはこれでしようがないのだ、こういうような御意見でございましたし、また内容的に、日弁連の先生などはやはりまだまだブラックボックスがあるとかいろいろなことが指摘をされておるわけでございます。したがいまして、実際やってみませんとこれがどういった効用を持つかということはわからないという点があるわけですから、とりあえずやってみることは結構だといたしまして、やってみた上でやはりこういうものも開示なりなんなりできるじゃないかというようなものが出てきますればそれはそれで、あるいはまたこういうところはよりよいものになる、あるいはこういう不都合なところは手直しできる、こういうことがはっきりしてくると思うので、その際にはこれは見直しをしていただくということでお願いをしなければならないのだというふうに思っております。  本法案の今後の見直しのことについて、大臣としてはいかがお考えでしょうか。
  116. 高鳥修

    高鳥国務大臣 本法案は、私どもほぼ十年近い歳月をかけまして勉強してまいりました。いろいろ専門の先生方の御意見も伺ったりあるいは諸外国の立法例なども参考にしながらまとめさせていただいたものであります。  個人情報保護法案というのが、いわばプライバシー保護法案であるというふうな観点から極めて不十分なものではないかという御指摘をしばしばいただいたところでございますが、その後審議の過程を通じまして、私どもが苦心をしながらまとめてまいりましたことについてだんだんに御理解をいただいてきたのではないかというふうに思って、ありがたく思っておる次第であります。  ただ、しかしながら、もとより本邦におきまして初めての法律でございますので、したがって不十分な点も多々あろうかと思います。さらにまた、今後コンピューターによる個人情報処理というものが技術革新に伴いましてさまざまに変わっていくであろうとも思われます。そういうことも踏まえまして、私どもといたしましては適時適切な見直しをしていかなければならないと考えております。本法案制定していただきました暁には、また専門の先生方にお集まりいただいていろいろ御検討いただくなり、あるいは国会におけるいろいろな御論議を踏まえまして検討してまいりたい、このように考えております。理事会等におきましても見直し条項の附帯決議もされるやに承っておりますので、それらも踏まえまして対処をしてまいりたいと考えております。
  117. 中村巖

    中村(巖)委員 終わります。
  118. 竹中修一

    竹中委員長 川端達夫君。
  119. 川端達夫

    ○川端委員 いよいよきょうで審議を終了するということで、全般的な見地から幾つかの点についてお伺いしたいと思います。  何回も議論になったところでありますが、今の御答弁でも、この法案自体プライバシー保護というもの全部を包括するものではないということはよく理解をしておるものでありますが、基本的に個人のいわゆるプライバシー保護しなければいけない、そしてそのプライバシーという概念自体もいろいろな時代の流れの中で、いわゆる個人情報を知られたくない、ひとりでいる権利というところから広がってきて、自分の情報をコントロールする権利であるというふうな認識に世の中なっているということも、大体共通の認識ではないかというふうに思うわけであります。  そして、いろいろな議論をしていく中で、この法案自体がそういうプライバシー保護するという立場の中の一つである。コンピューター情報、特に国のコンピューター情報が非常に大きくなってきたという中で、個々人、国民の皆さんがその情報管理に対してプライバシーを侵害されるのではないかというおそれを非常にたくさん持っておられる、不安を持っておられる。したがって、プライバシー保護という観点の中で一つの分野である国の情報、その中のとりわけ電算機の情報に関してきちっと対応しよう、こういうことだと思うのですね。そういう意味で言うと、本来のプライバシーはしっかり保護しなければならないという一貫した理念といいますか、思想といいますか、哲学といいますか、そういうものが流れているはずであります。  ところが、この法案自体を読みますと、全体のそういう流れというものがなかなか酌み取れないというふうなことで、どうも読めば読むほど行政の円滑な遂行という言葉にウエートがあるように読めて仕方がないわけなのです。そういう部分に関して、やはり世の中で初めてできるこういう種類の法律ですから、全般的にプライバシー保護をするという中でその一部を規定するのだ、したがって、これを見本にしてこれから全般的な民間部門あるいは国においてもマニュアルの部分も含めて、こういうふうに情報というのは管理されるべきであるという指標になるべきではないかなというふうに思います。そういう部分でそういう観点というものが余りないように思うのですけれども長官としてはいかがお考えでしょうか。
  120. 高鳥修

    高鳥国務大臣 本法案立案の趣旨というものは、ただいま川端委員が御指摘になった、そういう個人プライバシー権保護ということを基本的に踏まえて立案をしたつもりでありますが、しばしば御答弁申し上げましたように、現在の行政機構の中で一体何で総務庁に我々の持っているデータを一々ファイルを届け出しなければならないとか、あるいはまた平たい言葉で申しますと、総務庁からいろいろと文句を言われなければならぬのか、そのようないろいろな意見があったのをようやく調整してここまで持ってきたというものでございます。したがって、不十分のそしりは免れない点があるかもしれませんけれども、現在の段階においてはぎりぎりのところであったということを御理解いただきたいと思うわけであります。  それから、なお民間部門あるいは地方公共団体等におけるプライバシー保護ということにつきましては、例えば都道府県等においてはいまだ制定されておりませんが、今後ともこの法案一つのステップにして整備をしていただきたいというふうに考えているところでございますし、民間部門についても、当然のことながら政府として積極的に取り組んでいくべきである、このように考えております。先ほど来お話のありました訂正権でありますとか、さらには本人の同意というようなものについては殊さら民間部門において厳しく扱われるべきものではないか、その方向で今後検討さるべきものであろうというふうに考えております。
  121. 川端達夫

    ○川端委員 今長官がおっしゃったとおりに、各省庁がなぜこういうことをしなければいけないのか、総務庁にそういうことをぐだぐだ言われなければいかぬのかということが、まさに個人プライバシー保護するという観点に立った理念というものがまだ十分に徹底していないのではないか。したがって、木を見て森を見ずというか、非常に細かい部分の行政立場だけですよということで、技術論を中心とした仕組みになっているから余計そういう部分での理解が得られにくい、こういうことではないかなというふうに思います。  きょう本委員会に来ましたら、人事院月報というのがここに並べて置いてありました。たまたま今読んでおりましたら、一番初めのページの裏に「I種試験の合格者を発表」、一種の宣伝ですね、こういうのが載っている。その中で、合格者が云々とありまして、「二八試験区分のうち三区分(行政、心理、畜産)で」女性が「トップ合格しています。」こういうふうに書いてあるのですね。その前段は、女性が非常にたくさん、百五十人と史上最高になって、その中で三つの分野でトップで合格しておられます、こういうふうに書いてある。  そうすると、先ほど来の議論で、いわゆる入学試験は本人に知らせるのか知らせないのかとかいろいろな議論があった。そのときに、I種の公務員試験の、個々人の名前ではないですけれどもこういう記事が載る。読みようによって、この分野とこの分野とこの分野で女性がトップであったということ自体は、個人情報管理といういわゆるプライバシーということでいうとかなり慎重にすべき情報であるはずなんです。そういう部分が割に安易にぽこっと書いてあるわけですね。例えば、この分野で女性の合格者が何人おられるのか知りませんけれども、そのうち三人であれば、あの人がトップであろうか、この人がトップであろうかということが類推をされてしまうわけですね。ということは、トップで通ったのが名誉だと思っている人はいいですけれども、不名誉だと思っている人もいるかもしれないわけです。そういう個人情報という部分に関しての理解、それからきちっと守らなければならないという理念、こういうことがまだまだ不十分である。そういう中でこの法案ができるということに、前進であるという意義は認めるのですけれども、その理念を本当にするには法案の中にきちっとすべきではないのかなということを非常に思うわけです。  そういう意味で、前進をするということ自体に関しては一応の評価をしたいと思うのですが、先ほど長官も、これから時代の流れの中で見直しも考えていきたいというふうなことをいろいろお触れになりましたから、重複しますけれども、これから見直していくときには、そういう理念というふうなものもいろいろやっていく中でやはりはっきりしておかなければいけないという部分を明示すべきだというふうに思いますし、中身的にも問題があるところは変えなければいけないだろう。それからコンピューターの技術革新というのは非常に遠い速度で進むわけですから、そういう部分では対応し切れないというふうなことが出てくるかもしれないということで、一定期間に見直しというのは当然やられるべきだと思うのですが、ちょっと重複して恐縮でありますが、御見解のほどをお聞かせいただきたいと思います。
  122. 高鳥修

    高鳥国務大臣 ただいまの公務員の成績の公表について、女性がトップであるとかないとかということの公表についての評価をどうすべきかということについては、私自身もちょっと判断できませんが、一つには、日本においてはプライバシー保護に対する国民全体の意識というものが他の諸国に比べましてまだまだシャープでないというか、そういうところがやはりあるのではないかというふうな感じも持っております。そういうことからいたしまして、私どもがこの法案を立案する際にもなかなか思うほどにはそうした思想を盛り込めなかった。それはやはり国民の側にもそうした権利意識というものがもっともっと発達していくことがあるいはこうした法案前進させる一つのゆえんであるのかなという感じがいたします。  ただいまの御意見などを今後十分踏まえまして、私どもも先ほど来申し上げておりますように、電算処理の日進月歩に対応し、また国民意識の変化に対応いたしまして、さらにまたこの法律が初めての法律でありますので、実施をいたしました上で、欠点があればもちろん速やかに修正をするなりなんなりということをお願いしてまいり、遺憾のないようにやっていきたいというふうに考えております。
  123. 川端達夫

    ○川端委員 本案から多少ずれるのかもしれませんが、きょうの新聞もそうだったのですが、いわゆるコンピューターウイルスというものが日本にも上陸をした。最近アメリカで軍事情報を含めたところにかなり大規模にウイルスが侵入してしまった。アメリカのある学生がやったということのようでありますけれども、そういう部分で、この法案で言えば安全性の確保という部分に該当するいわゆるハッカーの問題、それからこのウイルスの問題も含めて、コンピューターの時代の流れというものには我々今まででは想像もできないような事態がいろいろある。  例えばハッカーの問題とかコンピューターウイルスの問題というのは、行政機関の保有する電子計算機処理という法案なのでお聞きするのですが、こういう問題というのはどこで検討されるのかということ、あるいは、この法案でも強いて言えば安全のためにきちっとしなければならないということがあるわけですけれども、そういう部分で言うと、どういう関心を持ち、どういう対策をお考えになっているのかをお聞かせいただきたい。
  124. 重富吉之助

    ○重富政府委員 お答え申し上げます。  電算機に保有されております個人情報の安全性を確保するために、実は私どものところで内々検討を始めておりまして、その際にはコンピューターの所管省庁であります通産省、それから電気通信関係の所管省庁であります郵政省と相談をしながら検討はしておりますが、もしこの法案国会でお認めいただきまして成立するようなことになりましたら、私どもは鋭意その問題について、現在は内々やっておるわけでございますが、今おっしゃったような問題については全力を挙げて取り組みたい、このように考えております。
  125. 川端達夫

    ○川端委員 次に、先ほどの議論に戻るわけですけれども長官、いろいろなそのほかのプライバシー保護という認識が今はまだ日本国民の中にある面ではなじまないというかなじみ切っていないということで、この法案がそういう契機になっていくという要素もあるのではないかという御趣旨の御発言がありました。私もそうだというふうに思いますし、そうなってほしい。そういう意味でプライバシー保護というものをどう考えていくのか。国民の皆さんは漠然とした不安はお持ちになっている。そういうときにこういう法案がスタートをする。それでは、民間部門あるいはそのほか、大きく言っていわゆるプライバシー保護というものをどう考えていこうかということに関して早急にスタートしていくべきだというふうに思うのですが、それから法制化を検討していくべきだと思うのですが、その点についての御見解をお伺いしたいと思います。
  126. 高鳥修

    高鳥国務大臣 プライバシー全体の保護ということになりますと、これは法務省あたりが中心になって検討していただかなければならない問題だと思いますが、少なくとも民間の持っております個人データ、これがもう相当大量なものになっておりまして、ダイレクトメールでありますとか消費者信用情報等でそれぞれ民間において保有され、利用されておるという現在の状況にございます。したがいまして、政府といたしましても既に閣議決定をいたしておりまして、これらにつきましてできるだけ早期に所要の措置を講ずべきであろう、こういう観点で検討を進めておるところであります。  ただ、民間部門ということになりますと総務庁の所管外になるものですから、私どもとしては役所の建前、役割分担上、民間部門について今法案を立案するという立場にないわけでありますけれども、ただ、政府の施策を総合的に推進するという観点から、総務庁といたしましても、他の省庁協力をいたしまして、御期待にこたえるように努力をしていきたい、このように思っております。
  127. 川端達夫

    ○川端委員 次に、前回私がここで質問させていただいたときにもいろいろ議論になったのですが、第四条に関連するのだと思うのですが、いわゆる収集制限についてお尋ねをしたい。  この前もいろいろな議論をさせていただいたのですが、そのときに御答弁として、国のいろいろな収集制限考え方がある、OECDがそういう考え方をガイドラインとして一つ示している。 しかしその部分を法制化するということでは各国とも対応もいろいろあるし、いろいろな難しい問題もある。その部分はそれなりには理解はできるわけですが、そのときに行政機関法律に基づいて、しかも目的を持って収集をするのであるから殊さら収集制限をする必要がない、こういうふうな御趣旨だったと思うのですね。  私が申し上げたのは、いわゆる思想、信条あるいは宗教、犯罪その他という部分に関しては、プライバシー保護という観点からいえば、基本的には集めてほしくないし、集めるべきではない。一番初めに申し上げましたように、理念があって、その中で正しい法律に基づき、目的を持って集める場合はこの限りでないというふうにすべきではないか。そうすると、表から言うか裏から言うかの違いではないですか、こういうことでありましたけれども、本来、私が今申し上げましたように、行政機関法案でありますから、法律その他いろいろなものの規定のあるものを除いては、いわゆるセンシティブ情報に関しては収集してはいけないというふうに規定をするということ、これは表からだと思うのですが、そうすると実際上何か非常に不都合なことがあるのかどうかということを確認をしておきたいと思うのです。
  128. 百崎英

    ○百崎政府委員 先ほどもちょっと御答弁申し上げたわけでございますが、まず基本的に、いわゆるセンシティブ情報と言われるものであっても、行政機関が公益目的を達成するために必要のある場合には収集できるという点は御理解いただけると考えております。  それで、今先生が御提言になりました法律に規定がある場合を除いてはかくかくしかじかのものは集めてはいけないのだ、そういう書き方をしてどういう不都合があるかという御質問でございますけれども、実はそこで言っております法律というものを、例えば個別具体的な法律の規定というふうに考えますと、今の我が国の法律全般を見渡してみましても、行政機関情報収集につきまして個別具体的に、いろいろ収集制限とか収集ができるとかいうことを規定している法律というのはほとんどございません。そういたしますと、例えば公益目的を達成するために個別の法律条文がなければ収集できないということになりますと、今度は行政機関が必要がある場合もほとんど収集ができないというような事態になるわけでございまして、それでは、また一方で本来の公益目的の達成に支障が生ずる。そこで、それでは個別の法律をつくればいいじゃないかという、いわば例外規定みたいなものですけれども、そういう話になりますと、先ほども申し上げておりますように、今の実体法を全部洗い直して、かくかくしかじかの場合には特に電算処理に係る個人情報について例外的に収集ができる、そういう規定を設けなければこれは収集できなくなる。  また一方、現在の各省の設置法におきましてはいろいろな所掌事務と権限が書いてございますが、その最後のところに、その機関が所掌している事務を遂行する上で必要な資料収集をすることができるという規定が設けられておりまして、実際上は各省はその規定に基づいていろいろな情報を集めておるわけでございますけれども、個別法でそういった原則禁止みたいな規定を設けますと、それでは設置法の規定と個別の具体法との適用関係が一体どうなるのか、そういう問題になりまして、その優劣関係を今度は決めなければいけない。その場合には、各省の設置法の資料収集規定の中に、電算処理の場合にはかくかくしかじかの情報を集めてはいけないという規定を全部盛り込まなければ法律の適用関係がはっきりしない、そんな事態に実はなるわけでございます。  そうなりますと、これはまた作業が大変だという話は別にいたしましても、じゃ一体なぜ電算処理の場合だけそういった制限をするのか、あるいは電算処理にかかわらず情報収集一般についてそういう規定を設けるというような御意見もあろうかと思いますけれども、この法律自体は電算処理に係る個人情報保護目的としているわけでございますので、この法律ですべての行政機関情報収集一般を縛ることが果たしてできるかどうか、そういう問題が一応ございます。あるいはまた、例外的に収集できるという規定を設けるにしても、一体どういう場合が例外に当たるのかどうか。そういった議論をしてまいりますと、これは先ほど申し上げましたように、いろいろ議論がございましてほとんど収拾がつかないのではなかろうか、そういうことを私ども考えているわけでございます。  したがいまして、結局収拾策としては、現在も行われておりますように、各省の設置法に基づいて各省が必要な範囲で情報収集を行っておりますので、先生が御指摘の、法律に規定がある場合を除くというその法律は各省の設置法も含むというふうに、もともと法律ですから当然含まれるとは思いますけれども、そういうふうに考えてまいりますと、結局今御提案申し上げている、法律の定める所掌事務の範囲内で必要な情報収集する、またそれはそれ以上のものであってはいけない、そういった法案と同じことになるではなかろうかと私は考えているわけでございまして、今考え得る最善の案はこれしかあり得ないのかな、そんなふうに考えているわけでございます。
  129. 川端達夫

    ○川端委員 法律で定める場合はこの限りでないという言い方が悪かったのかもしれません。ファイルの保有というところに「法律の定める所掌事務を遂行するため必要な場合に限り、」と書いてあるわけですね。この部分だけがただし書きであるというふうにできないでしょうか。今言われたように法律収集ということを、これは収集という言葉で言ったのであれだったのですが、いわゆるセンシティブ情報に関係するようなファイルは保有できない、ただし法律の定める所掌事務を遂行するため必要な――要するに、この四条に書いてあることを阻害するのではなくて、この場合だけですよ、そのほかはだめですよというふうな規定も今のような考え方になるのでしょうか。  収集するということをお尋ねしたものですから、収集ということで言うと、収集ということを法律で定めないと各省庁全部いろいろなことをできなくなってしまうではないかという御趣旨だったと思うのですね。確かにこれは収集に関しては一切書いてないので、ちょっとブレークダウンして保有という観点にしたときに、ここでは保有に限定をしているわけですね。この限定は、それはそうだろう、しかしそのときの基本的な精神としていえば、そういうセンシティブ情報的なものを持ってはいけないという理念があってしかるべきじゃないかという趣旨だったので、その点どうでしょうか。簡潔にお願いしたいと思います。
  130. 百崎英

    ○百崎政府委員 その点は、収集といたしましても、仮に資料の保管といいますかあるいはファイルの保有と置きかえましても、先ほど申し上げたような点は全く変わらないと思います。  それからこの法律自体は、何度も申し上げておりますように、電算処理に係る個人情報の手続を決めるということでございますので、電算処理のためにまずその第一歩となるファイルを保有する、そこのところに規制をかけているわけでございまして、そこで先ほど申し上げましたような、各省がその設置法に定める所掌事務を遂行する範囲で必要な限りで、しかも特定な目的を持った事項に限って保有できる、そういう規制をかけておけばそれで十分ではなかろうかと考えているわけでございます。
  131. 川端達夫

    ○川端委員 これまたやると一時間ぐらいかかってしまうのであれですけれども、そういう部分で私が申し上げているのは、今の行政機関収集し保有するということにおいて、いろいろな目的を持ち、しかも法律の定める所掌事務を行うために持つんだということを制限するつもりはないわけです。逆に、今そういうふうにいろいろなことをおっしゃいましたけれども、現に保有するということ自体は現行の法律で保有をしているわけですし、収集をするという特に取り決めもなしに、職務上必要であるからということで収集をしているわけですし、保有しているわけですね。その枠のときに、その部分を侵害することなしに、いわゆる理念として基本的にはそういうセンシティブ情報のものは持つべきではないのですよ、ただし、こういう行政上で必要とするものは性格をはっきりして保有をしなさいというふうにすることにおいては、今せっかくの御答弁ですけれども、若干違うのではないかなと思うのです。
  132. 百崎英

    ○百崎政府委員 この法律の中に、例えば各省の所掌事務の規定にかかわらず、かくかくしかじかの場合を除いてはセンシティブ情報を含む個人情報ファイルを持ってはいけない、そういう規定を書けないかというお話でございますけれども、その場合に、先ほど申しましたように、一つは、各省の所掌事務の規定にかかわらずというふうに書いてございますので、所掌事務のあれは一応除外される。ところが今度は、例外的に一体どういう場合にそういう制限行政機関に課せられるのかというところをめぐってまたいろいろな問題があろうかと思います。その場合に、例えば例外的に認められる場合が個別法に規定がある場合はできるけれども、そうでない場合はできない。そういうふうに考えますと、今の我が方の法律の体系の中にはそういうことを決めた個別法はない。そんなことになりますので、それじゃそういう個別法を設けるかというと、先ほどのような話に実はなってまいります。  それからもう一つ厄介な話は、では一体、法律に規定する以上いわゆるセンシティブというのは範囲はどうするのか、そういった問題も出てまいりますし、単にそういう法律条文を一条設けることで簡単は済むかどうかということにつきましては、いろいろまた検討すべき問題があろうかと考えております。
  133. 川端達夫

    ○川端委員 今言われた部分でもセンシティブの規定は難しいというのは私もそう思うのですけれども、例外的な部分というものに関しては、ここで規定してあるだけの部分でも同じようなことがあるのではないかなというふうなことを思います。もう時間がなくなってしまったのですが、そういう意味で、いわゆる一般的には、プライバシー保護一つの部分を、セクションを今度の法律で決めるという意味で言えば、まさにそういう理念が欠けているということに非常に不安を持つわけです。  そういう意味で最後の質問でありますが、第十条では「受領者に対する措置要求」ということで、情報を提供したときにその使用目的もしくはその使用方法等々に制限を課して、あるいは安全をきちっとするようにということで、いわゆる目的外利用等々に歯どめをかけている。ところが、その第二項で、そういうときにそのもらった人の「業務の遂行を不当に阻害することのないよう留意する」ということがあるわけです。この中身議論はこの前もありましたからいたしませんが、その部分では、目的を持って渡すときに使う方が余りがんじがらめにされたら困りますよというようなことまでむしろこの法律では丁寧に書いておられる。議論として言えば、こんなことは当たり前のことである、きちっと守らなければいけないことです。それで、わざわざ使う人のその「業務の遂行を不当に阻害することのないよう留意する」というのは、不当に阻害するなどということはあり得ないことだということで言えば、えらく親切に、場合によっては、判断によっては貸し出すというか使わせる方の、目的外利用というふうなものできちっと歯どめをしている部分をルーズにしてしまうようなことまで丁寧にお書きになっていて、一方で、今私が前段申し上げたような精神条項的なものをお入れになったらどうかということはかなり難しいというふうなことで言うと、やはり姿勢としてプライバシー保護一つであるというよりは、行政の円滑な遂行という部分の方に非常にウエートが置かれているという印象を受けざるを得ない、こんな感じがいたしております。  時間が来てしまいましたので、いろいろな問題もある中でありますが、個々のそういう懸念に関しては附帯決議等々でこういうことを盛り込んでいただきたいという議論理事会でもしていただいていると思いますので、そういう部分に関して、まだまだ生まれたての法案になるであろうということで、これからそういう細かい問題についていろいろと十分に御検討いただく、あるいは場合によっては専門家の御意見も聞いていただくということに関しての基本的な見解だけ、最後にお聞かせをいただきたいと思います。
  134. 高鳥修

    高鳥国務大臣 先刻来御答弁申し上げておりますように、この法律は本邦において初めての法律でございます。したがいまして、いろいろな観点から見てかくあるべきというような御意見はたくさんあるであろうと思います。私どもといたしましては、今日の急速な電子計算機処理の発達の中で個人情報保護するためには、とりあえずぎりぎりの線としてこのような法案を作成、御提案を申し上げているところでございますが、今後実施をさせていただくにつきましては、十分国会における御審議の御意見あるいは専門家、学者等の検討などを伺いまして、適時適切に修正すべき点があれば今後修正をしていく、改正すべき点があれば改正していくという態度で取り組んでまいりたいと考えております。
  135. 川端達夫

    ○川端委員 ありがとうございました。終わります。
  136. 竹中修一

  137. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案で、繰り返し言われておりますように個人情報収集についての制限規定が全く抜けているということ、これは重大な問題であると考えます。 プライバシー保護は今国民の重大な関心事でありまして、これにこたえるためには収集段階からプライバシー権が保障されなければなりません。  そういうことで、まず人事院に尋ねますが、人事院は、国家公務員の採用試験に当たって、受験者のプライバシー保護という点でどんな配慮をしておられるのか、お伺いいたします。
  138. 森園幸男

    ○森園政府委員 お答え申し上げます。  国家公務員の採用試験の人物試験におきます題材が主たる御質問の事項であろうかと思いますが、私ども、人物試験におきましては、受験者の公務員として必要な責任感、協調性あるいは積極性というような面からの人物的資質を検証するということでやっております。この試験におきましては、個人プライバシーに係ります例えば家庭の資産でございますとか受験者の出生に関する事項というようなことは質問をしないようにやっておるところでございます。
  139. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 もうちょっと詳しくお伺いしたいのですが、質問を行わせない事項ということで人事院で指示していることがありますか。その中身を言ってください。
  140. 森園幸男

    ○森園政府委員 採用試験につきます各試験種目ごとに実施要領を定めておるわけでございますが、その中でただいまの事項に関する部分を読み上げますと、次の事項については質問しないこととしておりまして、「一、受験者の信条、支持する政党、尊敬する人物 二、家庭の資産、住居状況、家族の職業、収入等の家庭環境 三、受験者の嫡出・非嫡出の別、本籍地」以上でございます。
  141. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 次に、警察庁にお尋ねいたします。  警察署のもとに置かれております派出所や駐在所から巡回といって警察官が個人の住居や事務所を訪れて、カードの記載事項についてこれでよいのかということを確かめたり、新たに管内に転居してきた人にはカードに記載をしてくれということを求めたり、あるいは巡回してそこで書くということが行われているようであります。記載内容は各都道府県警察によっていろいろあるというようにお伺いいたしましたが、カードをつくる目的とその法的根拠をまず御説明いただきたいと思います。
  142. 西山正樹

    ○西山説明員 巡回連絡は、派出所、駐在所の警察官がその担当いたします地域に所在する各家庭や事業所を訪問いたしまして、警察の方から防犯や事故防止上の指導、連絡、その他必要な警察活動を行うために実施しているものでございますが、この巡回連絡を効果的に行うために、住民の理解協力によりましてカードを作成しているものでございます。  このカードあるいはまた巡回連絡の法的根拠でございますが、警察法二条に規定されております「警察の責務」を達成するために住民の協力を得て行う事実行為でございます。
  143. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 この巡回カードは管内の世帯あるいは事務所を対象にしてつくられているわけですが、どんな項目を書かれるわけですか。
  144. 西山正樹

    ○西山説明員 警察庁の方において統一的な記載事項は定めておりませんので、府県警察によってその内容はまちまちでございますが、おおむね家族、同居人の氏名、年齢、職業、勤務先あるいはその電話番号といったことなどについて記載することになっている例が多いようでございます。
  145. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうすると、その場合に、人事院では先ほどプライバシー問題で特に試験のときに聞かないというような事項を挙げられましたが、警察庁の方では、その人事院のに比べてみましてプライバシー問題で何らかの配慮をしているのか。配慮してこういう点は特に除くというようなことでやっている項目があれば、具体的に言っていただきたいと思います。
  146. 西山正樹

    ○西山説明員 この巡回連絡と申しますのは、あくまで一種の行政サービスと申しますか、住民の方の要望を聞いたり、それを警察の活動に反映させるという意味で、協力を得て了解のもとにやっているものでございますので、先ほど申し上げました氏名でありますとか年齢、勤務先といった点につきましても、本人の協力といいますか、同意に基づいて書いていただいたり、あるいはこちらの方で記載するということでございますので、当然プライバシー等本人の気持ちといいますか、そういう問題のあるようなものにつきましては質問事項にも入っておりませんし、また当然答えてももらえないものということで、各県良識を持ってやっているものというふうに考えております。
  147. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 緊急時の連絡、巡回連絡ということを言われましたけれども、それが基本的な目的であるとすれば連絡先、こういうことは必要になってくると思います。  私が見ました神奈川県では案内カード、それから東京では巡回連絡カードということになっておりますけれども、ここに世帯主と家族、同居人、それから雇い人、その続き柄、その人たちの本籍、生年月日、職業、勤務先、学校など書くようになっております。これは東京と神奈川では少し違います。  今挙げたようなこういう事柄というのは、今おっしゃったようなカード作成の目的とは関係ないんではないだろうか、そういうことを書いてもらう、聞いて書くというようなことは、これはプライバシー保護に配慮しているということが言えないのではないかという疑問であります。この点はいかがですか。
  148. 西山正樹

    ○西山説明員 住所、氏名、職業でありますとか連絡先、勤務先、こういった点につきましては、災害時の連絡でありますとか交通事故に遭われたときの連絡でありますとか、そういった場面におきまして必要であるという実例からも、カードに記載して事後の連絡等に役に立たせるというものでございます。
  149. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 だから、緊急連絡、事故のときの連絡ということが目的であるならば、一体本籍はなぜ必要なのか、それから本人にしても家族にしても同居人にしても、生年月日ということがどうして必要なのか、お伺いします。関係があるのか。
  150. 西山正樹

    ○西山説明員 生年月日の問題につきましては、事故に遭われたときに本人と名前、生年月日とを特定するという意味で必要かというふうに考えます。  また、なお本籍の方につきましては、府県の方に聞きましたところ、非常時の親族等の連絡先と本籍地が合致する場合が多いために、その本籍という項を設けておるということでございました。連絡先と本籍地が合致するということで本籍地という欄を設けたということでございます。
  151. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 今言われた場合は、例えば神奈川県の案内カードによりますと、「雇人は本籍または非常の場合の連絡先」こうなっております。それから東京の場合は、同居の人の本籍、こういうことになっているわけです。ですから、これは目的もここに書いてありますけれども、結局交番活動する上で本人と連絡をとる、その世帯に連絡をとる、これが中心であるわけで、そういうことまで必要でないと思いますけれども、どうでしょうか。
  152. 西山正樹

    ○西山説明員 過去の多くのケースにおきまして、非常時の連絡先が本籍地である場合が多いという意味で本籍地を書いていただいておりますもので、本籍地そのものを知るためということではございません。
  153. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 このカードにあるような詳しい内容というのは、普通の人は自分の勤務先にも提出しない人が多いわけです。特に秘密の事項があるわけではなくても、人それぞれにこういうことを人に知らせたくないということがあります。提出しないでおきますとまた巡回があって、いないときにはまたカードを置いていかれる。この委員会で秦野参考人が述べておりましたけれども、相手が警察だから断れない、断ると報復されるのではないかというような意見が寄せられているということを述べられました。警察庁は本人の意思で任意な気持ちで出してもらっているんだということを言われますが、そうであるならば、カードは提出する義務はないんだ、あるいは書きたくないことがあれば書かなくてもいいんだというようなことをカード自体に書いておくべきだというふうに思いますけれども、そのことは書いておりますか。
  154. 西山正樹

    ○西山説明員 先ほども申し上げましたように、巡回連絡はあくまで任意で住民の方の協力を得て行うものでございますので、カードに記載する、あるいはその内容についてのことを答えるということは全く任意で自由でございます。  カードにその旨を記載すべきではないかということでございますが、カードには書いてございませんが、巡回連絡を行う際に、この趣旨とカード作成の趣旨を直接警察官の方から口頭で相手の方に申し上げて実施しているというふうに理解しております。
  155. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 これは聞いた一つの実例ですけれども、転居をするということが決まって、荷物を運ぶときは出たり入ったりしますけれども、その間にカードが置いていかれた。それにはちゃんと「ご記入のうえお届け下さるか、担当の警察官に話して書かせて下さい。」こういうふうに書いてある。そして、これをほっておいたらまた催促があるということになるわけですけれども、そうなりますと、結局やはり文章の上でそういう性質のものだということをはっきりしておかなければ、相手が警察ですから、やはり出さないとまずいのかという気持ちになって出すわけです。一々警察官が来て事情を話して、自由ですよ、こういうことではなくて、そういうやり方がやられているわけですから。  それでは、反対にこの提出は任意であるということをカードに書いてあるという例があるかどうか、お伺いします。
  156. 西山正樹

    ○西山説明員 カードに記載してあるという例は承知しておりません。  したがいまして、大事なことは、あくまで任意で協力を得て行うということでございますので、警察官が巡回連絡の真の目的を達するという意味でも、直接訪問して話を伺うということを徹底してまいりたいと思います。
  157. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 では、最後に確認しておきますが、このカードを提出しない人の分については、さらに警察官が出かけて記載するとか、あるいは本人や家族を知っている人から聞いて警察官の方で書くということはない、カードは、結局提出されないものはそのまま放置しておくということでありますか。
  158. 西山正樹

    ○西山説明員 巡回連絡の趣旨、目的からしまして、防犯上の指導、連絡でありますとか非常時の連絡先を知るという意味で、一度行って不在のときにはまた出かけるということもございますが、これはあくまで任意のものでございますので、最終的にカードが作成されないという場合はもちろんございます。
  159. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 では、人事院と警察庁、結構です。  結局、警察という関係からいえば、そういうことで来られると、やはり任意といっても実際上応じざるを得ないというのが参考人も言われたとおりであると思います。  今の話を受けて総務庁にお尋ねいたします。  今の警察庁の連絡カードづくりの場合を考えてみますと、本来カードづくりの目的というのは、緊急時の連絡場所を知るため、連絡をするためというのが中心になっているわけであります。ところが、この中身を見ますと、私が今言いましたように、客観的に見れば目的とは関係のない事項がたくさん書き込まれているわけであります。ですから、目的を緊急時の連絡、防犯上の連絡ということに特定していても、現実には情報収集範囲の制限にはつながっていないわけです。  総務庁は、法律の定める所掌事務を遂行するために必要な場合に限り保有することができ、かつ、記録される項目も必要最小限度のものでなければならないと書いてあるので、保有の制限によって実質的に収集制限をしているということを言っておりますけれども、この法案にある保有規定というものでは、巡回カードの例を見てみましても、収集する個人情報の範囲を制限することにはなってはいない。ですから、今のような場合に、目的があるからということでその収集範囲を制限すると言うことはできないのではないか、この点は総務庁、いかがですか。
  160. 百崎英

    ○百崎政府委員 個別の今の事案につきましてはちょっと別といたしまして、この法律におきましては、今先生がおっしゃいましたように、基本的には、個人情報ファイルの保有自体を「法律の定める所掌事務を遂行するため必要な場合」に限る、所掌事務の範囲内というよりは「所掌事務を遂行するため必要な場合」ということでまず第一の縛りをかけているわけでございまして、次に、そのファイルの保有ができるとしても、そこに記録される項目はできる限り特定されたファイル保有目的を達成するため必要な限度を超えてはいけない、そういう二重の縛りをかけているわけでございます。それによりまして、結果的には情報収集制限されるというふうに考えております。
  161. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 だから結局、今言いましたような盗難や交通事故などの被害を受けたときとか道を教えたり迷子になったときなど、皆さんに奉仕する資料として派出所に備えつけておくという目的、それの中身を見ますと、世帯主の氏名、現住所、非常の場合の連絡先、本籍、屋号、営業種別、居住年月日、それから家族または同居人の氏名、続き柄、生年月日、職業、勤務先、学校、それから同居人または雇い人は本籍または非常の場合の連絡先、こういうことがずっと書かれているわけです。人事院が、これは面接試験の場合ですけれども、わざわざ調べないということにしたような事柄が、警察上の連絡、一つ行政目的ということで無限に広げられている。だから、保有の規定があるから収集制限される、そういう論理は現実の状態から見ると成り立たないというように考えますが、もう一度。
  162. 百崎英

    ○百崎政府委員 例えば今の警察の例にいたしましても、警察法の規定によりまして、「警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防」等々「に当ることをもつてその責務とする。」こういうような規定があるわけでございまして、基本的にはそういったことに基づきまして、先ほど警察庁の方からお話がありましたような情報を集めているのではないかというふうに考えておりますが、それはこの警察の責務を果たすために必要なものではないかというふうに私ども考えているわけでございます。
  163. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それは警察の所掌事務ということで、そうすると、その目的を達成するためということになれば警察は何でも調べていいということを言われることと同じことになるわけです。私が今具体的に挙げたのは、防犯の連絡ということでそんなことまで収集するということで、目的があるからといってその目的に沿った連絡先を調べる、それをはるかに超えてしまっている、目的は縛りにならないということを言うわけであります。  次に、収集手段による制限の問題です。総務庁は、日本行政法律の規定に基づいて行うことになっているので、当然に行政は適法かつ公正に行われるから収集手段による制限は設けなくてもよい、こう言っております。 この点、行政機関は違法な情報収集は絶対にやっていない、またこれからもやらないということを断言できるのですか。
  164. 百崎英

    ○百崎政府委員 行政機関は本来法律による行政ということを基本原理といたしておりますので、当然に適法かつ公正な職務を執行する、こういうことを私どもも前提にして考えておるわけでございます。ただ、たまたま仮に違法な情報収集等が行われているようなことがありますれば、それは極めて遺憾なことではございますけれども、あくまでも建前としては、行政というものは本来適法に行われるということが当然のことだというふうに考えております。
  165. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 じゃ、違法な情報収集が行われているということも理論的には認めるということのようですが、現実に違法なまたは不適正な方法情報収集が行われております。電話の盗聴だとか団体に対するスパイ行為、いろいろあります。その中で電話盗聴について尋ねます。  まず郵政省から、盗聴の目的でNTTのケーブルなどに違法工作を受けた事件は過去五年間に、すなわち昭和五十八年から何件発覚しておりますか、年度ごとに報告をしていただきたいと思います。  またその中で、犯人や容疑者が郵政省やNTTに加盟している者があれば、それも示していただきたいと思います。
  166. 濱田弘二

    ○濱田説明員 お答えいたします。  NTTのケーブル等に対する異物取りつけでございますけれども、いずれも告発、告訴に係る件数でございます。NTTの報告によりますと、昭和五十八年度三十四件、昭和五十九年度二十三件、六十年度十二件、六十一年度二十二件、そして昭和六十二年度、昨年度でございますけれども六十三件というふうに報告を受けております。  それから、先生御質問の第二点でございますけれども、最近の例ということで昭和六十二年度について把握したものでございます。NTT本社が承知しているところでありますけれども、先ほども申し上げました昭和六十二年度に告発等した事案六十三件のうち、三件につきまして起訴処分の通知があったものというふうに私どもとして承知いたしております。
  167. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 起訴ですか。
  168. 濱田弘二

    ○濱田説明員 起訴処分でございます。
  169. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それでは、法務省にお尋ねいたします。  一昨年の十一月二十七日、日本共産党の緒方靖夫国際部長宅の電話盗聴が発覚して、緒方氏は翌日東京地方検察庁に告発をいたしました。東京地検は特捜部で捜査をいたしましたが、結局昨年の八月四日に二名の犯人を特定し、犯罪行為を認めながら、告発された人物をすべて不起訴処分にいたしました。今郵政省が答えられた三件は起訴のものですが、これは不起訴の事例です。不起訴にしたこの事件で検察庁が認めた犯罪行為というのはどういうものでありましたか。
  170. 古川元晴

    ○古川説明員 委員お尋ねの事実につきまして、検察庁の方で認定いたしました事実としまして承知いたしておりますのは、要旨、次のようなことでございます。  神奈川県警警備部公安第一課に所属する被疑者二名につきまして、共謀の上、昭和六十一年十一月、三回にわたりメゾン玉川学園二〇六号室において、引き込み線を接続した電話機を用い、緒方方の電話機で同人が発受する電話の通話内容を盗聴しようとした。こういう電気通信事業法違反、中身は盗聴未遂ということでございますけれども、このような事実を認定したというふうに承知いたしております。
  171. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 その不起訴処分の後で、緒方氏が東京地方裁判所に付審判請求を行いました。  東京地裁は、ことしの三月七日に裁判をいたしましたが、その決定の中で盗聴の事実について、私の方から申し上げますと、一つは、林敬二、久保政利、家吉幸二、田北紀元の四名が神奈川県警本部警備部公安第一課所属の警察官であり、日本共産党関係の情報収集を担当していたということ。  それから次に、林敬二と久保政利は、職務上の行為として日本共産党関係の警備情報を得るため、昭和六十一年十一月中旬から下旬にかけて、メゾン玉川学園二〇六号室で緒方氏らの電話による通話を盗聴しようとしたということ。 しかも盗聴に成功したと認めることができるということ。  林、久保の二人の警察官の盗聴は、上司の指揮命令を受け、他の警察官と共謀の上の組織的行為であるということ。  四番目に、家吉、田北両警察官は、この盗聴行為に関与した疑いが強いということ。  盗聴の事実行為についてこの趣旨の判断をしていると思いますが、この点はお認めになりますか。
  172. 古川元晴

    ○古川説明員 御指摘の決定は東京地裁のものであると思いますけれども、今委員指摘のような摘示がなされておることは事実でございます。
  173. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうしますと、検察庁の判断は盗聴未遂、しかし東京地裁の方は未遂ではなくて既遂であるということになります。  次に、この評価の問題で同じ東京地裁の決定では、この盗聴行為は電気通信事業法百四条の通信の秘密を侵す違法な行為であるということ。それから、これを現職警察官が職務上組織的に行ったことは許されないのはもとより、法治国家として看過することのできない問題というべきであるという評価判断をしていること。これも間違いないですね。
  174. 古川元晴

    ○古川説明員 そのとおり間違いございません。
  175. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 この決定に対する抗告があって、東京高等裁判所が抗告審の裁判で、事実関係は東京地裁の判断のとおりであると言っております。  このことと、その上でさらに、盗聴のための工作と盗聴行為はだれにも知られないよう周到な計画のもとに隠密裏に行われたということをつけ加えております。  さらに、被疑者らの行為は電気通信事業法第百四条によって処断されるべきであるということもつけ加えております。そういうことですね。
  176. 古川元晴

    ○古川説明員 委員指摘のような要旨の判示があることは事実でございます。
  177. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 法務省にもう一つ。  東京地検の不起訴処分に対して、緒方氏が検察審査会に審査の申し立てを行いました。審査を担当した東京第一検察審査会は、ことしの四月二十七日に議決をいたしました。その議決では、議決の趣旨のところに被疑者林敬二、同久保政利、同田北紀元に対する電気通信事業法違反の点についての不起訴処分はいずれも不当である、こう言っていること、これもそのとおりですね。
  178. 古川元晴

    ○古川説明員 そのとおり間違いございません。
  179. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 結局このケースというのは、検察審査会という素人の人たちで横成されるところで、三名の不起訴処分はいかぬ、間違っている、不当である、こう言っております。それから高等裁判所の方も百四条で処断すべきであるということをつけ加えているわけです。結局、行政機関がやった違法な行為を行政機関が不起訴処分にした、こういうケースになろうかと思うわけであります。  そこで、総務庁にお伺いいたしますが、この問題の最初に言いましたように、総務庁行政機関法律に従って行政を行うから、違法、不適正な情報収集の禁止規定は要らないということを言っております。しかし、この電話盗聴事件のように、法律違反までして行政機関情報収集をやっているわけであります。現実に違法な手段で情報収集をしているのでありますから、こういう現実があるということを考えてみた場合に、収集手段を制限する規定というのが必要だと思うのですが、それでも今までどおりに、行政法律に従って行われるから不必要だというお考えですか。はっきりしていただきたいと思います。
  180. 百崎英

    ○百崎政府委員 その点につきましては、先ほども申し上げましたように、基本的には、国家公務員法で、国家公務員は職務遂行するに当たって法令遵守の義務が課せられておりますし、行政というのは法律に従って適法に行われることが前提になっておりますので、この法案にそういった収集手段に関する規制の規定を設けなかったわけでございます。  その点につきましては、個人情報保護法で行政機関だけを対象に規定しておりますアメリカとかカナダの法律におきましても、そういった適法かつ公正な手段によってしか収集してはいけないという規定は設けておりません。  仮に、今いろいろ御指摘がございましたが、違法あるいは不当な手段でもって情報が集められる場合に、違法な場合には当然これは、先ほど電気通信事業法ですか、そういった法律に基づく罰則等がございます。あるいは刑法の規定に違反するような手段で行われれば、当然刑法違反ということで処罰が加えられる、そんなようなことがございます。  また、一般個人がそういった違法あるいは不当な手段によって集められた情報に基づく行政処分によって具体的な不利益処分を受けた場合には、それは既存の行政訴訟法なり行政不服審査法なり、そういったものによって救済される道が残されておりますので、御指摘のような情報収集の手段について適法かつ公正に収集しなければならない、そういう規定を設ける必要はないと考えております。
  181. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そういうことを言っても、結局適法でないやり方で情報収集が行われる。しかも、法案を見てみましても、これからファイルを保有しようとする場合は事前に通知をするというふうになっておりますから、保有しようとする場合は情報収集をするわけです。ですから、情報収集自体が違法な手段でやってはいかぬということをはっきりしなければならないと思うのです。特に、総務庁の方はいつでも、この法案はほんの一部に限定されたものであって、これからいろいろなところに情報保護法律ができるその第一歩になるのだ、そういうことを言っておられますから、なおさら第一歩のところでちゃんとした規定を設けていなければならないということを言いたいと思います。  今のは法律違反になる、それによって処罰されるという事例です。盗聴ということで、通信の秘密を侵す行為として電気通信事業法、それから電話設備に物を接続させたということで有線電気通信法、こういうもので処罰規定がある場合ですが、そういうような処罰規定がない場合もあるわけであります。  郵政省にお尋ねしますが、昭和三十八年十二月九日の内閣法制局の意見を見ますと、電話の一方の当事者が電話の端末の設備で聞き取れる相手方の通話の内容は、一方の当事者の支配のもとに置かれた事項で、「公社……の取扱中に係る通信の秘密」の範囲外の事項である、こう言っております。  公社は現在は電気通信事業者になるわけですが、そうしますと、電話の受話器あるいはその周辺に細工をして相手方からの通話を第三者が盗聴するという行為は、電気通信事業者の「取扱中に係る通信の秘密」を侵害することには当たらないというように読めるようですが、この第三者の行為は電気通信事業法に違反することにはならない、郵政省はこういうように扱っておられますか。
  182. 濱田弘二

    ○濱田説明員 ただいまの御指摘の事例で申し上げますと、一方当事者である受信者の同意を得てそのような行為がなされる限りにおきましては、昭和三十八年の内閣法制局の意見がございますように、これは通信の秘密の範囲外の事項であるというふうに私どもとしても考えておる次第でございます。
  183. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうなりますと、今の電気通信事業法では処罰ができない。やはり盗聴であるけれどもできないということになります。  さらに、電子工学的盗聴装置というように学者は言っておりますけれども、例えば集音力の強い装置を受話器の付近に置いて通信設備には接触をさせないというようなやり方で他人の電話盗聴をする、要するに、通信設備には直接細工をしてはいないで盗聴ができるような手段で実行するということに対しては、これは今度は有線電気通信法も適用にならない。要するに、これはもう法律上処罰規定はないということになるように思いますが、郵政省の解釈はどうですか。
  184. 濱田弘二

    ○濱田説明員 電気通信事業法の適用対象外になるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  185. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そういうふうにして法律違反にはならない。しかし、行政機関が他人の電話を盗聴したり会議の内容を盗聴したりすれば、行政機関プライバシーを侵害するということになるわけであります。プライバシー保護するということになれば、その立法は、やはり立法の上では個人情報保護する法律ということになるわけです。個人情報保護に関する法律というようにこの法律を言うのであれば、この個人情報は自分でコントロールする権利を保障する、そしてそれを侵害することを禁止する、侵害に対しては処罰をするということがなければならないと思うわけであります。  本案の個人情報の保有に関する規定というのは、このプライバシー保護という点から見れば実際上何の役にも立たないということになるわけであります。それは、収集の問題について何らの制限をしないということから出てくるわけであります。今まで話しましたような違法、不当な方法収集した個人情報、これもファイル化ができますし、保有することができるわけであります。だから、保有という規定ではプライバシー保護はできない。この違法、不当な情報収集を禁止する規定は、個人情報に含まれるプライバシー保護する、そういう面から必要であると思いますが、どうですか。
  186. 百崎英

    ○百崎政府委員 違法、不当な手段によって収集された情報に基づいて、例えば個人に具体的な損害といいますか権利利益の侵害があったという場合には、これは不当な場合でも既存の行政不服審査法ですかによって救われますし、場合によっては損害賠償の請求もできる、そういうようなことで救済の道は一応開かれているというふうに考えております。
  187. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 違法、不適正なやり方で情報収集して、それを保有する、それを救済する道というのはどういうことですか。 大体、やられた方は知らないまま保有されているということになるわけですよ。
  188. 百崎英

    ○百崎政府委員 ちょっと御質問の趣旨を聞き違えているかと思いますけれども、現在の我が国の救済制度というのは、特定の行政処分、あるいはこれは非常に特定な場合ですけれども事実行為によって個人権利利益が具体的に侵害された場合には、例えば行政不服審査法あるいは行政事件訴訟法、そういったもので争えるということでございまして、具体的な権利利益の侵害がない場合には、今のところ特別に法律に規定がある場合を除いては救済の道はございません。
  189. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 今言いました法律違反、法律違反であれば処罰されるけれども法律違反でない不正な、不適正な情報収集をやった、それが保有されている、こういうことについての救済手段があるのですか。
  190. 百崎英

    ○百崎政府委員 違法または不当な行政処分によりというようなことで、現在の行政不服審査法は、法律に違反しなくても、不当な行政処分によって権利利益を侵害されたというような場合には、救済の道が開かれております。
  191. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それは行政事件訴訟法によるわけであって、一般の人たちがプライバシー保護をと要求していることに対応するものでは決してないわけです。プライバシーの侵害自体を、不正な手段ややっちゃいけないことをやるというようなことを制限する、こういう規定が設けられなければならないわけであります。この不当、不法な収集を禁止すること、それから情報収集したことを本人に通知すること、それから本人の同意を得ること、これを原則とするということなどで収集方法制限の規定を設けておれば、本人がセンシティブ情報収集に対して断ることもできますし、保管自体を拒否するということもできるわけであります。  現在の法律体系からいいますと、違法なプライバシー侵害に対して侵害行為自体を禁止する法律がないというところに問題があります。電話盗聴の場合でも、電気通信事業者の取り扱い中に係る通信の秘密侵害に対して電気通信事業法、あるいは送信場所と受信場所との間の有線電気通信設備の間に盗聴装置を取りつけることを禁止しております有線電気通信法があるといったように、プライバシーそのものの侵害を禁止するのではなくて、その周辺の手段ともいうような法律で処罰する。プライバシーではなくて関連する手段が禁止されているという状況が今の法律状況だというように思うわけです。プライバシー保護法制定が今求められているのは、プライバシー侵害そのものを防がなければならない、そのためにはプライバシー侵害そのものを禁止する法律が必要である、こう言っているんだと思うのですが、この点はどのようにお考えですか。
  192. 高鳥修

    高鳥国務大臣 先般来しばしば御説明申し上げておるところでございますが、この法律プライバシー全体について規定をした法律ではございません。政府が保有しております個人情報保護目的として立案をいたしたものでございます。したがいまして、柴田委員指摘をされるようなものについては当初から予想をしていない法律であるということでございますので、その点を何回つかれましても、この法律でおこたえをすることは率直に言って不可能であるというふうに申し上げる以外にないと思います。
  193. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 大臣は繰り返しそのように言っておられますけれども、第六条で、ファイルを設置しようとするときは事前通知をしなくちゃならないという規定があるわけでしょう。 設置しようとするような場合はやはり収集をしなくちゃならない。 収集のやり方が間違っている、しかも行政機関ですから、行政機関個人の思想や信条や宗教や社会的身分のようなものを収集するだけで憲法が保障する基本的人権の侵害になるというようなものや、個人が他人に秘密にしたいというような個人情報収集するのはよくないわけで、この法律といえどもやはり収集を予定しているわけですし、しかもこれは一分野に限られる。 しかし、これをこれからのいろいろなプライバシー関連の法律の第一歩にしようというお考えであるならば、なおさらこの収集制限の規定をちゃんと設けなければならない。個人情報といっても、プライバシーはその中に入る本人が秘密にしたいもの、それから法律上禁止されるもの、こういうものをいうわけでありますから、本人が自分はそれはしゃべってもいいということになればプライバシーになりませんけれども、自分はやはりしゃべらないということであればプライバシーになるわけであります。そういうことで、プライバシー全体ということでなくて電算処理情報に関するものであっても、やはりプライバシー侵害国民要求にこたえるものでなければならない、こう思うのですが、そういう点で聞いているわけであります。
  194. 高鳥修

    高鳥国務大臣 政府が保有いたします個人情報につきましては、その大前提として行政が公正、適法に行われておるということがあるわけでございまして、先ほども申し上げましたが、そのことを法律にわざわざ書く必要はない、当然のことである。したがいまして、この法律におきましては、それぞれの行政機関が保有する個人情報についてはその法の趣旨、目的に沿った最小限度のものでなければならない、それを逸脱したものであってはならないという規定をもってすれば足りるというふうに考えておるところでございます。
  195. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 だから私は、違法な手段による収集だとか、法律に違反しないけれども不適正な収集だとか、それから目的によっては縛りにならないというような事例を挙げて質問をして、収集制限の規定の必要を要求しているわけであります。  時間があと二分余りでありますから、準備しました質問はやめざるを得ないようであります。そこで、個人情報関連の法案の問題で質問いたしましたが、結局統計法につきましては質疑を省略せざるを得ないということになります。  しかし、ここでちょっと申し上げておきますと、統計法につきましては、統計の調査事項にプライバシーにかかわるものは入れないとか、統計行政当局と本人にしか回答内容がわからないようにするとか、目的外利用の承認は法律で厳重にチェックするとか、こうしたプライバシー保護立場から統計法を見直して、本当に国民から信頼される統計というように改善していくことを要望しておきます。  それから、電算機処理個人情報保護法案につきましては、限定的ではあっても個人情報保護の第一歩でなければならないというものであります。しかし私は、第一歩にはなっていないというように考えます。実際を見てみますと、個人情報収集制限規定を欠いているとか、国民にとって重大な問題でブラックボックスをつくっているとか、要するに個人情報に関する個人権利保護し、保有機関の責任を明確にするという個人保護法制の本来的な眼目を外していると言わざるを得ないと考えるのであります。そういう点から、私たち共産党は抜本的な修正を要するということを最後に申し上げまして、時間ですので終わります。
  196. 竹中修一

    竹中委員長 これにて両案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  197. 竹中修一

    竹中委員長 この際、行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案に対し、柴田睦夫君外一名から修正案が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。浦井洋君。    ─────────────  行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  198. 浦井洋

    ○浦井委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、ただいま議題となっております行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案に対する修正案の提案理由とその内容の概要を御説明申し上げます。  プライバシー保護するための法制度の整備は国民が強く要望しているところであります。コンピューターによる大量の個人情報処理、保有に対するプライバシー侵害への危機感、諸外国や地方自治体でのプライバシー保護制度の確立がその背景にあり、そして警備公安など公権力による盗聴、スパイ行為や個人情報を取り扱う民間業者からの干渉を身に迫る危機として国民は痛感し、あるいは怒り、これらのプライバシー侵害を禁止することを内容とする個人情報保護法を今求めているのであります。  ところが政府提出法案は、国民が最も強く求めている思想、信条、宗教など基本的人権にかかわる個人情報収集、保存、利用の禁止の規定を設けることなく、公権力による個人情報収集に法的根拠を与えるなど、逆に国民プライバシーを危うくするような内容になっているのであります。  我が党は、国民の要望にこたえ、憲法に基づく基本的人権の一つであるプライバシー権を保障し、自分の情報は自分がコントロールするという個人情報保護の諸原則を確立するため、政府提出法案の根本的な欠陥を基本的に正す立場から、修正案を提出するものであります。  次に、修正案の概要を申し上げます。  第一は、法の目的を「プライバシーの侵害を防止すること」とし、目的達成のために国民プライバシー権日本国憲法の保障する基本的人権であることを明記し、個人情報保護するために必要な基本的事項を定めることとしております。また、法律の名称も目的にふさわしく、個人情報保護に関する法律に改めます。  第二は、プライバシーの侵害を防止するために、法律の規制対象を国の行政機関、地方公共団体、特殊法人並びに個人情報を取り扱う民間業者及びその委託を受けて個人情報収集する者としております。手作業処理されたものを含むすべての個人情報ファイル法律対象となっております。  第三は、公権力などからの国民プライバシー侵害を防止するために、思想、信条、宗教及び社会的身分に関する事項など基本的人権にかかわる個人情報収集を禁止しています。あわせて「行政機関等及び個人情報取扱業者は、不法又は不当な方法個人情報収集してはならない。」とし、警察、公安調査庁、自衛隊などが盗聴、スパイ行為のような不当、不法な手段によって個人情報収集することを禁止しています。さらに、職業及び経歴、犯罪歴、身体的特徴及び健康状態、取引、所得及び財産などの個人情報については、個人別に検索し、抽出することを目的とした個人情報ファイルを保有することを原則として禁止しています。  第四は、個人情報を当該個人の知らないところで収集、利用、提供されることがないように、「個人情報収集しようとするときは、当該個人情報に係る個人の同意を得なければならない。」こととし、個人情報ファイルを保有した場合においては、保有の目的以外の目的のために当該個人情報ファイルを使用してはならないとしています。  第五は、自己個人情報を保有している行政機関等に対し、自己について収集された記録の正確性の確認、本人の同意を得ずに不当、不法な手段、目的等で収集されたものかどうかなどを知るため、自己に関する情報の開示を請求することができることとし、開示された記録が不正確であったり、誤っている場合、記録の訂正及び補正を請求することができることとしました。不当、不法な手段、目的等で収集された個人情報については、当該個人情報記録を廃棄することが請求できることとしています。なお、開示請求権を十分に機能させるため、軍事、外交を含め個人情報ファイルの公示の例外を認めておりません。  第六は、行政機関等が個人情報収集、保有を適正かつ公正に運用しているかどうかを監視するために、民主的に構成、運営されるプライバシー保護委員会を設置することとしております。  委員会会議は公開を原則とします。委員会は、プライバシー保護のために必要な調査・勧告、研究・報告、個人情報取り扱い業者の所有する個人情報に関する訴えの審査及び監督を行います。  最後に、この法律を実効あるものにするために、行政機関等の職員が、この法律で禁じられた個人情報収集した場合、個人情報目的外に利用し、または提供し、公表した場合、「三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。」などの罰則と損害賠償の規定を設けています。  以上が、修正案の提案理由とその概要であります。  なお、本修正に要する経費は約三億円と見込んでおります。  委員各位の御賛同をいただき、速やかに可決されますよう要望いたしまして、修正案の趣旨説明を終わります。  以上であります。
  199. 竹中修一

    竹中委員長 これにて修正案についての趣旨の説明は終わりました。  この際、本修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。高鳥総務庁長官
  200. 高鳥修

    高鳥国務大臣 ただいまの行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案に対する修正案につきましては、政府としては反対であります。     ─────────────
  201. 竹中修一

    竹中委員長 これより両案及び修正案を一括して討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。前田武志君。
  202. 前田武志

    ○前田委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案及び共産党提出行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案に対する修正案に対し、一括して討論を行います。  まず、政府提出法案に対し、賛成の立場から討論を行います。  申し上げるまでもなく、近年の我が国における電子計算機の利用の拡大と情報処理、通信技術の発展に伴う情報化の進展は、国民生活に豊かさと便利さとをもたらしている反面、社会的問題をも生じさせております。  特に、電子計算機による個人情報処理の拡大は、国民の間に自己情報が予期しない形で収集、蓄積、利用または提供されているのではないか等の不安感や個人権利利益の侵害のおそれを生じさせることから、その保護対策の必要性が各方面から指摘されているところであります。  したがって、このような課題に対応することは、個人権利利益保護と来るべき高度情報化社会の土台づくりの観点から急務となっております。  個人情報保護対策については、従来から政府において種々の検討が行われてきましたが、このような法律をつくるということは、我が国にとっては全く新しい、ある意味では画期的な試みであり、情報化社会に迅速、的確に対応し、行政に対する信頼を確保するものとして、高く評価すべきものがあると思います。  今回の行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案は、時代の要請にこたえ、個人情報保護を図るため、行政機関の保有する電子計算機処理に係るものについて、個人情報ファイルの保有制限個人情報の安全、正確性の確保、公示制度、利用、提供制限、開示請求制度、訂正等の申し出等を規定するものであります。これらの保護措置は、我が国における個人情報保護対策の確立にとって大きな第一歩となるもので、極めて重要であり、まさに時宜に適した妥当なものと考え、賛意を表するものであります。  続きまして、共産党提出の修正案に対し、反対の立場から討論を行います。  共産党提出の修正案は、本法の目的をいわゆるプライバシー権全般を保護するものとするよう求めているもののようでありますが、プライバシー権の内容はいまだ必ずしも明確ではなく、プライバシー権保護法律目的として明記することは適当ではないと思います。  また、収集制限を規定することやすべての個人情報について、これを公示し、開示すべきであるとの案については、我が国行政の実態や国民意識などの国情あるいは社会公共の利益を考えれば不適当であると考えます。  以上、共産党提出の修正案は、全体として現実的ではなく、行政の果たす重要な役割を考慮しないものであり、国民全体の利益を考えた場合、到底これに賛意を表するわけにはまいらず、反対の意向を表明するものであります。  なお、政府においては、法施行後は、法の適正、厳格な運用を図るとともに、その運用状況や今後における情報処理、通信技術の発展、国民意識の変化等に対応して、これまでの当委員会の熱心な論議をも踏まえ、常に時代に合ったものとしていくため最大限の努力を払われるよう強く要請して、私の討論を終わります。(拍手)
  203. 竹中修一

    竹中委員長 田口健二君。
  204. 田口健二

    ○田口委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案に対し、反対の討論を行うものであります。  高度情報社会の著しい進展に伴って、過度の情報の集中化や商品化が生じ、この中で国民プライバシーが侵害され、個人尊厳が脅かされる危険性がますます高まっていることは、審議の中で明らかにされたとおりであります。  総理府が行った個人情報保護に関する世論調査(一九八五年)を見ても、プライバシー侵害はふえたと思う人は約五割もおり、そのためか行政機関プライバシー保護対策を求める人は七割五分を上回っているのであります。大部分の国民プライバシー保護の確立を求めているということを政府は改めて肝に銘じてもらいたいと思います。  諸外国の状況を見ても、既に多くの国がプライバシー保護法制定しております。大切なことは、こうした中で、プライバシー保護原則について世界的な潮流というものが確立しつつあるということであります。  OECD理事会が一九八〇年に示した勧告を見れば明らかなとおり、今やプライバシー権についての考え方は、単なるひとりにしておいてもらう権利から、もっと積極的に自己に関する情報の流れをコントロールする個人権利自己情報コントロール権と考えられています。  しかるに、本法案は、こうした国際的に確立しつつある諸原則を全く踏まえていないものであると断言せざるを得ません。個人情報保護に関する法律案といいながら一体どこを保護しているというのでしょうか。保護されているのは政府の機能ばかりで、国民プライバシーは全く保護されていないではないかと思います。  本法案問題点をいま一度指摘しておきますと、一つは、収集制限の問題であります。どんな個人情報も適正かつ公正な手段で、しかも本人に同意を得て収集されなければならないというのがこの原則であります。また、思想、信条、宗教にかかわるようないわゆるセンシティブな情報については、収集自体行われるべきでありません。勝手な情報収集が許されないというこの原則は、プライバシー原則のうちの最も基本的な原則であります。ところが、本法案にはこの原則の規定がありません。したがって、政府国民のどんな個人情報でも収集できることになっております。  もう一つは、その存在自体が秘密になっているどのような個人情報記録保管システムも存在してはならないという個人参加原則の問題であります。本人が知らない個人情報は、ひとり歩きしてもわからないし、勝手に内容を変えられてもわかりません。したがって、個人プライバシーをひどく侵害してしまう可能性が極めて高いと言わなければなりません。もし、国民が自分自身でさえ知ることができない個人情報政府が持つとしたら、これがプライバシー保護の基本原則に反することは明白であります。  この点についても、本法案は極めて多くの適用除外なるものが存在し、結果として国民は多くの自己情報を知ることができない。 国の安全、外交上の秘密に関するものなど、各省庁が完全に自由にできるもの、各省庁ファイル簿から外されるもの、そして教育、医療の分野など国民の開示請求権そのものを否定したものと、二重、三重の適用除外が設けられております。一体国民の前からどれだけの情報を隠せば気が済むのでしょうか。  このほかにも、目的外利用や外部提供についても、例外が多過ぎて事実上歯どめがなく、マニュアル処理も規制対象から外されております。  このような法案が果たして個人情報保護する法案と呼ぶことができるのでしょうか。したがって、日本社会党・護憲共同は、国民プライバシー保護する法律が早急に必要であることを強調し、本法案に強く反対するものであります。(拍手)
  205. 竹中修一

  206. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、ただいま議題となりました行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案に対する反対討論を行います。  法案に反対する第一の理由は、安保、外交に関する個人情報ファイルの存在そのものを秘密にして、国民の目から隠し、政府の中に巨大なブラックボックスを合法的につくるという重大な問題点を抱えていることであります。  この秘密にできるファイルは、安保、自衛隊に反対する個人情報を陸上自衛隊調査隊などが系統的に収集、保有している個人情報ファイルを初め、犯罪の捜査を含む十一項目に及ぶ広範なものであり、これは国家機密法制定の論拠にもなりかねず、到底容認することはできません。  第二の理由は、個人情報保護の基本的原則である個人の思想、信条、宗教など基本的人権にかかわる情報収集及び不当、不法な手段による個人情報収集、保有を禁止する規定を全く欠いていることであります。  警備公安などは民主的な市民団体、労働組合などを不当、不法にふだんから監視し、盗聴やスパイ行為が発覚するたび世論の大きな批判を浴びているところであります。 我が党の緒方国際部長宅盗聴事件はその最たるものであり、憲法の保障するプライバシー権を守るべき政府みずからが国民プライバシーを侵害しているという事件であります。同時に、これは総務庁が言う行政機関法律を遵守するから、基本的人権にかかわる収集禁止規定は不必要であるとの主張がいかに無責任な詭弁であるかを事実で示しているのであります。収集制限の規定を設けない本法案は、現に警備公安などが行っている思想調査や盗聴、スパイ行為などを放置することになりかねない危険性をはらんでいるのであります。  第三の理由は、法案は規制の対象となる範囲を行政機関の保有する電子計算機処理された個人情報に限定していることであります。  電子計算機処理されたもの以外の個人情報はもちろん、大企業や個人情報取り扱い業者による個人情報収集、保有にあってもプライバシーを侵害される危険性に変わりはありません。民間の個人信用情報でも、誤ってブラック情報に載せられて流通したため、権利利益の侵害を受けた被害も生まれております。これらの個人情報を同時に規制することが、国民プライバシー保護する上で今求められていることであり、諸外国の実例を見ても不可能なことではありません。  法案目的規定に個人情報保護を明文化することを我が党が求めたのに対し、高鳥長官がはしなくももしそれを入れるとこの法律中身まで全部書きかえなければならぬと答弁したように、このような欠陥と問題点を持つ本法案個人情報保護法案と呼ぶこと自体、国民を欺くものと言わざるを得ません。  本法案を撤回し、個人情報保護する基本的原則を盛り込んだ真の個人情報保護法案提出し直すことを要求し、私の反対討論を終わります。(拍手)
  207. 竹中修一

    竹中委員長 これにて討論は終局いたしました。    ─────────────
  208. 竹中修一

    竹中委員長 これより採決に入ります。  行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、柴田睦夫君外一名提出の修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  209. 竹中修一

    竹中委員長 起立少数。よって、柴田睦夫君外一名提出の修正案は否決されました。  次に、原案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  210. 竹中修一

    竹中委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、統計法及び統計報告調整法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  211. 竹中修一

    竹中委員長 起立総員。 よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  212. 竹中修一

    竹中委員長 この際、ただいま議決いたしました両案中、行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案に対し、近岡理一郎君外三名から、四派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。田口健二君。
  213. 田口健二

    ○田口委員 ただいま議題となりました自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合の各派共同提案に係る行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案に対する附帯決議案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報保護に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、行政機関における情報化の進展にかんがみ、電子計算機処理に係る個人情報保護の一層の充実を図るため、次の事項について適切な措置を講ずべきである。  一 総務庁は、高度情報化の進展に伴うOA機器の多様化、性能向上、急速な普及に対応して、適宜に電子計算機処理の範囲について見直しを行うこと。また、マニュアル処理に係る個人情報保護についても別途検討すること。  一 思想、信条、宗教、病気及び健康状態、犯罪の容疑、判決及び刑の執行、社会的差別の原因となる社会的身分に関する個人情報収集・保有に当たっては、ファイル保有目的を厳密に特定するとともに、可能な限り法律その他の法令等によって収集根拠を明確にし、その利用・提供・安全確保に特段の配慮を加えることによって、個人権利・利益を損なうことのないよう万全を期すこと。  一 行政機関は、個人情報収集に際して、収集目的収集の根拠、収集に応ずる義務の有無等をできるかぎり明らかにすること。    また、行政機関は、法律の定める事務の遂行に必要な限度で、かつ、収集することに相当の理由がある場合を除き、みだりに第三者から個人情報収集することのないよう努めること。  一 総務庁は、行政機関個人情報ファイルを利用及び提供するに当たっては、そのファイルが使用に供される事務の目的を達成するため必要な限度において利用、提供し、処理情報の本人等の利益を不当に侵害する利用、提供が行われないよう、明確な基準を設定すること。    また、個人情報ファイルの保有機関は、目的外利用、提供先等については、その利用、提供状況記録を保管するよう努めること。  一 総務庁は、個人情報ファイルの保有等に関する事前通知の適用除外となるファイル、及び個人情報ファイル簿に掲載されない個人情報ファイルファイル数、記録範囲、適用除外の根拠等を可能な限り的確に把握し、みだりにその範囲が拡大されることのないよう、必要な措置を講ずること。  一 特殊法人については、保有する個人情報ファイル数、データ量が多いことにかんがみ、早急に必要な措置を講ずるよう指導すること。  一 開示請求権が認められない教育、医療関係の個人情報に関して、情報の性質上その開示については特別の配慮の必要性を踏まえつつ、国民の意識の変化に対応した制度の在り方について、別途検討すること。  一 個人情報の安全性確保、個人情報ファイルの保有等に関する事前通知、個人情報ファイル簿作成、処理情報の利用及び提供、処理情報の開示等に関して、政府部内の統一性・斉一性を維持し、規制等の実効性を確保するために、総務庁は可能な限り明確なガイドラインを作成すること。   また、個人情報収集、保有、利用、提供により個人権利利益を不当に損なうことのないよう、総務庁は保有機関による本法運用の実態を調査等によって十分把握し、所要の実効ある措置を講ずるよう努めること。  一 情報化社会の進展に伴う各般の影響等を踏まえつつ個人情報保護の推進を図るため、学識経験者等により保護法施行に関する基本的な事項等を調査・審議する場を設けること。  一 政府は、総合調整機能の充実を図り、本法の趣旨及び運用実態等国民への周知のため、毎年度、報告書を作成し、個人情報保護に対する国民の意識向上と参加を促進して、本法の実効性の確保を期すること。  一 個人情報保護対策は、国の行政機関等の公的部門のみならず、民間部門にも必要な共通課題となっている現状にかんがみ、政府は早急に検討を進めること。  一 我が国の高度情報化、国民自己情報に関する意識、行政情報の保有・利用の在り方等、状況の急激な変化にかんがみ、五年以内に本法の必要な見直しを行うこと。  本案の趣旨につきましては、先般来の当委員会における質疑を通じて既に明らかになっておることと存じます。  よろしく御賛成くださいますようお願いを申し上げます。
  214. 竹中修一

    竹中委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  215. 竹中修一

    竹中委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、総務庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。高鳥総務庁長官
  216. 高鳥修

    高鳥国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、政府として今後とも検討し努力してまいりたいと存じます。     ─────────────
  217. 竹中修一

    竹中委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  218. 竹中修一

    竹中委員長 、御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕      ────◇─────
  219. 竹中修一

    竹中委員長 次に、内閣提出行政機関の休日に関する法律案及び一般職職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  趣旨の説明を求めます。高鳥総務庁長官。     ─────────────  行政機関の休日に関する法律案  一般職職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  220. 高鳥修

    高鳥国務大臣 ただいま議題となりました行政機関の休日に関する法律案及び一般職職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  まず、行政機関の休日に関する法律案について御説明申し上げます。  政府は、真に豊かさを実感できる国民生活を実現するため、国全体として労働時間を短縮することを当面の重要課題の一つとして位置づけ、その推進に取り組んでいるところであります。その一環として行政機関については、公務の円滑な運営を図りつつ週休二日制を推進するため土曜閉庁方式を導入することが必要であると考え、このため、毎月の第二及び第四土曜日を、従来から休日として扱っている日曜日、国民の祝日等と合わせて、行政機関の休日として規定するとともに、期限の特例について必要な措置を講じることとし、ここにこの法律案提出した次第であります。  次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。  第一に、日曜日並びに毎月の第二及び第四土曜日、国民の祝日に関する法律に規定する休日、十二月二十九日から翌年の一月三日までの日は行政機関の休日とし、行政機関の執務は原則として行わないものとしております。 なお、行政機関の休日においても、各行政機関がその所掌事務の性格等にかんがみ、必要に応じてこれらを遂行することを妨げるものではないことを念のため規定しております。  第二に、国の行政庁に対する申請、届け出等の期限で、一定の要件に該当するものについては、その期限である日が行政機関の休日に当たるときは、その翌日をもって期限とみなすこととしております。  なお、以上のほか、附則において、この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することを定めるとともに、関係法律について所要の改正を行うこととしております。  続きまして、一般職職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。  政府は、ただいま御説明申し上げましたとおり、行政機関において土曜閉庁方式を導入することが必要であると考えておりますが、土曜閉庁方式の導入に伴う週休二日制の実施方法及び勤務時間制度の改正について、本年八月四日、人事院勧告が行われました。  本法律案は、この人事院勧告を実施するため、一般職職員給与等に関する法律について、所要の改正を行おうとするものであります。  次に、法律案の内容について、その概要を御説明申し上げます。  第一に、日曜日並びに毎月の第二及び第四土曜日等四週間につき二の土曜日は勤務を要しない日とし、勤務時間は、月曜日から金曜日まで及び勤務を要しない日以外の土曜日において割り振ることとしております。  第二に、各庁の長は、勤務を要しない日に特に勤務させる必要がある場合には、かわりの日を勤務を要しない日として休ませることができることとしております。  なお、以上のほか、附則において、この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することを定めるとともに、関係法律について所要の改正を行うこととしております。  以上が、これら法律案の提案理由及びその内容の概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  221. 竹中修一

    竹中委員長 これにて両案についての趣旨の説明は終わりました。     ─────────────
  222. 竹中修一

    竹中委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田口健二君。
  223. 田口健二

    ○田口委員 まず最初に、いわゆる土曜閉庁関係法案について幾つかお尋ねをいたしますが、土曜閉庁の実施の時期の問題でありますが、大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  さきの本委員会においても御質問を申し上げた段階で、大臣の方から年のかわり目が一つのポイントである、実はこのようなお答えもいただきました。当然のことながら、私どもは来年の一月からこれが実施をされるというふうに考えてまいりましたが、そのお考えは変わりがないものかどうか、まず確認をさせていただきたいと思います。
  224. 高鳥修

    高鳥国務大臣 土曜閉庁方式の導入につきましては、前内閣において六十三年度中に導入するという方針を決定していたところでございますが、竹下内閣においては前向きに取り組むということで取り進めてまいったところであります。前向きとは、三月三十一日になって前向きということはないだろうということからいたしまして、年のかわり目が一つの時期かなということを私は申しておったところでございます。  この法律の実施に当たりましては、少なくともやはり最低限一月くらい前までには成立をさせていただいて公布をさせていただきませんと、諸官庁におけるPRあるいはまた人員配置等の準備、いろいろな都合がございますので、行政サービスを低下させないという前提のもとに実施するためには最低限一カ月くらいの期間があればやれるのかなと考えておりまして、私といたしましては、一月実施ができるように法案審議等についても御検討をいただきたいというふうに考えておるところでございます。  ただ、一つ問題がございまして、一つ国会の関係、もう一つは裁判所の関係等でございます。国会職員につきましても一般の公務員と同等な扱いをすることとなっておりますので、国会における方針につきましてはなお御検討中というふうに承っておりますが、それらにつきましてもよろしく御配慮を賜りたいというふうに考えております。
  225. 田口健二

    ○田口委員 閉庁にかかわって行政サービスの維持ということが問題になってくるわけでありますが、その具体的な方策について、私は、ぜひ当局は一方的にそういう方策を立てるのではなくて、職場の意見も十分尊重しながらそういう方策を立てるべきだ、したがって関係労働組合ともこれらの問題については十分協議をしていただくべきであるというふうに考えますし、また各省庁における具体的な閉庁職場の決定に当たっても、十分その点をひとつ踏まえていただいて、関係労働組合と十分な話し合いを行っていただきたいというふうに考えていますが、御見解はどうでしょうか。
  226. 勝又博明

    ○勝又政府委員 土曜閉庁方式の導入に当たりましては、総務庁及び各省庁におきまして民間団体等の意見を聴取したわけでございますが、その際には、官民の労働団体あるいは職員団体からも御意見を伺ったところでございます。開庁官署、閉庁官署の振り分けにつきましては、閉庁方式導入の趣旨を勘案しながら、一方におきましては国民生活への影響も十分考えながら、各省庁において決定することになっておるわけでございます。具体的に閉庁官署を決定するに当たりましては、行政サービスを極力低下させないための工夫も必要でございまして、これらの検討の際には関係団体の意向も踏まえながら、しかも職員協力を得て各省庁内部で十分な詰めが行われることが望ましいというふうに考えている次第でございます。
  227. 田口健二

    ○田口委員 次に、これは閣議決定の中にもありますが、土曜閉庁を行うに当たって国民に対する周知、これは具体的にどのような方法でされようというふうに考えておられるのか、お尋ねをいたしたいと思います。  ここで、官庁執務時間並休暇ニ関スル件という閣令六号がありますが、これが今回の法律によってどうなっていくのか、あわせてお答えをいただきたい。
  228. 勝又博明

    ○勝又政府委員 土曜閉庁に伴います周知の問題でございますが、これにつきましては、去る五月三十一日の閣議決定におきましても「土曜閉庁方式導入の趣旨について、国民理解を十分に得るよう引き続き努めるとともに、閉庁する土曜日、閉庁官署の範囲等については、適切な広報活動を実施する。」とうたっておるわけでございますし、また、関係法律成立後所要の周知期間を設けることといたしておるわけでございます。  総務庁におきましては、土曜閉庁方式導入の趣旨について国民理解を得るための広報といたしまして、これまでテレビ、新聞、雑誌、週刊誌等を通じていろいろ行ってきたわけでございますが、今後とも引き続き国民理解を得るような広報活動を行いますとともに、各省共通のポスターを作成配布いたしまして必要な箇所に掲示するというふうなことも考えております。  また、個々の官署におきましてもいろいろ周知について御検討願っておるわけでございますが、例えば、窓口への案内の表示であるとか、パンフレットの作成配布であるとか、関係団体への通知であるとか、業界雑誌等への掲載であるとかというような工夫をお願いしたいと思っておりますし、それなりの御努力を期待したいと思っております。  次に、閣令六号の件でございますが、大正十一年の閣令六号、官庁執務時間並休暇ニ関スル件のこの執務時間の定めは、日曜日あるいは年末年始、祝日等がそれぞれの根拠によって休みの日として既に定められているということを前提といたしまして、これらの日以外の、休みの日以外の日における執務すべき時間というものを定めたものでございます。  今回、新たに月二回の土曜閉庁を実施するに当たりましては、長年社会に定着しております執務日を変更するものであること、あるいは国民権利義務、国民生活等多方面に影響を及ぼすものであるということ等から、土曜閉庁日を行政機関全体として見れば休みの状態になっている日、すなわち行政機関の休日と位置づけまして、これまでの日曜日、年末年始、祝日等と合わせて規定したものでございまして、その他の日の執務時間にまで言及したものではございません。したがいまして、行政機関の休日に関する法律案の成立後も、閣令六号の執務時間に関する定めはなお効力を有するものというふうに考えております。
  229. 田口健二

    ○田口委員 自治省にお尋ねをいたします。  本日、地方行政委員会でこの関連法案が議了したということも聞いておりますが、先日も私が本委員会でお尋ねをいたしました中で、地方自治体における土曜閉庁も国におくれをとらないというような御答弁をいただいておるわけでありますが、地方自治体に対する土曜閉庁の問題についてどのような方針で今後対応していくのか、現時点におけるその辺の考えをひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  230. 佐藤信

    佐藤説明員 五月三十一日に閣議決定をされました「行政機関における土曜閉庁方式の導入について」の中では、ただいま御指摘がございましたように、地方公共団体における土曜閉庁方式についても「できる限り国と均衡をとりつつ導入することができるよう法的措置を含め所要の措置を講じる。」というふうにされているところでもあります。これを受けまして自治省においては、ただいまお話がございましたように、地方団体の土曜閉庁方式の導入に必要な地方自治法の一部を改正する法律案を今国会提出して、現在御審議をいただいているというところでございます。  また、具体的に開閉庁の振り分けでございますとか、閉庁する場合の行政サービスのあり方というような点については、学識経験者によります地方公共団体の土曜閉庁に関する研究会に検討をお願いし、その御報告も先々月いただいたところでございます。自治省といたしましては、今後法案が成立次第、各団体に対して、さきの閣議決定あるいは研究会報告の趣旨を踏まえて、国に余りおくれることがなく導入ができますように必要な指導を行ってまいりたいというふうに考えております。  また、地方団体の中には、現在土曜閉庁方式の前提となります四週六休制の導入がまだおくれている団体もございますので、これらの団体については、まずもって必要な条件整備を行って四週六休制を導入するよう今後とも指導を行っていきたいというふうに考えております。
  231. 田口健二

    ○田口委員 今回の閉庁に際して、これは閣議決定でもあるわけでありますが、学校、病院、外来部門でありますが、これは閉庁の対象にはなっておりません。ただ、閣議決定の中でも「当面、閉庁の対象とせず、」ということであって、「教育課程、児童生徒の生活、医療供給体制等について配慮しつつ更に検討する。」ということになっておるわけですね。この点は、将来の完全週休二日制へ向けての点から考えてみても緊急に検討しなければならない課題であろうというふうに思います。  そこで、文部省と厚生省に、この関係で現時点においてどのような考え方を持っておられるか、時間もありませんので簡潔にひとつお答えをいただきたいと思います。  じゃ、文部省の方から。
  232. 菊川治

    ○菊川説明員 教員の週休二日制につきましては、現在は四週六休に相当するものを長期休業期間にまとめ取りをしていただくということで対応しておるところでございます。しかし、今後世の中の週休二日制がさらに進んでいくことが予想されるわけでございまして、そういったことを踏まえまして、これから学校五日制についてどう考えていくかということが課題でございます。  昨年の十二月に出されました教育課程審議会の答申におきましても、その点につきまして御議論をいただきまして、社会の情勢を見ながら今後その学校五日制を漸進的に導入する方向で検討する必要があろうという提言をいただいております。ただ、学校の場合、学校五日制によりまして児童生徒の教育水準がどうなるのか。教育水準を維持しようと思えば、子供の学習負担がどうなるのか。それからまた、土曜日が休みになった場合に社会の受け入れ態勢がどうなのか。土曜日が休みになって塾へ皆通っていってしまうということになってはいけない。受け入れ態勢も十分必要だろう。また、世論調査を見ましても、この点につきましては国民理解が厳しゅうございまして、学校五日制を導入することについては賛成が二〇%程度、反対が六〇%強という状況でございますので、国民理解も得ながら進めていく必要があろう。そういうことを踏まえまして教育課程審議会では、この学校五日制をいつからどういう形で導入していくかにつきましては実験学校を設けるなどして検討をすべきであろうという提言でございます。  それを受けまして文部省では、まずこの七月に省内に関係局長から成ります教員週休二日・学校五日制の検討のための省内連絡会を設けて、今後の対応を考えておるところでございます。さらに、六十四年度概算要求におきましては、この問題を総合的に研究するために、社会の変化に対応した新しい学校運営等のあり方に関する調査研究のための経費、これは内容は学校五日制のものを主としてやっていきたいと思っておるわけでございますが、その関係の協力校六十四校を要求しておるところでございます。この問題につきましては、この調査研究の結果を見ながら導入の時期や形態について具体的に検討してまいりたいと思っております。
  233. 矢野朝水

    ○矢野説明員 現在、国立病院・療養所の一日の外来患者というのは大体五万五千人ほどいるわけです。したがいまして、土曜閉庁をやるということは非常に影響が大きい、国民理解が到底得られない、こういうことで当面対象にしておりません。しかし、ポイントはこういう土曜日におきまして地域の医療供給体制をどうするのか、こういう環境条件をつくっていく、これがポイントだと思っておりますので、そういった環境条件の整備状況を十分配慮いたしまして、さらに検討していきたいと思っております。
  234. 田口健二

    ○田口委員 続いて法務省にお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、第一条の第三項のところに「第一項の規定は、行政機関の休日に各行政機関がその所掌事務を遂行することを妨げるものではない。」という規定があるわけですね。閣議決定の折の資料を見ましても、閉庁は実施をするけれども、その事務については一定の事務を閉庁日であっても実施をするという、これは総務庁資料だと思うのでありますが、載っているわけであります。この中で、法務省関係では刑務所、拘置所というのが起案として上がっているわけです。事務の内容としては「被収容者の処遇に関する事務」ということだけが書かれておるのでありますが、私どもが常識的に考えてみまして、これら刑務所、拘置所における被収容者の処遇に関する事務というのは、当然日常的に行われている面会、弁護士の接見が入ると思うのでありますが、さらには差し入れ、こういうものがあると思います。この資料に上がっている閉庁日に行われる事務について、今申し上げました面会あるいは差し入れというのが当然含まれるというふうに理解してよろしいでしょうか。
  235. 中間敬夫

    ○中間説明員 お答えいたします。  刑務所、拘置所等におきます収容業務、特に日常生活的な処遇業務、これは当然土曜日であろうと日曜日であろうと行われるところでございます。しかしながら、先生お尋ねのただいまの収容者に対する面会、差し入れ、こういった対外的な窓口に関しましては、この土曜閉庁方式の趣旨にのっとりましてこれは閉めさせていただく、休ませていただくというふうに私ども考えております。  ただし、ただいま先生御指摘の弁護人によりますところの接見というものの重要性にかんがみまして、この弁護人接見の緊急性あるいは必要性、こういうものが認められる場合には、各庁でそれぞれ職員配置等の手当てがつきますならば、これを極力実施する方向で努力いたす所存でございます。
  236. 田口健二

    ○田口委員 私は、今の法務省考え方はちょっと納得できないのです。確かに被収容者の処遇に関する事務というのはいろいろあろうかと思うのでありますが、例えば土曜日が閉庁になる、翌日は日曜日ですね。その翌日が祝日になるということになると三日間連続なんですね。弁護士の接見はちょっと今の御答弁では明確でないところがありますが、何か各所で勝手にというか判断をするということになるのかどうかわかりませんが、これはやはり先ほどの質問の中でも出ておったのですが、憲法十三条から考えてみたら、これは国民の基本的な人権にかかわる問題ですから、土曜閉庁の趣旨からいって休みますというのは問題じゃないかと私は思うのですが、その点はどうでしょうか、再答弁してくれませんか。
  237. 中間敬夫

    ○中間説明員 ただいま先生がおっしゃられる御趣旨にのっとりまして、弁護人接見の重要性については私たち十分にこれを尊重いたしまして、極力その趣旨に沿うように、職員配置等の手当ても行き届きますように努力をいたすつもりでございます。
  238. 田口健二

    ○田口委員 ぜひそういう立場対処していただきたいということを申し上げておきます。  そこで、総務庁の方にお尋ねします。  今言ったような資料がありますけれども、閉庁するけれども通常の事務はやるとか一部の事務をやる、そういう機関が随分あるわけです。これはどういう形で決めていくのですか。政令ではないと思いますが、省令で決めるのか、あるいは何か閣議でもってそういうものをきちんと決めて公示をするのか、これはどういうふうに決めていくのか、お答えいただきたい。
  239. 勝又博明

    ○勝又政府委員 本法案におきます行政機関の休日と申しますのは、全体として見ますと、行政機関の執務を行わない日ということでございまして、個々の官署が土曜日はあげるか閉めるかにつきましては各行政機関判断にゆだねられるということになるわけでございます。 したがって、通常でございますと各行政機関の長が判断するわけでございますが、個々の官署の実態に応じましては、それぞれの各官署の長に判断がゆだねられるということもあろうかと思います。 したがいまして、それを決める法形式もそれぞれに応じて区々になろうかと思います。 ただ、土曜閉庁の趣旨は、行政運営に支障がない限り第二、第四土曜日はできるだけ休む、第二、第四土曜日に休むことが行政運営に支障を来す、あるいは国民権利義務あるいは国民行政ニーズに反するというようなときには休まないという趣旨でございますので、そのようなことを基準として御判断いただきたいというふうに思っておるわけでございます。
  240. 田口健二

    ○田口委員 余り時間がなくなりましたけれども、ここで人事院の方に二、三点お尋ねをしておきたいと思います。  一つは、去る八月に出されました勧告を見まして、私なりに言って評価をしておる点は、いわゆる時間短縮に関して公務、公共部門で先行していくという考え方が出されているわけであります。ただ、報告を見てみますと、完全週休二日制の問題については、国の新経済計画ですか、この期間内に速やかに、こうあるわけですね。ところが一方では、勤務時間問題研究会、人事院の中に設けられていると思うのですが、この報告では昭和六十五年度ということに明示しているわけですね。ところが、国の計画的期間ということになれば六十七年。これは人事院はもっと踏み込んで六十五年度を目標に公務員の完全週休二日制というのをきちっと出すべきではないかと思うのですが、その辺の人事院の基本的なお考えをまずお伺いしたいと思います。
  241. 内海倫

    ○内海(倫)政府委員 完全週休二日制というものは、私どももできることなら早く実現を期したい、そう考えております。  しかしながら、反面、公務員という立場、そういう立場からこれを考える場合には、やはり一般国民の皆さんに対する行政サービスという問題もありますし、あるいは社会的な諸条件、例えば銀行が完全にそういうものをいつ実施するか、あるいは一般企業等においてどの程度まで完全週休二日制というものが実現していくか、その辺もいろいろ見きわめながら考えていくこともまた必要でございます。とりわけ、繰り返しますが、やはり行政サービスが低下するというふうなことがないようにいろいろな諸計画も考えていかなければならない、そういうふうなことを考え合わせまして、この八月の勧告に際しましては、勧告で年限を決めて取り上げるということをあえて見送りまして、報告においてなるだけならば早い段階においてこういうものを考えたい、それには労働時間短縮に関する国全体の計画期間の中で条件が整備し次第こういうものは実行していきたい、実現していきたい、そういうふうな意見を表明しておいたわけです。  したがいまして、私どもとしては諸般の条件をいろいろにらみ合いながら、完全週休二日制の実現への努力というものは今後も一生懸命やっていく。ついでに申し上げますならば、そういうものが実現する条件の一つに、やはり今回提案されております土曜閉庁ということによる四週六休というものが確実に実施されていく、確実に行われていくということがまず大変大事なことだと私ども考えております。
  242. 田口健二

    ○田口委員 それからもう一点、人事院の方で考え方を聞きたいと思うのでありますが、実は国家公務員の勤務時間法制というのが、見てみますと、今回の法律もそうでありますが、いわゆる給与法というこの法律の中に公務員の勤務時間というのが書いてあるわけですね。本来勤務時間という非常に労働条件の中で重要な事項でありますからやはり別個の法制、勤務時間法というのか何といいますのか、そういう別個の法制を考えていくべきではないのか。今回の場合には閉庁方式による四週六休制でありますが、これが将来完全週休二日ということになりますと、職員の勤務時間に関する問題は別途法制化をすべきではないかという考え方を持っているわけですが、この辺はいかがでしょうか。
  243. 川崎正道

    ○川崎(正)政府委員 勤務時間というものは非常に給与とのかかわりが深いわけでございます。したがいまして、現行法におきましては、給与法の中で給与の基本的な要素としての勤務時間ということでいろいろな規定があるわけでございますが、今、委員からお話がございましたように、勤務時間あるいは休暇、こういったものは給与と並ぶ大きな勤務条件でございます。したがいまして、それを取り出しまして一つの法制で決めるべきではないかという御意見があることは、私たちもよく承知しております。私たちのところで完全週休二日制あるいはこれからの休暇のあり方等、今いろいろ検討しているわけでございますが、その検討の中で、今委員からの御指摘の御意見も十分頭に入れながら検討を進めてまいりたい、このように考えております。
  244. 田口健二

    ○田口委員 それでは、最後にお尋ねをいたしますが、今回の改正案の内容を見てまいりますと、いわゆる人事院規則にゆだねられている部分がかなりあると思うのですね。したがって、これからそれらを決めていかれるわけですから、当然関係労働組合ともその点については十分な御協議をお願いをしておきたいと思います。  そして同時に、今度新たにいわゆる振りかえ制度、代休制度というのが導入されてくるわけですね。このことについて、率直に言って職場の中でいろいろな不安というものもあるわけです。この辺についてわかっておることがあれば、もう時間も余りありませんが、簡単にこの振りかえ制度の問題についてどういうことを考えておられるか、お聞かせをいただきたいと思います。
  245. 川崎正道

    ○川崎(正)政府委員 まず最初に、いろいろな関係方面からの御意見を十分に尊重するようにという点でございますが、従来からも人事院は各方面の御意見を十分に参酌しながらいろいろな制度を改正する、あるいは決めていくということをいたしておりますが、今後ともに各関係方面の御意見は十分に尊重しながら制度改正を進めてまいりたい、このように考えております。  それから、振りかえの問題でございますが、現在考えております振りかえと申しますのは、勤務を要しない日、いわゆる閉庁土曜日あるいは日曜日にやむを得ず出勤を命じられた場合に、月曜日から金曜日までと申しますか、通常の勤務を要する日にかわりに休みがとれるという制度を新しくつくろう、こういうことでございます。 この制度の運用に当たりましては、当然にやむを得ず勤務を命ぜられる場合、そういった場合に限ってこの制度は運用していくということを前提としておりますので、各省庁におかれましても当然にそういう運用をなされるであろうというふうに考えております。
  246. 田口健二

    ○田口委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  247. 竹中修一

  248. 井上和久

    井上(和)委員 初めに、去る六日に総理府が発表いたしました公務員に関する世論調査の結果につきまして若干の質問をいたしたいと思います。  この世諭調査の中には、公務員の週休二日制についてや給料についてなど、あらゆる角度からの設問がございます。本日の議題となっております土曜閉庁につきましては後ほどお伺いをいたしたいと思いますが、まず、この調査の中で私が一番気になる点というのが、今の公務員に欠けている点という項目がございまして、この質問では、今の公務員に欠けていると思われるものは何でしょうか、この中から幾つでもお答えください、こういうふうな質問でございました。その回答結果を見てみますと、公務員に欠けている点があると答えておる人が七八%もあるわけであります。またその中で、どういう点が欠けているとしているかといいますと、一番が、サービス精神というのが四二・四%でございます。また次が、仕事に対する意欲というのが三四・八%になっております。三番目に、柔軟な物の見方というのが二三・七%。次に、仕事の速さ、正確さが欠けているとするのが二三・三%などと続いておるわけであります。それで規律を守る態度というのが七・九%、その他一%となっております。  こういうふうな状態でありますが、この中で、仕事に対する意欲と規律を守る態度が欠けていると答えているのを合わせますと四二・七%にもなるわけでございます。今私が挙げましたこの二つというのは、公務員としての姿勢、また綱紀といいますか、公務員としての根本的な問題だと私は思うわけであります。これはあくまでも調査でありまして、あらゆる角度から検討しなければならないとは思うのでありますが、それでも一応四割強の人が公務員として一番大切な部分が欠けているのではないかという印象を持っている、こういう受けとめ方がされているということであります。  この点を含めまして、この世論調査の結果をごらんになっての総務長官の御所見を伺いたいと思います。
  249. 高鳥修

    高鳥国務大臣 ただいま井上委員から御指摘のように、先般総理府で公務員に関する世論調査を実施いたしました結果、今の公務員に欠けている点として、サービス精神の欠如が四二・四%、仕事に対する意欲が三四・八%等々の御指摘がございます。極めて不十分であるという御指摘が八割にも上っておるということにつきましては、私どもこれを謙虚に受けとめて、真心のこもった行政国民立場に立った親切な行政をやってまいらなければならないということで、さわやか行政サービスというようなことも運動の一環として展開をしておるところであります。  ただ、この指摘の数字というのは複数回答でありますから、合算いたしますと一〇〇%になるのではなくて二一四%になるという、ちょっと複雑な指摘になっておりまして、これと裏返しの数字として、役所に行ったときの公務員の態度がよかったというのが二二・七%。まあよかったというのが五二・六%、合わせますと七五%ぐらいの方がまあ役所はよくやっておる、こういう評価もしておられるわけであります。  いずれにいたしましても、公僕たる者、国民に奉仕をするという精神を貫いていかなければならない、謙虚に受けとめてまいりたいと存じます。
  250. 井上和久

    井上(和)委員 この調査というものは本年の六月に行われたようでありまして、既に五カ月を経ておるわけであります。考えてみますと、この五カ月の間にリクルート問題が起こりまして、政官財への大変な事件へと発展をしておる、こういうふうな様相を今呈しておるわけであります。 したがいまして、この世諭調査というのを今やったとしたら、こういう結果が出るかどうかというのは大変疑わしいのではないかというふうな気がするわけであります。  しかし、この問題は非常に残念なことでございます。この疑惑というものは、国民の政治不信を深めていく大きな原因でありましょうし、政治家あるいは官僚、財界、幅広くわいろ性の強い株が配られておる。何の目的でこれだけ巨額の金を配ったのか、この真相を解明することは国会における大きな最優先の仕事であると私は思うわけであります。  先日、四日だったと思いますが、高鳥総務長官は、もらった人は名のり出よ、こういうような発言をなさったと聞いております。私も長官の御意見に同感でありまして、国民は、政治そのものがこの疑惑によってまさに国民無視の政治だというふうに今受けとめておる。と同時に、次から次から出るということで、まさにうんざりしておるというのが今の国民の皆さんの気持ちじゃないかと思うのです。ある人は言いました。子供の隠れんぼみたいに、見つかったらしようがなしに出てくるというようなことはおかしいんだというような話をした人もおりますけれども、現実には確かにそういうふうな面がございます。この政治不信を防ぐためにも、ぜひこういうことの解明をしっかりやっていきたいと思うわけであります。 これが結局は国民の、例えば納税意識なんかが薄らいでいくというふうな面に出始めてくると大変な問題でもございますし、ぜひこれに対しまして、我々国会議員はもちろん謙虚に受けとめ、反省をするべきであると思うわけでありまして、長官のお考えを私は大変すばらしいというふうに考えます。内閣の関係の一人として、ぜひ真相解明につきましても力を尽くしていただきたいと思うわけでございます。  六日に竹下総理が、地方遊説先の香川県で講演をされました。その中で、公務員の綱紀粛正について締め直しを検討したいと、内閣として綱紀粛正策を講ずる考えを示されたのでありますが、総務庁長官として今後どのようにこの綱紀粛正策を検討されていくのか、決意も含めまして具体的に御答弁をいただぎたいと思います。
  251. 高鳥修

    高鳥国務大臣 公務員の綱紀粛正問題に関しましては、ただいま御指摘のように総理が香川県へのいわゆるつじ立ちと申しましょうか、行かれたときに記者会見でお話しになっておられるところでありますが、それ以前にも、国会におきましても綱紀粛正問題について私自身も御質疑を受けておるところであります。  私は、公務員は国民全体の奉仕者として、その職務の公正な執行について国民の疑惑や不信を招くことのないように常に留意し、綱紀の厳正な保持に努めるべきことは当然のことである、このように考えているところでございまして、総理の方から内閣官房の方に御指示もあるようでございますので、綱紀粛正問題につきましては実は当庁の担当でもありますし、十分協議して適切な対処をいたしたい、このように考えております。  なお、実は昭和五十四年、ちょっと古い話になりますが、十一月九日内閣総理大臣指示というのがございまして、その中にはいろいろな項目が盛られておるところであります。例えば「公務員の関係業界等からの接待及び贈答品の受領は、国民の疑惑を招くことのないよう厳に慎しむ。」というようなことの指摘がございましたり、また次に、五十四年十一月二十六日の官房長等申し合わせにおきましては、「関係業界等からの餞別、贈答品等は受けないとともに、送付されたものは返送する。」等々、いろいろなことが今まで重ね重ね言われてきているところでございまして、今年も三日二十三日に人事管理会議というのを総務庁が主宰して行っておるところでありますが、そこにおきましても綱紀の厳正な保持ということを要請しておるところでございます。  もう新しいことは何もない、言い尽くされておるわけでありまして、これをいかにしてきちっとやるかということが問題だと思うわけでありますが、適切な対処をいたしたいと考えております。
  252. 井上和久

    井上(和)委員 ぜひともやっていただきたいと思います。  それから、土曜閉庁の法案に関連をいたしましてお伺いをいたしたいと思うのですが、この説明の中にもございましたように、経済構造の調整ということや、あるいは高齢化、国際化、そういうふうな中で雇用の安定がどのように図られるか、あるいは労働環境をどうやってすばらしいものにしていくか、こんなことは今我が国の大変重要な課題であるというふうに私も思います。それで、この労働時間の問題というのは、ことしは一つの転機であろうかというふうに思うのです。週四十時間労働制に向けまして労働基準法が四日に改正をされました。さらには、新経済計画や雇用基本計画で年間労働時間を五年で約一五%縮める方針というものを政府が決められたのであります。これはぜひ実現をしていただきたいと思いますし、いかなければならないと思います。  労働時間の短縮というのは、我が国の構造調整を進めていく上におきましても多面的に不可欠であります。よく言われます日本人は働き過ぎである、こういうふうな批判というものもございますし、現にこれは私が申し上げるまでもありませんが、一九八六年の例で製造業の労働者の年間総労働時間というのが、我が国が二千百五十時間に対して、アメリカ、イギリスは千九百時間台、西ドイツやフランスに至っては千六百時間台で四百数時間の差があるわけであります。この差が縮められまして、そしてそれによって余暇時間がふえる、同時に働く人のゆとりが生まれる、人間的な余裕回復が行われるということになりますと、これは内需拡大効果という意味からでも大変なものがあろうというふうに思うわけであります。労働省が試算されたのでは、全労働者が完全週休二日制になれば、余暇関連消費というのが約二兆八千億円くらいふえるのではないか、こんなような結果もあるのでありまして、同時に休日を楽しむ人がふえるならば、そのためにサービスを提供する人、その分野で働く人たちもふえていくというふうにもなろうかというふうに思うわけであります。こうしたことを含めまして、今回のいわゆる土曜閉庁法の導入をぜひとも早急に実施をしていただきたいと考えます。  民間企業に土曜休みを促し、週休二日制を促進する上で公共機関での土曜閉庁の実施の効果は大きいと言えます。また、今後各地方自治体にも波及していくと見られますので、その効果のみならず障害となる部分にもよく目配りをするのでなければならないと思います。中小企業、零細企業の経営を圧迫したり、国民に対する行政サービス、窓口サービスの低下につながることのないよう万全の体制をぜひともお願いをしたいと思います。ここのところが非常に問題であろうかというふうに思うわけであります。確かにこの行政サービスの低下というものを一部では心配をする声がございます。だから、土曜閉庁を実施するということが行政サービスの低下ではなくて、むしろこの面では向上につながっていくような努力をするというふうな実態といいましょうか、決意というものをぜひ改めてひとつ総務長官にお伺いしたいと思います。
  253. 高鳥修

    高鳥国務大臣 先般の総理府の世論調査では、公務員の官庁などにおける土曜閉庁導入について賛成だという方がようやく多くなったという実情でありまして、その賛成も条件つきであって、行政サービスの低下を来さないようにしっかりやれ、こういう条件つき賛成というような形であります。しかしながら、まあそこまでようやく来たのかなという感じを私は持っておるところであります。  今御指摘のように、サービス向上ということを一生懸命やりますとともに、仮に緊急事態等がありました場合にはもちろん関係者は支障のないように勤務体制につくとか、あるいはまた国民生活に直接関係のあるところについては交代制勤務でこれを実施していくというようないろいろな工夫をいたしまして、国民の皆様方に非難を受けることのないようにしっかりやらせたいというふうに考えております。
  254. 井上和久

    井上(和)委員 もうちょっと具体的なお話といいましょうか、この土曜閉庁ということは行政改革という意味からいいましても十分に私は理由があるような気がするわけでございまして、行政機構の縮小あるいは手続の簡素化、さらに効率化、こういうふうなことを徹底するということがこのことをしようとしてより進んでいってもらいたいというふうな気がするわけであります。  それで、去る十月二十五日、総務庁、大蔵省より行財政改革の推進についての基本的な考え方が公表されました。この中で、行政改革については「経済社会情勢の新たな変化に対応し、行政の役割を見直す」こう述べながら「これからの時代にふさわしいものに作りかえていく」こういうふうに述べておられるわけでありますが、今の言葉の具体的な中身をひとつ明確にしていただきたいと思うわけであります。財政改正の中身というのは割合数字もきちっと出ておると思いますが、この行政改革の記述が非常に総論的なものだというふうに思いますので、ぜひ具体的なものをお答えいただきたいと思います。
  255. 高鳥修

    高鳥国務大臣 先般国会の御要請によりまして提出いたしました「行財政改革の推進について」という文書につきましては、従来の臨調、旧行革審あるいは新行革審の六月二十九日の意見具申、これらを踏まえまして、当庁において行政改革部分については取りまとめをいたしたものであります。この個々の文言につきましては、それぞれ関係省庁の合意を得て政府として提出いたしたものでありまして、なおかつまた中期的な展望に立ってのものでございますので、その大部分については三年ないし五年の間にぜひとも実現してまいりたいというかたい決意を持っているところであります。一つには、変化への対応、あるいはただいま御指摘のありましたような簡素化、効率化、総合性の確保あるいは信頼性の確保といったような改革の視点に立って、各種の改革課題の具体的な方向を示したものであるというふうに御理解をいただきたい次第であります。  中身につきまして具体的にということになりますと、それぞれの年度ごとに定めていかなければならないものもございますので、やはり項目を羅列するだけになってしまって大変恐縮でありますが、考えているものといたしましては、年金、医療、農業等主要施策、あるいは行政組織、定員、現業等、公社、特殊法人等、国、地方を通じた行政改革、規制緩和、補助金等、各分野にわたりまして着実に御趣旨に沿った方向で具体化をしていきたいというふうに考えているところでございます。
  256. 井上和久

    井上(和)委員 先日の税制問題の特別委員会の中でのお話だったと思うのですが、竹下総理が、より一層の行政改革の推進を図るために国家公務員の総定数を定めました総定員法または行政組織法を見直す考えを明らかにされております。行政組織法は中央省庁部局課数などの総枠を定めたものでありますが、五十九年の改正で省庁内の統廃合については政令で行えるようになりました。その際、附則で局部課数を含め六十四年七月以降改めて法律のあり方を見直すことというのがうたわれておるわけであります。これは総理が見直す、こういうふうに言われたわけでありますが、いつごろその作業に入られるのか。また、改正案というのは来年の国会に出すとか出さぬとか、そういうことまでわかっておりましたら、スケジュールについてお伺いをしておきたいと思います。
  257. 百崎英

    ○百崎政府委員 ただいまのいわゆる総定員法と国家行政組織法の見直しでございますが、まず、国家行政組織法につきましては、今御指摘のように来年の七月、この法律が施行されましてから五年目の見直しということになっております。したがいまして、私どももそういった法律の附則に書いてございますような見直し規定に従いまして、目下検討中ということでございます。それからなお、総定員法につきましても、現在は第七次の定員削減計画を実施しているところでございますが、これにつきましても、七次以降どうするかというようなことを含めまして、今検討をしているということでございます。
  258. 井上和久

    井上(和)委員 時間が参りましたから、最後にお伺いをしておきたいと思います。  まず一つは、土曜閉庁の準備をずっと今日まで進めておこしになったと思いますが、それでもって具体的にこういう点に注意し、こういうところを改善しておこうというふうなものがあったと思うのです。それについてお伺いをしたいということと、もう一点は、土曜が閉庁されることによりまして、先ほどもお話が若干ございましたが、事務量というものに変化がないとすれば、どこかではこなさなければならなくなったとすれば、一カ所に仕事量が固まったりすることがあって、超過勤務というのですか、こんなことがどんどん起こってきたりしても本来の意味から外れるのじゃないかなという気がするわけであります。また、もっとしっかりやっておかなければならぬなと思うのは、土曜閉庁されたときの事務が次の日に持ち越されていいのだということがはっきり書いてあるわけであります。この点についての周知徹底がしっかりなされていないと、これは直接に国民の皆さんの問題であると思いますので、これをしっかり徹底をしてもらいたいと思うのですが、これについてお伺いをいたしたいと思います。
  259. 高鳥修

    高鳥国務大臣 この土曜閉庁するのだ、第二と第四の土曜日には役所が閉まっているのだということが国民の皆様方に十分周知徹底されますならば、恐らく国民の皆様方のサイドにおきましても、そういうことを念願に置かれた役所の方へのお出向きをいただけるのではないかと考えます。  地方自治体におきまして、土曜日の午後も仕事をするのだということをやったところがあるのですが、これは住民の方々が、土曜日の午後は休みなのだという観念があられるものですから、余り利用にお見えにならなかったという実績も私ども把握しております。したがいまして、国民の皆様方にその点を十分御理解をいただいて、できるだけ普通の日に御利用いただくように努めていきたいと思いますし、事務能率の向上、処理の敏速化、改善すべき点も多々あると思いますので、できるだけ職員の過重負担にならないように、こういう機会に改善すべき点は改善し、簡素化すべき点は簡素化するという努力もあわせていたしてまいりたいと思います。
  260. 井上和久

    井上(和)委員 時間が参りましたので、終わりたいと思います。ありがとうございました。
  261. 竹中修一

    竹中委員長 川端達夫君。
  262. 川端達夫

    ○川端委員 非常にわずかな時間でありますので、簡潔に全体的なことをお伺いをしたいと思うのです。  今回の土曜閉庁法案の本来の目的といいますか目指すところは、当然のことながら、アメリカ、イギリスに比べても三百時間あるいは西ドイツ、フランスに比べると五百時間以上の長時間労働に日本は置かれている、そういう状況から、少なくとも先進国と肩を並べるところまでの労働時間の短縮ということが目的であろうと思います。そういう中での一つの施策として四週六休を土曜閉庁でやろう、こういうふうに理解をしているわけですけれども、問題は、目的が実総労働時間の短縮であるはずであると思うのです。  そういう意味で、前回の人勧のときにも私御質問したのですが、もう一度確認したいのですが、公務員の場合に、五十一年からの四週五休の試行に始まって以来六十三年の今回の閉庁に至るまで、四週五休の試行、それから四週六休の試行、本格実施という中での実際の総労働時間の実態把握というのがどのようになっておるのか、それから総務庁としてそれをトータル的にどのように認識されているのかについて、お伺いをしたいと思います。
  263. 勝又博明

    ○勝又政府委員 総労働時間は所定内勤務時間と超過勤務時間、それからマイナス要因でありますところの年次休暇の取得日数から成り立つわけでございますが、総労働時間を把握するということにはなかなか難しい面がございまして、総労働時間数ないしはその推移というものは私どもといたしましては把握いたしておりません。ただ、週休二日制ないしは土曜閉庁方式の導入と申しますのは、先生もおっしゃいますように、総労働時間の短縮にあるのは当然でございまして、これまでも超過勤務の短縮であるとか年次休暇の取得日数を向上させるとかということにつきましては、私どもといたしましてはそれなりの努力を払ってきたところでございます。
  264. 川端達夫

    ○川端委員 実態把握をされていないということなんですが、これからされるつもりはあるでしょうか。あるいはそういう指示をされるつもりはあるのでしょうか。
  265. 勝又博明

    ○勝又政府委員 公務員の総労働時間の把握につきましては非常に難しい問題がございますので、まことに申しわけない次第ではございますが、今の時点で総労働時間を調査しようという考えはございません。
  266. 川端達夫

    ○川端委員 難しい状況があるというのはどういうことか教えていただきたい。  それと、本来目的が実総労働時間の短縮にある、そういうときに、四週四休から四週五休に移り、四週六休に移ってきた。そういう中で、当然ながらその目的とする時間短縮が実現しているのかしていないのか。休みはふえたけれども残業がふえてしまっている、あるいは年休の消化が落ちているということになれば、本来の意味を果たしていないわけです。民間企業でも、基本的にはすべてそういう調査を労使挙げてやっているのを私はたくさん知っております。そういう意味で、何らかの方法でそういうことができないかどうかということです。  それとあわせて、今度の制度では代休の取得を認める制度ができるわけですけれども、そういう意味では、実際にその代休がどのような形で現実に消化されていくかということをフォローしなければいけないのではないか、その必要性は非常に高いのではないか。実際に職場におられる方も、代休という制度が導入されるということでそれが実際にとれるであろうかという不安を抱いておられる。そういう意味では、そういう部分をフォローするためにも調査はこれからやるべきではないか。あるいは、有給休暇というものに土曜を休みにした分がどんどんしわ寄せがふえる。代休はとれるかどうか、有給休暇はとれるのであろうか、代休をとることにすると有給がとれなくなる、あるいは時間外がふえていく、そういう懸念を持っておられると思うのです。  そういう意味で、今日まで実態調査をしてこられなかったということは、本当を言えば、さかのぼって調べることは私は可能ではないかと思うのです。そういう意味で、これからの実総労働時間、そのベースになる部分での代休あるいは有給休暇それから時間外という部分に対する調査、実態把握をされるべきだと思うのですが、あわせて御答弁いただきたいと思います。
  267. 勝又博明

    ○勝又政府委員 総労働時間を構成する要因は先ほど申し上げたわけでございますが、年次有給休暇の取得日数につきましては、人事院あるいは私どもの方も調査いたしておるわけでございます。傾向的に見ますと、ここ数年、取得日数に急激な変化はございません。ほぼフラットに推移しているという状況にございます。  それから超過勤務でございますが、超過勤務の実態につきましては職員個々によって非常に偏りがあるということが一つございますので、そのようなものを把握することによって全体を想定する材料にはなり得ないのではないかという懸念を持っているわけでございます。  いずれにしましても、くどいようですが、私どもといたしましては、年次休暇のまとめ取りを含めた取得日数の向上であるとか、超過勤務時間数の抑制、これについては人事管理運営方針等を通じまして関係各省庁を御指導しているところでございます。  また、今回の法案に盛り込まれております代休につきましても、四週六休土曜閉庁の趣旨に沿いまして、実勤務時間が短縮されるようその活用が強く望まれるわけでございますし、各省におきましてもそのような形で、土、日に出勤を命じた職員につきましてはできるだけ代休制度を活用してくれるものと期待しております。
  268. 川端達夫

    ○川端委員 余り時間がないのですが、例えば、そういうふうに残業時間が非常に偏った部署であるというデータがあるのであれば、その部署の人たちは、時間短縮というものをどうとらえたらいいのかということにおいては非常に問題を示すデータになっているわけですね。そういう意味で、いろいろな代休もあなた任せに取得されるように期待するということではなくて、実際に目的が実労働時間を短縮していくんだということであれば、もう少し所管官庁としてきめ細かく、実際の数字に基づいた指導監督ができるようにされるべきだと思いますし、強く要請をしておきたいというふうに思います。  そういう中で、土曜閉庁を受けられる職場は、目的がそういうところであるということでは、基本的には、仕事が残ったからあるいは土曜日休みの分で繰り越したからということで、人をふやすということをやらないでやろう、要員増をしないでこれを何とか消化しようという御努力を各職場でしていただいているわけですけれども、そういう部分で当然ながら求められるのは、行政のより効率化であろうというふうに思います。各方面でいろいろと御努力をいただいているのは承知をしておりますが、そういう中で大きなネックになる基本的な仕事の仕組みの部分に抜本的なメスを入れようとすれば、いわゆる職務権限、上司、部下での思い切った権限の委譲というのも一つ考えるべきではないかな、これは細かいおのおのの仕事をこういうふうに効率化しようというのと違う観点から行政がかかわっていかなければならない問題ではないかなというふうに思うのですが、そういう仕事の効率化という部分に関してどのようにお考えになっているのか、見解をお聞かせいただきたいと思います。
  269. 勝又博明

    ○勝又政府委員 先生御指摘のように、行政事務の簡素効率化を図るためには、当該行政事務が必要かどうかということだけではなくて、その行政事務をどのように実施していくかということにつきましても見直しをする必要があろうかと思います。ただ、その権限委譲ということでございますが、行政事務の実施に当たりましては、責任の所在ということを明確にしておく必要もございますので、各省庁におきましてそれぞれのポストの具体的な職務内容等に応じまして具体的に御判断いただくべきものというふうに思っております。
  270. 川端達夫

    ○川端委員 個々の仕事の部分はそうであろうと思うのですが、管理監督される省庁としての基本的な労働時間短縮、そしてそれの裏づけとなる業務の効率化推進という観点で指導されるべきである。先ほどからのお話、全般的に各省庁がそういう趣旨にのっとって一生懸命おやりになるだろうということでは非常に物足りないように思いますし、各論になるとなかなかそれは難しいということが出てくるのではないか、そういうことで申し上げたわけです。  それと、実総労働時間をトータル的にもっと減らしていこう、その裏づけとしていろいろなことがやられている、それが実効的に実総労働時間としてどういうふうになったかというのが余り把握されていないというのは非常に不満なんですけれども、そういうのがすべて目指すべきところとして、二〇〇〇年に労働時間を先進国並みにしようというふうな新前川レポートの方針もある中で、今回の土曜閉庁の隔週休みというのは、いわゆる完全週休二日へのワンステップであるというふうに我々は認識しているわけです。完全週休二日制導入というものの推進を、今回の国家公務員の場合がその推進役として一つの役割を果たしていると思うのですね。その一里塚であろうというふうに思うわけです。  完全週休二日制導入への姿勢と計画等に関して、基本的なお考え長官にお伺いしたいと思います。
  271. 高鳥修

    高鳥国務大臣 完全週休二日制につきましては、現在主要各国の大部分がこれを実施しているところでありまして、たしかアメリカは終戦の年、一九四五年に既に完全週休二日制を公務員について実施をしている。それからフランスは、たしか二十年くらい前から既に完全週休二日制を実施している。サミット参加国などでやっていないのはたしかイタリーでありますが、私、イタリーへ参りまして勤務状況を調べたのですけれども、午後二時までの勤務であとはみんな休みというような、普通考えますと変則的な勤務状況であります。したがいまして、これは別といたしまして、主要各国においてはほとんど官庁の週休二日制というのはもう実施されて相当の日時がたっておるという状況であります。  そういう中で、我が国におきましてはようやく月に二回の土曜日を閉庁にするということになったわけであります。しかも、この法案を提案するに至りますまでの間におきましても、実は総務庁自体も、六十三年度に導入を検討するとした中曽根内閣のときの方針については果たして本当にやれるのかなという感じすら持っていたというのが今までの姿であります。それをようやくここまで踏み切ってまいったわけであります。  今後、民間における週休二日制の普及状況――今回国があえて踏み切ろうといたしておりますのは、少なくとも民間の相当規模のところにおいては月に二日以上土曜日も休んでおる、こういう実態が六割以上あるということを踏まえまして、あえて踏み切ったわけでございまして、今回のこの官庁が休む、あるいは金融機関が来年の二月から完全週休二日制になる、そういうことを踏まえて民間部門における週休二日制というのはやはり急速に広がっていくであろう。それを踏まえまして、その実施状況を見ながら、民間において六割以上の部門においてそれぞれ完全週休二日制になるというような事態になれば、国としても当然に完全週休二日制というものを導入してもいいのではないか。私はそんなことを一つの目安に考えていくべきではなかろうかというふうに考えております。
  272. 川端達夫

    ○川端委員 時間が来てしまいましたので、お願いだけをしておきたいと思います。  いろいろな意識調査でも、国民の皆さんは土曜閉庁になっていわゆるサービスが低下するのではないかという懸念を抱いておられる。それにこたえるべく、働いておられる方々は懸命な努力をされているし、されると信じております。しかし、そういう部分ではやはり理解というものが非常に大事であるということで、一般国民向けのPR、これは各省庁に任せるということではなくて政府としてきっちりとやっていただきたいということをお願いしたい。  それともう一つは、土曜閉庁が実施されても閉庁できない職場という部分に関して、可能な限りそれに近づくように、それから、できないところとできるところという部分で変にモラルが下がったりそういうことのないような職場での意識づけということに関しても、十分御留意をいただきたいと思います。  以上で終わりにします。ありがとうございました。
  273. 竹中修一

  274. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 我が党は、土曜閉庁法案は公務員労働者を完全週休二日制の方向に進め、また民間労働者の週休二日制を促進することにもつながるものでありますので、法案に賛成の態度をとることを初めに表明しておきます。  しかし、土曜閉庁を実施する政府の方針には問題があります。この点について質問します。  土曜閉庁導入についてのことしの五月三十一日の閣議決定では、「土曜閉庁方式導入に当たっての留意点」として、「土曜閉庁方式の導入に当たり、行政サービスを極力低下させないため、緊急時における業務体制の整備その他の工夫を行う。」としております。我が党は、土曜閉庁の実施について、国民生活に支障のないよう十分配慮して、国民に必要な窓口などは確保することなどを提案してきましたが、この閣議決定で言う「行政サービスを極力低下させない」という「極力」とは具体的にはどのようなことを指しているのか、お伺いします。
  275. 勝又博明

    ○勝又政府委員 土曜閉庁方式を導入した場合には、特定の官署を除きまして第二及び第四土曜日には執務をしないわけでございますから、どうしてもその土曜日に行政サービスを受けたいという人にとってはサービスの低下になることは否めないわけでございます。したがって、行政サービスを全く低下させないということはあるいはできないのかもしれませんが、先生も御指摘の去る五月三十一日の閣議決定においても、行政サービスを極力低下させないように努力すべきであるということで、いろいろと各般の工夫を行うことにしているわけでございます。  具体的な内容を申し上げれば、例えば、留守番電話を設置するとか、受付ポストを設けるとか、あるいは留守番電話でいろいろ回答を申し上げるとかといったようなシステムの導入などが考えられますし、さらには、迅速な処理を要するような貨物が港に入ったような場合につきまして、事前に連絡があった場合には臨時の開庁を行うとかいうようなことも当然考えることになっております。さらには、緊急時の連絡体制についても当然のことながら整備を図っていく必要があろうかというふうに思っております。
  276. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 土曜日が閉庁になるので部分的にサービスは低下するということですが、裏返せば、ほかの開庁日、休日でない土曜日も含めて開庁日のサービスは低下させないということになると考えます。  さらに、閣議決定によりますと、その留意点には、今言った「行政サービスを極力低下させない」ということと一緒に、「現行の予算・定員の範囲内で実施する。」ということが書いてあります。この事柄というのは矛盾するものだと思いますが、どうですか。
  277. 勝又博明

    ○勝又政府委員 国家公務員の週休二日制につきましては、従来から予算、定員の増加を伴うことなく実施してきたわけでございまして、今年四月からの四週六休制につきましても、このような方針に沿いまして各般の工夫を行いながら実施してきたところでございます。  現在導入を図ろうとしております月二回の土曜閉庁といいますのは、この四週六休制の枠の中での閉庁方式でございまして、週当たりの勤務時間の短縮を伴うわけでございませんので、新たな定員の増員があるわけではございません。また、土曜閉庁方式の導入に当たりましては、行政サービスの低下を極力来さないために各般の工夫を行っておるわけでございまして、緊急時における業務体制の整備等を図ることとしておりますが、一方におきましては、代休制度を新たに導入することによりまして、勤務条件につきましても配慮してまいりたいというふうに考えております。
  278. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そのような説明でありますけれども、現実の職場を見てまいりますと、今の説明でどうしても納得できないというふうに考えるわけであります。  私たちも、土曜閉庁法案審議するに当たりまして、法務省の登記所や運輸省の陸運事務所、それから厚生省の国立病院、国民と直接かかわる窓口業務を担当している官署を何カ所か調査をし、視察をさせていただきました。そして、当局の側からも職員の側からも意見を聞きました。土曜閉庁を実施する要望というのは、当局の側にも職員の側にも強いものがあります。しかし、土曜閉庁を予算、定員を現在の範囲内で実施するという政府の方針については、職員の側から強い反対がありますし、当局の側からもこれでよろしいという賛成意見というものは聞きません。現場で働いている人から見るとこれは当然のことだと思うわけです。  土曜日を閉庁するのですから、業務量は当然平日に増加をすることになります。この増加した分が毎日平均して分散してふえるということになれば吸収されるという可能性も出てきますけれども、業務量は日によって違うわけであります。土曜閉庁されますと、登記所や陸運事務所などでは木、金、月、このあたりの業務量が特にふえるのではないかと予想されております。 行政サービスを低下させないで定員をふやさないということになれば、そういうときに残業で処理しなくちゃならないということになります。ところが、予算をふやさないということになりますと、これは残業ができないことになります。仕事がたまって国民への行政サービスが低下して、職員に負担がかかってきます。これは悪循環になるわけです。行政サービスを低下させないためにも、職員に労働強化を強いないためにも、予算や定員を確保するということは当然のように必要だと思いますが、そういうことではありませんか。
  279. 高鳥修

    高鳥国務大臣 委員御承知のとおり、現在四週六休で土曜日は半数が休んでおるという状況になっておるわけであります。それを土曜日を閉庁することによりまして、開いております土曜日には全員が出て仕事をするということになるわけでありますから、現在四週六休で実施しておるものよりは事務能率の面におきましてはむしろやりやすくなるというふうに考えていいのではないだろうかというふうに思われます。なお、こうした制度が定着することによりまして、先刻申し上げましたように、国民の皆様方の側におきましても利用の方法についてはおのずからお考えいただけるようになるのではないかというふうに考えます。  今委員が御指摘のような問題があります反面、国民の要望は、行政改革をしっかりやれ、無用な人員は抱えるなという非常に強い御要請もあるわけでございますので、私どもといたしましては、事務処理方法の改善等を通じまして、サービスの低下を来さないようにしっかりやっていきたいというふうに考えております。
  280. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 お言葉を返しますけれども、現実に大変忙しい職場がある。そして、確かに労働時間というものは減るわけではありませんけれども、やはり二日間の休みがあるということになりますと、それにかわる日ということでそこに仕事が集中する、国民からの仕事が集中してくる。窓口なんかはそうだというようにこれはだれでも考えるわけであります。そういうときに、人間はふえていない。そうすると、現在の職員であればこれは当然に残業ということになりますし、その残業量がふえるということはこれはもう必然だというように思うわけであります。そのことを言っているわけです。  特に、定員不足のしわ寄せを受けております職員は交代制勤務者であります。交代制勤務者は法律的には四週六休は確実に保障されておりません。法律では、四週六休ができなければ四週四休でもいいんだというような規定になっているように見ております。その原因というのは何だということになれば、これは定員不足、定員が足りない、人が足りないということが根本的な問題であります。  また、定員問題は今後完全週休二日制を実施していくという上でも避けて通れない問題であるというように考えます。今、労働時間は同じだという前提で言われますけれども、現実には残業がふえる、労働過重になるといった心配が当然ありますし、まして完全週休二日制ということになればさらにそういうことがふえる。全体の仕事の量は減らないわけですから、五日間でこなさなければならないということになりますから、定員問題というのは避けて通れない問題だと思うわけであります。政府は完全週休二日制への実現に向けて、この職員の定員問題をどう考えているのか、お伺いします。
  281. 高鳥修

    高鳥国務大臣 繰り返すようでありますが、国民の側からは政府に対する行政改革の強い御要請があるわけでございます。それを竹下内閣としても、もっと真剣に受けとめてしっかりやれという御要請があるわけでございますので、そういう御要請の前に、それでは土曜閉庁いたしますから定員をふやしますというお答えは私の立場からはなかなかできないところであります。むしろ、やはり総合的に人員配置等について検討しまして、それぞれ適正配置をする努力をいたしまして、そうした御要請にはおこたえしていかなければならない、このように考えております。
  282. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 どうも大臣の方も枠があるので本音が言えないという状況ではないかと思いますが、私は、定員や予算の確保ということは、国民への行政サービスを維持し向上させ、また職員に労働強化をもたらさないというためには絶対に必要であるということを重ねて指摘するものであります。  なお、この後行われます附帯決議につきましては、我が党は、学校、病院の土曜閉庁は当然のことながら、そのための条件整備が前提にあるという立場であることを含めて賛成することを表明して、質問を終わります。
  283. 竹中修一

    竹中委員長 これにて両案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  284. 竹中修一

    竹中委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  まず、行政機関の休日に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  285. 竹中修一

    竹中委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、一般職職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  286. 竹中修一

    竹中委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  287. 竹中修一

    竹中委員長 この際、ただいま議決いたしました両案中、一般職職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案に対し、近岡理一郎君外三名から、四派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。近岡理一郎君。
  288. 近岡理一郎

    ○近岡委員 ただいま議題となりました自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合の各派共同提案に係る附帯決議案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     一般職職員給与等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   社会経済情勢の変化等に伴い、労働時間短縮・週休二日制の実現が緊急かつ重要な国民的課題となっていることにかんがみ、公務員についても、その積極的な推進を図るため、政府並びに人事院は、次の事項について速やかに適切な措置を講ずべきである。  一 病院、学校等においても、土曜閉庁方式による四週六休制の早期実施に努めること。  一 土曜閉庁方式による完全週休二日制を早期に実施できるよう、計画的な条件整備に努めること。  一 土曜閉庁方式の実施に当たっては、その趣旨について国民理解を十分得るょう配慮するとともに、行政サービスを極力低下させないよう各般の努力を行うこと。  一 年次休暇の完全取得の促進、超過勤務の縮減、休暇制度の拡充等により、年間総労働時間の短縮に努めること。  本案の趣旨につきましては、当委員会における質疑を通じて既に明らかになっておることと存じます。よろしく御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  289. 竹中修一

    竹中委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  290. 竹中修一

    竹中委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、総務庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。高鳥総務庁長官
  291. 高鳥修

    高鳥国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、政府として今後とも検討し努力してまいりたいと存じます。     ─────────────
  292. 竹中修一

    竹中委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  293. 竹中修一

    竹中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  294. 竹中修一

    竹中委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十七分散会