○坂本(重)
政府委員 お答えいたします。
ただいま先生から御
指摘がありましたとおりでございまして、残念ながら八月二十六日、現地時間で午後六時二十分ごろ出港いたしました第八共和丸は、出港後十分後にカリャオ港の沖約八キロの地点でペルー海軍
潜水艦パコーチャの左舷に
衝突いたしまして、パコーチャは、ペルー海軍によりますと間もなく沈没いたしました。ペルー海軍の発表でございますが、それによりますと、
潜水艦は第八共和丸の右前方四十五度の
方向で浮上航行にて接近してきた、
衝突後約一分後に四十メートル先の水深約三十三メートルの地点で沈没した由ということになっております。あと死亡者、損害等につきましては、先ほど先生が申された数字そのとおりでございます。なお、生存者四十四名のうち一名が依然として重体であるという情報も入ってきております。
そこで、第八共和丸の現状でございますけれども、現在、第八共和丸はカリャオ港に停泊しておりまして、そして船及び乗員の港外への退出は禁止されております。ただし、乗組員に関しては身柄の拘束は受けておりません。
現地の
日本大使館も先方
政府と鋭意
折衝しておりまして、その結果、九月一日でございますけれども、
日本側からの照会に対しまして、先方の海上保安当局より、船長、一等航海士、冷凍長及び一等機関士の四名を除く船員については帰国申請があれば帰国を認めますということを言ってまいりました。そこで、現在、船主の三鬼さん等が大使館と一緒になって先方に帰国の
要請を出しておりますので、先ほど申しました船長以下四名を除く船員に関しましては間もなく帰国が実現するのではなかろうかと考えております。なお、現在、船主の三鬼さんほかいろいろな方が現地に到着しておりまして、大使館と現地の弁護士と一緒になりまして先方
政府とも連絡をとっております。
他方、先ほど先生が触れられました原因等についてでございますが、現在、ペルー側は
事故原因の究明についてカリャオ港の海上保安当局が
調査中でございます。そして、船長ほか
関係者の事情聴取を三回にわたって行っておりまして、第一段階の
調査は終了したと言っております。他方、九月一日からカリャオ検察当局が独自に事前の
調査を開始いたしまして、これに関しましては恐らく一月ないし二月の期間、
調査に要するのではなかろうかと言われております。
我が方といたしましても、この事件は非常に痛ましい事件であるという
認識のもとに、早速課員を現地にも派遣いたしましたし、二十七日には宇野外務
大臣から先方の外務
大臣あてに見舞い電を出していただきました。それからまた、現地の妹尾大使も
潜水艦長等の葬儀にも
出席いたしましたし、私自身三十一日、在京マキャベロ大使を訪問いたしまして哀悼の意を表すると
ともに、この事件が二国間の伝統的な
友好関係に悪影響を与えないよう要望すると
ともに、
調査と司法
関係においては公正な取り扱いを
期待する旨表明いたしました。
一応こういうところが推移でございますが、問題は原因でございます。先ほど先生がおっしゃったように、ガルシア大統領は八月二十七日の記者団との応答におきまして、恐らく漁船が
潜水艦の長さを誤認したのではなかろうか、こういう発言がございました。それからまた、八月二十八日には国防
大臣がやはり記者団との応答におきまして、
潜水艦の乗組員の見方によれば、
日本漁船の接近に誤りがあり、避けようとしたが
潜水艦後尾に
衝突、多分
日本漁船に
責任があるだろう、こう述べております。それから、もっと私どもが重視しておりますのは、実は八月三十一日に至りまして、オソリオというカリャオ港の海上保安本
部長、この方は
調査の最高
責任者でございますが、この方が記者団との応答で、
潜水艦は汽笛を通じて同艦が優先権を有することを
日本漁船に警告したが、
日本漁船の船長が認めているように、それを認めるのが余りにもおくれたため今回の
衝突となった旨発言をしております。なお、八月二十九日に至りまして、第八共和丸の大門船長は邦人記者団に対しまして、
潜水艦の左舷側の赤ランプを見たという点からは本船に回避義務があったであろうという旨述べております。
しかしながら先方
政府は、先ほど先生がおっしゃったように、この問題を非常に冷静にかつ慎重に扱おうとしておる節が見られまして、二十七日には外務
大臣がこの問題に関して、決して両国間に悪影響があってはならないということを我が方の大使に述べておりますし、それからまた、二日に至りましてガルシア大統領が
日本人記者団との
会見におきまして、先ほど先生が申されたとおりのことを言っておられます。
そこで、今後の見通しでございますけれども、この問題はあくまでもペルー領海内で発生した事件でございますので、裁判管轄権は第一義的にはペルー側にあって、ペルー側は海上
衝突予防条約の当事国でもありますので、それに基づきましてペルーの国内法が適用されるのであろうと私ども判断しております。したがって、
我が国政府といたしましては、原則としてペルー司法当局の判断を尊重するという立場を維持したいと思っております。
ただ、残念ながら過失によるものとはいっても死者が出ておりますので、先方弁護士によりますと、刑事
責任が問われるものと当然思われます。ペルーの刑法によりますと、業務上過失致死の場合には一カ月以上五年以内の禁錮刑ということになっております。それから民事
責任、補償などについても当然これは要求されるのではなかろうかと思っております。もちろんこれは
日本側に過失があった場合のことでございます。もしそうだとすれば、この点に関しましてはペルー
政府と第八共和丸
関係者の間で話し合われることになるのではなかろうかと思っております。
先ほど申しましたように、現在、
事故原因、
責任の所在につきましてはペルーの海上保安当局が
調査を行っておりますけれども、私どもとしましてはその
調査結果を待っておる段階でございまして、今後その
調査結果を踏まえまして、その対処ぶりにつきましては慎重に対処してまいりたい、検討してまいりたいと思っております。ただ、本件
事故につきましては、先ほど申しましたとおり、
日本側漁船の過失を示唆するペルー側の発言が多々ございます上に、大門船長自身の過失を認める趣旨の発言もございますので、私どもといたしましては、決して楽観は許されないという状況にあろうかと判断しております。いずれにしましても、
日本政府としましては、ペルーの司法権に干渉しない範囲内で、邦人保護の見地から、必要に応じて側面的に積極的に
協力してまいりたい、こう考えております。