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1988-09-06 第113回国会 衆議院 内閣委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年九月六日(火曜日)     午後二時三十二分開議  出席委員    委員長 竹中 修一君    理事 近岡理一郎君 理事 月原 茂皓君    理事 戸塚 進也君 理事 前田 武志君    理事 宮下 創平君 理事 田口 健二君    理事 竹内 勝彦君 理事 和田 一仁君       有馬 元治君    河野 洋平君       鴻池 祥肇君    鳩山由紀夫君       三原 朝彦君    宮里 松正君       森下 元晴君    谷津 義男君       角屋堅次郎君    広瀬 秀吉君       井上 和久君    鈴切 康雄君       川端 達夫君    浦井  洋君       柴田 睦夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 田澤 吉郎君  出席政府委員         内閣官房内閣安         全保障室長   佐々 淳行君         警察庁警備局長 城内 康光君         防衛庁参事官  小野寺龍二君         防衛庁参事官  福渡  靖君         防衛庁参事官  村田 直昭君         防衛庁参事官  鈴木 輝雄君         防衛庁長官官房         長       依田 智治君         防衛庁防衛局長 日吉  章君         防衛庁教育訓練         局長      長谷川 宏君         防衛庁人事局長 児玉 良雄君         防衛庁経理局長 藤井 一夫君         防衛庁装備局長 山本 雅司君         防衛施設庁長官 池田 久克君         防衛施設庁総務         部長      弘法堂 忠君         防衛施設庁施設         部長      鈴木  杲君         防衛施設庁労務         部長      吉住 愼吾君         法務省刑事局長 根來 泰周君         外務省アジア局         長       長谷川和年君         外務省北米局長 有馬 龍夫君         外務省中南米局         長       坂本重太郎君         外務省欧亜局長 都甲 岳洋君         外務省中近東ア         フリカ局長   恩田  宗君         外務省経済局次         長       内田 勝久君         外務省経済協力         局長      松浦晃一郎君         外務省情報調査         局長      山下新太郎君         農林水産大臣官         房長      浜口 義曠君         海上保安庁長官 山田 隆英君         海上保安庁警備         救難監     邊見 正和君         高等海難審判庁         長官      小林 芳正君  委員外出席者         海難審判理事所         調査課長    松下 幸亮君         内閣委員会調査         室長      岩渕  静君     ───────────── 委員の異動 九月六日  辞任         補欠選任   大村 襄治君     三原 朝彦君   河本 敏夫君     鴻池 祥肇君   村井  仁君     鳩山由紀夫君 同日  辞任         補欠選任   鴻池 祥肇君     河本 敏夫君   鳩山由紀夫君     村井  仁君   三原 朝彦君     大村 襄治君     ───────────── 八月三十日  スパイ防止法制定に関する請願小澤潔紹介)(第六二二号)  国家機密法制定反対に関する請願中路雅弘紹介)(第六二三号) 九月五日  スパイ防止法制定に関する請願原田昇左右紹介)(第六四一号)  国家機密法制定反対に関する請願佐藤祐弘紹介)(第七六〇号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出、第百十二回国会閣法第七号)      ────◇─────
  2. 竹中修一

    竹中委員長 これより会議を開きます。  内閣提出、第百十二回国会閣法第七号、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨の説明につきましては、第百十二回国会において聴取いたしておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 竹中修一

    竹中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  4. 竹中修一

    竹中委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。角屋堅次郎君。
  5. 角屋堅次郎

    角屋委員 本日は、前国会に引き続きまして防衛二法の審議をやるということで、午前から始まるケースを想定いたしまして早目にこちらに参りまして準備をしておったのでありますが、理事会のお話し合いでこの時間に相なったわけでございまして、張り切っておったのですけれども、少しスタートがかかりにくいところでございます。  同時に、きょうは小渕官房長官にも御出席を願い、防衛庁関係長官以下全員そろうのは当然でございますが、やはり防衛問題を考えるというのは、他の委員先生方の御質問でもそうでありますけれども、国際情勢外務省中心にした外交関係の諸問題、あるいは総合安全保障を考えるという場合は、外交的手段努力と同時に食糧総合安全保障といったような問題をどう考えるか、あるいはその中で防衛手だてをどう考えるのかといったような広い視野からの議論が当然のことでございまして、きょうも外務省関係は大変御苦労でございましたが、各局長勢ぞろいという形をとっていただいて大変恐縮でございます。  官房長官は、先ほど理事先生方にお聞きすると、私の質問が始まってから三十分で官邸の御用 に行かれる、さらに参議院の方にもお呼びがあってそれに行かなきゃならぬということでございまして、そういう段取りであるということでありますから、私もそれを了承いたしました。質問はやはり全体の流れの中でやらないと、摘出して小渕官房長官にお聞きするのは大変やりにくいのでありますけれども、今のように冒頭三十分おいでになって、官邸用務あるいは他の委員会用務につかれるということでございますから、官房長官に、ソウルオリンピックの問題、さらには潜水艦なだしお」と第一富士丸との衝突における対策、特に御遺族に対する補償問題、さらには過般竹下総理訪中されたわけでございますが、これは中国首脳部からも高い評価を受け、人民日報等報道でもそういう報道がなされておるわけでありますが、内閣の大番頭として、竹下訪中というものに対してもお聞きをしたい。おられれば、必要に応じて小渕官房長官どうか、こういうふうな形でお尋ねをするということをあらかじめ申し上げておいたわけであります。日中の問題は日中の流れの中で、「なだしお」の問題はすぐに御遺族救難対策というふうに飛び込むのにはなかなかやりにくいのであります。またソウルオリンピックの問題。  そこで、きのう来、楢崎弥之助代議士が、野党が強く要求しておりますリクルートコスモス真相解明証人喚問等関連をいたしまして、みずからのリクルートコスモスとの関係、特に社長室長から数回にわたって金品を伴った、リクルートを助けてくださいといった要請を受けたという報道が大きく出ておりまして、新たな事態を迎えたという感を深くいたしておるわけであります。先ほど、こちらに質問に入る前にテレビをひねりましたら、楢崎代議士社長室長がお話をしておるのがテレビにそのままに声も含めて出ておるのは、非常に衝撃的なニュースとして受けとめたわけであります。  そこで冒頭に、我が党を初め野党のそれぞれ国対等中心に、国民に対する政治信頼という問題から出ておりますリクルートコスモスの問題については、政治家を含めて徹底的に真相究明をやらなきゃならぬ、必要に応じて証人喚問をしなきゃならぬということで強く要請してきたことは御案内のとおりでありまして、その方針は今も変わらないわけであります。したがって、政府税制改革の問題をやろうとするのであれば、その問題と同時に、不公平税制の是正問題を先決としてやらなければならぬということで、今各党国対筋ではいろいろな折衝が行われておるわけであります。  そこで、まず第一に小渕官房長官にお伺いしたいのは、きのうの楢崎代議士新聞記者会見等中心にいたしまして新たな事態を迎えておるリクルートコスモスの問題に絡む真相究明問題については、政府としても、党も含めて誠意を持ってこの真相を明らかにする、そして国民政治に対する信頼をきちっと整えるということが我々政治家として当然必要なことであるというふうに考えますが、新たな事態を迎え、野党の強い要請の中でリクルートコスモス真相究明の問題についてどういうふうに考えておられるのか、内閣としてどう対応されようとしておるのかという点をまずお伺いをいたします。
  6. 小渕恵三

    小渕国務大臣 私も昨日の本院議員でございます楢崎弥之助氏の会見につきましては承知をいたしております。しかしながら、その事実関係につきましては、いまだ詳細を承知するところになっておりませんので、政府といたしましていかように対応するかにつきましては、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。  なお、真相究明につきましては、これは国会におきまして、証人喚問等の問題が過ぐる衆参両院予算委員会審議過程におきまして話し合われておるようでございます。この点につきましても、院のことでございますので、政府としてこれに対してコメントを差し控えさせていただきたいと思います。  いずれにいたしましても、それぞれの問題点につきましては、昨日の楢崎議員問題指摘並びに前段の株式譲渡に関する問題につきましては、私見としては考え方をいささか持つものではございますが、政府の立場としていかように対応するかということにつきましては、まだ事実関係並び楢崎議員の対応が明確でありませんので、この際差し控えさせていただきたいと思います。
  7. 角屋堅次郎

    角屋委員 リクルートコスモス真相究明につきましては、今度の臨時国会開会以降、野党側としては特別委員会設置要求、またその過程各党間でいろいろの折衝が行われた中で、特に公明党の方から質問等を通じて特別委員会設置が強く要求されてきた。これは国対ベースの問題として今話し合いがなされておるわけであります。それが設置されるということになれば、証人喚問等も含めて真相究明が徹底的になされなければならぬ。  楢崎代議士の問題に触れられましたけれども、テレビを見ておりましたら、林田法務大臣自身も、数日中に東京地検に告発があれば、これは取り調べざるを得ないだろう、従来の七十六人等の問題についても必要なことが出てくれば、これも調査の対象になるだろうという意味のことを答えておるわけですが、そういう点については、法務大臣自身内閣メンバーの一人として言っておるわけですが、どうでございますか。
  8. 小渕恵三

    小渕国務大臣 これを事件として考えるかどうかという問題でございますが、内閣の現段階におけるその方面の責任者としては法務大臣がおられるわけでございますので、法務大臣のお考えは尊重しなければならない、こう考えております。
  9. 角屋堅次郎

    角屋委員 きょうは国際的な外交全体の問題、それにかかわって食糧安全保障あるいは防衛問題ということで盛りだくさんな質問を用意しておりますので、官房長官に、次に第二点の質問に入りたいと思います。  それは、九月十七日からソウルオリンピックが開催されるわけでございます。東京オリンピックに引き続いてアジアにおけるスポーツの祭典として、平和の祭典として、百六十一の国・地域がこれに参画をするという、従来から見ますと画期的なオリンピック祭典が行われようとしておるわけであります。これが成功裏に終わることを我々隣国の国民も心から望んでおるところだと思うのであります。  そこで、ソウルオリンピック成功のためには、日本国民としては、もちろん我々も含めて、スポーツマンシップのもとで堂々と戦って、金メダルも銀メダルも銅もどれくらいとれるだろうかという期待も一面ではもちろんあるわけであります。しかし同時に、日本選手がフェアプレーの中で堂々と勝負をするというのが基本であろうと思います。  もう一つは、日本外国選手が参りまして、開会ぎりぎりまでたくさんの国が日本でトレーニングをされる、日本からソウルへ行かれるという選手も相当多いわけであります。だとしますれば、国際テロ等に対してもきちっと対応しなければならぬという問題もございます。単に国際テロだけじゃなしに、その他のトラブルが起こらないようにどうするかということについても、やはり日本政府として、また我々として最善を尽くしていかなければならぬというふうに考えております。  政府としてソウルオリンピック成功のためにどういう基本姿勢で臨んでいかれるのか、その点を第二点としてお伺いいたします。
  10. 小渕恵三

    小渕国務大臣 アジアで二回目に行われるソウルオリンピック成功をこいねがう気持ち、また同時に、その成功のために安全にこれが行えることを期待する気持ちは、角屋議員と全く同様でございます。  そこで、御指摘にありました安全対策でございますが、この対策のためには我が国としても最大限の協力を惜しまないということで努力をいたしまして、御指摘がありましたように、本邦で練習する各国の選手団は大変多うございまして、そうした選手のまずは身の安全ということから考えな ければなりませんが、この点につきましては、関係国から関連情報を収集いたしまして、現在では特別の経費も支出をいたしまして万全を期しているところでございます。  そこで、いろいろ危惧される中に日本赤軍テロリスト活動等もあるわけでございますが、この点につきまして、その活動を封じ込めるために関係国への協力要請等行っておりまして、オリンピック関連安全対策日韓連絡協議会、こういう協議会設置をいたしまして、開催国であるところの韓国政府と緊密な連絡をとっておるところでございます。  また、政府としては、この対策に遺漏なきを期するために、ソウルオリンピック対策関係省庁連絡会議、こういうものを設置いたしまして、数度にわたって綿密な検討を今行っておるわけでございます。  いずれにいたしましても、日本経由オリンピックに参加される選手、役員その他多々あることも承知をいたしておりますので、我が国としても果たすべき責任役割を十分考慮しながら万全を期していきたい、こう思っておる次第でございます。
  11. 角屋堅次郎

    角屋委員 警察庁の方からおいでになりましたでしょうか。――先ほども触れましたように、ソウルオリンピック成功のためには、国際テロ等動きについても懸念があるわけでありまして、そういう問題も含めて、外国選手あるいは日本選手、そして日本からソウルオリンピックに行く方々、他の選手でない方々日本を経由して行かれる方々に、過剰な姿というのは慎重にしなければなりませんけれども、事故が絶対起こらないというための万全な対策というのは当然とらなければならぬと思いますが、そういう点については鋭意今日やっておられると思いますけれども、その点について御答弁を願いたいと思います。
  12. 城内康光

    城内政府委員 お答えいたします。  ソウルオリンピック安全対策は、本年における日本警察の最重要課題一つでございます。ただいま御質問にありましたように、参加する選手団あるいは観光客の八割が日本からあるいは日本を経由して行くということでございますので、この安全の問題は日本国内治安の問題でもあるわけでございます。  そういう基本認識に立ちまして、私どもはテロ未然防止ということに最大の努力をしておるわけでございます。とりわけ的確な情報収集をすること、それからそういう選手村などの施設を十分警戒する、海空港地域警戒をする、あるいは沿岸地域警戒をする、そういった警戒警備をやっております。  それからさらに、潜入工作員などの、あるいはテロリスト検挙、過般五月に「よど号」の犯人グループ日本へ潜入していた柴田を逮捕したわけでございますが、そのような検挙活動にも力を入れて万全を期しておるところでございます。
  13. 角屋堅次郎

    角屋委員 ぜひソウルオリンピック成功のために日本側としてなし得る手だてについては全力を挙げてやっていただいて、アジアにおける東京オリンピックに続くソウルオリンピックが大成功のうちに平和の祭典として終わるようにお願いを申し上げたいと思います。  そこで、第三点の問題として小渕官房長官にお伺いをいたします。  これは国際情勢の問題、その中で中国問題やソ連問題や朝鮮半島情勢やあるいはまた東南アジアを含む全体的な情勢、そういうものについて伺う中で竹下訪中の問題をお伺いするのが本来でありますけれども、これは各論。全体的な問題は、小渕官房長官のお体の都合で、竹下訪中の問題を引き出してお聞きしたいと思います。  私は、今日の国際情勢基本認識としては、大臣も御認識のように、いわゆる数年来の国際情勢の中ではデタントへの方向というものがやはり第一歩を踏み出しつつある、その拡大を我々としては願わなければならぬということであろうと思います。言うまでもなく、米ソ首脳会談を通じて、戦略核の中でとにかくINF全廃がわずか四%程度ということは別にしても、核戦力米ソ中心拡大の傾向の中で、これにストップをかけて、中距離核戦力についてはこれを全廃する。この間新聞でもテレビでも出ておりましたけれども、ソ連のSS20の廃棄というのがオープンな姿の中で行われるということで、核の廃棄がやはり現実スタートした。これは米ソともに検証を伴うことでありますから、相互の信頼関係がなければこういうことは生まれない。さらに、レーガン大統領の退陣の時期が迫っておりますけれども、戦略核の半減という問題に対する我々の期待は大きいわけでありまして、それらを契機にしながらヨーロッパにおけるNATO、ワルシャワの通常兵力等を含めた削減の問題あるいは全体的な軍縮の問題等々も含めて、さらに核兵器の廃絶に向けてあるいは軍縮方向に向けてやはり努力してまいらなければならぬ、日本もその中で大きな役割を果たしていかなければならぬということであろうかと思います。  また同時に、中ソの関係についても、後ほど各論の中で外務省政府委員からお伺いしますけれども、とにかく過般社会党の招待で来た宋平団長等記者会見等でも言っておりますように、着実に後退ではなしに前進の方向で進みつつあるということも、やはりこれは趨勢として事実だと思います。朝鮮半島におきましても、盧泰愚大統領のいわゆる大統領就任以来の新しい政策というのは、ソ連にも目を向け、中国にも目を向けてやっていこうという姿勢であるということも厳然たる事実でありまして、現実にそういう動きが具体化してきておる。さらに、アフガンからのソ連の撤退の実行が始まっております。イラン・イラク戦争についても、国連の仲立ちによって停戦ができるようになった。ジグザグコースはありましても、国際情勢の中で地域紛争というものにも手がけられる。カンボジア問題に対する、とにかく中国が問題にしておりますところのベトナムの撤兵問題等についても、これが始まっていこうという動きにある。国際情勢全体からすれば、かつての厳しい状態の中から明るい日差しが見えてきたというのが、やはり私の国際情勢に対する基本的認識であります。  そういう中で、日本は西側の一員ということをよく言われますけれども、同時に忘れてならぬことは、アジア一員である。アジア一員であるということを考える場合には、まず大切な相手としては日中の関係がある。これは子々孫々に至るまで日中友好が生々発展していくことを国民も望んでおりましょうし、我々もそれを推進しなければならぬ。そういう中で竹下総理訪中された。鄧小平さん初め中国首脳と会われた。友好裏話し合いがされた。単に八千百億円に上る借款を供与するという問題も、もちろん相手側の感謝の意向を示されたということはありましょうけれども、しかし竹下総理の、日中の関係子々孫々に至るまで友好関係の中で、軍縮問題等も含めてお互いに協力しながらやろうじゃないかという姿勢に対して、中国首脳がこたえてくれたということであろうというふうに私は認識します。  そういった中で、竹下訪中問題、これは中国からも、大平内閣当時に次ぐ第二番目の新しいスタートが始まるということで高い評価を受けておるわけでありまして、我々もその評価を否定する気持ちはございません。そういう点で、竹下訪中の問題について小渕官房長官としてどう受けとめておられるか、また日中友好の問題について内閣としてどういう姿勢でこれからやられるのかという点について、お答え願いたいと思います。
  14. 小渕恵三

    小渕国務大臣 ただいま竹下総理訪中成果と今後の中国政策につきましてお尋ねがありました。  申すまでもありませんが、ことしは日中平和友好条約締結十周年に当たるということでありまして、この間日中関係は順調に発展して、このような記念すべき年に当たりまして今般行われました竹下総理訪中は、日中関係の一層の発展契機とするにふさわしい実りあるものとなったと確信をいたしております。特に李鵬総理との首脳会談 は、日中両国の新政権発足後初めての首脳間の対話となり、双方が恒久的平和友好関係の実現に向けとも協力していくことを確認できたことは、大変意義深いことだと思っております。鄧小平軍事委員会主席からは、新しい日中関係をつくり上げていこうという積極的な発言を受けられまして、総理も同意したところでございます。このようなことから、総理の今次訪中は、十年間のこの間の日中関係の来し方を振り返り、原点を確認し、両国指導者間の信頼関係を深めるとともに、日中関係強化拡大の礎を強固にするという所期の目的が十分達成されたものと考えております。  今後とも、今次総理訪中成果を十分に踏まえ、揺るぎなき日中関係の構築のため、引き続き日中共同声明日中平和友好条約日中関係四原則に基づき、各分野にわたる友好協力関係発展を図ってまいる所存でございます。
  15. 角屋堅次郎

    角屋委員 小渕官房長官のお帰りになる時間になりましたので、潜水艦なだしお」と第一富士丸衝突に対する遺族補償の問題は、新長官田澤防衛庁長官竹下総理の御指示を受けておると思いますが、積極的にやろうとしておることで、これは田澤長官の方にお伺いすることにいたします。  もう一点だけお伺いいたしたいと思うのは、きのう我が党の山口書記長竹下総理に会われた。それで、朝鮮民主主義人民共和国建国四十周年で山口書記長団長北朝鮮を訪問する。かねて社会党としては、大韓航空機事故のことで北朝鮮に対するいわゆる制裁措置というものをやっておりますけれども、それを早期に解除せよということで、これは我々のメンバー広瀬さんが、朝特委関係は重要な責任で、この問題は委員会でも何回か取り上げていただいた問題であります。竹下総理は非常に慎重なことでこの解除問題を言われましたけれども、第十八富士山丸のお二人の方の早期帰国の問題も人道上の問題でございまして、それに限りませんけれども、なるべく早い機会にこれを解除するというふうにぜひお願いしたいと思うのですが、いかがですか。
  16. 小渕恵三

    小渕国務大臣 かねて御党からも、いわゆる大韓航空機事故に関する日本政府の措置の解除、緩和につきまして御要請のあったところでございます。政府といたしましては、この措置を発表いたしましたゆえんの問題は、あの事件に関しましていわゆる事件関係者が日本政府発行のパスポートを所持していた、いわば日本人であるがごときを称しながら行動に及んだということについて、我が国の立場として甚だ遺憾の意を表したことと、もう一点は、ソウルオリンピックが平和裏に開催されることを目的として発表いたしておることでございます。  その後、朝鮮半島をめぐる情勢の中で南北の対話が極めて進展をいたしておる今日の状況でございますし、あわせて七月七日には韓国新大統領、盧泰愚大統領がいわゆる七・七宣言を発表されまして、中国ソ連との関係改善に努めるということでありますと同時に、日本、アメリカその他の国におきましても、いわゆる北朝鮮とのクロスの関係改善についてこれを期待する旨の発表がなされておるわけでありまして、こうした情勢の変化を十分踏まえながら、政府としてもこの措置の解除あるいは緩和という問題について対処いたしていきたいと考えておりますが、現在諸般の情勢を考慮しながら真剣に検討をいたしておる段階でございます。  なお、御指摘のありました第十八富士山丸問題につきましては、私どもはこの措置とかかわり合いが直接あることでなく、これはあくまでも同胞二名が北朝鮮に拘禁された状況に相なっていることに対して、人道的立場から一日も早い帰国のできる状況を期待をいたしておることでございまして、この点につきましては、あらゆるチャネルを通じて現在最善の努力を傾注いたしておるところでございます。
  17. 角屋堅次郎

    角屋委員 官房長官、時間が既に参っておりますので結構でございます。ありがとうございました。  それでは外交関係防衛庁関係、それぞれアレンジをしながら逐次お伺いをいたしたいと思います。  そこで、冒頭潜水艦なだしお」と第一富士丸衝突問題で若干お伺いをいたしたいと思います。  この問題は、既に御案内のとおり、本院においては七月二十八日に、衆議院の運輸がメーンになりまして内閣、交通安全特、安全保障特、こういった委員会の連合審査が行われまして、真剣な論議が行われ、その後も、内閣としては対策本部を持っていろいろな総合的な対策を推進される、また海上保安庁は海上保安庁として、運輸省は運輸省として、あるいは防衛庁は防衛庁としてということで、いろいろ対応してきた時間的経過がございます。  そこで、その間この衝突事故についての防衛庁の、長官あるいは一般のシビリアンと制服組の重要な責任者責任問題、こういうものをどうするかということも国民が注目しておる一つの問題だというふうに思うのであります。瓦前防衛庁長官は初めての大臣御就任でありましたけれども、体のボリュームもありましたが、非常に重厚な性格で、基本的な問題については我々と見解を異にするところがございますけれども、久方ぶりに防衛庁長官らしい防衛庁長官として御活動されたという評価を持っておる一人であります。そして出処進退についても、最終的には合同慰霊祭等が行われた後に潔くその責任をとられたわけでありますけれども、やはり政治責任を立派にとるということは節目節目においては必要なことでありまして、その出処進退は立派なものであるというふうに思います。  そういった後を継がれて新長官が御就任になって、きのうは潜水艦なだしお」と第一富士丸衝突事故の海の現場にまで行かれて花をささげられ、哀悼の意を表されたという報道承知をいたしております。我々もまた、この事故が起こった数日後、七月二十六日になりますけれども、我が党の土井委員長ともに私自身も現地に参りまして、関係方面を訪ねて状況を、さらに事故現場の海上についてはいろいろ手配を煩わしてはいかぬということで、丘の上から哀悼の意を表する、また病院におられます患者についてもお見舞いを申し上げるということで、衝突事故の現場に直接駆けつけた一人であります。  そういう中で新しい田澤防衛庁長官が誕生したわけでありますけれども、後ほど各論については必要に応じてお答え願いますけれども、今言った情勢の中で新長官に御就任になる、閣僚としては二回の経験をされて押しも押されもせぬベテランでありますけれども、防衛問題というのはなかなか手厳しいところが当然出てまいるわけでありまして、そういう中でどういう決意で任務遂行に当たられようとするのか、それをまずお聞きしたいと思います。
  18. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 先般の潜水艦と一般船舶との衝突事故、多くの人命を失った痛ましい事故でございますので、したがいまして、こういう事故が二度とあってはいけないということで、防衛庁としましても再発防止策を講じまして、対策を立てまして、今後それが具体化のために積極的に努力をいたしたい、かように考えております。  その具体化のために、私も実はきのう現地へお伺いしまして、亡くなられた方々への心からの御冥福、また御遺族に対する心からなる弔意を表してまいったわけでございますが、今後再びこのような事故の起こらぬように、また御遺族に対してましては、心からなる弔意を表すると同時に、賠償問題についてはできるだけ早い機会に処理をしてまいりたい、かように考えております。
  19. 角屋堅次郎

    角屋委員 そこで、潜水艦なだしお」と第一富士丸衝突事故の問題は連合審査でもいろいろな角度から取り上げられたのでありまして、私も改めて細かい点まで触れてお聞きしようというふうには思っておりません。ただ、この問題を契機に、国民の自衛隊に対する厳しい意見というのがやはり広く起こったというふうに私は思っており ます。  潜水艦なだしお」が衝突するまでに、本来海上衝突予防法等で責任を持っておる行動をとらなければならぬ、その行動をきちっととっていないという点ももちろん重要な真相究明のポイントでありましょうが、不幸にして衝突の起こった後のいわゆる緊急的な通報措置というものが二十一分かかってから現地の海上保安部の方に届くというふうなことは、戦いに備える海上自衛隊の幹部の措置としては、いざというときにはとても間に合わぬのじゃないかという感じを率直に受けたわけであります。また、東山海幕長が記者会見をやっておるのを見ますと、潜水艦なだしお」の艦長以下それぞれ法規に基づいて万全を尽くして、第一富士丸が左に来なければ衝突は起こらないんだ、何か責任は第一富士丸の船長側にあるかのごとき態度を冒頭において示した。この海上自衛隊のトップの責任者というべき者の基本姿勢というのは国民からいって全くなっていないという厳しい意見のスタートは、その辺から始まっておる点もあると思います。また、潜水艦というのはなかなか小回りがきかぬわけでありますけれども、防衛大学の元校長が週刊誌等で言っておりますが、とにかく通報のおくれというのは最大の欠陥だ、同時に、艦長自身がそういう溺者が海上にずっとおるという中では鑑員に対して飛び込めという命令を即座にやって、人命救助第一でやるべきだったのにそれがなされていないというふうなことを厳しく言ったりしておるわけでありまして、そういった問題等も含めて、今回の事故における艦長並びに上級系統の幹部の対応あるいは考え方というものは厳しく批判されなければならぬ問題を内在しておるというふうに私は思うのであります。  そこで、海上保安庁の長官の方にお伺いしたいと思うのですけれども、連合審査以降、第一富士丸の船体も検証する、あるいは潜水艦なだしお」の船体も検証する、さらに関係者の意見を聴取するという中で、海上保安庁の方は海難審判庁と違って捜査でありまして、そういう中で捜査の具体的な内容に深く触れるということは重要な段階の中でお答えしにくい面もありましょうけれども、問題ははっきりしておると私は思うのであります。そういうはっきりしておる部面について、この衝突の原因、あるいは潜水艦なだしお」の救難、通報等々の問題について簡潔にお答え願いたいと思います。
  20. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 海上保安庁としては、事故発生以来本件衝突事故の捜査につきまして横須賀海上保安部を中心といたしまして捜査を進めておるところでございます。横須賀海上保安部におきましては、捜査員百名以上を動員いたしまして、これまでに潜水艦なだしお」の艦長、遊漁船第一富士丸の船長を初め両艦船の乗組員、また第一富士丸の乗客等関係者から事情聴取を行いますとともに、両艦船の損傷状況等に関する検証あるいは「なだしお」の運動性能等に関する洋上の実況見分等を実施しているところであります。  現在までどのような責任関係にあるかというようなことにつきましては、まだ結論を得るに至っておらないところでありまして、今後引き続き関係者の事情聴取であるとか検証結果の分析を行いまして、両艦船の衝突に至る航跡の解明あるいは過失の認定等を行っていきたい、できるだけ早急にそれを詰めていきたいということでございまして、この席において、ただいま先生お話がございましたような関係者の責任関係等についてまだつまびらかにする段階にないということを御理解願いたいと存じます。
  21. 角屋堅次郎

    角屋委員 今まで御調査をされてこられて、調査の大勢的な考え方として、この衝突の主たる原因は潜水艦なだしお」にあるということははっきり言えるのじゃないかと私は思うのですが、いかがですか。
  22. 山田隆英

    ○山田(隆)政府委員 主たる原因がどちらにあるかということにつきまして、現在いろいろな関係者からの事情聴取等を含めて捜査を行っておるところでございまして、まだどちらに主たる原因があるかということは申し上げられない段階にあるということでございます。
  23. 角屋堅次郎

    角屋委員 九月二日に横浜地方海難審判理事所の方から横浜海難審判庁に審判開始の申し立てが行われたことは既に報道で御承知のところでありますが、きょうは海難審判庁長官に御出席願うようにしましたが、この審判開始はマスコミの報道では十月早々から始まるだろう。これは横浜海難審判庁のところで審判をやられて裁定が出る。それに問題があれば高等海難審判庁に上がっていく。場合によれば最高裁へのルートというのも考えられるわけでありますけれども、審判の開始をしてからどれくらいで横浜海難審判庁の裁定が出るかということはにわかに決めがたいところでありますが、こういう事件の痛ましい実態から見て、真相究明についてはできるだけ早い時期になるべく裁定が出されて、これは行政ベースの問題でありまして、そういう点について半年ぐらいかかるだろうという観測もあれば、あるいはもう少し早いかもしれないけれども、場合によってはもう少し延びるかもしらぬ、いろいろ言われておるわけであります。その辺のところについて海難審判の申し出がなされた機会でありますので、御答弁を願いたいと思います。
  24. 小林芳正

    ○小林(芳)政府委員 今、裁決がいつごろに出るだろうかということでございますが、これは横浜地方海難審判庁の合議体で審判をするわけでございます。ただいま申し立てがありまして準備中でございまして、先ほど十月三日開廷というふうに申されたと私聞いたのですが……(角屋委員「申し立てが九月二日です」と呼ぶ)申し立てが九月二日ですか、まだ関係人その他の打ち合わせの準備がありますので、第一回の開廷がいつになるかということにつきましては、まだどういうふうに変わるかちょっとわかりませんが、やはり十月の早い機会のうちに第一回の開廷ができるのじゃないか、そういうふうに推定しております。  なお、できるだけ審理を早くということでございますが、今までの事例その他ございまして、一生懸命やってもどのくらいできるかというのは一件一件でやはり違うわけでございます。それで見当といたしましても、少なくとも半年ぐらいは普通このような事件ではかかっておる、急いでもそのぐらいの程度はかかっておるというのが相当ではなかろうか、そのように推定しております。
  25. 角屋堅次郎

    角屋委員 海難審判庁における審判の案件というのは、お聞きしておるところでは年間八百件ぐらいあるというふうに言われておりますが、海上自衛隊等が関連します案件というのは十数件ぐらいだと言われております。その辺のところはどうでございますか。
  26. 小林芳正

    ○小林(芳)政府委員 ほぼおっしゃるとおりだと思います。  長い年月でいいますと八百件を少し超しております。八百五十に近いかと思います。ですが、ごく最近にとれば年間に一応八百件ぐらい海難審判をやっておるということでございます。  なお、防衛庁に関連した事件、これはやはり十数件でないか、そのように記憶しております。
  27. 角屋堅次郎

    角屋委員 海上保安庁長官あるいは海難審判庁長官に御出席を願いましたが、捜査の大詰めの段階、あるいはこれから横浜で海難審判が始まっていくということで、私が的確にお答えを願おうという趣旨には必ずしも沿うておりませんけれども、役目柄、非常に重要な大詰めあるいはこれから審判開始ということでありますので、今の答弁はやむを得ないものとして受けとめておきます。  そこで、防衛庁関係にお伺いをしたいのでありますが、長官、瓦防衛庁長官辞任されて、新しい長官になったわけです。西廣防衛事務次官あるいは東山海幕長は当時の瓦長官に辞表を提出しておった。これは預かりのままなのかどうかわかりませんが、単に責任はそれにとどまらず、直接衝突の原因になった山下艦長もそうでありますし、その上のところも含めたいわゆる制服組の責任という問題は、先送りの姿勢がマスコミの会談等で新長官のニュアンスからうかがえるのです。これは、今の海上保安庁のこれからの進みぐあいあるいは海難審判のこれからのテンポ等を考えます と、なかなか時間が相当かかる問題でありまして、そういうものがもう少しはっきりしてきてから、海難審判の問題はあるいは別の問題でありましょうけれども、はっきりしてきてからというのでは少し機を失するのではないか、むしろ新長官就任の機会に、適当な時期にこういう問題についての措置をする必要がある。ただ制服組の中にというかあるいは防衛庁の中に、雫石の事故の発生当時、当時の増原防衛庁長官あるいはまた制服組の方も含めて、この事故は我々の側に衝突責任があるということを言って、増原防衛庁長官もやめる、空幕長も責任をとる、あれは早く責任をとり過ぎた、雫石の事故の教訓というのを逆に見まして、やはりもっとその辺のところは慎重にする必要があるというふうなことが言われておるとも言われるわけであります。そういうことが潜在的にあって、瓦防衛庁長官以外のところの措置がおくれておるのか、あるいは明確な一定のかくかくの時期にはやらなければならぬという基本認識に立っておるのか。  竹下総理大臣も、委員会における質問の中では、しかるべきときにつかさつかさの責任というものは明確にしていかなければならぬ、一般論としてそう答えておられるわけでありますが、やはり一般の場合ももちろん、あるいは公務員の場合も、何か事が起これば処断がその問題に即応して行われていくわけでありまして、特に防衛庁あるいは自衛隊という問題については、士気の問題として別の意味から何か寛大にやらなければならぬという意見もあるようでありますけれども、やはり責任をとるべきものについてはきちっととっていくということが自衛隊に対する国民信頼というものと重大にかかわっておると思うのでありまして、その辺のところは新長官としてはこれからどうやっていかれるのか、明確にお答え願いたい。
  28. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 平和憲法のもとで文民統制が確立されている段階で、三十万隊員の最高の責任者である瓦防衛庁長官政治的な責任をとられたのでございまして、これは非常に大きい責任だと思うのでございます。したがいまして、私たちはこの責任を深く肝に銘じて、再びこのような事故の起こらないように再発防止対策に積極的に取り組み、また事故原因の究明を徹底して進める、あるいはまた御遺族に対する温かい手を差し伸べるという対策を今後進めていくことが大きな責任であろうと考えております。したがいまして、瓦長官辞任の意思を尊重しながら、私たちは、制服組もあるいはまた一般の事務を担当している者も、誠心誠意これからこれら事故の防止のために努力をしたい、かような考えでおるわけでございます。
  29. 角屋堅次郎

    角屋委員 今のお答えを聞いておりますと、責任問題としての処置は今後全然やらないということですか。
  30. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 今後海上保安庁の結果あるいはまた海難審判その他の結論を得て、その折にはまた考えるべきときには考えてまいらなければならないと思いますが、現段階においてはただいま申し上げたような方向で進めていきたい、かように考えております。
  31. 角屋堅次郎

    角屋委員 先ほど新長官就任の決意をお聞きしましたときに、御遺族に対する補償問題について触れられました。その問題で重ねてお伺いいたしたいと思います。  竹下総理自身もこれを早くやらなきゃならぬということで御指示をいただいておることだと思います。同時に新長官自身も、この問題は早急に進めようということで御指示をされておるものと承知をいたしております。報道によりますれば、西廣防衛事務次官が記者会見なんかで、第一富士丸の方に窓口は我々の方で引き受けるから遺族に対する補償問題を進めようじゃないか、ところが第一富士丸の弁護士なんかの意見も含めて、そうはなかなかまいりません、防衛庁がやると言うなら防衛庁自身やってくださいというふうな状況にあるように聞いております。が、いずれにしても、事態責任が雫石のときは航空自衛隊の関係が六、それから全日空関係が四というふうなことが言われて、あれは最初はもろに我々の責任と言っておったのは早まったというふうな意見が潜在的にあるやに聞いておりますけれども、その責任の分野がどれぐらいになるかということは別にして、御遺族に対していつまでもこの問題を放置することはできない。第一富士丸の方は、もう船長以下雇われておったのがやめてしまうというようなことで、支払い能力もどうかというようなことが言われておる。これは保険の関係で一人四千万は出るということも言われておったりするのだけれども、向こうは全体として三十億ぐらいの補償金額になるだろうというふうにも言われております。  そういう問題は別にして、第一富士丸がそういう状況であるならば、防衛庁が主たる責任を持って遺族との関係で、世帯を持っておる責任者、あるいはお子さんに至るまでいろいろあるわけですけれども、誠意を持って遺族との交渉を始めていくという姿勢であろうかと思うのでありますが、第一富士丸のことにかかわらず、主体的に、また主たる立場でこれからそういうことで取り組んでいかれる、もちろん各省庁との協議すべきこともあろうかと思いますけれども、その点はもうスタートをしておる、精力的に進めていくということに承ってよろしいでしょうか。
  32. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 賠償の問題につきましては、御承知のように事故原因究明と関連が深いわけでございますけれども、ただいま御指摘のように、御遺族のためにもこれはできるだけ速やかに結論を出して差し上げなければならない、こう思います。就任早々、竹下総理からも賠償問題はできるだけ早い時期に結論を出すようにという御指示もございましたので、私も就任早々次官に対して、これが作業を速やかにするようにしてはいかがだろうかということを申し上げておったのでございます。したがいまして、負担割合については別としましても、やはり賠償金額の積算作業を進めることが第一だろうと思いますので、それを進めるためには富士商事の了解を得なければならないものですから、今富士商事との間で、ぜひこれは積算作業を進めたい、できたら御遺族との交渉にも入りたいということで交渉を進めている段階であるということでございます。
  33. 角屋堅次郎

    角屋委員 先ほど質問の中で元防大校長と言っていたのは、私の三重県の関係の上野出身の猪木さんであります。これはちょっと名前に触れませんでしたので、触れておきたいと思います。  そこで、各方面の問題がありますから、「なだしお」問題については、特に御遺族に対します補償問題も含めて、あるいは今回の事故を教訓として再びこういうことを起こさないための防衛庁自身としての御努力を強く要求しておきたいと思います。  今度の問題が起こつた後、先月の八月二十六日に今度はペルーで、ペルーの潜水艦と、私の地元になりますけれども第八共和丸というカツオ・マグロの漁船との衝突事件が残念ながら起こったわけであります。このときは、第八共和丸の方は大門司君が船長でありますが、二十一名の乗組員には事故がなくて、今度は逆にパコーチャというペルーの海軍潜水艦の方、これは戦争が終わる直前にスタートしたアメリカの潜水艦でありますけれども、それをペルー海軍が受け入れて四十数年潜水艦として使われておるということで、乗組員五十二名の中で四十五名救助され、そのうちの一名が亡くなりましたけれども、事故のときに死亡四名、行方不明三名を含めて亡くなられた人八名の痛ましい犠牲者が出ておるわけであります。これは船尾の方で当たりどころが悪かったということがあるのかもしれませんが、ただ報道承知しているところでは、この潜水艦の艦長というのは身を挺してハッチを閉めたり何かして、そしてみずからは亡くなられた。そしてそういうことによって海底に沈んでいった潜水艦を救助してみると、二十三名の方がこの潜水艦の中から救助された。だから私は、直接地元の漁船の関係もありまして、これは非常な救いの気持ちでありました。  この問題については、事故当時ペルーのアラン・ガルシア大統領自身が、日本の漁船が潜水艦を小さな船と見誤って事故を起こしたのじゃないか、事故責任日本の漁船の方にあるような印象の発言を当初されました。しかし、この点については九月二日の夜、日本時間では三日の午後になりますけれども、改めてアラン・ガルシア大統領が日本人記者団と会見をいたしまして、事故は残念で痛ましいことであった、しかし、あくまでもこれは災難であるというように理解しておる、そのことによってペルー国民日本国民との友好関係については揺らぐことがあってはいけない、こう認識しておるという改めての記者会見での発表がございました。調査の結果については調査責任者の方に任せる、我々はその結果を尊重する、こういうふうに言っておるわけでありますけれども、外務省の方、中南米局あるいは出先の大使館を通じて大変お世話になっておるわけでありますが、このペルー潜水艦我が国漁船第八共和丸との衝突問題について、外務省チャンネルで掌握しておるところ、あるいはこれからどう推移をするかにわかに判断しがたいわけでありますけれども、それらの問題についても可能な範囲で触れて御答弁を願いたいと思います。
  34. 坂本重太郎

    ○坂本(重)政府委員 お答えいたします。  ただいま先生から御指摘がありましたとおりでございまして、残念ながら八月二十六日、現地時間で午後六時二十分ごろ出港いたしました第八共和丸は、出港後十分後にカリャオ港の沖約八キロの地点でペルー海軍潜水艦パコーチャの左舷に衝突いたしまして、パコーチャは、ペルー海軍によりますと間もなく沈没いたしました。ペルー海軍の発表でございますが、それによりますと、潜水艦は第八共和丸の右前方四十五度の方向で浮上航行にて接近してきた、衝突後約一分後に四十メートル先の水深約三十三メートルの地点で沈没した由ということになっております。あと死亡者、損害等につきましては、先ほど先生が申された数字そのとおりでございます。なお、生存者四十四名のうち一名が依然として重体であるという情報も入ってきております。  そこで、第八共和丸の現状でございますけれども、現在、第八共和丸はカリャオ港に停泊しておりまして、そして船及び乗員の港外への退出は禁止されております。ただし、乗組員に関しては身柄の拘束は受けておりません。  現地の日本大使館も先方政府と鋭意折衝しておりまして、その結果、九月一日でございますけれども、日本側からの照会に対しまして、先方の海上保安当局より、船長、一等航海士、冷凍長及び一等機関士の四名を除く船員については帰国申請があれば帰国を認めますということを言ってまいりました。そこで、現在、船主の三鬼さん等が大使館と一緒になって先方に帰国の要請を出しておりますので、先ほど申しました船長以下四名を除く船員に関しましては間もなく帰国が実現するのではなかろうかと考えております。なお、現在、船主の三鬼さんほかいろいろな方が現地に到着しておりまして、大使館と現地の弁護士と一緒になりまして先方政府とも連絡をとっております。  他方、先ほど先生が触れられました原因等についてでございますが、現在、ペルー側は事故原因の究明についてカリャオ港の海上保安当局が調査中でございます。そして、船長ほか関係者の事情聴取を三回にわたって行っておりまして、第一段階の調査は終了したと言っております。他方、九月一日からカリャオ検察当局が独自に事前の調査を開始いたしまして、これに関しましては恐らく一月ないし二月の期間、調査に要するのではなかろうかと言われております。  我が方といたしましても、この事件は非常に痛ましい事件であるという認識のもとに、早速課員を現地にも派遣いたしましたし、二十七日には宇野外務大臣から先方の外務大臣あてに見舞い電を出していただきました。それからまた、現地の妹尾大使も潜水艦長等の葬儀にも出席いたしましたし、私自身三十一日、在京マキャベロ大使を訪問いたしまして哀悼の意を表するとともに、この事件が二国間の伝統的な友好関係に悪影響を与えないよう要望するとともに、調査と司法関係においては公正な取り扱いを期待する旨表明いたしました。  一応こういうところが推移でございますが、問題は原因でございます。先ほど先生がおっしゃったように、ガルシア大統領は八月二十七日の記者団との応答におきまして、恐らく漁船が潜水艦の長さを誤認したのではなかろうか、こういう発言がございました。それからまた、八月二十八日には国防大臣がやはり記者団との応答におきまして、潜水艦の乗組員の見方によれば、日本漁船の接近に誤りがあり、避けようとしたが潜水艦後尾に衝突、多分日本漁船に責任があるだろう、こう述べております。それから、もっと私どもが重視しておりますのは、実は八月三十一日に至りまして、オソリオというカリャオ港の海上保安本部長、この方は調査の最高責任者でございますが、この方が記者団との応答で、潜水艦は汽笛を通じて同艦が優先権を有することを日本漁船に警告したが、日本漁船の船長が認めているように、それを認めるのが余りにもおくれたため今回の衝突となった旨発言をしております。なお、八月二十九日に至りまして、第八共和丸の大門船長は邦人記者団に対しまして、潜水艦の左舷側の赤ランプを見たという点からは本船に回避義務があったであろうという旨述べております。  しかしながら先方政府は、先ほど先生がおっしゃったように、この問題を非常に冷静にかつ慎重に扱おうとしておる節が見られまして、二十七日には外務大臣がこの問題に関して、決して両国間に悪影響があってはならないということを我が方の大使に述べておりますし、それからまた、二日に至りましてガルシア大統領が日本人記者団との会見におきまして、先ほど先生が申されたとおりのことを言っておられます。  そこで、今後の見通しでございますけれども、この問題はあくまでもペルー領海内で発生した事件でございますので、裁判管轄権は第一義的にはペルー側にあって、ペルー側は海上衝突予防条約の当事国でもありますので、それに基づきましてペルーの国内法が適用されるのであろうと私ども判断しております。したがって、我が国政府といたしましては、原則としてペルー司法当局の判断を尊重するという立場を維持したいと思っております。  ただ、残念ながら過失によるものとはいっても死者が出ておりますので、先方弁護士によりますと、刑事責任が問われるものと当然思われます。ペルーの刑法によりますと、業務上過失致死の場合には一カ月以上五年以内の禁錮刑ということになっております。それから民事責任、補償などについても当然これは要求されるのではなかろうかと思っております。もちろんこれは日本側に過失があった場合のことでございます。もしそうだとすれば、この点に関しましてはペルー政府と第八共和丸関係者の間で話し合われることになるのではなかろうかと思っております。  先ほど申しましたように、現在、事故原因、責任の所在につきましてはペルーの海上保安当局が調査を行っておりますけれども、私どもとしましてはその調査結果を待っておる段階でございまして、今後その調査結果を踏まえまして、その対処ぶりにつきましては慎重に対処してまいりたい、検討してまいりたいと思っております。ただ、本件事故につきましては、先ほど申しましたとおり、日本側漁船の過失を示唆するペルー側の発言が多々ございます上に、大門船長自身の過失を認める趣旨の発言もございますので、私どもといたしましては、決して楽観は許されないという状況にあろうかと判断しております。いずれにしましても、日本政府としましては、ペルーの司法権に干渉しない範囲内で、邦人保護の見地から、必要に応じて側面的に積極的に協力してまいりたい、こう考えております。
  35. 角屋堅次郎

    角屋委員 次に入る問題の関係もあって、この問題については、あのペルー沖というのは非常に優良な漁場で、日本の遠洋漁船が百数十隻行って おるというところでありまして、今回の事故によってそれに対するセーブ条件が出ないかというふうな点についても、報道等もあったりして、我々もそういうことにならぬようにということを基本的に考えておるわけであります。同時に、今も御答弁がありましたように、この問題の調査、それから責任、どう措置するかということは第一義的にペルーの側にとり得る責任があるわけであります。そういった中で、外交チャンネルを通じ、あるいは農林水産省でいえば水産庁が中心になって、これは漁船の問題でありますから、これらの問題が公正な立場で、しかも我々が予想したような形で早期に解決するように、それぞれのつかさつかさで御協力を願いたい、こういうふうに思っております。  漁船問題に触れた機会に、農林水産省から官房長おいでを願っておりますので、官房長の方は、決算委員会に呼ばれたりいろいろな関係がありまして、古巣の私がなかなか質問を当ててくれないといってやきもきしておるのじゃないかと思いますので、順番は別として、ここでひとつ官房長の方にお伺いしたいと思います。  私冒頭にも申し上げましたけれども、一国の安全保障というものを考える場合は、いずれの国の立場であれ、まず外交努力というものが基本にならなければならぬことは当然であります。それらの問題についても後ほど個別の問題の中で若干触れますけれども、同時に、あってはならぬことでありますけれども、やはり一朝事があるという場合には食糧の安全性というものが基本的に重要な問題であります。  我々は古い年代でありますから、戦中あるいは戦争が終わった直後の非常に食糧の窮屈な時代というものを体験しておるわけでありますし、同時に、それは戦後においてもオイルショックの問題が出たときのわずかな間、アメリカとの関係が大きなパニック状態を招いたということもあります。また、ことしの場合は世界的に異常気象でありまして、アメリカは干ばつである。農産物の関係は三割近く減収になるだろう。かと思えば、中国関係は熱波である。過般私はモスクワに参りましたけれども、モスクワの方は数十年来の暑さである。ホテルの中も、冷房がないと言ってはあちらにいけませんので、冷房がなかなかきかないというふうに申し上げますけれども、チョコレートを数個買いましたら、平板のチョコレートは帰ってきてみたらとろとろになっておる。セパレートしたものは、やわらかくなっておりましたが、これは土産で持って帰りまして、かぎを預かっておるおばさんの方に差し上げたのでありますが、ソ連も数十年来の暑さである。国際的な異常気象ということをことしの場合には経験したところで、日本の場合も梅雨がなかなか明けないといったような問題がございました。そういう平時の状態も含め、あるいはあってはなりませんけれども事が起こるという場合を考えました場合に、命の糧である食糧を安定的に確保するということはやはり基本的な重要命題でありまして、その点の主たる責任は農林水産省が負っておるわけであります。  最近は、農産物十二品目の問題がガットの俎上に上ったり、あるいは牛肉・オレンジの問題でアメリカから手痛くいじめられてようやく話し合いをまとめたり、豪州にもそれを適用したり、やはり新たな苦難の時代に入っておるわけであります。同時に、アメリカ自身は、ヤイター通商代表部代表などは、またヤイターに限りませんけれども、かねて日本の生命線である米にまで自由化を迫る、そういう動きがあるわけでありまして、そういう点等も考えますと、ただでさえ自給率が低下しておる中で、我が国食糧安全保障の問題を一体どうするかというのは政治的に重大な問題だと思います。そういう点について官房長から、農林水産省としてどういう形でこの命題に答えていくのか、お答えを願いたいと思います。
  36. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生お尋ね食糧安保の問題でございます。  最初に、先般輸入の自由化が決定されました牛肉・かんきつ等の問題に関連してでございますが、これに関連する農業、我が国におきます地域的あるいは全国的な意味におきましても大きな意味を持っております農業でございます。その存立を守り体質の強化を図るという観点から、農業生産性の向上あるいは農産物の品質の向上並びに農産加工の合理化等を図るということを第一にいたしまして、さらに自由化後の農業経営に及ぼす影響の緩和等、農業の経営の安定を図るという視点を加えまして、各種の措置を緊急に講じることとしておるところでございます。特に、肉用牛の子牛の価格安定に関しては新たな立法措置を講ずることとしております。さらにこれにあわせまして、農産加工の経営体質の強化のための融資措置等を含む支援措置の検討に入っているところでございます。  先生御指摘のとおり、現在の我が国の農政あるいは農業が直面しておる問題といたしましては、世界の国際化の傾向、それと我が国農業の存立をいかに調和するかということでございます。先生御指摘のとおりでございますし、また、私自身もこれまで経験しておりますように、戦後の農業におきまして、食糧国民にとって最も基礎的な物資であるということを痛感しておるわけでございます。この一億二千万人に及ぶ国民食糧の安定供給を図っていくということは農政の基本役割だというふうな認識に立っております。  食糧の供給に関して申し上げますと、現在、一九七二年以来は世界的な意味で穀物の国際需給緩和のような状況を呈しておりますけれども、これまた先生御指摘のとおりでございまして、ことしにおきます異常気象といいますか、アメリカにおきます干ばつの問題あるいは各地におきます熱波の問題等々考えますと、さらに長期的見通し等から国際的な人口問題あるいは砂漠化の傾向等々あわせて考えますと、中長期的には農業に関しては不安定要因を抱えておるわけでございます。  こういうことに留意いたしまして、今後とも国内生産の効率的な展開を図るとともに、あわせまして安定的な輸入の確保に努めて、国民に対して食糧の安定供給と不測の事態についても対処できるよう食糧のいわば供給力の確保、自給力の確保に努めてまいる所存でございます。まず、そのために農林水産省におきましては、第一といたしまして、制約された国土条件のもとでも可能な限り生産性を向上しまして農業生産を実現していくという観点から、国内での基本的な食糧供給力の確保を図ることとしております。このためにすぐれた担い手あるいは優良農地の確保、さらには水資源の確保等々、各般の施策をこれに傾注していく所存でございます。また、特に米等、現に国内で自給する体制が確立されているものについては、需給の均衡を図りながら、国内自給の方針を今後とも堅持するということを考えておるところでございます。繰り返すようでございますが、これにあわせまして、安定的輸入の確保を図るとともに、世界の食糧需給の安定のための国際農業協力を推進するということも必要かというふうに考えております。  以上のことを基本といたしまして、構造政策あるいは生産政策等の各種の施策の推進を図る考えでございます。
  37. 角屋堅次郎

    角屋委員 前後の質問でやっておるものですから、多くの課題を抱えてあと四十分近くになりましたので、問題を進めたいと思います。しかも、なるべく前置きを簡略にしながら、お答えの方を的確にやってもらうということでお願いしたいと思います。  外務省からおいでを願っておるわけでありますけれども、国際的な外交の環境、冒頭に私はいろいろな諸条件を具体的に幾つか挙げながら、日本をめぐるあるいは世界をめぐる全体的な情勢というのは、デタントの芽が出てき、それが伸びる傾向を示してきておるというふうに受けとめております。  最初に、朝鮮半島関係の問題から入りたいと思います。  新しく韓国が民主化された諸情勢の中で、盧泰 愚大統領が誕生する、野党の党首等も日本に対する訪問が頻繁になる、盧泰愚大統領自身も十一月には国賓として日本に来られる、また朝鮮民主主義人民共和国に対する韓国側からの話し合いや、あるいは民族が小異を残して大同につく、そういう大前提でひとつ話し合おうじゃないかといったような問題があるし、また韓国自身は、ソ連にも目を向けあるいは中国にも目を向け、オリンピック成功のために東欧諸国にも飛び、アフリカにも飛び、血のにじむようないろいろな努力が百六十一の国と地域の参加となって、アフリカ一つを見ても、四十五のオリンピック委員会の中で、韓国よりも北朝鮮を承認しておる国が多い中で、とにかく二国不参加以外は全部参加をしてくれる。もちろんソ連中国も含めて東欧諸国も参加をする。こういう形のためには韓国自身が非常な努力をした背景があるというふうに私は理解をしております。その努力が、ある意味では中国との間に貿易の代表事務所ができるとか東欧諸国の間にも二つ貿易の代表事務所ができて、それがさらに拡大をする傾向にある。  そういった情勢等も考えてまいりますと、今までの韓国における軍事政権時代というのとは模様を変えてきておる面がある。逆に、そういう面で、アメリカが韓国に米軍として駐留をしておりますけれども、北との情勢が、ジグザグコースはあるでしょうけれども変わっていくとする、あるいは韓国の姿勢というのが幅広く中国ソ連、東欧諸国、アフリカの方面にまで接触が伸びていくということになった場合に、韓国にある米軍というのは撤退をする、そういう問題が近い将来起こる可能性があるのじゃないか。アメリカは、軍事費を減らさざるを得ぬ財政状況にあるけれども、核に対するコミットメントというものはやはり堅持していくのだというのが基本方針である、こう言っております。しかし、韓国のこれからの対外政策というものが開かれた姿勢の中で進んでいくということになると、米軍の駐留の意味というのが変わってくる可能性もある。撤退の可能性も出てくるだろうという感じが率直に言ってするのでありますが、その辺のところをどう見ておられますか。
  38. 長谷川和年

    長谷川(和)政府委員 韓国におきます米軍の問題でございますが、米国の国防予算の削減等との関連で、米国内の一部に在韓米軍の縮小等を主張する声もあると承知しておりますが、米韓双方において、現時点においては撤兵に関しまして何ら具体的な動きがあるということは承知しておりません。例えば、本年六月上旬でございますか、韓国で米韓の第二十回の安全保障協議会がございまして、その際共同声明が採択されましたが、その中でも、在韓米軍の駐留継続が再確認されておるということでございます。  なお、これは米韓両国間の問題でございますが、日本政府としましては、現実に緊張状態にある朝鮮半島においては、やはり在韓米軍の駐留は韓国の防衛努力と相まって、朝鮮半島の平和と安定の維持のための重要な要素であると認識している次第でございます。
  39. 角屋堅次郎

    角屋委員 次に、中国ソ連関係の問題に移りたいと思います。  ソ連関係については、御承知のように、私は十数年来、自分が好きであるとか嫌いであるとかは抜きにして、石田前会長、櫻内現会長のもとで、事務局長として日ソ友好議員連盟の仕事を推進しておりまして、役目柄ソ連にも十数回行っておるわけでありますが、日ソ関係を考えてまいります場合も、ソ連との往来というのが冬の時代から見ると非常にふえてきておる。ここ数次の問題を考えてみましても、国連総会で宇野外務大臣とシェワルナゼソ連外相との話で、私の見るところでは、恐らく十二月にシェワルナゼ外務大臣が訪日をする。我々日ソ友好の関係をやっておる者としては、十月の中旬に第六回の日ソ円卓会議をモスクワでやろうということで、百数十名の代表団が行くわけでありまして、櫻内さんを団長として、私が事務総長で、政治経済交流、学術、文化、いろいろな問題をざっくばらんに話し合おうということでありましょうし、それから私がモスクワに参りました際に、ソ日セクションのグラツキー会長、これは労働大臣もやっておられる方でありますが、その間で、グラツキーが日本に参りました際に日本の衆参両院議長の方から正式にソ連最高会議国会代表団を招待するということに相なりまして、これが来年の二月に来ることになるだろう。  そういうふうなことで、かつてのことからいえば、中曽根総理は、ゴルバチョフ書記長が日本に来る、中曽根総理自身モスクワに行って、モスクワでゴルバチョフ書記長と会うと非常に意欲を燃やした時期がありましたが、残念ながらこれは実施されませんでした。しかし、過般、中曽根前総理の立場においてゴルバチョフ書記長との会談というのがやられまして、これにはいろいろな見方があります。私もちょっと持ってきておりますけれども、内容には触れませんが、中曽根さんの訪ソの問題についてはいろいろな見方があります。しかし、前総理のキャリアにおいてゴルバチョフ書記長とざっくばらんに領土問題も含めて話し合われた。近くまた、アメリカのキッシンジャーさんやミッテランさんとともに、別の形でゴルバチョフ書記長と会談をしようというプログラムもあるようでございます。  そういった状態の中で、各政党の中にもソ連に対する考え方、あるいはまた外務省防衛庁等、特に防衛白書なんかを見ますと、ソ連を仮想敵国として、これに対する万全の措置を講じなければならぬというようなことが前提でずっと防衛白書が伝統的にでき上がっておるわけでありますが、そういう一面的な姿勢でいいのかどうかということが問われなければならぬというのは私の認識の中にあるわけであります。  そういったことはそれとして、中国ソ連との関係、これが関係改善の方向に進んでいる。次官会議等も行われましたけれども、引き続きまた行われるというふうなこともありまして、この中ソの関係改善、場合によっては鄧小平さんとゴルバチョフ書記長との会談ということが実現するかどうか。かねて中国の方は、ソ連に対していわゆる注文をつけておる。アフガニスタンからソ連軍は撤退しなさい、カンボジアにベトナムの軍隊が入っておるけれども、これを撤退しなさい、あるいはモンゴル等々、あるいは中ソの国境問題、こういうものをもっとちゃんとしなさいということを言ってきたわけでありますが、いわゆるアフガンからの撤退は既に始まっておる。カンボジア問題についても話し合いが進もうとしておる。あるいはまた、この間モンゴルから一個師団近くソ連の方に移動させたというようなこと等もありまして、中ソの関係話し合いが進み、関係改善の方向に行こうとしておる。これがさらに進展をするということになるのかどうか。  私は、基本的には、今の中国というのは経済建設が最大の命題である、そのためには、中ソの関係悪化というのはいかぬけれども、関係改善はもちろん一定のテンポで進めなければならぬが、同時に、経済建設のためには日本の力もかりなければならぬ、あるいはアメリカの力もかりなければならぬ、あるいは西側のその他の国の力もかりなければならぬということのバランスの判断の中で中ソ関係の問題を進めるのではなかろうかというふうな感じもいたしますけれども、こういった問題についてひとつお答えを願いたいと思います。
  40. 山下新太郎

    ○山下政府委員 お答え申し上げます。  先生いろいろな点を中ソ関係につきまして御指摘になられまして御質問いただいたわけでございますが、最近の中ソ関係につきましては、御承知のとおりに貿易、経済等いろいろ実務的な分野におきまして関係拡大する傾向にあるということは十分言い得ることだと思います。  他方、中ソ間のいわゆる政治的な関係についてでございますが、これも先ほど御指摘になりましたとおり、中国はいわゆる三つの障害というものが存在しておるということを言っているわけで、この点に関します中国基本的な立場は今でも変わっていないと理解しております。  他方、つい過般、竹下総理訪中されました際に、李鵬総理が、中ソの全般的な正常化が議事日程にのっているという趣旨の発言をされました経緯がございますし、さらにまた、先月の末からこの九月一日までカンボジア問題に関する中ソの次官級の会談が行われまして、そのような事態を踏まえて見ますと、今後カンボジア問題がいかに進展するかということによりましては、中ソの関係がハイレベルの接触を含めまして進んでいく可能性があるのではないかというふうに私ども見ております。  鄧小平あるいはゴルバチョフ、この両首脳の会談につきましては、御承知のとおり、従前来ゴルバチョフ書記長は、いつでもどこでも中ソの首脳レベルの会談を行う用意があるということを表明していたわけでございますが、他方、中国側の鄧小平自身が、カンボジア問題が解決されればゴルバチョフ書記長と会う用意もあるということも言っておられるわけでございます。したがいまして、カンボジア問題の進展いかんによりましてはこの会談の可能性もあるのではないか、こういうふうに見ている次第でございます。
  41. 角屋堅次郎

    角屋委員 中ソの関係改善がなされるということは、アジア情勢の中ではやはり歓迎すべきことだと私は思うのです。ところが、これはすべての先進諸国が歓迎するのかということになりますと、アメリカは困ったことだというふうに受けとめるんじゃないか、そういう予測もするのです。また同時に、日本防衛庁筋、防衛庁筋と言うと差しさわりがあれば、政治のレベルというふうに抽象的に申し上げてもいいんだけれども、これも困ったことじゃないか。いわばソ連に対しては、軍事的な面からいえば、日本だとか韓国だとか、あるいは少し条件は違うんだけれども、中国も引き入れて、ヨーロッパのNATO諸国とともソ連に対する包囲網というものがやはり戦略的には考えられて今日まで来ておるというふうに私は受けとめておるわけでありまして、中ソの和解で首脳会談が行われ、大きな変化をするということになると困ったことだという国あるいは困ったことだという勢力というものが厳然として存在するんじゃないかというふうに思うのです。  私は、前に防衛問題で、前統幕議長というタイトルで出しております栗栖さんの「私の防衛論」というものを読み返してみたり、あるいは同じく元統幕議長の矢田次夫さんの「日本防衛の構図」というのを読んでみたり、他にも勇ましいかつての自衛隊幹部の所論やいろいろなものに目を通したりするのですけれども、この矢田次夫さんの「日本防衛の構図」の中の四十四ページとか四十五ページにかけて、六十年の八月二十二日の朝刊に読売新聞報道しておる問題として書かれておるわけでありますけれども、当時のアメリカ太平洋艦隊のフォーリー司令官というのが米海軍兵学校の機関誌「プロシーディングズ」の六十年八月号に「太平洋における戦略的諸要因」と題する小論文を寄稿して、日ソ平和条約の締結という方向に対して警告をしているのも注目しなければならないだろう。先ほど申し上げたように、読売がこの論文の要旨を当時紹介したのですけれども、フォーリー司令官というのは  この中で、米太平洋戦略と日本政治体制の関係に触れ「もし日本が中立的姿勢をとった場合、現在の米軍太平洋戦略の遂行は極めて困難になる」と指摘した。この論文では、「中立的姿勢をとった場合」が具体的に何を意味するか言及していないが、これまでの日ソ関係に対する米政府の態度から見て、懸案の日ソ平和条約締結を指すものと受け取られる。 こういうふうに解説しております。  フォーリー司令官は「アメリカが危険な世界に直面する太平洋の政治軍事要因」として、日本の中立化のほか、フィリピン政変による在比米軍基地の喪失、中ソ和解の二つを挙げている。 この論文の中でこういうふうに言っておるのでありまして、私が触れた中ソの関係改善という問題は、一般的には我々は国際情勢上望ましいといっても、それを望まない国があったり、それを困ったことだという勢力があるというふうに申し上げることは、あながち根拠のないことではないというふうに思うのですが、いかがでございましょう。
  42. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 ただいま外務省の方からも答弁がございましたとおり、中ソ関係につきましては経済、文化等実務面における改善が見られておりますし、それから、さらに両国関係が正常化していく可能性というのはかなりあるというふうに我々も見ております。このような改善というものが、先生ただいまおっしゃいましたソ連に対する包囲網の一翼を担う中国というものを変えさせるという意味で我々が心配しているということはございません。基本的には、中国は自主独立外交をかねてから唱えておりますし、中国が我々の、我々というか米日等の一翼を担うというような現実であったということではないと思います。  同時に、もちろんアメリカの中でそういう説を唱える人たちもいるかと存じますけれども、一方、現在そういう中ソの関係が進展している中で、ただいまアメリカの国防長官中国を訪問しているわけでございます。そういったようなことから、アメリカにしましても、中国というものがバランスのとれた形でソ連、米国、日本との関係を結んでいくということに利益を見出しているのではないかと想像されるわけでございます。我々といたしましても、先ほど先生も御指摘なさいましたとおり、中ソ関係というのが一九五〇年代のような関係に戻るということではなくて、中国はそれぞれの国と均衡のとれた関係を結ぼうとしているということではないかと存じます。そういう場合、我々としてもこれは非常に結構なことではないかという感じがいたします。  ただ、もう一つ申させていただきますと、関係進展の兆しは見えるものの、実際には中ソ国境におきまして例えばモンゴルからの一個師団の撤兵という事実はございますけれども、それ以外の点では依然として軍事的な対峙兵力は非常に高水準にあるという状態が続いております。やはり歴史的には非常に不信の関係、根深い不信感があるかと思います。そういった意味で、関係改善というものも必ずしもそう急速に進むというものではないかもしれません。その点は十分我々としても注目していかなければいけないという感じがいたします。
  43. 角屋堅次郎

    角屋委員 外務省の方にお伺いをいたします。  日本ソ連関係については、国会の決議もしばしばなされておりまして、北方領土問題を解決して平和条約を締結するというのが各政党を通じての基本認識基本的態度として確認をされておるわけでありまして、我々日ソ議運の関係の者もソ連との話し合いの中ではそういう立場で推進をしてきておるわけですが、向こうは従来から、領土問題については六〇年安保以降情勢は変化したということで、解決済みとか存在しないとかいうようなことを言っておる中で私なんかも激しい論争を挑んだりしながら、今度の円卓会議もそういうことが重要な問題の一つになるだろうと思います。  そういった中で、時間の関係もありますから具体的に日本のシンポジウムの中でだれがどういうふうに言ったということは触れませんけれども、最近、ソ連の中でも新しい考え方の勢力あるいは昔からの固執した考え方の勢力というものがあって、新しい考え方の勢力の中から北方四島の問題について四島の共同管理の問題が出たり、あるいはまかり間違うと、平和条約の際に鳩山さんが行ったときの共同宣言じゃありませんけれども二島返還の問題が出たり、いろいろな動き報道されておるわけであります。  そういう意味では、今度十月中旬の円卓会議の中で領土問題に対してソ連のそういった新しい流れが、直接責任者の立場でなくても、やはりそれに直接かかわっておるセクションの重要なポジションの立場で問題提起がなされておる。そういう問題をどう認識すべきなのか、あるいはそういうものが今後どういうふうに進んでいくのだろうか。やはりアメリカはやがて太平洋時代が来る中 で日本中国との関係というものを重視、東南アジアその他を含めたそういう認識の問題意識を持っておるだろうと思いますけれども、ソ連にいたしましても、ヨーロッパ関係においてはNATO、ワルシャワの対峙状態という中で中距離核戦力が全廃されて、地上兵力をどうするかの問題がある。しかし、目はペレストロイカの中でアジアに大きく向いてくる。ウラジオストク演説じゃありませんけれども、そういう中で日本の経済力、日本の優秀な技術力というものをやはりソ連としても活用したい、そういうことを通じてペレストロイカの実績を上げたい。ヨーロッパの国々に対しても日本に対しても、合弁企業法によって合弁をどうだというやり方を提示しておることは御案内のとおりでありまして、ヨーロッパ側は割合に進んでおる形になりますけれども、日本側は数点で遅々として進まぬという現状にあることも御案内のとおりであります。  そういう全体の中で、私は、お互いの政治体制、経済体制は基本的に違っておりますけれども、ソ連は大切な隣国として、激しい対立を激化する方向でなくて、友好関係というものも保持していくということが世界の平和と安全の立場から見ても重要であるというふうに認識しておる一人でありますが、最近の北方領土をめぐる問題あるいはソ連側から日本に対する提示の問題、そういう問題についてどういうふうに受けとめておられるか、ひとつお答えを願いたいと思います。
  44. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、ソ連もウラジオストク演説におきましてアジア・太平洋地域に対して新たな関心を示してきたことは、そのとおりでございます。最近ソ連側においても、アジア・太平洋につきましていろいろな考えがソ連の内部で行われておるということを私どもも承知しております。このような動きが具体的にどういう形で我が国に対してあらわれてくるかということは今後とも注目をしたいと考えております。  しかし、先生もお触れになりましたように、何といっても我が国にとりまして戦後最大の懸案は北方領土問題でございます。この問題を解決して平和条約を締結し、そして隣国であるソ連との関係を長期的に安定したものにするということは戦後の一貫した政府外交姿勢でございますので、このような立場に立ちまして今後とも外交を進めていきたいと思っております。  領土問題につきましては、御承知のように、一時ソ連は聞く耳を持たぬという形で一切討論に応じないという時期もございましたけれども、一昨年の二度の外務大臣の間の会談を通じまして、ソ連側との間に平和条約問題を継続審議するということに合意しておりますので、この契機をつかまえて、政府といたしましても、今後あらゆる機会をとらえて領土問題を含め平和条約問題の解決、締結ということに努力してまいる次第でございます。  具体的には、御案内のように、九月の末に国連におきまして外相会談が予定されておりますし、年末にはシェワルナゼ外務大臣の訪日ということが具体化すると思いますので、こういう機会をとらえましてこの外交基本方針を貫徹すべく努力していきたい、このように考えております。
  45. 角屋堅次郎

    角屋委員 時間がもう追っておりますので、今度は防衛関係の問題で数点、防衛庁長官なりあるいは関係局長から御答弁を願いたいと思います。  私は、防衛関係の問題についてはネガティブの性格の面が多いのでありますけれども、しかし同時に、三十年国会活動をやってまいりました経験からいたしますと、我が国の平和憲法と自衛隊という問題がだんだん乖離している、なかなか突破しにくい問題もいろいろな説明、考え方を加えてどんどん自衛隊、防衛関係の方は進んでいる。憲法制定当時の基本原則に返るわけじゃありませんけれども、条文を読んでも憲法制定当時の経緯から見ても、ここまで自衛隊が来ていいのかという感慨を深くする一人であります。そういう点についての議論のいとまはございません。  率直に言って、憲法の拡大解釈によって実質上憲法改正をやろうという、条文の問題の前に非核三原則の問題があったり、武器輸出三原則の問題があったり、憲法上自衛力を持ち得る限界の問題が論じられたり、あるいはまた自衛力の発動という問題には三条件があるということが言われたり、専守防衛という言葉が使われたり、私は一々読みませんけれども、専守防衛という問題一つを見ても、かつて自衛隊の制服組の幹部であった者が、これはスローガンにすぎない、東南アジアの大東亜戦争を遂行したという立場に対する厳しい批判に対しては、それを説明するのに、専守防衛というのはスローガンとしては非常に有効的である、あるいは政治的には非常に有効的である。しかし、この車守防衛ということによって果たして日本防衛役割を果たし得るのかという点については、基本的には否定的立場に立っておるわけであります。  これは栗栖さんの「私の防衛論」を見ても、あるいは矢田次夫さんの「日本防衛の構図」を見ても、その他の所論を見ても共通して言えるわけでありまして、専守防衛という政治的な考え方というものを言ってみたり、いろいろな言い方をしている。時間的なゆとりはありませんから、これは一々読みません。瓦防衛庁長官当時でも東南アジア二国へ行きましたけれども、我が国は専守防衛だとかなんとか言って説明してこられたと思うのです。ところが、制服組の腹の中では、専守防衛というのは政治的な表現なんだ、そんなことでは日本防衛は成り立たぬのだ、こういう認識が特に幹部級に強い。そういうことで、憲法の大きな制約の中である意味ではそういう勢力にこたえるかのごとくどんどん拡大をしていく。非核三原則も、今度横須賀にいわゆる核を十分搭載できるそういうものが二艦入ってくる。非核三原則の空洞化、アブステンション。寄港の問題については、かねてからライシャワー発言やラロック証言等で随分長い間議論されてきた問題でありますけれども、そういうものが現実にいかに政府が説明しようとも崩れているのじゃないか。  また、防衛費については既に中曽根政権下において一%を突破した。防衛費一%の精神は尊重すると官房長官談話でも言っておる。しかし、今の中期防衛整備計画、やがて検討していこうというポスト中期防衛整備計画、本委員会でも委員各位によっていろいろ議論がなされておる。深く触れる時間的ゆとりはありませんけれども、そういう中で総額明示方式でやる。これは与野党協議でやるわけではない。国防会議や閣議を通じて、決めるのはいわゆる政権政党の内閣責任においてやるわけです。これは国会にかかるけれども、それは重大な変更をもたらすという例は日本国会においてはない。  そういう中で、いわゆる憲法と自衛隊というものの乖離、また国際情勢から見て、我が国政府として、国会として、あるいは政治家として何をやるべきかという点について、防衛がどんどん進んでいくということはリザーブしなければならぬ、セーブしなければならぬという立場が一つの考え方としてなければいかぬというのが、私の基本認識であります。  私は、かねてから言っておりますように、第二次世界大戦では小隊長であったり中隊長であったり、厳しい試練の中において戦争の体験を持っておる一人であります。そして最後は長崎の原爆の惨たんたる惨状を体験して、五島の現地中隊長で戦争の終わりを迎えたわけでありまして、核廃絶に対する気持ちや、あるいは日本のいわゆる相互安全保障の中で防衛の問題はどういう位置づけにあるべきかという点については、防衛庁が考えるような積極的な考え方は私は持たないので、新しい防衛庁長官になられた大臣から、これから新大臣として防衛予算の問題がございます、それから横須賀に参りました艦船の問題がございます、それからポスト中期防の問題についての検討もぼつぼつ始めなければならぬでしょう、そういうことに対する基本的な姿勢というのをどういう姿勢でやられようとするのか、それをお伺いしたいと思います。
  46. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 ただいま角屋委員の御指摘のように、我が国の憲法九条の精神は、いわゆる我が国の主権者としての固有の自衛権というものを否定していないという前提から、平和憲法のもとで、そしてただいま御指摘のありました他国に脅威を与えない、いわゆる軍事大国にならないということ、さらには文民統制を確立するということ、非核三原則を守るということ、そして節度ある防衛力の整備を図っていかなければならない。また、日米安保体制の信頼度を向上させていくということを着実に守っていかなければならない。しかもまた、中期防につきましてはもう既にことしで四年目を迎えるわけでございまして、これを中心にして今予算編成をしているわけでございます。この中期防についても、いわゆる防衛大綱を基本としながら進めているのでございまして、先ほど来御指摘がありますように、これからの防衛計画につきましても、やはり節度ある防衛計画の確立をしていくというような基本的な精神で今後も対応してまいりたい、こう考えております。
  47. 角屋堅次郎

    角屋委員 古くて長い間防衛費の一%論議というのがそれぞれ内閣でも予算委でもずっと続けられてまいりまして、先般私が親しくしていただいております防衛庁長官をやられた大村襄治先生の方から「GNP一%論の軌跡、国会論議を省みて」、非常に労作で、これは大村先生の御性格だと思うのですけれども、各政党にまたがって、いろいろな機会にこの問題を議論したので私の名前もちょっと載っておりますけれども、ずっと年代的に、これを読むと、各政党委員長初めいろいろな方々が時の総理その他とGNP一%問題で歴史的にどういう議論をしたかということで、大変貴重な御本をいただいたりしております。また、先ほど申し上げました「私の防衛論」や矢田次夫さんの「日本防衛の構図」や、それから触れませんでしたけれども、「九〇年代の日本防衛を考える NATO・ヨーロッパ諸国の例に見る航空機運用を通じて」というシンポジウム、これは、六十年の三月二十日東京において、英王立国防研究所、ドイツ連邦共和国防衛技術研究所、日本安全保障研究センター。これには竹田五郎さん初め防衛庁の旧幹部の方々が出て、時には勇ましいことを言い、いろいろな議論をしておるのを興味深く拝見して、これに関連をして、過般千歳に行ったり北方領土の視察に行ったりした感慨の問題についても少し触れる時間があればというふうに思ったのですけれども、これは時間をなくしたわけであります。  最後に私は、非核三原則の問題について、「ライシャワー自伝」の中から、この問題に関してライシャワーさんの触れておる点をお読みして、私の質問を終わるようにいたしたいと思います。  防衛庁長官は、「ライシャワー自伝」という徳岡孝夫さんの訳で文芸春秋から出ておるこれをお読みになったことがありますか。
  48. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 まだ読んでおりません。
  49. 角屋堅次郎

    角屋委員 日本で生まれ日本で育ち、日本の方を奥さんに迎えられて、東洋学を専門にされたり日本大使もやられたりして、日本には非常に親しまれた方でありますけれども、ライシャワー発言という問題で出たことについても触れておられるのです。私はいずれ、今度の国会は無理かもしれませんけれども、教育問題を議論するときには、ライシャワーさんの自伝の中からそういう問題も少し触れながら議論をしようかなと思ったりしておるのです。  「定年のあと」という四十七の項の五百十六ページ以降にライシャワー発言に関することがずっと出ているのですけれども、その中で、ライシャワーさんはこういうふうにポイントとしては言っているのです。   いわゆる「ライシャワー発言」は日本で大問題になり、さまざまな的はずれの解釈も行われた。だが事実は、日本政府が二十年間というもの日本領海に入るアメリカ艦艇があたかも核兵器を積んでいないかのように国民に説明し、実情を糊塗し続けてきたことこそ問題なのである。軍事専門家なら当然と思う事実を言っただけなのに、国民が私の言ったことをそのまま信じ、政府の虚言に怒ったのを見た日本政府は、私に対して怒りを向けてきた。 「ライシャワー自伝」の中で、ライシャワーさんはこういうふうにこの問題については触れておるわけです。  これに対する答弁を求めるわけではありません。非常な親日家であり、ライシャワーさんは学者として、また人間として尊敬すべき人であったことは間違いないわけでありまして、非核三原則、今度の横須賀への新たな二つの巡洋艦あるいは駆逐艦、こういうものが核搭載能力を持っているわけですけれども、寄港問題、現地の知事や市長あるいは横須賀の市議会が満場一致で反対している中で、これが強行されたわけであります。やはり、原則を立てれば原則はきちっと守るという姿勢でやってもらわなければ、疑惑のある中で自衛隊に対する信頼は生まれない、あるいは政府に対する、防衛政策に対する信頼は生まれないということを申し上げて、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  50. 竹中修一

    竹中委員長 竹内勝彦君。
  51. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 まず、官房長官、時間がお急ぎのようでございますから、集中して官房長官質問をさせていただきたいと思います。  先ほど同僚委員からもございましたが、リクルートコスモス贈賄疑惑、非公開株を事前に譲渡を受けたという問題から、今度は野党議員に対して贈賄疑惑、こういう形で、贈賄申し込みといったものがどうも成立するのではないか。刑法でいけば第百九十八条でございますね。それでまた、前の段階での、きょう午前中の報道の段階では五百万円持参したやに、そんな報道もございましたが、どうも楢崎代議士の弁護人の話によりますと、「札束の厚さが全く違っていた。おそらく、一千万円前後はあったのではないか」というようなことまで、今届いた夕刊でございますけれども、そんなような報道もなされております。  官房長官、先ほど政府のスポークスマンとしてこの問題に関してノーコメントというような言い方でございましたが、そんなもので済まされないですよ。とにかく、現時点で官房長官の感想をまず最初に伺っておきたい。
  52. 小渕恵三

    小渕国務大臣 先ほども角屋委員にお答え申し上げましたが、楢崎委員に対しましてのリクルート問題をめぐっての種々の行動、御発言につきましては、そのすべての詳細を承知いたしておるわけでございませんので、私として先ほど同様にコメントを申し上げることを差し控えさせていただきたいと思いますが、いずれにいたしましても、一般論的に、疑惑、疑念等が存在をいたしますれば、そのことを解明していくことは、政府のみならず議会もさようでございましょうし、また国民もそのように考えておることにつきましては、当然のことだろうと思っております。
  53. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 ぜひそれは積極的にやっていただかなければならない。そのことで今国会もいろいろと紛糾してぎくしゃくしておる、そういう面からもぜひひとつ官房長官の意欲ある政府としての対応、そういったものを望んでおきます。  それはそうと、昨日、日本テレビでかなり詳細にニュースが流されましたけれども、官房長官見ましたか。
  54. 小渕恵三

    小渕国務大臣 遅く帰宅いたしまして、録画部分につきましてこれを見ました。
  55. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 私も見ましたが、これはとにかく、林田法務大臣もきょうの記者会見で述べておりますが、楢崎代議士から告発があれば検察が事情聴取などをして取り調べることになると思う、犯罪の疑義があれば厳正に対処する、こういうような法務大臣の発表もございますけれども、刑法第百九十八条は贈賄について規定しておるのは官房長官もご存じのとおりですね。公務員に対して職務に関してわいろを供与する場合はもちろん、その申し込みあるいは約束をした場合でも違法行為としている。だから、今回のこのケースというのは贈賄申し込みに触れる疑いがあると思うのですが、その中でも、私の見ておった中で、先生が 議員活動を続けられる限り支援を続けたいというような言明をしております。これはまさにこの百九十八条に触れると思いますが、官房長官、見解はどうですか。
  56. 小渕恵三

    小渕国務大臣 具体的犯罪の成否は、証拠によって認められた事実関係に基づいて判断すべき事柄でありますので、あのテレビは確かに拝見をいたしましたが、すべてのそうした証拠によってそれを規定すべきでございますので、今の段階で何罪が成立するかについては答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  57. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 林田法務大臣は積極的にこのように述べておりますし、各大臣のコメントなどもございます。そういう中で官房長官、余り時間がないのですから、私に何度か質問に立たすのはいろいろ影響があるので簡潔に答弁していただきたいのですけれども、竹下総理といたしましてもこれに関してのコメントはないですよ。これは竹下総理の秘書にもかかわっておる、そういう問題でございます。そういうものを、これだけ疑惑が二重になってきているわけですから、これは単に非公開株式の譲渡、これだけじゃないのです。それに対して、この楢崎弥之助代議士に対して野党政治家への贈賄申し込み、こういう二つの大事件が重なっているのです。その点を認識したならば、そんな、今の段階でノーコメントなんという――大事な、やはり国民が注目しておるのですから、これはぜひこういった問題を解明してもらわなければならない。単なる道義的というような、そんな問題じゃないです。これはぜひ官房長官として何らかの、個人的な見解で結構でございますから、見解を述べていただきたい。
  58. 小渕恵三

    小渕国務大臣 先ほど申し上げましたように、あらゆることにおいて国民の理解と協力を得ずしては政治が進まないことは当然のことでございます。そういった意味で、一般論的に、もし疑惑、疑念があるとすれば、このことについては解明していくことは当然のことだというふうに考えております。
  59. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それはそれでわかりますが、行政府の代表者の一人としてこの贈賄申し込み事件について、この今の事態に関してどう思うかということなんです。あなたの個人的見解なんですよ。もう一度述べてください。
  60. 小渕恵三

    小渕国務大臣 行政府責任ある立場におればこそでございまして、やはり国会でおつくりをいただいた法律に基づいてそれを執行するということでありますれば、より慎重に、よりその責任の重さを感じながら対処しなければならないことでございまして、そういった意味で、事件と称される概要につきましてまだ十分な内容を承知をいたしておりませんので、この際、責任ある答弁といいますか、確たる答弁をすることを差し控えさせていただきたいことを御理解いただきたいと存じます。
  61. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それでは細かい点、法務省に来ていただいておりますから答弁を求めます。
  62. 竹中修一

    竹中委員長 官房長官はいいですか。
  63. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 官房長官は結構です、何か急ぎのようでございますので。  そこで、法務省来ていますか。――このリクルート問題に関連しまして、楢崎さんが言っておるのは、私が国会でリクルート疑惑を追及した前後に、リクルートコスモスの取締役社長室長が、今の段階では弁護人は一千万円前後ではないかというような、こういう発言もございますが、昨日の段階では、この楢崎氏が言っておることは、取締役社長室長が現金五百万円を議員宿舎に持参、リクルートを助けてほしいと頼んできた、贈賄申し込みとも見られる行動があったことを明らかにした。同議員はこの現金の束を確認をした上で受け取りを拒否したとありましたが、この現金提供の申し込みが事実だとすると、国会議員の質問という職務に関しての贈賄申し込みとしての刑事事件になると思いますけれども、法務省、答弁してください。
  64. 根來泰周

    根來政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、検察庁を所管しております法務省といたしましては、捜査を遂げる以前に具体的案件について犯罪の成否を申し述べる立場でないことを御了承願いたいと思います。  ただ、報道によりますと、楢崎議員は近く告発されるということを申し述べられているところでございますけれども、もし検察官に告発されれば、当然事情を聴取いたしまして事実の確定を図りまして、その上で犯罪の成否を確定することになろうかと思います。
  65. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 今回のこのリクルートコスモスの非公開株を政界関係者等に譲渡していた問題、これは刑事事件というよりも道義的なモラルの問題、こういった形ですりかえよう、こうしておる感があるわけですが、しかし、今回のこのリクルートコスモスの取締役社長室長の行動というものは、これは本質を完全にあらわしておる、このように感じるわけでございます。事実関係を通じてもこれは動かしがたいものである、だれが見てもそう思うわけでございますが、中にはこういうことを言っていますね。まさにこれは何か隠し撮り、いわゆるアメリカのおとり捜査、そういうようなものにも当たるというようなことの発言をしている人もいますけれども、単なるプライバシーの侵害などと判断されるべきではなくて、例えばこれは銀行でもビデオを撮って利用客を絶えず監視しておる、犯罪捜査に役立っておる、そういうようなものもございます。そういうものから考えていけば、ここまではっきりしてくると、これはそんなもので片づけられるようなものじゃない。したがいまして、この事実関係というものは動かしがたいものだ、また、国民の大多数はそのように思っておると私は判断しますが、法務省、どう思いますか。
  66. 根來泰周

    根來政府委員 恐縮でございますけれども、私どもはやはり適正な手続によりまして適正な捜査を行って、それで証拠を収集して、その上で事実を確定して、それをもとに発言する、こういうことになっておりますので、社会的事実としてはともかくといたしまして、法務省あるいは検察庁といたしましては、捜査をする以前に犯罪の成否を述べることについては差し控えたいと思っております。
  67. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それは法務省としてはそういう答弁しかできないでしょうが、林田法務大臣は、そういう意味では楢崎氏から告発があれば――告発はあるようでございます、今も御答弁の中にもあったとおりでございますので、事情聴取などをして取り調べる、これははっきりしておるわけです。  そこで、要はこの場合、現金の束で政治家国会での追及をとめさせようとした、こういった事実、これを考えれば、金銭または金銭にかかわる利権でもって政治家を動かそうとした、これがリクルート問題の本質です。これも報道によりますが、リクルートコスモス側では、同社長室長が独断でやったことだ、会社は関知していない。五百万も一千万も一人のサラリーマンが、個人が用意して渡すなど考えられないでしょう。だからこれは会社としての刑事責任、こういうふうに考えられるわけでございますけれども、これまた法務省、もう一度答弁してください。そんな変な答弁、みんな注目しているのだから、通り一遍のことだったらここで答弁することないでしょう。ちゃんともうちょっと責任を持って答弁してください。
  68. 根來泰周

    根來政府委員 何遍も申し上げるようで恐縮でございますけれども、私どもはそういう社会的な事実について、いろいろ捜査官あるいは個人的な見解として感触はございますけれども、それはともかくとして、私ども行政機関として、やはり証拠に基づかないで犯罪の成否をどうだこうだと申し上げるのは非常に僭越でございますし、これは告発があったときにその証拠を収集して、その上でやはり判断をして、それを申し上げるのが筋だと思いますので、前の答弁をそのまま維持させていただきます。
  69. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それでは、ビデオが撮られてあり全国に放映された。官房長官も見た。皆さんも恐らく見たんじゃないでしょうか。この立証とし て、これは有力な証拠物件になりますか。
  70. 根來泰周

    根來政府委員 この事件はともかくとして、これまでビデオを利用して立証した事件もございますし、事件によりましては有力な立証手段になり得ることもあり得ると思います。
  71. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それでは、刑法第百九十八条におきまして、この規定から、このビデオが真実であれば当局は直ちにこの事件の真相解明に動くべきです。いつ動くのですか。
  72. 根來泰周

    根來政府委員 報道をいろいろ拝見しておりますと、そこに犯罪の疑いがあるという報道がございますし、検察庁の方も十分この件については関心を持っておるわけでございます。ただ、報道において楢崎議員が表明されましたように、数日以内に告発されるということでございますから、告発があれば当然検察庁は捜査に着手して事実を解明すると考えております。
  73. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そこでこれだけ、もう一点答弁を求めておきますが、社長室長本人は楢崎氏にはめられたなんて言っているのだ。先ほど私も言いましたが、アメリカのおとり捜査を思わせるようなそういうことまで言っている。はめられた、はめることが仮になされたとすれば、これは今度は刑事罰に該当するもの、そういうように考えられますけれども、法務当局の明快な答弁をもう一度してください。
  74. 根來泰周

    根來政府委員 御指摘のはめられたという話は新聞紙上で拝見しておりますけれども、どういう事実をもってはめられたのかその辺十分に承知しておりませんので、何とも申し上げかねるわけでございますが、一般的に申しまして、要するにおとり捜査の場合に、それが理由で無罪になった例もございますし、またいろいろ犯意を誘発したというような話もございますが、いろいろ事実関係を検討しないと、これについて何とも申し上げかねるところでございます。
  75. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それでは、本来の防衛二法の問題に関して質問をさせていただきます。法務省、結構でございます。  まず、潜水艦衝突事故関連して若干質問させていただきますが、とにかく視界良好の海で今回の痛ましい事故が起きた背景、さまざま改善すべき問題が提起されておるわけでございます。海上保安庁第三管区海上保安本部によると、浦賀水道の一日の船舶交通量は平均五百九・六隻という報道もなされておりますけれども、同航路の千葉寄りあるいは神奈川寄りの水域を加えると七百二十二・二隻に上る混雑ぶりだ、このようにも伺っております。  そこで、そのような状況下で、自衛隊の艦船の航行について、海上交通安全法の遵守、これが重要でございます。今回のみならずそうですよね、これは重要です。これだけのものですから。今回これはどうなっておりましたか、海上交通安全法の遵守という問題に関してどのような状況だったのですか、この点を海上保安庁、御答弁をお願いしたいと思います。
  76. 邊見正和

    ○邊見政府委員 お答え申し上げます。  今先生おっしゃいましたように、浦賀水道の通航量は全体で一日に七百二十数隻、それから航路は大体五百十隻ぐらいでございますが、その中で今回の自衛艦「なだしお」の航路航行につきましての海上交通安全法の遵守状況につきましては、我々の方としては、海上交通安全法につきましては特に異常な状態ではなかったと考えております。
  77. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それでは、ふだん実態として、この航法の問題としては、民間の船舶が自衛隊の艦船等に遠慮しているようなことはなかったですか。
  78. 邊見正和

    ○邊見政府委員 我々は、現在捜査を実施しているわけでございまして、そういった中身についてももちろん事情聴取をしているわけでございますが、現段階においてそのことについての答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  79. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そのことで言っているんじゃない。ふだんのことを聞いてるんじゃないですか。ふだんの一般論として、遠慮しているようなことはなかったかと言っているのですよ。
  80. 邊見正和

    ○邊見政府委員 一般論についてお答えいたします。  一般論では、特に民間船が自衛艦を避けなければならないというルールがあるわけではございませんので、我々の方としては、民間船が自衛艦に対して遠慮をしているというふうにはとらえておりません。
  81. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そういう遠慮をしているんじゃないか、遠慮をしているような状況はなかったか。だから、本来自衛艦がよけなければならないものを、向こうが交通安全法に従って当然よけていかなければならない、ところが、それを遠慮してこちらがもう前もってストップするなり、あるいはよけていくなりというようなものがふだんなかったか、これを聞いているのですよ。全然ないのですか、はっきり答弁しておいてくださいよ。
  82. 邊見正和

    ○邊見政府委員 お答えいたします。  一般的には、自衛艦と民間船との関係につきまして、そのようなことは特に聞いてはおりません。  ただ、小さい漁船等につきましては、漁船の方が、自衛艦との航行に際して衝突予防法の関係にあっても自主的に避けるというような事態はあり得る、このように考えております。
  83. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そのことを聞いているんだよ。  それでは、今回の事故を受けて、米軍やあるいは自衛隊の艦船が浦賀水道のような海上を航行する場合、海上保安庁として何らかの対策を考えておりますか。
  84. 邊見正和

    ○邊見政府委員 お答えいたします。  海上保安庁には海上交通センターというのがございます。ここの海上交通センターでレーダーによって浦賀水道通航船舶の位置等を監視しておりまして、情報の交換をやっているわけでございますが、そういった自衛艦と情報の交換等につきまして今後密接にやっていくというようなことはやってございます。
  85. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それでは防衛庁、お伺いしておきます。  海上自衛隊の潜水艦が民間の船と衝突あるいは接触した事実、五十年以降どんな状況がございましたか。まずそれを説明してください。
  86. 長谷川宏

    長谷川(宏)政府委員 お答えいたします。  海上自衛隊の潜水艦が民間船に衝突あるいは接触いたしました事故は、昭和五十年以降三件ございました。  まず初めは、五十年六月に広島湾におきまして、潜水艦「おやしお」が濃霧の中で貨物船と衝突いたしました。この原因は双方の運航に関する過失によるとされました。  それから第二番目のケースは、五十五年六月でありまして、潜水艦「みちしお」が八戸港外におきまして、同じように濃霧の中で航行中、漁船と接触いたしました。これも双方の運航に関する過失があったものとされました。  最後のケースは、五十九年五月に「ゆうしお」が室戸岬の南方におきまして、これは潜望鏡の深度で航行中に一般船舶に気づかずに衝突いたしまして、自分の艦首部分に損傷を受け、相手船にも損傷を与えたわけでありますが、この原因の主因は潜水艦の艦長の潜望鏡観測の不適切というふうにされたわけであります。  そのようなことでございましたので、自衛隊といたしましてはそれぞれ対策を講じました。
  87. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そういうような事態を考えてみても、これは自衛隊の艦船の運用に基本的な問題があったのではないか、こういうように考えますが、防衛庁、どうでしょうか。
  88. 日吉章

    ○日吉政府委員 今回の事故は交通の非常に頻繁な浦賀水道で起こったわけでございますけれども、このような海上交通安全法が適用されます東京湾、伊勢湾、瀬戸内海につきましては、自衛隊の艦艇も一般の船舶と同様にこの法律の規定の適用を受けておりまして、それに基づいて航行しているわけでございます。さらに、これらの海域につきましては、管区の海上保安部の方でいろいろと航路内への出入あるいは航路内航行に関する航 行安全指導事項を定めておられまして、遵守するように指導されておりますが、私どもといたしましても、それに準拠いたしました全く同内容の内部取り決めを設けまして、その遵守を励行させているところでございます。  したがいまして、我々としましては法規を遵守すべく万全の措置をとっていたつもりでございますけれども、事故が起こりましたのは事実でございますから、私どもとしましては、総点検、総監察をいたしますとともに、今後こういう過密なる海上におきます航行の安全につきましてはさらに対策を練っていきたい、かように考えている次第でございます。
  89. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 この衝突直後の自衛隊から第三管区海上保安本部に対する事故発生の通報が二十一分後と手間取ったやに伺っております。また「なだしお」側の救助活動の対応が不十分であった。いろいろと本院におきましても論議が行われましたけれども、自衛隊の隊員の意識等に不十分な問題があったのではないか、納得のいかない点があったのではないか。そういった面と、また今後の事故を未然に防止する上での対策、そういったものは本当に、ぜひ念には念を入れて、二度とこういう事故が起きないように要望しておきますが、防衛庁長官の御所見をお伺いしておきます。  前任の瓦長官がいわば、この「なだしお」の衝突事故で多くの犠牲者を出した、そういうもので辞任をされたわけでございますけれども、田澤長官としてこの事件をどのようにとらえ、どのように対処していこうとしておるのか。非常に重要な問題でございますので、ぜひ意欲的な田澤長官の御答弁をこの際発表しておいてください。
  90. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 今防衛局長から御答弁がありましたように、防衛庁としましても海上での安全法をこれまでも忠実に守って今日まで来ているのでございますが、不幸にしてこういう事件が起きたわけでございまして、多くの人命を失った痛ましい事件でございますだけに、私たちは二度とこういう事件が起こらないように再発防止策を徹底して進めるべきであろうと考えます。したがいまして、私も就任して早々でございますが、早速現地へ赴きまして、再発防止対策を徹底していただきたいということで、潜水艦の状況等も見、また浦賀水道の現状等も視察してまいりました。  これからは、今までも進めてまいりましたけれども、潜水艦という特殊船艦でございます。したがいまして、これに対して救助のための措置を進めていく。そのためには、探照灯をつけるとか救命索の発射器を備える、あるいはまた各船舶に対しての連絡のための通信等の措置を徹底して進めるべきであるというようなことなどをも十分把握し、また視察をもしてまいったわけでございますので、今後再びこのような事件が起こらないように万全の措置を講じてまいりたい。  さらには、御遺族に対しては、これから賠償金を含めて温かい援助の手を差し伸べてまいりたい、かように考えております。
  91. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 重ねて海上保安庁にお伺いしておきます。  横須賀海上保安部が事故後「なだしお」の艦長に事情聴取のための出頭を求めたが応ぜず、横須賀海上保安部の係官を海上の「なだしお」に派遣して、そうして事故から七時間近くたって艦長から事情聴取をした、このように伺っておりますが、それは事実なのか。そしてまたどうしてなのか。本来海上保安部へ出頭すべきではないのか。そういった面も含めてあわせて御答弁いただきたいと思います。
  92. 邊見正和

    ○邊見政府委員 ただいまお尋ねのありました件でございますが、まず事情聴取につきましては、確かに始まった時間はおくれたわけでございますが、これは当初人命救助優先というふうに当庁は考えておりました関係でございます。  それから、事情聴取を行いました場所につきましては、行うべき場所については特段の定めはないわけでございますけれども、今回につきましては、当初海上自衛隊の横須賀地方総監部で「なだしお」の艦長の事情聴取を行ったというのは事実でございます。これは、「なだしお」につきまして七月の二十四日、二十五日の両日、実況見分というのを実施しておりました。この実況見分には艦長の立ち会いをお願いしていたわけでございますので、そういった事情もありまして、横須賀総監部の方で艦長から事情を聴取したということでございます。したがいまして、「なだしお」の実況見分が終了いたしました後は、海上保安部の方で事情聴取をしているということでございます。
  93. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 海難審判庁、来ていただいていますね。――今回の潜水艦なだしお」と第一富士丸事故調査の進捗状況はどんなふうになっておるのか、まず御答弁いただきたいと思います。
  94. 松下幸亮

    ○松下説明員 御質問の件は、九月二日に横浜の地方海難審判理事所から横浜地方海難審判庁に申し立てになりまして、その間海難審判維持をするための必要証拠書類等をそろえまして、九月二日に申し立てをしたわけでございます。  今後の日程等につきましては、先ほど長官がお答えいたしましたように、来月中に第一回の審判が行われる予定になっております。
  95. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それでは、「なだしお」の論議をしてまいりましたけれども、ここで、このたび出された防衛白書に関して若干質問をしておきたいと思います。  まず、竹下内閣になって初の白書でもございます。中曽根内閣の昨年まで、この二年間続いた「防衛計画大綱」の見直し論が、こちらには消えておりますね。これはいかなる理由ですか。まずその辺から。
  96. 日吉章

    ○日吉政府委員 お答え申し上げます。  白書は、紙面のページ数といいますか、そういう制限もございますので、一般的には最近時点一年間におきます、国会なりでいろいろ御議論をいただきましたものを主として取り上げるというような観点から、内容の更新を図っているわけでございます。  そういうことでございまして、大綱見直し論といいますか大綱の仕組みにつきましては、二、三年前でございますが、非常に議論が盛んでございましたので、それらの御議論を整理いたしまして政府としての考え方をここに述べておったわけでございますが、過去一年間を振り返りますと、この間の議論もほとんどなくなっておりました関係上、同じページ数の中におさめる関係では、これを省略いたしまして他のものを掲載したというのが実情でございまして、特に他意はございません。  ただ、昨年、一昨年にかなりこういうページが割かれておったというのには、やはり「防衛計画の大綱」が五十一年にできましてからちょうど十年目の節目を迎えておりましたので、そういう意味で内外での御議論も多かったのではないか、かように推察しております。
  97. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そこで、重ねてお伺いしておきます。  中期防衛力整備計画、六十一年度から六十五年度まで、こう続いていくわけでございますが、次期防衛力整備計画はどのような方向と考えておりますか。
  98. 日吉章

    ○日吉政府委員 昨年の一月に閣議決定されました防衛力の整備についてという閣議決定の中に中期防後の昭和六十六年度以降の防衛力整備のあり方についての定めがございまして、それにつきましては、中期防終了までに改めて国際情勢や経済財政事情等を勘案して、専守防衛等の我が国基本方針のもとで決定を行うべきというふうに書かれてございます。したがいまして、まだ二年ございますのでその具体的な方針について述べられる段階ではございませんけれども、防衛庁といたしましては、やはり防衛力の整備といいますものは中長期的な観点に立ちまして計画的かつ継続的に進めるということが望ましいのではないか、かように考えておりますので、六十六年度以降も現在のような、中期防のような防衛力整備計画を策定することが望ましいのではないか、かように考えております。そういう意味では、そろろそろ作業 に着手する必要があろうかと思いますので、政府部内、安全保障会議等にお諮りをいただきまして、できるだけ早い時期に検討に着手するお許しをいただければありがたい、かように考えております。
  99. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 六十二年の防衛白書には、「日米安全保障体制」の中で「わが国は、外部から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使することとしており、わが国が武力攻撃を受けていないにもかかわらず防衛力を行使することはあり得ない」、これは当然のことでございますが、今度はこの記述はなくなっていますね。これは何か意味があるのでしょうか。
  100. 日吉章

    ○日吉政府委員 同じような御疑問を某新聞の論説欄の記事の中にも御指摘をいただいたかと思いますが、結論から申し上げますと、特段の他意はございません。  六十二年度版にそういうふうな記述がございましたのは事実でございますが、実はこれはある一つの議論の導入部といたしまして挿入しているところでございまして、我が国が日米安全保障体制下での防衛力の向上を図ることは、米国の戦略に組み込まれて、戦争に巻き込まれるのではないかという、いわゆる巻き込まれ論というものがありますので、それに対する防衛庁の考え方を初めて整理して述べるときに、その当然の前提としての前置きとしてそういうくだりを設けたわけでございまして、特に他意があるわけではございません。本年度の分に当たりましては、この巻き込まれ論につきましての記述は、先ほど申しましたのと同じような理由で省略いたしておりますので、当然ながらその前提としての文言も消えてしまった、それだけのことでございます。
  101. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 消えた方はわかりました。  では今度は、微妙に変えている方は、これは紙面の都合とかそんなことじゃないと思うから、ちょっとここで述べさせてもらいます。  まず、「自衛隊の現状と課題」の「自衛隊の能力」で、「防空のための作戦」「作戦の意義」、これは六十二年の白書には「全般的な防空作戦は、侵攻してくる敵の航空機をできるだけわが国の領域外で要撃し、」こうなっておるのが、六十三年の防衛白書では「防空作戦においては、敵の航空機をできる限り遠くで要撃し」と、「領域外」というのを今度は「できる限り遠くで」、こういうことになってくると、我が国の要撃機の活動範囲の枠をだんだん無制限に広げていくというように危惧するわけでございますけれども、専守防衛の根本的な考え方に変更はないと思いますが、これはどう説明しますか。
  102. 日吉章

    ○日吉政府委員 先生に非常に子細にお読みいただいておりまして感謝いたしておりますが、この点も結論から申し上げますと全く他意はございませんで、先生が危惧されているような御心配には当たらないかと思います。  私どもは、防衛白書をできるだけ多くの人たちにお読みいただくように、アンケート調査をいたしましたり、いろいろな形で防衛白書に対する批評を承っておりますと、まず一番多い御議論といいますか御意見は、どうも文言が難しくてわかりにくいという御指摘が非常に多うございます。そういう意味で、ここに限りませんで少し砕いた、それだけに概念があいまいになっているところがあるいはあるのかと思いますが、砕いて書いているところがございまして、ここも「領域外で」と書いておりましたのを「できる限り遠くで」というふうに書いたわけでございまして、特段の意味はございません。
  103. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それでは、これはちょっとそういう心配がありますので、ぜひ今後の問題として考慮していただく必要があると思います。  そこで、シビリアンコントロールについて、先ほどの論議でございましたとおり、今回の「なだしお」の事件の問題も、現場からの情報が総理やあるいは防衛庁長官に届くのがどうも遅かったのではないか、そういうものもあるやに伺っておりますし、今の、海上保安部が艦長の出頭を求めているのにもかかわらず反対に調査官が「なだしお」のところへ行くというような事態、そういうようなものなどをあわせ、また、今回の白書の中での「シビリアン・コントロール」という箇所で、例えば六十二年の白書の「政治が軍事を十分に把握し、」といった箇所が削除されておるとか、あるいは文民統制という面で、民主国家として譲ることのできないよりどころ、そういうものが削られておる。こういった面を考えて、この防衛白書が、危惧でなければいいのですけれども、どうも防衛政策の全面転換への伏線ではないか、シビリアンコントロールの希薄化ではないか、こういうようなものが感じられるわけです。これはどうしても感じられるわけです。  そういった面、そういうものではないという防衛庁としての見解をもう一度ここではっきりと述べていただきたいと思います。
  104. 依田智治

    ○依田政府委員 お答えいたします。  シビリアンコントロールにつきましては、先ほど田澤大臣からもお話がありましたが、今回の潜水艦事故等でも、シビリアンコントロールとしての自衛隊を預かる最高責任者である瓦前長官辞任するというくらいな大変な責任をもとに、防衛庁においてシビリアンコントロールが運用されておるというように私どもは理解しておりますし、その点については常に心して運営に当たっているところでございます。  白書につきましては、「政治が軍事を十分に把握し、」という箇所が抜けておるではないか、そういうところがシビリアンコントロール軽視の一つのあらわれだという感じでございましたが、実は、先ほど来防衛局長から話がございましたように、今回の白書は、去年いろいろアンケートをとりまして苦労した結果、やはり余りにも活字が多過ぎるのではないか、見ただけでちょっとうんざりするというような傾向をできるだけなくそうというようなことで、本文をできるだけ簡略化する、それで囲みとか写真――写真は実は倍増しております。そんなことで非常に見やすくなったという声もございます。そんなことで、「防衛政策基本」は、もちろん「憲法と自衛権」、「国防の基本方針」、「非核三原則」、「シビリアン・コントロール」、この四つを着実に書かせていただこうということで実はやったわけでございますが、ただ、「非核三原則」とか「国防の基本方針」にページを割いているのと比べますと「シビリアン・コントロール」が余りにも冗長ではないかということでございまして、私どもの方としては説明文的な要素のものをちょっと十行ぐらいカットさせていただいたということです。それでもなお、シビリアンコントロールにつきましては、この白書の中で、総理の最高幹部会議における訓示等も含めて延べ三ページを割いておるということでございまして、私どもとしてはシビリアンコントロールについては相当力を入れておるというようなつもりでございますので、御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  105. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 後で防衛庁長官のこのシビリアンコントロールに関しての御所見もあわせて伺いたいと思いますが、もうちょっとこの白書に関して論議をさせていただきたいと思います。  まず初めに伺っておきたいと思いますが、有事来援研究というのはどういうことですか。まず、その定義というか、それを伺っておきたいと思います。
  106. 日吉章

    ○日吉政府委員 有事来援研究は、委員御案内のとおり、ことし一月の瓦防衛庁長官とカールーチ米国防長官との間の防衛首脳会談におきまして、研究をしようということが合意されたものでございます。この有事来援研究につきまして明確な確立された定義というものがないわけでございますが、私どもは日米防衛首脳会談でもって合意された概念というのはこういうことだと理解いたしております。  それは、両国で合意されております日米防衛協力に関する指針、いわゆるガイドラインに基づきます共同作戦計画研究の一環として、我が国に対して武力攻撃がなされた場合の我が国防衛のために、時宜を得た米軍の来援を得ることについて いかなるやり方があるか、あるいはいかなるふうにすれば時宜を得た米軍の来援が得られるかということについての研究をするものだ、かように理解しております。瓦前防衛庁長官もそういう理解のもとにこの問題の提起を行ったことと理解いたしております。
  107. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 有事来援研究に関して、ガイドラインに基づいて行われるその前提条件として、研究、協議の結論は日米安保協議委員会に報告され、その取り扱いは日米両国政府のそれぞれの判断にゆだねるものであり、両国政府の立法、予算ないし行政上の措置を義務づけるものではない、このように本院においての御答弁の中でも伺っておるわけでございますけれども、ガイドラインに基づく主な研究としてはどんなものがあるのか、確認のために項目別に挙げていただきたいと思います。
  108. 日吉章

    ○日吉政府委員 先般発表いたしました防衛白書の中でも述べさせていただいておりますが、現在まで日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドラインに基づきまして防衛庁と米軍との間で研究してきておりますものは、共同作戦計画の研究のほかにシーレーン防衛共同研究あるいはインターオペラビリティーに関する研究などがございます。これは、先生がただいま御指摘になられましたように、指針そのもので、この研究、協議の結論は両国政府の立法、予算ないし行政上の措置を義務づけるものではないことを前提条件としております。現在までのところ、これらの研究結果に基づいて我が国の立法、予算、行政上の措置を講じたものはございません。
  109. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 その中で研究が終わったものはあるわけですね、それをもう一度。
  110. 日吉章

    ○日吉政府委員 共同作戦計画の代表的なものといたしまして、一つの侵略対応を想定いたしました研究を行いまして、これにつきましては、その後補備修正等をいたしましたが、一応研究に区切りがついた、かように考えております。ただ、今後情勢の変化等もございますので、これらの研究の性格上、必要に応じ見直していく必要はあろうかと思いますが、一応区切りがついてございます。
  111. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 一応区切りがついたというのは、全部区切りがついたのですか、もう一度。
  112. 日吉章

    ○日吉政府委員 一つの侵略対応を前提とするという前提条件のもとで、なおかつ現時点においてという前提のもとにおきますと、一応これで研究の区切りがついたと思いますが、あるいは前提を変えるとか今後の情勢の変化が著しいものがあるということになれば必要に応じ見直しが出てくるのではないか、かように考えております。
  113. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そうすると、その研究は、予算ないし行政上の措置ですが、そういったものはもう講じたのですか、あるいは今後講じていくのですか、どういうふうになっていますか。
  114. 日吉章

    ○日吉政府委員 これはあくまでも研究にとどまっておりまして、この研究結果に基づきまして、予算要求をしたりあるいは法律の改正、新しい立法を要求したり、その措置を講じたりはしておりません。
  115. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そうすると、この研究は、今後のプロセスですが、どういうふうになっていくのですか。ちょっとよくわからない。研究だけで終わって、行政上の措置なり予算の措置なりというものはないのですか。はっきりしておいてください。
  116. 日吉章

    ○日吉政府委員 研究をいたしまして、その研究内容の性格によりまして、そもそも行政上の措置なり予算上の措置が必要でないような内容のものがあるわけでございます。また、場合によりますと、その研究結果によりまして、それを反映する上で行政上の措置が必要なもの等があるいは出てくるかもしれませんけれども、今のところはそういうものは出てきておりません。
  117. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そうすると、イージス艦の配備はシーレーン防衛研究の結果ではないのですか。これは全く違った角度からイージス艦というものの配備を決めていった、こういうふうに理解するのでしょうか、もう一度御答弁
  118. 日吉章

    ○日吉政府委員 日米防衛協力のための指針に基づきますシーレーン研究からイージス艦の要求を行い、予算化が図られたということではございません。これはむしろ中期防衛力整備計画の中にその根拠を求めるべきでございまして、それに基づきまして防衛庁内部に設置されました洋上防空体制研究会の研究過程の中で、イージスシステムを導入するということが洋上防空体制を完全にしていく上で効率的であるという結論が中間的に得られまして、それに基づいて御要求申し上げ、予算化をしていただいたということでございます。
  119. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 シーレーン防衛共同研究、ガイドラインに基づいたその研究でございますね、それが微妙にイージス艦の導入というものに関連してくるのではないか。これは全然関係がない、こういうように見ていいのか。私は微妙に関連してくると思うのですが、どうでしょうか。
  120. 日吉章

    ○日吉政府委員 なかなか御理解がいただきにくい問題であろうかと思いますが、ここをあえて割り切って申し上げさせていただきますと、洋上防空体制研究会等で研究いたしますのは、洋上防空体制を整えるためには装備面等でどういうふうな装備を図ることが効率的であるか、どちらかといいますと、こういう観点に研究の眼目、主題が置かれてございますが、ガイドラインに基づきますシーレーン研究は、どちらかといいますとそれよりも、与えられました装備を前提といたしまして、日米共同作戦を展開するときにどういう作戦計画を立てることが有効であるか、またどういう作戦計画が立てられ得るか、そういうふうな観点に主眼が置かれている。若干語弊があるかと思いますが、御理解をいただく意味で割り切って申し上げますと、そういうふうな違いがございます。
  121. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 有事来援研究の具体的な内容として伺っておきますが、HNS、WHNSの研究等はどんなふうになっているのでしょうか。
  122. 日吉章

    ○日吉政府委員 有事来援研究そのものからHNSあるいはWHNSの研究に直接的に、論理必然的につながってくるものではない、かように考えております。と申しますのは、一般にHNSといいますのは、御案内と思いますが、支援基地の提供とかあるいは共同使用施設の運用、装備の事前配備といったような、施設の提供、運用等を内容といたします平時の受け入れ国支援の問題と、さらにはより広い範囲の、有事の際に支援国に対しまして基地防空なりあるいは捕虜収容等どういうふうな形で支援するかという有事HNSがあるわけでございます。したがいまして、これらのHNSあるいはWHNSというのは、米本国から来援に参りました米軍固有の問題ではございませんで、駐留米軍が既に駐留いたしておりまして、既に平時から駐留しております米軍が有事の際あるいは平時の際に活動するに伴いまして、そのときに受け入れ国側の日本がどのような形で支援するかという問題でございますから、有事来援研究から即HNSあるいはWHNSの研究が論理必然的に出てくる、こういうふうなものではございませんで、別の概念としてそれぞれ存在するものでございます。  しかしながら、有事に来援いたしました来援軍が非常に効果的に防衛活動に参加するためには支援国がどうあるべきかという問題としての研究はあろうかと思いますが、それはむしろ既に駐留しております在日米駐留軍の研究等とあわせて研究される問題でございまして、これらの後方支援に関する問題といいますのは、有事来援研究から出てくるというよりも、共同作戦計画その他もろもろの研究をいたしました結果、駐留米軍あるいは来援米軍に対してどういう支援を行うことがいいかという、そちらの方から出てくる問題ではないか、かように考えております。
  123. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 じゃ、このHNS、WHNSの研究というのはどこまで進んでいるのですか。
  124. 日吉章

    ○日吉政府委員 ただいまも申し上げましたように、共同作戦計画あるいはその他もろもろの研究を行いました中で、そこからにじみ出てまいります後方支援に対する需要に対してどう対応するか ということでございますので、むしろこの問題は時系列的にはおくれて出てくる問題でございますから、現段階においては、この研究に着手しているあるいはこの研究をそろそろ始めようとしているというような段階ではございません。
  125. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 具体的に進んでおるNATOと米国との間におきましてはどんなふうになっていますか。
  126. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 NATO正面におきましては、戦後非常に長い歴史の中でいろいろな議論が行われながらHNSの体制ができ上がってきたということでございまして、非常にわかりやすくどういうプロセスを経てできてきたということは必ずしも言いにくいという感じがいたします。特に、ドイツが正面になるわけでございますが、ドイツの場合は、もともとおりました米軍が一部引き揚げたもの、これを危機時にまた再びドイツに戻すというのが有事来援の思想でございますし、それからドイツには、米国以外にイギリス、フランス、カナダ等いろいろなNATO国の軍隊が長い間おりまして、そういう過程を経てだんだんHNSの体制が整えられてきたということではないかと存じます。  比較的最近の例といたしましてわかりやすいのは、ノルウェーの例かと思います。ノルウェーの場合は、一九七六年にNATOの北翼の安全についての研究がアメリカとノルウェーとの間でスタートいたしました。一応の結論が一九七九年に出ておりまして、その結果として、アメリカ海兵一個旅団が有事の場合に来援することが適当である、そういう結論ができておりまして、その海兵一個旅団を受け入れるためにいかなる支援体制をつくるべきかということを今度またノルウェー側で研究した結果、アメリカとノルウェーとの間に海兵一個旅団の有事来援、それに対する支援体制、そのための兵器の事前集積といったものを一つのパッケージとした合意ができ上がっております。この場合は、ですから一種の研究が先行して、そのプロセスの結果合意ができた、そういう例もございますけれども、NATO全般がそういうふうに動いてきたということでは必ずしもございません。
  127. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 もう一度、くどいようで申しわけないのですが、有事来援によって米国とそれからNATOとの間で結ばれているWHNS協定、その前の段階として、同じように有事来援研究というプロセスを踏んで、そしてWHNS協定という形に進んだのじゃないのですか。私はそれがノーマルなものだと思うのですけれども、説明してください。
  128. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 ただいま申し上げましたノルウェーの場合は、平時において外国軍隊の駐留がございませんで、有事のときにアメリカ海兵一個旅団、それからそのほかに、前はカナダからの増援等が合意されていたのですけれども、最近カナダはそのコミットメントを引っ込めてしまいまして、ほかの国が来援することになっておりますが、平時におりませんので、そういうふうに有事のときに来援した外国軍隊に対する支援という問題が出てきておるわけですけれども、欧州正面でありますドイツを中心とした地域におきましては、平時に米軍その他の外国軍隊がおりまして、したがってその平時にいる軍隊についても、当然のことながら平時の支援、それからそれが戦時に至った場合の支援の体制というものを組まざるを得なくなっているわけでございまして、有事に来援する部隊独特の問題ではないということで、有事来援とそのWHNSとは必ずしも結びついていないというのが現状かと存じます。
  129. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 そこで、この研究という言葉は、これは日本と米国との間における独特なものですか。ほかにはないですか。
  130. 日吉章

    ○日吉政府委員 御質問の意味が必ずしも正確に理解できていないかもしれませんが、あるいは研究という形で表現されているものがあるかもしれませんけれども、少なくとも防衛面につきましては日本と米国との間では日米安保条約というものが締結されておりまして、そのもとですべての協力体制が組まれております。その一環といたしましてガイドラインも設けられ、それに基づいて研究するわけでございますから、そういうパートナーシップを組んでおります国は米国以外にはございませんので、そういう意味では、米国との間でのみそういう意味での研究という言葉は使われていると理解していただいてよろしいのかと思います。
  131. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 日米のいろいろな協議が重なっていきますよね。いわゆる協議の積み重ねが研究ですか、もう一度答弁してください。
  132. 日吉章

    ○日吉政府委員 ただいまの私の答弁はあるいは適切でなかったのかもしれませんが、研究という言葉を他国との間でも使っている場合があってはいけないと思いまして日米安保体制まで援用したのでございますが、このガイドラインに基づきます研究はそれぞれ独立の形で研究がなされているわけでございます。
  133. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それでは、この有事来援研究について、今回の白書にあるのは、WHNSについては「有事来援研究を行うか否かにかかわらず、本来、研究する必要がある問題」というふうに記述していますね。そして同じくWHNSについて、日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドラインにおいては、「後方支援に関する日米間の相互支援の研究に係るもの」こう記述されております。それから、先ほどいろいろ伺いましたが、これは各種の研究の項目が出そろった段階で別途改めて行われるものだ、このように白書で述べておりますけれども、五月の日米安保事務レベル協議では、先ほどもその面に関しての若干のものがございましたけれども、もうちょっとわかりやすく、どのような進展がなされたのか明らかにしてくれませんか。
  134. 日吉章

    ○日吉政府委員 五月の日米事務レベル協議でございますが、私ども俗にSSCと言っておりますが、私も本年初めて参加をいたしたわけでございます。有事来援研究、WHNS協定、これらにつきましては、いずれについても話し合いは行われておりません。
  135. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 同じく白書にあるわけでございますけれども、五月上旬の第十八回の日米安保事務レベル協議で、「共同作戦計画の研究に係る後方支援面の問題点の洗い出しを行っていくことで双方の認識が一致」こういうふうに書かれていますね。これはどうなんですか、WHNSの準備作業が開始されたというような理解をしてはいけないのでしょうか、それはまた全然違うのですか、明らかにしてください。
  136. 日吉章

    ○日吉政府委員 先ほども申しましたように、後方支援面の研究というのは、日米共同研究の中で共同作戦研究、いろいろな研究をしていきまして、その中から新たににじみ出してくるわけでございまして、そういう形で後方支援面についての研究は行うことにいたしましょうという話し合いが行われたことは事実でございますが、これは後方支援面についての研究の一種の手順をお互いに話し合ったということでございまして、積極的に有事来援研究あるいはWHNSにつきまして話をしたというようなものではございませんでした。
  137. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 それでは、防衛庁長官に最後にお伺いしておきます。  私はいろいろと防衛白書を例にとりまして、シビリアンコントロールの行く末というものを、この白書を見る限りにおいては、例えば先ほどもここで申し述べましたが、全般的な防空作戦としての我が国の要撃として、「敵の航空機をできる限り遠くで要撃し」というような表現にしたことにも触れたわけでございますけれども、私は、どんどんこれを拡大していくといったものになってはならない、このように思いますし、シビリアンコントロールというものをどうしても守っていかなければならぬわけでございまして、これが微妙に、このシビリアンコントロールが危惧されるような、あるいは一歩踏み出しているような、そういったものがなければいいわけでございますけれども、今の有事来援の論議に関しましても、そのねらいはどうもHNSであり、WHNSではない か、ヨーロッパ並みのそういった有事来援に関しての疑念というものが生じてくるのではないか、こういった面が私は思われるわけでございますので、長官、ここで国民の皆様にそういった危惧を抱かしてはなりませんし、このシビリアンコントロールという問題に関して、ぜひ長官としての御所見をお伺いしておきたいと思います。
  138. 田澤吉郎

    田澤国務大臣 我が国は、平和憲法のもとで、専守防衛に徹して、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないという基本理念を貫かなければなりません。そうして、節度ある防衛力の整備を計画的に、しかも継続的に進めていく、さらには日米安保体制の信頼度を向上させていく、こういう一つ防衛の指針を貫くためには、何としても文民統制を確立していかなければならない、こう思うのでございます。そういう点で、今御指摘のようないろいろな問題がございますけれども、あくまでも私たちはシビリアンコントロールを確立するという決意でこれからも処してまいりたい、こう考えますので、御理解のほどをお願い申し上げたいと思います。
  139. 竹内勝彦

    ○竹内(勝)委員 以上で終わります。
  140. 竹中修一

    竹中委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十二分散会