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池田参考人 ただいま大変基本的な御
質問をいただきまして、お答えを申し上げたいと思います。
私は、今おっしゃったように、
昭和十一年から六十三年まで五十二年間、三井物産という
国際貿易を行う
会社におりまして、その間、
アメリカ、
イギリスにも若干の時間を過ごした次第でございます。今回、
NHKという組織の
会長を引き受けるに当たりまして、過去においてはどんな人が
会長であったかということをちょっと調べてまいりましたら、
NHKの前身でありまする
東京放送局というのが今の愛宕山の
曲垣平九郎のところにあったのですが、そのときの、
会長ではなくて
総裁でございましたが、その方は有名な
後藤新平という方であったことがわかりました。大正十三年にそれができまして、十四年に名古屋及び大阪ができて、後にそれが一緒になりまして
社団法人日本放送協会というものができたということを承知したのであります。そのときは、
岩原謙三氏が
総裁ではなくて
会長になったと思っております。その後、
昭和十一年になりまして
岩原さんが亡くなったために、後任をだれにするかということで非常に
議論があったそうですが、
後藤新平さんにまたお願いしようと思ったところが、
後藤さんがどうしても引き受けないために、当時政界のあれであった
近衛文麿さんが、
会長ではなくて
総裁になられたと聞いております。
昭和十一年に
岩原さんが亡くなられてその後どうしたかということは
皆さん十分御存じのことと思いますが、
昭和二十五年に
放送法というものができまして、従来
社団法人であったものが
法律に基づく
公共放送団体に相なったわけでございまして、私の承知するところでは、初代の
会長は
総裁ではなくて、
日本放送協会の
会長は古
垣鉄郎という朝日新聞の
出身者で、後に
フランスの大使になった方でございます。その他
阿部真之助さんとか
前田義徳さんとか、いわゆるそうそうたる
人物がこの
日本放送協会の
会長となって今日に至っておられまして、
前任者の
川原さんも今おっしゃったようにまことに立派な方でございまして、私はこれらを学ぶたびに、つくづく私のようなお粗末な
人間が果たしてこの大役にたえ得るかどうかということについていささかじくじたるものがございますが、せっかく非才を傾けて、この大事な
世界に冠たる
公共放送である
NHKというものを、非力ながら
皆さんの協力を得まして、
名実ともに
世界に冠たる
公共放送としての実体を築き上げて、現在までの
日本放送協会が持っておるいろいろなひずみとか、そういうものを打破するということを申し上げるとちょっと語弊がありますが、やっていきたいと思っております。
私が
NHKに来まして最初に感じたことは、
大変人材が多いということでございます。ことしの九月に、就任後二カ月目に私は
アメリカに参りましたが、その目的は、
アメリカの下院のコミティー・オン・ザ・テレコミュニケーション・アンド・ファイナンスというコミティーのチェアマンをしておりまする、ミスター・マーキーという人に会うためでありました。彼に私が言いましたことは、「
イン アワ オーガナイゼーション ウイ ハブ サムシング ライク フィフティー ドクターズ オブ エンジニアリング」
工学博士が五十人おるよと、これらが、「ゼイ トライ
ベリーハード ツー
インペント
ハイビジョン ホワット ウイ コール
イン ジャパン。
イン ザ ユナイテッドステーツ イット ハズ ビーン コールド ハイ デフィニション
テレビジョン」今の
ハイビジョンですな、それをつくるのにトゥエンティーイヤーズ、二十年かかったんだ、これらの
人間が協力してつくった、そういうものは
アメリカにはもちろんない。ヨーロッパにも、
フランスがあると言っておりますが、比べてみると問題にならない。ことし
イギリスのブライトンで両方並べて比較するという会があったんですが、
フランスはずるくて、てめえの方だけやりまして、我々は別の格好で展示するというふうな苦肉の策を講じまして、彼らの
技術の劣っておることを隠そうとしたということがございます。
これからこの
ハイビジョンというものをどうするか。
皆さんもごらんになったと思いますが、
スキャニングラインというのは
走査線のことですが、千百二十五本のやつ、今
皆さんのうちの
テレビジョンは五百二十五本の
スキャニングラインでございますが、千百二十五本というために非常に絵が緻密に相なりまして、そして
画面の大きさが今の四対三が十六対九、本当なら十六対十二になるやつが十六対九で横に長い。これは
技術者に聞きますと、目の
角度というのが、物を見る
角度が三十度くらいが適当だということだそうでありまして、そのために
画面がやや横長になっております。こういうものを今後ますます
アメリカなどに何らかの形でロイヤリティーを取るとか、今財政的に大変困難な
NHKの
状態に多少ともプラスになればいいなと私は思っておる次第でございます。
そのほか、
衛星でございますが、私の方の
技師長がそこにおりますが、これは今話が出たテレメーターエンコーダーというものが故障を起こしまして、その
衛星の
姿勢がいつ何どきどっちに行くかわからぬということになっておりますので、後刻お願いしたいと思いますが、
衛星放送には
衛星料金を取りたい、こう思っておるわけでございまして、そういう
状態にあるときに
衛星料金を取ることは甚だ不適当ではないかという
議論もあるわけですけれども、後刻
皆様方の御
質問があると思うので、それには
技術的にお答えしたいと思っております。
それから地上波の
聴取料も上げたい、今の
財政収支が、六十三年度の
予算によりますと百二十四億の赤でありまして、そのほかに
債務償還が百三億ありますので二百二十七億円赤になる予定になっておりますが、これをどう詰めるか、今毎日毎日
NHKの内部で検討中でございまして、いずれ年内には一つの案を出して、一月末の
国会に提出いたしたいと思っておるわけであります。
それから私の感じましたことは、
技術は別といたしまして
人間が多い。一万五千人が多過ぎるじゃないか。一万五千三百人という数字ですが、これを何とか今のうちに減らして経費の面から縮小を図り財政の安定をしたいという希望が多いのですけれども、一万五千人が多いか少ないか見方によるのでありまして、我々のお師匠さんである
イギリスのBBCは二万九千人の
人間がおります。これは何でもかんでも自分でつくろうとしたためにそういうことになっておるそうでありまして、最近
放送白書が
国会に提出されて、
経営をもう少しコマーシャルにやったらどうかという
議論も出ておるようですけれども、我々はそれらの先輩のやり方なども頭に入れまして、後刻
国会の
皆さん、逓信
委員会の
皆さんにお願いをいたしたいと思っておる次第でございます。
それから
人間が、職員録がこんなに厚いのがありまして、小さな字でいっぱい書いてあるのを見ますと、大体
局長があれば下に副
局長がおる、ディレクターがおる、その下に副部長がおるということで、役のつかない人の数が少ないくらい役付ばかりいるというので、私はそれを見て非常に、こんなに役が必要なのかなと単純な疑問を持っておるのですけれども、それも長年の歴史の間に積み重ねられてきた結果であろうと思いますので、これらも子細に検討いたしまして
経営の効率化の一翼を担ったらどうか、かように思っておるわけでございます。
少し長くしゃべったように思いますがこの辺で、御
質問にお答えしたと思いますが、もし何かありましたらまたお答えいたします。ありがとうございました。