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1988-12-16 第113回国会 衆議院 地方行政委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十二月十六日(金曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 松本 十郎君    理事 片岡 清一君 理事 片岡 武司君    理事 渡海紀三朗君 理事 西田  司君    理事 平林 鴻三君 理事 山下八洲夫君    理事 草野  威君 理事 岡田 正勝君       石橋 一弥君    瓦   力君       玉生 孝久君    友納 武人君       中山 利生君    松田 岩夫君       渡辺 省一君    加藤 万吉君       中沢 健次君    細谷 治嘉君       安田 修三君    小谷 輝二君       柴田  弘君    経塚 幸夫君       寺前  巖君  出席国務大臣         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     梶山 静六君  出席政府委員         内閣官房内閣内         政審議室長   的場 順三君         警察庁長官官房         長       森田 雄二君         通商産業政務次         官       浦野 烋興君         自治大臣官房長 持永 堯民君         自治大臣官房総         務審議官    小林  実君         自治省行政局長 木村  仁君         自治省財政局長 津田  正君         自治省税務局長 湯浅 利夫君  委員外出席者         総務庁行政管理         局企画調整課長 陶山  晧君         総務庁行政管理         局管理官    菊地 徳彌君         大蔵省主計局主         計企画官    杉井  孝君         大蔵省主計局主         計官      水谷 英明君         地方行政委員会         調査室長    大嶋  孝君     ───────────── 委員の異動 十一月十七日  辞任         補欠選任   谷  洋一君     玉生 孝久君 十二月二日  辞任         補欠選任   鈴木 恒夫君     瓦   力君 同月九日  辞任         補欠選任   金子 一義君     宮澤 喜一君 同月十六日  辞任         補欠選任   宮澤 喜一君     金子 一義君 同日  辞任         補欠選任   金子 一義君     宮澤 喜一君     ───────────── 十一月十日  留置施設法案廃案に関する請願児玉健次紹介)(第二五五四号)  同(矢島恒夫紹介)(第二五九二号)  留置施設法案反対に関する請願金子満広紹介)(第二五五五号)  同(辻第一君紹介)(第二五五六号) 同月十四日  留置施設法案廃案に関する請願関山信之紹介)(第二六四二号)  同(安田修三紹介)(第二七一二号) 同月十五日  留置施設法案廃案に関する請願浦井洋紹介)(第二九七九号)  同(東中光雄紹介)(第二九八〇号)  同(藤原ひろ子紹介)(第二九八一号)  同(村上弘紹介)(第二九八二号)  留置施設法案反対に関する請願浦井洋紹介)(第二九八三号) 同月十七日  留置施設法案廃案に関する請願岩佐恵美紹介)(第三三七三号) 同月十八日  留置施設法案廃案等に関する請願田中恒利紹介)(第三四五六号)  固定資産税及び都市計画税に関する請願矢島恒夫紹介)(第三四五七号) 十二月十五日  留置施設法案廃案に関する請願草野威紹介)(第三五八二号)  同(坂上富男紹介)(第三六七一号)  留置施設法案反対に関する請願安藤巖紹介)(第三六三五号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  地方自治法の一部を改正する法律案内閣提出、第百八回国会閣法第八五号)      ────◇─────
  2. 松本十郎

    松本委員長 これより会議を開きます。  第百八回国会内閣提出地方自治法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案につきましては、前国会におきまして既に趣旨の説明聴取しておりますので、これを省略したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 松本十郎

    松本委員長 御異議ないものと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────  地方自治法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  4. 松本十郎

    松本委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安田修三君。
  5. 安田修三

    安田委員 それでは、地方自治法質疑に入る前に、最近緊急の問題がよく目についておりますので、まず初めに警察庁に対しまして若干の質問をいたしておきたいと思います。  それは、現職警察官による不祥事件が最近大変目につきまして、国民生命財産を守るために時には身命の危険を冒して職務についている多くの警察官がいる中で、こうした不祥事件のために国民信頼を失うということになれば大変でございます。私が当局からもらった懲戒処分の数は五十九年を境にしまして減少傾向にあるようでありますが、しかし、事犯が悪質になっているようにも実は思うわけであります。  かつて五十七年ゲーム機汚職、五十九年サラ金苦のための銀行強盗事件などが発生したことがあります。今回は尼崎競艇警備に関しての贈収賄強要疑惑、さらに大阪枚方署少年暴行死亡事件など、起きてはならない重大なことが実は起きておるわけでありまして、この事件経過についてひとつ当局からお伺いしたいと思います。
  6. 森田雄二

    森田(雄)政府委員 心なき一部の警察官が不祥事を起こしまして、国民警察に対する信頼を揺るがせ、また、先生方にも大変御心配をかけてお りますことは、まことに申しわけのないことであります。  お尋ねをいただきました尼崎競艇場事案について概要を申し上げたいと思います。  本件は、尼崎競艇場警備をめぐりまして、施行者側であります市当局尼崎西警察署との間にいろいろ妥当性に問題がある関係があったというものであります。話が大変込み入っておりますが、整理をいたしまして個別に順次申し上げたいと思います。  第一は、警察側競艇施行者側から備品を購入していただき受け入れていたという問題であります。  寄附の受け入れにつきましては、本来、個々物品につきまして、寄附者寄附の目的、寄附内容等を総合的に検討いたしました上、県の財務規則で定めております寄附採納手続をとって受領すべきこととされております。ところが、本事案にありましては、このような検討をせず、かつ正規の手続をとることなく、いわば慣例的に物品を受領していたというものであります。金額は年間五十万の枠内というふうに報告を受けております。今後は定められた手続を確実にとるよう指導してまいりたいと考えております。  また、尼崎西署署長公舎側溝工事でありますとかクーラーの設置に要する経費を市の特別会計から支出をしていただいていたことも判明いたしておりまして、これらにつきましては、市側善後策につきまして協議をしていると報告を受けております。  第二は、いわゆる飲食関係であります。  警察署側尼崎市の幹部などとの懇談会の中には、初顔合わせでありますとか警備の打合会といったような必ずしも不当と言い切れないものが含まれていることは確かでありますが、しかしながら、こういう会合は、その場所、出席者範囲回数等から具体的に判断をいたしまして、社会通念に照らし是認されるようなものでなければ絶対に相ならないと考えております。今後は、職務執行に当たって必要と認められる会合であって、かつ批判を招くようなおそれのないものを除きましては辞退させるように指導してまいりたいと考えております。  なお、報道されましたいわゆるツケ回し、すなわち、市側抜き飲食をいたしまして、その代金を市に払わせておるというケースについてでありますが、今日までの県警調査によりますと、三万三千円ばかりの飲食代を一度支払わせていたことが判明しております。まことに不届き、極めて遺憾と言うほかないと考えております。  第三の問題は、警察署で行います柔剣道大会等の御祝儀ということでお金ビール券、さらには競艇警備のためにいただく感謝状に添えられました金一封を受領していたということであります。  これらのお金は、何回かに分けてでございますが、合計いたしまして年間三十万円ということであります。これらは、個々的に見ますとあるいは社会通念上の御祝儀範囲内と思われる面もありますけれども、全体として見ればかなりの額に上っておりまして、妥当性を欠いているのかなという気がいたします。今後は、このようなものをちょうだいいたしますにつきましても、批判を生じる余地がないような場合を除きまして、お金や物の受領は原則として辞退するように指導していきたいと考えております。  こういう関係警察側の当事者でありましたのは、前の尼崎西警察署警ら課長でございましたが、この人間につきましては、以上のような関係調査いたしまして、このような事実が判明いたしましたところから、十二月十二日付で懲戒免職処分といたしております。また、関係者監督責任につきましても、近く結論を出す予定であると承知をいたしております。  いずれにいたしましても、再びこのような事案を引き起こすことのないよう厳しく指導し、規律の振粛に努めてまいる所存でございます。  二つ目大阪少年死亡事件でございますが、本年十二月三日、大阪枚方警察署警察官建造物侵入現行犯人として逮捕した少年四人を本署へ連行中、逮捕した少年のうちの一人が苦痛を訴えたために病院に収容いたしましたが死亡したという事案であります。  警察といたしましては、死亡の直後から本部捜査一課員を投入いたしまして、少年の遺体の解剖所見や現場に臨場しておりました警察官を初めとする関係者からの事情聴取等事案の解明に努めました結果、制圧行為を図った警察官の行き過ぎた行為によりまして少年死亡に至らしめた疑いが濃いものと判断をいたしまして、十二月十日付でこの警察官懲戒免職処分にいたしますとともに、特別公務員暴行致死の容疑で逮捕したものであります。  日本の警察としてはまことに恥ずかしいことであります。今後断じてかようなことが起きることのないように十分の指導に努めたいと考えております。
  7. 安田修三

    安田委員 尼崎あるいは伊丹両市尼崎競艇警備事件につきましては、我々もいろいろな角度で調べてはおりますが、いろいろ限界もございます。今もおっしゃったように、三十万円いただいても、それが悪いということでは断定もできないような言い方でございます。それからまた、社会通念という問題も言葉の中には出てまいっておりますので、ラインの引き方というのはいろいろ双方の考え方によって違ってまいると思います。そういう点我々も、警察市当局との関係でどれがどのような形でこういうことになったのかという問題等もございますので、もう少しいろいろと調査したいな、こう思っておるわけであります。ただ、金額的にも、今おっしゃった額以上のこともまた耳に入ったりしております。いずれまた、この問題については機会をとらえていろいろとお聞きもしたいと思っておるわけです。  それから、枚方署加地裕巡査長暴行事件について、今森田官房長から遺憾の意を表明されました。発表では当地の新田府警本部長も大変陳謝しておられます。私、大阪府警兵庫県警というのはとにかく、先ほど言いましたゲーム機あるいはピストル強盗、連続でよく起きたときがございまして、あそこの方は何かちょっと大変なところだなという感じを持っております。いろいろと新聞報道等によりましても、あの当時の四方府警本部長、今は関西空港会社の常務のようでございますが、何か関西というところは特殊なところだ、関西の方いらっしゃると申しわけない、決してそういう意味じゃございませんが、そういう談話も見ました。とにかく、なかなか我々が考えることではないような社会通念もあるようでございます。そういう点等いろいろ見ながらも、なおかつ悪いものはやはりきちっとしていかなければならぬということになるかと思いますが、そういう中に、大阪府警がいろいろと市民との信頼関係を取り戻そうということで、ことしは何かいろいろな市民参加懇話会みたいなものをつくられたり、あるいは監察一一〇番というものをつくったりということで大変努力をしておられることを大変好感を持って実は見ておりました。  そこへ今度の少年死亡事件でも、府警がいち早く監察をして、そして発表し、陳謝されたということに思っておったのでありますが、たまたま週刊誌発表によりますと、ことに実は二点指摘してあります。一つは、「A君の死後、警察の対応に不可解な動きが見受けられた。」それは「A君のガールフレンドを一晩中ぶっ通しで取り調べ「暴行は見ていません」という調書を取った。」この点が一つ。もう一つは、「A君の母親(四九)にも、「シンナー中毒死疑いがある」と告げ、少年健康状態をしつこく聞いている。母親が問われるままに「幼いころ喘息だった」「胃腸が弱かった」「私は心臓病」と答えると、それが「少年は病弱で、心臓病疑いもあった」という記者発表にすり替えられた。」そして、今回の事件の発覚も、実はA君と合わせて四人おったわけですので、A君の友人らのマスコミへの告発から実はこの問題が公に出た。そうしますと、私は、大阪府警は今度はみずから内部に手を入れた、これは体 質も変わってきたなと思ったけれども、これは週刊朝日でございますけれども、これを見まして、私もやはりまだこれでは改善されていないのかな、こう思ったわけでありまして、ここら辺はどういうぐあいに当局はとっておられますか。
  8. 森田雄二

    森田(雄)政府委員 今御指摘をいただきました週刊誌記事は私も読ませていただきました。  大阪府警説明報告によりますと、少年から、シンナーを吸引しておった事実、それから建造物侵入に関する事情聴取、それから少年が死に至った経緯を十分に聞くために事情聴取に長時間を要したけれども、何か特別の誘導によって供述をある方向に強要するというような事実はなかったというふうに言っております。これは手前みそな言い方だとおしかりを受けるかもしれませんが、死体がある、解剖もするということでございますので、原因が物理的に発見されるはずのケースでありましたから、あえて大阪府警が事実を隠ぺいするために特別の工作をしようとしたことはなかったのではなかろうかと考えておるところでございます。ただ、そういう疑惑を呼ぶとすれば、それは大阪府警の不徳のいたすところといいますか、よろしくないことでございまして、今後はそういうことも含めて十分指導してまいりたいと考えております。
  9. 安田修三

    安田委員 そこでもう一つ聞いておきますが、事実経過新聞の当初の発表と、それから後から子供たちの直接インタビュー等から出て、この間からよく新聞に出ていることが、あれは事実でない、そのうちにそれが事実になってくるということがたくさんありまして、大臣は特に税制特でよく体験してこられたと思うのでございますが、今度の週刊朝日にも、例えばA君がなぜけられたか、引きずり込まれて体落としに遭ったかという経過について、当初の新聞発表と、今事実経過として調べた週刊誌発表とは違っているわけです。それはなぜか。初めは警察発表によって、いわゆるパトカーから少年が出ようとしたので警察官が一緒に出て、そこでもみ合いになった、こうなったのですけれども、事実は、この中では、たまたま警察官の制服の問題から警察官と言い合いになって、引きずりおろされて、そして殴るけるの暴行を加えたという、まるきり違ったのが出ておるわけなんですね。ここらあたりは官房長、どうなんですか、どっちが本当なんですか、ちょっと聞かせてください。
  10. 森田雄二

    森田(雄)政府委員 事実は、ただいま被疑者を逮捕いたしまして捜査中ということで、もう少し時間をかしていただきませんとはっきりしたこと、確定的なことがわからないと思いますけれども、いずれにしても、一瞬、瞬間的出来事であったと聞いておりまして、もみ合いになったものですから目撃者の証言も大変区々であったというようなことでございました。  それから、マスコミで取り上げられております警察の当初の発表ということでございますが、あれも警察本部として正式に認定して発表したわけではございませんで、いろいろな取材に応じていろいろな人間がしゃべったのが記事になってしまった、こういうことと聞いているところでございます。
  11. 安田修三

    安田委員 そうであれば、後からこういうぐあいにだんだん目撃者等談話等をとって総合して状況が組み合わされてきたのがどうも事実のようでございますので、私はそういう点は今後、事実経過について、初めは今おっしゃったようにそのときの状況発表した、だが、後から真実がわかれば、そのようにきちっと発表されてしかるべきではないかと思います。  さてそこで、警察というのは外からは特殊な組織と見られがちであります。しかし、警察といえどもこの社会一員でありまして、そこには社会の出来事がいつも映し出されておると思いますから、いろいろな事件猫ばば事件だとかいろいろなことが起きるのも実はそういうことだろうと思いますし、警察官も人の子でありますし、いろいろな事件がそこに起きて不思議ではないと私は思います。しかし、警察警察官というのは、これは頼りになる存在としての期待信頼がなければならないわけでありますし、現にそうした社会的な使命も背負っておられるわけであります。警察不祥事件を単なる責任追及あるいは規律や教養だけを求めるということだけでとどめていてはいろいろと問題が出てきますし、それから今回の場合でも、本来は警察のこの問題について、どうしたら国民との間に民主警察として信頼関係ができ、すっきりしたものとなるかということを、この委員会は今までこういう問題を一つも取り上げたことがないのですから、集中審議ぐらいしてやるべきが本当だろうと思うのです。しかし、たまたまこういう短時間のうちに、しかも今地方自治法の重要な審議を控えて、しかも年末警戒の大事な時期にあってこんなことをやっていてはかえって全国の警察官に士気の阻喪を来してはまずいとも思いますし、そういう点で私は今は適切な時期ではないと思っております。ただ、一般社会の変化に対応しながら警察組織と改革されていく問題点を摘出することが大切でありますから、いずれは警察組織、あり方を集中して審議して、今後の警察の運営に役立てるという機会をぜひ本委員会でつくっていただきたい、こういうことをひとつ私は委員長に要望しておきたいと思います。これは決して警察をいじめるとか、さっき言ったように責任追及という問題ではない。やはり社会の中の警察一員としてどうあるべきかということをお互いに、当局も我々も真剣にこれを見て論議をしていかないと、この種の事件というのは私はなかなか絶やすということはできないんじゃないか。内部努力も必要、だが、外から見た目でもいろいろ問題点を出していくことが必要ではないかと思います。  そこで、私最後に一つ言っておきますが、それは警察人員構成年齢から見ればひょうたん形が逆ひょうたん形に移行してまいっております。言うなれば警察官高齢化も実は進んでおります。そのために内部昇進等もできない、同じ年代の人がたくさんおって。これは年齢構成その他の統計上から見ますと、そういう世代もたくさんおられまして、中にはいらつきというような目に見えない原因もあるのではないだろうかとも私は思います。  今年の懲戒免職十五名、当局からいただきました十五名のうち、十名までが四十歳前後に集中している。若い人たち事件を起こしているか、私はこう思っておりましたが、そうじゃない。一人は五十五歳の人がおりますが、あとは四十歳前後の警察官としては分別のついている年代。しかも相手方もその人もこういう事件によって人生を棒に振ってしまう。本来は考えられないようなことが実は起きているわけです。そこに注目していかなければならないのではなかろうかと私は思います。今回はとりあえず改革のために内部努力要請していきますが、同時にまた、少年暴行事件等のようなケースについて十分の手当てをしておいていただきたいと思います。  そこで、公安委員長にまず一つ。本事件等が起きた。これからとりあえず、将来の問題は先ほど言いましたが、とりあえず公安委員長としてどのようにきちっとしていくか、お伺いしたいと思います。
  12. 梶山静六

    梶山国務大臣 安田委員指摘のとおり、近来警察官各種不祥事件が続きまして、これによって国民皆様方に多大の御迷惑をかけております。もちろん一件の不祥事件も許さるべきことではございませんけれども、この一部の不祥事件によって、身命を賭して日夜任務遂行に当たっております警察全体に対する信頼が損なわれましたことは、まことに残念の限りでこざいます。今後とも綱紀の粛正、職務執行適正化に努めて、ただいま委員指摘のようないろいろな内部管理やあるいは外的な交流等をひっくるめまして、国民信頼を回復することに全力を尽くしてまいりたいと考えております。
  13. 安田修三

    安田委員 警察関係は以上で終わります。  さて、地方自治法に入る前にもう二件だけ、今度は自治省関係についてお尋ねしておきたいと思 います。  大臣にお尋ねするのでありますが、六十三年度末で期限切れとなる国庫補助負担率引き下げについて、ことしの春以来いろいろとこの問題について自治省も取り組んでおられるわけでありますが、その回復を完全にするということは極めて大切なことであります。自治省努力しておられるその成果が上がるのか上がらないのか、大変注目すべき時期に入ってまいっております。これについてひとつお伺いしたいと思います。
  14. 梶山静六

    梶山国務大臣 私も自治大臣に就任をしてこの一年来、与野党の皆さん方の大変な激励をちょうだいいたしまして、この国庫補助負担率復元の問題、いわゆる緊急退避的な、大変厳しい財政事情内需拡大という要請を受けての緊急避難的な補助率のカットでございますから、約束どおり明年度からはもとに戻すべきだという主張をし続けて大蔵や世論の喚起に努めてまいったところでございますが、いずれにしても、国、地方財政事情、いずれも楽ではございません。そしてまた、私は国と地方補助負担制度事務分量その他の見直しを行わなければ適正な配分はできないと思っておりますけれども、いずれにしても、私は、約束事でございますから、まず国と地方信頼を回復するのには約束を守ることが前提だ、こういう主張をしてまいったわけでございます。  ことしの春以来、大蔵省に対しましても、早く個々の問題について見直しを行い、適正な補助負担率の問題の解決に努めろ、こういうことを申し入れをし、ようやくこの秋以来というか最近になりまして大蔵自治の間で協議機関が設けられて、今個別の問題の折衝を行っているのが現状というふうに聞いております。  各与党野党をひっくるめ、あるいは地方六団体その他の強い要請もございますので、この補助率復元に向かって、今後とも全力を尽くして期待にこたえるために努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  15. 安田修三

    安田委員 これはいつごろこの問題について決着がつきますか。
  16. 梶山静六

    梶山国務大臣 先般来申し上げておりますとおり、六十四年度の予算編成期にこの問題は討議をするということになっておりますので、ことしの夏の概算要求でも、もしもこの国庫補助負担率もとに戻せばという試算もこれにつけ加えてこの論拠にいたしておりますが、いずれにしても、前の覚書のとおり、六十四年度の予算編成期にこの問題の決着をつけたいと考えております。
  17. 安田修三

    安田委員 私は、梶山大臣でありますから、むざむざと向こうに城を落とされるようなことはないだろうと思っておるわけでありまして、ぜひひとつ復元をしていただきたいということで、御尽力をお願いしたいと思います。  さて、ふるさとづくり特別対策事業の採択が、随分資料をいただきましたが、なっておりますので、これの状況をひとつお伺いしたいと思うのです。  それとともに、今年度の国税三税の自然増収による地方交付税の増額分について、各地方自治体、市町村に一億円当て配分することが先般来盛んに報道されております。そこで、これもふるさとづくりのプランを作成させるのが目的だ、こう聞いておるわけでありますが、お金を配ることは大いに結構でございます。問題は、ふるさとづくり特別対策事業の場合も、あの要綱等に書いてありますように、文化会館とか市民会館とかそういう箱物はつくらないのだ、こういうことで実は出ておるわけであります。  さて、今度の場合は、もちろんそういうプランづくりということでございます。私、自治体にお金を配ることは大いに結構、また自治体がひもつきでなく自主的に使っていただく、これは我々のかねがねの要望。問題は、地方交付税の場合には、これはもう本来地方自治体の固有の財源でありますから、地方交付税法に従って配分するのが本来の建前。それをそのときどきの恣意によってつかみ取りのようなやり方をしますと、地方交付税そのものの機能、本質というものがねじ曲がってしまう。そういう点で、このやり方については十分慎重に扱う必要があるのではないだろうか。いろいろな点で金をやろう、配ろうという、当然これは地方自治体の金でありますから、本来地方自治体へ行くべき金でありますけれども、問題はその使い方について新たな発想をして行おうというのでありますならば、やはりその着目すべき点について慎重であらなければならぬと思うわけでありまして、その点、ひとつ概要等お聞かせ願いたいと思います。
  18. 梶山静六

    梶山国務大臣 昭和六十三年度に創設をいたしましたふるさとづくり特別対策事業は、都道府県を単位として魅力あるふるさとづくりと多極分散型国土形成を図るため、緊要度の高い地域振興プロジェクトを対象として実施をしております。  今年の六月に第一次分、十二月に第二次分を指定し、現在合わせて二百二十六団体、四十一道府県、八政令都市、百七十七市町村が行う百六十プロジェクト、三百六十二事業を指定をいたしております。  これも魅力ある地域づくり、いわば地方自治団体の独創性、自主性を生かすという主張もとに行ってまいったわけでありますが、冒頭は各省庁との事業の競合、こういう問題で調整に苦労をいたしましたけれども、最近この問題がようやく定着をいたしまして、地方自治体全体として自主的な事業が行い得るという状態になってまいったわけであります。  この事業はいわばハードの面を担当するわけでございますが、今安田委員から御指摘がございました、いわゆるふるさとづくりと申しますか、竹下総理がふるさと創生をひっ提げて総理・総裁選に臨んだのは一年ちょっと前のことでございますが、総理も大変大きな関心を持っております。今まで日本というのは、この百年来、明治維新以来、あるいは昭和二十年に新しい平和民主国家が誕生してからも四十年間、いわば中央主導でもって、中央の優秀な行政機能、このもとにいわば能率化と申しますか効率化と申しますか、そういう努力を払ってきて、いわば大変能率的、効率的な地方自治体、しかし反面画一的になったという事実も否めないことでございますが、そういう地域づくりがようやくできてまいったわけであります。そして地方自治体みずからも行政能力を高めてまいったことは委員御承知のとおりでございます。ですから、この時期に、今まで中央の縦割り行政の中でのみ地方というものがその選択をしながら、この地方自治を守り育ててきたわけでございますが、ようやくこれだけの行政能力の高まった地方自治体でございますから、みずから考え、みずから実践をし、みずからつくり上げるという気組み、気概を地方自治団体に強く持っていただかなければならない、こういう時期に逢着をいたしているという気がいたします。  総理からも御相談やらあるいは御下命を受けて、本当の意味でのいわゆるふるさと創生、地方自治団体を生かす方法は何かないものかということの諮問を受けて、足りない頭ではございますが、自治省皆さん方のお力をおかりをしながら幾つかの点を模索をいたしております。新聞紙上等において、まだ成案を得ておりませんが、いわばふるさと創生、ふるさとづくりというものに市町村に画一に一億円という構想が出ていることも、また私たちの頭の中に去来をする一つ問題点ではございます。  確かに人によっては、地方自治団体本来の権利である交付税でございますから、何も中央がどうこう指図をする必要はないではないか、こう言われますが、ちょうど六十二年度、国税三税の自然増収に伴いまして、また未配分の交付金がふえたことも現実でございます。これは地方の権利でございますけれども、いずれにしても、基準財政需要額の中に見込まなければこの配分がなかなか難しゅうございます。ですから、今まで約十一兆という交付税が人口割あるいは面積割あるいは税収その他もろもろの要因をひっくるめて配分をされているわけでございますが、むしろ一つの行政単位、いわゆる住民に接触をする市町村という行政 単位を一つの固まりとして見るならば、それぞれがソフト的なものを行う場合において、人口が多いから少ないからということではない。場合によっては、町村というのは、府県や市から見ますと、ともすると行政能力が劣っているのではないかというひがみすら持っているところも現実にあるわけであります。そういうことを考えますと、市町村みずからが奮い立つためには、自分の地域を考えるに金の多寡は関係がない、むしろそういうものは画一に扱われてしかるべきだ、そういうものが底辺になければうまくいかないのではないかということで、各市町村の方々、首長の方々や議員の方々と意見の交換を行いながら、今そういうものの成案を得ようとして努力をいたしているさなかでございます。  いずれにいたしましても、これから自主的、主体的な地域振興策が練られますように、今までのふるさとづくり特別対策事業と両々相まって、いわばソフトの面で本当に市町村がみずから物を思い、そして将来の展望を切り開いてやっていく意欲の出るような施策の展開を地方みずからに行ってもらう、そういうものを考えてまいりたいと思いますので、お知恵のほどをお願い申し上げたいと思います。
  19. 安田修三

    安田委員 今まだ検討中ということでございますので、一つは、地方交付税法の趣旨に沿って、その趣旨に反しないように、その機能が生かされるように。それから、場当たりではなくて、それは将来に必ず――今大臣のお話を聞いておりますと、今の地方交付税の配分そのものについていろいろと問題点を持っておられるようにも受け取れる場面もございます。例えば市町村だったら大小にかかわらず一定のものを出してもいいじゃないか、そういう考えもあるようであります。とにかく将来にわたってそれが一つの理念として貫かれるようなものであってほしい。場当たりで、何か金があったからただばらまきますよということでは大変反対である。そこらあたりを慎重に考えられて、そして一つの方向を出してもらいたいと思います。  これはいろいろと議論したいところがありますが、地方自治法の方に入りますので、この程度にしておきます。  さて、地方自治法に入るに当たりまして、まず月刊「地方自治」という雑誌が出ております。これについて先にお伺いしておきたいと思います。  これは大変有意義な雑誌であります。発行所は「ぎょうせい」でありますが、編集は地方自治制度研究会となっております。この会は事務所を自治省行政課内としておるわけであります。私が自治省から照会していただいた文書によりますと、一つは、行政課の職員が同研究会の構成員として編集の一部を行っている。二つ目は、研究会は私的に設けられたものである。三つ目は、組織が明確に定められているわけではないが、地方行政につき関心を有する者などをもって構成されている。こうなっております。実は余り明らかでない組織のようであります。しかも私的機関であります。この私的機関がなぜ自治省の中にあるのか、これをまずお伺いしたいと思います。
  20. 木村仁

    ○木村政府委員 これは相当長い歴史を持つ雑誌でございますが、その発行当初から自治省の行政課を中心として、そこに勤務する者が相寄ってそういった組織をつくり、「ぎょうせい」と協力をして編集をしてきたといういわば沿革に基づくものでございます。
  21. 安田修三

    安田委員 そうしますと、これは編集の一部ということが実は文書の中にあったのですが、「ぎょうせい」の方に照会しましたら、自治省の方で全部やっておられるようであります。言うなれば自治省の機関誌みたいな、「ぎょうせい」が発行所ですから機関誌ではないのでしょうが、言うなればそのような性格のようでございます。  そこで、「地方自治」の二月号に全国町村議会議長会事務総長の大橋茂二郎さん、この人も、私は自治省の一課長であったということを書いておられますが、「審議されない地方自治法改正案」というものが論文として出されております。雑誌にどのような見解を出されようとそれは勝手でございますし、まして、これは役所のOBであっても役所から離れられておるわけでありますが、たまたま自治省が編集されておる、今言ったように準機関誌的な「地方自治」、その中の論文であるということ。しかも全国町村議会議長会、民間団体であるけれども準公的な機関。その論文の中に、「地方自治法の改正案が国会において実質的審議がされず、いわば、国会において無視されていると言うべき事態が起っていることについて、果たして、どう考えたらよいのであろうか。」国会において無視されておるということを実は言っております。このことは大橋さんが言っておるけれども、自治省の行政課内において行っている編集の機関誌にこのようなことが載っておるということは、これは自治省そのものの意思ではないか。しかも、この後にいろいろと問題点指摘等さらにこの方の論文の中に出てくるわけでありますが、「国政に従事する人々の国政における地方自治の占める役割と意義についての認識は極めて低いことを物語っている」という、まさに国会国会議員への侮辱をこの人は言っているのですね。  しかも、こういう論文を機会に町村議長会から、もちろん陳情書とか意見書も出ておりましたが、一斉に攻勢がかかってまいりました。私たちも、ことしの四月時点だったでしょうか、本委員会開会中だったと思いますが、町村議長会から議長さんが何人もおいでになりましたのでお会いしました。私は、地方自治法改正案がどのような経過でできたか、そして地方制度調査会でどのような経過審議があったかということをつぶさに申し上げて、反対している理由をつぶさに申し上げました。それについては一言も言われずに黙って帰られました。ただお願いしますだけでありました。私は極めてけしからぬと思うのです。私はこれについては当局責任をとってもらわなければならぬと思うのですが、どうでしょうか。
  22. 木村仁

    ○木村政府委員 先ほどお答え申しましたように、「地方自治」は自治省の機関誌ではございませんが、行政課の職員がそれに従事しているという沿革上、自治省の機関誌のごとき感を持たれているということは事実でございまして、それだけに私どもは編集に当たっては注意して行うように指導いたしている次第でございます。  この巻頭論文につきましては、実は地方自治に関して学識経験あるいは見識のある、社会的地位のある方々にお願いをいたしまして、テーマも内容も自由でございますということでお願いをいたすのでございます。二月号に掲載されました大橋氏の論文につきましても、数カ月以前にそういう依頼がなされておりまして、ちょうど全国町村議長会として地方自治法の早期成立のための要望をしていこうという意思決定がなされた時期でございましたので、その事務総長としての立場から、いわば町村議長会の熱意を表明していこうというおつもりでお書きになったものではなかろうかと存じます。  実は、私も二月に雑誌を見ましたときに、これはちょっと怒られるかなという気がいたしたのでございますが、何分、この巻頭論文をお書きになる方々はそれぞれ社会的地位のあるお方でございまして、依頼した以上は、それを没にするとかあるいはここを直せあそこを直せというようなことを申しておりますと、もう書く方がなくなってしまうという編集者の苦しい事情もございます。どうかそういうところもお考えいただきまして、御寛容をいただきたいと存じます。  今後はこの雑誌が中正な立場で編集されるよう、私も十分に注意をいたしてまいりたいと考えております。
  23. 安田修三

    安田委員 私はこれは寛容なわけにはいかないと思います。というのは、大臣、これは聞いてくださいよ。自治省の行政課の中にある地方自治制度研究会というものは会長がだれだかわからない。「ぎょうせい」に聞いても会長はわからないというのです。そういうわけもわからないということは、役所がやっているということなんですね。それが巻頭論文に載せてあるという。それは この編集後記にあるように、編集者がお願いしたということが書いてあるのですよ。自治省の中で編集されておることに、単に論文があったからといって国会が無視しておるとか、あるいは国政に参画しておる者は地方自治に認識がないとかということを書かれて自治省が黙って出すなんということがありますか。これは絶対許せないですよ。  委員長にお願いしておきますが、大橋茂二郎という者を私は参考人で次の機会に呼んでいただきたいと思います。そして、なぜこういう趣旨のことを書いたのか。この人は自治省の行政課ですか、自治省の一課長をやっていたと言うんですね、第十六次の地方制度調査会のときには一課長をやっておった、下働きをしておりましたと。  そこで、中身についてこの人と見解の異なるところがある、これはやむを得ないです、それぞれの法的見解なり背景の見方の違いですから。だが、国会に対してこのような侮辱的なことを堂々と書いて、それを自治省の編集で出すなんということがあり得ますか。寛容もくそもないですよ。局長、あなた自身の責任じゃないですか。あなたがそのときにタッチしたかしないかは別として、あなた自身の責任じゃないですか。そこらあたりの示しがつかなくてどうしますか。おかしいじゃないですか。どう思うのですか、あなた。
  24. 木村仁

    ○木村政府委員 そのような細心な注意が編集に当たって払われなかったことについては、私も行政局を所管しておりますので、公式の仕事ではございませんが、責任を痛感いたしております。今後は十分に注意をして編集するように指導してまいりたいと思います。
  25. 安田修三

    安田委員 十分の注意じゃないですよ。大体自治省の中にこのようなわけのわからない会を置くということがあるんですか。大臣、聞いてください。そういうことが許されるのですか。皆さんの外郭団体で、補助団体その他で置くというのじゃないのですよ。そういうことが許されるのですか。はっきりしてくださいよ。別なら別のところに会をつくってやってください。こういうことがあり得るのですか。こんなあいまいなことではおかしいですよ。これはあなた、みんな責任逃れじゃないですか。こんなことで世の中が通るものなら楽ですよ、仮に悪いことを言えば、人に書かせて後から謝っておればいいのですから。こんなばかなことがありますか。とにかくこの研究会というものがあるのなら、この種のものの編集にタッチするというのはおかしい、やるなら当然別のそういうものでやるべきである。それから、皆さんの方で原稿を依頼されて書かれるのは、いろいろな雑誌にもたくさん自治省の方が書いておられるし、それは当然でしょう。だが、自治省がこのように全面的に編集をやっておるものにこのようなことが書かれるということであるならば、このようなやり方はやめてもらいたい。それから、これについてはきちっと責任の所在を明らかにしてもらいたい。これは単なる陳謝で済むものではない、国会全体の侮辱なんですから。このようにはっきり活字に残っている。言った言わぬという問題じゃないのですよ、こんな国会が無視しておるとか。地方自治法について重要な課題があればこそ双方で知恵を絞りながら今日まで来たんじゃないですか。  ここに平林先生等おられますが、あの公有地拡大の問題を抜き出して議員立法したことについて、この人は鼻でせせら笑ったようなことを言っておるのですね、財政の問題は優先するから、おまえら何もわからぬでああいうことをやっているんだろうと言わんばかりのことを言っているのです。しかし、それはその人の見方だ、そこら辺まではどう書かれようと。だが、国会が無視しておるとか、国政に参画しておる者は地方自治に認識がないとかと言われて、我々が黙っておれるかというのですよ。局長、あなた自身の感覚がおかしい。これからやりませんなんて、こんなことはできることじゃないじゃないですか。  大臣、あなた一生懸命書類を見ていらっしゃるけれども、これはどう思いますか。
  26. 梶山静六

    梶山国務大臣 不勉強な大臣でございまして、私この「地方自治」という本を読んだ経験があるか、体験があるかということを、後ろに、私の目の前に出したことがあるかということを何遍か言って、中身の問題ではなくて、この「地方自治」という月刊誌が、多分一度や二度は目に触れたことがあるのかもしれませんが、よく言われる言葉であれば、記憶に定かでございません。こういうのを読んだ覚えがないので、この中でどういう論文が書かれたか、もちろん論文の提出の仕方もございましょうけれども、そういうことで中身をよく承知をいたしておりません。質問通告が出ていたとすれば、私も不勉強だったので、この月刊「地方自治」という本の性格をどういうものかと思って今尋ねていたところでございますので、今委員指摘のような点がございますれば、思い過ごしがあるのか、あるいは行き過ぎがあるのか、その辺の事情を冷静に判断して対処をしてまいりたいと考えております。
  27. 安田修三

    安田委員 これはいずれにしても大橋という人をこの審議の過程で一遍参考人として来てもらう。これだけこんなひどいことを言われて黙っているわけにいかない。私は個人的に調査に行こうと思ったのだけれども、また言うた言わぬと言われたら嫌だから、公の場に呼んでいただいて堂々と議論した方がいい。そしてこの趣旨も聞きたい。それから自治省もこういうことについては何らかの責任をきちっとしてもらわなければならない。そうしないと、これは単なる個々の問題ではない。国会自身についての権威を傷つけておることですから、もう編集者がどうのこうのという問題ではない。自治省そのものが責任をとってもらわなければならぬ問題だ、こう思います。そういう点で大臣は、次の機会にうちの理事からも何らかの提起をいたしますから、記憶していただきたいと思います。  さて、本論の方に入っていきます。  そこで、地方自治法改正法案は現行を六点にわたって実は変えようとしているものでありますけれども、そのうち大別して二つの流れを含んでいると私は思います。一つは、職務執行命令訴訟制度の見直し、二つは、機関委任事務に対して監査委員の監査権限を認めるということ。  さて、この機関委任事務に対しまして監査委員の監査権限を認めるということは、長年の地方からの強い要望でもありました。そこで第十八次の地方制度調査会が監査制度の改革と監査権限の拡大について実は答申しております。一時は法案の作成まで進みながら、また、当局も改正いたします、こう言いながら日の目を見なかった経過もあるわけであります。したがいまして、監査委員の監査権限の拡大を中心とする改正につきましては、我々の要望に沿っておりますし、地方団体の長年のたっての要望でございましたので、こういうよい制度の確立を図ることは我々も大いに歓迎するところであります。  ところが、もう一つの流れでありますこの職務執行命令訴訟制度の見直しは、公選の首長の罷免権をなくするというのは、従来からも学説、また我々自身も、それはおかしいじゃないか、こう言ってきた経過がありますので当然としまして、国と地方団体の長との関係において、二度にわたる裁判を媒介にして初めて代執行が可能になるという制度を変えて、内閣の確認をもって代執行ができるようにしようという改正でありますので、これは国と地方関係の根幹にかかわる重大な変更でありますので、私たちは、これは改正でない、これは改悪だ、こう実は指摘してきているところであります。では、なぜこのような改正案が抱き合わせに出されなければならなかったのか、こういう点についてお伺いしたいと思います。
  28. 木村仁

    ○木村政府委員 行政改革推進審議会におきましては、国、地方公共団体を通ずる行政改革の一環として機関委任事務制度全体の見直しを議論されたのでございますが、その中で、御指摘のように機関委任事務の執行に関する職務執行命令訴訟制度、それから議会の検閲・検査権、監査請求権及び監査委員による機関委任事務の監査権というものが一括して審議をされまして、そしてこれを全 体として改革していこうという議論がされた結果、これらが一体となった改革案が出てきたものでございます。  地方制度調査会におきましても、同じ立場で機関委任事務の関係を、機関委任事務の整理合理化、そして団体事務化、それから議会及び監査委員の監査関与権の拡大、さらには職務執行命令手続の合理化という三つを全体として審議をされまして御答申をいただいた結果、このような法律案になっている次第でございます。
  29. 安田修三

    安田委員 今局長からきれいなお話がありましたが、しかし、御存じのように六十年七月二日、各新聞は一斉に一日に開かれた行革審の模様を報告したわけです。それは「機関委任事務及び国・地方を通ずる許認可権限等の在り方」と題する小委員会報告書の提出を報じたわけですね。それで各新聞とも、その中身についていろいろな書き方はありますけれども、ほぼ一致していることは、地方行革推進小委員会の論議の焦点ですね。それが一つは、職務執行命令訴訟制度の見直しが突如として出てきたということ。もちろん、突如として出てきたのは、私たちも、それはいわゆる小委員会の原案、その次の修正案、最終案というものを見ましたときに、日の経過を見ればはっきりしておるわけでありまして、これはまた何も今の局長のようなきれいなことをおっしゃらなくても、前の大林局長、今の次官が地方制度調査会でもその経過を言っておることは、私たちも委員会でも聞きましたし、調査会でも聞きましたし、また地方制度調査会は公開でございまして、議事録も残っておりますから、経過が出ておりまして、これは突如として出てきたことは間違いございません。二つは、賛否両論が激しく交わされたということ。三つ目は、国から地方へ許認可権限を移譲しようとしても各省庁が手放さなかったこと。四は、監査委員の監査権限が機関委任事務に及ぶことに各省庁が地方の関与拡大で事務停滞のおそれがあるとして反発したため、職務執行命令制度の見直しを抱き合わせた。これが当日各社が一斉に――もう見出しが例えば「権限の委譲と引き換え 地方へにらみ」ですとか、あるいは「指紋押なつの通達拒否で 自治体への切り札?」とか、あるいは「権限の地方委譲に合わせ 代償措置を確保」だとか、とにかくすべてが要点をこのように表現しております。  そして続いて中央紙は一斉に社説で、地方自治が後退する、これでは地方自治は前進しないという見出し、あるいは地方自治の根幹にかかわるとか、あるいは住民が主役の地方行革をせいという見出しで、これは中身は大変だということを実は報道しまして、一斉に警鐘を鳴らしたわけです。  したがって、この後は地方団体もいろいろと反対の意向等が伝えられてきたわけでありますが、そこで私は、自治省はこのときに行革小委員会で一体どういう役割あるいは立場をとって主張してきたんだろうか、これをまずお聞かせ願いたい。今のお話を聞いておりますと、さらさらっときれいな流れをおっしゃったのですが、これは実際はそうでなかった。今言ったように激論が交わされて大変だったんだ。自治省はそのときは地方の立場を守るために一体どうだったんだろうか、これをまずお聞かせいただきたいと思います。
  30. 木村仁

    ○木村政府委員 行革審の小委員会におきます審議経過につきましては、その詳細は自治省で全部承知いたしているわけではございませんが、今御指摘になりましたような経緯があったわけでございます。  自治省は、この代行制度の取り扱いについては終始非常に慎重な立場をとって対処をいたしておりまして、その過程で御承知のように六十年七月一日の小委員会報告が公表されました直後にも、御指摘のような新聞報道等がありますとともに、地方自治等の関係者からもなお慎重に審議してほしいという意見が相次いだわけでございます。そこで七月二十二日の行革審答申では、これも御承知のように、小委員会報告とはさらに手続を密にいたしまして、地方公共団体の長から裁判を提起できる時期を早めるとか、あるいは小委員会報告では長の罷免制度がなお残っておりましたものを、長の罷免制度を廃止するというような措置が加わった答申が行われたわけでございまして、この行革審答申に対しましても、知事会あるいは市長会はさらに慎重な審議が欲しいということであったわけであります。  そこで、自治省といたしましても、地方制度調査会における審議を待つことにいたしまして、地方制度調査会において御承知のとおりの慎重な審議が行われ、そして結論が出されたわけでございますが、ただいま申し上げましたように、この問題につきましては終始自治省としては慎重な対応が必要であると考えておりましたし、そういう手続をとられたものと承知しております。
  31. 安田修三

    安田委員 総務庁、おいでになっていただいておるわけでありますが、行政改革審議会のうちの地方行革推進小委員会が、先ほど言いました「許認可権限等の在り方」と題する報告書を出されたわけでありますが、この報告書の中身と、それから行革審から本答申がなされたときの答申では、知事、市町村長の罷免制度を今度はなくして代執行一本と、監査委員の監査権限の拡大等に絞って実は出してこられたわけでございまして、このそれぞれの審議経過について、総務庁の方からお伺いしたいと思います。
  32. 菊地徳彌

    ○菊地説明員 御説明申し上げます。  先生御指摘のとおり、小委員会と最終的な答申とは違っております。その要点は、今先生もおっしゃいましたので省略いたしますが、要は詳細につきまして、今行政局長から申し上げたと同じ個々個別にはわかりませんが、大宗として要点を申し上げますと、小委員会報告が出て、それから各般の意見がございました。その要点は、主として地方公共団体側から、本制度につきましては地方自治の根幹に触れるものである、したがって取り扱いについては慎重にという御意見がございました。それからその後の状況を見通したときに、一つ地方制度調査会でも審議が予想される、こういうような状況がございました。それらを兼ね合わせて、答申するとき慎重な表現ぶりをもって具体的な方向ということで整理をしたものと考えられます。  したがいまして、その中で、一つは罷免制度は答申では廃止する、こういうことがございましたが、代執行の部分につきましては、ほぼ小委員会と同じような表現ぶりをもちまして、ただ、小委員会では具体的方策ということで非常に断定的に書いておったものを、答申では具体的方向ということで若干後に議論を譲るというようなニュアンスをもってまとめたと承知しております。
  33. 安田修三

    安田委員 総務庁にお伺いしますが、行革審小委員会では賛成、反対、中間、それぞれの意見があったようであります。そこで、それまでこの機関委任事務の地方への権限移譲の問題について、初めは職務執行命令訴訟制度というものは、機関委任事務の地方への移譲ということが論じられたときに全然出ていなかった。それが六月末になって突如として出てきたという経過になっているわけでありますが、そのような経過について皆さんの方でどのように承知しておられるか、お聞かせいただきたいと思います。
  34. 菊地徳彌

    ○菊地説明員 御説明申し上げます。  ただいま御指摘の、突如としてというのは、私も今不勉強でございまして定かでございませんが、時系列的な経過を申し上げますと、そもそもこの問題、当初出てまいりましたのは五十七年七月三十日の臨調の第三次答申に発していると思います。これで機関委任事務のあり方につきまして新たな調査審議機関によって検討を行うように提言しております。その後臨調が廃止になりまして、それから行革審が生まれました。行革審の中では、審議会自体は五十八年七月一日に発足したわけでございますが、その後その審議会の中に五十八年十一月七日に機関委任事務等に関する小委員会というのが設けられました。それで審議を進めておきまして、その後先生おっしゃるように、五十九年五月十四日に地方行革推進小委員会というのが発展的にその機関委任事務の小委員会を吸 収しまして、そこで今個別の機関委任事務とあわせまして機関委任事務にかかわる問題を幅広に検討する、こういう経過がとられたということでございます。その結果、六十年の七月一日に小委員会報告、さらに七月二十二日に行革審としての答申が出されたというふうに承知しております。  個々個別の、どうしてそうなったかというところまで今ちょっと掌握しておりません。
  35. 安田修三

    安田委員 そこで、機関委任事務の審議が進んでいって、結果的には機関委任事務は、後ほど申し上げますが、どの程度そのときに答申に出てきたかというと、わずかなのでございますけれども、とにかく各省庁の抵抗が強くて、しかし行革審として何とかこれは最大テーマとしてまとめなければならぬということで、そこで各省庁をなだめる手段として職務執行命令訴訟制度をこの際見直して、そして簡素な手続である代執行ということで、言うなれば、これは国の権限強化ということになりますが、それをもって引きかえに了承したという経過になっておるということを実は承知しておるわけであります。  まあ大体、先ほどの木村局長のお話あるいはまた総務庁の行革審経過等から見ても、そのことは新聞報道に指摘されておるとおりの中身でありますし、また、私たちも今まで地方制度調査会その他当局説明をお伺いした中でも、ほぼそれは一致しておるわけであります。それだけに、これは大変不純な経過の中から出てきた、またこれは当然あるべきことでない重大な国と地方との根幹にかかわる問題の変更である。だからこそ各地方団体からもそういうことは慎重にやってもらいたいという意向がたくさん出たということは、先ほどから当局がお話しのとおりであります。  そこで、第二十次地方制度調査会では、手続上は行革審小委員会報告とほぼ同じ答申を出されたわけでありますが、当時、ここにおいでになります地方制度調査会の草野委員、それから佐藤三吾委員、原田、細谷それに不肖私、五委員連名で実は意見書を出したわけであります。その結果、答申案が実は異例の採決で行われました。地方制度調査会の答申を採決でやるなどというのは極めて異例であります。四十五名の委員がおるわけでありますが、初めは盛んに地方団体の方も反対をぶたれました。しかし当日、反対論の方は、まあ御都合が悪かったということにしておかなければならぬのでしょうが、御出席になりませんで、委員全部で二十二名出席したうち賛成十六名ということで採決が終わりました。四十五名中十六名の賛成でございます。出席者が二十二名でありますから、出席者の中では過半数になっておりますが、反対の方たちは当日はお見えになりませんでした。そこらあたりいろいろと憶測することができるわけでありますが、しかも総会はたったの三回で終わっておるわけであります。私は、これは大変異常だと思うのです。行革審の出てきた経過、そして、しかもこれほど重要なことが行革審の後追いで地方制度調査会は同じような手続関係を答申しなければならなかったという、しかもそれは採決で行った、慎重に審議することができなかった、極めて異例だと私は思うのです。こういう異例のことまでやらなければ、この機関委任事務の地方への移譲ができ得ないところに今日の悲劇があるのかもしれません。  先般の地方制度調査会で、自治大臣は、各省庁の縦割り行政は強い、きょうの地方制度調査会でも、各省庁の人たちは多少は来ておるのでしょうけれども、大方来ているのはほとんど自治省じゃないか、こういう指摘がありまして、もっともでございました。それほどのところだからこういうことをやらなければできなかったのかもしれませんが、こういう異常な中で地方自治法の改正案が出されるということは極めて残念だと私は思うのですが、大臣、これはどうでございましょう。こういうことがまかり通っていいんでしょうか、お聞きしたいと思います。
  36. 梶山静六

    梶山国務大臣 提案者側でございますから、ぜひひとつ慎重に御検討いただき、早く結論を出していただきたいということ以外に申し上げようがございません。ただ、私が考えていた以上にというか、勉強した以上に大変長い、しかも、どろどろしたという表現がいいかどうかわかりませんが、経緯があったということもよく承知をいたしております。そういうもみにもんだ後の提案でもございますので、またこの委員会審議も慎重にならざるを得ない、そういう背景も私には理解ができるわけでございますが、あえてまげてひとつ御審議を賜りますようにお願いを申し上げたいと思います。
  37. 安田修三

    安田委員 そこで、これはちょっと途中に問題を挟むようでありますが、竹下総理は九月二十八日の第二十二次地方制度調査会の発足に当たりまして、その第一回総会で、地方への権限移譲について、その具体案をつくる場として行革審あたりが土俵づくりによいのではないだろうかという趣旨のことを述べられたわけであります。梶山自治大臣も各省庁の縦の縄張りが強いので、私もそのように思うという、そういう趣旨のことが述べられまして、これは報道もされたところであります。  しかしながら、先ほど言いました六十年当時の行革審は、各省庁のOBが参与なんかでかなり入っておられまして、行革審そのものは各省庁の縄張りのもつれ合いのような観を実は呈しております。そのため地方六団体が六十年三月に、機関委任事務の廃止四十項目、それから地方の自主運用にゆだねるもの百八十項目を含め五百二十九項目の機関委任事務の改善を要請いたしました。これに対しまして行革審は、先ほどのように、外で見る以上のすったもんだのあげく、廃止がわずかの十一項目、改善は六十七項目、これは自主運用その他そういう関係を全部まぜまして改善が六十七項目にとどまり、機関委任事務の整理については、実は全く権威のない答申になってしまったわけであります。したがいまして、私はこの地方問題を論ずるにはどうも行革審というのは余り適当な環境ではないのではなかろうかという感じもいたします。この点大臣、どうでございましょうか。行革審というのはどうもほかの場所と違って、余り縄張りからいったらここらあたりは切れるんじゃないかという感じを持っておるんだけれども、従来の経過からしますと、実際はそうではないという感を持つわけであります。どうでございましょう。
  38. 梶山静六

    梶山国務大臣 委員御出席の地方制度調査会の席でも御質問をちょうだいして、私なりの感じを申し上げたのでございますが、確かに制度建前論から申しますと、地方制度調査会というものがあって数次にわたる答申を出し、そして国と地方の権限論やそういうものを答申をしているわけでありますから、それで尽きるのではないかという議論もございます。要は、それをどうして実行するかという問題でございますが、制度建前論とは別個に実効論、実際はどうやれば効果が上がるかという側面も見なければならない。そういうところから見ますと、確かに地方制度調査会、これはむしろ私たちが一番希求をするいわば地方団体の意見を中心にして、なおかつ国という側面を見ながら答申がなされているという、漠然とした感じでございますが、そういう感じがいたします。  それに引きかえてという言い方がいいかどうか、ちょうど対照して見るべきポジションではございませんけれども、行革審はどちらかというと大きな国という観点から地方はどうあるべきかという見方もできる機関ではないかと私は思います。それぞれが車の両輪というわけでございますから、私はその車の片方の車さえ回っていれば片方の車は回らなくてよろしいという論点には立ちません。もちろん、双方がそういう主張で両方が回ってこそ車の両輪論があるわけでございますから、そういう観点に立つわけでございますが、人間どうしても近きより遠きに及ぼすという感じがありますから、近くのものがよく見える、そういう感じがございますので、もう一遍そういうもので見てもらうことも、私は、むしろ今までの制度建前論からいえば一〇〇%地方制度調査会にゆだねられるべき問題でありますが、それを実効あら しめるための、そんなことを言うと行革審にしかられるかもしれませんが、補助的な手段として彼らが論議を踏まえてやっていただくことはある意味でよろしいのではないか。  そして、そのときも申し上げましたけれども、確かに私自身も感じますことは、今まで百年来でき上がった、あるいは特にここ四十数年来でき上がった中央の縦割り行政、中央の行政が強い上になおかつ縦割り、統合性がないという、この半面を見ますと、それを打ち破る手段としては、ある意味で行革審にも多少の成果が過去にもあったと私は思いますし、これからもそういう意味で言えるわけでございますから、むしろこの地方制度調査会というのは、今までの国の縦割り行政と全く違った地方地方自治という横からの一つの眺め、そういうことがあるわけでございますから、その意味でこの縦割り行政の弊害をどう破ることができるか。  内閣といえども、私はもっともっと強い内閣だと思ったのですが、内閣の調整権能も、そう言っては失礼かもしれませんが、大変弱うございます。まさに一省庁、独立機関でございますから、これに対する関与権ないしは強制権、こういうものがないわけでございますから、これを了解させるためには大きな世論の背景が必要であります。地方制度調査会から大変すばらしい答申をちょうだいをいたしながら、これが全面的に採用されないゆえんのものも、また私どもも考えなければいけない。  特に、総理は大変地方に対する理解者、私と同様にある意味では地方主義者かもしれません。今総理という立場でございますから、あえて地方主義者という表現は使わないかもしれませんが、大変地方に対する理解、私と何遍か――私も土民軍、こう俗称しているのですが、地方主義者でございます。ですから、地方をどうすればいいか、中央からの発想というのも決して私は否定をいたしませんが、地方自治という観点から国の行政を見直していいはずだ。そういう点では共鳴を持ってくださっている総理でございますから、総理が諮問をするのでございますから、私は、その点万々抜かりがないというか、我々が地方の一〇〇%の理解者ではないかもしれませんけれども、これから国の制度はどうあるべきか、地方を抜きにしてこれからの国の活力はあり得ない。民主政治の根幹は地方自治だというその根底を踏まえてやっていただくならば、私はこの車の両輪が機能するはずだ、そういうことを期待しながら、これからの行革審の審議の経緯を私も見詰めてまいりたい、そして私どもも言うべき時期には堂々とこれに対して物を言ってまいりたい、こういう感じでございます。
  39. 安田修三

    安田委員 大臣地方問題では地方の立場を大変尊重するという趣旨はかねがね承っておりますので、この種の法案は無理をしないで慎重に審議をするように当局もひとつ心がけていただきたい。大臣はこの法案審議にはいろいろと問題点も思っていらっしゃるのだろうと私は思うのですが、先ほどおっしゃられる立場としては提出者でありますから、そういう点では当局側もひとつ慎重に対応していただきたいと思うのです。  さて、この法案のまとめは各省庁間調整で大変もめたように私は伺っております。そこで、結果的に地方六団体の意見提出権を実はその段階で削除して、自治体から事後の裁判の申し立てを入れることで話し合いがついたということになってまいりました。自治省は、国と地方との根幹に関する制度ということでは、この点は大変主張されたのだろうと私は思うのですが、しかし、ここら辺はやはり原則で譲れない、この原則を譲るということは大変なことなんでございますので、そういう点では自治省はすきっと突っ張れなかったものかどうか。私は余りどうのこうの言うのは、そのときの力関係ということになるのでしょうが、どうなんでしょうか。自治省は突っ張れなかったものでしょうか、この法案をまとめるときに。
  40. 木村仁

    ○木村政府委員 自治省といたしましては、地方公共団体の自主性、自律性を強化する観点から機関委任事務制度全体を改善するという立場でございましたので、各省折衝におきましては、全力を挙げて御指摘のような諸点について実現するように努力をしたわけでございます。特に、機関委任事務に対しまして地方議会及び監査委員が関与権を持つということにつきましては、これは地方自治関係者の長年の要望でございました。これをひとつ実現いたしたいということが一つの主眼でございました。  それから、関連して職務執行命令手続につきましては、先ほど申しましたように、慎重な立場で臨んだのでございますが、この機関委任事務全体の改善を達成するために必要な要件が整うならば、これを法律に入れていくという態度でございます。  そのために、まず命令の発動の要件でございますが、適正な事務の管理、執行がなされなければ著しく公益を害することが明らかである場合に限るとか、あるいは他の方法では解決ができない場合に限るというような、現行の命令手続にはない厳しい要件を加えて入り口を狭くする。第二に、主務大臣の命令に対しましては、内閣総理大臣に不服の申し出ができることとして、その再考を地方の側から求めることができるようにするような手続を認める。第三に、代行が現実に行われる前に、不服の申し出が国の受け入れるところとならなかった段階で、直ちに主務大臣の命令の取り消しを求める裁判を提起し、同時に執行停止を申し立てることができるというようなことによって、最終的には裁判所の公正な判断を、機関同士の争訟でございますが、認めることにするというような条件。それから、これも大変議論されました、そういった極限的な場合に長の罷免をするという制度をやめる、これはいわば地方自治が独立することの象徴的な部分でございますが、そういう廃止が実現するというような全体的な要件が認められましたので、全体として同意をしたわけでございますが、御指摘地方諸団体の意見提出権につきましては、これも地方制度調査会が繰り返し答申をしていただいているところでございまして、私どもといたしましては、その実現には執念を持って当たっているわけでございますが、この法律案のまとめに際しましては、どうしてもそれが実現できなかったということでございまして、その点はまことに残念に考えておりますが、今後とも努力を継続させていただきたいと存ずる次第であります。
  41. 安田修三

    安田委員 今いろいろな説明がありましたが、大事な柱というのが実はだめなんですよ。職務執行命令訴訟制度が覆っていく。それから入れなければならぬ意見提出権が入らない。監査委員制度の拡大というのは、もう前から当然あるべき姿、これは住民が承知しない現状になってきてしまっている。  そこで、今いろいろと職務執行命令訴訟制度が変わった場合の代執行の場合の手続上のことが言われました。こういう手続になるからとおっしゃるのだけれども、これはきょう時間があれば、そのうちの一部、きょうは初めての審議でございますので、全部は入りません。私ども、総論的な部分だけということでありますが、できたら手続の部分も初めちょっとだけ入りたいと思うのですが、気休めなんですね。  例えば、今度の場合は、代執行になって、そこで不服申し立てをして、いわゆる原状回復、仮に裁判で地方が勝って、今度は地方が裁判を起こすわけですから、地方が勝って原状回復になっても、これは何にもならない結果になるわけです。これは、現在の代執行で行政訴訟をやってそれが覆った、その場合にも原状回復は事実上はでき得ない場合が多いケースと一緒でありまして、ほんの気休めにしかならない、そういう点ではまるっきりこれは違ってくるわけですね。  そこで、職務執行命令訴訟制度は、今国と地方との基本的な原則を私は示しておると思うのです。こういう単にマンデーマス・プロシーディングという一つの制度は何だと見れば、こういう何か手続上の流れだけになっているのではないかと いうことなんだけれども、しかし、事実上は国と地方との基本的な原則を示しておると私は思いますし、また、日本の今の国と地方との関係を論じたときに、このことを抜いて考えるわけにいかないだろうと私は思うのです。特に日本の地方の民主化、自治育成の大きな柱になっている。何もこれが日常作用しているわけではないが、これがあることによって地方自治体の首長の自主性あるいは首長の創意工夫に基づいて仕事を濶達にやれるということの大もとは、この職務執行命令訴訟制度というものによって支えられておると言って過言ではないのではないかと私は思うのです。  それで、国の仕事について国と地方とが対立した場合、対立ということは私は非常に重大だと思うのです。対立ということは、何も国と地方とがいつもけんかしておるということではない。その間に国と地方とそれぞれ対等だといいながら、今事実は対等でないような場面はたくさんにあります。例えば無数の通達や通知がたくさん行く。しかし、その場合に機関委任事務の場合は、その通達というのは、国の仕事のいわゆる中身についていろいろと国が指示するということになるのでしょうが、自治事務の場合はそうではない。国がそういう助言、勧告という程度なんでしょうけれども、それにもかかわらず、今地方団体の場合は、すべての通達について国のその通達をいかにも全部行政の指示のようにあがめ奉っておるような場面が間々あります。それだけに私は、国と地方とが、対立関係というのはけんかするとかそういうことではない、それはお互いにそういう対等という立場を表現する場合には極めていい場面ではないかと思うのですが、その場合に国の指揮監督権と、住民から公選によって選ばれた、しかも住民の監視のもとにある地方の首長の主張との違い、その調和を司法で判断するという、現代民主主義の三権分立の趣旨に沿った重要な制度が実は今の職務執行命令訴訟制度であろうと思うわけです。これがなぜ不都合で変えなければならぬのだろうか。どうでしょうか。変えるということは不都合だから変えるのだろうと私は思うのですが、どこが不都合で変えなければならぬのでしょうか。それをお聞きしたいと思うのです。
  42. 木村仁

    ○木村政府委員 現行の職務執行命令訴訟制度が制定されております趣旨等は御指摘のとおりでございますが、現実の問題として、この制度が二度の裁判が非常に時間がかかりますために作動し得ない制度になっている、作動し得ないというと語弊がございますが、大変作動しにくい制度になっているという批判があることは事実でございます。また一方では、そういった裁判手続をとるということに関連して、公選で選ばれた長が内閣総理大臣の、あるいは知事の手によって罷免されるというような大変非民主的な部分があるという批判があることも事実でございます。  こういった点を全体を勘案いたしまして、機関委任事務制度の基本的なあり方を議論する中で、地方制度調査会等においてもこういった結論が出されたわけでございまして、政府としてもその結論を踏まえて法案を提出させていただいているわけでございます。     〔委員長退席、平林委員長代理着席〕
  43. 安田修三

    安田委員 その二度の裁判、一つは、確かに二度の裁判というのは手続上大変ですよ。裁判で一遍判決をいただいて、その次はまた執行をかける段階で確認の裁判をいただかなければならぬのですから、それは大変ですよね。だが、それは結局先ほど言ったように、上級機関と下級機関との関係ではない、だが国が指揮監督権を機関委任事務については持っている、そういう公選の首長という立場で、それを調和を保つという点では司法判断という、これはやはり民主主義とは遠回りしなければならぬという至言があるわけでありますが、それがここに生かされておるのだろうと私は思うのです。したがって、今まで国の方でも、どうしても手っ取り早くやりたいという当面必要としたものは、そのよしあしは別にして、もう既に代執行で個別に開始してしまっているわけですね。例えば土地収用法、都市計画法、農地法と私の知っておるのでは十の法律があります。まだあるのか、今まで余りはっきりしないので、これはどこへ聞けばはっきりするんでしょうかね。法制局その他にも、あるいは内閣ではっきりわかるのでしょうが、今までの関係者地方制度調査会その他でも大体九つか八つかという話ですが、私が調べたのでは十の法律が、私書き出してみました。ここではそういう簡素な手続、すなわち代執行というのは既に行われているわけですね。したがって、その他の方は、一体そういうぐあいに代執行を必要とするようなものは、今さしあたって皆さんの方で必要だ、まあ必要でない必要であるというのはそれぞれの立場によって違うのだろうが、しかし、いずれにしても何か今の場合に二度の裁判によって手間取って、そのために進まないというような事案というものは考えられるのだろうか。もう出てこないんですね。  それから、先ほど二点目に述べられた首長の罷免問題、これは当然なんです。しかし、今の罷免でも決していいことではない。あれは取らなければならぬが、今の罷免でもそんな簡単じゃない。二度の裁判をやって、そして代執行と、この問題はそれぞれ裁判の後に続いておるわけでありますが、これだって別になかなかそこまで、法令その他違反して罷免させるというような事実というのは出るわけはないんで、いいことではないが、あっても作用できるようなものでもない。したがって、今それを変えなければならぬという理由は一向に私は見当たらぬわけです。  したがって、答申が出された当時、これも新聞報道等にも随分書かれたわけですけれども、外国人登録の指紋押捺の拒否が実は社会問題になってまいっておりました。市町村長さんの中には、指紋押捺をしなくても構わない、こうした意見も出ていたことに対しまして、こうした制度の見直しはできたのではないだろうかと実は言われてまいったわけです。それにしましても、その当時このことで緊急事態が起きたわけでもなかったわけでありますし、また機関委任事務の停滞を招いたわけでもなかったわけです。     〔平林委員長代理退席、委員長着席〕もし国が何かその当時の外国人登録問題等で代執行に乗り出したとしても、現実にこれまた処理し切れるわけでもございません。たまたま当時の新聞の報道等によりますと、法務省の当局では大変期待しておるような談話が出ておりました。しかし、自治省関係の方はそれとは無関係というのもまた出ておりました。それぞれによって思惑があったのかもしれません。私は、あるいはこういうようなことが社会的な背景として、あるいは機関委任事務を地方に移譲する場合に、当時皆さんの中に相手省庁から責められた材料として譲らざるを得なかった背景があったのだろうかなとも思ったりするのですが、どうなんでしょうか。先ほどの前段言った理由では私はなかなか理由が見当たらない。じゃ、今のような社会的な理由、責めによって皆さん方も譲らざるを得なかったのだろうかと思ったりするのですが、どうでございましょう。
  44. 木村仁

    ○木村政府委員 今回の改正は、その各段階における審議の過程を通じて、かなり純粋に制度論としての批判にこたえていくという立場であったように思います。現に起こっている、あるいは近く起こるであろうような事件を念頭に置きながら議論された背景は、私どもはなかったというふうに理解をいたしております。
  45. 安田修三

    安田委員 先ほど大臣は、総理もそれから私も一生懸命、こうおっしゃって、地方の問題について、どちらかというと土民軍のような存在で、とにかく地方の問題については真剣なんだという趣旨をおっしゃっております。私は、大臣地方問題では大変熱意を持っていらっしゃると思っているわけです。しかし、今度のこういう職務執行命令訴訟制度が入ってくるということになれば、これは中央の権限が強化されて、地方の重要な、平生は何とも思っていないものだけれども、しかし、このことによって地方の首長のいわゆる自主性というものを支えておる柱でありますから、そ ういう点では私は、地方という問題を大切にされながらも地方を締めつけることになってきてしまって、これは逆ではないだろうか、こういうぐあいに言わざるを得ません。  最近、逗子市の池子米軍住宅建設問題等がありますが、たまたまいみじくもこういう地方自治法の改正問題の真っ最中にこういうものが出てまいったわけでありますけれども、この前に準用河川の池子川の改修問題等が実はあって、これがたまたまこういう場合に該当するのだそうであります。いわゆる調達庁とそれから逗子市の当局との間に、こういう協議という問題ではこれが該当するのだそうでありますが、現実問題としてこういう場面が浮かんでくるようであります。  したがって、将来の問題から考えた場合に、有事立法ということが出た場合に、あるいは先ほど言った外国人登録が現実に何かの場面に逢着して進まないという場合に、この種のことは実際問題として作用してくるのかなという気もいたします。しかし、そうなりますと、日本の場合に、これから国際社会に重要な役割を果たしていかなければならぬ立場、あるいは世界がこういう平和へのムードが高まっているときに何をか言わんやという感じもするわけです。ですから、私はこのように皆さん方が改正しなければならぬという理由がさらさら見当たらないというところに非常に不信――普通はそのよしあしは別にして、これだから変えなければならぬというものがある。そうすれば、結局、ひっきょう行革審の地方行革小委員会あるいはまた地方制度調査会で当局説明の端々にあらわれたように、結局は各省庁の機関委任事務の地方への移譲と引きかえにこれを出さざるを得なかったという最終その理由しかない、それ以外にまだあったのかと思ったら、それしかないかなということなんですが、そういうぐあいに解釈していいですか。
  46. 木村仁

    ○木村政府委員 先ほど来申し上げておりますように、この制度は事実上非常に作動しにくい制度である、したがって、制度としてそれを改正する必要があるということも行革審、地方制度調査会において審議された一つの結論でございまして、行政の秩序を維持する制度でございますから、第一次的には行政の中で解決されることが原則でございます。もちろん民主主義の慎重な制度、国の監督権限の効果性と地方公共団体の長の本来の独自性、自律性との調和を保つという意味で裁判手続を使う、そういった制度なのでございますが、この制度が実際にも動くことができるようにしておくということが必要ではないかということでございまして、その場合にも最終的にはやはり裁判所の判断が入ってくるということでございますから、私どもは行政上の手続としては極めて妥当な改革案ではなかろうかと思うのが第一点でございます。  そういった改革案とともに、長年の課題であります議会、監査委員の関与権、それから罷免権の廃止、そしてそれを背景として今後機関委任事務の全体的な縮小を図っていく努力を続けていくということに全体として地方自治を進めていくメリットがある、こういうことが私どもの判断でございます。
  47. 安田修三

    安田委員 裁判の判断が入ると言うけれども、それは代執行が行われたときに裁判を提起しても執行は伴わないわけですね。だから、後ほど裁判に勝って原状回復をやっても原状回復しがたいものが出てくるわけです。だから、これは気休めと一緒なんですよ。したがって、そのことによって、司法の判断が入るからといって、実は今の制度を変えるに値するものでも何でもないということは私は極めて大切だと思います。そうでなければ、手続だけ簡単にするのなら、裁判二回のものが一回で終わらないかという議論はあるのです。事実そういう提起もいろいろこの過程にはありました。だが、それは今政府としては困るのでしょう。それをやったら困る、先にやってしまいたいというその発想が問題なんです。  さて、今いろいろおっしゃいました。そこで私は、作動しにくい、それでは今まで職務執行命令訴訟制度が発動された事案についてお伺いしたいわけです。どういうケースということですね。
  48. 木村仁

    ○木村政府委員 これまでの事例といたしましては、御承知のことと思いますが、東京都の前の砂川町の町長が土地収用法に基づく公告等の手続をとらなかったために職務執行命令訴訟等に至った例が一つございます。それから、福岡県田川市長に対して、外国人登録法に基づく国籍表示を違法に行ったとして職務執行命令が出された例がございます。いずれも現行の制度に基づく手続が行われ、砂川町の場合には、訴訟が提起されて最高裁の判決が出て決着をしております。また、田川市の場合には、命令が出された段階で知事と市長との話し合いがつきまして、問題が解決しております。  表面にあらわれている問題は以上の二つでございます。
  49. 安田修三

    安田委員 そこで、今おっしゃった二つの件だけなんです。ほかは出ていないわけです。作動しにくいから出さなかったとおっしゃるのかもしれませんが、事実上は私どうしてもやらなきゃならぬ問題だったらやっていらっしゃると思うのです。砂川事件の場合、昭和三十五年六月十七日の最高裁判決をどのように受けとめていらっしゃるか、お聞きしたいと思います。
  50. 木村仁

    ○木村政府委員 ただいまの御質問にお答えする前に、先ほどちょっと間違ったことを申しましたから訂正いたしますが、砂川事件は最高裁で決着したのでなくて、最高裁が破棄差し戻しの判決をして、高裁で終わっておりますので、訂正をいたします。  砂川事件最高裁判決の趣旨でございますが、職務執行命令訴訟制度の趣旨につきましてこの判決は、「地方公共団体の長本来の地位の自主独立性の尊重と、国の委任事務を処理する地位に対する国の指揮監督権の実効性の確保との間に、調和を計る必要があり、地方自治法第百四十六条は、右の調和を計るためいわゆる職務執行命令等訴訟の制度を採用したものと解すべきである。」こういう部分がございます。これは現行制度の趣旨としてまことに適切な判示であると考えております。  ついでながら、改正案におきましても、先ほど申しましたように、最終的には裁判所の公正な判断を仰ぐことができるということになっているわけでございます。
  51. 安田修三

    安田委員 今局長がおっしゃったように、最高裁判決は、地方自治の本旨からも必要だということで評価をしておりまして、私はいわゆる日本の三権分立の制度がこの中にぴしっと生かされておると思うのです。したがって、そうしたことを欠くということは、現行憲法の趣旨にも背くことになるのではないだろうかと私は思います。  さてそこで、福岡県の田川市の国籍書きかえ問題の場合、先ほど局長おっしゃったように、これは和解で解決しております。このことはいろいろ問題がありましたが、これまた職務執行命令訴訟制度に基づいて政府が命令をしていった。しかし結果的に裁判になる前に和解になっていった。要するに、私が先ほど言いましたように、それぞれの団体が対等であるという、国と地方との間に法令解釈についての意見の相違が出て対立したが、しかし、それがお互いに主張し合って、そして裁判にいくケースもあり、田川市のように裁判にいかないで話し合いがついた、これもまたひとつそれでいい場面ではないだろうかと思うのです。そうでなければ、どちらかというと、今の場合に、こういう地方の時代あるいは地方が尊重されるといいながら、国から通達や通知が出れば、自治事務であっても、それまですら国の指示に従わなければならぬような感すらある場面がたくさんある。しかし、こういう職務執行命令訴訟制度があって、首長が毅然として自分の自治体の法令解釈その他等を守って対立した場合には、自分の身分が保障されながら頑張れる、そういうような場面がこのようにあるわけですから、私はこれは地方の発展のためには不可欠の要件になることは間違いないと思うのです。そういう点で私は、福岡のこういう和解という場面にくるのは、やはりあり 得るのだ、砂川事件のようなところまでいくのもあり、またこういう和解ということで解決するというのもあり得るのだ、そういう点では大変評価されていい制度ではないかと思いますが、こういう関係のいわゆる大もとである自治省としてはどう思ってこられましたか。
  52. 木村仁

    ○木村政府委員 機関委任事務の執行というのは、国、地方を通ずる行政の秩序の維持の問題でございますから、国と知事、知事と市町村長との間に十分な意見の交換、話し合いが行われて、それですべてが円滑に進んでいくのが理想の姿であろうと存じます。その意味で、田川市の事件につきましては、命令は出されましたものの、それを背景としながら話し合いが行われ、問題が解決し、そしてその事務の改善が後日なされたということで、私どもは行政の過程として大変評価すべき過程ではなかったかと考えております。ただ、最終的にはそういったものを担保する制度があるということが必要であったのかなという気もするわけでございます。
  53. 安田修三

    安田委員 そこで、先ほど監査委員の監査権限の拡大という問題も入るというお話がありました。そういう点で、私は初めからそれは大変評価しておるし、長年の要望であったわけで、いいことはいいこと、ぜひ改正していかなければならぬということではいいのですが、ただ、そういう職務執行命令訴訟制度というような大事なものがなくなった場合に、地方の失うものは非常に多い。そのために監査委員の権限が入ったということはちょっと筋違いだったのじゃないだろうか。それは機関委任事務の地方移譲という問題に対して、実は職務執行命令訴訟制度の問題というのは押し込まれてきたものであって、監査委員の問題が入ったからいいという問題ではなかったのじゃないか。だから、私はこう思うのです。機関委任事務というものは見直して、本当に地方団体が、さっき言うように五百二十九項目か、廃止から改善から含めてかなりすっきりしてきた。しかも、行革審が言っているように、国家として機能上必要なものだけを残して、あとは全部地方へ移しなさい、そういうものが整理された暁に、いや職務執行命令訴訟制度というのはもうそんなに必要ないんだ、だから地方地方でやりなさい、国は国でやるから、それはお互いにそれぞれ行政機関としての立場を尊重しながらやっていく、あとはそういう今までの機関委任事務の関係では余りぎくしゃくするようなものはなくなったのだから、職務執行命令訴訟制度もこの際変えようじゃないか、こういう話の持ちかけなら話もわかると私は思うのです。ところが、先ほど言ったように、廃止が十一項目でしょう、そして改善が六十七項目でしょう、こういう状態で伝家の宝刀をさあどうぞと言って差し渡すのはいささか代償は大き過ぎはしないか、ちょっと大変じゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  54. 木村仁

    ○木村政府委員 先ほども申し上げましたように、今回の改正の内容も、この種の制度としては妥当な、いわば適法手続を尽くした制度になっている。しかも、最終的には裁判による救済があるということで、それなりの合理化がされたものと私どもは考えております。それが第一でございます。  第二に、先ほど来申しておりますように、罷免の制度がなくなった、それから議会、監査委員の関与権が拡大されたということがあるわけでございまして、全体として地方自治を推進する方向の改革として評価していただけるのではないかと私どもは考えているわけでございます。  御指摘のように、自治省といたしましても、機関委任事務は最終的にはゼロにする、あるいはそうならなくとも、ごく限られた国家的事業で、どうしても地方団体の長に機関委任することが必要なごく限られた事務だけ機関委任事務とするという姿に持っていくことが理想でございます。そこで、今回のこの改正ができますと、いわば地方における機関委任事務への団体としての関与が非常に強くなるという意味で、機関委任事務がいわば団体事務化の過程をとり始めるのではないかという期待を持っております。  それから、この訴訟制度を改革いたしますことによって、個別法によって極めて即断的な代行制度がどんどんできていくことも防ぐことができるのではないか。そういうことで、全体として地方自治を推進する方向に評価していただける改革案ではないかと私どもは考えている次第でございます。
  55. 安田修三

    安田委員 あなたは提案した当局の立場で説明しなければならぬから評価するとおっしゃるのでしょうが、そういう評価というのはどうでしょう。地方自治問題を論ずる人でそういう評価を持っている人はいるんでしょうか。地方制度調査会でも私聞いていましたが、ほかの党から出ていらっしゃる委員、私の左側にいらっしゃる委員の方でも、初めは反対論を随分ぶたれたのですよ。最後は別の人たちが来て賛成だけおっしゃいましたが、初めは皆さん問題点は全部一緒としていた。本来、大臣初めここにいらっしゃる人はみんな大体そうなんじゃないでしょうか。だが法案が出てしまえば、それはそれぞれ立場がありましょうからこういう議論になるのでしょうが、これを評価するなんというのは――これはわかりやすいのですよ。なぜかといったら、裁判をやったって、勝った場合は原状回復できるけれども、それは何にもならないことになる。私はきょう時間がないからそこまでできませんけれども、そういう原状回復をやった場合、経費の負担はどうなりますか。例えば地方が裁判に勝った。地方がその経費を負担しなければならぬという。じゃ、地方が国から権利を侵されて、地方が自分で原状を回復して、費用まで自分で持たなければならぬのか、踏んだりけったりじゃないかということになるけれども、事実上はそれは何の負担にもならない。なぜかといったら、これはそういう権利問題みたいなものが多いですから原状回復は不可能なんですよ。だからそれは本当の気休めなんです。  しかし、出される以上は皆さんそうおっしゃらなければならぬという気持ち、それは皆さんの立場の気持ちであって、私はそれを承知するわけにはいかない。それは本当に大変なのであります。ですから、これは得るところは一つもない。ただ、監査委員の権限拡大だとか罷免の問題は当然の話です。これはおかしい話です。だが職務執行命令訴訟制度と引きかえというなら罷免を置いてもらってもいい、現実これで公選の首長の首を切れるわけがないんだから。二回裁判をやって首を切るなんて、裁判でまず国の方が負けることが多いでしょう。だからできるはずはない。それだったらまだ現状の方がよろしいということになってしまう。これは総括的には、新聞報道等でも指摘されてきたように、また事実見て、国の各省庁の権限が結果的に強まるだけです。地方に得るところがあるなんというのは、局長は法案の提出者として説明しなければならぬからそうおっしゃるのであって、事実上はそうではないということを私は指摘しておきたいと思うのです。  そこで、私は監査委員の問題に一つだけ触れておきます。時間があれば代執行の具体的な手続上の問題点にも入りたいのですけれども、監査委員の監査権限の拡大だけにとどめておきたいと思います。  機関委任事務について議会の検閲・検査権及び監査請求権を認めることになりました。それからまた、監査委員の監査の対象とするわけですね。そこで、機関委任事務といっても、自治事務のようなものが大変多いのは先ほどもおっしゃっておるとおりです。そこで、住民に密着した地方議会や監査委員に監査権限がなかったこと自体、合理的な根拠がなかったと思うのです。したがって、今日まで地方制度調査会から十七次、十八次にわたって監査制度の改革に触れて機関委任事務を監査の対象とするよう答申されてきたことは御承知のとおりです。  ところで、今回の改正案は、重要なところが実は監査委員制度の改革の中でぼかされておるわけです。それは第九十八条では、議会における機関委任事務の書類及び計算書の検閲は「(政令で定 めるものを除く。)」とされております。また、監査請求の対象となる事務も「(政令で定めるものを除く。)」となっておるわけです。さらに、監査委員の監査の対象となる事務についても「(政令で定めるものを除く。)」となっておるわけです。大事なところは全部政令で除く、除く、除く。政令の定め方によっては、せっかくの決まった権限は何もなくて、かすだけ残るということにもなってくるわけです。ここが皆さんにとりまして各省庁との大変な駆け引きの場面でございましょうが、国会審議している我々が一体どの事務が見れて、そしてどの辺まで監査が突っ込めるかということが全く五里霧中、一寸先はやみと一緒です。  さて、政令の概要というのはどうなんだろうか。それによっては私たちは、監査委員の権限が拡大されるけれども、喜んでいいのかどうなのかさっぱりわからない。喜んでいらっしゃるのは局長だけ、こうなるわけです。どういうところまで我々はのぞけるのか、それを皆さんはどのように政令で区切りをしようというのか、これをお聞かせいただきたいと思います。
  56. 木村仁

    ○木村政府委員 機関委任事務に対する監査の権限を創設いたすわけでございますから、その実質が損なわれるような政令による除外ということは考えられないのでございまして、私どもとしては政令で除外する事務の数は最小限にいたしたいと考えておりますが、現在の段階ではまだ固まっておりません。どういう性質のものかと申しますと、非常に個人の秘密に関することの多い事務でありますとか、あるいは行政機関が裁判所の行う司法手続に準ずる争訟の裁決、決定等を行います準司法的事務等に限られるというふうに考えております。
  57. 安田修三

    安田委員 これだけ聞いてもわかったのは除外は最小限にしたいというだけで、あとは個人の秘密に関する事務あるいは司法手続に準じたものだといっても、大体ここらあたりに入ってきますと、行政関係の中身でございますのでかなりの範囲が入ってしまいます。そういう点では大変問題のあるところですね。これはこれからの論議の中でさらにいろいろと問題が出てまいると思います。  そこで、百九十九条の「監査の実施に関し必要な事項は、政令で定める。」これまたそうなっておるわけです。監査の実施方法まで実はこのように制限があるわけでありますが、実施方法は一体どういうことになるのだろうか、これもひとつお伺いしたいと思います。
  58. 木村仁

    ○木村政府委員 事務監査の実施に関し必要な事項を定める政令でございますが、これも内容はまだ固まっておりませんが、監査の効率的な実施、監査の対象となる事務の円滑な執行についての配慮等、監査を行うに際しての基本的な事項について若干の規定が設けられる予定でございます。
  59. 安田修三

    安田委員 そこで、例えば議会が監査請求をして監査して是正すべきことが発見された場合、議会としてどういう措置が可能でしょうか。
  60. 木村仁

    ○木村政府委員 この議会による機関委任事務に関する検査・検閲、監査請求は、御指摘のように、地方公共団体の長、委員会等が国の機関として行う事務の執行が法令、通達及び地域の実情を十分に勘案して行われているかどうかという点を住民の代表である議会が監視をし、そこにもし非違がある、あるいは不公正あるいは著しい非効率がある場合には、これを地方自治法九十九条第一項に基づきます意見陳述権等を行使することによりまして、執行部に是正を求めるというのが第一の効果でございます。  第二に、機関委任事務でございますから、国の法令の制度あるいはそれに基づく通達、指導等がいろいろあるわけでありまして、もしそういうところに問題があるのであれば、同じく九十九条第二項の規定によりまして、関係行政庁に意見書を提出する等の手段でこれを正していくということになろうかと思います。
  61. 安田修三

    安田委員 今、第九十九条の意見陳述、意見書提出という問題、こういう関係の措置という問題が出たわけですが、例えばこういう場合でも、それじゃ機関委任事務で国の方でこうしましたということの通知とかいうものは何ら出てこないわけですね。そういう点では何かもう言いっ放しで終わりというような感じもしてきて、これまた大変問題だろうと私は思うのです。  そこで、先ほどからの政令問題と関連して、最近は法律の中に政令に委任することが非常に多過ぎる。国会中心主義をとる現在の憲法の精神に照らして、国会の立法権を侵すような一般的、包括的、抽象的な委任というのは本来は許されぬわけです。ところが、最近の立法例はどうもそういうケースにだんだん入っていくような傾向を示しておるのじゃなかろうかと私は思うのです。政令で規定し得る事項は、皆さんはもちろんこれの方の本職でやっていらっしゃるわけでありますけれども、本法の補完的な規定とか具体的、個別的あるいは特例的な規定に限られてくる、あるいはまた解釈規定にとどまるということでないだろうか。そういう点ではこの政令問題、もちろん自治省と各省庁との兼ね合いで余りのぞいてもまずいなという場面のところもありますが、それは別にして、限定されて中身に突っ込んだ論議ができるように当局も次の質問者のときから心がけていただきたいと私は思うのです。そうしないと、我々自身が論議しても論議のしようがないという場面がたくさん出てきてしまうわけです。  そこで、もう時間が少なくなってまいりましたのでお尋ねをしておきますが、先般も資料はいただいたのですけれども、機関委任事務の実際の量についてです。  これは別表の方も、それから今度法改正になったらまた少しふえるという数もいただきました。しかし、今までいろいろな場面で議論を聞いておりますと、別表以外にも随分あるのだ、それは数え切れぬというのですね。別表の数は四百幾らで、今度改正されると五百幾らというのをいただきましたが、推測でも結構ですけれども、その他にも一体どの程度あるのだろうかということをお聞きし、かつ、先ほどちょっと出ておりましたが、機関委任事務の中で代執行をやらなければならぬという対象事務というのは自治省の皆さんは本職として一体どの程度見渡せるのだろうか。例えば、自治事務化みたいになってしまっているのもたくさんあるわけです。だから、その中でどの程度か。十の法律で一番よくかかるのは、例えば土地収用であるとか、これはもう地方の人を任じられる大臣にすれば一番よく扱って御存じのはずです。農地だとか、先ほど幾つか挙げました十の中でも伝染病予防法とかいろいろなものがありますので、実際はどうかかるかわかりませんが、とにかく大体必要なものはもう個別法になってしまっている。そうすると、たくさんの中でこれから一体どの程度が対象になると皆さんは推定しておられるか、お聞かせいただきたいと思います。
  62. 木村仁

    ○木村政府委員 機関委任事務の数でございますが、おおむね法律改正の最新の時点では、地方自治法の改正法案ができた時点の機関委任事務が別表に網羅されるわけでございます。従来は五百二、三十ありましたが、行政改革で整理いたしました結果、現在は四百九十七項目でございます。前回の別表整理以降新設あるいは廃止されたものがございますので、昭和六十一年十二月三十一日までに公布され、昭和六十二年四月一日までに施行されました法律、またはこれに基づく政令によるものとして新規七十二項目が今回の改正案に入っております。それから四十六項目が削除となっておりまして、差し引き二十六項目の増、したがって、もし成立いたしますと五百二十三項目になります。その後の、つまり六十四年四月一日以降施行の法律がまた幾つかもちろんあるわけでございますが、それはちょっと現在のところまだ把握しておりません。それは数はそれほど多くはないはずでございます。(安田委員「代執行はどの程度対象に」と呼ぶ)代執行がどの程度の項目についてできるのかということでございますが、現行の法律でいいますと、単に機関委任事務を違法に執行したり事務に懈怠があったりすれば執行命令ができるわけでありますが、今度の改正法になり ますと、他に救済手続がないこと、救済の方法がないこと、そして放置することによって著しく公益が害されるおそれがあることという事実認定の大きな縛りがございますので、私どもは、一体どの程度適用可能性があるのかということは、ちょっと即断できない状態でございます。
  63. 安田修三

    安田委員 終わります。
  64. 松本十郎

    松本委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十一分休憩      ────◇─────     午後一時二分開議
  65. 松本十郎

    松本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。柴田弘君。
  66. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 法案審議に先立ちまして、委員長の御了解をいただきまして、愛知県のことで恐縮でございますが、せっかくお忙しい中を浦野通産政務次官にお越しをいただきました。愛知万博開催の問題につきまして数点にわたりお尋ねをしたい、このように思います。  愛知県では、御案内のように、二十一世紀初頭に国際博覧会を開催をしたいと希望いたしております。国際博覧会は国が主催するということになっておるわけであります。担当省が通産省であるわけでありますが、この愛知県の希望にどのような対応を示されるかというのが第一点。  それから二つ目は、正式な名のりには閣議了解が必要になると私は思うわけであります。二十一世紀初頭ということでございますが、博覧会開催の予定時期ということもあるわけでありますが、少なくとも閣議了解は五年から十年前にはやらなければいけないだろう、こう思いますが、その辺の点につきまして、まず二点お伺いをしたいと思います。
  67. 浦野烋興

    ○浦野政府委員 柴田先生の御質問に答えさせていただきます。  愛知県で二十一世紀初頭に万博をやりたい、この御希望を通産省として受けとめておるところでございます。  その受けとめ方でございますけれども、新たな時代の幕あげに我が日本でこうした万博が開催されるということにつきましてまことに意義深いものだ、このような受けとめ方をいたしておるわけであります。  通産省、これは担当省になるわけでありますけれども、十二月の十四日、パリで開催されましたBIE総会におきまして、我が国の政府代表の二人が行っておりますけれども、これは通産省の商務室大隅室長、そして外務省の今川公使でございますが、この二人から、この総会において各国代表に対して既に二十一世紀初頭に開催したい要望を伝えてございます。  ただいま先生のお話の中で、閣議了解を得なければならないだろう。これは、これまでの慣例によりますと、BIEから、五年ないし十年先にひとつ各国希望があれば登録をしなさい、開催の登録をしてほしいという要請がございます。これを受けて閣議了解をいたしても構わないと思います。もちろんこの閣議了解は早くても構わないわけでありますが、さして現段階では慌てる必要はないだろうとも思っています。  ただ、もう一つその前段階で批准というのがございまして、これは特別博、一般博を合わせて五年ごとにひとつ開催をしていこう、こういう条約が定められておりますが、これはまだ我が国は批准をいたしておりません。これは各国の動静を見ながら外務省を中心にその批准の時期というものを考慮されるように承っております。  以上でございます。
  68. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 重ねてお聞きをしておきますが、ただいま政務次官は、愛知万博の開催は非常に意義深いことである、このようにおっしゃいました。東京、大阪のはざまにある地盤沈下をしている名古屋を中心とした中部、その活性化のために意義が深い、このように私は考えるわけでありますが、この辺についての御感想、御意見をお聞きしたい、こう思っておるわけであります。  それからいま一つは、これは通産省が担当省として国が主催するわけでありますが、やはり国、地方自治体あるいは民間、経済界等々との費用負担の問題がある、こう思うわけであります。その辺のことはどうなっているか。あるいはまた、全面支援ということでありますが、その中身というのは一体どうか。政務次官お答えいただければ結構ですが、事務当局の方でも結構です。お答えをいただきたいと思います。
  69. 浦野烋興

    ○浦野政府委員 愛知県は東京と大阪のはざまにあるというお話でございます。東京では昭和三十九年にオリンピックがございました。大阪では四十五年に万博が開催されました。この地域はやや活力に乏しいということを耳にいたしておるところでございますけれども、この万博を開催するに当たりましては、当然ながら地元が大いなる熱意を持っていただかなければならないわけでございまして、各界各層の協力を得ていただくということが肝要でございます。通産省といたしましても、もちろん、先ほども申し上げましたが、真剣にこの万博に際しては全面的な協力を惜しまないという決意を持っておるわけでございます。  地元負担等のお話もございました。これについてはこれからの問題でございますけれども、この財源というのは入場料による収入というのが大きな役割を占めております。大阪万博の際には、入場人員が六千四百万、そして建設費、運営費で約五百億ずつ、加えて周辺の公共設備投資が六千二百億となっております。二十一世紀初頭の博覧会は、そのときの経済事情あるいは国の財源という問題にもかかわることでありますから今確定できるものではありませんけれども、おおむね大阪万博と同じような形態になるのではないか。したがいまして、国、地方公共団体もそれなりの負担をしていただく、もちろん地元、民間の方々の御協力というものも考えなければならないだろう、このように考えております。
  70. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 意義深いことというのは、やはり東京、大阪のはざまにあって地盤沈下をしている中部圏の活性化、特に今言われております二十一世紀初頭にいわゆる中部新国際空港の建設ですとか、あるいはリニアモーターカーによるところの中央新幹線の建設、あるいはまた第二東名・名神高速道路の建設、やはりこれと万博は大きく連動していると私は思います。万博の実施によって、万博が起爆剤となって、そういった大きなプロジェクトというものも建設が促進される、そしてそれが中部を中心とした地域の活性化、活力ある中部を築いていく、こういうふうに私は意義をとらえておるわけでありますが、その点の御所見。  それから費用負担について、これは聞くところによりますと、国三分の一、地方自治体三分の一、それから地元財界、経済界三分の一、こんなふうに聞いておりますが、その辺のところ。  それからいま一つは、最初の御答弁にありましたように、去る十四日に行われましたパリでの国際博覧会事務局総会、四十五カ国が参加をして、外務省の今川代理大使、そして通産省の大隅氏が愛知万博を大阪万博並みの一般博覧会として開催したいという意思表明をされた。お聞きしたいのは、この総会の反応というのはどうでしたでしょうか。愛知万博誘致の可能性というのは十分あるのかどうか、そのような報道もなされているわけでございますが、その辺の御見解を簡単で結構ですがお聞かせいただきたいと思います。
  71. 浦野烋興

    ○浦野政府委員 ただいま柴田先生おっしゃったように、まさに中部の活性化という新しい時代の幕あげの一大イベントでございまして、これを新しい時代に向けての起爆剤にしたい、私も愛知県の一人でございますから、まさに柴田先生と同じ考えを抱くものでございます。  費用負担等のことにつきましては、後ほど事務方から御説明をさせていただきたいと思っております。  大プロジェクトがこの中部地区にありますことも柴田先生からお話がございました。こうした愛 知万陣に向けていろいろな、空港を初め、きょうも柴田先生は朝の空港議連の総会で御発言をなさいましたけれども、そうしたプロジェクトと相まって、この中部が大きく飛躍をするということにしていきたいものだ、そんな考えもございます。  そして最後の御質問で、二人の代表が現地でこの万博開催の希望を伝えました。これに対して各国の反応はどうかということでございますけれども、まだ条約の批准もいたしておりません。そして、閣議了解もいたしておりません。しかしながら、この総会における我が国の一つの戦術といいますか、何とか皆様方の理解を早くいただきたいということから、機先を制する形で二十一世紀初頭の開催希望を伝えました。したがいまして、根回しをいたしておる段階ではございません。ですから、際立った反応というものはうかがえなかったようでありますけれども、通産省の大隅、そして外務省の今川、このお二人は議会の事務局長であるドフレーヌ女史あるいは議長のソルロランさん、いずれもフランス人であります。そして、この総会には執行委員会というのがございますけれども、その委員長のアランさん、これは英国の方でありますけれども、この主要な人物には強くお願いをしている、こういう情報を得ております。
  72. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 政務次官、私が心配するのは、かつて仲谷前愛知県知事がオリンピックを名古屋でということで旗上げをされました。ところが、その後ソウルに敗れました。まことにお気の毒でありますが、仲谷知事はつい先ごろ自殺をされたというふうに承っております。このようなことのないように、せっかく打ち出したものを、何が何でも愛知に誘致をしてやっていかなければならない、このように思っておるわけであります。まだ批准もされない、あるいはまた閣議了解もされないということであります。その辺は私は政府の対応としてはわかりますが、とりあえず十四日のパリにおける総会は、これは一つの大きなハードルを越した感じではないか、私はこういうふうに思います。しかし、正式の登録申請に向けて、やはり国として正式に決定していかなければなりませんし、ぜひお願いをしたいわけであります。あるいはまた、さらに先ほど来御答弁がありましたように、国際的な合意を取りつけて初めて開催できるわけでございます。この辺、ひとつ政府として今後具体的にはどのような手順を踏んで対応されるかということにつきましてお尋ねをしておきたいわけであります。よろしくお願いいたします。
  73. 浦野烋興

    ○浦野政府委員 私の答弁に不備があれば、事務方から具体的な日程等が決まっておればお答えをいたします。  ただいまも申し上げたかと思いますけれども、批准につきましては各国の動静を見て外務省所管で行う、閣議了解につきましては、万博のときもそうでありましたが、登録申請の要請が事務局より参った時点で行うことになっております。したがって、これからの通産省としての取り組みでございますけれども、先ほど三名の主要人物の名前を申し上げましたが、これにかかわらず、四十五カ国の各国代表の理解を得るために通産省として最大限の努力をしていきたいと思っています。  また、これは愛知県で開催されるということになりますけれども、あくまでこれは日本の万博であるということから、愛知県だけではなく、我が国の全国の方々の深い理解の中で強力なバックアップをいただく、日本が挙げてこの万博開催を希望しているんだということを強く諸外国に訴えていかなければならないと思っています。
  74. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 今のところ二十一世紀初頭と申しましても、マスコミ等の報道によれば西暦二〇〇三年か二〇〇五年というふうに見られる、でありますから一九九三年または一九九五年までに登録申請ということになるのではないか、こういうように報ぜられておりますが、このような理解でよろしゅうございますか。
  75. 浦野烋興

    ○浦野政府委員 その点につきましては、BIEの登録の要請があった時点で申し入れをするということでございまして、現時点で二〇〇三年になるのか二〇〇五年になるのか、その点のことにつきましては現段階では確たることが申し上げられないわけでございます。
  76. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 もう時間が余りありませんから、まとめて三点聞いていきます。  先ほど来申しておりますように、この名古屋圏あるいは中京圏というのは、東京、大阪両大都市圏のはざまに位置し、とにかく沈滞をした空気に包まれているわけであります。この地域をさらに活性化させるためにも地元はもっと積極的に行動すべきであり、この博覧会の開催が大きな意味を持つものと思われるわけであります。この博覧会を誘致し成功させるために地元としては何をなすべきか、この点が一つであります。通産大臣によれば、地元がもっともっと行動的、情熱的に立ち振る舞ってもらいたい、こういうふうにおっしゃっておりますが、この点。  それから二つ目は、この万博のテーマですね。単なる技術とか経済というものにとらわれないで、世界にアピールできる壮大なものにしていきたい。そうすれば、平和と文明というものであるわけでありますが、この辺のお考え方、テーマですね。  それから最後に、この国際博覧会の開催というのは、くどいようでありますが、名古屋圏を中心とした中部圏の発展に具体的にどのような効果をもたらすのか。この三点をお聞きしたいと思います。
  77. 浦野烋興

    ○浦野政府委員 この地域における万博、これは先生おっしゃいました、どうも東京、関西と比べて活力がないよ、まさにそうした向きがございます。これを何とかしなければならぬということから地元は、先ほどのお話のとおりオリンピックでソウルに敗れた、何とかしてそれにかわるものをこの地域で開催したい、この熱い気持ちが万博という形であらわれてきたと思っております。  まさにこの万博につきましては、これは二十一世紀初頭ということでございますから、我が国のみならず、あるいは全世界に対しても大きなインパクトといいますか意義を持つものと考えるべきだろうと思うのです。すなわち、ある意味では二十一世紀の方向を示すものであり、明るい展望というものを示すものになるだろう、またそうしていかなければならないと考えます。  地元の皆様方がこれをどのように受けとめておるか、このことにつきまして具体的にというお話ですけれども、まさに地元の人たちが、何とかしてこの地域で開催をするんだという気持ち、それを持っていただくことが大事だろう、これは田村大臣もおっしゃっておることでございます。したがいまして、愛知県でやるわけでありますから、愛知県の方々がまず日本国内の方々にもあのオリンピックのときと同じような理解を求める、さらにそれを上回る行動を起こすべきだ、こんなことも思うわけでございます。  それではこの地域にどのような効果をもたらすかということでありますが、柴田先生先ほどもお話のございました、この地域はリニアモーターカー、第二東名・名神、伊勢湾岸道路、東海環状都市帯、そして中部新国際空港、こうした大型プロジェクトが待っているわけでございまして、これと万博、これをどのような連携の中で進めていくか、万博の実現に向けてそうしたプロジェクトを促進していくか、あるいはその大型プロジェクトが集大成する中で万博を開催していくか。これは考え方があろうかと思うのでございますけれども、万博が開催されるとなれば、先ほどもちょっと触れましたけれども、あの関西につきましては相当規模の資金が導入されるわけでありまして、こうした観点からも、はざまと言われるやや地味な地域の活性化、これが大きく図られるものと私は確信をいたすところでございます。  テーマにつきましては、これはまだ正式に決まったわけではありませんけれども、地元では平和と文明というお考えをお持ちのようでございますが、これは今後なお英知を絞って立派なテーマということにされればと思っています。  現段階ではそのように承っております。
  78. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 この問題、最後に自治大臣にお 尋ねをしておきます。  今質問のやりとりをお聞きいただきましておわかりだと思いますが、事は愛知県の問題であり名古屋市の問題である。まさしく地方行政、地方の活性化の問題であるわけであります。自治大臣としても大きな責任がありますし、閣僚の一人としての責務もあると私は思います。通産省、担当省としては全面的な支援ということであるわけでありますが、その辺自治大臣としてはどのようなお考えで取り組んでいただけるのか、それをお聞かせいただきたいと思います。
  79. 梶山静六

    梶山国務大臣 私は実は、率直に申しまして、現在までこの愛知県の万博の問題については承知をいたしておりませんでした。しかし、ただいま柴田委員と浦野通産政務次官、それぞれ地元でございますから、お二人のやりとりを聞いておりまして、大変夢の膨らむような、ともすると昨今の大変いら立ちを覚えるような国会運営の中でこんなすばらしい夢をお与えいただきまして、気持ちだけでも大変ほのぼのとして今目をつぶりながら聞いていたところであります。まさにそれは竹下総理の言うふるさと創生、多極分散に通ずる道でもあります。具体的なことは承知をいたしておりませんが、ぜひそういう夢が現実のものとなりますように、これから関係省庁と打ち合わせをしながら善処をしてまいりたいと考えております。
  80. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 では政務次官、どうもありがとうございました。御退席をいただいて結構であります。  次に、法案審議に移らせていただきたいと思います。  今回の改正案の中で、機関委任事務についての議会の検閲・検査権、あるいは監査委員の監査権の導入、地方公共団体の長の罷免制度の廃止や議会の参考人制度の創設等々については我が党が主張してきたところであるわけでありますが、現行の職務執行命令訴訟制度を見直すということには反対であり異論のあるところであります。  そこで、まず初めにお伺いしておきたいわけでありますが、行革審の地方行革小委員会でこの見直しが始まるまでの経緯について御説明をいただきたい。  聞くところによると、この小委員会におきましては、報告書作成の直前になって、それまでの一連の審議とは何の脈絡もなく唐突に事務局側から持ち出されたと言われておるわけでありますが、それは事実かどうか、お聞かせをいただきたい。
  81. 木村仁

    ○木村政府委員 当時の行革審の小委員会におきます審議経過につきまして詳細を自治省としては承知をしていないのでございますが、行革審では、国、地方を通ずる行政改革の一環として、機関委任事務についてその制度全体、各方面から見直し審議しておられたのでありまして、その中で、御指摘の議会や監査委員の関与権と並んで職務執行命令訴訟制度の見直しが取り上げられたものというふうに理解をいたしております。  経緯を申しますと、小委員会報告が六十年七月一日に出されましたが、そのころから職務執行命令訴訟制度の見直しについては慎重に審議をすべきではないかという声がございまして、行革審の七月二十二日の答申におきましては、地方公共団体の長が裁判を提起できる時期を早める、それから長の罷免制度が残っていたのを廃止するという手直しが加えられて答申が行われたというふうに聞いております。
  82. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 今御説明をいただきましたが、納得できません。  一九八六年二月三日、地方制度調査会が出しました「職務執行命令訴訟制度の見直しに関する意見」の中にもやはり「中央・地方を問わず行革推進にとって必要要件であるとの統一認識が形成されてきたが、訴訟制度の見直しについては極めて唐突であり、その必要性は議論もされず、また主張もされてこなかった。」このようにあるわけであります。やはりこれが唐突に持ち出されてきたのは果たしてそれだけの理由があるのか。私は政治的な色彩が極めて強いものと言わざるを得ない。しかも、地方自治体が拒否した機関委任事務を国が代執行するのに二度の裁判手続を必要とする現行制度が施行されましてから、この制度が適用されたのは今日まで昭和三十五年の砂川事件の例だけであります。なぜ唐突に改正する理由があったのか。私は改正する理由はない、こう思いますが、明確にひとつ、なぜ改正しなければならないのか、大臣、お聞かせいただきたいと思います。
  83. 木村仁

    ○木村政府委員 現行の職務執行命令訴訟制度が、機関委任事務の適正な執行の確保の要請地方公共団体の長の本来の地位の自主性、独立性との調和を図る観点から設けられているということは当然でございますが、しかし、行政内部の効果的な秩序の推特を図りますための制度としては、二度の裁判があるということで非常に動きにくい制度であるという指摘がなされたのでございます。また一方では、公選された知事、市町村長を内閣総理大臣あるいは知事が罷免するということは、丁寧な手続をとるにせよ、民主制度としてはいかにもおかしいのではないかという声があったことも事実でございます。これらの制度に対する批判と申しますか問題点指摘が、機関委任事務全体の制度の議論の中で浮かび上がってきて取り上げられてきたものでございまして、政治的というよりは非常に制度的な議論の中から出てきたものではないかと存じます。  政府といたしましては、行革審そして地方制度調査会の慎重な審議の結論を踏まえまして、この代行制度の合理化を図りつつ、一方では、監査委員地方議会の機関委任事務に対する関与の制度を充実するとともに、また罷免の制度はこれを廃止する、そして全体として今後そういった基盤の上で機関委任事務をできるだけ縮小していく方向の改革を進めたいということで、この法案を提出させていただいているわけでございます。
  84. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 理解することができません。  続いて聞いていきますが、行革審答申においては地方の自主性、自律性の強化方策の一つとして提言をされていますが、機関委任事務について国の代行権を強化するということがなぜ地方の自主性と自律性の強化につながると考えるのか。私は勘ぐって申しわけありませんが、同時に提言をされた議会及び監査委員の機関委任事務への関与を認めることとする措置に対する代償措置として今回のこの改正がなされるのではないか、こういった気持ちを持っているのですが、どうなんですか。
  85. 木村仁

    ○木村政府委員 この機関委任事務に関する職務執行命令手続の改革につきましては、従来から現実の行政の迅速かつ的確な運営の上では十分に機能しない制度であるという批判があり、また、長の罷免という非民主的な制度が続いているということで批判がございました。同時に、機関委任事務の適正な執行と地方本来の自主性、独立性との調和を図る制度としての機関委任事務の職務執行命令手続というものを改善していくという観点からしますと、改革後の制度も十分に丁寧な手続がとられ、そして最終的には裁判所において機関争訟が行われる可能性が残されているという意味で、調整の制度としては改善されているのではないかと私どもも考えております。  同時にまた、便宜論ではございませんが、同時にそれと合わせて議会や監査委員の関与の幅を広げ、かつ罷免の制度は廃止するということで、代償措置というよりは、私どもとしては全体としてこの機関委任事務の制度改革を見た場合に、地方自治の進展に貢献するものであるという判断をいたしている次第でございます。
  86. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 地方自治の後退にこそつながれ、また中央集権がより一層進むことにこそなれ、あなたの考え方、御答弁と私は真っ向から対立をしておりますから、すれ違いになるのはやむを得ませんが、続いていろいろと聞いていきます。  この見直しの理由ですね。地方自治体が拒否をした機関委任事務を国が代執行するに二度の裁判手続を必要とする現行制度が施行されてから、ただいま申し上げましたように、この制度が適用さ れたのは昭和三十五年の砂川事件の例だけであります。これは東京都と町の関係でありましたね。ですから、改正する理由が余りないわけなんです。自治省はどうおっしゃっているかというと、具体的なケースを想定しての改正ではなく、機関委任事務全体の見直しを機に制度を整備するのが目的である、こうおっしゃっているわけですが、これは納得できませんよ。説明になりません。この法案はずっと継続審議、継続審議で来ておりますから時期がだんだんたってきたのですが、この代執行の簡略化が浮上したのは外国人登録法の指紋押捺問題をめぐる一部自治体の拒否騒ぎが一因だ、こういうふうにも当時言われたわけであります。どうですか。
  87. 木村仁

    ○木村政府委員 この行革審における審議の過程から見ますと、専ら制度論、機関委任事務をめぐる全体的な制度論の中で出てきた議論であり結論でございまして、具体の発生しつつある問題あるいは将来発生するかもしれない問題をにらみながら議論されたというようなことは承っていないのでございます。
  88. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 また、私がさらに申し上げたいのは、現行制度の見直しの具体的な、かつ緊急の必要性はあるのかどうか。これはないと私は思う。じゃ、あなたの方があるとすれば、一体具体的にどの法律のどの事務についてどのような事態の発生を想定しているのか、具体的に答弁をしてください。あるいはまた、過去に発動を検討したが、現行制度に問題があるために発動できなかった、そういったケースがあったのかどうか、この点もひとつ具体的にお答えをいただきたい。  それからもう一つ言いたいのは、政策的に特に迅速な処理が必要とされる事務について、この地方自治法ではなく関係個別法で裁判抜きの代行規定を置くこともできるわけであります。これはもう詳しいことは申しませんが、よく御承知だと思います。例えば土地収用法の第二十四条、これは知事が代行できるわけでありますね。それから国土利用計画法の第十三条、これは国土利用計画審議会の確認を受けて総理大臣が代行できることになっている。あるいはまた都市計画法第二十四条におきましては、この都市計画の決定を建設大臣から指示され、これに従わないときには都市計画中央審議会の確認を受けて建設大臣が代行をすることができる、こういうことなんですよ。だからこの地方自治法を、この代執行をわざわざ改正する、見直しするのでなくて、個別法で十分に対応できる、やるならひとつ個別法でやってもらいたい、私はこういうふうに思っているのです。ですから、今新たに改正案を提出する理由はない、撤回をしていただきたいと思います。大臣、どうです。
  89. 木村仁

    ○木村政府委員 大臣が答弁いたします前に私から。  第一点の、具体的にいかなる場合を、事案を想定して制度改正を行うのかという点でございますが、この議論は、先ほど来申し上げておりますように、機関委任事務全体の議論の中で制度的に起こってきた議論でございまして、具体的な事案が想定されていたわけではございません。そして、その命令の執行に当たりましては、改正後の第百五十一条の二、第一項から第七項までに規定する措置以外の方法によってその是正を図ることが困難なような現実の事態、かつ、それを放置することにより著しく公益を害することが明らかであるというような事態、そういう事態の場合に適用すべき制度として絞りをかけているわけでございます。  そこで第二点の、それでは緊急にこれを整備しなければ対応できない事態があるか、これまでにそういう事態がたくさんあったのかという点でございますが、それは御指摘のとおり、私どもは承知しておりません。と申しますのは、発動された事件は一、二あるわけでございますが、発動されないで、考えながらしかし発動しなかった事案というのはちょっとわかりませんので把握していないのでございます。  それから第三点の、個別法でやる点につきましては、そのような方法があることは十分検討をされましたし、議論の過程でも個別法でやれるのではないかという議論がたくさんあったことも事実であろうと思います。ただ、現在の姿から考えてみますと、例えば予防接種法で市町村長が懈怠を起こしたときに知事が直ちに代執行できるというようなことは、なるほど合理性があるようにも思いますが、個別法で次々と、そういう形で非常に迅速かつ簡便な方法で代行ができるようになるということは、むしろ私どもは大変恐れることでございまして、地方自治法の制度がもし現実に動かないとしますならば、それを少し動くように、しかし慎重な手続で動くようにして、それをもって余り乱発の、個別法による措置をむしろ避けてまいりたいと考えております。
  90. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 大臣、私はこの改正、必要ないと思うのですよ、この件に関しては。先ほど来議論をしてきました。現行制度で十分間に合う。この現行制度の趣旨につきましても、大臣、最高裁も国の機関委任事務の指揮監督権と地方の長の自立・独立性との間の調和を図るものとして認めており、その意味からも、現行規定は国と地方との基本的なあり方はどうあるべきかについて考える際に、そのよりどころとする規定であると私は考えております。  このような地方自治の根幹にかかわる重要な規定を、具体的な理由や緊急の必要性もなく、今やりとりしてきましたが、そういう必要性はありません。単に迅速な処理が期待できないからという手続的な観点から見直すことが地方自治の本旨にかなった措置であるとは到底考えられません。むしろ中央集権化を進め、地方自治を後退させるものであると私は考えます。この辺の大臣のお考え方、私は撤回を要求をしたいわけでありますが、どうでしょうか。
  91. 梶山静六

    梶山国務大臣 せっかく御提案をしているものでございますから、慎重に御検討をいただいて早く結論を出していただきたいと思います。  具体論につきましては政府委員に譲るといたしましても、確かに御指摘のようにこれは制度論でございまして、実効性がどうか、即効性がどうかという問題のみを論議しているものではございません。ですから、これがこのまま通れば地方制度の、地方自治の崩壊につながるというのも思い過ごしであるかもしれませんし、またこれがなければ国と地方関係が良好に保てないとも現実には考えません。しかし、制度論としてお互いに考えるべき点があるような気がいたします。  それは、今先生が御指摘のような最高裁その他の判決等にもございますけれども、私はどちらが正しいとか正しくない――一般論で申しますけれども、国の主張地方主張、それは同じ物差しで律し得ないということがあろうかと思います。それですから、どちらが正しいとか正しくないとかという物差しはない。国としての責任や権限において行わなければならないことと、地方自治体がみずから地方自治体の本旨にのっとってやらなければならない責任と権限というのは別個なものでございます。これが両方かち合うことが一番望ましいのでございますけれども、例えば国の主張で、大きな意味で自衛権、自衛権の中の国防の問題だとかあるいは外交上の問題だとかいうのは、地方自治の具体的な手法にはなかなかなじみ得ないものがありますし、地方主張と、また、これを国家としての政治要因を考えればそれを乗り越えるものがあってしかるべきものだ、そういう制度論が私はあろうかと思います。  その問題を、職務執行命令訴訟制度、こういうものにどう結びつけて考えるかという問題でございますが、それぞれ長い経緯を経て今回提案をされたものでございますから、ぜひとも慎重に御検討願いたい。これがだめであれば地方自治が崩壊をする、これが通れば国が全部中央集権になってしまうという短絡的というか思い込んだ考え方ではなくて、それぞれの主張があるという原点を踏まえて御協議を賜れば幸いだと思います。
  92. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 撤回をしないということですね。では議論をさらに進めてまいりたいと思いま す。  現行制度では、国の命令が違法であると考える地方自治体の長は、第三者である裁判所の判断があるまでは当該命令に従わないことができるわけですね。すなわち、法令の解釈については国と地方は対等であることを保障した制度が現行制度だと思います。裁判が遅延するために迅速な処理が期待できないというのであるならば、その裁判の遅延というのは国だけではなく国民全体の問題でありますから、むしろ機関委任事務の問題としてではなく、やはり裁判官の増員等裁判に関する制度全体の改革の問題としてとらえるべきであると考えるわけであります。どうでしょうか。これが一つ。  それから二つ目には、個別法に具体的に規定するものと比較をして、地方自治法に一般的、抽象的に規定をされますと、地方公共団体の当局者にとっては、その事務処理全般にわたって国の代行権発動の影におびえることになり、住民の意向を反映した事務処理よりも、国の指示に盲従することが優先をされ、地方自治の後退を招く結果になるのではないか、こういった危惧を抱いておりますが、その辺はいかがでありましょうか。  そしていま一つは、現行法では職務執行命令が出されても、地方公共団体の長がそれを違法であると考えるなら、第三者である裁判所の公正な判断があるまでは一応それに従わないことができたので、結果として地方公共団体の自主的な法令解釈権を認めることとなっているわけであります。しかし、今回の改正はこれを否定する結果になるわけですね。どう考えていらっしゃるか。この三点について御見解を伺いたい。
  93. 木村仁

    ○木村政府委員 裁判所制度のあり方につきましては、いろいろな御意見がおありになると思いますが、政府といたしましては行政機関でございますので、裁判につきましては論評を差し控えさせていただきたいと存じますが、この制度の見直しを検討するに当たりましては、やはりいろいろなことが議論された中で、命令を出し、確認するという裁判の手続をするという部分で大変時間がかかるということが議論されたことは事実でございます。そういうことで新しい制度に改革をしようということでございます。  第二に、個別法で命令手続が設けられるのなら別論、地方自治法で強い制度ができますと地方が萎縮するのではないか、そういう点は、もしこの職務執行命令手続が非常に一方的な手続でございますならばそういうことも言えるかと存じます。しかしながら、裁判の点について申しますと、従来におきましても裁判手続が始まりまして、その結果命令が出され、それに違反すると確認があって、最終的に代執行ということになるわけでありますが、今回も、内閣総理大臣ではございますが、異議を申し立てて、そしてその決定を待って、そしてその決定に不服がある場合には直ちに訴訟を提起し、それと同時に執行停止の処分を求めることができるわけでございます。そして、裁判所はその本案について知事が申し立てることに理由があると見えるときは執行停止の処分をすることになっておりまして、それをとめようとすると、政府は理由がないことを政府の方で疎明しなければならないという慎重な手続になっているわけでございますから、今回の改革で、法律解釈についての地方公共団体の長の力が大変弱められるとは考えられないのではないかと考えるものでございます。
  94. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 それでは答弁になっておりません。時間の関係からちょっと前へ進めていきます。  大臣にお尋ねしておきますが、別の観点からこの代行制度というのを見ますと、国の事務が機関委任という形で地方公共団体の長等に委任されていることが前提になっているわけです。でありますから、これは機関委任事務制度を根本的に見直して、機関委任事務の整理合理化による国、地方間の事務の再配分を行うことが大事だ、それによって解決する問題だと私は思うわけなのですね。むしろ、国、地方間の事務の再配分こそがこの見直しよりも優先されてしかるべきであるというふうに考えるのですが、どうなのですか。
  95. 梶山静六

    梶山国務大臣 国の機関委任事務の見直しについては適時適正に行われている問題でございまして、いろいろな答申も受けておりますし、現実にまたそういうものが進んでおります。  ただ、今回の提案の問題は、むしろ国と地方とのいわば、先ほども申した制度・権限論、そういうものでございまして、具体的にこれがどういう効果をあらわすか、あるいは弊害があるか、そういう問題というよりも、むしろ車の両輪と言われるものが現実にどうあるべきか。そして、国と地方がそれぞれ別個な機関で、あるいは先ほど言われた個別法でやったらいいではないかというようなことになりますが、私はやはり自治体の中に穴をあけて、個別法で別個な形の中央の行政が地方自治体に全部入ることに必ずしも賛意を表する人間ではございません。そういう意味では、むしろ国と地方がある意味で関連をすることが望ましいと思われるもの、これに関しては当然国の機関委任事務があってしかるべし。そして、なおかつそういう中で国の主張地方主張が違う場合どうすべきかという制度論、権限論の問題でありましょうから、この問題とその整理合理化という、現実に合うという問題はまた別個な考え方に立って進められるべきものだというふうに理解をいたしております。
  96. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 さらに質問してまいります。  この改正規定についてでありますが、一つは、現行法と比較すると、発動の要件を厳格にするために、「著しく公益を害することが明らかであるとき」を要件に加えたとされておりますね。じゃ具体的にこれはどのような事態を指すか。それからまた、公益を害することが明らかかそうでないかだれが認定するか、判断するか。まあ主務大臣だと思いますが……。  それから、まだあります。この主務大臣に不服の知事は、内閣総理大臣に不服の申し出ができるとされておりますね。そもそも主務大臣が、事前に閣議に諮ることもなく、このような重大な命令を発することが果たして考えられるか。でありますから、内閣総理大臣に不服の申し出をしても、総理大臣が申し出に理由があると認めることはほとんど期待はできないのではないか、こんなふうに私は考えているわけであります。この辺はいかがか。  それから三点目は、現行法は国側から訴訟を提起し、命令の適法性は国側が立証しなければならないので、発動に際しては慎重な検討が必要になっているわけであります。しかし改正案は、このような手続を必要とせず、国側の命令に不服の場合、地方の側から訴訟を起こしてその主張の正しいことを立証する責任があります。したがって、改正案では国側の一方的な意思に基づく恣意的な発動を招く結果が十分にある、このように感ぜざるを得ませんが、以上の三点について明快なる答弁を求めます。
  97. 木村仁

    ○木村政府委員 著しく公益を害する場合と申しますのは、代行についてできるだけ慎重であるべきであるという見地から加えられた条件でございまして、一般的には社会、公共の利益に対する侵害の程度が甚だしいという場合に限定しようとする趣旨でございます。その判断は、個々具体的な状況の中で行われるものでございますので、一般的にこういう場合だということは大変難しいと存じます。そしてこの判断は、第一次的には当然主務大臣判断にかからしめられているのでございますが、これが不服であれば、知事は直ちに内閣総理大臣に不服申し出をして、最終的には裁判所の判断にゆだねられることになるわけでございます。したがって、主務大臣の恣意あるいは広範な裁量にゆだねられる部分は制約されているものと存じます。  それから、内閣総理大臣に不服を申し出ても、しょせん一つ穴のムジナと申しますか、あらかじめ話がついているだろうから意味ないではないかということでございますが、そういう見方もあろうかと思いますが、また、総理大臣は全体を統括 する立場から、その不服申し出があった時点に立って客観的な調査を行い、言い分も聞き、決定を下すものでございますから、それなりの意味があるのではないかと思っております。  それから、地方の側から裁判を起こし、あらゆることを立証していく必要があるから不利ではないかと言われる点につきましては、そのとおりでございますが、この訴訟の提起は長限りでできる機関争訟の訴訟手続でございますし、同時に、執行停止の処分を申し立てなければならないのであります。そして、その本案に理由がありと見えるときは執行停止処分を裁判所がする、それをとめようとすると、逆に国の側がそうでないことを疎明しなければならないという関係にも立っておりますので、それなりの調整がとれているのではないかと考えております。
  98. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 この問題は、もっともっと深くやるために、これだけあるのですけれども、これだけやっておるととても二時二十五分までに間に合いません。それで、きょう一日で終わるわけではありませんので、私は、慎重審議を特に求めたい、こういうふうに委員長に申し上げます。  そこで、この問題のとりあえずのまとめとしてひとつお聞きをしておきますが、今回の改革の一つの力点は、国の代執行制度の簡素化で、機関委任事務を地方自治体が拒否した場合、国側は裁判手続抜きで代執行できるようにするということにありますね。これは先ほど来申しておりますように、地方自治権の侵害でありますし、中央集権化のより一層の強化につながると思います。この改革が裁判抜きという一点のみでは論ぜられる性質のものではないことを御指摘申し上げたい。それは、遅々として進まない機関委任事務の整理合理化と自治体への権限移譲の問題であると私は思います。今大臣に答弁いただきましたが、私はそういうふうに思います。国の機関委任事務は、統計調査、河川の維持管理などその数は四百九十七項目に上り、自治体の事務量の七割から八割を占めると言われておるわけであります。  そこで、行革審は六十年七月の答申で機関委任事務の八十項目、許認可権限五十四項目について廃止あるいは地方移譲によって整理合理化をすることを求めた。しかし、昭和六十年末政府が決めた六十一年度行革大綱では、整理された機関委任事務はわずか十五項目であった。地方制度調査会答申は、これは不十分であるともうはっきり言っているわけであります。私はここに行政改革の大事なポイントがあると思います。この点について、大臣どうでしょう。どのようにお考えになるか。これが一点。  それから、代執行の制度改正をしても、現状では自治体側にすぐ不都合が生ずるとは考えにくいわけであります。また、中央省庁の組織、人員、事務能力の面からも代執行が可能かというと、これも疑問視する声もあるわけであります。だが問題は、私はこれは反対をしておりますが、通るとすれば、その運用適用面、制度簡素化で幅広い分野への国の介入が行われることになれば、戦後四十数年たちまして定着しつつある地方自治の根幹を揺るがしかねない、このように断言せざるを得ないのであります。  この二点について大臣から御見解をいただきたいと思います。
  99. 梶山静六

    梶山国務大臣 委員指摘のように、機関委任事務の見直し、そして地方への権限移譲、この問題はいわば法律改正とは別個の問題として取り進めていかなければならないという認識では全く同じでございます。ただ、何もかもなくすことができるかどうかというのはもちろん検討の結果でございますけれども、私は国と地方が相共管をしながらというか、国の事務をどうしてもやらなければならない自治体の分野も、具体的にどうこうと言われますと私も即答いたしかねますが、あることが普通だという気がいたします。それは車の両輪論からいっても国と地方が全く別個なあれであっていいはずがございません。受ける利益は住民でございます。住民はイコール国民でもございます。そういう観点から立つと、截然と国と地方が全部、大半においては住民に身近な行政は住民の身近なところで地方自治体がやることは当然でありますが、その地方住民といえども国民であることに間違いがございませんし、国家としての大きな保護をちょうだいをしなければならない。また国はその責任を負うわけでございますから、その意味で、もう一回皆さん方に慎重な御審議を願いたいと考えております。
  100. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 しからば、大臣、次の三点をお伺いしたいわけであります。  四百九十七項目ですね、今機関委任事務。自治省、これは間違いありませんね、そうですね。この機関委任事務については近い将来、大臣がそのように御答弁されるならば、地方自治体に移譲する考えがあるのか、あるいは例えば機関委任事務移譲五カ年計画というようなものもつくるのかどうか、あるいは五カ年計画でなくとも、今後そういった計画性のあるものを持って地方へ機関委任事務を移譲していく考えがあるのか。これはもちろん財源も必要であります。そして、もしそれができないとすれば、移譲ができないとすれば、その機関委任事務一つ一つについて、いわゆる国と地方の役割分担と申しますか、明確にそれをしていかなければならない、はっきりしてもらいたい、こういうふうに思うわけであります。  我が党は、草野部会長がこの八月の初旬に「昭和六十四年度自治省予算編成に対する申し入れ」の中で、「国の権限を大幅に地方移譲し、行政事務・権限の再配分を行なうこと。特に、機関委任事務は早急に廃止する」、この廃止というのは要するに地方へ、もう既にやっているわけでありますから、財源を移譲するわけですね。そういうようなことを自治大臣にたしか要望されたと思うわけでありますが、この点を含めて、どうでしょう、この機関委任事務の考え方は。
  101. 梶山静六

    梶山国務大臣 委員指摘のように、この機関委任事務の整理合理化の問題は、たびたび当委員会でも、あるいは地方制度調査会、そしてまた臨調や旧行革審の提言を受けております。そして二度にわたって一括の改正法等が進められてきたことでございますが、自治体側から見て決して満足なものとは考えておりません。さらにこれを進めるための努力をいたしてまいりたいと思います。他方、私も何度か申し上げておりますように、中央省庁、それぞれやはり各省よって立つゆえんのものもございます。そして、それぞれの省庁のまた利点もございます。そういうものに立って、一つの機関委任事務があるとするならば、この省庁に理解をさせ、納得させ、そのものに向かっていくための努力もこれまた払わなければなりませんから、私どもは、要求をすると同時に説得という業務をこれからもやっていかなければなりませんし、時代の推移を見定めながらそういう需要にこたえていかなければならない、その努力を払ってまいりたいと思います。  いずれにしても、自治省の権限のみで果たしてできるかといいますと、残念ながら、これは地方制度調査会でも何遍か答申を受けておりますけれども、受けて立ってそれを整理合理化できる機関がどこにあるのかというと、内閣のいわば調整権というものに期待をしたいわけでございますが、前段も私が申し上げましたように、やはり各省庁のよって立つ法的な論拠もございますので、そういうものとの調整を一生懸命図っていかなければならない現実的な課題がございます。御理解をいただきたいと思います。
  102. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 私は、今まさしく大事なのは地方分権、何度か地方行政委員会で申しておりますが、まずやらなければならないのは、いわゆる国の権限移譲の問題である、地方分権の確立の問題であると思っておるわけであります。  法案に関連して申し上げておきますが、私、実はことしの八月に「国から地方への「権限移譲」に関する質問主意書」を提出いたしました。大臣お読みになっておりませんね。時間が余りありませんから読みませんが、「国と地方公共団体との間の権限配分の現状について、政府はどのように認識しているのか。」これが第一問です。竹下総理 大臣からは、みんな読みませんが、「国と地方の機能分担の適正化のための見直しを政府全体として着実に推進していくことが必要であると考えている。」こういう答弁なんですね。これはいいわけです。  今度第二問で三点質問しました。五月十八日に総理の諮問機関である第二十一次地方制度調査会が「地方公共団体への国の権限移譲について」答申をされております。これはもう大臣も知っていらっしゃると思うのです。「東京一極集中が地価高騰を招き、多極分散型の国土づくりの必要性が声高に叫ばれている現在、今回の提言は大きな意味がある。」これは私が言っておるわけですね。「問題はこの答申をどう実現するかである。以下、三点について質問する。」  その第一点は、「答申では、当面速やかに実現するよう求める事項として具体的に「土地利用」について四項目、「まちづくり」として三項目、「産業交通」として九項目、計十六項目の権限移譲を提言している。今後いかなるスケジュールで実現していくのか。」こういう質問に対して、竹下総理いわく、「今回の答申で提言された具体的な事項については、各制度の趣旨も踏まえ、検討してまいりたい。」やる方向での検討か、やらない検討か、さっぱりこれじゃわからない。質問主意書の答弁書がこういうものであるわけなんです。  それから質問の第二点は、「答申では、国から都道府県への移譲にとどまらず、市町村への移譲を積極的に行うこと及び市町村への移譲については、規模の大きな市には、一般の市町村に対する以上の移譲を行うことを検討すべきだと提言している。具体的にどのように対応するのか。」これについても同じように、「市町村に対する移譲についても検討してまいりたい。」やるのかやらぬのか、さっぱりわからぬです。  それから第三点は、本当に笑っちゃうのです。頭にきちゃうのです。これは笑っちゃった方がいいのか。「答申では、個々地方公共団体が必要に応じて国に権限移譲を要求することができる制度づくりの検討を提言している。」地方制度調査会は。これを「どのように具体化していく方針であるのか。」これについても、御指摘の趣旨の答申が行われている、「今後、提言された方法についても検討してまいりたい。」  それで、ある新聞がこれを見ましてどう書いたか。一番はまあまあだ、二番はあっさりと柴田代議士はかわされたと私の地元の新聞は言っておる。政府の考え方というのはこんなものですか。権限移譲という問題は古くて新しい問題であり、地方自治権の確立、そして中央集権の打破というのはもうたびたび地方行政委員会等々においても絶えず論議をされてきたことではないのでしょうか。私はそういうふうに思うのであります。  それで改めて、一言でいいですから、今のこの質問主意書の答弁を踏まえて、いわゆる国の権限移譲の問題あるいはまた地方分権というものについて、自治大臣としては、私見でも結構ですが、どのようにお考えになっているかということが一つと、もしやっていかなければならないというのであれば、やはり自治省としても、これは政府全体の問題かもしれませんが、一つのスケジュールをきちっとつくって、計画をつくって実践をすべきである、今その時期に来ている、私はこういうふうに訴えたいのですが、いかがですか。
  103. 梶山静六

    梶山国務大臣 大変地方自治を思う柴田委員の御意見、私の胸を打つものがございます。  確かに、本来の国と地方との権限の移譲問題、それに加えて一つの具体的な方式として四全総が示した多極分散型の国土形成、この具体論に向かってこの問題に付随をする権限の移譲がどうできるか、そういう問題を私は今真剣に検討をしている段階でございます。何もかも一挙にといっても、私自身考えて気負ってこうやってきたのですが、一年間やってみまして日暮れて道遠しという感じすらするわけでございますが、今まで中央から地方へ押しつけた、押しつけたというと言葉が悪いのですが、なかなか地方でも受ける能力的なもの、財政的なものもなかったという現実から考えればやむを得なかったこともございますが、この四十年来大変地方自治は成長をいたしてまいりましたし、その点では行政能力も高まってまいったわけでございますから、ようやく今中央から地方へという波だけではやっていけない時代を迎えているわけでございますから、中央から地方へという波がやや今停滞をし、そして部分的ではありますけれども、地方から中央へ物を申す時代にようやく到達をしてきた気もいたします。ですから、もうこれがなければだめだと私もあきらめがちになりますけれども、これは党派を超えて、地域を超えて、お互いがそういう努力を重ねることによって新しい国と地方とのバランスの回復ができるという気がいたしますので、お互いに、これで終わりだとか、なかなかうまくいかないということに藉口してこの問題から逃げないで、本気になってやっていただくことをお願い申し上げまして、答弁になりませんが、お答えにいたします。
  104. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 お願いを申し上げて御答弁を終わりますのではなくて、あなたが頑張らなければいかぬのですよ。私どももしっかりやりますよ。地方行政の最高責任者があなたですよ。何かこちらにげたを預けられるようなそんな答弁、まあ余り暗い話ばかりしておってもいけませんから、ちょっと趣を変えますか。とにかく地方分権、権限移譲ということは大事だと考えていらっしゃるわけですね。――ちょっと首の振り方が……。まあいいですよ、まだ聞く機会がありますから。  そこで、時間があと十数分になりましたので、ふるさと創生に資するために、「自ら考え自ら実践する地域づくり」事業が創設されると聞いておる。この事業の趣旨、内容、この辺について御説明をいただきたい。
  105. 小林実

    ○小林(実)政府委員 現在、全国各地におきまして地域づくりにつきましてさまざまな工夫が凝らされておりまして、私どもといたしましては大変心強く思っておるわけでございます。  御承知のように、ふるさと創生は国、地方を通ずる内政上の最大の課題でございます。こういう機会をとらえまして、国におきましても、地方が知恵を出し中央が支援するという、これまでとは異なった発想が重要であるというふうに考えておりまして、そういう趣旨のために、「自ら考え自ら実践する地域づくり」を創設することを検討いたしておるわけでございます。
  106. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 その内容は、この地域づくりは昭和六十三年度から六十四年度にかけて全市町村一律に一億円を措置したいということですか。これは特に自治大臣の相当な熱意だそうですが。
  107. 梶山静六

    梶山国務大臣 先ほどの質問で一つお互いに勘違いをしておりますことは、確かに地方分権、これは大切なことでございますが、自治省がその先頭、自治大臣が先頭と言われますけれども、これは都道府県、市町村がその先頭に立って、自治省はそのお手伝いをするという分野でございます。自治省といえども中央官庁の一つでございますので、これが余り地方自治体に深くかかわり合って全部を引っ張っていくということになりますと、これまた中央集権のおそれも出てまいります。私はその点を自戒をしながら今やっているつもりでございますので、首の振り方が少し小さかったといたしますと、それは私は本当の意味で地方自治の旗振りは都道府県であり市町村である、そのお手伝いをするのが我々だ、そういう認識でおることをまず御理解を願いたいと思います。  それから、このふるさと創生の問題で、先ほども御答弁を申し上げたのですが、竹下総理も強いふるさと創生というか、地方が知恵を出し、それから中央がこれを支援する体制、今までと全く逆の発想をとれないものかどうか。そういうことでお互いに、ともすると今まで中央の縦割り行政の中に埋没をしたというか、その中で大変苦吟をしながら地方自治体が歩んでまいったのですが、安易につこうとすると、中央省庁の、あるいは中間行政機関である県のそれぞれの補助行政やその他の施策に、あるいはそれを地方が選択をしながらやってくれば地方も何とか曲がりなりにもやってこれたという面がありました。それは確かに中央 省庁のいろいろな地域に対する思いやり等もあったかもしれませんが、どちらかというと物思わざる地方自治体ができ上がりつつある。私は、これは反面大変怖いことだという気もいたしております。ようやく成熟をしつつある地方自治体がみずから考える能力をもっともっと涵養していかなければならない、そして地域間も競争してお互いにやっていこうではないか、こういう物の発想から、今全くの試案でございますけれどもそれぞれが思うために、思うための原資も必要でしょう。ですから私は、そういうもので市町村において全く区別のない、全く使途の指定されない交付税方式による対策費をとることが今一番望ましいのではないかという気持ちがいたしまして、せっかく今成案を得ようと思って努力中でございます。
  108. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 一億円ですね。一億円の話はされませんでしたが、そうですね。  それで、三千二百四十五の全市町村に一律一億円の地方交付税を配分する。これはもともと地方交付税ですから、地方の固有財源ではありませんか。自民党の中でもいろいろな批判がある。また新行革審からもこれは税金のばらまきだ。国民自治体に行革は終わったという印象を与えかねないのじゃないか。見え透いた人気取りだよ、政策不在だ、理念、哲学がない、ただ竹下内閣の話題づくりに利用するだけだ、こういう非難、中傷があるわけでありますが、私もむべなるかな、こういうふうに思うわけであります。人口二百人の村もあれば人口二百万の大都市もある。この辺を大臣はどう考えていらっしゃるかということ。  二つ目は、これはせっかくきょう内閣内政審議室長さんが来ていらっしゃるので、お答えできる範囲で結構ですが、竹下総理のふるさと創生、これを具体化するために有識者などで来年夏をめどにふるさと創生審議会、これを総理の諮問機関として設置するという意向を固めたと、あるマスコミは報じております。  それからもう一つ、小渕官房長官を座長として各省庁の局長クラスから成るふるさと協議会を近く設置し、そして今の一億円を活用した各市町村の活動について取り上げていく計画である、このようなこともなされておるわけでございますが、この辺どうなのか、ひとつ簡略にお答えをいただきたいと思います。
  109. 梶山静六

    梶山国務大臣 確かにばらまきであるとかあるいはむだ遣いではないかといういわば中央側の批判があることはよく承知をいたしております。しかし、今委員が言われましたように、交付税ですから本来地方お金でございますから、それを基準財政需要額に見込むということはまさに自治省の仕事でございます。これを関係省庁と打ち合わせをしながら、その自主的な財源を早く自分の手元のものにする、この努力を今せっかく払っているさなかでございます。小さい村もあるかもしれません、大きい市があるかもしれませんが、一個の地方自治団体として認知をし、それを助長することがふるさと創生、地方自治尊重の基本でなければならないという気が私はいたします。これは、ばらまきであるとか、大きいものと小さいものとの差をどう埋めるとか、思想、哲学がないということではなくて、むしろ私は、そういうところにいわばふるさと創生の思想、哲学を求めてやっていかなければならない、そういう信念でこの問題に取り組んでまいりたいと思いますので、ぜひひとつ御理解をいただきたいと思います。
  110. 的場順三

    ○的場政府委員 御質問の点でございますが、まず後の方から申し上げますと、ただいま自治大臣から御答弁のありました件に関しまして、各省庁が積極的に協力する必要があるので、官房長官を座長とするような各省庁の局長クラスの協議会のようなものを開いて内閣全体で推し進める必要があるではないかということは伺っておりまして、何らかの形でそういう各省庁全体が協力できるような体制をつくる必要があるということで今せっかく検討中でございます。  前段の方でございますが、御指摘のとおり、確かにふるさと創生というのは竹下内閣の最大の政策目標でございます。各省庁それぞれの立場からふるさと創生いかにあるべきかということについての御議論がございます。各省庁だけにお任せしておいていいものかどうか。それをどこかの段階で統一する必要があるのではないか。そのためには、例えば内閣総理大臣の諮問機関として行革審もございますし、あるいは経済審議会もございますし、いろいろな審議会がございますが、そういう公的な審議会とは別に、総理がもう一度勉強していただくという意味で早急にそういうアイデアをまとめるということも念頭に置いていいのではないかということで、これから各省庁の意見を聞きながらどういうやり方をやるか、官房長官を座長にするような各省庁の局長クラスの協議会だけでいいものかどうかということも含めまして前向きに取り組むつもりで、そういうことも念頭に置いて検討中でございまして、まだ決めているわけではございません。
  111. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 審議会の方はまだ検討中、ところが協議会の方は相当進んでいるようですね。いつから協議会は発足される予定ですか。それから、もし審議会ができるとすれば、来年夏と私言いましたが、いつごろでしょうか。
  112. 的場順三

    ○的場政府委員 前段でございますが、実は自治省の構想というのは、例えば予算編成が具体的にあって、その段階で地方交付税の中にきちんと一億円が組み込まれるということが決定するということとの関連がございますので、その前に事実上発足させるということも一つの方法としてございますけれども、私どもは各省庁からいろいろな申し出があるときにその意見を十分聞いて調整するという調整役でこざいますから、できるだけ適切な時期に開きたいと思っております。ただ、付言いたしますと、公式なものとして発足することと事実上の会合を開くということは切り離してもいいのかなということも考えております。  それから、勉強会をどうするかという話は、これはまだ十二月の日程、一月の日程等もはっきりいたしませんので、いろいろな政治日程等とのかかわり合いもございますので一概には言えませんが、私の室長としての立場から仮に何かやるということになれば、やはり六十五年度予算案との関連を考えてやる必要がございますので、やる場合にはそうゆっくりしていることはできないなというふうに思っております。
  113. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 わかりました。  それじゃ、時間がほぼ参りましたので、最後に二点、大臣に聞いて質問を終わります。  大蔵省、補助金問題でせっかく来ていただきましたが、済みません。この補助金カットの問題、大臣地方自治体への負担はもう四兆九千億円、五兆円になんなんとしている。しかも、これは六十三年度までの暫定措置である。いよいよ大詰めが来ました。要するに、これは先般も決起大会がありましたでしょう。これを五十九年度に復元しないと国と地方との信頼関係が損なわれる、財政秩序が失われる、こういう地方自治体の状況です。自治大臣、いよいよあなたの本当の闘いの場が来たわけです。これをどうされるか、大臣の決意を伺いたい。  いま一つは、今年度予算に地方自治体が計上されておりますふるさとづくり財団、マスコミ等に報ぜられておりますが、これはもう終わりですか、ことしはやりませんか、あるいは修正するのですか。これをこの時点ではっきり答弁していただきまして、その答弁が納得できるものであれば、これで質問を終わらせていただきます。
  114. 梶山静六

    梶山国務大臣 第一点の国庫補助負担率の暫定措置については、毎回私が一貫して申し上げておりますように、六十四年度の予算編成時において決着をつける、それは個別の問題で討議をする、そして修正すべきものがあれば恒久措置としてこれから見直しをいたそう、それから今まで三年間の暫定措置ということで一括されたものに関して個別の理由がない限りは復元をしてもらう、このことに変わりはございません。その決意で全面的な努力をいたしてまいります。  それから、冒頭お話を申し上げましたふるさと創生の問題については、一億という象徴的な言葉 がございますが、そういう問題を超えて頑張ってまいります。  ふるさと財団については、私の在任中に決着をつけて行います。
  115. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 済みませんが、前の補助金カットのところ、ちょっと耳が遠くなりまして聞こえなかったのですが、要するに五十九年度に、今四兆九千億ある地方負担をもとに戻す、これをやっていくのか。今、何か補助金カットを一部続けていくような、しかし大半は復元する、こうおっしゃっているのですが、そうすると、予算委員会等で行われている答弁とちょっと変わってきていると思いますけれども、もう一遍はっきりお聞かせください。
  116. 梶山静六

    梶山国務大臣 毎度いたしているとおりでございます。この補助率カットは、原則としてもとに戻すべきもの、そして六十四年度の予算編成時において決着をつける。その六十四年度の決着というのは、まさに三年前と状況が、社会環境がお互いに異なっております。ですから、今まで補助率カットを行った分野で、それぞれの分野を見直してお互いに合意が得られるものがあれば、むしろ暫定措置などというものではなくて新しい制度に移行しよう、そして、どうしても見直しができない、ただ一括あったものはもとに戻してもらおう、そういうことでございますので、前々から私が答弁しているとおりでございます。
  117. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 五十九年度のものに復元すると解釈していいですね。どうですか。ちょっと違うのですね。
  118. 梶山静六

    梶山国務大臣 何遍も御答弁しているわけでございますが、それじゃ六十四年度の予算編成時に決めるということではなくなってしまいます。私が六十四年度の予算編成時に決めると言うことは、例えば福祉関係の補助はどうあるべきかという本質的な問題の解決がつくならば、この問題は暫定措置ではなくて、それぞれ国と地方の役割分担、費用負担の分担を見直そうではないかという提案をしているわけですから、いつかこの委員会でも申し上げたのは、大蔵省をはすに見ながら、ことしの五月か六月くらいまでには大蔵省個々の問題で早く詰めようと言ってくるではないか、それを待っているのだけれども、いまだかつてないから、ひょっとすると一括もう返してくれるのかなという表現も恐らく速記録に載っているはずでございます。それを受けて、ことしの九月来自治省大蔵省の間にはこの個々の問題について詰め合っている機関がございます。相当進んでいるというふうにも仄聞をいたしておりますが、いずれにしても詰められるものは詰めよう。それはあくまでも暫定措置や、ただ単にもとへ戻すということではない。決められるものは決めていこう。そして、どうしても残るものがある。恐らく大半は残るのだと私は思うのですが、残ったものはもとへ戻そうよ、国と地方信頼関係が失われないように、やはり約束したことは守ろうよ。ですから、約束したから昔のままで手は出さない足も出さないというのではなくて、それはやはり一刻一刻変わっていく社会情勢でございますから、見直しをして得な分野もたくさん自治省にもございます。恐らく国の財政側もこれは見直しをしなければならないという問題もあろうかと思います。そういうものはお互いに見直しをして、合意を得ればそれでいいじゃありませんか。それを、一切見直しはいけません、もとの、これは下世話になりますから申しません、もとのあれに返せといっても、それはもうそうではなくて、やはり時々刻々移ったものは移ったなりに変化をとらえてやっていかなければならない、私はそのように御理解をちょうだいしたいと思います。
  119. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 もうこれでやめようと思いましたけれども、ちょっと御理解できないのです。ちょっと時間をいただきたいのですが、予算委員会等でも大臣は、とにかくあくまで六十三年度までの暫定措置だ、五十九年度に復元するのは当然だとはっきりずっとおっしゃっていらっしゃったじゃないですか。そうでしょう。それが、自治省大蔵省との間で今話し合いになっている。あるものはひとつ決めよう、それは大体福祉関係予算を五〇%以上の高率補助金のものについてはカットした分でやろう、その他のものを復元しようというのは新聞等にもう載っているわけですよ。だめだとおっしゃるならば、じゃ財政局長に聞いてもいいのですが、今大臣大蔵省と話を詰めているというのですが、具体的にどのように詰めているのですか。それをひとつ、復元を五十九年度のように全部復元するのではないと大臣はおっしゃった。一部はそのままのものもあると私は理解をする。ところが、大部分は復元をしたい、私はこういう理解をしているのですが、これが間違っておったら訂正をしていただきたいのですが、財政局長どうなんですか。
  120. 津田正

    ○津田政府委員 私どもは現在の暫定法というのは六十三年度で切れる、この原則は守ってもらいたいということでございます。それでは今後補助率というものがそのままでいいのかどうか、これはいろいろ議論がございます。権限移譲の問題も絡んでございます。ですから、今後の補助率のあり方というものについて検討している、こういうような状況でございます。
  121. 柴田弘

    ○柴田(弘)委員 これで終わりますが、この問題、大事な問題でありますので、また機会がありましたら一層突っ込んだ質問をさせていただくことをお願いを申し上げまして、終わります。  延長しましてありがとうございました。
  122. 松本十郎

    松本委員長 岡田正勝君。
  123. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 いや大臣、久しぶりでございますね。委員会が開く前に、きょうは大臣に対しての質問はしないという約束をしたのでありますが、皆さん全部大臣に質問していらっしゃいますので、私が一人だけ質問しなかったといったのでは、これまた妙に勘ぐられてもいけませんので、一、二冒頭にちょっとほんの小さいことを質問いたしたいと思います。  まず第一に、ふるさとづくりの各市町村に対する一律一億円の配分の問題ですね。これは非常に世間をにぎわしておりますが、あれは竹下さんが仕掛け人ですか、大臣が仕掛け人ですか。私は大方大臣が仕掛けたなと思っておるのですが、いかがですか。
  124. 梶山静六

    梶山国務大臣 委員御承知のとおり、私も地方議員の出身でございまして、自分の政治モットーを愛郷限りなしという言葉にいたしております。そういう意味では竹下総理と大変相似通った環境でもございます。どちらが仕掛け人かというと竹下さんが仕掛け人でございます。これは総理・総裁になるときに、ふるさと創生論をひっ提げて総理・総裁を射とめた人間でございますから、この人がふるさと創生を考えている。そしてまた深く深く地方を思っているし、また現実の国全体の行政のあり方を見ても、中央から地方へというやり方が、残念ながら各省庁間のいわば摩擦係数も強くなった。そういうことで画一的なものではもうやっていけない。むしろそれぞれ地域のバラエティーに富んだ需要に対応していくことが日本の活性化につながる。そういう思想を竹下さんが持っていることは私は万々承知をいたしております。  そして、この思想をどうやったらば具体的に生かせるかという手法論については、私も自治省を預かる人間でございますから、自治省の中で皆さんの知恵をちょうだいしながら、どうやればそういうものにこたえられるか、幾つかのテーマをつくって出しました。しかし、何もかも一緒にできません。その中でたまたま合致をしたのがこのふるさと創生。とにもかくにも差別をしない、地方自治一つ一つを固有の権威と見よう、これは大変な哲学だと私は思うのです。  そして私は、ふるさと創生というのは政治の最終的な目標ではないかという気もいたしますし、この問題に全力を挙げよう。ですから、いわゆる地方自治の末端というか最先端に立つ市町村を中心にやろう。国は決して関与をしてはいけない。しかし何らかの知恵を出したりお手伝いをしようという技術や、その他の問題があればいけないから、それは内閣なりなんなりで各省庁の知恵を拝借する機関はつくろうよ。しかし、物差しをつくるのはあくまでも地方自治体ですよ。それは中間自治体である都道府県といえども市町村に余り深くガイドラインをつくってもらいたくない。むしろある意味で事務的なお手伝いをすればいい。その程度の踏み込み方でやっていきたい。  そして、この自治体の中でも都道府県、これは今もお話をいたしましたけれども、年の中ごろからふるさと財団、俗称でございますけれどもそういうものの構想があって、各都道府県や政令指定都市から今年度分五千万円の拠出の予算の議決をちょうだいして、いまだ発足をいたしておりません。私なりにいろいろな思惑がございました。すぐ発足しても、それぞれの省庁の理解を得られないで発足をしてみて果たしてこれがうまく育つかどうか。ほかの分野でいろいろな干渉があったらばおかしくなるのではないか。そういうことを考えながら各省庁とのすり合わせ、本質を変えないでいろいろなものとの理解を深める努力をこの半年来やってまいりました。まだ発表すべき段階ではございませんけれども、一番一義的に報告をしなければならないのがこの地行委員会でございますから、細目全部とは申しませんが、おおむねその意味では詰まってまいりました。そして近日中にその財団の設立を認可する段階までになりましたので、この財団を活用しながら、いわば四全総に言う多極分散型の国土形成のために一つの大きなインセンティブになってもらいたい。そしてそれ以前の問題として、それぞれの地方自治団体がみずからの村おこし、町おこし、市おこしをする意気込みをつくり上げていきたい。こういう思想で今ふるさと創生と財団の問題に真剣に取り組んでいるのが実情でございます。
  125. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ありがとうございました。非常に明快な答弁をいただきまして、非常に気持ちがいいのでありますが、今度はちょっと意地の悪いことを言います。  今、任期中にふるさと財団づくりはやると明確におっしゃいましたね。そこで、私は大臣のような方がさらに続いて留任をされることを心から望んでおる一人なんですけれども、さてさて、どうやら裏の舞台というのは、二十三日にはすべて上がっちゃって、二十四日には会期末を待たずに組閣の発令がある、こういうようなうわさも聞こえております。委員長席に座っていらっしゃる人もうわさに上っておるのであります。こういうような事態でございますが、任期中にとおっしゃいましたことは、さすれば最短距離で言うと、二十四日までには発表があるなというふうに期待をしていいのでしょうか。
  126. 梶山静六

    梶山国務大臣 言葉を選ぶべきだったのですが、つい口が滑ったと申しますか……。  一つ例外条件がございます。私がきょう交通事故で、あるいは突然の病気で死亡すれば私の任期中ということにはなりませんが、今岡田委員が御指摘になった二十三、四日ということになれば私の任期中にこの財団の認可をいたしたい、さように考えております。  それはなぜかといいますと、決して私個人の考えではございません。各都道府県の知事さん方は三月の第一回の都道府県議会で五千万の議決を願っているわけでございます。十カ月もたっていまだに発足ができないことを当初予算に編成するとは何だというそしりも恐らく、私の耳に直接言ってくれる方はおりませんけれども、知事さん方の悩みの一つでもあろうかと私は思います。また、これにかける意気込み、それは第一回の定例議会でやられたわけですから、後の第二、第三の議会でやったのではないということは大変な意気込みがある。むしろ、極端なことを言うと大臣権限で許可ができたのかもしらない。しかし、それをなぜ延ばしたかといいますと、各省庁との触れ合いを私は大切にしたい。財団が発足をした後スムーズにこの運営ができるように、ねらいとするものができるような理解を深めよう、そういう努力を払うことの方が大切だということで今までお待ちを願ったわけでございますから、これはどうしても私の責任でやらなければ相済まないという気がいたしますので、そのような決心をし、そのように事務当局に命じて、今準備を進めておるところでございます。
  127. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 非常に明快な回答をいただきましてありがとうございました。安心いたしました。あと残すところ一週間ほどでございます。どうぞひとつ頑張ってください。いやいや、恐らくつながっていると思います。私はそう期待をしております。  さて、これは大臣にお答えいただかなくてもよろしいのでありますが、この一億円は何にも拘束しないよ、何に使ってもいいんだよということでございますが、まさしくそのとおりになるのでしょうか。
  128. 津田正

    ○津田政府委員 この原資は、六十二年度の剰余金の一部が交付税で出てくる。ですから、正式には今後の補正予算の編成の問題になるわけであります。そういう意味で正式というわけではございませんで、今案を一生懸命詰めておるわけでございますが、もともと交付税でございますので、これは使途自由ということでございます。  私どもはその配分につきまして一律という方向で検討しておるわけでございますけれども、いわばふるさとおこしの計画だけではなくて、住民全体がそういうような機運に向かっていく、いわば運動費的なものも考えておりまして、いわゆるハードとかそういうようなものは考えておらないわけでございます。ただし、これはいずれにしましても地方交付税の話でございます。まさしく各市町村が自主的な判断で、そして住民総参加のもとでそういうようなふるさとおこしの起爆剤になってほしい、こういう考え方でございます。
  129. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そこで、ここで聞いていらっしゃる皆さんがあるいはそんなばかなことがとおっしゃるかもわかりません。また、そんな古いことを今ごろとおっしゃるかもわかりませんが、実際にあった例でありますから、ひとつ聞いておいてもらいたいと思うのです。  いわゆるふるさとづくりが住民の総意によって行われるようにしたい、みんなに及ぶようにしたい、これはなかなか魅力のある言葉ですね。そこで、住民のみんなに及ぶようなことをしようとすると、例えばこんなことを実行した市町村長がおるのですよ。何をやったかといいますと、これはそのものずばり選挙対策のためにやったことでありますが、市の公金を使って冠婚葬祭すべて敵味方漏れなく全部だあっと現金を配ったのですね。これは違法の摘発は受けませんでした。ただ、わんわんと政治問題化はしましたが、違法でどうこうということにはなりませんでした。  そういう実例がありますが、場合によっては、何にも縛ったりあるいはガイドラインを示してそれに沿わなければいかぬというような拘束をしたりするようなことはしない、何に使ってもいいんだ、とにかく住民みんなが総意で考えられるようなことであればいいんだ、ハード面じゃなくてソフト面で十分活用してもらいたいということでありますが、一番ソフトな使い方じゃないかなというふうに思うのでありますが、こういうことが起きたらどうなさいますか。
  130. 津田正

    ○津田政府委員 実は私も財政屋でございますので、普通の常識からいいますと、市町村の規模等を考えてということも考えたわけでございます。しかし、これは交付税で、まさしく住民みずからが考えてもらう、こういう趣旨からすると、正直申しまして、交付税で一億平均にして、隣の村は八千万、うちの村は六千万とかいうよりは、まさしくうちの村も隣の町もそれぞれ一億ということが一番の、住民から見ての監視ができ、またその成果というものは住民みずから今後の、将来の地域の発展のためになるのではないか。そういう意味で、住民の目から見てもわかりやすいような仕組み、これは私どもちょっと今までの財政論からは飛躍するわけでございますが、そういうような意味で一律ということが非常に意味があるのではないか。そういう意味で検討しておるわけでございまして、まさしく岡田先生の御心配の意味を住民サイドからわかりやすく監視できる、その成果を皆が享受できる、こういうような考え方に立ち たいと考えておるわけでございます。
  131. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 余りにも質問がばかばかしいから局長さんも答弁に苦しみ苦しみ、難しい言葉でお答えになったようでありますが、もう一つばかばかしいことを申し上げますと、今いわゆる僻地市町村というのは人口の流出ということに大変苦しんでおります。そこで、例えばお嫁さんを連れてくるというようなことなんかに対して、今ではもう日本国内だけでは足らないで海外にまで花嫁募集をしておるというような市町村があるほどでございます。となると、これは相当の財源になる。それで今までよりももっといい条件のものをこしらえまして、それでお嫁さんを迎えるのならいわゆる町営住宅も建ててあげましょう、あるいは嫁入道具もあれしましょう、結婚式も町長が仲人でやりましょう、奨励金も出しましょうというようなことなんかも起こり得るのじゃないか。本当に僻地で弱っているごく少数の市町村に、なるほど私が今ここで言っておるようなことが真剣に考えられてくるのではないかというふうに思いますが、そういう事例がありましたらどうなさいます。
  132. 梶山静六

    梶山国務大臣 本当は政府委員に答弁をさせるところですが、むしろそういう情緒的な問題は私の方が得手かもしれません。  確かにこの一億円の使い方、その村にとって何が一番村おこしに必要か。中央から眺めてそんなばかたらしいことにお金を使うなと言うかもしれませんが、まさに村にとってはそのことが一番肝要であれば、一番肝要なところに使うことが一番望ましいと思います。そして、先ほど局長が、これはソフトの面、いわば事業計画的なものと言いましたけれども、それが事業費であってもよろしいんだ、それはその自治体の考え方によってしかるべし、そう思います。  それから、冠婚葬祭にお金を使ってしまう。まさに今、中央から地方へといった時代が、地方の行政能力が高まって地方から中央へと言える時代になったということは、率直に言うと、昔のように全部お酒で飲んじゃったとか、そういう村長さんはなかなかいなくなってスマートになりましたから、そういう人の目について、その次選挙ですぐたたき落とされるようなことは万々やる心配はむしろ逆にないのではないか。むしろ画一的な、それぞれが何かコンサルタントに頼んで、私の村は何かないかといって、東京から眺めたような村。おこしの計画をつくられることの方が心配だ。ですから私の村は嫁もらいに、私の村は奨学金に、私の村は計画を組んで、私の村はここに何か記念塔を建てよう、それぞれのものがあってしかるべきだ。ですから、この使途に関しては制限をいたしません。どうしても尋ねられれば、こういうガイドライン、こういうものはどうでしょうということは用意をしてあげなければ、これは不親切になりますからいたしますが、それぞれの思うところに従ってやっていただくことが第一義だと考えております。
  133. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 大変よくわかりました。  その次に、これもそんなことが本当にあったのかというような問題でありますが、本当にあったことです。ある市の市長さんが大変な激戦になったのです。しかも新人なんです。とても現役の市長に勝てる情勢ではない。そこで参謀どもが寄り集まって考えたのが、実にいい妙案を考えました。そのころ、各市町村では市長や議会の飲み食い、交際費、いわゆる食料費と交際費の使い方が多過ぎるというので住民の批判が起きてきておった時代のことでありますが、そこで一番住民の気持ちにぴたっとくるテーマは何だ。これだ、飲み食いと交際費だというので、その選挙戦のスローガンに、私が市長に当選したら飲み食いや交際費なんというのは一銭も使いません、予算にも上げません、これを公約しますと一本だけやったのです。そうしたら大変な人気が沸きまして段違いの成績で御当選に相なったのですよ。  それで初めての予算編成をされました。文字どおり食料費もなければ交際費もないのですよ。存目だけを置いて食料費も交際費も本当に金を計上していないのですよ。いやすごいぞ、やはり本当にやるぞというので全国の新聞が珍しいから取り上げました。そうしたら、当時マッカーサー司令官がおる時代でありましたが、マッカーサーがいたく感激いたしまして、それで田舎の町の市長さんでありましたが、わざわざマッカーサーの司令部にお呼びになって、マッカーサーがじきじき、あなたのような人が本当の首長さんだといって表彰状みたいなものをくれたそうです。それがまた全国紙に載った。それでますます人気を高めたのです。  一年たちました。二回目の予算編成になったら、どかんと食料費、交際費を組んだのです。だけれども、マッカーサーからその表彰状を戻せということはありませんでした。これは本当にあったことなんですよ。  だから、そういうことをつらつら考えてみまするに、今度はみんなで知恵を出し合って何かいいことをしようじゃないか、そのためにはおらが町で人が集まってくるようなことをやろうというので大きなお祭り、イベントを組みまして大勢のお客さんを呼ぶ。そのためには村民みんな力をかしてくれ。そのかわりその祭りの期間中、一週間なら一週間は村民に限り飲み食いただだ、一億円全部飲んでしまえというようなイベントを組んだらどうなさいますか。
  134. 梶山静六

    梶山国務大臣 これも財政局長から答弁をさせますと、後々問題のできたときに責任をとらなければなりませんから。結果として村民大会でお酒を飲むことも、一億円全部飲めるかどうか私は実際わかりませんけれども、それをその村が好むならば、これに対して中央は干渉してはいけない、そこまで私は地方に全部この問題に関しては権限をやろう。  それはなぜこんなことを言うかといいますと、幸いにきょうは新聞記者はいませんが、新聞にふるさと創生一億円、一億のばらまき大臣と私だれかに言われたのですが、これだけ出ておりますと、うちの村へ一億円が来るというのはみんなわかっちゃっているのです。ところが、今十一兆かそこらの交付税を配ったのは、何がどこへどう行っているのかだれもわかりません。しかし、この一億だけは間違いなく我々の村おこしに使うのだなということだけは特別に見られているわけですから、この一億はあだおろそかに使うと、その首長は首が本当に飛びますから、私はこの金は、よく補助金なんかで、もらうとその年に使ってしまわなければならないから、いいかげんなところで使ったことにしてしまえとかいうような、そういうことがあったとは申しません、想像の世界ではあるわけですが。こうなりますと、例えで言う「我がものと思えば軽し笠の雪」といって、幾ら重いあれでも自分のあれだということで仕事は一生懸命やる。そしてこの一億は大切に大切に、自分のものだから村おこしのために、町の計画のために使おうではないかという気組みが必ず出てくるはずだ。そしてその反面、大変きついかもしらないけれども、隣の村があれをやるならおれはもっとという、地域間のいい意味での競争も出てくるのではないかということを期待をいたします。
  135. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 非常に楽しい答弁をいただきまして、これでまた地方自治団体、一段と活気づくんじゃないかというふうに思います。  そこで、念のためにお尋ねをしておきますが、今度の一億円、一律のいわゆる地方交付税の配慮、これはそれぞれの基準財政需要額を一億円かさ上げをして地方交付税としてお配りするのである、これはずうっと続きますね。六十四年度だけですか、一遍喜ばすだけですか、それをまず答えてください。
  136. 津田正

    ○津田政府委員 先ほど財源で申し上げましたように、六十二年度剰余金の処理をどうするか。正直申しまして私どもは六十数兆円の借金を抱えておりますので、もしそういうほかの需要がなければそれは返す、そういう軽減に充てる、これが筋だと思います。  しかし、考えてみますと、ふるさと創生という機運と同時に、時あたかも明治二十二年の市制町村制以来百年たっておるわけであります。やはり この百年という一つの峠でございますので、今まで来たそれぞれの地域の歩み、そして今後の展望というものに使ったらどうか。そういう意味におきまして、これは六十三年度、六十四年度で合わせて一億円ずつ配分しよう、まだ事務的に詰めたわけではございませんが、その他の諸費の財政需要額に一億円ずつ加える配分方法ができるのではないかということで内々検討しておる状況でございます。
  137. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 私、耳が悪いからもう一遍確認させていただきますが、六十三年度に一億円、六十四年度に一億円じゃないのですね。両方年度合わせて一億円ですね。そうですね。  そこで大臣、私はこれが惜しいと思うのですよ。本当に惜しいことをすると思う。なぜなら、口の悪い者から言わせますと、実際に使うのは六十四年度ですわね。六十四年度一年だけ各一律一億円というのでは、これはもう見え透いた選挙対策、参議院対策ということになりはしないのかな、悪口を言っている者はもう既に言い始めておりますよ。まさに政府の手によるいわゆる日本じゅう総酒盛りの予算だ、投票所へ駆り立てるための、行け行けというような予算ではないかという悪口を、私が言っているのじゃないですよ、そういう悪口を言われるのが私は悔しいのですよ。そんな根性でやられたのではないはずなんで。だからそのためには私はこの際、今まで長年の間、五十九年以来補助金のカットも随分続いておりますね。約五兆円弱のものがふんだくられておると言っては言葉が悪いが、被害を受けているわけですね。六十四年度から果たしてそれがぴたっと五十九年度のとおりに復元できるかどうかというのは未知数ですよね。しかも、これは先行き非常に怪しいということになると、せっかく生み出したあれですから、この地方交付税を一律一億円かさ上げというやつをぴたっと定着させてもらえば、私は非常に実効が上がる、それで政府の意思が地方へぴしっと浸透するというふうに思うのでありますが、大臣、そういう欲は出ませんか。
  138. 梶山静六

    梶山国務大臣 考えないわけではございませんけれども、一億一回こっきりというのがむしろみそでございまして、この原資でとにもかくにも自分の村づくりを考えるのだ。それは後に続くということがありますと、人間安易になりがちでございます。来年もある、再来年もある、ゆっくり考えればいいや、その前のものは最初は飲んじゃってもいいということになりますから、そういうことではなくて、やはりそういうそしりが出るのではないかという懸念をしながらも、町村制発足百周年、そしてようやく地方自治の行政能力が高まって、中央から地方へというその流れから、むしろ地方の力が中央に及ぶようになるのだという機運を助長する起爆剤にしたい、そういうことでございますので、来年のことを言うと鬼が笑うということがございますが、とにもかくにもこれでやってもらう、その後のことはまた後で考えてしかるべし。しかし、少なくともこの問題に関しては、これを一年間で使っちゃいなさい、二年間で使っちゃいなさいというのではなくて、それはそれぞれの、繰り越しも何もできるわけでございますから、その中でそれぞれの地方に合った御計画、事業をお考え願いたいということが真意でございます。
  139. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ありがとうございました。私が冒頭からふるさとづくりの問題について今まで質問をさせていただいて、大臣の明快なる御答弁、局長の明快な答弁をいただきました。これは全国の市町村民がみんな聞きたい答弁ですよ。できればこれは全部、各市町村に印刷物が行くぐらいにひとつ御配慮いただきたいと思っておりますが、これは私の欲であります。  次の質問に入らせていただきます。  今の代執行の問題でありますが、今回の改正によって職務執行命令訴訟制度を見直すというのは、どこにその基本的な理由があるのでありましょうか。その理由は何ですか。
  140. 木村仁

    ○木村政府委員 現行の職務執行命令手続は、機関委任事務の適正な執行の確保の要請地方公共団体の長の本来の地位の自主独立性との調和を図る観点から設けられているという制度で、それ自身立派な制度でございますが、現実の行政の中において制度としてうまく動かないという批判があることが事実でございます。また、公選された知事、市町村長を内閣総理大臣等が罷免をするという部分が加えられて、この部分が民主的でないという批判があることも事実でございます。こういう点を踏まえ、機関委任事務の基本的なあり方を審議された行革審の中で総合的に問題になりまして、一つの改革案が示され、地方制度調査会としてもこれを検討された結果答申をいただいたわけでございます。  私どもとしては、この改革と、それから地方自治体の議会、監査委員の機関委任事務に対する関与の権限の拡大、そういうものを全体として考え、将来の機関委任事務の整理縮小に貢献するものと判断して提案をしている次第でございます。     〔委員長退席、平林委員長代理着席〕
  141. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 これは先ほどどなたかから質問があったことでありますが、聞き及ぶところによりますと、小委員会において報告書作成の直前になって、それまでの一連の審議とは何の関係も脈絡もなく唐突に事務局側から提出されたものであるというふうに報道されておったのでありますが、この点はどうですか。
  142. 木村仁

    ○木村政府委員 自治省といたしましては、行革審の委員会の中の細かな議事の詳細については承知しておりませんが、委員会審議の中で、唐突と申しますかそれは別として、ある段階で出てきた議論のようには承っております。
  143. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 私は警察官でありませんから犯人逮捕が目的ではありませんが、行革審へ出した事務局側、その事務局側というのはイコール自治省ではありませんの。
  144. 木村仁

    ○木村政府委員 事務局は自治省ではございませんで、総務庁を中心に構成された行革審の事務局であろうと思いますが、事務局が提案した案であるか委員の中から出てきた案であるか、そのあたり私どもはわからないのでございます。自治省は意見等は聞かれていると存じます。
  145. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 だから総務庁が、総務庁の事務局の方がお出しになったのは、それは手続上当然でしょうけれども、自治省の意向を一〇〇%取り入れて提出したものではないのかなというふうに思っておりますが、いかがですか。
  146. 木村仁

    ○木村政府委員 この問題が出ましたときに、当時の自治省といたしましては、あくまで慎重に検討していただきたい、地方公共団体を代表する六団体の皆様も必ずしも賛成でないということもわかっていたようでありまして、慎重に審議をしていただきたいという態度で終始いたしておりまして、自治省のイニシアチブで出たお話ではなかろうと考えております。
  147. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 総務庁、お越しになっていますか。――今のことにお答えができますか。
  148. 陶山晧

    ○陶山説明員 ただいま自治省から御説明のありましたように、当時、行革審には法律上独立の事務局が設置されておりました。その事務局は、職員の構成としては、ただいま行政局長から御説明のとおり当時の行政管理庁からの出向職員及び大蔵省自治省等からの出向職員で構成されていたはずでございますが、私どもの立場といたしましては、当時いわば組織上独立の事務局が関与した問題でございまして、ただいまの総務庁行政管理局の立場として当時の経緯を必ずしもつまびらかに承知はしておりませんので、恐縮でございますが御了解いただきたいと存じます。
  149. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 これまで国の機関委任事務につきまして地方公共団体が事務を怠ったという具体的な例がありますか。
  150. 木村仁

    ○木村政府委員 事務を怠った例というのは全部は存じませんが、事務を怠った結果、職務執行命令手続がとられた例といたしましては、東京都砂川町長が土地収用法に基づく告示等の手続をとらなかったため職務執行命令訴訟等に至った事例が一件と、福岡県田川市長に対して外国人登録法に基づく国籍表示を違法に行ったとして職務執行命 令が行われた、この二件だけがございます。
  151. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 機関委任事務について国の代執行が特に必要なものについては、土地収用法とか都市計画法、国土利用計画法などの個々の法律により特別措置が講じられておることは御存じのとおりです。これを地方自治法という一般法で改正したいというその根拠は一体何ですか。
  152. 木村仁

    ○木村政府委員 地方自治法におきます代行制度は特定の事務を念頭に置いてつくられているものではなくて、地方公共団体の長の自主独立性に配慮しつつ機関委任事務の適正な執行を確保するための一般的な制度として地方自治法の第一回改正で入れられた、非常に長い沿革を持った制度でございます。当時市町村にのみあった機関委任事務を、戦後知事が公選になったことに伴って機関委任事務に振りかえていったわけでございますが、その際の国、地方を通ずる行政の統一性、秩序を保つための制度であったというふうに考えております。そういった一般的な制度について機関委任事務に関する全体的な見直しの中で改革が行われたわけでございます。  これに対して、個々の個別法に規定されます代行手続は、それぞれの行政目的によって特に緊急に必要とされるような代行を行う制度で、一番典型的なのは、予防接種を市町村長が懈怠した場合に、都道府県知事がすぐ代執行できるというようなものでございます。ただ、地方自治法が、従来は二度にわたる裁判手続、そして改正された後としても、最終的には機関争訟という形の訴訟で手続が入念にされているのに対して、個別法でそういう特別の需要に基づいてつくられるものは、ともすれば簡略な手続になる傾向があるかと思います。でありますから、行政上の必要でそういう個別法で措置されるのは当然のことでございますが、それが余りにも広くなるのは好ましくない。したがいまして、地方自治法の代行手続も入念な手続を備えつつ一般法として整備をしておきたい、こういうことでございます。
  153. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 今回の改正で、職務執行命令訴訟制度の見直しを首長に委任される機関委任事務に限定し、国政選挙の施行など地方公共団体の行政委員会への機関委任事務を除外しておる、その理由は一体何ですか。
  154. 木村仁

    ○木村政府委員 これは職務執行命令手続が制定されました当初からそうでございまして、なぜそうなったかということについては、私どもちょっと勉強してもはっきりはしないのでございます。したがいまして、半分は推測になりますけれども、恐らく、知事及び市町村長は非常に多種多様な機関委任事務を所管している、これに対して行政委員会等は極めて限られた行政目的を持った機関である、しかも主として合議制でございますから、単独の独任機関と違っていろいろチェックが働くじゃないか、そういうことから、あるいは職務執行命令手続がなかったのかと思います。  現在においてもそういった事情は同様でございますので、一般的な長に対する代行手続だけ改正しようということでございます。
  155. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 首長への機関委任事務と行政委員会への機関委任事務で、こういうことをやりますと権衡を失するのではないかなというふうに思いますが、いかがですか。
  156. 木村仁

    ○木村政府委員 御説のように、ある意味では均衡を失していると存じます。ただ現実には、行政委員会が機関委任事務を処理しています場合に、例えば教員免許の手続でありますとか、あるいは農業委員会に関する手続、土地の収用委員会に関する手続、そういうものにつきましては個別の法律で措置されている場合がございます。これはもともと限られた種類の仕事を処理する委員会でございますから、あるいは個別法で措置するのは一つの考えかと考えております。
  157. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 時間が切迫してきましたので、総務庁の方にも、そして自治省にも、両方にお尋ねをしておきたいと思います。  地方制度調査会の六十一年二月三日の答申において、職務執行命令訴訟制度の改革を認めることとは別に、国の地方出先機関の整理を求めています。この観点から、少なくとも現業的部門を除く国の地方出先機関はこれを全廃すべきではないかというふうに思っておりますが、いかがですか。
  158. 木村仁

    ○木村政府委員 地方出先機関の整理縮小につきましては、地方制度調査会としては何度かにわたって答申をしているところでございます。その主たる理由は、本省と出先の間に二重行政、二重監督の問題がある、それから、地域総合行政の遂行という観点から見るときは、ばらばらの縦割りの出先があることが阻害要因となるのではないか、そういうことから大幅な廃止縮小が必要であるというのが地方制度調査会の立場でございまして、地方自治の観点からはそういうことが言えるのではないかと考えております。
  159. 陶山晧

    ○陶山説明員 御説明を申し上げます。  御指摘地方支分部局につきましては、従来から政府といたしましては、累次の行革大綱等に基づきまして整理合理化を推進してまいっております。  ちなみに臨調答申以降、つまり昭和五十九年度以降の措置について簡単に実績を申し上げますと、まずブロック機関につきましては、運輸省、郵政省等の五十四機関の廃止、それから財務局、地方運輸局等の内部組織の縮小合理化等を実施いたしました。また、府県単位機関につきましても、地方行政監察局、財務部等百七十八機関の縮小改組を実施したところでございます。さらに、府県単位機関のもとに置かれております支所、出張所等の機関につきましては、今年度末、六十三年度末までに六百四十四カ所の整理を実施する予定でございます。  現業的な部門を除く国の出先機関につきまして全廃すべしという先生の御指摘につきましては、国と地方との機能分担のあり方、あるいは財源配分のあり方、また広域行政への対応の必要性等々基本的な問題がございますし、また住民の利便等いろいろ検討すべき問題があるのではないかというふうに考えております。しかし、政府といたしましては今後とも引き続き国、地方を通ずる行政改革を進めていくという方針に変わりはございませんので、地方支分部局につきましても組織、定員の整理合理化は引き続き推進してまいりたいというふうに考えております。     〔平林委員長代理退席、委員長着席〕
  160. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 最後の質問をさせていただきます。これは本当は総務庁にも意地悪く聞きたかったのでありますが、総務庁がこれはこらえてくれ、自治省だけでひとつお願いしたいということですから、聞くだけ聞いておいてください。  今のことに関係するのですが、国の代執行の手段として第一に想像できることは、国の地方出先機関を活用するということが考えられると思います。しかし、国の地方出先機関は国と地方との二重、三重行政をもたらしておるものでありまして、行政の非効率を招いている代表的な機関であると私は思っております。今回のこの改正が通ってしまいますと、かかるむだな地方出先機関を存続するための口実に使われるのではないかという心配をしておるのでありますが、どう思われますか。
  161. 木村仁

    ○木村政府委員 地方自治法の規定に基づきます国の代行というのは、それほどしょっちゅう起こることではございませんし、また代行の事務の量等に応じて出先を使ったりあるいは直接中央の方々が代執行したりすることもあろうかと思いまして、出先機関が構造的に地方団体の事務を代行するような事態にはならないと思いますから、問題は少し違っているかなというような気がいたしますが、いずれにいたしましても、この法律改正がすなわち地方出先機関の整理縮小をしないという理由にはならないと考えます。
  162. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 時間が参りましたのでこれでやめますが、私が予定をしておりました質問の三割しか消化をしておりません。この次を楽しみにいたしまして、とっておきたいと思います。ありがとうございました。
  163. 松本十郎

    松本委員長 経塚幸夫君。
  164. 経塚幸夫

    ○経塚委員 最初に、午前中に論議がありました 警察の問題について、改めてちょっとお尋ねをしておきたいことがあると思いますので、お尋ねをしておきます。  私は警察庁の答弁を聞いておりまして、警察庁がこういう考え方で大阪シンナー少年のいわゆる致死事件、それから尼崎の競艇問題などをとらえておるということであれば、これは今後不祥事件は絶えないどころか、いやますますこれははびこるのではないかという危惧さえ答弁を通じて感じました。  そこで、ちょっとこれは会議録がまだ手に入っておりませんから、私が警察庁の午前中の答弁を控えた部分ですので、正確を欠いておる点があれば御訂正をいただければ結構かと思います。  まず答えられたのは、備品などの購入ですね。これは購入していただいたのを受け入れた、こうおっしゃっている。それから寄附金の問題については、歳入手続をとるべきものを検討もせずに慣例的に扱ってきた、年間五十万円の問題、こうもおっしゃっておる。それから署長公舎側溝工事の問題は、市側善後策を講じておる、こうおっしゃっておる。それから飲食の問題については、職務執行上必要なもの以外は辞退をするとはおっしゃっておりますが、不当と言い切れないものも含まれておる、こうもおっしゃっておる。それから最後の、御祝儀だとかこういう祝い金などについては、これは年間三十万円ですが、社会通念上の範囲、一方でこう言っておるかといいますと、妥当性を逸しているのかなという感じもする、こうもおっしゃっておる。これは大変矛盾をしておる。どこが矛盾をしておるのかということをちょっと指摘しておきたいと思うのです。  備品などの供与については、いただいた、していただいた、こう言っておりますが、市側の言い分は全然違うわけですね。これは記者会見でもって中嶋助役が、警察との関係の中で市職員としてやってはならない行為で応じた。つまり時には、応じない場合には警備の時間をおくらせるなど嫌がらせをしたということまで言われている。こうして市側としては応じざるを得ない、そういう状況に置かれたので応じた。そしてその応じ方が、これまた明確になってきたことでありますが、極めて問題のある支出の仕方を市の側はしておった。どういう支出の仕方をしておったかといいますと、公然と警察署長の公舎の側溝だとかあるいはクーラー代だとか警察の備品代、こういうような名目で支出ができないわけでありますから、この支出に際してはいろいろ費目を変えて、そして競艇場の備品などというような費目でもって特別会計から支出をした、したがってこれは公金の不正支出に当たる、いずれこの問題についての刑事責任上の問題も明らかにされるだろう、こういうようなことも言われている。  そうすると、午前中の警察側の答弁とは全然違うでしょう。購入していただいたのを受け入れた、こうおっしゃる。市側は、してはならないことを、要請に応ぜざるを得なかった。これは言葉をかえて言えば、強要されたという面も片っ方では浮かび上がってくるわけです。そして受け入れた警察側は、いわゆる会計上寄附金の扱いあるいは寄附物件の扱いについてはこれは事務手続上の問題だとこうおっしゃるが、出した側は、公金の不正支出だ、こうなっている。そうすると、警察の側は二重の問題が出てくる。不正に支出された公金を受け取りながら、警察の収納の帳簿上の手続の不備と同時に、やっておらなかったということと同時に、不正に支出された公金を受け取ったという問題が出てくるじゃないですか。  それから飲食の問題についてもそうであります。これは社会通念上とおっしゃっておりますけれども、調べによりますと、六十から六十二年度の間だけでも、接待で三十一回五十八件、七百六十四万五千円、ビール券やその他を含めると約二千万円、しかもこういう慣習は四十年代から続けられておった、こう言うのです。これは一体どういうことですか。全くこれは署ぐるみで、しかもこの金額、警察と市が半々で警備の件について双方が対等の立場で協議したための接待じゃないのです。警備警察職務権限だ、そして接待したのは、費用は全額市役所の公金なんです。警察は持っているのですか、持ってないじゃないですか、全額。これは職務権限にかかわる問題と言えないことはないじゃありませんか。社会的儀礼上ということになれば、今後も市役所と警察署との関係で、市役所に全額お金を持ってもらえるという接待は社会通念上当たり前のことだ、役所と署という組織組織との関係であればこれは何ら問題がないという弁明さえ兵庫県警はやっておるじゃありませんか。こんなことをしていいのですか。この点はどうですか。お伺いいたします。
  165. 森田雄二

    森田(雄)政府委員 最初に物品の受領について申し上げたいと思います。  私どもは、尼崎市当局者がどういうお話をしておるのか存じませんけれども、兵庫県警からの報告によりますと、この物品寄附はかなり以前からいわば慣行的に行われていた、いいことか悪いことかは別といたしまして、そういう実態があるようであります。それで、五十年代の後半からは五十万という予算の枠が示されまして、その範囲内で受け入れるということを続けておったということであります。したがいまして、この報告によりますと、少なくとも署の方が市の方から無理やりに物品を提供させておったという実態はないものと判断せざるを得ないと思うわけであります。  それから飲食についてのお尋ねでありますが、これは、招待を受けておった方は記録を持っているわけではございませんし、お金が幾らかかったかわかる立場にもないわけでございます。一応市の方の資料によりますと、昭和六十年度は十回、六十一年度十回、六十二年度六回という回数が記録されておるようでありまして、この三年度で六百九十一万五千円かかったということであります。午前中も申し上げましたが、市の幹部との初顔合わせあるいは警備の打ち合わせといったような、社会通念と言うとおしかりを受けるかもしれませんが、現行の社会実態から見て必ずしも不当とは言い切れないものも含まれているとは考えますけれども、これは一回一回、場所、出席者範囲回数等から見て具体的に判断すべきものだと言わざるを得ないと思います。  これも申すまでもありませんが、どこの県警も服務規程というものは置いてありまして、警察に職を奉ずる者は、いやしくも職務執行の公正さを疑われるような部外者とのつき合いあるいは飲食、物のやりとりといったものは避けるようにということでありまして、私どももふだんからそういう方向で常々厳しく指導しておったわけであります。この尼崎市と警察署との関係がそういう面からいって問題がなかったかどうか、これは厳しく反省、検討する必要がある。兵庫県警ではそういうことをやっておると理解しておるところでございます。
  166. 経塚幸夫

    ○経塚委員 さらに重大なことは、この接待の席上に県警の部長クラスが参加をしておった。問題になった警官は、今回が初めてじゃなしに、過去三回、女性問題等々もあっていろいろ注意を受けたこともあるのでしょう。ところが、奥さんの親が元県警の部長だということもあって、ああいうことが見過ごしにされておるんじゃないか。それで、退職された前署長と二人三脚でいつも飲み歩いていたという。この署長はもう不問に付されておる。この署長がいわゆるクーラーを二台取りつけてもらった。側溝工事も市の公費でやらせて知らぬ顔だ。県警の部長も接待に関与をし、元署長は二人三脚でいつも、それで内部告発でおかしいじゃないかと過去三回、女性問題、いろいろなことで注意を受けた本人だという。  だから、少なくとも事警察庁という立場に立つならば、これは組織ぐるみではなかったのか。それで慣行上というようなことが、これはよかったのか悪かったのかは別としてとおっしゃいますけれども、こういうことが四十年から二十年間続いているのですよ。こんなのは悪いに決まっておりますよ。それは民間の企業との関係であれ役所との関係であれ、警察警察の予算があるわけであ りますから、必要なものは予算に計上して執行するというのが建前なんでしょう。御祝儀をもらうとか、これは回数は少しばかり違います、金額も若干警察庁報告とは違いますが、大体似ておるわけですね。それですから、ここへメスを入れないことには根本的な解決にはなりませんよ。地元の尼崎関係では、トカゲのしっぽ切りだ、組織ぐるみの解明は何一つやられておらぬじゃないか。それで市では、違法行為になっておるかおらないかは今後は警察にゆだねるとおっしゃる。それで警察は、これは社会通念上の常識の範囲内だ、こうおっしゃる。これは全く癒着だよ。それで警察庁が先ほどのような御答弁をなさっておるのでは、これは真の解明にならないですよ。  時間がございませんので、私は委員長に改めて最近の警察の問題での集中審議をやる必要があるというふうにお願いをしたいとは思っておるわけであります。  大阪の問題もそうですね。私、先ほど控え室へ面会者が来ておるというので行ってきました。当の枚方市の主婦の方が来ておられました。今枚方市内の学校の生徒たちの気持ちは本当にかわいそうですよ。言っていますよ、何で少年が警官にけ殺された。殺された少年、確かにシンナー吸っておったのは悪い。しかし、シンナーを吸うというのは一時的な火遊びで、いつか反省のときが来て真人間に立ち直る。本人は、真人間に立ち直ろうというので、あしたから力仕事に出ると言って地下足袋を買い、働きに出る準備をしておったと言われておる、ひ弱な少年。相手はどうかといえば、身長百八十数センチ、体重八十キロ、柔道二段というじゃないですか。それでパトカーの外へ連れ出して殴る、ける。あげくの果てに、中でシンナーを吸っておった少年を待っておりました中学三年の少女をそのまま警察に連れていって、警察何やったんですか。十時間にわたって、おまえは暴行を見ておらぬだろうな、調書を書け。それで彼女の告白によると、夜明けになってもう疲れたので、暴行は見ておりません、警察暴行しておりませんと調書を書いて帰ってきた。そうして、帰ってきて告白をされて初めて事が公になったのです。もみ消しにかかったのでしょう。  それで警察は、シンナーによる事故死などというようなことを言った覚えはない、こうおっしゃっていますけれども、母親が語っているじゃないですか。警察は、事件直後はシンナーによる中毒死だと言う。息子さんの体が弱かったのではないか、いろいろ質問をしました、でも息子は元気だったのです、やはり乱暴されておったのですねと母親がこう嘆いて仏壇の前に手を合わせた、こう言っておるのですよ。  それはシンナーは悪いことですよ。しかし、一時的な青少年の非行は立ち直る機会がありますけれども、わずか中学三年の少女が十時間もかかって夜明けまで、にせの調書を警察の手にとらされたというこの心の痛手は、私は一生消えないと思いますよ。本人だけじゃないですよ。私は枚方から来たという母親の気持ちを聞きました。もう警察は信用ならぬ、こんなむちゃなことをする。そうして一人の少年はこうも言っておりますね。警察はぼくらを虫けら扱いにしておる、こう語ったと言われておりますね。そして腹をけって本人を致死に至らしめたということで早く解決をつけられた背景には、今言ったような少女の告白や少年の証言があったから。あの猫ばば事件で被害を受けた主婦も新聞で語っております。今度の少年の場合は証人がおったから早く解決がついたけれども、もし証人がおらなかったら一体どうなっておったのかと思うとぞっとする、こう言っているじゃないですか。この件についてはどうなんですか。事実御調査なさった上での午前中の発言なんですか。
  167. 森田雄二

    森田(雄)政府委員 実は先ほど大阪府警から、この事案につきましての現段階における概要の報告がございました。これに即しまして、若干詳しくなりますが、お話をしたいと思います。  一番最初この死亡した少年を逮捕したいきさつでございますが、十二月三日の午後九時二十八分ころ、管内の住民の方から枚方署へ、高等学校の校舎の壁をよじ登っている者がいるという電話の申告がございました。そこですぐ警察官八名を現場に急行させまして、そのうちの五名の警察官が学校の塀を乗り越えて校庭に入って捜索を実施したわけでございます。  その結果、校舎の二階廊下で少年一名、中庭で一名、四階から雨どいを伝って地上におりてきた少年一名を発見いたしまして、いずれも建造物侵入の現行犯で逮捕したわけであります。また、通用門付近にいた少年一名も同じ容疑で現行犯逮捕いたしますとともに、その少年と一緒におりました少女三名につきましては、シンナーの吸引と建造物侵入の容疑で任意同行することとしたわけでございます。逮捕した少年には、いずれも手錠はかけていないということであります。死亡した少年は、このとき四階から雨どいを伝っておりてきた少年であるそうであります。  次に、この少年が非常に荒い呼吸をし、シンナーのにおいが強烈にしたということでありましたので、直ちにパトカーの右後部の座席に乗車させ、その後別の少年を同じパトカーの後部の中央の座席に乗車させたわけであります。そこへ学校の中の捜索から最後に引き上げてきた警察官が、外からパトカーのドアを少しあけまして、この亡くなられた少年に対して、校舎の四階の窓の外のひさしの上にいたそうでありますが、そういうことをすることは極めて危険であるというようなことを注意いたしましたところ、この少年は反対に警察官に食ってかかり、警察官が制止するのを押しのけて車外に出てまいりました。そこで、これを見ておりました運転席におりました別の警察官が当該少年のところにやってまいりまして、パトカーの中へ連れ戻そうということで三人でもみ合いの状態になったわけであります。  そのとき、別の車両におりました、このたび逮捕されました加地巡査長でありますが、この状況に気づいて応援に駆けつけましたので、最初の二人の警察官はこの巡査長に任せて現場を離れましたところ、今度は少年と巡査長とがもみ合いをいたしまして、その場から約十メーターほど移動したということであります。そして、その場において加地巡査長は、この少年を制圧するために柔道の払い腰または体落としのようなわざで少年を投げ、さらには足払いをかけて横転させたことが認められるわけであります。また、その際に同巡査長がこの少年にひざげりを加えているのを目撃したとの供述も一部ございまして、本人もそういうことをしたかもしれないと供述しておるところであります。  そこで、別の車で子供たちを運ぼうとしておりました現場責任者でありました係長がこの巡査長の行為に気づきまして、パトカーのところまで行って同巡査長にやめるよう指示をいたしまして、同巡査長はこの少年をパトカーまで連れていって、もとどおり後部の座席に乗車させたわけであります。少年がパトカーからおりて再びパトカーに乗るまでの間は、二、三分ぐらいのごく短い間だったそうであります。パトカーに乗りました後、この少年は、水が欲しい、気分が悪い等訴えていたようでありますが、現場を出発して五、六分後の午後十時二十八分ころ本署に到着をいたしまして、降車させようといたしましたところ、吐き気を訴え、一階入り口のところに座り込んでしまったとのことであります。それで警察官が様子を見ましたところ、口から泡を吹き、ぐったりしておりましたので、直ちに救急車を呼び市内の病院に送ったのでありますが、到着時には既に死亡していたということであります。  そこで、このため直ちに検察庁に連絡をいたしました上、警察本部の刑事調査官によります検視を行いまして、司法解剖とすることといたしました。解剖の結果によりますと、直接の死因は不詳ということでありますが、解剖の主要所見として腹部打撲圧迫傷それから諸臓器失血状あるいは腹腔内の出血といったものが見られたとのことであります。この少年は、巡査長の制圧行為を受けるまでは特別の異常は認められておりませんで、制 圧後ぐったりしていたとのことであり、さきに述べましたとおり、同巡査長が制圧時にひざげりを加えていたのを目撃したとの供述も一部にあり、そこで、同人の制圧行為少年死亡につながった疑いが強いという判断をいたしまして、特別公務員暴行陵虐致死の疑いで同巡査長を逮捕いたしますとともに、懲戒免職処分にしたということであります。  現在詳細取り調べ中でございまして、まだ細かいところでわからぬところがございますが、今の段階で把握した概要は以上のとおりでございます。
  168. 経塚幸夫

    ○経塚委員 公安委員長、これは御存じですか。「兵庫県警が”出版妨害”」十二月十一日です。御存じない。――公安委員長は御存じないようですが、これを出版したのは神戸市西区、事務員多田幸子さん、ペンネーム。タイトルは、交際していた警部補が所属していた兵庫県警刑事部暴力対策第二課からとった「ああ暴対」という本を出された。この本が本屋の店頭に出されると、五冊、十冊とまとめ買いがされている。それからしばらくしますと、警察の方から三カ月間にわたって、まだ残っている部数があるはずだ、それを全部出してもらいたい、こういうことで執拗にこの著者の自宅を訪ね続けてきた。そんなことをしていいんですかと問い直すと、上司の命令で、これが私の仕事だ、時には五十万円出すから、こういうことで買い取り代金の提示もされた、こう言われているのですね。兵庫県議会での十三日の我が党の質問に対しましては、これは県警も著者のところへ行ったことは認めております。出版社へも警察が行っているのですね。  この時期はどういう時期かといえば、グリコ・森永事件、山口組と一和会の対立抗争事件の真っただ中。これは一体どういうことですか。結論的に申し上げますと、尼崎競艇の不祥事件といい、それから大阪シンナー少年をひざでけ殺した事件といい、それからこの兵庫県警の出版妨害、まさにこれは憲法違反でありますが、この事件といい、これは上司の命令で三カ月間著者に本の提出を求め続けた、こう言う。すると、これはまさに署ぐるみだ、こうなってくる。警察ぐるみだ、こうなってくる。大阪事件も、一方では今表面上の事実経過はありましたけれども、裏では暴力はなかったことにしようということで十時間も調書をとり続けて、そして事件隠しのでっち上げを強要した。これもまさに署ぐるみになってくる。尼崎の競艇事件は四十年代から署ぐるみの事件なんだ。これを一個人の警察官の道義上の問題だとか責任で処理をされている限りは抜本的解決にはならない。  だから、相次ぐ不祥事件、私は、梶山大臣大臣に就任をされ、国家公安委員長を兼務されて一番頭の痛かった問題は、何でこんなに警察不祥事件が続くのかいなと、朝起きて新聞を見ると嫌な思いをした日が何度かあったに違いないと思うのですよ。私は当然だと思うのです。それと補助金カットの問題だろうと思うのですけれども。これは抜本的にこの原因をどう見るのか、今後一体どう対策を講じられるのか。特に大阪事件尼崎事件、今警察庁からも報告がございましたが、まだ取り調べ中の過程の問題もありという御答弁もございましたが、これは一日も早く事実を明らかにして、やはり天下国家、国民の前に公表して国民信頼を回復する措置を講ずべきだ、こう思いますが、国家公安委員長としての所見をお伺いしたいと思います。
  169. 梶山静六

    梶山国務大臣 個々の問題について、その事実の真相を私は残念ながらつまびらかにいたしておりません。しかし、先ほど安田委員にもお答えをいたしましたように、この春以来警察官の各種の不祥事案が続きまして、これによって国民皆様方に大変な御迷惑をおかけをいたしております。  私は、一件の不祥事件といえども許さるべきでないという、先ほど申し上げましたけれども、一部の不祥事件によって日夜身命を賭して任務遂行に当たっている警察官全般に対する信頼を損なったことに対して、まことに残念のきわみでございます。そして、今経塚委員の言われたことと官房長の答弁、確かに微妙なずれ、感覚の違いもあろうかもしれません。しかし、怖いことは、人間善悪は別として、慣行、こういうものになれた場合の恐ろしさ、こういうものを今感じているわけであります。この機会に、とにもかくにもそういうあしき慣行をもう一回、善悪の区別なくして、慣行をもう一回見直しをしなければならない、そういう感じがいたします。  総体的な組織というか、組織ぐるみという表現がございましたけれども、一人でできない問題、それから、例えば悪いことにその軽重はございませんが、あるいは過剰な捜査を行ったとかなんとかという問題とまた異なりまして、尼崎の問題や猫ばば事件等には確かに胸の痛む恐ろしさすら覚えるわけでございます。  私は、残念ながら、その事件の多発をしている大阪や兵庫の土地柄であるとか、特に府県警の気風というか、そういうものを承知をいたしておりませんが、私のような北関東、東北の人間にとってみては考えられないことでもございます。土地柄のせいなのか、土地柄の比例的な代表が警察であるのかどうなのか。そういうことを言ってはいけませんけれども、しかし、その問題にまで立ち入らないとこの問題の解決ができないのではないかという実は深いおそれを抱いている一人でございます。  とにもかくにも、私は国家公安委員長でございますから、指揮命令系統は警部はございません。しかし、広範な管理権を生かしまして、何とかこういうことのない警察社会をつくり上げなければならない。今確かに指摘をされた一番私の嫌な思い出、まあ思い出というか、まだ思い出になったわけではございません、現実に日々刻々触れる問題でございますが、この種の報告を受けますと一番胸の痛むことが多いわけであります。抜本的な改正を、監察体制をひっくるめて考えなければならないという感じでございます。
  170. 経塚幸夫

    ○経塚委員 地方のせいにされますと、きょうは京都の寺前さんもおりますし、大阪の小谷議員もおりますし、私も大阪でございますから、みんな悪いということになりかねませんので、これはぜひひとつ、あしき慣行は洗い直してメスを入れてみる必要があると思っております。  あと時間もわずかでありますが、基本的な問題について、自治法の改正問題でお伺いをいたします。  まず最初に大臣にお伺いをしたいのでありますが、国の機関委任事務に対する自治省の基本的な態度なんですが、これは本来原則廃止すべきというお考えなのかどうなのか。  警察の方は結構ですから。  五十六年四月の砂子田政府委員、それから五十八年四月の山本国務大臣、それぞれの答弁の中でも、地方制度調査会は二十五年、二十六年の神戸勧告に始まって以来そうでありますが、一貫して原則廃止の態度をとっているわけなんですね。この点、自治省の基本的な態度はどうなんですか。
  171. 梶山静六

    梶山国務大臣 委員指摘のとおり、機関委任事務については、地方制度調査会が数次にわたって答申をいたしておりますとおり、基本的にはこの概念を廃し、国の責任において処理すべき事務は国の事務、地方公共団体の責任において処理すべき事務は地方公共団体の事務と端的に考えるべきでございます。  しかしながら、一挙にそれができるかどうかという今度は現実論でございますが、当面はその積極的な整理合理化を推進をしなければなりませんが、それと同様に、地方自治体の自主性、自律性の確保及び事務の適正な執行の確保の両面の要請を踏まえてこの制度のあり方を見直し、早くそういう基本的なものに立ち返るというか、基本的なものに進んでいく努力を払わなければならないというふうに考えております。
  172. 経塚幸夫

    ○経塚委員 答弁は、原則廃止だという前の部分だけで結構だったのですよ。しかしながらということがついてくると話はややこしくなってくるんです。ここからがややこしくなってくるんです よ。やはり原則廃止だという基本的立場で対応されるのか。それとも、国と地方は車の両輪だから、それは両輪という面もあるでしょう。しかし、その事務の扱いの処理の仕方については、これはこれでまた別な方策を検討すべきであって、まず今の戦前から引き継がれた国の機関委任事務という、地方も国の行政の一つの枠内の機関だという判断から生まれたのが国の機関委任事務制度なんですから、新しい自治法のもとではこれは原則廃止をされておらなければならなかった性格なんですが、いろいろ抵抗があって残されてきたという経緯があるわけなんでしょう。だから、私はこの基本点ははっきりしておくべきだと思うのです。  ところで、しかしながらとおっしゃった後の部分がややこしくなってきておるといいますのは、現実を見ますと、機関委任事務の件数ですが、現在数、別表三、四は四百九十七ですね。これは改正後は幾らになるのですか。
  173. 木村仁

    ○木村政府委員 現在提案いたしております地方自治法の一部改正法の別表についておりますものは、増加するものと廃止するものとがありまして、最終的には五百二十三項目となる予定でございます。
  174. 経塚幸夫

    ○経塚委員 大臣、お聞きのとおり、これは減りはしませんがな、あべこべにふえますがな。四十九年の自治法改正後は五百二十二でしょう。これよりさらにふえるという勘定になるんですな。こんなもの原則廃止だと言うておったって、これは棚上げだ。それで、しかしながらというのだけが歩いてきておるわけだ、国と地方と車の両輪で云々というのが。それで、結果的には国の機関委任事務は、大幅縮小、削減どころか、逆にふえていっているという傾向にあるじゃないですか。これは原則がはっきりしておらぬからなんですよ。  そこで、これは大臣にお尋ねをしたいのですが、これも先ほど答弁を聞いておりまして、なるほどこの考え方では果たして本格的に機関委任事務が整理されるということになるのかどうか、大変疑問に思ったわけです。大臣は御答弁の中で、これは車の両輪とおっしゃいますけれども、地方制度調査会だとか歴代の大臣や政府側の答弁は、国は国の事務、地方地方の事務、そして身近な地方の事務は地方の事務として、原則機関委任事務は廃止してもらいたいというのが歴史的な伝統なんです。ところが、臨調、行革審答申では、これは有効な制度という結論を出したじゃないですか。有効な制度という結論を出しているんですよ。片一方は原則廃止論だ、片一方は原則有効論だ、こう言う。車の両輪と言うて、車はどっち向いて行きまんね。全然向きが違いますがな。  それですから、新行革審と地方制度調査会と一体どっちが優先されるのか、こうなってくると、臨調に対して地方六団体が原則廃止をしてもらいたい、こういう陳情をされた。そして、これだけの項目を検討されたい、こういう陳情もされた。ところがこれが全く無視されて、そして有効論が生かされてきたんです。それで、今度の新行革審も臨調のこの基本姿勢を引き継ぐんでしょう。全く別途の新たな原則論を確立するんですか。そうじゃおまへんやろ。これを引き継ぐはずですよ。そうすると、原則有効論を基本にして、権限移譲だ何だかんだ言ったって、これはうまいこといきますか。いくはずないじゃないですか。  それで新聞記事を見ますと、一方には地方制度調査会がある、これは総理の諮問機関だ。それで、目的には、地方行政に関する問題を諮問を受けて審議する、こうなっておる。そうして、新行革審も同じ総理の諮問機関だ。しかし、権限移譲の問題などをやることについてはにらみのきく新行革審でと、こうなっておる。そうすると、地方制度調査会はにらみがきかぬのか、こうなる。同じ総理の諮問機関だけれども、地方制度調査会では横の線では余りにらみがきかぬのか、こうなる。それなら、にらみのきかぬところで何十年これを論議しておっても通らなかったという理由も、ここから結論づけられてくるわけでありますが、自治大臣としてこの点どうお考えなんですか。むしろ地方制度調査会の立場をこそ尊重どころか優先をして機関委任事務の整理合理化を図る。基本は原則廃止。そして、国と地方と両々相またなければならない事務については対等、平等の立場からの調整という問題も別途これは検討の余地もあり得るのじゃないか。しかし大臣の御答弁、先ほど来からのを見ますと、国全体の立場に立ってみてやってもらった方がいいと思ったから、そういうお考えですが、同じ結果になりはいたしませんか。その点どうお考えですか。
  175. 梶山静六

    梶山国務大臣 ただいまも申し上げましたとおり、私は、やはり制度・権限論からいえば基本的には截然と分けられてしかるべきだという観点が、特に地方制度調査会を中心にして数次の答申に出ていることは御案内のとおりであります。しかし、現実に私たちは地方自治の住民であると同時に国民でもございます。住民、国民の受ける利便というのを全く考慮に入れないで、ただ制度論、権限論だけで割り切ることがいいのかどうなのかという現実的な手法、これも私は考慮に入れなければいけない。  そして車の両輪論を皆さん方もお認めでございますが、車が右と左てんでんに回ったら堂々めぐりをするのじゃないかということもありますが、車の両輪というのは、車は一輪一輪では成り立たないということが車の両輪論でございますから、その間には心棒というものか何かがつながることによって両輪という。あれはつながってなければ両輪じゃないのですからね。両輪論というのは、少なくともそこに何らかのパイプ、それがあるので、片方は中央に向かって物申すことがある、そして中央はまた地方にこれをお願いする分野がある、これが私は現実的な両輪論だという気がいたします。個々の問題全部当たってみなければなりませんが、今確かに指摘をされて、今までの機関委任事務がさらにふえていく、こういうことであってはいけないわけでございますので、その辺の整理合理化を早く進めながら、どうしてもしかしこれとこれは両方一緒でなければいけないという分野、こういうものを見定めて、住民、国民の利益の共存を図っていきたい、このように考えております。
  176. 経塚幸夫

    ○経塚委員 時間が参りましたので終わりたいと思っておりますが、それは軸は一つでもモーターが二つあって、片っ方の車は後ろを向いて回る、片っ方の車は前を向いて回るという、軸は一本でも両輪だったら必ずしも一致して前を向いていくとは限らぬですよ。だから地方のモーターなのか、中央のモーター、これが力を持ってくるのか。これは言ってみれば綱引きですよ。だから二十何年どころか、もう戦後四十何年かかって抜本的に解決がついておらない問題なんですから、私は、やはり自治省自治省としての立場をもっと明確にして、そして地方制度調査会を最優先させて論議すべきである、かように考えております。  まだこの問題は序に入ったばかりでございますので、どうか委員長におきましても、後の十分な審議が尽くされるように御配慮をお願いいたしまして、終わらせていただきます。
  177. 松本十郎

    松本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三分散会