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1988-11-05 第113回国会 衆議院 税制問題等に関する調査特別委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十一月五日(土曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 金丸  信君    理事 加藤 六月君 理事 海部 俊樹君    理事 瓦   力君 理事 羽田  孜君    理事 藤波 孝生君 理事 加藤 万吉君    理事 村山 喜一君 理事 二見 伸明君    理事 米沢  隆君       甘利  明君    池田 行彦君       片岡 清一君    岸田 文武君       小杉  隆君    斉藤斗志二君       志賀  節君    鈴木 宗男君       田原  隆君    高橋 一郎君       谷  洋一君    玉沢徳一郎君       中川 昭一君    中川 秀直君       中島  衛君    中西 啓介君       中村正三郎君    野田  毅君       葉梨 信行君    浜田 幸一君       堀内 光雄君    宮下 創平君       村山 達雄君    山口 敏夫君       山下 元利君    伊藤  茂君       川崎 寛治君    坂上 富男君       中村 正男君    野口 幸一君       山下洲夫君    小谷 輝二君       坂井 弘一君    坂口  力君       宮地 正介君    安倍 基雄君       玉置 一弥君    工藤  晃君       正森 成二君    矢島 恒夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  竹下  登君         法 務 大 臣 林田悠紀夫君         外 務 大 臣 宇野 宗佑君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣 中島源太郎君         厚 生 大 臣 藤本 孝雄君         農林水産大臣  佐藤  隆君         通商産業大臣  田村  元君         運 輸 大 臣 石原慎太郎君         郵 政 大 臣 中山 正暉君         労 働 大 臣 中村 太郎君         建 設 大 臣 越智 伊平君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     梶山 静六君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 高鳥  修君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      粕谷  茂君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 田澤 吉郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      中尾 栄一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      伊藤宗一郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 堀内 俊夫君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 内海 英男君  出席政府委員         内閣法制局長官 味村  治君         内閣法制局第三         部長      津野  修君         公正取引委員会         委員長     梅澤 節男君         公正取引委員会         事務局官房審議         官       糸田 省吾君         総務庁長官官房         審議官     増島 俊之君         総務庁行政管理         局行政情報シス         テム参事官   重富吉之助君         防衛庁参事官  村田 直昭君         防衛庁防衛局長 日吉  章君         防衛施設庁施設         部長      鈴木  杲君         防衛施設庁労務         部長      吉住 慎吾君         経済企画庁物価         局長      勝村 坦郎君         経済企画庁総合         計画局長    海野 恒男君         経済企画庁調査         局長      冨金原俊二君         国土庁長官官房         長       公文  宏君         国土庁土地局長 片桐 久雄君         法務省刑事局長 根來 泰周君         外務省北米局長 有馬 龍夫君         外務省条約局長 斉藤 邦彦君         大蔵大臣官房総         務審議官    土田 正顕君         大蔵省主計局次         長       篠沢 恭助君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省証券局長 角谷 正彦君         国税庁次長   伊藤 博行君         文部大臣官房長 加戸 守行君         厚生大臣官房総         務審議官    末次  彬君         厚生大臣官房老         人保健福祉部長 多田  宏君         厚生省社会局長 小林 功典君         厚生省保険局長 坂本 龍彦君         厚生省年金局長 水田  努君         農林水産省経済         局長      塩飽 二郎君         通商産業省産業         政策局長    児玉 幸治君         通商産業省機械         情報産業局長  棚橋 祐治君         通商産業省機械         情報産業局次長 水野  哲君         通商産業省生活         産業局長    岡松壯三郎君         工業技術院長  飯塚 幸三君         資源エネルギー         庁長官     鎌田 吉郎君         運輸省運輸政策         局長      塩田 澄夫君         労働大臣官房長 清水 傳雄君         労働大臣官房政         策調査部長   甘粕 啓介君         労働省職業安定         局長      岡部 晃三君         労働省職業安定         局高齢障害者         対策部長    竹村  毅君         建設大臣官房長 牧野  徹君         建設大臣官房総         務審議官    木内 啓介君         建設省住宅局長 伊藤 茂史君         自治省財政局長 津田  正君         自治省税務局長 湯浅 利夫君  委員外出席者         地方行政委員会         調査室長    大嶋  孝君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ───────────── 委員の異動 十一月五日  辞任         補欠選任   西田  司君     高橋 一郎君   原田  憲君     斉藤斗志二君   山口 敏夫君     小杉  隆君 同日  辞任         補欠選任   小杉  隆君     山口 敏夫君   斉藤斗志二君     原田  憲君   高橋 一郎君     西田  司君     ───────────── 本日の会議に付した案件  税制改革法案内閣提出第一号)  所得税法等の一部を改正する法律案内閣提出第二号)  消費税法案内閣提出第三号)  地方税法の一部を改正する法律案内閣提出第四号)  消費譲与税法案内閣提出第五号)  地方交付税法の一部を改正する法律案内閣提出第六号)      ────◇─────
  2. 金丸信

    金丸委員長 これより会議を開きます。  内閣提出税制改革法案所得税法等の一部を改正する法律案消費税法案地方税法の一部を改正する法律案消費譲与税法案及び地方交付税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  質疑の申し出があります。順次これを許します。米沢隆君。
  3. 米沢隆

    米沢委員 私は、民社党・民主連合を代表いたしまして、ただいま提案されております税法六法に関連いたしまして、総理並びに関係大臣に総括的な質疑を行いたいと存じます。  顧みますと、この臨時国会が開かれたのが七月十九日、それから既に三カ月半経過をいたしてやっと本法案の本格的な審議入りになった。そういう意味では、総理におかれてはまずは胸を一なでぐらいのところかな、そういう感じがするわけでありますが、しかし、既に今会期は十一月二十四日、まさに目の前に迫っていると言っても過言ではありませんで、そういう意味ではかなり切迫した、緊迫した状況の中にあると言ってもいいと存じます。  この七月十九日以来三カ月半経過をいたしましたが、この間、考えてみますと、新しい消費税というものが盛り込まれた税法でございますから、国民にとりましてはいわゆる大衆課税として、特に低所得者皆さんに影響が大きい税金だということでかなりの関心を持たれ、それはまた与野党にいろいろと陳情等を通じて大衆増税は反対だという声がかなりの程度でやってきたことは、これは否めない事実でありましょうし、同時にまた、消費税そのものは、幾らお国のためとはいいながら、おのれの事業をやると同時にその中で消費税を計算し、納税コストはおのれで払い、もし競争の激しい業界の中でその消費税が次に転嫁できないとするならば、それはまさに第二法人税的に働く、事業者にとっても実際は一面は大変迷惑な税金が入ったのがこの六法案でございますので、与野党でこの国会で少々もめるのは私は当然のことだろうと思います。  同時にまた、世論調査等を見ますと、一方では、審議を尽くせというのが大体六割ぐらいあります。ところが、審議に入ると多数の自民党にずるずる持っていかれるぞ、結果的にはこの消費税を成立させるために手をかすことになるからやめろというのが大体六〇%ぐらいある。新聞世論等も、まさにこの法案に対する厳しいといいましょうか難しさをいろいろな面で世論調査が示しておる。そういう状況でございますから、我々野党にとりましても厳しい選択を迫られていることは、これは事実でございます。  しかし、考え方によりまして、この三カ月半というのは果たして空費したものであったのか、いたずらに経過したものであったかと言われると、私はそれは異論がある一人であります。  それはなぜかといいますと、例えば、長年サラリーマンの皆様の怨念とも言えるような重税感を解消してくれというこの声にこたえて、まず増税なしの減税をやろうではないか、六十三年度減税一兆二千億の減税をこれは実現させることができました。この三カ月半のいわゆる中でございます。あるいはまた、不公平税制是正をやろうではないか。残念ながら中曽根税革には不公平税制是正という意味ではほとんど見るべきものはなかった。今度は少々入っているけれども、それも満足するものではない。やはり大衆増税を課す以上は、その以前の作業として少なくとも現行税制体系の中で不公平を是正し、税制というものが信頼に足るものだということを見せながら税制改革審議に入っていくということがまさに政治にゆだねられておる責任ではないか。そういう観点から、不公平税制議論する協議機関をつくろうではないか、そして、その中で珍しくまじめに議論をしてきたことも事実でございます。その成果につきましてはいろいろと御批判もありましょう。しかし、ある程度進んだことも事実であります。  同時にまた、このような消費税を入れる前に少なくとも政府として汗をかかねばならぬことがあるのではありませんか、それが行財政改革であり、特に高齢化社会に対応する消費税と言われるならば、せめて福祉ビジョンぐらいを示して国民理解を求めるのが当然のことではないか等々の話もこの間にやったわけでありまして、そういう意味では、中身等についてはまだ我々も得心いかないところはたくさんありますけれども、少なくとも三カ月半は空費したものではない、いたずらに過ごしたものではない。税制改革審議を始める前の問題として、言葉をかえるならば、本来こういうものは政府がみずから提起をし、そして議論をしてもらうというのが建前であるけれども、残念ながらそのあたりに及びがつかない。税制改革法案を一挙に早くやれという議論の中で、ちょっと待ってくださいよという、まさに政府が手抜きをした部分野党提起をし、その部分議論をしてきた、そういう位置づけがなされてしかるべきだと私は思うのでございます。もしこの三カ月半が空費されたというものであるならば、それはまさに政府手順のまずさであったと言っていいと私は思います。  まあ理屈はいろいろありますが、しかし会期は迫ってきております。一番大事なのは、私も税制改革特別委員会理事をやっておりますが、まあやいのやいのとうるさくなってきたことでございます。我々はこれからが本当に一番大事なことでございまして、本当に本格的な税制の論議をするためにはまさにこれからだという感じでございますので、今私が総理に要請したいことは、この一番大事な税法審議が一挙にはしょられてしまうのではないかという危惧の念を強く持っているということでありますので、これは絶対に納得できるものではありません。このような状況にあればあるほど総理としては徹底審議のために十分な時間を確保するということ、これは金丸委員長にもお願いしなければなりません。同時に、租税民主主義立場からいいまして、決して強行採決はしないことを約束すべきだと私は思います。そしてこの際、総理は本法案の処理につきましてどのような出口論をお持ちか、まず、しかと承っておきたいと存じます。
  4. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 この三カ月半を振り返っての反省と申しましょうか、また、政府に対するその責任等についてお触れになりました。一々私どももうなずけるものがございます。  ただ、出口論入り口論というのは、言ってみればこれは国会そのもの審議の問題でございますので、いかに長年その道にあったとは申しながら、私の方から国会運営そのもの中身に至っての論評をすることは差し控えるべきではないか。今のように整々たる議論がおのずから帰結する結論をお出しいただけるものであろうと心から期待をしておるということに尽きるではなかろうかと思います。
  5. 米沢隆

    米沢委員 こういう重要な時期であるがゆえに、先ほど甘えるなという話がありましたが、冗談じゃないと私は言いたいのでございます。本当にそのような手順を踏んでやってこられたならば、逆に会期の幅の問題だって、あるいはまた国会を始める時期だって、いろんな考慮の上に本当はうまくできたかもしれません。しかし私は、野党の方からも再三再四にわたって申し上げておりますように、手順を誤りなさるな、もっと時間をかけて、本当に税制改革という抜本的な議論をするのであるからその周辺整備を本当に心がけてやってもらいたいと言い続けたことをやってくださらないがゆえに、逆に言うたらこの三カ月半にそのような議論が出てきたというわけでございますので、こういうときにこそもっと慎重に審議できるという時間を十分にとろう、それは物理的に限界もありますけれども、それは政府としても本当にその時間はとるように努力をすると約束をなさるのが私は総理立場ではないかと思うのでございます。再度、私は御見解を伺いたいと思います。
  6. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 委員会運営中身については行政府立場から申し上げることは差し控えるべきであると思いますが、今、三条件についてももろもろ御議論がありました。なかんずく三番目のいわゆる行財政改革あるいは福祉ビジョン等は、おっしゃるとおりこれは要請に基づいて作業をしたという経過をたどったものであることは私どもも十分承知し、反省もいたしておるところであります。したがって、国会審議に当たりましては、政府としてはできるだけ意のあるところを御質問等に応じて詳細にお述べ申し上げることによって国会審議に対応するとともに、それを通じて国民理解が深まっていくことを期待をしておると言うにとどまると思います。
  7. 米沢隆

    米沢委員 さて、今国会の予期せぬ出来事といえば、これはリクルート事件の発覚といいましょうか、リクルート事件が飛び込んできたということではないかと思います。これが少なからず審議の日程を狂わせておるということも、これは事実でございます。  しかし、毎日毎日朝起きて新聞を読みますと、次から次に政界官界を巻き込んだ新しい事実や疑惑が報道されていることには本当に驚かされます。率直に私の感想を述べるならば、いつまで続くぬかるみぞという感じですね。まさに構造的な株のばらまきの実態と、それがまた底が深いという驚きであります。もう一つは、よくも江副さんまいてくださったな、あちこちあちこちと株をまいてくださっておりまして、あきれて物が言えない、これが率直な私は感想であります。このような事件が報道されるたびごとに憶測が乱れ飛ぶ、国民政治不信はいやが上でも高まっていく、まことにこれはゆゆしき事態だと認識せざるを得ません。こういう事態が次から次と進展してまいりますと、本当に税法どころじゃないな、税制改革あたり議論するほど悠長な時間はないというような国民皆さんの声が伝わってくるような気がしてならぬのでございます。総理、この江副氏の政界官界を巻き込んだ異常とも言える構造的な株のばらまきにつきまして、率直に言って、じゃ何を意図してやったというふうにあなたは思っておられますか。  考えてみますと、この構造的な株のばらまきというのは、直接まいたものもある、第三者割り当てをしたその会社がまいたものもある、第三者に割り当ててそれからまた買い戻してまいたものもある。普通、直接最初の安定株主を探すためにまくぐらいは、これはもう常識ですよね。ところが、第三者割り当てするために幽霊会社的なものをつくっておる、そこから買い戻してまたまくというのは、普通の株式市場で起こる幾ら未登録の株の配付とはいえ、ちょっとやはり異常だ、だれもそう見ておると思うのですね。総理、率直に言って、それは本人に聞かなければわからぬかもしれませんけれども、なぜこんなことをしたのだろうと率直に思っていらっしゃいますか、聞かせてほしい。  それからまた、この前私も税革の一人として江副さんの病床質問というのに立ち会った。そのときは、委員政治家のリストぐらい出したらどうだという話に対して江副さんは、経済人信義があるから死んでも言えない、こう言った。しかし、経済人信義を重んじるような人がこんなにばらまくものだろうかと私は不思議でたまらない。果たして彼に経済人信義を言う資格があるのかという感じさえするのでございますが、総理、この私の考えに対して、率直に言って本当はどういうふうに思っていらっしゃいますか、御見解を承りたい。
  8. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 米沢委員もおっしゃったように、それは本人様に聞いてみなければわからぬこともあろうかと思います。が、御指摘ありましたように、いわば一つ決算対策による安定株主ということもこれは論理的にあり得ると思っております。その他の問題で本人様自身がどういう意図を背景に持っておったかということは、それは想像の域を出ないことになりますので、私からここでお答えするだけの自信はございませんが、米沢委員がいろいろ御指摘なすっておる点について私も同じような感じを持っておるということは申し上げて適切かと思います。
  9. 米沢隆

    米沢委員 そういう意味では、まさにこの事態の進展に対して一体国会が何ができるんだ、政府として何ができるんだ、そのことが本当は問われていると思うのです。言葉だけの問題ではなくて、真実実効性が上がるための努力国民に示すことなくして私はこの事件は終わらないという感じがしてなりません。そういう意味で、我々のこの動きというものが果たして国民期待にこたえているものであろうかと自省しなければならぬと思うのであります。  御案内のとおり、国会というのは国政調査権を持っておる。国政調査権の有力な一つの手段は証言法による証人喚問である。ところが御承知のとおり、証言法そのものを改正しない限り証人喚問には応じないという政府自民党の強固な意思がまさに証人喚問の前に立ちはだかって、一向にそういうものが進まない。証言法を改正しなくても、それなりに常識を働かせてやるということを約束するならば現行証言法だってやれないことはないにもかかわらず、その知恵でも出そうという議論に一向にならない。これが国政調査権をさびつかせておる非常に大きな問題だと我々は認識しておるわけであります。  また、政府につきましても、やれ守秘義務だとか、やれ捜査の支障があるとか、やれ証券取引法はそういうところまでは及ばないとか、すべて小さく小さく、狭く狭く、おのれの仕事をしなければならぬ分を縮小してしまって、疑惑解明には残念ながら努力不足、マスコミだけが山生懸命頑張っておる、こういう姿が本当の今、国民に映る真実の姿ではないかと思うのでございます。これでは政府にとって肝心かなめ税法審議支障が出るのは当たり前の話でありまして、私は、そういう意味でもっと政府は腰を入れてこの疑惑解明のために頑張るんだという姿勢をまず国民の前にもう一回強く示すべきであるし、また、その実効を図るために格段の努力をしてもらわねばならぬと思っておるのでありますが、まず総理見解を聞きたいと思います。
  10. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 いわゆる議院証言法の問題は、国会の問題として私もかつて参画はいたしておりましたが、中間報告が議長のもとに出されておるというふうに理解しておりますので、これについて触れることは差し控えさせていただきます。  いわゆる国政調査権と、それに対する政府側協力の問題であります。国政調査権には最大限協力をすべきである、私がいつも申し上げておるところであります。しかし、お互い体験からいたしまして、そこに守秘義務とかいろいろな壁があることも事実であります。その問題につきましては理事会等でいろいろ御議論がなされておるということも承知しておりますので、三権というものが一方に存在しておるということも十分認識しつつも最大限協力するという姿勢で、それらの話し合い等に十分尊重して従うべきものであるというふうに考えております。
  11. 米沢隆

    米沢委員 そのような基本的な物の考え方を持っていらっしゃるその結果が、現在国会として一向に国政調査権を発揮するチャンスがない、あるいはまた国会審議をするに際して政府からの十分な協力も得られていないという結果を生んでおる。そのことを一体総理はどう考えておるかということをもう一回聞かせてもらいましょうか。
  12. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 確かにこの国権の最高機関たる国会、そして国政調査権、これには行政府最大限協力をしなければいかぬ。が、長年お互い体験により、そこに今御指摘なすった守秘義務の問題を含め壁がございます。その壁に対して結局どのような最大限協力ができるかというのは、当該委員会等の御相談等に対して私どもが、三権というものがあるということ、これは否定してはいけませんが、しかしその中で可能な限りの知恵を出していくというのが私どもに与えられた任務ではないかというふうに考えておるところでございます。
  13. 米沢隆

    米沢委員 やはり私は、こういう政府姿勢、結果的には何も本当に腰を入れた様子が見えない、こういう状態が続く限り、野党リクルートばかり言って税法審議を延ばしておるなんという理屈は立たないと思うのでございます。  この際、このようなリクルート疑惑、難しい、広がりの深いものでございますから、一挙に解決するということにはならぬでありましょうけれども、少なくとも一挙に解明するぐらいの気持ちでやっぱり江副氏の再喚問を、私は証人喚問として召喚することを要請せざるを得ません。いろいろとたくさんの人が次から次に新聞に登場されますけれども、一番知っておるのは江副さん本人が一番知っておるのだから、せめて江副さんぐらいは、それも証人として呼ぶという、そのことに自民党皆さんも同意してくださることが最後の良心だと私は思っております。  そういう意味で、江副氏の証人喚問委員長に対して民社党としても要請することを申し上げ、理事会でよろしくお取り計らいをいただきたい。
  14. 金丸信

    金丸委員長 わかりました。(発言する者あり)静粛にしてください。
  15. 米沢隆

    米沢委員 そしてこの際私は、司法の捜査が進んでおると言われておりますけれども、一体どこまで進んでいるのか、今どういう状況にあるか、これからどうしていくのか、今日までの司法当局による捜査状況を踏まえて、国会にその中間報告を提出することを求めたいと思います。  さらに、刑事訴訟法第四十七条ただし書きに基づきまして、捜査資料をでき得る限り公表してもらいたい。せめて株の流れの全容、流された意図については、これはそう簡単に物は言いにくいかもしれませんが、せめてかかわった政界官界のリストぐらいは早急にこの国会に、協力的であるとおっしゃるならば出していただきたい、このことをまず法務大臣に見解を求めたいと思います。
  16. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 まず、捜査の進捗状況でありまするが、昨日もお答え申し上げたのでありまするけれども、東京地検におきまして楢崎議員の告発に関しまして、去る十月十九日に強制捜査に着手をいたしまして、翌二十日に松原リクルート元社長室長を逮捕いたしまして以来、捜査に当たる検事を漸次増員いたしまして、現在二十三名の検察官を投入した捜査体制のもとで、松原元社長室長に係る贈賄申し込みの事実の解明を中心にいたしまして鋭意捜査中でありまするが、この間に松原室長の取り調べのほかに、多数の参考人の事情聴取を行いますとともに、リクルート本社とかリクルートコスモス本社、東洋信託銀行などの関係箇所の捜索、差し押さえによりまして押収いたしました干数百箱の証拠物の分析、検討を行いまするとか、あるいはビデオテープを検討をするとか、そういうような所要の捜査を続けておるところでありまして、松原室長の拘置も十一月十日まで延長をして捜査をしておるというような状況でございます。  次に、資料を公表すべきではないかという御質問でございまするが、先ほど総理が御答弁になりましたように、国政調査権に対しましては最大限協力をするということでございます。しかし、まだこの事件は、今申しましたような捜査中の段階でございまして、そこまではいっていないということを御理解願いたいと思います。  しかしながら、公益にとって極めて必要であり、また相当の理由があるというようなときにおきましては、かつては国会の秘密会において提出をしたというようなこともございまするし、協力をしたいという考えでございます。
  17. 米沢隆

    米沢委員 協力いただけるのは、一体どういう事態が終わったときにそういう決断をなさっていただけるのですか、法務大臣。
  18. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 それは今も申しましたように、国会におきまして国政調査の方面から十分御調査をいただいて、秘密会のような会をつくっていただき、また捜査も相当進んでまいりましてある程度司法当局としても見解を得るというようなことができましたならば、公判以前におきましても応じさせていただかなければならないだろう、かように考えております。
  19. 米沢隆

    米沢委員 税法の本論に入りたいと思います。  私は、先般この場を通じまして、今回の税制改革の全体像はおよそ当初の理念と目標から外れて矛盾と欠陥に満ちたいびつな形に堕してしまっておるということを申し上げました。質疑を進めるために、簡単に先般の質疑の要点だけおさらいをさせていただきたいと思います。  まず、理念と目標から外れて全体像がおかしくなってしまったというその論点として、まず第一は、五兆四千億という消費税の税収を図られるにもかかわらず、それが個別物品税で三兆四千億一挙に消えてしまう。残りは二兆円。しかし、国も地方も消費税による支出増を強いられることになるわけでありますから、国と地方を合わせてこの消費税の導入に伴う税収、財政への寄与というのは大体一兆円前後、一兆円を切るぐらいのものしかない。財政の面からは非常にメリットが薄い、また地方の財政にとりましても、これはほとんどメリットはない、逆にマイナスだというのが第一点。  第二点は、現行の間接税の廃止というものがかなり多額に上る。例えば五%消費税の場合ならば、九兆円の収入の中で三・四兆円を消すならばまだわかる。三%の消費税という五兆四千億の中でそのまま三・四兆という個別間接税を消すというのは、これは現行の個別税制にもいろいろな問題があるから当たり前の話ではございますが、ただ今度の税制改革はほとんど個別物品税制を消すためにあったという位置づけがなされてもおかしくないぐらいにちょっと個別物品税制を一挙に片づけ過ぎた、それが大きな税収不足を生んでおるということを私は言わねばならない。  第三番目は、消費税の税収でも約四〇%ぐらいは地方の財源となっていきますね。したがって、二兆七千億の減税超過型であるということでもおわかりのとおり、将来の高齢化社会に向けていつかは増収するぞという仕組みは入れることに成功されるかもしれませんが、残念ながら実質的に金目で高齢化社会のために対応するんだという収入はゼロか何もない。果たして高齢化社会に対応できるという、胸を張れるようなものであろうか。あるいはまた、国税でも地方税でも、個別物品税制をのけますと、所得税、住民税、法人税、法人住民税、相続税等の減税財源はトータルで五兆二千億しかし一兆円しか使えないのでございますから、減税財源で入れるのだという今までの主張等もありましたけれども、これまたいいかげんなものになってしまっておる。  あるいはまた、直間比率の是正。特にこの直間比率の是正というのは、このごろ竹下さんは余りおっしゃらない。中曽根さんはよくおっしゃった。当初は竹下さんもよくおっしゃっておった。結局高齢化社会に対応するというのは、直間比率を是正することが間接的に高齢化社会に対応する税制というものをつくることに必要なんだ、第一義的には直間比率を是正してサラリーマンの皆さん方の重税感を解消してあげよう、と同時に、高齢化社会になっていく、お金が要る、それを社会保険料や税金でみんなが納めていくとするならば直接税体系が多いところではやはりサラリーマンの皆さんの肩の方にたくさん乗ってくるであろうから、それが重税感につながる、したがって、それを解消してあげることが高齢化社会のためになるという、間接的に直間比率の是正高齢化社会のためだ、こうおっしゃっておった。ところが、この直間比率の是正そのものも結果的にはそう前進をしておりません。  この前、同じこの税制改革委員会で質問をさせていただきました。大蔵省の方は、通常使うのは国税だけの直間比率だということをおっしゃっておりましたが、払う立場にとったら、国税だって地方税だって直間比率をそういう意味で本当に議論するためには合わせて議論するのが当たり前の話じゃないかと私は思うのですね。そういう意味で国税、地方税合わせて比率を計算してみますと、わずか三・六%ぐらいしか前進していない。だから、例えば今度の税制改革法案が通ったとしましても、少々減税の累進税率では、緩和しましたから効き目は昔よりもそうないかもしれませんけれども、わずか三・六%ぐらい前進したからといって二、三年もたったらすぐまたもとに返ってしまう代物ではないかと私は思うのです。これは大蔵大臣、一回聞かせてもらいたいと思うのですね。そういう欠点がある。  あるいはまた、一番大きな欠点は、大きな歳入欠陥をつくる税制改革だということです。確かに、消費税国民皆さん理解してもらうためには減税を大盤振る舞いしないと納得してくださらないかもしれない。我々も減税やれ減税やれと言うてきた。そういう意味では、そういう要望にこたえたと言ってもいいかもしれませんけれども、それにしても余りにも大きな歳入欠陥だ。国税、地方税合わせてトータルで二兆七千億。政府は二兆四千億のマイナスがあるとおっしゃる。それではそれを認めましょう。その上、御承知のとおり、国や地方が消費税を負担しなければいけませんから、これが大体合わせて約一兆円だとしましょうか。二・七プラス一、三・七兆は完全に歳入欠陥を生じておる税法だ。そういう意味で、高齢化社会に対応すると言うても合点がいかない。財政再建とか財政の健全化に資すると言ってもこれは合点がいかない。直間比率を是正されると言ってもこれは合点がいかない。最終的には約四兆近い歳入欠陥を含む税制改革だという議論であれば、個々の税法についてはいろいろな評価があるかもしれませんけれども、トータルとしての竹下税革の全体像はこれは余りにもおかしな姿に堕してしまったのではありませんかと私は言いたいのですね。再度、総理か大蔵大臣の見解を求めたい。
  20. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 五点にわたりまして御主張を承りました。  まず第一の点でございますが、個別物品税等々を整理した結果、実際には消費税をやりましても二兆円のネットの増収しかない、これはそのとおりでございます。そして、国、地方も相当の負担をするではないか、この点につきましては、前回大蔵省、自治省から御答弁を申し上げたとおりでございますが、国と地方の間の重複分といったようなものをもう少し精査をする必要があるようでございますが、いずれにいたしましても、おっしゃいますように、一兆と仮にしようとおっしゃいましたのはその辺でございましょうと思います。そうしますと一兆ぐらいのものしか残らないではないか、国も地方も転嫁をこれは必要とする税金でございますから、当然負担をしなければならないことでありまして、これは仰せられるとおりであります。  第二点でございますが、こうなったのは、実は仮に消費税が五%でもあれば相当大きな収入であるから、三兆四千億という、国、地方合わせると八つの税になるわけでございますが、そういう間接税を廃止しても大きなものが残るが、五兆四千億ではこれは今第一に御指摘になったように残るものは非常に少ないではないか、それは言ってみれば個別消費税というものを吸収し過ぎたと申しますか、何もかにもやめてしまう、そういうことで、そこのところが行き過ぎたんではないか、元が九兆もあればそれはよろしいが、こういう意味の御指摘であったと思います。  これは、物品税等々の個別間接税の方にいろいろもうこのまま放置できないような問題がむしろあったというふうに御理解をいただくべきかと存じます。すなわち、そのうち尤たるものは物品税でございますが、戦前には非常に大きな税金であり、たくさんの項目を課税対象にいたしておりました。戦後大変にいろいろな変遷をいたしましたが、その間これは、戦後の最近までの経緯を見ますと一種の奢侈品課税であるといったようなふうに多くの場合説明されてまいったのでございますが、国民の価値観が変わってまいりますと、何が奢侈品で何がぜいたくかといったようなことは大変に実はあいまいになってきたことは否定ができません。現実の姿といたしましては、今の物品税収入は自動車とそれから電気製品でほぼ三分の二をしょっておるわけでございますので、その他のものはあるいは課税であれあるいは非課税であれ、なぜその二つのものだけがそう多くのものをしょうのか、それは奢侈品であるからということになりますと、どうもいろいろ疑問を寄せられる向きもある。のみならず、個別間接税の中でも酒税などになりますと、これは外国からの高級酒の輸入を防圧するための方法であるというようなことがしばしば国際会議において首脳間でやりとりがあるというようなことになってまいりまして、個別間接税そのものが実は非常に説明しにくくなった、あるいは対外的にいろいろ批判の対象になつた。  振り返りますと、OECD加盟二十四カ国でございますが、付加価値税を採用しております国が十八カ国あるそうでございます。残り五カ国はベースの広い消費税型のものをやっておりまして、そのうちカナダは近く付加価値税に移行するかどうかというような議論をやっておりますが、残った一国は日本ということでございます。そういう意味からも、やはり個別間接税を整理すべき、統合すべき時期に来ておるだろうというふうに存じます。  これは米沢委員からもしばしば御批判のあるところでございますけれども、タックス・オン・タックスというようなことはなるべくやらない方がいいということもございますので、こういう消費税をいたしましたときは個別間接税は廃止をできるだけしようというのがこのたびの考え方でございました。その結果、残ったものは少ないねとおっしゃいますればそのとおりでございますが、制度としてはかなり整備されたという感じがいたします。  第三の問題は、地方にも今度の消費税収入は結果として相当分与あるいは交付することになる。確かに、三九%と存じますが、これが地方の財源になってまいります。そうなりますと、なおさら今度のこの税制改正においてあるいは消費税において金目でもって高齢化社会に対応するんだということは、金目の面では言えないではないか、こういう御指摘でございました。  これは総体として二兆四千億円の減税になるわけでございますので、金目の面で高齢化対策をやっておるということは確かに申し上げにくい、それは私はおっしゃるとおりであると存じます。ただ、私どもが思っておりますのは、前にも申し上げまして申しわけございませんが、今の段階で六・六人の若い人が高齢者を背負っておる。十五歳から六十五歳の人が六十五歳以上を背負っておる率は六・六対一でございますが、それが二〇〇〇年になると四対一になり、二〇一〇年には三対一になるというのが目に見える現実になってまいりましたので、その際、今のような税制をそのままにしておきますれば、若い人は直接税、所得税を中心にしてこの負担をせざるを得ない。今さえ所得税が非常に高いと言われているときに、そういうことを若い人に求め得るかといえば、私は恐らくそれは不可能を強いることであるというふうに存じます。かくては安定した社会福祉制度というものは危殆に陥ると考えざるを得ない。  そういう意味で、我が国はかなり所得水準の高い、格差の少ない社会になってまいりましたので、このような社会の共通の負担は薄く広く皆さんに背負っていただく。いわば若い人に背負ってもらう六十五歳上の方々も、恐縮なことではありますけれども、お人のためというわけではございません。やはり御自分たちのためにもそういうことを考えてはいただけないだろうかということでございます。それは制度の問題であって、金目の問題で申し上げているのではないということは御指摘のとおりと思います。  直間比率でございますが、この前国の方だけを申し上げましたが、国だけを申せば七二・二対二七・八がほぼ二対一になる。これはよろしゅうございますが、地方の方は七七・三対二二・七が七四対二六程度でございますので、国、地方を合わせますと直間比率の改善は少のうございます。  直間比率というのは、総理がしばしば言われますが全体をあらわす一つの形でございますから、これが余り狂っておりますときは何かどこかに問題があるというふうな、指標として考えております。昭和二十五、六年、シャウプ税制が始まりましたころは直接税が五五であったと思いますが、一遍、昭和四十五年ごろに五〇まで行ったことがございます。しかし、その後ずっと骨格が変わりませんから、直接税がここまで参りましたのはやむを得ないことで、七二対二七が悪いと申しますよりは、これが中堅所得層の給与所得を中心にした非常な重税感になってきている。そのことの一種の表にあらわれた姿、それが直間比率である。したがって、この直間比率の姿が非常に偏ったときには何か税制の中に問題がある、こういう指標として私ども申し上げているのでありまして、このたび改正させていただきますと、国税については二対一になってまいるというふうに考えます。  最後の問題は、このたびの税制改正は結局歳入欠陥をつくっていくのではないか、この御指摘は、今までお述べになりました四つのことの締めくくりとして言っていらっしゃるわけでございますが、確かに財政当局としては、現在のような財政状況でネットの減税をするということはこれはかなりの思い切りでございます。殊に、特例公債を昭和六十五年度にはやめたいという立場から申しますならば、歳入欠陥というのは相当つらいことでございます。しかし、いろいろ努力をいたしまして、結局、消費税二%という税率はこれがもう限度である、今日においてもさように考えますし、将来においてもそう考えるべきものでございますから、そういうむしろ厳しい状況の中で、やや優先度の低い歳出は切っていく。また、租税措置法等々にも工夫すべきものもあろうと思います。かたがた経済運営を誤らずに、こういう中で何とか財政再建も進めてまいりたい、かように考えております。  長くなりまして申しわけございませんでした。
  21. 米沢隆

    米沢委員 質問した点だけ答えてほしいですね、政府の演説会ではないんだから。時間は何ぼでもたちますし、六・六人で一人という、そんなのは聞き飽きるくらい聞いているのですから。ポイントを申し上げておるのでございますから、ぜひそのあたりだけをお答えいただきたいと思います。  今、るる長ったらしく御説明いただきましたが、問題は、この大きな歳入欠陥を生んだ税制改革、今大変つらいものだとおっしゃった。確かにつらいだろうと思う。一体、本当に三%の消費税を上げない、別の手段でやるとするならば、自然増収か行革みたいな歳出の削減しかあり得ない。しかし、先般から議論になっておりますように、赤字国債六十五年脱却も大きな課題である。長年のツケ回しも十一兆三千五百億も残っておる。これも今から償還していく対象の中にある等々、誘惑は大きい。消費税が逆に三%と低い税率で入ったものだから、そして歳入欠陥がどっと出てくるようなのが見せられたから、これは国民としてはすぐ動き出すなと思うのは当然なんですね。十年間も動かないなんて、大体信じないです、こんなのは。いつでも動き始める、可動の態勢に入っておるのではないかというくらいのことしか私は考えない。  今までの答弁、先般の私の質問に対しましても、そのために三%をいじるようなことはないといろいろとおっしゃった。しかしそれは、今この話し合いの中で、討議の中である程度私自身は理解したとしても、多くの国民はこういうものが十年間くらいもう動かないというはずがないと思っておる。総理はそういうものの歯どめに対して、国会や法律があるじゃないかとおっしゃる。しかし、国会ほど、まあ怒られるかもしらぬけれども、頼りないものはないところもある。例えば、現に今、世論調査でも六割方が消費税は嫌だと言っても、その消費税を入れようとしておるのが国会なんだ。あるいはまた、長年の大蔵委員会等の議論でも、赤字国債についてもそうだった。赤字国債の借換債にしていくときもそうだった。あるいは国債の整理基金に繰り入れを停止する際にもそうだった。みんなそのときそのときによってさっさと法律をつくってさっと通していく。確かに一方では厳しい財政事情があったにせよ、逆に言うたら、これから先厳しい財政事情が続けば逆にすぐ法律をつくりかえて、歯どめ論あたりすぐなくなってしまう。それが国会なんです。それを信用しろということ自体が、少なくとも十年間くらいはその三%はいじりませんという、その気持ちはいいです、姿勢は、しかし、現実にはそうならないのではないかというのが国民の不安だ。そういう意味で、私は歯どめ論をもっとしっかり総理に持ってもらわねばならぬし、また国民の前に表明してもらわねばならぬと言うておるんです。どうですか。
  22. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 歯どめ論につきましては、いつも申し上げておりますように、私は国会というものが存在しておるということを申しております。まことに今この歴史をひもといて、まずは率直なところが、昭和四十年の公債発行の際、それから五十年補正のいわゆる特例公債発行の際、そうしてこの繰り入れ停止、そしてまた借換債ということは、その都度大変な良心の苛責を感じながら、国会に相談しながら対応してきた施策でございます。したがって、そこに何かの目標がなければならないというのが、いわゆる当初は五十九年赤字公債脱却であり、そして、今や六十五年度赤字公債依存体質からの脱却ということに対して国会協力を得ながら一生懸命取り組んでおるわけであります。ただ私は、先日も申し上げましたが、いわゆる税率そのものについて、竹下内閣などというのはこれはしょせん歴史のほんの一こまにすぎない、が、後世代まで手足を縛るということは、私は、国民の意識の変化の中にそれは少し私自身は慎まなければならないことではないか、これはいつも自分に言い聞かしておるところであります。  例えば、減税論議にいたしましても、国会議論も変化したなと思うのは、戻し税を見つけたとき、みんなこんないいものはないぐらいなつもりで取っかかったこともあるわけです。それを戻し税を否定するようになり、そして本格税制でないといかぬというふうに変化をいたしますから、ヨーロッパにおいて見られるごとく所得税減税とあわせながらいわゆる消費税率を上げてきたという歴史を見ますと、全部後世代まで、そのときの国民の選択権まで縛ることは私はできない、そのように申しておるわけであります。  したがって、今日の時点で申し上げることは、これだけぎりぎりの議論をして出した三%というものでございますから、これが容易に変えられ得るはずもないという感じを私自身は持っておるところでございます。強いて申しますならば、竹下内閣で変える考えはございませんとそれは歴史の一こまとしての約束はできたとしても、未来永劫の約束をすることは、これはやっぱり後世代の方々の手を縛ることになるんじゃないかという考えにいつも立っておるわけでございます。
  23. 米沢隆

    米沢委員 良心の苛責に耐えながらいろいろ国会がおかしいことを決めてきた。あるいは、後世代を縛ることはできないという意味で将来上げるかもしれないということを一方では示唆される。私は、そういう意味では聞いてみたいのは、一体、この増収措置が動き出すのはどういうようなときだと想定されますか。大蔵大臣、総理、どういうときだと思いますか。何とはなく何とはなくじゃもうこれはわからぬの、僕らは。何とはなく何とはなくと遠回しの議論では。もっとダイレクトに、本当に基準は要らぬもんでしょうか、もしこれが動くとすればどういうときでしょうかということにはっきり答えてもらいたい。
  24. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 三%の税率を動かすというときはどういう状況においてであるかというお話でございましたが、今財政をお預かりしている私といたしましては、これは動かすことは考えておりません。そういうことをいたしますと財政再建そのものがむしろ私はなまるというふうに考えますので、私は何とかこの下で財政再建、特例公債も新規発行をやめるということを手始めにして再建をしていきたいと考えておりますので、財政を預かっております私に関しましてはそういう状況を想像しておりません。
  25. 米沢隆

    米沢委員 私は、最大の歯どめ論はやっぱり行政改革を断行するということ、常に断行し続けるということ、それからこの前問題提起をしましたように、株の放出だとか国有地財産の整理とか、いわゆる現在国が持っておるもの、あるいは抱えておる株の問題等々、踏み込んで計画的に整理するものは整理していく、自分たちでつくれる金はどんどんつくっていくという、そのことをはっきりさせることが、それもある程度年次計画でもってやることが、それで金が出る限りこっちは動きませんというのが私は最大の歯どめだと思うのですね。残念ながら、一方ではそっちの方の意欲といいましょうか決意みたいなものが欠けておるんではないかと見るものだから、国会があるじゃありませんか、法律があるじゃありませんかというのは結局うさん臭く見えると私は思っておるんですよ。だから、これから総理は、歯どめ論は何かと問われたら、国会と法律があると同時に、私は行革をやり、財政再建のために徹底的に金目になるものは年次的に売ってでも集めるんだ、そしてできる限りそっちの方を抑える努力をするということをもう一つ加えていつも演説してもらいたい。どうですか。
  26. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 大変これはいい御提言といいますか、私に対する御忠告でございます。それを加えるのは、私は長い間けちけち財政を担当してきておりますので、そのことはその以前の問題としてあり得ると思っておりましたが、改めて国民の皆様方に問いかけるとき、今のような発言をすることに対しては、これは大変私自身としても喜ぶべきことであると思います。歳出圧力に耐えるという努力もまた、これは国会行政府も大変なことであるということも承知の上でお答えを申し上げた次第であります。
  27. 米沢隆

    米沢委員 それから、この歯どめ論に関して、いわゆるいつ何どきその需要がふえていくかわからぬものを相手にしている限り、常に圧力は出てくるだろう。だから逆に、例えば赤字国債みたいなものを、トータルで今百五十九兆、建設国債、赤字国債合わせてありますが、赤字国債は六十五兆から七十兆ぐらいありますね、これだけを償還するために何しろ消費税を入れる、それが償還し終わったらそこで終わり、また議論のし直しというのが、本当は一番のトータルとしての歯どめ論なんですね。そういう議論に対して、財政再建との関連でどういうようにお考えですか。
  28. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 あるいは大蔵大臣のお助けをかりなきゃいかぬかとも思うのでありますが、私は、それが財政再建税として考えた場合の発想はそこにあったのではないかな、こういう感じがいたしております。それからいま一つの歯どめ論として、福祉目的税とし、その中身を、例えばでございますが、基礎年金部分、老人医療部分等々に限って、それを対象とした歯どめ論というものもあり得るかなということも、米沢委員との議論の間に今までも幾たびかしたことがございます。  しかし、今度の場合は、そうした目的税意識からするところの歯どめ論というものではなく、二十一世紀に向かってのあるべき税制構造というのを構築しようということをお願いしておるわけでございますから、そういう一つのものを対象にした歯どめ論というのは、財政再建税でありあるいは福祉目的税であった場合とは違って、非常にやはり立てにくい問題だ。だから、やはりその都度立てていきます。仮に六十五年度脱却ができた場合のその後の財政再建計画と申しますか財政再建構想というものが出た場合に、そこでまた当然歯どめ論の議論は継続していくでありましょうが、やはり今の場合は、せっかく御指摘いただいたように、国会というものが存在しておる、なお、私どもが今後財政再建あるいは行政改革、歳出の節減合理化、これに引き続き厳しくシーリングをもっと抑えてでもやりますというぐらいな決意を述べることは、私も結構だと思っております。
  29. 米沢隆

    米沢委員 その点は議論が尽きませんので一応やめますが、次に、もう一度、税制の富の再配分機能と今政府が推し進めようとする水平的公平の確保、この関係について少しく質問をしてみたいと思うのでございます。  今回の消費税の導入の論拠といいましょうか背景には、垂直的公平も大事だけれども、それよりも今日の時点では水平的公平を確保することが大事である、政府税調等の答申にも書いてありますし、答弁の中にもそういう趣旨が入っております。その結果、逆進性の強いと言われる消費税導入に踏み切る、あるいは資産性所得に対しては、利子課税とかキャピタルゲイン課税とか土地譲渡益課税等々は大体総合課税ではなくて分離課税になってしまう、あるいは資産課税については大変政府は冷たいというのかな、資産課税には弱いというような状況が結果的には出てきておるのではないか、こう私は思うのです。いわば、垂直的公平よりも水平的公平をと。今度の税制改革はそういう意味ではもう歴史的な大転換期だと思うのですね、税法議論、物の考え方、哲学として。しかし、その前提になっておる所得の水準が上がり平準化したという事実は、本当にそういう事実なのか、今垂直的公平よりも水平的公平をという歴史の大転換をする際にしてはちょっと論拠がおかしくなっているのではないのかな、これがまたいわゆる消費税導入に対して大変多くの皆さん方の不安を生んでおるということにもつながっているのではないのかなと私自身は考える。  確かに、戦後と今日においては、給与所得は上がりました。平準化も進みました。特に高度経済成長のときに、人手不足だ、どんどん経済が大きくなって、給与もそれにつれて大きくなってきた。その間に水準も上がるし平準化も進んだ、これは事実だ。しかし、この五年とかこの十年をとったときに、一体どういうふうに給与所得というのは、そんな根拠になるほどに平準化が進み、上がったであろうか。残念ながらそのあたりはマイナスの方向に動いておると私は思う。これから先の経済を展望したときにどうなるか、少なくともあの当時の高度経済成長はもう二度と来ないであろう、うまくいって中成長、下手をすれば低経済成長、人手も余ってくる時代になる、あるいはまた、労働力のミスマッチで言われますように単純労働者と技術労働者で分かれてくる、一方では物すごく高給をもらう人がおるかもしらぬけれども、こっちの方は余りもらわないというふうに、水準が上がるとか平準化が進むというのは逆方向に下手をすると行ってしまうのではないか、そういうことが読めるというのが私の考え方です。  その上、御承知のとおり資産課税。資産所得というものが、捕捉ができないから課税ができないと言われるほどに、資産がどんどんふえてもその所得は大体明確にならない。しかもこのごろ、現在のコストインフレの状況を受けてどんどん土地の価格も株の価格も上がってきて、持っておればどんどんもうかる、持たぬやつはとことん持たない、自分の家さえ持てなくなってきたということで、給与所得本来の平準化の問題等も鈍化し始めておるだろう、あるいは資産性所得という意味では逆に格差が拡大しておるだろう、こういうものを考えた場合には逆にジニ係数というのは悪化しておると思う。  今政府が水平的な公平をという意味消費税を導入される論拠にしておるけれども、その論拠は逆にマイナスの方向に向かっておると考えることが、私は、今度の税制改革を別の意味で手当てする上で非常にその発想に立つことが大事だ、そう思うのですが、総理か大蔵大臣、どちらからでも結構です。
  30. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 第一に、長い目で見た場合には確かに所得の平準化もまた水準も上がってきたことはそうであるが、この数年間の傾向はむしろそうでないではないかと言われましたことは、私はその限りでそのように存じます。確かにこの数年間、今までの動きに停滞が見られる、あるいは多少の後退も見られるということは事実であろうと思います。  ただ私は、これは、やはり二度の石油ショックであるとかあるいは急激な円高がいっときございましたとかで雇用の不安が非常にございました。ついこの間まであったわけでございますので、これはどうしても、今申しましたような長年の動きに水を差す結果になったことはやむを得ない、残念なことであったがと思います。これから先私どもは、今有効求人倍率が叫を超えるというような状況になって人手不足が言われるようなこの経済のもとで、長年進んでさましたこの傾向がもとの道に帰ってさらに進んでいくであろうということを考える、期待もいたしますが、そう考えて間違いではないのではないか。雇用不安というものは確かに急速に解消しつつございますので、その点は私ども米沢委員の言われましたこと、御心配の意味は、それでも所得格差というものは業種によって開いていく、サービス産業の方は不安定、いろいろな問題があることはきっと御指摘のとおりでありますが、大きな流れとしては、私は雇用の不安というものは解消しつつあると見ますので、将来をそのように悲観をしなくてよろしいのではないかというふうに思います。  次の点は、所得税が所得再配分の機能を持つことはもう疑いないことでございますけれども、その垂直的な再配分機能というのは、私は時代とともに、社会の動きとともに変わってまいるのではないかと考えております。マルクスが考えましたような社会におきましてそれが非常に厳しくなければならないものであったことはそうでございましょうが、最近英米などで見られますように、それならばもう二段階にしてしまうといったような動きはこれは果たしてどういう意味合いを持つのか。我が国も簡素化に向かっておりますが、それはやはり所得水準の上昇、平準化の上に、財政等々の機能でいわゆる社会福祉政策がかなり進んできておるということもあわせまして、所得税の持っておるそのような機能の程度というものは私はかなり変わってきているというふうに考えてよろしいのではないかと存じます。  最後の問題は、そういうことがあるとして、資産課税はもう一つやはり、資産のいわゆる資産効果と申しますか再配分にさらに重点を置くべきではないかと言われますことは、先般からいろいろ御議論になっておりまして、私は十分考えるべき御指摘だと思っております。  現実の問題といたしまして、このたび非常に悩みましたのは、土地、株式等々、これが大きな資産に名目的になっているわけでございますけれども、片方で、大都市において本当に小さな土地を親から受け、あるいは御主人に亡くなられて後のものが維持できないというような現状が現にございますものですから、それについて大きな減額比率を掛けなければならない、そうしませんと大変な問題が起こるということが不幸にして大都市に起こりましたために、多少、今言われました徹底的に重課をすべきであるということと違った要素が出てまいったというのは事実であると思います。しかしそれでも、いつもこれは御指摘にもなりますが、自然増収の中では相続税あるいは贈与税の収入が非常に大きい。これはやはり株もございますけれども、それでも結局は土地の評価がやはり大きいということになっておりますし、また資産課税そのものは、消費、所得、資産の中で従来と同じだけの比率は少なくとも持っておりまして、各国に比べまして決して相続税の税率は低くない、むしろ高い方である。不十分ではないかとおっしゃいますことは、たまたま今のような土地問題等に関連がございまして問題なしとはいたしません、将来に向かっていろいろな問題を示唆しているとは思いますが、ただいまのところは少なくとも資産課税の比率を下げずに置いてあるということでございます。
  31. 米沢隆

    米沢委員 ほぼ御説明いただいたような感じはしますけれども、しかし、資産課税に対する取り組みというものは、それぞれの局面局面でいろいろでこぼこの議論があっても当然だと思いますが、やはりこれから先の本当に不公平の最大のものは、資産に対する、資産性所得に対してどういう税金のかけ方をするのかというそのことだと私は思いますね。  例えば、今おっしゃったように、日本のような異常な事態の中で相続税あたりも何とか対処して減税してあげねばならぬ、そのことも考えなければいかぬし、トータルとしてはまた物の考え方もあるというようなことをおっしゃいましたが、私は、もう少し政府は資産所得に対する課税の哲学を持ってもらいたいと思うのですね。それも、ただ大蔵大臣がこの人だったからこの人はこう言う、次の大蔵大臣はこれだからこれを言うではなくて、まさに継続する政府としての資産課税に対する哲学をぜひ確立してもらいたい。その確立がない限り、これから先の土地税制に対しても、資産所得に対する、利子課税にしましてもキャピタルゲイン課税にしましても土地譲渡益課税にしましても、そのたびごとに揺れ動く。結局土地対策のために土地税制が使われ過ぎるということで、税制本来の何か哲学がない限りどうもこの問題はアキレス腱になる。特に不公平感という意味でのアキレス腱になる。そういう意味で、人によって変わる哲学ではなくて、少なくとも政府として継続できるような資産に対する課税の仕方、この哲学、これをぜひこの税制改革の論議の中で、議論を通じて次の宿題として私は確立してもらいたいということを強く要請したいと思うのであります。  例えば、よく使われます数字で、昨年ですか、一年間ぐらいで大体GNPに匹敵するような土地の価格の増益、増収含みあるいは増価値というのですか、あるいは株式の増価。その中で、例えば相続税というのは一・二兆ぐらいですか一・六兆でしたか、土地は一年ぐらいでそれだけGNPに匹敵するほど価値が上がる、相続税はその前の価値にも、積み上げてきた価値にもかかるのでございますが、わずか一兆二千億か一兆六千億だったと思いますが、比率で計算すればわずか〇・三%ぐらいですよ、昨年一年間の。それにもし相続税がかかったとしても、過去の累々として積み上げた相続の財産、それが基礎ですから、〇・〇〇〇ぐらいのパーセントですよ。果たして相続税はただ単に税収として相続税ができたのか、富の再配分機能を持たせて相続税というものができたのか、その哲学をたどれば、水準としては余り大したことがないという議論ではなくて、もっと富の再配分機能という感じから相続税をやはり見るということも大事じゃないか。  確かに急激にふえることに対しては激変緩和をしなきゃなりませんが、やはり生きていくための、生存する権利を保障するようなものは認めながらも、やはりトータルして、持っておる人には持っておる人なりに相続税もいただき、それが結果的には富の再配分につながっていくという税制を念頭に置いてもらわないと、結果論で再配分を議論するのじゃなくて、やはり再配分する機能が税法にはあるという観点から私は資産課税に対する所得についても哲学を確立してもらいたいということを申し上げておるわけでありますが、これは総理ですかね、答えてほしい。
  32. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 この資産性所得の問題について申し上げてみますと、利子課税、配当課税、これが源泉分離という形であるものが総合化されていくというのは、一つの方向として私は哲学が継続しつつあるのではないかと思います。やはり私は、この問題では譲渡所得の問題ではなかろうかというふうに、詰めてみればそうなるような気がいたしております。したがって、その譲渡所得の場合、やはり代表的なものは株式とそして土地であろうと思っております。  株式につきましては、私は株式市場の成長と我が国の行政というのが必ずしも、あるいはこれは先輩に対して失礼な問題もありますけれども株式市場の発展の方が行政よりもはるかに速く進んできたということでこれが議論になって、これの問題についていろいろな対応策が考えられておるところではないか。  それから、二番目の土地の問題につきましては、これはいろいろな議論をいたしてみましたが、私の生まれた在所などというのは土地の全く上がらないところでございますけれども、要するに不公平感の一つは、たとえ未実現の所得であっても、今おっしゃいました増価に対する情緒的な不公平感、それから譲渡そのものが行われて所得を生んだときの大きな不公平感、こういうものがあろうかと思います。したがいまして、この土地の問題については、やはり土地対策委員会が契機となって土地基本法というものを勉強しなきゃならぬような環境になった。それを打ち立てることによって、私は、譲渡所得の中における土地の問題についての一つの哲学というものが打ち出されていくではなかろうかな、こういうふうに考えております。  それから、もう一つおっしゃいました相続税の問題というのは、私は富の再配分という表現がいいのか、あるいは社会への還元と言った方がいいのか、これは表現は別といたしまして、従来とも我が国の相続税には一つの哲学が存在しておるんじゃないかというふうに私は思っております。少し荒っぽい言葉でございますが、西郷南洲児孫のために美田を買わず、こういうのが私は日本の相続税の一つの哲学になっておるんじゃないか。しかし、事業承継でございますとか現実の問題でいろいろな課題がございますけれども、相続税に対しては私は哲学というものは、我が国の税制の中には社会還元の思想としての哲学は存在しているんじゃないか、こういうふうにいささか私見でございますけれども、かねて思ったことを申し上げた次第でございます。
  33. 米沢隆

    米沢委員 ちょっと哲学論争になって、これは国民にもわかりにくい議論だと思いますので、これはここらでやめたいと思います。  先ほど私は、この個別物品税を一挙にちょっと下げ過ぎたんじゃありませんかということを言いました。一挙に解決しなきゃならぬ、何も、するなということじゃないですよ。しかし、今度の選択はもっと別の選択もあってしかるべきではなかったのか、こう言うておるわけですよ。現に自動車さんには暫定税率を認めるんですから、これは税収の観点からでしょう。それ以外に何か理由があったんですか。  私は、そういう意味ではやはりこの個別物品税制も、一挙に解決することが一〇〇%それは理想であるにせよ、しかし税収に欠陥を生むようなものになるというのではやっぱり問題であろう。消費税をうまく導入させるためには産業政策を持たねばならぬ。そのための金が要る、別の一般会計から持ってこいと言ったら大蔵省は嫌だ嫌だと言うんだから、せめて個別物品税制を暫定的に変えていく中で税収源を見つけていくという、それぐらいの知恵はあってしかるべきではなかったかと私は言うておるわけですね。わかっていただけますね。  そういう観点からいたしまして、私どもはやはり、よく言われますように、米も三%、ダイヤモンドも三%。私はまだ信用していないですよ、この三%がそのままほとんど長く続くなんていうのは。これが五%になり、八%になり、一〇%になるという時代が来るとしましょうか。そのときに米も一〇%、水道の水も一〇%、ダイヤモンドも一〇%というのでは、私はやっぱりそう納得できないという国民の声になっていくんではないか。確かに、何を選別してどうするかという議論はあるにせよ、食糧も同率、ダイヤモンドも貴金属もみんな一緒だという、必ずそんな議論が出てくると思いますよ、それは。  そういう意味では、個別物品税は何も一緒でなければならぬということではないわけです。ほかの、いわゆる各国で付加価値税等導入されたときも、既存の個別物品税率はでこぼこのまま残したり、下げるけれどもそのまま残したり、一挙になくすものもある、そういういろんな選択をされたんですね。それは、そういう配慮と同時に税収という配慮があったんではないか。今度はそういうような配慮がないというところに、何かしら次の産業政策等を窮屈なものにしていくということが感じられるということを私は申し上げておるわけですね。どうですか、簡単に答えてください、大蔵大臣。
  34. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 問題が簡単でないのでございますけれども、それは実は私どもも半分は共感したいようなお話なんでございますね。  前回はいろいろ免税品目をたくさんに設けていたしました。今のお話ですと、税率も物によって違ってもよかろう、こうなりますと、なぜという説明はもう大変に難しいし、お立場立場で、それを受け入れられるか受け入れられないか、そういったようなことになった一つの類型が前回の問題でございますもので、今度はそういう制度の精緻さはやや損ないますけれども、一番わかりやすい簡単なことにさせていただいた、端的に申しますとそういうことでございます。  いろいろ申し上げとうございますが、短くいたします。
  35. 米沢隆

    米沢委員 個別物品税の関係で私が申し上げましたこと、このような三%ぐらいの消費税のときには、少なくとも私が言うぐらいのことの方がベターな選択ではないか、もう自信を持って私は言いたいのでございます。  特にまた、個別物品税で言わねばならぬのは石油諸税の問題ですね。もう私はこれは三回ここで大きな声を出しました。一回目は通産大臣に、二回目は大蔵大臣に。しかし、まだ方向性みたいなものが明示されない、非常にこれが残念でございます。もう言うまでもなく石油諸税は、税込みで十兆円産業の中で三兆二千億という大きな貢献を既に国家にしておる。税抜きの対比をすれば四五、六%も石油は税金を払っておる。財政物資並みですよ、これは。間接税収入のトータルの中でも二〇・九%ぐらいがこの石油諸税の占める割合だ。ここまで国家に貢献しておるにもかかわらず、全然そのあたりが考慮もされないというところが非常に不満の原因なんですね。  例えば石油諸税だって、これはいわば物品税みたいなものですわね、物にかかる税金ですから。ほかのものは、今おっしゃったように一挙に解決するという理想論のもとにすべて個別物品税として三%にする。自動車だけ六%という暫定税率で残りましたが、一挙にやるという理想を貫かれながら、石油だけは、特定財源になっておるのだからといって、みんなやみからやみにほうり出して知らぬ顔だ。もし物品税をそんなきれいな理想論で一挙に三%にするという努力があるならば、幾ら特定財源であるとはいえ、石油諸税の物品税に関するものもやはり下げてやるという努力みたいなものがあってしかるべきだ、私はそう思うのですね。ところがそういうのは、議論があったとは言いますけれども、余り我々にはわかる理屈として伝わってこないのでございます。もしそれを一挙に下げないとするならば、せめて、じゃ石油に対する消費税ぐらいは政策的な軽減税率でもとろうか、非課税にしようか、ゼロ税率にしようかぐらいの検討がもっとあってしかるべきだ。こっちの方はそのまま、こっちの方は丸々という単純併課なんというのは、石油だけなんだ。  その上、御承知のとおりタックス・オン・タックスですね。政府のふれ込みは、消費税というのは累積を排除する形の税金でございますというのがふれ込みでしょう。ところが堂々とタックス・オン・タックスを認めるようなことがまかり通っておる。これはタックス・オン・タックスだけでも、一気にこの場でそれはもうすぐやめますと言うのが当然の話です。それ以後どうするかの議論をしてもらうならいいけれども、タックス・オン・タックスの税金のかけ方まで含めて後でいろいろ検討しますなんというのは、私は絶対に納得できない、そんな話は。  私は、そういう意味でタックス・オン・タックスなんというのは、そんなのは即やめるという議論にしてもらいたいと思うし、もし石油に今かかっておる石油諸税をどうしようもないというならば、石油なんか、非課税ぐらいを選択してやるのが当然だ。もしこっちの方をいじるならば、石油税も調整減税みたいなものが、調整併課みたいなものが考えられるだろう。私は、そのあたりはもう検討が進んで答える段階に来ておらなければいかぬと思うのですよ。どうですか、大蔵大臣かな。
  36. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昨日も二見委員からこのお話がございまして、これは私どもで言いますとちょっと泣きどころのようなところが、実際正直を申すとございますのです、これはよく御承知でございますので率直に申し上げますが。  まずタックス・オン・タックスそのものは、これは酒税でもたばこ税でもございますわけですから、それは私は、いろいろ物品によって説明があるだろう。殊に、それならばしかし調整併課ということがあり得るじゃないか、結果として、片っ方のものを減らしておけばそれで調整ができるじゃないかということの議論になっていく。ただ、この石油のように保税地域から出たときにもう税がついておりますものは、店の方でどの部分税金かということは、区別しろといってもこれは実際上非常に難しい。税額票でもやりますと別でございますが、帳簿でやれば非常に難しいという現実はあるだろうと私は思うのです。ですが、結局そういう現実の難しさがございますと思いますが、考え方の上では何かあり得るだろうというのは、どうも理屈としては絶対あり得ませんとは申し上げにくい。  なぜ併課を調整しなかったかということは、最後のところは結局、これが特定財源になっている、道路であれ空港であれあるいはエネルギー対策であれ、そういうことになっておるという現実と、消費税は一般にほとんど例外なくどこにでもかけさせていただきますという立場との間の問題が結局調整減税という形をとりにくくしたというのが現実なのでございますが、昨日も申し上げましたように、これはやはりこの税のこれからの動向あるいは財政事情、これに関する特定財源の用いられ方等々をいろいろ考えてみる必要があるというふうにただいま思っておる問題でございます。
  37. 米沢隆

    米沢委員 私は、特定財源だから仕方がなかったというよりも、本当に一挙に個別物品税制を解消してすがすがしい姿にしようと思う理想を貫こうとするならば、せめて特定財源だからという議論の前にやはりもっと突っ込んだ議論をしてもらわねばならなかった、こういうことを申し上げ、まず非課税、ゼロ税率みたいなものからもう一回議論をし直してもらいたいと思います。またお尋ねしますから、そのときはよろしく頼みます。  次は、転嫁の問題でございます。  先ほどから議論のありますように、消費税は多段階で累積排除型の税金でございますので、次から次に転嫁が流通段階でうまくいけばいい消費税になるでしょうが、一たんそれが詰まってしまうと、それは消費税ではなくて第二法人税的なものになる。もしそれが弱小企業で、競争が激しくて転嫁できないばかりに利益が薄くなるということであれば、これはまさに死活問題だという意味で、転嫁の問題は重要な論点だと私は思うわけであります。昨年は、売上税のときには転嫁の話は余り関心がなかったといいましょうか、気づかなかったというのでしょうか、問題にならなかったと思いますが、私は今度の消費税議論の過程の中で、転嫁という問題は非常に大きな問題として認識が広がったという気がするのですね。それはやはり死活の問題だからだと思うのです。  そこで、税革法の第十一条には、「消費税の円滑かつ適正な転嫁」ということで「事業者は、消費に広く薄く負担を求めるという消費税の性格にかんがみ、消費税の円滑かつ適正な転嫁が行われるよう努めるものとし、必要と認めるときは、取引の相手方である他の事業者又は消費者にその取引に課せられる消費税の額が明らかとなる措置を講ずるものとする。」「国は、消費税の円滑かつ適正な転嫁に寄与するため、消費税の仕組み等の周知徹底を図る等必要な施策を講ずるよう努めるものとする。」法文の中にこうして書いた努力は認めましょう。同時にまた、国の責任として公正取引委員会の除外例も設けた、それも私は一歩前進だと評価しないわけではありません。しかし、この法文を読んでおる限り、いかにも何か人ごとだという感じがするのですね。みんな事業者がやるのですよ、国の責任はカルテルと周知徹底しかないのですよというような感じがしてならぬのですね。  私はそういうものよりも、事業者も確かに努力をしなければならぬ、当たり前の話でございますが、もっと国は踏み込んで第一義的に責任感じるような法文にしてもらわなければならぬと思うのですよ。それでないと、転嫁というものがうまくいかなかった場合に、実際救われない業界が出てきたときにこれはたまらぬのですよ。事業者責任ですわ、第一義的には事業者努力することですわ、もっとやったらどうでしょうか、うまくいくはずでございますがねなんという調子でやられたんじゃ、これはたまったものじゃないですね。  そういう意味で、一体こんなような姿勢で転嫁というのはスムーズにいくと本当にお考えなんでしょうか、認識を伺いたいと思うのです。
  38. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御指摘のように、私どもいわゆるつじ立ちと申しますか、地方に説明に参りますと、この転嫁の問題がもうほとんどの質問の中心に最近はなってまいりました。それはすなわち、本当に転嫁ができるだろうかということについての事業者側の心配を反映しておるものと思います。お尋ねは当然のことだと思いまして、政府部内におきましても、この問題については公取委員会とも連絡の上で、各省、本当に各省庁挙げまして協力をしていただいております。  まず政府自身でございますが、これは先般閣議でも私は申し上げましたように、六十四年度予算編成に当たりましてこの部分政府の負担については予算上十分な措置を考えるということをみずから申し上げておりますが、また公共事業等の発注に当たりましては、入札価格はいわば裸の価格でお願いをいたしまして、そうしてその上に落札のときにこの消費税分を加える、あらかじめそういうことを明らかにいたしまして入札に参加していただくという制度をとってまいろうと考えております。これはいわば税を負担すべき経済主体としての政府あるいは地方団体の心構えの問題でございます。  次に、地方でおっしゃっておられます地方の方々の転嫁につきましては、昨日も公取委員長から御説明がございましたが、この法律の規定を設けましたほか、公取、独禁法の例外を設けまして、いわば転嫁の方法についての共同行為、価格そのものではございませんが、自分のこの商店街では百円それに三円、そういうやり方でいこう、あるいは正札にみんなそういう表示をしようといったようなことを独禁法の例外にしていただく。しかしこれはもっともっと細かいことがいろいろございまして、そういうことについてのガイドラインも公取との間で御相談をしていただく。  なお、行政を所管しておられる各省、通産省等々各省ございますが、みんな出先において業界団体と非常に細かに接触をしていただいておりまして、この十一条の趣旨が心配なく実現できますように大変な御協力を願っておるところでございます。
  39. 米沢隆

    米沢委員 今度の消費税議論に関連して、転嫁の問題が大変大きな課題だと認識をされ、それなりに政府努力をし始めたということは私は評価をいたします。しかし私は、そういうような努力というものが、まあ転嫁がうまくスムーズに始まればそれは何のことはないのでございますが、少なくとも始まる際、それこそ四、五年はかなりトラブルが多発すると思うのですね。そういうときにやはり一番頼りになるのは法律なんですね。私は、税革法に書かれるこの十一条の書き方が「努めるものとする」とか、あるいは「必要と認めるときは」「消費税の額が明らかとなる措置を講ずる」とか、何でこういう中途半端なことで書いてあるのだろうかと思うのですね。  私は、消費税というものは、消費者からもらうという税金であるならばやはり全額を転嫁しなければならぬと事業者には義務づけをし、消費者はそれを全額払わねばならぬと義務づけするというのが本当は当然の書き方だと思うのですが、何でここはこう簡単に文学的な表現に変わってしまうのでございましょうか。何か理由でもあるのですか。
  40. 水野勝

    水野(勝)政府委員 この点につきましては、税制調査会でも種々議論のあったところでございます。この税の性格からはまさに事業者が転嫁をしていただくという趣旨のものでございますけれども、一方、税制調査会の中におきましては消費者の立場からの御議論ももろもろございまして、消費者としては通常の取引の結果としての税負担、これを負担するということは明らかでございますけれども、両方の、事業者の観点からだけではなくて、消費者の立場も含めた趣旨として明確にしてもらいたい、このような御意見もあったところでございます。それが第一点。  それから、例えば第十一条の一項でございますと、必ず額を明らかにすべきだというふうな書き方をいたしますと、納税者の方々にそれぞれの取引によりまして、それぞれの態様によりまして価格と税額を明らかにするという側面は考えられますが、これを一義的に法律でもって、常に取引に際しまして額を区分して明確に表示しろと、そこまで法文として強制をするということも、また円滑な取引という観点からいたしますと問題があるということ、それが第二点。  そうした理由によりましてこのような条文になっておるところでございますが、先ほど委員も御指摘のように、とにかくこの法律でその趣旨を明らかにするということがまず最大前提で、そのために努力をいたしまして、いろんな局面を兼ね合わせました条文としてこのようなものとして御提案をした次第でございます。
  41. 米沢隆

    米沢委員 まさしく今の御説明は、今度の消費税というのは転嫁がうまくいくかいかぬかわからぬ、消費者に、税金が何ぼあるか、それも言うていいものか言うて悪いものかわからぬ、わけのわからぬものだということを証明するような話しぶりだ、こんなのは。そうじゃないですか。消費者の立場からああだこうだ、事業主の取引の観点からどうだこうだと言われたって、結局スムーズにいかないことを前提にして書いたのだ、これは。そうですね、今の説明を聞いていると。これはスムーズに転嫁できるようにしようという配慮じゃないのだ。そうじゃないの。スムーズにしようと書かれているだけの話だ。まあ政府で今努力されておる、それは見なきゃわかりませんが、しかしどうも説明を聞いておる限りでは、転嫁をうまくやるようにしてあげましょうじゃなくて、転嫁は実際本当のところはうまくいかぬと思いますから、まあうまくいくかもしらぬしうまくいかぬかもしれませんので、適当にこう書いておかざるを得ないのですよという説明にしか聞こえませんね。私は、やはり転嫁がうまくスムーズにいくためには、それなりに消費者は払え、事業者は必ず転嫁しろというぐらいの書き方があってしかるべきだと思うのですよ。  同時に、消費者の立場から見たら、税込みなんてわからぬですね。いや、私の税金は三%なんだろうか、ひょっとしたらたくさん税金がかかり過ぎておるのじゃないか、それは何もわからぬ。そういう消費者の立場を考えるならば、これは逆に外数表示をしろぐらいのことを書いた方が本当は消費者のためじゃないですか。ましてや事業主間の取引みたいなものは、これだけは税抜きだ、税金をこれだけもらいますと伝票には整理することがやはり必要でしょう。もともと今度の税制は、事業主の皆さん方が受け入れやすいようにということで、かなりこれは付加価値税という理想の姿からしたら堕落した姿になったと言われる。そのことがまた、消費税の転嫁という問題に関して、転嫁する方もされる方も不透明なものをつくった、こう言われる。インポボイスを放棄してこの帳簿方式になったのですから、帳簿方式であるとはいえ、せめてインボイス方式に近づくような、転嫁がうまくいけるようなシステムみたいなものをやはり法律の中に書き込んで、でき得る限りインボイスに近いような方式で転嫁をスムーズにさせるということを考えることが、この法律を提案する者の義務だと思うのですよ。答弁願えますか。
  42. 水野勝

    水野(勝)政府委員 おっしゃることはよくわかるわけでございますが、去年御提案申し上げました売上税におきましては、この点を伝票方式と申しますかインボイス方式にする、税額票を御発行いただくということがまた最大の問題点となったという事情もあるわけでございます。また、現在の物品税法におきましては、その第四十二条で、必ず事業者は契約をするときも区分表示をして契約をすべきである、また価格表示は必ず分別して表示しなければならないという規定はございますが、およそそうしたものは取引慣行として実施されていないわけでございます。こうした現実を踏まえながら、しかし御指摘のようなこの税の性格を明確にするということは非常に重要であるということで御提案をし、最小限度とにかくこの税の性格を明示させていただいたということでございます。  それからまた、第二項におきまして、その適正な転嫁のために施策を講ずる努力義務を国にも課しているところでございますので、御趣旨は生かされているというふうに考えておるところでございます。  また、伝票方式と申しますかインボイスにつきましては、税制調査会もこの税の将来の方向につきまして、「今後の消費税の定着とともに、将来は税額別記の書類により控除する方法にしていくことが望ましい。」という提言をいたしておるところでございます。     〔委員長退席、海部委員長代理着席〕
  43. 米沢隆

    米沢委員 法律をつくる場合にも、妥協というのでしょうか、そういうことでこういう法文になったというようにしか聞こえないのでございますが、私は簡素化することが一応の目的であったとしても、少なくともその簡素化が公平を損なうようなものになってはならない、あるいは転嫁あたりもでき得る限りうまくできるようにしてあげようという配慮を法律ににじみ出させるような配慮をしなければならない。私はその意味で、先ほどから何回も言っておりますように、インボイス方式と帳簿方式を比べたらそれなりに長短はありますけれども、転嫁のやり方みたいなものに関しては、転嫁する方も転嫁されて支払う方も不透明になったことはこれは事実ですよ。その事実に着目するならば、インボイスをとらないのですから、それにかわる転嫁しやすい方法論をでき得る限り積み重ねてあげる、国の責任でそのことを考えてあげるということが私は立法者の責任だということを再度申し上げておきたい。今のような答弁では私は全然納得できないということを申し上げておきたいと思います。  それからもう一つ問題なのは、転嫁を国も一生懸命させるようにしました、そしてまた事業者も一生懸命やろうとしました、でもできないというのを一体どうするかということです。  しかし今度の消費税というのは、簡易課税だとかいろいろなのが入りまして、この税金はうまくやったらもうかる人も出てくるのですね。これは消費者から取ってもうかるという税金になる可能性もあるのですよ。これはどうも腑に落ちないですね。だから簡素化と、実際本来の消費税というものの趣旨が貫徹できないような事態になり得るという問題、私はこれはこれから先非常に重大な問題になっていくのだと思いますね。この税金を適用されたがゆえにもうかる業者が出てくるのだから。これはうまくやればもうかるのですから。そういうものは果たして消費税と呼べるのかということですな。そして一方では、消費税を転嫁しようとするにもかかわらず、それも怠惰であってはいけませんよ、まじめに何とかして乗せようとする努力はしてもらわなければいけませんが、あらゆる努力を尽くしても転嫁できないというのは、これはもう消費税ではありませんね。事業者が自分の懐から出さねばならぬという、これは私は消費税と呼ばないと思うのですが、大蔵大臣、どうなんですか。
  44. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この税は消費者に転嫁されるべきものであって、事業者が自分の腹を痛めるという性格のものでは確かにございません。  それから、もうかる者もあるよと言われまして、もうけると言われるとちょっとさようでございますと申しにくうございますが、つまり五億円までの人には、粗利益は二割だということを推定いたしましたときに、それ以上の付加価値があったときには実は二割にとどまるという問題がございます。それをおっしゃっていらっしゃるわけでございますが、制度の精緻さを損なうことは若干あるのはわかっておりますけれども、しかしそれによってなるべく簡素にさせていただきたいという趣旨、これは何とぞ御理解をお願いいたしたいと存じます。
  45. 米沢隆

    米沢委員 よく何回も言いますように、簡素と公平は両立しない。簡素にした結果、もともとこの消費税本来の趣旨を逸脱するような結果にもなりかねない仕組みがたくさんでき上がっておるという、これを消費者の立場から見たら一体どうなるんだろうか。消費税は三%と決まっておるけれども、しかし結果的には三%以上払う消費者が出てくるかもしれない。現にそうかもしれませんね。トータルで三%を消費税として転嫁しようとするでしょうから、この物は競争力が強い、この物は競争力が弱いとなれば、弱い物には余り税金をかけずにこっちの競争力のある物に三%以上かけて、トータルでは売り上げの大体三%を調達する、そういう方法でこれは許されておるのでしょう、大蔵大臣。ある業者が複数の品物を扱う、こっちの方は非常に競争力が強い、こっちの方は弱い。本当はこれはみんなどっちも三%転嫁しなければならぬけれども、こっちは転嫁したら売れなくなるかもしれぬ、そういう意味ではこれは転嫁しない、そのかわり、競争力の高い方は少々価格を上げても買ってくれるものだから税金ぐらいちょっと上乗せしよう、こちらで五%か六%取ろう、こっちはゼロにしよう、合わせてみてうちの売り上げに比したら三%の税金を取る、そういうことは許されるのでしょう。
  46. 水野勝

    水野(勝)政府委員 先ほどの十一条の条文にもございますように、適正な転嫁をお願いするということでございまして、その点は、要するに便乗値上げといったものは御遠慮いただくということでございます。したがいまして、この税の性質として三%をすべて一律にお願いをするということでございますので、そうした極端な価格転嫁の態様といったものは問題であろうかと思うわけでございます。  それからもう一点、三千万の免税点とか五億円の簡易課税の方式を採用させていただいておりますけれども、そうした取引のウエートは、三千万でございますと三%程度、五億円以下でございますと二割弱でございますので、全体の経済の取引の動きをゆがめて、それによって多額のものが先ほどのお話のような結果になる、それはそれほどの大きな規模のものではないというふうに考えておるところでございます。
  47. 米沢隆

    米沢委員 一方では適正な転嫁という形でちょっとうまく工夫があるようなことを言い、一方では一律三%を課してもらわなければ困るんだと言う。そこいらがいいかげんだから僕らは質問しておるわけですよ。実際、業者はそうするんじゃないでしょうか。そんなことをだれがチェックするのですか、一律でなければならぬということを。貫徹できますか、行政として、税務行政として。極端なことは、確かに極端だからそれはけしからぬということになって、またそんなこともしないだろうと思うけれども、少々のことはするんでしょう。そういうものは逆に言ったら、消費者から見たら、税金は三%と聞いておるけれども、実際は五%のものを買う人がおり、こっちには消費税がかかってないものを買う人がおる、こういうアンバランスが出てくることが非常に問題だ。そのことがまた業者間のいろいろなトラブルを起こしていくであろうということにもつながるかもしれない。だから、でき得る限り転嫁はスムーズに行えるように、もっと義務づけることが必要だということを言うておるわけだ。そして、消費者もわかるように、あるいは事業主もわかりやすいように、インボイスを放棄した時点においてはやはりでき得る限りインボイスに近づくような方法論を義務づけていくことが良心だろうということを言っておるということを私は理解してもらいたい、総理。  同時に、いかなる努力をしたとしても転嫁できない、これは、消費税じゃないですから返してもらわねばなりません、こんなのは。もし返してくれるというルールをつくってもらえば、税率は少々動いたってそう文句にならぬかもしれませんね。あらゆる努力をしたにもかかわらず実際は転嫁できない、私はこれは消費税と呼んじゃいけないと思うのですね。そんなのは返してもらわなければいかぬと思いますね。還付しなければならぬ。それがこの消費税の性格だと思うのです。それとも、そういう消費税というのは名ばかりで、何しろもらえばいいんですわということですか。
  48. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御自分でおっしゃっていらっしゃいますように、非常に極端な場合を言っていらっしゃるのではないと思いますけれども、こういうことは私はあり得ると思います。例えば端数計算が――これは仮の例とお聞きくださいませ。例えば交通機関の初乗りの料金とか距離による逓減とか逓増とかいうこと、そのある料金については端数が出てしまう、その端数を取れませんから、長い距離あるいは区画間の調整である程度全体として調整をして三%にせざるを得ないとか、あるいは自動販売機の場合は、大抵問題は解決しておりますが、例えば牛乳を箱で売っておる、この場合にまた端数が出得ることと思います。その場合、その牛乳の製造、発売者は、スーパーへ出しておる牛乳もあるでございましょうから、それとの関係で調整をしてよろしいとか、そういうやむを得ない場合の微調整というものは全体として行われることもやむを得ない、こういうことは場合によってあろうかと存じます。
  49. 米沢隆

    米沢委員 だから、最後の質問だ。転嫁できないものは返してもらいたい。そのルールをつくってもらいたい。どうですか。
  50. 水野勝

    水野(勝)政府委員 今回の制度におきましては、もうほとんど例外品目と申しますか非課税品目をなくするようにいたしまして、しかも税率は三%一本でございますので、今まで成り立っておりますところの取引の秩序といったものが、すべて三%をお願いをするということにおきましては大きくは競争関係が変わる、経済の秩序が変わるわけのものでもございませんので、前回に比べれば、なお一層転嫁の環境はその点改善をされているのではないかということでございます。  したがいまして、そうした点はございますが、政府部内におきましては寄り寄り関係省庁集まりまして、便乗のないように、しかし適正な転嫁が行われるように、それぞれの所管庁におきまして業界とお話をお願いしておるところでございますので、御指摘のような点のないようにいたしたいということでございます。
  51. 米沢隆

    米沢委員 神様じゃありませんから絶対ということは言えない。転嫁できないものが必ずあるだろうと私は思う、絶対ではないかもしれないけれども。そうした場合には自分の懐から払うということになる。これは私は消費税ではないと思う。そういう意味で、引き続き、これはまだ大きな声を出したいと思いますが、ぜひ御検討方をお願いしたいと思うのであります。  もう時間も大体なくなってしまいましたが、最後に、今度の税制改革における増減税の分岐点の話を簡単にしてみたいと思います。  もうこれは、るるいろいろなところで取り上げられております。今度の税制改革について我が党で試算をしましたところ、大体分岐点は三百万前後のところにあります。夫婦子供二人、その標準世帯で年収三百万ぐらいが増減税の大体分岐点です。政府の方は二百七、八十万という計算をされておりましたが、大体そのあたりかもしれませんね。しかし、これもよく数字に出ますように、国税庁が出す民間の給与所得の実態等を見ますと、驚くなかれ年収三百万未満の人が大体半分ぐらいおるのですね。これはやはり驚きですね。今度は二兆七千億も減税超過型で税革法をつくられた、かなりサービスしたという思いが私はひとしおだろうと思います。にもかかわらず、わずか三%の消費税を導入したとしてもこんなに、三百万というのが増減税の分岐点なんですね。年収三百万以下の方々は増税になるというのですよ。  また、ちょうどこのあたりは、きのうも論議がありましたように、生活保護家庭とか母子家庭とか年金生活者にはそれなりにまだ対策の打ちようがありますね。ところが、この三百万以下の年収の皆さん、健全で一生懸命頑張っておる皆さん、しかし、企業に支払い能力がない等で年収が少ない、そこらが直撃を受けるということは、これは非常に問題なんですね。この中でも、例えば年々年収が上がっていくまだ春秋に富む人なら、まだいいかもしれません。ところが、中小企業あたりで平均大体二百五、六十万でしょう。そういう皆さん方は、ほとんどの方が増税になるという世帯になる。これはいかにしてもやはりエアポケットの部分でございまして、そのあたりの対策はいかがなものだろうか、何か本当にないものだろうかと私自身もよく考えるのです。こういう現状に対して一体どう考えるのか。  と同時に、私はこのあたりのエアポケット解消策としては、きのうも取り上げられましたが、やはり退職所得控除だとか、あるいはこれから先、公的年金だけには頼れないとするならば、自分たちで個人年金を積み立てたり企業年金を積み立てていかねばならぬ、その中でやはり加勢してあげるような税制をつくってあげるということが本当は高齢化社会の対策ではないのか。私はこの前の福祉ビジョン等を見させていただきましたけれども、そのあたりの配慮がないから、あんなのはいいかげんだという批判も逆に出てくるわけですね。これから先高齢化社会がやってくる、公的年金だけには頼れないかもしれぬ、じゃ働きながら若いうちから個人年金を積み立てる、企業年金もそういう対策で労働者対策をつくってくれる、そのあたりをやはり所得控除してあげたり、利子や配当を非課税にしてあげたり、そんな配慮こそ本当は高齢化社会のものであり、そして退職後それしかもう、年金と退職金しかないという皆さん方に、そこから税金をわあっと取るのじゃなくて、五十年以来いじってないのでございますから、せめてそこらは今度の税制改革に当たってはさわってあげるというそんな配慮が本当は必要だと思うのですね。大蔵大臣、最後に御答弁いただきたい。
  52. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまのようなところに当たられる方々には、生活保護基準の引き上げ等々いろんな施策を歳出面でも動員いたしまして、そういうことのないように極力努めたいと存じます。  なお、退職所得控除額につきましては、前回の改正から長い時間がたっております。控除額の引き上げを行うべきではないかという御指摘がございますことを承知いたしております。国会におきますそのような御議論を踏まえつつ、十分検討させていただく所存でございます。
  53. 米沢隆

    米沢委員 最後の最後ですが、これは今国会に間に合うのですか。ずっと先の話ですか、今の退職所得控除の話。
  54. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 国会の御意向を踏みまして、できるだけ速やかに検討させていただきます。
  55. 米沢隆

    米沢委員 終わります。
  56. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 これにて米沢隆君の質疑は終了いたしました。  工藤晃君。
  57. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表しまして、まず、私がここで質問に臨むに当たりましての態度を述べたいと思います。  第一に、我が党はこれまで、消費税法案、これは公約違反であり、国会決議違反であり、撤回すべきであり、もしやるというならば国会解散をして信を問えということを強く強く述べてまいりました。  第二に、今やこのリクルート疑惑、広がるところを知らず、底知れぬ深さをあらわしているときに、国民の信頼を取り戻すために何としてもこのリクルートの全容解明こそ国会に課せられた最も重要な課題であり、これを果たしていかなければならない。したがいまして、こういうときに自民党竹下内閣がリクルート疑惑の幕引きを図ったり、消費税法案審議入り、公聴会設定、さらに衆議院での採決を急ぎ、そうして強行しようとする方向をとっていることに強く抗議をあらわしてまいりましたし、今も改めてあらわすものであります。  さて、私は冒頭、リクルート問題について伺いたいと思います。  我が党が十月十一日、ドゥ・ベストリストを発表して以来、政界官界ぐるみともいうべきこの事件の底知れぬ深さ、広がりが次々と明らかになってきております。  リクルートは、一体何をねらって百四十名、二百万株以上という株のばらまきをやってきたのか。  これまで見たところ、第一に、中曽根前首相、藤波官房長官を初め、既に名前が明らかになっただけでも中曽根内閣のときの主要閣僚九名に株が渡っていることであります。政権中枢に及ぶ政権丸ごと買収のねらいありではありませんか。  第二に、竹下、宮澤の歴代人蔵大臣にねらいを向けていると同時に、江副氏みずから政府税調の中に入り、その中でも株をばらまいていることなど、税制改革にも手を伸ばしているねらいが見られること。  第三に、本業である求人情報産業で文部大臣、文部事務次官、労働事務次官などを抱き込むねらいが見られること。  第四に、マンション、土地転がし、リゾート産業などで、そこでの荒稼ぎをねらった株の分配が見られること。  第五に、将来をにらんで先端情報産業に新規参入し、リクルート情報帝国をつくり出すために、電電公社、現NTTに食い込んで最大限利用する、そのため真藤会長を初め役員に株をばらまいている。  これら既に明らかになったことだけでも、ロッキード事件を上回る大疑獄事件の様相をあらわしつつあると言えるのではないでしょうか。その真相、その全容を徹底的に解明し、国民の前に明らかにし、責任を追及することが、総理竹下内閣の最大の今の責務ではないでしょうか。  ところが、竹下総理のこれまでの答弁を伺いましても、違法性がない、単なる経済行為、このように逃げたり、あるいは四つの分類ができるといった何か評論家のお話を聞いているように述べたり、どうもそらぞらしい限りであります。なぜ、みずからの責任総理政治生命をかけて解明すると、その一言がはっきり言えないのでしょうか。なぜ、自分にかかわる事実を含めて進んで明らかにすることとともに、自民党の内部に向かってあるいは各省庁に対して、株をもらった者はみずから名のり出よという呼びかけができないのでしょうか。疑惑にふたをするような態度を改めて、今こそ自浄能力を発揮し、今国民の間に渦巻いている批判にこたえるべきだと思いますが、総理、いかがでしょうか。
  58. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 いつも申し上げますように、私は、四つの点ということが評論家のような表現だとおっしゃいましたが、私なりに正確に分析をいたしまして、四つの角度からこれの対応に対しては心をささぐべきであるということを申しておるところでございます。
  59. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 それでは今までの答弁から一歩も進んでないわけであります。それでは真相解明に対しても決してプラスにはなりません。  さらに言いますと、もっとはっきり言いますと、中曽根政権の中枢を巻き込んだ、ロッキード事件の田中角榮に引き続き総理大臣の犯罪の疑いが深まっているということが言えるのではないでしょうか。中曽根内閣のとき江副氏がなぜ重要なポスト、政府税調あるいは土地臨調の参与、大学審議会の委員あるいは教育課程審議会の委員、この四つのポストを手に入れることができたのか。さらに、リクルートの将来にとって決定的な情報産業の面でNTTに食い込んで、そしてアメリカのクレイ社の大型スーパーコンピューターの導入について、そこで中曽根首相の関与があったのではなかったのでしょうか。なぜ中曽根氏及びその周辺に株の譲渡がずば抜けて多かったのでしょうか。  ロッキード事件のときに国会でも法務省刑事局長として活躍された安原元検事総長は、謝礼にせよ先行投資にせよ、何の見返りも期待しないであれだけの金を動かすことはありませんと述べておりますね。何の見返りも期待しないであれだけの金を動かすなんていうことはありません。そして安原氏は、だから江副さんを国会証人喚問すべきでしょう、それによって政界、マスコミ界に流れた金の趣旨を解明し、国会みずからが政治的、道義的責任を明らかにしなければ社会の公正なルールやモラルは確保できません、特に政界責任は重いと思いますよと述べているのも本当に当然だと思います。  我々は、ロッキード事件体験しております。ロッキード事件国会が果たした役割、あるいはそのときの内閣が取り組んだ姿勢、それと比べていささかも劣ることがあってはいけないわけでありますが、民主主義の根本が問われているこの問題で、先ほどは四つの分類だけのお答えに終わりましたが、もっと積極的に真相解明に取り組むという総理の決意を伺わせていただきたいのであります。
  60. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 せんじ詰めてみれば、四つの範疇の中で究明すべきものであるというふうに私は整理いたしておるところでございます。その範疇の中で精力的な対応をするのは当然であると考えております。
  61. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 四つの範疇からなかなか出ないので、これはさらに我々は追及してまいりますが、ここでは主務大臣として宮澤大臣がおられます。先般弁明発言をされました。その問題につきまして、私自身聞いていてどうしてもわからなかったことが幾つかありますので、改めて伺う次第であります。  第一の点というのは、この報告の決定版と言われるかもしれませんが、そこに至るまでなぜこんなに時間がかかったのかという素朴な質問であります。朝日新聞の横浜支局の記者がこの問題でいろいろ大臣に伺おうとしたのはたしか六月下旬、それから七月、八月、九月、十月と四カ月もたったわけであります。しかも、これはせいぜい二年ぐらい前にさかのぼることであった。しかも、服部恒雄氏がこれにはかんでいたという御説明でありますが、服部さんはただの秘書ではなしに秘書官であります。まさに大臣と一体に、一番身近にいて分身とも言われる方でありますから、こういう問題があったとき、調べようと思えばなぜ直ちに調べ、それが報告されなかったのか。四カ月もかかってやっとここまで至ったというのは、明らかにしようという熱意が極めて薄かったのか、あるいはまた事実をそのまま述べられないので何かあれこれ迷っていたのか、どちらかと考えざるを得ないのですが、なぜこんなに時間がかかったのか。この点いかがでしょうか。
  62. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 当初、全くわからなかったことでございますので、調べるのに多少服部が時間をかけました。その後は、調べまして聞きましたところをその都度御報告申し上げまして、せんだって申し上げました。それ以外につけ加えることはございません。
  63. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 続いて伺いますけれども、それならばなぜ十月以降になって、服部名義での取引でなしに宮澤本人の名義であったと説明を変えられたのか。私たち見たところ、十月十一日に我が党がドゥ・ベストのリストを公表してそこで宮澤本人名が出てきたから、それで変えたのではないか。つまり、新しい事実が突きつけられると初めてこれまで述べたことを修正したとしか見られないということは、全体としては事実を隠し、しかしやんごとない事実が出てくるとその部分だけ修正したとしか考えられないのですが、その点いかがでしょうか。
  64. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点もせんだって申し上げてございます。
  65. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 せんだってどう述べられたのかさっぱりわからないのでありますが、続きまして私の疑問の続きを述べますと、河合氏という第三の男が出てこられまして、そして宮澤さんの名前を借りればコスモス株が手に入るということで、あっという間に二千万円以上もうけて自分の事業に充てたということです。これは個人にとっても極めてドラマチックなもうけ仕事だったと思いますが、そういうことであるにもかかわらず、その河合氏はなぜ、九月三十日、一万株三千万円で買ったということだけは覚えていて、それで自分が訪ねていった相手のお名前はだれか忘れた、これはどう考えてもあり得ない話だと思いますが、どうなんでしょうか。ちなみに言いますと、九月二十日というのはドゥ・ベスト文書に書いてあるからこれだけは事実としてつけ加わったのじゃないかと思いますが、どうして肝心なところは忘れてしまうようなことになったのでしょうか。
  66. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 せんだって御報告申し上げましたことが、私が受けました報告のすべてでございます。
  67. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 結局、答弁いただけないも同様なんですが、しかしミスターⅩから河合さんが株を手に入れたということですが、このミスターⅩは、相手が時の副総理・大蔵大臣宮澤さんだからこの株をぜひお分けしたい、そうだったわけですね。そのミスターⅩ氏のところに今度は河合さんが行って手に入れたわけですが、宮澤さんのお話でも、この河合さんと大臣とは面識はない。もちろん親戚とか親兄弟とかそういう関係でもない。そういう河合さんが、相手が宮澤さんだからぜひこの株をお分けしたいというこのミスターⅩのところへ行って、どうして自分は宮澤本人の代理だと相手を信じさせることができたのでしょうか。通常ならば、直ちにそのミスターXは大臣のところに電話をかけて、こういう人が来たけれども本当かと聞くはずなんですが、これもあり得ない話なんです。何か町の三文判を買っていってそれで取引ができた、これはあり得ないのですが、ここはどう説明されるのでしょうか。
  68. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いろいろ御想像の上でお尋ねでございますけれども、この間申し上げた以外に私の知っていることはございません。
  69. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 御想像でなしに、だれが考えたって、相手が宮澤さんだからぜひお分けしたいというところに、宮澤さんと何にも面識のない、宮澤さんの代理ということを証明することが何にもできない人が行って、そうして一万株ですか、手に入れてきたということは、これはあり得ないことだから聞いているわけなんです。  もう一つだけついでに伺っておきますが、なぜ河合氏は売るときは自分の名義にしないで服部恒雄さんの名義にしたのでしょうか。これにつきまして、宮澤さんの名義にすると相手に借名だったということがわかってしまう。しかしここでは、今度売るときはこのミスターⅩにまた売ったわけじゃないんだと思うのです。証券会社を通じて売りに出したということですから、何の名義にしても直接は借名であることが出てこない。そこでこの河合さんはまた、どうも宮澤さんの名前が出ては御迷惑がかかる、ここまで配慮があったということでありますが、それならば、服部秘書官の名前が出ても同じく宮澤さんに御迷惑がかかるわけでありますから、なぜそのときは河合さんは自分の名前で売らなかったのか、ここもどうしてもわからない点ですが、この点いかがでしょうか。
  70. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それも、河合氏の説明としてせんだって御報告を申し上げたこと以外にございません。
  71. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 以上、幾つか伺いましたけれども、これは私だけでなしに、この前説明されたことをもう一度読み直してみるとだれでもおかしいという点について私は一つ一つ伺ったわけですが、それについてこの前の説明のとおりということは、新たに疑問点に対して説明がなされないということであります。そうだとすると、ともかくあり得ない話が余りにも多過ぎるから私たちは聞いたわけでありますが、しかしどうしても、それならば一番わかりやすい話は何かというと、結局御本人が買ったのではないか、服部名義で売ったのではないかというのがよく広がっている推理でありますが、この方が一番本当らしく聞こえてくるし、私もそう思いますし、それはまた朝日新聞の横浜支局の方が服部秘書官に会ったとき、ほかの政治家の秘書に会ったときとまるで違って、資料を見せられても即座に否定したということとつなげてみるとそういうことになってくるわけでありますが、委員長、これはどうしてもここで、この問題の質問は私は次に移りますけれども、明らかにしていかなければならないことが余りにも多いということですから、当委員会で決めました参考人を一刻も早く呼ぶということに加えまして、我が党が要求してまいりました江副氏を初め一連の要求している人々を証人喚問すべきであります。これは委員長としてぜひ取り計らっていただきたいところであります。どうでしょうか。
  72. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 後刻理事会において御相談し、また委員長にも、その旨お話のあったことをお伝えしておきます。
  73. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 今私は、どこに行きましても、それから新聞の投書欄その他を見ましても、国民の間に大きな怒りの声が渦巻いている、このことをしっかり見なければいけないと思うわけであります。  朝日新聞十月五日の調査を見ましても、消費税反対六五%、賛成一六%。リクルート事件税制改革絡みでの意見として、「まじめに税金を納めるばかばかしさ」三五%、「政治家の倫理感のなさ」二四%、「多額の売却益に税金がかからない腹立たしさ」二二%です。  朝日ばかりという声がありましたので、その後発表された政府外郭団体NIRAの委託で行った「税金オピニオンダイヤル’88を見ましても、政治不信の声が渦巻いております。消費税導入反対四五・八%ですが、すぐにはやってはならない、慎重と言われる意見二五・六%を加えますと、ともかく今すぐやるべきではない、それは七一・四%になります。ここに出されたのは、本当は全部ここで御紹介したいくらいなんでありますが、一、二拾いますと、「税制論議に入る前に政府の態度を正せ。まずリクルート問題に名を連らねた人を公表して、その人たちから税金を取ったりと、国会でやってもらいたい」「リクルート問題等をみても、総理大臣をはじめ、本当に図々しいと思います。自分たちの態度を改めてから改革をすすめるべきです」「自分たちはリクルート問題をみてもわかるように私腹をこやしていながら、国民から税金をとるなんて許せない」というのが先ほどの政府外郭団体のNIRAの委託で行った報告にあり、この報告書があるのであります。まだいっぱいあります。  一口で言って、リクルートコスモス株に群がり、ぬれ手にアワの大もうけで税金を払わない政治家が、消費税で大増税を押しつけるとは何事だ、こういう国民の声に対して率直に、総理、どうお考えになりますか。これが今広がっている声ですよ。どうお考えになりますか。
  74. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 体制側にある者は、あらゆる批判に絶えず謙虚に耳を傾けるべきものである、このように考えます。
  75. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 謙虚に耳を傾けるということは、それに従って実行をすべきであります。  さて、国民の声は、リクルートリクルート税制税制、こういうことはもはや通用しないということであります。第一に、総理、副総理・大蔵大臣、幹事長、自民党政調会長を初め消費税導入など竹下税制改革法案の推進者、この名義はともあれ、コスモス株を譲り受けた疑惑の人になっている。国民に信用しろと言ってもそれは無理だ。第二に、消費税の原案をつくった政府税調もリクル!ト汚染があるのではないか。  コスモス株を譲り受けた中曽根前首相、その人事としての政府税調、元毎日新聞編集局長歌川令三氏がおりました、彼はもうやめましたが。中曽根前首相のイニシアで暴れ馬、その中には江副氏がおられました。それから消費税原案をつくった第三部会の部会長代理の公文氏もおりました。それからまた第三者割り当てを受けたウシオ電機の牛尾氏もおりました。どうも税制改革案づくりのところからこのリクルート問題が絡んできていると見ざるを得ませんが、ここで私は、この江副、公文、牛尾の三氏がエコノミスト八五年十二月十七日号で「”暴れ馬”座談会」をやっている、この暴れ馬の皆さんがどんな発想で新しい税を提案したのか、述べてみたいと思います。  「中曽根首相は十人の”暴れ馬”を特別委員に任命した。三人の”暴れ馬”に集まっていただき、税制改革の方向を議論してもらった。」これがエコノミストのコピーであります。それで江副氏が言うには、「いま一億中流意識ということがいわれていますが、言葉を換えれば、一億高額所得者になりつつあるといいましょうか。」公文氏が、「逆進というのは、それはほんとうに貧しい時代の話であって、」つまり逆進性ですね、収入の少ない者ほど税金を重くする、そういう逆進はそういう時代の話であって、「豊かな社会は基本的に大衆課税であるのがあたりまえだと思うのです。」だから大型間接税というのですね。それで、牛尾氏が続いて何と言っているかといいますと、余り所得に対する「捕捉率を高くしようと思うと、実に住みにくい社会になる。アメリカみたいに捕捉のおおらかな国が横にある。だから、きわどい人はみなあっちへ行ってしまうということにもなる。」「活力があって、すごくやる気のある人のうちの半分ぐらいはきわどい人が多いんですね。その人が全部いなくなっちゃうと、国は非常に秩序正しくなるんだけれども、なんとなく競争力が落ちるというところがあるんですよ。あんまり整然たる社会にすると、魚棲まずというところがあるんですね。そういう意味では、間接税はやりやすい方法だ。」  いいですか、この三人の暴れ馬が言うには、今や一億高額所得者になりつつある、豊かな社会だ、逆進なんて問題になるか、基本的には大衆課税が当たり前だ、こういうことを言っております。自分たちだけはぬれ手でアワで税金を納めないくせに、今や大衆課税が当たり前だ、大型間接税だとおっしゃっております。さらに、活力があってごくやる気のある人のうち半分ぐらいは際どい人――際どい人というのはどういう人なんでしょうか、江副さんがそばにいたからそんな感じがしたのかもしれませんが、所得の捕捉率を高くすると際どい人がアメリカへ逃げていってしまう、国は秩序正しくなるけれども競争力が落ちる、だからそういうことはやめて間接税にしましょう。  こういう意見ですが、今や一億高所得者時代だから大衆課税がいいんだというこの意見、あるいはまた、際どい人が日本経済を支えているから、所得税の捕捉率なんか厳しいことをしないで、そうして大型間接税にしよう、政府税調でこういう議論がされたと判断せざるを得ないわけですが、今私が紹介したこの三人の意見について、大蔵大臣どんな、まことにそうだというお感じでしょうか、それともこれは違うぞというお感じでしょうか。
  76. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 前、後よく読みませんとわかりませんので、批評いたしかねます。
  77. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 私は、都合のいいところも悪いところも、ここに持ってきたものでそのとおり引用したことでございます。ですから、際どい人はアメリカへ逃げてしまうと困るから所得税を厳しくしないで大型間接税にしようとか、こういう意見が少なくとも政府税調の中でこの主要な三人が述べられたと判断できる事実がここに残っているわけであります。そして、さっき言いましたように、これを任命された中曽根首相は株を受け取っている。そして江副氏が入って、公文氏や牛尾氏の方に株をばらまいている。そしてどういう議論をやっているかと思うと、まさにこういう国民から見ればふざけたことを言うなというような議論をやっているわけであります。  こういう意見が税調の中に入り込んだという事実があることも含めまして、税制改革案をつくられる過程そのものにこういうリクルートの汚染が入り込んだと見ざるを得ないし、その意味からいっても、国民がまた、今やるのはリクルートの解明だ、税制改革なんか今やるときじゃないと言っているそれにこたえる意味からいっても、それこそ今の竹下税制改革案は白紙撤回すべきだと私は思いますが、総理、いかがでしょうか。
  78. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 税制改革をしようということで、国会の召集を申し上げ、そうして御提案申し上げておるわけでございますから、撤回の考えはありません。
  79. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 その答弁が、いかに今の国民の願い、感情から離れているかということを御指摘しまして、次に、問題の消費税の問題に入ってまいります。  あらゆるものが課税対象になってしまうのではないだろうか。売上税のときは、政府は、飲食料品初め五十一の非課税取引があるから、課税分野の割合は家計の消費支出の四割程度になると説明しました。四割ぐらいだと言いました。消費税は、家計の消費支出の一体何割ぐらいになるのでしょうか、お答えください。
  80. 水野勝

    水野(勝)政府委員 一割程度かと思います。
  81. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 今、聞こえなかった。一割程度と言ったの。
  82. 水野勝

    水野(勝)政府委員 失礼しました。逆の数字を申し上げたわけでございます。一割強が課税対象外、その他の部分が課税対象ということでございます。
  83. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 要するに九割ということであります。家計の消費支出の九割にかけられる、このことはこれまでなかなか明らかにされてこなかったのですが、きょう私、初めて伺いました。  大蔵省が出した資料によりますと、あらゆるものに税金がかけられるということは、ちょっと述べますと、売上税と比べて、飲食料品、それからマイホームを買う、建築をする、それにかかる、借家の家賃にかかる、医薬品にかかる、医療用具にかかる、お産にかかる、予防接種、予防注射、健康診断にかかる、保育所と助産施設を除く第二種福祉事業にかかる、在宅福祉にかかる、障害者の車いす、点字タイプライターなど障害者用物品にかかる、福祉電話、障害者使用電話料にかかる、鉄道、バス、タクシー、宅配便などにかかるし、旅客定期航路、離島の航空路線にもかかる、教科書、新聞、テレビ、国が企画した催し物や文化財公開の入場料、中古車にかかる。家計のほとんどあらゆるものが課税対象になるのではないかということであります。  かからないものを探すのが大変だという声のとおり、まさに家計のすべてにかけるわけでありますが、大蔵大臣、本来税金をかけてはならない母子世帯、老人世帯あるいは貧困世帯に対して、それこそ食料品から水道、電気、ガス、家賃、交通費、電話料金、公共料金のすべてにわたって税金をかけることになるということを、もう一度ここで確認していただきたいと思います。
  84. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そのような世帯の方々につきましては、十分な配慮を歳出面でいたしてまいりますし、これからもいたすつもりでございます。  この消費税は、医療、社会福祉、それから教育の一部につきまして非課税でございますが、その他につきましては原則として課税ということでございます。
  85. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 いろいろ政策によってというのは、私の後の質問の方でただすことにしますけれども、今ともかく母子世帯、老人世帯であってもすべてにかかるということが確認されたんだと思います。  もともと、税制をどうするか議論するときに一番重要な前提は何でしょうか。今国民の所得がどうなっているのか、所得の多い人、少ない人、所得の全体の分布が一体どうなっているのか、このことをまず実証的に研究した資料を用意して、それで今こうなっているからこの税金をかけるとこういう影響が出てくるということをまず調べなければならない。しかし、この問題につきまして先回私が質問しましたときに大きな疑問を投げかけ、また批判も行いました。  それは厚生省の行っている収入調査、所得再分配調査によりますと、一九八四年、全世帯を収入の少ない世帯から多い世帯に五つのグループに分けます。二〇%ずつ分けます。年金など公的給付を受ける前の当初所得では、一番高いところは一番低いところの十三・一倍という開きがある。年金など公的給付を含めての現金収入で見ると、一番高いところが一番低いところの七・二倍である。非常に大きな格差であります。アメリカの収入調査は、九・一倍という格差を指摘しております。これは八四年の数字であります。  さらに、この問題に続きまして、六〇年代以降の傾向として、厚生省の収入調査によりますと、七五年に一つのピークがあらわれます。オイルショックのときです。これが八・八倍ですが、八四年はさらにピークをつくって十三・一倍となっている。したがって、大蔵省がこれまで宣伝してきたところの平準化という格差が縮まっていく傾向ではなしに拡大する傾向にあるのではないか、この事実が明らかになってきたわけであります。  そこで、もう一度ここで確認しておきたいのは、前回質問したことですからもう繰り返しませんけれども、大蔵省が家計調査を使って、勤労者世帯を使って、収入の高いところが入ってこない、それから収入の低いところも入ってこないこの調査で、いかにも今の収入の格差がわかるかのようなことを言ってアメリカの方の収入調査と直接比較するのは、統計としてもこれはやり方が間違っているということをこの前は確認されたと思いますが、この点が一つ。  それから宮澤大臣は、これは会議録にもありますが、我が国がこの何年間か経済が非常に難しく、多少逆の方向、つまり拡大の方向に行ったかもしれないという感じがしますが、ともかく政策目標としては平準化にしたいものだということも認められましたが、このことを改めてここで認められていただきたいと思います。
  86. 水野勝

    水野(勝)政府委員 前段の点につきまして申し述べたいと思います。  前回も申し上げましたように、戦後シャウプ税制以来の抜本的な改革をいたしたい、そのためにはデータといたしましても、その時代からの連続性のあるものとしての家計調査を使わしていただいているということで、前回も申し上げたところでございます。
  87. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 二回目の石油危機がありましてから後最近まで、非常に雇用の不安がございましたので、長い間の平準化、格差の縮小という傾向に一時停滞あるいは多少の後退が見られたということは事実と存じますけれども、現在雇用状況も回復いたしております。これからはまた今までのそういう長い間の傾向線に戻っていくものと考えております。
  88. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 私は、さっき二つ聞いたのですね。収入調査でない家計調査で、一番お金持ちとそれから収入の少ない人を除いた調査で、それで日本の貧富の格差がどうだなんという勝手なことを言ってアメリカの収入調査と比較するのはおかしいですね、おやめなさいと言って、この前は認めざるを得なかったんだと思いますが、先ほど水野主税局長は全然それは言われなくて、専ら言ったのは、家計調査というのは昭和二十六年からある。たしかそこから始まっているのですよ。これはつながりがあるからこれを続けるんだと言うのですが、今問題にしているのは、それこそ収入の高いところと低いところはどれだけ開いているか。それをその調査にもならない家計調査で幾らつなげてみたって何にもならないじゃないですか、何を答えているんだということになりますよ。  それからもう一つ、これはもし統計をよく勉強された方ならだれでも知っていることなんですが、昭和二十六年、二十七年の家計調査、ちょうどスタートを切ったばかりです。あのときの調査というのは、その後点検してみると非常に不十分で、調査漏れが多く、アンダーレポーティングです。それで、あれは余り今は使い物にならないというのが専門家の意見になっており、これは前回も私述べましたけれども、経済企画庁の中で、国民生活研究所の中で一貫して国民の所得や生活の状況を調べてこられましたこの問題でも第一人者の石崎氏が書いていることであります。  そういうことで、シャウプ税制のときというのはどうかというと、むしろ財閥解体があって土地改革が行われて、そして労働組合運動が盛んになるような時期で、この格差が縮まったとき、これは石崎さんも指摘しております。そして、その後五〇年代は格差が広がり、それから六〇年代、確かに少し緩む時期がありますが、また広がるということであります。したがって、一貫してなどということは言えないし、そういう長年のことを言うならば、なぜ本格的な統計に基づいて言わないかということですが、この点につきましてはここではおきます。  私がはっきりここで伺いたいところは、先ほど言いました厚生省の所得再分配調査で私が示しましたように、現金収入が一番低い二〇%の世帯は百三十三万三千円、それから高い二〇%の世帯が九百六十五万四千円、七・二倍ですが、それぞれ消費税の負担はどうなるのでしょうか、どのくらいになるのでしょうか。こういう検討はされましたでしょうか。これはきのう質問を求めておきました。     〔海部委員長代理退席、羽田委員長代理着席〕
  89. 水野勝

    水野(勝)政府委員 御指摘の数字は収入なり所得の数字でございますので、私どものこの消費税からまいりますと、消費支出につきましての御負担でございますと算定をできるわけでございますけれども、所得、収入、そうしたものからは直にここで申し上げられるような数字としてなかなか申し上げにくいところでございます。
  90. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 これは重大なんだな。新税を出して、それが収入の少ない人たち、それから中間の人たち、それから多い人たちにどういう負担をかけるか、これはまさにそれぞれの所得に対してどれだけ負担をかけるのかということが問われているのに、その資料さえも用意してない、検討さえもしてない。それでこの法案を出して審議して、そしてどうのこうの、これはおかしいじゃないですか。なぜそういう基本的なことをやらなかったのですか。手順としてもおかしいと思います。これは重大問題です。
  91. 水野勝

    水野(勝)政府委員 そういった面の分析、数字につきましては、ライフサイクルに応じました負担率の調査、収入の五分位別の負担の調査、もろもろの側面からのものを私どもなりにいろいろ検討してお出しし、御検討を願っているところでございます。
  92. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 この税金が逆進性ということ、これは総理も認められますね。逆進性というのは所得に対してでしょう。低い人の負担が重い、高い人が軽い、だから逆進性だ。ところが、このいかに逆進性であるかという調査はやってない、こういうことなんですよ。だから重大だと言っているわけなんですが、それならば仕方がないので、私の方で計算したものをちょっと述べます。  第一・五分位、年収百三十三万三千円は現金収入の約九〇%が消費支出に回る、それから第五・五分位の九百六十五万四千円は約五五%が回る、こういうふうに見られます。それから、先ほど主税局長も認められましたように、消費支出の約九割が課税対象になりますから、第一・五分位は三万二千円、現金収入の二・四%、第五・五分位は十四万三千円、現金収入の一・五%。収入が一番少ない二〇%の世帯と比べて一番多い二〇%の世帯、収入は七・二倍も多いわけでありますが、その少ない方が税の負担率では、二・四%と一・五%ですから、高い方と比べて一・六倍も重い。これはもう大変な逆進性と言えるのではないですか。  だから、総理はこれまで所信表明やあるいはまた税制改革法案でも公平という言葉を大変多く使われましたけれども、母子世帯、老人世帯、非常に生活の苦しい世帯に対して家計費のすべてにかけるような消費税、しかもこの低い層の方が高い層と比べて税負担が一・六倍も重いような、そういう驚くべき逆進的な税制をなぜ公平と呼ぶのか。それともこの税制は本来公平じゃないのだ、ほかの施策で何とかするのだ、その辺のけじめをぜひはっきりさせていただきたいと思います。
  93. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私がいつも申し上げておりますことは、ちょうど昭和二十三年、取引高税が議論されたときの速記録にも、今おっしゃったと同じ議論が行われておるのでございます。ただ、そのときは百万長者という言葉が使ってありますが、今ではちょっと、百万長者と言えばみんなが百万長者かな、こういう感じもいたしますが、その取引高税、一%でございますけれども、そのときの議論にもございます。  が、いわゆる逆進性というものは、私はいつも否定しておるわけではございません。ある意味において逆進的であるという面があることは否定できない、こう申しております。ただ、要するに公平という問題については、別の意味における公平というのは、いわゆる所得に応ずる、能力に応じた応能主義的なものと消費の多寡に応ずるところの公平さというものは、消費税というものにはまた理論的に存在しておるということも私は言えると思うのであります。  がしかし、今おっしゃいました、そこでそうした問題については財政面でいろいろなことを言ってきたじゃないか、申されたとおりであります。配慮しておる点、六つの懸念から七つの懸念になり八つの懸念にとなっておるわけでございますが、まず最初に申しましたのが、消費税の税率を極力抑制して三%、そういうことを配慮したということが一つ。二番目には、消費税の非課税取引について、広く薄く公平という基本的考えを踏まえつつ、医療や福祉等の分野を非課税にした、こういうことが二つ目。三つ目が、これは今工藤委員のおっしゃった範囲にはあるいは入っておらぬかもしれませんが、大幅な所得税減税等によって中堅所得者を中心に税負担の軽減を行うとともに、各種控除の引き上げにより課税最低限の引き上げを行っておる、これが三つ目。それから四つ目が、消費税の導入に伴い物価への影響が生じる場合は、生活保護、在宅福祉等に手を差し伸べるべき人々に対して、施策については適切な配慮をする。これが財政上とあるいは他の税目によって、この逆進性というものに対する対応する施策だというふうなことを御答弁申し上げておるところでございます。
  94. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 ともかく逆進性は認められました。そして、その他のもろもろのことをやるということを述べられましたが、それはまたこの後私が伺っていきたいと思います。  一つだけ申し上げておきますが、所得が高い者が税金をより高い率で払う、こういうことと、何か消費が、同じ卵を食べたら金持ちも貧乏人もみんな何%払え、こういう水平がある、これは成り立たないのですね。これは学説でも何でもないのです。私は別にマルクスやレーニンの財政学で言っているのではなしに、大蔵省に大学を出てお入りになる方ならばだれでも勉強してこられるマスグレイブの財政学などを読んで、まず、等しい状態の人、等しい所得の人に等しい税金の負担、これが水平的公平で、しかしこの水平的公平と垂直的公平というのは同じ金貨の両面で、こういう同じ所得の人に同じにかけるということは、同時に違う所得の人には違う割合でかけるというこの垂直公平が必ずなければいけないというのであって、あくまで所得というものを中心にして公平を論じている、これはもう常識なのであります。垂直も水平も一体のものなのです。ですから、さっき言いました収入が一番少ない方が一番高いところと比べて一・六倍も税負担をするというのはどこが公平か。どこも公平じゃない。全く不公平なのです。それだからこそ、我々は最悪の不公平税制だと言っているのです。  そこで、今の総理のお話とも絡みますが、生活保護の問題について承りたいと思います。  生活保護の給付をどうかして、貧しい人たち、一番困っている人たちにも消費税の税負担がかかるけれども何とかなるのではないか、中和できるのではないか、こういうことでありますが、今の政府の生活保護行政でそういうことが期待できるだろうか。  それで、具体的に私が聞きたいのは、これは二月のことでありますが、この衆議院の予算委員会におきまして我が党の正森成二議員が伺った一つの問題がありますが、荒川区で八七年十月に起きた、七十八歳の婦人が、生活保護の辞退届という形で無理やり打ち切られて、そして福祉事務所に対して抗議の遺書を残して自殺された事件、ここでも取り上げられました。「福祉は人を助けるのでしょうか。苦しめるためのところでしょうか。生き抜く瀬も何もなくなりました。」と遺書にあったわけであります。  これは、これまで政府が、実施要領百二十三号通知の締めつけや、八五年度国庫補助率八割から七割への切り下げとともに、生活保護切り捨て、申請用紙すら渡さぬような水際作戦を全国的に強めたことの中であらわれた痛ましい事件ではないでしょうか。このことについて厚生省としてはどこまで真剣に反省されたでしょうか、伺いたいわけであります。
  95. 小林功典

    ○小林(功)政府委員 ただいま荒川のケースをおっしゃいましたので、私どもでもこれを調べておりますので、ちょっと御説明させていただきます。  荒川のケースにつきましては、実は東京都の監察医務院の死体検案書を読みますと、これは自殺ではなくて、直接の死因は冠状動脈硬化症による病死というふうに推定されております。それはそれといたしまして、確かに遺書も四通残されておりました。今先生がおっしゃったのは、恐らく共産党の区会議員に対する遺書ではなかったかと思いますが、それは我々存じません。あと三通ございまして、それにつきまして見てみますと、いずれも迷惑をかけたことへのおわびとお世話になったことに対する謝意ということに尽きておりまして、決して福祉事務所に対する非難めいたものは一切ございませんでした。これは事実でございます。  いずれにしましても、私どもは、この生活保護というものが国民の最低生活を保障する非常に大事なものでございますし、かつ、それが財源はすべて税金で賄われるものでございます。したがいまして、適用するかどうかという判断に当たりましてはやはり慎重にかつ適切にやらなければならない、これは当然のことだと思います。その点について我々は十分注意しておりますが、今のケースにつきましてはそういうことでございます。
  96. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 遺書は残してある、遺書は残してあるけれども自殺ではなかった。では、自殺ではなくて何か病死だ。生活保護を打ち切られて、仮に病死して死に至った、これだけでも大変な問題ではありませんか。ましてや遺書まで用意している、こういう問題である。  もう一つ、荒川区には大変重大な問題がありますよ。荒川区でこの事件が起きる前に、昭和六十二年度東京都指導検査講評というのをやっております。私たち、その文書を見ておりますが、この荒川区の生活保護行政がどういうぐあいで、その中でこの事件が起きたのか、ここからもわかります。ここで東京都はこう言っているのですよ。「本来なら、保護が受けられるような人についても申請が受理されていない。あるいは、取り下げという形で保護開始に至っていないケースが、記録を見た中で散見される。」東京都が見ても、荒川区は受け付けてない、それからやめさせている。相談件数が、八四年度を一〇〇として八六年度七五・一に下がっているのです。しかも、相談に来た人に相談のみの処理、つまり申請の受理をしないわけですね。八四年度二六・二%が八五年度三〇・八%、八六年度四〇・八%に上がっていっている。つまり、相談にも行けないような状態にして、来ても受け付けないということを東京都が批判しているわけであります。そうして申請受理は、八四年度四五・三%、八六年度三二・四%に下がっている。開始件数は、八四年度を一〇〇として八六年度五六・七に下がっている。これは重大だ。東京都も、この荒川区のやり方は認められない、どんどん切り捨てをやっている、その批判を行っているときに、一つ重大な問題があります。  厚生省の方は、この荒川区のやり方の方がいいということを東京都に認めるという圧力をかけている事実を私は聞いております。こういうことがあったのかどうか、どうしているのか、これは厚生大臣に伺いたいと思います。
  97. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 私ども、そういうようなことは決してしてないと思っておりますが、今初めて承ったことでございますので、十分に調査してみたいと思います。
  98. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 この事実は、厚生大臣、ぜひ調べて、改めることは改めなければいけないと思います。  さらに、札幌市白石区で八七年一月二十二日、一人の婦人が三人の子供を残して餓死した事件、これも正森議員が取り上げられましたが、これはこの婦人自身が福祉事務所に行ったところが、九年前に離婚された、その九年前別れた亭主のところに行って金がもらえるかどうか聞いてこいとか、あるいはこの書類を持ってこいとか、若いんだから働けとか、そういうことをさんざん言われるものだから、とうとう怖くて行けなくなったと言って、そのお友達の人が何度も福祉事務所に何とかしなければいかぬと言いながら、こういうことが起きたわけであります。  これは今政府が進めている水際作戦、つまり福祉事務所の窓口で申請用紙さえ渡さずに追い返すのはいいやり方なんだという、その中で起きたことであり、これは荒川区の事件ともつながるわけでありますが、これが決して偶然でないというのは、この問題が札幌でも、札幌テレビ「TODAY 福祉の谷間で……母親餓死の背景」というので流されたときに、約三百本の電話がずっと鳴り続けたということであります。  これを一、二紹介しますと、「四四歳の女の人です。生活保護の相談に行ったら、いきなり働けと言われ、頭から申請をはねつけられたそうです。言葉遣いが悪く、他人のことを呼びすてできます。」「保護の申請に行っても、兄弟がいるではないか、働けるではないかとか、その都度違うことを言って何か月も引きのばしているんですとの訴え」、こういうことがもう数々、三百本も出てきたわけであります。こういう事件は、まさに今政府が生活保護の打ち切り、そういうことをやって申請用紙さえも渡さないようなこういうやり方、東京都が検査に入ってみても余りにもこういうのはひどいというやり方が政府によって支持されているような、こういうことから起きていることは明らかでありますし、それはもう現に生活保護予算の補助率が七割にカットされ、そうして千世帯当たりの保護率が八〇年度二一・一、それが八六年には一九・九と劇的に下げられてしまっている、そうして結局生活保護の予算は最近は五百億円も使い残しが出る、地方でも出るというようなことになっているわけです。  総理にぜひ伺いたいのは、生活保護で中和させるとかそういうことを言われますけれども、なるほど給付を少し上げるというようなお考えなのかもしれないけれども、窓口で受け付けないで、それから受けている人も働け働けと言って打ち切らせるようなことをやっていながら、これでは窓口で追い返された人にどうやって生活保護の方で消費税の重い負担がかかってくるのを中和できるのでしょうか、そこのところをどう考えるのでしょうか、それとも抜本的に今言われているような非常に非人道的な非人間的なやり方を大きく改めるという決意がおありなんでしょうか、それこそ伺わせていただきたいと思います。
  99. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 基本的に申しますと、先ほど申しましたようにこれは予算編成上対応すべき問題である、いわゆる給付額の問題はそうであろうと思います。が、お互いが疑問に思っておるのは、地域別に見ますと、ある地域は千人当たり四十人、ある地域は千人当たり四人以下と十倍も違う。そうすると、国民の皆様方の税を使って給付する場合、それが、いい言葉じゃございませんけれども、不正給付という感じのものがあってはならぬというところに行政というものの峻別さが当然あるべきであろうと思うわけであります。その行政の峻別さの中に今御指摘のような問題があるといたしましたならば、これらに対してはやはり適切な対応をすべき課題である、このように思っておる次第であります。消費税そのものとの関係については、私は直接その問題とは別の問題だというふうに考えております。
  100. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 今のどんどん切り捨てていくやり方が、何か切り捨てられた人がみんな不正給付であるかのような発言は絶対認められません。これは正していただきたい。どういう根拠でそういうことを言うのですか。絶対にそういうことはない。いいですか、このことは重大な問題だ。現に今福祉がこんなに冷たくなった、福祉事務所に行くのが恐ろしくなった、これは全国どこでも聞かれることなんですよ。そういうことをしておいて、それで消費税をさらにかけて、その上何か生活保護行政で中和できる。中和できようがないじゃありませんか。しかし、この問題につきましてはさらに私たち問題にしていきますが、老後保障の問題についても少し伺いたいと思います。  労働省に伺います。  「勤労者の老後生活安定対策研究会報告書」というのがありますが、お年奇り夫婦二人の家族の希望生計費が月二十二万円である。それから税金や社会保険料などがありますから、このぐらいの生活はしたいなという生活は二十五万円の収入がなければならない。しかし、現にお年寄りの世帯で二十五万円に達しているのは全体の四分の一にすぎないということでありますし、また、この調査によりますと、厚生年金がそのとき男子平均月十四万円、こうやって月二十二万円の生活に達するには一体どのようにしたらいいのか、そこの研究会ではどのようなお考えを出したんでしょうか。
  101. 甘粕啓介

    ○甘粕政府委員 今お尋ねの問題につきましては、六十二年五月に老後の安定と充実を求めるという研究会から御報告をいただいたものでございます。  今先生からお話がありましたように、希望生計費等が約二十五万円で、現在の六十年度の厚生年金の受給額が月平均十四万円、これが四十年加入のモデル年金額の場合ですと十八・五万円でございますが、それぞれの場合の不足額十一万円あるいは六・五万円、これにつきましては、これを終身年金で受け取るというふうに六十五歳から仮定しました場合には、十四万円の場合には約一千五百万円、それから年金受給額が十八・五万円の場合には約九百万円が必要である。そのために、言ってみますと、対応といたしましては一つは若いときからの財産形成等によります貯蓄の問題あるいは退職金につきましての充実等が挙げられているところでございます。
  102. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 今のはちょっとわかりにくかったようですが、私は本文を読んでまいりましたので別にこれ以上伺いませんけれども、要するに四分の三の人たちはとてもその収入は手に届かない。そうすると、この報告書は、六十五歳までしっかり働くということを前提にして、そのとき千五百万円ぐらいの貯蓄がなければいけない。しかし、調査すればとてもそういう状態でないということがおわかりいただけますし、また退職金も中小企業など非常に少ないし、全体平均しても退職金がそこに至らないということから、今のこういう政府の状態からいっても老後の保障が極めて不十分であるというところへもってきてこの消費税がかかってくるということ、どうしてそのことで中和ができるとかそういうことが言えるのでしょうか。  ついでに、時間の関係もありますが、建設省に、公営住宅、公団住宅、公社住宅などの家賃がこの十年ぐらいの間でどのくらいふえたのか、答弁していただきたいと思います。
  103. 伊藤茂

    伊藤(茂)政府委員 お答えします。  新規に建てられましてその年に供給をされるということで、年度ベースで管理開始住宅の全国平均値でございます。第二種公営住宅の家賃は、五十三年度に二万六千四百円、六十二年度に四万三百円でございます。第二種公営住宅は、五十三年度一万七千三百円、六十二年度が二万六千百円、それから公団賃貸住宅でございますが、五十三年度四万三千三百円、六十二年度七万五千四百円、公社賃貸住宅は、五十二年度三万二千二百円、六十一年度六万五千二百五十円となっております。
  104. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 これはざっと六十一年度を五十二年度と比べますと、公営住宅が六六%、公団住宅が九八%、公社住宅が一〇三%上がっている。今どの公共住宅でも問題になっているのは、住んでおられる方の高齢化が進んで、それにもかかわらず家賃がどんどん引き上げられる、こういう状況がある。  そこで、加えて私は、老人ホームの利用料がこのところどうなっているのかについても伺いたいと思いますが、これは老人福祉施設の一人当たり費用徴収額でよろしいわけですが、五十五年度を一〇〇として六十三年度幾らになっているでしょうか。
  105. 多田宏

    ○多田政府委員 老人福祉施設、特別養護老人ホームと養護老人ホームを合わせまして平均した数字でございますが、五十五年で費用徴収額一人当たり四万八千円、これに対しまして六十三年度は二十三万一千円でございます。
  106. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 結局一〇〇として示すと四七五、約五倍になっているのですね。そして特に養護老人ホームの場合ですと二万四千円が十三万二千円ですが、入所者の場合一万二千円が十万八千円になる。それから特養の場合も、入所者の場合は三万六千円が十九万二千円になる。つまり入所者からいうと、養護老人ホームは九倍、それから特養の場合は五・三倍、大変な引き上げでありまして、男の人で月十三万円の厚生年金を受け取っていても、八万円は取られてしまって五万円残るだけ、婦人の方は厚生年金四万円と少しですから、手取り残るのは二万円ぐらいだ。そして年金の上がり方が遅くて、この引き上げが最高で一万円、一万円というふうに引き上げられている。これが、もうこれは言うまでもないことでありますが、こういう施設に対する国の負担率を切り下げたのと並行して進んでいるということが事実なのであります。  ですから、私がこの問題で最後締めくくって言いたいのは、さっきの生活保護というのは国の福祉としては最低の福祉で、ある意味では国の福祉を見る物差しにもなる。その点で今こういう切り捨てが行われている。それから、一番老後対策ということが言われながらも、実は住んでいる住宅もそれから医療費も上げられる、あるいは老人ホームも引き上げられるという、本当にそういう状態に追い詰められていっているところに加えてこの消費税が導入され、さっき言ったように生計費の九割にかかるとすれば、これが一体どんな重い打撃になるのか、これを中和できるというふうなことが言えるのだろうか、この点については総理の御意見を承りたいと思います。
  107. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 生活保護は、これは生存権の最低保障、こういう感覚は私も等しくいたしております。先ほど来申し上げておりますように、いわゆる消費税の持つ逆進性の部分に対する懸念に対する財政上の措置については、私は中和できるものであるというふうに考えております。
  108. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 これだけ言って、中和できるということをあくまで言われるわけなので、もう一点伺いたいと思いますが、竹下内閣の今度の税制改革のやり方は、それからまた内容は、レーガン政権のところでやった八四年の税制改革の進め方、内容と比べても、私は随分違うように思うわけでありますが、アメリカの税制改革では付加価値税の導入を否定しましたね、連邦税として。どういう理由で否定したのか、どういう検討の結果否定したのか、これはよく国際的な流れであるとか言われているだけに、この点は答えていただきたいと思います。これは大臣、答えられますか。
  109. 水野勝

    水野(勝)政府委員 幾つかの点を挙げておるようでございます。おおむね総理から申し述べております懸念、こうしたものと同じようなものでございます。第一点は、大きな政府につながる心配がある。第二点は、恐らくこれは逆進性の話だと思いますが、税負担が低所得グループに移動する。その次は、物価を上げるのではないか。それからその次は、日本とやや事情が異なるわけでございますが、州それから市町村と申しますか、地方政府に既に幅広い間接税がある、それとの調整が大きな問題だ、このような点を挙げておるようでございます。
  110. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 州税との関係でいいますと、今米国では売上税というのがいかに不公平であるかというので撤廃運動が非常に広がっている。そういう状況の中でこういう問題が検討されたということが一つでありますが、私がはっきりさせなければいけないのは、アメリカの税制改革案、三冊の本から成っておりますが、その中で第三が付加価値税ということになっております。この付加価値税の検討だけで百数十ページにわたっておりますが、その検討の仕方が竹下内閣と著しく違うのではないか、そういうことなんです。  それはどういうことかというと、まずアメリカで付加価値税を検討するときに、年収一万ドル以下から始まって、一万ドルから一万五千ドル、そういうふうにして八ランク、最後は二十万ドル以上として、それぞれがこの付加価値税を導入したらどういう負担率になるのか。これは、こんないろいろグラフを使いまして、一番低いところでは一四%ぐらいになる、一番下ではうんと差がある、こういう逆進性を調べた。これが一つですね。調べた上に、今総理が中和とかいろいろ言われましたけれども、実際に生活保護のような給付を物価にスライドして、そして対策をとった場合どれだけ緩和ができるだろうか、食料品をゼロ税率にしたらどれだけ緩和ができるだろうか、あるいは税額控除という方法をとったらどれだけ緩和ができるだろうか、それぞれについて実際にやってみて、そうしてその結果として、結局これは一番貧しい人に重い負担が残るというので、二つの理由でこれは、水野主税局長ごちゃごちゃいろいろ言いましたけれども、二つの主な理由なんです。一つは貧困線以下、そういう人たちに絶対的な負担をかけるということであります。二つ目は逆進性ということです。この二つのことから、さらにさっき言った中和策をとってもこれは何も困難を取り除けられないということから、このことを拒否したわけであります。  私が聞きたいのは、さっきは大蔵省は、それぞれの収入階層ごとにどれだけ税負担がかかるかということをやったかというと、これはやってない。それからもう一つ、では課税した上でいろいろな対策をとったとき具体的にどこまで緩和できるのか、そういう検討をしたのか、これはやってない。やってあるというならぜひ見せてもらいたいわけでありますが、これを出して、その上で中和とかいうことを議論してほしい。もともと税金問題を我々が論ずる、検討するそのアプローチからして、本当に収入がどうなっているのか、どういう負担になるのか、どこまで緩和できるのか、こういう実証的な検討も何もしないで、そうして逆進性はあるけれども中和できます、これではどうしようもないじゃないですか。だからこのことをはっきりさせたい、それでこういうところならばぜひアメリカのやり方を学んではどうですかと言っているわけでありますが、どうですか、このアメリカのやり方と比べて。
  111. 水野勝

    水野(勝)政府委員 所得階層別と申しますか収入階層別等の分析につきましては、ライフサイクルに応じました負担の増減状況、それから年収の百万円刻みの負担の増減状況、それから分位別のものもそれぞれお示しし、それぞれいろいろな御検討をいただいているところでございます。  それから、中和策の具体策につきましては、これはまさに明年度以降の予算編成の中で具体的に進められるところでございます。  先般シャウプ博士が来日されまして、アメリカでもいろいろ検討をされているようですが、こうした税の動向はどんなものですかとお聞きしましたら、やはりこれはアメリカの連邦、州、地方政府、この点の問題が一番ネックになってアメリカではなかなか進まない、こういうふうなお話でございました。
  112. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 シャウプさんが来て、都合のいいところだけ言おうとしたのでしょうけれども、今の中和策の問題一つとってみても、それは来年度の予算編成だ、それをどういうことをやってからどこまでやれるか示さないで、これは来年度の予算だ。これは当てにできないじゃないですか。  さてそこで、私は税収見積もりの問題に移りたいと思います。  消費税の税収は幾らか。大蔵省は、五兆四千億円、それで三兆四千億円を調整しますと純増税が二兆円と発表しております。そこで聞きますが、消費税の税収規模五兆四千億円、これはちゃんとした計算によるものでありましょうか。この問題であります。  消費税の税収規模を我々が計算するときに二つの方法がありまして、負担をする側からの立場、支出の立場、それから業者が払う立場、この二つから計算されるわけでありますが、まず負担者の立場から計算するときに、家計最終消費支出にかかります。マイホーム購入または建設にかかります。国、自治体の支出にかかります。非課税分野の設備投資などにかかります。主なところはこの四つですね。これは御確認ください。
  113. 水野勝

    水野(勝)政府委員 御指摘のように、需要サイドと供給サイドからの試算があり得ることかと思いますけれども税制に応じました具体的な階層別の状況の分析とか業種別といったところからの分析にたえ得るものとしては、やはり先ほどお示しの支払う側と申しますか、そうしたものでないとちょっと税制上の仕組みに合わせた分析といったものが不可能でございますので、私どもとしては、法人企業統計等の支出サイドと申しますか、供給サイドからの分析でもって積算をしているわけでございます。もちろん支出サイドからマクロ的にこれは水準としてどうか、そのようなサイドチェックは行っているところでございまして、そうしたサイドチェックによりましても二つの方式につきましては大差ない、このような感じを私どもは持っているところでございます。
  114. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 私は主なものが四つだなと言った。その四つはどうですか。それを聞いているのです。
  115. 水野勝

    水野(勝)政府委員 国民経済計算の大きな項目としては、そのようなものがあろうかと思うわけでございます。
  116. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 ともかく大蔵省は付加価値の方からの計算も示されましたが、同時にこの負担の側からの計算も行ってきたわけですから、その大蔵省が出されたもので私は聞いていくわけであります。それによりますと、八六年度民間最終消費支出を百六十三兆円とされております。これはもとの百九十三兆円から実際に支出してないいわゆる帰属計算を除いて、三十兆円を除いた数として百六十三兆円であります。  さて問題は、一九八九年度以降でありますが、八七年度に四・二%の伸び、それから八八年度の見通しで五・一%の伸び、これは民間最終消費支出の伸びであります。それから八九年度について言いますと、最近の民間の調査機関が行っているのはまず五%から六%でありますから、五%とすると、八九年度は百六十三兆円が百八十七兆円に伸ばされます。そうすると、一方大蔵省では消費支出に対する消費税の負担率、これは物品税なんかを引いた純増分ですね、それを一・一%として、消費者物価も一・一%上がるとしておりますから、百八十七兆円掛ける一・一%でもう二兆一千億円ぐらいになるではありませんか。この計算どうですか。間違いありませんか。
  117. 水野勝

    水野(勝)政府委員 私どもの五兆四千億円ベースのものは、これは六十三年度ベースといたしておりますので、その点の違いがそこにまずあろうかと思います。
  118. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 しかし、六十四年度から実施するんじゃないですか。六十四年度の数字を言わなければいけないんじゃないですか。それもおかしい話なんでね。だけれども、今言ったようにともかく八九年度まで延ばしますと、この計算からしますと、今言ったいわゆる純増分だけ一・一%ふえます。で、二・一兆円になりますね。ところが、さっき言いました五兆四千億円引く三兆四千億円イコール二兆円というのが、純増分がもうここだけで出てしまうけれども、先ほどもお認めになったように、まだ三つばかり柱が残っている。  二つ目がマイホームの購入、建設。大体、今住宅建設は年二十兆円台ですから、八割ぐらいを見たとして約五千億円という税金が入ってきます。それから三つ目に、国、自治体の消費税導入による経費増。これはこの委員会の答弁を伺いましても、これは一九九〇年度でありますが、国は七千億程度、地方自治体が六千億円、そうすると、計一兆三千億円というのが出てまいります。それから四つ目の非課税分野の設備投資になりますと、金融業だけでも最近大分投資が伸びている。こういうことを考えますと、保険、教育、医療、社会福祉などを加えて控除できない設備投資が七、八兆円ある。ならば、そこにかかる税負担は二千億円ぐらいある。  そうすると、今言った住宅建設と国、自治体の負担増、それから非課税分野の設備投資を合わせるともう二兆円の数字に達するわけですね。だから家計の消費支出でもう二兆円という純増が出てしまって、そのほかに二兆円の税額が出るとしたら、政府の計算でいうと五・四兆円だというと、この二兆円がどこに逃げていったのか、隠れてしまったのか、この点をはっきりさせていただきたいと思います。
  119. 水野勝

    水野(勝)政府委員 先ほどからの委員のお話は、まさに国民経済計算からのお話かと思うわけでございます。私どももその点につきましては、マクロチェックの資料としては使わせていただいておりますけれども、先ほど申し上げたような理由からそれをもってこの積算根拠とすることはできないということで、サイドチェックにとどめているところでございます。
  120. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 そんなことを言ったって、大蔵省は我々のところへ資料を持ってきたわけですよ。それなら、あの資料そのものを撤回しますね。もうやめますか。
  121. 水野勝

    水野(勝)政府委員 その点はお持ちして各項目につきまして御説明を申し上げているところでございまして、その点につきましての大きな違いはないものと考えております。
  122. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 何を言っているんだかさっぱりわからないな。大体、家計消費の方だけで山・一%で二兆円、これはいわゆる純増税分が全部出てしまった。そのほかに二兆円ある。とすると、税額は五兆四千億円プラス二兆円で七兆四千億円ということになりますよ。そうでしょう。それ以外ないんだから。そうすると、政府が言ってきた二兆円の純増税じゃなしに、その倍の四兆円が純増税ということになりますよ。  そうすると一体どういうことになるかというと、国民にとっての減税は何が大事かというと、所得税と住民税減税でしょう。これは三兆一千億円の減税でしょう。それでもう一方消費税に伴う純増分が二兆円だから、二兆円と三兆一千億円とを比べると何かこちらが大きいように見えるけれども、今の計算でも三兆円が実は四兆円だということになれば、この消費税に伴う増税の総額、純負担増の総額が所得税、住民税減税の三兆円を上回るということになってくる。とすると、中には収入の多い人の方は減税が多いという人がいるかもしれないけれども、大多数の平均的な国民にとってみれば増税、増負担の方が大きいということは、ここからも判断できるのじゃないですか。これは非常に重要な問題ですから答えてください。どうですか、これは大臣にお願いしますよ。
  123. 水野勝

    水野(勝)政府委員 私どもの積算につきましては、その資料等が支出サイドと申しますか、そちらのサイドから厳密に積み上げておるところでございますので、そのような大きなものが出てくるということは、私ども到底考えられないところでございます。
  124. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 それは重大だ。そんなこと言ったら一・一%がうそか、五兆四千億円がうそか、それから二兆円増がうそか、みんなどこかがうそになりますよ。じゃ、改めて出し直してください。さてそれでは、先ほど言いました付加価値の方で計算をするというので、その点についても聞きたいと思います。  そこで、まず私は大蔵省に聞きたいのは、納税者の立場からの計算でいきますと、付加価値マイナス純投資というのが課税ベースになりますね。そうしますと、普通マクロの計算をするとき、必ず国民経済計算を使ってその付加価値を使うわけなんですが、大蔵省はなぜ国民経済計算は使えない、これは信頼できないと言うのか。信頼できないというならば、これは根拠を述べてほしいと思います。なぜ使えないのか。
  125. 水野勝

    水野(勝)政府委員 国民経済計算につきまして信頼できないといったことは、私ども全く申してございません。ただ、SNAベースと申しますのは、各種の基礎資料を加工調整して出てまいります第二次統計でございます。そういった点はやはり制約があろうかと思うわけでございます。  それから、私ども税制との関連を見ます際には、いろいろ御議論のございます免税点のお話、簡易課税等々によりますと、階層別の分析にたえ得るものが必要でございます。そうした点から、私ども税制になじむものとして法人企業統計等を使っておるわけでございまして、決してSNAが信頼できない、このようなことを申しておるつもりはございません。
  126. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 信頼できないと言っていないと言うけれども、これは第二次統計だから使えないと言うから同じことを言っているのじゃないですか。だって、問題はマクロの計算をしなければいけないでしょう。マクロの計算をするときなぜ国民経済計算が使えないのか、それがわからない。そこをもう一度説明してください。
  127. 水野勝

    水野(勝)政府委員 お話しのマクロと申しますか、総体としてのものはそこからある程度推計できるわけでございますので、私どもとしては、積み上げによりまして計算した結果をSNAベースによりますところのマクロチェックをさしていただいておる、まさに御趣旨のとおりのような使い方をさしていただいておるわけでございます。
  128. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 企画庁に伺います。  今の国民経済計算の計算のやり方なんですが、入り口方式をとっております。入り口方式というのは、物をつくったところでまず押さえます。工業統計あるいは農業統計を押さえます。それで、生産者価格でどれだけあるか、それが流通マージンあるいはまた各種のマージンが加わって総生産額が出てきて、その出てきたもののいわゆる材料や何か使われた中間投入を除いた部分というのは、輸出されるか、それから在庫になるか、あるいは最終的に消費されるか、このいずれかになるわけでありますが、この中で、まず全体をつくったところで押さえるというところに今の国民経済計算の非常にすぐれた点があると考えますが、いかがか。これが一つ。  それからもう一つ、法人企業統計というのはマクロの計算にはすぐには役に立たないので、どこで使うかというと、暦年を年度に直すところで使うとか、あるいは設備投資を公的分野とか民間に分けるところで使う、せいぜいそういう補助的手段にしか大蔵省が今大事にしている法人企業統計は使っていないというふうに私は経済研究所の皆さんから聞いておりますが、間違いありませんか。
  129. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 御指摘の国民経済計算、システム・オブ・ナショナル・アカウントと申しますか、これはフローとストック、物と金という各側面をさまざまな基礎統計からやっておるということは、もう既に御案内のとおりかと思います。同時に、総合的なシステムによってマクロ的な整合性のとれた形で計算しているものと承知しておる次第でございますが、どういうように具体的にこれを作成していく方向かという点については、少しく政府委員から答弁させた方がいいのではないかと思います。
  130. 冨金原俊二

    ○冨金原政府委員 先生のお尋ねは二点ほどあったかと思います。まず一つは、SNAの作成の方法について、生産額からアプローチをするということでございますが、確かにそういうやり方をとっているわけでございます。しかしそれは、御承知のとおり全体的な整合性を保つために供給サイドと需要サイドと両方からチェックをするということでございまして、生産サイドだけをつかまえてやっておるわけではないということで、それぞれの統計の特性を活用しながら、全体的に信頼性の高い推計を行っておるということが一点でございます。  それから二番目の、法人企業統計については余り信頼できないんではないかという御指摘でございますが、これは今申し上げましたように需要サイドの一環で使っているわけでございまして、決して私どもは法人企業統計は信頼できないという考えを持っておるわけではございませんで、むしろ原統計としては極めて信頼性の高い統計の一つだと考えております。
  131. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 いずれにせよ、国民経済計算というのは法人企業統計からまず入るんでなしに、一体どれだけ生産したかというのでマクロがとらえられるわけであります。ところが、明らかに大蔵省は、マクロの計算をするときに、国民経済計算は何か制約があるといっていかにも使えないかのように言って、今言った法人企業統計などからいわゆる大蔵省流の積み上げをやっていって付加価値額を出す。その額は幾らかというと、八六年度二百三十四兆円だとしております。ところが国民経済計算では、八六年度付加価値は二百九十六兆円で、これからさっき言った帰属計算などを引きますと二百七十二兆円になりますから、大蔵省はこれよりも三十八兆円過小計算をしているわけです。もう最初から四十兆円近い数字、付加価値額をちょろまかしてしまって少なくしている。  いいですか。そこでおいて、さっき言った付加価値マイナス純投資額ということになるでしょう。今度引き算の純投資を引くときはどうかというと、さっき二次的で余り使えないと言った国民経済計算の投資の額を持ってきて引き算の方をやっているわけなんですよ。つまり、付加価値から純投資を引くのに、付加価値の方は国民経済計算の方は大き過ぎるといって小さくしておいて、引き算の方になると今度は大き過ぎるはずの国民経済計算の投資を引く、こんなでたらめなやり方がありますか、一貫してないじゃないですか。しかも、引くときの純投資の中にはさっき言った非課税分野、免税業者、その設備投資も丸ごと引いてしまっている。こんなでたらめなやり方、原理的にいっても間違っているじゃないですか。やり直してください。
  132. 水野勝

    水野(勝)政府委員 SNAベースでやりますと大き過ぎるから法人企業統計等からいったということは全くございません。ただ、そのチェックをする全体としての、御指摘のような総体としてのチェック、このときにはSNAを活用させていただいておりますし、各項目につきましても、もちろんSNAベースのもので補完されるものがあれば使わせていただいている場合はあるわけでございます。
  133. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 今言いましたように、負担する側の計算からいっても明らかに小さな計算をしている。それから、まさに付加価値の計算からいっても都合のいいところでは国民経済計算を使わない、そしてこっちでは使うというような、引き算のところだけ使うようなこういう恣意的な計算をして、その出した結果というのが消費税の負担増で二兆円、それで減税の方が大きい大きい、この宣伝そのものがうその計算に基づいているではありませんか。  これは私たちがこの問題を検討しているだけでなしに、例えば日本経済新聞が、やや控え目だと思いますが、六兆八千億円という計算をしておりますね。この六兆八千億円であっても五兆四千億円よりもはるかに多くて、一兆四千億円以上上回るわけでありますが、この六兆八千億円でも既存の間接税を整理して残りが三兆四千億円で、これは政府の二兆円という数字よりも七割大きい。日本経済新聞の計算も七割大きいわけでありますよ。それでまた、さっき言った所得税、住民税の減税の総額と比べてこちらの方が大きいということになれば、国民にとって大事なのは、今減税が大きいのか増税の方が大きいのか。それで政府は盛んに減税の方が大きい大きいと言う。これは成り立たないじゃないですか。うそじゃないですか。これはここではっきりさせなければいけない一番大事な問題なんだ。この問題では総理か大蔵大臣の御見解を伺いたいと思います。
  134. 水野勝

    水野(勝)政府委員 日経NEEDSのお話がございましたが、これは中小企業の特例とか簡易課税とかそういったものを全く考慮していない過大なものと私どもは考えております。
  135. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 大臣の答弁をお願いします。
  136. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどからるる御説明を申し上げました、いわば支払いサイドを積み上げておりますけれども、そのチェックの方法としてはいろいろなSNAも使いましてやらせていただいておるところでございます。
  137. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 ここに自民党税制調査会長山中貞則さんの「税制改革案作成の苦心談」というのを、自民党の本部でやられたのを私持ってきておりますが、この中でどういうことが述べられているかといいますと、これは六月二十二日ですが、この苦心談の中で、「年を越して、新しい税制が出発をしたならば、これは意外な増収になると、私は思っておる。大蔵省のいうような六兆なんていうものではないと思っておる。」と、自民党税制調査会の会長からも大蔵省の数字は信用されてないじゃないですか。だから、自民党の税調からも信用されないような数字を国会に出して、これで審議しろといってもだめじゃないですか。やり直していただきたい。どうですか。
  138. 水野勝

    水野(勝)政府委員 いろいろ関係方面との折衝の過程では税率水準等の話も出まして、私ども最後の最終の税率のときには、それでは財政再建との関連で非常に心配があるといったようなことを申し上げた経緯がございますので、そうしたやや安心させていただくような御発言もあったりはしたことでございますが、特段それが分析の結果としての御発言ではなかったようでございます。
  139. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 そんなことはもう問題にならない。私、きょう質問してまいりましたけれども、そもそも所得が平準化して世界に誇るべき平等状態になって、だから大型間接税がいいんだというようなその前提も完全に崩れ去っている。そしてまた、政府が提案しているこの規模そのものに偽りの計算があるということを見ると、これは全く許せない内容だということになったと思いますが、時間が参りましたので、私はきょうの質問を終わります。
  140. 羽田孜

    ○羽田委員長代理 これにて工藤晃君の質疑は終 了いたしました。  次回は、来る七日月曜日午前九時三十分委員会、正午理事会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時四十三分散会