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1988-10-25 第113回国会 衆議院 税制問題等に関する調査特別委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十月二十五日(火曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 金丸  信君    理事 加藤 六月君 理事 海部 俊樹君    理事 瓦   力君 理事 羽田  孜君    理事 藤波 孝生君 理事 加藤 万吉君    理事 村山 喜一君 理事 二見 伸明君    理事 米沢  隆君       甘利  明君    井出 正一君       池田 行彦君    小沢 辰男君       片岡 清一君    金子 一義君       岸田 文武君    志賀  節君       鈴木 宗男君    田原  隆君       谷  洋一君    玉沢徳一郎君       中川 昭一君    中川 秀直君       中西 啓介君    中村正三郎君       西田  司君    野田  毅君       葉梨 信行君    浜田 幸一君       原田  憲君    堀内 光雄君       宮下 創平君    村山 達雄君       山口 敏夫君    山下 元利君       伊藤  茂君    緒方 克陽君       川崎 寛治君    坂上 富男君       田口 健二君    中村 正男君       野口 幸一君    山下洲夫君       草野  威君    小谷 輝二君       坂井 弘一君    坂口  力君       宮地 正介君    安倍 基雄君       玉置 一弥君    佐藤 祐弘君       辻  第一君    正森 成二君       矢島 恒夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  竹下  登君         法 務 大 臣 林田悠紀夫君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         厚 生 大 臣 藤本 孝雄君         通商産業大臣  田村  元君         運 輸 大 臣 石原慎太郎君         郵 政 大 臣 中山 正暉君         労 働 大 臣 中村 太郎君         建 設 大 臣 越智 伊平君         自 治 大 臣 梶山 静六君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 高鳥  修君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 内海 英男君  出席政府委員         人事院総裁   内海  倫君         人事院事務総局         管理局長    菅野  雄君         人事院事務総局         任用局長    森園 幸男君         人事院事務総局         職員局長    川崎 正道君         内閣総理大臣官         房管理室長   文田 久雄君         総務庁長官官房         審議官     増島 俊之君         総務庁人事局長 勝又 博明君         総務庁行政管理         局長      百崎  英君         国土庁長官官房         長       公文  宏君         国土庁土地局長 片桐 久雄君         法務省刑事局長 根來 泰周君         大蔵大臣官房審         議官      土居 信良君         大蔵省主計局次         長       篠沢 恭助君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省理財局長 足立 和基君         大蔵省理財局次         長       吉川 共治君         大蔵省理財局た         ばこ塩事業審議         官       松田 篤之君         大蔵省証券局長 角谷 正彦君         国税庁次長   伊藤 博行君         厚生大臣官房総         務審議官    末次  彬君         厚生大臣官房老         人保健福祉部長 多田  宏君         厚生省保険局長 坂本 龍彦君         厚生省年金局長 水田  努君         資源エネルギー         庁長官     鎌田 吉郎君         運輸大臣官房国         有鉄道改革推進         総括審議官   丹羽  晟君         郵政省電気通信         局長      塩谷  稔君         労働大臣官房長 清水 傳雄君         労働大臣官房政         策調査部長   甘粕 啓介君         労働省職業安定         局長      岡部 晃三君         労働省職業安定         局         高齢障害者対         策部長     竹村  毅君         建設大臣官房長 牧野  徹君         建設省住宅局長 伊藤 茂史君         自治省行政局長 木村  仁君         自治省行政局選         挙部長     浅野大三郎君         自治省財政局長 津田  正君         自治省税務局長 湯浅 利夫君  委員外出席者         地方行政委員会         調査室長    大嶋  孝君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ───────────── 委員の異動 十月二十五日  辞任         補欠選任   岸田 文武君     金子 一義君   西田  司君     井出 正一君   坂上 富男君     田口 健二君   工藤  晃君     佐藤 祐弘君   矢島 恒夫君     辻  第一君 同日  辞任         補欠選任   井出 正一君     西田  司君   金子 一義君     岸田 文武君   田口 健二君     緒方 克陽君   佐藤 祐弘君     工藤  晃君   辻  第一君     矢島 恒夫君 同日  辞任         補欠選任   緒方 克陽君     坂上 富男君     ───────────── 本日の会議に付した案件  税制改革法案内閣提出第一号)  所得税法等の一部を改正する法律案内閣提出第二号)  消費税法案内閣提出第三号)  地方税法の一部を改正する法律案内閣提出第四号)  消費譲与税法案内閣提出第五号)  地方交付税法の一部を改正する法律案内閣提出第六号)      ────◇─────
  2. 金丸信

    金丸委員長 これより会議を開きます。  内閣提出税制改革法案所得税法等の一部を改正する法律案消費税法案地方税法の一部を改正する法律案消費譲与税法案及び地方交付税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。米沢隆君。
  3. 米沢隆

    米沢委員 私は、昨日社会党の伊藤政審会長の方から四党を代表して概略説明をいたしました基本構想につきまして、政府の見解をただしてみたいと思います。  基本構想という名前を見ますと、かなり綿密に積み上げられたような印象はあるかもしれませんけれども、我々の物の考え方は、いわゆる六法案、特に消費税という新しい税金が入っておる法案議論する前に、政府としてやはり考えてもらわねばならないこと、汗をかいてもらわねばならないこと、あるいは法案議論をする前に確かめておかねばならぬこと、そういう問題について問題提起をしようではないかという観点で取り組んだのが実情でございます。そういう意味で、私ども六法案審議、本格的な審議入りを前にいたしまして、果たしてそのような環境が整ったかどうか、そういう観点から我々は政府答弁を見ていきたいと思いますので、ぜひ慎重に、まじめな御回答をいただきたいということをまず要望しておきたいと思います。  そこでまず、竹下税制改革理念目標という問題についてただしてみたいと思います。御案内のとおり、竹下さんは総理就任以来即税制改革に取り組んで今日にこられ、今六法案がこの国会提案されるに至っておるわけでございますが、その間竹下総理は我々の再度にわたる理念目標を明らかにしろという議論には余りお答えにならないままに、こういう法案ができ上がったという感じがしてなりません。と同時にまた、税制改革議論内閣としてされる場合に、それなり理念とか目標を持ってこのような法案ができ上がったんだと拝察いたしておりますけれども、この際、竹下税制改革理念目標というものは一体どういうところにあったのか、そしてそれは今度の六法案にすべて網羅されてその目的は達成されたと見ておられるのかどうか、その点についてまず所見を求めたいと思います。
  4. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 税制改革法案を御審議していただくために今国会をお願いをいたしまして、そうして提案いたしました税制改革法案の中には、法文を一々申し上げることではございませんが、今次税制改革のいわゆる基本理念というものにつきましては、第三条におきまして、「今次の税制改革は、租税は国民社会共通の費用を広く公平に分かち合うためのものであるという基本的認識の下に、税負担の公平を確保し、税制経済に対する中立性を保持し、及び税制簡素化を図ることを基本原則として行われるもの」である、このように書いておるわけでございます。  しかし、そこに至りますまでの経過につきましては、これはいつも申し上げることでございますが、現行税制経済社会の著しい変化に対応し切れておらない、こういう認識から、税負担がとにかく給与所得を初めとする個人の稼得所得に偏って、他面その裏腹として消費課税のウエートが著しく低下し、こうした中で納税者重税感不公平感が募ってきている等々さまざまなゆがみが目立ってきておる、そういうことを根底に置きまして、納税者重税感不公平感は一層深刻化して、また税制経済活動に対する中立性が損なわれ、ひいては税制国民の信頼が失われてはならぬという背景があったから、今申し上げましたような考え方基本理念として御審議をいただこう、こういうことにいたした次第でございます。  考えてみますと、本当に昭和二十五年税制、それから一生懸命御苦労いただいて一つ改革への方向を明示された昭和五十九年税制というものがございました。そして一方、その間に五十三年の税調答申、それからそれが挫折いたしました五十四年の決議、さらには成立し、また後にはなくなりましたもののいわゆるグリーンカード制への取り組み、五十九年一月一日を目指しての問題でございましたが、そうしたことから経過を経てきて、そして昨年売上税をお出しし、これが廃案となったという厳粛な事実を踏まえて、一方、これはどうしても国民皆様方の理解を得なければならないというので、その反省に基づいて、たび重なる答申等をちょうだいし提案したのが今度の法律であるというふうに、基本理念のほかにそうした経過の中における我々の立場お答えとさせていただくわけでございます。
  5. 米沢隆

    米沢委員 今るる御質問お答えいただきましたけれども、私は、この税制改革の全体像を見たときに、果たして今おっしゃるような理念目標というものが生かされているであろうかということに大いに疑問を持つ一人でございます。何しろ、消費税導入最初にありきという観点から、いろいろな意味で何かそれを成功させるために配慮し過ぎて、全体像はかなりいびつなものになっているのではないか。逆に言ったら、理念とか目標最初はあったけれども、しかし税制改革法案としてまとめる中において配慮し過ぎという部分が大きく突出して、トータルとしては全体像はかなりいびつなものになっておるという、そういう意味理念目標は達成されていないのではないか、そういう感じが否めないものでございます。  まず、そういう観点から質問をしたいと思うのでございますが、第一は、税制というものは富の再配分機能というのが重要な機能であることは御案内のとおりでございますが、今いろいろと資料を眺めておりますと、いわゆるジニ係数と言われる富の不平等を示す係数は、かなり悪い方向に走り始めておるのではないか。その上、御承知のとおり資産所得等についての申告は、まさに税制議論でよくおっしゃいますように捕捉が大変足りない。そういう意味では、資産所得そのものは意外に高所得者に偏っておる傾向がありますから、そういう意味では持っておる人はもっと持っておるというところが余り把握されていない。逆に言ったら、同時にまた、いろいろと公的な援助をもらっている皆さん方所得も把握し切れていない。したがって、そういう資料の不備の上に立ってジニ係数はもっと深刻なものになりつつあるのではないか、こういう感じがしてなりません。そして、近年における資産格差の拡大等々を考えてみますと、富の分配はかなりおかしい方向に向かっておる。  しかし、この税制改革そのものは、もう御主張いただいておりますように、所得が上がり平準化が進んだので消費税も結構ではありませんかという、そういう構想のもとに消費税導入がなされておる。そういうことを考えますと、本当に税制というものの富の再配分機能について一体政府はどういう考え方でこの税制改革を見てきたのか、同時にまた、今度新しくできたこの税制改革中身そのものが、これからの富の再配分という関係でどういう機能をしていくというふうに思っていらっしゃるのか、その点についてまず所見を求めたいと思います。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまジニ係数につきましての御指摘がございました。確かにこの数年でございましょうか、いわゆる所得格差等々を示しますジニ係数あるいは第一分位と第五分位との格差に、長年ずっと縮まってまいりました傾向がやや逆の方向を示しておるような姿が見られます。これは私ども考えますと、世帯構成変化ということもございますと思いますが、やはり石油危機あるいは最近では円高かもしれませんが、そういうかなり大きな雇用の不安がございました。雇用の不安がございますために、雇用を確保することが至上命題となって、それは勢い、賃金の上昇というよりはむしろ雇用の確保というように国の経済が動いた。また、かつてない経験でございましたから、経済全体もかなり影響を受けた。それがただいまおっしゃいますような多少逆行的な現象の根本原因ではないであろうか。今我が国経済かなり順調に動き始めましたので、これからの傾向といたしましては、私はそれはもとの方向に直っていくのではないかというふうに考えておるわけでございます。  さて、次に資産の問題でございますが、確かに土地株式等々の価格上昇によりまして今おっしゃいましたような傾向が見えておることは、私は否定できないであろうと存じます。そこで、株式につきまして譲渡所得原則課税にするという御提案をいたしました。これではなお不十分だという御指摘は存じておりますが、ともかく非課税から課税への原則転換をいたしました。また、土地につきましても、殊に短期の譲渡につきましてはかなり重い課税をいたしておるわけでございます。そういう意味では、この二、三年の殊に土地を中心とするいわゆる資産価格上昇は否定できないところでございますから、そのような階層が、階層と申しますか持っておる人たちのいわば名目的な資産は、かなり大きくなっておるということは否定できないところでございます。  このたびの相続税改正におきまして、この点は昭和五十年以後初めての改正でございますので、是正をしなければならない点があったことは御理解いただけると思いますが、非常に悩みましたのは、土地価格上昇が、殊に都会におけるわずかな宅地でも非常に大きな実は評価をせざるを得ないことになりまして、その結果として、親から受け継いだ本当のわずかな土地相続のときに維持できないというような、あるいは未亡人がそれを売らなきゃならないというような状況は、何としてもこれ対処しなければならない問題でございましたので、御承知のように小規模宅地減額割合を五割から六割と異常な割合を減額しようとしておるのでございます。この問題の意味しますところは、やはりそういう階層はそういう方々として対処しなければならないという問題がございますものですから、今おっしゃった問題とそれとがややぶつかるような感じになっておるかと存じます。しかしながら、それでも我が国の御提案後の相続税最高税率はやはり先進国に比べてかなり高いものでございますし、また、税収全体の中における消費所得資産課税のうち資産割合、シェアは決して落ちてはいない、在来のものを維持しているということでございます。
  7. 米沢隆

    米沢委員 私は、今度の税制改革は、所得配分機能が強化されたか弱化されたかという観点から見ると、やはり所得配分機能は弱くなった中身である、こういうふうに判断せざるを得ないと思います。それが一つの大きな矛盾でございます。  第二の問題は、消費税導入一体何を意味するのかという、どういう位置づけと考えたらいいのかという観点から質問をしたいと思うのでございます。  御案内のとおり、特に税収の面から見たときに、もう計算しなくてもおわかりだろうと思うのでございますが、消費税政府提案によりますと大体五兆四千億の増収だと言われる。しかしながら、その消費税導入すると同時に物品税等の廃止が三兆四千億あるわけでございますから、差し引き約二兆円の税収ということになりますね。しかしながら、政府地方自治体もあるいはいろいろと公社公団も、それぞれそれなりにこの新しい消費税負担しなければなりませんから、そのあたりを実際カウントいたしますと、後で数字を聞かしてもらいたいと思うのでありますが、消費税導入した結果税収増となる部分はほとんどないということになっていくのではないかと考えておるわけでございます。  そこで大蔵大臣、まず政府が、もしこの消費税導入されたときに、一体予算編成の中でどれほどこの消費税負担しなければならぬのか。自治大臣には、地方自治団体が、一体この消費税導入されたときにどれだけ自治体として支出増がふえるのか。できれば大蔵大臣公社公団支出増等がもし計算があれば、あわせてちょっと御返答いただきたいと思います。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この税は転嫁せらるべきものでございますから、政府といえどもいわば納税者という立場がございます。詳細につきましては、恐れ入りますが政府委員から申し上げます。
  9. 篠沢恭助

    篠沢政府委員 新税導入に伴いまして歳出増、国の方の一般会計でございますとどのくらいはね返りがあるかということにつきまして、現在六十四年度予算の全般の査定をしておるわけでございますが、その査定水準等に対してどのくらいはね返るかということになりますものですから、現在なお正確な積算はできておりません。非常に概略感じで申しますと、三、四千億のレベルにははねるであろうということは言えるわけでございます。
  10. 津田正

    津田政府委員 地方団体歳出におきます消費税導入に伴います負担でございますが、これも今大蔵省から御答弁ございましたように、具体的には六十四年度の国の予算編成作業と並行して行われます地方財政計画の策定の中で的確に算定してまいりたい、かように考えておるわけでございます。各費目ごと計算しなければならないわけでございますが、現段階で非常に大まか申しますと、六十三年度の地方財政計画規模が五十数兆円でございます。全般的な物価上昇への影響というのが一%強ということでございますので、歳出ベースで六千億程度規模ではないか、かように思っておるわけでございますが、今後の作業で積み上げてまいりたい、かように思います。
  11. 米沢隆

    米沢委員 今大蔵自治各省から御返答をいただきましたけれども、ちょうど売上税のとき、売上税五%のときに政府の方の支出増は約二兆二千億ぐらいになるだろう、こういう計算がされました。今度は非課税問題等が変わっておりますから少々変動はあるんでしょうけれども、大体五分の三として一兆三千億ぐらいですね。それよりもちょっと非課税部分がふえましたから、逆に言ったらふえておるという感じですね。乱暴な計算でこれは恐縮なんでございますが、今政府は三千か四千億ぐらいだとおっしゃいましたが、ちょっとこれは過小見積もり過ぎるんじゃないのかな。
  12. 篠沢恭助

    篠沢政府委員 ただいまお答え申し上げたように、六十四年度予算というもので具体的にどのような経費をどれだけ見積もり、それに対して消費税がどういうふうにかかるかという推計計算をしなければならないわけでございます。その根っこがまだ固まっておりませんので、おおよその感じとして何千億台というような概略お答えをしておるわけでございます。
  13. 米沢隆

    米沢委員 余り時間をとりたくないのでございますが、五%の売上税のときに、政府は二兆二千億の消費税負担があるという資料を出されましたよね。その観点からしますと、三千億か四千億なんというのは余りにも過小評価といいましょうか、でたらめな数字だという気がしてならないわけでございます。確定要素が確定しておりませんので計算はしにくいかもしれませんけれども、およそ答弁においては、ある程度まじめに答弁してもらいたいと思うのですね。  そういう意味では、先ほど申しましたように、消費税導入して五兆四千億ですね。個別物品税是正によって三兆四千億引くのですから、残りは二兆円ですね。そして、今おっしゃいましたように、政府地方自治体が支払うであろう支出増が、その過小見積もりであるならば約一兆円。私はこれが政府の方は一兆近いものになるのじゃないかと思っておるのでございますが、そうなりますと四、五千億しか残らない。一体消費税というものは税収というものに関してどういう位置づけがなされておったのか、そういう意味では非常に私は問題だと思うのですね。そういう意味で、例えば売上税五%のときに三兆四千億引くのと、三%の消費税のときに丸々三兆四千億引くのとは、全然意味が違うわけですね。そのあたりが、個別物品税を一挙に是正して、そして税収増という意味ではかなり変な姿になってきたという、その反省が私はあってしかるべきだと思うのでございます。  第二の問題は、かねて政府が申しておられました、今度の税制改革直間比率是正しなければならぬのだという発想ですね。今度の場合、五兆四千億の消費税個別物品税に三兆四千億食われるわけでございますから、消費税の六十数%、まあ六五%ぐらいが間間にシフトするだけの話ですね。そういう意味では直間比率はほとんど是正されてない。  直間比率是正高齢化社会に対応するなんという理屈を言われた。少々はそれは直間比率是正されてますよ。しかし、あなた方が最初おっしゃった直間比率是正してこれからの高齢化社会にたえ得る税制にするという立論は、かなり程度が低くなっておる。実際、直間比率、どれぐらい是正されるのですか。
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御承知のように、このたびの税制改正は、全体としては二兆四千億円のネットの減税になるわけでございますが、それは主として直接税の減税になるわけでございます。そこで、これが平年度化いたしましたとき、大体二対一ぐらいではないか。すなわち六六、七と三三、四、こういうふうな推計をいたしております。
  15. 米沢隆

    米沢委員 私の計算によりますと、六十三年度の当初予算では直接税が五十六兆八千七百二億円、間接税が十六兆七千四百七十三億、その直間比率は大体七七・三対二二・七。同じ項目で今度の税制改革を差し引き、足したり引いたりいたしますと、大体その直間比率は七三・六対二六・四ぐらいになるのですね。ちょっと、今大蔵大臣は六十数%の数字を言われましたけれども、後ほどその数字の根拠について資料を提出してもらわねばなりませんが、私の試算によりますと、直間比率変化はわずか三・七%ぐらいの是正でしかあり得ない。実際、考えてみればそんなものですね。そういう意味では、直間比率是正がまさにうたい文句であったにもかかわらず、残念ながら直間比率是正はおっしゃるほどには何も変化していない。少々変化したけれども、そう大きな変化ではない。それも一つ大きな問題だと私は思うのでございます。それが消費税のカウントを間違って五兆四千億じゃなくてもっと多くなるとおっしゃれば、あなたのような数字になるのかもしれませんが、それはこれからの資料の提出を待って試算をし直してみたいと思います。  次の問題は、そういう意味では高齢化社会に対応するという意味での、税収という意味での備える面は全然ないということですね。高齢化社会に対応するという意味では、税収という意味ではない。ただ仕組みをつくった、将来の増収の仕組みをつくったというだけであって、今度の税制改革の現時点における税収面では、高齢化社会に備える費用はほとんどゼロであるということですね。  それから、減税も大幅にやるんだから、したがって消費税みたいなものは入れてもらわなければ困るんだという、減税財源としての消費税位置づけみたいなものが云々されたことがありました。しかし、その減税財源といいましても、所得税、住民税だけで三兆一千億ぐらい減税をやっておるのでございますが、今度の規模は、先ほど申しましたように実質的には一兆円に満たないぐらいの消費税の実質収入でございますから、その所得税、住民税減税の三分の一の財源にも満たない。そういう意味では、減税財源にもなり得ていないということを意味しておるのじゃないかと思います。  そういう意味では、この消費税導入というのはねらいどおりただ仕組みを入れたということと、個別間接税の廃止をしただけということでありまして、皆さんが理念とか理想とか目標とされました直間比率是正とか高齢化社会に備えるとか減税財源なんだという理屈は、残念ながら中途半端でしか達成できてない、その意味では目標は達成してないと私は思っておるわけでございまして、消費税導入税収にとって一体何なのさというのが我々の率直な見解でございます。  その上、消費税中身そのものはまた税法の議論で詳しくやりたいと思いますけれども、何しろ事業主の皆さんが負担しやすいようにしたいというような発想で、この前の税額控除方式から帳簿方式に変えられたという観点から、残念ながら今度は転嫁という意味で、事業主にとりましてもあるいは消費者にとりましても、転嫁そのものは完全に不透明な姿になってきた、こういう意味では新たな不公平がかなり懸念される、こういう代物になっておるわけでございます。  昔から、簡素と公平は両立しない、こう言うのですね。簡素と公平は両立しない。本当に公平を期すならば、本当にしち面倒くさいぐらいに複雑な制度をつくらないと公平は期されないであろうし、簡素にすれば公平は保てないし、公平を保てば逆に複雑になる。こういうのはまさに真理でございまして、そういう意味では、消費税そのものを簡素にされたつもりではございましょうけれども、しかし公平という観点からは不公平な消費税という姿をつくってしまった、そういうことが言えるのではないか。これもまさに竹下税革の理念にそぐわない問題である、こう指摘をせざるを得ないのでございます。  それからもう一つは、この前もこの予算委員会で取り上げましたが、石油税の単純併課という、これは完全に理屈に合わない議論だと私は思うのですね。御案内のとおり、石油というのは約十兆ぐらいの売り上げの中で、石油諸税三兆二千億ぐらいもう既に払っておるわけですよね。そういう意味では、もう既に三〇%は税金を取られておるという業界なのでございます。本来ならば、今度の消費税議論の中で、消費税導入するから個別物品税はみんな消費税の三%に収れんしていくんだ、いろいろな入場税だとか娯楽施設利用税とか、そんなのをみんな調整して、何しろ今までもらっておった流通税のような物品税みたいなものはみんな下げるんだという議論の中で、実際石油諸税はどういう議論がなされたのか。  石油という物にかける税金でございますから、まさに物品税みたいなものだ。ほかのものはみんな、物品税をこの際洗い直してみんな下げるというときに、なぜこの石油だけがそのまま放置されねばならぬのか。もし基本的に議論をなされるならば、石油諸税をまず三%に落として、それから特定財源論として一般財源論との関係で議論していく、そういう議論があってしかるべきではないかと思うのでありますが、残念ながら完全にそういう議論は、なされたのかなされていないのかわかりませんけれども、まずなされてないだろう。なされたらそういうばかな結論は私は出てこないと思うのでございますが、残念ながらこのような不用意に、特に石油諸税は特定財源というのに物すごく貢献しておる税金ですね、そういう業界に、単に消費税の段階でみんなが横並びで低く下げろという段階でそのまま放置するなんというのは、全く政府そのものが石油業界の産業政策的なものを何も配慮できない、あるいは税法上からいってもこれはまさに無理のある選択であった、こう言わざるを得ないのでございますが、大蔵大臣、どうですか。
  16. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 今回の消費税の創設に当たりましては、極力薄く広くお願いをいたすことといたしまして、例外品目と申しますか、非課税品目は極力なくする、特に財貨とサービスの関係におきましては、取引の真ん中に入る可能性のある財貨につきましては、これは原則すべて、薄い税率でございますが、ひとつ課税の世界にお入りをお願いしたい。サービスにつきましては、これは末端での消費でございますので、取引に混乱は生ずることはない。したがいまして、福祉、教育等につきまして若干の非課税項目を設けたところでございますけれども、物につきましては、この点はひとつ例外なくお願いをいたしたいとしたところでございます。この点につきましては、大変関係者の間でも時間をかけて議論がなされた結果でございます。  それから物品税等は、今回お願いをいたしております消費税、これは財貨、サービスの消費に対して広く薄くお願いをするという考え方の一環の中の税金でございますから、これは物品税、入場税、通行税等は吸収をしてまいったわけでございますけれども、石油関係諸税につきましては、これは石油あるいは石油製品という物品に着目いたしましての、それの特殊な性格、それからその使い道がいろいろなところで特定されておりまして、いわばひもつきの財源となっているということからいたしまして、これは若干消費税と現在の既存の石油関係諸税とはその税の性格を異にするものがございます。したがいまして、これは消費税をお願いしつつ、既存の石油諸税につきましても併課をお願いをいたしたところでございます。この点につきましては、大変関係者の間で時間をかけて、また激論の末このような結果になったところでございまして、御理解をいただきたいところでございます。
  17. 米沢隆

    米沢委員 そんなのは御理解しない。御理解できない。大体、物品税を全廃して三%に統一して議論をされようとするならば、石油諸税だって例外ではないわけでございますから、まずその基準を適用し、その後特定財源としての位置づけをどう考えるのかという、そういう議論を丁寧にしてもらうのが本当は筋じゃないでしょうか。今度の税制改革非課税を余り持たないという方針はわかりますよ。しかしながら、物品税を何しろ今度は合理化してといいましょうか、下げて統一しようというなら、その哲学を一方では貫いてもらわないと、それは片手落ちというものではないかということを主張をしたいわけでございます。  その上、三兆二千億というもう既に石油諸税がかかっておるわけでございますけれども、今度の消費税というのは、このタックスにまたオンされるという議論なんですね。こんなでたらめな税制の設計はないと私は思うのですよ。タックス・アンド・タックスならまだわかる。ところがタックス・オン・タックスだな。税金の上にも消費税をまたかけて取り上げるという、そういうものを当たり前のごとくに提案されるその気持ちが私はわからない。こんなものは、まさに欠陥商品をこれはいいものでございますという詐欺商法みたいなものだと思うのですが、大蔵大臣、どうですか。タックス・オン・タックスというのは当たり前のことなんですか。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 米沢委員の御立論にも一理あるということは、私は拝聴しておって感じております。先ほど主税局長が申し上げましたが、石油並びに石油製品というやや一般物品とは違う特殊な性格を持っている商品であるということ並びにそれがいわば特定財源になっておるというようなことから、大変に政府部内でもこれについてはいろいろ議論をいたしたところでございますが、結果としてお願いを申し上げているようなことになったわけでございます。
  19. 米沢隆

    米沢委員 そういうのは、納得できません。  その次の問題は、増減税の帳じり。計算しますと、どう計算しても二兆七千億マイナスなわけですね。減税超過型。政府の方は、この前の私の質問に対しましても、二兆四千億が減税超過の金額であってと言って、三千億は行方不明になっておるのでございますが、本当ならばその三千億についても、今度の税制改革をまともに出されるならば、ちゃんとこういうことで処置をするという形で提案されるのが本当だと思うのですね。  増減税計算したら二兆七千億、政府答弁は二兆四千億、一体この三千億はどう調達するか。もう既に年度改正あたりで貸倒引当金だとか賞与引当金あたりを念頭に置いておるというような風評は流れておりますけれども、これはフェアじゃありませんね。こんなのは国会が承認したわけでもない。議論の対象にもなってない。そういう意味では二兆七千億の減税超過ということだと思うのですね。大体この三千億はもう決まったんですか。だれが決めたんですか。どこで決めたんですか。
  20. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 前回も委員に申し上げたところでございますが、今回御提案をしております改正法案を積算いたしますと、御指摘のように二兆七千億円でございます。ただ、今回の企業課税におきましては、税率を引き下げる、一方課税ベースの拡大を図るべしというのが税制調査会の指摘でございまして、そうした方向は生きておると私ども考えておるところでございますが、今回御提案しているものの中におきましては、配当軽課措置の廃止、益金不算入措置の縮減というところまででございます。その後、企業課税につきましては四党協議でもいろいろ御議論をいただきまして、引当金等につきましては二、三年内をめどに検討する等々の御結論と申しますか、与党からの回答がなされているところでございます。  こうした点も背景といたしまして、この今回の税制改正の中では何らかの課税ベースの拡大といった面は努力をいたしたい、しかし今回改正の現実に御提案しているものの中では含まれてない、この点は御指摘のとおりでございますが、この点につきましては与野党のお話し合いの中でもございましたような、二、三年のめどの中で結論の得られるものはお願いをして御提案をしてまいりたい、このように考えているところでございます。
  21. 米沢隆

    米沢委員 まあ苦しい答弁ですよね。野党の不公平税制協議なんというのは、あなた方が出した税制改革の全体像以後に始まった話でございますから、そんな話を当てにして最初から組み込んでおったとか組み込む予定であるとかそうなるはずでございますなんというのは、答弁になっていないと言わざるを得ませんね。  それから、二兆七千億減税超過型でございますから、まさに消費税を何とか必死で入れようということで配慮した結果こういうことになった。一面は、これは減税が多くなるのだからいいことだ、しかし財政という意味では、完全にこれはチョンボですね。大蔵当局の発想からすると、全く私はチョンボだと思いますよ。六十三年の減税を我々がやかましく言ったときには、恒久財源がなければ減税はできませんと、あれだけ言い続けたじゃありませんか。自然増収なんか全然財源ではあり得ないのだということを言いながら、堂々と二兆七千億、結果的には自然増収で充てるような中身のものを発表される。この乖離、物の考え方の乖離、到底我々も何となく納得できないのですよ。  大体、この二兆七千億というのは一体どういうふうにこれから埋め合わせていくつもりなのか、これをお聞きしたいですね。即消費税が動き出すのか、そうでなければこれから二兆七千億分かなり数年にわたって自然増収でそれを埋め込むのか、あるいはまたほかに何か増税の予定があるのか、あるいはまた先ほども言いましたように、消質税の見込み違いで二兆七千億はすぐ埋まるのか、一体これはどういうことなんですか。
  22. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 現在の財政状況からいたしますと、今回の税制改革が後代の世代に負担を残すものであってはならないというのが税制調査会の基本的な考え方でございました。そういう意味におきましては、前回の売上税のときには、各年度におきましても全体の改革を通じましても、歳入中立と申しますかレベニュー・ニュートラルで御提案を申し上げたところでございますが、この一両年の税収の動向によりまして、若干そこのあたりにつきましては弾力的な税制改革をお願いできる環境になった、これがまたある意味では今回、税制改革、ぜひこの機会にお願いをいたしたいという、そういうことにもつながるわけでございますが、六十一年度におきましては二兆四千億円、六十二年度におきましては三兆七千億円の剰余金を生じておるところでございます。したがいまして、今回二兆七千億円という減収額を伴う改革でございましても、当面の財政再建と申しますか、財政改革目標でございます六十五年特例公債依存体質からの脱却という点につきましては、大変苦しい環境になることは否定できませんが、歳出歳入を通じましてのあらゆる努力を通じまして、それが絶対に不可能というものでもないということでございますので、ここは二兆七千億なり二兆四千億の減税をお願いしつつ、その財政再建の目標には全力を尽くして努力をいたすということでございます。したがいまして、その目標達成のために消費税の税率を引き上げるとか具体的な大きな増収を考えるとか、そういうことは当面考えていないところでございます。
  23. 米沢隆

    米沢委員 それはそれで了としますけれども、いずれにしても苦しい答弁ですよね。減税には恒久財源が必要だというのは、これは年来の大蔵省の主張であった。ところが、今は自然増収がいいことをバックに、何とか自然増収でうまくやる。六十五年の赤字国債ゼロを達成するためにも、自然増収はある程度使われねばならないたちのものですね。もしこの目標を達成しようとするならば、逆にそちらの方に自然増収を充てて、残りの二兆七千億、二兆四千億の財源調達としては、下手をすると結果的には赤字国債的なものを充てるみたいなものにこれはなっていくわけですね。今まで大蔵省が主張されたものと今度の税制改革で示しておられるものとは全然違う。それも大蔵省としてかなりきつい立場のものが出されて、これがすべての全体像で、すばらしいものでございます、理念目標も達成されましたなんという議論は、我々聞く耳を持たないと言ってもいいんじゃないですか、大蔵大臣
  24. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは財政の立場からいえば、まことにつらい決断をいたさなければならなかったわけでございます。将来に向かってこの際思い切った税制改革をやろうと考えますと、昨年のような経験もございますし、三%を超える消費税というものはそれはとても無理であるということ、今後もそう思っておるわけでございますが、それに対してしかししばしば申し上げたところでございますが、所得税等々は中堅の給与所得者に非常にきつい、法人税も国際並みでないといったようなことから、将来を考えますとどうしてもここでやはり重税感不公平感というものを除きたい、こういうことになりまして、差し引きとしては大きないわばネットの減税になった。ただ私ども考えますと、このたびの減税によりまして、いわゆる俗語で言えば勤労意欲とか企業意欲とかいうものは、これは直接税が大きな減税になっておりますから、必ず経済活動にはいい結果を与えるであろうと信じておりますし、歳出についてもまだまだやはり工夫をして削減をしていかなければならないということもございます。米沢委員のおっしゃいますように、ネットで大きな減税になったということは、考えてみますと、やはり四十年近く置いておりました税制を将来に向かって大改革をするとすれば、これはやむを得ないコストである、犠牲であると申しますか、代償であるというふうに考えたわけでございます。
  25. 米沢隆

    米沢委員 そういうお話を聞きますと、何しろ新税導入初めにありきだ、少々犠牲を払っても何しろ新税だという、そういう姿が浮き彫りになってくるのです。何でそんなにお急ぎになるかという気持ちがするのですよ。何か竹下総理の政治日程の関係ですか、これは。
  26. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 長い間議論をして、国民のコンセンサスが那辺にあるかということを見定めながら、二十一世紀に向かっての税制体系を構築していこうという長い間の延長線上にあるわけでございますので、私の政治日程とは関係がございません。、
  27. 米沢隆

    米沢委員 先ほどから御答弁を聞いて皆さんもおわかりだと思いますが、要するに、最初理念目標があった、しかし新税導入は何しろ果たさねばならぬという課題であるがゆえに、かなりの配慮をし過ぎたことで結果的には全体像としてはいびつなものになった、これが私は率直な評価だろうと思いますね。そういう意味では、まともに理念目標が達成されていないという結果を生んでおるのではないか。ということは、反面なぜそういうことになったのか。これはまともな理念目標を持って堂々と国民に説明しようという姿勢に欠けておったのだ、私はそう思うのですね。まさにこれは租税民主主義の手抜きだ、その結果がこういういびつなものをつくり上げた、こう言ってもいいと思いますね。  確かに、税制議論ですから甘い話ばかりはない。きつい話もある。負担を願うものもある。私はそのものを含めて、国民は決してばかではありませんから、もっと高齢化社会なら高齢化社会をびしっと念頭に置いて、やはり説明するときはちゃんと説明をする。少々反対があっても説明し、納得してもらう、その時間と手順を省いてはならぬと思うのですね。何しろそのあたりはもうややっこしいからやめた、余りやかましいことは言うな、ただ新税が入りさえすればいいんだということで配慮に配慮を重ねた結果、結果的には大蔵省が嘆くような全体像ができ上がってしまった。私は、政府そのものが、こういう新税というような、国民が初めて体験するような税金を今からつくろうとされるのでございますから、もっと高齢化社会のビジョンをはっきり示し、あるいは政府としてもちゃんと汗をかくんだ、行政改革は断固としてやるんだという姿勢を示し、そして大変心配をいただいている財政再建というのはこういう手順でやるのでございますと、そういうことを事前にちゃんと議論をし、国民にいろいろと提示をし、その中で税法を議論するという、そういう手順を省いた結果こういういびつなものになったし、現に税制改革法案議論する中でも、残念ながらああだこうだああだこうだとわざわざ野党がこんな問題提起をして議論をしてくださいと言わざるを得ないような状況をつくった。これはひとえに総理、あなたの理念のなさだと私は思うのですよ。どうですか。
  28. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 確かに昭和五十三年度、五十五年度からいわゆる一般消費税(仮称)を導入することについての準備を始めるべきだというところから始まった問題である。そしてそれがいろいろな議論を重ねた結果、いびつという言葉をお使いになりましたが、私も完全にこれは立派な、何と申しますか、理論的には説明できてもその姿かたちが完全なものであるというふうには思いません。したがって、今の米沢さんのおっしゃっていることは、私どもにも理解ができるわけでございます。しかしながら、これを構築していくために、私どもはさらには今度は昨年度の売上税というものの大きな反省の上に立たなければならぬということになりますと、やはり税というものは執行する前に議論しつつ理解を求めなければいかぬが、執行した後においても、不断の見直しといわば理解を求めることと不公平感に対応していくという努力は引き続き続けていかなければならぬわけでありますので、長い議論の結果今度この法案を提出しておりますので、姿かたち完全であるというふうには私自身も思いません。  そして、その間にもう一つは、もっと福祉ビジョンであるとか行財政改革であるとか、そういうことの中長期目標を示すべきである、これはかねての御主張でございます。したがって、これはまた五十四年の十二月のまさに国会決議にも、第一に行政改革をやって歳出の節減合理化等の問題をやって、そして税制に取っかかっていくべきであるということが書かれておることも十分私どもも承知をいたしております。だからこそどうしても、中長期を示す前には私どもはとかく現状の、今の制度、施策を前提に置いて姿かたちを描いていくということになりがちでございますが、それを可能な限り現実的なものとして、国会に対しても御議論をいただく素材を提供しようということで今日までも努力し、きょうもまた努力して御議論の素材に提供していこうという考え方でございます。
  29. 米沢隆

    米沢委員 「今次の税制改革に際しての国及び地方公共団体の責務」として税革法第五条――法律に入るからといって喜んじゃいけませんよ。税革法第五条には、「福祉の充実に配慮しなければならない。」とか「行政及び財政の改革の一層の推進に努めなければならない。」よと、何となく申しわけ的に書いてあるんですよ、これは。大体今まで税制改革議論をする際に、みずから政府の方から、まさに財政再建はこうしましょう、高齢者ビジョンをこういうことでつくるから御理解いただきたいとか、行革はこういうことで断固やりますなんて、これは聞いたことないね。いろいろと言われて結果的に、まあ法律の中でこう書いておかぬとうるさいぞというぐらいのものしか私は見えないですよ。  私は、税制改革もそれは大事。同時に、財政改革の問題や高齢者福祉の問題や行革の問題は、それと同じ比重で大事だと思うのですね。決して刺身のつま的な存在ではない。そのことが今までの政府の姿勢論からは、残念ながら結果的に刺身のつま的にしか考えておられないと私は思わざるを得ないんですね。質問したら答えましょう、質問する前には何も言わぬ、それで税革税革と。  税制改革だって、それは歳入構造の安定化を求めるためにやるのでございますから、歳入と歳出はまさにあざなえる縄のごとき関係でありますから、歳入を議論するときには、特に新税を導入しようという税制議論をされる場合には、やはり将来の歳出増についてどういう見通しを持つのか、そして同時にまた、大きな政府を目指さない、行革も徹底的にやるんだという、そういうことを示しながら議論するのが当たり前であって、税制改革そのもので整合性を議論できるはずがない。トータルの問題として初めて税制は整合性のある議論になるということを我々は主張し続けて、塚本三条件の最後に入れて今まで強く求めてきたわけでございます。  きょう何かしらそういう資料が出される、出していいということだそうでございますので、まず福祉ビジョンの問題について政府資料提出を求めたいと思います。委員長、よろしいでしょうか。
  30. 金丸信

    金丸委員長 どうぞ。
  31. 米沢隆

    米沢委員 それぞれ委員には資料がもうすぐ行き渡るであろうと思いますので、厚生省、まずこの「長寿・福祉社会を実現するための施策の基本的考え方目標について」という問題を簡単に御説明ください。見るところは、かなり今まで言うてきたようなことをただ書いてあるというようなところもたくさんあるのでございますが、特に新しく踏み込んだという点を中心にして簡単に説明いただきたい。
  32. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 詳細は政府委員から説明いたさせますが、明るい活力のある長寿社会を実現するための総論としての基本的考え方、各論としては福祉、医療、年金等の施策の方向目標について取りまとめたものでございます。詳細は、政府委員からお答えさせます。
  33. 末次彬

    ○末次政府委員 ただいま提出いたしました「長寿・福祉社会を実現するための施策の基本的考え方目標について」、これにつきましては、全体を各施策に共通する基本的考え方と各施策ごとの目標とに分けて示しておるところでございます。  まず、「基本的考え方」といたしましては、第一に、高齢者を単なる保護や援助の対象としてでなく、社会に貢献できる一員として位置づけること。第二に、国民の基本的ニーズについては公的施策で対応し、多様かつ高度なニーズについては個人及び民間の活力の活用を図る。第三に、国民負担の水準を、経済の発展、社会の活力を損なわない程度にとどめるという考え方に立って、社会保障その他福祉に関する施策を進めることといたしております。  次に、各施策の内容でございます。  第一に、「積極的な健康づくりと生きがいをもって暮らせる地域づくり」につきましては、高齢期を健康に、また、体が不自由になった場合にも住みなれた地域で安心して暮らせるよう、健康づくり、社会参加のほか、医療、福祉面や世代間交流にも配慮した町づくりを進めることにいたしております。    〔委員長退席、海部委員長代理着席〕  第二に、「保健、医療、福祉サービスの連携と充実」でございますが、行き届いた保健、医療、福祉サービスを受けつつ、高齢者が可能な限り家庭や地域の中で生活できるように、特に寝たきり老人や痴呆性老人に対する在宅サービス及び施設サービスにつきまして、七十五年を目途に、ショートステイ五万床、ホームヘルパー五万人、特養、老健施設合わせまして五十万床など具体的な整備目標を掲げて、必要な体制整備を図ることといたしております。  第三は、「児童の健全な育成と家庭の支援対策の強化」、第四は、「障害者の自立と社会参加の促進」について述べておるところでございます。  第五でございますが、「高齢雇用の推進」につきましては、六十五歳までの雇用確保を目標といたしまして、同一企業あるいは同一企業グループ内における継続雇用の推進、高齢者の再就職の促進、職業能力の開発等の施策を進めることといたしております。  第六、「老後生活を経済的に支える所得の保障」でございますが、この点につきましては、高齢雇用の推進と相まちまして、長い高齢期を経済的に安定した暮らしができるようにするため、公的年金についておおむね現在程度の水準を維持するとともに、年金支給開始年齢につきまして、将来できる限り早い時期から段階的に六十五歳にすることを目標にいたしております。また、厚生年金基金等企業年金の育成、普及を図ることといたしております。  第七に、「良質で効率的な医療の供給と医療費の保障」でございますが、医療供給体制について、各医療機関の機能分担の明確化等計画的な整備を進めるとともに、医療内容の充実を図ることといたしております。また、医療費保障につきましては、医療保険各制度間の給付と負担の公平化、いわゆる一元化でございますが、これに向けた措置を段階的に講じまして、全体としての給付率をおおむね八割程度とすることを目標にいたしております。  第八に、「長寿を支える研究開発の推進」でございますが、長寿科学研究を総合的に推進するとともに、高齢者等の心身の負担の軽減に貢献する新技術の開発、普及等を進めることにいたしております。  以上でございます。
  34. 米沢隆

    米沢委員 ところで、我々は、この福祉ビジョンの提示というのは、ただどんなことをやろうとしているのかというだけではなくて、国民皆さん方に示した上で、消費税導入との関連でこの福祉ビジョンを一体どう見るかという、そのあたり一つの本心にあったわけでございます。  この前、三月の予算委員会におきまして、我が党の永末委員質問に対して出てきた資料によりますと、現行水準を維持したとすれば、社会保障に関する国民負担は、現在の一五・二%が、七十五年の時点では大体四・五から五%ふえて一九・五から二〇%程度になるであろう、八十五年の時点では七・五から一〇・五くらいふえて二二・五から二五・五くらいになるであろう、こういう展望をお示しいただいたわけでございます。ということは、これは現行制度を維持した場合にこのように社会保障に関する国民負担変化するということであって、今提示された中でも新しい施策を盛り込んだ場合には一体この数字はどうなるのか。例えば、前提を置かねばなりませんけれども、社会保障関係負担が対国民所得比でまず一定であるとみなした場合には一体どれぐらいの金が要るのかですね。それから、新しい施策を入れた場合には、七十五年ぐらいまでの間に今おっしゃったようなことは実現してもらわなければいけませんが、一体どういうぐらいのお金が要って、それがどういうふうに国民負担にはね返ってくるのか、そういう説明をしていただけませんか。
  35. 末次彬

    ○末次政府委員 三月の時点でお示ししました数字は、現行制度をもとにする、こういうふうに申し上げたわけでございますが、ただいま御説明いたしました資料によりまして、社会保障制度の姿といたしまして、医療保険につきましては全体として八割程度の給付水準にしたい、つまり現行程度の給付水準を維持したいということを申し上げたわけでございます。年金につきましても同様でございまして、前回再計算の水準程度でございますから、この試算の中にはおおむねそういうものが盛り込まれておるというふうにお考えいただいて結構ではないかと思っております。  福祉につきましては、ただいま申し上げましたような体制整備を積極的に図っていくつもりでございますが、全体のウエートといたしましては医療保険、年金がそのほとんどでございますので、推計といたしましては、三月にお示しいたしました水準というものでおおむね妥当するのではないかというふうに見ております。
  36. 米沢隆

    米沢委員 今の御説明いただきますと、まあ現行水準、今から十一年たって二十一世紀の初頭に立ったときに、現在の年金の水準、現在の医療保険の水準、少々介護サービスあたりのものが新規にふえるということなんですね。結局それは、将来お金がかなり要るだろうという証明にはこれを見たらよくわかる、しかし新しい施策との関係がちょっとわからない。  大蔵省、いや、大蔵大臣に聞きたいと思うのでございますが、実際我々が本当に不安に思い、あるいは国民の皆さんも心配に思っていらっしゃるのは、かなりの金が要るであろうというのはわかった、しかし今度入ってくる消費税の三%は、いつごろそれが動き出すのかという関心なんですね。今厚生省が説明されたものは、現行水準を維持するだけでこれぐらいになるということでございますから、これはもう消費税を上げなくても維持できると思っていらっしゃるのか、それとも、何も新施策をしなくても、現行水準を維持するだけでもかなり大変だから消費税は動かねばならぬと思っていらっしゃるのか、そのあたりをちょっとはっきりしてほしいのですよね。
  37. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 消費税を将来、御提案いたしました三%以上に上げる意思が、方針があるかということについては、そういうことを考えておりません。  それから、三月にお示しいたしました計数のときにも申し上げましたが、御承知のように我が国には、長期経済計画というものは五年を超えるものはないわけでございますが、ここで議論しておりますのは、昭和七十五年あるいは八十五年という二十年余りまでの将来でございまして、三月のときに、GNPの伸びをたしか四%の場合と五%でございましたか、そういう仮に想定をいたした、そうして投影をしたというようなことを注に申し上げておるわけでございますが、そういう意味では、このたびのビジョンは非常に一生懸命、政府部内、厚生省を中心にいたしましたが、もう一つこれを定量的に申し上げられない部分がございますのは、それはやはり将来の国民総生産そのものが実は確定と申しますか推定する基礎を持ってないということにも関係がございます。したがいまして、ある程度定性的であることはぜひ御理解をお願いいたしたいと存じます。
  38. 米沢隆

    米沢委員 確かに、経済指標がこれから変動する不確定要素はありますけれども、現状のような状況が続いた場合には、現行の福祉水準を維持する限り、消費税をいじるというようなことはあり得ないということでいいのですね。
  39. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 消費税をさらに三%より上に上げるということを前提に物を考えているということはいたしません。
  40. 米沢隆

    米沢委員 それから、大蔵省や厚生省のこの前の予算委員会の発表資料によりますと、高齢化のピーク時二〇一〇年には国民負担率は四六%台に上昇するという計算になっておるわけですね。しかし一方、政府税調の中間答申は、将来の財源手当ては必要だろうというようなことを書きながら、他方では、この改革が租税負担率の上昇を目指すものではない、こう書いてあるのです。これは、中期的なスタンスを見るのか、短期的なスタンスで物を言われておるのかの差はあると思いますが、どうも首尾一貫しないですね。高齢化社会がやってくる、金の要る社会である、徐々に租税負担も社会保険料負担も伸びるであろうと言いながら、税制改革議論した政府税調は、この改革は租税負担率の上昇を目指すものではない。これはどういうふうに説明していただけるのでしょうか。
  41. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどある程度以上には定量的には申し上げることができないと申し上げましたもう一つの要素は、実は給付と負担という関連を、つまり高福祉高負担とかあるいはそうでないとか、いろいろ言葉はございますが、そこの選択をどうするかということは結局国民の意思によるものであるという問題があろうと存じます。一、二年のことではございませんで、十何年から二十何年でございますので、やはりそういう問題がどうしてもあるということは否定できませんし、そのことを今から見越すということも、なかなか難しい問題でございます。  ところで、ただいまお尋ねの点でございますが、いろいろの考え方はございますけれども、私どもは、臨調で時々言われますように、やはり今のヨーロッパ先進国のところまで負担が行くということは、これはどうも適当でない、やはりそのかなり手前のところでとどめるべきものではないかということ、これは正式に政府がそういうことを決定したというようなことは別段ないわけでございますけれども、総理以下私どもほぼそういうことは頭に持っておるということでございます。
  42. 米沢隆

    米沢委員 先ほどの厚生省の説明に関連するのでございますが、この社会保障関係負担国民負担がどうなるかが一番心配される点でございますが、昭和六十三年の時点では、社会保険料が約三十二兆、国庫負担が約十二兆という形で調達されておるわけでございますね。合わせて四十四兆、現行の水準を維持する、そのかわり高齢化が進む、その結果、昭和七十五年時点、昭和八十五年時点でどれだけの金が上乗せされていかねばならぬのか。どれぐらいになりますか。
  43. 末次彬

    ○末次政府委員 六十三年度で申し上げますと、いわゆる展望ベースで四十四兆という数字になっておるわけでございまして、これに伴う負担も当然それに見合った四十四兆ということでございます。これを七十五年時点で仮に六十三年度価格で表示いたしますと、七十五年の給付に要する経費、これが五十六兆ないし五十八兆程度というふうに考えております。六十三年度の社会保障関係負担、これを国民所得比一定、つまり四十四兆に固定いたしたといたしますと、差し引き十二兆ないし十四兆という金額は出てまいるわけでございます。
  44. 米沢隆

    米沢委員 要するに、七十五年時点では約十二兆から十四兆ぐらい現時点に比べると社会保障関係の負担がふえる、それから八十五年時点では二十一兆から二十九兆ぐらいふえる、こういう御説明でございますが、その間社会保険料という形で一体どれぐらいその場合にふえていくのか、それが結局勤労者家庭にどういう影響が及ぶようなことになるのか。特に、トータルとしての社会保障費負担がふえるということは、国庫と社会保険料で相補っていくのでございますけれども、こういう事態になると社会保険料はかなりのものになっていくんじゃないのかな、そういうものに一体勤労世帯が耐えられるのかどうかというその議論がなされねばならぬと思いますので、ぜひこの際、七十五年、八十五年時点でこれくらいの金が要るというお話でございますが、社会保険はどれくらいそれを受け持って、そうした場合には大体七十五年時点、八十五年時点で勤労者世帯の実収入の中でどれくらいの割合を社会保険料が占めるのか、そういう説明をちょっとしてほしい。
  45. 末次彬

    ○末次政府委員 ただいま七十五年の五十六ないし五十八兆という金額を申し上げたわけでございますが、その内訳といたしまして、社会保険料が四十ないし四十二兆、この分につきましては、六十三年度価格で申し上げますと、三十二兆から四十兆あるいは四十二兆にふえるということでございますから、八兆ないし十兆ふえるという数字が出てまいるわけでございます。ただし、これは六十三年度価格で表示いたしております。したがいまして、七十五年時点での勤労者の所得はどうなっているかということにつきましては、別途何らかの推計が必要かというふうに考えておりまして、単純にこれを三十二兆が四十二兆になる、その分だけ負担率がふえるというわけにはまいらないだろうというふうに考えますが、一応の数字といたしましては、六十三年度価格で表示いたしますと、三十二兆が四十兆あるいは四十二兆程度になるというふうな数字計算いたしております。
  46. 米沢隆

    米沢委員 細かな数字が出ないようでございますが、また同僚議員の後ほどの質問で補完してもらいたいと思っております。  そこで、その「長寿・福祉社会を実現するための施策の基本的考え方目標」といういわゆる文書はいただいたわけでございますが、これから昭和七十五年という二十一世紀を迎える間、いろいろと厚生省あるいは労働省として、あるいは大蔵省として骨を折ってもらわなければならぬ課題がたくさんある、そういうものについてちょっと個別に聞いてみたいと思うのでございます。  まず第一は、厚生年金や共済年金などの年金支給開始年齢、これを何とか六十歳から六十五にしようという動きがずっとこれは続いておるのでございますけれども、いわゆる七十五年時点までの間に六十五歳支給開始年齢に何しろ上げたいということになっているのかどうか、そういう意味ではこの十年間のターゲットであるかどうかということが第一点でございます。  その場合、六十五歳に支給開始になるということは、定年になられてから、六十五歳まで定年が続いておるならばそのままうまく移動するのでございますが、どうしても七十五年という時点で多くの皆さんが六十五歳の定年になっておるという姿は、労働省の汗のかき方いかんでございますが、非常に難しいところもあるだろう。そうなったら厚生年金や共済年金の支給開始だけが先に行って、先延ばしになって、こっちの定年の方は余り延びないとするならば、この間に乖離ができる。この間の生活の安定をどう図るのかという、これは非常に難しい、また大事な問題だと思うのでございますが、そういう観点からは、まさに昔から言われておりますような部分年金、部分就労、そういう発想が再度取り入れられてしかるべきものではないか、そういう意見に関して厚生省はどういうふうに考えておられるのか、これが第二点でございます。  それから第三点は、労働省は六十歳前半層の雇用一体どのような手法で拡大されようとしておるのか。この中身を見ますと、「高齢雇用の推進」という中では、「六十歳台前半層の継続雇用を中心として高齢者の雇用就業機会の拡大を図る。」できれば具体的にどういう方策を今持っておられるのかということを聞きたい。  同時に、「老後生活を経済的に支える所得の保障」といいますと、「六十五歳程度までの継続雇用を中心とする」と、年金の方はもう六十五歳程度まで継続雇用がなされるであろうという前提のもとにこれを書いてある。労働省の書かれたものは、六十歳台前半層の継続雇用に力点が置かれている。もう既に労働省の方は六十歳台の前半、厚生省の方は六十五歳まで支給開始年齢を上げるということがあるものですから、そこまで継続雇用がなっておるような書き方なんですね。そういう意味で、両省が書かれた差異だと思いますけれども、いわゆる定年の問題と支給開始年齢の問題というのは、各省庁、労働省と厚生省の感覚でもこんなに違うわけですね。そういう意味で私はぜひ、六十歳前半層の雇用一体どういうふうに拡大しようと労働省はなさっておられるのか、そのあたりについて労働大臣の見解を聞きたい。  第四番目は、公的年金水準を一体改善するのかしないのかという問題だと思います。  今の段階で、昭和七十年を目途にして年金の一元化を図ろう、こういうことでございますが、これは給付の方の一元化であって、負担の方の一元化は余り言及されていないのですね。負担の方のいわゆる公平化というものについて、一体どういう判断をなさっておるのかという問題もあります。  同時に、今の公的年金、現行水準を維持したらこうなるという先ほどの資料をいただきましたけれども、しかし公的年金そのものは、いろいろと見方はありましょう、結局お金を出したら多くなるよ、出さなかったら低くなるよという、そういう関係でもありますが、少なくとも公的年金の中で、老齢福祉年金だとか国民年金の水準は低いと言われておる。また、そのままであると、やはり幾ら完全に国民が、すべての皆さんが年金をもらえる姿が描けたとしても、どうしてもそこだけは問題が残るであろう。そういう意味で厚生省としてこれから公的年金の改善をする意思ありや否や、こういうことなんですね。それは国民の選択という言い方もできましょうけれども、厚生省として老齢福祉年金を一体どうしようとしておるのか、国民年金の水準をどうしようとしておるのか、あるいは厚年、共済年金等々六十五年には財政再計算をされるそうでございますが、その結果、もしかなり悪いデータが出ると、もう一回給付水準を下げるようなことになるかもしれない。あるいはまた、見方によっては上げてもいいということになるかもしれない。そのあたりの見通しについて、我が厚生大臣の確たる意見を聞いてみたいと,思っております。  一括して質問して大変恐縮でございます。覚えておいてください。  それから、五番目は何かといいますと、基礎年金ですね。この前、年金を改革いたしまして、みんな基礎年金というげたを履かせた。この基礎年金について、結局あの当時の議論では、政府としては三分の一を持とう、こういうことになったわけでございますが、これからの税制改革の絡み、それから七十五年をいわゆる長寿社会として楽しめるようなものにしようという目標があるならば、基礎年金に対する国庫負担の関係は三分の一からあるいは三分の二に、あるいは二分の一ぐらいに上げるべきではないか、我々はそう考えておるのでございますが、その点についての見解はどうであるか。  それからもう一つは、老人保健制度の問題でございます。  御承知のとおり、組合健保、政管健保等から拠出金がどんどんふえておりまして、老人医療、かなり医療費がふえておる。その結果、拠出金がふえる。結果的には政管健保も組合健保もかなり赤字が続出する。その前から国民健康保険は大変なことだ。ことしの春でしたか、ある程度改善は行われましたけれども、まああれも二年もったらいい方だという感じですね。そういう意味では、老人医療保険そのものは全体的に危機に瀕しておる、二、三年たったら破産の危機に瀕しておると言ってもいいと私は思うのですね。そういう意味では、老人医療制度そのものも一回見直しをしなければならぬ。あるいは政管健保、組合健保、国民健保を一体どういうふうに今から明るい二十一世紀を迎えるために手を加えていかねばならぬのか、これも大きな問題ですね。その点に関して厚生省の見解を聞いておきたい。  特に老人医療の中身につきましては、国庫負担は今は三〇%ですか、せめて老人医療については国が半分は面倒を見るという姿にするということが本当ではないかなと我々は考えておりますが、そういう点についての御見解を、以上七つですか、えらいたくさんになりましたけれども、一つ一つ具体的に詳細に御説明いただきたい。
  47. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 多少長くなるかもわかりませんが、お許しいただきたいと思います。  まず、厚生年金の六十五歳支給開始年齢の引き上げの問題、これはもう御承知のように、年金財政が今後極めて厳しくなってまいりますし、特に団塊の世代が受給資格を得る八十年の後半、非常に厳しくなるわけでございまして、そこへ至る経過の中で保険料の負担が急激にふえたり、また過度なものにならないようにしていかなければならないわけでございます。そういうことを考えますと、いろいろな手だてがあるわけでございますが、その中で特にこの年金の支給年齢の引き上げという問題については、これは避けて通れない大きな課題であると思います。事実、ヨーロッパにおきましても、現在六十五歳の支給年齢を二歳程度引き上げようとしておるわけでございまして、そういう点も参考にしなければならない、我々もそうだと思います。  この引き上げの問題につきましては、現在年金審議会におきまして御検討いただいている最中でございまして、来月末には御意見をちょうだいできるという段階でございます。ただ、考え方といたしましては、御指摘のございましたように、高齢雇用の状況、また年金財政の状況等も十分に考え、さらには、移行に当たりましては老後の生活設計が大幅に変わるということでもありますので、これは長期間かけて対応していかなければならぬというようなことも含めて、総合的に、慎重に判断してまいろうと思っております。  それから、部分年金の問題でございますが、確かに支給開始年齢の引き上げを考えます場合に、高齢雇用と年金制度との間の連係を図っていく、これは極めて大切な問題でございまして、その手法といたしましては、私どもは、一つには繰り上げ減額年金制度の導入、それから二番目には、現在行われております低所得者に対する在職老齢年金をさらに実情に即したものに変えていく、こういうことで対応してまいろうと考えております。  それから、順番が後先になるかもわかりませんが、老人医療の国庫負担の問題、現状におきましては公費で三〇%、国が二〇%負担しておるわけでございますが、この問題については国庫負担をさらにふやすべきではないか、こういうお話でございます。これは、老人医療の費用負担のあり方について根幹にかかわる問題でございますので、六十五年までの見直しの中で検討してまいる大きな課題であると考えております。  それから、老人医療費の増加等によりまして、健保組合、政管健保の組合員の負担が増加しておる、これはまさにそのとおりでございまして、財政状況も非常に厳しいものがあると思いますが、当面少なくとも六十五年までは、全体といたしましては健保組合、政管組合ともにほぼ経営努力その他によりまして対応できるものと考えております。しかし、苦しい組合もあるわけでございまして、それらの個別組合に対しましては、補助金等によりまして対応してまいる考えでございます。いずれにいたしましても、今後老人医療費の動向であるとか医療保険の運営状況、拠出金の額の動向等を勘案しながら、六十五年までの見直しの中でこれは考えてまいらなければならぬというふうに考えております。  それから、年金の問題で公的年金の水準の問題にお触れになられましたが、特に自営業者の皆さん方はいわゆる基礎年金部分しかないわけでありまして、二階建ての部分につきましては今後取り組まなければならない大きな課題であると思っておるわけでございまして、この場合には各県あたり国民年金基金制度、これを活用いたしまして対応していく、そういう方向で考えておるわけでございますが、これも年金審議会の御意見も十分に伺った上で、来年以降で対応してまいりたいと思います。  それから、公的年金の水準につきましては、これは何といたしましても、先ほどの年金大改正におきまして設定をいたしました平均賃金の六九%、この水準はぜひ確保してまいりたい、そのために全力を挙げてまいりたい、かように現在考えておるところでございます。  最後の基礎年金の国庫負担率の問題でございますが、これは基礎年金を導入いたしましたときに御承知のように三分の一の負担率を設定したわけでございますが、これをさらに二分の一、全額という御指摘、御意見でございます。これは将来の大きな課題であると率直に私どもも考えておるわけでございますが、現状におきましては、この厳しい財政状況の中ではなかなか困難であろうと思います。しかしいずれにいたしましても、このことにつきましては国民皆さん方のコンセンサス、お考えがどのあたりにあるかということも十分に伺った上で、総合的に考えてまいらなければならぬというふうに考えております。  以上でございます。
  48. 中村太郎

    中村国務大臣 本格的な高齢化社会の到来のもとにおきましては、高年齢者の高い就業意欲を積極的に活用できる社会を実現していくことが重要でございます。このため、六十五歳程度までの雇用、就業の場をどうしても確保いたしたいと考えておるわけでございまして、その目標としまして、第一には、今の賃金、労務管理の見直しとかあるいは職務再設計、さらには高年齢者に適した職域や就業形態の開発等を進めますとともに、このことによって継続雇用を推進してまいりたいと考えておりますし、第二は、高年齢者にかかわる労働力需給調整機能の強化によりまして円滑な再就職への促進、それから第三は、生涯能力開発の理念に立った教育訓練の振興を図ってまいりたい、第四は、シルバー人材センターを通じた臨時的、短期的就業機会の確保等を通じまして、これらの施策を総合的に実施してその確保を図ってまいりたいと考えておるわけであります。
  49. 米沢隆

    米沢委員 それぞれお答えをいただきました。細かな問題でまだ言いたいことはたくさんありますが、またの機会にいたしまして、いずれにいたしましても結局高齢化社会はやってくる、金の要る社会である、したがって負担をしろという議論は、新しい皆さん方に説得のある施策が将来に向けてなされていくというものがないと、非常に理解しにくいものだということをぜひ理解してほしいと思うわけでございます。ここまで社会保障制度がいろいろと完備された姿になっておりましても、中身はいろいろありますが、いずれにしても日本の国民は将来に不安を持っておるということは、何か足りないということだと私は思います。そういう意味で、そのあたりを十分留意されまして、これからの福祉行政に一層力を入れてほしいと思っております。  さて、先ほど申しましたように福祉と税負担は選択の問題だ、確かにそういうところはありましょうが、今度の例えば消費税というものは福祉目的税ではありませんので、これは一般財源としての位置づけがなされておりますので、これから消費税がどんどんふえていくという不安に対して、単に高齢化社会のために要るお金を消費税で調達するという関係ではなく、トータルとして財政が不如意のときも消費税は動き始めるんだという、どういうようにその部分を説明されようとしておるのか、その点についてはっきりとお答えいただきたいと思います。国民の不安は、消費税がもし三%で導入されたとする、いつそれが動き出すのか、どんなときに動き出すのか、そういうところにかなりの不安と、同時にまた歯どめ論が必要だなという気持ちを持っておられるのではなかろうかと私は思うからでございます。  そこで、例えば六十五年の赤字国債発行ゼロというのも、先ほどちょっと御答弁ありましたようにままならない。特に二兆七千億という減税分のショートがありますから、赤字国債発行は、大蔵省がこの消費税率を五%から三%とするときにはかなりもがかれたという話は新聞等で聞いております。もし五%でなければ約一兆五千億くらいの赤字国債を発行せざるを得ない、結果的には六十五年の赤字国債ゼロは達成できない等々と理屈を言われてもがいた、こういう話は聞いておりますけれども、確かに六十五年の赤字国債ゼロというのは、自然増収に助けられていかにも何か当然のごとく達成できるだろうなんという安易な気持ちを持っておる人もおると思うけれども、実際は大変厳しいものだろう、私はこう思うのですね。  あるいはまた、予算編成のときに借りまくったツケ回し、これも何回もこの場で議論になりますけれども、かなりのものがありますね。繰り延べとして将来処理をしなければならぬ累積残、厚年等への繰り入れ特例等で積もり積もったのが約十一兆三千五百億ぐらいあるのですが、一体これをどう返済していくのか、このあたり消費税が連動するのかなという心配もなさる方もおりますね。あるいはまた、今厚生大臣から話がありましたように、健保、年金等々、特に国鉄年金等、当面する難しい問題がある。ここにもやはり国庫負担を何とかしろという議論かなり出てくるであろう。  そうなったときにはまたこの消費税が動き出すのかな等々、私は消費税というのは中長期的に財政の安定を図るために導入し、かなり先にこれは動き出さざるを得ない、しなければならないと思っておるのだけれども、当面六十五年の赤字国債がうまくいかないぞ、ツケ回しを何とかしなければならぬ、これも返済計画をつくるとどうも消費税が横ににこにこ笑っているような気がするというふうに、結果的には何か消費税というものがいつどんなときに発動されるのか、そのあたりがはっきりされないと国民の不安は解消できない。その点について総理大臣でもいい、大蔵大臣でもいい、はっきりとした線引きを行ってもらいたいと思うのです。
  50. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず、昭和六十五年度に赤字公債依存の体質から脱却をするということは、私ども何とかして達成いたしたいと考えておるところでございます。確かに二兆数千億円のネット減税は、その意味では先ほども申しましたように非常につらいわけでございますけれども、しかし歳出削減の努力等々ともかく歳入補てん公債というものは六十五年度には脱却をしたい、これは何としてもやり遂げたいと存じております。  それから、いわゆるあっちこっちへ負担をお願いいたしております分でございますが、これは大問題でございまして、赤字国債を脱却しました後まず取りかからなければならないまさに大きな問題でございますから、赤字国債がなくなったから財政再建が済んだというようなわけには到底まいらないというのは御指摘のとおりでございます。国鉄の共済につきましては、先般懇談会の方々が懇談会としての結論を出していただいたわけでございますが、それを踏んまえまして関係閣僚がいろいろこれから検討を始めつつあるという段階でございます。  あれこれ米沢委員の言われますように、財政はとにかく赤字公債を出しておる財政でございますから、これはとてもとても楽になったというようなことはもう当分申せない実情でございますが、しかしだからといって消費税を増税するということは私ども考えておりません。これだけ難産をしておりますものが、そんなにまた簡単に増税ができるというふうには到底考えられません。産まれることはぜひ産んでいただきたいのでございますけれども、到底考えられない。ヨーロッパの例なんかを見ておりますと、仮にそういうことがございますときには大体直接税、それも所得税の減税との組み合わせでそういうことが行われることがある。これはそういう意味で、ならば国民が納得をされるという状況においてであろうと思いますけれども、そういうことを考えましても、消費税の税率引き上げということは私ども容易に考えられることではないと思っております。
  51. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 まず、六十五年の赤字公債依存体質からの脱却、この目標は、別に今度の減税要因がありましても取り下げたというわけではございません。振り返ってみますと、五十九年とというところにいろいろな焦点を合わせておったわけでございますが、その可能性というものがなくなって五十八年からいわゆるマイナスシーリング、それまでゼロシーリングでございますが、マイナス五%、一〇%ということで予算編成を踏み出して、その方針を今日まで貫いて、そこにまた御批判をいただくツケ回しの問題等も出てきたことは私も十分承知いたしております。そういうことでやってまいりましただけに、今度やはりこの問題についてはなお一層の歳出の節減合理化等を念頭に置きながら、この目標に向かって進むべきものであるというふうに考えます。が、その後の国債残高にいたしましても、あるいはツケ回しの処理にいたしましても、あるいは国鉄共済、もう六十四年まではいいとしまして、その先早速出てくるわけでございます。これらの対応策につきましては頭を痛めておりますが、それこそお知恵をかりながら、何とかこれはしのいでいかなければならぬ課題であるというふうに思います。  そういう問題から、米沢さんの御意見はいわゆる消費税というものの出番というような角度から御議論なさいましたが、そういう議論がありましたから、やはり財政再建計画を立てて財政再建税とすべきだという御議論もありましたし、また福祉ビジョンを立てて福祉目的税にすべきだというようないろいろ議論のあったのも、新税というものがそこに想定されますといろいろな意見が出てくるものだなというふうな感じを持って私はその話を深く聞いて勉強させていただいて、そうしてこの結論としては、確かに私どもの議論の中にも、あの五十四年の国会決議の場合にも、国民福祉の充実のためには安定した財源が必要であるという書き方をしたときにも、私自身もお手伝いをさせていただきながら、あるいはそんな考えもあったんじゃないかな、そういういろいろな模索をしながら今日に立ち至って、今度一般財源として、不公平是正という、公正感を持って国民が納税できるような、二十一世紀に向かっての安定的な税制の構築というものをお願いしておるという経過をたどったんではないかなというふうに感じます。
  52. 米沢隆

    米沢委員 問題は、いつ発動されるにせよ、古来言われますように消費税みたいなものは痛税感がない、財政当局にとっては一番便利な税金だということは当たり前の話ですね。そういう意味で、このような甘いみつが用意されるということは、従来必死になって行ってきた行革あたりが棚上げされていくのではないかとか、あるいはまた歯どめなく大きな政府になっていくのではないかとかというような心配があるということと裏表の関係にあると思うのですね。  そういう意味で第二の問題は、やはり消費税導入されるこの歯どめを一体どういうふうに考えていらっしゃるのかということが非常に大きな問題です。私は、国会答弁ではまた同じように総理はお答えになるかもしれませんけれども、一番のいい歯どめは、何しろ消費税が稼働しないように徹底的に行革を断固としてやり抜こうということであり、あるいはまた現在持っておる政府株式だとか土地だとか、処分できるものは処分して赤字国債を減らして、その分の利払い費をどんどん削減していこう、その分だけ財政的には弾力性のあるものにしていこうという、その努力を必死にすることが一番のいい歯どめだと思うのですね。そのあたりをいいかげんにして、にこにこしながら消費税を迎えるということは、断じて許してはならないという気がするのです。  そういう意味で、歯どめ論については国会があるんだからいいじゃありませんかなんという、とぼけたと言うと怒られますね、そういういいかげんな歯どめではなくて、政府みずからが行革を断固として示す。そして、いろいろと政府の手持ちの問題等について、積極的に赤字国債の残高等を減らしていくというそちらの方に全力を傾けるというのが、本当の意味で今総理が言わねばならぬ歯どめ論だと私は思うのですが、いかがですか。
  53. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 また五十四年の決議を読みますと、まさに行革、そして歳出の節減合理化、それを御協力をいただきながら一生懸命今日までやってきたわけでございます。しかし、これで済んだというような考えは全く持ってはおりません。今おっしゃったNTT株の売却収入の活用にいたしましても、確かにそういう一つの果実は生じてきたと思うんでありますが、これで済んだという考え方は全く持っておりません。したがいまして、これらの手順を進めながら、そしてより安定的な将来に向かっての税制を構築していくことをお願いしておる。まずすべてこれだけでやって、そしてその後で考えればいいというところまでは、私ども現実の問題として踏み切れない、こういうふうに考えております。
  54. 米沢隆

    米沢委員 きょう総理の決意を示される意味で、先ほどの福祉ビジョンと同時に、「行財政改革の推進について」という総務庁と大蔵省の出された資料がありますが、これについて、余り時間もありませんので、特に踏み込んだ問題等を中心にして簡単に説明いただけませんか。
  55. 百崎英

    ○百崎政府委員 ただいまお手元にお配りいたしております「行財政改革の推進について」、まず私からその概要について簡単に御説明申し上げます。  今先生がおっしゃいましたように、財政改革の推進につきましては、これまでも最重要課題の一つとして実施してまいりましたが、今後とも引き続きこれを強力に推進するということで、本年六月の新行革審の意見等を踏まえてこれからもやってまいります。  まず、内容でございますが、行財政改革の基本的な考え方でございますけれども、行政改革につきましては、いわゆる変化への対応、簡素効率化、総合性の確保、信頼性の確保、この四点に視点を置きまして、当面の課題として規制緩和などに積極的に取り組むことを述べております。  次に、重要施策についてでございますが、社会保障あるいは農業等の主要分野につきまして、制度、施策の見直しを行い、これを改革するということを述べております。  また、行政組織・定員、四ページでございますが、これにつきましても簡素効率化を図る、同時に人件費の累増を抑制する、こういう観点から今後とも厳しい管理を行うことにいたしております。  また、公社、特殊法人等につきましては、三公社の民営化後の各会社について改革の定着を図るほか、各特殊法人につきまして、官民の役割分担を踏まえて、引き続き事業分野及び内容の見直しに努めることにいたしております。  五ページに参りますが、国と地方の関係等につきましても、幅広い見地から国と地方の機能分担のあり方あるいは費用負担のあり方について検討するなど、国、地方を通じた行財政改革を推進することといたしております。  次に、規制緩和でございますが、これは新しい意味で最重点の課題と考えておりますけれども、本年中に提出が予定されます新行革審の答申を待って、流通、物流等の分野における公的規制の緩和に積極的に取り組むことといたしております。  また、補助金等につきましても、いわゆる補助金特例法の期間経過後における補助率等の取り扱いにつきまして検討を進めますと同時に、統合・メニュー化その他の補助金の整理合理化を進めてまいります。  それから、共通的な行政制度といたしまして、今国会に提出いたしております個人情報保護法案の早期成立等を図るというようなことを考えております。  最後に、国民立場に立った親切な行政を実現するために現内閣において開始いたしましたさわやか行政サービス運動、これの全国的、持続的な展開を図る、こういうことを考えております。  私からの説明は、以上でございます。
  56. 篠沢恭助

    篠沢政府委員 ただいまの紙のうち、財政改革の基本的考え方が一ページの末尾から二ページにかけてございます。  ポイントは、厳しい財政事情のもとで歳出面における既存の制度、施策の抜本的見直しをいたしまして、第一に、昭和六十五年度特例公債依存体質からの脱却と公債依存度の引き下げに努めたい。それから国民負担率について、臨調答申の趣旨等を踏まえ、その上昇を極力抑制してまいりたいということを述べております。  またさらに、今後の歳出歳入のあり方について具体的な考え方を明らかにしておるわけでございますが、この中で、国債費のシェアの縮小、政府保有株式等の売却についての考え方、いわゆる財政支出の繰り延べ措置の処理等について触れているところでございます。
  57. 米沢隆

    米沢委員 両省から簡単にコメントをいただきましたけれども、これをつくるまでには特に行政改革、財政改革という問題はかなりお役所同士の綱引きもありましょうし、難しいところでもありましょうから、努力は多といたします。しかしながら、今御説明いただいたように、この文書を見る限り、数字的に各項目ごとにタイムスケジュールみたいなものが全然示されてないのですね。財政再建だって、財政改革の道筋が全然示されてないわけですね。せめて私は、行政改革にしても財政改革にしても五カ年計画ぐらいに位置づけて、来年からはこういうことをやります、どれぐらいで解決したいと思うとか、あるいはこの五カ年の終末において非常に難しいから大体結論はこのあたりに来ておるでしょうとか、せめてアクションプログラム的なものを出さないと、行政改革をやりますというただ文書だけであって、できなかったらごめんなさいで終わるようなものでは、これは行政改革に力を、腰を入れるという議論にはならないと私は思うのですね。毎年毎年、歳出削減とか行革等は常に重要な課題でありますなんという演説では、私は納得できないのですよ。できれば、こういういい文書が出てきました、まだこの中身については我々不満がたくさんありますが、これはまた後の委員会で逐次個別の問題として議論をしたいと思っております。  きょうは各大臣、関係者来ていただいておりましたが、残念ながら個別の問題に入り込む時間がございません。ただ共通して言えますことは、何しろアクションプログラムがない。これは書いただけで、できなかったらできないという代物になる可能性もある。この前も私は行革について総理に申し上げたときに、担保がないということですね。計画をつくるというのは縛られて嫌なことだ、責任をまた云々される。しかし計画がないということは、逆にまた無責任になる、なってもいいということにもなる、悪く言えば。というたちのものでございますから、ぜひこの「行財政改革の推進について」をできるだけ年次を決めて、あしたからすぐやれとは言いません、言えないものもたくさんありますから、そういう意味ではやはりできるものから、あるいはできないものはこういう年次で頑張っていくんだ、そういうアクションプログラムを示してもらわなければ納得できない話だ、こう思っておるのです。その点について大蔵省あるいは総務庁の見解を聞きたい、これが第一点。  例えば財政支出の繰り延べ措置の処理方針、ただ、今からやるのでございますではちょっとわからない。一体どういう方針でどういう年次でやっていくのかとか、あるいは先ほどから言うておりますように特例公債の償還計画、こういうのを一体どういう方針でやっていこうとされておるのか、あるいはまた国債の償還財源としての株の売却益、NTTのその後をどうするか、あるいは日たば、日本たばこ産業株式会社の株放出等についてどういう前向きの議論をしようとされておるのか、そこらが皆目わからない。  あるいは国鉄の長期債務の処理計画、借金が借金を生むといいましょうか、利子が利を生んでかなり大きなものになりつつありますね。ところが、残念ながら国鉄の用地が売れない。ただ利子だけが加算されて、結果的には、国民負担が十四兆何ぼかあったはずですね、その分だけどんどんふえていくんですね。そのあたりもまさに隠れた日本の政府としての借金でございまして、国鉄債務の処理に当たり一体このあたりをどうするんだ、利が利を生むのを横に見ながら土地は売れませんわでは、こんなの問題にならない。JRの株の放出等についてももっと真剣に具体的に議論をしてもらわないと、結果的には国民負担に返ってくるのですから、そのあたりを運輸大臣は一体どう考えておるんだということをお聞きしたい。  そして、最後になりましたが、再度申し上げますが、やはり行革の年次的なアクションプログラムをぜひつくってもらわなければならないと思っておりますが、総理や大蔵大臣や運輸大臣やその他の皆さん方、ぜひ前向きに答弁いただきたい。
  58. 高鳥修

    ○高鳥国務大臣 今回お示しいたしました行革の中期見通しにつきましては、さきに六十三年の六月二十九日、新行革審から出されました意見具申、これを踏まえまして、そこで提起されました問題あるいは臨調、旧行革審以来御論議をいただいてまいりました問題を整理いたしましてお示ししたわけであります。  中には、例えば林野会計などにつきましては七十二年度までに均衡を見るとか、あるいはまた国立病院や療養所等につきましてはおおむね十年を目途としてというようなことをお示ししておりますが、その他につきましては大体中期計画ということで考えております。その中期というのは、三年ないし五年の間にひとつぜひ不退転の決意を持ってやろうということで政府としてお出しをしたものであります。したがいまして、この文言につきましては当然のことながら各省庁においておおむね大筋において了解しているところでありますが、行政改革は御承知のとおり総論賛成、各論反対ということになりがちでございますので、ぜひひとつ広く国民の御理解を得て推進してまいりたいと考えておりますから、よろしく御鞭撻をお願いいたします。  なおまた、アクションプログラムの具体的な日時を示せということでありますが、六十四年度の行革大綱作成に際しまして、できるだけそのような方向で努力をしたいというふうに考えております。
  59. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 行革の大眼目でございました国鉄改革、新生JRが出発いたしまして、大変軌道に乗りまして売り上げが伸び、黒字も出ておるわけでございますけれども、その反面、そのおかげか、片っ方にございます御指摘の膨大な長期債務が忘れられがちでございまして、清算事業団の用地あるいはJR株式を売り払ったお金は、この長期債務を償還するための貴重な財源であります。あくまでもそのための財源でございます。  土地に関しましては、地価の高騰で凍結でストップがかかりまして、非常に二律背反の状況でございますが、いずれにしろ基盤整備を行いまして約十年かけて売却することにしておりまして、その額は六十二年度の当初の価格で大体七・七兆になるものと見込んでおります。また、事業団が保有しておりますJR株式でありますけれども、とらぬタヌキの皮算用になるかもしれませんが、実績をうんと上げましてできるだけ高く売ることで、できればあの膨大な長期債務をツーペイにでもできればという希望がございますけれども、いずれにしろ安定的な経営の実績が積み重ねられることが不可欠の条件でございまして、会社の発足後の経営の動向などを十分見きわめた上で、売却の時期について等判断してまいりたいと思っております。  なお、事業団の抱えております長期債務の処理については、本年一月に閣議決定されました償還基本方針において明らかにしておりますとおり、用地並びにJR株式の売却収入などの自主財源を充ててもなお残る長期債務等については、最終的に国において何らかの方法を講じて処理するということでございますけれども、それもいろいろな状況を勘案しまして、新たな財源、措置については、その時点での雇用対策あるいは用地売却等の見通しその他を勘案しまして、また歳入歳出の全般的な見通しとあわせて検討、決定することとしております。
  60. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほども一部申し上げましたが、とにかく特例公債をやめるということが今私どもにとってまず最初の仕事である、何をするにも新しく借金を、赤字公債を出しておったのではいけないということ、これを優先して考えたいと思っておりまして、先ほども申しましたようにいわゆるあちこちに負担をお願いしております分、ツケ回しとおっしゃいましたが、それはその段階においてひとつ計画的に考えるということと存じます。  国鉄清算事業団については今運輸大臣が言われましたので、NTTの株の売却については、これはいわば施策が軌道に乗っておりまして、昨年百九十五万株、ことしは株数を減らしておりますが、市況を見ながら毎年これは売却をいたしまして、そのときの満期になります国債の償還に充て、あとは社会資本整備等に使うということでございます。  たばこは大変難しい仕事を持っておりますものですから、まず会社として株式が放出できるだけのいわば経営をしてもらわなければなりませんで、鋭意関係者が努力中でございます。
  61. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私にも御指名がございましたが、思い出してみますと昨年の十二月でございましたか、本院の予算委員会において永末さんから、ビジョン、中長期計画を福祉政策にわたってのものを出すべきである、こういう御質問があって、それで先ほど申しましたように、現行の制度、施策をそのままの前提においてのものを一応はお出ししてみた。さらに本院においていろいろ議論がありまして、詳しいものを出すべきだ。それで六月でございましたか、いわゆる塚本三条件というものがありまして、それからいろいろな形を我々も検討させていただいて、ただ私自身、長い間米沢さんと議論しながらいつも考えておりましたが、経済見通しというようなものは、例えばあれだけ議論した六ないし七%の名目成長率、四%の実質成長率、三%の消費者物価の上昇率、二%の失業率、一%の卸売物価の上昇率というようなことを申しましたのも、結果として大変変わってきておるわけであります。したがって、計画経済下にない場合、本当に中長期のものを出すことはなかなか困難であります。したがって私は、今回御理解をいただけるとするならば、お出ししたものは、言ってみればこれは一つのまさに哲学に基づく青写真であり、そしてそれの実行計画についてはやはり五年刻みぐらいというのがいつもながら――ただ、老人医療なんかは今二年で終わりではないかとおっしゃいましたが、大体において五年計画というようなところで御議論をいただけるというのが、自由主義経済下においては、歳出を伴う施策でありますだけにそういうもので御理解をいただきたいものではないかな、こういうふうに考えております。
  62. 米沢隆

    米沢委員 質疑時間が終了いたしました。  私は、この問題は少なくとも政府を挙げて懸命に努力をしてもらわねばならない重要な課題でございますから、例えば新行革審等にもこの案を出して、そこでまた議論をしてもらうというような措置をぜひとってもらいたい。個別の問題としてまだここに書いてある以上の問題、たくさんあり過ぎるぐらいあるんでございますが、これはまた同僚議員に質問してもらいます。  残念ながら、大好きな建設大臣、御答弁いただくチャンスがなくて申しわけございませんでした。おわびを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
  63. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 これにて米沢隆君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  64. 金丸信

    金丸委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。池田行彦君。
  65. 池田行彦

    ○池田(行)委員 私は、現下最大の政治課題でございます税制の抜本改革の問題につきまして、先般野党各党の共同提案に係ります税制に関する基本構想を中心にいたしまして、自由民主党の立場から所見を申し述べ、また、政府に対しまして、本構想に対する御見解、そして政府提案しておられます税制改革法案考え方につきましてお伺いしてまいりたいと存じます。本来でございましたら、野党の方々から御提案でございますので御提案者の方に御質疑申し上げるのかもしれませんが、委員会運営のルールに従ってそういうようにさせていただきたいと存じます。  このいわゆる基本構想を見てまいりますと、最初の「趣旨」のところで、まず「国民合意の税制改革のために」とこううたわれておりますし、また五つの原則の第一でも「国民合意の原則」、また五つの手順の中でも第一に「民主的ルール」を、そして最後にまた重ねて「国民合意」ということを強調しておられます。  私どもが政策決定してまいります場合に国民の合意を得ていくということは当然大切なことでございますし、とりわけ税というものは国民皆様方に御負担をいただく、国民生活に大きな影響を与えるところでございます。ましてや今回のようにシャウプ税制改革以来という抜本的な改正となりますと国民皆様方の御納得を得ながらこれを進めていくというのはもう当然のことでございまして、この点に関しましては私どもも何らの異論のないところでございます。そのような観点から、これまでも国民皆様方の御理解を得るための努力は営々と続けてこられたと思うのでございます。  私ども自由民主党におきましても、今回の税制改革に限りましても、党の税調におきまして実に七十回、延べ百七十時間に及ぶ慎重な審議を行ったところでございまして、また、国民の各界各層の代表の方々からもいろいろ御意見をお伺いしたところでございます。そうして、政府税制改正提案されました今日におきましても、我々、党といたしましても、中央あるいは地方あらゆる組織を通じまして、国民皆様方にこの税制改正についての御理解をちょうだいすべく努力をしておるところでございます。  政府におかれましては、当然のこととしてこれまでもそのような御努力を続けてこられたと思います。ことしの税制改正だけじゃなくて、五十九年の末に抜本改正の必要性が政府税調によって指摘されて以来、あるいはさかのぼりますと、昭和五十三年でございますか大平内閣当時に一般消費税が提起されて以来、本当に政府におきましても税制改革につきましてはありとあらゆる角度から検討を加えられ、また国民の理解を得べく努力されたと思うのでございます。その間竹下総理は、ほぼ全期間にわたりまして政府あるいは党にあって税制改革を推進する中心的な責任のあるお立場にあられ、今日はその最高責任者としてこの課題に取り組んでおられるわけでございます。  竹下総理は、これまでの国民合意取りつけのための布石と申しましょうか、いわば来し方を振り返られましてどういうようにお考えなのか、そして、今日なお合意取りつけの努力が足りないじゃないかという批判を寄せられることに対してどのようなお感じだろうか、また、現在までの御努力の結果どの程度までに国民の中でコンセンサスが形成されつつあると認識しておられるか、その点をまずお伺いしたいと存じます。
  66. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 来し方を振り返りと大変文学的表現でありますが、事実、五十三年度のいわゆる一般消費税(仮称)を五十五年度から導入の準備を進めるべきであるという答申以来、確かに私はたまたまその衝にずっと継続してあったわけでございます。やはりあのときの五十四年の決議案にありますように、がしかしその仕組み、構造等について国民の理解と協力を得るに至らなかったという認識というのは、私はそれなりに、当時お手伝いをさせていただきながらそういう感を深くいたしました。  そこで、言ってみれば、財政再建に関する決議でございますが、一つの手順が、まず行政改革をやり、そして歳出の節減合理化をやり、さらに税制問題に改正等をやってこれに当たるべきだ、こういう趣旨というものはやはり私どもの頭の底に残っておりまして、言ってみればその手順で今日までいろいろ苦しいことを皆さん方の合意を得ながらやってきたのではないか。そこに既に果実をもたらしたあるいは電電の改革問題等もあるでありましょう、そしてまた歳出削減、これはつけ回しとかいろんな御批判を受けながらも国会の協力を得ながらここまでやってきた。したがって、私なりには、十年の歳月をかけてお互い税制問題について問答を続けてきたんじゃないですか、こういう気持ちもありますが、振り返もてみると、私自身がたまたまその衝にあったのであるいは自意識、自覚が過剰かなという反省も率直にいたしておるところであります。  一方、この五十九年に、先日山下元利委員からお話がありましたが、少し本改正に踏み込んだ改正がなされまして、そうして抜本改正の必要性を五十九年末の答申において指摘され、それから前内閣時代六十年の九月諮問をして、税制抜本的見直しについての答申というのを六十一年十月にいただき、さらに私から諮問をいたしまして、その後、御案内のように地方公聴会をやりましたりあるいは中央の公聴会をやりましたり、あるいは納税者たる業界代表の皆さん方の意見を聴取したりという意味においては、私はコンセンサスというものが逐次できつつあるという私なりの意識は持っております。  何としても、国民のコンセンサスが那辺にあるかということは、やはり国会そのものが国民の代表の皆さん方によって構成されるわけでございますから、したがって、ここの議論が深まることとまさに並行して、私は国民のコンセンサスというのが形成されていくべきものであろうという期待と願望を持って臨んでおるところでございます。
  67. 池田行彦

    ○池田(行)委員 ただいま総理の方から、これまで政府としてもあるいは総理御自身としても大変な御努力をされたというお話でございまして、しかしながら、その衝にない方々、国民一般の方々にはまだ十分の認識がないのかな、自分がかなりコンセンサスができたと思うのは自意識過剰かな、こんなお言葉がございました。そしてさらに、そういった合意形成のために一番大切なのは国会における審議ではないかという御指摘があったわけでございます。私もまさにそうだと思うわけでございまして、現在こうやって税制改革問題が各党出席のもとに審議されているということに、私は個人的にもある種の感慨を覚えているわけでございます。  と申しますのは、私、一昨年夏から昨年秋にかけまして実は本院の大蔵委員会の委員長の仕事をさせていただきました。そのときも税制改正の問題が大変重要な課題として浮上しておったわけでございまして、私も何としてもこの大きな問題に全力をかけて取り組もう、こんな決意でおったわけでございます。とりわけシャウプ税制以来の改革と申しますが、シャウプ税制をつくりましたときの大蔵大臣は池田勇人という男でございまして、たまたま私の義父に当たるわけでございます。そしてまた、その当時蔵相秘書官として大変なお仕事をされました宮澤喜一先生が大蔵大臣としてお仕事をされる、これも何かの因縁だな、こんな感じを持ちまして、実はその当時一つのテレホンカードをつくりました。  失礼なんですが、池田勇人を配し、大蔵大臣を配し、その下へちょっと私の顔を出しまして、昭和二十五年の大蔵大臣が、「わしのつくった税制も時代おくれになった。君たちの手で立派につくり直してくれ。」このようにしゃべっております漫画のテレホンカードでございます。あれこれ申し上げるまでもなく、本当にこの間の経済社会変化というものは大変なものでございまして、その間いろいろ手直しをしたといいましても、よくぞ今日までもった、一日も早く税制の立て直しと申しましょうか抜本改革をやり遂げなければならぬと思うわけでございます。  しかしながら、昨年は御承知のような経緯でございまして、マル優制度の見直しあるいは一兆五千四百億円の所得減税というものはできましたけれども、売上税法案委員会に付託されることもなく廃案の憂き目を見たわけでございます。そのような反省の上に立っての今回の税制改正でございますので、今回は幸いにして各党御出席のもとに審議が進んでおります。国民の負託にこたえるためにも国会審議を促進してまいらなければいけない、そして国民の意見をこの委員会の場で聴取するためにも公聴会なども開催していかなければならぬと思うわけでございます。これは政府答弁を求めるのではなくて、委員長初め委員の各位にお願いしておくことだ、こう思う次第でございます。  ところで、この野党の皆様方基本構想でその総論、「趣旨」の部分を見てまいりますと、大分政府案に対する御批判もあるようでございます。理念目標もないじゃないか、総論から各論へという筋も外しておるし、世界の間接税に例のない、問題の多い消費税を入れておるじゃないか、政府提案に対して大変な、さんざんな酷評でございます。  しかし、まず理念目標もないじゃないかという点についてでございますけれども、そもそも税制あるいは財政というものは、そのこと自体も国民経済なり社会なりにいろいろな影響がございますけれども、概して申しますとそのこと自体が目標ではない。それはやはり政治なりなんなりには、福祉をどうするか、教育をどうするか、あるいは国の安全をどうするかというふうな目標があるわけでございまして、いわばそういったものを実現していくための手段という側面が税には大きいのじゃないかと思います。そういった面から申しますと、税について理念を出すとか目標を出すというのはなかなか難しいことじゃないか。これまでの税制改正提案の中におきましても、余りそういったことが表で議論されたことはないかと思うのでございます。むしろそれは審議を通じまして、国の政策全般がこれからどのように運営されていくべきかというような議論の中で明らかにされていくというのが通常であったかと存じます。  しかし今回は、抜本改正であるということを考慮してでございましょう、政府におかれましても特に税制改革法案というものを提案されまして、その中で今回の税制改正理念というものを簡潔にではありますが示されておられると思いますし、また、このような税制改正を通して一体国民にどういう社会を約束するかという野党の皆様方の御指摘に対しましても、例えば社会保障の面につきましては、けさ方もいろいろお話がございましたが、つとにいわゆる長寿社会対策大綱というものを提案されている。この三月には、二十一世紀初頭のそういった社会保障関係の給付と負担の展望がどうなるかという試算も出されておる。そしてまたけさ方は、いわゆる福祉ビジョンと申しましょうか、「長寿・福祉社会を実現するための施策の基本的考え方目標」というものも示されたわけでございまして、その理念目標というものは明確な形で、そして計数的に出すのはなかなか難しいかと存じますけれども、政府政府なりに最大限の努力をしておられるのだなといった姿勢を私は今回の議論を通じて感ずるわけでございますが、今回の税制改正理念なり目標につきまして簡潔に、こういうことを考えているということを大蔵大臣の方から御教示いただければと存じます。
  68. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどシャウプさんが御尊父様とシャウプ税制をつくられたときのことをお話しになられましたが、とにかくそのときの我が国の一次産業のGNPに占める比率は二六%ございました。今は二・八%でございますので、全く違う国になってしまいました。ですから、その税制が続いたということはある意味でシャウプさんが非常に賢い勧告をされたということにもなりますが、何としてももう到底無理でございまして、殊にそれが直接税、所得税は中堅給与所得者のところに一番重税感になって、そこから不公平感が生まれている。国民の現在の税制に対する不公平感というのは、おのおのの立場のおのおのの不公平感がおありと思いますが、一番大きな部分はやはりそういう給与所得者の部分である、どうかしなければならない。法人税も外国と比較をされなければならない時代でございます。殊に、我が国はこれだけ所得平準化し高くなりましたので、社会の共通の費用は薄く広くみんなに負担していただいて高齢化社会に備えるということも大事なことであります。そういう意味所得消費資産、バランスのとれた税制を、文字どおり四十年ぶりに、しかも十何年先の二十一世紀を控えてここで確立したいというふうに考えておるところでございます。
  69. 池田行彦

    ○池田(行)委員 この基本構想の「趣旨」の中の、その最後にございます批判でございますけれども、基本構想から個別の各論へという当然の筋を無視して、抜きにして、世界の間接税制に例のない仕組みの、問題の多い消費税を急いで強行するのはいかがであろうか、こういう指摘があるわけでございます。  私は、この御指摘は、せっかくの御提起ではございますがどうも私の認識と一致しないわけでございまして、現在の世界の税制というものを見てまいりますと、多くの国で広く消費一般に薄く税を負担していただくといったタイプの間接税が柱として入っておると思います。そして、今回提案されております消費税というのは、取引の各段階に課税し、そしてまた前段階の仕入れに係る税額を控除していくという仕組みでございまして、これはヨーロッパ諸国を中心として多くの国で採用されておりますいわゆる付加価値税と同じような類型に属するものでございまして、このような税制を、消費税を、世界に例のない、問題の多い消費税という御指摘はどういうことなんであろうかなという感じがいたします。現在のような日本の個別物品税体系というものが、むしろ現行の税制というものが世界に例のない、問題の多い税体系である、こんな感じがするわけで、これは全く逆じゃないかという感じがいたします。  また、もちろん先進国の中でもいわゆる付加価値税を採用していない国があるじゃないかという御指摘は、そうでございます。何しろ最大の米国がそうでございます。しかし、米国の場合にも州税におきましてはいわゆる小売売上税という課税ベースの広い消費税があるわけでございますし、また、現在ちょうど大統領選挙が行われておるわけでございますけれども、その帰趨はともかく、ポスト・レーガンの政権がどのような形になるにしろ、今の双子の赤字、その中でも財政の赤字を解決するために真剣に考えるならば、付加価値税というものが米国においてすら真剣な検討課題になってくるんじゃないかなということを指摘される識者も少なくないわけでございまして、あれこれ考えてまいりますと、私は、現在御提案になっております消費税というものは、世界の現在の税制、これの大勢に沿ったものである、このように考える次第でございますけれども、政府の御見解をお伺いしたいと思います。
  70. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはもう御指摘のとおり、OECDの国の多くがいわゆる一般消費税、付加価値税といったようなものを採用しておりますし、アメリカも州は小売課税がたくさんございます。  で、個別消費税というものが、物品税をとりましてもちょっと大変説明のしにくいものになっておりますし、また酒税でございますと、何か外国の酒を輸入をさせないための方便であるようなことも国際的に言われたり、個別消費税がやはりサービスの大きくなった時代になりますととても今のままでは無理だということになってまいっておりまして、そういう点からもこのような消費税というのは、やはり世界の大勢になりつつございます今、我が国としても当然もう考えていいことではないかというふうに思うわけでございます。
  71. 池田行彦

    ○池田(行)委員 次に野党の方で基本構想で御指摘されている点は、第二の原則として公平・公正の原則、そのために不公平税制是正を徹底せよ、こういうことを強調しておられます。  公平の原則というのは、もうその御指摘をまつまでもなく税の世界では古今東西を通じての最大の原則でございまして、これはもちろん常に公平が保たれるように税制を見直ししながらやっていかなくちゃいかぬ、それは当然でございますし、今日までもやってこられたと思います。しかし、何か個々の税目に見られます不公平、この是正というものを全部きれいにしなくてはその先へ進んではいけないんだと言われるのはいかがかなという感じもするわけでございます。  これまでもいわゆる不公平税制、これはもともと不公平あれかしと思ってやったわけじゃない、それぞれのそのときどきの経済社会の実態との関係で政策的にそのような措置がとられたわけでございますが、それがその社会の変化の中で不公平であるという指摘を受けるようになっておるわけでございますが、いずれにしましても、そういった個々の不公平につきましては毎年毎年の税制改正でもその是正に努力が払われてきたわけでございますし、今回の政府の御提案の中でもいろいろその是正措置が講じられておるのだ、このように思うわけでございます。そういった意味で、現在まだ残っておって不公平だと指摘されるものは、ある意味では非常に難しい、問題の所在はお互いにわかっておるんだけれどもいろいろな事情でなかなか手をつけにくい、そういうものばかりになっているんじゃないかという感じがいたします。そういったことがあったからこそ当委員会でもいろいろな議論がございましたし、また、与野党の間でもこの問題をめぐって非常に真剣な討議が尽くされたわけでございます。そういった中で、今回これまでに措置されたもの、あるいは今回の改正案に含まれているもの以外につきましても、与野党協議あるいは当委員会等の議論を通じて、これからの将来の改正なり処理の方向というものが大分見えてきたものがあると思うのでございます。  そのように個々の不公平の問題についてはいろいろその努力は払われておるわけでございますので、それはそれとして今後とも真剣な努力をしていくといたしまして、やはり税体系全体の問題も考えなくちゃいけないのではないか。  今国民の中に日本の税制が非常に不公平であるという感じが充満しているというのは、いろいろなことがございますけれども、個々の不公平というよりも税体系全体が、先ほど大蔵大臣からもお話がございましたように、余りにも直接税に偏った姿になっている、しかも、それがまたサラリーマン層に非常に大きな負担になっている、そういったことが税体系全体として不公平感を招いているという感じがするわけでございまして、個別の不公平是正が成るまでは体系には手をつけるなと言われては、これはいわば最大の不公平を温存しておけ、こんなことになるんじゃないかという感じがいたします。むしろ私は、この際思い切って税体系全体を見直すという政府提案を真剣に検討いたしまして、審議いたしまして、国民不公平感を払拭する道を歩むべきだ、このように考える次第でございますけれども、大蔵大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  72. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のように、不公平、不公正を看板にしている税法というものはこれは国会がもとよりお通しになるはずがないのでありまして、やはり一つ一つの政策目的を持って行われたことである。ただ、時代とともに政策目的が変わる、あるいは達成されたというような場合にそれを見直すということは大事なことであって、国会でそういう御議論がございますのは私はごもっともなことだと思うのでございます。  ただ、今考えますと、最大の不公平は、やはりおっしゃいましたように所得税のそれも給与所得の中ぐらいなところ、ここで非常に累進がきつくなって、しかも住宅ローンの返済であるとかお子さんの教育であるとか、ただでさえ苦しいところへちょっと昇給するとすぐ上の税率に行く、どうも自分だけが重荷をしょっているという感じ不公平感になっている部分、これが私は非常に大きな部分であると思います。この点は制度としてもそうでございますし、池田委員は行政もおやりになりましたのですが、行政の面でも給与所得と事業所得というようなことはございます。やはりそこが一番大きな問題ではないかというふうに考えるわけでございます。
  73. 池田行彦

    ○池田(行)委員 私は、ただいま御答弁をいただきましたように、やはりこの体系全体の見直しが不公平是正の最大の方途であると考える次第でございます。しかし、そうは申しましても、やはり個別の不公平につきましても各党から御指摘のございますように真剣に取り組んでいかなくちゃいかぬ点があると存じます。  そして、先般来、先日来の御審議の中で資産課税の問題につきまして、土地あるいは証券等の問題につきまして各委員からいろいろな角度から御指摘がございました。これは確かにそのとおりでございまして、最近株式があのような状態になっているとか、それから土地が非常に急騰している、そういった世の中で、先般村山委員でございましたか御指摘になりました、そういった土地のあるなしによって新しい富裕階層、ニューリッチとニュープアが出てきておるという、それは確かにそのようなことがあると思うのでございます。これは私どもは無視してかかるわけにはいかぬわけでございます。  そういった意味で、政府におかれましても、当然、株式土地などを中心とします資産課税につきまして、その資産の保有にかかるもの、あるいはその譲渡益にかかるもの、あるいはその資産を保有することから生まれてくる収益にかかるもの、いろいろな資産にかかる、何といいましょうか、課税を考えるわけでございます。そういったことについても相当これまでにも措置をしておられるし、今回の御提案の中にも実はかなり含まれているように私は見受けるわけでございますけれども、どうも問題が非常に大きいだけに、不公平感の最近の大きな原因になっているだけに、あそこも足らぬじゃないか、ここもおかしいじゃないかという御指摘ばかりが先行しまして、政府は何もやっていないじゃないか、こんな感じ国民の中に出ておるのじゃないかと存じますので、この際、今次の税制改革案で提案されている措置あるいは最近の税制改正の中で講じてこられた措置につきまして、これは政府委員の方からで結構でございますので、御説明をちょうだいしたいと思います。
  74. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 戦後の税制におきましては、戦後の荒廃の中からいかにして資本を蓄積し国際競争力をつけるかということが経済政策上の大問題とされてきたところでございますので、課税上におきましても、資産につきましては、これは資本蓄積の促進あるいは資本市場の育成といった観点からもろもろの特別な施策が講じられてきたところでございます。貯蓄につきましては、個人貯蓄はその大半はこれを非課税とする、あるいは株式譲渡所得につきましてはこれは原則非課税とするというふうなのがその典型でございました。  貯蓄課税につきましては、昨年、改正を御提案してお認め願いまして、従来の少額貯蓄非課税制度という制度は老人等に対する非課税制度というふうに改正をさせていただいたところでございます。今回は、株式譲渡所得につきましては、原則非課税というのを原則課税の方式に改めさせていただくということで提案をいたしてございます。これが従来の資産課税につきましての大きな変革ではなかろうかと思うわけでございます。  それから、資産課税につきましての特殊なものとしては相続税がございますが、この相続税は、従来昭和五十年以来これを改正をいたしてございません。相続税資産の再配分と申しますか、そうした機能ももちろん期待されているところでございますけれども、何分にも十数年間これは今まで見直しをしてきてないということから、最近の地価の上昇株式市場の活発化、金融資産の増大ということからいたしまして見直しを行うべき時期に来ているということでございますので、今回、課税最低限の引き上げ等々をお願いいたしてございますけれども、これはまだ改正前の課税水準を上回る程度のものでございますので、軽減合理化とは申しておりますけれども、これは合理化の方向が大きいのではないか。  また、この相続税改正の一環といたしまして、最近の地価の上昇を反映いたしまして、土地をもって相続財産とすることによりまして租税負担の軽減、回避を図るという傾向が見られるところでございます。これはこの委員会におきましてもいろいろ御議論をいただいているところでもございますが、今回は、三年以内に取得した土地につきましてはその取得価額で評価をさせていただくということでの御提案をさせていただいているとごろでございます。  それから、大きな資産課税としては土地の問題がございます。土地につきましてはこれまでも随時見直しを御提案申し上げてまいりました。去年の改正では超短期重課の制度をお願いいたしました。また、個人の事業用資産の買いかえの特例の縮減合理化もお願いをいたしたところでございます。今回は、法人が借入金をもちまして土地を取得し、その借入金の利子を損金算入とすることによりまして法人の税負担の軽減、回避を図るといった傾向が最近見られるところでございますので、借入金の利子につきましては原則四年間は損金算入をいたさないという制度をただいま御提案申し上げておるところでございます。  この一両年の改正資産関係の国税としての見直しはこんなところでございます。
  75. 池田行彦

    ○池田(行)委員 ただいま御説明がありましたように、資産課税、その中で土地の問題につきましても政府としてもいろいろ工夫はしておる、措置はしておられるということがうかがえるわけでございます。しかしながら、国民一般の方々のお話を伺いますと、いや、そうはいっても地価はこんなに暴騰しているじゃないかとか、首都圏ではほんのささやかなマイホームという夢も夢のまた夢、とても実現できない話になってしまったとか、土地をめぐりましては、失礼ではございますけれども政府の無策を追及する声が、決して野党だけではなくて、私ども自民党の支持者の中にも少なくない現状でございます。税制の中でもこれまでもいろいろと苦労はしてこられたわけでございますが、なかなかうまくいかない。これはやはり土地政策全体をもう少し総合的に考えていく必要があるのじゃないのか、税制だけに荷をしょわせてしまうというところに無理があるのじゃないか、こんな感じがするわけでございます。  政府におかれましても、総合土地対策要綱にもいろいろと、土地の所有には利用の責務が伴うんだ、こういうことをうたわれましたり、あるいは土地の利用に当たっては公共の福祉を重視しなくてはいかぬのだ、こんなことも主張しておられるわけでございますし、また、現在土地に関する基本法というものを準備されておるというふうにお伺いしております。そういった意味で、土地をめぐる総合的な対策というものができて、その中の一環として土地税制というものが組み込まれて初めて税制も期待される機能を果たすことができるのじゃないか、こんな感じがするわけでございますけれども、国土庁長官土地対策についてこれからの方向、その中でただいま申しましたように利用の責務が伴うとか、あるいは公共の福祉を優先するべきだという考え方についてどのようにお考えになるか、お願いいたします。     〔委員長退席、海部委員長代理着席〕
  76. 内海英男

    内海国務大臣 土地対策につきましては、ただいま御指摘のように、これまでにも国土利用計画法による監視区域の機動的な運用、あるいは不動産業あるいは金融機関等に対する行政指導、こういった形で地価の抑制ということについてはそれなりにやってまいりました。土地税制等につきましては、今大蔵省当局から御答弁がございましたが、そういった各種の施策を講じてきたところでございます。今後とも政府一体となって総合土地対策要綱に基づきまして、土地税制の活用を含めまして、監視区域の機動的な運用、さらに諸機能の地方分散、それから住宅宅地の供給の促進、こういった面を推進していく必要があると考えております。  また、ただいま御指摘がございましたように、土地対策を強力に推進するためには、土地の公共性、社会性を明確化する必要もあるかと思います。また、土地については公共の福祉を優先させる、利用の責務を伴う、こういうような国民の共通の認識を確立させることもまた必要なことではないか、こういった意味でこのたび土地基本法というものを考えて、この前野党四党から御提出になっております土地基本法案も参考にさせていただきながら、各界各層の有識者の方々のお集まりをいただいていろいろ御論議をいただいて、土地基本法の法案提出ということについて目下慎重に検討を進めているところでございます。内容は、ただいま申し上げましたように、公共の福祉を優先させる、利用の責務を伴う、こういったことも主眼として国民の共通認識を持ってもらう、こういうことを目標に考えております。  以上でございます。
  77. 池田行彦

    ○池田(行)委員 この問題については、実は大蔵大臣もたしか十年くらい前、昭和五十三年ごろに、大蔵大臣が主宰しておられます政策研究グループですが、平河会で「土地の公共財としての活用」ということを提言された。そういうのを拝見した記憶がございます。十年前という非常に早い時期で先見性があったと申し上げるべきなのか、あるいはその時代にもう既に大変な問題であったのにいまだにそれについて有効な措置が講じられてないということに施策のおくれが甚だしいと言うべきなのか、そういうようなことでございますけれども、もう早くからこの問題を重要課題と考えておられました大蔵大臣といいますか宮澤喜一先生の御所感、御感触をお伺いしたいと思います。
  78. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 やはりこの土地価格土地問題というのは、見ておりますと、何年かのサイクルで起こってくるようでございます。今度のは今度の理由があったわけでございますけれども、あのときに私がおっしゃいますようなことを申しまして、所有権と利用権というものを分けて考え、所有権を否定するという意味じゃもちろんございませんが、そういういろいろ議論の中で、しかし国土利用計画法のようなものが制度としてはできたわけでございますね。できたわけでございますが、それがまた、ある事態が起こりましたときに急に発動できなかったり、なかなか発動しにくかったりということが一つあるのではないか。今度のようなことは、これはもっと程度がひどい程度でございますし、したがって、国土庁長官の言われますように、基本から考え直すということが大事なのではないかというように考えております。
  79. 池田行彦

    ○池田(行)委員 いずれにいたしましても、土地の問題は本当に今国民の各界各層の中でいろいろな観点から、不満と申しましょうか問題があるということは指摘されておるわけでございますので、政府におかれましても、税制はもとよりでございますが、土地政策全般についてどうか真剣な取り組みをここで期待しておきたいと存じます。  また野党御提案基本構想に戻りまして、この中で、第三の原則として「総合課税と応能負担の原則」ということをうたっておられます。その中では、総合課税主義を貫くということ、それから社会の変化に即応する応能負担原則の確立、さらに直接税を根幹とし間接税を補完とする制度をとる、こういうことを主張しておられるわけでございます。  私は、応能負担の原則、担税力、能力に応じて税を負担していただくというのは、これは当然のことでございますが、今回の政府税制改正の御提案でも、当然そこのところは大切に考えておられるのだと思うのでございます。そして、何となく野党の御主張を聞いておりますと、消費税導入はけしからぬという御指摘でございますので、応能負担の原則というのはやはり所得を中心に見なくちゃいけないのだ、消費を尺度にして課税するということはこれは担税力に応じない課税なのだということを前提にしておられるような気がするのでございますけれども、私は、現在の世の中、社会の状態を見ますと、もとより所得は非常に大きな能力の尺度でございますけれども、消費だってこれまた重要な担税力の尺度ではないか、このように考えます。この二つの尺度というものをうまく組み合わせながら、あるいはさらに資産の関係、これも組み合わせながらやっていくというところに、本当の意味での応能負担の原則が実現するのじゃないかと考える次第でございます。とりわけ、最近よく言われる話でございますけれども、保育所へ行きますと、どうしてもあちらの方の方が裕福だなと言われる人が、表向きの所得が低いものでございますから安い保育料で済んでおるとか、あるいは学生さん方の奨学資金についてもそういうことが見られる、いろいろなことがあるわけでございまして、そこのところはやはり消費も立派な尺度であるということで考えていくべきものでないかと私は一つ考えております。  それから、「直接税を根幹とし間接税を補完とする」という御指摘があるわけでございますが、この点については、私、今回の税制改正を通じましても税制改正後におきましても、やはりそこは変わってないんじゃないかというふうに理解しておるのでございますが、いかがでございましょうか。  たしかこの政府提案のような税制改正がなされますと、直間比率がほぼ二対一ぐらいの割合になる。現在ですと直接税が七二、三%というところでございますが、そして間接税が二七、八%ということだと思いますが、それが二対一ぐらいになる。この水準は、ずっと過去さかのぼってみますと、大体昭和四十五年ぐらいの水準でございまして、シャウプ税制ができたときはたしか五五対四五ぐらい、その後若干の異動がございましたけれども、高度成長が始まる時期の三十五年には大体それと同じぐらいのレベル、昭和四十年の段階でも六対四ぐらいでございます。そう考えますと、今回の税制改正が成ったとしても、まだその水準にまで直接税の比率は下がらないといいましょうか、間接税の比率は上がらないわけでございまして、これは「直接税を根幹とし間接税を補完とする」という、言い直せば所得を主たる担税力の尺度にして、消費の方はいわば従たるスケールといいましょうか尺度にするということは維持されておるというように考えるわけでございますけれども、そのあたりはどうなっておるのか、御教示をいただければと存じます。
  80. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど応能負担ということについてお話がございまして、私も実は池田委員のおっしゃる感じを持っておるのでございます。つまり、所得税というものは非常に累進を厳しくして、そしてその所得の再配分ということをやるのが本来所得税の機能である。それが厳しいほどそういう役割を果たすという考え方は、かなり私は古典的な考え方であると思います。マルクスなんかの考え方であったと思うのでございます。それはそういう社会、そういう時代というものがあったと思うのでございますが、しかし、ハイエクなんて言うと生意気でございますけれども、時代が違ってまいりまして、我が国のような国になりますと果たしてそういうことが大事なのであろうか、意味があるのであろうか。それならばなぜアメリカが税率を二つにしてしまったか、大変思い切ったことでございます。イギリスもそういうふうに考えている。やはり私は社会というものは変わっていくのだというふうに思いますし、我が国のように所得水準が高くて格差の少ない国はなおさらのことではないかというふうに実は考えております。  後段におっしゃいましたのは……
  81. 池田行彦

    ○池田(行)委員 それで結構でございます。  私、今も御答弁ございましたように、現在の日本の経済社会の実態を考えますと、本当に今回のような税制改正方向が社会の実情に即し、また国民の間の公平感にもつながるんじゃないか、こんな感じを持っておるところでございます。  それから、総合課税という問題につきましては、これももう既にこの委員会でたびたび論議されましたので余り深く入るつもりはございませんが、その論議の中でやはり株式のキャピタルゲインの課税の問題に非常に各委員の論議が集中しておったと思います。そうしてまた、これは国民の中でも、やはりキャピタルゲインについては、今回原則課税になるとはいってもまだほかの所得に比較して税負担が非常に軽微ではないか、これは不公平ではないか、何とかならないかという声が少なくないのも否定できないところでございます。これまでの論議を通じまして、政府の御提案からさらに踏み込んで、まだこれから数年かけてではございますけれども、そういった方向を考えていこうじゃないかという御答弁が総理あるいは大蔵大臣からも出てまいりました。何回もそういう方向が出てまいった、こう思うのでございます。私も、もちろんそういう方向が今日の国民の気持ちなどを考えた場合に、あるいは公平な税負担といった観点から大切であるとは思うのでございます。しかし、言うまでもないことではございますが、そのためにはどうしても把握体制の整備というものをしっかりしていただかなくてはいけない、それがないままに拙速でやってしまいますと、形だけ総合課税、形だけの公平は確保されたけれども、実質的には不公平を助長してしまうんじゃないかな、これは過去における我が国の税の歴史からも言えることじゃないかと思いますので、その点は政府においても今後の検討の過程で十分御留意いただきたいと存ずる次第でございます。  それからもう一点、そういった把握体制を整備するという中で番号制であるとかカードであるということが議論されておるわけでございますが、その中でとりあえず証券取引だけを対象とする証券カードというものはどうであろうかというアイデアもあるようでございますが、私はこれはどうしても避けなくてはいかぬものだと思います。それは米国のように、いわば社会福祉の方の番号を納税者番号とか投資に使っていくとか、いろいろなアイデアもあるようでございますけれども、証券取引だけにやりますと、いわゆる金融市場の中での資金シフトというものを起こしてしまうのじゃないか。これはやはり税の観点だけではなくて、日本の金融・資本市場全体あるいはそのことが日本の経済に及ぼす影響というものを考えますならば、やはり慎重にしなくてはいかぬというふうに考えておるわけでございますが、その点につきまして、大蔵大臣何か御所見がございましたら……。
  82. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆる証券カードというものがどういうものであるか、きちんとした定義を伺ったことがございませんのですけれども、もし株式の取引にだけそういうものを使う、義務づけるということになりますと、おっしゃいますように、これは資金の流れというものを大変に変えるであろうと思います。税制はよほどの理由がない限りは中立的な作用を営むべきものであって、証券カードといったようなもので金の流れが大変変わってしまうということは、よほどの理由がありませんと、私はやはり慎重でなければならないと存じます。
  83. 池田行彦

    ○池田(行)委員 ありがとうございました。  次に、野党御提案基本構想の中で第四の原則として「地方自治の尊重」ということをうたわれておるわけでございます。この点につきましては、政府の御提案税制改革法案におきましても、今回の税制改正が国あるいは地方自治体の財政運営に支障を来さないように十分配慮するようにといった規定があると承知しておりますが、今回の税制改正によりまして国、地方ともに、何しろ全体として二兆四千億の減税超過でございますから、どちらも減収になると思うのでございますが、その減収に対する措置がどのようになっておるのか。全体として国の方はどの程度の穴埋めと申しましょうか埋め合わせと申しましょうか、それがどうなっているか、それから地方の方はどうなっているか、その点につきましては、大蔵大臣あるいは大蔵省から。そして、さらにその中で具体的に、地方の方につきましては国税の改革に伴う地方間接税の減収という問題が一つあり、それから次には、国税三税の減税に伴う地方交付税の減収という問題がある、それから三番目には、独自の問題として個人住民税の軽減問題がある、この三つがあると思うのでございますが、それぞれにどういうふうな措置が講ぜられておるのか、これは自治大臣の方から御答弁いただきたいと存じます。なおその際、あわせて消費譲与税の配分について、現在東京への一極集中という問題がいろいろ議論されておりますけれども、この譲与税の配分のときにどういうふうに配慮されておるのか、東京と、それからいわゆる財政とか公共事業に依存する度合いの多い島根県を初めですね、その辺の配分はどのように配慮されているのか、明らかにしていただきたいと思います。
  84. 篠沢恭助

    篠沢政府委員 今回の税制改革におきまして、個人住民税の減税それから電気税の廃止など地方税が相当な減収になりますほか、地方交付税も減収になるわけでございますが、これにつきまして道府県や市町村の仕事に支障を来さないようにということで消費税税収から地方への配分を決めたわけでございますが、消費税税収のまず五分の一相当額は人口などの基準によりまして地方団体に譲与をする、それから今の譲与税分を除きました消費税税収の中から二四%の交付税率で新たに地方交付税を地方団体配分するということにいたしました。これによりまして、消費税から地方への配分の比率は三九%程度ということになっております。売上税の際は三一%ということでございました。これはレベニュー・ニュートラルでございますから環境は違うのでございますが、そのようなことで努力をしたつもりでございます。
  85. 湯浅利夫

    ○湯浅政府委員 今回御提案している消費譲与税の配分の問題でございますけれども、これは今回創設を御提案しております消費税との調整対象となっている料理飲食等消費税でございますとかあるいは電気税というような地方間接税の減収を補てんするというようなことなどを含めて創設されるものでございまして、その減収に見合う形で総額の十一分の六を都道府県、それから十一分の五を市町村分という形で配分するものでございます。そして、その配分のやり方といたしましては、この譲与税が設けられました趣旨を考えまして、都道府県分につきましては四分の一を人口、それから四分の三は従業者数という要素で配分をしたい。それから市町村につきましては二分の一ずつの要素でやっていきたいということでございまして、この譲与税のでき上がる趣旨が、間接税が今回廃止あるいは調整されるということを前提にしてできるということを考えますと、減収額とこの配分額との間に余り大きな変動があるということも好ましいものではないのじゃないかというようなことで、今後この配分につきまして検討してまいりたいというふうに考えております。なお、三年間はこの減収額についての激変緩和をやるという予定でございます。
  86. 池田行彦

    ○池田(行)委員 ありがとうございました。  この税制改正が中央と地方との財源にどういうふうに影響するのか、それがまた総理の今進めておられます「ふるさと創生」の作業とどういうように絡むか、いろいろお話をお伺いしたいと思ったのでございますが、残念ながら時間が迫ってきたようでございますので、今回の税制改正につきましては地方財政の運営に支障のないようにできる限りの配慮は払われておるということを確認させていただきまして、自治大臣どうもありがとうございました。  それで、あと時間がございません、ちょっとはしょってまいりますが、福祉社会の問題につきましては、けさほどいわゆる福祉ビジョンも出されまして、あれこれお聞きしたいこともございますが時間の関係上今回はそれに触れずにおきまして、政府提案税制改正がどういうふうに社会福祉なり年金に影響するかという点についてちょっとお伺いしたいと思います。  と申しますのは、今回の税制改正というのは昨年のレベニュー・ニュートラルとは違いまして減税超過でございますから、国、地方を合わせたものと国民との間で申しますと、去年はプラス・マイナスなし、だから国民の中で、全体としてはそうなんだけれども、おれはもうける方だろうか、得する方だろうか、損する方だろうか、こういう議論があったと思うのですね。今回はそうではない。全体としては国民減税になるのは確かだと思います。だから、押しなべて言えばみんな減税になるのだけれども、その得の仕方が大きいか少ないかというそんな話ではないかと思うのでございます。余り損得の議論をしてはいけないのでございますけれども、そういったことが税制改革に対する国民のいろんな意見を左右するということも否めないわけでございますので、ちょっと触れておきます。  そういったいわば全体としてみんなが大体得をするという税制改正の中で、いや、おれはどうも仲間外れらしいぞ、損をしているぞ、こういう方々がおいでになるわけでございますね。その一つがやはり所得税の納税者になっておられない方でございますね。その中でも生活保護の対象の方であるとかそういったいわゆる弱者と言われる方々、そういった方々に対してどうするかという問題につきましては、これまでは歳出の面で適切に処理してまいります、こういうお話があるだけで具体的にどうするというお話がございませんでした。それがやはりそういった方々に不安を呼んでいるのではないかという感じがする。  それからもう一つは、必ずしも弱者と申しませんけれども、年金で生活しておられる方、年金受給者の方々でございます。これは仕組みからいいますと、消費税導入する、そして物価が上がる、そうしたら物価スライドで年金が上がる、こういう仕組みになっておるわけでございます。法律は五%以上の物価上昇だと、こうなっていますが、最近は五%以下の小幅の上昇でも特例法で措置されておりますので、消費税で物価が上がればちゃんとスライドするのでございますと、これで説明はつくのでございますけれども、でも物価スライドを実施するまでには一年余りの時間があるじゃないか、こういうことになる。その期間の損益をどうするか、その期間の間をどうするかという、それはこれまでもあの狂乱物価のときですら一年おくれだったのでございますから我慢してくださいよとおっしゃるのだと思うのでございますけれども、今回は違う。物価上昇の幅は仮に政府のおっしゃるように一・一%だといたしましても、これは政策として、国の意思として物価を上げようというのでございますから、それでそれを確かに上がるように、転嫁がちゃんとするようにいろいろきめの細かい配慮をしておられるわけでございますから、それなら、スライドしますよというのを冷たく一年待ちなさいとおっしゃらずに、前もって政府の方でかぶりましょう、ちゃんとそれだけは年金の額を改定しておきましょうというぐらいのことがあってもいいのじゃないのかなという感じがいたします。そうすれば、年金で暮らしておられる方々もこの税制改正に対する見方も大分変わってくるのじゃないかという感じがするのでございますけれども、それについて、簡単でいいですからどうでしょうか。  それとあわせて、朝方の米沢委員への御答弁の中で大蔵省当局は、今回の消費税の国の財政に与える影響を大体三、四千億という御答弁があって、私もちょっと直観的にどうも少し規模が小さ過ぎるのじゃないか、こんな感じがいたしました。例えば今申しましたような福祉の関係だとか年金の関係で、それは当然予算で、歳出で配慮されれば消費税分を見なければいかぬわけですが、そんなものは考えておられるかおられないか、その辺もあわせて御答弁いただきたいと思います。これは事務当局で……。
  87. 篠沢恭助

    篠沢政府委員 消費税導入に伴いまして、真に手を差し伸べるべき人々への歳出面での配慮ということは十分考えていかなければならない問題であろうと思っております。生活保護、在宅福祉等真に手を差し伸べるべき人々に対する施策というものを六十四年度予算編成でどう取り扱うかということにつきましては、これから十分関係省と御相談をしてまいりたいと思っておるわけでございます。  それから、年金につきましての御質問でございましたが、今先生から御指摘のとおり、これまでも年金のスライド等につきましては十分適切な措置をとってきたわけでございますが、消費税導入されました場合、年金受給者への影響を含めまして六十四年度の改正というものを一体どう考えたらいいのかということにつきましては、私どもといたしましていろいろ難しい問題も考えられるのでございますが、引き続き今後の予算編成過程の中で厚生省等関係省庁と十分相談をさせていただきたいということで、ただいまはお許しをいただきたいと思っております。  それから、米沢委員の御質問に対しましてけさほど大変大ざっぱな感覚をお答えをしておりますけれども、これは、消費税導入に伴いまして、国も財貨サービスの購入者あるいはその受益者ということになりますと当然その税負担をしなければならない、そういう意味でその負担増が生ずることになりますものですから、そのような購入者の、あるいは受益者の立場でおよそどのくらいの影響が出てくるのだろうかというような感じで実は申し上げたつもりでございました。この点、大変説明不足で失礼をいたしたのでございますが、考えられる点としましては、このほか、先生御指摘のように、この年金問題が直接どうというふうには申し上げられないのでございますが、観念的には物価上昇に伴う影響というものをどう考えるか、どの範囲の人にどう考えるのだという、まさにその問題があるわけでございます。大変説明不足でございましたが、税制改革法案の成立を踏まえまして全体としての所要額というものは改めて精査をいたしまして、予算編成段階で適切に計上させていただきたい、そういう努力を尽くしていきたいと思っております。
  88. 池田行彦

    ○池田(行)委員 時間が参ったようでございますけれども、あと一問お許しいただきます。  ただいまの御答弁、今予算編成の前でございますからそのくらいの程度にしかお答えがいただけない、それは十分理解できますけれども、こういうときにこそ本当に真に手を差し伸べるべき弱者に対して十分な配慮を政府にお願いしておきたいと存じます。  最後になりますけれども、野党の基本構想の最後のところで、現在は経済税収も極めて好調である、だからもう税制改正の成立はそんなに急がなくてゆっくり時間をかければいいじゃないか、こういった御趣旨の説明があるわけでございますけれども、私はこの点はいかがだろうか。  現在の経済の好調は、特に税収の好調さにつきましては、これは例えば租税弾性値が、国民所得に対する弾性値が去年が三・三でございますか、余りにも異常なわけでございまして、これはやはり土地の高騰であるとか、あるいはいわゆる証券のブームであるとか、あるいは円高メリットの浸透であるとか、いろいろな一時的な要因のためにこれだけの税収の好調があった、これは期待はしたいけれども、このような好調さはいつまでも期待できないんじゃないかという感じがいたします。それから、ある意味では去年、ことしと所得減税を先食いしておるわけでございますから、これはもう財政の事情は非常に苦しいんじゃないか。来年の予算編成をめぐっても、ことしの主計局のガードは非常にかたいわけでございまして、私もかつて主計局に籍を置いておりましたころ、先輩から予算査定するときにはこうやるんだといろんなことを聞きましたが、その中にこんなことがございました。予算要求や新規要求や陳情があったら、まずノーと言え、それから考えろ、こういうことを言われたわけでございますが、最近の主計官はそうじゃなくて、まずノーと言ってそれっきり忘れてしまう、失礼なんでございますけれども、こんな感じすらする厳しい状態なんです。  そういった意味で、決して今経済も好調、税収も好調、財政もゆとりがあるからゆっくりやっておけという状態じゃない。それは、税制改正はその観点からも急がなければいかぬし、あるいは逆に言うと、まだこういった経済の好調さがあるときにこそ税制改正をしっかりと進めなければいけない、このように考えるわけでございますけれども、そのあたりの私の認識について大蔵大臣からちょっと御答弁いただき、それから最後に、総理大臣から税制改革に取り組む御決意というものをお聞かせいただきまして、質問を終えさせていただきたいと思います。
  89. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに弾性値三・三というのは、これはもうどなたがごらんになっても異常でございますので、こんなことが続くと考えるわけにはまいりません。たださえ赤字公債を出している経済でございますから、ますますそうでございます。その点はもうおっしゃるとおりであると存じます。
  90. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 本委員会の審議を通じまして新しく第八の懸念でございますとか、これは加藤さんのお話にございましたが、そういう具体的な議論が徐々に詰まりつつある。やはり審議しつつ理解を求め、理解を求めつつ審議していくということで、何としてもこの国会、そのために召集し、お願いした国会でございますので、成果を生めますことを心から期待しております。
  91. 池田行彦

    ○池田(行)委員 ありがとうございました。
  92. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 これにて池田行彦君の質疑は終了いたしました。  次に、佐藤祐弘君。
  93. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 最初に、竹下総理にお伺いをいたします。  総理は、一昨日、新潟市での記者会見で、リクルートコスモス株をめぐる疑惑解明に関連しまして、「政府として国会の国政調査権に最大限の協力をしなければならない」と述べ、「秘書にかかわる問題については、」ということで、これは宮澤大蔵大臣の秘書のことを言っておられるようでありますけれども、「秘書にかかわる問題については、詳しい事情が国会の場で明らかにされていくであろうと確信する」こうお述べになったと報道されておるのですが、その御趣旨について改めてお聞きしておきたいと思います。
  94. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 ちょっと定かに覚えておりませんが、最初申しましたのは、いつも申し上げておりますとおり、いわゆる国政調査権に行政府として最大限の協力を行うべきであるということを強調したわけでございます。それから二番目の問題は、秘書にかかわるということを、そういう表現はしなかったと思いますが、私を含め政治家の周辺は情報の集まりやすい立場にもあります、したがって自粛自戒すべきものである、問題そのものは国会の場等でいろいろ御調査いただいておるさなかであるというふうに申したような気がいたしております。
  95. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 また後ほどお伺いもしたいと思いますが、いわゆる疑惑の解明についてぜひ積極的な姿勢で取り組んでいただきたいということをまず冒頭申し上げておきます。  順序は多少変わるのですが、NTTの関連で幾つかお聞きしていきたいと思います。  既に、NTTの元取締役であります長谷川寿彦氏への末公開株の譲渡をめぐりましては、委員会でもリクルートの情報通信事業との関連で贈収賄の疑惑があるのではないかといった点が論議をされてまいりました。さらに先日、十一日でありますが、我が党が発表しましたドゥ・ベスト社からの譲渡先のリスト、これにNTTの現取締役であります式場英氏の名前が入っていることが明らかになりました。御本人も譲渡を受けたことを認められたわけであります。式場氏は電電公社の時代から通信システムの関係、その分野を担当してきた方でありまして、リクルートが情報通信事業に本格的に取り組み始めました一九八四年、昭和五十九年でありますが、当時は企業通信システムサービス本部長、そういう要職にあった方であります。長谷川氏に続きまして式場氏の名前が出てまいったということで、リクルートのNTT対策といいますか、非常に系統的、組織的なものであるということも表面化したわけであります。  これは非常に重要な問題でありますので、ぜひ真相の解明が必要だと思うのですが、監督官庁であります郵政省、この問題についてどのように認識をし、どのように対処をされてきたかという点を郵政大臣にお聞きをいたします。
  96. 塩谷稔

    ○塩谷政府委員 今NTTの長谷川前役員あるいは式場現役員につきまして御指摘があったわけでございますけれども、私ども、それぞれの両名のことにつきましてNTTから報告を受けているわけでございますけれども、例えば業務に関する契約などにつきましては所要の社内手続を経て適正に実施されているというような報告を受けておりまして、それを受けとめているところでございます。
  97. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 式場氏が関与しましたリクルートとの契約はたしか二件あったと思いますが、その内容についてお答えいただきたい。
  98. 塩谷稔

    ○塩谷政府委員 式場氏につきましては、企業通信システムサービス本部長、これは電電公社の時代でございます、それからNTTになりまして、企業通信システム事業本部副本部長の役職にありまして、この当時、回線のリセールといいますか、太束の回線をNTTから借りまして、そしてそれを分割して一般のお客に売りさばく、こういう回線のリセールとい方り業務がございますが、それを始めたわけでございまして、その回線のリセールにつきましてのコンサルティング、太束の回線を借りてどういう通信システムをしたら効率的か、そういうような通信システムについてのコンサルトをする、そういうコンサルティングの契約と、それから、これは専用保守契約といいまして、太束の回線を分割しておりますその分割装置、時分割装置といっておりますが、こういった機器類の保守契約、こういった契約にタッチしていると承っております。
  99. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 リクルートの一つの事業のポイントであります回線リセールの重要な部分についての契約を直接担当されたということでありますが、最初の御答弁で少しはっきりしないのですが、式場氏が株譲渡を認められたということを含めてどういうふうに対処され、どういう結論になったのかという点をお聞きしたかったわけであります。お答えいただきたい。
  100. 中山正暉

    ○中山国務大臣 お答えを申し上げたいと思います。  先般のこの委員会での御答弁でも申し上げましたように、式場氏に関しましては、個人の、自分のお金で株式を買いまして、そしてまだそれを売ってはおりませんし、職務上特段の便宜を与えたという報告も受けておりません。  NTTが六十年の四月に民営化されましたときに、意欲的に取り組んで、お得意様の株を持っていた方がいろいろいいんじゃないかという判断でされたことであって、今から振り返ってみた場合にはいろいろな御疑念の対象になるかもしれませんが、私は、式場氏に関して絶対そんなことはないと信じておりまして、長期保有という形での株を安定株主としての目的に合致した方途で入手したもの、かように考えております。
  101. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 十分そう言い切っていいものかどうかという点は、後ほどまたお伺いしたいと思います。  リクルートは、情報誌産業、人材開発産業ということで成長してきまして、それで、数年前から情報通信産業としての発展を目指して、社の命運をかけるということで来ているわけであります。  その関係でNTTとの協力問題というのが出てくるわけでありますが、リクルートの社内報の「かもめ」の五十八年の新年号で江副社長はこう言っておられるのですね。「八〇年代の末までには、リクルートは電通や朝日を抜いて日本一の情報産業になる可能性を十二分に持っている」と。そのポイントの一つがRCS、先日来問題になっておりますが、リモート・コンピューティング・サービス、これにコンピューターが必要だ。もう一つが回線リセールということであります。回線リセールにつきましては、さっきお答えがありましたように、式場英氏が直接契約もなさった、そういう担当の責任者であります。  それで、RCSの関係でありますが、それのNTT側の対応をされる方が長谷川寿彦氏ではありませんか。それを確認しておきます。
  102. 塩谷稔

    ○塩谷政府委員 リクルート社のリモート・コンピューティング・サービス、RCSでございますが、この関係は、当時データ通信事業本部長の職にありました長谷川元取締役の所掌に属する仕事でございます。
  103. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 私たちの承知しておりますところでは、NTTはリクルートに大変手厚いサービスを提供しておられるというように思われるのです。例えば、局舎の貸与といいますか提供がございます。いわゆるクレイ社のスーパーコンピューター、これが二台あるわけでありますが、その一つがNTTの横浜西ビルに設置をされている、もう一台は大阪の堂島ビルに設置をされているということがあります。それからまた、回線リセールでは多重化装置というのが必要なんですが、もちろん所有はリクルートでありますが、設置場所は電話局の中にあるといった例もあるわけであります。  また、それをリクルートの側も企業の宣伝に大いに活用しているわけでありまして、これはリクルートの宣伝文書でありますけれども、「NTTの全面的な技術協力を得たサービス」だということをトップに打ち出して宣伝をしているわけです。回線のリセールでありますとかその他についてですね。そしてまた、トラブルが起きたときには「電話一本で当社とNTTのスタッフが迅速に対応いたします。」と、リクルートの社員だけではなくてNTTの社員も迅速に対応するんだというほどの宣伝にもなっておるわけです。  こういう点をずっと見てまいりますと、非常に特別に便宜を図っているというように思えてならぬわけです。そして江副氏自身も雑誌のインタビューで、「私はNTTグループと考えて」いる、「一部で電話局の局舎を使わせてもらっているなど、事実上、一体ですからね」というような発言もなさっているということであります。  そういうことの結果、回線リセールではいち早く六〇%を超えるシェアを確保する、こういった状況にもなっておるわけですが、これはNTTの全面的な支援といいますか、そういうことがなければ考えられない、そういう事態ではないかと思うのですが、そういう点、特別のサービスというふうに感じるのですが、いかがですか。
  104. 塩谷稔

    ○塩谷政府委員 今先生いろいろ御指摘されましたけれども、これは、私どもNTTから承っているところによりますと、例えばリセール業者に対しましての庁舎の提供というような場合でございますが、こういった場合は、安全性の確保といいますか、そういうコンピューターや時分割装置というような高価な機器類の安全性の確保というようなことを念頭に置いて、そういう庁舎を提供しておるもともとの、NTTの本来の業務に支障がないということを条件にいたしまして、一種の事業経営上の判断によりまして公平にお貸しするということを承っております。私は、いろいろなお客を相手にする事業体として一種の商業上のルールといいますか、その辺、公平に提供するということはやはり大事なことだと思っておりますので、そういうふうに承っている次第でございます。
  105. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 その点は非常に疑問を持っております。  例えば、ちょっと根本にかかわる問題になるのですが、電電民営化の法案審議の際に、電電自身も郵政も回線リセールについては否定的だったということがあるわけです。私は当時直接逓信委員会で審議に当たったわけでありますが、逓信委員会での附帯決議、国会決議になるわけでありますが、国会決議でもこう言っているのですね。「政府は、現行の専用線の料金体系の下では第二種電気通信事業者による専用線の単純再販が日本電信電話株式会社の経営に支障を及ぼすことにかんがみ、単純再販を禁ずる約款についても認可すること。」ということが決議であります。さらに、審議の中ではもっと明確に答えておられるわけです。どういうことかといいますと、現在の副社長でありますが、児島氏は「電電公社から丸ごと買ってそれを細かく割って、また端末の方は私どもの電話機につなげ、こういうふうな電話を又借りをしてやるというふうな電話の再販、これについては私どもは絶対に応ずることはできない。」こう明快に明確に言い切っておられるのですね。そして、当時の郵政省の小山局長もそれを支持する旨の答弁をなさっているわけです。  しかし、それから間もなくリクルートと回線リセールの話し合いを進めるということに事実はなっていっているわけですね。ですから大変そこが疑問でありまして、そういう基本的な方針を変えた、この方針変更はどうしてだったのか、その背景にどういう事情があったのか、それをお聞かせいただきたい。
  106. 塩谷稔

    ○塩谷政府委員 電電公社からNTTに組織が変わりますいわば一種の電電民営化といいますか電気通信の自由化の時期に、法律の論議の際にあるいは今佐藤先生がおっしゃったような論議が取り交わされたのかもしれませんが、その当時懸念されたことは、専用線というものを販売する、その形態としては、新しく電気通信の設備を自分でつくりましてそれをお客に提供する第一種電気通信事業という分類を認めまして、その第一種電気通信事業という事業がやる仕事、商売が専用線のまさに販売ということでもありますので、その第一種電気通信事業者と、いわゆる回線リセールでまた専用線を販売する、専用線を借りてそれを分割して販売するその再販事業が、どういう競争といいますかどういう対抗関係になるのか、その辺についての見定めがなかなかつきにくいということで、いろいろ懸念された議論もあるいはあったのかもしれません。  実際にこの回線リセールが、今おっしゃいました附帯決議のような再販を除いて販売が行われますということになりますと、これは言ってみれば、いわゆる大手を対象にした第一種電気通信事業者の専用線の販売と、それから、なかなか自分一人の財力、経済ではそれだけを買い切れない、しかし分割して細かくした回線ならば手が届くといういわば層の違ったお客、需要を開拓するといいますか、そういう需要も生んで、両々相まって回線市場が活発に需要を生むという意味でいい結果になるのではないかというような結果もありまして、そういう回線リセール事業というものが生まれ、また育つに至ったのではないかというふうに考えております。
  107. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 かなり違うのですね。民営化当時の議論では、単純再販というのは絶対にやらないのだということを長い委員審議の中で繰り返しNTTも答弁をしておられます。「電話を主体とする再販売、これについての契約は絶対にせぬという方針でございます。」と明快なんです。そして、先ほど御紹介しましたような決議もつけて年内に採択をされた。五十九年末ですね。そういうことがありました。ところが、その一方でリクルートとNTTとの話し合いというのが進行しているという経過があるわけです。やはり私はこの問題との関連があるのではないかという点を非常に疑問に思うわけです。  ここにNTTの大阪西支社の文書というのを持ってきておりますが、「リクルート社 回線リセールの概要と設備対応について」というものであります。ここでは、既に五十八年十一月、民営化の二年前でありますが、五十八年の十一月からリクルートとNTTの間で勉強会がスタートをした。そしてリクルートとNTT社長間でレター交換というのもやられている。そしていろいろその間、研究会の設置でありますとか企業の設置の問題その他あるわけでありますが、六十年の八月、つまり民営化の四カ月後ですね、四カ月後には回線再販、リセールについてNTT・リクルート社長会談というのも早くよ行われているというのが事実の経過であります。  ですから、一方で、国会では再販は絶対やらないんだということを明確に何度も繰り返し答弁をされ、そして国会決議にまでその趣旨を含んだ、再販に応じないという約款も郵政省として認めていくんだというようなことが定められておりながら、こういうふうにいち早く方針転換が行われる。今の塩谷局長答弁では、当時も塩谷局長は郵政で活動しておられたわけで当然御存じのはずなんですね、そのままでは到底納得できない答弁と言わざるを得ないと思うのです。  再度お尋ねしますが、こういうことについて委員会でも全然報告はない、我々も承知をしてないという事態がどういうことで進行したのか、再度答弁いただきたい。
  108. 塩谷稔

    ○塩谷政府委員 あるいは私の表現が舌足らずであったかもしれませんけれども、私ただいまの答弁で、国会の附帯決議でなされております専用線の単純再販売、これはいわゆる公衆回線と専用線を接続することの禁止でございますが、それはそのとおり守っている、それは禁止しておりまして、これにつきましては、郵政省はこういう公専接続の禁止の規定を含んだ専用サービス契約約款を認可しているところでございます。ですから、それ以外の専用線の再販売というのは、これは別に附帯決議で何ら禁じられておるところではございませんので、それはそれでやっているということでございます。別段このことについてリクルート社と何かの関係があるということは毛頭ございません。
  109. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 随分勝手な解釈といいますか、この質疑の中でも、ここでもはっきりしておりますように、別にそういう区分けをしての議論ではないのですよ。ここに繰り返し紹介しておりますが、要するに電話の再販、つまりは電話回線リセールですね、この問題なんです。当時は、経営に危機を来すおそれがあるからということで、それはNTT当局は絶対にやらないと言い、そういう約款が出てきても郵政省としては認めていく方針だということであったわけです。だから、今の答弁はどうも理解の違いといいますか、強弁といいますか、というふうにしか私はとれませんが、時間のこともありますから前へ進みます。  こういうことで、いずれにしましても客観的な状況でいいますと、回線リセールはやらない、基本的にやらないという方針まで変えて、リクルートとのそういう協力関係といいますかサービス提供をいち早く始めるという状況で進んできたわけです。しかも、その当事者が今回問題になっております式場英氏であったということでございます。これは非常に重要な問題だというふうに私は思う。そういう点が今いろいろ注目を集めているわけです。それで、先日の日曜日でありましたが、産経新聞の報道では一面トップでありましたけれども、「「NTTルート」に重大関心 株譲渡は“謝礼”」かという大きな見出しで報道もされておりますし、けさの読売新聞でも、四十万株、これはいわゆる還流、再譲渡で明らかになっている分でありますけれども、「四十万株は“進物用”か」という見出しも報道されているという事態であるわけです。そういう大変疑惑が持たれているという問題でありますから、私は、郵政省もこの問題では相当真剣に、正確に取り組んでいただく必要があるのではないかというふうに指摘をしたいと思います。  ここで大蔵省にお聞きをしたいのですが、リクルートコスモス株の公開に当たりまして、店頭登録の申請がいつ行われ、決定したのはいつかということと、公開価格がたしか四千六十円だったと思いますが、どういう手続で最終的にだれが決めるのか、いつそれは決められたかということです。それらの点を簡潔にお答えいただきたい。
  110. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 店頭登録の申請が行われましたのは六十一年九月三日でございます。それから、店頭登録が行われましたのが六十一年の十月三十日でございます。それから、分売価格の決定は、これは通常、分売が行われる二週間前に行われるということのようでございますけれども、本件について申しますと、不動産会社二社を類似会社といたしまして六十一年九月十日から十月九日の一月間の取引所の終わり値をもとにいたしまして最低分売価格を幹事証券会社が決定いたしました。それにつきましては十月十五日に主幹事である大和証券を通じまして協会に報告が行われております。それから、この分売価格の決定につきましては、大蔵省としては関与いたしておりません。
  111. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 そうすると、今の説明で、最終的に公開価格を決定するのは証券会社という御答弁ですか。証券会社からの意見をもとに、最終的には当事者であるリクルートコスモス社が決めるのじゃないのですか。
  112. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 証券会社がいろいろ価格計算について類似価格の算定とか何かに関与するわけでございますが、分売方式といいますのは、一般の株式売買と同様に大株主が自分が持っております株式を売却するという行為でございますので、この場合、大株主である江副さんが自己の計算で一定の価格をもって申請協会員、つまり大和証券に売り渡し委託を行うといったものでございますので、最終的な決定は、これは江副さんが自分の値段を決める、そのアドバイスをいろいろ大和証券等が行った、こういうことでございます。
  113. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 さきの答弁と違って今の答弁ではっきりしたことは、最終的には江副氏が決められた、リクルートコスモス株の公開価格ですね、これはコスモスの方の取締役会長でありますから、ということであります。  そういうことでありますから、結局事実経過では九月の初めに申請をして、お答えがなかったのですが、九月の中旬に店頭登録することが決定されたということであります。問題の一連の株の譲渡、ドゥ・ベストを初めとするのは、九月三十日、九月末に再譲渡をされておるわけです。これは常識に属するようなことでありますけれども、店頭登録の申請をした時点、そして九月末までかなりの期間があるわけですが、その間には公開されればおよそ幾らぐらいになるかという見通しはつくわけであります。例えばけさの読売新聞でもこういうことが報道されております。「当時コスモス社の代表取締役会長でもあった江副氏は六十一年九月初めの時点で、証券会社の説明から」同業者と比べても「少なくとも四千円にはなる」というふうに判断をしておったということであります。これは当然だろうというふうに私は思うのです。  そこで、これは非常に重大な問題になってくるというふうに言わざるを得ないと私は思うのですね。つまり、五十九年の十二月の最初の株の譲渡、この場合には決算対策でありますとか安定株主とかということが言われました。しかし、六十一年九月の場合にはそういう名目はもう当たらないわけです。しかも、今のことで明らかになりましたように、九月末に再譲渡する以前に、かなり前に、公開されれば四千円ぐらいにはなるだろうと見込まれる。実際にも四千六十円と公開価格が決まりました。そして初値はたしか五千二百七十円と、三割増しが限度でありますから、そういうことになったわけであります。そういうことが十分に見通せる段階であの再譲渡をされたということでありますから、これは今具体的には式場氏の問題でやりとりをやっておるわけですが、個人的な所有で問題はないということで済まないんだというふうに私は思うのです。明らかにこの六十一年九月の譲渡というのはすぐもうかる株の譲渡でありますから、やはり私は、あの七月十八日の最高裁決定に照らしましても、特定人の入手といいますか、そういう点でも非常にわいろ性が濃いものだという点を指摘しなければならぬと思うのです。特に加えて、式場氏はリクルートの回線リセールを担当して契約も進めた当事者だという点では明らかに職務にかかわる譲渡というふうにも見れるわけでありまして、準公務員であるという点などを考えますと、やはり贈収賄罪の容疑で、それを定めております電電会社法の十八条がありますが、そういう点がはっきりした場合、それの適用される事例ではなかろうか、こういうように考えるのですが、法務省の見解を伺いたいと思います。
  114. 根來泰周

    根來政府委員 従前から再々申し上げておりますように、私どもとしては、捜査機関を持っておりますので、捜査をする前に頭越しにそれが犯罪であるとか犯罪の容疑があるとか申し上げる立場ではありませんし、また、そういうことを行政機関が申し上げると、やはりそう言われた方の人権にもかかわることでございますので、それはここでは申し上げないという立場を貫いておりますので、御了解願いたいと思います。
  115. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 じゃ言い方を変えますが、この問題については捜査当局としても関心を持って対象に入れて当たっておられるのでしょうか。
  116. 根來泰周

    根來政府委員 これも一般論でございまして恐縮でございますけれども、従来から申し上げておりますように、国会でお尋ねのあった件あるいは報道された件で犯罪の嫌疑があるんじゃないかという話については、検察庁もそれ相応の配慮を払っておるといいますか、検討しているといいますか、そういう関係だと思います。
  117. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 私は極めて重大な出来事だというふうに思っております。  次に、リクルートが社運をかけたもう一つの事業でありますがRCS、この問題でお伺いしていきたいと思います。  この事業のかなめは言うまでもなくコンピューターであります。現在リクルートは四台のスーパーコンピューターを持っております。うち二台がアメリカのクレイ社製でありまして、あと二台は富士通と日本電気製の位のであります。この米クレイ社製のスーパーコンピューターをNTTを介して購入したという経過であるわけですが、その購入経過ですね、これについて明らかにしていただきたいと思います。
  118. 塩谷稔

    ○塩谷政府委員 お尋ねのスーパーコンピューターでございますが、これはNTTにおきまして四台購入しております。  まず最初に、これは昭和五十九年の四月でございますが、いわゆる科学技術計算用ということで、一番適しているということで買いまして、これはNTTの武蔵野通信研究所へ置いております。次いで六十一年五月、これは買いましてリクルートに転売しております。これはNTTが買いましたものについて、設計建設委託契約に基づきまして購入して引き渡しているということになっております。それから六十二年の三月、これも武蔵野通研へ研究用で配直し、六十二年の六月、二台目をリクルートに引き渡しているということでございます。
  119. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 リクルートは、日電のSX2や富士通のVP400についてはもちろん直接購入しているわけですが、どうしてクレイ社製についてはNTTを介して購入をしたのか。手数料など割高になるのではないかというような指摘もあるのですが、その点はどのように承知をしておりますか。
  120. 塩谷稔

    ○塩谷政府委員 NTTは、電気通信事業体として、また先端的な情報、技術を駆使したいろいろな研究並びに事業ということで、その辺についてのノーハウを有している事業体と思われるわけでございますけれども、その辺のノーハウあるいはこういったコンピューターについての調達、設置工事、それからいろいろな試験をやって実用に供される、そういったところのキャリアとしての力というものを恐らくリクルート社としては見込んで、このNTTが買ったコンピューターにそういった受託業務をしてもらってRCSの業務を始めたのではないかというふうに考えられます。
  121. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 この購入に当たって、いろいろな調達に当たっての原則といいますかがあったと言いますが、内外無差別でありますとか透明性の問題でありますとか、そういう点はどのように対応されたのでしょうか。
  122. 塩谷稔

    ○塩谷政府委員 その点は、今先生おっしゃいましたように、NTTが特殊法人として政府調達の取り決めの適用を受ける事業体でありまして、おっしゃるとおり内外無差別の原則に基づきまして、透明性も図りながらこの辺の資材を調達したということでございます。  これは分類からいいますとトラックⅠというものに入ります機器類でございますけれども、ほかのコンピューターをもってはかえがたいいろいろな能力を非常に持っているということで、代替性がないというようなことで、随意契約に基づいて購入したというふうに承知しております。
  123. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 これは随意契約ということですが、こういう場合は、大体国際調達の手続としてはスーパーコンピューターメーカーに通知をして提案を求めるということになるのが普通じゃないのですか。そういうことは除外して、いきなりクレイ社との随意契約をやったのですか。
  124. 塩谷稔

    ○塩谷政府委員 ちょっと私、答弁が先走りまして恐縮でございます。  最初にスーパーコンピューターを購入します場合に、これは先ほど申し上げましたように武蔵野での一台目でございますけれども、当時スーパーコンピューターを製造していました五社、クレイ、CDC、富士通、NEC、日立に提案を依頼しまして、そしてその五社から行われた提案についていろいろ審査いたしまして、結局、科学技術計算用のコンピューターとして総合的にこのクレイ社がよろしいということで決まったというふうに承っております。
  125. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 今説明がありましたのは科学技術計算用のコンピューターでしたけれども、リクルートから要請があってNTTが購入した際はどういうことだったのかというのをお聞きしているのです。
  126. 塩谷稔

    ○塩谷政府委員 リクルート社へ引き渡されたもの、二台目になるわけでございますが、これはユーザーでありますリクルート社の希望に合致いたしますコンピューターの技術仕様がクレイ社のみであったということで、これも代替性がないという観点でこのクレイ社のものを買ったというふうに承知しております。
  127. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 どうも何か理解がちょっと中途半端なような感じもしながら聞いておりますが、武蔵野通研で使っているというものについては、当初五社から出していただいて決定した。ですから、この場合は無差別ということでありますが、結局は入札などは行われずに随意契約でクレイ社のスーパーコンピューターを購入したという経過で、それ以降については、武蔵野通研で使っている能力とリクルートが要請している能力というのは必ずしもイコールじゃないわけでありますから、その際にはどういう審査をされたのか、どういう手続を踏んだのかというのが一つポイントなのですが、そこは今の説明でははっきりしません。どういうことですか。
  128. 塩谷稔

    ○塩谷政府委員 お尋ねの点、残念ながら私もここで確答できる材料を持ち合わせておりませんが、要するに、技術仕様といいますか、そういうものにこたえる能力がクレイ社のコンピューターであったということが理由であるというふうに承知しております。
  129. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 では、その限りでもう一度確認しておきますが、リクルート社から出された要望に沿うものがクレイ社のコンピューターしかなかったという判断でNTTがそういう契約をして購入した、こういうことですね。
  130. 塩谷稔

    ○塩谷政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  131. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 では、NTTの国際資材調達、特にアメリカからの資材調達について確認をしておきたいのですが、対米資材調達については日米間での協議が行われるというふうに承知をしております。その際には、日本側からは郵政省、外務省、NTTが出席をする、そして米側からは通商代表部、商務省、国務省が出てくるということであろうと思いますが、そのとおりでしょうか。
  132. 塩谷稔

    ○塩谷政府委員 そのとおりであるというふうに承知しております。
  133. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 つまり、NTTの対米調達、NTTがコンピューターでありますとか通信機器を購入する場合は、日本政府の監督と指導のもとに行われるということになってきておるわけです。しかも、問題のクレイ社のコンピューター購入、スーパーコンピュータに購入ですね、この背景といいますか流れとしては、昭和六十年、一九八五年一月に当時の中曽根総理とレーガン大統領との日米首脳会談がありました。そこでレーガン米大統領の方から、通信機器とエレクトロニクス、木材、医療機器、この四品目について輸入促進を強く要請されたということがあります。中曽根主相が、私自身がそれについてはチェックをして進めましょうということでお話をされまして、当時の新聞にもその点が見出しになって報道されておるというようなこともございます。その日米会談を受けまして、四月五日に当時の左藤郵政大臣がNTTの真藤社長に対しまして中曽根首相の意向を伝えて、NTTはその意向に沿って調達をふやすことを約束して契約を結んでいくという運びになるわけであります。  ですから、こういう経過を見ますと、米クレイ社のスーパーコンピューター購入には、当時の政府の意向といいますか、とりわけ中曽根首相の意向が強く反映されたのではないかというふうに思うのですが、郵政省は、そういう点について当時の総理から何らかの指示でありますとか、直接的な働きかけといいますかそういうものがあったかどうか、お聞きしたいと思います。
  134. 塩谷稔

    ○塩谷政府委員 お尋ねに入ります前に、ちょっと念のためにということで申し上げておきたいと思いますけれども、NTTの調達手続と申しますのは、これは、先ほど私が申し上げましたように、特殊法人でございますNTTがとります調達手続について日米で取り交わしました一種の行政取り決めでございまして、おっしゃるとおり、NTT調達につきまして内外無差別の方針のもとに、透明性とオープン性を確保した調達手続を規定しているわけでございます。これは調達の手続を定めたものでございまして、何をどれだけ買うかということは、これは買う事業体の判断によるわけでございます。  そこで、お尋ねの件でございますけれども、私ども掌握している事実によりますと、これは六十年の四月四日の経済対策閣僚会議で、総理から、NTT調達と衛星が四月九日の対外経済対策の目玉だ、NTT調達については実績額を昨年以上にするようにできたらいいということの発言がございまして、明くる日、私どもの左藤郵政大臣からNTTの社長に、外国企業からの購入実績をふやすようというように要請をしたという経緯がございます。これはトータルとして、NTTがこれまでやっております外国製品の購入、これを全体としてふやしてくれということでありまして、何をどれだけ買えというようなことを指示したものではございません。
  135. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 六十二年の場合も、二基目の場合でありますが、これは六十三年に入って最終的にリクルートとの受け渡しというのが行われているわけですが、その際にもやはりアメリカの国会議員から中曽根首相に対して非常に強い要請があった、ぜひアメリカのスーパーコンピューターを購入してもらいたい、こういうことですね。四人の方からあったとか十一人の方からあったとか、いろいろな報道もあるわけでありますが、この際そういう経過もありまして、六十二年の六月のNTT常務会で購入を決定したというように承知をしておるわけです。  そこで、この問題で私が特にお聞きをしたい、解明する必要があるのではないかと思っておりますのはこういうことなんです。  先日、二十一日の本委員会で我が党の松本善明議員が質問いたしました。その際にもこの問題に触れまして、ことしの三月四日付の日経新聞の報道を引用して質問をしたわけであります。その日経新聞の報道では、「江副リクルート会長と親しい中曽根氏が同社へ引き渡すことを条件に、NTTに購入を依頼したといわれている。」云々という記事があるわけでありますが、それを引用いたしまして法務省に見解を求めましたところ、その問題も視野に入れて当たっているという答弁もあったわけであります。  そこで、これは竹下総理にお伺いをしたいのですが、その際にこういうことがあるのですね。中曽根総理の側近の方が、リクルートは以前からスーパーコンピューターの導入を計画していたので、米国から入れてもらえばありがたいという話をされたというのですね。中曽根総理の側近の方のお話ですが、リクルート側が以前から導入を計画していた、だからそれを米国から入れてもらえばありがたい、こういうふうに話をされたというふうなことがあるわけです。私は、ここで言われておりますように、リクルートの要望を受けて中曽根総理が、リクルートへ引き渡すということを条件にNTTにスーパーコンピューターの購入、こういうことを依頼されたということになりますと、これはいささか重要な問題になってくるのではないかというふうに思っておるのです。この点につきまして、総理はこういう経過を御承知かどうか、どういうようにお考えになっておられるか、お聞きをしたいと思います。
  136. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私が全く知らない話でございます。
  137. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 特定の企業の要望に沿って対米調達の中でそういうものについての要請が行われたというようなことになりますと、これは大変な問題だというふうに思っているのです。総理はお聞きになっておられないという、承知してないということでありますが、当時は相当大きな問題にもなったことだというふうに思うのですね。  これは去年の中曽根総理訪米、四月の際のこととして伝えられておるわけですが、それはリクルートの二基目の問題、二台目のスーパーコンピューターの問題ですね。第一台目のときは、先ほど申し上げましたように、六十年の一月二日の首脳会談以来の経過がありまして、貿易摩擦解消の問題でありますとか、去年は半導体問題で盛んな対日攻勢があった、そういうような中で政府の調達なども決定されたというような経過もあるわけですが、それはあくまで個別品目ということではなくて行われておるものだということが先ほどの説明でもあったのですが、このケースはそうではなくて、個別のものについてのそういうかかわりといいますか、そういうことがあったということになりますと、これは本当に重大な問題だなというふうに思っておるわけです。それでつまり疑惑が生じる問題だということであります。  これだけではありませんで、今度のリクルート問題ではまだまだ未解明の問題が多いという状況であります。  我が党が発表しましたドゥ・ベスト社からの再譲渡ということがあの限りでは明らかになりましたけれども、その後もビッグウエイでありますとか、これは十二万株、エターナルフォーチュンは二十万株、ワールドサービスは二十万株というように次々にありまして、またさらにヤクルトからというようなこともあるわけです。一体何十万株までそれが膨れ上がるのかという点もありますし、非常に重要な問題点としては還流の問題点が出てきておるわけですが、それがどこに再譲渡されたかというのは依然一つも明らかになっていない。――一つもではありませんが、大半が明らかになっていない。ドゥ・ベスト社だけが明らかになって、八万株、九人ですね、それ以降の五十万株を超えるものについて明らかになっていない。これは広く指摘されておりますのは、ドゥ・ベスト社の場合と同様に、政、官、財界関係者に流れているのではないかという疑惑もあるわけであります。ですから、この問題について、やはり私は、国民的にも強い関心を呼んでおりますし、徹底的な解明が必要だと思うわけであります。  本当に今度のリクルートの問題というのは非常に広くて深いといいますか、まだまだ未解明な部分が多いわけであります。ロッキード事件のときよりも、さらに金脈的にも関係する範囲も多方面にわたっている。既に当委員会でも、当時の中曽根総理が任命権を持っておられた政府税制調査会の特別委員に江副氏を任命された問題でありますとか、土地対策検討委員会の設置に伴う委員その他をめぐりましても質疑がありました。疑惑の指摘もあったわけであります。こういう今回のリクルート問題は、本当に日々、次々に新たな問題が新聞でも報道される、テレビでも報道されるという中で、多くの国民が非常に関心を持ち、ぜひこの全容を解明してもらいたい、一体どうなっているんだということがあるわけですね。これに対してやはり積極的に国政の場で答えていく責任があるんだ。そういう面で、これは竹下総理に要請もしたいわけでありますが、この問題の全容解明、これにぜひ積極的に当たられていただきたいということであります。  今回の事件は全体として非常に規模も大きい。中曽根内閣の時代に中曽根前総理も深くかかわる形で起きておるということから、しかも、先ほど申し上げましたように、株の再譲渡問題はまだまだ解明されていない部分が大変多い。その他スーパーコンピューターの購入をめぐりましても私は疑問点を提起いたしました。そういうことを含めて全容が解明されていくならば、あるいはロッキード疑獄を上回る一大疑獄になるのではないかという指摘もあるわけであります。そういう点を踏まえまして、冒頭に竹下総理の所信もお伺いしたのでありますけれども、この問題で本当に国民の疑問、関心にこたえる、そういう姿勢で積極的に全容解明、これにやはり総理・総裁として当たられるべきだというふうに思うわけでありますが、その御決意をお聞きしたいと思います。
  138. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 当初に申し上げましたとおり、この国政調査権には行政府として最大の協力をしなければならぬ、これはきちんとしておくべき問題でございます。  刑法上の問題等一つの予測の上に立っての御議論についてお答えする自信も準備もございませんが、そうした問題については検察当局が適正な判断をするであろうというふうに考えております。
  139. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 捜査当局的立場議論をするということではなくて、やはり国政調査権、今、国会がやるべき責務は大変大きいと思うのですね。やはり重大な国政にかかわる問題が起きたときには、憲法の定めにのっとって国政調査権、それに基づいての証人喚問をやりますとか、必要な資料を全部提出されて、その上で真実を明らかにする、そういったことこそが今求められておる。今まさに国民の間では大変な不信も生まれかねない、生まれておるという状況だというふうに思うのです。  こういう点で、これは委員長初めお願いをしたいわけでありますが、かねがね我が党が要求しております証人喚問をぜひ実現をしていただきたいし、国会国会の場で、捜査当局の捜査とは別に、これは支障がないという答弁も既にされておるわけでありますから、引き続き解明の努力を続けていくということが極めて重要だということを最後に強調して、質問を終わります。
  140. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 これにて佐藤祐弘君の質疑は終了いたしました。  次に、野口幸一君。
  141. 野口幸一

    ○野口委員 私は、野党が提出をいたして、皆様方に問題を提起をいたしております基本的な問題につきまして、若干質疑を行いたいと思っております。  昨日でしたか、国会図書館に参りましていささか資料を調べておりまして、議員の閲覧室の本棚に、何げなく見渡しましたところ、万葉集がございました。そこで、私も好きなものですから広げてみましたら、ちょうど今日の総理並びに大蔵大臣の御心境にやや当てはまるかなというようなものがございました。ひとつ参考までに読み上げてみたいと思います。   紅の深染めの衣下に着て上に取り着ば言なさむかも   明日香川七瀬の淀に棲む鳥も心あれこそ波立てざらめ この二首でございます。  これは私流に解釈をいたしますと、非常に色の濃い衣を下に着ているうちはまだいいけれども、余り上の方から着て人に見せびらかすと大変なことになって大騒ぎになるよという戒めの言葉であります。  また、二首目は、七瀬の淀というのは、もう言うまでもありませんが、非常に荒れ果てた河原に鳥が静かに住んでいるのは、心あれこそ、つまり心配りがあるからこそ波立たなくて住んでいるんだよ、だから心配りというのは大切なんだ、こういうことを言っているんだと思うのであります。  まず私は、総理が今日まで税制問題に取り組んでこられました御心境、並びに今日における税制問題に対する経過と、その上に立っての御所見を承っておきたい。
  142. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 その万葉のみぎりになりますと、学の程度が私と野口さんと違うと見えて、私自身これに正確にお答えするだけの自信はございません。が、見せびらかすなよ、気配りをしろよというのは、別の意味で私の処世観とも合っているんじゃないかな、こんな感じがいたしました。  さて、税制問題に対する心境でございますが、率直に言いまして、言い古されたことでございますけれども、五十三年以来いろいろ議論をいたしまして、本当に私は、国民の代表である国会の構成員の皆様方議論というのはかなり濃密に議せられて今日に至ったものだ、国民のコンセンサスが那辺にあるかということをお互い見定めつつ議論を進めていくわけでございますが、その懸隔はまだあると思いますが、濃密な議論を積み重ねることによって急速にコンセンサスが得られるであろうという心からなる期待をいたしております。したがって、万葉の精神にもございましたように、可能な限り情緒、感傷、感情にとらわれない静かなる議論が粛々として行われることを大変喜んでおるところでございます。
  143. 野口幸一

    ○野口委員 まあ万葉論議をするつもりはございませんけれども、意味は非常に深いのでございまして、単に表向きから流れてくる文意だけではなくて、底にある部分というのは非常に奥深いものがございます。本来ならば相聞歌でございますからお答えの一首をいただきたいと思ったのでありますが、ございませんようですから、残念ながらこの問題はここにとどめます。  そこで、総理にお尋ねいたしますが、きのう来同僚の伊藤議員からも、国民の意思というものが最近、いわゆる消費税問題に注目が集まって、かつまた総理のお考えになっておる方向とは逆に、反対する声が新聞世論調査のパーセンテージからも見受けられる、このように論ぜられておりました。総理はこの国民の意思をどのように受けとめて、何によって今日国民がどのように考えているのかなということをお知りになっていらっしゃいますか、その辺のところをお聞かせください。
  144. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 それは各種世論調査等を参考にすることももとよりのことでございますけれども、やはり国民のコンセンサスが那辺にあるかというのは、国会議論の中で肌で感ずるのが一番適当ではないかなというふうに私自身は考えております。
  145. 野口幸一

    ○野口委員 国会の私どもの意見を十分聞いていただくということも大切ではございますが、一方また、国民皆さん方が直接投書なりあるいはまた新聞等で発表される御意見なりというものは貴重なものでございます。どうかその点にも今申しましたように十分な心配りをしていただきたいということを申し上げておきたいと存じます。  そこで、改革理念目標は何か、大げさに大上段から振りかぶりましたが、私、この問題につきましては私なりの考えが実はあるわけでございます。そこでそれに先立ちまして、先ほど御質問なさいました同僚議員に対しまして厚生省が、いわゆる二十一世紀といいますか将来を展望した、いわゆる老齢化社会に向かったところの福祉ビジョンについての御発表がございました。これはどういう意味合いで今日これをお出しになりましたか、ひとつお聞きをいたしたいと思います。
  146. 末次彬

    ○末次政府委員 高齢化社会を迎えるに当たりましてどういう社会を想定するかというようなお尋ねがかねてからございまして、いわゆる福祉ビジョンと申しますか将来の福祉社会のあり方について出すようにというような御要望がございまして、それに応ずる形といたしまして、六十一年には既に長寿社会対策大綱を閣議決定いたしておりますし、三月には社会保障の給付と負担の展望を示したわけでございますが、さらに施策の基本的な考え方、医療、年金、福祉等の施策の目標方向につきまして取りまとめてお出ししたわけでございます。
  147. 野口幸一

    ○野口委員 今度は総理にお聞きしますが、総理も今回の税制改革に当たって、いわゆる来るべき老齢化社会という言葉をお使いになったかどうかは別といたしまして、そういう問題も頭に入れて福祉ビジョンというものも確立していかなければならないということにお触れになったと思うのですが、いかがですか。
  148. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 そもそものところが、五十四年の国会決議を読みましても、国民福祉の充実のためには安定した財源が必要であるといううたい文句を――うたい文句はちょっと表現が適切じゃございません。そういう文言をおつくりになったのは、もとよりそういう高齢化社会というものを念頭に置いておつくりになった決議ではないかなというふうにあのときから感じておるところでございます。  したがって、やはり一つのビジョンというものがあって自由社会経済体制の中で中長期の財源的裏づけを特定するというのはなかなか困難な作業でございますけれども、そういう一つのビジョンに対して、今までいろいろやってきた各種五カ年計画とかというような積み上げの中で究極の福祉の到達点に近づいていくという努力をすることが、いわばその財源、すなわち国民皆様方の御負担になる税制論議のときにも大切なことだなということは、それこそ国会議論を通じながら私自身が常日ごろ感じておるところでございます。
  149. 野口幸一

    ○野口委員 私も、そういう点につきましては税制改革に当たってぜひとも考えなければならない課題の一つであろうと存じます。  加えて、私はかねてより、財政再建の問題につきましてたび重ねて大蔵委員会でお話をしてまいりました。もう総理が大蔵大臣時代からしゃべらせていただいている。そのときに、初めは五十九年度のいわゆる特例公債脱却でありましたが、それができなくて六十五年、こういうことになりました。六十五年ということになりまして、先ほど来のこれまた御質疑の中にもございましたが、六十五年に特例公債脱却ということは可能でございましょうか、大蔵大臣
  150. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどもお答えをしておったところでございますが、このたびの税制改正がネットの二兆何千億の減税になりますので、実は非常に難しい事態になっておりますが、私は何とかしてこれは実現いたしたいと、今大蔵省の諸君と一生懸命各省庁の御協力を得て努力をしております。
  151. 野口幸一

    ○野口委員 財政再建とは何も特例公債から脱却したことによって事成れりではない。これは再々大臣もそのとおりだとおっしゃっておられるわけであります。  ところで、シャウプ税制以来の改正をやるのだ、こういう大上段からの税制改革に当たりましては、この問題を抜きにして組み立てるのは実は不可能だと私は思っておったのであります。それで、いわば国会決議の問題に入っていくわけでありますが、実は私、ずっと大蔵委員会の会議録並びに総理と大蔵大臣の御答弁を実は拾ってまいりました。この中でおもしろそうなものと言っては失礼ですが、非常に興味のあるものをちょっと御披露させていただきたい。時間がかかるのでありますが、ぜひとも聞いていただきたいと思うのであります。  まず五十四年十一月二十一日、これはたしか財確法だったと思うのでありますが、その答弁でありますが、そこで当時の竹下大蔵大臣がこのようにおっしゃっております。  昭和五十九年度までに特例公債を解消するという基本的目標といたしまして、 とありまして、中を抜きますけれども、   したがって、入るをはかって出るを制すると申しますが、まず出るを制した上で、なおかつ歳出の増加に伴って財源が不足する場合には、国民の理解を得て負担の増加を求めることも検討の外に置いているわけではないというふうに御理解をいただければ幸いであります。 つまり、一生懸命歳出削減をしていくけれども、もう足らなかったときにはやはり新たな負担を求めなければならぬかもしれぬ、こういうことを既に五十四年におっしゃっているわけでございます。  続けて引例をいたします。次は五十五年でございますが、そのときには、   確かに本院における十二月二十一日の国会決議を読んでみますと、いま御指摘のとおりであります。 というのは、いわゆる一般消費税は財政再建には使わないということでございます。  一般消費税(仮称)については、決議が行われているところでもありますので、あのままの形での新税を提案できる環境にはないというふうに答えておるわけであります。  なぜこだわったかと申しますと、いわゆる一般消費税(仮称)というような特定の仕組みに限定するのではなくして、消費支出一般に着目するという意味での、幅広い消費支出に着目する間接税とでも申しましょうか、そうした一般的な消費税を今後一切否定するということは、税体系上もきわめて問題が大きいと考えられるわけでございますので、したがって、この財政再建のための歳入構造の健全化の必要性につきましては、国民の御理解が得られるよう今後とも十分努力をしていかなければならないと考えております。 こう御答弁になっておるわけでございます。  なおちょっと続けさせていただきます。これはおもしろいのでありますが、五十五年四月九日であります。  外国のお客さんとお会いするのは八時から十時までの間であります。八時から十時までの間は、日本経済はなぜこんなにすばらしいのかという質問を受けるわけです。十時に来ますと、政府はだめじゃないか、こういう批判を受けるわけです。 つまり、委員会が始まるというわけだから。  二つの顔というのが大蔵大臣だな、こういう感じがしております こういうのであります。さて、財政、こうなりますと、借金がどうしてできたのだということ、またどうして返すのだと外国のお客さんが質問しますが、  財政再建あるいは財政の健全化、財政の果たし得る対応力をつけるというようなことは 大変大事なことだという感じをしみじみと抱いておる昨今でございます。 つまり、これにつきましても、非常に慎重ではございますけれども、財政再建に対して一定の所見を述べておられます。     〔海部委員長代理退席、羽田委員長代理着席〕  たくさんあるわけでありますが、一番大事なところは、後でもまた読ませていただきますが、五十八年二月九日、公明党の鳥居さんの質問に対する答弁でありますが、私は、学問的には、EC型付加価値税というもの、これは理解できるところでございます。しかし、それの部分からそもそもインボイス部分がマイナスされた、除かれたということは、やはり日本の商慣習とかいうことになじまないという意味において除かれて、いわゆる一般消費税(仮称)というものがおおよそ形づくられたということでございますので、その一般消費税(仮称)も、詳しく読めば、国民の理解が得られなかったからこれはやめる、得られればいいのか、こういう議論もまたできぬわけではないと思いますが、そこまで議論するほど、それは国会に対して非礼でもあるし、私自身愚か者であってもならぬというふうに思うわけです。 こういう自戒の言葉もございます。  たくさんありまして、その都度その都度非常に竹下さんらしい御答弁が続くのでありますが、私が申し上げたいのは、税制改正をやるときには財政再建の問題というのを頭に入れないでやるということはあり得ないことだと常に思っておられたと私は思うのであります。ところが、今回のこの提案の中には、先ほど提案されておる内容を少し読ませていただいたわけでありますけれども、私どもから拝見いたしましても、この問題は国会決議というものがございまして、抜けております。それはそのとおりで結構なんでありますが、それはどうして抜けているかといいますと、先ほどもちょっと厚生省にお尋ねいたしまして、総理自身にもお聞きをいたしましたいわゆる福祉ビジョンについての課題でございます。  ある人の論評でございます。これは横浜国立大学教授の岸本さんの論評でございますが、いわゆる竹下流という財政再建に関する決議に対する今回の解釈の仕方というのは、竹下さんらしいと言うのであります。つまり、その理屈はウルトラCだと驚嘆されている。その理屈というのは、「この決議は財政再建という目的のために一般消費税導入するということを否定したものであって、より大きな財政目的、例えば高齢化社会に備えるための財政基盤の確立というような目的のために、それを導入することまで否定したものではない」という解釈をしているということであります。したがって、先ほど来おっしゃいましたように、いわゆる高齢化社会に備えるための財政基盤の確立という目的に対しては税制改正をやってもいいのだという解釈だということでございます。  そこで私がお聞きしたいのは、この財政基盤の確立ということと財政再建ということとはどういう関係にあるのでしょうか、そこをお聞かせいただきたいのでございます。
  152. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 五十四年以来の私の大蔵委員会等におきます答弁についてお読み上げをいただきまして、よく私が言われているように、言語明瞭なれど意味不明、こういうことをよく言われてまいりましたが、若干その感があるなという自己反省もいたしております。  ただ、私が当時から思っておりましたのは、いわゆる財政再建を至上命題として取り上げたあの時期において、本当にいわゆる一般消費税(仮称)というのをあの財政再建決議の中に入れてちょうだいいたしましたのも、消費一般にかかわる税制そのものを否定されたらこれは学問的にも後世の方に迷惑をかける、こんなことでございましたので、いわゆる一般消費税(仮称)ということを使わしていただいておったわけでございます。  それから仕組み、構造等について国民の理解を得るに至らなかったということだから、原則からいえば理解を得るようになればやってもいい、こういうことは、せっかく国会決議がつくられてまだ数年しかたたないのに、それは国会に対して非礼ではないかという気持ちは絶えず持っておったところであります。  いずれにいたしましても、今おっしゃいましたように、最初は確かにあれは財政再建のためというのが大きく一つ前に出ておって、それから変化してきておることも事実だと思います。高齢化社会の到来、だれしもそういう認識はありましたけれども、言葉として将来の高齢化社会を描いた場合に、この安定した財源としてのいわゆる消費一般に着目した税制というように若干変化してきて、そうして今度はたび重なる減税要求、本格的には先日も議論がありましたが、あの五十九年の所得減税のときはやや理論的な改正だな、あの戻し税等に比べますと大変理論的だなと私は思ったことがございますが、そこから今度は減税先行という一つ考え方も出てまいりました。それが歴史的経過をたどってレベニュー・ニュートラルのところまで来て、今度は減税先行というような形にまで変化して御提案を申し上げておる、こういうことになるんじゃないかなと思います。  しかし、野口さんの議論というものは、前からそうでございますが、まあ前からそうでございますがといって、ずっと固定しておるという意味で申し上げておるわけじゃございません。いわば財政再建という至上命題を考えておるときに、そういう財政基盤を確立するということが財政担当者の、なかんずく大蔵大臣の一番大事な仕事だという御忠告は絶えず受けました。あなたに対してお答えしたことをもう一つ覚えておりますのは、したがって、最初の財確法の話がありましたが、財確法というのは、当分の間予算の範囲内において赤字公債を発行してもいいというような書き方はしません、やはり毎年毎年国会議論をいただくことによって、我々もそれによって絶えず反省していくという意味においてあれは毎年毎年出す法律です、こんな話も当時したような記憶がございます。  しかし、もう一つ言えますことは、やはり財政基盤というものは、これは税法とかそうしたものもございますし、歳出削減というようなものもございますが、いわばそういう歳入が確保されるような経済政策自体もうまくいっていなきゃならぬという考え方は絶えず持っておりましたので、当時ほかの国に比ぶれば経済のパフォーマンスがいいということを言われておりましたので、大蔵大臣というのは午前八時から十時までと大蔵委員会へ入った以後と大変二面的な顔を持っておるというようなことを言ったのも、一生懸命いわば財政基盤を強化するための産業政策等にも熱意を持っておりますよということを本当は含んで申し上げたかったということではなかったかと、適切な答弁になったとは思いませんが、一生懸命で答弁をいたしました。
  153. 野口幸一

    ○野口委員 全く言語明瞭、意味不明でございまして、私の最後に申し上げましたいわゆる財政基盤の確立というのと財政再建というものとのかかわり合いはどうなりますかというところのくだりは、実は余り詳しく御説明をいただけなかったと思うのであります。  大蔵大臣いかがですか。大蔵大臣としてひとつ、財政基盤の確立、財政再建、これはどういう関係がございますか。
  154. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは似たようなことでございますけれども、財政再建というのは、先ほどからいろいろ俗語でツケ回しとよくおっしゃいますけれども、これだけそういうものがあったり、国鉄の清算事業団がございましたり、そういう今までの背負っております債務がまだ片づかずにございます。それで本体そのものも赤字で運営されている。そういう状況を普通にするというのが財政再建の目下の課題ではないだろうか。  それで、財政基盤の確立と申しますのは、大変高望みと申しますか、少し先のことを申しますれば、特例公債ばかりでなくやはり公債というものを出さずに財政が運営されるということができますと、財政基盤が確立した、これは少しまだ、我が国にはあす、あさってということではないかもしれませんが、そういうふうに私は思っております。
  155. 野口幸一

    ○野口委員 そうなってまいりますと、さすがにやはり学者の言っているウルトラCというのはうなずけるのでありますが、確かにいわゆる財政再建のためには新しい税制は組み込まないという御答弁があり、かつまたそれは実践をしているんだと一方では言い、一方では財政基盤の確立のためには新しい税制もやむなし、こういうように受け取れてくる。したがって、それが到達するところはずっと同じところへ来るわけでありまして、その意味では竹下流ウルトラC、今回の税制改革構想というのはそういうところに意味があるのかなという感じがするのであります。  これは総理にお聞きしますが、そういうウルトラCというのをお考えになって、今日そのような国会決議というものをかわすためにお考えになったわけでございますか、いかがですか。
  156. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 いや、本当に生来素直でございますので、ウルトラCなどというわざができるものでもございませんし、本当に五十四年以来野口さんとずっと議論し続けてきたその延長線上に自分を置いておるつもりでございます。
  157. 野口幸一

    ○野口委員 そこで、ちょっと大蔵省にお聞きいたしますが、これは計数的な問題でございますが、昭和四十一年以来我が国がいわゆる公債というものを発行するようになりまして、トータル的に今まで幾らの総額の公債を発行なさったか。建設公債あるいは特例公債を含めて、今日までのトータルをお示しいただきたい。並びに今日までの支払い利息、いわゆる利子でありますが、国債費でありますが、それのトータルもついでにお聞かせをいただきたい。
  158. 足立和基

    ○足立政府委員 昭和四十年度の国債発行開始以来、新規財源債で申し上げますが、新規財源債の発行総額は、六十三年度末で建設国債約九十六兆一千七百億円、特例公債約七十二兆一千六百億円、合計いたしまして約百六十八兆三千三百億円、こういうことでございます。この今申しました数字は新規財源債の総額でございまして、御案内のように、国債は現在六十年償還ルールということで償還を行っておりまして、借換債は含んでおりません。  それから次の、利払いの総額でございますが、これも国債発行開始以来六十三年度末で約八十二兆二千七百億円になる見込みでございます。
  159. 野口幸一

    ○野口委員 今さら申し上げるまでもなく、全く巨額な金額がここで流れているわけであります。今日なお国債依存をしなければ、いわゆる公債依存をしなければ予算が成り立たないという状況でありますし、また国債費も二〇%を超えている。こういう現状は、確かにまだ先行きいつになったらというような気がするわけであります。  そうした場合における税制改革の物の考え方として、私は、昨年の場合であったか一昨年の場合にもちょっと申し上げたと思うのでありますが、税制改革をするに当たって、先ほどもおっしゃっておられましたが、特に今日の段階における政府の施策としてお考えにならなければならない問題は、財政再建をどのような仕組みでやっていくのかという問題、なかんずくこの公債残高、百六十兆に及ぶこの金額をどのように償還をしていくのか、ましてや、その後のいわゆる特例公債はどういう形で処理をしていくのか、また、発行は六十五年度までになし遂げたいという気持ちがございます、そのことは既にお聞きをいたしておりますが、償還の方は一切聞いておりません。これから償還されていくわけでありましょうが、そのために利払いが非常にかさむわけであります。現在これも、先ほど申しましたように支出予算の二〇%を超えているというような状況であります。これをやはり何とかしなければいけないのじゃないだろうか、こういうことが先立つわけでありまして、そういった意味合いで、財政再建というものを頭に踏まえ、かつまた二十一世紀の福祉ビジョンあるいは老齢化社会というものを展望して、そうした総合的な判断の中で、一体全体国民は将来どういう形で税というのを納めなくてはならないんだよ、また納めてもらわなければならなくなるよということをお示しをいただいて、そうして、そうはいってもそう簡単にそこにすぐさま高齢化社会があした来るわけではないわけでありまするから、十年なり十五年後ということになりますならば、その間にどういう具体的な税制というものを施行するかということをお示しいただくのが私は国民によくわかった税制改革ではないかと思うのであります。  何か昨今聞いております税制改革は、去年の場合は、減税をしてやるからその財源のかわりに、プラス・マイナス・ゼロにするために新税を導入するというような発想であったように思うのであります。今回の場合もまたやや似たような感じがございまして、まず消費税ありきというこの路線をしいておけば後また何とかなるんであるというようなこと、先日来いろいろな議論の中にも出てまいりましたけれども、それはもちろん総理も大蔵大臣も御否定なさっておりました、特に税率の問題で。しかし、そういうことを考えさせないためにも、もっとそれこそ大きな見地から将来の財政というものを見通して、この際、税制というものはかくあるべきというものについて国民が理解と納得のできる裏づけのある資料をつけて、そしてできる限り数値の問題も、先ほど来言われておりますように確かに経済は流動性がありますし確定値はなかなか求められないものでありましょうけれども、でき得る限り英知を絞っていただいて、数字もできる限りこれを示す。そして、現在の福祉の状況をどのように改善されていくかいかないかは別にして、例えば仮に現在の医療体系、仮に現在の年金の金額というものをそのまま持っていっても老齢化社会の進展によってはかくなる負担が必要なんだよという数字も含めて出した上で、それで国民負担はかくかくしかじかになる、その中で税はこのような負担をしなければならないんだよ、国民皆さん方にぜひとも御理解をいただきたいという立場の上に立った税制改革というのを前にお出しになるのがこれは正しいやり方ではないだろうか。というよりも、これは正面から出てこられる、三百人を擁しておられる自由民主党のあるべき政策の出し方ではないかな、余りにもみみっち過ぎるのではないでしょうか、もっと大胆にお出しになるのが私から見ればいいのではないか、こういうように思うわけでありますが、いかがでしょうか。
  160. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は、野口委員の言われますことは少しも間違っていないと実は自分で伺って思うのでございますけれども、現実にある程度の正確度を持ってそのようなプランが立てられるかと申しますと、実はそこのところがなかなか難しいということだと自分で感じるわけでございます。つまり、まず経済計画、我が国の将来経済につきまして、せいぜい五年が最長の可能な計画となっておりますが、しかし、その五年すらもなかなか読み切れないということでございますから、仮にそういう十年とか十五年のものをつくりましても、私は正直を申しまして、過去の経験から言うとその確度というものは甚だ不確かなものであって、それに基づいていろいろなものを組み立ててしまうということにもしたがって不安があるということではないかと思うのでございます。  ただ、それにもかかわらず、私は野口委員の言われますことは決して間違っていないという気持ちがあるものでございますから、今日もああやってビジョンのようなもので、定量的ではございません、定性的でありますけれども、それでも一つのデッサンをやはり政府として持っていき、国会にもごらんいただくという努力をいたすということが大事ではないかと思うのでございます。
  161. 野口幸一

    ○野口委員 私は個人的には決して増税を望むものではありませんけれども、必要なものはやはり必要なんでありまするから、国民にある意味では正直にそういう財政事情を吐露して、そして将来展望も明らかにして、出すべきものは出していただく、負担していただくべきものは負担していただくという赤裸々な御発表があって、そしてそれは、二十年、三十年というのは難しいでありましょう、確かに数値的には難しいでありましょうが、およそ現在の経済事情を基盤とし、それからGNPの伸びも大体このくらいのところというようなところで数字を出してみて、そして出てくる数値というものをまず目標に置いて、これは変わるかもわかりません、変わるかもわかりませんが、こういうようになりますという、現在の想定はこうです、これは変わるかもわかりません、しかし現在はそうはいっても先ほども言いましたように高齢化社会というのがあした来るわけではないのですし、だから例えばこの五年間はこういう構想で、こういう税目こういう税目という税体系でいただきたい、こういうようにお出しになるのが正しい方法ではないのだろうかということを私は申し上げているのであります。そうでないと、国民消費税というものなら消費税のところだけを見まして、そして議論をするようになりますから、私どももその辺のところは考えなければならないと思うのであります。  世界というのは大きく変貌いたしまして、今やまさに経済は世界を一つの軸にして回っております。私どもも、政党次元の話でありますが、観点を変えて物を考えなければならない時代も来ているわけであります。そういう意味におきましても、やはり将来を展望をした大きな施策というものが示されて、そしてその上に立ってこの小規模のといいますか、ここ数年の必要的なものについてのあり方をお述べになった税改革というのをお示しになるのが私は正しい税制改革のあり方ではないだろうか。その大きな議論なしに、小さな、つまり消費税なら消費税というものを先に出してこられますから非常にややこしい議論をしなければならないのではないだろうか。もっと国民とのコンセンサスを十分にしてというのは、時間をかけてというのは、そこのところに私は時間をかけてほしいと思うのであります。  そして、先ほど来お話もございましたが、ここ数年経済事情がよかろうかとか悪かろうかという話がございましたが、そのことは別といたしましても、少なくとも仮にこれが赤字になったからといってもそう驚くほどの赤字になるわけじゃありません、もう既に百六十兆から借金しているのですから、そこで数兆借金がふえたところで大したことないのですから。だから、そういうぐらいの気持ちに立って議論をして、そして大きな構想に向かって国民のコンセンサスを得る、こういう立場で考えていただくのがやはり正しい税制改革のあり方ではないか、こう申し上げておるのでございます。いかがでございましょうか。
  162. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 建設的なお立場から言っていただいて、いや建設的というのは決して税に賛成だと私申し上げているんじゃございませんから、そうおとりにならなくて結構なんでございますけれども、私どもの立場というものもお考えくださりながらと申し上げておきますが、ですから、大変にお答えがしにくい。そうじゃないかと言われれば本当にそうだと思いつつ、そういうものはなかなかつくれない。予算が単年度主義であるのに対して、殊に公共投資なんかには五カ年計画とかいうものをやはり何とかかんとかやりつつございますが、これなんかはその一つの努力でございますと思います。ですから、税なんかについてもできればそういう展望の上に立てれば、それも余り大きく違わないような信頼度のある展望の上に立てれば、もうそれがいいということは全く何も申し上げることのない御主張なんでございますけれども、現実にはなかなか苦労しておるということでございます。
  163. 野口幸一

    ○野口委員 それでは、また角度を変えて申し上げますが、いわゆる公債残高というものを積極的に減らしていく方法の一つとして、私、前にも本会議場で提起をさせていただいたことがあるのですけれども、公社公団等の民営化の問題でございます。これは非常に私どもの関係する部分もございまして、思い切って御提言をしているわけでございますけれども、こういった問題も私は、今までならば言ってはならぬ部分にあったかとも思うのであります、しかし、こういう時代になってまいりましたら、このことも思い切って提起をしなければならぬ、財政再建に絡む問題としては提起をしなければならぬと思うのであります。  政府も、いわゆる財政再建のためにということでございまして、少なくとも今日まで民営化の問題も積極的に進めてこられました。電電公社を日本電信電話株式会社に、あるいは日本たばこ株式会社にというふうに、国鉄もそうでありますが、同時にまた、今日公社公団というのは多数ございまして、これはある人の、国民経済研究協会の方の論文でございますが、それによりますならば、非常にたくさんの財源がここにある、少なくとも百七十一兆円に達する株式売却益が存在するのではないかという議論が実は先年来出されているわけであります。こういったものにも率直に耳を傾けていかれる姿勢はないのだろうか。こういったときにこそこういった思い切ったことをやり、身軽にして、税制改革という問題についてもそういったことを頭に入れた中でお考えになるのが税制改革を考える基本的な構想のあり方ではないだろうかと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  164. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは私は言われるとおりと存じます。けさ「行財政改革の推進について」という紙をごらんいただきましたが、この中でもそういう思想は入っております。  つまり、これは一つは、今おっしゃいますように、公社公団が持っておる資産というものを民間に売れば、それはそれだけの歳入がある、のみならず、そこに雇っておる人たちは今納税者負担であるわけでございますから、それも軽くなるというような点はそうなのでございますが、問題は、つまり、もう公社公団である必要はない、これは民間会社でもいいというのであれば、これはもともと私は行財政改革とか民活とかいうのはそうすべきことであろうと思いますので、要は、したがって公社公団である必要がある、それだけの理由がある、存在理由があるかどうかということを常にチェックしていかなければならないということではないかと存じます。
  165. 野口幸一

    ○野口委員 おっしゃることはよくわかります。私どもも全部が全部というわけにはまいらないと思いますし、また、公社でなければならない、公団でなければならない部分の存在することも理解をいたします。しかしながら、少なくともこういった時代でありますから、思い切って民営化に踏み切って、そしてその財源を有意義に活用をし、そして一方では雇用の確保はもちろん必要でございますけれども、そのことをも含めて民間活力の素材にしていただけるならば幸せだと思いますし、また、そのことが財政再建にかかわる部分とさらにまた税制改革にかかわる部分に大きく貢献するということを忘れてはならないと思うのでございます。  もう一つは、そこでまた復習に戻るようでまことに恐縮でございますが、「増税なき財政再建」という言葉は、やはり今日、幽霊のようでありますが、ありますか。残っておるのですか、もう消えたのですか。
  166. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私どもは、やはり財政再建はどうしても必要でございますが、増税の方法によることは適当でないと考えておりまして、このたびの税制改革も、したがいましてこれはネットの減税になっておるわけでございますが、その中でなお財政再建は歳出歳入面での大変な努力をしなければならないと思っておるところでございます。
  167. 野口幸一

    ○野口委員 大臣、私はそれがうそだというのですよ。そんな紙切れのほごみたいなものをいつまでも振りかざさないで、財政再建のためにもやはりある程度は、本当ならば、本来はあの国会決議がなければそのためにも税制改正したいのですよとなぜおっしゃれないのですか。ただあれがありますから実はやりません、これが本音なんじゃないですか。そういう意味では「増税なき財政再建」という言葉はもうそろそろおしまいになった方がいいのじゃないかなと私は思うのですが、いかがですか。
  168. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 主客転倒という言葉がございまして、どちらが主とは決して申しておらないのでございますが、ただ、増税をやって財政再建するというのはどうしてもやはり緩みが出てまいります。これは真実でございます。竹やりで戦争ができるというようなことを申す意味ではなくて、やはり増税すればいいのだということがございますと、歳出を切る努力あるいは歳入を一生懸命確保しようという努力がなまるということは本当でございますから、殊に経済が比較的うまくこういうように動いておりますときは、なおさらにやはり増税を考えないで財政再建を追求していくべきではないかと思います。
  169. 野口幸一

    ○野口委員 主客転倒だという話がございましたが、私はある意味でそういった議論もたまには必要ではないだろうかと思って申し上げているわけでございます。野党だからといって全部反対の立場で物を申し上げるというよりも、むしろ与党側にある意味ではその真意というものをお聞きをしてみるというのも必要ではないかと思いまして、そのようなことを申し上げました。  そこで、これは前の主税局長でございました福田さんとずうっと前の主税局長でありました平田さんが対談をなさっておる本を読ませていただきました。これに大蔵官僚さんの本当の考え方が吐露されているなと思うのでありますが、ここにこういうことが書かれてあります。福田さんが「増減税ゼロで、減税のための増税という話が当面ですね。その次に財政再建がどうなるか、その次には高齢化社会を控えての財源が要ると、三段階あるわけですね。」平田さんが「それは社会党の提案は五%だけど増税必至だといっているんですね。増税をするかしないかは第二の問題として出てくる可能性はある。それを否定するのはおかしいと思いますが、いま決めてしまう必要はない。将来の問題として残すんですよ。」ところが「増税分は社会福祉に向かうんだという保証があればいい」と言っています。もう一つ「社会保障を徹底すると、どうしても財源が要る。その財源を何に求めるかということになってくるんじゃないですか。日本の年金は積立式で、あれで相当賄っているから、今のところはまだ積立金で賄えるけれども、いずれ六五歳以上が一五%あるいは二〇%になれば、今の方式だとどうしたって無理があって、やはり一般財源から相当繰り入れざるを得ないでしょう。それをどうするか。」その点は非常に問題です、ということを言っておられます。  つまり、税制改革というものを、増減税ゼロで出発をして、その次にはいわば高齢化社会というものを控えて財源が要るという段階、それから財政再建という段階で、三つの段階でやるのが正しいのだということをいみじくもこの大蔵省のOBの方がおっしゃっておられまして、非常におもしろい話だなと思って読ませていただいたのでありますが、これに対する御所感はいかがですか。
  170. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 二人ともすぐれたOBで、経験も豊かであられるわけでございます。そこで言っていらっしゃることは私間違っていると思わないのでございますが、現場で実際仕事をしておりますと、やはり増税ということができるとすればどうしても歳出を切る努力はなまりますし、かたがたいわゆる大きな政府になりやすい。これはどうしても、野口委員を含めまして、こうやって現役の私どもあるいはお役人さんもそうでございますけれども、それは金を使う有意義な目的というのは随分幾らでもございますですからいいじゃないかということになりやすくて、少しずつ少しずつ政府が大きくなっていくということは御同意いただける場合があるだろうと思うので、それはやはり私は慨してよくないことではないかというふうに考える、なるべく民間の力を使う方がいいのだというふうに思うわけでございます。
  171. 野口幸一

    ○野口委員 これは一つの意見でありますから、私もそう重きを置いているわけではありませんが、一つの見方として、あるいはまた大蔵省自身はそういう考え方をしているのかなということを示唆されたと思って私は読ませていただいたわけでございます。  確かに、税制改革のあり方として、今、昨年もそうでありましたが、所得減税をする、その財源のかわりに、いわば当時は売上税でございましたが、それを導入するという路線をお引きになる、それがまず第一段階である。第二段階は、次には、その出してきた売上税のいわば対象品目の増加だとか、当時はいわゆる対象品目が、控除品目が非常に多うございましたから、それの増加だとか、あるいはまた税率の控除だとか、いろいろなことを考えて財源確保をさらに深めていく。そういった中で高齢化社会への対応だとか財政再建というものを考えていくんじゃないかな、こういうように国民に思わせてしまう。だから、どうもこれはだましだぞというような感覚が国民の中にわいてくる。  だから、そういうような変な出し方をしないで、私は先ほど来申し上げていますように、本来この問題はもっと根深い問題であるから、いろいろな意味から、いろいろな角度から検討をして、将来像というものをはっきり出して、ビジョンというものを明確にして、そして国民に信を問うて、そこで税制改革に移られていくのが本当の道であろう、いわゆる心配りをした竹下流の税制改革ではないかなと思うのでありますが、竹下総理大臣はいかがですか。
  172. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 今御議論を聞いておりまして、私は、「増税なき財政再建」というのは、ここの場所で一遍土光さんのお諭しがございましてという表現をしたことがございますが、あれは退路を遮断しなければ、今大蔵大臣からお答えがありましたように、とかくイージーに流れやすいということからの哲学ではなかったかなというふうに思っております。しかし、あのときも議論しましたように、そこで当時は臨調でございますが、瀬島会長代理でございますかをお迎えして、「増税なき財政再建」とはすなわち新たなる税目を設け、大きく租税負担率を変えるようなものを考えてはならない、こういうことに整理整とんされたというふうに思っております。したがって、今度提案いたしておりますのも、新たなる税目で大きく租税負担を変更するというような性格でないということは、それを貫いてきておる証左ではなかろうかな、こういうふうに思います。  それから、議論の過程で、財政再建税というふうにした目的税がいいじゃないか、こういう議論をしたこともございますし、それからいわゆる福祉目的税、それも中身を基礎年金と老人医療とに限定した範囲の中で見合うものを構築してみたらどうだ、こんな議論をしたこともございます。したがって大筋からいいますと、あの財政再建のためのいわゆる一般消費税(仮称)、そうして今度はやがて来るべき高齢化社会を展望したときの安定的財源の確保の問題、それのやはり延長線上に今日の提案申し上げた法律も存在し、そして議論もその延長線上で今問答をしておるところではないかなというふうに思っております。     〔羽田委員長代理退席、海部委員長代理着席〕  それで、お読み上げになりましたので私もちょっと読み上げますと、要するに、これはアメリカの財政再建に対する提言でございますけれども、「政策決定は、賢い少数のグループによって行われがちなものである。しかし、合衆国のような代 議制民主主義のもとにおいては、政府は、賢人委員会ではなく、個別的利害にその行動が左右される多数の人々の集合体である」。「選挙民にとって、赤字予算の利益(政府の支出の増大、減税)は直接的であるのに対し、その負担については、赤字財源を公債発行で調達しようと通貨供給量の増大で調達しようと、間接的である。これとは対照的に、黒字予算負担政府支出の減、増税)は直接的であるのに対し、インフレの鎮静化は間接的である。選挙民は、赤字予算を歓迎し、黒字予算を嫌う。一方、政治家は、選挙民に不人気な政策を実施するわけにはいかない。」しかし、これはアメリカに対する提言で、日本はよくやっていらっしゃいますね、こういうことを言われたこと、これはブキャナンさんのお話でございましたので私も整理してとっておいたわけでございます。  したがって、それが野口さんの一つ議論であり、そうしてもう一つ、これは失礼に当たりますが、「公債の方が租税よりも負担感が少なく感じられると考えるのが現実的である。」よって、少々は赤字公債でつないでもいいじゃないか、こういう議論もされがちであるが、それは危険であるということも書いてございます。  感想を述べたようで非礼でございますが、率直にお答えをいたします。
  173. 野口幸一

    ○野口委員 そこで、ちょっと話題を変えまして、厚生大臣にお聞きしますが、先ほど「二十一世紀初頭における高齢化状況等及び社会保障の給付と負担の展望」というのがございました。これは、数値的にはもちろんある程度、というよりも推計でありますからこのようになっていくとは限らないわけではございますが、これをお出しになるに当たりまして用いられた資料でございますけれども、特に社会保障給付の部分で、国民の側は直接いわゆる国庫負担でない部分を同じ比率で負担をしていくという形で求められたもの、同じ比率といいますか、現在の比率の延長線上に立って求められたものであると思いますが、いかがですか。そのとおりですか。
  174. 末次彬

    ○末次政府委員 三月にお示しをいたしました数字は、現行制度をもとにいたしております。したがいまして、国庫、社会保険の比率と申しますのは、現行制度における比率を前提といたしております。  ただ、御承知のとおり、制度によりまして今後給付が非常にふえる部分とさほどでもない部分、また制度によりまして、例えば老人医療、これは高齢化によりまして非常に医療費はふえるわけでございますが、そういう部分部分がございますので、全体としてならしてみますと、三月にお出しいたしました程度数字になるということでございます。
  175. 野口幸一

    ○野口委員 先ほどもそういうものに対しましての議論がございましたが、いずれにしても、このものといわゆる展望をした税制改革の問題との関連性が説明が不十分であると私どもは言わざるを得ません。やはりもっと、このことにおいて私どもの税負担がどのくらいの変化をしていくのかということについても赤裸々にお出しになって、国民がわかりやすいようにするのが政府の責任ではないだろうか。こういうようになっていくんだよということについて、先ほども同じことを申し上げましたが、やはり国民が一番心配しておることは、老齢化社会の到来とその保障等について一体私どもは個人的にどうなるのか、国はどう負担をしてくれるのかというようなことに関心が高いわけであります。また、それに対応する負担という問題をどのような形で負担をするのかということも関心があるところでありますから、この問題については、後刻法案審議になった場合にはぜひともこのことを中心にしてまた集中的に議論をさせていただきますが、本日のところはこれでこの点はやめさせていただきます。大臣、ありがとうございました。結構でございます。  次に、納税者の番号制度の問題について少しくお聞きをいたしたいと存じます。  先ほど来既にこの問題についても御議論がなされております。しかし、不公平税制是正のためにどうしてもやってほしいなということは、やはり納税者番号制度導入の論議をもっとやらなければならぬということがそれぞれの報道機関におけるところの論説、社説等でも書かれておるところであります。そうしませんと、幾ら立派な税制を確立されましても骨抜きになってしまうという感がするわけであります。先ほど実はいわゆるキャピタルゲインに関連いたしまして株の売買に関してのみの番号制度ということが議論されておりましたけれども、それじゃなくて、納税者番号という問題について私どもも、例えばプライバシーの問題とかいろいろな問題があるということは承知をしておりながらあえてこの問題を踏み切って、ぜひともこの納税者番号に踏み切るべきではないだろうか、そのことがやはり不公平税制是正に関する一番大きな課題になるんじゃないだろうかと思うのであります。  いろいろなことを申し上げてみましても、やはり不公平税制是正というのは、納税者番号の導入と、後から申し上げますけれどもいわゆる総合課税、この二つに尽きると思うのでありますが、この納税者番号制度の導入について、なお政府の方では先般来のお考えに変化はないのでございましょうか。お考えはいかがでございますか。
  176. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題は、御承知のように、税制調査会に小委員会をお願いいたしまして、非常に長くまた深く御検討願っております。と申しますのは、問題が発展いたしますとこれは非常に大きな、税だけでない、経済だけでない、国民生活全部にかかわる大きな問題でございますので、それを御検討願っておりまして、これは私どもも必要以上に時間を使っているというような気持ちは全くございません。非常に大きな問題でございますから、各角度から御検討願って、ひとつ結論を見つけていただきたいと思っておるところでございます。  やはりいつまでもしなくていいという問題ではございませんで、いつぞやも申し上げましたが、ある期間の中でどうすれば国民が心配されないような形でできるか、あるいはできないのか、それについて国民が大体どういうふうにお考えになるかというところまでなるべく早い期間に見きわめたい。税からいえばこれはまことに効率的なことは申し上げるまでもないことでございますけれども、やはりもう少し広い、高い見地も必要とするということかと存じます。
  177. 野口幸一

    ○野口委員 今、後ろから御懸念のこともございましたが、問題点としましては私どもも、例えば地下経済を助長するのではないか、徴税コストがかかり過ぎるという問題だとか、憲法十三条の個人の尊重、生命、自由、幸福の追求等の権利の尊重に反するだとか、納税以外の用途にも利用されるおそれがあるだとか、あるいはまた、この中で一番大きな問題は三と四にまたがるところのプライバシーの侵害の問題の懸念であります。しかし、このことを頭に置いておりますと実は不公平問題というのは消え去らないのでありまして、何としてもこの問題を何らかの形で日の目を見させたいなというのが私どもの気持ちでございます。  実は、私はここ十何年来、自分個人で確定申告書を書いて税務署に提出をいたしております。もちろんわずかな収入でありますのですぐ書けるのでありますけれども、まずは自分で書いてみて、そして納税者がどういう気持ちで税務署へ行っているかなということを自分で確かめるために自分自身で三月十五日までに税務署に参りまして提出をいたしております。その税務署から参ります確定申告書の用紙に既に番号が打たれてございまして整理をなされてございます。もう既に納税者番号というのは一部においては実質的にはお使いになっておるのではないかと思いますが、これは国税庁の方でわかりましたらお答えをいただきたいと思います。
  178. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 お答え申し上げます。  仰せのように、確定申告がされました方につきましては、部内での整理用ということで整理番号を用いております。ただし、それはあくまでもそれぞれの税務署単位でございますので、言われているような納税者番号とはちょっと種類を異にしておるのではないかというふうに思います。
  179. 野口幸一

    ○野口委員 たとえそれは税務署ごとであろうとなかろうと、実は非常に大きな長い番号でございまして、たしか十けた以上ある番号でございますから、これは一目見てどこの税務署でどこのものかということがはっきりわかるように、恐らく電話番号と同じで、〇三の五〇八の何々というふうになりますと初めの二文字は府県でその次は税務署名で次は何々というふうになっているのだろうと思います。十けた以上の番号が実は確定申告書にも判こが押されて送ってまいります。私は、それを見まして、ああ税務署さんも賢いんだな、私たちが言うよりも先に納税番号はやっておるわいと思っておるわけでありますが、もう一歩踏み込んで、この制度というものを、なぜ納税者番号かということについての御議論を深めていただいて、ぜひとも不公平税制是正一つの大きな柱にしていただきたいということをまずお願いをしたいと思うのであります。大蔵大臣の再度の御決意のほどをいただきたい。
  180. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 仰せられますようにこれはできるだけ早く、しかし高い、広い角度から結論を出していただきたいと思っておりますが、私は、やはり我が国が英米と違いましてかつて全体主義的な権力的政治のもとに置かれた経験があって、国民がそういう経験をしまして、それから脱してわずかに四十年という比較的短い期間であるということに国民がいろいろにこの問題についてその疑念を持たれるところがあるのではないかということをひそかに実は考えておりまして、思い過ごしかもしれませんけれども、そういう全体の問題としてこれはぜひ積極的に検討をしていただいたらどうであろうかというように思っております。
  181. 野口幸一

    ○野口委員 その次に、記帳制度の整備の問題について少しくお聞きをいたしたいと思います。  最近、納税環境の整備にかかわりまして、記帳制度の問題についてもたびたび大蔵委員会で話をしてまいりました。記帳記録保存関係につきまして、既に記帳義務の関係につきましては昭和五十九年に創設されまして以来いろいろな部門部門で、また各種の税制等の議論の中でも議論されてまいったわけでありますが、今日、青色申告の場合は別といたしまして、白色の場合は記帳の義務が義務づけられておりません。これは後ほどのみなし法人の問題とも関連をするわけでありますが、少なくとも記帳というのは、商法上から考えましてもまた今日の日本の商習慣から考えましても、決して無理な要求ではないと思うのでございます。  納税環境の整備という立場、それからまたこれの正当性を確保していくという立場からも、やはり記帳をなさった方が主張するにも正しい主張ができるであろうし、また税務当局から見ても、それが精査なものであるかということについても非常にわかりやすい。何とかしてこの記帳制度の義務化というものをこの際お決めになる必要があるのではないだろうか。この辺についてはいかがなお考えをお持ちでございましょうか。
  182. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 お話しのように、昭和五十九年度の税制改正におきまして記帳制度を創設していただいたところでございます。青色申告者でございますと一定の帳簿を記録し保存しておくことが求められているわけでございますが、一般的な申告所得者につきましてはそういう義務はございませんでしたところ、昭和五十九年におきまして事業所得者でございましてその前々年分の所得が三百万円を超える方につきましては、簡易な帳簿でございますけれどもこれを記帳し保存をするということをお願いいたしたところでございます。  ただ、よく指摘されております点は、この点が特段の罰則の規定もなく、強制力が弱いのではないかということが指摘されて、完全な記帳制度であるかどうか、いろいろ御議論のあるところでございます。しかしながら、青色にもならない三百万円程度ぐらいの小規模な企業でございますと、これを罰則をもってまで強制をするということはいかがか、あくまでこれは執行当局におきますところの指導によりまして記帳の慣習をつけていただき、記帳の慣習が定着いたしましたらば青色申告者になっていただくというふうに、現在執行当局におきまして努力されているところでございます。
  183. 野口幸一

    ○野口委員 思いやりといいますか、そういう意味でおっしゃっておられることはわからないわけではありませんけれども、非常に今日、税という問題に対する国民の関心も高く、かつまた、一方では減税だとかいろいろな問題につきましても主張をしている国民であります。それなればこそ、自分たちの身辺を明らかにして、そして記帳制度というものもみずからそれを進んで実施するようにしなければならないのが私は本来であろうと思うのであります。  そういった意味から考えましても、例えばアメリカにおきましても、特に故意に記録を怠った者は罰金または一年以下の懲役に処せられる。西ドイツにおいては、故意または過失によって不正な記帳を行った場合は過料に処せられる。フランスの場合も、故意に記帳を怠った場合または不正な記帳を行った場合は罰金及び一年以上五年以下の禁錮に処せられる。フランスは大分きついようでございますけれども、とにかく諸外国を見ましてもこういう例はあるわけでありまして、特に日本におけるところの記帳制度の整備が、いわゆる現場におけるところの税務当局の現場職員においては非常にこの問題が重視されている昨今でございます。  主税局も、いつまでもそういった温かい温情というのは、片方では余りないのにその方面だけは非常に温情があるわけでありまして、その辺のところはきちっとさせるべきものはさせるという立場に立ってやっていかなければならないのではないだろうかと思うのでありますが、もう一度、これからの対応のあり方について、これは大臣からでも結構でございますが、結構でございますは失礼でございますが、ぜひ大臣からもこの点について御所見をお述べいただきたいと思います。
  184. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 五十九年改正でお願いいたしまして、六十年分の所得税からその実施を現実にお手数をお煩わせしているわけでございます。この定着状況等を見まして、この制度をさらに前進させる、推進させる余地があるかどうか、執行の面とも十分相談をいたしまして御趣旨にこたえられるようにいたしたいと思うわけでございます。
  185. 野口幸一

    ○野口委員 重ねて申し上げますが、その実施状況のパーセンテージはおとりになったことがありますか。その以前と以後において、五十九年以前と以後においてどのくらいの程度進んでいますか。
  186. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 先生仰せの数字をどういう側面でとらえるのがいいのか、なかなか難しゅうございます。御案内のように、私ども行政の現場におきましては記帳の指導というのを行政の一部として行っております。その記帳指導の対象になった人員がどうかというあたり一つの指標になるのかなというふうにも思いますけれども、ちょっと先生の御質問の趣旨にこたえるような格好にはならないのかなというふうにも思いまして、端的な計数としてはちょっと手持ちしていないというのが実態でございます。  ただ、念のために申し上げますと、指導件数は、それ以前も含めまして着実にふやしてはおります。
  187. 野口幸一

    ○野口委員 これは私も実質的に調査をしたわけではございませんが、私の関係する税務署でしかお聞きすることができないわけでありますが、そう決まってはおるけれども、罰則がないために、いわば絶対的なものがないという意味もございまして余り進んでいないというのが現状だそうでございます。これは主税局長さんにしかと申し上げておきます。それで現場は非常に困っている、こういうことでございます。その点を申し上げておきたいと思います。  さらに、執行面における不公平感是正のあり方につきまして申し上げてみたいと存じます。  確かに、世上クロヨンだとかトーゴーサンとか言われる中に所得の捕捉についての問題点をよく言われます。これもたびたび大蔵委員会でも申し上げてきたのでありますが、過度の実調というのはいかがなものかということでお答えになってきた経緯があるわけでありますが、少なくとも私は、現在の時効制度になる七年の間に一遍ぐらいはどの納税者にも実調が行えるという、最低そこの辺のところはぜひやっていただけないかな。そうしますと、例えば、これもこの前の大蔵委員会で申し上げたのですが、実は私の娘が保育園に行っておりまして、保育園の保母をしておりまして、自転車に乗っけてこられるお子さんの保育料よりも自家用車のいわゆる外車でお送りになられるお子さんの保育料の方が安いというような感じが実際面ではありましても、しかし実は納税の捕捉はしっかりやられていて所得の捕捉はそこから出てくるのだから、そういう人だと仮に税金が低くて保育料が低くてもやむを得ないのだという説明ができると思うのであります。しかしながら、残念ながら今のところそういうのは抜けておる部分もございまして、不公平感というのはそういうところから出てくるのではないだろうか。  少なくとも七年に一遍といいますと、これは長いようでありまするけれどもなかなか実行面では難しい数字でございます。パーセントでいいますと、法人税で九・五%、所得税で三・八%の実地調査割合でございます。実調率をこれから大体一四・三%に上げなければ七年に一回回らないという形になりまして、職員の増加だとかいろいろな問題があろうと思いますけれども、これは国民不公平感を払拭するためにぜひやっていただきたい。  例えばこれをやって、実は所得の不正を挙げた、それで今までよりも税収を上げることができたとします。しかし、ワーストテンに入るような大きなものは出てこないことは間違いございません。そんな大きなものは出てこないと思います。思いますけれども、しかし国民不公平感というのはそこではっきりと皆さんわかっていただけるのではないだろうか。みんなが正しく申告し、所得も捕捉され、そして同じように税金を納めているという気持ちがわいてくるのではないだろうか。今は何年目に一遍かしか来ないからあとは交通事故みたいなものだと言ってうそぶいている人が中にはおりますだけに、おかしいのじゃないかという気持ちがわいてくるのではないだろうか。  そういった意味では、捕捉の完全化を期するために、少なくとも現在のこの実地調査割合というのはいただけない、もう少し上げて、疑うわけではございませんけれども、少なくとも失効期間にならないような七年に一遍ぐらいは、実施の方法にもよると思うのでありますけれども、税務署の方が出かけていって調査をするという体制をとっていただくことができないものだろうか。これは特に不公平税制是正といいますか、不公平感の払拭の方でぜひとも必要なことではないだろうかと思うのでありますが、大蔵大臣お答えをいただきたいと思います。
  188. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実調そのものによって上がります税金もさることながら、実調がかなりしばしば行われるということになりますと、納税者かなりちゃんとした申告をするということの効果が、正直のところ私はその方が大きいであろうと思いますので、確かに調査の方法にもよるかもしれません、手抜きという意味じゃございませんけれども、それだけの関心なり警戒感と申しますか、納税者に持ってもらう程度の実調のやり方というのは、私は、いろいろ工夫をしているのだろうと思いますけれども、十分また工夫をさせていただかなければならぬと思います。
  189. 野口幸一

    ○野口委員 私の知っております実調のあり方といいますか、実際に行ったわけではありませんけれども、横から眺めさせていただいた場合は、非常に長い期間多数の職員がおっかかりになりまして、銀行から取引先からもう随分と大変な資料を集められまして、いわばからめ手から攻めまして、これは悪質な場合でありましょうけれども、やっておられる御手数の多い仕事を見ておりますと、これを上げろというのは大変だとは思います。しかし、少なくともそこまでいかなくともできる実調もあろうかと思うのであります。仰せのとおり、必ずしもそういうのばかりが全部納税者ではございませんから、正直な者もおるわけでございますから、そういった意味では簡易な方法で済む場合もありましょうし、実調率というこの言葉から来る、語感から来るものはちょっときついように聞こえますけれども、もう少し税務当局が実際に、私から言わせれば、現場に行って御調査になる機会というのが、失効になる期間いわゆる七年間の間にはもう一回くらい行ける、一回は必ず法人も個人も押しなべて入れるというようなシステムにぜひ御考察をいただけないかな、これが不公平感を除去するに非常に大きく役立つのではないだろうか、こう思うのでありますので、再度ひとつ国税庁の方からも御答弁をいただき、大蔵大臣も後で御答弁いただきたいと思います。
  190. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 仰せのように、除斥期間内に少なくとも一度は実地調査をするようにというお話でございます。ただ、その数字は、現在の所得税あるいは法人税の実調率と比べますと相当差がございます。  その前に、ちょっと今の調査の実態がどうかというところを概略御理解いただきたいと思うのですが、やはり私どもの調査も、今先生おっしゃったように非常に手をかけるケースもございますし、それから非常に短期間で終えるものもございます。査察のように非常に問題があるというケースでありますと、おっしゃるように相当の日数をかけておりますけれども、通帯の税務調査ですと、企業の大小にもよりますけれども、税務署所管の場合ですとむしろ非常に限られた日数で実調をこなしているというのが実態かと思います。所得税で見ますと、平均しますと数日くらいになっておろうかと思います。そういう平均の中で、ものによっては相当の日数を、それから案件によりましては半日あるいは一日あるいは二日といったところで済ますのもございます。  そういう意味で、限られた調査日数といいましょうかを最大限効率的に活用するということで努力をしておるわけでございますが、にもかかわらず、現状は今冒頭申し上げましたような所得なり法人の実調でございます。もちろんこれで満足しているわけではございませんで、私どもといたしましても、内部事務の効率化等あるいは機械化等を今後とも一層進めまして調査日数の確保に努力してまいりたいというふうに考えておりますが、同時に、どうしても必要な場合には所要の定員を関係方面の御理解も得ながらふやす等々によって、先生のおっしゃるような実調率を今よりも上げるという方向での努力を今後ともやってまいりたいというふうに思います。
  191. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 玄人になればなるほど完全主義になりやすいということは、私はきっとあるのだろうと思います。その辺は、私の気のつくことぐらいは専門家でございますからよく気がついているのだろうと思いますけれども、今御指摘のようなこと、あるいは機械化等々も、もっともっとひとつ勉強していかなければならぬと思います。
  192. 野口幸一

    ○野口委員 前の主税局長でありました梅澤さんが、いわゆる不公平感の解消の方策ということについてもお書きになっておりまして、今執行当局の立場にありますから当時国税庁長官でございましたが言えないけれどもということで、前置きがございまして書かれておる中にありましても、いわば国民皆さん方が公平というものに向かって一歩も二歩も前進を図るという姿勢で考えられる解消の方策として、執行の面におけるところのいわゆる調査の問題が出てくる、これは行き過ぎても、むちゃくちゃにやるのもよくないけれども、少なくともこの問題というのは、先ほど私が申し上げていますように、不公平感をなくするということについては非常に効果のあるものである、そういうことを述べておられるわけでございます。  そのことと、実はいわばここのところがまた隘路になろうと思うのでありますが、いわゆる定員論の問題が出てまいります。そうなってまいりますと、またもとへ戻ってきて、今日の状況から考えて余り人がふえないということで重くなってくる職員の負担というものはあるわけでありますけれども、しかし私は、国民不公平感をなくすという立場からの御施策ならば、それが先ほども徴税、徴収の額との見合いの中で人件費というものが相殺されるのではなくて、実は不公平是正あるいは不公平感というものの除去のために役立つとするならば、進んでこの問題についても一定の御所見がございましたように進めていただきたいということを最後にお願いを申し上げておきたいと存じます。  そこで、みなし法人の課税の問題について申し上げたいと存じます。  今回の不公平是正の中にみなし法人の課税問題についての言及がございました。そこで、青色申告会の総連合というのがございまして、そこで言っておりますのは、いわゆるみなし法人課税の問題についてでありますけれども、みなし法人課税制度は税制でないという意見がある、すなわち恩恵的政策の配慮のものと言われて位置づけられている、極めて不本意だと言っているのであります。したがって、このみなし法人課税をやめろということについては、今まで私どもは何か恩恵的な政策の配慮の中で受けていたように思われるので、この際、いわゆる小規模企業税制というのを明らかにしていただいて、取るべきものは取る、あるいはまた引かせていただけるものは引かせていただく、経費は経費と明らかにしていただいていわゆるみなし法人課税というものをひとつ設立していただけないものだろうか。これは各種のいろいろな先生方もみなし法人課税の問題についての文献をお出しでございますけれども、締めて言うならばこういうところに今意見が集約されているように思うのでありますが、この点についての御所見はいかがですか。
  193. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはもう御指摘のように二重控除じゃないか、あるいは法人なのか個人なのか、ぬえ的ではないかという批判と、いや、これで奥と店とのちゃんと合理化ができる、同族会社だってあるじゃないかという議論がございまして、結局事業主報酬の制限をすることに今度いたしましたので、これが六十八年まででございますか、それまでの間にやはり中小企業税制ということで、ちょっと今このものの位置が何かふわっと不安定でございますので、やはり帰属すべきところへ帰属する、制度としてどう考えるかを考えてまいらなければならないと思っております。
  194. 野口幸一

    ○野口委員 もう一つ申し上げたいと存じます。それはタックスヘーブンにかかわる問題でございます。  この問題は過般も御議論がございました。しかし私考えますのに、この問題は今日、国際的にも非常に重視すべき課題であろうと思うのであります。したがいまして、この問題につきまして大蔵当局は、いわゆる機構の改革も含め、前向きに充実を図っていただきたい、そして早急にこの対応がなし得るような状況にぜひしていただきたいということを求めるものでございます。  同時にまた、総理もサミット等にお出かけでございますし、国際会議もたまたまあることでございますから、この国際的な脱税問題につきましては戒めていただくと同時に、進んでこの問題も提起をしていただきまして、タックスヘーブンの問題についてもぜひとも列国の皆さん方にも御理解をいただく機会をより多くつくっていただきたい、この二点を申し上げたいと存じます。
  195. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 タックスヘーブンの問題につきましては、昭和五十三年の改正におきまして、タックスヘーブンにおきまして子会社等をつくられた場合におきましても、それは日本国内に所得が持ち込まれたものとして課税をさせていただくという制度をお認めいただいたわけでございます。その後、この対象となる地域の追加の指定でございますとか、制度面でも、その地域におきましては法人税率が極めて低いことが条件でございますが、しかし、法人税率自体は低くないが、それが配当を受け取ったときには課税されてないようなところへ配当している場合にはこの制度の仲間に入っていただくとか、いろいろ制度的にも実施面でも工夫はいたしてきているところでございます。現在、この指定をいたしておりますのは三十三カ国あるいは地域でございますが、これにつきましてなお追加をする余地がないかどうか、鋭意検討いたしておるところでございます。  制度面につきましては、こうしたいろいろ工夫をいたしておるところでございますが、執行面におきましても、国際調査体制の確立に向けましていろいろ工夫を凝らしているところでございます。
  196. 野口幸一

    ○野口委員 そういう抽象的なといいますか平面的なお話は、昨日も承りましてよく存じております。  そこで具体的には、もちろん国際的な調査でありまするから、それぞれの主権国に入りまして調査をすることの難しさということもお聞きをいたしましたし、私どもも決してそれがうそであるとは思いませんけれども、やはり執行面におけるところの仕事の充実を図っていくためには機構も改革し、人員もよく配置をしてやっていかなければならぬということを申し上げておるのでありまして、したがって執行面においてぜひその充実強化というものを図っていただきたい、こういうことを含めて申し上げました。だから、国税局の方でぜひ……。
  197. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 お二つ御質問ございました。  一つは、国際問題が非常に重要になってきておる、経済取引等々の国際化に伴って税もそれに見合った対応をすべきじゃないか、執行面でしっかりやれというお話かと思います。  この点につきまして私どもも、機構的にも、国税庁あるいは国税局、税務署を通じまして国際課税をある意味では専門にこなし得る職員の養成等に努めております。  具体的に申し上げますと、本庁におきましては国税審議官、国際業務室あるいは国際調査管理官といったポストを設置していただいておりまして、これらが特に国際課税問題を中心に担当しております。同様な仕事につきまして、主な国税局には国際調査課あるいは調査情報課、国際調査専門官等を設置いたしまして、海外取引調査に係る事務を言うならば専門に行っておるということでございます。  そして、今後もこういった国際課税の問題は重要さをますます増していくと思いますので、こういう事務に従事する職員の研修なり、あるいはそういった職員の数をふやすといったようなことも今後ともなお努力してまいりたいというふうに考えております。このことは、先生お話しのタックスヘーブン税制の執行に関連いたしましても当然対象として、重点課目の一つとしてやってまいりたいというように思います。  それから、いま一つの国際的な関係でのいろんな協力といいましょうか、各国政府間の協力というお話がございます。  いろんな舞台がございますけれども、国税庁が関与しております分野では、環太平洋税務長官会議、これはアメリカ等の、日本を含めまして四カ国の長官会議。それからSGATARと称しておりますけれども、ASEAN諸国を中心とした国々の税務長官会議といったような機構を持っております。機構というのはややオーバーですけれども、会議を持っております。そういった会議を通じまして各種の情報交換、意見交換を行うとともに、また実践的には、先生御案内のように、租税条約に基づく情報交換ということで関係各国との情報交換を積極的に推進してきております。これらも今後ともなお一層ウエートをかけて充実させてまいりたいというふうに考えております。
  198. 野口幸一

    ○野口委員 まだ時間があるようでありますが、予定をいたしましたものがおおよそ終わりましたので終わらせていただきますが、一応申し上げます。  今日、先ほど来申し上げておりますように、いわゆる税制改革というものは本来もっと大局的見地から、しかも入念に急がず、国民の皆さんに合意をいただくためにぜひともそのことに努力を怠ってはならぬ。しかもそのことは、総理並びに大蔵大臣にも申し上げましたように、たびたび総理自身もそのことが一番大事だということを申し述べてこられたところでございます。今日お見受けいたしますところ、まだまだそこに至っていないというのが私の実感でございます。  私どもが提起をいたしました今日の税制改正のあり方というものにつきましても、もう十分お読みでありますし、先ほど来同僚、先輩が申し上げてきたところでございます。  重ねて申し上げますが、どうかそういった意味合いで、全般的な配意の中から、しかも将来を展望して国民にわかりやすい、説明のいく、納得がいく税制というものを時間をかけて、この際、総理の政治日程に合わせてじゃなくて、国民の生活日程に合わせてひとつ御審議をいただけるようにお願いを申し上げまして、私の質問を終わりたいと存じます。
  199. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 これにて野口幸一君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十六日水曜日午前十時委員会、正午理事会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十六分散会