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1988-10-24 第113回国会 衆議院 税制問題等に関する調査特別委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十月二十四日(月曜日)     午後一時一分開議  出席委員    委員長 金丸  信君    理事 加藤 六月君 理事 海部 俊樹君    理事 瓦   力君 理事 羽田  孜君    理事 藤波 孝生君 理事 加藤 万吉君    理事 村山 喜一君 理事 二見 伸明君    理事 米沢  隆君       甘利  明君    池田 行彦君       小沢 辰男君    片岡 清一君       岸田 文武君    志賀  節君       鈴木 宗男君    田原  隆君       谷  洋一君    玉沢徳一郎君       中川 昭一君    中川 秀直君       中島  衛君    中西 啓介君       中村正三郎君    西田  司君       野田  毅君    葉梨 信行君       浜田 幸一君    原田  憲君       堀内 光雄君    村山 達雄君       谷津 義男君    山口 敏夫君       山下 元利君    伊藤  茂君       川崎 寛治君    坂上 富男君       中村 正男君    野口 幸一君       山下洲夫君    草野  威君       小谷 輝二君    坂井 弘一君       坂口  力君    宮地 正介君       安倍 基雄君    玉置 一弥君       工藤  晃君    正森 成二君       矢島 恒夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  竹下  登君         法 務 大 臣 林田悠紀夫君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         厚 生 大 臣 藤本 孝雄君         労 働 大 臣 中村 太郎君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 内海 英男君  出席政府委員         国土庁長官官房         長       公文  宏君         国土庁土地局長 片桐 久雄君         法務省刑事局長 根來 泰周君         大蔵省主計局次         長       篠沢 恭助君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省理財局長 足立 和基君         大蔵省証券局長 角谷 正彦君         国税庁 次 長 伊藤 博行君         厚生大臣官房総         務審議官    末次  彬君         厚生大臣官房老         人保健福祉部長 多田  宏君         厚生省健康政策         局長      仲村 英一君         厚生省保険局長 坂本 龍彦君         厚生省年金局長 水田  努君         労働省職業安定         局高齢障害者         対策部長    竹村  毅君         自治省財政局長 津田  正君         自治省税務局長 湯浅 利夫君  委員外出席者         地方行政委員会         調査室長    大嶋  孝君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ───────────── 委員の異動 十月二十四日  辞任         補欠選任   小沢 辰男君     中島  衛君   熊谷  弘君     中西 啓介君   宮下 創平君     谷津 義男君 同日  辞任         補欠選任   中島  衛君     小沢 辰男君   谷津 義男君     宮下 創平君     ───────────── 本日の会議に付した案件  税制改革法案内閣提出第一号)  所得税法等の一部を改正する法律案内閣提出第二号)  消費税法案内閣提出第三号)  地方税法の一部を改正する法律案内閣提出第四号)  消費譲与税法案内閣提出第五号)  地方交付税法の一部を改正する法律案内閣提出第六号)      ────◇─────
  2. 金丸信

    金丸委員長 これより会議を開きます。  内閣提出税制改革法案所得税法等の一部を改正する法律案消費税法案地方税法の一部を改正する法律案消費譲与税法案及び地方交付税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤茂君。
  3. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 私ども社会党公明党民社党、社民連、四党で勉強いたしまして、税制に関する基本構想というのをつくらしていただきました。残念ながら全野党ではございませんけれども、それに基づきまして質問をさせていただきたいと思います。  野党提案ベースにして討議をする機会をつくっていただくというのは大変異例なことでございまして、こういう審議を行っていただくことにも皆様感謝を申し上げたいと思います。また、感謝気持ちを込めながら、遠慮なく、厳しく議論をさせていただきたいと思っているわけであります。  皆様にお配りしてございますので、ごく簡単に趣旨だけ述べさしていただきますと、私どもがこれをつくりましたのは、一つには、政府与党皆様の方ではやみくもにこの消費税導入だけを急いでおられる。何十年かに一遍という、明治維新以来四回目だそうでございますけれども、抜本的な税制改革というものについての哲学理念原則進め方、そういうものが国民には理解されないままに急がれているのではないだろうかというふうな気がしてなりません。そういうことで、この基本構想冒頭にも書いてございますけれども、現状を見ますと、世論調査の結果を見ましても多数の国民反対、不安の意思表示をしているのが現実でありまして、消費税導入中心とする政府案への国民的合意は何ら形成されていないというふうに言わなければならないと思います。そしてまた、進め方を見てみましても、そういう税制改革理念、目標を国民に明確に語ることなくして、また、民主的なさまざまの手順を抜きにいたしまして消費税だけを急いでいる。私どもといたしましては、こういうことで数の力で強行されるということになりますと、税に対する国民信頼、それから今後の日本民主主義というものを心から憂えざるを得ないというふうに思うわけであります。  そういう意味で、私ども野党としての責任を痛感いたします。やはり批判をするだけではなくて、私ども野党としての立場からあるべき姿を積極的に提案し、いい議論をしていくということにしていきたい、それが本来の議会使命であろうというふうに思うわけでございまして、先般来議論をいたしてまいりました不公平税制是正につきましての十項目提案ということにつきましても、その打開案も含めて、そういう気持ちから私ども提案をさせていただいているわけでありまして、そういう努力を私どもは今後ともしてまいらなければならぬというふうに思っているわけであります。  そういう意味で、ここに五つ原則五つ手順というものを提起いたしました。その中身は、今まで特に社公民三党委員長が、それぞれ土井委員長あるいは矢野委員長基本法提案民社党塚本委員長提案、そして私ども野党政審会長合意をしてきた文書というものを基本にいたしましてまとめたわけであります。  税制五つ原則として、国民合意原則、公平・公正の原則、そして総合課税応能負担原則地方自治尊重原則並びに福祉社会原則というものを立ててみました。また、手順が非常に重要でございますので、民主的なルールによる改革をすべきである、少なくとも公約違反をやるのは認められません。二つ目には、最優先課題として徹底的な不公平是正三つ目には、行財政改革長期展望四つ目には、福祉政策長期展望福祉ビジョンを出していただきたい。そして五つ目には、国民合意のためには十分かつ慎重な討議をしなければならない。五つ原則五つ手順ということを提起さしていただいたわけであります。人によりましては五箇条の御誓文と言う人がおりましたけれども、その中身の柱につきまして、私はだれしも否定できないことであろうと思います。だれしも否定できないことを柱にして、そういう否定できないことに現実おやりになっていることが合っているのですかどうかということを議論することは非常に実りあることではないだろうかというふうに思うわけであります。  総理も前もってお読みになっていたと思いますので、このような提起をさしていただいたことにつきまして、竹下総理、御感想ございましたら、まず冒頭にお伺いしたいと思います。
  4. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 たしか四月でございましたか、土井委員長四つ問題点という表現であったかと思います。税制とちょっと離れているななんて思いましたのは、いわゆる軍事予算の拡大を阻止するとかいうのが一つ入っておったような気がいたしますが、それから六月が塚本三条件というのがありまして、それから八月にいわゆる公明党、あの矢野さんの基本法構想、十六条でありましたか、そういうのが出てまいっておりましたことは、私どもも承知しておったところであります。     〔委員長退席海部委員長代理着席〕  一方、四野党の十項目のいわゆる不公平税制問題点が指摘されて、これはこれなりにいろいろ御議論をいただいておるところでありますが、したがってそういう、事によったら最大公約数というお言葉を使わしていただくのは若干非礼かと思いますが、そういうものを苦心をしておまとめになって提示されて、それがお互いの議論の大きな素材として提供されておるということは、私は、議会制民主主義立場からまことに結構なことじゃないかなというふうに感じておるところでございます。
  5. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 議会制民主主義立場からいって、与党野党提案をぶつけ合って議論するというのは大事なことであろう、私もそう思うわけでございまして、また、そういうことを、きょうは私ども建前ベースにして質問するという形になっておりますが、本当はいろいろな形で率直に意見をぶつけ合うということも議会の大事な機能であろうというふうにも思うわけであります。私は、そういう意味で申しましたら、この五つ原則五つ手順などというのは、ある意味では良識かどうかというよりも常識でありまして、こういうことを政府もきちんと大前提として声明をされる、場合によっては、議会においてもこういう原則でやるんですよということを全会一致で決めて作業にかかるというふうなことが私はふさわしい姿であろうというふうに思うわけであります。  そういう点を含めまして、中身につきまして私ども見解を述べ、質問をさせていただきたいと思います。これから公明党坂口政審会長、また民社党米沢政審会長など、シリーズで御質問を申し上げる、議論をしたいというふうに考えておりますので、私どもの方から特にこの五つ原則というものに関連をした議論をさせていただきたいと思います。  まず第一の国民合意原則、これはタックスデモクラシーの精神あるいは近代議会政治税負担の公平の問題から生まれたという歴史の経過から見ましても、御説明をする必要はないであろうと思います。単刀直入にまず総理にお伺いをしたいと思います。  今総理の方が、昨日もそうであったようですが、つじ立ちの御努力をなさっている。週刊誌やその他を見ましても、さまざまの動きを見ましても、かつてない規模でさまざまのPRが行われている、政府案PRが行われているというふうなわけでございますけれども、それにもかかわらず、政府提案反対をする世論の方が非常に大きいわけであります。改めて申し上げるまでもなく、総理もよく御承知のことであろうと思います。朝日新聞では消費税反対六五、賛成一六、日経新聞では反対五六、賛成三二、毎日新聞では、これは九月十一日ですが、反対が五八、賛成が一五、NHKの七月の調査では反対が五八、賛成が二一、東京新聞では反対が四六、賛成がわずか一四というふうな状態であります。  しかも、最近になって特徴的なことは、九月、十月、この段階調査の結果で見られておりますことは、主要な新聞調査にも出ておりますけれども、四月、五月、六月の段階と比べまして、よくわからないという人が減っている、そのかわりに反対の方がふえている。かつては賛成よりも反対の方が三倍ぐらいでございましたが、今は反対の方が賛成の四倍というふうなアベレージになっているというふうな状況であります。  私は、これを見ますと、国民世論の方はそういう状態にある。総理は、議論をしながら世論を深め、また考えていくというふうな趣旨を申されておりましたが、世論の方はそういう反対の方がふえているという状況。ところが総理の方は、御発言を伺っておりますと、身命をかけてとか今国会至上命題であるとかつじ立ちしても云々とか、政治家がそう簡単には言わないさまざまの言葉を連ねられているわけであります。私は、国民国会に非常に大きなずれとギャップが出ちゃう、政府国民の間に非常に大きなギャップが出るということを、これは懸念せずにはおられません。  総理、いかがでしょう、こういう状態のもとでも、こういう国民世論構造状態ですね、これはあらゆる世論調査に共通した状況ですから、こういう状態でもこの国会で強行されるおつもりでしょうか。それを強行して、来春から混乱もなくそれが執行できるなどとお考えになっているでしょうか。
  6. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 まず、国民世論動向等について、各紙の世論調査等をお挙げになりました。これは、私はそれを読むたびに、私ども努力がなお足りないなという大きな反省材料にいたしておるところでございます。しかし、私なりに、それは君自身の勝手な解釈だということがあろうにいたしましても、私自身率直に考えてみますと、先日我が党の山下委員から御質問がありました、五十九年税制改正というのが一つありました。私は、ある意味において本格税制改正に近づかんとする努力を、あのときも各党協議が土台にあったわけでございますけれども、なされたのが五十九年だなと。それは、よってもって来るゆえんのものは、やはり五十四年の国会決議等がこの背景にあってそういう機運が醸成されてきたものだなというふうに思います。  したがって、その機運を得て、実は政府税制調査でもいわゆる抜本改革ということの答申を五十九年の末にちょうだいをいたしました。それから新たにまた、抜本改正の具体的な成案についての諮問中曽根内閣で行われ、また、竹下内閣になりまして、売上税という大きな反省に基づいて諮問をし答申をいただいたという経緯をたどっておって、しかもその間に、それは一億二千万国民公聴会に参加していただくわけにはもちろんまいりませんけれども地方公聴会等もやりながら国民皆さん方理解を深めていく努力を続けておるということは、私は私なりに今そのように理解をしておるわけであります。  そうしてまた、この努力に基づきまして、やはり昔から言われますように、新税はすべて悪税なり、しかし、それがある種の理解となれを生じた場合はこれまたすべて良税になる、税金というものの性格からしてそういうものであるということを踏まえながら、なおかつこの最高機関である国会議論が高まっていけば、国民理解というのは、あるいは合意というのは急速にまたこれは進んでいくに違いない。事ほどさように国会議論というのは権威の高いものだというふうに考えておるところでございます。  それから、いま一つ申し上げるといたしますならば、したがって、やはり新税というものでありますだけに、我々の努力というのは本当に何層倍する努力もまたしていかなければならぬというふうに思っております。そして、たびたび申し上げますように、この国会そのものは、いろいろな受けとめ方はそれぞれ自由でございますが、召集権者である政府としては、税制改革をお願いするためにお願いした国会であるということからいたしまして、この国会で議了していただけることを心から期待し、そして信じておるということでございます。
  7. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 期待をするのはわかりますけれども、信じることができるかどうかは、私はまた別問題だろうと思います。  今総理の御答弁の中に、新税は悪税という、よく時々伺う言葉でございますけれども総理の口からそういうことがございました。私は、非常にそれを考えさせられるわけであります。新税は悪税なりというふうな世間の言葉がございます。しかし、それは、日本国民は私は良識を持っていると思います。要するに、税金は何でも嫌だ、反税だという、そういう国民の総意ということではないと私は確信をいたしますし、それを信じながら国民に語るのが政治家使命ではないだろうかというふうに思うわけであります。  私は、税制改革は必要だと思います。それから、中長期にわたりまして私どもも真剣な提案をしていきたいと思います。私ども提起をいたしましたように、今の国民皆様からすれば、まず徹底的に不公平をなくしなさい、税金の使い道についてもきちんとした中長期のシナリオをつくりなさい、高齢化社会が参ります、それをどうしますか、今の状況だけでは、今の政策だけではなくて知恵を絞った努力をしてください、そういう上に立ってなおかつ必要なものをどうしますか。そういうことになれば、当然ですが、直税間税いずれをやるのか、あるいはミックスを選ぶのか、さまざまのことについてのフェアな議論があり得るだろうというふうに思うわけでございますけれども、今の政府のおやりになっている状況というものは非常にかけ離れている。それがはしなくも新税は悪税なんという言葉総理の口から飛び出すというふうなことになっているのではないだろうかと思うわけであります。  総理、重ねてお伺いしますが、税制は最もベーシックな政策であります。税制あり方から近代民主主義が生まれている。私は、日本民主主義日本というふうに誇りを持って語れるような議論と対応をしたいというふうに思うわけでございまして、世論とかけ離れた、世論の中では反対が強まる状況、そういう中で強行される状態というものを議会人の一人としても大変これは憂えるわけであります。重ねてお伺いいたしますが、世論が、今、今日現在のような構造が変わらない、こういう状況が続いているという中では強行しないということを明確にお約束をいただきたいと思います。  私は、本来論議は大いにすべきだと思います。しかし、一月後にとか、もう間もなく十一月の何日にとかいうような形でゴールを設けるというのは間違いだと思います。やはり議論は真剣に展開をする、そして内容について議論を尽くし、あるいは国民の多くの皆様が大体御納得をいただける、そういうときに初めてゴールが設定をされるというのが、これは特に税制については必要なところではないだろうかというふうに思うわけでございまして、今のような世論構造の特徴、こういう状況のもとでは、デモクラットとして、これはデモクラシーの場の大きな責任を持たれる総理・総裁として、それでも強行するというのはいたしませんということをお約束いただきたいと思います。
  8. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 国会議論を尊重するのは、これは当然のことでございます。その国会議論とは、すなわち、私はまさに国民世論代弁者、正確に判断される代弁者のお方の集団が国会であるというふうに考えております。したがって、この国会議論の中でおよその方向というものが示されたとき、これは私どもはお願いする立場でございますが、国会において適切な処理をされていくものであろうというふうに思っておるところでございます。  私の方からこれを審議していただきたいとして提案したものでありますだけに、この審議に当たっては、どういう場合に決着をすべきものだということを申し上げるのは行政府立場からしては非礼に当たるではないか、あくまでも国会の御判断にゆだねるべきものであるというふうに考えておるところであります。
  9. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大変竹下さんらしい御答弁でございます。これがもし中曽根さんでしたら、あなた方は反対するけれども私のやったことは歴史が判断するでありましょうとかという、大げさなことをおっしゃるところでございましょう。  総理、大変失礼な表現を私は余り言いたくはございませんので、おなじみの評論家伊藤昌哉さんがこういうことをある週刊誌に言われておりました。  今日の状況竹下国対政治と呼んでいます。竹下首相が最も得意とする、また、佐藤元首相が最も得意としたやり方であります。こういうことでは総理大臣は要らない、国対委員長がおればよろしいと、こうなるわけです。まあしかし、こんな国の将来を語るところの総理なき国対政治がいつまでも続くものじゃありません。言葉が不明瞭なだけではなくて、やっていることも不明瞭だということに国民は気づき始めています。信頼を失い始めた竹下首相は、三百名の超安定政権を維持できなくなるでしょう。今こそ政治家としての見識を問われている。同じ伊藤ですが、評論家伊藤昌哉さんがこういう言い方をなさっております。  私は、この際、そういうデモクラシー中心としての税制という哲学を毅然として総理が語っていただくということを期待をいたしているわけでございますが、いかがですか。御答弁、同じですか。
  10. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 伊藤昌哉さんという評論家の方は、かつて総理大臣秘書官もなすっておった立派な方であると、私の方は尊敬を申し上げております。  人の口に戸が立つわけではございませんから、私自身にいかなる批判がありましょうとも、そもそも私どもは、学生時代から、とにかく体制側にある者は絶えず七〇%は批判を受けて、それを耐え切るのが本来の体制あり方であるという私なりの哲学を持っておりますので、その点についてはいかなる批判にもそれに耐えていくこと、これがいわば体制側に立つ者の立場であるというふうに私はいつも考えております。したがって、どんな御批判を受けましょうとも、それは決してその批判をする人が悪いのではなく、みずからに欠点があるという考え方に立たなければ体制側責任は果たされるものではないといつも言い聞かせております。  したがって、そうした批判があるのはやはりおれにそれなりの欠点があるということを十分自覚しながら、そして国会議論を詰めていただくための行政府としては最大限の協力をしていく、こういう立場でこれからも国会に臨むべきであるというふうに考えております。
  11. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 総理、こういう問題、基本的な姿勢の問題につきましても、きょうは野党側から提案したものにつきまして政府見解を承るということですから、本格的にどうすべきか、どうするかという意味での議論の言うならばまだ予告編でございますから、本番のときにはこんなわけにはまいらぬ、真剣な詰めをしていきたいと考えております。  それともう一つ、これに関連して伺いたいのですが、もう一つわからぬのは、ことし、この国会政府が御提案のようなことをやらなければならない必要性が一体どこにあるのだろうか、必要性とまた必然性がどこにあるのだろうかというのは、国民が感覚的にお考えになっていることであろうというふうに思うわけであります。  私どもは、三年程度の議論はしていきたいと考えております。なぜかと申しますと、かつてない自然増収弾性値三・三三、こんな状態がそのまま続くとは思っておりませんけれども、日銀、経企庁その他のさまざまな資料を見てみましても、景気対策をうまくやれば来年もその次もまあまあいいところに続けられるというふうにも考えております。アメリカの大統領選挙後の日米関係米国経済など、非常に懸念される状況もございますから、それらを含めて考えましても、自信を持てるのではないだろうか。ある意味では、そういう意味で相当時間をかけて十分な議論をする、国民合意にふさわしい議論をするというには私はかつてない絶好の機会である、デモクラティックな議論をするには絶好の機会、時間と余裕がある、それを生かしていい議論をしましょうということであって、何が何でもことしやらなければならないという現実必要性一つもないと私は思うのですが、どう認識をされておりますか。
  12. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 税制の根本的改正、改革につきましては、税制調査会が既に昭和五十九年以来答申をしておるところでございますが、伊藤委員も御指摘のように、そのためにやはり不公平感というものはどうしても除去しなければならない、八月十七日以来御提案になったこれは問題点でございます。  その不公平感のもとの一つは、やはり給与所得者、殊に中堅層の給与所得者がいわば非常に大きな重税を負っておるという気持ち、その感じが他に対する不公平感になっておると存じますのですが、この点はもう何とか是正をいたしませんと限界に来ておるという感じがいたしております。また、法人につきまして、諸外国がここでにわかに法人税を下げておりますので、それとの権衡の問題もある。片方にそういう問題がございます。  他方で、間接税につきましては、個別間接税をやっておりましたので、物品税にしても、何が課税で何が非課税であるかということ、あるいはサービスに課税されていない。外国に対する一種の輸入防圧策ではないかというような批判があるといったような問題が他方でございます。  そういう状況でございますので、かたがた将来を展望いたしますと、高齢化社会がもう迫ってまいりまして、それに対応して、どうやって社会の負担を広く薄く国民に背負っていただくことによって福祉社会というものをしつかりしていくかという問題、過去と現在と将来と実は三つの問題がございまして、この時期と、昨年もと考えたわけでございますが、それは、先ほど歳入のお話がございました。確かに三・三というような弾性値はまことに異常なことでありまして、何度も続くことではないということは御指摘でございますが、そのことよりも、このたびの税制改革そのものは増収を考えておるわけではございませんで、ネットとしては二兆四千億円の減税になるわけでございますから、そのような意味では、税収が好調であるということとは多少実は私どものねらっておることが違っておりまして、先ほど申しましたようなことで、過去、現在、将来を展望して、まずまず経済状況が比較的穏やかなこの際、お願いを申し上げたいというのが私ども気持ちでございます。
  13. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 宮澤さんがおっしゃるような現在の不公平感、どう対応するのかというようなことでしたら、私は、まず今日の不公平是正を完全にやるということの方が先ではないだろうかというふうな気がいたします。それから、あと言われましたことになりますと、さまざま論争したい点がずっとつながってくるのですが、そうなりますと政府提案中身に深く突入することになりまして、与党の皆さんが大変お喜びになることになりますから、それはいずれの機会にさせていただきたいというふうに思うわけであります。  もう一つ総理に伺いたいのですが、公約問題であります。  ここも、今までの総理がいろいろな本会議委員会でお答えになったことを言いますと、読めば読むほどあいまいもことしてくるというふうなわけでございまして、前には、前国会などのときには、重いものと受けとめているという言葉に象徴されるお返事でございました。重いものとは一体どういうふうに受けとめるのかということをその後の御発言を伺いますと、まるで重く感じていないというふうな中身に思わざるを得ないわけであります。はっきりお答えいただきたいのですが、前回の選挙で三百数議席を自民党が得られたというときの選挙の唯一最大の公約は大型間接税導入せず、頭言葉その他まくら言葉あったようなことを言われておりますが、国民の意識はそうなっているわけであります。  そこで伺いますが、竹下内閣は前回の選挙の公約に拘束をされますか、されませんか。選挙公約は当然次の選挙まで有効だ、また、これは義務であるというのがデモクラシーの政治の基礎でございます。総理がよく四年間の任期は大切に大切にということをしばしばおっしゃいますけれども、それと同じように、公約を大切に大切にというのが民主主義政治家基本的態度ではないだろうかと思うわけでございまして、重く受けとめられている前国会の御答弁、それが軽くなったのか、さらに重くきちんと認識をされておられるのか。要するに、前回の選挙公約は竹下内閣竹下首相を拘束している、いない、どちらに思われておりますか。
  14. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 その問題にずばりお答えします前に、先ほどのお話の中で一つ加えさせていただきますならば、実際問題、伊藤委員と私と、本委員会では初めてでございますが、大体何年税金の話をしたと御記憶でございましょうか。大変長い議論をしております。それは、やはりある意味において大きな土台ができて、そこで、自然増収等のお話がありましたが、今のようにいわゆる経済のパフォーマンスとでも申しましょうか、諸条件が落ちついているときにこそ、後から考えてあのときにやっておけばよかったなというようなことがあってはならぬ、今こそ私は税制議論を一番冷静な環境の中で御議論いただけるときじゃないかということを、一つだけ最初につけ加えさせていただいておきます。  それから二番目の、今のお尋ねでございますが、これは選挙公約というのは、私もぎりぎりした議論をしようとは思いませんが、それは税制抜本改正をやるというのが選挙公約でありまして、それがどこまでが選挙公約であるかという議論をしようとは思いませんけれども、各党がそれぞれ選挙公約をお出しになって、それをあるいは県連、末端の支部等に出したものを選挙公約とすれば、あくまでも税制改革そのものが選挙公約であるわけでございます。しかしながら、選挙中いろいろな発言、それはいろいろな前置詞がついておりますから、いわば議論をしてこの前置詞を解説すればこういうことになるという議論ができるものではございますけれども、私自身、選挙公約というものは、それはそれこそ重い重いものだというふうに思っておるわけであります。が、本来、我々には四年間の任期が与えられておる。その任期の中で社会情勢の変化に対応していくというのもまた我々に与えられた使命ではないかなということをいつも感じておるところでございます。  そもそも、これも伊藤さんと議論しても、もうまさに何回もしたことじゃないかとおっしゃいますが、大型とは何ぞやという議論も、本当のことはいつまでも、随分いろいろな批判も受けましたが、比較して大きいというのが大型であるとか、あるいは普遍的、網羅的とかいう言葉はこれは漢和辞典を引いてみれば全部例外なしと書いてあるとか、こんな議論を、これはまじめな議論として行ったこともあるわけでございます。が、いわゆる個別消費税が広く薄いいわゆる消費税に変わってくるというのは、それは比較してその範囲が広くなったから大型であるということは言えると思うわけであります。  それと同時に、また我々にも反省がありますのは、いろいろな重い総理の発言をもとにいたしまして、例外をつくりましたし、いろいろなことをいたしました。そういうところからくる反省というものもまたなくてはいかぬ。そういう反省に十分基づきまして今回のいわゆる消費税法案提案して御議論をいただこう。今伊藤さんもそこまで入っちゃいかぬという気持ちで御議論なすっておりますけれども、今まで長い間議論した分を私なりに集約しますと、実際は入り入りながら議論しておるわけでございますので、どうか入りながら御議論をしていただいて、そういう環境自身はもう醸成されているんじゃないかな、こんな感じがいたしております。
  15. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 特別委員会が設置をされますときに、新聞を見ておりますと、自民党のある幹部の方がこれで妊娠八カ月という言葉遣いをされたそうでありまして、そういう認識というのは根本的に間違っていると私は思います。私どもがこの基本構想を出しましたのは、要するに、税制国民的合意を得る条件も手順も基礎も何ら形成されていない。だから世論反対しているのだ。このことをきちんとわきまえないで数で通せばいいとなったら、私は、税に対する国民信頼は崩壊すると思います。日本民主主義はなくなってしまうだろうと私は思います。  税制改革の不必要を私は言っているわけではありません。税負担国民は嫌だというみたいな解釈で私は言っているわけではありません。あるべきデモクラシー日本にふさわしい税制をつくりたい。これは政治家の一人として、野党としても真剣にそのことを追求をするわけでありまして、ですから、ここで申し上げた五つ原則五つ手順というのは、文章にも書いてありますとおりに、国民全体のコンセンサスの表現であろうというふうに私どもは思っているわけであります。今質問しているのは、そういう前提条件の一つ一つについて私ども考え政府に問いただしたい。それで合格ならば結構です。しかし、それでだめならば全部やり直しなさい、前提からやり直しなさいということを申し上げなければならないということで質問を申し上げておりますので、そう御了解をお願いしたいと思います。  ついでに申し上げますが、安倍幹事長でしたか、何かこれを通すのに安保改定に匹敵する大事な問題だということを言われたそうであります。幹事長としてそんなお気持をお持ちになっているのかもしれません。しかし、思い返してみましても、あの安保改定のときに日本の国内がどうなりましたか、その後岸内閣がどうなりましたか。その後それと同じ運命になるようなことを私ども希望はいたしておりません。そういう意味での議論をしていきたいと思っているわけであります。  もう一つだけ竹下さんにお伺いいたします。  今の御答弁の中で、今までの公約、前回の売上税、そういうことの反省の上に立って今回の提案ということを言われました。率直に申し上げまして、私はこれは詭弁だと思います。要するに、こうなんですよ。大型間接税導入せずということを中曽根総理は公約された。そして、国民の皆さんみんな覚えておりますから、それと真っ向から違反するものをやるわけにはまいらぬということで、言うならば例外、非課税品目をたくさんつくるとか、さまざまな条件を設けまして、これが投網ではありませんという形で売上税はあったわけであります。  その経過の反省に基づいて、竹下さん、今出されているものは何ですか。これは投網どころか地びき網でありまして、言うならば、黒はやりませんということを選挙で公約した。黒にならないように、まだらの入った、白黒まだらくらいで中曽根さんはやった。否決をされた。今度は真っ黒のものを出してきたというわけでありまして、私から言わせましたら、中曽根さんの場合には公約に照らして不完全公約違反、今度の場合の方は完全公約違反、そういうことではないだろうか。反省に基づいてというのはむしろこれは全然違うので、この経過を真剣に反省をなさるならば、売上税廃案の後に、たしか宮澤さんでしたか、言われておりましたが、時間を置いて改めてスタートからよく考えてやらなければなりませんというふうな御発言が閣僚、首相かどなたかございましたけれども、それが真の反省というものではないだろうか。大事なけじめですから、お答えいただきたい。
  16. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 まず、先輩である、お亡くなりになっております岸内閣当時の安保改定、私も当選一回目の衆議院議員でありました。しかし、振り返ってみて、あの大先輩である岸内閣のときに国会において議論していただいた安全保障条約の改定というのが今日の我が国の平和と繁栄の基礎になったものだというふうに、私はこれを評価しておるものでございます。  さて、ただいまの御質問でございますが、確かに網羅的、普遍的、包括的、そうした言葉がございました。したがって、いわばそれを念頭に置きながら、今御指摘のありましたいろいろな例外品目を設けますとか、あるいはいわゆる非課税品目を設けますとか、そういうようないろいろ工夫をして、それから税額票問題でございますとか、工夫して出しました。しかし、その反省というのは、私はまず昭和六十年二月六日の衆議院予算委員会における前総理の発言、その重みに対して、売上税法案というのをいろいろその発言を踏まえてこれを作成しましたが、やはり税額票が過重な事務負担となるではないか、こういうような批判もいただきました。そしてまた、今おっしゃったように、その売上税のときよりも薄く広くという意味においてこの範囲が広がってきたということは事実でございますけれども、非課税品目もございますし、また簡易納税制度等、そのときの反省に基づいて仕組まれた今度の法案でございますので、私は、どちらが黒でどちらが灰か、こういうような議論よりも、中曽根総理の発言以来それに基づいてできたもの、そしてそれが国民理解を得るに至らなかった、その点を抽出して、またこれを簡易にし今御審議をいただいておるというのは、やはりその延長線上に今日の法律案は存在しておるというふうに考えております。
  17. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大変熱心な、また苦しい御答弁でございますけれども、さっき申し上げたように、きょうは私ども提案に基づいて御議論いただいておりますので、ぶつかり、あるいは真剣な議論の予告編という意味ですからその程度にしておきたいと思いますが、いずれこういう問題というのは、けじめの問題ですから、これは政府政策国民への責任あり方の問題だと思いますから、議会政府とともにあいまいにするようなことは私はしたくありませんので、きちんとやっていきたいと思います。  一つ目の国民合意原則という立場から私ども考え方を申しますと、だめということだと私は思います。  それから次に、公平・公正の原則というものを立てました。書いてあることは簡単に書いてございますので、改めて御説明する必要もないであろうと思います。不可欠の原則であり、あるいは公平は最優先課題というふうに規定をいたしております。これは、国民皆様全体の大きな願いであろうと思います。  それでお伺いをしたいのですが、今政府世論調査も含めましたあらゆる世論調査を通じまして、今日の税制は不公平である、日本の現在の税制は不公平である、そういう声が八割前後という異常な高さを示しております。デモクラシーの国としては、私は非常に恥ずかしいことであろうというふうに思うわけであります。私は、そのことになりますといつも非常にいいことだなと思って読むのですが、アメリカのレーガン税制改革、大統領の議会提案あるいは年頭教書などなどがございます。私ども社会党がアメリカを褒めることは余りないのですが、いいことはいいのでやっておきたいと思うのですけれども、その大統領の議会提案、テレビ中継になりました議会提案の全文を読んでみますと、非常に感動する部面がございます。  このサブタイトルには「デス アンド タックシーズ メイ ビー イネビタブル、 バット アンジャスト タックシーズ アー ノット」、要するに死と税金は避けられないかもしれない、しかし不正な税金はそうでないという言葉がついております。それから、この演説につきましても、評論などではアメリカンドリームという言葉もつけられております。私は、政治家として大変結構な姿勢であろうというふうに思うわけであります。  竹下さん、これはレーガンとしては非常に派手好みで私は地味好みだから違いますというような話ではなくて、基本的な姿勢だろうと思いますが、その大統領の議会提案を読みますと、第一、Aとして「米国民の圧倒的多くは、現行税制に不満をもっている。彼らは、以下の理由で事態を憂慮している。(一)税制が不公平である。国民は、税金をほとんど、あるいは全然払わない金持ちや健全な企業の話に接して、穏やかならざる気持ちでいる。国民は、みたところ状態はおなじなのに支払う税金の額が大きく違う人たちの理屈およびその正当さの理由がわからない。」「国民は、多くの税金の減免措置の経済的正当づけに疑問をもっており、それらは税金逃れだとみている。」「不満が高まるにつれ、税制の持続力がおびやかされている。これがおびやかされるにつれ、不可欠の政府サービスや活動を維持していく基盤もおびやかされている。」「アメリカという国は、不公平な税制に対する大衆の怒りから生じた革命的な動きのなかから誕生した。二世紀後のいま、もう一つの革命が静かに進行している。それは、平和的な革命だが、やはり歪んでしまった税制に対する大衆的な怒りから生まれている。米国民は、新しい制度を求めている。これは、ありきたりの党派的な問題ではない。税制改正の動きについては、両政党内に強力な推進者がいる。」云々と書かれております。これの報道を見ますと、与野党全員立ち上がって拍手するという状態だったそうでありますが、そういうこととは日本の場合には非常にかけ隔たった状態になっているわけであります。  私は、この際ひとつ伺いたいのは、この八割の不公平感というものをどう消すのか。私は、いろいろな理由があると思います。一つ一つ洗い直して、本当にこれは不公平なのか、どの程度不公平なのか、どう直せるのか、直せないのか。あるいはまた、税制の取り扱いがこの五年十年長きにわたって国民の参加なしに、国民から見て不透明性ですね、自分とは関係ないところで決められているみたいなことがやはり非常に不公平感を増幅しているというふうな側面もあると思います。ですから、税制という側面あるいは仕組み、社会的な側面、いろいろなものを含めまして、これを消していくということは重要な政治の役割であろうというふうに思うわけであります。  総理にお伺いしたいのですが、四野党共同提案項目、これに対しまして自民党政調会長、いろいろ議論をさせていただきました。放言居士とマスコミが言っておりますが、それにはふさわしくなく、放言もなく、まじめな議論を八回、九回やらしていただいたわけでございますけれども、しかし、その中間的な段階での自民党の見解というものが表明をされました。私ども、内容としては非常に不満であります。最高責任者である総理にお伺いをしたいのですが、やはりまだ未解決のものがたくさんございます。こういうものをこの税制改革の最優先課題としてぎりぎり詰めて、そして解決をするということをしていただきたいと思いますが、そうお考えになっておりますか。  さらに言うならば、この際、政府みずからが不公平一掃宣言をやろうではないか、レーガン演説ではありませんけれども、アメリカンドリームに匹敵するぐらいの、そういうことをやはり国民に声高く語られるというふうなことをやられるべきではないだろうか。税制改革をやるためには、伊藤昌哉さんが言われたような手法ではなくて、そういう手法が大事ではないだろうかと私は思いますが、いかがでしょうか。
  18. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 あの野党四党、社民連を含む意味におきまして四党の不公平税制の十項目というのは、私どもにもよく理解できるものであります。したがって、これはまさに十分御承知の上での御質問でございますが、それを税制体系の中へ構築するときに、実際問題として理論的構築の一歩出なければいかぬ場合も実際ございます。それは、やはり私はそれこそ与野党の協議の中でそういうぎりぎりしたところの問題が浮かび上がってくるというのが最も好ましいのじゃないかなというふうに、いつもこれは考えておるところでございます。  私どもの体験からいたしましても、後お互い反省しました。例えば五十二年税制減税のときでございますか、いわゆる戻し税というものもやりました。そしてその次の戻し税の段階、また、五十九年の際はいわば若干の恒久税制に結びつく要素があっただけに非常に魅力を感じたこともありますが、お互いやはりそういう話し合いの中には、私を含め試行錯誤というものもあったと思うのであります。したがって、とことんの議論の中で、直ちにできるもの、政府が行っておるそれをさらにもう少し強化すべきもの、直ちに置けるもの、中期に検討すべきもの、長期に検討すべきものというような選別がなされて話し合いが詰まっていくということが最も好ましいことではなかろうかというふうに思います。ただ、今おっしゃいました、まさに不公平よさようなら、そして所得減税よこんにちは、こういった若干情緒的な訴え方は、可能な限り、私はきのうも申しましたが、情緒的なもので税制というものは割り切れないというところに、国会議論がより大切だという感じがいたしております。
  19. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 一般論は別にして、具体的なことを特に二つそれではお伺いをしたいと思います。  一つは、先般来議論にもなっておりますが、不公平是正要求の十項目の中の第一項の株式譲渡益課税の問題であります。二つ大きな柱がございまして、一つはリクルート問題を契機にと申しましょうか、創業者利得課税の問題とか、いわゆる大口売り抜け大もうけと申しましょうか、未公開株の公開後売却への課税の問題とかなどなどの問題でございまして、これは税率まではいっておりませんが、方向づけは合意をいたしました。  問題は、本体の方になるわけであります。先般、坂口さんの質問総理が御答弁をなさいました。私も注意深く伺っておりました。これが一番大きな問題であろうと思います。要するに、政府原則非課税から原則課税いたしますということを明確にされました。結構だと思います。したがいまして、それでは原則課税にふさわしい、抜本的な改革ですから、ことしちょっとやって来年どうするとかいうものじゃありませんから、抜本改革機会にふさわしい原則課税の構築をどうするのかということが当然ここで問われてくるわけでございますけれども、今のところ、それにこたえるような提案政府の方からはなされておりません。それで、先般の竹下さんの御答弁の中でも、総合課税は非常に重要である、また把握の問題、番号制、これらもその総合課税のためには大切な前提条件であると思うというふうな趣旨のお話があったということであります。  私は、総理、非常に大事な機会ですから、何かそういう言葉があって、あるいは政府税調でも番号制小委員会とか、いろいろ欧米に行かれた方々から私ども話を伺っておりますけれども、大変勉強なさったそうでございますけれども、十一月に報告書が出される。非常に多面的な問題がございますから、恐らくさまざまの複雑な議論がなされるでありましょう。そのうちに行方不明になったということでは、私はこれは責任を問われると思うわけでございまして、私は、この際、本来あるべき原則課税の方向というものをどう現実具体化をしていくのか、そこまでやはりきちんとすることが今非常に大事なことではないかと思います。総理も先ほど中長期的、短期的整理とかおっしゃいましたが、私ども項目今すぐ、ことしか来年かすぐ全部やれると思っておりません。ただ、こうしますということをはっきり出す、その上に立って具体論を着実に構築をしていくというのが、現実でございますから当然のことであろうと思うわけであります。     〔海部委員長代理退席、羽田委員長代理着席〕  同時に、そういうことになってきますと、いろいろな問題があるだろうと私は思います。政府税調の報告の中でも幾つか検討すべき大事な問題、プライバシーの問題もございますし、既存のさまざまの番号との関連もございますし、効果もございますし、あるいはまたその費用の問題などなどを含めまして、アメリカ型、イタリー型などなどいろいろな議論が出されておりますし、それぞれ懸案だろうと私は思います。しかし、それをやっているうちに道に迷って行方不明になるということでは何ら意味がないわけでありまして、気持ち言葉はあったけれども行方不明になったのでは困ります。行方不明にならない保証というのは、こうしますという方向づけですね、まあ四年後なのか三・五年なのか四・五年なのか、その辺はこだわりませんけれども、こうしますということをきちんと出す、それに基づいて着実なさまざまの具体的な努力をしていくということが、積み上げていくというプランが提供さるべきであろう。政府税調に御議論をいただくこともあると思います。行政の場でやることもあると思います。議会の場で議論することもあると思います。  同時に、そういうことをやるについて、税の公平の視点からのさまざまの問題提起が今やられております。連合からはクリーンカードという発想で国民の御理解をというのもございますし、これは大事なことだと思います。それからもう一つには、やはり国際的に今日本の証券マーケットは世界最大の規模に成長しているということになるわけでありまして、これからますますそのウエートが世界的にも高まるでありましょう。例えばインサイダー取引とか税制その他について、日本のマーケットが古い体質のままいるということだったらこれはおかしくなると思います。証券業界の首脳部の方々もいろいろな御議論をなさっていることを伺いますけれども、やはり中長期を展望したあるべき姿というものを描かなければなりません。  あるいは技術論でも違うと思います。日本は、さまざまのそういう意味での有効な技術力を持っております。開発できると思います。アメリカでセキュリティー・ナンバー・システムの上に後で税制をオンしたというときのコンピューターシステムとか、これは巨大コンピューターシステムでしたが、今はもっと有効なスーパーコンピューターがいっぱいあるわけであります。プリペイドカードその他便利で非常に役に立つ、そういう技術も随分開発をされていろいろなカードが数億枚発行されているという状況になっているわけでありまして、いろいろな意味でもってこれからの時代にふさわしい、言うならば新しいモデル、そういうユニークなモデルをつくっていくというふうな可能性も持っていると私は思います。  そういうことがさまざまあるわけでありまして、技術的な困難、国民の御理解、さまざまな問題があることは私も否定いたしませんし、私どもも真剣に取り組まなければならないと思います。ただ大事なことは、気持ちとして言葉として表明をされたことを具体的に、そういう方向に参りましょう、これから一年、二年、三年、四年それについて真剣な議論を積み上げていきたい、今まで指摘されたさまざまな問題点があります、もっと広い視野、高い視野から将来を考えてやろうではありませんかというふうな御決断がこの抜本改正にふさわしい決断ではないだろうかと思うわけでありまして、それについてのお考えを、決断をお伺いをしたい。
  20. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御指摘の問題につきましては、政府の御提案におきましても有価証券の譲渡益を、株式の譲渡益を原則非課税から原則課税にするという大きな転換をいたしましたことは御承知のとおりでございますが、現在の行政の体制からいきますと、それを総合課税にきちっと仕切るということにはいろいろ問題がございました。したがいまして、申告分離、源泉分離というような御提案をいたして、しかし基本はここで原則課税になったわけでございます。ただそれにつきまして、八月十七日の御提案にもございましたように、それで十分であるのか。すなわち、源泉分離のときの譲渡益というものを仮に五%とみなすわけでございますが、例えば今お話しのような売り抜け等々の場合に、あるいは創業者利益もそうであるかと思いますが、現実に五%ではないであろう、そういうことをどう考えるのかという御指摘がございまして、これはまさに御指摘について政府も謙虚にそれを承らなければならない立場だというふうに考えておるわけでございます。その問題が第一でございます。  そして、第二におっしゃいましたのは総合課税に関する問題でございます。  この間、総理大臣から御答弁坂口委員に申し上げましたように、この総合課税への移行のための納税者番号制度の導入を進めるべきであるということについての御指摘、これは所得の適正な把握のためには重要な前提条件であるということを御答弁をいたしております。このことの意味は、御指摘のように税制調査会においてこの問題はかなり深く検討されまして、何と呼びますか、仮に納税者番号と呼ばせていただきますが、そのような制度を取り入れれば、これは税制の上では大変にいわば有効であるということは疑いのないところでございますが、納税者番号といえば納税に限るようでございますが、そういうことをやったときに果たしてそれが税だけの関係にとどまるものであるか、経済全般に広がっていくかいかないか、あるいはいくことが望ましいか、それを欠いた経済取引はしからば無効であるかとか、経済内にいろいろな問題がありますことは御案内のとおりでありますが、さらに経済の問題を超えまして、国民生活全般にこのような制度が国民から受け入れられるかどうか。過去において全体主義的な政治を経験したことのある我が国の場合に、これがどのように国民に受け取られるであろうかといったような、かなり広い分野で考えなければならないということが税制調査会の皆様のお考えで、それで小委員会をつくって外国にまで検討に行かれたわけでございます。  ただ、おっしゃいましたように、そういうふうに言ってこの問題を何となくうやむやにして忘れてしまうのではないか、ほうり投げてしまうのではないかということでないという意味で、せんだって総理大臣から、たまたまいわゆる利子課税につきまして五年後の見直しということがありますわけでございますが、その時期にこの問題のあり方を検討、見直すということは大事なことではないか、こういうふうに申し上げたのはそのような意味でございます。  もう一つ、我が国の株式市場のあり方につきまして御指摘がございまして、出来高と申しますか、流通総額においては、時価総額においては世界一になった、さようでございますが、いろいろ問題がある、おっしゃるとおりと思います。それは、例えばインサイダー取引につきましても、我が国としてはごく最近法令の整備をしたばかりでございますから、まだまだ深めていかなければならないところがございますし、また、株の公開等につきましても問題があって、それは証券取引審議会の不公正取引部会で御検討を願って、できるだけ早く結論を出していただいて正すべきを正したいと考えておりますが、一言で申せば、我が国の証券市場の、仮に透明性とでも申し上げることができると思いますが、外から見ても非常にわかりやすい、不透明なところがないというものにしていかなければならないと考えておるところでございます。
  21. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 これは総理にもう一言答えていただきたいのですが、さっき申し上げたような幅広い視点からさまざまの努力をしなくちゃならぬ。それから、この把握の体制をきちんとするということにつきまして、日本では初めてのことですから、いろいろな意味での検討と努力としなくちゃならぬと思います。  また、そういう中で私は思いますけれども、今問題のリクルートの大きな柱である仮名取引、インサイダー取引、こういうことにつきましてもよく報道されておりますが、ニューヨーク・タイムズを初めアメリカの新聞からは、何で日本ではこんなことがあるのだろうと奇異の念を持って見られているというのが今日の状況のようであります。私は思いますが、こういうことについてきちんとしなさいということにつきましては、先般アメリカのSECの委員長が見えられたときにもお会いになったと思いますから、どういうお話があったのか知りませんけれども、外国からすれば、アメリカからすれば常識のことですね。日本は根っからインサイダー社会であると評論する人がいますけれども、しかし世界の常識と合わせなければ、古いしきたりではもたない。こういうリクルート問題や何かのことを一掃するためにも、カードなり把握なりこういうものがきちんとしていれば、アメリカの制度では起こり得ないわけですよ、起こったらぱちんとやるわけですから。それだけのものが国際的には進んできている。日本では依然として何ともなっていない。五十八条その他の問題の執行にいたしましても、証取審不公正取引委員会などなどで延々と審議をしている。  私は、決断の問題だろうというふうな気がしてならないわけであります。仮名取引、インサイダーその他につきまして証券局長通達を出した、守られていない、主管大臣もさまざまかかわっているなどなどのことがこの委員会でも話題がございましたが、そういう不名誉なことをなくするためにも私はきちんとこの際する、そういう大きな筋道をこの際きちんと立てる、その上に立って具体的に着実な努力をする。総理、いかがですか、これは当然のことだと思いますが。
  22. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 今私に、いわゆる証券取引等から国民が情緒的にも実際的にも感じておる不公平感というものに対する将来展望についてのお話をお聞かせいただいたわけでございます。  実際問題、私は、カードということにつきますと、昭和二十三年でございましたか、シャウプさん以前でございますが、いわゆる賦課するという考え方から申告制度に我が国の税制考え方が変わってきた。あのときに仮にカード制度というものが出たとしたら、いわばすべて国民信頼に任して申告制度というものを、占領下ではございますが標榜したときに、カード制度というものが出たら、またそれによって監視するというふうにも見られて、あのときには結局その話は出ずじまいで、申告制度というものがすんなり我が国の税制の中に入っていったのだなというふうに思います。  そうして今度は二十五年のシャウプ勧告に基づく税制改革がありまして、当然原則課税であったわけでありますが、二十八年に株の譲渡所得を非課税にしたというのは、これが事業所得ないし雑所得であったとすれば課税であったわけでございますけれども、もう一つ、あのときに六カ月未満保有の株を年五十回で二万五千株を通達でもって定められておったようでございます。それから昭和三十年代、お互い覚えておりますが、銀行よさようなら、証券よこんにちはという時代がございました。それからその後が四十年でございますか、オリンピックの翌年、いわゆる山一の日本で初めての証券業界に対する日銀特融が行われて、株式というものに大きな変化が生じてきたというような歴史的な経過を見てみますと、私は、資本調達市場として株式が力を持ったときに、あるいは二十八年に原則非課税にしたのは、言ってみれば、先ほどちょっとおっしゃいましたが、はっきりしない金と申しましょうか、そういうものが資本調達市場に入ってくることによって、我が国の産業の活性化ということもあるいはあったのかなという感じがしないわけでもないわけでございます。  それから、昭和三十六年に五十回かつ二十万株がこれは法令で定められて、そうしていわば健全なる資本調達市場としての問題と、それからもう一つはいわば投資先としての、投資家が法人、個人を問わず考える株式市場というものが、何といいますか、異常に発達してきたというのが今日の状態ではないのかな。したがって、よくロンドンで議論しますと、株式の問題が、何分ロンドン市場というのは大阪市場ぐらいなものでございますから、大阪より少し多いのでございますが、日本の規模というものがなかなか理解されないぐらい株式市場というのが日本は発達した。それに法令がついていけなかったとは思いませんけれども、そこにいろいろな問題が出てきたことに対する対応というのが、やはり今日これが集中的に議論されていく歴史的流れじゃなかったかなというふうに思います。  したがって、原則課税、しかし、今日の場合はこの源泉分離と申告分離にいたしますよという形でまずは御提案申し上げ、さらにそれについていろいろな御議論をいただいておるわけでございますから、それらを踏まえてより公正なものにこれを仕組んでいくということが必要であって、したがって、この仕組まれたものというのはこれでおしまいというものであってはならぬなということを考えてくると、やはり総合課税主義といわゆるカードのあり方というものが必然的に議論されていく経過を将来にわたってたどっていくのじゃないかなという感じを私は最近深くしております。だから、伊藤さんもお感じになった一人でございますが、全然今の目的とは違いますけれども、いわゆるグリーンカードというものの反省も私にもありますが、そういう方向が、私は、必ずそういうことにいくべきものであって、これでおしまい、源泉分離でおしまいですよ、申告分離でおしまいですよというものではないであろうというふうに思っておりますし、そうあってはならないという考え方は等しくいたしておるところでございます。少し話が長くなり過ぎました。
  23. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 言葉の端っこをとらえるわけではありませんけれども総合課税、あるいは把握番号制をたどっていくのじゃないかなという話がございましたが、たどっていくのじゃないかなでは困るわけでありまして、私は思いますけれども抜本改革ですから、大蔵大臣言われましたようにさまざま難しい問題がございます。しかし、ここで抜本改革にふさわしい政治の決断をしようというのなら、私どもが要望しておりますように、本当の原則課税、把握はちゃんとやります、そして国民皆様に御理解いただいて、クリーンなそしてフェアな税制のためにこういたしましょう、しかし、それは一挙にできませんから、十なら十、五つなら五つの問題がございますから、真剣に議論します、その議論する間の過渡的な存在として、短期間の間ここに掲げておるようなことがありますというのが私は抜本改正というものだろうというような気がするのですね。  大変不満でありまして、まだまだこれは最優先課題の前提条件の方を十分やらなければならぬなというふうな思いを深くするわけであります。何か前向きの御答弁が先般ございましたからと思って、きちんとしてもらえばと思って好意的に御質問したのですが、いけませんで、極めて残念であります。  それからもう一つだけ、これに関連しまして土地問題についてお伺いをしたいと思います。  十項目不公平是正の中にも土地税制を挙げてございまして、勉強すると非常に難しい問題だということは私どもよくわかります。しかし、何とかしなければならぬという問題であることも、これは気持ち政府も私どもも等しくするところであろうというふうに思うわけでございます。  申し上げておきたいのは、私ども税制あるいは資産課税として何とかしなければならぬという問題意識はあります。それだけを言っているのではありません。御案内のように、この春には私ども野党、仲よし四人組で勉強いたしまして、土地基本法を提案をさせていただきました。聞くところによりますと、総理も関心を示されまして、こういう問題について、土地全体総合基本法、いわゆる基本的な構造というものを政府としても勉強しなければならぬということで、国土庁長官中心に御勉強なさっている。うちの横浜市長も委員に加えていただきましてやっているということのようでございまして、私どもなりに野党提起したことがそれなりに何か側面的に意味があればいいことだなというふうにも思っているわけでございます。  ただ、問題は中身でありますから、どうしていくのかというふうに思うわけでありまして、私は税制の角度で考えて言っているわけではありません。やはり土地総合政策と申しましょうか、全体をどうするのか。土地臨調と申しましょうか、六月十五日の臨時行革審の御答申ですね、閣議で出されました対策なども詳細に読ませていただいておりますけれども、もう一つ実は物足らないわけであります。  私は二つ、見解を承りたいと思うわけでございまして、その一つは、おくれにおくれてはいるのですが、もうここで土地問題に戦後史的な新しい座標軸を据えよう、そういう御決断を明確にしていただきたいと思うわけであります。欧米の土地制度と比較をいたしますと、やはり公共財であり、私有権ではあるけれども所有権中心ではなくて、利用が中心であり、そしてまた高度にうまく利用するようにパブリックな意識を持たれている。言うならば、土地は私有財産ではあるけれども、市民が、みんなが、幸せにするための、ハッピーにするための、住むための共通のグラウンドであるというふうに認識がなされている。これが私は近代社会のあるべき姿だろうと思いますが、日本の場合には甚だしくそれにかけ離れているという状態にあるわけであります。そういう方向への御努力というものをどう鮮明にやっていくのかということが一つだろうと思います。  総理はしょっちゅう、サミットも含めまして行かれておりますから、外国へ行かれた際、欧米、特にヨーロッパのさまざまの、一私ども随分調べてみましたけれども、土地制度、税制その他についての関心も時々生まれたのじゃないだろうかというふうに思いますけれども、やはりそういう土地制度あるいは土地政策全体に新しい座標軸をどう据えるのかという面が一つであります。そういう意味での基本法に取り組んでいただきたい。  私どもの方で提起をいたしましたのは、四野党の法案では、土地の利用は公共の福祉を優先させる、あるいは土地の所有からむしろ利用を中心に、あるいは投機の対象としてはならないし、さらには土地の増価益あるいは社会開発利益というものは社会に還元さるべきである、そういう方向に世論も誘導しながらやっていきましょう、劇薬のようにできるかどうか別問題にして、そういう方向をこの際鮮明にしようではないかと言ったわけでありまして、できたら国土庁長官、従来の行革審の答申と対策要綱をお決めになった枠組みからもう一歩積極的に進め、努力をする、そういう意味での努力をしてもらいたいと思います。  それから土地税制ですね。これにつきましては、やはりこの土地税制についても新しい座標軸をぜひ据えてもらいたい。政府税調の答申を読みましても、戦後四十二年、土地の供給その他さまざまな理由をもちまして譲渡益課税を安くしていくということでやってきた。しかし一面では、その結果が一体何だっただろうかという今日の土地のクレージーな状態がある。もう一面では、他の税金税制と公平であるのかないのかという疑問を感ずるという趣旨のことが税調の答申の中にも書かれております。  私は、この際、土地税制についても、例えば不労利益期待というものを容認しないと申しましょうか、汗を流さず、土地が上がる、不労利益を大きく期待する、そういうものをなくするような税制、あるいは高度利用を誘導するような税制。ヨーロッパのどこでしたか、ベルギーですかどこか調べてみましたら、町の平家の家にはわりかし高い、しかしそれがより高度に集合住宅になると保有税も非常に安くなる、高度利用誘導の税制というのも聞きましたし、それから未利用から利用に引き出していく税制、今の特別保有税の問題なんかもっと抜本的に考えるというふうな問題もあろうと思います。それから、もちろんですが、地価高騰を許さない、これはイタリーの土地増価税なんかの場合、通すときには随分議会でも裁判所でも大問題になったようでありまして、しかしそれが通過をした途端に土地の高騰がぴたりとまったという作用があったということを実はレポートを読みましたけれども、そういう要素を持ったものをどうくみ上げるのかということを決断しなければならぬ。  少なくとも今政府がお考えになっておりますような、土地につきましては、何か土地のための融資を受けてそして赤字法人でどうとか、ごく部分的には出ておりますけれども、こんなものは土地税制について努力をしたのには当たらぬと思いますね。中身について一挙に具体的なことを全部回答してもらいたいとは申しません、そういう方向への新しい座標軸をどう据えるのかということが必要ではないだろうかと思うわけでございまして、土地基本法へのそういう姿勢の問題、中身は結構ですから姿勢の問題を、国土庁長官。それから土地税制についてのお考え。そしてこれは政治決断、政治思想の問題ですから、そういうことを含めまして土地税制、土地政策、土地制度についての転換というものをなるべく早い時期に本格的にやろうということがぜひとも必要だと思いますが、最後に総理のそれについてのお考えも伺いたい。
  24. 内海英男

    ○内海国務大臣 先生の第一番目の御質問の中に、ヨーロッパの方の利用権というものを我が国の方にも活用したらいいではないかというような御提言もございました。私どもも、今度は基本法をいろいろと御協議いただく中におきましても、所有権から利用権ということに重点を置いて御意見を承っていくつもりでございます。  また、ヨーロッパの土地制度につきましては、その国その国によっての歴史的な経過とか、経済あるいは文化、こういった経過をたどっておりますので、即、我が国にこれが適用になるというような認識にはまいりませんけれども、先進諸国でもございますから、土地制度について相当な経験を踏んだ結果が土地政策にあらわれておるということからまいりますと、十分我々も勉強して取り入れられるものは取り入れていかなければいけないな、こう思っております。  それから、土地基本法の問題でございますが、先生もおっしゃられるとおり、率直に申し上げますと土地は国土という意味にとれると思うのです、我が国の国土。したがいまして、国民の生活及び生産を通ずる諸活動の共通の基盤となる、限られた資源であると思っております。したがいまして、適正かつ合理的な土地利用の実現を図ることが極めて重要であるということはよく認識をいたしております。  政府がさきに決めました総合土地対策要綱におきましても、「土地の所有には利用の責務が伴うこと。」等の基本的認識のもとに、国民理解と協力を得つつ図られるよう努めておるわけでございます。また、土地対策を強力に推進するためには、土地の公共性、社会性を明確にして土地につ いての共通の国民の意識を確立する等のため、土地基本法を制定する方向で先生も御存じのとおり検討を進めておるところでございます。今後、既に野党がさきの国会で御提案になっております土地基本法案につきましても私どもも十分検討させていただきまして、また、各界各層から成る有識者の方々の御意見等も参考にいたしまして、法律制定の意義あるいは盛り込むべき事項等についても慎重に検討して早急に結論を得たいと、目下努力をいたしておるわけであります。先生御指摘のように、十一月いっぱいぐらいにはめどをつけたい、こういう予定で作業を進めておるわけであります。  また、最後におっしゃいました土地税制のことでございますが、土地税制につきましては、御指摘のように、開発利益を社会に還元し、社会的公平を確保すべきこと、これは先般政府が決めました総合土地対策要綱におきましてもうたわれております。土地の利用と受益に応じた社会的な負担の公平等の理念がうたわれておるわけでございます。この理念を生かして今後の土地税制あり方を検討するためにも、現在、今申し上げましたような土地基本法の議論の中で関係省庁とも十分な協議をしながら早急に基本的な考え方を取りまとめてまいりたい、こう考えておるわけでございます。     〔羽田委員長代理退席、海部委員長代理着席
  25. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま国土庁長官がお答えになられましたように、税制の面もやはり基本法との関連において考えていかなければならない点が多々ございまして、基本法の方がまとまってまいりますと税制もそれに協力といいますか、そういう意味考えていく点が幾つかあると存じます。  まず、不労利益と申しますか、やや不労所得に近いという意味のことをおっしゃいまして、この点は確かに給与所得などとは違う扱いを課税上もいたしておるところでございますが、気をつけなければなりませんのは、やはり土地をなるべく出してもらう、抱え込んでしまってもらっては困るという点がございますので、短期の売買についてはこれはもう問題がないわけでございますが、長期についてはなるべく長く持っておったものでも町に出してもらうという意味では長短の区別というものは必要である、土地をみんなが利用するという意味ではそうではないかという考え方でやってまいりました。  それから、その高度利用あるいは不利用、全く利用されていない場合、利用されている場合、このことも御指摘はよくわかるわけでございますが、よく空閑地というようなことを申しますが、仮に利用というのはどういう状況を利用というのかといったようなことは、一つ踏み込みますと大変厄介な問題でございますので、この点も結局、基本法的な考え方に沿いまして税制考えてまいらなければならないと思っておるわけでございます。
  26. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 竹下内閣ができました後、国会で、臨時国会の際に土地対策特別委員会というのができた。それで、その所産というものが私は基本法じゃないかな、こんな感じすら実は持っております。あのとき四党提案基本法構想というのを私ども勉強させていただいて、行政を預かる者として、いろいろ問題点はあろうがやはりその方向でそういう鞭撻にこたえるべきじゃないかというので、ただいま御指摘がありましたように、国土庁で懇談会をつくって、今そのあり方についておおむねおっしゃったような趣旨で、利用の問題であるとかあるいは還元の問題であるとかを含め議論していこう。そうなりますと、またきょう御指摘なさったのが、実は私ども税制調査会からちょうだいいたしました中間答申税制と非常に似ておる点を御指摘なさったわけでございます。  それで、御指摘なさったように、その中で税負担行為に対して、法人が借入金による土地取得をした場合の税負担回避行為に対し歯どめ措置を講ずるとか、あるいは譲渡所得の問題につきましても、問題のある点は今度の法案の中にもお願いをしておるわけでありますが、基本的には今おっしゃいましたように、土地という問題はやはり基本法というものをつくる雰囲気、環境をつくっていただいて、それに乗っかって我々も作業を始めさしていただいた、そういう中で税制の位置づけもしていくべきものである。したがって、今度我が党で先般お答えいたしておりますものを要約して読んでみましても、大体指摘なすっておる方向で物は進んでおるのじゃないか、また、そういくべきものじゃないかという感じが私もしております。
  27. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 これは株のキャピタルゲインの問題に劣らずこれからの社会に非常に重要な問題でございますし、また、サラリーマンが首都圏に一生かかっても土地が買えない、夢でも見ることができないというふうな悲劇的な状態をどう変えていくのか、まさにこれは政治に問われているという問題でございますので、今気持ちのといいますか、お考えの表明はございましたが、さらに具体的にこの問題はやってまいりたいというふうに考えております。  第二原則で随分時間をとりましたので、簡単にいたしますが、一つだけ、これは総理に注意を喚起しておきたいのですが、私ども不公平是正の十項目の中にパーティー課税の問題がございまして、このパーティー課税の問題について、自民党の見解では、何か専門家協議をしなさい、していきたいというふうな内容がございました。それで、新聞を読みますと、何か渡辺政調会長が選挙制度調査会の後藤田さんに連絡をとりまして、この課税の問題は、税制の問題は棚上げ、今国会中にどうしたらいいかを相談をするけれども、専門家で検討をするというところにバトンタッチをしてしまって、そして来年あたり何かしたいというような報道が実はなされておりまして、私どもは、見解で出されましたが、自由民主党の見解をすべてうのみにして了承したわけではございませんので、そそっかしい行動にはならないようにお願いをしていきたいと思います。  また、この問題は、国民皆様政治家がどう襟を正し姿勢を持つのかということの問題でございまして、私ども野党政審会長が北海道でこの問題を議論しましたときにも、パーティーということだけで議論したわけではありません。さまざまな問題を議論いたしました。幅広く政治とお金、国民との関係の議論をいたしまして、その中の表に出す具体的なものとしてパーティーを出したというふうなわけでありまして、そういう趣旨からまた別途議論してまいりたいというふうに思います。  次に、税制改革総合課税応能負担原則というものを提起をいたしました。今までさまざまな議論がございましたから、簡単な文章を書いてございますので、趣旨は御異議なく御了解いただけるものと思っております。総合課税原則の再構築、そして今の政府案でお考えのさまざまなことはむしろみなしの勧めであって、総合課税が崩壊をするという危険性を感ずるわけでありまして、そういうことを明確にした対応をお願いを要求してまいりたいという趣旨であります。  そしてまた、応能負担についての原則も確認をしていきたいと思います。私どもが学校で習った古典的応能負担と現在の応能負担と同じなのかどうなのか。イコールそれは水平公平、垂直公平の理解の問題になるでありましょう。いろいろな意味でそういうことをまじめに議論することも社会のコンセンサスを代表する意味でいいことではないだろうかと思っておりますが、時間がございませんので十分できません。  一つだけ竹下総理に確認しておきたいのですが、前に直間比率の問題で、たしかこの場所で竹下大蔵大臣が模範答弁をなさいました。私どものいつも記憶に残っている直間比率についての模範答弁でございますけれども、その御趣旨は、直間比率というのはアプリオリにどれがいいとかというふうに決めるものではない、あるべき税制審議をし、あるべき税制が構築をされ、その結果として表明をされるというふうなことであって、最初にそのテーゼがあってどうするのかということは税制の本来の姿ではありませんということをおっしゃいました。先般いらっしゃった御高齢でも元気なシャウプさんも、そういうことを日本記者クラブの講演でもおっしゃったそうでございます。そういう意味では、いろいろな議論が横行されておりますから、私は、筋の通ったいい議論税制を構築をするということにしたいと思うので、総理大臣におなりになったので変わったわけではないということだけ確かめておきたいのです。
  28. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 何度も、いわゆる直間比率とはあらかじめアプリオリに固定的に決めるべきものではなく、その結果として出てくるのが直間比率であるということを何回も申し上げました。私は、直間比率というのは構築されたものの結果として出てくるものである、その場合の経済成長率等によって予測も違ってくることもあり得るものだという原則は、今でもそのとおりに思っております。だから、結局、しかし結果として出たものがやはりこれほどの変化が生じておる、その根源をたどってみようという議論はあり得るのじゃなかろうかというふうに思っております。
  29. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 第四番目の原則に、私どもはそのペーパーでは分権というものを尊重しなければならぬ、地方自治の尊重と書いてございますけれども、この点は我が日本社会党の地行の神様の方が間もなく引き続いて御質問をなさいますので、私の方からは省かせていただきます。  五番目に、福祉社会原則というのがございます。  私は二つ聞きたいのですが、一つは、どういう税金の使い道かということについての合意がどうしても必要であろうと思います。そうして、公平にちょうだいをする、不公平をなくする、どういうふうに有効によりよき社会のために使われるのですか、そういう理解を通じて日本の社会が税金の、つづめて言うならば取る、取られる社会から、言うならばよりよき社会のための会費という意識が生まれてくる、そういうデモクラシーの発展を私どもは希望をしているわけでございますけれども、そういう意味からいいますと、幾つか問題がございます。行革、あるべき二十一世紀にふさわしい行政制度はどうかという問題もございます。あるいはまた、福祉の制度です。三月、議会に機械的な試算として提出をされたものしか現在ございませんけれども、どのようにしていくのかという問題もございます。  それから、私ども社会党として特に重要視をしているのは防衛費の問題であります。この間、中曽根さんが総理になられてから今日まで、六回の予算編成でどう変わったのかということを調べてみましたら、随分これは特徴的な状態がございまして、防衛費の方が六年間にたしか四三・一%でしたか。社会保障の方が一四・三、大分自然増を抑えられている。文教費対策はたしかプラス・マイナス・ゼロに近い。中小企業対策はマイナス二一・九、そんな数字が出されております。  そういう財政の流れを見てまいりますと、やはりこれは必要なんだという御意見があるかもしれません。この延長線でこれから五年、十年、二十一世紀初頭を展望するとなると、これは非常に大変なことだな、深刻なことなんじゃないかというふうな気がするわけでありまして、どうしてもこういう抜本税制改革機会にどのような社会をつくるのかという展望を立てるべきである、改めて国民皆様にそういうことについてのお約束をするというふうな必要があるだろうと思います。どういう形になりますか、この抜本改革機会に将来どのような財政の柱を考えていくのかというふうなことが必要ではないだろうか。五年ごとに出されているものと違った意味でも結構だと思いますが、必要であろうと思います。そういうことをお考えになるかどうかということが一つ。  それからもう一つは、これは総理に簡単に伺いたいのですが、防衛費の問題、先般朝日新聞でしたか、諸外国の評論が出されておりました。「外国の見方」、マンスフィールド駐日大使、実質五%以上伸びていて、米国やNATO諸国を大幅にしのぐ実績である。日本は今や世界第三位の防衛予算を持っていることになる。米議会の上下両院合同経済委員会の発表、日本の防衛費はNATO方式で計算をすればGNP比の一・五%ぐらいになる。少なくとも世界第六位だが、米ソに次いで第三位と見積もる向きもある。イギリスの国際戦略研究所のレポートでは、NATOの軍事費の定義に従えば世界第三位。それを上回るのはもちろん米国とソ連だけ。アメリカ国防総省の四月発表のレポートでは、同じようなことですね。それからアーミテージ米国防次官補も、英、仏、西独、いずれの国を上回る大きな努力日本はなさっている、日本の防衛費は世界第三位に一九九〇年までに達するであろうというふうなことを言われております。  総理、読んでみましたら、ことしの八月発表されました防衛白書から、例年ございました日本の防衛費との国際比較の表が削除をされております。第三位に近づくのを何か隠すためではないかというふうな気持ちもいたします。これからの社会、今ニューデタント時代に大きく世界が動こうとしている、さまざまの世界じゅうのホットスポットが次から次へと火を消していくというふうな状態になっているわけでありまして、そういう時代の中で、今のテンポで世界第三位をこの数年のうちに達成するよう目指す財政運営をなさるのですかどうか。いかがですか。
  30. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 確かに四月の社会党提案の第二項目目でございますか、軍事費の問題として、文章だけでございますけれども、今の議論のあったことを記憶いたしております。  防衛費に関しましては、 一つは、いわゆる将来にわたっての我が国のまさに専守防衛という考え方に基づく大綱というものがあり、そうしてこれに対して、これを着実に達成していくためのぎりぎりの調和点を求めながら年々の防衛費を決定いたしておりますが、これは本当は第一次、第二次から数えますと第五次になりますでしょうか、途中が抜けておりますが、これが今度の中期防というもので、今それに基づいて予算編成を行ってきておるわけでございます。  防衛費そのものの比較につきましては、これは私は防衛白書にそれが抜けたという理由を申し上げるだけの知識は今ちょっとございませんけれども、これはいろいろな比較がございますが、いずれにせよ我が国の防衛費というものの四五%がいわゆる人件費であって、その人件費部分というのが他の国に比較いたした場合かなりの額になるものであるという特徴は、私どもも近隣諸国等に対しましていつも説明しておる中身でございます。したがって、意識的に軍事大国などというのは思いもしないことでございますが、我が国の必要最小限の防衛費の予算編成に当たりましては、この大綱を踏まえ、そうしてぎりぎりの調和を図りながら中期防を着実に実施していくという考え方でこれからも臨んでいきたい。何が何でも第三位になろうとか、計算の仕方は別といたしまして、そんな考えを毛頭持つものではございません。
  31. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 とても今の御答弁に承服はできません。第三位になるのですよ。なるのです、今のままでいって。世界じゅうそう見ているのですよ。そういう路線を我が日本はとるのですか、とらないのですか。重大な選択だと思います。時間がございませんから、本日はやがての重大な論争のテーマ予告だけにとどめさせていただきます。それから厚生大臣、お待たせして恐縮なんですが、一つ伺いたいのです。これから福祉の中長期プランの問題は、公明党坂口さん、民社党米沢さん、その勉強家がリレーでまた御質問申し上げるということなんで、一つだけ伺っておきたいのです。  三月にあのような機械的試算というものを出されました。私は、ああいうものの上にどういうふうにいろいろな政策努力を積み上げていくのか。それから、難しいのですけれども中長期の経済展望もございます。それがすぐ財政にはね返ってまいります。いろいろなことを、そういうものを知恵を絞って、現実どのように五年後、十年後、できれば二十一世紀初頭にターゲットを当てていくことができるのか。全部数字で言えるのかどうか。あるいは丸めた数字で言えるのか。丸めた数字でいって、ローリングでいくのか、わかりません。そういうことを国民の皆さんがわかるように、実感としてわかるようにということが新たな負担を求める消費税の前提条件、したがってそれは前提ですよということを申し上げているわけでございますけれども、そういう作業なり、そういうものをどうお出しになるような御決意があるのかどうか。現実には宮澤さんの大蔵省とのさまざまな議論がございますから、いろいろ大変なことはわかりますけれども、何かそういう必要性を痛感しているわけでございまして、中身のことはまたまた後々バトンタッチで深めてまいりますけれども、一言その状況考え方を伺っておきたい。
  32. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 御指摘のお考え方につきましては、私もよくわかります。ただ、社会保障制度のこれからの目標であるとか水準につきまして、定量的なものについて具体的にどの程度考えていくかということになりますと、これは国民のコンセンサスということも必要でございましょうし、例えて言えば、医療費について言えば、老人医療費をどのようにこれから進めていくかということについて考えただけでも、これはこの時点でこういうふうにいたしますということについては前提がいろいろあるわけでございまして、そういう点では定量的な問題についてはなかなか困難であるということも御理解いただけると思います。  ただ、お話しのように、今後の中長期ビジョンということにつきましては、長寿・福祉社会を実現するために、しからば定性的に基本的な考え方はどういう考え方であるとか、また福祉、医療、年金等の施策につきまして目標とか方向ということにつきましては、なかなか難しい面はございますけれども、できる限りそのことについて検討を加え、国会の御審議の参考に供することができるように今取りまとめ中でございまして、そういう考え方で進んでおることを御報告申し上げる次第でございます。
  33. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 また同僚の、他党の皆さんも含めて議論を深めてまいりたいと思っているところであります。  残った時間、別の話にさせていただきたいと思いますが、駆け足で五つ原則のうち四つ触れさせていただきました。私が申しているのは、何も要求が過大というのではなくて、どこまでできるかは別にして、とにかくこうすべきではないかという気持ち質問させていただいたわけでありまして、何か野党側から問題を、テーマを出しまして、政府の方に声を大にしてさまざま注文をつける、そういうことではなくて、やはり国民の皆さんだれしもが当然であろうという柱を立てて、その方向に向かって汗を流して鋭意努力をするということが税制改革の、これは邪道ではなく正道だろうというふうに思うわけでありまして、率直な気持ちを言わせていただくならば、何も点数をつけるわけではございませんけれども消費税議論する前提としての条件が合格点に達しているとはとても思えないわけでありまして、まだまだ十分な議論をしなければならぬ。ある意味では、こういう経過その他も含めまして、理念、目標、前提条件、手順などを含めて練り直してもらいたいというふうな気がするところであります。  あと、残った短い時間でございますけれども、リクルート問題に関連をいたしまして、法務大臣、お待たせをして恐縮でございますが、三つだけ質問をさせていただきたいと思います。  その前提に、これは総理に申し上げておきますが、それはそれこれはこれのようなことを、先般、秋田でしたか、何か言われたようでありまして、私どもは、リクルート究明、不公平是正、そしてこういうプリンシプルを明確にするということは三つの前提条件というふうに思っているわけでありまして、それはそれこれはこれでは、私は、国民は納得しないであろう、絶対に納得しないであろう。町を歩きましても、そういうことを、私は本当に憤慨しているんですよというようなことをいろいろ言われるわけでありまして、重要な政治の信頼にかかわる前提条件というふうに考えているわけでありますが、それは、見解を問うことはいたしませんが、別にいたしまして、三つ伺いたいと思います。  一つは、法務省に伺いたいのですが、捜査状況ですね。リクルートの強制捜査がございました。二十日には松原氏の逮捕がございました。その逮捕状それから十九日から二十日にかけての捜索令状の中でも、他の数人と共謀の上ということになっているようでございます。そういうことにつきまして、共謀の幹部の特定、江副氏が毎日熱心に報告を聞き指示していたというようなことが、さまざまマスコミの記者からも報道を大きくされております。というようなことになっておりますが、そういう毎日報告を聞き指示している、それが自然の姿だろうと思いますが、そういうことについての本人の取り調べなども含めまして、共謀の幹部というようなものが特定をするところまでいっておりますでしょうか。
  34. 根來泰周

    根來政府委員 去る十九日から二十日にかけましてリクルート本社等を捜索いたしまして、また二十日には松原元社長室長を逮捕いたしまして、二十二日には勾留いたしました。したがいまして、そういう共謀の点につきましても現在鋭意取り調べ中であると考えております。確かに捜索の事実は数人と共謀の上ということになっておりますので、そういう、だれといつ、どういう内容の共謀をしたかということについて今後捜査をしていくものと考えております。
  35. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 法務大臣にちょっとお伺いしたいのですが、前から当委員会での議論の中で、捜査資料の提供の問題についての議論答弁がございました。また、国会での証人喚問に関連をするという議論がございました。何か、その後の大臣の記者会見などで、国会との関連など含めまして消極的にとられるような御発言があって、刑事局長の御発言と違うんじゃないかというようなこともあったようであります。悪く解釈をいたしますと、大臣の方が事実上の指揮権ではないかというふうな言い方をされる人もいるわけでございますけれども、これらにつきまして、この機会にきちんとした前向きの、あるべき対応を御答弁をいただきたい。
  36. 根來泰周

    根來政府委員 大臣が答弁される前に、若干私が申し上げた点について御説明申し上げます。  私は、この間、坂井委員の御質問に答えまして、いわゆる証人喚問と捜査の関係について申し上げました。そのときに私が申し上げたのは、検察の現場としては静かに捜査をしたいという心情であろうと思いますけれども、その辺少し言葉が違うかもわかりませんけれども国会の御決定であれば捜査に支障がないと思う、こういうふうに答えたように記憶しております。  それはどういうことで申し上げたかと申しますと、これは非常に歴史的な一つの問題がございまして、昭和四十九年に石油カルテル事件というのがございまして、そのときに衆議院予算委員会が、石油カルテル事件で告発された石油会社等の関係者を証人として聴取するというお話がございました。これに対しまして、当時の法務省刑事局が、そういうことをされると捜査に支障があるということを予算委員長に申し入れたわけでございますけれども、そのとき非常に国会の御反発を買いまして、国政調査権に介入するのはおかしいというふうなことが一つの問題になりまして、結局証人喚問がされたわけでございます。その後、そのやみカルテル事件あるいはロッキード事件あるいはダグラス・グラマン事件について国会の証人喚問が行われまして、また、今回も告発の対象となっておる江副氏について参考人の聴取が行われたわけでございます。そういう件について、検察といたしまして捜査の障害になったということは従来聞いていないわけでございます。これは結局、国会がそういうことにつきまして、三権の分立とかあるいは捜査の障害とかいうことについて十分御配慮いただいた上で御決定になっているものと私ども考えているわけでございます。  確かに、その個々のことを仮定いたしますと、非常に捜査の差し支えもあることもあると思いますけれども、それはそういうことも踏まえまして国会で御検討になった上で御決定になるわけでございますから、そういうことについて、我々はその時点におきましては捜査の障害になるということはないということを断言申し上げたわけでございます。  大臣が申し上げたのは、そのいろいろの問題を仮定した場合に、やはり捜査の障害があるのではないか、しかし、それは国会で十分調整してくれるものと思うということを記者会見で申されているわけでございまして、私の申し上げていることと何ら矛盾することじゃございません。私は、国会の御決定があればそれは捜査の障害にならないというふうに考えているわけでありまして、大臣はその前提として、国会で御議論される場合には捜査の障害ということも十分お考えいただくであろうということを申されているわけでございます。  以上、御説明したとおりでございます。
  37. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 私が基本的に申し上げておりますることは、国政調査権と検察の捜査ということは両立してやっていくことができる、こういうことでございます。その際に、捜査と証人喚問につきましていろいろな場合を仮定いたしますると、例えば現在逮捕いたしまして捜査中であるというような場合には差し支えがあることも否定できないわけでありまするが、そういう場合には国会で十分調整をされると存じまするので、政府としましては国政調査権に最大限の協力を申し上げる、こういうことであろうと存じます。
  38. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 国民の最大のと申しましょうか、大きな関心を持っておられる問題でございますし、国会、検察、それぞれ車の両輪と申しましょうか、それぞれやはり国民皆様から疑惑を晴らしていただけるような努力をすべきであろうというふうに思いますから、ぜひ御努力をいただきたいと思います。  最後に一つだけ、これは法務省刑事局とそれから大蔵省に伺いたいのですが、最近さまざま報道されておりますし、私ども、いろいろなうわさなり情報なりなんなりをいろいろと聞くわけでございますけれども、大きな問題として、未公開株を江副氏が買い戻してという問題は、前に今まで議論になりました八万株の問題どころか、第二、第三、第四のルートがあって六十万株に及ぶとか、いやもっと多いとか、さまざまなことが実は報道をされております。  それぞれ内容を私ども聞いたりまた読んだりしておりますと、相当確実性が高いというふうな気がするわけでございまして、今まで議論してまいりましたような日本証券業協会の自主ルールに言うところの内規の違反であるかどうか、現在取り調べ中であり、どのようにするかどうか。新聞では、違反といっても厳しい規制とかそういうようなことはしないような報道も前にちょっとなされましたが、まさにこれは証券行政としても、あるいはその案件、事件といたしましても非常に重大な問題であろうと思います。要するに、あるべきルールが膨大な規模で破られているというような問題ですから。しかも、報道で見ますと、例えばヤクルトから八万株、江副氏の友人にというような報道がございますけれども、実際には十二万株であった、八万株はどこかへ行ったというような話でありまして、その報道を見ますと、大蔵省の届出書に二十万株でこうだというように書いてあるのでこうしてもらいたい、あとは戻します、大蔵省の届出書にこう書きましたのでというふうな報道もなされております。  これらのことを大蔵省、六十万株かどうか知りませんけれども、膨大な額の、今までとはレベルの違った巨額のものでありまして、それらのことをどう行政当局としてとらえ、あるいはまた証券業界のルールを大きく乱す重大な問題だと思いますし、こういう問題については私は証券業法その他含めましたやはり厳しい追及、対応をなされるべきではないだろうかというふうに思うわけでございますけれども、その辺を大蔵省としてはどのように、大蔵省の届け書類に報告してあるとか書かれておりますけれども、把握をいたしておりますか。  それからもう一つ、刑事局長、恐縮ですが、最近、次々にこういう大きな調査、報告などがなされている問題ですね、これらについてどのような把握あるいは関心をお持ちですか。双方からお伺いして、終わりたいと思います。
  39. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 私どもといたしましては、新聞にいろいろ伝えられているような事実について具体的に承知しておりません。ただ、あそこで伝えられておるような事実につきましても、新聞その他によりましていろいろ事実関係、例えば江副さんが買い戻したのかどうかというあたりは、どうもよくわからないところがございます。  この問題は、基本的には第三者割り当てそのものはきちんと行われたわけでございますが、その後の第三者割り当て先からの株の移動ということで、これが証券業協会のいわば公開前の特別利害関係者等による株式移動に触れるかどうかといった点が第一義的な問題でございまして、そういった意味では、証券業協会は、新聞で伝えられているようないろんな事実について幅広くこれは調査をするように幹事証券会社に指示しているというふうに私ども聞いております。私どもといたしましては、そういった対応の状況を見た上で、一義的にはこれは証券業協会の問題でございますので、そういった対応をまず見守っているといった段階でございます。  それから、政策的な問題としてこれをどうするかといった問題につきましては、これは大臣からも御答弁申しましたように、証券取引審議会の不公正取引部会等の場におきまして、例えば第三者割り当て先に対する株式の長期保有の義務づけでございますとかあるいはディスクロージャーの問題等々、そういった問題として今後の対応を今検討しているところでございます。
  40. 根來泰周

    根來政府委員 ただいまその犯罪性についてどうのこうのと言う立場でございませんけれども、せっかくの御指摘でございますから、検察庁も十分拝聴しまして適正に対処するものと考えております。
  41. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 時間ですから終わりたいと思いますが、いずれにしろ、最後に話題にしました問題は、手軽な議論で済ませる問題ではございませんし、当委員会でも集中的にさまざま御議論がなされることになるでありましょう。  その前の五つ原則、先ほど申しましたように、私、今まで伺いましたところでは、どうしてももう一遍こういうものについてはきちんと練って、きちんと対応を組んで、その上で税制改革はどうあるべきだという本論に入るということを改めてやらざるを得ないというふうな気持ちがするわけでございまして、そういう意味での議論を今後とも私どもはやってまいりたいというふうに思います。  これで質問を終わります。
  42. 海部俊樹

    海部委員長代理 これにて伊藤茂君の質疑は終了いたしました。  坂口力君。
  43. 坂口力

    坂口委員 伊藤先輩に引き続きまして、我々四党で出しました税制に関する基本構想中心にいたしまして質問をしたいと存じます。  先ほどお話がありましたように、この基本構想は、社会党の土井委員長が四月十六日に税制改革についての四つ基本要求というのを発表されまして、我が党の矢野委員長が、八月五日でございましたけれども税制改革基本法要旨を発表させていただきました。また、民社党塚本委員長がソウル談話の形で六月十五日に税制改革の三原則について発表になりましたものを基本にいたしまして、我々四党の政策担当者の共同見解をそれに織りまぜてここにまとめさせていただいたというものでございます。中身につきましては、伊藤政審会長の方からお話がございましたが、できるだけ重複しないようにしたいと存じますが、五つ原則五つ手順ということでここに私たちは発表したわけでございます。  この四党の発表の前に、八月五日、我が党の税制改革基本法要旨におきましては、第一次改革と第二次改革に分けまして、第一次改革におきましては、不公平税制の是正、そして総合課税の確立、資産課税の強化等々を織りまぜまして、これらを一応整合性あるものにまとめましたその暁において、なおかつ、国民理解も得られ、そして必要があると認められるときに限り、第二次改革、直間比率の見直しを含めました二次改革を行う、こういう内容のものでございました。このことにつきましては、竹下総理から前の質問のときに御意見を伺ったりもいたしましたけれども、それらを踏まえまして今回この四党の改革案をここに基本構想としてまとめさせていただいたわけであります。  私は、今までも不公平税制の中で幾つかの質問を終わらせていただいておりますが、その中で一つ資産課税につきましてだけちょっと落としておりますので、この際これだけひとつ落ち穂拾いをさせていただいて、次に進ませていただきたいと思います。  我が党はかねてから資産課税の問題を言っておりまして、とりわけ土地増価税のお話を何回か申し上げまして、矢野委員長も本会議場でも申し上げたところでございます。この土地増価税につきましてはいろいろ議論のあるところでございまして、多くの皆さん方から賛否両論寄せられているわけでございますが、企業の経営者の皆さん方からも、今までは反対の意見が多かったわけですが、最近になりまして、この税制は一考に値するというお話がこのところ相次いでおります。それはやはり土地税制との絡みでおっしゃっているわけでございまして、現在、非常に土地が高騰いたしまして、地価の時価とそれから簿価との格差が余りにも大きくなり過ぎてしまった、この状態で土地を売買をしますと非常に税金が高くなるというようなことから、この再評価税、土地増価税を行った方が後の処理は楽になる、こういうこともあるのではないかと思うわけでありますが、そんなことでいろいろ御議論を実はいただいているところでございます。  前回このことを委員長が申しましたときに、たしか総理大臣から、そうした意見のあることは十分に聞いているけれども、しかし利益のないところに課税をするというのはいかがなものか、こういう御意見があったように記憶をしているわけでございます。しかし、それはそうでございますけれども、全体のバランスから考えますと、やはり、具体的な方法論につきましてはいろいろの方法があろうかと思いますけれども、一考を要するものではないか、最近とみにそう思っているわけでございまして、もしここで御意見がございましたらひとつ大蔵大臣等にもお伺いをしておきたいと思います。
  44. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この点はしばしば御指摘がございまして、私どもも決して軽々にはお話を伺っておりませんで、いろいろそこらに問題がありますからこそ御指摘になっておられるのだと思います。  従来から、所得が実現していないときにちょっと課税ができるであろうか、あるいは保有税的なものであればそれを強化すべきではないか、また、これらは概して装置産業が持っているものが多いので担税力なんかの点でもいろいろ問題がありはしないか、これは申し上げておりますことはもうよく御存じのとおりでございます。  私どもも、これはいろいろに実は考えておるわけでございますが、シャウプ勧告のときに、御記憶でもございますけれども、昭和二十四年に、企業の固定資産に対して再評価をして再評価税、たしか六%であったと思うのでございますが、を課するということがございました。これはやはり戦前と戦後という大変に価格の変動の大きかったときにやったことでございましたけれども、私は余りそれがいい結果になったという記憶を持っておりません。そういうことは今から四十年近く前のことでございますが、ただいまお話しのようなこと、果たしてもしそういうことであれば、固定資産税なり固定資産的な課税は可能でないのであろうか、あるいは、一般に法人、個人を通じて申しますれば、贈与税であるとか相続税であるとかあるいは譲渡所得であるとかいうものの課税の形でそういう要素を加味できないかといったようなこともまた考えるべき要因かと存じます。しばしばの仰せでございますので、なお検討させていただきたいと存じます。
  45. 坂口力

    坂口委員 きょうは福祉の問題を中心にしまして後でお聞きをしたいと思うわけでございますが、そうした財源の使い方の問題ともこれはかかわってくる問題でございますが、税制上は、所得、資産、消費でございますか、三つがバランスのとれた税体系をつくり上げる、政府の方はそういうふうに主張しておみえになるわけであります。今回のこの税制改革につきまして何回か触れられましたように、所得並びに消費については触れておみえになりますけれども、資産につきましては相続税について触れられているのみでございまして、本格的な資産についての御提言は今回ないわけです。  我々、土地増価税の問題を中心にしまして、その他この資産課税の問題を主張しておりますけれども、こうした資産の問題は、所得のいわゆる累進性を緩和をするというようなことが今回行われるわけでございますから、やはりあわせてこの際に議論をしなければならない問題ではないかと思っているわけであります。将来また総合課税になるなりあるいはまたもし番号制が導入されるというようなことになりまして把握がしっかりしてくるというようなことになりますと、先日も議論がありましたように、最高税率はまた検討の段階に入るかもしれません。そうした段階になってまいりますと、殊さら、資産再配分に一体税がどう役目を果たすのかということが大きな問題になってくるのではないかというふうに思います。 資産の再評価。再配分ですね、失礼しました。私、再評価と申しましたが、再配分ですね。資産再配分をどうするのか、所得再配分をどうするのかということになろうかと思いますが、再配分機能をどこに持たせるのかということを考えましたときに、やはり資産課税を抜きにして論ずるわけにはまいりません。あわせまして、社会保障の問題を一体どうするのかということとこれは裏表の問題になる可能性もございます。こうしたこともきょうは織りまぜながらひとつ議論をさせていただきたいと思います。  きょうは、福祉の問題に入ります前に、全体の高齢化社会のアウトラインを見ましたときに、大体昭和五十年には六十歳以上の人が約一二%台でございました。私は、そのときの記憶では、昭和百年になりますとちょうど七十歳以上の人が一二%台になって、昭和五十年から昭和百年までのこの五十年の間に一二%が六十歳以上から七十歳以上に十年ずれる、こう記憶をしていたわけでございますが、きょう厚生省にお聞きをいたしましたら、いや、坂口さん、それは間違いで、七十五歳以上がもう一二%台であって、昭和百年、七十歳以上というのはもう一八%ぐらいになりますよという御指摘を受けまして、ちょっと私の記憶違いであったのか、あるいは前の統計を私が見ておりましたのか、少しずれがあるようでございます。あるいは昭和七十五年、西暦二〇〇〇年ぐらいが七十歳以上が一二%台ということなのかもしれなかったというふうに今思っております。  いずれにいたしましても、かなり高年齢の方にずれることは間違いないわけでありまして、そうなりましたときに、この昭和五十年から昭和百年ぐらいの間に、少なくとも十年は我々の社会の枠組みをずらさないといけないわけでございます。それは、定年にいたしましても、あるいは賃金にいたしましても、あるいは年金にいたしましても、いろいろの私たちの機構を少なくとも十年は後にずらすことができ得るかどうかということにかかってくるだろうというふうに思います。  我々が待ちに待ちました高齢化社会でございますけれども、いざこうして高齢化社会を迎えてみますと、その喜びよりもむしろそれによって起こるところの不安の方がより大きくなっているというのが現状でございますが、この高齢化のプラス面とそれからマイナス面とを比較をいたしましたときに、マイナスの方が目立っている。初め長寿社会を夢見まして、お互いに長寿社会に向かって進んだわけでありますが、そのときには、いわゆる元気で働ける期間がより長くなる、こういう認識であったと思います。しかしながら、こうしてでき上がってきた高齢化社会を見ますと、その元気に働ける期間が長くなったということではなくて、むしろ老後が長くなったという認識の方が強い。そこに現在の不安と申しますか、いら立ちというのがあるのではないかというふうに思うわけでございます。  それで、高齢化社会を迎えて、そして我々の社会の枠組みを少なくとも昭和五、六十年ぐらいから十年は後方にずらすというような操作を行おうとしますときに、やはり一番問題になりますのは雇用の問題ではないだろうか。かつて五十五歳が定年でございましたけれども、それが現在六十歳定年に向けましてようやく動き出した。そして、まだ完全ではございませんが、その六十歳に向けて現在進行中である。しかし、まだ完全に六十歳にはなっていない。これを六十五歳までさらに延長するということは、現在の時点で考えますと、これは言うはやすく行うはなかなか難しいことではないのかな、こう思うわけでございますが、しかし、長寿社会を迎えました場合にそうせざるを得ない。もしそうすることができ得れば我々が心配しておりますことの半分は解消するのではないか、こう思うわけでございます。これは雇用だけではございません。その枠組みを十年間ずらすことができ得ればということでございますけれども。  そこで、一番問題になります雇用の問題につきまして労働大臣にきょうはひとつお聞きをしたいわけでございますが、現在お考えになっている状況の中で六十五歳定年制というのは夢のまた夢なのか、それとも、いや、そうではなくて、かなり現実性のあるものとしてとらえることができ得るのか。もしも非常に難しいとするならば、それはどんなことが一番ネックになって難しいのか、それを取り除いて前進するためにはどんなことをしたらいいのか等々、もう難しいことの数々でございますけれども、ひとつ労働大臣からまずお聞きをしたいと思います。
  46. 中村太郎

    中村国務大臣 御指摘になりました仮定につきましては、考えといたしましては、私どもも全く同感でございます。御承知のように本格的な高齢化社会を迎える我が国で、とにかく六十五歳までは何としてでも雇用の継続あるいは就業の場を確保しなければ活力を失ってしまうというふうに考えております。今、御案内のように、六十歳の定年がはっきり決定をしている企業というのは全体の六二%、それから、もう既にやることに決まっているんだ、数年のうちにやるんだというものを含めますると七六%、こういうような数字が決まっておるわけでございまして、私どもは、とにかく目下のところは六十歳定年を定着をさせて、その上で労働者の就業のニーズあるいは体力、健康等に応じまして、それぞれ定年延長あるいは再雇用あるいは勤務延長というさまざまな形で継続雇用の道を図ることが大切であると思っております。  しかし、おっしゃられますように、物すごい勢いで高齢化が進むわけでございまして、何年か後に今の対応だけではとても賄い切れない、そういう感じがいたしておるわけでございまして、六十歳を超えての定年というものを当然ながら考えていかざるを得ない、このように思っておるわけでございます。しかし、その場合には、やはり今までの賃金、退職金制度の見直しとかあるいは人事、労務管理の体制の見直しの問題とか職場環境の改善の問題、いろいろあるわけでございますから、それらをあわせて総合的に環境整備を図りながら定年延長の問題を考えていかなければならないと考えておるわけでございまして、御指摘のように、いずれはこの問題を真剣に討議していかなければならないというふうに考えておるわけでございます。  問題点は何かということでございますけれども、何といいましても、全体的には国民全体の合意でございましょう、コンセンサスでございましょうが、労使、特に使側の御支援をいただかなければならないというふうに考えておるわけであります。
  47. 坂口力

    坂口委員 もう一言だけ労働大臣にお聞きをしておきたいと思いますが、今お聞きをいたしますと、六十五歳定年というのは一応射程距離と申しますか、その中に据えて見ることができ得るという意味合いのお話であったというふうに承りました。高齢化の進捗状態とあわせて考えましたときに、大体今世紀のうちには、そこまでは行けなくとも、六十五歳定年制に向けて動き出さないと間に合わないのではないか、こういうふうに思っておりますが、その辺、大体どのぐらいなめどを持ってこの六十五歳定年に向けて進もうとしておみえになるかという、その詳しい何年何月までというようなことは結構でございます、大体の目安だけひとつお聞かせをいただけましたらありがたいと思います。
  48. 中村太郎

    中村国務大臣 御案内のように、これは年金問題等とも絡んでくるわけであると思うわけでございます。まあ私どもは、今おっしゃられましたように、今世紀の中では実現せざるを得ない、そういう方向へ持っていかざるを得ないのではないかというふうに考えておるわけであります。
  49. 坂口力

    坂口委員 今御指摘になりましたように年金との絡みがあるわけでございますが、何と申しましても、高齢化社会の中で年金は一つの大きな目玉になるものであることは間違いございません。それで、年金論議、きょうはここでしている時間的ゆとりはないわけでありますが、年金にかかわります問題といたしまして二つここで議論をさせてもらいたいというふうに思っております。  一つは、年金の資金を何によって確保していくか。それは社会保障費として国民皆さん方から出してもらうか、それとも税として出していただいたものを現在のパーセントあるいはまた現在よりも多くのパーセントで年金の財源としてそれを導入をするか。その場合に、その税は直接税中心なのか、間接税中心なのか。これらの問題があろうかと思うわけであります。これが一つ。  それからもう一つは、今まで約六十二、三兆円、六十三兆円ぐらいございますか、厚生年金。それから国民年金が三兆円で、昭和六十三年度現在六十六兆円の積立金があるわけでありますが、これをどう運用するかということだろうと思うのです。この自主運用の問題につきましては、これは大蔵委員会で何度か当時竹下大蔵大臣に質問させていただいた経緯がございますけれども、いわゆる資金運用部資金としてこれを使用するか、それともその何%を自主運用するかという問題があろうかと思います。  できる限り年金に対する掛金は少ない方が国民の側からすればいいことに間違いはないわけでございますし、また、現在の段階ですら既に掛金のでき得ない人たちがかなりのパーセントになっている。お聞きをすると、一五%ぐらいに達しているというお話を聞くわけで、これから掛金率といたしましては昭和五十九年の貨幣価値で一万三千円ぐらいまではだんだんと増加していかざるを得ない、こういう今までの計算がございます。そういう掛金をより少なくして、そうして国庫負担もできる限りたくさん投入せずにいこうと思えば、この六十六兆円という積立金をいかに運用するかということだけしか道は残っていないわけでございます。  これはどうしても資金運用部資金の中に入れて財投に使わなければならないから自主運用はできませんとここでシャットアウトをしてしまうと、そうしますと、これは一般財源の中から年金の財源としてより多く投入をしなければならないということになってくる。これはイタチごっこになるわけでございますが、この辺のところにつきましても、この税制の論議とともにこれは大きな問題でございますので、この際にひとつけじめをつけて前に進まなければならない問題ではないか、かように思っているわけでございます。  したがいまして、年金にかかわります問題として、税金という形で入れるのか社会保障費という形で入れるのかという問題と、積立金をいかに運用するかという問題、この二つの問題、大変大事な問題でございますので、ひとつ議論をさせていただきたいと思います。  まず、積立金の運用の方でございますが、資金運用部の預託金利は、昭和六十二年、初年度のものだけを見ますと、これは四・九七九%、平均いたしまして。そんな率になっておりまして、これは五%弱の預託金利でございます。ですから、もうそんな高利運用というのはでき得ない状態にある。しかしながら、生命保険その他の民間保険はかなり高利運用いたしておりますし、また、同じ厚生年金の厚生年金基金の方などは非常にいい運用をなすっている。そこに運用によりましては非常に大きな格差がついてくることだけは間違いがないわけでございます。  ほかのものとは違って、年金の積立金は、これは税金で出してもらったお金とは違う、国民の皆さんからお預かりをしているものであるから、税金と同じように自由自在に使うということはこれはいけない、別だという議論を今まで何回か私繰り返してまいりました。そういう意味で、財投との絡みがございますけれども、これからこの積立金をどのように使っていくのか、少なくとも現在よりは積み立ての率を高くしていくのか、それともそれすらもでき得ないということなのか、その辺のところからちょっとお伺いをしたわけでありますけれども、大蔵大臣にお答えをいただきます前に、厚生大臣に厚生省の希望の方から先に聞いておきたいと思います。
  50. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 年金の積立金の運用につきまして、有利な自主運用をふやして年金の財政基盤を強化していく、御指摘全く同感でございます。この積立金の運用につきましては、御承知のように三つの側面がございまして、自主運用、福祉運用、財投協力、こういう三つの側面があるわけで、この三つがうまくバランスをとっていくということがまず基本だと思います。  他の共済年金の状況等を見てみますと、共済年金ではほぼ自主運用、自主有利運用が三分の一、私学共済に至りましては六〇から七〇%、こういう現状でございます。厚生年金、国民年金の積立金は現在六十六兆円あるわけでございまして、そのうち四兆一千億今自主運用して、八%前後の運用利回りで運用しておるわけでありますので、私どもといたしましては、他の共済年金並みの三分の一、三三%ぐらいの線にはぜひ持っていきたいな、努力して実現したいな。このことが結果として保険料を減らす、そういう負担を軽減するということに結びつくわけでございますので、ぜひ努力すべき大きな課題であるというふうに考えております。
  51. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 三月でございましたか、予算委員会に御報告をいたしました資料、これは機械的な計算でございましたけれども、これによりましても、この社会保障関連の負担が将来に向かってふえざるを得ないであろうということは否めないところであろうと存じます。  私の考え方から申しますれば、今社会保険方式を基本としておりますけれども、これは、保険料によりますと給付と負担の関係が大変に明確でございますから、それによって制度の効率的な運用ができるという、そういうメリットがあるということなのでございます。しかし、今後のことをいろいろ展望してまいりますと、やはりおのおのの制度、これは年金でも医療でもそうでございますが、趣旨や目的、実態に即しまして、税による財源も適切に組み合わせていかなければならないのではないかというふうに考えております。  その際、直接税か間接税かというお尋ねにつきましては、税源一般と申し上げるのが適切と存じます。別途直間比率というものを改めたいと私ども考えておることは税制の根本改革で何度も申し上げておるわけでございますが、一般に税源によりある程度の組み合わせが必要になるのではないかというふうに考えております。  それから、第二段の問題もまことに難しい問題でございますが、六十二年度から年金福祉事業団が資金運用部から融資を受けましてこれを運用してこれを特別会計に納付しておる。財源強化対策がとられておるところでございます。おっしゃいますように、財投には財投の国民経済的な役割がございます。これはもういろいろな、中小企業であるとか経済協力であるとかいろいろ大きな目的を持っておりますので、これは大切にしていかなければならないと思っておりますが、ただいま仰せになりましたこととの関連で申せば、結局、財投に対する一般的な需要あるいは財投自身の原資がどうなっていくか、それから年金財源そのもの、まさにおっしゃっておられることでございますが、やはりそれらを総合的に勘案しながら予算の編成過程で考えていく。どうもお答えとしてはいかにも型にはまったお答えになるのでございますけれども、どうもそうしていくということが最善の方法ではないかと考えております。
  52. 坂口力

    坂口委員 財政の方からいえばそれが最良の方法なんでしょうけれども、年金ということを中心考えますと、それは最良の方法とは言えないんですね。これはもう何度か私が申し上げたことでございますが、これは今回の税制改革の中でこれから社会保障に対してどういうふうな方針でいくのかということと絡んでまいりますが、私はこの際に、今まではこういう経過をたどってきたんですからやむを得ません。そして、今すぐに方法を全部変えて自主運用に全部してしまえといったって、これは無理な話でございます。しかし、将来は、一つの方向性として、やはり何らかの道を選んでいかなければならない。もしもそれをしないとするならば、せっかく皆さん方から年金のお金として提出をしていただいたわけでありますから、それが国民の意思といいますよりも政府の意思によってその運用が十分にいかないということであるならば、それに見合うべきものを一般財源から導入をしていかなければならない。結局は回り回っていくわけですね。それで、一般財源からも年金の資金としては入れない。そして運用も高利運用の方には回すわけにはいかない。これは許すわけにいかないと思うのですね。  このことを申し上げると、大蔵省はいつも大変渋い顔をされるわけでありますけれども、しかし、私が申し上げておりますのは、国民から税として納めていただいたお金と年金のお金として出していただいたものとは違うということを申し上げているわけであります。どうも大蔵省は、年金の預金額も税として出してもらったものと同じようにお考えになっておる。あたかもそれを大蔵省は同じようにこれは国民のために使うんだから構わぬのだというお立場になっておみえになる。しかし、それは年金のために出されたものでありますから、一般の財源あるいは一般の税として出していただいたものとはおのずからそこに違いがあるということを述べているわけであります。  だから、一〇〇%これを自主運用に回せといってもなかなかこれは難しい話でしょうけれども、しかし、そこは基本が違うのだから、やはりこれは自主運用として、今厚生大臣がおっしゃったように、少なくとも三分の一ぐらいは目指して、そちらの方向に行かなければならないのではないか。別に私は厚生省から頼まれたわけでもございませんし、厚生省の肩を持たなければならない理由はさらさらないわけでございまして、厚生省も大蔵省も私は同じウエートで見ているわけでございますけれども、事この問題につきましては、厚生省のおっしゃることの方に軍配が上がるのではないか、こう思っているわけでございます。ひとつ再度御答弁をいただきたい。
  53. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この問題についての過去の経緯は委員はよく御存じでいらっしゃいますし、また、ただいま御指摘になりました問題点は、何省何省ということではなく、私どもも実は問題として決して気がついていないわけではございません。税ではないんだよとおっしゃいますことも、まさにそういうことはよくわかることでございます。結局、したがいまして、あれこれ考えながらどのようなバランスをとっていくかということに尽きるのだと思いますが、御指摘になりましたことは十分今後とも考えさせていただきます。
  54. 坂口力

    坂口委員 どうも歯切れが悪くて、十分にわかっていておやりにならぬから余計始末が悪いわけですね。わからずにおみえいただくのだったらそれはやむを得ないということにもなりますけれども、十分にわかっていてやりませんとおっしゃるのですから、どうもこれは我々としては納得しがたい。  いよいよ高齢化の厳しい時代を迎える。そして現在のこの年金だけでは少し不十分じゃないか、もう少しいい年金にならないのかというような声がある。そしてまた一方におきましては、非常に物価の上昇が激しいようなときにはそんなことは起こらないのですが、最近のように物価が安定をいたしておりますと、国民の皆さんの方は、それならば国の方の年金に納めているよりも生命保険等の私的年金の方に掛金をした方が返りが大きい。事実、いつか私提示をいたしましたけれども、三%ぐらいの物価上昇率でいけば私的年金の方が確かにいいんですよね。そういう宣伝も一方からこれあり、多くの皆さんは、基礎年金への掛金をおやめになって、そして私的年金の方に入っておみえになるという方もあるわけです。このままで推移をいたしますと余計にそういう傾向が大きくなっていく。  これは、そういうふうにする方が悪いんだと言っておれるのかどうかという問題だろうと思うのです。ひょっとしたら、今から数年後には月々の掛金が一万三千円ぐらいにはなる。そして六十五歳から基礎年金としてもらえるお金が五万円。それを同じように私的年金と比較をされました場合に、国民皆さん方から、とてもじゃないけれども国の方は安過ぎる、これではついていけないというふうにお考えになりましても、そこは無理なことではない。そういうふうな意味もありまして、私は、この問題をいわゆる国の財政の論理だけで今までと同じように考えていていいか、税制改革のこの時期にこの問題も含めて一遍議論をすべきではないか、そして今までの方向を少し軌道修正をすべきではないか、こう考えておる一人でございます。  総理大臣、大蔵大臣にこれ以上お聞きをいたしましても無理かとも思いますし、総理大臣は大蔵省も厚生省も両方平等にごらんになっているお立場でございますから、ひとつきょうの議論にけじめをつける意味から御発言をいただけたらと思います。
  55. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 今のような議論が出てくる、すなわち、定年制六十五歳、年金問題がおのずからそれに付随した議論となって六十五歳支給というような議論が勇敢に出てきたというのは、私は例を余り知りません。しかし、そういう議論を本気にしなければならぬ時期に来たんじゃないかと思います。  私自身最近思うわけでございますが、ちょっと横道にそれますが、例えば公務員の最高の地位につかれたときの岸先生や椎名先生は四十歳、それから今国会にいらっしゃいます少し上の方の先生方が大体五十歳、それから今もう五十五から上になりまして六十になった。よく冗談で言われますが、結婚式でだれかが紹介するときに、新婦のお父様は前途有為な課長補佐でございますというような時代が来るだろうということをよく言われて、本当だなあと思って私感ずることが率直にあるわけでございます。私自身も間もなくそのマル優年齢に達するわけでございます。  そういうことを考えてみますときに、将来の課題でどうしても避けて通れない問題に年金問題があるわけでございます。何とか年金の一元化という問題を年金担当大臣のもとでまとめて将来にわたっての構想を出さなきゃいかぬ、こういうことになっておるわけでありますが、部内でいろいろ議論されておる今の局限した一つの問題としてのおっしゃる自主運用の問題でございますが、これにつきましては、また別の議論として、自主運用というのが有利かつ安全という場合は別途の機関でやった方がいいじゃないか、こういう議論も確かにございます。一元的に運用するのを、いろんなところでばらばらにやるより、むしろ一元的に運用するためには別途どこかで一本にしてやってもいいじゃないか、こんな議論も私聞いたことがございます。 したがって、自主運用をして有利にし、いわゆる掛金を可能な限り上げないでいこうというその趣旨は大変まじめな議論でございますけれども、運用という問題になったときには、多方面で運用した方がいいのか一元的運用がいいのか、財投原資の問題は別といたしまして、その辺はもう少し議論してみるべきところではなかろうかな、こういう感じでいつもおるということを、これは大蔵省とか厚生省とかという問題じゃなく、坂口さんと同じような立場で、私も、有利かつ確実の運用ということになると、どこでやったが一番有利かつ確実かということになるとまた別の議論も起きてくるんじゃないかなという感じもしないわけじゃございません。したがって、今これで結末をつけるとおっしゃいましたが、結末のつけがたい問題ではないかというふうに感じております。
  56. 坂口力

    坂口委員 結末をつけると申しましたのは、きょうの議論で結末をつけるという意味でございまして、これはなかなか結末のつけにくい問題であることはよく承知をいたしております。しかし、これからどのような社会保障像を描いていくかというときに、この問題は抜きにして議論のできない大きな問題の一つである、こう思っております。大蔵省の方も、かたくなに持ったら放さないというような態度ではなくて、ひとつ柔軟に対応をしていただいて、これは全部が全部自主運用に回せといったってそれは無理なことは私たちよくわかっております。しかし、これは別な意味でお預かりしているお金ですから、そのことをおわかりいただいております以上は、やはりその趣旨にのっとつて、その趣旨に一番合った方法で運用するというのが一番大事なことではないか。年金の増額が要求されている今日でありますから、やはり多くの皆さん方に少しでも年金を増額してお返しをするというその趣旨にのっとつてこれが運用されなければ、ほかの目的で運用されるというのはいただくわけにいかない、こう私は主張しているわけでございます。  したがって、大蔵省といたしましては、この問題につきまして、今までもいろいろ考えてはいただきましたが、どうも硬直的で同じところにばかりとどまつているわけでありますが、どうかひとつもう少し柔軟に、新しい角度から御検討いただいて、そして自主運用に御協力をいただいたらと思う。私が御協力と言うのはおかしな話で、これはぜひそうしてもらいたいと思うわけです。  それから、もう一つの方の話も、もう既に宮澤大蔵大臣から同じに実は答弁をしていただきました。社会保障費を中心にして医療費あるいは年金の財源を確保していくというお考え、前にもお聞きをいたしました。これは社会保障費でいくのか、税でいくのか。税も、直接税でいくのか、そして間接税でいくのか。どうもきょうはまだ間接税のお話をするのは早過ぎるわけでございますから、ちょっとこの議論はしにくいわけでございますけれども、——ありがとうございます、どうも。遠慮するわけではございませんが。  逆進性の多い順からいえば、間接税、社会保障費、直接税、こういう順番になるわけですね、逆進性の強い順から申しますと。それで、私は、社会保障費として年金なり医療費なりの財源を国民の皆さんからお出しをいただくというのも、余り社会保障費にばかりおっかぶせるということにも反対立場でございます。ましてや間接税からより多く取るということにつきましては反対立場でございます。なぜかといえばこの逆進性の問題があるからでございまして、これもしかし程度ものでございまして、全部が全部一〇〇%こちらからとか、一〇〇%こちらからというような話ではございません。程度ものではございますけれども、現状に比較をして今後どうしていくかということになりました場合に、現状よりも社会保障費のパーセントをふやしていくということには私は反対でございますが、今大蔵大臣がお答えになりましたのは、現状に比較をして社会保障費の率をふやしていく、こういうふうに御答弁いただいたというふうに理解してよろしゅうございますか。  それから、厚生大臣は、この問題につきまして先日一度お聞きをしたことがございますけれども、余りはっきりした御答弁がございませんでした。どちらともとれる御答弁だったように記憶をいたしておりますが、厚生大臣としては、今後の年金、医療につきましての財源確保に、これは社会保障費のパーセンテージをふやしていくことに賛成なのか、それとも税制の面でこれはカバーしていくのがいいというふうにお考えになっているのか、その税制の中、直接税と間接税に分けて云云というところまで申しません、どちらかということをひとつ御意見を聞かせていただきたいと思います。
  57. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 行革審の答申などでも、保険料による方が比較的区分が明確で云々ということがございまして、私だけの意見ではないかと存じますけれども、私が先ほど申しましたのは、三月の資料でも申し上げましたが、現在保険が一一、税が二五・五、三六・五ぐらいでございますか、これがほぼ七十五年には五ポイントぐらい、八十五年には一〇ポイントぐらい上がる、GNPいかんにもよりますけれども、というのは、機械的な計算だと申し上げたのでございまして、割合としての保険料分が高くなるかどうかということを定かに私にも、実は計算も正直言ってできないものでございますから、そこまで申し上げようとした意味ではございませんでした。先ほど厚生大臣がおっしゃいましたように、いろいろな考え方を両省で今詰め合っておるわけでございますけれども、なかなか定量的なお答えは申し上げにくい。私が申し上げましたのは、三月の資料でも申し上げましたように、七十五年には総体ではあるいは五ポイントぐらい、八十五年にはひょっとして一〇ポイントぐらい、こういうようなことを頭に置いて申し上げましたので、それ以上細かいことを思って御答弁をしたわけではございません。
  58. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 社会保障の負担につきまして、税と保険料、どのような組み合わせといいますか割合がいいのか、こういう御質問でございますが、御承知のように社会保険方式をとっておるわけでございまして、これでいろいろなメリットがあるわけで、現在は定着をしている。そうしますと、考え方としてはあくまで、社会保険方式でありますから、これは保険料中心というのがやはり基本にある考え方だと思います。  ただ、この社会保険料と税の組み合わせというのは、これは割合については非常に難しい問題でございまして、現状におきましては大体三対七、こういう割合でございますが、これを、今後の本格的な高齢化社会、そういう将来に向けてどのような割合に持っていくかということについては、やはり最終的には国民の選択によるものでございますし、また給付とも関係するわけでございますので、なかなかお答えが難しい問題だとお答えをせざるを得ないと思っております。
  59. 坂口力

    坂口委員 両方ともはっきりいたしませんね。両方ともはっきりいたしませんが、大蔵大臣の方の御答弁は、前回お聞きをしましたときには、今後社会保障費の割合を現在に比較をしてふやしていきたいという趣旨のことを御発言になったように記憶をいたしておりますけれども、ただいまの御発言では、そこは少し軌道修正をされて、社会保障費の割合を現在よりもより多くするという意味ではないというふうに少し変わったように思いますが、そういうふうに受け取らしていただいてよろしゅうございますか。
  60. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私が社会保険料の割合と仮に申し上げておりましたら——申し上げておったかもしれません。それは言葉がルースでございました。全体として上がっていくということは避けられないように存じますがと、この額のことを申し上げようとしておりまして、きちっと計算をして割合ということを申し上げようとしておったのではございませんので、その点は、私自身よく今計算もできずにおりますが、割合ということを申し上げようとしたのではございませんでした。
  61. 坂口力

    坂口委員 社会保障費という言葉を私使っておりましたが、社会保険料のことでございます。  それで、医療の方に話を移させていただきたいと思います。後でまとめてまた年金、医療その他含めまして議論をしたいと思います。  先日も本屋さんに行きまして、「ホスピスケアの夜明け」という薄い本でございますけれども、大変薄い本ですけれどもすばらしい内容の本でございまして、この中を読ませていただきました。そういたしましたら、実はこんな話が出ているわけでございます。  これは大阪大学の精神科の柏木先生がお書きになっているわけでございますけれども、ある地方の大学病院の看護婦さん百五十人ぐらいのところにお話しに行かれまして、そして、もし皆さんが将来がんになられて、家庭で死を迎えることができない状態になった場合に、今皆さんが働いておみえになるこの病院で死を迎えたい人は手を挙げてもらいたい、こういうことをこの先生がおっしゃいましたら、百五十人の看護婦さんがだれ一人として手を挙げられなかった。一人も手を挙げられなかった。その理由をお聞きをしたら、一つは、自分たちの職場ではどう考えてもやり過ぎの医療が行われている。一つ、やり過ぎの医療が行われている。二番目には、痛みや苦しみをうまくコントロールできないで、患者が痛みを訴えながら、苦しみながら死を迎えている。三番目に、精神的な支えがほとんどなされていない。四番目に、患者のその人らしさ、人間らしさが無視されて、医療の側のパターン化されたケアが患者に押しつけられている。この四点を挙げられたということがこの本に書いてございまして、この本を読ませていただいて胸の痛くなる思いと申しますか、これは大変なことだなという思いを実は持った一人でございます。  大学病院というところ、立派な建物があり、立派な機械が並んではいるけれども、しかし、そこに働いておみえになる看護婦さんが、自分たちはここでは死にたくはないというふうに思っているという話を聞きまして、これは大学病院も考え直しておかなければならないなと思っておりましたら、きょう各紙の新聞の一面にこの大学病院を含めます医療の問題が出ておりまして、あれあれと思いつつ見ていたようなわけでございます。  私は、この医療の問題を考えます場合に、このような看護婦さんの意見、これは看護婦さん方が悪いというわけにはまいりませんし、また、それを指導している医師の責任がすべてであるというわけにもまいらない、これはやはり我々にもその一端の責任はあり、そしてまた、やはり大学の側にもその責任の一端はあり、それぞれその責任はお互いに分かち合わなければならない問題であろうかというふうに思います。  医療がこれからどちらの方向に進むのか。高齢化社会の中でだんだんと医療費の増大が叫ばれておりますけれども、医療費がだんだんと増加をしてまいります場合に、これをどう我々は受けとめていくのか。それは病院の中における病院医療というものを中心でいくのか、それとも我々は家庭において治療するあるいは死を迎える、そうした在宅医療というものにこれから重きを置いていくのか、その辺のところはこれからの医療の財政的な問題とも絡みまして非常に大きな議論ではないかというふうに私は思います。  税制改革を行います場合に、年金と医療という車の両輪でありますこの福祉の大きなものだけは、どちらの方向に向かっていくのかということだけは少なくともやはり決定をしておかなければ、これから医療も年金もどちらの方向に向いていくかわかりませんというような状態の中でこれだけ負担をしてくださいということを国民に言いましても、国民の側が納得をしてくれる可能性はないと私は思う一人でございます。  そうした意味でこの医療の問題をお聞きをするわけでございますが、在宅医療という方向で、現在、これは現在に比較して、一〇〇%在宅医療だとか一〇〇%病院医療だとかというようなことを申し上げているわけではございません、現在に比較をして将来は在宅医療により重きを置いていくのか、それとも病院医療というものをより充実をさせていこうとしているのか、その辺は厚生省の方、どうでしょう。
  62. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 今後の医療を考えますときに、極めて基本的な問題点一つだと思います。病院中心か在宅中心か、端的に申し上げますとそういうお尋ねでございますが、これは、やはり一つ考え方といたしましては、実際の医療ニーズに応じて、例えば高度医療ということであれば病院になるでしょうし、またプライマリーケア、初期診療ということになれば在宅ということになりましょうし、両方が無論大事な問題であると思います。  ただ、先般OECDの厚生大臣会議に参りまして、ヨーロッパの高齢化率は日本が二十一世紀に到達するちょうどその時代の高齢化率でございまして、そういう高齢化先進国のヨーロッパにおきましては、高齢者の医療ということについては明らかに病院から住宅、在宅というふうに移っておりまして、そういうところを見ますと、我が国におきましてもこれからの方向としてはそういう方向が十分に考えられる方向になるのかなというふうに、考えなければならない方向かなというふうに思っておるわけでございます。
  63. 坂口力

    坂口委員 医療によりまして治癒する人たちはよろしゅうございますが、どうしても現代医療をもってしても治ることのできない人たちがたくさんおります。その中で短期間に死を迎える人たち、その人たちの問題は時間的には短期間に決着がつくわけでございますが、しかし、現代医療をもってしても治らない、よくもならないかわりに、しかしそれ以上悪くもならないという人たちもまたいるわけでございます。その人たちは、そのまま捨ておかれますと寝たきりになってしまう、あるいはまた非常に廃人同様の形でその予後を過ごさなければならないということになってしまいます。いわゆるホスピスケアの必要性というのがそこに生まれてくるのでありましょうし、いわゆる終末医療として大きなこれからの問題になってくるのであろうかと思います。  この言ってみれば究極の医療と申しますか、人生最期のみとりに近いところのこの医療、これは最初の段階の医療とあわせて大事な段階であります。現在のがん患者の九五%は病院で亡くなっておりますが、先ほどの大学病院の看護婦さん方のお話のように、そのことが果たしていいことかどうかということが今問われている。しかし、各家庭での在宅医療というものを行うということが、それが医療費の面で国としては楽かどうかということとは別次元の話でありますから、在宅医療というものにすれば財政的に楽になるというような考え方でもしもそれが志向されるとするならば、それは大変残念なことでありまして、厚生大臣も決してそんなことでおっしゃっているのではないと思うわけであります。  この究極の医療から、これがそのまま医療の側の手を離れますと、これが究極の福祉と言われます、いわゆる寝たきり老人あるいはまた老人性痴呆といったような人たちの介護の問題に結びついてくるわけでございます。この介護というのは今日まで余り大きな声で叫ばれなかった問題でございまして、これは日本における究極の福祉ではないかというふうに私は思っております。そうした意味から、この寝たきりの人たちあるいはまたいわゆる老人ぼけになったような人たちの介護の問題、これを家庭で行うか、それともこれまた施設で行うかという選択の問題が起こってまいります。あわせて、この介護の問題には、それが家庭であれ施設であれ、それを見ますのが、それは社会が見るのか、それとも家庭が見るのかという問題がもう一つつきまとってまいります。  いわゆるデンマーク型の介護は、そうした人たちは社会で見る、こういう考え方でございます。しかし、日本の場合は、家庭、家族ということが比較的大事にされてまいりましたし、そうした習慣もございますから、現在までの習慣からいきましても、それが社会でというふうに一概にいきにくい精神構造もあろうかと思います。しかし、その問題も今よく見据えて出発をしなければならないときに来ているのではないかというふうに思いますが、いわゆる寝たきり老人あるいはまた老人ぼけと言われる人たちの介護の問題としてこれをどのようにお考えになっているのか。先ほど申しましたように、これは家庭なのか施設なのか、そしてまた社会がみとるのか、それともこれは家庭がみとるのか、こうした考え方。これは、家庭でこれを見ておりましても、必ずしもそれは家庭にいたからといって家庭が全部それを受け持つという意味ではなくて、場所は家庭であっても社会的に見ておる場合もこれはあるだろうと思うわけです。これは別にちょっと分けて考えなければならない問題だと思いますが、両面ございますけれども、ひとつ厚生大臣からお答えいただきたいと思います。
  64. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 我が国の高齢化社会、急速に進展するわけでございますが、三つの特徴がございまして、そのスピードが速いということ、それから、六十五から七十四の方よりも二十一世紀以降になりますと七十五歳以上の方の方が多いということ、それから三番目は、生産人口が二十一世紀以降は減ってくる、こういう三つの特徴がございまして、第二の、七十五歳以上の方の方がむしろ六十五歳から七十四歳までの人よりも多いということから考えますと、寝たきりの方がふえる。痴呆症のお年寄りもふえる。事実、七十五年には現在の六十万人を百万人と想定しているわけでございまして、寝たきりの方々に対する対策というのは非常に大きな問題であります。  で、この方々をしからば社会で見るのか、家庭で見るのか、こういう御質問でございますが、これは、先ほど御指摘のように、日本の場合には家族と同居していらっしゃるお年寄りが多い。また、病気になれば家族の方々に介護してもらいたいというお考えの方も多いわけでございまして、そういう状況を前提にして考えますと、やはり寝たきりの方々を介護する問題は、できる限り家庭で介護するということが私は原則であろうと思うわけでございます。ただ、その場合に、その負担が家族にかかるわけでございまして、また一方において女性の社会に対する進出というのもこれからふえていくわけでございますので、そういうことを考えますと、この家庭内における寝たきりの方々の介護を今まで以上に十分に可能にするためには、やはりホームヘルパーを増員したりショートステイ、デイサービス等の事業をこれからさらに充実さしてまいりまして、そういう家庭における負担を減らしながら家庭における介護を原則として行っていくというふうに考えてまいりたいと思います。  なお、家庭における介護ができない場合もあるわけでございまして、その場合につきましては、特別養護老人ホームであるとか老人保健施設、これも将来に向かっては設備をふやしていくわけでございまして、そういう考え方で対応してまいりたいというふうに考えております。
  65. 坂口力

    坂口委員 よくデンマークには寝たきりという言葉がないと言われまして、これも「エキスパートナース」という本が出ておりまして、これを拝見しましたら、川島みどりさん、看護婦さんでございますが、デンマークに行かれたときのいろいろの記事が出ております。これを拝見をいたしておりますと、年老いても可能な限り家族に依存をせずに生きていくということを基本にしている。我々日本人が、年老いてもなおかつ家族に依存をせずに生きていくということを基本にして生きていくのか、それとも年老いれば家族に依存をして生きていくという立場でいくのかという、日本人のこれは選択の問題になろうかと思いますが、しかし、このどちらを選ぶかということによって、社会的に支えるのか、家族で支えるのかという問題は大きく分かれてくるだろうと思います。  我々、どちらかと申しますと、ミドルエージ以上の人間は家族に支えられて生きていきたいと思う人の方が多いように思いますけれども、あるいは若い人たちはそういう考え方ではなくて、できる限り自身で、自分で生きてほしい、可能な限り自分の力で生きてほしいと考えているのかもしれません。そうした世代間の考え方の違いというものもあろうかと思いますし、これは我々としてもここでよく考えなければならない問題でございますが、もしも社会の助けをかりて、いわゆる社会が社会的に面倒を見ていくという立場をとるといたしましたならば、これはこれからの高齢化社会の中で年金よりも医療よりもこの介護の問題が最も大きな問題になると私は思いますし、もしそういうことになるといたしましたら、これはやはりその財源がかなり必要になる。もしそういうふうに、人の将来は生ある限り自分で生きるということを中心にして、そして社会的な力をかりて一生を全うしたいという生き方を日本人の多くが選ぶというふうに仮定をいたしましたならば、その財源としての負担というものは国民の皆さんに求めなければならないことになります。もしその選択が選ばれるとするならば、私もまたこれは国民皆さん方にそれ相応の御負担をお願いをしたいと申し上げなければならない立場ではないかと思うのであります。  しかしながら、その点をあいまいにしたままでこの議論をすることは、将来の財政問題に大きな違いを与える。そこのところをやはり私はこの際に、税制改革論議とあわせて、ここのところのある程度のけじめをつけて出発をしないと、今から先十年あるいは十五年してからこのどちらに進もうかとするのでは遅過ぎるのではないか。出発はどちらの方向にするかはもう決めて出発をしなければならないときを迎えているのではないかと私は考える一人でございますが、その点についてもう少し厚生大臣のお話を聞かせていただきたいと思います。
  66. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 確かに、施設、社会、在宅、こういう問題、非常に大事な問題でございまして、いろいろ申されました中で最も大きなポイントの一つとして考えられますのは、幾ら設備が充実いたしておりましても、高齢者にとりまして、自分が社会から孤立をしている、孤独であるということは非常に大きな問題だと思います。ですから、そういうことからして、やはり高齢者の考え方の中には、住みなれた社会の中で家族や隣の人や友人と一緒に過ごしていきたいという気持ちが非常に強いわけでございまして、ヨーロッパの高齢化先進国におきまして、確かに自分のことは自分で、家族とは離れてそういう施設の中で老後を送るということもあったわけでございますけれども、それは結果としてそういうお年寄りの孤独というような問題が大きく出てまいることによって、今多少そういう点では考えが変わってきているのではないだろうか。  日本の場合は、先ほど申し上げましたように家族と一緒に生活をしたいという強いお考えが高齢者にございますし、また現状においてはそういう状況であるわけでございますから、やはり今後の高齢者、特に介護を要する人たちの場合には、在宅で家族が介護をするということがあくまで基本であって、これはそうすることによって医療費が軽減されるとかされぬとかいう問題とは全然別次元の問題であるわけでございまして、また、そういう家族がお年寄りを介護できるようなインセンティブをこれから十分に考えていくということは、この政策を進めていく上に大変大事な問題であるというふうに考えておるわけでございます。
  67. 坂口力

    坂口委員 寝たきりの人をつくるかつくらないか、それはやはり介護をしていただくいわゆるヘルパーの皆さん方がおっていただくかいただかないかということによって決定されることがかなり多いというふうに言われております。したがいまして、日本も、寝たきりの人をこれ以上つくらない、現在以上のパーセントはつくらないというそういう決意でもってやっていこうと思いますと、そうするとやはりこの介護をしていただく人の数をふやさなければならない、財政的な問題がそこに出てまいります。これから先、現在大体日本では寝たきり六十万ですか、それから老人性痴呆六十万、約百二十万、こう言われておりますが、二十一世紀初頭にはこれが二百万ぐらいになるのではないかというふうに言われておりますけれども、しかしこれは、もっと現在の数字ぐらいに抑えていくことがやろうと思えば私はできると思う。それはしかし、それだけのことをやらないと抑えることができ得ない。  ですから、これからこの介護をする人の数をふやすという問題、しかしそれでもなおかつ寝たきりになり老人性痴呆を迎えた人たちを一体どうするかという問題がある。究極の医療、究極の福祉としてここにどう政治が切り込んでいくのか、この人たちのためにどうしていくのかということは大きな問題になるのではないだろうか。年金、医療、介護、この三つ並べても決して見劣りのしないような問題になる可能性があると私は思うわけでございます。したがいまして、できるだけ寝たきりをつくらないために、できるだけ老人性痴呆をつくらないために何をなすべきか、そしてそこにどういうふうな手を我々は打つべきかということについての、財政的な問題も含めて、私は、ここに焦点を当てなきゃならない、このことを注目をしていかねばならないというそういうお気持ちが大蔵大臣におありになるか、あるいは総理大臣におありになるか、その辺のところをひとつこの際お聞きをしておきたいと思います。
  68. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどから御質問を承り、また厚生大臣の御答弁も伺っておりましたが、極めて大切な、しかも避けることのできない問題についてお話しになっておられることは、承っておりましてよくわかりました。財政の立場からも無関心ではいられない問題であるというふうに存じます。
  69. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 いわゆる究極の福祉、そして実際は家庭で、諸手当ては社会全体でとか、こういういろいろな議論をお聞きいたしておりました。私は、昭和五十四年のあの決議のときのことを思い出しますと、国民福祉の充実のために安定した財源が必要であるという一項目が入れられたのは、あるいは今のような詰めた議論としてではなく漠然とした背景がそういうところにあったのかな、当時は財政再建の決議ではございますけれども、そういうところにあったのかなという感じを今持ったわけでございます。  しかしながら、とはいえ、その財源を俗に言う目的税でもって充てるべきだという意見を申し上げておるわけではございません。そうした財源というのは、可能な限り色のつかないものであって、優先順位の中で財源というものは配分されていく性格のものでございますが、そういう高齢化社会というものを前提に置きました場合に、社会保険負担とそして租税負担、したがって歳出の場合は一般財源になるわけでございますが、それがどういうふうに組み合わされていくか。今までは漠然と、ヨーロッパのそれよりはかなり下回る時点においてと、こういうことを申し上げておりますが、そういうことを考えた場合、今大蔵大臣からお答えがあっておりましたように、財政というもの、その裏づけとなる税制というもの、それらが究極の福祉にどういうふうに出動していくかということは大事な問題であるということは私自身理解をさせていただいた、こういう感じがしております。
  70. 坂口力

    坂口委員 では、この問題、これだけにさせていただきますが、労働大臣、お待ちいただいて申しわけありませんでした。  これに絡めまして、もしも両親のうちのどちらかが急に病気になったというようなときに、幾日も幾日もというわけではございません、最初の三日とか四日とかというふうに、あるいは一週間とか、まあ一週間は無理にしても、例えばたとえ三日にいたしましても介護休暇というものが認められることができたら、こういう御意見が特に女性の中で強くございます。このことにつきまして一言御意見を承りまして、この介護の問題、終わりにしたいと思います。
  71. 中村太郎

    中村国務大臣 御指摘のように、高齢化あるいは核家族化、このことを背景としまして、老親の介護の負担が勤労者家庭にとりましては大きな問題になっておることは承知をいたしておるわけでございます。看護休暇制度というものはこの問題への対応の一環であろうというふうに考えますけれども日本では、実は企業がこの介護休暇制度を取り入れているのは全企業の一〇%前後、こういう状態でございます。したがいまして、これから行政が取り組むためには、まず介護休暇の制度の内容あるいはまたその効果、さらには問題点等につきまして十分実態把握などに努めていかなければなりませんけれども、このことは長寿社会における女性労働者等の福祉という問題にも関係がありますので、そういう観点から十分これから検討してまいりたいと思います。直ちに法制化というようなことはいささか時期尚早ではないかというふうに考えていますが、方向を見定めながらいずれは取り上げていかなければならぬ問題であるというふうに承知をいたしております。
  72. 坂口力

    坂口委員 あと残りました時間、少し生臭い問題だけ一、二やらせていただきたいと思いますが、一つは、先ほどちょっと触れましたが、きょうの新聞等にも大きく報道されておりましたミドリ十字の未承認輸入薬のお話がございます。  大学病院のあり方等、先ほど少し触れたところでございますけれども、これを拝見いたしますと、この中に大学病院等がかなりたくさん含まれている、国公立の機関がかなりたくさん含まれているということでございまして、「未承認の放射性検査薬を不正輸入した薬事法違反事件」云々と書かれております。また、それぞれの国公立の病院等でもいわゆる不正請求がされているということで、今後の推移いかんによっては保険機関の指定の取り消しに発展するかもしれない、こういう内容でございます。  もしもそういうことになったといたしましたら、一国立病院あるいは大学病院だけの問題ではなくて、患者さん方にも大変な迷惑をかける話でございます。それだけにこれは捨てておけない問題であるというふうに思いまして、きょうの税制論議とは少し外れますけれども、あわせてひとつ事の経過、どういうことであったのかお聞きをしておきたいと思います。
  73. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 今回新聞に報道されましたミドリ十字の医薬品に関する医療機関からの不正事件について、経過を申し上げます。  ことしの春でございますが、福島県におきまして、南東北脳神経外科病院というところで薬価基準に収載されていない医薬品が使われているというような情報を得まして、福島県がこの病院を監査をいたしました。その結果、キセノンガスという、これは検査薬、診断薬として用いられているものでございますが、これを使って別の医薬品を使ったという形で保険の請求がなされていた、こういうことが判明したわけでございます。  そこで、このキセノンガスというのはミドリ十字という製薬会社がフランスから輸入して販売していたものでございまして、その後厚生省からも、ミドリ十字に対して販売等の状況を照会、調査をいたしました。その結果、この薬価基準に収載されていない放射性を帯びた医薬品をかなり広い範囲の医療機関に販売しているということが判明いたしたわけでございます。  私どもといたしましては、薬価基準に収載されていないものを使用して他の薬価基準に収載されているものとして請求をするということになりますと、これは不正請求ということになるわけでございますので、この医薬品を購入した医療機関に対しまして、全国で約七百余りございますけれども、ここに対して調査をすることにいたしました。現在、都道府県を通じまして、本年十一月末までに調査結果を報告するように指示をいたしております。  その実際の詳しい内容につきましては、現在まだ調査中でございますから、ここで具体的にお答えできる段階にまでは至っておりませんが、やはりこれだけの医薬品の不正請求という問題になりますと、私どもは当然法規に照らして厳正な処置というものを含め今後の対応を考えていかなければならない、こういう状況に至っておるわけでございます。
  74. 坂口力

    坂口委員 厳正な処置は当然行われなければならないと思いますが、しかし、先ほども申しましたとおり、一方におきましては多くの患者さんが出入りする機関でもございます。取り消しというようなことになりますと、これまた病院だけではなくて、患者さんにも非常に迷惑をかけることでございますので、その辺のところも十分考慮をしていただいて、けじめをつけるところはひとつつけていただきたい、かように思います。  今後につきまして、もしも御意見がありましたら厚生大臣からお伺いをしておきたいと思います。
  75. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 今申されましたように、けじめをつける点はけじめをつけながら、患者の方々にその影響が極力及ばないような点も十分に念頭に入れて対処してまいりたいと考えております。
  76. 坂口力

    坂口委員 ではこの問題はこれだけにしておきたいと思います。厚生大臣、ありがとうございました。  あと一点だけでございますが、先日来リクルート問題が今日までいろいろな形で議論をされてまいりまして、その都度に証券局長、この場に立たれていろいろと説明になっている。その姿をずっと見ておりまして感じておりますことが一つございます。  それは、日本の有価証券市場というのはだんだんと大きくなってきている。しかもインサイダー取引等の問題が最近は加わってまいりました。仕事内容も非常に大きくなってきている。インサイダー一つ取り上げましても、これを十分に掌握することが果たしてできるのかどうか、これは非常に難しいことではないか。とりわけ現在の大蔵省証券局のその体制の中でこれらのことをすべてやり遂げるということは非常に難しいことではないかという気がするわけであります。  どなたかの質問にもいつかあったように思いますが、御承知のとおりアメリカはSECという一つ委員会がございます。日本はシャウプ税制のころ幾つかの行政委員会がございましたけれども、だんだんと取り壊されまして、今は公取だけが残っているというような状態でございます。別な組織にするかどうかは別にいたしまして、現在の大蔵省の証券局でこの有価証券全体にまつわります問題をこれから取り扱っていけるのかどうか、私は少し疑問に思う一人でございますが、これにつきまして、大蔵大臣、御意見をひとつ聞かせていただきたいと思います。
  77. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 おっしゃいますように、我が国、殊に東京市場は時価で申しますと世界一大きな取引市場になったということでございますが、インサイダー取引についてすら、実は我が国では制度を整備いたしましたのはごくごく最近でございますので、それが国民全部の、関係者全部の理解を得てきちんと行われるのには、やはりよほどのこれからの努力が必要でございます。押しなべて、市場の透明性ということについてはまだまだ望むべきことが多いと存じます。そういう意味では証券行政に課された仕事は大きいわけでございますが、さてそれで、例えばアメリカにはSECがある。そういうものを、とはおっしゃいませんでした、必ずしもおっしゃいませんでしたが、そういうことをどう考えるか。  一つは、我が国の場合は証券会社の数がアメリカに比べますとはるかに少ない。いわばえりすぐられたと申しますか、免許事業でございますので、その点がアメリカとは一つ違うということがあろうと思います。  それから、行政委員会というものが、ただいま御指摘になりましたように、戦後幾つか、これは占領軍との関係も現実にはあったわけでございます、誕生いたしましたが、ほとんどのものが姿を消した。これは、我が国の行政の仕組みの中でやはり何か生き残りにくい理由が一部にあったのではないかとも思われます。  それからもう一つは、SECは準司法権的な権能を持っておりますので、この点がまた、そのような行政委員会というものはなおさら我が国ではいろいろ難しいことがあるであろうと考えますと、行財政改革のときでもございますのでなかなかそういうことはいかがなものであろうか。証券局、地方には財務局もございますものですから、ともかく仕事は確かに非常に大きゅうございますので、いろいろな工夫をしながら、またなるべく政府全体としての定員の増加となりませんようにいろいろな意味で工夫をしてこの仕事をやっていってもらいたいとただいま考えております。
  78. 坂口力

    坂口委員 行政委員会なるものに編成がえをせよということを私も決して申し上げているわけではございません。ただ、市場はだんだんと国際化をされてまいりますし、今大蔵大臣が御指摘になりましたように、日本の一部上場あるいは二部上場の会社の数というのはそんなに多くはございませんけれども、国際化をされてまいりますと、日本国内だけの話ではなくなってくるわけでございます。  そうした状況も踏まえて考えましたときに、現在の体制で今後も今までのような誤りを繰り返さないでいけるのかどうかということに対して一抹の不安を感じる一人でございます。もちろん優秀な能力の方々がそこにたくさんお見えになりますことは十分存じ上げておりますけれども、しかし人間のやることでございますから、一人の守備範囲というのはおのずから限界がございます。このインサイダーの問題等は、これはなかなか幅広い仕事でございますから、しかも大蔵省とかあるいは国会とかというようなこういうやかたの中にこもっていてはなかなかこれはわからない問題でもございます。いろいろの場所に出かけていって初めてこれはわかることでもあろうか。  そうしたことを考えますと、最近だけを見ましてもいろいろの有価証券にまつわります事件がありましただけに、こうしたことをこれから繰り返さずにいくために体制をさらに強化をする必要がありはしないか。大蔵大臣御自身にもいろいろのお話が現在あるさなかでありますだけに、ひとつ大臣はこの際英断を振るってそうした改革をおやりになることが一つの道ではないかと私は思う一人であります。そうした意味で、現状でいいのか、もう少し考える必要はないのか、もう一度お聞きをしておきたいと存じます。
  79. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 現状では十分でないと考えておりますので、いろいろ改めてまいりたいと存じます。
  80. 坂口力

    坂口委員 証券局長、現場にお見えになりますお立場から、ひとつ御意見がありましたらお聞かせください。
  81. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 確かに御指摘のように国際化が非常に進んできている、それに合わせまして日本の証券市場の直すべき点は直す、透明性を確保していくとかあるいは国際的な諸慣行に即していろいろ制度を直していかなければならぬといった中で、また日本の証券市場の規模というものがニューヨークに匹敵するあるいはそれを超えるほど大きくなっているという中で、本当に仕事が非常に忙しくなっているということは御指摘のとおりだと思います。そういった中で、実際問題として行財政改革を進めている中でございますので、我々としても、限度はあると思いますが、なるたけ関係方面に御理解を得ると同時に、私どもといたしましても仕事の中身等いろいろ工夫しながら与えられた使命をできるだけ着実にかつ有効に進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  82. 坂口力

    坂口委員 忙しいとみえまして角谷証券局長の口調がだんだん速くなってまいりまして、これは大分忙しいのだろうな、こう思っているわけでございますが、冗談はさておきまして、これは真剣にひとつ取り組んでいただかなければならない問題ではないかというふうに思います。  本来大蔵省の中でなさることは、いわゆる監督ということよりもやはり許認可を中心にしましたことが中心になろうかと思いますし、なかなか現場の監督というところまではいきにくい。もちろん証券協会等もございますから、そうしたところでもかわりの役割を果たしていただいているのであろうかと思いますが、しかしそれには証券協会は協会としての立場がありますから証券協会にすべて代役を果たしてもらうというわけにもいかないのだろう、そんなふうに私考えているわけでございますが、その辺の整理と申しますか、証券協会なら証券協会に今後どういうふうな仕事をゆだねるとか、何かその辺のところは議論になっておりませんか。
  83. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 基本的に証券会社に対する監督なり市場の管理というのは、大きなところでは大蔵省において所管しておるわけでございますけれども、やはり個別の業務規制、あるいはその中の自主ルールの策定、そういったもの等につきましては証券業協会を通じてそれぞれ指導をしていただく。そういうことによりまして、行政の方の役割というものは基本的な政策の立案とかあるいは基本的な証券行政、証券会社の監督といったところにとどめておる。そういうことで、おのずと業務分野につきましても、すみ分けといいますかそういった形でお願いしている。  ただ、私どもといたしましては、やはり行政としてやるべき分は行政としてやるべき分野がある。あくまで業界の自主規制でございますので、それはおのずと限度があるところも事実でございますので、そういった意味では、行政の立場として中立公平の立場でやらなければならぬ点につきましてはやはり証券行政としての立場で対応すべきものである、基本的にはそう考えているわけでございます。
  84. 坂口力

    坂口委員 この質問で最後にさせていただきますが、総理、きょうは私ども基本構想中心にして質問をさせていただき、その中で私たちの基本的な考え方を述べますとともに、その中で特に社会保障面に焦点を当てましてお聞きをしたわけでございます。  その中で、諸大臣といろいろの議論をさせていただきました中で明らかになりましたこと、そして、なお明らかにならなかったこと等々ございますけれども、社会保障の面の中で、医療にいたしましても、あるいは年金にいたしましても、あるいは新しい介護の問題にいたしましても、政府として、厚生省としての考え方というものがまだ明確に打ち出されていない、こういう方向に動き出そうという方向性というものがまだ十分に見えない段階である、こう総論づけることができるのではないかと思うわけでございます。  この全体の流れと、そして片方におきましては税制改革の方が風雲急を告げている、こういう二つの流れがあるわけでございます。私は、この税制改革の問題と、そして行政改革あるいはまた社会福祉の問題とは表裏一体の問題でありまして、一方をより早く、一方は後からというわけにはいかない、車の両輪で両方ともやはり同じように進めるべきものであるというふうに考えております。  そういう意味からきょうは質問をさせていただいたわけでありますが、どうかひとつ、そういうふうな意味で、片方の社会保障、社会福祉の問題というものに対してこれから方向づけをどのように急がれるか、そしてこの税制改革とどのように歩調を合わされるかということにつきまして総理のお考えをお聞きをしたいと存じます。
  85. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 たしか昭和五十一年でございましたか、福祉のトータルプランというのを発表されて、我々それを読まされた時代がございましたが、きょうの場合、いわゆる終局の福祉ということからする一つ哲学論争もあったかと思います。具体的に確かに医療、年金、そうして介護という新分野についての御発言がございました が、そういう問題について今までも厚生省を中心としていろいろな理論を構築してきております。が、私なりに感じますのは、例えば本院でお示ししたことのある計画等にいたしましても、現状の施策、制度を前提に置いてのものでございますから、いわば自分らが真にこういうところへ終局的に到達するんだという目標が定かでない、こういう御批判もあるわけでございます。  したがって、政府といたしましては、いわゆる福祉の中長期ビジョンというようなものを可能な限りあらゆることを、この施策、制度を前提にしてという幾らかの前提がつくのは当然でございますけれども、これらをお示しすることによって福祉政策についての議論もさらに進めてまいりたいというふうに思います。それだけ、将来の高齢化社会等を展望した場合に、今から準備していなければならぬのが財源であり、そしてその裏づけとなる税制であるという意味において、御論議を深めていただくことを心から期待をいたしておるところでございます。
  86. 坂口力

    坂口委員 一言言われたので、私もまた一言言わなければならないような感じになりました。  総理が、だからこの税制改革が必要だとおっしゃるわけです。私たちは、税制改革が必要だとおっしゃるのならこちらの方はいかがですか、こう聞いているわけでございまして、鶏と卵の追っかけっこみたいな形になっておりますけれども、私たちは、どうしましてもこの辺のところをやはりともに進めていかなければ、国民皆さん方に負担をしていただくにいたしましても、なぜ負担をしていただくのか説明がつかない。こういう方向に進めようとするから負担をしてくださいと言うのならば話はわかります。しかし、もしもこれから福祉は切り捨てますよというような方向の中で負担をしてくださいと言いましても、これはノーという答えしか返ってこないことは当然であります。ですから、これは両輪の話でありまして、片方だけ先へ行くという話ではないわけで、コインの裏表の前であると私は思うわけでございます。  そうした意味で、一言おっしゃいましたので私もまた一言つけさしていただきましたけれども、少し時間を残しましたが、これで終わらしていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  87. 海部俊樹

    海部委員長代理 これにて坂口力君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十五日火曜日午前十時委員会、正午理事会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十四分散会