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1988-10-17 第113回国会 衆議院 税制問題等に関する調査特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十月十七日(月曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 金丸  信君    理事 加藤 六月君 理事 海部 俊樹君    理事 瓦   力君 理事 羽田  孜君    理事 藤波 孝生君 理事 加藤 万吉君    理事 村山 喜一君 理事 二見 伸明君    理事 米沢  隆君       甘利  明君    池田 行彦君       小沢 辰男君    片岡 清一君       岸田 文武君    熊谷  弘君       志賀  節君    鈴木 宗男君       田原  隆君    谷  洋一君       玉沢徳一郎君    中川 昭一君       中川 秀直君    中村正三郎君       西田  司君    野田  毅君       葉梨 信行君    浜田 幸一君       原田  憲君    堀内 光雄君       前田 武志君    村山 達雄君       谷津 義男君    保岡 興治君       山下 元利君    阿部喜男君       伊藤  茂君    川崎 寛治君       坂上 富男君    中村 正男君       山下洲夫君    草野  威君       小谷 輝二君    坂口  力君       宮地 正介君    安倍 基雄君       和田 一仁君    工藤  晃君       正森 成三君    矢島 恒夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  竹下  登君         法 務 大 臣 林田悠紀夫君         外 務 大 臣 宇野 宗佑君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣 中島源太郎君         運 輸 大 臣 石原慎太郎君         建 設 大 臣 越智 伊平君         自 治 大 臣 梶山 静六君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      中尾 栄一君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 内海 英男君  出席政府委員         経済企画庁物価         局長      勝村 坦郎君         経済企画庁総合         計画局長    海野 恒男君         経済企画庁調査         局長      冨金原俊二君         国土庁長官官房         長       公文  宏君         国土庁土地局長 片桐 久雄君         法務省民事局長 藤井 正雄君         法務省刑事局長 根來 泰周君         外務省経済協力         局長      松浦晃一郎君         外務省条約局長 斉藤 邦彦君         大蔵省主計局次         長       寺村 信行君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省証券局長 角谷 正彦君         国税庁次長   伊藤 博行君         運輸大臣官房国         有鉄道改革推進         総括審議官   丹羽  晟君         建設省都市局長 真嶋 一男君         建設省道路局長 三谷  浩君         自治省行政局公         務員部長    芦尾 長司君         自治省行政局選         挙部長     浅野大三郎君         自治省財政局長 津田  正君         自治省税務局長 湯浅 利夫君  委員外出席者         地方行政委員会         調査室長    大嶋  孝君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ───────────── 委員の異動 十月十七日  辞任         補欠選任   熊谷  弘君     前田 武志君   宮下 創平君     谷津 義男君   山口 敏夫君     保岡 興治君   野口 幸一君     阿部喜男君   玉置 一弥君     安倍 基雄君 同日  辞任         補欠選任   前田 武志君     熊谷  弘君   谷津 義男君     宮下 創平君   保岡 興治君     山口 敏夫君   阿部喜男君     野口 幸一君   安倍 基雄君     玉置 一弥君     ───────────── 本日の会議に付した案件  税制改革法案内閣提出第一号)  所得税法等の一部を改正する法律案内閣提出第二号)  消費税法案内閣提出第三号)  地方税法の一部を改正する法律案内閣提出第四号)  消費譲与税法案内閣提出第五号)  地方交付税法の一部を改正する法律案内閣提出第六号)      ────◇─────
  2. 金丸信

    金丸委員長 これより会議を開きます。  内閣提出税制改革法案所得税法等の一部を改正する法律案消費税法案地方税法の一部を改正する法律案消費譲与税法案及び地方交付税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村正男君。
  3. 中村正男

    中村正男委員 おはようございます。連日大変御苦労さまでございます。  きょうは、十四日の審議と一転いたしまして、不公平税制の是正の二巡目の質問に入ります。  後ほど具体的に御質問をしていきますが、その前に、十四日に開かれましたリクルート問題の集中審議におきまして幾つかの新たな事実も出てまいりましたし、国民の関心は今やまさにこれに集中しておる、こういうふうに理解をするわけでございますので、その点について一、二お聞きをしていきたいと思います。  まず、昨日十六日に竹下総理秋田記者会見をされました。その報道がけさの各紙に具体的に掲載されておったわけでありますが、その中で竹下総理は、このリクルートコスモスの未公開株譲渡の問題で、宮澤総理大蔵大臣自分名義であるということをお認めになられたわけでございますが、そのことに対して竹下総理は、極めて政治倫理上これは遺憾なことである、こういう談話を出されたわけでございます。  私は、もちろん政治倫理という問題、これはもう当然のことでございますが、一連の今回のリクルート問題解明に当たってまいりました経緯からいたしまして、現職の副総理大蔵大臣が、いわゆるこの未公開株自分名義であるということをお認めになった。しかも、審議過程でしばしばその事実関係を各委員がただしてきたわけでございますが、都度あいまいにされながらようやく自分名義をお認めになった。重要な大蔵大臣というポストにあられる宮澤大臣がこの期に及んでこの事実を認められた、大変大きな国民の不信を今増大をさせております。  そういうことを考えますと、単に政治倫理責任だ、あるいは政治倫理上の問題として遺憾であるということだけでは済まされないと私は思うわけでございまして、極めてこれは行政上の重要な責任問題ではないのか、こういう認識に立つわけでございます。  改めて竹下総理のそのことに対するお考えをまずお聞きをしたいと思います。
  4. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 昨日、秋田におきまして記者会見、これは正式な記者会見がございました。そのとき私がお答えいたしましたことに触れてのお尋ねでございます。  私は、今回の問題につきましては大体四つの側面があるのではないか。すなわち、証券取引法に関連する問題、それから課税上の問題、それから刑事上の問題、さらにやはり政治的道義的責任の問題、この四つの問題が問題とされておるではないか、こういう前提を置きました。したがって、政治家というものは、特に情報等の集まりやすい立場にある職業人としての、私個人のみならず周辺も含めて、絶えず政治家としての倫理綱領というようなものを念頭に置いていかなければならないものであるということを述べた次第でございます。  今さらにお尋ねは、行政上の問題、こういうことでございますが、やはりそれ以前の問題として、私自身も含めてうかつなことがございます。そういう点は、やはり倫理の確立といいますか、絶えず身を律しておることによって今のような問題もなくて済むということになるのじゃないかなというふうに思っております。
  5. 中村正男

    中村正男委員 今この国会は言うまでもなく税制国会でございまして、既に政府税制改革法案提出をいたしております。その法案作成あるいはこの審議をめぐっての最大責任者宮澤大蔵大臣でございまして、しかも既に今日まで論議をされてまいりましたいろいろな問題の中で、株式取引をめぐるいわゆる譲渡益に対して非課税だということでの国民の大きな不満等々を考えますと、そういう税制国会最大責任者である大蔵大臣がこの時点でこういう問題を引き起こされて、まあだれでも失敗はあるよ、気がつかなかったことがあるよという簡単なことで済まされるべき事柄ではないと私は思うわけでございまして、行政執行上極めて、この税制国会論議責任者としても私は責任を重要に受けとめていただきたいと思うわけです。そういう意味合いでは、今の総理の御答弁大変焦点をぼかした形で、証券取引法との関係だとかそういうところに持っていこうとされておることについては私は承服はできません。  この問題についてはまた具体的にいろいろの立場から論議がされていくと思いますが、私はその中で、今言われました証券取引上の問題、この問題に限っただけでも今回の事柄についての責任は大変大きいと思います。その点について事実関係をただしていきたいと思いますので、以下ひとつお答えをお願いしたいと思います。  まず、ことしの九月、大蔵省証券局長名前で出されております「顧客の行ういわゆる仮名取引受託について」という日本証券業協会会長あて指導通達、このことと大変重大なかかわり合があると私は認識をいたしております。  まず、この通達内容を改めてここで読んでみたいと思うのです。            蔵証第一六〇一号            昭和六十三年九月十三日  日本証券業協会会長殿          大蔵省証券局長 角谷 正彦    顧客の行ういわゆる仮名取引受託について   標記のことについては、既に昭和四十八年三月十五日付蔵証第七三七号及び昭和四十九年五月十七日、付蔵証第七七六号をもってその自粛方指導を行ってきたところであるが、最近、株式取引に関し、一部の証券会社従業員に、仮名取引であることを知りながら多数の口座開設したり、あるいは、  ここが大事なところでございますが、  自己と特別の関係のある者の名義を使用させる等の行為が見受けられたことはまことに遺憾である。このような行為は、取引の公正を阻害するとともに、証券界全体に対する社会的信頼を失墜させるにとも懸念され、厳に慎むべきである。   ついては、今後の株式仮名取引取扱い等について下記のとおり通達するので、上記通達趣旨をさらに徹底することとあわせて、貴協会所属証券会社周知徹底方お取り計らい願いたい。  こういう前文かつきまして、具体的な指導が五点にわたって行われております。  まず、これを出した目的をお尋ねをしたいと思います。
  6. 角谷正彦

    角谷政府委員 本年の九月十三日付で今委員指摘通達を出しました。この趣旨は、広く一般投資家が参加する証券市場の公正を確保する、また、インサイダー取引等不正取引を防止するといったために証券会社内部管理体制を充実するということがぜひ必要である、こういった趣旨から、株式仮名取引受託を禁止する、こういった趣旨通達を出したわけでございます。
  7. 中村正男

    中村正男委員 さかのぼりまして昭和四十八年三月十五日に、蔵証七三七号、先ほども少し触れましたが、ここでは「今般衆議院大蔵委員会有価証券取引税の一部を改正する法律案に対する附帯決議において、「無記名もしくは架空名義による有価証券取引を排除するよう一層努力すべきである」旨の決議がなされたことにもかんがみ、仮名取引受託等自粛について、その趣旨をさらに徹底させるよう貴管下証券会社指導されたい。」こういう財務局長あて通達を四十八年に出しております。  さらに、四十九年五月十七日、先ほども言いましたが、七七六号で、ここでは「上記のような行為の絶滅を期されるよう格段のご協力を賜わりたくお願い申し上げます。」こういう同趣旨をさらに強くした通達として指導がなされておるわけです。  四十八年、四十九年、そして今回の九月のさらなる通達、こういう通達内容について、今回の宮澤大蔵大臣架空名義といいますか、いわゆる仮名取引に値するような行為をなされたことについて、これは抵触をするのではないかというふうに思うわけですが、どうですか。
  8. 角谷正彦

    角谷政府委員 証券局長通達は、これは先ほど御説明した趣旨で申しましたように、証券会社においてそういう行為を行う、証券会社を通じて広く一般投資家が参加する市場取引が行われるわけでございますが、その証券会社内部管理体制をきちんとすることによりまして、インサイダー取引でございますとかあるいは証券従業員仮名取引あるいは借名取引に加担するといったことのないように証券会社指導するといった内容のものでございます。  そういう意味では、今回の問題になっております取引というのは、どちらかといいますと店頭登録前の未公開株相対による取引でございまして、証券会社を通ずるものではないわけでございまして、そういった意味では、この証券業協会会長に出しました証券会社に対する通達といった問題とは対象を異にするといったものでございます。
  9. 中村正男

    中村正男委員 全くそういう答弁理解ができません。これは三度にわたる自粛通達に明らかに反するわけでございますし、第一、私は、宮澤喜一氏という人はいわゆる普通の顧客なのかどうかという点が最大問題点だろうと思うのです。言うまでもなく、大蔵省を統括し証券局に対して具体的な指導立場にある大臣でもございますし、当然そのことは証券業協会に対する指導のこれまた最高責任者でもあるわけでありますから、そういう大蔵大臣という立場からして、まさにこれは通達破りのきわめつきの私は今回の問題ではないのかというふうに認識するわけですが、宮澤大蔵大臣はどのように受けとめておられますか。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先週御報告いたしましたことは、私はまことに軽率なことでありましたし、監督の不行き届きは申しわけないことだと重々考えております。殊に私のただいまの立場におきまして一層にそう考えておりますが、ただいまの点は、証券局長から申し上げましたように、いわば証券会社相手のことではございませんで、相対のことであったということでございますので、その点では通達に違反ということはないと存じます。 ただ、かといって、決してこれは正常なことではございませんで、申しわけないことだと思っております。
  11. 中村正男

    中村正男委員 それでは、幾つかの事実関係をもう一度尋ねていきたいと思います。  まず、今回の取引に重要なかかわり合いを持たれた河合康文氏というのは大蔵大臣とどういう関係にあるのか。そして、またもう一人の、秘書官であった服部恒雄氏、これも大変かかわっておられるわけでございまして、先ほど通達の文書からいたしますと、いわゆる自己関係ある人、まさに宮澤大蔵大臣の直接関係のあるそれぞれの人物であります。そういう点からも、私は、この通達趣旨に重大なかかわり合いがあるというふうに指摘をしておきたいと思います。  二つ目は、河合氏は服部名義口座開設入金させた、こういうことが審議の中で明らかになってきたわけでありますが、当然のことながら株の取引については印鑑が必要であります。河合氏はいわゆる宮澤喜一名印鑑を無断で借用をしたということになるのではないのか。また、この宮澤喜一名印鑑はそれではどういう形でこの河合氏は手に入れたのか。宮澤氏から頼まれて河合本人印鑑河合氏に渡されたのか、あるいは、そこには一切そういうことはなくて、河合自身が勝手に盗用したのか、あるいは偽造したのか、その点はどうなっているのか、宮澤大蔵大臣にお聞きしたいと思います。  まず、河合氏と宮澤大蔵大臣関係について先に述べていただきたいと思います。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 河合康文氏は私とは直接の知り合いではございませんで、私の秘書服部恒雄と、早稲田大学でございますが、同窓の後輩で親しくいたしておる人でございます。職業SE総合設計という会社経営者でございます。  次の問題は、河合氏は、同氏が服部名義口座開設をいたしましてそこに入金が行われたということでございます。私の印鑑ということでございますが、私自身印鑑証明のあります印鑑が使われたというようなことはもとよりございません。推察をいたしますと、もし印鑑が必要であれば、言葉は悪うございますが、俗に三文判と申しますが、恐らくそのようなものを使ったかと存じます。もともと河合氏は、名前を貸してくださいということに対して服部承諾をいたしておりますので、その間に悪意があったというふうには私は考えておりません。
  13. 中村正男

    中村正男委員 全く自分の知らないところで自分名前名義として使用されて、その過程手続は全く存じません、こういうことは世間に通用しない。ましてや御自身大蔵大臣という要職にある方がそういう形でこの問題を言い逃れされておることについては、大変私は遺憾に思うわけでございます。  いろいろ入金方法についても、例えば河合氏が服部名義口座をつくってこれに入金をしたということになっておりますが、この場合の印鑑についても、これは服部氏がどういう形の方法でそういう手続をしたのか。その間に名義人である宮澤喜一氏には何ら承諾なりあるいは指示を仰がなかったのか。また、大蔵大臣である宮澤さんは、入金手続についてどういう銀行のどういうところに口座を設けて入金すべきだという指示をされたのかされなかったのか、そこもひとつお聞きをしておきたいと思います。この場合の印鑑も存じ上げてないということなのか、あわせてお聞きをしておきたいと思います。
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 従来から申し上げておりますとおり、このことについては私は全く実は存じないことでございましたし、口座そのもの宮澤ということではもとよりございません。服部という名義河合氏が開設した口座ということでございますので、そこは先ほど申しましたのと同じように服部という印を使いましてそういう口座をつくったものというふうに考えられます。
  15. 中村正男

    中村正男委員 本人名義であるということは認められましたけれども、この経緯については一切明らかにならない。ひたすらそのことは事実関係を詳細にお調べになって明らかにしようとされない。私は大臣の、言ってみれば社会通念上も理解できないような行為ですね。御自身名義が使われているわけですから、その経緯が一体どういうふうになって、どういう銀行口座が設けられて、いつどういう形で入金されたのか、そういうことの事実関係はお調べになったのか。そのあたりはどうなんですか。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先週御報告を申しましたように、河合氏から服部が聞きましたところによりますと、服部名義口座河合氏が開設をいたしまして、そこに売却代金入金されておるということでございます。これは実は全く私のあずかり知らないことでございました。
  17. 中村正男

    中村正男委員 わかりました。もうこれ以上は当の本人等この場に来ていただいてただす以外には、私は事実を公にすることはできないと思いますので、改めて理事会等で今協議されております証人喚問を強く要求をしておきたいと思います。  関連いたしまして、竹下総理に一、二お聞きをしておきたいと思います。  十四日の審議総理は、ドゥ・ベストの株については青木氏がこれを取引をした。初めてドゥ・ベストからのいわゆる買いであった、こういう答弁をされたのですが、そのことはそれでよろしいですか。
  18. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 参議院の委員会また本院等で、調べてみる、こういうことを申しておりました。その調べた結果を御報告したわけでございますから、おっしゃるとおりです。
  19. 中村正男

    中村正男委員 それでは、そのドゥ・ベスト会社のだれから青木氏は買ったのか、それはどういうふうに把握をされておりますか。
  20. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 あのとき正確に申し上げましたのは、リクルート関係者からこの株の譲渡についての話があって、そしてそれをお受けいたしました、それの恐らく売買契約書の相手方がドゥ・ベスト株式会社になっておる、こういう趣旨だと思っております。
  21. 中村正男

    中村正男委員 これも全くまだ明らかにされようとしておりません。  もう一つなんですが、これは素朴な単純な私自身の疑念なんですが、ドゥ・ベスト社からの株譲渡された方々リスト、九名挙がっております。その中で、大蔵大臣宮澤喜一氏が一万株の名義をお認めになった。竹下総理にかかわる方としては青木氏が二千株、これはまだ竹下総理は御自身名義であるということは言っておられませんからあくまでも青木氏ということになるのですが、これはもう世間では竹下総理にかかわる株の受け渡しが二千株、こういう受けとめ方であります。そのほか中曽根前総理が二万三千株だとか、あるいはここにおられます加藤六月先生だとか、幾多自民党のお偉方がずらっとそれこそ本当に大きな株数にかかわっておられるわけです。これはまだ具体的に資料が出ておりませんからその範疇でしか申しようがございませんが、今はっきりしておるのは、この九人のリストの中では、例えば労働次官であった加藤さんも千株お認めになった、宮澤さんも一万株お認めになった、式場さんも五千株お認めになった、この資料はほぼ事実だという、これはもう明らかであります。  そうなりますと、私はどうしても腑に落ちないのは、大蔵大臣が一万株で、総理にかかわるのは二千株、これはどうなっておるのかなと率直な疑問を持つわけであります。これは普通の人たちといいますか国民のすべてが単純にこの疑問を持っています。これに我々は答えていかなければならぬ、これは国会責任なんです。  ここで総理、お聞きをしたいのですが、あくまでも総理にかかわる株の数はこの明らかになっている二千株だけであって、三十七社のうち、まだいろいろ我々が指摘をしたい大変な会社がございます。エターナルフォーチュンだとかあるいはビッグウェイ、こういうトンネル会社とみなすべきところから、例えばエターナルでは二十万株、ビッグウェイでは十二万株、そのほかあると思いますよ、そういうところから、一切竹下総理にかかわる立場で株は関与していない、こういうことを断言されますか。また、そのことについて、御自身として自分にかかわる方々にきちっと調査をされたのか、そこをお聞きをしたいと思います。二千株と一万株は、これはいいです。いいですが、あくまでも二千株だけがかかわっているのであって、今後どういう形で明らかにされようとも、私については一切これで、これだけしか関与していないということを断言されますか。
  22. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 そもそもリクルートコスモス社株式の話を私自身受けたことはございません。  ただ、元秘書であります青木氏が、新聞社の取材に対し、自分にかかわるものについて、二千株をこのような日にちに取得し、このような日にちに売りましたということを申しましたと、その報告を素直に申し上げておるところでございます。そもそもその株式の話を私自身は受けたことがございません。
  23. 中村正男

    中村正男委員 あくまで総理は、これは個人の問題であって、総理大臣という立場の者としては一切関与していない、こういう域の答弁から出ておりません。きょうはそれでおいておきましょう。いずれ証人喚問等を通じて我々は国民の前に事実を明らかにしていかなければならぬと思います。  最後に、宮澤大蔵大臣、冒頭から総理は、倫理上の問題、遺憾であったという範囲から出ておられないわけでありますが、私は、行政上の責任を痛感をしていただいて、その責任のとり方について今どのようにお考えになっているのか、それをお聞きをしたいと思います。
  24. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まことに軽率であり、また監督も行き届かなかったことを重々申しわけなく思っております。今後十分反省いたすつもりでございます。
  25. 中村正男

    中村正男委員 当面私は、大蔵大臣責任のとり方の一つとしてこれだけはやっていただきたいことがございます。  ここまで事実関係が明らかになって、国民に大きな、さらに深い疑惑の念を持たしてきておるわけでありますから、少なくとも、大蔵省が持っているすべての情報を今全面的に公開をして、そして国民の疑問に答える、このことが私は今宮澤大蔵大臣のなすべき責任のとり方だと思うのですが、そのことについてのお考えを、今まで角谷証券局長等に幾ら質問しても、いやこれは守秘義務だとかなんとか、国民の側に立たずに、リクルート側の顧問弁護士のような立場での答弁の範囲を出ていない。したがって大蔵大臣として、すべての大蔵省が持っている資料を全面的に公開をすべきだと私は思うのですが、いかがですか。
  26. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 行政上許されるものは今後とも国会の御審議に資するために資料として提出をいたします。私個人に顧慮をするようなことは決していたさせないつもりでこざいます。
  27. 中村正男

    中村正男委員 時間も経過しましたので、これでとりあえずこの時点における宮澤大蔵大臣竹下総理に対する質問を終わりますが、最後に、これに関連して証券局お尋ねをしておきます。  今回こういう自粛通達を三度にわたって出しているけれども、実際それが有名無実になっているこの現状からして、もう単に通達では到底こういった不祥事は防げない、やはり現行の証券取引法を改正をして、そして法律としてきちっと執行できるような、そういう形に改めるべきだと私は考えるわけです。  同時にまた、後ほど質問をしていきますが、こういうことが本当に野放しにされておる今の証券取引の中では、私は、罰則規定だとかそういうことも当然やらなければなりませんが、何といっても証券取引に対するきちっとした名義確認、いわゆる取引上のカード制だとかあるいは取引者ナンバーだとかそういうものを実施をしなければ根本的な解決にはならないと思いますが、それについてはどうですか。
  28. 角谷正彦

    角谷政府委員 今回の九月十三日の通達でございますが、これは従来の自粛通達と違いまして、証券会社に対して、架空名義等であることを知りながら受託することを明確に禁止いたしております。それを担保する処置として、そういったことが行われた場合におきましては証券業協会の規則において処断する。最悪の場合には、不都合行為者ということで証券界からその従業員を追放という措置を、一番きつい場合には含めて措置をする、それから、各証券会社に対しましても、内部管理のいろいろな規則等を直させましてそういったことを禁止するということで、かなりきつい措置をとっているわけでございまして、そういった意味では従来の措置とは全く異なるというふうに考えるわけでございます。  なお、先ほど申しましたように、この趣旨証券会社が行う行為を規制するということでございまして、直接的には一般投資家に対して規制が及ぶものではございません。それでは一般投資家に対しまして法律等によりまして本人名義によらなければならないということを義務づけたらどうかという御意見はあろうかと思いますけれども、株式以外の一般の経済取引におきまして本人名義によらないで取引が行われているということが実際問題としてかなりあるということを考えますと、株式だけについてこれを行うということはなかなか難しい問題がございますし、かといって株式を含むすべての経済取引について、これを例えば法律によって本人名義によらない架空名義を排除するということは、これはまたなかなか、証券行政の範囲を超えるものではないだろうかというふうに考えているわけでございます。  なお、証券会社に対してこういう行為自粛するように規制しましても、例えば口座がちゃんと本人名義でございまして、本人自分取引であるということを主張するといったふうなケースについては、証券会社が幾ら確認してもこれはなかなか確認し切れないといった問題もあるわけでございまして、そういった意味では、証券会社に対して通常の一般取引についてまで法律によりまして本人名義であることを確認する義務を負わせるということは実際上なかなか困難な事情がある、こういったような事情があるわけでございますので、当面そういった通達を厳粛に執行することによりまして対応していかざるを得ない、こういう実情にあることを御理解いただきたいと考えております。
  29. 中村正男

    中村正男委員 やはりそれは取引カードにするか取引者ナンバーというものをつくって、それできちっと管理をしていく以外にないじゃないですか、それでは。そのことは後ほどまた触れてまいりたいと思います。  それでは、ここできょうの本題であります不公平税制の是正の問題について質問を続けていきたいと思います。  今日まで多方面にわたって質疑が展開をされてまいりました。しかし、不公平税制の現状に対して思い切った具体的な是正についての態度が政府側からまだ示されていない、私はこういうような認識に立つわけでございまして、今日、全体的な不公平税制は私は九九%手つかずになっている、こう言っても過言ではないと思うのです。  株式の売却益にいたしましても、原則非課税から原則課税、こう言っておりますが、内容的には本当に申しわけ程度であります。それも、肝心の捕捉、今の問題でございます捕捉があいまいである限り、私は原則課税とは言えない、これはもう明確に申し上げておきたいと思います。  医師優遇税制にいたしましても、社会保険診療報酬五千万円超については優遇は認めない、こう言っておるわけでありますけれども、このような言うなればリッチなお医者さんは、法人にしてしまうか、それともみなし法人に逃げ込むか、いずれにしても税金を小さくする逃げ道は幾らでもあるわけでありますから、よりもっと厳格な医師優遇税制に対する改正をやらなければなりません。また、全国に十八万、病院の数と同じだけある宗教法人の優遇税制についても全く手をつけておりません。個人事業主でありながら法人とみなしてサラリーマンから恨みを買っている、このみなし法人の問題も、これも先送りされようとしております。政治献金、パーティー収入、すべてこれ非課税のままであります。  我々は、抜本的税制改革の抜本という意味合いは不公平の解消、こういうふうに理解をしておるわけでございまして、以下、具体的に後ほどただしていきたいと思います。したがって、今後の審議もございますので、きょうは政府側は思い切った、ひとつ踏み込んだ答弁をそれぞれしていただくように冒頭申し上げておきます。  そこで、その具体的な問題に入ります前に、私はやはりここで国民の声というものを代弁をしておく必要があると思うのです。いろいろなマスコミ報道、とりわけ税制国会のさなかにおきまして世論調査の結果を発表いたしておりますが、先日の十月五日でしたか、朝日新聞の世論調査を見てみましても、こういう数字が具体的に出ております。  「あなたは、今の税金のかけ方は公平だと思いますか。不公平だと思いますか。」公平はわずかに九%、不公平は七八%、答えない一三%。二つ目の「今回の税制改革案で、もっと改善してほしいのはどんな点ですか。」ということに対して、これは回答カードから一つ選択ということになっておりますから、数字上のトータルは意味はありませんが、政治家のパーティー収入への課税が二四%、土地税制強化が二二%、医師優遇税制の見直しが二一%、宗教法人への課税が一一%、以下ずっとこうなっておるわけです。三つ目の「株の売り買いによるもうけには、きちんと税金をかけるべきだと思いますか。そうは思いませんか。」という問いに対しては、かけるべきだというのが七一%。  それから四点目の「政治家が資金集めのために開くパーティーが目立っていますが、こうしたパーティーの収入には課税すべきだと思いますか。そうは思いませんか。」という問いに対しては、課税すべきだというのが実に八二%であります。最後に、「リクルートコスモス社の未公開株政治家などに譲渡され、税金のかからない多額の売却益を得ていた問題が、明るみに出ました。税制改革を考えた場合、あなたは、この問題について、どう感じましたか。」これも回答カードから一つ選択ということでありますが、まじめに税金を納めるばかばかしさ三五%、政治家倫理感のなさ二四%、多額の売却益に税金がかからない腹立たしさ二二%、税制改革論議のむなしさ六%、こういう本当に今の国民の偽らざる考え方が具体的に出てきております。  これについて、まず大蔵大臣はどういう認識をされておりますか、どう受けとめられますか。
  30. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず、不公平税制の問題でございますが、政府が御提案いたしました案におきましても、先ほど指摘にもなられましたが、株式のキャピタルゲインを原則課税とする、あるいは診療報酬について、あるいは法人の土地取得に関する利子の扱いについて、あるいはまた、最も中心であります所得税の改正につきましては、ライフステージをなるべく一つの税率で勤労所得については過ごせるような大きな改正をいたしましたが、これは重税感ということからくるやはり不公平感を除去するというねらいでこざいます。  しかしながら、御指摘のようにそれだけではまだ十分でないということにつきましていろいろ御議論があることをよく存じております。国会における御議論等々も伺いまして、国会の御意志を謙虚に体してまいらなければならないと考えておるところでございますが、御指摘のように、不公平税制として政府が御提案をし、あるいは国会が御審議を願うということは本来あり得ないことで、それぞれの政策目的を実現するために結果として特例が出てくるという、そのメリットとデメリット、トレードオフをどういうふうにするかということが今いろいろ議論になっておる不公平税制と言われるものの実態でございますから、したがいまして、そういうことも判断をしつつ、政策目的とどのように調和をするか。先ほどみなし課税のことも御指摘になられましたし、公益法人についての課税についてもお話がございました。不公平ということを目的にしてもとよりそういうものができておるわけではないことは申し上げるまでもないことでございますので、政策目的との関連をどのように考えるかということを、ただいまばかりでなく今後とも続けて考えていかなければならないと思うわけでございます。  国民の世論につきましては、したがいましてそのような不公平を是正をするということ、国民にもいろいろの立場の方がおられますので、いわゆるみなし法人というようなものについては全く不公正だと思われる国民もおられますし、当事者にとってはそれは必要だということにもなるのでございましょうし、いろいろな御自分立場から見て他のものについて不公平と考えられるようなことはこれはしばしばあるわけでございますから、全体として不公平感をやはり除去していくということは大事なことであろうと存じます。  なお、政府の提案全体についてもうしますならば、所得税を中心にして直接税を軽減をしていく、また、全体ネットでは二兆四千億円の減税になっておる、このたびは歳入中立ではないわけでございまして、その点あたりにつきましても、また消費税につきましても、まだまだ国民各位に十分御理解をいただいていない部分がある、政府としてもなお努力をいたさなければなりませんし、国会の御審議を通じてまたそれが国民にも知らされていくということについては、私どもも最善の努力をいたさなければならないと思っております。
  31. 中村正男

    中村正男委員 国民の皆さんにはまだまだ理解を求めていかなければならない、こういうふうにおっしゃっておられますが、今日まで相当政府もいろいろな機関を通じて、また具体的にお金を使ってPRにこれ努めておられます。今、大蔵大臣がお述べになったようなことであれば、私は世論調査の結果というものもそれなりに変化をしてきても当然ではないかというふうに思うわけです。ところが、世諭調査の結果というのは逆に、政府が時間をかけて、お金を使ってPRをすればするほど、政府の意図とは反した世論調査の結果が出ておる。そのことに対する認識は、私はまだまだ大蔵大臣は十分受けとめておられないように思うわけです。  例えば今の朝日新聞の過去のずっと世諭調査をさかのぼってみますと、消費税に対して、三月時点では賛成というのは二一%ありました。それが六月時点では一八%に下がっている。今日現在ではそれがさらに一六%に下がっているわけです。半年の間にこれだけ大きな数字の変化があるわけです。また、反対を見てみますと、三月時点では六〇%、六月時点では六〇%、変わっておりません。しかし、今回の調査ではこれが六五%に上がっておるわけです。ですから大臣のおっしゃっておることとまさに国民世論は正反対、PRをされればされるほど、いよいよもってこの政府のやろうとしておる税制改革には反対だという意向が強く示されております。そのことに対して総理、どういうふうにお考えですか。
  32. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 確かに昭和五十三年以来、国会におきましても税理論というのが大変な議論の対象になってきております。したがって、まず国民の皆さん方のお持ちの税に関する関心度というものが高まって、税改革は必要だという方向はおおむね私は定着されつつあるではなかろうかというふうに思っております。  そうすると、これはちょっと古い話で申しわけありませんが、十八世紀から十九世紀にかけてのあのカナールの理論というのを僕はよく読むのでこざいますが、税というのは、ある段階、それが詳細に理解され出すと自己中心の分析がいま一度行われ、それはかえって旧法はすべて良税なりという思想の方に傾斜するであろう。しかし、それがいま一つ議論されることによってある種の理解がついた場合、この新税はすべて悪税であるという理論を飛び越して、そしてそれが習熟の段階に至ったならば、また、いわゆるなれという意味でございますが、それは良税へ変化していくであろうということをよく聞かされながら、私はまずさらに国民全体のバランスの中で理解がこれからまた深まっていくんじゃないかな、そういう傾向は私はある意味においてはやむを得ないものじゃないかな、こういうふうにも思っております。
  33. 中村正男

    中村正男委員 国民の本当に腹の底から出ておるような今の不公平税制に対する不信感、これにまともにひとつ目を向けていただいて、ぜひ具体的な是正を的確に行っていかなければならぬと思います。  それじゃ、次に移ります。  次は、これもまた不公平税制の一環として、とりわけ国民の中で大変日本の税務執行上の基盤が弱いんじゃないか、したがってまじめに税金を納めている立場の者からは、そういった脱税等が摘発されますと非常に不満が募るわけでございまして、そういった納税環境及び税務行政の執行基盤の整備について御質問をしていきたいと思います。  十月十五日、一昨日ですが新聞報道で、いわゆる東京国税局が税務調査をした結果が報道されております。見出しは「首都圏の中小不動産会社9割に申告漏れ」これは五千社の税務調査であります。   土地転がしや地上げに奔走、地価狂騰の仕掛け人ともいわれる中小不動産会社約五千社を東京国税局が税務調査したところ、九割近い業者から千九十三億円に上る申告漏れ所得が見つかった。十四日までに同国税局がまとめたもので、このうち五百九十五億円は、架空領収証を悪用したり、経費の水増しなど不正な手口による隠し所得。こうした 裏資金を株投機などでさらに膨らませていたケースもあった。 こういう内容でありますが、これは単なる氷山の一角だと思います。  実は、国税労働組合全国会議という組織から、納税環境の整備なり執行面の基盤強化について御提言をいただいております。これに基づいて二、三質問をしていきたいと思いますので、委員長、この資料を各党にちょっと配付を許可いただきたいと思います。  まず、この国税労働組合全国会議という組織でございますが、これは全官公を上部団体に持っておりまして、全国で約二万七千人の組織でございます。このほか別組織として大阪国税局に約五千人、広島国税局に約三千人、その他若干の別組織がございますが、大方この大阪、広島も国税労働組合全国会議と同じ組織形態の組合であります。いただいた御提言、主要な点を幾つ質問をしていきたいと思います。  まず一ページ目でありますが、はぐっていただきますと、  現行税制下においては、まず不公平の是正が肝要であり、この観点から次の課題について整備する必要がある。  (1) 不公平税制の是正という観点から、制度面についての改善が必要である。  (2) 不公平感の象徴となっている、接触率について是正するため、調査従事の要員を確保する必要がある。  (3) 執行整備の観点から、日本の税務における電算関係予算の拡充が必要である。  (4) 執務環境の整備の観点から、記帳制度、罰則規定、調査権限等について整備する必要がある。  (5) 納税意識高揚の観点から、租税教育について改善を図るべきである。 こういう五点の基本的なとらまえ方が提起をされております。  その中で、時間がこざいませんので、執行面の強化と納税環境の整備という点についてのみ御質問をしていきます。  第一は、次のページ、三枚目ですか、各税目についての実調査率の一覧というのがございます。これで見てみますと、申告所得税では六十一年わずか三・八%、源泉所得税については六・二%、法人税九・三%、資産税の譲渡所得三・五%、相続税八・九%、消費税の物品税八・三%、揮発油税一・六%、こうなっております。  きょうは国税庁に来ていただいておると思いますが、まずこの数字自体、間違っておりませんか。
  34. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 お答え申し上げます。  申告所得税以下、各重立った税目の実調率等が記されております。基本的にはここに書かれておる数字で正しいものだと思います。ただ、若干その定義のとり方によって別の数字もございますが、大筋はここに記載されているとおりかと思います。
  35. 中村正男

    中村正男委員 私は、この調査率がこれで果たして妥当な調査率の水準なのか、その点についてお聞きをしたいと思います。  まず、お聞きをしますと、大体各税目とも共通して七年間たてば時効だというふうに聞いておりますが、それが正確であるかどうかということと、七年たてば時効だということから考えますと、余りにもこの調査率というのはそれとの関連で低いのではないか。だから、時効の年数との関係で、調査率はどのくらいの数字が保たれれば、十分とは言えませんが大体その要件を満たすということになるのか、その辺をお聞きしたいと思います。
  36. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 先生の御質問の御趣旨は、実調率が税務行政の中でどういう役割を示すかということとも相関連するかと思います。私ども税務行政を担当しております者といたしましては、適正公平な課税の実現のためにはいろいろな施策を講じております。指導あるいは相談等々各種の施策を講じまして、その中でいろいろベストを尽くしながら適正な課税に努めてまいりたい。そういった中でも、もちろん先生おっしゃる調査というものも大事な柱の一つでございます。したがいまして、このことも大変重要な柱といたしまして、年々の事務量の中で相当の部分をそれにかけておるのもおっしゃるとおりでございます。  ただ、御質問のように何%をもってあるべき姿かというのは非常に難しゅうございます。もろもろの施策をどう評価するかということが一つ。それから、納税者のサイドにおける現状をどう考えるかという問題等々ございます。一般論として申し上げますならば、納税者の方のいわば税に対するお考えも非常にいろいろございます。まじめな方もいらっしゃいますし、中には税に関しての心得違いをしておられる方もおられるということで、私どものそういうことに対しての対応ぶりも、事柄調査という側面に限定いたしましても、それぞれに見合った対応ということが必要じゃないかなというふうに考えております。したがいまして、非常に問題のあるケースについては、御案内のように査察というような刑事罰を求めるようなことでもって対応してまいりますし、それから、ついうっかりというようなたぐいであれば指導をもって対応するというようなことで、ここに記されておりますような調査の率のみでもって一律に一義的に言うというのはなかなか難しゅうございます。  除斥期間、時効の期間七年というお話でございますけれども、もちろんその期間内で直すべきことは直さなければいけませんけれども、一律の率を言えという点についてはなかなか難しいということでもって御理解を賜りたいというふうに思います。
  37. 中村正男

    中村正男委員 私は、きょうは、すべての国民の皆さんにやはり公平に税金を負担していただくためには、税務当局としてもこういった具体的な考え方でやりますよというふうな格好の国民向けの場所じゃないか、だから、思い切ってそういった考え方を述べていただいてもいいんではないかと思うのですが、いささか抽象的だと思います。  要は、私も実調率がパーセントだけでもって十二分だとは思っておりません。問題は調査の中身が問題でありまして、いろいろ組合の方とお話をすると、大変調査日数も限られる、一件当たり大体平均一・五日ぐらいしか日程が確保できない、これでは十分な調査ができない。やはり根本的な問題は、言うまでもなく調査人員が大変不足をしている。きょうは数字を申し上げませんけれども、私ども聞くところによりますと、欧米のそれぞれの国の状況と比較して日本の税務職員の体制が非常に弱い、要員が不足しているというふうに思うのですが、そこのところ、調査日数の充実ということを含めて今の調査人員の実態はどうなっているのか、当局としてはそれに対するどういう要求を持っているのか、具体的にこの際、総理大蔵大臣がおられる前ですから、胸張って言うていただきたいと思うのです。
  38. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 私ども税務行政を行うに当たりまして、今お話のございました調査ということも当然中心的課題の一つとしながら、税務行政全体として質の向上といいましょうか、内容の充実に努めてまいりたいと考えております。  そのためには、私どもの中におけるいろいろな合理化、効率化ということも当然やってまいらなければならない。それから、世の中の動きについての勉強も当然やっていかなければならない。そういった私ども自身の努力を積み重ねながら、しかし同時に、どうしても足りない、環境の変化といいましょうか、納税者の増加等々に見合っての仕事の量等に対応しましては、必要最小限のものは何としてもよろしくお願いしたいということで、関係方面へいろいろお願いしておるところでございます。  従来も幸いにしていろいろ御理解を得ながら、限られた、いろいろな制約がございますけれども、そういった中で御理解を得ながらやってきておるつもりでございますが、今後ともそのような努力を続けてまいりたいと考えております。
  39. 中村正男

    中村正男委員 次長、私はこの際率直に言ってもらいたいと思うのです。調査率を適正なものにする、あるいは調査内容調査日数も現行の慌ただしい日数ではなしに、最低これくらいはやらなければならない、そのためには今の人員体制では不足だ、したがって、あと何人増員すれば何とか国民のそういった負託にこたえられるという具体的な数字を私はお聞きをしたわけでして、抽象的な答弁はいいわけです。どうですか。
  40. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 税務行政の中での調査という点に焦点を合わせての御質問でございます。  私ども現状の調査の実態も、平均値で申し上げますと先ほどのお話のように、税目によって多少違いますけれども、ある種の数字が出てまいりますけれども、実際の調査の実態は、これも先生御案内のように、非常に多くの日数をかけておるものもあれば短時日で仕上げるのもございます。したがいまして、私どもは、納税者といいましょうか、逋脱あるいは申告の状況に見合った調査が的確に行われ、その結果もし問題があればその問題が是正されるようにしていくような体制なりシステムなり、もろもろの工夫をしていく必要があると思っております。  現状がそのあるべき姿というのに比べてどうなのかという点は、これは非常に難しゅうございます。それで、私どもは与えられた中で最大限の努力をし、相当成果を上げているというふうに自負しておりますけれども、ではどういう数字になればいわばマキシマムになるのかということになりますと、これは事柄の性質上、なかなか一義的にいわく言いがたしというところでございます。非常に抽象的に言えば、定員の問題であれば多々ますます弁ずというようなことを言うことができますけれども、私どもとしては、世の中の環境あるいは税務行政に対する期待度、それから行政部内における制約等々いろいろございます。そういった中で、税務行政に対して最大限御理解をいただくということを関係部局にも理解をお願いしております。そういうための努力を今後とも最大限続けていきたいということで、先生のせっかくの御示唆も受けまして、今後とも努力してまいりたいと思います。
  41. 中村正男

    中村正男委員 わかりました。  時間がございませんので、もっと深くいろいろな問題から質問していきたかったのですが、例えば事務量の増加等を見てみましても、その中でとりわけ大きいのは還付申告書数、これが昭和五十年度には二百七十一万二千件であったものが、今日では五百九十九万二千件、二・二倍に上っております。これは医療費の還付請求が多いわけでして、これを合理化するために足切り金額を五万円から十万円にする、そして事務量を減らすとか、そんなことをやられてはたまりませんけれども、もっと診療時点で、それこそみなし還付だとか、何か合理化が図れないかなというふうに思いますが、特に事務量の増加も指摘をしておきたいと思います。  一方、人員の方は、ほとんど昭和五十年時点と今日とでは変わってない、微増にとどまっております。  それから、各税目別の実地調査状況、これは冒頭中小企業の不動産会社の摘発状況を私申し上げましたが、具体的に六十二年度の数値を見てみますと、法人税が、約二百万件の申告件数があって、そのうち十九万二千件、約一〇%弱を実地調査をしております。その中で更正決定件数が十六万件、実に更正決定割合というのは八三・三%、過少申告が八三・三%。ですから、冒頭の不動産会社の摘発された内容とほぼ同じ、調べればほとんどそれが違法であるという実態になっておるのですね。申告漏れ所得金額は実に一兆二千二百五十六億円に上っております。以下いろいろありますが、この申告漏れ所得金額、合計しますと六十二年度だけで二兆六千四百四十億円にも上っておる。この数字、まず国税庁、間違いございませんか。
  42. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 お話しの数字全部ちょっとフォローし切れなかったものですからあれですが、法人数とか調査件数等々は、おっしゃった数字のとおりだと思います。
  43. 中村正男

    中村正男委員 この件で最後に、最後にといいますか二つまだ残りておりますが、執行整備の観点から、電算関係の予算ですね、いわゆる電算機関係の予算が他の国と比較して非常に少ない。アメリカとのADP予算の比較の数字をいただいておるのですが、日本では総額百三十四億円、アメリカの場合は実にこれが二千六百億円、約二十倍ですね。定員を見てみましても、日本が四百四十六人従事している、それに対してアメリカでは二万一千五百五人従事をしている。国税庁全体の予算を見てみますと、日本が四千百七億円、アメリカが実に九千億円、等々の数字があるのですが、とりわけこの電算機関係の予算がアメリカと比較して非常に少な過ぎるのじゃないか、もっと効率よく執行整備をしていくためには、思い切った予算の充実、これを図っていかなければならぬと思います。  最後に、この定員不足の問題と電算機予算の拡充ということについて、六十四年度の予算、大蔵大臣、どのようにこれについて配慮しようとされているのか、思い切ったひとつ具体的なお考えをお聞きして、この件の質問を終わりたいと思います。
  44. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国税庁ができましたときのことを私はよく記憶をいたしておりますが、シャウプさんが見えましたあたりのときでございますので昭和二十五年ごろでございましょうか、当時六万二千、たしか六万ちょっと上おったのでございますから、現在五万三千でございましょうか、ですから、その間の推移を考えますと、一人当たりの税額を見ますと、これはもうまことに今おっしゃいますことは私は概して真実のお話をしておられるのじゃないかと思います。  そういう意味では、能率を上げたり機械化をしたり、いろんなことをやっておりますけれども、実調率は法人でも一〇%を割っているわけでございますから、仮にここで有能な人を増員いたしますならば、費用対効果で言えばそれは私は非常に大きな効果になるだろうということは想像にかたくございません。とは申しましても、やはり国全体の行財政の合理化ということがございますものですから、国税庁の諸君には全く私は辛抱してもらって、随分それは苦労をかけておるというのが本当のところと存じます。電算機関連もあるいはおっしゃるようなことがあるのじゃございませんでしょうか。そういうことで一生懸命とにかく行財政改革の時代でございますので苦労をしてやってもらっておりますけれども、どうしてもやむを得ないということになりますと、定員でも予算でも、それはまた国会にもお願いを申し上げなければならない。できるだけぎりぎりのところでやらしていただきますが、ここにございますいろいろなお話は私十分参考にさせていただきたいと思います。
  45. 中村正男

    中村正男委員 ぜひひとつ総理もこの点、人員の面と予算の面、頭の中に入れていただきたいということを申し上げて、この質問を終わります。  次に、今日の経済状況の中で、率直な国民感情として、資産所得課税には今の税制は大変甘いのじゃないか、現状に対して十分な対応ができていない、それに比べて、いわゆる勤労所得といいますかそれには大変厳しい税制である、これが私正直な受けとめ方だと思うのです。そこで、この問題について質問していきたいと思います。  御存じの全日本民間労働組合連合会、通称連合ですね、これが最近発表した資料によりますと、資料そのものは経済企画庁の国民経済計算年報六十三年度版でございますが、このような指摘があります。  六十一年度の金融資産は約二千四百兆円、うち株式は三百七十五兆円であって、前年比、時価で百二十一兆円もこれが増額されておる。一方、土地については、およそ千三百兆円の資産となっておって、これも前年に比べますと二百四十四兆円も時価評価額が上がっておる。合計して、一年間で三百六十五兆円上がっておる。一日一兆円もどんどん上昇したというのが指摘であります。恐らく六十二年度はさらにもっとこの実勢は高騰しているのじゃないかと思います。  これは具体的な資料の説明はできないのですが、言われるところによりますと、土地全体に対する年間の売買累計というのは二京だ、そのくらいあると言う人もあるのですが、それはともかくとして、連合が指摘をしたこの数字について、経済企画庁が発表されたと思いますが、この事実関係はどうでございますか。
  46. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 先生にお答えをさしていただきたいと思います。  大体概要は概略御指摘のとおりとお考えいただいて結構ではないかなと思うのです。  まず第一には、六十三年度版の国民経済計算年報で見ますると、六十一年暦年末の金融資産総額が大体二千四百兆円、こう御指摘でございましたが、実は二千四百三十七兆円でございます。うち、株式は三百七十五兆円でございまして、土地は大体千三百九兆円となっておる次第でございます。ただ、雇用所得総額は大体百八十二兆円となっておる次第でございます。  こうした金融資産あるいは土地資産総額そのもののGNPに対する比率で見ますると、前者ではまさに七・四倍、後者、すなわち先ほど申し上げました土地資産等々では四・〇倍ということになりましょうか。  これらの比率を時系列的に眺めてみますると、次第に上昇してきていることだけは間違いございません。このところの金融資産や土地資産の大幅な上昇率、増大する株の上昇、地価の情勢というものも、その点では先生の御指摘のとおり大変に反映されている結果をもたらしているのではないか、こう思います。  ただ、国民可処分所得に対する雇用者所得の割合は、景気局面に応じて変動しておりますけれども、上昇傾向を示している点は、昭和六十年に大体六三・六%になっておりまして、他の先進諸国のアメリカ、ドイツその他の国々と比べますとやや平均値になってきた、こういうことだけは言えるのではないか、こう思う次第でございます。
  47. 中村正男

    中村正男委員 とにかく物すごい数値であることは間違いないわけです。  一方、労働による伸びというのを見てみますと、これはGNPの数字をベースにして考えますとせいぜい四、五%しか伸びてない。合計数にいたしますと、絶対額として十四兆円から十八兆円ぐらいしか伸びてない。一方、資産の伸びというのは年間三百六十五兆円も伸びている。この数字と、一方、国税収入の構成比を見てみますと、いわゆる勤労所得の所得課税、これは国税収入の実に六〇・九になっている。ところが、資産課税からくる国税収入の割合というのは一九・一%。まさに、いかに働くことに過酷で、そして資産に甘い税制かということの指摘なんです。  もう簡単で結構ですが、大蔵大臣、どういう御認識でしょうか。
  48. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはいろいろな見方があると思うのでございますけれども、ただいま言われましたような土地あるいは株式につきましては、このところ非常に値上がりが大きゅうございました。したがいまして、現在高といいますか総額という考え方でいけば、給与の総額の伸びよりはその伸びの方がはるかに大きかったということは事実であろうと存じます、この近年でございますが。  そういたしますと、そこから生まれる租税収入というものは、伸びが大きかっただけ相対的には小さくはないかと言われる意味では、私はそういうことが申せると思います。ただ、少し長い目で見まして、我が国の国税を消費、所得、資産ということで見てみますと、資産からくる国税はほぼ一定の割合を維持しておりまして、このたびの改正後においてもさようでございますが、そういう点はございます。  政府としても、株式の課税、あるいは、マル優のことはいろいろ御議論がございましょうけれども、利子所得の課税等々につきましていろいろ新しい施策をお願いをし、また御提案をしておるところでございます。  相続税につきましても、我が国の相続税は決して軽い方ではございませんが、この際、昭和五十年に決めました制度をそのままにいたしてございますので、大都会における小規模の宅地等々に、実は事業用の土地でもそうでございますが、非常に無理がきておりまして、ある程度の減税をさせていただいたのでございますけれども、それでも資産所得課税は決して全体としてはシェアは落ちていないと考えております。
  49. 中村正男

    中村正男委員 こういった資産所得といいますか、そういうものが極めて増大してくる、これは日本経済というものが二十一世紀に向けまして経験する重要な変化だと私は思いますが、このストック経済化といいますか、今経済企画庁長官も言われたのですが、既にもう個人の金融資産だとかあるいは対外資産の増加等で顕著にストック経済化という現象が示されております。私は、そういう中でこれからの経済政策のありよう、あるいはまた具体的に税制、これにやはり重要なインパクトを与えなければいけないし、税制の視点もそこに置かなければならぬと思います。  せっかく経済企画庁長官おいででございます。もう時間がございませんが、こういうストック経済化の中の経済政策のありよう、これをどういうことをポイントにやっていけばいいのか。時間がなくて恐縮ですが、長官のお考えをお聞きをしておきたいと思います。
  50. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 多少税制の問題とは異なるかもしれませんが、我が国経済の着実な成長、あるいは特に高い貯蓄率の持続というものによりまして、国民資産は確かにGNPの成長率をはるかに上回る速さで増大してきていることだけは間違いございません。昭和五十五年から六十年までの最近五カ年間だけをとらえてみますると、大体名目GNP成長率が五・五%ということであるのに対しまして、我が国の資産のそれは八・四%となっておりまして、六十一年度になりますとさらにちょっと拡大傾向で、一四・九%と伸びを高めておる次第でございます。  全体的にどうとらえるか、こういう御質問でございますから、こういう国民生産の資産の増大というものは、国民の高い貯蓄率のもと、基本的には社会資本や住宅のストックなどの充実の我が国の経済発展というものには大きく貢献しているとは思います。しかし、近年に見られるような株価や地価そのものの大幅な高騰というようなものは、これは資産格差の拡大や経済の不安定さを促進する要因もこれまたあろうかな、このように、先生の御指摘のとおりに考えているわけでございます。
  51. 中村正男

    中村正男委員 毎年発生するフロー量である所得よりも、過去から蓄積されてきたストック量である資産の方が比重が高まってくる、こういうことになるわけでして、そういう中で税制の持つ重要性というのは大変大切になってきたと私は思います。  そこで、こういったストック経済化の中における税制のあり方、これについてお聞きしたいのですが、今不動産のキャピタルゲイン、いわゆる実現益、これは資産を売却して譲渡益となった場合には課税されている。ところが未実現益、資産が保有され続けている場合の、いうところの含み益、これの課税が今は非課税という形に現実になっている。もちろんこれは消費された時点では課税されますけれども、いわゆる貯蓄されてくる過程の含み益というのは非課税になっている、こういう問題ですね。  今まで論議されてきたのですけれども、結局は徴税技術が困難だからというので一応済まされてきたのではないかと私は思うのですが、これからの時代、こういう状況がかなり進んでいくとなればここにメスを入れなければならぬと思いますし、今現実にこの含み益に対しては非課税ということについて、この実現益と未現実益とのそういうことからいたしまして、果たしてこれで整合性のある税体系と言えるのかどうか。これは難しい問題でございますが、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  52. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題はしばしば御提起がありまして、私どもも何か考え方がないものかということはとつおいつ考えておるのでございますが、過去の歴史で申しますと、シャウプ税制の中で、資産再評価というのは、一遍、事業用の資産についてございまして、たしか六%であったかと存じますけれども税を取ったことがございます。それは戦後と戦前とのやはり価格のバランスをとったのだと思いますが、それだけが経験かと思います。  それで、今のことは、やはり含みというものが、その課税が所得課税であるか資産課税であるかということあたりに、どうも私どもはやはり整理をしてみようとしますと、所得課税ならばこの所得は実現しておりませんし、資産課税であれば固定資産税とか特別保有税がございますので、それならば、それが不足であればそういうことを重課をすればいいというようなことで、かたがた、そういう含み資産を持っておりますのは装置産業が多いものでございますから、必ずしも好況とも言えない、また担税力があるともなかなか申しにくい。むしろ、そういう装置産業がそういう含みを持っているがゆえに比較的原材料を安価に供給していくという意味では国民経済に貢献していると申せるということもございまして、お話は何度も私ども考えておりますけれども、なお明確な結論が出ないというところでございます。
  53. 中村正男

    中村正男委員 私は、やはりこの点に税制が的確に対応していかない限り、この資産所得の問題といわゆる労働所得に対するとらまえ方と、結局そこには大きな矛盾といいますか、が解消されないというふうに指摘をしておきたいと思います。  そこで、資産性所得というものがどんどん増大していく中で、一方、労働者も、当然のことながら資産形成というものをこれからの高齢化社会ということからいたしましても自身考えなければなりません。その場合、資産所得に比べて労働所得からの資産形成ですね、この労働所得からの資産形成が大変不利だ、私はこういう指摘をしたいわけです。  たまたま一橋大学の野口教授という方がこういう試算をされております。簡単に申し上げますのでポイントだけおつかみ願いたいと思うのですが、要は、労働所得から貯蓄がなされていく場合と株や不動産を大量に持つ資産家が資産をふやしていく場合とを比較すると、結局、前者すなわち労働所得からの貯蓄の場合が大変不利になる、こういう指摘なんです。  今、仮に労働者が退職後に備えて毎年の所得の中から百万円ずつ貯蓄をし、年利五%の定期預金に加えていく場合、これは税が全くない世界というそういう前提で考えますと、三十年後の元利合計は六千六百四十三万円、こういう数字を出しておられます。一方、資産家が二千方円の資産を値上がり率年五%の株式、これは配当を計算しません、で保有している場合には、毎年のキャピタルゲインは、これは百万円になりますね、二千万円の五%ということですから。それで三十年後の資産評価額は八千六百四十三万円。したがって、この場合のキャピタルゲインというのは、二千万円引きますから当然のことながら六千六百四十三万円。ですから、税の全くない世界では、たまたまこれは百万円という労働所得からの貯蓄を考えました場合、全く同じ数字になるわけです。  ところが問題は、これが税が課せられた場合どういう数字に変化するかということなんですが、労働所得からの貯蓄は課税後所得でございますから、利子所得が非課税であった時点で考えますと、仮に限界税率を二〇%で計算しますと、百万円の蓄積額というのは実質は八十万円になる。これを三十年後の元利合計で見てみますと、五千三百十五万円となるわけですね。ところが、今キャピタルゲイン課税というのがないわけでありますから、仮に今回の譲渡益課税を税率二〇%で実施されたという計算をいたしますと、これまた税金が千三百二十九万円になるわけです。税引き後には五千三百十五万円ということですから、譲渡益課税二〇%にした場合でもこれは同じになるわけですけれども、利子課税を適用された場合には、これが実質、労働者の場合、貯蓄からの貯積が四千七百三十二万円になるわけですから、この差、いわゆるこの五千三百十五万円と四千七百三十二万円、ここでも具体的に約六百万円ですかのいわゆる労働所得からの蓄積の方が不利な数字になるわけです。  数字の問題はその程度におきまして、結局、実際上資産所得からの資産形成の方が有利である。労働所得からの資産形成の方が不利な数字を今申し上げたのですが、これを是正するためには、一つは、労働所得からの貯蓄に限定して利子非課税をやはり復活をしなければならない。財形の完全非課税と、もう一つは五百万円という枠を撤廃をすべきである。それから二つ目は、勤労者が行っております年金貯蓄、これを大幅に改善をしなければならない。そのことによって、労働者の資産形成といわゆる資産所得からの資産形成のバランス是正といいますか、こういう一つの手だてが考えられるわけです。そのことについて大蔵大臣、どういう認識でしょうか。特に後段の二つですね。     〔委員長退席、海部委員長代理着席〕
  54. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今言われましたことの基本的なお考えはわかりました。結局、おっしゃいましたことは、勤労所得はまず勤労所得として第一回の課税を受け、さらにそれが資産になったときに資産所得として第二回の課税を受ける。しかるに、資産所得は本来的に一遍しか課税がないではないか。殊に勤労所得の場合には従来マル優があったので、そこのところは免除されておったが、それがなくなるとなおその差が大きくなると、こうおっしゃったわけと存じます。  これはちょっと理屈になりまして申しわけないのでございますが、一言だけ言わしていただければ、資産所得も最初から資産があったはずはないので、何かが貯蓄して資産になったんだということはちょっと言わしていただきたい気持ちがございます。それは日本の税制よりもっと昔からあったかもしれませんから。  そのことはちょっと一言だけ言わしていただくとしまして、しかしそういうことは今の段階を切って言いますと、私はおっしゃることは理解できるように存じます。でございますから、生命保険料とか年金についての特別控除、合わせて五万五千円でございますか、あるいは財形、この限度程度は不十分だとおっしゃるかと存じますが、考え方としてはそういう考え方は現行の税制の中でやはりやっている。将来に向かって考えていくべき問題があるということは、私はおっしゃいましたことはよく自分理解ができたと思います。
  55. 中村正男

    中村正男委員 私は、勤労所得と資産所得の不公平の一つとして資産形成の面でもある、これはやはり改善をされなければならない、この指摘として今の二点、財形貯蓄の拡充、これを要望しておきたいと思います。  総理にお聞きをしますが、こういう資産保有格差というものが今大変顕在化しつつある。このままの状況が仮に続くとするならば、将来世代まで不公平が拡大されていくんじゃないか、私はこういう懸念を持つわけです。極端なことを言えば、そういう資産のある家に生まれた子供は一生涯そういう大きな財産を背負って生き続けていける。ところが片や、そうでないところで生まれた子供はいわゆる大きな経済的なハンディキャップを背負って同じこの競争社会で生きていかなければならない。単純な、素朴な今の社会の一面を私は申し上げておるわけです。そういう不安を感じておる国民感情を申し上げておるわけですが、こういう資産保有格差が顕在化していく中で、将来世代にわたってそういう不安がさらに助長されていかないものか、助長されていくんじゃないかという懸念について総理、ひとつお考えをお聞きしたいと思います。
  56. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 いわゆる今おっしゃっているのが、我が国の、なかんずく戦後等における相続税、今のは法人資産じゃなく個人資産のお話が主体でございますから、の議論のときにあったわけでございます。そこで、私はよくその当時言っておったのでございますが、日本の相続税というのはある意味において、西郷南洲の子孫のために美田を買わず、こういう思想じゃないかという、一面それはあり得たと思うのでございます。したがって、親たちはその子弟等の教育をして社会に出るまでが責任であって、自分らが蓄積した資産はむしろ社会に還元すべきだ、だから相続税は大いに重課すべきだ、こういう議論が一つあったことは事実であります。それをいろいろな形において調整されたのが今の相続税法というものではなかろうかなと思います。一方、これは中村先生の方でもよくお聞きになるように、しかしそこには承継税制というものがあるんじゃないか、これなんかはというので承継税制の議論ができて、いろいろな調和、中和がなされて今日に来ておるということではないかなというふうに私はこの問題については考えております。  ただ、基本的におっしゃいました、いわば今度の場合、今お言葉をかりれば、労働所得あるいは勤労所得、これの減税とか、そしてあるいは消費税についてはネット増税になるとか、が、資産に対してはその適正化という訴え方をしておりますのは、あるいはそこの辺もう少し、この資産格差というのがますます顕在化するから、適正化というものに対してもっとアクセントをつけた勉強を今後すべきじゃないかという意味においては、私にも理解できることでございます。
  57. 中村正男

    中村正男委員 それではあとの時間、もう十五分しかございませんので、具体的な項目について一つ一つお聞きをしますので、的確に踏み込んだ御答弁をお願いしたいと思います。  まず、この資産課税の適正化をやろうと思えば、当然のことながら把握の問題、これを解決しないことにはこの資産課税の問題は解決し得ない、私はこういう立場で、いわゆる納税者番号制であります。  今までの論議を聞いておりますと、四年後に改めて総合所得に向けて検討します、こういう域を出ていない。私は、この把握の問題、納税者番号という問題については、四年先に改めて検討するというのじゃなしに、四年後移行していく、総合所得課税を前提にして納税者番号というものを実施するというふうな答えをぜひきょうはお聞きをしたい。  それから、そのためにはまずどれから適用していくのかということについては、先ほどから問題になっております証券取引に適用するカード制、そういう形でまず実施をすべきではないのか。とりわけ株式の大口取引というものを対象にこれの実施を四年後にやるということ、そしてそれに向けて具体的な検討に入っていくというふうに我々としては要求をするわけでございますが、いかがなものですか。
  58. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のように、徴税という見地から申しますれば、これは制度が整備されますと大変に効率的であることは間違いがございません。したがいまして、私どもも政府税制調査会にこれについての御検討をお願いいたし、また小委員会が既に海外も視察をされて鋭意御議論をしておられるところでございます。  ただ、御承知のようにこれが将来、納税だけのものであるのか、あるいは経済取引一般に使われるべきものであろうか、その場合にいわゆるプライバシーとの関連はどうなるであろうか、経済、経済外の問題をいろいろ含んでおりますものですから、税制調査会の小委員会の御議論の推移を私ども注意深く見守っておるところでございますし、また、国会における御議論につきましても十分に拝聴をしておるところでございます。
  59. 中村正男

    中村正男委員 今までの論議の中で、結局大蔵大臣なり政府側の答弁が極めて消極的な域を出ていない、そのために、今、来月の中旬にでも中間報告がなされようとしております番号制の小委員会の作業も、結局国会での審議の成り行きを見守っております。今までの政府答弁であれば、大蔵大臣にしても竹下総理にしてもこの問題に対しては大変あいまいな域を出ていない。したがって小委員会の作業も、この中間報告で最終までの方針を報告する必要はない、あわてることはないじゃないかというふうな小委員会論議になってはせぬだろうか。小委員会論議できちっとこの方向性を出していくためにも、私はこの国会、今のこの審議の中で大蔵大臣の明快な、四年後移行だ、そういう方向でひとつ小委員会審議をしていただくというふうな踏み込んだお考えをぜひお聞きをしたいのですが、もう一度お願いします。
  60. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどから申し上げますように、徴税の立場からいえばこれはまことに効率的だと考えておりますし、今株のキャピタルゲインというような問題がございますと、特にその緊要なことをおっしゃいますことは私もよくわかるのでございますけれども、ただ問題は、経済だけの問題にとどまらず、非常に大きな国民全体の関心になる問題である可能性がございます、かつてグリーンカードという問題もございましたものですから。そういうことも考えますと、ここはやはり小委員会の御議論をよく周到に詰めていただきたい、こういうふうに考えております。
  61. 中村正男

    中村正男委員 次に、株式の売却益課税の強化について。  これも非公開株の問題を中心に短期の売り抜け、創業者利益の問題、大口取引、この課税強化については一定の認識をきょうまでの審議の中で示されたと思います。しかし、今もって具体的なこの強化策については踏み込んだお答えがございません。政府提出しておる範囲の中でというふうに我々は受けとめるわけですけれども、これについて、一つは、これは未公開株に限定しての話でありますが、一年以内の売却についてはみなし分離は認めない。そして、公開前三年以内に取得した株の売却は短期の売り抜けとみなして二〇%とする。地方税六%を加えて二六%とする。そして三点目は創業者利益でありますが、公開の三年以上前から所有しておる株の売却益は、まあ二〇%との関係で若干考慮する。こういう具体的な指摘に対しては、きょうはどういうお答えをいただけますか。大蔵大臣、お答えいただきたいと思います。
  62. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題につきましては従来から国会でいろいろ御議論があり、また八月十七日の野党各党の御提案以来、これにつきましての御検討も与野党で行われておることと承っております。政府といたしましては、ただいま御提案いたしました政府税制改革案だけではその後の事態にも徴して不十分であるという御指摘は、謙虚にそのように考えております。  基本的には、譲渡益が五%である、したがってそれに対する二〇%の課税は一%でございますが、取引いかんによっては譲渡益が五%であるというそういうみなしが、いかにもそれでは少ない取引がいろいろにあるのではないかという御指摘がございます。それは確かにもう少し大きな譲渡益のある各種の取引がございます。創業者利益もその一つであるかもしれません。  そのようなことを総合的にどう考えるかということは、今申しました基本認識に立ちながら各党間の御議論、国会の御検討等も承りつつ謙虚にその推移を政府としても反映して考えさせていただきたい、ただいまのところはそのような考えでございます。
  63. 中村正男

    中村正男委員 五%の利益については確かにそれは少し少ない見積もりだというふうな認識を示されたわけでありますが、これはもうまさにそのとおりでございまして、ぜひひとつ新たな観点での見直しを強く要求をしておきたいと思います。  創業者利益についても、仮に一〇%というふうな論議もございますが、例えば所得税の累進税率、これは今一〇%から六〇%、こういう段階であります。それとの関連でも、私は創業者利益一〇%というのは、仮に一〇%でやるとしても少ないのではないか。というのは、まあ普通の勤労者の課税の構造は、所得税の構造は一〇%から六〇%あるわけです。創業者というのは、いわゆるそれだけの株を売却できるぐらいの、いわば高額所得者になるわけでありますから、それの売却益に対する課税が所得税の最低税率の一〇%と同じ率だというのは、これはやはりちょっとおかしいんじゃないか。何も創業者一人の功績でその会社が株を公開できたわけじゃないわけです。多くの人の協力でもって、あるいは努力でもってそういう事態になったわけでありますから、そういうことを考えますと、最低の一〇%と同じような率では私はちょっとまだ少ない、やはりそれ以上の課税の率にしなければバランスがとれないんじゃないか、こういう指摘だけはしておきたいと思います。  次に、政治家のパーティーへの課税であります。  これも今までの論議を通じて明解な踏み込んだ答えはございません。むしろ当初から政府・与党の発言というのはどんどん後退をしてきております。我々が新聞紙上で読む限りでは、例えば八月の中旬時点でしたか、竹下総理安倍幹事長と河口湖でゴルフ会談をやられた。そのときの話題として、少なくとも一〇%程度の分離課税は必要じゃないか、これはもう新聞に出ておるわけですね。そういうお話がなされたかどうかは、これは私は御本人からはお聞きしておりませんが、報道ではそんなことがあっておる。あるいは渡辺政調会長の発言でも、消費税方式をひとつ考えたらどうだろうか、また大蔵省自身も具体的に、印紙税方式でもってやればやれるのではないか、こんなことも出ておりました。ところが、ここまで審議が進んでくる中で、むしろ今日時点では、政治資金規正法との関係等々もあってこれはちょっと無理だということで先送りされようとしておる。  私は、これこそまさに今竹下政治が問われておる最大国民からの指摘だと思います。この問題については、ぜひひとつ総理のお考えをお聞きしたいと思います。
  64. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 政治家のパーティー課税について今三つの例示がございましたが、それぞれ専門家の方もあるいは我々もそれはしょっちゅう話をしておる御指摘でございます。ただ、今各党のそれこそプロ中のプロの方がお話し合いをなすっております。  私も、この問題について昨日でございましたか放送討論会も詳しく聞かしていただきました。なかなか政治資金法の側からこれをアプローチしていった場合にいろいろな問題がある。しかし現実、国民のあの世論調査にも示されておるとおり、まあ不公平感といいますか、情緒的不公平感と理論的不公平感があるとしたら、情緒的不公平感の最大なるものではないか。したがって、後でもし仮に不合理が生じたら直しても、この際は印紙税方式とかでやってみたらどうだ、こんなようなお話があって、それも一つの御意見だなと思って私自身も聞かしていただきました。ただ、本来政治資金の側からアプローチしてまいりますと、この議論はみんなが自己矛盾に入ってしまいます。  したがいまして、いわば現実のそういう、ちょっと言葉は適切でないかもしれませんが、そういう情緒的不公平感に対応する姿勢としてどうあるべきかということを、それこそもうプロ中のプロの人が今御議論いただいておるので、私も静かに仲間入りをさしてもらおうかな、こう思っておるところでございます
  65. 中村正男

    中村正男委員 私は、この問題はもう技術論で、いや、政治資金規正法とのかかわり合いだとかどうだとか、そういう次元の問題じゃないと思うのですね。やはり税に対する国民のまじめな——今日莫大なパーティーの収益を上げながらそれが課税されていない、一方我々は、勤労者の場合は一〇〇%所得が捕捉されて課税されている、何だというのが国民の感情なんですね。それにこたえなければ、竹下政治は全くそれに背を向けるということになりますので、ぜひひとつ具体的に、例えば印紙税でもって検討していくというふうなことも含めてもう一度お尋ねしたいのですが、もうよろしいです。ぜひひとつこれは踏み込んだ最終的な態度をお願いしたいと思います。  それから土地税制。  これも時間がございませんので、申し上げたいことは、今の土地の評価に関するそれぞれの問題が、例えば固定資産税は自治体、相続税は国税庁、公示価格、基準価格は国土庁、一物四価あるいは三価というふうになっております。我々は、やはり土地評価額の一元化を図るべきじゃないかという指摘が一つと、それから特別土地保有税の見直しですね。これも、やはり資産所得が大変比重が高まっている今日、新行革審の報告でもこれは見直せというふうな指摘もございます。  そこで、具体的にお尋ねしますが、第一点は、この免税点を規定した面積あるいは税率の引き上げを図るべきではないのか、今、一・四%と三%でありますが、それについての質問と、それからもう一つは、二年間の徴収猶予の期間がございます。この間が大変いろいろな不正の事件を起こしておるわけでございまして、この猶予期間中の監視の問題で、具体的な国税庁の考え方があればお聞きをしたいと思います。——自治省ですか。
  66. 湯浅利夫

    ○湯浅政府委員 特別土地保有税の問題につきましては、四十八年に、その当時の土地投機を前提にいたしましてでき上がった税制でございます。そういうことを踏まえまして免税点なり税率の問題が確定されたものでございますので、現在の時点で考え直す場合には、別の要素からまた考え直す必要があろうかと思います。現在の段階で、できております特別土地保有税の内容の中で、免税点なり税率の引き上げを直ちに行うということは問題じゃないかなという感じがいたします。  また、二年間の徴収猶予等につきましては、土地が買われてから直ちに利用するということは、現実の問題としてなかなか建物を建てたり何かする間に期間がかかるわけでございますので、そういうものを考慮して二年間の徴収猶予ということでやっておりますので、この辺のところも、今後の土地の利用というものをどういうふうに考えていくかということによって検討していかなければならない問題だと思っております。
  67. 中村正男

    中村正男委員 時間が参りましたのでこれで終わりますが、みなし法人の問題、それから宗教法人の問題、ぜひひとつ具体的に是正をするということを進めていただきたいということを要望しておきたいと思います。  最後に私は、税金を国民が納得して払うための三つの原則というものがあろうと思います。  一つは、まじめに働く人には軽く不労所得には重く、そして貧しい人には軽く金持ちには重く、そして総体的に社会全体の平等が保たれるようにするというのが、国民が望んでおる、納得する、税金を納める側の気持ちではないかと私は思うのです。税制改革に向けてそういうことを強調いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  68. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 これにて中村正男君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ────◇─────     午後一時二分開議
  69. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。村山達雄君。
  70. 村山達雄

    村山(達)委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、きょうは不公平税制のテーマだそうでございますので、そのことについてお伺いしたいと思います。  私は、実は大蔵省在官二十六年でございまして、幸か不幸か、ほとんど税をやらされたのでございます。衆議院の方もことしでちょうど満二十五年になりまして、その間、経済とか財政を勉強させていただきました。しかし、税制につきましても、最初から我が党の税制調査会の一員としてやはり勉強させてもらいましたので、通算して五十年、因果なことでございますが、やらせていただいているのでございます。  そこで、不公平税制の話でございますが、所得課税における不公平の問題として、所得税、法人税の個別問題につきましては与野党が今十項目挙げまして鋭意検討しております。したがって、それらの問題はいずれ本委に出てまいりましょうから、その際またゆっくり議論する機会があろうと思いますので、きょうはその他の事項について、私が日ごろ考えておる不公平問題、そういうものについてお伺いしたいと思います。  ただ、十項目のうち、キャピタルゲインの課税の問題、あるいは、特に最近創業者利得がなぜ非課税か、こういう問題について論議されておりますので、若干その間の経緯を知っている者として、今までの経緯を申し上げ、そして創業者利得の課税についての御感触を最初に伺いたいと思います。  御案内のように、シャウプ税制は二十五年でございますが、このときは原則総合課税でございました。そして株のキャピタルゲイン、キャピタルロスはすべて通算いたしまして、そしてもし赤字が出れば、翌年度以降普通所得から控除するという制度であったのでございます。私は当時国税庁の初代所得税課長としてこの問題に取り組んだのでございますが、何といっても、やはりキャピタルゲインを総合するシステムがありませんでした。したがって、どういうことになったかといいますと、一つは、キャピタルゲインは本当に、言葉はどうか知りませんが、ほとんど逃げまくる、キャピタルロスがありますと、証券会社の証明書を添えて持ってくるわけでございます。したがって、シャウプが言った理想的な形、キャピタルゲインとキャピタルロスの総合課税という問題は、税収として考えてみましたときには、私はかえってマイナスであったと思います。それからもう一つは、たまたま取っ捕まった者が大変な不公平になってしまう。これは当然のことでございます。  しかも実行上の難しさは、仮に株式の売却がつかまったといたしましても、その取得原価というものはわからぬのでございます。当然同じ銘柄でございます、やっている人は買ったり売ったりしているわけでございますので、その取得原価というものはつかまらないのでございます。恐らく、今、納税者番号によって総合するという問題はありますけれども、仮に売却高を全部総合したとしても、いつ幾らで買った分をやったかということがわかりませんとやはり問題であろう。ちょうど事業所得の計算上、棚卸しにつきまして同じ問題があるわけでございますが、現行法は、それぞれの取得原価を本人の選択によりまして求める方法をあらかじめ申告させておるのでございます。そういうことでようやくつないでいるのでございますので、やはり総合課税になりましてもこの問題は残ると思います。  いずれにいたしましても、そういうことであって、不公平でありかつ税収はマイナスだ、こういうことでありましたので、昭和二十八年でございましたが、私が主税局の方と相談いたしまして、もうこの制度は、残念ながらこれはやはり理想に過ぎる、廃止してもらいたい、そのかわりに、それにかわるものとしてひとつ流通税として有価証券取引税のようなものを起こしたらどうか、こういうことで有価証券取引税が一つの身がわりとして起こされたわけでございます。しかし、見てみますと、これは法人の株式も同時に一緒に捕捉いたしまして、流通税としてこれが発足しました。それで、二十八年の当初予算では六億ぐらいの予算計上でございましたが、これは、日本の資本市場の発展とともに、今日ではことしの当初予算では一兆六千六百億、こういう膨大な税収源に育っているわけでございます。  しかしその当時から、株式譲渡所得による所得は非課税にするにしても、やはり余り目に立つもの、事業所得あるいは雑所得に該当するようなもの、あるいは事実上事業の譲渡に類似するような、持ち分のある一定比率以上を譲渡したものについては課税すべきではないかということで、この分はやはり依然として課税するということに残したわけでございます。  その後、市場にはいろいろな現象が起きました。第一に、買い占めによって発行者に高く売りつけるというような人が横行してまいりました。そこで、買い占めによるものはやはり課税の対象にするというようなことにいたしました。それからまた、いわゆる株価操作がだんだん始まりまして、いわゆる仕手株というものがありまして、取引所の特別報告銘柄というようなことで、社会的に感心しないというようなものについてもまた課税の対象に取り込みました。また大口のもの、これについてもやはり課税すべきじゃないかという常識論がありまして、それを取り込んできた、こういうような経緯でだんだんやったのでございます。  創業者利得を非課税にいたしましたのは、そのままほっておきますと、継続的取引あるいは事業譲渡類似の取引、さらには大口取引、こういうものに当然ひっかかってくるわけでございます。折から日本の資本市場は非常に日本の今後の経済成長のために拡大が望まれておったのでございます。ほかの社会的に好ましくない現象だけとっつかまえて、それに課税しているわけでございます。ほかのものは全部非課税になっておる。そこで、結果的にそれらの大口とかあるいは継続であるとか、あるいは事業譲渡類似に該当するいわゆる創業者利得については、むしろ市場拡大のために、あるいは創業者の株式公開というものは結構なことではないかというようなことから非課税にしてまいった、こういうことだろうと思います。  今日、キャピタルゲインは原則課税に戻ろうじゃないかということで、既に政府御提案の分離課税と申告分離課税の選択制度になっております。今度の案では、そこは申告になるのか分離になるのかはこれからの問題でございましょう。また、税率がどうなるのか、今のところでは申告になってもやはり二〇ということになると思います。  株式市場のその後の変化は大変なものでございまして、今や時価総額においてもニューヨーク市場を抜き、それから売買総額におきましても、もうニューョーク市場に近くなっておる。昨年の株式の大暴落のとき、いわゆるブラックマンデーのときにアメリカの方は随分おっこちまして、今日まであの水準を回復してない。幸いにして、日本は一五%程度落ち込みましたけれども、もう既に回復してあの水準を抜いておる。今や、昔のようにニューヨークの相場を写真相場としてこちらが写すのでなくて、逆に日本の資本市場というものが、やはり世界的なものとして、日本の資本市場の行方いかんが世界の資本市場に影響を与えるというほど大きくなっているわけでございます。  したがいまして、その観点からいたしまして、やはり株式市場というものは、今までのような量的な拡大ではなくて、国際資本市場としてその適格条件である価格形成について公正を保たにゃいかぬ、あるいは透明度をふやさなければいかぬ、こういう要請が時代とともに強くなることはもう当然なのでございます。したがって、インサイダー取引の規制の問題が登場する、あるいはディスクロージャーのより徹底がやはり叫ばれる、これは当然なことだろうと思うのでございます。  まあ今まで証券会社、随分日本の証券会社は大きくなりましたけれども、率直に申しまして、日本の証券会社の優勝劣敗と申しますか優劣というのは、ほとんどアンダーライターになるかどうか、これが一つの問題、もう一つは、いわばインサイダーのような、あるいはそれに類似したような情報をたくさん持っているかどうか、これによって恐らく証券会社の優劣が決まってきた、こういうことだろうと思います。しかし、今や先ほど申しましたように質的転換を図らねばならぬ、そういう意味で創業者利得について改めて今光が当てられている、こういう状況でございます。  そういうときに、この創業者利得の課税のあり方について、まだ実務者会議でも結論は出ておりませんけれども、どのような感触を持っておられるか、まず大蔵大臣にお伺いしたいと思います。
  71. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 シャウプ税制創設以来の経緯につきまして、ただいま御経験を詳しく御教示をいただいたわけでございます。  おっしゃいますように、今不公平税制と俗に言われますが、そのような制度をつくりましたときに、政府も不公平を看板にしてつくったわけではございませんし、いわんや国会の御審議においては総合的にいろいろ御判断をいただいて、政策目的のために、後になって不公平と呼ばれるかもしれませんが、アクセントをおつけになったというのが一般にその生まれるゆえんであったと存じます。したがいまして、長いこと時間がたちますと、その当時の政策目的と、また新しい政策目的が生まれる、あるいは政策目的を達成し終わったがゆえに不公平の格差だけが残るといったようなことは起こり得ることでございますので、絶えずそれは政府としても注意をしてまいらなければならないと存じております。  株式のキャピタルゲインをこのたび原則課税にいたしましたことは、ただいま村山委員がお述べになられましたような経緯からでございますが、ただ、この株式の売買を捕捉する体制というものは今のままでは依然として完全だとは申しにくい。一つでも二つでも大きなものをつかまえればそれでいいではないかということでは税務行政は公平を期し得ませんので、やはりそういう現実と比べ合わせますと、政府が御提案をいたしたようなことが、それでも原則課税ということで一つの進歩ではないかと考えておりました。  ただ、その後にいろいろなことが起こりまして、また国会でも御議論がありまして、政府が申し上げましたように売買差益というものは平均して五%であるというみなしが果たしてあらゆる場合に妥当であるかどうかという御議論がございまして、確かに考えますとそれは必ずしもそうであるとも申せない場合がございますので、この点について御議論があり、政府も謙虚に御議論を承っておるところでございます。  その中で、創業者利益というのは、やはりケースとしてはその一つでございますが、しかし市場経済におきまして創業者の創意を優遇するということは極めて大事なことであると存じます。これは過去における創意もさりながら、今後もやはり創業者の創意というものは大変に大事なものであるということ、並びに株式を公開するということも証券の立場からいえば望ましいことであるといったようなことから考えますと、創業者利益というものにある程度の課税というものはこれは先ほど申しましたようなことで必要であろうかと存じますものの、市場経済における創業者というものの厚遇、優遇と申しますか、尊重と申しますか、それはやはり考えておかなければならないことではないかと思っております。
  72. 村山達雄

    村山(達)委員 大体御感触、わかったような気がいたします。  次に、個人所得課税における問題、いわゆる水平的不公平それから垂直的不公平という問題についてお尋ねしたい、あるいはまたその対策についてお尋ねしたいと思います。  いわゆる水平的不公平というのは所得の種類によって捕捉率が違うところから恐らくきているであろう、こう思うのでございます。巷間、所得者に対する納税者割合が違うことをもって不公平の象徴だと言っておりますが、これは私は当たらぬと思うのでございます。私も村山調査会というのが党内に設けられた時に、同僚諸君とともにこの点を真剣に研究いたしました。大体納税者割合は、定かのことは申し上げませんが、まああの程度のものかと、実績値があれに近いものじゃなかろうか、そういう感触を得たということだけを申し上げておきます。  問題は、むしろそうではなくて、申告後調査したときに増差所得額が平均一体どれぐらい出てくるのか。これももちろん査察であるとか特別調査の対象になるもの、こんなものは納税者のほんの一部でございます。こういうものを標準に挙げるべきではないと思っております。  私は、日本の税務行政の執行というものは相当程度が高いと思っておるのでございます。それは執行に関するあらゆる制度を見ますとアメリカと日本が一番完備しているということからも私は言えるのではないか、こう思っているのでございます。  しかし、普通の調査で出ますと、大体普通、個人の場合はまあ少し疑わしいものを重点的に調べるということはありますけれども、調査後の所得に対して大体二割程度脱漏しておる、こういうことなのでございます。これは必ずしも脱税を意図したものでないかもしれません。やはり個人でございますから必要経費の概念が難しい、そのために家計に関する費用が紛れ込むとかそういったこともある、あるいは多少はまあ節税といいますか軽減しようという意図が働くのかもしれません。しかし、まあ大体この成績は一貫してほぼ二割というのでございます。  私は戦前の税務行政にも関係しておりました。当時は、所得調査委員の議を経て、賦課課税でございました。したがって、その当時は公開通達というのがありませんで、内部限りの通達は出ておりました。「主秘第一号」という有名なものでございます。これは今私ははっきり覚えているのでございますが、収支実調した事業所得者については、所得調査委員会に提案するときに二割減額して提案することができるという趣旨のことが書いてあったのでございます。それを見まして、私は図らずも、この問題は大変実際問題として難しい問題であり、そして今も昔も変わらぬのだなという個人的な感を深くしたのでございます。  そこで、やはりこの問題というものは、例えば複式簿記を採用しております法人の増差割合は狂いは少ないようでございます。だから、どうしてもそういった記帳とかあるいはその他の納税環境を整備する以外にこの問題はなかなか解決できないのじゃないかというのが私の考え方でございます。  問題はもう一つ、水平的な不公平の中に、御案内のように、今事業所得者その他の方は、家族の方に所得を分与するあるいは分割する制度が当然認められているのでございます。これは、今青色申告の大体平均を見ますと一人年間百四十万円ぐらい出ているのでございまして、必ずしも大きな金額ではございません。ただ問題は、給与所得者は自分の奥さんにそういう分割をすることができません。日本の税制は言うまでもなく稼得者本位、単位でございまして、昔のように家族合算をしていないのでございますから、そこに結果的に不均衡が出てくるという問題です。それだからといって昔に戻って家族合算をやるのか。今英国はそうやっております。これはまた甚だ、個人本位でいき、夫婦共稼ぎの時代でもあるということを考えると、それは行き過ぎであろうということになりまして、去年の九月の改正で配偶者特別控除の制度が創設されたことは御案内のとおりでございます。  ただ、あれを見ておりますと、所得税において年間十六万五千円、それから住民税において十四万円、これではちょっとバランスがとれぬじゃないか、これの増額をすべきではないかと実は私は個人的に考えておったのでございますが、今度の税制改革案でこの辺の手当てが行われているかどうか、その点を大蔵大臣並びに自治大臣から、配偶者特別控除の引き上げの問題でございます、お伺いしたいと思います。
  73. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 事業所得において所得の分割が行われるとおっしゃいますことはまさにそのとおりでございますが、他方で、勤労世帯におきまして世帯単位の申告ということは、これは我が国で現実の問題としては適当でないことであろうと思われますし、また二分二乗ということでございましたら、これは恐らく共稼ぎ世帯には有利に働かないというようなことがございます。  そこで、配偶者特別控除というものでその事業所得とのバランスをとるということが一つの方法と考えまして、先般これを創設いたしたわけでございますが、今おっしゃいますように、なおそれでは十分でないということから、それをこの際かなり思い切りまして増額をさせていただいて、そうしてバランスをとるということにしてはどうかと考えておるわけでございます。
  74. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 地方税におきましても国税同様に、そのバランスを失しない程度に、しかも自治体の財政を考慮に入れながらその増額を図ったところでございます。
  75. 村山達雄

    村山(達)委員 それを聞いて実は安心したわけでございます。  次に、いわゆる垂直的不公平と言われる問題に触れてみたいと思います。  我が国は昔から定期昇給、ベースアップ、こういう慣行があります。シャウプ税制以来所得の平準化が行われていることは事実でございますが、高度成長から低成長になりましてそのベースアップ率が非常に少なくなっておる、これもまた事実でございます。しかし、我が国の累進構造を見ますと本当に細かいのでございまして、去年の改正で多少階段を少なくしたとはいいながら、国税におきましては一〇・五から六〇までの十二段階、それからまた地方税におきましては五%から一六%の七段階がまだ残っているわけでございます。そういうことから申しますとこれは大変な累増感を持ってくることは当然なことでございます。それがやはり事業所得者と給与所得者の捕捉の格差とも競合いたしまして不公平感を増大している、これが一つの原因であると思います。  もう一つは、我が国の累進税率というのは、例えばサラリーマンについていいますと、その収入が一体幾らであるか、ここにだけ着目して税率その他が盛られておる。しかし、今度政府税調で調査されましたサラリーマンの生涯収支の計算によりますと、一番収入が多くなる四十代の後半、五十代の前半で、子供さんの教育費のためにかえって家計収支はマイナスになってくる、しかし税率はそんなことは構わずにやはり収入ベースで高い税率を盛っているということでございます。したがって、これらの問題についてはやはり税制の側から今の事情にアプローチして、言ってみますと、そういった感触を払拭する、不公平感、累増感を払拭する必要があると思います。  したがってこれは一つは、我々の伺うところによりますと、思い切って税率を単純化した、それから普通のサラリーマンの方は大体これぐらいで済むようにしたというようなことを大蔵大臣から伺っております。また教育費の問題については、扶養親族の割り増し控除の制度を入れてこの問題に対処しようとされておると聞いておるわけでございますが、この辺についての改正案の考え方あるいは中身について御教示願えばありがたいと思います。
  76. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆる不公平税制と納税者が感じられる内容の一つといたしまして、重税感というものが原因になっていることが多いであろうと私は存じます。ただいま村山委員が言われましたように、所得税の累進が非常に細かく、急でありますと、殊に勤労所得者が、ある段階、それは社会に出ましてある程度後、住宅ローンを払うとか子女の教育に金がかかるとかいうような年齢になりましたときに、昇給をずっといたしますとその都度新しいブラケットの方へ負担が進むということはいかにも重税感を与えますし、殊におっしゃいましたように、事業所得者と比べますと、大変平ったい話をいたしますと、クラス会なんかで集まりまして、事業をやっている人とそうでない人と、同じに世の中に出まして大変に税負担が違うというようなこと、ここらのところがやはり自分だけがという感じになりますと不公平感になってくるということは事実ではないかと存じております。  したがいまして、このたびは、社会に出られましてからほぼライフステージを一つの税率で済む方法はないかということで、今度御提案いたしましたのは、勤労所得にいたしますと標準世帯で七百三万円までは一〇%でございます。九割近い勤労者がこの税率一つでライフステージを終えるということ、終えると申しますか、それで十分だということかと存じます。なお、二〇%は千四十一万円でございますので、ここまでいきますともうほとんど勤労者の九割何分まで、九割八分ぐらいと言われておりますが、ここに入ります。そういたしますと、大抵の場合税率は一つ、出世をされて長く勤められるとか給与が上がったときに二つということでございますので、これですと重税感というものはかなり除かれるのではないかということ。  それからもう一つ、仰せになりましたように子女の教育等々に負担が非常にかかるということになりますと、やはり割り増しをしておいた方が、ある年齢層の扶養家族だけはその問題の解決に役立つのではないか、こう考えまして御提案をいたしました。  アメリカのように一五と二八の二つだけ、あるいはイギリスもこのごろそういう簡素化をやっておられるようでこざいますが、国があるいは社会がある程度高度化いたしまして所得水準が高く、また我が国は平準化しておりますが、そういう場合に、所得税というものを極端に所得の再配分機能を余りに古典的に強くすること自身は、むしろ勤労意欲を失わせてしまうという結果になるのではないかという反省があるわけでございます。我が国としても、やはりそういう観点にも立ちながら、まだ二つというわけにはまいらないわけでございますが、現実の処置としてこのたびのような御提案をいたしたわけでございます。
  77. 村山達雄

    村山(達)委員 次に、法人課税の不公平の問題について触れたいと思います。  法人でございますが、今非常に経済の国際化が行われております。そして、経済資料によりますと、日本の付加価値生産のうち民間法人企業がほとんど八割を占めておる、八割近いものが法人企業から生じているということになっております。  そしてまた、考えてみますと、ついこの間まで、一九八〇年、昭和五十五年ごろまでは、日本のいわば法人税、事業税を合わせた実効税率は五〇を切っておりました。たしか四九・四七ぐらいだと覚えております。当時、主要国はまだ税制改革が進んでおりませんで、ドイツを初めほかの国も大体日本よりは高かったのでございます。しかしその後各国は今の経済競争という点に着目し、そしてまた課税ベースの広い税制を取り入れることによりまして、この税率をどんどん下げてまいりました。日本の方はどうかと申しますと、その後、所得税の減税財源として法人税を上げるとかいうことになりまして、今日の段階で見ますと、日本の実効税率はドイツを除いては最も高い税率になっているのでございます。  確かに日本の企業は過去すばらしい業績を上げてまいりました。しかし、今後いよいよ成熟国家間で安定成長の時代に、競争と協力の時代に入るわけでございますので、やはり余りにも高い税率というものは日本の競争力を阻害し、そのことが結局外国への、海外への直接投資あるいは子会社の設立等を必要以上に誘発する。そのことは当然産業の空洞化につながる問題であり、雇用にも大変大きな問題があると思っておるのでございまして、そういう実効税率から見て、日本の法人税の法人負担はやはり適正に軽減すべきである、これが一つの論点でございます。  もう一つは、我が国の法人税の税率は留保と配当とその税率を異にして、配当に対して軽課しております。これは昭和三十七年だと思いますが、資本充実のためにはやはり配当を軽課した方がよろしい、そしてまた法人、個人の負担調整はそれなりに支払い側のところでもインセンティブをつけた方が資本増資の関係からいってよろしいのではないか、こういうことでやったのでございますが、結果を見ますと全然自己資本の充実の目的は達していない。しかも、日本の法人、個人の二重課税の問題については、やはり配当率を大事にするという考え方でございましょうか、増配をほとんど調整のためにやっていない。だから今のところは、結果からいいますと配当性向の高い会社に対する優遇税制としてしか働いていないという結果が見られるのでございます。したがって、配当に対する税率あるいは留保に対する税率は以上のようなことからしてやはり一本化が望ましい、その方が不公平でなくなる、こういう感じを我々は持っているのでございます。  以上二点について、今度の税制改革でどんな手当てをされるのか、お伺いしたいと思います。
  78. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のように、見ますと、昭和五十五年における我が国の法人の実効税率は四九・四七、御指摘のとおりでございます。その段階ではアメリカが五一、イギリスが五二、西ドイツが五六、フランスが五〇でございますから結構並んでおったのでございましたが、昭和六十年、この二、三年でございます、にわかにドイツ以外の各国が税率を大きく引き下げてしまいまして、アメリカが四〇、イギリスが三五、フランスが四二でございますので、これでございますと、我が国はこの五一をほっておきますと、おっしゃいますようにどこへでも本店を移動できる今の時代に、我が国が、簡単に言えば企業がよそへ出ていってしまう。税収の関連もございましょうが、国民生活、雇用の問題、もっと大きく日本全体の経済力の問題もございますので、このような国際化の時代にはやはり法人税率も国際的な考慮なしには決められない、そういう現実に私どもとしても即さなければならないと考えまして、このたび引き下げを御提案申し上げました。なおそれでも決して我が国の法人税率はほかに比べて大変に低いというわけにはまいりませんけれども、いろいろな事情もございますのでこれでともかく御提案を申し上げた。  なお、配当軽課のことは御指摘のような政策意図から行われたと私も承っておりますが、結果としてはいわば高率配当会社を優遇するということにすぎないような、インセンティブとしてはどうも働かないというようなことになったように存じますので、やはりこれは段階的に廃止してしまうということがむしろ税制公平に沿うのではないかというふうに考えております。
  79. 村山達雄

    村山(達)委員 ありがとうございました。  時間が限られているようでございますので、日本の消費税における不公平の問題、それから税制体系として私が不公平だと思う点、この点を一緒に述べて、そしてまた大蔵大臣の御感触を伺いたいと思います。  我が国の消費税はご承知のように個別消費税でございます。酒、たばこ、これはもう明治以来からあるわけでございます。その他いろんなものがありますが、ほとんど戦時中に臨時立法によってつくられたものでございます。やはり奢侈的なもの、こういったものから余計税金をいただくべきではないか、こういう思想であったわけでございます。シャウプ税制も、当時はやはり貯蓄率はマイナスでございましてタケノコ生活をやっておりましたから、所得税の方にがっちり力を入れて、消費税の方は取引高税あるいは織物消費税を廃止したにとどまりまして、あとは大して手をつけなかったということは、当時の事情からしてよくわかるのでございます。  しかし、シャウプ以来もう四十年たつわけでございます。その間消費に大変な変化がありまして、言ってみますと消費の多様化あるいは平準化、さらにはサービス化というものが顕著でございまして、我が国の代表的個別間接税であります物品税一つとってみましても、課税されているものと課税されてないもの、課税されているものについても税率の差等について今日だれも説明ができないだろうと思います。したがいまして、物品税の追加品目の新設とか既存税目の廃止なんか言ってみても、実際立法諭をする基準を失っておる、ここに最大の問題があると私は思っておるのでございます。  そしてまた、これは国際的に通用しない。そのことがこの間の酒の問題、特にウイスキーの問題がガットでガット違反という判定を受けた。あるいは物品税における輸入自動車、金貨あるいは金時計、こういったものを非常に高い税率でやっておる、これはやはり昔の思想で、ぜいたく品であるかないかということをみんな区別して可否を決め、税率を決めたのでございます。  しかし今日では、言ってみますと、自分の欲しいもの、自分に不足しているもの、自分の趣味嗜好に合わせて消費が行われるというような、さっき言ったような多様化、平準化、それからサービス化が行われる。そしてサービスの方と見ますと、今消費に占めるサービス支出は恐らく五三%ぐらいだと思いますけれども、税の方で出しますと国税、地方税合わせてたった一・一%にすぎない、こういうことになっているわけでございます。  そしてまた、最近における、やはりこれはもう世界的な傾向だと思うのでございますが、そういったことを勘案いたしまして、各国は相次いで課税ベースの広い間接税に移行しているということは御承知のとおりだろうと思うのです。今日OECD二十四カ国の中で日本だけが個別消費税をしいておる、我々が不公平だと思う、説明のできないと思うものをしいておる、こういうこと。また、最近アジアにおきましても、相次いで課税ベースの広い間接税のうち、重複課税をなくし、その意味で経済について最も中立的なあるいは国民経済に最も合う付加価値税に移行しているということはよくわかるのでございます。アジアでも恐らくもう五カ国ぐらいやっていると思うのでございます。そしてまた、中南米でも十カ国ぐらいやっているんじゃないかと思っておりますし、アフリカもやっておる、今共産圏も相次いで課税ベースの広い間接税に移行しておる。これはまさに国際経済の流れに沿って税制を変えるということは当然なことだと思うのでこざいます。  私は、そういった意味で、やはり課税ベースの広い間接税に移行し、あわせてサービスについても均等に扱っていくというのが一つの方向であると思っております。  もう一つ、そのことからくる租税体系の不公平という問題について触れてみたいと思います。  もともと租税の理念といたしまして、総理がおっしゃっておりますように公平、中立、わかりやすいという意味の簡素、あるいは共通のものとして徴税費が安ければ安いほどよろしい、こういうことの理念があると思うのでございます。しかしながら、一つの税目でこれらの需要を、要請を全部満たす税なんていうのはありっこないことは当然のことでございます。  まず、所得課税で申しますと、それは所得に応じた応能負担である、これは確かに言えるだろうと思うのです。しかし、先ほど申しましたように個人所得については捕捉の格差が当然伴うわけでございますから、そこに不公平という問題が出てくる。それから、可処分所得を減らすというところから非常に痛税感がくるのでございます。これはよしあしいろいろの評価がございますが、余りにもひどい痛税感はいかがなものであろうかと思います。また、徴税費も非常に高いわけでございます。  今度は消費税ということになりますと、これは、長所といたしましては、所得の種類に関係なく消費の大小に応じて課税される。その意味では所得税体系の補完税としてやはりすぐれているのではなかろうか。そしてまた比較的痛税感が少ない、これも、程度によりますけれども相当の評価を受くべきではないか、こう思います。  そしてまた、資産課税でございますけれども、これもそうでございまして、資産課税は普通、保有課税、移転課税、あるいは資産所得から生ずる所得課税、こう分かれるわけでございますが、特にいわゆる流通税系統に属しております資産の移転に伴うもの、これは痛税感が一番少ないわけでございまして、したがってどこの国でもそういうものを組み合わせておるということでございます。  現行日本の租税体系を見てみますと、今国税が大体四十五兆円、地方税が二十六兆五千億。幾らの税目で税制を仕組んでいるかといいますと、いずれも二十五税目からの組み合わせになっておるわけでございます。このことはやはり経験的に、公平、中立、簡素、あるいは徴税費をできるだけ財政的見地から安くする、こういうことは一つの税では目的は達せられない、したがってその組み合わせをやっていくのだという考えに出ているだろうと思います。  しかも、もう一つ考えてみますと、最近OECDを中心としまして国民経済計算の計算が非常に発達しておりまして、経済成長がいかなる経済の流れから生じてくるか、そしてまた、福祉行政というもの、これはもう先進国の一つの共通の政策目標になっておりますが、福祉というものが非常に大事だ、こういうことからいろいろな計算が行われておるわけでございます。  言うまでもなく、生産し、それを消費し、貯蓄し、そしてその貯蓄が投資資金に回っていく、この循環の中から出てくるのは当然のことでございます。そのときに、生産のところである所得発生のところに過重な負担をかけるということは、先ほども申しましたように可処分所得の必要以上の減殺につながるだろうと思うのでございます。現に、そういう観点からいたしまして、今世界の傾向では、所得、消費、資産に関する課税のバランスのあり方、こういうものが論じられているのでございます。     〔海部委員長代理退席、委員長着席〕  伺うところによりますと、残念ながら、個別消費税に頼っており、まだそれにしがみついており、そして所得課税偏重である日本の税制は、国税、地方税を通じてOECDの中で所得課税が最も高い国、消費課税が極端に低い国、こういうことに属しておると聞いております。この辺はやはり勇気を持って直すべきではないかというふうに思っております。  したがって、これから伺うわけでございますけれども、今度の税制改革案というものは、恐らくそういう視点に立って総合的な改正が行われると思っておるのでございますが、そこで一番大事なことは、今やろうとすることは租税体系の再構築である、こういうこと。だから、所得課税あるいは資産課税の軽減、そういうものと、それから、消費課税の課税べースを広くし、サービス課税を取り入れることによる多少の充実、これはやはり税制改革を一体としてどちらがいいのか、こう論ずべきものでありまして、そのうちの消費課税の例えば逆進性だけをとって、だから気に入らぬと言うのは、そもそも税制改革を論じているのではなくて、これはやはり消費税の長短を論じていると言わざるを得ないと思うのでございます。  そういう意味で、どんな御構想でこれらの問題を扱おうとしているのか、大蔵大臣からお伺いしたいと思います。
  80. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 幾つかの点について御言及があったわけでございますが、物品税につきましては、私も戦前の物品税から存じておりまして、大変にたくさんの品目を網羅して、たしかマッチまであった時代があると思いますが、隆盛を誇ったわけでございますが、現在八十五品目でございますか、それもまあ言ってみれば高級品、奢侈品といったような説明になるのかと思われますけれども、おっしゃいますように、国民の価値観が多様化した、あるいは平準化したというようなことから、今の物品税が何が課税で何が課税でないかということはほとんどクイズに近いようなものすら実はございまして、やはりどうかしなければならない段階になっておったと存じます。殊にサービスの消費が非常に大きくなってまいりますと、これはまずまずほとんどないということでございますから、その問題もございました。そして、例えば外国から見ますと、大型の自動車に大きな物品税を課するのは輸入を防ぐためではないかというような一種の誤解と申しますか、そういう批判があり、あるいは酒の従価税、これも高級の酒類の輸入を防圧しようというのではないかと、これは最近までこの問題を持ちかけられまして、そういうことにもなってまいりましたので、やはり大勢でございます一般消費税に移るべき時代、物品税それ自身がもう説明が非常に困難になっておったというふうに考えるわけでございます。  第二の点は、租税体系の問題といたしまして、やはり直接税は捕捉が難しい点がある。あるいは、これは痛税感という点で申しますと、どっちかといえば、程度問題でございますが、痛税感がないということは、租税としてはやはり一つのメリットかと存じますし、徴税コストからいたしましてもさようだと思います。  そういったようなことから、政府として、所得課税、資産課税、消費課税という三つの組み合わせの中から、公平、簡素、また中立、それから徴税費の問題等々をバランスをとってつくりたいというふうに考えたわけでございます。それによりまして、また、OECDの中でまことに極端に直間比率の狂っております我が国の税制のあり方も直していけるのではないか。押しなべまして、消費税そのものだけがいわば逆進的であるということから税制改革全体を御批判いただくのでなく、全体、税制改革全部を一体としてお考えいただいて、しかもこれは歳出面にも関係いたしますが、その上で御判断をいただきたいというふうに政府としては考えております。
  81. 村山達雄

    村山(達)委員 今お話があったような方向で全体の税制改正が進められるようでございますが、この際、経企庁長官に伺いたいと思います。  税制改革案は恐らく経企庁にも全部行っておると思いますが、これが全体の日本経済に与える影響、あるいは経済の成長あるいは国際収支、経常収支にどんな影響があるのか、あるいは物価にどんな影響があるのか、その点をごく、答えだけ教えていただきたいと思います。
  82. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 国会というところは摩訶不思議なところでございまして、時々、きょうもこのような事例がございまして、知っている人が知らない人に質問するというのもこれはいかがなものかなと思いますが、私は率直に、そういう意味において十分にひとつクリアに読ましていただきまして、そして御教示させていただきたい、こう思います。  今回の税制改革法においては、もちろん個人所得課税及び法人課税等について総額五・六兆円の減税を行うのに対しまして、消費税の導入、課税の適正化等による増収は三・二兆円ということにとどまりまして、差し引き二・四兆円の大幅な減税、先ほど指摘のとおりでございます。  したがいまして、税制改革全体では、消費、設備投資等の内需を中心に、経済に対して相当好ましい影響があるのではないかと期待されるものでございます。また、中長期的観点からいいますならば、個人所得の課税の累進緩和や法人税率の引き下げは、勤労意欲、事業意欲に対しまして好ましい影響を与えることなどから、民間部門を中心とした経済の活性化に資する、こう考えられるものでございます。  なお、今回の税制改革が我が国経済に与える中期的な影響は、大幅な減税超過による消費等、内需の拡大を中心として、実質成長率で見まして、大体年率平均では〇・二%程度の成長率の効果があるのだろうと考えられます。また、経常収支に対しましても、内需の拡大等を通じました輸入の拡大によりまして、大体二十億ドル程度の経常黒字の削減効果を持つものと考えられるものでございます。  さらに、消費税の導入に伴いまして物価上昇が生ずることになりますけれども、これはいわゆるインフレ的な物価上昇とは性格をおよそ異にいたしまして、この点は何回かお答えもさせていただいたのでございますが、一回限りのものと認識しているものでございます。すなわち、消費税の導入等が消費者物価に与える影響につきましては、物品税の廃止などの影響も考慮いたしまして試算をいたしますと、消費者物価の水準を約一・一%程度引き上げるであろうという見込みでございます。以上でございます。
  83. 村山達雄

    村山(達)委員 どうもありがとうございました。  いよいよ最後の時間になりました。  私は、戦後の日本経済の大きな変化がどんなものであるか、それから——いや、私の方で大体私の認識を申し上げて、最後に総理の御決意を伺いたいと思うのでこぎいます。  戦後日本は壊滅的打撃を受けまして、ほとんど混乱時代が朝鮮動乱が始まるまでは続いておったのじゃないだろうか。シャウプ税制もいわばあの当時つくられたものである、こういう認識でございます。朝鮮動乱が二十五年から二十九年まで、これは言ってみますと、明治初年と同じように、敗戦後ほとんど資本を喪失した日本の二度目の原始蓄積がそこで行われたのではなかろうか。そして、、昭和三十年から昭和四十五年まで、これは池田内閣の所得倍増計画であらわされるように、歴史上まれに見る高度成長をばく進した。しかし、四十六年にいわゆるドルと金を交換しないということからいたしまして、事実上の変動為替相場に移らざるを得なかった。これは四十八年のたしか二月に正規に変動為替相場に移ったのでございましょうが、これが一つの日本の大きな試練であったと思います。  続いて、四十八年から五十四年まで、いわゆるオイルショクが始まりました。これはまた先進国の中で最も我が国に大きな影響を与えることは当然なのでございます。これも見事に乗り切った。そして、今一番大きな変動は、やはりアメリカの双子の赤字からくる先進国間の政策協調でありまして、そのために総理が三年前プラザでもって、その政策協調に基づいて日本の政策方向は円高の方向に行こうじゃないか。そのためにはまた同時にそのことと相随伴いたしまして内需拡大をやる、市場を開放してやる、そのためには当然産業構造の変革を余儀なくされる。また、その引き金としてやはり財政も協力しなければならぬ、金融も協力しなければならぬ。そこで緊急対策が行われ、そしてまた今の通貨対策、低金利でやっていこうではないか、こういうことが行われておる。今は確かにその点では日本は非常にいいパフォーマンスを示していると思います。  これらの変化を通じて、税制の上で考えてみますと、やはりこの四十年の間に産業構造、就業構造はえらい変化をした。所得の給与化が著しく進んでしまった、そして所得水準の上昇、また平準化が進んできた。消費の多様化、平準化、サービス化が進んでしまった。こういう大きな、あるいは経済の国際化、また将来人口の高齢化、こういうことが望まれまして、租税体系のときの税負担をどこにどれぐらい配分するのが最も今後の日本の発展、日本の国民の幸せのためになるか、こういうことが今問われておると思うのでございます。  明治以来の租税史をちょっと振り返ってみたのでございますけれども、シャウプ改正までに多くの改正が行われております。明治初年における地租の問題、あるいは酒、専売益金の問題、それから明治二十年に初めて個人所得税が創設されました。三十二年に法人所得税が創設されております。そして、ちょうど日露戦争の済んだ三十八年に相続税が行われているのでございます。そしてシナ事変以来昭和十二年から臨時立法が行われました。しかし、戦費の調達には限度がありました。しかも、複雑怪奇になる。これらの体系をすっきりさせたのが昭和十五年の大改正でございます。それからはシャウプなのでございます。  私は、旧税は良税にして新税は悪税である、こういう言葉をよく知っております。その意味はと申しますと、やはり負担であるだけに、将来どんな立派なものになるかならぬかは別にして、新税の導入とか租税体系の変更というものは納税者心理には非常に影響があるんだ、そういうことを私は意味していると思うのでございます。したがって、やはり国民の負託にこたえて出ている我々国会議員あるいは政府、こういうものは、明治の先輩その他が断固として時世に合わしてやった税制、必要な税制体系の再構築、こういうことを責任を持って実施しなければ、今日並びに将来の国民の負託にこたえ得ないと思っております。  ちょうど今は物価が一番安い、低い、そうして経済の状況は非常に好景気、いまをおいていつの時期この税制改革は断行できるのであろうか。総理最大限の今熱意を持っておやりになっておることは重々知っておりますが、事、将来の日本かかわる問題でありますので、どうぞひとつ勇気を持ってこの問題に決着をつけていただきたい、この点につきまして総理の御決意を伺いまして、私の質問を終わります。
  84. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 一時間の時間でございましたが、大変含蓄のある御教導を賜りましたことをお礼を申し上げます。  今、明治二十年、所得税、その前の地租から酒の益金等からずっとお話がりました。また、戦後の経済史とでも申しましょうか、昭和二十五年シャウプ勧告——私はちょうど昨日一生懸命で探しておりましたら、社会科の先生をしておりましたのが二十三年から二十五年まででございまして、そのときの教科書が出てまいりました。そうしたら、昭和二十五年の社会科の教科書を見ますと、限界効用説なんという難しいことも書いてありましたけれども、やはり昭和五年から八年までの所得水準に返る努力をするのが今の我々の勤めだ、こんな書き方がしてありました。ところがそれが意外とはやくできたのは、二十五年、いわゆる一九五〇年の朝鮮戦争に始まる大きな変化であったと思うのであります。  したがって、今先生昭和三十年からの問題をずっとお説きになっておりましたが、二十五年は一九五〇年でございますから、五〇年代がまさに言ってみれば日本は前進の時代に入って、それから六〇年代が今おっしゃいました所得倍増、高度経済成長、言ってみれば繁栄の時代、けんらん豪華たる繁栄の時代とでも申しましょうか、それでちょうどまたその真ん中ぐらいに、不思議なものだなと、オリンピックがありましたが、OECDに加盟して、今先生またOECDのことをお話しなすったということを聞かせていただいておったわけでございます。それから七一年のいわゆるドルショック、ドルの兌換制停止、これにもお触れになりました。大変、そういう過去を振り返りながら、やはりすべての改革は歴史の変遷というものにまず基礎を置かなければならぬという意を強くいたした次第であります。  そこで、今次の税制に関しましては、今御指摘がありましたように、確かに、旧税は良税にして新鋭はすべて悪税なり。しかしまたこれには、習熟することによって必ずやまた良税に変化するであろう、こういうことが書かれておるということを、私自身もいつもそのことを想起いたしておるところであります。したがって、その習熟の期間が、審議の期間において国民の皆さん方の理解をより深めることによって習熟していく期間もまた短くなっていくであろう。したがって、この審議というものを通じながら、審議しつつ国民理解を求め、理解を求めながら審議していくという姿勢の中でこれをやり遂げて、そして二十一世紀へ向かってつなぐところの、いわゆる新しい税制体系というものを構築していかなければいかぬ。  しかも、今経済のパフォーマンスいいじゃないか、確かにそのとおりであります。こういう落ちついているときにこそ、私どもはやり遂げなければならない、これは政治的な意味においてもその使命であろうということをみずからにも言い聞かせておることを申し上げて、お答えときせていただきます。ありがとうございました。
  85. 村山達雄

    村山(達)委員 ありがとうございました。
  86. 金丸信

    金丸委員長 これにて村山達雄君の質疑は終了いたしました。  次に、二見伸明君。
  87. 二見伸明

    ○二見委員 村山学説をお伺いいたした後に、竹下上級講師と宮澤上級講師に不公平税制についてお尋ねをしたいと思うわけであります。  その前に、けさ各紙でリクルート問題について強制捜査に踏み切るという報道がなされました。一社だけならばともかく、各社がかなり大きな見出しで、きょうにもということでございました。実際にはまだお昼までのニュースでは、きょうはリクルートに強制捜査に踏み切ってはいないようでありますけれども、一社が特だねとして抜いたのであればともかく、全社が強制捜査に一両日中に踏み込むと書いたということは、それは東京地検がそれなりに、きのうにでも関係のクラブにリークしたのだと私は思います。そのことについて私はとやかく言う気持ちは毛頭ありません。しかし、この国会でもリクルート問題については集中審議も行われ、江副さんへの病床質問も行うなど、非常に関心を持っている最重要課題の一つでもあります。  法務省、お尋ねをいたしますけれども、強制捜査に踏み切ると伝えられておりますけれども、いつ踏み切るのか、それをここで御報告いただきたい。
  88. 根來泰周

    根來政府委員 私どもといたしましては、新聞の報道について論評する立場ではございませんし、また強制捜査というのは捜査の進展に応じて決定することでございますので、強制捜査の時期等について予告することは不可能でありますし、また不適当であると思います。しかし、本日に限って申しますと、本日中に強制捜査をするという報告は受けておりません。  なお、ただいまお話のありましたように、リークしたという話もございますけれども、これはもしリークしたのならばきょうはやっているはずでございますから、やっていないということは、やはりリークしていないということだと考えております。
  89. 二見伸明

    ○二見委員 そうですね。けさの新聞もきょうやるとは書いておりませんでしたね。きょうにもということでありました。一両日中にもやるということでした。それが各社が同じような報道をしているということは、これはそれなりにそういう情報が漏れたわけであります。国会でもこの問題はかなり重要視しているわけでありますから、当然あそこまで新聞に書かれているのだから、言ったらどうですか、ここで。
  90. 根來泰周

    根來政府委員 楢崎議員の告発を受けてからもう一カ月以上もたちますので、その間に相当の関係人を取り調べていることも事実でございます。そういうような状況を踏まえまして、各社が、新展開を迎えたとかあるいは逮捕するとかいう話が出たんだと思いますけれども、先ほども申しましたように、いつ強制捜査するかということはやはり申し上げることも適当でございませんし、また申し上げるような材料も現在持ち合わせていないわけでございます。
  91. 二見伸明

    ○二見委員 今、一カ月以上経過して相当数いろいろ事情聴取もしてきたということですけれども、大体何人ぐらい事情聴取されたかは言えますか。中身はいいです。
  92. 根來泰周

    根來政府委員 このリクルートの問題につきましては、従来から再々申し上げていますように、国会の御議論も十分踏まえて検察庁で検討しているところでございます。したがいまして、一カ月の間いろいろ検討もし、また楢崎議員の告発事件についてもいろいろ取り調べもしていると思いますけれども、現在、まあ相当量ということは申し上げられると思いますけれども、何人調べたかということについては、ちょっと私どもも報告を受けていないところでございますし、報告することも適当でないということを考えておりますので、ひとつ御勘弁願いたいと思います。
  93. 二見伸明

    ○二見委員 告発の中では、江副前会長、それからリクルートコスモスの池田友之社長も贈賄工作を共謀したということになっておりますけれども、この関与の有無についてはかなり解明は進んでいるんでしょうか。これは、関与があったとかないとかというシロクロの答弁を私求めているわけじゃなくて、また関与しておりますかしてませんかと聞いたって、言えるわけじゃありませんから、言わないでしょうからお尋ねしませんけれども、かなり解明が進んでいるのかどうか、そこら辺はどうでしょう。
  94. 根來泰周

    根來政府委員 御承知のように、楢崎議員の告発には、リクルートの関係者である江副氏あるいは池田氏が共犯者ということで告発をされておりまして、ただいま御指摘の問題は、すなわち告発状に指摘されている問題でございます。告発がある以上、それは解明するように努力しているというふうに思いますけれども、どの程度解明しておるか、これはまだ申し上げる段階ではないというふうに考えております。
  95. 二見伸明

    ○二見委員 根來さん、お尋ねしますけれども、今挙げられた二人の人、江副さんと池田さんについては、事情聴取したかどうかについては答えられますか。ただ江副さんの場合には、何か余り事情聴取されてないような感じもするわけです、今病院で寝ているわけですから。病院にまで出向いていって事情聴取するようなこともあるのかどうか、そこら辺はどうでしょう。
  96. 根來泰周

    根來政府委員 ただいまの点についても、従来からそういう問題はお答えできないということでお願いして、御容赦願っているわけでございますが、江副さんの問題も池田さんの問題も、もちろん検察庁が必要があると考えれば当然取り調べをいたしますし、その手段としまして病院に赴くことも当然あり得ると思いますけれども、現在は何とも申し上げかねるところでございます。
  97. 二見伸明

    ○二見委員 国会ではリクルート株については、未公開株譲渡についていろいろ疑惑が持たれているわけでございますけれども、このリクルート問題の解明が進んでいけば、こうしたことにも踏み込んだ捜査を行うことになるでしょうか。
  98. 根來泰周

    根來政府委員 ちょっと時間をいただいて説明したいと思いますけれども、検察庁が捜査権を発動するときには、やはり犯罪の嫌疑ということが必要でございます。したがいまして、犯罪の嫌疑のないところに捜査権を発動できないわけでございますけれども、その前提といたしまして、やはり嫌疑があるかどうかということを検討することが必要だと考えております。それで、従来から国会で犯罪の嫌疑がある、疑いがあると言われたことについては、その前提としまして、十分検討させていただく、また検討していると思うというお答えをしているわけでございます。  したがいまして、従来からその株式の流通についてもいろいろ疑いがあるのではないかというふうに言われておりますので、それは検討の対象の中に入れているだろうというふうに申し上げているわけでございまして、それが検討の結果犯罪の嫌疑があるというならば、それは捜査の対象として捜査を進めていくものと考えております。
  99. 二見伸明

    ○二見委員 未公開株を取得した人はいろいろな人かいらっしゃいますし、未公開株を取得したからといって、それが直ちにすべてがすべて悪ということにはならないと私は思います。一般論としてそういうことです。ただ、いろいろ国会で我々が疑問視しておりますのは、問題視しておりますことは四つの区分に分けられると思うのですね。  一つは、いわゆる政治家ルートというのがあります。もう一つは、官僚のルートに株が回ってきたというのがあります。三つ目には、準公務員ルートに回ってきているのがある。それから自治体ルートに分けられる。この四つに区分をされているわけでありますけれども、この四つのルートのどこにポイントを置いて捜査を進めているか、その点についてはお答えいただけるでしょうか。
  100. 根來泰周

    根來政府委員 この問題につきましては、先ほど申し上げましたように、捜査というわけではなくて検討という範囲、非常に概念的でございますけれども、その範囲に入ると思います。したがいまして、国会でこの問題につきまして贈収賄に当たるのではないかというふうな御質問もございましたし、また特別背任に当たるのではないかというお話もございました。そうしますと、贈収賄なり特別背任なりそれぞれ刑法上の構成要件がございます。その構成要件に当たるような話があるのだろうかどうかということがすなわちポイントでございまして、そういう点を検討しているのではないかと私どもは理解しております。
  101. 二見伸明

    ○二見委員 もう一つ、いわゆる川崎の小松前助役について横浜地検が事情聴取をしている旨報道されておりますけれども、この小松さんについての究明はかなり進んでいるのでしょうか。
  102. 根來泰周

    根來政府委員 この問題につきましては、この国会におきまして警察庁の刑事局長がいろいろ御説明申し上げております。警察と私どものいろいろの関係がございますので、若干の役割分担と言うのは若干語弊があると思いますけれども、そういうことだということで御理解いただければありがたいと思います。  また、検察庁が小松助役に関係する事件を直接調べたという報道はございましたけれども、これも何とも言いかねるのでございますが、私どもの感じとしては否定的に考えております。
  103. 二見伸明

    ○二見委員 もう一つ、先日の集中審議で改めて三つの会社名がここに出でまいりました。一つはドゥ・ベスト、もう一つはビッグウエイ、エターナルフォーチュン、正式名はたしかそういう名前だったと思いますが、捜査当局としてはこの三つの会社も念頭においているというふうに理解してよろしいですか。
  104. 根來泰周

    根來政府委員 繰り返しになりますけれども、これもいろいろのいわゆるリクルート問題の一環ということで、いろいろ疑問があるというご指摘もございますのでそれは当然全体の中の一つの問題としてとらえているものと思います。
  105. 二見伸明

    ○二見委員 根來さん、もう一点お尋ねいたします。  いわゆるリクルート問題に対する検察の取り組みの態勢ですけれども、ロッキード事件における捜査人員というのは、強制捜査当時は検事二十八名で、捜査最盛期は五十名だったというふうに聞いておりますが、現在特捜部はこの問題、どの程度の人員といいますか態勢をしいているのでしょうか。
  106. 根來泰周

    根來政府委員 特捜部の検事は三十数人だと思いますけれども、この検事が全部やっているわけではなくて、この前問題になりました野村証券の問題とかいろいろやっておりますので、全体に何人それに従事しているかということを私十分把握しておりませんけれども、まだ捜査自体が顕在化している事態でございませんので、仮に強制捜査ということになりますと何人という数も御報告できるのでございますけれども、今のところちょっと何人ということは申し上げかねる事態でございます。
  107. 二見伸明

    ○二見委員 私もこの問題はちょっと聞きにくいというか、要するに憲法論としては、検察作用も行政作用であるから国政調査権の調査の対象とすることができる。しかし、原則はそうだけれども、起訴、不起訴についての検察権の行使に政治的圧力を加えることを自的とすると認められるような捜査や、また起訴事件に直接関連ある捜査の内容を対象とする調査は許されないという憲法解釈もある。今伺ったのは、別に捜査の内容を対象にしたものだとは私自身は思っていないわけです。ですから、本来であればもう少し踏み込んだ御答弁をお願いしたかったわけでありますけれども、どうもそれもかなり厳しいようでございます。  いずれにいたしましてもこの問題は、我々はここに何人かの証人喚問も要求しておりますし、これからも当委員会でこの究明は鋭意努力が続けられていくわけでございますので、この問題についての質疑は以上で終わり、きょう本来の内容である不公平税制についてお尋ねをいたしたいと思います。法務省結構でございます。  実は、今のリクルート問題と密接に関係あることなんですけれども、こういうリクルート問題というのが起こってきた事実を見ながら、もしそれが贈収賄に発展するものであるかどうかという見きわめ、解明が一つは必要です。と同時に、二度とこういうほかなことが起こらないように体制を整備するということが必要です。二度と起こらないように、再発防止の手だてをきちんとするということも国会に課せられた大事な役割だと私は思います。  そう思いますと、やはり株式店頭のあり方について私はこれから検討しなければならないのではないかと思います。  例えばリクルート関連では、安定株主づくりの名目で政治家だとか国家公務員などに株式をはめ込んだことが問題になった。そしてそれがどこに、だれに行ったかわからない。だから今我々この国会、この委員会でいろいろと手だてを尽くしているわけでありますけれども、もう二度とこういうことが起こらないようにするためには、安定株主づくりのためにどんな人に株式が渡ったのか、何株渡ったのかというようなことが一目瞭然でわかるようにしなければならないのではないか。新たに企業に譲渡先や割り当て先のディスクローズ、いわゆる公開を義務づけたらいいのではないかという意見が大蔵省内部にもあるようだけれども、むしろそれは積極的に踏み込んでやるべきだ。やみの中にわからなくするのじゃなくて、むしろだれか何株未公開の株を受け取ったということを一目瞭然にしておけば何でもないことなんです。そうした法律改正をなさるお考えはございますか。
  108. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 このたびの出来事に関しまして私ども考えなければならない点は二つの方面に分かれておりまして、一つはただいま仰せになりました証券取引行政との関連でございます。もう一つは税法の問題でございますが、ただいまお尋ねは前者についてでございました。  それで、先般もちょっと申し上げましたが、証取審議会に不公正取引特別部会というものを設けていただいておりまして、この九月早々に実はこういう問題について御審議をお願いを始めたところでございます。それは一つは、今おっしゃいましたように公開前の株式譲渡及び第三者割り当て増資でございます。もう一つの問題は公開株そのものの配分、それからその価格算定方式、大まかに申しますとこの二つのことの中にただいま仰せになりました問題が入るわけでございますが、そういうことについて今後いかにあるべきかを不公正取引特別部会に実は御審議をお願いをいたしまして、既に御審議が始まっております。できるだけ早く結論をいただきまして、それに従いましてどのような措置をいたしますかを決めさせていただきたいと考えております。
  109. 二見伸明

    ○二見委員 大臣が二番目に触れられたのは、いわゆる公開価格の決定に関することですね。今は類似会社比準方式というので、似たような会社の株価でもって公開するときの株価を決めようという方式になっておりますね。これをむしろそうではなくて、今検討されているのは二段階分売方式というのですか、百出すうち二十なら二十をとりあえず出しておいて、十日間ぐらい売買の実態を見て、それから価格を決めて残りの八割を出そうとかという、そういう二度階分売方式というのが検討されているようでありますけれども、類似会社比準方式というのは必ずしもすべての会社にはなじまない場合がありますね。その点についてはやはり二段階分売方式の方にこれから方式を変えていくのかどうか。  ただ、これは証券会社が何か大分異論を唱えているというふうにも聞いておりますけれども、大蔵大臣、そこら辺はいかがになっていますか。
  110. 角谷正彦

    角谷政府委員 先ほど大臣からお答え申し上げましたように、証券取引審議会不公正取引部会の店頭公開制度に係るいろいろな問題の中に、やはり公開価格の算定のあり方というのがございます。これは端的に申し上げまして、今の実際の公開価格のもとで最初の初日の初値というものがやはり二割程度平均しましても乖離があるといいますか、その分利得を得られるといったふうな状況にございます。それはやはり公開価格の算定に問題があるのか、あるいは初値の算定に問題があるのか、いずれにいたしましても両方の面からいろいろ議論しているわけでございます。  その中で御指摘の公開価格の問題、類似会社比準方式でやっておりまして、これは会計上認められた一つの方式でございますが、これが果たして現実に合っているのかどうか、もうちょっと需給関係なりなんなりを反映した方式ができないか、あるいは同じ類似会社比準方式でございましても、その算定の要素の中でもうちょっとウエートの置き方を変えることによって適正な価格形成ができないか等々、いろいろな議論がございます。  これは正直言いまして議論を開始したばかりでございますので、まだどういう方向で結論を得られるという段階まで至っておりませんけれども、広く各界の意見を聞きまして、今御指摘の問題にできるだけこたえられるような形の案をつくってまいりたいと考えているわけでございます。まだ結論は得られておりません。
  111. 二見伸明

    ○二見委員 大臣、これはいずれにしても今国会は無理でしょうけれども、通常国会には法律としてお出しになりますか。
  112. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 特別部会の結論いかんによることでございますが、行政措置をもって足りるかあるいは法律を必要とするか、いずれにいたしましても、その結論に従いまして、できるだけ早く年内に結論を出さしていただくべき問題だと考えております。
  113. 二見伸明

    ○二見委員 総理大臣、パーティー課税についてお尋ねをいたします。  パーティー課税については、まだこの委員会で議論される前に、竹下総理もパーティー課税については前向きの発言をされました。安倍幹事長もたしか前向きの発言をされております。野党の党首もパーティー課税についてはやるべきだという発言をされておりまして、言うなれば政治界のトップは、パーティー課税はやるべきであるということに話がまとまっているわけであります。ところが、その後雲行きがおかしくなってまいりまして、どうも政治資金そのものに課税をするということはなじまないのではないか等々の結論が出てまいりました。出てきた議論について私もよくその気持ちというか、理論は十二分に理解するけれども、しかし、政治資金はいかにあるべきかというそうした政治家の純理論でもって、このパーティー課税を放置してもいいとは私は思わないのです。  実は私は大変心配するのですけれども、先日我が党の水谷委員あるいは橋本委員質問に対して、総理は、パーティー課税については政治資金規正法から入っていかなければならないと述べられました。ということは、パーティー課税は総理としては本音の部分ではあきらめたということなのか、それとも、そうではない、何とかうまい方法があるならばパーティー課税はやりたいという依然として強い気持ちは持っているということなのか。これを額面どおり受け取ると、政治資金規正法から入るということになるとパーティー課税はだめかな、こう受けとめられるわけでありますけれども、総理の本当のお考えはいかがですか。
  114. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 若干行政府の立場からは、まず一つは、お二人様の御質疑に対してお答えとしては踏み込み過ぎたかな、過去長い間政治資金規正法等の勉強をさしていただいた経験を語ったというようなことにして、ひとつ御寛容をいただきたいわけです。  端的に、きのうのお話等も私も聞いておりましたが、やはりパーティー課税ということが論ぜられるようになったのは、政治家を励ますパーティーというものが、言ってみればどういう議論があろうと、情緒的不公平感というものが国民全体にあるじゃないか。情緒的不公平感というのもきょう初めて使わさしていただいて、言葉がよかったか悪かったかなと思っておるのでございますけれども、理論的不公平感等からいってみると、やはり本筋は政治資金規正法から入っていく。私の経険で随分議論したことがありますが、政治に行政権が介入する一つの穴をつくることそれそのものは、政治至上主義的な物の考え方から、断じてこれは抑えなきゃいかぬというのが共通した議論としてあったこともございました。  が、きのう聞いておりまして、私もその情緒的不公平感というのはわかるものですから、しかし現行法におきましても、その収益を私生活等に使っておれば、これは当然のこととして雑所得等において総合課税をする性格のものでございますから、これをきっちりやればいいじゃないかという議論もあり得るかもしらんな。  それで、そんなことを考えてみますと、そういう一つの情緒的不公平感というものも、筋からいえば収支をはっきりして、政治活動に使ったものとそうでないものに使ったものとできちんとした総合所得の中において雑所得としての位置づけをしていけば、それでできるということになります。これは二見さん百も承知の話だ。  が、それであって情緒的不公平感というものに今対応できるのかな。すべて理論的不公平感の問題で議論すべきだが、政治というものから見れば情緒的不公平感というのは確かにある。そうすると、印紙税というような議論が出ておりますので、一つの考えとして自分も仲間に入れてもらおうかなという感じを率直に持ったわけでございます。したがって、行政府としてどう思うか、こういうよりも、おまえの経験としてどう考えるかというお尋ねとして、友情に甘えて、それであえて今のようなことを率直に申し上げてみたわけでございます。
  115. 二見伸明

    ○二見委員 ぜひお仲間に入っていただきたいわけでありまして、例えば私がパーティーを開いて一億円もうけた。大きく言わせてもらいますけれども、一億円もうけて、その一億円を、そっくりゴルフの会員権を買っちゃったり、あるいは自分の家の新築に使ったりすれば、これは雑所得で総合課税で私は全部税金に持っていかれるのです。この一億円を全部政治活動に使えば、私には一銭も税金はかからない。私が使ったんじゃないんだから、政治活動として使ったわけですから。それは純理論としてそのとおりなんです。しかし、それはなかなか国民の、今おっしゃった情緒的不公平感という点から見ると理解しかたいものがあります。理解しない国民が悪いのだと政治家である我々は今言える段階じゃない。そうなると、多少論理に飛躍はあるかもしれぬし、粗っぽいかもしれぬけれども、政治家の資金集めのパーティーに限定して課税しなければならないんじゃないか。  今まで取りざたされてきたのは、一つは、野党の我々が言ったのは純収益に対する二〇%の課税というのがあります。パーティーをやった、一億円売り上げた、そのうち経費が半分で五千万、残り五千万に二〇%かけようというのが野党の案だけれども、これは大変ある面では行政府、例えば税務当局が、本当に売り上げは一億円ですか、本当は一億五千万だけれどもごまかして一億円にしているんでしょうとか、これは入り込んできますね。政治資金の中に入り込んでくるので、野党が提案したものを野党の私が首をかしげるということはいいことじゃないけれども、私個人としては余りよろしくないなと思っているわけです。  そうすると、名前は申し上げませんけれども、ある自民党の幹部の方は、消費税方式ではどうだとおっしゃる。消費税に反対している我々が消費税方式をいいなんて言えるわけないし、しかも消費税方式でも、やはりこれは幾ら売れたんですかということになれば税務当局が入り込んでくる。これはよくない。  そうなると、税務当局が一番入りにくい形は印紙税方式かな。例えば入場券を一万枚発行して印紙税を払って、実際に売れたのが八千枚であれば、二千枚分返してもらえばいいんですからね。私はそれが一番いいんじゃないか。そうすればはっきりしますから、税務当局が介入するわけがない。発行して実際に売れた分だけ税金を納めればいいわけですから、こんなわかりやすいことはない。  もちろんこれには、なるほどそういうことになればというので脱法はあると思う。例えば二万円未満は免税にしますよというと、じゃ一万円券をつくって、本当は二万円なんだから二枚買ってくれとか三枚買ってくれということが出てくる。あるいは案内状だけ出して、券は出さないからお祝儀でくれ、そういうのもある。しかし、例えば政治家たる者で、二万円のパーティーをやろうと思って、一万円券を出して税金をごまかそうなんという政治家がいたとするならば、ごまかそうというか、合法的に税を逃れようなんという政治家がいたとするならば、そんな政治家は絶対大臣にはなれないね、これは。大変粗っぽい話だけれども、そのぐらいの決断をしてパーティー課税というのはやらなければ、私は国民の持っている漠然とした不公平感、総理のおっしゃる情緒的不公平感、それはぬぐい去ることはできないと思う。  今我々はここで不公平税制の議論をしているし、政府の方としては一日も早く政府法案審議に入ってくれと言うのだけれども、国民の方から、おまえの方はどうなっているのだと、こう言われたら答えようがありませんね、返事のしようがありませんね。総理大臣行政府の長としては言いにくいというお話でしたけれども、どうか我我の仲間に入ったつもりで率直な御意見を承りたいと思います。
  116. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 行政府の長としてでなく仲間に入ったつもりで言え、こうおっしゃいます。  そこで議論してできたのが、自由民主党においてパーティー開催の自粛に関する申し合わせというものを行って、必ず政治団体、任意団体でも政治団体が開催し、その収入、支出の状況を明らかにして節度ある開催をしよう、こういうことで自粛に関する申し合わせというのが決まったのです。  今おっしゃいますように、消費税方式というのも一つの——それを聞きました私も、消費税に反対している我々が消費税方式ということに賛成できるわけがないじゃないかとかいうようなお話があったということも聞いておりますが、この印紙税というのは、考え方によれば入場税方式のような感じになりますが、それがなじむものかどうかということと、基本的にもう一つ考えなければいかぬなと思いますのは、これから議論の上でいろいろな結論をお出しになるわけでございましょうが、いわゆるパーティーは収益事業かということになりますと、収益事業という中に法律的に読めるのかなという感じがします。したがって、今のような知恵がだんだん出ていくわけでございますから、私は、それこそ専門家のプロ中のブロの皆さんがお話しなすっているわけですから、それの仲間入りと申しましても知識水準がそれに達しませんけれども、離れつつその感触を受けとめながら、自分なりにも模索していかなければいかぬなというふうには思っております。
  117. 二見伸明

    ○二見委員 結婚式のパーティーというのはこれは収益事業じゃありませんけれども、政治家である我々がパーティーをやれば、収益事業というのは適切な日本語じゃないけれども、ちゃんと利益は出るようにやるわけでありますから、それは一種の収益事業とみなされてもやむを得ないのじゃないかと思うし、印紙税というか、まあ入場税方式ですね。  しかも私は、これが永遠に崩れないすばらしい方式だと自分でも思っているわけじゃないのです。やはり原則は、総理もおっしゃるように政治資金規正法から入るというのが本筋だと私は思う。しかし、その本筋を言っていたのでは国民からの期待にこたえられないし、いわゆる情緒的不公平感を払拭することもできないから、こんな粗っぽい方式をやっているわけで、もしやるとするならば、私はこれは時限立法でもいいと思っているのです。五年とか十年とかの間に政治資金規正法を見直す、あるいはきちんとした収支の、あるいはパーティーを自粛するとかいろいろなことが行われる。そうしたことをやりながら五年とかあるいは十年という時限立法でやるし、もし法律をつくるというならば、これは法律でやる以外にありませんから、法律は印紙税法とか入場税法を使うのじゃなくて、租税特別処置でこれは処置するか、あるいは新法をつくるかということになるだろうと思うのです。  そういうことも含めて、改めて総理の御見解を承りたいと思います。これは大蔵省としては、それがいいですということはなかなか言いにくい立場だから、大蔵大臣にはお尋ねしませんけれども、総理としてもう一度御見解を賜りたいと思います。
  118. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 そこで古い話になりますが、いわば政治家のこのパーティーというのを任意団体が行うのじゃなく、政治資金規正法の届け出団体がこれを行うことにして、そして公明選挙推進連盟というようなところへその一割を納めたらどうだ、こんな議論もしてみたことがあります。そうすると行政の介入はなくて、そしてそれが政治浄化のために使われていけばいいというような考えで、そんな議論をしたこともございます。  確かに、要するに税法上どうなるのだ。ただ私が入場税と申しましたのは、古い昔の入場税のことを思い出して話しておりますので、今の法律はちょっと違いますけれども、そういう議論をしたことがございますし、今おっしゃった、さはさりながら認知していただいた情緒的不公平感というものに対しては、何かやらなければならぬじゃないかというその何かという問題について、私も、新聞紙上では前向きだ後ろ向きだといろいろ書かれながら、そのプロの議論を絶えず承りながら模索しておるというのが現状でございます。そんなことを、収益事業の範疇に入らぬからできるわけないじゃないかというようなことで突っぱねるという考えはございません。
  119. 二見伸明

    ○二見委員 いずれにしても、この問題はこの国会できちんとした決着といいますか方向づけだけは出して、国民の信頼を回復したいと我々は念願をいたしておりますので、そのことも総理はぜひともお含みおきいただきたいと思います。  その次に総合課税について。大分政府の方も総合課税については前向きになりつつあるように感じておりますが、私はやはり総合課税の時代はもう来ていると思いますね。日本人もマネーゲームでもうける時代になりました。日本人個人金融資産は六十二年末で七百三兆円だということですし、そのうち株式は六十九兆円だということになりますと、利子配当を含めて総合課税に進まざるを得ない環境が着々と整いつつあるのではないかと思いますけれども、これは総理大臣あるいは大蔵大臣、どちらでも結構でございますけれども、この点についての御認識はいかがでしょうか。
  120. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 基本的には、仰せられますように所得はできるだけ総合していきまして、累進税率の適用をするというのが本来であろうと存じます。それは、基本的におっしゃいますことに私ども同意でございます。現実の問題としては、何かの政策目的あるいは現実に課税の捕捉に問題があるといったようなことで、変則は幾つかございますが、基本は私はやはりそういうことであろうと存じます。
  121. 二見伸明

    ○二見委員 同じことの繰り返しを今度は外から眺めてみますと、私は、国際化という観点からも総合課税に進む必要があるのではないかというか、納税者番号をとらざるを得なくなるのではないかと思います。  ヨーロッパでは、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、イタリアが納税者番号を採用しておりますし、イギリス、フランス、西ドイツはこれは採用しませんですね。フランスは、平等よりもおれは自由の方がいいやというので、ありませんし、イギリスの場合も、新保守主義の経済理念でもって番号は用いないことになっているようであります。しかし、一九九二年にECが市場統合をすることになっておりまして、今いろいろな面で各国間のすり合わせが行われております。  ですから、一九九二年にECの市場統合がどの程度できるかということにも関連はしてくるのですけれども、いずれにいたしましても、ヨーロッパでも市場統合への動きにつれて、今度は国境を無視してアングラマネーが動いてくるのを、それはフランスもどこの国もいいというわけにいきませんから、何とか名寄せしてこれを捕捉しなければならぬなという動きが出てくる。番号を嫌がっているフランスだとか西ドイツも、西ドイツはたしか連邦政府でやらずに州でやっているのだと思いますけれども、名寄せについて全く無関心ではいられなくなってくるのだと私は思います。そういう国際的な動きがある。  もう一つ、カナダがことしの九月からアメリカと全く同じ番号制を採用することに踏み切りました。これは私は、アメリカとカナダの自由貿易協定というものと全く無関係だとは思っておりません。そうなると、例えばECが名寄せをするようになった、アメリカも既に番号でもって名寄せをするようになった、そのときに日本だけが番号で名寄せができないということにはちょっと無理があるのではないかと思います。そうした国際的な働きからきても、やはり私は番号の採用ということは、好き嫌いはあるけれども、一つの方向でやむを得ないのではないかなと思いますが、大蔵大臣の御認識はいかがですか。
  122. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 課税あるいは徴税の目的からいいますと、これはもうまことに効率的であることは間違いございませんが、これはもう二見委員がよく御承知でございますからくどくは申し上げませんが、いろいろな問題がございまして、これはやはりその国が過去において全体主義的な支配と申しますか、そういう経験を持ったか持たないかにも微妙に関係をしておるように見えますので、そういうこともよほど考えておかないといけませんで、いずれにいたしましても、これは具体的に税制調査会の小委員会をお願いいたしまして、各国も視察をしてこられました。その御所見を近くまとめられることになろうと存じますので、これを私ども大事なこととして注視をしておるわけでございます。     〔委員長退席、海部委員長代理着席〕
  123. 二見伸明

    ○二見委員 どうも総合課税ということになると、その手段としてすべての所得を捕捉しなければならない、そのための番号制の導入ということになります。我々も理屈ではそう言っておるのでありますけれども、世論調査をすると、世論の反応がまた厳しいのですね。これは我々も困っているわけです。  これはある新聞の九月の世論調査によると、キャピタルゲイン課税に七一%が賛成、一五%が反対。我々はよしやっぱりキャピタルゲイン課税はやろうと意を強くしたのでありますが、そのための番号制については、取り入れた方がよいというのが二七%で、株などに限って取り入れるというのが一五%で、取り入れない方がよいというのが四三%。国民は一方でキャピタルゲインは課税せよと言いながら、そのための手段である番号については、おれは嫌だよと非常に相矛盾した行動をとっていることで我々も戸惑いがあるわけです。  考えてみますと、確かに二見伸明は〇〇一番とこうつけて、海部俊樹先生は〇〇二番とこうつけられる、それから後ろから激励してくれた浜田幸一先生は〇〇七とかこうつけられて、この番号は何のための番号かいなというと、あなたから税金を丸ごといただくための番号ですと言われて、これは喜ぶ人は正直言っておりません。幾ら公平とはいいながら、それは嫌だよということになります。  ですから、これから番号を採用するということになりますと、やはりその番号をもらうことが、自分に番号をつけられることが何らかプラスになるというインセンティブがないと、国民は積極的に協力しません。アメリカで社会保障番号をつけたのは、まさにそれは年金その他に関係して、自分にプラスになってくるから社会保障番号制度をとっているわけであって、イタリアはイタリアで別のやり方があるわけでしょう。そうすると、これは税金を取るための番号なんですよというものじゃなくて、いやおれはプライバシーだ何だ、もちろんプライバシーの保護の問題もあるけれども、税金を取られるためにおれは番号をつけられるのか、それはたまったもんじゃないという拒否反応というのは、これからもかなりあると思います。  我々は総合課税を進めるために番号制は必要だと思うけれども、その拒否反応をなくすような、マイナスのインセンティブじゃなくて、プラスのインセンティブがあるような制度というものをこれから知恵を出して考え出さなければいかぬと思いますが、そうしたアメリカやイタリアのとっている制度を参照しながら、大蔵省としてはどういうようなことをお考えになっておられるか、もし固まった案があればお示しをいただきたいと思います。これは大蔵大臣でなくても、事務当局でも結構でございます。
  124. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 御指摘の点はまさにポイントであろうかと思うわけでございます。アメリカのように、既に長い期間社会保険番号として使われていたものを税の方で使わせてもらうという体制に移行した国もございますれば、そういったものがないけれども、いわばまず国民の皆さんにそれを持ってもらうという以前の問題として、税務当局内で整理番号として使ってまいったものを、そうしたものとして社会にお願いをするというイタリア方式もあるわけでございます。  税務当局におきまして番号をつけさしていただくということは、現時点におきましても国税、地方税当局、それぞれ住民税であれ所得税であれ整理番号はございます。それをどのようにして経済取引の中に必ず使っていただく、そういう番号を使っていない取引は、じゃどういう性格のものとして位置づけるのか、そこらのところがまさにポイントであろうかと思うわけでございます。  そういった点も含めまして、税制調査会の小委員方々、ヨーロッパの方式、アメリカの方式、それぞれ実地に出張して調査をしてまいって現在まとめておるところでございます。したがいまして、そうした方向につきまして現時点で大蔵省として特段のものをただいまは持ち合わせていないわけですが、御指摘のような点も含めて今後中で、税制調査会それからまた私ども、詰めた議論をしていく段階にあるところでございます。
  125. 二見伸明

    ○二見委員 総理、この総合課税について最後の質問になるわけでありますけれども、私は総合課税は四年後にぜひとも導入ということで見直しをしていただきたいと思います。  ただ、そのときの経済情勢もいろいろありますので、今ここで即断はできないんだけれども、総合課税ということで所得税に関する課税ベースがうんと広くなる。そうしますと、やはり所得税の最高税率ということもあわせて検討する必要があるんじゃないのかなと私は思います。所得税の最高税率だけを引き下げれば、それで減税された高額所得者は、それを株に回したりあるいはまたマネーゲームでお金を稼ぐ。それは総合課税でなければ別の資産の不公平を生むわけであります。ですから、総合課税にすれば最高税率を検討しても全部税金がかかってしまいますから、株のもうけは税金、銀行預金の利子も税金、しかもそれは総合課税で累進性でかかってまいりますから、私は総合課税をやる場合には、まあ政府案で五〇%になっているんだけれども、現在の所得税の最高税率も検討したって一向に差し支えないと思っています。  と同時に、中にはおれは絶対番号は嫌だというのがいると思う。何から何まで知られてしまうならおれは生きていられない。そういう人のためには、総合課税をした方が得か、あるいは分離課税をした方が得かという損益分岐点みたいな、かなり高い分離課税を選択として認めても一向に差し支えないのではないか。総合課税よりも選択分離の方がかなり有利だとなれば、みんなこっちに行ってしまうけれども、そうじゃない、どっちでもかかる実際の税負担は余り変わらないんだ、ただこちらの場合にはおれは番号をつけてないだけ有利だ。少し高いかもしれぬ、総合課税の方が何か幾らか得する、税金は安くなる感じだけれども、しかし番号をつけてない点だけ気分的に楽だからいいや、というような思い切った高率の分離課税も選択としてつけてもいいのではないかと思いますけれども、総理の御見解はいかがでございましょうか。
  126. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 なかなかこれは一口に答えるのは難しい話でございますが、確かに番号制のことを考えましたときに、みんながこれは税の番号だと意識しない番号のつけ方はないかというので、社労関係の方が、それはやはり人間全部この番号を持っておって、どこかで行き倒れしておったら、その番号を見てコンピューターへ打ち込めば、どこどこの人で、血液型は何だからすぐ輸血はそれでやればいいじゃないか、人間全体の生命を守るための番号だというふうなところからアプローチしてみたらどうだ、こんな話も私も昔聞かされたことがございます。  が、もう一つ、番号制を導入したが、それが余り機能していない実例も確かにございます。番号を使ってやる場合と、まるっきり使わないアングラマネーの部分があったという実例もあるようでございますが、いずれにせよこの問題は、今大蔵大臣からお答えがありましたように、せっかく今小委員会をつくって皆さん方ヨーロッパ等を視察していらっしゃいますから、ある種の方向というようなものは私どもお知らせいただけるようなことになるのじゃないかなと思います。  それから総合課税の問題というのは、これも大蔵大臣からお答えになったとおりでありますが、ただシャウプのときは本当は上は五〇%なんです。それで八段階でございます。その後だんだん上がって、一番長いのが十四年間ぐらいが十九段階でございました。ただ、あれはよく勉強してみますと、大変な高度経済成長期だったから、要するに、ある時期まで来たらいきなり次の高い税率になるというのをなだらかにするために、十九段階というような仕組みがあったのではないかなというふうに勉強させていただいたことがあります。  今度出しておるのはいわば五段階というところでございまして、したがって総合課税というものは、必ず応能主義によるある種の累進性というのはお互いの念頭にありますけれども、フラット税制であっても、二百万の人の一〇%なら二十万であり、二千万の人の一〇%なら二百万であるわけですから、その応能主義的な要因は、フラットであっても議論のうちには入るのではないか。したがって、この際、他の先進国にも見られるように可能な限りフラット、二段階にすぐできるわけではございませんが、五段階にさせていただこう、こういうことになっておるわけでございますので、この総合課税と番号制、そして総合課税ではあるが応能主義による直接税、所得税等のいわゆる累進性を可能な限りフラットにするという考え方と、もっと累進構造をきつくしろという考え方とは、まさに総合的に考えなければいかぬ問題ではないかな。  したがって、二見さんも議論しておりますと、これだという決め手は、もちろんお持ちになっておらぬと言うと失礼ですが、模索中とこう申しましょう。政府でも今まさに小委員会等で模索中であって、原則総合課税への移行、その考え方は理解できるのでありますが、その間どういうふうな調和をそこに求めていくかということではないのかなということを感じました。
  127. 二見伸明

    ○二見委員 キャピタルゲインのみなし分離についてお尋ねしますけれども、今までのキャピタルゲインについては原則非課税だった。これを今度は政府の改正案では原則課税としましたね。しかも納税者の選択によって申告分離課税、これは一年間の損益を合計して自主申告して、値上がり益の二〇%を納めるという申告分離課税と、さもなければ源泉分離課税、いわゆるみなし分離という制度ですね、利益がどれだけ出たかを問わないで、売却額の五%を利益とみなし、その二〇%、つまり売却額の一%を証券会社が源泉徴収するいわゆるみなし分離課税、この二つのどららをとってもよろしいですよというふうにしようとしていますね。これは新たなる不公平を生むことになるのじゃないかと私は思います。一つは、損が出たら税金のかからない申告分離をしよう、もうけたら源泉分離で一%で済ませてしまおう、これは不公平ではありませんか。
  128. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 そういう意味におきましては、申告と源泉の選択がある場合におきましても、それを選択いたされた方は何年かはそれを使っていただきたい、どっちかに割り切っていただきたいという考え方ももちろんあるわけでございますが、そうした場合におきましても、結局前提となりますのは、御指摘いただいておりますようなその把握体制の問題でございます。  申告分離で全部お出しになってきたとおっしゃられても、その方がほかに取引をしておられるのかおられないのか、そこはその店舗だけでの取引ということで、証券取引はすべて一口座だというふうなことでも制度化されていれば別でございますが、そこは極めて自由、弾力的でございますから、そうした大量的、継続的、弾力的に行われる証券取引につきまして何らかの把握体制が確立されていない場合におきましては、結局は御選択にまつほかはない。  そうしたものが完全に公平なものであるとは必ずしも私どもも思っておりませんが、あわせて把握体制の整備を模索しながら、とにかく御指摘のような若干の不公平はございましても、原則課税にこの際踏み切るというところで、いろいろな点につきましては目をつぶる点はありましても、とにかく原則課税に踏み切るということを最大の前提といたしましたところから、こうした方式を御提案いたしておるところでございます。
  129. 二見伸明

    ○二見委員 原則課税に踏み切りながら新たなる不公平を生じさせようとしている。これはやはり決して見逃すことのできない点だと思います。特に与野党政策担当者協議の間でも、果たしてこれで、一%というのはおかしいのじゃないかと私なんかは思っておりますし、これは二ぐらいにしたらどうだ、二%ぐらい取れという議論もしているわけでありまして、その点もひとつ大蔵省は念頭に置いていただきたいと思います。  さらに、今度はみなし一%をつけたことによって、有価証券取引税は〇・五五から〇・三になるのでしょう。みなし一%というのは個人ですね、企業は関係ありませんね、これは。企業にとってみれば、有取税は〇・五五から〇・三に下がるのです。法人にとってはこれは大変いいことですね。個人にとってみれば、要するにみなし一%といえば何か税金みたいな感じがするけれども、何のことはない、今まで〇・五五の有取税を一・三にしたのと同じでしょう。有取税でしょう、みなし分離というのは。みなし分離が有取税と全く違うのだったら違うと言ってください。
  130. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 ただいま申し上げましたように、原則課税にとにかく移行するということを大前提として御提案したところでございますので、そうした御指摘があること、あり得ることは私どもも承知いたしておるところでございます。  ただしかし、とにかく源泉分離でございましても、ここは本人がそれを選択されたということは、五%の利益ありというふうな形をとってお願いをするわけでございますので、あくまでもこれは所得課税として御理解をいただきたい。  一方、有価証券取引税は、これはまさに流通税でございますので、理論的にも所得の有無にかかわらずお願いをする税金でございますので、そこははっきりと違うわけでございます。  法人の点の御指摘は、まさにそのとおりでございますが、株式取引と申しますのは、先ほど申しましたように極めて大量な取引でございます。その際におきまして、法人、個人を区分いたしまして税率を異にいたしましてお願いをするということは、この税の性格からいたしましてなじまないところでございますので、取引税としては一本にさせていただいて御提案しておる。ただ、下がる分につきましては、法人の利益がその分増加するわけでございますので、その分は相応の法人税としての御負担もお願いをできるところでございます。従来この有価証券取引税は、何とかキャピタルゲイン課税の原則課税化へいたしたいという検討の中で、いわば代替的に流通税である取引税の引き上げをお願いをいたしてまいった経緯もございますので、そのときには個人も法人も一緒にお願いをしてきたという実態でございます。そうした点も全体を踏まえまして、今回引き下げるという点におきましては、流通税としてはやはり一律にお願いをいたしておるところでございます。
  131. 二見伸明

    ○二見委員 水野さんいろいろおっしゃいますけれども、要するに個人の投資家にとってみれば、損が出たら税金のかからない申告分離、もうけた場合には源泉分離、こういう使い分けで個人の間で不公平がまず生じるという点が一つあります。  今度は個人と企業と比べてみれば、個人にしてみれば、今までは有取税は〇・五五だった。しかし今度は実質的には有取は一・三になる。法人の方は〇・三になる。個人と企業との間で不公平が拡大するということ以外の何物でもないと私は思います。もう一度御答弁ください。
  132. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 個人同士の間の問題といたしますれば、その人に所得が発生をいたしてない、あるいは損失であるというときには、これは所得税として課税をお願いするということはできないわけでございますから、形式的なお答えかもしれませんけれども、源泉分離を適用されたという方は、それは所得ありの方、源泉分離でなくて申告分離を適用されたという方は、これは所得ゼロあるいはマイナス、所得があれば所得税をお願いし、所得がなければこれはお願いをできないところでございますので、その点は、その両者の個人の間で不公平があるというふうにはやはり考えることはないのではないか。所得のある方は源泉を適用され、ない方は申告分離を適用されたという、結果としてそうなっておるということではないかと思うわけでございます。  ただ裏の事情として、いろいろな事情から同じような方が源泉分離をされ、同じような方が申告分離をされたという事態を想定しての御議論でありますれば、それはそれとしてわかるわけでございますけれども、やはり税制を仕組む上におきましては、所得あり、その方は所得があるから源泉分離を適用されたというふうに考えるのが筋でございますので、個人間に不公平を招来するという点につきましてはいかがかなと思うわけでございます。  法人の点につきましては、先ほど申し述べました。余りにも大量な株式取引でございますので、これを区分してお願いをするということは、簡便な流通税としてお願いをしているこの税の性格からいたしましては、ちょっと法人のものを区別してそのまま残すということはいかがか。従来引き上げをお願いするときに、キャピタルゲインにつきましては本来法人は課税になっているわけでございますから、その点も含めまして引き上げをお願いしてきた経緯がございます。引き下げるときも、この点につきましては統一的にお願いをすることで御提案をしているところでございます。
  133. 二見伸明

    ○二見委員 この議論をこれ以上やりますと、加藤六月先生から感謝状が参りますので、これについては質疑をやめます。  残り時間が少ないものですから、実は本当は土地税制、相続税についてちょっと議論したかったのだけれども、土地税制あるいは相続税を考える場合に、そのバックグラウンドになるのは私はやはり土地政策だと思う。きょうは土地政策の大まかな話だけを聞いておいて、そして土地税制、相続税については後日に譲り、その質問が終った後、総理にもう一点別の質問お尋ねして、時間が来ますので終わりたいと思います。  実は国土庁長官、土地基本法に関する懇談会というのを始めましたですね。十月十二日に第一回が行われた。私は時宜に適した会合だと思うのだけれども、いわゆる土地基本法というものを通常国会に御提出になるのかどうか、その点はいかがでしょう。
  134. 内海英男

    ○内海国務大臣 土地基本法の提出の問題につきましては、現在土地に関する有識者の先生方の懇談会を設けまして、先生御指摘のように十二日の日に初会合を開いて、いろいろと御意見等を承っておる段階でございます。また、さきの国会で御提出になりました野党各党の土地基本法等も参考に踏まえまして、できるだけ速やかに法案を作成して、関係省庁ともよく打ち合わせをいたしました上で提出に踏み切りたい。できれば次期国会を目指して成案を得たい、こう考えておる次第でございます。
  135. 二見伸明

    ○二見委員 新行革審では、土地に関する基本理念として、利用の責務、それから公共の福祉の優先、計画的利用、開発利益の還元、受益に応じた公平な負担、こうしたことが国民の共通の認識として必要だという考え方を持っておられるようでありますけれども、土地基本法においてものような基本理念を盛り込みたいとお考えになっておりますか。
  136. 内海英男

    ○内海国務大臣 ただいま先生の方から御指摘のありましたような土地政策についてのいろいろな基本理念、あるいは公共の福祉、その他土地に対する社会的観念、こういった基本的な問題から踏み込んでまいりたい。公共性というようなものに踏み込みまして、それを基本にして御検討いただいておる、こう申し上げられると思います。
  137. 二見伸明

    ○二見委員 土地税制について具体的なことではなくて、土地税制のあり方みたいなことにまでこれは言及できますか。その点はどうでしょう。
  138. 内海英男

    ○内海国務大臣 土地税制につきましては、先生も御指摘のように、固定資産税、相続税、いろいろございます。したがいまして、私どもの役所だけでその問題に対する答えを出すというわけにはまいりませんので、こういった問題も検討の材料として各省庁と意見の調整をして成案を得たい、こう考えております。
  139. 二見伸明

    ○二見委員 時間も迫ってまいりましたので、大蔵大臣に一点お尋ねします。それから総理大臣お尋ねします。その質問を両方同時に申し上げます。  大蔵大臣お尋ねしたいのは、私は今土地基本法についての概略の話を伺っていたのですけれども、土地問題を考え、土地税制を考えた場合に、相続税というものはやはり見直さなければならないのじゃないか。というのは、要するに地価というのは、実勢価格がありますね、それから公示価格があって、固定資産税の評価額があって、相続税の評価額、四つありますですね。それぞれ理由があるわけです。  しかし、相続税に関しては、むしろ公示価格かあるいは実勢価格に評価額をして、そして税率をうんと下げてしまう、そうした方が例えば土地の流通にとってもいいのじゃないか。土地の評価額が、相続税の評価額が低いから、お金で持っているよりも、株で持っているよりも、土地にかえておいた方が相続税が安いというような現象も現実にあるわけです。二十億円の土地を持っている、借金が十億円ある、しかし、これは二十億円の土地だけれども、実際の相続税の評価額は十億円だということになれば、借金とでチャラになってしまう、税金を払わないで済んでしまう。むしろ評価額を実勢価格かあるいは公示価格にして相続税の税率をうんと下げた方が、節税を考えた土地への資金の流れが少なくなるのじゃないかということも考えておりまして、そんなことも念頭に置きながら、その点で大蔵大臣の御所見を承りたいと思います。  もう一つ、総理大臣、実は私は、企業というのがここまで国際化してまいりますと、タックスヘーブンの話もございますけれども、やはり日本独自の税体系というか、それは税というのは主権の最たるものだという議論はそのとおりだろうとは思いますけれども、例えば法人税の税率が日本とアメリカでは違う、日本とヨーロッパでは違って、ヨーロッパやアメリカの方がよほど低いということになれば、企業は低い法人税率のところに工場を移転してしまいます。あるいは現地法人をつくって、こちらの日本国内の法人の方を形骸化してしまう。所得税も同じです。日本の所得税が高いから、ではアメリカへ行って、アメリカへ住所を移してしまおう、向こうの方が所得税が安いからというような、直接税の間で先進国間でかなりのばらつきが出てまいりますと、それは経済活動にも支障を来してくるんじゃないか。しかもボーダーレスの世の中ですから、企業にとっては国境はあってないようなものであります。  そうなると、一度先進国の間でもってタックスサミット、所得税のあり方、法人税のあり方、これを本気になって先進国同士でもって話し合って、すり合わせなければならない時代が近い将来来るのではないかと私は思っておりますけれども、そうしたタックスサミットについて総理大臣の御見解を伺って、質問を終わりたいと思います。
  140. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一つのアイデアをお出しになられましたので、月並みの反論を申し上げるのはちょっと気が引けるのでございますけれども、今のようにいたしますと、今でこそ、また東京のようなところでこそ土地が相続財産の大きな部分になりますが、そうでない全体、やはり総合課税になりますと、土地を考えるために税率を下げてしまう、税率を異ならしめることができませんので、そうしますとやはり実際は預金とか株式とか書画骨とうとか、かなりの減収になるのではないかなという感じがいたします。  しかし、おっしゃいますようなことは、例えば相続直近三年間でございましたか、取得の土地はもうその取得価格によるとかなり厳しくいたしましたし、また実勢価格、相続税の路線価格等々、何かもう少しさや寄せできないかということは、なお努力をいたしたいと思っております。
  141. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 タックスサミットを開いたらどうか、こういう御提言でございます。  今タックスヘーブンを例示されましたように、経済が国際化しておる中で今まで国際的な協議の場としましては、OECDの租税委員会、それから税の執行、これは特に執行面ですが、環太平洋税務長官会議、またアジア税務長官会議等がありまして、これまでも随時開いておるところでございます。が、今のタックスサミットというのは、それが国際化の趨勢の中で一番次元が高い場所で議論されておるのはどこかなといいますと、やはりG5とかG7じゃないかな、こんな感じが私自身しております。  そういうところで、私も先進国大蔵大臣会議なんかへ参りましたときに、日本には所得でも税のらち外にある所得があるそうですね、こう聞かれまして困ったことがありましたが、考えてみればそれはマル優のことでございました。それで私は、いや、マル優というのは勤労によって得て節約して貯蓄されたものだから、二重課税になるからというような議論をしたりしたことがございますけれども、ああいう場所が一つの考え方なのかな。それで、先進国サミットというのは経済サミットでございますけれども、いきなり首脳会議に税金を持ち出して、得意な人もいらっしゃるし、余り得意でない人もいらっしゃるでございましょうし、その辺、やはりG5とかG7というようなところから入り込んでいくのが一つのあり方かなと傾聴させていただきました。
  142. 二見伸明

    ○二見委員 以上で終わります。
  143. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 これにて二見伸明君の質疑は終了いたしました。  次に、安倍基雄君。
  144. 安倍基雄

    安倍(基)委員 どうも総理大蔵大臣のころは随分ここで論戦をしたのですけれども、しばらくぶりでございます。  本日は二つの問題、政治倫理と公約及び不公平税制と二つ考えておったのでございますが、不公平税制を中心として論議する場であるというところから、まずそちらの方を先に論議したいと思っています。  今まで同僚議員からもいろいろお話が出ましたけれども、現在やはり一番大きな問題は、大きな不公平を感じているものは、いわば土地についての問題ではないか。みなし法人あるいは医師税制といろいろ言われております。これはそれぞれの立場の者が反論しておりますけれども、こういったものはコンセンサスを得てそれなりの結論を得なければいかぬ。土地税制というものが一番これからの大問題ではないかと思っております。  私は、ある中小企業の経営者に会いましたら、本人たたき上げでございますけれども、自分たちのころは一生懸命前半生働けば自分の土地くらい買えた、ところが現在はそうではない、働く者は気の毒であるということで、本当に涙を流して語ったことが非常に印象的でございますが、この土地問題、これはどちらかと申しますと、税のみならずいわば所得あるいは資産の配分の不公平ということで、これから大きくクローズアップする問題ではないかと思っております。  初めに、既に同僚議員が聞かれたことでございますけれども、連合がこういったデータを出しております。これは、六十一年の金融資産は約二千四百兆円、そのうち株式が三百七十五兆円、年間の株式のいわば増価額が百二十一兆円、土地は千三百兆円で年間が二百四十四兆円、株式と土地と合わせますと年間三百六十五兆円というすごい額になっておる。土地と株式については一日一兆円の増価額があると言われております。この計数は正しいわけでございますか。
  145. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 新SNAと申しましょうか、もう先生よく御存じでございますシステム・オブ・ナショナル・アカウンツと申しますが、この利子及び配当、地代などの財産所得は、金利の動向等を反映いたしまして、毎年の伸びは変動いたしますが、国民所得に対する比率からいきますると、昭和五十五年以降ほぼ一六%程度で安定的に推移をしております。これは当然のことながらキャピタルゲインは入っておりません。  我が国国民資産そのものは、昭和五十五年から大体六十年までの過去五年間の年平均増加率は八・四%となっておりまして、同期間の名目GNPの年平均増加率五・五%を上回っておりまして、六十一年度におきましては、対前年度伸び率ははるかに上回って一四・九%、こういうことに相なるわけでございます。額にいたしますと四千五百二十四兆円ということになるわけでございますが、これは名目GNPの伸び率の四・二%を大幅に上回ったという計算に相なるわけでございます。その結果、国民資産そのものは、名目GNPの約十四倍になったということに計算されるわけでございます。  一昨年のこうした資産価格の上昇というものは、要するに原因を突きとめてみますならば、このところの株価の上昇というものと、あと一つは地価の高騰というものも反映させられていることだけは、御指摘のとおり間違いございません。
  146. 安倍基雄

    安倍(基)委員 この間において、労働に対するいわば賃金の増が十四から十八兆。この状況で、一体土地に対してこのままほっておいていいのかというのが連合を中心とした大きな声でありますが、これと関連いたしまして、租税総額中における土地保有についての税、これはむしろ自治省に調べてもらいましたけれども、これを日米英比較していただけませんか。
  147. 湯浅利夫

    ○湯浅政府委員 我が国の固定資産税、都市計画税、それから特別土地保有税、この三つが土地保有税の関連の税目ということになると思いますが、これの国民所得に対する割合あるいは租税総額に占める割合というものを申し上げますと、昭和六十年度におきましてこの三つの税額の総額は、国民所得に対しまして一・九%、それから租税総額に対しまして七・九%となっております。  類似の税について欧米四カ国のただいまの比率を出し上げますと、日本より高いのはアメリカで、アメリカは国民所得に対し三・二%、租税総額に対しまして一三・〇%。それから、イギリスも日本より高く、国民所得に対して五・三%、租税総額に対しまして一二・六%ということになっております。フランスは我が国とほぼ同様でございまして、国民所得に対しまして二・二%、租税総術に対しまして六・三%。それから、西ドイツは日本より低く、国民所得に対しまして〇・五%、租税総額に対しまして一・七%というような状況になっております。
  148. 安倍基雄

    安倍(基)委員 これはよく資産、所得、消費のバランスと言われておりますけれども、この中でいわゆる資産所得は抜いて、資産そのものの税でございます。そうしますと、日本は米英に比較すると大分低い。  一方、単に租税総額中にたける割合だけでなくて、国富において一体土地の価格の占める割合がどのくらいであるのか、これを見ますと、日本は一九八五年で約五七・三%、約六割が要するに国富の中における土地になっております。アメリカは二三・七%。といいますと、国富の中の土地の占める割合を勘案しますと、土地保有に対しての税は非常に低いと言わざるを得ない。たまたまドイツの場合には国富における土地の割合は非常に高いのですけれども、税の方が非常に低いというちょっと特殊な形を持っております。  いずれにいたしましても、年々一日一兆円評価額が伸びるというところのいわば土地に対して、その保有については非常に税が低いと言わざるを得ない。よく宮澤大臣は、土地の評価が幾ら上がっても、譲渡のときにかけるからいいのだというお考えをお述べになります。評価が上がっただけでは課すわけにはいかない。それはどういう意味かといいますと、私はちょっとそれはわからないのですけれども、所得がなければ要するに課さないのか。そうすると、消費税というのは所得がなくても課すのですね。となると、土地を保有していることについて税を課してどうして悪いのだ。土地の評価額が上がってくる、それに対して税をどんどん課していってどうして悪いのかということをどうお考えでいらっしゃいますか。
  149. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私が申し上げようとしておりますのは、言葉が足りなかったのかもしれませんが、その含みに課税をするということが、もし所得税であれば、その所得は実現していない所得であるということを申し上げて、保有に対する課税であれば、これは固定資産税等々そういう現行の税制があるわけでございますので、これは私、自分の所管のことでありませんので、仮定のこととしてしか申し上げないのでございますが、その系統で処理ができるのではないかということを実は申し上げようとしておるわけでございます。
  150. 安倍基雄

    安倍(基)委員 問題は、これだけぐんぐん実質価値が伸びる土地が、これは地方税の領域だから入れない。国税と地方税のいわば境界をぴしっとつけて、これは地方税だ、これは国税だ。国税の中で直間比率を直さにゃいかぬということばかりを言いまして、土地に対するいわば所得、消費、資産のバランスをとるというのが、地方税には入れないという理由でもって、これだけ一日一兆円の評価額が上がるのに対して一歩も入れない、その辺に私は基本的な問題があるのじゃないかと思います。いかがでございますか。むしろこれは大蔵大臣ですね。
  151. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 入れないと申し上げているのではなくて、現実に固定資産税の評価がえなどがございますと、大変に課税には苦労を課税当局がしておられるという現実がございますものですから、そういうことも考えながら、自分の所管外ではございますが、ちょっと申し上げたのでございます。
  152. 安倍基雄

    安倍(基)委員 では、自治大臣の御意見も伺いましょう。
  153. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 資産課税については、もちろん国、地方を通じて極めて関連の深い問題でございますから、そういう意味で税制改正は議論をされたものというふうに考えております。  しかし、現実に今土地の税制について考えますと、いわゆる保有を前提にして毎年課税することを基本とする固定資産税がございますし、いわば土地税制という意味では特別土地保有税があるわけでございます。それから、国税でございますが、これは相続税があるわけでございますから、それぞれの観点から、いわばその異動の時期、あるいはその資産に着目をして、着実な地方自治を守る一つの税としての体系を整えているわけでございます。ですから、委員指摘のように、土地を持っているその保有の価値を高めたから、評価が高くなったから課税をするということであるならば、それではそこに所得を発生しない者にも税金を取ることができるのかといいますと、これは土地の追い出しにつながる問題もございますし、慎重に検討しなければならない問題だというふうな感じがいたします。
  154. 安倍基雄

    安倍(基)委員 今所得が発生しないところという話が出たのですけれども、私がさっき申しましたように、消費についても所得が発生しない。しかし、それを要するに消費があるところに所得ありとみなして課税するという形だと思いますが、そうすると土地保有についてもそれだけの資産を持っているという形から課税される。  それに加えまして、土地保有について課税をする場合、こういった問題があるわけですね。例えば大きなビルを持っている。そのビルがいわば大きなビルであれば、一つの町が出現したと同じだ。それに対しては当然、下水道もあれば水道もあれば、いろいろな公共施設が要る。でありまするならば、そのビルを中心部に保有している人間は、所得があるなしにかかわらず、当然その費用を負担しなければならない。それと非常に便利な場所にある便利さも享受する。そういったことで、いわば土地保有というのはそれなりの大きな意味を持っておるわけです。そこは私が一番問題とするところでございます。  しかももう一つ、例えば株式なんかの場合には、自分が売り買いでリスクを冒してやる。土地の価格の上昇は、たまたまそこに公共事業が行われる、それで自然に上がってしまうという要素があるわけです。例えば、ちょっとこれは具体的な話になりますけれども、整備新幹線が今度軽井沢まで行きます。この建設費用を聞いてみますと約二千億円ある。軽井沢は当然そこで地価も上がるでしょう。ホテルもお客さんがふえるでしょう。しかし、その費用二千億はだれが負担するんだ。サラリーマンが負担するだけであるのか、開発利益を享受する人間が負担するのであるのか。  あるいは、私は過日東京湾横断道路の話をしました。対岸の地価は必ず上がるだろう。そうするとその地価上昇分をどう考えるのか。例えば、大分一時期田中元総理の鳥屋野潟の話がございました。鳥屋野潟をあらかじめ田中元総理の企業が買った。非常にけしからぬということを随分言われました。確かにけしからぬには違いないけれども、そこに堤防ができればそこの土地は当然に上がるので、そのときの現所有者は何らかの利得を得る。ここでいわゆる開発利益と申しますか、開発利益をどう考えるか。整備新幹線をどうしてやったのかという問題もございますけれども、この点について運輸大臣のお考えを承りたいと思います。
  155. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 さきの八月三十一日に政府・与党が合意いたしまして、着工順位を決めて、高崎—軽井沢間をまず六十四年度中に着工しようと決定をしたわけでありますが、その議論のさなかにも、こういう公共事業を起こした場合の波及効果、開発利益を含めて議論が出ました。ただ、こういった開発利益というのは確かに存在いたしますが、なかなか計量、計算しにくいものでありまして、それがつかまえにくいということで、その認識だけは共通して持ったわけでございますけれども、これから十二月末までに財源を含めましてそうした問題について議論することになっておりますので、その決定を受けまして、運輸省としても適切に処置していきたいと思っている次第でございます。
  156. 安倍基雄

    安倍(基)委員 私がこの問題を持ち出しましたものは、土地の価格というのは一種の公共事業の関数というか、公共事業があるところに必ずその上昇がある。これを考えないで、単に公共事業はいい、いいということだけであるのはおかしい。もともと公共事業の受益者と負担者が同一であるときに初めて公平が保たれる。ところが、公共事業の原資がすべてサラリーマンの税金であれば、サラリーマンの犠牲において一部の土地所有者がいわば利得をする。例えば軽井沢あたりは非常な富裕のお金持ち連中が多いわけですが、そういったのがサラリーマンの二千億の経費でもって、自分の土地は上がるわ、便利になるわと、これは軽井沢を血祭りに挙げたわけでございますけれども、いずれにしろそういったことは必ず起こる。  でありますから、公共事業が富の配分を逆にゆがめている要素があるのではないか。負担者と受益者とが一致している場合には、これはゆがめることにならない。ところが、日本の場合には公共事業が多い。それが一つ一つが富の配分をゆがめている。しかもその原資がサラリーマンである。この点について私は、不公平税制の先の問題として、富の配分の問題としてまず取り上げなければいかぬと思っているのです。この点総理大臣、どうお考えでいらっしゃいますか。
  157. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 土地の問題でございますが、私ども、税制調査会というのは内閣総理大臣の諮問機関であって、地方税も国税も論議するわけでございますから、そこへ踏み込むということが、これはできないと初めからかかっておるわけではもちろんございません。  ただ、固定資産税というのは、これは都市計画税もそうでございますが、本当に今やいわば地方財源の大きな柱となっておるという位置づけはもとよりございます。しかし、私自身いつも考えますのは、いわゆる未実現の利益に対する課税というものは、それは確かに担保価値が出てくるとか、あるいはまた精神的にリッチになったという富裕感が生ずるとかという問題もございます。それから、今おっしゃったように、株式は仮に売買するならば一つの知能労働をして、知恵を出して行うが、土地の場合は、そこへ道路がつけば、いわば自己の努力なくして上がっていくんじゃないか、だからそれに対してもっと着目すべきだ、こういう御意見もわかりますけれども、未実現の利益というものに対してそれを所得と、いわば未実現の所得というものを所得として見ることはできない。  それからもう一つは、消費というのは、まさに所得ではなくして、所得というのがある意味において応能主義であるならば、応益に対する、利益に応じたものというふうに割り切って私は考えることにしております。
  158. 安倍基雄

    安倍(基)委員 私が今申しておりますのは、未実現の利益と申しますけれども、結局、保有についての税というのは一種の間接税みたいなものでありまして、要するに所得が出て課するというよりは、便利のいいところを占めているとか、そのためにはいろいろ公共施設も要るとか、そういった意味の消費に着目して課税すると同様の意味で、土地保有あるいは不動産所有に応じて考える税でございまして、それをあくまで未実現と見るか見ないか。末実現であれば課さないというのは所得税の概念でございますね。むしろ保有税の概念は間接税に近い概念でございます。この点を私は言っているわけでございます。いかがでございます。
  159. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 ある意味において、ここに住居を構え、あるいはここに企業をすることによっていわゆる利益を得ておるという応益的な考え方であろうかと思っております。したがって、まさに地方税としての大きな柱に例えば固定資産税などはなっておるのではないか。だからそれらを総合して見ていかなければならぬ問題。もとよりもう一つは、百も御承知のとおりでございますが、いわば装置産業等の問題もあるにいたしましても、そういうふうに考えております。
  160. 安倍基雄

    安倍(基)委員 もちろん固定資産税が大きな地方の財源になっておることはわかっております。しかし、一日一兆円の伸びで伸びている土地所有、しかもこれをそのままずっと置いておけば、メガロポリスに集中するだけの財源になるわけです。メガロポリスについてはいろいろ問題があると思いますけれども、やはりこれだけ伸びていく土地について、それぞれの地方自治ということだけで考えていっていいのかどうかということが言えると思います。もう一つ、これはいわば利子についてのマル優廃止だ。今度いわばキャピタルゲインについて厳しくする。その資金はまた土地に流れていく可能性もあるわけですね。でございますから、不公平税制というのは、やはり利子を考える、キャピタルゲインを考える。そのときには一緒に土地も考えないとこれはしり抜けになる。でありますから、土地をいわば地方税だけの問題として考えていっていいものであろうかという大きな問題があると思います。  現在の土地の上昇、必ずしも限られた供給と非常に強い需要と、いささか膨れた数字であることは私は考えております。しかし、いずれにいたしましても、いわゆる消費税とかいろいろ逆進的な税を論議するときに、それでは資産についてどうするんだ。資産について、これは単に地方財源だけだということで、そうすると地方財源になっておけばメガロポリスがそれだけいわば優遇される。それでいいんだろうか。これから五年、十年を考えたときに、国の財政と地方財政、それぞれの財源配分ということをよく考えていくべきではないかと思います。この点大蔵大臣総理の御見解を承りたい。
  161. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題は古くて新しい問題でございます。いつの時期かにやはりそういうことを考えなければなりませんが、殊にこのようにいろいろな各財産の間で価格の変動がございますと、財源問題がそれだけ緊急になってくるということはそのとおりだと思います。これはやはり大事な問題でございますから、検討していかなければならないと思っております。
  162. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 大蔵大臣からお答えがあったとおりでございますが、あくまでも国と地方は車の両輪として、一方、可能な限りの自主財源というものを持ちたいという要請は当然ございましょう。しかし、税源そのものがこのように跛行性があります段階において、平衡交付金制度があり、そして交付税制度ということに進歩してきておる。だから、やはりそれは全体としてどうとらえるかというところであろうと思いますので、御意見の趣旨、私にも理解できますし、大蔵大臣からお答えがありましたように、検討すべき課題だという問題意識は持っております。
  163. 安倍基雄

    安倍(基)委員 保有税を検討するときに、例えばこの土地はこれしか使わせない、容積率が非常に低いというような場合には、土地の用途を制限しながら税が重くなるという可能性があるわけです。私はやみくもにただ保有税を上げると言っているわけではないのです。これは保有税を上げていけば、むしろ法人住民税なりあるいは個人住民税を下げていくことも考えられる。そこで、やはり容積率とタイアップして一緒に考えていかなければ、これは収益性のない土地に重税を課すことになる。私の理解は、現在、例えばメガロポリスにおける容積率の変更あるいは土地の区分、住居区分とかあるいは商業地区の区分、これは例えば東京であれば各区からの申請により、それを東京都が認め、それを建設大臣認めるというぐあいになっていると理解しておりますけれども、いかがでございます、その方法でこれからいいのでございましょうか。建設大臣のお考えを承りたいと思います。
  164. 越智伊平

    ○越智国務大臣 そのとおりであります。今この用途区分の変更とかあるいは高さ制限の問題等、各地方公共団体に指導をいたしております。ただ、その地域地域で民主主義が徹底いたしまして、何人かの反対があるとなかなかできない、これが実情であります。お話の点はそのとおりな仕組みになっております。
  165. 安倍基雄

    安倍(基)委員 この税と関連いたしまして容積率の問題も考えねばならぬ。これをこれから地方にそのまま任せておくのか、あるいは国が一歩踏み込むのか、これは非常に重大な問題でございまして、これはいろいろ消費税論議の前提としての不公平税制、土地問題の大きなポイントではないか。でございますから、国と地方とのいわば財源問題をどうするんだ、それとともにそういった指導というか権限と申しますか、国土庁も含めた意味の考えでございますね、その辺をやはり考えていかないとこの土地問題、土地における不公平は解消しないのじゃないかと思います。いかがでございますか。
  166. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 それがまさに前の段階でございましたか、国土庁長官からお答えがありましたように、両院にできました土地問題委員会等で、私も拝見させていただきました貴党から出された土地基本法というものがございました。したがって、今のような問題をも含めて、公共的利用のあり方とかあるいは社会への還元をどうするかとかというような問題を議論していこうというのが、今度の懇談会ができました一つの要因であるというふうに私は考えております。
  167. 安倍基雄

    安倍(基)委員 いずれにいたしましても、最近土地価格の上昇で非常に相続税の問題が起こっております。法人には相続というものがないじゃないか。考え方によりますと、むしろ保有税を引き上げておいて相続税あるいは譲渡税を軽減する。となれば、いわば保有税を引き上げるということは、需要に対してこれだけのコストが要るという需要抑制の効果がある。逆に譲渡税の方については、軽減すれば供給促進の効果もある。何も追い立てるというのじゃなくてですね。しかも高度利用ができる。そういう意味で、これだけの土地問題の日本において、いわば土地保有税あるいはそれについての国と地方との財源調整、特にメガロポリスについては考えるべきだと思っております。最後にこの問題についての総理大臣のお考えを承りたいと思います。
  168. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 確かにそうした問題もいろいろ議論された結果と申しますか、国土庁において懇談会をつくって結論を急ごうじゃないか、こういうことになったではないかというふうに私は理解をしておるところでございます。
  169. 安倍基雄

    安倍(基)委員 次の問題に移ります。  我々は不公平税制の是正を中心としての論議をするわけでございますけれども、最近非常にリクルートの問題が焦点になっております。リクルートの問題というのは、いろいろ法案提出する当事者が、一体そういった資格があるのかどうかということの倫理の問題を中心にしていると思います。やはり見逃されたもう一つの倫理があるのではないかなと私は考えるのです。  これは去年、売上税のときに中曽根さんがうそをついたということで非常にけんけんがくがくになりました。公約違反ではないか。ことしはすっかりその話が忘れられてきた。しかし、私はやはり倫理問題というものが基本的にあるのではないか。と申しますのは、政治家の一番の倫理は何だろう。私は大蔵の出身でございますから、同僚あるいは後輩から、どうにか審議を進めてこの論議をあれしてくれ、上げてくれと頼まれております。官僚の論理、倫理はまさにそのとおりです。国のためを思って彼らが一生懸命考えているのは私もわかります。ただ政治家は、まずリクルートがいけないとか李下に冠を正さずということとは別に、選挙のときにはっきりと選挙公報に書いたり、あるいは誓約をしたりという閣僚が随分いるわけですね。  これは大勢の閣僚がおられますから、いささかスケープゴートにするのは気の毒なんですけれども、倫理を問題とする文部大臣は、一応「「大型間接税反対」を公約とし、当選の後も党内で強く主張する。「大型間接税反対議員連盟」の結成に協力し、積極的に参加する。」あるいは法務大臣は、公報の中に「大型間接税には反対します。」と書いてあるわけですね。もちろんそのころにおけるいろいろな情勢からいって、状況は変わっていると言われるかもしれません。しかし、法の番人あるいは倫理の番人としての——私はこのお二人は、政治家の中ではどちらかといえば非常にまじめな方だと思っております。まじめでない政治家が随分おりますけれども、どちらかといえばまじめな方だと思います。個人的には非常に親しみを覚えているわけでございますけれども、ただし、やはりこうやって選挙民に約束したという倫理、これはリクルートで問題となって、資格があるかないかと同じレベルで考えるべきではないのかなと私は思います。スケープゴートじゃないですけれども、ちょっとこのお二人に簡単に弁明を聞きたいと思います。
  170. 中島源太郎

    ○中島国務大臣 せっかくのお尋ねでございます。選挙公約のころと申しますと六十一年の夏と思いますが、私も記憶は定かに持っております。当時は、大型間接税のあり方についてはこれからという時期でございました。私どもの周辺では、国民が反対をし、党員が反対をするような大型間接税と称するようなものの導入は考えないという当時の自民党総裁のお言葉もあった時期でございまして、その趣旨に沿って私もお約束を申し上げた、そういう記憶は鮮明にございます。  ただ、その後時系列的にいろいろな論議がございました。そして、党内におきましても正式な手続におきまして論議がなされ、また売上税の問題、そして今それを含めまして御提案を申し上げておりますのは、国民各層により御理解いただけるものということで御提案を申し上げておるわけでこざいます。  また、文部大臣といたしてつけ加えるならば、今回の場合には基本的には非課税を設けないという中から、政治的な配慮で一条学校その他につきまして配慮、打ち合わせをいたしました上で御提案をいたしておるところでございますので、よろしく御審議のほどお願いを申し上げたい、こう思っております。
  171. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 私、この公約を書きまするときにはよほど注意して書いたつもりなんですが、まず前提としまして「国民理解と信頼の上に立つ」税制改革を行い、その際に「大型間接税には反対します。」こういうように申しまして、特に「には」を強調しておるのであります。したがって、大型でない間接税には反対するということではないのであります。今回の消費税の法案でありまするが、まさに大型間接税には該当しないもの、かように考えておりまして、公約には反しないのじゃないかと存じておるところでございます。
  172. 安倍基雄

    安倍(基)委員 今現在まだ何も大型間接税を審議しているわけではないのですよ。私は倫理を取り上げているのです。いいですか。私はお二人をまじめな方だと思っておりますけれども、いわば選挙のときにこう言ったということは非常に重たいと思うのですよ。その後情勢が変わったとかなんとかいうことは、それは弁明にすぎないわけですね、本当のところ。  私は実は名前は挙げませんけれども、こういうことを書いています、やはりアンケートの中で。   政党政治の基本は新たな課税負担を国民に求めます場合は、明らかに負担方式を国民に提示をいたしまして、それで審判を仰ぐということでなければなりません。でありますから、今回の選挙に、この大型間接税について提案いたしておりません。提案いたしておりません問題を安定多数を得たからといって、これを付加するということは出来ません。これは政党政治の自殺行為でございます。したがって、結論的に言ってこのことは断じてありません。こういうことを答えられている方もおります。  私は、政治の倫理、状況が変わったからということは弁明にならないと思うのです。在任期間中はやはりその公約に縛られるのではないか。リクルート、リクルートというのは非常に大きな問題であります。これは一つの倫理であります。しかし、政治家倫理というのはまたもう一つ別にあるのじゃないか。両方ともやはり倫理ではないのか。私は、役所の連中がこれを通してくれという気持ちはわかります。しかし、政治家としての倫理というのはここにあるのではないかなと私は考えるのです。  これはイギリスの例を言いますと、憲法上の習律という論議がございます。いわばマンデートの原理、これは一つの学説でございますけれども、議員は選挙民から一つのマンデートを与えられる、そのマンデートを使い切ったときには新たに選挙民のいわば意思を聞くというのがマンデートの原則です。  この場合、自民党の半数以上の人がやりませんというマンデートを持って当選された。それは私は任期中は拘束するのではないかな。我々は全権を与えられたのであるのかどうか、白紙委任を与えられたのであるのかどうか。もちろんこの公約を出さなくても当選された方もおられましょう。多くの方はそうかもしれません。しかし、私はこの公約というものは、やはりリクルートの倫理と同様の重みを持って考えるべきなんじゃないか、政治家倫理として。この点、総理、つじ立ちをして訴える、それで新しい案をつくってつじ立ちをして、長い間かけて——確かに選挙の短期間に非常に感情的になることもある。でありますから、選挙をするとまたつぶされるのじゃないかということを心配している人もいます。しかし、本当にいい税法案であれば、あるいは説得を十分すれば、それは私はつじ立ちをする意味があるだろう。この法案がいいか悪いか、私は今この法案をまだ論議しているわけではないわけでございますけれども、しかし最後の国民の審判というのをどう考えるのか。  私がアメリカで若いころを過ごしたころに、ある町の話がございました。いわば新しい発電所を税金を払ってつくるか、今までの発電所で我慢するか、けんけんがくがく分かれまして、最終的に古い発電所で我慢しよう。その結果が本当に横から見て正しかったか正しくないか。あるいは先見性を持った人間にとっては、新しい発電所をつくった方がよかったかもしれない。しかし最終的に民衆が、いわば市民がそう決定した。そこにやはり民主主義の原点があるのではないかな。この税制改革も、最後にはやはり審判を得ないままに施行するというのは問題ではないか。  アメリカというのはフェアというのを非常に大事にします。アンフェアかフェアか。やはりフェアの精神が、フェアネスの精神が民主主義の原点ではないかな。リクルート問題で倫理をいろいろ議論するのも大切である。それと同時にフェアかどうか、この点について私はもう一度、単に公約違反だということでほかの議論を全然しないという必要はない。やはりそれは議論は必要かもしれませんけれども、私はその点をもう一遍胸に手を当てて考え直す必要があるのではないかと思います。いかがでございますか。
  173. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 いわゆるフェアであるべきだ、これは私は税制もフェアであるべきだというふうに思っております。したがって、選挙公約の点についてお触れになっておりましたが、私自身の考え方を申しますと、昭和五十三年の政府税制調査会の答申に基づいて、いわば国会で議論は十年以上なされてきた問題であるというふうに思っております。ただあの際、強いて申しますならば、大型というものの定義づけというものがないままに選挙に突入したという感じは私自身も持つものでございます。  しかし、与えられた任期の中で国民のためにと、皆さんと同じようにだれもがお思いになっている。それが次善の策として考えられたものを、今の時期行うが最も適切だと判断したことに対しまして、現閣僚の皆さん方を含め、自民党としては国民の信を問うことなく、国政の責任を全うしていこうという考え方で思想統一をして臨んでおるわけでございます。
  174. 安倍基雄

    安倍(基)委員 この問題は、またそういった不公平税制の話が終わり、リクルートの話が終わった後どういう議論をするかというときに、また改めてという議論になると思いますけれども、この点は私はこれからもよく胸に手を当てながら考えるべき問題であると思います。  もう時間もございませんけれども、せっかく外務大臣が来られたものですから。  実はちょっと話題が外れるのですけれども、総理がサミットに行かれる前に私が外務委員会に出まして、それでこういうことを言ったのです。この秋にいろいろ税制を論議されようとしているのですな、ODA、余り気前のいいばらまき的なことをやってきては困りますよ、もしそれだったら大変なことになりますよと、いささかおどかしたわけです。  というのは、私が申しましたのはこのODA、過去ドルがこの二、三年のうちに半減しているわけですね。でありますから、同じ円であっても、同じ円価格であっても実質は倍増しているわけです。それで、援助を受けた国は、今まで十億円で一つの病院ができれば、今度は二つできるという状況なわけです。でありますから非常に実質価値がふえている。これを次々とふやしていくいうことはむしろ不消化を生ずるだろう。確かに我々は国際的義務を負わなくちゃいけない。それは十分わかっている。国際的義務を負うというのはいろんな負い方がある。門戸開放のために、あるいは産業に対しての支援も要るかもしれない。あるいは戦略防衛のためにいろいろ要請があるかもしれぬ。そういったものを全部込みにして考えるべきじゃないか。過去の中曽根内閣は、防衛費がふえるとそれ以上にODAをふやす。タカ派的なイメージを和らげたいというところだったと思います。  ところが、もしこういった経費を安全のための保障と考えるならば、防衛費と競争してODAをふやすのもおかしい。むしろトータルの伸びが一定であってもいいはずじゃないか。しかも本当に相手の国のために役に立っているかどうか。私はつい最近「エコノミスト」にその論文を載せまして、また読んでいただければいいと思いますけれども、この日本がこれだけ債務を負っておる。このODA、例えばこれでいきますと大体これからの経費ですね、今約一兆円となりますと、一兆七千億くらいに五年後くらいにはなると言わざるを得ない。それだけの額、本当に今の相続税であっても一兆五千から二兆円ぐらいのものだ。それだけのものを海外に出すということは、よほどの慎重さを要しなくてはいけない。単に国際的な責任を果たしているということだけでこれを考える、まあいささか胸を張るだけのためにやっている。おかしいのじゃないか。これが本当に対外交渉にいろいろ役立っているのか。ヤイターとのやりとりとか、そういうのに役立っているのか。役立ってないといえばうそかもしれないけれども、もっともっとこの問題は慎重にしなければいかぬ。  きょうは不公平税制の問題でございますけれども、行革、行革といっても一兆円規模の行革はなかなか難しいわけです。この点国民の一人としてどうお考えになっているのか、私はもう一度外務大臣総理大臣の御意見を承りたいと思います。
  175. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 ODAに対しましては、いつも安倍委員からいろいろと独特の御意見を伺っておるわけでございます。論文も私も拝読さしていただきました。ついこの間の八月十日にアジアの人口が三十億になって、今や全世界人口の六割を占めるという事態を招いておりますし、その三十億の中に世界のプアな人たちが八割いるというようなことであります。  申すまでもなく、ODAは南北間にある人道上の考慮、なおかつ相互依存、この精神に基づいてやろうやというのがODAの精神でございますが、我々からいうならば、将来このままの情勢でやれば確かに安倍委員のおっしゃるように大変な事態でございましょうが、でき得べくんば今日のLLDCを途上国にし、途上国は中進国になり、中進同は先進国になる、そのような気持ちを持って今日の経済大国日本は世界のそうした発展に貢献をしなければならぬ、これが私たちの理念でございます。だから、いつも総理と国際会議に出ますと申し上げるのですが、経済大国日本は決して軍事大国になりません、だからそういう面で大いに貢献しましょう、こうした理念でやっておりますので、この点もひとつ御理解を賜りたいと思います。
  176. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 中曽根内閣の昭和六十年の九月の十八日だったと思っております、そのときが第三次中期目標、それから六十三年の六月十四日、これが第四次中期目標、こういうものを立てて今日に至っておるわけでございます。今おっしゃいましたように、消化率の悪いところとか、あるいは消化率の大変いいところとか、いろいろな問題がございます。したがって、この量ももとよりでございますが、質的改善というのをやっていかなければならぬということを、いつも御鞭撻を受けながら考えておるところでございます。  が、しかし、今度のこの第四次中期目標を決めますときには、私も考えました。今我が国の負担がDAC諸国のトータルの一七・八%くらいにいっておるのじゃないかと思います。このまま仮に他が伸びないでこちらが伸びていったとすれば、ある時期に二五%に達するのじゃないかな。そうすると、まさにアメリカの国連分担金比率ぐらいいくんだな。したがって、そうなった場合に、かえって今度は経済侵略とかあるいは輸出市場の拡大競争とか、そうとられてはいかぬから、なおのこと質的に配慮していかなきゃならぬ問題だというふうな問題意識を持っております。ただ、防衛費を横目に見ながら予算処置を行っていくという性格のものではなく、これはこれとしてやるべきものであるというふうに考えております。
  177. 安倍基雄

    安倍(基)委員 もう時間もございませんけれども、いずれにせよ我々の貴重な税金であるという意識を重々考えていただきたいと思います。  五十分なものですから、改めて質問する機会がございましたら、またお願いしたいと思います。
  178. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 これにて安倍基雄君の質疑は終了いたしました。  次に、矢島恒夫君。
  179. 矢島恒夫

    矢島委員 けさから当委員会の質疑でも、キャピタルゲイン問題あるいは仮名取引の問題が出されております。  そこで、私はまず証券局長にお聞きしたいのですが、一つは、仮名取引とはどういう取引なのかということ、もう一つは、ここに証券局長通達、それからそれを受けての日本証券業協会会長の通知がありますけれども、この中で仮名取引の絶滅を期されるようと、こういう言葉があります。どういうわけで絶滅する必要があるのか、この二点をお伺いしたいと思います。
  180. 角谷正彦

    角谷政府委員 仮名取引といいますのは本人名義以外の取引、具体的には他人名義あるいは他人の名義を借りての取引、そういったものを申しているわけでございます。  それから、私どもが出しました証券業協会等に対しまする通達でございますが、これは広く世の中一般に仮名あるいは借名という事実があることは事実でございますけれども、それを直接的に禁止するというのは、これは証券だけというわけにはまいりません、いろいろ難しい事情がございます。ただ、証券会社を通じて、これは証券会社に対する行為規制という形で、仮名あるいは借名の自粛あるいは禁止をこちらが通達したわけでございますけれども、その趣旨は、要は仮名ないし借名というものが、場合によっては証券会社従業員によって行われるいわゆる手張り等が行われることの原因になりかねない、あるいはインサイダー取引でございますとか脱税でございますとか、そういったことが証券会社の仮名あるいは借名といったこととして行われる。そういうことは、要は証券会社内部管理体制あるいは財務体質に悪影響を及ぼすおそれがあるだけではなくて、やはり証券市場の健全な発展という観点から見ますと是正すべきである、こういった趣旨に基づきまして、証券会社に対する行為としてこれを規制するといったことにしたものでございます。
  181. 矢島恒夫

    矢島委員 そこで大蔵大臣にお聞きいたしますが、大臣のこれまでの国会答弁によりますと、河合氏が取引をしたということになっているわけです。我々はそうは思いませんけれども、宮澤名義で買って、そして服部名義で売った、こういうことでございますか。
  182. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは先週申し上げたことで尽きておりますけれども、私の名義で買った、そして売却をいたしますとき、代金は河合氏が服部名義口座開設いたしましてそれに入金をした、こういうふうに聞いております。
  183. 矢島恒夫

    矢島委員 買ったときも売ったときも本人以外の名義取引がされた、このことは事実ですね。  そこで、証券局長通達がありますけれども、売ったときは証券会社を通して売っており、売買報告書も証券会社から送られている。この名義本人、この場合は河合氏ですが、以上であって仮名取引だ、こういうことで、この局長通達違反ではないのか。そういうことに大蔵大臣関係するということは極めて重大なことだと思うのですが、この点いかがでしょう。
  184. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 前にも証券局長が御説明を申し上げたと存じますけれども、この通達は、証券会社に対しまして、その対象となる仮名取引あるいは借名取引と申しますのは、証券会社に設けられた本人名義でない名義による口座による取引というふうに承知をいたしております。  今回リクルートコスモス株式の売買は、これは店頭登録前でございますので、したがって相対取引でございます。証券会社を通さずに行われておりまして、通達は、そういうことについて通達の対象とはなっていないということとして承知しております。
  185. 矢島恒夫

    矢島委員 売り買いともに店頭登録前に行われた、こういうことでございますか。
  186. 角谷正彦

    角谷政府委員 買う行為店頭登録前でございます。これは証券会社を通じない取引でございますので、仮名あるいは借名という問題の通達対象ではございません。 それで売ったときはどうかということでございますが、ただいま大臣のお話によりますと、河合さんが実際の所有者である、それを服部さんの名前でやったということになりますと、これはいわゆる仮名取引ということには該当するだろうと思います。  ただ、ではこれが通達の禁止している行為かどうかということでございますが、先ほど御説明申し上げましたように、この行為証券会社に対する行為規制という形でかけているわけでございまして、投資家が本人名義以外の名義取引を行うということは決して望ましいことではございませんけれども、通達で対象にしておりますのは、証券会社がこういった行為を知りながら、これに加担するといった行為をいわば自粛するあるいは禁止するということで終わっているわけでございまして、そういったふうな意味では、私どもの通達の対象になる意味での証券会社通達違反という事実はないということでございます。
  187. 矢島恒夫

    矢島委員 そこが重大な問題なんです。今、売ったときは証券会社を通して仮名で取引がされた、このことはお認めになった。  ところで、買ったときの問題ですけれども、宮澤名義で買ったわけですが、いわゆる相対取引だから違反ではない、証券会社への通達である、こういうことに答弁はなるわけですが、相対取引ならこれは仮名でどんどんやってよいということですか。証券局長、重大な問題なんです。
  188. 角谷正彦

    角谷政府委員 仮名あるいは借名ということは、実は株式取引以外にも実際の経済取引でいろいろ行われていることは事実でございます。例えば民法とか商法では、名義貸しとか名板貸しとかそういったことに対する規定を設けて、その法律関係がどちらに帰属するかとか、私は法律の専門家じゃありませんので法務省の方があるいはいいかもしれませんが、そういった事実がある。そういったことを前提としていろいろ法律規制がなされている。それが望ましいか望ましくないかということは別といたしまして、一般に投資家に対しましてそういう実態がある以上、すべて仮名あるいは借名を一般の取引についてまで禁止するということはなかなか難しいし、あるいはそういうことを行いましても、証券行政立場からいいますとなかなか実効は期しがたいという問題があるわけでございます。  そういった点から、私どもの通達は、証券会社に対する行為の規制という形で、証券会社指導するという形を通じて、仮名あるいは借名取引について自粛あるいは禁止を求めたということでございまして、直接的には投資家サイドの取引にこの効果が及ぶというものではないということでございます。
  189. 矢島恒夫

    矢島委員 極めてごまかしの答弁なんだ。通達によりますと、こういう仮名取引や借名取引について、なるほどあて先は日本証券業協会会長であるけれども、顧客の行う仮名取引の問題として通達が出ているわけです。しかも、これを受けて出されたところの証券業協会の会長からの通知では、そこにいる営業員の問題と同時に、営業員の問題が一番多く書かれております、内容としては証券会社に出した通知ですから。しかし、顧客に対しての仮名やあるいは借名取引、こういうものも自粛すべきだという精神になっているのじゃないですか。
  190. 角谷正彦

    角谷政府委員 別にごまかしているとかなんとかというわけではございません。もともと私ども証券行政立場から、証券会社を監督する立場でこの通達を出しているわけでございます。したがって、私どもは証券会社に対する行為規制であると考えているわけでございます。当然のことながら、証券会社といたしましては、そういった仮名あるいは借名が行われること自身自分たちの利益になりませんし、あるいは証券市場の健全な発展にとっての利益にもならないといったことから、お客にもそういったことのないように要請してもらうということは当然でございますが、今問題になっておりますのは、では証券会社が積極的にこれに加担した形で仮名あるいは借名を行ったかといいますと、そういうふうな意味での証券会社通達違反という事実はないだろう、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  191. 矢島恒夫

    矢島委員 私、納得いたしませんけれども、私はこの通達の精神というのは、一般顧客について仮名取引をしてはならないということにある、このように思います。  そこで、四十八年二月二十八日、衆議院の大蔵委員会での決議がここにあります。その決議は、「無記名もしくは架空名義による有価証券取引を排除するよう一層努力すべきである。」このように書かれているわけであります。こういう決議がなされたわけであります。これは内容からして、証券会社はもちろんのこと、取引に参加する顧客も含めて仮名取引を排除するよう決議したものだ、こういうことで理解できると思うのです。  大臣の今度のことについては、まさしく局長通達だとか大蔵委員会での決議、こういうものをないがしろにするものだと思うのです。これら通達だとかあるいはこの決議、こういうものを進めていかなければならない立場にあるのが大蔵大臣だと思うのですね。ですから、うかつだったというようなことでは済まされない問題だと思うのです。大臣としてその責任をとるべきだと思うのですが、いかがですか。
  192. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 決議の解釈についてはよくはっきりいたしておりませんが、通達に違反したというようなことはないつもりでございます。
  193. 矢島恒夫

    矢島委員 決議に対してははっきりしない、こういうことですから、私が先ほど読み上げた四十八年二月二十八日衆議院大蔵委員会、その内容を後でぜひ見ておいて、これに対するあなたの責任というものを明確にしてもらいたい。  そこで、もう一つ重大な問題があるわけなんですが、売った側、リクルートであるかドゥ・ベストであるか、いずれにしろこの売った側は、仮名でないということを前提にしてこの場合には河合氏に株を売った。こういう通達やいろいろ出ているわけですから、あくまでも仮名で本人が買いに来たということでないということを前提にして売ったわけですね、株を売った側は。ところが、そのときの名義が実は宮澤大蔵大臣だったということがあのリストの中で明らかになった。つまり、河合氏は売り手側をだまして不当な利益を得たことになる。そうなりますと刑法の二百四十六条による詐欺行為、こういうことになるわけです。  そこで、大蔵大臣は、いろいろと言われておりますけれども、この河合氏が行った詐欺行為をいわば手伝ったということになる。いわば共犯者という立場にあると言われても仕方がないんじゃないか。この点はどうですか。
  194. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは全くどうも思わないことでございます。
  195. 矢島恒夫

    矢島委員 少なくとも河合氏はあなたの名前を使って、相手側に、売り手側に重大なうそを言って、そして株を取得する、それを売ることによって利益を得た。しかもそのときに使った名前宮澤大蔵大臣だった。ですから、あなたはそのときにそれを承諾したかどうか、あるいはその問題がまだありますけれども、必然的に河合氏が行った詐欺行為に対して協力した、こういうことについてはどうですか。
  196. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 全くそういう意思はございませんでした。
  197. 矢島恒夫

    矢島委員 意図とかそういう問題じゃないのです。あるいは意図がなかったと思いましょう。意図はなかったとしても、結果としてそういう今日の状態になったということはお手伝いをしたことにならないか、こういうことなんです。
  198. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのような意図を全く私は持っておりませんでした。
  199. 矢島恒夫

    矢島委員 そういう点で私、今いろいろ言われても極めて不明確な状況で来ているわけなので、委員長にぜひお願いしたいのですが、本委員会でこの疑惑を解明するために我が党が江副前リクルート会長を初め二十三名の証人喚問を要求しているわけですが、改めて委員長にこのことを要求したいと思います。
  200. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 後刻理事会で相談をいたします。
  201. 矢島恒夫

    矢島委員 不公平税制の問題に移ります。  不公平税制の是正ということを言う場合に、私はまず何といいましても大企業に対する特権的な減免税、この問題を是正しなければならない、こういうふうに思います。この点では、先日我が党の工藤晃委員が外国税額控除の問題あるいは移転価格税制の問題、それから引当金や準備金、こういう問題について質問をしたわけですが、私はこの引当金の問題について別の角度からお聞きしたいと思うわけです。  そこで、大蔵大臣にお聞きしたいのですが、我が国の税法上の引当金といたしましては、貸倒引当金だとか賞与引当金、退職給与引当金あるいは返品調整のための引当金、それからあと二つほど、特別修繕引当金と製品保証等引当金、以上六つあると思うのです。これについて六十一年の十月に税制調査会が税制の抜本的見直しについての答申を出しておりますけれども、これによりますと、「利用実態等を踏まえ、厳しい見直しを行っていく必要があることはいうまでもない。」このように述べております。この答申が全く生かされようとしていないと思うのですが、大蔵大臣、この点はいかがでしょうか。
  202. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これらは大企業を有利にするためにある優遇策とは私ども考えておりませんで、御承知のように法人の場合、費用と収益とが対応をいたしますが、その費用を期間の間で適正に配分をしておく必要があるという考え方が引当金であり、準備金であるわけでございますので、これはいずれ課税の対象になるものでございます。したがって、それを優遇策とは私ども考えておりませんけれども、ただ、引当金にしましても準備金にいたしましても、実態というものを、ある程度年月をかけておるとわかるものでございますから、それを余り離れるようなことはどうであろうか。なるべく実態に即していくべきだというのがその答申の趣旨であろうと存じます。それは私どももそう思っております。
  203. 矢島恒夫

    矢島委員 大体いつもお答えになるような答弁の繰り返しでございますが、少し具体的にお聞きしたいと思います。  我が国の貸倒引当金についてお聞きしたいのですが、この貸倒引当金制度について今日まで改めていない。この合理的な理由を御説明いただきたいと思うのです。
  204. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 引当金につきましては、随時その利用状況に応じまして見直しを行っているところでございますが、特に貸倒引当金につきましては、当初千分の十五でございました。これを千分の十二、千分の十、千分の八、千分の五、千分の三と、昭和四十七年度改正以来五回にわたりまして引き下げてまいりまして、当時の水準の五分の一にまで引き下げたところでございます。今後ともその利用実態等に応じまして見直しを行ってまいる所存でございます。
  205. 矢島恒夫

    矢島委員 それならば、今日本で行われているこの貸倒引当金制度、この制度は諸外国にあるのでしょうか。アメリカではいかがでしょうか、お聞きしたい。
  206. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 アメリカにおきましては、総資産五億ドル以下の銀行につきましては、法定率による繰り入れと申しますか引き当てがございます。それから西ドイツ、フランス等におきましてこうしたものが制度化されてございます。イギリスにおきましては、これは個別の債権債務につきまして具体的に判定して、処理することとなっているようでございます。
  207. 矢島恒夫

    矢島委員 私がアメリカを聞きましたら、西ドイツ、フランス、イギリスまでお話しいただいたのですが、制度はあるということですが、その内容をもう少し詳しく説明していただけますか。
  208. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 アメリカにおきましては、総資産五億ドル以下の銀行につきましては概算繰り入れがあるようでございます。その概算繰り入れ率は、八七年までは法定繰り入れ率、八八年以降は実績値と申しますか経験値と申しますか、それによりますところの繰り入れ率のようでございます。
  209. 矢島恒夫

    矢島委員 アメリカにおいても八七年一月一日以降変わりましたね。いわゆる直接償却方式、つまり回収不能または無価値になった時点で一部を償却する方法に変わっている。それから西ドイツ、フランスそのほかについても、日本と同じかどうかという点についてお聞きしたのですけれども、全部日本のとは違いますね。やはりそこに原則として個々の債権の評価は個別に検討される。回収不能額については直接損益の勘定で償却され、損益算入は可能であるけれども、実際に簡単に償却することはできないんだ。しかも、いわゆる日本で行われているような法定繰り入れというのを認めていない。この法定繰り入れを認めている国は、今おっしゃられた国の中であるのですか。
  210. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 ただいま申し上げました西ドイツ、フランス、こうした国につきましても、御指摘のように、個別の債権に応じまして具体的に判定をするというのが原則のようでございますが、金融機関につきましては、特例的に概算繰り入れ率が認められているようでございます。  ただ、その場合におきましても、ドイツにおきましては、金融機関、日本流に申しますと金融保険業につきましてすべて一括一本の引き当て率ということではございませんで、それぞれの債権の種類によりましてその率は異なるようでございます。ただ、債権の種類によって異なりますけれども、概算繰り入れ率で処理はできるということのようでございます。  フランスも同様でございまして、個別の債権につきまして具体的に判定することが原則でございますが、金融機関につきましては千分の五の法定繰り入れ率が特例的に認められているようでございます。
  211. 矢島恒夫

    矢島委員 総理にお聞きしたいのですが、今主税局長答弁の中にもありましたとおり、この貸倒引当金という問題については、我が国のように法定繰り入れ率で積み立てていくというところはないわけなんです。いろいろな条件がそれぞれついております。この法定繰り入れを認める我が国のこのやり方ということが、これら諸外国に比べて極めて甘い制度になっているということについてはいかがかという点と、それから抜本的税制改革ということを言われているわけですが、こういうところにこそメスを入れるべきではないだろうか。政府はかねがね法人税の国際化、こういうことを言っておられる。諸外国の例をよく学んでこの部分について見直されるべきだと思うのですが、総理、いかがでしょうか。
  212. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 いわゆる引当金制度自体の問題につきましては、費用を適正に期間に配分するなどの見地から、法人税の課税所得を合理的に計算するために設けられた制度である。しかしながら、いろいろ議論がございまして、課税ベース拡大の見地から見直しの必要があるということは言うまでもないことだ。しかもその上に、今おっしゃいました国際化時代ではないか。ただ貸倒引当金につきましては、私自身も国際会議で議論をしたことがございますが、実態としての扱いとしては、日本の制度にむしろ合理性があるじゃないかという議論も確かにありましたことだけ御紹介しておきましょう。
  213. 矢島恒夫

    矢島委員 そういう意見があったということですが、例えばここに予算委員会提出された業種別の貸倒引当金の法定繰り入れ率と、それから実際に貸し倒れが起こった業績率という表があるのですが、いずれも法定繰り入れ率と比べたら貸し倒れ実績率が極めて低くなっているわけですね。例えば金融機関、盛んに水野主税局長言われたのですが、金融機関の場合をちょっと例にとって言いますと、法定繰り入れ率は十分の三ということです。実際に貸し倒れによったところの実績率ということになると千分の一になりますね。約三分の一になっていると思うのです。  私、全国都市銀行十三銀行について調べてみたわけなんですが、それによりますと、貸出金の残高は百五十二兆三千四百億円となっています。これに対して貸倒引当金は、有税分を含めまして一兆四千四百億円になっています。このうち無税分だけを取り出して計算してみます。貸付金残高の○・三%ということで計算するわけですが、四千五百七十億円になる。ところが、実際に貸し倒れによっての実績ということになると百五十億円である。結局、貸倒引当金の無税額の約三%、これにすぎないわけですね。つまり、実際の無税分の貸倒引当金四千五百七十億円から実際に貸し倒れによって使われた部分百五十億円を引きますと四千四百二十億円、これがまさに無税で内部留保されている。  先ほど総理は、我が国の貸倒引当金は合理的だ、こういうふうに言う意見もあるというお話でしたけれども、こういう多額の内部留保が実績面とそれから積立分とを比較したとき出てくるわけですね。極めて不合理であり不公平税制ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  214. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 金融保険業につきましての貸し倒れの実績と法定繰り入れ率との差は、御指摘のように三倍程度のようでございます。これはほかの業種の繰り入れ率につきましても大体二倍から四倍の間で、この間の実績との対比率というのはおおむね業種ごとにバランスはとれておるかと思います。ただ、三倍前後になっているという点につきましての評価をどう見るかという点は、いろいろお考えはあろうかと思うわけでございますけれども、場合によりましてはこれを数倍上回る貸し倒れの発生もあるわけでございますので、現時点におきましては、こうした実績率とのバランス程度が適当ではないかと思うわけでございます。  もう一つ、貸し倒れの実績となりますと、それぞれの金融機関としては、その分を完全に放棄することとして、それを相手方にも通知するわけでございますので、その点はかなり各金融機関におきましてもシビアに扱っており、また税法上の貸し倒れの認定というのもかなり厳しいところでございますので、その点につきましてはよく問題にはなるところでございます。
  215. 矢島恒夫

    矢島委員 貸し倒れの実績率に対しての現在の法定繰り入れ率がバランス上適当だという今の御答弁には、私は承服しかねます。納得しかねます。  一応総理にお聞きしたいのですが、この貸倒引当金というのは、債権がふえるほどその金額もふえることになるわけです。そうすると、成長の著しい企業、こういう企業は一層この資金を豊富にしてやること、今度は逆に、債権が少なくて衰退傾向の企業というのは、前年分の貸倒引当金とそれから本年分の差額が利益になって、そしてそれが課税される。つまり増税になるわけですね。すると、ますます自己資金を失っていくことになる。私どもは、この貸倒引当金の繰り入れ率を経過期間五年として二分の一に圧縮するようにしたらどうかということを主張しております。こういう大企業に対する貸倒引当金についての実態調査というものをぜひやっていただく、そして諸外国の例も考慮に入れて、直ちに抜本的な是正を行っていくべきだと私は思いますが、総理、いかがでしょうか。
  216. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 あるいは専門的な分野につきましては、専門家の口をかりなければ私も正確なお答えをするわけにはまいりませんが、従来のいわゆる各種引当金制度というものが、そして将来の課題として、それが法人税の増収につながって今日来ておるということ。それからいま一つは、金融機関の問題につきましては、主として私が先ほど申しましたのはサウンドバンキング、いわゆる健全経営という面から、その制度が果たしてきた役割というようなものが評価されたという意味において申し上げたわけでございます。  したがって、各種引当金、なかんずく貸倒引当金等の引き当て率の問題が現実問題としてこうなっておるからということについて、直ちにここで、それは検討をいたしましょうと申しますよりも、絶えずそうした問題は検討の対象にしておくべき課題だというように申し上げた方が適切かと思います。
  217. 矢島恒夫

    矢島委員 検討をされ、なおかつそれを是正していくという方向を強く要求するわけです。  次に、退職給与引当金の問題についてお聞きしたいと思います。  退職給与引当金の繰入限度額は通常、全従業員が一度に退職した場合に必要な退職金総額の四〇%だというふうに理解しておりますが、こういう退職給与引当金制度というのが外国にあるのかどうか。先ほどの貸倒引当金のときと同様、アメリカ、イギリス、西ドイツ、フランスあたりについてお聞かせいただきたい。
  218. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 これは退職給与引当金という制度その以前の問題として、一体退職金制度といったものが諸外国でどういうふうになっているかということと大きく関連するわけではないかと思うわけでございます。  諸外国におきましては、退職金という一時金的な制度というものは余り一般的ではないようでございます。しかし退職年金といったもの、こうしたものはあるようでございます。そうしたことを受けまして、ドイツにおきましてはこの退職年金につきましての引当金があるようでございます。一方、アメリカにおきましてはやはり年金制度でございますが、これは企業経理としての内部での引当金ということでなくて、むしろそうした退職年金制度に備えましてのいわば外部拠出的なものの利用が一般的でございまして、そうしたものは当然その時点で損金になるということでございます。  御質問につきましての端的な退職給与引当金といったものは、我が国のが一つの例でございますが、退職年金につきましての引当金はドイツにあるということでございます。
  219. 矢島恒夫

    矢島委員 雇用形態の違いなどがあるにしても、諸外国にない制度であることは今答弁のとおりだと思うのです。実際にこの退職給与引当金の繰入限度額の四〇%に対して、積立金の残高に対する目的使用の実績は何%ぐらいになっておりますか。
  220. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 この点はまさに先ほどから総理もお答えいただいておりますように、経理のシステムとして、とにかく現時点で働いておられれば、その分の退職金につきましての債務を費用収益対応の原則で引き当てるということでございますので、その年にやめた方と退職給与引当金とを対比して比較するということは、この制度の趣旨からいたしますといかがなものかと思うわけでございます。  ただ、実質的に、形式的にと申しますか、現実の引当金と現実に退職された方の金額といったものを対比をいたすと、そこはいろいろなさまざまな現象があるわけでございますが、一般的に先ほど指摘のございましたような年々幾らかでも成長しつつある企業につきましては、当然のことながら、支払い分というのは引当金額を下回るのが通例のようでございます。
  221. 矢島恒夫

    矢島委員 退職給与引当金、いろいろと具体的な数値について御答弁がいただけないんですけれども、一応おおよそ目的使用実績というのが、それぞれの企業によってそれはもちろん違いがあるということはわかりますけれども、平均しますと一〇%前後ではないんですか。そう理解してよろしいですか。
  222. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 連年いろいろな数字でございますが、おおむね一〇%から二〇%の間というのが実情のようでございます。
  223. 矢島恒夫

    矢島委員 総理にお聞きしたいんですが、残高ベースで見ますと貸倒引当金が約三兆円、それから退職給与引当金が約十兆円あります。賞与引当金が約五兆円。この三つだけ合計いたしましても約十八兆円あるわけですが、実績ベースでは、この何割かが実績ベースとなっているとしても、圧倒的部分は大企業の内部留保ということでの内部資金になっている。つまり、課税ベースというのを縮小しているんだ。これだけではなく、先ほどの三つの十八兆円だけではなくて六つの引当金、それから準備金になりますとその数え方がいろいろあるということですが、二十四、五あるんじゃないかと思います。特別償却制度になりますと、これまた国税庁の数え方でしても二十一ぐらいだということです。これらが大企業の課税ベースを著しく小さくしているんじゃないか。こんなにたくさんの引当金、準備金などを認めている国はほかにあるのかどうか。  そして不公平税制の是正というならば、これらの制度に抜本的にメスを入れる。私が先ほど質問いたしましたのは、貸倒引当金と退職給与引当金を例にとりましたけれども、そのほかにもたくさんの今申し上げたような引当金だとか準備金があるわけですが、こういうものにメスを入れるということこそ今求められているのではないですか。その点について総理の御見解をお聞きしたいと思います。
  224. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 だから、結論からいいますと、課税ベースの拡大という見地から、これは絶えず見直しを行っていくべきものであるということをお答えいたしたとおりでございます。
  225. 矢島恒夫

    矢島委員 何回やっても同じ答弁しか戻ってまいりませんが、ここに元国税庁の職員であった富岡さんの「経済レポート」の中の論文があるんですけれども、この中で富岡さんは、これら引出金、準備金などのタックスシェルターがあって、日本の大企業の課税ベースはもともとが一〇〇〇だとすると三〇〇ぐらいになっている、こう言っているんですね。つまり、実効税率が五〇%だとしても、本来の課税べ-スに照らしてみれば一五%ぐらいにしかならない、こういう論文を書かれているわけです。  大蔵省は「タックスナウ」とかあるいは「フォト号外」、カラーの相当高いと思われるような本を出している。その中で、日本の法人税率は国際的に高い、力ある企業は法人税の安い他の国へ流出してしまうことも考えられる、こう盛んに宣伝しているわけですね。しかし、法人税を国際的に比較する場合に、表面税率だけで比べてよいものなのか、実質的負担を比べなければならないのではないか。私が今までずっと申し上げてまいりましたように、外国ではいろいろな損金算入というものを認めていない。日本の引当金や準備金などは、やはり整理していかなければならないんじゃないか。また、企業が負担する社会保険料というものも加えて検討をすべきときにあるのではないか。これらを考えていきますと、この「タックスナウ」やあるいは「フォト号外」で書かれているような日本の法人税は高い高いという宣伝は偽りではないか。この点についてはいかがでしょうか、総理大臣でも大蔵大臣でも。
  226. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今我が国についての論文を御紹介なさいまして、私、その当否を存じませんが、しかし、アメリカなどはもっとひどかったわけでございまして、あれだけ税率を下げて法人税収がふえる、それはベースをそれだけ広くしたからだ。これは御存じのように大変にいろいろ免税があったわけでございます。ですから、我が国だけでなくいろいろ比べてみませんと、それはちょっと言えないのだろうと思います。
  227. 矢島恒夫

    矢島委員 先ほど総理も、研究を常にやりながら見直すべきは見直すという方向で検討されるということですから、私はこの後、賞与引当金の問題と、それからとりわけ今問題になっております政治家のいわゆる政治資金集めのパーティーの問題について質問しようと思ったわけですけれども、残り時間が極めてわずかになってしまった。  そういうことで、この「タックスナウ」というものについての内容で我が党がたびたび指摘したような偽りという問題、日本の法人税が高いというのももちろんその一つですし、国民の税金を使ってこういう偽りの宣伝はやめるべきだと思うのですが、いかがですか。
  228. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 ただいまの引当金のところでも申し述べましたように、これはそれぞれの背景となる制度が外国とも違う点もあるわけでございますので、それぞれのものを比較するということは、いろいろ技術的な面に問題があるわけでございます。そうした点も踏まえまして、極力正確な資料で各方面に御説明を申し上げているわけでございますので、決して私どもが偽りの資料をもちましてPRしているということはございませんことを御理解願いたいと思います。
  229. 矢島恒夫

    矢島委員 その点についてはこれから大いに論議していきたいと思いますが、時間が参りました。  現在ある不公平税制の主たるものは、時間が極めて短いわけですけれども、私は、やはり大企業優遇税制というものだ。それに全く手をつけずに、お茶を濁すような政府のやり方に対して、国民は絶対にこれを納得しないと思うのです。ですから、最悪の不公平税制である消費税を導入するというようなことはとんでもない、これが国民の多数の声であることを指摘いたしまして、質問を終わります。
  230. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 これにて矢島恒夫君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十八日火曜日午前九時三十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三分散会