運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1988-10-13 第113回国会 衆議院 税制問題等に関する調査特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十月十三日(木曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 金丸  信君    理事 加藤 六月君 理事 海部 俊樹君    理事 瓦   力君 理事 羽田  孜君    理事 藤波 孝生君 理事 加藤 万吉君    理事 村山 喜一君 理事 二見 伸明君    理事 米沢  隆君       甘利  明君    池田 行彦君       小沢 辰男君    片岡 清一君       岸田 文武君    佐藤 敬夫君       志賀  節君    鈴木 宗男君       田原  隆君    谷  洋一君       玉沢徳一郎君    中川 昭一君       中川 秀直君    中村正三郎君       西田  司君    野田  毅君       葉梨 信行君    鳩山由紀夫君       浜田 幸一君    原田  憲君       堀内 光雄君    三原 朝彦君       宮下 創平君    村上誠一郎君       村山 達雄君    山口 敏夫君       山下 元利君    伊藤  茂君       上田 利正君    川崎 寛治君       坂上 富男君    中村 正男君       野口 幸一君    細谷 治嘉君       坂口  力君    橋本 文彦君       水谷  弘君    宮地 正介君       玉置 一弥君    和田 一仁君       工藤  晃君    正森 成二君       矢島 恒夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  竹下  登君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         厚 生 大 臣 藤本 孝雄君         郵 政 大 臣 中山 正暉君         自 治 大 臣 梶山 静六君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 内海 英男君  出席政府委員         総務庁統計局長 田中 宏樹君         経済企画庁国民         生活局長    末木凰太郎君         経済企画庁調査         局長      冨金原俊二君         国土庁長官官房         長       公文  宏君         国土庁土地局長 片桐 久雄君         大蔵大臣官房総         務審議官    土田 正顕君         大蔵省主計局次         長       藤井  威君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省証券局長 角谷 正彦君         大蔵省国際金融         局長      内海  孚君         国税庁次長   伊藤 博行君         厚生大臣官房総         務審議官    末次  彬君         厚生大臣官房審         議官      清水 康之君         郵政省電気通信         局長      塩谷  稔君         郵政省放送行政         局長      成川 富彦君         自治省行政局選         挙部長     浅野大三郎君         自治省財政局長 津田  正君         自治省税務局長 湯浅 利夫君  委員外出席者         地方行政委員会         調査室長    大嶋  孝君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ───────────── 委員の異動 十月十一日  辞任         補欠選任   安倍 基雄君     和田 一仁君 同月十三日  辞任         補欠選任   熊谷  弘君     三原 朝彦君   中川 昭一君     佐藤 敬夫君   野口 幸一君     上田 利正君   山下洲夫君     細谷 治嘉君 同日  辞任         補欠選任   佐藤 敬夫君     村上誠一郎君   三原 朝彦君     鳩山由紀夫君   上田 利正君     野口 幸一君   細谷 治嘉君     山下洲夫君 同日  辞任         補欠選任   鳩山由紀夫君     熊谷  弘君   村上誠一郎君     中川 昭一君     ───────────── 本日の会議に付した案件  税制改革法案内閣提出第一号)  所得税法等の一部を改正する法律案内閣提出第二号)  消費税法案内閣提出第三号)  地方税法の一部を改正する法律案内閣提出第四号)  消費譲与税法案内閣提出第五号)  地方交付税法の一部を改正する法律案内閣提出第六号)      ────◇─────
  2. 金丸信

    金丸委員長 これより会議を開きます。  内閣提出税制改革法案所得税法等の一部を改正する法律案消費税法案地方税法の一部を改正する法律案消費譲与税法案及び地方交付税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加藤万吉君。
  3. 加藤万吉

    加藤(万)委員 昨日はどうも委員長御苦労さまでした。きょうは理事会の申し合わせで、リクルート問題を避けまして不公平税制に絞ってやるということでございますので、その趣旨に沿ってこれから質問をさせていただきます。何せきのうのきょうでありますから、委員長にも大変お疲れのことだと思いますが、よろしく御高配をお願いしたいと思います。  ただ、一言だけ申し上げさせていただければ、各党すばらしい頭脳を寄せ集めまして質問をさしていただきました。残念ながら結果については私どもの期待するものでなかったので、これからの審議の中ではこの私ども趣旨が生かされるような議事の取り運びを委員長にもぜひお願いをしたい、このことだけを最初に所見として申し上げておきたい、こう思います。  先般来、我が党のそれぞれの委員が国の財政問題について、不公平税制中心にして論議をさせていただきました。きょう私は、主として地方財政という立場から見る今日的な不公平の情勢などを中心にして、総理並びに各大臣にお伺いをいたしたい、こう思います。  総理案内のように、シャウプ税制我が国に取り入れられまして、このシャウプ税制の骨格となるものは直接税を主体とする総合課税方式、同時に、いま一方大変重要なことは、地方自治が発展するための独自の財源をどのようにつくるのか、どのような税目設定をするのか、しかもその財源は極めて安定的な財源として確保される、そういう条件整備をこのシャウプ勧告中心にして税の体系として取り入れてきたことは御案内のとおりであります。例えば固定資産税のようなものあるいは住民税、さらに当時議論があったと言われておりますが、付加価値税地方への導入課題あるいは資産課税、特に大規模な土地所有に対する地方への税目としての課題などなどが当時も議論をされ、その後も議論されておるわけであります。私は地方自治というものあるいは地方における行政サービスなどを通して地域に根づいた政治、まあ言葉をかえて言えば、地域民主主義の上に成り立つ日本民主主義、こう申しましょうか、このシャウプ税制の中にはいわば我々が求めている財政からくるそういう一つ哲学のようなものが存在したのではないか、こう思っているわけであります。  ところが、今回の税制改正政府側から提起をされますと、シャウプ税制以来の改正という言葉がしばしば出てくるのであります。それではシャウプ税制というものは、今度の政府提起の中にはその税制哲学的な要素というものが排除されてしまったんだろうか、私は率直に言ってそういう懸念を実は持つのであります。今度の政府側が提案しております税法などを研究してみたり学者の意見などを聞いてみましても、どうもシャウプ税制以来の新たな税制改革、それは全くシャウプ税制が求めていた税の体系とは別の仕組み、同時にまたそういう税の体系、こう思われてならないのであります。  そこで総理最初にお聞きいたしますが、どうでしょう、シャウプ税制というものを今まで総理はどういう形で見ておられているのでしょうか。同時にまた、今日の状況の中でシャウプ税制というものがどう生き続けているのか、ひとつ総理税制に対する、シャウプ税制中心とするやや理念的なお答えをいただければと、こう思います。
  4. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 シャウプ税制というのは、今まさに加藤委員おっしゃいましたように、あの当時大変なまだ窮乏の我が国であったわけでございますけれども、一時的に財産税でございますとかそうしたものの時代が過ぎ去りました後、やはり私は、所得の再配分機能というものを前提に総合課税という方向を意識して勧告がなされたものではないかと、基本的にはそういうふうに思っております。  今おっしゃいました例の付加価値税、これは実施に移されませんでした。それから富裕税、これは確かに何が富裕かというようなところで途中でなくなっております。あるいはいま一つは、やっぱり株式のキャピタルゲインの問題が、原則課税であったものが昭和二十八年でございましたか、また原則非課税になって、そういう変化はもたらされておりますが、その当時は、やはり私は、今申しましたように所得の再配分機能というものを志向して、総合課税制度というものが一つの柱ではなかったかなというふうに思うわけでございます。  そうして、確かにそういうことから出発いたしまして今日に至っておるわけでございますが、むしろ今日は、その所得の再配分機能というものに対して、勤労所得に対する重税感というようなものが出てきて、どこの国でもいわば経済成長とともに行われますように、共通社会的経費は広く薄くというような消費税へ移行していく一つ過程環境が今醸成されてきたのではないかと思います。後の方は私の意見で、前の方はシャウプさんのときの考え方を申し上げたわけでありますが……。  もう一つ、この地方税という問題につきましては、これは昭和二十三年でございましたか、所得税が賦課するという形から申告制ということに、これはシャウプ勧告前でございますけれども、それと地方自治の確立、いわゆる納税申告に基づくもの、本人の良心に基づく申告、それから地方自治というもの、アメリカ日本のそれは大きな地方自治体の差はございますけれども、それがやっぱり一つの、税のみならずでございましょうけれども哲学としてあったんではないかな、可能な限り自主財源というものを難しいにしても模索していくべきではないかなという考えが私はその当時あったではなかろうかというふうに思います。  その後交付税変化しておりますが、いわゆる平衡交付金というような形になっておりましたのも、その当時の地方自治から考えたならば、あれは精いっぱいの考え方ではなかったんではなかろうかというふうに考えておるところでございます。
  5. 加藤万吉

    加藤(万)委員 所得の再配分機能というものを求めていく、それはわかりましたが、総合課税という問題は、総理、今シャウプ税制の中の一環にあったとお答えがないんですね。今度の場合でも、いわゆる総合課税分離課税か、あるいはキャピタルゲインについてもどうすべきかという、これは議論の分かれるところなんです。  ですから、私が懸念しますように、いわゆるそのシャウプ税制という根幹がなくなっていったんだろうか。所得の再配分とか、今おっしゃられた申告制に基づく地方自治権あるいはその自主財源、いわゆる税目設定ですね、これはわかるんですよ。ところが、その一番基本になるべきところが、どうも税の哲学という言葉は行き過ぎかもしれませんが、総理の理念として欠けているような気がするんです。いま一遍、そこのところを、お答えいただきたいと思います。
  6. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私は、税の歴史、私なりに中学校の社会科みたいな話になりますけれども、そもそも最初税というものができたのは、人間が集団生活を営むようになってから外敵外敵というよりもある意味においては野獣かもしれません、そういうものから身を守るために、それぞれいわば労役を提供することによって社会共通の費用に充てられておったところから出発してきたんではないか、こう思っておるわけであります。  ところが、そこに一つの王制のような封建主義社会というものができたときに、その最高の権力者がそれぞれ賦課するというような形になったときに、大変な搾取するものと搾取されるものというような時代に至って、いわゆる初期の社会主義体制というものができてくるんじゃないか。そうすると、社会主義体制というのは最初はやはり全部、言ってみれば間接税に頼る。すなわち、物の値段の中に共通経費が入っておるわけでございますから、国有企業であり、そして公定価格でございますから。それに若干の勤労所得、すなわち努力と報酬というものが加味されてきて、今度はそれが著しく差ができた場合に、いわゆる所得の再配分機能というものが働いてきて、そうしてその所得の再配分機能というのが、またそこに著しい重税感を感ずる、アンバランスを感ずるようになったときに、もう一度今度はいわば消費所得の間の消費というものに対する課税というものが着目されてくるというのが、税制歴史の中でその段階に今来ているんじゃないかな、私はこういう感じがいたしております。  したがって、社会共通経費というのは、ある意味において、今所得の再配分機能応能主義と申しますならば、広く薄くというのは応益主義ではないだろうか、利益に対応するものではないかな、こういうふうに考えますと、応益段階納税義務を果たすのか、所得段階でそれを果たすのか、しょせんはそのバランスがどこにあるかというのが、その都度私どもが衆知を集めて考えていくというようなのが、税制の移り変わりの中における位置づけではないかな、こういうふうに考えておりますから、やはり応能主義はもちろん残るわけでございますし、シャウプさんのそういう物の考え方というのは廃ってはいないというふうに私は思います。  当時、地方自治のことでは、これは私、私事にわたりますが、先般、三年前にお会いしましたときに、島根県の浜田市まで調査に行ったというお話を聞いたことがございます。まあ、アメリカのモンタナ州と島根県と同じぐらいの人口だからいいのかななんて思ってそのとき聞いておりましたが、近く、シャウプ博士も八十五歳ぐらいの老人になっておられますけれども、その当時は四十五歳ぐらいな若手でございましたが、お見えになりますので、思い出話も聞いてみようかなという感じは持っております。
  7. 加藤万吉

    加藤(万)委員 広く薄くという言葉総理よくお使われなんですが、広く薄くということと課税ベースを広げるということとが、どうも同義語、同意語のように聞こえてならないんですね。私は、課税ベースを広げて――さっきいわゆる税の歴史的な経過、その中における労役的なもの、そういう要素はあったと思うのです。それが例えば地方団体における、今日それが即という言葉は当たらないかもしれませんが、人頭割税ですね。この人頭割税の部分地方税制の場合には非常に厚くとって、そして他の部分に対しては何といいましょうか、薄くという意味ではありませんけれども、そこの部分を多くとって、地方自治権住民生活権というものを一番近い範囲でとらえて、それを税によって行政サービスを受けよう、こういう形になっていると思うのですね。  そうしますと、国税地方税という性格は、基本的にどうも違う。そこにシャウプさんは一つの目をつけられて、さまざまな間接税あるいは付加価値税、そういうものを想定をし、しかもそれが安定的な財源、こういうところにあったと思うのですね。ですから、総理がおっしゃるように財政歴史が、単に労役税から、いわば沖縄ではございませんが、これだけの背になればすぐここから税を取るぞという、そういうものは十七世紀時代はあったかもしれません。しかしそれが今日商品に、あるいは地域における行政サービスとして受けるものに対して、公益的な税として負担をしていくという、そういうところにシャウプ税制根幹があったような気がするのですね。私は先ほどから言っておりますように、それが地域生活基盤を支え、同時にそこに自分の手でつくる町づくり、いわばそこにおける地方自治といいましょうか、そういうものが発展して、そこをまた政治課題としては発展させようとしたシャウプさんなりの一つ政治哲学があったような気がするのです。  そこで私が懸念するのは、どうも政府の出しているのは、そこの部分カットして、そしてさまざまな点を税の仕組みとして取り入れられようとしている。シャウプ税制の問題、あるいは今度の地方における間接税国税への吸収という問題、ここをみんな一番心配しているのですね。いわゆる地方自治というものが財政的にも壊れやしないか。あるいはそこにおける地方固有の、独自のサービスないしは独自の事業、そういうものがこの財源の移転によって縮小されやしないか。総理総理七つ懸念というのを表明されました。私はそれなり理解ができるのです。私は八つ目懸念にこれを加えるべきだと思うのですが、やはりそこに対する懸念というものは住民の側からありますよ。  例えば医療なんかについても、かつて六十五歳以上からも医療無料という制度をとった自治体があるわけですね。ところが今度そういうものは、結局地方における財源の、例えば保留財源二五%とか二〇%とか、そういう財源と同時に独自の税目をもって処置するわけですね。こういう財源があるから、隣の市は六十八だけれどもおれのところは六十五になるんじゃないかとか、あるいはお隣のところには老人ホーム一つしかないけれどもおれのところは二つあるとか、そういういわば自分の手による町づくりというものが破壊されていく。  今度の場合でも、これはどうも塀の上を歩いて論議するようなことで、総理にとっては気持ちのいい話でしょうけれども、私には余り気持ちよくないのですがね。税制改正を見てみましても、例えば物品税、いわゆる間接税で吸い上げたものの、今度は法律上は二五とか二〇%残すということになっておりますけれども、やがてこれはかつての譲与税みたいに吸い上げるのじゃないですか。そんなことは、これは少し論外ですけれども、しかしそういう懸念というものはあるのですよ。どうですか。七つ目から八つ目懸念をこの際表明される必要があると思うのです。でなければ、国の行政の最後の窓口は七〇%地方団体なんですから、この一つ懸念は晴らすことはできませんよ。概念ですけれども、ひとつ総理の見解を聞きたいと思うのです。
  8. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 実は私明らかに申し上げますけれども加藤委員と相談したわけでも全くございませんが、いずれの日その八つ目懸念というのが私は議論に上るであろうと思っておりました。まあ期待しておりましたというとちょっと表現がオーバーになりますから、上るであろうと思っておりました。  今まで考えてみますと、六つの懸念のうちに、いわゆる実際問題として税を負担する消費者の持つ懸念というのが大体あの中で四つぐらいになるのかな。それから納税者事業者あるいは納税義務者、それの持っておる懸念が手続面倒ではないかということと、それから転嫁の問題と二つになるのかな。失礼いたしました、五つと二つでございます。消費者そのもの懸念とそれから事業者懸念と、その次に出てくるのが、私はこれはいわば自治体の持つ懸念ということではないかな。ただ、私なりの勉強では、譲与税にいたしましても、それから交付税への算定基準にいたしましても、大変工夫されてできておるな。だから議論の中で自治大臣からこのような措置が行われておりますというようなことで、あるいは地方行政委員会、もとより本委員会等を通じて八つ目懸念というのは解消されていくんじゃないかな、こういうふうに思っておるところでございます。  ただ、百も承知の上での御質問でございますが、地方自治そして自主財源、確かにこれは尊重すべきものでございますが、何分税源が偏っておるところに最終的には、地方行政専門家皆さん方からもいつも言われることでございますけれども、本当に自主財源を見出すということは税源が偏っておるという限りにおいて非常に難しいものである。だから、かつて平衡交付金というものがあった形において、そういう平衡性を保つというところには交付税とかそういうものが必要であるということを私自身いつも自分で思っておるところでございます。
  9. 加藤万吉

    加藤(万)委員 どうも総理のペースに引き込まれちゃいけないなと思って、大変心配しながら実は今質問しているんですが、総理譲与税の話が出ると総理に引き込まれますから、交付税を見まして、最近の交付税の中における政府の後始末と言ってはおかしいですが、による交付税への算入というのは非常に多いのですよ。例えば一律カットがそうでしょう、あるいは利差臨特交付税への算入がそうでしょう、などなど言いますと、私の計算では、これは自治省の正確な数字、こっちにメモがありますが、一兆三千億超えるでしょう、後年度への送り、交付税への算入を含めまして。いわゆる交付税そのものが、総理が言うようにいわば地域の自主的な経済あるいは財政あるいは環境づくりそのものだと、いわゆる独自の財源だと理解をしながらも、そこに余りにも補助金的要素が、あるいは国の支配的要素というものが食い込んでくるものですから、どうしても懸念が出るのですよ。  ですから交付税で、あるいはシャウプさんが言った当時の平衡交付的要素というのは、御案内のようにむしろそれは基準行政といいましょうか、そういうものを確保するためには低位な府県は上げて云々という、そういう要素を持ちながらの導入だったわけですが、今日ではどうも交付税そのものが、いや交付税にカウントするから一律カットは認めてほしいとか、利差臨特などについては交付税でやがて後年度算入するからということで、これはいつパアになるかわかりませんけれども大蔵大臣自治大臣とよく覚書を結ばれて、覚書を結ぶたびに私は冷や冷やしているんですよ。だって一律カットのときだってそうでしょう。あれは単年度限りですよ、一年限り。それがまた延びてまた延びて、ことしが期限ですから。借金だって一カ月待つというものを三カ月待ってくれと言って、三カ月待って返さなかったら文句言いますよ。そういう要素が多いのです。ですから、私は第八の懸念がこの場合出てくる、こう思うのです。  これは議論しても切りがありませんからこの程度にとどめますが、八つ目懸念をいみじくも総理もそう考えていらっしゃったということで、ぜひこれからいろいろなところで発表されるときには八つ懸念を表明されて、八つ懸念を解消するためにはどうするかという策もぜひこれは出していただきたい。先ほど言いましたように、交付税そのものがそういう要素になってくる要素を排除するためにはどうしたらいいのかといえば、地方固有財源税目をどう国から地方に移譲して、そこに財政的な条件を整備してやるか、私はこのことが非常に重要ではないか、こう思うのです。  そこで、これは今度は大蔵大臣にお聞きしたいのですが、どうなんでしょうか。今総理がずっと歴史過程の中で所得消費、そして広く薄くと、こういう話がございました。税のかけ方としての歴史的な経過それなりに私はわかったのですが、この間、日本産業構造社会変化は大変ですね。私の記憶でいけば、昭和二十八年ごろから我が国特例という措置がだんだんと拡大をしていったわけです。この特例という措置を当時の経済状況から今日の経済状況まで比べてみますと、経済の発展というものと合うのですね。  例えば朝鮮動乱後、私なんか石油化学の会社で働いておったわけですが、石炭から石油へという、花開く産業時代という時代がございました。そして、その石油産業が次に今度はコンビナートというシステムになって、ここでは鉄鋼、石油、電力、化学というコンビナート地帯ができてくる。コンビナート地帯ができてくると、ここにまた特例措置が生まれてくる。特に工業コンビナート地域をつくるための土地税制などが緩和されてくる。そして今度はそこから出た製品が、内陸工業地帯に発展をして、内陸工業地帯が発展をする中でいわゆるハイテク産業が根づき、発展をする。そして日本の産業は鉄鋼から軽薄短小という産業に変化をしてくる。この間に、それぞれの段階で特別措置があるのですね。私は、それはあってもいいと思うのです、時には日本経済を活性化するために。今日でも韓国などではそういう制度をとって産業の活性化を求めていく、あるいは雇用の確保をするなど政策的な要素はあると思うのです。  ところが、一番問題なのは、前にあった特例、特別措置もそのまま置いたまま実はやっているのです。ですから、租税特別措置と言われているさまざまな特権あるいは特例というものが積み重ねられて、その積み重ねと勤労所得者の払う所得税とが不公平じゃないか。キャピタルゲインなんかもそうですね。あるいは土地課税に対する資産課税なんかもそうでしょう。私は、そういう特例、特別措置というものが、経済の発展に応じて、あるいは日本産業構造消費構造に応じて税が変わるというのはわかりますよ。同時に、この特例措置が変わっていくことによっていわゆる課税ベースが変わってくる。この課税ベースの変わったことに着目して課税ベースを広げる、こういう策を今日の時点ではとるべきではないか、私はこう思うのですが、いかがでしょうか。
  10. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 シャウプ税制当時の昭和二十五年におきます我が国産業構造は、一次産業のGNPに占める比率が二六%あったようでございます。ただいま二・八%ぐらいでございますから、それはもうシャウプ税制以来大変な国の変化がありましたことは御指摘のとおりでございます。  そして、今おっしゃいましたような段階段階で、確かに租税も政策目的に従いまして、いわゆる租税特別措置法等々で特例をいろいろに設けてまいりました。それは国の今日までの発展に役立ってまいったと思いますが、加藤委員の言われますように、ともするとその特別措置が既得権になりまして、それを受ける納税者、業界等々からいえば、一遍与えられたものはなかなかそれを放棄しないといったようなことは、ともすれば確かに過去においてもございました。私どもといいますか課税当局から申しますと、それはできるだけ整理をしたいということで当然のことでございますがやってまいりまして、できるだけ措置法の見直しというのをしばしば、毎年やっておりますけれども、毎年やりますときにスクラップ・アンド・ビルドのようなことも工夫したり、何年目かに大掃除をしたりしてまいりまして、ただいま一番大きな部分は中小企業に関連するものであると思います。それから最近で申しますと、エネルギー関連であるときもございますし、環境関連であることもございますし、そのときどきの政策需要をこの措置法の中で取り入れてまいっております。できるだけ、おっしゃいますように新しいものが入り用であれば古いものはそのときに処理していくということで進まなければならないと思っておりますが、ともすればただいまおっしゃいましたようなことがありがちでございます。
  11. 加藤万吉

    加藤(万)委員 我が党の村山委員が資産の増価額についていろいろ御質問さしていただきました。これも同じ資料に基づくわけですから数字的な根拠は同じですが、日本経済研究センターが出した六十一年、六十二年の株あるいは土地の増価額は六百十九兆円、こう言われているわけですね。この六百十九兆円、今日消費需要をどうとらえるかという場合に、GNPから来るとらえ方だけでは当然不足だ、こういうようないわゆる資産の増価額によって起きる消費というものが日本のこれからの景気も支えていくだろう、相当長期間支えるだろう、こう一般的には言われております。ですから、よく大蔵省サイドで聞こえてくる、いや、これは単年度増収ですという言葉は、私はその範囲においてはちょっと聞く耳を持たないわけです。  いずれにしても、私はこの資産増価額というものは消費に拡大してくる。消費に拡大してきて、そこに税目、税収があるから、大蔵大臣、これもまた塀の上で話をするんですが、地方財政は今度八千九百億円マイナスですね。いわゆる今度の増減税といいましょうか、を加えてプラス・マイナス地方財政は約八千九百億円財政が不足だ、これは自然増収で賄う、一言で言えばそういう体制。自然増収で賄うというお金、要するにそれだけ自然増収がふえるだろうというお金は、もちろんGNPもそれなりに伸びるでしょうが、この資産の増価額から来る消費市場への波及、それから来る税の税収、自然増収、こういうものを見込まれているんでしょう。でなければ八千九百億円なんという金は今の地方団体では持てませんね。御案内のように地方団体は今地方債、公企債、交付税特会借入を含めて六十六兆九千六百七十七億借金ですからね。私は仮に百歩譲ってそれを認めたとしても、それならばこれの資産増価に対して何で税の課税ベースを広げないんですか、こういう議論をしたくなるんですよ。どうですか。
  12. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 せんだって村山委員から、その資産の問題についての御指摘がございました。あのときのお話、つまり土地でありますとか株式でありますとかの非常に大きな、いわば名目的な価値の膨らみがあるということのお話であったわけでございますが、私どもがあのとき申しましたのは、そういう名目的な価値の膨らみが譲渡所得の形において税収にはね返っていくという、その部分は確かに相当大きいわけでございますが、それはいっときのものであろうということを申し上げたわけでございます。  他方で、今加藤委員の言われることも私は真実だと思いますのは、そのように資産が増価すれば、いわば平たい言葉で言えば、懐が暖かくなればそれだけ消費も大きくなるだろう、限界消費性向は確かに大きくなるわけでございますので、それはそういう形で、何と申しますか消費にはね返ってくる、それは私はそのとおりであると思います。かなり長い時間でございますけれども、それだけ懐が暖かくなれば消費水準は高くなるだろうということは、もう私はそのとおり、それが資産効果と言われているものだと思いますが、それは確かに長い時間そういう状況で徐々に税収にはね返ってくると思いますけれども、前者はいっときの譲渡所得によってその関連の税収が非常に大きくなる、所得税、譲渡所得でありますとか、あるいは有価証券移転でありますとか、相続税でございますとか、それはいわばいっときのことである、こういうふうに分けて考えていくべきかと思います。
  13. 加藤万吉

    加藤(万)委員 消費の中には、私は資産分も含まれてくると思うのですね、生活の消費という意味じゃなくて。例えば今日の金余り現象が土地投機に回って、それは譲渡益もそれぞれ出ますよ、一時的であるかもしれませんが、それを常に業としている人は、そこにおける利益というものが出てくる。さらにその利益によって次の拡大投資を行っている。  自治大臣が見えますが、今一番困っているのは公共用地でしょう、地方団体で。特に、私は神奈川県ですから。この前東京都下の市町村を調べてみましたら、当初予算に対して用地費が三〇から一〇〇ですね、プラスを加えないととても用地が買えない。ある都市などは大変工夫していまして、土地を取得をしないで公共事業が何ができるだろうか。そうしますと、学校の用地の下側に地下の何かをつくればいいとか、あるいは道路の下側に下水道を、少し曲がるけれどもそっちへはめ込めば土地の用地取得費は幾らか減るとか、大変苦労しているんですね。いわばそういう形で出てくるもとのところになぜ富裕税がかけられないのでしょうかね。土地に対する税、いわゆる譲渡所得、譲渡する場合の所得と同時に、長期間土地を保有している者に対する税率を変更した税をかけていいんじゃないですか。そういう形も私は地価鎮静化の一つの方法である。  同時に、それが地方団体の公共事業に多少でも、多少というか、私は相当プラスになると思っていますが、そういう方向性というものはこの際私はとられるべきではないか。消費から来る税収が自然増収として拡大する。したがって、今度の財政でプラス・マイナスでいって地方団体は八千九百億円ほどマイナスになるが、それはまあ長期的に埋めていこうじゃないか、埋まるだろう。ならば、同時にそういう意味での、先ほどからずっと話しておりますように、社会状況変化に伴う課税ベースというものをいま一遍ここで見直してみる。私は、不公平税制の是正はそこから出発だと思うのですね。そこから出発をして、さてそれで足りない財源はどうするかという、この議論なら何ぼでも乗りますけれども、どうもそこだけを置き去りにして、世に言う消費税最初にありきという議論では、どうも私どもは納得することはできない。どうでしょうか。土地に対する税というものがこの際いま一遍そういう意味で見直されてしかるべきだと私は思いますが、大蔵大臣、どうお考えでしょうか。
  14. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 富裕税というお話がございまして、御記憶のようにシャウプ勧告ではこの富裕税というものが勧告されまして、五百万円超の純資産に対してある程度の課税をしろということでいっときいたしましたのですが、どうもこれは当時の状況もあったかもしれません、うまくいきませんで、結局間もなく廃止をいたしました。  今のお話を承っておりまして、私はそれを富裕税と呼ばずとも、そういう資産の取得、保有それから譲渡についてはおのおののやはり今いろんな課税がある。仮に土地などで申せば、固定資産税であるとかあるいは特別保有税であるとかいうものがございますので、そういうことで私はある意味での今おねらいになっていらっしゃる目的は達しておるのではないか。あえてそれをまとめて、富裕税という形でまとめてやるかやらないかということはなかなかやはり問題がありますし、おのおののことでやっていけばそれでその目的には沿っておるのではないかというふうに私としては思うものでございます。
  15. 加藤万吉

    加藤(万)委員 今おっしゃったような譲渡益課税を他の面でという、それも方法ですね。  そこで、例えばこれは話ですが、固定資産税に対する土地評価額の問題について、いわゆる一物二価、あるいは四価、こう言ってもいいのですが、路線価その他を含めまして言いますと四価ぐらいあるわけですね。公示価格あるいは路線価、相続税の場合の評価額は路線価ですね。そして実勢価格と、こうあるわけです。この幾つかある価格に対して、この際やはり路線価と言われるのでは低過ぎるのではないか、余りにも税に対する制度として緩和といいましょうか、あるいは優遇ではないか、公示価格では少し高過ぎるのではないかという、いろいろ意見があるのですね。  どうでしょう。この際、大蔵大臣言葉を受けての話になりますが、そういう土地資産にかかわる税を富裕税というもの、ちょっと否定的ですから、あるとすればそういう面での価格、いわゆる標準価格、一物二価といいましょうか、それをなるべく社会的に見て公平さを保証されるような価格に近づけるという意思はございませんでしょうか。
  16. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 固定資産税のように毎年反復して納めます税金と比べますと、相続税は一生に一遍と申しますか、何度しかない税金でございますので、やはりそこで評価の基準というものが違ってくる。殊に相続税の場合には大きな税金を納付する、その場合に評価された資産を売却して納付するということがしばしばございますので、いわゆる市場で売れる、すぐにでも売れる程度の評価をしておきませんと、余り高い評価をいたしますと売却ができない、税金分が調達できないということがございます。そういうことで、相続税の評価は独特のやや低い評価をしておるということと承知しておりますけれども、おっしゃいますような議論政府部内にもあり、審議会にもいろいろございまして、全部が一本にならぬでも何とかその間の調整がもう少しできないかということは、政府部内でも検討いたしておるところでございます。
  17. 加藤万吉

    加藤(万)委員 大蔵大臣、先ほど私と総理のやりとりの中で、応能、応益という問題、同時にそれが地域民主主義という一種の政治哲学要素、やりとりをしてみたのです。     〔委員長退席、海部委員長代理着席〕  外形標準課税、これは私はやはり今再検討すべき時期に来ているというような気がするのです。外形標準課税は、しばしば地方事業税の中に取り込まれて地方におけるという議論、これはあったことは御案内のとおりですね。赤字企業の場合に、いや、それは法人税ないし事業税であれば均等割、それで措置をする、このことも地域条件から見ると極めておかしいといいましょうか、あるいは制度としてもっとあってしかるべきではないかなという意見があるのですね。  私のところなんかは、京浜工業地帯その他抱えていますから、率直に言って赤字の大企業がないわけではありません。ところが、そこには何千人という従業員がいて、地域的な行政サービスを受けているわけですね。これは均等割税、均等割の事業税といいましょうか、ただ火災があれば消防が出る、従業員の人が何かやればレクリエーションの広場を市立の公園で用意したりその他でやる、そういう行政サービスを受けながら、税の面では外形的な要素に基づく税というのは一切ない、どうも不均衡ではないか。先ほどの地域における応益的な要素を基準とするならば、外形課税という論議は当然あっていいはずだし、私は制度として取り入れるべきものではなかったかと思うのですね。  どうですか、大蔵大臣。今度六十一年の税調の答申が出まして、外形標準課税につきましては、国税における大型間接税の関係で先送りをすべき、あるいはその中に取り込むべきであって云々ということで、外形標準課税はこれで打ち切りですか。これで落ちこぼれてしまったのですか。この答申をお読みになって大蔵大臣、見解、どう思いますか。
  18. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 地方税のことについては、あるいは自治大臣から御所見があろうかと存じますけれども国税で申しますと、確かに法人が社会的にいろいろな便益を受けておるのにもかかわらず、法人税を納めていないというようなケースをどう考えるかということでございますが、私どもでなかなか踏み切りがつきませんのは、法人税というのは所得課税であるというふうにやはり考えざるを得ませんものですから、所得がない場合に課税ができるかという、そういう問題はどうしても避けて通れない一つの問題になってくる。  そこで、それならば、法人そのものの赤字と言われるその赤字の内容が果たしてまことに適正であろうか。例えて言えば、交際費などはどうなっておるかとか、いろいろその辺には検討の余地がきっとあるであろう。現にこれは、土地問題との関連でございますけれども、急に要らない土地を買って持っておってその金利は経費になる、その結果赤字になるということなどはちょっといかがなものだろうかということから、これは今回改めることにお願いを申し上げておるわけでございますが、そういうようなことで、あるいはまた執行面で中小法人を実査いたしますと、今まで赤字で処理しておったものが実際には否認するものがたくさんあって黒字になる、これは執行面でございますけれども、そういうこともしなければなりません。そういうようないろいろな方法で、今赤字だと言っているものがそのまま今まで通っておる。それには幾つか執行面にも、あるいは場合によりまして立法面にも工夫の余地がないかということは、私どもも問題意識として持っております。
  19. 加藤万吉

    加藤(万)委員 執行面というか、私は先ほどから言っていますように、公益的な、応益的な場における企業課税という原則に照らして、やはり外形標準課税というものはいま一遍起こしてみて議論する価値のあるものだ。大蔵省で、何か今度大型間接税が入るから法人事業税も検討し直すべきだなんという逆の議論があると私は聞いておるのですね。これはうわさ程度なら結構なんですが。そうではなくて、先ほど僕が何回も言っているように、地域におけるそういう行政サービスを受けるものに対して何を法人が社会的負担として行うのかという、その視点から見る外形標準課税事業税に取り込む、これも一つの大きな意見としてあるわけですから、そういう立場で、それは大蔵大臣が言われるように、土地の取得に対して借り入れをした分の金利は今度は認めないなんと言う。みみっちいですよ。  それよりどうですか。交際費にずばり手を入れてみたら、あるいは宣伝費にずばり手を入れてみたらどうですか。三兆円以上でしょう。そういうものを求めていく姿勢が、技術論的に、今言ったような執行面上においてやるならば、その行きつく先が大型間接税で、今度は法人事業税関係も吸収してしまおうかなんというものと、それから、いや、外形標準課税の方へいこうとするものとの意識、意欲の差になってくるのですよね。私はそういう意味で、この六十一年の税制の答申というのは非帯に不愉快というか、あってはならないような答申だったなというような気がするのです。御案内のように、昭和三十九年まではこの議論があり、税調あたりでも外形標準課税問題を地方の舞台における税収として考えるべきだという、そこまでの議論があったわけですからね。そんなことを考えてみると、この際、外形標準課税の問題をいま一遍起こして、永遠に葬り去るというような方向ではない検討をぜひお進めいただきたい、こう実は私は思います。  次に、これは大蔵省と自治省財政の当局者にひとつお聞きをいたしたいのですが、所得税課税最低限と住民税課税最低限、数字はたくさんありますけれども拾い上げてみますと、例えば昭和五十四年、所得税を一〇〇にしますと、住民税は七三です。昭和六十三年をとりますと、課税最低限の所得税住民税の比較で八六・三です。今度法改正をされているのをちょっと私試算してみたのですが、六十四年度が七〇・三、六十五年度が八五・一、こうなっていく。これはあとはいいですが、この差、いわゆる所得税住民税課税最低限の差、これを議論することは意味があると思いますか、ないと思いますか。これは大蔵省の財政当局者と自治省財政当局者にお聞きしたいのです。  なぜかと言いますと、いや差は問題じゃないのですという議論があるのです。所得税所得税課税最低限のとり方があります、住民税住民税独自のいわゆる課税最低限のシステムがあります、したがって、それを比較をするのは余り意味がない、こういう意見がよくあるのですが、両方の財政当局者からちょっとお答えいただきたい。意味があるのかどうかでいいです。
  20. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 所得税住民税は、同じように所得に対して課税をいたしておりますところからいたしますれば、その比較ということも意味があろうかと思います。しかし、やはり同じ所得課税標準といたしましても、所得税住民税にはおのずとそこに、例えば負担分任でございますとか、そうした考え方の差はあるかと思いますから、それをただ機械的に比較して、同じでなくてはいかぬとか、このくらいの比率でなくてはいかぬというところまで言えるかどうかにつきましては、一概にはなかなか言えないかと思います。
  21. 湯浅利夫

    ○湯浅政府委員 所得税住民税におきます課税最低限につきましては、ただいま大蔵省から御答弁がございましたとおり、それぞれ税の性格が違うわけでございますので、住民税におきましてはいわゆる負担分任的な要素が非常に強い。それから所得税におきましては、所得配分という機能が強く出ているということでございますから、これを一概に、所得税課税最低限が幾らだから住民税課税最低限は幾らでなければならぬ、こういうような比較の仕方はできないのではないかということでございます。
  22. 加藤万吉

    加藤(万)委員 まあ結果的に言えば余り意味のない議論だ、こういうことですよね。私は、そういう見方がされるのが非常に遺憾なのですよ。意味のない議論をして意味があるのですよ。なぜかと言うと、これは一つの例ですが、地方税における住民税課税最低限の引き上げは、減税の中から課税最低限を引き上げている例はもちろん多少はありますよ。それよりも、生活保護費の上昇によって課税最低限を引き上げざるを得なくなったのじゃないでしょうか。ですから、課税最低限の、国が減税を行いますと住民税との差が縮まるのですね。これは当然ですね。そういう技術的な要素があります。  ただ、住民税課税最低限を決める、ここ二、三回といいましょうか、四、五回といいましょうか、私が聞いている範囲では、いわゆる課税最低限の非課税限度額を引き上げる措置というよりも、むしろ生活保護費の上昇に伴うものに見合うものとして課税最低限を引き上げている、そういう要素が非常に強いのですね。これはよくよく考えてみますと、一言で言えばどうも地方税減税が行われなかった結果じゃなかろうか、そんな感じがするのですよ。今言ったように課税の仕方が違いますから、それを差として議論することは余り意味がないけれども、どうしてその差が縮まってきたのだろうかなということを吟味していきますと、地方住民税課税最低限、いわば減税というものがなかったことによって、まあ生活保護費がこれだけ上がったから、それ以下に下げてその部分にまで税をかけるのはどうもせつない。したがって、そこの部分を引き上げて住民税課税最低限にしている、こういう経過が非常に多いですね。  例えば六十二年度の減税問題もそうですが、今年度減税になりましたね。今年度減税になりましたけれども、今年度の減税に対して地方税減税、住民税減税はありませんね。これは六十二年度ですかね、ちょっと年度もし変わったら失礼しますが、六十四年度まで地方税はある一定の段階で減税するということになっておりますから、それがあるから六十三年度の所得税減税に見合うものとして六十五年度、地方税でいきますと六十五年度になりますね、その減税はする必要がないんだということで、従来の六十四年度分の減税で間に合わせると言ってはおかしいですが、それでつじつまを合わせたわけですね。どうも減税という問題をとらえるときに、地方税減税、住民税減税をどうするかという問題が余り前に出てこないのですね。そして、やや追っかけるように多少の減税はやるけれども、むしろ課税最低限を引き上げるものは、減税という要素よりも、今言ったような生活保護費からくる課税最低限の引き上げという要素が多い。ここに政治家が着目しなければならぬ問題があるのじゃないか。  先ほど言われましたように、事務当局、いわゆる官僚の皆さんから見れば、その差は余り議論しても意味ないことですよ、こうなりますけれども政治家という立場で見ると、なぜそこが縮まってきたのか、あるいはなぜ拡大するのか。例えば先ほどの、六十四年から六十五年にかけての地方税との比較がこれだけ変わってくるという今度の問題点なんかも、まだ私は検討していませんからこれ以上のことは言えませんけれども、何かここにそういう我々が考えなければならない政治要素があるような気がしてならないのです。  どうですか、自治大臣。これは自治大臣にはちょっと無理でしょうか。今言った課税最低限の問題は、地方税と国との関係の中で、政治的に地方住民税課税最低限を見ていくという目が必要であり、それが結果的に国の減税と地方住民税減税がある意味においてはバランスのとれた減税の姿勢になってくる、私はこう思うのです。そういう方向をとるべきだと私は思いますが、自治大臣の所見がありましたら、ひとつ聞かせてください。
  23. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 税全般から見ますと、国と地方それぞれの目的が違いますけれども、整合性を得なければならない関連性の強い税制であろうかと考えております。  ただ、今住民税所得税のいわば連動の問題でございますが、どちらかというと先生御指摘のように地方税、特に住民税等を考えますと、いわば負担分任的な性格が強いわけでございますから、国の所得税、この所得配分機能という問題とはある一面で異なることはやむを得ない。そういうことから考えますと、私は必ずしも国税で行う減税にスライドして地方が減税をしなければならないというふうに一義的には考えておりませんが、しかし受ける住民側からいえば、国、地方を通じて連動されることがいいし、国税が安くなって地方税が高いということに対する矛盾、不満が助長されることもいかがなものかと思いますから、いわば足して二で割るというか、折衷案的なものがあってしかるべきだというふうに考えております。
  24. 加藤万吉

    加藤(万)委員 優等生答弁でございますが、先ほど私ちょっと間違えましたことが一つありますから訂正しておきますが、生活保護費が上がって非課税限度額が引き上げられて、本来課税最低限が上げられる部分が上げられなかった、そういう意味でございます。ちょっと取り違えましたので、訂正をしておきます。  課税最低限が上げられなかった一番の原因は、やはり地方財政が豊かでないということですよ、これは何だかんだ言っても。しかし、生活保護費は国の方で決めて、これだけ生活保護費が上がりましたというのに、それ以下の人に地方税住民税をかけることはできないわけです。したがって、先ほど言った非課税限度額だけを引き上げて、そしてつじつま合わせをしたというのが本当のところでしょう。となると、政治家として我々が考えなければならぬのは、いわゆる地方財源不足という問題に対してどう考えていくのか。同時に、自治大臣言葉をかりて言えばちょうど中ほどのということも含めてですが、バランスのとれた地方税減税というものがそういう配置の中で行われていく、このことが必要ではないかと思うのです。  さて、大蔵大臣、私も実は見解が出なくて困っているのですが、大蔵大臣の見解を聞きたいのですが、所得税住民税のあり方、これを一つのものとしてとらえて、これからの日本の税の合理化を図るべきだという意見が実はあるのです。今自治大臣が言ったように、地方財源はまたその地方状況においての税体系であるから、住民税地方の税体系の中における税率として物を見るべきだ、こういう意見があるのです。大蔵大臣、もしおとりになるとすればどちらをおとりになりますか。これからの日本所得税住民税との関係においては、一体化という方向を強めようという意思あるいはそういう見解か、その辺をちょっとお聞かせいただけませんか。
  25. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 どうも私、両方総合的な立場に立って考えていないわけではございませんが、今与えられた職責から言いますと、国税の方の責任大臣だということにならざるを得ないものでございますから、多少このお答えが歯切れが悪いのでございますけれども、本来国と地方との行政財政の再配分ということはいつかはしなければならない仕事でありながら、なかなかそういう声がありましても抜本的な再検討が行われたことがございません。今のお話はそういうことの一環として考えられるべき問題であろうと思うわけでございますが、ただ、そういう前提がなかなか相立ちませんので、そういうことになれば、どうもやむを得ずと申しますか、成り行き今のような制度を続けていくということではないかと思っております。
  26. 加藤万吉

    加藤(万)委員 これは私自身も勉強したいと実は思っている課題でもあります。  大蔵大臣、私は、不公平税制課税ベースを広げること、同時に日本の税体系というものを我々はこの際真剣にお互いに討論してみる、あるいは勉強してみるということが必要ではないかと思うのです。ですから、一定の政府の政策の中における大蔵大臣ですから、財政問題としての方向性といいましょうか、あるいは私どもに問題を投げかけてもらうような一つ提起といいましょうか、そういうことをぜひしてもらいたいなという気が実はするのです。これは後で、この次いつになるかどうかわかりませんけれども、どこの所得部分が今度の法改正によって減税額が多くなるだろうか、こう見ますと、実は地方税国税とは少し百万ばかり単位が変わってくるのです。五百万前後のところが今一番減税が多くなっていますね、政府が考えておられるところは。ところが、地方税にいくと六百万ぐらいのところが多くなるのですね。これは何でだろうか。これは税率の問題を含めて、自治体の方から県民税、市町村民税、こう話がありますので、これを含めて私は言っているのですが、それと所得税のあり方というものを本格的に我々が議論するということがどうも必要になってきたというふうに実は思うのです。これはいずれ議論のときに大蔵大臣の見解も、今の改正とかなんとかという視点に余りとらわれずに十分我々と議論してもらいたい、ここだけは要望しておきたい、こう思うのです。  さて、補助金カットの問題はどうも歯切れが悪くて困るのですが、自治大臣最初自治大臣に聞かなければだめですよ。サマーシーリングではこれはペンディングになりましたよね。そして、十二月に各省大臣との間で話し合いをして、いよいよ約束事を守っていただける、私はこう確信をしているのですが、自治大臣の見解をひとつお聞きしたいと思う。
  27. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 再三地行その他でお答えをいたしておりますとおり、国庫補助負担率の引き下げ問題は、国の極めて厳しい財政の事情を背景として、また内需拡大をしなければならないという対外的な配慮というか、景気のいわば外需依存か内需依存かという問題をめぐっての結論として、六十三年度までの暫定措置として行われていることは御案内のとおりでございます。  六十四年度以降の補助率負担の取り扱いについては、原則としてもとの補助負担率に戻すべきものと考えております。しかし、具体的には六十四年度の予算編成時までに関係省庁の協議で定められることとなっております。  自治省としては、各事業の性格、国庫補助負担制度の意義等を踏まえつつ、国としての責任が全うされるように、また地方財政の健全かつ安定的な財政運営の確保が図られるように検討を進めてまいる所存でございます。
  28. 加藤万吉

    加藤(万)委員 大蔵大臣、今年度の地方財政計画は、財源不足額が御案内のように一兆七千二百五十九億、このうち国保の新しい制度等で六百億円別枠になりますから、補助率のカットによる財源不足額は一兆六千五百六十億ですか、それがなかりせば地方財政はプラス・マイナス・ゼロ、率直に言って相当絞り込んだ地方財政計画をつくっていると私は思うのです。各地方団体が、これもやりたいあれもやりたいという事業をそれぞれカットして、そして財源に見合う、私に言わせればどうも上からこの枠内の財源だからこの中で全部歳出計画をつくれと言われたような気がしないわけではありませんが、結果としては地方財政はプラス・マイナス・ゼロ。ところが一方、補助率カットの分だけが財源不足になるのですね。初年度目やったときに当時の自治大臣は、これが一年で終わらなければ私は腹を切ります、こう言われたのですね。腹を切られる前に首の方がどこかに行ってしまったのですが、どうでしょうか、もう三年ですね。自治大臣大蔵大臣との覚書があり、その後三年のお約束をし今日になっているのですが、今大臣から答弁がありましたように、年末段階でこの財政、予算を打ち合わせすると言うのですが、大蔵大臣の見解を聞きたいと思う。
  29. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御承知のような、また今自治大臣も言われましたような契機がございまして、三年間の暫定措置としてやらせていただきまして、その三年が終了するということは御指摘のとおりでございます。したがいまして、これ以後の問題につきましては、今後の諸情勢の推移あるいは国、地方財政行政事情、行財政の役割分担のあり方等々、そういう問題を考えながら関係省庁とできるだけ早く協議をいたしまして、年末、予算編成までの過程で対処してまいらなければならないと思っておりまして、内々では少しずつ関係省の間で意見交換をいたしておるところでございます。
  30. 加藤万吉

    加藤(万)委員 大蔵大臣、今度の税制改正の中の増減税問題、地方財政、まあ仕組みとしてありますが、この問題とは切り離してこの問題をやられますか。今お話の中では、財政のいろいろな状況を勘案して十二月にやります、こうおっしゃっていますね。そのいろいろな事情の中には、今度の税制改革による地方財政と国との入りと出がありますね。一方では譲与税、片一方で地方交付税、一方では地方住民税の減、片一方の間接税の減でバランスをとっていますね。バランスをとられて、表がありまして、その中に含まれたものとして一律カットの問題は議論されるのですか。それとも、それとは別です、私は当然そうだと思うのですよ、答えは。これは別に三年前からの話ですからね。それを今度の税制がどうなるかわからないときに、その中に繰り込んでなんていう話にはよもやならないと思いますけれども、どうですか、大蔵大臣
  31. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 このたび御審議をお願いいたしております税制の根本、抜本改革におきましては、国及び地方税おのおのについて御審議をお願いしておるわけでございますし、当然その間の財政の関連も考慮いたしました上で御提案をいたしたものでございます。  私どもは、できるだけ速やかにこの税制改革をやらしていただきまして、六十四年度はその前提の上に立ちまして予算編成等々も考えさしていただきたい、これは一般論でございますが、そういうふうな基本的な心構えで考えておりますので、ただいまの問題も、したがいましてそういう前提、背景のもとに検討をしつつある、また、いたしていきたいと思っております。
  32. 加藤万吉

    加藤(万)委員 税制問題が議論されたのは、それは中曽根さんの売上税以来ありますよ、本院で。しかし、補助率カットの問題は、全くそういう意味とは、まあそれは全くとは言えませんけれども財源的なつながりはあるんですから、しかし議論としてはもう済んだというか、三年で終わったものでしょう。したがって、それは税制改正がどうなるか、その中の財源配分はいろいろあるけれども、しかしこの部分については、補助率カット部分についてはお約束どおりお守りしますという、それを取り込んでどうするかということはありますよ。削減を復活さして、補助率カット分を復活さしてこれをどう取り込むかということはありますけれども、これ自身はしかしもうそこで結論が出ている問題でしょう。そうじゃないんですか。この全体の財政計画の中で考えることはわかりますよ。しかし、この部分については確実に確保します、それで穴が仮にあいた分はどうするか、これは別途考えるにしても、これ自身は確約できるんじゃないですか。大蔵大臣
  33. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 申し上げておりますように、この問題は関係省庁の間で検討を続けまして、予算編成の過程で結論を出したいと思っておるわけでございますが、その背景として何を考えておるかというお尋ねでございますので、政府としてはその背景は、御提案をいたしました税制改革というものが成立をして、そういう背景を前提として考えている、こういう意味のことを申し上げておるわけでございます。と申しますのは、税制改革がございませんままの背景と税制改革を行いました後の背景とは、中央と地方の間の財源関係等々が御承知のように変わってまいりますので、したがって、そのような背景を前提にして協議を進めていきたい、こう申し上げておるわけでございます。
  34. 加藤万吉

    加藤(万)委員 これ以上追及してもお答えは出ないと思いますが、総理、今度の七つ懸念の中で税の逆進性の問題について大変触れられておりますね。いわば低所得者といいましょうか、そこに負担がかかることについては大変懸念がある、逆進性の問題について触れられております。この被害を一番受けるのは生活保護世帯ないしは年金生活者等でしょう。この補助率カットのうちの少なくとも生活保護費は直ちに復元すべきだという意見が各界から出ていますね。いわゆる地方制度調査会その他からも、公的なものとしてそういう意見が表明されているわけです。私は、総理がこの逆進性に対する懸念を排除される最大の国民への信用といいましょうか、あるいはその確証を裏づけるものは、この補助率カットの、なかんずく生活保護費はもとに復元します、このことだと思うのですが、この確約はできますか。
  35. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 今のお話を聞いておりますと、覚書を書いた大蔵大臣は当時私でございまして、肝に銘じてこの御意見を傾聴しておるところでございます。  この問題は、昭和六十年の十二月二十一日、私と古屋さんとの覚書でございます。したがって、補助金問題関係閣僚会議をやりまして、生活保護の御質問でございますが、三年間は十分の七として、その後のあり方については改めて大蔵、厚生、自治の三大臣が協議して定めること、そういうふうにして措置をいたしたわけでございます。したがって、今宮澤大蔵大臣から総括的に補助率問題についてお話がございましたが、そういうものの一環としてやはりこれは結論を出されていくものであろうというふうに私自身考えておるところでございます。  ただ、あのときも御議論したような記憶がございますが、要するに、全額国費であった時代、占領軍から言われまして、それから二十二年でございましたか、たしか奥野事務官が一生懸命反論をした記録とか、そういうことで八割に、五分五分、七、三、八、二というようないろいろな議論が行われて、八、二が長い間定着してきた数字であるということは私も十分認識はいたしておりますが、総合的にこれが解決されるのは、その三大臣の協議、そして総括的には今大蔵大臣からお話がありましたことに尽きるのじゃないかというふうに思っております。
  36. 加藤万吉

    加藤(万)委員 もうこれは尽きている議論でありますから、今たまたま総理おっしゃいましたように、長いこと大蔵大臣覚書をたしか私の記憶では二度か三度も結ばれていると思うので、証文もこのくらい出すと多分実行してくれるものだと私は思いますよ。  総理、御案内でしょうけれども、生活保護費は市が配りますね、配分します。それから、町村は県が配分しますね。最近、九州とか北海道の過疎の地帯、しかも人口が減って市ぎりぎりとか、市の人口がいわば三万五千とか、標準人口が下がっている市があります。生活保護費がやがておりてこないのじゃないか。あるいは地方負担分がふえたために市町村が、それでなくても人口減で過疎になって財政力が弱くなる、そこで人口移動しているのですね。例えば市から町村へ行っているのですよ。町村だと県ですから財政力がまだ余裕がある。そういうところに不正受給などが発生しているのですね。大変市長さん、困っていますね。これはもはや我々が考えなければならない社会問題、政治問題でもありますね。生活保護費を受給するために、確実に得るために住居を移動するなんていうことはあってはならない行為ですよ。私は、単に従来の覚書条項を復活してくれというだけではなくて、お互いに政治家ですから、そんなことで住みなれた自分地域を放棄しなければならない、本当にそういう人があるわけですから、そういう人がこの補助率の復活はないのではないか、そしてうちの市は財政力が弱くなってやがて今度は九割になるのじゃないか、市の負担分が減ってしまって七割になるのじゃないか、こういう不安、これだけは除いてほしいですね。年度末におやりになるということですから、ぜひひとつ今のことも含めまして、総理としても地方団体の所管の自治省と大蔵省との調整をきちっとしていただいて、証文どおりにお返しいただく、復活をさせていただくということを強く要請をしておきたいと思います。  厚生大臣、どうも済みません。三十分ぐらいの予定でいたのですが、ちょっと三十分ばかりオーバーしてしまいました。社会保険の診療報酬について、御都合があるそうですから、まず厚生大臣の方に先にお聞きします。  社会保険診療報酬の非課税部分ないしは経費算入問題など、社会的に非難の多いことは御案内のとおりです。厚生大臣大臣がその業界、いわゆる医師会、歯科医師会などと接触が一番深いわけですね。今日、その非課税に対する国民的な議論があるにもかかわらず、そういう団体からは強くその制度の存続を求められているというのは、一体どこにあるのでしょうか。そして、それに対して大臣はどのような御見解をお持ちでしょうか。
  37. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 医療は、これは申し上げるまでもないことでございますけれども、国民の健康であるとか生命にかかわる極めて重要なサービスでございまして、そういう意味から考えますと、この医療を担う病院とか診療所の経営が安定していくということは、これは極めて重要な問題でございます。  一方、医療の持つ公共性というものが他の事業に比べまして極めて高いということにつきましては、今御指摘のように医療を担う方々から強いその趣旨考え方が表明されているわけでございまして、現状における我が国医療というのは自由診療が一割、それから社会保険診療が九割でございまして、この九割の社会保険診療というのは、厚生大臣が決めた公定料金で国民に必要な医療を、提供しておる、こういうことでございますから、国民の医療はその九割の社会保険医療によって支えられている、こういうことが実態としてあるわけでございまして、まさにこのことを医療側は高い公共性を持っておるということの主張の根拠にいたしておるわけでございます。その高い公共性を持つ医療を安定的に国民の健康のために供給、提供していくということが我々の仕事であるわけでございまして、そういう考え方に立ちますと、現在の税制における特例措置というものについての基本的な枠組み、こういうことについては私はこれからも維持されていくべきものであるというふうに考えておる次第でございます。
  38. 加藤万吉

    加藤(万)委員 社会保険診療報酬については、経費の控除問題といま一つ事業税の非課税問題と、二つ課題があることは御案内のとおりですね。事業税の非課税についてはどういう見解なんでしょうか。
  39. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 これは学校医、また救急医療、そういう分野で極めて献身的な協力を地域におきまして医療側がしておるわけでございますから、そういうことから考えますと、農業であるとか医療というのは事業税を非課税にするという今の制度というものは極めて合理的な考え方ではないかというように考えております。
  40. 加藤万吉

    加藤(万)委員 釈迦に説法ではございますが、厚生大臣昭和三十六年の国民皆保険制度が始まって以来、我が国医療機能というものは大変いい意味では充実をしましたし、相当広範にわたって国民の健康と生命を守っていることは、私もそのまま認めたいと思うのです。ただ昭和三十年以前、いわば終戦から二十年代の前半と言っていいのでしょうか、その当時における医療機関の社会的な公共性というものが、さて昭和三十六年以降、そして今日の状況などを見ますと、これは相対的なものですが、事業税を非課税にしなければならないほどの公共的な要素、例えば私は減額はあると思いますよ。今日そういうものはたくさんあるわけですから、さまざまな特例措置、減額措置がありますけれども、これを非課税にするほどの公共性というものをこの中に見出すことはできますか。どうでしょう。
  41. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 これは確かに非常に難しい問題だと思います。ただ先ほどから申し上げておりますように、医療というのは他の事業と異なりまして非常に高い公共性を持っておるということについては御理解いただけておると思うわけでございまして、特に国民皆保険制度に協力をして、しかも国民医療の九割は社会保険医療が行われていて、その社会保険医療は公定料金のもとで国民に必要な医療を提供しておる。ですから、国民の医療はまさにそういう制度によって現在成り立っているということから考えますと、これは極めて高い公共性を持っておるということが言えると思うわけでございまして、そういう観点から、今の基本的な税制上の枠組みというものはこれからも続けていってしかるべきであるというふうに考えておるわけでございます。
  42. 加藤万吉

    加藤(万)委員 公定料金で広範な層をという。医療の診療報酬については、検討を加えるべき時期だと私は思うのです。これは社労の方の常任委員会で議論があることですから避けますけれども、問題は、だから税というものに求めるのはどうも私はうまく合点がいかないのです。それならば診療報酬をどうすべきかですよ。あるいは過疎における医療機能としてやった場合に、安定的な医療供給をするためにはそれに租税特別措置が必要だというならば、過疎医療をどうすべきかということでしょう。あるいはこれは自治大臣がいらっしゃいますから、例の自治医科大学なども、過疎の医師の養成のためにということが主な目的でできておりましたけれども、最近では中都市あるいは最近の言葉で言う地方中核都市の医療機関のセンターを担う医師をどう供給するかという方向に変わりつつあるような気が私はしているのです。がしかし、本来過疎地域医療の公共性を保つために医療機関の経営というものを安定させようとするならば、税制の問題よりも、過疎におけるそういう機能をどう補助していくのか、そういうものに対する財政的な視点というものが私は必要だと思うのですね。  ですから、厚生大臣のおっしゃっていることは総論としてはわかりますよ。しかし各論になってまいりますと、さてそれが事業税の非課税でよろしいのか、あるいはそれが減額でいいのか、あるいはそういうものを支えるとするならば、今幾つか挙げましたように過疎における新たなそういうものを補助する制度というものを考えていく、そういう視点。私は診療報酬は決して高いと思っていません。今公定料金で安いと、こうおっしゃいましたが、かかる者にとっては、患者との関係が今ああいう負担率ですから、これは高いと感じますけれども、しかしお医者さんからいえば、診療報酬は私は安いと思いますよ。盲腸一つ切って幾らとか、お話を聞いて、なるほどこれじゃ安い。ならば、そこの部面は診療報酬の改定を何で埋めるかという話をしなければいかぬわけですね。私は、そういう議論でありませんと本当の意味での税の体系上における不公平感、マル優、医師優遇税と言われ、国民的な非難といいましょうか、そういうものが解消できないと思いますよ。  厚生大臣、何か御用があるそうですから結構です。私の意見をお受けとめいただいて、ぜひこれからの仕事をしていただきたい、行政に反映していただきたい、こう思うのです。  自治大臣事業税非課税について、今私が申し上げました見解を含めて、自治大臣の見解をお聞きしたいと思うのです。
  43. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 今回の税制改正においては、事業税を含め社会保険診療報酬にかかる特例のあり方について国税地方税を通じて見直しの検討を行ったところでございまして、ただいまの厚生大臣等の意見を踏まえた結果として、今回税負担の適正化の面で効果的な所得税、法人税及び住民税の概算経費率の所得計算の特例の見直しを行ったことは御案内のとおりでございます。  残念ながら、むしろ自治省側というか自治体側としては、事業税について税調その他の答申を踏まえて、非課税とする現制度を見直すべく最善の努力をしましたけれども、ただいまの御意見のとおり、社会保険診療の公益性、公共性に照らして一般の営利事業と同一視することはできないという意見もこれあり、引き続き検討を行うということになったわけでございますが、ただいま先生御指摘のとおり、医療実態を正当に判断をし、その実態に対応する制度をむしろ確立すべきことであって、税制上からの配慮がいいのかどうなのか、こういうものも改めて検討しなければならないという感じがいたします。
  44. 加藤万吉

    加藤(万)委員 大蔵大臣、時間がありませんから単刀直入な御意見をお聞きしたいのですが、今度いわゆる経費控除の問題、五千万以上で線引きをされましたね。経費控除です。今の医療機関が社会保険診療報酬として受けている額が、五千万以上はたしか三割じゃなかったですかね。二千五百万以上が四割、五千万以上が三割だ。今五段階制度ですね。今度は二段階に直そうとされているわけですが、私は、むしろ今の診療報酬の所得からいえば、現行制度の中で二段階であってよかったというような気がするのですよ。これは私案ですが、三千万ぐらいで線を引いて二段階ぐらいのものにしたらどうか。それで、三千万以下は経費を何%にしますか、五〇%にするか、あるいは四〇%にするか、その辺のところは今度政府がとられているような方式によって課税をしていく、そういう制度が現行法の中でとられてよかったのじゃないか。野党間でもこの問題についてはいろいろ相談をしています。そして、やがて診療報酬を含めて各界、各業界にあるような税制度に変えるべきで、特別な制度というものは廃止をすべきではないかという意見が大方の社会公正世論になっているような気がしますので、これはまた税制改正のときに議論をさせていただきたいと思うのです。  そこで、総理にこの問題、事業税についてお聞きをしておきたいのです。  事業税は、今おっしゃったように自治大臣が奮闘されたのでしょうけれども、結果的には見送りということになりました。事業税が市町村に入らないということは、確かに医療機関の持つ社会的責任あるいは学校医を含めた身近な我々の健康を守ってもらう人として理解はできますけれども、やはりすとんと落ちないですよ。税というのは、不公平感がどこかに存在するとそこに集中して非難、攻撃が出て、せっかく医療機関で働く献身的な御努力がそういうことによって事実裏目に出てしまう。あるいは裏目とまでは言いませんけれども、非難を買うという状況は排除されなければいかぬと思うのですね。事業税の非課税問題について、総理の見解をひとつお聞きしたいと思う。
  45. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 いわゆるお医者さんの事業税問題というのは、自治大臣からお答えがありましたように、いろいろな議論の末引き続き検討する、こういうことに今なっておるわけでございます。  私自身のささやかな勉強の中では、最初お話しになりましたシャウプ勧告のときの付加価値税というのは、きょうも外形標準課税のことで御議論なすっておりましたが、あれはある種の事業税だったと私なりに理解しております。したがって、事業というものに対しての考え方が、全般的な事業の規模とかあるいは収益性とか、その当時から議論があったから結果としてあの付加価値税というのは――今の付加価値税とは全く違います、先生おっしゃった、やや外形標準的な事業税とでも申しましょうか、そういうものが結局採用されなかったのだな。そうすると今の場合も、事業税というのはやはり収益を生む事業と公共性の部門においての比較をした場合に、そこに差があってしかるべきだという議論も私自身もわからぬでもないような気がいたします。したがって、私の乏しい知識からしても、結果としてやはりこれは継続審議と申しましょうか、将来にわたっての課題として残ったのだなと、こういうふうに率直に私は受けとめておるところでございます。
  46. 加藤万吉

    加藤(万)委員 ぜひそういう立場でひとつ再考をお願いしておきたい、こう思います。  固定資産の性格上または用途に対する非課税問題についてお尋ねをしたいと思うのです。特に建物の非課税などについてお聞きをしたいと思うのです。  国鉄、国有鉄道がJR、民間になりました。その結果として、従来の国鉄にかかっていた税がそれぞれ継承されてJRに引き継がれてまいりました。きょうはJR、NTTなどというところに焦点を当ててお聞きしたかったのですが、時間がありませんのでNHKの問題について、やや限って御質問をしたいと思うのです。  NHKの場合の公共性、いろいろありますが、郵政大臣、NHKの公益性というものはどの範囲のものだというようにお考えになりますか。
  47. 中山正暉

    ○中山国務大臣 お答え申します。  先般の国会で二十五年ぶりの放送法の改正をいたしたわけでございますが、その第七条「目的」の項に「協会は、公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組による国内放送を行うとともに、放送及びその受信の進歩発達に必要な業務を行い、あわせて国際放送を行うことを目的とする。」というような条文がございまして、豊かで、かつ明るい番組を全国にあまねく受信できるように放送を行うということでございますが、受信機を設置した者から受信料によって運営されるということでございまして、この「公共の福祉のために」という中には、日本は、特に地表十二層の地殻が覆っております中で、四層は北米プレート、それから太平洋プレートとかフィリピンプレート、それからユーラシアプレートという、世界でも珍しい四つの層が出会う場所でございます。南鳥島というのは一年に十・五センチ、ハワイが一年に九センチ動くという、これは大変な地殻変動があるわけでございますので、どんな事態が起こりましても国民全体に、日本列島全体に情報を即時に伝達するような公共放送の必要性というのは、これだけの経済大国を支えていきます国家の安定した経済の繁栄の中に、私どもはそういう地殻変動の大変激しい上に住んでおるということなんかを考え合わせますと、公共放送の重要性というのは大変私は重視しなければならないものである。特に民間放送も百五十四社になっておりますが、公共放送、NHKの役割というのは、特に国会で御指名をいただきます経営委員十二名、その協議によりまして一般から優秀な方に会長に就任をしていただくというような形で運営をされておりますし、特に将来、昭和三十九年から研究が始まりましたハイビジョン、それからまた今実際に放送を始めております衛星放送とか、いろいろな放送の技術の進歩などをいたしますためにも、公共放送の重要性というものは、将来の高度映像社会に向けての重要な役割を負っているのがNHKではないか、私はかように認識をいたしております。
  48. 加藤万吉

    加藤(万)委員 NHKが持っている公共性についてよく教えていただきました。ありがとうございました。私はそうだと思うのです。そして、それが国民の負担によって、料金で賄われているわけですから、それだけに公共性というものは、偏らずに、しかも広範な我々に対する情報伝達の機能としてぜひ育成していただきたいと思う。  私は、それであるがゆえに非課税があるのだと思うのです。今日では固定資産税、法人事業税、事業所税、その他数え上げればたくさんありますけれども。国鉄の場合にもそうです。国鉄の場合には一定の減額措置がありまして、これは国で吸い上げて納付金という形で実は地方配分されているのです。今度JRになりましてどこがどういうふうに変わったのかな、こう思いましたら余り変わってないですね、自治大臣。これは財政当局に聞いてもいいですが。私は、JRになったら、しかもあれだけの特別措置があるならば恐らく納付金は減額になるだろうと調べてみましたら、昭和六十一年の納付金は三百九十八億、それから六十二年がたしか四百五億だったと思います。それから六十三年見込み額が四百六億だったと思います。この中にはもちろん日銀の建物その他の納付金もあります。これは全然算定基礎はわからないですね。地方団体にこれが国鉄の納付金ですといっておりてくるのですが、わからないのです。何の計算でどうしてこの金がおりてくるのですかと言ったら、多分あそこに駅舎があって、あそこに線路が通っているからそれの固定資産税でしょうといったような調子で、中身はわかりません。全国的にいえば、総体でいえば金額は少ないわけですけれども、しかし四百億円前後のお金ですから大変なお金です。NHKの場合は、これが全然ないわけですね。私は、NHKの公共性が強ければ強いほど公共機関へのサービスという問題がNHKはあってしかるべきだと思うのです。  今度お聞きしますと、従来の大学、高校、公民館も漸次廃止をしまして、小中学校の放送受信料までお金を取る。額で幾らですか、まあ取るということですね。幼稚園で負担が一年間で四万円、小学校で十七万円、中学校で八万円、全国で五十六億円、こう言われているのです。どうですか郵政大臣、ちょっとこれは、公共性であるがゆえに片方のいわゆる非課税措置、そして国民の期待する情報、しかも今日の学校教育の中でいわゆるハイテク産業を利用した教育制度がますます進む時代でしょう。だから、逆に言えばそこに着目して金を取ったんだ、こういうことになりますけれども、ちょっと酷じゃないですか。聞くところによると、文部大臣からはぜひその廃止はやめてくれ、こういうお話のようですが、五十六億円ですよ。  私は、例の基地の障害からくる受信映像の問題を一遍取り上げたことがあるのです。そして御案内のように、基地周辺の何キロは半額、真ん中の部分はゼロ。これは国庫負担の方、国の方で防衛関係費になるのでしょうか、どこから出しているのか知りませんが、NHKに払っている。NHKに言わせれば電波は正常に出しているのだ、受信者の方に言わせれば私のところのテレビは壊れていません。しかし、真ん中に飛行機が飛んだり音を出したりするものですから映らない。これは両方とも責任はないですね。国の責任ですよ。しかも、今言った小中学校といえば義務教育ですよ。しかも、これは負担になれば全部地方団体の負担でしょう。まさか学校が出すわけじゃないのです。学校経費から、それじゃうちのテレビ一台についてあるいは二台について一年間、小学校だったら十七万円払いましょうなんということはできませんね。地方団体の負担ですよ。ここまでやらぬでもいいんじゃないですか。私は、これはいわゆる非課税措置との関係も含めて、しかもそれが地方団体の負担増になるということも含めて、これは今後議論しますが、消費税導入によって一体地方団体はどのくらい負担するか、いろいろなシミュレーションが出ています。大変な額ですね、総理。だって、それはそうだと思うのですよ。国の事業の執行の出口の七割が地方団体ですから。そこに今消費税がかかってきたり何かしたら大変だし、そこから起きる物価のはね返り、それが人件費に来る、あるいはボランティアをやっている福祉関係の人に来るなどなど計算すれば兆という金になるのじゃないかというシミュレーションを出している人がありますが、これは後で議論するとして、当面おやめになったらどうですか。
  49. 中山正暉

    ○中山国務大臣 お答えを申し上げます。  総理も私も地方議会の出身でございますので、お話を伺っておりますとまことに心苦しいような気もするのでございますけれども、実は国会決議がございまして、国会で毎回附帯決議という形で、一番最近のだけ読み上げさせていただきますと、「受信料の免除措置の見直しをさらに積極的に進めること。」というのが五十三年に参議院でございます。最近では五十四年に「協会は、視聴者の理解と信頼を深め、確実な収納を図るとともに、国際放送交付金の増額、受信料減免措置の改廃など、」というところでその語が出てくるわけでございますが、「協会の負担の軽減を図る措置を検討すること。」ということになっておりまして、六十三年度だけでも百二十四億円の赤字が見込まれておるわけでございます。  順次お話のございました、最初は職業訓練所、それから青少年矯正教育施設、刑務所、それから公的医療機関、図書館、博物館、これが八千三百件ありました。五十三年にそれを廃止をいたしまして、五十五年には学校のうちで大学が二千五百、それから高等専門学校が三百、全部で二千八百件でございます。それから今先生、私もそれに関与をしたとおっしゃいました五十七年に基地周辺それから射爆撃場周辺、これが二十九万九千八百件ございます。今これは財団法人の防衛施設周辺整備協会が負担をしておるということでございますが、五十八年には学校のうちでも高等学校、それから公民館、青年の家など二万二千八百というものが廃止をされておりまして、NHKが公共放送であればあるほど財政的な基盤というものを確立しなければいけない。受信をしている人たちにそれを愛情を持って育てていただくためには、やはり金を出すところに魂があると申しますか、そういう意味で魂で負担をしていただくということはどうしても受信料ということになるのだと思いますし、受信料の問題にも、私ども課税をすることがどうだろうかというようないろいろな議論がございましたが、広く一般にこれまた日本を愛するという意味での負担をするということでは当然のことではないか。特殊な負担金という呼び名でNHKの受信料は呼ばれておりますが、特殊な負担金についても我々は税制の面でもいたし方ないというような気持ちでおるわけでございます。
  50. 加藤万吉

    加藤(万)委員 受信料の見直しの国会決議を盾にとられてのお話には、いろいろな要素が含まれていますね、見直しの要素というのは。私が言いますように、小中学校は義務教育ですよ。限界というのがあるのです。私は教育予算のときにも言ったのです。義務教育費に対する国庫負担行為を削除することはけしからぬ。いろいろありますよ。例えば学校職員の事務費だとかなんとか周辺の問題で多少外堀を埋められることについては、財政上の問題があれば容認するかあるいは妥協するかというところはありますけれども義務教育費に対する国庫負担は排除すべきだ。これは恐らく原則にして教育関係はやっていると思うのですね。きょうは文部大臣呼びませんでした。という観点から見れば、義務教育の施設に対する負担は、これは排除すべきですよ。でなければ、地方団体からいえば今度は、それではNHKさん、あそこに建物があるのだからひとつ建物の税を払ってもらおうじゃありませんか、これはこうなりますよ。自治大臣どうですか。
  51. 中山正暉

    ○中山国務大臣 税制の問題と受信料の問題というのは、これは別々に考えていただくよりいたし方ないのではないかという、世界でも冠たるNHKという組織の中で、確かに小中学校に対する受信料の免除措置を廃止するというのは大変心苦しいとは思っておりますが、これは、先ほども申しましたような公共放送という存在価値が一瞬たりともなおざりにできないという、そういう日本放送協会の使命みたいなもののある限りは、これはいたし方ないのではないかと私ども理解いたしております。
  52. 加藤万吉

    加藤(万)委員 文部大臣の方からも要請があるようですから、ひとつここはよく検討していただきたい、こう思います。  時間がありませんから、最後に基地交付金について、これは自治大臣にお聞きをしたいと思うのです。  基地交付金については、自治大臣は私と二、三回やりとりしていますから、多くを申し上げません。資産課税の中で基地機能に対する課税、これはそれぞれ大変問題になっています。特にそれぞれの資産評価額が大変低いのと、それから五年ごとにその資産評価の改定をやる、結果として国の基地交付金の総額がここ二、三年全然ふえていない。私ども基地の周辺を見てみますと、時折新しい自衛官の宿舎が建ってみたり、あるいはあそこに人がふえたのじゃないかなどと思うこともあるのですが、しかし、これは基地の中へ入って調査するというわけにまいりませんから、それぞれの機関を通してどうなんですかという話を聞く以外はないです。  そういう結果二つの問題が出てまいりました。一つは、固定資産税の見直しは三年ごとですから、基地の資産評価の見直しも三年に統一されたらどうですか、これが第一点でございます。二つ目には、基地交付金に対して調整がありますね。その市町村の財政力の優劣あるいは財政力に応じて二〇%でしたか二五%でしたか、調整資金があります。その結果として、基地交付金が減額をされているのですね。これは大臣、私はこの前資料を提供して、例えば今問題になっている厚木基地の大和市などでは、ひどいときには前年度比三十何%の減額がある。ずっと累積されているわけですから、何かいつの間にか調整交付金の方はおりてこないのじゃないかなどというような話になりかねない要素を持っているわけです。  したがって、私は、三年ごとの見直しをすることによって全体として基地による環境被害あるいは地方団体財政力を充実する、ここに視点を置きながら、財政調整という問題がもしあるとするならば、その調整は、今言ったように三年ごとの見直しにすれば資産の再評価が起きるわけですから、そこからくる増額部分を国庫の支出金として拡大をしていく、その中で、例えば財政調整上どうしても加算をしなければならない地方団体に対してはこれを加算していく、こういう方法をとられるべきではないか、こう思うのですが、自治大臣と、この問題については大蔵大臣の見解をひとつお聞きしたいと思うのです。
  53. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 基地交付金につきましては、委員もう百も御承知のとおりでございますが、今、五年の見直しを三年に、あるいは富裕団体に対する調整をしないこと、いろいろなことが言われるわけでございますが、実態はそれ以前の問題だという認識をいたしております。  固定資産税の代替的な性格と財政補給金としての性格をあわせ持っていることは御案内のとおりでございますが、国の厳しい財政事情その他から、いろいろな実態上のシーリングというか枠の設定がございまして、ここ五十七年来実は横ばいで推移をしていることは御案内のとおりでございます。大変矛盾を感ずる点もございますけれども財政全般の苦しいという状況を見れば、今までやむを得なかったのかなという感じもいたしますし、また、固定資産税の代替的な性格、こういうものから見れば現状のままでいいという理解をすることはできません。しかし残念ながら、自治省の全体の枠として今までの進め方、こういうことでどういう工夫ができるか、来年のことを言うと鬼が笑うと言いますけれども、六十四年度のことしの夏の概算要求については、抜本的な改正にはもちろん当然つながっておりませんけれども、少なくとも自治省内の創意工夫をすることによってこの概算要求額を多少とも増すことに大蔵省の理解を現在得ているという状況でございます。ですから、今後この体制をさらに制度上何とか固定資産税の代替的な性格を踏まえてというその現実論を直視をしながら、将来この方向をそういうものとして見ることができるための根本的な制度を考えていきたいというふうに考えております。  それから、財政力によるカットをやめて全額交付すべきだということもございますが、財政上の超過団体の置かれている立場とそうでない立場というものは全般として見なければならないという観点もございます。  それから、今の国有財産の五年ごとの見直し、これを三年にすべきだということがございますが、特に基地問題に限定をしてという意見かもしれませんが、全般的な問題もございますので、統一的な見解は政府委員から答弁をさせていただきたいと思います。
  54. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 自治大臣も今お聞き及びのように国の財政事情についても十分御理解をしていただいておりますが、その上でいろいろきめ細かいこともお考えのようでいらっしゃいますので、よく予算編成過程で御相談をしてまいります。
  55. 加藤万吉

    加藤(万)委員 以上で終わりますが、総理、基地問題は今や大変な、まあ総理のそばの小松基地などでも基地に反対するいろいろな問題が出ています。したがって、地域住民の基地からくるそういう被害が財政の面まで縮小されているのだよということが非難として起きないような措置をぜひ配慮していただきたい。これはこれから自治省と大蔵省の相談事でございましょうけれども、ぜひそういうサゼスチョンもいただくことをお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  56. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 これにて加藤万吉君の質疑は終了いたしました。  この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ────◇─────     午後二時七分開議
  57. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。水谷弘君。
  58. 水谷弘

    ○水谷委員 昨日、江副氏に対する臨床質問が行われました。真相の解明にはまだけだし遠しという感があるわけでありますが、今後の委員会においてその問題については徹底した解明が行われますよう、委員会の運営においてもお取り計らいをお願いをして、私はきょうは不公平是正の問題に限定して御質疑をさせていただきたいと存じます。  過去数度、竹下総理とは不公平の問題について予算委員会においていろいろ御議論を重ねてまいりました。私の感想から申し上げまして、どうもこの不公平是正という問題についての総理の基本的なお考えと私の考え方に隔たりがあるな、こういう感を深くしているわけでございます。  私たち公明党は、あくまでも、税制改革の必要性は認めますが、しかしながら、そこへ至る大事なプロセスとして、徹底した不公平の是正というものはいささかもおろそかにすることはできない、このような考え方に立っているわけでございます。  最近のいろいろな発表、またマスコミの報道にもそれが載っておりますけれども、国民の側から見ますと、先般のリクルート問題はもちろんのこと、本当に額に汗して働かれる勤労者の皆さん方にとってみれば、こんなことが許されていいのかというような問題が続出をしているわけであります。  つい最近発表になりました六十二年分の民間給与実態調査、時間がございませんので国税庁から資料をいただいておりますが、この調査によりますと、やはりここで給与所得者が他の業種の皆さん方に比べていわゆる納税額が非常に大きい、こういうことが数字の上ではっきりとあらわれてきているわけでございます。給与所得納税額が八兆一千億という数字をいただいておりますが、一人当たりの納税額になりますと二十四万円、給与に対する税額の負担割合が六%。これを六十二年分の所得額の確定申告に係る税務統計で見てみますと、自営業者一人当たりの申告納税額は、これは弁護士やそういう方々を抜いたものでございますけれども十九万円、農業所得者の一人当たりの申告税額が十二万円、このようになっているわけでございます。個人の段階においても業種の違いによってこういういわゆる納税額の格差が明確にある。この点も国税庁の調査で発表になった数字でありますから明らかであります。  さらには、この間発表になりましたいわゆる脱税白書と通称言われておりますその数字を見てみますと、その数字の中にも、これは有価証券の取引に係る申告漏れ件数が二十三件、その申告漏れの一件当たりの金額が四億円という、これもまた膨大な金額が出てきているわけでございます。  それから、六十二事務年度における法人税の課税実績、これに対する調査で、法人税の件数が二百十一万に対して実地調査件数が二十万件、この二十万件の調査件数、これは実施割合が九・五%でございますけれども、その八〇%を超える法人が申告漏れ、所得隠し、これを行っているという数字が明らかになってきております。  さらには、欠損法人の実態についても克明にこれが調査で明らかになっているわけでございますけれども、この欠損法人の実態について、六十一年それから六十二年について数字を挙げてお答えをいただければと思っております。国税庁……。
  59. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 お答え申し上げます。  昭和六十一年分につきましては、欠損法人の全法人に対する割合はトータルで五四・三%でございます。それから、同じ計数につきまして六十年分につきましては、五五・四%というふうになっております。
  60. 水谷弘

    ○水谷委員 そのうち資本金額一億円超十億円未満、それと十億円以上の法人の内容を言ってください。
  61. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 私、今手持ちしております数字が少し細かくブレークダウンしてあるものですから、おっしゃるように一億円以上十億円という区切りになっておりませんが、便宜一億円以上から五億円というところで申し上げますと、六十一年が三二・七%、同じく一年前が資本金一億円以上のところで三三・五、これは一億円以上五億円未満というところでございます。それから十億円というお話でございますが、手持ち資料で申し上げますと、十億円以上五十億円未満というところで見てまいりますと、六十一年が二六・九、六十年が二五・二。  それで、各資本金階級別に総じて申し上げますと、一般的に資本金の額が小さくなるほど欠損法人割合は高くなっておる、そういう一般的な傾向がございますが、今例示的に申し上げましたようなクラスでは、ただいま申し上げたような数字になっております。
  62. 水谷弘

    ○水谷委員 詳しく数字を言っていただきましたので重複は避けますが、一億円以上十億円、この辺の数字を概括的に分析しますと、約四社に一社は欠損法人という形になっているわけでございます。これもいわゆる赤字法人の問題として、小さな零細企業の皆さん方から見れば、どうしてあれだけの巨大企業がそういう形で税金を払わないで済むのかなという素朴な疑問と同時に、やはりそこに不公平感を感じておられる。  今私が数字を挙げて申し上げましたのは、個人の中におけるいわゆる納税額、さらにはその背景には所得の捕捉という問題もあり、さらにはまた必要経費の控除という問題も並ばって、いわゆる納税額における業種間の格差、クロヨンと言われたりトーゴーサンと言われている問題、これはやはり国民の側から見れば大きな不公平を抱く大変な中心に据えられていると思うわけであります。  さらに問題は、シャウプ税制以来の我が国税制の変遷の中で、いろいろな特例とか例外とかがその時代その時代のもちろん経済情勢を反映し、さらには政策誘導というものもリンクされた形で税制が変遷を遂げてまいった。そういう中から今日各地に不公平を醸し出している。中でも特に指摘をされて、今国民の側からリクルート問題等々あわせて不満が寄せられておりますのが有価証券譲渡益に対する課税のあり方、これが大きな問題になってきている。もう一つは、土地または預貯金、こういういわゆる金融資産、土地資産、資産性の所得に対する適正な課税というものが見送られているのではないか、これがしっかりとした位置づけをなされていない、ここにも大きな税に対する不公平が出てきているわけでございます。  先ほど来から総合課税の問題について総理はいろいろお述べになっておりますが、有価証券譲渡益というこの位置づけを政府は今改正案の中で原則課税という位置づけをなさろうとしておられる。シャウプ税制以来原則課税であったものが原則非課税になり、さらにはまた原則課税という位置づけをされようとしているわけでありますが、当然のことだ、これはもう本当に既に遅きに失していると指摘をせざるを得ないと思つております。  さてここで、この委員会で、今まで創業者利得に対する課税のあり方、大口、短期に対する課税のあり方等々については、現在の政府の原案の中ではそれらが位置づけられていない、そのことに対して改めてその位置づけをしていかなければならぬという答弁をなさっているようでありますが、しかとその辺のところを改めて確認の意味でお尋ねをしておきたいと存じます。
  63. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御指摘のように、このたびの政府提案におきまして、株式の譲渡所得キャピタルゲインにつきましては、従来の原則非課税を改めまして原則課税ということで御提案をいたしておるわけでございます。  その際、現実の問題といたしまして、株式の移動、取引の実態というものがただいまの税務執行の体制では必ずしも十分に把握できないという問題がございまして、それは、したがいまして例えば納税者番号であるとかカードとか、いろいろな御議論に発展をするのでございますが、それにつきましては、影響の大きいことでございますので、税制調査会が小委員会を設けてただいま鋭意検討中でございます。したがいまして、それが整います時期になりますとまた別でございますけれども、ただいまの状況において、原則課税に改めまして、それによって申告分離と源泉分離との両方の制度を設けるという御提案を申し上げておるわけでございます。  ただ、その際に、源泉分離の場合には一応キャピタルゲインを五%とみなしまして、それに対して二〇%の税率を掛けるという案を御審議願っておるわけでございますけれども、五%というキャピタルゲインは一般の場合では恐らく相応の数字であると思いますけれども、ある種の取引の場合、ただいま水谷委員の言われましたように、創業者利益もその一つでございますし、公開を挟みまして、公開前に持っておったものが公開によって非常な値上がりをして、いわば売り抜けと申しますか、そういったような場合には相当大きな譲渡益が生まれる。そのような場合に一%ということでいいのだろうかということを、御提案を申し上げました後、いろいろその後に起こりました事態あるいは国会における御議論等々を拝聴いたしておりまして、確かにそこにはやはり問題があるというふうに政府もただいま考えるに至っております。  しからば、どのようなケースを重課していけばいいかということにつきましては、ただいま国会でも御議論であり、各党でも御議論でございますので、その経緯も注意深く承りながら、政府としてこうあるべきではないかという結論を得たいと存じておりまして、ただいまその中途の段階にあるということでございます。     〔海部委員長代理退席、委員長着席〕
  64. 水谷弘

    ○水谷委員 これから議論を深めながら、今方向性だけは明確におっしゃいましたので、その方向で詰めていかなければならないと思っております。  さてそこで、公開前に取得し、公開後にそれを売却し巨額の利得を手にする、また大口、短期等の取引についてもこれを明確化するという作業が伴わなければ、どのような重課の方法をとってもそれは明らかにはならぬわけです。  いろいろ議論されておりますが、いわゆる家族や知人の名義を借りて取引がなされている仮名、仮名口座、そういう仮名や仮名口座が一人の人のところに累積をされて大口になる、それが取引をされる、株価が操作をされる、仕手株が起こる、こういう現象が現在の株の中にある一つの姿であるわけです。そういうことを考えますと、今いろいろ議論をしていただき、そして政府の方でも検討していただいておりますが、この重課を考えたとしても、その取引をした者が明確に把握できなければ、これはその対象から外れてしまうわけであります。  そういう意味では、従来から主張を申し上げておる納税者番号制度、これはプライバシーの尊重、保護という、またそれ以外にも各般のいろいろな問題があることは百も承知であります。しかしながら、このキャピタルゲインに対する公平な課税、いわゆる適正な的確な課税をこの税制改革の前段で一生懸命やろうということであるならば、この納税者番号制度への方向性ぐらいは、今もちろん税調小委員会等で検討し、ヨーロッパまで調査に行かれたり御努力いただいていることはよく承知をしております。しかし、マル優の廃止の時点で、五年後に総合課税移行をも含めた見直し、または所要の措置を講ずるということをその改正の中にびしっと位置づけをしてきており、いわゆる利子配当等に対する、金融資産の中でもそういうものに対してはそういう位置づけをし、将来総合課税への移行という位置づけをしてきているわけであります。  であるならば、このキャピタルゲインも同じく、いろいろこれからの検討課題はたくさんあると思います。しかし、国民の皆様方から見ていろいろな問題がある、問題があるということで不公平税制の是正は先送り、そしてまず消費税ありきというような改革は許せない、こういうお気持ちは当然のことであります。でき得る限りの不公平是正のためのあらゆる決意とその姿勢を一つ制度の中に明らかにしておかなければならない、こういうふうに考えるわけでございます。  野党の政策担当者がいろいろ煮詰め、そして与党の代表に有価証券譲渡益の課税総合課税への移行、四年後を一つのターゲット、これはいわゆる利子分離課税というこの方向性が出ているわけでございますので、同じ物差しの中に入れながら、四年後という方向性ぐらいは明確に出して、この検討が行われたという事実をここで確立しませんと、こういう不公平是正の論議は一体何なのだ、検討します、勉強します、いい課題でございます、しっかり取り組みますと言っても、それは決して国会の論議が煮詰まったという形にはならぬわけでございます。  私はそういう意味で、これは今宮澤大蔵大臣からお話がございました、大臣のお考えの論理もよくわかっておりますけれども総理、この件について総理の御所見をお伺いをしたいと思います。
  65. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 今までの水谷委員のお話を承っておりますと、いわゆる勤労所得に当たる問題については、事業所得と給与所得の問題についてクロヨンとかいろいろ言われておる水平的不公平の問題が一つあるじゃないか。  それから、いま一つは実調率の問題をお挙げになりました。確かにそのことは私どもいつも思いますのは、もしこの各事業所や法人が源泉徴収制度というものがなかったら、一体どれほど税務職員がおったら足りるだろうかというようなことすら考えたことがございますが、実調率の問題等についてお触れになりました。  それからもう一つは法人間の、いわゆる百七十万法人で約八十対九十だったと思いますが、赤字法人とそうでない法人との間の外形標準のような問題についても国民に不公平感があるじゃないか、こんなことでありました。  さらに資産所得にお触れになりまして、利子所得、配当所得、その次の譲渡所得について、少なくとも利子所得については前回の国会であのようにして、当時からいえば五年後見直しということで一つの目標が設定されておるが、キャピタルゲイン課税、なかんずく株式譲渡所得の問題については、したがってそれに符合する四年後と申しますか、ともに資産性の所得であるわけでございますから、その辺を目標に置かないと、検討する検討するでずんずん延びてしまったら実効が上がらないじゃないか。  ちょっとかみ砕いて私なりに理解させていただいたわけでございます。これは私は一つの御見解だと思っております。  ただ、政府が提案しておりますので、それらに対する措置はこの国会で恐らく措置されることでございましょうが、一つの見識として、その問題については私どもも念頭に置かなきゃならぬ問題だと思います。とはいえ、もちろん他の御提案、御提示いただいて各党のプロの皆さん方で御検討していただいておる問題の中で、直ちにやれる問題も、四年後じゃなくてもやれる問題もあろうかと思いますが、直ちに、そして中期、長期というようなところに、一つ資産課税のあり方について、昨年議論して修正した、五十一条だったかと思います、ちょっと条文は忘れましたが、そういうことを念頭に置いて議論を進めていくべきだという意見は十分傾聴させていただきます。
  66. 水谷弘

    ○水谷委員 やはり有価証券譲渡益に対する原則課税、これは大変重いものでございますね、原則課税ですから。しかし申告分離と源泉分離、この選択制があって、源泉分離の場合はいわゆる利得率五%で二〇%を掛けて一%、このことになってまいりますと、申告分離の方はちゃんと名前まで明確にして、はっきりして、そして二〇%課税してください、こういうことになるわけで、これはどちらへ偏っていくんでしょうかね、大臣申告の方がうんとふえるでしょうか。想定でございますけれども申告分離を選ばれる方は相当多くなって、源泉分離はうんと少ないでしょうかね。いかがでしょう。
  67. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 申告分離でございますとキャピタルゲインとキャピタルロスの通算ができるわけでございますので、そういうことにある程度お詳しいといいますか、しょっちゅう経験していらっしゃる方は譲渡損を引く方が有利か有利じゃないかということはすぐおわかりになるわけでございますので、そういう方々の場合には申告分離をとられる公算は私は相当あると思うのでございますが、ごくごく普通の方でございますと、源泉分離が自動的で簡単でございますので、数としては恐らくそっちを選ばれる納税者の方が多いのではないだろうか。ちょっと専門家に聞いておりませんのですが、普通常識としてはそう考えるべきでございましょう。
  68. 水谷弘

    ○水谷委員 私は本当に素人でございますが、やはりそちらの方がどうも多くなるのではないかな、こうなります。そうしますと、こういう選択制で原則課税ということになっても大体一%、まあこれは大変優遇税率だな、私はそういうふうに判断をいたします。しかし、五%の利益率を見れるか見れないかという議論、五%という数字がどうかという、これは意見が分かれるところかもしれませんが、現在の有取税の税率等から考えてみても、相当これは優遇税率ではないか。原則課税といっても、やはりこれはまだまだ不公平感を取り除くほどにまでは一歩足が入ってないかな、こんな感じがするわけであります。  先ほど申し上げましたように、やはり中期であれ長期であれ総合課税への移行、この有価証券譲渡益についてはその移行を明確にしていくんだ、こういう方向性、そしてその手だてとしての納税者番号制度とか、そこに至るまでの証券カードの問題等々も含めても、いずれにしてもそれはそこへ至る手だてでありますから、方向だけは明確に打ち出すべきだということで、去年からすれば五年後、ことしから四年後というこの数字の妥当性を私は申し上げたわけでございます。  時間の関係でこの辺にしておきますが、もう一つ、我が党の宮地委員質問、いわゆる我が党が提案をしております税制基本法構想というものについてお尋ねを申し上げた際、総理から、今日に至るこの税制改革までは長く時間をかけてきましたよ、公明党提案のその基本法は手順法的性格でございますという位置づけをいただいて、時間がどうもかかり過ぎるという、私がお聞きした感触ではそんなふうに聞いたわけでございます。  しかし、私たち国民の側からしてみれば、いわゆるタックスペイヤーの立場からしてみれば、時間がかかろうと何であろうとやはり税は公平であっていただきたい、本当に公平な税であっていただきたい。それを正してしっかりした上で、まだ二十一世紀高齢化社会へのビジョンも提示されていないわけでございますし、すぐあした来るわけじゃないわけでございまして、いわゆる国民負担率の問題等々、すべて総合的に見た消費税論議、間接税、直間比率の問題等々も含めてそれは議論をしなければならぬ時期が来るだろう。  しかしながら、我が党の基本法の中身は、まず徹底して不公平の是正をここでしっかりクリアをすることが大事だ。その上で、その一つの大きな部分として総合課税の再構築という問題、資産課税の適正化という問題、これらはしっかりやった上で、高齢化社会へのビジョンを踏まえて、そして抜本的な税制改革へ歩むべきだという、これは手順法という位置づけ、まあどういう御趣旨でおっしゃったのかわかりませんけれども、国民から見れば当然の踏むべき、あるべき姿ではないか、こう思って実はこの基本法をつくり上げてきたわけでございます。  そういう意味では、我が党の基本法の中身もそうでございます、と同時に、今政府の提案をされておりますこの税制改革法の案の中でも、改革の基本理念の一番冒頭には税の公平というのをぴしっと総理はお据えになっていらっしゃる。この中身の重さから見ても、不公平の是正という位置づけというものは大変な重みがあるな、こういうふうに考えるわけでございますが、簡潔で結構でございます、改めて総理のお考えをお伺いをしたいと思います。
  69. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 手順法というのはちょっと便宜的な呼称であったかもしれませんが、あの基本法を拝見させていただきますと、その理念とかいろいろな考え方共通する点がございます。  ただ、言うなれば第一次改革と第二次改革というものに分けて、その第一次改革のときに、今おっしゃいました不公平問題を徹底して議論して、その上で第二次改革で、直間比率も含むというたしか表現もございましたが、そういうことを検討したらいいじゃないか。だからその限りにおいては、一つの結論が出るまでの手順が書かれておるという意味で手順法という言葉を使いましたので、悪気で使ったわけでは全くございません。したがって、あれを見てみますと、確かに理念とかいろいろな考え方共通する面もございますが、私があのとき宮地さんに申し上げましたのは、とはいえ、いささか私個人の感じもあったかもしれません。  昭和五十三年に答申をちょうだいしたところからいわゆる税制改革が始まってきて、五十四年の暮れに決議案が出て、そしてそれに基づいて昭和五十九年ということを念頭にしていろいろな議論をし、その後昨年の売上税に至り、今般の税制改革に至ってまいりました。だからこれだけ、手順という表現はちょっと適切でないかもしれませんが、時間をかけてこうして国会で議論をしてきたのでございますから、したがって、あの十六条の基本法というものの手順を私なりに計算してみると、余りにも時間がかかるのではございませんでしょうか。今のいわゆる勤労所得に対する重税感とか、そういう問題も可能な限り早く解決する必要もございますだけに、そういう意味においてやや手順法で少し長過ぎるというような表現をしたことは事実でございますが、素直な感じを申し上げただけでございます。  不公平の問題についての位置づけは大体一緒だと思っております、考え方そのものは。先ほど来いわゆる水平的不公平問題とかいろいろな議論をなすっておりましたが、私どもとそう大きな違いが、決定的な違いなんというのは全くないのではないかな。ただ、いつも申しますように、不公平感というのは、要するにどうしても何かを主体として、いわば比較してという形に出がちなものであるというので、可能な限り冷静な雰囲気で不公平問題を議論した方がいいということはいつも言っておることでございますが、不公平に対する認識は全く一緒だと思って私も聞いておりました。
  70. 水谷弘

    ○水谷委員 総理、認識の問題ではなくて、現在の不公平税制を是正をすること、これが税制改革の最も主要な位置づけとして総理がお出しになっておられるこの税制改革法案の中にもぴしっとなっているわけです。そのためにきょうも委員会でこの議論をしているわけでございます。ですから、この議論というものが税制改革へぴしっとつながっていくような位置づけを政府としてはされなければならない。そのために、たとえ多少時間が必要だということであるならば、それはその時間を費やして結論を出さなければならない、こう思うわけでございます。  もう一つは、五十三年の答申以来今日まで税制改革論議を重ねてきた、このようにおっしゃいます。政府税調を中心にし、また与野党においてもいろいろな議論を重ねてきた経緯はよく存じております。しかし、本格的な税制改革ということが国民の側に向かって俎上にのり、そして国民の関心が集まり、本当にどうあるべきかという国民参加の中での税制改革論議というのは、あの売上税のとき、そしてことし、今がまさにそのときであります。それが一年や二年あっという間にこの不公平の是正もおろそかなまま通り過ぎていったのでは、これは国民的な合意を得ることは不可能だろう、こう私は思っているわけでございます。  次に、今回の税制改革案、いろいろ分析等もさせていただいておりますけれども、どうも土地税制に対する踏み込みが、ちょっとこれはどうなっておるのかな、こういう感じがするわけでございます。  いわゆる土地問題、地価対策、広くこれは国会で特別委員会等においても議論を重ねてきたわけでございますけれども、特に土地税制にかかわる問題について、シャウプ勧告シャウプ税制以来の抜本的改革という抜本的改革を行われるのであるならば、この土地税制もその中にしっかりとした位置づけをし、また先ほどの論理じゃございませんけれども、今すぐこれができないということであったとしても、方向性ぐらいは明確にここで出していきませんと、利子、有価証券、これは本当に資産性所得を生んでいくものでございますが、これらは原則課税分離課税、いろいろ厳しいそれぞれの適正な課税のあり方が出てくる。片方土地保有に対する、これからも議論をちょっとさせていただきますが、土地の保有に対しては非常に緩やかな対応があるとすれば、ここにいろいろな金融資産が流れていく、こういう可能性がこれから先にまだ私は出てくるような気がするわけであります。  その一つの例として、やはり東京都区部の地価の異常高騰、その高騰のまま、頂点に達したまま上昇がストップをする、そういう情勢が今出ておりますが、他の都市圏においてはまた地価の高騰、上昇が今見られてきているわけであります。そういう意味では、これだけ抜本改革を行われようとするのに土地税制に対する踏み込みは一体どうなっているのかな、こんなふうに考えるわけでございます。  国土庁長官お見えになっておりますので、直接土地、地価対策等を所轄をしておられる国土庁長官として、今回のこの税制改革案の中にこれがどういうふうな取り扱いになっていると位置づけていらっしゃるか、国土庁長官の御見解を承っておきたいと思います。
  71. 内海英男

    内海国務大臣 ただいま御指摘のありましたように、十月一日の地価調査に当たりましては、先生御指摘のような実態が出ております。私どもといたしましては、先生の御質問になられた土地税制につきましては、土地転がし等の投機的土地取引を抑制するために、昨年十月から超短期の重課制度というのを設けてそれを強化してまいりましたと同時に、いわゆるミニ保有税、こういったものに対しましても強化の措置をとってきたわけでございます。  土地政策の推進に当たりましては、土地税制というものがいかに重要であるかということにつきましては十分私どもも認識をいたしておるわけでございますが、昨日も土地基本法というものにつきまして有識者の御意見等も承って、今後の土地のあり方というものについて基本的にいろいろ御意見を承ろうということで、私どもも土地政策というものの強力な推進策についても苦慮いたしておるわけでございます。  現在、さきに閣議決定をいたしました総合土地対策要綱に基づきまして、土地の有効高度利用、こういった観点からも考え合わせまして、都市計画の面あるいは施策の整備、こういったような関係のものを具体的に進めるためにも関係の省庁と一体となって協議を進め、検討して進めていかなければならない、こういうふうに考えております。
  72. 水谷弘

    ○水谷委員 政府税調で御検討いただく折に出された大蔵省の資料が手元にあるわけでございます。それに基づいて申し上げたいと存じますが、昭和六十一年の法人企業の所有する土地の価額ということで国民経済計算、期末貸借対照表の土地、これは金融機関を含むものでございますが、これの価額は三百三十一兆七千三十二億という数字がございます。簿価が、これは金融保険業を除くという数字しか出ておりませんが、金融機関を含めてほぼ六十兆から六十二兆になると考えます。さらに固定資産税評価額、これが七十三兆三千六百九十七億という、このような数字があるわけでございます。  この議論は先般村山委員も御指摘になり、この議論を深められたわけでございますけれども、私も同じ立場に立って、ここに見られる二百六十兆から二百七十兆と言われるこの含み益、先般の予算委員会においても、我が党の矢野委員長がこの資産性課税の適正化という問題で、この含み益にはやはり何らかの適正な評価と適正な課税が必要であろう、こういう議論をいたしました。  先ほどいわゆる土地譲渡にかかわる超短期のいろんな税制の手直しをここで重ねてみえております。もちろんそれも必要であろうと思いますけれども、いわゆる地価対策、それから国土の有効利用、それから土地の流動性、こういうものを考えたとき、土地税制の中でやはり大事な位置づけは、保有に対してどのように課税をするかという、こういう基本的な発想が導入されなければ、どうしてもそれは、流動化はストップをかけられるし、その含みは大変な額に上っていくわけでございます。  私はそこで、いわゆる国民所得、租税総額に対する不動産、この不動産の割合の国際比較についてちょっとお尋ねをしておきたいと思いますが、一番新しい資料で結構でございますので、不動産税、財産税日本の場合は固定資産税、都市計画税及び土地保有税という、これを一応不動産税とくくったとしまして、これの日本アメリカ、イギリス、フランス、西ドイツ等の国際比較。これはどういう意味かといいますと、保有に対してどういう課税をしておるか、その保有に対する課税の形態が日本とどう違うかということを理解をしていただくために、この数字について御報告いただけませんか。
  73. 湯浅利夫

    ○湯浅政府委員 我が国固定資産税、都市計画税とそれから特別土地保有税の三つの税目の国民所得とそれから租税総額に占める割合は、それぞれ一・九%、七・九%、これは昭和六十年度でございますが、そういう数字になっております。  それで、日本より高い国といたしまして、アメリカでは国民所得に対して三・二%、それから租税総額に対して一三%という例がございます。また、イギリスも日本より高いわけでございますが、国民所得に対して五・三%、租税総額に対して一二・六%ということになっております。フランスは日本とほぼ同程度でございまして、国民所得に対して二・二%、租税総額に対しまして六・三%ということになっております。  日本より低い国といたしまして、西ドイツでございますが、国民所得に対して〇・五%、租税総額に対して一・七%、こういう状況になっております。
  74. 水谷弘

    ○水谷委員 先ほどから何回も申し上げておりますけれども、特にこの税制改革の入り口で国民的な関心が寄せられておりますのは、キャピタルゲインに対してはどういうふうになるんだ、それから土地等の資産に対する的確な評価と適正な課税がどう行われるのか、この二つとも、税調の税制改革の基本が発表されたときも、この土地税制については一歩も二歩も踏み込むようにという、そういう基本的な立場であったはずでございます。  そういう意味で私は申し上げたいのでございますけれども、この含み益という問題は、これをこのまま放置しておきますといろいろなところに問題が派生してくる。特に国際的にも我が国の含み益というものが、いわゆるダンピングの基本の部分にそういうものもあるのではないかとか、いろいろな国際批判を受けている一つ部分にもなっていると言われているわけでございます。  総理、我が党の委員長がいろいろ御質問申し上げましたときに、未実現の所得に対する課税、こういうものはいかがなものか、さて、保有ということになると固定資産税、保有税との絡みがありまして、こういう御答弁がございましたが、私はそれではちょっと納得できないのでございまして、固定資産税、保有税との問題があるならば、ではどうすれば、どういうふうに方向性を出していけばこれが適正に位置づけられるのだろうか。やはり年間二百六十兆とか二百七十兆、まあ年間ではございませんが、現実にそういうふうにある含み資産、含み益、これはそれによって担保能力もつき、さらには新たな投資を生み、さらには新たな事業への進出が図られ、そして経営の安定能力が増し、これは企業にとっては大変な一つの果実と言ってもいいほどのものであるはずだと思う。  そのものが、非常に難しい位置づけのために何ら手を打たれないということであると、これは個人の場合は、御存じのとおり相続税という形で二十年ないし三十年に一回はそれが精算をされるといいますか、含み益もかなり妥当な線で評価をされて、相続税評価額というものによって、これは路線価によって決めてくるわけでございますけれども、ある程度適正にこれが評価されてくる。しかし、法人は倒産するまでそういうものは起きてこない。  これをありとあらゆる法人にかけろとか、または高税率にせよとか、また短期のうちに含みを税として取ってしまえとか、そんな乱暴なことを申し上げているのではなくて、その含み益に対する的確な把握、そして適正な課税というこの方向性も、やはりこの抜本改革の中で明確に位置づけをしてしかるべきものではないか、こういうふうに考えるわけでございます。  固定資産税には問題があるといろいろ指摘がございます。半面厳し過ぎる、半面固定資産税が甘過ぎるから土地の流動化が起きず、高度利用が行われず、保有に対する認識が非常に甘いのだ、これは土地対策上非常によろしくないという厳しい議論もあります。しかし特例、いわゆる住居、生活用資産等についての配慮をすることはもちろんでありますけれども、保有に対して適正な課税を行うということを除いては、土地対策、土地に対する税制というものは確立はできないだろう。この狭い日本の国土の中で一億二千万にも及ぶ国民が本当に有効に国土を利用しようとする場合、その国土がいわゆる資産を生むための元手として利用されたり、さらにはそれが放置されたり、高度利用が行われなかったり、これはもう許せないのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。  それから、未実現のものに対する課税というお話でございますが、総理、相続税はどうでしょうか。例えば親から子に、親から子ばかりではございませんが、一般的にはそういうことです。これは親から子へ移るだけでございます。移るだけでかかるわけでございます。これも考え方によれば、固定資産税の補完的な役割の一つとして、富の集中を防ぐために課税をされている相続税の位置づけというふうに考えれば、これも親から子に移るだけで、必ずしも実現をされていないものであります。  いわゆる固定資産税は個人、法人ともにかかるわけでありますが、さらにここにはとらまえられない含み益については、個人は相続税という形で二、三十年に一回取られる、ところが法人はないという意味で、この土地増価税というものを固定資産税を補完する税という位置づけをして、そしてここに細かい配慮が必要です――総理がよくおっしゃる装置産業等、非常に厳しい産業の構造転換の中で御苦労されておられるようないろんな企業も全部ひっくるめてみんな厳しくやれ、そんな暴論を言っているのではなくて、それらも全部配慮した上で、やはりこの位置づけは避けて通れないのではないのか、こういうふうに考えるわけでございます。  もう一つ固定資産税そのものも見直しをしなければいかぬのかな。それは、固定資産税はやはり応益負担の原則に徹した方がいいのではないか。含みまでその固定資産税の中から評価がえをして取っていくという位置づけはどうなのかな、こういう考え方もあります。  固定資産税は、やはり地方の格差が生じてまいります。固定資産、いわゆる特に東京のように地価高騰を続けている地帯と過疎地域、そういうところでは、全くこの固定資産税の税収の格差というのはその自治体には出てまいる。ですから、その含み益そのものについては、国税の形でこれは保有税という位置づけをして、適正にそれが課せられればいわゆる地方間の格差是正という役割も出てくるのではないのか。固定資産税の中にある含み益部分、これらも積極的に保有土地増価税という形の中でこれを位置づけをしていけば、そこに整合性もとれ、いわゆる個人、法人のこの不公平もなくなり、適正な、また有効ないわゆる地価対策にもなれば、土地の高度利用の方途もここから見出せるのではないのかな、こんなふうにいろいろ考えているわけでございます。  私は、冒頭申し上げましたように、今度の税制改革の中でこの部分がやはりしっかりと位置づけられなければいけないのではないのか。総理がよくおっしゃる所得、資産、消費、バランスのとれた税体系を構築していくというこれに、消費部分がこれから議論をされる部分でございますから、私は踏み込んで議論はいたしません。しかし、所得、資産という位置づけもされているわけであります。そういう意味では、特に不公平を国民が感ずる、土地を持てる者と持たざる者とのこの不公平感、それも個人と法人との不公平感、これらをなくしていくためにも、二百六十から七十兆円と言われているこれらの含み益に対して税制改革の中で重い位置づけをなさるべきではないのかな、このように御指摘をいたすわけでございますが、まず大蔵大臣、いかがでございましょう。
  75. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 大変長い、内容の多いお尋ねをなさいましたので、最後の部分についてお答えさせていただくことになるかと思いますが、結局、これはいつも申し上げることで恐縮に思いますけれども、そのような法人の含みというものはやはり実現をしていないわけでございますから、相当の税金を恐らくお考えでいらっしゃろうと思いますが、としますと、どうやってそれを担税するかということがやはり企業側にございますと思います。それからまた、結局それは所得課税ではないということになりますれば、それであれば固定資産税を重課することが適当なのではないか。ただ、その固定資産税の重課ということがなかなか現実には難しい状況になっておることを見ますと、その点にはまたそれなりの問題があるのではないか。  それから、事実問題といたしましては、そのような含み資産をかなり持っておると思われますのはいわば装置産業に多いわけでございますが、その装置産業、必ずしも好況産業でございませんので余計ただいまのような問題があり、また逆の観点から申しますと、そういう含み資産を持っているということは国民経済的に全く利益になっていないわけではなくて、生産のコストがそれだけ安くなっておるということは、それとして評価すべきではないか。  大変総合的に言われましたのでお答え部分的で申しわけございませんが、そういう感じを持っております。
  76. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 今大蔵大臣からお答えがあったとおりでございますが、私の率直な感じを申し上げますと、長い間やってきた議論を、長い議論じゃなくて長い間やってきた議論を端的にお取りまとめになった御意見だ、こういうふうに私は言わしていただきます。  それで、やはり今問題点をまさに言われていたのであって、装置産業なんかは、あるいは水谷さんはそういうものに対しては特別な配慮をすればいいじゃないかという背景を持っておっしゃったかもしらぬ。だからその装置産業だけを議論しても、これは大変な議論になると思うのでございます。したがって、現実の問題としては、やはり所得税としての位置づけをした場合、未実現の利益に対する課税ということに踏み込むということは現在のところ適切でない、その答弁ももう大体まとめておっしゃいましたが、本当に私、いろんな議論をしてそうだと思います。  だが一方、個人と法人と分けた場合、個人は相続税によって言ってみれば社会還元されるじゃないか。ところが、これは若干乱暴な議論になるかもしれませんけれども、相続税の議論をするときに、日本の相続税の根幹は何ぞやといったら、だれかがそれは「西郷南洲、児孫のために美田を買わず」と。特定のところにおって特定の資産を持ちながら後継者がそのまま生活するものではなく、一遍は子孫のために美田を買わずで出直して、学校の教育等をするところまでは親の努力だが、その後はやはりみんなで出直して、平等の立場から考えるべきだというのが日本の相続税の一つ考え方ではないか。  完全に私はそうだとは思いませんけれども、そういう議論もあるわけです。したがって、そのものは世代が交代するときにいわば社会へ還元するという形で、相続税というものによって社会還元をする。ところが法人の場合はそれはございませんけれども、法人がそういうもので、装置産業等で生きてきた場合、それは社会に還元するという性格のものではないような気もするのでございます。  したがって結論は、もう水谷さんの方から、装置産業があると言うだろう、そして未実現のものは難しいと言うだろう、固定資産税、特別保有税との基本的な問題をどうするかという問題もあるじゃないかとおっしゃいましたが、まさに答弁も加えておっしゃったように、私もこの問題について、それはきょうからやりましょうとかいう踏み込みをするだけの自信は、率直に言ってこれはございません。
  77. 水谷弘

    ○水谷委員 大変難しいということをわかった上で申し上げているわけですが、しかし、この税制改革の中でこの位置づけはやはりしておくべきではないかという意味から御指摘をしたわけでございますので、さらにお取り組みを総理、宮澤大蔵大臣にお願いをしておきたいと思います。  サラリーマンに対してことし、六十三年度申告からいわゆるサラリーマンの特定支出控除制度、実額控除と言われている制度導入をされ、いよいよ実施になるというわけでございますが、このことでちょっと御質問をいたしたいと思います。  この特定支出控除制度、簡単に制度と、それから具体的にその支出、控除の対象となる費用、これはどうなっておりますか。
  78. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 特定支出としては五つの項目が指定されてございます。通勤費、転任に伴う転居のための引っ越しの費用、研修の費用、資格の取得のための費用、単身赴任者の帰宅のための旅費、これが五つの支出の項目でございます。  これらの項目の支出額が年間におきまして給与所得控除額を超える場合には、給与所得控除額にかえましてこちらの方の合計額を控除することができる。これが特定支出控除の極めて大ざっぱでございますが概要でございます。
  79. 水谷弘

    ○水谷委員 今の御説明でわかりましたが、それでございますと、これに該当するような人というのはどんな方なんでしょうか。
  80. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 一番端的には、例えば遠くに単身赴任をしておられる、その方々が月に一回なり御帰宅されるというような方がまず該当することになろうかと思うわけでございます。  それから、最近多い議論といたしましては通勤費でございまして、かなり遠いところから新幹線ででもお通いになる、こうした方々がふえてきておるということをお聞きするわけでございますので、そうした方々につきまして適用の可能性があるのではないか、こんなふうに考えてございます。
  81. 水谷弘

    ○水谷委員 今主税局長おっしゃいましたが、新幹線は認められるのですか。
  82. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 通常、通勤に必要とされる費用でございましたら、その点につきましてのものは通勤費として含まれる、このように考えておるところでございますが、実際の扱いといたしましては、国税当局の方で認定されるかと思います。グリーンまでまいりますとそこは恐らく否認はされるかと思いますが、通常の新幹線の費用でございましたら該当するのではないかと思います。
  83. 水谷弘

    ○水谷委員 続けてお尋ねをいたしますが、六十一年の十月、政府税調の答申が出ておりますが、その中で、給与所得控除のあり方について答申がなされております。この給与所得控除のあり方の答申の中身の概要を、まことに恐れ入りますがお述べいただけますか。
  84. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 給与所得控除のあり方につきましての御指摘の答申におきましては、二つの側面があるわけでございます。  一つの側面といたしましては、ただいま御指摘のようなサラリーマンにつきましての特別のいろいろな支出があるわけでございます。勤務に伴う支出がある。こうしたものに対処するためのものとして給与所得控除があるわけでございますが、給与所得控除はそのほかにもまた、サラリーマンが勤務されるにつきましてのその担税力がほかの方々の担税力と質的に差異がある、そうした配慮もあろうかと思われます。そういう中で、実額の支出に当たる部分の対処という意味があるわけですけれども、サラリーマンの方としてはそれが一律に機械的に計算されて控除される、そういうことでなくて、実額としていろいろ費用がかかるということについての控除ができないか、それがサラリーマンの方々の税の不公平感の解消の一つの手だてにならないかという点が一点でございます。  それからもう一つの側面といたしましては、この給与所得控除が、青色申告者につきましてはその青色専従者におきましても丸々適用になる。さらには、みなし法人を採用された方につきましては、そのみなし法人の報酬につきましてもこれが完全に適用になる。しかし、こうした個人の所得者におかれましては、必要経費としては一応いろいろなものが控除された残り、これをその所得の中からみなし報酬なり青色専従者給与が引かれるとすると、何となくそこの控除が二重ではないかという御議論もあり得る。  そうしたことからいたしまして、この際、給与所得控除を二つに分けまして、一方を経費控除の部分とし、一方は担税力に対する配慮部分とするというふうにいたしまして、現在の給与所得控除水準の半分が経費部分であるとすれば、その部分とサラリーマンの実額的な支出とを対比いたしまして、そちらの実額的な部分が多ければそちらの方として控除を認めるという、サラリーマンにとってはそういうあり方、一方、事業所得者等の給与所得控除につきましては丸々適用するのはいかがか、例えば半分にする、そういうふうな考え方が示されたところでございます。  しかし、現実に制度を仕組むに当たりましていろいろ検討が行われました結果といたしましては、これはそのままには実行されませんで、やはり所得税の長い歴史の中で、サラリーマンにつきましては給与所得控除ということで概算的に機械的に控除される制度が定着いたしておりまして、一挙に実額控除的なものが導入されますと、サラリーマンの方々にとってもまた税務当局のサイドにおきましてもかなりな混乱も生ずるのではないか、ここは一挙にそこまでいくのはいかがかということで、先ほど御指摘のような特定支出控除という形にかえて制度化されたところでございますが、六十一年十月の答申におきましては、ただいま申し上げたような考え方が展開されておったところでございます。
  85. 水谷弘

    ○水谷委員 短時間の中で、よくわかりやすく御説明をいただきました。  要約いたしますと、この税調の答申の中で「勤務費用の概算控除」とそれから「他の所得との負担調整のための特別控除」というふうに二つに分け、そして、それの比率は二分の一ずつであろうという形でお出しをいただいております。  そうなってきますと、現在のこの特定支出控除の五項目の合計が給与所得控除額を超えるという位置づけではなくて、給与所得控除の二分の一を超えたものについてはそれを申告して、それを認めていくべきではないのかというこの税調の答申であろうかな、こう思いますが、先ほどの局長の答弁を聞いておりますと、一挙にそういう方向へ持っていくというのはサラリーマンの方にとっても混乱がある、また税務当局も、申告になるわけでございますから大変な徴税事務、いわゆる申告に携わる事務が膨れ上がる、こういうお話でございます。  私は、この税調の答申の基本的な考え方、これはぜひ尊重して、サラリーマンの皆さん方の中で、先ほども私聞きましたが、この五項目を合計して、給与所得額の約三〇%程度と言われている給与所得控除、その金額まで積み上げ計算で超える人なんというのは、本当にこれは総理、考えられません。少なくともこの二分の一ぐらいであれば、相当数のサラリーマンの方々は、やはりおれたちも必要経費を認めてくれるんだなということで御納得がいただける形になったのではないのかな、残念だな、こう思っているわけです。  大蔵大臣、このことについては、この税調の基本的な考え方と実際にでき上がった制度と大きな開きがあるわけでございますけれども、この税調の基本的な考え方をもう一度見直し、さらには、そういう方向性をも含めて考えてみようかな、こういうふうにサラリーマンの皆さん方の税の不公平感の払拭のためにもお取り組みをいただくお考えはございませんか。
  86. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この問題につきましては、かねてから長い議論があったわけでございますが、税調の中でも、今水谷委員のおっしゃいましたようにかなり積極的に考えたいと思われるお方と、いやしかし、理屈はそうかもしれないが、やればそれはもう従来の考え方の大さな転換になりまして、どれだけうまくそれが秩序正しくいくものか、おっしゃいますように、やりようによりましては大変な還付の請求、大変な数になる可能性もございます。それから歳入への関連もあろうと思います。  ということから、なかなか一部の方が理屈で言われるようなわけにもいかないな、とにかくこういうことでごく限定的に出発をしてみるかというような落ちつき方になったようでございまして、最初は確かに一部の議論はかなり勢いのいいと申しますか、大幅な議論でございました。まあしばらくこれをやらしてみていただくということであろうかなと私としては今思っております。
  87. 水谷弘

    ○水谷委員 仮定の議論で恐縮でございますが、これはやってみなければわかりません。どのくらいの申告者がおいでになるかですね。しかし大臣、私は本当に余り楽観的な見方ができないのでございまして、これを利用される方は本当に少ないのじゃないか。そういう段階でやはり再度――これはここまで芽を出されたわけでございますね。制度として位置づけをしてくださった。ですから、もう一歩これはやはり前進を見るべきだろう、こういうふうに思うわけでございますが、時間がありませんので、それは申し上げてだけおきます。  自治大臣、長くお待たせいたしまして恐縮でございますが、今回税制改革に取り組もうとされて臨時国会が召集をされ、今日まで議論を深めてきたわけであります。  この間においていろいろ問題、国民の側からの指摘がございましたが、やはり政治家の資金集めのパーティーに対して課税すべきだというお声は大変強うございます。これは本来ならば、本質的には政治資金規正法という基本に立ち返った議論が必要であり、さらには、あるべき政治家のあり方というその問題に立ち返った議論が必要です。本質論はそういうことであろうと思います。しかし国民の側から見て、政治家があんなうまいことをやっていてどうなっているんだという素朴なお考えといいますか、その感じられ方というのも私は大切にしなければならぬのかな、こう思っているわけでございます。  いろいろ政策担当者の中で議論が行われているようでございますが、やはりこれは当委員会においても大いに議論をし、そしてあるべき姿というものを出していかなければならない。そういう意味で、野党の政策担当者間の中では、純収益に対する二〇%の課税は適当であろう、このような案が提出をされておりますし、私もその案については支持をいたすわけでございますが、大体五十九年から六十二年までどのくらいパーティー収入が上がり、今日までその収入、経費、そしてその差し引き収益というのでしょうか、それがあるか、御報告いただけますか。
  88. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 まず第一に、自治大臣に届け出のあった政治団体によるパーティー収入の数字は、昭和五十九年は四十七億八千七百万、六十年分が七十九億九千七百万、六十一年が八十七億七千三百万、六十二年分は九十五億五千万になっております。  そして、冒頭意見を求められました政治家ないしは政治家周辺のいわゆる励ます会等のパーティーについて、いろんな御意見があることは承知をいたしておりますが、いずれにいたしましても、適正な励ます会あるいはパーティーであれば、人格なき社団に課税をすることは不適当でございます。そのうちで特に政治資金と思われる分野という場合においては、私は政治団体がみずから申告すべき問題であるというふうに考えておりますし、いわゆる一般パーティーを政治資金規正法によって規制することはできませんし、また政治家の資金について行政府がとやかく申すべき立場にはないという感じもいたしますので、各党間で十分今検討を積まれているようでございます。  ただ単に二〇%の課税をすればいいということになりますと、これはそういう問題にこれからもろもろの分野で課税がなされるのかどうなのかという、いわば普遍的な問題もございます。さりとて、今いわゆる政治資金という問題の中でパーティーが問題になっているというその問題意識は、当然政治家として持たなければならないというふうに考えております。
  89. 水谷弘

    ○水谷委員 このパーティー収入が、ただいまの御報告にもありましたように、過去四年間で約倍近く、があっと膨らんでいる。そういうこともやはりいろいろ議論を呼んでいる大事な要素だと思うわけでございます。今大臣がおっしゃったそういう配慮すべき、例えば国民の政治参加への道という問題等も含めて、これはいろいろ議論があることは承知しております。しかし、どうも難しいことについては手をつけないで、税制改革という名のもとに拙速に進められるという、国民の皆さん方から見るそういう感情というものは間違いなくあるわけでございまして、私どもも、そういう政策担当者の中で今煮詰めておられるとはいうものの、この必要性についてはやはり本質的には将来において議論が必要で、その場合に廃止になるということもあるかもしれませんけれども、当面これは何らかの国民に対する結論を国会としても出さなければならない、こういう共通認識に立っているわけでございます。  総理、いろいろ同僚の橋本委員がこの後関連で質問をされますので、この辺で私、質問を閉じますが、どうか竹下総理がお進めになろうとしている税制改革、これが本当に国民が参加をし、国民が理解をし、コンセンサスが形成された形で実現するために、不公平の是正、これを徹底的に行った上でこの税制改革が進められますことを、私は、その税制改革の中身についての議論はこれからするとしても、税制改革の必要性についてはそういう立場で考えているわけでございまして、そのために本院でこれだけ貴重な時間を使い、不公平是正の議論をしているわけでございますので、政府としてもここにおける議論で実現可能なものは積極的に取り入れて、そして御提示をいただくように私からお願いを申し上げておきたいと思います。  一言総理の御所見を伺って、質問を終わらしていただきたいと思います。
  90. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 御指摘の点、まことに同感の点が多うございます。  やはりずっと見てみますと、使われておることは二つあります。公平ということと、それからもう一つは手続面の簡素。いろいろな言葉がその都度使われておりますが、絶えず使われておるのは、二つの問題が税の論議の中にはここのところそれこそ何十年使われておるなという感じを持っておりますので、公平を旨としなければならぬ。したがって、いわゆる言われておる不公平税制というものには、お互いの議論を通じながら、すぐできるもの、中期的なもの、長期的なもの、そういうことの仕分けをしてこれに当たるべきは当然のことではなかろうかというふうに考えておるところでございます。
  91. 水谷弘

    ○水谷委員 ありがとうございました。
  92. 金丸信

    金丸委員長 この際、関連質疑の申し出がありますので、これを許します。橋本文彦君。
  93. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 まず総理にお尋ねいたしますが、総理日本世論調査会という団体を御存じでしょうか。そして、その団体が九月の二十六、二十七日に行いましたいわゆる税制改革についての調査がございます。その調査内容は御存じでしょうか。
  94. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 世論調査会の調査結果というものにつきましては、さらっと見せていただきましたが、橋本さんから質問の通告があっておりましたので、少し詳しく見せていただきました。
  95. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 その全国世論調査の結果によりますと、とにかく現在の不公平税制でどこに是正の重点を置くべきか、こういう問いに対しまして圧倒的に多かったのが、政治家のパーティー収入に課税をすべきであるという意見でございました。これは今水谷委員からも質問がありました。お答えもありましたけれども、こういう世論調査の結果を見て総理はどのようなお考えをお持ちでしょうか。
  96. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 第一に政治家のパーティー収入にも適切に課税するという順番、第一番に挙がっておったというふうに私も理解しております。  基本的な議論をお互いいたしますと、この問題はやはり政治資金規正法の側から本来は入っていかなければいかぬ問題であろうというふうに思っております。実際問題といたしまして、ただ額としてそれが提示された場合において、政治活動に使うべきものであるという認識のほかに、それをいわば私生活に使っておるというふうな誤解というものを与えがちなものであるという点について考えますと、やはりこれが攻め手――攻め手と言うと言葉はおかしゅうございますが、この問題に入り込んでいく手法としては政治資金規正法問題から入っていくというのが本当であるのかな。これは今行政府の私として申し上げるわけじゃなく、長年この問題に国会議員として取り組んでおりました経験から、そういうことをあえて申し上げたわけでございます。
  97. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 今回の税制改革、この論議では宮地委員からも我が党の手順論というものを展開いたしました。そのお答えとして、もうシャウプ勧告以来、昭和二十五年ころから長い議論をしております、したがって、我が党のこの案では時間がかかり過ぎると思うというお答えがありました。しかし、いわゆる税制改革、これが国民的に多大な関心を持ってきたのはつい最近ではないかと思っております。  昭和十一年あるいは十二年ころに馬場税制というのがございました。それからシャウプ勧告の前にもいわゆる大型間接税の論議もありました。しかし、国民が本当に大型間接税を知ったのは大平内閣のときではなかったかと思います。しかし、それは国会決議で、財政再建のためには一般消費税導入しない、そういう国会決議がございます。そして、にわかに大きな論点になってきたのは昭和五十九年ころではなかったか。そして昨年の売上税で国民の圧倒的な反対に遭って廃案。したがいまして、いわゆる税制改革政府のおっしゃっております税制改革の中身についてはつい最近始まったばかりであって、長い議論はかけていないのじゃないか、こう思うのです。  とにかくいろいろなところで、税制改革には時間をかけてもいいからじっくりと国民のコンセンサスを得る、そして納得のいく税制改革をすべきだという声がございます。我が党は三年か四年という年限を提示しておりますけれども、それでも長過ぎるのでしょうか、御意見を伺いたいと思います。
  98. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 手順法という言葉がどうもひとり歩きしまして、あるいは適切でなかったかと思います、もっと哲学がちゃんと書いてあるわけでございますから。ただ、第一次改革、第二次改革に分けてありまして、そうして昭和六十五年三月三十一日までにたしか第一次改革の答申をちょうだいして、そこで不公平税制の問題をそれまでに議論をし、そしてその後第二次改革に入るというようなことを単純に計算してみますと、ちょっと長いなという感じを持つことは事実でございます。  確かに私、かなり長い時間お互い議論してきたと申しますのは、シャウプ勧告のときのことは、実はシャウプ勧告以来国会に議席を持っていらっしゃる先生、この間調べてみましたらたしか六人ぐらいしかいらっしゃいませんから、その問題は我々は昔の勉強をしておるような感じが時にすることがございますが、少なくとも私は、五十三年の税調答申に基づいたときから間接税議論というのが国民の皆さん方の中に入っていったのではないかな、こういう感じを持っております。  一方、社会経済情勢の変化の中に、いわゆる勤労所得を担当していらっしゃる皆さん方から、いずれにしても受益でございますから、受益に関する対価としての消費税と能力に応じての対価としての所得税というものとの間に、大変な不公平感というものを現実の問題として重税感として感じておられるということは事実である。  と同時にいま一つは、たまたまと申しましょうか、経済全体を見ますときに、かつては七、六、五抜きの四、三、二、一なんというようなことを申しておりました。六ないし七%の名目成長とか、五がなくて四%の実質成長とか、三%の消費者物価、二%の失業率、一%の卸売物価というようなことを申しておりましたが、それが今や大変に落ちついた状態にある。こういうときにこそ実りある議論ができて、そして税制改革の好機ではないかという意味において、この基本法を読ませていただく限りにおいて、私を基準にして言えばかなり長い、こういう感じを持っておることは事実でございます。
  99. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 総理は、あくまでも税制改革のポイントは公平であるということを再三再四繰り返しております。しかし、政府税調の方で二回にわたっていわゆる大きな地方公聴会を開きました。そこで論議されたのは、間接税導入という問題よりも、むしろ現在の不公平税制を是正すべきだという声が圧倒的に多かったように思います。そういうことからいたしますと、とにかく国民の声は、現在の現行の税制の不公平さ、これを何とか是正してもらいたいという声に尽きると思います。  それがこの日本世論調査会のアンケートにもなると思いますけれども、これを一位から挙げていきますと、一位が政治家のパーティー収入課税、それから二番目が医師優遇税制の見直し、三番目がいわゆるサラリーマンから見た自営業者あるいは農業者との比較の問題で、大変な不満がある。四番目に、今問題になっておりますキャピタルゲイン課税、そういうような順番がございます。これを単純に見てみますと、とにかくマスコミ等で、あるいは我々身近に接するような事案、これをまさに如実に反映しているなという感じがするんです。そうしますと、第一番目に国民が不信感を持っているのは我々政治家であります。そして二番目に不満を持っているのがお医者さんじゃないのか。そういうような形で、とにかく社会的な不信を持たれている方に不平が来ている。  今政治家のパーティー収入の問題がありました。自治大臣から今お答えがありましたけれども、年間九十五億というふうに聞きました。その課税となりますと、二〇%といたしましても約二十億円しか上がってこない。単純計算すればこうなるわけです。したがって、政治家のパーティーに課税したってたかだか二十億円だよと、そういう議論がありますけれども、国民はそういう金額は問題にしていないと思います。一夜にして何億円というような収入を上げる方もおられる、そんなのでいいんだろうか、そういう声があるわけでございます。何回も言っていますけれども政治資金規正法の見直し、確かに難しい問題はありますけれども、今やはり国民が納得するような、国民がそうだと言うような改革をするためには、政治家からまず襟を正していかなきゃならぬじゃないかな、こう思います。  ちなみに、総理は今までパーティーをやったと思いますけれども、一晩で一番多く上がったパーティーは幾らですか。
  100. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 パーティーをやった経験があるかということでございますが、永年勤続の際一回と、それから昨年でございます。  永年勤続のときは、これは私個人の問題でございますが、昨年の場合は政治資金規正法の届け出団体名でやったわけでございます。定かに記憶しておりませんが、昨年が十一億ぐらいでございましょうか、永年勤続のときが半分ぐらいであったかなと思っております。
  101. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 二番目に大きい医師優遇税制なんですが、これもいわゆる社会保険診療報酬規定の概算経費率、五千万円を超える分についての五二%をカットするという案が提示されておりまして、医師優遇税制にもメスが入ったんだというような議論がございますけれども、この世論調査による医師優遇税制に対して不満だというこの結果は、総理はどのように理解しておりますか。
  102. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 そもそもが昭和二十六年でございましたか二十七年でございましたか、あのときは通達で七二プロと二八プロでございますか、そうして二十九年にこれが議員立法で法律になって、それからずっと今日までの経過を得た。当初は、いわゆる経費とは何ぞやという議論から入っておりますので、私は余り不公平税制という範疇には入っていなかったんじゃないかなというふうに思うのであります。  その後、いわゆる所得額が公表されるようになりました。そうすると、我々地方へ行けば、上の方ずらっと、職業、医師と書いてある。そういうところから一つの不公平感というものが増幅されてきたんではないかな、こういうふうに思うわけであります。そうしてさらに、いわゆる社会保険診療報酬というような問題がこれに加味して、点数、単価とかというような問題が加味してまいりまして、そうして今度御審議をいただいておる五千万円を境にする問題というものは、やっぱり漸次改革された、国民のそうした批判にこたえた措置ではないかというふうに私は思っておるところでございます。
  103. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 過日、民社党の玉置先生が質問いたしました。それによりますと、五千万を超えるようなお医者さんはいわゆる青色申告をしているし、さらにみなし法人としての制度を利用しておる。現実にはこのいわゆる概算経費率を適用していない人が多くなった。そういう実態があるので、今回の経費の五千万円以上のカットについては、実態に即して言えば余り実効のない制度なんだ、こういう形から切ったんじゃないかという声がありますけれども、それはいかがでしょうか。
  104. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 若干専門家の手助けをかりなければ正確にお答えをする自信がございませんが、適用者が六割から四割に減っていくということが一つの前進ではないかなと、非常に漠然とした感じお答えをするわけでございます。
  105. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 今回政府の方では、税制改革の必要性をサラリーマンの声を代弁して言っております。サラリーマンは怒っているというような感じでたくさんPRされております。それではその肝心かなめのサラリーマンにどれほど今回優遇措置がとられているのか、それを見てみるわけですが、かえってサラリーマンは不公平を助長させられてしまう、そんなような声もたくさんございます。  せんだって国税庁から民間給与実態調査というのが出ました。それによりますとサラリーマンの状況はやはり重税であった、こういうのが出てまいりました。  一つここでお聞きしたいのは、クロヨンというような表現でありますけれども、サラリーマンは所得の九割が捕捉されている、把握されている。ところが自営業者は六割、農業所得者は四割しかとらえられていないということが数字の上でも出てきたわけでございます。  この把握の問題もさることながら、今度は納税している、申告している数を見ますと、これを見てびっくりしたのですが、例えば農業所得者は百三十万人いるとされております。ところが納税者は三十二万人しかいない。つまり二四・六%しか申告していないという事実がある。それから農業者以外の自営業者、これは六百九十九万人おるそうですが、納税者は三百一万人で、これも四三・一%しか申告していない。サラリーマンは完全に、正確に言えば八九・三%が納税しておる。こういう実態はどうして出てきてしまったのでしょうか。そしてサラリーマンから見て自営業者、農業者に対して大変な不満を持っている。何とかしてくれという声がこの世論調査の結果出てまいりました。これは総理はどのように思いますか。
  106. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 ただいまの御指摘は、それぞれの所得者の所得種類に応じましたそれぞれの所得者と納税者との割合をお示しの数字ではないかと思うわけでございます。  給与所得者の場合でございますと、給与所得者の中では納税者割合が九割近い、農業は四分の一ぐらい、農業以外の普通の事業所得者では四割ぐらいという御指摘でございますが、これはそれぞれの所得の方々の所得水準にもよる部分もかなり大きいのではないかと思うわけでございます。  通常の農業所得者でございますと、水田等だけでございましたならば、課税最低限等で落ちるケースがかなりあるわけでございますし、農業以外の事業所得者の場合におきましても、控除によりまして所得税納税者から外れていくという割合、これはそれぞれの所得水準によりまして起こることでございますので、この所得者の納税者割合をもって、それがクロヨン等々の把握率と申しますか、申告率をあらわしているということが直ちに言えるのかどうかということについては、私ども疑問を持っておるわけでございます。  ただ、サラリーマンにつきましては、従来から、五十年代以来本格的な減税が行われておりませんので、御指摘の納税者割合も七〇%台から九割近くに上がってきているという、このことは否定できない。経過的に見るとそういう現象になっているわけでございますから。したがいまして、サラリーマンを中心に、特に働き盛りのサラリーマンの方々の減税を中心に今回の税制改革を組み立てておるところでございます。
  107. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 この六十二年分の確定申告結果によりますと、医師、弁護士を除きましたいわゆる自営業、この自営業者の納税者一人当たりの税金を出してみますと十九万円だそうです。農業所得者は十二万一千円。こういう数字を見ても、サラリーマンから見ると随分違うなあという思いがするんですが、今水野局長がおっしゃったように、所得水準が違うんだからという形でもってこれも割り切るべきなんでしょうか、お答え願います。
  108. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 今先生御質問の中で、自営業者あるいはその他の営業者、農業者の数字をもってお示しになりましたが、やや技術的なことを申し上げて恐縮でございますけれども、私ども所得区分は、主たる所得でもって区分するというような技術的な問題がございます。  それから、先ほど主税局長から御答弁申し上げましたように、それぞれの所得階層というのは必ずしも均一ではない、それぞれいろいろ違っております。そういった意味で、先生お示しの十九万とか十二万という数字も、あるいは二十四万という数字も、あくまでもマクロでの平均概念でございます。その意味で、この数字をもって直ちにクロヨンがどうこうということを言うのは、ややいかがなものかなという感じでおります。
  109. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 このトーゴーサンだとかクロヨンという言葉は相当前からありまして、これこそやはりその是正をしなければいけないんじゃないかなと思うんですが、税務署体制の税務署の人員の問題だとかいろいろなことがありまして、思うようにいかないというようなことも聞いております。しかし、この問題を放置しておいて、新たに所得消費のバランスをとるんだということでは、サラリーマンの方では絶対に納得できない、こう思うんです。どうしたらサラリーマンがみんな同じなんだなという、そういう感覚が持てるような制度ができるのか、それを真剣に考えるときが来たのではないか、こう思うんです。  今回の税制改革も、公平、公平ということがたくさん出てきておりますけれども、どうも本当の意味の公平がないんじゃないか、こう思えてならないわけでございます。公平というのであれば、まずこのように出てきている不公平税制というものを徹底的に是正してから、それでなおかつ来るべき高齢化社会はどういう社会なのか。現在まだまだ高齢化社会の姿は描かれておりません。どういう高齢化社会が来るのか、その社会で我々がどういう生活をするのか、どのような厳しい状況に置かれるのか、あるいは逆にどのようにすばらしい高齢化社会が来るのか、そういうようないわゆるビジョンもなければ設計図も示されていないわけでございます。いたずらに高齢化社会に突入する、大変だ大変だという論議ばかり先にありまして、肝心の高齢化社会はこうなるであろうという全体像は描かれておりません。  そういうわけで、とにもかくにも消費税ありきではなくて、高齢化社会がどういう社会なのか、そしてその社会に突入した場合に我々国民はどのような税負担をすべきなのか、そういうことを国民のコンセンサスを得るためには、やはり相当長い論議が必要ではないかなと思うんです。ただ簡単に高齢化社会が来ます、だから消費税お願いいたしますでは国民は納得できないわけでございまして、そういう意味で、我が党が提案しておりますように、とにかくじっくりと三、四年かけて見るべきではないか、議論をすべきではないかということをまた再三申し上げたいと思います。来るべき高齢化社会の設計図が描かれて初めて、国民はそれではこういう税負担やむを得ないなというようなプランを早急に出していただきたいと思います。御意見を伺います。
  110. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 確かに我が国が二十一世紀に向かって高齢化が進むということ、御指摘のとおりでございますし、また前国会におきましても、これはやや機械的な計算だけでございましたけれども、多少の資料をお目にかけたわけでございますが、それだけではなお不十分だということは政府感じております。  ただ問題は、当然のことながら実は大変に難しい、将来に関することでございますので、やり得ることに限度がございますけれども、何かもう少し多少でも具体的なことを申し上げられないかと思いまして、政府部内で鋭意検討をいたしております。
  111. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 前から鋭意検討、鋭意検討の言葉で来ております。具体的にいつごろ高齢化社会の全体像が描かれるわけでしょうか。
  112. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 事の性質上いろいろ制約がございますし、余り具体的に、また計数的に申し上げられる問題でもないのでございますけれども政府が提案を申し上げております税制改革案についての御審議の一助となりますように、そういう段階でできるだけ早くまとめたいと努力をいたしております。
  113. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 言葉じりをつかまえて恐縮なんですが、できるだけ早く、できるだけ早くと言ってずっと来ております。今回この税制改革に当たりましても、高齢化社会のいわゆる全体像が描けなければ、これは到底議論するわけにいかないと思うわけです。観念的に、感覚的に、高齢化社会は大変ですよ、だからというのでは、どうしても国民は納得できない。したがいまして、まず高齢化社会がこんな社会なんだとわかったとしても、国民は、はいわかりました、では負担しましょうと直ちには出ないのでありまして、国民が納得するためには、当然まず現行税制が抱えている不公平部分、これを直さなければその気にはなれない、こう思うのです。ところが、今回の改革案を見ておりましても、そういう言葉一つもないと私は思うのです。そこのところはいかがでしょうか。
  114. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点は私どもが最も実は力を注いだつもりのところでございまして、殊に給与所得者についてある階層と申しますか、むしろ年齢層と申し上げるのが適当かもしれませんが、その方々、それは社会に出てある程度たって、ローンの返済であるとかお子さんの入学であるとかそういうあたり、教育費でございますが、そのところの重税感が非帯に強い。それは一つは刻みが大変にきつく、すぐ昇給が累進につながるというこの重税感がやはり一つの不公平感に、どうも自分のところばかりがということに極めて転じやすい。それは一つは垂直的な問題でございます。すなわち、所得税全体のスケールの中でその部分重税感、スケールが非常に相対的にきついということになりますと、水平的な不公平感が生まれます。  それからもう一つは、先ほどからおっしゃっていらっしゃいます垂直的な不公平感で、それは例えば給与所得事業所得あるいはその他の所得との対比、これは制度上の問題もございますし、行政の問題もあるわけでございますが、それをおのおの直していきたいということで、この際所得税のそういういわば中堅サラリーマンのところの減税をやらしていただきたい。これがやはり一番大きな不公平感の改善になるポイントだというふうに思っておるわけでございます。
  115. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 昭和二十五年にシャウプ勧告で抜本的な税制改革ができました。そのときの理想はあくまでも累進総合課税、これでございました。しかし、その後だんだんと分離課税が入ってまいりまして、そしてなし崩しにシャウプ勧告の理想であった累進総合課税というものが今ずたずたに壊れてしまっている。その結果、その総合累進課税が純粋に適用されているといいますか、給与所得者についてはいわゆる特例が少ないためにその税負担に重税感感じておる、こうだと思います。  しかし、今回の動きを見てまいりますと、累進総合課税に返ろうという考えはないようでございます。今、大臣の方から垂直的公平という言葉が出ましたけれども、垂直的公平というのはあくまでも累進課税にあります。しかも総合にあります。ところが、姿勢として垂直的公平、累進総合課税に移行する、そういう考えはない。昔に返ろうという考えは一つも見えないわけです。何とかここまで来た現行の税制のままで、しかも間接税導入していこうというふうにしか見えないわけなんです。シャウプ勧告が行いました総合累進課税あるいは申告制度、これに現在返ろうというような考えはございませんか。
  116. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 やはり考え方としては、総合課税中心がいいということは橋本委員の言われるとおりで、私どももそう思っているわけでございます。  ただ、そこで問題は、一種の累進の問題でございますが、累進率が細かければ、あるいは高ければ高いほど公平感が生まれるというものでは私は絶対にないと思います。それはそれぞれの社会の成熟度にもよることでございますが、我が国ほどになりますと、余り刻みの細かい、累進度の強い、しかも高い税率はきっと逆に公平でないんだろうと思います。アメリカのように一五と二八と二本でしたら、これはやはり一つ考え方だと思うのでございますが、なかなかそこまではまいれませんにしましても、累進刻みがたくさんあって厳しくなるというのが、これで公平だと言うにしては、我が国の社会はもうかなり程度の高い社会になっておるというふうに思いますものですから、やはりそういうときには片一方で幅広く薄い一般的な消費税というものもお願いして、そして直接税の負担を少し軽減していく方が、私は我が国の今の姿にも、これからの姿にも合っていくのではないかというふうに考えるわけでございます。
  117. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 垂直的公平、これが本当は正しい法のもとの平等の理念なんだ、それをいわゆる租税政策として取り入れるべきだということは正論かもしれませんけれども、しかし最近水平的公平、これも考えなければならないんだという議論がございます。  その背景には、我が国においては所得水準が平準化してきた、そんなに上下のばらつきがなくなってきたという感じで、いわゆる広く薄く分かち合うというような言葉で水平的公平概念も導入しよう、そういう考えじゃなかろうかと思うのですが、我が国はまだまだ欧米に比較しまして所得は平準化しておりません。フランスに次いで非常に所得格差が高い国であるというわけでございますので、所得平準化というような時期にはまだ至っていない、こう思います。  それはさておきまして、この世論調査で四番目に上がってきたのがいわゆるキャピタルゲイン課税でございます。これもたくさん議論はございました。三度も三度も繰り返しませんけれども、今回のキャピタルゲイン原則課税の問題に関しまして、これが入ってまいりますと、現在あります売買回数三十回以上かつ十二万株以上の譲渡には課税をするとなっているわけですが、この回数制限あるいは株数制限、これが今度の改正ではなくなるというわけです。  そうした場合に、いわゆる大口投資家、これは本来ならば申告して課税をしなければならない。それが今度はなくなってしまう。そうすると今まで払っておった大変な金額が逆に一%でもって圧縮されてしまう、楽になってしまう、こんなような議論があるのです。そんなような国民の声に対してはどのようにお考えでしょうか。
  118. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ここのところは確かに一つ問題がやはりございますと私どもも思っております。  従来そういう制度でやってまいりましたけれども、実はこの株式の移動、譲渡というようなものを行政がなかなか的確にとらえられないというのが現実であるものでございますから、今の大口のケースというのは課税になるケースは大変に実は少ない。大変に少ないので、それはどうも行政としてはいかがなものであろうか。ないよりは一つでもあった方がいいというわけにも必ずしもまいりませんで、やはり公平な行政をやらなければならないということからは、どうも行政としてはちょっとこれをどうしていいのか。結局やはりはっきりそれを捕捉できるような体制をつくってまいりませんと、まあまあ公平であるという行政ができないというような問題がございます。その辺は実は研究を要する問題だと思っております。
  119. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 現在の回数制限、株数制限、この実態はどうなんでしょうか。計数的にもしお示し願えれば……。
  120. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 株式の売買に係る所得につきましては、先生御案内のように、現在は五十回以上二十万株以上となっております。六十三年分からは三十回十二万株というふうに相なりますが、実績の出ております部分につきましては六十二年分ということでございますので、五十回二十万株という条件下での計数というふうに御承知おきいただきたいと思いますが、私どもの方で全国の税務署に提出されました申告書の中からこの条件、これはいずれにいたしましても雑所得等の中で申告されます。その中で今申し上げました条件に該当する申告の件数を集計しておりますけれども、六十二年分につきましては千五十一件でございます。
  121. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 金額はいかほどになりますか。
  122. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 ただいま申し上げましたように、有価証券に係る譲渡益も他のものと合わせまして雑所得として申告されます。したがいまして、私ども申告書の集計といいますか処理の上からいきますと、雑所得の中からその分のみをピックアップするということはちょっとできかねますものですから、有価証券の譲渡益が含まれる申告書に係る雑所得、それに係る税額ということで、ちょっと先ほど申し上げました件数――件数はいいんですけれども、有価証券譲渡益に係る部分というのはなかなか数字が出しにくうございます。したがいまして、その点をやや大胆に推計いたしますと約二百三十億ぐらいじゃないかなというふうに、若干の推計をもって計算しておる次第でございます。
  123. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 大蔵大臣、回数制限については現行法上規定があるけれども、規定どおりに把握できない、数が少ない。千五十一件雑所得として上がってくるけれども、純然たる株譲渡のものはわからない。強いて推計をすればということで今二百三十億円という金額が出ました。これは現在の証券取引から見て到底考えられないような数字だと思うのです。  それで私が聞きたいのは、回数制限あるいは株数制限というものは何のためにつくったんでしょうか。
  124. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 昭和二十八年の改正におきまして、従来総合課税とされておりました有価証券譲渡益課税原則非課税になったわけでございますが、その当時といたしましては譲渡所得となるものは非課税、しかし、事業所得なり雑所得になるものとしては課税という原則であったわけでございます。したがいまして、単発的なものは非課税でございますが、継続的にかつある程度の大口な取引で行っておられますものについては、事業所得ないしは雑所得として課税だ、こういうふうに二十八年に仕組まれたところでございます。  その後こうした考え方が徹底されてまいりまして、事業所得、雑所得、譲渡所得という所得の種類は別といたしまして、とにかく継続的にかつ一定以上の規模で取引されたものについては課税であるというふうに、昨年と申しますか、現在までなっているところでございます。単発的に譲渡されたもの、すべてそういったものは原則として非課税としつつ、継続的にいわば事業として、あるいは事業に準ずるような形で行われます有価証券譲渡、こうしたものは課税という考え方で仕分けが行われてきておるということでございます。
  125. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 こんな声があるんです。今までこの回数制限に従いまして、何億円という億単位の累進課税をされていたいわゆる大口投資家と申しますかそういう方々が、今回の案によりますと、売却額の一%を選択した場合には百万円単位の税金で済むという話があるんです。したがって、これはもう大変な抜け穴である、かえって不公平を助長するものなんだ、不公平感を増すものなんだという議論がありますが、これはいかがでしょうか。
  126. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 建前といたしましては、現在五十回二十万株、また去年は三十回十二万株でございますが、そうしたものは申告を要するとなっておりますところ、その実績といたしましては、先ほど国税庁の方から説明ございました千件、そしてまた二百億円程度、これはまた委員御指摘のように、およそ現在の株式市場の状況からするとなかなか想像しにくい結果になっておる。これはやはり五十回二十万株あるいは三十回十二万株といったものがきちんと把握されるような制度が確立されていない、専らそれは取引をされる方の申告におまちしているという実態でございますので、こうした数字になっている。  もちろん執行当局としても、こうした制度があります以上、それとおぼしき方々につきましては、多量の事務を投入いたしましてその是正をお願いをしておる。しかし、これが非常に大量かつ流動的な株式の取引でございますし、また各地、また各営業所に分散して行われる。こうしたものを徹底して調査をいたしますということは大変な事務量を要する。したがいまして、そうした調査なりによりましてたまたまぶつかった人が課税になる、あるいは大変誠実な方が千人ぐらいが申告をされるという状態ではかえって不公平を招来するのではないか。実際にはそうした実情になっておる。  そうした意味におきましては、ごく限られた方が五十回二十万株、三十回十二万株で総合課税が行われる一方、その他の大多数の方々については実質非課税になっておるということからいたしますと、その税率水準はともかくといたしまして、原則課税をまずお願いするというところが、この時点におきましてお願いをするべき方向ではないかということで、先ほどのいろいろお話のございますような課税方式で、とにかく原則課税で出発をさせていただければどうかということでございます。  ただ、これにつきましては、先ほど来からいろいろ最近におきまして御議論がある。そうした御議論につきましてはまた十分承ってまいりたいと思っているところでございますけれども、とにかく適切な把握体制なしに制度だけを仕組んでみましても、むしろ実質的な不公平が生じかねないということから、現実的にとにかく原則課税に出発をさしていただければというところでございます。
  127. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 確かに総合課税のために難しいということで、いわゆる納税者番号をぜひ導入するようにと強く訴えておるわけでございます。  今、正直者が申告して千五十件程度と言われましたけれども、この回数制限に違反して、いわゆる脱税しておったというのがわかったのは何件ぐらいあるんですか。
  128. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 今申し上げました数字は六十二年分の申告の数字でございます。私ども調査はもう少しそれよりも前の時点のものを調査対象にしておりますので、先ほど申し上げました数字に見合った年次という格好にはなっておりませんけれども、一番新しいところで申し上げますと、六十二年四月から六十三年三月までに行いました調査、その結果で今の有価証券の継続的取引に係る所得申告漏れが把握されましたものは千四百八十七件でございます。
  129. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 キャピタルゲイン関係でいわゆる原則課税、大いに結構でございますけれども、今言ったようにこの回数制限を撤廃いたしますと、大口な投資家が大変な恩恵をこうむるという事実が出てくることをまず指摘しておきたいと思います。  いずれにいたしましても、総理、税金というものは国民が納得できるような理念がまず欲しいと思います。総理も何回となくいわゆる公平、中立、簡素という言葉を繰り返しております。公平であり、中立であり、簡素であるということは、納税者から見て確かに望ましい理念でございますけれども、どうも政府のとろうとしているこの改革は、まず国の方からどうしたら税金が取りやすいのかなという観点から考えられているというように思えてならないのです。国民の側から見た公平、これを最優先してぜひとも改革に当たってもらいたい、こういう気持ちを持っておりますが、総理はどこに一番重点を置いておりますか。
  130. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 これは、御指摘どおりいわゆる公平ということであろうと私は思っております。徴税の方から見ると簡素ということもあり得るでございましょうが、税を国民に理解を得るということは、やはり公平という観点であるというふうに私は思っておりますし、そのことは貴党の基本法にもありますが、我が方の改革案というものにもそのことを明記しておるということが実情でございます。
  131. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 時間が参りました。ぜひとも不公平税制を是正するということが国民の一番納得する手順ではなかろうかと思いますので、総理、公平ということに最大のウエートを置いてお願いしたいと思います。  終わります。
  132. 金丸信

    金丸委員長 これにて水谷弘君、橋本文彦君の質疑は終了いたしました。  次に、工藤晃君。
  133. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表しまして、不公平税制の問題を中心質問いたしますが、その質問をする大きな前提としまして、今国民の間には、リクルートの追及、全容解明、責任を明らかにする、そのことなしに何が税制か、その声が日増しに高まっているのであります。当委員会は必ずこの国民の声にこたえなければいけないということが一つと、それから、不公平税制問題を議論しますが、しかし、今竹下内閣が推し進めようとしているところの消費税、大型間接税、これこそ母子世帯にも老人世帯にも貧しい世帯にも重い負担をかけ、逆進性の最大の不公平税制である、これを引っ込めるということが不公平税制を本当に国民的に討議する前提である、このことを私はまず明らかにして質問に入っていきます。  最初に……
  134. 金丸信

    金丸委員長 工藤さん、ちょっとお待ちください。  リクルートの問題については、きょう理事会で、税制の不公正をきょうは質問するということで、リクルートの問題には触れない、そのかわり明日これをやるということですから、それはいろいろ理屈をつければ理屈になるでしょうが、その辺はまた……
  135. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 私、この順番でやっていきますから、それでキャピタルゲインでやるときには、これまでもこの委員会で各委員質問を聞きましたが、リクルートに触れられなかった方はおられなかったと思います。したがいまして、この順番で、出された順番でやりますから……
  136. 金丸信

    金丸委員長 ひとつ常識でやってください。
  137. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 所得平準化の問題について伺います。  シャウプ税制のとき、あのころは所得格差が非常に拡大をしていた。だから、直接税中心で、累進で、垂直公平だということを言われた後で、その後四十年間非常に変化をした。所得が向上し、平準化した。確かに四十年間に国民一人当たりの所得は向上したでありましょうけれども、この平準化したというのは、一体、何を根拠に平準化したと言われるのですか。根拠を挙げていただきたいと思います。
  138. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはいろいろございますが、まず一番一般的に申し上げることができるのは、恐らく、総理府が毎年一度国民の生活感情の調査をしておりますけれども、みんな自分が中流に属する、中流のどの辺ですかというと、中流の中だという答えがほとんど九割なんでございますね。これは一番正直な、それはもう何年もそうでございますから、まず狂いのない一つの国民の持っている見方と思います。  それから、もう少し統計的に申しますなら、いわゆる第一分位と第五分位との格差を毎年毎年やっておりますが、これが二・九でございますから、シャウプのときに五・八であったと思いますが、二・九というのはアメリカの例えば九・五なんかと比べますと大変に小さい。ジニ係数でもそうでございます。  工藤委員の言われますのは、恐らく、先回りをするようで申しわけありませんが、この何年か必ずしもそういうふうな傾向に動いていないだろう、時々よくそういうふうにおっしゃいますので、それは私はそういうことがあると思いますのですが、それはやはり石油危機とか円高とかいうのがございまして、かなり雇用が危うくなった、ついこの間までそうであったのでございますから、その間にはやはり給与の伸びはどうしても小さいということがございました。そういうことがございますから、この過去の何年間かは多少その傾向というものが緩んだ、あるいは少し後ろ向きへ行ったかもしれません。しかし、ここまでまた経済が立ち直りましたから、必ずやまたそういう傾向が進んでいくであろう。しかし、今でも私は、日本は一番所得格差の少ない国だということを申し上げることはできると思います。
  139. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 これは昨年、私が大蔵委員会で実は同じ質問をしましたけれども、今度繰り返さざるを得ないのは大変残念なんですが、今、一対二・九倍、これは所得ランクで世帯を二〇%ずつとって一番上と一番下が二・九倍というのですが、それは家計調査勤労者世帯の実収入なんです。  伺いたいのは、その勤労者世帯というのは社長や取締役、理事が入っているのですか。それから、家計調査の中には単身世帯が入っているのですか。そのことをちょっと答えていただきたいと思います。     〔委員長退席、海部委員長代理着席〕
  140. 田中宏樹

    ○田中(宏樹)政府委員 お答えいたします。  勤労者世帯でございますが、家計を賄う主な世帯員、すなわち世帯主でございますが、会社、官公庁、学校、工場、商店などに雇われて勤めている世帯をいいますので、いわゆるサラリーマン世帯というものでございます。
  141. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 単身者世帯は。
  142. 田中宏樹

    ○田中(宏樹)政府委員 今の家計調査には単身者世帯は含めてございません。
  143. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 理事会でお願いしました資料がございますので、ここで配っていただきたいと思います。
  144. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 資料を配りますので、発言を続けてください。
  145. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 資料を見ていただければ、今総務庁の統計局の方からお答えになったように、調査の対象として単身者世帯は入っていないということ、それで、今単身者世帯というのは全世帯の約二割ですね、ここに低所得者が集まっております。それから、勤労者世帯というのには社長や取締役や理事は入っておりません。  それで、もともと日本の家計調査というのは大変なんですよ。六カ月家計簿をつけなければいけないというので、きっちりとそういう家計簿を連続的につけられる世帯が選ばれてしまうから、最初から単身者世帯という貧しい世帯というのは外されております。それから同時に、大変金を持っていて奥さん方が――それは単身の老人世帯が多いのですよ、今。それで、そういう金持ちで奥さんがへそくりして株をやっているようなところはまた家計簿をつけられませんから、そういうのは入っていなくて、一番高いところと低いところを外す。まして勤労者世帯というカテゴリーになったら、もともと社長さんは入っていない。だからこれはあくまで家計調査であって、収入調査じゃないんですよ。収入調査でないから、これで貧富の格差がどうなっているかとか平準化ということは全然出てこないのです。全然出てきません。  じゃ、もう一度伺いますが、宮澤大臣、先ほどアメリカの方が九・何倍と言った、その統計はどういう統計なんですか。
  146. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今おっしゃいましたように、家計調査というのは、それはそれなりの制約はございますけれども、しかし、お言葉を返すようですが、この五分位階層というのはずっと昭和二十六年ごろからの数字がございますものですから、趨勢としては読めるわけでございます、同じ条件でございますから。  それからもう一つは、国際的に日本はそんなに高くないよとおっしゃいますが、日本よりいい統計を持っている国は私はどうも余りないんじゃないかと思います。この家計調査ほどの調査をやっている国はないものでございますから、したがって、その点は、家計調査そのものには制約がございますけれども、だから申し上げていることは間違いだというふうには私思いませんので。  アメリカの九・五というのがどこから出ましたか、ちょっと私出典を存じませんから、だれか――知っておりますから政府委員から。
  147. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 アメリカの数字といたしましては、USビューロー・オブ・ザ・センサスのマネー・インカム・オブ・ファミリーズということでございますので、アメリカの国勢調査局と申しますか、そういうところの家族所得分布状況、こういう数字であろうかと思います。
  148. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 大体今答えられたとおりで、アメリカのセンサス局、統計局みたいなところですね。これはその所得調査なんです。収入調査なんです。現金収入の調査で、これは家計調査じゃないんです。それで、税金や社会保険料など控除する前の現金収入、したがって賃金、自営業者の所得、配当、賃貸料、社会保障の支給等々、これを専ら所得が国民の間でどう分布しているのか、それを調査するわけでありますから、したがいまして、所得調査と、それから、先ほど言いました単身者はもう最初から入れていない、上の方も入ってこないというところの五分位を比較するというのは、これはもう統計の専門家の世界だったら極めて初歩的なミスになるし、あえてこれを無理やりアメリカと比べようというふうになると、これは全く、悪い言葉で言えばもう詐欺師的な比較にもなりますよ。これは統計の世界では全く通用しないのです。  それで、日本の単身者世帯というのは最近ずっとふえているんです。そういうのは家計調査にも出てくると思いますが、それは何か、老人世帯が非常にふえて、ここの収入が少ないわけですね。だけれども二・九倍という数字を使ってアメリカの九倍と比較するようなのが実は大蔵省の広報関係に最近まで見られるから私は言ったし、当委員会でもそういうような御発言がありましたので、こういうもので日本の今の所得の分布状態、貧富の差がどうなっているか比較したら、そもそも税金の問題の出発点からして間違ってしまうということになりますので、ついでに、厚生省おいでになっておりますので伺いたいと思います。  昭和五十九年所得再分配調査の十分位階級別当初所得はそれぞれ幾らか、全部述べられると時間がかかるので、第一分位と第二分位、それから第九分位と第十分位をちょっと述べていただきたいと思います。
  149. 末次彬

    ○末次政府委員 御質問所得再分配調査は、すべての世帯類型につきまして、当初の所得と、当初の所得から税、保険料等を控除し、年金等の社会保障給付を加えた再分配後の所得変化を調べるための調査でございまして、御質問昭和五十九年の所得再分配調査結果におきます、年金等の社会保障の給付を含まないいわゆる当初所得の十分位階級別、これを申し上げますと、第一・十分位が十九万四千円、第二・十分位が百二十三万六千円、第九・十分位が六百七十二万二千円、第十・十分位が千二百七万一千円でございます。
  150. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 総理政府の中で厚生省では所得調査をやっているわけですね。当初の所得がどうで、それがどうなるのか、いろいろな税金を払ったりあるいは社会保障給付を受けたり、再分配するとどうなるのか、まさにこちらの方は所得調査なんですよ。それによりますと、今お聞きになりましたように、また今の資料ですね、これはそのまま厚生省がお出しになった資料ですから全く同じ数字が挙げられたわけでありますが、この資料のIのCの表2というところを見ていただければわかりますように、第一・十分位が十九万四千円、第十・十分位が千二百七万一千円で、この第一と第十を比べると、六十二・二倍という数字が出てくるのです。これはそのとおり厚生省の調査であります。  それで、もしこれを五分位にするためには、一〇%ずつのクラスに分けてありますから、五分位にする方は易しいのですね、この二〇%に合わせればいいわけで、それで直してみますと、第一・五分位は七十一万五千円、第五・五分位は九百三十九万七千円で、この第一と第五の開きは十三・一倍であります。先ほどの二・九倍からは想像されないそういう格差が収入調査で出てまいります。  アメリカはこの年、私も調べましたが、この同じ年に、一九八四年ですが九・一倍ですから、この十三・一倍という数字を比べますとアメリカよりも多いということになりますが、どうですか大蔵省、大蔵大臣、税金の議論をするときは、政府の中でこういう調査がやられているのに、何か都合のいい調査だけ出されているのじゃないですか。なぜこういう収入調査を重視してちゃんとそれに基づいた議論をやらないのですか。これは宮澤大臣、答えてください。それから総理も、これは総理の問題でもありますので答えていただきたいと思います。
  151. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 現在行われております税制改革作業は、シャウプ以来の抜本改革ということでお願いをいたしておるところでございます。そうしたところから、統計数値といたしましても、戦後できるだけ長い期間をとりまして比較できる計数といったものが必要でございます。したがいまして、そうしたものにたえ得るものとしては実収入統計というものがございますので、それを一貫して使わせていただいているところでございます。  また、アメリカにつきましては、確かに統計のとり方、性質は違う面があろうかと思いますけれども、このアメリガの同じような計数を、やはりこの計数としては戦後の三、四十年を比較できる計数になっておりますので、系列的にはそれを使わせていただいておる。また、マクロ的にアメリカ日本との分配の数値といたしましてはジニ係数等々ございますので、何とかそこらは統一的に私どもは御説明できるというふうに考えているところでございます。
  152. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 大臣、答えてください。同じ政府の中の厚生省でやっているまさに収入調査、つまりアメリカの収入調査と一番比較しやすい近距離にある調査が十三・一倍になっている、こういう事実が今の数字から出てきたわけですから、言ってみると、そういう税金の議論に都合の悪い数字は隠して、しかも最初から上も下も外したような本当の意味の収入調査じゃない家計調査を使うということをやっているんじゃないかと思いますが、そういうことは今後どう改めていきますか。
  153. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 やはり国が違いますと体制も違いますし統計も違いますしいたしますので、できるだけそれを共通なものを選ぶように努力をいたしておるわけでございます。決して何か目的的に、恣意的にというようなことはやっていないつもりでございますが、今後もよく注意してまいります。
  154. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 長期的な傾向が見られないと言いますが、まさにこの厚生省の所得再分配調査につきまして、こういうふうに皆さんの表にグラフもつけておきましたけれども、六十二年の数字はつけてありませんが、これでちゃんとずっとその傾向が出てくるわけであります。  この傾向の問題は後でもう一つ論じるとしまして、もう一つ。一番アメリカの収入調査に近いようにすればどうか。私もただ十三・一倍ということを言いっ放しではありません。アメリカの収入調査はどういうとり方かというと、税金だとか社会保険料を引く前の現金収入でありまして、そうしてそこには社会保障なんかの給付も入っておりますから、これは厚生省のこの統計からつくり直すことができる、簡単に計算することができるわけであります。それでやりますと、ややさっきの十三・一倍という数字が変わりまして、ちょうど第一・五分位は百三十三万三千円、第五・五分位は九百六十五万四千円、これで七・二倍の開きになります。  しかし、この収入調査の中には、特にキャピタルゲインなど、そういうものは十分とらえられておりません。財産所得が十分とらえられてないということからしますと、それから先ほどの、当初の十三・一倍というような数字とあわせて考えますと、アメリカの約九倍の開きと比べて日本の方がもうはるかに平等だということは絶対言えないわけなんです。ですから、そういう数字が、六七年、七二年、ずっと八倍から七・四倍、六・九倍から六・六倍、七五年に八・八倍から七・九倍、それから七八年に七・七倍から六・七倍というふうに来て、今、八四年に十三・一倍から七・二倍、こういうふうになっているわけです。  だから、ここで私は総理大蔵大臣に答弁していただきたいのですが、所得の平準化というのを、こういう収入調査から、平準化と言うけれどもどうして言えるのか。これで見ると、七五年がピークで八・八倍になって、それからどんどん下がっていけば平準化ですな。そうじゃなしに、八四年に十三・一倍とまたピークが来てしまっている。これがどうして平準化なのか。だから、これから税金の議論をするとき前提として、二・九倍だとか平準化、こういう表現はもうこれ以上使わないでもらいたい。あえて使うとしたら、これは誤った情報を国民に伝え、誤った印象を与える、こういうことになりますよ。平準化と言うことをやめてください。これはもう厚生省の数字でありますので。
  155. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは工藤委員のも一つのお考えかもしれませんけれども、やはりこれは大事なことだと思いますので、国全体の所得がまあ格差が上と下と小さくなるということは政治としても私は大事な目標だと思うものでございますから、したがいまして、そういうことに常に注意をしていて、やはり長い間の、多少長い間の趨勢が必要かもしれませんが、そうなっていかないということは大事なことだと思うのでございます。  それで、我が国がこの何年間か多少、経済が非常に難しゅうございましたのでそれを離れた逆の方向へ行ったかもしれないという感じはいたしますが、それでしたらそれはやはりいい方向へ直していかなきゃならないというふうに思いますので、そういう政策目標はやはり常に持っていたいし、そのための統計などは十分整備をして考えていくべきではないかと思います。  外国との比較については、それは条件もいろいろ違いますからよく注意しながら申し上げなければなりませんが、そういうものを絶えず考えておくということは大事だと思っております。
  156. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 今の答弁だと、では平準化とか外国と比べても日本の平等さを誇るというその事実は、事実上今の答弁で否定されたと思わざるを得ないですね。ただ、目標として平準化に行きましょう、それは結構な話です。目標じゃないんだよ。シャウプ税制から四十年たって、それで平準化した、世界に誇れる、こういう事実はないじゃないか。これは私は勝手にやっているんじゃなしに、政府の統計を使ってやっているわけです。しかもアメリカと比較をされているから、アメリカの統計と一番合うような形で私は比較をしたわけです。  それで、ついでに、先ほどジニ係数というお話がありました。よく持ち出されるのが一九七六年のOECDの各国のジニ係数の比較であります。しかし、このジニ係数を比較するときにどういう統計をOECDが使ったか御存じですか、これを答えてください。これはやはり大蔵省が宣伝していますから、大蔵省で答えてください。
  157. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 先ほどお示しのは一九六七年からお示しでございますが、この統計数値から申しますと昭和三十七年からあるわけでございまして、ですから私どもは、そこでとどまっている部分では不正確でございますから、使える数字を使わしていただいている。しかも、この一九六七年の前の三十七年を持ってまいりますればこれよりも高くなるわけでございますから、これもやや一面的なお示しではないかと私どもは思うわけでございます。  それから、OECDにつきましては、OECDの千九百何年でございますか、この数字を私どもはそのまま使わしていただいているわけでございます。
  158. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 いや、大体家計調査で上と下を外したような調査をやって、それが一面的でなくて、ちゃんと収入調査をやったものに基づいて私が議論しているのが何が一面的ですか。そんな答弁は私は認められませんよ。  それで、さっき言った六二年も八・三倍ですよ。これは七五年が八・八倍、八四年が十三・一倍ですから、やはり後のピークの方が高いわけであります。  そこで、肝心なことを、一番聞かなければいけなくて聞いたことを言わないで、ああやってああいうことだけ言って帰ってしまいましたけれども、しかし、OECDの調査の問題になったのは、これは当時、それからまたその後ずっと経済企画庁の調査官として、また国民生活研究所の主任の調査員として、特に国民所得の国際比較の分野では日本の第一人者であり、その後独協大学の教授、今は名誉教授ですが、石崎唯雄さんという方を御存じだと思いますが、この人がこのOECDの発表を見て大変びっくりして、そうしてなぜそういう結果が出たのかと見たら、わかったのは、やはり家計調査と同様に収入調査としてはちょっと役に立たない全国消費実態調査をOECDに使わせてしまった。ところが、当時企画庁の中でもどこでも、一体どこの省庁がOECDにこれを出したかといったら、だれもわからない、そういう結果であります。  そこで石崎唯雄氏の方は、就業構造基本調査という、これは非常にサンプリングが行き届いた調査で、当時ずっと収入調査をやっていた、この就業構造基本調査をやり、国民所得との比較などをやりながら、結局出した結論がどうかといいますと、「我が国所得分配はOECD加盟国の平均よりは不平等であり、ほぼアメリカ並みである。」こういう結論になったわけです。ジニ係数でいいますと、上から十カ国のうち二番目によかったのが下から二番目というので、アメリカ並みだということを石崎唯雄氏が明らかにしたわけです。つまり、ジニ係数が〇・三三五でなしに〇・四〇八だということで、それでまさにアメリカ並みだということにしてありますが、こういう重要な結果が出されたのに対しまして、その後何の反論もされてないというところを見ると、これはやはり権威ある研究だということになるわけであります。  そういうことで私は、先ほど事実上日本の平等化というのはこれまでの統計からいっても無理だということをお認めになったと思うわけでありますが、同時に経済白書について伺っておきますけれども、特に経済白書では資産格差が拡大しているということが指摘されている。それはなぜかということについてごく簡単にお答えいただきたいと思います。
  159. 冨金原俊二

    ○冨金原政府委員 お答えいたします。  ことしの経済白書で資産格差の試算を試みているわけでございますが、データ上いろいろ難しい問題がございまして、先ほどちょっと御議論ございましたように、資産格差を推計する一つの方法として勤労者世帯の五分位階層別の金融資産の保有状況変化を一応調べているわけでございます。その結果といたしまして、第一分位と第五分位の勤労者世帯の金融資産の比率が、六十一年が四・六倍、六十二年が四・四倍、若干さかのぼりまして五十六、七年ごろはほぼ四倍程度ということでございますので、いささか上昇が見られるという分析をしているわけでございます。  もちろん、このほかにも資産保有ということを考えますと、土地あるいは持ち家ということがございまして、この辺は実態的な数字が必ずしもはっきりつかめないものでございますから、そういった具体的な形の推計はしてないわけでございます。  結論的に申し上げますと、若干の格差が拡大した可能性があるということの中には、株の上昇あるいは土地の上昇というものがそういう形で反映されているのではないかという感じ議論をしているわけでございます。
  160. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 だから、経済白書を見ても、資産で、株とか土地その他で非常に格差が拡大する傾向ということをやはり一つの重要な問題点として指摘しているわけですね。それで、資産の格差が拡大するというのは、もともと所得の格差が拡大して、それで株や土地を買える人たちが資産を持って、それがまた値上がりして、またそれがフローにはね返る、フローとストックというのはそういう関係にあるわけですから、まさに最近の状況というのは、ここ数年見ても拡大ということが問題になるわけであります。  そういうことでもう一つ聞いておきたいのは、アメリカの雑誌で「フォーブス」というのがありますけれども、世界の十億ドル長者を毎年調査しておりますが、八八年について言いますと、全世界で百九十二の個人ないし家族がいて、そのうち国別にはアメリカが六十八、日本が三十四、西ドイツが十五、カナダが八というように、日本がずば抜けて多いわけです。  この傾向というのは、先ほど私が最初に指摘した厚生省の調査ともつながってくるし、経済白書ともつながってくるわけでありますが、どうですか、総理、それから宮澤大蔵大臣、こういうふうに日本でどんどん大資産家が急速に伸びてくるというのは一体どういう原因でしょうか。税制上問題がないのでしょうか。税制がやはり大企業、大資産家がどんどん太るのに大変都合よくできているからこうなっているのじゃないのでしょうか。その辺、どうお考えでしょうか。
  161. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私も詳しいことを知らないのでございますけれども、「フォーブス」を見ておりますと、ここのところで急に日本からそういう番付の上の人が出てまいりましたのは、恐らく土地とそれから殊に株式のように思われます。株が値上がりをして、そこへまた為替レートが、円が強くなりましたものですから、そういったようなものが、何人かの、もう名前を申し上げれば御存じの人々がかなり上の方へ出てくる。それを見ておりますと、自分並びに自分の系列の会社のそういう土地なりなんなりをいわば評価いたしまして、持っている株式も評価いたしまして、それで勘定しておるようでございますので、最近日本に起こりました土地と株式と為替レート、それがかなり影響しておるのではないかというふうに、私もよくわかりませんが、読みながらそういう感じを持って見ております。
  162. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 この「フォーブス」の調査を私も見ましたけれども、大変詳しい系統的な調査で、西武の堤義明氏の調査も、去年の分については大き過ぎるという批判を受けて、改めて、今言われたような会社が持っている株は外して、それでなおかつトップだというようなことをしておりますし、なぜ堤義明氏がどんどん太るかというと、例えば民活法なんかで財政上、金融上特定施設が非常に保護を受けて、そして十七プロジェクトが動いているというようなことまで書いているわけであります。  結局この問題というのは、日本税制が、今、株、土地と言われましたが、株のもうけ、土地のもうけ、株のもうけの場合は個人もありますし法人もありますが、非常に緩いことからこういうことになると判断せざるを得ないわけで、先ほど言いました日本が世界に誇る平等どころか、全く一部の少数の大資産家、大企業だけがどんどん大きくなってくるような社会経済であり、同時にそういう税制があるということが明らかになるわけです。  それから、先ほどのことで一言だけつけ加えておかなければいけないのは、よくシャウプのときが非常に開いていて、それから縮まったと言うけれども、実はシャウプ税制のときというのは、財閥解体をやった、それから土地改革をやった、労働組合がどんどん運動できるようになったということで、一番格差が狭くなっているときで、その後、特に六〇年代など少し平準化が出るという傾向を石崎氏も認めておりますが、その後また拡大しているわけで、シャウプのときはこんなに拡大していて、だから垂直で、今度はこれだけ平等になった、だから水平で、広く薄くでというような消費税、この議論はそもそも成り立たないと思います。  総理、そもそもの今提案されているものの出発点の議論として、こういうところは直さないと誤った情報ということになりますが、これはいかがにお考えでしょうか。
  163. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 それぞれの社会体制によっての相違もございますが、第一次的社会主義国家というのは私は全部間接税だというふうに思うわけでございます。これはいつも申し上げておりますので、それに対する反論もまた論文も読ましていただいておりますから、それはそれで結構でございます。しかしながら、それが進歩して、いわば努力と報酬の一致というような、俗に言う開放、改革体制がとられてまいりますと、そこに所得税議論というものが入ってくる。  その所得税議論というものが、所得に着目した税制であって、そうしてそれが消費に着目した税制と余りにも懸隔したときに、離れたときにまた新たに消費に着目したいわゆる受益負担というものが生じてくるというのが歴史の必然性ではないかなどといって、まあ自分一人であるいは考えておるかもしれませんが、おたくの論文もいろいろ読ましていただいておりますが、そのように考えております。
  164. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 総理、いつから社会主義国の総理になったのかなと思いましたね。だけど、私の今持ち出している議論というのは非常に深刻な、国民にとって重要な問題ですから、そういう形でまともに答弁されないとすると、答弁を逃れたというふうにどうしても私も考えてしまいますよ。これはもうやむを得ないことですね、そういう答弁されていったら。  何か今は非常に平等な社会になって、だからもう大型間接税いつでもやれるという、そのそもそもの出発点がおかしいじゃないかと言っている事実を、政府の統計やら国際的な調査やらあらゆるものを使って私が示して、まじめに議論しようとしているときに、そういうふうに言ってしまったらまさに答弁できない状態だというふうに判断せざるを得ませんが、今みたいな答弁を繰り返していますと本当に時間がたってしまいますので、そこで次のタックスヘーブン税制に行きます。  今ここで我が党が不公平税制の問題で非常に重視しているのは、確かに今共産党を除いた議論がやられております、十項目挙がっております。十項目の中にはもちろんなるほどと思うのはありますけれども、しかし、今取り上げなければいけない最大の不公平な部分というのは、まさにさっきの「フォーブス」の結果やその他が明らかにしたような大企業に対する優遇税制、これは国際的に見ても物すごいものだと思います。それから同時に、キャピタルゲインとか土地とか、そういうものに対する税制が非常に緩過ぎるという、そういう結果としてこういう不平等が拡大再生産されているわけでありますから、その立場からまずタックスヘーブン税制について伺いますが、海外直接投資の急増が続くとき、そのうち、タックスヘーブンへの投資の額は、割合はどのくらいでしょうか。
  165. 内海孚

    内海(孚)政府委員 我が国の対外直接投資届け出実績の数字をまず申し上げますが、昭和六十年度が百二十二億ドル、六十一年度が二百二十三億ドル、六十二年度が三百三十四億ドルでございます。そのうち、タックスヘーブン諸国に対するものを統計で判明する限り拾ってみますと、昭和六十年度が二十八億ドルで全体の二三%、六十一年度が六十二億ドルで二八%、六十二年度が七十八億ドルで二三%となっております。
  166. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 今の答弁からも、大体年々、多いときは二八%という額が直接投資としてタックスヘーブンに向かっているわけです。これは同じ結論だと思いますが、お配りしました資料の資料Ⅱに、十カ国について八〇年から八六年、どれだけタックスヘーブンヘの直接投資がふえているかというものをとっております。それから、それぞれの円の表示もありますが、驚くべきことに、八〇年度から八六年度にかけて、七九年度末と言っていいでしょう、それから八六年度末にかけて、七年間で七倍になっているのですね、この十カ国のタックスヘーブンだけで。それで、円にしますと四兆円という額になるわけです。つまり、今政府は海外直接投資を盛んに奨励している。それでどんどんふえている。実は四分の一がタックスヘーブンに向かっていってどんどん出ていっている。こういう現状をどう見るのか、こういう現状に合った今の税制になっているのか、このところをどうしても議論しなければならないわけであります。  そこで聞きますが、タックスヘーブン税制課税対象に計算する特定外国子会社の留保金額は、八〇年度から八六年度にかけてどのくらいにふえていますか。七倍にもふえておりますか。
  167. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 私ども国税局の調査課で所管しております資本金一億円以上の法人につきましての、お尋ねのタックスヘーブン税制の適用があるという申告ベースで申し上げてみたいと思います。  これは昭和五十五年四月決算から五十六年三月決算の法人でございますが、それの課税対象の留保金額は二百十二億円でございます。同様に、昭和五十六年は百八十八億円、昭和五十七年は百七十四億円、昭和五十八年は三百十四億円、昭和五十九年は二百八十二億円、昭和六十年は二百六十四億円、六十一年は二百三十八億円となっております。
  168. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 これも私が配った表にありますから大変答弁する側も楽だったと思いますけれども、しかし、これを見て、この約七年間に、ドルで言うと残高で、残高というか累計額と言っていいでしょう、十のタックスヘーブンで七倍にもふえた。それなのに、今の税制でとらえられる唯一のいわゆる特定外国子会社の留保の額というのは、この間二百十二億円と二百三十八億円ですが、完全に横ばいですね。  これはあれじゃないですか、この今のタックスヘーブン税制というのは全然働いていないのじゃないですか。ともかく、海外に出ていくのにタックスヘーブンへどんどん出ていけば、幾ら出ていっても税金は大してつかまらないという結果じゃないのですか。もしそうでないと言うなら、海外の大口不正所得というのがこの間ふえていると思うのですが、その辺はこの間物すごくふえていますか。
  169. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 タックスヘーブン税制の適用される条件は先生御案内のとおりでございます。それの適用の結果の計数は先ほど申し上げたとおりでございます。  いま一つの御質問の、海外の大口不正所得はどうかという点でございます。  私どもも海外子会社を有する法人につきましての調査は相当ウエートを置いて調査しておりますけれども、その結果につきましては、いわゆる海外取引に係ります大口不正所得の計数は、当然のことながら年度によって相当ばらつきがございます。年度別に見てまいりますと、五十五年度の――これは十年……
  170. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 最近の数字でいいからちょっと……
  171. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 最近のでよろしゅうございますか。最近、一番新しいところで申し上げますと、昭和六十一年事務年度、これは私どもの作業の都合上事務年度というのを使っておりますので、先ほどの年分とは必ずしも対応しておりませんけれども昭和六十一事務年度で百十六億円となっております。
  172. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 これは八三年度が百二十一億円、八四年度が百二億円等々と比べて、ほとんど横ばいですね。そうすると一体どういうことかといいますと、七年間で例えば四兆円十カ国に行った。それで、四兆円なら、年一〇%なら四千億ぐらいな所得を生むはずである。ところが、とらえられているのは全然これがふえないで、せいぜい二百億円ぐらいしかとらえられない。これでは全く今のタックスヘーブン税制というのはあってなきがごとしということになるのですが、なぜそういうことになるのですか。そこのところを真剣に検討したことがあるのでしょうか。これは宮澤大臣お答えいただきたいと思います。なぜそういうことになるのか。
  173. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 タックスヘーブンは五十三年に制度化をお願いをしたところでございます。その後六カ国を新たに追加する、あるいは配当につきまして、それを無税とするようなところに配当いたしましても留保所得とみなすとか、制度的にいろいろ工夫、改善をいたしておるところでございます。また、執行面につきましては、ただいま国税庁の方から御説明申し上げておりますように、鋭意その適正な運用に努力をいたしておるところでございますので、私ども十分にこの制度が活用されていないというふうには考えていないところでございますが、従来からこの指定国を追加する等の努力はいたしてきているところでございますので、こうした点につきましては引き続きまして十分研究をいたしてまいりたいと思います。
  174. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 それは指定国をふやすのも結構でしょう。だけれども、私がさっき挙げた十カ国というのはみんな指定国なんですね。この十カ国の指定国、全部は三十三カ国ですよ、そのうちの十カ国で七倍にもふえながら、しかもこの今の制度では全然ふえないということは、働いていないということになるのじゃないですか。なぜそうなるかということ、これはさっぱり今政府として検討していないように私は思わざるを得ないわけです。  最近OECDの方で「国際的な租税回避と脱税」という非常にまとまった調査報告書が出ておりますが、これを見ると、私もなぜそうかと考えざるを得ない点にぶつかります。  一、二の点を言いますと、タックスヘーブンというものは、これは特に古典的なタックスヘーブンですが、特徴は何かというと、銀行、商業上の秘密を守る、それからほとんどが租税条約を持たない、したがって外からの税金調査は及ばない。日経金融新聞に、やはりそういうお金持ちが読むのかもしれませんが、「タックスヘイブン情報」というのがよく載っております。この中にケイマンの例を一つ引いておりますが、ともかくケイマンの秘密保護法のもと、「ケイマンビジネスに関する限り、島内外への情報漏えいには厳しい罰則の適用があり、先進各国、特に米国はこれに手を焼いてきた。」こういう一つの例ですが、いっぱいあるわけです。  だから、このようにタックスヘーブンというのは外からの調査も及ばないという特徴が一つあるのに加えて、もう一つ重要なことは、この中で、タックスヘーブンがあるから、そこへもうけたもの、所得を移す、これはもう第一次回避ですね。これは一時的な回避なんですが、しかし、この第一次回避したものをそこへため込むのではなしに、第二次回避といって、今度は所得をいろいろな形に変えて見つからないようにして別のところに移して、そして御本尊に返してしまうという、こういうやり方をやっているわけなんです。  だから、こういうことは日本の、私もパリのOECD事務所へ行きましたが、たしか大蔵省からも行っておられます。行っておられますから、当然こういう状態だということは前から知っておられると思うわけなんですが、実はこういうものがタックスヘーブンだというのであれば、それに合わせたどういう税制でなければならないかということを当然考えるべきじゃないかと思います。  そこで、どうですか、実際にこんなに海外直接投資がふえるとき、四分の一もタックスヘーブンに行っているときに、どういう利用の仕方をしているのか、それについてひとつ政府としてこれは調査しなければならないと思いますが、そういう調査をやりますか。これは大臣お答えいただきたいと思います。
  175. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 昭和五十三年に導入いたしましたタックスヘーブン税制は、諸外国のそれぞれの制度と比べまして特に我が国のものが効果が薄いような仕組みになっているとも考えられないわけでございます。  それからまた、御指摘の最近におきますところの直接投資も、この一両年と申しますか、そこにほぼ半分ぐらいが集中しておる、まさにこの最近の直接投資でございますので、こうしたものがこの何年か経てどのようにそれが収益と関連してくるか、これは今後の課題ではなかろうかと思うわけでございます。そこらの点につきましては、執行当局におきまして、組織を初めといたしましてもろもろの点で工夫を凝らして調査に当たっているところでございます。
  176. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 だから私冒頭に申し上げましたように、今不公平税制いろいろあるけれども、大企業税制の中に不公平な部分が非常にあると言ったこれは一つの例になりますね。こんなに四兆円も海外へタックスヘーブンに投資して、さっぱり税金はとらえられないで済んでしまう、これが不公平でなしに何が不公平かということになりますね。  それに対して、今の税制が明らかにとらえられてないということが結果として出てきているから、しかも、なぜそうなるかといえば、タックスヘーブンというのはそもそも簡単に税金の調査が及ばないからタックスヘーブンなんだということですから、それならば、せめてこういうOECDでやったような実態調査をやってはどうですか。実態調査をやって、そうして各企業がどういう利用の仕方をして税金逃れをやっているのか、これはやっぱり政府として明らかにして、それに合った対応をする。必要ならば、タックスヘーブンヘの投資は一件一件案件として、これは税金を払わずに逃げていく投資でありますから、きちっと、場合によれば事前審査をするということも必要になるかもしらぬ。  それから、先ほど水野主税局長、外国と比べてと言いますが、随分無責任ですね。外国ではもっと進んだやり方をやっております。それは挙証責任の転嫁ということです。企業側に挙証責任を転嫁するやり方をやっております。これは多くの企業に対してやっている国と、特にタックスヘーブンへ投資する国に限ってやっている場合がありますけれども、特にフランス、ベルギーの場合は、タックスヘーブンへ子会社をつくったりするときには、そこへの例えば利子の支払い、ロイヤリティーの支払い、特許料の支払い、あるいはまたサービスの対価なども直ちにはこちらで損金として控除を認めない、これは利益を隠したものかもしれない、それで、そうではございませんよということをあくまで企業に証明させる、こういうことをやっている。これは一つ参考になりますが、こういう外国でもやっているレベルのこともやらないで、それで日本は外国並みのことをやっていますということは通用しないわけであります。  今言いましたのはタックスヘーブン税制がいかに役に立ってないかということでありますから、一つの重要な問題点としてこの質問は後でまた繰り返し続けることとしまして、外国税額控除について移りたいと思います。  主税局の国際租税課課長補佐の中尾武彦氏が、「国際税務」という雑誌で外国税額控除制度について日本と諸外国との比較をやっております。それでその第一に、「控除限度額の計算については、一括限度額方式で、別枠管理もない日本が最も寛大な制度になっている。」日本制度はこの面で一番寛大だというふうに指摘されておりますが、大体こう理解してよろしいのですか。
  177. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 戦後、我が国昭和三十年代以降海外に進出いたしました折には、どうしてもおくればせながら外国に出ていくというところでございますので、これを国を挙げてバックアップするという面も恐らくあったのであろうかと思います。したがいまして、外国税額控除の限度額の計算あるいはその限度額の繰り越し等につきましては、諸外国と比べますと、個々にいろいろな点を取り上げてみますと、比較いたしまして我が国の方が少し甘いかなという面があることは否定できないと思います。
  178. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 直接答えないで、甘いところがあるかなというようなことですが、これはまず、どれだけ外国税額を控除できるかという枠の計算のときに、一括限度控除方式というのをとっているのは日本アメリカだけで、その他は国別限度あるいは所得別限度をとって厳しい。しかも、アメリカ所得によっては限度を設けている。その意味では日本が一番これが緩いということになります。  二つ目に、今度はこういう控除限度額に対して実際に控除する外国税額があって、余裕額があったとき、日本は五年先もそれが使える、あるいは超過額があっても五年先使える。こういうゆったりとしたルーズなことをやっている国がほかにありますか。これもイエスかノーかで答えてください。
  179. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 繰り越しにつきましては、やはり我が国は甘目の国ではないかという感じがいたします。
  180. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 これも世界にない一番寛大なやり方をとっているわけです。  それから第三に、みなし外国税額控除、タックス・スペアリング・クレジットと言いますけれども、相手国が減税措置をすると、その減税分はこちらの日本の会社が払ったものとみなしたという、これは全くすごい驚くべき制度なんです。これはたしかヨーロッパ諸国にありますが、アメリカはこの制度はありますか。
  181. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 アメリカはございません。西欧諸国におきましては一般的に認めているようでございます。
  182. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 アメリカはこれは非常に不当であると言ってやっていないわけです。  それからもう一つに間接外国税額控除。現地法人をつくったとき、そこから配当があったとき、そこの現地法人でありながらその払った税金をこちらが、日本側の本社が払ったとみなすやり方、これをとっている国は大体どのくらいありますか。
  183. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 主な国におきましても間接税額控除はとっているようでございます。
  184. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 これは主な国と言いましたが、日本アメリカ、イギリス、西ドイツ、デンマーク、括弧してカナダぐらいであって、世界のどこでもとっているわけじゃないのです。  以上、大蔵大臣総理おわかりいただけたと思いますけれども日本の外国税額控除、どの部分をとってみても日本が一番寛大なやり方をとっているということになりますね。だから、これは私、八四年、八五年、予算委員会で、そのときたしか竹下大蔵大臣に大分言いましたが、大したことないと言われましたが、大したことないどころか、大変な問題をはらんでいるわけです。  そこで具体的に、今言った四つの面、どれも厳しく直していかなきゃいけないのですが、とりわけ、事実上それを利用している大企業にとっては完全に補助金同様になっているタックス・スペアリング・クレジットと間接控除、これは直ちにやめた方がいいと考えます。これをやるかやらないか、ぜひ答えていただきたいと思います。これは大臣、答えてください。
  185. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 これは、開発途上国におきますところのもろもろの特別措置を講じておるケースにつきまして全くこれを否認いたしますと、そうした国におきましてこうした特例措置を講じた効果が失われてしまい、その分の税額が我が国の税収となるというふうな結果を招くわけでございますので、これを一概に、一挙に廃止するということはいかがかという感じがするわけでございます。
  186. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、我が国税制の立場あるいは税収の立場から申しましたら工藤委員の言われるようなことになりますが、先方、その発展途上国で、主権国であって企業誘致とかいうようなことでいわば減税をする、免税をするというようなことは、我が国としては、基本的にはやはりそういう開発途上国が発展していくことは望ましいわけでございますので、ある程度私はやはりつき合っていいんじゃないかという感じを持ちます。決して国全体の政策から判断してそれはやめた方がいいということにはなかなかならないんじゃないか、限度もございましょうと思いますが、意味があることではないかというふうに思っております。
  187. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 先ほど日本の外国税額控除、ここを見ても寛大過ぎるあそこを見ても寛大過ぎる、そういうところはお認めになるけれども、具体的にここをなくせあそこをなくせということになると全然それをやらないというのなら、やはり大企業のための不公平税制是正はやらないというのに等しいんじゃないかと思います。  それでこれは大蔵省が出している実際の数字ですから、一々そちらで水野さん答えなくていいですよ。資本金三百億円以上の大きな企業、製造業、卸売業、金融保険、これが八六年の二月期から八七年一月期に、外国税額控除に係る外国法人税額が三千億円あります。これは、企業にすると製造業が六十社弱、卸売業、大商社ですね、七社、それから金融保険が約四十社、合わせて約百社ですね。たった百社と言っていいでしょう、に三千億円の税額控除がある。しかも、これが本当に二重課税を防止するといって向こうで払った税金を控除しているかというと、そうではありません。製造業の六十社弱について言うと、八百二十億円のうちみなしが六十億円、間接控除五百二十億円、計五百八十億円、つまり総額の七一%は払わないで、みなし計算で丸々補助金がこの六十社弱に与えられている。商社の問題になっている七社ですが、六百七十億円のうちみなしが七十億円、そして間接税額控除が三百三十億円、計四百億円、総額の約六割が丸々補助金として出されている。さっきの金融保険業を加えると三業種で、三千億円のうち、みなし、間接合わせて千三百七十億円、総額の四六%が丸々補助金で、この数字は最近の一年をとりましたが、その前もその前も、大体千四百、千五百億円ということになっておりますが、これはまさに、たった百社、それぐらいに対して年々こんな大きな規模で補助金を与えているということになっているのですよ。というのは、本当に向こうで払ってない税金なんだから、みなし計算なんだから。こういうことが不公平でなくて何が不公平かと私は言いたい。  さっきのタックスヘーブンの場合も同じですよ。日本の外国税額控除は、そういう制度として全般的に不公平だという、不公平というか大企業に寛大過ぎるというだけでなしに、現実に百社に対して年々千四百億も千五百億も補助金を出すようなことをやっている。こういうようになるともう税制じゃないですね、補助金制度ですよ。こういうのをやめろと言ったのは、さっき言った具体的な間接控除をやめなさい、それからタックス・スペアリング・クレジットをやめなさいということになりますよ。これをほっておくのですか。これをほっておくというならば、不公平税制を是正しないということになりますが、なぜここを検討しないのか。――大蔵大臣、答えてください。ちょっともう、時間がありますからもう来なくていいですよ。
  188. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 それは、我が国の企業に対する特別措置と見るのか、当該開発途上国におきますところの政策によりますところの減税と見るのか、そこはいろいろ見方があろうかと思うわけでございます。ただ、こうしたみなし税額控除制度というものを全く無原則、野方図に広げていくということはやはりいろいろ問題もあろうかと思うところでございます。六十一年十月の税制調査会の答申におきましても、この点につきましては合理的な範囲に限るべきであるという考え方が示されているところでございますので、先ほど大臣からも申し述べましたように、そこは限度と申しますか、一定の合理的な範囲内で適用するように今後とも対処してまいる必要があろうかと思うわけでございます。
  189. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、先ほど申し上げましたことを繰り返すようですが、そういう発展途上国に我が国としていわば歳出の形で援助をしていく、いろいろな形で援助をするということなのか、あるいはそういう国々が自分の力で企業誘致をするというそれによって発展していくということを助ける、どちらがいいのかというような、そんな簡単な話じゃございませんが、大まかに言えばそういう種類の話でございますから、やはりそういう国々が企業誘致をしてそして自分で発展していこうというときに、ある程度歳入のそれは犠牲にはなりますけれども、その減免税というのを認めてやるということは私は決して意味のないことではない。ただ、どの限度が適正かということはあろうと思いますし、それから一般的に外国課税の控除、海外課税の控除の問題は、我が国が、先ほどから申しましたが、ちょっとずつ甘目なところが私はやはりありますと思いますから、ここでいろいろ御議論にもなっておりますので、まあ国際並み、国際水準並みということにだんだんやはりしていかなければならないなというふうに考えております。
  190. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 今の答弁を伺っておりますと、国際並みとか言われますけれども、具体的にさっき言ったアメリカもやらないわけですね。タックス・スペアリング・クレジットをやってないわけなんです。だから、都合のいいところだけアメリカからまねて都合の悪いところはまねないというようなことだけでなしに、さっき言ったように、本当に具体的な問題なんだ。約百社余りに年々千四百億も千五百億も補助金を注ぎ込むようなことをやっている。これは対外援助じゃないよ。対大企業援助だな。  だから、そういうことからいってこれはもう直ちにやめるべき項目であるということで、この問題も今後も私たちは要求を続けますが、次の日産、トヨタへの税金還付問題について伺っておきたいと思います。  これは去る五月九日、野間議員が決算委員会で取り上げました。これは、言ってみれば移転価格制度に伴う対応的調整ということになると思いますが、アメリカの内国歳入庁、IRSから日産、トヨタ両社が米国移転価格税制に基づき追徴金納税を迫られていた問題について、日米租税条約に基づく両国当局間協議の結果として、国税の方は、日産は十一年間も遡及して五百八十億円、トヨタは五年間遡及して二百二十億円、計八百億円、地方税は、法人事業税と法人住民税ですが、日産は三百五億円、トヨタは百十七億円、計四百二十二億円、計千二百二十二億円も還付された。しかも、八月になってから追加還付が行われているところであります。  この追加の分を除いてみますと、十六都道府県四十九市町村、突然巨額の財政の負担ということで大変なショックを受けております。神奈川県百五億円、東京都八十四億円、愛知県六十五億円。これは市町村のレベルになりますと、還付額が税収の一割とか二割とか三割、四割に達するようなところがあって大問題になっております。各地で大問題になって住民運動にもなっております。千二百二十二億円が突然二つ日本の最大の自動車会社に返されたという問題、しかもこれは制度としてはこれからも起こり得る問題である。アメリカの側では今度は電気機械関係でまたこれに味をしめたからこういうことをやってやろうと言っておりますから。  したがいまして、この問題は徹底的に問題点を洗っておかなければいけないと思って私はこの問題を取り上げたわけであります。  この問題で質問の第一は、地方税の還付は移転価格の対応的調整としてやったのかどうか、どういう法的根拠に基づいてやったのか、これは自治大臣答えてください。
  191. 湯浅利夫

    ○湯浅政府委員 移転価格課税に伴うこの対応的措置は、御案内のとおり、納税義務者の更正の請求に基づきまして法人税の課税標準である所得それから法人税額を減額更正することによって行われるわけでございます。地方税法によりますと、法人住民税の法人税割は法人税額を課税標準といたしております。また、法人事業税は法人税の課税標準でございます所得の計算の例によって課税標準を算定するということになっておりますので、法人税におきまして減額更正が行われた場合には、既に納付されている法人の住民税事業税が過大に納付される結果になるわけでございます。  この場合には、その法人はこの住民税なり事業税につきまして地方団体の長に対しまして更正をすべき旨の請求をすることができるわけでございまして、更正の請求を受けた地方団体の長は、調査の上更正を行い、還付金が生じる場合にはこれを還付する、こういう制度になっているわけでございます。
  192. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 ずばり答えていただきたい。これは租税条約に基づいて、それで移転価格の対応的調整としてこの地方税の調整までやったのかどうか。イエスかノーかで答えてください。
  193. 湯浅利夫

    ○湯浅政府委員 今の対応的調整によります法人税の減額更正に伴いまして地方税の減額更正が行われたということでございます。
  194. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 日米租税条約が取り扱っている税目地方税が入ってないですね。国税だけですね。それでしかもアメリカで日産、トヨタが州税で何か追加徴収を受けておりませんね。それなのになぜ日本地方税国税に倣って還付をしなければならないのか。これは日米租税条約の上で何の根拠もない。しかも国税通則法にはそういう移転価格の対応調整を受けた体系やいろいろ規定があるけれども地方税には全然ないわけですから、今のような説明は絶対納得できないですね。これは日米租税条約にないことを日本の方でやみで調整したと考えざるを得ないことになりますが、全くこれは根拠がないと思います。大臣いかがでしょうか。
  195. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 今後企業活動が国際化いたしますとこうした移転価格問題が起こるということは往々出てまいることでございまして、我が国税制におきましても一昨年の改正におきましてこうした制度導入させていただいたところでございます。  したがいまして、そうしたことが起こります場合には、ただいま自治省の方からお話のございましたように、その課税標準自体が動くわけでございますから、そこは納税者の権利として更正の請求の措置がとられることは、これは現在の状態、国際的な企業活動の活発化のもとではやむを得ないことであるというふうに考えるところでございます。
  196. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 これは自治大臣お答えにならなければいけないことだと思いますが、じゃ、これは後で答えていただくことだと思います。  しかし、日米租税条約は国税しかやってない。アメリカ側は地方税の調整を全然やってない。何で日本だけやらなければいけないのか。先ほど移転価格の法制化と言って、八六年のことでしょう。そのとき地方税法で何かそういう規定を入れましたか。入ってないでしょう。何も入ってないのです。だからこれは何としても私は譲りませんよ。根拠ないことをやっていると思わざるを得ない。どうですか、自治大臣
  197. 湯浅利夫

    ○湯浅政府委員 現在の法人住民税の法人税割なり法人事業税の課税標準というものが、地方税法上先ほど申しましたようなことで決められているわけでございますから、その根拠が変わってくるということになった場合にはその税額も変わってくるということになるのではないかと思うわけでございます。
  198. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 この問題では私はその解釈は絶対成り立たないと思いますし、これはまた繰り返しますが、仮に百歩譲って、この移転価格に伴う対応的調整で国税をやったら地方税もずるずるっと、さっき言った法人事業税とか法人住民税をやるということであるならば、それならばなぜ租税条約の実施に伴う特例法に基づいて、その八条に、「大蔵大臣は、租税条約のわが国以外の締約国の権限ある当局と当該租税条約に規定する協議又は合意をする場合において、その協議又は合意の内容が地方公共団体が課する租税に係るものであるときは、あらかじめ自治大臣に協議し、その結果に基づいて、これをするものとする。」続いて、「自治大臣は、前項の規定により大蔵大臣から協議を受けた場合には、必要に応じ、関係地方公共団体の意見をきかなければならない。」この措置を今度やりましたか。やってないと思います。
  199. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 租税条約実施特例法の第八条の規定にございますけれども、そこに書いてございますように、「地方公共団体が課する租税に係るものである」ということで、今問題になっております法人税に関する協議ということで本件は行われておりますので、ここで言うところの対象にはならないというふうに解しております。
  200. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 だから、そういう使い分けをやられているのですよ。それで、租税条約は国税しかやらないというのを地方税まで自動的にやるべきだと言って、地方税でこれを還付するといったら地方財政は大変なことになるのに、それはこの租税条約の特例法とは関係ないんだから自治大臣大蔵大臣は相談する必要ないんだとか、知事や市町村長の意見を聞く必要ないんだ。だから今もう大変な混乱が起きていますよ、関係自治体で。だけれども、これはこういう解釈のまま進んだら、これから起きたらどうしますか。もう現に追加が起きている。突然降ってわいたようにして来る、自治大臣も知らない、関係市町村も知らない、それで出すものは出せということだけやられる。これは今の移転価格の一つ制度として非常に不備になって、大企業に余りにも甘いということの一つのあらわれです。  もう一つこの問題で聞いておかなければいけないのは、今度やったトヨタ、日産に係る両国の租税当局間の協議と合意ということなんですが、日本政府のやり方というのは余りにも企業へのサービスが行き過ぎているんじゃないか。  これは国税庁国際業務室の大橋時昭氏がやはり「国際税務」に翻訳しております、OECDとして移転価格と対応的調整をおおよそどうやるべきかということについて書いてあります。ここに訳したものがありますけれども、この中で、「一方の国の課税当局の行った価格調整に他方の国の課税当局が同意する場合に限り、また、その限度においてのみ義務づけられることになる。」アメリカが十一年さかのぼって日産に対して税を余計かけますよということに同意できる範囲だけで日本政府は今度は日産に対して対応的調整の義務が発生するので、何もアメリカが十一年やったから日本が十一年やらなければいけないということになっていない。これはもう国際的なやり方における解釈であります。これは、この報告書の今後の運用改善の余地のところでも非常に強調されておることです。日本の側が認めた範囲内でのみ、確かにトヨタや日産は十一年、トヨタは五年ですが移転価格をやってきた、それならばという認められる範囲内でやらなければいけない。  一体、日本は移転価格制度が法制化されたのが八六年以降なのに、その前の分について何が移転価格かどうかという判断する基準もない。これが一つ。  それから、トヨタも日産も移転価格じゃないんだと言って否定してきたんですから、協議したとき、これは国税庁だと思いますが、一体どういう調査、どういう資料に基づいて、なるほど十一年さかのぼってこれは調整しなければいけないなということになったんですか。十一年間ちゃんと資料を用意し、調査して、その上ですか。それともアメリカが十一年だからおつき合いで十一年ということですか。これは非常に重要な問題なんです。つまり、国際的にも何もそんな向こうがやることに倣わなくてもいいんだと言っている。これが当たり前のことなのに、今度のようなことが起きたわけですから、本当に調査の上、判断の上やったのかどうか、これははっきりさせなきゃいけない問題であります。
  201. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 対応的調整あるいはその前提となる移転価格の問題は、今さら改めて申し上げるまでもないことでございますけれども、特定の企業の取引がアームズレングス、いわば独立企業間価格との対比において適当であるかどうかということにつきまして複数の国家間での議論が生ずるという場合でございます。  本件につきましても、問題の提起は確かにアメリカ・サイドからの問題提起ということになっておりますけれども、私どもは別にアメリカが言ったから直ちにそのとおりにするということではなくて、事柄が今申し上げましたような独立企業間で行われるべき価格になっておるのかどうか、そのことを客観的にデータに基づいて先方とも十分議論し、企業からも資料を徴求した上で定めた結果でございまして、おっしゃるようなアメリカが言うからどうこうというようなたぐいのものではございません。
  202. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 いや、国税庁はちゃんとそういう資料と、それから調査を行ったのかどうか、それを聞いているんで、ただうのみにしたのではありませんと言いますが、これはトヨタも日産も否定していますから、そういう都合のいい資料を見せるわけはないわけです。それから、これは税務上の資料とは違いますよ。税務上の資料じゃなしに、実際一台幾らで輸出して、それで幾ら利益がその年あって、それをどう分割してということですから、そういう調査までやったのですか。やってないでしょう。  というのは、これも申しわけないけれども国税庁国際業務室長の川田剛氏が「国際税務」の八八年一月号にこう書いているのです。これは移転価格の協議のときですが、「先方は十分な資料を持って協議にのぞむことができるのに、当方は、申立者から十分な資料提供がないと丸腰同然で相互協議の場にのぞまざるを得ない」、悩みとして書いてあるのですが、これはこのトヨタ、日産のことを言っているんじゃないのですか。どうなんですか。
  203. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 二つの権限ある当局間の協議でございます。したがいまして、私どもは私どもなりに、場合によっては質問検査権等を行使することによって必要な書類を得、そのことによって先方政府と十分協議する、そして求むるべき正しい値を求めて、それによってしかるべき所得を算定するということで対応しております。
  204. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 OECDの中で大体どういうあり方かということがもう報告書になってはっきりしているのに、あくまでも向こうが十年やったから十年する必要はないんだ、日本が認められる範囲内で、この場合なら三年とか二年とか、それでいいんだということをやっているのに、今のやり方は、一方では国際業務室長がこういう嘆きを雑誌に書かざるを得ないような状態があって、それでろくろく調査したのやら何やらわからない状態のまま、ちょっと国民から見て十一年もさかのぼるなんて考えられない、異例中の異例のことがやられてしまっている。そういうことからいうと、国際的な移転価格の合意とそのあり方からいっても、それに伴う対応的調整のあり方からいっても、日本の今度のトヨタ、日産に対するやり方は余りにも大企業へ甘い甘いやり方をやっているのではないか。  そういう問題ですから、ついでにもう一問聞いておきますと、問題は、十一年間日産に対してはさかのぼったわけであります。それで、それも明らかにしっかりした資料があり、調査をしてやったとは思えないやり方をとったわけでありますけれども、特に十一年間さかのぼるという問題では、OECDの報告書の中でも、国内法令が例えば五年なら五年、そしてこの条約ではさかのぼらなければいかぬというような趣旨があったとしても、多くの国々は国内法令の規定、五年なら五年を優先させている。つまり、条約の方を優先させることに留保をしている。これは多くの国々がということなんです。だから日本が、多くの国々がやっているように国内法令の五年をさらに超えて十一年さかのぼる必要がどこにあるかということがこの国際的なやり方からも言えるわけです。  この問題でもう一つ伺うのは、千二百二十二億円という還付の額の計算なんですね。これは日産の場合でいいますと十一年間さかのぼってしまっておりますが、既にこれは野間議員の質問政府側は認めたわけですが、異常に大きな為替差益をつけた計算をしておりますね。それはそうなんですよ。移転価格というのはアメリカ側から見るとドルの計算で言いますから、十億ドル何年かの年に利益があった、これを日本が八億ドル、アメリカが二億ドル、これはけしからぬというので六億ドル、四億ドル、こういうふうに訂正するというのでやるのですから、同じ二億ドルをふやしたり減らしたりするのでも、この年が一ドル二百五十円というように円が安いときは返ってくる税金が計算上大きくなるわけですね、同じ二億ドルであっても。  ところが、最後にアメリカ側に送金したときには昨年の十一月で一ドル百三十円で送金しておりますから、結局、野間議員の試算によりましても、法人税の還付額五百八十億円のうち二百二十億円も差益を含んだものを返してしまった。地方税を返したのも余計なことながら、この差益も余計に返している。これは全く不可思議なことなんですよ。なぜならば、この移転価格の対応的調整というのはあくまで二重課税を防ぐ救済措置である。だから、返ってきたら二百億円以上も得をするというような救済措置はないと思うのです。  その意味で、これは総理大蔵大臣、今度の日産、トヨタの還付のやり方は根本的にさっきの私の問題点に基づいて見直しをやってください。どうですか、見直しをやってください。
  205. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ずっとお伺いをしておったわけでございますが、まず、このたびのことは大企業を何か優遇して、そのためにやったんだということではございません。それはまた実際、大企業が別にこれで利益を得たということにはならないわけでございますから。  それからもう一つ、冒頭に言われました地方税のことでございますが、これは課税標準が変わったわけでございますから、事業税等々の計算が変わってくるのはやむを得ぬことで、地方にとって私は迷惑なこと、それには違いないと思います。かなり大きな税金を還付しなければなりませんから迷惑だということは私はよくわかりますが、しかし、これは課税標準が違えば計算をして還付しなければならないという、そういう理屈のことだと思うのでございます。  それから、最後に言われました為替が変わりましたので送金に際して為替差益が生まれる、それは生まれると思います。しかし、それはまた為替差益として課税の対象になりますわけですから、それが何も会社の得になるわけではない。――確かに全部は取りませんでございますけれども課税の対象にはなるわけでございます。それも、会社は何もそれを目指してわざわざやっておったわけではございませんから、全体として移転価格の制度をこういうふうにやってまいりますと、確かにこれは随分大きなスケールの話になりましたですけれども、決まりどおりやってまいりますと、日米のネゴシエーションは、協議は実は非常に厳しいものであったように聞いておりますが、理屈として落ちつくところへ落ちついた。何といいますか、我が国としては還付になる、アメリカに余計税金が行ったというようなことはちょっと残念なような気がいたしますけれども、しかし、これは理屈でいけばどうもそうなることでございますので、やむを得なかったのではないかと思っております。くれぐれも、企業の利益のためにしたわけじゃございません。
  206. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 もともとこの移転価格の対応的調整で、結局これは日本の企業としていえば、海外に事業を広範に行っている大企業がこれを利用するし、現にこうしているわけですから、まずこれでいろいろ直接利害関係があるのは大企業であるということが一つと、それから、そもそも租税条約で対象になっていない税目まで還付するというのは、どう考えたってこれは説明がつかないですよ。絶対につかない。今の法体系からいってもつかない。もし完全にというならば、先ほど言ったような、大蔵大臣自治大臣と相談するとか各長の意見を聞くというような制度が入ってこなければいけないだろうけれども、全然それがなくて、これからも続けられるということを聞くと、本当にそら恐ろしい感じさえするわけです。  しかも、先ほど紹介しましたような、OECDの中で、こういう移転価格はどうあるべきか、対応的調整はどうあるべきかというときに、あくまでも日本側として、トヨタの三年間、日産の五年間、ここまでならわかるからというふうに認めた範囲内だけで合意をしてくればいいので、向こうが十一年やったらこちらまでやらなければいかぬという理由はどこにもない。だから、それは国際的なやり方のスタンダードからいっても行き過ぎだ、そういうことを言っているのであります。そしてまた、最後に税金をかけるからと言いますけれども、先ほど言った二百二十億円、これは国税だけの差益にかけても四二%かかるので、残りの方は丸々利益になるのですから、これはもう明らかに大企業にとって大きな利益を与えたわけです。  どうでしょうか、これは改めなければいけないと思いますが。
  207. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 申し上げましたようなことで、これは法理に従いまして厳しい交渉をやって出た結果でございまして、地方税のことは、地方税はまけなくてもよかったろうともしおっしゃるのでございましたら、これは課税標準が改まりましたのですからむしろ計算をし直さなければならないという、裁量のある問題ではないと私は思っております。  為替差益のことは、全部それを取れるわけではございませんが、これは還付なんということがございますと、為替というのは当然ついて回りますものでございますから、大企業が何もそれをあらかじめねらっておってやったことではない、いわば普通、これは商取引ではございませんが、物の売り買い、金のやりとりには為替がついて回りますので、それによって差損が出たり差益が出たりするということは、これはどうも意図したことでない、やむを得ないことではないかというふうに考えております。
  208. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 ねらったものでないと言うけれども、結果としてそうなっているし、政府のやり方が国際的なやり方と比べても非常に寛大だという問題点は明らかなわけですから、ぜひこれは見直さなければいけないし、こういうところを一つ一つ直していかなければ、今の大企業税制の非常に優遇な面というのは直せないわけですから、そのことを強調しているわけです。  私はかなり早口でどんどん質問したのに反し、答弁の方が比較的緩いテンポになってしまいましたので、私は次に、キャピタルゲインとリクルート疑惑の問題について移りたいと思います。  今、不公平税制の中でキャピタルゲイン問題というのは非常に大きな問題であることは明らかでありますが、とりわけ今度のリクルート疑惑とともにこの問題が改めて大きく取り上げられたことは、言うまでもなく当委員会においてもそうだったと思います。そして、ぬれ手にアワという言葉がやたらにはやりまして、それで大もうけをしながら税金を納めていない、何事だ、まずこれを正せというのは当然の声だと思うわけであります。  そういうことで、私もこのリクルートの問題で宮澤大臣につきまして一、二問最初に伺っておきたいと思いますが、我が党が十一日に発表した新たな資料に九名のリストがあります。これが第一に、本物だという定評を得るに至っているというのは、新たな名前が出てきた人たちがこれを認めているということがあります。それから第二に、政治家の秘書だから譲り受けたと言わないに対して、これは多賀谷氏、式場氏……
  209. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 工藤君に申し上げますけれども最初委員長が申し上げましたように、きょうの理事会でいろいろ御相談をして、各党合意の結果、きょうは不公平税制ということに限定し、その他のことについては御相談をして改めて十分する機会をつくると委員長も言っておったわけですから、これはお守りをいただきたいと思います。
  210. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 私は当委員会でこれまでの質問を聞いておりましたけれども不公平税制以外の問題で聞かれた方がいなかったですか、いろいろ追及された方あるでしょう。各党とも、もちろん二人、三人ですから、その全員がやられたかどうかわからないけれども、共産党からは私一人が質問者でありますから、よその党がやったのと同様にこれはやるのが当然でありますし、それから、不公平税制中心だと今言いながら、自民党の方が今まで六法案の問題についてかなり審議を進めるような質問をやられておるわけでありますから、絶対に……
  211. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 工藤さん、それは、ちょっと委員長から御注意申し上げますが、昨日の理事会でいろいろお話し合いをしてからのことでありますから、昨日以前のことにさかのぼって論及されることはちょっと次元が違うと思いますから……。
  212. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 いや、キャピタルゲインの問題に入るために聞いておかなければいけないのですよ。
  213. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 いや、そのお話は理事会に出席のおたくのオブザーバーもいらっしゃるところで決めた話ですから、話し合いはどうぞ守ってください。
  214. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 これはキャピタルゲインとの関連でやっているのですよ。だから正森議員がやると言ったのはやめたじゃないですか。私がやってなぜ悪いのですか。これは、だけれども……
  215. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 あなたがおやりになって悪いとは決して言いませんが、不公平税制の是正に関する議論と、各党が、リクルートの議論は日を改めてするということで理事会できのうそれはきちっと話をし、きょうも理事会で話をしてから始めておるわけでありますから、その話し合いは守ってください。
  216. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 私のどこがこれは不公平税制の是正じゃないのですか。――委員長、私は今の海部さんの判断ですね、賛成できませんよ。だからこの問題、じゃ税制に関するところをどうしても言いますよ。――委員長
  217. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 工藤晃君。
  218. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 今まで大蔵省は、仮名取引、借名取引をやめるように通達をどのくらい出しましたか。これは税制の問題ですよ。
  219. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 いわゆる仮名取引の受託につきましては、四十八年あるいは四九年の二回にわたりまして自粛通達を出しました。ただ、最近におきまして明電工事件その他多数の仮名あるいは借名を利用したような事実が見つかりましたので、そういった意味で、株式につきまして明らかな仮名口座の受託の禁止あるいは本人確認を一層徹底するといったふうな通達を証券局長名で九月十三日に出したところでございます。
  220. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 そこで問題が出てくるわけなんですよ。大蔵省からは仮名取引、借名取引をやってはならないという通達が出ているけれども、宮澤大臣のこれまでのお話だと、それは服部秘書官がそれこそ河合さんに名前を貸したにしろ、これは大蔵大臣かあるいは秘書官がこの通達に反することをやったということにならないですか、そのことを聞いているわけです。だからどうしてもこの問題に触れざるを得ないわけですよ。そうでしょう。これは触れざるを得ないですよ。大蔵大臣から先頭に立ってやられたら、これは実行できないですよ。
  221. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 ちょっと説明が足りなかったかもしれませんけれども、証券行政の立場からいいますと、広く一般投資家が参加する証券市場を健全に育成する、あるいはその担い手である証券会社の営業姿勢といいますか、そういったものを適正化する、こういった観点から必要な規制を行っているわけでございます。  そういった意味で、今回あるいは既にこれまでも排除に努めてきましたところの仮名取引あるいは借名取引に係るものは証券会社に設けられましたところの本人名義以外の名義による口座による取引でございまして、今回のケースにつきましては、いわば登録前のリクルートコスモス株式の取得といったことで、相対で、証券会社を通じないで行ったわけでございますので、証券会社による仮名口座による取引の排除といった概念とはちょっと領域といいますか対象が違うものでございます。
  222. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 今の答弁だと問題が出てくるんだな。それは、相対で手に入れた者が名前を借りて、今度は売ったんだから、売るときにはそのかわった名義で、借名か仮名かで売ったわけなんですから、それで問題になっているわけですから、今のケースと違いますね。証券局長、答え直してください。
  223. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 今回のリクルートコスモス株の公開後の売却というのは、当然のことながら証券会社を通じて行われたものでございます。ただ、これは証券会社といたしますと、証券取引を、市場において売買するのを受託するという行為は証券会社の正常な行為でございます。そういった意味では証券取引上特に問題となるような事実は認められませんので、そういった個々の取引内容について私ども調査いたしておりません。
  224. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 だから、そこが問題なんですよ。さっき言いましたように、宮澤大臣のこれまでのお話だと服部秘書官が名前を貸したということになりますと、そこで結局売るときには仮名とか借名でやっている。秘書官というのは行政組織法でもどんな大事な仕事か、ただ一人大臣の機密を守ってそれで仕事をする、大臣と一体の方が、大蔵省が一生懸命そういう仮名、借名をやるなよという通達を出しても、そこのところで崩れてしまっているとすれば、これはもう実行できないじゃないか、こういう問題になるわけです。  それで、もう一つ問題がありますが、これはやはり今までここで問題になりましたキャピタルゲインとインサイダー取引との関係の問題になりますけれども、大蔵省の証券局内では、株に手を出してはならないという内規がある。そうすると、証券局に入ってくる情報というのは、これは大蔵大臣も首相も、直ちに情報が入るかどうかわからないけれども、可能性としてはある。それからまた、大蔵大臣総理の場合は一般の人が手に入れられない情報がどうしても入ってくる、あるいはまたその政策決定が株価に影響を与える、これは例えば金利を上げるとか下げるという決定も株価全般には影響のあることは御存じのとおりですね。  それから、特に日本は外国から四大証券と政府が一体になって何かやっているんじゃないかといって非常に疑いをかけられているのは、これまでもいろいろ関係の雑誌、新聞などが書いているとおりなんでありますけれども、これは証券局に伺いますが、毎月一回大和、山一、日興、野村の四大証券と証券局は会合を行っているのではないでしょうか、定期的な会合。
  225. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 原則として四社の社長会といいますか社長のグループと月一回程度いろいろなお話をじかに伺うという機会はございます。ただし、これは四社だけでやっているわけではございませんで、例えば十社とかあるいはその他の中小証券の方々ともそれぞれやっておるわけでございます。
  226. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 これは例の十月のアメリカの株価大暴落の翌日、日本で昼飯会が四社と大蔵省で開かれたというのはNHKにも大きく取り上げられて、結局株価というのはこういうところで動かしているのかということで大問題になったんですよ。それで、ある雑誌が取材して、「大きな山に日が上る」という言葉があった。それはどういうことかというと、定例の会合、四大証券の株式部長とそれから証券局流通市場課長との定期会合を大和、山一、日興、野村の順番で幹事がかわってやるので「大きな山に日が上る」ということなんですが、そういう密接な関係にある。  このこと自体何かということを私は言っているんじゃないんですよ。こういう関係にあるときに、当然証券局が一番重要なあれがある。例えば今度NTTの株をもっと上げようということもやってきたということが伝えられている。そういうときに、これまでの大蔵大臣総理への質問では、総理大蔵大臣が株に手を出すというのはこれは経済行為だから許されるとかいうのでなしに、これはもう一切やらないという、そういうところでこのキャピタルゲイン問題ではまず表明しないと、やはりキャピタルゲインというのは、一般的な株に手を出している人のキャピタルゲインもあるけれども、特定のそういう情報を手に入れられる人のものもあるし、それから特定のそういう創業者利得をおすそ分けするときどうだということもあるわけなんですから、ここのけじめをはっきりさせなきゃいけない。それはまず大臣から、大蔵大臣総理からここでやはり決意を表明していただきたいと思うわけです。
  227. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私は、たまたまそういう気持ちでやってまいっております。私ども資産公開いたしますのでおわかりいただけるわけですが、前回の公開と前々回と一つだけ動きがございましたのは、実は母が亡くなりまして一部相続をいたしましたけれども、ごらんいただきますと異動をほとんどいたしておりませんで、私自身はおっしゃいましたようなことは自分としてはやっておるつもりでございます。
  228. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 いつも申し上げますように、政治家、なかんずく私は今、内閣総理大臣でございます。したがって、お互い情報の集まりやすい立場にある。それだけに、それがよしんば経済行為であったとしても、周辺もこれに対しては十分気をつけておるべきものである、本人はもとよりのことである、こういうふうに考えております。
  229. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 今の問題のこれ以上はあすの続きということにいたしまして、キャピタルゲインに入ります。  政府が今言っているキャピタルゲイン原則課税は名ばかりではないかということはもう多く指摘されているわけです。売却高のわずか一%で済む源泉分離、それから売却益の二〇%、地方税は六%で済む申告分離、これでは大口投資家にとってかえって有利になるということははっきりするわけですが、なぜ総合課税にしないのか。アメリカもやっている、イギリスもやっている。イギリスも今まで分離課税三〇%だったのを今度総合課税に直していきますね。これは私の得た情報ではそうなっております。スペインなども総合課税をやっているはずであります。なぜまず総合課税にするということで原則決めないのですか。原則課税は当然ですよ。原則課税であり総合課税にするということでなぜけじめをつけないのですか。
  230. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 アメリカも従来はキャピタルゲインにつきましては六割控除、それからイギリスは分離課税といった特殊な、特例的な課税を行っておったところでございますが、アメリカが一五%と二八%のフラット税率にする、イギリスも二五%と四〇%のフラット税率にする、そうした税率構造との絡みでいろいろ課税方式が変えられているということもあるかと思うわけでございます。我が国におきましてはまだ税率構造はそこまで参りませんし、また、アメリカのような把握体制といったものの整備もこれからの問題でございますので、とにかく原則課税にこれから移行するということをまず基本的な前提として考えさせていただいたということでございます。
  231. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 総合課税という原則をともかくアメリカはとっているし、イギリスも今度とるわけですよ。それからスペインの例を挙げました、そういうところがある。日本でこれほどぬれ手にアワとかいろいろ問題になりながら、なぜ原則と同時に総合にしないのか。  特に問題なのは、申告分離ではなしに源泉分離を上場株式でやると言いますね。今、上場株式の取引は一年間にどれくらいの規模ありますか。
  232. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 東京証券取引所の六十二年における売買金額でございますが、全体で二百五十四兆円でございます。
  233. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 今、東京と言いましたが、全体として二百九十六兆円という数字もあります、余り変わらないと思いますが。今の上場株式の取引の規模というのは十年前と比べて十二倍にふくれ上がって、約三百兆近いというのは、GNPにほぼ匹敵するような規模にふくれ上がっている。大変な経済活動の規模ですね。それで、GNPは国民が汗水流して働いてそれでつくり上げているものです。それと比べて、まさに売った買った、売った買ったの世界で三百兆円。この三百兆円の世界の方がただ売却額の一%で済むというのは、これはだれがどう考えたっておかしなはずです。まさに不公平税制を直して税額をふやそうというのはこういうところから真っ先にやらなければいけないというのが、ただの一%である。それで、損をしたときには申告をすれば、合わせてほとんど税金を払わなくて済む。どっちに転んだって済むということなんです。  これにあわせて非常に今問題になっているのは、この源泉分離の場合は売却額のただの一%だけでなしに、その上、本人確認も支払い調書の提出も要しないということになっているようなんですが、そんなことをしたら仮名、借名取引、野放しになるのじゃないんですか。どうなんですか。
  234. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 源泉分離課税、その性格の判断は別といたしましても、源泉分離選択課税というのはまさに支払い調書の提出あるいはそれを前提といたしますところの告知の義務、そうしたものを適用しないというのが源泉選択課税の性格でございますので、源泉選択課税というものをお願いをする場合には、それはそのようなシステムになるかと思うわけでございます。  なお、先ほどの一%ということは、利益率が五%ということでございますが、これは一年間ということではございませんで、大体年間平均いたしまして三回なりの回転率がある、その都度五%の利益率で一%ということでございますので、そこらの回転率等も考慮に入れているところでございます。
  235. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 そういう答弁をしますけれども、ともかく三百兆円も取引がある、この上場について一%でいい、それでまた本人の確認もしないということになると、これでは例の四百幾つも口座をつくった明電工事件ですね、こういうのももう追及されないし、それから例の相沢代議士の問題なんかももう追及されないし、それこそやみからやみへ金が回るだけですよ。相続税の場合だってそうですよ。それがだれの株かわからない。調査できなくなってしまう。  だから、何か不公平税制を直すと言って一番問題にしているかのようであるけれども、このキャピタルゲイン課税の面でまさにこういう仮名とか借名が幾らでもできるようにする方向へ政府が進んでいるときに、さっき言ったように、通達の面ではやめましょうと言っているが、これはやめられるわけないですよ。本当にこの仮名、借名をやらないということにして、これは証券会社というのはみんなお客さんを知っていますから、お客さんを知らないで取引している証券会社なんかありませんから、本当にこれはアメリカでもフランスでもやっておりますが、証券会社に、取引をしているお客さんの名前を、それからどういう取引内容かを報告することを義務づけるということをやって、総合課税にするという方向をなぜとらないのですか。  本人確認もしない、支払い調書も出さなくていいというこの提案自身、それこそ今起きている数々の疑惑事件、これからは帳消しにしてしまう、最初から見えないようにしてしまうということとして疑わざるを得ない。だれがこんなことを考えたんだと考えざるを得ないのですが、なぜこういうところをまず問題にしないのでしょうか。大蔵大臣どうですか。
  236. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 今回、原則課税に移行いたします際には、証券会社に委託して売買をされる方等につきましては、それは個人、法人を問わず告知の義務をお願いをいたしておるところでございます。また、その中で源泉選択できるのは個人でございますので、大半のと申しますか過半は法人の取引でございますので、そうした告知あるいは支払い調書の制度につきましては、全体の取引の相当な部分はこの告知、支払い調書の通知制度、こういったものが適用されるわけでございます。
  237. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 この問題はやればまだまだ切りがありません。  それで、私は残された時間がまだありますから、せっかく皆さんに配った資料もあることなので、引当金、準備金の問題について一、二聞いておきたいと思います。  以前「エコノミスト」の「戦後産業史への証言」で、元主税局長の三人、泉美之松氏、吉國二郎氏、高木文雄氏が、なぜ戦後あんな特別償却とか引当金とか準備金とかできたかといういきさつを語っておられ、大変興味深い内容ですが、そこで高木氏が、「特別償却はいったいだれが考えたんですか。やっぱり平田さん……。」そうすると泉氏が、「平田さんだね。あの人が昼、財界人と懇談すると、うっかりできないんだ。帰ってきたら、「おい、これはどうじゃ」とくるんだなあ。」と言って、昼間、財界人と会うと次々と新しいものができてきたといういきさつを大変おもしろく語っておりますが、その後、引当金や準備金の整理というのは一体政府はどうやってきたのか、これは非常に大きな問題じゃないか。どうですか、歴史に詳しい宮澤大臣
  238. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 その記事は十年ぐらい前の「エコノミスト」の座談会の記事であったかと思うわけでございまして、まさに昭和二十年代、三十年代の高度成長期に、法人税制としてもいかにしてそうした資本の蓄積、輸出振興に対応するかということで、税制としても対応しておった時代のお話ではないかと思うわけでございます。昭和五十年代に入りまして特例公債を発行する時期になりまして以降は、法人税制につきましては、例えば貸倒引当金につきましては五回ぐらいその縮減をお願いをするとか、特別償却といったものも逐次縮減してまいっている。最近の十数年におきましては三十年、四十年代のころの環境とはかなり違ったものになっているということを御理解賜りたいと思うわけでございます。
  239. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 今のような答弁では済まないわけなので、それで、資料のⅢを見ていただきたいのですが、これは一九八六年と一九七六年の「法人企業の実態」からの比較を行っております。  まず、最近の時点で見ると、引当金四種類、本当は六種類あるわけですね。準備金四種類、本当は二十種類以上あります。受取配当益金不算入。それぞれ資本金十億円以上の大企業が六〇%以上を占めている。これで資本金十億円以上の大企業は課税所得を十二兆二千二百三十三億円少なくしている計算になります。これは計算してみればすぐ出てまいります。そうすると、四二%の税金がかけられるとして五兆一千三百三十八億円、これは減税に値するということになってまいります。  それから、税額控除の方は、先ほどの外国税額控除を含めて三種類について六〇%以上が資本金十億円以上が適用している。特に外税控除、試験研究費は九二%である。特にここで問題のある外税控除とか試験研究費の税額控除は約五千億円ありますから、さきの分と合わせると、資本金十億円以上の大企業は五兆六千億円のタックスエロージョンがあるということになる。  もちろん、この引当金とか準備金とかこれらの制度というのは中小企業も使えます。使えるけれども、現実に選択ができるのはやはり大企業であるということは、これまでの大蔵省の調査でもわかるわけなんでありますから、なぜこの準備金、引当金、こういうものをもっと根本的に整理していかないのか、十年前と比べても、確かに準備金は若干減ったということが数字で出てきますが、あとの控除税額にしろ引当金にしろふえる一方だというのがこの比較から出てくるわけであります。  どうですか、アメリカの場合は、法人税の引当金ですね、税制上のですね、会計上じゃありません。これはありません。それからイギリスの場合は、やはり税制上の損金に落とせる準備金という制度がありません。それから、貸倒引当金がある国があっても、それは実際に貸し倒れがその年発生したかどうか証明して初めて積めるわけであって、日本と違います。なぜこういう整理を真っ先にやらないのか。これはもう主税局長は結構でございますから、大蔵大臣、答弁してください。
  240. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 やはり我が国が戦後、ですから昭和三十年、四十年代、そのころが一番だったと思いますけれども、国際的に企業が競争力をつけなければとても日本はやっていけない、そのためには資本蓄積をしてもらわなければいけないということは、企業のためという意味でなく、やはり私は日本が自立をしていく上で大事なことであったというふうに考えております。そういう時代に、いわば、もともとこういう引当金とか準備金とかいうものは結局は課税として取れるわけでございますから、費用を期間の間でうまく案分するということでございますので、しかし、それでもその時点における法人の競争力は非常につきますから、そういうことでやってまいった、そういうことのいわば続きであると思いますが、今日我が国はむしろちょっと強過ぎるぐらいなことを言われるような国になっておりますから、かつてのようなそういう要請というものはそれほど強いわけではない。ですから、やはりだんだんに実態に近づけていくということが必要であろうと思います。  企業にとりましては、これはある程度もう、一種の、何と申しますか、既得権と言ってはちょっと言葉が悪うございますけれども、ずっと長年やってまいっておりますから、急にそれをあるとき突然全部というふうなことは適当でないのだろうと思いますが、やはり実態に即して縮めていくということは、基本的に私は方向としてそうあるべきものと思っております。
  241. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 今まで質問してまいりましたが、冒頭、シャウプから四十年たって所得が平準化したと言うけれども、事態は全く逆で、不公平がどんどんどんどん広がり、日本で驚くべき大資産家、大企業があらわれ、そして、その大企業の国際競争力は今や宮澤大臣も認められたようなそういう高い状態にある、それにもかかわらず外国と比べて余りにも優遇した税制が続き過ぎている、なぜここにメスを入れないのか、これがきょうの私の質問の概要でありますけれども、時間が参りましたので、これをもちまして私の質問を終わります。
  242. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 これにて工藤晃君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十四日金曜日午前十時委員会、正午理事会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十五分散会