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1988-10-07 第113回国会 衆議院 税制問題等に関する調査特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十月七日(金曜日)     午後一時一分開議  出席委員    委員長 金丸  信君    理事 加藤 六月君 理事 海部 俊樹君    理事 瓦   力君 理事 羽田  孜君    理事 藤波 孝生君 理事 加藤 万吉君    理事 村山 喜一君 理事 二見 伸明君    理事 米沢  隆君       甘利  明君    池田 行彦君       片岡 清一君    岸田 文武君       北村 直人君    熊谷  弘君       斉藤斗志二君    志賀  節君       鈴木 宗男君    谷  洋一君       玉沢徳一郎君    中川 昭一君       中川 秀直君    中村正三郎君       西田  司君    野田  毅君       葉梨 信行君    浜田 幸一君       原田  憲君    堀内 光雄君       宮下 創平君    村山 達雄君       山口 敏夫君    山下 元利君       伊藤  茂君    川崎 寛治君       小林 恒人君    坂上 富男君       中村 正男君    山下洲夫君       坂井 弘一君    坂口  力君       橋本 文彦君    水谷  弘君       宮地 正介君    安倍 基雄君       玉置 一弥君    工藤  晃君       藤原ひろ子君    正森 成二君  出席国務大臣         内閣総理大臣  竹下  登君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         厚 生 大 臣 藤本 孝雄君         労 働 大 臣 中村 太郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      中尾 栄一君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 内海 英男君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房広報室長   高田 朗雄君         経済企画庁国民         生活局長    末木凰太郎君         経済企画庁物価         局長      勝村 坦郎君         経済企画庁調査         局長      冨金原俊二君         国土庁長官官房         長       公文  宏君         国土庁土地局長 片桐 久雄君         大蔵大臣官房総         務審議官    土田 正顕君         大蔵大臣官房審         議官      土居 信良君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省証券局長 角谷 正彦君         大蔵省銀行局長 平澤 貞昭君         国税庁次長   伊藤 博行君         厚生大臣官房総         務審議官    末次  彬君         厚生省健康政策         局長      仲村 英一君         厚生省保険局長 坂本 龍彦君         労働大臣官房政         策調査部長   甘粕 啓介君         自治省税務局長 湯浅 利夫君  委員外出席者         地方行政委員会         調査室長    大嶋  孝君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ───────────── 委員の異動 十月七日  辞任         補欠選任   小沢 辰男君     北村 直人君   田原  隆君     斉藤斗志二君   野口 幸一君     小林 恒人君   和田 一仁君     安倍 基雄君   矢島 恒夫君     藤原ひろ子君 同日  辞任         補欠選任   北村 直人君     小沢 辰男君   斉藤斗志二君     田原  隆君   小林 恒人君     野口 幸一君   藤原ひろ子君     矢島 恒夫君     ───────────── 本日の会議に付した案件  税制改革法案内閣提出第一号)  所得税法等の一部を改正する法律案内閣提出第二号)  消費税法案内閣提出第三号)  地方税法の一部を改正する法律案内閣提出第四号)  消費譲与税法案内閣提出第五号)  地方交付税法の一部を改正する法律案内閣提出第六号)      ────◇─────
  2. 金丸信

    金丸委員長 これより会議を開きます。  内閣提出税制改革法案所得税法等の一部を改正する法律案消費税法案地方税法の一部を改正する法律案消費譲与税法案及び地方交付税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。村山喜一君。
  3. 村山喜一

    村山(喜)委員 大変な激励をいただきまして、ありがとうございます。  不公正税制の問題を中心にいたしまして質問を申し上げたいと存じます。  まず第一点は、最近の経済動向を見てまいりますると、明らかに、従来のGNPで物をはかるその考え方が、どうもその尺度だけでははかれない状態になっているんじゃないか。特に、株式あるいは土地のそういう増価益の問題を中心にしまして、GNP匹敵をする金融資産が新たに発生をしているという事態が生まれているわけでございます。したがいまして、そういう立場から、今日の財政の問題あるいは税制の問題、金融の問題を考えまする場合には、そのような立場に立って問題を広くとらえていかなければならないというのが今日国民課題ではなかろうか、こう考えておりますので、その問題を皮切りにいたしまして、順次質問をいたしてまいります。  そこで、地価高騰資産所得の問題につきまして、最近二年間の、八六年、八七年の地価高騰は大変異常でありまして、経済社会に与える影響は非常に大きいわけでございますが、まずその土地値上がりにつきまして、その計数を確かめてまいりたいと思います。  経済企画庁の六十三年の国民経済計算によれば、一九七〇年、昭和四十五年から昭和六十一年、八六年までの土地値上がりは千百二十六兆円、八六年末の評価額は一千二百六十二兆円に達して、特に八六年、昭和六十一年中の値上がりは二百四十七兆円と思われるが、この数字公示価格基準にいたしましたものとして計算をされたものであろうと思うのでございますが、時価評価すればどのような数字になるのでございましょうか、お答えをいただきます。
  4. 中尾栄一

    中尾国務大臣 村山委員お答えいたします。  二十五周年、まずもっておめでとうございます。その質問の冒頭にお選びいただきまして、本当に感謝申し上げたいと思います。光栄でございます。  国民資産が全体的に見て大きな影響をもたらしてきているんじゃないのか、特にGNPフローと考えて多少隔たりが出てきているんじゃないか、こういう御質問が主だろうと思うのでございますが、私ども国民資産というものを時価評価で考えますると、六十年の末、暦年末でございますが、五百八十六・二兆円というものが大体アップをしておりますから、したがいまして、六十一年の暦年末で計算しますと、総合計で四千五百二十三兆九千億円、前年比で言いますと大体一四・九%のアップ、こういうことになります。これはGNPフローの場合は、もう既に委員、御専門家として御案内のとおりでございまして、名目四・八%のアップ実質四・九%のアップ、こういうことに相なるわけでございます。
  5. 村山喜一

    村山(喜)委員 六十一年の値上がりは一四・九%という、そのトータルでお示しでございますが、二百四十七兆円、間違いございませんか。
  6. 冨金原俊二

    冨金原政府委員 お答えいたします。  ただいま大臣が御説明いたしましたのは全体の資産評価額を御説明したわけでございますが、その内訳として、先生おっしゃいました土地でございますが、国民経済計算では再生産不可能有形資産という表現を使っておりますが、これが大体土地に当たるわけでございまして、御指摘のとおり、評価額といたしましては、六十一暦年末が千三百八兆六千億、それから六十年末が千六十兆三千億円でございますので、差額としては、御指摘のように二百四十八兆弱だということになろうと思います。
  7. 村山喜一

    村山(喜)委員 国土庁の方から私が非公式に聞いたところでは、この六十二年、一九八七年の末の地価上昇は千五百三十六兆円、すなわち、八七年中に二百七十四兆円、先ほどは二百四十八兆円でございますが、値上がりをしたと言われておりますが、これは大体間違いはないのではなかろうかと思うのでございますが、いかがでございましょう。
  8. 片桐久雄

    片桐政府委員 お答えいたします。  土地の総資産額調査につきましては、経済企画庁の方が国民所得統計の一環としてやっているものでございまして、私どもの方は、地価上昇率といいますか、そういう統計をやっているものでございます。
  9. 村山喜一

    村山(喜)委員 国土庁土地白書によると、八六年中の全国の土地値上がり率は七・七%、八七年は二一・七%と記載をされている。この比率からいえば、当然、八七年は二百七十四兆円というのは、これはちょっと少な目の値上がり益じゃなかろうかと思うのでございますが、私が言う二百七十四兆円という数字については、これは否定をされるのですか肯定をされるのですか、いかがですか。
  10. 冨金原俊二

    冨金原政府委員 お答えいたします。  先生指摘のその六十二暦年中にどれだけ地価上昇があったかということについては、私どもまだ国民経済計算数字を正式に集計しておりませんものですから的確なお答えをいたしかねるわけでございますが、先生の御推定というのは、公示価格平均値で前の年の資産の残高に掛けられまして計算をしておられるということであれば、一つ推計方法ではないかという気はいたします。ただし、公示価格は御承知のとおり調査ポイント単純平均でございまして、例えば首都圏あたり上昇率がいろいろ調査されているわけでございますが、単純平均ではなくて、地価のウエートということを考えますと数字がいささか違ってくる可能性もございますが、推計方法としては一つ方法ではあろうかと思います。
  11. 村山喜一

    村山(喜)委員 だから、先ほど、二百四十八兆円の公示価格基準にいたしました値上がりが示されているというのは時価に換算をしたら幾らになりますかと、それよりももっと大きいであろうということは常識として成り立つわけでございますから、そのことを言ったわけでございます。  今経済企画庁の方から答弁をいただきましたが、私は、地価値上がりというのは国土庁土地白書もとにして計算をした数字を申し上げているわけでございますから、この二百七十四兆円というのは公示価格もとにしたものである、低いところでそれだけのものがある、時価に直したらもっと高いであろう、こういう想定は、これは間違いだとは思わないのでございますが、経済企画庁長官いかがでございますか。
  12. 中尾栄一

    中尾国務大臣 まだ六十三年度の調査は済んでおりませんが、今先生の御指摘のとおり、私も評価額よりは上回っておるものであろう、こう思われます。
  13. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、仮に八七年の値上がりが二百七十四兆円といたしまして、八六年、八七年の二年間の土地値上がりは五百二十兆円という巨額に達します。その間に、この二年の間に株価の値上がりでございますが、これはほぼ毎年百兆円平均でふえているのではなかろうか、こう思いますが、いかがでございましょう。
  14. 冨金原俊二

    冨金原政府委員 これも私どものデータは六十一暦年までの数字でございますけれども、今申し上げました経済計算の中での資産内訳としましては、六十一暦年末の株式金額は三百七十四兆八千億、六十年の株式評価額は二百四十一兆九千億でございますので、約百三十兆円ほど増加しているという数字になっております。
  15. 村山喜一

    村山(喜)委員 百三十兆円の値上がりであろう。そういたしますと、二年間にGNPは一体どれだけあったのでしょうか、トータルとして。といいますのは、今百三十兆、まあ百五十兆ぐらいになるのでしょうが、そういう計算をいたしますと、土地値上がりと株の値上がりだけで七百二十兆から七十兆ぐらいの総増価益発生をしているのではないか、そういうふうに思われるわけでございますので、大体GNPよりもそちらの方の資産増価益の方が大きいのではないか、こういうふうに思うわけでございますが、そういうことは正しくないという御判断でございましょうか。
  16. 中尾栄一

    中尾国務大臣 私は、今先生の御指摘は、何といいますか、ほぼ路線としては間違えた路線を言うているとは思いません。ただ、問題点は、所得そのものとそれから実質資産というものとの格差というものは、これは相当に分けて考えなければならない、すなわちディスティングィッシュして考えなければならないものである、このようには考えておりますが、先生のおっしゃるとおりであります。
  17. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、土地それから株の値上がりによります利益というのは、これは労せずして得た不労所得である、それが国民全体の物やサービスの生産価値生産を上回るということ自体が非常に異常なことだ、私はそう思うのでございます。世界のいろいろなところを調べてもみましたが、他に例を見ない状態がこの二年間は続いているのじゃないか。  またその問題は後ほど詰めてまいりますが、これではまじめに働く者がばかを見る社会になりまして、総理のおっしゃる施政方針考え方とは反する世の中になるのではなかろうか、こう思うのでございますが、総理いかがでございましょう。
  18. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 今ちょっと私も話を聞いておりまして、大体いつもGNPといいますと、ことしの場合は一年の日にちと一緒でしたから大体三百六十五兆円ぐらい、それで名目で四・八でしたか伸びておるような気がいたしますから、今ちょっと計算しますと二年間で約七百兆ということでございますか、それは総体のGNPであって、今村山委員指摘されたのは、資産の持つ評価増加分だけでも百兆以上ということになりますと、これはそれだけを見た場合は大変な相違があるというふうに私自身も感じさせていただきました。  本院の土地対策特別委員会の場合にも御指摘があっておりましたが、適正な値上がり率とはどうかというようなことがありまして、消費者物価上昇率とかあるいはGNP上昇率とかそういうものも基準にすべきだという議論がありましたけれども、結局それはただお互いの問答の中に終始して、定義が決まったわけじゃございませんけれども資産価値増加に対する、その中において株式そして土地というものが他のものに比して大変ノーマルでない上がり方をしておるということは、私自身もそういう感じは同感でございます。
  19. 村山喜一

    村山(喜)委員 まともにお答えをいただいていないのはお聞きのとおりでございます。  私が言いたいのは、やはりそういうようなものが、金融資産が、キャピタルゲインが大変なGNP匹敵をする額でふえ続けていく中で、そこには社会的ないろいろな不都合が生じてトラブルが発生をしていく。  そういう中で、私が今からさらにもっと中身指摘いたしますが、土地は大体三〇%ぐらいを法人持ち、六〇%ぐらいが個人分、そういうような分類をすることは間違いでしょうか。そしてまた、株式の場合は法人分が大体八〇%ぐらいに持ち分がなっているようでございます。それから個人が二〇%ぐらいだ。こういうふうに大まかに分類をしてみると、その資産評価益がどこにどのようにあらわれてくるかということがわかるわけでございますが、株式所有区分は八割と二割という見方は間違っていないと思いますが、土地所有区分はいかがでございましょう。
  20. 片桐久雄

    片桐政府委員 土地所有区分個人法人という区別でございますけれども、まず、金額といいますか土地の総評価額の中で、いわゆる家計分というのが、これは六十年末の統計でございますけれども、六六・六%でございまして、法人企業が約二五%というふうになってございます。
  21. 村山喜一

    村山(喜)委員 したがいまして、今土地と株のキャピタルゲイン数字をほぼ確認をいたしてまいりますると、法人の持っている土地評価益が約百五十兆ぐらい、それから株式の場合には法人が八割持っているわけでございますから、法人所有はまあ百五十兆は下らないだろう、そういうふうに見られるわけでございます。そうなってまいりますると、法人利益というのはその二つを合わせたものになりますから、この二年間に十二年分ぐらいの営業利益を稼いだ数を株や土地値上がりによって得ているということになるのじゃないか。  私はここで労働省にお尋ねをいたしたいのは、労働者賃金総額が八六年、八七年の二年間に幾らふえたのだろうか。私たちの見通し、見込みからいえば、一年間の賃金増加率は七兆円から八兆円じゃなかろうか、こういうふうに見ているのでございますが、労働大臣いかがでございますか。
  22. 甘粕啓介

    甘粕政府委員 急な質問でございまして、賃金の、一人当たりというよりも総額ということでございますので、もう一度計算いたしましてからお答えさせていただきたいと思います。
  23. 村山喜一

    村山(喜)委員 この想定は間違っていないと思います。勤労者はこの二年間に十五兆円ぐらいしか所得がふえていない。片一方法人の場合にはそういうような意味において三百兆を超える評価益発生をさせている。したがいまして、その資産土地、株の騰貴によりまして、それが譲渡されたりいたしてまいりますとそこに実際の価値が生ずるわけでございますから、その土地処分をし株を処分をした人の所得というものが、国税庁の発表によります上位百位までの姿の中にはっきり出てくる。調べてまいりますると、七十七人までが土地売却所得であります。九名は株による所得であります。  そういうような意味において、十一万人余りおります多額納税者、これは一千万以上の納税者でございますが、その人の土地譲渡所得というのは昨年幾らになっているんだろうか。これは後でお答えをいただけばよろしいのでございますが、やはり高騰しました地価というのは、売却をしたりあるいはこれを担保物件にして借り入れが行われますから当然金融資産に変わってまいりますし、そして貯蓄投資消費につながっていくわけでございますから、そういうような意味において、今日大変な消費景気だと言われておりますが、その消費動向というものは一体どういう階層がどのような消費をやっているんであろうかということを押さえなければならないのじゃないかと思うのでございます。  といいますのは、東京圏といいましょうか首都圏といいましょうか、ここに土地の大変な集中的なキャピタルゲイン発生をしてきた。そして、そこには経済集中をし、情報が集中をしていく。そういう中で東京景気が、株の上昇地価上昇が結び合う中で異常な繁栄ぶりを示している。片一方においては、もう私の九州とかあるいは総理の島根のあたりもそうでございますが、本当に公共事業にただ寄りかかっているだけの状態に立ち至っている。私は、やはりそこに跛行的な景気が今日生じている中で、今日の税制をどうすればいいかという問題を考えなければならないのじゃないかという意味質問を申し上げているわけでございます。  したがいまして、今そのことについてはお答えができれば、所得税法によりまして一千万円以上の納税額の場合には所得中身公示をすることにもなっておりますから、わかっておればお答えをいただきたいし、そして高騰をした地価売却をした、それを担保にする借り入れ等金融資産に変わりまして、それが貯蓄投資消費につながっているという状態についてはどういうふうにお考えであろうか、このことを長官なり大蔵大臣の方からお答えをいただきたい。
  24. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 お答え申し上げます。  第一点の、公示された方々の所得種目の中で譲渡所得によるものがどの程度かという御質問でございますけれども、御案内のように、公示されますのは、各種の所得を全部総合して、その上で税率を掛けまして出てまいります税額が一千万円を超える者ということでやっておりまして、その中の所得種目がどうかというところまでの分類をしておりませんものですから、せっかくのお尋ねでございますけれども、十一万人のうち譲渡所得によるものかどうかという点はちょっとお答えできないということにつきまして御了解賜りたいと思います。
  25. 村山喜一

    村山(喜)委員 ここに「国際情勢資料」というのがございまして、「貧しい日本中産階級」、ビジネス・ウィーク誌八月二十九日号でございます。これを見ておりますと、なるほどなと思うことがいっぱい書いてございます。それは、今、日本中産階級階層分化を遂げつつある。その中でニューリッチとニュープアと分かれていく。その分かれのいわゆる基礎は、土地を持っているか、株を持っているか、それから自分経費経費として落とす手段を持っているかどうか、そういう人たちが新しい富裕層を形成していく。経費経費として落とすことができないような人や、あるいは土地を持っていない人、株を持っていない人は、新しい貧しい層に取り残されていきつつある。もう的確に分析をしておるわけでございます。資産所得者と、そして新しい貧しい階層格差が拡大をしていくというのは、政治としてはよろしくないだろうと私ども思うのでございます。  昔、経済企画庁、私も関係をしておったわけでございますが、勤労者が一生涯働く中で住宅東京の周辺で持てるのには、幾ら住宅であればそれを自分所得の中で支払いが済ませるという設計がございましたね。ちょっとその数字を発表してください。
  26. 冨金原俊二

    冨金原政府委員 これは、ことしの経済白書一つ試算として出したものを御説明させていただきますけれども、六十一年度の場合の試算でございます。これは、東京都で土地つきの一戸建ての家を持つために必要な価格幾らであるか、あるいは東京圏、一都三県の範囲内でそれを持つ場合にどうであるかという試算をしたものでございます。  東京都の場合には、六十一年度で持ち家の価格が約七千七百万円ぐらいは必要であろう、東京圏の場合には、四千六百万円ぐらいは必要であろうということでございます。これに対して、一応これも平均的なものでございますけれども、生涯の収支差額貯蓄額的なものでございますが、これが大体五千九百万円ぐらいという計算になっておりまして、そういう意味では、東京都で六十一年の場合の試算でも一生涯の貯蓄では取得は難しい、こういう計算を一応試算としては出しているわけでございます。
  27. 村山喜一

    村山(喜)委員 総理、私は、やはり勤労者がまじめに働いて、そして通勤時間を二時間も三時間もかけながら本当に満員電車に揺られながらやってくる、大学を出て三十年働いてマイホームも夢がかなわない。そして、私たちも宿舎におりますが、チラシが新聞の折り込みに入ってまいりますね。これを見ていると、一けた余計な数字が入っているなあと思うのでございます。昔、笑い話じゃございませんが、マンションと言っておった。このごろは億ションと言う。億の単位でなければそこに住めないという状態は、これはどう考えても政治の貧困と言わなければならないと思うのでございます。  そうなれば、そういうようないわゆる土地や株の値上がりによりまして富裕層になった人はおるわけでございますから、その人たち資産処分したときには当然評価益に適正な課税をする、そしてそのお金というものを財源として新しい土地対策なりあるいは住宅政策というものを進めていく、そうしなければ、この東京は砂漠になって、みんな郊外郊外へ追いやられていく、これではやはり人間を忘れた政治じゃないか、今竹下内閣がやらなければならない最大の課題はここにあるのじゃないか、そういう客観的な事実をつかまえて、そして課税を適正にやっていくという姿勢がなければ、つじ立ちをされまして総理幾ら演説をされましても、国民は納得をしないのじゃないでしょうか、その点を私は総理にお聞きをしたいのでございます。
  28. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 基本的に、国土狭隘にして人口が多いという問題は確かにあると思います。例えば、少し前の計算でございましたが、国土面積がアメリカの二十六分の一として、それから可住地面積でございましたか住める面積がおよそ八十分の一、七十七分の一とか八十分の一とかいっておりましたが、定かには覚えておりません。人口が半分でございますから、一人当たり四十分の一しか住める面積が基本的に存在しない。したがって、逆にまた一人当たり所得を同一と考えたら四十倍までは我慢しなければいかぬ、こんな議論をしたことがございます。  しかし、それが四十倍じゃなくして、全然、それこそ先ほどお使いになった跛行性があるわけでございます。だから基本的には、村山委員のところや私のところは、それは十分生涯賃金と生涯貯蓄の中で取得し得る地域にお互いおるわけでございますが、そういうところにみんなが住まいすることのできるような、これを今の政策の中では一極集中から多極分散へ、こう申しておりますが、一挙にできるという意味で申し上げておるわけでは決してございませんけれども、基本的にはそういう均衡のとれた国土というものを考えていかなければ、それこそ、いわゆる土地の国有化とかそういう問題は別次元の問題といたしまして、あり得ないのじゃないかというふうに私も率直に感じておるところであります。  そこで、いわばそういう土地株式等の資産価値が上がっていくというものを、しかしそれを譲渡した場合における譲渡所得ということについて税制が別の意味において機能していくという考え方は、私も、そのおよその節度はあるにいたしましても、否定するものでは決してございません。したがって、今度の税制の場合、所得消費、そして資産には適正化という言葉を使わせていただいておるわけでございますので、いわゆる所得消費資産に対する適正化というその適正というものが、地域格差もある中で全体的にお互いが協議した上でその適正化というものが行われていくわけでございますから、私は一歩前進の考えではなかろうかというふうに考えております。  ただ、もう一つの別の問題として、いつも議論いたしますいわゆる保有税的なものに対してはまた別の考え方があろうかと思いますが、今おっしゃったいわば所得、実現した利益に対する所得というものに対しましては、私も同じような感じを持っております。
  29. 村山喜一

    村山(喜)委員 それは、なるほど増価という問題は、値上がり益、純資産の増大、それが未実現のキャピタルゲインでありますが、実際は売却時には課税をされる、売却益税みたいな譲渡益税でございます。しかし、それは法人の場合はそうはならないのでございまして、これが続いていく限り含み資産の増大というものにつながっていくわけですね。含み資産の増大につながっていく。そうすると法人はその利益を、この法人が続く限りどういう形で出てくるかといえば、含み資産がふえていけばいくほど株価にそれが反映をされる。日本の場合の株価形成というのは、大蔵大臣が一番よく御承知のように、アメリカと違って株主配当というものを重視していくのではありませんね。それはもう、少しでいいから——五十円株のせいぜい高くて八%ですから四円ぐらいのものですね、一株当たり。そんなのを目がけて株主も投資をしない。それで、値上がり益をねらって、株主も期待をするものですから、やはり法人の含み資産がふえていく中でそれだけ株価が上昇をする、こういう仕組みがずっと続いていっているのが今日の姿じゃないでしょうか。そして盛んに株式市場の健全化という意味において個人株主をふやしなさいということで指導もされているのでしょうが、どんどん法人間の持ち合いが多くなって、もう既に八〇%は法人の持ち分ですね。一体そういうような状態というものは、大蔵大臣として、健全な、今の証券が大蔵省の考えているものと実態は食い違いがないのですか、その点はいかがでございますか。
  30. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今アメリカの株価との比較についてお話しになられましたが、確かに我が国の場合とアメリカの場合を比べますと、一株当たりの収益率と株価とは、我が国の場合に、アメリカの場合に比べまして大変に乖離をいたしております。そういう水準からいえば、つまりアメリカ的物差しからいえば日本の株価はいわば大変に高いということになるのでございましょうが、その一つは、今おっしゃいましたような清算価値と申しますか、その含み資産を買っておるということはおっしゃるとおりであると思います。  アメリカにおきましてもこの何年間かは不動産の価格が大分上がってまいりましたけれども、しかしこれはもう日本とは比較になりませんので、我が国の場合、その株式会社が持っております不動産、殊に土地でございますが、その含みをいわば株価で評価をするということは、確かにアメリカには余りない、我が国とアメリカとの株価形成の一番大きな違いではないかと思っております。  もちろん、我が国の株価の現状が、どれが正しいか正しくないか、正しいという言葉そのものがこの際適当な言葉でないのであろうと思いますけれども日本経済の、あるいはその企業の将来性を買う、そういう要素もきっとあるでございましょう。あるでございましょうが、一株当たりの収益率とその株価との乖離が余り大きくなりますことは、概して健全だとは申しがたいということは申し上げて差し支えのないことであろうと存じます。
  31. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、この問題につきまして時間をそんなに費やすわけにまいりませんが、要は勤労者の二年間の所得の増は十五兆円ぐらいしか伸びていかない。ことしの春闘の賃金引き上げも四・三%ぐらいのものであると聞いております。そうすると、勤労者の場合は、最近の状況を見ておりますると、貸金格差が、職業によりまして、業種別によって大分拡大をしている、あるいは同じ労働者でありましても職種によりまして変わって、これが拡大をしていくという形があらわれております。  これについて、二年間に労働者の賃上げの所得上昇は十四、五兆円、株価の上昇土地を持っているのは三百兆円というようなのが目の前に出てきますと、そういうような労働者に対する分配率の問題等はどういうふうに考えていったらいいのか。こういう資産評価が過大に膨張をし、GNPを上回るようなそういう資産評価が、増価益が生まれてくる中で、本当に汗水垂らして働く勤労者所得がそういうような伸び方では、所管の労働大臣としては一言なかるべからずという気持ちになるのが当然じゃなかろうかと思うのですが、大臣はどういうふうな御所見でございましょう。
  32. 中村太郎

    中村国務大臣 御指摘のように、労働者の企業規模間の賃金格差は、大企業、中小企業を比較してみますると若干の拡大傾向が見られます。ただ、年齢別に企業規模間の格差を見ますると、各年齢ごとにそういう大きな変化はございません。やはり、平均的では格差があるように見えますけれども中身を見ますると年齢構成の差が大きく影響しているのではないかなというふうに考えております。  さらに、労働者の職による賃金格差、例えば管理職あるいは事務職、それから技術職、それから生産労働者、この関係を見まするといささか格差が見られる、こういう状態でございます。  なお、産業間の賃金格差につきましては、労働者の男女構成比率あるいは学歴構成の違い等もありまして、比較的賃金の安い製造業あるいはサービス業、それから比較的高い金融業、保険業との間にはやや格差の拡大の傾向が見られることは御指摘のとおりでございます。  これをどうするかという問題は、これは一労働省だけで片のつく問題ではございませんけれども、私どもはかねてから中小企業の勤労者の福祉の向上という面で、例えば、ささやかではありますけれども、本年度、市町村単位ごとに行っておりまする福祉施設の補助金制度を適用しておるというようなこともやっておるわけでございまして、勤労者の福祉の向上のためにも、今申されましたような土地値上がり等につきましては、やはり十分な配慮をしていかなければいけないというふうな考えを強くいたしておる次第でございます。  なお、先生先ほど御指摘になりました勤労者所得増加分七、八兆円ということは、おおむねそのとおりでございますので、つけ加えさせていただきたいと思います。
  33. 村山喜一

    村山(喜)委員 この問題で締めくくりに私は宮澤大蔵大臣にお聞きして考え方をただしてまいりたいと思うのですが、それは、こういうような評価益が増大をしていく中で、実際譲渡をした場合の課税が的確になされないと格差がますます拡大をしていくわけですね。したがいまして、譲渡益課税という問題については今日まで政府税調やあるいはその他の、自民党さんの方でも党内税調で十分論議はされていると思いますが、どうもそういうような意味における株価や土地価格上昇に伴う評価益の増大とGNPとの対比において問題をとらえて判断をされたのは少ないのではないだろうか、私はそう思っておるのです。  したがいまして、そういう含み資産に今まではなっているのでしょうけれども、実際はそれが一つの水槽の中に入りまして、そこからこぼれ出たものが既に土地を買いあるいはマンションを買い、そういうような土地処分した富裕層は新しい大きな消費を形成をするわけですから、そういうような意味において有価証券取引税の思わぬ税収が入ってくる、あるいは相続税の税収が思わぬものが入ってくる、そういうことの上から問題をとらえていくべきではないか。  この際、いわゆるGNPに対する税収の弾性値、従来は一・二%平均でずっときていますが、今は何%ですか。
  34. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昭和六十二年度におきましては、三・三三というまことに異常な数値になりました。
  35. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこなんですよね。三・三三というのは、大臣も異常な数値になったとおっしゃる。これはいわゆるGNPもとにしてはじき出す数値から言えばとらえることができない。しかし、それによって税収を、歳入を確定をされるのですから、自然増収が出たなどと言って、思わぬ税収が出ましたと言って喜んでいるわけにいかぬのです。そこはきちっとしてもらわないと。  その三・三三という弾性値はなぜ生まれたのですか。分析をされましたか。
  36. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは先ほどからるるお述べになりましたことの結果でございますが、つまり一つ土地値上がりによりまして、いわゆる譲渡益、あるいは相続税もさようでございますが、そういう関連のもの、株式値上がりによりますところの、あるいは取引高の増大によりますところの有価証券取引税あるいは譲渡所得税も個人についてはあるわけでございますから、それから一部はやはり円高差益というものからくる部分があったように存じます。これらはいずれもある意味で一遍限りと申しますか、正常ないわゆる営業利益的な、経常的な所得と違います。そういうものがこの異常な弾性値に反映されておるということは間違いのないところでございます。
  37. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、従来から予算の歳入の見積もりやら予算編成の過程の中あるいは財政再建の中でどういうふうにしていくのかというこれは大きな物差しでございます、GNPに対する税の弾性値は。新しい手法を開発されますか、それだけをお答えください。
  38. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 実は、村山委員の持っておられます問題意識は私どもも共通に持っておりますものですから、しばらく前に私どもの役所の中で、従来歳入見積もりは主税局が先端でやっておるわけでございますけれども、一遍限りのことであるか、どの部分が一遍限りのことで、どの部分が日本経済のいわば変化によるものであるか等々、かなり今大事な時期であると考えましたので、主税局以外の官房等々もひとつおのおのの立場から力を合わせて、これからの歳入見積もりをどういうふうにしていけばいいか、なぜこのような異常な弾性値が出たかといったようなことについて検討をするように私から指示をいたしまして、もうその検討を実は何カ月間かにわたってやっております。まだ答えを聞いておりませんけれども村山委員の言われますような問題意識は私どもも確かに持っておりますし、重大なことと考えております。
  39. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、税の本質論を——竹下総理大蔵大臣を三回もおやりになったし、大変財政、金融税制については権威者だ。また、一つ竹下哲学をお持ちでございます。  そこで総理にお聞きをしたいのですが、税の本質というのは一体何だろう。だから、ゾルレンの立場とザインの立場がある。その場合に一体今の税制というのはどういう位置づけをすればいいのだろうか。世間の人たちが言うには、文芸春秋の九月号でございますが、秩父セメントの会長さんが、政府が消費税の案を出しましたときに、「案を出す方にも、反対する方にも「哲学」がない」と言われたのを私は読んだことがございます。そうなってくると、やはり国会の場において税制という問題に対する、哲学論争というところまではいきませんが、竹下総理がお考えになっているこれからのいわゆる税のあり方の問題は一体何だろうかということで、私も非常に興味を持っておるところでございます。  そこで、平凡社の世界大百科、これは図書館で見てみましたら、こんなことが書いてありました。「たとえば、生活必需品に対して課される消費税などは、この生活必需品の消費量が各人ともほぼ一定であり、したがって税負担額もほぼ同額であるという意味で、人頭税とその性質ないし作用を等しくするといってよい。」と書いてある。——いや、事典は間違っていないのです。  そういう考え方に立って、一体総理のお考え、税制のあり方というのはどのような価値判断に基づいておやりになっているのだろうかということを一言聞いた上で、次の問題に入っていきます。どうぞ。
  40. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 これはちょっと一言といいましても、一言で答えるのは非常に難しゅうございます。よく一言で答える言葉の中では、公平、公正、簡素、選択、活力、こういうことを言っておりますが、ただ、公平、公正というのも、どっちかといえば公平はイコールで、公正はフェアだ。それは本当を言いますと、税制調査会等でずっと公正という言葉が入ってきたのは中曽根内閣からで、それまでは言葉としては公平が使ってありました。  まあその議論は別といたしまして、結局いわゆる人間集団というものが社会を形成いたしますと、一番最初はやはり労役の提供から始まったと思うのであります。そこで、労役の提供をできない人が、今度はそれを物によってかわりにそれを負担する。そうして今度は統治者ができてまいりまして、そうしてその統治者の最初の社会は言ってみればすべてが間接税という感じじゃないかと思うのであります。その後、それではいけないというので、いわゆる富の再配分という意識が入ってきて所得というものに着目されて、そうしてその所得の着目というものが過ぎると、そこにまた別の意味における公平の概念が変化してくるというような歴史でずっと続いてきているんじゃないかなということを思っておりますので、やはり今の我が国の経済社会情勢なり人口構造も含めて、そこに基点を置いて公平、公正、簡素なバランスのとれた税体系というものを構築していくというのが、少なくともここ二十一世紀に向かって一番いいことじゃないだろうかという考え方を持ってお願いをしておるということでございます。
  41. 村山喜一

    村山(喜)委員 私は、日本税制、税率は諸外国に比べて高いとは思っておりません。そして社会保障の負担金も現在の段階ではそう高くないんです。しかしながら、なぜ国民の中に税に対する不満というものが八割もあるんだろうか。これはやはり税の負担率の高さではなくて、おかしな格好になっているから問題がそういう意識にあらわれてくるんじゃなかろうか、私はそう思わざるを得ないのでございます。その点は、なぜそういうふうになっているのかという判断を大蔵大臣なり総理はされたことがございましょうか。  というのは、今の税制というのは申告税制ですね。そしてそれは良心に基づいてきちっとみんな納税をするんですよ、いわゆる憲法上納税の義務というのはきちっとしているわけでございますが、良心に基づいて悪いことはしない、そして正直に申告をして、税を応能によって、応益に応じて負担をしていくという考え方なんだろうと思うんです。ところが、どうもそれがおかしいなと税制に対する不満がうっせきをするというのは、これは一体なぜなんでしょう。その点はどのように分析をされているんですか。
  42. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いろいろございますと思いますが、私どもが一番感じておりますのは、勤労所得、給与所得の中で、おのおののライフステージで、ある程度の年になりましたときに、住宅ローンの返済もしなければなりませんし子供の教育費にも金がかかる、そういう年齢層がございますが、そこのところで非常に累進の刻みがきつうございますものですから、ちょっと昇給をしてもむしろ税金で持っていかれてしまうという、そういう重税感がその年齢層に多い。  で、その年齢層がはたを見ますと、自分と一緒に学校を出て事業をやっている、中小企業などをやっている人は、どうやら大変どうも税金はうまいことをしておるという感じが、それこそクラス会なんかで会えばすぐにわかるわけでございます。そうしますと、いかにも自分たちの給与所得についての重税感が強い。それに対してその他の所得、事業者の所得等々がどうも十分に把握されていないのではないか、そういうことが一緒になりまして不公平感というものが非常に高くなっている。私はそれが、ほかにいろいろあるとは存じますけれども、それが一番の今の問題ではないかというふうに考えております。
  43. 村山喜一

    村山(喜)委員 そのために、同じ所得があるのに片一方は得をしてうまいことやっている、片一方は正直に源泉で徴収をされて何にもうまいことがない。  よく言いますね。青色申告事業者であってもあるいはみなし法人であってもよろしいんですが、交際費を経費として控除ができる。商売やっていく上において必要な経費は控除ができるわけですから、一定の範囲内で。で、親戚とか知人とか、そういうようなので結婚がある、あるいはお祝いがある、それにお金を持っていくが、片一方経費で落とせる、給与所得者の方は落とせない。いや、それは給与所得控除があるからいいじゃないか、そっちの方に入っているんだよと言っても、今度はみなし法人の場合では、経営者もあるいは家族の人も給与所得者として同じような待遇を受けているわけですから、親戚同士で、女房同士で、おたくはいいわね、私のところはだめよというような格好になっているんじゃないでしょうかね。そこがやはり今日の税制に対する不公平感を生み出している一つのポイントじゃないか。     〔委員長退席、海部委員長代理着席〕  それからもう一つは、やはり株の譲渡益課税の問題ですよ。株を処分をする、その場合には、あるいは取得をしてリクルートコスモス社の場合のように適当に売り抜けていってそれだけの利益を得た、それは税金はかけられないのですよということで、そっちの方はうまいことをやっているなあと。  私たちは、やはり株主の中にも、平均的な株主とそういう特権的な株主がおるところに問題があるんじゃないかなと思っているんですよ。総理大臣も御案内のように、そういうようなすぐ、転換社債であっても一定の日にちが来たらそれだけプレミアがついて、そして価格が上がりまして、そしてそれも利益が税金がつかないものが入ってくるのですから、本当に気のきいた転換社債、あるいはリクルート株のような、そういうような株を手に入れることができる人が特権的な人ですよ。そしてそれは一般的な株主の犠牲の上にその人は自分たちはうまいことをしているわけですから、そういうような機会を得ることができるような人たちが得をし、機会を得ることができない人たちがそれを眺めているわけですね。そうすると不公平感というものが生まれていくのは自然の姿だと私は思う。  そのときに今の申告納税制度というものは一体成り立つんだろうか。やはり税制という問題は良心に基づいて納税をするという思想がなければ、これがないとやはり日本のこれからの税制は壊れていくんじゃないか。そして、そういうような権力に近い人あるいは大企業に近い人あるいは証券会社の中に非常に近い人、こういうような人たちだけがうまいことをやっていくような今の仕組みは直していかなければならないというのが税の本質論として必要じゃないだろうかと思うのですが、その点の認識はいかがでございましょう。
  44. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま言われましたこと、株式の場合と土地の場合と、私は村山委員が先ほどからお説きになっていらっしゃることの意味はよくわかっておるつもりなものでございますから、異議を申し立てるつもりで申し上げるのではございませんが、株式の場合には土地の場合と違いまして、かなりたくさんの国民が、大小いろいろ取引がございましょうが、みんなこの株式取引というものに関心を持ち始めておるということから考えますと、やはり市場に対する国民の信頼感、特定の人だけが得をしているというようなことがあってはならない、一般の投資家が保護されなければならないという観点が大事だと存じます。  したがいまして、余り大きな利得が一部の人々、これは特権階級とは限りませんで、縁故者という場合に一般に第三者割り当てがございます。縁故者はずっと長いこと商売の関係で縁故があるとかいろいろございますものですから、それを特権というふうに言うのは一般には当たらないかもしれないと思いますけれども、しかし余り大きな譲渡益がございましたときには、今度原則課税にいたしまして、ああいう申告分離、源泉分離という二本立てでお願いをしようと思っておりますが、余りゲインが大きいときにはそれだけでいいのかどうかという問題は確かにあると考えておるわけでございます。  もとに返りまして、村山委員の言われますように申告納税制度、我が国が戦後採用いたしました申告納税制度は、まさに納税者が正直であるということの上に成り立つわけでございますが、それはすべての場合には期待しにくいものでございますから、正直でないケースはある程度行政の側でちゃんと摘発ができる、指摘ができるということでございませんと、正直だけに頼っておりますと、いわば正直の人が損をするというようなことになりかねません。それがキャピタルゲインにおける、殊に株式キャピタルゲインにおける今の行政の限界である。限界がございますものですから、納税者番号であるとかあるいはカードであるとかいうことの可否について今検討をいたしておるわけでございますが、やはり正直を期待すると同時に、不正な、不正直な納税者に対しては行政がそれなりに対応できるということでありませんと、正直というものが生きてこないということになるのではないかと存じます。
  45. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで具体的な問題、きのうも企業税制に対して、法人税制の問題等についてのいわゆる実効税率の問題を大臣が御説明をいただきました。  名目税率がございますね、それから実効税率がある。実効税率の問題をとらえて日本法人税は高いとおっしゃる。私は、それは理論上の数値にすぎないのじゃないか。実際の税率というのはあるのじゃないんですか。その点からまずお聞きをしたいのです。
  46. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは専門家の助けをかりなければなりませんが、私どもは、やはり表面税率というものが基本になっていかなければならないだろう。そういたしますと、いわゆる租税特別措置法等によるいろいろな要素がプラスになったりマイナスになったりして入ってまいりますが、特別措置法は各国でやはりおのおの政策目的が違いますし、それから、適用を受ける企業、受けない企業、それも違うものでございますから、この議論に入ってまいりますとなかなか議論のとめどもないところに行ってしまうということで、やはり表面税率をまず基礎に考えるべきではないかというふうに思っております。
  47. 村山喜一

    村山(喜)委員 私は、法人税のあり方を見ておりまするとやはりどうも業種間によって非常にアンバラがある、これが第一点ですね。それから、税率が今まで高くなったものですから、抜け穴をつくるために租税特別措置法とか、あるいは法人税法の本体の中にもございますね、そういう抜け穴がある。  そこで、これは経営者団体の方からもいろいろな陳情をいただくのですが、どうも今の実効税率論争というのを聞いていると、これは理論上の仮定の数字の組み合わせでございますから、それが当てはまる企業もあれば当てはまらない企業もある、したがいまして抜け穴をたくさんつくらなければ企業としては困るということになる。今度の場合だってそうでしょう。法人税率を下げますよ、それは結構だ、やってくれ、ただし退職引当金とかあるいは各種の準備金は、賞与引当金とかそういうようなものは残しておってもらわなければおれたちは困るよ、こういうふうにおっしゃる。やはり税率を下げたらそういう水漏れがするようなものは下げていく、これを広く薄くという課税の対象として考えなければいかぬのじゃないですか。広く薄くというのはよく総理もお使いになる。宮澤さんもお使いになっていると思うのですが、広く薄くという意味はそういう問題のとらえ方ということでやらなければいけないのじゃないでしょうか。  今考えてみますと、東京都の美濃部さんが知事をやっているときに、一体今の実際の税率はどうなっているのだろうということで、相当なスタッフを用いて追跡調査をしましたね。そのときに、実際の法人の税率の場合には、四二%とかなんとか言っているけれども二十数%だよという数字がその当時出ている。しかも業種によって非常にでこぼこがある。  やはりそういうものをこの際政府税調あたりがお調べになって、そしてこれからは国際社会の中における税制のあり方というものを求めていかなければならぬ時代ですから、対外的に競争力を失うから法人税率を下げてくれというのじゃ、これはやはりそういうような水漏れがある、特別措置がある、大分整理はされましたけれどもなお残っている、やはり広く薄くという概念はそういうところに用いていくという配慮というものが政治になければならないのじゃないか。その私の所見はどういうふうにお考えでございますか。
  48. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いわゆる引当金等は、これはもう釈迦に説法でございますが、費用と収益とを対応して考えまして、その費用を期間の間で案分するという考え方でございますから、いずれは歳入になる部分であって、これを政策的な減税だというふうに私ども考えませんが、しかし少なくともある時間の間においてはそういう効果を納税者にとってはもたらします。そういうことはそのとおりでございますが、したがいまして、一般的に法人税率を下げる、それと並行して、今の村山委員のお言葉を言いかえれば課税ベースを広くするということでございますから、そういうことで税率を下げていくと、アメリカなんぞは随分極端になったものでございますからあそこまでしなければなりませんでしたが、我が国はそんなにはなっておりませんが、やはり課税ベースを広くしながら税率を下げていくということは方向としては私はそのとおりと存じます。  ただ、政策減税ではないにしても、今までの一種の積み上げあるいは期待権と申しますか、そういうものがございますから、それを下げていきますのにはある程度の時間をかけていかなければならないという点はございます。ございますが、課税ベースをなるべく広くするということはそのとおりであろうと存じます。
  49. 村山喜一

    村山(喜)委員 世界の税金の常識というので、税率を下げたときになぜ所得税とか法人税とかその優遇措置を減らさないのか、減らして課税ベースを広げないのかということは、世界の識者の日本税制についての意見として私たちも謙虚に聞いておかなければならぬと思うのです。アメリカの場合でもそうでしたし、イギリスの場合でもそのような方向の中で税制の改革が行われてきた。日本の場合にはそういうところはまだまだ不十分でございます。私はここに経団連の意見を持ってきておりますが、やはりそういうような業界内にあるでこぼこを調整をしながらやる意見であれば結構でありますが、法人税率は下げろ、そして優遇措置は残せ、これでは筋が通らないんじゃなかろうかという意見を申し上げておきたいと思います。  そこで、今度はやや具体的な問題に入ります。今の税の執行の問題に関することでございます。  ここに資料がございますが、総収入金額の合計額が三千万円を超える場合には総収入金額報告書を提出しなければなりません。どういうような書式で報告をするんだろうかというので、その書式も持ってきてもらいまして見てみました。これは三月十五日までに出さなければならぬということになっております。それからなお、二千万円を超える者については財産債務明細書を提出しなければならない。それから、さっき局長の方から答えられました申告書の公示の問題。一千万円を超える者については公示をするということになっている。  それから、青色申告者の場合には、帳簿書類を備えてその取引を記録し、保存をしなければならない、こういうことになっております。その施行規則をずっと見てまいりますると、施行規則の五十六条では「青色申告者の備え付けるべき帳簿書類」というのがございまして、それにはこういうような簡易な記載の方法でもよろしゅうございますよというのがある。それから、五十七条には「その記録に基づき、貸借対照表及び損益計算書を作成しなければならない。」こういうように書いてございます。  そこで私が気になりますのは、税の執行の上から見まして一体今のようなやり方でいいんだろうか。それは、税制の中に会計学を取り入れた方法を用いた方がいいんじゃないだろうか。単なる損益計算書だけじゃ、実物資産がどういうふうに動いていくかということが明確になりません。ごまかしとして出てくる可能性はあるわけです。最近の脱税の姿なんかを見ておりますると、そういうような資産を持っている人たちが脱税をする、所得隠しをするというようなのが出ておる。土地の場合でもそうでございます。  したがいまして、私が提案をいたしたいのは、もしそういう事実があるということが皆さん方の大蔵省の方でも確認をいただけるならば、やはり税の執行の上から見まして適正な措置をとるべき段階にもはや来ているのではなかろうか、そういうふうに思うのでございます。いわゆる税制の中にそういうような問題をどのように執行しているのかということで、私は事務的に資料をもらってみました。ところが、簡易なやり方で記帳をして、それをもとにして保存をしている方と、複式簿記を用いましてちゃんとそれを持っている人と分けていないのですね、統計的にも。ですから、企業会計の原則を持ち込まなければ税制の問題も完全に捕捉ができないのじゃないか。したがいまして、一定所得もしくは一定資産以上の者の申告書には、損益計算書とともに貸借対照表を付することを義務づけるようなことをやらなければならないのじゃないかと私は思うのでございますが、税の執行についてどういうふうにお考えでございましょうか。
  50. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 お答え申し上げます。  まず、現状がどうなっておるかという点でございますが、先生もお話にございましたように、青色申告者が備えつける帳簿書額の態様といたしましては、基本的には複式簿記の原則によった書類が出せるようなのをベースにしております。ただ、一定の場合には簡易簿記、あるいはさらに所得の一定額以下の人につきましては現金主義の収支もできるということになっております。現状は、お話しのように両者合わせました青色申告者のトータルの中で約九割以上でしょうか、四百二十万弱のうち四百六万ほどは正規の簿記あるいは簡易簿記によっておりまして、残り十万ほどが現金主義ということになっております。  問題は、先生のおっしゃるその四百六万のうち正規の簿記によるものと簡易によるものとの内訳がどうかという点でございますが、御指摘のように、それを区別する集計をしておりません。ただ、実態的には相当数が簡易な方によっておるだろうというふうに想像はしておりますけれども、具体的な計数は持っておりませんが、そういう前提におります。  お話しの、PLだけではなくてBS関係、貸借対照表も含めた格好の書類が出せるようなそういうふうな方向に持っていくべきではないかという点でございますが、理想としてはおっしゃるとおりだと思います。ただ、現在の納税者の記帳の実態等々から見て、一気に全部の人にどの程度のことまで期待するのが適当かという問題もございます。そういった意味で、私どもは現行制度のもとで可能な限りおっしゃるような方向での記帳指導をやってまいりたい、これは現行法を前提にしてでの運営上の方針でございます。
  51. 村山喜一

    村山(喜)委員 これは宮澤大蔵大臣、大変重要な問題なんですよ。なぜかといいますと、今連日のように、脱税が幾ら、それから所得ごまかしが幾らと新聞をにぎわしておりますね。ですから私は、今国税庁次長がおっしゃるように、全部にやれとは言っていないのですよ。やはり一定額以上でないとそういうような資産形成もできないわけですから、資産形成ができるような一定金額、一定の所得資産以上の人に対してやはりそういうようなものを検討してみる価値は十分にあるのじゃないですか。その点、大蔵大臣どうでしょうか。
  52. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはもう理想といいますか理屈からいえばそういうことに全く異存はないことでございますが、現実に納税者がそういういわば知識と、それから技術でございますが、十分それを備えていないということ。それは講習等々でしていかなければならないことでありますし、また公認会計士とか税理士とかいろいろそういう人々もおられるわけでございますけれども、なかなか理想に近づくのに苦労しているということかと存じます。
  53. 村山喜一

    村山(喜)委員 歯切れが悪い答弁でございます。やはり税の執行に当たる者は、そういう、でありますがということじゃなくて、やはり前向きの提案を私の方ではしているつもりです。だから、それは受けとめていただいて、それは急に実施しようといったって無理なことはわかるわけですから、検討ぐらいは引き受けてしてみましょうぐらいの答弁はできませんか。どうですか。
  54. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 こうした記帳の問題も含めた納税環境の整備の点につきましては、昭和五十九年の改正でかなり基本的にいろいろ見直しを行いまして、青色申告者以外でも記帳の仕事をお願いしたい、帳簿記録の保存をお願いしたい、それから先ほどのお話の総収入金額報告書も御提出願いたいといったもろもろの改正をお願いをいたしたところでございます。  御指摘の青色申告者の中での記帳の程度の問題でございますが、御指摘のような簡易な記帳の場合でございましても、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費の明細帳、それから固定資産税台帳というものも含まれてございますから、大きな中身としては、おおむね貸借対照表と損益計算書という本格的な簿記の原則に基づきますところの記帳の中身とそんなに本質的に違いはない、そこから大きな漏れが生ずるというふうな記帳体系ではなかろうということで、そのときにおきましても簡易な簿記といったものは存続されたところでございます。とにかく、完璧なものをお願いをするよりは現実に記帳できる範囲でのお仕事をお願いしたい、それがまず先決でございますので、こうした簡易な方式といったものをなくするということはやはり問題ではなかろうかと思うわけでございます。  そこで、正規な簿記と簡易な簿記、これを例えば御指摘のような所得金額の大きさとかそういったもので分けて、そこははっきりと段階を設けて指導をするということも一つの手ではあろうかと思います。しかし、一般の事業所得者からいたしますと、正規な簿記を仕事の合間につけるということはなかなか難しい面もございます。やはり正規な帳簿、貸借対照表と損益計算書をお願いをするとなりますと、税理士の先生にお願いをする、それだけの報酬も払うということになりますので、どうも一律的に一つの限度を設けて、こちらは正規、こちらは簡易というのをまだお願いをする段階にはないというのが現在の執行の状況ではなかろうかと思います。  しかし、御指摘のような点もわかりますので、よく執行部局の方とも御相談をしながらそこらは検討をしてまいりたいと思います。
  55. 村山喜一

    村山(喜)委員 損益計算という名目計算では、これの裏づけになる貸借対照表というものが必要である。資産評価益がふえていく中で、実体経済GNP匹敵をするような大きな増価益発生をしている中では、やはりきちっと所得消費を押さえ、そしてそれが資産として残るという姿を描き出していくためには、研究をされることは、これから不公平をなくしていくという意味において、何でもいいというわけにはいかぬのですよ、やはりそれはきちっとして、財産計算だけの、今いろいろなものを並べ立てられましたが、それは計算は成り立つけれども名目計算計算が会計学上、法的に認められたことは一度もないのですから、そのことは大臣はよく御承知で、また局長も知った上で答弁をされているのだと思いますよ。ですが、やはりこういう状態の中にあっては、私は一定水準以上のものというのは、それはいろいろ知恵をかりればいいわけでございますが、そういうような原則をもう日本の場合にも導入をしていかないと、いつまでも大福式の税のやり方じゃ間違いじゃないでしょうかね。コメントできませんか。
  56. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 国会でこういう御指摘を受けることは本当にめったにないことでございます。よく御趣旨の点を踏まえまして検討をさせていただきます。
  57. 村山喜一

    村山(喜)委員 次に、今の所得税という税制は十種類に分かれていますね。一体何でだろう。どんな所得であっても、そこには所得を得た、そして消費をして、そしてそれが貯蓄なり資産として形成をされる。そういうような循環を考えてまいりますと、今の十種類の所得税というのは何のためにあるのだろうか。それは大変これからの論議の上において必要な内容になってまいりますので、大蔵大臣、その十種類に分けている所得税は、なぜそういうふうに十種類にも分かれてきたのでしょうか。
  58. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これも専門家の助けをかりなければなりませんが、私程度の知識でございますと、繰り返し発生する所得、一番いい例は給与所得であろうと思いますが、これと、それから一遍、一時の所得、それは例えば退職所得でありますとか、キャピタルゲインもそうでございますね、山林所得、これはやはり所得としての性格がそのように違いますので、課税の仕方もおのずから異なってくる、こういうことがあるのではないか。専門家、主税局長から申し上げますので、ちょっとお待ちください。
  59. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 ただいま大臣から御答弁申し上げたとおりでございまして、それに尽きるところでございます。  所得税は所得に対して課税さしていただく。その所得というのは、要するに収入からそのための必要経費を引いたもの、これが基本的には所得でございます。  ただ、その必要経費計算といったものが非常にいろいろな局面があるわけでございます。ただいま大臣申し上げた例えば山林所得でございますと、二十年、三十年に一回所得発生する、その間の必要経費といったものは一体どのように計算をするのか。法人でございましたら、もうそこはまさに先ほどのお話の貸借対照表と損益計算書で自動的にできるわけでございますが、個人にすべての場合それを期待することは無理だ、ということになりますと、その必要経費計算につきましていろいろな特例を考える必要が出てくるわけでございます。  また、三千万人、四千万人のお方がおられる給与所得者、こうした方々につきましても、その必要経費を逐一記帳をしてこれを収入金額から個別的に差し引くということは現実的になかなか困難でございますので、これは必要経費の控除といったものにかえまして給与所得控除といったことで対処さしていただきまして、大量的な所得につきましての簡易な計算を可能にしているところでございます。  また、およそ必要経費の概念になかなかなじまないという所得の種類もあるわけでございます。利子所得につきましては、我が国の場合には必要経費といったものを考えていないところでございます。  そのように、必要経費といったものにつきましての計算がいろいろな局面が考えられるというところから種類に差を生ずるわけでございます。  また、所得税はご承知のように累進課税でございます。累進課税でございますと、毎年循環的に発生する所得につきましては同じような税率の累進度を適用すればよいわけでございますけれども、先ほどの山林所得の例で申し上げれば二、三十年に一回発生するもの、これを一時的にほかの場合と同一の累進税率を適用いたしますと酷な場合が出てまいる。それからまた、およそ全く性格としても偶発的にしか生じないような一時的所得、こういったものにつきましても、そこは累進税率の適用に差異を設ける必要もある。  このような観点から、その所得につきまして十種類に分けまして、課税方式を、その所得の種類に応じたもので課税所得計算、税額の計算をいたすのが適当ではなかろうか、こういうところから十種類に分けられてきているというふうに考えてございます。
  60. 村山喜一

    村山(喜)委員 今山林所得の話がございましたが、このごろは二十年や三十年で山の木が売れるなどと思っておってもらったら大変です。これはもう五十年ぐらいたたないと材木としての価値がないのですよ。このことは総理大臣はよく御存じのとおりです。やはりそういうような経済の実態というものに目を向けてもらわなければいかぬわけでございます。  それは所得発生をするいろいろな原因もありましょうし、あるいはそれを得るための力関係のものもありましょう。それによって担税力やその他の問題も含めて十種類に分けたんだろうと思うのですが、一体、所得を得る場合に、人的控除というものをもっと、やはり人間が人間として所得を得て生活をし消費をするわけですから、その場合には、そこの家族を形成し所得によって生計を維持する人、その人的控除。それから所得の税率を、これをやはり、それの所得資産が残っていく、そういうとらえ方をしていくならば、所得の段階で課税をする、そして消費の段階で課税をする、資産の段階で課税をするという方式なんでしょうが、私は、この所得税というものは、基本的には、所得の段階で課税をしていく中でそういう必要な人的控除、例えば一人百万円ぐらいの人的控除をぽんと設けて、それであとは累進税率をつくれば、これは余り、今十種類に分かれている税制のあり方の、そんなのを一つ一つ、さっき水野局長でございましたか、そんなことをしたら税理士は喜ぶだろうがと言わんばかりの話をされましたが、今のようなわかりにくい税制を簡素化して、もっと明確にしていく必要が今日あるのじゃないだろうか、こう思うのです。  ですから、所得自体は、いろいろな方法で得られた所得というものについては、同じ公平さ、同じ水平においてとらえればいいんで、やはりそういうような考え方によって処理をしていくという考え方は成り立ちませんか。
  61. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 一つのお考えであろうかと思うわけでございます。戦時中でございますとか戦後の時代でございますとか、税収の必要性もあり、またかなりな程度で所得再分配効果を期待するというような場合でございますと、きつい累進の課税をお願いする、そうするような場合には、やはり控除の面でもかなりそれぞれの所得者の人的な環境に応じまして差別をして、厳しい累進をお願いするということが出てまいるかと思うわけでございます。  しかし、それほどの所得水準の格差もなく所得水準が平準化しておりますとき、それほど極端な再分配効果を期待しないということでございましたら、所得課税の面におきましても、控除等につきましても極めて簡素にする、また税率もフラットにするという考え方があろうかと思うわけでございます。  先般のアメリカのレーガン税制改革も、控除を簡素化する、また税率も二段階にするというふうな方向が出されたわけでございます。税制調査会におきましても、一昨年の抜本改革のときの審議におきましては、幾つかの所得税の課税方式につきましても検討が行われ、最後は四つに絞られて審議されたわけでございます。  その中の一つにおきましても、とにかくもう思い切って控除は簡素化する一方、最低税率は五%にして、また税率の数も少なくする、そのような方式の選択も検討の対象になされたところでございますが、まだそこまでは日本所得税もいっていない。それからまた、今お話しのように、所得課税する面と消費課税する面と資産に対する課税の面、こうしたものの組み合わせで全体として対処すればいいのではないか。そういたしますと、所得に対する課税の面では相応の人的控除をお願いし、また相応の累進を維持する。一方、消費、それからまた資産の面、こうしたものでお願いをする、そちらの面もできるだけ簡素にする。そうした全体の組み合わせの中で適正な再分配と申しますか担税力に応じた課税をお願いするということに落ちついているわけでございます。  しかし、思い切って控除も人的控除を簡素化し、思い切って税率もフラットにしていくというのは一つの方向ではなかろうかということはよく理解できるところでございます。
  62. 村山喜一

    村山(喜)委員 私はやはり税制の具体的な論議は、今各党の政策担当の人たちが具体的な問題についての論議をやっております、それの成果も踏まえながら、いずれこの委員会において受け皿としてその結果も論議をしながら、なお不公平税制の是正のための論議が必要になろうと思うのでございますが、やはりこういうような基本的な論議は総理大蔵大臣が御出席をいただいている中で、政府税調あたりでも技術的な論争はなさるけれども、基本的な、根本的な論争というものは余りないんじゃないだろうかと思うのですよ。  そこで、そういうような意味においては、今新しい事態を迎えているわけでございますから、ぜひ今のような認識というのは——私は最近の富の分配なりを考えてまいりますると、だんだん格差が平準化されないで格差が拡大をしつつあるのではなかろうかという点を懸念をしておりますのは、ジニ係数でございます。このジニ係数を見ながら、これが高くなりつつあるんじゃないだろうか。六〇年代はこれが非常に低くなりまして所得格差も大変少なかったわけでございますが、経済が発展をする過程を通じましてだんだん高くなってきて、そして日本の場合には、諸外国に比べて公平で所得格差もないと盛んに言われているけれども、実際は言われるほどそうじゃないんじゃないだろうか。  最近のデータの中で、一番新しいのはまだ国際的な統計が出てまいりませんのであと二年ぐらいかかるようでございますが、その点を踏まえながら、本当に格差がない、平準化された、そして平等な所得が保障されて、国民はみんなそういうような状況になってきたから消費税を負担をするという理論形成が今なされようとしているわけですが、ジニ係数等で見る限りにおいては、どうやらそれは仮説にすぎない、だんだん崩れつつある。それはなぜ、どこから崩れてきたかというと、GNP匹敵をするそういう資産評価益富裕層の第五分位階層に属する人たちの手に集中をされている。そこから、消費購買力が貯水池から漏れるようなふうにして土地の買いあさりになり、あるいは遺産相続を節税をするためにワンルームのマンションをつくってみたりするようなことをやったりして脱税まがいのことをやったりしながら、そして、マイホームを持てない人は、今までためたやつでもうとにかく高い値段のやつを今のうちに買っておけというような格好になっている。そういうふうにして、資産処分ができた人たち消費拡大ができるけれども、それ以下の人たち消費が拡大をされない。なぜかなれば、賃上げも四%前後の姿である。こういうような姿が今日日本所得状態ではなかろうかということを私は今まで主張をしてきたのでございます。  したがいまして、今主税局長がお話しのように、所得が平準化されて、そして均質化されている、平等化されているという認識には立ちません。この点はもっと事態の推移を見ながら的確に判断をいただきたいのでございます。その点を申し上げておきます。  時間が迫ってまいりました。そこで、次は税の執行体制の問題でございます。  この前、企業が脱税をしているのが、所得調査をしてみたら一兆を超えるような脱税が見つかったという報道がありましたね。それからきょうの新聞にも、九割が所得ごまかしをやっている。こんなに歳入の規模も大きくなっていく、そして今言ったように、いろいろな節税の工夫をしながら、できるだけ税を出さないようにということで一生懸命やっている人たちもたくさんふえてきた。こういう中で、海外の取引との間において法人税を一円も納めないような大商社が発生をしたり、あるいは借入金を非常にふやして、そして所得税は一円も納めないような大きなホテルが出てきたりするようなのを私たちは聞くわけですね。  そうすると、そういうような海外まで査察をし、そして脱漏はないのかあるいは脱税はないのかというその姿を調べるためには、私は税務職員というものはこれはふやさなければならないと思っているのですよ。今まで総定員法とかいろいろな形において、そういう税務の執行の職員についてはふやしていない。内部のやりくりで財務職員を税務職員に回してみたりして、そして田舎の税源の少ないところから都市部の税源の多いところに回したりしながらやりくりをしているのが実態だと思うのです。  一体、その税の執行のあり方というものについて、これはどの程度税調あたりにおいて論議をされ、あるいはまた大蔵省内部の方において、そういうようないわゆる歳入を得るために、しかも、私はやはり、ごまかしを許して、うまくごまかしたのが得するというようなことになれば納税申告制度というのは壊れていくわけでございますから、よくないと思うのです。そういう立場で、その点についてはどういうような今日まで税の執行体制の問題について処理をされてきたのか、お伺いをしておきたいと思います。     〔海部委員長代理退席、委員長着席〕
  63. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 シャウプ税制の始まりは昭和二十四年、五年でございますが、あのころの税務職員の数は六万でございます。たしか、記憶しております、間違いないと思います。ただいま五万でございますので、一人当たりの徴収税額というのは格段に違っておることはもう申し上げるまでもないのでございますが、それだけ機械化、合理化ということも進んできたということ、努力がありましてやってまいったということでございます。  やはり国税というのは大蔵省だものでございますから、国庫大臣としての大蔵大臣という、そういうこともございまして、随分それは増員をしないようにしないように努力をしてまいって、あれこれ工夫をしてきておるのでございますが、その反面で、どうしても実査率が非常に落ちてくるというようなこともございます。村山委員のおっしゃいますように、ですから、税の執行の面でいろいろなそういう報道が幾つもある、あるいは不公平があるということ、そのとおりといえばそのとおりでございますが、何とかその五万という体制でやってまいりました。  できるだけふやさないようにと思って、もうぎりぎりいっぱいの努力をいたしつつございます。どうしてもやむを得ないときにはとは思っておりますけれども、また、昨年は国鉄の職員との関連で少しふやさせていただきましたが、何とか最小限でやっていってもらいたいという心構えでやっております。
  64. 村山喜一

    村山(喜)委員 今ここで急に執行の職員をふやしますということは言えない立場にあることはわかりますが、私は、やはりそこら辺は、目に余るような行為が平然として行われるようなのが国民の前に見えるのですから、もう今日一番信頼がないのはお互い政治家だと言われたら、私たちも申しわけない気持ちでいっぱいになる。それは、やはり課税すべき所得がありながらそれについては何にも課税ができないでおる、それは間違いだ。やはり法理論的にもあるいはまた人間の道理の上から考えてもそれはおかしいじゃないかというものは正していかなければならぬと思うのでございます。  時間がありませんので最後は意見だけ言いますが、実質的な公正というものを税制の中で確保していくためには、財産計算の裏づけがあって、そしてその所得と財産は毎年公開をする、そして所得税法や富裕税法の施行をもってしなければ正確な意味実質的な公正というものは確保できないと私は思っているのでございます。  そういうような意味において、今不公正税制という問題は、実効税率が法人税は日本の場合には高うございますと言われても、それは理論上の計算にすぎないじゃありませんか、実態の税率は、実際の税率はどうかということを追求しませんと、業種別にアンバラが出てきている、その業種別のアンバラを直さないで進めるためには、抜け穴をつくって、租税特別措置とかあるいはその他の法人税法上の措置をとらなければならぬ。いつまでもそんなことを繰り返しておったのでは、これは税に対する国民の信頼を失うことになりますから、私はその点についてはもう少し、美濃部さんの時代は、あれは革新系の知事がやったのでおれたちには関係ないというふうに思われないで、やはりそれに基づいて、そういう実態調査をした結果というものを今日に敷衍をしてみたら一体どうなるのだろうということぐらいは興味をお持ちいただかないと、これからの竹下総理がおっしゃるみんなが納得をしてやっていきましょうという世の中にならないのではないだろうかという気持ちを込めて質問をいたしました。  私の質問に対して総理の御所見があればお答えをいただいて、私の質問を終わります。
  65. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 村山委員の御意見を交えた御質疑というものは傾聴させていただきました。  私なりに同じ疑問を持ったことかたくさんありました。一例から申しますと、所得の種類十種類、しかしあれは突っ込んで勉強してみればみるほど、私は、タックスペイヤーの側に立った論理構成をするとやはりあれしかないのかな、そうすると、その中におけるいわばアンバラというものをどういうふうに処置していくかということではないかな、こういう私なりの意見、結論に到達したことがございますが、一つ一つ突っ込んだ御質疑でございましたので、引き続きそれぞれについて突っ込んだ御質疑を賜れば国民のために大変いいことじゃないかな、こういう感じをしみじみといたしたわけでございます。
  66. 金丸信

    金丸委員長 これにて村山喜一君の質疑は終了いたしました。  次に、玉置一弥君。
  67. 玉置一弥

    ○玉置委員 民社党・民主連合の一番バッターとして、今話題の不公平税制についていろいろ関連の質問をいたしたいと思います。  税金に対しての国民の意識というのは特にここ数年大変高まっておりまして、我々の所属しております大蔵委員会でも、税金に関してはいろいろな方々の御意見をいただいておりますし、政府の方も、日常の活動の状況を見ておりますと、業界団体を初めいろいろな地域、そういう方々から意見が届いているようでございます。  私ども国民の税意識という観点から見てまいりますと、税金に対してなぜこれだけ国民の関心が高まったのか、これは一つには税制そのものがやはり大きな問題を抱えている、こういうことが言えるかと思います。また、政策の裏づけといいますか、いろいろな政策を実施していく場合の裏づけ、財源の裏づけになるという一面もございます。またその逆に、どういうところがその政策を負担していくか、この負担に対する姿勢、こういう両面を持っている、こういうふうにも思うわけでございまして、そういう面で、余裕のあるときには、比較的国民の側から見ても税金に対しての姿勢はまだまだ甘い状況であったと思います。  今回総理府の調査が出ておりますけれども総理府の調査にいたしましても、昭和五十五、六年ごろに行われました調査あるいはそれ以前に行われました調査というものと今回を比較いたしますと、格段に国民の関心が高まっている、こういう感じを受けます。それだけに、逆に歳出面での評価というものも当然厳しくなっているのではないか。この調査はなかなかないわけでございますが、私はそういう感じを受けました。  そこで、この国会、政府・与党の方は税制改革の臨時国会である、何かこういう位置づけらしいお話を聞いておりますけれども、いずれにしても税の改定そのものは国会の論議を経て行われる、こういうことを我々税の法定主義ということで言っておりますが、政府・与党の姿勢を見ておりますと、国会の論議はどうも理論の整理というよりも、あるいは国民の意見の調整というよりも、一つの形式主義であって、この論議を形だけ経ればそれで済んでしまうんだ、こんな感じがいたします。  私ども昨日、党の中でこれからの税制をどう構えていくか、こういう論議をいろいろ各人意見を出してやりまして、一部新聞にも報道されましたけれども、やはり私どもは、国民の最大関心事であります税制につきましては、十分な論議をしながら国民の納得いくような形で決めていきたい、こういうことでございまして、従来から、税制に関してもしかり、審議拒否をしない、こういう形でやってまいっております。その辺をぜひ頭の中にまず入れていただきたい。  それから、憲法三十条にも書いておりますように、「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。」ということで、国民が納税の義務を負っているわけでございますから、その義務を負った人たちが納得をするというのは非常に大事なことであるし、我々から見ても今までの税制、これだけよく我慢したなというような、むしろそんな気持ちでございます。昔からクロヨンとかトーゴーサンとかいろいろな不公平を象徴する言葉がございまして、これをごく当たり前として我々も受けとめてまいりました。それだけに国民の中に不公平感がある、それだけ納税に対する義務感というのがおくれているのではないか、こういうふうに思います。  それで、これからの不公平税制の論議の中で、きょうはまずやはり国民の税の意識というものを明らかにしていきたい。税制改正について政府がこれだけ強い姿勢で取り組まれておるわけでございますから、それぞれいろいろな調査があったと思います。しかし、ふだん見ておりますと、大蔵省並びに国税庁調査そのものというものは余りなくて、むしろ新聞報道なり民間機関のいろいろなデータをお使いになっている、こういうような形でございますが、ごくまれに数年に一回総理府が調査をされる、こういうことでございますので、まずこの間行われました六十三年二月の調査、これは税制改革に関する有識者調査ということでございますが、この中身について具体的に、税制全般、直接税、間接税等に分けて調査結果の説明をまずいただきたいと思います。
  68. 高田朗雄

    ○高田政府委員 私ども総理府で行いました税制改革に関する有識者調査でございますが、これは本年の二月十三日から三月四日まで行ったものでございます。  主としてねらいは、国民の中の各界と申しますか、各分野の方々の違いによってそれぞれ税制というものについての受けとめ方あるいは考え方といったようなものに差と申しますか、一つの傾向に相違があるのではないかというようなことを考えまして、どういう結果が出るであろうかということを把握したいということでやったものでございます。  したがいまして、そういう各界というものを九つのグループに分けまして、学識者グループあるいは報道関係者のグループ、それから経済界あるいは労働関係、農林水産・自営業というグループ、それから中小企業の方々のグループ、それからサラリーマン、青年・婦人、税の実務家というようなグループに分けて行ったわけでございます。千名の方に郵送によって調査をいたしました。  内容につきましては、「税金問題に対する関心」それから「税制改革の必要性」、「現行税制問題点」あるいは「直接税の不公平性」というようなもの、それから「不公平の解消方法」ということについてどうお考えになるかというような問題、あるいは不公平解消のために間接税を導入する場合どうお考えになるかといったような問題等々につきまして、それぞれの層と申しますか、各界の方がどういう御意見をお持ちであるか、それを比較してその傾向を見るということで調査したものでございます。
  69. 玉置一弥

    ○玉置委員 まとめて調査結果というのはなかなかやりにくいと思いますけれども、一言で言うとどういう結果が出ましたか。
  70. 高田朗雄

    ○高田政府委員 項目が大変多うございますので、一言というのは大変難しゅうございますが、不公平の問題について申し上げれば、現在の直接税の不公平な点としては、「医者や宗教法人などが制度上優遇されている」とかあるいは「自営業者などに比べてサラリーマンの税負担が重い」ということを挙げた者が多いというような点がございます。  これは全部やると大変でございますので、よろしゅうございますか。
  71. 玉置一弥

    ○玉置委員 一言でというのはとても無理だと思いますけれども、それぐらいいろいろな問題点があるということでございます。  ちなみに、税金についての関心ということで見てまいりますと、六十一年と六十三年で比較をいたしますと、六十一年の方は七六・〇%の方が関心があるというような回答をされております。六十三年は九六・八%、ほぼ全員について関心がある、こういうふうに変わってきております。それから負担感につきましては、六十一年は七三・五%ありました。六十三年は五四・六%に減ってきております。これはやはり減税の効果ですかね。それから、不公平感につきましては六十一年八一・四%、これが六十三年には八四・五%というふうに、ほぼ横ばいでございますが若干上昇している。  こういう状況でございまして、関心については非常に高い。それから、政府の方でも必要性については大部分の方が必要である、こういうふうに強調されておりますが、そのとおりで、数字は出ております。それから「現行税制問題点」としては、「負担が重すぎる」「不公平である」「複雑でわかりにくい」「現在の社会経済情勢に適合していない」「その他」、こういろいろあります。こういう状態でございます。いろいろ申し上げましたけれども、税に対してはこういう状態でございます。  それからもう一つ、六十二年の十二月に調査されました中で社会意識に関する世論調査がございます。これは結果は六十三年五月でございました。これも総理府でございますが、これを見てまいりますと「社会的不公平・不平等感」についてというのがございまして、こういう中で最も不公平、不平等の感じの強いものは何か、このトップに「税制度」というのがございまして、これが八〇%、以下「所得格差」「学歴の偏重」「土地の所有」「大都市圏と地方圏の格差」その他、こういうふうに出てきているわけでございます。  こういうふうに見てまいりますと、今回の調査においても、確かに不公平、不平等という中でのトップに躍り出る税制、また国民の関心事からいってもこの税金問題というものが今非常に関心がある。そして報告の中にありますように、いろいろな問題点指摘しております。これをまず総理大臣大蔵大臣に、調査が出たか、ああそうかということじゃなく、どういうふうに受けとめて何をしなければいけないとお考えになりましたか、お聞きをいたしたいと思います。
  72. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まず有識者調査でございますけれども、これは先ほど総理府から御説明もありましたように、無作為抽出法の調査とは違いますので、文字どおり有識者を千人御意見を伺いましたので、私どもの持っている意識にどちらかというと近いということが申し上げられるのじゃないか。  例えばその特色は一言でありませんが三言ぐらいで申しますと、やはり今のは「不公平である」「負担が重すぎる」それから「間接税のウェイトを高める方が公平になる」、こういう答えで、私どもの意識に近いのでございますけれども、今度、無作為抽出法のいわゆる社会意識に関する世論調査になりますと、不公平ということと重いということ、それ以外のところは必ずしも一つの方向を示しておりません。どちらかといえば税制改正というものは、殊に新しい売上税あるいは消費税のようなものは、どうも余り賛成でない。ただ、今のままでよろしいのでしょうかということについては、今のままでいいとも思わない、こんなような意識と私は受け取っております。
  73. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 有識者調査の方で見ますと、大体いわゆる不公平感というものは皆さんがお持ちになっているんだなという意識はございます。ただ、中をいろいろ分析してみますと、先ほどの村山委員との議論じゃございませんが、それぞれの立場に立って公平の基準というものにはかなりの相違はあるなという感じがいたします。  この調査のときに、報告を私が聞くわけでございますから感じたことでございますけれども、例えば所得税が十九段階であった段階がたしか十四年ぐらいございます。したがって、先ほど村山さんの顔を見ながら、村山さんの在職年数の半分以上は十九段階のときにおりなさったんだな、私自身もそうでございますから、こんな感じで聞いておりましたが、そういう十九段階の中に割になれた階層と十九段階の中で非常な不公平を感じた階層と、これも今度は年齢層で分極化しておるな、そんなような感じを持って見た事実もあるわけでございます。  したがって、実際問題、先ほど来の御意見じゃございませんが、国民負担率も租税負担率も諸外国に比べれば低い、そして課税最低限は断然高い、が、それは国際比較の中では余り議論されないものだな、やはり身近なところにおける水平的公平と垂直的公平が一番こういう世論調査の中にあらわれてくる下敷きではないかな、こんな感じで見ておったことを素直に申し上げます。
  74. 玉置一弥

    ○玉置委員 今の税制度の調査の中で職業別に見ていきますと、管理職、事務職あるいは労務等いわゆる被用者、主体としてサラリーマン、こういう方々、あるいは商工サービス、自由業にも不満が多い。それから無職の家庭の主婦に強く不満があらわれている、こういうデータが出ているそうでございます。  それから、所得格差につきましてもやはり非常に不満がありまして、これは二十代後半、三十代後半の男性に多い。しかし、男性の場合はほぼ全般にわたって所得格差について非常に不満を持っている。これは税制との関係もありますし、企業格差、業種格差、こういうのもあると思います。また、女性は四十代までで、二十代前半、結婚しようかな、どうしようかなと思って働いておられる方については余り所得について関心がないけれども、結婚をあきらめてといいますか、言っちゃいけないのですかね、そうじゃなくて、仕事に専念をしていこうと決めた方については大体所得に対して不満を持つ、こういうのがデータで出ているということでございます。  それで、我々の方でも実際にいわゆる国民所得日本の生活レベルといいますか、こういうものを、先ほどのお話じゃございませんけれども、ついつい外国とやはり比較をするわけでございます。  ちょっと話が飛びますけれども国民所得だけで比較をいたしますと、確かに総理がおっしゃいますように社会保障、税ともに外国に比べて低いというデータが出ております。これは従来からずっと低いままで来ましたけれども、実は社会保障の負担率の伸びが非常に近年、諸外国の率よりもはるかに大きな伸びを示してきているということが数字上言えると思います。  そこで、今現在は大体両方合わせますと、税だけで二五・数%、社会保障負担で一一%ぐらいでございますから、三六ぐらいである。従来から大蔵委員会等で話をされておりますのは、まあまあいいところ四五、六じゃないかという、これは推測ですけれども、おっしゃいませんけれども、我々推測すると大体そんなものだな、こういうような感じを受けるわけでございます。欧米の方は、アメリカはまだ日本と同じぐらいでございますけれども、ヨーロッパの方は大体五〇%前後というふうに高い数字を示しておりまして、数字上見ますと平均的に一四%ぐらいの開きがある、こういうことが言えると思います。  そこで、本当に日本の私たちの生活が、それだけ負担が少ないから楽なはずなんですけれども所得もふえた、これは為替レートによって変わりますけれども、少なくとも今世界で一、二番の所得になっておりますね、一人当たりでございますが。これを見ていきまして、それだけ所得がふえているんだったら楽になっているはずだけれども、実際に私どもの生活感というのはそんなに楽ではない。これは何が問題か。負担感というのは、税、社会保障の負担がありますけれども、実際に生計費で見た場合にどういう開きがあるかという見方がございます。それから税外負担ですね。税外負担の中の社会保障費を除いて実際に目に見えてないいろいろな負担がございますけれども、こういうものを含めて見た場合に本当にどうなんだ、こういうことを知りたいと思いまして、きょうは企画庁長官にもおいでをいただきました。  まず、日本国民生活、特に生計費比較ではどういう水準にあるか、それをどういうようにとらえておられるかということをお聞きをしたいと思います。
  75. 中尾栄一

    中尾国務大臣 委員お答えしたいと思いますが、ずっと論理の流れを聞いておりますると、御指摘の面は一つ一つうなずける面は数多くあるわけでございまして、確かに実質的な日本経済成長率並びにまた日本の現行における国民生産等を諸外国と比較いたしましても、今やもう冠たるものがあることは御指摘のとおりでございます。しかし、それが即生活の豊かさに直結しないのじゃないのか、こういう御指摘でございますが、これは確かに物価の面、その他の面においてうなずかなければならないと、私もその担当の省の長といたしまして感ぜざるを得ない点がございます。  これはまた後ほどいろいろとお話もあろうかと思いますから、またそのときに申し上げるといたしまして、ただ全体的に見ますると、物価そのものあるいは経済そのものは大変にある意味においては落ちついておる。例えば六十二年度の十月から十二月期、それから六十二年の一月−三月期、これなどを比べますると、短観ではございますけれども、大体二・七%の伸び率を示しておる。四月−六月期ということになりますると多少ちょっとマイナスの寄与度にはなりましたが、そういう点においては経済はむしろ拡大路線から巡航路線に入っておる。これは間違いなく言えるんじゃないかと思うのです。  ただし、先ほど言いましたように、物価の価格差であるとか、そういう問題点においては確かに問題はあろうかと思います。なかんずく衣料であるとかあるいは生鮮食料品であるとか、そういう問題点も御指摘のとおりかと思います。そういう点におきましては、私どもも今から円高差益還元等をじっくりと通じまして、この格差是正に努めなければなるまいな。これは経済の方の立場から申し上げますれば、内外価格差の是正にもこれまた努めなければなるまい点だな。あるいはまた円高の傾向もございまするから、そのような面における格差もございますが、こういう点において私どものひずみを一つ一つなくしていく。  さらにつけ加えて言うならば、農業問題等におきましても価格是正にも努めなければならない。したがって構造調整もしなければならない。差益還元は言うまでもない。こういうことに相なりまするから、そういう点におきましては、種々の問題は今から、タイムラグの問題点もございますけれども、いろいろと片づけていかなければならないと思います。六割九分大体還元をされつつあるとはいいますものの、特殊に還元されているものがあっても、まだ全部にわたって行き渡っているとは思いません。そういう点におきましては、タイムラグの差はありこそすれ、こういうものにおける格差是正というものも鋭意努力をするつもりでございます。
  76. 玉置一弥

    ○玉置委員 わかりやすいようにちょっと順番を変えてやりたいと思います。  企画庁長官、ついででございますので、今ちょっと申し上げましたけれども、レベルの比較、この辺について企画庁にお聞きをしたいと思います。  これはいろいろな比較方法がございまして、例えば生計費比較というのが、これは一ドルが百五十五円のときに出たというものですから去年だと思いますけれども、去年の今ごろだったか、もうちょっと前ぐらいに出たものでございまして、これでいきますと、アメリカと日本と比較をいたしますと、日本の家計消費支出額というものがございます。これは一ドル百五十五円で換算をして出したものでございますが、日本の家庭が二十八万九千四百八十九円、アメリカの家庭が二十万七千八百六十八円で比率が七二%、こういうことになっております。それから西ドイツ、二十三万四千四百八十六円、比率は八一%。こういうことで見ていきますと、生活感というのはこれと全く逆になると思うんですね。実際の所得は高い、それで同じ生活をする、こうなりますと、アメリカと比較をしますと日本の場合七割の生活しかできない。西ドイツと比較をしますと八割の生活しかできない。ということは、それだけ圧迫されているわけでございますね。こういう比較が一つあります。  それから物価比較として、これは非常に難しいのですが、東京を一〇〇とした場合にニューヨーク、ハンブルク、ロンドン、パリ、こういうのがございまして、食パン、牛肉、こうずっとあります。それから衣料品、テレビ、カラーフィルム、ガソリン、いろいろございます。こう眺めてみると、工業製品については日本は比較的安いのですけれども、そのほかについてはとんでもないというお値段がたくさんございます。  こういうふうに見てまいりますと、非常に生活レベルも違うと思うのですね。日本の場合どこで満足しているか、ともかく物を買って満足しているようなところが結構あるみたいでございます。ところが、ヨーロッパの方へ行きますと古い物でも平気で飾ってあるし、それでともかく自慢は何かというと、先祖代々の物を持ってきては、これはいつの時代のどういうものでございまして、こういう自慢をなさっている。日本の場合は、これは高かったんだよという自慢がたくさんあるのですけれども、その辺までいくとちょっと物の考え方も違うし、生活様式も違うというのがあるのですが、単純に生計費を比較いたしますとこういう差があります。物価ではさらに日本が非常に高い、こういう数字が出ております。  こういうことで、同じ生活をするならばどのぐらい違うかというのが本当は知りたいのですが、何かそういうのはありませんかね。
  77. 中尾栄一

    中尾国務大臣 物価そのものを全般的にノーマルな形でそのステータスを出せと言うならば、御案内のとおり、日本は物価の優等生のドイツというところを抜いているような感じがいたします。物価の優等生であるドイツは一・四%ぐらいの物価高ではございませんでしょうか。アメリカが四・〇%ほどでございます。しかし、日本の国は〇・五%程度という消費者物価を今でも堅持しておる、あるいはまた卸売物価にしてはもう〇%を切るというようなところから見ますると、ある意味においては大変にいい路線を歩んでおるということは、もう現実に申せると思います。  ただし、委員大変に詳しく御説明を賜りましたけれども、全く御指摘のとおりでございまして、公に言いますならば、日本は大体、大まかに言って年間二万ドルぐらいの国民所得だ、こういう形をとっております。したがいまして、つい先般まではスイス、アメリカ、日本という順序でございましたが、今や日本、スイス、アメリカ、こういうような順序にまでなっておるということでございます。先ほど委員指摘のとおり、七二%、三%という数値を挙げられておりましたけれども、まさに日本の国はそういう意味においては二万ドルではない、一万七千ドルから一万六千五百ドルぐらいなんじゃないのか、そのぐらいの水準じゃないのか、こう言われますると、確かに全般的な公共料金の例えばガス、電力までも含めまして、あるいは衣料、肉、野菜等々を含めまして、その先生の御指摘は間違いないと思います。  しかし、このような中においても、私どもはしたがって向こう五カ年というものを、竹下総理も答申を受けられ、なおかつ指名をされたわけでございますけれども、向こう五カ年の中で、むしろ交通アクセスあたりも含めまして、一極中心主義的な東京、これを是正していきながら核多極分散型にして、地方分散型にしていくような形勢の中で、むしろ政令都市などの活性化をしていく、農村の活性化も次いでしていくという形において、潤沢な道というものをとっていくのが今からの経済政策ではなかろうかというのが一つの柱でございます。  そういう中にありまして私どもが考えておりますのは、やはり経済成長率は大体三・七五というのを向こう五カ年計画で考えておりますが、この方向でいいのじゃないだろうか。しかしそういう中にあっても、是正すべきは今言った価格差、内外価格差、これを例えばあらゆる見地において価格の是正というものを打ち出していくということのすべてをこれまた同時に相まって忘れてはならない。  あと一つポイントになりますのは、先ほども村山委員からも御指摘いただきました土地の問題でございます。一極中心主義なるがゆえに土地の非情な暴騰がある。かつては四畳半、六畳ぐらいのがずっと横につながっておったから長屋と言われ、これが今や縦につながっているからマンションともアパートとも言うだけの、見解としてはちっとも変わりはしないのでございますが、土地がそれだけ高くなりましたからそういう形になったのでしょう。  そういうことからいきますと、こういうものの全般的な交通アクセスを含めた是正というものが極めて大事なポイントであるということもあわせて申し上げておかなければならぬ、こう思っております。
  78. 玉置一弥

    ○玉置委員 ちょっと話が物価の方へ参りましたけれども、実は今の生計費比較を見ても、日本の生活は欧米の七割ぐらい、八割ぐらい、逆に言えば二割ぐらい余計に負担しているということになると思います。先ほど村山先生からもそういう話があったのですが、我々としては、税、社会保障負担だけではなく、欧米のいわゆる生活レベル、そういうものから比較をしても日本国民がいろいろな面で負担を強要されている。こういう部分については、税、社会保障以外の負担として見ていかなければいけないと思います。  もう一つは、その物価の中で、いろいろあるのですが、政府が関与されている物価統制といいますか物価に関する政府の規制というのがございまして、例えば農産物、米、小麦、牛肉、砂糖、乳製品、乳製品も何か北海道と本土では大分値段が違うという御指摘もいただいているようでございますが、あるいはエネルギー、それから運輸関係の鉄道運賃、バス、タクシー、航空、電気通信、たばこ、酒、流通、大店舗ですね、この辺については政府が関与している業界である。これについての物価というものがございまして、大体概して言いますと保護的に、産業対策としての傾向が非常に強くて物が高いと言われておる、こういうことでございます。そういう面からいきますと、本来は国民が、利用者が負担するということではなく、産業政策として見ていく部分であるから歳出面での負担増加ということになろうかと思いますが、これがいわゆる料金、料率によって要するに保護されている、こういうことになると思います。  そういう部分を考えてみて、先ほどおっしゃいました欧米より低いという話でございますが、二割ですからまだ若干低いかと思いますけれども、そういう面からいくと、そんなに数字上、税、社会保障負担だけで欧米との比較をするというのは、確かに総理も単なる比較ではないという考えもお持ちですけれども、だめだと思いますけれども、いかがでございますか。
  79. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 単なる比較として、国民負担率が低く租税負担率が低い、こういうことを申しました。それはそのとおりでございますが、今おっしゃいました二つの点、そういう税ないし社会保険料としての負担のほかに公共料金というのが一つございます。この差というのは、やはり私は国土の実情等々からいった場合のコストというものが影響しておるんじゃないかというふうに思います。  それからもう一面は、やはり物価そのものではなかろうかと思うわけであります。その物価につきましても、いわゆる公共料金的価格のものとそうでないものとがございますが、私も農産品の中で感心いたしましたのは、欧米と比較して大体変わらぬのは卵の値段です。何でかと思って、私は面積だけで変わらないのかと最初思っておりましたら、この間数を調べてみましたら、卵を産む鶏が一億三千五百万羽、それから肉の鶏が、ブロイラーでございますが一億六千五百万、大体計三億おるな。卵は一人が一日に一つずつ消費し、そして鶏の場合は大体十人で一羽ずつ食っているのかな、こんな計算をしてみましたが、これはちょっと農政の成功であったのかどうかわかりませんけれども、別の問題としまして、あとの問題というのはやはり土地というものが一番大きな影響の上で、物価問題というものがいわば租税負担、国民負担率の別の負担としてあるんじゃないかな、こんなささやかな勉強をしておりました。
  80. 玉置一弥

    ○玉置委員 大蔵大臣、同じようなことでございますけれども、今数字上の話で、いつも大蔵委員会でも話が出ております。いわゆる社会保障負担あるいは税負担以外の負担、この辺についてカウントするのは非常に難しいと思いますけれども、少なくとも単なる比較ではなく、そういう生活の実感というものも含めての租税負担率というものを決めていかなければいけないと思いますが、いかがでございますか。
  81. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その場合どういうふうに考えてまいりますか、例えば可処分所得の中で、ローンの返済であるとかそういったようなものを可処分と考えるか、そうでないかといったようなこともございますから、それはやっぱり国々で違うのだろうと思います。
  82. 玉置一弥

    ○玉置委員 実は私もサラリーマンをやっているときに家を買いまして、ローンを払ったら食べる分を忘れていたぐらい払ってしまいまして、一時生活ができなかったときがあったのですけれども、ローンというのは固定的に二十年間ぐらい続くものですね。それで土地、家ともにということでございますけれども一つはどんどんみんな買って、要するに核家族という状態ができたわけでございます。それも「ふるさと創生論」によって地方分散しようということでやっておりますけれども、なかなか進まない。進まないし、片方では上がってしまって今さら買えないという方も大分おられるわけで、だから非常に格差が拡大したという感じがします。今から考えると、私はその当時は六割ぐらいをローンに払って、四割で生活していたのですけれども、そういうことができたのですね。ところが、その後の人というのは今度は買うにも買えないという状況でございまして、そういう意味ではこれはまた別の問題で、単なる可処分所得をふやしたくらいじゃなかなかできないのですね。  我々もよく減税のとき申しておりましたのは、税金の伸びは可処分所得の伸びの三倍いっております、こういうふうな話をしていろいろ減税をしていただきましたけれども、我々としてはそれ以外に生活感から来る負担感、これはやはり軽減していくようなことをぜひ政府に対して要望したいと思います。  そこで、ごく部分的な話でございますが、先ほど申しました特に政府関連の規制の中にありますもの、こういうものについての物価が高いというふうに言われております。実際いろいろ調べてみましても、確かにヨーロッパとの比較もそうでございますし、類似品の国内のもの、そういうものと比較してもそういうことになりますが、これに対して政府はどういう対応をするおつもりか、お聞きをしたいと思います。
  83. 中尾栄一

    中尾国務大臣 新あるいはまた旧前川レポートと申しましょうか、少なくとも私どもはその前川レポートの路線に沿って今からの経済運営はなしていくべきだろうな、このように考えております。これにはやはり国際的なある意味におけるスタンダードレベルに私どもの国というものの基本線を持っていかなければならない。  それには一つは規制緩和、あと一つは私どもの内需拡大を中心にして外需を減らしていくという路線、あと一つは何といいましても一番私ども問題点でございます市場の開放という点もあるわけでございます。しかし、市場の開放という問題におきましては、各国とも、アメリカに農産物におけるウエーバーがあるがごとく、日本にもやはりこれまた譲るべきものと譲るべきでないものとあるということを考えなければなりますまい。そういう意味におきましては、私どもも相当な数においていろいろな抵抗があっても、それをむしろリベラライズしていく方向に努力を傾注したことも事実でございます。  このような形において価格差というものの是正、あるいは国別価格差、これもやはり方向別格差として考えていかなければなるまい。こういうものを全体含めて私どもは、先ほどの公共料金的なもの、政府ででき得るものというものは規制緩和をある意味における基本的な角度のメジャーの中に置いて、そしてこれに鋭意努力をしていくということは極めて大事である。これは世界的水準の中において日本がやっていかなければならない前提条件でもあろう、このように考えておることも申し添えておきたいと思う次第でございます。
  84. 玉置一弥

    ○玉置委員 ありがとうございました。経済企画庁長官につきましては大体これで終わりますので、いつでもどうぞ。  それでは、大蔵大臣がおられませんので、国税庁にお聞きをしたいと思います。  国税庁伊藤さんにお聞きしますが、税制の不公平と言われる内容、先ほどからいろいろ論議をされてまいりました。執行面での不公平、これは一つは申告制度のあり方というもの、あるいは申告と源泉徴収の間の捕捉の差、いろいろな問題があります。それから法人税関係もいろいろ言われておりまして、特に労働組合関係からの指摘というのがあるわけでございますが、その他自営業のいわゆる経費等の証明ですね。各税務署で申告の中身を見ながら精査をされまして、否認をされるというのがあります。否認をするというのは、これはだめだよ、こういうことですけれども、だめだよという基準が一定であればいいのでございますが、その都度若干振れているような感じがするわけで、仲がいい人ほどいいのかなという気もしますけれども、そうじゃないでしょうね、公平だと思いますが、その辺の執行上の不公平感について、この辺について国税庁に聞けば多分ないと言うと思いますけれども、どういうふうにとらえているか、お聞きしたいと思います。
  85. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 お答え申し上げます。  言葉としてクロヨンという言葉はよく使われますけれども、私どもといたしましては何といいましょうか、職種別にそういった数字での差があるというふうには考えておりません。ただ、そうはいいましても、実際に実地調査等を行いました場合に、問題があるケースもあることもこれまた事実でございます。その意味で、そういう業種別に九、六、四とかいうようなことではございませんけれども納税者の中には、必ずしも申告制度の趣旨を十分御理解していただいておられない方もおられるということもこれまた事実でございますので、そういった方についてはいろいろな対応でもって私どもとしても対処しておる。  御案内のように最も悪質なもの、大口なものにつきましては査察をもって対処いたしておりますし、一般的なケースにつきましては通常の調査で対応する、あるいはそのほか指導等々ということで、問題になり得るケースあるいはなっておるケースにつきましては、その是正にいろいろな手段をもって対処してきておるつもりでございます。  それから、二つ目の自営業者における調査の際の公平の問題という点でございますけれども、これは全く一人一人のケースケースに即して、正しい所得は何であるかということを納税者の申告をベースにしながら、しかし私どもなりにいろいろな資料から、こういう点はどうでしょうかというような疑問点をぶつけ合い、それに対する反論をまたお聞きする、そういった中で何が正しい所得であるかということの心証形成をしていくということでございます。  御質問の趣旨は、調査官あるいは納税者によって執行の程度に差があるんじゃないかということかと思いますけれども、私どもといたしましては、行政が同じ程度の悪さといいましょうか同じ程度のよさといいましょうか、納税者の方において仮に同じ程度に悪いのであれば、それに対応する我々の行政も同じ程度でなければならないということで、そういったことを具体的に何でもって担保していくか。一つは、いろいろな意味で通達をもって、根っこには当然法令がございますけれども、法令の解釈あるいは執行につきまして各種通達を出す、あるいはいろいろな証拠の認定の仕方についても、各種の研修等を行うことによって行政の質の均一化を維持していくように努力しておるということで、結果として行政の質の内容における平等といいましょうか、公平ということも確保してまいっておるつもりでございますが、今後ともそういった点については努力してまいりたいというふうに思います。
  86. 玉置一弥

    ○玉置委員 ほかにも申告の書式が非常に複雑であるというのがございますし、例えばさっきもちょっと申し上げましたように、引当金、準備金、その他いろいろありますが、その利用度合いが業種間あるいは大企業、中小企業によって違う。知っている人は知らない人より節税といいますか、よく利用できるわけでございますけれども、この辺がなかなか受け止め方として不公平というふうに映っているみたいでございます。私はそのこと自体は別にそんな不公平だと思わないのです。勉強しない方が悪いのであって、本当は利用した方が得ですから利用すればいいのですけれども、なかなかそうはいかない、こういうふうな実情らしいのでございます。  我々から見るとというよりもむしろサラリーマンから見るとということでございますが、現在の申告制度と源泉徴収制度、先ほどのクロヨン、トーゴーサンというお話でございますが、いわゆる申告制度と源泉徴収制度の間の不公平感、これがサラリーマンの本来の税に対する不公平じゃないか、こういう感じがいたします。  そこで、これまた逆から言えば、いわゆる自営業の方から見ますと、サラリーマンは各種控除が多いじゃないか。今標準世帯で課税最低限二百六十一万ですか、今度何か上がるらしいのでございますが、二百六十一万も控除されて非課税だ。控除はもっと少ないですけれども課税だ。ましてや基礎控除、何やら控除といっぱいあります。今度はありがたいことに配偶者特別控除というのができますけれども、こういうものもできてくる。こういうのがいっぱい出てまいりまして、そっちの方が不公平じゃないか、こう言う方もおられるのですね。びっくりしましたけれども、実際におられるようでございます。そういうことからいきますと、いわゆる申告制度と源泉徴収制度の間のいろいろな不公平というような感覚でとらえておられるのではないか、こういうような感じがいたします。  これをより接近をさせようということでいろいろ今までやってまいりまして、片方では各種控除の引き上げをやってまいりました。それから、ことしからでございますが、いわゆるサラリーマンの実額控除ですね、こういう制度が入りました。こういうことで、かなり政府の方も積極的に前向きに取り組んでこられました。これは大変評価をしております。しかし、これ以上接近するというのはとても無理ではないかという感じがいたします。  そこで、私ども従来から二分二乗方式というものを何回も、竹下大蔵大臣の時代も申し上げましたし、宮澤大蔵大臣の時代も何回かそういうお話をさせていただきました。ところが一向に話が進まない、こういうことでございまして、今の例えば、これは多分捕捉の問題だと思います、あるいは制度上の問題もあるかと思いますが、申告制度と源泉徴収制度の間におきます不公平の問題、今みなし法人課税の問題もいろいろ出ておりますけれども、これもこういうところから来ているわけでございます。きょうは申しませんけれども、そういう面で世帯単位の課税をやれば大体こういうところが解決できるわけでございますから、こういうものができないのか、この辺をお伺いしたいと思います。  ちなみに、私ども試算をいたしましたデータがございまして、夫婦子供二人、この辺で計算をいたしました。これでいきますと、給与収入が大体五百万ぐらいまでは税率がほぼ同じでございますけれども、それを超えますと二分二乗方式の方が税率、要するに家庭の受ける税負担が軽くなります、こういうデータが出ております。五百万を超えて八百万のゾーンから安くなってくる、こういうふうなことが出ております。  先ほどのみなし法人課税の中でも今までの話が出ておりましたけれども、片方の、事業主の給料を取らないで奥さんにたくさんかぶせるとかということで法人にするとか、要するに法人税の方が高いという一つの傾向がございましたから、そういうふうな操作をしているとかいろんなのがあるわけですね。保育料が安い方がいい車に乗っているとか、いろんな話も聞いておりますけれども、そういうものが大体こういうふうに二分二乗方式という所得税の方法をとれば解消していくことができるのではないか、こういうふうに思いますが、いかがでございましょうか。
  87. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その問題は税制調査会でも御議論があり、世の中でも玉置委員の言われますようにそういう御議論がございます。  なぜ二分二乗なのかということなんでございますが、まず実際問題としましては、二分二乗いたしますと恐らく共稼ぎをされる世帯はどちらかといえば不利になるのでございますね。そこで、これからの我が国のあり方を考えますと、殊に若い方はだんだん共稼ぎが多くなる、どうもこれは必然と思われますが、その場合に、この二分二乗というのはそれに対して税の方でややブレーキをかけるようなことになりますものですから、それがいいだろうかどうだろうかということがございます。  そしてもう一つは、やはり税というのはそういう意味では稼得者一人一人のものではないのか、夫婦だから一緒という考え方はそれでいいんだろうかというような疑問もございますし、結局、しかし片稼ぎといいましても配偶者、普通奥さんでございますが、その貢献というのはもとより無視できないということから、配偶者特別控除をふやしていく方がいいというふうに私どもは考えたわけでございます。しかし、いろいろ御議論のありますことは承知をいたしております。
  88. 玉置一弥

    ○玉置委員 諸外国の例、ちょっと資料が見当たらないのですが、アメリカ、西ドイツあるいはフランス、イタリアもありましたか、いろんな国で二分二乗方式と選択方式というのがございますね。いわゆる日本的なこの所得税の方と二分二乗方式を選択できます、こういう国がアメリカと西ドイツだったと思いますが、そのほかの国は選択はできない、しかし、ちょっと甘いものになっています。そういうのを見てまいりますと、今大蔵大臣おっしゃいましたけれども、要するに共働きをすると損だというような話は解消できるわけですね。  それで、逆に今の配偶者特別控除を拡大していきますと、大蔵大臣も絶えずおっしゃっておりましたし、昔、竹下大蔵大臣のころもおっしゃっておりましたけれども、独身者が損をするという形になります。損をするというのは言い方おかしいですけれどももともと目的が違いますから多少いいんですけれども、実際差ができてしまう。  そういうふうに考えていきますと、確かにそれはもう何をとってみても税制というのはそんなものだと思うのですね。何もかもうまくいくような税制があれば、国民に対してこんな不満感が生じないわけでございますし、我々としてもこんなに毎日毎日大蔵委員会で税制論議をやって、それでも問題の種が尽きないというのは、やはりいろんな不満があるからでございまして、だからそういうものは、もうこれはしようがないというふうに割り切って考えていけば、ある程度のところで手を打っていただきたいという言い方は変ですけれども、新しい時代の流れでございますからぜひ考えていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  89. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 何か大蔵委員会のときの延長のような気も若干いたしますが、率直に申しまして独身者のある種の重税感というものがありますが、扶養家族とかそういう出費の要らない間は、全体のライフサイクルの中ではむしろそれ相応の税を納めて、そうしてだんだんだんだん各種出費が重なる時期になって、それがもろもろの控除によって優遇されつつ、最終的にはお互い完全な消費者、消費オンリーになっていくわけでございます。私も間もなくその年齢に達するわけでございますけれども、そういうライフサイクルからいえば独身者の方のおっしゃることについては疑問がある、こういう議論も随分いたしたことが確かにございます。  今おっしゃいました二分二乗の問題につきましては、今大蔵大臣からお答えがあったとおりでございまして、いろいろな勉強はいつもしながらも、こういう現行の長い間なじんだ税体系の中ではむしろ共働きが不利になる、こんな結論で今日に至っておるわけでございます。  諸外国も、やってまた途中やめたり、またやったりといろいろな変化があるようでございますが、したがって税というものは、だれしも不公平感というものはとかく自分中心に考えがちなものでございますので、適当な機会で手を打つという表現はお互い適切でないかとも思いますが、いわゆる適当な時期にお互いのコンセンサスを得る、こういうことはやはり税制の論議の中ではいつも考えていなければならぬことではないかな。これが絶対だというのはなかなか難しい問題だといつも考えておるところでございます。きょうのような問答を通じながらお互いのコンセンサスが形成される、そのことが最もとうといことじゃなかろうかなというふうに思っております。
  90. 玉置一弥

    ○玉置委員 二分二乗方式はおっしゃるようにいろいろな国々でかなり実施をされておりまして、外国でやっているということですね。特にアメリカ、ヨーロッパですね。  今政府の方で導入しようとしております消費税、これは大型間接税を欧米でやっているからやりたい、こんな話だったと思いますが、欧米でやっているからやりたいというのが一つあります。片方は、欧米でやっていてもやらないというのがあります。どっちなんですかね、物の考え方としては。
  91. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 やはりいいことはどこがやってもやらなくてもやる。
  92. 玉置一弥

    ○玉置委員 いいか悪いかと決めるのは国民だと思いますけれども、一応いろいろな面でぜひ検討をしていただきたいと思います。  話を次に移したいと思いますが、有価証券譲渡益課税、これは私ども政策担当者会議の中でも一時いろいろな論議がございました。私もあのとき初めて税金を取る側に回ったような気がしましたけれども、実は初めての経験でございまして、減税財源を探せということでございました。六十三年度の減税財源、我々の準備したのが何か渡辺政調会長の方から見ると少なかったようでございますから、何とか探せ。ああでもない、こうでもないといろいろな論議をしてまいりまして、そのときにもこの一部の財源として今回の有価証券譲渡益課税、こういうものが出てきたわけですね。あのときもつくづく思いましたけれども、やはり取る側に回ると、取りやすいところから取ろうかなというのが気持ちとして出てくるのですね。ふだん我々批判しているのですけれども、税金は取りやすいところから取るのかということを言っておりますけれども、何となくそういう立場になりました。  そのときいろいろ論議をしたわけでございますが、最近の証券、債券、この辺の市場の拡大というのは異常と言っていいほどの大変な膨らみ方でございまして、特に六十一年以降ここ三年間、定着をするくらい規模が拡大をしてまいりました。今までは有取税によってかなりカバーできているな、金額からいきましてかなり出ておりますから、そんな気がしていたのでございますが、有取税も大変膨らんでまいりました。しかし、一般的にかなり大もうけされた方が、株でたくさんお金をせしめた方がふえておりまして、それを見た方々がぜひこの辺を何とかすべきじゃないか、こういうことで今回の有価証券譲渡益課税という問題が出てきたと思います。  政府の方も、今回政府の改正案という形の中に、原則課税という形での改定が打ち出されてまいりました。私どもが従来から有価証券譲渡益課税というもの、いわゆるキャピタルゲイン課税についてやろうというふうに思っておりましたのは、かなり細かく把握をしながらいわゆる譲渡益についての課税をとりあえずやろう、それから将来は総合課税で損も益もやはり課税対象にしなければいけないだろう、こういうふうな感覚でいたのでございますが、今回申告分離課税というような形あるいは源泉分離課税というような形、この二通りの選択制にされておりますが、まず、なぜ選択制にされたのかということが一つと、それから申告分離課税の場合には捕捉体制をどうするのか、この辺についてお伺いをしたいと思います。
  93. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まず、このたび御提案いたしましたことの背景に、原則的にひとつキャピタルゲイン課税をさせていただこうということがございますが、その際、今の行政の現状で申しますと、株式の譲渡、売り買いというものを行政がえこひいきなく、まんべんなくとらえられるかどうかという行政側の体制には十分でないところがございます。したがいまして、それは納税者番号とかあるいはカードとかいうこととの関連をどう考えるかという、税制調査会が小委員会をつくって今検討をしておられるそういう一つの制約がある中で御提案をしたわけでございます。  本来ならば御本人が申告をされて、そしてキャピタルゲインとキャピタルロスを計算なされるのならば、それで申告をしていただいてもよろしゅうございますが、中には取得価格がおわかりにならないというか、過去のことになりますからはっきりされないという方も、これもこのごろは大衆が投資をされるということを十分考えておかなければいけませんので、そういう方もある。その場合には、源泉分離であればこれは間違いございませんから、そういうことであろう。  つまり源泉分離の場合には、これは市場の取引でございますから、証券会社がきちんとしておりますれば源泉分離ということは自動的に行われますので、それでそういう選択を設けた。中に、いや自分はキャピタルロスがあって、その方が大きいんだという方もあるかもしれません。その場合にはむしろ申告分離を選択されれば、これはキャピタルゲインはないということになりますが、もちろんその場合、そのロスをほかの所得から引くということは、それはひとつ認めないということでございますけれども、そういうことでございます。
  94. 玉置一弥

    ○玉置委員 今のを聞いていると、もうかった場合は源泉分離でやれ、それから損したら申告分離でやれ、基本的にはそういうことですかね。
  95. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 必ずしもそう申し上げたわけではございませんでしたが、一般論としてならば源泉分離の方が簡単と申しますか、自動的に源泉で徴税ができますが、いや自分はそうでないんで、キャピタルロスがあるとおっしゃれば、これはもうそういう道はつくってさしあげなければいけないということかと思います。
  96. 玉置一弥

    ○玉置委員 今の現行制度では、ロスが生じた場合、分離課税ですから、申告制のときはまとめてゲインとロスですね、これを出していけば調整していただけるのですか。要するに現行というか今度の制度ですね。
  97. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 現行制度におきましては原則非課税でございますので、譲渡によりまして損が出ても、それは損としては扱わないというのが現行制度でございます。  それから提案申し上げている制度におきまして、ただいまの申告分離の方式の場合におきましては、申告分離ということではございませんで、今回原則課税となりましたので、所得税の法律そのものの中に、証券会社を通じてお売りになるときには、証券会社に対しまして住民票その他の公的書類を提示して氏名、名称、住所、そういったものを告知していただく、証券会社からは今度はそれが支払い調書として税務当局の方にお出しいただく、これが把握体制となっているわけで、これが所得税法の本則に入っているわけでございます。  それで、今回申告分離という形をおとりになった場合でも、この把握体制の本則的なシステムは本則どおりでございます。それを申告分離でございませんで、その取引につきましては源泉選択を行われるという方につきましては、その氏名、住所の告知、それから証券会社から税務当局への支払い調書の提出、これは適用がない、そのようなシステムとして御提案申し上げているところでございます。
  98. 玉置一弥

    ○玉置委員 ロスとゲインの……。
  99. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 ロスが発生しているときでございましても、御自分としてはその支払い調書、告知義務が適用になる申告分離の方式は選択されないということであれば、たとえ取得価格より下回った部分でございましても、御自分はその売却価格の五%の二〇%ということで一%の源泉選択を御適用になる。それはもうその部分五%が必ず利益としてみなされるわけでございますから、それはロスが発生しているという場合には該当しない。たとえ売却価格が取得価格を下回っておりましても、そちらを選択されれば、それはロスではなくて五%が利益として扱われる。しかし、それは自分としてはやはりロスとして出したいということでございましたら、その源泉選択の方は選択されない。そうすると、申告分離課税でございますから、その譲渡益はロスとして出される。しかしそのロスはほかの所得と通算されることはない。  と申しますのは、いろいろ取引をやっておられて、利益の上がっておる方は全部源泉選択で一%でいき、ロスの部分だけはそれを適用しないで申告分離にされますと、ロスだけが表に出てきて、そのロスがほかの所得、極端な話、給与所得等と通算されてそちらからの税額がむしろ還付になる、それは適正でない。と申しますのは、必ずその方の一年間の譲渡による利益、損失が通算されておれば、それはそれとして一つのシステムになりますが、その都度選択ができて、利益のある部分は源泉選択、そうでない部分は申告分離ということになっておりますと、申告分離でお出しになってきたものをほかの所得と通算して場合によっては還付、そういったことはこの段階としては適当でないということで、ロスとしてお出しになればその部分は、もちろんほかの株式の譲渡の取引との損益は通算できますけれども株式の譲渡の世界で通算した残りの損失は、それはほかの所得とは通算できない。ロスはロスとしてそれだけのものにとどまる、そういうことで御提案を申し上げております。
  100. 玉置一弥

    ○玉置委員 何か全然わからないのですね、説明が。  簡単に聞きます。まず、株式同士の中で一年間は選択制は片方しかできない、こういうことですね。要するに申告分離を選んだら一年間は申告分離、源泉分離を選んだら——違うの。違うらしいですね。違うんですか。それをまず……。  それからもう一つ株式同士の売買の中で、例えばこの前は損をしました、今回は得をしました、年間トータルで通算をするときに通算をして申告をするのか。源泉分離の場合はその都度ですね。そのかわり源泉分離の場合は要するにロスはとらないという話ですね。とらないということは返してくれないということでしょう、一つは。今まで例えば個別に利益が上がった部分がございました、片方は損した部分がございました、もうかったやつからは取るけれども損したやつは知らないよ。これが一つ。  それからもう一つは、申告分離制度の方でございますが、申告分離制度の中では、年間トータルの申告をして、利益の部分については課税対象で、ロスについては非課税——非課税というのは変ですけれども課税対象の税額からロスの分を引けるのかどうか、その辺についてお伺いしたいと思います。
  101. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 選択はその取引ごとで結構でございますから、その年の中で源泉選択を適用になった取引については、それはその都度結果として一%の源泉徴収をお願いをする。それは利益が出ている場合でも実質的にロスの場合であっても、源泉選択の方を適用になった個別の取引は常にその五%が利益と扱われ、その結果として一%の源泉徴収が行われる。すべて源泉選択を御選択になったケースは利益あり、五%の利益であるというふうに適用をさしていただけるわけです。  それはロスの場合でも五%とみなしますが、二〇%の場合でも五%の課税を適用、選択できるということでございます。  したがいまして、一年間の部分につきまして全部申告分離というふうではございませんで、個々の取引におきまして源泉選択を選ばれた以外の部分の譲渡につきましては、申告分離全体を通じまして幾つかの取引がございます、それは源泉選択を適用しなかった取引の世界では損失の部分と利益の部分とは合算されまして、結果として利益がある場合には二〇%の税率での分離課税をお願いをする。損失でありましたら、それは損失ということだけでございまして、もちろん納税部分はございません。普通の所得課税でございますとほかの所得と通算はされて、ほかの所得を食い込んでまいりますけれども、その食い込みはないということでございます。
  102. 玉置一弥

    ○玉置委員 委員長もなかなかわかりにくいようでございますから、もうちょっとわかりやすい説明をお願いしたいと思います。  簡単に言えば、もうかったやつからは税金取るけれども、損した部分は非課税という形にはなりますと。ロスの部分を還付するということはない、一言で言えばそういうことですね。
  103. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 源泉選択を適用されなかった部分以外の取引につきましてロスになりましても、それはロスとして扱わない、非課税ということ。そもそもロスでございますから課税はございませんし、さらにそのロスはほかの所得に食い込むことはない。そこは仕切ってあるということでございます。  それは先ほど申し上げましたように、必ずその取引の都度ではございませんで、全体が通算されていればほかの所得と通算することも考えられますが、今申し上げましたように、源泉選択とそうでない部分とがそれぞれ任意に選択されることになっていますので、そうしますと損だけを出してくるというようなケースにつきましては適正でないということから、こうした方式のもとではロスはほかのものと通算することはいたさないということにいたしているところでございます。
  104. 玉置一弥

    ○玉置委員 ますますわからなくなりましたけれども、まあそういうことらしいんですね。  それで、もう一つわからないのがございまして、実は我々の論議の中で、創業者の株売却益については非課税という形が今度課税だ。ところが我々の論議の中では強化していこう、こういう話がございます。今回の改正案の中で読んでみても、その創業者利益についてはどういうふうにするというのを書いてないのでございますが、この辺についてはどこでそれがわかるのですか、ちょっとお聞きしたいと思います。
  105. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府が提案申し上げました改正案では、創業者利益というものを特別に扱うという考え方には立っておりませんでした。したがいまして、それは普通のキャピタルゲインと、普通の扱いになるわけでございます。  しかるところ、その後起こりましたいろいろな事案あるいは国会における御議論等々で、そうはいっても創業者利益というのは非常にゲインが大きいではないか、それでもそんなことでいいのかという御批判がありますとともに、しかし創業者利益であるから、これはただ大きなゲインがあったということだけではなく、やはり市場経済においてはこれは厚く遇されなきゃいけない部分があるだろうということがございまして、それならどのぐらいの課税が相当かということにつきましては、ただいま国会でも当委員会でまさにいろいろ御議論がございますものですから、私どもその御議論の推移を見守っておるということでございまして、普通並みではいけないであろうということは、私どももその後のいろいろな事案にかんがみ、あるいは御議論にかんがみて検討いたしつつございます。
  106. 玉置一弥

    ○玉置委員 創業者というのは、確かに一番安いときに手に入れているわけでございますから、過大な利益が出てくると思います。そういう意味では、株売却の基本的な姿勢からいきますと、やはり強化というか、本当はみんな同じじゃなくて、例えば取引高によって率を変えるとか、そういうのがいいと思うのですね。あるいは利益額ですね、そうでないとおかしいというふうな感じがします。  そこで、まだあるのですが、とりあえずカード制についてお伺いをしたいと思います。  納税者番号制度というのがございます。これは利用している国がたくさんありまして、これまた外国でやっているというものなんですね。これで見ますと、いわゆるキャピタルゲイン課税、捕捉ということもございますが、その他全般にこのカード制の採用というのがあるようでございまして、例えば、これはキャピタルゲインだけではなくて全般の税制に関する納税者番号制度ということでございますが、アメリカ、カナダ、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、イタリア、こういうところで使われているようでございます。その番号も、アメリカの場合は社会保障番号、カナダも同じく、あとは税制上の統一コードというような納税者番号、こういうようなものでやっている、こういうことで把握をされております。  例えば、今の株の話もそうでございますが、これから一つ資産課税の強化というもの、先ほどというか従来から消費所得資産の税のバランスというものをとっていかなければいけない、こういう話を総理大蔵大臣ともにおっしゃっております。そういう姿勢からいきますと、資産の把握、これもやはり考えていかなければいけないし、また税制改正のマル優の改正がございましたけれども、そのときに五年後、ですからことしからいいますと四年後には総合課税への移行を検討したい、こういう話もございました。そういうことはマル優だけが総合課税になるということではないわけでございまして、いろいろな諸制度がそれぞれそういう総合課税の方向に検討されていくのではないか、こういうふうに思います。     〔委員長退席、海部委員長代理着席〕  そういうふうに考えていきますと、従来の分離課税体質というのは、その都度把握をして、そこでその税負担分というのを取ればいいわけでございますけれども、総合課税になってまいりますと全般を通じた統一的な管理番号、管理体制というものが必要になってくると思います。そういうことから考えていきますと、やはり番号を利用したいわゆるカード制、そういうふうなものに移行せざるを得ないのではないか、こういうふうに思います。それについてどうお思いになりますか。これは総理大蔵大臣ともにお答えをいただきたいと思います。
  107. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その支払いカードのことでございますが、税だけの見地から申しましたら、それは国民がみんなそういうカードを持っておられて、それで取引が行われましたら、これはもう税の徴収からいえば大変に便利でございます。それは疑いがございません。  ただ問題は、これはやはり国によってその国の歴史といいますか経験があるのだと思いますが、アメリカはおっしゃいますように社会保障の番号を使っております。これもしかし社会保障の番号が始まりましてからかなりたちましてから、これを税金にも使おうかということになったようでございますが、あの国は歴史でもって国民が政府から非常に強い権力で締めつけられたという経験を持たない国民でございますから、割に受け入れやすかったのだと思います。  その点では、せんだってもどなたかエッセイストが書いておられましたが、納税者番号というようなことを思うと軍隊時代を思い出すという、我が国にはまたそんな歴史があったりするものでございますから、国民がどう考えられるかということはよほど慎重にしなければならないことだと思います。  税だけであるのか、それが自然によそへも及ぶのか、その番号を付さない取引というのは経済取引として無効であるのかとかいろいろなことがございますので、それは税制調査会の小委員会で今検討していただいておるところで、税だけからいえばこれは大変に便利でございますけれども、それだけの見地からこれを決めてまいるわけにはまいらないと思います。  それで、玉置委員の言われますのは、しかし所得税というのは本来総合が本則なのであるから、できればそういうことをすれば総合しやすい。さようでございます。さようでございますが、そうでなくても、例えば支払い者に支払い調書の提出を義務づけるというようなことをかなりやりますれば、その資料で税務署側が総合の資料を持てるわけでございますが、それは取り扱いの煩瑣なこととの結局トレードオフになるということではないかと思います。
  108. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 全く大蔵大臣から申し上げたとおりでございます。  が、ただ玉置委員も私も思い出さなければいかぬと思いまして、今ちょっと思い出してみましたら、例のグリーンカード制度、あれはそもそもはマル優は残すが、仮名あるいは金融機関の窓口をたくさん利用するとか、そういうことがあってはいけないから限度管理をしようということで始まって、御賛成をいただいて五十五年の三月三十一日に法律は成立したわけですね。しかし、やはりその後いろいろな問題が起きたのは、その国の言ってみれば一つはプライバシー、こういうことでありますが、今大蔵大臣から申されたかつての別の手帳のイメージとかいろいろなこともございまして、結果としては五十九年一月一日施行、すなわちカードの交付申請は五十八年の一月一日からしようというその直前になって、お許しをいただいて別に政令で定める日まで延期をして、そして租税特別措置で今度は三年延期をしておいて、六十年三月に制度そのものを廃止した。  こういう経過を振り返ってみますと、にわかにこれでいきましょうという踏み切りというのはなかなか難しいな。しかし、そこでちゃんと、今お話があったように、それこそ小委員会の方で、これは証券取引に限定しての話でございますが、勉強してやろう、こういうところへ来ておるんだな、そういうふうに私も思っております。
  109. 玉置一弥

    ○玉置委員 総合課税の完全な把握をしようと思えば、それこそ番号制でなければできないと思うのですね。少なくともコンピューターを使う場合は名前と生年月日だけでは非常に不正確でございまして、管理番号というのがなければ非常に紛らわしく迷いやすい。だからその都度個別に手計算で処理をしていかなければいけない。これは私自身がやっていましたからよくわかるのですけれども、そういうことなんですね。だから必ず内部では統一番号というのがあるはずなんですね。そういう意味で考えていきますと、いずれそういう形になるのであれば、また総合課税という形で考えていかなければいけないということであれば、番号制というものをやはり念頭に置いて検討していくという姿勢が必要ではないか、こういうふうに思います。  そこでまず、大規模に構えて私も別に言っているわけではないので、実は金丸委員長おられたら、金丸委員長がやめさせたのじゃないですかと言いたかったのですね、本当は。金丸さんと春日さんがお話しされて我々の首根っこを押さえに来まして、いや本当、覚えているのですけれども、そういうことがございまして、それで廃止になったのですね。あれがなかったら今ごろこの番号制度というのはできているのじゃないかという気持ちもございまして、ぜひ残っていてほしかったのですが、おられないようでございます。  いずれにしても、総合課税のときの把握について、捕捉の仕方、これについてどうされていくのか、こういうのが一つ。  それから、今証券カードというお話がございましたけれども、証券カード、それから何々カード、こういうふうに徐々に拡大をして、それを統一的に使っていく、こういうふうな段階方式と言っているのがございます。そういうのが一つ。  それから、大口、小口というのがございまして、例えば、今は大口株式売買というのがどのぐらいになるかわかりませんが、普通の庶民からいいますと大体一万以上、一万一株以上ですか、その辺が大口じゃないかと思うのですが、その辺というふうにある程度ある層を切ってみて、そこから上だけを把握をする、捕捉をする、こういう方法もあるかと思います。  そういうふうにいろいろ工夫していけば、私はそう別にプライバシーを侵害するわけでもないし、まして税制にというか、国税庁には守秘義務があるわけでございますから、税金以外に使うということであれば問題でございますけれども、そうでなければそういう問題も生じてこない、こういうふうに思いますので、まず証券カードあるいは大口取引カードといいますか、そういうようなもので把握ができないかということ、それから総合課税に移行した場合の把握はどうするのか、この辺についてお伺いしたいと思います。
  110. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 今回御提案しておりますのは、原則課税を本則としては御提案しております。ですから本則としては、総合課税を予定しておる把握体制の法制化をお願いをしようとしておるわけでございまして、それは一般的には、証券会社等に対しまして、譲渡対価の支払いを受ける際には住民票の写し等の公的書類を提示して氏名、名称を告知していただく、証券会社の方は、それをもとに税務当局に支払い調書の御提出をお願いをするということで、所得税の本則体系では総合課税を前提としつつ、このような把握体制をとっておるところでございます。  仮にすべてが総合課税になりました場合にも、法制的には恐らくこうした体制でいく。ただ、そこで住民票を御提出願い、氏名、名称の告知をお願いをするというときに、納税者番号制度あるいはカードといったものが導入されておれば、その番号をお願いをするという方がコンピューター等による管理が容易になろうかということは想像されるわけでございますが、現在そこまでの法制化の内容には至っておらないわけでございます。  もう一つ次に、証券カードといったようなものから入り、各種の金融資産なり資産所得なりに段階的に入っていくという方式はいかがかということでございますが、一般的に申し上げますと、金融資産というのは極めて流動的でございます。わずかな金利差等をも判断して自由に弾力的に動くものでございますので、一部の金融資産の世界にこうしたカード制度といったものを適用を願って順次ということは、その点は金融資産間のバランスに響いてまいりまして、金融資産全体に不要な移動等を起こさないかという心配が感ぜられるわけでございます。  それから、そのような資産所得と申しますか、金融資産の種類でございませんで、大口、小口、まず一般的に小口のものもすべて含めてお願いをするのか、一定以上の大口のものについてまずお願いをしつつ段階的に入っていくのかということにつきましては、まだ税制調査会でもそこまでの具体的な検討は着手されておりませんが、一つのお考えではないかという気がいたします。  いずれにいたしましても、税制調査会は先般ヨーロッパとアメリカに実地調査団を派遣いたしまして、それが九月に調査を終わっているところでございまして、そうした調査結果等を踏まえて、今月小委員会を再開して検討を深めていただけるものと思っておりますが、そうした場合には、仮に仕組むとすればこういう仕組みがあり、その場合に大口、小口、そういったものから段階的に仕組んでいく、そうしたものも含めて仮にお願いをするとすればといった場合の仕組み、そういったものについても御検討がされるのではないかと考えております。
  111. 玉置一弥

    ○玉置委員 いつも税制調査会の答申が出てからとか検討が終わってからということでございまして、それまで何もしないのですかね、大蔵省は。確かに政府の諮問機関ということでございますけれども、諮問機関が物を決めるまで何も動かないというのは変でございますから、やはり問題ありと思う場合、これからの方向性がある程度出てきているわけでございますから、その辺について鋭意検討をお進めをいただきたいと思います。  それから、総合課税になった場合に現行マル優制度、マル優制度は一応大きなやつは廃止でございますけれども、財形とかいろいろ若干老人のものが残っておりますね。この辺がどうなるのか。存続するのかアウトになるのか、これの方はまだ検討されてないですかね。一つの方向性は出ているかどうか。
  112. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 マル優制度は、貯蓄の優遇制度ということで戦後始められたものでございますが、昨年いろいろ御審議願いましたときにも申し上げましたように、それが結局個人貯蓄残高の七割近くをこれによって非課税とする、利子所得金額にすれば十六兆円という巨額な資産所得を非課税とするような制度になってしまったわけでございますので、こうした点から、貯蓄の非課税制度といったものを基本的にお願いをするということで制度改正をお願いしたところでございます。したがいまして、番号制度が仮に導入されたという場合におきましても、こうした貯蓄のほとんど七割にも達する本質的な非課税制度といったものが、果たしてこれを復活させるということが適切かどうか、その点につきましてはなお十分な御検討をお願いをする必要があろうかと思うわけでございます。  ただ、昨年の改正のときに、先ほども指摘のございました附則におきまして、五年たったところで見直しを行うということでございますが、これはとにかく課税をお願いをする。それは一五%の分離課税でお願いをしましたが、これを総合課税への移行をも含めて見直しを行う、そのような附則を議員修正でお願いをしたところでございます。したがいまして、一般的なマル優の復活ということではございませんが、そうした見直しの方向につきましては附則で御指示をいただいたところでございます。
  113. 玉置一弥

    ○玉置委員 今、源泉分離に一応なっていますね、マル優の部分。それが総合課税になりますと、今より税率の低い部分については、言ってみればマル優の復活みたいなところがあるわけですね。高いところについては、いわゆる総合課税でございますから高い税率で取られる、こういうことですね、簡単に言えば。だから、言えばこの現行残ったマル優制度も総合課税の中に含まれてしまえば崩壊かなという感じがするのですけれども、ただ多分そういう方々は所得はないですから、そういう意味では存続かな。だから、存続というとらえ方をしていいのか廃止というとらえ方をしていいのかちょっとわからなくなった。そういう意味でちょっとお聞きしたわけです。だからいいです。  それで、時間の関係でちょっと飛び飛びになりますが、とりあえず企業税制についてお伺いしたいと思います。  それで、本来予定としてはタックスヘーブンからいろいろ外国税額控除、そういう問題に入っていくのでございますが、厚生大臣ずっとお待ちをいただいておりますので、集中してそこだけまずやりたいと思います。  実は、今まで過去予算編成の時期になりますと必ず出てまいりましたのは、いわゆる医師の承継税制、こういう話でございました。我々聞いておりますのも、従来出てきたんだけれども、最近どういうわけか、シーリングが厳しいからか余り出てこなくなった、こういう話を聞いております。たしか昭和二十七年に医師優遇税制ができましたときに、本来は社会保険診療報酬、こちらの改定をやろう、こういう予定でございましたけれども、なかなかその改定が難しい。これは点数の問題もありますし、一点当たりの単価の問題もございますし、技術評価をどうしていくかとかいろんな問題点があったと思いますが、こういう問題がありました。そういうのがもう既に三十五年たっているんですね、二十七年から。三十六年でございますか、たっております。  医師優遇税制というのは五段階の経費率がございまして、所得によって変わっていく。今回政府の方から変更が出されておりますけれども、しかしそれでもまだまだ庶民の間では医師の優遇税制というものに対する批判が非常に強いわけです。我々もいろいろな問題点としてとらえておりますが、その問題点の中に絶えず出てまいりますのは、一つは、診療報酬の改定等その当時の課題が本当にどうなったんだ、こういう話でございまして、まずその診療報酬等その当時、昭和二十七年当時出されました課題、これが今現在どういう状況になってきたのかということをお答えをいただきたいと思います。
  114. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 ただいま御指摘になりました税制の創設の前後のいきさつを若干申し上げてみますと、昭和二十六年の十二月に診療報酬の点数改定がございました。単価の改正がございました。その際に日本医師会あるいは日本歯科医師会の主張した点数単価の改定と政府が実施いたしました改定とが開きがございまして、診療担当側の委員からは不満が表明され、その後この問題が後に残ったわけでございます。  そこで、政府といたしましては、昭和二十六年分の所得税の経費率の特例を設けることといたしまして、経費率七〇%程度ということで実施をいたし、昭和二十七年分も同様の措置をとったわけでございますが、二十八年分にこの措置を廃止いたしまして、二十九年に議員提案による立法で、現在の租税特別措置法の内容の基本となった経費率七二%というものが実施されたわけでございます。  このような経緯を踏まえまして、その後診療報酬単価は二十六年に改定されて以来据え置かれておりましたけれども、三十三年の十月に一点単価十円ということで新しい診療報酬点数表になって、その後今日に至っておるわけでございます。  この間相当の回数にわたりまして点数表の改正がございましたが、その間医学医術の進歩あるいは社会経済情勢の推移等に応じて、その都度中央社会保険医療協議会の御審議を経て改定を行ってきておる次第でございまして、現在までにそういう税制との関連も考慮しながら、時代に合った診療報酬に改定してきているという次第でございます。
  115. 玉置一弥

    ○玉置委員 我々の税制論議の中で不公平税制、特に医師優遇税制の話がよく出てまいります。実態はきょうは触れないつもりですから、これはこういう話だというふうに聞いているとお考えいただきたいのですが、要するに市街地ですね、人のたくさん集まる、患者さんの多いところにつきましては青色申告を使った方が得だ。それから、いわゆる過疎地といいますか周辺ですね、離島ですか、そういうところも含めてでございますが、無医村もありますからね、そういうところになりますと医師優遇税制を使った方がいい。これはやっぱり状況が大分変わると思うのですね。  それから、私もある会社で値段を決めている方でございましたけれども、値段というのは少なくとも三年ぐらいに一回変えていかなければいかぬ。これは技術革新もございますし、それぞれ単価がかなり大きく変わってまいりますから。それを今までの改定の年数から見ていきますと、これはお医者さんがみんな文句を言うのは当たり前だというくらいほうってあるわけですよ。ところが使い方によってはもうかっている人もいる。これは本当にどうなっでいるのですかね、厚生大臣。我々もよくわからないのですよね。確かにわからない部分がたくさんあるから非常に不公平感を持っている人がおりますし、ある地域の所得の上位十人のうち六人がお医者さんだった、こういうのもあります。そういうことを考えるとやっぱり何かあるんじゃないか、こういうような気がするのですね。  だから、問題点が解消されたのかされてないのかというのは今の御答弁でよくわからないのですが、その当時の要するに税制関連の問題点としては解消した、こういうように受け取っていいですか。
  116. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 大変難しいお尋ねでございまして、当時のいきさつ、ただいま申し上げましたように、診療担当側の主張と政府の主張と食い違っておりまして、その中からこの税制が出てきたわけでございます。その後の改正につきましては、やはりこういった税制の存在も踏まえながら、そのときどきの医学医術の内容あるいは社会経済情勢の推移に応じて改定してきております。  この問題についての解消というものが完全に行われたか行われないか、これは直ちに検証というような形での解明というのはなかなか困難であろうと思いますが、いずれにいたしましても税制自体は現存しておるわけでございますし、そういったものとの関連も踏まえつつ、この診療報酬の改定がそのときの状況に応じて行われてきているということになろうかと思っております。
  117. 玉置一弥

    ○玉置委員 まだわからないですね、できたのかできてないのかというのは。  大臣、ちょっと済みませんが、今我々の不公平税制の論議の中で医師優遇税制というのがございます。しかし、我々としてもさっき申し上げましたように、今の税制で対応できる人はもう本当に、逆に言えば医療関係で非常に苦労して地域を持たれている方が非常に多いわけですね。その人たちが恩恵をこうむっているだけで、むしろ市街地の方々は青色申告を選択している、こういう状況です。しかし、いずれにしても今の税制そのものがこういう大ざっぱな経費率を決めて、えいやでやるというのはおかしいわけですから、むしろ実態に即した中でやらなければいかぬ。その中で診療報酬につきましての早くの改定を前から言われているわけですが、これが一向に進まない、こういう状況でございまして、これがやられなければ私どもは医師優遇税制に手をつけられない、そういう感じがするわけです。  診療報酬改定なり、要するに二十七年のころの約束事がもう既にクリアされているのかどうか、この辺について大臣としてどういうふうにお考えになりますか、お答えいただきたいと思います。
  118. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 租税特別措置制定当時の事情につきましては、政府委員が答弁いたしましたとおりでございまして、要するに診療報酬の決め方と租税特別措置、これはセットで行われた。私ども立場というのは、この税制中身を議論する立場ではございませんで、国民の健康を守る、そういう立場から適切な医療を提供するために医師に対してどういうふうに対応していくかということが我々の立場でございます。  その立場からいたしますと、医師の公共性が非常に高い。公定料金であるとか、それから他の事業と異なりまして病床数も規定されているとか、それから四六時中患者から言われますと診察しなけりゃならぬとか等々、他の事業に比べての極めて高い公共性を考えまして、今の税制が適当なものであるという見解をとっておるわけでございまして、委員質問の最初に決められた、セットした内容が今解決したかどうか、こういう点については議論の分かれるところでございますし、我々としてはお答えを差し控えたいというふうに思っております。
  119. 玉置一弥

    ○玉置委員 議論が分かれても、厚生省は厚生省の意見があると思うのですね。医師優遇税制そのものが今これだけ強い口調で批判されておりまして、我々はどっちかといえば弁護しているわけです。これはなぜかというと、診療報酬の改定をやらなければならない。やはりその作業が進まなければ我々だって手がつけられないと思っているわけです。そういう意味で、これはもともと成り行きがそういうところから発生してきたわけでございますから、そのこと自体が納得できなければお医者さんだって継続して医療を続けていくことはできない、こういうふうに思うわけで、これについて逆にこちらから厚生省にお伺いしているわけです。そういうことでございますので、お答えできないというのは困るのですよ。お答えしてください。
  120. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 私はお答えを申し上げたつもりでございますけれども、重ねて申し上げますと、厚生省の立場からいたしますと、医師の極めて高い公共性にかんがみまして、現在の税制は至極適当なものであるというふうに考えておるということでございます。
  121. 玉置一弥

    ○玉置委員 聞き方によると、話し合いがつかないから当分このままでいいんじゃないか、こういう感じで受け取れました。  そこで大蔵大臣にお伺いをしたいと思いますが、その前にもう一つ厚生大臣に承継税制の方で。  これ以外に実は歯科そして普通の医師というのですか、歯科医師、医師の関係で税制上のいろいろな問題点がございました。しかし、今いろいろ生じておりますのは、お医者様が高齢化されまして息子に譲りたい、あるいは親戚の方とか違う方に譲りたい、こういうことがあるかと思います。そのために一人法人というのがあるのですけれども法人化すると何となく法人に財産を取られ、自分のものでない。これは先ほども林業の話が出ておりましたけれども、同じなんですね。山を持っていても会社をつくったら会社のものだ、確かにそうですけれども。そういう面で、承継税制というのは中小企業の場合つくっていただきまして、今回も改正の中に一部、若干よくしていこうというようなことがございます。  そういう意味で、我々も医師についての事業承継という意味での承継税制のお願いを従来からしていたのでございますが、また逆に医師会なり歯科医師会の方から再三そういうお話がございまして、一時はもうできそうなところまで行ったのですけれども、何か話が立ち消えになったということでございまして、今現在の検討状況はどうなのかということと、これから本当にやる気があるのかないのか、こういう聞き方は悪いですかね、その辺についてお伺いしたいと思うのです。
  122. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 医師の承継税制の問題でございますが、我が国の医療を取り巻く環境というのはさま変わりしてまいっておるわけでございまして、今後の医療を考えますと、プライマリーケア、つまり家庭医的な機能を充実していくということが極めて大事な問題になってくるというふうに我々は考えているわけでございます。このプライマリーケアを担っておる方々は開業医でございまして、この開業医の動向がそれじゃどうなっているかということになりますと、今言われましたように、開業医の高齢化の問題とか若い医者が勤務医志向であるとかいうことによりまして、全体の医師の中に占める開業医の割合は年々低下をしてきておる。こういうことでございますから、我々の考えているこれからの医療の大きな問題点から考えてみますと、これは非常に問題だということになるわけで、開業医がその事業の承継を円満にするために我々としては当然支援をしていかなきゃならぬ。  この一環で一人医療法人の問題もあるし、今御指摘の医師の承継税制という問題があるわけでございまして、これはぜひとも関係者の皆様方の御理解をいただきまして、せめて中小企業の皆さんと同じようなレベルまでにこぎつけたい。それによって国民の健康も守れるし、また医療費の適正化という問題も可能になってくるということも考えられるわけでございまして、ぜひ医師の承継税制の実現につきましては全力を挙げていきたい、かように考えておるところでございます。
  123. 玉置一弥

    ○玉置委員 今は厚生大臣にお聞きしましたけれども、今の診療報酬に絡む医師優遇税制の問題、それから今の承継税制の問題、この辺について大蔵大臣にお伺いをし、また全般についての御意見を総理にお伺いをして、質問を終わりたいと思います。
  124. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 診療報酬の課税の問題でございますが、ただいま政府が御提案を申し上げております改正案でも、実は従来の優遇制度によります歳入の減額は九百億だそうでございますけれども、このたびの改正によってそのうち六百億円がいわば戻ってくると申しますか、ですからかなり大幅な改正でございますので、私どもとしてはこれをもってしばらく様子を見させていただいてはどうであろうかという気持ちを持っておりますけれども、なおこれにつきまして各方面の御意見に注意深く耳を傾けてまいりたいと思っております。  それから承継税制のことは、今度は御承知のように小規模宅地、事業用の場合には六割減額でございますので、これはかなり思い切ったことをいたしたつもりでございます。相続税の最低課税限度も引き上げておりますので、かなりお医者様にもそれは楽になっておると思いますのですが、かたがた一人法人の問題もございますので、何とかこれでやっていただけないものだろうかと私といたしましては思っておりますが、なお厚生大臣がどういうお考えをお持ちでいらっしゃいますか、また承ってはみたいと思っております。
  125. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 いわゆる医師の優遇税制問題について、特に承継税制の問題にお触れになりました。  昭和二十六年の暮れに、あれはたしか法律じゃなく通達で七二プロというのができて、それで二十九年に法律になったというふうに聞かされております。ちょうど二十四年、五年、六年、七年が池田大蔵大臣でございまして、その秘書官であった宮澤現大蔵大臣がその間の事情は詳しくて、私もお聞きしたことがございますが、ただ七二プロの理論的根拠ということには、ちょっと私も定かにこれを分析するだけの能力はございませんでした。それで、その後ずっと変化をしてまいりまして、今度はこの改正案を今御説明のようにお願いし、そして承継部門につきましても、相続税の改正のところと、それから二百平米の住宅部分のところと、あそこで私はかねて御主張なすっておる承継の部門は、この原案の中で御審議いただける状態が整っておるなというように思っておるところでございます。  ただ、もう一つ自身わかりませんのは、これも厚生大臣に聞いてみようと思っておりますけれども、あの当時の人口当たりの医師の数と、今たしか人口六百七十人当たり一人とかいう数でございますから、それでもまだ三百何十人のところも国によってはございますですけれども、あのころは恐らく千人を超しておったんじゃないかなというような社会的変化もあるなというようなことで、先般来その問題を勉強さしていただいておるところでございます。
  126. 玉置一弥

    ○玉置委員 さっき時間を間違って十分早目に言ったので、言ったからには終わりますけれども、実はきょう準備しただけでもまだまだ赤字法人関係とか企業税制とかいろいろございます。  今までの税制論議の中でいろいろ出てまいりましたけれども、不公平項目として我々だけでも大体二十五項目ぐらいとらえておりまして、きょうは本当のその一部を皆さんにお尋ねをしたわけでございます。やはりいろんな税務調査等、実際実務を担当される方はもっと厳しく感じておられると思いますけれども国民の中で不公平感があるということだけで重税感につながってくるというふうに思いますし、例えば税金だけじゃなくて、いろんな心理的な要素あるいは自分の生活の実態といいますか、こういうようなものも今の国民税制に対する不満というものにつながってきている、こういうふうにも思うわけでございまして、ぜひ時間をかけて御論議をいただきますようにお願いを申し上げまして、私の質問を終わらしていただきます。
  127. 海部俊樹

    ○海部委員長代理 これにて玉置一弥君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る十一日火曜日午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五分散会