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1988-10-06 第113回国会 衆議院 税制問題等に関する調査特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十月六日(木曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 金丸  信君    理事 加藤 六月君 理事 海部 俊樹君    理事 瓦   力君 理事 羽田  孜君    理事 藤波 孝生君 理事 加藤 万吉君    理事 村山 喜一君 理事 二見 伸明君    理事 米沢  隆君       甘利  明君    池田 行彦君       小沢 辰男君    尾身 幸次君       片岡 清一君    岸田 文武君       熊谷  弘君    志賀  節君       鈴木 宗男君    田原  隆君       谷  洋一君    谷垣 禎一君       玉沢徳一郎君    中川 昭一君       中島  衛君    中村正三郎君       西田  司君    野田  毅君       葉梨 信行君    鳩山由紀夫君       浜田 幸一君    原田  憲君       堀内 光雄君    宮下 創平君       村山 達雄君    谷津 義男君       山口 敏夫君    山下 元利君       伊藤  茂君    緒方 克陽君       川崎 寛治君    坂上 富男君       沢田  広君    中村 正男君       山下洲夫君    坂井 弘一君       坂口  力君    橋本 文彦君       水谷  弘君    宮地 正介君       北橋 健治君    玉置 一弥君       和田 一仁君    工藤  晃君       正森 成二君    矢島 恒夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  竹下  登君         法 務 大 臣 林田悠紀夫君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣 中島源太郎君         厚 生 大 臣 藤本 孝雄君         通商産業大臣  田村  元君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     梶山 静六君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 高鳥  修君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      中尾 栄一君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 内海 英男君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     梅澤 節男君         公正取引委員会         事務局官房審議         官       糸田 省吾君         警察庁刑事局長 中門  弘君         総務庁行政管理         局長      百崎  英君         経済企画庁調整         局長      星野 進保君         国土庁長官官房         長       公文  宏君         国土庁土地局長 片桐 久雄君         法務省民事局長 藤井 正雄君         法務省刑事局長 根來 泰周君         大蔵省主計局次         長       篠沢 恭助君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省証券局長 角谷 正彦君         大蔵省銀行局長 平澤 貞昭君         国税庁次長   伊藤 博行君         文化庁次長   横瀬 庄次君         厚生大臣官房総         務審議官    末次  彬君         通商産業省産業         政策局長    児玉 幸治君         資源エネルギー         庁長官     鎌田 吉郎君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       向 準一郎君         中小企業庁長官 松尾 邦彦君         自治省財政局長 津田  正君         自治省税務局長 湯浅 利夫君  委員外出席者         参  考  人        (日本銀行総裁) 澄田  智君         地方行政委員会         調査室長    大嶋  孝君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ───────────── 委員の異動 十月六日  辞任         補欠選任   小沢 辰男君     中島  衛君   中川 秀直君     谷津 義男君   原田  憲君     鳩山由紀夫君   堀内 光雄君     谷垣 禎一君   宮下 創平君     尾身 幸次君   坂上 富男君     緒方 克陽君   野口 幸一君     沢田  広君   玉置 一弥君     北橋 健治君 同日  辞任         補欠選任   尾身 幸次君     宮下 創平君   谷垣 禎一君     堀内 光雄君   中島  衛君     小沢 辰男君   鳩山由紀夫君     原田  憲君   谷津 義男君     中川 秀直君   緒方 克陽君     坂上 富男君   沢田  広君     野口 幸一君   北橋 健治君     玉置 一弥君     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  税制改革法案内閣提出第一号)  所得税法等の一部を改正する法律案内閣提出第二号)  消費税法案内閣提出第三号)  地方税法の一部を改正する法律案内閣提出第四号)  消費譲与税法案内閣提出第五号)  地方交付税法の一部を改正する法律案内閣提出第六号)      ────◇─────
  2. 金丸信

    金丸委員長 これより会議を開きます。  内閣提出税制改革法案所得税法等の一部を改正する法律案消費税法案地方税法の一部を改正する法律案消費譲与税法案及び地方交付税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題とし、質疑に入ります。  この際、お諮りいたします。  各案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁澄田智君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 金丸信

    金丸委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     ─────────────
  4. 金丸信

    金丸委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沢田広君。
  5. 沢田広

    沢田委員 本日は、日銀総裁にはお忙しい中おいでをいただきまして、まずもって厚くお礼を申し上げます。  先般、先進国会議に、大蔵大臣は行かれなかったようでありますが、おいでになりました。その際、累積債務問題などについては宮澤提案なるものも発表されたようであります。その効果があったのかどうか疑わしいというようなことも言われておりますが、まずその点御報告国民の前へしていただく、こういう立場で、会議の結果について御報告を願いたいと思います。
  6. 澄田智

    澄田参考人 ただいまの御質問に関して、私の感じましたことを申し上げさしていただきます。  現在、世界主要先進国経済は、予想を上回る好調な経済拡大でありまして、そういう点について各国認識をともにいたします。そうして、インフレの懸念につきましても、欧米各国でとられました金融措置等によりまして、現在差し迫った状態ではない、こういうような認識でございまして、したがいまして、先進各国としては、現在のような経済を今後とも継続をしていく、そうして各国間の対外収支の不均衡を是正していく、これが肝要である、こういうことに相なって、この点は、今までの会議の折に比べまして、今回は比較的問題は少なかった、こういうふうに認識をいたしております。  一方、債務国の問題、発展途上国に対する開発援助問題等につきましては、経済大国としての日本に対する期待が強く、そうして日本提案というものが多くの関心を呼んだ次第でございます。  日本提案の中には、IMF融資と並行いたしまして、中進国債務問題に対応する手段といたしまして、日本輸出入銀行のパラレルローンと申しまして、IMFローンと並行してローンを出す、こういう構想を述べたわけでありますが、この点につきましては、ほとんど全体一致しての評価というものがあり、ぜひこの制度を有効に活用してもらいたい、こういうような空気でありました。  一方、新しい提案といたしまして、債務国の、これも中所得債務国でありますが、債務国自助努力前提として、そうして債務国債務の一部を証券にかえる、いわゆる証券化を行うとともに、残りの債務についてはこれをリスケジュールを行う。これはいずれもケース・バイ・ケースに従って、マーケットを重視しての対策である。そういう対策としての、いわゆるメニューアプローチと言われておりますが、そういうメニューアプローチ一つとしての提案、これが世上宮澤提案と言われるものでございます。そうして、その債務国外貨準備をもって準備勘定IMFに設ける、なお将来の貿易収入等をさらに積み立てることも考える、こういうことによって債務元利の履行の保証を行う、こういうような構想でございます。  この構想に対しましては、その具体的な適用というようなものが今後どういうふうに行われるかということに対して期待を持ちながら、なお今後具体的な内容をさらに詳しく詰めていく必要があるのではないか、こういうのが一般的な空気であったように承知をいたしております。  簡単ではございますが、以上でございます。
  7. 沢田広

    沢田委員 それで総裁、きょうは大蔵じゃありませんので税制の方でありますが、今、株が大変値上がりをしていたり土地大変値上がりをしている。税制の方でも、こういう暴騰によってどう税をとらえてどういう税制が、いわゆる課税が国民的に望ましいのか。国民から見ると、遠い夢のまた夢という状況土地取得も家の取得もだんだんなってきておる。やはりこれは政治責任でもある。同時に金融責任もあるんじゃないか。  現在、四百兆ぐらいのマネーサプライになっています。この一年間に一一%、四十兆円、日銀券が大分出ておる。これも言うならば、金余り現象と一口に言っておりますが、その状況によって醸し出された、あるいは不動産屋地上げ屋金融機関が金利が低いからどうしても無理して金の貸し付けをやっていく、その悪循環の中にこの株の問題も起きあるいは土地の問題も起きてくる、こういうことは否定できないことじゃないかというふうに思います。今のところ百三十三円ぐらいの相場でおりますが、百二十円台は一応通り過ぎた、峠であったはずですね。ですから、その意味においてはもう少し土地抑制というものについて、あるいは地上げ屋などに対する融資規制、こういうものはもっと徹底的にやっていくという必要性があるのではないか、さもなければこの土地というものの値上がり国民生活を破壊してしまう、こういう意味においての金融行政責任というものは大変大きい、政治の力、税金の問題だけではない、こういうふうにも理解できるわけでありますが、総裁はどのように御認識いただいているでしょうか。
  8. 澄田智

    澄田参考人 最近の地価あるいは株価の形成に金融が関係しているのではないか、金融緩和の結果ではないか、こういう御指摘でございますが、金融緩和が影響しているということは、私は事実であると申し上げざるを得ない、こういうふうに思います。  ただ、これはよく御承知のことと存じますが、最近の地価に関しましては、殊に大都市における地価に関しましては、こうした金融要因のほかに、経済社会国際化が進んでいるあるいは情報化が進んでいる、そういうもとで大都市への機能集中というようなことが大規模に見られたということも少なからず影響している、こういうふうに思います。また、株価につきましても、そのときどきの景気国内景気あるいは企業の業績、さらには海外の株式相場といったような動向もまた大きく影響しているということも事実でございます。このように地価高騰株価動向について種々の要因が複合的に作用しておって、これは必ずしもひとり金融緩和のみに帰すべきものではない、こういうふうに考えておる次第でございます。  申し上げるまでもなく、私ども金融緩和政策を続けておりましたその原因は、我が国経済にとって最大の課題である対外均衡是正のためには、株式相場の安定を図るとともに、金融緩和によって内需の拡大を図ることが必要である、こういうふうな判断に基づくものでございまして、この点は御理解いただきたいところでございます。  ただ、私どもとしては、物価との関連において金融緩和の行き過ぎが生じないように細心の注意を払っておるつもりでございます。日本銀行の日々の金融調節においてもこの点を心がけておりますし、またこうした観点から、金融機関に対しては節度ある融資態度ということを強く要請をしてきているところでございます。ちなみに、最近の金融機関貸し出し伸びを見ますと、これは幾分鈍化をしております。またマネーサプライにつきましても、代表的な指数でありますM2プラスCDの前年比の伸び率を見ましても、ことしの初めごろの一二%台からこのところ一〇%台に入ってきている、こういう状況で若干鈍化をしている、こういうことでございます。  私どもといたしましては、今後の金融政策運営に当たり、万が一にも金融面から物価安定の基礎を損なうことのないように、引き続きマネーサプライ動向を含めまして内外情勢を注視しつつ、適時適切に対応してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  9. 沢田広

    沢田委員 全然否定はされなかったし、若干は肯定されておられました。その割合については別といたしまして、やはり今社会の中で大変土地暴騰も株の売買も行き過ぎているのではないかということも否定できない現象でありますので、総裁の方においても、西ドイツの例をそのままとは言いませんけれども、そういう配慮が必要な状況下にあるのではないか、こういう言葉があったということをひとつ理解しながら対応していただきたい。これはお願いを申し上げるというか要請をいたしまして、きょうは税金の方が主体なんでありますが、やはり税金も何でもそうでありますが、過ぎたるは及ばざるがごとしでありまして、十分にその対応に過ちなきを期していただきたい、こういうことをお願いして、総裁はきょうはこれで結構でございますのでお帰りいただきたいと思います。お答えは、もしいただければしてください。
  10. 澄田智

    澄田参考人 土地株式の問題については先ほど申し上げたとおりでございますが、西ドイツの例を引かれまして私ども金融政策運営について御指摘がございました。そこで、金融政策運営について改めて申し上げさせていただきますと、金融政策運営は、物価景気為替あるいは内外金融状況等すべての内外の諸情勢総合的判断の上に立って運営されるべきものである、かように考えております。  最近の経済情勢を見ますると、物価卸売物価消費者物価とも落ちついております。先行きにつきましても、最近の国際商品市況の落ちつきやあるいは原油価格軟化等から見まして、現在の物価安定がにわかに崩れるとは予想しがたいところでございます。また、金融面におきますマネーサプライ伸びは、先ほど申しましたように若干鈍化をしてきている、こういう状態でございます。したがいまして、私どもとしてここでマネーサプライ伸びをさらに大きく抑え込むために本格的な引き締め政策に移行するというようなそういう段階ではない、かように認識している次第でございます。当面、これまでの金融政策のスタンスを維持することが適当であると考えている次第でございます。  しかしながら、そうは申しましても、現在景気が力強い上昇を示す中で製品需給労働需給も引き締まりの方向にございます。また金融は緩和しておりますし、マネーサプライ伸びも、鈍化しつつあるとは申せ水準としてはやはり高い水準にあることは変わりはございません。こうした景気金融の実態に照らしまして、物価先行きについては十分注意が必要である、かように考えておりまして、私どもといたしましては、引き続き予断を持つことなく、物価情勢為替動向等を十分に注視しつつ適時適切な対応を図っていく所存でございます。  以上、申し上げさせていただきました。
  11. 沢田広

    沢田委員 御苦労さまでした。お引き取りいただいて結構であります。どうもありがとうございました。  大蔵大臣、今やりとりがありましたけれども、税の方で公平感をつくるということもあるけれども、言うならば金融行政の中で公平感をやはり保っていくという政治的な責任、これもなくはない。だから、税制を論ずる前提というものは、常にそのときの社会情勢経済情勢国民生活、これがやはり前提となって議論をするわけでありますから、今御発言がありましたけれども、やはり土地暴騰はやまずあるいは株の売買もなかなかやまずという金余り現象と言われている状況は、やはり政治責任の一半がある、こういうふうに思いますが、今の答弁を聞きながら、大蔵大臣は行かなかったですけれども、国内的な問題だけについてはせめてその責任があるわけでありますから、その点はどのように対応されるつもりか、それから地上げ屋に対する資金の融資等々についての抑制はより一層高める必要があるのではないか、こういう点についてはどうお考えでいらっしゃいますか。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昨年地価が急騰いたしましたことのよって来るゆえんは、総裁先ほどお話しになっておられましたが、やはり一つは、我が国が急速に国際化をしてまいりまして、そのためのオフィスの需要があるといったようなこと、その需要がまたしかし仮需要を呼んだというようなこともございまして、それにはやはり金余りということが一つの背景であった、私はそれはそのとおりであると存じます。  したがいまして、昨年の七月からいわゆる特別ヒアリングということを始めまして、これは個々の金融機関に、土地価格上昇の著しい地域をまた選びまして、かなり踏み込みまして具体的な取引につきましてヒアリングをいたしました。その結果といたしまして、金融機関もいわば行き過ぎた貸し出しについてはいろいろな自粛措置もいたすことになりまして、これはかなり効果があったと考えております。  と申します意味は、やはりそこに至りますまでの間に、必ずしも投機的なあるいは反社会的な動機でなかったにいたしましても、金が余っておりますので金融機関としてはそのような貸し出しに非常に応じやすい状況にあったということはございますので、そういうことに対しまして注意を促した、そのことは効果があったと考えております。  申し上げるまでもないことでございますが、土地がごく正常に譲渡され、保有されあるいは流通していくということは、生活のためにあるいは事業のために、当然のことでありますが極めて大事なことでございます。そのためには金融を伴いますし、また土地そのものが担保にされることも、これも正常である限りは、やはり正常な金融がその裏づけになるということは大事なことであると存じます。  昨年のようなことがあってはなりませんが、しかし正常に保有され、譲渡され、流通していくということは大切なことでございますので、そういう意味金融が正常にこの裏づけになっていくということは大事なことでございますが、昨年起こりましたことは、いかにもそれが正常を欠く事態になった。行政といたしましても、先ほど申しましたような努力をいたし、金融機関側もまたそれにやがて対応してくれまして正常化に向かった。おっしゃいますように、税制だけではなく、やはりいわゆる金余り金融がやや過剰に需給を狂わせるあるいは仮需要を起こすというようなことは、十分に注意しなければならない政治課題であると存じます。
  13. 沢田広

    沢田委員 今大臣の答えているのは、去年の過去完了としての話だけですが、今の状態がやはり六〇%なり七〇%値上がりしているという現実はお認めになりませんか。私は、今必要な施策を言っているわけです。去年の暴騰の部分は、これは終わったことであります。また、今いわゆる近郊、六十キロ圏とも言っておりますけれども、そういうところがだんだんと上がってきておる、こういう状況に対してはどう御認識になって、それに対して今必要だ、こう私は言っているわけですね。  ですから、前のときの値上がりにさらに今日またその値上がりを加えておる、あるいはさらにだんだんだんだんと遠くへ敷衍しているという状況を、今すぐ答えられなければ事務局から聞いてでも結構ですが、もう少し資料を集めてお答えいただいて、前の去年のことではない、今のことなんだ、今のことでこれからさらにそのことの措置が必要ではないか、こういう質問ですから、これはちょっと時間をかしますから、ひとつ事務局と相談してからお答えください。  それで、国土庁が来ておりますから、今土地の問題でお伺いしますが、もっと監視区域をふやしたらどうか、あるいはさらにその規制について厳しくしていくという考え方はないか。国土庁としても今の現状を憂えているんだろうと思うのでありますが、顔は憂えているようには思えませんけれども、心情としては憂えている状況にあると思います。ひとつ内海国土庁長官から、この今の土地状況についての認識、それから不公平を助長している要因にもなっておる、こういうふうに私たちは認識しているわけでありますが、その点の見解も含めてお答えいただければ幸いです。
  14. 内海英男

    内海国務大臣 お答え申し上げます。  昨年八月以降、監視区域大都市圏を中心といたしまして広範に指定をいたしたわけでございます。特に地価上昇の著しかった東京圏におきましては、届け出対象面積を百平米以上というような制約を設けまして、その運用強化を図ってきたところでございます。これらの措置によりまして、東京圏におきましては、先生御承知のとおり幾らか鎮静化の傾向になってきたわけでございます。  しかしながら、大阪圏名古屋圏東京圏周辺部等においてはかなりの地価上昇が見られるような状況でございます。これらの地域につきましては、今後とも監視区域指定拡大してまいりますと同時に、届け出面積の引き下げ、こういった運用強化を各地方公共団体にもお願いして、行政指導に努めているところでございます。  ただ、これらの措置によりましてもなお地価の急激な上昇が、継続的な現象が見られるというようなことになりましたときには、さらに強い勧告等行政指導を積極的に行いまして、その行政指導をある意味においては無視しておるような地方行政機関等もなきにしもあらずのような感じもいたし、そういう行政指導を甘く受け取って、なかなか監視区域指定しなかった地域が上がっておるという地域も間々あるように受けとめておりますので、今後とも厳しく、行政指導をさらに強力に推進してまいって地価の安定を図っていきたい、こう考えております。
  15. 沢田広

    沢田委員 大蔵大臣、じゃお答えください。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それで、ただいま国土庁長官が言われましたような国土庁の御方針でございますので、私どもの方も、国土法勧告を受けるような状況にある土地については融資を特に慎まなければならないということを含めました通達を金融機関に出しまして、管理体制をそれに従って強化するようにということをいたしております。国土法とその精神にのっとりまして、それを踏まえまして、融資についても注意をするようにということを申しておりまして、それは実行に移されつつあるように存じております。
  17. 沢田広

    沢田委員 きょうの新聞にも一部出ておりましたが、不公平の前提となるものは、第一番目が税金、その次には政治と、こういうふうにある新聞にも載っておりました。  これは総理にお伺いいたしますが、今この不公平の税制議論をするという状況下にありまして、やはりおくれたる施策というものは、過ぎたるは及ばざるがごとしと同じように、いわゆる優柔不断もこれまた罪の大なるものであります。ですから、土地暴騰とかそういうものは、先駆けて施策を講ずることによって政治家としての使命が果たされるのであって、後から追っかけたのでは、これは政治家としての使命を果たすことにはならないのであります。  ですから、今の不公平の税制を含めてでありますが、不公平感の除去、あるいは今不公平がどういうところに存在をしているか、あるいは不公平というものをなくすために今どういう施策が必要か、細かい内部のそれは必要性はありませんけれども、やはり不公平感をなくすために何が必要なのか、また総理としては何をしていったらいいのか、今お考えになっていることがあったら、その点ひとつお答えいただきたいと思います。
  18. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 まず、不公平という問題についてでございますが、確かに、これは今御指摘ありましたように、御審議いただく税制のみでなく、いろんな不公平感というものが存在しておると思います。それらの不公平感というのを現実的な問題として可能な限り少なくするようあるいは除去するような努力を、政治が後追いではなく先駆けてやるべきだという考え方には、私も全く同感でございます。  それで、この国会で特にお願いをしておりますのは、これは税制に関する不公平の問題でございます。これは沢田さんも随分御議論をなさいましたように、率直なところ、不公平税制というものを議論するときに、私は当初は大変悩んだことがございます。なぜならば、租税法定主義のもとで国会で成立した法律に不公平があるというと、何か国会自身が、自分たちが不公平をつくったんじゃないかという感じを持つ場合もあり得るんじゃないか。したがって、その当時は、不公平感というところで集約した方が議論として上りやすいじゃないか、こんな感じも持ちました。  そこで、具体的に国会、租税法定主義のもとにおいてできた税制の中で、じゃどこから手をつけるかというと、これは長い間の議論でございますが、やはり租税特別措置からではないかな。それが連年議論されて今日に至ってきておるわけでございます。その間に、沢田委員からも御指摘がありました水平的不公平と垂直的不公平があるじゃないか、こういう議論も随分してまいりました。  したがって、私なりにこれを整理してみますと、もう四党において立派にこの不公平税制という言葉をお使いになっておりますから、不公平と不公平感とどうかという議論は、もう長い間議論しましたけれども済んだ議論で、明らかに不公平税制の是正ということを進める必要があるというこの四党の考え方というものは、私どももそれを軌を一にしていい、一にすべきものだという考え方に私自身なっております。  したがって、これを整理しますと、税制というものは結局納税者の信頼を得ることを基礎的に考えなければならぬ、それはやはり負担の公平であり、それがすなわち公平の原則であるという立場から立って、いろいろな事情はございますが、今日工夫してこの法律案としてそれらを含めたものを御提案申し上げ、御審議を賜っておる。したがって、さらに本委員会、あるいは広く言えば国会でございましょう、具体的には本委員会等においてその議論が詰められていくことに対して、私どももそれを傾聴しながら対応していかなければならない問題であるというふうに考えております。特に冒頭おっしゃった政治全体の不公平の面において、いわゆる土地税制以外の問題においても国民の間に不公平感をもたらす大きな要因であるという認識は、私も等しくいたしておるところでございます。
  19. 沢田広

    沢田委員 これからまた各項目にわたりまして質問をしていきますが、きょうは不公平税制についてのみという、理事会でお決めになったそうでありますから、そういうことについて限定して質問をしていきます。  この不公平というものは、そのもとがあって不公平というものが議論されるわけでありますから、現在の税制一つ前提となってまず不公平の是正をただし、その後の議論はまた別の機会にやる、こういうことで今進んできているわけであります。でありますから、今四十六日、四十六回と言った方がいいですか、自民党さんも税制会議をたくさんやってこられました。しかし、残念ながら不公平税制については、なかなか手がつかなかったのかつけなかったのかわかりませんけれども、そういう状況であります。  それからまた、政策担当者会議が開かれております。しかし、きょうの会議はそれらとは一応無縁の状態において国会の場で不公平税制議論をしよう、こういうことで開かれた会議でありますから、どこかで聞いたような言葉になりますが、政策担当者会議会議中ですからそれがまとまりましたら考えますといったような答弁は、きょうは御免こうむります。それじゃなくて、ぜひ政府の見解をきちんと述べていただきたい、そういうふうにひとつ政府としては心構えを持っての御答弁をいただきたい、こういうふうに思います。  今総理大臣がまとめて不公平税制というものについてのいわゆるおぼろげなる認識については触れられましたから、あとは大蔵とか国税とかそういった点については一応後にいたしまして、後へ若干いきますからちょっと中断しますが、委員長に今度はリクルートの問題について。  きょうの会議が開かれるに当たっては、不公平税制議論をする以前にリクルートの江副証人あるいは招致を委員長は実現をした上で、その次に不公平税制議論をするというふうに私たちは聞いていたわけであります。ところが、それが変わって、十一日にお呼びになるという予定で文書を出された。この点は委員長としては、確認してよろしい、私たちが理解をしてよろしいことなのかどうか、これは委員長からひとつ明快にお答えをいただきたい、こういうふうに思います。
  20. 金丸信

    金丸委員長 江副君の招致につきましては、理事会協議に基づきまして私に手続を一任されたわけでありますが、そこで事務局を使いまして江副君の方に電話を二度いたしました。その電話の結論が、はっきりした結論がありませんので、十月一日に文書をもって中央郵便局から書留で招致の手紙を出した。今もってまだその返事が来ません が、この問題につきましては回答があり次第理事会に諮りまして、取り扱いを決めてまいりたい、そういうようなことで、きょうのこの委員会がリクルートの問題前に行われたということは理事会で決定されたことでありまして、いろいろお話もあろうと思いますが、すべて理事会の合意の中でまとめてきておるということだけは御理解いただきたい。  以上。
  21. 沢田広

    沢田委員 それから、御本人そのことの問題よりも、国会としてこのようなことについてはやはり究明というか追及というか、あるいははっきりさせるというための努力をされていることには敬意を表しますが、もしこれだけの、国会の最高機関、あるいは憲法で保障された最高機関、そういうものの要請にこたえられなかったというようなことがもしありとせば、これは極めて民主主義の阻害になるし、憲政史上の汚点になる。これは、これだけの名委員長と言われてきた金丸さんでありますからそういうことはないだろうと思いますが、まさに憲政史上に汚点を残さないように、やはり的確に、しかもまた明確にこの点は処理していただくことが国民を納得させる道でもあるし、民主主義を守る道にもつながる、これは優柔不断は許されないということだと思いますので、委員長のさらなる決意と勇断を切望して、まずお答えをいただいて、質疑に入りたいと思います。
  22. 金丸信

    金丸委員長 沢田委員のお話はもっともだと私も思いますし、十二分に理事会と検討しながらこれに対処してまいる決意であります。  以上。
  23. 沢田広

    沢田委員 このリクルートの内容は、先般いろいろ議論をされました。  そこで、順は不同ですが、総理大臣も自分ではない、それから大蔵大臣も自分ではない、こうおっしゃっておられるわけですね。大蔵大臣総理大臣が買ったわけではないんだ。これだけ問題になってきて、世間を騒がせ、国会も大変迷惑を受けて、その中身のいかんは問わず大変国民に迷惑をかけたことは、あなたの部下があるいはあなたの知人が、このことは否定できないことではないのか。  だから、せめてそういう金は、悪銭身につかずという言葉もありますが、そういういろいろなものであれば、もっと率直に税務申告をしてしまうとか、あるいは難民対策に、あるいはどこかへ差し上げるとか、そういうことぐらいは常識的に考えても人情的に考えてもいいんじゃないか。それはあなた方が考えることじゃなくて、そういうふうに指導する役割にあるんじゃないのかというような気がする。そのまま温めたままでいていいよというのは、やはり総理なり大蔵大臣という立場から見たら、おまえそういうことをやったんじゃいかぬから、それはひとつ社会福祉の方へ出しなさいとかあるいは確定申告をしなさいとか、そういうふうに指導するというのが当面の措置なんじゃないのかという気がするんですが、その点は、総理自身のことではないようですし、大蔵大臣自身のことでもないようでありますから、そういうふうに指導するのがやはり雇い入れている指導者の役割じゃないのか、こういうふうに思います。  この点は、これは法律論ではありません。悪いとかいいとかという問題でもありません。しかし、これだけ世間を騒がせていることの事実は否定できない。だから、その金は返せ、でなければ確定申告しろ、あるいはどこかへちゃんと寄附をしなさい、そのくらいの指導はして、社会、世論のこれだけ激高した状況というものをおさめる配慮がやはり政治家としては必要なのではないかというふうに思います。  私のこれは本当の思いつきみたいなことでありますけれども、そういう配慮はあっていいのじゃないのかな、もしなかったとすれば今までちょっと手おくれになっていたのじゃないのかなという気がするのでありますが、総理大臣大蔵大臣は、部下に対してそういうことは、いわゆる桃李のもと冠を正さず、こういうことを言っていましたから、そのとおりで、ひとつ部下にはそう指導をするのが適切なんじゃないのかと、こういう気がしますが……。
  24. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 元秘書ということでございますが、いずれにしても私と長い間一緒に仕事をしておったわけであります。それにはそれの人格と申しましょうか、人権と申しましょうか、そういうことはあろうかと思いますが、今のような御意見について、当然帰結するところは本人の意思でございますが、十分本人が考え、参考にすべき問題であるというふうに私も理解をいたしております。
  25. 沢田広

    沢田委員 大蔵大臣、どうです。
  26. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 お話の御趣旨は決して理解できないわけではございませんが、やはり御本人御本人の考え方によるものであろうと、総理の言われましたように考えます。
  27. 沢田広

    沢田委員 過去にもし忠実な部下であったとすれば、自分の主人に迷惑が及ぶということにおいて、当然本人が自発的に、主人に迷惑をかけた、長年世話になった人に申しわけないという気持ちで、国民をこれだけ騒がせたということは不徳のいたすところだといって、みずからがそういう措置を講じていくことが普通の人間ではなかったのかなという感覚はありますね。  本人でないからお答えできないというかもしれぬが、そういうサゼスチョンなり、前の部下であろうとそういうことによっておれがえらい迷惑を受けているんだ、それはせめてそのぐらいの償いは一応するべきじゃないか、法は法のもとで正されるものは正される、そういうことで別としても、そのぐらいの措置国民に対してやるようにしてくれ、おまえはやれ、こういうことは、やはり総理の言うことだったら、大蔵大臣の言うことだったら恐らく部下は従うだろうと思うのですね。それをやらないということが余計開き直りに見えるし、おれは悪いことやってないんだという論理につながるような気もしないでもない。私は、いいとか悪いとかは別として、迷惑をかけている現状、それをもっと謙虚に受けとめる必要があるんじゃないか、こういうふうに思います。  委員長は、総理のいわゆる御意見番として名実ともに許されているのですから、ひとつそういう意見も委員長から言って、そのぐらいのことはやって片をつけておけというぐらいは言っておいた方がよかったのじゃないかという気がするのでありますが、委員長はその点はどうですか。
  28. 金丸信

    金丸委員長 ただいまの私に対する御質問につきまして、私は、こういう席に着きましたのは、相撲で言えば行司みたいな立場でありますから、それにイエス、ノーを答えるということは適切でない、こう思っております。  以上。
  29. 沢田広

    沢田委員 意のあるところはわかると思いますね。ですから、公式の場であるし公式の委員長ですから、ここでどうこうということは言えないだろうと思います。しかし、気持ちはわかるだろうと思います。  それからもう一つ、これは国税庁にお伺いするのですが、五十人を超えた、七十六人になった違反の非公開株の譲渡は、それ自身が無効になるんじゃなかろうかという疑問が一つあります。  それからもう一つは、そういうことで実際に売買行為が行われた事実関係はあるのかないのか。もし名前だけでということは往々にあり得るのですが、とするならば、少なくとも献金か贈与かということに税法上はなる。今私の言っていることで回答を求めなくとも、事前に処理されていればこれ以上私は言わなくて済むわけなんでありますが、贈与か献金か、それはわかりませんけれども、事実関係から見れば金銭の売買行為は行われていない、あるいは名前だけで処理した、ファイナンスが金は出した、そして千二百五十円と五千二百円ですか、その差額だけ持っていったと仮定をすれば、それは当然献金かあるいは一時所得、雑所得ということに相手側にはなるのじゃなかろうか。これも今後日本社会の慣行上から見て極めて問題のあるところです。ですから、国税庁として見れば、その行為はやはり雑所得扱いをして対応をしていくことの方が正しいのではないのかという気がいたしますが、この点はいかがですか。
  30. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 お答え申し上げます。  今先生がお話しになりましたのは、相当いろいろな仮定を置いておられます。それでございますので、なかなか一義的に本件に即してどうという言い方は難しゅうございますけれども、一般論として申し上げますならば、やはりそのときにしかるべき対価を出して購入された株、それがその後の譲渡によって結果として利益が出た、そういうふうに承知しておりますけれども、そういう一般的な状況のもとでは、やはりそれは基本的にはキャピタルゲインの世界の話だろうと思います。その分野でありますならば、当然のことながら、原則非課税、一定の場合に課税という中での条件に該当するかどうかという観点での課税の適否の問題になろうかと思います。  先生おっしゃっておられます贈与云々あるいは一時所得云々というのは、譲渡と取得をちょっと区別して申し上げたいと思いますけれども取得のときにおける価格がその取得時における適正な価格を下回ってのものであったならば、何がしかの別の課税関係が生ずるのではないかという趣旨かとも思いますけれども、その場合の適正な価格とは何ぞやというのも、これまたなかなか難しい問題でございます。非上場段階での取得時での評価の問題でございますので、それをどういう基準で評価するか、観念的に申し上げれば、その時点における適正な価格、適正な時価ということに相なりますけれども、対象が非上場株であるということから、その評価をどうやって行うか、なかなか一義的にはまいりませんが、一般的な実務といたしましては、各種の資料を総合勘案してと言いつつ、具体的な資料がない場合には相続税の評価額等を基準にして判定するということでやっております。  本件に即してという点につきましては、個別にわたりますので答弁は差し控えさせていただきます。
  31. 沢田広

    沢田委員 それで、絵画とか骨とう、ありますね。こういうものは、値があって値がないと言われるくらいなものであります。十万円が五百万になる場合もあるし、大変な価格、三億円でも買ってくる人もいるくらいですから、そういうふうに非常にある。今回の場合も、平面的に見まして、実際に売買行為、そういうものが伴わないで、いわゆる差額だけがその人に渡された。差額だけという言葉がちょっと強過ぎるかもわかりませんが、差額をその人に渡したといった場合は、絵やあるいは骨とう品と同じように、預かっていた骨とう品がこれだけに売れたからその差額を持っていくという場合、当然これは一時所得あるいは雑所得ということに扱われると思うのですね。ですから、当然そういう意味で、名義は書きかえがちゃんと終わっているとか終わっていないとか、あるいは金が支払われたとか支払われなかったとか、そういう事実関係は別としまして、そういう扱いは当然考えられるのではないか。  だから、あくまでもそれは完全な売買契約行為、こういうものが行われてそれぞれの書類が全部整備されているという場合は、それは今のおっしゃっているとおりだと思うのです。しかし、絵画の場合とか骨とう品の場合とかと同じじゃないか。一応そういう名前でお借りをしました、しかしこれだけ利益がありましたから利益はその分だけ差し上げますという意味に、非常に平凡に考えますとそういうことになるのではないのか、あるいは税法上雑所得として処理していく筋道のものではないのか、その方がまた罪が軽くなるんじゃないのか、こういうふうに思うのです。  書画骨とう、こういうものを考えてみましても、これはあくまでも株の取引だと頑張るから結果的にはやはりおかしくなるな、こうなるのですが、そういうふうに考えれば、やはりさっき言ったように献金かあるいは贈与かということになるわけですね。ですから、そういうふうに書画や骨とうと同じような形にこれは対応したものなのではないのか。相手は、来なければわかりませんが、来れば恐らくそういうふうに言うんじゃないかという気が私はするのですが、国税庁はそういう扱いで解決できる道はなかったのかどうか、その点お伺いします。
  32. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 お答え申し上げます。  非常に、何というのでしょうか、先生のおっしゃっておられますのはいろいろな各種の仮定を置いておられますので、それを一般論として、そういう前提で申し上げるのが適当なのかどうか、大変今ユニークな御発想だというふうに私承っておりましたけれども、やはり一般論という範疇で申し上げますならば、やはり対価を支払って取得した、それがその後利益を生じた、それからまた取得するときの時価、いわば客観的に一義的に必ずしもよくわからないものの時価あるいは価格をどう評価するかというその二つの問題を一体どう考えていくかということと関連して、先生のおっしゃるのも一つの見方かとは思いますけれども、私どもの実務といたしましてはなかなかそう割り切るわけにはいかぬのじゃないのかな、先ほど申し上げたような整理をした上で判定していくべきものではないのかなというふうに考えております。
  33. 沢田広

    沢田委員 大分水を向けてお話をしたわけでありますが、応じないようでありますから、それはやはり司直の手でただしてもらうということになるんだろうと思います。  しかし、そういう一つの中身として考えると、やはり献金とか贈与とかそういうものにつながる可能性もなくはないということを考えますと、国税庁の答弁として、もしこれが一般の市民あるいは一般の企業の間であったと仮定をすれば、やはりこれは税務調査でやられるとすると相当のものになるんじゃないかという気がしないでもありません。だから、ここで答弁されたことは、幾つかの仮定を置いてということで、該当するがごとくせざるがごとく回答がありましたけれども、もう一回、これは今突然のことであったとするならばよく考えて、株でいけば三年の時効であるけれども税金でいけば七年、こういうことになるわけでありますから、時効はまだ来てないわけであります。でありますから、そういう対応の道も残されておる、こういうことを一応申し上げて、この後の十一日以降の審議にあとはゆだねることにいたします。  続いて、不公平税制の問題点にそれぞれ入りたいと思います。  ここで今不公正税制の協議が行われておりますが、今までのこういう事件の後を受けて、これから株の売買については税制上考慮する、こういうことで四党間でも意見の一致を見たようであります。政府においてはこれに対してどのように今準備をされ、その合意を得た事項をどう受けとめておられるのか、その点御回答をいただきたいと思います。
  34. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今国会に政府が御提案いたしましたことは、従来いわゆる株のキャピタルゲインにつきましては原則非課税でございましたが、このたびは原則課税ということにさせていただく。そうして、いろいろ税務執行上の可能性等々を考えてみますと、一つ一つ取引を、いわゆる納税者番号であるとかあるいは何かそういうことがございますればともかく、それを欠いております現状では、一つ一つを正確に全部把握できるという体制にございませんことも考えまして、申告分離それから源泉分離、両方の方法によりまして、この際従来の方針を改めて原則課税とするということに御提案をいたしたわけでございます。  しかるところ、その後にいろいろ御指摘のような問題が起こり、また各党におかれましても、八月十七日の野党の御提案というものもございました。したがいまして問題は、大きく分けますと、公開以前の株式の譲渡あるいは第三者割り当て、公開株の配分それから公開株の価格の決定、そういう幾つかの問題が出てまいったわけでございまして、これは、一つは税法の問題でございます。キャピタルゲインの問題でございますし、もう一つは、証券取引上のいわば制度の問題に関係をいたします。  後者の方は、証券取引審議会の不公正取引特別部会というもので、問題を私どもから提起をいたしまして、九月初め以来その制度のあり方について御協議を願っております。  前者の問題は、今まさに御指摘の課税の問題でございますが、ただいま申し上げました問題の中で殊に目立ちますのは、例えば公開前に取得した株を公開と同時に、俗語で申しますと売り抜けと申すのでございましょうか、そういう場合には非常に譲渡益が大きい場合が多い。そういう場合も政府提案で処理できるか、政府提案の程度でよろしいのかという問題意識を私どもが持っております。  それからまた、同じような形態でありますが、その場合に創業者利益として従来優遇されておった部分がございます。これは、市場経済社会において創業者利益を厚遇するということは大事なことであるとは思いますが、その限度、その程度はどうあるべきかということについてやはり問題があるであろうということを考えております。  それから第三の問題は、これは俗語で申しますと株上げとも申すのでございましょうか、非常に短期にしかも大量の株式についての売り買いがあったという場合、従来でございますと十二万株あるいは三十回というようなことをいたしておりましたのですが、その問題。そのやり方は今回はそれをなくしておりますので、そういうものはほっておいていいのだろうかという御指摘、これも先々の問題としてはいろいろ問題がやはりある。しかしそのことは、行政上はその取引をいかにして確認するかという、納税者番号でございましょうかあるいはカードでございましょうか、何かそういうものと関連をしてまいりますので、政府としては、納税者番号関連のことは税制調査会の答申もございまして、今小委員会をおつくりいただいて、これをどういうものにすればいいのか、それは税だけに限るべきものであるのか一般取引にも及ぼすべきものであるのか等々複雑な問題がございますので、今御検討願っておるということでございます。  大体以上のような問題意識を持ちまして、このキャピタルゲインについてのいわゆる不公正部分を、できますものは直ちに、それから納税者番号等々に関係がありますものは多少の時間がかかるかもしれませんが、そういう形で是正をしていくことがやはり必要なのではないかという、御提案後にそういういろいろ起こりました出来事あるいは各党における御議論等を拝聴しながら、そういう考えを政府としてはただいま持っておりまして、これにつきましてはまた本委員会の御議論もあろうかと存じますが、政府といたしましては、十分そういうことを考えたい心づもりでおります。
  35. 沢田広

    沢田委員 今の問題で二つあるのですが、今の段階でいくと、検討をするという段階だというお答えですね。そうすると、不公平税制に関する審議は、この何時間かに一応限定していないわけですね。そうすると、その後結果的には、この問題は議論しなければならない、法案としても出してくる、こういうことになるわけですね。大臣としては、この分は改めて法案として提議をしてくる、こういうことになりますね。事実関係は、今ここで決まってきたことはある、だからこれから政府としては法案を提出する用意を考えている、こういうことですね。
  36. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 形式はともかくといたしまして、政府といたしましては、御提案を申し上げた後にいろいろ各党が御議論になっておられます内容あるいは現実に起こりましたこと等を考えますと、御提案申し上げたことだけでは不十分である、速急にその中に加えるべきものがある、また、物によりましては、しばらくの間検討した上で改めるべきものもあるという認識を持っておりまして、それをどういう形で実現していくかということは、なお本委員会における御審議等を承りながら決めてまいらなければならないと思っております。
  37. 沢田広

    沢田委員 要するに、有価証券関係、株売買の問題については、不公平税制の問題の一つとして、今後引き続きまたこの委員会の意見あるいはまたその他の意見を聞きながら、政府としてはその意思を固めて提案をする、改めてそこで議論をする、こういう順序になる、こういうことと理解してよろしいですね。
  38. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その部分は、政府がそのように考えておりますことをどういうふうにして実現させていただくかという、いわば形の問題でございますので、当委員会あるいは与野党——これは今御協議願っておる与野党という意味ではございませんで、この委員会におけるいろいろ与野党の御議論等々のいかんによりましてどういう形になりますか、要は、政府としては、ただいまの御提案いたしましたものにさらに改めるべきところがあるという認識を持っておるということでございます。
  39. 沢田広

    沢田委員 結果的には、これは大きな質の問題あるいは量の問題、両方ありますけれども提案したものも改めて提案し直さなければならない、あるいは現在の不公平税制だけについて限定して直すべきものを直していかなければならない、その上で新しい段階を踏む、こういう基本に触れるようなものがあれば、当然そういう形になってくると思うのです。ですから、言葉じりをとらえるわけではありませんが、不公平税制議論については、今後引き続き続行するし、結果的には政府の方で意思を固めて原案として国会へ提出をする、そしてその問題については、その場で議論をして、その内容は今言われた内容であるかどうかは別としても、そういう方向で処理していくんだ、これはやはり不公平税制の是正の一部である、こういうことについては国会も政府も意思は一致しておる、だから引き続いて今後これは検討も加え、同時に政府としても法案として提出する、こういう段階だ、こういうことでいいでしょうか。
  40. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 方式としてはいろいろな可能性があることであると存じますが、政府が考えておりますことはただいま申し上げました。それで国会におかれまして、国会の御意思としてこれはこうあるべきだということであれば、これはもとより政府としては国会の御意思に沿うべきものと考えておりまして、つまり例えば国会がこういうふうにお考えになる、それについて政府の意見はどうかということをお求めがあるわけでございますけれども、国会の御意思であれば、それは政府としてはそれを尊重する、こういうふうに申し上げるべきことであろうと考えておるわけでございます。
  41. 沢田広

    沢田委員 ですから、そのことが根本に触れる場合については、そのことが前提とならなければ次の段階へ進めない場合もあり得るし、その中身を見なければそのことは不明である、こういうことの現状にある、こういうふうに理解せざるを得ないのでありまして、今言われたようなものになれば、改めてそこそこの場において議論をした結果でなければその将来の展望もつくれない、こういうことになるのじゃないかと思います。これはもうそれ以上触れません。  続いて、株式売買の課税については、そういう方向についてほぼまとまったものとして、これは事務局で結構でありますが、具体的な法案づくり等については入っているわけでありますか、どうですか。
  42. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 ただいま大臣から御答弁申し上げておりますように、問題点は整理されてきてまいっております。第一点は売り抜けの問題、第二点は創業者の問題、第三点は株上げと称しますか大口短期の問題、このように問題点はそれぞれ整理されてきております。また、私どもが御提案している考え方、これは、市場を通じて売却されたものは転々と大量に取引されるものですから、取得価格がなかなか把握しがたいというところから、御提案しているような案に落ちついているわけでございますが、それを今の問題に重ねてみますと、公開前後のものというのはそうした特性はない。そうすると、そこからどういうふうな解決策が考えられてくるか、現在問題点が整理され、考え方も整理されてきているところでございますので、鋭意政府部内は政府部内として検討はいたしておるところでございます。
  43. 沢田広

    沢田委員 いや、検討しているじゃなくて、それで立案の準備に入っているのかと聞いているのですよ。検討だけして、しらばっくれるつもりじゃないでしょう。
  44. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 そこは、ただいま大臣からも申し述べましたように、まさにこの委員会での御審議は本日初めてでございますので、検討はいたしておりますが、まさにここでの御審議の御意見、状況も、これはこの点として十分私どもも勘案し考慮すべきところでございますから、もう結論を出してしまって、これですという段階にはもちろん至っていないわけでございます。
  45. 沢田広

    沢田委員 今も若干ざわめきがありますけれども、こういうのは歯牙にもかけず、こういう言葉でいって、結果的には、きょう議論はしているけれども、政党間の議論というものも、これも公式のものでもあるわけですから、そういう公のもので議論した結論というものがある。だから、私もあえて中身については多く物を言わないのでありますけれども、それぞれの代表者が協議をしてきた。そして、その結果については尊重をします。尊重をして内部で検討します。検討をすれば、今度は法律案としての立案が必要になってくる。じゃ、これはいつごろの考え方でおられるわけですか。きょうここでまた同じことを大臣も言ったわけですからね。改正の点を大臣も言ったわけですから、そうすると、それではまだ事務局は不満だというわけですか。それとも立案には入らないということですか。どういうのですか、それは。
  46. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 私どもとしては、政府案としてその時点で自信のあるものを御提案し、御審議を願ったところでございますが、ただいま委員の御指摘のような問題点は、その後出てまいっておる。したがいまして、私どもとしては政府案が最善であるものとして御提案し、御審議を願っているところでございますので、まさに本日からの御審議、これによりまして、不十分だけれども現在の案でよいではないかということでございましたら、ぜひこの政府案をお願いをいたしたいところでございますし、まさにこれから本日の御審議、本日以降の御審議を得たい。しかし、先ほどの御指摘のような問題点は認識いたしておるというところでございます。
  47. 沢田広

    沢田委員 それではやはり通らないですね。出ちゃっているから直せないというのじゃないのですね。その出ている前の問題はまず土俵に乗ってないわけですから、だからその前に不公平税制は直していきましょう、これが与野党間で一致をした事項ですね。与野党間で一致をした事項については、これは出ていようが出ていまいが、やはり早急に立案をして提案をしてこなければ、これは一致した事項を誠実に実行しないということになる。かえってこれは国会が混乱するもとですよ。  やはり与野党で一致したことは、その後の問題に触れずに立案をして提案をしていく、こういう姿勢がないと、国会運営はかえって——これは言うなら裏切り行為ですからね。そういうことになりますから、与野党で一致した事項は提案をしてくる、そういうことにならなければならぬと思うのですね。また、政府もそういうふうに答えているわけでありますから、立法府はその前の法案が出ているから、その問題はその後だと言うがごとき言辞というものは、若干問題があると思うのですね。  それだったら、この間ずっとやってきた政党間協議は何だったのか、こういうことになる。それはそういう形でやはり間違いがあるあるいはミスがあるあるいは修正するところがある、お互いに気づいたところはここで直していきましょう、こういうことで一致をしたことですから、政府はやはりそれに対応した処置を講ずるのがその責任の一端である。そこで余り遅疑逡巡して、何かうまく話だけにしておいて、実行は後ですよなんということで言い逃れようというのは、これは少しひきょうですよ。  ですから、これは大臣にも言いますが、それはちょっと事務局だからあれ以上は言えないんじゃないかと思うのですが、決まったことは実行するということでなければならぬと思います。これは大臣、いかがですか。
  48. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはまさに事務当局でなく、私からお答えをしなければならぬことだと思います。  八月十七日に野党四党の十項目の御提案があったということを、私ども存じております。それから、それをめぐりまして与野党間でいろいろ御検討が進んでおるということも、よく存じております。きょうはその話を余り申してはいけないということで、それもよく存じております。  そこで、ただ御承知のとおり議院内閣制でございますので、政府・与党というのは当然のことながら一体として私ども考え、またしょっちゅう打ち合わせもし、議論もいたしておりますので、そういう御協議の中から国会のいわば御意思としてこういう方向が出てくるということになれば、それはもとより私ども当然それを尊重すべきことでございます。  それをどういう形で実現するかということにつきましても、恐らくはその御協議の場でいろいろお話があるのであろうと想像をいたします。ただ想像をいたします。そういうことに私ども従っていこう。逆に申しますと、私が先ほど幾つかの問題意識を申し上げましたが、今いろいろこれにつきまして御議論が始まる、当委員会でもこれから御検討が始まる今の段階で、それなら政府はお出ししたものを手直しするのか、こうおっしゃれば、それはそうだと申し上げておるわけではございませんで、いろいろ当委員会で御審議があり、また与野党もいろいろ協議をいたしまして、その結果として国会が最善と思われるところ、それに政府のお出ししました考え方が改まっていくであろう、そのことは私どもとしても確かに改善すべき点があると考えておるということを申し上げておるわけでございます。
  49. 沢田広

    沢田委員 いずれにしても微妙なところですから、この扱いについては、協議が調ったもののいわゆる案件の処理、ちょっと聞くと、政府は出しちゃっている体面があるから、その法案との関連があるから、結果的には後回しにされそうな印象にとれる発言もありました。あるいはその以前に提出をして、直すものは、是正をするものは是正をする、こういうこともあります。また、引き続き不公平税制の問題が議論されていく中で対応するという処置もあります。これらについては、ここでやりとりしても、また今の答弁では何か政府の方でなくて協議会のような場所での問題というふうに受けとめているような答弁もありました。  これ以上私は詰めませんが、委員長理事会において、我々が審議をしているこの不公平税制の取り扱いについて、決まったものについてはどう対応していくのか、これはやはり早急にその方向を出していただくよう御努力を願いたい、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  50. 金丸信

    金丸委員長 わかりました。そのようにいたします。
  51. 沢田広

    沢田委員 そのようにお決めいただくそうでありますから、次にパーティーの問題であります。  これも非常に世間からは批判をされている事項の一つでもございます。そういうことにおいてパーティーの課税というものについては、あるべき政党論とかそれからあるべき政治論とかというものももちろん土台にあるわけですが、国民的に見ると、やはり了解しがたい面がある。こういうことからこのパーティー課税というものは、やはりこれも過剰なのかもわかりませんけれども、そういう批判もなくはありません。それで私は、これは総理の決断にかかる問題でしょうから、五億ぐらいの場合は二五%ぐらい、三億ぐらいのところでは二〇%ぐらい、一億ぐらいは一〇%、それ以下は五%ぐらい、このぐらいにやはり国民に還元する。言葉はそういうことですね。国民に還元をしていく、そういう方法も一つの道ではないかというふうに思います。パーセンテージについては必ずしも全面的にこだわるものではありません。しかし、そういう姿勢が今求められておる。これは自分の腹を痛めるのですからつらい話です。つらい話であるけれども、やはり政治に信頼を取り戻していく一つのセクションとしては必要な問題だ、こういうことと理解いたしますが、総理、そのように発想を考えられていく道はありませんか。
  52. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 いわゆるパーティー課税の問題でございますが、長い間議論がなされておって、政治に対する行政の介入というものをどうするかという原点議論から、政治資金規正法とパーティーによる収益との関係をどうするかとか、あるいはパーティーの種類、例えば叙勲祝賀会とかいろいろなものがあるでございましょう、そういうもの、それから主催者が任意団体であるか政治団体であるか、そういう議論を随分従来もやられてきたことを私も承知しております。が、沢田委員がおっしゃいましたように、その根本議論はいろいろあるだろうが、国民感情としての問題が政治の場では取り上げられるべきではないか、こういう御意志であったように私拝聴いたしましたので、それらのことを総合勘案しながら、私は、やはり最終的には国会の場で解決されていくべきものではないかなというふうに思っております。
  53. 沢田広

    沢田委員 これは政策担当者会議といいましても、より高次な政治的な位置づけなんですね。政治資金規正法をつくったから、その逃げ場としてこういうものになったのかもしれません。しかし、そういうものが横行していることも事実であります。といってまた、それだけの金が必要な原因をなくせという議論もなくはありません。しかしいずれにしても、国民から見るとあるいは企業側から見るとこれは望ましいことではないのだというふうな国民の声というものも、無視するわけにはいきません。  やはり不公平というのはもろ刃の剣なんですよね。これは我々もそうなんです。総理もそうなんです。不公平税制というものを直すことはもろ刃の剣で、つらいことを言わなければならぬ。自分もそのつらいことによって被害を受けなくてはならぬ、そういうのが不公平税制の本質ですよね。これは総理も知っていると思うのです。ですから、そういう意味においては、だからといってそのまま便々と延ばしていって国民の信頼を得られるかどうかということになると、そうはいかない。だから、ある程度痛みもあるだろうしあるいは政治資金規正法の問題あり、政党法の問題もある。いろいろな問題があるけれども、現在起きている問題の取り扱いを処理しなければ、それは国民の信頼を取り戻していく道につながらない。どうあろうとそういうものをつくっていかなくてはならぬ、それが政治だと思うのです。  だから、本質論で議論してそれはだめだという言葉だけではなく、現実的な対応、こういうものが求められていると思うのですね。そこで私は、現実的に対応するためには現在の状況の中においてのやや国民的な妥当性、こういうものがやはり必要になってきている。国民から見れば、やはりあぶく銭を集めたような認識しか持っていないのですよね。だからそういう考え方に立ってくれば、じゃその金は何になっているんだ、もとはどこから出ているんだ、どういうふうになっているんだという疑惑というか疑問というものも出てくるわけです。  そういう問題もあるけれども、ともかくそれで得た金額の何がしかは社会に還元をするということも、やはり国民に納得してもらう一つの道筋じゃないか。これは私はそう無理な発想ではないだろうと思うのですね。パーセンテージの問題は別としましても、やはり一〇%か何%か国民に還元するということは、それは税に納めるということですから、そういう形で処理することも一つの道筋であろう。これはやはり総理が決断をする段階ではないのか、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  54. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 今沢田委員おっしゃいましたように、かつてそういう立場にあって私が議論したときの経験からいたしましても、社会還元というのは、税の問題もございましょうし、あるいは当時の議論でございましたけれども、例えば選挙浄化の財団があって、何ぼかはそこへ寄附することによって、現実問題としての対応が税法上の論議とは別にできるんじゃないか、こんな議論も随分したことがございます。少なくとも四党提案の十項目の中に入っておる、またそれは私どもも十分理解できますので、複雑な問題であるだけに、私は、それこそ国会の議論というものを中心にして私どもとして対応していくべき問題ではなかろうか、私がこういうのが最も適切ではないかと言うには少し失礼過ぎるな、こういう感じもしております。
  55. 沢田広

    沢田委員 こればかりまたやりとりしても仕方がありませんが、やはり国民感情を無視した政治というのも、これもないのでしてね。確かにみずからの意思に身命を賭する場合もあります。そういう場合もありますけれども、やはり国民感情というものを考えていかなければならぬし、筆頭理事の親分と言っては悪いですね、筆頭理事の海部先生なんかはきちっとそういう点については言っているわけですから、やはりそれは各界の代表者の中でもそういう声もなくはありませんし、ひとつ総理もそういうふうな立場を通じながら毅然としてそこは処理をしていく、国民期待にこたえる、こういうことが大変大切だと思いますが、特に望んで次に入りたいと思います。よろしいですね、それは。  続いて、これは赤字法人の問題でありますが、これも極めて社会からは、百九十八万ある法人の中で税金を納めているのは大体九十八万、逆に百万が税金を納めていない、こういうような状況があるために、結果的には事業税じゃないけれども外形課税にしようとか、あるいは交際費の損金を認めないとか、実際に赤字であるのもある、しかし、粉飾という言葉がいいかどうかわからぬが、赤字にして申告をしているのも相当数ある、こういうことに対する国民の批判だと思うのですね。  そこに退職引当金があり貸倒引当金があり、またそれぞれの準備金がある、こういう構造に対してやはりメスを入れなければいけない、この声も世論です。この点も、現在のような法人の半分が税金を納めないで地方の固定資産税と事業税均等割だけ、こういうことだけでは、相当な大きなものがそういうことで済まされているということは許されない、こういうふうに思いますので、この点は大蔵大臣また事務局から、どうこれに対応するのか、ひとつお伺いをいたしたいと思います。
  56. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点には二つの面がございまして、今御指摘のようにまず執行面の問題がございます。つまり、いわゆる実査というものが十分に行われていない結果として、よく調べれば実は赤字ではない、黒字ではないか、実はある部分が、個人の費用が会社の費用になっているというようなことがございますとそうなるわけでございますが、ですから税務執行の面でもっとしっかりやって実態を究明しなければならないという問題が一つございます。  それから、別途に制度上の問題がございます。ただいま御指摘のように、法人は赤字といえどもいろいろ社会的な便益を、公共的な便益を受けているわけでございますから、それに対して何にもしないでいいのかということについては、おっしゃいますように均等割がある、あるいは固定資産税があるということが従来の答えでございますが、さあそれだけでいいのか。  ただ、私どもやはり悩みますのは、法人税というのは所得課税でございますので、所得がないときに法人税が取れるかということについては、なかなかこれという説明のうまい答えが出てまいりませんで、そこで悩んでおるわけでございますが、このたび一つ改善をしようといたしましたのは、法人が土地を買う、その土地を買いました利子はすぐにその年の経費にするとは限らない、そうはいかないよという制度を今度新しくつくることにいたしましたのは、これによって赤字法人というものの一部が課税の対象になってくる可能性も出てまいる。一つ土地対策でございますが、そういう改正はお願いしようと考えておるわけでございます。  あれこれ申し上げましたが、このことは執行面ではこれからもできるだけ改善をさせていただきますが、制度面でそのような法人に所得がいわばないと考えられるときにどのような対応が可能であるかということはかなり根本問題にさかのぼりますので、その点はしばらく検討させていただきたいというふうに考えておるわけでございます。
  57. 沢田広

    沢田委員 事務当局からひとつ。どちらですか、国税か……。
  58. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 基本的な考え方は、ただいま大臣から申し述べたとおりでございます。  それで、現実的に一つ提案しているのは、土地の利子の問題でございます。これは一般的に申し述べれば、会社、法人の任意的な行為によってそれが赤字になるということであろうかと思います。その一つの形態が、利益は上がっている、しかし土地を次から次へと借入金で購入し、その利子でもって赤字にするという、そこのあらわれが今の点であろうかと思います。  その点をもう少しさらに進めますと、交際費でございますとか寄附金でございますとか、こういったものもある程度法人の任意によりまして支出できる経費、これによって利益を帳消しにして赤字になるという現象がある。ということであれば、交際費の支出、寄附金の支出でもって赤字になるというような点につきまして何らか見直しができないかということは、私どもしょっちゅう検討をいたしておるところでございますけれども、一方におきまして一生懸命交際費を支出して何とか赤字から脱却しようとする、そういうところにそういうような課税をお願いするのはいいのか。また現在交際費は、基本的には大企業、資本金五千万円以上の法人につきましてはもう否認でございますので、そうした方向をとりますと結局中小法人の方にだけ当たるような改正になるというような難問もございましてなかなかうまい出口は見つからないということで、ただいま大臣からも申し述べましたように引き続き検討すべき課題であるというふうに認識しているところでございます。
  59. 沢田広

    沢田委員 あるデパートが黒字である、それから同じ系統ですが、ある都市のデパートは赤字である、そうなるとそのデパートとデパートは一緒にしまして一つの会社にする、そうすると一方の黒字は片方の赤字と相殺されまして結果的には赤字になる、こういうのもたくさんあるのですね。  ですから、要すれば赤字法人に対して、四二%がつらいということなのかどうかわかりませんが、あるいは違った税率でお願いをするというのも当面あるだろうと思うし、あるいは当面の税率二〇%なら二〇%なり赤字でもひとつ納めてもらいますという、所得じゃないからこれは困ると言うけれども、それは見かけの総売り上げについて考えていくという方法もあるわけですね。  そういう形で経営努力もしてもらうとか、ともかく国民が、赤字法人だからそのまま均等割で、駅前の一等地を使って赤字だからということでそのままのさばっているという状態を許しておくという感情にはなかなかなり切れないと思うのですよね。ですから、そういうものが存在しているということについては相当問題がある。外形だけの均等割しか納めていない、しかも駅前の一等地を占有しておる、それは国民感情として許されることではないですよ。  ですから、このままさらに検討するということではなくて、実態調査を強めるかどうかわかりませんけれども、あるいは経営内容にまで立ち入ることになるのかわかりませんけれども、いずれにしてもその誠意を政府が示してもらわないと、これは国民はなかなか納得しない、こういうふうに思います。  私の言った例も現実的になくはない。これはあるのですから、皆さんも知っているだろうと思うのですが、そういう状況を野放しにしておいて、営々として働いているところの今度は中小企業やその他は税金を一生懸命納めている、そういう逆作用がより不信感を増大させておる、こういうことにもつながるわけです。だから、手がつかないんじゃなくて、手をつけるという意思表示だけはきちんとひとつやってもらいたいと思うのです。例えばこの半年間はそれだけを専門的にやるというようなものがあってもいいじゃないですか。あるいは五年、三年に一回は全部ひとつ点検をやってみるということもあっていいじゃないですか。とにかくそういう赤字法人団体調査プロジェクトをつくってそれだけをやって歩くということがあってもいいじゃないですか、そういうことをひとつ政府で出せば、それは今度は黒字で申告が出てきますよ。そういうふうに私は思います。  だから、そういうことを発言すること自身、私は黒字になっていくのだろうと思うのです。また黒字にするように努力していくだろうと思うのです。痛くもないところまで探られるのは嫌だというのは人間の本能ですからね。だから当然、そういうプロジェクトをつくってやるということになれば、それに対応した業界の体制ができる、こういうふうに私は思いますが、大臣、せめてそのぐらいはプロジェクトをつくって、百万の法人ですからたくさんありますが、ひとつ手がかりを求めてやってもらいたい、こういうふうに思います。いかがでしょう。
  60. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 制度として改めることができますものは、今回のように今後も検討を続けてまいりますが、もう一つ執行面で、確かに実査率を高めてまいりますとまだいろいろなことができるだろう、否認し得る経費というものも実際突っ込んでいけばあるということは十分考えられますので、その点は一生懸命励行させていただきたいと思います。
  61. 沢田広

    沢田委員 続いて、文部省でありますが、宗教法人であります。  公明党の矢野委員長も先般は、宗教法人においても純粋の宗教活動以外の収入については課税されることも至極もっともである、こういう御意見も拝聴しました。ということで、宗教法人という名前であるから全然治外法権だということにもならないということで、その業務の内容あるいはそのあり方というものについては、やはりこれも世間からいろいろあります。  それから、特に著名なものと著名でないもの、という分け方はよくないのかな、皆著名かもわかりませんが、私らが知らないような宗教団体も、これまた数多くあるわけですね。これはなかなかチェックができない。しかもこれは、信教の自由というものが憲法で保障されている分野であります。ですから、なかなかそれもチェックができないけれども、だといってこのまま野放しにしておくというわけにはいかない。極端に言うと、うちの中にお稲荷さんみたいなほこらをつくって何々教ですと言えば、それで固定資産税もゼロになるというような笑い話もなくはないくらいですからね。  ですから、宗教法人に対する課税というものに対しては、これも文部省で、大変に厄介だろうと思いますけれども、本家の方の仕事が追われているくらいですから、だと思いますが、やはりこのままそうしておくわけにいかないので、文部省としての見解、それから大蔵省としての見解、これも明らかにしていただきたい、このように思います。
  62. 中島源太郎

    中島国務大臣 お尋ねの宗教法人でございますけれども、その中には宗教活動、これについては課税をされておりません。この部分は信教の自由に基づくものである、これは御存じのとおりでございます。  一方、宗教法人の中にも、その他の収益事業あるいは公益事業を営んでおる部分がございます。この部分は他の公益法人との横並びの税率となっておりまして、これも御存じのとおりで、私どもはそれぞれ適正な理由があるというふうに考えております。  ただ問題は、にもかかわらずその中で脱税行為が一部にしろある、あるいは申告漏れがある、これは残念なことだと考えておりますし、また、そういう宗教法人に対する優遇税率というものをねらって一般の法人から意識的にそれの進出、参入を図ってくるという意図的なものも見られるわけでございます。こういったものは厳しく排除していかなければならない、また、納税意識も高めていく必要があるということからの努力をいたしておるところでございます。  しかし、実態につきまして、さらに今御懸念のような問題につきましては、認証事務の取り扱いを厳正にいたしていくということが必要でありますので、ことしの三月末日に文化庁次長の通達を出しまして、認証事務については今のように単なる宗教の、と同時に信者の数の問題、あるいは宗教法人の移転の問題、あるいは休眠的な宗教法人があればこれに対して解散を指導するとか、そういう厳しい通達を出させていただきました。  ただ、実態はどうかということでございますので、本年から来年にかけまして実態調査をやらしていただきたいと思っております。何分、単位宗教法人は十八万三千法人ほどございますので、そのうちの約一〇%を目標に一万八千程度の宗教法人の実態調査をいたしまして、そして早急に取りまとめてまいりたい。その調査項目は大体取りまとめをいたしましたので、本年十一月ごろから実態調査に取りかかりたい、このように考えておるところでございます。
  63. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 課税上の関係についてお答え申し上げます。  宗教法人につきましては二つの観点がございまして、一つは、法人が収益事業を行っております場合には、収益課税が行われます。したがいまして、法人税が適正に納付されておるかどうか、申告されておるかどうかという観点のチェックが一つでございます。それからいま一つは、当該法人から給与等で支払われましたものに対する源泉徴収が適正であるかどうか、その二つの観点から宗教法人につきましても適正な課税に努めてきておるところでございまして、今後とも、そういった収益事業かそうでないかといった区分の問題、あるいは収益事業でありながら適正に申告されておるかどうか、そういった観点からのチェック、あわせて源泉所得税につきまして申告漏れになっておるような給与等がないかどうか、そういった観点からの調査も、今後とも継続して充実してまいりたいというふうに考えております。
  64. 沢田広

    沢田委員 国税庁の方にお伺いしますが、現在まじめに申告をしている宗教法人、まじめにと言うと言葉がまたおかしいですが、正当にといいますか、している法人はどの程度あるか、御存じですか。
  65. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 ちょっと手元に正確な数字がございませんけれども、文部省あるいは都道府県等に認証されておりますのは約十八万件ほどあったかと思います。ただ、それはあくまでも宗教法人としての認証件数でございますが、収益事業を行っておりません場合には当然のことながら納税義務もないということで、私どもの方の関係で申告等の必要になるものは、その中の、正確な数字ちょっと手元に置いておりませんけれども、一万弱だったように承知しております。
  66. 沢田広

    沢田委員 駐車場をしたり宿舎として利用したりしている場合に、駐車場の料金が宗教活動に使われる場合と、駐車場の収入をその宗教法人の収入としている場合、この二つがあると思いますが、その点はどういうふうに、はっきりしないと言うが、前もってレクチャーしているのですからその程度くらいは調べておかなければおかしいと思うのですよ。ですから、その区分についてはどういう解釈を持っていますか。
  67. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 宗教法人の場合、一般的な公益法人と同様に、政令で定められております収益事業に該当する行為を行った場合には、当然納税義務が発生するわけでございます。お話しの駐車場等につきましても、当然そういう事業から生ずる所得があります場合には申告をしていただく、納税していただくということで、宗教法人でありましても、その場合には他の公益法人等と区別なく、当然納税義務があるということでございます。
  68. 沢田広

    沢田委員 はっきりつかんでいないようですね。いわゆるお寺なりその法人に来る人が専有して使う駐車場と、それから一般に開放している駐車場と二種類あるわけですね。もちろん境内なんかに置いてあるものは宗教活動の一部である、こういうふうになるのだろうと思いますが、それ以外に一般の者に開放している駐車場の収入も、それは課税対象になるという解釈でよろしいですか。
  69. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 ただいま申し上げましたように、駐車場業というのが政令三十三項目の中の一項目として掲名されております。したがいまして、委員おっしゃったようなケースでありますならばこれに該当いたしますので、納税義務が発生するというふうに考えております。
  70. 沢田広

    沢田委員 その場合に、これはあなたに聞くのはちょっと難しいかもしれませんが、地方税も当然それには伴ってくるということになりますね。
  71. 湯浅利夫

    ○湯浅政府委員 地方税の関係につきましても、所得に関する点につきましては国税と同じ扱いになるわけでございます。固定資産税等につきましても、収益を伴うものに使われる部分につきましては課税の対象になる、こういう考え方になるわけでございます。仰せのような、一つの駐車場につきまして一部は信者の方たちが使い、一部は一般に開放されるというような場合の区分につきまして、具体的にどういうような形で運用するかという点につきましては、やはり個々の実態に応じまして固定資産税の課税をするというような形になろうと思います。
  72. 沢田広

    沢田委員 それは、地方団体に任せてあるわけですか。
  73. 湯浅利夫

    ○湯浅政府委員 基本的には今申しましたような基準でやるわけでございますが、その具体的な運用につきましては、それぞれの地方団体で課税事務を行うということになっております。
  74. 沢田広

    沢田委員 では、認定は国でやらないで地方団体に任せて、それは国が乗るということですか、判定は。
  75. 湯浅利夫

    ○湯浅政府委員 所得に関する課税につきましては、国税の関係の認定に乗っていくということになると思います。私申し上げましたのは、固定資産税の課税の問題につきましてそういう形で課税を行うということになると思います。
  76. 沢田広

    沢田委員 いや、こんなことで時間をつぶしたくはないのですけれども、もう少し完璧な答えがあるといいのですが、とにかく若干不明点なしとしませんね。この後宗教法人に文書が出るそうでありますから、それに対応して国税も地方も同じように一つのその文書を柱としてそれに具体的な項目をつけながら、その対応にこれまた不公平が生じてはなりませんし、まじめな法人が泣いてはいかぬのでありますから、その辺にはきちんと文部省と打ち合わせをした上でその対応をきちんと図ってもらいたい、こういうふうに思いますが、よろしいですか。
  77. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたように、私ども国税の関係からいきますと、ニつの観点がございます。したがって、法人税に関する分につきましては、収益事業を行っているかどうかというところを、文部省での調査等も十分参考にしながら、今後とも課税の適正化に努めてまいりたいと思いますし、同様な問題は、源泉所得税につきましても、源泉徴収義務のある人がしかるべく源泉徴収をしていただいておるかどうか、その点の確認なり課税の適正という点を、従来以上に今後ともしっかりやってまいりたいというふうに考えております。
  78. 沢田広

    沢田委員 いずれにしても、これが実行された以後の結果について、できれば当委員会が存在している間に御報告をいただきたい。途中であっても、御報告をいただきたい。この点、よろしいですか。じゃないと、大体聞きっ放しで終わらせられる危険性があるから……。
  79. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 その時点その時点で、私ども全力を挙げてまいるつもりでございます。いかなる格好での御報告ができるか、今時点では何とも申し上げられませんけれども、御質問をいただいた段階での現況に即してお答えを申し上げたいというふうに思います。
  80. 沢田広

    沢田委員 もう一つ、次の問題に時間で入りますが、その前にちょっと……。  金が今千七百円ぐらいでありますが、宗教法人に関係することにもなるのですが、相続のときに位牌を金でつくったらどうなるのだろうかな、それは相続税はかかるのかかからないのか、大変そういう話もなくはありませんでした。五キロぐらいでつくっておいたら、軽いと泥棒に入られるだろう、じゃ少し重くしてつくったら心配ないのじゃないかというふうに非常に頭を使っている人もいるんだなと思ったのでありますが、もし五キロなら五キロで位牌をつくった場合は、これは相続税の対象となるのですか、相続税の対象とならないのですか、どっちですか。
  81. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 大変難しい質問でございますが、一般的に、その商品価値に着目してのものであれば、課税対象になり得るだろうと思います。崇拝の対象かどうかというそういう区分からいきますと、おっしゃるようなケースは、どちらかというとそうでない方の部類に入るのじゃないのかなと思いますが、極めて難しい質問でございますことだけは御理解賜りたいと思います。
  82. 沢田広

    沢田委員 いや、難しいと言ったってこれは現実の問題なんですから、難しいから答えられない、かからないならかからないでいいのですが、難しいからかからないというのなら、それはそれで一つの結論です。しかし、そういう人もなくはない、今金が安いですから。ですから、先祖を敬う気持ちで、その熱心の余りやはり金で位牌をつくるということはあり得る、こういうふうにも考えますが、やはりそれは尊敬の念十分に価値あるものだというふうに思うのですが、いかがですか。
  83. 伊藤博行

    伊藤(博)政府委員 あくまでも一般論でございますけれども、常識的な範囲を超えて商品価値の非常に高いものをそういうふうに使われた場合には、私どもとしては課税されるべきものというふうに承知しております。
  84. 沢田広

    沢田委員 これも若干過酷なような気がしないでもありませんけれども、きょうはこの程度にして、また別な機会にあとやりたいと思います。  続いて、物品税でありますが、これも手直しをしなければいけない、スタンドでも千五百円のスタンドから物品税がついているという意見もあります。同時に、ダイヤモンドや毛皮みたいなものにもっと物品税がかかってもいいじゃないか、日本は消費亡国になってしまうんじゃないか、奢侈亡国というか消費亡国というか、そういうことをすら言われているわけであります。  やはりダイヤモンドとかそういうものは、高いから値打ちがあるので、あれが十円だ百円だといったら、だれもありがたいと思わないんだろうと思うのです。そういう意味において物品税の見直しというのは必要なことで、やはり奢侈品は奢侈品として高い税金を納めることによって自己満足を感ずるという一分野はなくはないと思うのですね。ですから、物品税については、やはりそれなりの社会的なあるいは世界的なそういう一つの中に価格構成を今日つくっておる、だからそれは尊重していくことも大切なことだというふうに思います。  これは大蔵と通産両方から、ひとつ現行の価格構成、こういうものが一つ日本の今日の状況をつくっておる、突然二束三文になっていったら価格は非常に混乱してしまう、ダイヤモンドが百円になったそうだなんといったら、これはとんでもないことになるんだろう、まあ百円にはならぬでしょうが、例えばの話であります。ですから、その意味において、高い奢侈品は奢侈品としての税金を納めることによってその満足を得ている人はそれで満足でいいんじゃないのか、こういうふうに思いますが、その点はいかがでしょう。
  85. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 物品税が本来つくり始められまして今日までいろいろな変遷をしてまいりましたが、確かにその間の段階では、奢侈品には高い税率を課するということをずっとやってまいりました。今日でもそういうものは残っておりますけれども、実際にはしかし、何が奢侈品であり何が奢侈品でないかということは、それはダイヤモンドなどは明らかでございますけれども、途中になりますと国民の価値観が多様化してまいりまして非常にあいまいになってまいっておりまして、今日の現状で申しますと、紅茶は非課税でございますがコーヒーは課税である、ウーロン茶も課税であるというようなことはございます。スキーは非課税であるがサーフボードは課税である。事はなかなかもう説明がしにくくなっておる、これはやはり価値観が多様化いたしておるということに関係があると思います。もう一つは、これだけ経済がサービス化いたしましたけれども、サービスについての課税というものはほとんどないということがございます。  それから、現在の物品税は御承知のように自動車とあと家庭電器、クーラー等々で七割近く、大変少品種が大きなものを背負っておりますもので、外国からそれは一種の海外に対する差別課税であるという批判を自動車についても受けましたし、酒税なんかもそうでございますが、これについても受けておりますことは御承知のとおりで、あれこれどうも今の制度としてはもう説明がもたないということになってまいっておるのと、ごく少数の品種が大変な税金を背負っておるという、いわば一種の不公平感と思いますが、そういうことがありまして、やはり個別間接税というものには限度があるという感じを持つに至りまして、今度それを一般的な消費税に変えさせていただきたいと思っておるわけでございます。  御指摘のように、本当にダイヤモンドが奢侈品であるということにはどなたも御異存がないと言われればそうであろうと思いますが、それはしかし、もし考えられるとすれば何か別個のことであって、一般的な物品税の中で奢侈品というカテゴリーを設けることは、現実にはなかなか選択が難しくなっておるというふうに考えております。
  86. 沢田広

    沢田委員 では、ダイヤモンドは否定しないでしょう。だけどまた、ひとつ価格構成から、やはり国民価格に対する感覚の面から見て、通産省としてはいかがですか。
  87. 田村元

    ○田村国務大臣 今大蔵大臣が御答弁申し上げたことですべて尽きておると思いますけれども、奢侈品とは何か、まあ価格という点でもべらぼうなものはとにかくとして、奢侈品とは何かということについては、我々はやはり時代の変遷というものを考える必要があるのじゃなかろうか。奢侈品、庶民にとってはぜいたく物だというような考え方で、金持ちだけが買うあるいはもてあそぶ、そういうものを身につける、そういうことで庶民にとっては奢侈だという考え方はやはりいかがなものであろうかというようなことから、私ども、物品税に対して抜本的な見直しという点、それだけじゃございませんけれども、今の御質問の御趣旨に沿って御答弁申し上げれば、そういうことで賛成をいたしてまいったということでございます。
  88. 沢田広

    沢田委員 じゃ、ダイヤモンドなどについての課税も同じだという意味に解していいですか。毛皮にしてもそうですけれども、そういうものはやはりいわゆる一般の普通の人が、五百八十万の平均給与の公務員にしても、これは手の届かないものですよ。ですから、そういうようなものがある程度買える人はやはりこれも社会に還元をする、こういう論理というものはあってしかるべきではないか、こういうふうに思いますけれども、これ以上追及はしませんが、ダイヤモンドも毛皮も、そういうものも買える人は買え、あとの人は泣け、こういう意味というのはちょっと通用しないのじゃないか、そういうように思いますが、これはもう一回、大蔵、通産大臣と両方ですが、お答えいただきたいと思います。
  89. 田村元

    ○田村国務大臣 ダイヤモンドなんか金持ちが買え、あとはまあ、そういう意味で申し上げたのじゃございませんので、庶民のニーズあるいは時代の変遷、実態、そういうものを考えたときに、ダイヤモンドであるからあるいは毛皮であるからといって、庶民をその対象外にするということはいかがなものであろうか。もちろん何十カラットとかいうでかいのは、それはそういうようなものは話は別でございますけれども、庶民にもまた買うことのできるダイヤモンドもあるはずでございます。毛皮でも庶民で買うことのできる毛皮もあるはずでございます。でございますから、どこまでがどうかというと、これはなかなか難しゅうございますけれども、私は、やはりそういうことがいわゆるリッチというのでしょうか、庶民に心の豊かさというものを感ぜしめることは悪いことじゃないのじゃないか。奢侈品というふうにして何となく、おまえたち貧乏人はもうこんなものは関係ないよ、これは金持ちだけだから税金かけるんだというふうにいくのもいかがなものだろうか。これはなかなか難しい問題でございます。今おっしゃったことも事実でございますし、また難しい問題で、どのようにといって決めつけるということがなかなか難しい、この点は大体裏返せば考え方は同じようになるんだろうと思うのでございますけれども、どうぞ誤解のないようにお受けとめを願いたいと思います。
  90. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今通産大臣がお答えいただいたわけでございますが、庶民にも買えるダイヤもある、庶民にも買える毛皮もあるというようなこと、まことにそのとおりだろうと思いますが、そういたしますと、それは課税から外すかということになって、かなりまた問題は複雑になってまいるのだろうと思います。そうして、正直を申して、そういう場合に、数少ないケースが残ったとして課税はできるのでございましょうが、さて、その徴税費と実際いただく税金とがそこでどういう関係になるのだろうかというようなことも、現実問題としてはやはり租税でございますので考えることもあって、ごくごく限られた場合に何かそういうものが別途考えられるかどうかということは、お話でございますから検討もいたしますけれども、いわゆる物品税の中でそういうものを考えるということはいかがなものであろうかと存じます。
  91. 沢田広

    沢田委員 これはこのぐらいにしますが、今まで平然と物品税、これを今日一兆八千億を取ってきたのですから、今そらぞらしくいかがなものかなんて言うのも、それこそいかがなものかと思うのであります。そういう歴史的な過程というものをやはりみずからが卑下していくということは、それこそはいかがなものかと思うわけでありまして、やはり現実としてミンクの毛皮とかダイヤモンドというものにある程度の税金がかかることは、社会の常識だと私は思います。だから、そういう常識を一つの論理で割り切ってただにするなんということをもし仮にも言ったら、今までの物品税は何だったのだということになってしまいますから、それは天につばするようなもので、みずからがそれはかぶる、こういうことになるわけで、以上でとどめますけれども、そういう牽強付会の論理はひとつ使わないでいただきたい、こういうことを申し上げて、この問題はこの程度にとどめます。  続いて、土地の課税のあり方でありますが、先ほども述べましたけれども土地暴騰し続けております。これは国土庁にお伺いしますが、現在の平均的に国民が住める条件、大体住まいとして持ち得る条件の標準はどの程度の平米が適当かというふうに、これは感覚的なものかもわかりませんが、ひとつ国土庁の長官は現状においてどの程度が国民が住み得る居住の面積であるか、こういう点についてはどんな考え方を持っておられますか。事務局でも結構です。
  92. 片桐久雄

    ○片桐政府委員 居住水準につきましては、建設省の住宅五カ年計画の方で誘導居住水準というものを決めておりますけれども、例えば都市居住水準の場合には、共同住宅で標準的な四人家族で九十平米ぐらいというものをいわゆる専有面積、マンション形式の場合九十平米というような数字を出しておる次第でございます。
  93. 沢田広

    沢田委員 都市ばかりじゃありませんから、全国的平均ではどうなんですか。
  94. 片桐久雄

    ○片桐政府委員 庭つき一戸建ての場合の数字については、今手元に数字がございませんけれども、百二十平米とかそのぐらいの水準だったと思っております。
  95. 沢田広

    沢田委員 ちょっと少な過ぎるな。税法では二百平米、こういうふうに一応基準を押さえていますね。それがいわゆる可住面積といいますか、そういうふうに押さえているのだろうと思うのであります。今のこの公示制度というものでいくと、これは相続税だ、固定資産税だ、あるいはその他の評価税だというふうにいろいろな問題を投げかけているわけでありますが、何とかこの土地課税のあり方の中で、三千万が四千万にというような意見もありますが、さっき言ったような政策がもし並行的に行われればどうなのかというのが一つ。それから、この近郊都市圏における土地暴騰下における土地税制というものをどうするかということが一つ。だから監視制度と、あるいはそういうものが都市計画法上設定してある区域についてはこういう税法を適用します、いわゆる白地のところについてはこういう税法を適用します、まずこういう区分があってもいいのではないか、こういうふうに思いますが、これは税務当局の方からお伺いをいたします。
  96. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 御指摘の二百平米の土地の問題でございますと、これは特段地域を限ってございませんで、そういう考え方から地域をもって税制を違うものを適用をするというのはなかなか難しい。全国一律のものとして適用をいたしておるわけでございます。そういう点からいたしまして、二百平米が都心でございましたら何億にもなる、地方でございますとほとんど何十万、何百万ということだから不公平ではないかという議論ももちろんございますが、地域をもって税法の適用を区分するというのは、非常に問題ではないかなという気がいたします。  ただ、御指摘のように、例えば農地の問題にいたしますと、相続税の納税猶予制度はこれはもう全国一律、別に市街化調整区域、市街化区域、区別はいたしておりませんけれども、市街化区域の中におきますところの一定の農地を売った場合には特別の税率の適用があるといったことで、地域的なものは皆無とは申しません。したがいまして、全国の地域を、何と申しますか、その所在地、何々県なりなんなりそういう区別は不可能かと思いますが、市街化区域、市街化調整区域、白地区域、そうしたものによって適用を異にする税制、これはその政策的な要請が非常に大きければ考えられるところでございます。しかし、そうしたもので政策的に余り細かく区分するのは基本的にはいかがかな、やはり土地土地、関連する税制は一律適用が本来は適当ではないのかなというふうに考えてございます。
  97. 沢田広

    沢田委員 土地の課税の問題だけは、これだけでも一時間か二時間議論しなければならぬ問題で、非常に多岐にわたる問題なんですね。だから、今ほんのちょっぴりかじったような話になるのでありますが、要すれば、土地課税というものはそもそも何なんだろうか、それから土地の譲渡課税というものは何なんだろうか、やはり根本に触れないと、この土地課税というものが全国一律でいいと言いながら、いわゆるその免除額は一律になっているとすれば、相当な面積に差が出てくる、あるいは利用目的によって差が出てくる、こういうことについて土地課税というものがやはり不公平の原因とされておる。  その原因を直すのにはスライド制も認めていかなくちゃならぬのじゃないかというふうに私たちは考えます。やはり評価額なら評価額に応じて考えていく。それは、干円のところと百万円のところと同じ免税点があるという論理も、これも不公平の一つにつながるんじゃないか。だから、百万円のところは百万円のところとなり、百円のところの控除限度の倍率はどこを基準として四千万と決めるか、その比率においてある程度許容限度を広げていくという余裕は国民に与えてやらなければならぬのではないか、こういうふうに思います。  全国一律で許容していくということは、都市にいる者に過酷な条件を与え、そして地方にいる者に非常に楽なということに条件を与える、こういう論理が展開できるんですね。ですから、ますます都市生活者は困窮していくということになってくるんだし、心もすさむし、問題も起こす、こういうことになるわけで、やはり税法上でも土地課税はある一定の水準のスライドを認めてないと、これだけ暴騰した土地の段階において不労所得だという形で全部処理するというなら、これはまたこれで別の論理になる。  何かそこに税制の基準というものをつくらないと、国民は自分で高くしたわけでも何でもない。結果的には客観的な条件、周りの条件でそうなっちゃった、こういうことなんで、本人に責任があるわけではないんですね。だからそういう意味において、じゃ高く売れたんだからそれでいいじゃないかということにもなりますが、不労所得という論理で一貫するんなら一貫しても、これも構わないんですね、これは一つの論理ですから。しかし、一定の限度をつくるというならば、やはり周りの条件と同じようなバランスのとれた条件にしなければこれは納得できないんじゃないか、こういうふうに思います。その点まず、バランスだけの問題で一律ということがかえって不合理を生んでいる、こういうことになっていると思うのですが、いかがでしょう。
  98. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 四千万円という金額は、一律に適用させていただいております。これは原則二〇%ということでございますので、金額に応じ二〇%でございますので、そこは金額が大きければ大きいなりに二〇%一本の税率で、小さな金額でございましたら税額もしたがいまして小さくなるわけでございますから、そこの点は地域的に区別をいたさなくても、その金額に応じて自動的に税負担も、累進というところまで委員のお考えがいくのかどうかでございますけれども、金額に大きく、とにかく累進はいたさなくても、比例税率でございましても税負担はそれは格差が生ずるというところは言えるのではないかと思います。  それから、今回御提案申し上げているのでは、最高税率を五〇%といたしますと、長期の譲渡所得が二分の一課税ということでございますから、もう四千万円までは二〇%でございまして、その上のものはすべて二五%が限界かと思いますので、御指摘のように累進をそこに導入する余地は余りないのではないかなという気はいたすわけでございます。  それから一方、面積でもって決めておりますのは、逆にこれは全国一律二百平米といたしておりますが、御指摘のような点もございまして、二百平米、従来は居住用地でございますと三〇%控除でございますが、ただいま御指摘のような異常な高騰ということが他動的に発生した、これにつきましては、今回五〇%控除というその控除率の方で対応させていただくのが適当ではないかということで御提案を申し上げているところでございます。
  99. 沢田広

    沢田委員 新しい方の制度については、今のところ何も言っているわけじゃないのです。それは念のため申し上げておきますが、要すれば、現状の土地価格構成の中で、その単価の差というか、坪当たり、平米当たりの単価の差によって限度額が一律に置かれていることにおける不公平、こういうものを解除していく必要性がある。言うならば、評価額の何倍というぐらいな限度額というものは、そこでスライドという意味を言っている。三千万なら三千万は幾らを基準にして三千万、だとすれば、評価額が高くなれば高くなった水準で限度額を上げてやる、こういう意味で私は申し上げているわけで、そういうことで検討はできないか。じゃないと過酷な条件になってしまうおそれがある。土地は金を生むものじゃありませんからね、それ自体は。ですから、そういう意味においての限度額というものは考えてやらないと、不公平をより一層増すことになりはしないか。  こういうことで、これは大蔵大臣、ここだけで議論していられませんので、ひとつどういうふうに今土地税制について考え、新しいのだというのじゃだめですよ、そうじゃなくて、考え方を、限度額を上げていくということでどうなんだろうか、こういうことでお答えいただきたいと思います。
  100. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは私も随分考えてみまして、正直申しましてうまいお答えがないのでございますけれども、やはり根本は、相続税というものは、変な表現でございますけれども、やっぱり従価税であって従量税ではないということにどうも帰着するように思うのでございます。百坪の土地に課税するのではなくて、評価された何千万円とか何百万円に課税をするというところが、どうしてもそこから逃れられないのじゃないかと思います。  それで、先ほど主税局長が申し上げましたように、それでも事業用土地に六割引いてあげるということは、その六割が東京でございましたら一億円に当たるかもしれません。それから、青森でございましたら八百万円ぐらいになるかもしれない。そういう意味では、六割引くというところでかなり東京の人には当たりがやわらかくなっている、その他の財産まで考えますとそういうことは言えるのじゃないかと思うのでございます。
  101. 沢田広

    沢田委員 それも納得はちょっとできないのですが、評価額が、あるいは規制区域であろうとなかろうと価格が高くなれば総体の枠が大きくなるわけで、その六割というものも大きくなるわけですから、そういうことにおいて、金を生むものでないだけに一般の人にとってみれば過酷な条件を生む、こういうことですから、きょうはこの問題は、今後また引き続いて、不公平税制認識に若干ずれがあるようでありますから、これは別な機会にまたやりたいと思います。  次いで、不公平税制の最たるものとして言われているのが引当金あるいは準備金、こういうようなものでありますが、特に引当金の見直しについてこの機会にお伺いをしておきたいと思います。  各引当金あるいは交際費とかそういうものもありますが、現在のところで、この引当金の見直しをする考え方があるかどうか、まずそれからお伺いします。
  102. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 引当金につきましては、これは特段、本来は税制上の特別措置ということではございませんで、いつの時点で費用を計上するか、それを収益の計上の時期と合わせるといういわば費用収益対応の考え方が根底にあるわけでございますので、これをもちまして特別措置的に不公平的な制度として議論をするのはややいかがかと思うわけでございます。  しかしながら、具体的には引き当ての率等につきましては、それは利用実態等を踏まえつつ常に適正なものにしておくように努力すべきことは当然でございますので、そういった点につきましては従来から見直しを随時行ってきているところでございます。  今回の税制調査会の答申も、主な引当金、貸倒引当金、退職給与引当金、賞与引当金につきましてそれぞれ考え方を述べ、検討の方向を示してございます。ただ、今回御提案をしております改正案には具体的には御提案はいたしておりませんが、それぞれの引当金につきまして示された税制調査会の考え方に基づきまして、今後とも随時検討してまいる考え方でございます。
  103. 沢田広

    沢田委員 案外時間のたつのが早いものでありますから、急がないとならなくなりました。  とにかく、これは六十年度でありますけれども、交際費にしても三兆円、これは今言ってないことですよ。寄附金でも二千八百億以上、それから貸倒引当金が三兆円、それから賞与引当金が五兆円、それから退職引当金が八兆円、減価償却のあれが二十兆円というように、これが要すれば企業会計の内部留保金として運用されておるし、そのことによって赤字、黒字の目印がまた出てくるし、同時に、退職引当金などは、倒産した会社の引当金はゼロになってしまっておる。こういうようなことがやはり不公平の一つの内容として指摘をされているわけであります。  ですから、もう以上で言いませんけれども、引当金についてはなおさらに、では倒産した会社の退職引当金を残してやる道はないのか。素朴な質問一つすれば、倒産したけれども退職金を出せないというのはおかしいじゃないか、そのために引当金を置いておくのじゃないのか、こういう質問を我々受けるわけです。大臣、それは疑問に思いませんか。倒産しても退職引当金は退職引当金としてそれは残してやるという筋道を法的に保障してやるということは当然のことじゃないでしょうか。倒産したらなくなってしまうのだよ、路頭に迷うのだよという論理は、政治的に許されないだろうと思うのですね。その一点だけ聞いてこの問題を一応終わりますが、そういう点で見直しが必要だというふうに言えると思うのです。大臣、いかがですか。
  104. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは逆の面からのお尋ねであったわけでございますけれども、一般論として、引当金は費用と収益が対応するということで、費用を期間配分をするということなのでございますから、特別の優遇措置ではございません。結局はいただけるというか、そういうものでございますが、ただ引き当て率が実態から非常に難れて大きくなっているというようなことはいわば入り用のないことでございますから、これはやはり年とともに整理をしていかなければならない。  最後のお尋ねは、ちょっと逆の面からのお尋ねで、主税局長からお返事いたします。
  105. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 退職給与引当金につきましても、基本的な考え方は、その退職金を支払う金額、それをいつの時点で前もって費用に計上しておくかという税制上の理屈でございますので、いざ払う段階になって倒産いたしておりましたらその金が現実に積まれていないという問題は、これは税制の立場からいたしますとちょっとなじまない議論でございます。  しかし、ただいままさに委員指摘のように、政治的に一体それじゃ何なんだ、この引当金はという御議論のあることは、私どもも従来から十分承知いたしておりまして、この点につきましては、それを何か特定の資産として積み立てることをして支払いの担保をすべきであるというものと連動させるべきではないかということも検討はいたしてきてございます。しかし、そういたしますと、逆に退職給与引当金の積み方に限定が出てくるような感じもするということで、一方そういう問題意識もございますので、なかなか難しい問題でございます。  したがいまして、大きな方向としては、退職給与引当金は、むしろ外部拠出的なものに大きく変更していくべきではないかという議論がございます。中期的に見れば私ども、そういった方向でもってむしろこの制度を基本的に見直すべきではないかという気もいたしておりますが、ただいまこれを廃止いたしたりしますと、労使双方からこの退職給与自体の水準にまで影響するんじゃないかという御議論もございますので、慎重に検討いたしておるところでございます。
  106. 沢田広

    沢田委員 これにはまだ別な意見もありますが、時間もありますので、次の問題で商法改正、あと準備金その他は他の委員が担当してやることになっておりますので、譲っていきたいと思います。  商法改正に当たって、特に金融機関の資本金の増額問題、それからこれは日経さんの二月二日の「「簿外取引規制も」ということで、BISの条件の問題、自己資本比率の八%の貸し付け問題、こういうことを含めて商法改正についてはどういう手順で進めていこうとしているのか、その点ひとつお伺いをいたします。
  107. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 商法の改正作業につきましては、法制審議会の商法部会におきまして、昭和五十七年以来鋭意検討を続けていただいております。もうその審議も大詰めに来ておるところでございます。そこで、できるだけ早くこれは国会に提案をさせていただかなければならない重要問題でございまするが、今法務省といたしましては、多くの法案も審議をお願いしなければならないという時期に当たっておりまして、次の通常国会に提案することはなかなか難しいんじゃないかという感じもございまするが、できるだけ早く提案をさせていただいて審議をお願い申し上げたい、こういう段階でございます。
  108. 沢田広

    沢田委員 じゃあ、後で突然出されてこれでこうだというんじゃなくて、やはり途中で、中間でもいいですから報告をしていただいて、一応各議員の意見を聞いた上でさらに詰めていただくという段取りをとっていただきたいと思うのです。決着がついちゃってから、答申をしちゃってから全部これで決まったよという押しつけのものから一つワンクッション置いて、一回中間で報告していただいて、また意見をそれぞれ聞いてその上でさらに詰めたものにしていく、そういう段階をとっていただくよう、特に商法改正は今後非常に大きな重要な意味を持っておりますので、お願いをして、それはわかりますね、それで大体やっていただけますか。じゃあ、お答えいただきます。
  109. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 仰せのとおり重要な問題と心得ておりまするので、さようにいたしたいと存じております。
  110. 沢田広

    沢田委員 続いて、これも大蔵大臣、通勤費の問題でありますが、通勤費は今二万六千円ぐらいまで許容限度を与えてもらっているわけでありますが、瀬戸の大橋ができて、例えばあれは通行料五千円ちょっと、それで毎日もし岡山の方へ四国から通勤していくと仮定すると、二十五日にしても大変な金額になる。往復すると、これは一日一万円になる。あれは通勤させないつもりでああいう高い料金にしているのかどうかわかりませんけれども、通勤費の枠は二万六千円で区切っているということになると、どうやってもこれは筋が通らないのですね。やはりそういうものを決めるときには、通勤費もそこの部分は別途実費として認めるとか、やはりそういうものを一方で考えませんと、料金決定だけは勝手に進んじゃって、片っ方の枠だけはそのまま据え置かれているというのは、これまた通勤に要する費用、実費支弁ですから、当然それは考えられるべき性格のものですね。ああいうべらぼうな一兆七千億もつぎ込んだから五千円にもなったんだろうと思いますが、やはりそこには政治が入っていいんじゃないのか、あるいは実費支弁金額は免税措置になっていいんじゃないのか、こういうふうに思いますが、まずその一点からお聞かせください。
  111. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これも実は困った問題でございまして、理屈の上では、どこから通勤するかというのは勤労している人の任意であるということだものでございますから、そういうところに現実の通勤費を全部非課税にするということはおかしいという理屈があるんでございますね。ここから通勤しなければならぬというのならそうなりますが、任意だものでございますから、全部それは見てやるということは理屈がないというのがもとの理屈なんだろうと思うのでございます。二万六千円というのは今の公務員のいっぱいのところまで免税にしているわけでございますが、最近はしかし、新幹線で通勤距離に人を住まわせるのならばその通勤費も優遇してはどうかという、今度は別の住宅対策の問題からの問題提起もありまして困っておるところでございますが、理屈としては、今度設けていただきました特定支出控除の対象にはなる、決まりました以外の特定の支出を認めるか認めないかというその対象にはなるということにはなっておるようでございます。
  112. 沢田広

    沢田委員 弱った問題だというんじゃ政治の問題にはならないので、やはり政治の問題としては、今瀬戸の話はしましたけれども、例えば石原運輸大臣は通勤新幹線なんという発想もして、上野—宇都宮間九万二百九十円、上越新幹線で上野—高崎間が八万九千円、こういうふうに具体的に出ているのですね。だから、実費支弁という原則からいえば制限を置かないで、かかった金額について免税措置を講ずるということは至極当然のことではないのか、こういうふうに思います。その点は、今の輸送機関のこういう状況を考えますと、ますます住みにくいところから——勝手に住むんだというあなたの論からいくとそうなるのでしょうが、それでは済まないと思うのですね。だから、それは善処していただくように御検討願いたい、時間の関係でそういうふうに特に要請をしておきます。  三十一分まで、こういうことになっておりますから、ひとつ大臣総理と二人、これは政治的な話も入ってますからお答えをいただいて、質問を終わりたいと思いますが、また返事によってはもう一回質問します。
  113. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 よく研究させていただきます。
  114. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 石原構想と申しますか、その内容についても十分承知をいたしております。大蔵大臣からお答えしましたように十分研究をさせていただきたい、このように考えます。
  115. 沢田広

    沢田委員 真剣な面持ちでお答えいただきましたからよき方向で検討されるものと思いまして、三分ばかり早いのでありますが、以上で終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  116. 金丸信

    金丸委員長 これにて沢田広君の質疑は終了いたしました。  この際、休憩いたします。     午後零時二十九分休憩     午後三時二十二分開議
  117. 金丸信

    金丸委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。田原隆君。
  118. 田原隆

    ○田原委員 質問を行うに当たりまして、まずもって一言申し上げたいと思います。  以下、質問の中でるる申し上げることもありますが、我が国の現行税制にはさまざまな問題が生じており、これを解消し、未来を展望した望ましい税制を構築するために、税制の抜本的改革を実現することが喫緊の課題となっていると考えております。税制についての国民の関心は極めて高いものとなっておるわけでありますが、この国会が召集されまして、この国会においてあるべき税制について十分論議を尽くすことこそが国民の負託を受けた私どもの最大の責務と考えておるわけでありますけれども、七月十九日に召集され、七十日間たち、さらに延期されましたが、調べてみますと、この間に特に我が党の税制の通であります方々の質問等を含めてわずか四、五回しかなされておりませんし、また延長後約十日たちましてやっと質問ができるという状況でありますが、どうかこれから本格的な質問にぜひ入っていただくようにお願いする次第であります。  以下、そのような見地を踏まえつつ税制についていささか質問を進めてまいりたいと思います。  言うまでもなく税制は財政のベースでありまして、経済社会の重要な基盤であります。したがって、一たん全体の骨格が構築されますと、その骨格の中での枝葉の手直しはときどきありましても、全体的な見直しは大変難しいものであります。他方、十年一昔、それすらも長過ぎると言われるぐらいのスピードで日本経済社会は急速かつ大きく変革しております。税制経済社会の変化に即応することが困難になってきております。税制にさまざまなゆがみ、ひずみ、不公平が生じております。  しばしば言われますように、我が国の現行税制は戦後の混乱期でありました昭和二十五年シャウプ勧告に原点があると言われておりますが、その後、申すまでもなく我が国経済は戦後の復興から高度成長へ、そしてオイルショックを経て安定成長、国際化へと大きく変革してまいりました。所得構造も、多くの人々が中流意識を持つところまで来ました。先日同僚の中村議員が申しましたように、第五分位と第一分位の比が二・九と世界で最もフラット、高級と低級の比率が最もフラットになっているわけであります。いわゆる平準化しておるわけであります。これに伴いまして消費は著しく多様化し、税制経済社会との間に不整合が生じております。  具体的に申しますと、所得課税におきましては、過去数十年来の所得水準上昇、平準化には著しいものがある中で、我が国の所得課税はその累進性が非常に強く、そして所得の捕捉にアンバランスがあること等から、サラリーマンの重税感、不公平感が高まっているところであります。特に四十代、五十代の人たちは、子供が学校に行き、ローンがあり、その他もろもろの支出がありまして、この辺のところは大変苦しい生活、重税感を持っておるわけであります。特に近年は本格的な減税が行われていなかったこと等から、給与所得を初めとする所得課税に税負担が偏ってきておる傾向があります。それが重税感、不公平感を一層高めておると私は考えておりますが、しからば日本税金は高いのかと申しますと、国民負担、これは税と社会保険でありますけれども、世界的に見て一番低い。税負担は二四・四、社会負担は一一、合わせて三五というくらいの感じでありますが、イギリスはこれが五三、西ドイツも五三・六、フランスは六二、スウェーデンは六九というように非常に高いわけであります。にもかかわらず日本で非常に重税感をサラリーマンが持っておるというところに大きい問題があるわけでありますので、これは何とかしなければならぬと思うわけであります。  また、法人税についても、昭和四十年代以降の法人税率の数度の引き上げもあり、法人の税負担は国際的に見て非常に高い水準になっております。最近は経済国際化しておりますから、国際的な見地から見ても我が国企業の税負担の不公平というのは重大なことであります。  さらに、税収を所得課税、消費課税、資産課税というふうに三つに分けて見た場合に、消費課税のウエートが昭和二十年代、三十年代にはおおむね四〇%ありました。しかしその後ほぼ一貫して低下を続けまして、昭和六十三年には二〇%を割ると推定されております。現行物品税等の個別間接税には課税品目や税負担にアンバランスが目立ち、最近における消費パターンの多様化やサービス化の進展の実態に即応し切れず、極めてひずんだ構造となっているところであります。  このような現行税制の抱える問題点を解決するためには、現行税制を部分的に手直ししてもどうにもならないわけでありまして、戦後の我が国経済社会構造の変化を十分踏まえて骨格自体の抜本的な改革が必要とされているものと考えるのであります。これこそが最大の不公平税制の是正であろうと私考えております。  そこで、まず総理にお伺いしたいのでありますけれども、今回の税制改革の基本的な考え方がいかなるものであるかということを伺いたいと思うわけであります。今までいろいろな場合にお答えになったことも聞いておりますが、もう一度お答えいただくことがまた国民の理解を深めることであると考えておりますので、どうぞよろしくお願いします。
  119. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 戦後の税制の歴史をたどってみますと、昭和二十五年、いわゆるシャウプ勧告に基づく税制改革というものが行われた。その前は、言ってみればそれまでの旧憲法下における税制国民に賦課するというのが、いわゆる申告をもととするというふうに観念的な変化はあったと思いますが、仕組み上の改革はやはり私は昭和二十五年の税制改革から始まったのだなと。  そこで今御指摘がございましたように、その後いろんな部分的手直しがありました。しかし今日に至るまで、その間私は税制改革が試みられたのが、一つは昭和五十四年、あるいは五十三年の税制調査会答申に基づく五十四年に意図した一つの改革ではなかったかなと思います。  しかし、これはそこにもう一つ財政再建という別の目的があったというふうに思うわけであります。それが昭和五十四年の暮れの国会決議というものがございまして、言ってみれば、この財政再建というものを行うにはまずは国民福祉の充実のためには安定した財源が必要であるという認識のもとに決議が行われ、それの順序に沿って行政改革、歳出の節減合理化、そして税制、こういう順番で今日に至っておると思うのでございますけれども、そのときたまたま私は大蔵大臣でございましたので、各党の専門家の皆さんがお寄りになって国会決議をおつくりになるときに、国民福祉充実のためには安定した財源が必要であるという言葉を冒頭にお使いになったのは、あるいは高齢化社会を目指したいささか福祉目的税的な意図も全くないではなかった、こういう印象を持ちながらそれのお手伝いに参加させていただいておったわけであります。そのときは、五十九年というのがいろんな意味税制改革の一つの目標年次ではなかったかなというふうにも思われます。  そして、今度は新たにレべニュー・ニュートラルという立場からいたしまして、いわば所得税減税、今御指摘なすった稼得所得に偏っておるというところからする所得税減税というものの財源として、レベニュー・ニュートラルの立場から議論されたのが、いわゆるこの売上税というものが議論された時期ではなかったか。  そこで、そういう経過を経て、その反省の上に立って、今日いわば所得、消費、資産というものに均衡のとれた税体系というものを、二十一世紀に向かって国民の皆さん方がまず御理解がいただけるであろうというものを構築していくというのが今次の税制改革の大きな目的になっておるんではなかろうか、このような考え方に立っておるわけでございます。  したがって、今おっしゃいました、確かに対国民所得比としてはこれは先進諸外国に比べれば低うございます。そして、課税最低限は一番高いところにもあります。そういう特色を持ちつつも、やはり稼得所得に偏った、そういうこと、そして、その裏腹として消費課税のウエートが著しく下がった、そこに今御指摘なすった重税感とか不公平感というものがうっせきしておる、これらの払拭もともどもに将来へ向かっての税体系の構築をしていこうというのが今次税改革の目的ではなかろうか、このように理解しておるところであります。
  120. 田原隆

    ○田原委員 ありがとうございました。  次に、いわゆる不公平税制の問題について伺いたいと思うのですが、税制国民生活に深くかかわる問題でありまして、税制について国民の信頼を得るためには不公平であってはならない。負担の公平確保を図ることがぜひとも必要である。ここで、今回の改革案におきましてはかなり思い切った見直しを行っていると考えておりますけれども、なお一部には不十分であるとの声も聞かれるところであります。以下、この問題に係る幾つかの点についてお尋ねしたいと思います。  まず、有価証券の譲渡益についてでありますが、現行の原則非課税から改革案では原則課税に改めることとして、具体的な方式については申告分離課税と源泉分離課税との選択制を採用しておりますが、これは画期的な改革であると考えます。しかし、政府の改革案に対してはさまざまな意見が出されております。特に株式の公開に関連しては、証券取引のあり方の問題も含め、さまざまな指摘がなされておりますが、株式売却益課税について以下の点を指摘したいと思いますので、お答えいただきたいと思います。  まず、公開前に取得した株式を公開後に売却し、短期間に多額の利益を得る、いわゆる売り抜けの問題が社会的関心を集めております。また、公開に際して創業者が株式を大量に売却しますが、これにより多額のいわゆる創業者利益が発生する問題が指摘されております。こうした事例への課税のあり方としては、政府の改革案の課税方式は不十分ではないかという意見が多数出ております。この点につきまして大蔵大臣のお考えを伺いたいと思います。
  121. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のように原則非課税から原則課税に改めました点は御評価をいただいておるところでございますが、ただ、現実に行政の能力から申しますと、納税者番号であるとか、何かそういう今ございませんような制度でも導入いたしませんと、一つ一つ株式の譲渡についての把握というものは非常に困難でございます。そういう限定の中で、このたびは原則課税といたしまして源泉分離、申告分離ということでお願いをいたしたいと考えておったわけでございます。  しかるところ、ただいま御指摘のように公開前から公開後にかけましてのいわゆる売り抜けと申しますか、この場合にはかなり譲渡益が大きい場合がしばしばある、創業者利益はもとよりさようでございますが、そういう現実に起こりました事例にかんがみて、政府案だけで十分であるかないかということは、政府自身も実はいろいろにただいま考えつつあるところでございますが、国会におきましてもいろいろそういう御議論が行われておることをよく承知いたしております。したがいまして、この点はできますならばどういう方法によりますかで現在御提案いたしておりますものそのものにさらに改善を加えるということが必要なのではないかという認識は、ただいま田原委員が言われましたように私どもも持っておるところでございます。
  122. 田原隆

    ○田原委員 次に進ませていただきますが、不公平税制と言われる中に医師税制があります。今度かなりの見直しをやっておりますが、私はひとつ希望だけ、お答えは要りませんが、述べさせていただいておきます。  多額の収入、多額の売り上げのある、売り上げという言葉は変でありますが、売り上げのある医師に対しての特例の適用を認めないという点は納得できるわけでありますが、これが将来御研究するに当たりまして、過疎地、離島などにおきますお医者さんはそれなりに非常に苦しい思いをしておるということ等を御勘案の上、御検討いただくようにお願いいたします。  また、国際課税の問題でございますけれども、商社など、日本を代表する大会社が、全体としてかなりの利益を上げながら、外国に税金を払っているために日本では余り払っていないという、こういうものにつきまして素朴な国民感情があります。国際的な二重課税の排除ということはこれは絶対必要であると思いますが、海外で活躍する法人に対して過重な負担を求めるということもこれもまたどうかと思いますし、外国税額控除制度自体を否定することはこれは到底できませんが、現行制度におきましてやや甘い部分がないのか、故意にやったらやれるようなものが幾らでもあるのではないかというような気がするという指摘もたくさんあります。これらにつきましても今後よろしくお願いいたします。  いわゆる不公平税制の是正の問題に関し、直接税をめぐる幾つかの点について今質問いたしましたけれども、しかしながら、不公平は直接税の中だけに存在するのではありません。現行の間接税の中にも幾つかの矛盾、不公平な点が見受けられるところであります。これらの点につきましても、今回の改革の中であわせ抜本的な見直しを行うことが不可欠であります。  野党四党の不公平税制是正の共同提案におきましても、最後の項目で個別物品税制の改革を主張されておりますが、これは野党の諸君から見ても現行個別間接税制度が不公平であると認識しておられることを示すものであると解釈しております。この点につきましては、我が党と問題意識は共通になっているわけであります。  実際、我が国の現行の物品税など、個別間接税制ほど不公平で時代おくれ、国際的にも通用しなくなっている税制は他にないと私は考えます。この不公平の最たるものは、一体何が課税の基準なのか、課税されている物品と課税されていない物品との格差がどうにも説明できなくなっていることであります。  これは例えば、金貨と金地金、コーヒーと紅茶、そういう問題等を並べてみましても、ゴルフ用具とテニス用具、いろいろ並べてみましてもわかることでありますが、これを一々御質問申し上げましてやるとクイズの番組みたいになるわけでありまして、それほどこれらの中には整合性がないというような不合理な制度になっておるわけであります。  なぜこのような不合理な制度になってしまったのか。あるいは、なぜこれは不合理だと我々が感じるようになったのか。私は、それは戦後四十数年の間に我が国社会経済状況が大きく変化しまして、それに伴って我々自身の価値観が変わってきた、そのことが個別間接税制度の前提を今や覆しているからであると考えるわけであります。  言いかえますならば、現行の個別間接税制度は、ぜいたくなもの、奢侈品的なものに負担を求めるという考え方の上に立った税であるわけでありますが、確かに二十五年にシャウプ勧告が出されたころのように、国民の所得水準が一般的に低くて、何がぜいたく品であるかがわりかし明確であった時代においては、この制度はそれなりの合理性があったと思うのであります。しかし、所得水準が今日のように大幅に上昇し、世界でも最も豊かな国の一つ我が国が成長したわけでありますから、一億総中流化と言われてもいいわけでありますから、所得の平準化が進んだ今日、消費も価値観も多様化しており、一体何がぜいたく品か、何が奢侈品なのか、その判断を客観的に行うことは困難になっておるのであります。今や、その用具に物品税が課されているゴルフが大衆スポーツでないとはもはや言えないわけであります。ゴルフ場へ行ってみたらわかります。すなわち、現行の個別間接税の前提の崩壊であります。     〔委員長退席、海部委員長代理着席〕  私は現行間接税は時代おくれであると先ほど申しましたが、社会経済情勢の大きな変化の中で、経済はサービス化が著しく進展しております。家計の消費支出に占めるサービス消費の割合は、昭和六十一年度で見ますと五三・四%と消費支出の半分以上を占めるに至っております。しかし、我が国の税収に占めるサービス課税の割合は、同じ昭和六十一年度で見ると、国税と地方税を合わせましてもわずかに一・一%、国税、地方税のうちの間接税等の税収に占める割合を見ても四・八%にすぎません。この時代の流れとかけ離れたサービス課税の欠如が、サービスと物品の間の不公平をもたらしているとも言えるわけであります。そして、先ほど申し上げましたように、我が国税制全体の課税のバランスを崩し、税制全体を不公平なものにしておる消費課税のウエートの趨勢的な低下は、まさにこの個別間接税制度ゆえに生ずる面が大きいのではないかと思います。  かつて間接税収の多くを依存してきた酒類やたばこといった嗜好品は、月給が上がったからといってたばこを一本たくさん吸うとか、一箱たくさん吸うというようなことでもありませんから、その性格上、消費の伸びにおのずと限界があります。消費支出に占める負担割合が低下していくからであります。また、今述べましたように、サービスに課税が行われておらず、課税対象とされている物品にも限定があるからであります。現行個別間接税制度は国際的に通用しなくなってきているとも言えます。さらに進んで、我が国の貿易摩擦の一因にもなっていると言えるのではないでしょうか。  先進諸国の中で我が国のような課税方式をとっているのは我が国だけであります。OECD加盟二十四カ国の中で、二十三カ国は全部何らかの間接税が入っております。十八カ国は、付加価値税その他いろいろの税でありますが、入っております。また、アフリカ諸国、中南米諸国あるいは東欧諸国を入れましても、みんな何らかの形で間接税、付加価値税その他いろいろな形で間接税の制度を採用しております。米国はないと言われますけれども、ほとんどの州において小売売上税があります。カナダでは、連邦に製造業者売上税、州に小売売上税があります。カナダも近く税制改革をして付加価値税にしようとする動きがあると聞いておりますし、国際国家日本として、しばしば国際国家と言われながら、我が国の間接税制度は欧米諸国等から見ると極めて特異な制度であると言えます。それがゆえに、取引に当たって諸外国に戸惑いを与えるわけであります。その国の輸出品が、たまたま我が国の個別課税の対象となっていると、その相手の国にしてみれば、何だかわざわざねらい撃ちにされたような感じになるものもあると思います。それが国際摩擦の原因になってきておるとも言えます。昨年秋のウイスキー、ワインについてのガットのパネルの判定が我が国にとって不利なものであったことは記憶に新しいところであります。  以上、物品税などの現行個別間接税制度の問題点を私なりに整理して申し上げましたが、政府として現行制度の問題点をどのように考えておるか、大蔵大臣にお伺いしたいと思います。
  123. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま物品税を中心にいたしまして個別間接税の問題につきまして御指摘がありました。まことに物品税、長い歴史の変遷の中で、今日の姿は大変に説明のしにくいものになってまいりました。  それは、一つは冒頭に言われましたように、奢侈品に強く課税しよう、高く課税しようということは伝統的に物品税の考え方でございますが、一部のものを除きましては何が奢侈品で何がぜいたく品であるかということが大変に人によりまして価値観が違ってまいりまして、一元的に規定をすることが難しくなってまいりました。その結果といたしまして、このものは課税でこのものは非課税であるといういろいろなたくさんの例、クイズとおっしゃいましたけれども、まことにクイズ番組にふさわしいような、立ち往生するようなケースも幾つか出てまいっております。それが第一の点でございます。  第二は、長い戦後の歴史の中で、昨今これだけサービスのウエートが国民生活の中で大きくなってまいりましたが、つまり、消費は物品だけでないということになってまいりましたが、そういう要素をほとんど今の間接税はとらえておりません。そういう問題が一つございます。  それから、これも仰せになりましたが、そういう制度を維持しておりました結果、ただいま物品税は四割以上のものが自動車である、さらに家庭電器を加えますと六割余りになるという、ごくごく少ない品物が物品税の歳入の六、七割を実は背負っておるということは、外国から申しますと、例えばシャシーの大きな自動車に高い課税があるのはこれは外国からの自動車の輸入をねらっているのではないか、これを防圧しようとしているのではないかという批判が幾たびも寄せられました。また、酒につきましても、ウイスキーの級別というようなことは高級ウイスキーの輸入を防ごうとしているのではないかという批判は最近まであったところでございます。そういう、これはまあ一部誤解でございますけれども、外国から見ますとそのようなものとして見られるようになりました。  あれこれ考えまして、この際、これを一般的な幅の広い低い消費税に改めさせていただきたいというふうに政府としては考えるに至りましたゆえんでございます。
  124. 田原隆

    ○田原委員 現行制度をどのように変えていくかということは大変難しいことであります。野党の共同提案にもありますように、最後の項目、よく見てみますと、現行の個別間接税体系そのものは基本的に維持して、課税対象の見直しを行うことで問題の解決を図ろうとしておるのではないかという感じもいたします。しかし、もしもそういうことをやった場合に、対象とされた業界は、あるいは対象となった人たちは大変な大反対をするわけでありまして、かつて五十九年、六十年度の税制改革のときにOA機器に課税しようとして失敗した例がございますが、大変なことであります。  私は、現行間接税制度の改革はそう簡単なものではなく、やはり広く薄く公平に消費に負担を求める一般的な間接税を導入する、そういういわゆる今提案されている消費税的なこれでなければならないというふうに考えております。総理、これらについての御決意をひとつお願いしたいのです。
  125. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 この税制論議をするに当たりまして、確かに今いろいろな推移についてお話がございました。私、大変興味を持っておりましたのは、昭和八年の税制というのを、少し昔でございますけれども勉強しましたときに、砂糖消費税が約一〇%、総体の税収の一〇%、酒、たばこが三四、関税が一三%程度でございました。しかし、昭和八年は余り適切でなくて、昭和九年から十一年が一番適切だということを教わりまして、そこの数字を見ながら昭和二十五年、そして昭和六十二年というふうにいろいろ比較してみますと、いわゆるこの広く薄く共通の負担を求めようということには、やはりそれなりの時代が必要ではなかったかなという感じがいたすわけでございます。  もっとも、古い時代は、これは社会主義国家の現状がそうでありますように、間接税が主体をなしておることは事実でございます。国営企業等、物の値段の中に税が入っておるわけでございますから、これはだれしもそのことを否定するわけではございませんが、それが初歩的社会主義社会が進歩して、いわゆる富の再配分という観点からいろいろな税制の構築がなされ、そしてそこに行き過ぎが生じた場合、やはりベースとなる共通する経費というものを言ってみれば広く薄く国民に求めていく、そういう環境が熟したのが今日ではないか、私はこういう感じを持っておるものでございます。なかんずく消費税につきましては、個別消費税の歴史でございます、これは戦前を見てもそうでございますけれども。したがって、そこにおのずから私は、この不公平感が増幅されてきたということからして、今日のいわば薄く広く共通の経費を御負担いただく場合の消費税構想というものが出てくるのは税の歴史の中の極めて必然性ではなかろうかな、こういうことを自分なりに考えておるところでございます。御指摘なさいました御意見については、私も同感でございます。
  126. 田原隆

    ○田原委員 消費一般に負担を求める課税ベースの広い間接税が必要であるということは明らかになったわけでありますが、これにいろいろ懸念があるということで、総理が七つの懸念ということでまとめておられますが、時間の関係上一々お聞きするのはやめます。  本当はもう一回お聞きして、もう一回熟読玩味すると国民の皆さんももう一回よくわかるのではないかと思いますけれども、それはやめますが、その中で、私は特に大事なのは消費税の転嫁の問題ではないかと思うわけであります。もし転嫁できなかったらこれは不公平税制のさらなる助長をすることになるわけでありまして、一方で減税して一方で転嫁できないということになるわけでありますから大変なことになる。ところが、我が国国民はこういう税にはなれてないということになりますと、下手をすると第二法人税になってしまうのではないか、そういう心配をする人もおるわけでありますから、転嫁をどうして円滑に進めるかということがこれから先非常に重要な問題になります。  第一は、独占禁止法の分野における環境整備の問題であります。消費税法の附則においてこれらを明記することになっておりますが、ただ法律の条文だけでは大変難しくて、どのような申し合わせができるのかということがわかりにくいわけであります。  独禁当局、公取の方におかれましても非常に御検討されておるわけでありますが、この転嫁の方法に対する共同行為やそういう表示に対する共同行為といって認められる行為というようなもの等について、いろいろ具体的に書いていただくように御検討なされておると聞いておりますけれども、これをぜひ具体的に書いていただかなければ、抽象的な説明ではとてもこれはわからない。また届け出が要件とされておりますけれども、その窓口なども親切にちゃんとやっていただきたい。それからガイドラインをつくるというようなことを言っておられますけれども、ガイドラインも具体的で例を挙げながらわかりやすくやっていただきたい。  これらについて公取の決意のほどをひとつお願いします。時間がありませんのでよろしくお願いします。そして、親切でとにかく事業者が萎縮しないような扱いをやっていただかなければならないと私は考えますので、その辺の御決意を伺いたいと思います。
  127. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 三点ほど御質問があったわけでございますが、ごく簡潔に御説明を申し上げます。  今回の特例措置といたしまして、転嫁の方法それから表示の方法の決定に関する共同行為が認められておるわけであります。  まず前者につきましては、価格形成力の弱い中小企業並びにその団体の行為でございますが、具体的には、それぞれ各事業者は商品につきましてめいめいの価格で販売をしているわけでございますが、消費税が導入されますと、それを価格に転嫁する場合に、めいめいの価格について消費税相当額をどのような方法で上乗せしていくかということを業界なり組合で決めていただく。あるいは転嫁の方法には、価格ではございませんで量で調整するというやり方もございます。それから、細かい話になりますけれども、そういった方法で税額を計算いたします場合に端数が出てまいりますけれども、その場合に、業界として切り上げでいくのかあるいは切り下げでいくのかあるいは四捨五入でやるとか、そういった細かい点につきまして決めるということを想定しておるわけでございます。  それから、表示につきましては、いつかこの委員会でも御説明申し上げましたけれども、消費税相当分を価格の外書きとして消費者に表示するのかあるいは内書きとして表示するのか、あるいは値札は従来のままにいたしまして、消費者の買い上げが終わりました後、レジで統一的に消費税相当額を代金として上乗せするということを消費者にあらかじめきちんと業界として決めて明らかにしておく。そのほか事業者間ではインボイスと申しますか、納品書とかあるいは請求書にその業界で本体の価格と消費税の価格をきちんとわかるように、そういった規格を統一する、そういったことを決めるということも可能なわけでございます。  いずれにいたしましても、これらの共同行為は法律によりまして公正取引委員会への届け出が要件になっておりますけれども、現在、その届け出の具体的な内容とか方法については鋭意事務局で検討いたしております。いずれにいたしましても公正取引委員会の本局、それから地方事務所が八つございますが、ここが窓口になりまして届け出の法律で求められている要点はぜひ明記をしていただかなければなりませんけれども、なるべく事業者への負担がかからないような、簡潔で要領を得た届け出の様式等について配慮しながら今作業を進めておるわけでございます。  ただいま申し上げましたいろいろな点につきまして、この問題は私ども非常に日本の競争政策上の重要な問題と考えておりますので、消費者にも事業者にもわかりやすい、どれだけのことが許されるか、どれだけのことが認められないのかといったことを具体的に示したガイドラインのようなものを法律ができました段階で世の中に公表をいたしまして、周知徹底を図りながら万全を期してまいりたいと考えておるわけでございます。
  128. 田原隆

    ○田原委員 ありがとうございました。  その次に、転嫁についての行政の取り組みについて少しお伺いしたいと思います。  国がみずから行う事業がありますが、それについて政府がどこまで本腰を入れて転嫁対策を講じようとしているのか非常に注目されるところであります。このような点から考えると、適正な転嫁を受け入れる模範を示す意味で、国は積極的に購入資材の適正な価格上昇を、あえて甘受という言葉を使いますけれども、甘んじて受けていただいて、公共事業費等の予算査定に当たっては消費税分を上乗せするといった対応も必要であろうと思います。もししなかったら、その分だけ事業が圧縮されるわけでありますから、これは内需拡大にも何にもならない。  また、地方公共団体が転嫁を受け入れてくれるかどうかの不安が事業者に強いことも聞いております。地方公共団体、これは財政の豊かなところ、そうでないところと多々ありますから、これを転嫁の相手方の消費者、事業者等にうまく転嫁できないようなことでは、そういうふうに圧迫、プレッシャーをかけるようではこれはいかぬわけでありますから、適正な転嫁が積極的に受けられるように図っていただきたい。一片の通達だけではだめであろうと思います。どうぞ十分な行政指導等をよろしくお願いする次第でありますが、この二点は大変大事な点でございますので、大蔵大臣、自治大臣の御見解を伺いたいと思います。
  129. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点につきましては、概算要求のいわゆるシーリングを決定いたしました七月の閣議の席上でも私から発言をいたしたところでございますが、国が範を示す意味で、予算編成の過程を通じまして、ただいま田原委員の言われますような危惧を払拭をして、国としても負担すべきものは負担する、こういう仕組みでやってまいりたい、心組みでやってまいりたいと考えております。
  130. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 消費税は転嫁を通じて消費者側が負担することとなっているために、地方公共団体も国と同様、消費、サービスの受益者として歳出増が生ずるというふうに考えております。このため、今後税制改正法案の成立を踏まえ、地方公共団体の財政運営に支障が生じないよう地方財政計画の策定を通じて所要額を適切に計上するとともに、地方公共団体に対してもこの趣旨の指導をしてまいりたいと考えております。
  131. 田原隆

    ○田原委員 ありがとうございました。  また、実際に転嫁を円滑に進めていくためには、やはり個々の業界の実情を踏まえ、きめ細かい行政指導が不可欠であると考えております。このような点からすると、事業者や事業者団体に対して積極的に消費税の転嫁及びその受け入れについて要請、指導を行っていかなければならないと思いますが、産業界に対する指導的立場にあります責任大臣の通産大臣の御見解を伺いたいと思います。
  132. 田村元

    ○田村国務大臣 消費税は、申すまでもなく事業者に対しまして消費税の適正かつ円滑な転嫁及びその受け入れ、これについて要請しなきゃならぬわけでございまして、通産省としてはできる限りの努力をいたす所存でございます。  税制改革法案にもこの趣旨は明確に定められておりますが、加えまして、国が消費税の円滑かつ適正な転嫁に寄与するために消費税の仕組み等の周知徹底を図るなど必要な措置を講すべきである、このように定められております。それを受けまして、産業界に対しまして消費税の趣旨について説明したりあるいは意見を伺ったり、これは現に現在しておるところでございますけれども、事業者の一番の懸念は何といっても転嫁が円滑に行われるであろうかということであろうと思います。そのために、このような事業者の懸念を解消するために広く国民に対して消費税の性格をPRいたしますとともに、転嫁のカルテルについて独禁法適用除外規定を設けることなど、適正かつ円滑な転嫁のための環境整備に努めていくこととしております。  また、事業者に対しましては消費税の趣旨を十分に説明し、消費税の適正また円滑な転嫁に努めるよう要請、指導いたしますとともに、転嫁を適正に受け入れることにつきましても、十分な理解を得られるよう要請、指導をしてまいるつもりでございます。  また、これらの措置を講じました結果として、実際に、現実に転嫁が適正かつ円滑に行われているかどうかについて状況を把握してフォローアップに努めてまいりたい。すなわち、十分なるモニタリングをやっていきたい、このように考えております。
  133. 田原隆

    ○田原委員 通産大臣に重ねてお伺いしたいと思いますけれども、円滑な転嫁を進めるためには、それぞれの業界のかかわる問題に応じてきめ細かな対策を講ずることが重要ではないかと考えております。例えば商店街というものなんかについても、これをさらに近代化したり魅力的なものにしてまずお客を集めてやらなければならないし、そういうためのインセンティブを与えてやらなければならないし、支援もしてやらなければならないというような感じがいたしますが、ぜひそれらをよろしくお願いしたいし、そして商店街同士のコミュニケーションもよくして、お互いにつまらない足の引っ張り合いなどしないというような、モラルに関する指導も必要であろうと思います。  このような円滑な転嫁についての、業種の実態に即した行き届いた対策をぜひやっていただきたいと思います。これは単に税制上以外のものも含まれるかもしれませんが、よろしくお願いいたします。
  134. 田村元

    ○田村国務大臣 商店街と申しますのは、近年都市構造の変動とか、買いにいらっしゃるお客様、何といいますか、来街者といいますかお客様、そういうお客様の減少などによりまして停滞あるいは衰退感を強めていることは事実でございます。このような状況のもとでの消費税の転嫁につきまして、商店街が懸念を有している事情は十分承知いたしております。  通産省といたしましては、かねてから商店街が消費者にとって魅力あるものになるよう努力しているところでございます。消費税の導入に当たりましても、商店街の懸念が払拭されますように商店街の中での表示の方法、転嫁の方法等について協議のしやすい環境を整備いたしますほか、商店街の顧客そのもの、お客様そのものを増大させるような今おっしゃった商店街の活性化、近代化に従来にも増して努力をいたしていく所存でございます。これを一つの契機とするという必要もあるかもしれません。  そういうことで、通産省としましてはこのような考え方に基づきまして、業種の実態を踏まえながら、転嫁について各事業者の不安や懸念を解消するために、広く国民に対して消費税の性格について先ほど申し上げたPRをすること、あるいは転嫁のためのカルテルについて独占禁止法適用除外規定を設けることなど、適正、そうして円滑な転嫁のための環境整備に努めますほか、消費税導入円滑化のための所要の助成策等につきましては、今後の税制改革関連法案の国会における審議の状況等をにらみながら万遺憾なきを期したい、このように考えております。  いずれにいたしましても、先ほど田原委員指摘のとおり、今の問題は消費税絡みのことだけではないと思います。その中の一つが消費税対策でありますが、こういうことを先ほど申したように一つの契機として、商店街の活性化のために一段の努力をいたす決意でございます。
  135. 田原隆

    ○田原委員 もう一つこの転嫁のことでお伺いしたいのですけれども、発注元とか納入先のようなものが、弱い立場にある下請、納入業者等に税負担をしわ寄せさせるような事例、あるいは当店は税金をおまけしていますというような、他の店に比べていかにも安いように見せかけるような表示をすること等も将来考え得るわけでありますが、これは毅然たる態度で臨まなければ秩序が生まれてこないと私は思うのであります。これに類するようなことがもしあった場合に、一体どういうふうに対処するおつもりか。もう一回通産大臣並びに公正取引委員会の方の御見解を承りたいと思います。
  136. 田村元

    ○田村国務大臣 消費税は、もう申すまでもなく、消費に広く薄く負担を求めるものでありまして、各取引段階ごとに転嫁されて、最終的には一般消費者が負担すべきものである、これは定義と言ってよいと思います。したがいまして、事業者はみずから適正な転嫁に努めますとともに、下請業者や納入業者からの転嫁を適正に受け入れるべきでございます。特に下請業者などは取引上弱い立場にございます。でございますから、独占禁止法、下請代金法によりまして、親事業者が取引上優越的な地位にあることを利用して不公正な取引を行うことは厳しく規制されておるものであります。  消費税の導入に当たりましても、親事業者が取引上優越した地位にあることを利用して下請業者や納入業者からの消費税額分三%の転嫁の要請を一方的に拒否し、納入代金を従来のまま据え置くことなどは、独禁法あるいは下請代金法に違反するおそれがありまして、政府としてはこれらの法律を厳正に運用いたしますとともに、親事業者等に対して違反行為が行われないよう指導して、御指摘のような下請業者、納入業者への税負担のしわ寄せがないように努力をいたしつつ万全を期したいと思っております。これは、公取から再び御説明があろうと思います。でございますから、恐らく御説明があると思いますが、公取におきましても独占禁止法や下請代金法の運用に関するガイドラインを作成あるいはこれを公表するというふうに私は承知いたしております。  また、御指摘のような表示の問題でございますけれども、消費税の適正な転嫁を旨とする税制改革法案の本旨にもとるような表示がなされますときには、場合によっては景表法——景表法といいますのは、不当景品類及び不当表示防止の法律でございますが、景表法上の問題となるおそれもあると考えられます。  いずれにいたしましても、個別の事例に即して検討し、公正取引委員会とも十分に連絡をとり合いながら対処してまいりたい、このように考えております。
  137. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 御質問のございました二つの点につきましてはただいま通産大臣のお答えにありましたとおりでございますので、重複を避けまして、まず第一点につきましては、ただいま大臣も仰せになりましたように独禁法なり下請法違反の問題が生じますので、これは中小企業庁とも十分連携を密にいたしまして、従来同様この下請法の厳正な運用に当たりましては十分注意してまいりたいと考えております。  それから表示の問題につきましても、税金分安くなっておりますという表示、これは一般的に言いまして、市況によって価格が下がったのか、あるいは免税事業者の場合でも仕入れの段階で消費税を負担しておるわけでありまして、その分を果たして事業者が負担しておるのかどうか、つまりその表示自身が消費者に誤った価格認識を与えるという場合が一般的に考えられるわけでございます。こういった例にとどまりませず、この表示の問題につきましてはざまざまな問題が生じてまいると思いますので、これも先ほど通産大臣がおっしゃいましたように、個々の問題につきまして事業者にも消費者にもわかりやすい事例を示しまして景品表示法の厳正な運用に努めてまいりたいと考えております。
  138. 田原隆

    ○田原委員 今まで転嫁についていろいろお伺いしまして、基本的なことがわかったのですが、少し具体的なことについて一つだけお伺いしたいと思います。  主税局長にお伺いしたいと思うのですが、農産物等の競りの場合ですね。競りというのは一般の相対売買とかなり異なっておりますが、売り手と買い手の間で直接価格交渉が行われないで価格転嫁をどのように行うかということが非常に気になるわけであります。また、市場では課税生産者からの出荷物と免税生産者からの出荷物が混在しておるわけでありますが、両者を区別してきめ細かに対応することは不可能ではないかという実務面での心配がございます。こういったことから、農家等は競りについて非常に不安を感じているということを我々身に感じておりますが、この点どういうふうにお考えになっておるか、御見解を聞きたいと思います。
  139. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 競りの問題は御指摘のようにいろいろな意味がございまして、重要なポイントであろうかと思います。今御指摘のように、相対売買と違いますので、その転嫁が円滑に行われるのかどうかという不安もございますし、また市場という公的な施設での転嫁の問題ですから、非常に影響するところも大きいのではないかと思うわけでございます。  直接の所管ではございませんので正確なことは申し上げられませんが、私どもも関心を持ってお聞きしているところでございまして、現在関係省庁において鋭意それが詰められておる。大体方向は固まってきている。今御指摘のように相対売買と違うということ、それから出荷者が課税事業者もおりますれば免税事業者もおるという、なかなか技術的、実務的にも難しい問題はございますが、この点につきましては、競りの価格に三%を上乗せした価格取引をするということでおおむね関係者の間で調整がつけるれておる。鋭意関係省庁で調整が最終的な段階で行われておる、おおむね固まっておるということで、関係者の方々もおおむねそれで納得し安心をされているようでございます。現在そういう状況でございます。        〔海部委員長代理退席、委員長着席〕
  140. 田原隆

    ○田原委員 わかりました。ぜひひとつ関係省庁の意見を聞いてうまくやっていただきたいと思います。  最後に、転嫁に対する問題で一番重要な問題は国民へのPRであろうと思いますが、この点については政府、関係者挙げて取り組んでおられることと思いますけれども、消費税の必要性とか仕組みといった点だけでなくて、国民に身近な話題や素朴な疑問を幅広く取り上げて、迅速かつ平易に何度も何度も説明していく必要があるのではないかと思っておりますので、よろしくお願いします。  事業者や消費者の間に消費税は転嫁される税金であるという理解が定着することこそが円滑な転嫁を実現する上で最も重要であるし、そのことが税制改革の基本になるわけでありますから、それにつきまして総理が陣頭指揮をしていただいて、ぜひ転嫁のPRをやっていただきたいと思いますが、よろしくお願いします。
  141. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 確かにヨーロッパの財政当局の人と話をしますと、転嫁の問題を議論しますと、なれということもございましょう、消費税というのはそもそも転嫁さるべきものであって、転嫁そのものが我々の議論の対象になったことはない、こういうお答えをいただくことが多うございます。これは各党の専門家の皆さん方がヨーロッパ等を視察された際のレポート等を間接的に読ませていただきますと、確かにそういう印象を受けていらっしゃると思います。しかしながら我が国においては、いわゆる広く薄くというこの消費税は初めてでございますだけに、税制改革法第十一条でございましたかに努力義務が課されておりますが、それを具体的に——そのうち議論になると思います。再販価格のあるものはどうするんだとか、あるいは先ほども例示としてお出しになった農産品等の競り市にかけて決まるものに対する負担はどういうふうな手法でやるんだとか、そういうような議論が詰まっていけば私は必ず理解を得られるものである。そういう前提に立って、私どもが若干専門家的な議論であってもその中へ溶け込んでいって一生懸命でPRに努めることが、この税制が円滑に執行されていくかぎになるのじゃないか、このように考えておるところでございます。
  142. 田原隆

    ○田原委員 転嫁の問題はこのくらいにしまして、法人税の問題についてお聞きしたいと思います。  我が国の法人税は他の先進諸国の中でも極めて高い水準でありまして、非常に国際競争の上で支障を来しておるとも言えるわけであります。  具体的に申しますと、実効税率で見て我が国は五一・五五%でありますが、主要先進国は、アメリカで四〇・三四、イギリスで三五・〇、フランスで四二・〇等と、我が国のものと比べて大変低いわけであります。これでは困るわけであります。我が国では、昭和四十年代以降、厳しい財政事情を背景に逐次法人税率、いわゆる直接税の一つである法人税率を引き上げて、その財政の赤字に対処してきた。主要先進国においては、むしろ一九八〇年代に入って民間経済の活性化等を重視する観点から逆に下げてきたということで、埀離が非常に開いてきておると思うわけでありますけれども、このままでは非常に空洞化現象、いわゆる海外に逃避という形で、いい意味で進出ではなくて逃避という形で出ていく可能性もあるわけでありますので、雇用の面で、あるいは中小企業対策等で困った問題が起こるわけであります。  今度一応四〇%台に引き下げられるわけでありますが、さらにさらにこれから下げていかなければいかぬと思いますが、これにつきまして大蔵大臣の御決意を伺いたいと思います。
  143. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに今の世の中では、会社の主たる所在地をどこへ持ってまいりますことも自由になってまいりました。そういう意味で、我が国の法人税負担というものが先進国との競争関係においてやはり考えなければならないということは、ただ税収からばかりでなく、誤りますと企業の空洞化というような問題にも発展いたしますので、大事な問題であると存じております。  このたびようやく法人税率の軽減を御提言申し上げることができるに至ったわけでありますが、税制調査会の中におきましても、これで果たして十分であろうかという御指摘がございました。また税収、国税全体の中における法人税のウエート、重さというのは我が国の場合かなり高うございまして、そういうようないろいろな点も今後考慮していかなければならない要素ではないかと思っております。
  144. 田原隆

    ○田原委員 以上でおおむね私の質問を終わりますが、最後に、ひとつどうかいろいろ今申し上げたような点をこの国会の場で何回も何回も論議されまして、そのことが国民に深い理解を与えるということを御認識いただきまして、今後とも議論していただきたいと思うわけであります。  これで終わらしていただきます。
  145. 金丸信

    金丸委員長 これにて田原隆君の質疑は終了いたしました。  次に、宮地正介君。
  146. 宮地正介

    ○宮地委員 私は、今回の税制改革の特別委員会におきまして本日は不公平税制を中心とした集中審議、このように伺っております。そこで、まず政府の税制改革に臨む基本的な政治姿勢、この辺の問題からお伺いをしてまいりたいと思うわけであります。  今、国民の皆さんが大変注目しているこの税制改革におきまして、大変にいら立ちというかあるいは政治に対する不信、これはいわゆるリクルートの疑惑解明問題に対しまして、特に竹下総理あるいは宮澤大蔵大臣、また自民党の安倍幹事長、渡辺政務調査会長などいわゆる税制改革を提案するその中心的な政治家が、このリクルートの問題に、秘書とかあるいは親族とか側近の皆さんとはいえ、関与している、これに対する国民の率直な、果たしてそうした政治家の皆さんが税制改革を提案する資格があるのか、大変厳しく国民は見詰めているわけであります。  きょうは関係する大臣として総理大臣大蔵、自治、法務、経企庁、総務庁の大臣が来られているわけでございますが、この点について、総理宮澤大蔵大臣には過日の委員会でも御質問させていただきましたが、きょう御参席いただいている大臣から、どの程度深刻に受けとめ、反省をし、また国民のそうした政治不信を払拭さすために努力をされようとしているのか、この点についてまずお伺いをしておきたいと思います。
  147. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 今次国会は、税制改革をお願いしようということで召集申し上げたものでございます。しかるに、その間、いわゆるリクルートコスモス株式の問題が起こってまいりました。  その取引にかかわった人そのものが私の周辺にあるということについては、私は、よしんばそのことが経済行為として法律の範囲内とは言われても、これについては私自身やはり大変情報の集まりやすい環境に身を置いておるわけでございますだけに、まことに残念に思うところでございます。したがって、まず深く反省をして、そしてそれに対する対応の仕方というものは、これはまた事務的には証券取引法上の問題でございますとかそういう問題もございますが、それ以上にやはり本院で苦労しておつくりいただいた政治倫理綱領、そうしたものをもう一遍読み直して、それを拳々服膺しながら信頼回復に努めていかなければならない問題であるというふうに私自身は思っております。
  148. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 経緯につきましては以前にも申し上げましたので繰り返しませんが、いずれにいたしましてもこれは甚だ軽率な判断に基づくことであったということで、私自身深く反省をいたしております。今後、こういう過ちを犯しませんように十分戒心をしてまいる、そういう気持ちで税制改正の仕事にも当たらせていただいておるつもりでございます。
  149. 宮地正介

    ○宮地委員 特にこうしたぬれ手にアワのいわゆる株の売却益を関係者が得ておる。また、今不公平の是正の最たるものとしてキャピタルゲイン課税というものが大変に国民の注目を浴びておる。それが、政治家がいとも簡単に得ておる、なおその上にそれが税金がかからない、非課税措置である。こういうことに対しまして、昨日も朝日新聞が世論調査を発表しておりますが、国民は、税金を納めるばかばかしさ、これが三五%、政治家の倫理感のなさ、これが二四%、ぬれ手でアワの売却益に税金がかからぬこの不公平の腹立たしさ二二%と、何と国民の八割以上の方々がこうした政治不信と税を納めることに対してのばかばかしさという、大変な納税に対しての不信感というものが出ているわけであります。そして、そういう中においてこうした状況をある専門の方が「いまや、職業的利権屋集団に堕した感がある政治家たちに、課税のルールづくりの資格があるのか、」ここまで問われているのであります。今、総理も反省をし、倫理観の問題、大蔵大臣も反省をし、おわびをしております。しかし、言葉じりや単なる国会の論議をすり抜ければいいというようなそんな感覚でおったら、私は、国民は愚にして賢でありますから、そんな甘いものではない、こう大変に危惧をしておると同時に、同じ政治家の仲間としてもこれからの日本の将来というものに大変心配をしている一人であります。  そういう点において、きょうは国家公安委員長もおります。総理、この点について、ここまで国民がいら立ちを覚えていることについてどのように深刻にこれを受けとめ、二度とこうしたばかげたようなことが起きないように、要は私は政治家のやはりモラルであり、受ける方の姿勢ではないかと思うわけでございますが、この点について再度総理にお伺いをしておきたいと思います。
  150. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 御指摘ありましたように、基本的には政治家のモラルの問題であると私も思います。したがって、私はもとより、やはりいろいろ詰めてみますと、ああして苦労してつくっていただきました倫理綱領、そういうことに絶えず忠実であるべきということをいつでもみずからの心に言い聞かして対応していかなければならぬというのが政治家たる者のあるべき姿であろうというふうに考えております。
  151. 宮地正介

    ○宮地委員 大変に残念なことでありますけれども、竹下総理がこの七月二十九日の所信表明演説の中において、なぜリクルートのリの字も出てこないようなそうした所信表明演説をされたのか。今総理がお答えしたような深刻な受けとめ方をしておったとするならば、当然リクルートの疑惑に対して猛反省の所信表明演説があってしかるべきではなかったのか、こう私は感じております。  また、税制改革のその一つの答申づくりをしておる政府税調の小倉会長でさえ、このリクルート疑惑の問題に触れまして、政治家には反省の色が見えない、残念だと大変厳しくおっしゃっているわけでありますし、その上、江副さんそれ自身が政府税調の特別委員であった。国民にとってはまさにダブルパンチの衝撃を受けているわけでございまして、私はそういう点から見ましても、並み大抵の反省やおわびでは国民は許してくれない。竹下総理初め竹下内閣の閣僚としても襟を正してこの臨時国会に臨まなくてはならないのではないか、こう思うわけでございます。大臣を代表して国家公安委員長、この点についてどういう御感想と御決意を持っておるか、お伺いしたいと思います。
  152. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 御指摘の点については、やはりそれぞれが厳しい自己戒律というか倫理観を持って臨まなければならないというふうに感じております。ですから、今回の税制改革を通じまして、審議を通じまして、それぞれの反省点に立った改善、改革がなされることを期待をするわけであります。
  153. 宮地正介

    ○宮地委員 特に、第百二国会の六十年六月十四日の衆議院本会議におきまして、国会法の一部改正が行われました。百二十四条の二に「議員は、各議院の議決により定める政治倫理綱領及びこれにのっとり各議院の議決により定める行為規範を遵守しなければならない。」こうあります。その政治倫理綱領には「かりそめにも国民の非難を受けないよう政治腐敗の根絶と政治倫理の向上に努めなければならない。」こうあるわけでございます。  総理、私はこの委員会で二度にわたってこの問題に触れさしていただいております。我々政治家も、やはり襟を正し、国民に対しての依怙依託としての姿勢を示していかなければならない、これがまず税制改革の法案審議以前の問題として問われているのではないか。そこに竹下内閣として生命を賭して税制改革の法案をやるというなら、また生命を賭してこの問題の真相解明と同時に再発防止のための具体的な提案、提言をすべきではないのでしょうか。この点についての総理の御見解を伺っておきたいと思います。
  154. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 税制改革に対する私の取り組み方、これは御指摘のとおりであります。そうして、いわゆるリクルート問題に対する取り組み方、一方、告発を受けておるということが厳粛な事実として存在しておりますが、やはり要は、今も御指摘のありましたように、政治倫理審査会ができて、今これがいつでも機能するような仕組みになっておりますが、国会法が改正されたあのときからの倫理綱領というものに、間断なく政治家個人個人がこれを想起しながら日常対応していくということに最終的には私は尽きるのではないかというふうに思っております。
  155. 宮地正介

    ○宮地委員 ぜひ今後の竹下内閣の対応を私どもも見守らしていただきたいと思っております。  そういう中で、昨日、野村証券の元課長が逮捕されるという事件が報道されました。私は、この事件をテレビや新聞で見さしていただきまして、大変に驚きとまた慨嘆をいたしました。その元課長なる者が、野村証券には政治家用の特別口座X資金があるなどとうそをついて金をだまし取ったという事件のようであります。このような土壌といいますか、そうした証券会社の幹部が、プロがそこまでうそをついてまでやっているというその点にも問題がありますが、政治家用の特別口座X資金、こういう土壌といいますか発想といいますか、こういうものがまた真実として受けとめられ、だまされる方もだます方も悪いわけですが、日本に今株を中心としたそうした資金のやりくりをする土壌があるのではないかという、そこに問題があるのではないか。大変私は残念な事件だと思っております。  まずこの事件の状況について捜査当局から御報告をお受けしたいと同時に、こうした政治家の名が利用されているというこうした土壌の改善のためにも何らかの手を打たなければならない、私はそう思うわけでございますが、この点については大蔵大臣あるいは総理からお伺いをしたいと思います。
  156. 根來泰周

    根來政府委員 お尋ねの事件でございますけれども、これは仰せのように野村証券の柏木という元課長とそれから株式会社エム・ディー商事の土橋という社長の二人を東京地検が逮捕いたしました。  その事実でございますが、昭和六十二年の二月十六日ごろに、品川区の総和商事という会社で同会社の鈴木という社長に対して、野村証券には大会社の役員や政治家の資金を運用している特別の口座がある、一年で倍ぐらいになり確実にもうかりますという全くありもしないことを申しまして、三億円を振り込ませてこれを騙取したという詐欺の事案でございます。  二人につきましては本日勾留請求をいたしまして、先ほど勾留が出たというふうに承知しております。
  157. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまのことにつきましては詳細存じませんので、それ自身に論評することができませんが、しかし、例えば証券取引法あるいは証券業協会の内規等々で従来いろいろなことが定められてまいっておりますけれども、最近になりまして、やはりそれだけでは非常に不十分である、例えばインサイダー取引規制どもその一つでございますが、それにとどまりませず、いろいろな不公正取引と言われるものあるいはその温床になりやすいものについてどう考えるべきかということを、証券取引審議会の不公正取引特別部会においてこの九月から検討をお始め願った。この事件と直接どういうふうに関係があるかは、この出来事を存じませんので申し上げられませんけれども、一般的に申しまして、そのようなモラルを高める、あるいは間違いを起こす土壌を除くといったような努力行政の面でもしてまいらなければならないと考えまして、着手をいたしておるところであります。
  158. 宮地正介

    ○宮地委員 そういう点で、特に証券会社のこれからのモラルといいますか、企業でありながらやはり証券会社の場合は社会的に非常に重要な責任と立場のある、そうしたいわゆる公器ではないかと私は思います。ことしになってもそうした点で、銀行初め証券会社、信託銀行など、お金を取り扱っている金融証券業界にそうした事故が非常に多発をしている。そうした問題に対しても大蔵省としてもやはり厳しくたがを締めていかないと、片一方でキャピタルゲインの不公平税制の問題を是正をしておきながら、実際に証券なりを扱う公器である企業が内部からそうした、特に国会の政治家を利用したような資金集めをしているというのはとんでもないことでございまして、私は、今後厳重にこうしたことが起きないよう再発防止に努力をすべきではないか、この点について大蔵大臣の御決意をお伺いしておきたいと思います。
  159. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のとおりと思います。かつてはああいう投資の世界はいわば玄人の世界と考えられておった時代が長く続きましたけれども、最近はそうでもございません。やはりいわゆる財テクといったようなことにつきましては国民が広く関心を持たれるようになりました。そういう意味では余計投資家保護ということが大切になってまいります。玄人でございますとそういう間違いは起きませんが、いわば今まで経験のない大衆がそういうことに関心を持たれる、積極的に参画をされるということになれば、投資家を保護するということは行政にとりまして極めて大切なことであります。また、証券会社自身もそういうお客様を誤らせないように、あるいはだますなんということはこれはもとより論外でございますが、誤らせないようにいろいろ証券会社としても考えてもらわなければならない、それはやはり証券行政全体の喫緊の課題であるというふうに思っております。また、証券業協会においても、それはそういう意識で努力を始めておられるというふうに承知をいたしております。
  160. 宮地正介

    ○宮地委員 そこで、リクルートの疑惑問題についても若干お伺いをしておきたいと思います。  昨日、楢崎代議士のいわゆる告発問題に伴いまして、リクルートコスモスの秘書室長らを参考人で東京地検が初めて事情聴取をされたと伺っております。また、この委員会におきましても、私も具体的に川崎市の助役の職務権限といわゆる株の譲渡の問題についても問いたださせていただきました。また、過日は我が同僚の坂井委員からも、NTTの元取締役の長谷川氏の職務権限と、またいわゆる株の譲渡の問題についても触れられました。こうした問題は、まさに捜査当局が本気になって取り組んでいると思いますが、現段階においてその進捗状況はどのようになっておられるのか、この点について御説明をいただきたいと思います。
  161. 根來泰周

    根來政府委員 いつも申し上げておることでございますけれども、国会で御質問のあった事項につきましては、検察庁も十分念頭に置きまして検討していると思います。  九月八日に楢崎委員から告発がなされました贈賄申し込みの事件につきましては、鋭意捜査中と聞いております。新聞で報道されたことにつきましては、肯定も否定もする立場でございませんけれども、捜査の常道に従いまして関係者を取り調べるなど、鋭意捜査中の状況にあるということを申し上げておきます。
  162. 宮地正介

    ○宮地委員 特に川崎市の小松助役の問題につきまして、川崎市においては既に百条委員会が設置をされ、この小松助役のいわゆる証人としての喚問をしよう、こういう動きがあるようでございますが、今この小松助役が一体全体どこにいるのか皆目わからない、こういうようなことも言われているわけでございます。私もこの委員会でこの臨時国会が始まりましてから質疑をさせていただきました。捜査当局としては、接触した事実、この辺については可なのか否なのか、この点についてだけでも結構ですから御報告していただきたい。
  163. 中門弘

    ○中門政府委員 お尋ねの川崎市の助役に係る件につきましては、現在神奈川県警察におきまして情報収集を通じまして事実関係の把握に努めておるところでございますが、その具体的状況につきましては答弁を差し控えさせていただきたいと存じます。
  164. 宮地正介

    ○宮地委員 今、百条委員会が川崎市につくられて、この小松助役を証人喚問をしようとしていろいろ捜しているんだが、見当たらないというのですね。どこにいるかわからない。私もこの問題を中心として、職務権限と株譲渡の問題でこの委員会で質問して、もう一カ月が過ぎているわけです。捜査状況が進捗しているのであれば、この問題について小松助役に地検が接触した事実というのは当然あるのではないか。ところが、皆目わからないということは、うがった見方かもしれないが、捜査当局は、一生懸命情報を収集してやっております。こう言っていますけれども、果たしてどこまでやっているのか。全く進捗していないのかもしれない、こういう見方もあるわけですから、いつ、どこでなんということは言いません、そういう接触の事実があるのかないのか、あったのかなかったのか、この点だけ確認したいと思います。
  165. 中門弘

    ○中門政府委員 具体の事案につきましての答弁は差し控えさせていただきたいと存じますが、一般論として申し上げますと、情報収集を通じての事実関係の把握の過程におきましては、例えば事案が複雑でございますとかあるいは関係者の事情聴取がなかなかできないというふうなことで、事実関係の把握に時間を要するということも事実であることを御理解いただきたいと存じます。
  166. 宮地正介

    ○宮地委員 その辺は、捜査当局の真摯な解明についての努力をされている、こういう認識で前向きに信頼をしたいと思います。ただ、今申し上げたように川崎市においてそうした百条委員会が設置され、一番の当事者である証人喚問をしようということで、連絡をするにしてもどこにいるかわからない、全く見当がつかない、こんな事態で今川崎市の百条委員会も大変困惑をしておる。こういうことを聞きますと、私が申し上げることも理解ができるのではないか。今後その点についても信頼をしてまいりたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  ただ、ここで、このいわゆる江副氏のリクルート問題のこの疑惑が、株の譲渡とか株の第三者割り当てのこうした売却とか、株にまつわる問題、そしてまた職務権限との問題、さらに最近に至りましては、そうした問題だけでなくして、政治献金とどうもこの利権との関係といいますか、こういうものが随所に明るみに出ている新たな事実が出ているわけであります。川崎市においても伊藤市長が政治献金を受け取っておった、埼玉県の浦和市においても中川市長が政治献金を後援会とはいえ受け取っておった、また同僚の国会議員の中にも何人かの方がこのリクルートコスモスから政治献金を受けておった、こういうようないわゆる問題。また、楢崎代議士に対しては、国会質問に手心を加えてくれというのかどうかわかりませんが、五百万円の現金を持ってきた。何か、株とか政治献金とか、お金さえ出せば何とでもなる、職務権限であろうが利権であろうがそういうものが動かせる、こういうような江副氏のいわゆる社会常識を外れたお金優先のそうした思考というものがここのところで大きくクローズアップをしてきたわけでありまして、私は、そういう点から考えましても金丸委員長に申し上げたいことは、このリクルート疑惑解明というものの真相のかぎを握っているのは、やはり江副氏の国会招致をする以外にない。これは単に江副氏を攻撃をするとかあるいは質問をするといった問題ではない。今国民は、この税制改革を論ずる前に、それを提案する政治家に資格があるのか、ぬれ手にアワのそんな金を受け取った政治家に資格があるのか、また創業者の江副さんの百四十六億に上る創業者利得に一銭の税金もかからない、こんなばかげた税制があるのか、国民はあらゆる角度からこのリクルートの疑惑解明に強いいら立ちと関心を持っているわけでございます。  そういう意味からもこの国会招致に対しては、私は、総理が生命を賭して税制改革をやるというなら、委員長総理の後見人として、また今委員長という重要なポストにある以上、生命を賭してこの江副浩正氏の国会招致を断行すべきではないか、こう思いますが、委員長の決意をお伺いしておきたいと思います。
  167. 金丸信

    金丸委員長 ただいま総理の後見人というお言葉がありましたが、私は後見人のつもりではおりません、それは第三者が言っていることでありまして。  ただ、江副の問題につきましては、理事会でもいろいろ審議していただいておりますし、また、向こうからの御返事もはっきりした返事がないので、文書をもちまして先週土曜日、公文書によりまして、十一日の日に衆議院のこの部屋にということで招集の令状を出したわけであります。まあ令状ということは別といたしまして、書類を出したわけでありますが、そういう状況でございますから、私もうやむやに葬っていこうというような考え方は毛頭ありません。真剣にこれからも取り組んでいきたい、こう思っております。
  168. 宮地正介

    ○宮地委員 委員長のお人柄と長い政治家としてのそのキャリアの上から、世のため国のために御奉公しようという、そういう政治家としての御決意があることを私は信じ、ぜひこの問題に決着をつけていただきたい、強く御要望しておきたいと思います。  そこで、このリクルート疑惑の問題から、少し具体的問題といたしましてインサイダー規制強化の問題について、大蔵省から何点かお伺いをしておきたいと思います。  御存じのように、アメリカにおきましては公開前の株式購入者は氏名、株数とも証券取引委員会、いわゆるSECに届け出るよう義務づけられております。再発防止のためにも証取法を再改正し、店頭市場の、インサイダー取引と言われている未公開情報を利用した不公正取引規制をすべきではないか、私はこう思っておりますが、大蔵大臣、御所見をいただきたいと思います。
  169. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 詳細には政府委員から申し上げますが、九月の初めに不公正取引の小委員会を開いていただきました。そこでお願いをいたしましたことは、一つは公開前における株式の譲渡並びに第三者割り当ての問題、もう一つは公開に際しましての株の譲渡配分の問題、それから公開価格の決定の問題、大きくくくりますと問題はその二つに分かれるわけでございますが、その中にただいま宮地委員の言われましたような問題も当然入ってくることと存じておりまして、この不公正取引特別部会はこれらの範囲の問題についてただいま御検討願っておるということでございます。
  170. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 ただいま宮地委員お話しのアメリカの例は、これは恐らく買い占めにかかる五%ルールの話ではないかと思います。  日本のインサイダー取引につきましては、先般五月に法律を通させていただきましたわけでございますが、それについては、上場株式ということでございまして、一般の投資家が参加しないリクルートのような公開前の市場につきましては、インサイダー取引とは若干違う面があろうかというふうに考えておるわけでございます。  ただ、御指摘のように、非公開株でありましても、今回のように、店頭登録あるいは公開に関連いたしましてこういったことが起こるといったことは、一般投資家の目から見ると、著しく不公平ではないかという疑念がございます。そういった意味で、公開市場のあり方をどう見るか。今、具体的に大臣からお話ございましたように、その公開前の株式の譲渡をどういう形で制限することができるかどうか。  ただ一方、これは資本市場としての公開市場の機能を阻害するものであってはならないわけでございまして、その間の調和が当然必要になってくるわけでございますが、そういった問題、あるいは公開価格の決定と初値との間によって特別利益が出るといったことをどういうふうにして縮減したらいいかといった問題、こういった問題につきましては今後、証券取引審議会不公正取引部会において具体的に審議を開始していただいておりまして、できれば年内に結論を得たいというふうに考えておるところでございます。
  171. 宮地正介

    ○宮地委員 再改正までに、やはり年内ということでございますが、これは実際に法律として改正案の中に出てくると来年の通常国会になるのではないか。そういうことを考えますと、時間もかかりますので、当面証券界の自主ルールとして、店頭登録前の株主異動の公表など、こうした規制を早急にやらせていくということは考えられないのか、この点についてはいかがでしょうか。
  172. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 ただいま御指摘の問題につきましても、証券取引審議会の不公正取引部会におきまして、ディスクロージャーの問題に関連いたしまして御議論をいただいておるところでございます。検討の結果がどうなるかということについて今から予断を持って私から申し上げるのは必ずしも適当ではないかというふうに思いますけれども、御指摘の点につきましても、これは重要な検討項目の一つであるというふうに理解いたしております。
  173. 宮地正介

    ○宮地委員 もう一つ大事なことは、親引けの禁止についてでございますけれども、上場予定会社が証券会社を介して関係会社に株式を割り当てするいわゆる親引けを禁止する、このルールにつきましては、四十八年七月の東証理事会で「株式公開制度の運用方針について」ということで決定をされているわけでございます。これ以降、東証で公開株の割り当て先をチェックして、問題がある場合には上場を認めない措置をとっているわけでございますが、今回のリクルートコスモスの場合に、この親引け禁止に当たらないのかどうか、この点についてはいかがなんでしょうか。
  174. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 通常、いわゆる親引けといいますのは、公開に先立ちまして発行会社の意思で特定の人に株を割り当てる行為でございまして、これはいわゆる殖産住宅事件でそのことが非常に問題とされたわけでございます。そういった意味では、その親引けにつきまして証券業界におきましても自主規制としてこれを禁止する措置を最近とりました。昨年だと思いますが、とりました。同時に、特定の人に多額の利益を与えることがないように、公開株につきましては原則として一人当たり千株とか二千株とかいう形で、特定の人に偏った配分はしないというふうな扱いにいたしておるわけでございます。  今御指摘のリクルートの件でございますけれども、これは公開に当たりましては、江副さんが持っておられます二百八十万株を、売り出しの方法によってこれをやったわけでございまして、親引けの問題はございませんでした。  なお、現在問題になっておりますリクルートの問題につきましては、これは公開前に、むしろ何といいますか、特定の者から特定の者へいわゆる株の移動が行われたということでございまして、これはいわゆる、先ほど御指摘の親引けという行為には該当しないわけでございます。
  175. 宮地正介

    ○宮地委員 時間がありませんので、詳しいことはまた大蔵委員会等で質問させていただきたいと思いますが、先ほどから証取審の不公正取引部会の対応についてお話も出ておりますが、この不公正取引部会のテーマとしては、株価の形成あるいは買い占め問題あるいは株価操作、こうした三つのテーマがやはり中心ではないか。特に新規公開株についての問題であります。  この株価の操作につきましては、証取法百二十五条で相場操縦などを禁止しておりますが、協同飼料事件で適用されておりますけれども、適用の件数がごくわずかである。この点については今後どのように改善をしようとしているのか、伺っておきたいと思います。
  176. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 証券取引審議会の不公正取引部会におきましては、先般インサイダー取引についての御結論をいただいてこれは立法化したわけでございますが、九月に再開いたしまして、それ以外のいろいろな問題につきまして御議論をいただくことにいたしております。  まず、御指摘の点のうち公開株の問題、株式公開制度のあり方の問題、これは今回のリクルートの問題等も契機といたしまして早急に改善を要するのではないかということから、まずこれから検討に着手しているわけでございます。  引き続いてその後、いわゆる買い占めの問題、この問題につきましては先般公明党の矢野委員長からもいわゆるアメリカの五%ルールの問題等に関連して御指摘がございましたので、こういった問題につきましても御議論いただきたいと思っておりますし、それからその後の問題としまして、これは御指摘のありました株価操縦の問題、証取法百二十五条につきましては、法律の規定の仕方とかあるいは実際の適用の問題いろいろ難しい問題がございますので、どういう対応策があるかどうか。ここでまだ議論を開始する前から私の方がどうこうという対応を申し上げる立場にはございませんけれども、こういった問題につきましても、今後引き続きこの不公正取引部会の場で御検討いただきたいというふうに考えているわけでございます。
  177. 宮地正介

    ○宮地委員 株価形成の問題につきましても、リクルート問題の新規公開株の株価形成につきましては、株式公開前の譲渡制限期間の延長、特に現行では株式公開直前決算期から一年前、こういう点などにつきましても例えば二年程度に延長をするとか、こうした具体的な改善策ですね、あるいは公開前の株式のディスクロージャーなど、あるいは公開直前の公募のあり方、こんな点もやはり改善していくべきではないのか、こう思いますが、この株価形成に対する改善措置についてはどう検討されているのか。
  178. 角谷正彦

    ○角谷政府委員 ただいま宮地委員指摘の問題は、それぞれ株式公開制度のあり方をめぐるかなり主要な検討課題でございます。それらの主要な検討課題それぞれにつきまして先般の審議会におきましては御議論いただくことを決定したところでございまして、そのそれぞれにつきまして、私どもとしてはできるだけ具体的な対応策が提言されるということを期待しているわけでございます。
  179. 宮地正介

    ○宮地委員 三つ目の仕手集団による買い占め問題、これはうちの委員長がSECの規制にある五%ルール導入の検討、こういうことで提案もされているわけでございますが、この五%ルールにいたしましても、投資家に対して果たして強制力があるのか、実効が上がるのか、いろいろやはり検討課題があることは我々も存じ上げているわけであります。しかし今、今日のこうした株に対する株価操作とか株価形成とか買い占め問題、これもまた国民のひんしゅくを大変に買っているわけでございますので、この点についてもそれなりの重大な決意で大蔵省も年内にこの問題の成果が上がるよう努力をしなくてはならない、これは当面の緊急課題ではないか、私はこう思いますので、この点についての大蔵大臣の御見解を伺っておきたいと思います。
  180. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のように当面の緊急課題でございますので、不公正取引特別部会の答申と申しますか、結論を年内にお願いをいたしまして、その結論のおのおのにつきまして行政としても具体化に着手をいたさなければならないと思っております。
  181. 宮地正介

    ○宮地委員 それでは次に、いわゆる税制改革の手順の問題、不公平税制の是正の問題などにつきましてお伺いをしてまいりたいと思っております。  まず総理にお伺いをしておきたいと思いますが、やはり税制改革の今後の一つの手順として、まず私は、先ほど来から申し上げているように、今国民の最も重大な関心事であり、また究明をしてもらいたい問題はリクルートの疑惑解明である、これは一歩たりとも退くわけにはいかない。次にやるのは、やはり不公平税制の是正ではないかと思います。そしてその次に、今総理などが言われている資産とか消費とか所得、こうしたもののいわゆる税体系の見直し、構築の問題ではないか。そうした手順が、何か今回の税制改革においては政府としては明確でない、どうもまず消費税導入ありき、ここから始まっているような感じがするわけです。  私ども公明党は、この手順において、まず不公平税制の是正をじっくりやろうじゃないか、その第一次改革をやり、そして、今申し上げた長期的な展望のもとにおいて、国民の合意が形成されることを前提としていわゆるこの所得、消費、資産に対する課税の適切な組み合わせ、構築をしていこうじゃないか、この第二次改革、これを三、四年かけてやって国民の合意を得ようじゃないか、こういう手順まで明確にして提言をしているわけですが、この点について総理の見解を伺っておきたいと思います。
  182. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 まず、私の方から申し上げますと、私は、税制改革の手順というものは、今日まで長い間の試行錯誤の中に今日に及んできておる、今日までの試行錯誤の中にいろいろ議論されたことそのものが手順であるというふうに、私自身はまず思っております。  そもそも論になりますが、昭和二十五年のこの改革、あのときで一番私が勉強さしていただいてちょっと驚きを感じましたのは、例えば所得税の刻みが八段階でございます。私どもが代議士に出たころから十九段階時代というのがあって、今日に至って、先般六段階でございますか、今度の原案は五段階、こういうことになっておりますが、そういうシャウプ勧告以前は別としまして、シャウプ勧告というものに基づく税制が、例えばきょう議論いただいておるこの有価証券の譲渡益、譲渡所得についての問題、これは原則課税であったものが、昭和二十八年でございますか、原則非課税になって、今度原則課税となって、また新たなる問題として今のような議論が行われておる。それから、あのシャウプ勧告のときにありました富裕税というようなものが、長らく議論されましたが、結局、実際上富裕の基準というのが難しくて廃止になったとか、あるいは、あのとき出ております付加価値税、あの付加価値税は今の付加価値税とちょっと違っておりますが、ある意味においては法人事業税みたいなものだなという感じは受けますが、実施されないままに長い間今日に至っておる。  そういう議論がずっとなされて、そこでやはり一つのきっかけになったのは、やはり私は財政再建というものに直面したときの五十三年答申に基づく一般消費税のときからではないかな、こういう問題意識を自分なりに整理しております。そうして決議が行われ、心の中で、例えば五十九年という心があったかもしれませんが、その問題は別として、そうして、いわゆるグリーンカード制度というのが五十五年の三月三十一日に両院を通過いたしまして、五十八年の一月一日からあのカードが配られ、五十九年の一月一日から実施に移されるという、あれも通ったわけですから、衆参両院を一度は。あれは、やはり一つの今日に至るまでの体験的手順というものじゃないかな、こう思っております。そうしてその後、今度はいわゆる所得に、稼得所得にかかり過ぎる税制を改革しようというところで先般の売上税問題があり、その反省から今回のいわゆる税制改革というものがある。こういうふうな歴史の中で、手順というものは随分十数年の長くにわたって尽くされて今に至っておるんじゃないかというふうな感じが私なりにいたしております。  そこで、今度は先生の方の基本法でございますが、たしか十六条から成っておりまして、聖徳太子の憲法よりも一条少ない。十七条が今度の我が方の改革法でございますから、それより一条短いというのが、おたくからより簡潔じゃないかというようなお話も承らしていただきました。  あの法律は確かに私ども似たところ——似たところと申しますと非礼ですが、聞くべき点がございますが、最終的に言いますと、今おっしゃいましたように、いわゆるこれから出発する手順法というような性格を持っておるんではないか。たしか六十五年の三月三十一日までに協議会が第一次改革の結論を出して、それからまた数年かかって第二次改革、こういう手順、基本法であると同時に手順法的な性格を持っておる。したがって、基本法の中で考え方として私どもも同意する面もございますが、それにしては余りにもやはり時間がかかる問題ではないかな。私なりに見れば、過去十数年やってきた経験の中において、トライ・アンド・エラーと申しましょうか、あるいはトライ・エラー、そして時にはストップしてレシンク、考え直し、またラン・アゲイン、走り出す、こういう歴史がすなわち手順になっておるのじゃないかな、こんな感じがいたしておるところでございます。  少し甘えっ放しくお答えいたしましたが、私の率直な感じを申し上げた次第でございます。
  183. 宮地正介

    ○宮地委員 竹下内閣の時代を過ぎるかもしれませんので、総理としては少し長く感じるかもしれませんが、やはり手順は手順として、しっかりと国民の合意を得るためには粘り強くやらなくてはならないのではないか。そういう中で私どもは、特にこの不公平税制の是正について、これはやはり税構造のひずみを是正する、これをまず最優先にすべきではないか、そういうことで、第一番目に現行の所得税を見直す。総合課税制度の再構築とあわせて、この分離課税の廃止とかあるいは課税ベースの拡大を図り、税制を垂直的あるいは水平的公平なものに改革をする。第二番目には、やはり法人税の課税ベースの拡大ですね。これはやはり、法人税の税率を下げる。そして、今の引当金制度などについてのこうしたものを取っ払って、逆に課税ベースを拡大をしていく。公益法人あるいは政治資金に対する課税を適正化していく。第三番目に、資産に対する課税の適正化によって資産の保有による格差を防ぎ、富の再分配機能を確保する。第四に、脱税や行き過ぎた節税など執行面の不公正を改善する。これを一つの柱として、後ほどまたお伺いしてまいりますが、具体的ないわゆる不公平の是正をやっていく。  この不公平税制の是正のいわゆる進め方、そのポイント、柱、これについて総理はどのようにお考えになっておりますか。
  184. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 時間の長短を別としますと、今おっしゃる税制改革に対するアプローチの仕方の中で不公平税制等についての是正が議論され、それに一つの、直ちにできるものあるいは中期的にできるもの、長期的にできるもの等の整理整とんがされて進んでいくというのに対しては、私は異議を持つものじゃございません。ただ、おたくのいわゆる税制改革基本法を私なりに理解させていただくといたしますならば、それは余りにも長期の時間を要することではないかという印象を先ほど来申し上げておるところでございます。
  185. 宮地正介

    ○宮地委員 内容的にはほぼ満足するけれども時間が足りない、どうもこんな結論のようでございますけれども、むしろ我々から見ると、竹下内閣は少し拙速過ぎるのではないか、こういうふうに思うわけでございます。  時間がございませんから、次の大きな問題としては、やはり総合課税の再構築の問題であります。これは、所得再分配機能の強化ということがポイントになっているわけでございますので、特に所得再分配機能の強化についても、公正な税構想をつくり上げていく上で最も重視すべきは総合課税の構築ではないか。  我が国の所得税制というものは、総合課税の建前をとっているものの、利子配当所得に対する分離課税が行われ、また、資産所得課税、事業所得課税に対する優遇措置拡大によろいわゆる課税所得の侵食で所得税の課税ベースが縮小され、労働所得課税に過重の負担がしわ寄せされておる、これがいわゆるサラリーマン層を中心とした不公平感の強いところではないかと思うわけでございます。税率構造を緩和する一方で、所得税の課税ベースを拡大し、総合課税の徹底を図り、この矛盾を解消していくべきではないか、こう我々は考えているわけでございます。この点について大蔵大臣はいかがでしょうか。
  186. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 基本的な考え方といたしまして、所得税は本来的にはすべての所得が総合されて、ある程度の累進によって課税されることが望ましい、それが基本的に、やはりシャウプ税制もそう考えておりますし、近代の考え方も私はそうであると存じます。  ただ、それに対しまして現実に例外がございます。それは、政策的な考慮によって分離しておるものもございますし、また、総合したいんだけれども何かの事情によって所得の把握が現実には困難であるので、やむを得ずそれを分離して源泉等々で課税をするといったような考え方に基づくものもございます。  基本的にはしかし、おっしゃいますように、すべての所得が正確に把握されあるいは正確に申告されて、それが総合課税の形である程度の累進をもって課税されるというのが理想の姿であるということは、私はそれで間違いないと存じます。
  187. 宮地正介

    ○宮地委員 今も大蔵大臣申されましたように、やはりシャウプ勧告の理念、また本来の税原理から見れば、累進総合課税の再構築、これを目指すのは当然であろうと思います。  もう一つ重要な問題は、資産に対する課税の適正化、特に社会的公正の確保という面から、最近の地価の高騰、こういうものが土地を持っている者と持たない者の間に大変な税の不公平、不公正感というものを与えているわけであります。この問題につきましても、特に私ども公明党としては、社会的公正を確保するために、法人に限りまして法人の所有する土地の含み益というものを社会に還元をする、そうした土地の増価税の創設を提案しているわけであります。  この問題については、いわゆる未実現、こういうことでなかなか総理初め大蔵当局はちゅうちょをしているわけでございますが、この含み益の社会に対する還元問題というものはまた避けて通ることのできない一つの大きな税制改革のポイントではないか、私はこう思うわけでございますが、この点について総理あるいは大蔵大臣の所見を伺っておきたいと思います。
  188. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 法人の含み益に対します課税につきましては、宮地委員が何度も御指摘になっておられますし、また公明党の長い間の御主張であることも存じております。私どもの意見ももう実は、また申し上げますとくどくなりますので余りくどく申し上げてもと存じますが、実際それは未実現の利益であるし、もし財産の保有のための課税であるとすれば、固定資産税もございますし特別保有税もございます。また現実に、それらの大きな含み資産を得っておる産業を見ますと、かなり多くのものがいわゆる装置産業、現代で申しますと余り業績のトップの方ではないところに多いこともございまして、それに課税をするということが果たしてどういうものであろうかといったようなこと、いろいろ理由がございますが、ただ私ども思いますのは、それが全然社会に還元されていないかといえば、そういう形でいわば再評価をして課税をしない、含みのままで置かれておるということは、それは生産コストを下げておることには間違いございませんので、そういう意味で全く還元されていないということは言えないのであろう。まあ、これはちょっと思いつきましたことを申し上げるのでございますが、そういうことは言えると存じます。
  189. 宮地正介

    ○宮地委員 これについて、やはり未実現だからということで避けているだけでは能がないのではないか。これだけの莫大な資産が非常にふえておる。六十一年だけでも土地だけで一年間で二百四十六兆円、こういう莫大な資産が増加しておる。未実現だからといってそこに全く踏み込まない、これはもう理由にならないのではないか。何らかの形でやはりこの資産の問題についても適正化をするための工夫、努力、これがあってしかるべきではないかな、こう思うわけです。  この点について具体的に何をせいとこちらからは申し上げませんが、私ども土地増価税という一つの処方せんを提案していますが、社会に還元するためにこうした資産の適正化問題に竹下内閣が何らかの工夫、努力で取り組んでいく、こういうものがあるのかないのか、この点についていかがでしょう。
  190. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 先ほど大蔵大臣からもお答えがありましたように、この問題はかなり古い問題でございます。いわゆる所得という分野からとらえた場合に、未実現の利益に対する課税というのはこれは論理の整合性はないということ。  が、しかし今おっしゃったように何らか考えられぬか、こういうことから考えてみますと、保有税あるいは地方税の根幹である固定資産税の問題とどうしていくか、こういう問題が出てくるということに対して、問題がいつでもそこまでの議論に、きょうのところもそうですよね、実際そこまでの議論になっておる。ただ強いて言うならば、個人は除外して、相続税というものが存在するから、したがって法人にというようなところに、十年前の議論よりは私は変化が生じてきたなあというふうには思うわけでございますが、こういう問答を積み重ねながらひとつお互いの勉強課題としてこれからも、エンドレスというわけじゃございませんけれども、きょうのところはエンドレスでございますが、議論をしていこうじゃございませんか。
  191. 宮地正介

    ○宮地委員 これはまたいろいろじっくり詰めていきたいと思います。  もう一つ大事な問題は高齢化社会への対応でございまして、このためにはまずビジョンの策定、長期税制のあり方、こういうものをやはり検討していかなければならない。  厚生大臣にお越しいただいておりますが、まず、この高齢化社会のビジョンについては厚生省としては今おつくりになっておるのか、おつくりになって今検討されているとすればどういうような形を検討されておるのか、現段階で御報告いただければお願いしたいと思います。
  192. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 本格的な高齢化社会を迎えまして人生五十年型の経済社会から人生八十年型の経済社会を再構築する、そのための指針として、雇用それから年金、医療、教育、生活環境等を内容といたします長寿社会対策大綱というものを政府は既に定めておりますし、また、ことしの三月には、二十一世紀の初頭における高齢化の状況並びに社会保障の給付と負担の展望につきましてもお示しをいたしておるわけでございます。さらに、今後の長寿福祉社会を建設していくための基本的な考え方につきまして、また福祉年金、医療の施策に対しての方向、それから目標、そういうものにつきまして今検討中でございます。今国会の御審議の参考に供することができるよう今全力を挙げているところでございますが、何分いろいろ困難な事情もありますし、広範多岐にもわたるわけでございますし、また政府部内の調整という問題もございまして時間がかかっておりますけれども、できるだけ早くお出しするように努力をいたしておるところでございます。
  193. 宮地正介

    ○宮地委員 できるだけ早くということでございますが、やはり税制改革の問題とは切っても切れない関係にあるわけでございます。特に財政需要の増大が避けられないこの高齢化社会におきましては、安易にこの財政規模が拡大しないように不断の行政改革を進めるとともに、やはり納税者がそれを監視することができるよう痛税感を伴う税制度の確立が私どもは望ましいのではないか、こう考えておるわけでございまして、このような観点から見れば直接税を重視した税制の改革を目指すべきではないか、これが私どもの主張でございます。  今の高齢化社会ビジョンに合わせてその最も大事な行政改革の問題について、総務庁としては今後どのような決意とまた対応をされようとしておるのか、この運動についてお伺いしておきたいと思います。
  194. 高鳥修

    ○高鳥国務大臣 旧行革審におきましては、行政改革はなお道半ばであるということで、今後一層の精進、努力を望むということを指摘をしてこられたところであります。また、今年の六月二十九日、新行革審が総理に対して意見具申をしておられるわけでありますが、その中におきましては、いろいろな問題についてかなり幅広く手をつけておることについてはその努力は認めるけれども、なおなおやらなければならない問題がたくさんある、これをしっかりやれという意見具申がなされておるところであります。  これらの意見具申を踏まえまして、行政改革につきましてはなお今後一層不断の努力を重ねてまいりたい、このように考えております。
  195. 宮地正介

    ○宮地委員 大蔵大臣、私どもは今申し上げたような直接税を重視した税制改革でこの高齢化社会への対応、こういうものを検討しているわけですが、この点についてはどういうお考えをお持ちですか、御見解を伺っておきたいと思います。
  196. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 前にも申し上げましたし、宮地委員も御存じのことでございますが、現在、六十五歳以上の老人と生産年齢人口、十五歳から六十五歳まででございますが、比は一対六・六でございます。それが二〇〇〇年には一対四になり、二〇一〇年には一対三になるということになりますと、それだけの費用を若い人が直接税の形で本当に負担できるものであろうか。年をとるということは稼得能力がなくなるということでございますから、どうしても分母の上の人たちは所得税を払う力は小さくなってまいります。下の人が所得税を負担しなければなりませんが、今より半分以下の人がそれをしょっていかなければならぬということになれば、私は大変に大きな負担になると考えざるを得ないと思うのでございます。そういう負担は、一部は税金で一部は恐らく社会保険料でございますから、それがどういう分かれになるかは別といたしましても、やはり税金もある程度その一部にならざるを得ないと存じますので、そういたしますと、所得税という形で今六・六人がしょっておるものを、三人でそれをしょわせるということは本当に所得課税で可能なものであろうかということを考えますと、それはお年寄りも申しわけありませんが消費税でございますとある程度は負担をしてもらえるのでございますから、みんなが薄く広くということがやはり入り用になるのではないかというふうに私どもとしては思うわけでございます。
  197. 宮地正介

    ○宮地委員 具体的に、私ども今申し上げたような一つの基本的な考え方、手順、また一つの柱を中心にして税制改革というものは行っていくべきではないか、我々の提案を含め政府の見解をお伺いしたわけでございます。ぜひ今後とも、議論をしながらこうした問題について誠実に詰めていきたいな、こんな感じをしております。  そこで、まずキャピタルゲインの課税の問題につきまして具体的に少しお話をお伺いしてまいりたい、こう思うわけでございます。  キャピタルゲイン課税というのは、これはもう御存じのようにシャウプ税制におきましては総合課税とされておったわけであります。一九五三年、資本蓄積の促進に資することを理由に非課税とされたわけであります。この一九五三年という年は、資産所得の代表ともいうべき利子所得が総合課税から外され分離課税になった、いわゆるシャウプ税制イコール総合累進課税が崩れた年とも言われているわけであります。そういう中で、マル優の廃止でいわゆる分離課税、こうした処方にどうも政府のキャピタルゲイン課税というものの考え方が類似しているのではないか。なぜか、このシャウプ税制のときの総合課税に戻ろうというどうもこういう意欲が見当たらない。取引内容とか本人を確認するためにこの納税者番号制度を導入しなければならないから難しいのだと。これも非常に、果たして国民の合意が得られるであろうか。  私どもは、今回のいわゆるみなし一%課税とか分離の二〇%課税、申告分離と源泉の分離でそうした処方せんがいろいろ改革案の中で出されてきておりますけれども、これですと大多数の投資家は、投資内容も利益の額も税務当局につかまれずに済む後者の方法、いわゆる源泉分離課税を当然選択すると見られるわけであります。これでは、マル優廃止に伴う一律分離課税により巨額のアングラマネーが税の網から合法的に免れたと同様、投機まがいの財テクが天下公認となるのではないか、こうした危惧があるわけでございます。  こうなりますと、当時のシャウプさんが指摘をしておりましたように、ある人々が平然と法に従って自己の税負担額を回避していることが知れるのは、ある人々が非合法的に脱税していることが知れるよりも一層納税倫理に対して有害となると指摘しておるわけでございまして、まさにこのようになるのではないか、こんなまた心配もあるわけでございまして、私どもは納税者番号制度の導入を主張しております。もしこれが難しいとするならば、当面証券取引カードの制度を導入して、原則課税らしく申告分離課税二〇%一本でいくべきではないか、こう思うのですが、大蔵大臣の御見解を伺っておきたいと思います。
  198. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今、昭和二十八年当時のことをおっしゃいまして、私はそのとき、その寸前までそういうことに関係をいたしておりましたものですから、感じを申し上げるのでございますが、これはしかし、あるいは事務当局に歴史として御説明させると違うことを申し上げるかもしれませんが。  当時、どうして株式のキャピタルゲインというものをいわば非課税にしていったか、あるいは富裕税というものもその年ごろにたしかやめるのでございますが、それは財閥解体がございまして、証券を、いわば当時の言葉で申しますと証券民主化でございますが、できるだけ国民にみんな証券を持ってもらおうではないかという大きな動きがございました。それから講和条約が終わりまして、みんなとにかく一生懸命働こう、そしてなるべく働いた成果というものは、ちょっと言葉は語弊がございますけれども、なるべくそれは、どう申しますか、いわば総合課税もそれはもう成熟した社会では一つの考え方でございますのですが、そうでなくて、みんなとにかく働いて自分のものにしていこうじゃないかというような、そういう動きが非常に強かった時代でございます。そういう意味では、シャウプさんがもう少し成熟した社会で考えておられたシャウプ税制というものを三年間やってみまして、どうも今の日本、当時の日本としてはそこまでなかなかやり切らぬので、やはり一人一人の創意なり働きというものに重点を置いた方がいいのではないかという考え方が、今おっしゃいましたようないろいろなシャウプ税制からの申してみれば外れでございますが、そういう動きになってまいったんだと思っております。  これはちょっと当たらない比較かもしれませんけれども、アメリカでレーガン大統領が、むしろキャピタルゲインというようなものはなるべく減らした方が経済活動にはいいんだというようなことを言い、あるいは所得税の累進も何段階もあるよりは二つにしてしまった方がいいんだといったような、こういうことをかなり言っておられます、またやっておられますが、幾らかそういう物の考え方、当時の日本と全く今のアメリカと違いますようなものの、経済活動を個人個人の創意で活発にしていくことが当時の日本としては大変に必要だったという意味合いを持ったのではないかと思います。  これは少し長くなって申しわけございませんでしたが、私は同じことが今の日本に当てはまると申し上げているわけではございません。我が国は今もっと成熟した社会になりましたので、したがいまして、多くのものを総合課税にしていこうということはさっき申しましたように税の本筋だと存じておりますし、ただそれは、キャピタルゲインの場合には、申しましたように納税者番号であるとかあるいはそういう難しい問題がございますものですから、それについての結論が出ますまで何年間かの間はただいまのような姿でやらせていただきたいと御提案をしておるわけでございます。
  199. 宮地正介

    ○宮地委員 非常にそうした大きな問題点もあるという認識をやはり大蔵省もしっかり踏まえて、税制改革の問題というものに取り組んでいただきたい。  特に、キャピタルゲイン課税の中の創業者利得ですね。この問題も午前中少し出ておりましたが、この問題については小倉政府税調会長も、今回のリクルート疑惑の問題に触れまして、政治家には反省の色が見えない、残念だと厳しく批判をしておると同時に、創業者利得の課税問題については、公開時の創業者利潤などをどうすべきかの論戦が政府税調で欠落しておった、売却額の一%では国民の理解が得られないだろう、我々の手落ちかもしれない、ここまで小倉税調会長は申しているわけでございます。今回のいわゆる事務担当者協議においてもこの問題について触れられておるわけですが、この創業者利得、先ほど申し上げましたように江副さんの場合にも百四十六億が全く税がかからぬ。まあそれにはそれなりの理由が今まであったと思いますけれども、もう社会では通用しない。せめて二〇%程度のいわゆる申告分離課税制度、こういうものなどによって創業者利得というものに課税を検討すべきではないか。この点について大蔵大臣、立法の作業に着手する用意があるかどうか、伺っておきたいと思います。
  200. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど申しましたようなことで政府提案は申し上げておるわけでございますけれども、その後に世の中で起こりましたこと、あるいは国会における御議論等々を拝聴しておりますと、一つは、いわゆる非公開株が公開されるというときに、売り抜けというのでございましょうか、そのときにかなり大きな譲渡所得が発生する、つまり五%掛ける二〇%、一%ではない大きなキャピタルゲインが出るということがしばしばあるではないか、それはまた実際あるわけでございます。  もう一つは創業者利得でございます。これは市場経済において創業者が厚遇されなきゃならないということは、私はそのこと自身は間違いないことだと思います。大事なことだと思いますが、それにもやはりおのずから限度があるのではないか、その限度はどの辺であろうか、殊にキャピタルゲインが原則課税になったという状況の中でそれはどういうふうに考えておけばいいかということは、御指摘のように私は十分考えなければならない問題である。政府としてもただいまそういう認識で考えております。
  201. 宮地正介

    ○宮地委員 これは大変重要な問題ですから、総理からも御意見、御決意を伺っておきたいと思います。
  202. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 市場経済におきまして創業者利得というのは、特に二十年、三十年前、私どもはそのことはむしろ、本当に粒々辛苦し、いろいろなノーハウを蓄積しながら一つの企業を育ててこられたということについては、客観的に見ると尊敬の念を持って見ておったというふうに思うのであります。だから、原則的に市場経済の中における創業者利得というのを否定する考えはございません。しかし、今日の状態に立ち至った場合、やはり私はそこにおのずからの節度と、今大蔵大臣からお話がありました限度でございますが、そうしたものに対して、あるいは小倉税調会長が感想を述べておられたのもその点についての議論をもう少し深めるべきではなかったかなというような意味ではないかというふうに私もコメントを読みながら感じておりましたので、基本的には大蔵大臣からお答えのありましたとおりでございます。
  203. 宮地正介

    ○宮地委員 もう一つ大事なのは、いわゆる大口短期のキャピタルゲイン課税についてのいわゆる重課の方式を考えていく、そうした考えはお持ちではないか。イギリスとか西ドイツとかフランスなどでは、長期と短期のキャピタルゲイン課税の方式が異なっておりまして、性格が若干違うにいたしましても、土地の譲渡益については個人、法人とも短期については重課されておるわけであります。  例えば、二年以内の保有、発行株式の一%以上の売買等、こうしたものを対象にキャピタルゲイン課税の重課、これは検討できないものなのかどうか、この点について大臣、いかがでしょう。
  204. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 税の専門家の意見を聞いておりますと、やはり長期につくられたキャピタルゲインと短期につくられたキャピタルゲインとでは短期の方に重課すべきであるという思想は、土地に限らずにあるものだそうでございます。おっしゃっていらっしゃることは、したがって基本的にそういう思想があるということは私も聞かされておるのでございますが、問題は、かつて五十回二十万株、最近では三十回十二万株でございますかになりましたが、その場合、今度の制度でそういうことがいわばなくなってしまうということはどうなのかということは確かに問題でございます。  問題でございますが、今度それを一遍引っ込めましたのは、実は何十回十二万株というようなことが、行政をやってみますと大変に課税実績がいわば悪いわけでございます。現実に捕捉し得た件数というのは大変に少ない。捕捉しないよりも捕捉した方がいいではないかという御議論があるかと思いますが、課税をする側から言いますと、いかにも浜の真砂のちょっと一つをつかまえたという行政はやはり行政としては大変に満足なものでない、できれば公平にまんべんなく行政をしなければならないという気持ちがございますものですから、したがいまして今の問題は、今後譲渡所得の捕捉をどういう形でやればうまくいくか、例えばそれは納税者番号であるとかカードとかいろいろな御議論があるわけでございますが、それが整いますと今のような場合に不公平なく重課をすることができる、こういうことでその問題を一遍今度は御提案をせずに将来の問題として残しておる、こういうふうにお考えいただけば、大体私どもが考えておったことでございます。  別の言葉で申しますと、本来株式の譲渡益というものが大変に捕捉がしにくい今の行政の能力でございますから、それを捕捉ができる、不公平なく捕捉ができるということになりますと、ただいまのような問題についてはもっと、いわば重課、普通以上の課税をやってもいい、それをまた行政としても公平にできる自信が持てる、こういうことになってまいるのではないかと思っております。
  205. 宮地正介

    ○宮地委員 いずれにいたしましても、先ほども申し上げましたように何らかの形で、納税者番号制度の導入が現段階で厳しいというのであれば証券取引カード制度などを導入して、このキャピタルゲイン課税の適正化について政府は本気になって取り組んでいかなくてはならないのではないか、私どもはそういうふうに思うわけでございます。  結局、政府の方としてはキャピタルゲインの課税の適正化ということについては理解はし、創業者利得についても何らかの検討は必要である、しかし行き着くところはやはり納税者番号制度の導入ができなければできにくい、こういう結論では、先送りになってしまうわけでございます。大蔵大臣証券取引カード制度というものをやはり当面導入して、この問題に決着をつけるお考えはないでしょうか。
  206. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまの私どもが御提案をいたしました立場は、仮に源泉でございますと、これは証券会社が責任を持ちますと市場取引いたしますものは全部源泉で間違いなく捕捉ができます。そのことについて納税者に不服がおありであれば、それは納税者自身が自分の責任においていわば申告分離をされる。いずれにしても、これはまず課税がまんべんなく間違いなく行えるということでああいう御提案をいたしたわけでございます。  そのゆえんは、税制調査会でも随分納税者番号あるいは納税者カード、いろいろなことを御検討になって、これが税だけの分野にとどまるものであるか、とどまるとしたらそれでよろしいものであるか、あるいは始めればそれにとどまらない、広くもっと及ぶものであるか、その場合、国民がこれをどういうふうに考えられるであろうか、経済取引においてどのような影響を与えるであろうかというような、御承知のように大変複雑な問題がございますので、小委員会をおつくりになって、今たしか外国の実情も調査をしておられる。これは一遍全体を前向きに税制調査会としては考えてみようという御意思だと受け取っておるわけでございますが、その御検討の結果が出まして国民的な合意がある程度出てまいりますと、今のようなことも考えていけるわけでございますけれども、ただいまのところそれに至っていないということかと存じます。
  207. 宮地正介

    ○宮地委員 次に、タックスヘーブン税制についてお伺いをしておきたいと思います。  いわゆる租税避難地といいますか、タックスヘーブンの税制強化、この問題について現在の指定は国・地域三十三、こういうふうになっておるわけでございますが、これをやはり十ぐらいふやすということがいろいろ事務レベル協議でも検討されているようですが、大蔵省としてはこの点についてはどの程度御検討、またこのタックスヘーブン税制の改正についてやる決意があるのかないのか、この辺についてお伺いしておきたいと思います。
  208. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは問題が比較的明確になってまいりまして、結論を申しますと、タックスヘーブンをさらに、今三十三カ所でございますか、追加をすることを考えておりますし、また、この制度の動かし方につきましても改善の余地があろうかと思いますので、これはやらせていただきたいと思っております。
  209. 宮地正介

    ○宮地委員 そうしますと、これはどういう形になりますか。先ほどの創業者利得にあわせ新規立法、こういう形でやるお考えですか、作業の手続としては。
  210. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 端的に申し上げますと、タックスヘーブン対象国の追加、見直し等は、これは法律の趣旨に基づきまして大蔵大臣指定によって決まるものでございますので、そういう意味におきましては法制的な措置とも言えるわけでございますけれども大蔵大臣指定行為という行政手段でもってなされるものでございます。なおそのほか、タックスヘーブン、昭和五十三年に制定されまして以来、指定対象国の指定の追加を初めといたしまして、その都度必要に応じましてその扱い等につきましても法制的にいろいろ改善をしてきているところでございまして、今後必要に応じましてそうした面につきましてもなおよく検討し、必要があれば見直しを行ってまいりたいと思っておるところでございます。
  211. 宮地正介

    ○宮地委員 そうしますと、その見直しの時期はどの辺を目標にしておられますか。
  212. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 現在考えられる対象国あるいは対象地域につきまして検討をいたしておるところでございまして、この次の年度の改正、六十四年度改正が一つのめどとなろうかと思いますので、そうした意味におきましては、今年度中にできればそうした措置を講じたい、こんなふうに考えてございます。
  213. 宮地正介

    ○宮地委員 次に、今やはり非常に国民が大きな関心を持っている問題が政治家のパーティー課税の問題であります。これにつきましては、いろいろ我が党においても党内で議論があるわけでございますが、政府としてはこの問題についてはどう取り組むお考えなのか、これについて大蔵大臣の御見解を伺っておきたいと思います。
  214. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 あるいは税法上の問題の範疇を出るような感じがいたしますので、私からお答えした方が適切かと思って立ち上がったわけでございます。  今御指摘がありましたように、党内でもいろいろな御議論があるとおっしゃいましたが、私の今までの経験からしても、大変な議論があることは事実でございます。そもそも論から始まりますと尽きることのない議論になりまして、私自身も途中で何度か壁にぶち当たった経験を持っております。したがって、今度はこの税制というものを、特に不公平ということに、十項目の中に明瞭に入れられた一つ課題でありますだけに、今協議会は協議会として議論をいただいておりますので、それらの推移を見、基本的にはやはり本委員会で処理はする問題であろうと思いますので、それを静かに見守っておるというのが率直な私のこの現状でございます。
  215. 宮地正介

    ○宮地委員 静かに見守っているというよりも、政府としてはどうこの問題について御意見なりお考えを持っているのか、大蔵大臣どうですか。
  216. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 従来でございますと、これは政治資金規正法あるいは政治というもののあり方等々から行政はここにはタッチをしないということで、それでまたよかったというふうに考えておりました。が、実は政治の方のお立場からそれでいいのかなという御提言があっておるわけでございますので、政府という立場から、行政という立場からいたしますと、どのような政治の方の御決断になるのかということをいわば待たせていただいておると申しますか、そういう立場かと存じます。
  217. 宮地正介

    ○宮地委員 この問題はまた非常に難しい問題であろうかと思います。しかし、国民は非常にこの政治家のパーティーに対する課税について大きな関心を持っていることも事実であります。印紙税方式の問題だとかあるいは収益に対する課税の問題だとかいろいろな方法、あるいは政治資金そのものに課税するということは政治資金規正法の本旨にもとる、こういうことで収支の報告書のチェックを強化するとか、特にこの資金が政治家の個人の所得に流れる、そういうものに対してのチェック、こういうものもいろいろの角度で議論が我が党内でもされております。しかし、この国民の関心事をやはり我々国会議員が避けて通ることもできない、そういう非常に厳しい状況にあることも事実でございます。ぜひこの点についても、政府としてどういうふうな結論を導き出すか、それなりの政府独自の検討も必要ではないか、私はこう思うわけでございますが、この点について再度大蔵大臣の所見を伺っておきたいと思います。
  218. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほども申し上げましたようなことで、私ども政治行政との区別は、今の制度と申しますか姿で落ちついておるというふうに考えておった、それが行政の立場でございましたが、政治の方から国民の意見もいろいろ聞かれて、それは必ずしもどうかというふうに今お考えであられるように存じております。その御決断いかんでございますが、具体的な方法としてこういういい方法がありそうだというふうにはすぐに、一長一短ということが本当のところでございますけれども政治の方の御決断いかんで、それに一番近い方法はどうしたらいいかということはその段階で考えさせていただくことであろうかと存じております。
  219. 宮地正介

    ○宮地委員 次に、いわゆるみなし法人課税、この問題については大蔵省としてはどの程度これを検討されようとしておるのか、特に個人企業、中小法人に共通した小規模企業税制、この創設を二、三年かけて行う、こういうようなお考えもちらちら出ておるわけでございますが、このみなし法人課税に対する問題についてはどのように政府として取り組んでいかれようとするのか、お伺いしておきたいと思います。
  220. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 世の中で一般に不公平税制と言われますときに、あるいはそういう御議論が行われますときに、本来その不公平を目的としてそういう制度がつくられたはずはないのでございまして、何かの政策目的を達成するためにある制度を考え、そして、それがしかしほかの角度から見れば不公平ではないか、政策目的のメリットと不公平というデメリットと果たしてどうするのかということが御議論になるのだと思いますけれども、このみなし法人の問題はまさしくそういう面を持っているのだと私は思います。  つまり、これには積極的に賛成をされる議論がたくさんございます。奥と表とをきちんとやはり中小企業の中で分けるメリットがあるといったようなこと、反対の方で申しますと、しかし、それは一種の二重控除ではないか、あるいは形態としては個人を選びながら法人としての特典だけを求めるのはおかしいではないかといったような御議論、片っ方では、しかし同族会社というものはあるだろうといったような御議論。でございますから、これについては両方に御議論があるというのが本当のところで、それで私どもは、昨年の九月に税制改正をいたしまして、ともかく事業主報酬であろうとも、それは青天井はいかにも問題でございましょうと、これについて実質的な制限を設けることをお認めいただいたわけでございます。  今、ですから制限が設けられたわけでございますが、それを今始めたところでございますので、この制度を次にお改めいただきます、これは五年間でございましたか、それでございますから六十七年ごろまでにはこれについての、どういうふうにいたしますか、いわゆる小規模企業税制とでも申しますのでしょうか、それをどういうふうに昨年の改正の後をしていくかということを決めさしていただかなければならないなと思っておりまして、これは両方に御議論がございますものですから、かなりそれを詰めて検討さしていただかなければならないと思っております。
  221. 宮地正介

    ○宮地委員 もう一つ、医師の税制問題ですね。これについては特にいわゆる事業税の非課税の問題、こうした特例問題についての廃止の問題等含め、医師税制についての改革という問題も不公平税制の是正の一つの大きなポイントと言われております。この点については政府としてはどういうようなお考えを持っておりますか。
  222. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 このたび政府が御提案いたしましたのは、五千万円以下に限りまして社会保険診療医にこの特例を残さしていただきたいということであったわけでございますけれども、その効果は、人員として見ますとこの適用を受ける人員が六割から四割に減少しておりますし、また、この金額の適用を受ける割合は四割から二割に減少いたしますので、かなり大きな実は改正になる。税収にいたしますと、たしか九百億の中で六百億ぐらいのものが増収になると申しますから、かなり大きなこれは改正でございます。したがいまして、今回としては改正をこの程度でさしていただいてはどうであろうか。また、別途に辺地でありますとか僻地でありますとかいう医療についての御議論もございますものですから、そういうことをあわせまして少し先々検討さしていただくということではなかろうか、ただいまとしてはそう考えております。
  223. 宮地正介

    ○宮地委員 企業税制についてのいわゆる貸倒引当金の段階的引き下げの問題とかあるいは賞与引当金の問題など、まだまだ税率の引き下げとそれからいわゆる租税特別措置法によるところの引当金の改廃等、これももっと積極的にスリムな形にして、それで法人の税率をぐっと下げてくる、こういう関係を求める、期待する国民の声も強いわけですが、この企業税制についての、一つは引当金の問題、あるいは受取配当益の不算入割合をいわゆる五〇%まで圧縮する問題など、こうした問題については政府としてはどういう今後の改正を検討しているのか。
  224. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 引当金等につきましては、これはいわば収益と費用とが対応するということから、その費用を期間の間であんばいする、配分をするということでございますから、これ自身が優遇税制だと私どもは考えておりませんけれども、現実にはかなりその引き当て率が、何と申しますか実際よりは高いと申しますか甘いと申しますか、そういうことがございますものですから、少しずつこれを圧縮して、いわばきつくしてまいりましたわけでございます。  ただ、これは企業にとりましてはいっとき大変な増税になるわけでございますから、ある程度スケジュールを持って段階的にやってほしいという企業側のお考えもあります。それもわからぬではございませんが、やはりだんだん実態に即していくように、つまり強化していくと申しますか縮めていくというのが本来の方向ではないかと存じております。  それからもう一つ、後でおっしゃいました受取配当の益金不算入は、これは実際上余り厳しくやりますと会社を一緒にしてしまった方がいいというようなことになってしまうわけでございますから、政府としては八〇%というところでやらしていただいてはどうかというふうに考えておるわけでございます。
  225. 宮地正介

    ○宮地委員 特に、これは主税局長の方でいいと思いますが、政策減税の中で現在、特別障害者控除、これがございますが、これを割り増しをして、寝たきり老人介護控除、この創設を考えていく、そうした一つの時代の流れといいますか要請があるのではないか。  もう一つは、いわゆる学校入学金の重複納付につきまして、ダブったところ等については寄附金控除を検討できないか。非常に最近そうした問題の国民の声も強くなってきております。この点について大蔵省の今後の検討、進め方、考え方等についてお伺いしておきたいと思います。
  226. 水野勝

    ○水野(勝)政府委員 所得税におきますところの福祉関係の配慮措置につきましては、今回も割り増し金額を増額する等の措置を講じておるわけでございますけれども、新たな措置として新しい形態の控除を追加していくということになりますといかがか。さらに、現在既に十数種類の控除があり、金額の段階がございますので、現在の枠組みの中で当面は考えていくのが適当ではないかというふうに考えておるところでございます。  それから第二点目の問題につきましては、現在も寄附金控除の問題は、入学に関する部分はこれは適用しないことといたしておるところでございまして、やはり最終的にどこかの学校に入学することを担保する手段としてそうした措置を講じておられる、そうしたものでございますので、果たして寄附金と言えるかどうかという点もいろいろ議論のあるところではなかろうかと思うわけでございます。現時点といたしましては私どもこの扱いでやむを得ないのではないかということでございまして、むしろ文部行政的にそうしたものをどの程度許容されるのかという方のサイドで御検討をいただく問題かなというふうに考えておるところでございます。
  227. 宮地正介

    ○宮地委員 事務当局としてはそれより踏み込んだ答弁は難しいと思います。  総理、最近寝たきり老人の介護、これは非常に深刻な問題でございますし、高齢化社会の中で非常に寝たきり老人もふえ続けてきておるわけでございます。総理は常々、恵まれない、また低所得者の方々などには福祉の歳出面でいわゆる手当てをしていく、こういうお考えをお持ちのようですが、私は寝たきり老人介護の控除、税制面でできる面はこういう面で、また福祉の面でも手当等で対応できるものであればそうした手当でも、両面からでもこの問題については対応していく、非常に大事な今、時代の要請ではないか。  また先ほどの入学金の重複納付につきましても、非常に大変な大学、高等学校の入学、授業料等の資金づくりに奔走している御父兄が、ダブったりトリプルの場合に、入学金二十万、三十万、これが返ってこない。せめて寄附金控除でもって税で還付できるようなシステムというものは考えてあげるべきではないか。総理の決断を伺いたいと思いますが、今後検討していく用意があるかどうか、お伺いしたいと思います。
  228. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 まず最初の問題は、私が時々口にしております、いわゆる税だけで懸念の解消が行われるではなくして、歳出の問題、その中に例示として在宅福祉というようなことを申し上げておるところでございます。今おっしゃった問題はそのまさに在宅福祉の範疇に入る問題だというふうに思うわけでございます。これが税制上の中へ入っていきますのは、部分的手直しでございましたが、いつでございましたか、とにかく各党議論してこれをやったわけでございますから、その税制上の問題と歳出上の問題でどういうふうな工夫ができるものか、今後やはり検討の課題ではあるという問題意識は私自身持っております。在宅福祉という言葉の中にそんなことを漠然と連想しておることは事実でございます。  それから、二番目のダブルないしトリプルの入学金の問題になりますと、これはかつてやはり本院で教育減税というようなものがいろいろ議論された結果、このたびまた御審議いただく法律案の中でいわゆる特定年齢の、たまたまそれが学校へ行かれる年齢に当たるわけでございますが、割り増し控除という問題である程度中和できたと同じように、これから文部行政の立場からも議論してもらわなければいかぬ問題ではないかな、こういうふうに思っております。
  229. 宮地正介

    ○宮地委員 時間が参りましたので、この程度でおさめたいと思いますが、経済企画庁長官には、今後の経済動向と自然増収の関係でお伺いをしたかったわけでございますが、また後の機会とさせていただきたいと思います。  時間が参りましたので、これで終わります。大変ありがとうございました。
  230. 金丸信

    金丸委員長 これにて宮地正介君の質疑は終了いたしました。  次回は、明七日金曜日正午理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十一分散会