○宮澤国務大臣 ただいま議題となりました
税制改革法案、
所得税法等の一部を改正する
法律案及び
消費税法案、以上三件につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。
初めに、
税制改革法案につきまして御説明申し上げます。
政府は、今次の税制改革の趣旨、基本理念及び方針を明らかにし、かつ、簡潔にその全体像を示すことにより、改革についての国民の理解を深めるとともに、改革が、整合性を持って、包括的かつ一体的に行われることに資するほか、改革が我が国の経済社会に及ぼす影響にかんがみ、国等の配慮すべき事項について定めることとし、本
法律案を提出した次第であります。
以下、その大要を申し上げます。
本
法律案の第一章は今次の税制改革の基本的考え方について定めております。
まず、今次の税制改革の趣旨でありますが、今次の改革は、現行の税制が、著しく変化してきた現在の経済社会との間に不整合を生じている事態に対処して、将来の展望を踏まえつつ、国民の租税に対する不公平感を払拭するとともに、所得、消費、資産等に対する課税を適切に組み合わせることにより均衡がとれた税体系を構築することが、国民生活及び国民経済の安定及び向上を図る上で緊要な課題であることにかんがみ、これに即応した税制を確立するために行うものであります。
次に、今次の税制改革の基本理念でありますが、今次の改革は、租税は国民が社会共通の費用を広く公平に分かち合うためのものであるという基本的認識のもとに、税負担の公平を確保し、税制の経済に対する中立性を保持し、及び税制の簡素化を図ることを基本原則として行うこととしております。
このような趣旨及び基本理念のもと、今次の税制改革は、次のような方針に沿って行うことといたしております。
まず、今次の改革は、所得課税において税負担の公平の確保を図るための措置を講ずるとともに、税体系全体としての税負担の公平に資するため、所得課税を軽減し、消費に広く薄く負担を求め、資産に対する負担を適正化すること等により、国民が公平感を持って納税し得る税体系の構築を目指して行うこととしております。
また、今次の改革は、全体として税負担の軽減を図るとともに、国及び地方公共団体の財政運営に基本的に影響を与えることのないよう配慮して行うこととしております。
なお、今次の税制改革は、我が国の経済社会にさまざまな影響を及ぼすものであることから、本
法律案におきましては、改革に際しての国及び地方公共団体の責務について定めております。すなわち、改革の趣旨及び方針にかんがみ、福祉の充実に配慮しなければならないこと、また、改革に際し行財政改革の一層の推進に努めなければならないこと、さらに、改革の円滑な推進に資するための環境の整備に配慮しなければならないこととしております。
次に、本
法律案の第二章におきましては、既に述べました今次の税制改革の趣旨、基本理念及び方針に従って行う国税及び地方税に関する改革等の全体像を示すこととし、個人所得課税及び法人税並びに相続税の負担の軽減・合理化等、
消費税の創設及び酒税の抜本的見直し等並びに国と地方公共団体との間の財源の配分について、その内容を簡潔に示しております。
また、本
法律案におきましては、消費に広く薄く負担を求めるという
消費税の性格にかんがみ、
消費税の転嫁について特に規定を設け、事業者は、
消費税の円滑かつ適正な転嫁が行われるよう努めるものとし、必要と認めるときは、取引の相手方にその取引に課せられる
消費税の額が明らかとなる措置を講ずるものとするとともに、国は、
消費税の円滑かつ適正な転嫁に寄与するために必要な施策を講ずるよう努めるものとしております。
さらに、本
法律案におきましては、今次の税制改革が、その趣旨、基本理念及び方針から見て、整合性を持って、包括的かつ一体的に行われるものであることにかんがみ、その実施の時期について明らかにしており、その時期は、各税の改革等の内容及び事前手続に要する期間並びに各税の有する性質に応じて、国税に係るものにつきましては昭和六十三年十月一日、昭和六十四年一月一日及び同年四月一日とし、地方税等に係るものにつきましては昭和六十四年四月一日及び昭和六十五年四月一日としております。この場合において、相続税及び贈与税の負担の軽減及び合理化に係る改正については、昭和六十三年一月一日にさかのぼって適用することとしております。
次に、
所得税法等の一部を改正する
法律案につきまして御説明申し上げます。
政府は、今次の税制改革の一環として、所得税法、法人税法、相続税法、酒税法、たばこ
消費税法、石油税法、取引所税法、有価証券取引税法、印紙税法及び租税特別措置法の一部を改正することとし、本
法律案を提出した次第であります。
以下、その大要を申し上げます。
第一に、所得税につきましては、税負担の思い切った軽減・合理化を行うとともに、税負担の公平の確保を図るための措置を講ずることとしております。
まず、所得税の負担の軽減・合理化につきましては、中堅所得者層の負担軽減を主眼として、最低税率を一〇%とし、その適用範囲を大幅に拡大する等税率の累進度を緩和するとともに、税率構造を五段階に簡素化するほか、中低所得者の負担の軽減を図るため基礎的な人的控除の
引き上げ等を行うとともに、福祉政策等の見地から障害者控除等の特別な人的控除の
引き上げ等を行うこととしております。
また、内職所得者について、パート所得者との均衡を考慮した課税上の取り扱いをするため、必要経費の最低保障を認めることとする等所要の改正を行うこととしております。
次に、税負担の公平の確保を図るための措置といたしましては、株式等の譲渡益について、非課税を原則とする現行制度を改め原則課税とし、他の所得と分離して課税する制度を創設するほか、社会保険診療報酬の所得計算の特例の縮減を行うこととしております。
第二に、法人税につきましては、基本税率を四二%から三七・五%に、中小法人の軽減税率を三〇%から二八%にそれぞれ引き下げるほか、配当軽課税率を廃止することとしております。
そのほか、受取配当等の益金不算入制度及び外国税額控除制度の見直しを行うとともに、土地等の取得に係る借入金の利子の損金算入を繰り延べる措置を講ずる等所要の改正を行うこととしております。
第三に、相続税につきましては、遺産に係る基礎控除等を二倍に引き上げるとともに、税率の緩和を行うほか、配偶者の負担軽減措置の拡充等を行う一方、遺産に係る基礎控除等の算定の基礎となる相続人の数に含まれる養子の数を制限する措置を講ずる等所要の改正を行うこととしております。
また、贈与税につきましては、相続税の改正との関連において、税率の緩和等を行うこととしております。
第四に、酒税につきましては、従価税の廃止、清酒及びウイスキー類に係る級別制度の廃止等酒税制度につき簡素合理化を図るとともに、各種酒類の税負担水準を見直し、酒類間の税負担格差を縮小した上、従量税率について
消費税相当分の引き下げを行うこととしております。なお、清酒、しょうちゅう等の中小酒類製造者に対しては一定期間税率を軽減することとする等所要の措置を講ずることとしております。
第五に、その他の間接税等につきましては、次のような改正を行うこととしております。
まず、たばこ
消費税につきましては、課税方式を従量税方式に改め、現行の税負担水準を維持しつつ
消費税との負担の調整を行うこととし、石油税につきましては、課税方式の従量税化を図ることとしております。
次に、取引所税につきましては、商品等の先物取引に係る税率を引き下げることとし、有価証券取引税につきましては、株式等に係る税率を引き下げることとしております。
このほか、印紙税につきましては、物品切手等五文書を課税対象から除外することとしております。
以上の改正につきましては、原則として昭和六十四年一月一日以後または同年四月一日以後実施することとしております。なお、相続税及び贈与税の負担の軽減及び合理化に係る改正については、昭和六十三年一月一日にさかのぼって適用することとしております。
次に、
消費税法案につきまして御説明申し上げます。
政府は、今次の税制改革の一環として、物品税等の現行個別間接税制度が直面している諸問題を根本的に解決し、税体系全体を通ずる税負担の公平を図るとともに、国民福祉の充実等に必要な歳入構造の安定化に資するため、消費に広く薄く負担を求める
消費税を創設することとし、本
法律案を提出した次第であります。
以下、その大要を申し上げます。
まず、
消費税の課税の対象は、国内において事業者が行った資産の譲渡等及び保税地域から引き取られる外国貨物としております。
第二に、納税義務者は、国内において行った課税資産の譲渡等については当該譲渡等を行った事業者、課税貨物については外国貨物を保税地域から引き取る者としております。なお、事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が三千万円以下の者については、その課税期間中に行った課税資産の譲渡等につき納税義務を免除することとしております。
第三に、非課税取引等につきましては、土地の譲渡、資金の貸し付け等のほか、一定の医療、社会福祉事業及び学校教育を非課税とし、輸出取引及び輸出類似取引を免税としております。
第四に、課税標準は、課税資産の譲渡等についてはその対価の額、課税貨物についてはその引き取り価額としております。
第五に、税率は、百分の三としております。
第六に、課税の累積を排除するための仕入れ税額控除の概要について申し上げます。
事業者が国内において課税仕入れを行った場合または課税貨物を引き取った場合には、帳簿または請求書等に基づき計算した課税仕入れ等の支払い対価の額に百三分の三を乗じた金額を仕入れに係る
消費税額として、課税資産の譲渡等に係る
消費税額から控除することとしております。
なお、この仕入れに係る
消費税額の控除に関し、基準期間における課税売上高が五億円以下の事業者については、その選択により、課税資産の譲渡等に係る
消費税側の一定割合を仕入れに係る
消費税額とすることにより簡易に納付税額を計算する方法も認めることとしております。
また、その課税期間における課税売上高が六千万円未満の事業者について、納付すべき税額の一部または全部を課税売上高に応じ軽減する限界控除制度を設けるほか、売り上げに係る対価の返還等をした場合等にも、税額控除を認めることとしております。
第七に、
消費税の申告、納付等については、原則として、個人事業者にあっては一月から十二月までの期間、法人にあっては事業年度を課税期間とし、課税期間終了後二カ月以内に申告し、納付することとしております。また、中間申告及び納付の制度を設けております。
さらに、仕入れに係る費税額等を控除した結果、控除不足額があるときは、その不足額に相当する
消費税額を還付することとしております。
また、保税地域から外国貨物を引き取る者については、原則として引き取りの際、申告及び納付をすることとしております。
なお、この法律は昭和六十四年四月一日以降の資産の譲渡等及び外国貨物の引き取りについて適用することとし、施行に当たり所要の経過措置を設けております。
以上が、
税制改革法案、
所得税法等の一部を改正する
法律案及び
消費税法案の提案理由及びその内容であります。
何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。