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1988-10-27 第113回国会 衆議院 社会労働委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十月二十七日(木曜日)     午前十時六分開議  出席委員    委員長 稲垣 実男君    理事 高橋 辰夫君 理事 戸井田三郎君    理事 丹羽 雄哉君 理事 野呂 昭彦君    理事 畑 英次郎君 理事 池端 清一君    理事 沼川 洋一君       相沢 英之君    粟屋 敏信君       伊吹 文明君    今井  勇君       小沢 辰男君    大野  明君       片岡 武司君    近藤 鉄雄君       佐藤 静雄君    笹川  堯君       自見庄三郎君    鈴木 恒夫君       高橋 一郎君    竹内 黎一君       谷垣 禎一君    虎島 和夫君       中山 成彬君    堀内 光雄君       三原 朝彦君    宮里 松正君       持永 和見君    伊藤 忠治君       大原  亨君    金子 みつ君       川俣健二郎君    永井 孝信君       早川  勝君    村山 富市君       新井 彬之君    鍛冶  清君       吉井 光照君    木下敬之助君       塚田 延充君    児玉 健次君       田中美智子君    大橋 敏雄君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 藤本 孝雄君  出席政府委員         厚生政務次官  長野 祐也君         厚生大臣官房長 黒木 武弘君         厚生大臣官房審         議官      伊藤 卓雄君         厚生省保健医療         局長      北川 定謙君         厚生省生活衛生         局長      古川 武温君         厚生省薬務局長 北郷 勲夫君         厚生省保険局長 坂本 龍彦君  委員外出席者         総務庁行政監察         局監察官    菊池 光興君         法務省入国管理         局参事官    山崎 哲夫君         文部省体育局学         校健康教育課長 石川  晋君         自治省行政局公         務員部公務員第         一課長     石川 嘉延君         社会労働委員会         調査室長    滝口  敦君     ───────────── 委員の異動 十月二十七日  辞任         補欠選任   石破  茂君     笹川  堯君   大野  明君     宮里 松正君   木村 義雄君     虎島 和夫君   堀内 光雄君     鈴木 恒夫君   持永 和見君     谷垣 禎一君   河野  正君     村山 富市君   田邊  誠君     金子 みつ君  平石磨作太郎君     鍛冶  清君   塚田 延充君     木下敬之助君 同日  辞任         補欠選任   笹川  堯君     石破  茂君   鈴木 恒夫君     堀内 光雄君   谷垣 禎一君     持永 和見君   虎島 和夫君     木村 義雄君   宮里 松正君     大野  明君   金子 みつ君     早川  勝君   村山 富市君     河野  正君  鍛冶  清君     平石磨作太郎君   木下敬之助君     塚田 延充君 同日  辞任         補欠選任   早川  勝君     田邊  誠君     ───────────── 十月二十六日  臓器移植の促進に関する請願石橋一弥紹介)(第一八九六号)  同(上草義輝紹介)(第一八九七号)  同(大塚雄司紹介)(第一八九八号)  同(自見庄三郎紹介)(第一八九九号)  同(杉浦正健紹介)(第一九〇〇号)  同(園田博之紹介)(第一九〇一号)  同(竹内黎一君紹介)(第一九〇二号)  同(中山太郎紹介)(第一九〇三号)  同(野中広務紹介)(第一九〇四号)  同(原田昇左右紹介)(第一九〇五号)  同(平沼赳夫紹介)(第一九〇六号)  同(森喜朗紹介)(第一九〇七号)  同(森下元晴君紹介)(第一九〇八号)  同(山崎平八郎紹介)(第一九〇九号)  同(斉藤斗志二君紹介)(第一九四六号)  同(自見庄三郎紹介)(第一九四七号)  同(月原茂皓紹介)(第一九四八号)  同(丹羽雄哉紹介)(第一九四九号)  同(野中広務紹介)(第一九五〇号)  同(原田憲紹介)(第一九五一号)  同(船田元紹介)(第一九五二号)  同(増岡博之紹介)(第一九五三号)  同(持永和見紹介)(第一九五四号)  同(林義郎紹介)(第二〇四八号)  年金受給者等に対する福祉灯油支給制度化に関する請願池端清一紹介)(第一九四五号)  保育制度の維持、拡充に関する請願渡部一郎紹介)(第一九九〇号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  後天性免疫不全症候群予防に関する法律案内閣提出、第百八回国会閣法第九〇号)      ────◇─────
  2. 稲垣実男

    稲垣委員長 これより会議を開きます。  第百八回国会内閣提出後天性免疫不全症候群予防に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤忠治君。
  3. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 私は、時間の関係がございまして、ポイントを絞って質問をさせていただきたいと思います。  まず初めに、法案の第七条第一項にございます医師通報の問題についてであります。このようになっているわけです。「その診断に係る感染者が第五条の規定による指示に従わず、かつ、多数の者にエイズ病原体感染させるおそれがあると認めるときは、その旨並びに当該感染者の氏名及び居住地その他厚生省令で定める事項を」「都道府県知事通報するものとする。」こうなっているわけであります。そこで、指示に従わない場合とはどういうケースを指すのか。つまり、指示に従わないと判断をするのは医師独自判断によるものなのか、その判断医師がされる場合、判断基準行政当局医師に事前に示されているのかどうか、この点についてまずお伺いをいたします。
  4. 北川定謙

    北川政府委員 エイズに限りませず、いろいろな感染者医療を行うに当たりまして、医師はその患者やあるいは感染をした人に対して一体その人自身がどこで感染をしたかということをまず聞く、そういうことで感染源を確認しながらその病気の内容診断していくという過程があるわけであります。そういう中でこの七条第一項において「指示に従わず、かつ、多数の者にエイズ病源体感染させるおそれがある」かどうかを医師判断するに当たりましては、患者とはいろいろな問診を繰り返しながら、患者の持っている情報あるいは患者気持ち、そういうものと密接にかかわりながら診断行為を進めていくわけでございまして、そういう中から感染をした患者が「多数の者にエイズ病源体感染させるおそれがある」というのは、例えば売春常習者売春行為を繰り返しているというようなことがわかってきた場合、あるいは薬物乱用者が多数の者を相手にして共通した針で注射回し打ちを繰り返しておるとか、そういう情報がだんだんと医師の方にわかってくるわけでございまして、そういう場合に多数の者に感染をさせるおそれがあるという考え方医師が持つようになるわけでございます。
  5. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 私が聞いておるのは、今説明のあったようなさまざまな判断というのは、検査なり問診過程医師が当然判断をされることはよくわかるのですが、この「指示に従わず」という一つ判断を下すのは医師自主的判断独自判断でやられるのか、それとも行政当局判断基準医師一定程度示されるのかどうか、そこを聞いておるわけです。そこをはっきりしてください。
  6. 北川定謙

    北川政府委員 これは、医師が自主的に判断をすることになると思います。といいますのは、やはり多数の者に感染をさせないようにという指導をして、その指導がうまくいったかどうかというのは患者対応を見れば医師判断できる、こういうふうに思っておるわけであります。
  7. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 結局、医師判断と理解していいわけですね。  では、次に移ります。例えばこういうケースについてはどうお考えですか。医師患者というのは、患者がお医者さんを信頼しなくなったらその医師にはかかりませんから、これはもう信頼関係によって成り立っているわけですね。強制的に連れてくるというようなこと以外は自主的に患者は行きませんから、そういう関係だと思うのです。実態というのはさまざまでございまして、例えばある患者さんがあるお医者さんにかかっている、診てもらっている、どうも好きになれない、お医者さんとの信頼関係が薄れていく、そういうふうな状態になりますと、患者が他の医者に移るという場合が考えられると思うのです。そうしますと、そういう格好で診ておられた初めのお医者さんは患者さんがもう来てくれなくなって、そこで医師患者一定指示をした、ところがその患者はもうあのお医者さんは信頼ができないというか、信頼関係がなくなったものですから、他の医師に移ってしまった、そうしたら当初診られた医師にすれば、指示をしたのですが指定した受診日になってもその患者はあらわれない、催促をしても返答もしないというようなことが起こり得ると思うのです。こういう場合は、指示に従わないということになるのかどうか、その点どうでしょう。
  8. 北川定謙

    北川政府委員 そこのところは患者さんのいろいろな動向、その他来なくなる前に医師患者の間に保たれておった人間関係をベースにしながら判断するわけでございますけれども、そういう非常に感染の危険があるということを医師が考え、しかもその患者の行方がわからなくなってしまった、そういう場合には当然このケースに当てはまってくるというふうに考えます。
  9. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 そういうケースというのは起こり得ますし、来てくれないわけですからどうしようもないと思うのですね。しかし、それは自分指示をしているのに従わなかったということですから、ほうっておけば、医師立場からすれば、感染者であるわけですから、当然二次感染のおそれがあると判断をされると思うのですね。首に縄をつけて引っ張ってくることは不可能であるかもわかりませんから、そこまで行動はとらないにしても二次感染のおそれがそこで出てくる。ということになれば、法案で言います八条に規定をされておりますが、つまり、勧告だとかあるいは二項に明記されております命令などでそういう場合に対応されるのかどうか、この点についてお伺いいたします。
  10. 北川定謙

    北川政府委員 先ほども申し上げましたように、その場合にその患者さんが常習的に売春行為を行っておった、あるいは注射等回し打ちをやるグループに入っておったというような前提があって、さらにそういう行為が続けられておるということが相当程度心配をされれば、通報の対象になると考えております。
  11. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 これは後でまた議論になると思うのですけれども、そこのところに局長、非常に隘路があるのじゃないですか。実際にそういうことは、本人は指示する段階までは患者さんは来てくれていたけれども、それ以降は他の医者にかかって、自分の言うならば管轄範囲というのですか、知り得ないところに行っているわけですからどうしようもないにもかかわらず、その患者感染者であるとすれば二次感染のおそれがある、何とかしなければいけないと思うのですが、どうしようもない、どうにも具体的な対策の打ちようがないケースというのは出るのですよね。ですから、今の局長答弁だけでは問題の解決にならぬ。  そうなりますと、医師の手を離れまして、それは行政当局がやってくれということで八条の勧告なり命令の発動ということになりますと、これは大変だと思うのですね。そうなりますと、行政当局、これは知事ということになりますが、ローカルでいえば県当局なのでしょうか、そこのところがどのような手続で実態把握、それから二次感染が起こらないように対処するかということになりますと、この法律では全然わからぬわけでしょう。どういう行動行政当局がとられるのか、そういうことが全然わからない、何も書いていない、ここのところに大変大きな問題が存在している。患者にしてみれば公権力で追い回されるかわからぬ、どこかに拉致されるかわからぬ、無理やりある特定の医者に連れていかれて、あなた受診をしなさいというふうに勧告を受ける、命令を受ける。その措置に従わなかったら、これは罰則規定はございませんけれども、一体どうなるのか、人権はどうなるのか、プライバシーはどうなるのかという問題が出てくるのですが、その辺はどうでしょう。
  12. 北川定謙

    北川政府委員 先生指摘のように、実際の現場ではいろいろとニュアンスが出てまいると思うわけでございますが、この知事受診勧告あるいは命令ということも、実際には非常に公権力を伴ったような形で行われるのではなくて、これは保健相談というような形で行われるわけでございますので、あくまでも患者がそれを拒むというようなことが起これば、そこのところまでこの法律は追跡をすることはできないというふうに考えております。
  13. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 次にお伺いをいたします。  多数の者に感染させるおそれがあると認める、こういうケースというのは今局長がおっしゃいましたようなケース、このように考えてよろしゅうございますか。それとも医師の自主的な判断にそれは任せる、ほかにもケースがあるから、なかなか第三者というのですか医師以外の人間が特定できないということなのか。それともこういうケースというのは、多数の者に感染させるおそれがあるのだというケースをずっと列挙して、一定基準厚生省が示されるのか、どちらですか。
  14. 北川定謙

    北川政府委員 ただいまの先生の御質問は、第七条の二項のさらに多数の者に感染をさせるおそれがあるということを御指摘になっておられると思いますが、その基準というのは、ただいま申し上げたようなことが同じように一つ基準として示されるというふうに考えております。
  15. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 基準を示すということですか、医師判断にすべてゆだねるということですか、どちらですかと聞いているのです。
  16. 北川定謙

    北川政府委員 先ほど具体的な例を申し上げましたけれども、売春常習者感染を起こすような状況売春行為を繰り返すとか、あるいは薬物乱用者が相互に注射回し打ちをするとか、こういう例示は示すことになると思いますが、それを一つの物差しとして具体的に判断をするのは医師ということになると思います。
  17. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 例示厚生省が示されるという答弁でございましたが、それはこの法案審議密接不可分関係にありまして、具体的な中身がわからないとこの法案の抽象的な文言なり想定問答ではどうにもしようがないケースが出てきますが、これをひとつ示していただけないでしょうか。
  18. 北川定謙

    北川政府委員 これは厚生省令で具体的にお示しをすることになるわけでございますが、ただいま申し上げましたような指導基準を定めることになります。
  19. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 厚生省令でそういう医師診断にかかわる……(発言する者あり)
  20. 北川定謙

    北川政府委員 ただいま申し上げた事項につきましては、今後の法の運用に当たっての指導通知で示すことにしております。
  21. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 ここが一番重要な問題なのですね。ですから一番大事なのは、私が何度も聞いていますように、医師が自主的に判断する、すべてその裁量に任せるということでいくのか、それともガイドライン厚生省が示すという方法に立たれるのかということを聞いてきまして、後者をとられているわけですね。やはり一定判断基準を示されるわけですね。ですから、その判断基準中身というのはどういうものなのかということをセットにして明らかにしてもらわなければ、抽象的な議論をやったってこれは議論としては全然深まりませんし、なかなか前へ向いて進まない、こう思っておりますので、それは今直ちにとは言いませんが、委員長にお願いをしたいのですが、ひとつその点については考え方をより具体的にこの審議過程提起をいただきたい、このことをお約束いただきたいと思うのですが、どうですか。
  22. 稲垣実男

    稲垣委員長 今伊藤君から提示のありました件につきましては、よく厚生省で検討して、この時間内にお答えできるようにいたさせます。  そういう意味を含めて、北川保健医療局長
  23. 北川定謙

    北川政府委員 先ほど来申し上げておりますように、この法律が今想定しておるエイズ感染の源となる環境というのは、いわゆる売春行為あるいは注射等回し打ち、こういう社会現象が非常に危険な場になるというふうに想定をしておりますので、そういうところに具体的には絞られるというふうに考えております。
  24. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 では、次を聞きます。  七条の二項ですか、「感染させたと認められる者が更に多数の者に」「感染させるおそれがあることを知り得たとき」というのがあるのです。目前の感染者から医師が話を聞くだけで一定判断をされて役所通報することになると思うのです。それ以上事実を究明するという気持ちはあっても、実際その医師はそういう行動をとることは不可能であろうと私は判断をするのですね。こういう場合は、話を聞いただけで役所通報する。問題なのは、それは医師個人判断で、第三者客観性がないわけです。第三者は確認できないわけですからね。判断をされて、そしてそのおそれがある、それを通報される。された事実はひとり歩きしまして、報告を受けられました行政の側としては、それがあたかも真実だ、真実無比なのだということで行政対応が始まるというところが大変問題だと思うのですね。これは全く実行上も難しいと私は判断するのですが、どうでしょう。
  25. 北川定謙

    北川政府委員 確かに医師が対面をしておる患者さんから間接的に聞く情報でございますから、その情報だけをもって直ちに通報するということにはならないと思いますが、これはあくまでも社会に非常に大きな影響を及ぼす感染源でございますので、医師はその患者との間で慎重に粘り強く対話を重ねていきながら、その事実関係を確認をしていくという行為が当然入ってくると思います。  それから、ある段階でこれはやはり行政通報して行政と共同で感染拡大防止を図る必要があると医師判断した場合に通報することになるわけでございますが、これはまたさらにその先のことになるわけでございますけれども、受けた行政は、行政の自主的な判断でそういう情報を分析をする行為が起こると思います。そういうことで、個人プライバシーにも非常にかかわることでございますので、慎重な対応を進めながら感染防止という効果を上げていくという過程が起こってくると考えております。
  26. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 残念ながら答えになってないと思うのですね。私が聞いておりますのは、だれかによって感染をされた方がお医者さんと対面するわけですよ。そして、その対面している患者さんにうつした方がさらにだれかにうつすかわからぬということを書いてあるのです。そういうケース想定して法文は明記されているわけですよ。そのおそれをお医者さんに判断させるわけでしょう。できるわけないでしょう、その前にその患者はいないんだから。その患者がどこに行っているのか、だれなのかということは、対面している患者さんから聞き出す、患者さんが言わなければわからないわけですよ。言うか言わないかは患者さんの自由なんですよ。それを権力でもって言わせるなんということにはならぬわけでしょう。そんなような関係になったら医師患者信頼関係はもう根底から崩れるわけですよ。そんなことは思っておったってできないのですよ。そこまでお医者さんは権限を与えられてないのです。この法案は与えるというのですか。そこまでは考えてないのでしょう。そうしたら、結局想定している目的は実際の話が不可能でしょう。それを可能にしようと思ったら、その患者さんを問い詰めに問い詰めて、警察が被疑者を扱うような格好で問い詰めまして、ずっと経路をたどっていってその人をひっ捕まえて、その人から聞かない限りはこの目的は果たせない、おそれがあるとは判断ができない、こういうことなんですから、一般的な答弁じゃだめなんですよ。それは答弁になってないのですよ。
  27. 北川定謙

    北川政府委員 今先生の御指摘なされたように、実際にこの感染症の問題は、簡単に情報が得られるとかそういうことではないと思いますが、現段階においてエイズはまだ治療方法が実際にない、それから感染をすれば発病の率が非常に高く、発病すれば死亡の可能性が高いというような、我が国ではまだまだ感染の広がりは少ないのですけれども、諸外国の状況を見ると非常に心配状況が広がっておる。そういう状況の中で、医師患者に対してそういう状況を話しながら、患者自身治療とか患者自身が他に感染をさせないように、あるいはさらに患者感染をさせた感染源があるわけでございますので、その感染源は一体どういう状況になっているかということは、患者との信頼関係が成り立てば当然つかめる情報であるというふうに思います。これはあくまでもその情報をつかむ端緒、こういうことになろうかと思います。
  28. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 今の答弁を聞いていましたら、現在でもやっておるのですよ。何もこんな法律をつくらなくたって、その程度のことだったら、医師患者関係では当然医師の義務としてやらなければいかぬわけですよ。特別のことではないのです。それ以上のことを求めておるのでしょう、この法案では。違うのですか。でなければ、通報はできないし、勧告はできないし、命令はできないわけですよ。罰則規定が出てくるといっても、そういうことなんでしょう。つまり、行政権力が言うならば実態把握に本格的に乗り出す。そのためにこれは、医師がもっとしっかりしてくれ、実態調査をして、どのように現状はなっておるのかという状態を把握したいということがねらいなんですよ。今局長がおっしゃる程度だったら、現にやられているわけですよ。ですから、こういう水かけ問答というのですか、局長のペースの答弁では、私に対する具体的な答えになっていないのです。そういう場合どうするのですかということに対する答弁になっていないわけですよ。それでもお医者さんが判断ができない場合にはそのガイドラインをまた示すのですかということを僕は次に聞きたいのですけれども、そこまでいかない。あなたの答弁というのは非常に抽象的だから。時間の関係がありますから、この問題だけを私一人がやっているわけにいきませんので同僚議員が後に続いてやりますが、私が今提起をさせていただいたこの具体的なケースをとらえて質問をしましても、なかなかお答えいただけない。抽象的な答弁では議論は深まらぬわけです。全然かみ合っていないのですからね。  そこで、私申し上げますけれども、そういう問題がある。この法案というのは非常にあいまいな内容で、具体的な中身というのが明らかにされないで法案審議をやるといったって、これはとても不可能、このように私は考えているわけです。それで、聞くところによりますと、修正案というのも出ていますね。用意されていると聞いているわけですが、この中では、つまり原案はそうなってなかった医師通報に限るわけですよね。こうなりますと、私が問題にしていますお医者さんの責任というのはもっと重くなるわけです。そういうことが実際行政の要請を受けた格好で、口は悪いかもわかりませんが、お医者さんが行政の取り締まりの先兵の役割を果たすなんというような、そんな格好にだってなりかねませんよ。実態を何としてもつかみたいなんてことになったら、患者立場はどこかへ吹っ飛んで、何としても自分がやってしまうということに、どうしても事態というのはそちらに向いて流れていかざるを得ない、こう思うわけであります。しかも、そういうことから当然医師患者信頼関係というのは破壊されていかざるを得ない。そうすると、そんなこわいお医者さんには、かからなければかかりたくないという患者気持ちが広がっていきます。どうしても本当に把握しなければいけない感染者を潜伏させる結果になっていくのじゃなかろうか。  さらに、盲点をもう一点申し上げます。しかも問題なのは、検査は受けてないし、症状も自覚するところまではいかないというケースがあるのですね。こういうケースはこの法案のらち外に置かれているわけです。どうしようもない。この法案の網にかかってこない。そうすると、そういう非常に不十分な法案なものですから、予防法案の趣旨に結局沿ったものになってない、こういうふうに断ぜざるを得ない、私はこう思っているわけです。  そういう意味からしましても、今申し上げましたように、この法案については慎重に審議をして、そして実を上げるというような結論が出るならともかく、時間が来たから強行採決なんということになったらとんでもないことだ、私はこのように強調したいわけでございます。いずれにしましても、この法案を貫いております考え方というのですか、それは私が読ませていただいた当初から思っておるのですが、行政指導統制、管理する、こういうものを柱に据えた法の内容になっている。患者実態を把握して根絶を図っていくと目的に書いてあるのですが、上下の関係で律しようとしている、ここにこの法案の根本的な問題がある、私はこう思うわけです。そうではなくて、実際医師患者と市民の皆さんが一体になって根絶のためにどのように協力をしていこうかということになるのだったら、第三者機関のサーベイランスをつくって、そこで行政もサーベイランスを頂点にしまして協力体制をどうしくか、こういう考え方法案というのは考えられたっていいのじゃないか、仕組みをそういうふうに変えたっていいのじゃないかと私は思うわけですが、こういう問題点についてひとつ大臣の見解をお伺いしたいと思うわけでございます。
  29. 北川定謙

    北川政府委員 大臣の御答弁をいただく前に一言申し上げさせていただくわけでございますが、確かに先生の御指摘のような御心配がないとは言えませんけれども、戦後の公衆衛生の行政というのは、そういう非常に警察権力的な、取り締まり的な構想でいくのではなくて、むしろ指導的、相談的な体制の上に立って健康を守っていく、そういう基本的な思想の上に立ってこの法律は成り立っておると私どもは考えておるわけでございます。そういう意味で、決して強制的、権力的ではないと考えておりますので、よろしくお願いを申し上げます。
  30. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 この法案のねらいは、まさに現在治療方法の確立してない、しかも感染すればその大部分が患者として発病し、しかも死亡率が高い、こういう病気の蔓延を防ぐというところにあるわけでございまして、その蔓延を防ぐというその考え方の中には幾つかの対策、柱がございますが、だんだん御意見ございましたように、プライバシーを守るということも極めて重大な問題でございます。患者プライバシーというものが守れなければ、御心配にございますように患者が地下に潜るというようなことも起こるかもわかりませんし、この蔓延を防止するために適切な処置をとるための阻害要因にそれがなるわけでございますので、その点については十分の上に十分に配慮をしていかなければならない大きな問題だと思っておるわけでございます。この法案の中で、国並びに地方公共団体につきまして守秘義務の強化を十分に貫くように配慮をしておるわけでございますので、その点が十分に守られていく段階で、プライバシーの保護という問題につきましては遺漏がないようになるというふうに考えております。
  31. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 いずれにしましても、私が提起をしました問題に対する答弁の中では、医師判断の問題、プライバシーの問題、信頼関係の問題、法が目的とするところの所期の目的をこの仕組みで果たしていけるのかどうかという点については、甚だ答弁としては不十分でございますし、多くの疑問を残しているわけですから、時間をかけてひとつ慎重な審議をいただきたい。でないと、この法案については私たちとしては到底納得することはできませんし、反対の態度で臨まざるを得ない、このように考えております。  あと時間がございませんので、残ります時間を献血の推進体制について質問をいたします。  二十日の日に全会一致で議決をされました血液製剤の自給促進、それの凝固因子製剤を献血血液によって完全に供給できる体制というものをつくっていくという、早期救済策の中の第五項として議決をいただいておりますが、これは非常に立派なんですね。私もこれを読ませていただきまして、基本的な考え方についても非常に積極的でございますから、そういう意味では高く評価をしているのですが、問題なのは、六十五年度までに因子製剤自給率一〇〇%に何としても持っていかないといけないわけですね。これは至上命題になっているわけです。ところが現状はどうかといいますと、ローカル血液センターの実情を見ましても、大変不十分な点が多過ぎる、こういうことを指摘せざるを得ません。六十三年度の実績から見ましても、六十三年度の目標が果たせるかなという判断にしましても、これはもう難しいと言われているわけです。  どういう点が一番献血してくれる人が多く来ないかということなんですが、私もこの問題では過去においてかなりやってきた経験もございまして、表彰を何度かもらっているわけですが、そこでいつも問題になりますのは、時間がございませんので三つだけに絞りますけれども、献血車、移動車が行きますね。繁華街を頼りにしないとローカルセンターなんか血が集まってこないのです。ところが、大型車をとめたら交通妨害になるというか、交通警官にどけどけと言われて駐車がなかなかできない。警察庁に対して厚生省としては過去再三にわたって要請をされまして、当初は警察庁もなかなか協力的だったのですが、最近お巡りさんもあっちを向き出しまして、どうも献血車そのものが、移動車もとまれない、苦労しているというのがまず一つございます。ですから、非常に具体的過ぎるのですけれども、これらについても厚生省の方できちっと、警察庁の方にそういうことにならぬようにひとつまたアクションを起こしていただきたい。  二つ目。帰するところ、この大口ユーザーというのは、表現がちょっと問題ありますが、結局公務員なんですね。それから、やはり企業、職場の皆さん、こういうところを頼りにして献血体制というのは拡充しない限り無理でございます。ところが、昼の間にとにかく献血をするといいましても、二百ccや四百ccだったら時間がかかりませんが、成分採血だと一人四十分以上かかりますよ、今のところは。とてもじゃないけれども二十人もそこらもとれっこないのです。しかもこれは来てもらわなければいかぬのです。ローカルセンターの場合には、車でやれませんからセンターまでわざわざ来てもらわなければいかぬ。で、看護婦さんがいろいろやるということになるわけで、そうなりますと仕事に影響が出るからそんなに協力ができない、職務専念義務であります。先進的な山口県では、職務専念義務免除ということをしまして、相当成果が上がっているという先例を私たちも聞いているわけです。したがって、自治省にお伺いしたいのですけれども、これは管轄されているわけですから、自治省としては、百万リッターを六十五年に確保できなければ、一方でどんないいことを言ったって血友病患者の皆さん方に因子製剤が供給できないわけです。そうすると、また輸入に頼らなければいかぬわけですから、待ったなしでございます。そういうがけっ縁に立っておるという認識をしっかりしていただいて、自治省は都道府県、市町村に対して、、職員の皆さんにこれは仕事がちょっとくらい支障が生じても協力するようにというふうな指導をしていただきたいと思うのですが、どうでございましょう。
  32. 石川晋

    石川説明員 お答えいたします。  職員は、地方公務員法の規定によりまして全力を挙げて職務に専念しなければいけないということになっておりますが、法律または条例に特別の定めがある場合に限って職務専念義務を免除することができるというふうになっております。条例による職務専念義務の免除は、合理的な理由がある場合に限定的に行うことができるというふうにされております。  既に、御指摘の事例のような場合に数県で職務専念義務の免除を行っているという事実は承知しております。しかし、地方公務員の勤務条件につきましては国家公務員との均衡を図るという原則も一方にございますし、公務と職務専念義務免除とのバランスという問題もございまして、地方公共団体に対しまして御指摘のような事例について職務専念義務を免除するようにという指導をこの際積極的に行うかどうかということにつきましては、国家公務員に関する国の取り扱いがどうなるかなど、この問題に対する国の動向を見ながら検討してまいりたいというふうに考えております。
  33. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 こんな状態ですものね。事態がこんなに急迫しておるのに答弁はああいう答弁しか出ないのですよ。  結局、ローカルセンターはあんたのところの市役所で何人協力してくれないかというふうに折衝に行きますね。ところが、やはり仕事で人は厳しい状態ですから、私はそこの課で何人も人を出すことはできません。断るときに管理者の皆さんが言われるのは、職務専念義務がございますと言われたら終わりですよ。ローカルセンターがそれ以上突っ込むことはできない。血液は集まってこない。結局そうなんです。それでああいう答弁です。問題の解決にならぬでしょう。そうしたら、公務員がそんな態度なのにそろばん片手にやっておる商売の民間が何で協力をしなければいかぬのやということになっていく。そういうことなんです。  結局繁華街に出ていって、ローカルではなかなか人の集まるところが少ないのです。そこへ行って、移動車でもって汗をかいてやっておるのです。日曜日がほとんど書き入れどきなんです。看護婦さんもそこへ行ってやる。職員の数も少ない。ところが代替休暇が与えられないのですよ、ローカルセンターでは人が少ないものですから。看護婦さんはふらふらになっていますわ。そうすると、ウイークデーはどこで血をもらうかとなる。市町村の役場の入口へ行くのです。ところが、おいでになるのは高齢者の皆さんばかりです、役場へ行っても。そういう人たちの血は残念ながらなかなか思うように活用できないわけでしょう。というところに絞られていくのです。学校へ行くと、校長先生は協議会で胸を張るのです、私どもの生徒にも教育しますと言って。それで移動車が行くのです。校内へ入ってくれるな、校内へ入ったら生徒とのトラブルが起こって、もし事故でも起こったら私の責任になるというようなケースで、なかなか校庭には入れないのです。そういう厳しい条件の中でローカルセンターは汗をかいて、少ない人間でやっている。  国全体が、少なくとも公務員なり地方公務員が率先をして、献血体制をつくるために積極的にやっていこうじゃないかという姿勢がなかったら、六十五年に百万リッターですか、これを確保しなければ因子製剤は血友病患者に供給できないじゃないですか。あなたら、こちらで言っていることと違うじゃないですか。そんな状態でどうしてできるのですか。だから私がお願いをしておるのは、そんな理屈じゃなくて、ローカルセンターがお願いに行ったときに、年間の計画が立ちますから、そのときにある役場で一日に二十人ぐらいは行かなければいかぬ、勤務時間に一時間半ぐらいは食い込むかもわからぬ、そのときには市長さんなり町長さんが君ら積極的に協力をしてやってくれとハッパをかけるのが当然じゃないですか。あなたの答弁だったら、公務員まずやれ、それからおれのところを考えるという言い方じゃないですか。そんなばかなことでこれはできないと思う。委員長、どうですか。しっかりした答弁をください。
  34. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 献血の問題は、厚生省が音頭を、責任のある問題でございますので、私も前から、今先生の御指摘になりました献血車が繁華街に入ることが、場所によるのでございますが、入れないようなケースがあるというようなことも聞いておりますので、ただいま日本赤十字社ともいろいろ御相談もいたしておるのでございますが、関係の省庁とよく相談をいたしまして、献血の体制あるいは献血がやりやすい環境を各省こぞって協力していただいて、献血の確保をするというようなことで関係の省庁と連絡のための会合をできるだけ早く持ちたいと考えておるところでございます。ただいまの自治省との御相談もぜひいたしたいと考えております。  それから、百万リッター、血液凝固因子製剤の国内血という問題につきましては、御決議もいただいておりますし、これはぜひ私の方はやるという覚悟で、決心で今計画を進めております。これはおっしゃるとおりいろいろ難しい問題があるわけでございます。材料の確保あるいは製造を日赤でやるかあるいは民間の企業でやるか、いろいろあるわけでございますが、あらゆる手段を尽くしましてあの決議の線に沿ったことをやるという決心でおりますので、御安心なさいというわけにはまいりませんけれども、できるだけのことを私どもはやるということを御理解いただきたいと存じます。
  35. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 今の答弁を聞きまして、ぜひこれは完全にやっていただかないと大変なことになりますので、お願いを申し上げます。  最後に一言だけ。これは厚生省にお願いがございますが、ローカルセンターの皆さんの現状を見ておりますと、これから仕事量がふえますから、仕事量に見合った適正な要員配置ができるように、日赤の方に対して問題解決のために積極的に指導していただきたいということを最後にお願いを申し上げます。それの答弁をいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  36. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 日本赤十字社のセンターには大変御努力をいただいております。大体順調にいっていると思っておるのでございますが、なおよく今後の課題もいろいろございますので、御相談して円滑にいくように進めたいと考えます。
  37. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 ありがとうございました。
  38. 稲垣実男

    稲垣委員長 永井孝信君。
  39. 永井孝信

    ○永井委員 ただいま同僚の伊藤委員から的確な質問がなされましたけれども、答弁の方が的確でありませんので、これから短い時間で私は質問するわけでありますから、端的にポイントをついて御答弁をいただくことをまず冒頭にお願いをしておきたいと思うわけであります。  十月二十四日、そしてきょう、それぞれ全国紙がミドリ十字の未承認検査薬の購入問題について報道いたしました。この問題についてまず初めにお伺いしておきたいと思うのでありますが、新聞に報道されている七百六病院、この病院が厚生省調査によって全容が明らかになった、このように報道されておりますが、この厚生省調査の全容ということについて、新聞報道されていることについて、その事実をお認めになりますか。
  40. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 私どもは、現在この事件につきましてまだ調査中でございます。この調査は十一月末までに完了させたいということで、全国の都道府県に指示をいたしまして現在調査中でございますから、全容についての把握というのはまだ行われておらないわけでございます。事実として私どもが把握しておりますのは、未承認の医薬品を購入した医療機関が全国で七百六あったということ、そしてその医療機関のそれぞれについての全容はまだ把握しておりませんけれども、一部において不正の請求があったということまでは把握をいたしておるという状況でございます。
  41. 永井孝信

    ○永井委員 この七百六病院の内容なんですが、国立病院あるいは公的病院が数多く入っているわけですね。これは大変な問題だと私は思うのですね。きょうはこれを細かく追及する時間がないわけでありまして、大筋だけちょっと私が申し上げておきたいと思うのでありますが、このミドリ十字、御承知のように血液製剤のトップメーカーであります。そして、このトップメーカーであるミドリ十字が供給した血液製剤によってエイズ感染被害者を多く出してきたという事実は、御承知のとおりであります。今度は無認可検査薬の販売を行った。もちろん、それを買い入れて承認をされた検査薬に置きかえて不正請求をした病院も病院でありますが、この無認可の検査薬の販売でミドリ十字は大変な利益を上げている。そうして全国の患者に重大な被害を及ぼそうとしている。したがって、これはこのまま放置できない問題でありまして、ミドリ十字に対してなぜ営業停止命令ができないのか、あるいは薬事法にそのことに対する法的な整備ができていないということであるとするなら、どういう処分をするのか、的確にお答え願いたいと思います。
  42. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 ミドリ十字につきましては、薬事法での承認を得ない薬を販売したという事実を調査いたしまして、去る七月に営業停止三十五日という処分をいたしております。
  43. 永井孝信

    ○永井委員 三十五日すればまた営業を始めるわけですね。そうして同じことを繰り返していく。このことによって、結果的に病院にかかる患者が大変な迷惑を受けるわけであります。この七百六の医療機関のうち特に悪質なものについては、当然保険医療機関の取り消し処分などが行われると私は思うのでありますが、その対象になる病院が、国立病院あるいは公的病院など地域における中核病院がたくさん入っているわけでありますから、大変な影響を及ぼしてくるわけであります。しかし、そこにかかっている患者には何の責任もないわけであります。  そこで、保険医の指定の取り消しによって保険がきかなくなった、そういう状態が起きたときに、患者がこうむる被害を最小限に食いとめるための措置を講じなくてはいけないと私は思うのであります。仮に例えば本人が立てかえ払いをするとすれば、立てかえ払いができる人はいいのでありますが、立てかえ払いができない事情にある人も存在するわけでありますから、いずれにいたしましても、処分と、その処分によって患者がこうむる被害、これについて的確な対応をしてもらいたいと思うわけでありますが、ひとつ簡単にお答えいただきたいと思います。
  44. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 違反をいたしました保険医療機関に対する処分は処分として、私どもはこれは厳正に行わなければならないと考えておりますが、同時に、ただいま御指摘がございましたように、それによって患者の方に迷惑、不便がかかるということはできるだけ避けなければならないと私どもは認識しておりますので、ただいま御指摘のありました問題点も含めまして、そういった対応についてはできる限りの配慮をいたしたいと考えております。これは行政処分と切り離して、仮に取り消しを行ってもできるだけ患者側への迷惑、不便というものが最小限度にとどまるように、十分な配慮をいたすべく検討をしてまいりたいと考えております。
  45. 永井孝信

    ○永井委員 具体的な内容についてはきょうはもうこれ以上言う時間がありませんので、また改めての機会に譲りたいと思いますし、また後で質問される同僚委員の方々に譲っていきたいと思います。  さて、エイズ予防法にかかわる問題でありますが、これの効果について私はポイントを絞って質問してみたいと思うわけであります。  政府が提案してきておりますが法律が有効かどうかという問題でありますが、潜在的な感染者の理解と協力を得られるかどうかということが最大のポイントであると思うのですが、どうでございますか。
  46. 北川定謙

    北川政府委員 先生指摘のように、やはりこの問題の渦中にある感染者あるいは発症された方々、この人たちがエイズの正しい知識を持って対応されるということが基本になると考えます。
  47. 永井孝信

    ○永井委員 協力を得ないことには法律を幾らつくってみてもその効果をもたらすことはできないということを間接的ながら今答弁の中で言われたと思うのであります。最前も我が党の伊藤委員からこのことについてかなり厳しい御指摘がなされました。この法律ができて、感染者であることが役所通報されてしまうのではないかということが、結果的に感染者あるいは受診しようとする人をおびえさせることになってしまう、だから潜在的な感染者の協力を得られることを結果としてはできにくくする、私はそういうことになっていくという筋道はもう目に見えていると思うのです。むしろ結果的に潜在を促進してしまうのではないか。自分がもしかしてエイズ感染しておるのではないかと思ったら、すぐに何のちゅうちょもなく病院に駆けつける、自分信頼している医師のところに駆けつけて診察を受ける、指導を受ける、こういうことになっていくことがこの法律によって保証されると自信を持って言われますか、どうですか。
  48. 北川定謙

    北川政府委員 この法律のねらいは、一つ感染の拡大を防止するということが大きな目標としてあるわけでございますけれども、一方では、この病気が性接触によって感染をする、あるいは非常に治療が難しいというような問題もあって、非常に社会的に注目をされておるということがあるわけでございまして、そういった意味でこの疾病の予防に関しては社会的なルールをきちんとする必要がある、そういう観点からこの法律が提案をされておるわけでございまして、特にプライバシーの保護、人権の保護という観点から、医師患者に対する対応を非常に抑制的に決めておるという特徴があろうかと思います。
  49. 永井孝信

    ○永井委員 法律案をつくった当事者として、社会的なルールが必要であるとか、この法律は本人のプライバシーを保護することについて非常に重視をしておると言われるのでありますが、去年の三月にこの法案国会に提案されて以来、これにかかわるいわゆる血友病患者の皆さんの団体であるとか、多くの学識経験者を含めて肝心の当事者たちが、この法律ではだめだ、この法律をつくることがかえってマイナスになる、潜在患者をふやしてしまうことになる、逆にそのことがエイズ感染を広げてしまうことになるのではないかと口をそろえて言っているわけですよ。政府が幾らこの法律をつくることによって蔓延を防止できるとか社会的なルールを法律で定めれば効果を上げることができると言ってみたって、当事者がそうではないと言っているのですから、これはどんなことを言ってみたってそういうことになっていかないということを証明しているのではないですか。  時間がありませんから私は続けて言いますが、例えば最前の質疑の中の大臣の答弁でも、蔓延を防ぐための手段としてこの法律が必要だと言われました。あるいは局長の方は、売春常習者であるとか麻薬の静注者の回し打ち、こういうことが答弁の中でも触れられてまいりました。しかし、現在日本の国には売春防止法があるのですよ。売春をしてはいけないわけです。いけないのだけれども、実際は売春天国と言われるほど売春が大手を振って歩いているのです。売春防止法があって、その売春をとめることができない。このエイズ予防法をつくったら、感染源と見られる売春常習者売春行為をとめられるという保証がどこにあるのですか。仮に医師から通告された行政の当局が、どうやって生活指導したり蔓延を防止することが法律によってできるのですか。男女の関係のそういう機微に触れる問題をどうやって日常監視するのですか。どうやってとめるのですか。そんなことができるのなら、売春防止法でその効果を求めることができるわけじゃないですか。だから、この法律をつくってみても、結果的に受診をすべき人が受診をしないで地下に潜ってしまう、このことを最も恐れているのですよ。このことについて、そうではないということが言えますか。的確な論拠がありますか。
  50. 北川定謙

    北川政府委員 エイズという病気は二十世紀の末になって突如として人類の中にあらわれてきた、こういうことでございまして、その治療方法がない、非常に致命率が高いという難しさを持っておるわけであります。しかし、エイズ感染力が非常に弱いというようなこともございまして、一定のルールで生活をする、正しくこの疾病に対応するというようなことをすれば感染を未然に防ぐことができる、現在の段階において私どもはそういう格好対応ができるという状況にあるわけでございます。したがって、医療の現場においては、お医者さん方もこの病気に対して一体どんな対応をするべきかということについて非常に迷っておられる点もあるわけでございます。そういう状況の中で、患者さんのプライバシーを守りながら、感染を拡大しないように、さらに不幸な人が起きないようにするための一つ社会的ルールをつくるということでこの法律の提案をさせていただいておるわけでございまして、先生が御指摘のように、もちろんこの法律だけで拡大防止ができると考えておるわけではございませんで、正しい知識の普及をするとか医療体制を整えるとか研究を進めるとか、いろいろなことを総合的に進めることによって何とかしてこの病気の拡大を少しでもおくらしたいと考えるわけでございます。
  51. 永井孝信

    ○永井委員 今いみじくも局長は、エイズというのは感染力が非常に弱い、こう言われました。普通の生活をしておれば心配要らない、こう言われました。確かに病院に行っても、待合室にそういうPRのポスターも張ってあるわけです。しかし、この法律を提案してきた当時は、極端なことを言えばその人と体が触れるだけでも感染するかのような大変なマスコミ報道もあって、恐怖に陥れるという状態がある中での法案の作成だったわけですね。それほど感染力が弱くて、普通の生活をしておれば感染心配がないのなら、今局長が言われたように、本来この問題は正しい知識の普及に努めれば済むはずなんです。それをあえてエイズ予防法としてこの法律を独立でつくれば、法律をつくるぐらいだからこれは大変なことなんだということで、エイズに対する恐怖感をむしろあおり、唆してしまうことになる。あるいは血友病患者を除外するとかいう修正案も用意されているようでありますが、この過程の中で血友病患者の皆さんに与えた影響というのははかり知れないものがある。そうすると、法律が独自にできたのだから血友病患者の皆さんに対する世間の目も今まで以上に厳しいものになってしまう。このことがその人たちの人権をどういうふうに侵すことになるか、これは想像にかたくないわけです。局長が言われるように、それほど感染力の弱いものであって、正しい知識さえ持てばこれの感染を防げるのなら、法律は要らぬじゃないですか。どうですか。簡単に答えてください。
  52. 北川定謙

    北川政府委員 正しい知識を持てば感染を防げる、これは事実だと思います。しかし、実際には社会の中で、これは日本はまだそういう渦中に巻き込まれないでおるわけでありますが、欧米諸国においてはもはや手がつかない状況になっておることも一方の事実であるわけでございます。したがって、この法律によってエイズに対する正しい対応のルールを日本の社会につくっていくことが現段階においてどうしても必要なことではないかと考えるわけでございます。
  53. 永井孝信

    ○永井委員 だから、その正しい知識を持たせるためにルールと言うけれども、法律がなければそういうことはできない問題ではないでしょう。厚生省の日常の業務はどこに存在するのですか。厚生省がそのことをきちっと指導していけば済む問題ではないですか。法律をわざわざつくる必要はない、私はこう断定せざるを得ないのであります。  時間がありませんから次の問題に入りますが、例えばこの政府案の第十四条の問題であります。守秘義務であります。医師や公務員の守秘義務がこの十四条にうたわれているわけでありますが、これで感染者患者プライバシーを十分に守れると考えますか。この第十四条がなくても、現行法体系のもとでも公務員や医師にはちゃんと守秘義務が課せられているのであります。その守秘義務が課せられている中で、今までどういうことが起きてきたのか。  例えば、新聞報道された問題について具体的な例をいいますと、全国初めての女性患者として注目されました神戸の例、男性同性愛者を含め百五十人もの相手と性的接触を重ねていたとされた大阪の例、あるいはプレーボーイのヘモフィリアと報道された高知の例、枚挙にいとまがありません。関係者の守秘義務が現行法のもとでも課せられているわけでありますから、もしも守秘義務が完全に守られているとするならば、このマスコミ報道はなかったと思うのであります。マスコミ報道がたとえ患者の名前を伏せていても、神戸の例に見られますように結果として数日のうちにその患者がだれであるかということは特定されてしまって、神戸の例でいいますと、もうその家族はそこに住めなくなって一家離散をしてしまっているわけであります。今申し上げました高知の例も大阪の例もそうであります。そのそれぞれの患者全部一家離散という悲惨な状態に立ち至っているわけであります。厚生省は、こういう神戸や大阪や高知のケースについてだれが守秘義務を守らなかったのか調べたことがありますか。あるいは報道後患者とその家族がどんな目に遭っているか調べたことがありますか。あったとするならば、答えてください。
  54. 北川定謙

    北川政府委員 今先生が御指摘されたように、幾つかの地域で個人を特定できるような報道が行われてきたという点については、報道に行き過ぎはなかったか、あるいは行政医療機関においてもより周到な配慮ができたのではないか、いろいろな考え方があるわけでございます。しかし、エイズについての知識が現在に比べてまだ普及していなかったとか、ややセンセーショナルに取り上げられたというようなことは否めないわけでございます。個人プライバシーを守るということと国民の知る権利にどうこたえるかということのはざまの中で適切に対応していくということはなかなか難しい点があるわけでございますけれども、それはそれとして、エイズ予防ということは何としてもやらなければならない。その上で、医師やあるいは業務上患者の秘密を知り得た者がその秘密を守るための規定というものをこの法律によって特に強化をするというようなことによってエイズに対するプライバシーを守るという国の意思、これを明確にしながら、一度にはなかなかうまくいかない点が多いわけでございますけれども、そういう基本的な姿勢に立って国民、社会の理解を得ていくという努力を私どももしなければならない、このように考えております。
  55. 永井孝信

    ○永井委員 守秘義務と知る権利のはざまで非常に対応が難しいと今答弁がありました。守秘義務があっても、今私が指摘しましたように、神戸や大阪や高知の例のように直ちにそのことがマスコミ報道されてしまって特定されてしまった。まあマスコミにすれば取材源はいろいろなところにあるのでしょうが、一生懸命報道するために努力をしているのですから、これはマスコミの努力でありましょう。しかし、この種の問題が守秘義務が課せられているもとでその守秘義務が効果をもたらさなかった。結果としてその関係者の一家離散という悲惨な目に遭うようなことにつながってしまった。そこで、今度社会ルールをつくるためにあえて別の法律をつくる。そこで守秘義務を第十四条で明確にする。じゃ、十四条で明確にしたことが守られるのであれば、今までの、今現在公務員やあるいは医師にも課せられている守秘義務は当然その効果をもたらしてこなくてはいけない。売春防止法があっても売春がなくならないのと同じことなんですよ。だから法律をつくることがすべてじゃない、私はそう言わざるを得ないと思う。  だから、きょうはもう時間が参りましたから、これ以上質問する時間がないのは残念でありますが、私はあえて口を悪くして言えば、政府が一たん出した法案だから何が何でも、政府のメンツにかけてでもこの法案は成立させてもらわなければ困るというような性格のものではないはずであります。むしろもっと時間をかけて、もっと具体的に、みんなの協力が得られるようにすべきなのが政府の任務じゃないのですか。大臣の方に私はお伺いいたしますが、この法案の持っている不備な条件あるいは問題点、患者団体に協力が得られないということがわかっている問題点、政府がどのように言おうと患者団体の皆さんはこれでは協力ができないと言っていらっしゃるわけだから、そういう問題点を持っているこの法案については一たん撤回をして、改めてみんなと知恵を絞り合って新たな対応を考え出していく、あるいはそこまでいかなくともさらに時間をかけてじっくりと実態に合ったような対応をすべきだと私は思うのですが、この点について大臣の答弁を聞きたいと思います。
  56. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 エイズにつきましては、永井先生もよく御承知でございまして、世界的に非常な勢いで蔓延が広がっておるわけでございまして、大体十カ月に倍になるようなスピードで患者はふえているわけでございます。五年前のイギリスが日本の現在と全く同じような状況でございまして、そのときにもこの法律をつくることについて消極論がございました。その結果として法律はできなかったわけでございますが、現状は約五千人にまで患者がふえておるわけでございます。そのことから、私も直接話を聞いたわけでございますが、現在英国においては非常に反省があるということも承りました。そういうこととか、今のアメリカにおきましては、これまた御承知のように七万人から八万人の患者が発生をいたしておりまして、ある州におきましては患者の結婚も禁止をする、極めて人権を阻害したそういう法律まで現在あるわけでございます。そういう状況を眺めてみますと、国民の健康を守る立場厚生省といたしましては、幸いにも百人前後の患者しか発生していない我が国のこの現状かち見て早急にこの法律をつくりまして、そしてこれ以上蔓延を防ぐということが最も我々に課せられた使命であると考えているわけでございまして、いろいろ御指摘の御意見等につきましてはこれから私どもも絶えず念頭に置きながら進めてまいりますけれども、しかしこの法律だけは、国民をエイズの病気から守る、この大きな目的のためにぜひとも成立をさせたい、また御理解をいただきたい、かように考えておる次第でございます。
  57. 永井孝信

    ○永井委員 時間が来ましたけれども、もう一問だけ簡単に言います。  今大臣に答えていただいたのですが、私からもう一度申し上げますと、日常の十分な行政指導、それが医師患者信頼関係を絶対に崩さないということをやれば、法律をつくらなくても十分に協力が得られるし、そしてイギリスの例も言われましたけれども、かつてイギリスの梅毒の撲滅運動のときに、法律をつくったけれどもその法律は効果をもたらさなかった。したがって、その法律を廃止をして梅毒患者が自由に診療できるように匿名制度も取り入れた。そのことによって梅毒が根絶に近い状態にまでできたという前例もあるわけでありますから、私は、この医師患者信頼関係を何よりも大切にして、法律によって律することがすべてでないということをあえて申し上げたいと思うわけであります。  そうして、最前も伊藤委員から血液の問題が出ましたけれども、この間十月二十四日の新聞を見ますと、人の血液を使わずに凝固因子製剤ができるという報道がなされました。そしてそれが一切無害だということも新聞報道で出されているわけでありますが、そういうことが事実なのかどうか。もしこれが可能だとすると画期的なことでありますから、厚生省がもっと積極的に対応すべきだと思うのですが、この問題だけを一言答えていただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  58. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 今先生がおっしゃいましたのは、遺伝子組みかえ技術を使いまして血液凝固因子の第VIII因子をつくるという話でございますが、私ども承知しておるところによりますと、ドイツの会社でございますが、バイエルから臨床試験を開始したいということで治験届が出されております。近く治験が行われるというふうに考えております。バクスターについても、これはアメリカの会社でございますが、報道がございましたが、アメリカでは臨床試験が行われていると聞いております。まだ日本では臨床試験の届けは出されておりません。今先生から安全だというふうなお話もございましたが、これはネズミの一種でございますが、ハムスターの細胞を使いまして、そこに第VIII因子をつくる遺伝子を入れましてそれをふやすというようなやり方でございまして、人の血液と違いますものですから、安全性とか、こういうものについては治験を通じてしっかりやりませんといけないという点は残っております。  しかしいずれにしましても、新しい技術を用いて血液によらない製剤という非常に希望の持てる分野でございますので、慎重に安全性を確かめながらこれは伸ばしていくべき分野というふうに認識をいたしております。
  59. 永井孝信

    ○永井委員 終わります。
  60. 稲垣実男

  61. 金子みつ

    金子(み)委員 私は、大変時間が制約されておりますので多く質問することができないのですが、三点についてだけ質問をしたいと思います。これも政府側の御答弁次第で全部できるかどうかわかりませんけれども、御協力いただきたいと思います。  まず最初の点は、血友病患者の問題でございますが、血友病患者の人たちは必ず主治医があるわけです。そして、その主治医である医師はすべて今までエイズサーベイランスに協力してきている人たちです。それから、輸入血液製剤の問題ですが、これは問題が起こりましたその後加熱処理をするということが決まって、そして製剤の処理も改善されたわけでございます。そういうことがございますから、したがって仮にこの政府の原案がそのまま運用されたとしても、事実上は今後新しく製剤に基づく血友病患者の方たちのケースは生まれてこないと考えていいと思うのですけれども、どうですか。
  62. 北川定謙

    北川政府委員 基本的には先生の御指摘のとおりだと思います。
  63. 金子みつ

    金子(み)委員 わかりました。そうだとしますと、血友病患者さんをこの原案から除外するという修正案が今検討されていますね。私はわざわざここで除外する必要はないと思うのです。もう既にこれは問題ないのです。出てくるはずがないということが行われているわけですから、何もわざわざ除外する必要はない。  それを申し上げる理由は、わざわざ除外するということを修正によって行うということ自体が、この人たちは特別の人だという印象を社会に与えてしまう、そして社会的な差別感がつくり出されてしまうことになると私は思うのです。このことについては血友病患者の方もその家族の方たちも同じように考えておられます。ですから、今度外す必要はないと思うのです。わざわざ外すことがむしろ逆にこの人たちを差別してしまうという結果になるのだから、事実上として今局長言われたように新しいケースが生まれてこないということがもう処置されているのですから、このままにしておいていいのではないかと思うのです。むしろ私は、政府はこの患者さんを取り外してもらいたいという希望あるいは要求をどうしておとりになったのか、どこからお聞きになったのか、知りたいと思うのです。私どもも随分一生懸命調べてみました。調べてみましたが、いわゆる名古屋グループというグループは確認がとれませんでした。しかしあとの方たちは、今私が申し上げたように、むしろこれはマイナスになるというふうに言っておられます。ですから私が考えますのに、血友病の患者さんたちに対して何か特別な措置を考えるとすれば、それは薬害であるということをはっきり認めた救済策、もう既に行われましたね、あれでいいのではないかと思うのです。だから私、これは考え直してほしいと思うのですが、どこから聞かれましたか。
  64. 北川定謙

    北川政府委員 先生の御指摘は二点あるわけでございますけれども、まず第一に、血友病の患者をこの法律の対象から除外をするという修正案を今国会で今御議論をいただいているわけでございますが、その除外をする必要がないのではないかという先生の御指摘でございます。  基本的にはと先ほど私申し上げましたが、もう既に現在使われている血液凝固製剤はそういう感染源を持っていないわけでございますからその心配はないわけでございますけれども、既に過去に使われた方であってまだいろいろな情報行政側にないということも一方にはあるわけでございます。つまりもう少し申し上げれば、まだ感染の証明がされていない方もあるということだと思います。あるいはさらに、発病の状況が個別的に言えばつかまれていないケースもあるという状態にあるわけでございますが、一方ではこの法律の大きなねらいは感染の疫学情報を得るということでございますから、血液凝固因子製剤に基づく感染状況がどうなっておるかということがもうほぼつかまれておる、こういうふうに考えれば、これは細かくなりますけれども、法第五条の医師都道府県知事への報告、ここから外すことは差し支えないのではないかというような考え方も成り立つというふうに考えております。  それから第二の点でございます、どこから血友病を除外すべきであるという議論を経たか、こういうことでございますが、この点につきましては今国会あるいは前国会の御議論の中でもいろいろな御質疑がございまして、大臣からも血友病を除外をすることも一つ考え方であるというような御答弁もあったわけでございます。既に疫学的にはいろいろな情報が得られておる、それからまた医師の管理のもとにあるというようなことからすれば、本法案の対象から外れても本来の目的には支障がないのではないかというふうに考えておるわけであります。
  65. 金子みつ

    金子(み)委員 今の御答弁によりますと、前の分は時間の問題だと思うわけですよ。そうでしょう。きょうあすの問題じゃないけれども、時間の問題で解決すると思います。それから後の分は、どこから得られましたかということについては、はっきり御返事いただけませんでしたね。
  66. 北川定謙

    北川政府委員 私が申し上げましたのは、この国会議論の中でそういう御主張がかなりあったというふうに考え、また大臣からも、そういう考え方もあるということを一つの出発点としておるというふうにお答え申し上げたわけであります。  なお、さらに追加をさせていただければ、私どもも患者さんの団体からいろいろとお話を伺う過程で、そういう意思があるということも酌み取らせていただいたというふうにお答えをさせていただきたいと思います。
  67. 金子みつ

    金子(み)委員 そういう意思があると読み取らせていただいたとおっしゃるのは、どっちですか。外してくれという方ですか、外さないでいいという方ですか。
  68. 北川定謙

    北川政府委員 血友病を外してほしい、除外をしてほしいという考え方でございます。
  69. 金子みつ

    金子(み)委員 私はそれを伺っていたのですよ。どこの団体からお聞きになりましたかとお尋ねしたのです。それは具体的にはどこと言えないわけですね、局長としては。どこの団体と言ったらいけないのですか。差しさわりがありますか。もし差しさわりがないんだったら教えてください。
  70. 北川定謙

    北川政府委員 明確に団体というふうに私どもは申し上げるわけにいきませんけれども、そういう意味からいけば、先ほども申し上げましたような国会の中での御議論というふうにお答えをさせていただき、さらに私どもがいろいろな情報を得る過程で、社会の中でそういう声が強かった、こういうふうにお答えをさせていただきたいと思います。
  71. 金子みつ

    金子(み)委員 この問題で時間をたくさんとられるのは困りますけれども、非常にあいまいですね。私ははっきり知りたいわけです。なぜかと言えば、患者のグループの方たちは、私どもが調べた範囲では外してほしくないのです。外されることによって逆に差別がはっきり出てきて困る。だから外さないでもらいたいと思っているところへ、外すという修正案が出ているということを聞いて非常に心配しておられるわけです。だから私は、厚生省ではどうつかんでいらっしやるかということを伺いたかったので、はっきりとそれを言っていただけないのだったら、また考えます。  いずれにしても私が申し上げたいのは、考え直してもらいたいということです。いいですか。はっきり御存じないわけでしょう、どういうグループだということを。あるいは御存じであっても言えないのかもしれませんね、その辺は私はわからないけれども。そうだとすれば、言えないのはおかしいと思っているのだけれども、ひょっとしたらわかっていらっしゃらないのじゃないんですか。それがわからない。
  72. 北川定謙

    北川政府委員 具体的にどこの団体というふうには申し上げられませんが、いろいろな患者さんの声として私どもは承知をした、このように先ほど来御答弁申し上げているわけでございます。
  73. 金子みつ

    金子(み)委員 イタチごっこになりますし、ほかの質問がありますから切りますけれども、非常にはっきりしないのですね。だから本当にあったのかなかったのかだって疑えば疑えるわけなんで、都合のいいように解釈しているとこっちが考えてもいいんじゃないですか。だからそこら辺を厚生省となすっては、そんなふうに疑われるのは嫌でしょうから、、はっきり何なら何とおっしゃったらいいと思うのですけれども、それができないようでございますから、私はこれはペンディングにいたします。雲の中ということでペンディングにします。  次の質問に移ります。  次は、医師の問題なんですが、医師の意見ということに関してなんです。けさ冒頭の質問者であった伊藤議員の質問で御答弁がありました。それで、この原案も、自民党が出していらっしゃる修正案も、患者の性行動に関する大変に困難な、難しい判断医師に求めているわけですね。感染した人が多数の人に感染させるおそれがあると見た場合というような言い方がありましたり、私はけさの伊藤議員に対する御答弁を伺っていましたら、判断基準はないと。ないでしょうね、できるわけないんだから。そうしたら、それは省令が、あるいは指導通達をするつもりはあるというふうにおっしゃいましたが、私はできるとは思えない。結局、これは医師判断、幾つかの事例をもとにした医師判断だという御答弁もありましたから、そこへ来ているんだろうと思うのですね。そうすると、こういう難しい、非常に微妙な責任の重い判断は、医師一人に全部任せておられるというふうにしか理解できないのですが、大変なことだと思います。そうだとすれば、私が質問したいのは、関係した医師の同意を得た上で作業されたと思うのですけれども、どういうふうにしてお決めになりましたでしょうか。いつ、だれが、どうい う医師たちと会って、どのようにお決めになりましたか、それを教えていただきたいです。
  74. 北川定謙

    北川政府委員 政府がこの法案を固めていく過程で、医師を代表する一番大きな集団である社団法人日本医師会を初めといたしまして、行政的には公衆衛生審議会、エイズ対策専門家会議等の場面で広く専門家の御意見を伺った上でこういう法案を提案させていただいておるわけでございます。
  75. 金子みつ

    金子(み)委員 私が申し上げていることは、今局長が御答弁なさったように、日本医師会とか公衆衛生審議会とか何とか会議とかのメンバーのお医者さん、医師たちということなんですが、この医師先生方は全部患者さんをちゃんと診ていらっしゃる方たちなんですか、問題はそこだと思うのですよ。それに日本医師会というのは、一般開業医師集団なんですよね。それで、血友病患者の方たちが、あるいはエイズ患者さんたちが受診をしておられるのは、むしろどちらかといえば病院なんです。開業医じゃない。開業医のところに行っている人もあるかもしれませんが、大方は、三分の二以上は病院だという資料はいただいて持っています。その患者を診ているお医者さんの意見というものを直接具体的に聞いていらっしゃらないじゃないですか。それでどうしてそう決めるのですか。  私は時間がないから大急ぎで調べましたところが、聖母病院の増田医師、駒込病院の根岸医師、永寿総合病院の和田医師、これはお三人とも日本医師会の会員ではありません。それから東京衛生病院の金子医師、荻窪病院の稲垣医師、このお二人は会員です。ですけれども、会員の人ではあっても医師会から意見を聞かれたことはない。だからそんなことをだれが勝手にオーケーしたのかと、非常に憤慨して返事をしてくださいました。会員じゃない先生方はもちろんのことです。全然何にも関係はありません。だから私が伺いたいのは、こんな大事なことを医師一人の責任で決めようというときに、患者を診たこともない医師が意見を出したって、それは空論ですよ。もっとはっきりと科学的に、具体的に結論を出していただかなければ困るので、少なくとも患者を診た医師たちの意見というものがはっきりとつかまれていなければならないと私は思いますので、それを申し上げているわけなんですが、それはやっていらっしゃらない。  二十五日に会合なさいましたね。私時間がないから申しますが、二十五日というからおととい、一昨日ですね。一昨日の夜、厚生省は血友病患者を担当している医師厚生省にお呼びになったそうです。私はそのことについて続けてお尋ねします、関連していますから。何のためにお呼びになったか、どの範囲の方をお呼びになったのか。そして結果として、何人お集まりになってどういう結果になったのか、それを続けて御答弁いただきたいと思います。     〔委員長退席、畑委員長代理着席〕
  76. 北川定謙

    北川政府委員 お答えが前後いたしますが、最初に、先日血友病の主治医の先生方数人にお集まりをいただいた点についての御指摘であろうかと思いますので、その点についてお答えをさせていただきますが、それは発症予防研究の班の中の一部の先生にお集まりをいただいたということで、班の最近の状況についての意見交換あるいは最近のエイズ法案審議状況等についてお話し合いをしたということでございまして、特段のねらいを持ってやったわけではございません。  それから、最初の御質問に戻るわけでございますが、まず第一は、エイズ患者さんを診療しておられる医師先生方が感染の防止を図るためにどんな対応をするのか、いろいろと難しい御判断があるわけでございまして、それぞれのお医者さんによっていろいろ御意見が違っておるわけでございますが、社会全体として一つのルールをつくっていく、それによってむしろお医者さん方の対応をスムーズにしていただく。そういう点からすれば、これは個別にいろいろおやりになる、あるいは行政が個別の通知でやるというようなことではなくて、むしろ国会で御議論をいただき法律という形ですることの方が合理的ではないかと私どもは考えておるわけでございます。  第二の問題は、どのような形で専門の医師の意見を聞いたか、こういう御質問でございますけれども、厚生省エイズ対策会議というようなものが組織をされておりまして、この問題が非常に社会的にクローズアップをされた過程でいろいろと御相談もさせていただいておるわけでございます。その中には、直接患者さんをごらんになっておるお医者さんもおるわけでございまして、そういう社会的な場でお話を伺いながら厚生省として主体的に判断をしてきた、このようにお考えをいただきたいと思います。
  77. 金子みつ

    金子(み)委員 二十五日にお集めになった医師たちというのは今お話しのように、要するにこれはインフォーマルな集まりですよね。公式なものじゃないですね。たまたまエイズ予防治療研究班の先生方が五、六人ぐらいお集まりになったという話ですけれども、この方々は患者を診ていらっしゃる方なんだと思いますけれども、患者を診ておられる医師たちというのは約百人ぐらいいらっしゃるそうですね。  だから私が申し上げたいのは、そのうちの五、六人だけの意見を聞けば百人の先生方が納得するという、そんなことですか。私は、医師の方たちというのはそんな人たちじゃないと思うのですね。だから、今局長が、集まって意見を聞いた中にはエイズ患者を診ている先生もいらっしゃるというふうにおっしゃいましたが、何人かの人はそうでしょうけれども、私はこういう重要な問題は担当している人たちのみんなの意見を聞くべきだと思うのですよ。百人ぐらいわけないじゃないですか。一万とか百万とかというのだったら話は別ですけれども、たった百人ぐらいの人ですから、これは厚生省が一生懸命になれば意見を全部聞けると思うのですよ。しかも私は、それを正式に、急いで、この委員会法案を議了するまでの間にぜひ聞き出してもらいたいというふうに思います。これは一遍に集めるといっても無理かもしれないと思ったら、都道府県に協力を求めて、電話でもいいですよ、手分けをして確認してほしいのです。きょうじゅうというわけにはいかないでしょうから何日かかけてもいいと思いますけれども、とにかく最善の努力を尽くして、たった百人ぐらいしかいない医師の意見なら聞けるじゃありませんか。それはぜひやってほしいと思いますね。同じ患者を診た医師たちでも、百人の中には、Aさんがオーケーと言ってもBさんはオーケーと言わないかもしれないでしょう。医師というのはなかなか難しいということを厚生省でも御存じでしょう。ほかの職種の人と違って、医師というのは大変難しいし、面倒なんですよ。だから、この人たちのオーケーをとらなかったらこのことはできないと思うのです。こんな重大な責任を医師一人に任せるのだったらば、百人ぐらいの医師の意見を聞けないことはないと思うのですね。だからそれをぜひやってもらいたいと思いますが、お約束していただけますか。
  78. 北川定謙

    北川政府委員 この問題はなかなか複雑な点がございまして、簡単に一つの方向にまとめるということはなかなか難しい点があろうかとは思いますが、厚生省といたしましては、この法案を提案する過程で、先ほども申し上げましたように公衆衛生審議会、これは伝染病の防止のための専門のお医者さんたちでありますし、それから厚生省におけるエイズ対策会議というような会議の場も含めて、いろいろな御議論をしていただいた上で御提案をしてまいっているわけでございます。また、今国会におきましても、参考人というような形で医師を含めたそれぞれの分野の専門家の御議論もいただき、これは賛否両論があったわけでございますけれども、そういう状況も踏まえながら法案の御審議をお願いしているところでございますので、十分に御理解いただきたい、このように思います。
  79. 金子みつ

    金子(み)委員 私の質問答えていらっしゃらない。今おっしゃったことはさっきも聞いたのです。同じことです。だからそのことを伺ったのじゃなくて、百人の、エイズ患者を直接診たこの医師たちの意見を早急にとってもらいたいけれども、それはできるかどうかということをお尋ねしたのです。できませんか。
  80. 北川定謙

    北川政府委員 先ほど来御答弁を繰り返しているわけでございますけれども、これまで一応の手順は踏んでまいっておるわけでございますので、改めて調査をするというようなことについてはひとつ御容赦をいただきたい、このように思います。
  81. 金子みつ

    金子(み)委員 今の御答弁ですと、厚生省は都合のいい調査だけをやったような感じに受け取れるのですよ。お手盛りのと言ったら言い過ぎかもしれませんが、幾つかの厚生省が決めていらっしゃる医師のグループの意見を聞いたというだけであって、全員じゃないですね。こういう重要な問題はぜひ慎重にやらなかったら、大変な法案なんですから、この法案を進めていくのにはこれくらいの努力はやったっていいのじゃないですか。もしできないのだったら、私はこの質問を保留します。委員長理事会にお任せしますが、私は保留したいと思います。  あともう時間がありませんから、最後のポイントについて質問を続けます。  最後の分は、三つ目のポイント、外国人の入国に関する問題なんです。これまた大変ですね。難しい問題だと思います。政府案は、附則第三条で出入国管理及び難民認定法を改正して、多数の者にエイズ感染させるおそれのある外国人は上陸を拒否するという趣旨の法文になっておりますが、これは間違いないですか。
  82. 山崎哲夫

    山崎説明員 附則三条でそのような改正をすることになっております。
  83. 金子みつ

    金子(み)委員 そこで、お尋ねがあります。  エイズ感染している外国人のうちで、日本に来て多数の者に感染させるおそれがあるかないかということをだれがどういうふうに確認するのですか。六十二年度に日本に来られた外国人は二百十六万人いるのですね。私は、この問題を外国人だけに絞るということは片手落ちだと思います。もしやるならば、水際作戦を徹底させるというのだったら、海外に行って帰ってきた日本人も帰国に際してやらなければ整合性は欠かれてしまうと思いますね。だからこれもしなければいけないと思う。こっちは六百七十九万人いる。合わせて八百八十何万、大変な数ではございます。しかし、こういう問題は、一体だれがどうやって確認するかという問題を的確に御答弁いただきたいのですが、大変な問題だと思います。できるわけないと思うのですがね。
  84. 山崎哲夫

    山崎説明員 先生の御質問は、二つあろうかと思います。  まず、多数の入国者のうちエイズ感染者であるかどうかということを確認する方法でございますが、入国審査官が現に有する情報からでございます。入国審査官は、上陸審査の段階におきまして、申請者がエイズ感染しているか否かについては事前に入手しております情報、資料に基づき審査をするわけでございます。疑いの存する者につきましては、入管法九条二項の規定によりまして、指定医の、これは「厚生大臣又は法務大臣の指定する医師」ということになっておりますが、指定医の診断を求めまして確認をすることになっております。ただ、これは感染者であるか否かということでございます。  次に、この者の上陸拒否をする場合には、単に感染しているだけではなくて、他の多数の者に感染させるおそれがあるかどうかということを判断しなければならないわけでございますが、御案内のとおりエイズというのは感染力が非常に弱く、感染経路が限られており、特定の行為に伴い感染するものであるということから、多数の者に感染させるおそれがあるかどうかは純粋に医学的な見地からだけの判断ではございませんで、問診の結果知り得た情報、その者の過去の行動、職業をもとに導かれる経験則等により医師が下した判断を尊重しまして、入国審査官が判断するわけでございます。
  85. 金子みつ

    金子(み)委員 私は、今の御答弁を聞いていて、そんなことですべてが動かされたら大変だと思いましたよ。そんなことでどうしてわかるのですか。言いますか、本人がそんなことを。冗談じゃありませんよ。こんなことわかるはずないでしょう。もっとそれを突っ込んだ質問でもしてごらんなさい。人権問題ですよ。国際的な人権問題にまで広がる可能性があるじゃありませんか。こんなことだれが考えついたのか知らないけれども、非常に愚かですよね。全く残念だと思います。こんなことで決められた人は本当に迷惑ですよ。とんでもない迷惑です。これはとてもじゃないけれども、いただけませんね。  それで、私は、こんなことを日本が決めようとしているのだったら外国はどうだろうと思って、資料をつくってくださいとお願いをしました。資料がただいま届いてまいりましたけれども、拝見しました。これはいつの資料かわからぬです。これはいつのですか。それがまずわからない。厚生省の資料だそうです。「各国の外国人エイズ患者等に対する入国規制措置」、あるかないかということだけしか聞いてない。あるとかないとか、いろんな国が返事しています。だけれども、ある中身がわからないのですよ。規制措置の内容がわからない。そこで、私どもは自分たちで調査をしましたし、それからこの資料によりますと、これも「あり」と「なし」と「検討中」という幾つかの国が並んでおりますが、読んでみますと、「あり」の国は何をやっているかといいましたら、健康証明書をとるようにするとか、それに似たような証明を持ってきなさい、陰性か陽性かというそれだけしか書いてなくて、ほかの人に感染させるおそれがある者なんというのはどこを探してもないのですね。これは日本だけですね。そういうことだと私は思いました。さらにヨーロッパあたりは、エイズを理由に入国を規制すべきではない、イタリア。エイズを理由にした入国規制など考えたことがない、論議されたこともない、スウェーデン、フランス。こういうふうに書かれています。だから日本のような、感染させるおそれがある者なんという非常にあいまいな、不得要領な、そして一たんまかり間違えばとんでもない人権侵害にもなるような規制をしている国なんてどこにもない。  WHOの資料をお調べになりましたか。WHOはこれに対してどういうふうに言っているかお調べになりましたか、厚生省
  86. 山崎哲夫

    山崎説明員 先生質問は、三点ばかりあろうかと思います。  まず、諸外国におけるエイズの規制状況でございますが、私どもが承知している限りでは、法令上ないし既存の関係法令を準用することなどにより、エイズ感染している外国人の入国または滞在を規制している国は、米国、ソ連、カナダ、中国等二十三カ国でございます。これは四月現在調査しました四十六カ国中二十三カ国ということになっております。  それぞれその規制の仕方は、就労する者につきましてはあらかじめエイズ感染証明を提出させるとか、さらには入国後五日以内にエイズの検査を受けさせるとか三十日以内に受けさせるとか、それぞれ各国の法制が異なりますから、それぞれの国におきましてその国の実情に合うような方法で規制をしております。  次に、WHOの先生の御指摘の見解でございますが、これは一九八七年の三月と四月に出された入国規制に関する見解だと思いますが、WHOの勧告は、海外旅行者に対するスクリーニングはエイズの蔓延を若干おくらせるにすぎず、スクリーニングよりはむしろ教育の拡充が重要であるとするものであると承知しております。しかし、我が国の今回の法案における入国規制につきましては、外国人の入国に際し陰性証明を求めるというようないわゆるスクリーニングを行うことは考えておりません。上陸を拒否できる外国人は、エイズ感染している者であって、多数の者にエイズ感染させるおそれのある者に限っているわけでございます。したがって、我が国を訪れる外国人の中にエイズ感染している者がいたとしましても、それのみによって上陸を拒否することはしませんが、国際的に見まして、御案内のとおり我が国はエイズ感染がいまだ進んでいない状況にございまして、その蔓延を防止するため、これらの人たちが他の多数の者にエイズ感染させるおそれがあると判断される場合には上陸を拒否し、我が国の公衆衛生上の利益を確保しようとするものでございまして、WHOの勧告に反するものではないと考えております。
  87. 金子みつ

    金子(み)委員 私は、WHOの勧告に反しているか反していないかなんてお尋ねしたんじゃないのです。ただ、WHOはどんなものを持っているかお調べになりましたかと申し上げただけなんで、ちょっとそこまでおっしゃるあれもなかったんですがね。しかし結局、感染者でほかの人に感染のおそれのある者はだめという言い方は日本だけですよね。だけれども、だれがそれを決めるかということをさっきから申し上げているのに、一つもそれに的確な答弁がどこからも出てこない。だれがどうやって感染するおそれがあるということを確認するかということ、できるわけがないでしょう。私は、そんな考えてもできもしないことを理由に法律をつくっていくというのは非常に危険だと思います。しかも、一年半もあるんですよ、この法案が初めて提案されてから。それだけ期間があったのに、そこの点をなぜもっとはっきりと決められなかったのかということは非常に残念だと思います。  それで、時間がありませんから今の御答弁、もう結構です。同じようだと思いますから結構です、私は納得できないのですから。何遍聞いても、だれに聞いても、けさから二人の議員の方が同じような問題を質問しましたが、だれも的確に答弁していらっしゃらない。できるわけないから答弁できないのは当たり前ですよ。だれがどのようにしていつ判断するかなんて、できるわけないでしょう。だからその問題はもう答弁ができないというふうに解釈をします。  私はそこで、もう時間がありませんから最後に大臣に申し上げたいことがある。大臣、ずっとやりとりを聞いておられたと思いますけれども、私だけの質問関係で申し上げてみますならば、納得のできない点がまだあります。不明な点があります。これじゃとてもこの法案を進めていくことはできない。これはどうしたって、こういう不明であり納得できない点はきちっと解決して、みんなが納得してさあそれでやっていかなければいけないねということにならなければいけないと思うのですが、それができていない。だから私は、この法案はもっともっと慎重に審議しなければいけないとしみじみきょうは感じました。  それで大臣、性行為感染する病気、性行為感染症というのですか、これで医師にかかるというのにはすごい勇気が要るのですね、男性でも女性でも。そう簡単に医師にかかれないですよ。風邪を引いたから医師のところへ行こう、おなかが痛いから行くのと違うのですから。特にエイズの場合は有効な治療法がない、先ほど大臣もおっしゃいました。感染者に対する偏見や差別も強い。だから、よほどのことがない限り受診をためらうのは当然だと思うのです。だから仮に受診しても偽名を使う、あるいは受診しないで逃げてしまう、こういう人たちが多いから、大臣はこの法案は蔓延を防ぐためのものだとおっしゃったけれども、事実はそれと逆行する可能性が非常にあるのです。むしろ潜って広がっていくということは非常に多いと思います。だからそれを抑えるためには、それを防ぐためには、だれでもが安心して医療を受けられるという姿勢がこの法案に流れていなければいけないのですよ。そういう姿勢が一貫して対策としてお立てになってこの法律中身になっていなければ、基本になっていなければならないと私は思うのですけれども、大臣いかがでしょう。その御答弁を伺って、質問を終わります。
  88. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 まず、エイズの蔓延を防止してほしい、これは全国民の願いであると思います。一たんかかりますと御承知のことで非常に死亡率が高く、しかもこの治療方法はまだ確立していないわけでありますから、もうとにかくこれ以上の蔓延を防いでもらいたい、これは国民の全体の気持ちだと思うわけでございます。そういうことが私どもがこのエイズ蔓延防止のための法律を提出いたしております最大の背景にあるわけでございますが、不幸にして感染された方、また感染からさらに進んで患者になられた方の場合を考えてみますと、今金子先生が言われたようなそういう考え方も一面あると思いますけれども、同時に、これは最終的には死亡率が高い病気でありますから、何とかしてこれは治したいと考えられることもまた一つの基本的な考え方だと思うわけでございまして、今の医療におきましても感染から発病をおくらす、そういう治療もあるわけでございますし、また、患者になりましてからも治療を受けることによりまして死亡をおくらすといいますか、そこへいかないようになるということも現状の医療において確立しているわけでございますので、エイズにかかられた方々が治療を受けずに隠れるというようなことが、すべてそうだというふうには私は言い切れない。その場合にやはり大事なことは、エイズに対する正しい知識、理解というものが国民の皆さん方に広まって、そしてこの病気に対して偏見とか差別ということを感じないような社会、しかもこの病気は特定の人だけがかかる病気ではなくて一般の人もかかり得る病気であるということであるわけでございますので、お互いに社会の中で偏見、差別を持たずにそういう病気の治療社会全体として受けとめていくというような状況をぜひともつくりたい。それが可能になれば、エイズ感染または患者になった方々が地下に潜るというようなことはないと私は思うわけでございます。  同時にもう一つ大事なことは、今のエイズ患者感染者また発症いたしまして患者になりました数、これが世界的に見ますとどんどん進んでおるわけでございまして、この実態、事実から私ども目を背けることはできないわけでございます。一方においてはこの治療方法がまだ確立してない病気はどんどん進んで患者数はふえてきておる、そういう中で幸いにも日本の場合はまだ百人足らずの患者でございます。しかし、もし世界じゅうのスピードと同じようなスピードで日本の場合進行するとすれば、倍々ということを考えてみますと十年足らずで実に一万人の患者になるというようなことも予想されるわけでございますので、そういうことも念頭に置きますと我々としてはエイズ蔓延防止のための法律として最低のものはぜひともお願い申し上げたいし、また不備な点があればそれを解決する、そういう御議論もぜひお取り扱いとしてこの委員会の御審議の中でお願いいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  89. 金子みつ

    金子(み)委員 終わります。
  90. 畑英次郎

    ○畑委員長代理 大原亨君。
  91. 大原亨

    ○大原(亨)委員 今まで伊藤委員、永井委員金子委員、それぞれ真剣な質問がございまして、私が質問をする点とダブってまいりますが、今までの質問を念頭に置きながら順次質問をいたします。  賛成論、反対論をいろいろと文章や質疑応答を通じまして確かめてまいりますと、現状認識についてはかなり一致点があるわけです。ただ、厚生大臣が答弁しておられましたように、ほっておいたら大変だ大変だとオオカミ少年みたいなことを言って、一番大切な点は、過剰反応を起こして非常に大きな取り締まりの規定になってくるとこれは逆効果ではないかという議論があるわけです。そういう議論がもう圧倒的に強いわけです。  厚生大臣はそういうことを言われるのですが、きょう長野政務次官の御出席をいただいておりますが、長野さんが「ニューヨークのエイズ最前線を視察して」という記事を厚生省の機関雑誌に出されたのを私は見まして、非常によく表現をされておる点があると思うのです。時間の関係があるのであなたの記事をちょっと引用いたしますと、日本とアメリカが根本的に違っておるのは何かというと、男性同性愛がアメリカでは非常に大きなウエートを占めておるが、日本では考えられないような状況である。感染ルートですね。それから、アメリカは社会の二重構造があると言われているのです。底辺構造があると言われている。教育や情報の徹底しない地帯があるわけですね。そういう地帯に薬物乱用者、麻薬乱用者、常習者なんですが、これがアメリカはニューヨークを初め大都会に非常に多いけれども、日本は幸いに、麻薬はかなり警戒すべきですが、これは警察行政との関係がありますが少ないというわけですね。それから、これは中曽根さんが言ってからちょっと大きな批判の的になりましたが、教育水準は日本は非常に普遍化しておりまして、それでテレビでも新聞でも情報がすぐ入ってくる、こういう状況ですが、アメリカはそれが非常に曲折があって、言うなれば社会の二重構造がある。こういう点でアメリカとは日本のエイズ感染についての拡大の度合いというものが違っておるのだ、こういう点を指摘いたしておりましたが、その点について私から申し上げたことに間違いがあるか、あるいは補強すべき点があるか、御答弁ください。
  92. 長野祐也

    ○長野政府委員 私の未熟なレポートが先生の目にとまりまして、光栄でございます。  御指摘のことを私もそのレポートに書いたわけでありますが、そこに書いた趣旨は、日本と比較をした場合に患者数が少ないことと、今御指摘のような男性同性愛あるいは静脈注射による薬物乱用者などのそういう方が少ない、そういう点が今後予防対策を行っていく上で日本にとって有利な条件であるということを実はそこに指摘をしたわけでございます。先生の御指摘のとおりであると思いますが、ニューヨークで私が見てきた特徴を申し上げれば三点あると思っております。一つは、ニューヨーク市では全米の約四分の一のエイズ患者がおるわけでありまして、これを人口に当てはめていきますと、日本で二十二万人の患者がいるという比率になるという量的な面と、もう一つは、エイズ問題が女性の問題に実はなっておりまして、ニューヨーク州の二十四歳から三十四歳の女性の死因のトップがエイズであって、妊娠可能年齢の一・五%、人口にしますと二万三千人の妊娠可能な女性がエイズ感染しているということ、三つ目は、静脈注射による薬物乱用者が多いという今のアメリカの複雑な社会現象密接に絡んでいるという質的な問題がある、そういうふうに認識をしております。
  93. 大原亨

    ○大原(亨)委員 報告では、日本の発症者、患者の九十名というのがありますね。その大部分は、これは絶対的に血友病の関係が日本はあるわけですね。汚染血液の問題があるわけですが、その他の感染ルートを取り上げますと、話があったように日米比較で特色があるわけです。そこで問題は、アメリカでは血友病患者の方が汚染血液によってエイズになった、こういう問題が全体的に見るとウエートが非常に低い。日本は非常に高い。これはどういうところに原因があるというふうにお思いになりますか。
  94. 長野祐也

    ○長野政府委員 厚生省のサーベイランス委員会の八月三十一日現在の報告によりますと、我が国のエイズ患者数は九十例で、そのうち凝固因子製剤によるものが五十一例で五七%になっているのに対しまして、米国防疫センターの十月三日現在の発表によりますと、アメリカの場合、凝固因子製剤と考えられるものが七百七十三例で約一%であります。血友病患者の中で感染率を見ますと、アメリカでは約六〇%であるのに対して我が国では四〇%となっておりまして、他の感染経路による感染者が少ないために我が国では凝固因子製剤による感染者が相対的に高くなっているのではないかと考えられます。
  95. 大原亨

    ○大原(亨)委員 厚生大臣、アメリカは麻薬の常習犯とかが非常に多いのですね。そういうふうに非常に蔓延する基盤があるわけですが、しかし日本では、そういう背景といいますかそういうものを議論する際に、アメリカの参考になる点は、FDAにいたしましても感染の対策機関にいたしましても、一つの事象に対しまして反応が非常に厳しいわけです。非常に厳しくやるのです。長い話ははしょりますが、日本では血液製剤を圧倒的にたくさん使うわけです。これは薬価基準との関係、薬務行政との関係があるのです。差益との関係があるのです。そして、その中で非加熱の汚染血液製剤を日本が導入したどころに原因があるのですね。非常に大きいのですよ。それに対しまして加熱してエイズのビールスを殺菌すべきであるという意見が出ますと、アメリカのFDAやそれに並行した機関は直ちに決断をいたしましてやるわけですが、日本はその判断が二年四カ月もおくれているわけです。その経過は一々質疑応答はいたしませんけれども、薬務局に郡司という課長さんがいて問題を提起したのですが、今有名で論争の中に出てくるのですが、安部さんが責任者をやっている安部委員会がこれを拒否したわけです。今東大の教授をやっている人が最近発表していますけれどもね。  時間が限られておるからやるのですが、日本があいまいな態度をとっているということは何かというと、非加熱と加熱、ビールスを含んだ非加熱の血液製剤の流通がずっと広がっておりまして、在庫があるわけですよ。そして日本は、薬価基準の制度があるのですが、一万六千も薬価基準があるというのは世界じゅうにないですよ。フランスは四千を三千に減らそうとしていますよ。日本は一万六千あるのです。だから、ミドリ十字のように未承認の放射性何々薬剤を振りかえて請求するのだ。でたらめですよ。そういう薬務行政の乱れというものがあって、薬価基準制度の乱れというものがあって、そういうものが原因で決断もおくれるし、それが蔓延して、在庫を一掃するためにまたダンピングをやる、そして差益を追求する、そういうメーカーベースの行政というものが問題になる。メーカーと癒着をした学者が政府の委員会に入っておる。そういうことで、厚生省の一部ではせっかく正当な判断がありながら判断がおくれてしまって、それでエイズが血友病の皆さんを対象にいたしまして蔓延した、こういう現象でしょう。だからそのことについて、アメリカのいいところはいい、間違ったところは間違った、こういうふうにしなければならぬが、私はアメリカの薬務行政、厚生行政一定の原則を持ってやっていると思うのです。日本はそういう点において根本的に改めないと、薬害列島日本と言われておる。サリドマイドとかスモンとかコラルジルとか、日本のようにこんなに薬害の多いところはないわけです、その後始末ということになっているわけですから。そういう点を根本的に改めていくという方向がない限りは次から次へと新しい薬害の問題が起きるのではないか、こういうふうに私は思うのです。大臣、聞かれていかがですか。
  96. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 我が国の医薬品行政につきまして極めて基本的な御意見でございますので、私も、御指摘の御意見につきましては絶えず念頭に置きまして今後我が国の医薬品行政を進めていかなければならぬと考えております。  ただ、非加熱製剤から加熱製剤への切りかえが日本が約一年半おくれました理由は、加熱をいたしますとたんぱく質を加熱するわけでございまして、たんぱく質を加熱すれば人間にどういう影響があるかという臨床例がアメリカにはありましたので、直ちに非加熱から加熱に切りかえが可能であったわけでありますが、日本の場合にはこの臨床例がないために我が国としてその検査をするということは、これまた基本的な考え方であるわけでございまして、その結果として非加熱から加熱への切りかえが一年数カ月おくれたという事実もあるわけでございます。そのことは、今までこの委員会におきましていろいろな質疑の中で明らかになっておりますけれども、それはそれとして、御指摘の点につきましては今後十分に考えていかなければならない最も大切な御意見、考え方であると考えております。
  97. 大原亨

    ○大原(亨)委員 今の答弁で重要な問題があるのですけれども、アメリカでは臨床例があったというのです。日本には臨床例がなかったから汚染の血液製剤をどんどん消化していく。これは将来性がないかもしらぬぞというふうなことになってダンピングをやる。差益があるものですから、ずっとこの血液製剤をあらゆる病気に使っていくということになったわけです。こういう臨床例の問題については、私は制度の欠陥もあると思いますが、日本自体で臨床をやらなければ日本の体質に合わない、こういうへ理屈を言う人もおるのですが、しかしヨーロッパとかアメリカの先進国でそういう臨床例に基づく措置があったら、直ちに人命にかかわることですから日本は適用して暫定措置をとっておく。汚染をした血液製剤がどんどん入っているというふうなことはおかしいのです。そういう疑惑があるものが入っているということがおかしいのです。それがたくさんの人々に害を及ぼしたということになるわけです。それは事人命にかかわるのですから、その考え方が足りない。制度の欠陥も一つはあると思うけれども、そういう例を日本に適用する場合にはきちんと対応できるようにする。アメリカから汚染された血液製剤を九〇%以上、日本はそういう売血による輸入血液製剤全体の三分の一を消化している、血液行政の問題にもかかわりますけれども。そしてそれはアメリカの底辺の人々の血液が多い。売血ですから、生活のためにこれはやるのですから、自分の収入のためにやるのですから汚染した場合が多いわけですよ。ですから、そういうものを日本がどんどん使うような体質というのは、薬価基準のシステムに一つあると私は思っているのです。根本的に日本の薬務行政を立て直すというところにメスを入れないとだめです。  きょうは総務長官に出席を求めたのだけれども、これはよく聞いておいてください。厚生省をこの問題について行政監察しなければいかぬ。そういう臨床例だけにこだわってこんなにおくれてそうなったのかということになりますと、これは言うなれば、過失、無過失はあっても裁判になったならば犯罪行為になりますよ。大臣、いかがですか。
  98. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 一般的な物の考え方としては、国際基準として他国の基準を日本におきましても準用するということは将来の方向だと思うわけでございますが、これは具体的な問題で個別に内容を検討する必要も当然あると思うのでございます。例えば輸入食品の安全性の基準の問題につきましても、我が国独自の基準をつくらなければならぬという御指摘国会であるわけでございまして、一般的にはそういう方向はそうだと思いますけれども、具体的にはその事例、事例で判断するということが必要ではないかと考えております。
  99. 大原亨

    ○大原(亨)委員 それは答弁にならないと僕は思うのですよ。これはこの前全会一致で通りましたが、副作用基金の準用の問題についての法律ができました。これは駆け引きでも何でもないのであって、それは一歩前進であるからということでみんなやったわけですよ。あの法律の準用というのは、政府とか企業、メーカーの言うなれば犯罪行為というか、結果として認めたのですよ。。あれは結果責任論なのです。訴訟の余地は残っているのですよ。被害者がこれから訴訟を起こすかもしれません。しかし、これは長くかかるからということで、全体として見て薬害救済は国の責任であり、メーカーも責任がないとは言えないということで、結果としての責任論の上に立ってあれは準用しているのです、法律論として。これから訴訟をやる人はやりますよ。やりますけれども、それは当面の措置として早くやるのだからよかろう、こういうことになったわけです。それは違いますか。あれは結果責任論ですよ。     〔畑委員長代理退席、委員長着席〕
  100. 北郷勲夫

    ○北郷政府委員 大原先生が犯罪、犯罪とおっしゃいますので私どももつい申し上げざるを得ないのでございますが、ちょっと前におっしゃったことについてなんでございますが、野方図に汚染された凝固因子製剤がどんどん入っていたという御指摘でございます“これも先生よく御承知のとおり、凝固因子製剤というものは血友病の患者さんに絶対に毎月欠かせないものでございまして、この凝固因子製剤が仮に効かないとなりますと大変な問題になるわけでございます。血友病の患者さんがかかっておられますお医者様方の中にも、その当時加熱製剤が本当に有効でかつ安全かということについてかなり議論があったわけでございまして、そこのところをしっかり確かめるというようなことも要請されたわけでございます。片方で危惧をしながらも片方で安全性、有効性についてきちっと確認しなければならぬという立場にあったということが一つあったわけでございます。それからまた、さらにできるだけ原料血の安全性を、安全なものをという努力をずっといたしてまいりました。証明をつけてもらう、あるいは検査済みの原料血に限るとか、いろいろな努力をいたしてきておるということでございました。今振り返ってみて、結果的によかったじゃないか、こういうことでございますが、それなりに努力をして、安全な薬の供給ということに努力をしてまいった。決して犯罪を犯すというふうな意識ではなかったということを御了解願いたいと思うわけでございます。  それから、今最後に直接の御質問でございます結果責任という点は、ややそれに近い考え方かと存じますが、私どもは、今回の救済対策は企業の一つ社会的責任というものに基づくものであるというふうに考えております。
  101. 大原亨

    ○大原(亨)委員 次の質問に移るのですが、政府の提案の七条には、今まで引用されましたけれども、「医師は、その診断に係る感染者が第五条の規定による指示に従わず、かつ、多数の者にエイズ病原体感染させるおそれがあると認めるときは、」こういう問題について伊藤さんから議論がありました。それで法制局に私は尋ねてみました。尋ねてみますと、今引用しました政府の法律案にかわる法律案を提案されておる民間の医師とか弁護士さんの第一線団体が提起している問題も含まれておるわけですが、やはりこの法律の中で議論がありましたが、売春法による補導処分の対象者、常習者ということですね、それから麻薬取締法の中の麻薬の常習者、これは二つとも感染経路の中に入っておるわけです。それから専門家の意見では、刑法における傷害罪の対象になると言われております。法律のように、エイズ菌をばらまくような常習者は傷害を与えるということになるから刑法の適用になるのだと言われております。その三つが今の法律の対象になる者の中身であると思われるわけです。これを法律にはっきり書いてその人だけを対象にするんだというふうなことができるかといいますと、衆議院の法制局は、そういうことは立法上不可能です、憲法十四条に触れます。大切な点は、その議論があるのに、法制局の見解もあるし専門家の見解があるのに、そういう者を対象にして医師通報の義務がある、知事行政権を発動することの以下の条文が十条まである。そういう中身の確定しないようなもの、法律的に確定できないようなもの、それを対象者として取り締まるというふうな法律の体系というものは、体系自体に誤りがあるのじゃないか、非常に大きな欠陥があるのじゃないか。  そうすると、政令に任す、行政措置に任すということになると主観的な判断になってくるから人権尊重にならぬのではないかという疑惑が解けないわけですよ。私が質問した点は、これは最後の段階ですから厚生大臣でなければだめだ。事務当局に言うと、ああでもないこうでもないといって、自分の方が正しいんだというようなへ理屈を垂れるからだめだ。厚生大臣、私が言ったことについて、立法上の法制局が言っていることやあるいは政治的な判断としてそういう問題があるということは、わかるでしょう。いかがですか。
  102. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 今御指摘になられましたことは、私はよくわかります。そこで、エイズ予防法案における医師通報の実際の運用につきましては、エイズの蔓延防止上放置できない売淫常習者、静脈注射による薬物乱用者等を対象としたものでありまして、いやしくも人権尊重やプライバシーの保護の点で懸念されるような事態が生ずることのないよう運用上も最大限の配慮を払ってまいらなければならないと考えております。  また、御指摘のとおり、エイズ予防を図る上でサーベイランス、啓発活動、カウンセリング等の対策が極めて重要でございますので、今後の施策もこれらの点を基本に置いて展開してまいる考えであります。
  103. 大原亨

    ○大原(亨)委員 私どもは第一線の医者とか弁護士などそういう専門家の意見を聞きながら政府の案に対応できるような立法ができるかという点を、我々の意見をやってみました。しかし、その中で出てきた二つの法律案があるのですが、その一つは性行為感染予防法というのがあるのですけれども、これは性行為感染症で売淫をした者、こういうふうにしまして、出た案は売春法に関係するような法律になっているのですが、これは法制局で詰めてみますと、これも特定できない、立法上問題がある、法律をつくることになれば憲法上の問題が出てくる、十四条がある、こういう議論ですね。ですから非常に難しいのですが、しかし非常に大切な議論をこれからするわけですから、私どももどうしたらいいかということについては十分に責任のある議論や意見をしなければならない。  私は政府が今までやってきた中で非常に評価できる点は、サーベイランス委員会——サーベイランスという意味は何かと調べてみると実態を把握すること、実態を把握する委員会、このサーベイランス委員会というのはある程度実績を上げたと私は思うのです。なぜかといいますと、発症者と感染者をかなり正確に把握しているのです。これはちょっと政府委員質問いたしますが、八月に委員会でまとめて発表いたしました数字がありますね。その数字と、アメリカでは潜在患者というものがこんなにあるのですが、日本では非常に少ないと言われている、そういう厚生省の機関も潜在患者について発表したのがありますが、サーベイランスが把握したのと潜在患者のギャップは日本は比較的低いのじゃないか、私はこういうふうに思っています。どのくらいの差が推定をされているのですか。簡単に。
  104. 北川定謙

    北川政府委員 我が国の現状につきましては、先ほど先生指摘いただきました厚生省エイズサーベイランス委員会への報告が集計をされるわけでございますけれども、八月十五日現在のエイズ患者は九十例、それから感染者は千四十八例となっているわけでございます。今先生が御質問の潜在患者の推計でございますけれども、これは昭和六十三年度の厚生省の研究班の報告があって、これによりますと、患者数はサーベイランス委員会の報告と同じ、感染者については一九八七年末現在で二千四百例というようなことになっております。
  105. 大原亨

    ○大原(亨)委員 ちょっと質問しますが、サーベイランス委員会行政委員会なんですか、諮問委員会ですか。
  106. 北川定謙

    北川政府委員 これは保健医療局長が依頼をしておる、言ってみれば諮問委員会というような形になろうかと思います。
  107. 大原亨

    ○大原(亨)委員 サーベイランス委員会委員は専門家であるわけですよ。医者とかそういうふうに限定しておるわけです。ですから、情報が他に漏れないという一つの安心感もあるわけですね。ですからそこへ情報が行っている。氏名は固定しなくても行っているというふうに理解をしているわけです。ですから、これは実態把握の上に立って対策をやるのですから、非常に大きな機能を果たしている。いろいろな意見を聞いておりますと、私はそれはいいと思うのですが、サーベイランス委員会が諮問委員会行政委員会か何かわからぬようなことでなしに、例えばそういう医師とかあるいは法律家等で構成するといたしましても、専門家が一人ぐらいは常駐していて定期的に会議を開くような、そういう委員会にしておいて委員会の独立性をきちっとしたならば、行政の中心となるのではないか。そして実態を把握しておいて、医療機関その他を通じましてやることが必要である。だから、この委員会の法的な性格について、今度の法律では根拠は何条ですか。それをきちっとしなければならない。
  108. 北川定謙

    北川政府委員 サーベイランス委員会法律上の位置づけというものは、今回の法律の中ではないわけでございます。しかし、法に基づいていろいろな情報が上がってくるわけでございまして、これはあくまでもプライバシーを保護するために匿名という格好で上がってくるわけでございますので、これを判断するに当たりましては専門的な委員会という形で十分機能するものと私どもは考えておるわけでございます。したがって、現在のような行政改革という大きな枠組みの中の行政対応といたしましては、あえて行政委員会というような形式をとらなくても、エイズ法案によって十分その目的が達成されるのではないかと私どもは考えているわけであります。
  109. 大原亨

    ○大原(亨)委員 私は、この法律体系の中にサーベイランス委員会の法的な裏づけをきちっとすべきだと思うのです。そして独立性を与えておいて、予算を使うわけですから、ある程度そこへ集約された情報患者のために使われるのだという点を、安心を持って、信頼を持って対応できるような体制を法律の中につくっておくべきではないか。これは単独法という意見もあるのですよ。単独法をつくったらどうだ、それを中心としてやればいいじゃないかという議論があるわけです。私どももそれはうなずけると思いますね。せっかく政府が積み上げて一つの実績を持っておる委員会の背景となる根拠の法規もないというのは、幾ら行政改革といいながら、例えば薬価基準が一万六千件あるというのは世界じゅうにないですよ。そういうのを調査いたしまして、それでこういうものを価格と一緒に許可するというようなことを改革しなければならぬ。  そのことを考えてみましても、サーベイランス委員会をきちっと法律的に裏づけのあるものにして独立性のあるものにするということは、法律をつくる上において欠かすことができないのではないかと私は思いますが、厚生大臣、何か意見がありますか。
  110. 北川定謙

    北川政府委員 確かに先生が御指摘のように、法律に基づいて上がってくる情報を処理する委員会の法的な裏づけということについては、そういうお考えもあろうかと思いますが、先ほど来申し上げておりますように、現在のような行政改革という大きな枠組みの中で法に基づく委員会をつくるということについては、別の問題がある。と同時に、私どもとしては、先ほど来申し上げておりますようにプライバシーを守るために疫学的な情報として上がってくる情報を収集してそれをどう判断するか、こういうことでございますので、現在の運用で行っておりますような委員会で十分機能を果たすものと考えておるわけでございます。
  111. 大原亨

    ○大原(亨)委員 それは政府委員答弁で、ああ言えばこう言う。それはへ理屈というものだ。それなら法律は要らぬということになるんだ。行政措置で全部やったらいいじゃないかということになる。余計なものをつくっているじゃないかという議論になる。行政改革というのは、必要なものは設定していくという方針ですよ。何でもかんでもだめというのじゃなしに、これは時代に対応できなくなったから整理しよう、これは要るというときには、きちっと厚生大臣は、あるいはきょう出席しているのですが、行政管理庁はそういうものを判断するということがなければ、本当の対策は立たないですよ。  それから、もう一つ現行制度で有効なのはカウンセリングですよ。感染者患者や保護者やその他の相談にあずかる、自由に相談できる、安心して相談できる、そういうカウンセリング事業をきちっとする必要がある。これは非常に効果を上げておるし、上げ得る。これは法律の根拠がありますか。出ておりますか。あるいは予算上の措置をとっていますか。
  112. 北川定謙

    北川政府委員 先生指摘のように、私どももこの問題に対応する上で、エイズのカウンセリング問題というのは非常に重要であるということでございまして、六十三年度予算におきましても、経費は五千万を確保しておるところでございます。
  113. 大原亨

    ○大原(亨)委員 それこそ法律に根拠を求めて、カウンセリング事業というものを一定状況では設置をして、窓口を開くということが非常に必要ではないかと私は思うわけです。  それから、日本やアメリカあるいは外国と違う経路の問題で、水際の問題については金子委員質問をされましたし、問題点については保留をした格好になっておりますが、これは日本人が外国へ行って、アフリカに行ったりそういうところへ行って持って帰るのもおるかもしれぬのですね、六百万人おるのですから。それから外国人の旅行者は二百五、六十万人入っているのでしょう。そして水際作戦でチェックするといったって、これはもう予算を取るためにそういう口実を設けるだけの話であって、これはやったら大ごとになりますよ。そんなことはできない。  そういうことよりも日本の社会的な条件の中でどうするかという問題を中心に考えた場合には、やはり啓発と教育の問題が重要ですね。それで、啓発ということになると、日本は高度情報社会で全部の家がテレビを持っているわけですよ。新聞も徹底しておるわけですよ。そういうことですから、それはアメリカの二重構造の社会とも違うし、アフリカとも違うわけですよ。それが進んでいるとか進んでないということになると中曽根発言で批判されたようになるけれども、実態がそうなんです、社会的な基盤が。日本では社会構造がそういうふうになっているから、エイズについての非常に過剰反応な面については是正をしながら、必要な啓蒙についてきちっとやれば徹底するわけです、予算を組んで繰り返してやれば。だから、啓発とか教育についてはどういう手を打つのですか。
  114. 北川定謙

    北川政府委員 先ほど来の御議論でも御答弁申し上げておりますように、エイズに対する正しい知識ということが非常に重要な役割を果たすわけでございますので、エイズの対策の中で、例えば保健福祉相談事業というようなことを設けまして、六十三年度で約五千万、六十四年度は約九千万弱の予算要求をしておるところでございます。そのほか、カウンセラーの養成ですとか学校関係者に対するPR、エイズの正しい知識の普及、このための予算等も六十四年度で要求をしておるところでございまして、こういうものを全体的に運用しながら、一日も早くエイズに対する正しい知識が社会の中で定着をするように着々と努力をさしていただきたい、このように思っております。
  115. 大原亨

    ○大原(亨)委員 いろいろ議論をしておりましても、基本の問題は、エイズ感染者が発症をどうしてとめることができるか、それで患者の、発症者の治療をどうするか、こういう抗体の陽性の問題と治療の問題について開発研究、こういうものに政府としては全力を尽くすということがないと、これは信頼性というものはないと思うのですよ。幾ら取り締まりをしましても、何のめどもないものについてだれも信頼しないで逃げていって広がっていくということになると思うのです。だから、研究とか開発についてどういう考え方、どういう予算でこれからやろうとしているのか、そういうきちっとした政府の義務を法律で決めるというのならば私はわかりますよ。そういう点についてはどうなんですか。
  116. 北川定謙

    北川政府委員 エイズの対策というのは、法律の制定ということは国民の権利義務に関する非常に限られた事項について私どもはお願いをしておるわけでございまして、それ以外のいろんな分野でエイズ感染が蔓延しないための努力、これは強く進める必要がある。ただいま先生の御指摘は大変ごもっともな点がございまして、私どももエイズの研究開発費というものを設けておりまして、これは昭和六十三年度予算では約八億五千万弱でございますけれども、これを六十四年度ではさらに増額要求をしながら費用の面でも遺憾のないようにしたい。それから、国立病院医療センターというところの中にそのための情報センターをつくるとか、あるいは国立予防衛生研究所の中にも研究の組織をつくるとかということもあわせて行っておるわけでございまして、我が国にこれからじわじわと広がっていくこの問題に研究の面からも万全の体制をとりたい、このように考えているわけでございます。
  117. 大原亨

    ○大原(亨)委員 時間もだんだん迫ってまいりましたが、一つ重要な点は、一つ一つやっていきますが、やはり血液行政の中で、その他の原因の中には血友病があるのですが、血友病の汚染血液の問題がある。しかも、ほとんど売血を輸入しているという。日本が最大の輸入先ですね。そういう実態があるわけです。だから、血液については今まで質問がありましたように、自給と献血を原則として、やはりお互い人生の末期とか最終段階とか来ます。天皇陛下の今の病状があるけれども、国民はみんな見ておる。ああいうきれいな血液を自分たちも輸血をしてもらいたいという希望がある。血液製剤にいたしましてもほとんどを外国から輸入している。しかも、それは売血だ。こういうことでカウンセリングとかサーベイランス委員会とか、そういう問題がありましたが、その前の問題で、血友病対策について血液行政をきちっとするという今回の対策ですね、自給と献血についての具体的な方針はたしか昭和三十九年かに閣議で決定しておるわけですから、それをぴしっとやる。一大国民運動を起こしてやる。国会議員もやるし公務員もやるし、みんなやっていく。それで、自分が将来血液製剤を使う場合にはね返ってくるような制度もとりながら、日赤を中心として公共性を持って官の予算を使ってやれば、これはエイズだけではなしに日本の医療にとっても——今のような売血に依存する、薬価差益をやる、在庫を一掃するために決定をおくらせるというような圧力をかけるわけです。そのためにどんどん各方面に宣伝資金や政治資金を出していく。患者団体にまで出しておるわけです、ミドリ十字その他。それで封じ込めるというような、そういう本末を転倒したような政策ではなしに血液行政をきちっと立てなければならぬ、計画を立てなければならぬ。そして、厚生大臣が先頭に立って一大国民運動を起こして、自給と献血によって日本は賄う。イギリスがやっておるわけですから。売血をやるというのは、そんなことはだめですよ。それは漸次縮小していくような方針をとらないといけないのではないか、これが第一点。  それから、薬務行政についても申し上げたとおりですが、私は委員長にお願いしたいんです。時間が十分ないのですが、ミドリ十字が未承認の薬で不正請求したというのがありますね。不正請求がずっと出ているわけです。公的病院もそれを買ったというのですよ。未承認という薬価基準に登載されていない医薬品を使って、そして承認をされている薬剤、それの名前で請求したんですから二重の犯罪ですよ。厚生大臣、私は薬務行政でかなり長い間議論してきたんですが、例えばビタミン剤とか抗生物質などで有名なメーカー品は、銘柄別の登載になっているから高いんですよ。ゾロゾロメーカーで同じような色のものをつくって、そして高い分で、メーカー品で請求をしたならば差益が倍出ますよ、三倍出ますよ、そういうことで売り込むわけです。これが振りかえ請求なんです。この場合はどっちも許可されているんです。犯罪性ということになれば倍、半分です。しかし、ミドリ十字のこの前処分をされた対象は未承認薬の不正請求。それから今度は、ミドリ十字は輸入売血をもとにして血液製剤をつくっているメーカーとしては五大メーカーの一つで、一番の四〇%くらいやっているんですね。ですから、汚染血液の輸入についても一定の役割を果たして、エイズの問題についてはその原因となっておるわけです。これはまた不正請求の問題とは別の問題ですけれども、エイズの問題に関係してはやっぱりそういう問題があるんです。  だから私は委員長にお願いしたいのですが、ミドリ十字の社長は技術者で、私が最近のいろいろな対応を見ていましても非常に率直ですよ。非常に率直な対応をしておる。その前の前は私は非常にいい人だと思ったけれども、あの人の意見については賛成することがあったのですが、松下元薬務局長ですよ。あなたの先輩だ。あなたの先輩が社長だったわけですね。こういうふうな二つの事件を起こして責任とってやめたわけだ。しかし、ミドリ十字は、日本血液銀行の発祥なんですけれども、やっぱり異常な体質があるんです。個人としてはどうこうと言うわけにはいかなかったかもしれないけれども、それは私は責める意思はないけれども、今の社長は非常に率直だけれども、このエイズの汚染血液を日本が輸入をして使ってこういう問題が起きたということと不正請求の問題は、私はやっぱり薬務行政の問題から言うて看過できないですよ。一万六千の薬価基準に価格と一緒に登載しているものを使うんですが、差益をめぐりまして血みどろな争いがやっぱりあるわけです、医療機関とメーカー、卸との間において。外国では薬価基準の制度をとらないですよ。日本は島国だから日本だけでやっているんです。実態調査から登載に至るまでは非常な努力ですよ。医薬品を許可いたしましたら卸はオンコストで、一定のコストで販売するという仕組みになっておって市場をつくっているんですよ、医薬品市場を。日本は医薬品市場ができてない。だからこういうむだと、そして非常に大きな薬害を国民にはね返らせておるわけです。  そういう点で私は、ミドリ十字の社長さんに国会へ来てもらって、これは技術者ですから非常にリアルな質疑応答をしますから、日本の血液行政だけではなしに薬務行政についてぜひ意見を聞いたり議論をしなきゃならぬ。これは今の薬務行政に対して頂門の一針というか非常に大きな影響を持つことになると思うので、これは日本の薬務行政の非常に大きな、これからどうするかという問題の契機になる問題でもありますし、国民的な関心ですから、ぜひ私は参考人として御出席を願って、そして自由にフリートーキングをしてやってもらいたい、お願いしたい、こういうふうに思いますが、委員長、いかがでしょう。
  118. 稲垣実男

    稲垣委員長 ただいまの大原委員の極めて貴重な御指摘でございまして、まことに傾聴に値するものと受けとめております。これらの問題については今後慎重に取り運びをしなければなりませんので、今後理事会等の協議も踏まえまして、前向きに検討してまいりたいという覚悟でございます。
  119. 大原亨

    ○大原(亨)委員 前向きの答弁がありましたが、これは本案を採決する以前にやってもらいたい。それも前向きに処理してもらいたい。これは委員長はうなずいておりますが、これから委員長の信任が問われることになると思うのです。  時間が来ましたから。私は、社会党の案とか法律案とかいうものではないのですが、しかしその構想、やり方、考え方の基本について申し上げたのです。つくるべき法律はつくる。しかし、これは過剰反応ですよ、この法律は。過剰反応で、取り締まりですよ。そういう過ちを本委員会は犯してはならない、こういうことを犯すべきではないということを私の最後の意見として申し上げまして、終わります。
  120. 稲垣実男

    稲垣委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後一時二分休憩      ────◇─────     午後一時四十三分開議
  121. 稲垣実男

    稲垣委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。沼川洋一君。
  122. 沼川洋一

    ○沼川委員 エイズ予防法案につきましては、今まで救済策、また法案の根幹に触れるような問題も幾らか取り上げられてきたわけですけれども、実際法案中身、本体に入るのはきょうの委員会が初めてでもございますし、そういう意味でこの法案中身にいろいろとよく理解できない問題、また非常に心配される問題を多々含んでおりますので、順次そういう問題を質問させていただきたいと思います。  特に、今回のエイズ予防法案中身でございますけれども、一条に「目的」がうたわれ、二条で「国及び地方公共団体の責務」、そしてさらに三番目に「国民の責務」、四番目に「医師の責務」、この辺は特に問題がないところでございますが、第五条以下が非常に問題点を含んでおりますので、この辺について詳細にお尋ねをしてみたいと思います。  第五条には「医師指示及び報告」ということで「医師は、エイズ病原体感染している者であると診断したときは、当該感染者又はその保護者に対し、エイズの伝染の防止に関し必要な指示を行い、」こういう条項がございます。ここで問題なのは、伝染の防止に関し必要な指示を行うためには、まず最初に来るものは告知義務だと思うのですね。本人に対してあなたはエイズ感染者です、これはここからスタートすると思うのです。その上に立っていろいろと指導がなされると思います。その問題で私心配しますのは、本人にキャリアであると伝えると一口に簡単に言いますけれども、例えば日本の場合、がんの告知率がもし正確な数字がわかったら教えていただきたいと思いますが、私の記憶ではたしかついこの前まで一〇%前後ぐらいではなかったかと思います。何か三〇%ぐらいになったというような話もちらっと聞きましたけれども、例えばアメリカあたりが九〇%ぐらい、非常に高いわけです。ところが二十年ぐらい前のアメリカは、がんにおいてすら医師が相手に告知をしていいものかどうか、さんざん悩んだという歴史を持っておりました。日本は相変わらずがんで告知という問題になりますと、それぞれの担当医がこれは最も苦悩される問題でもあるわけです。その辺について日本のがんの告知率がわかったら教えてください。今どれぐらいですか。
  123. 北川定謙

    北川政府委員 現在ここに日本のがんの告知率に関する数字は持っておりませんが、先生指摘のようにまだまだ低い状況にあると存じます。
  124. 沼川洋一

    ○沼川委員 御存じのように、特に日本人は外国人と比べますと極めて情緒的な国民だとよく言われております。また、臓器移植なんかの問題を見ましても、外国みたいに問題がうまく運ばない。やはりその背景には私は国民性の問題があると思うのですね。そういう日本において、がんですら外国に比べたらはるかに告知率が低い。それなのにエイズ感染者に対して、あなたはエイズ感染者ですと果たしてどの医者も同じように告知ができるものかどうか、この辺についてはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  125. 北川定謙

    北川政府委員 基本的にがんとエイズの違うところは、エイズ感染をするというところがあるわけでございます。そういった点からすると、エイズの告知というものはがんの告知とは本質的に違う点があるというふうに存じます。したがって、基本的にはエイズ感染の拡大を防ぐためには患者自身に告知をするということが原則であると私どもは考えておるわけであります。  ただし、非常に幼い子供さんでありますとか、あるいは患者の置かれた心理的な状況とか精神的な状況について、これは医療の場でございますのでいろいろ配慮をしながらできるだけそういう方向でやる、あるいは直接本人にできない場合にはその親族、両親等に十分考慮を払いながら告知をしていくというやり方もあろうかと思います。
  126. 沼川洋一

    ○沼川委員 私は感染の違いを言っているわけじゃないのです。がんも大変な病気ですが、最近は医学技術が進歩してがんの研究が相当進んでまいりまして、かつてみたいな怖さというものがだんだん変わりつつあります。私がここで問題にしたいのは、エイズの場合、キャリアである間はまだしも、一たん発症したら今までのいろいろなデータを見てももう確実に死ぬ病気です。発症したら助かりっこない。がんと比べたら、エイズは怖さが全然違います。ですから、簡単に告知と言うけれども、これを相手に伝えるということはもう死刑の宣告みたいなことになるのじゃないでしょうか。私はそういう意味でお尋ねしたわけです。相手は自分感染者であると聞いた途端に、これはすごいことですよ、恐らくもう目の前が真っ暗になって自分の人生というものは一遍に、それは大変なショックだと思うのです。ですから、ここでは簡単に「伝染の防止に関し必要な指示を行い、」と書いてあるけれども、まず告知というものが本当にできるのか。条項で決めたから、はい、ではやりましょうというふうに、現場のお医者さんがそんな簡単にできるものだろうか。これは、私が日本人の国民性また外国と比べて、そういういろいろな面から考えて、まずこのこと自体がどうなのかということで御質問申し上げているわけです。
  127. 北川定謙

    北川政府委員 先生指摘のように、一人の人間がある病気に感染をしておる、それが非常に重篤な問題である、こういうときに簡単に法に定めてあるから告知ができるか、そういうお尋ねでございますけれども、それは非常に深刻な問題であり、微妙な問題であるというふうに思います。しかし告知は告知として、その後あるいはその前でございますが、患者の心理状況について医師はいろいろと相談に乗る、そこを考慮しながら対話をしていくということが必要になろうかと思います。なお、そういうことを専門にするいわゆるカウンセリングというような問題が出てくるわけでございますけれども、そういう点についても、今後さらにレベルを高めていく努力をする必要があるのではないかというふうに存じます。
  128. 沼川洋一

    ○沼川委員 念のためにお聞きしておきたいわけですが、要するに各現場の医師それぞれに任せるのか、この問題を厚生省でも、基準というとちょっとオーバーになるかもしれませんが、ある程度判断する場合のマニュアル、そういうものをつくって現場の医師に対して周知徹底させる、また指導を行う、こういうことは考えていらっしゃらないのですか。
  129. 北川定謙

    北川政府委員 告知をどういう基準でするかということについては、法律は何も言っておりませんし、厚生省もそこのところは、基本的には感染症であるので告知をすることが原則である、しかしそのやり方あるいはやる時期等についてはそれぞれ現場のお医者さんが主体的に判断をされるというふうに考えておるわけでございます。
  130. 沼川洋一

    ○沼川委員 二次感染を防止する場合に、やはり本人がキャリアであるということをよく周知徹底をするということは大事なことでございます。ただ私が心配しますのは、医療現場でこの問題をめぐって相当混乱が起こるのじゃないか、率直に言ってそういう不安がございます。ある患者にはその日に言ったって大丈夫だというふうに医師判断をする患者もいるでしょうが、やはりそれぞれ性格も違えば抱えている家庭環境も違えば仕事も違うわけです。いろいろな家庭の背景、その人のいろいろな立場を考えて、ある人には一カ月かかって告知せざるを得ぬような人もおるかもしれません。ある人は一週間ぐらいで告知できるかもしれません。ただ簡単に診察して抗体陽性者だとわかったからといって、その場で即告知できるような問題でないだけに、この辺はまず入り口ですけれども非常に難しい問題を含んでおりますし、この辺の指導についてはひとつしっかり厚生省の方でも現場の医師とよく相談の上検討していただきたいと思います。  ただこの場合、さらにお尋ねしておきたいのは、配偶者がいた場合に本人だけに告知するのか、その配偶者にも告知するのか、この辺についてはどうお考えになっていらっしゃいますか。
  131. 北川定謙

    北川政府委員 この点について行政側がどうすべきであるということを端的に申し上げることはいかがかと存じますが、そこは現場のお医者さんが患者とその配偶者との人間関係、これは状況がいろいろあると思います。そういうことを総合的に判断をしながら、できることならば、その配偶者にも理解をし患者の療養生活をサポートをしていただくためにも、患者状況について正しい判断を伝えるべきではないかというふうに思います。
  132. 沼川洋一

    ○沼川委員 医師が本人にだけ伝えて配偶者に伝えていなかった、これは御夫婦ですからそういう中でもし感染をした場合に、例えば奥さんとしますとこっちから医師が訴えられるというケースもありますね。全然私には知らせてくれなかった、だから自分感染した、医師はけしからぬ、こういう問題、想定できますね。こういう場合はお考えになっていらっしゃいますか。
  133. 北川定謙

    北川政府委員 望ましい状況ではございませんけれども、現実の社会でございますから、そういうことも起こり得るものと思います。
  134. 沼川洋一

    ○沼川委員 それと、あとは保護者ということもあります。恐らくこれは未成年の場合だろうと思います。ですから、「医師指示及び報告」という項目のしょっぱなから非常にこれは難しい問題を抱えておりますので、この辺については十分よくいろいろな場面を想定されて、その辺の指導というのはしっかりお願いをしたいと思います。  この第五条の段階では、「必要な指示を行い、」とありますが、この「必要な指示」は、どういうことを指示なさるわけですか。
  135. 北川定謙

    北川政府委員 感染者診断した医師は、第二次の感染を防ぐということが非常に大きなことになるわけでございますので、そのためにはこの疾病が主として性交等によってウイルスが感染をするというところから、そういう場面において感染防止をするいろいろな手段、例えばコンドームを着用するとかあるいはさらには医療機関に定期的に受診して健康管理と二次感染の防止の問題について指導をする、あるいは感染者の家族や性的接触の相手方につきましても、感染者本人を通じて医療機関での受診を勧めるなど、いろいろな場面が想定をされるわけでございます。
  136. 沼川洋一

    ○沼川委員 ここに「七日以内」とありますが、これは何か特別な意味がございますか。
  137. 北川定謙

    北川政府委員 「七日以内」といいますのは、これは感染症でございますので情報がなるべく早くということを考慮して、これが適切な時期であるというふうに判断をしているわけであります。
  138. 沼川洋一

    ○沼川委員 次の六条の問題でございますが、これには「感染者の遵守事項」、二点ほど定めてあります。「感染者は、人にエイズ病原体感染させるおそれが著しい行為をしてはならない。」この中で「病原体感染させるおそれが著しい行為」、この範囲は大体どういう範囲を指すわけですか。
  139. 北川定謙

    北川政府委員 一つには、今までの諸外国のいろいろな実例から判断しまして、何といっても性行為が一番具体的な感染の場であろうと思います。そういうところからすれば、直接の接触を避ける努力をする、あるいは麻薬等の静脈注射回し打ちという血液を直接接触をさせるというようなことは非常に感染の機会が多いわけでございますから、そういう点については特段の注意を喚起をする、さらには出産の問題ですとかあるいは夫婦間の問題ですとか、いろいろと一般の家庭の中でも考えられなければならない問題があるわけでございますけれども、法律はそこのところまでは細かに考えてはいないわけであります。
  140. 沼川洋一

    ○沼川委員 今ちょっと問題出ましたが、特にその中で妊娠、出産、こういう問題、これはかつて高知の問題がありましたときに、本人が産みたいという女性に対していろいろな形で圧力がかかったということ、その事実はよく御承知のことと思いますが、この著しい範囲の中にそういう問題までとらえて、特に私が具体的にお尋ねしたいのは、妊娠、出産という問題に対して厚生省はどういう御見解ですか。
  141. 北川定謙

    北川政府委員 人の人権ということの中に、こういう妊娠あるいは出産というものは基本的な人権の一つであろうというふうに考えるわけであります。これは、最大限に本人の意思を尊重するということは非常に重要な問題であろうと思うわけであります。しかし、そうはいっても妊娠をすることによって赤ちゃんに感染が起こるということがかなりの頻度であるわけでございますので、この点については担当される医師は非常に悩まれるわけでございますけれども、そこのところについては患者の意思を最大限に尊重する、しかし医学的な事実関係については十分に説明をして理解を求める、最後の判断は御本人がするというようなことになろうかと思うわけであります。
  142. 沼川洋一

    ○沼川委員 前段は非常にすっきりしていますが、しかしというところから難しい、ちょっとすっきりしないのですが、やはりそうはいっても現場で、この前の高知みたいに医学的ないろいろな根拠を挙げて、結果的には本人からすれば圧力をかけられる。自分の、人間として産みたい、そういう基本的人権にかかわるようなところまで下手すると踏み込むという有為になるおそれがここには多分にあると思いますので、いろいろとその点お考えになっていらっしゃると思いますが、特にこれは配慮をすべき問題点じゃなかろうかと指摘しておきます。  さらに私がここでお尋ねしたいのは、著しい行為の範囲について今局長からいろいろお聞きしましたけれども、では著しい行為であるかどうかというのは、一体どういう調査をやって、どういう方法情報を得て、これは危険行為、著しい行為である、こういう判断をされるのですか。
  143. 北川定謙

    北川政府委員 これは調査をしてということではなくて、医師患者を診察し治療をしていく過程で、そういう点が他に感染をさせる心配があるということを説明していくわけでございますから、そういう指導を受けて患者が適切な生活をするということが正しい感染防止の結果につながる、このように思うわけであります。
  144. 沼川洋一

    ○沼川委員 実際問題、著しい行為の範囲となると、非常にこの辺になるとその判断は難しいんじゃないか、とりようによっては非常にいろいろなのが含まれてくるんじゃないか、そういう心配がございます。それと問題は、この六条で「感染者の遵守事項」、「著しい行為をしてはならない。」とか「医師指示を遵守するように努めなければならない。」とか、いわば法律でこういうことを定めてあるわけですが、言ってみればこの一項も二項もこれは医師の領域であって、何も改めてこんなものを法律で定めて守らなければならぬとか、そういうふうな条項とは違うのじゃないか、こういうのは医者がやる問題じゃないでしょうか。
  145. 北川定謙

    北川政府委員 確かに患者治療を受けるという状況のもとでは医師との関係のもとにあるわけでございますけれども、患者といえども社会の一員でございますので、社会を構成する一員として、自分が持っておる、これは大変不幸な状況にあるわけではございますけれども、そういう病気を他に感染させない、そういうことを法のもとに努力をしていただくということは、決して不当なことではないというふうに存じます。
  146. 沼川洋一

    ○沼川委員 次に、七条の「医師通報」の問題ですが、これも午前中非常にこの中身について質問があっておりましたが、特にこれは問題のあるところですね。この条文の中で「感染させるおそれがあると認めるとき」という言葉があります。また「感染させたと認められる者」また「感染させるおそれがあることを知り得たとき」、こういうような規定がございまして、医師感染拡大のおそれがあると判断した場合に知事に名前を通報することになっております。しかし、これは現実には個々の医師判断医師それそれによって違うわけでございまして、相当この段階ではばらつきが出ることが予想されるわけです。言葉をかえて言うと、公平さという面で問題が一番あるところじゃないか。ですから、やはり判断について統一的な判断基準というものを図る必要があるのじゃないか。そういうことについてはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  147. 北川定謙

    北川政府委員 この問題は、法律があるなしにかかわらず、医療の現場においては担当したお医者さんは非常に悩まれるわけでございます。そういう点でございますので、このエイズ予防法という体系の中でそういう点についてはある一定ガイドラインを示して、その線で対応していただくというふうにすることがより状況をよくするのではないかというふうに考えるわけでございます。
  148. 沼川洋一

    ○沼川委員 また、この中にあります「多数の者にエイズ病原体感染させるおそれがあると認めるとき」、こういった人は大体どういうグループを想定されているのですか。
  149. 北川定謙

    北川政府委員 一番端的な例は、午前中の御議論でも申し上げましたけれども、売春行為というような不特定多数の者の間で性行動をする、あるいは麻薬等の回し打ちをするというようなことが現在諸外国においても非常に問題になっておりますし、我が国においてもそういう集団の中での感染が一番進んでおりますので、そういう点を明確にとらえて、そういう点に着目してこの法の運用をしていくことが一番効率的ではないかというふうに考えるものであります。
  150. 沼川洋一

    ○沼川委員 売淫の常習者、そういったグループを想定されていると思いますが、気になるのでお尋ねしておきたいと思いますが、そういう売春を行うものとフリーセックスとどう区別されますか。
  151. 北川定謙

    北川政府委員 売春というのは、字義どおりに解すれば、金銭の授受を伴うというふうに考えるわけでございますけれども、そういう点を除けば、売春ということとフリーセックスということとは同じ問題があるというふうに考えております。
  152. 沼川洋一

    ○沼川委員 非常に一つ一つに難しい問題がたくさんありますので、実はきょうも午前中御答弁を聞いておりまして、これだけの法案をつくったのだから、本当を言うと、厚生省は胸を張って堂々と自信を持って答えていいはずの答弁が、さっきそこで聞いておりまして、何か一々苦慮して答弁されている。そのことを一つとらえても、このエイズ法案というのは大変な法案だな、そういう思いがいたします。法案をつくった厚生省が何か口ごもって答えなければならないような法案が通ったらどうなるだろうか。あとずっと聞きますから、できれば自信に満ちて、確信を持って御答弁いただきたいと思います。  ここでちょっとまた五条に返るわけですが、今私が言うこの七条のところは感染者医師に従わない場合、五条の場合は性別と年齢だけでよかったわけですが、そういうケースの場合には氏名と住所等も届け出る、またどういうわけで従わないかという報告もすることになっていますが、問題は、五条を見ますと、これはいろいろと意見の分かれるところでもありますけれども、五条の段階ではやはり感染者を全国的に把握する、各都道府県にどういう分布状況なのか把握するという意味で、ですから医者指示に従っている限りは性別と年齢しか届け出義務はない。そこだけ聞いていると、何か大丈夫かなと思いますが、恐らく各医者は、もしその患者医師指示に従わない場合は今度は住所と氏名を届けるわけですから、最初の段階知事への報告は性別、年齢だけで済むでしょうが、その最初の段階で住所も氏名もやはり医師に知られるということは当然考えられますよね。
  153. 北川定謙

    北川政府委員 日本の通常の医療の場においては、患者を診察する医師は基本的には住所、氏名をちゃんと調査した上で診療行為に入るというのが通常でございます。ただ、匿名検査というような考え方もございまして、特にこのエイズの場合、自分感染しているかもしれない、非常に不安がある場合に、しかし大多数の人はそういう場合でも感染をしていない場合が多いわけでございますので、実際の社会の現場では匿名検診ということも行われておるわけでございますし、厚生省としても今後さらにそういう状況を拡大をして、医師に名前が知られる、あるいは社会に名前が知られるというおそれを排除しながら検査を受けるということを一方では進めていく、こういうふうに思っているわけであります。
  154. 沼川洋一

    ○沼川委員 このエイズ予防法案に反対される、例えば現場の臨床医の先生あるいは公衆衛生学の専門家の方々、そういった方々の意見の中で非常に分かれるのが、この五条の段階なんです。ある先生は、法案そのものは反対だ、特に七条以下は問題があるけれども、五条の性別、年齢くらいは把握という意味であってもいいんじゃないか、こうおっしゃる先生もあれば、しかし性別、年齢がわかるということは結局そこで全部わかってしまうんだ、ですからこの五条すら問題だ、そういうふうに厳しい指摘をされる先生もあるわけです。まして感染者から見ますと、この法案をずっと見ていく限りにおいて、医師指示にさえ従っておれば氏名とか住所が外に漏れることは絶対ない、こういうことを局長は再三にわたってここで答弁されていますけれども、感染者立場になりますと、もう医師に言った途端に、性別、年齢だけじゃなくて住所から氏名から職業までわかってしまうというような、普通の人以上にやはり医療機関を 疑ってかかるという心理から考えてみますと、この五条の項目も、今厚生省が外に向かって説明されておるように性別と年齢だから心配ない、そういう指導が何かいま一つ信頼されていないのじゃないか、そういうことは私も非常に感じます。  これは時間がありませんのでちょっと先に進みたいと思いますが、特に性病予防法では、患者医師指示に従わないで、またその治療を受けない場合に限り氏名等を届け出るということになっておりますが、このエイズ予防法案は、多数の者にエイズ病原体感染させるおそれがあると認める者の氏名、居住地通報する。性病予防法の場合よりか、範囲が非常に拡大されていますね。これは何か意味があるわけですか。  また、本来医師患者というのはお互いに秘密保持というのを前提にして成り立っているわけですけれども、この条項を見ますと、結局今度は行政庁が関与してくるわけですね。こういうことがあるということは、感染者通報を恐れて診療をちゅうちょするということにつながる最大の原因になっているのじゃないか、こういう感じを持ちますが、その辺いかがでしょう。
  155. 北川定謙

    北川政府委員 この点については再三御議論いただいているわけでございますが、このエイズ予防法案が誤解をされておる点がそこにあるというふうに思うわけでございます。この法案の根底に流れておる思想は、何といってもやはり患者プライバシーを守る、これが基本的な前提である。そういうことをしながら、なおかつ社会の中に広がっていくエイズの蔓延を防がなければならない。そのために最小限のことをするという考え方に立っておるわけでございまして、その点については今後とも私どもとしても社会の皆さん方に十分御理解をいただけるように、さらに理解を深めるべくPRをしていきたい、このように思っておるわけであります。
  156. 沼川洋一

    ○沼川委員 さらに、この検査についてちょっと伺っておきたいと思いますが、これはあくまでも人権、プライバシーを保護するという観点から、医師感染者信頼関係に基づく保健指導によるということがこの法案の基本にされていると思います。ただ具体的に、例えば検査結果が陽性と出た場合、医師がどのような場所でどのようにして本人または保護者に告知をするのか、また、どんな方法でこういった患者らと性的に接触した人に医療機関で診療を受けるように呼びかけるのか、こういう点については何かお考えがありますか。
  157. 北川定謙

    北川政府委員 現在、いろいろな医療の現場でいろいろな形でエイズの検査が行われておるわけでございますが、仮にその検査の結果が陽性であった、このことは電話あるいは郵便、もちろん直接面接をしながらそのことを伝えるという形になるわけでございますけれども、いずれにしても陽性であるということは発病をするということに密接につながるわけでございますので、しかるべく医療機関に来て具体的な相談あるいは発病予防ということについていろいろな対応をとっていくわけでございますので、これはどうしてもやはり医師との面接ということが感染がわかった段階から必要になってくるというふうに思うわけであります。  それから、第三者の、その背後にある感染源というものについては、直接面接をした患者の供述といいますか申告といいますか、そういうことを介して情報を得るということになろうかと思います。
  158. 沼川洋一

    ○沼川委員 次に、第八条の「都道府県知事の健康診断勧告」、この問題についてお尋ねをしておきたいと思いますが、ここには要するに知事が「感染者であると疑うに足りる正当な理由」という言葉があります。また、「不特定かつ多数の者にエイズ病原体感染させるおそれ」、こういう言葉がありますが、そういうふうに判断したときには「エイズ予防のため特に必要があると認めるときは、その者に対して、期限を定めて、感染者であるかどうかに関する医師の健康診断を受けるべきことを勧告する」、こうあるわけですね。ここで心配なのは、「感染者であると疑うに足りる正当な理由」とかあるいは「多数の者にエイズ病原体感染させるおそれ」、こういうものを何を基準として判断するのか。しかも、その認定の手続については何も書いてありませんし、結局これは自治体によって判断が個別的に流れて乱用されるおそれが多分にあるところなんですね。こういう点についてはどうお考えになっていらっしゃいますか。
  159. 北川定謙

    北川政府委員 感染者であると疑うに足る理由としては、まず第一には、第七条第二項の規定によります医師からの通報、それからさらに第十条の質問に対する回答の結果、感染者感染源であるとわかった場合等が考えられるわけであります。いずれにしてもこの条項は、勧告というような言葉で言うと強いニュアンスがあるわけでございますけれども、実際には都道府県の行政官である医師が相談の窓口になるというようなことになろうかと思いますので、実際には、そこに来られた患者さんあるいは感染心配のある方の医療あるいは保健の相談を受けるというような形で対話が進むわけでございます。
  160. 沼川洋一

    ○沼川委員 ここのところはちょっと重ねてお聞きしておきたいと思いますが、第五条、それから第七条、これはいずれも医師感染者判断して、また今度は医師指導に従わない場合に都道府県知事に通告する。ですから、都道府県知事の場合はそれを受けていろいろと対応する場合もあるのでしょうが、この八条については、これは別に医師の通告によらないで、都道府県知事が「感染者であると疑うに足りる正当な理由がある者」とかあるいは「不特定かつ多数の者にエイズ病原体感染させるおそれがある」と認めたときには、知事の裁量でやっていいということですね。
  161. 北川定謙

    北川政府委員 必要がある場合には知事はそのようにすることはできるということになっております。
  162. 沼川洋一

    ○沼川委員 これは言ってみれば、行政医療に対する介入じゃないですか。こういった医療に素人の行政が全く自分判断によってどんなことでもできる。通告によって動く場合と全く別のケースであるだけに、特にここのところは何か拡大解釈されて、これは下手をすると人権、プライバシーの侵害につながるというようなおそれが多分にあると思うのですね。  さらに、この健康診断命令ですけれども、恐らくこれは裁量によって行われると思うのですが、例えば普通一般の手続を考えますと、裁判官の令状とかあるいは適切な手続によることなく行政当局者の判断だけでそういうようなことが命令されるわけです。しかも、今度は命令に違反した場合には罰金を取られる。そういうものになっておることを考えますと、これは人権を侵害するおそれが多分にあるのじゃないか。また、こういったことをやられても、恐らく表に出るということは少ないのじゃないかと思います。泣き寝入りするケースというものにつながっていくのではないか。こういうことで心配するわけですが、その点はいかがでしょうか。
  163. 北川定謙

    北川政府委員 都道府県知事指示をするという現場の状況想定すると、それは大多数の場合、保健所等医療の機能を持った行政機関でこういう行為が行われるというふうに思うわけでございまして、そういう場面で患者さんと十分な対話をしながら、患者さんの病気の心配にこたえながら、しかもこの病気の他への感染の危険ということも十分説明しながら、合意を樹立をしながら、その必要な指導をしていくわけでございます。そういう点では、この法文をこのまま見れば非常に強圧的に見える点があるわけでございますけれども、実際の現場はそのようなことにはならないというふうに確信をしております。
  164. 沼川洋一

    ○沼川委員 続く第九条もやはり問願ですね。「第七条第一項の通報に係る感染者若しくは前条第二項に規定する健康診断により感染者であると確認された者又はその保護者に対して、エイズの伝染の防止に関し必要な指示を行うことができる。」これは都道府県知事の権限がうたわれておるわけですが、言ってみれば伝染防止の指示権だと思うのです。これは他の衛生法規なんかと見比べてみますとちょっと類例のないものじゃないかなと思って、この点も非常に心配するところです。要するに行政職員に指示させるもので、エイズが性行為感染症であるということを考えますと、これは行政職員が行い得るものかどうか、その辺の妥当性について極めて問題が残るところなんですが、この辺はいかがですか。
  165. 北川定謙

    北川政府委員 第九条の指示でございますけれども、先ほど来申し上げておるように、都道府県知事の権限のもとに、具体的には保健所等の医療機能を持った施設においてこういうことが行われるわけでございますから、医療という大きな概念の中でこの仕事が具体的に行われるということになるわけでございます。
  166. 沼川洋一

    ○沼川委員 先ほども言いましたけれども、これはまさに行政医療への介入と言っていいような、非常に心配な点でございます。しかも、性病予防法を見ましてもこんな規定はないわけですね。また今も言いましたように、まさしくこれは医療行為に対する行政の介入を意味するものであるということを非常に強く感じるわけです。こういうことがなされますと、一番大事な医師患者信頼関係がますます破壊されていくし、潜在的感染者受診拒否とかあるいは医師のカウンセリング等の徹底がますます困難になってくる原因になりはしないか、こういう点を心配するわけですが、この点はいかがですか。
  167. 北川定謙

    北川政府委員 ただいま先生が御説明になられました性病予防法との関係でございますけれども、性病予防法自体はこのエイズ予防法と比べて知事指示、権限等についてはさらに強いいろいろな規定を持っておるわけでございまして、私どもとしては、エイズという病気の現在における特性というものを踏まえて考えていくと、性病予防法とはもっと違った、特に人権への配慮ということに力点を置いて新しい法体系で対応することが望ましいと考えているわけでございます。そういうことからいたしましても、この九条の問題につきましては、先ほど来申し上げておりますように都道府県知事の機関としての保健所あるいは医療機関等が直接患者と対話をすることになるわけでございますので、行政医療の現場に介入するというような御心配はないわけでございます。
  168. 沼川洋一

    ○沼川委員 さらに、その職員の権限として「感染者若しくは感染者であると疑うに足りる正当な理由のある者又はその保護者に対し、必要な質問をさせることができる。」感染者であると疑うに足りる理由があれば職員が出ていって質問をする権限があるわけですね。この質問内容がどうなるか。この辺になると、これは非常に拡大されて、個人プライバシー侵害につながるような心配が多分にあるわけですね。しかも、質問に対して虚偽の答弁をした場合には罰金がある。これは憲法においてすら黙秘権というのがありまして、例えば自分に不利な事柄は答えなくたっていいのです。ところがこういう質問権があって、しかも罰金がある。そういうものを飛び越えたような、極めて乱用が拡大されるようなものがあるというところが、この法案が人権、プライバシーが守れないと指摘される大きな問題点じゃなかろうかと思うのですが、この辺はいかがでしょうか。
  169. 北川定謙

    北川政府委員 現在の個人の人権を尊重するという基本的な立場にある社会におきまして、個人自分の不利益にかかわることを述べる必要はないことは基本的な点であると思います。したがって、自分の不利になるというようなことについては黙秘をすることは当然あり得るわけでございますが、一方では虚偽の申告をする等によって間違った判断行政側に起こる、そのためにさらに次の段階へ進んで、そこで第三の関係者にいろいろな影響を及ぼしていくというようなことも考えられますので、そういうことがないようにするためにこの条項を設けているわけであります。
  170. 沼川洋一

    ○沼川委員 再度お尋ねしておきたいと思いますが、ここで都道府県知事指示として述べられております「伝染の防止に関し必要な指示」、この「必要な指示」の具体的内容は、一体どういう内容なんですか。
  171. 北川定謙

    北川政府委員 先ほど来申し上げておるわけでございますけれども、このエイズという感染症は血液を介してあるいは精液を介して感染するわけでございますので、輸血血液の提供というようなことがまず考えられるわけであります。さらにはコンドームを用いない性交渉、あるいはかみそり等は自分の専用とするとか、あるいは出血時には適切に対処する等日常生活における注意事項等が、医師指示が対象になるわけでございます。
  172. 沼川洋一

    ○沼川委員 重ねてお聞きしますけれども、こういった都道府県知事または職員が医療行為に関しての適切な指導が果たしてできるのかなと考えてみますと、またそれを飛び越えて私生活にまで及ぶ、そういう質問あるいは指導、そういうものに踏み込むおそれがここには多分にあります。これはどうでしょうか。
  173. 北川定謙

    北川政府委員 先生の御指摘のような、私生活に干渉するというようなことは全く考えられないわけでございまして、一般的にエイズという感染症を他に感染させないためには、そういうことについての知識がない場合については、患者さんにとってそういう知識を得ることは非常にメリットになるわけでございますから、そういう点では決して強権的にそういう指示をするということではなくて、むしろ指導的にそういうことが行われるというふうに理解していただくことが適当ではないかというふうに思います。
  174. 沼川洋一

    ○沼川委員 さらに今度は、自治体職員が感染者と連絡をとったり会う場合、どういう場所で会うのか、どういう連絡方法で会うのか。この辺になってきますと、これはもう極めて人権、プライバシーを侵すおそれがいろいろな面で心配されるわけですが、そういうことについてはいかがですか。
  175. 北川定謙

    北川政府委員 都道府県の職員と言いますが、これは特定の職員を指定するわけでございますから、この場合には医師あるいは保健婦ということになろうかと思います。そういう点からして、決して一般の職員だれでもがそういうことに関与していくということはないわけでございますので、医療に十分な知識を持った職員が具体的に対応する、そして、その指示等がどういう形で行われるかということになるわけでございますけれども、本人のプライバシーを守るという意味からすれば、まず電話というようなことでの対応が非常に便利かと思うわけでございますけれども、その他郵便等で対話をするとか、さらには直接保健所等に出てきていただいて対話をするということが考えられるわけであります。  いずれにしても、この場合にはその該当者のプライバシーを慎重に守るという観点から、御本人の意思、そういうことを前提として具体的な方法を考えるということになるわけでございます。
  176. 沼川洋一

    ○沼川委員 この法案の中に罰則規定がありまして、エイズ治療を行った医師あるいはこの法律に基づくエイズ予防事務に従事した公務員あるいは職務上知り得た秘密の漏えい、こういった違反に対して罰金があります。いわば守秘義務を課してさらに罰則があるわけですが、現在のような日本の社会情勢下では、一たんエイズ感染者であるということが知れ渡ったときには徹底的な差別を受けるし、家庭崩壊にもつながる、そういういろいろ心配な問題があるわけですが、一たんそういうことが起こったら、二度と復権できないわけです。だから、そういうことのないように、こういった担当者には守秘義務があって、さらに罰則が設けられておる。しかし、日本の場合、守秘義務違反で処罰された例というのはほとんどないと言ってもいいぐらいなのですね。ですから、幾ら「一年以下の懲役」「三十万円以下の罰金」というふうに書いてあっても、この罰金が安いとか高いという問題ではなくて、日本においてそういう守秘義務が本当に守れるかという問題の方がやはり今一番問われておる問題じゃないか。ですから、何か罰則があるから人権、プライバシーが守れるみたいなそういう法案の出し方ですけれども、この辺が一番危ないのであって、罰金とかそういうものには関係ないのが日本の現状ではないでしょうか。どうでしょうか。
  177. 北川定謙

    北川政府委員 この点につきましては、私どもも先生と全く意見を同じくするものではないかというふうにすら考えるわけでございますが、罰則があるから物事が守られる、秘密が守られるという理解の仕方ではなくて、個人の人権あるいはプライバシーの保護ということに対するこのエイズ予防法案の持っておる理念、基本的な考え方、こういうものをこういう形で表現をする、そういうことによって現場の関係者にこのエイズ予防法案の持っておる個人プライバシー保護ということに対する考え方の重みあるいは社会の一般の国民の皆様に対してもそういう点を理解をしていただく、そういう意味が非常に強いのではないかというふうに思うものでございます。
  178. 沼川洋一

    ○沼川委員 もう一つお聞きしておきたいと思います。これは午前中も質問があっておりましたが、出入国管理及び難民認定法の一部を改正して、エイズ病原体感染している一定の者は当分の間本邦に上陸することができないこととする、こういう問題があります。特に外国人の出入国の場合、いろいろな国際法上のバランスを考えますと、日本だけが特異なものをつくって国際社会の中で後で問題になる、そういう心配はございませんか。
  179. 北川定謙

    北川政府委員 この件は、基本的には法務省の方からお答えすべき点だと思いますが、私の方としてこのエイズ予防法案に関連する問題としてお答えをさせていただくわけでございますが、確かにこれは国際的な問題でございますので、日本が一方的にこういう条項をつくって一方的に運用していくというようなことになれば、場合によってはいろいろな国際摩擦を生ずることが起こるかもしれません。しかし、一般的に主権国家が自分の国の衛生状態を守っていく上で、そういう感染性の強い患者が見つかった場合に全く対応ができないということでは国民の健康を守る上からも非常に問題があるわけでございますので、そういう条項を持ち、その運用に当たっては慎重、適切に対応していくものではないかというふうに考えるわけでございます。
  180. 沼川洋一

    ○沼川委員 一応法案の持つ問題点をずっと聞いてきたわけですけれども、一つ一つに実際法律が通った場合に運用の面で解釈の仕方によってはどうにでもなるような箇所がたくさんある。これは一番局長がお認めになっているところだと思うのです。ですから、こういう法案については、そういうあやふやなものがあるということは人権侵害のおそれが多分にあるということをよほどしっかり知っておっていただかないと大変じゃないかと思います。  そこで、私の言いたい本論に、このエイズ法案の持つ問題点何点かにわたって改めて御質問をしたいと思うわけですが、これはぜひ大臣にも御見解をお聞きしておきたいと思います。  ここに、エイズ法案の「目的」として「この法律は、後天性免疫不全症候群予防に関し必要な措置を定めることにより、エイズのまん処の防止を図り、もつて公衆衛生の向上及び増進に寄与することを目的とする。」これだけが目的となっています。今いろいろと私が指摘しました、極めて人権、プライバシーを侵害するおそれがある条項がずらっと法案の中に含まれています。また、この法律の「目的」を読みましても、簡単に読んで感じますことは、何か社会防衛に徹している。これはこの委員会でも何回も言われましたが、要するに、外国と比べたら幸いなことにまだまだ日本はエイズ感染者が少ない、アメリカみたいになったらもう手おくれである、ですから今のうちに何とかその防止を考えなければならぬ、このことは全く意見一致でございますが、それが、だからやはり法律をつくらなければならぬというふうに展開されるのと、法律以前にもっとエイズ実態をよく把握して、また伝染の問題等も含めて何が一番最高なのかということを考える必要があるのじゃないか、そこに意見が食い違うわけですが、この「目的」を見る限り、私が非常に残念だと思うのは、どうしてもこれはどんなに読んでも社会防衛的なそういう性格を非常に強く感じます。逆に、ここで言うところのエイズ感染者というのは何か社会悪であるというような、どうもそういうとらえ方があるんじゃなかろうか。きょうは大臣いろいろと答弁の中に、共存できるような社会という答弁をなさっていましたけれども、やはり何か罪悪視しているという認識を国民に植えつけている、目的からして何か社会的防衛の色彩が強い、そういうふうに感じてなりません。残念だと思うのは、こういう患者を保護する、救済するという、この法案には「目的」の中にそういう視点が全然ないわけですね。ですから、そういうことが抜けている法案というのは、何か取り締まりをする、罪悪視して取り締まるというようなそういう性格を強く感ずるわけですけれども、この辺についての大臣の御所見をお聞かせいただけないでしょうか。
  181. 北川定謙

    北川政府委員 今の先生の御議論をお伺いしておりましても、この法律に対する理解の仕方というものが、私どもがこれからこの法律を運用する立場に立っての考え方と、この法律の適用を受けていろいろと御心配になる立場のお考え方とかなりのギャップがあるように感ずるわけでございますけれども、実際はあくまでもこれは公衆衛生立法でございまして、患者を罪悪視するとか社会防衛のために個人の人権を侵すとか、そういうことがないように特に配慮をするということからエイズ後天性免疫不全症候群という疾病だけを取り出して単独の法律の体系をつくらせていただいておるわけでございまして、そういう点からすれば、従来の伝染病予防法あるいは性病予防法とお比べいただきまして、人権への配慮というのが相当数段に進んでいると御理解をいただけるのではないのかなというふうに思うわけでございます。  それから、ただいまの法の「目的」の中にそういうニュアンスがないという御指摘もあったわけでございますが、実際第三条には、「国民は、エイズに関する正しい知識を持ち、」ということと「エイズ患者等の人権が損なわれることがないようにしなければならない。」という規定を持っておるわけでございますので、そういう観点からしましても、国民一般のみならず、これはこの法律を運用する行政当局にとっても当然基本的な問題認識であるというふうに思うわけでございます。
  182. 沼川洋一

    ○沼川委員 だから私が言いたいのは、その「目的」にそういうニュアンスがないどころか、そういう項目がないわけですね。保護する、こういうことも大事な目的じゃないかと思うのです。救済の手を差し伸べる。何か取り締まるというようなことだけがこの「目的」でいたずらに強調されているような気がいたします。  それから、今おっしゃったように国民の責務として「正しい知識を持ち、」また「エイズ患者等の人権が損なわれることがないように」、人権については本当にこれだけですね、言葉は。「エイズ患者等の人権が損なわれることがないように」これが余りにも抽象的な表現だけにとどまっておるのに比べ、人権を損なうおそれがある項目はやたらに多いわけです。例えばエイズ患者のいわば人権、プライバシーを守るというのだったら、具体的に就労の場合はどうするのか、就学における問題はどうするのか、もっと細部にわたってこういう場合には差別をしてならぬというような、そういう歯どめがしっかりなければならぬのに、ただ言葉がばっと並んでいる。そういう点を総合しますと、私は社会的防衛という性格が強過ぎて保護という視点がないということを申し上げたわけですが、いかがでしょう。
  183. 北川定謙

    北川政府委員 法律の体系をどのようにまとめるかという問題になろうかと思うわけでございますけれども、ただいま先生が御指摘されたような就学あるいは就業の場における差別の問題、これはこの法律規定にはございませんけれども、他方においてもそういうことについての基本的な理念というものはあるわけでございますので、そういうものを踏まえて実際に我々がこの法律を運用していくいろいろな場面で、国民のエイズに対する正しい認識を深めていただくという過程を通してそういう問題についても十分に配慮していきたい、このように考えておるわけであります。
  184. 沼川洋一

    ○沼川委員 改めて局長にお尋ねしたいと思います。この委員会で前にも一遍御答弁を聞いたことでもあるわけですが、改めて聞きたいと思います。  エイズ予防、要するに二次感染を防止するということについて再三にわたって、これは絶対日本では法律が必要だ、こうおっしゃっているわけですね。ですから改めて聞きます。法律が必要であるという理由をひとつもう一遍明確に述べてください。
  185. 北川定謙

    北川政府委員 日本の社会の中で法律があるなしにかかわらずエイズ感染が拡大をしておるということは事実であります。それからまた、いろいろな医療の現場で患者さんに対して医師がいろいろな対応をし、いろいろとお悩みになっておられるということも事実であるわけであります。また、国としてもあるいは社会一般的に見ても、エイズの拡大を防ぐということを具体的に行動に移さなければいけないわけでありますけれども、その場合に、法律に基づかないで行政指導あるいは都道府県の個々の判断等で行われる場面を考えますと、私どもとしては、むしろ一つガイドラインとしての法律をもって個人プライバシー、人権を守るということへの最大の配慮をしながらエイズ感染を何としてでも防ぐ、この基本方針はぜひ必要ではないか。そういう観点からしますと、法律は、いろいろな御議論はございますけれども、一つの規範としてこういうものを現段階で持つということはぜひ必要ではないか、このように考えておるわけであります。
  186. 沼川洋一

    ○沼川委員 今、御答弁の中に含まれたと解するわけですが、この前、一遍この委員会ではっきり三点ほど挙げられましたね。そのときの局長答弁を覚えているわけですが、何で法律が必要であるかということの理由を三つ述べられました。一つは、やはり法律がないと感染者実態把握を的確にとらえることができない、的確にとらえるためにはどうしても要る、特にサーベイランスで医師の協力を求めるという体制では弱い、やはり法律によって義務づけなければこのサーベイランス体制が整わないということをおっしゃいました。二番目に、これは今もおっしゃったのですが、人権、プライバシーの保護、そういう面で守秘義務を強化する、法的な義務づけがそのためにはやはり必要である。三番目に、医師患者信頼関係が崩れたケースの場合にやはり知事がそこに介入する、そういうものはやはり法律で決めなければならぬ。この三つを明確に挙げて、これが法律をつくらなければならぬ理由だとおっしゃいましたけれども、これは今もそういうお考えですか。
  187. 北川定謙

    北川政府委員 御指摘のとおりでございます。
  188. 沼川洋一

    ○沼川委員 そこで、改めて局長にお尋ねをします。  このサーベイランスの問題は、エイズの二次感染を防ぐという面で極めて大事な問題です。ところが現状はどうかといいますと、はっきり言って国民的な合意がまだ十分できていない、日本にはその素地がまだないと言ったっていい、これが率直に言って現状じゃないかと思うのです。ですから、この予防法案をつくってサーベイランスの効果を上げる、そういう説明をなさっておるわけですけれども、問題は、医師の協力というものを義務づけたからといって何かこの体制ができるとお考えになるところが随分認識が間違っているのじゃないかな。問題は国民的合意が十分でない、ここからスタートしなければ、ただ医師に義務づけたからといってこれが完壁なものになるとは私は考えられませんが、その点いかがでしょうか。
  189. 北川定謙

    北川政府委員 確かに先生が御指摘のように、国民全部の賛成を得ることはできませんが、前回の参考人の御指摘の中でも、この法律が早くできることによってエイズ予防の実際の事業を現場でも適切に進めることができるというような強い御意見もあったわけでございまして、もし仮に一部の医療関係者の間にまだこの法案に対していろいろな御疑念があるとすれば、そういう点については従来から申し上げておりますような基本的な考え方ということを御説明申し上げながら御理解を深めていただくよう、今後ともさらに努力は続けていく必要があろうかと思うわけでございます。  いずれにいたしましても、現段階においても、将来日本の国全体に非常に大きな影響を及ぼすようなこういう感染症を今の段階に抑えておくためには、一まずサーベイランスというようなことが必要になるわけでございますし、あるいは感染防止のいろいろな具体的な手順というものを決めていく必要があるというふうに思うわけでございますので、そういう点でこの法律の積極的な面をぜひ御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  190. 沼川洋一

    ○沼川委員 再度お尋ねします。  やはり二次感染を防止するということでいろいろと方法があるわけですが、一番大事なことは何かと考えてみますと、感染者、特に潜在感染者の協力をまず得なければならない、これがまず私は第一義だと思います。その次に、やはり医師の協力、しかも医師患者信頼関係、こういう体制がうまくできていかなければならない。第三番目に、これはやはり国民のサーベイランスに対する認識、理解、こういうものがなければならないと思うのです。ですから、検討するとか考慮に入れるみたいなことをおっしゃるけれども、こういう問題を考えるときに一番根本に据えて対策を考えなければならない大事な問題が、私はその辺の視点がどうも抜けているように思うのです。  それから参考までに、これはこの前この委員会で参考人として御出席願った大井先生がおっしゃっていた話を聞いて、なるほどそうだなと思って改めて私も調べてみたのですが、これは十九世紀のころ、梅毒が非常に問題になった時期がございました。梅毒の場合は明らかにセックスによって移るわけです。しかも、あの当時は治療法がありませんでした。一般から見ると、梅毒と聞いただけで忌み嫌われた病気でした。ちょうど現在のエイズに十九世紀当時の梅毒はよく似ているのじゃないかと思うのです。  これに対して、例えばイギリスでどういう対応をやったかというと、もちろんこれは法規制をやって社会の健康を守ろうという動きが当然あったわけです。その中には、例えば隔離入院も含めた強い規制もやっているわけです。しかし現実に起こったことはどういう結果だったかといいますと、感染者が全部医療機関から逃げてしまった。要するに地下に潜ってしまったわけです。そして、さんざんな結果が出たわけです。要するに、治療法もないのに法による規制というのが、見事その試みは失敗したわけです。ですから、イギリス側はこのことで物すごい過去の反省に立っておりまして、これは一九八五年、イギリスの厚生大臣がHIV感染者の届け出義務を拒否しているわけです、それはだめだと。その理由としては、やはりこういうのをやるとエイズ患者に対する社会的偏見を助長する。二番目に、潜在的感染者医療機関で受診しなくなる。その結果、結局はエイズのサーベイランスを行うことは困難になるだろうということできっばりとあきらめておるわけです。過去にそういう苦い経験があるからです。日本はよくそういう歴史も踏まえ、しっかりつかんでいかないと、法律をつくったために日本は将来に禍根を残すようなことになりかねない。これはいろいろな臨床医あるいは公衆衛生学の専門家、そういった方々から厳しく指摘されておるところなのです。いかがでしょうか。
  191. 北川定謙

    北川政府委員 先生の御指摘ではございますけれども、先般の参考人の大井先生のお話の件でございます。大変専門の先生でございますので、このようなことを申し上げるのはいかがかと思うわけでございますけれども、イギリスの梅毒の問題というのは、今から百年以上も前のイギリスの社会における問題であったわけでございまして、そのころの医療の水準あるいは社会一般の弱者に対する物の考え方あるいは制度の強権性というようなことと、現在の医療が発展し、社会福祉の理念の発達した日本の社会における現状と、それからエイズという疾病の特性、さらには今度の御提案をしておる法案の持つ人権への配慮、医療の体制というようなことをいろいろ総合的に考えますと、これは全く違った状況にあるというふうに考えるわけでございまして、イギリスの十九世紀の議論が今日の議論の参考にはなるとしても、該当はしないというふうに私どもは考えるわけであります。  また、先ほど先生が御指摘になられた、英国では患者の届け出すらやってないということでございますけれども、イギリスにおいても一九八七年から患者の届け出を始めておりますし、既に先生も御理解いただいていると思いますけれども、この間にエイズ患者が、先ほど大臣からも御指摘がありましたように非常にふえてしまっておる、手おくれであるという状況にあるというようなことをいろいろ考えまして、こういう人権の問題については十二分に配慮をしながらもやるべきことはやらなければいけないというのが、現在の私どもの立場でございます。
  192. 沼川洋一

    ○沼川委員 ただ、何回も言いますように、要するにエイズ感染者というのはどういう人たちかというと、何か一般に罪悪視されていますけれども、一人一人ずっと掘り下げていってみますと、一つはやはりいつ発症するかもしれないという物すごい、これは自分の生命に対する危機感を持っていらっしゃいます。それは当然です、人間ですから。それからもう一つは、いつ自分の人権、プライバシーの問題で今住んでいる場所から追われるか、あるいは職場から追われるか、あるいは家庭が崩壊するか、そういう問題とあわせて、だれも自分の周りに味方はいないという不安を常に持っていらっしゃる。これは言ってみれば社会的弱者といわれる方々であろうと思うのです。  ところが、この法案を見る限りそういう視点はどこにもないですよ。何かそういう感染させるというのはどうも悪い人で、これは徹底的に追跡して調査して二次感染を防がなきゃならない、そういう法律であることは一つ一つ条項を見ていけば明らかじゃないかと思うのですね。ですから、サーベイランスの体制にしても、二次感染防止という大きな一つの課題を達成するためにも、やはりそういう方々が安心して医療機関にかかれるという一つの体制をまずつくることが先決であって、ただ強権的な法律ができることによってどうしても逆行するという不安は、特に感染者の中には、また感染を疑っている人たちの中には、我々以上に強いはずなんですね。そういう視点をとらまえない法律というのは、私は極めてこれは問題の本質を見失っているのではなかろうか、こういう心配が率直にございますが、そういう視点でこれはとらえてある法律ですか。
  193. 北川定謙

    北川政府委員 先生が今御指摘いただいた点は、この法律の賛否を分ける非常に重要な問題だというふうに思うわけでございます。先ほど先生がお使いになられた罪悪視という言葉でございますけれども、私どもは少なくともそういうふうにとらえておりませんし、今までもとらえていないわけでございます。  それから、この法律をよくごらんをいただきますと、特に医師患者をきちんとコントロールする、これが基本になっておるわけでございまして、医師の管理下にあり、医師指導のもとで適切な治療、それから他への感染防止ということを図っておる場合は全く関係がないわけでございまして、一般の社会の皆さんはまさにそういう範疇に入るわけでございます。ただ、何といっても非常に複雑な社会でございますから、先ほど来申し上げておりますような売春とか乱交とか、これからだんだんと拡大をしていくおそれのある麻薬の回し打ちとか、こういうことがエイズの拡大の大きな根源になっておる。そして、そういうものがひいては、これは性的な感染症でございますのでやがて一般の社会に入り込んでしまう、そういうことを非常に心配をするわけでございまして、どうしてもコントロールができない場合に行政が関与をする。しかも、この行政もいろいろな制約のもとで指導的な対応をしていくという構造になっておるわけでございますので、その点はぜひ御理解を賜りたいというふうに思うものでございます。
  194. 沼川洋一

    ○沼川委員 現在日本で保健所あるいは医療機関でエイズ検査をなさっておると思いますが、実態はどうなっておりますか。
  195. 北川定謙

    北川政府委員 現在私どもがつかんでおりますエイズに関する相談、検査等の体制でございますけれども、エイズサーベイランスの協力医療機関というのが千七百八十三施設ございます。それから、患者さんあるいは感染心配のある皆さんに対する相談窓口としては、一般的な窓口として九百四十五、この中には保健所等も含まれるものと思われますが、そのほか専門的な窓口として百五十二ございます。それから、検査のための採血窓口でございますけれども、これは千五百七十六施設あるというふうに把握をしております。
  196. 沼川洋一

    ○沼川委員 その中で、匿名の検査というのはできるようになっているのですか。
  197. 北川定謙

    北川政府委員 基本的にはどこでも匿名という形で対応するよう指導しておるところでございます。
  198. 沼川洋一

    ○沼川委員 実は私の手元に、これは全部大阪府下からになっているわけですが、何人かの方から手紙をいただきました。大阪では匿名の検査所があるのですね。匿名と言われて、検査所の実態がどうなっているか、いろいろな方からみずから実際体験したことを述べられた手紙をいただきました。第一、匿名というけれどもどこに行ったら受け付けてくれるのかとうとうわからないので、人に聞くわけにはいかないので帰ってきたという人もいます。やっと窓口を見つけたので、恐る恐る血液検査をお願いしますと言ったら、近所に人がいるのにああエイズ検査ですか、そういうふうに不用意にそこの従業員が大きい声でどなるのでもうさっと帰った、そういう手紙もありました。中に入ったってカーテン一枚、隣にだれかいるのに平気でエイズの話がある。私はそういう手紙をいっぱいもらって心配するのですが、匿名という検査所ですら、医師またはそこの医療従事者のこういう抗体検査に来る人たちに対する配慮というか、そういう医療機関というのが意外に多いのですね。中には非常によくしてもらっているという手紙もいただいております。もちろんそういう医療機関もあると思いますが、そういう実態厚生省の方ではよくとらえていらっしゃいますか。
  199. 北川定謙

    北川政府委員 先生指摘の大阪におけるHIVと人権・情報センターが行われた調査、さらにはそれに基づきましての要望書等については、私どもも承知をしておるところでございます。こういう状況にあるということも大阪府を通しての事実照会で、大変遺憾なことでございますけれどもそういう状況がある。その点については大阪府でも情報をつかんでおりまして、これは遺憾な状態でございますので、もう少し慎重な対応をするためにいろいろな改善策を進めておるようでございます。  私どもといたしましても、この点につきましては、この法律を提案をしております基本的な理念に立ちまして、患者さんたちあるいは感染心配しておられる方々のプライバシーを守る上での慎重な対応ということについては、さらに注意して指導してまいるつもりでおります。
  200. 沼川洋一

    ○沼川委員 現状ですらそうでありますので、そういう方々の御意見の中には、まして法案でも成立したら大変ではないかという不安の声がたくさんございます。その辺も踏まえてしっかりした御指導をいただきたいと思います。  時間が余りありませんので、文部省、来ていらっしゃいますか。教育関係で、エイズに対する正しい知識の普及、これは極めて重大なことでありまして、これは何も文部省だけに限らずに自治体あるいはいろいろな職場、範囲は非常に幅広く考えられると思いますが、文部省の指導の中で一つ心配いたしますのが、学校において伝染病予防に関連して学校保健法というのがございますね。特に学校保健法というのは感染症として三つの分類をしておるわけですが、エイズが恐らく第一分類あたりに入ってくるのではないか。こうなった場合に血友病の生徒児童の場合、保健所の指導と連携して感染しているか否か、そういう選択になるのではないかという心配がございます。要するに、保健所の指導が入ってきて学校独自だけでは決められない、そういう横からの指導が入ってくるということによって、その辺の不安が一つございます。ですから、この法案が成立しますと、学校保健法にそういう具体的な根拠を与えるのではないかという心配がございますが、この点いかがでしょう。
  201. 石川晋

    石川説明員 現在のところ、学校保健法では、今先生もおっしゃったようなものは含まれておりませんし、学校で行う健康診断としてそのことをやることは考えておりません。ということで、先生の言ったこと、ちょっとまだ現時点ではそういうことの心配は私ども考えていないということでございます。
  202. 沼川洋一

    ○沼川委員 今後そういう問題が心配されますので、その辺の対応は十分お願いしたいと思います。  さらにもう一つお尋ねしておきたいと思います。  これは、文部省の方で学校現場の先生方のいわば手引書としてつくっていらっしゃいます。この中に、エイズに対するエイズ予防法についてはどういうことを具体的にやったらいいかという項目の中に「流水とせっけんを使い、手をよく洗う。」「けがをしたら傷口を流水でよく洗う。」「血液が、体や衣服についた時はすぐに洗い流す。」「ハンカチ・タオル・櫛・歯ブラシなどは清潔にし、自分の物を使う。」これは言ってみれば、日常生活あるいは普通の衛生教育の面でこういうことをおっしゃればよくわかるのですが、エイズ予防についてという題の中に含まれてますと、何か手を洗わなければならぬ、歯を磨かなければならぬ、学校現場で感染するということはあるのですか。
  203. 石川晋

    石川説明員 御承知のように、エイズという病気につきまして正しい理解を求める必要があるということがまず手引書のねらいなわけでございますが、その基本は、通常の意味で日常健康な生活をしている範囲において特段感染心配がない学校生活というような場では、そういうことを心配するような種類の病気ではない、一般的にそういうことを気をつけていれはいいのですよ、むやみに恐れたりすることでエイズの抗体を持っている方などについてむちゃくちゃな差別をするということがないように、こういう趣旨でございますので、先生のおっしゃるとおり手を洗うとか、そういうことをちゃんとしておればいいのです。保健指導であるとか、そういうときにそういう形で指導しなさいという趣旨で書かれているものでございます。
  204. 沼川洋一

    ○沼川委員 そういうことだったら、ふだんの学校の衛生指導あたりでやればいいんですよ。殊さらエイズ指導という中でそういうことを言うと、じゃ学校現場で感染するのか。特に御存じのように、感染者の大半は生徒児童なんですよ。この人たちが感染源になるわけがないじゃないですか。そういう中に手を洗えとか、くじは自分のくしを使えとか、歯ブラシは自分でとか、殊さらそういうのが入ってくると何か学校現場でうつるような、そういうニュアンスで聞こえてくる、そういう面の問題点も患者団体の中から厳しく指摘されております。やはりその辺はもっと明快な指導をやるべきじゃなかろうか、私はこのように思うのですが、いかがでしょうか。
  205. 石川晋

    石川説明員 先生の御趣旨のとおり、日常のそういう学校生活などでは通常感染心配のない病気である、こういう趣旨で今まで指導してきておりますし、今後ともそういう方向で指導していきたいというふうに考えております。
  206. 沼川洋一

    ○沼川委員 しっかりやってほしいと思います。だから、エイズ予防法などという頭にそういうタイトルつけてそこの下にこういうのを並べることは、これはもう早速やめてください。  それから、飛び飛びで申しわけありませんが、今回このエイズ予防法案審議する過程で、特に薬害の被害、血液凝固因子による被害を受けられた血友病の患者の方々、これは本当に全くお気の毒であり、大変な被害だと思います。そういうこともあって、この法案から血友病の方を除く、こういうことがこの委員会でも一つの懸案になりまして、最終的には分離する、そういう方向で、それなりの御努力というのは私は評価したいわけですが、ただここで指摘しておきたいのは、改めて新たな問題がそのことによって起こっているということですね。  率直にお尋ねします。この日本型エイズというのは、本当にこれは血液製剤による感染者、ほとんど血友病の方です。被害を受けていらっしゃる九〇%以上がそうです。ですから、その九〇%以上の方を除くとわずかなそういう残った、法律としてそんな法律は存在意義があるんだろうか、率直にそういう気がいたします。もう一つ今度は心配な点があります。血友病の方々はお気の毒な人だ、しかし残りはあれはけしからぬやつだ、ただでさえその法案社会的防衛が強いのに、もう除いたから後はびしびしやれ、法案がなお強硬になるんじゃないかという心配が率直にございます。それからもう一つ、これはここに参考人として来られた血友病の代表の方々が、もう異口同音におっしゃっておりました。ややもすると社会では血友病イコールエイズという誤解があります、そういう図式で見られています、感染者でないのにそういうような目で見られます、こういうことを盛んにここでおっしゃっておりました。じゃ、血友病の患者を除いたからといって、血友病イコールという一般世間にある誤解が解決しますか。こういう新たな問題を生んでいるわけですが、いかがでしょう。
  207. 北川定謙

    北川政府委員 この法案の体系の中から血友病患者について特段の配慮をするという御議論が現在進んでおるわけでございますけれども、私どもとしては日本のエイズ問題の中で血友病の問題については、その感染の形態あるいは感染の広がり、その他必要な疫学的な情報については既に得ておる、こういう状況の中でさらに一番これから心配なのは、血友病の患者さんが血液凝固製剤で感染したエイズではなくて、一般の性的な接触等によって起こってくる新たなる感染の広がりでございますので、そういう点からすれば血友病の関係をこの法律の体系から別に考える、こういうことはそれで差し支えないのではないかという考え方を持っておるわけでございます。  先生が血友病関係者を除いた少数者を対象とした法律は意味がないのではないかという御指摘でございますが、そこのところは私どもはまた別の考え方を持っておるわけでございまして、予防というのはまさに問題が大きくなる前に抑えるということでございますので、これから問題が拡大をしていくということが目に見えておるわけでございますので、それを少しでも被害を小さくする、そういう観点からこの法律は必要であるというふうに考えるわけでございます。
  208. 沼川洋一

    ○沼川委員 これは大臣にお尋ねをしておきたいと思いますが、きょうも何回も指摘されておる問題です。  現時点でこのエイズ予防、二次感染防止で何が一番大切かというと、やはりエイズの正しい知識の普及、これはもう幾らやったってやり過ぎじゃないと思います。ただ問題なのは、国が中心になってやってこられている今のそういう正しい知識の普及という態勢が、末端に行きますと、いま一ついろいろな団体に届いていても国民全体に広がりを見せてない、まだまだ現場には誤解がたくさんあります。こういう面ではもっともっと思い切った予算を組んで、学校だけじゃなくて、これは職場あるいは自治体、いろいろなところにもっと拡大すべき問題じゃないか。その辺について国でも一回しっかりチェックをして、エイズの教育という問題はしっかり力を入れていただきたいと思います。これはWHOの例を引くまでもなく、ロンドンのエイズサミットでも、やはり一番大事なのは正しい知識の普及だ、これが強調されておりますし、こういうことを前提にしてむしろエイズ対策というのは進めなければならぬと思うわけですが、その辺についての大臣の御見解をお聞かせください。
  209. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 御指摘のとおりでございます。一般的に病気を治すという場合に、その病気の治療予防、こういうことになるわけでございますが、エイズに関していえばその治療方法が確立されていない。こういう病気でございますから、病気にならないように全力を挙げて当面は努力をする、これはもう当然のことでございます。したがって、どういう形でこの病気が感染をするのか、この病気の内容はどういうものであるか、実態はどうなのかということをよく国民の皆さん方に知っていただくということは、これは最も大事なことでございまして、予防の点でも、この病気に対する偏見、またそういう偏見を背景にした差別感という問題を解決するためにも、正しい病気に対する知識を持ってもらうということは非常に大事なことだと思っておるわけでございまして、御意見をさらに踏まえまして、正しいエイズの病気に対する理解を国民の皆さん方に深めていただくためにPR、啓発運動にはさらに力を入れてまいらなければならぬというように考えております。
  210. 沼川洋一

    ○沼川委員 あわせて、マスコミ等の報道も非常に影響が大きいだけに、これは厚生省の方あたりもその辺はしっかりよく打ち合わせをした上で——ひところと比べますと随分落ちついた正確な報道がなされるようになりましたけれども、パニックと言われた神戸、高知のあの騒動のときは随分マスコミの報道がいろんな誤解を与えたことは事実なんです。そういう中でたまたまこういうのが出ていると、ちょっとまた心配するわけですね。これは「コンピューターウイルス国内ネットに初侵入」「電子メールで送られてきた怪しげなプログラムを使わないこと。自分のコンピューターがウイルスに感染しているかどうかを見分けるワクチンを、すでに会員が開発」したとか、いまいろいろウイルスが問題になっているときにこういう言葉がどんどん一方的にマスコミに報道される、こういうことがまた変な誤解を生むもとにもなるわけです。いろんな面で正しい知識の普及と同時に、厚生省あたりの発表のあり方、また報道のあり方、そういうものを含めて誤解を解いていくということは、今後極めて大事じゃなかろうかと思います。  時間がもうそろそろ参りましたので私申し上げておきたいのは、こういった公衆衛生上の法規をつくる場合に大事なことは、一般の常識とかあるいは大衆の恐怖心とかそういうものを土壌にして法案をつくると、後になってとんでもないものができます。これはもう過去のいろいろな例がございます。ですから、やはり医学的、科学的根拠をあくまでも前提にして、冷静な判断の中で法案というのをつくっていかなきゃならぬと思うのです。いつかもこの委員会指摘しましたように、ちょうどあの神戸のパニック、高知のパニックのときに何かばたばたと三カ月ぐらいでできた法案であるだけに今でも心配するのですが、専門家からそういう問題点の指摘がこの法案は余りにも多過ぎるのですね。  しかも今度は、人権、プライバシーという面から見て、こういう立法をした場合に諸外国から恐らく、相変わらず日本の本質は変わってないのではないかという厳しい指摘を受けます。この前、精神衛生法でもう懲りました。それこそ世界各国から、日本の精神衛生法は人権無視だと国際世論の中でたたかれました。日本は今や経済大国、医療水準もトップクラスにある国です。そういう日本がつくる法律ならば世界に冠たる、医学的、科学的観点から見たって説得力があって、しかも実効性があって人権、プライバシーが守られる、そういう面でさすがと言われるようなものをつくらないと、これはまた外国の批判を浴びるのではなかろうか。そういう問題点が余りにもこの法案の中には多過ぎます。  きょうも何回も論議しましたけれども、二次感染防止は、ただ法律をつくったらいいというそういう観点から出発するのではなくて、もっともっと一番大事な、潜在感染者が安心して協力してもらえるそういう体制、そしてサーベイランス体制、その辺をがっちりつくっていくということから出発しないと、こういう強権的なものはかえって地下に潜ってしまって、知らないところで感染が蔓延していく。また、人権、プライバシーというのはもう徹底的に侵される。侵されたら最後、復権はできない。ですから、かつての苦い日本の歴史の中にらい予防法があります。今、これはもう新しい患者はおりません。かつて隔離されたような方々が高齢化して、いろいろな病気を抱えて悩んでいらっしゃる方があります。この前、熊本から来られた五十年間隔離されたという方のお話を聞きました。昭和十三年から五十年、らい予防法によって隔離されてきた、この五十年間何だったんだろうか、本当に悔しい、ちょうど今国会にかかっているエイズ予防法が二度と私たちがされたようなものにならぬように、人ごとながら一生懸命この法案の行方を心配しております、こういうことをおっしゃっておりました。一たん人権、プライバシーが侵されたら、これはもう復権できません。例えばかつて結核の場合は労咳と言われたけれども、ああいった抗生物質とかペニシリンの開発によって、結核患者社会の中に認知されて共存してきました。  ですから、きょうも大臣がおっしゃっていますように、エイズと日本で堂々と名のれるかというと、とてもじゃないけど名のれません。やはりこの社会の中にそういう感染者も受け入れて社会全体が温かい手を差し伸べる、国の対応も、弱者として、救済の手を差し伸べる相手として、そういう把握の仕方、そういう対処の仕方をしない限りは、二次感染防止は絶対にできない。したがって、今厚生省が何としてでも成立させようと思っていらっしゃるこういう強権的な、社会防衛的な色彩の強い法案では絶対に二次感染は防止できない、こういう見解を最後に申し述べまして、この法律には私どもはどこまでも反対であり、こういう法案こそ一遍取り下げてぜひひとつ再検討されるべき法律ではなかろうかということもつけ加えまして、私の質問を終わりたいと思います。
  211. 稲垣実男

  212. 木下敬之助

    ○木下委員 それでは、早速質問させていただきます。  まず、先般、血液製剤によるエイズウイルス感染者の早期救済について与野党で決議を行いまして、一致して政府に対して対策の充実を求めておるところでございますが、今後これを受けて厚生省としてどのような対策をしていくのか、お伺いをいたします。
  213. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 先般の本委員会におきます決議につきましては、その御趣旨を十分に尊重いたしまして、できる限り早く、年内を目標にいたしておりますけれども、各種救済の給付を実施に移す方向で努力をいたしておるところでございまして、今後とも血友病患者の救済対策にできるだけの努力を払ってまいりたい、かように考えております。
  214. 木下敬之助

    ○木下委員 年内ということでございますが、ぜひとも実現するように、よろしくお願いいたします。  今回の法案審議で一番問題になって議論されておりますのは、我が国のエイズ患者感染者というものは、血友病の治療を受ける中でエイズのウイルスに感染してしまった人というのがほとんどでございます。そういうことで、多くの関係者の方々からいろいろと懸念されております。この法案によって、血友病患者やその家族の方々に行政が介入してくるのではないか、こういった点も言われ、特にプライバシーや人権の保護について十分保障をされているとは思えないのですが、これらの点について厚生省はどのように配慮をしていくつもりなのか、お伺いをいたします。
  215. 北川定謙

    北川政府委員 今回御提案申し上げております法案は、基本的には医師患者信頼関係に基づく医師指示によって感染の拡大の防止を図る、こういうことを基本としておるわけでございまして、行政は、どうしても医師指示に従わないで多数の者に感染をさせるような、いわば医師の手に負えないような場合に限っておるわけでございます。したがって、血友病の患者さんの方々を含めて、医師指示に従っておる方々に対して行政が直接介入するというようなことはないわけでございます。運用に当たりましてもそういうことがないように十分に配慮していく必要がある、このように考えておるわけであります。
  216. 木下敬之助

    ○木下委員 できてしまった法案がひとり歩きするようなことがないように運用にきちっと歯どめをしていくべきだと思いますが、同時に、修正して明確にしなければならぬ点もあると思います。  幾つかお伺いしたいのですが、この第二条に「情報の収集及び研究の推進」とありますが、この「情報の収集」というのも、これがひとり歩きするといろいろなことが考えられると思って心配するのですが、政府としてはどのように考えておられますか。
  217. 北川定謙

    北川政府委員 第二条で考えております「情報の収集」でございますけれども、これは第一には、エイズの疫学、予防治療等の研究に関して国内外の情報を集める。それから第二は、各国のエイズ対策についての情報を集める。第三には、そのほかエイズに関するいろいろな法制あるいは倫理問題に対する各国の対応についての情報を集める。エイズ対策を進める観点から必要な情報や参考となるものを収集をするということが、ここで言われておる情報の収集の内容でございます。
  218. 木下敬之助

    ○木下委員 患者さんの把握や感染者実態を正確につかむということも、情報の収集に入っておるわけですか。
  219. 北川定謙

    北川政府委員 患者さんの把握あるいは感染者の把握ということについては、この法律では第五条で具体的な手順を決めておるわけでございますので、基本的にはそういうことになりますが、その他一般的な患者さんあるいは感染者に関する情報というものも今の二条の対応になることは御指摘のとおりでございます。
  220. 木下敬之助

    ○木下委員 五条の方はお医者さんが診断するということでございますが、自分から進んで診断を受けたり、お医者さんから診てはっきりとそうではなかろうかと思われる症状で診断をされるということもあるでしょうが、お医者さんの方が勝手に、全然本人の希望にかかわらず何かのついでに血をとったから、健原診断でそちらも検査するというようなことは、これは許されるのですか。
  221. 北川定謙

    北川政府委員 先生の御指摘の点は、これは非常に重要な点でございます。世界各国でもWHO等を中心にこの点についていろいろな議論があるわけでございますが、基本的には、医師患者が一対一で向かい合う医療の局面でエイズの検査を医師患者の同意なしに行うということは適当ではないというふうに言われておるわけでございます。この点につきましては、現在厚生省指導のために編さんをしております「エイズ診療の手引き」を改訂をしているわけでございますけれども、その中でもそうした趣旨を盛り込むという方向で検討しております。そういうことで今後とも、エイズの検査を患者さんあるいはその心配のある人の同意なしにするということは人権上の問題が起こるので、それは極力抑制をするという方向で指導をしてまいりたい、このように考えております。
  222. 木下敬之助

    ○木下委員 極力抑制と言われる。どういった対策をとるのか。これは法がないのなら、相当強硬なそういったことをやっていただかなければなりませんが、同時にやはり法をきちっとしておく必要があるのじゃないでしょうか。現実に私だって、どういう形でどんなことでどういうふうになるのかわかりませんから。知らない間に調べられて、調べられているだけでもこれは不愉快なことじゃないですか。そういう意味できちっとしておいていただきたいと思います。  それから、血液製剤によるエイズ感染者の方々というのは、もともと血液製剤を必要とする病気のことから一〇〇%お医者さんの管理下に置かれておるわけでございますので、この人たちを通じてエイズが蔓延するということはないと考えられます。法文の中で対象から除外すべき部分があるのではないかと思いますが、この点どのようにお考えになりますか。
  223. 北川定謙

    北川政府委員 この点につきましては、過去この委員会で何度か御議論があったわけでございますが、法案は、医師感染者信頼関係を基礎として、これに基づいて医師から適切な指導が行われておる、こういう場合には行政が関与することはない、こういう立場をとっているわけでございます。したがいまして、血友病患者の方々は継続的に医師指導を受けており、それに従って療養生活を送っておられる方がほとんどでございますので、そうした医師指導を守っておられる方々についてまで都道府県知事が別に命令あるいは指示質問等を行うということは必要がないと考えておるわけであります。
  224. 木下敬之助

    ○木下委員 私が先ほど調べられるのが不愉快だと言ったのは、エイズが不愉快だという意味じゃないのですよ。私は人間として自分の意思じゃないのに調べられるということが不愉快だと申し上げたので、誤解のないようにその点は申し上げておきます。  それから次に、感染者の方々は発症を防ぐということが一番大きな問題になっていくわけですが、この発症予防治療事業を大幅に拡充するということも聞いておりますが、これについてはどのように取り組んでいかれるか、お伺いいたします。
  225. 北川定謙

    北川政府委員 エイズに関する治療方法が未確立の現状において、この問題は最大の課題であると考えておるわけでございまして、エイズウイルスに感染をした方々の発症予防あるいは治療研究を推進をするところであります。昭和六十三年度から全国血友病の主治医、これは約八百人の先生方がこの傘下に入っていただいているわけでございますけれども、この方々の協力を得ましてエイズウイルスの感染者の発症予防治療研究班を組織をしたわけであります。今後ともエイズ感染者への発症予防研究事業をさらに拡大をしていきたいと考えておりまして、このための予算として昭和六十三年度は二億一千万でございますけれども、六十四年度は予算要求額として三億八千万を計上しているわけでございます。
  226. 木下敬之助

    ○木下委員 大いにやっていただきたいと思います。  次に、エイズに関しては正しい知識の普及ということが最も大事で、そのことについていろいろと御論議がございますが、このエイズに関する正しい知識の普及というのは具体的にどういうことを指し、考えておられるのか、またどういう方法でその普及を図ろうとしているのか、お伺いいたします。
  227. 北川定謙

    北川政府委員 エイズという病原体は一九八三年になって初めてこの地球上で同定をされた、医学的に確認をされた、こういうことでございます。しかも、その感染力は非常に弱い。しかしウイルスの持っておる特性からして、うまい治療薬あるいはワクチン等を開発することが非常に難しい、そんなような特性を持っておるわけでございますが、そういう状況の中でも、このエイズ感染力が弱いことから適切な生活態度をとっておればむやみに感染が広がっていくことはないというふうに理解をされておるわけであります。ある専門家は、この状況について、エイズ感染力は弱い、しかし一たん感染をしてしまえばなかなか治療ができない厄介な病気である、こういうふうに言っているわけでございます。  そういった観点から、第一に、エイズ個人の日常の行動によって予防可能な病気である。日常の普通の生活をしておれば感染をする危険はない。第二に、エイズは発症をすればその予後は非常に不良である。しかし、エイズウイルスの感染力が先ほど申し上げましたように非常に弱いので通常の社会生活及び家庭生活の中では感染はしない、特定の性行為を除いては感染をしないというようなことが非常に重要なことであります。さらに、血液製剤とか献血の血液の安全対策がとられたわけでございます。我が国においてはかって血液凝固因子製剤を介して感染が起こったわけでございますが、その後の対応でその点での心配はなくなったわけでございまして、我が国におけるこれからのエイズの問題は、性行為によって感染をする、この点が非常に重要な点になるわけで、その点についても正しい理解を持っていただきたいというふうに考えております。第四は、エイズに関する検査や相談は全国いろいろな保健所や医療機関等で行われております。匿名でも検査が受けられるというようにプライバシーに対する十分な配慮がなされておるわけでありますが、そういう実態もさらに周知を図りたい。また、これはかってはある時期に蚊などによる感染あるいはプールでの感染なんということも大変心配をされたわけでございますけれども、こういうことについてはその心配はないということが専門家のいろいろな調査が進められるに従ってわかってまいっておりますので、こういう点についても間違った理解を正していく必要があると考えておるわけでございます。  いろいろそのほか、この知識を普及するこういう問題は、その中身がどういうものであるかという問題と、どういうメディアで広げていくかという問題があるわけでございます。例えば政府の広報を通してとか、あるいはいろいろな医療保険制度の事業の中で行うとか、あるいは学校教育の中で行うとか、その他のいろいろな専門あるいは民間の団体の活動を通して提供をしていくとか、いろいろな点があるわけでありますが、非常に多くの人々の中に適切にこの知識がきちんと定着をするためには相当の時間がかかるわけでありますし、経費もかかるわけでございます。今後とも真剣にその努力を続けていくつもりでおります。
  228. 木下敬之助

    ○木下委員 国民にエイズというものに対する正しい知識を広げていくというのは、もちろん十分大事なことでございます。しかし同時に、直接に関係があり、人権問題とも非常に密接なやりとりのあり得る場所もしくは専門的知識がより一層要るようなところ、例えばお医者さん、医療に従事している人たちは専門的なことを知らなければなりませんし、その人を通じて感染者にもまたより一層細かなことをお話ししなければならないでしょう。同時に、そういったときに人権を損なわないように接するにはどうすればいいか、こういったこともある程度のものを決めて指導していくことも正しい知識の普及であると考えますが、医者医療従事者、またそこを通じて感染者にどのように正しい知識を普及させるか、こういった観点からどう考えておられるか、お伺いいたします。
  229. 北川定謙

    北川政府委員 医師は言ってみれば病気に対しての専門家であります。したがって、エイズという病気に対しても基本的には十分な理解があるのではないかという前提に立つわけでございますけれども、医師といっても今非常にいろいろな分野の専門分化が進んでおります。そうすると、いわゆる感染症あるいはウイルスということに対して十分な認識がない場合もあるわけでございまして、そういうところからエイズ患者さんに対する対応の仕方についてもいろいろと問題を起こしたという新聞情報等もあるわけでございます。  そういうところから、厚生省といたしましても、医療従事者向けの「エイズ診療の手引き」という冊子をつくりまして、日本医師会等を通したりいろいろなメディアを通して情報の提供に努めているわけでございます。今後ともその努力を続けてまいるわけでございますし、「手引き」については最新の知識に基づいてだんだんと改訂をしていくというような作業もやっております。血友病の治療を行っている医療機関を対象にした研修会をやるとか、エイズの専門相談窓口の医師等を対象とした研修会を開くとか、検査技術の向上を目的とした研修会を開くとか、いろいろな局面をとらえて、そういう点について一番核になる職種である医療関係者に対する正しい知識の普及ということに今最大の努力を傾けておるわけでありますが、先生が御指摘になりました人権というようなことについても、さらに今後こういういろいろな場面で強調をして、適切な対応ができる手段ということについてもPRをしていきたい、このように考えております。
  230. 木下敬之助

    ○木下委員 医師に対することはそういうことでお伺いいたしておきますが、感染者等につきましては、お伺いしますところ、厚生省ではことしから保健福祉相談事業をスタートさせておられます。こういったカウンセリングがうまくいくのもいかないのもいいカウンセラーがいるかどうかにかかっておると思いますが、カウンセラーの養成についてはどのように考えておられますか。
  231. 北川定謙

    北川政府委員 御存じのように、エイズというのは非常に微妙な側面をたくさん持っておるわけであります。感染をするとなかなか治癒をしがたい、死に至る可能性が非常に高いというようなことがあるわけでございまして、そういった点から感染者あるいは患者はいろいろな精神的な不安、葛藤を持っておるわけでございます。そういう点からいいますと、単に医師だけでそういう心理状態に十分対応できるかというと、医師は非常に専門特化しておりますし忙しい職種でございますから、患者と十分に対話をするということのためのカウンセラーの必要性が出てまいるわけでございます。エイズ患者が非常に多い欧米諸国では早くからこの点が重視をされておるわけでございまして、WHOにおきましては重点的にこの問題を取り上げておるわけでありますが、厚生省といたしましても、今年度から主ないろいろな医療機関の協力のもとにこのカウンセラーの機能を整備していきたい、こう考えておるわけでございます。  まず第一には、保健福祉相談事業という形で仕事を進める。また第二は、カウンセリング検討会というものを設けまして、カウンセリングの具体的な指針をつくるというようなこともやっております。また、カウンセリングが本当に効果が上がるということのためにはカウンセラーの養成が非常に大事である。これはただいま先生が御指摘なさったとおりでございます。したがいまして、本年の八月、カウンセリング国際会議というものをWHOと共催で日本で開催することができました。そういうことから日本人約二百名を対象としてトレーニングコースをスタートさせたわけであります。また、WHO主催のカウンセリング指導者養成コースに専門家を日本から外国へ派遣するというようなこともやっております。また第三に、米国のCDC、これは防疫センターと言っておるわけでございますが、そこが主催をしておるカウンセラー指導者養成コースにも専門家を派遣するなど、今後はさらにいろいろな局面を通じてその充実を図ってまいりたい、このようにしておるわけでございます。
  232. 木下敬之助

    ○木下委員 カウンセリングに当たって、本当に人権に細かな配慮をしてもらいたいと思います。一方的に自分がただ配慮したというのじゃなくて、本当に現実に自分がそうだったらという相手のショックのことまで考えて細かな配慮をしていただきたいと思うのです。  特に、第五条に定めております「必要な指示」ということがあるわけですが、これは具体的にどういうことを考えているのか。そして、その指示ということで行うに当たって具体的にお医者さんというのは一体どういうあり方であるのがいいのか。お医者さんのそのときのあり方について厚生省として具体的にどう指導するおつもりなのか、お聞かせいただきたいと思います。
  233. 北川定謙

    北川政府委員 第五条に定める「必要な指示」ということの場合に、患者の人権をどうやって守っていくか、こういうことになるわけでございます。感染者診断した医師は、その感染者からさらに次の二次感染を防ぐ、これが非常に重要なポイントになるわけでございますけれども、そのためには患者医師との間に信頼関係というものを樹立して、その前提に立っていろいろな指導が成果をあらわすわけであります。  それで、具体的に感染者にどんなことを指導するのかという御質問でございますけれども、エイズという病気は性交渉を通して感染するという場面が非常に多いわけでございますので、コンドームの着用を勧めるというようなことが具体的な手段となります。また、医療機関で定期的に受診して健康管理と二次感染の防止というようなことを具体的に続けていく、こういう指導も必要になります。第三には、感染者の家族や性的接触の相手方についても、感染者本人を通じまして医療機関でエイズ感染の有無等について受診を勧めるというようなことも重要な指導事項であると考えております。  厚生省といたしましては、エイズの二次感染防止の観点から、感染者に対しては病名または抗体陽性であるという告知をするという、先ほどもこの点についての御議論があったわけでありますが、エイズ感染症であるということからすれば、これは基本的な立場になるわけでございます。しかし、患者さんの心理の状態あるいは年齢の問題等一律にはいかない点が多々あるわけでございまして、そういう点について十分医師に理解をしていただけるよう、当然医師の皆さんはそういうことについての御認識があるわけでありますけれども、行政としてもさらにその考え方を普及をしていきたい、このように考えておるわけであります。
  234. 木下敬之助

    ○木下委員 お医者さんだから病気については全部専門知識があるのではないということは、これはエイズそのものが新しいということを抜きにしても、当然お医者さんにも随分格差がございますから十分やらなければいけないと思いますが、もっと知っていて当然といいながらその対応等が懸念されております学校の現場等、血友病患者の皆さんの中に子供さんも大変多いわけでありまして、学校、幼稚園、保育所、こういった場所における関係者の正しい知識の普及等どう対応していくか、こういったことも相当熱心に普及を図らないと行き届かない。心ない、心得違いの人が出はしないかと考えております。そういう意味で文部省にもお伺いしたいので、厚生省と文部省、両方ともこの点についてお答えをいただきたいと思います。
  235. 北川定謙

    北川政府委員 最初に、厚生省の側からのお答えを申し上げるわけでございますが、血友病の患者さんは子供が非常に多いわけでありまして、そういう血友病イコールエイズというような概念が定着をしてしまうということは非常に心配なことでありますし、またその危険が現状においてないわけではないわけでございます。そういう点から、厚生省としてはエイズという病気の実像というものを明確にいろいろな場面で提示をしていきたい。文部省におかれましても、既に学校教育の場におけるエイズ対応について指針を示されておるわけでありますが、厚生省といたしましても、、幼稚園の先生だとかあるいは保育所の保母さん等に対する研修の場をつくるというようなことも検討をしております。今後とも関係機関の協力を得ながら、これは非常に重要な点でありますので、精力的に進めてまいりたいというふうに考えております。     〔委員長退席、畑委員長代理着席〕
  236. 石川晋

    石川説明員 文部省におきましては、学校教育の場でエイズについて正しい知識、理解、特に先ほどからお話しになっておりますけれども、血友病の患者さん、児童生徒の場合ですが、いわれのない差別を受けないようにということを受けまして、昨年二月に通知を出すとともに、本年六月には指導の手引書を出し、かつ各種の研修会等を通じまして先生方に正しい理解、正しい指導をしていただくようにお願いしているところでございます。さらに、本年度から地域ぐるみで、エイズ問題を含む性に関する指導事業というようなモデル事業を行いまして、学校や地域におけるこういったものの指導のあり方ということもさらに進めていきたいというふうに考えておるところでございます。
  237. 木下敬之助

    ○木下委員 学校で子供さんに向けての教育と、また先生の心得というものを先生によく指導していただきたいと思います。  それからもう一つ、そういう知識の中で、会社に行って、会社での扱い等がいわれない、不当であるという声も聞きますし、心配、懸念もされます。会社等に対しては何か考えておられますか。社会全体についてでしょうけれども。
  238. 北川定謙

    北川政府委員 社会全体に対して一般的にエイズの問題を正しく理解をしていただくということの中で、今先生が御指摘になられた職場での問題に対応するという形をとるわけでございます。厚生省といたしましては、そういう観点から血友病でエイズ感染した方が単純に普通の社会生活の中で感染を起こす心配がないということをいろいろな場面でPRをしてきたところでございますし、今後も力を入れていくというふうに考えております。
  239. 木下敬之助

    ○木下委員 私は、正しい知識ということで自分も一生懸命考えてみたし、このエイズ問題にどのように取り組むかということをいろいろ考えてみたのですが、とにかく今現在治療法がない。ということは、エイズを撲滅するといっても、治療法がない中での撲滅とかいう方向は絶対にできることじゃないわけですから、広がらないようにしながら共存していくような社会を考えていくことが正しい知識であろう、このように考えます。  先ほどから普通の生活をしておれば、こう言われますが、これだけの人間がいますと、何が普通の生活なのか、一体どういう普通までは大丈夫で、どこからそれは普通じゃないのだということになるのか、こういったものをもう一歩突っ込んで明確にする方がかえって余分な恐怖心がないと思われます。確かにプールやふろでうつることはない、当然でございます。それは同時に、そのことも普通の生活でありますし、その中でプールでどういうことをするかということも、普通のプールの入り方でございましょう。ところが、私はめったに行きませんけれども、この間サウナのようなふろに行ったことがあります。前はかみそり等かなり使いっ放しで、人の使った後また使ったりしたのが、近ごろは使ったら捨ててくださいみたいなことが書いてあるのですね。これは、考えようによったらエイズという病気が出てきてから出たことなんですが、だからといって、エイズのおそれのある方は使いなさんなとか、自分のものに名前を書いておけとかそういうのじゃなくて、みんなそういうものは使わないようにしましょうということですね。これはすごくいいことだと思うのですよ。だから、子供さんにもし血が出たりしたらそのハンカチをどんなふうに処分するかとか、そういうことの必要が本当にあるのなら、その感染している人が自分で血のついたハンカチをどうするかを決めるよりも、血というものを、感染している人の血も感染していない人の血も全部同じように扱うような形のものを、共存していく上での社会の正しい知識とさせていくことが一番大事なのではないか、私はそう思います。今後、いろいろとあります中の正しい知識というものを見るときに、きちっと本当に差別しないというのは、そういう本当に細かいところまでいった普通か、普通でないかの選択、そのぎりぎりのところも選択して、そういうことは普通の生活の中でしないという世の中をつくっていくように考えるべきだと思います。  そんな意味で、誤解されることも含めてあえて提言を申し上げますが、例えば私どもはマムシなんかめったに見ませんが、マムシにかまれたりすることがございます。だれかかまれたら血を吸い出してやれ、こんなふうに自分も思うし、その現場に行ったらするつもりでおりますし、私はそのときにその人が感染しているかどうかを聞いたりするつもりなんか毛頭ありません。しかし、ではそれは普通の生活なのか普通の生活じゃないのかというと、めったにないから普通でない、これはおかしいと思うのですね。めったにないことであってもそれは普通のことなんですから、そのとき、人の血は吸ったりするものじゃないというものをこの社会の常識としていくのか、そうじゃないのか。こういう意味のエイズと共存していく社会をどう考えていくかという視点を決して忘れずに、本当に心の底から普通の生活をしていさえすればとみんなが思えるようなものを構築していただきたいと思います。御意見はいいです。私の考えを言わしていただきました。  それで、そういった意味も含めて医療機関においてエイズ感染予防防止対策といったことは重要だと思います。これは新聞で見ただけで、私医者じゃありませんから全然細かいことはわかりませんけれども、エイズ感染している人もしくは患者さんの血であろうものとか、そのとき使った注射針みたいなものが無造作に捨てられていた、ビニール袋から針が飛び出していて、ちょうどそんなものに引っかかったとしても感染するのではなかろうか、こういう記事がありました。先ほどから正しい知識と言われましたが、私も残念ながら、ちょうど通りがかりに筋を引っかけたら感染するのかしないのかということを知りません。同時に、どっちであるかを明確にして、こういったものに対する処置の基準みたいたものもあってしかるべきである。また、もしそれを決めるなら、先ほど申しましたように、そうだからとか違うとかじゃなくて、病院等で扱う血というものはみんなこうするんだ、病院で使った針はみんなこうするんだ、これに幾らお金がかかってもそういう基準で考えてもらいたい。この点、どんなふうに医療機関内では指導されるおつもりですか、お伺いいたします。
  240. 北川定謙

    北川政府委員 医療機関というのは、非常に危険な病原微生物を常に抱え込みながら仕事をしている世界でありますから、エイズの問題についても当然でありますが、いろいろな感染源を持っておるわけであります。そういう中で、医師自身、医療関係者自身がエイズ感染しないという面と、それから患者同士の間で感染を起こさないという、これは業務上どうしても守らなければいけない点になるわけでありますけれども、二つの側面があるわけであります。そういう観点から医師が過剰防衛的になるという場面も出ておるわけでございます。これは決してあってはならないことでありまして、感染源を持った患者さんに対しても適切な対応をするということがどうしても必要なわけで、こういう常識をすべてのお医者さんに持っていただく。大部分のお医者さんは持っておるわけでございますけれども、持っておられない医師の方にもあるいは医療関係者の方も含めてそういうことをしていただこうということで、厚生省としても何度かそういうことについての通知を出しております。また、具体的に「エイズ診療の手引き」というようなものもつくっておりまして、その周知徹底を図っておるわけでございます。  去る十月七日にエイズサーベイランス委員会が開かれたわけでありますが、そこでも「HIV医療機関内感染予防対策指針」作成ワーキンググループを設けまして、本年度内を目途に、この問題に対する最近のいろいろな知識をもとに「エイズ診療の手引き」を改訂していこうという作業を現在続けておるところでございます。
  241. 木下敬之助

    ○木下委員 重ねて申し上げますが、今、過剰にならないと。それは科学的に不必要な過剰になる必要はありませんけれども、先ほど言いましたように、どんなにそれに対する費用がたくさんかかろうと差別せずにやるという意味の過剰は、幾ら過剰であっても構わないと私は思います。  次に、今後の問題ですが、これから母子感染といったことも大きな問題になると思います。この母子感染防止のためのガイドラインができたと聞いておりますが、どういう考え方に立っておられるのか、お伺いいたします。
  242. 北川定謙

    北川政府委員 昨年の十一月に厚生省にHIV母子感染予防対策検討会を設けまして、専門家の先生方にお集まりをいただいて種々検討をし、本年の九月「HIV母子感染予防ガイドライン」の取りまとめをいただきまして、各都道府県に示したところでございます。このガイドラインでは、エイズウイルスによる母子の垂直感染、これは母親から子供への感染のことをいうわけでございますけれども、こういうものをどうやって防ぐか、こういう観点から現場で、医師が実際の臨床の場面でどう対応したらいいかということを具体的に示したわけであります。  その内容は非常に多岐にわたりますけれども、一、二の例を申し上げますと、まず第一に、妊娠の前にエイズウイルスの感染者に対する指導ということがあるわけでございますが、その女性が妊娠をすることによって御自身がエイズを発病する危険もあるわけです。それからまた、生まれてくる新生児も四〇から五〇%の確率でエイズ感染するというようなことも言われておるわけでございまして、こういう点を十分カウンセリングといいますか医療の場で指導をした上で子供さんを産むか産まないか、これは最終的には当事者が判断をすることになるわけでございますけれども、そういう点については慎重な対応をする必要があるわけでございまして、そういう点についての具体的な対応の仕方、こんなことも一つのテーマになっております。また、現在の我が国の状況から見まして、すべての妊婦に対する健康診断時のエイズウイルス検査は必要がないわけでございまして、特定のハイリスクグループ、例えば非常に売春というような行為と近いような人たちの中で希望する者に対して行っていくというようなことが示されておるわけでございます。その他、そういうケースから生まれた子供の育児の問題、それから将来への対応等々についても細かな指摘を取りまとめております。
  243. 木下敬之助

    ○木下委員 この問題も十分人権を配慮してやっていただきたいと思います。  エイズは、我が国ばかりではなく、国際的な取り組みが必要な問題であると考えます。国際協力という面から見てどのように取り組んでいくことを考えておられるのか。WHOではたしか十二月一日をワールド・エイズデーと定めて啓発活動を積極的に進めていくと聞いておりますが、この十二月一日に対しても我が国は何か取り組みが必要なのではないかと思いますが、どのように考えておられるか、お伺いいたします。
  244. 北川定謙

    北川政府委員 エイズは我が国におきますよりもむしろ欧米諸国等の外国において今非常にしょうけつをきわめておる状態にあるわけでございまして、そういった点からむしろ我が国は外国からいろいろな情報を得るというような利点もありますし、また一方では、我が国のいろいろなウイルス学の医学水準は非常に高いので、諸外国のエイズ対策にも貢献する力を持っておるわけでございます。そういう意味では国際的に積極的な対応をしていくという姿勢でおるわけでございまして、さきに政府が決定したエイズ問題総合対策大綱の中でも、国際協力及び研究の推進ということが重点対策として取り上げられておるわけであります。具体的には、我が国はWHOに対して、エイズ関連の予算といたしまして、昭和六十三年度約一億七千万を拠出をすることとしております。また、六十三年度から日米医学協力事業が既に進められておるわけでありますが、この中にエイズ専門部会を設けまして、日米二国間でいろいろな情報、意見の交換をしていくこととしておるわけであります。  なお、先生が御指摘になられました十二月一日ワールド・エイズデーの件でございますけれども、WHOは一九八八年五月の総会におきましてこのことを決めたわけでありまして、エイズ撲滅というスローガンを世界に伝えるとともに、この趣旨に沿ったいろいろな活動のための資料を提供しておるわけでございます。我が国におきましても、厚生省が主唱しまして十二月一日を中心に、エイズ予防することが可能な病気であるということを基本に、国とか地方公共団体にも呼びかけ、また民間団体にも協力をいただいて、いろいろな場面でエイズに対する正しい理解を広げるための催し物を考えておるところであります。
  245. 木下敬之助

    ○木下委員 次に、エイズの研究についてですが、エイズについては解明すべき課題がたくさんあるわけでございます。この各般の研究を総合的に進めていくことが重要だと考えますが、この点についてはどのように考えておられますか。
  246. 北川定謙

    北川政府委員 エイズはまだ人類にとってわからない点が多いわけであります。いろいろな学問の分野から総合的に研究をし、その病態の解明というものを進めていくわけでございますが、そのためには総合的にという先生の御指摘の点が非常に重要なことになるわけでございます。  そこで、厚生省におきましても、研究の組織化及びその積極的な推進ということを進めるために、先ほども申し上げましたエイズ対策関係閣僚会議のもとに学識経験者から成る専門家会議というものを設けておるわけであります。昨年の七月にこのエイズ対策専門家会議からいただきました「エイズ研究の基本的推進方策について」という報告を踏まえまして、大幅な研究費の投入とシステマチックな研究者の協力体制づくりということで今鋭意具体的な仕事に取りかかっておるところでございます。  詳細の内容についても御説明をすることを求められれば、さらに申し上げたいと思います。
  247. 木下敬之助

    ○木下委員 それでは時間が来ましたので、最後に大臣に。エイズ対策は国と地方が連携をとりつつ研究、情報、教育を一体となって進めていくことが対策を効果あらしめるために一番重要であると考えますが、所管大臣としての御決意を伺って私の質問といたします。
  248. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 今御指摘がございましたように、エイズ対策を進めていく上での幾つかの大きな柱の中で、国が研究の推進や海外の最新の情報を集めるという事項と、地方公共団体が教育であるとか知識の普及を図るために進めていく事項、両面があるわけでございまして、国、地方が協力をしながら総合的に対策を進めていくということは、エイズ対策を進めていく上で極めて重要な進め方だと思うわけでございます。こういう考え方に立って今後ともエイズ対策を進めてまいりたい、かように考えております。
  249. 木下敬之助

    ○木下委員 終わります。
  250. 畑英次郎

    ○畑委員長代理 田中美智子君。
  251. 田中美智子

    ○田中(美)委員 一九八六年、一昨年の十月二十二日に松本市にエイズ感染したジャパゆきさんがいるということが報道されて、一種のパニック状態になりました。それで国民はエイズという病気を知ったわけです。また、昨年の一月、神戸で女性エイズ患者があるという報道がされまして、やはり一種のパニック状態になりました。この一月の直後ですが、二月十二日にエイズ予防法案が出されるというようなことが新聞に報道されたわけです。そして、三月三十一日に閣議決定して、即日国会にきょう審議しておりますこの予防法案が提出されたわけです。このようなセンセーショナルな報道によって一種のパニック状態になっている直後にエイズ予防法案国会に上程された。都立駒込病院ではエイズ患者治療をしていらっしゃるわけですが、ここには検査の予約が何人も来ておりました。ところが、この法案が報道されますと、法案国会に出たのが三月三十一日ですから、その翌日の四月一日には、もう予約が半分、五〇%キャンセルされた。四月六日には、これは参考人の先生が言っていらしたわけですので御存じだと思いますが五九%、十三日には六九%の人たちがキャンセルをしたということは、この予防法案エイズの検査をしようかどうかと思っている人たちにいかに恐怖を与えたかということは数字的にはっきりわかると思います。  それから、この問題は参考人やいろいろな質問の中でここまで来たわけですが、私のところに一人の男性から手紙が届けられました。その中の一部ですが「十月四日の朝日新聞の予防法案決定後の記事を見まして今までの不安以上に愕然としました。もはや医者を頼ることはできません。最後には自殺する以外ないが、自殺しなければ医者に行かざるを得ないと思います。しかし、医者に行かず何とか少しでも長く勤め家族への責任を少しでも果たさなければと思っていますが、気力だけではどうにもなりません。」長々と書いているわけです。この法案が、この審議がきょう進められていること自体いかに大きな、静かなパニックといいますか、前のパニックはぱあっと週刊誌などに書かれたパニックですが、これは不安に思っている人たちに表に出ないパニック状態を起こしていると私は思います。大臣はどうお考えになりますか。簡単に答えてください。
  252. 北川定謙

    北川政府委員 状況について御説明を申し上げるわけでありますが、このエイズという問題は非常に重要な側面を幾つか持っております。諸外国の感染状況から見れば、今後の感染の拡大を防ぐことも非常に大きな眼目であります。また、今先生が御指摘をされたような方々もあることは事実であろうと思います。しかし、その事実も、全体の法律の構造というものを十分に御理解をいただければそういう誤解というようなものもだんだん解消をしていただけるのではないか。そういう意味でも私どもは、この法律の作成、議論過程で、この法律の持っておる真の意味を国民の皆様にさらに理解をしていただく努力をする必要がある、このように考えております。
  253. 田中美智子

    ○田中(美)委員 帝京大学の大井玄先生の論文によりますと、先ほども出ておりましたイギリスの梅毒の問題ですが、これも法律で取り締まるのではなくて、プライバシーを完全に守り、そして全部無料で自由に安心してかかれる診療所をたくさんつくったということである程度、完全に撲滅はされておりませんけれども成功に至ったということがあります。それは何を意味しているかと言えば、医者に対して患者が絶大な信頼を持たなければこの感染を防ぐことは難しい、予防することは難しいと私は思うわけです。医者患者信頼関係感染を防ぐということは、感染経路を強制的に調べるというようなことは実際には不可能ですから、まず感染者本人に自発的に話してもらう以外には方法がない。そして、感染者が病気の重大性を理解して、自分感染させたかもしれない人や自分感染させてしまったかもしれない人に自分から事実を告げ、検査を勧めてもらうとか、こういうふうな非常に難しい作業というのは、感染者と臨床医との間の信頼がなくてはできないのだと私は思います。これは先生方も言っていられるわけです。  ところが、先ほど北川局長のお話では、信頼関係が崩れたときを想定して知事指示権、命令権を与えているというようなことを言われたのはとんでもない話であって、まず感染しないようにということの話をまた後でしたいと私は思いますが、不幸にも感染した場合に、その人が愛する人たちに感染させないようにするということは強権的には絶対できないことだと私は思います。これはやはり医者との関連の中で本人がその気にならない限りはならないと思うのです。それをこういう形で、あらかじめ医者患者との信頼関係が崩れるということを想定して法律をつくっている、それを先ほど聞きましてまさに憤然としたわけです。  アメリカではまだ法律をつくっておりませんが、州の中には何らかの規制をしているところがあります。イリノイ州では、結婚許可証の発行のときに血液検査を義務づけた。これはことしの一月から施行したようです。そうしましたら、この許可申請の数が六〇%も減ったというのですね。アメリカですから何もイリノイ州で申請する必要ないわけですから、こういう法規制のない、義務づけのないところに行っているわけです。ですから、この法律ができたときにイリノイ州の公衆衛生の責任者B・ターノックという方が、法規制は有効でないと自分が予言したとおりになった、強制的な法規制は潜在的感染者が地下に潜ってしまうという結果になったということを言っているわけです。  このような今の日本の予防法案、こんなものができますと、血液検査を義務づけただけでも地下に潜るのに、今度のような予防法案では徹底的にルーツを全部調べられて生活にまで介入されるわけですから、地に潜るということは当然考えられる。今まで同僚の先生方もこのことは言われましたけれども、大臣、地に潜らないという自信がおありですか。これは大臣に責任があるわけですから、一言お答えください。
  254. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 地に潜るか潜らないかという問題は、見方によって随分変わってくるわけでございますが、その潜る根拠としてお挙げになられました英国の梅毒の問題、それからイリノイ州の結婚届の問題は、比較をして判断する場合に、これは正しく比較をする内容としては必ずしも適当ではないというふうに私どもとしては考えておるわけでございます。  イギリスの梅毒の問題は、百年前の話でございますし、また病気の内容についても病原体についてもその時点ではわからなかったわけでございまして、そういう病気に対する理解がないというところ、また医療の技術、情報力の問題等々がありましてそういうことになったと思うわけでございますが、日本の場合には、現状、現実にそういう情報力もありますし、またエイズに対して正しい知識の理解が進みますと、この病気についてどういう経路で感染するかということもわかるし、また、この病気は特定の人が感染する病気ではなくて一般の方々もこの病気に感染する可能性のある病気で、一緒に社会の中においてこの患者を受け入れて、そして差別や偏見をなくしていくという背景を社会としてつくっていかなきゃならぬ、こういうことも十分に御理解と御協力が得られると思うわけでございまして、そういう御理解、御協力がやあればあるほど患者感染者プライバシー、人権等の問題は守られるわけでございます。まず第一に大事なことは、社会がこういうエイズ感染者患者を温かく受け入れる、こういう社会をつくるということが最も基本的な重要な問題でございまして、このことは駒込病院の先生の本の中にも非常に大事な問題であるという御指摘もあるわけでございまして、私どもはそういうふうに考え、この法律患者を潜ることに至らしめるという考え方は持っておらないところでございます。
  255. 田中美智子

    ○田中(美)委員 大臣は今度の法案によって感染しているかもしれないと心配している人たちが潜らないという確信があるということをよく覚えておきます。  さて、新しい法案をつくる場合には準備期間が重要だと私は思います。特に新しい病気です。まだわからないこともたくさんあると思います。国民もよく知りません。そういうときに法律をつくるというのは、準備期間をうんとつくって十分な審議をしてから、調査をしてからやるべきだと思うのですが、今度の法案は、先ほど最初に日にちも述べましたけれども、報道の誤りもあると思いますが、日本じゅうがパニック状態になっている直後に、まさに厚生省自体がそのパニックに巻き込まれたかのように大急ぎでつくっているところに一つの問題点があると私は思います。第一、公衆衛生審議会に諮問もしておりませんし、医者法律家などの専門家の意見も十分に聞いていない。また、エイズの不慮の被害者である血友病患者のたび重なる要望も無視して、大急ぎでこの法案がつくられた。なぜこのように急いだのか。私は、コロンボ刑事ではありませんが、動機がどうしてもわかりません。なぜそんなに急ぐのか。心配するのはわかります。どうやって予防しようかといって努力するのもわかります。しかし、なぜこんなに急いだのかということの動機が、いろいろ探ってみましたけれども、今なお私にはわかりません。  この法案を大急ぎで通す前に、いろいろな人の意見を聞く必要がある。まずすぐやらなければならないことは、日弁連などの法律専門家の意見を聞くために参考人として国会に来ていただく。こうしてきょう一日審議したわけですから、その上に立ってもう一度それをやるということが緊急に必要なことだと思いますが、この点をお答え願いたいと思います。この点は委員長にお願いしたいと思います。
  256. 畑英次郎

    ○畑委員長代理 先ほど開かれました理事会の申し合わせに従いまして事を進めてまいりたいと思っております。
  257. 田中美智子

    ○田中(美)委員 理事会で申し合わせましたか。
  258. 畑英次郎

    ○畑委員長代理 再度申し上げます。  理事会におきまして決められました方向に基づきまして事に当たります。
  259. 田中美智子

    ○田中(美)委員 今、新しく日弁連等の法律専門家を参考人として呼んで審議してほしいと言っているのです。これはまだ理事会にかかっていないのじゃないですか。委員長、これは理事会にかけていただきたい。
  260. 畑英次郎

    ○畑委員長代理 北川局長
  261. 北川定謙

    北川政府委員 エイズ法案が作成される過程において、その検討の時間が非常に短かったという御指摘でございますけれども、法案の作成段階エイズ対策専門家会議の御意見も十分に拝聴し、また公衆衛生審議会の伝染病予防部会の専門家の先生方にも御相談をして、その御意見も踏まえてつくってまいったものでございます。時間が非常に早かったということのみをもってこの法案内容は問題があるという御指摘につきましては、私どもとしてはそれはそうではないというふうにお答え申し上げるわけでございまして、この法案が今国会に至るまでの御審議過程でもいろいろな御議論をいただいておるわけでございまして、基本的な部分にかかわるものでございますので、決して不適切な点はない、このように考えております。
  262. 田中美智子

    ○田中(美)委員 それでは、WHOのエイズに関する勧告のすべて、これは和訳をしてだれでもが読めるようになっておりますでしょうか。それからもう一つ、アメリカの大統領の諮問委員会エイズに関して答申しております。これも和訳してきちっとだれでもが勉強できるようになっているでしょうか。これを研究していますか。それから、アメリカ国立防疫センターの社会的差別防止に関する勧告、これも厚生省はきちっと和訳し、だれでもが勉強し、そして勉強した学者や専門家の意見を聞いているでしょうか。それからもう一つ、「コンフロンティングエイズ」という本の改訂版につけられました増補部分、ことし出ているものです、これについての和訳、そしてこれを研究し、またそれを読んだ方の討議、こういうものをしているでしょうか。
  263. 北川定謙

    北川政府委員 ただいま先生から御指摘をいただいた幾つかの資料のうち、「コンフロンティングエイズ」につきましては和訳をしたものがございますが、それ以外のものについては原文を保管をしております。
  264. 田中美智子

    ○田中(美)委員 私は今「コンフロンティングエイズ」の増補部分と言っているわけです。今アメリカなりまたWHOなりは、世界のエイズの問題の研究をどんどん進めているわけですから、こういうものを参考にしなければならないのに、私が資料を要求いたしましてもまだとっていないとか、英文だけあるけれどもまだ和訳してないとか、今言ったように増補部分は何にもしていない。ということは、厚生省感染症対策室とか、そういうふうなところではお話ししていらっしゃるでしょうし、また厚生省の方がアメリカやイギリスに調査に行っているということはあります。それくらいのことは当然のことですけれども、こうしたまとまったものをちっとも勉強しないで、我々議員にさえこういうものの要約さえも渡す準備もされていない。そういう中でこの法律がつくられ、そして今審議が進められているわけですから、これは後に大きな禍根を残す心配があります。局長や大臣がどんなに確信があると言われても、これはそうは言えないと思うのです。  ですから、もう一度委員長に申し上げますが、日弁連等の法律家、専門家を呼んだ参考人質疑を至急やっていただきたいと思います。再度お願いいたします。
  265. 畑英次郎

    ○畑委員長代理 けさほど開かれました理事会の話し合いの内容に基づきまして運営に当たってまいりたい、こう考えております。
  266. 田中美智子

    ○田中(美)委員 なぜこのように急いで、人類の過去の教訓にも学ばず、国際的な経験やアドバイスにも目を通さず、国内での慎重な討議もせずに、あたかも突然襲いかかった悪魔を退治するような姿勢でこういう法案がつくられているということは、私は何としても納得できないわけです。  そこで、法案中身に入る前に、今までの同僚議員質問の中で非常に疑問点がありましたのでお聞きいたしますが、大臣、あなたが先ほどおっしゃったことですが、エイズ患者はどんどん進んでいる、一万人にもなる、こういうふうに言われました。だから急いで予防法が要るのだということを言われましたが、私、きのう厚生省から、これからエイズがどれくらい蔓延するだろうかという将来推計という数字をいただきました。これを見ますと、血液製剤の被害者の数も入れても五年後、一九九二年に一番最大数で三百であるだろうと言われているわけです。そうしますと、血液製剤関係の方が大体百五十人と見ますと、これはわずかと言えるかどうかはわかりませんが、五年後に百五十です。大臣は一万なんて言っていらっしゃるのですね。これはまさにパニック状態になったときにそういう感じがしたのです。ばあっと広がるのじゃないかというようなことが言われた。そのときの感情でいられるので、大臣自身が御自分厚生省で出した資料さえもきちっと御存じないということはおかしいではありませんか。訂正していただきたい。一万にもなるなんて、とんでもありません。それこそパニックを大臣が起こすのですよ。厚生省の、あなたのそこのところで、実際のエイズは五年後に百五十人くらいしか出ないと言っているのです。訂正してください。
  267. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 私が申し上げましたことを正確に御理解いただければおわかりいただけると思うわけでございまして、もう一度申し上げますと、エイズ患者が大体十カ月から十一カ月のスピードで倍加をしておる、これは事実でございます。それから、もしそういう前提に立って数学上百名の倍々倍々というその数字を考えると、十年で実は一万人になります、こういうことを申し上げたわけでありまして、それが日本の将来そうなるといったことを申し上げたつもりはございません。
  268. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そういうふうにしかお答えできないでしょうね。もうちょっときちっと勉強して、御自分のところから出したものくらいはきちっと目を通して正確に物をおっしゃっていただきたいと思います。大臣の感覚というのは、いわゆるパニック状態のときの民間人の感覚と似ているということを私は今同僚議員質問の中で感じていたわけです。  といいますのは、九月八日、参考人の大井先生がこういうことを言っていられます。ことしの五月、一週間の間に千人の調査をした。それは民間人と公衆衛生の感染症の専門家、この二つのクラスに調査をした。それで、今までということは、ことしの五月までに二次感染、三次感染がどれくらい生じているだろうかということを調査したわけです。民間人は三〇%が千人以上と言っているわけです。ところが、専門家の方は六〇%がゼロから九名まで、四〇%が二けたと言っているのです。こういうふうに実際に患者に接していらっしゃる方や検査をしていらっしゃる専門家はそんなに倍々倍々、いずれ一万になるなんというような感覚はないのです。しかし、国民はあるのですよ、国民全部ではないですけれどもね。それは週刊誌や何かでどんどん書かれたり、いろいろ患者の名前までが漏らされたりする中で、これはどんどん広がっていくのじゃないか、これは無知からそうなっているのですね。ということは、そういう無知な民間人のレベルに大臣がいられるということを今ここで質問を聞いているときに思ったわけです。これはやはりもっと法案というものをきっちり勉強なさって、きょうそれぞれの先生が一生懸命でこの法案の危険性というのを訴えているわけですから、もっと謙虚に大臣は聞いていただきたいというふうに思います。これは大臣に対する私の要望と忠告でございます。  次に、法案中身ですけれども、これは同僚議員もたくさん述べられましたので簡単に申しますが、五条で医師の報告義務がある。そして、七条で医師通報義務があるわけです。これはお医者さん自体が、自分が診た患者さんを通報するだけではなくて、その患者さんから聞いた全く知らない人まで通報するのですから、これは大変なことだというふうに思います。そしてまた、先ほど局長が言われたように、医者患者信頼関係がなくなったときに知事にという形で、八条で知事勧告権及び命令権、それから九条では指示権まで与えているわけです。知事指示権を与えているということは、公衆衛生法規の中にはないものだ、このエイズ予防法案だけにある厳しいものだと私は思います。うっかりすると、指示というのは大したことのないように見えますけれども、先ほど同僚議員の中にもこの質問をなさった先生がいらっしゃいましたけれども、指示中身というのは限定されていないわけですから、どんなことをされてもわからないということです。逆に言えば、どんなことをしてもいいということに拡大解釈されてしまう。そのために自治体の職員の質問権があるわけですから、何を聞いてもいい、こういうことになるわけです。そうすると、特にエイズの場合には性生活にまで入るわけですから、その中でどういうことがやられるか。あなた子供を産んじゃいけないとか、極端に言えば結婚もやめなさいとか、やはりそんなことまで出てくる可能性というのはあるのですね。こういう指示権までがあるというのは、性病予防法にさえないでしょう。どうしてこんな厳しい取り締まり、まさに取り締まりだと私は思います。ですから、感染者も、また患者も、そして感染しているんじゃないかと心配している人たちも、医者信頼して指導を受けたり、また医者から言われて協力をしたりするということが大事なのに、こんなことをされたのではとても医者信頼することにならないと思います。  もう一度聞きますが、こんな状態の中で、大臣にしても局長にしても、もしあなたの息子さんか娘さんがひょっとしたら感染しているかもしれない、お父さんどうしようと言ったときに、安心して、ああすぐ保健所に行って検査しなさい、こういう気になれますか。もうちょっと人間の心で答えていただきたいと思います。
  269. 北川定謙

    北川政府委員 先ほど来の先生のお話を伺っておりまして、この法律のねらっておる本旨というものについてかなり誤解を持って御理解をしているのではないか、そういうふうに思わざるを得ないわけでありますが、まず感染者が今後どうふえていくかという点から始まるわけでございますけれども、欧米のいろいろな実例を見ておると、先ほど大臣が御説明申し上げましたような格好でかなりのスピードでふえていってしまう。これはふえてからではもう手がつかないのですね。そういうことからすれば、多少過大にということはあるかもしれないけれども、今の時点で万全な体制をとっておく、これはどうしてもやらなければいかぬことであるというふうに思うわけであります。その予防をする上で一般の国民のプライバシーを守る、人権を守る、これにこの法律は最大の配慮を払っておるわけでありまして、どうしても主治医との間で主治医の指導のもとに従えない人、これは残念ながらこのユートピアでない社会の中ではあるのですね。そういう場合に都道府県知事が関与をするということを言っておるわけでございまして、都道府県知事指示をする、あるいは健診の勧告をするということを言っても、それは決して物理的な力を行使することではなくて、先ほど来申し上げていますが、保健所とか医療機関の場で患者医師との関係を樹立しながら対話を進めていく、こういう構造になっているわけであります。それを極めて犯罪者を取り扱うようなそういう法律の構造になっているかのような御理解をされているわけでございますが、そこのところはぜひひとつもう一度法律をお読みいただければありがたいというふうに思うわけでございます。  それから、医師都道府県知事にいろいろな情報を提供をする、医師指示に従わないケースについて情報を提供するという点につきましても、これは患者にいろいろなことを無理やり話をさせてそういうことをするということではなくて、全体の感染の拡大を防ぐという流れの中で得られた情報を提供する、こういうことでございますので、決して強権的に扱っておるということはないのでございます。
  270. 田中美智子

    ○田中(美)委員 幾ら局長や大臣がないと言われても、実際に受ける国民は、特にそれに感染したのではないかという不安を持っている人、また感染した人たちが非常におそれているということは、やはり大臣と現場と離れているというふうに言わざるを得ません。私一人がこの法案が強権的だと言っているわけではないわけです。  今プライバシーが守られていると言いましたけれども、大阪のHIVと人権・情報センターのボランティアの人たちが大阪の八カ所の保健所の態度を調査した。調査した本人が書いたものを私全部読ませていただきました。先ほど同僚議員が言われましたので中身のことは申しませんが、こんな状態は大阪の保健所だけじゃなくて、ほとんど全部、やったらそれに近いんだというふうに私思います。そういう中でどうしてプライバシーが守れるんだ、そういうことの方が先ではないかと私は思うのです。こんなに大急ぎで法律をつくらなくても、その方が先じゃないかと思うのです。  それでお聞きしたいのですが、八七年一月の神戸の女性の問題、これをだれが漏らしたか御存じですか。どこが漏らしたか御存じですか。局長にお尋ねします。
  271. 北川定謙

    北川政府委員 承知をしておりません。
  272. 田中美智子

    ○田中(美)委員 お調べになりましたか。
  273. 北川定謙

    北川政府委員 特定の人が漏らしたという事実はつかんでいないわけでございます。
  274. 田中美智子

    ○田中(美)委員 調べてもいないのですか。これは厚生省が漏らしたんじゃないかといううわさは立っています。だから私は聞いているんですね。そうでしたら調べるべきです。公務員には今だって守秘義務があるわけでしょう。それなのに、こういうことが行われているのに、これは私は出したくありませんけれども、その人の写真まで出て、名前が出ている。これは週刊誌ですよ。私、幾つもこれをコピーしてきたのです。写真も出て、名前も出て、名前の下に本名とまで書いてあるんですね。ここまで出ているのです。そして、この人が亡くなったときに記者会見しているんです。神戸の場合、これは「神戸のエイズ女性死ぬ」ということで、新聞で記者会見しているのが出ていますね。「女性エイズ患者死亡で記者会見する安井兵庫県エイズ対策本部長」この人、公務員でしょう。何で一々エイズ患者が死んだということを公表するのですか。こういうことをしたら、これは漏らしたことじゃないですか。それから「エイズ感染妊婦が出産」、これは高知県です。「エイズ感染者の出産を発表する高知県の松尾保健環境部長」、これも公務員ですよ。それから、これは大阪でのエイズ患者、この九月二十八日ですか九日に亡くなったそうです。これも府環境保健部の担当課長が記者会見をしているんですね。  なぜそうやって一々記者会見をやるのですか。ということは、結局その跡を追えば、マスコミがどうとかいいますけれども、それを最初に漏らしたもとがあるわけでしょう。それをとめないで、それを調べもしないで、うわさとしては厚生省が最初出したのだ、こういうふうにある新聞記者は私に言っているのです。それを調べもしない。それで守秘義務とか言えますか。ですからこういう人たちは、お兄さんがいる、お母さんがいる、もうお父さんとお母さんの家の前には新聞記者が二十四時間張りついて、家から出てきたらつかまえて話を聞く、こういうふうな状態ですよ。これでは残された家族だってたまったものじゃないですね。こういうことがあるから、こんな法案ができたんです。結局、自分のうちの子もこうなるのではないか、自分がこうなるのではないか、そういうことが、先ほど私のところに届けられた手紙の中身のように、自殺する以外にはない。自殺できなければ医者に行くけれども、やはり行けない。しようがない。何も医者に行かないで、このままできるだけ働いて家族に少しでも金を稼いで死のうじゃないか、こんな悲しいことを言っているわけです。それはこういうことになるからなんです。  第一、地方自治体の素人の職員が何でも聞けるようなこと、公務員に守秘義務があるといったって、厚生省の中から聞いたんだという人がいるにもかかわらず調べようともしていない。調べてもどうしても見つからなかったから、そういううわさが立っただけでも申し訳ないと言うならわかりますけれども、それでしゃあしゃあとして守秘義務を守るというようなことはできないのじゃないかというふうに私は思うのです。こんな法案ができたらますます拡大解釈されてぽこぽこ出ますから、恐ろしくて出てこない。どうせ治らないのならもういいわ、治療法が出るまでいいわ、こういうことになります。  次の質問に移ります。  これは大臣が出席なさっているかもしれませんが、ことしの一月二十八日にエイズに関するロンドン宣言が採択されました。この中で、情報提供と教育が唯一最も重要なエイズ対策であると述べられているわけです。まず情報提供と教育、啓蒙、これに全力を挙げて、先ほどエイズは普通の生活というのは何だというふうに言われました。文部省でさえ、手を洗って、人の歯ブラシを使わないで、人のタオルを使わないで普通の生活をしていれば大丈夫。私は、きょうは忙しいので朝から一日手を洗っていませんよ。それなら、手を洗わなかったらエイズになるのかという感じのものがまだ文部省の中にも残っているわけでしょう。今そんなことは国民はだれも信じてはいませんよ。多少わかってきています。しかし、わからない人がまだいっぱいいるのですね。ですから、ロンドン宣言で言われたように、情報提供と教育と啓蒙にこそ全力を挙げるべきです。これについて厚生省はどういうふうなことをしていますか。時間がありませんので、簡単にお話し願います。
  275. 北川定謙

    北川政府委員 先ほど来御答弁申し上げているわけでありますけれども、さきに示したエイズ予防対策大綱でございますけれども、ここの中では法律案のほかに、今先生が御指摘になられましたような情報提供とか教育とかさらには研究とか発症予防の研究、いろいろなことを総合的に取り組むというふうに言っているわけでございまして、厚生省といたしまして決して法律だけですべてをやっておる、法律の成立だけに力を注いでいる、そういうことではございません。そのために現在でもいろいろな予算を確保しておりますので、そういう点では先生の御指摘と非常に共通をして全体的な仕事を進めておるということがお答えとして申し上げられるわけであります。
  276. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そんな抽象的なことは聞いていません。どういうことをやっているかというのです。例えばこの間パンフレットを私の部屋に持ってきてくださったですね。あれは何部ぐらい刷っているのですか。そして、どこに使ったのですか。
  277. 北川定謙

    北川政府委員 正しい知識を普及するためにポスターを約七十二万部つくって自治体とか医療機関、金融機関、郵便局等に配布をしております。また、海外旅行者に対する注意喚起のパンフレット、これは二千二百万部作成をして検疫所から海外旅行者に対して配布をしております。また、医師を対象にした「エイズ診療の手引き」を九万部つくりまして医師会等に配布をしておる。その他さまざまなメディアを通して教育をしているわけであります。
  278. 田中美智子

    ○田中(美)委員 今ロンドン宣言で言われましたように、まずエイズという病気はうつったら怖いけれども、めったにうつらないという点では怖くないんだということを科学的に徹底していくことが大事だ。スイスでは、八六年にスイスじゅうの全世帯にパンフレットを配布しているのです。国民全部に知らせているのですね。外国に行く人だけじゃないです。局長、きちっと前を向いて聞いてください。全世帯に入れているのです。自民党の議員も聞いていてください。全世帯に入れているのですよ。それからイギリスは、八六年の暮れから八七年にかけて二千三百万全世帯にやはりパンフレットを入れているのです。それからフランスでは、リーフレットを二千万枚つくってキャンペーンしている。国民に徹底的にしているのです。海外旅行者だけにするとか、ポスターを七十二万とか、それからパンフは二万とか、この間私がいただきましたパンフは三十万とか、それは一体どこに渡しているのかわかりません。それでは週刊誌や何かの責任もあると思いますけれども、非常に多くのパニック状態をつくっているわけですから、それを静め、そして冷静に国民が教育を受けるというような、そのための——日本は経済大国ですし、一億を超える国民がいるのですから、スイスやイギリスなどは人口がぐっと少ないですね。それでも全世帯に渡すというようなことをしているのです。ぜひそういうことをしていただきたいと思うのです。それが先です。法律は、それを全部して国民もわかって、その上でもう一度考え直してみたらいいではないか、そんなに急ぐことはないじゃないかと言っているわけです。今後こういう全世帯に対する教育はどうしますか。
  279. 北川定謙

    北川政府委員 国民の皆様にエイズについての正しい知識を持っていただく、これは基本的に非常に重要なことでございますし、そのための努力はいろいろさらに進めていく必要があると思います。ただ、そのやり方はいろいろあるわけでございまして、家庭に全部一部ずつ配布すればそれで日本全国でエイズに対する正しい知識ができたということにはならないわけでございまして、いろいろ機会をとらえて、いろいろなメディアを通して、もちろん家庭に届くということも必要でございましょう、いろいろな対応をしながら正しい知識を普及する、これは最大限の努力を払ってまいりたいと思います。     〔畑委員長代理退席、委員長着席〕
  280. 田中美智子

    ○田中(美)委員 これは、私は一例としてパンフや何かのことを言ったわけですが、こういうことになったら、例えばそういう府の課長さんが記者会見するとか、こういうのをちょっと調べてそういうことを絶対させないように指導できますか。これは漏らしているんじゃないですか。もう一度聞きますが、漏らしたということは、どこまで漏らしたら漏らしたということになるのですか、局長
  281. 北川定謙

    北川政府委員 先ほど神戸、高知等の事例について御指摘があったわけでございますけれども、各地で個人を特定できるような報道が行われた。これは報道に行き過ぎがなかったか、あるいは行政医療機関においてもより周到な配意ができなかったのか、いろいろなことが指摘をされておるわけでございますけれども、当時はエイズについてのいろいろな不安というものが現在に比べて非常に大きかった。そういう状況の中でややセンセーショナルに取り上げられたのではないか、こういうふうに思うわけであります。その後のこの種の問題に関する報道の取り扱い方も非常にリーズナブルになっているのではないかと思うわけであります。  行政等が感染者の病状等を発表したことについては、それぞれやむを得ない事情があったというふうに考えております。また、個人が特定されない形で基本的には行われたわけでありますけれども、その後いろいろな反応の連鎖の中で、今先生が御指摘されたような状況が起こっておるのではないかというふうに思うわけでありますが、なお今後ともこの問題は、やはり個人がいろいろな形で迷惑を受けるということはあってはならないわけでございますので、そういう点から今度の法律の中でも具体的な守秘義務を課する条項を設けております。その指導のあり方についてもこれから具体的に定めてまいりたいと思うわけでございますので、今後はそういうことが起こらないように大いに注意をしていきたい、このように思うところでございます。
  282. 田中美智子

    ○田中(美)委員 最後に局長さんにちょっと申し上げますが、先ほど同僚議員質問の中で国民に知る権利もあるということを言われましたけれども、知る権利というのは、私は結核で右肺がありません。この右肺がないということを皆さんたちここにいらっしゃる方は知る権利はないはずです。私がこれは人に知られたくないという場合には皆さんにはないはずです。しかし、リクルートの株を政治家がもらったというときのその人は、これは国民が知る権利はあると思うのですね。ですから知る権利という場合に、私の肺がないということを皆さんは知る権利はないのです、私が言うことは勝手ですけれども。それと同じように、エイズにかかっているかかかっていないか、この人が何という名前の人かということを知りたい人はいるでしょう。だから、週刊誌が売れるから週刊誌がこういう写真まで出すのでしょう。しかし、こういうもの、知られたくないというものに対して我々だれも知る権利はないはずです。そういう言葉を、局長がこの法案審議の中で、国民にも知る権利があるということを先ほど言われたことは許せないことだと思いますので、これは訂正していただきたいと思います。
  283. 北川定謙

    北川政府委員 先ほど申し上げたのは、個人プライバシーを守るというところと国民の知る権利とのはざまの中でどう対応するかというふうに申し上げたわけでございますが、知る権利というものは、あらゆることをすべて知るということではなくて、必要なことについてということは当然頭にかぶっておるわけでございますので、御理解を賜りたいと思います。
  284. 田中美智子

    ○田中(美)委員 局長ともあろう者がそういう不用意な言葉を、国民にも知る権利があるなどというようなことを言ったり、大臣が倍々倍々でそのうち一万にもなるんだなどと言うことは、厚生省自体が五年後だって百五十人だと言っておるのにそういうことを審議の最中で言うということは、非常に不謹慎だというふうに私は思います。  それを強く抗議しまして、この法案は絶対賛成することはできませんし、これを残したら世界で日本が人権の後進国であるというふうに批判の的になりますし、また必ず不安におののいている人たちは医者のところにやってこない、むしろ予防どころか予防ができなくなる法案だということを確信を持って申し上げて、怒りを持ってこの質問を終わりたいと思います。
  285. 稲垣実男

    稲垣委員長 一言申し上げます。  大原委員及び田中委員から参考人の要求がありましたが、二度にわたる参考人意見聴取などを通じて、審議は十分尽くされたものと認めます。  以上で本案に対する質疑は終局いたしました。(発言する者あり)     ─────────────
  286. 稲垣実男

    稲垣委員長 この際、本案に対し、野呂昭彦君外一名から修正案が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。塚田延充君。     ─────────────  後天性免疫不全症候群予防に関する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  287. 塚田延充

    塚田委員 ただいま議題となりました後天性免疫不全症候群予防に関する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党及び民社党・民主連合を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。  修正の要旨は、第一に、国及び地方公共団体は、教育活動等を通じてエイズに関する正しい知識の普及を図らなければならないこと。第二に、国及び地方公共団体は、エイズに関する施策が総合的かつ円滑に実施されるよう、相互に連携を図らなければならないこと。第三に、医師都道府県知事への報告については、感染者が血液凝固因子製剤の投与により感染したと認められる場合には、これを要しないこと。第四に、都道府県知事の健康診断受診勧告については、医師がその診断に係る感染者エイズ病原体感染させたと認められる者がさらに多数の者にエイズ病原体感染させるおそれがあることを通報した場合に行うこと。第五に、都道府県知事が行う質問については、健康診断受診勧告、健康診断受診命令または必要な指示を行おうとする場合に行うこと。以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  288. 稲垣実男

    稲垣委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。     ─────────────
  289. 稲垣実男

    稲垣委員長 これより本案及び修正案を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、これを許します。笹川堯君
  290. 笹川堯

    笹川委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております後天性免疫不全症候群予防に関する法律案及びこれに対して自由民主党及び民社党・民主連合が共同で提出した修正案につきまして、修正案及び修正案を除く原案に賛成の意を表するものであります。  後天性免疫不全症候群すなわちエイズの蔓延は欧米を初めとして世界的に深刻な状況にあり、その患者数は、WHOの集計によると世界で十一万人を超えており、感染者の数は五百万ないし一千万人と推計されております。幸い我が国のエイズ患者はなお少数にとどまっておりますが、欧米諸国での経験にかんがみ、患者数が少ない今のうちに緊急に総合的な対策を講じ、エイズの蔓延を防止することが必要であります。  そのためには、国民に対する正しい知識の普及を初めとして、感染情報の把握、二次感染防止対策の強化、国際協力及び研究の推進等の施策を総合的に進めることが必要でありますが、政府原案は、人権の保護に配慮しつつ、エイズ予防に関し、法律上の措置が必要な事項について定めることにより、エイズの蔓延の防止を図ろうとするものであります。その趣旨については評価できるものの、主として次のような諸点について所要の修正を行うことにより、一層の内容の改善が図られるものと考えます。  まず第一に、教育活動等を通じてエイズに関する正しい知識の普及を図ることを明らかにするとともに、国及び地方公共団体は、エイズに関する施策が総合的かつ円滑に実施されるよう、相互に連携を図らなければならないこととすること。第二に、医師都道府県知事に対して行う匿名の感染報告を、血液凝固因子製剤の投与によって感染したと認められる者については不要とすること。第三に、都道府県知事が健康診断勧告命令指示質問を行う場合を、医師指示に従わず、多数の者に感染させるおそれがあると認めて医師通報した場合に限ることとすること。  これによってさらに本法案目的の達成に資するものと考えるものであり、私どもといたしましては、この修正案及び修正部分を除く原案に賛意を表するものであります。  これをもちまして私の討論を終わります。(拍手)
  291. 稲垣実男

  292. 村山富市

    村山(富)委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、エイズ予防法案及びその一部修正案に対し、反対の意見を申し上げます。  何よりもまず、本日の委員会における我が党委員の質疑、意見に対して、特に学者、医師、弁護士、そして直接かかわりのあるとされている関係団体の方々が最も懸念し、不安に思っておる重要な論点について、政府側の説明はまことに不十分であり、解明すべき点が全くあいまいとなっています。にもかかわらず、本日議了、採決を行うことについては、断じて反対するものであります。  政府原案並びに修正案内容について一口に言えば、エイズ予防に逆効果をもたらす法案だということであります。  エイズウイルスから国民を守るためには、第一に、有効なワクチンの開発を初め、発病の抑制方法及び治療方法の研究開発を急ぐこと、第二には、性教育の充実を初め、予防のための正しい知識の周知徹底を図ること、第三には、いまだ医師の前にあらわれない潜在的な感染者がちゅうちょせずに医師にかかり、医師患者信頼関係を築くようにすること、この三つが必要最小限の施策であると思います。  しかるに、政府原案及び修正案は、多数の者に感染させるおそれのある者を現場の医師に抽出させ、また来日する外国人の場合は、それを法務省に判断をさせ、それらの者を行政による規制対象とするというものであります。これは多くの委員指摘しているように、逆に感染者の潜在化を促進し、医師患者信頼関係を損なう結果をもたらし、エイズ社会的防衛に逆行すること必至であると言わなければなりません。  厚生省は、国内においても、入国する外国人においても、実際には売春や麻薬の常習者であることが確実な場合にしか適用されないなどと答弁をしています。しかし、法律の上ではそのような限定はなく、第一線の医師や役人の主観的判断によって誤った判断や人権侵害のケースが生じたとしても、それは法律の条文に照らせばすべて合法的な行為となるのであります。そして、一たび医師役所が誤認したとすれば、該当者、家族にとってはそれが社会的に致命傷となり、平穏な生活が破壊されるおそれが多分にあると言わなければなりません。  エイズ予防の効果を高めるためには、まず何よりも教育と啓発、そして医療機関も役所も、希望者にはすべて匿名による取り扱いを実施すること、これだけのシステムを整備することによって、まず感染者たちの不安を取り除くことが急務であると思います。  なお、一部修正案は、血友病患者をこの法律の対象から除外するというものでありますが、血友病関係団体の皆さんが、新たな差別となるのではないか、我々を除けば済むという問題ではないとして反対しているのであります。したがって、どうしても成立させる必要があるというのであれば、政府原案の第七条、第八条、第九条、第十条など、管理と規制、人権侵害のおそれのある条文と附則第三条を削除し、サーベイランスの実施及びプライバシー保護の条文を残し、社会教育、学校教育の協力に関する条文を新たに起こすなど、最小限必要なものにとどめるべきであると考えるのであります。  我が党としては、以上の理由から政府原案及びその修正案に対し、断固反対するものであります。  同時に、この委員会審議の中で稲垣委員長もいみじくも決意を表明しております。「この法案は、ただいま御指摘ありましたとおり、極めて国民生活に重大な影響を与えるわけでありますから、今後慎重な取り組み、またその取り扱いにつきましても、民主的にまた公平に、今後理事会の協議等も踏まえまして、前向きに積極的に取り組んでいく覚悟でございます。」という覚悟の決意の表明をされておりますが、まだ審議も十分ではなく、何も急いで議了、採決をしなければならない客観的な必要性も認められません。むしろ慎重な審議の上に、最も効果の期待できるよりよい法制度の確立こそが期待されていると確信をします。  以上、我が党の反対意見を申し上げ、討論を終わります。(拍手)
  293. 稲垣実男

    稲垣委員長 吉井光照君。
  294. 吉井光照

    ○吉井委員 私は、公明党・国民会議を代表して、当委員会で継続審議中の後天性免疫不全症候群予防に関する法律案、いわゆるエイズ予防法案並びに修正案に対する反対討論を行います。  最初に、この法案は、エイズの蔓延防止を図る、人権、プライバシーの保護が骨子となっており、基本的には医師患者感染者との信頼関係を通じて、感染源感染者の把握、二次感染防止を図るとしておりますが、キャリアの方々の協力なしに二次感染の防止はできないのであり、その実効性には疑問が残るのであります。したがって、私は、法律制定の前にまず感染者の協力、医師の協力、国民の理解などを得ることが重要であり、絶対条件になると理解しております。  また、二次感染防止を図るために即法律をつくるとの考えは余りにも短絡的であり、法律をつくる根拠が乏しいのであります。その上我が国では、エイズ感染率は極めて低く、法律がないために感染が拡大した事例は皆無に等しい現状であります。  さらに、エイズ予防法案では社会防衛的な性格、取り締まり的なニュアンスが極めて強く、一般国民に恐怖心を与える色彩が非常に強いのであります。治療薬のない現状では、かえってエイズ感染者の警戒心が強くなり、地下に潜行させ、その実態の把握に困難が生じ、立法措置が逆効果になるおそれが十分あるのであります。  もう一つ、この法案における決定的な欠陥は、法案作成の背景、過程にあります。最近、やや鎮静化しているものの、一時期の神戸、高知に見られたエイズ騒動、エイズパニックに乗じて作成した、いわゆる大衆心理をベースにしたパニック立法であることであります。さらに、法案作成の準備から提出までの期間が極めて短いことであります。すなわち、昨年一月十七日、厚生省エイズ予防のための法制化の方針を表明、二月十日原案、三月六日に法律案要綱発表、三月三十一日には閣議決定し国会に提出しています。実に二カ月半のスピードでの法案作成であります。厚生省は、立案に当たって、エイズ対策専門家会議、公衆衛生審議会等を通じて、一部の臨床医や法律学者の意見を聞いたようでありますが、一年たった現在、実態が明らかになるにつれて、果たして、現場の臨床医、法学者等の広範な専門家の意見が十分反映されないまま作成されたとの印象が強く、不信感が募る一方であります。まさに、時期尚早であり、拙速であります。  次に、人権、プライバシーの保護の問題であります。この法案の第五条では、医師から都道府県知事に、感染者の年齢、性別、感染原因等の文書による報告義務を、第七条一項では、多数の者にエイズ病原体感染させるおそれのある感染者の氏名、居住地通報を課していますが、条文の「感染させるおそれがあると認めるとき」、「感染させたと認められる者」、「感染させるおそれがあることを知り得たとき」など、医師判断にゆだねられています。しかし、個々の医師判断には相当ばらつきがあることが予想されるため、実効を上げつつ個人の秘密保護が確保できるかは問題であります。  また、医師患者または感染者本人と連絡をとる場合、家族や職場などで秘密裏に事が運ぶかどうか、さらに患者の配偶者に果たして告知されるのか、あるいは未成年、児童の場合に親へはどのように連絡するのかなど、一歩誤れば家庭の崩壊や人間関係の断絶を惹起するおそれがあります。その他、離婚問題、解雇問題、教育問題、社会的問題等、数え挙げれば限りがありませんが、どれをとってもこの法案では対応できない問題ばかりであります。もっとエイズの現状を直視し、慎重な対応を図るべきであります。  次に、血友病患者に関する問題点を指摘します。  政府が実施した救済策は、当面の救済策として一応評価するものの、国、製薬会社の薬害被害に対する責任が不明瞭なため、その実施に責任を負うものとなっておりません。特に、政府提案の法案から「血友病患者を除く」との修正案では、一つ、我が国のHIV感染者の九三%は血友病患者であり、これを除くと法案の存在意義がなくなる。二つ、血友病患者を除いたことで、エイズ患者への取り締まり姿勢がますます強まる。三つ、血友病イコールエイズと誤解されている差別問題がさらにエスカレートする。など二重三重の縛りがあり、問題であります。  また、血友病患者の方々の要請でも、当委員会で意見を述べられた参考人の共通した見解にも、ことごとく廃案にすべきであるとの主張でありました。今こそ国はこれらの切実たる血の叫びを謙虚に受けとめるべきであると同時に、早急に国内自給体制の確立に着手すべきであります。  以上、るる述べてきましたように、この法案には社会防衛的性格が強く、患者を保護するという視点が欠落しており、一度撤回して廃案とし、再検討すべきであります。今後、二次感染防止のための手段は、法律によらなくてもカウンセリングの確立、正しい知識の普及、治療薬の研究開発への予算措置、サーベイランス体制の確立などを優先し、国民が理解し、納得のいく対策を講ずるよう政府に強く要望し、反対討論を終わります。(拍手)
  295. 稲垣実男

    稲垣委員長 児玉健次君。
  296. 児玉健次

    ○児玉委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、後天性免疫不全症候群予防に関する法律案に反対する立場から討論を行います。  私は、まず、この法案が当委員会において法案そのものの審議が開始された初日、実質的な審議わずか一日でこのような形で議了、採決が強行されることに心からの怒りを込めて抗議するものです。  現在、エイズの蔓延防止のために何より必要なことは、エイズについて正しい知識の普及を進めることです。本年一月、ロンドンで開催された各国エイズ担当大臣会議情報提供と教育が唯一最も重要なエイズ対策であると強調しているのは、まさにこのことであります。  日本のエイズ感染は、約九割が血友病の患者であり、その半数が子供です。子供たちは、血友病との闘いだけでなく、いつエイズが発症するかもしれないという不安、社会の偏見、学校で広がっている差別と無言で闘っています。その子供たちが胸を張って生きていけるようにすることこそ求められております。  そのためには、発症予防治療研究の事業を強化し、患者感染者に最新の研究成果を生かした最高水準の医療を保障することや、国内献血による安全な血液製剤の供給を確保すること、患者感染者またはその家族への抗体検査結果の告知を徹底することです。そして、国の責任において患者感染者に対する保護と援助を行うこと、プライバシーを守り、学校、職場、病院等での不当な扱いをなくすため具体的措置をとることが極めて重要です。  ところが、本法案は、取り締まり法的性格が強く、実効あるエイズ蔓延防止策にならないばかりか、病気と闘っている患者感染者プライバシーや人権を侵害するものとなっています。法案が提出された前後から、エイズの抗体検査を受ける人が激減していることにあらわれているように、本法案患者感染者の潜在化を招き、エイズ対策上マイナスの効果を果たすものと言わなければなりません。また、医師に報告義務を課すことによる医師患者信頼関係の破壊も予防治療の上で重大な障害となります。  血液凝固因子製剤による感染者は、医師の報告義務等から除外する、都道府県知事勧告等は、医師から通告のあった者に限る等の修正は、本法案の危険な本質を何ら変えるものではありません。我が党は、反対です。  この法律ができることによって、エイズはますます恐ろしい病気として定着し、患者感染者への差別、偏見が助長されかねません。私は、患者団体のみならず関連の学会や法曹界、医療関係者が強く反対しているエイズ予防法案は、この際、廃案とすることを強く要求して、反対討論を終わります。(拍手)
  297. 稲垣実男

    稲垣委員長 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  298. 稲垣実男

    稲垣委員長 これより後天性免疫不全症候群予防に関する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、野呂昭彦君外一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  299. 稲垣実男

    稲垣委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  300. 稲垣実男

    稲垣委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  301. 稲垣実男

    稲垣委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  302. 稲垣実男

    稲垣委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十七分散会