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1988-09-08 第113回国会 衆議院 社会労働委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年九月八日(木曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 稲垣 実男君    理事 高橋 辰夫君 理事 戸井田三郎君    理事 丹羽 雄哉君 理事 畑 英次郎君    理事 池端 清一君 理事 沼川 洋一君    理事 田中 慶秋君       相沢 英之君    粟屋 敏信君       伊吹 文明君    石破  茂君       今井  勇君    小沢 辰男君       大野  明君    片岡 武司君       近藤 鉄雄君    佐藤 静雄君       笹川  堯君    自見庄三郎君       高橋 一郎君    堀内 光雄君       三原 朝彦君    持永 和見君       大原  亨君    川俣健二郎君       河野  正君    永井 孝信君      新井 彬之君    平石磨作太郎君       吉井 光照君    児玉 健次君       田中美智子君    大橋 敏雄君  出席政府委員         厚生大臣官房長 黒木 武弘君         厚生大臣官房審         議官      伊藤 卓雄君         厚生省保健医療         局長      北川 定謙君         厚生省薬務局長 北郷 勲夫君  委員外出席者         参  考  人         (大阪環境保         健部長)    三橋 昭夫君         参  考  人         (東京都立駒込         病院感染症科医         長)      根岸 昌功君         参  考  人         (医事評論家) 水野  肇君         参  考  人         (帝京大学医学         部教授)    大井  玄君         参  考  人         (社団法人日本         医師会常任理         事)      村瀬 敏郎君         参  考  人         (日本赤十字社中         央血液センター         副所長)    西岡久壽彌君         社会労働委員会         調査室長    石川 正暉君     ───────────── 委員の異動 八月三十日  辞任         補欠選任   川俣健二郎君     渋沢 利久君 同日  辞任         補欠選任   渋沢 利久君     川俣健二郎君 九月八日  辞任         補欠選任   木村 義雄君     笹川  堯君 同日  辞任         補欠選任   笹川  堯君     木村 義雄君     ───────────── 八月三十日  全国最低賃金制度確立等に関する請願東中光雄紹介)(第四九七号)  同(藤田スミ紹介)(第四九八号)  国立明石病院及び国立神戸病院統合計画中止等に関する請願浦井洋紹介)(第五四〇号)  同(永井孝信紹介)(第五七〇号)  高齢者就労対策充実に関する請願細谷治嘉紹介)(第五四一号)  療術制度化促進に関する請願田並胤明君紹介)(第五四二号)  小規模障害者作業所助成等に関する請願外三件(大原亨紹介)(第五四三号)  総合的なパートタイム労働対策早期確立に関する請願唐沢俊二郎紹介)(第五五〇号)  同(村井仁紹介)(第五五一号)  同(串原義直紹介)(第六〇一号)  同(清水勇紹介)(第六〇二号)  同(中村茂紹介)(第六〇三号)  身体障害者雇用に関する請願岩垂寿喜男紹介)(第五七三号)  同(沢藤礼次郎紹介)(第五七四号)  身体障害者福祉行政改善に関する請願岩垂寿喜男紹介)(第五七五号)  同(沢藤礼次郎紹介)(第五七六号)  重度障害者寒冷地対策に関する請願岩垂寿喜男紹介)(第五七七号)  同(沢藤礼次郎紹介)(第五七八号)  総合リハビリテーションセンター設置に関する請願岩垂寿喜男紹介)(第五七九号)  同(沢藤礼次郎紹介)(第五八〇号)  脊髄神経治療技術研究に関する請願岩垂寿喜男紹介)(第五八一号)  同(沢藤礼次郎紹介)(第五八二号)  労災重度被災者終身保養所設置に関する請願岩垂寿喜男紹介)(第五八三号)  同(沢藤札次郎紹介)(第五八四号)  労災年金厚生年金等完全併給に関する請願岩垂寿喜男紹介)(第五八五号)  同(沢藤札次郎紹介)(第五八六号)  労働者災害補償保険法改善に関する請願岩垂寿喜男紹介)(第五八七号)  同(沢藤礼次郎紹介)(第五八八号)  労働者賃金等に関する請願奥野一雄紹介)(第六一八号) 九月五日  福祉国庫負担金削減反対等に関する請願不破哲三紹介)(第六四八号)  高齢者就労対策充実に関する請願沢田広紹介)(第六四九号)  療術制度化促進に関する請願小川元紹介)(第六五〇号)  身体障害者雇用に関する請願北村直人紹介)(第六五二号)  同(保利耕輔君紹介)(第六五三号)  同(牧野隆守紹介)(第六五四号)  同(森田一紹介)(第六五五号)  同(渡辺省一紹介)(第六五六号)  同(渡部恒三紹介)(第七一七号)  同(奥田幹生紹介)(第七三八号)  同(玉生孝久紹介)(第七三九号)  同(田邉國男紹介)(第七六三号)  同(野呂田芳成君紹介)(第七六四号)  同(前田武志紹介)(第七六五号)  身体障害者福祉行政改善に関する請願北村直人紹介)(第六五七号)  同(保利耕輔君紹介)(第六五八号)  同(牧野隆守紹介)(第六五九号)  同(森田一紹介)(第六六〇号)  同(渡辺省一紹介)(第六六一号)  同(渡部恒三紹介)(第七一八号)  同(奥田幹生紹介)(第七四〇号)  同(玉生孝久紹介)(第七四一号)  同(田邉國男紹介)(第七六六号)  同(野呂田芳成君紹介)(第七六七号)  同(前田武志紹介)(第七六八号)  重度障害者寒冷地対策に関する請願北村直 人君紹介)(第六六二号)  同(保利耕輔君紹介)(第六六三号)  同(牧野隆守紹介)(第六六四号)  同(森田一紹介)(第六六五号)  同(渡辺省一紹介)(第六六六号)  同(渡部恒三紹介)(第七一九号)  同(奥田幹生紹介)(第七四二号)  同(玉生孝久紹介)(第七四三号)  同(田邉國男紹介)(第七六九号)  同(野呂田芳成君紹介)(第七七〇号)  同(前田武志紹介)(第七七一号)  総合リハビリテーションセンター設置に関する請願北村直人紹介)(第六六七号)  同(保利耕輔君紹介)(第六六八号)  同(牧野隆守紹介)(第六六九号)  同(森田一紹介)(第六七〇号)  同(渡辺省一紹介)(第六七一号)  同(渡部恒三紹介)(第七二〇号)  同(奥田幹生紹介)(第七四四号)  同(玉生孝久紹介)(第七四五号)  同(田邉國男紹介)(第七七二号)  同(野呂田芳成君紹介)(第七七三号)  同(前田武志紹介)(第七七四号)  脊髄神経治療技術研究に関する請願北村直人紹介)(第六七二号)  同(保利耕輔君紹介)(第六七三号)  同(牧野隆守紹介)(第六七四号)  同(森田一紹介)(第六七五号)  同(渡辺省一紹介)(第六七六号)  同(渡部恒三紹介)(第七二一号)  同(奥田幹生紹介)(第七四六号)  同(玉生孝久紹介)(第七四七号)  同(田邉國男紹介)(第七七五号)  同(野呂田芳成君紹介)(第七七六号)  同(前田武志紹介)(第七七七号)  労災重度被災者終身保養所設置に関する請願北村直人紹介)(第六七七号)  同(保利耕輔君紹介)(第六七八号)  同(牧野隆守紹介)(第六七九号)  同(森田一紹介)(第六八〇号)  同(渡辺省一紹介)(第六八一号)  同(渡部恒三紹介)(第七二二号)  同(奥田幹生紹介)(第七四八号)  同(玉生孝久紹介)(第七四九号)  同(田邉國男紹介)(第七七八号)  同(野呂田芳成君紹介)(第七七九号)  同(前田武志紹介)(第七八〇号)  労災年金厚生年金等完全併給に関する請願北村直人紹介)(第六八二号)  同(保利耕輔君紹介)(第六八三号)  同(牧野隆守紹介)(第六八四号)  同(森田一紹介)(第六八五号)  同(渡辺省一紹介)(第六八六号)  同(渡部恒三紹介)(第七二三号)  同(奥田幹生紹介)(第七五〇号)  同(玉生孝久紹介)(第七五一号)  同(田邉國男紹介)(第七八一号)  同(野呂田芳成君紹介)(第七八二号)  同(前田武志紹介)(第七八三号)  労働者災害補償保険法改善に関する請願北村直人紹介)(第六八七号)  同(保利耕輔君紹介)(第六八八号)  同(牧野隆守紹介)(第六八九号)  同(森田一紹介)(第六九〇号)  同(渡辺省一紹介)(第六九一号)  同(渡部恒三紹介)(第七二四号)  同(奥田幹生紹介)(第七五二号)  同(玉生孝久紹介)(第七五三号)  同(田邉國男紹介)(第七八四号)  同(野呂田芳成君紹介)(第七八五号)  同(前田武志紹介)(第七八六号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  後天性免疫不全症候群予防に関する法律案内閣提出、第百八回国会閣法第九〇号)      ────◇─────
  2. 稲垣実男

    稲垣委員長 これより会議を開きます。  第百八回国会内閣提出後天性免疫不全症候群予防に関する法律案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、本日参考人として大阪環境保健部長三橋昭男君、東京都立駒込病院感染症科医長根岸昌功君、医事評論家水野肇君、帝京大学医学部教授大井玄君、社団法人日本医師会常任理事村瀬敏郎君、日本赤十字社中央血液センター所長西岡久壽彌君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 稲垣実男

    稲垣委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────
  4. 稲垣実男

    稲垣委員長 御出席参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用のところ当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  議事の順序は、初めに参考人方々から御意見を十五分程度お述べいただき、次に委員諸君からの質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、念のため参考人方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人委員に対し質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。  それでは、三橋参考人お願いいたします。
  5. 三橋昭夫

    ○三橋参考人 大阪府の環境保健部長をいたしております三橋でございます。また現在、全国都道府県及び政令指定都市衛生担当部局長で構成しております連絡協議会とでも申しますか、全国衛生部長会会長も仰せつかっております。  私は、本日は、地方行政におきましてエイズ第一線を担当している立場の一人といたしまして、私の意見を述べさせていただきたいと存じます。  大阪におきましては、先生方御存じのようにこの五月に一つ事例経験したわけでございます。大阪におきましては、昨年の神戸事例報道されまして以来、手探りではございましたけれども地方行政といたしましていろいろ努力をいたしてまいりました。例えば検査体制充実でございますとかあるいはテレホンサービス医療従事者皆様方に対する研修あるいは一般府民皆様に対する予防知識の普及等々でございまして、最近では大阪独自にエイズ基金なるものを設けまして、大阪独自の研究助成もスタートをいたしておるところでございます。このような中で、この五月でございますが、一つ事例経験いたしました。大変大きく報道されましたので先生方もよく御存じと存じます。私ども、この経験をいたしております中でいろいろと苦慮をいたしました。どうしたらいいのかということで苦慮いたした点が幾つかございます。大きく言って三つぐらい苦慮した点がございます。  その第一点は、いかにしてこの患者さんのプライバシーを守りながら、どうやって安心して療養していただけるかという点が一つ苦慮した点でございます。すなわち、どこの医療機関お願いをして治療をしていただいたらいいのかという医療機関の選定と申しますか、お願いする医療機関探しに大変苦慮をいたしました。これは幸いにいたしまして、ある医療機関が受けとめていただきまして、今患者さんは比較的安定した状態で療養をしておられるわけでございます。今後、都道府県がこの大阪のような事例経験いたしました場合に、どのような形で患者プライバシーを守りながら安心して療養をしていただくか、これは一つの大きなポイントになろうと思っております。  それから第二点、苦慮いたしました点は、実は地方行政立場といたしましてどの程度までこういう事例公表するかという点でございました。 この大阪事例につきましては、中途の段階で情報が漏れて報道をされたといった経過がございまして、地方行政といたしましては後追いの形で公表するという形をとりました。このような公表過程の中で、地元報道機関皆様方からは、こういうケースについては行政の方としてもひとつ公表ルールをはっきりしたらどうかといった御要望もございました。全般的に言いますと、地元報道関係皆様方プライバシー問題には非常に御配慮をいただいたと私感謝をしているところでございます。この辺、これからこういうケースが出てまいりました場合に、地方行政がどうプライバシーを守りながら公表の問題を考えていくか、これがなかなか難しい問題だと思っておりまして、これが第二点目でございます。  第三点目といたしましては、報道されておりましたように、このケースにつきましてはいろいろ感染経路が疑われたわけでございます。薬物乱用の問題もございましたし、そのほかいろいろ感染経路が疑われまして、正直なところ、どういう感染経路感染し発病なさったのかということは、私どもとしてははっきりつかめているわけではございませんけれども、しかしそれぞれの感染経路につきまして、ほかに感染をしておられる方がいるかどうかということについては、私どもとしても確認をしなければならないという立場から相当いろいろと追跡調査をやらせていただきました。しかし、この追跡調査というのも地方行政にとりましてはなかなか難しい問題でございます。私ども衛生行政を担当する者だけでこれを一〇〇%と申しますか、完全にやることはなかなか難しゅうございまして、例えば法務省関係の各施設でございますとかあるいは警察本部といった他の行政機関の御協力も得ながら進めていかなければならないという、大変苦労がございました。ある程度の御協力の得られた方々については検査をさせていただきましたけれども、今後このような追跡調査をするに当たりましてはどのようなルールでやっていったらいいのか、私ども大変苦慮をいたしております。この調査過程におきまして、これは責任のある御発言ではございませんけれども、この調査段階で、担当者レベルと申しますか、御相談を申し上げに行った先の方から、法的根拠があればさらにお手伝いができるんだがといった御発言があったやに聞いておりまして、これは公式な発言ではございませんけれども、そういうこともございました。  このような大阪経験からいたしまして、患者さんのケアでございますとか、それからまた、もしキャリアの方々が例えば外科手術とか合併症の治療の必要が起こったときにどのような形で対応してさしあげるのか、このような中で都道府県第一線機関といたしましてどのような役割を果たしていくのか、私としては、都道府県第一線機関としては相当の役割を果たしていかなければならないと考えております。プライバシーの問題にいたしましても患者さんのケアにいたしましても、いろいろな対策は最終的には都道府県が責務を負わなければならない、このように考えている次第でございます。そういう意味から申しまして、都道府県担当部長の一人としての意見といたしましては、都道府県仕事をしていく上にその根拠になる法的根拠があったら大変ありがたいなという感じでございまして、このような都道府県経験から、どうしたらいいかなかなかわからない段階におきましては一つルール、指針をお示しいただきたい。そういう意味でぜひ法制化を早くしていただきまして、都道府県がしっかり活躍できるような、努力をさせていただけるような体制を早くつくっていただきたいとお願いをする次第でございます。  また、このようなエイズ対策を進めるに当たりましては、都道府県間に施策の差があってはならないと思います。その意味からも法で決めていただければ、全国的に同じルール仕事ができていくということがございまして、その意味からも都道府県担当者の一人といたしましては、法制化が必要ではなかろうかと思っております。  そこで、先ほど私は全国衛生部長会会長を今仰せつかっていると申し上げましたけれども、今部長会の中でもエイズ問題につきましてはいろいろ議論をいたしておりまして、部長会といたしましてもことしの五月、厚生省の六十四年度予算編成に向けて私どもとしての要望をさせていただきましたが、その中でも法制化を含めたエイズ対策の強化をお願いいたしております。当然ながら、これにつけ加えまして、血液製剤に起因する患者さんあるいは感染者に対する救済措置も十分お考えいただきたいというお願いをいたしたわけでございますが、現在さらに部長会の中で、法制化促進についての議論取りまとめを行っております。今後取りまとめができました段階先生方お願いに上がることになろうかと思っております。その節はよろしくお願いいたしたいと思っております。  地方第一線を担当いたしております部長の一人といたしまして、大阪経験を中心にいたしまして私の意見を述べさせていただきました。  ありがとうございました。(拍手)
  6. 稲垣実男

    稲垣委員長 ありがとうございました。  次に、根岸参考人お願いいたします。
  7. 根岸昌功

    根岸参考人 都立駒込病院感染症科根岸と申します。  私は、今まで何人かの患者さんを診、そして残念ながらみとっていくという過程の中でいろいろな種類経験をしてまいりました。その経験の中で、臨床現場で一体何が起こっているのかということを一点、それから考えてエイズ対策には一体どういうものが必要なんだろうかということに関する意見、そして最後に、本予防法案に関しての私の意見お話ししたいと思います。  まず第一に、電話相談、そして専門外来、そして病棟の中というところに、エイズ患者さんあるいはエイズの原因であるHIV感染した方、そして検査をしたいと思って訪ねてくる人たち、その人たちの話を聞いていまして、私たちの中にも報道機関方々の中にもあるいは一般の方の中にも一つ間違った認識があるということに気がつきました。それは、HIV感染の力が大変強いという錯覚を持っておられるということです。これは大変怖い病気であるということが宣伝され、そして皆に知られるということによってかえって感染力を恐れる発言がたくさんなされる。そしてそれに対しての対策がされる。そしてそれを見て、さらにまた感染力が強いのではないかという疑いを持つ。ちょうど雪だるまのように、対策ないしはHIVに対する警戒心がふえているということがあります。  それで、科学的な根拠に基づいてHIV感染力を評価する必要があるというふうに考えています。これはお手元に資料をお配りいたしましたが、JAMAという雑誌で、感染力に関して、あるいは別の感染ルートがあるかどうかに関しての「考按」が「綜説」としてされております。それを後で御参照いただきたいと思います。  それから、感染をされている方に会って話を聞いていて気がつくことがもう一つございました。それは、彼らが二つの恐怖を持っているということです。一つ病気、要するに自分が死んでいくことに対する恐怖、それからもう一つは、自分を助ける者が周りにいないということに気がついた恐怖です。結局これは、自分たち病気と闘っていく上で社会的な援助がない、そしてしかも援助を求めるどころか、逆に社会の方から自分たちを攻撃するような行動に出ているということ、このことに対する恐怖は大変強いものです。この恐怖は第二の恐怖と言ってもよろしいかもしれませんが、この第二の恐怖予防をしていく上で大変大きな障害になっているということを指摘しておきたいと思います。  それからもう一つ気がつきますのは、サーベイランスに対する考え方がまだ皆の中で熟していないということがあります。これは、例えば匿名制度検査をいたしましょうという制度厚生省の方から、ハイリスク大変感染をしやすいグループと言われている人たちに対してその匿名制 度をやろうということで発足をしているようですが、私たちのところで接触をしているゲイの団体から何人かから電話がかかってまいりました。それは大変おもしろい、大変有効なシステムだと思うけれども、どうして私たちがこの匿名検査制度協力をしなければならないのですか、その必然性は一体どこにあるのですかという質問です。自分たち匿名検査を受け、そしてサーベイランス協力をする、しかしその協力をしたことによって自分たちに何のメリットもない、そういう種類のことを言われています。。それに対して私たちは何もお話をすることがない。ただ医師として、エイズの蔓延を防止するためにはサーベイランスが必要である、その実情を知って初めて有効な対策がとれるのではないかということでお話をしておりますけれどもサーベイランスに対しての国民的な合意がまだ十分にできていない、その素地がないということは指摘しなければならないと思います。  それから、臨床現場から考えた、今必要であると思われる対策事項幾つかございます。それはお配りしましたものの中にありますけれども、「エイズ対策上必要な事項」ということで八項目挙げておきました。これはエイズ対策に関しての考え方基礎が大分違っているかもしれません。違っているというのは、今までエイズ予防法案で言われている基礎とは大分違うところに論点がございます。それは臨床現場で実際にその患者さんを診、そして感染を恐れている人とお話をした中でつかんできて、現在何が必要であるかということを考えたからです。  さて、エイズ予防法案の審議がされ、そして国会に上程されたときに、臨床現場では大きな変化が起こりました。このパンフレットの下の方に表がございますが、それがそうです。私ども専門外来では予約をとって、そしてその検査を行っております。予約をとって検査をする、それは御本人の都合とかいろいろな種類のことでキャンセルが常にあるわけです。そしてこのような予防法案提出、あるいは神戸、高知での事件がある前は、大体二〇%ほどのキャンセルがございました。それが、国会に上程された四月一日以降の数字をちょっとごらんいただきたいのですが、右側の端っこ、下の方に書いてあります。四月一日の外来では五〇%の人がキャンセルをいたしました。四月六日には五九%、そして四月十三日には実に六九%の方が検査を受けることをキャンセルしております。これはいろいろな種類の解釈があると思いますが、一つには、この予防法案の精神が十分に受け入れられなかったという背景があるだろうというふうに考えています。  そこで、臨床現場からの対策の基本となるものは一体何かということを少しお話をしてみたいと思います。  それは一つは、緊急にやらなければならないのは、自分自分の体に起こっていることを知る権利、これは厳然とあるというふうに考えておりますが、その権利を安全に施行できる制度をつくらなければならないということです。サーベイランス考え方、疫学の考え方で無料匿名制検査が言われておりますけれども、実際のところは自分検査を受けに行く、その一般人たちの方も同じように第二の恐怖、要するに検査を受けに行ったということがほかの人にわかってしまっただけで社会的に葬られる可能性があること、あるいは陽性ということがわかった場合に自分の個人情報が公開されてしまう、そしてしかもこれは神戸でも高知でも、あるいはこの間の大阪でも不幸にして起こってしまったことです。そのような標本がはっきりある以上、何とか自分の身を守りながら安全に検査をできる制度が必要であるというふうに考えています。  それからもう一つは、感染をされている人、今一生懸命HIV感染、そしてエイズと闘っているわけです、その人たちを支えていく考え方が必要だということです。これは医療面からもあるいは社会面からも、あるいは経済面からも必要かもしれません。精神面からも必要です。どのような人であろうとも生きる権利を持っています。そしてそれは物理的に生きることではなくて、社会的に生きる権利を持っているということを指摘しておきたいと思います。  先日、東京でエイズのカウンセリングに関する国際会議がございました。そして、そのカウンセリングの精神が幾つか言われていきましたが、その中の一つに、個人としての感染者を認めるということが結局その人に自分で考え、自分で問題を整理させ、そして問題点を自分で決めていく、解決方法を決めていく、そしてそれをサポートする考え方、その考え方こそがその人の周りに対する二次感染予防する大変重大な、大変有効な手段であるということが指摘されています。これは、感染者を支えることによってその周りの二次感染を防ぐことができるという大変大きな指摘であるというふうに考えてよろしいと思います。  ちょっと視点を変えてみます。現在、アメリカ合衆国とソビエトで大分いろいろな外交的なトラブルがあり、あるいは取引がされています。その中で、ソビエトで起こっている人権問題、この問題が大変大きな国際的な戦略の一つとして非常に強い力を持っていたということは指摘するまでもないと思います。  さて、このエイズという病気にかかった人、社会的には大変な弱者です。その人たちに対して、例えば二次感染予防という名前のもとにいろいろな種類の規制を加えること、あるいは管理をしていくこと、このことは大変大きな人権問題を含んでおります。そして今、日本は国際的な国家であり、国際的な発言力も大変強くなってきております。その中にあって、もしもエイズ予防法案ないしは何か別の方法で感染者の人権を守る積極的な方策が示されない場合には、むしろ日本にとって国際戦略の中で大変大きな、そして後までぬぐうことのできない汚点を残すことになると思います。  臨床現場の方からもう一つどうしても必要だと思っておりますのは、そのような考え方を支えていく、あるいは感染者が感じている、あるいは検査を受けようと思っている人たちが感じている第二の恐怖を和らげるためには何が必要かということです。それはやはり厚生省でも十分に指摘しておられますように、結局のところ、エイズのことに関する強力な啓発活動をすることであるというふうに信じております。そして、それが一番有効で最短距離の対策であるというふうに考えます。現在の広報活動、啓発活動、教育に関しての活動は余りにも不十分であると指摘せざるを得ません。  さて、それでは私たちから見た本法案に関しての意見を二つほど述べたいと思います。  一つは、大変重大な問題と思いますのは、感染者を支える精神あるいは具体的な条項がこの法案の中には入っていないということです。それからもう一つ、人権を保護するということが中にうたわれておりますが、それは刑罰を設けた守秘義務をつけることによって保障されているということです。非常に消極的な方法でされているということです。この消極的な方法というのは、現在のエイズ感染者ないしは検査を受ける者に対する偏見あるいは差別、実際にこれが起こっているわけですけれども、それに対処するのには余りにも力が弱い。しかも、守秘義務はもともと既に医師にも公務員にも課せられております。ところが、それであっても個人情報が流れてしまったという実例がございます。説得力が非常に弱いと言わざるを得ません。逆に、むしろ積極的に人権を保障していくという考え方を何らかの形で法律的に定めていく必要があると私は考えています。  その二つの面で、本法案はむしろ感染者を暴き出す働きを持つのではないかという危惧を抱くものであります。今お話しした二つの点、感染者を支えるという精神が見られないこと、そしてもう一つは人権に対しての配慮が積極的にされていないということからして、私は本法案に関して賛成することはできません。  以上です。(拍手)
  8. 稲垣実男

    稲垣委員長 ありがとうございました。  次に、水野参考人お願いいたします。
  9. 水野肇

    水野参考人 御紹介いただきました水野でございます。  エイズの問題というのは、だれが何とおっしゃられようと、やはり現代では極めて重要な問題であるということについては間違いがないと私は思うのです。幾ら日本人の患者数がアメリカに比べて少ないといいましても今後ふえないという絶対的保証はないわけでございますし、どういうことが起きるかというのはわからない。したがって、エイズの蔓延防止対策ということをおやりになる、例えば厚生省がやるとか国会で法案をつくられるということについては、私は基本的には賛成でございます。  ただし、現代にとってエイズ問題で今何が一番重要かというのは、やはりエイズについての情報提供と申しますか、俗に言うPR、これが一番必要なのではないかと私は思うのです。これは先ほど来も御指摘になっておられますように、必ずしも現在のところ非常にうまくいっているとは私も思っておりません。むしろこの法律を、私は法律そのものは必要だと思うのですけれども、どうやって国民にエイズの問題を知ってもらうかということに重点を置いた法律というふうなぐあいにすることはできないだろうか。それが今一番必要ではないかと僕は思うわけであります。これは最初厚生省が提案されてから若干修正もありまして大分ニュアンスは変わってきてはおりますけれども、例えば依然として罰則規定というのが残っているわけでございます。私は、いかなる場合も喜んでエイズになった患者というのはだれもいないと思いますので、それにさらに罰則を加えるということはいかがなものか。今残っている罰則というのは、知事の命令を聞かなかったときに罰則があるわけでございますが、ただ私が罰則の中で残しておかれた方がいいだろうと思うのは、医師の守秘義務でございます。  こういうようなことが私の基本的な考え方でございまして、法律を出すこと自体が国民にある種の啓蒙を与えるということは事実であると思いますし、しかもその法律全体が国民にエイズの問題を知ってもらう、そういう角度からの法律というふうなものが重要なのではないか、これが第一点でございます。  それから第二点は、分けて考えるというと言い過ぎかもわかりませんけれども、今日、日本のエイズのキャリア並びに患者というのは二種類あるのではないかと私は思うのです。  一つは、これはまことにお気の毒であるわけでありますけれども、ヘモフィリア、つまり血友病の方々感染された。これについてはいろいろな議論があるわけでございますけれども、私はやはりこの方々は国が何らかの形で救われるということがまず第一に必要だと思うのです。私はこれについては、非常に個人的な見解かもしれませんけれども、裁判によって決着をつけるというふうなことをやりましても、患者はいずれその間に死ぬわけであります。だからそういうことではなくて、今かかっていられる方々に即刻手を差し伸べる、これは現に厚生省はやり始めておられるわけでございますけれども、そういうことがやはり法律をおつくりになることと同様に必要である。  もう一つは、これは内閣法制局の見解を聞かなければならないという面はございますけれども、今度お出しになるというか、現在出ているものからヘモフィリアの患者を対象から外すということは考えられないかという気持ちを私は持っております。それは同じエイズではないかという意見もあると思うのです。しかし、それは行政というのは血も涙もあるものでございまして、同じエイズでも若干違うのではないか。僕は決して差別するつもりで言うておるわけではございませんで、片側のヘモフィリアの方々は余りにもお気の毒であるということから申し上げておるわけでございまして、この辺は僕は法律的には余りつまびらかにしませんけれども、それは検討の余地があるのではないだろうかと思うわけでございます。  それから、巷間一部の方がおっしゃる、大体これを法律として出してきたから問題が起きるんだ、伝染病予防法で解決すればいいではないかという意見がありますけれども、私はそれには賛成ではありません。なぜなれば、今の伝染病予防法というのは明治三十年にできた先生方御存じの片仮名の法律でございまして、これは発想の原点も相当違いますし、隔離してほかの人に、つまり社会的防衛と厚生省では言うわけですけれども、その社会的防衛論の上にしか成り立っていない、そういう厳しいというか、ごく大ざっぱな日本語で言えば、きつい法律というものの対象にするよりはむしろ私は、今回のエイズ法案のような形でエイズだけ特別にお考えになる方がいいのではないかと思います。  それから、よく言われるもう一つ意見は、そうは言うけれどもエイズというのをやるのならほかにもいろいろあるではないかという意見があると思うのです。しかし私は、確かにエイズに似たような感染経路をたどっている疾病というのは幾つかあるわけでございますけれども、それを一緒くたに初めからやるということではなくて、まず一番社会的に関心の強いエイズのPRを中心とした法案をおつくりいただいた上で、もしその後いろいう言われているような病気、つまり感染経路が似ている病気がまたさらに問題になってきたときには再度議論するというふうな形でよろしいのではなかろうかと思います。  それともう一つ、私はぜひとも先生方に考えていただきたいと思いますのは、ほかの参考人がおっしゃったけれども全く同感なのは、非常にエイズについて国民に誤解があるということでございます。その誤解の最たる例を私が実際に見聞しましたので御紹介したいのですが、どこの大学とかということはちょっと申し上げるわけにまいりませんが、ある大学病院へエイズ患者が来たわけです。それで、とにかく病院長以下が非常に慎重に診断をした結果、間違いなしにエイズだということになった。ところがその患者は、余り詳しく言うとわかったらまた困るわけでございますが、アメリカにいたわけなのです。アメリカで感染した。それでアメリカの病院へ行ったところ、アメリカの病院で、おまえはエイズだから日本へ帰れと言われた。それで帰ってきてその大学病院に行ったわけです。大学病院側では、絶対にあなたの秘密が漏れないように別の部屋でちゃんと治療するから安んじてうちの病院へ入院しなさい、こう院長が言ったわけです。この院長というのは大変人間味の豊かな先生で私の尊敬する方なのですが、じゃあ先生、ちょっと三、四日考えさせてくれと言ってその日は帰ったというのです。  三、四日したら院長室へ大きなかばんを持ってやってきまして、先生、いろいろ考えました、しかしまことに残念ですが、私がここへ入院したら必ず私の住んでいるところに知れるであろうということはもうほとんど疑う余地はない、知れたら必ずこれは村八分になる、したがって、もともと自分はアメリカで感染したのだからこれからアメリカへ帰る。帰るという表現をされたそうです。先生に非常に好意的にいろいろとおっしゃっていただいたことは一生感謝していますと言って、入院しないと言ってやってきたわけです。それで院長先生はもちろん医者ですから、君、そういうこと言わずにもう一遍考え直したらどうかとか、うちでは漏れぬようにするよとかいろいろおっしゃったのですけれども、それは先生が大学のプロフェッサーだから世の中の細かいことは御存じないし、また田舎の状態というのはおわかりいただけないのです、したがって、自分はこのままアメリカへ行ってそのうち死んだということになるでしょう、これが最後のお別れになると思いますが、先生には非常に感謝しています、そう強く言って実はアメリカへ帰ったそうであります。  その患者がその後アメリカへ帰ってどういう転帰をたどったかについてはよくわからないらしいですけれども、私はこの一例は大変重要だと思うのです。これはだれが悪いのかと言えば、私は国民が悪いのだと思います。そういうことが日本の 現状で起これば、マスコミが書くとか書かぬとかという話とは別で、必ずやはり村八分みたいになるわけなのです。そういうことになってはいけないという意味でこの法律を私は出していただきたいということを申し述べたいと思います。  それからなお、法律に直接的な関係はないかもわかりませんけれども、私がぜひこの機会をちょうだいして申し上げたいことの一つは、これは厚生省でやれることであるのかもしれませんけれども、法律に盛れと言っているのではないのです。つまり、エイズの問題というのは確かにウイルス学者にとっては大変な関心があるし、臨床医にとっても重大な問題であるし、公衆衛生にとっても重大な問題であることは間違いありません。しかし、この問題は、私はもう少しマクロ的に見る必要もあると思うのです。先ほど来おっしゃっておられますように、社会とか経済とかあるいは精神医療とか、そういうふうなものを含めて非常に重要だろうと思うのです。したがいまして、何かエイズを中心にした研究所のようなものがつくられるということは、私はエイズをむだにしないことにもなると思うのです。エイズの問題というのは、単なるエイズの問題ではなくて、やはり人類自体の文明論でも、文明論というと軽いもののように思われても困りますが、要するに文明とのかかわりというのも非常にあるわけです。あるいは家庭というものがどういうものかというふうなところにも関連するのではないかと私は思うのです。そういう意味においてぜひこれを機会に、災いを転じて福となす、そういう感覚でそういうものをおつくりいただきたいと思います。  それから最後にもう一点だけ申し添えたいのは、私は厚生省ではどういう方法でどういうPRをするのが一番国民にいいかという問題について検討を直ちに始めていただきたいと思うわけです。何もこれは社労でやってくれと言っているのとは違うのですが、厚生省でおやりいただきたい。それはなぜかといいますと、PRというのは元来、大体記者クラブに頼んで原稿を書いてもらうという格好が多かったわけでございますけれども、これからの時代はそういう時代ではないと私は思うのです。本当にやろうと思えばいろいろな方法があると思うのです。  先般私はスウェーデンへ行きまして、スウェーデンの薬局はどこの薬局でもエイズのパンフレットを必ずちゃんと台に置いておりますし、表を通ると、要するにショーウインドーみたいなところにちゃんとエイズのPRをしてあるわけなんです。そういうようなことは日本の薬剤師会にちょっと話をされれば直ちに御協力いただけることだと私は思うし、それから病院にしても家庭医の先生のところにしてもそういうポスターを張っていただけるということは十分にできると私は思うのです。ポスターを張ったから直ちに国民の意識が変わるかどうかは別ですけれども、やはりそういうことを繰り返してやっていく、それ以外にないんだということをスウェーデンの保健省でも言っておりましたけれども。それで、薬局側はそれによってコンドームが売れるというメリットもあるということはもちろん言っておるわけですけれども、私はそれでいいのではないかと思うのです。  したがって、本当にエイズというものが国民に理解されて、これは単なる心筋梗塞とか糖尿病とかいうふうな病気と何ら変わるところがないんだ、しかも伝染力はB型肝炎なんかに比べればはるかに低いわけですから、そんなに恐れることはありませんよということも言ってやるべきです。ただし、私は、アメリカなんかでも非常に問題があると思うのは、アメリカでさえエイズの子供が学校へ行くというと父兄がとめるというふうな事態が起きているわけです。こういう点から見て、僕は別にアメリカをよくも悪くも言うつもりはありませんけれども、どこの国だってやはり基本的にはそういう偏見みたいなものがある。これは偏見を打破するためにも、しばしば偏見で国会で問題になることがありますが、このエイズというものと本気で取り組む必要があるのではないか、私はそんなふうに思います。  どうもありがとうございました。(拍手)
  10. 稲垣実男

    稲垣委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  11. 稲垣実男

    稲垣委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三原朝彦君。
  12. 三原朝彦

    ○三原委員 きょうは三人の先生方に御多忙のところお越しいただきまして、ありがとうございました。今三人の先生からお聞きしたことに対して、私は今から質問させていただきたいと思います。  三橋先生、先生は大阪にいらっしゃって大阪行政立場でいろいろエイズ患者の人にも直面されたお話も聞かせていただきましたけれども、我々ずっとこの委員会でいろいろ議論している中にまさに先生もおっしゃったプライバシーの問題がクローズアップされてくるのですが、先生が持たれたケースの中で、ありがたいことにある病院に入って今治療していただいているケースがありますとおっしゃいましたが、我々は大阪エイズ患者の方が出たということを新聞で知ったわけですが、その方に一応三橋先生がある病院を紹介されて入れられたその後あたりでもその方個人に何か不利益みたいなものが現在に至るまでプライバシーの点から見てございますでしょうか、そのことをちょっと聞かせていただきたいと思います。
  13. 三橋昭夫

    ○三橋参考人 大阪事例におきまして、入院してから患者さんに対して何かプライバシーの侵害があったかどうかということでございますけれども、実はこの患者さんが今お世話をいただいている病院に入院した後、この患者さんについての情報が漏れまして大きく報道がなされたわけでございますが、そのとき、こういうことを申し上げていいかどうかあれですけれども患者さんは大変お怒りになりました。実は患者さんからいろいろその過去の経緯等もお聞かせをいただいているさなかに情報が漏れて報道された。これは報道について云々というつもりはございませんけれども、大変患者さんはショックで怒られました。  実は、それで容態の方に影響がなければいいなということをそのときつくづく感じたわけでございますが、今その患者さんにつきましては、大阪府におきましても新しく治療研究の取り組みをするという情報を新聞等でごらんになったようでございまして、自分にとってもいい研究をやってくれるんだなといった受け取り方を現在のところはしていただいているようでございますが、最初の当時、そのようなことがございました。
  14. 三原朝彦

    ○三原委員 やはりプライバシーを守るつもりでもちろんやられておったのでしょう。どこか何かの手落ちでそういう情報漏れがあったのかもしれませんが、今、例えば私たちのこの法案を考えるにしても、いつも問題になるのはその点かと思うのですね。やはり病気にかかった人はかかった人で必ず頼るところは病院でしょうから、病院に行くわけでしょう。そしてこれは血液製剤感染された方はちょっとおいておきますが、それ以外の方ですと、やはりいろいろな自分の歩いてきた道なり歴史があるのでしょう。それを伝っていかないと、もともと感染した経路もわからないでしょうし、それを見つけていかないと、またその感染のもとから次々に広がっていくようなこともあるでしょう。  そういうことから考えると、やはり何か私は、三橋先生も結論でおっしゃったように、法制化の必要というものを私は感じておるわけですが、経路を調べる上でお医者さんもそれに協力していただかなければならないだろうし、また先生もおっしゃったように、行政機関とか警察あたりにお手伝いをしていただかなければ、私はやはりその感染源というのを調べるのは不可能じゃないかというような気もするわけですが、今のようなプライバシーの情報漏れからということになりますと、これはどう考えたらいいのでしょう。法制化されれば情報漏れがなくなるというようなこと、そんなに安易には考えられないのでしょうね。私はそれは本当にわからないのですよね。だからといっ て私はすぐに法制化して、社会的な——それこそ最後に水野先生がおっしゃったPRの面からも、国民一人一人に文明の中での新しい感染源、病気といいますか、それが起きていることは我々の今生きている文明への挑戦であるというような気もするわけですけれども、本当に私自身も今情報漏れからということになりますと、なかなかどういうふうに結論づけていいのかわからないような面があるのです。  次に、根岸先生にちょっと質問させていただきたいのですが、法案の中に感染者に対する思いやりの精神、支える精神みたいなものがないじゃないか、ただただそれを罰則規定みたいなもので何とかやっていこうというような感じだということをおっしゃって、またもう一つは、刑罰による方法で守秘義務の問題ですね。積極的な擁護がないとおっしゃっているのですが、そこのところをより具体的に御説明いただけますか。積極的な擁護、援護がないということに関して、じゃ先生ならどういうふうにお考えになっておるのかというところをちょっと聞かせていただけないですか。ちょっと私、そこのところ理解がよくできなかったものですから。刑罰による守秘義務のこと、守秘義務にすると常に潜っちゃう、最後はボランタリーに、自分がそういうことに可能性を持って病院に来て、自分がそういう病気にかかっているかどうだろうかということを調べることあたりが、わかるからというのでいずれのときにか病院に来ないで潜ってしまってというようなことを今心配されておられましたけれども、最後に積極的な擁護がないというところがちょっとわからなかったものですから、より具体的に御説明いただけますか。
  15. 根岸昌功

    根岸参考人 患者さんないしは感染をした人に対する積極的な支援がないというふうにお話をいたしましたが、実際にしなければならないと思うことが幾つかあります。それは例えば感染がわかってしまったために職場を追われた人あるいは学校から追われた人がいます。これは何も血友病だけではありません。ほかの性行為感染でもやはり同じことが起こっております。その人に対する、例えば日本にはございませんが差別を禁止する方法、あるいは法律かもしれません、そういう種類のものが具体的には必要であろうと思います。  それから、この差別に対するプライバシーの保護あるいは人権の擁護ということは決して法律だけで行われるものではありません。結局法律で決められていても、特に例えばアメリカでも起こっておりますけれども、学校へ通ってもよろしいという判決が法的に下されたとしても、その後で実際に差別をし、そして排除するのは一人一人の人間であるということを忘れてはならないと思います。したがって、差別に対する具体的な法的な措置が必要である。  それと、それこそ表裏一体と言ってもいいと思うのですが、それと同時に一般人たちに一人一人が今生きているのだ、一人一人を大切にしましょうという形での、水野先生も言われましたけれども文明論になってくるのかもしれません、その考え方がやはり一番大切であり、むしろそれが今度の対策を通じて国民の中に知れ渡っていくのじゃないでしょうか。そう考えております。
  16. 三原朝彦

    ○三原委員 ヒューマニスティックな考えからということで私も大いに共鳴はするのですけれども、実は今度エイズ法案に関して質問をするので、地元に帰ってそういうことも地元の支援者の人と話をしまして、まさにそういう具体的な例をとって聞いてみたのです。  例えばアメリカのテレビでもあったように、不幸にも子供さんがエイズにかかってしまった。それで学校に行かせていると、学校の生徒の父兄の方から拒否されてもう学校へ行けなくなってしまった。それで何か州の裁判所に訴えたとかいうケースがあったけれども、あなたたちならどうしますか、お母さん方ならどうしますかと言いますと、それは今の現実問題としてそういうことがない以上は、我々深くは考えたことはないけれども、実際問題となると反対行動はどうするこうする、そんな具体的なことはそれほどみんな悪らつな人じゃない、みんな善良な市民ですから言わないですけれども、しかし考えてしまうねということで、今我々一般の人に聞きますと、それは現実でもあると私は思うのです。今のところ我々もまだ認識不足のところもあるでしょうけれども、しかしそれが現実でもあるわけですね、一般考え方の中には。  次には、水野先生の最後におっしゃった厚生省はもっとPRしてというようなことでありましたが、例えはよく新聞なんかでは、やっと今市井にエイズに関するいろいろな問題点だとかPRなんかも出てきましたけれども、偏見というのはまさに心の問題ですから、患者の問題だから、論理的にこうこうこうだから心配要らないのです、こう言っても偏見というのはなかなかぬぐい去ることができないような気も私はするのですが、そこのところでもちろん政府も大いにこのエイズ対策に対してはPRもするでしょうし、また医学的な面で研究もしていかなければならないと思いますが、六十二年から六十三年にかけて、一億五千万から八倍ぐらいの予算も出して政府も努力をしておるわけですけれども水野先生、片一方ではそういうPRを一般の市井の人にもしなければいけない、片一方では研究もしなければいけないわけですね、大いにそれを治癒するための。  どうでしょう。がん撲滅あたりは十年計画で政府は中曽根総理の時代に始めて今一生懸命やっていますが、政府がやるべきことでPRもありますが、研究の方面でどの程度くらいまでのことを、今二十億強ぐらいの金でやっているのですけれども、スタッフから何から考えたら具体的にまだどの程度足りないでしょうか。どの程度やれば何年後にこのエイズに関しては解決の曙光が見えてくるぞ、そういうことはどうでしょうね。
  17. 水野肇

    水野参考人 私も科学者でもありませんし、エイズの専門家でもないからわかりませんけれども、私は、研究というのは一つの目標を決めてやりますけれども、その目標を達せられなくたって研究をやったメリットというのはあるという者2方をしております。  私が非常に尊敬する大先輩で、昔がんセンターの研究所長をなさっておりました中原和郎先生がよく僕におっしゃったのは、日本のがん学者と旅する者の中で要するに研究費だけもらっておるという人は三千人おる。その中で本当のがん学者と言えるのはどうかというと、それは三百人しかいないんだ。そして研究らしき研究ができるのはどうだというと、それは三十人だ。じゃ本当にノーベル賞ないしはそれに近い研究を実際に一生かかってやれるのはどうかというと、その中の一人だというのですね。しかしその一人が出てくるために、残りの二千九百九十九人がいるから一人が出てくるんだということをよく中原先生はおっしゃっていましたけれども、私は、研究というのは基本的にそういうものなのではないだろうかという気持ちがするわけであります。したがいまして、何年後にエイズが解決するとか、何年後にがんが解決するとかいったって、それはとてもじゃないがそうはいかない。  私ががんのキャンペーンを始めましたのは一九五八年ですが、そのときに水野君、あと十年してみろ、必ずがんは解決しておるよと、ヨーロッパもアメリカも日本も当時の名立たるがん学者はみんなそう言って胸を張っていましたよ。しかし、それから何年たっていますか。三十年近くたっていて、まだ足がかりがついていないというとがん学者にしかられますけれども、細かい研究は随分進んでいますけれども、本当の意味ではなかなかそうはいっていない。しかし、がんの研究によっていろんなことがわかってきたというふうなことがあるわけでございまして、私は、だからエイズの研究をやって、エイズの特効薬はできないかもしれませんけれども、それによって、例えばDNA絡みの問題とかそういうところでいろんなことが出て、逆にエイズの研究ががんの解明に役立つとか、あるいはがんの解明がエイズの解明に役立つとか、やはり研究というのは非常に総合的と申 しますか、そういう性格を持っているのが現代の研究であろうと思います。  したがって、幾ら出せばどうなるというふうにそれはちょっといかないと思うのですけれども、大いに研究はやっていただきたいし、それから私は先生方にもぜひ申し上げたいことの一つは、日本の研究レベルというのは、確かに医学の研究ではノーベル賞をもらった人が非常に少ないわけですけれども、相当いい線をいっておるということは確かなんです。いろいろな、例えば薬の開発にしましてもそうですけれども、日本の研究というのは経済と同じように非常に伸びてきておるわけでございまして、請う御期待ということは私は申し上げて差し支えがないのじゃないか。そういう意味において、先生方が予算を組んで研究費をお出しになればそれはそれなりのメリットがあって、全部どぶへ捨てたというふうなことにはならないということは胸を張って申し上げられるのではないかと思います。答えになっていないかもしれませんけれども……。
  18. 稲垣実男

    稲垣委員長 河野正君。
  19. 河野正

    ○河野(正)委員 時間が限られておりますのでいろいろ多くをお尋ねするわけにはまいりませんが、いずれにいたしましても、きょうわざわざ当委員会のために御出席をいただいた参考人に対しましては、心から敬意を表したいと思います。  特に、いろいろお尋ねする中で申し上げたいことはたくさんあるわけですが、水野先生がおっしゃった、いろいろ問題はあるけれども当面としてはエイズは大変だ、したがってこの蔓延防止対策、これに対して力を注がなければならぬということがございました。それからもう一つは、対応としてやはり救済対策というものを考えていかなければならぬ。現実に血友病患者その他においてエイズ患者が出ておるわけですから、それに対します救済対策というものを考えなければならぬ。私はいろいろ御意見を承りまして、そのこと二つが非常に大きく脳裏に焼きついておるわけでございます。  そこでお尋ねをしたいと思いますが、その前に、根岸先生の方から御発言があっておりましたから根岸先生の方に、今の水野先生のことに関連をしてまずお尋ねをしてまいりたいと思っております。  それは、やはり何といっても、水野先生の話がありましたようにPRということが非常に必要ですね。これは人権の問題もそうでしょうが、また今後エイズ対策を進めていく上においても国民に深く理解を求めていかなければならぬということは当然のことでございます。そこに歯車が狂いますと、今いろいろ周囲で心配をされているような人権を侵す問題とか、あるいはせっかく健診を受けようとした人がキャンセルする、法案ができてくるということで従来二〇%ぐらいのキャンセルが六九%にもふえてくるということで、この法案が出たということだけでいろいろ心配が出てきてそういう結果になったと思うのです。そこで私は、一つは何といってもPRをするということは、国民に対してエイズに対する理解度を深めていく。なるほど、根岸先生の診療医療団で出されておりますPR誌を見てみましても非常にわかりやすく書かれております。私どもも非常に敬意を表しておるわけです。やはり何といっても一番深い理解をまず第一に示さなければならぬのは医師団ではなかろうか、医療の最前線にある医師がこの問題に対する深い理解を持つべきではなかろうか、こういうふうに思うわけですね。  ところが残念ながら、日本病理学会が先般発表いたしております結果を見てまいりましても、大学あるいは医療機関四百三十施設に対してアンケートをとった、ところがそのうちの四分の一、二五%がエイズ患者に対する解剖を拒否をする、そういうアンケートが出てきて、非常に病理学会も驚いたというふうに言われておるわけでございます。なるほど今PRの中で、エイズ感染力が弱いのだ、B型肝炎よりも弱いのですよ、一緒におふろに入っても、一緒に食事をしたってうつるものじゃありませんよ、こういうふうにいろいろPRが行われておるが、現実には今のような側面があるわけですね。病理学者がエイズの解剖はお断りだ、この学会のアンケートの中で二五%もそういう結果が出てきておるということを私どもは拝見をいたしまして、非常に愕然としたわけですね。  そこで、きょうは参考人に対する意見聴取でございますから別に政府に対してとやかく言うつもりはございませんけれども、実は拒否した中に国立病院も入っているのですね。厚生省が何とかしてエイズエイズをと言ってPRをやっておられるけれども自分の身近な国立病院でもエイズ患者の病理解剖についてはお断りだ、そういう認識。水野先生のおっしゃっているように、PRによって国民の理解を求めることがエイズを蔓延させない、あるいは撲滅する大前提になるということが言われておるわけですけれども、その最前線の医師団にしてそういった——医師団の中でも病理学者というのは特に重要な役割を持っているんだと私は思うのですよ。ところが、そういうふうな状況にあることを聞いて私ども愕然としたわけですが、このPRについても、やはりもっともっと何らかの形でPRのやり直しというのか、そういう点も考えていかなければ、PRだPRだと言ってみたって結局実効は上がってこぬのではないか、そういう感じを持つわけですが、これは根岸先生の方の南谷先生が、そういう拒否した病理学者に対していろいろ御叱声をいただいておるようでございます。そういう状況のあることに対して私ども非常に憂えておるわけでございますので、それに対しまする御見解をまず根岸先生の方から承っておきたいと思います。
  20. 根岸昌功

    根岸参考人 医師の中にもHIV感染している人の診療を潔しと思っていない人がいないとは言えません。これは一般方々と同じで、あるいは逆に、であるからこそむしろHIV感染を恐れているという表面的な理由があります。しかし実際のところは、もしそういう種類のことで感染をするのでしたらば私たちは大変奇特な人間になってしまうわけです。どこの国であっても、そこに感染力の違いということがございますけれども、実際のところ、診療を受けていない、そういうエイズ患者はおられません。そのことはまずお話ししておかなければならないと思います。だれでも医療を受ける権利を持っておりますし、そして私たち医師としてそれに対処する責任を持っております。そうとしかちょっと答えようがないんですが……。  一番最初に申し上げました、エイズ感染力に関して大変間違った認識があるだろうということを指摘いたしましたが、それに基づくものだというふうに考えています。エイズそのものの感染経路は、現在のところ、血友病の方たち感染でも見られますように汚染された血液の輸血、そして感染をしてエイズのウイルスを持っている人との無防備な性交渉で起こる感染、そして母から子供へという感染、その三つしかございません。そのうちの血友病等に関するものに関しては医師の管理下にある、そういう厚生省の見解もございますし、そして母子間の感染の方も、当事者は常に医師の管理の中にあります。したがって、これから大きな問題になってくるのは、性行為感染症であるということはやはり考えておかなければならないと思います。そして、しかもその感染の力はそれほど強いものではなくて、強力な法の規制を必要とするようなものではないということを指摘しておきたいと思います。  むしろ、法をつくり、。医師の診療拒否ないしは解剖の拒否を決めていくということは、これは大変大きな間違いであって、そのような恐怖を結局法律をつくることによって社会に固定させることの方が問題だと思います。質問の趣旨から少し外れますが、そういう意味でも、今回の本法案の意義に関しても、エイズに関しての恐怖をむしろ社会に固定させる働きを持っているというふうに私は考えております。そういう意味で賛成できないという見解を述べておきたいと思います。
  21. 河野正

    ○河野(正)委員 それに関してですが、もう一言。  要するに、エイズ感染力というのは非常に弱い。したがって、B型肝炎ですら病理解剖が行われているのになぜエイズが拒否されたのか、そういう認識に対して私ども危惧の念を抱いているわけです。福島県立大学の若狭教授がおっしゃっておるのは、感染防止の設備が不備だ、それだからそういう解剖を行う特別な施設をつくってもらう、そういうことを要請するということをおっしゃっている。そうしますと、B型肝炎よりもっとエイズ感染力が強いのか、少なくともそういう発言からはそういう印象を持たざるを得ないというのが率直な私ども考え方でございます。B型肝炎でももう既に病理解剖が行われておるわけですから、なぜエイズのための独特の解剖室というものをつくらなければならないのか。そうすると、いろいろ言われている感染力の認識について私どもも非常に心配をするわけです。私どもは別にそれで惑わされるわけじゃありませんけれども、少なくとも病理学者がそういう立場に立って物を言われることは、一般の国民に対して非常に大きな誤解を与えるのじゃないだろうか。B型肝炎でやれるのだから、エイズ患者に対する特別な解剖室というようなことでなくてもやれるのです。  これは、静岡の虫垂炎の手術を拒否したということも同じことだと思います。なぜ一般の手術室ではできないのか。B型肝炎でやっておって、なぜ虫垂炎についてはできないのかということで、これまた誤解を招く。私どもは今後、水野先生がおっしゃったように、とにかくできるだけ国民に理解を求める、そうすることによってエイズを撲滅していく、こういうことでなければならぬ。先ほど根岸先生から、暴き出すというような形の法律では困ります、こういうような御指摘もございましたが、全くそのとおりだと思います。そういう意味で、今私が申し上げたことであえて一言、根岸先生の方から御見解を承っておきたいと思います。
  22. 根岸昌功

    根岸参考人 個人の情報をどうやって守るかということに関しては、大変大きな問題があると思います。人権というふうにお話をいたしましたが、自分の持っている基本的な人権としてのいろいろな種類の行為が保障されるということ以外にも、個人の尊厳を保つということが人間にとって大変大きな活動である、大変大切なものであるということも指摘しなければならないと思うのです。そうしますと、例えば現在の非常に豊富な情報力と、それからマスコミの人たち努力ということからして、実際には秘密にしておける個人の情報というのはほとんど存在しないということは言えると思うのです。その場合に、その個人の情報を大切にする世の中の情勢をつくっておかなければ現実的ではないということになります。これは法律あるいは何かの政令みたいな形で公式に要求することが一つ必要かもしれませんが、もう一つどうしても必要なのは、一般人たちに対して隣の人を大切にしなさいという、とても単純なことなんですが、そのことをもう一度考えていただくということが必要でしょう。  私たち日本人は大変忙しい思いをして、いろいろな経済発展をしてまいりました。ところが、その中で自分たちの基本的な人権、個人の尊厳あるいは個人の情報を大切にするという機運は残念ながらまだ十分には育っていないということが言えると思うのです。その中で非常に不安定な、不満あるいは危険、その中にちょうどこのエイズの問題があらわれてきて、そのエイズの問題が性病としての側面を持っているためにそこの矛盾を鋭くえぐり出していると私は考えています。したがって、エイズに関しての個人情報を大切にしていきたいということは、決して法律の問題だけではなくて、マスコミの人たちあるいは一般人たち全員が自分の身を守る、結局はそれで自分の身を守っていくのだ、あるいは自分の子孫を守っていくのだという観点でもう一度考え直してもらう機運をぜひともつくっていただきたいと思います。  以上です。
  23. 河野正

    ○河野(正)委員 もう時間が切迫いたしましたから、まことに恐縮でございますけれども水野先生の方にお尋ねをいたしたいと思います。  それは先ほど冒頭に申し上げましたように、第一に、蔓延することをどうして防止するか、それから第二には、現在まで起こった患者に対しては速やかに救済措置を行わねばならぬ、こういうことでございました。この蔓延防止、これはPRでございますが、これは別として、もう時間がございませんからここで端的にお尋ねしますが、この救済対策。これは竹下総理も国会で救済対策を講じなければならぬとおっしゃっておるわけですが、残念ながら具体的には明確なものがないわけでございます。イギリスでは御承知のように基金をつくって、一切血液製剤というものはイギリスの患者はイギリスで賄う、そのために二十三億拠出して基金をつくった、そういう話もございます。西ドイツでもかなり救済対策が進んでおるというような意見も聞いております。ただ、日本の場合は率直に申し上げまして、薬害かどうかというような問題についてもまだ明確じゃございませんし、そういう点では救済対策は非常におくれておるわけです。  時間がなくなって、非常に恐縮でございますけれども、簡単で結構でございますから、どういうことが一番望ましいのか、その辺についてひとつお答えをいただければ大変ありがたいと思います。
  24. 水野肇

    水野参考人 この救済というのは、先生御指摘のように大変難しい側面もあるわけでございますけれども、やはり現実に発病している患者にいかにして医療を提供するかということが救済の基本になるのだろうと私は思うのです。それから、まことに残念ながら、現段階ではそれはだんだん悪い方向に行くわけですね。  その場合に、例えばエイズホスピスというふうなものをつくることも救済の一つではないかと私は思う。何もエイズホスピスに隔離せよという意味におとりになられては困るのですが、そういう意味ではなくて、人間というのは、僕らも偉そうなことは言えませんけれども、やはり一番恐れているのは死の問題なんですね。だから、エイズというのは確実に、確実かどうかは実際には検討してみないとわからないのですけれども、八年ぐらいもつと、そこから先は死亡率が伸びないというふうなことが最近アメリカでは報告されています。つまり、病気になってから八年たって生きているという人は、そこから先は死亡率は九〇%ですね。それが固定しておるわけなんです。だからそれは、エイズになったけれども死なないで済むという人が絶対いないということではないという証拠にもなるとアメリカでは言っておるわけです。私はそういうことも含めて、しかしあのエイズになった状態、例えば全身の状態とかいうふうなものを見ますとこれはもう大変なことなんで、がん以上ではないかと思います。これはそういうアトラスが出ておりますけれども。やはり僕はこういう人には心の支えのようなものが要るのじゃないか。だから、エイズホスピスをつくるというふうなことも重要でしょう。  それから、血液の問題というのは、これはまた別個に考えるべきなんです。例えば日本は輸血をし過ぎておるですよ。そういうような問題から始まりまして、日本人の血液は日本人でという御主張も当然あると思うのです。それから、やはり血液というのは基本的に安全なものでないといけない。ただ、わからなかった時代のことはいたし方ないとしましても、わかってから後は、できるだけ速やかに行政的に阻止するとかいうふうなことは当然必要なんです。  それで私は、救済という場合にとかく見失われがちなのは患者の精神的なものではないかと思うのです。こういうものに手を差し伸べるということによって、我々の税金を払っておる国はやってくれておるのだなという印象を持つようになると私は思うのです。そういうところが非常に重要なところなんじゃないか。僕は何もただばかばか広告だけ打てばPRができるというふうな単純な考え方はしておりませんわけでして、ちゃんともっ とシステマチックにやる方法だって、これは時間があれば僕の考えを申し上げてもいいと思いますけれども、時間も余りないですからやめておきますが、そういうふうに考えておるわけです。だから、私が言っているPRというのは非常に広い意味のことを申し上げておるわけで、総理府がやっておるテレビにちょろっとスポットを出すというようなことを言っておるわけでは実はないわけであります。
  25. 稲垣実男

    稲垣委員長 沼川洋一君。
  26. 沼川洋一

    ○沼川委員 本日は、参考人先生方には大変御苦労さまでございます。そして、先ほどは大変貴重な御意見をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございました。時間が限られておりますので、何点かお尋ねをしたいと思います。  最初に、大阪府の三橋保健部長にお尋ねしたいのですが、五月にあのような事件がありました。実は、その前に神戸それから高知で問題があったときには、異常なほどマスコミまた世論が騒いだわけですが、意外に大坂の事件は、大阪パニックになるのじゃないかと言われながら、私の知る限りでは非常に冷静だった、このように思っておるわけですが、そのことについて現場を担当されていましてまずどのようにお考えになっておるのか。  それからもう一点、たしか大阪府は全国に先駆けて匿名エイズ検査所をつくっていらっしゃる、このように聞いておりますが、その利用の状況、またその内容についてできればまずお聞かせいただきたいと思います。
  27. 三橋昭夫

    ○三橋参考人 大阪でそれほど大きなパニックにならなかったのはどういうわけかということについてでございますが、実は神戸事例がございましてから大阪事例までに約一年ちょっと時間があったわけでございまして、神戸事例を参考にいたしまして、大阪としては医療関係団体の皆様とかその他いろいろの御協力を得ながら、どのような形で大阪としてのエイズ問題の取り組みをまとめていこうかという準備がされていたということもあったかと思いますし、今先生が御指摘になりました、匿名検査をやる施設があるという御指摘でございますが、実は大阪直轄の性病診療所を持っております。これは万代診療所と申しますが、ここで実は相当前から御希望の方にはエイズの血液検査を受けるような体制をとらせていただいておりました。いろいろ各関係団体に働きかけましたところ、例えばハイリスクと一応いろいろと言われておるようでございますけれども、特殊浴場等に勤務をなさっている皆さん方も相当数大阪では自主的に検査をお受けになっている状態があった、このようなことがあるいは大阪でそれほどパニックにならなかったということになるかもしれません。  それと、先ほども御説明いたしましたけれども患者プライバシー問題につきましては、私ども大阪地元報道関係皆様とは相当いろいろお話し合いをさせていただきまして、どうするのが一番患者さんのプライバシーを守るためにいいのか、そういうようなことも議論させていただいたこともあろうかと思っております。報道関係の皆さんも、この患者プライバシー問題につきましては、非常に御努力また御配慮をいただいたと思っております。
  28. 沼川洋一

    ○沼川委員 根岸先生にお尋ねしたいわけですが、先ほどからお話を承って私も全く同感でございます。私も、二次感染の蔓延を防ぐということにどうでもいいというような考え方を決して持っているわけではありませんが、今、国会に提案されているような内容の法律であったらかえって潜ってしまうのではないか、こういう心配を多分に持っておりますが、先ほどの先生のお話を聞きながら、自分の認識というのを余計深めたわけでございます。はっきり言って、今出ている法案の内容は社会防衛的な色彩が非常に強い。取り締まり的なニュアンスがどうも強い。また、一般に与える恐怖心をあおるような感じも受けます。さらに、エイズというのはもう害悪であってけしからぬ、何かいたずらにエイズ患者をそういう目でとらえているような感じを持つわけです。ですから、先ほど先生からいただいた資料を見まして、特に法案が出てからいわば患者キャンセル率が四月一日が五〇%、四月六日が五九%、四月十三日が六九・一%、臨床現場ではっきりとそういう数字にあらわれているということを見ますと、やはり患者を保護するという視点がない法案というのは、二次感染防止どころかかえって潜らせてしまう、このように思うわけですが、先ほども先生いろいろお述べになっておられましたけれども、重ねてその辺について先生の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  29. 根岸昌功

    根岸参考人 全くおっしゃるとおりでございます。取り締まるという姿勢に関して、それを受ける者の言葉を一つ言いたいと思うのです。  ある感染者に、二次感染予防のためにはどうしても追跡調査が必要だと思うけれども、どう思いますかというふうに聞きました。そうしましたら、その感染者が言った言葉は、私は今この病気でこんなに苦しんでいます、この苦しみをどうしてだれがほかの人に苦しませようと思いますかというふうに言われました。それが彼らの正直な気持ちであり、それを信ずることが我々の活動の基本になるべきだというふうに考えております。彼らは決して犯罪者ではないということをもう一度重ねてお話ししておきます。  以上です。
  30. 沼川洋一

    ○沼川委員 重ねてお尋ねしたいと思いますが、人権、プライバシーをあくまでも保護する、そして二次感染を防ぐ、これは同時にできるということはなかなか大変なことだと思いますし、先生も御指摘になっておりましたように、一つには医師に対する守秘義務、こういうのがございますし、また罰則も設けてあります。御指摘になったようにこれは極めて消極的な、こういうもので果たして人権、プライバシーが守れるか、そういう観点から先生は、いわば禁止条項、そういう法律をつくったらと、こうおっしゃいました。たしか私の聞くところによると、アメリカで最初のエイズ騒動のころとずっと経過してからの話ですが、やはりそういうものができたやに聞いておりますが、こういうものをつくっておる国について先生いろいろ御存じでしたらお聞かせいただきたいと思います。人権を守るという意味での禁止条項といいますか、そういう法律が私必要ではないかと思うのですが、その意見も踏まえて、またそういう諸外国の例がございましたら、ぜひひとつお聞かせください。
  31. 根岸昌功

    根岸参考人 具体的にどこの州でつくっているかということをちょっと私今メモを持っておりませんので、申しわけございません。ただ、アメリカ合衆国の中の州で、例えば検査をするにしてもどういう目的で検査をするかということ、それがはっきりしていないところで検査をしてはならない、あるいは感染者を職業の上でも生活の上でも法律の上でも、そして保健の上でも差別してはならないという法律は幾つもございます。感染者を隅に追いやるということは、その人たちを地下に潜らせるという働きを持っております。  それともう一つは、さらにその人たちが恐ろしい人であるという考え方社会に固定させる、そのことの方がもっと恐ろしいと思います。それは必ず後で私たちの方にはね返ってくるものだというふうに考えます。その人たちを救うことないしはそれを支えること、そのことは自分たちを支えることでもあるということを指摘しておきたいと思います。
  32. 沼川洋一

    ○沼川委員 それからさらに、先ほどもサーベイランス体制についての国民の理解を得られていない、この指摘がございましたけれども、先生としてこの合意を得るために具体的にどういうことをやっていったらいいのか、御意見をぜひお聞かせください。
  33. 根岸昌功

    根岸参考人 サーベイランス考え方は、実際に疫学調査をし、そしてその流行病、コミュニカブルディジーズですけれども、それの対策を講ずる上ではどうしても必要なことです。ところが、その必要な情報が周りの人たちの理解を得ないで いますと不十分なデータしか入ってこない。したがって、不十分な対策しか講じられないという致命的な欠陥を持つことになります。ところが、このエイズ報道に関し、あるいは今回のこの法案に関して、自分たちを守るための法律ではないという認識が余りにも広く行き渡り過ぎている。それはある部分では誤解がもしれませんし、ある部分では本当かもしれません。そこのところをもう少しオープンに議論をしていく。そのオープンに議論をしていく内容、あるいはその姿勢、それを全員に見せるということが、彼らのサーベイランスに対する考え方を改めてもらえる唯一の方法だと思います。それを早急にやる必要があると私は思っております。
  34. 沼川洋一

    ○沼川委員 最後に、水野先生に一言お聞きしたいのですが、先生は医薬品業界にも非常にお詳しい方でもございますので、特に血友病の患者方々の薬害被害というのが今大きな問題になっております。  確かに、ウイルスの混入したそういった問題について徹底的に責任の解明が必要でございますが、それ以前の問題として日本の血液行政のあり方が問題ではないか。特にほとんど輸血の血液は日赤中心のこういった公的なシェアで賄っているのに対して、血漿分画製剤になりますとほとんど全部民間に依存しておるわけです。しかも今度の問題は、そこから発生しているわけです。やはり二度とこういうことを繰り返さないというならば、今確かに加熱処理ができて安全だと言われておりますが、これとても決して安全ではありません。血液の自給自足体制を日本は早急につくるべきだ。それにしてはイギリスなどああいう外国の例と比べますと、日本は非常に手の打ち方が遅いと思いますが、この血液行政についてよろしかったら先生の御意見をお聞かせいただきたいと思うのです。
  35. 水野肇

    水野参考人 血液行政というのは大変難しい、厚生省行政の中でも最も難しいものの一つではないかというふうに僕は思っているわけですが、それは下手をすると非常に民族主義的な方向にいくというおそれも片側であるわけです。片側では沼川先生御指摘のような面もある。  ただ、私は一番言いたいことは、他人の血液を輸血するということは、これは大げさに言えば移植なんですよ。だから、基本的にはそう安易にやるものではないんじゃないかと私は思っております。例えば一例を挙げますと、今はいい薬ができたので胃潰瘍の手術というのはほとんどなくなったわけですよ。全くないことはありませんけれども。ですけれども、かつて胃潰瘍の手術をしても何千ccと輸血していた時代があるわけですね。ところが、だんだん輸血は余りせぬ方がいいというムードになってきて、最近ではできるだけ少なくしようというふうになってきているわけなんですね。  ただ、これもメリットとデメリットと両方ありまして、例えば先ほど来話題になっていますB型肝炎なんというのは、大量に輸血をした人からは比較的出にくいのです。むしろ二百ccとかごく少なくやっている人から割合出る。それはなぜかというのは、学者の間でもよくわからないのですけれども、大量にやれば抗体の方も大量に入っておるであろう、こういうふうに言われているわけですね。だから、大量輸血は必ずしも悪くないのだという別の側の意見もある。しかし私は、基本的な考えとしては、なるべく輸血をせずに済むのならしない方がいいというムードが病院なり診療所なりに出てこなくちゃいけない。同じようなことは、検査はできるだけ少ない方がいいんだとか、投薬はできるだけ少ない方がいいんだというのはみんなおっしゃるけれども、じゃ、現実に大学病院にいらっしゃってごらん、あんなにやらにゃいかぬのか。死にかけたやつを毎日三十ccずつ検査のためにとりますね。そういうようなことが片側で行われていて、血液は貴重ですよと言ってみてもやや声が届かぬというところもございまして、そういう基本的な問題がある、  そこへ持ってきて、先生も御指摘のように、確かに血液製剤絡みの行政というのは、対応が早いとは僕も思っておりません。おくれていると思いますが、そこらは厚生省も非常に気にしておるところでして、前回の異動でエースをとにかく課長に登用したりしていろいろやっているわけなんですね。こういう医療の形なんかというのは、国民とは全く関係ないというふうにおっしゃる先生が多いけれども、僕は本当は違うと思うのですね。国民がはっきりした知識を持って、これは僕は患者学だと思うのですが、そういうものを持って医師の側を批判——医師の先生も社労にいらっしゃるからぐあいが悪いかもしれませんが、医師の側をある程度批判できる程度の知識を持ってきたときには、医療の体制とか行政体制とかというのは一挙に変わると僕は思うのです。だから、知識というのはばかにできない。同じようなことがエイズにも言えるのではないでしょうか。こんな気持ちでおりますが。
  36. 沼川洋一

    ○沼川委員 時間が参りましたので、以上で終わります。どうもありがとうございました。
  37. 稲垣実男

  38. 田中慶秋

    田中(慶)委員 参考人先生方、大変御苦労さまでございます。  まず冒頭に、三橋参考人にお伺いしたいと思いますけれども、大変現場で御苦労され、そしてまた、現場経験からして今日のエイズ法案のデメリット、メリット、こういう問題、またこの法案がたとえ制定されたとした場合、どういう点により注意をしなければいけないか、こんな形について見解をお伺いしたいと思います。私の方は時間が余りないものですから、ストレートに物を申し上げて大変恐縮ですけれども、そんなふうに思います。
  39. 三橋昭夫

    ○三橋参考人 ただいま御審議なさっていらっしゃいます法案につきましてのメリット、デメリット、私、地方自治体の行政官といたしましては、この法律案で運用の問題は確かにあろうと思いますけれども大阪の実情等を考えますと、今の法律案で何とか地方行政としてはやっていけるのではないかという感覚を持っております。ただ、この法律案がもしできた暁には、これを運用するに当たりましてはいろいろと具体的な問題が出てこようと思います。そのときには、私ども地方行政官といたしましてもいろいろ国にお話を申し上げて、例えば政令あるいは省令の段階でどのような形に具体的にまとめていただくのか、その辺に対しまして御意見を申し上げたいというふうに思っております。
  40. 田中慶秋

    田中(慶)委員 現場でそれぞれ御経験をされたわけでありますけれども、今回のプライバシーの問題あるいはまた公表の問題やら感染経路の問題等々を含めて御苦労されたと思います。いずれにしても、今回のエイズ法案というのは、プライバシーの問題をいかにするかという問題もあろうかと思いますし、また、二次感染等々の問題やらいろいろなことを抱えておるのだと思います。そういう点で地方行政官という立場でなかなか申しにくいのかもわかりませんけれども、私どもは、皆さんの御意見をそれぞれちょうだいしながらこれからの審議に寄与しようと思っているのですから、端的に、今言ったような実際の問題として、法律があるからプライバシーが守れるのか、ないから守れないのか、こういう問題じゃないと思うのです。だから、法律がないところで既に御経験をされたわけですから、そういう点での感想をお聞かせをいただきたいと思います。
  41. 三橋昭夫

    ○三橋参考人 このたびの経験を通しまして、患者さんあるいは感染者方々プライバシーを守る地方立場からいたしますと、法制化をしていただいて、地方プライバシーを守る責務と申しますか、そういったものをはっきり示していただきたいという気持ちでございます。
  42. 田中慶秋

    田中(慶)委員 ありがとうございました。  根岸参考人にお伺いしたいわけでありますけれども、先ほど根岸先生の方からお話がありました感染者に対する、例えば社会的な面あるいは財政的な面あるいはまた医療の面等々の問題について補償しなければいけない、私も全くそういうふう に感じるわけでありますが、このエイズ予防対策を進める中で先生が一番国にこういうことを要望したい、まあ法律の問題で、法律を制定するとか制定しないとか、こういう問題とは別に、このことが一番重要だ、ですからこれはどんなことをさておいても最優先的にという形の中で国に対する要望、先生はまさしくいろいろな患者立場になっていろいろなことを聞いたり現場でいろいろなことをされているわけでありますので、そのことについて先生の考え方を聞かせていただきたいと思います。
  43. 根岸昌功

    根岸参考人 一つは、不幸にして感染をしてしまった人たち、しかもそれがどこかに責任があるような種類のもの、例えば輸血を通じて感染をした人たちに対して十分な補償をしていただきたいということ。これは決してそれで問題が片づくわけではありません、その感染をした人の苦しみがとれるわけではありませんが、それは最低限やらなければならないことであるということが一つ。  それからもう一つは、それができたからといってエイズの問題が片づいたのではないという認識をもう一度持っていただきたい。そして、一番強調しておきたいのは、エイズという病気が世の中にあるということ、そしてそれを個人個人の努力で防ぐことができるということ、そこのところを強調して、そして自分たちを守るのがほかの人を守ることでもあり、ほかの人を守ることが自分たちを守ることでもあるということを納得できる形できちんと話をしていただきたい、それを強調していただきたいと思います。
  44. 田中慶秋

    田中(慶)委員 実は、今回の法案の中で刑罰といいますか、こういう中で第八条二項に、都道府県知事は、勧告に従わない者に対して、健康診断を受けるよう命令することができるとなっているけれども、こういう問題、命令の乱用とかいろいろな形で心配される向きがあるわけでありますけれども、先生が今日までそれぞれ患者との対話やいろいろなことを経験をされた中で、これらに対する感想はどうなんでしょう。
  45. 根岸昌功

    根岸参考人 刑罰をもって本当のことを話してもらうということは不可能です。例えば私たち患者さんと話をしていて、まだ初対面ないしはつき合いが浅いときには、彼の方あるいは彼女の方には自分を飾るための方策というのをとります。それは、うそであったりあるいは誇大に言ったりということがあります。ところが、その中で診療し、そしてお互いに話をしていく中で信頼関係ができたときには、そこでは大変正直に全部お話をしてくれます。こんなこと言って前と話が違うじゃないか、いやそのときはこうだったんですよ、そういう調子です。そのような調子で、あるいはそのような信頼関係で初めてエイズの診療は成り立つものだと思います。決して、刑罰を設けることによって本当のことが言われる、ないしはうそをついたからそれに対して罰をつける、そういうことで本当の診療ないしは信頼関係は生まれてまいりません。そのように考えています。
  46. 田中慶秋

    田中(慶)委員 ありがとうございました。  水野先生にお伺いしたいわけでありますが、先生は先ほどエイズの問題を含めながら、蔓延防止対策という問題についてより強調されたわけでありますけれども、仮に今回の法案を先生は賛成という立場でもし修正をするとすれば、どのような点のより修正を先生として考えられるか、ちょっとお伺いをしたいと思うのです。
  47. 水野肇

    水野参考人 その点はさっきも大体申し上げたつもりなんですが、要するに今先生の御指摘になりました、知事の命令を聞かなかったときには罰則があるというのは、これはやめた方がいいのではないだろうかということが一点と、それからそれより以上に大きな問題点は、私は、この法律の対象から血友病の方が、要するに血液によって感染したという人を除外するということを入れられないか。つまり、それは技術的な問題はいろいろあるのだと思うのですけれども、法案の中にそうやれるか、あるいは附帯決議でやるか。それから一番厄介な問題点は、多分内閣法制局の見解だと思うのですが、これは法のもとにおいて何人も平等であるという憲法の規定があって、血友病だけ外すというのはそれは困るというふうに言うか、いやそこは便法がある、それは僕はちょっと法律的知識がないのでわかりませんけれども、とにかくそういうふうにして、つまり前向きの法案にするということです。  それから、これは余計なことかもしれませんけれども、私は、こういう国民全般に関係する重要な問題というのは、できることなら先生方の皆さんの一致で出てきた方がずっと迫力があるという印象をかねがね持っておるのです。強行採決ではやはりぐあい悪いじゃないかと思います。これは余計なことですけれども、そういう意味で申し上げたわけでございます。
  48. 田中慶秋

    田中(慶)委員 ありがとうございました。全会一致でという、こういう形で先生が願われているわけであります。  実は今度の法案をいろいろな形で見てまいりますと、幾つかの問題点は、やはり今先生が指摘されたような問題もあろうかと思います。ただこれは、法律でできるかどうかわからないのですけれども、先ほど先生も述べられた研究の問題あるいはまた情報の問題、それはPRになるのかどうかわかりません。あるいはまた、全体的に患者を含めて教育機関の問題等々の問題というのは、やはりこれからのエイズ対策やあるいは法律の上でも必要じゃないかな、私はこんな感じを受けてならないわけでありますけれども、これらに対して水野先生、見解があったらお伺いしたいと思うのです。
  49. 水野肇

    水野参考人 私も全く先生と同感でございまして、例えば先ほど来いろいろマスコミに出てどうとか、情報漏れがあるとかというふうな御議論があったわけでございます。私は、そういうもの全部をひっくるめて、それが日本の文化だとかねがね思っておるわけです。だから、ある日法案ができたからといって、あるいは可決されたからといって、突然情報漏れがなくなるとか、そういうことは無理だろうと僕は思うのです。  しかし、やはりそういう方向に日本が二十一世紀を目指して歩いていくのでなければ、これは経済だけが強いというだけの国にしかならないわけでして、そういう意味において僕は、法案の中へ盛れるか盛れぬかわかりませんけれども、PRの問題とか研究所の問題とか、研究所なんてそれだけでできておる法律もあるわけですけれども、そういうふうに考えていきたい。さように思っておるわけで、盛れるものなら盛れればいいと思いますけれども、やはり法案の格好の問題とか、これは役所言葉ですが、そういうふうなものもあると思いますから、これとこれを盛って、これは附帯決議にしてこれは行政指導だとか、そういう何か内政干渉みたいなことは僕は言いたくないわけでございます。
  50. 田中慶秋

    田中(慶)委員 ありがとうございました。  時間が参りましたので、以上で終わります。
  51. 稲垣実男

  52. 田中美智子

    田中(美)委員 三人の参考人先生方、きょうは本当にありがとうございました。  まず、根岸先生にお伺いしたいと思います。  今、エイズに対する偏見が非常に多く、新しい病気ですのでどこまで正しい知識を学んでいるか、私自身もプロセスにあると思っております。きょうの先生のお話では、今度の法案は蔓延を防ぐというところにやはり中心があると思うのですけれども感染するのはお産のときとか母乳とかウイルスの入った血液、それ以外の場合には性の無防備な接触しかない。普通の生活ではほとんど感染しない。水野参考人も、心筋梗塞と余り変わらないのだというふうに非常に文学的に表現なさったと思うのです。ですから、性交渉以外には感染しないということであれば、この蔓延を防ぐということは、この患者さんがどこからうつったであろうかという想像や、また自分がだれにうつすであろうかというようなことはある程度わかるのではないかと思うのです。やはりここを押さえるということは医者やカウンセラーの力が非常に大きいと私は思うのですが、こうした法案ができ ますと、その最も大切な役割をしなければならない医者に対して感染者が不信感を持ったり、先ほどの質問の中でも先生が、初めはうそも言うけれども、だんだん人間関係ができると本当のことを言ってくださる、この本当のところが出てきて初めて菖延というものが防げるのではないかと思うのですけれども、この点の先生のお話を伺いたいと思います。
  53. 根岸昌功

    根岸参考人 全くおっしゃるとおりだと思います。この法律がエイズの蔓延を防ぐという目的でつくられていながら、逆にエイズの蔓延を助長する働きがあるのではないかという危惧を持っております。先ほど感染経路一つは性行為であるということ、もう一つは汚染された血液ということを言いましたが、この中には麻薬、覚せい剤が入っております。こちらの方の対策も強力にやっていかなければならないということなんですが、今のところではこれに関しての疫学的な調査もありませんし、あるいはその患者の発生等々に関しても全くわかっていない。全然いないのかあるいは完全に潜ってしまっているのか、そこはよくわかりませんが、いずれにしましてもそういう状態である。  そうすると、性的な感染によるものが主であるということになりますと、この法案の提案理由の一番最初のページの直ん中辺に、女性の患者があらわれるようなそういうことで蔓延が非常に激しくなったということが書いてありますが、これは大変な危険な考え方でありまして、むしろ性行為というのはお互いの合意でされるものであるということからして、むしろ管理されたような種類の売春という考え方、そしてそれを買う人の根拠を与えるようなそういう提案理由であるというふうに私は考えています。これは全くの提案理由の誤りであると私は考えています。  以上です。
  54. 田中美智子

    田中(美)委員 確かに、このエイズはキャリアの方が感染源にもなるということですので、御自分で知らないでうつしてしまうということがありますので、私は今先生からいただきましたこの参考資料を見まして愕然としているわけですが、二月十二日にエイズ予防法案が出ると、もう検査予約さえどんどん減っている。そして、この法案が国会提出されてからというものはますます検査予約は減っている、その上にキャンセルがふえているというのを見ましても、これはむしろこの法案ができると全く野放しにされてしまうのではないかというふうに思いまして、恐怖を感ずるような気がいたしました。  それで、もう一つ根岸先生に伺いたいのですけれども、私たちはこの新しい病気に対してアメリカから学ぶとかどこからか学ぶということも、大事なことではあると思います。しかし、人類の歴史の中から学ぶということも大事だと思うのです。今度のエイズが非常に性病に近い、性に伴っているということがありますので、梅毒がイギリスで十九世紀に出ましたときと状態が似ていたのではないか。医療機関さえ結局治療法がないということや、また伝染の仕方がはっきりしないと医療機関も拒むとか、そういう状態の中で梅毒対策にイギリスが非常に失敗した、そしてその後、それから学んでこれに成功したということを聞いておりますけれども、このことについて先生御存じでしたら、お話し願いたいと思います。
  55. 根岸昌功

    根岸参考人 この件に関しては、むしろ帝京大学の大井先生が論文を書いておられまして、その論文の中からお話をする以外に方法がないんですが、蔓延の防止に成功したのは治療法が開発されたからではなかった、それが一つのポイントです。というのは、治療法が開発されたとしても、その問題はちっとも片づいていなかったということです。社会的な圧迫ないしは偏見、差別、そういうもので、治療法ができても蔓延を防ぐ力にはならなかった。これはエイズに関しても全く同じ状況があるだろうと思います。  それから、梅毒に関しては、無料で、そして匿名で、そして治療までできる、そういう施設がイギリスの各地にできる、その診療所の働きで流行が食いとめられた、そういう報告でございました。全く同じケースだと私も思っております。
  56. 田中美智子

    田中(美)委員 伝染病例とかというのであれしていたために蔓延したということも聞いておりますが、それも正しいのでしょうか。
  57. 根岸昌功

    根岸参考人 そのように論文の中には書いてございました。伝染病例とかというあれですね。ちょっと具体的な名前を失念いたしました。
  58. 田中美智子

    田中(美)委員 先生のお話、大変参考になりました。今度の法案が本当に蔓延を防ぐものではなく、むしろ潜在化させて感染を広げていく。もちろん、人権の問題というのはその過程で非常にあるということを感じます。  私の時間ももうなくなりましたので、三人の先生にお願いをしたいと思うのですけれども、先ほど水野先生もPRということを盛んに言っていらっしゃいましたが、簡単にPRと一言で言ってもいろいろあると思うのです。例えばエイズが非常に出ておりますアメリカで看護婦さんが赤ちゃんを抱いていた。その看護婦さんがゴムの手袋をはめて抱いていたポスターか写真かが出た。着物を着たエイズの赤ちゃんを看護婦さんが抱くのになぜゴムの手袋をする必要があるのか。性交渉以外は特殊な例を除いてはないのに、そういう写真が出るということになりますと、やはり幾ら大丈夫だと言われても、アメリカではゴムの手袋をはめて赤ちゃんを抱いている。そうすると、子供が学校に来たって握手したら怖いんじゃないか、ゴムの手袋をはめなければならなくなるんじゃないか。  そういう点で、PRのやり方にこうした間違った写真を出すとかというようなことがないようなPRの仕方をぜひ先生方に、もう時間がありませんのでお伺いできませんが、いろいろとお知恵をかしていただきまして、誤った写真とかPRがありましたときには御指摘願いたいというふうにお願いすると同時に、もう一つお願いは、国民的にエイズ治療法を一番待っているのは、やはり感染しているんじゃないかと思ったり、また感染していらっしゃる方はこれに命をつないで待っているというふうに私は思います。そういうことを考えまして、何としてもこの治療法を開発するためのPRというものにもそれぞれ影響力の非常に大きい先生方でありますので、ぜひあらゆるところでこういう国民的な声が上がりますように、私ども国会議員も治療のために国が全力を上げるように努力をしたいと思いますが、どうか先生方も国民的な世論を上げていただきますように心からお願いいたしまして、私のきょうの質問を終わります。  本当にきょうは御三人、どうもありがとうございました。
  59. 稲垣実男

    稲垣委員長 以上で午前の参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  この際、暫時休憩いたします。     午後零時八分休憩      ────◇─────     午後一時二分開議
  60. 稲垣実男

    稲垣委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前中に引き続き、参考人から意見を聴取いたします。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  議事の順序は、初めに参考人方々から御意見を十五分程度お述べいただき、次に委員諸君からの質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、念のため参考人方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考 人は委員に対し質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。  それでは、大井参考人お願いいたします。
  61. 大井玄

    大井参考人 大井でございます。  本日、エイズ予防法について参考人として意見を述べる機会を与えていただきましたことに感謝の意を述べさせていただきます。  さて、エイズ予防法の公衆衛生的必要性や意義の検討には、まず第一に世界のエイズ流行の中での日本の位置づけの評価を行い、第二に同法がエイズウイルスすなわちHIVの蔓延を防ぐ上で、特にHIV感染者サーベイランスの効率を上げる上で有効であるか否かにつき意見を述べ、さらに時間が許せば、エイズ予防対策に触れるのが適当かと存じます。同法の弊害につきましては、血友病患者の代表の方々が既に差別を助長する点を主に陳述されましたので遠慮させていただきます。また何分限られた時間でございますので、第一の点については軽く述べ、後刻質問があれば補足させていただきたいと存じます。  現在、世界のエイズ患者は、WHOに届けられただけでも十万を超えております。アメリカでは感染者数は百万から百五十万いるとも伝えられております。アフリカでは毎年百万を超える人が新たに感染しているとも言われます。このような話を聞かれると、日本でもこれから大流行が起こるのではないかとの印象を受けられる方も多いかと存じます。果たしていかがでございましょうか。  昨年より用いられるようになりました分類によりますと、エイズ流行には、アメリカ、ヨーロッパのようにゲイや麻薬中毒者を主体とし、大きな感染者人口があるパターン一の地域、アフリカなどに見られる異性愛感染によるパターン二の大流行地、さらに主としてアジアや東欧のようなエイズ患者数が極めて少ないパターン三の地域に分けられております。日本は幸いにしてパターン三地域に属しますが、それでは日本はアメリカ、ヨーロッパのようなあるいはアフリカのような大流行を今後起こすものでしょうか。時間がないので結論から申し上げますが、答えはノーでございます。  その理由は、第一に、アメリカ、ヨーロッパと比べ、ゲイや麻薬中毒者のようなハイリスクグループ集団の規模が比較にならないほど小さいことであります。例えばアメリカの成人男子の二〇%近くはゲイかその傾向があると推定されておりますが、日本では〇・五%という推測がございます。第二に、正常のセックスによりHIV感染する可能性は非常に小さいからであります。アメリカではHIV感染した血友病患者と何年も性生活をともにした奥さんでも感染している率は一〇%そこそこであるというようなことが知られております。もちろん条件によって異なってまいりますが、通常の性交渉による感染確率は〇・一%とも推計されております。このほかに幾つか理由はございますが、後刻御質問があれば述べさせていただきます。  当委員会議事録を拝見いたしますと、英国のエイズ患者は四年前に約百人であったものが現在は千五百人である。したがって、日本では現在百人近く患者が出ておりますから四年後には千五百人までふえるといった認識をされ、危機感を抱く方もおられるようでございます。しかし、そういったことは絶対にございません。イギリスでは四年前既に数万にも及ぶHIVの二次感染者、三次感染者が存在いたしましたため、エイズ患者の急激な増加、私たちはこれを指数関数的な増加と申しておりますが、を示したのでございます。我が国の場合、一九八五年以来現在に至るまで各四半期に十人前後、毎年数十人の患者が発生し、ほぼ横ばいになっており、二次感染、三次感染が少なかったことを示唆しております。  それでは、四年後、一九九二年には我が国ではどのくらいの患者発生を見るものでございましょうか。厚生省研究班は、感染者人口が現在二千五百人ぐらいとして、既に感染している血友病、ゲイの人々を主体として今後毎年数十人ずつ新しい患者があらわれ、四年後には累計でせいぜい二百数十人から三百人と予測しております。私はこれが大体妥当であると考えます。すなわち、我が国においては欧米並みの大流行は考えられないのでございます。  さて、エイズ予防法の最も重要な基本点として、法がサーベイランスの効率を上げるであろうということが説明されております。それでは、この法規制は果たしてエイズキャリアのサーベイランスの効率を促進するものでありましょうか。このことを評価するためには人間の行動に対する正確な洞察が必要になってまいります。  歴史を振り返ってみますと、十九世紀の梅毒はそれがセックスによってうつるということ、また治療法もなかったということ、さらに人々から忌み嫌われていたという点で現在のエイズに極めて似ております。これに対し、例えばイギリスでは法規制をもって社会の健康を守ろうという動きが当然ございました。中には患者の隔離入院をも含めた強い法規制もございました。しかし現実に起こったことは、感染者医療機関の回避、すなわち地下に潜るという現象が起こり、さんざんな結果を見ました。例えば二十世紀初頭、ロンドン市民の男二一%、女七%は梅毒にかかっていたという報告もございます。かの有名なサー・ウィリアム・オスラーによれば、一九一五年のイングランドとウェールズだけでも梅毒による死亡は実に六万と推定しております。すなわち、治療法もないのに法により規制する試みは失敗いたしました。  この教訓を欧米の公衆衛生関係者は極めて深刻に受けとめております。例えば一九八五年、イギリスの厚生大臣はHIV感染者の届け出義務づけを拒否しておりますが、その理由は、第一にそれはエイズ患者に対する社会的偏見を助長する、第二に潜在的感染者医療機関で受診しなくなるだろう、その結果エイズサーベイランスを行うことが困難になるだろうと申しております。  では、HIV感染者エイズ血液検査協力してくれるようなサーベイランスの方法はどのようなものであるべきでしょうか。アメリカと日本の二例を御紹介したいと存じます。  アメリカでは、一九八五年以来、各州において手軽にエイズ検査を受けることができるような体制をしいております。しかし、その検査を受ける際の手続に関しては比較的ばらばらでございます。ある州では、プライバシーを守るという守秘義務を前提としながら名前の登録を義務づけております。これを守秘義務記名方式と申しましょう。また、ほかでは無記名方式で検査を行っております。この方式では、受診者は自分プライバシーが漏れる心配をする必要は全くございません。どちらの方式が潜在的HIV感染者協力をよりよく得られたことでしょうか。先月、国際的医学雑誌ランセットに出た報告によりますと、オレゴン州では、一九八六年十一月までは守秘義務記名方式をとっておりましたが、十二月からは無記名方式を取り入れることにいたしました。その結果、初めて受診する者の数は、新方式開始前後それぞれ四カ月の間に三百六十三人から実に千二百五十人と三倍以上にふえました。また、この増加は特にゲイの人たちに顕著でありました。ゲイの半数はこの無記名方式でなければ受診はしなかっただろうと述べております。  さて、検査を受けようかと思ってから実際に検査を受けるまでいろいろ苦慮、逡巡し迷う期間がございます。この期間が守秘義務記名方式のときには約十二カ月間であったものが、無記名方式をとるようになり五カ月間に短縮いたしました。無記名方式、つまりプライバシーが漏れることを完全になくした方式が、守秘義務を標榜しながら記名方式によるというやり方よりもサーベイランスの効率を高めることがはっきりとわかるのでございます。同様の観察を私たちもしております。すなわち学生や会社員に、もしあなたがHIV感染していると感ずるようなときにはエイズ検査を受けますかといったアンケートを行いますと、一般に八割前後の方々検査を受けますと答えます。しかし、検査機関によるHIV感染者の届け出を義務づけるといった条件をつけますと、検査を受けますと答えた人のうち、女性では一七%、男性 では一〇%余りが届け出を行わない検査機関へ行きたいという選択肢を選びます。  御存じのとおり、日本では一般人には流行と言えるほどのHIV感染は起こっておりませんので、このような想定質問をされても余り現実感はございません。したがって、HIV感染の可能性をもっと強く感じているであろうグループの人たちに聞いてみる必要が生じます。私たちは約二百人のソープ嬢や千人以上のゲイの人たちに対して同様の調査を行った結果、ソープ嬢では一般女性の倍以上の割合で届け出を行わない検査機関を訪れると答え、ゲイでは検査を受けるという人のうち実に過半数、六五%が届け出を行わない検査機関に行って検査を受けると答えました。  このように日本においても、自分HIV感染している可能性を現実的に感ずる人々は、自分プライバシーが侵害されることをより強く恐れる傾向があり、したがって感染者の届け出を義務づける法規制は、彼らが検査を受けるのをむしろ妨げることを強く示唆しております。  以上要約いたしますと、社会的に強い差別を受け、治療法もないような疾病にかかっている気の毒な人々に対するサーベイランスは、あくまでもその人々の気持ちを察し、完全なプライバシーを保障し、その人々の自発的な協力を仰ぐことによってこそ効率が上がるものと思われます。つまり、そのような原則に基づいたサーベイランスこそがエイズ予防対策の重要な柱にもなり得るものと考えます。  最後に、法規制がHIV蔓延防止の効果をあらわさないばかりか、むしろサーベイランスの効率を低下させるであろうという点につきましては、私が米国の公衆衛生関係者あるいはWHOの関係者と話した限りではすべて一致した見解を抱いております。つい先日来日いたしましたWHOのエイズ対策責任者の一人、マニュエル・キャルバロ博士は次のように言っております。そうした法律の制定がエイズ防止という困難な課題に対する回答になるとは信じられない。法律によって患者が地下に潜れば、エイズに対する闘いは敗北に終わる。私と全く同意見であります。この予防法を制定した暁には、経済大国日本が公衆衛生的に意味のない、しかも弱者に対する差別を強める法をつくったという国際的指弾を受けるであろうことを私は恐れるものでございます。エイズ流行の状態を火事に例えますと、日本ではカーペットを焦がしている程度であり、ヨーロッパでは壁に火がついており、アメリカでは天井が落ちてきているとおっしゃる方がおります。この例えをかりますと、現在のエイズ予防法案はむしろカーペットを焦がしている火種をうちわであおぐような恐れさえあるものと申せましょう。  今回、エイズ予防法案提出理由は、後天性免疫不全症候群蔓延を防止するためということでございますが、法規制によって蔓延を防止できるというその認識自体が誤っているものと私は信ずるものでございます。  以上の理由で本法案の制定に反対するものであります。  御清聴どうもありがとうございました。(拍手)
  62. 稲垣実男

    稲垣委員長 ありがとうございました。  次に、村瀬参考人お願いいたします。
  63. 村瀬敏郎

    村瀬参考人 村瀬でございます。  冒頭にお断り申し上げておきますが、後天性免疫不全症候群についてはエイズという表現で、また後天性免疫不全症候群を起こすウイルスについてはエイズウイルスという表現をいたしますことを御了解願いたいと思います。  本委員会でも何度か御審議がありますし、また御議論のあった記録を拝見しておりますので、新しくエイズについて私がお話しすることはないと思いますけれどもお話を流していく都合上エイズについて私の考えていることを多少申し上げておきたいと思います。  エイズウイルスはいわゆるレトロウイルスで、逆転写酵素を持ったレトロウイルスということで、現在まで人間に感染しているウイルスとしては、ヒトのT細胞白血病ウイルスとこのエイズウイルスだけが人間に病気を起こしているウイルスであります。このウイルスの特徴的な感染様式として、いわゆる輸血とか血液製剤による血液媒介、または薬物常習者の注射針の回し打ちということ、これも血液経路を通ったものであります。それから母子感染、それから性行為感染という、大まかに言ってこの四つのことがアメリカの疫学調査その他で挙げられております。感染力そのものは非常に弱くて、水平感染はほとんどあり得ない。水平感染はHBの肝炎のウイルスよりもはるかに低いと言われておるわけでありますが、それだけに性行為感染というものの問題が非常に深刻になっているわけであります。  性行為感染については、男性同性愛者の感染もございますし、それが当初一九八一年以来クローズアップされているわけでございますけれども、一九八五年以降のアメリカの調査では、一番ふえているのは異性間性交でありまして、異性間性交によるリスクが非常に高くなっているということであります。しかも、この性のビヘービアというのは個人のプライバシーにかかわってくるものでございまして、教育その他でなかなか人間が動かないということもございます。また一方、このウイルスの治療治療薬が開発される可能性、または予防をするためのワクチンが開発される可能性は、今世紀のうちはほとんど不可能ではなかろうかということをNIHのギャロ博士なども言っているわけであります。  一方、我が国の伝染病、いわゆる感染対策、性病対策のようなものはどういう形になっておるかと申しますと、御存じのような伝染病予防法または性病予防法、先般廃止になりましたトラコーマ予防法、らい予防法などの法律がありまして実際に法律が動いているわけでございますけれども、環境衛生の向上、それから抗生物質その他の治療薬の開発というのがありまして、恐らく先生方は実情をなかなか御存じないと思いますけれども、伝染病予防法の対象疾病の中にはインフルエンザが入っているというようなこともありますし、はしかが届け出の疾病として入っているというようなこともありまして、実際には、届けたころには治ってしまうような病気がたくさん入っております。これは非常に長い歴史の中で起きたことでございまして、こういう法律のある部分が形骸化してきていることも事実であります。  そういう形骸化をカバーするために、日本の感染対策というのはサーベイランス事業というのを始めまして、昭和五十六年から感染症それから性行為感染症のサーベイランス事業を始めまして、日本全国に定点を設けて、その定点が自分の診た患者の情報を届ける、集積するということで、日本全体の感染症の流れというのを見ているわけでございます。私も感染症の定点を担当している一人でございますので、その定点観測の情報その他は十分知っておりますが、これを全国行政の施策あるいは我々の診療の現場で活用して、伝染病予防法、性病予防法の活性化を図っているというのが現状ではないかというふうに私は思っております。  そういう意味で、感染症のいろいろな推移、いわゆる昭和二十年代の細菌性の伝染病、コレラであるとかチフスであるとかそういう細菌性の伝染病から現在はウイルスの感染症に的が移ったということで、いろいろ法的にも行政的にも感染症を抑え込んでいく姿勢、スタンスが変わってきているというのが現状であります。そこに先ほどお話し申し上げましたエイズウイルスという、現在の微生物学では全く対応が困難なウイルスが出現したということがこの法律をつくる一つのきっかけになっているのではないかというふうに私は思います。  エイズ予防法をごらんになりますと、これは法律としては全く異例な法律でありまして、私は法律をずっと流して読んでいきますと、伝染病予防法、性病予防法などの形骸化した部分に対する反省と、これを何とか活性化したサーベイランス事業を活用していこうという精神が法の中に盛り込まれているのではないかというふうに思っており ます。法体系として国及び地方公共団体、国民、医師の努めなければならない責務ということは型どおりうたってありますが、その後感染者を診たときの医師の指示及び報告は、患者によく告知することと指導することということが義務づけられておりますし、知事への報告も年齢、性別、感染原因だけを報告すればいい。それも従来の法律でありますと所轄の保健所長へ報告していたわけですけれども、それをプライバシーの保護ということに着目して、都道府県知事へ報告するという形になっております。  感染者の守る事項として、他人へうつさないようにすることということと、もう一つ医師の指示に従うことということを強調しております。しかし、この医師の指示及び報告並びに感染者の遵守事項という二つのものを絡めまして、医師患者の人間関係の中で物を解決していこうという気持ちが法律そのものに非常に強くあるのだと思いますけれども、従来の法律であれば、しなければならないということについては、しなかったときの罰則が必ずついているわけでありますが、この法律にはそういう意味では指示、報告について、しなかったときの罰則がついておりません。私は、そういう意味ではこの法律は、むしろサーベイランスをみんなでやろうというふうに国民の気持ちを喚起して、どこかでエイズの我が国への侵入を防ぎたい、蔓延を防ぎたいという気持ちがあらわれているように思っております。  医師の通報義務にいたしましても、これは指示を守らない人の受診を勧奨したり、指示を守らないで売春類似行為等を行った場合にはその氏名を届けることになっておりますが、これにしても一切罰則はかかわっておりませんので、医師患者の人間関係の中で解決できることであればそれは解決できる、解決してよろしいという気持ちになっているのではないかというふうに私は思います。  それからもう一つ、守秘義務の問題でございますが、医師、公務員または公務員であった者については守秘義務が課せられておりますが、これは刑法でも課せられておりますし、公務員法でも課せられているわけでございまして、別にここで改めて守秘義務を課す必要はないわけでございますが、その他業務上この感染者であることを知り得た者すべてに守秘義務を課しているのは、この法律の特徴だと思います。御存じのように現在は、血液の検査そのものは検査所へ流れていきますし、検査所にはプリントアウトしてそれを医療機関にまた送り返す事務職員もおりますし、それから健康保険の適用になれば、健康保険組合でいろいろ請求書を調査するというようなときに病名を知り得るというようなこともありまして、現在は医療家、医師または公務員でなくても個人のプライバシーを知り得る可能性があるわけでございますが、そういう者に対する守秘義務を課しております。  罰則については、先ほどからも申し上げましたように守秘義務違反ということに重点を置いておりますし、またはどうしても言うことを聞かない場合だけ、その人はこういうことに対しては罰則を課するということでありまして、こういう席でそういう表現が適当かどうかわかりませんけれどもエイズのキャリアであって、しかも売春類似行為をするというような場合だけ罰則を課するということになっているのではないかというふうに私は法律を見ております。  そういう意味で、一連の私が申し上げました日本の感染症防衛の立場からも、この法律体系は今までの法律体系とは非常に変わったものでありますけれども、国民がウイルスの国内侵入を阻止しようという気持ちを鼓舞するという意味で共感が持てる法律案であると思っております。  御清聴どうもありがとうございました。(拍手)
  64. 稲垣実男

    稲垣委員長 ありがとうございました。  次に、西岡参考人お願いいたします。
  65. 西岡久壽彌

    ○西岡参考人 御紹介いただきました西岡でございます。  大医は国をいやし、中医は人をいやし、小医は病をいやすと申しますけれども、本日は、我が国を、あるいは人類をエイズから守るための非常に重要な会議で、大医である委員先生方の前で、小医、そのうちでも最も小さい、細菌やウイルスと人間の闘いを過去三十五年研究してまいりました一人の研究者の立場から意見を述べさせていただきます。  エイズ御存じのとおり、既にアフリカのある地域では過半の人々を襲い、次の世代が破壊されるという、住民の生存にとっては壊滅的な状況になっております。米国や西ヨーロッパにおきましては、既に対策の推進の手おくれから爆発的な流行を来しております。アジアも既に聖域ではなくなりました。アジアのある国の麻薬静注者、プロスティチユートの間におけるエイズの蔓延度が一昨年は〇%であった、昨年のワシントンの会議では一%であった、ことしのストックホルムの会議においては一六%であったという衝撃的な蔓延の状態が報告されておりまして、文字どおりアジアは聖域ではございません。我々にとっては非常に不十分だと思っております我が国の現行の届け出制によりましても、既に千百三十八名のエイズウイルスの感染者が八月三十一日現在報告されております。五月十八日の報告とその増加を比較いたしますと、血液凝固因子の受注者の方々の増加に比べまして異性間の性的接触の場合は十倍、それから男性の同性愛者の間においては二十倍の増加率を示しております。もちろんこの数字は届け出の非常に不十分な状態から推測される現状で、そういう状態で蔓延しつつあるというのが現状でございます。  このエイズを抑えるためには、基本的に緊急対策と根本対策がございます。現在の免疫学や分子生物学、遺伝学の方法論で重装備されました研究者の必死の努力によりまして、病気の存在が一九八一年にわかってからわずか二年後にその犯人である病原体のエイズウイルスがとらえられました。その後五年の間にその遺伝子の構造、ライフサイクルが明らかにされまして、これはまさに画期的なスピードであります。私の経験から申しましても、もしこの病気基礎的な方法論が進歩していなかった今から十五年あるいは二十年前に起こっていたといたしましたら、全く手のつけられなかった文字どおりの黒死病となったのではないかと思います。  さて、泥縄と申しますけれども、泥棒は捕まえられました。エイズウイルスであります。そして、それは我々の足の下におります。これを縛りつけるための縄は抗ウイルス剤であり、ワクチンでありますが、ウイルスを直接やっつける根本的な対策であります。かって我が国の国民病でありました結核でいえばストマイだとかBCG、次の世代の国民病と言われましたB型肝炎では、ワクチンだとかインターフェロンがそれであります。この根本的な対策である抗ウイルス剤やワクチンができ上がるまでまだ時間はかかりますが、それまで足元に押さえつけている泥棒、すなわちエイズウイルスを暴れ出さないようにしておくという緊急対策が必要でございます。このためには社会防衛と個人防衛の両方を両立させなければならないのであります。そのためには、既にウイルスに感染した人からの伝播の防止、守秘義務、そして治療に緊急最大の努力が払われなければならないと思います。それには国、地方自治体などの公的な機関、それから医師、研究者を初めとする医療関係者、それからエイズ患者あるいはエイズウイルスの感染を受けている方々それそれがその責任を負わなければならないと存じます。そしてまた、その責務をカバーするための公的な保護、法的な保護が必要であると私は思います。  公的機関のなすべきことといたしましては、一つは教育、啓蒙による社会認識の向上、これが後で述べますけれども差別の問題と関連して非常に重要なことであります。二番目が、エイズという敵の実態を把握するための届け出制、伝播防止のための公衆衛生活動です。これは孫子の兵法にもございますけれども、敵を知らずして戦えば必ず負ける、敵を知って戦うことが勝つ対策であると 言われていることは伝染病に対する鉄則でございまして、敵の本体もわからないで対策を立てるということは、やみに鉄砲を撃つことになるわけでございます。それから、人権を守るための守秘義務、研究の推進を保障する法的な保護。三番目は、私ども関係いたしております血液対策。既にこの問題に関しましては、日本の千三百万の方の献血の血液を調べさせていただきまして、そのうちから二十七例を防止して安全な血液を提供するということをいたしておりますし、血液製剤対策につきましても、加熱処理その他を含めまして対策が進んでいるわけでございます。四番目といたしまして、敵を知るための——敵というのはエイズウイルスでありまして、決して感染をしている人のことではございません。くれぐれも申し上げます。敵というウイルスを知るための実態調査に必要な調査並びに根本対策につながる予防治療の研究、これが公的な機関のなすべきことと思います。  それから医療関係者、特にドクターはエイズウイルス感染者に対して告知をする、それからリスクのある行動をしないような警告、それから最善の治療ということが必要であります。確かに現在の時点で根本的な治療法はまだ発展途上でございますけれども、かつての結核のことを思い出していただけますれば、ストマイのなかった時期でさえ結核も医師の指導のもとによく生存し、そしてストマイの治療を受けて治った人々がたくさんおります。私もその一人でございます。  次に、感染者のなすべきことというのは、専門医の保護を受けまして、その指導に従い、他の人への感染のリスクのある行動をしないこと。リスクの行動をすれば、人類が今足元に押さえつけている泥棒であるウイルスを再び野に放つことになるわけであります。しかし、感染のリスクのないことで、ウイルスに感染しているからといって人権侵害は絶対に受けてはならないことでありますし、そのために公的機関、医療関係者は厳密に守秘義務を守るべきだと思います。  ここで私は、対策推進の上で、感染防止と関係のない差別というものに対しては闘わなければならないということを強調いたしたいと思います。しかし、その差別はあくまでも社会の認識度と反比例するのでございます。結核の昔を思い出してください。先生方の年ごろ、我々のころには、あの家は肺病病みの家だから、前を通るときには鼻をつまんで歩けよなどということを言われておった記憶があると思います。現在、そのような事態が日本のどこにあるでしょうか。  もう一つ、私の二十年来の関係してまいりましたB型肝炎ウイルスに対する対策がございます。この仕事を私が国立の研究所で始めたころ、肝がんと関連があるということで非常に熱中してやりましたころ、こういう物騒な危ないものを研究室の中でいじってもらっては困るという、非常に激しい疎外を受けたことがございます。現在その感染経路がはっきりして、そういうことはないということがわかりました。そして一方では、社会においてはなおB型肝炎ウイルスを持っているということによって離婚騒動あるいは家庭の崩壊というようなこと、あるいは職務上の差別というようなことが行われておりましたけれども、現在はそれはほとんど消えつつありまして、日本じゅうの妊婦の方は、妊娠すれば必ずHBの検査を受けて、次世代への感染予防するという世界でもトップの体制ができ上がっておりまして、そういう差別は消えつつあります。社会の認識度が進むに従いまして、差別ということはこれと反比例して低下していくということが、今までの経験で私は確かに確認しております。  そしてもう一つの問題は、この届け出制を推進するということに関しまして、プライバシーを十分に守った上での届け出制の推進ということに思いをいたしますと、B型肝炎の場合に「肝炎の友の会」の会長が、中嶋さんという方でございますけれども、その方が重症の肝硬変で亡くなるときに、日本でもう少し、ちょっとでも早く届け出制ができておれば私と同じような思いをする人が少なくなる、こういうことをぜひ実現してくれということを我々肝炎対策推進の上で身近に感じまして、確かに申し上げましたように肝炎対策が非常にいい格好になりまして進んでおりますけれども、これがもし届け出制がきちんと行われていれば、十年かかったところが五年ででき上がったと私は確信しております。一年間になお一万二千人の犠牲者が出ているというB型肝炎の問題を考えますと、六万人の命を救えたことを痛感いたしております。より効率度のいい、プライバシーを確実に守った届け出制ということが、感染対策の上で極めて重要なことであります。  このようなことを踏まえまして、そしてもう一つ重要なことは、エイズというのはグローバルな問題でございます。ストックホルムのエイズの会の一番最後にWHOの総長のマーラーは、一つの国でエイズが撲滅したからといって自己満足してはいけない、すべての国からこれができなければ人類は救われないというのが今の現状であるというようなことを言われました。長い将来を見通しましてそういうところに貢献するということにおきまして、公的あるいは医療従事者あるいは患者すべてを守るための法的な保護ということにおきまして、このエイズ法案が前進して、先生方の将来を見通した対策が日本ででき上がるということの重要な一歩になることを期待して、私の意見を終わりにさせていただきます。  どうもありがとうございました。(拍手)
  66. 稲垣実男

    稲垣委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  67. 稲垣実男

    稲垣委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石破茂君。
  68. 石破茂

    ○石破委員 参考人先生方、大変お忙しいところをお出ましいただきまして、心から厚くお札を申し上げます。いろいろな御見解を聞かせていただきまして、大変参考にさせていただきました。ありがとうございます。  大変に難しい問題であろうかと思います。私自身、この法案をどう思うかと問われまして、絶対にこれで正しいという自信も持っておりません。しかし、これでは絶対にだめだと言い切ることもできません。これから考えていく上の参考にさせていただければ大変幸いであります。  なぜこれが難しいかということを考えてみますと、いろいろなものの利益考量の中にこの法案があるということがその問題の本質であろうかと思います。すなわち、先ほど来先生方がお述べのように、この法案もうたっておりますプライバシー、人権の保護というものをせねばならぬ、これは憲法で保障されたものでありますから、人権というものは何よりも重いということを言われることがございます。しかし、反面、人命というものをどう守るかということもあるわけでありまして、ある人に言わせると、人権は地球よりも重いが人命も地球よりも重いのだよなんということを言う人もおります。どっちが重いのだというと、これはわからぬ、どっちも重い。それと同時に社会の安全、安定、公的な秩序の維持、不安の防止、そういうものも確かに大事であります。これも何よりも大事という人があります。そしてまた、これはやや本題から外れるのかもしれませんけれども、知る権利でありますとか報道の自由でありますとか、そういうものをどう担保するのかということもございます。すなわち人権、プライバシー、そして人命、社会の秩序の維持、そして知る権利、報道の自由、これをどうやって組み合わせて、すべての人に納得いただける法案になるかということでありましょうけれども、現実問題としてそれは不可能なことであろうと私は思っております。何かを優先させていかない限りは法律としては成り立たないはずでありますし、それを決めるのが立法府の責務であろうというふうに私は考えておるのであります。  こういうような疑問を持っておりますので、なかなか明快な質問にはならないかと思いますが、まず大井先生にお尋ねをいたしたいのでありますけれども、先生はお話の中で、この法案が出れば患者が潜ってしまうではないかということをおっ しゃいました。したがってこの法案はやるべきではない、こういうふうにおっしゃったわけであります。確かに、このことが国会にのったと同時に受診者が減ったということを午前中の根岸先生でしたか、おっしゃいましたが、これは本当に明確な因果関係があるものでありましょうか。我が国の場合に確かに受診者が減ったということがあるのでありますけれども、ただ、それは法律が出たからということではなくて、一時期はヒステリー状態になったけれども、落ちついて考えてみればそんなに怖くないんだね、そう思った人もおるでありましょう。私は、あなたはエイズですよと言われたときに、人はどういう行動パターンをとるであろうかということが一番の重要な点であろうと思います。  私が浅薄な知識で考えますに、ある方は本当に世をはかなんで、ひっそりと暮らしてしまう人もあるでありましょう。中にはかわいそうな方がおって、もう命を絶とうという人もあるでありましょう。しかしある方は、自分エイズになってしまった、これを家族にうつすわけにはいかぬ、これを社会の人々に広めることはいかぬ、こんなかわいそうな病気になるのはおれだけでたくさんだ、したがって、進んで医者に行こうという気持ちを持つ人もおられるだろうと私は思うのです。  この法案を善意にといいますか、そういうようによくよく読みますと、守秘義務が非常に重くなっておるわけですね。これをばらしたやつは厳罰に処すよ、普通の刑法で定められている規定の倍の重罰になるわけであります。したがって、この法案を見て、プライバシーは守られるんだな、普通に暮らしておれば、多数に感染させるおそれがなければ知事に名前も行かないのだな、そうすれば子供のために、自分の隣人のために進んで検診を受けよう、そう思う人もおるはずだと思うのでありますけれども、その点、いかがでありましょう。
  69. 大井玄

    大井参考人 今先生がおっしゃいましたように、あなたはエイズですよと告知されたときの反応、行動パターンというのは、非常にばらばらだと思います。先生がおっしゃいましたような方も恐らくおられるだろうと思います。つまり、エイズになった方は非常に不幸である、これ以上このような不幸を世の中に広めないためには、進んで世の公衆衛生機関と協力をして何かをやろうという方も出てくるかもしれません。しかしながら、公衆衛生的に一番意味があるのは、エイズにかかった人の何%までがそういうような行動を行うか、大多数はどのような行動を行うかということなんですね。私が知る限りでは、エイズですよともし告知される場合には、恐らくその次にはその先生のところに来ない人が大部分だろうと思います。これは現場の先生もおっしゃっております。したがって、例えば第七条ですか、医師の指示に従わない者については、これは都道府県知事に通報をしまして、そして医師の指示に従ってもらうようにするということを考えておられますが、これは恐らく現実には起こらないことでございます。このような条項というのは、あなたはエイズですよ、これからお客をとるのをやめなさいというわけですね。そうすると、その人は二週間後に帰ってまいりまして、先生やはり必要があって三十人お客をとりましたということをレポートすることを前提としております。これは人間の行動原則に反するものでございます。人間は自分にとって不利であると考えることはこれを行わないというのが一大行動原則でありまして、このエイズ予防法は、残念ながら、そういうような意味においてこの行動原則に触れるものということを私は感じます。
  70. 石破茂

    ○石破委員 まことに人間がそのときにどういう対応をするかというのは難しいことであろうと思います。参考にさせていただきたいと思います。  私は、この法律の意味というのはいろいろあろうかと思いますが、一つ行政がこのことに対して無責任であってはならないというものも含んでおろうかと思います。すなわち、午前中の参考人の方の中で大阪の三橋部長さんがおっしゃいましたけれども行政が何かをやろうと思っても、準拠する法律というものがなければできない。確かにお医者様と患者さんとの信頼関係だけでこの病気というものが本当に社会に蔓延しない、蔓延する危険性はほとんどないと言われましたけれども、私は絶無ではないと思っております。その麗しい信頼関係だけで保たれればまことに結構な話でありますけれども、しかしさりとて、やはり都道府県というものも中央政府も、こういう病気が発生しないように、蔓延しないように防止をする義務は負うておるだろうというふうに思っておるわけでございます。  したがいまして、非常にレアケースであろうかとは思いますけれども、一万人の患者さんがおられる、その中の一人が、非常に言葉は悪いのかもしれませんが、だれの指示にも従わずにたくさんの人と交渉して、そういう病気をうつすという可能性が絶無とは言えないと私は思っておるのであります。そういう人を、もし仮に万が一であろうが、百万が一であろうが可能性が絶無と言えない以上、政府としては、都道府県としてはそれを防止する義務があるであろう、それが国民に対する責任だというふうに私は思っておるのでございます。その点についてどういうふうにお考えか、これは村瀬先生に教えていただければありがたいと思っております。
  71. 村瀬敏郎

    村瀬参考人 突然の御指名であれでございますが、私は医師患者の信頼関係の中で、善良な市民であればこの法律の流れの中に乗ってくる人の方が大部分であるというふうに理解をしております。
  72. 石破茂

    ○石破委員 ありがとうございます。  確かに私は、この法律を制定したからといって、エイズがなくなるというようなものでは決してなかろうと思っております。こういうものを防止するというものは、法律も一つの手段でありましょう。そしてまた教育、啓蒙というものも必要でありましょう。いろいろございます。しかし守秘義務をこの法律では重くしておる。  もう一度村瀬先生に教えていただきたいのでありますが、医師の守秘義務というものが重くなっておりますね。量的に重くなっておる。そしてまた範囲も拡大をしておる。身分犯の範囲も拡大をしておるわけであります。お医者様の中にも、皆善人とは限りません、いろいろな人がおるでありましょう。現在この法律で提案をされております罰則規定、これをもって、罪刑法定主義の観点からして、医師の心理的な、やはりこういうことをやってはいかぬのだな、人に漏らしてはいかぬのだな、そういうことを医師に知らしむるのにこれでもって十分かどうか、お教えをいただきたいと思います。
  73. 村瀬敏郎

    村瀬参考人 私は十分可能だと思っております。私は、医師の守秘義務については刑法に規定されているものでございますので、十分各医師が守っておるというふうに思っておりますが、法律の構成の中であえてもう一言それを強調しているというふうに受けとめているものでありまして、この問題だけでなく、守秘義務というものは守られていると理解しております。
  74. 石破茂

    ○石破委員 同じ質問を大井先生にさせていただきたいと思います。
  75. 大井玄

    大井参考人 守秘義務が守られているかどうかということでございますか。私の立場から申しますと、今まで余りにもケースが少な過ぎて、一般的に守秘義務が守られているかどうかということについて、相当正しいというふうなお答えをすることはできません。つまり、こういうようなケースが何万あるいは何千あるいは何百でも結構でございます、起こりましたときに初めて守秘義務が守られているかどうかということがちゃんと言える。しかしながら現在のところ見てみますと、わずか数例の患者が出たところで、私たちは既にマスコミや何かにおいて非常にその人のプライバシーをも知っている。大阪の例がそうであり高知の例があり、これはどういうことかと思うのですが、わずか数例の例しか出ていないのに、我々は余りにもプライバシーを容易に知ることができるということを見てみますと、これからもし数千例 というようなケースが出たときに、私はそういうような守秘義務がこれ以上守られるかどうかということについては非常に強い疑念を持っております。
  76. 石破茂

    ○石破委員 守秘義務というのは非常に大事なものであると考えますが、神戸の例にしても高知の例にしても、マスコミュニケーションによって非常にあおられた点は否めない事実であろうと思っております。やはりあのときはエイズというものをみんなが知りたかった、どんなことであろうかと知りたかった、それが書かれておる新聞を好奇心とかそういうことではなしにみんなが買いたがったということがございます。神戸市の場合には何をばらしたわけでもない。ただA子さんと言っただけで、とうとうお葬式の写真まで暴かれてしまったということでございまして、その点の配慮も必要であろう。確かに誘拐報道なんかの場合には申し合わせで、そういうことの危険性があるから報道しないということが申し合わせをされておるわけであります。そういうように協定とかなんとか、これは法の規制にはなじまないものであろうかと思いますけれども、そういう面における考察もあわせて大事であろうというふうに私は思っております。  最後に西岡先生にお伺いしたいのでございますが、偏見ということをおっしゃいました。それは確かにあろうと思っております。血友病の方が職場を追われたり、結婚できなくなってしまったり、恋人がいなくなってしまったり、本当にそういうような例を聞くたびに胸が痛む思いがしておる一人でございますが、こういうものを払拭するためにはどういうようにしたらよいであろうかということであります。一時期、エイズは普通の行為ではうつりませんというようなステッカーをバスに張って走っておったのを見たことがございました。あれを見て安心した人は非常に多いであろうと思っておるのです。そういうように何らかの少しのことで随分人の意識というのは変わってくるのではないか。もちろん根強いものもあるでありましょうが、偏見というものを取り除くがためにどういうことが一番有効であるとお考えか、御教示を賜れれば幸いであります。
  77. 西岡久壽彌

    ○西岡参考人 ただいまの問題に関しましては、私、偏見ということは、病気に対する正しい認識、社会の認識度が上昇すればするだけ、こういう格好で感染しないのだという科学的な理解が進めば、おのずから消えていくものであると思います。いろいろの今までの伝染病の例に関して、それははっきり申し上げられると思います。
  78. 石破茂

    ○石破委員 ありがとうございました。  非常に難しい。時間が少のうございますので十分なお尋ねができませんでしたけれども、私がまず冒頭に申し上げましたように、いろいろなものの利益考量の中で一番大事なものは人命ではなかろうかと思っております。プライバシーを最大限に守りながらどうやって人命を守っていくか、この接点をどこに見出すかということが今後の課題であろうかなというふうに感じた次第であります。  終わります。
  79. 稲垣実男

    稲垣委員長 河野正君。
  80. 河野正

    ○河野(正)委員 このエイズ問題についてはいろいろな議論があるわけですが、きょう特に午前中の御参考人の貴重な御意見の中で、私ども感銘深く承ったことが幾つかございます。そういう意味で、午後も参考人の先生の方々に貴重な御意見を承る機会をいただいたことを心から感謝を申し上げたいと思います。  そこで、いろいろございましたが、要約しますと、今後エイズの蔓延防止対策に全力を挙げなきゃならぬ、挙げるべきであるということが一つです。それから、既にエイズにかかった方に対しては、やはりその救済対策ということを早急に確立しなければいかぬ。そういう意見を承って、なるほどそうだな、具体的にそれをどう推進するかは今後のものでございますが。  そういう意味で、先ほど大井先生と西岡先生との間でちょっとニュアンスの相違はございましたが、大井先生の方は、アメリカやヨーロッパのように大流行が発生するということはないというような御指摘でございました。西岡先生の場合は、最近の発表を見てみても、同性愛者、異性間の性交それそれがこの最近で大体約十倍ないし二十倍に増加をしておるというような御指摘がございました。多少ニュアンスの相違はあると思ったのですが、いずれにいたしましても冒頭申し上げましたように、私どもとしてはエイズの蔓延というものを何が何でも防止していかなければならぬ、そういう立場から特に今申し上げましたように、大井先生の御指摘になりました、アメリカや西ヨーロッパ並みに大流行することはないだろうと言われております根拠といいますか理由といいますか、多少説明の中で数字の列挙がございましたけれども、時間がございませんから、それをまとめて御指摘いただければ結構だと思います。     〔委員長退席、畑委員長代理着席〕
  81. 大井玄

    大井参考人 お答えさせていただきます。  私は既に、一つは非常にエイズにかかりやすい人、ハイリスクグループと申しますが、そういう人たちはアメリカでもあるいはヨーロッパでも主として同性愛の方々及び麻薬中毒の方々だと申しました。こういうような人たちの人口が日本では非常に少ないということがございます。  二番目に申しましたのは、私たちが一番恐れております異性愛感染というものが意外として起こりがたいものである。そういうようなことを申しますときっと、じゃアフリカではあんなにはやっているのになぜ日本では大丈夫なのか、そのようにお尋ねになるかもしれません。それは完全にはわかっておりませんが、アフリカにおきましては、まず第一に性病が非常にはやっております。陰部に潰瘍があるようなそういった性病がありまして、そういう性病、いろいろございますけれども、そういうものにかかっていると極めてうつりやすくなるということがございます。それからもう一つは、性交渉を行う相手の数が日本人よりもはるかに高いということがございます。例えばこれは一つのレポートにもございますが、エイズにかかっている人たちの年間の性交渉の平均を調べましたところが、三十数人であったというようなことがあります。これは日本ではちょっと考えられない。一般の人に考えられないことであります。三番目に、アフリカにおきましては、特にサハラ砂漠の下の地域におきましては、むしろセックスを行わなければ、そしてどんどん子供を産んでいかなければ、なかなか種族が繁栄していけないというような生態学的な事情がございます。そういうような地域に参りますと、乳児死亡率が大体二五%とかいうような非常に高い率であって、そして生殖年齢に達しました二十歳から三十歳、そういうような一番大切な時期になりますと男と女の比は人口比で大体一対二ぐらいに減ってしまう。極めていわゆる先っちょの方がとんがっているような人口構成になっております。そういうところでは男も女もなるべく多くの人とセックスをしなければいけないというようなドライブがございます。したがって非常に多くの人とセックスをする。こういうようなことはやはり日本においても起こりがたいことでございます。  それから三番目の理由といたしましては、性行動を控えるということあるいは性行動に工夫をするということが日本では非常にはっきりとしております。これはアメリカでもそうでございます。つまり日本では、一つは、去年の春に神戸で初めて売春婦の方がエイズで亡くなられた。その後で各地のトルコですか、ソープランドに閑古鳥が鳴いた。そのくらい敏感に日本人は性行動を変化させるわけでございます。そしてソープ嬢もどんどんやめていった。幾つかのソープランドの店がつぶれてしまった。聞くところによりますと、女性解放論者の人が明治から一生懸命やってきたことが、絶対今までできなかったことを神戸のその一女性がなし遂げたというようなことを聞きますが、そのくらいドラマチックな変化がございました。それから、日本では避妊のために行います方法としてコンドームを使っております。毎日新聞 などの調査によりますと、普通のカップルでは八十数%はコンドームを使う。そしてそういうような人たちに、ではピルを使ったらどうか、そういう質問をしますと、ピルにするという人は一割ぐらいしかいないというようなことがございまして、HIVエイズウイルスが感染するというようなことに非常に都合が悪くできているという状態がございます。そういうことで、日本におきましては少なくとも異性愛感染によるエイズの流行ということは非常に考えにくい。  しかしながら例外がございまして、異性愛感染者として今まで、たしか去年の暮れぐらいですか、十一人の人が記録されておりますが、そのうちの十人近くまでがアフリカで感染をした方々でございます。これは対策を考える上でも非常に大切ですが、アフリカには七千人の日本人が長期滞在しております。相当多くの人たちが若い精力のある男性でございます。そういうような人たちの間にどのくらいエイズがはやっているか、こういうようなことは全く情報がございません。そういう不確定の要因がございますが、そういうようなものも入れたとしても日本においては欧米並みのエイズ大流行ということはなかなか考えられない、そのように申し上げたいと思います。
  82. 河野正

    ○河野(正)委員 非常にわかりやすく御説明いただきまして、なるほどなという実感を持ったわけでございます。  そこで大井先生、大学のプロフェッサーでございますから一言お尋ねしておきたいと思いますが、やはり医師というものは医療における最前線におるわけです。ですからエイズに関する国民に対する啓蒙、その中でも医師の果たす役割というものは非常に大きいと思います。まあ大きくあらねばならぬわけでございます。  ところが、午前中にちょっとお尋ねしたわけですけれども、病理学会で四百三十ぐらいの大学病院それから医療機関に対してアンケートをとりましたら、そのうちの四分の一、約二五%がエイズ患者の死体解剖を拒否する、そういうアンケートが出まして病理学会も大変愕然としたようですが、医者でも特に病理解剖というものは、こういう方面においては将来の学問の究明その他においては大きな役割を果たすわけです。そういうところで、B型肝炎は解剖するけれども感染力が弱いと宣伝されてきたエイズについてはできません、大学、国立病院も含めて医療機関の約二五%が解剖をやりません、拒否、そういうアンケートが出たということで、私としても愕然としたわけです。特にこういうエイズ患者に対しての理解と、それからまたエイズに対する国民の啓蒙運動の前線に立たなければならない分野においてそういう結果が出たことはいかがなものかなという感じが私どもはするわけですが、それらについて、先生は医学部のプロフェッサーでございますし、日本医師会からもおいで願っておりますから、それぞれ簡単で結構ですからひとつお答えいただきたい。
  83. 村瀬敏郎

    村瀬参考人 日本医師会といたしましては、昨年、エイズに対する性行為感染予防していただくためのポスターをつくりまして、全国医療機関または行政の窓口に張っていただくようにいたしました。また、日本医師会の会員には、エイズの全貌を十分に医学的に知らせるパンフレットを三回にわたって配っております。そのほかに、日本医師会の会員が患者さんと接したとき、エイズ患者さんでなくてもそれ以外の患者さんにエイズの問題を聞かれたときには、こういうふうに答えてくれというQアンドAも出して、十分周知しているところであります。  剖検の問題につきましては、日本医師会の会員の問題というよりもむしろ大学病院の姿勢の問題でありますので、私からはこうであるというふうにお答えできませんけれども、私といたしましては、医学者であればそれなりの防御をして、きちっと対応すべきであるというふうに思っております。
  84. 大井玄

    大井参考人 大学の教育者として、まことに恥ずかしく思っております。  エイズ患者さんの剖検を行うための予防措置というのは、B型肝炎の患者さんの措置と全く同じでいいわけなんで、そういう意味で病理をやられる方々がなぜそのような恐怖心を抱いておられるのかと思うわけなんですが、一つ考えられることは、エイズというのは医学を離れた立場、そういうようなところでそれほど怖い存在だという認識を医師を含めてみんなが持っているんじゃないか、そういうことを示しているわけなんです。アメリカにおきましても、エイズ患者さんからの採血を拒否するというような医学生あるいはレジデントというものが出て問題になっておりますが、ただ私は日本において四分の一というような数であることは知りませんので、日本の医学教育に携わる者として非常に残念なことだと思っております。
  85. 河野正

    ○河野(正)委員 なぜその点を私が指摘したかといいますと、やはり医師が最前線におるわけですから、エイズ患者に対する対応について一番大きな理解を持っておかなければならぬ。ところが今のような事態が起こりますと、エイズとはそんなものか、とにかくそういう病理学者がいるんだからということで、せっかくの啓蒙運動に水を差すという結果になるのです。そういう意味でこの問題は、ある一部のセクションだと思いますけれども、非常に残念なことだったなという感じがいたしました。今両先生からそういう御回答をいただいて、私どもも非常に心強く感じたわけでございます。  時間が余りありませんので、いま一つ二つだけお尋ねしてみたいと思います。  それは、きょうは参考人先生方に御意見を聞くということが目的でございますから、政府に対してとやかく言う筋合いではございませんけれども、どうやら日本のエイズ対策、対応というものがいつも後手後手に終始しておるという点があるのではなかろうかという感じがします。そこで、せっかく血液行政に詳しい日赤から御出席いただいておりますから、この際承っておきたいと思います。  御承知のように、加熱製剤と非加熱製剤の関係があるわけです。加熱製剤を使わなければならぬということになってなお非加熱製剤が市中に出回っておった。九大の発表によれば、とにかくそのために集中的に五十八年以降にエイズ患者が出てきた、こういうふうに言われております。そういう九大第一内科の発表があるわけでございますが、先ほど、ワクチンもすぐ簡単にできるものじゃなかろう、抗ウイルス剤もそう簡単にできるものじゃなかろうという先生の話がありました。そういう意味で、今日ではまだ血液製剤が大きな役割を果たしていくと思うのです。ですが、そういう血液製剤の問題に対しても国の対応がおくれた。そのために余計な患者さんがと言っては悪いけれども、ならなくてもよかった方が残念ながらエイズにかかったということがございます。  そこで、今度血液製剤でない脳下垂体後葉ホルモンを中心とする製剤、デスモプレシンというものの輸入が認可されたという話でございます。これは血液を原料としないわけですから、もしこれが大きな役割を果たすならば大変結構なことだと思うのです。ところが、これにいたしましても、申請したのが六十一年三月ですから、申請後二年半かかってやっと輸入が許可される、こういうことになっておるわけです。私ども専門でございませんから、この脳下垂体後葉ホルモンというものがどういう効果を持つのか定かにしませんけれども、認可されたわけですから、やはりある程度の効果があるわけでしょう。しかも血液製剤で失敗しておるわけですから、血液を原料としない製剤でございますから、もしそれが効果が大きいなら、これは大変いいことだと思うのです。ところが、これも申請をして二年半もしなければ輸入許可にならぬ。これも対応のおくれが非常に目立っておるような気がいたします。こういう問題に対して、せっかく西岡先生においでいただいておりますので、先生の立場から若干所見をお聞かせいただけましたら大変喜ばしいことだと思います。
  86. 西岡久壽彌

    ○西岡参考人 脳下垂体のことに関しましては、 私、先生と同じで全く専門でございませんのであれでございますけれども、薬の有効性それから安全性というようなことを慎重に審議されている過程だと私は信じたいです。  それから、血液のことに関しましておくれをとっていると申されましたけれども、B型肝炎の予防エイズ予防、それからもう一つATLの予防、こういうものに十分に安全な血液を供給するということだけに関しましては、世界じゅうどこへ行きましても、日本が初めてぴしっと血液の検査をやっているということを申し上げさせていただきたいと思います。エイズだけに関しましては、日本では余りありませんでしたが、私がこうやって話しておる間も検査室ではいたいけなラボランティーヌが毎日検査をしておりまして、千三百万人調べて、そのうちから二十七検体だけを除外しておる、そういう努力をいたしておりますことを御了解いただきたいと思います。  それから、ATLに関しましては、成人T細胞白血病でございます。これはアメリカでも去年からやらなければやらなければと言いながら、まだ実行に移しておりません。日本では一昨年から日本全国で安全な血液を供給するように、輸血の面で努力をいたしております。
  87. 河野正

    ○河野(正)委員 時間が参りましたので、これで終わりたいと思いますが、脳下垂体後葉ホルモンについての御見解を承ることはできませんでしたけれども、これが認可されました。血液を原料としない製剤でございますから、それが非常に有効だとするならば、エイズ患者にとって非常に大きな幸せだと思います。  それから、何といっても現状は血液製剤に依存しなければならぬということでございます。イギリスでは基金をつくりまして、イギリスの患者に対してはイギリスの血液でやるということで非常に力こぶを入れておるという話を承っております。日本の血液行政もいろいろ紆余曲折してまいりました。イギリス人に言わせますと、日本が今までべらぼうに血液製剤を使ったから血液製剤の値段が上がった、それが最近は日本も市場が減ってきたからおかげで値段が下がりました、こういう批判もあるようでございますが、いずれにしても現状では血液製剤が主たる治療薬になるわけでしょうから、ぜひひとつ先生もその方面で御活躍をお願いしたい。患者のために御活躍をお願いしたい。  きょうは先生方、本当にありがとうございました。
  88. 畑英次郎

    ○畑委員長代理 沼川洋一君。
  89. 沼川洋一

    ○沼川委員 本日は、先生方には大変御苦労さまでございます。また、先ほどは大変貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。限られた時間でございますので、何点かにわたって早速お尋ねをいたしたいと思います。  まず、大井先生にお伺いしたいと思います。  先ほど先生から世界のエイズ流行の中における日本の位置づけということで冒頭お話を承りまして、いろいろお聞きをしておりまして、今厚生省が考えております日本のエイズ問題の位置づけといいますか認識といいますか、それと先ほどの先生の御意見と相当認識の差があるなど、率直に私もそう思ったわけでございます。  この委員会でいろいろとエイズ法案について論議をしておるわけでございますが、その中で常に政府答弁として主張されております論点は、日本のエイズはこのまま放置しておくと手がつけられなくなる。具体的事例として先生が御指摘になりました英国は、四年前百名くらいの患者であった、結局何もしなかったためにそれが千五百名くらいになっておる、実はこの答弁は、この委員会の質問の中で大臣が私に対してお答えになった内容でもございます。ですからその辺を考えますと、どうも政府の主張というのは、だから早く法制化をしなければならない、そういうふうに結びついた主張になっておるわけです。私は、この問題を考える場合一番根本的に間違っていると思いますのが、この法案のよって立つエイズに対する基本的なとらえ方といいますか考え方がどうも何か間違っているのじゃないか、こういう気が率直にいたします。  それから、国が公衆衛生上のこういう施策を講ずる場合に一番大事なことは、一般大衆の知識水準とか不安とか恐怖心を基準にして物事を考えるのじゃなくて、やはりあくまでも医学的判断をこれに優先して、そこから物事を的確にとらえて判断をしていくという考え方がなかったら大変だと思うのです。先生は先ほども、こういう法案ができたら公衆衛生学的にも一体日本は何をやっているのだと必ず後になって批判を浴びますよ、こういうこともおっしゃっておりましたが、特に公衆衛生の専門家である先生のお立場から、まずその問題についてもうちょっと突っ込んでお話を伺えたらと思うわけでございます。
  90. 大井玄

    大井参考人 私も議事録を拝見しますと、OECDに出席された日本代表が英国の方から言われたことは、四年前に百人で、それは大した数ではないからちょっとほっておいたらば、あれよあれよという間に非常にふえてしまった、非常に困ってしまった、もっときちんとした対策を講じておくべきだったというような意味合いのことを言われたとおっしゃっていますが、これはもしイギリスの方がそういうことを言ったとすれば非常に間違っている。なぜならば、HIV感染いたしましてから発症までは大体五年あるいは七年とも言われるわけです。したがいまして、四年前に百人というようなとき、そのときから千五百人ぐらいに今はなっておりますが、これは既に四年前に全部感染している人であります。したがって、感染している人に対してどのような手を講じましたところで、発症を妨げるということは今のところではまだ少なくともできない。ましてやこの四年間はできなかったわけです。したがって、もしそのようなことを英国の代表が言ったとすれば、極めて医学的な事実を知らないものだ、そのように私は感じました。  しかしながら、先ほど申しましたように、日本のエイズがどのくらい流行するかということは、やはりこのエイズ予防法案に関しましては一つの大きな動機になっていると私は存じます。私は何回か今までそういうことについて論文も書いておりますが、日本におけるエイズというものは、もちろんわからないファクターはございますが、厚生省の研究班が既にもう発表しておりますように、これから四年後に二百数十名から三百名という線が大体穏当なものだろうということについては賛成しております。これをもっと詳細に調べてみますと、このうちの大部分は、既に現在感染している血友病の二千人の方々から発症者が出ている。そして、ゲイの人たちも数百人感染していると思われますが、その人たちが毎年毎年百人近く感染し続けてというような想定をしまして、これは相当大幅の仮定でございます、そういうような状態が続いていっても二百数十名とか三百名ぐらいしか出てこない。  しかしながら、ここで一番不確定であって研究者自体も不安に思っておりますことは、異性愛の人々がどのくらい感染して出てくるか。それで、一つ大きな問題は、日本においてこの二千人という血友病の感染されている方々及び数百人の同性愛の人たちが、どのくらい一般大衆、つまりヘテロの人たちエイズウイルスをばらまいて感染させていくポテンシャルを持っているかということが大きな問題になりますが、これはほとんど問題になりません。これは仮定からほとんど除いてもよいぐらいそのようなポテンシャルは小さいのでございます。したがって、どうしても外来の人々、つまり外からエイズウイルスをもらってくる人々あるいは外の国々からエイズウイルスを持ってくる人々、つまり外国の方々です、そのような人たちに対して恐らくもう少しきちんとした観察の目を向けなければいけないのではないかと私は思っております。  厚生省のやっております対策は、私が見ましても非常によいものが多いと思います。今西岡先生がおっしゃいましたように、血液のサーベイランスというようなことは非常にすぐれたことで、私 も外国に行って肩身の広い思いをいたしました。このエイズ予防法案を除きましては、ほとんど大部分のところでは私も支持するものでございます。しかしながら、少し抜けている点ということで言わせていただくならば、アフリカの日本人及びアフリカから来るアフリカ大陸の方々、その人たちに対してもう少しきちんとした目を向けるべきである。しかも、もしアフリカ大陸の方々について何らかの措置をするとすれば、これは当然国際的な問題にもなるわけでございます。したがいまして、そういうような場合にはどのような問題が出てくるのか、これは当然外務省であるとかそういったようなところとも連係プレーをしながらやっていかなければいけないだろう。そしてまた、そういう例えば水際作戦みたいなものをやる場合には、それがどのくらい感染が拡大するのをおくらすことができるかという、そこら辺の効果判定も行わなければいけない、そういうようなことを私は希望するわけでございます。
  91. 沼川洋一

    ○沼川委員 まだいろいろとお尋ねしたいわけでございますが、時間がありませんので、次に村瀬先生にちょっとお尋ねいたします。  先ほど先生からサーベイランス事業についていろいろと詳しくお話がございました。また先生もそのお一人であるということでございます。お話の中で、今度の法律案というのはこのサーベイランス事業を活用していこうという精神がみなぎっている、こういうことをお述べになっておりました。この国会でいろいろと論議しました中で、法律をぜひともつくらなければならぬ理由の一つとして、今のサーベイランスの事業体制の中の特にお医者さんの協力体制ですが、今のままではやはりどうしても弱い、だから法律をつくって義務づけをしなければならぬ、だから法律が要るのだ、そういう主張が政府側にございます。私、実際今法律がなくたってこの体制は相当着々と進んでおるのじゃないか、そういう気もいたしますし、むしろ法律で義務づけするということよりか、国民の間にこのサーベイランス体制についての国民合意といいますか、こういうものがまだまだない。例えばどういうわけで協力をしなければならないのか、協力して何のメリットがあるのか、こういうことに対しては何ら答えられないような現状でございます。ですから法律をつくって、協力という体制では弱いから義務づけてもっとこの体制充実させる、だから法律が要る、どうもこういう考え方は私ちょっと解せないわけでございますが、先生の御意見をお聞かせください。
  92. 村瀬敏郎

    村瀬参考人 お答え申し上げます。  私が先ほど申し上げましたサーベイランスのシステムというのは、従来伝染病予防法、その他性病予防法に載っております疾病群に対してのサーベイランスでございまして、これは相当数が多い疾病でございますので、少数の定点でとった値を推計して日本全体の流行を知ることができるという一つの推計基準があります。ところが、エイズのように非常に新しい病原体であり、しかも散在して散らばっていくものに対しては、サーベイランスの定点を全医療機関に振りまくというふうにしないと実態は当分の間はつかめないだろう。そういう意味で私は、サーベイランスを鼓舞するような法律としてあっていいのではないかというふうに申し上げたのであります。  以上です。
  93. 沼川洋一

    ○沼川委員 時間もありませんので、最後に西岡先生に一言お尋ねしたいのです。  先生は日赤のいわば中心的な立場で血液行政に携わっていらっしゃる方でもございますので、これは午前中も質問したわけですが、今回血液凝固因子製剤によって特に血友病の方々が被害を受けられた、これはもう世界に類を見ない日本のエイズの特徴でもあります。ですから、その薬害問題がいろいろと言われております。ウイルスが混入した、これは薬害救済法でどうかとかいろいろあります。  ところがそれ以前の問題として、日本の血液行政が余りにも——日赤が担当されていらっしゃる輸血の血液は、確かに国内自給ができるようになりました。ところが血漿分画製剤になりますと、全部民間に依存されておるわけです。しかも、それがほとんど全部外国から輸入されてきている。この問題に日本は何か手を打っていかないと、この血友病患者の被害者を出したということの反省にもなりませんし、二度とこういうことを起こさないという前提に立つならば、その辺何か手を打つべきだ。それにしても、日赤が輸血用の血液だけではなくて分画製剤についてももっと積極的に取り上げて、日赤でつくる、こういう体制を考えるべきではないかと思いますが、先生の御意見をお聞かせください。
  94. 西岡久壽彌

    ○西岡参考人 私、西岡個人の意見としてお返事させていただきます。  ちょうどライシャワー事件がありまして、そしてそのときに売血制度を一気に閣議決定で献血制度に切りかえようということで非常に成功をおさめたという面が、日本の輸血後肝炎の予防の歴史がございます。それの担い手として日赤がなったといういきさつだと思います。その後、現在の日本の皆さんの献血率というのは外国と比べても非常に高い状態でありながら、輸血に直接使うものだけは十分とにかく皆さんの御協力でマネージしている現状でございますけれども血液製剤のところまで手が回らなかったというのが偽らざる実情でありまして、それを踏まえてできるようにという体制にもっていかなければならない。  私、私見といたしましては、日赤としても血漿分画センターをさらに拡充する、それに対して非常に御援助をいただくというような方向で今進んで、努力をしておりますけれども、もう一つここでお願いしたいのは、皆様方が二百ccの献血を四百ccにしていただきますと非常にいいわけでございます。実際に日本が占領直後のみんなが非常に栄養不良のときに決めたのが二百ccでございまして、外国で二百ccでやっているところはほとんどございません。全部四百から五百というところで献血をしていただいております。そういうことが普及していくということと日赤の努力と相まって、今御指摘いただきましたように血液製剤までも国内で十分にできるということを努力目標に進んでいきたいと思っておりますし、それは一日赤のあれではございません、全国民の援助があって初めてできることだと思いますので、その点をさらにエンカレッジしていただくことをお願いしたいと思います。
  95. 沼川洋一

    ○沼川委員 時間が参りましたのでこれで終わりますが、この法案がそもそもできたときが神戸あるいは高知のパニックのさなかにでき上がっております。あれからずっと経過してまいりまして、調査研究が進むにつれてどうも法案のとらえ方というのがちょっと間違っているのじゃないか、こういうことを私も率直に感じますし、また公衆衛生の専門の先生方あるいは臨床現場にいらっしゃる先生の御意見、こういったものが余り反映されていないような気がしてなりません。どうかひとつそういう意味でも、今後ともどしどし先生方の厳しい御意見を賜りますことを心からお願いを申し上げまして、終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  96. 畑英次郎

    ○畑委員長代理 田中慶秋君。
  97. 田中慶秋

    田中(慶)委員 参考人の三人の先生方、大変御苦労さまでございます。また、先生方の貴重な御意見をちょうだいして、私ども今回のエイズ法案等々含めながら参考にしてまいりたい、こんなふうに思っております。  大井先生にお伺いしたいと思いますけれども、先生の数字その他で、いかに正しい情報を国民の中にあるいはまたそれぞれのところにPRをしなければいけないか。私ども端的に申し上げて、エイズというものを含めて大変怖い存在といいますか、そんなふうに認識しておりましたし、あるいはまた、これからアメリカを初めヨーロッパの例を数値を見ながら、日本でもまさしく国際化の時代が来ている、こんな形で厳しい状態が続くのではないかな、こんな認識をされておりました。  しかし、先生の御指摘の中で触れていないのは、今、日本はまさしく国際化の時代である。例えば 商社マンが世界各国に行かれております。あるいはまた、日本に世界各国からそれぞれ経済活動を含めて来られている。やはりこういう人たちも、生きている以上それぞれの人間としての欲望を満たす意味でいろいろなことがあると思います。これらに対して全然触れておられなかったわけですけれども、先生の御意見を聞かしていただきたいと思います。
  98. 大井玄

    大井参考人 一般感染症、例えば外国人が国内に入ってくるときに、その感染症を持っているか持っていないかで、そこにとどめる、あるいは帰してしまう、あるいは治療させる、いろいろなやり方がありますが、そういうような方法がどのくらい有効であるかどうかということが非常に大きなものになってまいります。そして、それがエイズに関してはどのくらい有効であるかということが眼目になっておりますが、今のところわかっておりません。  例えば私たちがアメリカに留学する際には、きちんと胸のレントゲンの写真を撮らされまして、それで大丈夫だというのを持っていったわけです。現在日本からアメリカに留学生が参りますときには、エイズ検査をきちんと受けて、陰性だということを言って、それがある限り向こうに行って勉強ができるというふうになっております。私は、アメリカがそういうふうなことをするのは非常に非合理的であると考えるわけです。なぜならば、アメリカにおいては既に百数十万という感染者がおりますし、そういうような人々から何らかの形で一般大衆にエイズのウイルスが拡散していくということの確率の方がはるかに大きい。また、アメリカにおいては非常に多くの麻薬中毒の患者がおります。そういうような者を通じてHIVが拡散していく。それを、日本みたいに非常にクリーンなところから出かけます留学生だとかそういった人たちに対してエイズ検査を求める、証明書を求めるというようなやり方は非常に非合理的であると考えます。  しかしながら、日本におきましては先ほどから申しましたように、国内においてエイズのウイルスが血友病者や同性愛男性からどんどん拡散していくというおそれはありません。したがいまして、もし濃度勾配の原理から申しますと、そのエイズウイルスを持っているプレバランス、つまり感染している可能性がうんと高いような人々の集団が日本に入ってくる場合には、そういう人たちをチェックしてもいいのではないか、そういうことが正当化されるのではないかという気が私はするわけでございます。  先ほど申しましたように、それは非常に難しいことであって、本当にどのくらい効果があるのかどうか、結核に対して行ったような規制がエイズに対して同様に効果があるのかどうか、現在のところわかりません。こういうことにつきましては、恐らく厚生省の研究班その他がこれからいろいろと研究していかれるものと思いますが、現在私が申しますところは、そういうような方向をも検討していただきたい、。そこまで申し上げます。
  99. 田中慶秋

    田中(慶)委員 今先生のそれぞれの見解を承ったわけでありますが、例えば今円高で海外旅行が非常に盛んになっているわけであります。やはりそういうファクターもこれから見ておかなければいかぬのではないか。先生がおっしゃったことを私は否定するものでも何でもないわけですけれども、ファクターのとり方として、そのことが私は重要なかぎを占めるだろうと思いますし、そのことが日本のエイズ患者をより抑制できるといいますか、今までの数値、こういう形になるのだろうと思いますが、今まで述べられた先生のそれぞれのデータのとり方だけでは大変危険なような気がしますので、一言申し上げたわけであります。  そこで、先生にお伺いしたいのは、エイズ以外でも例えば肝炎、これも輸血によってそれぞれ病気が問題になっているわけでありますけれどもエイズ対策のみを立法化するのは筋違いだという議論も私聞いたわけであります。要するに肝炎も同じじゃないか。こんな形で専門家として、大変残念ですけれども、時間が余りないものですから端的な答えをしていただきたい、こんなふうに思います。
  100. 大井玄

    大井参考人 B型肝炎とエイズと基本的に違うところは、B型肝炎については対策が既にあるということ、それからB型肝炎はエイズよりも非常に感染性が高いということ、そういうようなことで対処の仕方というのは違ってまいると思います。  そういうものがどの程度まで法的なものに組み入れられるかどうかということについては、私は現在コメントすべき材料がございません。
  101. 田中慶秋

    田中(慶)委員 村瀬先生にお伺いしたいと思います。  医師会は現在このエイズに関するPRといいますか、あるいはQアンドAまでつくられて大変努力されていることについては敬意を表したいと思います。そこで、医師会は大変努力をされておりますけれども、国の方の努力というもの、あるいはまた国はこうしたらいいだろう、こんな形で医師会として国に対して要望するようなことはございますか。
  102. 村瀬敏郎

    村瀬参考人 国に対して我々が要望いたすものとすれば、やはりそういう国民の啓蒙活動に予算を十分につけていただきたいというふうに思っております。エイズの問題に対してはアメリカの政府も一にかかって教育啓蒙というふうに言っておりますし、現在、先ほど来のお話で日本の国内がやや鎮静化しつつあるというふうなお話がありますが、それは国民感情が教育啓蒙の影響で鎮静化しつつあるのであって、ウイルスが鎮静化しつつあるわけではないということで、そういう面の御配慮を国にいただきたいというふうに思います。
  103. 田中慶秋

    田中(慶)委員 先生は医師会という立場で今それぞれお話しされましたけれども医師会というよりはむしろ先生が感染症の専門家という立場でこのエイズ問題をどのようにとらえられているのか、先生の御見解をお伺いしたいと思います。
  104. 村瀬敏郎

    村瀬参考人 感染症の専門家というのは非常におこがましい評価のされ方で恐れ入りますが、私は感染症の専門家というよりも、どちらかというと予防接種の専門家でございます。  予防接種につきましては、この問題については非常に悲観的であるということで、別の予防体系、ワクチンの予防以外の予防体系を当面は考えていかなければいけないというふうに思っております。そういう面で、私は、感染症の問題について法律その他をつくるときはもう少しフレキシビリティーのある法律であってよろしいのではないか、病気の流行が激しいときには激しいときのような法体系をつくる、鎮静化していったらトラコーマ予防法を廃止されたように、その法律を廃止するというふうな弾力性があっていいのではないかというふうに思っております。
  105. 田中慶秋

    田中(慶)委員 ありがとうございました。  時間がありませんので、西岡先生にお伺いします。  先ほど沼川先生からもお話がありましたわけですけれども、今日の献血の問題については国内の需要に対してどうにか間に合っている。自己申告制がスタートされてから円滑な機能が行われている。血液製剤の国産化を進めるに当たってという形で先ほど四百ccの問題、五百ccあるいはまたこういう努力等々の問題が述べられておるわけでありますけれども、ただ物理的に四百ccだけでこの血液製剤の国産化を進めることができるかどうか、こういうことを私は大変疑問に思っているのです。ですから、抜本的にこの血液製剤の国産化を進めるに当たって、すなわち今回の血友病もこれらと関連する問題なんですから、そういう点では国に望むこと、あるいはまた、ただ物理的に二百が四百に上がったからそれでできるわけではないと思うのです。もっともっとこれらに対する取り組みの姿勢というものが厚生省なり国にあってそのことが実現できるのではないかと思いますが、その見解をお伺いしたいと思います。     〔畑委員長代理退席、委員長着席〕
  106. 西岡久壽彌

    ○西岡参考人 御指摘のとおりでございます。
  107. 田中慶秋

    田中(慶)委員 時間が参りましたので、以上で 終わります。  参考人先生方、ありがとうございました。
  108. 稲垣実男

    稲垣委員長 児玉健次君。
  109. 児玉健次

    ○児玉委員 きょうは三人の先生に貴重な御意見をいただいて、ありがとうございます。  最初に、西岡先生にお伺いしたいのですが、今の質問とも関連いたしますが、先生は日赤中央血液センターの副所長でいらっしゃる。それで、私は血液行政一般でなく、血友病患者、子供さんもいらっしゃれば成人の方もいらっしゃる、体重の違いもある、そして軽症、重症、さまざまな問題があります。そういった方々に対する安全な血液製剤等を供給していく体制、この点で日赤に対する患者の皆さんの期待というのは非常に強うございます。血液濃縮製剤、クリオプレシピテート、中間クリオ、RCGと言われているもの、そういったものについてのこの後の日赤の御努力の重点、そしてそれとの関連で国に対してどのような施策を期待なさっているか、まずお伺いしたいと思います。
  110. 西岡久壽彌

    ○西岡参考人 血液の安全性の確保、ただいまの血友病の患者さんに提供いたしましたファクターVIII、ファクターIXの問題に関しましては、これは確かに日本の血液行政のあり方につきましてかつてのライシャワー事件以上のインパクトがあったことだと思っておりますし、それに対応して日赤といたしまして、私は一副所長でございますけれども、できる限り最善の努力をいたしまして、国の中で皆さんの献血率がこれだけいいわけですから、それの御好意に報いるような体制ということを我々は厚生省の方にも強く要求いたしまして、実現ができるようになお一層努力していきたいと思います。  血液全体の安全性ということに関しましてもう一つこの機会に申し上げさせていただきますと、B型肝炎の問題は片づきました。ほとんど九九・九%片づきましたし、エイズの問題も非常に努力をやってまいっておりますし、ATLの問題もやっております。残された大きな問題が、いまだに私毎日心を悩ましておりますのはノンAノンB、A型でもないB型でもないもう一つの輸血後の肝炎、正体の全くわからないものに関して、それに対してもやはり積極的に取り組んでいかなければならない。ところが、これはエイズウイルスと違いましていまだに相手がつかまりません。敵がつかまりません。非常に努力をやってそれらしいものが見えかかっているというような現状でございますけれども、そのことも含めまして、より安全な血液を皆さんに供給していくということが非常に大きな責務であるかと思います。ファクターVIII、ファクターIXで血友病の問題に関しましたことを非常に重要な教訓と受けとめて、ノンAノンBに関しましても、どこの国にも負けないように先駆けて対策を進めていくように努力をしていきたいと思っております。
  111. 児玉健次

    ○児玉委員 大井先生にお伺いしたいのですが、先ほどのお話の中で、ある伝染性疾患を法の規制によって捕捉、管理しようとすればどんな事態が生まれるか、イギリスの例でお話がありまして、その教訓から日本も深く学ばなければならぬ、そう感じました。先ほどのお話で、有効な治療法が存在しない、社会的差別が強い、患者が潜在化する、そういった条件は今の日本のエイズにおいても全くぴたり当たるような気がするわけですが、神戸や高知のエイズパニックと言われたそういった事態からかなり社会全体の努力もあって平静化していく中で、ことしの五月大阪で生起した事態はかなりショッキングな扱いがありまして、そして若干の追跡が行われたかのような報道もございました。ああいった大阪の事態について公衆衛生学の立場でどのようにとらえていらっしゃるか、この点お伺いいたします。
  112. 大井玄

    大井参考人 私が理解している限りでは、五月十二日の新聞で、四十五歳の大阪の男性が一年半ぐらいにわたって百五十人あるいはそれ以上の女性あるいは男性と性的な交渉を持ち、しかも彼は覚せい剤の使用もあった、外国へも旅行していたということで、そういうような極めて多数の性的交渉があった結果、二次感染、三次感染というものが広域に起こる、そういう可能性があるのではないか、そういう新聞報道があったと存じます。  結論といたしまして、感染者は出なかったか、あるいはほとんど出なかったと申し上げたいと思います。先ほど申しましたように、私たちが調べた限りでは、怪しいと思った場合にはほぼ九割に近いような人たちが今の体制下ではエイズ検査を受けております。そして、そういうような体制下で今までソープ嬢であるとかそういうような売淫行為に従事するような人々からほとんど出ていない。今回の場合も私が聞いた限りでは、大阪あるいはその地域において一例もそういうようなものに帰せられるような陽性例は出ておりません。したがって、そのように非常に多くの性的な交渉があったという非常に怖い報道が出ても、実際にはそんなに大したことはない。  これについて私たちはちょっと調査をしたのでございますが、五月十二日から一週間の間に約千名近い一般の人々に、この人によって今までどのくらい二次感染、三次感染者が生じたか、その印象を述べてください。同時にまた、公衆衛生の感染症の専門家の人たちにも同じような質問をしたわけなんです。そうしましたら、民間の方々は約半数が百名から九百九十九名の間であるという答えです。それから、三〇%が千名以上であると答えられているわけです。ところが、専門家の方は六〇%がゼロ名から九名であると答えておりまして、あとはほとんどが二けたであるということでございます。したがいまして、これは公衆衛生の関係者が受けた印象と一般の方が受けた印象とは随分差がある。そして、そういうような状態が起こるということには、ある種の社会的な意味を私は感ずるわけです。つまり、まず第一に、法律とかそういったような意思決定をする場合に、そういうような誤った印象下、誤った雰囲気の中で意思決定を行うということは、恐らく非常に危険なことであろうということでございます。  それから二番目に、例えば医師患者の関係が崩された場合に、売春行為を続けるような者に対してある種の強制的な措置ができる、こういう条項がございますが、そういう条項はこういうふうな事例から見ますといかに意味のないことかということがわかるわけです。つまり私が知っている限りでは、医師のアドバイスにあらがっていろいろ何かした、つまりうつし回ろう、あるいは性交渉をむやみに持とうとしたという事例はアメリカにおいて数例ございます。しかしながら、アメリカにおいては約百五十万の人たち感染しておるわけですね。その中で数例です。日本ではまだ売春婦の間でそういうものがほとんど見られていない。しかも、それなのにこういうような条項をわざわざつくるということは、いかに現実から離れた状況を想定してこういう条文をつくっているかということを私は感ずるわけなんです。こういうものが実際には作動しない。それにもかかわらず、なぜこういうものをつくるのか。公衆衛生は常に費用と効果というものを考えますが、もし費用効果分析というものを行うならば、これはほとんど効果ゼロなんですね。費用は極めて大きい、そういうふうに感じます。
  113. 児玉健次

    ○児玉委員 時間でもありますからもう一問最後にお伺いしたいんですが、今の先生のお話、私は初めて聞いて、それ自体ショッキングなことではありますが、今のお話の中の、当時五月十二日の事態についての報道が与えた社会的なインパクトと実際にそれがどのようなものであったかという実像との乖離ですね。それと、今お話にありました一般社会人の受けとめと専門家の受けとめの間のえらい大きな違い、そこのところを埋める努力といいますか、もちろん実態に近づけなければいけないのですけれども、その点で公衆衛生学としてはどのような営為というか営みが可能なのか、ちょっとその点もお伺いして、終わりたいと思います。
  114. 大井玄

    大井参考人 公衆衛生学は社会医学に属するものでございます。それは一つのサイエンスでございます。サイエンスというのはあくまでも証拠に 基づいて発言しなければいけない。その証拠が確実なものであればあるほどそれはいいわけなんですが、そういうような証拠をつくるためには必ず時間がかかる。そういうような証拠が本当に学問的に妥当であるかどうかということをきちんとした人に吟味していただいて、そして初めてその後で発言できるわけでございます。そういうような意味において、どうしても緊急の事態というものに多少おくれるようなことがある。パニックが起こったときに、パニックに対しておまえたちはそんなことを心配しなくてもいい、静まれということを直ちに言うことができれば、それは公衆衛生の立場として非常にいいのでございますが、なかなかそこまではっきりと絶対大丈夫だからということは言えない、そういう悩みがございます。もちろん、このようなエイズに関連しまして幾つかの極めてヒステリカルなあるいはパニッキーなそういう状況を経験いたしますと、そういうようなものを分析してはっきりとしたデータを示し、それに基づいて将来的には発言するということはできると思います。
  115. 児玉健次

    ○児玉委員 どうもありがとうございました。  村瀬先生には、ちょっと時間がありませんで御質問できなかった失礼をおわびしたいと思います。ありがとうございました。
  116. 稲垣実男

    稲垣委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五分散会