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1988-10-25 第113回国会 衆議院 決算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年十月二十五日(火曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 野中 英二君    理事 魚住 汎英君 理事 衛藤征士郎君    理事 鈴木 宗男君 理事 谷津 義男君    理事 渡部 行雄君 理事 草川 昭三君       岡島 正之君    林  大幹君       古屋  亨君    小川 国彦君       新村 勝雄君    古川 雅司君       岩佐 恵美君    野間 友一君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      伊藤宗一郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 堀内 俊夫君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     見学 信敬君         科学技術庁科学         技術政策局長  石塚  貢君         科学技術庁科学         技術振興局長  緒方謙二郎君         科学技術庁研究         開発局長    吉村 晴光君         科学技術庁原子         力局長     平野 拓也君         科学技術庁原子         力安全局長   村上 健一君         環境庁長官官房         長       渡辺  修君         環境庁企画調整         局長      安原  正君         環境庁自然保護         局長      山内 豊徳君         環境庁大気保全         局長      長谷川慧重君         環境庁水質保全         局長      岩崎 充利君         建設省都市局長 真嶋 一男君         建設省道路局長 三谷  浩君  委員外出席者         公正取引委員会         事務局審査部第         一審査長    佐藤 一雄君         科学技術庁長官         官房会計課長  石田 寛人君         環境庁長官官房         会計課長    梅沢  泉君         大蔵省主計局司         計課長     緒方 信一君         文部省学術国際         局研究助成課長 砂子田忠孝君         厚生省生活衛生         局企画課長   小沢 壮六君         厚生省生活衛生         局水道環境部水         道整備課長   坂本 弘道君         厚生省生活衛生         局水道環境部環         境整備課長   藤原 正弘君         通商産業省基礎         産業局化学品安         全課長     橋本 正義君         通商産業省基礎         産業局化学製品         課長      寺西大三郎君         通商産業省機械         情報産業局電子         機器課長    本田 幸雄君         工業技術院標準         部材料規格課長 加藤 康宏君         運輸省航空局飛         行場部管理課長 橋本 雅之君         運輸省航空局飛         行場部計画課長 小坂 英治君         運輸省航空局飛         行場部関西国際         空港課長    相原  力君         建設省建設経済         局建設業課長  村瀬 興一君         建設省河川局河         川計画課長   岩井 國臣君         建設省住宅局住         宅・都市整備公         団監理官    曾根 啓介君         建設省住宅局住         宅建設課長   梅野捷一郎君         建設省住宅局住         宅生産課長   上野 公成君         建設省住宅局建         築指導課長   鈴木 俊夫君         消防庁予防課長 海老 忠彦君         会計検査院事務         総局第二局長  志田 和也君         決算委員会調査         室長      加藤  司君     ───────────── 委員の異動 十月二十五日  辞任         補欠選任   野間 友一君     岩佐 恵美君 同日  辞任         補欠選任   岩佐 恵美君     野間 友一君     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和六十一年度一般会計歳入歳出決算  昭和六十一年度特別会計歳入歳出決算  昭和六十一年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和六十一年度政府関係機関決算書  昭和六十一年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和六十一年度国有財産無償貸付状況計算書  〔総理府所管科学技術庁環境庁)〕      ────◇─────
  2. 野中英二

    野中委員長 これより会議を開きます。  昭和六十一年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、総理府所管中、科学技術庁及び環境庁について審査を行います。  この際、科学技術庁長官及び環境庁長官概要説明会計検査院検査概要説明を求めるのでありますが、これを省略し、本日の委員会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 野中英二

    野中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────    昭和六十一年度科学技術庁決算に関する概要説明  科学技術庁昭和六十一年度決算につきまして、その概要をご説明申し上げます。  まず、一般会計歳出決算について申し上げます。  昭和六十一年度の当初歳出予算額は三千三百四億八千百六十九万円余でありましたが、これに予算補正追加額八億六千四百二十一万円余、予算補正修正減少額九十八億八百七十二万円余、予算移替え増加額六千七百八十三万円余、予算移替え減少額五十三億二千九百八十八万円余、前年度からの繰越額十二億五千六百四十三万円余、予備費使用額四千六十五万円余を増減いたしますと、昭和六十一年度歳出予算現額は三千百七十五億七千二百二十一万円余となります。この予算現額に対し支出済歳出額三千百六十七億二千百十万円余、翌年度への繰越額一億二千八百二十四万円、不用額七億二千二百八十六万円余となっております。  次に、支出済歳出額の主なる費途につきまして、その大略をご説明申し上げます。  第一に、原子力関係経費といたしまして一千七百四十六億九千六百十八万円余を支出いたしました。これは、日本原子力研究所における原子力施設工学的安全研究核融合研究多目的高温ガス炉研究原子力船研究開発等原子力関連試験研究及び各種原子炉運転動力炉・核燃料開発事業団における高速増殖炉及び新型転換炉開発ウラン資源の探鉱、ウラン濃縮技術開発放射線医学総合研究所における放射線による障害防止及び放射線医学的利用に関する調査研究民間企業等に対する原子力に関する試験研究委託原子力安全行政強化等原子力平和利用促進を図るために支出したものであります。  第二に、宇宙開発関係経費といたしまして八百九十二億三千百四十九万円余を支出いたしました。これは、宇宙開発事業団における人工衛星及びロケット開発、打上げ及び追跡並びにこれらに必要な施設等整備航空宇宙技術研究所におけるロケット等に関する基礎的、先行的試験研究種子島周辺漁業対策事業助成等のために支出したものであります。  第三に、海洋開発関係経費といたしまして六十二億二千七百七十六万円余を支出いたしました。これは、海洋科学技術センターにおける深海潜水調査研究潜水作業技術研究開発等のほか、関係省庁の協力により実施した海洋遠隔探査技術開発研究等ために支出したものであります。  第四に、試験研究機関経費といたしまして、当庁の試験研究機関のうち、航空宇宙技術研究所における短距離離着陸機研究開発金属材料技術研究所国立防災科学技術センター及び無機材質研究所における各種試験研究及びこれに関連する研究施設整備等を行うための経費として百七十一億三千三百九十三万円余を支出いたしました。  第五に、科学技術会議の方針に沿って我が国の科学技術振興に必要な重要研究業務総合推進調整を実施するための科学技術振興調整費、理化学研究所における先端的基礎研究推進のための国際フロンティア研究等を行うための経費、新技術開発事業団における流動研究システムによる創造科学技術推進事業等を行うための経費日本科学技術情報センターの事業を行うための経費等として二百九十四億三千百七十二万円余を支出いたしました。  次に、電源開発促進対策特別会計のうち、科学技術庁所掌分歳出決算について申し上げます。  まず、電源立地勘定につきましては、昭和六十一年度歳出予算現額は百四十五億六千九百九十二万円余であります。この予算現額に対し、支出済歳出額百十四億四千八百四十万円余、翌年度への繰越額二十一億八千百六十二万円余、不用額九億三千九百八十九万円余となっております。  支出済歳出額の主なる費途について申し上げますと、これは、電源立地促進を図るため、地方公共団体に対する電源立地促進対策交付金及び電源立地特別交付金交付並びに原子力発電所等施設、設備の安全性を実証するための試験等を行うために支出したものであります。  次に、電源多様化勘定につきましては、昭和六十一年度歳出予算現額は九百八十二億三千四百十五万円余であります。この予算現額に対し、支出済歳出額八百八十一億五千百六十二万円余、翌年度への繰越額八十七億六千四百五十三万円余、不用額十三億一千七百九十九万円余となっております。  支出済歳出額の主なる費途について申し上げますと、これは、基軸エネルギーたる原子力に係る技術開発推進を図るため、動力炉・核燃料開発事業団における高速増殖炉原型炉建設新型転換炉原型炉運転使用済核燃料の再処理技術開発ウラン濃縮原型プラント建設等のための経費並びに原子炉解体技術開発委託等を行うための経費として支出したものであります。  以上、簡単でありますが、昭和六十一年度決算概要をご説明申し上げました。  よろしくご審議のほど、お願い申し上げます。     …………………………………    昭和六十一年度決算科学技術庁についての検査概要に関する主管局長説明                 会計検査院  昭和六十一年度科学技術庁決算につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。     ─────────────    昭和六十一年度歳出決算に関する概要説明                   環境庁  環境庁昭和六十一年度歳出決算につきましてその概要を御説明申し上げます。  まず、昭和六十一年度の当初歳出予算額は四百六億八千二百二十七万円余でありましたが、これに予算補正追加額一億一千九百五十一万円余、予算補正修正減少額五億一千九百三十九万円余、予算移替増加額一億三千四百六十五万円、予算移替減少額二十五億五千四十六万円余、前年度からの繰越額二千四十五万円余を増減いたしますと、昭和六十一年度歳出予算現額は三百七十八億八千七百三万円余となります。この予算現額に対し、支出済歳出額三百七十六億三千九百七万円余不用額二億四千七百九十五万円余となっております。  次に、支出済歳出額の主なる費途につきまして、その大略を御説明申し上げます。  第一に、公害防止等調査研究関係経費といたしまして、五十五億九千六万円余を支出いたしました。これは、化学物質実態調査等を実施するための経費及び国立公害研究所国立水俣病研究センター運営等経費として支出したものであります。  第二に、自然公園関係経費といたしまして、四十億七千四百三十六万円余を支出いたしました。これは、自然公園等における管理及び園地、博物展示施設長距離自然歩道等整備並びに渡り鳥の調査、絶滅のおそれのある鳥獣の保護対策等経費として支出したものであります。  第三に、環境庁一般事務経費といたしまして、二百七十九億七千四百六十五万円余を支出いたしました。これは、公害防止を図るための施策推進に必要な調査費地方公共団体に対する各種補助金公害防止事業団及び公害健康被害補償協会に対する交付金環境行政に従事する職員の資質向上のための研修所運営費並び環境庁一般行政事務等経費として支出したものであります。  最後に、不用額について主なるものを御説明いたしますと、不用額は、退職手当等人件費を要することが少なかったこと等のためであります。  以上、簡単でありますが、昭和六十一年度決算概要を御説明申し上げました。よろしく御審議のほどお願いいたします。     …………………………………    昭和六十一年度決算環境庁についての検査概要に関する主管局長説明                 会計検査院  昭和六十一年度環境庁決算につきまして検査いたしました結果、特に違法又は不当と認めた事項はございません。     ─────────────
  4. 野中英二

    野中委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。魚住汎英君。
  5. 魚住汎英

    魚住委員 おはようございます。魚住でございます。  きょうは、環境庁長官及びそれぞれの部局の局長に、日ごろ日本環境保護に一生懸命努力をしていただいておりますことを認めました上で、御質問を申し上げたいと思います。  御承知のとおり、大変な内需拡大という名のもとに、全国四十七都道府県あちらこちらに「ふるさとおこし」ということで、たくさんのプロジェクトができておるわけであります。その中におきまして、私の選挙区熊本県も阿蘇、天草という山と海の二つの大きな資源を持っている地域であることは御承知のとおりであります。  そういう中におきまして、特に最近目立って賛否両論出ておりますことは、阿蘇地域におきまして大きな開発プロジェクトができ上がってきておるわけでありますが、それに対しまして、環境庁といたしまして、微に入り細に入り、自分たち立場をもととしていろいろと御意見を賜っておるようでございます。そういうようなことにかんがみまして、ぜひ基本的な考え方と、また、時代に相呼応するような形での環境庁の今後の対応についてお尋ねをしてみたい、こう思うわけでございます。  まず、具体的に申し上げますと、これは熊本県のローカル紙であります熊本日日新聞の九月十七、十八、三十日ということで三つの具体的な事例が出ておるわけであります。  まず、今日の日本の国の農業情勢を考えてみた場合に、御承知のとおりの牛肉・オレンジ等自由化に始まり、また米に対してもごらんのとおりの外圧、こういう中において農村に住む者はどういう将来の生活設計をつくっていったらいいかということについて、大変思い悩んでおるというのが実情でございます。  そういう中におきまして、御承知のとおり阿蘇というのは、一大農業生産地域でありますとともに、また別の面から見れば一大観光地域である、こういうようなことで、農業振興といわゆる環境保全ということの中においては相反する二つの要素がある、その調和をどういうようにしてとっていくかということにおいて、皆さん方の役所においては大変な苦悩、苦衷の中にあろうかと思うわけでありますけれども一つ事例といたしまして農業開発についても、これは環境庁阿蘇くじゅう国立公園管理事務所所長さんの談話ということで出ておるわけでありますけれども農業開発をやった場所については、今後その地域がほかの目的に利用されることについては絶対にそのようなことにならないようにしてほしい、こういうようなお話があっておる。草地造成の事柄についてはそういうことでありますが、片一方においては、レストランをつくることにおいて、これは屋根の色でありますとか塔屋の高さでありますとか、そういうようなことについても同じように環境庁からいろいろと御意見を出しておられる。また、サーキット場等が、これは熊本県、大分県を合わせてでありますが、三カ所できるように今計画がなされておるわけでありますが、これらについても反対態度所長名前で表明されておる、こういうような新聞報道を拝見させていただいたわけであります。  ぜひひとつ皆さん方に御理解をいただきたいことは、私たちは毎日朝起きて、そして家のドアをあけますと目の前は全部グリーンでありますから、毎日毎日自然の箱庭の中で生活しておるわけであります。ところが、都会の人たちからすれば、そういうすばらしい自然が破壊されるということはまことにもって、いわゆるこんなすばらしいところがあるのだから何としてでも残さなければならぬ、こういうような形で一生懸命考えられる。これもまた正論であろうと思う。しかしながら、地域住民としては、何とかして今の環境からよりよき環境へと自分たち自身努力をすることによってその生活を変えていかなければならぬ、こういう考え方を持っておること、これもまた事実でございます。  そこで、私の感じから言えば、それらの計画に対して当該事務所所長さん方がいろいろと事務所としてのコメントを出されることの中においては、そういう建設には具体的に反対であるというお気持ちをあらわされておるようでございます。私はそのことが正しいかどうかということをここで詰めようとは思いません。しかしながら、地域住民としては、少なくとも過疎からの脱却、そして自分たち地域活性化、こういうような題目に基づいて、市町村長中心にし、また県も中心になっていろいろなプロジェクトをつくりながら、そこの中でいわゆるほかからの力を導入することにおいて地域活性化を図っていこう、こういう考え方物事を進めておる最中であります。  環境庁としては、この具体的な事例に基づいて、所長が申し上げられたことが従来の所長立場からすれば決して間違ったことではない、けれどもやはり余りにもそういうものが先行していってしまうと、地域住民からの反発も出てきますし、また自然を守るという立場から、そういう団体人たちからすればなるほど頼りになる非常にすばらしい所長だと思われるかもしれないけれども、やはり地域住民の毎日の単調な生活の中には何とかして変化を求めたい、そして地域活性化を図りたいという願いがあることをどうぞひとつ知っていただいて、環境庁の今日とられております態度自体が果たして時宜に適したものであるかどうかということもどうぞひとつお考えをいただきたい、そういうような趣旨で実はきょうは質問をさせていただいたわけでございます。  局長さんなり何なりから答弁をいただきました後に、最終的に環境庁長官の方からぜひ最後に総括でお答えをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  6. 山内豊徳

    山内政府委員 ただいま国立公園自然環境を守ることと、地域振興と申しますか地元市町村の期待との調整につきまして、非常に本質的な御指摘ではあると思います。先生お挙げになりました三つ事例が実はかなり性格が違った問題でございますので、ちょっとお時間をいただきまして説明だけさせていただきたいのでございます。  初めに、草原を畜産用農地に変える話でございますが、これは実は、私もその後、所長にも具体的に直接聞きただしたのでございますが、農地に変えること自体をお断りしたというよりも、どうも全体的にここのところ農地に変えるヘクタールは年々非常にふえてきている、ことしは少し減ったようでございますが、そこまでは理解できるのだけれども、せっかく農地ということでお認めした土地が、計画段階ではございますけれども、いろいろな開発にさらに使われるような傾向がどうしてもあるので、実はこういった物事を決めますときに、やはり県知事、県庁の御意見も大事でございますから、県庁の方に、今後どの程度農地に変えていくのか、大体の見通しを教えてほしいと申し上げたところ、それについてはまだ計画がないということもありまして、余りはっきりした御答弁がなかったものですから、一応この御相談をお返しするという形をとったわけでございます。しかし、結論的には県の方からも十分な説明がございましたので、今回地元紙で問題になりました農地転用はお認めする方向で、また、将来につきましても県の農政当局ともよく御相談しながら物を運んでいこうということで、私どもとしては一応決着したと思っております。  二番目の建物の色なり高さでございますが、これは率直に申しまして、いろいろな公園で問題になることが多いのでございます。このレストランは、もちろん経営は実際は民間でございますが、自然公園の中の公園事業ということで、私ども自然環境保全審議会にかけまして、逆に言えば公園の中に一つ必要だということでつくらせていただいた事業でございますが、これにつきましては、やはりどこの国立公園でもある程度共通でございますけれども、余り華美なものあるいは高いものができますと収拾がつかなくなる経過もございますものですから、大体事務所には最小限の内規もございますので、地域によりましては地元とよく御相談しまして、そういったことを決める協定のようなものをつくった例もあるのでございます。阿蘇の場合はそういった形式をとった協定はございませんでしたが、従来の取扱指針範囲内で、御申請のあった方と相談をして、これも所長は、一応自分としては理解してもらって結論を出したというふうに理解をしておりますが、新聞ではそこを、事務所が非常に強い態度に出たことを強調しておりますものですから、先生がお受け取りになったような受け取り方が地元にもあろうかと思いますけれども、私どもがきのうも図面に即して検討させていただきましたら、今回の所長指導は私どもとしても十分お願いしなければいかぬ線の範囲内であるというふうに考えております。  三番目の、サーキット場という名前で言われております大規模な計画が、まだこれははっきりした形では事務所にも私どもにも御相談があったわけではございませんが、三つばかりあることは事実でございます。これにつきまして、先生おっしやいましたように、地元紙では所長が、言葉の上では「好ましくない」という言葉で出ているようでございますが、おっしゃるように、今の段階所長反対、賛成ととれるようなことを言うのはどうであったかという気もいたします。ただ所長にしますれば、言葉は正確に、まだ全く相談を受けていないけれども、ということで感想を述べたわけでございます。  ただ、先生指摘のように、このことについては一般論として、反対するという住民の陳情なども所長は直接お会いしておりませんけれども事務所の方にもそれがあったりしまして、地元新聞取材においては、所長はどう思うかねということをどうしても聞かれるものでございます。その点、私はその言葉、表現の上で問題があったとは思いませんけれども、余り早い段階意見めいたことを言うことは、先生指摘のように確かに問題があろうかと思います。  念のためと思いまして、どのような計画があるか昨日も私、調べてみたのでございますが、三つある計画のうち、一つは確かに国立公園の中でございますけれども、あとの二つ公園区域の外でもございます。そうなりますと、今申しましたように余り早い段階で事務的に意見を申し上げるのはどうかという気もいたしますが、一つ公園区域内といたしましてはかなり広大なものであるだけに、所長としては、何と申しましても昭和九年以来お預かりしている阿蘇国立公園という気持ちがありましたものですから、あえて尋ねられれば、自然環境保全の上で慎重な上にも慎重を重ねてほしいというつもりで「好ましくない」という言葉を使ったと思いますが、その点は、何度も申しますように、今の段階で、申し上げた表現としては新聞に書かれているとおりだとしましても、ちょっと踏み込み過ぎかなと思います。  ただ、くどいようでございますけれども、伝統ある草原景観の典型である阿蘇を守るために、ある意味では所長を初め私どもも苦心、苦労しているつもりでございますので、意のあるところは御理解いただきたいと念願する次第でございます。
  7. 魚住汎英

    魚住委員 局長の御答弁、まことにありがたいわけでありますが、何にしましても、今さっきも申し上げましたように、出先の方々の発言というのは非常に重みを持ってとられるわけです。  それで、環境庁日本人が住むために、また人々が住むために、日本の国を快適に保護をしていこうという基本的なお仕事をなさっておるということも十二分に理解をしております。私ども熊本県でありますから、熊本県の最大の、これは余りいい課題じゃないのですけれども、水俣病の問題なんというのは特に環境庁にお世話になって微に入り細に入り御指導いただき、御援助いただいておるということを知っておるわけであります。しかし、このことは、言うならば、正と負という区分けをしますならば負の方の対策でありまして、この問題は、環境庁の仕事とされて時宜に適した考え方で、今所管をされておる地域についても、国の大きな流れの中、いわゆる地域開発、ふるさと創生、またふるさと活性化といったような方向でぜひひとつ前向きにお考えいただきたいと思うのです。言うならば攻めることも守ることになる。ただ放置しておくだけですべてを守るという考え方には私は立たないわけでございます。その辺のことになりますと非常に難しい論議をしなければならぬと思いますし、考え方の違う人たちもおられると思うわけでありますけれども、例えば国立公園の敷地内であっても、荒れるに任せて、そしてもう見るにたえないような姿に現況がなっておるとするならば、それをよりよき人間の生活にプラスになるように形を変えて運用をしていくことになれば、これは私はプラスになると思うわけであります。その辺の見解をひとつぜひ局長にお伺いをしておきたいと思います。
  8. 山内豊徳

    山内政府委員 先ほど答弁の中でちょっと触れない点でございましたけれども、実は今回のサーキット場はいわゆるリゾート法によるリゾート整備とは一応切り離して理解してよろしいかと思います。一例を申し上げますと、リゾート法に基づくところのリゾート地整備の場合、これも先生指摘のようにすべてが国立公園の外というわけではございませんで、中には国立公園の中にそうした利用施設も含めて検討しなければいけない場合があるわけであります。先ほど説明を落としたのですが、阿蘇の場合もそうでございますが、国立公園には公園計画というものが、審議会の意見をいただきまして決められております。その中にはもちろん保護のための計画もあるわけでございますが、先ほど例を出しましたように、ここには食堂、レストランが要るのではないか、ここには宿泊施設、ホテルが要るのではないかという積極的と申しましょうか、利用面での施設も織り込んだ公園計画がございます。これはいろいろ事務の都合でなかなか進まない面もあるのでございますが、私どもできれば五年に一度ぐらいは見直しを加えていきたいということでございます。  今申しましたリゾート法でもし公園地域内を整備します場合は、こういった公園計画そのものも見直した上で対応しないと、先生指摘のように、ただ従来の保護計画だけではいかない場合がございます。そのあたりは、今お話のございました、時代に即した公園の利用のあり方の一例ではないかと思うのでございますが、そんなことで、阿蘇については今リゾート構想は承っておりませんけれども、例えば天草のような場合はどうしても公園計画との関係でリゾートを考慮しなければいけないという点があるようでございます。これはもちろん無制限に利用のための利用を認めるわけにいきませんけれども、そのあたりは、私ども指摘の点を踏まえながら、ある意味では正しい意味での調整をとりながら公園を利用していただく、保護していく道も持っておりますことをこの際御答弁させていただきたいと思います。
  9. 魚住汎英

    魚住委員 なるほど、計画課というのがあって計画をされ、その中で時代の変化とともにそれなりの対応をする、こういう御答弁であったと思いますが、ぜひひとつこの阿蘇の場合も、ここ十年間で社会の様相が大きくさま変わりしておりますし、その中において、例えて申しますならば、十年前に草地改良をして大規模な酪農団地をつくるんだ、こういうことで農民が大きな借金を背負いながら一生懸命開発していった。ところが、先ほど述べましたように、農業情勢は十年前と今日と比べますとまことにもって天と地ぐらいに違うようになってしまった。その中において、地元に残った人たちは、借金がゆえに年度末になりますと必ずその年の償還金のいわゆる償還期日が来るわけです。それが来るときになると、本当にどうしたらいいか、別段新たなる収入があるわけでもないし、さりとてそのまま置いておったって何かできるわけでもない。こういうことの中に、何とか処分できないか、そしてもっと有効に使うことにおいて自分たちが今の負債から逃れることができないか、こう考えるのは人間として当たり前だと思うのです。それがいい悪いと言うことはだれもできないと思う。  ところが、残念ながら、皆さん方承知のとおり、その欲求を満足させるぐあいには、法律、制度の網をかぶっておるわけですからできない、そういうこともあることは御承知のとおりです。ですから、何としてでもそこで、五年間の見直しだ、こういうことでありますから、では次の五年の見直しの時期はいつなのか、我々としては必ずそう聞かざるを得ないわけです。そうすれば、そのときに皆さん方とよくお話し合いをして、自分たちは今の時点ではこういう計画を持っておるけれども、ぜひ皆さん方とのいわゆるすり合わせの中において、皆さん方と調和のとれた開発計画はこういうものだという形ができ上がっていったとするならば、それが一番ベターだ。ですから、そういうことからすると、次の五年の計画の見直しの時期はいつなのか、こういうお尋ねをしなければならぬと思うのですが、いかがでしょうか。
  10. 山内豊徳

    山内政府委員 今の、先生が具体的に念頭に置いておられます阿蘇地域は、実は六十一年に一番直近の見直しを済ませております。その意味で、私が申します慣例として五年置きというのは六十六年になるわけでございます。  ただ、もし先生があるサーキット計画に絡んでの御指摘であれば、その地域は必ずしも、厳密な意味では保護を優先する地区というよりも普通地域というグループの地区でございますので、私はさっきの例示として公園計画をそういったことで見直していると申し上げましたが、全部が全部この計画公園計画に絡むというふうに申し上げるつもりではございません。ただ、非常に大事なことなんでございますが、そのサーキット場計画の仕方によっては、入る道路その他が特別地域に入ってしまいます。これが非常に重大なポイントになりますことと、それから、先ほど申しましたように、何といいましても二百ヘクタール前後というかなり広大な計画でございますので、むしろ私も新聞情報でしか知りませんが、そのあたりは従来畜産政策としてどういう土地であったかという絡みもあって、公園法の以前にいろいろまた論議が要る面もあるように私は新聞で伺っております。そんなことで、ある意味では、六十六年を待たなければ結論が出ないものではないけれども、非常な難しさをはらんだ構想として私は理解しておることだけ申し上げさせていただきたいと思います。
  11. 魚住汎英

    魚住委員 それでは、そのサーキット場となるべき、なるべきというより、サーキット場として用意をされている用地というのは普通地域だということなんですね。普通地域だというと、今おっしゃった次の見直しの年度は六十六年だけれども、それには該当しない、こう理解していいですか。
  12. 山内豊徳

    山内政府委員 普通地域を大規模に開発します場合は特に公園計画に基づく云々がなくても権限上できる面はございますので、その意味では六十六年を待たなくても結論を出すことは可能だと思います。ただ、くどいようでございますが、取りつけ道路その他は普通地域ではなくて特別地域になっております。これはかなり厳密な審査をしませんと了解を出せないという点でございます。
  13. 魚住汎英

    魚住委員 地元としましては、計画が発表された段階で、地元活性化につながる、よって何としてでもやってほしい。ところが片一方では、先ほど申し上げましたように、いわゆる自然を愛護する会、三百数十名の方々がつくっておられる組織で、乱開発に対しては云々だ。これは何もサーキット場だけの話じゃない、ゴルフ場その他、いろいろ草地改良も含めて総合的なものでありますけれども。しかしながら、数多くの方々は、先ほど来何回も繰り返し申し上げますように、ぜひともひとつ地域活性化のためにそういう施設が欲しいんだ、我々が農業に希望を持って今日までやってきたんだけれども農業の将来性というのはもうないんだ、そういうことであるならばやはり何としてでも今我々が背負っておる負債からこの際逃れたい、よって逃れるだけではなくて、そのことにおいてその土地を起因として地域活性化につなげていきたい。そのためにはぜひひとつ環境庁の方からも御協力をいただきたい、こういうのが私の願いでもあるわけです。  ですから、お話しございましたように、五年、五年で見直しをする、その当該地域が特別地域の中に入っておったにしても、また普通地域であったにしても、環境庁の基本的な考え方として、そういう地域開発プロジェクトがあるとするならば、環境庁サイドから見ても適応するような適宜な計画に話し合いを詰めることにおいてよりすばらしいものができていく、こういう形で今後進めていっていただきたいな、こう思うわけでありますが、最初から今までの間を総括して、大臣いかがでしょうか。
  14. 堀内俊夫

    ○堀内国務大臣 先ほど来お話を承っておりまして、村おこしと自然環境保全というのはあたかも対立するような感じがしますけれども、本来対立する問題じゃないと私は考えております。  先ほど来の委員の御指摘、もっともな点ばかりでございます。ただ、こういうふうにしたらどうかなと私は思うのは、本来我が国では国土の一四%にも及ぶ広範な地域を規制しておるわけでございます。これは世界じゅうどこの国を見ても例のない冠たるものである、こういう自然環境保全しなければならぬという原則には立っておりますけれども、今の村おこしの問題も、よりよい環境をつくっていくという立場からいうと、時代のニーズというものもございましょうから、これは調和できるのじゃないかと思います。  ただ、先ほど来一般論からいうと、同じ国立公園の中にでも絶対に動かしてはいけないという地域もあれば、これは地元とよく相談して地元のニーズに合って調和する方法で開発してもいいんじゃないかという地域も含まれておると思いますので、こういう点は、先に公園審議会の意見なんかも踏まえて、当地ではいろいろな問題を、村おこしをやる計画を立てると、ああこれはいかぬ、あれはいかぬと環境庁の方で言うてくる、一体どうしたらいいのかということになって行き詰まってくるわけでありますから、そういうことじゃなしに、村おこしをする側の方も、保全しなければならない部面はこうなっておる、こういう部面はこの程度に保全すればいいんだということの御理解が先にあれば、いろいろなマスタープランも意見の対立なしに私は動いていくんじゃないかという感じを先ほど来のお話を聞いてしているわけでございますので、今後環境庁の方とも十分相談を事前になさって村おこしを考えていっていただければ、今委員が御指摘の方向で円満に処理できる道がたくさんあるんじゃないかというふうに思います。
  15. 魚住汎英

    魚住委員 ありがとうございました。ぜひ、そのようなことで地元人たちの本当の気持ちというものを吸い上げていただいて、事に処していただきたいと思います。  何せこういうものが先に計画段階で、ごく一部の人たちしか知らない段階でぽんと役所の結論みたいなのが出てしまうと、これは何といいますか、民間というのはまことにもって役所に対して弱いわけであります。役所の立場理解するまでになっておらない。役所に相談に行って、そこで両方の立場をよくわかった、いわゆる合作案ですね、よりベターな案というものをつくっていく、そういう形にならぬわけです。ですから、何としてでもその辺のところで、何といいますか、屋根の色、そして家屋の形、いわゆる俗っぽい話で言えば、はしの上げおろしまでいろいろ役所からやかましく言われる、こういうことにならぬようにだけはぜひひとつお願いをしたい、こう思うわけであります。世間のすべての事柄に長じられた環境庁長官がおられるわけでありますから、大いにその辺のところを柔軟な対応を期待して、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  16. 野中英二

    野中委員長 谷津義男君。
  17. 谷津義男

    ○谷津委員 最初に、新石垣空港問題につきまして私はお尋ねをいたしたいと思います。  最近環境庁は、この問題に関係あると見たのでございましょうか、奄美大島の飛行場の建設に伴いましてサンゴの状況調査をやったようでございますが、この目的は何であったかをまずお尋ねいたしたいと思います。
  18. 安原正

    ○安原政府委員 先々週でございますか、実施いたしました新奄美空港周辺サンゴの調査の目的でございますが、御案内のとおり新石垣空港につきまして環境アセスメントの手続が県レベルで行われておりますので、その手続が終了いたしますと、公有水面埋立法に基づきまして環境保全の見地から環境庁長官意見を求められることになっておりますので、その際環境庁として審査するわけでございますので、その際の基礎資料を得ることを目的に行ったものでございます。
  19. 谷津義男

    ○谷津委員 そこで、調査が大体終了したということですが、現段階ではその目的は達せられたのでしようか、どうでしょうか。今までにわかる範囲内でお答えいただきたいと思います。
  20. 安原正

    ○安原政府委員 ただいまも申し上げましたように、新石垣空港につきましての環境アセスメントの審査の際の基礎資料を得るということが調査目的でございますので、その調査目的は達成したものと考えております。
  21. 谷津義男

    ○谷津委員 そういうことですと、私どもとしましても事前にそういう準備をしたというふうに理解をさせていただくわけでありますけれども、問題は、沖縄県で今環境アセスをやっておるという段階で、環境庁が先に、当然今度は長官の意見を求められるということでその調査をされたということでございますけれども、沖縄県も独自の調査をやるだろうというふうに思うわけであります。しかし、私は考えますのに、沖縄県におきましても、環境庁が先にそういう調査をされたということであるならば、当然のこととして沖縄県としてもこの奄美の調査ということはやられるのじゃなかろうかなというふうな考えを持つわけであります。そして、沖縄県としてのアセスを出してくるのではなかろうかと思うのですが、もし今日までの調査の内容について資料提出のお願いが沖縄県からあった場合には、環境庁としてはこれに対してどのように対処される考えでありますか、お聞かせいただきたいと思います。
  22. 安原正

    ○安原政府委員 先生も今おっしゃいましたとおりでございまして、新石垣空港につきまして沖縄県がアセスメントを実施しております。その関連で、新奄美空港につきましても沖縄県が独自の判断で調査を行うことは私どもとしては期待をしているわけでございます。したがいまして、あくまで沖縄県が事業者としてその責任と判断で評価書をまとめるわけでございまして、その評価書の中に比較検討結果を入れていただくということを期待しておるわけでございます。  これは仮定の話でございますが、今先生の御質問で、沖縄県がそれを求めてきたら環境庁はどう対応するのかというお話でございますが、そういうことでありましたならば、環境庁としましては、私ども自身既に調査をしたところでございますので、その調査結果を踏まえまして、必要な情報の提供あるいは調査手法等につきまして相談すべきことがありましたならば、それについての助言を行ってまいりたいと考えております。  それから、鹿児島県と沖縄県の二県にまたがる問題でもございますので、関係省庁あるいは鹿児島県に対しまして、沖縄による調査が円滑に進むように協力の要請をしてまいりたいと考えております。
  23. 谷津義男

    ○谷津委員 今日まで私どもが聞いておる話によりますれば、この奄美大島の新空港の建設につきましては、空港の埋め立てが直接の原因ではない、いわゆるサンゴに対する影響ですね、そういうことを鹿児島県は言っておるという話も聞いておるわけであります。また一方、それが大きな原因であるというふうなことでいろんな団体から指摘をされているという面もあるわけでありますが、今度の調査によりまして、その辺のところは環境庁としてもし発表できるものがあればひとつお知らせをいただきたいというふうに考えるわけですが、いかがなものでしょうか。
  24. 安原正

    ○安原政府委員 新奄美空港周辺のサンゴ礁の状況の調査結果がどうであったのかというお尋ねでございますが、先ほども説明申し上げましたように、今回の調査と申しますのが、新石垣空港のアセスメントの審査の際の基礎資料を得るということでございますし、現在沖縄県におきまして、新奄美空港につきましてのサンゴの問題につきまして独自で調査をしていただくようにこちらは期待しておるという状況でございます。そういう状況にございますので、沖縄県による評価書の公表に先立って、環境庁が事前にその結果を公表するということは考えていないわけでございます。
  25. 谷津義男

    ○谷津委員 その辺のところはよくわかります。先ほど、沖縄県からもしそういった資料についての要請があった場合はこれに協力していく考えがあるというふうに答弁をいただいたわけであります。当然、沖縄県の調査環境庁調査がもし食い違った場合は、これはいろいろまた問題が出てきて、環境庁にしてみれば自分独自の調査そのものがいわゆる環境庁としての調査結果だということになりますから、食い違うということは非常に困るわけです。そこで、先ほどのように資料の要求があった場合はこれに協力していただいているということで、多分その辺のところは非常にスムーズにいけるのではなかろうかというふうに考えるわけでありますが、この問題につきましては、環境庁にとりましても大変重大な問題になってくる。また、これは私の独断の考えですけれども、運輸省にしても建設省にしても環境庁待ちという感じを強く感ずるわけでありまして、その辺のところはしっかりやっていただかなければならぬなというふうに考えるわけです。  そこで、ちょっと運輸省にお聞きしたいわけでありますけれども、運輸省はかつて、昭和五十七年の三月に航空法に基づく設置許可を既にしておるわけですね。しかも漁業補償も行われているということを聞いているわけでありますが、現在、環境等の問題から未着工になっておりますこの状況につきまして、運輸省は新石垣空港についてどのように考えておるのか、そして建設場所についてはどこがよいというふうに判断をしておるのか、運輸省の考えをお聞かせいただきたいと思います。
  26. 小坂英治

    ○小坂説明員 お答え申し上げます。  石垣島の今問題になっております空港は、第三種空港として航空法の中で位置づけておるものでございます。したがいまして、この空港整備のあり方につきましては、一義的には設置管理者であります沖縄県が判断すべきものであると認識しております。県は、現空港の拡張も含めまして五カ所についていろいろと検討し、航空機騒音あるいは土地利用、いろいろ考えまして比較検討し、白保海上案が適切と判断しているというふうに理解しております。今、もとになっておりますこの空港計画も、そういうことで県が当地区に計画し、運輸省はそれを航空法に基づきまして審査し、設置許可したものでございます。
  27. 谷津義男

    ○谷津委員 運輸省にしましては、新石垣空港につきましては、航空法そのものだけで適地であるというふうな判断のもとに、五十七年に設置許可をしたということですね。今度また改めてこれのアセス等やっておるわけですが、特に沖縄県は、アオサンゴの保存のために二千五百メーターの許可をもらった滑走路を二千メーターに短縮をして、なお何とかこの建設に入っていきたいというふうな考え方で、現在環境アセスメントを実施しておるというふうに聞いておるわけであります。運輸省は、さきに認可した経緯から考えて、今後この問題につきましてはどのように対応していくのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  28. 小坂英治

    ○小坂説明員 先生指摘のとおり、この空港計画につきましては設置許可を出しております。この空港の現状あるいは今後の航空需要を考えますと、当地区に本格的にジェット機が就航できる空港が必要であるということで、環境保全との調和を図りながらその建設を行っていく必要があるというふうに理解しておるわけでございます。  したがいまして、現在問題になっておりますように、県において空港の南側にありますアオサンゴ群生等の保全に配慮しまして、南側の五百メートルを縮小するということで計画変更し、所定の手続に従いまして現在環境アセスメントを実施しているわけでございます。運輸省としましては、それを見守ってまいりたいというふうに考えております。
  29. 谷津義男

    ○谷津委員 もう一度お尋ねしますが、そうすると、運輸省の今度の許可のいわゆる範疇というのですか、それにはアセスメントも入れるということなのですか。これは運輸省の側は航空法だけで許可をすればいいのでしょう。そういうアセスメントまでも含めて運輸省は許可の対象にしようとしておるのですか。その辺のところをお聞かせいただきたいと思います。
  30. 橋本雅之

    橋本(雅)説明員 お答え申し上げます。  環境保護につきましては航空法上の審査事項ではございませんが、審査するに当たりましては、環境影響評価手続の実施結果をしんしゃくすることといたしております。
  31. 谷津義男

    ○谷津委員 そうすると、航空法外のこともしんしゃくの対象にするということになるわけですね。
  32. 橋本雅之

    橋本(雅)説明員 お答え申し上げます。  審査するに当たりましては、実質的には配慮するということといたしております。
  33. 谷津義男

    ○谷津委員 この新石垣空港につきまして、最後に長官にお尋ねしたいと思うのです。  この空港の必要性ということも非常に大事な問題だろう、と同時に、環境保全ということもこれまた大事なことだろうというふうに思うわけであります。そこで、環境庁は、これからその意見を求められてくる状況が出てくるわけでありますけれども保全地域開発のはざまにあって決断をするのは大変なことだろうと思います。先ほども申し上げましたように、恐らく建設省も運輸省なんかも、認可をする面については環境庁待ちという感じがひしひしと私は感じられるわけでありますけれども、この辺につきまして、長官はこの対応をどのようにしていくのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  34. 堀内俊夫

    ○堀内国務大臣 石垣島自体環境庁としては無指定地域でございます。地域指定をしていない。重要な場所は皆国立公園とかいろいろ指定しておるわけであります。問題が起きたのは、アオサンゴが非常に重要だということが国際的にもいろいろ関心が集まったということで、今問題が起きておると思います。  本来、政府のいわゆる手順から言うと、事業者である沖縄県が環境アセスをする、本来そういう姿でやっておるのが今の政府の手順でございますから、その手順に従うて沖縄県は環境アセスをし、そうしてここへ至ったのは、アオサンゴを守ろうということで、みずから五百メートルも滑走路を短くするというような措置を本来とってきておるというのが今までの過程でございます。  それで、私どもの方は、先ほど来企画調整局長が申しておりますように、公有水面地を埋め立てる場合に、建設省が環境庁にいわゆる意見を求めてくるということで、その準備を環境庁がしているということになるわけであります。このときは、環境庁は公有水面、その埋め立てる範囲内のいわゆる自然環境保全できるのかどうかという科学的な知見を得て、その知見に従って意見を述べることになろうかと思います。現在、その知見を得るための準備をしておるという状況だと思っていただいたらいいのじゃないかと思います。
  35. 谷津義男

    ○谷津委員 そこで長官、その準備のために奄美にも調査に行かれたということですね。いずれにしましても、環境庁の判断というのが建設側にとりましてもあるいはこれをまた保護する側にとりましても、どちらからも期待をされて、自分の方に有利な判断が出てくればありがたいという感じを持っているのじゃないかと私は思うんです。それだけに環境庁立場というのは大変な立場に立っておるのじゃなかろうかと私は思うのですが、近々意見を求めてくる時期があるわけでございますから、この辺につきましては、長官も大変だろうと思いますけれども、これは環境庁としての一つの姿勢を示す大事な判断になるのじゃなかろうかと思います。  そこで、もう一度長官としての考え方を、この判断についてどういうふうな考え方で判断されるように今思っておられるのか、それをお聞かせいただきたいと思います。
  36. 堀内俊夫

    ○堀内国務大臣 先ほども申しておりますように、村おこしと環境保全というのは対立しておるように一見見えるのですけれども、本来対立すべきことじゃない、両方とも一緒になって考えるのが筋道だと私は思っております。ただ、今度の場合は公有水面埋立法という法律に基づいて行うことでありますから、私どもとしては精いっぱい科学的知見によって行う。この両者の話をいろいろ聞いていますと、沖縄県の方は、ああいうようなサンゴ状態はもう沖縄県全部あるんだ、こういうふうに話を聞くのですね。それで東京におる人は、マスコミも含めてなんですけれども、これはわからぬわけなんです。それならたくさんあるということ、ここだけじゃない、もう全部あるんだ、ここにもあるここにもあるということを実際説明してもらう、あるいはそういう実証を得たら我々もっと都合がいいんですけれども、あるんだあるんだだけに今なっておるというのが困った状況だなと私も思っておるところであります。  だから、これは沖縄県も一緒になって、たくさんあるなら、ここだけということになると大変なことになりますから、いろいろあるならあるということをみんなで出して、みんなが納得できるような状態に早くしてほしいというふうに私は考えております。
  37. 谷津義男

    ○谷津委員 それでは、次に地下水の汚染についてお伺いいたしたいと思います。  最近、地下水の汚染状況につきましては、いろいろとマスコミにも取り上げられたりあるいは私どもも耳にするわけでありますが、現在環境庁で掌握している地下水の汚染の状況はどのようなものでありますか、まずお伺いをいたします。
  38. 岩崎充利

    ○岩崎政府委員 トリクロロエチレン等によります地下水汚染につきましては、五十七年度と五十八年度環境庁が実施した地下水汚染実態調査の結果、全国にわたり広範な汚染が判明いたしております。さらに五十九年度以降は、各地方公共団体が行いました地下水汚染の実態調査の結果を見まして、六十一年度までの三年間で大体一万二千本ほどの井戸の調査をやっておりますが、その結果といたしまして、トリクロロエチレンでは三・三%、テトラクロロエチレンで三・六%、それから1・1・1トリクロロエタンの場合はこれは少なくて〇・一%でございますが、トリクロロエチレンとテトラクロロエチレンにつきましてはかなりのものの地下水の汚染が見られております。  それから、六価クロム等の有害物質によります地下水汚染につきましても、私どもとして把握いたしておる感じでは、局地的でありますが毎年数件程度、こういうことになっております。
  39. 谷津義男

    ○谷津委員 この問題は生活に直接関係する問題でもありますので真剣に取り扱わなければならないということでありますが、この問題について環境庁はどのような認識のもとに対応しておるのか、その対応をちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  40. 岩崎充利

    ○岩崎政府委員 今までの取り組み方につきましては、先ほど申しましたトリクロロエチレン等の三物質につきまして五十九年八月に暫定指導指針というものを定めまして、都道府県知事等に対しまして、工場、事業場の指導に当たるよう通知して、また、関係省庁とも連絡をとりながら汚染の防止に努めているということでございます。  それから、私どもといたしましては、五十九年度から、地下水の汚染機構の解明のための調査研究に取り組んでいる、こういうことでございます。
  41. 谷津義男

    ○谷津委員 新聞等で報じられましたように、千葉県で発生したトリクロロエチレンの問題等は大きな社会問題というふうになっておりまして、現在でもこの問題は未解決ということでありますけれども、この件につきましては、地下水汚染が全国的に発生するという危険も出ております。今の御報告によりましてもその兆候があらわれているということでありますけれども環境庁は今後これに対して、水質管理という面から考えて新しい法律なりあるいはそういった管理の方法を考えておられるのかどうか、この辺をお聞かせいただきたいと思います。長官、いかがですか。
  42. 堀内俊夫

    ○堀内国務大臣 今まで水質保全法はあるのですけれども、今御指摘の地下の問題、法律体系ありませんので、政令もございません。したがって、今までから言うと、その起きた地元の県なり市なりでそれを監視する、あるいは対応するということで私どもは非常に関心を持っておるのですが、これでは全国的に言うと何が起きるかわからぬ、それが起きた場合は大変なことになる問題ですから、法整備等を含めて検討をしなければならないと思いまして、今度の君津の問題が起きたときに、私は水質保全局に法整備をひとつ考えたらどうかということを指示しております。
  43. 谷津義男

    ○谷津委員 今お話しのように法律、政令がないということから非常に危惧をしておるというふうなことでございますけれども、そうしますと、これは法律をつくっていよいよ管理体制に持っていくというふうな理解をしてよろしいのでしょうか。局長の方からひとつ。
  44. 岩崎充利

    ○岩崎政府委員 ただいま長官の方からお話がありましたように、私どもこれは重要な問題として受けとめておりますので、また長官からも指示がありまして、法制度化を含めまして検討をいたしておるというのが今の段階でございます。
  45. 谷津義男

    ○谷津委員 ありがとうございました。  続いて、大気保全行政についてお伺いをいたしたいと思います。  窒素酸化物の対策は、十五年ぐらい前からだったと思いますけれども、対策を強化してきておるということでございますが、いまだに目標値は達成されていないということで大変な御努力をいただいている。この原因は、自動車が予想以上に増加しておるという問題とかそのほかのいろいろな原因があるというふうに言われておるわけでありますが、この件については環境庁はどのように認識しておるのか、まずその辺のところからお聞かせいただきたいと思います。
  46. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 お答えいたします。  先生指摘のとおり大都市地域中心にいたしまして、窒素酸化物にかかわります大気汚染の状況は非常に厳しい状況にございまして、現在の環境基準が、昭和六十年を目途にこの環境基準を全部達成するというお約束をしながら、環境基準の改定が行われているわけでございますけれども昭和六十年のお約束の期限におきましては環境基準の達成ができなかったという状況にございます。特に、最近の状況を申し上げますと、六十年に達成できなかったということにあわせまして、六十一年、六十二年におきまして、東京、横浜、大阪等の三地域におきましては、環境基準の非達成局が前年度と比較いたしまして増加しておる状況にございまして、そういう面で、環境庁といたしましては、窒素酸化物にかかわります環境基準の達成状況が非常に大事な問題であるという認識を持ちながら、現状におきましてはこの事態を深刻に受けとめておるところでございまして、より一層関係省庁と連携をとりながら各般の施策を講じてまいりたいというぐあいに思っておるところでございます。  それから、先生のお話の中にもございましたように、この環境基準の非達成の原因といたしましては、まず自動車交通量の全体的な増加と大都市地域への集中が一つあります。それから、窒素酸化物排出量の多い直接噴射式のディーゼル自動車の割合がふえております。それから、一台の自動車を長い期間使用することによりまして、いわゆる段階規制を行っているわけでございますが、規制の厳しい最新の規制適合車への代替がおくれております。それからまた、小規模なボイラーなどの規制の対象となっていないような施設からの排出量がだんだんふえてまいっておるというような状況などが考えられておるわけでございます。特に最近、六十一年、六十二年におきましては暖冬傾向にございまして、冬季において大気が安定し、大気汚染物質が拡散しにくいような状況が多くあらわれておるというようなことも一つの要因となりまして、環境基準の非達成状況が続いておるという状況にございます。  そういう面で、私ども、従前以上にこの問題を重要課題というぐあいに受けとめておりまして、今後とも各般の対策を講じてまいりたいというぐあいに考えておるところでございます。
  47. 谷津義男

    ○谷津委員 二酸化窒素の環境基準が達成できないということで、これは六十年までに達成するということでやられておったわけでありますね。しかし、環境庁がこの基準達成のために、いろいろ話を聞きますと、できるだけ早い時期にとおっしゃるわけでありますけれども、この具体的な対策が幾つか示されておりますけれども、その対策が今までとられてきた中ではそれがうまく活用しなかったというか何かで、それを超えて自動車の増加なんかがあったためにできなかったということだろうというふうに思うわけですが、その苦労のほどはよくわかるわけでありますけれども、今後この対策についてはどのようにお考えでありますか。その辺のところをお聞かせいただきたいと思います。
  48. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 二酸化窒素にかかわります対策の考え方に対するお尋ねでございますが、基本的にはまず、先生お話しございましたように、自動車一台ごとのいわゆる単体規制、自動車一台ごとの排出ガスの規制の強化を従前も図ってまいりましたし、現在も進めておるところでございます。  それから、自動車交通量の抑制なり、あるいは交通流の分散、円滑化などの自動車交通対策の推進を図ってまいりたい。  さらに工場、事業場等におきます固定発生源からの排出の抑制、排出規制の強化をやってまいりたい。  こういう三本の柱をベースに置きまして対策を講じてまいっておるところでございます。  もう少し申し上げますと、いわゆる自動車の単体規制につきましては、ことしから六十五年にかけまして、大型ディーゼル車からの窒素酸化物排出量の約一五%削減を初めとする規制の強化を行っておるところでございますし、さらに、現在、中公審におきまして引き続きディーゼルトラックを中心とした規制強化あるいは走行モードの検討、黒煙対策につきましての検討をお願いいたしているところでございまして、来年度半ばに中公審からの答申をいただきまして規制の強化を図ってまいりたいというぐあいに考えておるところでございます。  さらに、交通対策の問題につきましては、交通公害防止計画ということで、防止計画にあわせまして、本年の三月に京浜・阪神地域を対象といたしまして関係省庁、自治体の参画のもとに、大都市自動車交通対策等計画という計画を策定いたしたところでございます。今年から三年間にかけまして、この大都市自動車交通対策等計画を策定いたしたわけでございますので、これのフォローアップをして交通対策の推進を図ってまいりたいというぐあいに考えておるところでございます。  それから、もう一つは固定発生源対策でございますが、近年自家発電などの普及が見込まれております固定ディーゼル機関なりガスタービンについて、本年の二月から規制の開始を行ったところでございます。今後とも、そういう需要に応じた、あるいは社会の変動に応じました規制対象施設の追加については検討してまいりたいというぐあいに考えておるところでございます。  さらに、公害健康被害の補償等に関します法律に設けられております基金を活用いたしまして、低公害車の普及などの環境改善事業推進を図ってまいりたいというぐあいに考えております。  さらに、先ほどちょっと申し上げましたように、冬期間におきます大気汚染が進みますことから、季節大気汚染対策ということで本年から着手してまいりたいというぐあいに考えておるところでございます。  さらにもう一つ申し上げますれば、現在、私ども局内に専門家によります窒素酸化物対策検討会といいますものを設けまして、現状を踏まえ将来の予測を行いまして、今後の対策の検討をしてまいりたいということで作業を進めておるところでございます。
  49. 谷津義男

    ○谷津委員 時間がありませんので、最後に長官にお聞きしたいと思うのですが、五十三年に改定された環境基準によりまして六十年までに達成目標ということでやられてきたわけであります。しかし、今回いろんなお話を聞いておりますと、目標年次を設定してない、できるだけ速やかにというふうなお話でありますが、なぜこの目標年次を今回は決めずにやられておるのか、最後にお聞かせいただきたいと思います。
  50. 堀内俊夫

    ○堀内国務大臣 御承知のように、大気汚染の原因はエネルギーでございます。そのエネルギーも、今までの過程から申しますと石炭、石油が環境の、いわゆる大気汚染の主たる原因になっておるのですが、いわゆる石油においては重油、ガソリン、軽油といったものに精製過程において分かれておりますけれども、重油、石炭を主に使っておった時分に、硫黄酸化物等によってあの四日市裁判におけるような公害が起きた。これをクリアして、今ガソリンと軽油が主たる原因になっておるのですが、ガソリンの方はいわゆる自動車、いわゆる我々の乗用車が主として使っておりますけれども、これはこの十年を見ますと一割ぐらい排気抑制になっておって、これは世界に冠たるものだと思うのです。ただ軽油の場合、いわゆる大型のトラックとかバスとか、これはもう御承知いただいておるのですが、この方は、普通のガソリン車のことを思うと一割くらいまで排出抑制できたのが六〇%くらいになっておるのじゃないか、これをもう一五%、二〇%下げると環境基準に大分近づくんじゃないかということで、先ほど来説明しておるのですけれども、これとても、それを下げて絶対量が同じであればこれは基準いつだということをはっきり明示できるのですが、一方、排気抑制をうんとしながら自動車がそれ以上にふえてくる、これはもう我々が予測できない。そして大都市に集中してくる。だから、国土分散してくれるとこういう規制がなくても環境基準はおのずから達成する。だから、これは環境庁だけでははかり知れないいろんな問題があるものですから、そういうことになっておると御承知いただきたいと思います。
  51. 谷津義男

    ○谷津委員 わかりました。どうもありがとうございました。終わります。
  52. 野中英二

    野中委員長 渡部行雄君。
  53. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 まず最初に環境庁長官にお伺いいたしますが、長官は尾瀬に行ったことがあるでしょうか。
  54. 堀内俊夫

    ○堀内国務大臣 ぜひ行きたいと考えながらまだ果たしておりません。
  55. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 この尾瀬問題は歴史的にも大分長い間問題になってきており、また、日本でも有数のすばらしい光景を持った環境のところであることは御承知のとおりだと思います。まず長官、この尾瀬問題について話しするには尾瀬を見ないことには実感が出てまいりません。どうかひとつ一日も早く尾瀬の実態を見ていただいて、どれほど重要な場所であるかということを御認識いただきたいと思います。  そこで、この尾瀬が、今非常に世論的には環境を守れという世論が強いけれども、その裏で尾瀬分水という非常に困った動きがあるわけでございます。これについて長官は一体どの程度の御認識をされておるのか、お伺いいたします。
  56. 堀内俊夫

    ○堀内国務大臣 尾瀬は先ほど申しましたようにまだ行っていないのですが、管理事務所がございますので、状況についての報告はいろいろ聞いておるところであります。  尾瀬の分水の話は、大分古くからこういう問題が御指摘のようにあるようでございますけれども、これは三県の間でもまだ意見が対立しているようであります。したがって、私どもとしては、従来の方針に従ってこの自然環境保全するという立場で処していきたいと考えております。
  57. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そうすると、これは昭和六十一年四月十五日に私が質問した問題に対する当時の森国務大臣からの答弁ですが、これについては「厳正な保護をするということで御了解いただきたい」と答弁した後で、「この地区は特別保護地区になっておりますので、これは環境庁としますと一番守らねばならないものでございますので、その点は十分含んで行政してまいりたいと考えております。」  いわゆる国立公園の指定があり、その中でも特に特別地区の指定をされておられるわけですから、これは、環境庁としてはこの問題について法的に一体どういう意味を持っているのか、また環境庁長官としてどういう権限を行使できるのか、その辺についてお答え願いたいと思います。
  58. 山内豊徳

    山内政府委員 尾瀬の一番大切なところは約八千六百ヘクタール、先生指摘のように、自然公園法によります特別保護地区として指定されております。  具体的に、特別保護地区はどのような規制と申しますか仕組みになっているかという点につきまして端的に申し上げますと、一般に景観、特にこの尾瀬の場合は、いわゆる景色だけではなくて高層湿原の生態ということも含めてと御理解いただいてよろしいと思いますが、それを維持するために必要があるからそのような指定が昭和二十八年以来なされているわけでございますが、この区域内では、例えば車とか馬に乗って人が乗り入れることももちろんできません。それから、例えば木を切ったりすることはもちろんのこと、典型的な例を申し上げますと、落ち葉といえども環境庁長官の許可がなければ採取できない。これは学術的に必要な場合には認めることがあるわけでございますが、そのような意味で、今先生が御指摘になっております、いわゆる世に言われておりますところの分水問題との関係で言いますと、例えばあの沼なり原の水位とか水量に影響するような行為はすべて環境庁長官の許可がなければ実行できない。むしろ守るところでございますので、原則として余りみだりに許可をしないというところが特別保護地区の実態でございます。
  59. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そうすると、つまり長官の許可なしには現状の変更はできない、こういうふうに解釈していいわけですね。
  60. 山内豊徳

    山内政府委員 そのとおりでございます。
  61. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そうすると、今までいろいろな動きがありまして、この尾瀬分水というのは、尾瀬から下流一キロの三条ノ滝近くに取水堰堤をつくって、そこからトンネルを掘って約十キロ南東の群馬県の矢木沢ダムに水を引っ張って、そして尾瀬分水をやり、自然流量年間約二億トンのうち一億四千万トン程度を首都圏に持ってくるという構想があるという報道があるわけです。  そして一方においては、昭和六十二年の七月二十九日には、群馬、栃木、茨城、埼玉、千葉、東京の一都五県の議長などで構成する尾瀬水利対策期成同盟会が八年ぶりに総会を開いて、この分水問題を協議したと言われております。  その他、日本プロジェクト産業協議会、これは(JAPIC)と括弧がかかっているのですが、こういうものが分水の働きかけを盛んに機会あるごとに政府にやっておるようでございますが、これについては環境庁長官としてどのようにお考えでしょうか。
  62. 堀内俊夫

    ○堀内国務大臣 私の方は、そういう話はまだ聞いたことがありません。したがって、委員がさきに森長官にお尋ねのあったとおりの記録も私は読みましたけれども環境庁としてはそういう方向で今なお変わりありません。
  63. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そうすると、大臣は絶対にこの変更は認めない、こういうかたい意思で臨むというふうに確認していいでしょうか。
  64. 堀内俊夫

    ○堀内国務大臣 そのとおりであります。
  65. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、建設省にちょっとお伺いいたします。  これも昭和六十二年八月十九日、我が党の坂上委員質問に対する答弁の中で、「地元住民の了承なしでは無理な仕事はいたしません。それは私のいるときだけではなくて、将来とも県が了承しない水の分水はできるはずがないのでありますから、その点は県がしっかりしていれば文句がないのじゃないでしょうか。」こういうふうに答弁されているのですが、その後、建設省はこの方針が変わったのですか。
  66. 岩井國臣

    ○岩井説明員 尾瀬分水につきましては、自然保護との調和という問題ばかりでなくて、流域変更という重要な問題を含んでおりますために、建設省といたしましては関係県の意見を十分尊重して対処してまいりたいというふうに考えておりまして、建設省の方針につきましては、従前の方針と変わりないということでございます。
  67. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そのあなたの前段の文句は不必要じゃないですか。やる意思がないということに変わりがないというならば、なぜ流域変更が加わっているので状況が難しいというような判断がされるのですか。それはあなた、全く矛盾していませんか。
  68. 岩井國臣

    ○岩井説明員 昭和六十二年八月十九日の建設委員会で天野前建設大臣が、先ほど先生がおっしゃいましたように、「地元住民の了承なしでは無理な仕事はいたしません。それは私のいるときだけではなくて、将来とも県が了承しない水の分水はできるはずがないので」云々とお答えしておられますが、そのとおりでございます。
  69. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そうすると、これは環境庁の長官の許しなしにはできないということがはっきりしたし、建設大臣が県との合意がない限りはできないということもはっきりしたし、そうすれば、完全に尾瀬分水というのは消えたと解釈すべきだと私は思うのですよ。それなのにまだきちっとしていない。何というか、非常に動揺を続けているということについて私は大変不愉快なんです。というのは、各県はこれについて相当の金をかけて政府に陳情をしたり、あるいは請願を繰り返しておる。これだってただじゃできません。旅費から印刷代から大変な金がかかっていると思うのです。そういう問題については明確に結論を出して、そういう県民同士が対立するような方向を打ち消していくことこそが政治の本旨じゃないかと私は思うのですが、その点は環境庁長官、いかがでしょうか。
  70. 堀内俊夫

    ○堀内国務大臣 全体の問題について私から答えるというのは適当でないと思います。ただ、重要な地域でございますから、環境庁としては従来どおり踏襲していくつもりであります。
  71. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 尾瀬分水については以上で終わりますが、建設省の方は帰っていただいて結構です。  そこで第二番目に、最近宇宙全体が大変汚されて、いわゆるくずというか、ごみが非常に問題にされておるのは御承知のとおりだろうと思います。人工衛星の打ち上げやロケットなどの打ち上げによってくずが大変たまっておる、こういうことでございます。しかもそのくずは超音速で宇宙空間を暴走しておる、しかもそれは七万個以上あるとさえ言われておるわけです。そして、そればかりではありません。空には放射性物質が一トン以上あると推定されておることが欧州宇宙機関、ESAのコンピューターで描き出されているわけです。こういうことを考えると、今相当本気になってこれらに対する対策を考えていかないとやがて取り返しのつかない事態になるのではないだろうか。しかも、これは宇宙空間だけでなしに、その中から毎日今でもそのごみが地球上に降ってきておる、あるいは放射性物質の一部が地球上におりてきておる、こういうことが言われておるわけですが、これに対してはどのような対策をお考えでしょうか。
  72. 吉村晴光

    ○吉村政府委員 今お話しございました宇宙空間にありますいろいろな破片につきましては、大気圏に突入の際にほぼ燃え尽き、地上に落下する可能性は極めて少ないというふうに考えております。また、我が国の宇宙活動は現在静止衛星、地球周回衛星の打ち上げを中心にやっておるわけでございますが、広大な宇宙でございますので、そういったものの打ち上げの際にこれらの破片に衝突をするという確率も極めて少ないということで、我が国の宇宙活動に直接的に被害を及ぼすとか支障をもたらすということは考えてないわけでございます。  ただ、現在、国際協力で考えております宇宙ステーションという、非常に大きな構造物を地球周回軌道に上げまして長期にわたりまして人間がそこで活動するといった構想でございますが、そういったものにつきましては、隕石からの衝突も含めまして、そういった宇宙空間に漂う物質との衝突ということにつきましても十分やはり配慮しておく必要があるだろうということで、宇宙ステーションの設計を行いますときにそういったものにつきましての対策もあわせて考えておるというところでございます。  なお、今御指摘ございました宇宙空間の放射性物質の問題でございますが、原子力衛星の打ち上げに伴いまして地球環境にいろいろな悪影響を及ぼしておるということがございますので、国連などの場におきまして、我が国といたしましてもこれらに対しまして厳しい規制措置が講じられるように各国に働きかけておるところでございまして、現時点におきましても、国際連合の宇宙空間平和利用委員会の場におきまして、原子力衛星の安全性の確保に関する国際的な規制について検討が進められておるというところでございます。
  73. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 大変楽観的な見方をしておるようですが、実際、あなたも読んだと思うのですが、十月四日号の「アエラ」の中には、コンピューターで宇宙から見た地球を取り巻くごみの絵がこのようにかかっておるし、そして、実際にソ連のコスモス一九〇〇が落ちてきたときの危険性等についても触れておりますし、また、わずか〇・二ミリの破片でスペースシャトルのところにへこみができた、こういう具体例までこれに出ているのですが、あなたの言うことではさっぱり実際と違っているのじゃないか。私は、余りそういう確率ばかりで物事を判断することは非常に危険なもので、その確率の範囲内に入った場合にどうするかというのが問題で、確率が少ないから大丈夫だとはならないのですよ。絶対に確率がゼロだというならこれは安心できるけれども、確率に数字が出ている限りそれがいつ起きるかというのは予測できないわけですから、それは決して安心、安全の基準にはならないと思うのです。そういう点で、今宇宙空間に浮いておる原子力の発電所あるいは放射能のちりあるいはその他の物質、こういうものを考えると、これから相当その対策を考えていかないと間に合わなくなるのではないだろうか。  例えばここに実例が出ていますが、「わずか〇・二ミリの塗料片がスペースシャトル・チャレンジャーの窓に直径二・五ミリのくぼみを作り、窓を交換せざるを得なくなった」ということが出ているのですよ。そこで、今アメリカではどんなことをしておるかというと、「NASAでは、有人飛行のメッカであるテキサス州ヒューストンのジョンソン宇宙センターが十年来、ゴミの研究に取り組んでおり、」十年も取り組んできているんですよ。そして、宇宙基地のための衝突警報システムなどを今開発しようと急いでおる、こういう実例があるんです。  そればかりではありません。ESA、つまり欧州の宇宙研究所ですね、宇宙機関と申しますか、そこではわざわざ「宇宙ゴミ対策委員会を作り、今年末までに報告書をまとめる予定だ。国連宇宙開発平和利用会議でも、ゴミ対策が問題になっている。とくに、原子炉衛星については、もし爆発すると、ソ連・チェルノブイリ原発事故とスペースシャトル・チャレンジャーの爆発事故を合わせたような大事故に」発展するということを指摘しているわけでございます。  それなのに、日本は何の対策もなしに、安全ですで終わりますか、そういうことで。それでいいんでしょうか。
  74. 吉村晴光

    ○吉村政府委員 先生今御指摘になりました雑誌の記事につきましては、私も拝見をさしていただいております。アメリカでも同様かと思いますが、アメリカが非常にこの問題について考えております最大のところは、人間が宇宙空間に行く場合に、そういった往復するスペースシャトルとか、それから宇宙に滞在する宇宙基地といった有人の施設に対して、長期間人間が滞在する施設に対してこういったものが衝突をしたときの問題ということで検討をしておるわけでございますが、静止衛星の打ち上げとか地球周回衛星の打ち上げの対策というふうなところまでいっているのかどうか、私どもとしてはそういったことではないんではないかと理解をしておるわけでございます。  それから、有人の施設という点にかんがみますと、先ほども答弁申し上げましたとおり、国際協力によりまして宇宙基地の建設を進める計画を持っておるわけでございまして、その設計に際しましてはアメリカ等と協力をいたしながら、そういった衝突の防止のシステムだとか、衝突した場合にそういった宇宙基地に大きな被害が起きないような対策、これは先ほど申し上げましたように、宇宙空間のごみと言われているものだけではなくて隕石からの衝突というものもあるわけでございまして、そういったものもあわせて検討をしておるということでございます。  繰り返しになりますが、そういった有人の場合にはやはり十分注意をしなければいけないと思って、諸外国とも連絡をとりながら検討しておるところでございまして、こういったものにつきましては、外国の動向も見ながら、また国連におきましての動きも見ながら、私どもとしても必要な対策を講じてまいりたいというふうに思っておるところでございます。
  75. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、検討はしておると言うけれども、どういう機関で検討しているんですか。特別な委員会とか何かをつくってやっているんですか。
  76. 吉村晴光

    ○吉村政府委員 宇宙基地の建設につきましては日本がかなりの部分の分担をするわけでございますが、その分担をいたしましたものにつきましてそういった対策、要するに部外からの衝突物等の対策につきましては、宇宙開発事業団におきまして設計等を検討しておるわけでございます。アメリカと技術的なベースのすり合わせをやりながら、そういったものについてどういうふうに考えていったらいいかということで、アメリカと同じようなレベルでの対策を考えるということで現在検討をしておるというところでございます。
  77. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 宇宙開発事業団で検討しておると言うけれども事業団の中にこういう問題を専門に検討する部会なりをつくらないで、それじゃだれが責任を持ってアメリカの関係機関との連絡をとったりあるいはヨーロッパの機関と連絡をとったりしておるのですか。
  78. 吉村晴光

    ○吉村政府委員 宇宙基地につきましてはアメリカ、ヨーロッパ、日本、カナダの共同プロジェクトということで進めておるわけでございますので、その段階におきましていろいろなレベルでの外国との打ち合わせの会議があるわけでございまして、そういうレベルに対応する体制を宇宙開発事業団の中につくっておりまして、そういうレベルに応じましていろいろな設計等について進めておるところでございます。宇宙開発事業団の中に、そういったものだけということじゃなくて、宇宙基地の中での日本の分担分をうまくこなすためのグループをつくって進めておるということでございます。
  79. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 ところで、あなたは、今の方は何庁ですか。——科学技術庁ですか。  環境庁としては、こういう問題についてはどうお考えでしょうか。しかもこれは宇宙だけでなしに地球上に対しても影響を及ぼすのはもちろんであるわけですから、そういう点について、こういう問題の環境保全についてはどのようなお考えを持っておるのでしょうか。
  80. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 お答えいたします。  先生のお尋ねの、人工衛星の破片等の問題について最近いろいろな議論が出ておることは私どもの方もいろいろ承知いたしておるところでございます。環境庁としましては、現在のところ、はっきり申し上げまして、本問題につきましては十分な科学的な知見を有しているわけではございません。今後は、このような議論あるいは国際動向といいますものを注意深く見守りつつ、科学技術庁とも十分連携をとりながら、適切に対処してまいりたいというぐあいに考えておるところでございます。
  81. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 時間がありませんので先に進ませてもらいますが、そうすると、科学技術庁としては二十一世紀に向けて一体どういう方向に力を入れて進むべきか、その辺は総合的に日本の科学技術というものをどのように考えておられるのかお聞きしたいと思います。大臣、これは基本的な問題ですからお答え願いたいと思います。
  82. 伊藤宗一郎

    ○伊藤国務大臣 二十一世紀に向けて科学技術政策はどういう方向に進むべきかという、極めて示唆に富んだ御質問でございました。  お答えをさせていただきますけれども、言うまでもなく、我が国は今、国際社会におきまして、経済の力だけでなしに科学技術面におきましても大きな地位を占めるようになりました。そういう我が国として、今までと違って科学技術政策の面でも世界的視野に立って政策を進めていかなければならないと考えていることは当然でございまして、このような認識のもとに、先生も既に御承知のとおり、一昨年三月に閣議決定をいたしました科学技術政策大綱においてそういう視野を盛り込んでおるわけでございまして、その大きな柱として、国際性を重視しながら科学技術の発展を図るというところを三本の柱の一つにして進めております。  今後、この大綱を基本とし、特に国際性を重視するという観点から、さらにはまた長期的な視野、観点に立って総合的な、機動的な科学技術政策の展開を図ってまいりたい、このように考えておるところでございます。
  83. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 世界的な視野に立って、そして基本政策に基づいてやると言われますが、科学技術という問題については国の立国の柱と考えていいでしょうか。いわゆる科学技術立国であるというふうにはっきり日本を位置づけていいでしょうか。
  84. 伊藤宗一郎

    ○伊藤国務大臣 これもまた申し上げるまでもなく、日本が今日までこのような歩みを進め、世界からも奇跡と言われるような発展を遂げるに至ったのは、科学技術を重視し、また、惜しみなく科学技術を導入して今日の国の繁栄を築いたわけでございます。また将来とも、国内にはほとんど資源も持たない、またエネルギーも持たないという国が、こういう経済水準、生活水準を保っていくためには、やはり人間の、国民の英知といいますか、知的創造力というものに頼る以外にはないわけでございますから、今後とも、科学技術を基本とした科学技術立国で進めるということは一つの国の国是と考えております。
  85. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 そこで、この資料を見ますと、国際性を強化するとうたわれておりますが、実際に日本から外国に派遣されておる人の数を見ると、これは全く微々たるものなんですね。  理化学研究所が六十二年度に二名、六十三年度に二名。新技術開発事業団が六十二年度がゼロ、六十三年度もゼロ。日本科学技術情報センターも、これは五十九年度から今日まで全部通してゼロ。宇宙開発事業団は、六十二年度が三名、六十三年度で九名。それから、海洋科学技術センターも五十九年度から今日まで全部ゼロ。日本原子力研究所が、六十二年度が四十名で、六十三年度が三十九名。動力炉・核燃料開発事業団が、六十二年度が十九名で六十二年度が二十七名。そして、合計すると六十二年度六十四名、六十三年度七十七名。これで国際性を強化したと言えるでしょうか。  私は、日本が最近ノーベル賞をもらっておるというようなことを鼻にかけておる人がいるけれども、これは日本の科学技術の分野で勉強した人ではなくて、アメリカに行って勉強した人がもらっているんですよ。ただ、たまたまその人が日本人であったにすぎないわけなんです。そういう事実について日本の科学技術行政というものを考えていかないと、とても今大臣が言ったような成果は期待できないと私は思うのです。もっと外国にどんどんやって外国の事業を見させる、そしてどういう研究が今先端になっているのか、どういう基礎研究が必要なのか、そしてもっと各科学分野の内部を交流させて、もっと知識の基礎を広げていかなければ本当の科学技術の進歩はないと思いますよ。  しかも科学と技術を分離しておる傾向が非常に強い。技術者を研究部門にもっとどんどん入れて、学者と技術者と一体になって研究開発を進めるというような政策をとっていかないことには、これはとてもこんな数字では納得できません。  これについてお伺いします。
  86. 緒方謙二郎

    緒方政府委員 これからの科学技術政策の推進の上で国際性を重視しなければならないということは、大臣から申し上げたとおりでございます。また、先生のお手元に提出いたしました資料、御指摘いただいたわけであります。そういう割には実績が少ないではないかという御指摘でございますが、ちょっと資料について申し上げますと、若干、資料の整理の関係もございまして、私どもの関係七法人の派遣の実績につきましては、六カ月以上の期間の研究者の派遣というものに限って数字を拾わせていただきましたので、一部に限られている点はお許しをいただきたいと思います。  なお、それにしても予算上の制度が必ずしも十分でないことは御指摘のとおりでございまして、今後ますます充実をしていかなければならないものと思っております。  ただ、御指摘の中に、例えば科学技術情報センターのように、これは研究機関ではございませんで科学技術情報の交流を行うということでございますので、研究者の派遣ということにはそもそもなじまないわけであります。しかし、そうはいいましても科学技術情報についてはそれなりに国際的な展開を図っているわけでありまして、別の形での人材交流というのはもちろん必要になるわけでございます。それやこれや総合いたしまして、私どもこれまでも予算上の努力を鋭意重ねているわけでございますが、今後もなお一層の充実強化に努めてまいりたいと思っております。  なお、予算上の数字をちょっと申し上げますと、先ほどの七法人以外、行政部内の職員あるいは国立の試験研究機関の職員等の海外派遣も含めまして、科学技術庁が所管しております一般会計研究者の派遣予算の総額が六十三年度で十五億九千八百万円でございまして、予算上の積算といたしましては七百五十一名分という予算になってございます。決して十分とは思っておりませんが、関係者を含めて私どもの持っている予算の総額は以上でございます。
  87. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 私の超過分は新村先生からいただきますから、後で調節してください。  最後に大臣、大臣のこれからの本当の決意をお聞かせ願いたいと思います。
  88. 伊藤宗一郎

    ○伊藤国務大臣 先ほどの御指摘、あるいは今政府委員とのやりとりをお聞きいたしまして、なお私からも申し上げたいと思いますけれども、まず国際性、あるいはまた世界的視野に立って行わなければならぬと言いながら、派遣の面でも受け入れの面でもまだ十分な規模になっていないという御指摘は、私は謙虚に受けとめたいと思います。そのために、これには大変な予算がかかるわけでございますので、科学技術庁としても精いっぱい努力をしてまいりますけれども、科学技術立国と言いながら、まだ日本の政治の中にそういう国是が十二分に定着をしていないといううらみもこれありますので、今後先生方の御後援を賜りながら、派遣の面でも受け入れの面でも御期待に沿えるような規模に持ってまいりたい、このように考えております。  なお、ノーベル賞の問題についても、御指摘全く同感でございまして、数の上でも、自然科学部門でノーベル賞の受賞者は、日本は戦前戦後を通じましてたった五名でございます。アメリカが百四十二名というまさにけた違い、そのほか欧州各国とも比べましてもこれまたけた違いでございまして、しかも御指摘のとおり日本での研究ではほとんどありませんで、アメリカその他の研究によったところが大きいということでありますならば、科学技術立国というものが泣くわけでございますから、日本の中で、日本での研究が、人数の面でも業績の面でもノーベル賞級の成果が上げられるような、そういう研究環境というものをぜひつくってあげたいというふうに鋭意努力してまいりたいと思います。三十代の後半が非常に研究者にとっては大事な年代だということも専門家から承っておりますので、そういう年代の方々が思う存分、思い切って自分の独創力に基づいて自分研究がなされるような、しがらみのない伸び伸びとした研究環境がつくられるように、これまた我々の政策の大目標として努力をしてまいりたい、このように考えております。  それにつけましても、加えて申し上げますけれども、やはり予算の獲得が極めて重要でございますので、口頭禅にならないように、お題目を並べるということだけでなしに、実りのある科学技術政策をつくり上げまして、二十一世紀にこの日本というものをソフトランディングさせたい、そういう決意で進めたいと思っておりますので、この上ともの御支援をちょうだいしたいと思います。
  89. 渡部行雄

    ○渡部(行)委員 ひとつよろしくお願いいたしまして、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  90. 野中英二

    野中委員長 新村勝雄君。
  91. 新村勝雄

    ○新村委員 最初に環境問題についてお伺いいたします。  堀内大臣、大変熱心に環境保全、改善に努力をされておりまして敬意を表するわけでありますけれども、まずこの環境関係の予算をちょっと、予算あるいは決算額でも大体同じですけれども見ますと、残念ながら逐年余りふえていない。そして、重要な点についてはかえって減っている傾向があるわけなのですね。例えば湖沼環境保全対策調査費、これは六十年から六十一年、六十二年、ずっと減っております。減る一方。それから栄養塩類削減対策等調査費、これもやはり逐年減る一方ということで、環境庁の重要な施策を示す数字が毎年減っているということは大変残念なわけでありますけれども、こういう現象は何を意味するわけですか。
  92. 岩崎充利

    ○岩崎政府委員 ただいま先生の方から、湖沼環境保全対策調査費と栄養塩類削減対策等の調査費が削減されているということでございます。確かに最近の厳しい財政事情の中で厳しいやりくりが迫られているわけでございますが、これについて若干御説明させていただきますと、湖沼環境保全調査費の中身が昭和六十一年度を境に変わったということでございます。具体的に申しますと、昭和六十一年度までは、湖沼水質保全計画を策定する上で必要なバックデータの抽出とかマニュアルの作成というようなもので、指定湖沼の指定とか湖沼水質保全計画の策定等の制度施行に当たっての必要な経費であったということでございます。そこで、指定湖沼の指定なり湖沼水質保全計画が進んで制度が確立されました六十二年度以降というのは、指定湖沼を対象に、水質の状況とか人口の増減とか、工業出荷額の推移等のフォローアップとかデータベースの作成というようなこととか、あるいは重要な地域住民の普及啓発事業というような形の中で、昭和六十一年度と六十二年度以降が減少しているということでございますし、栄養塩類削減対策等調査費のうちでも、これも窒素、燐の暫定基準の適用業種のマニュアル策定調査等につきましてはほぼ横ばいでございますが、ただ、窒素排水基準の適用対象湖沼につきます調査につきましては、相当規模の湖沼について順次調査を終了しつつある、こういうような形でございまして、予算が減少傾向にあるということでございます。そういうような形の中で、ただいま先生から御指摘がありましたように、調査の中身の変化によりまして減少しているということでございます。  ただ、いずれにいたしましても、湖沼環境保全というのは重要でありまして、これについては、私ども必要なものについては確保するというつもりでやっているということでございますが、ただいまの御指摘の減少ということにつきましては、今のような調査内容が変化してきている、こういうことでございます。
  93. 新村勝雄

    ○新村委員 調査内容の変化ということでありますけれども、内容の変化ということが内容の貧弱化ということに通じなければ幸いだと思います。  要するに、今申し上げたのは単に一、二の例でありますが、環境庁全体としても、やはり事業面あるいは調査の面、そういった面で、気持ちの上では充実しているかもしれませんけれども予算的には決して充実していないと思うのですが、大臣としては、環境行政は精神面だけでは解決ができませんので、やはりこれから十分なというか必要な予算をとって実施をしていくということが必要だと思いますけれども、大臣の御決意を伺いたいと思います。
  94. 堀内俊夫

    ○堀内国務大臣 非常に御懸念いただいて心から感謝いたします。何しろ、現在予算についてはマイナスシーリングが行われております。そういう基礎的な立場に立つと、小さい省庁はもろにマイナスシーリングを受けて予算が窮屈になっております。私もそのことを総理に、私どものような小さい庁に対しては大変な痛手になるという話を申し上げました。総理も十分認識しておられるので、我々としては、最大限やらなきゃならぬ仕事については予算を確保できるように努力していきたいと思います。
  95. 新村勝雄

    ○新村委員 次に、開発環境保全は矛盾する、なかなか両立しないということで、大臣も日ごろ悩んでいらっしゃることは前にも伺っておりますが、例えば開発が進み、あるいは海面の埋め立て、沿岸の埋め立てが進むにつれて莫大な量の、膨大な量の土が必要だということになってきます。これは東京湾の事業あるいは関西空港の事業いずれもそうでありますけれども、その場合には莫大な土量が必要であります。そうして、結果として丘が削られ、あるいは山が消えていくという現象が方々に起こるわけでありますが、そういう場合に土を取りっ放しにしておきますとその跡が荒廃してまいります。場合によっては、面積は小さいですけれども、砂漠状の荒廃地になっていくということもあるわけでありますが、そういった点で開発環境維持、特に採土が大量に行われますけれども、その跡地の保全の問題、あるいは土を取るにしてもその取り方の問題があるわけですね。千葉県へ行っていただけばわかるのですけれども、土を取った跡が大変荒れておるわけでありますが、そういう点についての環境庁としての環境保持の御配慮はありますか。
  96. 安原正

    ○安原政府委員 土砂採取に伴います環境保全の問題でございますが、これにつきましては環境影響評価等を行うことにより、適切に対処してまいっている次第でございます。  具体的に環境影響の評価の手続をちょっと御説明申し上げますと、土砂の採取そのものは民間事業で行われている実態が多うございますので、そういうことから主として公共事業について定められております閣議決定要綱に基づくアセスの対象事業にはなってないわけでございますが、対象事業の実施のために事業者みずからが土砂の採取を行います場合には、あわせて環境影響評価を行うように実際上運用されておるということでございます。  今御指摘の関西空港とか東京湾横断道路のケースでございますが、この場合には土砂の採取を行う者が事業者とは異なっておるわけでございますが、御案内のとおり大規模な事業でございますので、これにつきまして環境庁意見を申し述べたわけでございますが、その意見の中で、土砂の入手に当たって、採取、運搬に係る事業計画あるいは環境保全計画等を十分確認する等により、環境保全上の問題が生ずることのないよう最善を尽くしてほしいということを述べたわけでございまして、環境庁といたしまして、この二つ事業におきます土砂採取に伴う環境汚染の未然防止に努めておるところでございます。  さらにつけ加えさせていただきますと、この二つ事業に関係いたします地方公共団体、大阪府あるいは千葉県等につきましては環境影響評価に係る独自の制度を持っておりまして、この中で、一定規模以上の土砂採取事業につきましてアセスの対象にする等の対応になっておるわけでございます。  環境庁といたしましては、今後とも関係省庁とよく連絡をとりまして、土砂採取に伴います環境汚染の未然防止に努力してまいりたいと考えております。
  97. 新村勝雄

    ○新村委員 次に、土砂の点につきまして、環境の点とは別の観点から、これは土砂の取引価格の面での問題点があるわけであります。  実はこの点については二カ月ほど前にやはりこの委員会で当局の見解を求めたわけでありますが、今、関西空港の埋め立てが進められておりまして、その土砂の納入をめぐって公正な取引を害する取引が行われているということを指摘したわけでありますが、この点について、これは公正取引に反すると考えられますので公取の善処を要望申し上げていたわけでありますけれども、その後の調査あるいはその実態についてはどう把握されておりますか。
  98. 佐藤一雄

    ○佐藤説明員 お答えいたします。  先生指摘の海土協に関します独占禁止法違反被疑事件につきましては、私ども公正取引委員会といたしまして現在所要の調査を進めているところでございます。したがいまして、調査の結果、独占禁止法に違反する事実が認められるような場合には厳正かつ適切に対処してまいりたい、そういうふうに考えております。
  99. 新村勝雄

    ○新村委員 独禁法によりますと、四十条で出頭を求め、あるいは報告を徴するということが規定をされておりますし、同時にまた、四十六条ではさらに強い権限が与えられているわけですね。立入検査等の強制処分もできる、こういうことが決められておるわけでありますけれども、こういった法に許されたあらゆる方法を駆使していらっしゃると思いますが、具体的には海土協加盟の八社、あるいは海土協を事実上支配している方もおられるわけでありますが、これはもう既に周知のことでありますから申し上げますと、平島氏という方がこの海土協を支配し、さらにまた関西にも絶大な影響力を持っていると言われておるわけでありますけれども、こういう方々あるいはこういう会社についても調査をなさいましたか。
  100. 佐藤一雄

    ○佐藤説明員 私ども、先ほども申し上げましたとおりに調査を進めているところでございますけれども、その調査の内容につきましては何分にも現在調査を進めている最中でございますので、その中身につきましては御勘弁いただければと思います。
  101. 新村勝雄

    ○新村委員 それは調査中ということで了解はできるわけですけれども、私の調査によりますと、土の納入経路は、海土協というものがあって、海土協がいわゆるカルテル価格を決定して、千百三十円といういわゆる協定値段を決定して、それを六区に分けて請け負っている六つの企業体に売り渡しをする、そして六つの企業体は空港会社から支払いを受けるわけでありましょうが、八社が決めている協定値段、カルテル価格といいますか、これは千百三十円と言われておりますけれども、これは事実ですか。
  102. 佐藤一雄

    ○佐藤説明員 たびたび繰り返すようでまことに恐縮でございますけれども、現在調査しておりまする内容につきましては、現時点におきましてはまことに恐縮でございますが御勘弁いただければというふうに思います。
  103. 新村勝雄

    ○新村委員 そうしますと、そういった事実についてもまだ確認はされていないということですか。さらにまた、このグループの中で価格を協定した、カルテルをつくったといった事実についての認識はいかがですか。
  104. 佐藤一雄

    ○佐藤説明員 先生指摘されているような点も含めまして、私どもの独占禁止法に照らしまして、どこのところがどういうふうに違反することになるのかならないのか、それらの点について現在調査を進めつつあるところでございます。
  105. 新村勝雄

    ○新村委員 参考までに調査したところを申し上げますと、海土協は八社が加盟しておると言われておりますが、この八社が千百三十円という協定値段を現場者運賃込みで決めた。そしてそれをその値段で六つの企業体に売り渡した。六つの企業体は、土の計算からすれば、空港会社からは千三十円という値段で計算をされているということでありますから、そこに逆ざやがあるわけですよ。千百三十円で買って千三十円で売るわけですから、百円損するわけです。そういった奇妙な取引が行われている。そうして、その逆ざやの相当部分が海土協に入っている、海土協に相当莫大な資金が蓄積されている、こういう情報があるわけであります。そして、海土協なるものはこれは法人ではありませんので、そこに税法上の問題がどうなるのかというような問題もございますし、またその経理がどういう形で管理され、当局から管理監督されているかというような点についても大変疑問が多いわけなんですね。こういった点については、お答えは今の段階ではできないというふうにおっしゃると思いますけれども、そういった点も含めて、これから十分にこの部分についての流通の実態を明らかにしていただきたいと思いますけれども、いかがでしようか。
  106. 相原力

    ○相原説明員 運輸省の立場からお答えさせていただきたいと思います。  先生質問の海土協、いわゆる海上埋立土砂建設協会につきましては、淡路島で山土を生産し、かつ、大阪湾周辺におきまして埋立事業を行う建設会社から構成されている任意団体であると承知しておるわけでございますが、その具体的な活動内容につきましては、運輸省及び関西空港株式会社においてはそれ以上の実態については把握していないというのが実情でございます。
  107. 新村勝雄

    ○新村委員 そうしますと、関西空港として契約をしているわけですけれども、その契約の内容ですが、土の積算、見積もりは幾らになっておりますか。
  108. 相原力

    ○相原説明員 関西国際空港株式会社は御承知のように商法上の株式会社でございまして、個々の契約における積算単価につきましては企業の秘密にも該当いたしますので、私も実は承知しておりませんし、お答えできる立場にはございませんので、よろしく御理解いただきたいと思います。
  109. 新村勝雄

    ○新村委員 土の単価については、積算の基礎については御存じないんですね。発表できないということですか、御存じないのですか、どちらですか。私の調査によりますと、千三十円で計算をされているということでありますけれども、その数字についてはいかがですか。
  110. 相原力

    ○相原説明員 ただいまお答え申し上げましたとおり、まことに申しわけございませんが、個々の積算単価につきましては、企業の秘密にも該当いたしますので、お答えすることを差し控えさせていただきたいと思います。よろしく御理解いただきたいと思います。
  111. 新村勝雄

    ○新村委員 お答えできないということであればやむを得ないわけですけれども、そういう事実がほぼ間違いないという確信を持って申し上げられるわけでありますが、そういう流通の過程をも含めてぜひ公取さんで御調査をいただきたいということを特にお願いしたいと思います。  それから、これに関連をするわけでありますが、これはカルテルの疑い濃厚、カルテルの存在は間違いないというふうに言われておるわけですが、これは同時に土建業界の体質をたまたまさらけ出したということが言えると思うのです。これは関西だけではありませんけれども日本全国にわたって土建業界のカルテルというか、いわゆる談合の問題が言われて久しいわけでありまして、数年前にも国会でこの問題が大変論議をされたことがございますが、その後建設省においては努力をされたということが言われておりますけれども、余り実績が上がっていないというふうに我々は見ております、いわゆる談合の問題については建設省では現在どういう御認識ですか。
  112. 村瀬興一

    ○村瀬説明員 お答え申し上げます。  建設省といたしましては、従来から、建設団体等を通じまして、独禁法等関係法令の遵守ということにつきまして指導をしてきたところでございます。また、仮に法令違反の事実がはっきりした場合には、建設業法に基づきまして監督処分等の措置をとってきております。今後とも、建設業を営む者が関係法令に違反しないというようなことはもちろんでございますが、その資質を向上させることによりまして、建設工事の請負契約が適切に行われるように指導をしてまいりたいと考えております。  それから、関西空港の護岸工事に絡む先生のお話につきましても、先ほど公正取引委員会の方からお話がございましたように調査中ということでございますので、その調査結果を待ちましてしかるべく対処したいと考えております。
  113. 新村勝雄

    ○新村委員 今、業界における、いわゆる業務屋という名前で呼ぶのだそうですけれども、談合の担当の人がおられる。関西のブロックあるいは関東のブロック、関西のフロックについては何某、関東については何某氏が全体を取り仕切って談合を進めているというようなことが言われておるわけであります。先ほど申し上げた大林の平島氏、これは名前を申し上げてはどうかと思いますけれども、既に周知の事実でありますので申し上げたわけでありますが、そういった談合活動が活発に行われている、そしてそれがいわゆるボス的な存在の人たちに大変な利権というか権力を生ぜしめているということが言われておるわけですね。例えば、平島氏の御子息の婚礼に数億円の祝儀が集まったということが周知の事実として言われておるわけでありますけれども、そういったことは建設省としてはもちろん十分御承知のはずであります。そういう談合の地下組織といいますか談合のネットワークですね、これについてもひとつ十分メスを入れていただいて、公正な取引が確保されるような業界にしていただきたい。このことが公共事業の効率的な執行にもつながるわけでありますから、そういった点で公取の御努力とそれから建設省の御努力をさらにお願いしたいと思うのですけれども、いかがでしょう。
  114. 村瀬興一

    ○村瀬説明員 先ほど申し上げましたように、今後とも業界に対しましては、関係法令の遵守につきまして鋭意指導してまいりたいというふうに考えております。
  115. 新村勝雄

    ○新村委員 時間がありませんので、科学技術庁長官に一問だけお願いをいたします。  先ほども日本は科学立国で行くんだということを言われておりますし、また国際化を図っていかなければいけない、学者の交換も必要だと言われておりますけれども、それにはやはり単なる形の上だけでの施策ではだめではないか、ある意味では意識の革命を伴うものでなければだめではないかと思うわけであります。  そこで、ノーベル賞学者の江崎玲於奈さんの書いた本がここにあるわけでありますけれども、そこではやはり、日本人というのは集団行動をとり、集団の中で行動することは非常にすぐれているけれども、個人として独創的な成果を上げるには集団人間としては不適当であるということが指摘をされているわけなのです。これは教育の問題でもあるし、同時にまた、科学技術行政の今後の心構えを問われる問題ではないかと思うのですわ。  ここにこう書いてあるのですね。「日本人は通常、唯我独尊的自我は持たないし、持てない。日本のように連帯感、集団意識の強い社会ではそれは殺される。集団とは家族や親族のグループ、あるいは学校、企業などの組織である。日本人おのおのは属する集団の中で位置づけられる相対的自我を持つだけなのである。」江崎さんによれば、相対的な自我だけではなくて、絶対的な自我が確立されていないと独創的な研究開発はできない、こういうふうに言っておるわけなのですね。三人寄れば文殊の知恵などということわざがあるけれども、本当の独創的な研究は三人寄っても百人寄ってもだめなんだ、個人の卓抜した独創力が必要だし、その独創力を磨くためには集団意識の中に埋没していたのではだめだ、自我を確立しなければだめだ、こう言っておるのですね。  ですから、これは単に少しくらい予算を取って外国に留学をさせるということだけでは解決がつかない問題だと思います。これは深く教育の本質が問われる問題であるし、科学技術行政の問われる問題だと思うのですけれども、大臣はこの江崎さんの意見に対してどうお考えですか。
  116. 伊藤宗一郎

    ○伊藤国務大臣 江崎玲於奈博士の論文を通じましての御指摘、全く同感でございまして、それぞれの個の方々が独創性を強く主張しながら、全体としてバランスがとれるような科学技術政策といいますか、そういう研究環境というものを、先ほども申し述べましたけれども、ぜひつくってあげたい。  また、これは文部省の問題でございまして、科学技術庁長官として口を差し挟むのはどうかと思いますけれども、今も御指摘がございましたように、今の文教政策というか、教育行政のあり方についても、科学技術振興の面からはやはり我々も考えなければならない点があるということは、今の論文にも御指摘のとおり、私も同感だと思います。  もう少し、一人一人の個性なり独創性なり創造性を煥発するような、育てるような、色で言いますと赤は赤、白は白、黄は黄というものをそれぞれ主張しながら、それが描かれたときに全体として美しい絵ができ上がるような、そういう個性を尊重した、一人一人の潜在的な能力を育てるような教育の方向に持っていくように政治全体として考えていかなければならない、そのことがとりもなおさず科学技術の振興、またその基礎をなす基礎研究振興につながるのではないかというふうに考え、そういう方向に科学技術政策を持っていきたい、このように努力してまいりたいと考えております。
  117. 新村勝雄

    ○新村委員 終わります。
  118. 野中英二

    野中委員長 午後一時二十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十九分休憩      ────◇─────     午後一時二十分開議
  119. 野中英二

    野中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小川国彦君。
  120. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私は、最初に環境庁長官にお伺いしたいわけでございますが、今日自動車交通というものが非常に過密な状況を呈している。そういう中で、特に首都圏等においては大気汚染に与える影響というものが非常に大きい。こういう意味で、新たな首都高速道路などの建設に伴う大気汚染、騒音対策、こういうものについて環境庁としてはどういうような関心を払って取り組みをなさっているか、この点をまず伺いたいと思います。
  121. 堀内俊夫

    ○堀内国務大臣 ことしは非常に記念すべき年になっておると思うのですが、日本の本土あるいは四国、九州に至るまで自動車で全部通っていけるという道が完成された年でございます。ところが、今までは産業道路として非常に急いだ嫌いがございますけれども、今後の道路計画というものは、大都市圏が特に空気が悪くなっているという状況にありますので、私は、さきの道路五カ年計画の決定に際しましては、閣議の中で、今後道路をつくる場合には騒音あるいは排気規制等を含めて環境に十分注意して建設してほしいということを閣議で申しまして、建設大臣も了承して閣議決定になっているところであります。今後とも、道路整備等に関しては環境保全に十分に注意していただくことになると考えております。
  122. 小川国彦

    ○小川(国)委員 今、非常に車の爆発的な増加のために、車一台当たり六メートルしか道路がない、こういうような過密化が進行している状況の中で、NOx、NO2、こういうものについての規制値が一日平均値で〇・〇六ppm、これを昭和六十年三月達成見込みということで進めてこられたようでございますが、この目標に対する達成の状況というのはどういうふうになっていますか。
  123. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 お答えいたします。  六十二年度の数字で申し上げますと、六十二年度におきましては、いわゆる総量規制を実施しております大阪、横浜、東京という特別大きな大都市が対象となるわけでございますが、六十二年度におきましては、一般局におきましてその三都市合わせますと百一測定局があるわけでございますが、その中で環境基準の適合状況でございますが、一般局は百一局のうち五十七局が非達成でございますし、自動車排出ガス測定局におきましては六十八局中六十二局が非達成という状況で、非常に事態を深刻に受けとめて各般の対策を講じているところでございます。
  124. 小川国彦

    ○小川(国)委員 そういう厳しい状況の中で、先般板橋区、北区、豊島区、足立区、この四区を通る首都高の王子線の建設に当たって〇・〇六ppmが目標値とされた。しかし、道路の供用は昭和六十五年となっておるが、今六十三年現在で見ると、これに達するめどがつかないのではないか、こういうふうに言われておりますが、この点はいかがでございますか。
  125. 安原正

    ○安原政府委員 先生指摘の首都高速の王子線につきましては、その建設に当たりまして、五十九年から六十一年にかけまして東京都の環境影響評価条例に基づきましてアセスメントが実施されたわけでございます。その中で、全体の大気汚染に係る予測をしておりまして、それに道路建設に伴いまして負荷がふえるということで予測を立てておるわけでございますが、その予測値と申しますのは、今先生指摘環境基準を達成する見通しになっておるというぐあいに聞いております。
  126. 小川国彦

    ○小川(国)委員 これは今後の推移を見なければならぬわけでございますが、現状においてはこの四区の区長会から要望が出され、また専門家からも要望が出されて、この達成については非常に厳しい予測がなされているわけでございます。そういうことで、私どもは、これらの住民や関係区等の要望を受けて、環境庁においても、これは東京都が条例に基づいてアセスメントを行ったことでございますけれども日本の首都の東京に存在する大きな問題でございますから、引き続きこれに対する対処をお願いしたい、こういうふうに思います。  同様な問題について、道路局あるいは都市局においては、こうした環境問題の中での大気汚染の問題については、事業主体を監督する立場からどういうような取り組みがなされているか、簡潔に御答弁をいただけたらと思います。
  127. 三谷浩

    ○三谷政府委員 お答えいたします。  道路の環境問題というのは私どもも大変重要と考えておりまして、例えば一般論としては、バイパスとか環状道路の整備というような道路機能の分化とか、あるいはいろいろな施設整備、さらには防音工事助成あるいはその他の幹線道路の沿道の整備に関する法律ということでやっております。  御指摘の首都公団の道路につきましても、道路の重要性はございますけれども、やはり環境問題というのは非常に重要でございますので、具体的には例えば首都高速の王子線、これは板橋区から足立の江北に至ります七・一キロの路線でございます。この道路につきまして都市計画決定をする必要がございます。そこで、本路線につきましては、都市計画決定の際におきまして東京都で環境アセスメントを行っております。首都高公団は事業予定者としていろいろ参画をする、こういう感じでございます。我々は道路行政全般としましてそれらを指導する立場にある、こういうことでございます。
  128. 小川国彦

    ○小川(国)委員 いずれにしても、今後の重大な課題でありますので、関係当局それぞれ住民の期待にこたえた対処をお願いしたいと思います。  そこで私は、首都高速道路の高架下の又貸しの問題についてお尋ねしたいと思うのです。  首都高速道路の南池袋の高速道路の下にサンロード商店街というのがございまして、この二十九軒について商店街の建設がなされたわけでございます。しかし、現状においては、もう首都高にかかった従来の地権者というものは非常に数が少なくなってきているようでございます。そういう中で、この商店街の店舗、事務所等について、本来これは公団が直接賃貸借契約を行うべきであるにもかかわらず、その間に首都高速道路協会が入って大変な利潤を上げているわけであります。すなわち、この協会がたな子から取っている昭和六十二年の賃貸料は七千二百万円でありますが、協会が公団に納付している占用料は二千八百三十万円と二分の一以下であります。また、同所の駐車場四十八件につきましても、昭和六十二年度四億九千百六十一万円であるのに占用料は一億九千二百八十三万四千円となっております。それは二倍半の賃料を取っていることになるわけであります。  こういうやり方は、外郭団体としていわば私どもは天下り団体ではないかと思われるような協会を間に入れておりますために、ここにいたずらに利益を得せしめる、こういうことになっていると理解されるのでありますが、この点について建設省はどういうふうにこの実態を把握されておりますか。
  129. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 まず、御質問のございました首都高速道路協会という財団法人になぜやらせているのかということでございますが、この当時、公団側として自分が直接実施するということが事務的に大変困難であるという背景がございまして、財団法人首都高速道路協会に占用許可ということで実施させて、現在に至るまで同協会において被補償者ということを対象に賃貸をしているところでございます。  それで、この高速道路の路面下の占用につきましては道路管理上の影響が大きいために、「高架道路の路面下の占用許可について」という昭和四十年八月二十五日付の道路局長通達によりまして許可基準が定められておりまして、この基準によりますれば「高架下の占用は、原則として道路管理者と同等の管理能力を有する者に一括して占用させるものとする。」というふうに定めておりまして、これによりまして公団は協会に一括して占用許可をしたものでございまして、そういう法的根拠に基づいて行ったものでございます。  それから、協会が公団に対して納める占用料納付額と賃貸料の間に大きな差があるのではないかという御質問でございます。また駐車場につきましても同様な差額があるということでございますが、六十二年度について見てまいりますと、五号線の高架下の賃貸施設事業におきましては、賃貸料収入は七千二百万円でございますが、これに対して当該施設管理等に要する費用は、占用料が二千八百万円、減価償却費が一千六百万円、維持補修費八百万円、人件費約一千百万円、一般管理費その他で約八百万円ということで、合計七千百万円余りとなっているところでございます。また駐車場事業におきましては、使用料収入は四億九千二百万円余でございますが、これに対して当該駐車場の管理等に要する費用は、占用料約一億九千三百万円、減価償却費八千万円、維持補修費三千八百万円、人件費約五千七百万円、一般管理費その他で約一億一千四百万円で、合計四億八千二百万円余となっており、それぞれ収支おおむね見合っているというふうな報告を受けております。  以上でございます。
  130. 小川国彦

    ○小川(国)委員 今法的な根拠をおっしゃられたわけでございますが、この貸し付けの対象になりますのは、おっしゃるように法律で言えば占用の貸し付け対象が道路管理能力を同等に有する者ということで、「高架下の占用は、原則として道路管理者と同等の管理能力を有する者」、こういう意味で占用許可は首都高速道路協会に与えたわけでございますね。
  131. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 さようでございます。
  132. 小川国彦

    ○小川(国)委員 そうすると、その占用を受けた高速道路協会が今度その下を建材屋さんとかあるいはいろいろな商店、事務所に全部貸し付けをしているわけですが、これは首都高速道路協会が占用許可を受けたもので、その者がつくった事務所であり店舗でありましょうけれども、それをさらに貸すということは占用許可の精神に反する、又貸しになる、こういうふうに私ども理解するのですが、この点はいかがですか。
  133. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 もともと南池袋の店舗等の問題につきましては、事業を執行する上で、つまり首都高速五号線を建設するに際しまして、事業関係人の要望から、そこにこれらの者を入居させるということの目的で建設されたということでございます。  それで、そのことを首都高速道路公団が直接自分でそういう施設をつくってこれらの方々にお貸ししてもいいし、それからさらに、当時のいろいろな人手等の関係から高速道路協会にやらせてもいいということで、この五号線につきましては後者の道を選んで、後者の協会に占用させて、そしてその協会がそういう事業関係者に対してお貸しするという格好をとっているということでございまして、又貸しということではないというふうに考えております。
  134. 小川国彦

    ○小川(国)委員 協会が借りて、みずからそれを事務所なり店舗なりとして利用されるということならば、占用の精神なり占用の法律的な原則に照らして正しいわけなんです。しかし、協会は店舗をつくり事務所をつくり、みずから使用せず、今度は第三者にそれを貸している。こういうことは、建設省が全国でいろいろな公有地とか河川敷の占用許可を与えますが、占用許可という考え方はあくまで一時使用である、永久構造物はつくらせない、これが建設省の道路行政でも河川行政でも土地管理行政の中でも一貫した方針であります。ですから、占用許可というのはあくまで一時使用。しかし、どうしても長く使いたい場合は、公的な機関が公園とか緑地とかその他公的なものをつくるためにはこれを認める、しかしその他は原則として認めないというのが占用の考え方で、法的精神もそうなっている。それだから、許可を受けたその人が占用許可の中でその許可を受けるというのならまだこれはいいのですよ。しかし私どもは、この場合の店舗とか事務所を許すというようになった、このあなた方の読んだ高速道路の路面下の占用許可というこの考え方は、全国的に建設省が指導している占用許可の原則に極めて反する局長通達だというふうに思っているのですよ。  本来、占用というのは、法律の観念からいきましてもこれに対しては非常に厳しい考え方を持っているわけです。占用権というのは行政法上の公物使用権そのものであって、公物使用権というのは公権であって譲渡禁止や転貸禁止が大原則、営利事業のために占用許可を与えるということはできない、これが大原則ですよね。だから、皆さんがいわゆる道路管理者と同等の管理能力を有するからということで協会に貸したまではいいのですよ。しかしその協会が今度はそれを貸していわば利益を受けている、二倍以上の収益を上げている、こういうことは明らかに営業行為になります。これは皆さんの占用を指導している建設省の大方針に反するやり方だ。何といってもこれはやはり又貸しである。公団が直接、かつての道路のかかっているところの権利者に補償の措置として高架下を本当は貸してはいけない。その下で火のようなものを扱って道路の下が火事に一なったら困るので、本当は道路の高架下というのは貸すべきものではないのだ。だから皆さんは現在でも火を使うところには余り貸したくないと言っているそうですが、そういうような貸すべきでない高架下に事務所とか店舗を加えた、公共目的にないものを加えたというところに、皆さんの誤りの通達の第一歩があって、その上に加えて今度のはさらに——本来公団がそれらの補償する人たち施設をつくって貸すならこれはいいですよ。しかしそうではなくて、協会というものが借りて、そこが減価償却から維持管理費から人件費からそういう一般管理費まで出しているというのは、まさにこれは営業なんです。そういう上に又貸しをしているというのはこれは改めなければならないことだ、こういうふうに私どもは考えるわけです。  こういうものをもし又貸しを建設省が認めていったら、自分たちの管轄下にある公団だからやってもいいんだということになれば、今後こういうことがどんどん全国で行われていって、建設省の行政のけじめというのはつかなくなるのじゃないか、こういうふうに懸念されるわけですね。いかがですか。
  135. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 先生指摘のとおり、占用というのは公物について非常に厳しい考えのもとに行われるということは、この首都高速道路についても全く同じことでございます。そこで、もともとこれが必要になったゆえんというのは、建設当時の関係者の御要望があって店舗等をつくるということが一つありまして、それを公団が施設をつくって直接貸せるか、あるいはこの財団法人首都高速道路協会を使ってやるかというときの一つの判断がそこにあるわけでございます。  それで、この件につきましては、この財団法人の高速道路協会の寄附行為におきまして、こういうことができるという条文を設けておりまして、これは建設大臣の承認も得ているというところはございます。そこで、当時の公団の仕事の中からとてもこういうところまで公団としては手が割けない、ひとつ首都高速道路協会の方でやってくれないかということで、ここにまず同等なものであるという地位にあるこの協会に占用許可をした。その占用許可については、一般の占用許可と同様な公法上、公物管理上の制限があることは申すまでもございません。それが公団が直接やるか、あるいは協会を通じてやらせるかという差だけのものであると私どもは考えております。したがいまして、お入りになった方々につきましても、占用というものの持っている公法上の制約というのは当然かかってくみということが前提になっているわけでございます。  以上でございます。
  136. 小川国彦

    ○小川(国)委員 皆さんが、百歩下がって、公団が直接そういうような高架下を補償の物件としてつくった、しかしそれを貸すのが、やる気になればできるのだけれどもそれをできないという理由のもとに協会に任せた、それなら、協会に任せたことが手数料程度のものとかそういうものを払っているということなら私どもまだ理解できる。ところが、もうこれは、六十年で言うならば占用料が一千九百五十一万のところに賃貸料が六千四百四十二万、三倍近い賃貸料で、不動産業者でもこんな三倍近い稼ぎはしないというのですよ。いわば全く又貸しの上に乗ってこうした利益行為をやっているということは、皆さんが公的管理能力を持つ団体だということで認めたというふうには理解できないのですよ。皆さんが任せたというなら、一定の手数料だけでそれを管理しているというのならまさにそれはある程度法人の協会に任せたというふうに考えることもできましょうけれども、現状は全くそうじゃない、こういうことですね。二倍も三倍もの料金を取っている。  それからもう一つ、今の減価償却について、昭和六十二年でいえば占用料は二千八百三十万円、その公団が協会に貸したものの賃貸料が七千二百万ですよ、倍以上の賃貸料を取っているのですが、それで皆さんは減価償却に千六百万というけれども、これをつくるときにめいめいの出店者から五百万近いそれぞれの負担金を取っている。その半分は十年間で返す、こういうことで、何か減価償却とおっしゃるけれども、つくった建物の費用は実質その出店者から集めた保証のお金でつくられている。その上に維持補修費が八百万とか人件費が幾らとか言いますが、駐車場の方も先ほど人件費が五千七百万とおっしゃったのですが、これが間違いなければ、私がきのう現地調査に行ったら、おばあさんが一人掃除に来るだけだ、こう言うのですよ、そういうところに五千七百万もの経費がかかるのか。  駐車場にしても、一億九千二百八十三万円の占用料で公団が皆さんの外郭団体の首都高速道路協会に貸している、まあ早く言えば二億ですよ。二億で貸したもので四億九千百六十一万円、倍以上の収益を上げているのですね。だから、これが皆さんが占用許可を与えた「原則として道路管理者と同等の管理能力を有する者」、こういう公的な固体がこういうことをやっていいのか、こういうことなんですよ。しかも又貸しだ。これはやはり改めていかなければいけないのじゃないか。  公団がなかなか収益が上がらなくて道路の料金をどんどん上げなければならないときに、こういうような外郭団体をつくって、しかも役員は全部建設省や公団の天下った人が首都高速道路協会の理事になって、高給与と高退職金を取って、そこを維持させるために安い占用料でそういう協会に貸して、しかも協会はそこで二倍、三倍もの利益を上げて、やっている管理の中身はと見ればおばあさん一人の掃除に五千七百万という経費が出てくる。こういうことでは許されないのじゃないかと私は思うのですよ。  だから何といっても、まず改むべきは皆さんのこういうやり方について——もう一度伺いますが、占用許可を与えたのは協会であって、そして、その協会が第三者にそれを貸すということまで皆さんは法的に認められる、こういうふうに考えているのですか。
  137. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 お答えいたします。  まず前段の、手数料程度ということでどうだというお話もございますけれども、やはり一つの協会として必要なものは認める、公団でも必要なものは協会でも必要でございますから、なかなかそう手数料だけというわけにはいかないということで、先ほど内訳を申し上げましたようなことでおおむね収支相償うというふうなことである、こういう報告を受けているところでございます。  それで、今お話しのことでございますが、首都高速道路公団が協会に占用許可をするときは、既に公団の事業執行上こういう需要がある、そういうものをつくっていかなければならないということが一つの前提としてある、そこを承知の上でやるということでございますので、そこはそういうふうなことで御理解いただきたいと思います。
  138. 小川国彦

    ○小川(国)委員 いかなることが前提にあれ、法律違反は法律違反なんですよ。貸した当事者が利用する以外に、その人が第三者に貸して利益を上げることを認めたら、これは日本全国のこういう占用許可というものが崩れますよ。  私も県会議員を十二年やってまいりまして、地元から、道路ののり敷が公有地である、こういうところを借りれば自分の軒先だからひさしを延ばしたい、こういう人がたくさんあった、あるいは河川敷のそばに自分の住まいがある、もうずっと堤防で関係ないところだからここにさくを結わせてくれないか、そういう陳情があっても建設省は絶対だめなんですよ。工作物自体を認めませんね。本当の一時使用で何か小屋をつくってもすぐそれは撤去される、そういうものでなければいかぬというのが占用許可の皆さんの考え方、そうでなければ公有地の管理はできませんよね、できないはずなんだ。皆さんが仮に第三者の会社の駐車場に高架下を貸したとしても、そこに構造物をつくられてそして第三者が入っていったらこの管理はできなくなる。そういう意味からこれは明らかに又貸しである。これは変えるべきだ、こう私は思いますが、その点いかがですか。
  139. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 お話しのように、公物の管理上、占用というのは非常に厳しい条件のもとで行われるべきであるということは、道路についても同じであります。それで、公団が協会に占用させるときもそれは同じことでございます。そしてその占用は、公団が道路管理者、つまり自分と同じ同等の管理能力を有することを前提にいたしまして一括して占用させました、私とあなたは同じだということで占用させたものでございます。それを、先ほど来申し上げて恐縮でございますけれども、そういう事業執行のためにお入りになる方々のための建物をつくっていくということでございますので、そういう意味では公団と協会は同等である、一体であるというふうな認識をしてよろしいのではないかというふうに考えております。  それで、それじゃその建物にお入りになった方々は全く一般の賃貸借と同じことかと申しますと、そうではなくて、やはりそこは占用という大きな制度の仕組みと申しますかその枠内でやるということになっております。  以上でございます。
  140. 小川国彦

    ○小川(国)委員 それはあなた方の方で勝手に拡大解釈するわけで、公団と協会というものは明らかに別人格ですよ。一体という説明は法的孝え方の中から出てこない。  もう一つ具体例を申し上げますと、皆さんは、麻布・白金所在の四十七商店にやはり貸し付けをしているわけです。店舗とか事務所、これは公団が協会を通さずに直接皆さんが建てて貸しているんです。やろうと思えばそういうことはできる。ここではやっているんだ。しかし、そこでどういうことをやっているかというと、公団が直接四十七軒の商店や会社から賃貸料を取っているんですが、昭和六十二年度では四千五百九十六万円になっている。この四十七社は、賃貸料を毎月公団が指定する銀行、富士銀行麻布支店に振り込むようになっているのです。そして、滞納したときの賃貸料または通帳を紛失したときの賃貸料は首都高速道路協会へお支払いくださいとなっているのです。なぜこのような二重の手間をかけるのか。公団が直接賃貸ししているものならば、なぜ公団で責任を持って最終処理をしないのかということなんです。  協会は、この家賃の遅延があった場合にそのお手伝いをするということで、「公団所有の二号線高架下賃貸し施設の賃料徴収、清掃等の管理業務費」という名目で、昭和五十九年度では七百七万円、六十年度では七百十九万円、六十一年度では七百三十五万円の支払いを公団から受けているのです。これは、名目だけを掲げて実際は協会がただもらいしている、公団でいえばむだ遣いだ、こういうふうに指摘せざるを得ないのです。  また、現に私が現地を調査した際には、清掃というのは実質的に不必要なことだと言っているのです。普通の街の舗道と同じなんです。たまたま上に高速道路があって下に商店街がつくってあって、その前の道路を清掃管理費をもらうために掃くというのですね。掃くのも何だか満足な掃き方じゃないので、やってもらわなくてもいいと言っていらっしゃる。その掃除もこのごろやってなくて、区役所が取り残した大きなごみを取りに来てと言うと取りに来てくれる、こういう程度の清掃なんです。その賃料徴収というのは、借りている皆さんは公団の口座へ直接お金を払い込むわけです。それが滞ったから、通帳をなくしたからといって今度は協会へ行け。協会に行ったら、協会が手数がかったんだからその手数料と掃除代を払わなければいかぬというので、七百万円ずつ毎年払っている。これは全くむだ遣いだと思うのです。  住んでいる人たちが不思議に思っているのですよ。私がこういう費用が出ていると言ったらびっくりしていました。そんなむだ遣いをなさっているんですかというふうに言われているのですが、こういう点はどういうふうに把握されているのですか。
  141. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 ただいまの白金の問題でございますが、実はその当時は協会がそういうことをやるという仕組みができておらないということで、公団が直接にそういう建物を建てまして関係の方々にお貸しするという形にいたしまして、それが現在まで続いているということでございます。  それで、管理委託につきましては、こういう定型的なものを公団が直接やられるというよりは、業務の合理化を図る上でそういう協会というようなところにお願いするのがよかろうということでやっていることは事実でございますが、お話しの、普通に納めるときは銀行に、ちょっとおくれると協会にというのは実は私ども承知しておりませんで、今ちょっと問いただしたのですがまだよくわからない点がございますけれども、いずれにしろこういう一々の徴収事務、そういうものは公団が直接やらずに、公団の事務について習熟している協会にやらせるということは一つの方法であろうというふうに私どもは考えております。
  142. 小川国彦

    ○小川(国)委員 皆さんは私よりも、公団監理官というのも建設省にあって公団を管理しているのだけれども、こういうところの実際を全く把握していないと思うのです。恐らく局長さんも、ここに住んでいる方がどういう領収証を持っていらっしゃるか知らないと思う。私の手元にはその領収証がございますが、さっき申し上げた公団の指定した銀行口座に払い込む領収書になっている。私がその口座の先はどこだと調べたら公団になっているわけです。だから、これらの人たちは家賃は公団に直接振り込むようになっている。その家賃が振り込めなかったり何かの事情でおくれたら協会に納めに来いというのです。それだけのことなんですよ。だから、皆さんが徴収委託をしているというけれども、その協会がやる仕事というのはないのですよ。なぜおくれたのは公団が直接催促なさらないのか。公団が催促すれば七百万払う必要ないのです。しかも普通の公道を公団が掃除する必要もないのですよ、住民が掃除するでしょうし、自治体が清掃するわけですから。それをあなた方は料金の徴収と委託料という名目で七百万払っている。だから、これは全く払う必要のない経費じゃないのか。だから、こういうところにトンネル協会というか天下り協会というか、そういうものをつくってお金を稼がせてやろう、そういう考え方がある。  それから、もっと端的に言うならば、さっき言った占用料も、何もこの当時は協会がなかった、協会ができたから今度協会へ行ったというのはおかしいのですよ。そのことは、皆さん方がそういう天下りの外郭団体を育てるために——本当は、占用許可というのはこの規則でいえば公的なものしか従来許可にならなかった。私が調べたところでは、通達について調べましたら、昭和三十三年のころにはこういうものはなかった。それが三十三年十一月の「道路法施行令の一部を改正する政令の施行について」のときに、「占用物件の追加について」というので、「高架の道路の路面下に設ける事務所、店舗、倉庫、住宅その他これらに類する施設及び自動車駐車場を追加したこと。」こういうところで、皆さんが天下り団体をつくったらこういうことがやれるようにということでこんな改正をしたのじゃないかと私は疑いたくなるほど、占用の法的な概念とか原則、そういうものを踏みにじって、公的な公園とか緑地とかあるいは公的な駐車場まではいいのですよ、それを逸脱したこういうような店舗や事務所をつくらせて又貸しをさせる、そのためにこういう通達を変えているのですね。だから、これは皆さんは通達をねじ曲げてきていると私は思います。  前回のいろいろな無料券の発行も、皆さんが道路法施行令なり道路整備特別措置法なり施行令なりをねじ曲げた通達を出してきている。これもやはり通達をねじ曲げた通達をふやしてきて、そして外郭団体をつくらせてそういう仕事をやらせて、払わなくてもいいお金を払って、そして法の精神をまた踏みにじっている。これはやはり変えてもらわなければならないと思います。  局長さんも、残念ながら私が見ている領収証もごらんになっていないし、払込先も確認してないようですから、これは十分お調べいただいて、私は、次回には、これを是正するなら是正する、そういうひとつしっかりした考え方を持っていただきたいと思います。いかがでございますか。
  143. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 ただいまの領収書の件は実は不勉強で承知いたしておりませんので、それは調べてみます。そのときに判断させていただきたいと思います。
  144. 小川国彦

    ○小川(国)委員 それからもう一つ。今申し上げたように、南池袋の場合はそういう二重占用みたいなことをやって、又貸しを認めさせるために、本来これが直接公団が貸したならば八千万のお金が入るものを、実質は占用料二千万円しか入らない、こういう事態があるわけですね。細かい数字は別にして、そういうふうな差があるわけです。こちらの麻布・白金のように直接皆さんがお貸しになれば、その家賃は公団の収入として入ってくるわけです。ここを是正するだけでも公団の収入を一つ確保できるわけですね。こういう点を検討されるお考えはございませんか。
  145. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 東麻布と池袋の五号線の対比の問題でございますが、形は確かに違いますけれども一つの全体としての収支として考えた場合には、協会を使うのと直接やるのとでの差はないものであるというふうな報告を私どもは受けており、そのように理解をいたしております。
  146. 小川国彦

    ○小川(国)委員 協会がやるのと直接やるのと差はない。それでは、皆さんにさっき申し上げたように例えば掃除の方ですね。それでは清掃はどういうことをやっているか、これは局長わかりますか。私は現地まで行ってきのう調べてきたのですよ。駐車場の維持管理はどういうことをやっているかと言ったら、来なくてもいいと言うのだけれども、おばあさんが一人来て掃除をして帰るんだ、駐車場をおばあさんが格好だけほうきでやってもらっても、出入りの迷惑になることの方が多いからいいと言っているんだと言うのですよ。その辺の維持管理しかないというのですよ。どんな管理をなすっていらっしゃるのか、その維持管理にかかっている中身はどういうことなのか。
  147. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 その維持管理の全体の数字は先ほど申し上げたようなことで私どもは公団から報告を受けておりますが、実態の中身につきましては、私ども適正に行っているものというふうに思っておりますが、なお、今御指摘のようなお話もございますので、もう一度公団の方に調査をさせてみたいと思っております。
  148. 小川国彦

    ○小川(国)委員 参考に伺いますが、道路にかかった人たちの地権者が要求して、それを協会がつくりますときに、地権者から幾らお金をお集めになったか把握していらっしゃいますか。
  149. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 地権者からお金をいただいたということは伺っておりますが、額までは実は調査してございません。
  150. 小川国彦

    ○小川(国)委員 早く言えばそういう保証金的なもの、それから協力金的なもの、そういうものを合わせて取って、それで十年償還を約束している、こういう実態は御存じですか。
  151. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 そのように報告を受けております。
  152. 小川国彦

    ○小川(国)委員 十年償還というのは、その占用の原則に照らして違反だというふうにはお考えになりませんか。
  153. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 十年償還ということと占用とは直接に関係ないのではないかというふうに考えております。
  154. 小川国彦

    ○小川(国)委員 建物を貸しまして店舗を入れまして、あるいは事務所を入れさせまして、そしてお金を出させてそれを十年で償還させるということになったら、十年間はその人はいるということになりますよね。そういうことになりますよね。そうすると、これはもう占用ではないですよ。占用というのは貸し付けを一年以内に限っているのです。そうすると、もうそこで道路協会のやっていることは占用の概念を逸脱していることになりませんか。
  155. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 十年間で扱っていることと十年間保証するということは、別のことだというふうに理解をしております。
  156. 小川国彦

    ○小川(国)委員 では、その協力金はどういう性格のものでございますか。
  157. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 これにつきましては、建設コストをそういう形で下げていくということがねらいであろうというふうに思われます。
  158. 小川国彦

    ○小川(国)委員 占用許可を受けた公的管理能力を有するという協会が、みずからのお金でつくったのならわかるのですよ、そうじゃなくて、それをつくるに当たって保証金を取り協力金を取って、それも少額ではない、多額のお金を取って、そしてその協力金については十年間であれする、こういう形になれば、占用というのはもう一年以内というのが皆さん、建設省が全国に指導をしていることでしょう。これはそういうことに反してくることですよ。それは同じことですよ。そういうことを皆さんが協会にやらせているということは、公的立場に立つ者とは思えないと思いますよ。占用のもう明らかに原則に反した、だから私は又貸しだと言っているのですよ。
  159. 真嶋一男

    ○真嶋政府委員 だから十年の話と占用とは直接関係があるということじゃございませんけれども、占用期間につきましてはもう少し長いものも法令上認めております。そういう金を取って十年間で返すということと、それから占用をそこで認めたということは、先ほど申し上げたとおり必ずしも同じように考える必要はないのではないかと、理屈の上でそうではないかというふうに私ども理解をいたしております。
  160. 小川国彦

    ○小川(国)委員 時間が参りましたのであれなんですが、皆さんは、そういうお金を取っている、どういう性格の内容かも把握せずに、実態も把握されてない、こういうことではこの又貸しの疑惑は晴れませんよ、どう説明しても。もっと具体的事実を挙げてまたただしたいと思いますが、皆さんの方も、この南池袋のやり方と麻布・白金のやり方で共通しているところは、皆さんが天下っていく外郭団体を太らせるだけのことだ、結局損をするのは国民の方である、利用者の方である。公的な高速道路の下を、皆さん方が外郭団体のためにそれがもうかるような仕組みに一つ一つ仕組んでいる、こういうところだけは絶対改めていかなきゃならぬ、そういうことについて皆さんの是正を強く要望して、質問を終わりたいと思います。
  161. 野中英二

    野中委員長 草川昭三君。     〔委員長退席、魚住委員長代理着席〕
  162. 草川昭三

    ○草川委員 草川であります。  まず、最初に長官にお伺いをしたいと思うのですけれども、ことしの六月にトロント・サミットがあったわけでありますけれども、そのサミットの中で、今回は経済宣言、この経済宣言の中に環境問題というのが幾つか提案をされております。  例えば三十一、環境開発に関する世界委員会のレポートについての問題提起、三十二では「環境に対する脅威は国境を越えたものである。その緊要性に照らしすべての国に国際協力の強化が求められる。」云々がございまして、「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール。議定書は画期的なものである。」こういう幾つかの提言がございます。  最近、竹下総理も、フロンガスによるところのオゾン層の破壊、炭酸ガスによる地球の温暖化など、地球的規模の環境問題についての国際会議日本で開催したい、こう非常に積極的な意向を提唱されたと聞いておりますけれども、それはどういう経緯なのか、あるいはまたそれは事実なのか、ひとつ基本的な問題について環境庁長官の見解を明らかにされたい、こう思います。
  163. 堀内俊夫

    ○堀内国務大臣 現在、地球規模の環境問題についていろいろな懸念がございます。それらの原因をいろいろ考えてみますと、我が国とアメリカ合衆国との両方で大体半分ぐらい、そういう影響を持つのじゃないかという認識のもとに、私は、アメリカの環境庁長官であるトーマスさんと会って、この問題について十分討議をしなければならないということで、ちょうどお盆のお休みのときにアメリカへ参りました。そのときに、たまたま出発に当たって総理大臣にあいさつに参ったのでございますが、そのときに私の考えなり、さきの御指摘のトロント・サミットにおける総理の発言等についていろいろ話し合う機会がございました。そのとき竹下総理は、そうだな、日本は世界に何か貢献しなければならない、そういうことであると、今環境問題としてはいろいろな地球規模の懸念があるわけであるから、それらに対する科学的知見を確立するような方法、いわゆる世界的な専門家あるいは知見を持っておられる科学者等がいろいろ一堂に会して、そうして地球規模の環境問題について、いたずらに不安を持つ者もございますから、何かの高い知見を集める方法といえば、やはり東京で国際会議を持つというのも一つの方法ではなかろうかなというような示唆がございました。  たまたまちょうど、今申しましたようにアメリカへ行くときでございますから、アメリカでもこの話についてのならしというのか、協力をしてもらうというのにもってこいの機会でございましたので、私はアメリカへ行って、トーマス長官にもこの話をして賛同を得た、そういう経緯の中で、今竹下総理が示唆されたのもそういう経緯の中でできたことでございます。  私どもは、そのために、環境庁としては大分大きな仕事になるので、全庁挙げてこれと取り組む準備をしているところでございます。
  164. 草川昭三

    ○草川委員 今長官の答弁にもありますように、日本の役割というのは非常に大きいし、また責任も大きいと思うので、ぜひこの国際会議、せっかくやられるならば、成功し、また実績を挙げるような会議になるよう万全の努力をされたい、非常に強くこれは要望しておきたいと思います。  また、後ほど質問しますが、ただいま国連の環境計画の国際会議も開かれておるようでございますので、大いに国際的な視野のもとに行われたいということを要望しておきたいと思います。  第二番目に、今も出ておりますが、地球規模の環境問題というのは、相互にいろいろな関係をし合って発生をするものが多いと思うのです。例えば、このフロンガスは大気の温室効果の原因物質の一つとして挙げられていますけれども、一体その因果関係というのはどの程度認識をされているのか。また、そもそもこの温室効果、温度が上がっていく温室効果というのはどういう仕組みになっているのか、簡潔にお答えを願いたいと思います。
  165. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 お答えいたします。  太陽から地球に降り注ぎます太陽光線のうち、まず七〇%を大気と地表面が吸収しまして、残りの三〇%は大気中の微粒子や雲、さらには地表面から反射されまして宇宙空間にまた戻される、こういう形になっております。  今申し上げました七〇%の太陽光線のうち、大気には一九%が、地表面には五一%がそれぞれ吸収されまして熱になりまして、この条件があるわけでございますが、この条件から地球の気温を求めますと、氷点下マイナスの十七度Cになるというぐあいに言われておるところでございます。しかしながら、実際に観測されております地球の気温は大体十五度C前後でございますから、理論的なマイナス十七度Cとの比較におきましては、現実的には大気は三十二度C分だけ暖められておるということになろうかと思うわけでございます。  この暖める役割をしておりますのがいわゆる大気中にございます二酸化炭素やあるいは水蒸気でございまして、地表面から放出されます波長の長い赤外線が二酸化炭素や水蒸気に吸収されまして、再びまた地表面に向かって赤外線を放出しておるということによりまして、先ほど申し上げましたような地球の温度が大体十五度Cに保たれているわけでございます。このような保温の仕組みを温室効果というぐあいに考えているところでございます。  なお、大気の主成分でございます窒素とか酸素といいますのは、非常に量が多いわけでございますけれども赤外線をほとんど吸収いたしませんので、温室効果には寄与しないわけでございますが、先生のお尋ねのフロンガスにつきましては、赤外線を吸収するということで温室効果との間に因果関係があるわけでございまして、そのフロン等につきましては、その一分子当たりの地上気温の上昇効果と申しますのは、二酸化炭素の一万倍にも匹敵するということで、そういう保温効果、温室効果につきましては、かなり影響の強い物質であるというぐあいに理解いたしておるところでございます。
  166. 草川昭三

    ○草川委員 今言われたように、フロンガスの効果というのですか、環境破壊は国際会議でもほぼ認知をされておるところでありますけれども、最近異常現象というのが非常に多いわけです。これはいろいろな論文等が出ておりますけれども環境庁として、オゾン層の破壊との因果関係、関連はどのように把握をしているのか、見解をお尋ねしたい、こう思います。
  167. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 先生のお尋ねの異常気象とオゾン層の破壊、フロンとの関係ということでございますけれども環境庁といたしましては、非常に難しい問題でなかなか御納得のいただけるようなお答えができない状況にございます。  先生のお尋ねの趣旨とは異なることになるかもしれませんけれども、せっかくのお尋ねでございますので、私ども承知しております最近の異常気象といいますか、そういうものについて申し上げたいと思っております。  まず第一には、最近百年間の北半球地上の平均気温の上昇の幅は約〇・三度Cでございます。それから、一九六八年から七七年間の十年間の平均気温といいますものと七八年から八七年間の十年間の平均気温を比較いたしますと、ヨーロッパを除きまして全地球的に温度が上がっている地域が多くあるわけでございます。それからまた、この十年ごとに異常の高低温の発生頻度というのを見ますと、八〇年代に異常高温の発生が目立っておるという状況にございます。それから、二酸化炭素あるいは二酸化炭素以外の特定のフロン、メタン、亜酸化窒素等のいわゆる温室効果ガスと言われているものでございますが、これらの大気中濃度がいずれも増加傾向を示しておるというようなことを聞いているところでございます。
  168. 草川昭三

    ○草川委員 そこで、非常に地球大な話でありますから簡単に結論は出ぬと思うのですが、問題はかかわり合いがあると言われるフロンガスの生産量の状況でございますが、世界の生産量は年間約百十万トンと言われております。私が過日、政府に質問主意書を出しました場合に、政府の方は、昭和六十二年度で約二十万トンという数字があるわけです。ところが、けさも二、三の新聞に出ておりますが、日本の生産量は十六万トンだというような数字も出ております。通産省、十六万トンとか二十万トンとか言っておりますが、実際日本の生産量は最近のところ一体幾らなのか、お答えを願いたいと思います。
  169. 寺西大三郎

    ○寺西説明員 ただいま御質問のフロンの生産量でございますが、昭和六十二年で仮にとってみますと、フロン全体の総生産量は約二十万トンでございます。しかし、この中には必ずしも今回規制されますフロンでないものが入っておるわけでございますので、それを除かなければならないわけでございます。したがいまして、そういった数字を両方とも把握いたしております六十一年の数字で大変恐縮ですが申し上げますと、昭和六十一年のフロンの総生産量は約十八万トンでございました。そのうち、問題となります規制対象のフロンにつきましては約十三万トン、こういうことでございます。
  170. 草川昭三

    ○草川委員 そこで、また新しい問題になりますけれども、オゾン層の破壊によって最近皮膚がんの発生が出ている。このオゾン層の破壊と皮膚がんの発生についてのトータル数字を、問題提議をした財団法人日本環境協会の数字によりますと、大学病院での皮膚がんの頻度と紫外線量の相関について、全国四十四の大学病院の皮膚科での皮膚がん症の症例について見ると、その発生頻度は地域の紫外線の量との関連があることがわかるという数字が出ております。これはひとつ事実か、またオゾン層の破壊と関係があるのか、これは環境庁にまずお伺いしたいと思います。
  171. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 紫外線と皮膚がんとの関係でございますが、先生の方からお話がございましたように、オゾン層が破壊されることによりましてこれまでオゾン層に吸収されておりました有害な紫外線が地上に直接降り注ぐことによりまして、これが皮膚がん等の発生の増加をもたらすということが指摘されているわけでございます。これは、科学的知見を整理いたしました国連環境計画のオゾン層調整委員会の報告書の中におきまして、オゾン全量が一%減少した場合には皮膚がんが種類によりまして四ないし六%増加するというような報告があるわけでございます。  それからまた、先生のお話の中にございましたように、この皮膚がんの発生につきましては人種間で差があるということも言われているわけでございます。それから、同一人種では紫外線量の多い地域に住む方々ががんの頻度が高いということも知られているところでございます。しかしながら、これは緯度によりまして紫外線の照射量が異なるということによるというぐあいに考えられているところでございまして、現在既にオゾン層が薄くなっていることを示している証拠というぐあいには考えられていない状況にある、こういうぐあいに理解いたしております。
  172. 草川昭三

    ○草川委員 これは文部省に今のような答弁も踏まえましてお聞きをするわけですが、文部省には科学研究補助費というものもあるわけでありますし、オゾン層の破壊と皮膚がんとの関連という今のような答弁もあるわけでありますから、少ししっかりとした研究の充実を進めてもらいたいと思うのですが、文部省の見解を求めたいと思います。
  173. 砂子田忠孝

    ○砂子田説明員 科学研究費補助金は、我が国の学術研究振興するため、学術研究の動向に即して特に重要なものを取り上げ研究費を助成するものであり、文部省としましては毎年その拡充に努めてきているところでございます。  御質問にあるような環境及びそれに関連する課題は、社会的にも学術的にも重要な課題でございますので、従来科学研究費補助金、環境科学特別研究により研究を進めてきたところでございます。  昭和六十二年度からは、学術的、社会的要請にこたえ、重点的、機動的に研究推進させることを目的として新たに重点領域研究という研究種目が設けられましたが、これ重点領域研究に、環境が人体に及ぼす影響が大であるという観点から「人間—環境系の変化と制御」を六年計画で設定いたしました。一つは「人為起源物質の環境中の循環と制御」、それから二つには「環境要因の人体影響」等の研究項目を柱といたしまして、これを中心に組織的、計画的に研究推進し、その充実に努めているところでございます。  既にこの研究によりまして着々と成果が上げられ、フロンガスの測定等は難しい高度の技術を要するものでございますが、東京での初測定に成功するなど新聞報道等もなされているところでございます。  昭和六十三年度からは、これらの研究課題としまして九十四件、金額にいたしまして六億二千七百万円の助成を行っているところでございます。
  174. 草川昭三

    ○草川委員 今、文部省ではかなりの金を出して大学の研究を進めておるという答弁ですけれども、もっとその成果を多くの国民に理解できるような積極的な成果の開陳というのですか、PRをやっていただきたいということを要望しておきたいと思います。  今度はまた環境庁の方に問題を戻しますけれども、今月の十七日からオランダのハーグで国連環境計画による国際会議が開かれて、環境庁も出ておると思うのですが、アメリカはその会議において、フロンガスの使用の、生産ではなくて使用の全面禁止と有機溶剤トリクロロエタンの使用規制を提案するというように聞いておるのですが、アメリカはこれらの提案を行ったのかどうか。これは一番新しいニュースですからつかんでおみえになると思うのですが、その点はどうですか、お伺いをいたします。
  175. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 私ども新聞等で拝見しまして、先生お話しの現在の会議においてアメリカ側がそのような話を提案するのかなというぐあいに思っておったのでございますが、現在まで入っております情報によりますと、そういう話を会議の場においての開陳はなかったというぐあいに聞いているところでございます。なお、まだ今後、法律の関連の専門家会合等もあるわけでございますので、これからそういう形のものの開陳があるのかどうか、私どもとしましては、先生お話しございましたように環境庁からも会議に出席いたしておりますので、情報につきましては十分集めてまいりたいというぐあいに考えております。
  176. 草川昭三

    ○草川委員 いずれにいたしましても、アメリカの方は、既にことしになって環境庁にNASAの学者が来て、もっと使用制限に力を入れるべきだ、こういうようなことも言っておるようでございますので、我が国としての対応も十分できるようにしておきたいというように思うわけです。  今問題になりましたトリクロロエタンですけれども、これはウィーン条約において、オゾン層の化学的物理的性質を変化させる可能性のある物質として、条約の中で挙げられているわけですね。ところがモントリオール議定書の規制物質の対象にはなっていないのですね。この理由は一体何か。またトリクロロエタンがオゾン層に及ぼす影響、そのメカニズムについてのどういうような見解を持っているのか、これもお尋ねします。
  177. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 トリクロロエタンについてのお尋ねでございますが、先生もお話しございましたように、ウィーン条約と申しますのは、オゾン層の保護のための適当な措置の実施なり、科学的知見を集積させるための研究及び組織的観測の推進、あるいはオゾン層の保護のための国際的な協力の実施に関する義務等を規定したものでございまして、御指摘のトリクロロエタンにつきましても、国際的に研究や組織的な観測を進める対象の一物質でございます。  モントリオール議定書におきましては、ウィーン条約で取り上げられております物質のうち、オゾン層を破壊する程度や削減措置の適用可能性等を勘案した上で、規制対象物質を定めたものというぐあいに理解いたしております。モントリオール議定書の規制物質の追加といいますことにつきましては、今後の国際的論議の結果によって決定されるものであるわけでございますが、今後、環境庁といたしましては、実際のオゾン層の破壊の状況等についての科学的知見の集積を行うこと、あるいはトリクロロエタンの規制の必要性やその程度についても検討を進めてまいりまして、こうした国際的な議論に参加してまいりたいというぐあいに考えておるところでございます。  それから、トリクロロエタンは、我が国におきましては金属の脱脂洗浄剤などとして一年間に約十二万トンほど使われているわけでございます。我が国におきましては、地下水汚染等の原因物質ということでいろいろ問題になっておるところでございまして、昭和五十九年以降、暫定的な排水基準が定められておるということでございます。それから、大気中にもトリクロロエタンなど各種の塩素系溶剤が検出されているところでございまして、環境庁といたしましては、必要な調査等を行って観測を行っておる状況にございます。
  178. 草川昭三

    ○草川委員 けさの新聞にも、いろいろと洗浄剤の処理についての中間報告が報道されております。オゾン層の保護に関する法律を見てみると、環境庁長官と通産大臣は、特定物質を業として使用する者が排出抑制と使用合理化のために講ずる措置を示す指針を策定するということになっておりますけれども、この指針の策定というのは一体中間報告を経て出すのか、もう既にできておるのか、いつ発表になるのか、お伺いをしたいと思うのです。
  179. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 お答えいたします。  排出抑制と使用合理化の指針に関するお尋ねでございますが、本日の新聞等に載っておりましたものにつきましては、環境庁の方では検討会を設けまして、排出抑制にかかわる指針についてはどのような指針がよろしいのかということについて、専門家の方々の御意見をいろいろ聞いておったわけでございます。その専門家の御意見がまとまりまして、昨日その中間報告といいますか報告書が出されたということでございます。  また通産省におきましては、現在、このフロンの使用の合理化にかかわる観点からの検討をいろいろ行われているわけでございますので、そういう通産省の検討、それから私どもの検討といいますものが、先生方の御意見をいただきながら大体出そろった以降におきまして、私ども立場から申しますと、通産省と十分協議をして年内を目途に、法律に書いてございます排出抑制、使用の合理化の指針といいますものを定め、公布いたしたいと考えているところでございます。
  180. 草川昭三

    ○草川委員 通産省には使用合理化のための指針はちょっと後でお伺いしますが、今言われておりますのは、特にベアリングだとか半導体だとかいろいろな部品の洗浄にフロンを大量に使うわけですけれども、その工程を、シンガポールだとかマレーシアだとかタイあるいは台湾などに工場を移して、そこで作業をしそれを逆輸入をするのではないか、あるいは事実そういう点がある、こういう問題も指摘をされております。  そこで、その議定書では今言いましたような非加盟国からのフロンの輸入というのは禁止をされておるわけですけれども、今回できた法律ではこの措置は定められていませんね、商工委員会で議論のあったのは。法律制定の過程でどのような議論があったのか、これは環境庁に聞きたいと思います。
  181. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 先生も御案内のことでございますけれども、フロンの生産、輸入及び輸出の規制に関しましては通商産業省の方の所管であるわけでございますが、議定書第四条第一項に基づきます非加盟国からのフロン輸入の禁止というお尋ねでございますが、これにつきましては、外国為替及び外国貿易管理法によります輸入の承認の措置の対象となっているわけでございまして、この法律に基づきまして議定書第四条第一項に基づきます措置が担保できると考えておるわけでございます。
  182. 草川昭三

    ○草川委員 今そうだとおっしゃいましたけれども、いろいろなレポートの中には、最近では韓国やインドなど議定書の非加盟国からの輸入というものが非常にふえてきておるというようなレポートもあるわけであります。もしそれがしり抜けになっていくとするならば問題があると私は思いますし、問題は、フロンの使用者における対策が徹底をしないと、フロンの生産あるいは消費の削減というのをせっかく目標を決めて行ってもうまくいかないのではないか、こう思うのですが、その点はどうでしょう。
  183. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 先生の御指摘のとおりだろうと私は考えております。
  184. 草川昭三

    ○草川委員 ぜひ、このフロンの使用について、通産と環境庁はしっかりと話し合いをしていただいて進めていただきたいと思うのです。  そこで、今度は通産省にお伺いをいたしますが、通産省も当然のことながら法律を策定したわけですから、フロンの使用を抑制することに真剣な対応を立ててもらわなきゃいかぬと思うのですね、これは当たり前の話ですけれども。  ところが、過日来私が質問主意書で問題提起をいたしておりますけれども、フロンを使用して製品をつくるわけでありますが、その製品は具体的には我々の日常生活に大変影響のある畳の床なんですね。いわゆる脱わら床。普通の畳というのはわらでございますが、わらではない化学床をつくろう、こういうことで化学畳と一般に言っておりますけれども、フロンを使用してつくられた化学畳について、JIS規格というのですか、JIS規格化をしようとしているわけであります。  私は、オゾン層を破壊するフロンガスを使用して生産されるポリスチレンフォームを素材とする畳床のJIS規格をなぜ急ぐのか、どう考えてもわからぬわけであります。畳の品質管理を目的にJIS化を急ぐという意見があるわけでありますけれども、それは結果としてフロンガスの使用を増加させることにつながると思うのであります。  これは議論すると長くなりますので、通産省にお答え願いたいのは、このJIS規格化を一体いつごろ決めようとしておみえになるのか。十一月中旬ぐらいには決めると言っておられますが、まずその目標をお聞きしたい、こう思います。
  185. 加藤康宏

    加藤説明員 お答えいたします。  ただいま日本工業標準調査会におきまして、通産大臣から御指摘のJIS規格案の付議がございまして、建築部会で審議をするわけでございますが、本件、いろいろな方々の御意見もいただくためにさらに専門委員会を設置いたしまして、昨年来審議をしているわけでございます。御承知のように、一年近くの審議をしているところでございまして、大詰めになってきているとは思いますが、必ずしも十一月ということではなくて、やはり審議会でございますので、審議の推移によりまして明年になったり、多少まだ不確定の要素はあるかと思います。
  186. 草川昭三

    ○草川委員 そこで、これもちょっと前後いたしますが、過日の私の質問主意書に対して政府の方は、いわゆる化学畳床に用いるポリスチレンフォームの生産にフロンガスを使うということは認めたわけですね。全部が全部じゃないけれども、一部そういうものはあります。今の答弁にある専門委員会においても、フロンガスが用いられることの罪、このことがどの程度議論になっておるのかという質問をしましたところ、「法を踏まえた審議が行われている」という答弁があるわけであります。ところが、私なりにその委員会に参加をされている方々に聞きますと、フロンガス使用の問題点、環境破壊に及ぼす影響、これは非常に大きい問題だからこの委員会では議論をしてもらいたくない、あくまでも畳床のグレード、いいか悪いかという議論をするJIS規格の議論をしてもらいたい、本論は大き過ぎるので、この委員会では議論すべきではないではないかということを通産省の方が各委員に言った、こう言うのでございますが、それは正式な会議ではありませんけれども、その点はどうでしょう。
  187. 加藤康宏

    加藤説明員 お答えいたします。  フロンガスによります環境破壊ということにつきましては、全地球的な規模で評価が行われるべきであると思いますし、それを反映いたしまして、ことし五月にいわゆるフロン法が制定されたわけでございます。その法律の規制に基づきまして、引き続き一定量のフロンガスが使用できる、あるいはその範囲においてポリスチレンフォームの生産にフロンを使うこととか、それを使ったものを畳床に使うこともできるわけでございます。また他方、関係業界におきましても、その法律の附帯決議に示されましたように、代替品の開発努力しているというふうに承知をしております。  したがいまして、質問主意書で御答弁申し上げましたのは、専門委員会ではフロン法の規制に従ってポリスチレンフォームが生産され販売される、そういう前提のもとで畳床の審議をしているという趣旨でございまして、地球環境の評価に関するそういう問題につきましては、同専門委員会の検討の対象外と考えているわけでございます。したがいまして、その専門委員会におきましてもそうした審議はされていないということでございます。
  188. 草川昭三

    ○草川委員 質問主意書の答弁と今の答弁はちょっと私は食い違うと思うのですね。要するに私の質問は、フロンガスを使用して生産されるポリスチレンフォーム、これが畳床になる。これを包んだところの畳のグレードを決めるJIS規格をなぜ急ぐのか。JIS規格を急ぐとするならば、ポリスチレンフォームを使った畳床がAというグレードになれば、公団住宅だってそれを採用しますね。そうすると、ポリスチレンフォームがたくさん生産をされるということになる。ということはフロンガスがたくさん使用されるということになる。地球破壊になるじゃないか。だから、少なくとも代替品が出るまでの間は待つべきではないかというのが私の意見なんです。私の立場というのは、代替品ができるまでは待つべきなのになぜJIS規格を急ぐのか、環境破壊に及ぼす影響が大きいんだからこの議論はしたんですか、こう聞いたら、法を踏まえた議論をしているものと思う、こう言う。今の答弁は、フロンガスの話は大きい話だからこの委員会では問題があるからちょっと、こういう話。あくまでもグレードでいいか悪いかの議論をその専門委員会でやる。  これは私は、おたくの課長立場というのはそれでいいと思うのですよ。しかし、今我々が議論しているのは、日本の国全体、国際条約を踏まえた世界の大きな地球破壊という立場から議論しているわけですから、そんな話はほかでやっておきなさいよ、私の方は私の方だというのはJIS規格の精神からいってもおかしいし、またJIS規格も、その他の環境条件等を反映したJIS規格というように常に対応が柔軟でなければいけない、こう思うのですが、その点はどうでしょう。
  189. 加藤康宏

    加藤説明員 フロンの使用の問題につきましては、先ほどの五月にできました法律によりまして全体の製造等に関する規制がされ、さらに使用の合理化等に対しても指導があるわけでございますので、そちらの体系に任せるという立場でございます。
  190. 草川昭三

    ○草川委員 そうすると、もう一歩踏み込んで聞きますが、今専門委員会が開かれて、来月も開かれると思いますね。私が指摘をしたように、とにかくフロンを使用して製造するポリスチレンフォームというもののJIS規格化については早急な結論を出すべきではない、少なくとも代替品ができるまではJIS規格というものを認めるべきではないと私は思うのですが、その点はどうか、これをお伺いします。
  191. 加藤康宏

    加藤説明員 お答えいたします。  まず、JISという規格は強制的な規格ではございません。国の機関につきましてはそれを尊重していただくということになっておりますが、民間におきましてはJISの規格を使う、使わないは自由でございまして、畳の場合はむしろ民間における住宅の方がずっと多うございますので、まず強制的なものではない。したがいまして消費者、使用者そういう方々の需要があれば、そういう製品はJISの規格にかかわらずつくられる。現実にJISの規格がないにかかわらず、現在生産されているわけでございます。  それからもう一点は、先ほど申しましたように、フロンにつきましては法律等で製造等が規制されておりまして、その枠内でしか使用できないという一つの制約がかかっているということでございます。  それからもう一つ、我々がつくっておりますJIS規格につきましては、発泡剤というのは特に規定しておりません。したがいまして、フロンを使っても使わなくても、そういうポリスチレンフォームができればいいわけでございまして、現に一部フロンを使わないポリスチレンフォームもあるわけでございます。したがいまして、今後代替品ができましたとしてもそういう規格は有効でございます。したがいまして、そういうような代替品の製造、代替品によるポリスチレンフォームの製造、そういうものの生産も今後増大するものと期待しておるわけでございます。  以上のようなことを勘案いたしまして、JIS化を見合わせる必要はないものと考えているわけでございますが、先ほども申しましたように、現在標準調査会の委員会で審議中でございますので、その議論を、審議を踏まえて対処したいと思っております。
  192. 草川昭三

    ○草川委員 非常に重要なことですから何回か言いますけれども、確かにJISという規格の認定だけを考えれば今のような答弁でいいと思うのです。それで、現実にフロンを使用しない発泡剤というのもあるわけですから、それはそれでいいのですけれども、私が何回か言うように、今グレードアップというのですか、A、B、Cということになるのかどうか知りませんが、JISで認定されれば、住宅公団であろうとどこそこの町の住宅公社であろうと、化学畳を採用することはふえてくると思いますね、やはりその方が軽いわけですから。だけれども、私どもは少なくとも、少しでも早くフロンの使用をやめさせるべきだ、こう言っているわけでしょう。みんながそれに力を合わせよう。長々と環境庁答弁をとってきたのもそういうことなのです。  ところが、ここで一点、それはそれ、これはこれで、グレードを急ぎたい、そして、そんな大きい話をここへ持ち込んでもらっては困るというのが材料規格課長のお話だと思うのですけれども、まさしく、その場でこのような議論をしないと、いいものはいいじゃないか、とにかくJISを早く認めようじゃないかということになってしまう。それは全体として、せっかく今フロンを規制しようという国際会議もやろう、日本で総理大臣が先頭になってやろうというときに、実は通産省は、フロンを使う化学畳についてはJIS規格を決めて推薦しましたよ、買う買わぬは自由だとおっしゃいましたけれども、やはり公団であろうと何であろうと、公的な住宅はJIS規格以外のものは使いませんね。私はそういうことを思うので、暫時これは延期をすべきだと思うし、フロンの被害というものをぜひこの専門委員会で一回議論してもらいたいと思うのです。大きな基本的な話を長々とやれというのではなくて、ごく常識的な、フロンによるところの環境破壊というものとこれは関係があるよ、それでもやりますか、こういう前提で話を決めてもらいたいと思うのですが、その点はどうですか。
  193. 加藤康宏

    加藤説明員 お答えいたします。  繰り返しになりますが、我々が事務局をしております専門調査会にはそれぞれ目的がございます。しかしながら、草川先生の御指摘もございますので、専門委員会の先生にはこういう御指摘があったという御紹介はさせていただこうと思います。
  194. 草川昭三

    ○草川委員 ぜひ、そのようなことを踏まえて議論していただきたいと思うのです。  そこで、ついでながら、ポリスチレンフォームを中心とする畳床というのはこういうものなのです。このサンドイッチになっておるのがフロンを使ったポリスチレンフォーム、そしてこの横にありますのは、おがくずのようなものですが、インシュレーションファイバーボードというもので、サンドイッチにしまして、これを畳表を入れまして化学畳と称しておるわけですが、非常に軽いわけですよ。だから、住宅公団だとか東京都の住宅供給公社なんかも、非常に運びやすいものですから入れるということです。ただ、これが非常に弱いために、この上にたんすなんかを置きますと畳が非常に崩れる。だから通産省の方はJISを急ごう、こういうわけなのです。趣旨はそういうことなのですよ。ただ、私の方は、この中身がフロンさえ使わなければそれは自由なんだけれども、また日本の古来からの畳床というのは健康にもいいのですが、それはきょうは別といたしまして、そういう議論をしてくれと言っているのです。  消防庁にお伺いをいたしますが、これが非常に難燃性だということを言われておるのですけれども、実際は、例えばたばこの火を落としますと、もぐさのようになってずっとこれが燃えていきまして、そして難燃性だというものの、お互いの特性が集約されましてぼっと火がついてしまう、防火上非常に危険ではないか、こう言っておるのでございますが、消防庁はその点をどのように把握をしておみえになるのか、お伺いしたいと思います。
  195. 海老忠彦

    ○海老説明員 お答え申し上げます。  建物の火災の際に、その中に収容されておりますところの建材あるいは家具、衣類等の可燃物が燃焼することによりまして、煙を初めとして、燃焼生成物というふうに呼んでおるわけですが、これが発生をするわけでございますが、その種類とかその量といったようなものにつきましては、そのときどきの燃焼条件によって当然のことながら変わってまいるわけでございます。いずれにいたしましても、火災によりまして発生をするこういった燃焼生成物の中に含まれますところの燃焼生成物のガスの毒性の問題といったようなものにつきましては、一般的に留意すべき事柄であるというふうに私どもとしては考えておるところでございます。
  196. 草川昭三

    ○草川委員 今のは、わかりやすく言うならば、煙については注意をしなければいけない、こういう答弁だったと思うのですが、そのとおりだと思うのです。  それで、ちょっと時間が過ぎてきましたのであれでございますが、この化学畳を使い捨てたときに一体どういう処置になるか。今、私これをたまたま机に置きましたけれども、このインシュレーションファイバーボードというのは物すごくこれはほこりなんですよ、委員部の人に迷惑をかけますけれども。これをどこへ捨てるかということですね。当然のことながら私が捨てれば一般廃棄物ですよ。畳屋が捨てるならば産業廃棄物ということになりますね。あるいは公団がまとめて排出をするならばこれも産業廃棄物ということになりますが、畳でありますから、それが大量に市町村の焼却工場で処理をする場合にかなり問題が出てくるのじゃないかと私は思うのです。これはもう純粋な一般論という形で結構でございますから、厚生省に、仮にこのような大量の化学畳を市町村の焼却工場で処理する場合は問題はないのか、こういう質問をしたいと思うのですが、どうでしょうか。
  197. 藤原正弘

    ○藤原説明員 先生指摘のように、事業者がこのようなものを排出いたしますと、法律に基づきましてこれは産業廃棄物になるわけでございます。仮にこれを市町村の焼却場に大量に持ち込んだというふうな場合はどうなるかという御指摘でございますが、市町村の焼却工場で大量にこういうものを焼却いたしますと、燃焼温度が一定以上に高くなりますので、炉材の損傷、それからクリンカーの生成、窒素酸化物の発生などがありまして、焼却工場内,の円滑な運転が阻害される場合があるというふうに考えております。
  198. 草川昭三

    ○草川委員 今もお話がありましたように、一部のところでは化学畳はもう困るという状況もあるわけであります。でございますから、私どもはそういうことも踏まえまして議論をしていきたいと思うのです。  ここで、建設省お見えになっておられますが、建設省は、今のような議論を聞いて、今後化学畳についで、特にフロンを使用して製造する化学畳を今後とも採用するのか、あるいは各市町村の住宅供給公社等があるわけでありますが、どのような指導をされるのか、お伺いをしたいと思います。     〔魚住委員長代理退席、委員長着席〕
  199. 曾根啓介

    ○曾根説明員 お答えいたします。  化学畳の採用につきましては、住宅・都市整備公団におきましては、現在のところ、日本工業規格に定められました畳床を採用しておるわけでございます。現在、わら畳のほか、一部の住宅につきまして、先生指摘の化学畳につきまして、ポリスチレンフォームサンドイッチ畳床を採用しておるわけでございます。  今後につきまして、従来と同じように、日本工業規格に定められております畳床を採用していくこととしているというふうに聞いております。
  200. 草川昭三

    ○草川委員 ちょっと念のために、もう一回私の質問を聞いていただきたいのですが、我々が今ここで議論をしたフロンを使用して製造する化学畳が今の規格に当てはまるならば、フロンを使おうと使うまいとどんどん採用するということを言っているのか、もう一度お尋ねしたい。私は要するにフロンをという前提がありますから。
  201. 曾根啓介

    ○曾根説明員 先生指摘の点もございますので、その点につきましては留意いたしまして、今後適切に対応していきたいというふうに考えております。
  202. 草川昭三

    ○草川委員 ぜひ検討していただきたいと思います。  そこで、いろいろと議論をしてきたわけですけれども、国民の健康と暮らしを守るためには、環境保全に役立つ商品というものを政策的に環境庁が推薦をしていくことが必要ではないか、そういう時期が来たのじゃないかと思うのです。  消費生活上、環境保全意識の高揚を図るためにエコロジーマークというのですか、この実施が急がれるべきだと思うのですが、展望はどうかということです。  私、たまたま手元にスプレー、これはドイツですけれども、ここに国連のマークのようなマークをつけているわけですね。だから、これにはフロンは入っておりませんよということのスプレーですけれども、消費者としては、ここにエコロジーマークというものがあれば、これは安心をして環境破壊につながらないものだといって使用する。スプレー以外にもたくさんあると思うのですけれども、そういうことについてまず政策的に推奨すべきである。これはたまたま西ドイツの例でありますが、国際的な動向はどうなっているのか、お伺いしたいと思います。
  203. 安原正

    ○安原政府委員 環境保全型の商品の推奨の問題でございますが、国際的にはOECDでこの問題が取り上げられておりまして、昭和五十四年のOECDの環境大臣会合におきまして、各国が環境保全の商品の使用を促進させるようということで、予見的環境政策に関する宣言というのを出しております。また、個別の分野におきましても理事会勧告がございまして、例えば騒音低減とか古紙回収等の分野で、環境保全型商品の表示を利用して普及促進をすべしというような理事会決定が行われておるわけでございます。  実際にその事業を実施しております国としましては、先生今御指摘のとおり西ドイツがやっておりまして、一九七八年でございますから、五十三年から環境保護マークという事業として実施をいたしております。
  204. 草川昭三

    ○草川委員 今七八年からやっておるといいますが、ただいまの現状で西ドイツはどのような商品、例えば品目がたくさんあると思うのですが、そのうちの二、三主なものを紹介をしてもらいたい、こう思います。
  205. 安原正

    ○安原政府委員 西ドイツの事業におきましては現在五十品目を決めておりまして、商品の数にいたしますと約二千を超えることになっております。二、三の例といたしましては、例えば今御議論がございましたフロンを噴射剤として使用しないスプレーがございますし、あるいは再生紙を使用しましたトイレットペーパーとかノート等が対象品目になっております。
  206. 草川昭三

    ○草川委員 今西ドイツの例が紹介をされましたけれども、一番最初に質問をしましたように、日本は国際会合をやろう、こういうところまできているわけですから、代表的なものだけでもいいですから、環境庁は積極的にエコロジーマークの実施を図るべきだと思うのですが、現状と展望についてお伺いをしたいと思います。
  207. 安原正

    ○安原政府委員 エコロジーマークにつきましては、六十二年度環境庁委託によりまして、日本環境協会の方で、そのあり方につきまして調査をいたしまして、報告書にまとめてもらっております。私どもとしましては、この報告書を踏まえまして、できるだけ速やかにエコロジーマーク事業を実施したいと考えております。現在、その準備に当たっているところでございます。具体的には、ただいま日本環境協会の方でマークのデザインの、公募をやっておるところでございます。  他方、暮らしと環境に関する研究会を設けまして、その場で、今後このエコロジーマーク商品としてどういう対象品目を取り上げていくべきか、そこいらの基準的なものについて御議論もいただいておりまして、近くその中間報告をいただくことになっております。それを踏まえまして、その対象品目の選定あるいは実施の具体的方法につきまして、日本環境協会の方が中心になりまして固めをやっていただくことになっている。それによりまして、来年のできるだけ早い時期に実施に移したいと考えておる次第でございます。
  208. 草川昭三

    ○草川委員 ここで、本当はアスベストの使用規制と代替品の問題について質問をしなければならぬ、予告もしたのでございますが、時間がありませんので、建設省の方には申しわけございませんけれども、それは十一月一日の次の委員会に回すことにいたしまして、最後になりますので、環境庁長官に、これだけの議論をしておるわけでございますし、地球規模の大気汚染対策への積極的な取り組みについての長官の決意をお伺いしたい思うのでございます。  特に、先ほどのトロント・サミットの宣言もございますし、一九九二年に見込まれています国連の人間環境会議の二十周年の記念会合もあるわけでございますから、長期的な展望を立て、また、今答弁がありましたように国民の皆さんにも理解がいくようなエコロジーマーク等のわかりやすい対策、あるいはまた広く産業界あるいは国民の協力を得るような対策を立ててもらいたいと思うのです。また諸外国にも、ODA予算があるわけでありますから、日本のノーハウというのですか、ソフト技術というものを積極的に活用するようお願いしたいということを要望して、最後に長官の決意をお伺いをして、質問を終わりたい、こう思います。
  209. 堀内俊夫

    ○堀内国務大臣 地球環境についていろいろな懸念がございます。先ほども申しましたように、アメリカへ参りますと、トーマス長官は、今度の大統領選挙には環境問題について一つのテーマになっているという話を聞きました。また、この間ECの事務局長に会いましたそのときには、先進工業国で、特にソビエトのゴルバチョフ書記長が非常にこの問題に関心が深いということを強調されておりました。また、さきに総理が日中平和条約十周年記念で訪中されたときに、その記念事業について李鵬首相から、環境問題についての記念事業をしてほしいというような希望もあり、その経歴を見ますと、非常に環境問題についての知見をお持ちの方のようであります。そういう意味からいっても、現在、世界の洋の東西を問わず、環境問題については非常に御心配をいただいておる。そういう意味からいうと、我が国が環境問題について、特に地球的規模の環境問題について貢献する最もいい時期だと私は考えておるのであります。  特に、さきに国連の世界委員会で持続的開発という知見が出されまして、それにおいて、私の諮問機関であります地球懇では、ことし、どういうふうに今後の対策を講ずるべきかという基本的な見解が出されました。我が方としては、この報告書をもとに、いかにして我が国が地球規模の環境問題に貢献するかというテーマのもとに、一致協力してこれから進めていきたいと考えているところでございます。
  210. 草川昭三

    ○草川委員 以上で終わります。
  211. 野中英二

    野中委員長 古川雅司君。
  212. 古川雅司

    ○古川委員 極めて短時間でございますが、私は、先端技術にかかわる環境汚染などについて若干質問をいたしたいと思います。  初めに、ハイテク産業にかかわる環境汚染のキーワードの一つにテトラクロロエチレン、トリクロロエチレンがございます。いわゆる有機塩素系の溶剤でございまして、ドライクリーニングであるとかメッキ工場、そしてまた半導体工場で使われているわけでございます。  こうした二種類に限らず、有機溶剤による健康被害というものがあるいは労働災害として多く報告をされているわけでございますけれども、体内に蓄積して肝臓、腎臓障害や中枢神経障害を起こすほか、ごく微量でもがんを引き起こしやすい、そういう疑いもかけられております。厚生省では既に昭和五十八年の秋からそうした指摘をいたしておりますが、環境庁のお調べによると、全国の地下水にこれらの物質の汚染がかなり広まっているという調査をなさっておりますが、その調査の実態について、最初に御説明をいただきたいと思います。
  213. 岩崎充利

    ○岩崎政府委員 トリクロロエチレン等によります地下水汚染につきましては、五十七年度と五十八年度環境庁が実施した地下水汚染実態調査の結果におきましては、全国にわたり広範な汚染が判明いたしております。五十九年度以降、各地方公共団体が行いました地下水汚染の実態調査の結果から、六十一年度までの三年間で約一万二千本の井戸をやっておりますが、トリクロロエチレンで三・三%、テトラクロロエチレンで三・六%、1・1・1トリクロロエタンで〇・一%の井戸で水道水の暫定水質基準を超える濃度が検出されております。
  214. 古川雅司

    ○古川委員 極めて概括的な御報告であったわけでございますが、申すまでもなく、こうした先端技術というのはもう日進月歩どころではない、大変な進歩を遂げている時代でございます。したがって、数年前の調査の実態というものもまた大きく変貌しているのではないかと考えられますし、地下水への影響ということも心配をされますと同時に、先ほど来御議論のありました、例えばフロン113といった有機塩素系の溶剤のほかにも、三塩化硼素あるいはシアンあるいはホスフィン、四塩化珪素、そうした百数十種類に及ぶ特殊ガス、その大半が有毒ガスだと言われておりますが、そういったものが今の先端技術の中に使われている。そういったものの環境汚染、環境への影響についてその後追跡調査は続けられているのかどうか、実態がどこまで明らかになっているのか、その点はいかがでございますか。
  215. 岩崎充利

    ○岩崎政府委員 私どもが今調査いたしておりますのが、先ほど申しましたようにトリクロロエチレン等の三種目を中心調査しているということでございまして、水質関係の調査を今申し上げたような形で調査している、こういうことでございます。
  216. 古川雅司

    ○古川委員 大気の方はいかがですか。
  217. 安原正

    ○安原政府委員 私の方から、IC産業環境保全実態調査環境庁を初め厚生省、通産省、労働省で合同で調査をいたしましたので、その結果につきまして御報告申し上げたいと思います。  調査いたしました内容は、全国のIC工場におきまして、使用化学物質あるいは排出防止技術につきましてのアンケート調査という形でやっております。さらに、そのうちのICを一貫してやっておりますIC一貫工場十工場を選定いたしまして、この工場につきましては大気、水質、廃棄物処理、作業環境、これらの項目について実態調査を行ったわけでございます。  その調査の結果から見ます限り直ちに対応を要するような問題は特に見出されなかったということでございますが、各工場における処理施設の維持管理等に今後とも万全を期す必要があるというのが結論であったわけでございます。
  218. 古川雅司

    ○古川委員 ただいま御答弁のありましたIC産業環境保全実態調査検討会の皆様による調査の結果について、これは昨年の六月二十九日に発表なさったものを私も拝見しているわけでございますが、これは各企業に対してアンケートという形をとって実態の調査をしていらっしゃる。これは地下水の汚染に及ぶ問題あるいは大気汚染にかかわる問題、いずれについても言えることでありますが、こうした有害物質について調査をしていく、実態を明らかにしていく上で、先ほど申し上げました大半が有害であるガス、そうした物質についてほとんどが未規制、規制ができない、規制をしていない物質ではないか。あるいはアンケートという調査の方法にも物語られておりますようにいわゆる企業秘密、トップシークレットに属することが極めて多くて、実態を深く掌握できない、そういう姿があるのじゃないかということをまず考えるわけでございますが、これはせっかくの御調査ではございますけれども、その辺についてはどのようにお考えでございますか。
  219. 安原正

    ○安原政府委員 確かに企業秘密の問題があるわけでございますが、環境庁といたしましては、先端産業等における環境問題の未然防止の見地から、できるだけ情報を把握する必要があるということで努力をしておるわけでございます。  例えば、ICとかファインセラミックス等の分野におきまして、関係業界の協力も得て使用化学物質の種類、処理方法等の技術情報を計画的に収集・整理いたしまして、これを逐次地方公共団体に提供しておるところでございす。さらに、これは全体の業界の情報でございますが、個々の事業所ということになりますとそれぞれの地方公共団体で対応していただくことになるわけでございまして、環境庁の情報を踏まえながら、各地方公共団体で、各事業所に対してアンケート調査等の方法により必要な情報の把握に努めておるということでございます。  環境庁といたしましても、地方公共団体との連携をとりながら必要な情報収集の把握に努めてまいりたいと考えている次第でございます。
  220. 古川雅司

    ○古川委員 環境庁のお取り組みは、特にハイテク産業ということになりますと通産省とのかかわりも非常に深いと思います。通産省にもきょうおいでいただいておりますが、アメリカのシリコンバレーの教訓から化審法、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律がかつて改正をされたわけでございますが、これもまた先ほど申し上げたとおり、科学技術、ハイテクの日進月歩の勢い、そうした実態に果たしてついていっているのかどうかという心配もひとつあるわけでございますが、改正後、いろいろ今日の地下水汚染、そしてまた大気汚染がさらに進んでいる中にあって、通産省御当局としてはこの化審法の現状をどう掌握をしていらっしやるか、問題点をどうとらえていらっしゃるか、その辺をひとつお答えいただきたい。
  221. 橋本正義

    橋本(正)説明員 化審法におきましては、当初法律の制定のときにおきましては、分解性、蓄積性並びに長期毒性という観点から、分解性が悪くて蓄積性が高くて、かつ、長期毒性の疑いがある場合におきましては、特定の化学物質というようなことでこれを規制する、こういうようなことでやっておりましたが、その後各種の知見、さらに濃縮性におきまして、特に濃縮性が低いということにおきまして、環境に大量に放出されますと人間の健康に害を及ぼすおそれがあるという場合もあり得るのではないかということから、法律が改正されまして、昨年の四月その新法が改正施行されたということになっております。したがいまして、その改正に伴いまして指定化学物質制度というものが新たにできております。これは、先ほど申し上げましたとおり、分解性が悪くて長期毒性の疑いがあるわけですが、特に濃縮性が低いというものでございます。これにつきましても、その後指定化学物質制度をつくりまして所要の規制を行っているところでございます。
  222. 古川雅司

    ○古川委員 非常に単純にお伺いをいたしますと、シリコンバレーのような事故、そうした非常に異常な事態というのは日本の先端産業においては起こり得ないという御認識なのかどうか。そしてまた、この化審法の改正によっていろいろ対処をされてまいりましたけれども、その後事故というのは起こっていないのかどうか、その辺をひとつはっきりさせておいていただきたいと思います。  なおかつ、この化審法、その後今日の技術水準に至るまでに問題点は生じていないかと今私はお伺いをしたわけでございますが、もうちょっと明確に、例えば、その第三条、新規化学物質の製造または輸入にかかわる届け出の省令の第二条等によって、これは届けることになっておりますが、一トン以下の製造、輸入については届け出を要しないというふうになっている。そういった点に問題はないのか。  あるいはまた、これもシリコンバレーの事故の教訓の一つでありますが、地下のポリタンクの破壊、漏出があったわけでございますけれども、そういった点は日本について果たして実態をよく掌握しているのかどうか、そういった心配は今後ともに起こり得ないのかどうか、これも一つの問題になります。  化審法による審査というのは届け出後三カ月でありますけれども、これもあくまでも企業側の資料によるものでありまして、資料の審査を行う当局の方の能力と申しますか、それに対応する対応力というものが一体どこまできちんと整備されているのか、その辺も含めて問題があるというふうに指摘をされております。その辺はいかがでございましょうか。
  223. 橋本正義

    橋本(正)説明員 先生からただいま御指摘がありました化審法第三条に基づきます新規化学物質の製造等の届け出、これは御指摘のありましたとおり三条に基づいて届け出義務が課せられているわけですが、先ほど先生がおっしゃいましたとおり、一トン以下のものにつきましてはこの限りでないということで除外されております。ただし、この除外されておるものにつきましても、これは少量新規化学物質制度というものでございまして、この制度は、一年間の製造数量と輸入数量の合計が一トン以下の化学物質、こういうものを新たに製造または輸入しようとする事業者は、厚生大臣及び通産大臣に申し出を行っていただきまして、さらに次の二点が確認された場合に製造または輸入することができる、こういう制度になっております。  その二点とは、その新規化学物質の一年間の製造数量と輸入数量の合計が日本全国で一トン以下であることという点が一点。もう一点は、その新規化学物質について、既に得られている知見等から判断いたしまして、その新規化学物質による環境の汚染が生じ、人の健康を損なうおそれがないこと、こういうことになってございます。  したがいまして、両大臣が確認行為を行うに当たりましては、環境汚染等が生ずるおそれの有無について、事前に当該分野の専門家の意見を徴し、慎重に行っておるということでございます。また、このような少量新規化学物質に対する簡易な届け出制度というものは、欧米におきましても採用されているところでございます。
  224. 本田幸雄

    ○本田説明員 シリコンバレーの地下汚染はIC工場の地下ポリタンクからの漏出が原因でござ小ましたが、日本のIC工場におきましては、使用済みの有機溶剤を地下に貯蔵している例は少ないものと承知しております。地下に貯蔵タンクを設置する場合にありましても、トリクロロエチレン等適正利用マニュアルというものを今つくってやっておるわけでございますが、この内容に従いまして厳重に使用済み溶剤を管理するよう従来から指導しているところでございます。
  225. 古川雅司

    ○古川委員 この問題、最後環境庁長官にお伺いをいたします。  実際問題として、先ほど挙げましたテトラクロロエチレン、それからトリクロロエチレン、これらを代表といたしまして地下水汚染というのはどんどん進んでいるわけでございます。フロン等の大気汚染につきましては先ほど草川委員からいろいろ指摘のあったとおりであります。  私は、先ほど質問の中で、この化審法の改正等によって対処しながら、なおかつ、その後事故はなかったのかと伺ったんでありますが、その御答弁はありませんでした。  大臣、これは御承知のとおり、既に日本においても兵庫県の太子町、滋賀県の八日市町、安土町、東京の多摩川流域、そういったところで実際にこういう問題が起こってきているわけでございまして、いわゆる企業のトップシークレット、それを越えてさらに実態を明らかにしていくということも非常に厳しい面はあると思いますが、また企業としても、決してそうした汚染を進めようとして事業に取り組んでいるわけではございませんから、当然環境庁あるいは通産省に対しても協力があってしかるべきだと思いますけれども、要はこの化審法等の処置、さらに問題は、このハイテク産業の環境汚染というのは半導体産業ばかりでないわけであります。こうしたものをチェックしていく御当局の環境庁なり通産省、あるいは水質とかそういった面では厚生省もかかわってまいりましよう。そういった面での要員というのは十分なのか。これからどんどん進んでいくこういう環境汚染に対して十分対応し切っていける、そういう要員を持っていらっしゃるのか。その点を確認をいたしておきたいと思います。大臣によろしくお願いいたします。
  226. 堀内俊夫

    ○堀内国務大臣 先ほど来いろいろ議論を聞いておりまして、完全にそれをしのぐということはほとんどありません。今までの事故の経緯を見ましても、ほとんど人為的なミスであります。そういうことは、人間というものが完全でないということであって、いかなる場合でも人為的ミスが起きるという前提に立ってこれらの問題に対処しなければならないなど私は月ごろから思っております。  そういう意味から考えて、いわゆる人為的ミスが起きるという前提のもとにあらゆる対策を講ずるべきだと考えております。特に、地下汚染が問題になっておるそういう過去の経緯があって、フロンが発明されてきたというわけでございますが、このフロンが今日の問題としては大変な問題になってくるとまた逆戻りしてくる、こういうことになると、地下汚染の懸念はこれからますます深くなる可能性も御指摘のようにあるわけでございます。  そういう意味からいって、法整備を含めてこれらのモニタリング、監視の強化をするとともに、対策を十分講じていかなければならないと考えております。
  227. 古川雅司

    ○古川委員 科学技術庁長官においでをいただいております。残りわずかな時間になって大変恐縮なのでございますが、二点ほどお伺いをいたしておきます。  一つは、青森県の六ケ所村の核燃料サイクル基地の問題でございますが、地元では大変な大きな騒ぎになっておるようでございます。いろいろ視点はあると思いますけれども、ただ気になりますことは、安全性に懸念が持たれているということはいろいろ言われておりますけれども、その建設予定地に断層帯が存在するということが報道されておりまして、これまた新しい不安の材料になっておるわけでございます。これは科学技術的にどのように掌握をし、また対応をしていかれることでございましょうか、それが一つでございます。  もう一つは、これまた最近の大きな話題になりましたプルトニウムの海上輸送の問題でございます。これも非常に大きな問題になりました。時間がありませんので細かいことは申し上げかねますが、いずれにいたしましても、いわゆる海上輸送に伴いまして、武装した船による護衛を条件にしているという点が非常に大きな問題点になっております。これはさらに、海上保安庁の巡視船の強化、新装備というようなこともあわせて議論をされているわけでございますし、これから先の問題点になると思いますけれども、いずれにいたしましても、空輸、それにまた海路輸送、その両面を進めていく中で、まずまずの安全性の追求、そしてまた、海上輸送が通常化することによって護衛という問題がさらに伴ってこれから進められていくわけでございますが、海上保安庁、すなわち運輸省等の方とも詰めを急いでおられると思いますが、その辺の現状について御説明をいただきたいと思います。
  228. 村上健一

    ○村上政府委員 六ケ所村の件について御答弁申し上げます。  六ケ所村の再処理工場につきましては、御案内かと思いますが、現在まだ事業者の方で、原子炉等規制法に基づきます事業指定の指定を受けるための申請書を作成している段階でございます。したがいまして、現在まだ国といたしまして審査を行っていない段階でございますので、敷地内に断層があるかないか、またはあるとした場合に安全上支障があるのかないのかという判断は、まだ当然のことでございますが下しておりません。  いずれにいたしましても、今後申請がなされました場合には、法令、それから内閣総理大臣の諮問委員会でございます原子力安全委員会が定めました審査指針等に基づきまして安全審査が進められるわけでございますが、例えば先生指摘の断層につきましては、立地地点及びその周辺の相当な範囲について活断層の有無、活断層がある場合にはこれを起因とするいろいろな評価を行いますとともに、また、地震等によって断層が動きまして施設に直接悪影響を与えないか等の地盤の安定性などに関する評価を行いまして、厳正な審査で臨むつもりにしております。
  229. 平野拓也

    ○平野政府委員 プルトニウムの海上輸送の点につきましてお答えを申し上げます。  御案内のとおり、新しい日米原子力協定によりまして、プルトニウムのイギリス及びフランスからの輸送につきましては行空輸送、それから今回のアメリカ側との合意によりまして海上輸送、この二つの道が開けたわけでございます。いずれの方法をとるかということにつきましては現在政府部内において検討しているわけでございますが、現時点におきまして、プルトニウムの輸送までまだ若干の日にちがございますので、その間に政府部内において慎重に検討して、いずれの方法をとるかということを決めてまいりたいと考えているわけでございます。  その際、海上輸送の道をとるということになりますと、委員指摘のとおり護衛船の問題が出てまいるわけでございます。これにつきましても、現在政府部内におきまして、海上保安庁等も含めまして、いかなる形態でこれを実施すべきかということについての検討を進めておる、かような段階でございます。
  230. 古川雅司

    ○古川委員 科学技術庁長官から、この海上輸送の問題ですが、これから詰めを急がれるということでございますけれども、先ほども申し上げましたとおり、海上保安庁の行動範囲が大きく広がるというようなことで、これは今後大きく議論がさらに広がっていく問題だと思いますけれども、技術庁御当局としては、空か海かというその選択の中で、今後海上輸送ということになりますといろいろそういう障害も出てくると思うわけでございます。それを乗り越えて、かつ、長官としてはどのような方向性でこれから検討を詰めていかれるのか。運輸省との、また内閣全体との御検討の方向もありましょうけれども、大臣の御見解を伺って、質問を終わりたいと思います。
  231. 伊藤宗一郎

    ○伊藤国務大臣 今政府委員からも答弁をさせていただいたとおり、今海上輸送のあり方につきまして政府部内で検討中でございまして、その場合海上保安庁にお願いをするかどうかにつきましても、海上保安庁、運輸省とも今折衝中でございます。そしてまた、今委員指摘のとおり、そういう護衛船が、海上保安庁にお願いするとするならばその護衛船は今のところ手持ちでないわけでございますので、その船をどうするのか、その予算面の負担の問題をどうするかということもこれから検討してまいりたいと考えております。  幸い、プルトニウムの海上輸送につきましては、委員も御承知のとおり、昭和五十九年に動力炉・核燃料開発事業団がフランスから日本まで安全に輸送を行った実績がございます。今後イギリスまたはフランスからこのプルトニウムを海上輸送する場合には、この昭和五十九年の経験をなおそしゃくしながら、さらに安全性を高めながら、安全に十分に行うことができるものと考えておりますけれども、その実施に当たりましては、日本だけでなしに関係国の法令にも従いまして、安全の確保に万全を期してまいる所存でございます。
  232. 古川雅司

    ○古川委員 終わります。
  233. 野中英二

  234. 岩佐恵美

    岩佐委員 先ほど、環境庁長官尾瀬に行かれましたかという御質問に対して、まだ行っておられないということでございましたけれども、私はことしの十月の初めに尾瀬に行ってまいりました。いろいろ視察をしてまいったわけでございますけれども、その観点から幾つか問題を提起をしたいと思います。  最近環境庁が尾瀬について調査を行ったということでございますけれども、この調査の内容について具体的に御説明をいただきたいと思います。
  235. 山内豊徳

    山内政府委員 本年の調査はまだ実施中の面もございますが、大きなねらいはやはり尾瀬全体の利用のあり方、特に排水処理の面につきまして基本的な資料を得るための調査でございまして、来年度においてもまたがって行わなければならないと考えております。  当面、ことしの調査一つのポイントは、秋季の利用の入り込み者数を調べることでございますとかあるいは、ある程度既にわかっていることもございますが、現在の木道の整備状況とか排水処理施設が現在どういう状況になっているかということ、なお、できれば旅行業者などからことしあたりの実績を聞きまして全体的な利用の実態把握をしたい。それから、過去に行われました排水処理対策の計画面での比較検討などを今年度の重点に置いておりますが、なお、今申しましたように、来年度におきましても春の時期、夏の時期の入り込み者数の調査も含めまして引き続き取り組んでまいりたいと考えております。
  236. 岩佐恵美

    岩佐委員 この間尾瀬に伺いましたときに、利用者はどのくらいなのですかというふうにお伺いしたら五十万から九十万人と、利用者の数だけでも大変大きな推測の幅があるわけです。ですから、今やられている調査は大変重要だと思います。特にミズバショウの時期に利用者が集中をするということでございますので、ぜひ引き続き取り組んでいただきたいというふうに思います。  今行なっている調査ですけれども、これはいつごろ発表になるのでしょうか。
  237. 山内豊徳

    山内政府委員 ただいま申し上げましたように、ことしと来年にまたがっての調査でありますことと、調査の結果を独立に発表することを目的としますよりは、今後の尾瀬の保全対策に役立てるというつもりでございますので、明年度を含めましてできるだけ早い時期に取りまとめて、むしろ、具体的な保全対策を打ち出す中で調査の結果についても明らかにさせていただきたいと考えております。
  238. 岩佐恵美

    岩佐委員 尾瀬の植生の変化として、湿原の乾燥化、それからお化けミズバショウ、私も見てまいりましたけれども、コカナダモといういわゆる外来植物の侵入、こういうような汚染が指摘をされているわけでございます。こうした環境汚染が恐らくオーバーユースから来るのだというようなことが言われているわけですが、そういうこととの困果関係を含めて学術的な総合調査をもっとやっていく必要があると思います。  さらに、東京電力が尾瀬沼から水を取って、本来尾瀬沼の中は尾瀬ケ原を通って福島県側に流れるわけですけれども、それをトンネルでもって抜いて群馬県側に現在流しているわけです。取水を行っている。この取水の量をちょっと調べてみて驚いたのですけれども、一九八四年から八七年の四年間で尾瀬沼への流入量は七千万トン強ありますけれども、これに対して東電の取水量は約六千百万トンとかなり多くて、流入量の八七%にも達しているわけでございます。そして、一九八〇年から一九八七年の八年間をとってみますと、一億六千九百万トンの流入量のうち、一億五千八百万トンの取水量、つまり、取水が九三%にも達しているわけでございます。こういうことになりますと当然尾瀬ケ原へ水が行かない、これが乾燥の原因になっているんじゃないか、こういうようなことを指摘されているのももっともなのかという点もあるわけでございます。尾瀬沼も取水によって年間水位が三メーター上下する、こういう指摘もされておりますし、このような水の問題についても今後調査をすべきだというふうに思います。  先ほどのオーバーユースと環境汚染との因果関係についての調査あるいは水の調査、こういう点について環境庁として今後どういうふうに対応されていかれるのか、お伺いをしたいと思います。
  239. 山内豊徳

    山内政府委員 ただいま尾瀬沼からの取水を一つの例といいますか、基本的な問題として御指摘になったわけでございます。  確かに先生のお手元の資料でもそのような計算かと思いますが、ごく最近をとりますと、これは雨量の関係もあるようでございますけれども、大体流入量の七割ぐらいの時期も続いているようでございます。それはそれといたしまして、先生の御指摘は、そういったことが例えば尾瀬ケ原などにも影響があるのではないかという観点の御指摘と思います。  この湿原のメカニズム自体にはかなり私どもとしても未解明の部分があることは認めざるを得ないのでございますが、反面また、いろいろな地元自治体あるいは公私の団体において、既にそういった生態についてのいろいろな調査結果をお持ちになっている面もございます。私が先ほど冒頭に申しました今年、来年にかけて行います調査は、もちろんそういったことを配慮しないというわけじゃございませんが、やはり何か当面の具体的な保全対策に役立つ形のものを急ぎ取りまとめるということで、実はこれは大臣からの指示もございまして、余りだらだらとやるのではなくて、ことしから緊急に取り組んではどうかという御指示もございまして、具体的な排水処理対策に結びつくものを中心にと思っております。  ただ、御指摘の点、生態的なメカニズムを解明することはもちろん大事なことでございますので、この調査の中身ということではなくても、あわせて十分重点を置いて考えていきたいと思っております。
  240. 岩佐恵美

    岩佐委員 そういう長期的な観点に立って、そういうことも視野に入れながらぜひやっていただきたいと思います。  現地を伺ってもう一つ感じたことは、調査もさることながら、すぐにやってもいいのではないかということも幾つか気がつきました。それは自動車の規制なんですけれども、現在、土・日・祝祭日にはマイカー規制が行われているわけでありますが、これはマイカーが規制されているだけで観光バスは規制されていないのです。マイカーが規制されていないものだからかえって観光バスがすいすい入るということで、観光バスの台数が非常にふえてきていて、結局入山者がふえてしまう、そういう問題があって、観光バスの規制もあわせてやってほしいのだというような現地の意見もございました。  それから、山小屋とかキャンプ場の生活雑排水やトイレの問題、そういう汚水の処理の問題ですが、現在、環境庁もあるいは山小屋の皆さんも当面の対策ということでいろいろ知恵を働かせて工夫を凝らし、現実に環境庁は実験も行っているということで、その点はその点で大変評価できると思うのですけれども、やはりもうちょっとキャンプ場をきれいにするとか、それから山小屋の裏の方をもうちょっときれいにするとか、訪れた方々が目につくというようなことが幾つか指摘をされている。これはお互いの努力の中で解決することができる問題ではないかと思うのです。その点ぜひ早急に取り組んでほしいというふうに思いますが、いかがでしようか。
  241. 山内豊徳

    山内政府委員 まず交通規制の問題でございますが、観光バスを規制するかしないかということは、確かに御指摘のように、マイカーを規制してある区間観光バスなら乗り入れられるということで、お客様の量からいいますと、実はマイカーで渋滞するよりはたくさんの人が入れるような結果にもなっております。ただ、この点は当面のこととして御指摘でございますが、なかなかこれが一番難しいところかと思います。しかし、その点は十分念頭に置きながら今回の調査にも含んでいるつもりでございます。  二番目に御指摘のあった点、実はこれは一般的に御指摘でございますが、環境庁が直接所管しておりますキャンプ場などでも、ごらんいただいて、何かため升の清掃ぐらいもう少しやれないかという御指摘もあったようでございますので、まさにできることから手をつけることはぜひやりたいと思っております。ただ、これも御案内のように、尾瀬沼の方には電力も引いてあるので割合電気を使った排水処理ができるけれども、尾瀬ケ原ではそれができないという基本問題もございますが、御指摘のとおり、やれることは手をつけるという点につきましては今後とも十分努力をしてまいりたいと思います。
  242. 岩佐恵美

    岩佐委員 次に、トリクロロエチレンなどの有機塩素系溶剤による地下水汚染の問題について伺いたいと思います。  先ほどから議論のあるところでございますが、昨年の三月、千葉県の君津市で井戸水の汚染が検出されました。最近になってそれが市民に知らされ、大問題になっているところです。私の住んでいる近隣の府中市や八王子市でも以前地下水が汚染され、水道への取水が停止されるというようなことがございました。そこで、私も先月二十八日、君津に現地調査で行ってまいりました。我が党の国会議員がかなり参加をいたしまして、議員団としての調査を行なったところでございます。  汚染がわかったのが去年の十二月八日でございます。ところが、厚生省に報告があったのはことしの八月末です。つまり九カ月間もたってから厚生省に報告がある。しかもこの間市民には知らされないで、汚染をされ本水が供給されていたということになるわけでございます。厚生省としては、いや、この汚染は基準以下なんだからいいんだというような見解もあるようでございますけれども、しかし、知らされなかった市民はけしからぬということでかんかんになって怒っている、これはもう至極当然のことだと思います。  私は、そんなにちょいちょい汚染の報告があるわけではないと思うのですね。一年に一遍の報告、これは厚生省が継続的にやっておられるようですけれども、汚染がわかったらすぐに厚生省に報告しなさいというような報告システムをとってもおかしくはないと思います。その点、厚生省の御見解を伺いたいと思います。
  243. 坂本弘道

    ○坂本説明員 確かに先生指摘のように、昨年の十二月にこういう報告が出てきております。それで、私どもの方に参りましたのが八月三十一日、こういうことでございます。  こういうことに対してどういうふうに対応するかということでございますが、厚生省で昭和五十九年に、トリクロロエチレンに係る暫定的な水質基準というものを定めたわけでございます。これは先生も御承知いただいておると思いますが、その中で、定期的な水質検査を実施するようにとか、かつまた、汚染判明時の措置ですね、例えば低減対策を実施しなさいとか関係機関との連絡調整を十分やりなさいとか、こういうことをこのときに指示しておるわけでございます。したがいまして、個々の水道事業体では、この指導内容に基づいて水道水の安全確保ということをやるための適切な措置をとっておるものだ、こういうように考えておるわけです。したがいまして、個々の案件ごとにその都度厚生省が報告を求め、国との協議を行うという必要はないのではないか、かように考えておるわけでございます。
  244. 岩佐恵美

    岩佐委員 厚生省は、そこのところ、対応は各地方自治体に任せている。しかし、ちょいちょい汚染が起こるわけではないのですから、その報告を汚染が起こったときに厚生省に一報くれというぐらいのことは、これは言っておかしくないと思うのですね。何も、対策をひっくるめてもう全部そちらで完結しているのだから、厚生省は一年後にしか聞く耳は持たないというようなことをかたくなにする必要はないと思うのですね。そこのところはどうなんですか。
  245. 坂本弘道

    ○坂本説明員 確かに先生指摘のように、地下水というのは水道にとって非常に貴重な水源でございますし、全国で年間百五十億トン使っておりますが、そのうち二五%ほどは地下水でございます。そういうことで、環境庁などにお願いしながら、地下水汚染防止に全力を尽くすということで我々も取り組んできておるわけでございまして、決して事業体にお任せしておるというわけではございません。常に我々も一生懸命前を見ながら、事業体の方にきちっとした安全な水を出してもらうようにという指導はしてきておるわけでございます。  それから、その都度報告を求めるべきじゃないかという御指摘でございますが、いろんなところでちょこちょこと出てまいりまして、そのたびに我々は県等にひとつそのようにならぬようにというようなことをお願いしておりますし、かつまた、年に一回は全国の実態等も含めまして我々の方で調査をし、その結果を発表しておるという状態でございますので、決して人任せになっているわけではございませんので、御了解いただきたいと思います。
  246. 岩佐恵美

    岩佐委員 何で、その都度報告させるということについて、じゃそうさせましょうというふうにならないのか不思議ですね。つまり、汚染の井戸があったということになればそれは何かの原因で汚れるわけですから、一報を早く厚生省の方にもらっておいた方がいろんな対応について視野が広くできるでしょう、そこのところを私は言っておるのですよ。どうですか。
  247. 坂本弘道

    ○坂本説明員 確かに今先生指摘のとおり、その都度いただけばいいと思うのですけれども、全国一律にそういう形で常にということになりますと、ちょっと対応もしにくうございますので、できるだけ県を通じていただくというふうに考えたいと思っております。
  248. 岩佐恵美

    岩佐委員 それは県を通じてもらえばいいわけですよ。年に一遍じゃなくて、そういう汚染があったときにその都度もらえばいいのですね。一年に三件か四件だというときだってあるわけでしょう。そんなに頻繁に起こるわけじゃないわけですから、それは十分できるのじゃないですか。そこのところは私は強く言っておきますし、もし次の質問の中で答弁されるのでしたらしていただきたいと思います。  汚染された井戸の水を使って君津市は市営プールを開いていたわけでございますけれども、その使用について、市は、汚染されているのでどうしようかということで県に問い合わせをしたら、県が厚生省に問い合わせたということでございますが、このときに厚生省がどういう対応をされたのか、ちょっと伺いたいと思います。
  249. 小沢壮六

    ○小沢説明員 おっしゃるように、県を通じまして、ブールについてどのように考えていいかという問い合わせが口頭でございました。これに対しまして私どもといたしましては、当然のことでございますが、プールの水は飲用に供するものではございませんけれども、いずれにしても誤飲といったことで口の中に入るおそれがあるわけでございますので、飲用の井戸等の指導というのが従来から、水道の関係といいましょうか、飲料水の関係では行われておりますので、こういったものを参考に対応すべきであるというような回答をいたしております。
  250. 岩佐恵美

    岩佐委員 この厚生省の指導を受けまして、県も市に対して、社会的に見てまずいので使わない方がいいというふうに答えたということでございます。それにもかかわらず市はこの井戸水を使ってしまいました。この井戸からは二PPm、暫定基準の六十七倍もの高濃度のトリクロロエチレンが検出をされていたわけであります。市は、オープンの一カ月近く前からプールに水を張ってトリクロロエチレンを蒸発させ、〇・〇八ppmまで下がったから大丈夫と判断をしてオープンをしたということであります。〇・〇八ppmでも基準値の倍以上あるわけですから、それでもどうだったのかということはありますが、プールは使えば汚れますから、今度水を循環させていくわけで、新しい井戸水を足さなければいけないということで、市の発表したデータでも、オープン一週間後には〇・一九ppmと、オープン時の倍以上の汚染になっているわけです。その後はもっと上がっているのだと思われるのですが、市がデータを出さないのでこの辺はわかっていませんけれども、いずれにしてもそこでシャワーの水を使って上がるときにきれいにして出るわけですけれども、シャワーの水は直接井戸の水ですから、体をきれいにしようと思って使った水がかえって汚染水であるというようなことで、これらを総合して、本当になぜ水道水に切りかえなかったのかということで、市民はこれまた、水道の九カ月間市民に知らせなかったというのと同じように非常にかんかんになって怒っているわけでございます。そういう点から、君津の市長は今になってこのプールの問題では市民に陳謝をしているということだそうですけれども、こういう事態をなくすためにも、プールの水についてやはり何らかの考え方をはっきりさせておく必要があるのじゃないかというふうに思うのですけれども、この点厚生省いかがでしようか。
  251. 小沢壮六

    ○小沢説明員 プールの水の衛生基準につきましては、御案内のとおり、昭和六十一年に生活衛生局長通知で「遊泳用プールの衛生基準について」ということで各都道府県に通知いたしまして、その衛生確保のための指導をお願いしているところでございます。そこで、例えばPHでございますとか、濁度でございますとか、残留塩素量でございますとか、そういったものを水質基準として挙げておるわけでございますが、一般的な水質という、飲料水ではございません、プールでございますが、プールとして、飲料用のものではなく人がたくさん入るという特殊性に伴って、特に配慮を要するような事柄というようなことで掲げてございますし、それからまた、それがプールの水質の良否を簡便かつ的確に判断できるものだというふうな考え方で、そういう項目を挙げているわけでございます。  そういうような一般的な項目で現在指導をお願いしているわけでございまして、今回御指摘のような、例えばトリクロロエチレンや何かについて基準を設けてはどうかというようなことでございますが、いろいろな水道の水質基準に比べましてプールの水質基準の項目は大分項目数が違っておりまして、それは今申し上げましたような考え方にのっとっておるわけでございまして、やはりそういった一般的な事柄以外は個別個別に適切に指導してまいりたい、このように考えておるところでございます。
  252. 岩佐恵美

    岩佐委員 厚生省は国民の健康を守る立場の省でありますので、今後きちんと総合的にやっていっていただきたいということを強く要望しておきたいと思います。  今回の汚染源としては、半導体素子を生産している東芝コンポーネンツ君津工場の名前が上がっているわけです。周辺にはほかにトリクロロエチレンを使用しているところがないということで、工場内のボーリング調査でも土一グラム当たり二十マイクログラム、約二十ppmに相当する高濃度の汚染が発見をされていることから見て、この工場が原因であるというふうに推測をされています。私は工場にも入って見てまいりましたけれども、トリクロロエチレンなどの扱いがちょっとずさんなのじゃないかなという感じを受けたところでございます。  一九七九年からことし一月までにトリクロロエチレンの使用量は千百三十三トンだということですが、そのうち回収して廃液処理の業者に出したのが四百九十六トン、回収率は四三・八%、残りの五六・二%は大半が大気に放出をされてしまっているわけです。この工場では四カ所排気口があるということですが、吸着除去装置というのは最近やっと一カ所ついたという状況です。こうした点の改善を含めて、通産省として、原因の究明と安全対策についてこの工場に対する指導をきちんとすべきであるということで私ども申し入れも行っておりますけれども、この点について伺いたい。  また、全国には同じような工場がたくさんあるわけでございます。ところが実態調査もされていないという現状です。トリクロロエチレンなどがどのくらい使用されているのか、あるいは排水、排ガス、廃棄物などの処理がどうなっているのか、あるいは通産省のマニュアルが本当にきちんと守られているのかなどの実態がつかまれていなかったという状況でございます。これらについて通産省はその後の対応についてどうされておられるのか、伺いたいと思います。
  253. 本田幸雄

    ○本田説明員 地下汚染の原因につきましては、現在千葉県及び君津市において原因究明作業が行われておるところでありまして、通産省としましても、東芝コンポーネンツに対しまして原因究明作業に協力するよう指導しているところでございます。  それから、トリクロロエチレンについての回収装置の件でございますが、既に東芝コンポーネンツにおいては六十二年七月に活性炭吸着装置一基を設置してきたところでありますが、さらに来年三月末までにもう一基を設置する予定であります。残り二カ所につきましては現在検討中でございますが、工場内のダクト配管の設計変更とか処理量に見合った装置の設計、製作ということに数カ月を要すると考えられますのでちょっと時間を要しますが、六十四年度中には設置するように指導しているところでございます。  それから、今後こういうことがないようにということで、全国の半導体工場におけるトリクロロエチレンの取扱状況の調査及びマニュアルの調査——その前に、この取り扱いについて先生から、若干取り扱いが不十分じゃないかという御指摘がございましたが、今までもトリクロロエチレン等の利用マニュアルというものを指導してきておったわけでございますが、この実施状況につきまして、御指摘のようにもう一度全国総点検をするということで、現在調査の準備を進めております。どこでどう使っているか、名簿の整備から始めなければいかぬ面もございますので、現在調査の準備を進めているところでございまして、その調査が終わり次第、問題があれば指導を行うなど適切に対処していきたいと考えております。
  254. 岩佐恵美

    岩佐委員 今のマニュアルの件ですけれども、東芝コンポーネンツ君津工場でつくっているマニュアルの文書を現地でもらったのですけれども、これは、通産省が結構いいマニュアルだということで御紹介いただいたのは六十二年八月に改訂された分でありまして、その前の六十一年十一月の分を見てみると、改訂前と二十カ所ぐらい取り扱いを厳しくするような立場から補充をされているのです。幾つか例を挙げますと、トリクレンの容器や装置の下に漏えい防止用の受け皿をつけるとか、トリクレンの移しかえのときはポンプを使用する、ジャーとあけてはいけない、ジャーとあければ周りにこぼれるわけですから、ポンプを使用するとかトリクレンを含むぼろ布、ぺーパータオルをきちんと処分する、こういうことが盛り込まれているわけです。もともと通産省のマニュアルにはこういうことが書かれているわけです。ところが、現地では六十一年の十一月制定の分ではこれらが入ってなかったということですから、この点についてはきちんと、これからマニュアルについてもチェックをされるということですので結構だと思いますけれども、ぜひ早急にこれをやっていっていただきたいというふうに思います。  次に環境庁ですけれども環境庁についても報告がされないということで、何か環境庁の場合は新聞報道で知ったということだそうですね。この点も本当に、先ほど厚生省にも言いましたけれども、一報すればいいことを、向こうでちゃんとやっているんだからということで、実はちゃんとやってなくていろいろ大問題になっているわけですが、これが厚生省にも行っていなければ環境庁にも行かないということでは問題だと思うのですね。環境庁の方にも、こういう汚染が発覚したら、やはりこれからの原因究明とか対応とかいろいろな面があるわけですから、すぐにそれは一報するようにというシステムというのは確立する必要があると思うのですが、この点について環境庁のお答えをいただきたいと思います。
  255. 岩崎充利

    ○岩崎政府委員 環境庁といたしましては、各地方公共団体で実施しました地下水汚染実態調査の結果につきましては年に一回定期的に報告を受けているということでございますが、重要な問題につきましてはその都度報告をしてほしいということでやっておるような次第でございます。  汚染井戸が発見された場合には、直ちに衛生部局と連携をとって、飲用方法の指導等の被害防止対策を講ずるように指導をしているということでございます。実は昨日二十四日に私どもの主催で開催したのですが、都道府県政令市水質保全主管課長会議においても、重要な問題につきましては速やかに報告するように要請したというようなことでございます。今後とも、連絡体制の強化に一層努めてまいりたいというふうに思っております。
  256. 岩佐恵美

    岩佐委員 環境庁としては昨日の都道府県の担当者会議で直ちにそういう措置を講じられたというのは本当によかったと思うのですけれども、厚生省の方はまだおくれているようですので、大臣からも厚生省に対して、環境庁がやったから厚生省やれというのもちょっと言いづらいかもしれませんけれども、その辺連携をとっていくという意味で、ぜひこういうシステムというのは確立をしていく、政府としてもそういう方法をとっていただきたいというふうに思います。  今回の汚染源は、先ほどから申しておるように、現地の説明から、東芝コンポーネンツ以外には考えられないということですが、まだ県や市は断定ができておりませんし、理論的にも十分確立していない地下水汚染の問題だけに、専門家の力が必要だということでございます。環境庁、先ほどからの御説明で汚染機構の解明に取り組んでおられるということですけれども、実際の汚染というのは汚染源が単一でないなど、複雑でわかりにくいという状況でございます。今回の君津の場合は、そういう意味では東芝コンポーネンツに絞り込まれていっているという状況ですので、これは一つの汚染の解明ということでは非常にわかりやすい、そういう例ではないかと思いますし、また、これを研究することによって今後にいろいろ生かしていけるはずだというふうに思います。  環境庁としても、君津に研究者を派遣されるなり、汚染原因の究明のために、通産省やあるいは県、市と協力をしてアクションをとられるべきだというふうに思いますけれども、その点についていかがでしようか。
  257. 岩崎充利

    ○岩崎政府委員 私ども、五十九年度から地下水の汚染機構の解明のための調査等を行なっているということでございます。君津市の事例につきましては、かなり君津市が県の指導のもとに中心となって一生懸命調査を進めている、こういうことでございますので、私どもといたしましては、これは深い関心を持ってその推移を見守っているということでございます。また、県、市からの要請があればできる限りの協力をしてまいりたいというふうに存じております。
  258. 岩佐恵美

    岩佐委員 先ほどの答弁の中で、地下水については環境庁として法整備に向けて作業を進める準備をされるということでございました。私も初めてきょうこの委員会で伺ったわけでございますけれども、この法整備について、有機溶剤だけにするのか、それともいろいろなものも含めていくのか、それから大体どういう作業準備で、期間をどのぐらいのところに置いてやっていかれるのか、そういう点なんかがあると思うのですけれども、その辺についてちょっと大臣のお考えというか環境庁のお考えを伺いたいというふうに思います。
  259. 堀内俊夫

    ○堀内国務大臣 問題が起きた内容を見ると、本当はもう既にクリアしていなければならないような問題で、先ほど来も議論があったんですけれども、フロンガスによってほとんどクリアしたと思っておったわけなんです。ところが、そのフロンガスがいわゆる人類あるいは地球全部が破滅するような原因になるという疑いも出てきたわけでございますから、それ以前の姿として、この地下汚染という問題が長くあったと私は思います。こういう中で、実際言うと、今まで各省庁とももうフロンガスの時代へ入ったという認識があったと思うのですが、ここへ来てそんなことばかりじゃいけないということになってきますと、やっぱり各省庁で一遍相談し直して、この地下汚染に対しての法整備をする必要もあるんじゃないか、こういうことで、最近私は、この問題は、法整備も含めてこれを見直したらどうか、また、それに対する対応を講じやすいようにしたらどうかということを指示した段階でございます。
  260. 岩佐恵美

    岩佐委員 この点については、またこれからいろいろと論議をしていかなきゃいけない問題だと思いますけれども、積極的にやっていくべきだというふうに思います。  同時に、地下水だけではなくて、トリクロロエチレンなどの大気汚染ということが今大変問題になっています。大気については水のように暫定基準もないわけですね。もう全く野放しで大気に放出をされてしまっているということでございます。先ほどの東芝コンポーネンツの四つの排気口について全部吸着装置をつけるという、そういうことも大気の基準がないから当初はなかなか難しいことだったわけですね。それは先ほどの御答弁では四つとも何とかするということでありましたけれども、これは汚染工場だったからこういうことなんですけれども、そうでないところはこれまた野放しになってしまっているわけですね。  大気については、研究者の中では、現在の汚染された大気を吸い続けるといわゆる暫定基準を超えた水を飲んでいるのと同じことになる、そういう計算もしておられるわけです。大気に出たのが雨にまざって地下水を汚染をする、そういう説もあります。  また、現在トリクロロエチレンが大変大きな問題になっているものですから、先ほどから議論になっております1・1・1トリクロロエタンへの切りかえということが進んでいるわけです。アメリカでは、フロンガスと同様に成層圏オゾン層を破壊するから規制をせよという話も出ているというふうに言われています。  こういう状態の中ですから、やっぱり大気についても汚染実態の調査を進めて何らかの規制をしていく必要があるというふうに思います。その点、地下水とあわせてどういうふうに対応していかれるのか、環境庁のお考えを伺いたいと思います。
  261. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 お答えいたします。  トリクロロエチレン等によります大気の汚染の問題でございますが、六十一年度に実施いたしましたIC一貫生産工場の排出口及びその周辺環境におきます大気の濃度の調査があるわけでございますが、これによりますると、トリクロロエチレンあるいはテトラクロロエチレンあるいは1・1・1トリクロロエタンにつきましては、排出口の直近におきましては比較的高い濃度が検出されている事例もあったわけでございますけれども、周辺環境におきます濃度は押しなべて非常に低いレベル、確かに先生お話しございましたように、環境濃度的なものはないわけでございますけれども、労働環境管理濃度の約七千分の一というぐあいに、周辺環境におきましては非常に低いレベルにあるわけでございます。  しかしながら、先生も御存じのとおり、トリクロロエチレンとかテトラクロロエチレンにつきましては、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律に基づきます指定化学物質に指定されておることもございまして、これらの物質につきましては、大気保全局といたしましても、今後の大気中における濃度の推移といいますものを長期的に把握する必要があるというぐあいに考えておるところでございまして、今後、未規制大気汚染物質モニタリング事業という中に取り込んで考えていく必要があるのではなかろうかということで、現在検討を進めておるところでございます。
  262. 岩佐恵美

    岩佐委員 最後に大臣、大気の問題につきましても、工場が割と密集していて人家が近所にあるという場合もありますので、今そういう作業は進めておられるということですけれども、その点も含めて環境を守るという立場から、大臣に一言御決意を伺って、質問を終わりたいと思います。
  263. 堀内俊夫

    ○堀内国務大臣 段々に話を承っておりますと、まことにごもっともな話ばかりでございます。我々はその対応に万全を期す意味から考えても、ちょっとした問題であっても人命に影響を持つというような問題ばかりでございますから、十分注意してあらゆる対応に努めたいと思います。
  264. 岩佐恵美

    岩佐委員 終わります。ありがとうございました。
  265. 野中英二

    野中委員長 次回は、来る二十八日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十一分散会