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1988-11-18 第113回国会 衆議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和六十三年七月十九日)(火曜 日)(午前零時現在)における本委員は、次のと おりである。    委員長 糸山英太郎君    理事 甘利  明君 理事 北川 石松君    理事 田中 直紀君 理事 中山 利生君    理事 浜野  剛君 理事 高沢 寅男君    理事 神崎 武法君 理事 永末 英一君       天野 公義君    石井  一君       大石 正光君    鯨岡 兵輔君       小杉  隆君    坂本三十次君       椎名 素夫君    塩谷 一夫君       水野  清君    村上誠一郎君       山口 敏夫君    石橋 政嗣君       岩垂寿喜男君    岡田 利春君       河上 民雄君    伏屋 修治君       正木 良明君    渡部 一郎君       岡崎万寿秀君    松本 善明君 ────────────────────── 昭和六十三年十一月十八日(金曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 糸山英太郎君    理事 甘利  明君 理事 北川 石松君    理事 田中 直紀君 理事 中山 利生君    理事 浜野  剛君 理事 河上 民雄君    理事 高沢 寅男君 理事 神崎 武法君    理事 永末 英一君       天野 公義君    大石 正光君       小杉  隆君    椎名 素夫君       村上誠一郎君    山口 敏夫君       石橋 政嗣君    岩垂寿喜男君       辻  一彦君    玉城 栄一君       伏屋 修治君    岡崎万寿秀君       松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宇野 宗佑君  出席政府委員         防衛庁参事官  小野寺龍二君         外務政務次官  浜田卓二郎君         外務大臣官房長 藤井 宏昭君         外務省北米局長 有馬 龍夫君         外務省中近東ア         フリカ局長   恩田  宗君         外務省経済局次         長       内田 勝久君         外務省経済協力         局長      松浦晃一郎君         外務省条約局長 斉藤 邦彦君         外務省情報調査         局長      山下新太郎君         食糧庁次長   近長 武治君  委員外出席者         防衛庁防衛局運         用課長     守屋 武昌君         防衛庁教育訓練         局訓練課長   柳澤 協二君         防衛施設庁施設         部首席連絡調整         官       大原 重信君         防衛施設庁施設         部連絡調整官  板垣 靖雄君         外務大臣官房審         議官      谷野作太郎君         外務大臣官房外         務参事官    荒  義尚君         外務大臣官房領         事移住部長   黒河内久美君         外務省北米局北         米第一課長   岡本 行夫君         文部省学術国際         局留学生課長  三村 満夫君         通商産業省通商         政策局南アジア         東欧課長    木村 文彦君         海上保安庁警備         救難部長    赤澤 壽男君         外務委員会調査         室長      藪  忠綱君     ───────────── 委員の異動 七月二十八日  辞任         補欠選任   岡田 利春君     左近 正男君   岡崎万寿秀君     村上  弘君 同日  辞任         補欠選任   左近 正男君     岡田 利春君   村上  弘君     岡崎万寿秀君 八月五日  辞任         補欠選任   松本 善明君     藤原ひろ子君 同月九日  辞任         補欠選任   藤原ひろ子君     松本 善明君 十月二十日  辞任         補欠選任   岡崎万寿秀君     東中 光雄君 同日  辞任         補欠選任   東中 光雄君     岡崎万寿秀君 十一月十八日  辞任         補欠選任   岡田 利春君     辻  一彦君   正木 良明君     玉城 栄一君 同日  辞任         補欠選任   辻  一彦君     岡田 利春君   玉城 栄一君     正木 良明君 同日  理事高沢寅男君同日理事辞任につき、その補欠  として河上民雄君が理事に当選した。     ───────────── 八月十二日  ILO条約第百五十一号の即時批准に関する請願安藤巖紹介)(第二号)  同(石井郁子紹介)(第三号)  同(岩佐恵美紹介)(第四号)  同(浦井洋紹介)(第五号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第六号)  同(金子満広紹介)(第七号)  同(経塚幸夫紹介)(第八号)  同(工藤晃紹介)(第九号)  同(児玉健次紹介)(第一〇号)  同(佐藤祐弘紹介)(第一一号)  同(柴田睦夫紹介)(第一二号)  同(瀨長亀次郎紹介)(第一三号)  同(田中美智子紹介)(第一四号)  同(辻第一君紹介)(第一五号)  同(寺前巖紹介)(第一六号)  同(中路雅弘紹介)(第一七号)  同(中島武敏紹介)(第一八号)  同(野間友一紹介)(第一九号)  同(東中光雄紹介)(第二〇号)  同(不破哲三紹介)(第二一号)  同(藤田スミ紹介)(第二二号)  同(藤原ひろ子紹介)(第二三号)  同(正森成二君紹介)(第二四号)  同(松本善明紹介)(第二五号)  同(村上弘紹介)(第二六号)  同(矢島恒夫紹介)(第二七号)  同(山原健二郎紹介)(第二八号)  同(五十嵐広三紹介)(第六〇号)  同(広瀬秀吉紹介)(第六一号)  同(細谷治嘉紹介)(第六二号)  同(安田修三紹介)(第六三号)  同(川崎寛治紹介)(第一五八号)  同(佐藤敬治紹介)(第一五九号)  同(加藤万吉紹介)(第一八八号)  同(田口健二紹介)(第一八九号)  同(中沢健次紹介)(第一九〇号)  同(大出俊紹介)(第二二三号)  海洋INF全廃トマホーク艦日本母港化反対等に関する請願金子みつ紹介)(第六四号)  同(土井たか子紹介)(第六五号) 同月十八日  ジュネーヴ条約追加議定書加入に関する請願田並胤明君紹介)(第四三一号)  ILO条約第百五十一号の即時批准に関する請願山下洲夫君紹介)(第四三二号) 九月二十日  ジュネーヴ条約追加議定書加入に関する請願宮地正介紹介)(第一四七〇号)  同(鈴切康雄紹介)(第一六五三号)  在日米軍労務費特別協定廃止等に関する請願松本善明紹介)(第一七二二号) 十一月十五日  核兵器廃絶に関する請願清水勇紹介)(第二七八二号) 同月十七日  ILO条約第百五十一号の即時批准に関する請願角屋堅次郎紹介)(第三二九五号) 同月十八日  核兵器廃絶に関する請願沼川洋一紹介)(第三四五九号) は本委員会に付託された。     ───────────── 九月十四日  核兵器廃絶に関する陳情書外一件(第一二号)  ジュネーブ条約追加議定書加入に関する陳情書外一件(第一三号)  ILO港湾労働条約批准等に関する陳情書外一件(第一四号)  朝鮮民主主義人民共和国抑留日本人船員の釈放に関する陳情書外二件(第一五号) 十一月七日  日韓渡り鳥保護条約締結に関する陳情書(第一三二号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  国政調査承認要求に関する件  国際情勢に関する件      ────◇─────
  2. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 これより会議を開きます。  理事辞任の件についてお諮りいたします。  理事高沢寅男君から、理事辞任申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  引き続き、理事補欠選任についてお諮りいたします。  ただいまの理事辞任に伴う補欠選任を行いたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 御異議なしと認めます。  それでは、理事河上民雄君を指名いたします。      ────◇─────
  5. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  国際情勢に関する事項について研究調査し、我が国外交政策の樹立に資するため、関係各方面からの説明聴取及び資料の要求等の方法により、本会期中国政調査を行うため、議長に対し、承認を求めることにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ────◇─────
  7. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北川石松君。
  8. 北川石松

    北川(石)委員 質問の機会を与えていただきまして、深く感謝をいたします。  昨日、元内閣総理大臣三木武夫先生告別式が営まれました。三木先生外務大臣もお務めになりました。告別式の席上、マンスフィールド・アメリカ大使閣下弔辞をいただきましたが、切々として真実の中に三木先生をたたえられました。日米戦わずをあの情勢の中で叫ばれた先生、一貫して平和主義政治姿勢を貫かれた先生に、外国人からこのように真心あふれる弔辞をいただいたこと、これが外交でなくて何であろうかという思いをいたしましたが、宇野外務大臣はいかようにお考えになっていらっしゃいますか。
  9. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私も三木先生には通産政務次官としてお仕えしたことがございます。また総理のときは国対委員長として二期にわたりましてお仕えいたしました。格別の御薫陶を仰いでおります。先生の御逝去に対し、また外務大臣の大先輩でございますので、改めて弔意を表したいと存ずる次第でございます。  昨日の葬儀には残念ながら私参列することができなかったのでございます。おとといのお通夜には参りましたが、昨日はたまたまイタリア貿易大臣が来ておりまして、その会談並びに午さん会、そうした一連行事がございましたので、まことに失礼をいたしました。いずれ衆議院並びに内閣合同葬が行われますから、そのときにはもちろん参列をいたしたいと思っております。  新聞紙上におきまして、マンスフィールド米国大使弔意が表されたことを私も詳細読ませていただきました。マンスフィールド大使も今回辞意を漏らされましたが、まれに見る親日家であり、また長年の議会生活を通じまして、本当に人格高潔ということで内外において声価の高いお方であります。特に大使御就任以来十一年にわたって本当に日米間の平和のために尽くしていただいた、そのお方が述べられた弔詞というものは、やはり三木外相また首相に対する本当の心を吐露されたものである、私たちもこれに対して本当に感動いたしておる次第であります。
  10. 北川石松

    北川(石)委員 ただいま宇野外務大臣から御答弁をいただいて、私は政治というものは心と心のつながりの中に真実を形づけていかなければならぬということを痛切に感じております。  そこで、率直に言いますと、第百十三回臨時国会が七月十九日に召集され、また五十九日間延長いたしました。この間委員会が開かれておらない。これは那辺にあるかということ。もちろん政治のことだからいろいろの問題がありますが、まことに遺憾である、遺憾のきわみである。これに対して委員長の御答弁を得たいとかいうことは今申しませんが……(「委員長答弁」と呼ぶ者あり)答弁と言っておられるから、委員長答弁しなさい。――与党の理事から答弁しなさいと言われれば、私もこれに従わなければならない、こういう思い答弁を求めたのだが、委員長は腕組みをして答弁しない。私は、マンネリとなあなあ主義になってしまったら政治というものは高まっていかない、ただいまマンスフィールド閣下弔辞をお礼を申し上げながら申し上げたのは、そこにある。あるいはまた、外務大臣外務省から委員会を開くことは避けていただきたいというような申し出があったのかどうかも聞かざるを得ない。刻々に世界情勢が変わっておる中で、国民の負託を得た衆議院議員がこのような形であっては申しわけないという気持ちにおいて私は申し上げたのである。  今日までの世界情勢について、この際、外務省から簡潔に報告を求めます。
  11. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 七月十九日臨時国会召集、ちょうど四カ月ばかりたったのでございます。その間、私自身といたしましては、中南米訪問を企図いたしましたが、残念にいたしまして、メキシコ一国だけで、パキスタンのハク大統領の突然の死ということもございましたので、他の三カ国の訪問は取りやめましたし、また、その前に臨時国会召集ということで、他の三カ国の訪問も当然日程的に支障を来しましたので、丁重にお断わりしたという経緯がございます。  その後、九月に国連総会がございまして、当然国連総会に出まして、そこではサミット参加国それぞれの外相会談あるいはまた、ただいま申しました中南米のリオ・グループ外相会談、さらにはランチョンにおいてアフリカの各国外務大臣との懇談等々、いろいろ予定されておりましたし、また、その国連総会出席を機に、アメリカ訪問を正式にいたしまして、大統領以下首脳の方々との会談予定されておりました。  そうしたことでございましたが、残念にいたしまして、陛下の急病ということもございましたので、そうした一連の私の外国出張は、政府の了承を得ておったにもかかわりませず取りやめたような経緯がございます。そのほかにシェワルナゼ外相との会談予定されておりましたが、ニューヨークにおけるその会談も流れたような経緯もございましたが、このことに関しましては、栗山外審を派遣いたしまして、私の意図を伝え、なおかつ駐日ソビエト大使もお越しになられましたから、この方とも十分話をいたしまして、十二月にシェワルナゼ外相訪日というような段取りに相なったわけでございます。  主たる外交来訪者といたしましては、韓国の盧泰愚大統領あるいはイタリアデミタ首相等々正式に訪日をされる予定でございましたが、御承知のとおり宮中の行事がございますので、先方の方から御遠慮なさったという経緯もございます。さらにまた、日中友好平和条約発効ちょうど十周年でございますから、日本並びに北京においてそれぞれお祝いをしよう、特に銭其シン外務大臣訪日という予定もございましたが、これまた、そうした関係におきまして、先方から遠慮をしたいというようなこともございました。そのほかに、主要国といたしましては、ドイツ外務大臣ゲンシャーさんの訪日予定されておりましたが、これは御承知のとおりドイツのシュトラウス元党首が亡くなられたというようなことで、いろいろドイツ政界におきましても慌ただしい動きがございましたので、これまた先方からお取りやめというふうなことが相重なったわけでございます。しかし、そのほかのドイツ貿易相であるとか、また昨日はイタリア貿易相であるとか、数多くの外務大臣訪日予定どおりしていただきたいというので、予定どおりしていただいたというのが大体の外交日程あらましでございます。もちろんそうした中におきまして、いずれ御質問もあろうかと思いますが、外務省にかかわる米軍等々の問題もあったということ、そうしたようなことが続いてまいったというのがあらましでございます。
  12. 北川石松

    北川(石)委員 大臣日程報告を受けたのでありますが、欧州、アジア中近東各地にいろいろな問題が起きたことは新聞承知はいたしておりますが、イラン、イラクの平和、これも大変大きなことだと思います。この間、ほんのこの間だが、アメリカ第七艦隊の一部が何かしらぬけれども、東京湾で強を撃ったということも聞いています。これは報道というものが今日の日本国民の心の中によいものを醸し出すことも結構だが、悪いものを醸し出すところの報道もあるということを知っておかなくてはいかぬと思います。一筆よく人を生かし、一筆よく人を殺すと言われておりますが、こういうこともまた報道の皆さんにも私はよく真実を伝えていただきたい、このこともお願いいたしておきたいし、まだまだ指摘をしながら、アジア情勢こうではないかということも外務省から聞きたいのですが、あと残された質問に関連いたしますし、限られた時間でありますので、ただいまから、特に日本外交の中で、世界各国との姿勢は常に平衡、常に穏やかで平和的でなくてはなりませんが、今日本ソ連との外交というものは非常に重大なときじゃないか。もちろん平和裏にいろいろなものが進められておりまするが、ゴルバチョフ書記長日本へ来たいと言っていらっしゃる。この十二月には外務大臣が見える。その中でいろいろな委員会が開かれるであろうし、また外務省との話し合いもあろうと思いますので、この点についての質問に入りたいと思います。  七月中旬に中曽根総理ソビエト訪問されました。このときに領土問題が話題になったと思いますが、外務省の把握している点について簡単にお答え願いたい。
  13. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 前総理ゴルバチョフ書記長との会談、そうした内容に関しまして私が直接前総理から伺っておりますから、お話しした方がよいと思いますが、要は、中曽根総理の主張は、ペレストロイカとはすなわちスターリン批判と我々は考えてよいのではないか、二人の会談に先立つソ連党大会においても相当スターリン批判がなされた、そういうふうに考えてきた場合に、スターリンは東西の対立というものをむしろ大きくしてしまったような感じがする、だからそれではいけないというので恐らくペレストロイカも始まったのであろうと私は解釈する、といった場合に、スターリン膨張主義拡大主義、こうしたものが我が国の固有の領土までも占領するという事態になったのではないか、こういうようなことでそのことに触れられた、こういうふうに御本人が話しておられました。
  14. 北川石松

    北川(石)委員 時間がないので申し上げておきますが、スターリンはもう過去の人だと思うのです。しかし、過去が現在をつくってきていることもありますが、北方領土の問題が一番大切ではないかと私は思いますよ、外務大臣。このときに、ゴルバチョフ独特の話の中のニュアンスで領土問題について恐らく話していらっしゃると思う。中曽根首相がおれがやらなければやれないというようなムードもつくられたのではないかと思うのですが、私は、領土歯舞色丹は返してもよいというのは、四島の一〇%に満たない、八%に満たない、こんなものだけを返してもらっても何にもならないということをまずはっきりと申し上げておきたい。その中に日本ソビエト外交の甘さと外交のこびなどを売ってしまってはならないと思う。二島返還論というものは、昭和三十一年のときに日本国交回復のために触れられたものである。しかし、歯舞色丹では私は決して日本はおさまらない。それは国民感情であると同時に、今日までソビエトがとってまいりましたいろいろの問題がある。そういう点において私はアプローチの違いとかそういうことがあってはならないと思うが、欧亜局長は一体こういう問題が出てきたときにどのように対処していこうとしているのですか。
  15. 荒義尚

    荒説明員 お答えいたします。  ただいま御指摘の点でございますが、特に五六年の日ソ共同宣言に関しましては、先生承知のように、第九項におきまして「平和条約締結に関する交渉を継続することに同意する。」というふうに書いてあるわけでございます。この場合、平和条約締結交渉ということになりますと、領土問題が当然含まれてまいるわけでございます。また、これも御承知のとおりでございますけれども、七三年の田中総理ブレジネフ会談の結果におきましても、「第二次大戦の時からの未解決の諸問題を解決して平和条約締結する」ということが共同声明で規定されており、かつ、その北方四島の問題につきましては、未解決の諸問題の中に入るという口頭了解が両首脳間で確認されておるわけでございます。しかしながら、そういう事態があったにもかかわらず、今日におきましては、ソ連領土問題は解決済みであるという公式的立場を保持していることは、先生も御承知のとおりでありまして、我々としてもまことに遺憾であるということで、今後とも粘り強く四島一括返還ということで交渉してまいりたい、こういうことでございます。
  16. 北川石松

    北川(石)委員 ソロビヨフ大使が今のソ連大使だと思いますが、日本語が非常に堪能なのです。前回の委員会でもちょっと申し上げたのですが、四島を日本に返したら外務省困りますやろというようなことを私にぬけぬけぬかしやがったから、何ぬかしてんねん、日本外務省はそんなことで困らぬぞ、そういうことは取り消せと言ったら、間違っていましたというのでおさまったことがある。それほど巧妙に彼らは日本外交の中に、みずからの国、ソ連の国のためにいろいろな画策をしてくることも申し上げて、外務省の一段の、日本国というものと、そして北方四島という、あのソビエトが終戦当時に何十万の人間を、日本人たちを痛めたか、このことも心しておいていただきたいと思います。  そこで、ゴルバチョフの側近の中にたくさんいろんな人がおられる。その一人にイワン・コワレンコという方がいらっしゃる。この方は一九五〇年代半ばから党中央執行委員会にいらっしゃる。対日政策担当者としてクレムリンの対日政策をやっておられる。九月三十日の党中央委員会総会で、党機構改革によって国際部部長ポストが削減されたので、来春までに引退することになったと思われる。これで日本への強硬政策がソフトになったと思ってしまってはいかないと思うのでございます。これは私の方の調べで知ったことでございますが、ソ連自民党との関係を大変深くしたいと望んでおると思うのです。こういうソ連内容の中に立って外務大臣はいかように対処したらいいと思われますか、ちょっと聞かしていただきたいと思います。
  17. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 おっしゃるとおり、ソロビヨフ大使日本語は堪能でございます。だから、私も来る十二月の外相会議の一つの話題ソロビヨフ大使に提起をしたこともございます。先般は参議院におきまして、やはりソロビヨフ大使を招いていろいろ意見も聞かれたということもございました。そのときも相当はっきりと日ソ間の関係を改善したいということをテーマに話しておられます。いずれも私たちは歓迎すべきことだろうと思います。特に自民党のみかやはり各党にも接触をして、お互いの接触を深めることにおいて意思の疎通を図りたいということに努力をしておられる、この努力は私たちも大いに評価をしてあげたらいい、また評価しなくちゃならない、かように考えております。
  18. 北川石松

    北川(石)委員 そこで、日ソ関係というものは包括的にアプローチがあるというのは、この十二月の十九日にシェワルナゼ外務大臣が来られるのですか、いかがですか。見えるのですか、どっちですか、十二月。
  19. 荒義尚

    荒説明員 お答え申し上げます。  先ほど大臣からも答弁いたしましたとおり、先般のシェワルナゼ外相栗山外審とのニューヨーク会談におきまして、十二月の十九日から二十一日に外相間の定期協議をやるということが確認されております。
  20. 北川石松

    北川(石)委員 見えれば当然外相会談というのは行われますね。その中で今のようなことをよく踏まえながら、前総理が訪ソされたが、訪ソされた中で何を語っておったか。しかし、通訳を入れて会談されたこともありますから、知られざる点とまた知られておる点、二つあると思うのです。その中で日本というものを、特に北方四島返還については外務大臣が強く強く厳守しながら会談に臨んでいただきたい。これは要望しておきたいと思います。  そこで、去る六月に社会党の土井委員長は、北方領土問題を日ソ関係改善の入り口に置くな、社会党は全千島返還が基本原則ということを申されたと聞いておる。日ソ関係の改善は、北方領土問題を交渉の関所とすると一歩も前進がない、このようなことも講演されたと聞いておりますが、私は、北方領土返還を求めていく最も大事なところでありまするが、国論の統一というものが十分なされておらない。私は、国論の統一というものを十分するようになしていかなくちゃいかない、このように思います。このこともお含みおきを願っておきたいと思います。  それから、ソビエトは対日漁業政策にも新たな動きを見せかけていると思うのでありますが、この点についてどの程度把握しておられるかどうか、お聞きしたいのですが、どなたか担当の方。
  21. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 日本ソ連との間には非常に歴史の長い漁業関係の伝統と申しますか、いきさつがございます。現在、我が国ソ連の二百海里の中におきまして、毎年の両政府間の合意に基づきまして漁業を行っております。それからソ連の二百海里水域の外におきましてサケ・マスの漁業を行っております。これは委員承知のとおり、いずれも日本側に許されます漁獲量というのはだんだん減ってきておりまして、我が国の漁業は非常に厳しい現状に直面しております。我々の承知しておりますところでは、ソ連は、二百海里の外で従来我が国が行っておりましたサケ・マス漁業、これは全面的に禁止すべきだという意見を持っておりまして、それをここ数年のうちに日本に実施するように迫ってきているというように理解しております。
  22. 北川石松

    北川(石)委員 ただいまの御報告を聞きながら、去る七月十二日にサハリンにおきます日ソサケ・マスふ化の事業の調印をされたと聞いております。私は、これは大変結構なことの反面において、ある意味におきましては、北方領土水域におけるところの漁業にあわせて北方領土ソ連の固有領土であるというような認識をあるいは与えようとするところの意図がないとは言えない。領土よりまず魚だ、こういう空気が出ておることも事実であります。ソ連の巧みな誘いの中に、合弁事業という甘い誘いに乗りながら、領土返還に水を差すようなことがあってはならない、こういう思いをいたしますので、外務省にこれはよく注意を喚起しておきたい。利権に走ってしまって国を忘れ民族を忘れてしまってはいかない、このことを忠告をいたしておきたいと思います。  また、北方領土に絡みますが、ソビエトは非常に見事にくせ球を投げてきよる。私は野球が好きだから言うんだが、くせ球を投げてくる。ソ連外務省の発行誌「国際生活」七月号におきまして、科学アカデミーのペトロフ極東研究所日本部長の北方領土問題の存在を認める記事が載っておる。次いで七月下旬にプリマコフ氏が所長である世界経済国際関係研究所のクナーゼ日本社会政治課長が唱えた北方領土の共同統治案、九月に入ると、北方領土とサハリンの租借権を与えるというような租借権方式の構想をヨーロッパで非公式に我が国政府高官に、これは大蔵省幹部と聞くが、打診してきたというが、こういうことがゴルバチョフ書記長中曽根さんとの会談において何かを考え出さなければならないと云々したことと妙に符合してくる。こういう日本側の反響を見ようとする彼の、先ほどくせ球と言いましたが、ソ連流のしたたかな包括的対策に惑わされてはならない。  これはゴルバチョフ政権が、ペレストロイカといいますか、これは難しい、舌をかむような言葉だが、これらの成果を上げるための経済協力を日本に求めたって、日本がしっかりとしなくてはいけない。例えばソ連の経済成長率が八六年の四・一%から八七年二・三%に低下しておる。この要因はいろいろあると思うが、私は余り長らくこの点について言っておると大変時間を費やすので言いません。ソ連北方領土問題のかたくなな姿勢を少し柔軟に変化したように見せかけながら、その一方では国後島東南海域において、独断で流し網によるサケ・マスの漁獲の水域を強く規制しておる、十一月十五日まで。海上保安庁が受信した中において、こういうことが警報の中に言われておる。モスクワの日本大使館が九月二十二日、ソ連外務省太平洋南アジア諸国部に、ソ連が設定した操業水域は我が国固有の領土である国後島に接続する日本領海を含んでおり、これは明らかに不法行為であると強く抗議するとともに、ソ連側の操業を中止するよう要請したが、ソ連側は日本の抗議は受け入れられないと突き放したと聞いておる。かくのごとくソ連の態度は一向に変わっていないことを証明することを申し添えておきたいと思います。  外務省、どうですか。こういういろいろなものを私は提案しながら外務省姿勢というものをお聞きしておるのですが、いかがですか。
  23. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 いろいろ今おっしゃったようなソ連のサイドから領土問題の話が出ておりますが、我々といたしましては、もうあくまでも、これは四島の一括返還である、日本固有の領土である、この主張に全く変わりはございません。  今まで領土問題に関しましては、そういう問題は解決済みであるとかもはやないとか、相手によっていろいろ言われましたけれども、やはり一番最近では、田中総理がブレジネフと会われたときに、戦後未解決の問題はたくさんあります、その中には領土問題が含まれておりますよと再三にわたって言っていらっしゃいますが、それに対してブレジネフ書記長が、最初はヤー・ズナーユ、私は知っておりますと答えておりますし、もう一度別れ際に念を押されたときには、ダー、イエスである、こういうふうに言っております。そうして相手によってそれぞれ変わってまいりましたが、この領土問題は、ゴルバチョフ書記長の政権下におきましては、ソ連といたしましても、当然我々との会談にこの問題が出ることを想定されておるだろう、また議論をしなくちゃならぬというふうに私から申し上げておるところであります。
  24. 北川石松

    北川(石)委員 私は、日本語のわかるソ連大使に、ゴルバチョフさんが日本に来てくれることを大いに歓迎しますよ、その際土産を持ってきていただきたい、それは北方四島の完全返還でございますよ、こう申し上げておいたことも、この際ここで申し上げておきたいと思います。  コワレンコ・ソ連共産党国際部副部長が七月中旬に来日した際に、ゴルバチョフ書記長訪日について、書記長に日本を訪れる意欲は非常に強いが、その可能性が熟していない、沈滞した日ソ関係を何らかの形で活気づけたい、両国外交官が道を掃き清めるべきだということを言ったと聞いておりますが、その沈滞をもたらしたのは、日本側になく、日本は平和外交を常にとられておりますが、その責任はソ連にあると言って過言でない、このように私は思うのですが、外務大臣はこのことはどう思いますか。ソ連にあると思う。なぜならば、日ソ関係の改善をしたいと望む一人である私は、この冷却を続けてきた原因は――ソ連軍管理地区におけるところの戦後の日本人の死亡者数が何ぼあったと思いますか。外務省の調べをちょっと聞かせてもらおうか。何ぼあったと思います。幾らの数の方が日本は亡くなったと思いますか。わかりませんか。
  25. 荒義尚

    荒説明員 お答え申し上げます。  申しわけありません。ちょっと手元に資料がございませんので……。
  26. 北川石松

    北川(石)委員 対ソ関係をきょうは主に質問すると言っておいたのですが……。驚くなかれ三十四万九千七百人の多数に及んでおる。軍人が十三万一千六百人、一般邦人が二十一万八千百人であると聞いておる。日本の固有領土である北方領土を今日まで不当に占領しておきながら、武装解除した日本兵捕虜をまたシベリアに連れていって強制収容所に入れた。この行為は戦時中でなく戦後において行われておる。この国際法を無視した中で五万五千人の日本人がシベリアの荒野で死んでいったのであります。これについてソ連は一言の遺憾の意も表明しなければ、申しわけないということを言わずして、今日まで日本との外交を進めてきたことも事実である。大多数の日本人のソ連に対する不信感は、このようなところから生じておると言わざるを得ない。これは日本人の偽らざる心情でなくてはならぬと思います。  そういうことを思うときに、私は、この十二月に行われる日ソ外相会談では、外務省はその人員も把握できていないけれども、外務大臣は私の今言ったことをよく把握しながら、日本人の魂が浮かぶところの会談をしていただきたい。このことを強く要請しておきます。  また、最近ゴルバチョフ書記長がクラスノヤルスクで行った演説の中にも、このようなことを言われておる。太平洋地域の安全強化のための七項目の平和提案なるものは、自国に都合のよいことをぬけぬけと述べているということも言われておる。これはお得意の平和攻勢であろうと思うが、言行不一致であらうと指摘せざるを得ない。  また、昨年十二月からこの九月までの一年足らずの間に、太平洋艦隊の主要な基地はどこになったでしょうか。ソ連の太平洋艦隊の主要基地はペトロパブロフスクであろうかウラジオであろうか。いかがでしょうか、ちょっとお聞き申し上げたい。
  27. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 ソ連太平洋艦隊の主要基地は、依然としてウラジオストクだと承知しております。
  28. 北川石松

    北川(石)委員 この前の委員会で、石川島播磨が五万トン級の浮きドックをソビエトに売った、たまたまココムの問題があったときでありますが、これを指摘したのですが、もうウラジオストクからこれはかわっていったんじゃないか、私はそのような思いをしますね。どうでございましょう、まだやはりウラジオストクにソ連の艦隊のなにがあるのでしょうか。いかがでございますか。私はもうそれはカムチャッカ半島東側のペトロパブロフスクに移ったのではないかということを指摘いたしたい。  現在のソビエトの太平洋艦隊の中で、弾道ミサイル積載原子力潜水艦デルタ級が十六隻、ヤンキー級八隻が日本に近いオホーツク海に、ベーリング海にはデルタ級が二十四隻、ヤンキー級が九隻、タイフーン級が五隻配備されておる。極東における陸上兵力は、ゴルバチョフ政権になって五十三個師団から五十七個師団に四個師団もふえておることも指摘しておきたいと思います。  このように、着々とソ連の方は体制を変えてきておる。ところが外務省の今の報告を聞くと、いまだにウラジオストクということ、金科玉条のようにこのことしか知らないということは、世界情勢に対して疎いと言わざるを得ないし、外務省は一体情報はどのようにキャッチしておるかということを指摘いたしたいと思います。この点も指摘しておきたい。  時間がないので、次に移ります。  私はこのようなことを指摘しながら、INFが全廃されたから、核戦力全体から見ればわずか四%ですが、よかったなということは同じ思いでありまするが、ただいま指摘した点にもよく心しながら、私は防衛庁に望むが、防衛庁はどういう考えで今後対処していくのか。防衛庁も同じくウラジオストクにソ連の極東の一番重要なものがあると考えていらっしゃるのかどうか、防衛庁の答弁をいただきたい。
  29. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 先生、ただいま答弁いたしましたのは防衛庁でございまして、外務省ではございませんで、ウラジオストクと申し上げましたのは防衛庁でございます。  先生指摘のとおり、カムチャッカのペトロパブロフスクには非常に重要な基地がございますけれども、これは主といたしまして潜水艦の基地でございます。ウラジオストクには依然として水上艦を中心とした一番大きな基地があるというふうに我々は承知いたしております。確かに報道では、ウラジオストク基地の分散とかいろいろなことが出ておりますけれども、こういうことについては確認をされておりません。実際にその交通の関係を考えますと、やはりウラジオストクというのはソ連にとっては依然として非常に重要なところであり続けるというふうに我々は見ております。
  30. 北川石松

    北川(石)委員 今小野寺参事官でしたね、答弁されたが、ちょっとアメリカともよく聞いておきなさいよ。ソ連の太平洋艦隊の比重というものがペトロパブロフスクに移ったということを私は指摘しておる。防衛庁はそのように言っておるが、この間、アメリカの何やらいう軍艦か何か知らぬが、東京湾のあそこで過って弾を打ちよった。防衛庁、知らぬのと違うか。知っておるかな。このようなことをやっておって、日米の共同のいろいろな戦略、戦術というものを展開していくならば、これはゆゆしきことだ。私は、そういう現状の、しかもまだ一年向こう、二年向こうあるいは三年向こうに展開されようとするところの戦略の展開に対して防衛庁は甘過ぎる。そのような答弁というものは、私は外務省だと思ってこうしてさっき聞いておったのだが、今改めて防衛庁からそういうことを言うのならば、もう少し戦術、戦略というものは驥尾に付して、しかも決断をしなくちゃならぬときも多々あると思うが、誤った決断をするおそれがあるので、指摘をしておく。これ以上防衛庁に答弁は求めないが、指摘を重ねていたしておきたいと思います。  以上のことを申し上げながら、私は、日本ソ連の最大の通商、経済パートナーの一つとしての地位を回復することへの日本の経済界の関心の復活というものを非常にソビエトは望んでおる、大変な望みである。このことはゴルバチョフ自身も演説の中で言っていらっしゃる。私は、去る四月二十日の当委員会で、三井物産の八尋会長がモスクワを訪問されてボリソフさんに会っていらっしゃることも指摘した。松下の山下社長が訪ソされたことも指摘いたしました。たまたまココム問題が出ておったが、こういうことを指摘をいたしながら、私は、ボリソフさんは国家科学技術委員会の協力局長であった、日本とのつながりを非常に推進される方であった、こういう思いをいたしながら、今日の日本ソ連の中における経済界が外務省も知らない間にソビエトといろいろな契約をするおそれがあることを指摘せざるを得ないのだが、いかがでしょう。通産省からだれか来ていらっしゃいますか。
  31. 木村文彦

    ○木村説明員 お答え申し上げます。  我が国では、現在外国為替管理法によるココム規制あるいはこれに関連した決済方法等による規制を行っておりまして、政府が知らない間に法の運用に穴があく、そのようなことのないように厳格な運用を従来から行ってまいりました。今後ともその方針には変わりはないということを申し上げておきます。
  32. 北川石松

    北川(石)委員 通産省も広範囲にわたって何か大変だと思うが、私は特に国益より企業利益が優先するとの価値観を持った経済人が一部とはいえ存在することは残念ながら否定できないと思う。この前の質問でも触れましたが、戦前の外交を取り上げました。イランのアヘンを買い付け、中国に売りつけたことをこの前強く指摘した。それは日本の官僚が大変強い力を持っておるときですら、三井物産が当時の上海派遣軍特務部と結託してやったこと。こういうことは、秘密資金を稼ぐためにアヘンを上海でなにして、向こうの純粋な中国の中にこういうような市場を開いていったことは許されないということをこの間指摘した。利益のためにはいかなる仕打ちもやりかねないのが企業じゃないかということを申し上げた。このことは当時の公使より大臣にあてられた電報も引用して申し上げた。私は今日において利益第一主義である対ソ経済へのアプローチがあってはならないということを懸念して申し上げておきたい。あくまでも我が国の安全保障政策に十分に留意してやっていただかなくてはならぬということも重ねて申し上げておきたい。  近く大型の財界コミッションが訪ソされるということを聞いておりますが、大臣、御承知ですか。
  33. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 特にソ連側から経団連の会長を団長として来るようにというような要請がございましたが、今のところ経団連の会長は、その要請にこたえることはできないということを最近私と出会ったときにも申されております。
  34. 北川石松

    北川(石)委員 では、何ですか、財界コミッションは送らない、大臣は今送らぬようにおっしゃったが、どうですか。
  35. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 だから、今のところは行かれる予定はない、こういうように考えております。
  36. 北川石松

    北川(石)委員 行かれる予定がないとおっしゃっているが、行くことの下地は着々と進められておるように私の方ではキャッチしておるのですが、大臣との非常な食い違いであると思いますが、要路者はいかがですか。
  37. 荒義尚

    荒説明員 お答え申し上げます。  本件につきましては、まだ行く予定はないというのは大臣答弁のとおりでございますが、より詳しく申し上げますと、十月に専門家のグループがソ連の方を訪問しておりまして、その報告書がことしの年末あるいは明年の当初に出てくるという段取りになっておりまして、私どもとしましては、その報告書を検討した上でさらに検討を続けたい、こういうことでございます。
  38. 北川石松

    北川(石)委員 今の何は木村さんですか。どうですか、木村さんは。
  39. 木村文彦

    ○木村説明員 今参事官からお答えのとおりでございます。
  40. 北川石松

    北川(石)委員 私は、水面下の動きというものも、特に外務省というもの、外務大臣というものは非常な特権を与えられた日本政治の中にあると承知しておる。通産省、農林省も、各省、大蔵省といえども、外務省が外国と決定したことには従わなくちゃならない。大蔵省優先であっては日本政治はなし遂げていけない。こういうことを指摘しながら、何のために各国大使館に菊の紋章が置かれているかということ、外務省というものの地位と、日本国というものの一番大事な諸外国との接点に立つ外務省というものは重要であるということを指摘しながら、宇野外務大臣に重ねて、外務省の地位というものを、また昔の外務省と違うということもお考え願っておかなくちゃならない。率直に言うて、防衛庁と通産省は、大変忙しい、つらいいろいろなことをやらなくちゃならない各省でありましても、本委員会局長クラスの答弁を求めると言ったのにおりてこない。これは外務省姿勢が悪いのか、どの姿勢が悪いのか、私はわからないから今後検討しなくちゃいかぬと思うが、こういうことであってはよくない。いやしくも本院の方で指摘したことは忠実に守るところの各省でなくちゃならぬということも指摘しておきたい。  こういうことを思いながら、私は、民族あって国家あり、国家あって民族ありと思う。委員長、今うなずいていらっしゃるが、日本国があって竹下総理もあり、宇野外務大臣もあり、委員長もいらっしゃる。この上に立っての政治でなくては、民族の安定、民族の幸福、国家の隆昌というものはなし遂げ得られないということを私は指摘し、冒頭に三木元内閣総理大臣マンスフィールド大使閣下の弔辞を私は謹んで受けながら、日本国外交姿勢というものが真実の上に立ち、日本の民族の心を心としながら、相手の国民の心を心とした、その中の真実が形に出る政治をやっていただきたい。  宇野外務大臣、最後に大臣の決意を聞かしていただいて終わりたいと思います。
  41. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 いろいろと御激励のお言葉をちょうだいいたしましてありがとうございます。我々といたしましては、今日の日本の立場は、私もこのポストに就任いたしまして、本当にかくまでも日本世界からいろんな期待を込められ、また要請をなされる大きな国になったかというのが私の気持ちでございます。したがいまして、こうした大きくなったゆえんは、やはり戦後十年、私たちアメリカのいろんな資金の援助によって空腹を満たすこともてきましたでしょうし、さらにはまた、世界の好意によりまして融資等を受けていろんなインフラストラクチャーの拡充にも資することができたでしょう。かく思いますと、やはり国際的なそうした友情、そうした協力、理解、これにおこたえしなければならぬのが今の日本である、こういうふうな気持ちを抱いております。  もちろん、そうした中で竹下総理は御承知の三つの柱をたてました。一つは平和に貢献する外交、一つは文化交流、一つはODAの拡充、いずれも国民の御理解と国民の御協力なくしてはできるものではありません。だから、単にお金を各地に、ODAですからどうぞお使いくださいと言うんじゃなくして、やはり今日まで大をなさしめた国民努力の結晶を私たちはお預かりして、それをそれぞれの国の復興に充てる、まあ人道上の問題にも充てるということでございますから、そうしたときには、今北川委員が申されましたとおり、単なる技術じゃなくして我々の心というものを相手方に訴えていかなければなりません。そして日本人の心を相手方が受けとめてくれるような外交が大切である、かように私は思っております。
  42. 北川石松

    北川(石)委員 心、心と言われたのでいいですが、これを形に示していただきたい。  それから、ブッシュ大統領当選のことも申し上げ、お祝いを申し上げながら、ブッシュ大統領当選によるこれからの対アメリカの政策をお聞きし、また自分の所見も申し上げたかったけれども、私は十分間縮めるという約束をした、大臣のために。こういう非常に優秀な部下がいてくれる、心してそういうことも大臣はやっていただきたいと思います。  本当はまだまだいろいろ言いたいのですよ。本当に外務政務次官の問題からいろいろ言いたい。しかし、時間を約束した以上はこれで終わりたいと思いますが、与えていただいた時間の中、質問に御協力を願ってありがとうございました。終わります。
  43. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 河上民雄君。
  44. 河上民雄

    河上委員 きょうは久しぶりの外務委員会でございます。これは委員長にも申し上げたいことでございますけれども、国際情勢がこの数カ月の間に大きく変わっております。そういう意味からも、外務委員会の特に国際情勢に関する定例日というのは非常に重要だと思いますので、その点を委員長に注意を喚起さしていただきたいと思うのでございます。  御案内のとおり、この間米ソ関係がかなり大きく動いております。また中ソ関係もしかりであります。三十年ほど続きました中ソ対立も収束に向けて動き始めたかに見えますし、それと関連して朝鮮半島問題も大きく激動の時期を迎えようといたしておりますし、また東南アジア問題、そしてアメリカ大統領選挙がございました。  きょうは、その中で日本はどうするかということで、お尋ねしたい問題は多々ございますが、大変残念ですけれども、きょうはまず最初に、外務省職員に関連するいわゆる財テク問題から取り上げざるを得ないのは残念に思っております。私も外務委員会に所属すること長い一人でございますだけに、冒頭からこんな質問をするのは本当を言うと大変悲しいことでございますし、また関係する方々の中に私も親しくしておった方もおりますだけに胸痛む思いでありますけれども、しかし、やはり外務委員会としてこの問題は取り上げなければならない、こんなふうに思っておりますので、御質問したいと思うのです。  今、金、金、金の時代でございまして大変残念な世相でございますが、よもや外務省はこうした財テクには無縁だと我々は思っておったわけでありますけれども、そうした貴重なイメージというものが今回汚されたことを大変残念に思うわけであります。外務大臣の御意見も承りたいのでございますが、その前に、今回処分者を出した、処分をされたということでございますが、今回の行為は一九六一年の外交関係に関するウィーン条約、いわゆるウィーン条約に違反するのではないか。特に第四十二条には、「外交官は、接受国内で、個人的な利得を目的とするいかなる職業活動又は商業活動をも行なってはならない。」このように明記されておりますけれども、今回の関係者、それぞれ立場は少しずつ違うようでありますけれども、これはこの四十二条に明らかに違反しているのではないか、こんなふうに思いますが、外務省の御見解を承ります。
  45. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 今回のいわゆる財テク事件におきまする和田元理事官の行為でございますけれども、ジュネーブ代表部在勤中に約二十一名程度の方々からお金の預託を受けて、それを株式等の運用に回していたということにつきまして、ただいま委員指摘のように、ウィーン条約四十二条、そこに書いてありますこと、ただいま委員がおっしゃったとおりのことでございますけれども、「個人的な利益を目的とするいかなる職業活動又は商業活動をも行なってはならない。」これとの関連で問題があるというふうに存じております。  しかしながら、この和田元理事官がジュネーブで行いました行為が個人的な利益を目的とする職業活動であるかあるいは商業活動であるかという点につきましては、商業活動というものが不特定多数の人々からの預託を受けてこれを行うということであれば明瞭でございますけれども、少なくとも勧誘された方は、和田氏個人の友人として、知人として勧誘されて小人数でやっておったという意識でございまして、和田氏に会いましていろいろ詳しく詰めてみないとわからない点が多々ございますけれども、職業活動あるいは商業活動というふうに断定できるかどうか。その点は直ちに断定はいたしかねる、しかし問題は大いにあるというふうに存じております。
  46. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、内部の者が小人数でやれば違反でないという判断を持っておられるのですか。
  47. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 外交官といえども、一般にそれが行われているという意味じゃございませんけれども、理論的に、海外におきまして自分で株を運用する、つまりどこかの株を買うということ、これを禁じられているものではございません。ですから問題は、職業活動あるいは商業活動というような形で株を運用するという、和田元理事官の行為がそれに触れるかどうかというところが問題であるというふうに了解しております。
  48. 河上民雄

    河上委員 それでは、まだ最終的な結論はついていないということでございますか。
  49. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 和田元理事官の行為については、先ほど申しましたように、ウィーン条約上の判定は最終的にはしかねるということでございます。
  50. 河上民雄

    河上委員 それでは、処分をされたのはどういう理由ですか。
  51. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 ただいま申し述べましたように、和田元理事官の行為は、ウィーン条約上も、それから国家公務員法、これは職務専念義務の百一条、それから私企業からの隔離、百三条ございますが、いずれにつきましても問題があり得るということでございまして、そのような行為が法律にどの程度触れるかという判断、これはその手続を経てきちっとなされなければいけないと思いますけれども、それに触れ得るような問題ありという行為、これはもう明確に望ましくない行為であることは間違いございません。外交官としてはあってはならない行為であるというふうに考えております。したがいまして、その行為に関与した度合いにつきまして処分が行われているわけでございます。すなわち、大使二人につきましては、本来一般的に後進を指導すべき立場にあり、また範を垂れるべき立場にあるわけでございますが、そのような方が和田元理事官の勧誘に従いまして反復して預金を行う、もっとも当人たちはこれがそのような手広い行為と必ずしも認識していなかったという面はあるようでございますけれども、いずれにしましても、結果として和田元理事官のそのような望ましからざる行為を助長したということは、大使として極めて不注意であるということでございまして、その結果、二人の大使に対しては譴責処分としての厳重注意が行われたわけでございます。また当時のジュネーブ代表部の大使でありました千葉大使につきましては、和田元理事官が私的にいろいろ行っていた行為でございまして、和田元理事官の行為を大使として十分知り得る立場にはなかったかもしれませんけれども、やはり監督責任ということがございますので、千葉大使に対しましては注意という譴責処分が行われておる次第でございます。
  52. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、ウィーン条約及び国家公務員法の二つの条項に当たるかどうかはなお検討中である、しかし法に触れるかどうかは別として、外交官として望ましくない、また適当でないということで処分をされた、こういうふうに理解してよいかと思いますが、その場合、前者の方の結論が出た場合には、この外務委員会でその結果を御報告いただけますね。
  53. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 和田元理事官の行為につきまして、現在和田元理事官との接触等に努めておりますけれども、状況がさらに判明次第、我々としてもさらに判断がより可能になれば、そのような判断をいたしたいというふうに思っております。もちろん本件につきまして我々の判断がありますれば、それについては外務委員会等におきまして御報告申し上げることは当然でございます。
  54. 河上民雄

    河上委員 実は、外務省ではもう一つ必ずしも好ましいとは考えられない出来事が新聞で大きく報道されておりまして、かつて同僚委員でもありましたのでいかがかと思いますけれども、浜田政務次官が外務省内の課長に対して云々ということが新聞に大きく報ぜられております。これも法に触れるかどうかというのはちょっとわからないことでございますけれども、今のお話によれば、法に触れなくても、それが好ましいか好ましくないかということで外務省としてはそれぞれ判断をされているようでございます。こんなことが一体慣例としていつも行われていたのかどうか、今回初めてなのか、そういう点はいかがでございますか。
  55. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 浜田政務次官が昨年の末に省内の若干の方に対しまして、いろいろお世話になったということで、おつき合いの範囲ということで、上司の下僚に対するお世話になったということの志ということで、若干のいろいろお礼と申しますか、そういうことがあったというふうには聞いておりますけれども、これは上司の下僚に対する一般的な気持ちの範囲ということでございまして、報道されているように、非常に広くということではないようでございますし、そういうことが外務省において通常行われているということはございません。
  56. 河上民雄

    河上委員 それじゃ、今そういう御答弁がありましたが、それは省内で調査した結果でございますか。
  57. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 ただいまの浜田政務次官の行為は、先ほど申しましたような性格のものでございますので、組織的な省内の調査というものは行っておりませんけれども、ただいまのような性格のものであるということは、浜田政務次官等からもお伺いいたしましたし、我々としてもそういうふうに思っておる次第でございます。
  58. 河上民雄

    河上委員 外務大臣、お聞きになって、これは竹下総理じゃないけれども、いいことじゃないなという感じを持っておられると思うのですが、外務大臣、こういう外務省内の一種のモラルの低下ということにつきましてどういうふうにお考えになりますか。また今後どういうふうにしたらよいと今思っておられるか、お伺いしたいと思います。
  59. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 二つ問題を提起されたわけでございますが、最初の財テク問題は、これは好ましいことではありません。およそ国家公務員は国民に忠実でなくてはなりませんし、我々政治家もさようでございますが、常に風紀も侵すあたわず、金銭も侵すあたわず、そういう言葉で私たちは教わってまいりました。特に大使は認証官でございます。そうした立場において我が国を代表し行っておるわけでございますから、さらに緊張した生活をしてほしい、こう思いましたが、ただいま御指摘の件はまことにそういう意味では残念な事件であったということで、私も次官を初め官房長に徹底的に調査をするように命じたような次第でございます。そうして、やはり国民から外交官に与えられた何らかの感情、これに対してもはっきりお答えしなければなりませんから、厳重にこのことは譴責処分に処したという経緯がございます。  なおかつ、政務次官の話も、新聞報道があった後に政務次官が直接私のところに来られまして、経緯を話されました。私としては、今官房長がお答えしましたように、上司の部下に対する思いやりであったのか、かように解釈しております。なおかつ、人の交際というものは、だれとだれが交際して、盆、正月にはどうなっておるかとかいろいろございましょうが、そうしたことにまで、じゃ大臣と政務次官の関係だから入っていいのか入らなくていいのか、交際の範囲は私的な問題でございますから入るべきでない、かように私は考えておりまして、浜田君の率直なそうした御報告を受けましたので、わかりましたと申し上げて今日に至っております。
  60. 河上民雄

    河上委員 今回こういう事件が起きまして、外交官も非常に一生懸命やっている方も多いわけでございますので、そういう意味で皆さんも含めて大変残念に思っておられると思うのであります。  こうしたモラルの低下が起きました背景には、一つは、国際関係が非常に頻繁かつ複雑多岐にわたるにつれまして、昔のように外務省だけが国際関係をやるというのではなく、内閣の各省も、大蔵省あり、また通産省あり、防衛庁あり云々というようなことで、何か外務省がこれはおれのやる仕事だというところが次第に危うくなっているような感じもあるのではないかと指摘する方もあるわけです。英語ではモラルとモラールというのは、道徳と士気というのは非常に似たような言葉でございますが、士気が低下するからまたモラルも低下するということもあるのじゃないかと思うのでございます。  そこで、外務省というのは単に日常業務に追われるのではなくて、やはり日本外交路線を積極的に展開していくというところに初めて外務省の新たなというか、当然のことでありますが、そこに他の省にない一つの大きな使命があるのではないか、こんなふうに思うのです。何かもう日米関係という枠内だけに安住していればいいということでいきますと、今のようなことになるのではないかと思うのであります。そういう観点からいいまして、先般外務大臣は、秋の国連総会に、予定されておりましたのに欠席されました。またG7、今日日本の経済力がこれだけ大きく比重を占めておる際、特に金融、通貨の問題が取り扱われます、世界情勢を大きく左右するであろうというG7に大蔵大臣が欠席する。こういうことが相次いでまいりますと、これはもう世界は、日本は一体どんな国なんだというふうに思っただろうと思うのでございます。こういう点から見まして、やはり外務大臣はいかなる事態があっても外交は私の責任だという気迫で当たらない限り、外務省の士気の低下というのは当然起こるべくして起こったと言ってもいいと思うのでありますが、外務大臣、こういう点いかがでございますか。
  61. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 先ほどもその点は触れさせていただきましたが、やはり我々といたしましては、象徴天皇が本当に大変な事態になられるかもしれない、私の出発とそれが重なったということでございましたので、それぞれが判断をいたしまして、最終的には私が、ではそうしたことで今回の外交は栗山審議官にかわってもらおう、こう思いましてやったことでございます。しかし、今おっしゃるとおりのことは私は大切なことであると思いますので、ただいまの言葉は十分かみしめて今後当たりたいと思っております。
  62. 河上民雄

    河上委員 今お話がございましたけれども、そうしたために数カ月日本外交が麻痺するようなことになることこそ、実は外務大臣としての責任を十分果たしてないということにもなりかねませんので、そういう点はもう一度お考え直しいただきたいと思うのでございます。  宇野外務大臣に引き続きお伺いしたいのでありますが、今回ブッシュ新政権が誕生いたすわけでございますが、早速訪米の日程が決定したように聞いておりますけれども、これは必ず行かれるわけでございますか。
  63. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 三十日から出発するという予定を組みました。
  64. 河上民雄

    河上委員 この一月二十日から大統領になることが予定されておりますブッシュ氏に会う予定はございますか。
  65. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 ブッシュさんの御都合も聞かなければなりませんから、まだ具体的な日程その他は固まっておりませんが、私は、当然会わなければならない、かように思っております。
  66. 河上民雄

    河上委員 今度のブッシュ政権について外務省としてはどういうお考えを持っておられますか。ブッシュ時代というのが新しく始まるというふうに見ておられるのか。巷間伝えられますように、レーガン政権の第三期目という性格を持っており、勝つには勝ったけれども、レーガン時代の大きなツケを回されるという見方も強くあるわけでございますが、外相の御意見はいかがでございますか。
  67. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 先般の選挙でブッシュさんが大勝されました。これはアメリカ国民がデュカキスさんとブッシュさんを比べた場合に、民主党の方は変革またリベラル、ブッシュさんの方は現状維持、今のままでいいではないか、現に景気も七十一カ月好況が続いておるという状態ですから、そういうふうな答えを出されたと思います。そうしたことで、私はブッシュさんが当選されたことを喜んでおる一人でございますが、八年間副大統領としてレーガンさんを支えてこられたという方でございますから、私たちはその路線上において、日本外交もひとつ活発な今後の日米関係の構築に当たらなければならない、かように考えております。  同時に、レーガンさんはまれに見る日本あるいはアジア・太平洋に対する非常に親密の度合いと申しますか、いろんな面でいろいろと気配りをなされた大統領でございまして、したがいまして、日米関係というものは、我が国外交の基軸である、かように存じておりまするから、そうした線で私はブッシュさんにも我々との親善をさらに強めていただくようによろしくお願いしたいと思います。  ただ、御承知のとおり、議会筋におきましては民主党の方が若干勝っておられます。だから、ややもいたしますと、議会と行政府との関係はどうなのかという問題もございましょうが、ブッシュ大統領候補は今日まで議会とも親密にやってこられて、そうした面でも人づき合いの非常に上手な方であるということも聞いておりますから、我々といたしましては、当選が決まりましたとき、デュカキス候補との間において、二人はアメリカ繁栄のために協力しようというエールの交換がありました。そうしたエールの交換が、今後も議会と政府の間におきましても、そうした関係で進めていただきたいと私は思います。  もちろん日本も大国、またアメリカも超大国、この間には時代が進むにつれましていろんな問題があるであろう、それは一つ一つ努力をしてやっていかなくちゃならぬ。同時に、両国が世界的視野に常に立って、私たちのこの関係の良好なることはすなわち世界に大いなる貢献をするゆえんである、こういう立場でやっていかなければならない。そうしたことで、私は今後も新政権に対しまして期待もし、また私たち努力をしたい、かように思っております。
  68. 河上民雄

    河上委員 今外務大臣から大いに力強い御発言があったわけでございますが、それでは、そのブッシュ政権の今後の大きな課題と言われておりますが、同時にこれは世界経済、また当然日本はその最も強い影響を受けるわけでございますけれども、今日のアメリカ経済ですね、いわゆる貿易の赤字と財政の赤字という双子の赤字が続く限り、これはもうどうしようもない。御案内のとおり、最近ポール・ケネディの「大国の興亡」という本も出ておりますけれども、これではアメリカはナンバーワンとしての相対的な低下という評価もありますけれども、同時にそれはもう世界が大きく影響を受けるわけでございます。そういう際に、ブッシュ新政権に対して竹下政権として、また宇野外務大臣として、やはりこれは双子の赤字に手をつけてもらわない限りあなた方もぐあい悪いし、我々も迷惑だということをはっきりと最初に言うべきではないか、こんなふうに思うのであります。もちろん、それを具体的にやるのは内政問題だという答えが返ってくるかもしれませんが、我々としてやはり言うべきことは言わなければいかぬと思うのでありますけれども、外務大臣、いかがでございますか。
  69. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 アメリカの要路の大官にお目にかかりますたびに、総理も私も、やはり世界経済のためアメリカががっちりしていただかなくてはならぬ、特にドルは基軸通貨である、こうした関係からも双子の赤字解消に対しては全力を挙げてほしいと常に申し上げております。当然新政権に対しましても、そうしたことを申さなければならないと私は思っております。
  70. 河上民雄

    河上委員 先ほど議会筋というのは今度は民主党の議会というふうになったという御指摘がありましたが、御案内のとおり、民主党主導の議会というのは日本に対して攻勢に出てくるのではないか。一説によれば、ブッシュとデュカキスとどっちが勝ったら日本にとって有利か、そういう話が、私はこれは余り意味のないことだと思うのでありますが、そういうときに、ベンツェン副大統領候補をむしろ副大統領にした方が、彼が上院のボスとして残るよりも日本にとってはいいんじゃないか、したがってデュカキスが勝った方が日本にとっていいんではないか、そういう説もあったくらいでございますが、今後ブッシュ新政権で貿易政策あるいは防衛政策で日本に対して非常に強い立場で臨む可能性がありますけれども、外務大臣としてはこれについてどういうふうに対応せられるつもりですか。
  71. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 御承知のとおり、ただいま国務長官あるいは財務長官、さらには首席補佐官等々の人事が順次発表され、また確定いたしておりますが、全般的な内閣の構成はまだでき上がっておりませんし、ただいま鋭意選考中であると私は承っております。したがいまして、いろいろと前政権からの日本との関係の問題、これまた引き継がれることであろうと思いますが、やはりどのような政権でございましても、日米親善ということを中軸としながら、私たちはやはり日本日本の立場を常に主張していく、これには変わりはございません。
  72. 河上民雄

    河上委員 外務省にお伺いしたいのでありますが、アメリカからは最近特にバードンシェアリングということが言われておるのでありますけれども、恐らくブッシュ新政権になりますと、これが一層前面に出てくるのではないか、こんなふうに言われておりますが、外務省としてはどういうふうにこれに対処するお考えでございますか。  この前、NHKの政治座談会を聞いておりますると、村田事務次官は、バードンシェアリングというこの言葉をまずやめるところから新しい日米関係が始まるというふうに言っておられるのでありますが、外務省としては、その村田次官の言葉の意味も含めて、どういうふうに対処せられようとしておられるのか、伺いたいと思います。
  73. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 我々といたしましては、ブッシュ政権になりましても、米国と日本との相対的な力の変化という基本的な潮流を背景にいたしまして、我が国が国際社会におきまして一層の役割を果たすようにという米国の要請というのは、当然続いてくると考えております。  我が国といたしましては、世界の平和と繁栄に貢献するために、増大した国にふさわしい役割をみずから積極的に果たすことは当然の責任と考えておりまして、竹下総理初め外務大臣がいろいろな機会に言っておられますとおり、日本が国際社会において世界に貢献する日本として国際的な責務を自主的に果たすべきだという基本的な考え方に立って、これに対応していきたいと考えております。  それで、バードンシェアリングという言葉が適当でないかどうかというのは、これはバードンシェアリングという言葉をいかに理解するかにもよるかと思いますけれども、バードンといいますと、いかにも重荷を嫌々負っているという感じがするわけでございますけれども、我が国といたしましては、アメリカから言われたから仕方なくそれに渋々応じるということではなくて、ただいま申し上げましたような基本的な考え方に立ちまして、国際社会において当然果たすべき責務を果たすという観点から対応したいという考えを込めまして、できればバードンシェアリングという言葉は避けたいというふうに事務当局として考えている次第でございます。
  74. 河上民雄

    河上委員 最近東京湾のすぐそばで、房総半島沖、それも日本の領海内で米艦が海上保安庁の巡視艦艇に対して砲撃をしたという、まあ幸いにして当たらなかったのですけれども、砲撃をしたという大変許しがたい事件が起きておるのです。これに対する外務省の対応でございますけれども、新聞報道によりますると、竹下内閣の中で石原運輸大臣が、外務省はそれをひとつ内々にしてくれというふうに頼んだ、いわゆる隠ぺいを図った、それは対米配慮である、こういうことでやったというふうに伝えられております。これ大臣、事実ですね。
  75. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私も記者会見ではっきり申し上げましたが、隠ぺいした事実なし、石原運輸大臣から私に対しまして閣議前に抗議された事実もなし。ただ、話はありました。その話の中に、いろんな部下の報告を聞くと、どうも外務省がこれはもうちょっと発表を待ってくれとかやめておいてくれと言った、これはけしからぬと思いますよという話はあった。私もそういうことは発表をはばかる必要は何もない、私はそう思いますよと。私もそのことは聞いておりますが、もしその米艦のなしたところが、原因が追求されたら直ちに米国に対しては抗議すべきであると言っておいたので、発表するな、せぬのというようなことはまだ聞いてないから、私はそういうことはあなたと同じだよ、こういうふうに申し上げまして、そして役所でいろいろ調べました。ただ、新聞社との間の時間が随分あったということは事実でございましょう。しかしながら、その間、では運輸省なりあるいは海上保安庁なりそうしたところに、このことは内密にしておきましょうと言った事実は全くないということも私は調べました。それが結果でございます。
  76. 河上民雄

    河上委員 石原運輸大臣が、同じ閣僚として正式の抗議というのはぐあい悪いと思ってそうされたのだと思うので、それを話題にされたこと自体大変なことだと私は思うのですよ。まあ正式に文書で来ないから、それは抗議ではないのだという御理解はいかがかと思うのでございますが、それはそれとして、隠ぺいを否定されたわけでございますが、じゃそれなら事件が起きてから三十時間近く発表までかかっておるのですね。これは一体どういうことでございますか。あそこは日本でも最も船の航行の錯綜したところでございますね。仮にそういう事件が次々起こったら大変なことでございますからね。これは直ちに日本国民に知らせるべき問題だと思うのですよ。この三十時間たったというのは、これはちょっと弁解の余地がないと思うので、外務省、いかがですか。
  77. 岡本行夫

    ○岡本説明員 本件につきましては、海上保安庁から外務省の方に対しまして、九日の午後八時ごろ事件の発生についての連絡を受けたところでございます。それを受けまして、三十分後、外務省から直ちに在京米大使館に対しまして事実関係について照会をいたしました。その結果、在京米大からの回答が我が方に接到いたしましたのは十日の午前九時ごろでございました。私どもはこれを大変重視いたしまして、在京米大に対しまして抗議、事件の再発防止申し入れ、それから何よりも迅速な調査を要請いたすべく、午後四時ごろに在京米大使館の政務担当の参事官を招致いたしました。その結果、私ども確かに直ちにプレスの方等に対しまして公表すべきだったとは思いますが、在京米大使館参事官を招致した午後四時から、私どもが記者ブリーフを行いました午後七時四十五分までの間に数時間のおくれがあった。これは私どもとしてもできるだけ早くブリーフすべきものであったと思っております。
  78. 河上民雄

    河上委員 外務大臣、今外務省の担当者も発表のおくれがあったことについては遺憾であったというふうに認められたわけですが、大臣もそう御理解なすっておられますか。
  79. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私も、夕刊に大きく報道されてびっくりした一人でございますから、こんなことは外務省の名誉にかけてもあったかないか調べなければいかぬというので、次官にもまた局長にもそれぞれ私みずから出会いましていろいろ話を聞きました。それはただいま岡本課長が申したとおりでございます。ただ、なぜもう少しく早くしなかったか、うろうろせずにはっきりすればいいじゃないか、こういうふうに申しまして、この点は記者会見でも、その間時間がかかったことは遺憾でしたと私は率直に言っております。
  80. 河上民雄

    河上委員 ところがけさの新聞によりますると、米軍からタワーズ事件に関しまして防衛庁に、あれは海上保安庁の巡視艇とは思わずに、自衛艦だと思って発射をしたという連絡があった。巡視船と識別ができない、自衛艦に対して、訓練に邪魔だと思ったのかどうかわかりませんが、警告の意味で威嚇発射をしたと言わんばかりの弁明があったというふうにきょう出ております。しかもそのとき、ついでにもう一つ、一時間前にも射撃を行ったということをつけ加えて報告してきている、こういうお話であります。どうもこの報道というか、米側の認識によりますると、海上保安庁の巡視艇だったからちょっとぐあい悪かったが、自衛艦ならいいというふうに見ているかのごとく思われるのでありますけれども、一体日米安保条約のもとで、提供している海域なら、自衛艦ならばこういうことをやっていいという約束があるのかどうか、防衛庁に伺いたい。
  81. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 ただいまの最後の部分、安保条約についてのお尋ねでございましたので私からお答えいたします。  射撃を伴うような訓練を領海内で行うときは、これは施設、区域の中でのみ許されるわけでございますけれども、その際、相手が自衛艦であればどこで撃ってもいいというようなことは、条約上も全く書かれておりませんし、恐らく条約以前の常識の問題といたしましても、そういうことは許されないと考えております。
  82. 河上民雄

    河上委員 防衛庁来ておられたら、防衛庁は一体この米軍からの連絡をどのように受け取ったでしょうか。
  83. 板垣靖雄

    ○板垣説明員 ただいま来たばかりでございます。  チャーリー水域につきましては、事前通報はございません。夜間に練習訓練が行われる場合にのみ通報があることになっております。
  84. 河上民雄

    河上委員 今の方にもう一度。  向こう側は、自衛艦と誤って射撃した、こう言っているのですが、そういう認識というものを防衛庁は当然と受け取っているのですか。今の条約局長の言葉では、そういうことは絶対あり得ない。もう少し詳しく言いますと、領海内は確かに国際法上いかぬわけでしょうが、領海外なら自衛艦を標的にしてもいい、そういう了解があるのかどうか、それを伺いたいのです。
  85. 柳澤協二

    ○柳澤説明員 私ども日米共同訓練等で海上自衛隊と米軍とが一緒に訓練をすることはよくあることでございますが、まさに射撃というようなことは互いに相当神経を使わなければいけないことでありまして、御指摘のような了解は当然あるようなことはございませんし、それからリムパック等の派米の際は別でございますが、現に我が国の近くで行います共同訓練などで、相互に射撃し合うというような内容の訓練は、今までもやってきておりません。
  86. 河上民雄

    河上委員 条約局長に伺いたいのでありますけれども、領海条約によれば、極めて常識的に、領海内は無害通航ということになっております。また条約にあるなしにかかわらず、そういうことになっているわけですが、その観点から見ますと、今回の米軍の行動は国際法違反である、こういうふうに日本政府は考えておられますか。
  87. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 今回のタワーズの行為は、国際法上の無害通航には該当いたしません。このような行為は一般国際法上も認められるものではないと考えております。
  88. 河上民雄

    河上委員 そうしますと、外務省は北米局長が抗議をしたというふうに先ほど言われましたけれども、国際法違反であるということも含めて抗議をされましたか。
  89. 岡本行夫

    ○岡本説明員 私ども今回の事件、大変重視しております。我が国の領海内の訓練水域外の海域、しかも東京湾口付近という交通要衝の地におきましてこのような行為が行われたことは極めて遺憾である、このような行為は一切認められないということを強く米側に申し入れているところでございます。米側はこれに対しまして陳謝の意を表明しており、さらにただいま中で、どうしてこのようなことが起こったのかということについて鋭意調査中でございます。  昨日受けました中間報告では、先ほどの先生の御質問に関連いたしますけれども、海上には標的として使用した物体はなかった、つまり何かを標的としてこのような発射を行ったということは全くなかった、ただし、どうしてこのようなことが起きたのか、その理由についてはなお鋭意調査中であるという回答を得ているところでございます。
  90. 河上民雄

    河上委員 外務省に重ねて伺いますが、今後こういう、もちろん領海内は言うまでもありませんが、安保条約のもとで提供している海域以外でこのような発射をさせないという約束を取りつけておられますか。
  91. 岡本行夫

    ○岡本説明員 今回の事件は、米軍の内規におきましても認められない事態だったとの報告を私ども受けております。当然、米側としては再発防止に抜本的な策を講ずることになろうと存じます。私どもとして、我が国に安保条約に基づきまして駐留いたします米軍につきましては、当然に地位協定の厳格なる遵守が必要でございまして、先生がおっしゃられたような観点から、重ねて米側に地位協定の遵守、そして我が国国民の安全、財産の安全ということに十二分に配慮するようにということを強く申し入れ続けてまいる所存でございます。
  92. 河上民雄

    河上委員 外務大臣、最近こういう事件が起きましたが、それ以外にも例えば沖縄で射撃訓練の弾が民家に飛び込んでくる、安心して生活もできないという状況でありますし、また北海道あるいは青森、そして長野県の山間部のようなところにおきましても、米軍による非常に危険な低空飛行が平気で行われているケースが非常に多いわけです。これは単に米軍の訓練が行き届いていないというような問題ではなく、これはやはり日本政府として、特に外務省として日米関係についてしっかりとした姿勢を示していない結果、だんだん向こうはルーズになってきている。言葉は悪いですけれども、ちょっとなめてかかっているのではないかという心配さえあるわけです。外務大臣、この点についてどういうようにお考えになりますか。
  93. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 はっきり申し上げまして、今回の事件はまことに遺憾な事件であります。だから、私も先ほど申し上げましたその後段になりますが、外務省として、その原因が米軍にあるというときには厳重に抗議せよと言いつつ、私自身はちょうど米太平洋軍総司令官のハーディスティー中将とその翌日にお出会いするという予定がございましたから、もし米軍なら私からも中将に申し上げるということで、はっきりと中将に申し上げました。そうして今河上委員のおっしゃるとおり、沖縄の事件もあります。これはまだ米軍調査中でございますが、現に訓練の中において米軍同士のヘリコプターが接触して落ちた、そういうこと等も挙げましたし、基地住民の不安、これにつきましても申し上げ、なおかつ先ほどの事件に関しましても申し上げまして、私から言うならば、安保体制というものは一番これは円滑に運用されなければならぬし、今非常に運用がうまくいっていると思うが、最近しばしば米軍側においてそうした事故が続いておる。我が国の自衛隊もなきにしもあらずだけれども、やはりこれは緊張の欠くるところではないだろうか。だから、私として甚だ申しわけないが、緊張が欠けておるというふうに私は思うが、ぜひともこういう面に関しましても、はっきりとひとつお互いに安保体制というもとで緊張して第一線におられる方々はかかっていただかなければならぬ、こういうふうに申し上げた次第でございます。  そのときに、むしろ私が口を切る前に向こうの方から、過般の房総半島における事件はまことに遺憾な事件であって、我々としてはこうしたことが日米安保体制に、また日米間に大変な影響を与えてはいかぬので、我々としても十二分に調査をして、そして二度と起こらないようにいたしますということをはっきり総司令官も申されたわけであります。  その後マンスフィールド大使も、御承知のように、既に報道されましたが、その午後お出会いしましたときに一番にこのことを大使から申されました。また北米局長のもとには在日米軍司令官デービス中将、さらには第七艦隊司令官モーズ中将等々がくびすを接して来られまして陳謝しておられます。そして安保体制、日米間のために今後しっかりやりますからということをおっしゃって帰っておられます。  そうした中において、モーズ中将からだと思いますが、私に対する報告は北米局長がしておりますが、実はああいうふうな事件のその前、一時間前に領海の中で訓練をやったということも事実です、このことも重大なことでございますから、米軍といたしまして陳謝し、二度と起こらないように私は厳重監督いたしますというふうに、米国側からむしろ積極的に今回の事件に対する遺憾の意が表されております。  なおかつ、昨日は日米協議会が行われておりますから、この協議会の席におきましても、今河上委員が御指摘なさいましたようなこと等々に関しまして、今後のことに関し日本といたしましては厳重に抗議をいたしておるという次第であります。
  94. 河上民雄

    河上委員 この件につきましては、大臣からも御答弁がございましたが、あとの問題もありますので、次に移りたいと思いますけれども、ただ一つ防衛庁の御答弁の中で、夜間の訓練に関しては事前に通告があるけれども、昼間は事前の通告がないというようなことを言われたように聞きましたけれども、もしそうでありますならば、今回は昼間に起きた事件でありますので、この点は今後十分に考えていただかないといかぬ点ではないかと思いますが、いかがでございますか。
  95. 岡本行夫

    ○岡本説明員 地位協定上、米軍が施設、区域内で行います演習、訓練等につきましては、これを我が方に通告するという制度にはなってございません。ただし、我が方の国民の安全あるいは財産の保全といったものに対しまして重大な影響が想定されますような訓練等につきましては、当然私どもにも連絡があるわけでございます。先ほどの防衛庁の方の御答弁は、自衛隊と在日米軍の間でのいわば実際上の便宜上のアレンジメントとして存在するものと承知いたしますけれども、これは法的な求めによるものではございません。
  96. 河上民雄

    河上委員 今のようなことで日米間の関係がかなりはっきり浮かび上がってきたように思うのですが、現実に昼間にこういう事件が起きた以上、やはり昼間につきましても、夜間同様のアレンジメントが必要ではないかということを指摘いたしまして、次の質問に移りたいと思います。  先ほど対ソ関係について既にお話がございましたので、重ねて余り詳しく申し上げるのは差し控えたいと思いますが、やはり非常に重要なことですので、大臣に基本的な態度だけ伺いたいと思います。  先般大臣は、新潟における移動外務省という会合におきまして、対ソ関係につきまして重要な発言をされたと思うのでありますが、ゴルバチョフ書記長はまれに見る柔軟な人であって、こういうチャンスを見逃してはならないと思っている、こういうふうに言われましたが、これは今後の日ソ関係に対する竹下内閣の一つの姿勢を示すものだと考えてよろしいでしょうか。
  97. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 仰せのとおり、サミットでも、外相同士が集まったときの意見でございますが、今までのソ連指導者には見られない柔軟性とダイナミックな行動がある。ペレストロイカそのものに対しましても、やはりソ連内にはまだ反対があると思います。それに敢然と立ち向かっておる。だから、こういう人のときにお互いに言いたいことを言い、なすべきことをなすということの方が大切ではなかろうかというのが大体の国際間における西側の首脳陣の話でございます。  当然、我が国には他の国にもないところの領土問題というものが横たわっておりますから、速やかにこれは解決しなくちゃならぬということになりますと、こういう指導者が出られたとき、これはひとつチャンスだから、いろんな意味のチャンスを生かさなければいけませんよ、そして領土問題も解決し、なおかつそのほかの問題、もろもろの問題を通じて日ソ間の関係が改善されれば、これほどすばらしいことはないじゃないかというのがもちろん竹下内閣外交方針であり、私たちの考え方であると、ここではっきり申し上げておきたいと思います。
  98. 河上民雄

    河上委員 この前、ソ連のプリマコフ氏が自民党の研修会でございますか、会議に出られたりいたしておりまして、各所の発言の中で、この人はゴルバチョフ書記長外交問題の新しいブレーンというふうに聞いておりますが、いわゆる日ソ間の領土問題につきまして、領土問題が存在しているという前提のもとにプリマコフ氏が発言しているというふうに理解しておられるのかどうか。いかがでございましょう。
  99. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私もプリマコフさんの表敬を受けた一人でございますが、そのときプリマコフさんみずから、私はゴルバチョフさんの言うならばブレーンだというお話もされましたし、事実、アメリカ等々でゴルバチョフ書記長が記者会見をやるときには、その記者会見の場にはっきりとプリマコフさんの顔も映っておるということでございますから、日ソのいろいろな問題の交渉におきましても大変な方だ、私はかように存じております。  私は特にいろいろなムードの問題を話し合いましたが、自由民主党の安保総合調査会が行いましたときの一つのフォーラムの中のいろんなことから察しまするに、一応領土問題ありということは十分強く認識されておると考えてもいいのではないかと私は思います。ただ、この問題に関するソビエトのいろいろな方々の片々たる発言はございますけれども、肝心かなめの政府の考え方に関しましては、まだまだかたいところがあるというのが今の見方であります。
  100. 河上民雄

    河上委員 竹下内閣といたしましては、外交日程の中に、日ソ関係の改善、そして朝鮮民主主義人民共和国との関係改善というものが日程ないしは課題として入っていると我々理解してよいのか、まだそこまでいってないとおっしゃるのか。外務大臣の一つの考えをお伺いしたい。
  101. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 朝鮮半島の問題は、私常に申し上げまするとおりに、やはり南北そのものの話し合いが第一義的に大切なことであって、日本が国際場裏において、この問題に関し他を押し分けて出ていく、よく私はしゃしゃり出るという言葉を用いますが、そうしたことであってはならないと思います。それぞれまだまだ過去三十六年間、日本との関係等々、深いそれに対する感情が残っておるということもございましょうし、私たちもそうしたことを考えました場合に、我々からしゃしゃり出て、ひとつ両国家こうだああだというよりも、もし両国が話し合いをされて、日本もひとつ話に乗れよということならば、私たちはいつでも喜んではせ参ずるであろうというのが現在の姿勢である、かように申し上げて過言ではないと思います。ただ、大いなる関心を持っておるということは事実でございまして、北朝鮮に対しましても、第十八富士山丸のこともこれあり、したがいまして、労働党の代表がお越しになった場合には、我々としても、そうしたときに接触のチャンスというものがあるならば失ってはいけない、こういうふうな感じでおるのが現状でございます。
  102. 河上民雄

    河上委員 最後に一つ伺いますが、シェワルナゼ外相日本に来られると伺っておりますが、シェワルナゼ外相の来日、それからゴルバチョフ書記長の来日、さらには竹下総理の訪ソ、こういう見通しについて伺うことができればと思います。
  103. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 二国間外相定期会議は、今度は東京の番だということで、これは先ほど政府委員からお答えしましたとおりに、十二月十九、二十、二十一日の三日間にセットされました。そこで私はゴルバチョフ書記長の御来日という問題にも触れたい、かように考えております。毎度申し上げますが、既に四人の日本総理大臣が訪ソされております。しかるに、だれ一人首脳がお越しになっておらないということは、やはりそこに日ソ間の関係改善にも大きな、まだまだ入り口が見出されておらない。こういうふうに考えた場合に、ぜひともゴルバチョフ書記長の御来日を私たちはひとつ期待するということは申し上げたい、かように思っています。そういう段階でございます。
  104. 河上民雄

    河上委員 竹下総理の訪ソというのは、その次というふうに考えておられるわけですか。
  105. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 一応ゴルバチョフ書記長に来ていただくのが第一義的な国際的な慣例である、かように存じております。
  106. 河上民雄

    河上委員 もう余り時間がなくなりましたので、話題は変わりますけれども、この前外務委員会のいわゆる理事懇談会がありました席上、外務省の方から、さきの通常国会で批准をいたしました日米原子力の新協定の追加改定、附属書の一部修正についての御説明がございました。この問題については私も、ここにおられる同僚委員の方も皆質問されておられるわけでございますけれども、そのときの政府の御答弁から見まして、これは国会の承認を求めるべきではないかというふうに私は思っておるのでございますが、いかがでございますか。
  107. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 先日の理事懇談会におきまして外務省から御報告いたしました日米間の交換公文は、御承認をいただきました日米原子力協定の附属文書におきまして、プルトニウムの空中輸送につきましては米国の包括同意が得られるということが前提になったものでございまして、その後の日米間の話し合いにおきまして、もともと排除はされておりませんでしたが、包括同意の対象となっておりませんでした海上輸送につきましても、米側の包括同意を得ておくことが選択肢の範囲を広げるという観点から望ましいという合意ができまして、その点を日米間の文書で確認した次第でございます。  したがいまして、このような内容日米間の合意でございますので、従来より当委員会等で御説明しております、いかなる国際約束が国会の承認の対象となるべきかという基準に照らしまして、これは行政府限りで合意することができるという考え方に立ちまして、行政取り決めとして締結した次第でございます。
  108. 河上民雄

    河上委員 これは私自身も質問をしたので、記憶をたどれば非常にはっきり浮かび上がってくるのでありますけれども、あのときは、包括同意を得たい、そのためには航空輸送以外にあり得ないんだ、海上輸送は個別同意の対象だ、こういうことで再三御説明がありました。したがって、たとえもし落ちた場合とか、つまりアメリカでもアラスカ州が上空を通っちゃいかぬなんていう文句が出たりして、ほんの針の穴を通るようなルートを選んで日本に運ぶというような危険なことをせにゃならぬのは、航空輸送のみが包括同意になるんだ、海上輸送はだめなんだということでしきりと御説明いただいて、あの承認、私どもは反対いたしましたが、国会としての承認を得たんですね。そうなりますと、あのときの論点から見まして、これは重大なる変更であると言わざるを得ないんです。ただいまの御説明はその点を非常に無視したような議論だと私は思うのであります。  余り時間がないので、もう一つ言わしていただきますけれども、この前の御説明によりますと、海上輸送に武装護衛船をつける、それから武装した護衛者を乗船させる、こう言っているのでありますが、これは自衛隊を意味するのかどうか。  この二つを伺いたい。
  109. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 日米間の取り決めにおいて言われております武装護衛艦ということにつきまして、政府といたしまして自衛艦を使うということは全く考えておりません。
  110. 河上民雄

    河上委員 もう余り時間がないので言いますが、そうなると、海上保安庁の船ということですか。それとも外国の武装艦船を雇うということになるのですか。いかがでしょうか。
  111. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 理論的可能性の問題といたしまして、外国の艦船を使うということは排除されておりませんけれども、現在政府が検討しておりますのは、海上保安庁の巡視船を使うということでございます。
  112. 河上民雄

    河上委員 海上保安庁の船は沿岸警備にその任務が限定されております。そういたしますと、これは遠洋、はるか中東の海まで行くことはできない、あるいはヨーロッパの海まで行くことはできない。そうなりますと、これは国内法の変更ということにならざるを得ないのじゃないでしょうか。国内法の変更が必要であれば、条約の改定がやはり必要になってくる、私はそう思いますけれども、いかがですか。そのことを指摘しておきたいと思います。
  113. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦)政府委員 ただいまの御質問は本来海上保安庁からお答えすべき点でございますけれども、今おりませんので、私から便宜お答えいたしますが、我々の了解といたしましては、現在の海上保安庁の設置法におきまして、正確な言葉は覚えておりませんが、海上保安庁の任務といたしまして、海上の安全の確保ということが書かれておりまして、その水域は限定されていないということでございます。したがいまして、我が国の近海にとどまらず、公海であれば、海上保安庁の船が活動することは、現在の法律のもとにおいてもできるというふうに了解しております。
  114. 河上民雄

    河上委員 もう時間がないので、一言だけ。  そういたしますと、武装した日本の船が世界どこへでも行けるということになってしまいますので、海上保安庁の場合、恐らく武装していないということが前提だと思うのです。ですから、もう質疑時間が終わりましたので、質問が中途半端になりますけれども、そういう非常に重大な問題点をはらんでおりますので、あれほど大きな論議になりました日米原子力協定の実質的な改定を意味するような問題について、単に理事懇で説明したから済むというようなことは、私ども承服できないということをここで申し上げて、きょうの質問を終わりたいと思います。
  115. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 辻一彦君。
  116. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私、きょうは三十分くらいの時間でありますが、主として米をめぐる自由化問題あるいは市場開放の問題、それらについて二、三質問をいたしたいと思います。  ことしの九月にIPUの会議があって、その機会にガットの本部に行きまして、カーライル次長、それから農業が専門であるリュック農業部長とも一日、かなりな論議をしてまいりました。それから、この間日本・ECの会議があって、そこでもECの皆さんと農業問題等について若干の論議をしましたが、今日本の農産物、米の問題が大きな関心を持たれている状況にある。しかもRMAがUSTRに通商法三〇一条で提訴をして、それがいろいろな曲折はありましたが、先月末に却下をされた。しかも、近く、十二月上旬にはモントリオールでこの中間見直しが行われるという、こういう米をめぐる状況は大変大事なときになっておると思います。  そこで、まず第一に、パキスタンのイスラマバードで行われたガットの、非公式でありますが、閣僚理事会におきまして、浜田政務次官が日本の意向というものをいろいろ表明されておりますが、私としては、これはある意味ではUSTRがRMAの提訴を却下した一つの出発点でもあろうと思いますし、そういう意味で極めて大きな意味を持っておる。そういう点でまず浜田政務次官から当時のいきさつについて正確な内容をお伺いいたしたいと思います。
  117. 浜田卓二郎

    ○浜田政府委員 イスラマバードにおきまして開かれました先生指摘の閣僚レベル会議に、宇野外務大臣にかわりまして急遽私が出席をしたわけであります。そのときの主として米をめぐる発言についての真意なりいきさつなりということが御質問の趣旨だと思いますので、お答えをさせていただきます。  私の発言は、従来からの我が国の基本的な立場を確認的に述べた発言であります。すなわち、我々は主としてお米を念頭におきまして、基礎的食糧という概念を国際取引ルールの中に入れるべきであると主張しているわけでありますが、この基礎的食糧について長期的な安定確保の観点から特別な配慮が必要である、そういうことを一方で強調するとともに、他の国、例えば米国のウエーバーの問題あるいはECの可変課徴金や輸出補助金の問題、そういう各国が抱えている重大でかつ非常に難しい農業に関するルールの問題が議論される場合には、それと一緒にこの基礎的食糧についての問題を我々も積極的に議論をしよう、その際には、これは当然のことを確認したわけでありますけれども、市場アクセスの問題について議論を回避するものではないという趣旨を確認的に述べたというのが、先生指摘の、私の発言に関する経過並びに真意であります。
  118. 辻一彦

    ○辻(一)委員 一部のマスコミの報ずるところによると、浜田政務次官はその前の日にヤイター代表を訪ねられて、あすの会議の発言についていろいろと説明されているということが伝えられておりますが、そのときの御発言の中身と、ヤイター代表とのやりとりについてお聞かせいただきたい。
  119. 浜田卓二郎

    ○浜田政府委員 正確に申し上げますと、米に関するというよりも農業のルールに関する議論が行われました日の午前中でありますけれども、会議の途中、コーヒーブレークの時間を利用いたしまして、ヤイター代表と個別に会談をしたわけであります。その際、先生指摘のように、RMAの提訴によるUSTRの扱いの問題がまさにぎりぎりの段階に来ておって、それについて私どもは従来のいきさつから提訴を却下してもらうべきである、そういう主張をしておりました。その理由は、米のような重大な問題については、従来の両国政府のいろいろなやりとりの過程を通じて、二国間の問題としてでなくて、ウルグアイ・ラウンドの場で、マルチの、多国間のルールづくりの場で議論さるべきであるということを基本的に合意してきた経緯があるわけでありますから、まさにこのウルグアイ・ラウンドの場で私どもは米を含む農業のルールづくりについてまじめに議論をする考えであり、そのことを午後私の発言を通じて日本政府の態度というものを確認的にお話をするから、それをよく注目してほしい、まさにウルグアイ・ラウンドで我々はこの問題を真剣に討議するわけであるから、二国間の問題としてでなくて、こちらで処理をしてほしい、したがってUSTRに対する提訴は当然却下をしてほしいということを私はヤイター代表に話をした、そういう経緯でございます。
  120. 辻一彦

    ○辻(一)委員 日本的言い回しがしばしば向こうに非常な期待感をもたらす場合が、牛肉・オレンジの交渉をずっと見てもあるのですが、そういう点から、政務次官の言い回しの中に、アメリカのヤイターUSTR代表の方に何か日本が米の市場アクセスについて可能であるというような印象というか、あるいは感触を与えたようなものはないかどうか、これはどうお考えになりますか。
  121. 浜田卓二郎

    ○浜田政府委員 この問題は我が国にとって重大な問題であるという認識は私ども十分持っているわけでありまして、会議に臨むぎりぎりまで農林省当局と詳細な打ち合わせもいたしておりますし、農林省からも代表を私とともに随行していただきまして、会議の一つ一つの進行をにらみながら十分協議をしているわけであります。そういうことを背景として私は発言をいたしておりまして、先生指摘のような一定の予断を与える、あるいはまた我が国の態度に対する一定の思惑を与えるというような発言は決していたしておりません。まさにこのウルグアイ・ラウンド、これは御承知のようにモントリオールで中間レビューを行いますけれども、その後二年間継続して議論が行われていくわけでありますから、この長期の議論の中で我々はこの問題をまじめに議論していく、そのことを確認的に発言したということでありまして、御指摘のような点はございません。
  122. 辻一彦

    ○辻(一)委員 文書にも既に御発言の趣旨は出ておりますから、今発言もありましたが、市場アクセス問題について論議することを回避するものではない、この表現をどういうように向こうが受け取っておるかということは、なかなか問題があるのではないかと思います。  そこで、竹下総理が先月末にやはりレーガン大統領に親書を送っておるわけですが、その中にもほぼ同様なことが出ておるようでありますが、これについてどういう内容を伝えたのか、これは外務大臣からちょっとお伺いいたしたい。
  123. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 国際間の恒例として、親書の内容に触れることは余り好ましいことではない、かように思います。しかしながら、総理がお出しになる手紙である以上は、ただいまイスラマバードで政務次官が発言したそうしたことをもとといたしまして、二国間では随分とこの年初からいろいろな問題があったが、二国間の努力によってこれは解決した、したがって米はあくまでも二国間の問題にせずに、ぜひともこれはウルグアイ・ラウンドで処理したいものである、そういう趣旨を強調された、かようにお考え賜ればいいものではないかと思います。
  124. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これは十一月二日の本院の農林水産委員会において農林大臣からも、いろいろ同僚から質問があって答えられておりますが、向こうの方で発表された中身で二十九日の新聞が、USTRの決定を踏まえたヤイター代表の発言を一応紹介をしておるのですね。そういう書簡があったというその中で「「日本は新ラウンドの進展のために積極的な貢献を果たすとともに、他の諸国がかかえる農業問題とともにコメ問題を議論し、その結論に従うのはいうまでもない」と述べている。」こういうくだりがありますが、どういうようにこういう文書あるいは発言を向こうが受けとめておるのかということがなかなか大事なところじゃないかと思います。  それで、牛肉・オレンジの交渉経緯を振り返ってみると、四年前に輸入枠の割り当てが決着がついたときに、アメリカは、今回限りですよ、次は自由化ですよ、こう言った。日本は、それは聞いたことは聞いたけれども、何も合意していない、こう言ってずっと説明してきたわけですね。しかし、ことしの春に我が方が交渉をやろう、こう言っても、もうそんなことは四年前に通告してある、だから今さら輸入枠拡大の話は応ずる必要はない、自由化なら話し合いをやりましょう、こういう態度で一貫して態度を変えなかった。そして牛肉自由化は、何年かの間はありますが、結果としては自由化に追い込まれたといういきさつがある。  それから、ことしの一月に竹下総理がやはり日米首脳会談をやっている。これは私も二月の予算委員会でも総理に直接聞きましたら、そのときも牛肉の消費者の立場を考えなくてはならない、こういうような発言があるが、ああいう中でアメリカに牛肉の自由化をやむを得ないというような印象を与えたおそれはないか、こう総理にただすと、そこでも総理は、そういう印象は、受けとめはなかった、ないはず、ない、こう言っておるわけですね。しかし、結果としてはアメリカの方は非常に強硬に出てきて、自由化に追い込まれてしまった。  これを見ると、日本的な表現、それは政務次官の場合も文書がありますから、これ以上ははみ出てはいないであろう、こう思いますが、こういう表現が、もう既にUSTRヤイター代表等の受けとめは、この中間見直し、モントリオールの十二月上旬において日本は何か条件として出すべきだと言っているし、何らか出すはずだ。あるいはウルグアイ・ラウンドに入れば、当然論議になれば、あのときに参入について論議をして、非常に前向きな姿勢を示したではないか、こういうように言いかねないと私は思うのですね。そういう意味で国会の意思、政府の意思を明確にこの際にしておかないと、すぐ牛肉・オレンジのような言い方をされる懸念が私は非常に多いと思うのですが、それについてどうお考えになりますか。これは大臣の方からひとつ伺いましょう。
  125. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 あくまで農業問題はウルグアイ・ラウンドでも大きな分野を占めるのじゃないか、こういうふうなことが予想されます。世界の趨勢を大別しますと、やはり今回のウルグアイ・ラウンドは、ガットそのものの機能の強化並びにそのほか幾つかの話題がございますが、特に農業に絞る場合には三つに分けられるのじゃないか。それはアメリカの立場とそしてECの立場、さらには農産物輸出国としてのケアンズ・グループ、これはカナダ、オーストラリア等々でございますが、そうしたグループの意見に分かれるのじゃないだろうか。  私もOECDでこれが議論されましたときに参加いたしておりましたが、つまりいろいろと議論が差し挟まれております。その中において、日本としてはどうかというので、イスラマバードで政務次官が発言をしてくれました。そうした基本線で臨むわけでございますので、議論の中において私たちは、お互いにアメリカのウエーバーあるいはまた輸出補助金、そういうものが皆俎上にのったときに当然米を出しますよ、いろいろ議論しましょう、こう言っておるわけでございますから、今、では日本はこういう案を持っています、ああいう案を持っていますというわけではございません。そうしたことが、いろいろな議論が進められる中において、我々といたしましても、アクセスに関しましては、その議論を回避するものではありません、当然やります。そのかわりアメリカさん、ウエーバーどうしますか、輸出補助金どうしますか、あなたのところのいろいろな基礎的食糧とおぼしきものはどうしますか、こういう議論が展開される。それに関しましては、十二分に外務省も農林省と打ち合わせをいたしまして、それだけの議論ができるだけの、言うならばものを持って私たちも出席をいたしたい、かように思っておるわけでございます。だから、頭から、はい自由化賛成でございます、はい何やら賛成でございますというのではありません。やはり十分議論を煮詰めることを我々としても考えていきたい。そして、やはり日本といたしましても、御承知のとおり、ガットという自由貿易体制のもとにおいて日本の戦後もあった、今日の繁栄もあったということを考えながらいろいろな議論が展開される、私はかように思っておりますので、当然その議論の中に私たちも参加しましょう、こういうことでございます。
  126. 辻一彦

    ○辻(一)委員 議論には参加はするが、この国会決議、数回やっておりますが、衆参両院で米の自給あるいは完全自給、こういう決議内容は十分踏まえて、それを変える意思は毛頭ないということであれば、ちょっと大臣と次官からそれぞれひとつ御発言いただきたい。
  127. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 これはもう竹下総理も常に本会議等々で申されておりまするとおり、国会の決議というものは、私たちは十分脳中に納めて交渉すべきであると考えております。
  128. 辻一彦

    ○辻(一)委員 大臣がお答えになったのですから結構です。  そこで、九月の中旬ですが、ガット本部を訪ねて、ダンケル事務総長は海外へ行っているということで初めから日程が合わなかったのですが、カーライル次長とそれからリュック農業部長とは午前、午後とかなり論議をしたのです。詳細は別として要点は、日本の農業改革、最近の制度改正等はなかなかよくやっておるように思うし、それから農産物の自由化についても、ほかの国に遜色のないところまできている、こういうような一応の評価をしておりましたね。しかし、といって、もう日本はそれでいいというわけではない。特に米については――米については私も随分と我が方の、日本の主張を強く伝えておきましたが、その中で、といっても世界各国が米だけは例外であるというふうにはなかなかいかない、各国の理解を得ることが難しい、いずれもこう言っておりますね。  そういう中で中間レビュー、見直しが十二月上旬にされようとするのですが、アメリカとECは今農業問題で両極におる。ケアンズ・グループはアメリカに近いところ、日本はECに近いところにいるという見方をガットではやっておったのですが、何とかして歩み寄って中間へ寄ってもらいたい。こういう中で米も考えてもらわなければいけない、こういう考え方のようであったと思うのです。そうしますと、十二月上旬の中間見直しというものが決裂してしまえばそれはまたそれですが、アメリカとECが仮にある程度の、例えばケアンズ・グループの提案等、補助金を一〇%まず二年間削減する、しかしそのかわりに今度は日本の米も三%輸入枠を設定しよう、こういうことを言っておるわけですね。そういうケアンズ・グループ等をたたき台にしてアメリカとECの両極がある程度、一歩進んで妥協するとかいう中間的な状況が生まれたときに一体米はどうするのだ、こう出てくると私は思うのですが、そのときに、ただ議論をしますというだけではなかなか進まない、そのときにどうしますか。どう考えますか。
  129. 内田勝久

    ○内田(勝)政府委員 お答えいたします。  ただいま先生指摘のとおり、モントリオ‘ルにおきまする中間レビューにおきましての農業交渉の一つの大きなポイントは、米国とECの立場が極めて離れたもので、この妥協が何らかの形で成立するかどうかという点にかかっていることは、私どももそのように認識しております。この妥協が図られるという兆候は、少なくとも現時点ではなかなか看取されていないわけでございますけれども、私ども今後米、ECの間でどういう取引と申しますか話し合いが持たれるか、注目しているところでございます。  ただ、そこで一つの何らかの形での妥協が図られるという場合に、ここに二つの大きな視点がございます。一つは、長期的な目標についてどういうふうな形での妥協が図られるのか、もう一つは、その間、交渉継続中の短期的措置でございますが、短期的措置についてどういう措置なりどういう合意といったものが出てくるのかという点だと思われるわけでございます。  長期的措置につきましては、先生も御案内のとおり、我が国といたしましては、基礎的食糧という概念のもとで、そういう国民生活にとって不可欠の食糧につきましては、これを特別な扱いにしてほしいというのが、私どもの長期的な目標に関する主張の根幹、中心をなしているわけでございまして、これはぜひとも考えていかなければいけないと思っている次第でございます。  短期的措置につきましては、確かにケアンズ提案といった一つの措置が出ておりますけれども、これもアメリカとECの間で合意に達する余地がなかなか難しいのではないかというように考えておりますが、短期的措置の市場アクセスの問題についてどういうことになるのかという点につきましては、私ども少なくとも基礎的食糧の市場アクセスにかかわる問題は、これは先ほど大臣、政務次官からも御答弁ございましたとおり、アメリカのウエーバーの問題あるいはECの可変課徴金の問題といった各国の抱える農業問題の極めて重要な問題と一緒に考えるべき問題である。そういう意味で、これは長期的な目標としての新しい農業ルールをつくっていく上で、そこでどのように取り扱われるべきであるかということとの関連で検討されるべき問題であるという立場を私どもは貫いている次第でございます。  以上でございます。
  130. 辻一彦

    ○辻(一)委員 時間が非常に限られておるので残念ですが、米だけが何か飛び出して、突出して問題になるということは絶対あってはならないと思うのですが、その点は腹構えはしっかりしておるのでしょうね。
  131. 浜田卓二郎

    ○浜田政府委員 今事務当局から答弁がありましたように、我々はケアンズ提案につきましては、今そこに先生数字を御指摘になりましたけれども、あれはケアンズ提案そのものではないと思っているわけでありまして、イスラマバードの会議の席上でもその点は確認をいたしております。つまりオーストラリアがケアンズ提案の一つの例示として数字を出してきているというふうに我々は政府として解釈をしておるのであって、その数字を具体的にどうこうという議論をする段階では一切ないということを我々は明確に申し上げているわけであります。  お米についてもほかの農産品についても当然そうだというふうに考えているわけでありますし、特に我々は、お米については、それをめぐって基礎的食糧という新しい概念、定義を提出をして、この特別扱いを当然の前提としてルールづくりが行われるべきであるという主張をしているわけでありますから、その全体の中での位置づけがきちんとできない限り、お米についてだけ突出した結論を得るというようなことは全く考えておりませんし、そういう議論の流れには我々としては乗っていく考えはないということであります。  その点については、日本政府の考え方、立場というものは繰り返し各国に表明いたしておりますし、また個別の各国交渉におきましても、そういう日本の立場というものは明確に理解してもらうように努めているということも申し上げさせていただきます。
  132. 辻一彦

    ○辻(一)委員 幾つか伺いたいことがありますが、無理のように思いますので、最後に、政府が今使っている米の自由化はしないということと、それから農業団体が使って、私もそういう言葉を使いますが、市場開放阻止といいますか市場開放反対、これは同じ意味か違うのか、この点はひとつ見解としてはどうなんでしょうか。簡単に、余り長くならぬようにお願いします。
  133. 近長武治

    ○近長政府委員 言葉の問題ですので大変難しいと思いますが、私たちがいろいろと言葉を調べてみますと、特に、自由化というのは英語でリベラリゼーションということでございますけれども、やはりなかなか幅広い意味があるようでございます。したがって、例えばガットのニューラウンドでも、グレーターリベラリゼーションだとか、フルリベラリゼーションとか、かなり幅のある言葉になっているようでございます。いずれにしましても、私たちの方としても余り言葉だけの使い分けということではなくて、今先生も御指摘のように、例えば米の問題については、基本的には国会における御決議の趣旨等を体しながら、やはり単に言葉だけじゃなくて、実質で考えていかなければいけないというふうに思っております。
  134. 辻一彦

    ○辻(一)委員 じゃ、端的に伺いますが、自由化には反対と言っておった時代に、オレンジや牛肉の場合には輸入枠を設定してどんどん譲歩を拡大していった。あれは自由化の中に入らなかったと思うのですね、完全自由化の中には。だから、市場開放といえば、そういう輸入枠設定をも含んでおると思うし、それから自由化といえば、それとはかなり意味が違うと思うのですが、政府が国会の米の完全自給という決議を踏まえれば、市場開放に反対する、私はこうでなくてはいかないと思うのです。  ただ、その場合に、農林大臣も言っておりますが、一粒もとは、これは沖縄でかなり泡盛の原料に米を輸入しておるわけですから、そういう表現は使わないとしても、完全自給というこの言葉の重みは非常に重いと思うのです。政府としては、米の市場開放には反対する、市場開放はしない、こういう方針を明確に持っておるのか。いや、輸入枠設定はやむを得ぬから、将来だんだんいって、しかし自由化はできない、こういう考えを持っておるのか。そこをちょっと一点明確に聞いておきたいと思います。
  135. 近長武治

    ○近長政府委員 ただいまの御質問も、市場開放と自由化の違いはどういうことであるかということに先生の御認識があろうかと思うのです。ただ、これも先ほどの問題と同じように、明確に定義づけたものは、私たちいろいろと調べてみましたけれども、ないようでございます。ただ、これは大変大事な問題でございまして、特に米の貿易問題については、日本においては当然のことながら米、稲作については格別に重要なものである、こういうふうに認識しております。  したがいまして、国会におきます決議等の趣旨を体して、私たちいろいろな場面で対処していかなければいけないというふうに思っておりますので、これからもそのような考え方でいろいろな交渉等にも臨んでいきたいというふうに思っております。
  136. 辻一彦

    ○辻(一)委員 どうもどちらにもとれるように聞けますが、外相にお伺いしたいんですが、国会決議を踏まえれば、米は市場開放しない、こう考えるべきであると私は思うのですが、どうお考えになっておりますか。
  137. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今度のウルグアイ・ラウンドは、総括者として、総攬者として私が責任を持って出るわけです。これは非常にデリケートな問題で、例えば佐藤農林大臣が一言も言っておられないにもかかわらず、一粒も輸入しないというふうに伝わったことが三〇一条等々いろいろな問題につながっていって、農林大臣も非常に困られました。そういうことがございますから、私はやはり交渉交渉として、十二分に先ほどの国会決議の趣旨は頭の中に入れて行きますよ、こう言っておるわけでございますから、突き詰めたお話をここでするのは非常に難しい。  今も自由化あるいはまた制限、いろいろな言葉の意味を問われましたが、肝心の食糧庁すら非常に難しいということを申しております。したがいまして、十二分に、本日の辻委員質問等々私も清聴させていただいたわけでございますから、そうしたことを脳裏に描いて、そして対処するというのが日本の立場だろうと思います。
  138. 辻一彦

    ○辻(一)委員 時間が来たのでやめますが、そこは非常に大事なところで、これからの展開は基本的な二つの中にいろいろと含まれておると思う。その点で国会の決議は完全自給である、だから市場開放をしないという内容である、このことを私は国会の立場から強く申し上げて、これを踏まえてしっかりとこれから交渉してもらうように外務、農林両省に強く要望して、質問を終わりたいと思います。
  139. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十一分休憩      ────◇─────     午後一時四十九分開議
  140. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。神崎武法君。
  141. 神崎武法

    神崎委員 まず、ことし三月に発生いたしました上海列車事故の問題からお尋ねをいたします。  高知学芸高校の乗車いたしました列車事故でございますが、この補償問題は今日に至ってもまだ解決されていないわけでございます。このような悲惨な事故の場合、遺族の気持ちを考えまして、早急な解決が望ましいと思います。事件発生以来今日に至るまでの交渉経過について、まず御説明をいただきたい。
  142. 黒河内久美

    ○黒河内説明員 御説明いたします。  本件交渉につきましては、日中の当事者間で五月半ばにまず予備的交渉が行われて以来既に二回補償交渉が行われております。それからさらに三回にわたりまして団長間の協議が行われておりますが、現在引き続き双方の当事者間でさらに努力しているところと承知しております。
  143. 神崎武法

    神崎委員 補償交渉がまとまらないのは日中間の貨幣価値の違いが主な原因である、こういうことが言われているわけでございます。竹下総理が訪中をいたしました際行われました李鵬総理との会談におきまして、中国側はこの事故の補償問題につきまして、国情の違いを理解してほしい、こういう言明をしたということが言われております。そして竹下総理の理解を求めたと聞き及んでいるわけでございますが、外務大臣はこの中国側の姿勢についてどのようにお考えになっておられるのか、また竹下総理はこの中国側の立場に理解を示されたのかどうか、この点についてお尋ねをいたします。
  144. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 いずれにいたしましても、大変不幸な事故でございます。したがいまして、日本側は主任弁護士も相当力のある方がついていただいて、そして誠心誠意中国側と折衝されておられます。私も一、二度お出会いいたしております。また遺族会にもお出会いいたしております。  ただいま委員がおっしゃいましたとおり、やはり日本と中国とは、今日経済面あるいはまた物価面、そうした面で大きな差があるということは、十二分に日本側も承知いたしておられまして、それで私から言うとあと少しというような感じのところで、その点を十分わきまえて当局と折衝されておるということでございます。折衝のことでございますから、余り具体的なことは申し上げるわけにはまいりませんが、政府といたしましては、ただいま領事移住部長申しましたけれども、こうした方々に対して我々といたしましても助力申し上げておるという現状でございます。
  145. 神崎武法

    神崎委員 私はこのような問題が長引くことは日中双方にとって極めてよくないことであろうと考えるわけでございます。日中友好のため、また遺族のことを考えまして、この現在行われている補償問題の交渉とは別に、我が国政府として何かできること、別途の方策をもうお考えになるべき段階にあるのじゃないか、このように思うわけでございますけれども、その点について大臣、いかがでございましょう。
  146. 黒河内久美

    ○黒河内説明員 ただいま大臣の御答弁にございましたように、政府といたしましては、当事者間の交渉につきまして側面的に可能な限り親身なお手伝いをしているということでございまして、今後とも私どもできる限りの努力をしていきたいと思っておりますけれども、政府として何かということでございますと、何分にも当事者間でまだ交渉が進行中でございますので、具体的なことを申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  147. 神崎武法

    神崎委員 大臣としてどうでしょうか。時期として政府として何か行うべきこと、これをもう考えるべき段階に入りつつあるのじゃないでしょうか。その点大臣の御所見はいかがでしょうか。
  148. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私がああしたこうしたということもいささか控えなければならない、かように思います。あくまでも学校当局と中国当局、こういうふうになるわけでございますが、一応私は、主任弁護士とは十二分にいろいろと連絡している仲だ、こう思っておりますので、どういうふうなことが当事者間で話され、また我々に側面的であってもいいからさらに一歩前進ということが言えるのかどうなのか、まだそこまで連絡がないところを見るとないのじゃなかろうか。しかし、せっかく神崎さんも御関心を持って御質問いただきましたから、現状に関しまして、私からどうですか、一度そうしたことは内々裏にお尋ねすることも必要かもしれません。
  149. 神崎武法

    神崎委員 ぜひ早期解決のために外務当局御尽力をお願いいたしたいと思います。  続きまして、財テクの問題でございますが、河上委員の方からもいろいろな角度から論議されましたものですから、私あえて詳細についてお尋ねをいたしませんが、今回の問題はモラルの問題として大変恥ずかしい問題であると思うわけでございます。大勢の外交官は大変厳しい環境のもとに一生懸命頑張っておられるわけでございますから、そういう方々にとってもまことに悔しい問題であっただろうと思います。そういう意味におきまして、今後二度とこういうことは起こしてはならない、そういう観点から外務当局としてどういう措置をお考えになっておられるのか、また現にやられているのか、その点だけをお尋ねいたします。
  150. 藤井宏昭

    ○藤井(宏)政府委員 神崎先生指摘のとおり、本件は海外の瘴癘地等におきまして大変に苦労しながら勤務しておる外交官にとって大変に残念な出来事でございます。このようなことが再び起こらないようにということでいろいろな角度から検討しておりますけれども、一つは、大臣から全在外公館長あてに、これは先月の十四日でございますけれども、綱紀の粛正と申しますか品位を汚さないようにということの指示をいたしたわけでございますし、さらに、けさほど河上委員の御質問に対しましてお答え申し上げましたように、関係大使、それからさらに関係の特に深かった事務官につきましては、それぞれ譴責の処分がとられておるわけでございます。  さらに、今後このようなことが行われないようにということで内部的にいろいろな検討を重ねております。一つは、査察制度というのがございます。これは大体三年に一遍査察使を各公館に派遣するということになっているわけでございますけれども、これの拡大、強化につきまして、ただいま具体案の作成を急いでおるところでございまして、この間隔をさらに短くするとか、さらに査察を重点的に行う等々につきまして検討中でございます。
  151. 神崎武法

    神崎委員 次に、アメリカ大統領選挙の結果と、また日米関係の諸問題についてお尋ねをいたします。  次期大統領に共和党のブッシュ副大統領が圧勝したわけでございますけれども、外務当局として今回のこの大統領選の結果をどのように分析しておられるのか、また我が国としてこのブッシュ政権の誕生をどのように評価されておられるのか、その点をまずお尋ねいたします。
  152. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 まず、ブッシュさんが次期大統領として当選なさいましたことに私は敬意と祝意を表したいと思いますが、米国国民がデュカキスさんとそれぞれの政策等々を勘案した場合に、やはり現状維持でいいのじゃなかろうか、こういう判断をされた方が圧倒的に多かったと申し上げることはできると思います。デュカキスさんの場合にはリベラルと言われておりまして、いろいろそういう面におきましても、やはりそれよりもむしろ現状、落ちついた状態がいいというふうなこともブッシュ当選の大きな原動力であった、私はこういうふうに考えております。もちろん御本人は八年間レーガン政権下の副大統領として本当に一心同体で頑張ってこられたお方であります。またその経歴も非常に輝かしき経歴がある、かように存じますと、既にしてレーガン大統領日本並びアジア・太平洋に対する情熱ともいうべきそうした精神は本当に引き継いでいただけるものである、かように考えておりまするし、また常にレーガン政権の副大統領として、自由貿易体制ということに関しましても、このことを主張されたお方でございますから、今後日本といたしましても、二国間ではそうした立場で今後ともなお一層力強い関係を構築したい。何と申しましても、日米関係我が国外交の基軸である、こういうふうに私は申しております。同時に、ブッシュ政権そのものと、世界的な視野におきまして、ひとつ世界に貢献するような関係を築きたい。十二分にこれにこたえていただけるだけの体験と抱負をお持ちの方である、かように評価いたしております。
  153. 神崎武法

    神崎委員 ただいま大臣からブッシュ政権の評価についていろいろな角度からお話を伺ったわけでございますけれども、このブッシュ政権の性格についてはいろいろな方が、基本的には現状維持路線であろう、こういうふうに見る向きが多いわけでございます。  特に外交政策を中心にいろいろお尋ねをいたしたいと思いますけれども、外交政策についても、レーガン路線にごく限定的な変更を加えるにとどまるのではないか、こういう見方があるわけでございます。ただし、例えばフィリピンの米軍基地の閉鎖というような事態が生ずる、あるいは韓国駐留米軍の撤退を余儀なくされるような事態が生ずる場合とか、中ソの接近あるいは中ソ両国での保守強硬派の主導権奪回というような事態がこの四年間の政権の間に行われるとするならば、これは現政策の根本的な見直しを迫られることもあり得る、こういう点を指摘される方もおられるわけでございます。  そこで、全般的に今大臣からもお話があったわけでございますけれども、我が国政府としてブッシュ政権の外交政策というものをどういうふうに全体として予測をされるのか、もう一度お尋ねをいたしたいと思います。
  154. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 やはり米ソ間というものの対話の継続、これが世界の安定に大いに寄与するということは、これは私たちそう評価していいのではないかと考えておりますし、特にそういうようなもとをつくられたのがレーガン大統領であるということになりますと、これはそのまま私は継承されると思います。ブッシュ大統領候補としましては、私の就任以前にはゴルバチョフさんと出会うことはないだろう、こう言っておられましたが、ゴルバチョフ書記長の方から、十二月に行くからぜひともレーガン並びにブッシュさんとお目にかかろうというふうなことで、これもまた十二月七日に大体実現するだろうというふうな傾向でございますので、我々といたしましては、大いに西側陣営の一員として、日本はそうしたことにアメリカを支援していかなければならない、これが一つの大きなポイントだろうと思います。  二番目は貿易でございますが、貿易に関しましては、やはり自由貿易主義者であるということを私たちはかたく信じております。そのためには、恐らくブッシュさんも従前どおり日本並びに太平洋・アジアというものに対しましては懇切丁寧な関係をお互いに築こうということに努力なさるであろう、こういうふうに私は考えております。なかんずく日本とECとの関係というものも重要であると同時に、やはりアメリカもこの三極のまとめ役でございますから、どういたしましても、日本と同様にECとも従来以上の関係を構築されていかれるであろう。そのECが九二年には統合される、これも私たちの大きな関心事でございますから、当然この面におきましても、日本と米国というものはお互いにECに対しましてもより大きな立場で提携をしていく、共同をしていくということが大切ではなかろうかと私は思うのでございます。  特に私は、やはりアジアに対しましては、今申し上げましたようなことで、フィリピンの問題に関しましても、アメリカとフィリピン間の問題として過般一応の決着は見ておりますけれども、同様に中南米の問題に対しましても、米国はなお一層自分の目と鼻の先の地域でございますから、いろいろな意味で従前どおり以上の関係を構築されるような努力をされるのではなかろうか、かように考えております。  いずれにいたしましても、もう戦争はない、お互いに核を撃ち合うことはないという信念のもとに、今後の外交を進めていかれるのではなかろうか、かように思います。
  155. 神崎武法

    神崎委員 大臣、今フィリピンの問題についても少しお触れになりましたけれども、識者が言うブッシュ政権における外交政策において根本的な見直しを図られる場合の一つとして挙げられているフィリピン米軍基地の問題でございますが、このたびこの米軍基地協定の見直し交渉が妥結いたしたわけでございます。我が国としてこれをどのように評価されておられるのか、あわせてその在フィリピンの米軍基地の役割を我が国の安全保障あるいはアジア情勢という観点からどのように評価しておられるのか、この点についていかがでしょうか。
  156. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 スビック並びにクラーク基地は、一つのアジアにおける、また太平洋における安定のもとではないか、こういうふうに私たちはかねて思っております。ただ基地という問題になりますと、これは第三国である我々が関与するところにあらずして、フィリピン当局とそれを借りられるアメリカ当局との話である、こういうふうに割り切っておりましたが、過般両国の努力によりまして一応当分の間の目鼻がついたということに対しましては、私たちは、両国の努力に敬意を表したい、かように思っております。
  157. 神崎武法

    神崎委員 フィリピンにあります米軍基地の移転の問題がいろいろな機会に言われるわけでございますけれども、将来におけるこの米軍基地の移転の可能性といったものについてどのように予測されておられますでしょうか。
  158. 谷野作太郎

    ○谷野説明員 ただいま大臣が御答弁申し上げましたように、一応の決着が米国とフィリピンの間で図られましたので、当面の間、現在のところそのような話は両国からも出てきておりません。
  159. 神崎武法

    神崎委員 フィリピンに対しましては、多国間援助構想、いわゆるミニ・マーシャル・プランというものが言われておるわけでありますが、この構想の進捗状況と、この構想に対する我が国の対応についてお尋ねをいたします。
  160. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先生質問のフィリピンに対します多国間の援助構想に関しましては、基本的にはアキノ政権のもとで進めております新たな国づくりの努力各国で支援するという観点から、日本を初め、アメリカ、それぞれの関係国、それから関係の国際機関等非公式にいろいろ今詰めを行っておりますけれども、現段階では残念ながらまだ大枠に関しましては合意が成立しておりません。しかしながら、私どもといたしまして、今申し上げたような基本的な姿勢、つまりアキノ政権の新たな国づくりをできるだけ支援するという姿勢から、この多国間構想につきまして関係国間でできるだけ早い機会に意思疎通を図りたい、そして今後具体化に向けて各国で共同して当たっていきたい、こういうふうに考えております。
  161. 神崎武法

    神崎委員 我が国の援助のあり方でございますけれども、人道的、経済的、文化的なものに限られるべきでありまして、軍事的なものやそれを補完するものはしないという方針は我が国として決まっているのかどうか、決まっているとすれば、どこで決まっているのか、あるいはこの方針が変更されることはないか、こういう点について、援助のあり方についての基本的な考え方についてお尋ねいたします。
  162. 松浦晃一郎

    ○松浦政府委員 先生質問日本の援助の基本的なあり方に関しましてでございますけれども、これにつきましては、開発途上国の経済社会開発に対します自助努力を支援する、そういたしまして民生の安定、福祉の向上に貢献するということを私どもの援助の目的にしておりまして、先生指摘のような軍事目的に充てられるような援助は実施しないという基本方針をとっております。具体的には、例えばこの衆議院の外務委員会でも何度も決議をいただいておりまして、例えば昭和五十六年三月三十日の決議でございますけれども、「軍事施設等軍事的用途に充てられる経済・技術協力は行わないこと。」というふうに決議していただいておりますけれども、私どもといたしましても、この点に関しましては、関係国等のいわゆる国際約束の段階におきまして軍事目的に充てられることのないよう担保することにしております。
  163. 神崎武法

    神崎委員 識者の言う新政権の外交政策の根本的見直しを迫られるとする二つの場合、在韓米軍の撤退を余儀なくされるような事態が生じた場合ということでございますが、近い将来そういう在韓米軍の撤退の可能性というものは考えられるのかどうか、その点はいかがでしょうか。
  164. 谷野作太郎

    ○谷野説明員 お答え申し上げます。  過般の大統領選挙におきましても、アメリカにおきまして、この問題についてはほとんど議論になりませんでした。民主党も共和党も含めて引き続き韓国における米軍の存在を維持していくということは変わらないようでございます。他方、韓国におきましても、今の段階で米軍の部分的であろうとも撤退を求めるという動きは、韓国の側からも一切ございません。
  165. 神崎武法

    神崎委員 もう一つの根本的見直しを迫られる場合と言われる事態でございますが、中ソの接近、中ソ両国におきます保守強硬派の主導権奪回、こういう問題でございますけれども、特に中ソ首脳会談開催の見通し、この時期も含めまして、どういうふうに予測をされておられますか。
  166. 山下八洲夫

    山下政府委員 お答え申し上げます。  御承知のとおり、九月の末に国連で中ソ両国の外相会談をやりました結果、銭其シン中国外相が十二月の初めに訪ソするということが合意されております。その後、シェワルナゼ外相が今度は訪中するということが予定されているというふうに理解いたしております。したがいまして、一般的に言いまして、中ソの関係は改善される方向に向かっている。さらにまた鄧小平氏自身が、十月でございますが、二度にわたりまして中ソ首脳会談を来年開く可能性があるという趣旨のことを発言されております。そこで、私どもといたしましては、首脳会談自体は明年開催されておかしくはない状況だというふうに判断いたしております。
  167. 神崎武法

    神崎委員 その場合、アメリカのブッシュ政権の外交政策の抜本的、根本的見直しを迫られるような中ソの接近という可能性が強いのか、その辺のところはなかなか難しいところだと思いますが、いかがでしょうか。
  168. 山下八洲夫

    山下政府委員 中ソが接近と申しますか、外相会談、かつその結果を踏まえて首脳会談が行われるという方向に向かっている背景といたしまして、それ自体が中国の主張しております平和共存原則の上に中ソ両国の関係を構築する、言うなれば姿勢の変化を示したというところにその基礎があると思うわけでございます。  そこで、ただ、その結果として、それでは中ソの関係がどうなるかということでございますが、両国とも、かつての五〇年代のような同盟関係に入るといったようなことは考えていないということをはっきり言明いたしております。私どもの理解では、たとえ首脳会談が行われたということそのこと自体は安定化に向かうものとして歓迎し得ることではないかと思いますけれども、国際的な大きな政治状況の枠組みを変えるということには至らないのではないかというふうに判断いたしております。
  169. 神崎武法

    神崎委員 ブッシュ政権の外交政策のうち対日政策についてでございますけれども、大きな変化はないだろうという見方が強いわけでございますが、その中で問題になってくるのが、一つは日米地位協定の改定問題があろうかと思うわけでございます。きょうの新聞報道によりますと、ブッシュ新政権で国防長官就任が有力視されているジョン・タワー前上院軍事委員長は、日本が防衛上のバードンシェアリングを拡大するよう発言しているけれども、日本の防衛庁首脳は、少なくとも竹下内閣の間は改定には取り組まないだろう、またブッシュ新政権も改定を要求してくることはないだろう、こういう見通しを明らかにした、こういう記事が報道されておりますが、特にブッシュ政権になって日米地位協定の改定問題が浮上してくるのか、あるいはブッシュ政権、竹下内閣においては、このように改定問題は行わないということなのか、その点について大臣のお考えはいかがでございましょうか。
  170. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 現在のカールーチ国防長官は、日本の防衛費をこれ以上大きくせしめるということは決してよいことではない、それよりも、むしろ日本は経済的な面において世界に貢献されたらどうだろうかという意味のバードンシェアリングというものを時々口にされております。したがいまして、私も実は、議会筋がそうしたお話をされますときに、我が国の防衛費をそうした意味でふやすということは極めて困難である、一つは憲法上の制約、一つは近隣諸国に与える重大な影響、こうしたことを考えた場合に、それはだめですということを常に私も申し上げております。したがいまして、たとえ新国防長官が、今神崎委員が申されましたような線でお話があるのかないのか、これもまた確かめてみなければわかりませんし、また御就任になっておりませんし、この推移を見守りたいと思いますが、もしそのような話が仮にあったといたしましても、私たちは、ただいま申し上げたのが日本姿勢である、こういうふうに申し上げておきたいと思います。
  171. 神崎武法

    神崎委員 日米地位協定の改定問題についてはいかがですか。
  172. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 したがいまして、さようなことは毛頭今日は考えておらないということでございます。
  173. 神崎武法

    神崎委員 では、竹下内閣では考えていない、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。
  174. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 さようにお考え賜って結構だと思います。
  175. 神崎武法

    神崎委員 私は、日米関係は、大臣も基軸と言われましたけれども、我が国にとって外交関係の中で最も大事な関係であると思いますけれども、この日米関係は対等の関係、しかも信頼の上に立って維持、発展させなければならないものと考えるわけでございます。その意味におきまして、今回の米駆逐艦タワーズによります訓練弾発射事件、これは日米関係を損なうものとして極めて残念なことであるし、国民にとっても大変な怒りであると思うわけでございますが、今回の事件の事実関係については、現在米軍の方でも調査中というふうに報道されておりますけれども、最終的な事実関係はいつごろどういう形で国民の前に明らかになるのか、その点についてどうでしょうか。
  176. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 まだ正確にどの段階でこの調査が完了するかということは向こうから申してきておりませんけれども、繰り返し日本政府は、この数日来、可及的にこれを終結させるように要請してきております。
  177. 神崎武法

    神崎委員 できるだけ早期にこの事実関係が明らかになって、それに対して我が国としての対処方針というのが明らかになるように求めるものでございます。  こういう問題は余り感情的になってもいけないと思うわけでございますけれども、仮にこれがアメリカの領海内に日本の自衛艦が行きまして射撃訓練を行った、アメリカの海軍の軍艦近くにこういうことを行ったというような事態、これは逆に今回日本の領海内で起こったわけでございますけれども、もし仮にアメリカでそういうことが起こったら、これはもう大変な問題、アメリカじゅう騒然となるような大問題になろうかと私は思うわけでございます。その点いかがでしょうか。
  178. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 考えられないことでございますけれども、万が一そのようなことがあれば仰せのとおりだと思います。
  179. 神崎武法

    神崎委員 その意味において、国民が口には出していないけれども、やはり国民の今回の事件に対する怒りというものは相当大きいものがある、このように私は外務当局としても受け取っていただきたい。そして米軍に対して事実の調査と、それに対する責任、この点を明確にしていただきたい、このように要請する次第でございますが、いかがでしょうか。
  180. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 そのようなことを念頭に置きながら従来から米側と話し合ってきております。
  181. 神崎武法

    神崎委員 次に、日ソ関係についてお尋ねをいたします。  大きな日ソ関係の問題をお尋ねする前に、日ソ間の大学院生の交換留学制度の問題について、きょう文部省からも来ていただいておりますので、外務大臣並びに文部省にお尋ねをいたしたいと思います。  日ソ関係の改善が我が国外交にとって次の最大の課題の一つであることは言うまでもないことでございます。領土問題等困難な問題も日ソ間にはあるわけでございますけれども、関係改善のための幅広い土壌づくり、舞台づくりというものが各方面で行われていかなければいけないと私は考えるわけでございます。その意味におきまして、ソ連、ロシアの研究に携わっております我が国の大学院生を中心に現在いろいろ運動が行われておりますけれども、大学院生の政府間交換留学制度の実現、拡充、こういう要請に対して、ぜひこの声を外務当局、文部当局が聞き入れて実現をしていただきたい、こういう角度から私はお尋ねをいたしたいわけでございます。  一九八六年の五月、日ソ文化交流協定が調印をされてもう二年が経過しているわけでございますけれども、この協定中にございます大学院生の交換留学に関する条項が今日まで実施されていないのでございます。若手の研究者の方々は、国費交換留学制度を来年度から実施していただきたい、また定員枠を最低二十人以上とっていただきたい、これは我が国と他の米国との関係、中国との関係、東欧との関係、そういう交換留学制度をいろいろ参考にして、二十人以上はどうしても欲しい、そしてまた期間を弾力的に運用していただきたい、そしてまた年齢制限を緩和して弾力的に対処していただきたい、こういう要望を行っているわけでございます。私もまことにもっともな要望だと考えますけれども、文部当局、外務当局の前向きの積極的な御答弁をぜひ期待したいと思います。
  182. 三村満夫

    ○三村説明員 お答え申し上げます。  日ソ間の留学生交流につきましては、先般発効しました日ソ文化交流協定に基づきまして、日ソ政府ベースによる交換の道が開かれたところでございます。現在、日ソ間において人数、期間、それから年齢等の問題を含めまして、双方の受け入れに係る諸条件等について協議を行っておるところでございます。  申すまでもなく、留学生の交流は、国際的な教育、学術の水準向上、あるいは国民相互間の相互理解の深化等で大変意義のあるものでございまして、国費留学生制度としては、今日、ソ連からの留学生の受け入れは、過去のいろいろな経緯がございまして、まだ現実には行われておりませんで、また日本からの留学生の派遣というものも、政府ベースとしては行われておらないという現状にあるわけでございますが、私どもとしては、あらゆる国との交換を実現していきたいということでございます。当然ソ連との学生の交換につきましても、できる限り早い時期にこれが実現されることを期待しておりまして、種々努力を重ねておる。先生指摘の大学院生等のいろいろな要望についても、私どもも承知しておるところでございます。
  183. 荒義尚

    荒説明員 大筋は文部省からの答弁のとおりかと思いますけれども、我々外務省としましても、先生指摘のとおり、ソ連との真の相互理解を促進するためには、やはり文化交流が大事である、なかんずく若い人たちの交流でございます。そういう意味で、学生の交換につきまして、先ほど文部省からもお話がありましたけれども、現在鋭意日ソ間で受け入れの諸条件、人数も含めまして協議を始めておるところでございます。
  184. 神崎武法

    神崎委員 ぜひ若い研究者の皆さん方のこの要望を実現するようにしていただきたいと思いますが、最後に大臣にこの問題で一言前向きの御答弁をお願いしたいと思います。
  185. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 それぞれ政府委員がお答えいたしましたが、やはり人的交流ということは、両国の関係改善のためにも、将来のためにも大切でございますから、極力政府ベースでそうしたものが実現できますよう努力いたします。
  186. 神崎武法

    神崎委員 ありがとうございました。よろしくお願いをいたします。  それでは、玉城議員に譲ります。
  187. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 玉城栄一君。
  188. 玉城栄一

    玉城委員 最初に、宇野外務大臣にお伺いをしたいのであります。これは基本的な問題についてお伺いしたいのですが、政府の責務にはいろいろたくさんあろうと思うのですけれども、その中にやはり基本的に政府というのは国民の生命と財産を守る責務があると私は思うのですが、大臣のお考えはいかがでしょうか。
  189. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 政治の究極の目的は国民の生命財産を守るということでございます。
  190. 玉城栄一

    玉城委員 政府国民の生命財産を守らないということになりますと、これは大変なことでありますし、当然立法府の我々も、こういう国会活動を通して、また司法は司法の立場から、行政は行政のそれぞれの機関において日常的に国民の生活あるいは生命財産を基本的には守っていくというのは当然だろうと私は思うわけであります。大臣もそういうお考えであります。  それで、具体的に外務省御当局にお伺いいたしますが、先月、沖縄のキャンプ・ハンセン基地において米軍の実弾演習によりまして民間地域にそういう銃弾の被弾事件が起きて、地域住民は大変な恐怖、不安、大きな問題になっているわけですが、その事件の概要と、その原因、それと皆さん方はどういう対応をされているのか、簡単でよろしいですから御報告お願いします。
  191. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 まず、調査の現況でございますけれども、現在沖縄県警と米軍が協力いたしまして、米軍から提供されております試射弾丸、すなわち当時演習に従事いたしておりました米国の海兵隊隊員が使っていた銃と軽機関銃から発射されました試射弾丸と民間地域において発見された銃弾との比較鑑定を行っておりまして、これによって関連する銃器を特定する調査を行っているところと承知いたしております。これは御承知のとおり、伊芸で銃弾が九個発見されまして、それがキャンプ・ハンセンのレンジ6というところから発射されたものであろうということで、その一部についてはそれがもう米側によって認められているわけでございますけれども、大変ゆゆしい事件であったわけですが、今その鑑定結果を待っているというところでございます。  次に、いかなる措置をとったかということでございますけれども、簡単に申し上げますと、十月十八日に北米局の参事官から在京米大使に、十月二十日に日米合同委員会において日本側代表代理から米側代表に対し、十一月八日に北米局長から在日米軍参謀長に対し、それから十一月十一日には宇野大臣から、ハーディスティー米太平洋軍司令官が参りましたときに、このことに具体的に触れるというよりも、一般論として米軍が訓練を行う際には一つの緊張が必要であるという形で注意を喚起しておられます。それから十一月十七日の日米合同委員会において日本側代表北米局長から在日米軍代表に対しまして、改めて可及的速やかな調査の完結と、それに基づく可及的速やかな改善措置、再発防止のための措置の要求を行っております。
  192. 玉城栄一

    玉城委員 これは先月から一カ月過ぎておりまして、大臣も御存じのとおり、沖縄の場合は、そういう基地から派生する、これに類する事故は続出してきているわけですね。そのたびに地元あるいは県議会も含めまして、私たちも直接外務省に抗議もいろいろ申し入れしてきているわけですけれども、その都度、今調査中である、まだ原因はわかってないとか、そういうことをいつも言ううちにまた事故が起きてくるということで、全然国民の前に明らかにされないままに沖縄の場合は続いてきているわけです。こういうことは、いろいろな申し入れもされているというのはわかりますけれども、それは米側が本当に聞いているのかどうかというのを本当に思うのですよ。  それで、改めて大臣にお伺いしますけれども、このキャンプ・ハンセンの基地、これは大臣も御案内のとおりでありますが、沖縄本島の北部の方にあります名護市、金武町、宜野座村、恩納村という四つの市町村にまたがりまして、約五千ヘクタールの広大な基地です。今お話がありましたが、これはアメリカ海兵隊が使っている基地です。そのキャンプ・ハンセンの西側で米軍は実弾演習をやるわけです。ちょうど中腹に恩納岳という小山がありまして、その方向に向かってターゲット、標的を置きまして、戦車とか機関銃とか機関砲とか、常時そういう実弾演習を行っているわけです。ですから、そのたびにはね返るものもあるでしょうし、また砲弾の破片とかそういうものが、このキャンプ・ハンセンの周辺は住宅地域あるいは農地ですから、そこに落ちてくる。そういう事故が続出して、このキャンプ・ハンセンという基地そのものは、構造的にこういう実弾射撃のできる基地でないということは、口酸っぱく外務省当局にはこれまで申し上げている。しかし、それでも常にこうです。今回の場合は、今お話のありましたとおりに、キャンプ・ハンセンの隣接している金武町の伊芸という部落がありまして、そしてまたこの後ろの方に沖縄自動車道路というのがあるわけです。そこで九発のいわゆるライフル銃、軽機関銃の弾が出て、一発などは建築作業中の安富祖さんという方のおなかをかすめてとか、大変な恐怖を覚えるというのが今の実態なのです。  それで、一体どういうわけでこういうところに弾が落ちてくるのか、飛んでくるのか。恩納岳の反対の方向にあるわけですから、これはもう考えられない。通常はこれまで向こうの方に向かってやっているわけです。それで我々も詳しく調べてみました。そうしたら、今度の場合は、標的は恩納岳と反対の伊芸部落、沖縄自動車道路の方に向かったところに置いて、米軍は軽機関銃なりいわゆるライフル銃の実弾演習をやっているわけです。しかも、このライフル銃とか軽機関銃の射程距離は三・一キロです。この伊芸部落とか沖縄自動車道路は二キロです。その方向に向かって実弾を撃てば、その部落に飛び出すことは、これはだれが考えても当然のことです。こういうのは、私たちが調べただけでなくて、地元の金武町もそのことは確認しておりますし、米軍関係者もそのことを確認しているわけです。  こういう演習のあり方を、大臣、どう思いますか。
  193. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 事実関係の部分がございますので、それについて答えさせていただきます。  私ども、先生が今おっしゃられましたことはまことに解せないことでありますから、どうしてこれが発生したのかということ、すなわちキャンプ・ハンセンの中のレンジ6というところでの訓練が一体どのような形でなされたのか、まさに考えられないからであります。事実、昭和六十年の四月に先生御記憶のとおりの事件があって、その後米国の海兵隊は再発防止の措置をとったわけでございます。これは射撃レンジの包囲作戦コースでの実弾射撃というふうに私ども承知いたしておりますけれども、その後このようなことがなかったのに、今回たまたま一連の弾が見つかったということで調べているわけであります。  従来から申し上げておりますように、一方で、私どもは米軍が軍事的な練度を維持するために訓練を行わなければならないということに対して理解を示さなければならないわけでありますが、他方、訓練の行われます場所の周辺の方々の御理解が得られなければ、安保体制の円滑な運用は確保し得ないわけでありますので、それを念頭に置きながら、今まさに米側に調査の完結を繰り返し要求して、私どもにとって説得力のある解決策を考えるようにと申しているところであります。
  194. 玉城栄一

    玉城委員 いや、私が大臣にお伺いしていますのは、三・一キロという射程距離を持った軽機関銃、ライフル銃をその方向に向けて実弾演習をすると、当然飛び出してきますね、これはだれが考えましても。これは過失でも何でもない、故意だ。これはもう明らかに殺人的な犯罪行為と言われても返す言葉がないと思うのです。そういう住民、地域を射程距離に置いて実弾射撃をする、そういう訓練をどう思われますかということを大臣にお伺いしているのです。いかがですか。
  195. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 もちろん射程距離という問題もございますが、それが訓練場の外まで伸びるということならば、これは危険きわまる話でありまして、当然そういうようなことは、たとえ練度向上のための訓練であってもやってもらっては困る、私はそう思います。  私がこの間から聞いておるのは、西へ向けるべき弾が東へ飛んできておるということも聞いておりますし、それならば、また余計大変なことである、私はかように思っておりますから、いろいろ原因は西銘知事からも聞いております。またいろいろな機関を通じまして聞いておりますが、そうしたことで太平洋軍の総司令官に対しましても、沖縄でまだ調査中であろうけれども、しかし、例えば基地内において米軍のヘリコプターが接触して落ちたごときは、まさに緊張が足らなかったのじゃないだろうか、我が国の自衛隊も皆無とは言わないけれども、すべてそうした面において安保体制を有効的に運営するためにも、そのような緊張を欠いておるということは、甚だ私としては言いにくいか知らぬけれども、はっきり御忠告をしておきます、ぜひともそうしたことを改めてもらわなくちゃいけません、こういうふうにして、私は一応最高司令官にそのことを申し上げたということもここで付言いたしておきます。
  196. 玉城栄一

    玉城委員 大臣が大変御努力していらっしゃることはよくわかります。しかし現地では、例えばこれは現地の新聞ですけれども、「銃口は住民地域に」とか「移動部隊民間地へ銃口」とか「伊芸区に銃口向けて撃った」とか、こんな大きな字で、いわゆるターゲットにされている。ですから、これは決して過失とかなんとかじゃなくて、もう作為的な故意の犯罪的な演習だ。いやしくも米軍というのは外国軍隊です。幾ら安保条約があったにしても、我々日本国民というのは独立した主権国家の国民ですから、外国軍隊が日本国民に向かって、それを射程距離に置いて演習するということは許されますか。ですから、私が最初に大臣に申し上げたように、国民の生命と財産はどうなりますかということ、いかがですか、大臣
  197. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私は、いかなる米軍といえども、やはり我が国を守ってくれるという意味でいてくれるわけですから、それが我が国国民をターゲットとするということはないと信じております。しかしながら、そうやって現地の方々は、おれたちがターゲットだ、こういうふうな不安な気持ちを起こさすこと自体が間違いだから、その辺は緊張してやってほしい、こういうふうに申しておりますし、なおかつ機会あるごとにこのことは繰り返し申し述べていかなければならぬと思います。  最近、ワシントンにおきましても、非常にこのことが問題になっておる。決して太平洋軍だけの問題とか第七艦隊だけの問題とか在日米軍だけの問題ではなく、ワシントンにおきましても、こういうことはあってはいかぬということで非常に問題にしておると私たちは聞いておりますので、なお一層厳重にそうしたことに対しましては抗議もし、また今後あってはならないことは絶対してもらいたくない、私はそのように考えております。
  198. 玉城栄一

    玉城委員 ワシントンでも問題になっておる。大臣、これは御存じのとおり、沖縄の地元の知事もたまりかねて直訴までしているわけです。それで私はおととい有馬局長さんにもお願いしましたら、局長さんもそういう意向を示しておられた。ぜひ一回早急にキャンプ・ハンセンの問題になっているところ――我々は、住民地域に向けてターゲットを置いて、そこに向けてやっているということを確認していますから、本当にそうなのか。果たしてキャンプ・ハンセンという基地は、そういう実弾演習をするのにふさわしいのかふさわしくないのか。本当に構造的に欠陥があるのかないのか。現地の防衛施設庁は外務省何だと大変頭にきていますよ。外務省もペーパーだけでなくて、ぜひ早急に現地を調査すべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
  199. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 新しい安保課長が就任いたしました際も、それから現在の北米局の参事官が就任いたしました際も、それぞれ沖縄を訪れておりまして、この技術的な側面は私ども判断する力が必ずしも十分にございませんけれども、申し越しの趣旨を大臣にもお伝えして御指示を仰ぎたいと思っております。
  200. 玉城栄一

    玉城委員 ぜひ大臣、本当に伊芸地域、民間地域の方向に標的を置いてやっておるのかどうか。これは技術的な何物でもない。だれが見てもわかるのですよ。そうであったのかどうか、やはりぜひ見るべきだと思いますが、局長さんはできたらそうしたいという御意向があるのですが、大臣、ちゃんと指示されて外務省調査すべきですよ。
  201. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 当然こういう重大な問題でございますから、直接調査もさせなければならない、私はそう思っております。
  202. 玉城栄一

    玉城委員 そういうことについては、この前の例のタワーズ艦事件ですか、おとといは有馬さんもおっしゃっておられましたけれども、その結果によっては適切な必要な措置をとるとおっしゃいましたですね。私は、その必要な適切な措置をとる中には、今のようなことが本当に事実であったならば、一つはこの基地の根本的な見直し、これは当然含まれると思いますし、あるいは本当に非常識なそういう実弾演習をやっておったということがはっきりすれば、当然関係者の処分も我が国政府として要求すべきだ、その分もその必要な措置の中には含まれていると私は思いますが、局長さん、いかがでしょう。
  203. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 調査の結果によりましては、当然レンジの見直しはなされると思いますし、それから米側が必要な措置をとるということの中には、関係者に対して適切な処分がなされるということも含まれると思います。
  204. 玉城栄一

    玉城委員 大臣、私も沖縄の選出でありますので、基地に絡む問題も十数年この委員会でもいろいろなところでもやってきておりまして、それだけこういう基地に絡む問題が噴出するわけです。ですから、常に委員会等で政府の皆さん方がおっしゃることは、安保条約を円滑に運用しなくてはならない、それはよくわかります。そのためには地域の方々の協力も必要だ。ところがこういう実態では協力のしようがない。自分らがもういつやられるかという、子供なんかは大変な不安感を持っているわけです。我々はねらい撃ちをされているんだ、だから即時基地は撤去してくれ、現地の実態はこうです。「恐怖、不安が的中」こんな大きな字で連日新聞に書かれているわけです。ですから、そういう意味で、重要な国策である安保条約、この日米関係というものを本当に円滑にしていくというのであれば、こういう演習のあり方では言っていることと実態が違いますからね。ターゲットにされているような中で協力なんてとんでもないことですから、大臣、その辺の基本的な考え方はいかがでしょうか。
  205. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 これはもう最高の責任者に私が申し上げたと同じ意見だろうと思います。安保体制の円滑な遂行のためには、事故があってはならないということを、私は最高司令官にはっきり申し上げて、また大使にも申し上げておる。だから、認識は玉城委員と同じだろうと私は思います。    〔委員長退席、甘利委員長代理着席〕
  206. 玉城栄一

    玉城委員 特に、この機会に強く要望と申しますか申し上げておきたいのですが、このキャンプ・ハンセンの実弾演習はもう即時やめてもらいたい。これはどんなふうに幾ら再発防止と言ったって過去の事故の続出が証明していますから。こんなところで実弾演習をできるようなそんな場所ではないですよ。十分この点は――同時に沖縄の場合は基地が余りにも大きいですから、この際根本的に検討を含めて見直しをぜひやっていただきたいのです。  それからもう一つ、この機会に大臣にもお伺いしたいのですが、北海道の大使が今度おやめになられましたね。私は前から、安保条約のほとんどの基地というものは沖縄に一方的に集中して置かれているわけですから、そこに外務省はどなたもおらないで、防衛施設庁に任せきり。防衛施設庁のいろいろな新聞記事の報告を受けて、それだけで判断する。これは余りにも無責任過ぎる。実情、実態を外務省の皆さん方はよくわかっていらっしゃらないのですよ。北海道も結構ですけれども、それならば、沖縄にも外務省のある程度責任を持っている方をぜひ置いておかれて、県当局、米軍当局ともいろいろと話し合いも進めるということは、安保条約のいわゆる政府の言う円滑な運用のために、これはぜひ必要だと思うのですが、いかがでしょうか。
  207. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 もしも私どもが沖縄の実情について的確な認識を持っていないと思われるのであれば、それはまことに残念でありますけれども、外務公務員を常駐させるということは、また別の意味があるわけでございまして、何かさらに私どもの理解を深める方途があれば、それは考えさせていただきたいと思います。
  208. 玉城栄一

    玉城委員 それでは、時間も参りましたので、大臣もさっきおっしゃいましたので、早い機会に現地の実態調査を、局長さんが行かれた方が一番インパクトがあっていいのですが、それを要望しますけれども、とにかく早い機会にぜひ調査をされて、米側とも話し合いをしていただきたい、このことを要望いたしまして、終わります。
  209. 甘利明

    甘利委員長代理 次に、岡崎万寿秀君。
  210. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 私はまずタワーズの発砲事件からただしたいと思います。  今月九日、米海軍のミサイル駆逐艦タワーズが東京湾の入り口に当たる房総半島沖で射撃訓練を行った事件については、これまでも何人か質問がありました。そこで、きょう運輸省の方、見えていますね。事実関係をお聞きしたいと思うのです。まず、私の方からその経過のポイントだけ申し上げますので、それを確認してもらいたいと思います。  一つは、海上保安庁によると、保安庁の巡視船の「うらが」が九日の午後一時三十五分ごろ野島崎南方を北上中に、海上に約十メートルくらいの高さにまで上る白煙を発見して現場に向かったということ。  二つ目は、同四十七分ごろ白煙を上げている大型発煙筒、直径約三十センチくらいだったそうですけれども、それが浮遊しているのを確認して、それをさらに詳しく調べるために右の方へ旋回して、減速をしてUターンして近づいていったということ。  三つ目には、一時五十分ごろ突然射撃音を聞いて、そしてその「うらが」の船尾の約三百メートルくらい後方で、これは航跡の上であったようでございますけれども、高さ三メートルから五メートルの水柱が続けざまに立ち上った、そのことを確認しておきたい。  四つ目、それは、同船から北西約七キロの地点にいた米駆逐艦のタワーズ、この射撃訓練によるものであったということ。  ほとんど報道されていることでありますけれども、一応整理して出しました。事実このとおりですね。
  211. 赤澤壽男

    赤澤説明員 お答えします。  まず、第一点のところでございますが、横浜海上保安部所属の巡視船「うらが」でございます。先生の今のお話のとおり、野島崎の南方海上を北上中に「うらが」の右前方に白い煙を認めて、これを確認に向かっております。  それから、第二点目でございますが、この白煙源のすぐ西側のところに到着しましたのが午後一時四十七分ごろでございまして、ここでさらに詳細に確認するために右旋回をいたしておりますが、右旋回をしまして、この発煙筒に船首を向けてほぼ転針したころに、十三時五十分から五十五分ごろにかけて高さ三メートルから五メートルくらいの四ないし六本の水柱がちょうど「うらが」の真後ろ約三百メートルくらいのところに立ったというのがただいまの第三点でございます。  それから、第四点でございますが、この水柱等が発生しまして、そこで周辺の状況を「うらが」としては確認をいたしております。通航船舶等に異常がないかどうか、さらには発射源の確認、こういった作業をいたしておりまが、そういう中で、実は白煙に向かっております段階で、途中で視野の中に軍艦らしきものを認めておりますが、その状況が発生しました後、これの特定に入っております。そこで「うらが」から北西約七キロメートルぐらい離れたところの軍艦らしきその艦船について双眼鏡によって確認をしましたところ、艦番号9という数字などを確認いたしております。
  212. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 私の申し上げたとおりの答弁でございました。  そこで、続けて聞きますが、その発煙筒の位置は、野島崎灯台の西南西の十六・七キロの海上にあって、これは海上保安庁のものでもないし、また海上自衛隊のものでもない。これもはっきりしているわけです。また近くに発煙筒を必要とするようなそういう遭難船もなかった。そうすると、射撃訓練との関係から見て、米軍の方は否定しているやにきょう外務省の方から話がありましたけれども、これは射撃訓練の標的用としか考えられないというふうに思いますけれども、これは科学的に見て運輸省の側はどう判断されますか。
  213. 赤澤壽男

    赤澤説明員 発煙筒につきましては、私どもの方でも外務省を通じまして米海軍側に照会しましたところでは、米側の回答としては、タワーズとは関係ないという点の回答をもらっておりますが、さらに引き続きまして標的使用の点についても照会をいたしておりまして、その回答によりますと、物体を標的として使用したことはないというような回答をもらっております。
  214. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そこがおかしいんですね。海上保安庁の見解を聞いたわけですけれどもね。従来こういうふうにして発煙筒が何にもないところでぽっと燃えることがありますか。恐らくないと思いますよ。何かあるからこそ発煙筒が燃えるのであって、たまたまそこに偶然に射撃訓練が行われたのではなくて、やはりこれは射撃訓練と関係があったからこそそういうふうに燃えている、白煙が上がっているというふうに思うわけです。  そうすると、三十センチもの大きな発煙筒をだれが運んだかということなんです。これはまさかタワーズがおっことしてから七キロ距離を置くはずはありませんし、どこかのヘリコプターが持ってきて落としたかもしれません。横須賀から持ってきたかもしれませんしね。あるいはほかの第七艦隊の艦船が落としていったかもわからないですね。これは海上保安庁、見たことは事実ですからね。十メートルの白煙が上がっていました。そこに訓練があったのです。ですから、タワーズと関係ないかもしれませんけれども、タワーズに直接載せたものではないかもしれませんけれども、だれかが落とした。どういうふうに判断されますか。
  215. 赤澤壽男

    赤澤説明員 当初白煙を認めまして、「うらが」が接近してまいります段階では、私どもの任務でありますいわゆる遭難船等の状況が発生しているのではないかということで接近いたしておりますが、そこで現場付近に到着しました際認めた状況は、白煙が上がっている状態できらきら光るような炎が見えた。それで直接的に物にはさわってはおりませんが、船橋等から見た状況では、直径が三十センチぐらいあるのではないかというようなことで、その後船尾方向で水柱が発生した、そういった状況の中でこの発煙筒は燃え尽きたものか煙は出なくなっておりまして、回収には至っておりません。  ただ、これがどういうかかわりのものかという点でございますが、実は海上保安庁でもこのようなものは使っておりませんし、若干海上自衛隊の方にも照会はいたしましたが、それを使っているというようなことはございませんでした。
  216. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そうすると、訓練以外に考えられるのですか。だれがそこに落としたのか、置いたのかですね。どう判断されますか。
  217. 赤澤壽男

    赤澤説明員 訓練との関係については、私どももまだ今のところ分明ではございません。
  218. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 しかし、それ以外に可能性としてはどういうことをお考えになりますか。
  219. 赤澤壽男

    赤澤説明員 この発煙筒につきましては、私どもただいま申し上げましたように、解明には至っていないところなんですが、極めて一般的な例では、本件のものとはちょっと違うとは思いますけれども、例えば遭難船が救助を求めるために信号に使う、あるいは何らかの標識に使われるといったようなことが考えられると思いますけれども、特に射撃訓練等の関係につきましては、残念ながら私どもも専門的な知識を持ち合わせないものですから、具体的にはわかりかねております。
  220. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 しかし、遭難船は近くになかったのでしょう。海上保安庁のものでもないし、海上自衛隊のものでもない。遭難船のものでもない。タワーズのものと全く一体のものじゃありませんか。そう判断できませんか。恐れず言ってくださいよ。
  221. 赤澤壽男

    赤澤説明員 その点の特定には至っておりません。
  222. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 外務省に聞きたいと思うのです。  今私がるる質問したような状況で、これはどう判断してもタワーズの訓練と一体のものだと私は思います。またそういうふうに書かれている新聞報道等も多いわけですね。標的に使うときと使わないときがあるでしょうけれども、十発もの射撃訓練をやっているわけですね。これは明らかに射撃訓練の標的に落としたとしか思えないわけで、これは米軍の方にこの問題について詰められましたか。外務省、どうです。
  223. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 先ほど来海上保安庁からお答え申し上げておりますとおり、発煙筒の問題につきましては、外務省からの事実関係の照会に対して在京米大使館から、タワーズが発煙筒を投下したという事実はない、したがって、発煙筒を標的として訓練弾を発射していることはないとの回答を得ております。
  224. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そこが一番の問題なんですよ。外務省アメリカ側の言い分をそのまま聞くのじゃなくて、問題を解明する、国民の立場からきちっと調べる立場で積極的に問題解明に臨んでほしいということを申し上げたいと思いますけれども、では、その大型の発煙筒をどこから運んだのか。タワーズは、ジェーン年鑑を調べましたけれども、こういう発煙筒を運ぶヘリコプターを搭載していないのです。とすれば、だれかが運んでいるわけですね。保安庁のものでもなければ海上自衛隊のものでもない、遭難船も近くになかった。そうすると、やはりタワーズの訓練と関連してだれかが運んでいるはずなんですよ。横須賀からヘリでだれか運んだのか、第七艦隊に所属していますから、第七艦隊の船がここに置いていったのか。今はタワーズの艦長の責任問題だけを追及していますけれども、私たちは、この発煙筒の問題を見ると、必ずしもそこに限定してよいとは思わないのです。むしろこれはだれかが発煙筒を落とし、タワーズがそれを標的に射撃訓練を行った組織的な射撃訓練じゃなかったか、そういうふうに思わざるを得ないわけですね。運輸省、そういう点についてはどう判断されますか。いいです、外務省先に言ってください。
  225. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 米側は、発煙筒を標的として訓練弾を発射したということはないと回答してまいっておるわけでございますから、そして政府側は真相の究明をきちっとせいということを繰り返し申して、その上でこのような回答を得ているわけでございます。
  226. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 運輸省、どうですか。外務省先にと言ったのは、本当に米軍にとってこれが痛いところなんです。タワーズだけの責任じゃなくて、もう一人落とす者がいたということになりますと大変な問題になるのですよ。外務省、責任を持って調査してもらいたいと思います。運輸省の判断を聞かしてください。
  227. 赤澤壽男

    赤澤説明員 今回の事件につきましては、事実関係の確実な整理等再発防止が肝心のことだと考えておりますので、事実関係解明の中で付近漁船等からの情報収集等も含めまして調査を続けてまいりたいと思います。
  228. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 ぜひ、その発煙筒をだれが落としたのか、事件と関係なかったかどうか、そのことはしかと調べてもらいたいと要求しておきます。  さて、話を進めますけれども、タワーズは、もういろいろと報道されていますけれども、「うらが」が近くにいることは視認していますね。そして艦長はブリッジに立っていた。さらに試射を示す国際信号等も掲げていた。これは確認できますね。早くやってくれればどっちでもいいです。では、運輸省どうぞ。
  229. 赤澤壽男

    赤澤説明員 お答えします。  「うらが」がタワーズを視認しましたときの距離は約七キロぐらい離れておるわけですが、その状況の中では、何か旗旒を上げていたようではあるけれどもという程度で、具体的には読み取れておりません。何分にもこれだけの距離になりますと、軍艦のマスト等に掲げる旗旒の大きさでは判別できるものではなかろうというふうに考えております。
  230. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そうしますと、国際信号旗を掲げたというのは、まだ確認されていませんか。外務省、どうです。これもあっちこっちに報道されていますけれどもね。
  231. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 現在まで判明いたしております事実として米側が我が方に申し越していることの中に、タワーズは射撃中試射を行っていることを示す国際信号旗を掲揚していたと書いてございます。
  232. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 じゃ、国際信号旗があったわけです。つまり試射するということをはっきり示しているわけです。「うらが」がいることを知っているのですね。ないしは自衛艦と誤認したそうですけれどもね。これははっきり船があることを知っておきながら計画的な発砲訓練ですよ。これは私たちは大変重大だと思いますけれども、それは巡視船ないしは自衛艦、それを標的にして撃ったのじゃないかという見方が強まるのは当然なんですね。距離もわずか七キロですか、米軍の方は何か六千ヤードというふうに言っているそうですけれども、五インチ砲の砂を詰めた砲弾十発を発射しているわけですね。これは「うらが」の非常に近くに近接して着弾していますし、どういう意図であったかについては、また後でお聞きしますけれども、やはりこれは標的ないしは威嚇射撃のいずれかにせよ、「うらが」をねらい撃ちにしたとしか思えないのですけれども、この辺どういう見方をされますか。
  233. 赤澤壽男

    赤澤説明員 お答えします。  「うらが」を標的にしたかどうかという点については、標的の使用の有無について照会をしまして、これについての回答としては、標的は使用していないといった米側の回答でありますが、まだ引き続き詳細な調査を行っている段階でありますので、最終的には確定には至っておりません。
  234. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 とにかく今の科学の、特に軍事技術の発達からいって、三百メートル後方に、しかも航跡上にパンと撃ち込むというのは相当ねらい撃ちですよ。威嚇射撃と言われてもしようがないと思いますね。ないしは標的訓練と言われても仕方がないというふうに思いますが、しかしそれは今特定できないでしょう。  防衛庁に聞きます。  きょうのある新聞によりますと、この事件の起きた九日の午後三時ぐらいに、横須賀の在日米海軍司令部から、タワーズが自衛艦の近くを砲撃した、そういう連絡を受けたというふうに言われていますけれども、この事実の確認はどうですか。
  235. 守屋武昌

    ○守屋説明員 お答えいたします。  防衛庁といたしまして事実関係について調査した結果を御報告させていただきますが、事件発生の翌日でございます十一月十日午後二時ごろに、在日米海軍司令官サケット少将から横須賀の自衛艦隊司令官金崎海将に対しまして、きのう米海軍の艦船が千葉県の半島沖四マイルの地点から南に向けて射撃を行った、近くに日本のコーストガードの船がいたという内容の連絡を受けております。本日の新聞で一部報道されましたように、十一月九日午後三時ごろ、米海軍より海上自衛隊が連絡を受けていたという事実は全くございません。また海上保安庁の艦船を自衛艦と誤認していたというような連絡も全く受けておりません。  以上でございます。
  236. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 まあ事実はわかることですから、おっしゃったことは一応お聞きしておきましょう。コーストガードですから、海上保安庁の船というふうに見てもいいでしょう。しかし、いずれにせよ、発煙筒が白煙を上げていた、それを調査するためにちょうどタワーズと発煙筒の中間に割り込むような形で「うらが」が接近していったわけですね。だから、これは非常に邪魔になった。邪魔になったからどいてくれというのですか、そういうことで威嚇射撃をした、きょうの新聞等はその筋のあれとしてこのような判断を載せていましたし、あるいは近くに来たから幸いということで射撃訓練の目標にしたかもしれません。こういうことは、人の乗っている船なんですね、日本の領海内でこういう射撃訓練すること自体がけしからぬですけれども、人の乗っている船の近くに向けて、威嚇であれあるいは標的であれ、ねらい撃ちするとはけしからぬことなんですね。とんでもない違法行為であるというふうに思いますけれども、これは外務大臣、こういう行為を許しておいていいでしょうか。お答え願いたいと思います。
  237. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 領海内でのことでございますから、こうしたことがあってはならないと私は思います。そのために、外務省からも厳重な抗議をし、米軍からもそれに対する本当に慎重なる姿勢を示した回答を得ておるという次第でございます。
  238. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 私は、領海内だからけしからぬというだけじゃなくて、人間が乗っていることを視認しておきながら撃つということは、なおさらけしからぬというふうに思っています。厳しい抗議をやっていただきたいと思います。  そこで、このタワーズですけれども、二回やっているのですね。そして、これは八年前に横須賀を母港にして配備されているのです。いろんなことについては百も承知なのです。地位協定上もまずいし、国際法上もやってはいかぬということを百も承知でやっている。そこが問題であろうと思います。これは先ほどから答弁あったように、国際法上でもできないことになっている。なぜこういう八年間も日本を母港にしてよく知り尽くしている船がやったのか、どういうふうに判断されますか。
  239. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 それゆえにこそ米側も最高首脳を含め、これを大変深刻に受けとめて、徹底的に調査をすると申しているわけでございます。
  240. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 たまたま白煙が上がったので、その場に海上保安庁が行ってそれを確認したわけですね。しかし、その一回目は確認してなかったんですよ。そうすると、これまでもやらなかったという保証はないんじゃないかというふうに思えるんですね。たまたま偶然にタワーズが二回やったんじゃなくて、あるいはこちらの知らないうちにやったかもしれない。やらなかったという保証はないわけなんです。  先ほど外相は緊張に欠ける点があるんじゃないかということを指摘されましたが、その側面もあるかと思いますけれども、しかし当委員会で私はしばしば聞いていますけれども、最近は非常に超低空の、あれは戦闘訓練でしょう、米空母艦載機あるいはF16等による超低空訓練が行われています。奈良でもワイヤー切断事件が起きましたし、北海道、東北でも、きょうの新聞等によると長野の山村でも起こっていますし、これは明らかな戦闘訓練なんですね。基地間移動はできるというふうに地位協定に書いてあるんですが、最近の政府の解釈によると、射撃訓練以外だったら何でもできるというふうにおっしゃっているわけですね。こういう姿勢をとっているから、傍若無人といいますか、日本の空で我が物顔で今訓練が行われているし、また日本の海も同じようにして、こういうちょっとした射撃訓練だったらいいのではないかという形でルーズになっている点があるのではないか。射撃訓練は訓練区域内ですべきでしょうけれども、今度の二回にわたる、一回は日本が知らないところでやったということなどから見ると、これは偶然ではなくて、そういう政府姿勢にも問題があるのではないか、日米軍事同盟がここまで来ているということを示すものではないか、そのことを私たちは非常に懸念するわけでございます。  外務大臣、こういうことがなされていますが、せっかくこちらとしては区域を提供しているわけです、私はそれに同意する立場ではありませんけれども。しかし、それ以外のところでの訓練はやめるべきだということをはっきり伝える必要があると思いますけれども、御決意のほどを聞きたいと思います。
  241. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 米軍は訓練を行います際に、周辺のあるいは周辺地域の安全を配慮するのは当然のことでございます。しかし、その前提で通常の訓練を行うことは許されているわけであります。実弾を伴う演習等は当然指定されました訓練地域で行うこと、それに限られていることはございますけれども、それならば、その他何もできないかといえばそういうことではなくて、先ほど申し上げましたように、安全を考慮した上である種の態様の訓練は許されているということでございます。
  242. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 安全を考慮した上である種の態様は許されている、そういう解釈だからこそいろいろな被害が生まれる。住民に迷惑を及ぼす超低空訓練がなされるし、また、こういう射撃訓練が領域内でも行われるようなことが起こる条件をつくっているというふうに思います。したがって、一切の訓練をやめるように厳しく要求するのが日本政府姿勢ではないかということを強く指摘しておきたいと思います。  時間の都合もありますので、三宅島の問題に進みたいと思います。  逗子でも米軍住宅建設反対の富野さんが三選をされました。一回目のときは千票、二回目のときは二千票、三回目には三千票の開きで勝ったわけです。また十一月十一日の三宅島の村長選挙でも、相手側は対立候補も立てることもできない状況で寺沢村長さんが再選されたわけですね。二月の村譲選でも、自民党の方は惨敗だと言っておりましたけれども、こういう重大な時期にみずからの主張、政策を掲げる候補者を立てることができなかったということは、これは政治的には完敗だと思うのです。ふるさとの緑と暮らしと平和を守りたいという住民の大きな勝利でありましたし、安保優先の政治に対する地方自治の勝利だったとも私たちは見ています。  そこで、お聞きしますけれども、ことしの防衛白書の中には、三宅島での基地反対の闘いというのは情報不足による誤解があるからだ、こういうふうに書いてありました。しかしもう五年になるのです。施設庁は随分たくさんビラその他まいていますし、情報不足などあるはずありません。これは島民がなかなか防衛施設庁の言うことについて理解を示してくれない、支持を得ることができない、これをごまかすために、何か島民が誤解している、島民側に責任があるかのようにこじつけている、そういう理屈にすぎないわけなんです。この九月一日に開かれた第四回全島大会でも、この誤解だということについては非常な憤りがありまして、むしろ誤解しているのは、三宅島島民の反対の真意をよくつかんでいないのは政府自民党ではないか、こういう激しい批判も私聞いてまいりました。そういう偏見とかあるいは世論をごまかすための誤解論はもう除くべきではないかと私は思います。  きょうは、外務委員会でございますので、大臣としては安保との関連で宇野外相がお見えになっておりますが、誤解論だ、そういう単純な見方で今の三宅島や逗子のことを見るわけにはいかない、もっとまじめな気持ちで取り組むべきだと思いますけれども、誤解論についての関係大臣としての宇野外務大臣の御見解を聞きたいと思います。
  243. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 主として防衛施設庁並びに党の側は党のそうした関係委員会等々がなさっておられまして、そこでどういう話があったか、私は余りつまびらかにいたしておりません。だから、誤解論と言われたことがどういう背景で言われたか、つまびらかにいたしておりませんので、お答えしがたい面であると思います。
  244. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 まあ、言いにくいかもしれませんね。  池田防衛施設庁長官は、六月十四日の着任のあいさつの中で、三宅島などを念頭に置きながら、国民は防衛の大切さを「本当のところまだよく分かっていない。」だから自分のところに基地問題が起こると、「何んで自分だけが基地問題に関係がでてくるのかというようなことがありますと、たちまち本質がでてまいりまして、その分だけ防衛施設庁の仕事がより一層困難になるんじゃないかと思います。」こういうふうに述べられているわけです。これは防衛施設広報のことしの七月十日号ですけれども、たちまち本質が出る、これが私は着目すべき点じゃないかというふうに思います。  国会でも論議されましたけれども、この安保優先の政治の押しつけに対して、安保よりか生活の方が大切なんだ、こういう生活優先の立場から反対するのが、いわばここで言う本質という言葉じゃないかというふうに読み取れるわけですね。だから、池田長官も部内でのあいさつの中では、島民は誤解している、誤解していると言うんじゃなくて、やはりこれは生活優先の立場をもっと国策を優先するように変えなくちゃいけないということを言われているわけです。  きょうは施設庁から見えておりますけれども、そのような見地で今指導されていますか。国策よりか生活を大切にするような心情、本質を変えなくちゃいけない、そういうふうな立場で、新長官のもとで正しい認識をするように今指導がなされているかどうか、お聞きしたいと思います。
  245. 大原重信

    ○大原説明員 お答え申し上げます。  防衛施設庁長官、御就任なさいまして、私ども着任あいさつからいろいろ新長官の御意見あるいは御訓示をいただくことがございますが、具体的にどのような理念でと言われますと、何ともお答えのいたしようがございません。
  246. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 ろくな答弁もないんですね。  時間がまいりましたので、最後に聞いておきましょう。  田澤防衛庁長官は、三宅島選挙の後に、「押してもダメなら引いてみる。そんな姿勢で進めていきたい。頭を低くしてやっていかなければ」こういうふうに言っていますけれども、これは低姿勢で長期戦にわたってやっていこうということじゃないかというふうに思うわけですね。もう既に五年にわたって三宅島の人たちはふるさとを守るために一心に頑張っているわけなんです。もとの静かな島にしてほしいというのがその願いでございまして、あと何年たつのか。長期戦と言われて、施設庁の方はいつまでもいいでしょうけれども、何年たったらこの問題は片づくのか。本当に住民の立場に立つならば、これは深刻な問題なんですね。憲法で保障されている人間としての最低の生活が脅かされているわけなんですからね。また、そのように受け取っているわけでございますから、そういう点からいっても、もう何度も選挙があって、はっきりした判断が出ているわけです。そういう状況の中で、いろいろな意味で新しい転機に立った今日、三宅島のNLPは断念すべきだというふうに私は強く主張してまいっていますけれども、これも結局のところ外務大臣になりますけれども、関係閣僚としての御見解を聞きたいというふうに思います。
  247. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 やはり米軍には米軍として我が国を守るそうした責任上、常に洋上訓練をしたい、こうしたことは私は切なる願いであろうと思います。また、それにこたえることも、安保体制下にある我が国といたしましても当然のことであろうと考えております。
  248. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 では、時間が来ましたので。
  249. 甘利明

    甘利委員長代理 次に、永末英一君。
  250. 永末英一

    永末委員 久方ぶりの外務委員会でございまして、国会は臨時国会、それが延長というようなことでございますが、外務委員会なかなかございません。国際情勢は時々刻々と変化をしておるわけでございます。  外務大臣にお伺いしたいと思いますが、ソ連ゴルバチョフが権力を一手に集中するということをやりながら、ペレストロイカなどという言葉を旗印にしていろんなことをやっているわけでございまして、殊に外交関係の点でそのやり方を十分に注視しておかねばならぬと思います。  最近ドイツ首相がモスクワを訪れる。何かドイツ国内ではソビエトフィーバーなんというような熱病がはやっているような話でございまして、盛んにソビエトに対する銀行からの融資などが具体的に固まっておるように伝えられておる。それにつられてあちらこちらのいわゆる自由陣営側の銀行も融資をやろうとしている。アメリカの国防省が心配しているというようなニュースもございます。また、アジアにおきましても、ソウルのオリンピックを中心にしながら、ソ連と韓国との関係が非常に緊密の度を増し、通商関係においては、それぞれまだ国交はございませんけれども、代表的な事務所を設置する。そしてまたシベリア開発に韓国がコミットしておるというようなことも伝えられております。  これら一連の動きを外務大臣はどう見ておられますか。
  251. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 ゴルバチョフ書記長ペレストロイカ並びにグラスノスチ、これは従来の社会主義の枠内にはまったソ連では見られなかったようなことが見受けられております。恐らく永末委員もいろんな書物を散見されたことと思いますが、例えば若手学者による座談会等々を見てみましても、もしこれがスターリン時代あるいはつい最近のソ連ならばシベリア流刑確実であると思われるような内容ソ連国内において雑誌として発行されておるということでございます。そうしたところに私は新しいタイプの指導者が登壇されたなと思いますが、しかし、やはり我々といたしましては、そのペレストロイカが、では日本我が国との関係において評価し得るかということになりますと、まだまだ具体的にそうしたものが我が国関係においては出ておらないというのが現状でございますから、したがいまして、今後お互いの接触を保ちまして、どういうところにそうした現象が効果的にあらわれてくるかということを期待しながら、今日ソ連との外相会談を待っておるというのが現状でございます。  今おっしゃったような西独等と、コールさんの訪ソによりまして民間資金を提供するというような話も、昨日も私イタリア貿易大臣会談しましたが、同様のことを言っておられました。だから、私は私として、それはまた欧州とアジアとの考え方は違いますが、我々西側陣営といたしましても、大いに米ソ間の対話継続は歓迎するところであるが、しかし、日本といたしましては、まだ太平洋・アジア諸国には余り喜ぶような状態はでておらないんですよということも一つの意見として申し上げておきました。
  252. 永末英一

    永末委員 我が国との関係におきましても、ウラジオストクにおきます会議あるいはまた日ソ間の民間人の会議がモスクワで行われる。いろんな角度を通じてソ連が今何を考えておるかは外務大臣もよく御存じだと思います。  さて、外交ソ連は大きな意味でのペレストロイカの一環として新しい思考でやっていくんだ、こういうことをつとに言っておるわけでございまして、新しい思考って何だ。一言で言えば、今までのような膨張的、攻撃的軍事力ではなくて、軍事力の保有を、言うならば守るに足る軍事力が十分であればよろしいという、それを基軸にしながら外交政策を展開する、こういう説明がございますが、同時に、ソ連の軍部では、守るに足るということは、いざといえばはね返していくんだという、同じ言葉でもなかなか内容が違うわけでございます。  さて、そういう一つの考え方が過般のINFの全廃条約が成立し既に実施されている一つの原因だと思います。米ソ間においてはこういうぐあいに具体的に成果が上がっておる。またヨーロッパ圏とソ連圏の間においても、例えば十二月からの通常兵力の削減交渉が具体的にその議題を詰めつつある。まだ開かれるかどうかわかりませんが、そういう状況であると伝えられておる。我が国の場合には、一体この新しい思考というのはどういうぐあいに響いておるのか、あるいは響いていないのか。新しい思考というソ連の主張している一つの外交方針、軍事力に支えられた外交方針について外務大臣の御見解を伺いたい。
  253. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今もお触れになられましたとおり、確かに欧州では陸上等々を中心として長い国境線をそれぞれが持っておるというところから、我が国とはまた趣の異なった対ソ的ないろんな対応が見られておることは事実でございます。  特に、私たちが申し上げたいのは、やはりソ連は我々にとりましても大切な隣国である。特に米ソ間においては明らかに対話の継続ということが具現化しておる次第であるし、またゴルバチョフ書記長も非常にダイナミックな政策をとっておられることはよくわかる。なかんずく最近では太平洋に非常に関心を持たれまして、アジア銀行にも参加したい、さらには御承知のPECC、この会議にもひとつソ連が入りたい、世界的にはガットにも入りたい、そうやって非常に意欲的なところは、私たちはこれは大きなさま変わりであるとして一つの評価は許されるであろうと思いますが、それならば、ひとつアジア・太平洋地域におきましても、なお一層安全保障というものの高まりを何らか見せてほしいものである、こういうふうに私たちは考えておるような次第でございます。今のところはこれという評価ができない現状ではなかろうか、かように思っております。
  254. 永末英一

    永末委員 ゴルバチョフは、ヨーロッパへ行きますと、欧州の家におれは住んでおるんだ、こういうことを言っておる。先年ウラジオストクで演説いたしましたときに、ソ連は今や太平洋国家の一つである。確かに欧州にも太平洋にもまたがっている巨大国でございますから、それはそういう言葉を使える立場にあると思います。  さて、欧州ではいささか、今のように言っていることが、かつてのヘルシンキの全欧州安保条約の締結、その後いろいろやってきておる流れがございますが、アジアではほとんど目に見えたことはございません。ところが九月のクラスノヤルスクの演説では、何項目か、つまり軍備縮小あるいは軍備管理に関することに触れておるわけでございまして、その触れておる点は、海、それから空の問題に触れておる。陸上のことについて余り触れておらぬのでございますが、この触れ方についてどう判断しておられますか。
  255. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 クラスノヤルスクのゴルバチョフ書記長の七項目にわたるところのスピーチ、これに関しまして、日ソ間の関係は何とか改善したいものだという意欲、これは私たちは見えるのではなかろうか、こう思っております。  しかし、他に関しましては、やはり緊張が、先ほど申しましたとおり、アジア・太平洋地域においてこれで解除されたとか、あるいは逆に安全保障体制が強化されるというふうな点が見受けられないのが遺憾である、従前のソ連の主張の繰り返しのごときものではなかろうか、かように私は思っております。
  256. 永末英一

    永末委員 ウラジオストクの場合と今度の場合と全部同じではございませんので、違いがございますけれども、言うならば、今おっしゃったように、提案をしておるけれども、変化はない。この提案というのはまじめに受け取られるのですか。いや、宣伝文句だと受け取っておられるのですか。
  257. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 懸命になってペレストロイカとはかくのごとしということをおっしゃっているのではなかろうかと思いますが、やはりそれならば内容を伴ってほしい、こう思いますし、また、そうしたこともじかに出会ってお話しすれば、なるほどと思う点があるかもしれませんし、これは今私たちがただ表面の文字面だけで判定はなかなかしにくい。しかし、あえて判定するとすれば、今さっき申し上げましたように、旧態依然たる内容だなという感じでございます。
  258. 永末英一

    永末委員 太平洋、つまりソ連日本を包むようなこの近所の外相会談の提案までやっておる。シェワルナゼ外相が来ますと言うかもしれませんね。日本外務大臣はそういう提案があったときにどうされますか。
  259. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 もちろん外相会談でございますから、現在それぞれおぜん立てもいたしておりますが、また駐日大使が最近ソ連にお帰りになったときに、私のところに寄られましたから、対話の継続だよ、十二分にあなたの方の話も聞きましょう、私の側の話も聞いてください、お互いに今までニエット、ニエットと言っておったかもしらぬが、そのニエットの回数を少なくしていこうや、こういうふうなざっくばらんな話をして、そして十二分に耳を傾けたい、かように思っております。
  260. 永末英一

    永末委員 ヨーロッパにおきます通常兵力の削減交渉は、これからでまだわかりませんが、もしこれが進んでいくとした場合に、INFは全廃でございますから、双方が検証し合いつつ壊していますね。弾頭はどこに行ったか知りませんけれども、そういうことをやっておる。通常兵力の場合にも同じように検証を伴いつつ壊すのか、移転するのか、こういうことが懸念をされるわけでございます。移転をするといえば地球上のどこかにあるわけであって、恐らくソ連の言うヨーロッパの家から太平洋の国家の一員の方へ移転されたのでは、これは我が国としては影響を感ぜざるを得ない問題になります。したがって、通常兵力の削減交渉は、ヨーロッパにおきますNATOとワルシャワとの関係のように見えますけれども、我々もまた極めて関心を持たなければならない対象であると思いますが、外務大臣はどう思われますか。
  261. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 INFのときにも、当初はヨーロッパというだけの限定的地域におけるグローバル・ゼロということが言われておったのでございますが、それではしわ寄せがアジアに来るというふうなことで、御承知の前総理もそのことをサミット等々におきまして強く主張されました。そして米国の努力並びに西側陣営の結束、そうしたことによってINFは一応グローバル・ゼロ、完全にヨーロッパ、アジアを含めてということに相なったわけでございます。だから、日本もその点は大いに評価し、今おっしゃったように、これは核軍縮の第一歩であって、これだけではまだ満足じゃないよ、こう言っておる次第でございますから、やはりヨーロッパはヨーロッパといたしまして、NATOとワルシャワとの関係においていろいろな問題がこれから出てこようと思います。そうした面におきましても、やはり私たちは一応サミットという国際的な地位、場所にもおりますし、いろいろなところでその点は注意をしながら、やはり今アジア・太平洋の安全、そうしたものを図らなくてはなりませんし、特にその地方では我々日本が唯一の代表としてサミットに出ておる。サミットに出ておらなくとも、隣国には中国もおられる、またASEANもある。こういうふうに考えてまいりますると、そうした面でも常に会合を重ねるたびにそのお話をいたしております。したがいまして、日本の判断なり日本の適当なる対処というものは、これからだんだんと必要になってくる時代を迎えておる、かように私たちは認識いたしたいと思っております。
  262. 永末英一

    永末委員 二カ月ほど前でございましたが、アフガニスタンにおりましたソ連の戦闘部隊、戦車部隊ないしはヘリコプター部隊がサハリンに移動したという新聞記事を見たのでありますが、外務省は確認しておられますか。
  263. 荒義尚

    荒説明員 先生指摘新聞の記事は私ども承知しておりますけれども、サハリンに移動したという確証はまだ得ておりません。そういう動きは確認しておりません。
  264. 永末英一

    永末委員 ソ連の経済が非常に窮迫しておる、赤字財政を組まざるを得ない。ゴルバチョフがクラスノヤルスクへ行きましたときにも、書記長、あなたになってからペレストロイカと言われておるが、我々はソーセージも肉もなかなか手に入らないのだ、行列ばかりやっておるのだと言ったと伝えられております。そういう意味合いで、経済的に非常に重要な段階にあるのではないかと思いますが、軍事力を、一番金のかかる、恒常的に金のかかる通常兵力の削減というのは、私はソ連としても一つの課題になっておろうと思いますが、あなたはどう思われますか。
  265. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 これは最も大きな課題でございまして、一つのお話が私たちの耳にも入っておりますが、米ソの首脳が、二人が散歩がてら、私たちが際限なき軍備競争をやっておる間に日本ドイツも大きくなったね、こういうようなお話をされた。実はきのうコーヒーブレイクのときにイタリア大臣にもそのことを申し上げましたが、ついこの間、ソ連にデミタ首相と一緒に行ったとき、それと同じ話をゴルバチョフ書記長自体が言われて、我々が軍備を拡大しておる間にイタリアも伸びましたね、こういうことですから、やはりそのことは真剣な問題として考えておることは事実でございましょう、こういう話もございました。
  266. 永末英一

    永末委員 このクラスノヤルスクの演説の中で日本に関連した項目がございますが、そこで我が国がGNPの一%を軍事目的に使っておることを取り上げて、一%を極めて深刻に考えざるを得ない、こう言っておるのですが、何でこんなことを言っておるのですか。
  267. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 よく言われますが、ソ連の防衛費はGNPの一五%と聞いております。そのうちの五%が極東向けであると聞いております。その成長率は一%ぐらいかというふうに聞いております。我が国におきましてはGNPの一%です。それが前年対比五%伸びるということになればどうなるんだろうかというふうな計算があるいはあるのかもしれませんが、我が国の一%は決して隣国に脅威を与えるものではないと私は考えております。
  268. 永末英一

    永末委員 外務大臣はこの演説をごらんになって、なぜ彼らが深刻に考えているという表現をしたのか。今おっしゃったように、ソ連の持っておる膨大な軍事力と我々の持っておるのとはまさに月とスッポンぐらい違うのであって、にもかかわらず、なぜこういう表現をしたのか。そこのところはどう判断をされておられますか。
  269. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 やはり日本の経済力ではなかろうか、かように考えております。
  270. 永末英一

    永末委員 かつて国後、択捉、北方四島にソ連の軍隊が入ってきたことがございます。それ以来おります。七九年以降だと思いますが、そのときに国会では、そういうソ連のやり方を見て、ソ連我が国に対して脅威であるかどうかということが論議されました。そのときに潜在的脅威である、こういう答弁があったままになっておると思いますが、現在ソ連は我々日本にとって脅威ですか。
  271. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 現在商品が渡らない、行列はあるというふうな面もございますが、体制そのものが、いかにペレストロイカであるとはいえ、一つの社会主義国家として強大なる国家であるという認識は私たちは持っております。しかし、米ソ間におきまして、むだなけんかはよそうねという対話が始まったわけでございますから、私たちもやはりそうしたことに対する考え方を持ってしかるべきではなかろうかと思います。
  272. 永末英一

    永末委員 米ソ間における話し合いと、ソ連の隣国におる核兵器を持たない我々との関係はいささか違う面があると私は思うのです。そこで、なるほど米ソ間の話はあり、米ソ間における軍備縮小はINFで目に見えておるわけであります。なら、例えばソ連の太平洋正面におきます艦隊であるとか航空機であるとか陸上兵力は減少しておりますか。
  273. 荒義尚

    荒説明員 お答えいたします。  過去三年間の趨勢ということでお話し申し上げますけれども、やはり質的にも量的にも極東ソ連軍の増強が続いておるということでございます。海上兵力、航空兵力、それから戦略核、いずれもそういう状況にあるということでございます。
  274. 永末英一

    永末委員 ソ連は今のように現在保有しておる軍事力を減らしていることは認められないという日本政府の見解でございますが、ゴルバチョフはこのクラスノヤルスクの演説で、日本が米国との間の負担の分担の枠組みの中で軍事的潜在力を継続的に増強していることはソ連人を不安にしている、こう言うのですな。つまりアメリカとの間では話し合いでだんだんとダウンしておる、そしてそのアメリカが負担しておる分担を日本が実行していく、それが不安だ。これはどういう見解ですか。これはどう思われますか。
  275. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 最近米ソ間の首脳は何回となく出会っておられる。しかも、そのおぜん立てのために国務長官、外務大臣は両首脳のINFの会談のために三十回近く下相談をした。そう思ってそういうふうに聞いておりますと、やはり接触すればするほどお互いに何かわかるところも出てきたのじゃなかろうか。しかし、日本とはまだそこまで話し合いが進んでおらない、だから、私たちは米ソで話し合いが進んでおることをひとつ我が国とあなたの国との間においても継続しようじゃないか、それによっていろいろな緊張もあるいはまた誤解も我々お互いに氷解することに努めようじゃないか、そして速やかに北方四島及び平和条約、そういうふうに常に申し上げておるところはそこにあるわけでございます。
  276. 永末英一

    永末委員 先ほど触れました一%のことも、それから負担の分担、つまり今までアメリカが負担しておったものの肩がわりというようなことがソ連を不安ならしめたり深刻に考えさしているとすれば、これは大問題だと思いますね。この辺は外務大臣はやはり問題の所在を明確に相手方に知らして、そういう心配をしてもらわなくていいはずだと思いますが、いかがでしょう。
  277. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私はやはり今日我が国が独立を守り、なおかつ繁栄を遂げてまいった一つの大きな原因に安保体制がある。これは一九四五年以降いたずらなる東西の対立というものが米ソ間において起こり、西側や東側という陣営がおのずと構成されてしまった結果である。そのことがまだ続いておる。したがって、こうした我が国の事情も十分説明すればいいのではなかろうか、かように思います。
  278. 永末英一

    永末委員 アメリカ大統領選挙が済みまして、ブッシュ副大統領大統領になることが決まっておりますが、さて、アメリカの財政は極めて悪い財政でございまして、財政均衡法が動いてまいりますと、今後五年間で約二千八百億ドルから三千五百億ドル、四十兆円程度の軍事費の削減をやらなければならぬということが法律的に義務づけられておるわけでございまして、現在アメリカは二兆六千億ドルの国債残高を持ち、その利払いだけでも年間千六百億ドル、約十九兆円、二十兆円ほどの利払いをせざるを得ない。アメリカの税収のまさに三八%をこれに充てておるというようなところでございますから、アメリカが今まで支弁しておりました軍事費は削減していく、これが逆にまた費用の分担という形でアメリカの同盟国等にかぶさってくるということは、我々を待ち受けている極めて歴然たる状態だと思いますが、外務大臣、どう思われますか。
  279. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私を含めまして外務省では、バードンシェアリングと勝手に決められてもらったら、そういう名前は余り気に入らぬねということが第一でございます。しかしながら、日本も大きな国になりましたし、今日世界の平和というものに貢献をしておると思いますが、アメリカといたしましても、やはり同盟国との間におきまして、がっちりした枠組みをつくることがなお一層平和を確実なものにするという考え方があることも知っております。それが、言うならば私たちの余り好まない名前でありますが、バードンシェアリングという名前になっておるということも知っております。もちろん私たちも何らかの方途においてお互いに貢献をしてあげることは必要だろうと思いますけれども、あくまでもそうした面は非軍事的な面においてしかできないということは、議会筋にも政府筋にも私たちとしては申し上げておるところでございます。また、非軍事的な面の問題といえども、やはり国民に対しましてはっきりとかかる理由であるということが説明でき、国民からも了解を得られるということが必要であろう、かように考えております。
  280. 永末英一

    永末委員 ヨーロッパでは一九九二年にECが一つの経済体をつくるように努力をいたしております。現在でも、それを合算いたしますと、一年間の国民総生産の比較をしますと、一位がこのEC諸国を合わせた西ヨーロッパ、二番目がアメリカ、三番目が日本、四番目がソ連だという計算があります。アメリカではなぜこの二番目のアメリカが一番目のヨーロッパや三番目の日本のために膨大なる軍事負担を負わねばならぬかという議論がある。そこでアメリカの議会では、日本が防衛費と対外経済協力を合わせて三%の負担をせよということが議決になったり、わいわい主張されておることは、既にもう前からそうなっておりますね。  さて、選挙の結果、アメリカの議会は民主党がそれぞれ支配的な力を持ち、まさに圧倒的な力を持っておるということになりますと、そういう主張のもとにブッシュ新政権は日本に臨んできそうでありまして、今バードンシェアリングという言葉は気に入らぬとおっしゃいましたが、これはどういうものなんですか。費用の分担というような、今のような世界的規模で、アメリカは何も日本だけに言っているのではなくて、ヨーロッパにもいろいろなことを言うでありましょうし、どういうものだとお考えですか。今非軍事的とすぐに言われましたが、どういうものをアメリカがこの言葉の中に込めてわいわい言っておるとお考えですか。
  281. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今まで接触した範囲内におきましては、直接的には防衛費の分担ということもありましょうし、防衛費用を分担さすことでかえって日本が強力な軍事国になっては大変だという一つの考えをお持ちの方々は、いや、防衛以外の経済面において持たしてはどうか、では、どういう経済面かということになりますと、ODAとか、そうしたものは別といたしまして、いろいろな地域において、その地域の民生安定のために経済を拡大し、なおかつ政治を安定させてあげた方がよい。こうなってまいりますと、実はサミットにおきましても、その具体的な国名としてフィリピンという名前が出ております。これはあくまでも経済面の一つの議題として提案され、それに対しまして参加国がお互いに考えようということも、私はアメリカの言うバードンシェアリングの一環であろう、かように考えております。
  282. 永末英一

    永末委員 アメリカ人の方はわりかた簡単にそろばんをはじきながらやってくるのでございまして、自分の方はODAなどは実に微々たることしかやっていない。日本の方がODAがGNPの〇・一二%、防衛費が一%程度でございますが、三%にするというと大変なことになりますね。しかし、一たん数字が口にされますと、何かそれが大問題であるかのように扱われないとも限らぬ。  さて、世界に対してアメリカが持っておるいろいろな経済協力のあり方は、先ほどODAだけ申し上げましたけれども、いろいろな関係を持っている。我々は、我々の国の安全保障を中心にしながら防衛費も持ち、そしていろいろな経済協力も行っているわけでございまして、アメリカはグローバルにいろいろなことをやっている。その大国の任務を肩がわりしようというのがバードンシェアリングの考え方だろうと思います。我々はそのアメリカの全世界に持っているものを肩がわりしていく立場にはないと思う。我々の守備範囲というのは、おのずから我が国を中心とした周辺であると思いますが、大臣はどう思いますか。
  283. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 現在、日本世界に貢献するという面を強調いたしておりますが、今お触れになられましたODA、これはあくまでも南北間の底辺に横たわっている人道上への考慮あるいはまた相互依存という枠がございますから、そうした中で大いに検討していきたいと思う次第でございます。  なおかつ、紛争がアフガンを初めイラン、イラクあるいはナミビア、さらには足元のカンボジア等々ございます。こうした面も早急にその紛争が解決されることが必要でございますが、そのためにも、金だけではなくして、やはり人も派遣いたしましょう、さらには戦後の復旧、もし我が国に依存されるところがあれば大いに私たちはやりましょうというふうなことで、現在は目標を大体定めている次第でございます。そのほかにも還流資金等々は遠くアフリカにも、あるいはまた中米にも、さらには中東にも、いろいろな立場においてこれが行き届くようにしよう、特にアフリカには無償、こうしたものを広く行き届かせておるというふうなことでございまして、これはアメリカの分野を我々が引き受けたというのではなくして、今日、幸い世界の協力と友情によって大きくなった日本としては、当然そうした世界への恩返しという一つの意味もあるかもしれませんが、営々孜々として努力された国民の税金の中からそういう面もお預かりして、適切に政府がそのことにおいていろいろと貢献したいということでございますので、私たちは、米軍の肩がわりとか分野を日本に振り与えられて、それを我々がやっておるのだとは考えておりません。
  284. 永末英一

    永末委員 ことしの八月にアメリカの前国防次官でございましたイクレ氏を座長として大統領に対して長期統合戦略について検討したものが発表されました。その中で、日本の膨大な経済力に触れ、これは今後二十年どんどん大きくなっていく、もし対ソ、対中政策に関して日米の意見が合わないというようなことになったら、日米安保協力は消滅することもあるだろうということを発表いたしまして、いろいろ問題になりました。大臣はこの見解をどう判断しておられますか。
  285. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 やはり安保体制は日米間に一番大切なものでございますし、特に日米関係はやはり外交の基軸でございます。常に両国は世界的視野でお互いに協調していかなければならない、かように思いますと、そうしたことがないように努力をしなければいけないと我々は思っております。
  286. 永末英一

    永末委員 先ほどから触れておりますように、日本の伸びていく経済力というのは、アメリカにとっても、ソ連にとっても大きな問題である。その経済力がどう動くかということをお互いに違う立場で見ておるわけでありますが、さしあたりブッシュ政権ができる、そして彼らの中には、今申し上げましたように、バードンシェアリングの思想があり、それに基づいて対日要求というものが出てくる。我々の防衛費の中には思いやり予算などとやっておりますけれども、二年続いて特別協定をつくって人件費等を持ってまいりましたが、これ以上のああいう形での人件費の負担は地位協定を改定しなければできない状態になっておると思います。  さて、そういう環境の中で、先ほど外務大臣が触れられたように、年間五%の防衛費のアップなどと言っておりますが、全体的に見て、何とかこの軍事費の重圧を減らして、それぞれ各国国民の民生を向上しようという中で、我が国だけが着実に防衛費をふやしていくということが日本国民の共感を得るかどうか、外務大臣、お答えを願います。
  287. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 いつも申しておりますが、やはり抑止と均衡というものがバランスを得て初めて安全が保障されるということになりますと、その抑止とバランスというものは決して高レベルでなくてもよいのであって、低レベルであってもよい、私はこう思っております。そうしたことを目標として我々はやっていかなくちゃなりませんが、幸いなるかな米ソは対話の継続ということでございましょうけれども、まだアジア・太平洋地域のそうした軍備の増強というものがどこかにおいてなされておるということになれば、やはり我々といたしましても適切な防衛というものを考えていかなくちゃならない、それが言うならば防衛大綱だろうと思いますから、そうした水準を達成するためには、我々としても自主的判断の努力だけは怠ってはいけない、そして将来そうしたことのないように、だんだんと低レベルの均衡がとれ、またバランス、さらには抑止があればよいという時代をみずからもつくり出していく、そうした意欲も失ってはいけない、かように私は考えております。
  288. 永末英一

    永末委員 これで終わりますが、十分国際情勢を判断し、そしてその中で国民の合意を得られる外交方針あるいは防衛方針を外務大臣としてもきちんと立てられるよう期待をしております。  終わります。
  289. 甘利明

    甘利委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二分散会