運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1988-04-06 第112回国会 参議院 予算委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月六日(水曜日)    午前十時十分開会     ─────────────    委員の異動  四月五日     辞任         補欠選任      岩上 二郎君     高橋 清孝君      及川 順郎君     猪熊 重二君      神谷信之助君     上田耕一郎君  四月六日     辞任         補欠選任      猪熊 重二君     及川 順郎君      小西 博行君     勝木 健司君      秋山  肇君     野末 陳平君      下村  泰君     喜屋武眞榮君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         原 文兵衛君     理 事                 伊江 朝雄君                大河原太一郎君                 小島 静馬君                 林  ゆう君                 吉川 芳男君                 久保  亘君                 矢原 秀男君                 吉川 春子君                 三治 重信君     委 員                 石井 道子君                 石本  茂君                 梶木 又三君                 金丸 三郎君                 北  修二君                 工藤万砂美君                 坂野 重信君                 坂元 親男君                 志村 哲良君                 下稲葉耕吉君                 田中 正巳君                 高橋 清孝君                 中曽根弘文君                 中西 一郎君                 永田 良雄君                 野沢 太三君                 林 健太郎君                 降矢 敬義君                 増岡 康治君                 松岡満壽男君                 小川 仁一君                 及川 一夫君                 大木 正吾君                 千葉 景子君                 野田  哲君                 安恒 良一君                 猪熊 重二君                 及川 順郎君                 広中和歌子君                 和田 教美君                 上田耕一郎君                 佐藤 昭夫君                 勝木 健司君                 野末 陳平君                 喜屋武眞榮君                 青木  茂君    国務大臣        内閣総理大臣   竹下  登君        法 務 大 臣  林田悠紀夫君        外 務 大 臣  宇野 宗佑君        大 蔵 大 臣  宮澤 喜一君        文 部 大 臣  中島源太郎君        厚 生 大 臣  藤本 孝雄君        農林水産大臣   佐藤  隆君        通商産業大臣   田村  元君        運 輸 大 臣  石原慎太郎君        郵 政 大 臣  中山 正暉君        労 働 大 臣  中村 太郎君        建 設 大 臣  越智 伊平君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    梶山 静六君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  高鳥  修君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (沖縄開発庁長        官)       粕谷  茂君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  瓦   力君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       中尾 栄一君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       伊藤宗一郎君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  堀内 俊夫君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  奥野 誠亮君    政府委員        内閣官房内閣内        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房内政審議室        長        的場 順三君        内閣法制局長官  味村  治君        内閣法制局第一        部長       大出 峻郎君        内閣総理大臣官        房審議官     本多 秀司君        総務庁長官官房        審議官        兼内閣審議官   紀 嘉一郎君        総務庁長官官房        審議官        兼内閣審議官   増島 俊之君        総務庁長官官房        会計課長     八木 俊道君        防衛庁参事官   小野寺龍二君        防衛庁参事官   福渡  靖君        防衛庁参事官   児玉 良雄君        防衛庁参事官   鈴木 輝雄君        防衛庁長官官房        長        依田 智治君        防衛庁防衛局長  西廣 整輝君        防衛庁教育訓練        局長       長谷川 宏君        防衛庁人事局長  松本 宗和君        防衛庁経理局長  日吉  章君        防衛庁装備局長  山本 雅司君        防衛施設庁長官  友藤 一隆君        防衛施設庁総務        部長       弘法堂 忠君        防衛施設庁建設        部長       田原 敬造君        経済企画庁物価        局長       冨金原俊二君        経済企画庁総合        計画局長     星野 進保君        環境庁水質保全        局長       渡辺  武君        国土庁長官官房        長        清水 達雄君        国土庁長官官房        会計課長     佐々木 徹君        国土庁計画・調        整局長      長沢 哲夫君        国土庁土地局長  片桐 久雄君        国土庁大都市圏        整備局長     北村廣太郎君        法務省入国管理        局長       熊谷 直博君        外務大臣官房領        事移住部長    黒河内久美君        外務省中近東ア        フリカ局長    恩田  宗君        外務省経済局長  佐藤 嘉恭君        外務省条約局長  斉藤 邦彦君        外務省国際連合        局長       遠藤  實君        外務省情報調査        局長       山下新太郎君        大蔵大臣官房総        務審議官     角谷 正彦君        大蔵省主計局長  西垣  昭君        大蔵省主税局長  水野  勝君        大蔵省理財局長  足立 和基君        文部省初等中等        教育局長     西崎 清久君        文部省高等教育        局長       阿部 充夫君        文部省高等教育        局私学部長    坂元 弘直君        文部省学術国際        局長       植木  浩君        文部省体育局長  國分 正明君        厚生大臣官房総        務審議官     黒木 武弘君        厚生省健康政策        局長       仲村 英一君        厚生省保健医療        局長       北川 定謙君        厚生省保健医療        局老人保健部長  岸本 正裕君        厚生省社会局長  小林 功典君        厚生省児童家庭        局長       長尾 立子君        厚生省保険局長  下村  健君        厚生省年金局長  水田  努君        農林水産大臣官        房長       浜口 義曠君        農林水産大臣官        房予算課長    上野 博史君        農林水産省経済        局長       眞木 秀郎君        農林水産省構造        改善局長     松山 光治君        農林水産省農蚕        園芸局長     吉國  隆君        農林水産省畜産        局長       京谷 昭夫君        農林水産省食品        流通局長     谷野  陽君        水産庁長官    田中 宏尚君        通商産業大臣官        房審議官     末木凰太郎君        通商産業省通商        政策局長     村岡 茂生君        通商産業省通商        政策局次長    吉田 文毅君        通商産業省貿易        局長       畠山  襄君        通商産業省産業        政策局長     杉山  弘君        資源エネルギー        庁長官官房審議        官        向 準一郎君        運輸大臣官房審        議官       金田 好生君        運輸大臣官房国        有鉄道改革推進        総括審議官    丹羽  晟君        運輸省運輸政策        局長       塩田 澄夫君        運輸省航空局長  林  淳司君        郵政省電気通信        局長       奥山 雄材君        郵政省放送行政        局長       成川 富彦君        労働大臣官房長  清水 傳雄君        労働省労働基準        局長       野見山眞之君        労働省職業安定        局長       岡部 晃三君        建設大臣官房会        計課長      鹿島 尚武君        建設省建設経済        局長       望月 薫雄君        建設省住宅局長  片山 正夫君        自治大臣官房審        議官        兼内閣審議官   前川 尚美君        自治省行政局長  木村  仁君        自治省行政局公        務員部長     芦尾 長司君        自治省税務局長  渡辺  功君    事務局側        常任委員会専門        員        宮下 忠安君    参考人        日本銀行総裁   澄田  智君        住宅都市整備        公団総裁     丸山 良仁君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和六十三年度一般会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和六十三年度特別会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和六十三年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 予算委員会を開会いたします。  昭和六十三年度一般会計予算昭和六十三年度特別会計予算昭和六十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。     ─────────────
  3. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) まず、締めくくり総括質疑に関する理事会における協議決定事項について御報告いたします。  質疑を行う日は、本日六日及び明日七日とすること、質疑時間総計は二百五分とし、各会派への割り当ては、日本社会党護憲共同七十五分、公明党・国民会議四十三分、日本共産党三十二分、民社党・国民連合二十二分、新政クラブ税金党、二院クラブ・革新共闘及びサラリーマン新党参議院の会それぞれ十一分とすること、質疑順位及び質疑者等についてはお手元の質疑通告表のとおりとすること、以上でございます。  右、理事会決定のとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和六十三年度総予算案審査のため、本日、日本銀行総裁澄田智君及び住宅都市整備公団総裁丸山良仁君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) それでは、これより締めくくり総括質疑を行います。     ─────────────
  8. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) この際、防衛庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。瓦防衛庁長官
  9. 瓦力

    国務大臣瓦力君) 三月十一日の参議院予算委員会における久保委員の質問に対し、お答えいたします。  政府が従来から申し上げているとおり、憲法第九条第二項で我が国が保持することが禁じられている戦力とは、自衛のための必要最小限度実力を超えるものを指すと解されるところであり、同項の戦力に当たるか否かは、我が国が保持する全体の実力についての問題であって、自衛隊の保有する個々兵器については、これを保有することにより我が国の保持する実力の全体が右の限度を超えることとなるか否かによって、その保有の可否が決せられるものであります。  しかしながら、個々兵器のうちでも、性能上専ら相手国の国土の潰滅的破壊のためにのみ用いられるいわゆる攻撃的兵器を保有することは、これにより直ちに自衛のための必要最小限度範囲を超えることとなるから、いかなる場合にも許されず、したがって、例えばICBM、長距離核戦略爆撃機……長距離戦略爆撃機、あるいは攻撃型空母自衛隊が保有することは許されず、このことは累次申し上げてきているとおりであります。  なお、昨年五月十九日参議院予算委員会において当時の中曽根内閣総理大臣が答弁したとおり、我が国憲法上保有し得る空母についても、現在これを保有する計画はないとの見解に変わりはありません。     ─────────────
  10. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) これより久保亘君の質疑を行います。久保亘君。
  11. 久保亘

    久保亘君 減税に関する与野党政策担当者会議並びに国対委員長会談における合意は、暫定予算いかんにかかわらず、この合意国民のために果たされなければならないものと考えておりますが、政府はどのように受けとめておられますか。大蔵大臣総理大臣の御意見を伺いたいと思います。
  12. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 与野党の間におきまして、この問題につきまして国対委員長あるいは政策担当者間等で長い間御協議が行われていることにつきましては、政府としてはその推移を見守ってまいりました。もとより御協議の概要につきましては与党の方から聞いておりますので存じておりますが、なお推移を見守っておるということでございます。  四月一日の与野党国対委員長会談におきまして、自民党の方から、六十三年度の減税規模については、三月八日の与野党国対委員長会談合意及びこれに基づく政策担当者会議の対応を踏まえて、その範囲誠意を持って対応すること、また第二項の野党の要求した減税財源担当者間で引き続き協議をしていくというふうに回答をいたした、そういう状況で、この各党間の会談はいまだ結論を得ずに今日に及んでおるというふうに政府としては承知をいたしております。
  13. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 大蔵大臣からお答えがあったとおりでございますが、暫定予算と汗をかいていただいておる各党協議との関係というのは、私は関連性はないというふうに考えております。
  14. 久保亘

    久保亘君 暫定予算を提出したことによって与野党間の合意が棚上げになったんだなどという議論が一部ありますが、もしそうだとするならば、財政上の目的ではなくて他の目的のために暫定予算を利用するということになって、これは許されないことだと思うのでありまして、今竹下総理が全く関係のないことだとおっしゃっておりますので、その点はそのように承っておきます。  この合意の中に、予算成立までに減税規模について結論を出すという一項がございます。この点については昨日も当委員会において議論がございました。私はこの点について、その規模というものをどのように解するかということについて、竹下総理の本委員会における御議論も承っておりますけれども、その合意そのものについて、減税規模予算成立までに結論を出すという約束事については、参議院において予算審議中であり、成立までになお日時を有するわけでありますから、その結論を出すことに与野党間で努力を払うべきものだと思いますし、政府もまた減税について実施する責任のある立場においてこの合意が果たされるよう協力すべきものと思いますが、いかがでございますか。
  15. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昨日も総理大臣からお答えがありましたが、この規模ということになりますと、今の段階でこれを定量的に申すことは御承知のような事情でなかなか事実上難しい、定性的にということであるわけでございますが、なお今後与野党の御協議が進みまして何らかの結論に達するということになりますれば、もとより政府としてはそれを尊重いたさなければならないと思っております。
  16. 久保亘

    久保亘君 私は、国対委員長会談による合意でありますから、その規模というのを定性的と解するか、定量的と解するかということについては、この会談責任者たちの間で協議をせられるべきものだと思っております。竹下さんには竹下さんの意見があり、私には私の意見があります。しかし、定性的であれ定量的であれ、この合意に基づく結論を出すということについては、公党間の約束ということについてはそうすべきものだとお考えになりますか。
  17. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは政府が口を出すべきことではございませんけれども、私も一人の政党人として申しますならば、そうであろうと存じます。
  18. 久保亘

    久保亘君 これは、定性的か定量的かということについては、この会談合意した当事者たちは余りそのことを論じておらないのに、むしろ総理大臣大蔵大臣がそのことに対して、私は、総理大臣がよくおっしゃる言葉で言えば、まさに僭越非礼な解釈をなさったのではないかと、こう思っておるのでありますが、ここで私は伺いたいことがある。  定性的な規模というのは、例えばどういうことを指して定性的な規模とおっしゃるんでしょうか。
  19. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今まで何回か私もそういう立場にあったわけでございますが、定性的な規模というのでいろいろ議論して今覚えておりますのを一つ申し上げますと、景気浮揚に役立つ相当規模のと、こういうことを申し上げて合意したことがかつてございました。その文書作成者の一人であった経験から申し上げたわけでございます。
  20. 久保亘

    久保亘君 この問題は、しかし、今総理が言われたような時期の規模定性的合意をやったのとは違って、一月にわたる長い間のいろいろな論議の中でずっと詰まってきて、最後に国対委員長段階で、じゃこれは定量的な規模をひとつここで予算成立までには決めようじゃないかということで出てきたのがあの会談経過と文面を素直に読んだ場合の結論のように私は思えるんですが、総理は今度の場合ですね、一般的な場合ではなくて今度の場合、あの経過とそれから合意文書をごらんになってそうお読みになりませんか。
  21. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 経験上申し上げて申しわけありませんが、今申しました景気浮揚に役立つ相当規模のというのは、景気が心配されておったときの年度でございました。間違うといけませんからちょっと調べれば正確にわかることでございますが、それはたしか三月であったような気はするのでございます。しかしながら、昨年の臨時国会のときの税制協議というのがやっぱり一番の例なのかなと思いますのは、結局七月三十日でございましたか、いわゆる前年度剰余金等のめどが立った段階で初めて私の口から一兆五千億と、こういうことを申しまして、その後国会議論を聞きながら所得税法の刻みの調整で四百億、一兆五千四百億プラスになりました。したがって、定量的と言った場合は、やはり時期としては昨年ぎりぎぎりで私が回答する決断をした時期というのが私の経験からすれば定量の限界と申しますか、そんな感じがしてなりません。  だから、規模というのは、少し先ほど例示しましたのは、景気浮揚に役立つ相当規模のと、規模という言葉を使いまして、それをして規模の性格づけをしたというふうな記憶がございますので、その辺のところが、汗をかいていただいておりますが、双方今後継続しておるといたしましても、今の段階合意に達していないところではないかなというふうに私思っております。
  22. 久保亘

    久保亘君 これは与野党間で精力的に減税規模について協議をし、一定の結論を得れば政府はそのことに対して責任を持って実行されるものと、こう思ってよろしゅうございますか。
  23. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 与野党公党間でお約束ができましたら、政府誠意を持ってそれを実行いたさなければならないと考えております。
  24. 久保亘

    久保亘君 今度のあの協議並びに合意は、六十三年度の減税についてであります。  この六十三年度の減税については、その歳入財源前提として、今いろいろと論議のございます間接税は含まれないという前提が設定をされて議論が行われてきたものと私どもは理解をしているのでありまして、そういう意味では、この間接税とリンクしない形で与野党間の合意について大蔵大臣としては協力する、こういうことでよろしゅうございますね。
  25. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 政府立場で申しますと、六十三年度予算はただいま当院において御審議を願っているところでございまして、この御審議を願っております予算案には歳入の面で新しい間接税というようなことは想定をいたしておりません。また同様の意味で、ただいま与野党間でいろいろ御議論になっておりますところのその種類の減税につきましても、ただいま御審議願っております予算案想定をいたしておらない。したがいまして、そういう状況のもとで政府としてはそのような御協議進展いかんによりましてということは将来のこととして考えておりますが、ただいまとしては御審議をいただいております予算案が最善のものというふうに考えておるわけでございます。
  26. 久保亘

    久保亘君 それでは次に、暫定予算のあり方についてお尋ねをしたいのでございますが、総理並びに大蔵大臣は、憲法並びに財政法予算に空白を生ずることを想定せず立法されたものではないか、こういう御見解をお述べになっております。もしその見解に従うとするならば、立法に当たって想定せざる状態を生じた場合にどう対応するべきであるかという方針を明確に持つべきものと思うのでありますが、いかがですか。
  27. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいままでに申し上げておりますことは、財政法第三十条は、必要に応じて暫定予算を作成し云々と書いてございますが、憲法財政法を通じまして、旧憲法はおけるような措置については書いておりません。すべての措置は、予算国会の御審議を経なければならないというそういう前提をとっております。したがいまして、そういうことから見ますと、もしそのような事情で空白が生ずるという場合には、この財政法三十条で必要に応じて暫定予算を作成することができると、こういう考え方に立っておるものと存じます。  なお、せんだってから御議論のございますその暫定予算成立あるいは提出の時期というものは、新しい会計年度になってからでもそれは当然できるものということはこの財政法には書いてございませんけれども、「必要に応じて、」とございますので、やむを得ない場合には会計年度が変わった場合でも暫定予算を提出することができると解すべきものと思っております。
  28. 久保亘

    久保亘君 いや、私が申し上げておりますのは、財政法予算の空白を生じないということを前提にしておるとするならば、予算の空白を生ずる事態に対しては「必要に応じて、」というのは、財政責任を持たれるあなた方の判断によって決まるものではない。必要に応じてというのは、国民生活にとってその予算が空白になることはこれはよくないことである、ならばそのときに暫定予算を組むことができるということで、予算の空白を避ける、回避するように法は定めておるんだと、私はこう思います。  そういう意味では、毎年暫定予算をめぐっていろいろと議論がございます。私は、これはきちっと予算の空白を生ぜしめないよう財政上の、予算上の手続をとることをルールとして確立すれば問題のないことではないかと思うのでありますが、随分長い間暫定予算とも大蔵大臣として対応されてきた竹下さんはどうお考えですか。
  29. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私の経験からすれば、本当はいつの日か決着をつける問題だな、こういう感じは率直に持っております。  ただ、憲法六十条とそれから財政法何条でございましたか、異なった議決がなされた場合とかいうようなことに対しては、両院協議会を三月三十一日につくってなんということが本当はできるものだろうか、仮にそういう場合があったとして。そういうことになると、その角度からもまた議論をしていかなきゃならぬ問題ではないかな。  それで、仮にルールづけをいたしまして衆議院で、そこのところの考え方をどう整理するかでございますが、仮に通ります、通って三十日間の審議期間を保障するという立場から、その時点に不足分の暫定予算を一緒にお願いする、こういうことになった場合、異なった議決というものを前提としないことにもなりはしないか。あるいは自然成立要件ということを念頭に置いたとすればこれはむしろ非礼ではないか。やっぱり審議期間の保障の問題と、それから自然成立要件を具備して送ったということに対する二院制度のあり方としてどう本当に判断すべきか、この辺で私も実は壁にぶち当たっておる、個人の感じを申し上げて申しわけありませんけれども。  したがって、本当は毎年毎年、特に昭和五十一年以後でございますが、この議論をやっておると、私自身も、じゃ久保さんこれでどうでしょうかと言うだけの自信に至っていないというのは経験上事実でございます。
  30. 久保亘

    久保亘君 総理も長い議会生活を経験されて、議会の子をもって任じられておるのだ、こう思うので今のような御意見であったと思いますが、今日の立場からいいますと、参議院審議権にかかわる問題は参議院が決する問題であります。衆議院が予算審議を年度内に終えない場合には当然に暫定予算が組まれます。それから、衆議院が予算成立させて参議院に送りました場合に、参議院予算委員会が、つまり参議院側が審議の日程を設定していく中で、年度内に審議を終えることが無理ということが参議院側の主体的判断として明確になった場合には当然に暫定予算を提出する、こういうことにすれば問題はないのだと私は思うのであります。  暫定予算を出すか出さないかを年度を越えてもなおその提出権者である政府の側が握っているということで、これがいつもいろいろと問題を起こすのでありまして、そこが審議権を持つ参議院側の方が年度内に終えられるかどうかを決めるのでありますから、その決定に従って政府の側は暫定予算を日程の上ではもう全く事務的に処理されるということを明確にしておけば問題がないのではないですか。
  31. 竹下登

    国務大臣竹下登君) あるいはこれは法律事項にも関するかもしれませんけれども、今の論理はそれなりに私も理解できるところでございます。いわゆる予算の問題、憲法六十条の問題はございましょうとも、参議院へ参りましたならば、これは参議院の運営の中でいつ成立するかというのがおおむねの合意を得ていただく問題だ。強いて言えば、政府に期待権がありまして、可能な限り年度内にお願いしますという姿勢を持ち続けておるが、提案権そのものは政府にあります。が、もう既にかくかくしかじかになったから提出すべきであるという意見があったとすれば、それは素直にそれに従うべきものだろうというふうに私自身も思っておることは事実であります。  したがって、今もう一つ議論しなきゃならぬのは、そうなると五日まではいいとかいう議論もあるいはもう一遍もと戻しにして、あくまでも予算の空白がないという形の三月三十一日というものにお互いある種の精神的妥協をして五日までということになったわけでございますから、結果としてそれも戻さなきゃならぬのかな、こんな感じがします。それで、おっしゃるように衆議院でまだ議了してないときに暫定予算を出したのは昭和二十三年、二十八年、昨年もそうでございますが、そういうふうにあるわけです。衆議院を議了した後の問題については、今おっしゃる考え方で整理整とんをしていくという手はあるだろうというふうに思います。  そうすると、さらに若干の欲が出まして、財政法の中で、予算は十二月提出するを常例とすると書いてありまが、常例とするが、ねばならぬとは書いてないにしても、明治以来一遍も提出しないものを何で常例とすると残っておるのだろうか、その辺もまた議論してみるということにもなろうか。そうすると、既にまた参議院では御議論をいただいておりますそれに合わして国会法の改正の、いわゆる年一回召集するということで十二月召集するとなっておるものを一月にするかとか、こんな議論は既に参議院では一遍おやりいただいているようですが、そういうものを総合的に検討してみたらなという気持ち、これも内閣総理大臣としてでなく同僚の一人としてそういうことを体験的に考えたことがあるというふうにお答えをいたします。
  32. 久保亘

    久保亘君 この問題については、政府の方は国会審議状況に法律に基づいて素直に対応する、こういうことをお考えいただくとしますならば、国会、特に通常の場合暫定予算審議日程と絡みます参議院の側の意思を明確にいたしました場合には、その参議院の意思に従って竹下内閣としては来年度以降暫定予算の扱いはついては素直に対処をされる、こういうことで考えてよろしゅうございますか。
  33. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは院のそういう御決定があった場合、私はそれは素直に考えるべき問題だと思っておりますが、なお少し議論を詰めていただきたいものだというふうに思います。
  34. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) つけ加えまして一つ実務的な立場から申し上げますと、仮にそういう状況暫定予算政府が編成するという場合に、何日分の暫定予算を編成すべきかという問題がございますものですから、その場合にはそういう、そこにわたります一種の何と申しますか、めどと申しますか、そういうことも政府としては実は必要とするかと存じます。
  35. 久保亘

    久保亘君 今の大蔵大臣の御心配は、それこそ今回皆さんが大変手抜きをなさいました参議院側との協議を十分にお詰めくださればよいことなんでありますね。今回の暫定予算に当たっては、参議院予算委員会審議が続行中でございまして、私どもには一言の事前の御協議もなく、突如として衆議院の方に暫定予算が提出されたという経緯がございまして、参議院としては政府の対応に非常に遺憾な感じを持っております。  この際、委員長にお願いをいたしますが、次年度以降の暫定予算のあり方について、既に当委員会においては六十一年三月、当時の安田委員長の見解表明を当委員会の決議として御決定をいただいていることもございます。これらも受けながら、今回の四月に入って暫定予算が提出されたという異例の措置等も考え合わせて、ぜひ暫定予算のあり方について当委員会の一致した見解を取りまとめておかれるようお願いを申し上げたいと思います。
  36. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) ただいまの件につきましては、理事会協議いたします。
  37. 久保亘

    久保亘君 それでは、先ほど防衛庁長官から統一見解を示されましたので、この見解について伺いたいと思うのでございます。従来防衛庁が国会で答弁なさったことを集約された答弁だと思うのでありますが、これは政府の一方的な憲法解釈、法解釈を含んでおりまして、これを取りまとめて政府の統一見解として私としては了承することは全くできない内容でございます。  そこでお尋ねしたいのは、憲法九条が保持を禁止している戦力というのは、憲法の制定当時の認識においてはあらゆる軍事力を指していたことは疑いの余地がないと思うのでありますが、このことについて防衛庁長官はどう御認識なさっておりますか。
  38. 瓦力

    国務大臣瓦力君) 従来からの政府見解につきましては法制局長官から御答弁いただくことが至当かと存じますが、私はつきましての御質問でございますので御答弁いたします。  憲法第九条は、我が国が主権国家として持つ固有の自衛権までも否定したものではございませんで、したがって、この自衛権の行使を裏づける自衛のための必要最小限度の防衛力を保持することが許されておる、かような考えを従来から述べておるとおりでございます。私もさような解釈は適切である、かように考えております。
  39. 久保亘

    久保亘君 今日における九条の解釈を私は申し上げているのではないのでありまして、憲法制定当時においてどのように解せられていたかということ。昭和二十四年十一月八日、第六回臨時国会において、当時の首相吉田茂氏が本会議において述べられたことがございます。「我が国の安全を保障する唯一の途は、新憲法において厳粛に宣言せられたるがごとく、我が国は非武装国家として、列国に先んじてみずから戦争を放棄し、軍備を撤去し、平和を愛好する世界の輿論を」云々と、こういうことを述べられております。そして同じ演説の中で、「軍備のないことこそ、我が国民の安全、幸福の保障であって、又以て世界の信頼を繋ぐゆえんであり、又平和国家として世界に我が国体を誇るに足るところであると私は考えるのであります。」、これは吉田茂元首相の国会における演説であります。  これを見ましても、憲法の制定当初、初期における九条の解釈というのははっきりしておったのではないですか。そこの原点だけは——私は今の解釈論に対してここでどうこうしようとしているんじゃありませんよ。憲法の制定当初における立法の理念というのはそこにあったのではないかということを聞いておるんです。
  40. 味村治

    政府委員(味村治君) 憲法制定当時におきまして、当時の吉田総理が、自衛権の有無につきまして昭和二十一年六月二十八日の衆議院本会議におきまして、「近年ノ戦争ハ多クハ国家防衛権ノ名ニ於テ行ハレタルコトハ顕著ナル事実デアリマス、故ニ正当防衛権ヲ認ムルコトガ偶々戦争ヲ誘発スル所以デアルト思フノデアリマス、」、こういう答弁をされております。しかしながら、またこの答弁につきましては吉田総理は、昭和二十一年七月四日の衆議院の帝国憲法改正案の委員会におきまして、さきに「私ノ言ハント欲シマシタ所ハ、自衛権ニ依ル交戦権ノ放棄ト云フコトヲ強調スルト云フヨリモ、自衛権ニ依ル戦争、又侵略ニ依ル交戦権、此ノ二ツニ分ケル区別其ノコトガ有害無益ナリト私ハ言ツタ積リデ居リマス、」、こういうような答弁をされております。  さらに、第七回国会における施政方針演説におきましては、総理は、「戦争放棄の趣意に徹することは、決して自衛権を放棄するということを意味するものでない」とか、あるいは十二回国会の衆議院の平和安全保障条約委員会におきましては、自衛権に関し、芦田委員の質問に対して吉田総理は、「私の当時言ったと記憶しているのでは、しば々自衛権の名前でもつて戦争が行われたということは申したと思いますが、自衛権を否認したというような非常識なことはないと思います。」と。  その当時の答弁に若干のぶれがあったということは否定できないわけでございますが、現在の政府の解釈は、先ほど防衛庁長官がおっしゃったとおりでございます。
  41. 久保亘

    久保亘君 今法制局長官が言われたのですが、私も別にそこを抜いているわけじゃない、今から申し上げようと思っている。  吉田さんは、二十五年には、「戦争放棄の趣旨に徹することは自衛権の放棄を意味しておるのではない」と、こういう演説をなさっております。しかし、この自衛権というのは軍備だということではないということがその後の演説によって明確になるわけでありますね。「我が国家の政策が民主主義、平和主義に徹底し、終始この趣意を厳守して行動せんとする国民の決意が、」「我が国を守る安全保障であり、」と、こういう演説をされておるわけでありまして、少なくとも日本国憲法の初期の段階における立法の精神というのは、すべての軍備を否定するということにあったことは疑う余地は全くない、私はこう思っております。  この点については、しかし、今防衛庁長官の見解が今日における法制局の法的な見解のようにおっしゃったので、それならそれで今度は議論をやりましょう。  じゃ、聞きますが、防衛庁長官、先ほどの統一見解の中で、戦力に当たらない自衛のための必要最小限度実力とはいかなるものを指すか、この実力の判定の基準は何であるか、御説明いただきたいと思う。
  42. 瓦力

    国務大臣瓦力君) 我が国自衛のための必要最小限度自衛力を保持することは許されるが、この範囲を超える実力を保持することが許されない、このことは従来から述べておるところでございまして、私のただいま申し述べました見解もかかる従来からの考え方、これを変えるものではない。よって、我が国自衛のための必要最小限度自衛力を保持することは許されるということで、その防衛力整備といいますか、そのことに目下取り組んでおるわけでございます。  なお、さらにその限度といいますか、それらにつきましては法制局長官の答弁が適当かと存ずるわけでございます。
  43. 久保亘

    久保亘君 それじゃ質問を変えましょう。  憲法九条二項に定める戦力ではない自衛のための必要最小限度実力——実力という言葉を使っているんですが、実力戦力とはどこかに線があるわけですね。じゃ、この実力の限界というのはだれが決めるのですか。——いやいや、これは防衛庁の長官に聞いている。
  44. 味村治

    政府委員(味村治君) 憲法の解釈の問題でございますので私から申し上げます。  憲法は、先ほど申し上げましたように自衛のため必要最小限度実力を保有することは認めている。それを超えるものが戦力である、憲法九条によって禁止されている戦力であって、それを超えないものは憲法は禁止していない、このように従前から解釈しているわけでございます。  では必要最小限度というのは何かというのが先生の御質問でございますが、これはもとより定量的に定めるわけにはまいりません。これは周辺諸国のいろいろな軍事情勢、世界的な軍事情勢、国際情勢、いろんなことで定量的は定めることはできないわけでございます。  したがいまして、その判定につきましては各種の情勢を考慮に入れた上で御判断になるわけでございますが、これは防衛庁さらには安全保障会議、閣議、それから予算あるいは法律、自衛隊法とかそういったような法律、そういったものを御審議いただきます国会、そういうところにおいて決定されるべきものと存じます。
  45. 久保亘

    久保亘君 そうすると、きのうまでは戦力と考えられたものがきょうは実力になる、そして、これは戦力ではない、憲法違反ではない、こういうことに時の内閣の責任者がやろうと思えば何でもできる、こういうことになりますか。
  46. 味村治

    政府委員(味村治君) ただいま申し上げましたように、必要最小限度実力、この実力を備えますためには自衛隊法とかそういった法律とかあるいは予算でもって自衛隊の装備等を決定していただく必要があるわけでございますので、そういうところで御判断をいただく、予算なり法律案の審議におきまして御判断をいただく、それによって民主的なコントロールということになる、このように考えておる次第でございます。
  47. 久保亘

    久保亘君 私が聞いているのは、そうすると結局内閣が安全保障会議、防衛庁、こういうものに検討をさせて、そしてこれは戦力に当たらない、こう決めさえすれば方針はいつでも変えられる、実力のレベルというのは時の政治権力の判断で自由になる、こういうことですか。
  48. 味村治

    政府委員(味村治君) 政府といたしましては、我が国を防衛する責任を負っているわけでございますから、防衛のために必要な実力というものは、これは最小限度備えるというような立場からいろいろ検討をしているわけでございます。そういう立場から、我が国で備えるべき実力はどの程度かということを決定いたしました上で、それを法律案なり予算なりに反映いたしまして国会で御審議をいただくということでございまして、決して政府が勝手に決められるというようなものではないと存じます。
  49. 久保亘

    久保亘君 そういう非常に勝手な解釈でやられると、結局、攻撃型とか防御型とかいうような論議はもう非常にむなしいものとなるわけですね。要するに、それは国会には予算としてかけられるでしょう。しかし、権力を握っている者が決めれば、きのうまではこれは相手国に対する脅威となる侵略の武器ともなり得る戦力と判断されたものが、きょうはこれはいや必要最小限度実力のうちであって戦力ではない、しかもトータルでその実力を判定するというんですから、そうなれば個個の通常兵器に関しては防衛庁、政府の判断をもって何でもできるというのが先ほどの統一見解の示すところだと思うのでありまして、私どもは絶対にこれを認めることはできません。  なぜならば、個々兵器について、個々兵器の中でこれを攻撃的兵器として憲法の禁ずるものはということで例示をしているのは、ICBMと、先ほど防衛庁長官が本音をすっとおっしゃった長距離戦略爆撃機、これわざわざ核とおつけになって取り消された。ICBM、長距離戦略爆撃機攻撃型空母自衛隊が保有することは憲法上許されない。それはなぜかといえば、性能上相手の国の国土の壊滅的破壊のためのみに用いられるとなっているからです。だからだめだ。そうすると、この三つのものは明らかに核兵器並びにその運搬手段を指すものと思わなければならぬが、防衛庁長官、そのように解してよろしいですか。
  50. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先ほど防衛庁長官が最初に申し上げましたのは、もともと憲法自衛範囲内におけるその防衛力とは何かということで、それは一般的には全般の実力そのものについて評価されるべきものであって、個々兵器について云々ということではないということをまず原則を申し上げまして、ただ、しかしながら、個々兵器であってもICBMあるいは長距離戦略爆撃機のごときものは、たとえそれが一つの兵器あるいは一個の兵器であっても問題があるという、明らかに自衛の枠組みを超えるものであるという明確なものを申し上げたわけでありまして、それ以外のものについては、やはり先ほど来防衛庁長官、法制局長官が申されておるように、防衛力全般の力として自衛のための必要最小限度のものを超えるかどうかという判断に基づくものであるという旨を申し上げておるわけでございます。
  51. 久保亘

    久保亘君 いや、今防衛局長がおっしゃったことをもう私何遍も申し上げぬでもいいと思うんだけれども、個々兵器として憲法がその保有を禁止するものは、性能上相手国の国土の壊滅的破壊のためのみに用いられる攻撃的兵器、こうなっておるんです。そして、例示としてICBM、戦略爆撃機、攻撃型空母、こう書かれておるんですから、相手国の国土の壊滅的破壊のためのみに用いる、しかもここへ例示されている武器ということになれば、これは核兵器との関連を持つ兵器に限定をされているということではないかと聞いておるんです。
  52. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 例えば長距離爆撃機と申しますと、これについて言えば核運搬も可能であれば通常爆弾の運搬も可能であろうと思います。  いずれにしましても、長距離爆撃機というのは、国土防衛あるいは自衛のためというよりは、より遠距離を飛んで相手の国土そのものを攻撃するために専ら用いられる兵器であろうということで、必ずしもその一機によって核を積んだから壊滅的な打撃を与えるということよりも、その使用形態からいって、専守防衛と申しますか自衛のための装備と言うには、専ら他国の攻撃に用いられる兵器であるがゆえに、これは自衛必要最小限度範囲を超えるものであるということになるというような解釈でございます。
  53. 久保亘

    久保亘君 結局防衛庁長官が述べられた統一見解によれば、政府の、防衛庁の裁量権によって、もちろん国会の了承を得なければならぬかもしれぬが、その基本的な計画をつくる段階においては防衛庁の裁量権によって必要最小限度実力の水準を、レベルを自由に上げることができる。そして、それに合わせて通常兵器に関しては際限なく、特殊な例外を除いて際限なく自衛のための実力範囲内におさめてこれを保有することができると、こういう見解になりはしませんか。長官答えてみてください。
  54. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 憲法で定める自衛のための必要最小限度内にあるかどうかということについて、一体だれが有権的に認定を下すのかというようなお尋ねであり、過去この種御質問が何度かあったと思いますが、御承知のように、自衛隊を構成します人員なりあるいは装備その他の資材等、この組織を維持するための所要の経費というものは毎年度予算の一環として国会の御承認を得る必要があります。また、自衛隊員のあり方であるとか構成する自衛官の定員等あるいはその組織の基本に関する事項、こういったものについては法律で規定することを必要といたしております。  国会は、このような自衛隊にかかわる予算あるいは関係法律案等の審査を通じまして、自衛隊自衛のための必要最小限度を超えるものであるかどうか、そういった点について十分な審査をする機会が制度的に保障されておるわけでございまして、自衛のための必要最小限度内にあるかどうかという認定については、政府だけが恣意的にこれを左右することができるわけではございませんで、国会、つまりは国民の判断にまつということになっておる、それが制度的に保障されておるというように御理解を賜りたいと思います。
  55. 久保亘

    久保亘君 今そういう説明をされるけれども、実際にはあなた方はGNP一%を突破する閣議決定をやるときに中期防の定める総額明示方式というような便法を編み出されたけれども、中期防の経費の積算基礎なんというのは、これはもう本当に手づかみの金を並べただけじゃありませんか。  ここへ正面装備に関する中期防の所要経費の一覧表をあなた方の方からもらったけれども、各正面装備の種類について歳出額というのは百億単位で切ってあるんですよ。何十何億というのはみんなゼロゼロだ、百億単位で切ってある計算です。そういう大ざっぱな計算で十八兆四千億というのを出して、そしてその後、円レートがどう変わろうと何しようと、要するに六十年度価格の十八兆四千億こそ防衛庁が認められた防衛費の総額の枠内だと、しかもやってみて超えたらしようがないというようなやり方でやっていく。そういうやり方でどうして国会のシビリアンコントロールが可能になるでしょうか。必要な資料も出さない。この問題について私は非常に疑問を持つのであります。  きょうは時間がないので、総理大臣にちょっと今のことに関連して聞きたいことがあります。  総理大臣は、先般防衛大学校の卒業式に行かれて、報ぜられるところでは、経済力に応じた防衛力の整備をということをあいさつされたと聞きますが、そのようなことがございましたか。
  56. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 正確に今記憶いたしておりませんが、絶えず私の念頭にあるのは、一番先に決まりました、何年でございましたか、「国力国情に応じ」ということがいつも念頭にあることは事実でございます。
  57. 久保亘

    久保亘君 あのときは原稿をお持ちになりませんでしたか。
  58. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 持っておりましたが、今持っていないものですから正確にお答えできないのですが、念頭にありましたのは、要するに卒業式でございますから、その卒業式の巣立ちを祝福するという考え方と国力国情に応じてという防衛力の整備というものの考え方、それからもう一つは、例の思いやり予算という言葉ができましたときには私、実はどう解釈していいか困ったことがございます。それで、いろいろ探してみましたら、ウェリントン公が昔、偉大なる将軍というのはただ強いというだけでなく兵士の靴まで思いやると。シンキング モースト オブ ザ シューズ オブ ヒズ ソルジャーズという言葉がありましたので、そういうものだというようなことを竹下哲学として申し上げてまいりました。
  59. 久保亘

    久保亘君 いや、国会議員の生年月日までよく御承知になっている竹下さんが、つい最近原稿をお持ちになってごあいさつになったことをお忘れになるなどとはとても信じられないことでございます。私どもは、何か総理のおっしゃったことで、経済力に応じた防衛力というようなことをおっしゃったのではないかと報道を通じて知るわけであります。  それならそのことはそれとしまして、経済力に応じた防衛力というような考え方というのは、これはあなたの軍事大国にならないという別のスローガンとの間に少し矛盾が生ずるのではありませんか。
  60. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今届きましたので。  確かに私が平素思っておりますように、日本の国力に応じての防衛力がなくては、軍事的脅威に対処できないばかりでなく、同盟関係の維持そして信頼を得ることもできません。もとより我が国の防衛力の整備は、平和憲法のもと、専守防衛に徹し、他の国々に脅威を与えるような軍事大国とならず、非核三原則と文民統制を堅持して、そしていつも申し上げておりますように、他の諸施策との調和を図りながら進められていくことは申すまでもありませんというようなことを申し上げてまいりました。  それで、「国力国情に応じ」というのは、たしかあれは昭和二十何年でございましたか、ちょっと今調べさせていただきますが、一番最初「国力国情に応じ」というのがありまして、それから第一次防ができて、そして一次防の後二次防の間に一年単年度予算があって、それから三次防——昭和二十七年夏ごろからいろいろ準備をして、昭和三十一年七月、国防に関する重要事項を審議する機関として国防会議ができた。そこで、三十二年の五月二十日に国防会議それから閣議決定して、その中に、基本方針の中の三番目に「国力国情に応じ自衛のため必要な限度において、効率的な防衛力を漸進的に整備する。」と、こういうことがあります。  随分前でございましたけれども、その「国力国情に応じ」ということを申しましたときに、経済力に応じて何ぼでも軍拡をするのかと、こういう質問を受けたこともございまして、実は昭和三十二年の基本方針を私が忠実に説明したことでありますというお答えを、五、六年前でございましたか、したことが一遍ございますので、その一番最初の昭和三十二年の基本の項目についてやはり申し上げておる。したがって、いわゆる経済力がついたから俗称軍拡をやるというような考え方は全くなく、基本的に平和憲法に徹し、専守防衛、そしてまた他国に脅威を与えない、それから非核三原則、こういうことをいつも申し述べておるところでございます。
  61. 久保亘

    久保亘君 もう時間が余りありませんから、それじゃ竹下さんに最後に伺っておきたいのは、あなたは軍事大国にはならないと言われる。しかし、国力に応じた防衛力つまり軍事力を国際的な関係において持ちたいとおっしゃる。これはしばしば矛盾を生じてくる問題だと思うのでありますが、ぜひ伺っておきたいのは、あなたはさっき哲学という言葉を使われたが、軍事大国にならないという竹下さんの政治哲学の根底に軍縮の哲学というのがおありになりますか。
  62. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 哲学とおっしゃいますと大それたことになりますが、いわば軍縮そして現実的には軍備管理、そしてなお現実的はは双方の力の均衡の中にあるいわゆる現実面としては相対的な軍縮、軍備管理、そして終局的には核兵器の全面廃棄、こういうものをやっぱり描いておることは事実でございます。
  63. 久保亘

    久保亘君 軍縮の完成された、軍縮の極致といいますか、それは吉田さんもおっしゃっている非武装、こういうことだというのは認識を一緒にされますでしょうか。
  64. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これも古くからのをひもといてみますと、やはり国際連合というものに地球上に起こるもろもろの紛争を処理する能力のつくまでの間というのがいわゆる安全保障、日本のみならずいろいろな形の安全保障体制であり、また自衛力を各国々がそれこそ国力、国情に応じて持っておる、こういうことであろうと思います。だから、国連のところまでは私も割り切れます、国連がそういう力を持つまでは。それよりさらに今おっしゃいましたまさにこれは人類全体の問題としてとらまえるべきもので、ただこれを私の口から申し上げるといたしますならば、私は宇宙飛行士の方とよく対談をいたしますと、あの宇宙飛行をやっておると、仮に米ソ日本の宇宙飛行士が一緒に宇宙を飛んだならば、なぜあの緑の地球の上に核兵器だの戦争だのがあるだろうか、しょせん帰るふるさとはあそこしかない、あんな気持ちになってみたいなという、哲学よりも若干感傷じみた物の考え方が私に存在しておることは事実であります。
  65. 久保亘

    久保亘君 また議論をする機会もあろうと思いますが、やっぱりあなたも用心なさって、別に私は何か特別な意図を持って申し上げているんじゃありません、軍縮というのは、軍縮のでき上がった、完成された姿は非武装であるということはこれはごく自然に言えることなんじゃないかと思ったんですが、御用心なさったのでまた議論をしましょう。  それでは、日本の防衛費の歯どめについて、GNP比一%の枠内ということを中曽根内閣が六十二年度予算についてこれを適用しないということをお決めになったときに、官房長官の談話で、十八兆四千億の中期防の総額を枠として新たな歯どめとして考えるけれども、この十八兆四千億は毎年度の予算に引き直すとおおむね一%程度であると、こういうことを言われておるのであります。だから、一%という問題については、六十二年度予算のときにそのような閣議決定をなさったけれども、今日においてもこの考え方はなお防衛費に対する一つの尊重すべき歯どめとして政府の方針に生きておる、こういうことでよろしゅうございますか。
  66. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 昭和六十年九月十八日でございましたかにいわゆる中期防というものを国防会議、閣議決定して、それで五十一年度に決めたそれは適用しないと、今後は適用しないでございましたか、そういう決めのほかに、後藤田官房長官の談話でございましたか、発表いたしましたあの精神は私は生きておるし、守るべきものだと思っております。
  67. 久保亘

    久保亘君 それはGNP比一%というのは死んでいないと、こういうことですね。
  68. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これを開いてみれば正確なのがわかりますが、ちょっと開く時間がございませんが、あのときにおおむねGNP一%であると、それから、そのときの精神はこれを今後とも念頭に置くべきであるでございましたか、それは生きておると私も思っております。
  69. 久保亘

    久保亘君 最後に、防衛庁長官、ポスト中期防に、あなたの先ほどの見解からいたしました場合に、航空母艦が入ってくるということは、これは前にも当委員会で質問のあったことと聞いておりますが、あなたは防衛庁長官として、次期中期防を策定なさる責任者として空母を入れるということはない、今日の統一見解によってそういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  70. 瓦力

    国務大臣瓦力君) ポスト中期防につきましては具体的に方針を述べる段階にないわけでございますが、我が国憲法上保有し得る空母につきましても、現在これを保有するという計画はございません。これは先ほど申し述べたとおりであります。
  71. 久保亘

    久保亘君 ポスト中期防のことを聞いている。
  72. 瓦力

    国務大臣瓦力君) ポスト中期防につきましても、私は保有する計画は持ち得ないと、かように考えております。なお、ポスト中期防につきましてはこれから取り組む課題でございますから具体的なことを申し上げる立場にはないと、このことを前提といたしまして御答弁を申し述べさしていただきます。
  73. 久保亘

    久保亘君 気の毒だから、このぐらいにしておきましょう。  それで、私、ポスト中期防をおつくりになる際には、現在の中期防の経費見込みや計算の方式などをもっと精密なものにして、所要経費や歳出額、後年度負担などについて、国会においてあなた方が言われるシビリアンコントロールの役割を十分に果たし得るような資料をぜひ提供していただきたいと思うんですが、それはお約束いただけますか。
  74. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先生御案内のように、中期計画ということになりますと、その精度の問題、財政当局その他と相当詰めた中期計画をつくるわけでございますが、同時に年度予算でさらにそれを精査するということで、閣議決定するに際してはそれなりの幅を持って、幅を持ってといいますか、それが確定してしまったということではなくて、年度でさらに精査できるような形で決めざるを得ないということで限界があることは御理解いただけると思いますが、いずれにしましても、自後、いろいろ資料等を提出いたしておりますけれども、先生の御趣旨を十分勘案いたしまして今後の作業を進めたいというふうに考えております。
  75. 久保亘

    久保亘君 次は文部大臣に、大学の入学試験のシーズンも終わったんですが、大学入試の方式が次々に猫の目のように変わることによって高校生並びに高校の関係者は非常に迷惑をしておりますが、今のような大学入試の毎年変わるやり方についてどういうふうにお考えですか。
  76. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) お尋ねの中には二つあると思いまして、入試の方法というか内容が一つ、それから選抜の方法が一つありまして、それが両方かみ合っておりますので、よく猫の目のように変わるという表現をいただくわけでありますが、私どもはあくまでも多様化、個性化を目指してそれに合わせていくということが主であります。  内容につきましては、六十五年から新テストを施行したい、こういうことでありますし、それから選抜の方法につきましては、例えば受験の機会の複数化その他で、試行錯誤というものはあると思いますが、逐次皆様方に受けやすいようにということを目指して改革をいたしておるつもりでございます。
  77. 久保亘

    久保亘君 高校の関係者からいいますと、例えば来年度は、今度は方式としてAグループ、Bグループの連続方式と前期、後期の分離分割方式を大学、学部がそれぞれ選択する、こういうことになっておりますね。そうすると、実際には複数受験が不可能になる、あるいは複数受験して自分の入学する大学を選択する権利を奪われる高校生がこの方式の中からは非常に絡み合っていろいろな形で出てくるんですが、御検討になっておりますか。
  78. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 今おっしゃったのは、国大協で今までの連続方式と分離分割方式、当面両方併存という形を提案しておられるわけでありますけれども、連続の場合には当然今おっしゃったことはないわけですね。分離分割でございますが、分離分割というのは、連続方式でA日程、B日程を一緒にして、そしてその試験が終わってから合格、入学手続と、こういうことにしますと、一応試験の機会は与えられますけれども、試験が終わってから偏りが出てくるということがありましたので分離分割方式を提案なさっておるわけで、分離分割方式にしますと最初受けた者は二度受けられないではないかと、こうおっしゃるんですが、それは受けられるわけでございます。  ただ、分離分割というのは、前期の試験を受けてそして合格発表して手続をする。そして前期で入学手続をした者は、そこで入学手続をされるわけでありますから、その方はそこで入学手続が決まっておりますから、後期受験は御遠慮願うということですが、逆に言いますと、前期で失敗した方は敗者復活の機会があるわけでありますから、そういう意味ではやっぱり複数化の確保はできておると、このように考えます。
  79. 久保亘

    久保亘君 これは非常に不公平なのでありまして、Aグループと分離分割の後期を受けて、そしてその両方通った場合には自分で選択する権利がある。ところが、前期を受けたら、手続をすれば後の受験資格を失う、手続をしなければ、後を受けた場合に合格しなかったら浪人となる、こういうことになっておるんですよね。これは明らかに、複数制度というものの上に立つならば、複数制度を特定の生徒には否定するということになりませんか。
  80. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 今回国大協が考えております方式は、従来からの連続方式と分離分割方式の併存という形をとり、各大学が適切と思われるものを選ぶという方式をとりました関係上、御指摘のようにいろいろな大変複雑なケースが出てくるということは私ども否めないことであると思っております。  文部省といたしましては、これは複数化をこれから逐次適切なものとして定着させていくための一つの過渡期であろうかと思うわけでございますけれども、よりわかりやすい公平な制度に改めるようにということでかねてから国大協に指導をいたしておるわけでございますが、そういった方向へ向けてさらに一層改善が図られるように、今後とも国大協とも相談をしてまいりたい、かように考えております。
  81. 久保亘

    久保亘君 今後とも御相談なさるのはいいが、毎年毎年方式が変わったのでは高等学校の方はたまったものじゃないですね。これはやっぱり文部省も国大協に対して、今考えられる方式の最善のものをきちっと決めて、しばらく固定するようにしなければいかぬと私は思うんです。  それで、国大協の学長たちが新聞社のアンケートに答えて、一番最良の方法だと答えたのは旧一、二期校制だと新聞に報道されておりますね。これは非常におかしなことだと思うんです。今のような複雑怪奇な方式を出しておりながら、一方では旧一、二期校制の方が一番よいという答えが学長さんたちの中で一番多い。これはどういうことですか。
  82. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 四月一日の日経新聞の報道を私どもも興味を持って見たわけでございますけれども、設問の意図とかあるいは具体的内容等が余りはっきりしないわけでございます。  例えば、先生が今御指摘の最もいい入試方法というのを、国公立大学で何が一番いいかということにつきまして設問の方が、共通一次試験とか新テストとかいったようなたぐいの試験のやり方の問題と、それから旧一期校、二期校とかあるいはABグループ分けとかいったような日程の問題というのをごっちゃにしてどちらがいいかというような設問をしておりますので、回答がちょっと理解に苦しむような、ちょっと分析がしかねるような回答になっているというふうに思っておるわけでございます。
  83. 久保亘

    久保亘君 文部省もよく国大協とも話をして、そして、本来大学入試というのは大学が自主的にやるべきものであって、大学に任せられるべきものなんです。私立大学はそれでやっておるんだから、国立大学だけがそれがやれないというようなことはないのであって、だからもっと国大協に文部省はいろいろ余り文句を言わずに自由に論議をさせて、一番いい方法、そして必ず高等学校の関係者も含めて入学試験の方式というのは論議をさせないと、大学側だけの論理ではだめだと私は思うんですが、どうですか。
  84. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 御指摘のとおりだと私も思います。それで今回の入試改革に当たりましても、国公私立の大学関係者とそれから公立あるいは私立の高等学校の関係者に御参加いただきまして議論をし、その結論として一つの方向が出てまいったわけでございますし、それからまた、今後の大学入試センターの運営等につきまして、高等学校側の関係者の御意見も入るような仕組みをつくって運営していこうというようなこともその段階で相談をされておりますので、今後とも高校側の御意見というのも十分考えながら対応させていただきたい、かように存じております。
  85. 久保亘

    久保亘君 同じアンケートの中で、国大協に属する学長側は新しい六十五年度から実施されようとしている新テストについて四・三%しか評価していない、こういう報告がなされております。これは非常に驚くべきことであります。  しかも、文部省の入試改革協議会が出された新テストの方針というのは明らかに臨教審の答申とは食い違っております。根本的な点で食い違っております。これは、資格試験的扱いを検討すべきだという点、マークシート方式の改善という点、一番大きい点は受験生に結果を知らせるべきだという点において、今度の改革協議会の新テストのやり方というのは全く違っているのじゃないでしょうか。
  86. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 御指摘のあった点についてお答えをさせていただきます。  まず、受験生への得点の通知の問題に関しましては、これは入試改革協議会でも随分御議論があったわけでございますが、結局、現在偏差値輪切りということが言われておる中でより正確なデータを受験産業に提供するというようなことになるというのは必ずしも好ましいことではないのではないかという御意見が強く、今後諸般の御意見等も承りながら考えていかなければならないことでございますけれども、当面は受験生への得点通知というのは行わないという結論になったわけでございます。  それからまたマークシートの問題につきましては、これは各方面の御意見をいただきながら、今後ともこれを内容的に改善していくという努力をしようということは意見が一致しておるところでございます。  それから資格試験的な利用という点につきましては、これは二つのやり方が考えられるわけでございます。各大学で自分のところの入試に資格試点的にこれを使うというやり方と、それから全部の大学が資格試験的に共通に使うというやり方、二つあるわけでございますが、各大学が使うというのは各大学の御方針でそれはやっていただいて構わないことでございます。ただ全大学についてこれを入学資格試験という形で課するということになりますと、これは現在高等学校卒業で大学の入学資格があるという仕組みを根本から覆す形になるわけでございますので、これについてはより慎重な検討が必要であろうということで、今後の検討課題ということにしておるつもりでございます。
  87. 久保亘

    久保亘君 この問題についてはさらにまた文教委員会等でお尋ねをしたいと思っております。  それでこの際、通産大臣にお尋ねいたしますが、通産省の告発に基づいて、昨日警視庁が極東商会、新生交易の二社にココム違反事件について手入れを行ったということでありますが、通産省が告発に至るまでの調査並びにその経緯について御報告をいただきたいと思います。
  88. 畠山襄

    政府委員(畠山襄君) 今お尋ねのように、私どもは一昨日、極東商会それから新生交易という会社が外為法に違反をして、通産大臣の輸出承認をとるべき貨物、具体的にはディジタルメモリーでございますとかオシロスコープですとかそういうものでございますけれども、そういうものを中国に輸出したということで告発をいたしたわけでございます。  それでこれは、その調査のきっかけとなりましたのは、アメリカの方から昨年の八月ごろでございましたか、何か少しそういうようなものが出ているのじゃないかというような調査依頼と申しますか、そういうものもございまして、そういうことを端緒といたしまして私どもで慎重に調査をいたしまして告発に至った、こういうことでございます。
  89. 久保亘

    久保亘君 アメリカのどこからの情報ですか。
  90. 畠山襄

    政府委員(畠山襄君) 外務省経由で参りましたので正確には外務省からお答えいただいた方がいいかもしれませんけれども、私どもの承知している限り、こちらにある米国大使館から来たというふうに理解いたしております。
  91. 久保亘

    久保亘君 昨年の八月に情報の提供を受けて調査をしていた案件について、この時期に告発に踏み切った理由は何ですか。
  92. 畠山襄

    政府委員(畠山襄君) 昨年の八月にございましたのは、言ってみればこの調査の端緒的なものでございまして、決して膨大な何か内容のあるものが来たということではございませんでした。例えば商社の名前なども出ていなかったと記憶いたしております。オシロスコープでココムに違反するものが岩崎通信機製のものが出ているのじゃないかというような指摘であったわけでございまして、それから一生懸命ずっと調べまして時間がかかり、そしてまた捜査当局ともいろいろ打ち合わせをしていかなくてはいけませんものですから、そういう何と申しますか告発にたえる資料をそろえるということが必要でございますので、そうやって調査を進めておりましたらば告発がたまたまおとといになった、こういうことでございます。
  93. 久保亘

    久保亘君 通産省としてこの問題について行政上はどのような対応をなさいますか。
  94. 畠山襄

    政府委員(畠山襄君) 御質問の意味が二つあると思うんですけれども、まず基本的には、こういう問題が起きないようにいろいろ再発防止のための行政に、従来同様、あるいは従来にも増して一生懸命努めていくということでございます。  それから、もしお尋ねの意味が本件について行政処分をどうするかということでございますれば、行政処分につきましては、捜査の状況をよく見きわめまして、その上で処分をするならするというふうに考えております。
  95. 久保亘

    久保亘君 アメリカの両院協議会の包括貿易法案の審議状況と本件とのかかわり合いをどのようにお考えになっておりますか。
  96. 田村元

    国務大臣(田村元君) 特段の関係はございません。
  97. 久保亘

    久保亘君 外務大臣は本件について中国側との接触はございますか。
  98. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 今のところそうした接触はございませんが、我が国の国内法に基づく問題でございますから、そうした経緯に関する説明はきのうの時点において行わさすようにしております。
  99. 久保亘

    久保亘君 通産大臣、いろいろ通産大臣の御意見を我々も報道などを通じて承っておりますが、包括貿易法案の両院協議会の取りまとめに対してどういうふうにお考えになりますか。
  100. 田村元

    国務大臣(田村元君) 今の御指摘の問題は、去る三月三十一日の深夜、現地時間の三十一日の午前でございますが、米国の両院間におきまして包括貿易法案の中に外国企業制裁条項を挿入するということが合意されたことは御承知のところと思います。この制裁条項は、参加国が主体的にココムの規制を行うというココムの基本的考え方は反するものでございまして、今回の決定はまことに遺憾でございます。  率直に言いまして、ココムに違反するという案件が起こりましたときはそれは参加十六カ国がそれぞれ国内法で処罰すべきものでありまして、他の第三国からとかくの制裁を受けるということはこれは二重制裁にもなりますし、第一ココムの精神に反するものでございます。絶対に我々はこれは承服することはできません。でございますから、私も昨年二回参りまして激しくこれに反論いたしてまいりました。本年に入りまして、竹下総理訪米時にも我が国立場を強く主張いたしました。またこの三月に、駐米大使の松永大使から主要閣僚あてに書簡を出したりいたしております。  実は、新聞であるいは御承知かと思いますが、昨日マンスフィールド大使に通産省へお越しをいただいて、私から率直に日本の政府の考え方、見解というものを述べました。私は、この外為法の改正、いわゆる審査の人員の充実その他可能なことはすべて私は実行した、にもかかわらずアメリカ議会のこれは一体何ですかと。マンスフィールドさんには申しわけなかったんですけれども、私は全身の血が逆流する思いだ、そこまで申しました。また大使も、おっしゃるとおりだ、自分も全くあなたと見解を同じゅうするものだ、早速あなたの御意見を本国へも伝えましょう、こういうことでございましたが、いずれにいたしましても、この包括貿易法案というものに対してアメリカ政府が従来主張しておりましたように厳正な態度で臨んでくれるものというふうに信じております。
  101. 久保亘

    久保亘君 それでは今度は総理大臣に。建設市場開放の問題で二年ぶりに合意に至ったということについて、総理大臣は今度の合意をどういうふうに評価されておりますか。
  102. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 幸いに合意いたしましたが、この基盤は竹下・レーガン会談のときに既にでき上がっておりました。申し上げますと、我が国の公共事業は内外無差別であること、特にアメリカにも参入していただきたい、ただし実績というものが必要だが、アメリカの企業は日本に実績がない、これはアメリカの実績を勘定いたしましょうと、こうしたことで竹下・レーガン会談合意をいたしております。その上に立っての細かな折衝がなされたんですが、一つ特色を申し上げますと、公共事業という文言に関しまして、日本では公共事業とは国または地方自治体が行う事業である、こういうふうに定義をしてやっておるわけですが、アメリカでは橋とか道とかエアポートとかあるいは港湾とか、公共の用に供する事業はすべて公共事業である。こういうふうなことでいろいろとそこに民間とそうして国と地方と、そうしたものが入りまじったようないろいろ議論がなされましたが、その整理に手間取ったことは事実でございます。  二番目には、関西新空港に端を発したんですが、関西新空港は御承知の第三セクターでございます。この第三セクターに関しましても、政府・自民党はそれ以外にも東京湾の横断橋等々をやっておるわけですが、これは御承知のようにいわゆる民間活力で税金を使いませんと、民間の方々の預金を使わしてくださいという、こうした単純なことで、現在の財政難のときでございますから、また内需振興をしなくてはならぬときでございますから、新しい方式を考えていわゆる民間活力をやったんですが、アメリカ側から見ますると、どうもこれはごまかしではないか。つまり、政府がやっていることを民間に肩がわりさしているようなことだからごまかしで、それで民間の開放をしないんじゃないか、こういうふうな感情があったことも事実でございます。  そういうことを整理整とんいたしまして、最終的には民間企業にも何か参入の方途はないのかと。それはあくまでも政府と今日の日本の民間との間にはそういうものはありません。しかしながら、ひとつエンカレッジいたしましょう。エンカレッジとはどういうふうに訳すか。これも非常に苦労したのでございますが、最終的には「勧奨する」と。それによって政府も民間に対しまして内外無差別であると、こういうふうな理解を得まして、それからこのような問題がまとまったということでございますので、最終的には非常にきちっとまとまったと私たちは評価いたしております。
  103. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この交渉、最終的な窓口はこれは外務省でございまして、何分例えば研究学園都市構想といえば文部省、運輸省はもとより、公共事業といえば農水省、建設省、こういうことから我が方の外政審議室でいろいろ調整を、国内の調整をいたしました。  少し話が長くなりますが、確かに今外務大臣から言われたように、公共事業とは何ぞやと、こういうときに彼我の意見の相違もございます。それから御案内のように、日本がどんどん企業進出いたしますと、そこへ日本のゼネコンさんがついていって手配りをして、向こうの公共事業施行業者を使ってどんどん実績を上げておられ、それでアメリカの入札制度の中ではボンド制度というのがありまして保証すると。この会社ならここまで保証できるとかいうような制度の、仕組みの相違がございましたのが長引いた一つのゆえんのものであったと私思いますが、今外務大臣からお話がありましたように一応の妥結をいたしましたので、先ほど来の通産大臣との問答のように、包括貿易法案等にも何がしかのいい影響を与えれば幸いである、こういうふうに考えております。
  104. 久保亘

    久保亘君 参入の機会を保証したということで、参入そのものを実績の上で保証するということにはなっていないんでしょう。
  105. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 参入の機会を保証したということになりますから、やっぱり企業努力が伴うことでございますので、それが実際にとられるかとられないかというような問題は、これは我が国の公共事業等に対する入札制度等にまずは習熟していただかぬといけないではなかろうかなというふうに思っております。
  106. 久保亘

    久保亘君 だから、その点でアメリカ側との間に合意の内容についての食い違いはないんですね。
  107. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 相手はかなりいろんな事情で変わってまいりましたけれども、最終的唯責任者同士の話し合いというものは食い違いはないというふうに考えております。
  108. 久保亘

    久保亘君 日本が民間や第三セクターに対して、エンカレッジするというその合意に基づいて民間に対して政府が非常にきつく注文を出すというようなことはないんでしょうね。
  109. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 我が国におきましてはもう政府と民間とは明らかにきちっとしておりますから、したがいましてこういう外国企業の参入ということを尊重しながら、やはり民間におきましても内外無差別という原則、これをひとつ打ち立ててくれないかいということをアドバイスする、エンカレッジするという意味でございます。
  110. 久保亘

    久保亘君 大幅な譲歩という見方もございますけれども、私最後にこの問題で承っておきたいのは、これだけの合意に達して、一方アメリカ側が一九八八年包括歳出法で日本の企業をアメリカの公共事業から締め出す措置を決めておりますね。これは解除されたんですか。どうなるんですか。
  111. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) アメリカの会計年度は御承知のとおりに十月一日から九月三十日まででございますから、我が国の四月一日からとは異なっておりまして、その意味で議員立法は一九八八年度として既に成立をいたしております。したがいまして、こうしたことも今総理がおっしゃいましたように我々の誠意を持った合意によって避けられるであろうと私たちは思いまするし、同時にまた、これは毎年毎年アメリカにおきましては予算が通るたびに、その個々予算に法律がついていくというシステムでございますから、もちろん我々といたしましてはかかることは合意を見なかった段階のときの話であるから、一九八九年の、ことしの十月から始まる年度においてはこのような法律は成立しないだろうと。またそうしたことも十分外交上相手方に対しまして説明をし、理解を得る所存でございます。
  112. 久保亘

    久保亘君 日本側は随分いろいろと、関西新空港に始まって注文をつけられて譲歩していって、こちら側は制裁とも言える措置を受けているものを、その法律の期限が切れるまではだめというのは、これは少し問題じゃないですか。
  113. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 当の折衝に当たりました局長がおりますから、詳細説明をさせます。
  114. 佐藤嘉恭

    政府委員佐藤嘉恭君) 先生御指摘の点につきましては、私どもといたしましても当然念頭に置きながら対米折衝をいたしたわけでございます。  今年度につきましては、ただいま外務大臣から御答弁がございましたように、既にその修正条項が成立しているような事態であります。しかし、私どもといたしましては、今回こういう前向きのメカニズムがお互いの満足のいく形で成立をしたわけでございますから、アメリカ側はおきましても当然このことが念頭に持たれるということを期待もし、また我々もそういう主張をしてまいるわけでございます。八九年度におきましてはそのようなことがあってはならないという主張をたび重ねて行ったわけでございまして、先方の交渉責任者もその点については公の席におきまして十分留意している発言をしている状況でございます。御理解を賜りたいと思います。
  115. 久保亘

    久保亘君 ちょっとわかりにくい点もありますが、時間が来ましたので次は佐藤農林水産大臣にお尋ねします。  日米交渉が合意に達しなかったことで四月一日から無協定の状態になっておりますが、この影響はどういうことになりますか。
  116. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 牛肉、かんきつにかかわる関係国との取り決めについては、本年三月三十一日までで期限切れとなり、四月一日からは今おっしゃるように無協定状態となっております。しかし、六十三年度上期については既に暫定的に所要量の輸入割り当てを公表しておるところでございまして、国内市場に対する供給、これには影響がない、こう考えております。
  117. 久保亘

    久保亘君 二国間の協議は続けるということで合意に達したと言われておりますが、この二国間の協議というのは先般まであなたがヤイター代表と協議をされたのとは違って、今度はガットに提訴された後、ガットの二十三条一項に基づく二国間協議として続けられるということですか。
  118. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 昨日も答弁を申し上げておりますように、アメリカ側におきましてはガットの手続をさらに進めるであろう。そういうことになりますと四月の八日というのもある、そして五月の四日、パネル設置への方向も予測はできるけれども、しかし私が話し合いを継続しようと申し上げましたのは、答弁申し上げましたのは、現地において私の方からヤイター代表に対して、長きにわたって交渉を続けてきた、そのことについて改めて三月三十一日、夜になりましたけれども、四回目の会談におきまして、とにかく日米間、二国間で話し合いをしていこう、そして結論は勝った負けたということではなしに友好国らしく円満な話し合いを続けたい、こういうことでございまして、現状、ガット云々ということにかかわりなく申し上げてきたわけでございます。
  119. 久保亘

    久保亘君 そうすると、農林水産大臣もそれから総理大臣もこの協議に当たっての日本側の基本的な姿勢、牛肉、オレンジについては自由化には応じない、その自由化には応じないという考え方の上に立って協議合意に至らせるという考え方は今後も変わりませんね。
  120. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 政府といたしましては、これまで申し上げておりますように、また窓口として、農林水産大臣として申し上げておりますように、自由化は困難であるという主張をしつつ、今申し上げました二国間協議により解決したいと考えておるという従来の方針に変わりはございません。
  121. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私とレーガン大統領との話し合いの際は、共同作業でこれらの問題を解決しよう、そこで早急にテーブルに着くべきだと。ところが、自由化を前提としなければテーブルに着かない、こういうような雰囲気でありましたが、先般最高責任者たる佐藤農水大臣を派遣してそれでテーブルに着いた、こういうのが現状でございます。ぎりぎりではございましたものの。したがって基本的には、テーブルに着いた上の協議は今中断、こっちへ帰っておりますから中断しておりますが、継続すべきものであり、その基本的な考え方としてはただいま農水大臣がお答えを申し上げたとおり、こういうことでございます。
  122. 久保亘

    久保亘君 いろいろ官房長官のお話としては一大決心をすべきときに来たなどというのがございますが、この一大決心というのは牛肉、オレンジの自由化を阻止して守るということでしょうね。
  123. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 毎日毎日記者会見をいたす立場でございまして、この牛肉、かんきつ問題につきましても事あるたびに記者からお尋ねをちょうだいいたしておるところでございます。政府の基本的姿勢はただいま農水大臣が申し上げましたとおりで、また総理が御答弁されたとおりでございます。  そこで、いつぞやの記者会見で一大決意というようなことも申し上げましたが、これは佐藤農水大臣がしばしば異常な決意を持ってこの交渉に当たる、こう言っておられましたものですから、そのことが頭にありまして、政府としては農水大臣が二国間協議によってこの問題を解決すべく異常な決意を持って対処しておる、こういうことを私自身も同じ気持ちになりまして、さようなことを実は申し上げたわけでございます。いずれにいたしましても、農水大臣がいろいろガットの問題とかあるいはその他の、交渉事でございますので、政府といたしましては佐藤農水大臣の御努力をひたすら待っておる、こういうことでございます。
  124. 久保亘

    久保亘君 いよいよ時間が短くなりましたので、残りました二つの問題で簡単にお答えいただきたいと思います。  もうこの委員会でも何回となく議論をいたしてまいりました災害遺児奨学制度の問題について、既に四月に入りました。総理大臣のこの問題に対する最終的なお考えをお聞きしたいと思うんです。
  125. 竹下登

    国務大臣竹下登君) たしか三月の十一日に久保さんの今の問題について私がお答えをいたしまして、社会的に、病気になっておる者とかいろんな問題があってなかなか困難な問題であるとか、あるいは育英事業として文部省の日本育英会を活用するときに幾ばくかの抵抗がありはしないかとか、こんなお話をしましたが、結論から申し上げまして、先般の政策担当者会議の際にも自民党から出してもらうように私が政調会長をお呼びして指示をいたしまして、内閣の内政審議室において大体の考え方をまとめておるわけでございますから、やっぱり党首会談で出た話だから党側でひとつたたき台は、どんなのでも協力しますからまとめてくださいと、こういう方向で、恐らくそう遠くない時期に私は各党の専門家の皆さんの間で合意に達するじゃないか。やってみまして、警察官殉職者の遺児でございますとか、交通はもちろんでございますが、あるいは消防でございますとか、あるいは漁船で難破した人、いっぱいございまして、どういうふうなところでこれを生かしていくかというようなこともおおむねの考え方を各党協議いただければ私は成就するじゃなかろうか。  そして、四月一日と申しておりましたのは、もう既にそれは過ぎておりますけれども、遡及して適用することは可能だというふうな考え方でおります。
  126. 久保亘

    久保亘君 もう一つ戦後処理に絡む問題として、旧軍人等の恩給受給資格欠格者の問題がございまして、この問題については恩給そのものとしては一つの結論も出されておるようでありますけれども、問題は、共済年金にはこれらの期間が通算されておるが、国民年金、厚生年金には通算されていないことによって、もう既に高齢に達している関係者の間に非常にこれは不公平な扱いとしての不満があります。この点についてひとつ担当の方の方からそのお考えをお聞きしたいと思うんです。
  127. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) おっしゃるとおりの状況でございますが、これは恩給制度と年金制度の性格が、御承知のように恩給制度は国家報償というそういう考え方に立っておるわけでございますし、また年金制度は社会保障の考え方に立っておるわけでございまして、したがいまして、国民年金、厚生年金保険につきましては拠出、つまりお金を掛けるということを要件として社会保険方式をとっておるわけでございます。また、共済年金の方は恩給制度を承継、つまり受け継いでおる制度でございまして、つまり一本の制度でございますから、軍歴期間を加算することは当然でございますけれども、制度の異なる社会保障の考え方に立つ厚生年金、国民年金につきましては、これは通算するということは適当ではない、かように考えておるところでございます。
  128. 久保亘

    久保亘君 これはそういう制度上の実務的な面からのいろいろな異論を述べるのではなくて、いわゆる恩給受給欠格者の実態に照らして政治的に物事を判断しなければならぬ問題だと思っております。  既にこの問題については軍人期間の公的年金通算推進に関する議員連盟というのが古くにつくられて、この議員連盟は各党の議員を含むものとしていろいろと活動されてきたはずであります。副会長には渡辺美智雄政調会長がおられますし、常任理事の筆頭には小渕官房長官が名前を連ねておられます。それから竹下総理大臣もメンバーになっておられますし、佐藤農林大臣もそのメンバーであります。渡部国対委員長もメンバーでありますし、これらの方々がメンバーとして名前を連ねてこれをやらにゃいかぬということでやっておられる問題が、全くそういう事務的な段階の障害でだめというのはおかしいのじゃないですか。総理大臣お答えをお聞きしたい。
  129. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは古くはいわゆる官民格差というところから議論の持ち上がった問題でありまして、私もなるほどなとそういう感じを持っておりましたが、要するに、一定の拠出を要件として行った給付の中へ拠出をしない形で入っていくということに対する壁とでも申しましょうか、それで私自身も壁に突き当たったということの経験を持っております。  それで、いろいろ国会でも議論がありましたので戦後処理問題懇談会というところで議論してもらいましたら、軍歴期間を厚生年金保険及び国民年金に通算することは適当でない、こういう結論をいただいたと。だから政府側として今言えることは、それが限度ではないかなと。何か慰謝するような方法とかいう問題は別といたしまして、やっぱり一定の拠出で仕組まれておるものに拠出しない形で入り込んでいくということに対する論理というのはなかなか構築しにくいというのが実情でございます。
  130. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で久保亘君の質疑は終了いたしました。(拍手)  午後零時四十分まで休憩いたします。    午後零時四分休憩      ─────・─────    午後零時四十分開会
  131. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 予算委員会を再開いたします。  昭和六十三年度総予算三案を一括して議題といたします。     ─────────────
  132. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) この際、外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。宇野外務大臣。
  133. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 三月二十四日の本委員会における猪熊委員の人権関係条約に基づく報告書に関する御質問につきまして、補足答弁させていただきます。  女子差別撤廃条約、B規約報告書等この種の報告書の全文につきましては、国連に送付し、国連文書の形となった時点で国会に提出いたします。  昭和六十年当時の女子差別撤廃条約に関する国会審議の際の政府側答弁において、直ちに国会に提出したい等の答弁がありましたところ、この表現は不適切であり遺憾と存じますが、当時においても政府といたしましては、国連文書の形となった時点で国会に提出するとの考え方であったことはその後の実際の扱いから見ましても明らかなところであります。  他方、国連文書の形となる以前においても、人権規約B規約の報告書の御関心の部分につき御要請があれば、その要旨を後刻報告する所存であり、女子差別撤廃条約に基づく今後の報告書につきましても同様の取り扱いをする所存でございます。  以上であります。     ─────────────
  134. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) これより矢原秀男君の質疑を行います。矢原秀男君。
  135. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 ただいま外務大臣から御報告をいただきました件につきまして疑義がございますので、猪熊委員から関連質問をお願いしたいと思います。
  136. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 関連質疑を許します。猪熊重二君。
  137. 猪熊重二

    猪熊重二君 ただいまの外務大臣の御答弁によって、第百二国会において国連事務総長に対する報告を直ちに国会にも報告するという政府答弁がなされたというところまでの御説明は、大変今までと違いまして結構なことだと思います。  ただ、そのような答弁がなされたにもかかわらず、この表現は不適切であり遺憾と存ずるが、そのような取り扱いをする趣旨ではなかったというふうな御答弁でございましたので、この表現が不適切であり遺憾と存ずるということの理由をお教えいただきたい。
  138. 遠藤實

    政府委員(遠藤實君) 当時の政府側答弁の一部におきまして誤解を招く不適切な表現があったということでございまして、直ちに提出するというふうな表現がございましたけれども、当然この報告書につきましては正文が英文でございます。この英文は我が方が送付をいたしまして、国連事務局と所要の調整を経まして文書として確定するわけでございます。したがいまして、国連文書となりましたときにこれを提出するという趣旨であったというふうに考えております。
  139. 猪熊重二

    猪熊重二君 当時の国会における審議は、衆議院で六回の外務委員会が開かれたんです。この六回の外務委員会のうち、四回の期日において今の国連報告の問題が討議されたんです。参議院においては四回の期日がありまして、このうち二回の期日において国連報告の即時公表の問題が取り上げられたんです。言うなれば衆参外務委員会全部で十回のうち、この問題が取り上げられたのは六回取り上げられているんです。この六回取り上げられている各回において、安倍外務大臣及び山田国連局長が、国連に報告したときは直ちに国会にも報告しますと、こういうふうに答弁しておられるんです。それを単に不適切だとか過ちであったとかということでくるくる変えられたんじゃどうにもしようがない。  私はまず読みます。  衆議院の方において山田国連局長の答弁、「条約の実施に関します政府報告、これは公に公表する報告でございますので、私どもとしては、報告をいたしました場合には、それをいつでもどなたにでも手に入るようにいたしたいと思います。」。それから安倍外務大臣、「これは御要望があれば、その都度国会に報告いたします。」。国連局長、「国連に報告いたします報告は、直ちに国会の方にも御提出申し上げたいと思います。」。これは全部期日が違うんですよ。それから同じく山田国連局長、「国連に報告を提出いたしました際には直ちに公表するようにいたしたいと考えております。」。安倍外務大臣、「本条約の実施状況につきましては、国連に提出する報告は国会の方にも報告する考えであります。」。これだけのことをおっしゃっておられる。  そして最後に、参議院の外務委員会において附帯決議がなされた。この附帯決議には、「この条約第十八条により、政府が国際連合事務総長に報告を提出したときは、これを当委員会に報告すること。」という附帯決議がなされている。この附帯決議に対して安倍外務大臣は、「ただいま採択された御決議につきましては趣旨を十分尊重して、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の精神にのっとり、」「今後とも一層努力を重ねてまいる所存でございます。」と、これだけ答弁しておる。  それにもかかわらず、これが不適切だったとか過ちだったとかという一言で変えてしまわれるんだったら、国会審議を何と考えておられるんですか。国会審議において、十回の国会審議において政府側が答弁したその内容が、次の内閣になったらくるっと変わってしまうというふうだったら、十回の衆参外務委員会審議はどういう意味があるか。これは、条約を承認する際にこういう政府答弁をしておいて、そして条約を承認の議決をとっておいて、国会の議決を経ておいて、後になって中身を変えられたんだったら国会審議とは一体何なのか。重大な問題だ。  時間がありませんので、総理、この見解について、私は中曽根内閣、安倍外務大臣のこの方針は非常に立派な方針だと思う。これについて中曽根内閣を承継する竹下内閣としていいところは大いに承継してもらいたい。総理の見解を伺いたい。ただいまの外務大臣の見解は、私に言わせれば国会審議を全く無視する間違った答弁であると思います。総理の答弁をいただきたい。
  140. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 詳細読んでいただきますとおわかりのとおり、前内閣における安倍元外務大臣の発言は、今私が申し上げましたことと変わりはございません。なおかつ参議院の外務委員会におけるそうした御決議に対しましては、本条約の第一回報告を国連に提出した後、国連文書の形となった時点で、昭和六十二年五月二十六日に席上配付をもって参議院外務委員会に報告をしたと、こういうふうになっておりますので、その経緯はひとつ御理解賜りたいと思うのでございます。  私の申し上げましたのは、その当時の局長言葉に少しく——「直ちに」という印象は、出したと同時に出せと、そういうふうにとられる言葉でございましたから、さにあらずして、従来、内閣は国連で翻訳等々の事務総長との話が済んだ後において、そして報告の形を整えたときに国会に御報告申しますと、これが趣旨でございましたが、「直ちに」ということが余りにもアクセントが強過ぎたから、皆様方に対しまして今申されたようなことは大変おわびをしなくちゃならない点だと思って申し上げた次第でございます。御理解のほどをお願いします。
  141. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今宇野外務大臣からお答えしたことに尽きるわけでありますが、いずれにせよ、国会の答弁また国会における本会議はもちろんでございますが、委員会等の決議というのは尊重してまいるということは当然のことであると考えております。
  142. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 まず、私は減税問題で質問したいと思うんです。  同僚議員からも質疑があったと思いますけれども、与野党国会対策委員長会談、衆議院の確認事項で、一つは、「野党三会派の要求する減税は実施する。」、こういうふうに四項目にわたって、最終的には、「六十三年度の減税規模については予算成立までに結論を得る。」、こういうふうな四項目にわたる確認事項があるわけでございます。  そこで、私がやはり要求をしたいことは、この減税規模につきまして社会、公明、民社の三野党が四月の七日までに再回答を求める、こういう強硬な抗議というものがあるわけでございますが、私自身も、この予算委員会の四月の七日までに、あすまでに再回答すべきである、こういう主張でございますけれども、この点について大蔵大臣総理大臣にお伺いしたいと思います。
  143. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 三月三十日にただいま御指摘のような確認事項がございました後、四月一日の与野党国対委員長会談におきまして自民党の側から、六十三年度の減税規模については、三月八日の与野党国対委員長会談合意及びそれに基づく政策担当者会議の対応を踏まえ、その範囲誠意を持って対処する。また、野党の要求した減税財源担当者間で引き続き協議していく旨を自民党が回答されまして、その後与野党の折衝はなお今日まで結末に達していない、このように承知をいたしております。  政府といたしましては、したがいましてこの与野党協議、これからの成り行きを注目いたして注視をしておるところでございます。
  144. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私も、実は矢原さんがおっしゃった七日までに回答しろということを新聞で見まして、その後どうなっているかというのを、今ちょうどお昼の時間に外国のお客さんがございまして、確認しないままにここへ参りました。そういうおそろいの御要請が恐らく国対委員長の方にあったか、これからあるのかというふうに思うのでございますが、その会談というものを見守っておるということに尽きるかと思います。
  145. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 私が今総理大蔵大臣に質問いたしましたのは、何といいましても政党のトップでございますので、やはりそういう方が腹を決めていただかなければ国対会談もうまくいかない、こういう立場から強く要求をしたものでございます。その点解決の方へよろしくお願いしたいと思います。  二番目には、不公平税制問題の一部について質問したいと思います。  この予算委員会の審査を通じましても税制改革論議というものが非常に濃密に行われているわけでございます。その中で私は、シャウプ税制以来四十年のゆがみやひずみ、こういうものもございますけれども、特に働いていらっしゃるサラリーマンを中心にする重税感というものはぬぐえないものがあるわけでございます。そういう意味で、先ほども申し上げました一連のものでございますけれども、減税をサラリーマンの人たちに早くしていかなければいけない、それと同時に財源というものも不公平税制の中からつくり上げていかなければいけない、これが私の主張でございますけれども、この点について大蔵大臣はいかが考えていらっしゃいますか、伺います。
  146. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今御指摘のサラリーマンが不公平だと感じておられる税制のあり方については幾つか考えられる理由があると存じますが、一つは、勤労所得と事業所得との把握の違いというものが御承知のようにございますので、それについてやはり源泉で取られる場合にはもうきちんと取られてしまうというそういう気持ち、またある程度それは事実でございますが、そういうことがございます。それからまた、非常に累進が厳しいために、ちょうど中堅ぐらいになりまして教育費用であるとかあるいはローンの返済であるとかいう一番苦しいところの税率の刻みがきついということから、重税感というものがやはり一つの不公平感につながっていくということはあろうと思います。他方でまた、資産課税について十分でないという御批判もあろうと思います。  それらのことは政府は以前から決して気がついておらないわけではありませんで、税制の上でも行政の上でもできるだけこれを改めようといたしてまいりました。また、これからも両面において改めてまいりたいと存じます。それによって何がしかの税収、増収が生ずる場合もございますが、逆に重税感を緩和しようといたしますと、その分は減収になるといったような部分もございますので、それからの収入、歳入の増減と減税規模というものはその限りでは直接には関係がないと申しますか、もう少し大きい見地から考えていかないといけないという点はあろうと存じます。
  147. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 もう一つ、大蔵大臣に見解を伺っておきたいのでございますが、昭和五十年代から今日に至るまで、五十九年度、六十二年度を除いて本格的な所得税の減税というものは、野党も懸命に主張いたしましたけれども実施をしなかった期間というものが非常に多くございました。鈴木内閣以来増税なき財政再建を繰り返してきましたけれども、やはり近年所得がふえる中で減税をしなかったことにより自動的に税負担が上昇し、税収が急増した点は見逃せないと思います。  だから私は、増税なき財政再建とは言いながら結果的には減税をずっとやっておらなかった事実があるわけでございますので、国民の負担が本当に改善されたわけでもなく、ある意味では減税がなかったということは増税ありの財政再建であったと、国会の中で減税を野党が主張しながら本当に長い時期やらなかったそういう政府の姿を見ておりまして、増税ありの財政再建だなと、こういうふうにも私は思うわけでございますが、この点は大蔵大臣はどういう見解を持っていらっしゃいますか。
  148. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 基本的には御指摘は私はごもっともなことだと思っております。給与所得について見ますと、給与所得に対する源泉所得税は昭和三十五年に国税収入のほぼ一一%余りでございますけれども、六十一年には二二%に近くなっておりますので、これだけをごらんいただきましても、非常に給与に対する源泉所得税が、これは国税収入の内訳でございますが、きつくなっているということがわかるというふうに考えます。  昭和五十四年に、政府としてはいわゆる幅の広い間接税というものを考えまして財政の再建にも役立たせようとしたわけでございますが、世論の入れるところとならず、また国会の御決議がございまして、それ以後政府としてはいわゆる行財政改革、歳出の抑制ということに着手をいたしまして今日に及んだわけでございますが、同時に、その間特例公債を発行し続けておるような状況の中でマイナスシーリング、ゼロシーリング、マイナスシーリングを続けてまいりまして、残念なことではありますが、いわば本格的な減税というものができないような状況でございました。そういう状況の中で財政再建をやってまいったということは事実でございますから、いわば大きな減税が行われなかったという環境の中で財政再建が行われたではないかと言われますことは、そういう見方として私は現実にそうであったというふうにやはり考えております。
  149. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 考えてみますと、中曽根総理以来政府が税制改革のまくら言葉として挙げるシャウプ税制の見直しでございますけれども、私はシャウプ税制の特徴は公平、簡素をもとに所得税中心の総合課税主義にあると思います。ところが、その後の歴史的経緯を見ますと、利子所得の源泉分離課税、富裕税の廃止、有価証券譲渡益課税の廃止、あるいは法人に関するさまざまな租税特別措置の拡大による課税ベースの侵食等、税の不公平や複雑化がもたらされましたシャウプ税制のゆがみは、私は一面では政府の言う社会経済情勢の変化というよりも、実はシャウプ税制を骨抜きにしてきた政府自身にも問題があるのではないか、こういうふうに考えるわけでございますけれども、この点はいかがでございますか。
  150. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) シャウプ税制が昭和二十四年、二十五年から実行に移されまして以来、ただいま矢原委員が言われましたように、確かに幾つかの制度も改廃をいたしておりまして、例えば今ちょうどお話がございましたけれども、利子所得の課税につきましては、あるいは源泉選択になり、また分離になり、またちょっと非課税の時期もございました。いろいろ、いろいろに変遷をいたしておりますが、これはやはりそのときどきの社会の状況を見ながら、もちろん国会のお許しを得てでありますけれども、対応してきたというふうに申し上げることができるのではないか。  キャピタルゲインにつきましては、まずシャウプ税制を実行いたしました後、昭和二十八年度に有価証券のキャピタルゲインについて課税の廃止をいたしますとともに、ちょうどこのときに有価証券取引税を起こしておるわけでございますけれども、いろいろ、いろいろ変遷がございまして、私はこれはシャウプ税制そのものを、その精神そのものを、何と申しますか、恣意的に変えようとしたものでは必ずしもなくて、やはり日本経済の成長が相当速うございましたし、それに対応しつつ現実的な税制を考えてきたということではなかったか。  シャウプ税制の基本というのは、やっぱり何といっても総合課税主義であり、所得税累進中心主義であり、申告納税主義でございました。そういうことは基本的には守られてきた。しかし、いかにもその後の我が国の経済成長とともに所得の上昇が速い、そこから重税感が生まれてきた、あるいはそこからむしろ所得税、直接税のウエートが自然に大きくなり、間接税のウエートが非常に小さくなってきたといったような幾つかの点を申し上げることができると思います。
  151. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 私もすべてシャウプ税制が正しいとは思っておりませんけれども、株式の配当を所得から控除するなど企業に対する考え方に一部異論はありますけれども、今お話が出ておりますように所得税中心の総合課税主義を尊重することは大切だと思います。  二、三点具体的に質問申し上げたいと思います。  不公平税制の是正という立場から私もこの委員会で質問いたしましたが、同僚議員からもたびたび質問が出ておりますけれども、不公平の最たるものの中で株式譲渡益課税というものが予算委員会でもきのうも前向きで答弁が聞かされました。これは大蔵大臣総理大臣お二人にちょっともう一回確かめておきたいと思うんですが、株式譲渡益の課税、これは本当に再々約束されていらっしゃいます前向き、それがさらに、さらに前向きの確認の発言になるのかどうか、御答弁を明確にしていただきたいと思います。
  152. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この点は政府といたしましても、現在非課税が原則である、課税をしておりますのは大口のもの、例外であるということから、課税を原則にすべきであろうということは申し上げております。また、そのようなお考えのもとに、税制調査会においてもそれならばそれを行政上まんべんなくどのようにしたらいいかということを目下検討しておられると同時に、その一部実施手段のあるいは一つになろうかと思われる納税番号制度のようなものの持ちます意義、それから起こってくるもろもろの問題について小委員会を求めて検討しておられる、そういう状況でございますから、政府におきましてもあるいは政府税制調査会におかれましても、全体として原則課税の方向で進んでおる、その具体的方法を検討中である、このようにお考えいただいて結構と思います。
  153. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 また、昨年利子課税が分離課税になりました。こういうことで金持ちが優遇されたわけでございますけれども、やはりこれは総合課税をして高所得者から応分に税負担を求めるべきだと思います。五年後に見直しと一応決まっておりますけれども、仮に将来いろいろ討議をされて納税番号が導入されたら、この見直しというものは早めていった方がいいのではないか、こういう私は考えを持っておりますけれども、これについては大蔵大臣いかがでございますか。
  154. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これもシャウプ税制以来、先ほどもちょっと申し上げましたように、最も変遷の多かった制度でございます。現在の時点におきまして、非常に金融資産というものが多様であるということ、また膨大であり、かつ流動性が高いといったようなこと、それからこれを総合課税することによりますところの関係者、これは政府、地方団体もございますし、金融機関もございますし、納税者もございますし、徴税当局もあるわけでございますが、それらの大変な手数等々いろいろ考えますと、総合課税がいいかどうかということには私はいろいろな問題があるのではないか。ただいまいわば金持ちに対して三五%から二〇%へ減税になったのではないかという御指摘もございましたけれども、それは資産を持っておられる人は、従来からのいわばマル優等々を利用いたしますとかなり大きな免税の利用ができるわけでございますし、その上にまた割引債券を買えば、これはいわば源泉である、一六%である——一八%になりましたか、一六%であるといったようなことから、金持ちが必ずしも今度の改正によって得になったのではない、むしろはっきり二〇%の課税になったというふうに言った方が現実には合うのではないかというふうにも感じておりまして、この問題は、したがいまして納税番号制度が仮に導入されるということになりました場合におきましても、果たして総合課税にすることがいいのであるかどうかというのにはいろんなまだ議論が残るのではないかというふうに思っております。  いずれにいたしましても、昨年、法の御修正の提案がありまして、五年後には見直すということでございますから十分に検討しなければならないと思っております。
  155. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 この問題で一点だけ最後に伺っておきますが、次は法人の特別措置でございますけれども、なお多くの優遇税制があります。また、二重課税回避を名目に外国税額控除により大企業が法人税を納めないのは国民の目から見てもおかしいと思う点がございますけれども、これらについてはどういう御見解でございますか。
  156. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 例えば、商社あるいは外国に事業所を持っている大会社等々にございます例ですが、これは税制上の減免措置、御承知のように二重課税防止の条約に基づくところの国際的な一般に行われている措置でございますので、特定の事業者に特に特典を与えるという措置ではございません。ただどうも最近、いかにもこれはそうは申しながら引き過ぎである、そうは言ってももう少し日本に納めるものは残ってもいいのではないかというそういう御批判には耳を傾けるべきところがあると考えまして、昨年、この控除の頭打ちといいますか青天井で控除をすることはやはり問題があるということで、限定をいたそうということで法改正を考えたところでございますが、改めましてまたそういう改正を考えていく必要があると思っております。
  157. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 じゃ最後に、総理大臣に伺いますけれども、しきりにもう討議もされ、また今からも続けられますけれども、大型間接税導入という問題がいろいろと紙上をにぎわしているわけでございます。  私は、まず日本の税制の現実と将来、この点については現行税制の枠の中で不公平を是正していく、こういう観点から政府としては一生懸命まずそこに努力をすべきである、こういうふうに思うわけでございますけれども、逆に言えば、新税の導入というものはもう少し現行税制の不公平税制を直して、それで国民がどうこう言う場合は二年か三年も時間をかけて新税のいろいろの検討をすべきであって、今は私は不公平税制是正に全力を挙げるべきである、こう思いますが、総理大臣、御見解をお願いします。
  158. 竹下登

    国務大臣竹下登君) そもそも税制改革論議が起きたというのは、いろんな問題がございますけれども、やはり国民の間に不公平感が存在するから事ほどさように活発に議論が行われるようになったというふうな問題意識は余り違わないと思っております。  私が常日ごろ申しておりますのは、さてその不公平感というのはどこから出てきたかといいますと、先ほど来大蔵大臣からお話があっておりましたように、いわば源泉徴収の対象たるサラリーマンの方の課税とそうでない事業所得等々に対する課税の不公平感というものも大きな一つの存在であろう、それから今度は我が国間接税は御案内のように個別消費税という型をとっておる、そうすると個別消費税の中にまた不公平感というものが生じておる、そのことがまた消費と所得の間における不公平感にもつながっておると、こういうような総体的な不公平感というものを、それこそあるべき姿として所得、消費、資産というところに着目をした税制というものを見詰め直していこうではないかと、こういうことになっておりますが、今矢原さんの御指摘のように、現行税制の中における不公平感だけでもって、いわゆる不公平感というものが払拭できるとは必ずしも思いませんけれども、そういう不公平感というのを基調とした総体的なあるべき姿を模索していこうという考え方には変わりございません。
  159. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 この問題についてはまた後日に譲っていきたいと思います。  日銀総裁、どうも御苦労さまでございます。数点お伺いをしたいわけでございますが、一つは円高の続騰についてでございますけれども、円高の続騰が懸念されております。今回の直接の原因は、米の失業率改善によるインフレ懸念から東京での米の国債相場が一時額面割れまで下落したためとも見られます。しかし、長期的にはドル安で輸出が好調で設備投資が増加している反面、輸入が一向に減じる傾向にもないという不安材料が見られております。そういう意味で、ドル安底値観は依然なく、先安観が先行しているのではないかと、こういうふうにも思いますし、また今秋には大統領選挙もございます。そういうことで百十円から二十円の間もあり得るのではないか、こういう一部の観測もあるようでございますけれども、日銀総裁といたしましてはこういう点についてどういう御見解がおありか、伺いたいと思います。
  160. 澄田智

    参考人澄田智君) お答えを申し上げます。  為替相場の先行きの見通しについて、私どものように為替市場に直接接している立場、そういう通貨当局という立場から申し上げることは、これはいかなる場合でありましても思惑でありますとか憶測でありますとかということを呼びまして、相場に影響を与えるものでございます。そういうこともございますので先行きの見通しのようなことを申し上げることは差し控えさしていただきたいと思うわけでございます。  先週来百二十円台の後半でありました円ドル相場が一時百二十三円台というようなところまで円高ドル安化をいたしました。きょうはまた百二十五円に戻っているわけでございますが、こういった背景には、イギリス経済が堅調で、それとイギリスの高金利でポンドが買われて、そしてポンド高が連れ高というような形で円への投機あるいはマルクへの投機にもなったというようなことも一時ございましたし、それから三月末から四月初めにかけまして、日本の機関投資家が三月中はドル売りを控えているけれども、四月の新しい会計年度に入りますとドル売りをするのではないかという、これも根拠に乏しい憶測によってそれが材料視されるというような面もあったのではないかというふうに思っております。為替相場の基調自体にここへ来て大きな変化があるというふうには考えられないわけでございます。  いずれにいたしましても、なお対外不均衡は日米ともに大きいわけではございますが、しかし主要国の間の協調関係、政策面の協調を含めまして、それの堅持によりまして、各国のファンダメンタルズが改善をしていくということによって為替相場が落ちつき、そうして安定に向かっていくということを強く期待いたしているものでございます。
  161. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 また、日銀は今回の円高に小口介入しかしていないと、こういうふうに言われているように私は感触を持っているわけでございますけれども、その点は実態はどうでございますか。許される範囲で。
  162. 澄田智

    参考人澄田智君) どうも重ねての御質問に対して直接お答えができないので恐縮でございますが、介入というものは、やはり市場に警戒感ということも非常に重要なものでございますし、介入のやり方、手口あるいは金額というようなことについてこれを申し上げることはこれまた為替相場に響くことでございます。市場はいろいろに受け取るわけでございますが、私どもとしましては相場の推移を見ながら適時適切に介入をしていると申し上げることでお許しをいただきたいと思います。
  163. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 政府の一番専門の窓口でございます大蔵大臣に伺いますが、今後の円ドルの推移、これはどういうふうに分析をしていらっしゃるわけでございますか。おわかりの範囲で。
  164. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私も多かれ少なかれ日銀総裁とこの問題について同じような立場にございますので、先のことをあれこれ憶測することは差し控えるべきでございますが、昨年の暮れ、いわゆるG7の間で合意をいたしました政策協調、必要があります場合の市場に対する共同行動は極めて今日までのところ、いわば期待されたとおり各国の協調体制が続けられておりますし、また米国が昨年暮れの財政赤字の削減についての大統領府と議会との間の合意等々もございまして、いろんな事情から財政赤字の削減、貿易赤字の削減、アメリカ経済の競争力の強化ということに自分の問題として真剣に取り組みつつあることが明らかになってまいっておりますので、私といたしましては為替の将来は安定していくものではなかろうか、またG7は共同してそういうことを昨年暮れの声明で確認をしておるということでございます。
  165. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 次は円高による物価の問題をいろいろと伺いたいと思いますが、これ宮澤大蔵大臣は、例えば大型間接税が導入されると最後は消費者が負担を負う、これは当然のことですね。だから損害を受けるというか、一番最後のところで物価に転嫁されてくるのは消費者である、消費者が最後の負担を受けるところであると。これは総理も御一緒だと思うんですけれども、宮澤大蔵大臣、その発言はもう何回も当委員会で言われておられますけれども、そうでございますね。
  166. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) どのような構造の幅広い間接税を考えるかによりましてその度合いはかなり違ってまいるとは思いますが、これはねらいといたしましては消費税でございますから、消費者にいわば物あるいはサービスの価格のその部分だけの上昇となって転嫁されていくということはこの税の本体であることに私は変わりはないと思います。その態様等々、程度等々は、これは大変に税制そのもののつくり方によって違うと思いますけれども、逆に申せば、中間の物をつくる人あるいはサービスをする人が自分で自腹で負担すべき性格のものではない。ただ、さようではございますけれども、そのような消費者へのあるいは消費者物価への影響は、当然のことですが一遍限り、一度だけ水準がその部分だけ上昇をするというはずのものと考えております。
  167. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 経企庁長官に伺いますけれども、日本経済は物価は卸売は下がっておりますけれども、消費物価の指数というものは高値安定であると、私はグラフや数字から見てそういうふうに思うわけでございます。経企庁としても「物価レポート87」、これについては非常にもう国際的な問題、きちっと本当にすばらしい、企画庁物価局で発表されたものでございますが、私も公平だなと非常に評価しておりますけれども、現在のこういう円高差益の中で還元はされていない、たとえ七〇%は還元されても三〇%は残っている。こういう中で消費は高値安定である。では、その高値安定を、また今お話がございますように、もし秋に大型間接税というものが導入された場合には、消費者は二重の被害を受けていかなくちゃいけない。そうなれば現在どういうふうにしてこの物価を安定していかなければいけないかというネックが四つか五つあると思うんですけれども、そういう点も含めて経企庁長官のまずお話を伺いたい。
  168. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 矢原委員お答えいたします。その前に物価局の問題で大変な御評価を賜りましたこと、まずもって御礼申し上げたいと思う次第でございます。  先ほどの、何といいましょうか、大型間接税がとられた場合にどのような経過になるかということは、大蔵大臣がただ一回ほどの一つの上昇はあっても、その方向づけにおいて問題はないという報告でございましたが、私も大体その方向で沿っておりますが、ただいまの御質問は、円高差益について依然三〇%が還元されておらない、こういう形においてどう考えていくかというこういう御質問かと思いますので、その点について申し上げてみたいと思う次第でございます。  私どもの試算によりますと、円高の差益の還元率は六九・六%でございますから約七割と、こう先生御指摘のとおり見ておるわけでございます。原材料費などの値下がりを通じまして円高等のメリットの効果というものがどうしてもタイムラグが七カ月、私いつも二ないし二・四半期半と言っておりますが、七カ月から八カ月間で出てくるということもございまして、おおむね順調に反映されておるのではなかろうかなと、こう思っておるのでございます。  全体的な非常にグローバルな御質問でございますから、答えに不十分な点がございましたらまた政府委員にも協力願いますが、流通業界におきましても差益還元のための努力が行われていると認識しておるのが私どもの立場でございまして、政府としましても、まず流通業界に対して三次にわたって円高活用のプラン策定あるいは実施を要請することなどによりまして輸入拡大及び円高差益の還元を求めるとともに、流通業の輸入促進セミナーの開催をしたり、あるいはまたアメリカを中心にした欧米各国に私どもの市場の問題を説明さしていただいたり、あるいはまた商店街等における輸入品フェアなどの開催に対しまして支援を行ったりしておる次第でございます。  さらにまた、本年一月に臨時行政改革推進審議 会がございまして、そこに公的規制のあり方に対する小委員会を設置いたしました。現在、流通分野も含めまして、規制緩和あるいは長い間にわたる悪慣習、こういうものの撤廃というものについて検討を目下進めておる次第でございます。私どもの経企庁といたしましても、同審議会の審議への積極的な協力、開発輸入の支援などによりまして、輸入促進を通じまして、日本の国民にももっとパンフレットやあるいはその他を通しましても市場のあり方を徹底して説明しておくべき必要があろうなと、これは痛感する次第でございます。  流通におきましては、まず適正な競争を確保して、そして円高メリットが国民生活により一層浸透するように努めてまいりたい、このような所存でございますので、よろしくまた御承知おきを願いたいと思う次第でございます。
  169. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 日銀総裁、申しわけございませんがもう一点だけ伺いたいんです。  日本が円高によって差益還元がそれぞれされているわけでございますけれども、国民は実感として、特に働いているサラリーマンの人たちの実感というのは、ここにも数字分析を持っていますけれども、本当に還元の実感というものが一%ぐらいのそういうふうな恩恵にしか浴していない、そういう感覚が非常に数字的に出ている。あるところで、日銀総裁のこの差益還元というものをもっとすべきであるというような発言を私も伺ったように思うんですけれども、その点について日銀総裁の御見解を伺いたいと思います。
  170. 澄田智

    参考人澄田智君) 円高のメリット面という点につきましては、これは個人所得の面でありますとかあるいは企業収益の面でありますとか、さまざまな形をとって日本経済に実現する性格のものでありまして、物価の指数だけをもって見ることは必ずしも当たらないという面もあるわけでございますが、しかしながら卸売物価を見ますると、現在、前年に比較してほぼ一%低い水準で、しかも弱含みというようなそういう状況でございます。一方、消費者物価の方について見ますと、これは前年に比較して一%高といったようなところで落ちついた推移をたどっているわけでございます。このように、その間に差がございます。  これは、卸売物価の場合には輸出入品の価格を通じまして円高の影響が直接あらわれるというのに対しまして、消費者物価の場合には、これはサービス価格の占める割合が非常に大きいというようなこともございます。賃金その他、人件費コストというような面の影響もございます。そういうことで、卸売物価に比べると円高の効果が間接的であったり、あるいはその動きが卸売物価におくれてあらわれるという面がございます。  こういう事情を考慮いたしますと、必ずしも単純に比較はできないという気はいたすわけでございますが、ただ、そうは申しましても、国民各層が円高のメリットをあまねく実感するというほど円高差益の還元が図られているかということになりますと、御指摘のように、なお不十分な点は否めないところではないかというふうに考えております。  したがいまして、円高差益を広く国民各層に還元することを通じて、これまでの円高の物価安定効果を国民の上に生かしていくというためには、やはり流通機構の整備や市場開放による一層の輸入促進を含めまして、引き続き多角的な、あるいは着実な努力が必要ではないかというふうに考えるものでございます。
  171. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 どうもありがとうございました。もう結構でございます。  家計調査の報告を見ますと、総務庁の統計局六十三年三月二十四日でございますけれども、「全世帯の家計」というところで、円高の恩恵という形にも分析できると思うんですが、今申し上げましたように、勤労者世帯の消費支出、これは本当に一・九%の実質増加、こういうことでございますから、この円高差益の恩恵を満喫することはなかなかできない。他方の別な職業の方々のあれではプラス八・〇%、こういう高い実質増加もございますから、円高差益で低いものを満喫することができる。ここで一番問題になりますのは、物価に関連する政府規制の枠というものをどうするのかという問題があるんですね。  これで通産大臣に、まず公共料金の問題として電気事業、都市ガス、そういうふうな通産関係政府規制というものが多くございますけれども、そういう規制の枠はもう現状で締めるのか、それとも将来方向としては費目によっていろいろともう少し幅を緩めていくんだと、そういういろいろの御見解があろうかと思いますけれども、伺いたいと思います。
  172. 田村元

    国務大臣(田村元君) 公共料金等は、円高差益という点から考えますれば、どれだけであとは締めるということはちょっと考えない方がいいんじゃなかろうか、やはりその折々に触れてのことだと思います。電力、ガス、御承知のように円高差益として二兆六千億ぐらいの還元をもう既にいたしておるわけでありますが、その他、大体通産省関係の円高差益の還元は、もちろん十分ではありませんけれども、おおむねいい姿で還元が進んでおるんじゃなかろうか。中には、なおも、タオルじゃありませんが、少しばかり水気のあるのがあるからもうちょっと強く絞らなきゃならぬというのももちろんありましょうけれども。でございますから、やはりその折々に触れて、周囲の環境との横にらみ。ただ問題は、だからといって、我々はこれ以上円高が進むことを期待するわけにはまいりませんから。ですから、適時適切にということで考えたいと思います。
  173. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 運輸大臣に伺います。  運輸関係はここでもいろいろと質疑になりましたけれども、航空運賃の問題、タクシー、バス、鉄道、こういうふうにあるわけでございますが、運輸省関係では今後どういうふうに考えているのか伺います。
  174. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 航空運賃に関しましてはたびたび御質問いただいておりますけれども、外国航路の運賃の格差というものは、メカニズムを説明すると長くなりますけれども、業務上どうしても生じざるを得ない。それでもなおそれを克服するために今までできる限りの値下げをさせてまいりましたし、また四月一日をもって新たな値下げもいたさせました。これからもできるだけ差益が旅行者に還元されるように努力をしていくつもりでございます。
  175. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 もう一点農水大臣に伺いたいと思いますが、非常に今御苦労をしていただいておりまして、この前テレビの討論会を見ておりまして、農水大臣も知っていらっしゃると思いますが、農業者の代表の方、農協の代表の方、専門の学者の方々、やはり日本農業の将来の構想、こういうことをさらに明確にして農家に自信を持たしていくべきだという問題。少々外国より価格は高くても、やはり日本農業の歴史から見て農業を育てなくちゃいけないという消費者からの非常に温かい意見とか、そして農業者の代表の方々も、いろんなジレンマの中でとにかく足腰を強くしていかなくちゃいけない、これは農水大臣も御一緒だと思うんですね。  今物価の問題で見てまいりますと、為替レートで換算した日米欧主要都市の小売価格になりますと、どうしてもアメリカが強硬に押してくるように、例えば東京、ニューヨーク、ロンドン、ハンブルク、パリ、こういうような形で食パンや牛肉や豚肉や、いろいろのものをずっと物価単位で食料品の一つ一つで分けてみると、どうしても数字で、例えば牛肉百グラム、東京で三百五十四円のものがニューヨークでは百四十七円、ロンドンでは二百十六円、ハンブルクで百八十円、パリでは百八十四円、これは単なる数字のことで、それぞれの国のいろんな問題はございますけれども、こういうことで常に攻撃がいろいろあると思うんですが、とにかく足腰を強くしていただきたい。そして、日本農業を守らにゃいかぬというのは我々の意思でございますけれども、そういう中で、将来物価問題の中で一つ一つの項目がどうしてもクローズアップされていく。それについてはやはり値幅を縮めていく努力はどうなるのかという問題があるわけでございますが、そういう点、農水大臣いかがでございますか。
  176. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 流通の改善という点にも心をいたさなければならぬと常日ごろ考えており、やるだけのことはやっているわけでございますけれども、今おっしゃるように食べ物のことになりますと非常に関心が持ちやすいというか、毎日毎日のことでございますから関心を持たれておりまして、いろんな角度からいろんな品物についていろいろな評価がされる、こういうことでその受け答えに苦労をしておるところでございます。  最近の状況等につきましては食品流通局長、あるいは肉等につきましては畜産局長、それぞれ簡潔に答えさせたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。
  177. 谷野陽

    政府委員(谷野陽君) 食料品の価格についての御指摘があったわけでございますけれども、御質問にもございましたように、多少いろいろと、品質でございますとかあるいは購買単位等の点で数字の見方についての議論はあるわけでございますけれども、我が国の食料品の小売価格につきまして諸外国と差があるということは、かなりの品物について事実であろうかというふうに考えておるわけでございます。  このような問題につきましては、ただいま大臣からお答えを申し上げましたように、一つには、生産者の段階での価格につきまして、この一両年の間かなり生産者の皆さんにも御尽力をいただきまして、引き下げの方向でやってきたわけでございますし、また流通につきましても、これに並行いたしまして改善を加えるべきものであるというふうに私どもも考えておるわけでございます。  食料品の価格につきましての御関心につきましては、ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、まことにごもっともな点も多いわけでございますので、さらに一層努力を重ねてまいりたいというふうに考えております。
  178. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 教育問題に移ります。  先ほど同僚の久保先生からも御質問があったところでございますが、災害遺児の育英制度の問題でございますけれども、総理大臣にまず経過と対応についてどう考えていらっしゃるか、伺いたいと思います。
  179. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今御指摘のように、先ほど久保委員にもお答えいたしたところでございますが、そもそもこの問題は、昭和六十年の衆議院予算委員会において当時書記長でありました矢野委員から提起されたわけでございます。その後、党首会談というところで各党からまた御提議をいただいたという問題でございます。これは私どもとしても善処を約しましたし、そしてまた、本院におきましても、久保委員の御質問に対して、私もでございますが、中曽根前総理からも善処の約束等がなされております。  したがって、当初考えましたのは、当然のこととして育英会のことを考えてみたことは事実でございます。どちらかといえば育英会というのは、学力が高い方で貧しい人の子弟とでも申しますか、そういうことが基準でございます。したがって、災害遺児の方であるから特別成績の点を度外視するというわけにももとよりまいりません。それなりの運用はしてきておられますが、その後、御案内のように、因果関係の非常にはっきりしております交通遺児の方々に対する対策というものが充実してきております。そのほかに警察官の方の遺児の方とかあるいは海難遺児の方とか、あるいは消防士ないし消防団員等々の問題もいろいろそれぞれで構築されておりますが、必ずしもレベルは一緒じゃございません。  したがって、どこでこれをまともなものに構築していくかということで、やはり各省にまたがりますだけに内閣の内政審議室でこれの勉強をさしていただいてだんだん勉強が詰んでまいりましたので、したがって、党首会談で出たことでございますから、私から我が党の政務調査会長の方へ指示をいたしまして、そこでそのことが先般の政策担当者会議においてこれを詰めていこうというようなお返事になっておるようでございます。恐らく私は、各党の専門家の皆さん方が出かけて私どもが勉強さしていただいた素材を点検していただいて詰まっていくものではなかろうかなあという期待をいたしておるところであります。  ただ、四月一日ということを本委員会でも指摘されておったことが私の頭にも残っておりますので、言ってみれば、四月一日を過ぎた今日もこれがさかのぼって適用されることをも含めて考慮しなきゃならぬということで、今後の政策担当者会議のお話し合いを見守っておるというところでございます。
  180. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 私もこの点は本当に、交通遺児につきましては、先ほどもお話ございましたように的がはっきりいたしておりますので、私たち公明党も街頭募金をさしていただいたり、私個人も明石子午線クラブというグループの団体でもう十年近く街頭で毎年やらしていただいておりますが、確かに交通遺児の場合には明確にはっきりしている。ところがこの災害遺児と言えばやはりいろいろと把握をされる段階で非常に御苦労されたと思いますし、非常に難しい点もございますので、この点は僕も、竹下総理は非常に難しい段階をよく挑戦されて前向きでやっていらっしゃる、これは高く評価をしたいと思います。  ただ、内閣内政審議室で素材の検討をされていらっしゃる——僕はまだされていないんだなと思っていましたんですが、これ再確認しますけれども、総理、実際にやはり検討はずっとやっていらっしゃったんですか、もう一回再確認したいわけです。
  181. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 内政審議室で、私から指示をいたしましてそこで、まあ率直に申しまして社会福祉の面からいうと厚生省がございますし、そしてまた、本当に警察官の遺児の方の問題等は既に構築されておる点もございますが、例えばある育英会が仮に十万で片方は二万円とか、その辺の差もそれはございます。したがって、内政審議室の作業というのは、各省を一つ一つ呼んで聞いて、そしてそれを総合的にまた議論いたしまして、育英制度そのものはこれは文部省の所管の問題でございますが、文部省の専門的な意見を聞いて、私の報告で見ます限りにおいては、この素材を提供すれば党首会談で出たことゆえ各党の専門家の皆さん方に詰めていただければ構築できるんじゃないかな。これはあくまでも予測と期待にすぎませんけれども、相当な詰めをやってきたことは事実でございます。
  182. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 総理にもう一回御確認さしていただきたいんですが、先ほどお話がございました、やはり非常に難しい問題もございますから、各党担当者が出てやられると思いますけれども、その期日が過ぎても、先ほどお話がございましたようにやはり四月一日に遡及をして適用されるということが、これは委員会での御発言の確約等もございますし、ぜひこれは各政党間のいろいろの問題というよりも、やはり健全な国民の御家庭の皆さんも、政治の中でこういうことをやっておられるということについて、もしこういう形のものがきちっとできれば本当に、私は一面では政治そのものの評価というものが国民からされるのではないか、こう思うわけでございます。この点、総理大臣にもう一度伺いまして終わりたいと思います。
  183. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まさに党首会談で出たということを考えてみましても、皆さんそれぞれ仕組みを構築していくときにはいろんな問題がある。  現在の佐藤農水大臣がかつて本院議員であったときに、いわゆる自然災害の問題で長いことかかって補償問題を立法化されたということもございますので、いかにも制度、仕組みの中で構築するにはいろんな問題があるが、それを総合判断する政治マターとして取り上げられてきたというところに、これを成就させたいという気持ちがお互いあるだろうというふうに私も思っております。
  184. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 では次に、防衛問題に移ります。先ほども御質疑がございましたので、重複を避けて二点だけ質問をしたいと思います。  一つは、新経済計画策定方針と防衛力整備についてでございますけれども、現在昭和六十三年度から六十七年度までを対象とする新経済計画の策定作業が行われておりますけれども、今年の一月二十二日、経済審議会運営委員会決定された「新経済計画の基本的考え方と検討の方向」には、「防衛力については、国際情勢及び経済財政事情等を勘案しつつ整備する。」という記述があります。初めて防衛を経済計画策定のための検討事項の一つに入れられたものとして注目をしているわけでございます。  また、防衛計画の大綱で、「そのときどきにおける経済財政事情等を勘案し、国の他の諸施策との調和を図りつつ、」防衛力整備を行うとしていることからも明らかなように、防衛と経済は一体であり、両者を切り離して論ずることは困難との認識をお持ちのことと思いますが、この点について、今回経済審議会からも前述のような方針決定がなされたことを防衛庁長官としてはどのように受けとめていらっしゃるのか、所見を伺いたいと思います。
  185. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) お答えいたします。  何といいますか、防衛問題ではございますが、新経済計画総理を中心にまた諮問を受けまして出発して、私どもが担当さしていただいているものですから、私がまず答弁さしていただければ、こう思います。  本年一月に、御案内のとおりに新経済審議会が発足をいたしまして、そして取りまとめましたものが御指摘のとおり「新経済計画の基本的考え方と検討の方向」ということにおいて、「平和国家としての基本方針の下で、総合的な安全保障政策を推進するとともに、防衛力については、国際情勢及び経済財政事情等を勘案しつつ整備する。」、これが基本方針になっておるわけでございます。  全く委員御指摘のとおり、初の新経済計画の中における懸案事項としてまた盛り込んだことも事実でございますが、それなりの大変大きな意味がございまして、まず第一点、「世界とともに生きる日本」という視点から経済運営の中長期的なあり方を考える上では防衛問題も視野に入れておく必要がある、こう考えている総意がこのようにならしめた、こういうことでございます。  その取り扱いにつきましては、現在続行中でございますだけに、経済審議会における今後の審議の内容について詳細に私も把握しておりませんが、現在審議が続行中である、また同時に審議を、答申を待ちたい、こう思っておるわけでございます。  以上でございます。
  186. 瓦力

    国務大臣瓦力君) ただいま経企庁長官から経済審議会におきましての検討につきまして御答弁がございましたが、委員先ほど御指摘をいただきましたように、我が国は従来から防衛力の整備の具体的実施に際しましては、そのときどきの経済財政事情を勘案して国の諸施策と調和を図ってまいる、こういうことで取り組んでおるわけでございます。  いずれにいたしましても、いろんな場で我が国の防衛について議論されることは大変大切なことで結構だ、かように解しておる次第でございます。
  187. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 もう一点は、次期主力戦車についてでございます。  防衛庁長官は、一月二十八日の本院本会議で陸上防衛と洋上防空の二つを次期防の柱にするとの見解を表明されました。特に、陸上防衛については北部日本を重視し、師団のあり方を含め基礎的な研究を深めていくと述べておられました。報道によれば、次期防の整備の重点は中期防における海空から陸に移るとされており、これに伴い陸上自衛隊の戦略は従来の内陸持久、反撃戦略から前方対処、早期撃破戦略に転換され、地対艦誘導弾SSM1の実戦配備等も行われるようであります。その点についても多くの問題点がございますけれども、ここでは新戦車の問題だけを取り上げてみたいと思います。  防衛庁が次期主力戦車として開発している新戦車については、節度ある防衛力整備という観点から多くの問題点が指摘できると思います。  第一は、コンピューター内蔵の射撃指揮装置などのハイテク技術を多く用いているために、一台当たりの価格が七四式戦車の三倍以上の約十五億円にも達するとされている点であります。防衛庁は六十五年度から三十両分の予算を要求する方針であると伝えておりますけれども、仮に、次期防期間中も毎年度三十両の予算が認められるとすれば、昭和六十六年度から七十年度までの五年間に戦車だけで二千二百五十億円もの経費がかかることが推定されるわけでございます。  また第二に、新戦車が防衛費に及ぼす影響は、その単価が高いという点だけにとどまらず、新戦車の重量は七四式戦車を十二トン上回る五十トンであるが、これだけの重さのものを運用していくためには、橋、戦車道、トレーラー、戦車回収車など現存する施設、車両を新たに改修することが必要であります。そのための経費もかなりのものになると見込まれます。このような新戦車の導入は、直接的、間接的にも我が国の防衛費を押し上げる要因となる以上、その導入に当たっては国民が納得できるような理由が示されて当然であると思います。この新戦車の必要性は明確にはされていない。また米ソの最新鋭戦車に匹敵するか、それ以上の性能を持つと言われる戦車を日本が保有する必要があるのかどうか。また、陸上自衛隊の戦略が前方対処、早期撃破に転換されようとしている現在、わざわざ戦車に多額の金額をかけることが果たして適当かどうか疑問に感ぜざるを得ないのであります。そういう点をまず詳しく述べていただきたいと思います。
  188. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 私の方から戦車の必要性等について御答弁したいと思いますが、次期防についての具体的な検討はまだいたしておりませんので、一般論としてお答え申し上げたいと思います。  御承知のように、陸上自衛隊の装備その他が列国の装備等についてややおくれをとっておるということは事実でございます。また、陸上自衛隊だけで国土防衛をし得るということになりますと、御存じのように、一個師団が防御し得る幅というのは十キロ内外ということでございまして、そういうことは実際上不可能である。したがって、できる限り相手方の陸上部隊というものが活動能力のない洋上あるいは水際においてこれを阻止するということが肝心であるし、今後ともそういった方向でできるだけ対処をしていきたいというように考えておることは事実でございます。  しかしながら、それでは洋上撃破ですべての国土を守り得るかといいますと、やはりよその国と非常に近い地域その他がございまして、相手を発見してから洋上でこれを阻止するということが困難な地域がございます。さらに言えば、相手方の空挺部隊であるとか、あるいはヘリボーン、そういったもので必ずしも船を使わずに直接本土に、国土に侵攻してくる場合もあるという際に、これを相手方が根づいてしまわないうちに早期に撃破をするという、いわば機甲、装甲をした機動打撃力と申しますか、そういったものの中心になるのはやはり戦車でございまして、戦車の必要性なり重要性というものはいまだ減じていないというのが現状でございます。その点は御理解を賜りたいと思います。  なお、技術的な問題等については別の政府委員からお答えをいたします。
  189. 鈴木輝雄

    政府委員(鈴木輝雄君) 予定の単価、調達数量等についてお答えいたします。  現在新戦車の開発の進捗状況によりますと、同戦車を制式化するのは昭和六十五年ごろになると見込まれておりますが、何分現在開発中でございまして、その量産が決定されておりません現段階におきましては、その単価、数量等について申し上げられる状況にはございません。
  190. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 長官にもあわせて答弁をお願いしたいんですが、これはきのうの夕刊でございますか、ソ連にハイテク戦車が開発されて、日本も含めて、アメリカもそうでしょうが、西側の技術では破壊不可能、こういうふうな非常に西側が脅威を持っているこういう関連の中で、今時間がないのでざっと申し上げておりますけれども、日本もハイテクの最高の戦車の開発にいろいろと力点を置いているのではないかという、私は非常に疑問を持っておるわけですが、それもあわせて長官、答弁をお願いいたします。
  191. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) ただいま委員からソ連の新戦車についての報道について述べられましたけれども、このアメリカの雑誌に出ております新戦車についての記事は我々も詳細に読んでおります。ただ、事実については確認はできておりません。  一般的に申しまして、ソ連は非常に伝統的に戦車の開発に熱心でございまして、既に配備されておりますT80といったような戦車は、火器管制装置、それから特に装甲でございますけれども、これはもう既にNATOにおいて、一部の兵器が有効でなくなるということで心配しているという状況でございます。したがって、それをさらに上回る戦車が開発されているという報道が事実であるとすればこれは大変重要なことでございまして、我々としても十分注目していきたいと存じております。
  192. 瓦力

    国務大臣瓦力君) ただいま政府委員から答弁をいたしましたが、本庁の技本におきましても、今後我が国における防衛力整備の装備の問題につきましては、今日技術革新が相当進んでおる時代でございますから、委員からの激励もちょうだいいたしましたが、鋭意研究は進めてまいる。そのことがまた我が国の防衛力整備につながるわけでございますので、研究をしてまいりたいと考えております。
  193. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 時間がございませんので、次に言語聴覚療法士の問題を質問いたします。  言語療法士の資格制度の問題に関しては、資格制度についての現在の情勢、また言語障害治療者養成の状況、そしてまた医療資格制度に関して、厚生省としてもいろいろの御見解があろうかと思うわけでございますけれども、まず言語聴覚療法の必要性を含めて実態というものが、患者がどの程度、そして療法士の方が何人、こういうようなことであらあら御説明をお願いしたいと思います。
  194. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 言語聴覚障害者は今非常に増加しておるわけでございますが、お尋ねの対象となる患者数でございますけれども、六十二年度の身体障害者の実態調査で把握しております聴覚言語障害を有する者三十六万七千六百人という数字がございます。それから言語聴能障害の矯正のために検査あるいは訓練を必要とする患者の推計九十万という数字がございます。それに対応いたします言語療法関係の職員でございますけれども、医療機関で業務に従事しておる者が約千人ぐらいということでございまして、医療施設の数にいたしますと五百ぐらいというふうに考えております。それ以外に社会福祉施設と申しますか、難聴幼児の通園施設でございますとか聾唖児施設、心身障害児通園事業等の箇所数がございますが、そういうところで対応しているというのが実態でございます。
  195. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 もう時間がございませんので結論的な話から参りますけれども、私ももう三年近く厚生省ともいろんなやりとりをいたしておりまして、内容、組織、そうして法制化の中にはどういう問題があるのかということは、もうすべて厚生省も私も熟知した中での議論をやらしていただきたいと思います。そしてまた、新聞報道がどういうふうな見解の中で報道されているか、まあこういうこともすべてわかった上でございますけれども、結論から言いまして厚生省に申し上げたいと思うんですが、他の国家の資格制度というものがもう既にどんどん制度化されてきている段階の中で、なぜ厚生省がこのSTの資格制度について創設というものに決断を下さないかということでございます。そういう点いかがでございますか。
  196. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) おっしゃいますように、医学医療が進歩いたしましてそれに対応する専門職種というのが御指摘のようにどんどんふえておるのは事実でございます。診療放射線技師でございますとか、臨床検査技師でございますとか、理学療法士、作業療法士、つい最近は二つばかり新しい職種を設けたわけでございます。そのときに、新たな医療関係職種の資格制度の在り方に関する検討会というのを設けて、この聴能言語療法士の資格制度についての検討をお願いしたわけでございます。その際に、やはり関係団体がなかなか意見が一致しないということでなお調整を図るべきであるという御意見をいただいたわけでございまして、そのような経緯で、私どもとしては資格化、資格法にするということについて今回は見送ったという経緯があるわけでございます。
  197. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 これは厚生省の判断というものを、私もそのとおりで、いろいろ関係筋には当たっておりましたけれども、やはり高齢化社会の中で全国の人口の五%はこの言語聴覚関係の第二次的な病因を持っていると言われている状況の中で、患者の全国の代表の方から国会審議の議事録を見て、私も前に竹下さんが大蔵大臣か何かのときにこの問題で御質問したことあるでしょう。  田中総理が倒れられた後で、治療のためには本当に優秀な人たちであるが、やっぱり国家の法制化の中で勉強してやらないと、多角的な知識を持つ患者がふえていく中で、そういう方に対応する治療をしていかなくちゃいけないということで取り上げたことがございますけれども、患者の出版物に、我々病人の立場から見て、制度の許可を、いわゆる医者の場合だったら医師法というあれで国家の試験で資格を持っているわけなんですね。どんなに力があっても資格のない人が病人に治療をした場合には刑事事件になるのではないか、どんなに技量のすばらしい人であっても。お医者さんが後ろにおるから我々は診ていいんだと、医療する側の先生方はそれで済むかもわからない。病人の我々は、日本で定められた資格がない人に診られて、治ればいいけれども、もしその病気が厳しくなった場合にはどう我々病人を救ってくれるんだと、そういう病気を持った人の切実な声というものが、この議論というのは六年も七年も厚生省の中でも論じられて仲介役をしていらっしゃる。  いまだにこの問題が解決ができないというのは、私は、厚生省や政府は本当に苦しんでいる病人の人たちの立場を考えているのかどうか。もし、これが患者の方から国が告訴されたらどうするんですか。お医者さん方も一生懸命診ていらっしゃる。たまたま国家の資格制度というものにその該当がない。患者の方にすれば一生懸命診ていただいてよくなった、悪くなった、いろんなことがございますけれども、やはり問題の究極のところはお医者さん、そうしてそれに関連する人たちの診るのは、病気を治す国民の皆さん方は安心して病気を治していかなくちゃいけない。そのときに国家制度も何もない、それで十年近くもずっといろんな問題が提起されながら、厚生省がきちっとまとめていかない。  私は、きょうは病人の立場で、お体の悪い該当の方々の立場から主張しているんです。こういう場合は厚生大臣、どうお考えなのか伺ってみたいと思います。
  198. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) ただいまの病人の立場からの御意見、私も全く同感でございます。今までのこの資格の制度化ができなかった理由、経緯につきましては、先生よく御存じのとおりでございます。業務内容等について業界内での話し合いがつかない。つくということがこれはあくまでやはり資格の制度化にも必要でございまして、それを話が調うことを期待し、またいろいろ仲介もし、お願いしてまいったわけでございますけれども、御承知のようにいまだに話がつかない。  しからば、話がつかないからといってこれからも放置していいのかどうかということにつきましては、全く私もこれは早急に解決しなけりゃならない問題だと思います。きょうも厚生省の事務方に指示したわけでございますけれども、この問題を早急に解決するために、厚生省としてどういう考え、またやり方があるのか、そういうことにつきまして至急考えを進めるように指示したところでございまして、具体的には日本リハビリテーション医学会、また日本耳鼻咽喉科学会、これらの関係学会の意見を聞きながら、どのような形で資格法制化が可能か、できるだけ早く見きわめるように最大限の努力をいたしたいと思いますので、御理解いただければ幸いだと思います。
  199. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 厚生大臣、そこまではもうずっといろいろと検討をされているんですよね、そこまでは。  ですから、長い間この病気の方々がいら立ちの中で憤りを感じていらっしゃるわけです。だから、今誠意を持って答弁していただいておりますけれども、もう少し具体的にやはり明確にきちっと、もうここまでずっと待って、その事情というものが厚生省も医師の関係する組織団体も、そうしてこの言語療法士の二つの組織も、すべてがこれはもう議論というものは徹底的にしている。ただ問題になっているのは、私が申し上げているように患者の立場、そういう意見というものに行政機関やそういう診ていただく方々が十年近くもなぜ耳を傾けてくれないのか、私は今その立場で、だから今厚生大臣がおっしゃったことは、本当に僕は誠意のある御答弁だと伺っておりますけれども、やはりいつまでにきちっとするということの決断を出していただかないと、これは患者は大変ですわ。よろしくお願いします。
  200. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) 二つの団体側の意見が基本的に大きな隔りがある、そういう中で話がつかないわけでございます。厚生省としても、この医療側の立場と教育側の立場と、この二つの側の意見が調整できないわけでございますから、我々としても腹を決めて踏み切っていかざるを得ないというようなことも含めて考えておるわけでございます。
  201. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 竹下総理、私は何年か前にも総理にやはりこの課題で質問をしたり、きょうもいろいろ聞いていただいておりますが、病人の方の医療というものも、お医者さんや大学の医学部の教授等いろいろ日本に優秀な方がいらっしゃいますけれども、医療というのは、やはり国民の健康を忘れて医学や大学の医学部やそうしてお医者さんがあるわけじゃないんですから、国の税というものがそういうところにも配分されていきます。これは薬品メーカーも一緒でございますけれども、国民の健康という立場からすべてが動いていくものでございます。しかしこの問題は、そういう患者の立場というものが今までに置き去りにされている面がある。  それは厚生省も御心配されていらっしゃいますけれども、結論的に言うと、患者の皆さんの声が本当に謙虚に医学側の立場や治療する立場に聞かれていない、こういうことですけれども、総理大臣、その点はいかがでございましょうか。
  202. 竹下登

    国務大臣竹下登君) おっしゃいますとおり、私もこの御意見を拝聴させていただいたことが過去にもございます。  言語聴覚療法士という問題についての当時からの御発言でございましたが、きょう重ねてその御意見を聞き、そしてまた厚生大臣からのお答えを聞いておりまして、今の厚生大臣の最終的な答弁の中で、矢原さんの意のあるところは私は酌み取って対応をしてもらえる問題だというふうに客観的に理解をさせていただきました。私自身に大変な知識があるわけではございませんので、問答を聞きながら私がそういう理解をさせていただいたということをお答えといたします。
  203. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 具体的ないろんな問題がまだ不満でございますが、総理からも大臣からも前向きの御答弁ございましたので了としますけれども、本当に患者の立場に立って、治療する側は、どういう問題があってもやはりそういう資格制度というものを明確にして、そうして診る方も安心して診る、診られる方も安心してやはり治療される方々に身をゆだねていく、こういう患者の声なき声というものをどうか取り上げていただきたいと思います。  非常にもう時間がこういう格好になりまして、公団に来ていただいておりますが、次回に熱らしていただきたいと思いますので、失礼の段おわびを申し上げます。  以上で終わらせていただきます。
  204. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で矢原秀男君の質疑は終了いたしました。  午後四時十五分まで休憩いたします。    午後二時二十六分休憩      ─────・─────    午後四時十六分開会
  205. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 予算委員会を再開いたします。  昭和六十三年度総予算三案を一括して議題といたします。  これより安恒良一君の質疑を行います。安恒良一君。
  206. 安恒良一

    ○安恒良一君 まず最初に、六十二年度税収の過小見積もり問題についてお聞きをしたいと思います。  私は二月十九日、六十二年度補正予算審議の折に、六十一年度税収の過小見積もりの実態を明らかにし、さらに六十二年度補正で減税分を除く税収増加一兆八千九百三十億の政府見積もりが過小であることを指摘しました。三月三十一日発表の二月の税収実績等から、私の指摘が的中しておったと思いますが、どうも巨額な年度内増収になりそうですが、どのくらいふえると思いますか、大蔵大臣御答弁願います。
  207. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先般そういうことについて安恒委員の御発言がありましたことはよく記憶をいたしております。  二月の税収までわかりましたが、ただいまのところまだ大勢の見通しをつけるまでに至っておりませんことは、前回と余り変わっておりません。二月までの累計は九・一%でございます。決して全体の調子は悪くはございませんけれども、ただいまのところ年末調整がやはり効いてまいりましたのと、それから申告納税がこれがどういうことになりますか、減税分の見通しがこれは四月の終わりになりませんとわからないかと存じます。それでやはり何といっても御存じのように一番大きな勝負は三月期の法人決算、これがもう今となりましては一番大きな要素でございまして、決して三月期の決算が悪いとは思っておりませんけれども、昨年の三月期に営業利益でなく営業外のいろいろ工夫をしていい決算を各社がしておりますこともありまして、この三月期が昨年の三月期の上にさらに大きな伸びがあるものかどうかということを実は私どもも見通しかねておるというのが実情でございます。  したがいまして、総合しまして全体として悪いとは思っておりませんけれども、昨年度が最後の三カ月で非常に伸びが大きかっただけに、今回さらに同じことをその上に繰り返せるかどうかということにつきまして、もうしばらく事情、様子を見ていたい、こう思っているところでございます。
  208. 安恒良一

    ○安恒良一君 当初六千三百四十億、補正段階で三兆五千七百十億、そして二月の税収の実績から私なりに推計しますと一兆五千億から二兆円の上積みになります。そうしますと、六十二年度税収の対前年度増加額は四兆から五兆五千億の間に私はなると思うんです。  そうしますと、これは当初見込みの六倍から六・五倍になるんです。どうしてこんな大きい見込み違いをされたんですか。その原因は何ですか。
  209. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、もう少し後で数字が確定いたしましてから申し上げなければならないことだと思いますけれども、基本的には、経済運営がかなり順調に進み始めたということ、そして前年度の、前年度と申しますか、六十一年度の税収が最後の三カ月で非常に大きくなったという要素を六十二年度の税収見積もりの際に十分にベースにすることができなかった。かなり最後のしり上がりにいいところをつかまえることができずに歳入見積もりをしたということに関係があることは間違いないと思いますけれども、全体としてどのぐらいになるかということがまだ申し上げられませんので、分析的に申しますのはしばらく時間を拝借したいと思います。
  210. 安恒良一

    ○安恒良一君 私が補正予算のときに議論したことと全く同じことをまだ宮澤さんは答弁されていますね。慎重であっても、もう二月まで実績が出たんですからね。ですから、ここではっきり言ってもらいたいんです。現時点では補正後の上積みがあるのかないのか。私はあなたにも言ったでしょう。もしも上積みがあったらあなたは責任をとりますかとまで僕はあのとき議論したつもりですが、いわゆる上積みがあると思われているんですか、ないと思われているんですか。
  211. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 二月までとおっしゃいましても、実は月数で言いますと二月までなんでございますけれども、一番大きいのは三月期の法人税、これは五月でございますから、実はこれからが一番大きな勝負と申しますか、要因になるわけでございます。私、ただいまのところ、したがってどのぐらいになるかということを申し上げられないと申し上げておるんですが、全体としては好調でございますから何がしかの自然増収はあるだろうということは考えております。
  212. 安恒良一

    ○安恒良一君 私は前回も言いましたように、適正的確な見積もりというのは納税者にとっても重要なことでありますし、また予算審議している本委員会はとっても非常に重要なことなんですよ。ですから私は、建前論で逃げられたり、責任回避論的な逃げ方では全く反省がないと思うんです。  少なくとも経済全体が上向いていることは事実なんですから、その意味からいって三月決算がさらに悪くなるなどということは考えられないんですよ。それは全企業とは言いませんよ。しかしほとんどの企業がよい。そういう点において、既に補正の段階でも大きい見込み違いがあったんですから、私はさらにその上に上積みがあると思いますが、過去にこんなに大きく見積もりを誤ったことがありますか、大蔵省は。
  213. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まだ、こんなに大きなと言われましても、そこはどのぐらい大きいかがなかなか申し上げられないと言っておるのでございまして、それは三月期の法人が私は決して悪いとは、先ほども申しましたように思っていないのでございますけれども、前年が意外にいい決算をしておりますからそこを用心しておりますので、何がしかの増収はあろうと存じますけれども、どれぐらい大きいということは申し上げかねます。
  214. 安恒良一

    ○安恒良一君 当初、予算から考えて私は、私の推計では六倍ぐらいはあるだろう、こう言っているんです。何倍ぐらいあるかということはもうおわかりでしょう。当初お出しになったことはついて、幾らまでは確定できないにしても、どのくらい過ちを犯されたかというのはもうおわかりになるはずですよ。
  215. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、何度も申しますとおり、今の進捗率ではまだ申し上げることができません。
  216. 安恒良一

    ○安恒良一君 総理ね、六十二年度はもう終わったんです、四月ですからね。その税収の見積もりについても明確に大体このくらいあるだろうという答弁がされてしかるべきだ。それにもかかわらずその答弁もできない。私は税を専門に勉強しているわけじゃありません。一野党の議員です。しかし、補正後の税の見積もりが過小だと指摘できるぐらいのことはやっています。膨大な人員を抱えて税の資料をたくさん持っている大蔵省が、全くそのことについて答弁ができない。  しかも、言を左右にして責任すら何も感じていない。こんな態度は国会議員をなめている。納税者をなめている。こんなことではやっぱり許されない。少なくとも今の段階において見通せるものはついては私は答えてもらいたいと思うんですが、どうですか。
  217. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいままでの進捗率では、見通しを持ってお答えすることはできません。  幾らかの自然増収があるということは私としても予測をいたしておりますけれども、御議論をいただくにたえるだけのベースをお答えすることはただいまのところはまだできないということでございます。
  218. 安恒良一

    ○安恒良一君 数年前は財政金融研究所というのを大蔵省はつくられましたね。これはすなわち、予算編成の際に経済の見通しや経済情勢に的確に財政が対応するためだ、通産省や経企庁等の経済官庁のデータだけでは不十分だと、こういうことでおつくりになったんですが、私から言わせると、当初見込みから既に、補正の段階でもいわゆる宮澤さん自身が認めて頭を下げられただけ大きな間違いを起こされているんですよ。  あなた、きょうはえらい強気で頭を上げているけれども、あのときは頭を下げられたんだ、具体的数字でやったから。そうでしょう。財政金融研究所がどの程度こういう問題をチェックしているか具体的に説明してください。
  219. 角谷正彦

    政府委員(角谷正彦君) 今御指摘の財政金融研究所でございますけれども、これは、内外の財政金融事情、経済に対する基礎的研究と、それから大蔵省あるいは財務局職員の研修を行うことを目的としてつくったものでございまして、研究活動といたしましては、金融のいろんな国際化に対応する分野とか、あるいはマクロ経済に対する理論的分析等を行っておりますが、税収の見積もりにつきましては直接タッチしておりません。
  220. 安恒良一

    ○安恒良一君 財政金融研究の中で税収問題なり経済の見通しもやっておられると思いましたが、やっておられぬそうですか。  それから、主税局にも調査課がありますね。そこで総理にお聞きしたいんですよ。もうこの二つは行財政改革で解散されたらどうですか。こんなものは役に立ちません。私のような一野党議員が推計できることについても答えられないというんだから、この二つは行革として解散をされたらどうか。総理、そのところを聞かせてください。——総理に聞いています。
  221. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 税収見積もりは、過大見積もりの場合も過小見積もりの場合も、これはやはり両方とも、過小だからよかったということはなかなか私は言うべきことでないというふうにかねて思っておりますから、前年度のように見積もりを誤りましたときに、これはもう責任だと思っております。それは申し上げました。  今回、何も私は傲岸であるわけではございませんので、ただいまの段階でどのぐらいの見積もりが、自然増があるかと再三お尋ねになりますけれども、それは今申し上げるのは無理でございます、いずれ時期が来ればもう少し的確に申し上げられるのでございますから、いろいろ御議論のベースとして今どのぐらいということを申し上げるのは少し時期が早くて申し上げにくい、自然増はあるだろうとは思っておりますがと、こう申し上げておりますことを御理解いただきたいと思います。
  222. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 五十七年度予算の際、いわゆる過大見積もりであったと、こういうことで御指摘を受けたことがございます。たしか六兆円ぐらいでございましたか、歳入欠陥が生じたことがございました。それから、五十八年からは比較的——ただ久保さんにあんなことを言わなきゃよかったと今でも思っておりますのは、一%は誤差のうちなんということを言いまして、あれはそのときの誘導質問に乗っかったような感じがしておりますが、確かに見積もりというのは、安恒さんが今おっしゃいましたが、六十一年度のことにつきましても、三月決算法人が五月の末にどかっと入るなんというのは実際予測のできなかったことでございますので、税収見積もりについてというものはあくまでも見積もりという範疇に入るものだとお答えせざるを得ない。  調査課なんかが一生懸命でああしてヒアリングまでして詰めていくわけでございますから、ひとつ行革の対象ということは私自身の考えの外に置かせていただきたいと思います。
  223. 安恒良一

    ○安恒良一君 まあ、それじゃきょうはそうしておきましょう。あと一、二カ月たったら私の言った数字が正しくなったらこれはもうそういうものは解散させてください、役に立ちませんから。  じゃ、次の質問に行きますが、総理、私がこの前、総理の描くいわゆる所得、資産、消費の三つの間の均衡のとれた税構造ということについて総理の明確な御答弁をいただけなくて、きょうは総括締めくくりですから、その後総理の方で御研究されましたことについて答弁してください。
  224. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは正確を期するために、整理いたしましたから読み上げさせていただきます。  一、今回の税制改革の眼目は、所得、消費、資産等の間で均衡のとれた安定的な税体系を構築していくことにあると考える。  二、前回具体的な数字により申し上げたように、近年税負担が勤労所得を初めとする所得に対する負担に偏ってきた結果、税に対する不公平感、重圧感が高まってきている。  三、ところで、前回申し上げた所得課税、消費課税、資産課税の計数はOECD歳入統計の分類によるものであり、所得課税には勤労による稼得所得に対する課税のほか、資産の処分等からの所得に対する課税が含まれており、他方、資産課税には相続税、有価証券取引税等の資産の移転に係る課税が含まれるが、資産の処分等からの所得に対する課税は含まれていない。  これは安恒さんの御指摘なすったことを整理したわけです。  そこで、先般の御質問の趣旨も踏まえ、資産性所得として利子配当及び土地譲渡による所得に対する課税を所得課税から資産課税の方に分類し直して整理すると、次のような点が見受けられる。  その一としまして、個人の稼得する所得に対する課税のウエートは、五十年度の二六・三%から六十一年度の三〇・四%へ上昇している。他方、稼得した所得の処分の段階である消費に対する課税のウエートは三十年代、四十年代を通じほぼ一貫して低下を続け、五十年度は二六・八%で所得の稼得に対する課税とほぼ同じであったが、六十一年度には二〇・〇%へとさらに低下し、所得の稼得に対する課税のウエートをかなり下回るに至っている。  二、資産に対する課税のウエートは、五十年度一七・五%から六十一年度一九・一%へと上昇している。これは主として、資産の移転に係る課税のうち、相続税、有価証券取引税などが近年の地価高騰、株式市場の動向を反映し、増加していることによるものである。先般の六十二年度改正においては、利子所得課税及び土地についての登録免許税の見直しが行われており、資産課税のウエートはさらに上昇していくものと思われる。  資産課税に関しては、相続税について五十年以来制度の基本的見直しが行われていないことから、税負担の軽減合理化が求められている。  株式等を処分した際の譲渡益については現在原則非課税とされているが、税負担の公平の観点から適正な負担を求めるための見直しが必要となっている。その場合、他方で、株式等の流通に係る有価証券取引税については、その水準の見直しを要するものとされている。  これらの点は、いわば資産課税の中での負担の合理化あるでと言えよう。  三、以上のように、五十年代以降の推移を見ると、所得の稼得段階での課税と所得の処分段階での課税との関係が大きく変化していることに十分留意する必要がある。  大きな四で、いずれにせよ、所得、消費、資産等の課税ベースの適切な組み合わせについては、上記のような観点を踏まえ、税制調査会等で議論が深められ、望ましい改革案が選択された結果として決まってくるものである。  また、所得、消費、資産等に対する税収額の相対的な比率もさることながら、所得、消費、資産等のそれぞれに対する課税そのものが公平感をもって受けとめられることが肝要であり、所得課税、消費課税、資産課税のそれぞれにおける望ましい課税のあり方について議論が深められることも必要ではないかと考える。  こういうことを整理いたして、縦書きでもつくってきましたが、横書きの方が私自身も整理しやすいから、横書きのものをあえて読ましていただいたわけであります。
  225. 安恒良一

    ○安恒良一君 せっかく総理、整理していただいたんですが、よく意味が読み取れません。いわゆる総理のお得意の、非常に言語は明瞭だけれども意味不明瞭という表現にややなっている、失礼ですがなっているんじゃないかと思う。  そこで、私の方から、総理がどうも頭の中にこういうことをお考えになっているんじゃないかと、この文章並びに行間を読み取って具体的に聞いてみたいと思います。  それは、私がこの前申し上げましたいわゆる国税収入における構成比の割合で聞いてみたいと思いますが、総理のお考えとしては所得税課税は大きく下げなきゃならぬ、資産課税や消費課税を大きくやっぱり上げたいんだと、こんなお気持ちをお持ちだと思います。  そこで、所得課税の構成比、現在六九から七〇になっていますが、これを大体五〇%台の方向を目指す、こういうふうに所得課税では総理はお考えになっているんじゃないか。  他方、資産課税については、現在七、八%でありますが、この比率を近い将来に二倍程度に引き上げていきたい、こういうお気持ちを総理がお持ちになっているんではないだろうか。  さらに、総理としては、消費課税の構成比については、現在二〇ないし二三でありますが、これをできるだけ早い機会に三〇%台の構成比に引き上げていく、こんなお考えを総理がどうもお持ちだというふうにこの文章を読むわけですが、どうですか。
  226. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 安恒委員は、あるいはそのほかに税制調査会のたたき台と申しますか、素案とでも申しますか、そういうことも念頭に置いてお尋ねになったのではないかという感じがいたします。したがって、この素案そのものは改革の大まかな方向を示したものでありますので、具体的な内容については今後さらに税制調査会において検討が行われることでございますので、具体的な計数について素案の中でも申し上げておりませんし、私から申し上げることは非常に困難なことでございます、原則的に申しますならば。だから、税制改革の方向としては御指摘のような所得課税の軽減、それから資産所得課税及び消費課税の充実といった方向に向かって、その方向に向かって検討が行われておるのではないかというふうに考えられるんじゃないかと私も思います。  そこで、ずばり例示されました計数等は、それは総理そう考えているんじゃないかという、言ってみれば大変大胆な提案でございます——大胆な提案じゃなく、どう言った方がいいんでしょうか、大胆な御推察であるというようなことでございましょう。したがって、税制改革に関する私に対する貴重な御推察から伴う御質問といいますか、御推察から伴う提言とでも申しますか、あるいは貴重な資料の提供とでも申しますか、私その大胆な考え方をそのとおりですと言う勇気は今のところございません。まさに私に対する一つの貴重な推察に伴う御意見ということで受けとめさせていただくというのがやっぱりこれは答弁の限界じゃないでございましょうか。
  227. 安恒良一

    ○安恒良一君 これは誤解がないようにしていただきたい。私の考え方や私の意見を提案しているんじゃないんですからね。ここだけはっきりしておきたい。私は、総理総理立場で言いにくいだろう、そして総理が二回にわたって文章を出されています、数字も出されています、そういうものを私なりに読み取って、あなたがこういうふうにお考えになっているんじゃないでしょうかということを聞いたんです。なぜかというと、もう少し、少なくとも構成比ぐらい言う勇気を持たないと税の改革は総理できませんよ。大平さんは大平さんなりに大胆な提案をされた、中曽根さんもやや暴走ぎみであったけれどもかなり大胆な提案をされたんですよ。あなたになって、せっかくあなたがこういうことを言われたから、それを私なりに読んで、こういうふうにあなたは考えているんじゃないですかと私はこう聞いたんです。そうしたらいつの間にやら何か私の意見にすりかえてみたり、貴重な何とか、そんなごまかしでは困るわけです。  しかし、これ以上これで時間をとれません。とれませんから、税の改革を一国の総理としておやりになるならもっと明快に、少なくとも構成比をこう変えたい、それで国民はどうだと、それで国会議員の皆さん論議してもらいたい、こんな勇気を持ってもらいたいものですがね。どうですか、御勇気はありませんか。
  228. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私に成りかわって——成りかわってという表現はおかしいんですが、成りかわって推察に基づいて、君はこう考えておるだろうということでございますので、私はしかし現時点において答弁の限界ではないかとお答えしたわけでございますが、そういういわゆる所得、資産、消費の均衡というものに対して一つの見解というのをある時期に示さなきゃならぬというのはこれは当然のことであろうと思っておりますが、きょう、今そこまで私の頭が整理されていない、これは税調その他の関係もございますが。今のような御議論をいただけることは大変ありがたいと思います。
  229. 安恒良一

    ○安恒良一君 大変不満ですが、この問題はまたこれについていずれ、こっちは好むところではありませんが、税制国会等もあるでありましょうから、そのときには十分議論をしなきゃならぬと思っています。  そこで、先ごろ税制調査会が新型間接税の二類三方式を発表されました。  大蔵大臣にお伺いしたいんですが、EC型付加価値税と昨年の売上税の違う点、同じ点。それから一般消費税タイプと、五十四年の大平内閣が仮称一般消費税ということを言われたんですが、それの異同。それから取引高税と、昭和二十四、五年わずかの期間実施されていますが、いわゆる売上税の違い、この点について御説明を願いたいと思います。お考えを聞かせてください。
  230. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 主税局長からお答え申し上げます。
  231. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 御承知のように、素案は二つの方式と申しますか、二類型三つの方式と申しますか、今御提示のようなタイプを素案としてまとめて提言してございます。  それは、大きく分けますと累積を排除するか排除しないかというところで分かれるわけでございます。累積を排除するという場合に、それを税額票によってやる書類による方式、こうした方式があるわけでございます。売上税は、税額票によって累積排除をしていました。EC型は要するに書類でこれを累積排除をするということでございますから、大きなグループとしては、EC型と売上税というのは、書類によって累積を排除するということにおきましては、一つの同じグループと申しますか、そこに売上税が含まれるということは言えるのではないかと思うわけでございます。  もう一つ累積排除を行う方式としては、そうした書類でなくて、自己記録と申しますか、そこの帳簿によって排除するというのがございますが、それはEC型と売上税とはその点では違っておるわけでございます。  そういたしますと、かつての一般消費税(仮称)との関係が御指摘のような点として出てまいるわけでございますが、そのように書類によらずに累積排除を行うというようなことでございますと、その点では五十四年の一般消費税(仮称)、これに似たものになるということではないかと思います。  それから、累積を排除しないということは、これはかつて昭和二十三年に行われました取引高税の部類に大きくは入る。  非常に筋、方向として申し上げますとそういうことでございますが、しかし個々具体的にいろいろな細かい点を見ますると、それはいろいろ同じところもあり違うところもございますが、考え方としてそれだけまず申し上げました。
  232. 安恒良一

    ○安恒良一君 私が指摘した三つのタイプの比較は、どうも私は本質的な違いはないと思うが、三つずつに分けて分類して聞きました。  そこで、今度は大蔵大臣に聞きたいんですが、政府がもしも導入するとすると、新型間接税はこの三類のうちどれだということでしょうか。これ以外のタイプについて、例えば製造者庫出税というのもございますが、これ以外のタイプということはお考えにならないんでしょうか、どうでしょうか、そこを大蔵大臣お聞かせください。
  233. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 税制調査会に諮問をいたしまして、今の段階における税制調査会の素案ということで、これから世論に聞こうとしておられるわけでございますので、恐らく税制調査会としてはこの素案に至るまでの間に幾つかのその他の可能性を一応捨象せられたものと考えてよろしいのではないか。これから世論がありまして、よほどまたあれば別でございますが、作業の流れはそういうことになってきているのではないか。  そこで、そういうことから世論の反応があり、また私どもの党内でも実は税制調査会がございまして、ここでは今いろいろな各団体、業界を初め団体の意見をフリーに伺っているところでございます。ここはここでまたどういう大まかな印象が出てまいりますか、これはまだこれからのことでございますが、そういったようなことを総合しながら政府として最終的に国会に御提案をする内容を定めたいと思っておりますが、ただいま私どもの党内の方のそういう作業はまだほとんど進捗をいたしておりませんので、これについて的確に申し上げることができませんが、政府税調の方はただいま言われましたような流れに入っておるかと存じます。
  234. 安恒良一

    ○安恒良一君 いや、大蔵大臣、私が聞いているのは、政府税調が一応三類型を出したんだから、政府がもしも導入するとすればこの三瀬のうちのどれかということになるんでしょうか、それともまた新しい方法まで政府としてはお考えでしょうか。あなたたちのことを聞いているんですよ。
  235. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そこで、政府といたしましては、まず政府税調が最終的にどのような答申をなさるか、これからのことでございますが、流れは安恒委員の言われたような流れで考えておられると思いますが、私どもの党内にはまた党内で別途にこの問題について検討をしている税制調査会がございますから、そういう意味では最終的にその間の調整を図る必要があるかもしれない。したがいまして、最終的に政府がどういう案を御提案するかということをただいま申し上げるのは少しまだ早い段階だと考えております。
  236. 安恒良一

    ○安恒良一君 まだ少し早いとかいろいろ言われますけれども、もうこの通常国会において、予算委員会はきょうあすで終わりなんです。その予算委員会にあなたたちは何一つ、何を聞かれようと政府税調、自民党の税調、これで逃げ切ろうとされて、これでは国民は理解をしない。  そこで、総理にお聞きしたいんですが、総理は衆参の予算委員会間接税六つの懸念ということを御発表されました。この三つの方式のどれが一番総理が考えられている懸念を解消しやすいのか、もしくは総理立場で理想に近い税タイプは、税調が中間答申していますこの三つのうち、どれが総理がお考えになっているタイプに近いのかお伺いしたいんです。
  237. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今のは素案と懸念との関係というようなことでございましょう。したがって、私も申し上げておりますように、議論を積み重ねることによって和らぐものや、税制全体あるいは財政全体の中で考えていくべきものもあって、できるだけ多くの国民が納得し得る税体系を確立するために、こうした懸念に対して十分配意してまいりたいということを正式に申し述べておるわけであります。そこで、そういう懸念というものに配慮して望ましい税制のあり方について検討が行われてきておるんだろうというふうに思っております。  そこで、その素案の内容について今政府として、私総理大臣でございますから、政府としての何といいますか、評価を加えるということは、今は適当な時期ではないというふうに考えております。  だから、基本的に間接税というものは逆進性があるんじゃないかとかというような問題については、共通したものでございますので、したがって大きな差はないじゃないかなと。だから、やっぱりこれから地方公聴会もございましょうし、いろんな議論がなされる中で理解が深まっていくんじゃないかなというふうに思います。  ただ、一般論として、三つのうちで、今まで議論いたしましたインボイス方式というのはいわば大変事務量が多くなるんじゃないかとか、あるいは事務量の点においては第三類型の方が一番平易ではないかとか、いろんな議論が一般論としてはあり得ると思っておりますが、今六つの懸念の中で一番少ないのは大体これでございますと言うだけの自信はございません。
  238. 安恒良一

    ○安恒良一君 こういう質問をすると途端に、税でおれは自信がないと言う、ある場合には大蔵大臣で税は詳しいと、こういうふうにカメレオンのように変わられるわけですが、私は税制議論で何回も言うように、税調が検討中であるとか、予見を持たしてはいけないとか、こういうもっともらしい言葉の逃げの一手でほぼ今日まで、この国会を全部それで総理大蔵大臣も今乗り切ろうとしています。しかし、国民国会が疑問としてただすことに答えない、そんな態度で本当に税制改革はできるんでしょうか。  というのは、既に税調が間接税の問題として三つのタイプを出したんですから、この三つのうちどれが総理がお考えになっている六つの懸念を解消しやすいのか、それぐらいのことについても答えられないでどうして、税が詳しいとか、大蔵大臣を長くやったとか、税改革ができるんでしょうか。これは幾ら言ってもしようがありません。  そこで、一つ一つ解明していきたいと思いますが、まず事の正確を期すために、総理が読み上げられましたところの六つの懸念を、主税局で結構ですからもう一遍正確に言ってみてください。
  239. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 整理して申し上げます。六つ。  第一点、逆進的な税体系となり所得再分配機能を弱めるのではないか。  二、結局中堅所得者の税の不公平感を加重するのではないか。  三、所得税がかからない人たちに過重な負担を強いることになるのではないか。  四、いわゆる痛税感が少ないことから税率の引き上げが安易になされるのではないか。  五、新しい税の導入により事業者の事務負担が極端に重くなるのではないか。  六、物価を引き上げインフレが避けられないのではないか。  項目として申し上げるとそんなところでございます。
  240. 安恒良一

    ○安恒良一君 それじゃ今の順に従って、一ということで聞いていきます。  まず、一の御懸念に対して三つのタイプの違いをひとつ、総理、あなたの御懸念ですから説明してください。
  241. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今、大蔵大臣の方がこれは私がやりましょうと、こうおっしゃっていただきましたので、そのようにさせていただきます。
  242. 安恒良一

    ○安恒良一君 総理の懸念ですよ。
  243. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まず第一は、これは結局税体系全部、一つの税だけでなく税体系全部との関連及びそのような歳入がどのような歳出になるかということによって決められるべきものだと思いますから、この懸念はこれからのやり方でもって解消することができると思います。三つのいいずれでもそうだと思います。
  244. 安恒良一

    ○安恒良一君 二番目。三つのタイプ別に不公平感加重の影響差を答えてください、影響差を、この三つのタイプ別に。
  245. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今はタイプが示されただけでございますから、おのおのがどういう構造を持つ税になるかがわかりません。その段階におきましてはどのタイプにおきましても二の観点からいえば変わりはないと思います。
  246. 安恒良一

    ○安恒良一君 三番目。三つのタイプ別に低所得者層への過重負担の程度を答えてください。
  247. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは、まず一つは税率いかんによることでございます。あるいは非課税、免税点があるかどうかにもよることでございます。これはいずれもまだあの素案では出ておりません。  それからもう一つは、同時に行われるべき所得税等々の税改正がどのような構造になるかによりまして答えは異なってくると存じます。
  248. 安恒良一

    ○安恒良一君 次に、痛税感が少ないこと。
  249. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 痛税感が少ないことから税率の引き上げが容易になるのではないか。——これも私は同じであると思います。  つまり、申し上げたいことは、いずれの場合でもそれに相応する所得課税が、あるいは住民税の軽減がなければ、国会においてこの税率の引き上げというものを安易にお許しになるとは考えられません。そういう意味ではどのタイプをとりましても同じ問題を持っておるということかと思います。
  250. 安恒良一

    ○安恒良一君 三つのタイプのどれが事務負担が極端に重くなり軽くなるんですか。
  251. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただ単に事務負担というだけのことでございますと、取引高に課税をするという方法が一般的には一番簡単であると思われますが、この点は先般この席で税調会長が言われましたように、安恒委員の第二の御質問とも関連いたしまして、不公平ということと簡素ということが実は必ずしも一致しないということのケースがこの二と五の関連であろうかと存じます。
  252. 安恒良一

    ○安恒良一君 三つのタイプのうち、インフレへの影響度合いはどうですか。
  253. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これも、どのように免税点を置き、あるいは非課税品目を置くかということの違いがいわば物価水準にどの程度の影響を与えるかということでございますから、いずれの方法も最終消費者に転嫁される限りにおきまして、三つのタイプは同じ影響を持つものと。したがいまして、課税、免税点、非課税品目、非課税あるいは税率等々がこれを決定するものかと思います。
  254. 安恒良一

    ○安恒良一君 総理大蔵大臣がかわって答弁されましたがね、どうも私の質問に的確に答えてくれていません。私は、三つのタイプの新型間接税別に総理がお示しになった六つの疑問がどうなるのか、それから三つの疑問の解消に努めると総理はおっしゃったんですから、せっかく税調のたたき台がもう出たんですから、疑問の解消により効果の高い種類の税を採用すべく総理立場で考えて、私は説明をしてもらいたかったんです。ところが、非常に詳しいと言われる総理が何一つ言われないで、宮澤さんからの……。  私はやはり、納税者に対する、もしくは国会議員に対する明確な回答をしないままこの国会を乗り切って、そして新型間接税を導入しよう、そういう総理の悪巧みであってはいけないと思うんです、失礼ですが。悪巧みであってはいけない。少なくともあなたが六つの疑念を堂々と言われたんですから、それと三つの関係についてはいま少し、今の宮澤さんのような、これまた大変失礼ですが、通り一遍の御答弁では、私はこれより以上議論が進まないと思うんです。そういう点、総理どうですか。
  255. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まずひとつ、税金に詳しいと私は思ったことは一遍もございませんので、いたずらに大蔵大臣としての馬齢を重ねておったと言うにとどまるというふうに、私自身はいつでも自分にそう言い聞かせております。  それがまず一つでございますが、いわゆる六つの懸念とは、本来間接税の持つ共通的な懸念というものを実は私として整理して申し上げたつもりでございます。したがって、これがさらに税率がどうなるかとか、あるいはその事務手続の問題等についてどのような簡素な方法があるのかとかいうような具体論が煮詰まった段階で、三つの類型についてのそれぞれの特徴を御説明する環境が熟すのじゃないかと思いますので、私自身やはり六つの懸念というのは大型間接税という言葉から来る六つの懸念を整理してお話しいたしましたので、今の素案に対して一つ一つどうかというのは、いま少し詰まっていかないと、事務量そのものの問題でも御説明することはできないんじゃないかなと思います。
  256. 安恒良一

    ○安恒良一君 総理、あなたは間接税をつくるに当たって、重要な物差しの一つとして、六つの疑問を我々国会に言われたんじゃないですか。ですから、もう既に税調からはタイプが出たんです。税率が決まっていないからといって、じゃ六つの疑問が全部答えられないなどということではお粗末限りないんですよ。  ただ、あなたはどうしてもこのように論争を避けられる。論争を避けたあげく、最後は政府・自民党の案が出れば、それを国会に出して、国会の多数によって押し切ればいい、こんな単純な考えでシャウプ以来の大改革ができますか。シャウプ以来の大改革をやろうとするならば、あなたが考えていることをどんどんやはり国会の中において私たちにお示しくださる、それに基づいて我々もどんどん勇気を持って議論する、その中に与野党のコンセンサスというのが私はあると思うんです。非常に私は、この点は残念でなりません。  ですから、結果的に言うと、大平、中曽根両内閣が提案をしながら否定された一般消費税、売上税とほぼ同じ内容のたたき台を税調が出しているんです、率直に言って。私は税調も非常に不見識きわまりないと思っています。総理は、売上税や一般消費税の導入の失敗を、税の仕組み、構造等について国民の理解が得られなかったからだと判断し、これを反省したとこの前、私どもの久保委員の質問に答えられているんですね。それならそれのように、私は国会論議というものを深めていかなきゃならぬと思うんです。  若干仕組みさえ変えればいわゆる国民合意が得られるなどと思われておったら、これは大きな誤りであります。私は、今度税調が出したいわゆる税の仕組み、構造を国民が理解をすれば理解するほど逆に総理がおっしゃる六つの疑問が大きくなってきて、新型間接税に対する反対が強くなってくることは間違いないと思います。そこで、私はこの際はっきり指摘しておきます。  総理の基本認識の誤りと六つの疑問は具体的な新型間接税の三つのタイプで何一つ中和されない。あなたがおっしゃったところの疑問は何一つ中和されていないということを指摘して、もうこれより以上これに時間をかけるのも、どうしても中に踏み込もうとされませんのでもったいないので私の考え方を申し上げて、総理、何か考えがあったら言ってみてください。
  257. 竹下登

    国務大臣竹下登君) だから、いつも申しますように、間接税というものの持つ一般的な懸念、特にそれが大型間接税というそもそもが定義を出せということから私なりに苦心しまして、大型間接税というものの持つ懸念の側からこれを説明させていただいたと、こういうことでございますので、結局私が中和されるであろうと言うのは、間接税の税目だけではなく、いわゆる所得税でございますとか総合した税体系の中で中和されていく。それから、もちろんそれには財政支出の面で中和されるものもあるというふうに御理解をいただきたいものだと思っております。が、ここまで議論、引き出していただいたにつきまして、私もそれは政府税調、いずれ答申をもらえる時期もあるでございましょうから、もっとしっかりしたことを申し上げる時期は当然あり得るというふうに思っております。  それからもう一つ、その仕組み、構造等について理解を得られなかったというのは、これは当時の国会の議決の文章そのままでございますので、これは私のみが感じたことではなく、みんなが感じたことではなかったかなと思っております。
  258. 安恒良一

    ○安恒良一君 また改めてこの問題はやることにしまして、次に予算制度の乱れについてちょっとお聞きしたいんです。  五十三年度から十年にわたって、財政法十一条を無視しまして、歳出予算は四月から翌年の三月まで、税収は六月開始の五月終了という形になっているのが実態です。これはどうもゆがんだ予算の形態ではないかと思いますが、大蔵大臣、どうでしょうか。
  259. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 今、税収については六月まで、歳出については四月から三月までと、こういうふうに言われましたが、歳入歳出ともに予算年度は四月から三月まででございます。  実は、五十三年度に制度を変えましたのは、出納整理期間中に収納されるものの帰属年度をどうするかという点につきまして改定をいたしまして、当時四月までとありましたものを五月までと改めたわけでございまして、そういったことで四月、五月の出納整理期間に収納されるものが歳入になるという意味で、出納整理期間中の歳入分がふえているということは事実でございます。
  260. 安恒良一

    ○安恒良一君 もちろん財政法十一条を変えられたわけじゃないんですからね。しかし、今も局長が言われたように、五十三年度、財政難を理由に当時税収の二カ月先食いをやったわけです。この結果、予算の会計年度と税収の間にずれが起きていることは事実です。ですから、財政法上、会計年度が終わって出納整理期間中の四、五月に税金ががばっと入ってくるわけです。この実態を私の要求した資料に基づいて、金額と年間税収総額に占める比率、これを報告してください。
  261. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 税収の話でございますが、決算ベースの数字の話でございますので私から御説明いたします。  出納整理期間中に国税収納金整理資金から一般会計に歳入として組み入れられました額は、五十六年度九兆三千九百十二億円でございまして、五十六年度の税収総額に対する割合は三二・四%であります。  以下、年度を追ってまいりますと、五十七年度が九兆七千百四十六億円でございまして、三一・八%、五十八年度が十兆七千六百九十三億円、三三・三%、五十九年度が十一兆八千七百七十億円、三四・〇%、六十年度が十二兆八千八百六十四億円、三三・七%、六十一年度が十五兆一千四百五十三億円、三六・二%でございます。
  262. 安恒良一

    ○安恒良一君 そこで、大蔵大臣に聞きたいんですが、今もお聞きくださったように、税金の三〇%から三五%近いのがいわゆる会計年度が終わって入ってくるんですね。こういうことは財政運営上必ずしも私は好ましいと言えないと思いますが、どうでしょうか、これが一つ。  それから、いわゆるずれ込む税金が会計年度制度からいっても私は少なければ少ない方がいいと思いますが、この二点について大蔵大臣どうお考えですか。
  263. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 実は、先ほどから税収見積もりについて安恒委員からいろいろ御追及がありましたが、私がそれにまだ時期が早いと言って明確にお答えができない、しかしもう予算委員会予算審議も終わるぞと、通例、年度の終わりには本当に予算審議を終わられますから、そのときまでに税収の非常に大きな部分が実はわかっていないということは、御審議立場からも、御審議に応じる立場からも、確かに余り都合のいいことではございません。  おっしゃいますように、昭和五十三年度でございましたか、当時の財政事情もありまして、こういうことにさせていただきました。これは別に原則に反したわけではございませんで、御承知のようにいわゆる納税義務が発生した日のものはその年度の歳入にする、こう考えたわけでございますから、したがいまして三月期の法人税というものは五月になりますけれども、それは発生した年度のものになるという考え方はそれで一貫をしておることは事実でございますけれども、年度が終わりましてもその年度の収入のかなり大きな部分がわからない状況にあるということは御指摘のとおりであります。
  264. 安恒良一

    ○安恒良一君 私は、予算制度の建前、それから財政法上の建前からいっても、決してこういうことは好ましいことではないというふうに思うんですが、大蔵大臣から明確な御答弁をいただけなかったことは残念です。  そこで次に、出納整理期間中にずれ込んだ法人税の金額、それからそれが年間法人税総額に占める比率等々、私の要求した資料に基づいて報告してください。
  265. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 法人税につきまして五十六年度の出納整理期間中に繰り入れました額は四兆一千百七十億円でございまして、法人税収の年間総額に対する割合は四六・七%でございます。  以下、年度を追って申しますと、五十七年度が四兆一千六百三十三億円、四五・六%、それから五十八年度が四兆八千六百七億円、四九・五%、五十九年度が五兆五千四百五十一億円、四八・九%、六十年度が五兆五千五百九十九億円、四六・三%、六十一年度が六兆七千八百三十五億円、五一・八%でございます。
  266. 安恒良一

    ○安恒良一君 それから、出納整理期間中の税に対する法人税の比率をちょっと言ってみてください。
  267. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 出納整理期間中の税収総額に占める率は、五十七年度が四二・九%、五十八年度が四五・一%、五十九年度が四六・七%、六十年度が四三・一%、六十一年度が四四・八%であります。
  268. 安恒良一

    ○安恒良一君 総理大蔵大臣、お聞きのとおりでありまして、いわゆる出納整理期間中に年間に納められる法人税のほぼ五割が入ってきているんですね。やはりこのことは問題ではないか。また、今度は出納整理期間中に入ってくる全体の税収の約半分が法人税で占められている。  税収年度区分変更前の出納整理期間中にどれだけずれ込んだか、こういうことを私なりに調べてみましたら、大体税収総額の二〇%ぐらいだったんですね。それからまた、出納整理期間中に入ってくる税収に占める法人税の割合もせいぜい二〇%程度でした。  ですから、やっぱり会計年度の規定を厳守して、歳入も歳出も四月一日から翌年三月三十一日にすることが必要じゃないでしょうか。政府はぜひともこのゆがみを正すという方向で、この点について総理大蔵大臣十分御検討される用意があるかどうかお答えを願いたいんです。
  269. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 理論としては一貫をいたしておるつもりでございますし、法律にももとより反しておらないのでございますけれども、先ほどから申し上げておりますようなことで、これは確かになかなか、何と申しますか行政的にもいろいろ問題はございます。ございますことは認めなければなりませんと思いますが、これを現実に変えるとなりますと、もう御承知のように非常に大きな歳入を必要とする年度が出てくるわけでございまして、問題があることはおっしゃるとおり、私もそう考えております。
  270. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる納税義務の発生、まあ論理性はあると思いますが、先般来から議論されておる、言ってみればこの期に及んでなお前年度のいわゆる税収が把握できない、可能な限り近ければ把握の度合いも増してくるんじゃないかという論理はあり得るというふうに私も思いますが、しかし今大蔵大臣からもお答えがありましたように、この区分を仮に変えるということになりますと、それは大変な財政支出を伴う結果になりますだけに、私は非常に難しい問題だなと、現実そういうふうに考えております。
  271. 安恒良一

    ○安恒良一君 これから聞くこととも関連しますが、今日のような財政状態のときにこそ、やはりある程度こういうものを正常に戻さなきゃいけないんじゃないか。前にたまたま二カ月いわゆる先食いしたことから起こったことですから。  そこで、財政法十一条を厳守しないことによって歳入と歳出の時期のずれを大きくしています。しかし、四月から予算は発効するわけですから、予算に計上された支出をしなきゃならない。支払いの金がないという状態が四月、五月と続くわけです。この収支の時期のずれを調整するのが財政法第七条の大蔵省証券または一時借入金という制度になっています。  私の要求した資料に基づいて、最近の四、五、六の三カ月、各月の大蔵省証券発行額を説明してみてください。
  272. 足立和基

    政府委員(足立和基君) 五十六年度の大蔵省証券の四月の発行額が五兆二千三百八十億円、五月が二兆一千五百三十億円、六月が三兆四千百十億円。以下、五十七年度でございますが、四月が四兆八千四十億円、五月が四兆三千二百億円、六月が四兆七千三十億円。五十八年度でございますが、四月四兆四千八十億円、五月四兆七千五十億円、六月五兆七千七百八十億円。五十九年度、四月六兆四千三十億円、五月三兆二百五十億円、六月五兆七百八十億円。六十年度、四月五兆三百億円、五月四兆七千九百二十億円、六月四兆一千六百二十億円。六十一年度、四月七兆四千五百五十億円、五月四兆七百二十億円、六月五兆二千九百九十億円。六十二年度、四月四兆九千八百二十億円、五月二兆九千四百七十億円、六月二兆三千四十億円となっております。
  273. 安恒良一

    ○安恒良一君 そこで、大蔵大臣、実数は御承知のとおりですが、やはり年度当初の大蔵省証券発行額が大きくなっています。これはやはり税収の年度所属区分変更との関係が大きいはずだと私は思います。私も、年度所属区分変更以前の大蔵省証券の発行状況は数字で調べてみました。はっきり言えますのは、やはりこの制度をとるようになって国庫収入の大きいずれが歴然として起こってきておると思う。このことは私は予算の制度からいうとゆがみではないかと思いますが、大蔵大臣のお考えをお聞かせください。
  274. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 税収の所属年度区分を変更いたしましたからその限りでその間国庫の資金繰りが窮屈になるということは、これは否定のできないことでございます。したがって、それは大蔵省証券の発行等によって、泳ぐといいますか、対処する。そういうことになって、そのうちどの部分が税収の年度区分の変更によるものか、歳入歳出両方の動きで左右されますから的確にこれとは申し上げられませんが、大数的に観察いたしましたらそのとおりと思います。
  275. 安恒良一

    ○安恒良一君 私は、この財政法七条の大蔵省証券の発行は財政法十一条を前提にしていると思います。すなわち、季節的要因による収支のずれを調整するというのが本来の趣旨ではないでしょうか。それを税収が苦しいからということで二カ月先食いをして、そしてそのことが財政制度をゆがめてしまった、そしてこれを、いわゆる収支のずれから大蔵省証券で金繰りをつける、こういうやり方は大蔵省証券の使い方を逸脱しているのではないかと思いますが、大蔵大臣、その点どうでしょうか。
  276. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 財政法では、その年度の歳出の財源にはその年度の歳入を充てなければならないということが要求されているわけでございまして、まさにその要求は満たしているわけでございます。  ただ、たまたまその歳入が、四月、五月の歳入が多いということで、結果として資金繰り証券が多額に発行されざるを得なくなっているということは事実でございますが、制度の趣旨からは外れていない。それはたまたまそういうことになっていることは事実でございます、そういうことを申し上げたいと思います。
  277. 安恒良一

    ○安恒良一君 制度の趣旨から外れていないとか、たまたまなんて、そんな答弁は全然納得できません。しかしこれは、時間の関係で先に進みます。  それじゃ大蔵省、五十八年—六十二年度で結構ですから、四、五、六各月の大蔵省証券の利払いの金額をひとつ報告してください。
  278. 足立和基

    政府委員(足立和基君) 先ほど申しました大蔵省証券の発行額につきまして、平均発行期間及びその当時の割引歩合をもとに計算をいたしますと、五十八年度、四月が百七十九億円、五月百九十一億円、六月二百三十四億円。五十九年度が、四月二百四十六億円、五月百十六億円、六月百九十五億円。六十年度、四月百三十六億円、五月百三十億円、六月百十三億円。六十一年度、四月二百五十二億円、五月百二十一億円、六月百五十八億円。六十二年度、四月六十五億円、五月三十八億円、六月三十億円ということになります。
  279. 安恒良一

    ○安恒良一君 総理大蔵大臣、お聞きのとおり大変に多額の利子を払っています。私もこの全部が税収の年度区分を変えたためだということを言う気はありません。しかし、その影響が大きいことだけは今までの質問で明らかになったと思います。大蔵省証券の利払いは、結局は税金で納税者が負担するわけです。政府が年度区分を変えたしわ寄せが納税者にしわ寄せをされる。しかも出納整理期間中に五割に近い法人税がずれ込んでいるというのが一つの大きい問題点だと思います。そのずれ込みの部分に対しても大蔵省証券をやっぱり発行して、そしてその利払いは国民にツケが回ってきている。  そこで私は総理大蔵大臣にお聞きしたいんですが、本委員会でも同僚委員からいわゆる税収年度区分を正すことについて質問がありました。ところがあなたたちは大変消極的な答弁を実はされたわけです。私も、確かにもとに戻すことの苦労や困難はあると思います。しかし、予算制度をゆがめた上に利払いを納税者に押しつけて構わないということでは、政府の言い分としては私は済まないと思います。  そこで、この点について大蔵大臣総理からの答弁をお聞きすると同時に、私は提案があります。  それは、私のこれまでの質問をぜひ財政制度審議会に報告していただきたい、そして六十四年予算編成までにできれば財政制度審議会から結論を出していただきたい、こういうふうに思いますが、その点どうでしょうか。——あなたに聞いていない、二人に聞いている。
  280. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 技術的な問題で、余計な財政負担というお話がありましたのでちょっと御説明したいと思うんですが、今御指摘がありましたように、出納整理期間の関係で蔵券の発行高がふえまして、その結果割引料がふえているということは御指摘のとおりだと思います。その分が幾らということは明定できないにしても、確かに傾向としてはそういうことはございます。  ただ、このことは、実は五十三年度の財政処理との関連で出てきた問題でございまして、この出納整理期間の制度の改正によりまして、当時生み出された金が二兆円でございます。もしこれがなかりせば、これは特例公債を発行せざるを得なかった。しかも当時の起債市場は今と違って非常にタイトでございまして、悪い条件でしか発行できなかったということを考えますと、しかも一たび発行された特例公債はその残高がずっと残っていたということを考えますと、全体としての税負担ということを考えますと、決してあのときの処置は間違っていたのではなかったのじゃないかなと、こういうふうに思われます。今後ともこの制度をとるべきかどうかという点につきましては先ほど大臣からの答弁がございましたが、当時の処理としては間違っていなかったのではないかなというふうに思いますので、そのことを申し上げておきます。
  281. 安恒良一

    ○安恒良一君 そんなことは聞いていない。
  282. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今のことは確かに事務方としてはちょっと申し上げたいことであったろうと思います。  それで、問題があることはもうるるお話しになりましたとおりでございますので、私どもでもいろいろ検討はしなければならないと思いますが、何分にも非常に大きな金額に関係をすることでございますから、仮に財政制度審議会においてこれは甚だよくない、直せと言われますと、私どもその直す具体的なすぐの方法を思いつきません。というのが実情でございますから、今後の財政の事情の変化等も見ながら私どもでよく検討させていただきたいと思います。
  283. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは今大蔵大臣からお答えになったとおりであるというふうに申し上げるべきであると思います。
  284. 安恒良一

    ○安恒良一君 私は、今かなり財政事情も好転をしてきているときですから、そんなことも含めてぜひともやはり、財政制度審議会というのもあるんですから、そこの意見も聞いてもらいたい。あなたたちは都合のいいときには審議会をと言って、都合が悪くなると聞かない。今は税調税調と言っているじゃないですか。何のための財政制度審議会ですか。そういうことについて国会でこれだけ野党側からいろんな質問が出たら、それを謙虚に、聞いてみますぐらいのことの謙虚さがあっていいんじゃないですか。どうですか、大蔵大臣
  285. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いやそれは、安恒委員に申し上げているとおり、これには問題があるということは私どもがもう実は知っておるわけでございます。審議会に聞きましたら恐らく安恒委員のおっしゃるような御意見がきっと多いんじゃないかと思いますが、さてそれならば、そういうお答えがあったのでいざそれを実行するかということになりますと、その実行が容易でないものでございますから、もう少し時期を見さしていただきたいと、こう申し上げておるわけです。
  286. 安恒良一

    ○安恒良一君 次の問題に行きます。  実は私、前回の質問で外国人労働者問題について質問しました。そのときに私は、単純労働者への原則禁止、労働許可制度の導入、罰則の三点を指摘しました。その後、労働省の外国人労働者問題研究会が先月二十六日報告書を提出していますが、その報告書の要点、それからその中での特に特徴的な点について説明をしてください。
  287. 岡部晃三

    政府委員(岡部晃三君) 去る三月二十六日提出されました外国人労働者問題研究会報告書の要旨でございますが、まず第一に、単純労働者につきましては、その受け入れが我が国の雇用、労働市場あるいは社会経済に及ぼす影響を考慮いたしまして、従来どおり受け入れないとする方針を維持することが適当であると、こう言っております。  第二点といたしまして、事業主を通じまして、すなわち事業主に責任を持たせるという形において外国人労働者の適正な雇用管理を図りますとともに、不法就労者の防止を行うという新たなシステムといたしまして、労働許可制度をさらに一歩進めまして雇用許可制度を設けるべきことと言っております。  それから第三点といたしまして、この制度のもとで国内において外国人を雇用しようとするときには、個別にあらかじめ行政庁の許可を得なければならない。その雇用許可なくして外国人を雇用した事業主、あるいは無許可の雇用をあっせんしたブローカー等については、罰則を設けてこれを適用すべきことという三点でございますが、さらに、国際的な動向も考慮いたしまして、相当程度以上の知識、判断力あるいは技術、技能等を要する専門的、技術的あるいは管理的な職業であるもの、あるいはまた、留学、研修修了後の実務経験を必要とするもの等につきましては、これは現行の受け入れ範囲を見直して拡大する方向で検討すること。  以上四点でございます。
  288. 安恒良一

    ○安恒良一君 各大臣、お聞きのとおりのポイントが答申として研究会から報告されたわけです。  その中の一番重要な問題としては私は雇用許可制度の創設だというふうに思います。そこで、これについて法務大臣、外務大臣、労働大臣、通産大臣、各大臣から忌憚のない御意見を聞かしていただいて、最後に総理のお考えを聞かしてください。
  289. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 外国人の不法労働に関しましてはいろいろと議論がございまして、過般来そうした御意見も拝聴しておるわけでございますが、今の労働省の研究会が研究いたしましたことはこれは評価しなければならない、かように思っております。
  290. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) ただいまの労働省の研究会の提言で、第一に単純労働者を受け入れないという点については賛成でございます。  第二点、第三点につきまして、特に雇用許可制度を新たに設けるという点でありまするが、現行の入国管理は、アメリカやあるいはカナダ、オーストラリア、アジア諸国と同様に、出入国管理法に基づく在留資格制度をとっておりまして、西欧では皆国境を接しておりまするので、出入国管理は開放的でありまして、ほとんど管理をしておりません。そして在留管理を厳格にしておりまして、就業許可制度をとっておるという次第であります。我が国で新たに雇用許可制度をとりますると二重にチェックをすることになりまして、極めて厳しいことになりまするので、この御提言は現行の在留資格制度との調整を慎重に検討しなければならない、かように存じます。
  291. 中村太郎

    国務大臣(中村太郎君) 研究会の今度の提言の中の構想というものは、労働省としましては、今の外国人労働者の受け入れについて、労働市場の状況等にも照らして適切に受け入れをするということ。それからもう一つは、今の不法就労の実態にかんがみまして、これをより効果的に実効あらしめるための方策としましては極めて貴重な提言であるというふうに承知をいたしております。
  292. 田村元

    国務大臣(田村元君) この研究会の報告書は非常に傾聴に値する面と、それから、もうちょっと事務的に詰めさせなきゃならないかなと思う点があります。  例えば、有能な外国人労働者を受け入れるその秩序立てたり管理の面、そういう点では私傾聴に値すると思うんです。ところが、この許可制度につきましてもうちょっと事務的に詰めさせないとと思うのは、実は私も労働省で政務次官や労働大臣をやったもんですから、労働省がどういうことを考えておるのかということもわからないでもありませんので、もうちょっと詰めてみないかと、そして報告しろと、こう言ってございます。
  293. 安恒良一

    ○安恒良一君 総理、後からで結構でございます、少し聞きますから。総括的に答えてください。  今お聞きをしたように、特に法務大臣と労働大臣の間にかなりのニュアンスの違いがあるんです。  そこで、ちょっと法務大臣にお聞きしたいんですが、法務省は入管法の改正を新聞で発表されています、私は見ました。その意図はどこにあるでしょうか。
  294. 熊谷直博

    政府委員(熊谷直博君) 外国人労働者の入国問題を含めまして出入国管理をめぐる現在の状況に的確に対処するために、現在の在留資格の整備を中心とする出入国管理及び難民認定法の改正作業に着手することとした次第であります。  その改正の要点を申し上げますと、四点ございまして、どのようなカテゴリーの外国人が我が国に入国、在留できるかを現在よりより明確にするために在留資格制度の整備をすること、これが第一点。第二点が、入ってきます外国人及びこれを場合によっては雇用したいとする第三者に対して、その外国人に付与されている在留資格が一見しただけで理解できるようにするため、在留資格の表示方法を変更する。第三点目が、どのような要件を満たせば入国、在留できるかという審査基準を公示するということでございます。第四点がございまして、不法就労の防止等に資するために、我が国に在留している外国人が許容されている在留資格の範囲を容易に証明できるようにするということでございます。  意図は何かと申されましたけれども、こういうことによりまして現在の不法就労者の問題が少しでも改善されるのではないかと思っております。  すなわち、これらの在留資格の表示方法の変更とか証明制度等によりまして、少なくとも善意の雇用者が就労することができない外国人を雇い入れるということが防止できるということだけではなく、不法就労者の雇用が我が国の法令に反するものであるという一般の意識を向上させること、そういうことが考えられると思います。その結果として不法就労者を減少させ得るものと確信しております。もっとも、不法就労者の摘発とか送還とかにつきましては、従来どおり関係当局等とも協力をいたしまして強力に推し進めてまいる所存でございます。
  295. 安恒良一

    ○安恒良一君 最後は言われたやつは、不法就労の防止及び外国人を雇用したいとする者の利便に資するため必要に応じ例えば在留活動に関する証明書のようなものを交付し得る制度を設ける、これはどういう意味でしょうか。
  296. 熊谷直博

    政府委員(熊谷直博君) 現在の入国管理法のもとでの在留資格制度におきまして、在留資格証明書というのをあるカテゴリーの者につきましては出しております。これをすべての在留資格の者に対して証明書として出すことによりまして、その外国人がその在留資格によって何ができるのか、どういう在留活動ができるのかということを明確に第三者及び本人自身にわかるように、理解できるようにする、そういう目的でございます。
  297. 安恒良一

    ○安恒良一君 そこで、法務大臣に聞きたいんですが、やはり不法就労という問題が非常に大きな問題になっているわけです。今あなたたちがお考えになっている改正だけで不法就労は減るというふうに思われているんですか。これは大臣、あなたのお考えを聞いているわけですから、お考えを言ってください。
  298. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 今入管局長が申しましたのは、認められておる者について証明書を出すわけでございます。それで、認められていない者というのは、結局、観光なんかの名目で入ってきて残留をする者、こういうわけであります。したがって、この不法残留者を根絶するということはこれだけではできません。これはやはり明らかにしまして、日本へ入ってきても単純労働は認められていないんだということをよく承知させまして、そしてその上でもう厳重に処理をしていく。すなわち空港におきましては追い返し、さらになお残留する者につきましては、これをよく捜査しまして再び帰ってもらうというような厳重な方法をさらに進めていかなければ、これは根絶ということはなかなか難しいだろうと思いますけれども、あらゆる脱法行為をやろうとするわけでありまするから、しかしそれを強力に進めていくことが必要だろう、かように思っております。
  299. 安恒良一

    ○安恒良一君 強力に進める進めると言っても、この前私が実態を数字でお聞きをしたら、いろんなビザで入ってきた人が不法就労することがなかなか取り締まられていないというのが実態です。  そこで、法務大臣どうですか。やはり事業主に責任を持たせる、雇い主に責任を持たせるということは、私は不法就労を防ぐ一つの大きな方法だ。そういうことをこの研究会も指摘しているわけですから、この労働許可ないし雇用許可制度、こういうものが必要というふうにあなたはお考えになりませんか。そして、余り縄張り争いをすることなく、労働省と法務省が協力をして私はこういうことに対処すべきだと思いますが、法務大臣どうですか、労働大臣どうですか。
  300. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 縄張り争いではなくて、そういう法制上の問題があるということでございます。労働省とよく協調いたしまして厳重にやっていかなければならない。そして、そういう新たな労働許可制度というものにつきましては、認められないということが証明書でわかれば、これはもう認められていないわけですから、それを雇うということはもうその雇い主として絶対に法を犯しておるということになるわけですから、現在の法でもこれが処理できるだろう、こういうことでありまして、さらにそれを厳重にしなければならないというのでありましたならば、労働省と十分話し合いましてそういう方法をとればよろしい、かように考えます。
  301. 安恒良一

    ○安恒良一君 縄張り争いでないと言うけれども、これも新聞報道ですが、雇用許可制度の創設には反対である、こう言って法務省側は早々と打ち上げた。例えば三月二十八日の参議院法務委員会でも、雇用許可制度は支持しない、こういう答弁をあなたたちはしているんです。私から見ると、まさに役所の縄張り争いとしか見られません。  そこで、総理にお聞きをしたいんです。いわゆる外国人に対する雇用許可制度の導入は、現在の法的な不備から増大をしているこの不法就労を防止するという一つの対応策なんだ。ですから私は、この制度が導入されてもなお完全に食いとめることは難しいかもわかりません、しかし、非常に大きな一歩前進だと思います。なぜならば、企業に対して外国人労働者の名簿の備えつけを義務づけ、さらに雇用主の責任を明確にし、その結果雇用主と労働者の関係が明確となり、外国人の入国と在留管理をより厳しくすることができるわけです。  そういう点を踏まえてこの研究会がいわゆる問題を指摘しているわけですが、残念ながら総理、今お聞きのとおり、労働大臣と法務大臣の間には若干の食い違いがあります。外務大臣は大体その方向を支持された。通産大臣は、座っておられません、どこへ行かれたか知りませんが、いわゆる労働省との間の慎重な調整がと、こういうことですが、やはりこの問題は非常に急を要する問題ですから、少なくとも総理として、いわゆる労働許可制度、この発行について、研究会が指摘をしていることについての総理のお考えをまず聞かせてみてください。
  302. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私ども、このいわゆる外国人労務者問題につきましては、研究会で今検討しておりますということを答弁してまいりました。その研究会が提言を出していただいたという限りにおいて、私はこれは貴重な提言であるという前提の上に立っておりますし、雇用主に責任を持たすと。  ただ、私はあのものをちょっと拝見しましたときに、いわば出入国管理法の面と両方の面から罰則というようなものが議論をされていくとあるいは法体系上どんなものかなというような素朴な疑問を抱いたことはございますが、いずれにせよ、せっかく研究会で提言していただいたものを、これは今のところ両省でございますが、両省で十分話し合いをしていただきまして、やっぱり国民的コンセンサスの上に立った制度を樹立していきたいと思います。
  303. 安恒良一

    ○安恒良一君 例えば東京新宿区は、東京の中で最も外国人登録の多い区だと言われています。登録数が毎年千人以上の割合で増加しています。本年の一月三十一日現在で総数は一万四千五百九十九人、この四年間に六千四百人も増加しています。それで区役所の窓口は多忙をきわめている。それはなぜかというと、外国人の出入についての出入国管理法における管理はされますが、一たんそこを通過してしまうと後は全くコミュニケーション機構がないんです。それで、入国した人の管理はどこがやっているかということになると、いわゆる専門機関がありませんから、またそういう施策もないんですから、区役所が法的な裏づけがないままに医療保護等の申請の面倒を見ているんです。  このような現状から見ても、総理、やはり私は雇用許可制度というものは、諸外国でもとっているわけですから、導入をされて、入国をされた後の管理も——でないと、この前新聞に出たように、じゃぱゆきさんということで連れてきて低賃金で徹底的に働かせるという実態すら出てくるわけですから、その意味からいうと私は今回の指摘は非常に正しいと思いますので、どうしても役人というのは、この前言いましたようにパーキンソンの法則がございますから、すぐ縄張り争いをするんですよ。ですからこの点は、総理、ぜひやはり政治家としてきちっと正していただきたいということを申し上げます。  そこで、労働大臣にお聞きしますが、今回外国人労働者問題研究会の報告を受けて新たに政、労、使、学識経験者による調査会を設置して、外国人労働法の設定を含めて具体的検討に入ると言われておりますが、いつまで検討され、またこれに対する取り組み意欲、考え方を聞かしてください。
  304. 中村太郎

    国務大臣(中村太郎君) 御指摘の調査会につきましては、私どもとしましては早々にも発足をさせたいと考えております。その中で、今問題になっておりまする外国人労働者の受け入れの問題、あるいは不法就労の実態把握の問題、あるいは労働力需給のコントロールの問題、いろいろあるわけでございます。不法就労に対しましては、これが根絶を期するための必要な制度の整備充実とかいろいろあるわけでございますが、これらにつきまして遅くも年内をめどとして取りまとめをお願いいたしたいと考えておりますし、当然のことながら、それまでにおきましても政府部内の調整も図らなければいけないと考えておるわけでございます。  報告が取りまとめられた結果におきまして立法措置が必要だということになりますれば、それなりの対応を急いでいかなければならない、このように考えています。
  305. 安恒良一

    ○安恒良一君 ぜひ、政、労、使でやられるときに、私がここでいろいろ指摘をした事項についても十分御検討願いたい。  最後に、建設大臣にお聞きしますが、公共事業への外国企業の参加が進められています。とりあえずアメリカとの間は片がつきました。そこで、例えば仮に緯国等が安価な労働力を連れて参入してきた場合、我が国の建設業界は私は大打撃を受けるんじゃないかと思いますが、建設大臣のお考えをお聞かせください。
  306. 越智伊平

    国務大臣(越智伊平君) 御質問の要旨は建設業の外国企業の参入でありますが、これが参入いたしましても、ただいまは閣議了解に基づきまして労務者は外国人は使わない、使用しないと、こういうことになっております。この程度なれば外国無差別でありますけれども、ただいまもいろいろ技能労働者、例えば大工の賃金がうわさでは三万円、四万円と言われておりますけれども、実態を調べますと、三省協定で一万二千円とか三千円程度であります。二十日働きましても本当に所得が少ない、こういう状態でありますから、大変な混乱が起こる、率直に私はそういうふうに感じております。  でございますから、建設労務者はただいまのところ私は閣議了解に基づいて、たとえ外国企業が入ろうとも労働者は日本人と、こういうことで進めておる次第であります。
  307. 安恒良一

    ○安恒良一君 終わります。
  308. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で安恒良一君の質疑は終了いたしました。  明日は午前九時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十六分散会