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1988-04-05 第112回国会 参議院 予算委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月五日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  四月一日     辞任         補欠選任      本村 和喜君     野沢 太三君      近藤 忠孝君     佐藤 昭夫君      野末 陳平君     秋山  肇君  四月二日     辞任         補欠選任      青島 幸男君     下村  泰君  四月四日     辞任         補欠選任      関  嘉彦君     勝木 健司君      秋山  肇君     野末 陳平君      下村  泰君     喜屋武眞榮君  四月五日     辞任         補欠選任      勝木 健司君     小西 博行君      野末 陳平君     秋山  肇君      喜屋武眞榮君     下村  泰君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         原 文兵衛君     理 事                 伊江 朝雄君                大河原太一郎君                 小島 静馬君                 林  ゆう君                 吉川 芳男君                 久保  亘君                 矢原 秀男君                 吉川 春子君                 三治 重信君     委 員                 石井 道子君                 石本  茂君                 岩上 二郎君                 梶木 又三君                 金丸 三郎君                 北  修二君                 工藤万砂美君                 坂野 重信君                 坂元 親男君                 志村 哲良君                 下稲葉耕吉君                 田中 正巳君                 中曽根弘文君                 中西 一郎君                 永田 良雄君                 野沢 太三君                 林 健太郎君                 降矢 敬義君                 増岡 康治君                 松岡滿壽男君                 小川 仁一君                 及川 一夫君                 大木 正吾君                 千葉 景子君                 野田  哲君                 安恒 良一君                 及川 順郎君                 広中和歌子君                 和田 教美君                 神谷信之助君                 佐藤 昭夫君                 勝木 健司君                 小西 博行君                 秋山  肇君                 野末 陳平君                 喜屋武眞榮君                 下村  泰君                 青木  茂君    国務大臣        内閣総理大臣   竹下  登君        法 務 大 臣  林田悠紀夫君        外 務 大 臣  宇野 宗佑君        大 蔵 大 臣  宮澤 喜一君        文 部 大 臣  中島源太郎君        厚 生 大 臣  藤本 孝雄君        農林水産大臣   佐藤  隆君        通商産業大臣   田村  元君        運 輸 大 臣  石原慎太郎君        郵 政 大 臣  中山 正暉君        労 働 大 臣  中村 太郎君        建 設 大 臣  越智 伊平君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    梶山 静六君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  高鳥  修君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (沖縄開発庁長        官)       粕谷  茂君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  瓦   力君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       中尾 栄一君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       伊藤宗一郎君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  堀内 俊夫君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  奥野 誠亮君    政府委員        内閣官房内閣内        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房内政審議室        長        的場 順三君        内閣法制局長官  味村  治君        内閣法制局第一        部長       大出 峻郎君        人事院総裁    内海  倫君        人事院事務総局        職員局長     川崎 正道君        日本学術会議事        務局長      田中 宏樹君        警察庁刑事局保        安部長      漆間 英治君        総務庁長官官房        審議官        兼内閣審議官   紀 嘉一郎君        総務庁長官官房        会計課長     八木 俊道君        総務庁恩給局長  石川 雅嗣君        防衛庁参事官   鈴木 輝雄君        防衛庁長官官房        長        依田 智治君        防衛庁人事局長  松本 宗和君        防衛庁経理局長  日吉  章君        防衛施設庁総務        部長       弘法堂 忠君        防衛施設庁建設        部長       田原 敬造君        科学技術庁科学        技術振興局長   吉村 晴光君        科学技術庁研究        開発局長     川崎 雅弘君        国土庁長官官房        長        清水 達雄君        国土庁長官官房        会計課長     佐々木 徹君        国土庁大都市圏        整備局長     北村廣太郎君        法務大臣官房会        計課長      則定  衛君        法務省民事局長  藤井 正雄君        法務省矯正局長  河上 和雄君        外務大臣官房外        務報道官     松田 慶文君        外務大臣官房審        議官       遠藤 哲也君        外務省北米局長  有馬 龍夫君        外務省経済局長  佐藤 嘉恭君        外務省経済協力        局長       英  正道君        外務省条約局長  斉藤 邦彦君        外務省国際連合        局長       遠藤  實君        大蔵大臣官房会        計課長      佐藤 孝志君        大蔵省主計局長  西垣  昭君        大蔵省主税局長  水野  勝君        大蔵省理財局長  足立 和基君        国税庁次長    日向  隆君        文部大臣官房長  古村 澄一君        文部大臣官房総        務審議官     川村 恒明君        文部大臣官房会        計課長      野崎  弘君        文部省初等中等        教育局長     西崎 清久君        文部省教育助成        局長       加戸 守行君        文部省高等教育        局長       阿部 充夫君        文部省高等教育        局私学部長    坂元 弘直君        文部省学術国際        局長       植木  浩君        文部省社会教育        局長       齋藤 諦淳君        文部省体育局長  國分 正明君        文化庁次長    横瀬 庄次君        厚生大臣官房総        務審議官     黒木 武弘君        厚生大臣官房審        議官       川崎 幸雄君        厚生大臣官房会        計課長      多田  宏君        厚生省社会局長  小林 功典君        厚生省援護局長  木戸  脩君        社会保険庁医療        保険部長     土井  豊君        社会保険庁年金        保険部長        兼内閣審議官   佐々木喜之君        農林水産大臣官        房長       浜口 義曠君        農林水産大臣官        房予算課長    上野 博史君        農林水産省経済        局長       眞木 秀郎君        通商産業省貿易        局長       畠山  襄君        特許庁長官    小川 邦夫君        運輸大臣官房会        計課長      黒野 匡彦君        郵政大任官房経        理部長      山口 武雄君        郵政省貯金局長  中村 泰三君        郵政省簡易保険        局長       相良 兼助君        労働大臣官房長  清水 傳雄君        労働大臣官房会        計課長      椎谷  正君        労働省職業安定        局長       岡部 晃三君        労働省職業安定        局高齢者対策部        長        竹村  毅君        労働省職業能力        開発局長     野崎 和昭君        建設大臣官房会        計課長      鹿島 尚武君        建設省住宅局長  片山 正夫君        自治大臣官房長  持永 堯民君        自治大臣官房審        議官       湯浅 利夫君        自治大臣官房会        計課長      富永 栄一君        自治省税務局長  渡辺  功君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局経理局長   町田  顯君    事務局側        事 務 総 長  加藤木理勝君        常任委員会専門        員        宮下 忠安君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○昭和六十三年度一般会計暫定予算内閣提出衆議院送付) ○昭和六十三年度特別会計暫定予算内閣提出衆議院送付) ○昭和六十三年度政府関係機関暫定予算内閣提出衆議院送付) ○昭和六十三年度一般会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和六十三年度特別会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和六十三年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 予算委員会を開会いたします。  昭和六十三年度一般会計暫定予算昭和六十三年度特別会計暫定予算昭和六十三年度政府関係機関暫定予算、以上三案を一括して議題といたします。     ─────────────
  3. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) まず、理事会における協議決定事項について御報告いたします。  審査期間は本日五日一日間とすること、審査方式総括質疑方式とすること、質疑割り当て時間は総計五十八分とし、各会派への割り当ては、日本社会党護憲共同二十二分、公明党・国民会議十二分、日本共産党九分、民社党・国民連合六分、新政クラブ税金党、二院クラブ・革新共闘及びサラリーマン新党参議院の会それぞれ三分とすること、質疑順位及び質疑者等についてはお手元の質疑通告表のとおりとすること、以上でございます。  右、理事会決定のとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、政府から趣旨説明を聴取いたします。大蔵大臣宮澤喜一君。
  6. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) このたび、昭和六十三年四月一日から同月八日までの期間について暫定予算提出いたしましたが、その概要について御説明を申し上げます。  まず、一般会計につきまして申し述べます。  暫定予算が本予算成立までの応急的なものであることにかんがみ、今回の暫定予算におきましても、暫定予算期間中における人件費事務費等経常的経費のほか、既定の施策に係る経費について行政運営上必要最小限のものを計上することといたしております。  なお、新規施策に係る経費につきましては原則として計上しないことといたしておりますが、教育及び社会政策上等の配慮から特に措置することが適当と認められる生活扶助基準引き上げ等につきましては、所要の金額を計上することといたしております。  また、公共事業関係費につきましては、新規発生災害に係る直轄災害復旧事業費のほか、直轄維持修繕費等について暫定予算期間中における所要額を計上することといたしております。  歳入につきましては、税収及び税外収入暫定予算期間中の収入見込み額並びに前年度剰余金を 計上することといたしております。  以上の結果、今回の一般会計暫定予算歳入総額は二百十一億円、歳出総額は三兆九百十五億円となり、三兆七百四億円の歳出超過となりますが、国庫の資金繰りにつきましては、必要に応じ大蔵省証券を発行することができることといたしております。  なお、特別会計及び政府関係機関暫定予算につきましては、いずれも以上申し述べました一般会計に準じて編成いたしております。  以上、昭和六十三年度暫定予算につきまして、その概要を御説明申し上げました。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  7. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) それでは、これより順次質疑を行います。野田哲君。
  8. 野田哲

    野田哲君 まず、総理大蔵大臣に伺います。  昭和六十三年度が既に始まっているのに本予算成立をしていない。法律上も財政制度上も認められていない予算空白という異常事態が生じています。この責任をどうお考えになりますか。  さらに、昭和五十七年度以来、本委員会予算空白の除去を政府に要請して、ことしも原予算委員長から暫定予算準備が命ぜられていたのに、なぜ三月三十一日までに暫定予算国会を通過するよう取り運ばなかったのか。総理大蔵大臣のこの問題についての見解もあわせて伺いたいと思います。
  9. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 去る三月二十五日の予算委員会理事会におけるお話し合いに従いまして、予算委員長から政府に対しまして、当委員会審議と並行して念のため暫定予算編成準備に入るよう要請するというお話がございました。これを受けまして官房長官から、「政府といたしましてはこのことを重く受けとめております。一日も早い予算成立を願い、予算審議が円滑に進められるよう、政府といたしましては引き続き最大限の努力を払う所存でございますが、御要請に沿うよう念のため所要準備に着手したい」ということをお答えいたしまして、この旨は翌二十六日当委員会において委員長から御披露があったところでございます。  政府といたしましては、この委員長の御発言に従いまして、暫定予算案編成準備に入ったところでございます。ただ、その節も申し上げましたように、一日も早い本予算成立を念願いたすということから、一方において暫定予算準備はいたしつつ、本委員会の御審議政府としては最大限のおこたえを申し上げてきたわけでございます。  しかるところ、先週の土曜日になりまして、なお今週四日、五日の審議の御日程が十分に確定をしていないということを承りました。実はこのたびの暫定予算との関連で申しますと、四月六日に恩給支払いがございまして、これは二百万人に上る人々に対して四千三百億円近い支払いをいたしますので、いわゆるやりくりをもっていたしましては実行が不可能でございます。したがいまして、この六日という事態考えますと、暫定予算の御審議両院にお願いするといたしますと、慣例衆議院一日、参議院一日ということでございますので、そういたしますと、四日、五日という日を御審議に当てていただくということが私どもから見ますと従来の慣例でございますから、そういたしますと、ぎりぎりの二日、土曜日には政府としては暫定予算提出の決心をしなければならないということに相なりまして、土曜日に閣議決定をいたしまして御提出をいたしたのでございます。  本来、本予算の御審議を一日も早くお願いをしたい。成立、執行を政府としては念願してまいりましたし、また本委員会においてそのようにずっとお運びくださいましたことはよく存じておりますが、そのような二日を残す事態になりましたので、土曜日に提出をいたしまして、昨日衆議院において御審議をお願いした、このような次第でございます。
  10. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず、暫定予算財政法に基づきまして提出することができる、これは政府責任提出するわけでございますから、その提出の時期等について政府責任を感じているかと、こういうことにつきましては、責任を感じておりますというふうに明瞭にお答えすべきであると思います。  ちょうど昭和二十三年、二十八年、これは暫定予算の補正というものを三回やりましたり二回やりましたりしておりますが、そのときは、二十八年の場合は俗称ばかろう解散でございますか、参議院緊急集会をちょうだいしたときでございますし、その後は空白期間なしにいろいろ両院の御協力をいただいておりますが、四十一年、ちょうど私が内閣官房長官をしておりましたときに、初めて一日の空白期間というものが生じました。それからまたもとへ返りまして、五十年にまた一日ということがございまして、それから五十三年に三日、その後は大体ずっと四日等の空白期間が生じてきたということの是非ということは、長い間の議論でございますが、私自身いいことじゃないと思っております。このことについての議論は本当にいつの日かきちんとしなきゃならぬし、また、やっていると何かエンドレス議論のような感じも率直にいたしております。  そうしたことは別といたしまして、提出権そのもの財政法のもと政府にあるわけでございますから、この機に提出し、明瞭に空白期間が存在したときに提出したということについては政府自身責任を負うべきものである。国会話し合いがどうであったとかいうような問題ではなく、やはり提案権者政府自身責任だと、こういうふうに感じております。
  11. 野田哲

    野田哲君 今回の事態責任については、今総理も感じているということですけれども、直接の今回の事態原因になったのは、政党政治の基本である公党間の約束政府与党の幹部が見解の不統一によってほごにした。この公党間の約束をほごにしたことが今回の事態を招いた直接の原因になっていると思います。  この点について、与党総裁でもある、また減税問題でありますから、総理大蔵大臣も、直接その話し合いにはかかわっていないにしても、政府与党一体となっての対処という点からも私は責任があると思うわけでありますが、これについては総理はどのようにお考えになっておられますか。
  12. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今の質問をまとめてみますと、各党の話し合い、私は政党政治である議会制民主主義としては、これは当然尊重すべきものであるというふうに思っております。それが、与党内の不統一とでも申しますか、そうしたことが原因ではないかという趣旨の御発言であるというふうに受けとめてみますと、率直に申しまして、私も国会での問題につきましてはいつもかたくななように申し上げますが、国会で指名された行政府の長としてコメントをすることは差し控えさせていただきたいという前提に立っておりますが、いわば私自身昨年まで与党代表者として減税問題に携わった等の経験上から、あえてそういうことに前提を置いて申し上げさせていただきますならば、私も大蔵大臣もその経緯については報告を受けておったことは事実でございます。  あえて申しますならば、私の経験上で申しますならば、言ってみれば、いわゆる六十三年度予算成立までに減税の額を示すということに対しての定性的な問題と定量的な問題との意見不一致とでも申しましょうか、そういうことではなかったかというふうに思っております。かつての交渉の段階においては、六月末等々いわゆる税収が確定いたしますまでの間は、限界が景気浮揚に役立つ相当規模減税とかいうような表現にとどまっておりました。昨年、一兆五千億というのを私が幹事長書記長会談決定いたしましたときには、いわゆる前年度の自然増収等がほぼ明らかになっておりましたので、財政に携わる者の良心として、その範囲における減税規模というのを示すことができたというような経験から振り返ってみますと、定性的と定量的というところに意見の不一 致が——私はまだ不一致になったとは必ずしも思っておりませんけれども、意見合意に達しなかったというふうに理解をいたしております。
  13. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 関連質疑を許します。安恒良一君。
  14. 安恒良一

    安恒良一君 総理は巧みに、また、言語明瞭意味不明瞭のことをおっしゃるわけですね。  報告を受け取っておると言われますから、三月八日の与野党国対委員長合意は、「社公民三会派の要求する所得税法人税相続税等減税は実施する。」、こう書いてありますね。そして三月三十日の与野党国会対策委員長会談確認事項の第三項に、「六十三年度の減税規模については予算成立までに結論を得る。」と、しかもその第一項に、「野党三会派の要求する減税は実施する。」と、こういうふうに定性的な、その減税をどことどこをどうやるのかということについては既に一致しているわけなんですね。しかも、同じく三月三十日の中において、例えば所得減税やり方についても中身について、それから有価証券譲渡益等に対するやり方についても中身について与党側から回答があっているわけです。  そういうものを受けて、そのことを三月三十日の与野党国会対策委員長確認になっているんですから、総理がおっしゃる定性的と定量的の不一致があったのではないかというのは何を言っておられるんですか、わかりやすく言ってください。
  15. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私ども、報告を聞いて見ておりますと、いわゆる三兆円規模減税を行うと。この問題では私もビデオをとっておりまして、放送討論会等も見せていただきましたが、一応の合意というのはいわゆる平年度減税、これは私なりにもよく理解できるような気がいたします。従来ともそうした方向で税制改正を進めようとしてきたわけでありますから、まさに平年度の合意であるというふうに私も感じておるわけであります。  そこで、私が定性的と定量的と申しましたのは、額の問題ということでございます。額というものは、確かにこの時点において六十三年度減税についての額というのは出しにくい問題であろうと。したがって、あの与野党の話し合いの中で三兆円というのも聞いて——聞いておると申しますか、おなくなりになっていらっしゃったわけでございますが、まあどういう表現でございますか、したがって恐らく皆さん方、六十三年度減税について心中いろんなお考えがあるだろうと。合意に達しておりますいわゆる有価証券譲渡益課税の問題については、原則課税とするということは私は合意ではないかと思っております。  それの計算の仕方についても私なりに全くわからぬわけじゃございませんけれども、その施行日をいつにするかとかとりあえずは選択分離にするかとか、こんな議論がまだ残されておりますだけに定量化するというのは今の段階では難しいんじゃないかな、こういうふうに思っております。
  16. 安恒良一

    安恒良一君 全くいけぬ。というのは、例えばもう所得税減税についての規模についても、それから政策減税の金額についても、相続税、法人税の金額についても、野党が要求し、そのことを了解しているわけなんです。そういう中で、平年度の要求でありましたから六十三年度の減税規模については予算成立までに結論を得るということでありまして、そこで例えば所得税で言いますと、所得税やり方まで既に同意をしているわけですから、それが額が言えなかったというところは公党間の約束を裏切ったということになりはしませんか、その点どうですか。
  17. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 御議論の推移、私も全くわからないというわけではございません。が、しかしながら、やはりお見せいただいておりましたたしか九項目でございましたか、というものを一つ一つ精査してみますと、恐らく与野党の政策担当者間においてはまだお詰めいただける作業がと申しましょうか、これが定量的なところまでは達していないと見るのが普通じゃないかなと。私自身のこれは受けとめ方の問題でございます。
  18. 安恒良一

    安恒良一君 「野党の要求した減税財源は担当者間で引き続き協議する。」というのが二項にあるんですよ。そして三項に「六十三年度の減税規模については予算成立までに結論を得る。」ということが書いてある。あなたの言っていることは前段の話じゃないですか、そのことは二項に書いてあります。その上で三項にははっきり減税規模というのは額の問題だと。その点はどうですか。
  19. 竹下登

    国務大臣竹下登君) その規模が、最初私は額と申しましたが、額というところには至らないということではなかろうかと。したがって、規模そのものも定性的に、かつてのように景気浮揚に役立つ相当規模のということは余りにも抽象的過ぎるといたしましても、定量的なところへ詰めるのは難しいんじゃないかと思います。
  20. 安恒良一

    安恒良一君 総理、私はあしたまた総括のときに言いますが、私は総理のそういう姿勢ではこの国会を本当に乗り切れるだろうかどうかと。この国会は税制国会と、総理はこう言っています。国会でのこうした税制論議が国民の税制改革の認識を深めると再三言っています。しかし、こうして私どもが肝心なことを聞きますと、あなたは税調に逃げ込むか今のように答弁を回避するか、スローガンは言うが答弁に中身が全然ない。これで本当に国民の税制改革の認識が深まると思いますか。また与野党間の不信が取れるとあなたは思いますか。そんなことで本当に税制改革ができるんでしょうか、私は大変心配します。  それはなぜかというと、私たちはこの高齢化社会プラス国際化社会でどういう社会像を描くのか、そのインフラストラクチャーとしての税制をどう位置づけるのかという確固たる青写真、そういうものを総理が明確に打ち出して、そして税制改革のあり方を国民にアピールする、そして与野党で十分議論をする、こういうことがなくしてはあなたが考えられている税制改革なんというのはあり得ないんですよ。それなのに、肝心のまずこの国会の場において、いつもあなたは与野党で十分議論をしてくれと言われながら公党間の約束を裏切る、これは議会制民主主義を破壊することになります。こんなことで、本当にあなたは税制改革を二十一世紀に向けてやる気があるのですか、どうですか。そのことだけを答弁していただいて、あとはまたあしたやります。
  21. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今のようにおしかりを受けましたり、あるいは私の政治手法について御批判を受ける、そういう中から実りある論議が将来ますます深まっていくであろうということを期待いたしております。
  22. 野田哲

    野田哲君 法制局長官に伺いますが、財政法で年度の定めがあります。そして、今回の暫定予算はその年度に入ってから提出をされた、こういうことでありますが、年度に入ってからずっと空白が何日か続いている。そこで、年度の途中で暫定予算提出するというのは、これは法律的に一体どういう解釈をとっておられるわけですか。世間の常識としては、年度に入った途中で暫定予算提出する、これはケースとしては初めてのケースなんですが、法律的な見解はいかがですか。
  23. 味村治

    政府委員(味村治君) 暫定予算提出の根拠は財政法の三十条でございまして、「内閣は、必要に応じて、一会計年度のうちの一定期間に係る暫定予算を作成し、これを国会提出することができる。」という規定でございます。  先生が御指摘のように、会計年度は四月一日から始まっておりますから、四月一日前に暫定予算提出するということが立法当時は予想されていたものと考えられます。しかしながら、旧会計年度を過ぎまして新会計年度に入りましてからどうしても暫定予算をお願いしなければ国政運営上支障があるというような場合には、これは財政法の三十条に基づきまして暫定予算提出することも可能であるというように考えているわけでございます。
  24. 野田哲

    野田哲君 先ほど大蔵大臣は、四月六日になると恩給が払えない、これは便法では、やりくりではどうもうまくいかない、金額が大きいからと、こういうふうに説明されたわけですが、財政法三十条の「必要に応じて、」というのは、これは金額 によってその必要を感じたということなのですか。それとも、四月一日から何日か経過した期間によって判断をされることなのか。もっと言えば、恩給支払い日を法律で先延ばしをした場合には、もうちょっと空白期間があっても必要を感じないと、こういうことでしょうか。
  25. 味村治

    政府委員(味村治君) これは、具体的な必要性の問題に関しましては私から申し上げる筋合いではないわけでございますが、一般的な論議として申し上げますというと、この予算空白期間というのは、これは憲法なり財政法の予想しているところではないわけでございますけれども、残念にして今までそういった事態が生じているわけでございます。そういった事態が好ましくないということは言えるわけでございますけれども、そういう事態が生じている。  そういう空白事態に処しまして、各省庁いろいろな工夫をいたしまして、違法だというようなそしりを受けないようないろいろなやり方を何とかやりくりしているという実情であるわけでございます。そういうようなやりくりをする、そういったやりくりで賄える限度というのは当然あるわけでございまして、そういった限度を超えるようなことになりますとどうしても必要だと。そういうやりくりというのは非常に限られたものでございますので、それを限度を超えますというとどうしても必要だということになるわけであろうかと存じます。
  26. 野田哲

    野田哲君 私は、そのやりくりの限度によって判断をするということは、やはり財政制度の上で問題があるんじゃないかと思うんです。  後でまた問題にしようと思うんですが、例えば郵政省の郵貯の利払いとか、あるいは簡保の払い戻しとか、あるいは法務省の被収容者に対する賞与金の支払いとか、やりくりがつきさえすれば先延ばしをもっともっとやってもいいんだ、空白期間があってもいいんだと。これでは私は、財政制度の年度の定めは一体どう考えるのか、こういうふうに言わざるを得ないと思うので重ねて伺います。
  27. 味村治

    政府委員(味村治君) 政府といたしまして、このような予算空白が生ずるという事態が好ましいというふうには絶対に考えていないわけでございます。そういう事態が生じました場合に、やむを得ずただいま申し上げましたようなことが行われているということでございますが、そういったやりくりでは済まない——そういうやりくりをしないで済ませればこれが一番よろしいわけでございます。しかし、そういったやりくりではどうしても済まないというような事態になりますれば、これは暫定予算をどうしてもお願いしなければ国政運営上差し支えが生ずるというような事態になりますれば、先ほど申し上げました財政法の三十条によりまして暫定予算提出するということも、これは同条が禁止しているところではないと、このように考える次第でございます。
  28. 野田哲

    野田哲君 私は、会計年度というものについての政府考え方を重ねて伺いたいと思うんです。  財政法の第十一条、「国の会計年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終るものとする。」、もうわかり切ったことですけれども、こう定めております。そして、財政法の十二条で、「各会計年度における経費は、その年度の歳入を以て、これを支弁しなければならない。」、財政法の十二条はそう定めています。つまり、このことは、歳入歳出はこの会計年度によって一切の収入または支出を定めたものであると思うんです。したがって、歳入歳出は会計年度の考え方と切り離すことはできない、こういうふうに思うんです。会計年度とは、つまり収入と支出を区分、整理してその関係を明らかにするための期間、すなわち予算の有効期間のことだと、私はこういうふうに考えるわけでありますけれども、政府の方ではこの会計年度ということについて、財政法十一条、十二条についてどのように考えておられるわけでしょうか。
  29. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 財政法十一条、十二条の関係は先生御指摘のとおりでございまして、もともと予算空白期間というのはこれは好ましい状況ではございませんが、そういう空白ができた場合には一定の財務処理が必要でございます。これはもうやむを得ないことでございまして、緊急避難としてやっているわけでございますが、その場合にも、年度区分、これは乱さないようにということでいろいろと工夫をしているわけでございます。余り各論に立ち入って御説明するのもいかがかと思いますが、それぞれの費目につきましてその辺は精査をしながらやっている、こういうふうに申し上げてよろしいかと思います。
  30. 野田哲

    野田哲君 旧憲法では年度の開始までに予算成立しない場合の措置として、旧憲法の第七十一条で、「帝国議会ニ於テ予算ヲ議定セス又ハ予算成立ニ至ラサルトキハ政府ハ前年度ノ予算ヲ施行スヘシ」、こういうふうになって、その施行は勅令で行われていた、こういうふうに記録になっています。現行憲法の八十三条では、「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」、このような規定によって明治憲法の七十一条のような規定は廃止をされているわけであります。したがってこのことは、年度開始までに予算成立しない場合の措置として財政法の三十条で暫定予算の規定を設けている、こういうことだと思うんです。つまり、暫定予算の制度というのは予算空白期間が生じないための措置として設けられた制度である、こういうふうに考えられるわけです。  したがって、今回のように前もって予算空白が生じることが予見をされている、そして議会の予算委員会からも政府に対して要請があった、それにもかかわらず三月中に暫定予算提出をしないで新しい年度の開始後に暫定予算提出するという措置は、これは大蔵大臣、ちょっと言葉が厳しいようでありますけれども、議会対政府という立場で考えれば政府の怠慢ではないんでしょうか。またあるいは、憲法や財政法の曲解による措置ではないんでしょうか。この点はいかがでしょうか。
  31. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 折り目筋目を正して議論をしてまいりますと、そのいわゆるやりくりといったようなことはこれはもう法律に当てはまる概念でございませんので、緊急避難というふうなことを申し上げましたが、しかし一種のやりくりであるに違いありません。そのようなことは憲法でも財政法でも想定をしていないと言われますことは、そのとおりであると私は申し上げざるを得ないと思います。  長年の慣行でそういうことをやってまいりました。そのようなことは本来好ましくないだろうとおっしゃれば、決して好ましいことだとは存じておりません。ただ、政府の立場で申しますと、今回の場合、二十五日にそういう委員長からの御注意がありまして念のため準備はいたしておったのでございますが、なお当委員会あるいは当院におきましていろいろその辺のところも御賢察もいただけると、そういう可能性が現実に残っておると考えておりましたために提出をおくらせておったというようなこともございます。それは全く一種の政治的な、政府側のいわば考えに基づくものでありまして、厳密に法律的に申しますと、このような事態を迎えましたことはまことに残念なことだと申し上げるべきことでございます。
  32. 野田哲

    野田哲君 結局政府与党としては、四月五日までは空白が生じてもやむなしということでたかをくくっていたわけですよ。ところが、渡辺内野手と渡部外野手がダブルエラーをやったために恩給が払えなくなった、そこで慌てて年度に入ってから暫定予算を出した。まあ平易にわかりやすく言えばそういうことで、とんでもないイレギュラーが起こったと、こういうことだろうと思うわけです。  そこで私は、一体そのやりくりが適切な措置であるのかどうかについて重ねて伺いたいと思うんですが、去る三月十七日に当委員会で私は、予算空白が生じた場合のその間にどうしても支払わなければならない国としての支払い義務の処理についてどうするのか、具体的な項目を挙げて各省 の対応をただしたわけであります。法務省の被収容者作業賞与金、これは外郭団体の立てかえ払い、こういう答えが出ています。それから供託金の利子、これは繰りかえ払い、郵政省の郵貯の利子、簡保の還付金、これは繰りかえ払い、厚生省の食糧、医薬品、これは持ち越し分、こういうふうに答えておられるわけですが、それらの金額がどのようになっているのか、法務省、郵政省、厚生省、それぞれ今日までの支払い金額、繰りかえによるもの、あるいはたてかえ払いについてお答えをいただきたいと思うんです。
  33. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 行刑施設が全国で七十四庁、支所百十七庁で、合計百九十一庁ある関係で、現時点まで正確な数字は把握しておりませんが、推計で約五百万円でございます。
  34. 藤井正雄

    政府委員(藤井正雄君) 供託金利子の支払いにつきましては、予算決算及び会計令により、供託金、歳入歳出外現金を繰りかえ使用することが認められておりますが、この供託金利子は、供託金の元本の支払い請求がなされた場合に当該元本とともに支払うことを要するものでありますために、四月一日以降暫定予算成立の五日までの間の供託金利子について確たる金額をあらかじめ見込むことは困難でございます。  御参考までに昭和六十一年度の予算空白期間四日間の実績を申し上げますと、二百二十九万五千円でございました。
  35. 中村泰三

    政府委員中村泰三君) 郵便貯金の利子それから簡易保険の保険費、郵便年金の年金費の支払い額につきましては、昭和六十二年度の実績から、今回の予算空白期間中、四月一日から五日までの四日間の支払い額をそれぞれ推計いたしますと、郵便貯金の払い戻し利子で約十三億円、それから簡易保険の保険費は約五百十六億円、郵便年金の年金費は約三億円でございます。
  36. 川崎幸雄

    政府委員川崎幸雄君) 国立病院・療養所におきます医薬品、食糧費につきましては、現在備えを持っておりますもので対応しておりますけれども、今日までに対応しております額はおおむね二十八億程度と見込んでおります。
  37. 野田哲

    野田哲君 今それぞれ金額のお答えがあったわけでありますけれども、これらの措置につきましては、憲法の八十三条「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」、八十五条「国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。」、八十六条、これは言うまでもないことですが、「内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会提出して、その審議を受け議決を経なければならない。」、今述べられた各省の処置はこの八十三条、八十五条に抵触をする措置ではないんでしょうか。
  38. 味村治

    政府委員(味村治君) 御指摘のとおり、憲法八十三条は、財政処理の基本原則といたいまして「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」というふうに規定をしているわけでございます。  それで、先ほど法務省なり郵政省その他から御説明のありましたものは、これはいずれも法律の規定が、繰りかえ払いとかそういうような規定がございますので、そういう規定に基づきまして支出をいたしたという、あるいは第三者弁済というのはこれは国でない者が支出するわけでございますから、したがって、これは会計法の適用がないわけでございます。そういったようないろいろ憲法八十三条なり八十五条に抵触しない形で各省庁が苦心して処理をしているのだと、こういうふうに御理解をいただければ幸いであるというふうに存ずるわけでございます。
  39. 野田哲

    野田哲君 繰りかえ払いという制度は、これは国の財政法それから会計法による手続によって郵便局の窓口に、例えば預金者の預金、その日に預け入れられたキャッシュがある、あるいは払い出しに来る人がいる、そういうことで一々それに対して会計法上の日本銀行を通じての手続ができないから手持ちの現金で操作してもいいですよ、こういう制度であると思うのであって、予算空白期間にこれで払えというのが会計法二十条の本来の精神ではないと思うんですが、いかがでしょうか、大蔵大臣
  40. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 緊急避難的な措置としてやっているわけでございますが、今の郵便の例で申しますと、歳入歳出外現金ということでございまして、歳入歳出の外にあるものでございまして、そういった意味では年度区分独立の原則には反しない範囲でやっている措置でございます。  今御答弁申し上げましたいろいろな経費につきまして事後処理の必要なものもございますが、これは年度予算成立したら直ちに事後処理を行う、暫定予算成立すればそれより前にその処理に入るということもできるわけでございまして、私どもはできるだけ早く正常な状態に戻すべく予算の早期成立を期待しているわけでございます。
  41. 野田哲

    野田哲君 先ほどの法務省の説明の中で、被収容者の作業賞与金については外郭団体によって立てかえ払いをしてもらっている、矯正協会。外郭団体に立てかえ払いをしてもらっているということは、国家として矯正協会に対して債務を持つことになるんじゃないでしょうか。これは「国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。」、このこととどういうふうにかかわっているんでしょうか。
  42. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 国が債務を負担するということにやはり法的にはなるだろうかと思います。
  43. 野田哲

    野田哲君 そのとおりです。国が債務を負担するわけです。後で事後処理をすると主計局長も述べたわけですから、債務を負担することになるわけです。これは憲法の八十五条、国会の議決なしにやられているわけですが、いかがでしょうか。
  44. 味村治

    政府委員(味村治君) これは法務省の方のお考えでございますが、この被収容者作業賞与金、これは債務として既に国が負っているわけでございます。支払わなければならないという債務を負っているわけでございます。それを矯正協会という第三者が立てかえるということでございまして、その際に国が矯正協会に、矯正協会の方としては国のためにいわば自発的に立てかえるという形になっておりまして、そういう関係では国が債務を負担していない。仮に国が債務を負担するということになりましても、それは従前受刑者に対して負っておりました債務と同額でございますので、特にそのために債務の額がふえるというわけではございません。
  45. 野田哲

    野田哲君 これは法制局長官、かなり無理ですね。やっぱり先ほど述べられたように、国が矯正協会というところに借金をしたわけですよ。既に矯正協会から立てかえ払いで受刑者に賞与金を払ったわけですから、借金をしたわけですよ。だから、国会の議決に基づかない借金をしたことになるんだし、このことは一つの例でありますけれども、先ほど主計局長は、予算成立すれば直ちに事後処理をすると、こうおっしゃったわけです。つまりそのことは、四月一日から四月五日までの間は予算成立前提にしての会計処理が述べられたような形でやられているわけです、郵政省、厚生省、法務省、その他のところにもあるかもわからない。  この点について、五十七年四月三日、当予算委員会で角田法制局長官はこういうふうに述べておられるわけです。「予算成立前提として国費を支出するというようなことは絶対に許されない、もしそれをすれば違法であるということはもう明らかであると思います。」、こういう角田法制局長官の見解があるんですが、これと全く逆のことがやられておるわけです。その点はどう解釈すればいいわけでしょうか。
  46. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 今、予算の支出を行ってはならないと言われましたが、まさに予算の支出は行っていないわけでございまして、予算の支出を行わない形でいろんな緊急避難的な措置をやっている、そういうことでございます。
  47. 野田哲

    野田哲君 もう一回正確に言いますよ。「予算成立前提として国費を支出するというようなことは絶対に許されない、」、こう述べておられるわけです。予算じゃないんです、予算はないんで すから。国費を支出することは許されない、こうなっているんです。いかがでしょうか。
  48. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 予算成立なくして歳出の執行としての国費の支出は行ってはならないわけでございまして、それはやっていないわけでございます。
  49. 味村治

    政府委員(味村治君) 前任者の答弁でございますので私の方から申し上げます。  角田前内閣法制局長官がそのように言っていることは御指摘のとおりでございます。ただ、その次につけ加えてございまして、「ただ、それはそれとして、一方において現実に国政を運営するという立場から見て、少なくとも形式的な違法ということのそしりを避けつつ必要最小限度の財務処理を行っているということが偽らない現実の姿だと思います。」ということで、そのような処理が行われているということも敷衍をしているわけでございます。
  50. 野田哲

    野田哲君 先ほど主計局長は、国費は支出していない、こうおっしゃったわけで、そうすると郵政省の郵便貯金の払い出しや簡保の支払いなど利子の支払いは、あの金は国費ではないんですか。国が受け入れた金ではないんですか。
  51. 山口武雄

    政府委員(山口武雄君) お答え申し上げます。  繰りかえ払いでございますが、これは出納官吏が手持ちの現金を立てかえて支払いをいたすというものでございます。その時点では歳出予算の使用となるものではないというふうに私ども解しております。  したがいまして、繰りかえ使用をいたしました現金につきましては、後日支出官が歳出予算から支出して補てんいたすというときに歳出予算を使用することになるものと解して運用いたしております。これは、郵便貯金の利子といったような、経費の性質上緊急にお支払いする必要がございまして、一般的な支出の手続によるときはその時期を失するおそれがあるという、郵便局の特殊性から来た特例的な措置として認めていただいているものと、そのように理解しておる次第でございます。
  52. 野田哲

    野田哲君 この問題、今までの議論をずっと調べてみると、やはり政府の答弁に私は無理があると思うんです。法律の曲解があると思うんです。ですからやはりこれは、現在の憲法それからそれに基づく財政法、この趣旨予算空白が生じるという事態は想定をされていないし、また空白は絶対に生じさせてはならないということで、憲法六十条の最低三十日間の参議院審議期間の保障との兼ね合いで暫定予算の制度というものが設けられているわけであると思うんです。そして、会計法の二十条と予算決算及び会計令の五十五条、五十六条による繰りかえ措置等の便宜的処理は、これは国会でも何回も政府の答弁があるように、真正面から容認されているということではない、非常に遺憾なことであると言わざるを得ないと、こういうふうに述べておられるわけです。  そこで、私が一つずつ聞いていくと、それをなお当然かのように理屈をつけた答弁をされる。これは私は許されないと思うんです。今回も予算空白が生じて、現に今こういう議論をしているわけであります。この議論はもう私はこの辺で決着をつけてもいいんじゃないかと思うんです。つまり予算空白が予見されれば暫定予算提出する、あらかじめ予見をされた時点で提出する、こういう態度を明確にすべきだと思うんですが、総理いかがでしょうか。
  53. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今野田さんがこの辺でひとつ決着をつけたらいいじゃないかということについては、私もかねがねその感じは持たないわけではございませんでした。  ただ私は、そこで率直に申し上げまして、その問題が壁に突き当たりましたのは、憲法第六十条第二項、いわゆる参議院衆議院と異なった議決がなされた場合という問題点が一つ。それから、国会法八十三条の二でございましたか、異なった議決が、あるいは否決がなされて衆議院に返付される、その場合の両院協議会、こういうものがある。それで仮にいろんなことを考えてみました。  三月三十一日に可決を期待しておった。それが異なった議決で否決になった。そうすると、両院協議会というものを開くいとまというものがあるだろうか。そういうことになってまいりますと、もう一つ問題がその上にあるなと、率直にそう思います。だから財政法そのものを読んでみましても、予算は十二月提出するを常例とすると書いてありながら、明治以来、一回ございますけれども、一遍も提出したことがない、この辺にも本当は問題がある。  それからもう一つの問題は、じゃどこで予測するか。三十日という審議期間の保障という意味においては、したがってそれにずれ込んだ場合には暫定を一緒に持っていくべきじゃないか、こういう議論になった場合には、これはまたいわゆる二院制そのものに対する批判と申しますか、いろんな御意見があるだろう。  そこで、決着のつけようがなくて、昭和四十一年の一日空白が生じ、その後また五十一年に一日空白が生じ、三日空白が生じ、国会職員の給与の支払い日である五日の前の四日まではいいとなり、恩給の関係で五日までいいというふうなことになってきた。  今私が非常に素人っぽい表現をしましたが、その問題を含めて御議論をいただく問題じゃないか。政府が当然議論すべき問題ではございますが、あるいは国会でも議論をしていただける問題ではないかなと。そこで論文ができて、仮に野田哲議員の暫定予算に関する法律論というようなのができて出版記念会でもやったらみんなが参加するんじゃないか、そんなような気持ちまで今まで、これは冗談っぽいことを申しましたが、長い間毎年この問題で毎度理事会議論しながら、今野田さんのおっしゃった議論は私は一つ一つ正確な議論だと思いますが、その上に加えた憲法六十条、国会法の問題、それからそもそもが想定していないことでございますが、瞬間的に異なった議決があった場合の措置をどうするか、こういう問題もやっぱり含めて議論すべきじゃないかなと。  平素考えておることをどちらかといえば今申し上げた、こういう感じでございます。
  54. 野田哲

    野田哲君 まれなケースのことのために通常のことが処理されないということであっては困りますので、私は常識的な政府のこの問題に対する態度をひとつ検討してもらいたいと、げたを預けておきたいと思うんです。  農林大臣に伺います。この間は御苦労さまでした。あなたのワシントン行きは昭和六十二年度から昭和六十三年度へまたがる二年越しの出張になるわけでありまして、大変御苦労さんでした。経過を御説明いただきたいと思うんです。
  55. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 大変御心配をかけておりまして申しわけございません。牛肉、かんきつの問題につきまして、竹下・レーガン会談においてこのことが例示をされ、一日も早くテーブルに着いて話し合おう、こういうことを受けてテーブルづくりに専念をいたしてまいりました。なかなかできませんでした。三月三十一日という大きな節目を迎えるに当たりまして、その二日半前にやっとテーブルに着くということでございまして、四回にわたる会談を重ねました。私の方からは牛肉、かんきつの自由化は困難であるという考えを、率直にその事情を説明いたしました。輸入枠拡大をベースとして現実的な対応を迫ったのでありますけれども、残念ながら合意を得るに至りませんでした。  しかし、そうした議論の中でアメリカは、ガット手続は取り進めるということでありました。今後とも取り進められると私は想像しておりますけれども、しかしここで話し合いが決裂したのでは何のためのテーブルづくりだかわからなくなる。また、友好国としての存在価値はどうなるのかということで、新たな信頼関係を打ち立てた竹下・レーガン会談における、そのことを農産物問題で水を差してはならぬ。大きな責任を感じまして私としては話し合いの継続方を要請いたしました。そのことについてはわかっていただきました。農林水産大臣が出かけてきたって五分で終わるとい うようなことも公言されておったようでございますけれども、四回にわたる会談の結果、話は継続しよう、こういうことになったわけでございまして、今後とも日米間で、三月三十一日夜でございましたが、その合意を受けて粘り強く一生懸命努力してまいりたいと、こう思っております。
  56. 野田哲

    野田哲君 四月中にまたワシントンへ行かれるんだということが政府与党筋の方から報道されておりますが、もう一回行かれるということは、向こうの譲歩を何か見通しを持っておられるのか、それともこっちが何か譲歩の条件を持って行くのか、それとも前回と平行線、見通しなし、そういう状態で行かれるのか。その点いかがですか。
  57. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) ガットの手続を進めるであろうと。そういう経過の中で、五月四日、パネル設置の問題が出てこよう。そうなればいろいろまた問題が出てくるだろう。そうすると、多くの方々に御心配をかけておりますので、そういうことも頭に置きながら考えておけば五月四日までというのがまた一つの節目になるであろうと。その間に日本の農政、果樹、畜産、こういうことについてもいろいろ検討をし、特に米側に対し団体筋もいろんな方々が、また議会人もアプローチをかけてきた経緯がございますし、私自身もこのたび難しい厳しい環境を承知しながらも、我が方の主張を続けてきたその実績を踏まえまして、そして、一日も早い話し合い、円満な話し合いに決着をつけたい、こういう考え方でございまして、その際向こうが譲るのかこっちが譲るのか、ここがまさに話し合いでございまして、話し合いを一生懸命やらしていただきたい、こういう願望を持っておるわけでございます。
  58. 野田哲

    野田哲君 総理はことしの初めにワシントンへ行かれてレーガン大統領との会談をやられたわけで、そこがこの問題の一つの節目になっているわけですが、総理の方、あるいは今佐藤農水大臣も言われた、友好国との関係をということを非常に大切に考えておられるわけですけれども、その友好国であるアメリカの態度、農産物だけではなくて、建設、そしてこの間の科学技術協定あるいは東芝、すべての分野にわたって経済的に見れば、これはもう友好国じゃないですよ。ジャパンバッシングまさにきわまったという感じなんです。こういう状態に対して総理としてはどう対応されるのか。特にこの農産物問題、これは畜産農家、果樹農家にとっては大変な問題であります。  総理としてのこの問題に対する基本的なスタンスを伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  59. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 日米の関係というのがこれだけ広範囲になると、いろいろな問題も出てくるだろう。しかし、あくまでもその問題はいわゆる共同作業で解決しましょう、それが基本的な首脳会談の合意でありまして、その中で具体的に首脳会談で出た問題について、公共事業への参入問題あるいは科学技術協定の問題、そして今まさに御指摘なすったこの牛肉、オレンジの問題と、こういうことであります。その問題で、いわば四月一日までに期限の切れるものというのは科学技術協定、あるいは牛肉、オレンジ。公共事業は双方の約束で切れるというものじゃなく、米政府の対応を決める期間というものは存在しておりましたが、双方の考え方で切れるという問題ではなかったと。したがって、これについてそれまでに答えを出すか、そして今佐藤農水大臣から、いわば決裂ではなくして今後引き続き二国間で協議していこうということになったと、こういうことであろうと思うのでありますが、基本的にお互いの国の成り立ちの若干の違いもあると思います。  一つ公共事業を見ましても、公共事業といえば率直に言って国または地方団体が発注するものというふうに我々は思うし、ある人は公共的な事業はみんな公共事業だと思う人もあるだろうというようないろんな相違もございますが、徐々に徐々にこれを詰めてきております。したがって、ジャパンバッシングということについて私どもも、ハンマーを用意してそれでぶち壊されるという光景を見て愉快であった国民は決して一人もいないというふうに私自身も思いますが、それを超したいわば日米安保条約というものの上に立った相互信頼というもので、縮小均衡ではなく拡大均衡の中でなお根を詰めた話をしていけばそういう感情自体も徐々に払拭されていくべきではないか、いくものであろうという考え方で粘り強く交渉してみようというふうに思っております。
  60. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で野田哲君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  61. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、矢原秀男君の質疑を行います。矢原秀男君。
  62. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 まず最初に、暫定予算の問題について伺います。  総理大臣、別な話でございますけれども、私、予算空白という問題をいろいろと連想すると、私もスポーツマンでございますので、ジァイアンツの江川選手の入団時の一日の空白ということを考えるわけですが、それについての所感はどうでございますか。
  63. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私の所感は、恐らく矢原さんと同じようなことになるんじゃないかと思います。
  64. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 私は、この江川問題も、すべての関係の法律は人がつくっていく、法律も悪用すれば、善と悪、そういうふうな善用と悪用がございます。ですから、私は今から質問申し上げますけれども、今回の暫定予算の問題についても、法律というものは政権政党としては正道の立場の中でやはり判定を下していかなければいけない。  まず質問の一でございますけれども、帝国憲法第七十一条では前年度予算踏襲制がかって定められました。予算空白という事態が生じないようになっていたのであります。しかし、この制度は、政府と議会が対立したとき無予算期の発生を確実に防止することで政府の立場が著しく強化されていたため、民主主義下の現憲法では採用されなかった制度でございます。したがって、この経緯から考えましても、現憲法は無予算期すなわち予算空白を認めたものではなく、これを回避するため暫定予算制度を設けたということでございます。したがって、現憲法下においても予算空白なる事態は存在してはならないはずでございますけれども、政府見解はいかがでございますか。
  65. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 大日本帝国憲法第七十一条、御案内のとおりでございます。そして、日本国憲法八十三条、「国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」、これも事実であります。だから、矢原さんのおっしゃいましたように、終戦直後、憲法改正に当たって、やはり国の財政を処理する権限は国会の議決に基づいてこれを行うということであるから、すべてこの議決が優先すべきものであるというので七十一条は顧みられなくなった、こういう議論と、もう一つあることはあるんです。前年度予算を執行すべしというと、まさに戦争中の予算を執行することになるんじゃないか、こういう議論もあったやに、これは文献で調べたわけではございませんが、私も聞かされたことがございます。例えばドイツの基本法になりますと、非常に細目が明示してありますが、予算成立に至らなかった場合の措置というものはこれは残されております。  したがって、やはり空白を置くべきでないというところに財政法上における暫定予算というものができて、それに今まで何回かお世話になって議決していただいて、可能な限り空白期間を埋めてきたというのが現実の姿ではないかというふうに考えております。
  66. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 今回も政府が六十三年度暫定予算を四月の二日に国会提出しているわけでございます。これは明らかに六十一年の、さかのぼれば毎年でございますけれども、特に三月二十八日の暫定予算についての委員長発言、これを無視するものでもございます。そしてまた、今回も三月末に、二十三日ですね、社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合会派の国対正副委員長が会談をしまして、この暫定予算について の懸念、心配のために、国民生活に影響を与えてはいけない、こういうことで財政法第三十条の規定に基づいて暫定予算を組むべきである、こういうふうに予測的に自由民主党の国対委員長に申し入れをしている。また、当予算委員会におきましても御質問もありましたし、そうして理事会におきましても、理事会の意向を受けて原委員長から官房長官に対して暫定予算についてのやはり一つ一つの話もあったわけでございます。  こういうわけで、私たち当予算委員会としては良識の中で非常に適切な手を一つ一つ打ってきた、これは与野党ともに私は認めていらっしゃると思うんです。  そういう中で大蔵大臣にお伺いをしたいわけですけれども、特にこういう六十一年三月二十八日の暫定予算についての委員長発言、これを大蔵大臣はなぜ無視されていらっしゃるのか、これは前は竹下大蔵大臣でございますけれども、こういうふうにずっと続いているわけでございますが、この点を伺いたいと思います。
  67. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今回の原委員長の御発言等々に関します政府側の対応、その間の経緯につきましては、先ほど野田委員にも申し上げましたので今繰り返しを省略さしていただきますが、まさに矢原委員の言われましたようなことでございます。政府といたしましては、できるだけ当院におきまして速やかに予算成立をお図りいただきますようにということで念願をいたしてまいりました。  暫定予算をいつ提出するかしないかということは最終的には政府責任でございますし、政府のいわば政治的な決断でございますが、一つだけそういう立場に立つ者の考え方で御理解をいただきたいと思いますのは、参議院におかれまして、殊に予算委員会におかれまして非常に文字どおり極めて御熱心に、順調にこの予算審議をしていただいておることを政府はよく存じておりますために、この暫定予算提出するということは、予算が年度内に成立することは難しいと政府が判断したということを政治的にはどうしても意味いたしますものですから、御審議をいただいておる最中にそういうことをいたしますについては、よほど政府側も慎重でなければならないということは御理解いただけると思うのであります。  今回、幸いにしてと申しますか、参議院側がいろいろ御配慮をいただいて、原委員長からあのような御発言がありました。これは私どもとして、念のため暫定予算編成準備に入れという、いわばそういう政治的な意味合いにおいては委員長としての、あるいは委員会としての態度を御表示いただいたものと考えまして準備に入ったわけでございます。  それから後は、先ほども申し上げましたようなことで、年度内に入って、年度がかわって何日間かはやりくりをするということは好ましくないではないかと言われますことは、きちんとおっしゃればもうそのとおり法律の解釈は後からついていったようなところがなきにあらずでございますから、そういう慣例そのものが好ましくないということはそれといたしまして、一応慣例に従ってぎりぎりのところまではやはり暫定予算を御提出しないことが政府としてしかるべき政治上の態度ではないか、こう考えたわけでございます。  それが事柄の全部でございますが、しかしさらにさかのぼって、その何日間かの空白慣例で処理をされておるということに問題があるとおっしゃいますれば、これは先ほども申しましたようにやはり反省をすべき事柄であると存じます。
  68. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 暫定予算については遅くとも三月三十一日じゅうには国会提出することが政府の果たすべき最小限度の責任ではないかと思います。大蔵大臣も、総理もそうでございましょうが、参議院に送られてきたこの議案の中で、もう三月三十一日時点では本予算成立が期待できるかできないかということは、プロの皆さん方でございますからよくおわかりであろうと思うんです。そういう非常に苦しい中においても我々予算委員会としては、重要な予算を何とか許される期間の中で十分審議をして、義務と責任と権利を国民の皆さんの前に、参議院の本当に公正で独自な立場というものを果たしていきたい、ただそれだけで我々予算委員会は、委員は、一生懸命努力をしていたことは事実でございます。  ですから暫定予算というものは、もう今後は参議院に送られた段階でははっきりと決着をつけるべきであります。参議院の皆さんに一生懸命審議をしていただいても三月三十一日は物理的にはだめだ、こういうことになれば、やはり早急に政府として暫定予算を組み上げていかなければならない、私はこう思うのでございます。  そこで、もう一点伺いますけれども、総理大臣に伺いますが、先ほどからもいろいろやりとりがございますけれども、財政法第三十条の解釈を余りにも政府は恣意的に行っているのではないか、このように思います。初めに述べたように、旧憲法下でも現憲法下でも予算空白なる状態は認められていないと私は思うのでございます。この予算空白なるものを生じさせないために、前年度予算踏襲制にかわり財政法第三十条で暫定予算制度を設け、財政民主主義を貫徹したものであると私は思うのでございます。したがって、本予算における国会審議権を保障するためにも、政府暫定予算を年度内に提出することは現憲法のもとの義務であると私も思います、これを怠ることは逆に議会制民主主義を否定するものではないか、こういうように思うわけでございます。この件について最後に総理責任を伺ってみたいと思います。
  69. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私も矢原さんの御意見を否定しようとは全く思いません。  結局、今までの体験上申し上げてまいりますと、本来そこのところでもう一度議論しなきゃならぬ問題としては、予算空白というのが今まで現実に一日から五日までの間というようなものが許容されてきた、それそのものを否定して、もう一度三十一日というもの、四月一日というものに返ってみようというのも私は一つの見識だと思います、率直に申しまして。  したがって、昭和四十一年に一遍一日間空白を生じたのが、十年間またもと戻しになって五十一年にまた生じ、五十三年からやや惰性的になった、こう言わざるを得ないと思うんですが、結局我々に、いろいろ熱心にやっていただいておる、したがって成立さしていただきたいという物すごい期待感、あるいは期待権とも申しましょうか、そういうものがある。そうすると、その期待感というものと現実の問題を政治的にどう判断するかというと、今まではやっぱり理事会決定によって日程が定まったら、一日から幾ばくかの空白前提としながら出すことを差し控えさしていただいておったのではないか。だから、今度の場合はその見通しが定まらないというところで提出ということに踏み切ったということではないか、率直にそう思います。  しかも、遺憾であるとおっしゃるもう一つの点は、それでは少なくとも三十日なりに踏み切ったら一つの理屈は通るが、年度を過ぎてから踏み切ったということに対するこの御質問に対しては、私もまことに遺憾なことであるとお答えせざるを得ないと思いますが、そこのところの、いわば年内に議了していただける期待権を満たしていただけると判断する、しない、その時期というのが非常に微妙な問題であって、これからもこのようなことがないように、長い間議論した暫定予算制度でございますけれども、アメリカのように年度内における暫定予算についてというような議決ができるわけでもございませんので、我が国の憲法なり財政法なりをさらに読み直して、今おっしゃっている理想ということでございましょうか、それに近づけていく努力はしなければならない問題だというふうに考えております。
  70. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 この件について私も意見を述べておきたいと思いますが、憲法の精神及び予算制度から考えると、財政法第三十条に言う「必要に応じて、」とは、暫定予算に盛り込む内容に対する政府の判断を認めるものにすぎないと思います。また、提出できると言っているのは、年度内のど の時期にあらかじめ暫定予算提出するかという時期の判断を政府にゆだねたものにすぎません。法の趣旨からいって、暫定予算を三月三十一日までに提出することはこれは政府の義務であり、まして新年度入りしてからの暫定予算提出などは政府予算提出権の乱用であり私は許せない、こういう見解でございます。  時間がございませんので次に移ります。  日米牛肉、オレンジ交渉について伺いますが、農林大臣、先ほどもお話がございましたけれども、交渉の過程をまず述べていただきたいと思います。
  71. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 先ほども申し上げましたように、牛肉、かんきつの問題につきましては、一月以降、テーブルづくりをしてそして話し合おうという方針でずっとやってまいりました。しかしなかなかテーブルづくりができませんでした。四月一日からの完全自由化、この主張を一歩も引かずに、それがなければテーブルはつくらない、こういうことでございました。しかし、三月末、大きな節目を迎えるに当たって、三日前、正確には四日前だったと思いますが、テーブルづくりができた。話し合おう、こういうことでございましたので、現地時間でございますが二十九日夕刻、それと三十日、三十一日、二日半というものをかけて四回の会談をヤイター代表といたしました。  我が方は自由化は困難であるということを日本農政について詳しく説明いたしましたが、そのことにつきましては合意を得るに至らなかった。極めて残念なことでございました。しかし、ここで決裂したのではいけない、友好国との話し合いというものが簡単に崩れていいものではない、とにかく話し合いを続けようと、こういうことで話し合いの継続、これを合意いたしましてそして帰国いたしたわけでございます。  形としては一時中断ではございますけれども、話は継続していこう、こういうことでございますので、今後ともいろんな方々がアプローチをかけ、また私自身が体験をしてきたそのことを含めまして、日本農業、特に畜産、果樹、この問題につきまして詰めを行ってまいりたい、そしてアメリカ側にもさらに十分な理解を仰ぐためにひとつ努力を続けてまいりたい、こう思っておりますので、よろしくお願いをいたします。
  72. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 農林大臣、本当に一生懸命御苦労されていらっしゃいまして敬意を表する次第でございます。  もう一度伺いますけれども、米国の要求は、即時自由化なのか、それとも即時自由化を原則とするけれども二年以内の自由化なのか、それとも三年か五年以内の自由化を求めているのか、そういう感触はどうでございますか。
  73. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) アメリカ側は即時自由化、これを強く要求しております。
  74. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 牛肉、オレンジ交渉においても通商法三百一条の発動を考えているようでございますけれども、これについてはどのような見解を持っていらっしゃいますか。
  75. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) いろんな話し合いがございましたけれども、実は率直に申し上げて、今日までのいろんな報道、いろんな解釈、いろんな理解の仕方、このことについて私自身、もともとそう神経質の方じゃないんですけれども、神経質になっているわけでございます。そういうわけでして、三百一条、それで真正面から切り込んできた場合はどうするかとかこうするかとか、そういうようなただいま現在現実の交渉課題になっていないもの、正確に言えばそういうものにここで論評をする、コメントをするということは差し控えさせていただきたい、こう思っております。
  76. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 農林大臣、今後の対応でございますけれども、ガット提訴という処理の仕方だけでなく、二国間協議をも続けていく、こういう継続性を確約できたことは評価いたしております。我が国は、一つは、米国のガット提訴を受けてパネル裁定にゆだねるのか、二番目には、二国間協議により我が国から自由化時期を明示していくのか、こういうふうないろんな点があろうかと思いますけれども、我が国は自由化困難、こういう立場というものをとっていらっしゃるわけでございますが、重ねて今後の我が国の対応を、この点もう一回伺いたいと思います。
  77. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 先ほど来も申し上げておりますように、とにかくガット云々の前に、三月三十一日の夜になりましたけれども、日米間で話し合いは継続しようと我が方で提案をいたしましたものを向こうものんでくれましたので、その線に沿ってひとつ詰めを行ってまいりたい、しかし想像するにガット手続は既に取り運ばれていくでございましょう、こう申し上げておるわけでございまして、そうだとするならば、五月四日というまたパネル設置の節目も出てくるのではないか。  いずれにしても、多くの方々、生産者にも、また消費者にも成り行きについて御心配をかけておりますので、一日も早い決着が必要であると思いながらも、しかし、手順を尽くして丁寧に運んでまいらなければ、後で日本農業にとって禍根を残してはならない。また、ここで私が短気を起こしてやってしまったのでは、これは国際化の中でどういうことなんだというまた新たな批判を日本が受けることになっては、そう言われたのでは大変だと、こういう気持ちがこもごもであるわけでございます。
  78. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 総理大臣、ガット提訴の問題、二国間交渉、この二つがあるようでございますが、米国によるガット提訴の時期、これは四月八日のガットの臨時理事会、五月四日の定例の理事会、このケースが考えられます。農林大臣も今一生懸命やっていらっしゃいますけれども、総理としては、今申し上げた二点のケースがあるわけでございますが、もしこのガット提訴のときの我が国の対応としては、そのときには総理としてはどのような見解でございますか。
  79. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 昨日、最高責任者であります佐藤農林水産大臣報告を聞きました。政府与党一体となってその最高責任者を支持し、またそれの環境をつくるために一生懸命でやろうと、こういうことを申し合わせた次第であります。  今ガット提訴の問題についての御意見でございましたが、恐らく最高責任者たる農林水産大臣、パネル設置という段階というようなものを念頭に置きつつ、話し合いで、二国間協議で、せっかく、レーガン大統領との会談のときにはいわば共同責任でまずはテーブルに着くこと、そのテーブルに条件が合わなければ着かないと言っておったのが、佐藤農水大臣の訪米によってテーブルにはまず双方が着いたわけでございますから、それの延長線上において、やはり根気強く二国間で、パネル設置などということは意識の外に置いて、まずは交渉を進めていくということを基本的に考えております。
  80. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で矢原秀男君の質疑は終了いたしました。  午後零時五十分まで休憩いたします。    午前十一時三十八分休憩      ─────・─────    午後零時五十分開会
  81. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 予算委員会を再開いたします。  昭和六十三年度暫定予算三案を一括して議題といたします。  これより吉川春子君の質疑を行います。吉川春子君。
  82. 吉川春子

    吉川春子君 暫定予算についてお伺いいたします。  なぜ政府は四月二日になって暫定予算提出したんでしょうか。
  83. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 午前中にも申し上げたところでございますが、去る三月の二十五日に委員長から、理事会の御協議等々を踏まえられまして、政府としても当予算委員会審議と並行して念のため暫定予算編成準備に入るよう要請するというお話がございまして、これに対して官房長官から、委員長のお話を重く受けとめまして、政 府としては予算審議が円滑に進められるように最大限の努力を払いたいと存じますが、念のため所要準備に着手いたしますということを申し上げまして、その件につきまして翌二十六日、委員長から当委員会において御発言があったわけでございます。したがいまして、これに従いまして準備を始めたのでございますが、なお当委員会におきまして、あるいは参議院におきまして早く議了していただくことを政府としては念願いたしてまいりました。  しかるところ、先週の土曜日でございますが、もし暫定予算をお願いするといたしますと、衆議院一日、参議院一日というのが過去の慣例でございますし、実は四月六日に恩給年金の支払いがございまして、それが四千三百億近いもので二百万人余に関係をいたしますので、これはもういわゆるやりくりではやりようがございませんので、どうしてもこれをお願いするために暫定予算を御審議いただくとすれば、四日、五日、月、火しかないと、そういう状況でございました。  しかるところ、先週の土曜日、二日になりまして、翌週すなわち今週の御審議の日程が確定をいたしませんといったような状況を承りまして、それでは政府としてはぎりぎりいっぱいこの日に暫定予算提出せざるを得ないということから、同日閣議を開きまして暫定予算提出をいたしたところでございます。
  84. 吉川春子

    吉川春子君 そういたしますと、大蔵大臣暫定予算準備をなさっていた、そして年度内成立を期待していたと、こういうことでしょうか。
  85. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 第一にさようでございます。  第二に、万一参議院におかれまして年度内成立のお運びにならない場合にも、実は午前中にもいろいろ御議論のあったところでございますが、四月の何日間かであれば、決して褒めたことではございませんけれども、いろいろやりくりを過去においてもやってまいりました先例もございますものですから、法律的にも許されないことではないということは実は内心では考えておりました。ただそれは、どうも六日という恩給年金の支払いの日、このときだけはその規模の大きさからいいましていわゆるやりくりという方法がないというのが事実であったわけでございます。
  86. 吉川春子

    吉川春子君 参議院予算委員会理事会では、三月二十五日には既に三月二十八日から三十一日までの委嘱審査等の日程を決めており、六十三年度予算の年度内成立が無理なことはこの時点ではっきりしていたわけです。  なぜ三月三十一日に暫定予算成立するようにお出しにならなかったのかということについては、そういたしますと四月の五日までに予算成立すればいいんだ、こういうことで年度内に暫定予算成立するような日程ではお出しにならなかったと、こういうことですか。
  87. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いいんだと申し上げかねるわけですけれども、まあ何とか五日ぐらい、五日までですとやりくりができないわけではないと。過去にもそういうこともございましたものですから、そういうことは念頭にございました。
  88. 吉川春子

    吉川春子君 改めてお伺いいたしますけれども、予算空白をつくったというのはまさに政府責任ではないですか。
  89. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ここには国会政府しかございませんので、どうも私どもの至らないところはいろいろございました。
  90. 吉川春子

    吉川春子君 政府責任であるということをお認めになったわけですね。そういうふうに受け取ってよろしいわけですね。
  91. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 結果といたしまして、もっと早く暫定予算編成いたしまして御審議を願って、それが成立しておればこのような事態を招かなかったであろうということについては私ども反省をいたします。
  92. 吉川春子

    吉川春子君 重ねてお伺いいたしますけれども、反省をされているわけですが、そういたしますと、なぜ空白をつくったんでしょうか。反省されるならばやっぱりつくらないということであるべきではなかったんですか。
  93. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 空白は、生じましたので、つくられたわけではないと思うのでございます。生じたのにはいろんな原因があったと思います。
  94. 吉川春子

    吉川春子君 内閣官房長官が四月二日に暫定予算提出する理由について、予算委員会理事会でこういうふうに言われました。与野党協議の行方を見守っていた、与野党国対委員長にもいろいろ御苦労いただいたが、話し合いがつかなかったので暫定予算提出に踏み切った、こういうふうにおっしゃったわけですが、そのとおりですよね。
  95. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 理事会で申し上げましたことは、政治が政党政治で行われていることにかんがみまして、与野党間でのいろいろお話し合いがあったことでございまして、その話し合いによってこの予算成立もいろいろ関係がいたしておったことではなかろうかということは申し上げたわけでございます。
  96. 吉川春子

    吉川春子君 与野党でいろいろ話し合いが行われているのは参議院予算委員会理事会もそうなわけですけれども、官房長官がこの二日におっしゃったことは、国会の外でといいますか国会の機関とは別に行われております与野党協議、私たちから言えば密室協議なんですが、官房長官は与野党協議とおっしゃった。そしてその国対委員長会談、こういうもので御苦労いただいたけれども結論は出なかった、だから与野党の話し合いというのは、そういう要するに密室協議というか、国会の機関と関係のないところで行われていた、それを見守っていたけれども結論が得られなかったのでと、こういうことでしたでしょう。確認だけで結構なんですけれども。
  97. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 重ねて申し上げますが、与野党間でいろいろと御協議をされて、そのことの決定というものも国会審議にもいろいろ影響のあることはこれは政党政治の当然の帰結ではなかろうかということを申し上げたわけでございます。
  98. 吉川春子

    吉川春子君 私が今官房長官発言として申し上げましたことは、ここにおられます私以外の与野党の理事の皆さんやあるいは参議院の事務局や政府委員室やマスコミ関係者など、そういう多数がいらっしゃるところで発言なさったわけなんですね。先ほどの午前中の同僚議員の質問でも渡辺内野手、渡部外野手のダブルエラーが直接的な原因だ、こういうふうに指摘されておりましたが、これをお認めになるんですか。総理でも官房長官でも結構です。
  99. 竹下登

    国務大臣竹下登君) そういう御質問があったことは事実でございます。私も聞いておりましたが、合意に達しなかったという事実、この暫定予算提出とは別問題として、合意に税制協議が達しなかったという事実はそのとおりでございますが、それが両ワタナべさんのダブルエラーであったかどうかというのは、それはそれぞれの立場で御評価なさることだろうと思っております。
  100. 吉川春子

    吉川春子君 暫定予算提出問題とそれから与野党協議、括弧つきの与野党協議ですが、これは別問題なんですか。本当にそうなんですか。
  101. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 厳密に言えば、参議院における審議が順調に進んでおって、その参議院における議了の日にちが確定し、それを我々がそのとおりだと認めたならば暫定予算提出はしなかったかもしらぬというふうに思っております。
  102. 吉川春子

    吉川春子君 大蔵大臣もきのうもその意味のことを衆議院でおっしゃっていますが、参議院理事会で四、五の日程を決める前に、それが可能かとか可能じゃないとか決める前に、四月一日の夜に政府暫定予算提出を決意したと、こういう報道があり、四月二日の朝の理事懇では、参議院予算委員会に相談なく暫定を提出するのはけしからぬじゃないかという御発言もあり、それに基づいて官房長官に十一時四十五分に来ていただいて、そのときに既に官房長官は、この理事会報告した後暫定予算提出するつもりなんだと、こういうふうにおっしゃったわけなんですね。  そういたしますと、参議院審議がどうなるかということが予算委員会理事会で決まる前に、既に暫定予算提出ということが決められていたというのは事実の経過に照らしても明らかですが、何によって暫定予算提出する決意を政府はなされたのか、そこをはっきりと答弁していただきたいと思います。
  103. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 要するに参議院における日程が定まったという認識を持てば出さないわけでございます。今までもそうでございます。それは大筋理事会で各党の日程が確定したという事実に基づいて今までも出さなかったということがたびたびございます。  今回の場合は、私どもといたしましては空白を置いてはならないという基本的な考え方はもとよりございますが、いわゆる参議院の日程が定まらない状況下に、空白を可能な限り少なくするためにはこの際お願いをすべきだと、こう判断したわけでございます。
  104. 吉川春子

    吉川春子君 参議院予算委員会理事会で四日、五日にどういうふうに日程をやるかということを、そこで予算が上がるとか上がらないとかということもまるっきり白紙の状態で政府暫定予算提出を決意したわけなんですね。だから、参議院予算委員会理事会の経過とは無関係なんですよ。それなのに盛んに参議院での日程がどうのこうのとおっしゃるわけですけれども、それでは重ねて伺いますが、参議院の日程がうまくいかないだろうと、予算委員会の結論が出る前にそういう心証を持った動機はどういうところにあるんですか。
  105. 竹下登

    国務大臣竹下登君) およそ日程というものは長い先例というものがまた存在しているわけでございます。しかし、いろんな先例も確かにございます。日切れ法案あるいは暫定予算質疑なしということで両院を上げていただいたこともございますけれども、やはり二日間はかかるということだけは先例、それ以上短い先例はないということ、それから当然のこと締めくくり総括というものがあり、そして既に決まっておる集中審議等をにらみました場合に、常識的にこれ以上期待を持つあるいはこれ以上お願いするということはむしろ非礼に当たるからやはり用意をしておいた方がよかろうと、こういう判断に達したわけでございます。
  106. 吉川春子

    吉川春子君 そういう判断に至った原因は何なのか。参議院予算委員会の日程の決定ではないことは私が今明らかにしましたけれども、それ以外に総理としてはそういう心証を持ったという動機があったわけでしょう。それがやはり与野党の国会外の協議ではなかったのか、そのことを率直にお認めいただきたいと思います。
  107. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 貴党の主張されておりますのは、自分たちの入らないいわゆる政党間の協議というものが直接の原因であった、だから自分たちの参加していない協議はまことに避けるべきものであるという考えが恐らく底辺におありであると。これはだれもそう認めておると思うのでございます。しかし、現実の問題として、政府はこれは素直に考えなきゃならぬ場合、やはり先例等からいたしましてこれ以上期待を持ってお願いするということはむしろ非礼に当たると、こう考えたから提出することに踏み切ったというふうに素直におとりいただければ幸いこれに過ぐるものはございません。
  108. 吉川春子

    吉川春子君 大蔵大臣は、参議院予算委員会暫定予算準備をするようにと言ったのは、これはいつ提出すべきだというふうにおとりになったんですか。
  109. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そこは大変に、委員長の御発言も非常に注意して言っておられまして、予算委員会審議と並行して念のため暫定予算編成準備に入るよう要請すると、こう言っておられまして、提出ということも言っておられませんし、いわんやその日についても言っておられません。つまり政府に万一のことがあるかもしれないから心準備をしておけと、こう言われた、それも理事会のお話を踏んまえて言われたということでございますので、大変に慎重に御発言をしていらっしゃるというふうにそのときから伺っております。
  110. 吉川春子

    吉川春子君 財政法三十条その他の問題について理事会で討議しているわけですから、予算空白が生じるような形で暫定予算を提案せよなどということが委員長発言でないことは明らかじゃないんですか。
  111. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 委員長は、予算空白を生じても構わないよというようなことをもとよりお考えでおっしゃったとは思いません。
  112. 吉川春子

    吉川春子君 にもかかわらず予算空白を生じるように、しかも前例のない四月二日に提案されたと。そして私は、総理がおっしゃったように、共産党を入れない与野党協議はけしからぬと、これはかねてから言っておりますけれども、同時に今度はその国会外の国対委員長会議か与野党協議か知りませんが、そういうものによって参議院予算委員会の意思すらも踏みにじったんですね。私たちは、空白を生ずるような形で暫定を提案せよと、そういうことを委員長から言っていただいたつもりはないんで、そういうことで、私は国会外の意思で予算委員会の意思さえも踏みにじっているじゃないかと、こういうことを申し上げているんです。どうですか。
  113. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほど申し上げましたように、暫定予算を提案したことそれから四月二日に提案をしたこと、これは政府責任においてなされたことでございまして、当委員会なり国会にその責めを云々という種類の問題では絶対にございません。私どもの責任においてそれはいたしたことでございます。  それから、先ほど国会外の事情というふうなことをおっしゃいましたが、国会外の事情ということは私どもちょっと思い当たることはございません。
  114. 吉川春子

    吉川春子君 国会の機関以外のところで決められた意思に動かされたのではないかと、こういうことを申し上げているんですけれども、そういうつもりは全くないわけですね。
  115. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはいろいろなことがございましたことは知っておりますけれども、そのことと政府がどの時期に暫定予算国会提出するかということとは、これは切り離してやっぱり考えておかなきゃいけないと思います。
  116. 吉川春子

    吉川春子君 言ってみれば正規の機関ではない、しかも議事録も何もないそういう協議機関での結論というものに左右されて、暫定予算提出も四月二日という大変異例な時期にずれ込んだということは、もう紛れもない事実だと思うんです。参議院予算委員会審議もいわゆる密室協議が整わないことを口実にときどきストップしてきました。しかも、その密室協議というのは何が話し合われているのか、もちろん私たち共産党もそれから国民もあずかり知らないわけです。議事録にも公表されていない。マスコミも国民も厳しい批判をしているではありませんか。すなわち、税制は密室で論議すべきではない、あるいはわけのわからぬ国対政治、奇妙な国対政治、こういうことを書いているわけなんです。審議を尽くすことがまさに国会の任務であり、そういうよその理由を条件として貴重な国会の日程をつぶすということは許されないことなんです。  国民にとって最も関心のある重要な税金問題はもとより、軍備拡大そして大増税、あるいは暮らしを破壊するこういう三予算、こういうものについて私たちは十分に審議して国会の正規の機関で堂々と準備されるべきではないかと、こういうふうに思うわけです。我が党は、密室での協議をやめて正規の機関、国会で三十日の審議期間最大限に活用して徹底審議することこそ参議院の任務である、こういう確信を持っているわけです。——御反論がないようですので、次の質問に進みます。  東芝制裁問題、公共事業参入問題、科学技術協定問題に続いて、日米農産物交渉において牛肉、オレンジについてはアメリカが輸入自由化を要求しています。いずれの場合も、アメリカの理不尽 な要求に対して日本はいろいろ不満は述べているものの、結果としてこれを受け入れている。牛肉、オレンジにしても、これを自由化すればその次は米ではないか、できるだけこれをソフトランディングすることを期待しているにすぎないのではないかと、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  117. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 米にまで及ぶと今おっしゃいましたが、ここで審議をし発言をしていることは直ちにアメリカにもわかる国際社会時代でございます。そういう意味において一言申し上げておきますが、米にまで及ぶなんということは毛頭想像もしておりません。
  118. 吉川春子

    吉川春子君 牛肉、オレンジのことについて伺ったら、そのことはじゃ認めるんですね。そんなことは決して許されないと思いますが、断固として拒否しますか。
  119. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 答えないと、またそれを認めたと共産党流におっしゃるわけでございますから申し上げておきますが、けさほど来私も答弁いたしておりますように、牛肉、かんきつにつきましては自由化は困難である、こういうことでいろいろ説明をしてまいりましたが、まだ合意を得るに至っていない、しかし話は継続しよう、こういうことで今いろんな詰めをやっておると、こういうことを申し上げたわけでございます。簡単に言うとそういうことなんです。
  120. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で吉川春子君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  121. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、三治重信君の質疑を行います。三治重信君。
  122. 三治重信

    ○三治重信君 同僚議員から暫定予算に関する中心的な質問は大体出尽くしたのですが、私はまだ若干各省に、どういうふうにしているかということが漏れている省庁がございますので、ひとつ四月一日からの予算空白中の支払い義務を生ずる法律を持っておられる省庁——法務、郵政は先ほど御答弁なさいました。それで最高裁、労働、厚生、文部、参議院事務総長、総務庁と、これぐらい予算空白中に支払い義務を生ずる省庁があると思うんですが、そのやりくりについては今まで御説明になったことがあるかもしれませんが、ここでひとつ総括的にそのやりくりの状況を説明していただきたいと思います。
  123. 町田顯

    最高裁判所長官代理者(町田顯君) お答え申し上げます。  裁判所の関係の固有のものに限って申し上げたいと存じますが、そういうものといたしましては、この期間中に裁判所に出頭していただきました証人あるいは参考人等に対します旅費、日当、それからこの間に支給決定がありました国選弁護人報酬、それから若干特殊でございますが、四月四日に司法修習を終了いたしました司法修習生に支給いたします司法修習生手当といったようなものが裁判所固有のものであろうかと存じます。  証人等に対します旅費、日当につきましては、精算払いの方法で暫定予算等が成立いたしました後にお支払い申し上げるわけでありますし、それから国選弁護人の報酬あるいは司法修習生手当につきましても、同様に後払いということで従前からやっております。
  124. 清水傳雄

    政府委員清水傳雄君) 労働省におきます予算空白中に支払い義務の生ずる法律事項といたしましては、雇用保険法に基づく失業給付金等がございます。これらにつきましては、労働保険特別会計法施行令第七条等の規定によりまして前渡されている前渡資金を充てることによって対処をいたしているところでございます。
  125. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 恩給の支給期日は恩給給与規則によりまして毎年四月、七月、十月、十二月、それから払い渡し開始期日は年金恩給支給規則によりまして各支給期月の六日とそれぞれ定められているわけでございます。したがいまして、昭和六十三年四月支給期分の支給日は四月六日ということになっておりまして、私どもといたしましては遅くとも四月五日じゅうに予算措置をしていただかないと支給ができない、こういうことでございます。
  126. 黒木武弘

    政府委員(黒木武弘君) 厚生省関係でございますが、既に先ほど出ておったところでございますが、国立病院等における食糧費、医薬品等の購入費でございまして、これは持ち越し分で対処いたしておるところでございます。  それから脱退手当金、死亡一時金というのがございますが、通常裁定請求を受けてから支給決定がなされるまでに、脱退手当金につきましては一カ月程度、死亡一時金につきましては一週間程度を要することから、決定されたものが現在のところございません。  それから三つ目に、労働省の雇用保険法に基づく失業給付金等と同様でございますけれども、船員保険法に基づきます失業保険金等がございまして、これも労働省からお答えになりましたように、前渡資金を充てることによって支払っているところでございます。
  127. 古村澄一

    政府委員(古村澄一君) 文部省関係ではこの期間中に支払い義務が具体的に生じたものはございません。
  128. 加藤木理勝

    ○事務総長(加藤木理勝君) 国会における各会派に対する立法事務費の交付に関する法律の立法事務費がございます。これは各月に交付することになっておりまして、交付日は各月の一日となっております。したがいまして、空白中には予算成立の翌日にこれを交付するように決裁をいただいて、両院議長の御決定をいただいてそのようにお願いしております。  それから職員の給与がございます。これは毎月五日支給というように決めてございますが、これも決定によりまして予算成立の翌日ということにいたしております。  あと速記生徒の手当、これはわずかでございますが、それがございますが、これも職員と同様に予算成立の翌日に支給するようにいたしております。  以上でございます。
  129. 三治重信

    ○三治重信君 文部省、別に支障がないと言うんですが、国立大学の附属病院の支払いは文部省は関係ないですか。
  130. 古村澄一

    政府委員(古村澄一君) 医薬品等の購入費あるいは患者食糧費等がありますが、これは前年度からの持ち越し分で対処いたしておりますので、具体的には困難は生じておりません。
  131. 三治重信

    ○三治重信君 もうこれは暫定予算の場合のやりくりのやつは、法律を調べればみんなわかっていることなんですよね。今各省に御説明願ったんですが、四月五日までなら何とかやりくりできるというふうな答弁なんですけれども、これはやはり、法律によって施行する体制の行政組織としては、やりくりで過ごすということは決して正常的なものではないと思うわけなんですよね。だから、政府はなぜ暫定予算を組むのを嫌がるか。これは事務的に、もう衆議院が通ったときには、三十日で計算すれば四月に入るか入らぬかというのはこれは自明的にわかるわけなんで、きちんと準備をして年度内に今後出せるように努力してもらいたいと思うんですが、いかがですか。
  132. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 大筋私もそうすべきである。したがって、今三治さんは努力すべきであるとおっしゃいましたが、そのとおりだと思っております。  それで、毎年のことでございますので、私もそのことを幾ばくか考えたことがございます。現状の例えば院の構成、各会派がどうなっているかというようなものを全然離れまして、いろんなことがあり得るわけでございますから、したがって、衆議院参議院が異なった議決がなされる場合もあるわけでございます。そういうことの勉強をしてみますと、本当にそれが三月三十一日であった場合には、それこそ参議院予算を否決したときはこれを衆議院に返付する、これは国会法八十三条の二の第三項。それから国会法八十五条の第一項を見ると、予算、条約に関する両院協議会というものがあって、予算について参議院において衆議院の送付案を否決したときは、今度は両院協議 会をつくらなきゃいかぬ。そうすると、両院協議会は、御案内のとおり各議院十人ずつの委員をもって組織する。そういうことを考えると、それが三十一日に行われた場合、両院協議会を持つ機会が一体あるだろうかと。そんなことをこうやってみますと、予算空白というものをあらかじめ想定してあの当時憲法なり財政法なりというものは考えられただろうかということが一つございます。  それからもう一つの問題は、憲法六十条第二項の問題でございますが、三十日以内に議決しないとき、異なった議決なりをしないときは衆議院の議決を国会の議決とするということがありますから、三十日間の審議期間を保障するということになると、その三十日を計算して同時に本予算暫定予算というものを送るべきだという議論も一つあるわけでございます。それはまた、今度は二院制の自主性ということを考えると、これは非礼千万じゃないかという議論もまた成り立つわけであります。  かれこれ考えますと、最終的にはおっしゃったように三十、三十一、これも慣例によって今まで暫定予算質疑なしに送ったということもございますけれども、そのときもやっぱり一日、一日は確保しておるということでございますから、三十日に提出して三十、三十一でやるということがやはり一つの考え方であるのかなとも思われるわけでございます。したがって、今おっしゃったような形で努力していかなきゃならぬということには私は努力すべきであるという答えをするのが当然でございますが、本当にその場合、慣例上五日までは何とかやりくりができるということを前提に置いた議論は、じゃやめてしまうかというと、昭和五十一年以後の経過から見て必ずしもそうもいかぬし、したがって本当に気を使いながら毎年こんな議論をして、時には不毛の議論をしているような自己矛盾も感じておるということを率直に申し上げておきます。
  133. 三治重信

    ○三治重信君 今総理も御答弁のように、こういう議論というのは本当に余り生産的でもないし前進的でもないんです。だから、参議院の方、我々の立場からすれば、殊に参議院予算の三十日の期間というものは保障さるべきだと。それが普通であって、今総理が言われた特殊の場合はちょっとおいてですよ、毎年行われる、衆議院予算が終わって三十日という日にちはわかるわけなんだから、そこでひとつ参議院予算審議を確保するために、四月に入り込むような場合にはきちんと暫定予算を組んでいただくと。そうすれば、衆議院はとにかくとして、参議院予算審議中ですから、わざわざそういう暫定予算のための審議をあるいは政府の要請によってはやらぬでもそれで処理できると、こういうふうな感じを持つし、私は衆議院の状態を見ておっても、この暫定予算を組むか組まぬかというのが新聞だねになって、そのために与野党の攻防がいつでも衆議院の方で繰り返されて、本当の審議がいつも軽はずみと言っちゃ悪いかもしれないけれども、ちょっとしり切れトンボになるときもある。  こういうことを考えると、私は暫定予算をぜひ今後とも正常に組んでもらいたい、こういうことを要望いたしまして、質問を終わります。
  134. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で三治重信君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  135. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、野末陳平君の質疑を行います。野末陳平君。
  136. 野末陳平

    野末陳平君 きょうはいただいた時間が三分でございますので、通常の質疑はやめることにしまして、かねがね疑問に思っていることを一方的に言ってみたいと思います。  それはこの予算委員会質疑のあり方なんです。私も長いことこうして質問をさしてもらうんですけれども、果たしてこれでいいのかということを常に考えまして、今の総理のお言葉にも自己矛盾とか不毛の議論という言葉がありましたけれども、まさにそのとおりで、まず大臣の皆さんについては、やはりこちらが本音で迫っても必ずしも本音のお答えはいただけないということが多いですね。中には遠慮しながら低姿勢で野党の質問に答えて逃げちゃうという、そういう感じもする。そんなことの繰り返しで、明快なる質疑応答というのはこの場ではなかなか行われていない。これをずっと続けているわけですね、僕も長いこと。それから、政府委員の方に至っては本音は絶対言わない。これはもう必ずしっぽのつかまらないような難解な、回りくどい、わかりにくいことを答えて時間稼ぎをやる。そうすると、こちらが本音で聞いても何も意味がない。非常にこれはばかばかしくなってくる。  それから、野党から言わせれば、確かにそうですね、いいお答えをいただいたときにはそれなりの評価があるんでしょうけれども、しかし、そちらから反論が全然ないですからね。つまり、こちらは意見を一方的に言うだけで、いわばインタビュアーみたいなもんですから、こんなことでいいのかと、僕は余りいいと思えないんですね。それから、こちらの先生方もそうなんですね。これ座って聞いていらっしゃるだけで退屈じゃないかと思ったりしまして、かといって発言の時間は少ないしね、気の毒だとも思ったり、この場のあり方というのは国民が期待しているような白熱した議論なんていうのはなかなかなくて、どこに責任があるかは別として、これ、総理にお聞きしたいんですよ。  実のある議論がここで行われているのか、国民の期待にこたえているような国会かどうかと、そういうふうに問われた場合に、どういうふうにお答えになります、僕はどうもそうじゃないと思っているんですがね。
  137. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず、国会運営に私が長らく携わってきた経験から申し上げますと、与党質疑時間が少ないと、これはやはり、法律案作成に至りましても、あるいは予算編成に至りましても、政府与党一体責任で政調会の各部会等で十分自己の意見を吐き、質疑応答をしていらっしゃるということからして、割愛と申しますか、可能な限り少数意見に耳を傾けると申しますか、野党の皆さん方に時間を差し上げるというのが私どもが教わって今日まで守っておるところでございます。したがって、決してばかばかしいとも思うたことは私自身ございません。  それから、本音の議論、これは確かにわかります。私が言語明瞭意味不明ということをよく、あれはだれが最初申したかと申しますと、実は後藤田前官房長官でございました。大平さんの答弁はアーウーというのが非常にあるけれども、アーウーを解いたら後で読んでみると非常に明快であると。竹下君の文は、そのときの言葉は大変すばらしい言葉を使うけれども、後から読んでみると、本当にしっぽをつかまれないような答弁をしているんじゃないか、こういう私に対する忠告で、言語明瞭意味不明と、こういうことを言われたわけでありますが、それは確かに私自身反省しなきゃならぬ。おっしゃるいわゆる本音の議論をすべきだということに心がけるべきであるという自己反省をいたしております。  それから、もう一つだけ申し上げると、政府の場合、行政府の立場からして、立案に至る過程として各種審議会等にその諮問をし、答申をいただく間、一応の個人としての意見は別として、政府としての統一見解というものを答弁の形で申し上げるときに一つの制約がある。それはまた行政府の立場として、諮問申し上げた審議会等に敬意を、尊重するという立場において限界というものを絶えず持っておるという感じは私自身持っております。  しかし、本音の議論が、それは陳平さん、おれはこう思うんだよというような議論が行われるのは好ましいことだと思っております。
  138. 野末陳平

    野末陳平君 今のようなお答えの事情は僕もわかるんですね。長いことやってきてわかってきちゃった。わかってきて、それでいいかというと、逆にそれじゃだめだというふうに思っているので、あえてここで言いたくなったわけです。  そこで、もうちょっとこの国会を、あるいは予算委員会質疑のやりとりというのを活性化して、おもしろくと言うと語弊がありますが、少なくも退屈でないような中身のあるものにするために、一つだけ僕、提案したいんですね。  そちら側も、閣僚の皆さんも野党に、質問者にどんどん反論すべきだと思うんですよ。違うとか、それはもっと詳しく聞きたいとかね。せめてそういうやりとりがなければ、聞くけれども、ただそれで逃げられて、それでおしまいと、そういうのだけではつまらない。ですから、これは大臣の皆様、それぞれ個性がありますから、その反論が嫌な方もいらっしゃるでしょうが、少なくも野党が言いっ放しというんじゃなくて、そちらが反論してくるなり、こちらの意見をさらにもっと引き出すなり、そのための時間も惜しまない、こういうことをしてみたいと思って、またそれをお願いできるかどうか、そういうことはいかがでしょうか。最後にそれだけお願いします。
  139. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 心得るべき御提案であると思っております。  しかし、私どもお互い選挙という洗礼を受けて出ておる際に反論をいたします。反論をいたします際にも非常に丁寧に反論をするような習性が少しつき過ぎているなと、こんな感じは私自身の反省の中に持っております。
  140. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で野末陳平君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  141. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、喜屋武眞榮君の質疑を行います。喜屋武眞榮君。
  142. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 厚生省は、去る三月の十日から十七日まで、五名の調査団を派遣してフィリピンのマニラ、ダバオ、バギオ、三市調査をしておられますが、その調査の結果を承りたい。
  143. 木戸脩

    政府委員(木戸脩君) お答えを申し上げます。  今回の調査は、今次大戦により親と離別した孤児を含めまして日系二世等の肉親調査、それから生活状況等の実態調査、それから遺骨の残存状況、この三項目について厚生省と外務省、両省共同で調査を行ったところでございます。三月十日から十七日の八日間の間に、日系二世を主体とする百十一人の方と調査団が面接する機会がございましたが、その面接調査の主な内容でございます。  一般的な問題は別といたしまして、厚生省サイドの問題といたしましては、まず私どもが一番関心を持っておりました中国残留日本人孤児と同様の孤児の定義に該当する方はいたかどうかということですが、これはおられませんでした。それ以外に面接を受けた方々から、肉親の消息調査をしてほしい、あるいは日本の肉親を訪問したい、あるいは援護年金の受給資格が自分があるかないかなどの相談を受けたところでございます。  なお、八日間の滞在期間中でございましたが、調査団が帰国後もフィリピンの全土から日本の大使館あて調査依願が寄せられておりまして、現在その数は百五十件に達している、このような状況でございます。
  144. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 今の調査に基づいて政府はそれなりにどういう対応をしておられますか。
  145. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) 今後の進め方でございますけれども、孤児につきましては肉親調査を行います。また、御本人の希望がございますれば、引き揚げ援護等の措置を講じてまいるわけでございますが、全体的に申し上げますと、孤児の場合には中国残留日本人孤児と同等の考え方で処置をしてまいると、このように考えております。
  146. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 フィリピンには実は戦前沖縄からのたくさんの移民が行っております。したがいまして、その結果、沖縄出身の親を持つ孤児や二世がフィリピンには多いと思われます。  そのことは幸いに裏づけと申しますか、三月十二日の地元新聞、琉球新報では、パナイ島に四十人の孤児や二世がいると報じております。  そこで、私がお尋ねしたい結論は、そういうことから察しましても、フィリピン全域にわたって孤児や二世がおることが十分予想されます。その今の調査の方向は点の位置だと思うんですが、全面的に調査を進めていかれる予定がありますかどうか。
  147. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) そのように考えております。
  148. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、調査の上、判明した残留孤児や二世に対してどのような処遇を考えておられるか。すなわち肉親捜しの問題、あるいは国籍を明確にするとかそういう問題があると思いますが、そのことについてはどのように考えておられますか。
  149. 木戸脩

    政府委員(木戸脩君) まず、狭義の孤児の方についてでございますが、孤児の方につきましては、中国残留日本人孤児の場合と同様に、帰国したいという御要望がございますれば旅費を持って帰国をしていただくということを考えております。  それからいわゆる二世の方でございますが、二世の方につきましては孤児と同様な事情にはまいらないわけでございます。しかしながら、人道的な見地から、合法的な結婚で当時としても国籍を取得できたというような状態の方で、親子関係もはっきりしていて、ぜひ親が一度呼びたいが旅費を負担する能力がないというような特別の事情がある場合には、各省と相談をいたしまして、フィリピン政府合意が得られましたならば肉親との再会ができるように措置をしたいというふうに考えております。  それから国籍の問題につきましては、個々人のいろいろな御事情があると思いますので、これからいろいろ調査をいたしまして、個人個人のケースに応じまして一番いい道を選ばれるようにアドバイスをしたいというふうに考えております。
  150. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それでは総理にお伺いしたいんですが、戦後四十三年、我が国は経済大国だと。ところが、道義的立場からの戦後処理が遅々として進んでいないことを私は憂える一人であります。この現在まで放置された理由は一体どこにあるのであるか、政府としてこの問題の解決に向けて今後どのように取り組みたいと考えておられるのであるか。  もう一遍念を押したいのは、戦後四十三年もたった現在まで、このような大事な戦後処理の中で人間性の根本につながる問題だ、こう私は理解いたしておりますが、これが四十三年も放置されておる。政府としてこの問題の解決に向けてどのように取り組んでいく決意であるのか、総理の基本的な姿勢を承りまして、私の質問を終わります。
  151. 竹下登

    国務大臣竹下登君) おっしゃいますように、一九四五年に戦争が終わりまして、私なりにそれからひもといてみますと、やはり一番最初は占領下であったということ、それからその次は賠償問題というのに率直に言って大変なエネルギーを費やしてきた時代、こういうふうなことがあったのではないかなというふうに思います。私自身国会の御同意を得てことしできますのが元台湾日本兵の問題ができるわけでございますが、これとて戦後処理のいわゆる心に触れた人間の問題の一つの解決施策ではなかったかというふうに思います。  そうして、今おっしゃいましたフィリピン残留孤児の方等々の問題、孤児のみでございませんが、これについても、今問答がございましたように、厚生省は厚生省の立場、いろいろな角度からやっとそこへきめの細かいとでも申しましょうか、そういう対応が整いつつある。したがって、心に残ったもろもろの問題については、これは私どものいろんな施策の実行の中で、そういう私どもの時代、生きとし生けるものの整理をして後世代に引き継いでいかなきゃならぬことではなかろうかというふうに考えております。
  152. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で喜屋武眞榮君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  153. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、青木茂君の質疑を行います。青木茂君。
  154. 青木茂

    ○青木茂君 まず第一に、総理はなぜ暫定予算を組まざるを得なくなったか、この理由をどういうふうにお考えでしょうか。
  155. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはたびたび宮澤大蔵大臣あるいは小渕官房長官からもお話がありましたが、予算空白を置いてはならないというぎりぎりの決断というのが、参議院における予算の年度内ではなく、従来の習慣に基づく五日までの日程等に経験上照らしてみると空白が生ずるであろうということを認めたから、政治的な判断をして暫定予算をお願いしたと、こういうことに尽きると思います。
  156. 青木茂

    ○青木茂君 政治的判断でなぜ暫定予算を組まざるを得なくなったか、本当の理由はどこにありますか。
  157. 竹下登

    国務大臣竹下登君) やっぱり仮に五日までというのを従来の慣例上許容していただけるとすれば、お互い長い国会の間の中で、されば締めくくり総括がどれぐらいかかるだろう、そうして集中審議がどれぐらいかかるだろうというようなことをすれば、五日までに議了していただけるということが可能性が薄いというふうに判断したと、こういうことでございます。
  158. 青木茂

    ○青木茂君 普通だったら暫定予算を組まなくてもいいわけですね。その組まざるを得なくなった政治的な背景というものを総理はどういうふうに御理解になっていらっしゃるか、これをお伺いしたい。
  159. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 暫定予算というのは、原委員長から二十五日に準備しろと言われたように、毎年暫定を用意しておりますと言うこともまた非礼に当たるから、黙って大体用意してまいりました、私も長い間。これを提出するしないということは、これは大きな政治的決断であろうと思うのでありますが、その決断というのはやはり空白が生ずる可能性というものができたという判断そのものではないかというふうに思っております。
  160. 青木茂

    ○青木茂君 なぜ空白が生じる可能性ができたとお思いですか。
  161. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは恐らくあるいは与野党税制協議の問題等を底に置いての御質問だと思いますが、純粋に言えばやはりそれはそれである、やはり常識的に考えて一日、一日の先例によって、たとえ質疑なしでも一日、一日はかつても暫定予算では先例が存在しておるということと、普通の場合、締めくくり総括等に費やす日程というようなものを常識的に判断さしていただいたということ、やっぱり極言してみればそこに尽きるんじゃないかなというふうに思います。
  162. 青木茂

    ○青木茂君 私が伺っているのは実は十分御承知で手続論その他をおっしゃっていらっしゃって、こっちもその御答弁を十分承知で、何だこの平行線、不毛な議論はと、こう思っていて、これ以上伺っても私が伺いたい本当のお答えは出てこないし、もう皆さん早くやめろというような顔をして聞いてみえるわけですから、これ以上言いませんけれども、とにかくさっきの話じゃないけれども、本音の議論でやりとりをしませんと問題は一歩も進まないと思いますね。  私が本委員会の一般質問で、総理はいらっしゃいませんでしたけれども、どうも今度の一連の抜本的な税制改革というのは九回の裏から野球を始めるようなものだ、そこにいろいろ問題点が起きるんだと、こういうことを申し上げたんですけれども、それに対して総理、どういうふうにお考えでしょうか。
  163. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 新聞で読ましていただきました、九回の裏から始まるようだと。言い得て妙だと言うとこれはまた大変なことになりますから、やっぱり青木さんらしい表現の一つだなというふうに素直に読ましていただいたということであります。
  164. 青木茂

    ○青木茂君 総理らしい表現の一つだというふうに素直に御理解を申し上げますけれども、新聞紙上盛んに間接税論議、百家争鳴というのか、たけなわなんですけれども、この間接税というのは目的とお考えでしょうか、税制の抜本改革のやむを得ざる結果というふうにお考えなんでしょうか。
  165. 竹下登

    国務大臣竹下登君) あるいは後で大蔵大臣にお答えいただいた方が適切かと思いますが、やっぱり税というのはせんじ詰めてみますと所得の段階と消費の段階と資産、これに着目して税制というものの構築がなされておる。それで、税の歴史を見ますと、例えば共産主義国とでも申しましょうか、の場合は、言い方によれば全部間接税でございます。国有企業があって、そこに価格が決められて、それによって上がった収益によってもろもろの国政上の最低限のものがなされる。これは、国という法人の法人税であるという理解と、物価に転嫁しておりますからすべて間接税だという理解とあるわけでございますが、最初はそういうところから出発いたしまして、そこで大体所得に応じた所得の再配分思想というのが入ってきて、それが所得税体系というものになってきた。そうなって今度は所得の捕捉の問題というのがいろいろ議論されて、やはりそこには三者に適当な配分というものがなされた税体系が好ましいというふうに税の歴史というものは動いてきておるのではないかな、こういうふうに私は感じておるところでございます。  したがって、まず間接税ありきではございません。今でも、個別消費税ではございますけれども間接税は存在しておるわけでございますから、まず間接税ありきということではなく、まず所得、消費、資産等に適切に配分された税構築いかにありきか、こういうことであろうと思っております。
  166. 青木茂

    ○青木茂君 そうすると、間接税という言葉を抜きまして、税制の抜本的改革というのは、これは一種の自己目的なんですね、大蔵大臣いかがですか、手段ではなしに。
  167. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いやそれは、しかし税制も一つの政策でございますから、国全体の大きな政策の中では一つのやはりそれは政策手段であるということも言えますし、またしかし税制そのものが一つの完結した制度でなければならないという観点から見れば、それは青木委員のおっしゃるようなことも言えると思います。
  168. 青木茂

    ○青木茂君 税制全体が一つの完結したものであって自己目的である。何かここに原因があるからこれはすぐこういうふうに税を変えなければならないということであるとするならば、今なぜそんなに急ぐのか。抜本的改革であればあるほど時間をかけるべきなんだ。つまり、自己目的なら少し急ぎ過ぎではないか、こう思うんですけれども、総理の……
  169. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、ただいま総理が言われましたように、まず自己完結的なものだと考えましても、やはりシャウプ税制以来三十何年というものは所得、消費、資産の間のバランスが明らかに崩れておりますから、そういうことでございますからやはりそこは改めておくだけの時間がもうたっておると思いますし、今度は広い意味での政策手段としての税制ということを考えますと、やはりだんだん高齢化社会を迎えるといったようなことまで考えまして、いわば国の一つの政策としての税制というものの観点からも改めるべき時期に来ておるのではないかと考えます。
  170. 青木茂

    ○青木茂君 私が申し上げておるのは、必要性は十分わかるといたしましても、もう秋だとかすぐだとか、なぜそんなに拙速をお考えになるのか、こういうことです。このお答えだけ伺って終わりにします。
  171. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) やはりそれは、昭和五十三、四年のころから少なくともこれは政府としてはいろいろに考えておって、何度か国民からの御注意を受けたりまた挫折をしたりいたしまして今日に及んでいるわけで、決して二、三年前に考え始めたことではございません。少なくとも十年に近い歴史を持っておりますし、また高齢化社会の到来というのはもう十一、二年、だんだんそこへ迫っていきますから余り先のこととも実は考えられないのではないかと思っております。
  172. 青木茂

    ○青木茂君 終わります。
  173. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で青木茂君の質疑は 終了いたしました。  これにて質疑通告者の発言はすべて終了いたしました。質疑は終局したものと認めます。     ─────────────
  174. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) それでは、これより昭和六十三年度暫定予算三案に対する討論に入ります。  別に討論の通告はございませんので、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  昭和六十三年度一般会計暫定予算昭和六十三年度特別会計暫定予算昭和六十三年度政府関係機関暫定予算、以上三案を一括して採決いたします。  三案に賛成の方は起立を願います。    〔賛成者起立〕
  175. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 多数と認めます。よって、昭和六十三年度暫定予算三案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  176. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。    午後三時まで休憩いたします。    午後一時五十七分休憩      ─────・─────    午後三時開会
  177. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 予算委員会を再開いたします。  昭和六十三年度一般会計予算昭和六十三年度特別会計予算昭和六十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  これより教育に関する集中審議を行います。  質疑者等は、お手元の質疑通告表のとおりでございます。  それでは、これより久保亘君の質疑を行います。久保亘君。
  178. 久保亘

    ○久保亘君 質問の最初に、解決を急がれる二つの問題についてお尋ねしたいと思います。  最初に、中国における高知学芸高校の生徒たちの不幸な列車事故に対して健康センターの支払う見舞い金について、法の定めるところでは、他の賠償金が支払われる場合にはその額の範囲内で減額させることができるようになっております。しかし、これは減額を行うことができるとなっているのでありまして、あくまでも理事者の判断によるものと思うのでありますが、今回海外において起きました事故であることなどその実情にかんがみて、この問題については十分な法の許す範囲の最大の措置をとるべきものだと思うのでありますが、文部大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  179. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 高知学芸高校の三月二十四日に起きました事故について御指摘でございますが、多数の死傷者を出した事故でございまして、まことに悲惨な、悲しむべき出来事でございまして、冒頭私からも亡くなりました方々の御冥福をお祈り申し上げますのと同時に、負傷されました方々の一日も早い御全快をお祈りする次第でございます。  また、去る二十五日には、当委員長を初め与野党各委員の御配慮によりまして、二十五日夕刻から出さしていただきまして、おかげさまで翌日高知へ参りまして知事並びに学校長、理事長方とお会いをいたしました。事故発生の情報が入りました直後から関係各省と連絡をとりまして事後対策に万全を期したつもりでございますが、その態勢を御報告するのと同時に、学校関係者並びに上海それから政府、この三位一体で事後処理に当たるということをお伝えし、また御希望があればこちらで何なりと承るということを申し上げました。ついでと言っては失礼でありますが、当日ちょうど在日中国大使の章曙大使も高知へお見えでございまして、御一緒する機会がございましたので事後対策についてお願いを申し上げ、章曙大使からも快く、日本の希望については本国に直ちに伝えると、こういうお言葉でございました。  さて、今御指摘の日本体育・学校健康センターからのいわゆる死亡見舞い金でございますが、去る三月三十一日に学校の方にはお渡しをいたしてございます。ただ、聞くところによりますと、四月三日に遺族会が結成をされまして、遺族会の方方から現在学校にプールされておるというふうに承っております。この死亡見舞い金につきましては、日本体育・学校健康センター法によります規定がございますが、これについては、先生今おっしゃいました趣旨を体しまして知恵を絞ってみたい、こう思っておるわけでございます。ただ、その結果と、それからタイミングと言ってよろしいのかどうか、中国との賠償その他の進行もございますので、よく知恵を絞りたい、こういうことだけ申し上げておきたいと思うのでございますが、御趣旨の点はよく心得て考えたいと思います。
  180. 久保亘

    ○久保亘君 十分な措置がとれるように、今大臣言われました考え方に沿ってぜひ御努力をいただきたいと思います。これは、法はあくまでも行うことができると定めているのでありまして、それは理事者の方の判断の裁量の範囲が広く残されているものだと考えております。  次に、新潟大学の医学部附属病院において、大学の病院の駐車場を有料にするという方針が決められて、これが利用者に対していろいろと配布をされ、実際にはこの私が見ております文書によりますと昨日から実施されることになったのかなと思うのでございますが、国立大学の病院の駐車場を有料にするという問題について、とりわけ診療を受ける患者から駐車料を取るというような問題について、文部省はどういうふうにお考えになっておりますか。
  181. 野崎弘

    政府委員野崎弘君) お答え申し上げます。  新潟大学の医学部附属病院におきましては、かねてから自家用車の御利用を抑制すべくいろいろな指導がなされておるわけでございますけれども、特に近年自家用自動車を利用して入構する者が多いとか、あるいは病院に関係のない者が無断で駐車するというようなことが多いというようなことから、学内で対策委員会などをつくりましていろいろ検討したわけでございますが、駐車整理ということを実施しようということで、先生お話ございましたように既に昨日、四月四日からこれを実施しております。  駐車整理ということになりますと、それに必要な費用がかかりますので、駐車場の利用者から駐車整理に必要な最低限の費用相当額をお願いするというようなことで実施をしておるわけでございまして、これは実は新潟大学が初めての例でございませんで、既に五十年ごろから同じような形で実施をしている例がほかにもございますので、そういうようなことで新潟大学も実施をしたい、こういうような希望を聞いておるわけでございます。
  182. 久保亘

    ○久保亘君 厚生大臣、国立のあなたの所管にかかわる病院等において、診療を受けに来る者から駐車料をお取りになる病院がどれぐらいございますか。
  183. 川崎幸雄

    政府委員川崎幸雄君) 国立病院・療養所におきましては、一般的には今お話しのような駐車料金というものは徴しないわけでございますが、ただ、全国二百五十二カ所ございます病院のうち、都会地にございます三カ所につきまして整理料として低廉な額を徴しているという実態がございます。これは、近年自家用車によります外来患者あるいは見舞い等がふえているのに対しまして、外部の方々の違法といいますか駐車が多いために、利用に非常に支障を来し、苦情も非常に多かったためにこれを整理する必要が生じたということでございます。そのため、非常に低廉の額でございますけれども、整理料として徴しているということでございます。
  184. 久保亘

    ○久保亘君 厚生大臣、診療を受けに来る者がその診療の費用を負担するというのは、自己負担であれ保険であれ、診療費を支払うということは、 これは病院の施設を利用し、そして医師の診断を受ける、そういうことの対価として支払われるものだと私は思うんですが、どうですか。
  185. 川崎幸雄

    政府委員川崎幸雄君) 病院にお見えになる方、それぞれいろいろな形で、あるいは交通機関を使いあるいは自家用車をお使いになってお見えになるわけでございますけれども、ただ一般的に先生も今お話しございましたように、特別な負担をかけるというのは望ましくないわけでございますけれども、特に都会地区におきまして駐車場の確保が非常に困難である、こういったような実情もございまして、管理のために低廉な額を整理料としていただくということもこれはやむを得ないのではないかと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  186. 久保亘

    ○久保亘君 低額な料金ではなくて、これ私が見ております資料ではかなりな金額を徴収することになっておりますよ。例えば年決めにする者は二万円とかいろいろございまして、そんなに安い料金ではありません。  それから、新潟大学の学部長が連名でお出しになりました文書がここにございますけれども、不正に駐車場を利用する者が非常に多くなったので、その状態を改善するためにあなた方にお金を持ってもらいます、こういうことになっておるんです。こんなばかな話がありますか。不正に利用する者があるから正規に診療を受けに来た者がそのための費用を払わにゃならぬという、こういうのを大学が文書でお出しになるというのはどういうものですかね、文部大臣。
  187. 野崎弘

    政府委員野崎弘君) お答え申し上げます。  先生の御指摘でございますが、実は外来患者からは三十分までが無料、それから三十分を超えるときにこれは二百円というようなことで、そのほかの方につきましては確かに三十分まで無料ですが、三十分から一時間半まで二百円、それ以降は百円という加算をしていくというようなことで、患者の方とそのほかの方とはこういう形で差をつけて料金を徴収するというようなことも考えておりますし、それから駐車の整理業務をいたしますので、それに必要な費用等を最小限でお願いする、こういう趣旨でございます。
  188. 久保亘

    ○久保亘君 今、国立病院に診療に行って外来の患者が三十分で帰れる病院があったら、その病院の名前を挙げてください。
  189. 野崎弘

    政府委員野崎弘君) 確かに診療時間は三十分ということでは無理かと思いますが、そういう形で患者の方々にはほかの方よりも負担が少ないようにという配慮をしている、こういう意味で申し上げたわけでございます。
  190. 久保亘

    ○久保亘君 これ文部大臣、国の機関である大学の病院が診療を受けに来る患者から駐車料を取るということは私はやめるべきだと思う。全然関係のない者が料金を払うというのは当然のことでしょう。しかし、診療を受けに来る者から料金を取るというようなことはやめるべきで、現に厚生省の管轄の国立病院だってほとんどの病院はそんなことをしていないんです。そして、こういうのは文部省と協議しておやりになるんですかね。そういう駐車料を取る、取らぬというようなことは大学の自主的な判断に任されておるんだろうか。それならば、私はやっぱり文部省として診療を受けに来る患者から料金を取ることはするなというような指導が行われるべきだと思うんですが、どうでしょうか。
  191. 古村澄一

    政府委員(古村澄一君) 病院においでになる方はいろんな交通機関を利用されるわけでして、電車賃を払って電車に乗って来る方、あるいはタクシーに乗って来られる方、いろんな方がおられるわけでございます。そこで、駐車場が非常に狭い、そこに公平に車を収容するということになるとある程度の整理が必要だということで整理料をいただいているということでございまして、これはそういった形でやった方がより公平にその駐車場というものが使用できるだろうということから始まったものだというふうに思っております。  なお、これについては大学の管理のことでございますので、大学でお決めいただいているというのが今までの経緯でございます。
  192. 久保亘

    ○久保亘君 私は今民間の病院を利用する場合もいろいろよく知っておりますけれども、民間の病院だって駐車場の代金なんかを取るところはそんなにありませんよ。それを国の機関が、民間でもやらないようなことをどんどん大学の自主的な判断だといってやらせるなんというようなことは、これは私は国のやり方としては非常に逆向きなやり方だと思う。少なくとも診療を受けに来る人たちに対しては、それはそこの病院の施設なんだから、そこを診療を受けに来る者が利用することができるようにしてやるのが今の近代的な医療機関のあり方でしょう。だからそういう点については検討してきちんとやってもらえるかどうか、大臣どうですか。
  193. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 今大学病院の管理の問題ですから、そちらに自主的にと、こういう話でございました。  ただ、やっぱり私伺っおりまして、その趣旨は限られた駐車場を有効に使いたい、こういうことでありましょうから、限られたスペースを有効にということは、ほかの方々が入って肝心な方々が入れないということもお考えなんでありましょうから、先生おっしゃるように肝心なのは患者さんでございまして、患者さんの車ができるだけ駐車場スペースを使えるように、だからそのほかの方は多少遠慮していただくことがあるかもしれませんですわね。  そういうことも含めて、これは大学の自主的な運営のことではありましょうけれども、お話を伺っておりまして、限られたスペースをどのようにしたら有効に使えるのか、そういう見地からちょっと調べさせて勉強させていただきます。どのようなスペースで、利用者がどのくらいあって、患者さんだけでもいっぱいなスペースなのか、あるいは患者さんだけならいいけれども、そのほかお見舞いの方その他の方が入って肝心の患者さんが有効なスペースになかなか入れなくて困っておられるのか、そういう実情も含めてちょっと勉強させていただきたいと思います。
  194. 久保亘

    ○久保亘君 不正な利用を監視し、そして管理を行うためにお金が要るから外来患者も負担しろ、こういうことになっている。これは私は非常に逆な物の言い方だと思うんですよ。もし駐車場をきちっと管理する必要があれば、それは大学、国の責任においてやるべきことであって、それを患者の負担でやらせるというものではなかろう、こう思っております。その点についてはひとつ大臣の方で十分御検討いただいて、適正な処置を指導してもらいたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  195. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 実態をよく勉強させていただきます。
  196. 久保亘

    ○久保亘君 次に、法制局長官にお尋ねいたしますが、憲法十六条に定める法、命令、規則の制定、廃止、改正その他の事項に関する国民の請願の権利はすべての国民に保障されている基本的な権利であって、何人もその権利を制限されることはないと思うんですが、あなたの方もそのことで間違いございませんか。
  197. 味村治

    政府委員(味村治君) 憲法第十六条は請願権を保障いたしておりまして、この請願権の保障というものはすべての国民に及ぶものであるというふうに考えております。
  198. 久保亘

    ○久保亘君 憲法十六条に言う法や規則の制定、廃止、改正ということについて、行政府が立案中の法令に対して反対の意思を持って請願を行うことは憲法十六条に認める権利である、こう思いますが、よろしいですか。
  199. 味村治

    政府委員(味村治君) 法律の制定は国会でお定めになるわけでございますが、その法律案の作成は、これは初めは各省、それから内閣ということになっておりまして、各省で立案の段階におきましてその法律案につきまして何らかの御意見を有する方々が請願をなさるということは、これは当然の憲法十六条の請願権の範囲であろうというふうに考えております。
  200. 久保亘

    ○久保亘君 それから、憲法十六条は、国や公の 機関が既に決定した法令であっても、その政策に対して意見があり廃止や改正を求めるということも十六条の請願の権利に含まれると思うのですが、そのとおり解してよろしいですね。
  201. 味村治

    政府委員(味村治君) 憲法十六条に、「法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、」と書いてございますから、御指摘のとおりでございます。
  202. 久保亘

    ○久保亘君 法制局長官にもう少しお尋ねしておきますが、教職員団体がその請願の権利、法令に反対の意思を明らかにして行うその権利を行使する目的で集会を開く、そして団体の意思を確認または決定するということは、これは何ら違法な制限をされる行為ではない、こう思うのですが、よろしいですか。これは憲法二十一条ともかかわっている。
  203. 味村治

    政府委員(味村治君) これは、国民は集会の権利あるいは表現の自由を持っております。ただ、地方の公安条例あるいは道路交通法等によりまして、そういった法律なり条例なりによりまして制限されるという場合はございますが、そういったような制限がございませんければおっしゃるとおり自由でございます。
  204. 久保亘

    ○久保亘君 そうすると、その請願のための行動を行うこと、例えば今言われましたように公安条例とかいろいろな、そのことの議論はありますが、仮にその条例を前提に置くとしても、適法なデモとかあるいは署名活動を行うということは、十六条の請願の権利等に照らしてこれは何ら制約を受けるものではない、こう思うのですが。
  205. 味村治

    政府委員(味村治君) 委員の頭に描いていらっしゃる具体的な事案がちょっと私わかりませんので的確なお答えにならないかと思いますが、まず十六条の請願する権利、これは政府なりそういった国の機関に対して請願をする権利自体でございます。したがいまして、その権利は、先ほど申し上げましたように、平穏に請願する限りにおいては保障はされているわけでございます。  ただ、その請願の準備行為と申しますか、準備行為というものはこれは請願権のいわば直接保障しているところではございませんで、それはまた表現の自由なり集会の自由なりいろいろな自由というものに該当する場合もございましょうし、そこら辺はもう少し具体的な事案を伺ってみませんとお答えのしにくい場面でございます。
  206. 久保亘

    ○久保亘君 いや、今私が申し上げたのは、だから適法なデモとかあるいは署名活動とかいうようなものが、行政府が決めたことに対して反対の意思を持つものであるから禁止されるというようなことはあり得ないであろうと、こう言っているんです。
  207. 味村治

    政府委員(味村治君) 法律なり条例なりによって禁止されていない、言ってみれば自由な範囲に属する集会、そういったことの目的が行政庁の政策に反するからといってそれだけで禁止されるということはございません。
  208. 久保亘

    ○久保亘君 それではその請願のために必要な文書、図画を発行し、これは憲法でも認められていることですね、それからその文書を必要な人たちに回覧に供する、こういうことは憲法の保障している言論、出版、表現の自由ということだと私は思うんですが、これが人の身分によって禁止されることはございますか。
  209. 味村治

    政府委員(味村治君) 出版の自由あるいは言論の自由というものは憲法の保障しているところでございます。先生の御指摘のようなビラの配布といったようなことは、これは一種の言論の自由ということで憲法の保障する範囲に入るかと思います。  ただ、先ほど申し上げましたように、ビラの配布等につきましては、例えば公職選挙法でございますとかあるいは国家公務員法に基づく政治的行為でございますとか、ほかにもございますけれども、そういった法律なりあるいはまた地方によりましては条例によって制約がございますので、そういう制約の範囲内で行う限りではこれは自由であるわけでございます。
  210. 久保亘

    ○久保亘君 十六条の反対の立場に立って請願をする権利というものが何人にも保障されているということをあなたはお述べになっておるんです。そしてその請願のために必要な文書を発行し、その文書を回覧に供するということが、これが法律をもって制約されるということは私はあり得ないと思うんですね。今言うように、公職選挙法とかそういう特別なものはございますよ。ただ、一般的に憲法十六条の規定する内容に基づいてそういうことを、例えば国の決めた法令や決めようとする法令、そういうものについて意見を明らかにするために文書をつくって配る、そしてその意見に同調する人の署名をとるという行動が、これが禁止されることがあり得ますか。
  211. 味村治

    政府委員(味村治君) 具体的な事案がどうも頭に浮かびませんのではっきりしたことを申し上げかねるんですが、先ほど申し上げましたように、請願するというのは国の機関、地方公共団体の機関も入りますけれども、そういった公の官公署に請願をするわけでございます。  それで先生がただいまおっしゃいましたことは、請願をするためにその意見に同調される方を集めるとかいうようなことで自分の意見を回覧するとか、そういうことで請願のための一種の準備行為であろうかと存じます。それにつきましては直ちに先ほどの十六条の規定が及ぶというわけにはまいりませんで、それはまたそれで表現の自由でございますとか、そういうものの範囲に入ろうかと思うわけでございます。表現の自由につきましては、先ほど申し上げたとおりでございます。
  212. 久保亘

    ○久保亘君 だから二十一条の言論、出版、表現の自由というのも、これは何人たりとも制限を受けるものではないでしょう。
  213. 味村治

    政府委員(味村治君) 表現の自由は何人に対しても保障されているわけでございますが、これは公共の福祉のために必要な限度内におきまして法律に、あるいは場合によりましては条例によって制限をされるということもあるわけでございます。
  214. 久保亘

    ○久保亘君 それはどんな場合ですか。
  215. 味村治

    政府委員(味村治君) 例えば、先ほど申し上げましたように、公職選挙法におきまして配布いたしますビラなり文書の枚数を制限いたしますとか、あるいは刑法上のわいせつ罪でございますとか、そういったような例があろうかと存じます。
  216. 久保亘

    ○久保亘君 そこで文部大臣、去る三月二十九日、文部省教育助成局長名をもって各都道府県、指定都市教育委員会教育長あてに発せられた「教職員の服務規律の確保について」の通知、これは内容御存じだと思いますね。この内容は、今法制局長官が言われた憲法に定める十六条や二十一条の何人も侵されることのない権利、そういうものに照らして、この文書は法的にかなり問題が含まれているとお考えになりませんか。
  217. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 三月二十九日に教育助成局長の出しました通知は私も当然見ております。ただ、今手元にちょっと持ち合わせがございませんけれども、後段にありますように、これは法律に違反をすることがないよう、そういう違反をするようなことによって学校教育が信頼を失うことがないようにと、これが後段に書かれておるところでございまして、私はその点は当然のことながら、それを主に出したものというふうに考えております。  ちょっと全文が今手元にありませんので、後段部分——前段それから中段、後段がございますが、私の言いました部分は締めくくりの部分、特にそこが大事であろうと思って申し上げておるわけでございます。
  218. 久保亘

    ○久保亘君 この問題については、私の手元にも通知の写しがございますが、これは明らかに「国の機関又は公の機関において決定した政策の実施、例えば初任者研修の実施」、初任者研修というのはまだこれは国の機関において決定していないんです。法律を今から審議しようとしている問題です。にもかかわらず、「国の機関又は公の機関において決定した政策の実施、例えば初任者研修の実施」と、こうなっている。そして、仮に決定した政策や法律であっても、先ほど法制局長官 が述べましたように、国民の権利として、これに反対の意思を請願するものが認められている。それにもかかわらず、「署名運動の企画・指導等を行うこと、そのような目的を有する文書、図画等を発行し、回覧に供すること等は政治的行為に該当するものとして禁止されている」ということを断定的に述べて、そしてこのことに対して地方の教育委員会教育長が厳正な指導を行うようという文書になっているわけです。  これは明らかに憲法の定める国民の権利を行政官庁の一局長が制約し、そしてそのことを地方の教育行政機関を通じて強制させようとする、まことにこの文章に、「全く理解に苦しむところであり、」と書いてあるが、このような通知こそ全く理解に苦しむところであって、私はこのような文書を文部省が教育委員会に対して出したということは非常に疑問があると思うんです。  これは文部大臣、きょう私はこのことを質問することを申し上げておったので、この通知をそこへお持ちになっていないというのは、私は非常に不思議に思っていますけれどもね。これは衆議院でも質問があり、大臣も十分御承知のことだと思うんです。このような通知が出されたのは初めてのことであって、私どもはこの通知が出された意図が那辺にあるのか非常に理解に苦しんでおるところであります。  ぜひ文部大臣はこの通知について十分御検討の上、この通知を訂正すべきものがあれば訂正し、撤回しなければならないものであれば撤回すべきものだと思うんです。これは行政官庁のメンツにとらわれて、このような不当な文書をこのまま出しっ放しというわけにはまいらぬだろう、こう思うんですが、いかがですか。
  219. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 失礼をいたしました。  いずれにしても、この三月二十九日の局長通知は存じておるところでございますので、私としては一番大事なところは、先ほど申しましたように、違法な行為がないように、そして教育の中立性が損なわれることがないように、そういうことがあって学校教育の信頼が損なわれることがないようにと、こういう趣旨であろうと思うわけでございます。  ただ、その中段の部分で先生御指摘の部分がございます。これは恐らくその根拠は教育公務員特例法、それによって政治的行為の解釈が国家公務員法、さらには人事院規則、こういうふうになっていくのだと思いますが、その辺の法解釈をした上でこういうものが出されておると、こう思うわけでございますが、私としてはこれは正当なものと存じますけれども、段々先ほど法制局長官にお問いただしのように、これを出されました根拠というようなことがございましたら、失礼でございますが、政府委員からお答えさせたいと思います。
  220. 久保亘

    ○久保亘君 これはどう考えてみても、憲法に認められている国民の権利、そしてそれは教育公務員であろうと教職員団体であろうと、何人もこれを制約することはできないし、何人も制限されることのない権利なので、その権利を明らかに制約するような意味に解せられるような内容は、これはやっぱり私は率直に文部省としてはそのことを認めて措置すべきものだと思うんです。  あなたが言われた最終部分は、これは私は言わずもがなのことを言っていると思うんですよ。法律に違反するようなことがあったり政治的中立性を疑わしめるような行為をすることで学校教育に対する信頼を裏切るようなことがないようという、こんなことは別に改めて通知として出す必要のないものなんです。  ただ、私が問題にしているのは、このような例えば教職員団体であるとかあるいは一教育公務員が文書や図画等を発行しこれを回覧したり、あるいはあの法律は我々国民の立場に立って困りますということで、そのことに対して自分たちはこういうことを考えているんです、ぜひ賛成してくださる方は署名してください、そういうようなことをやることが、これがすべて教育公務員には禁止されている行為であるというような、こういうことはもう明らかに私は行き過ぎたと思うんですよ。憲法のない国の局長が書いたような文章になっているんで、この点については、私はきょうここでこれ以上論議をしてもあなたのお答えは同じようなことだろうと思うのでやりません。  しかし、この問題についてはこれは文部大臣、あなたが文部行政の責任者なんだから、幾ら文部省が管理体制をしこう、思うとおりにお上の言うことには従え、そういうことを文部省の局長考えているとしても、そのようなことを、民主的に選ばれた国会から出ておられる文部大臣がそのようなことに私は同調されてはならぬと思う。これは十分今私が法制局長官とも話をしましたその問答もよく御検討いただいて、そして明らかに違法な通知文書であるものについて、あるいは違法の疑いのある通知文書については率直にこれを訂正、撤回されるように強く求めておきます。御検討いただけますか。
  221. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 今の通知についての御指摘でございまして、先ほど法制局長官も、御指摘になっておる具体例がちょっとわかりにくいのでお答えしにくいと、こういうことでございましたけれども、今三月二十九日の通知の内容についてお尋ねでございますれば、当然通知を出すときの法解釈もございましょうから、これはもう正しいと思って出しておることは事実でございまして、その根拠についてここで政府委員からお答えをさせたいと存じますが、よろしゅうございますか。
  222. 久保亘

    ○久保亘君 いや、結構です。時間かないので、私が今言ったことをきちっと大臣の方でも御検討いただけば、また改めてこの問題についてお尋ねをする機会を得たいと思っております。  次に、この通知ともかかわっております教職員の初任者研修の問題についてお尋ねをしたいのでありますが、私は、地公法や教育公務員特例法に定める研修の条項については、どこからどう読んでみましても、研修というのは本来教職員の自主的な研修を保障し、その機会を与えることが行政の基本的な使命となっているように思うのですが、その点は大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  223. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) ちょっとお尋ねは、初任者研修の前段のお尋ねでございましょうか。
  224. 久保亘

    ○久保亘君 いや、研修ということについて。
  225. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) これは恐らく、例えば地方公務員法、国家公務員法ございますけれども、教育公務員につきましては教育公務員特例法の十九条、二十条に定められておる部分だと思いますが、十九条の前段に、「教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない。」云々がございまして、これは強いて言えば、私はみずから研修し向上する意欲を持つ、同時はそれに対して任命権者もまた研修するための施設、方途、計画などを立案して、その実施に努めなければならない、両々相まつものと、こういうふうに考えます。
  226. 久保亘

    ○久保亘君 そもそも研修というのは、研修をする者自体が意欲を持ち、そしてその研修の計画を立てていくということが主体であって、それで行政機関というのはそういう研修が十分に行えるように援助をする。今言われましたように、施設の問題であるとかあるいはその機会を与えてやるとか経費を助成するとか、そういうことが主たる任務で教特法の十九条、二十条に定める研修というのは最初決められたんじゃないかと私は思っております。  それは今大臣が言われたこととおおむね合致するんですが、しかし、今試行が今度の予算でも行われようとしております初任者研修というのは、任命権者の義務として教職員に研修を強制する制度になりはしないか。それはこれまで教育基本法に基づいて教特法が定めてきた、教育基本法の精神を体して教特法にも定まってきた研修のあり方と基本において矛盾しないかなということを思うんですが、この初任者研修を任命権者の義務として教職員に強制をするというその目的は何です か。
  227. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 基本的なことだけ申し上げますが、恐らく教職員の身にある者は、ここにありますように常に向上心を持ち研修をする、こういうことでございますので、どこからどこまでがその期間ということはないわけでありまして、常にその身にある限りやはり勉強し向上心を養う、こういうことでございますので、その中の一環として定めた初任者に対することでございますので、この初任者というのはまさに初めて、資質はもちろん皆さんおありになるわけですが、初めて人として人を教える、人づくりに参加される、そういう教鞭をとられる初めての時点でございますので、この点はまさに任命権者がその期間あるいはどのようにというようなことを定めて、資質をさらに向上させ、知見を広め、そして初めての御経験でありますから円熟した教員から実践的な指導を受ける、実践的な指導力を養わしめると申しますか、そういう期間をとることは当然であろうかと、このように考えます。
  228. 久保亘

    ○久保亘君 それでは、初任者研修のような制度をおつくりになります場合、これは試行の形であっても、また研修についていろいろと計画を文部省がお考えになります場合に、教職員をもって組織する教職員団体との協議というのは、これは全く必要のないものだとお考えになりますか。    〔委員長退席、理事林ゆう君着席〕
  229. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) すべて文部省が行政施策を進めます際に、教職員に関係いたします事柄につきましては各方面から広く意見を聞いているところでございます。  今回の初任者研修の六十二年度にスタートいたしました試行にいたしましても、既に御承知のように例えば臨教審答申を受けてこの初任者研修の構想をスタートさせたわけでございますが、その段階、あるいは教育職員養成審議会におきます初任者研修についての御審議の際にも、例えば教職員団体あるいは関係教育団体あるいは校長会、教育委員会、すべての団体の御意見は聴取しながら立案をしてまいった段階でございます。
  230. 久保亘

    ○久保亘君 すべての団体の意見を徴して立案をしてきたと言われるが、実態はなかなかそうなっていないんじゃないですか。現に文部大臣は、それでは最も大きな教職員の団体である日教組の責任者とお会いになりましたか。
  231. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 結果的にはまだお会いしておりません。ただ、いろいろな団体もございまして、そういう方々の御意見を私どもの耳を大きくしてお聞きするということは大切なことであろうと思いますし、やぶさかではございません。  ただ、それぞれの団体の運動方針その他は拝見しておりまして、やや全部否定されるとなかなかやりにくいなという感じはいたすわけでございますが、さはさりながらやっぱり表向きの運動方針もございましょうし、それから失礼ですが、その表向きというのは、全部反対と言われましても、しかし心はやはり教育、人づくりでございますから、国家百年の大計に向けましてどのようにして生涯教育をし、どのようにして新しい青少年を育てるか、そして平和国家を培うための人づくりだという面ではそう変わるわけはないと、私はこう思っておりまして、運動方針を突き合わせますと、はっきり申し上げまして、率直に申し上げまして、運動方針同士突き合わせますとなかなかこれは大変な難しいことだと、こう思いますけれども、より率直にお話し合いできる機会があればぜひ拝聴したいものだと、こう思っております。
  232. 久保亘

    ○久保亘君 意見が違うから話し合うことが必要なんです。意見が遠いからなお会って相手の考えを聞かなければならない。それを、意見が違う者はもう会っても仕方がない、そういうことでは非常に問題があると思うんですね。  それから、私はこれは日本の文部省も当然にかかわっておられると思うのでありますが、ユネスコの特別政府会議で採択をされた教員の地位に関する勧告というのがございます。これは大臣は御存じですか。
  233. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 存じております。一九六六年の会議のことだと思います。
  234. 久保亘

    ○久保亘君 この中には例えば第九項、「教員団体は、教育の進歩に大きく寄与しうるものであり、したがって教育政策の決定に関与すべき勢力として認められなければならない。」、こういうことがございますね。それから七十一項には「教員の職務遂行に関する専門職の基準は、教員団体の参加のもとで定められ維持されなければならない。」、七十六項には「当局と教員は、教育事業の質の向上のために設けられた措置、教育研究、新しく改善された教育方法の発展と普及に教員がその団体を通じ、またその他の方法によって、参加することの重要性を認識しなければならない。」、こういうことが定められておりますが、文部大臣はこのユネスコの教員の地位に関する勧告、今私が一部を読み上げましたこの条項について、これは尊重せらるべきものだとお考えになりますか。
  235. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 御質問の予定があったとすれば失礼なんでございますが、ユネスコの教員の地位に関する勧告すべてをちょっと手元に持っておりませんので、今お読みになりましたのがごく一部——ごく一部と申しますか、一部であろうと思います。これは勧告でございまして法的な拘束力はないとは思いますけれども、やはり努力目標の一つであろうという点では尊重すべきことであろうと思います。ただ、強いて言えば、三十一に現職教育の重要性を認識する面がございました、七十二に教員と教員団体は、当局と十分協力するよう努める、こういう一部もあるわけでございますので、両方相まって尊重していくべきことかなと、こう思います。
  236. 久保亘

    ○久保亘君 協力というのは、これは相互に協力することであって、さっきの通知のように文部省の決めたことに批判をしたり反対をしたりすることは許されぬというような考え方では協力は生まれない。だから、協力というのは私は大切なことだと思いますよ。だからこそ、この勧告も、教員団体が教育政策の決定に関与すべき勢力として認められなければならぬ、それは教育の進歩に大きく寄与し得るものであるからだ、こういう定めになっておるわけでありますから、だから法的な拘束力はないということはそのとおりかもしれませんが、私は今文部大臣がこの勧告については十分尊重すべきものであろうとおっしゃったことについては、私も大臣のお考えに敬意を表しておきたいと思います。  それから、時間が非常に短くなりましたので、この研修の問題についてもう一つ人事院にもお聞きしたいことがございますが、法制局長官に最初にお尋ねしたいのは、憲法十四条に定める法のもとの平等ということは、これはまた抽象的なことでお答えしにくいかもしれませんが、法のもとの平等ということは、同じ立場の人が法律のもとで差別されてはならぬ、こういうことだと思いますね。だから、一般的に言えば、国民は法のもとにすべて平等である、こういうことで、この平等を崩すような法の定めというのは認められない、こう思うんですが、どうですか。
  237. 味村治

    政府委員(味村治君) 憲法第十四条第一項は、近代憲法におきます基本的原則の一つである法のもとの平等を定めるものでございまして、各個人はすべて人間として平等な価値を持ち、法の内容あるいは法の適用につきまして人種、信条、性別、社会的身分等によって差別されないことを保障した規定でございます。ただ、しかし同項は、法律上のあらゆる差別を禁止したものではございませんで、合理的な理由に基づかない差別というものを禁止している趣旨でございまして、合理的な理由がございます場合には、これは他と異なる取り扱いをするということは憲法十四条第一項に違反するものではございません。したがいまして、先生の御質問は、結局そういった措置が合理的な理由に基づくか基づかないかということに帰着するかと思われます。
  238. 久保亘

    ○久保亘君 それでは、具体的にお聞きしましょう。  同じ年に同じ任命権者によって任命をされた例 えば教育公務員が、人によって条件づき採用の期間を違えられるというのは、憲法十四条に照らしてどうお考えですか。
  239. 味村治

    政府委員(味村治君) 先生のただいまおっしゃいました条件の以外に何も相違がない、あるいはそれにつきまして何かそういった区別をする合理的な理由がないということになりますれば、憲法十四条一項に違反するということになるわけでございます。
  240. 久保亘

    ○久保亘君 これは人事院はどういうふうにお考えになりましょうか。公務員として地公法、国公法によって条件づき採用の期間というのが決まっておりますね、六カ月。これをある特定の政策の目的を遂行するために、部分的に条件つき任用の期間を一年に延ばす。同じ年に同じ任命権者によって採用された立場の者が、そういう政策目的のために部分的に条件つきの期間を二倍に延ばされる、こういうことは人事院の立場から見たらどうなりますか。
  241. 内海倫

    政府委員(内海倫君) 具体的なことが私よくわかっておりませんので的確な答弁になるかどうかわかりませんが、私どもの国家公務員における採用及び人事というものにつきましては、もう御承知のように、国家公務員法に的確に平等ということが、あるいは公平ということが明記されておるわけでございます。だから、もし今仰せられておるようなことがやはり法の趣旨に従って行われるものであるならば、これをあえて違法と言うことはできないと思います。  私、甚だ失礼でございますが、その具体的な例を今承知いたしておりませんので、具体的によしあしを論じかねますので、さらに必要であれば事務当局から調べさせて御答弁申し上げたいと思います。
  242. 久保亘

    ○久保亘君 いずれまた、法律の具体的な審議の際にいろいろ私どもの疑問をお尋ねしたいと思っておりますが、少なくとも、例えばこれはもう文部大臣よく御存じのことで、初任者研修という一つの文部省の決めようとしている、法律で定める政策を遂行しようとすることのために、同じ任命権者が同じ年次に教育公務員として採用した者が、条件づき採用期間が六カ月の者と一年の者とに分けられるなどということは、これは明らかに、今長官も言われたように、憲法十四条に基づく法のもとの平等という点では問題が出てくるのではないか。また、人事院の総裁も具体的な事例がわからないのでと言われたけれども、一般論としては疑問を。呈せられたわけですね。この点についてはひとつまた機会を改めて議論をしましょう。  それで、文部省としてもこの点については十分内容を吟味して、小なくとも憲法に定める法のもとの平等とかあるいは他の法律との法体系を崩すような混乱を起こすようなそういう法律を準備すべきでない、私はそう思いますので、御検討いただきたいと思います。  時間が非常に短くなりました。最後に文部大臣にお尋ねしたいのは、中曽根内閣のときに閣議決定されました教育改革大綱がございますね。防衛大綱にしてもこれらの大綱には大抵実施に必要な財源についての一応の説明がつけられているのでありますが、この教育改革大綱には財源はどういうふうに示されているのか。  特にこのことをお聞きしたいのは、最近文教予算の国家予算に占める割合の落ち込みは非常に激しいものがございます。一九六〇年には一二・四%であったものが、今審議中の予算では、大蔵大臣もしっかり頭にとめていただきたいと思うのでありますが、八・〇七%に落ちております。一二・四から八・〇七といえばかなり急激なこの二十数年に及ぶ文教予算の落ち込みだと思っております。こういう点について、文部大臣は一生懸命頑張っておられるのは私もよく知っておりますので、どうお考えか、今後どういうふうにやっていこうとされるのか。とりわけ文化予算の問題と、それから最も重要な教職員定数改善計画の四十人学級の六十六年度完成に伴う新しい年次改善計画の策定ということについてどういうふうにお考えになっているか、その点を伺いたいと思います。
  243. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 幾つかの御指摘でございました。  まず、文教予算一般会計に占める割合と、こういうことでございました。これは確かに落ちておりますけれども、私どもは、失礼ですが一般歳出と比べる方がより正しいと言えるんじゃないか、こう思いまして、残念ながら——残念ながらというのか、六十三年度一般会計にも国債費、つまり利子払いが約十一兆円も入っておりますので、その分と比べますと確かに落ちてまいりますが、一般歳出と比較をいたしますと大体一四%程度を維持しておるところでございまして、強いて言えば〇・一ぐらいが前後しておるかなと、こういうことでございますが、まあ後段で頑張っておると言われれば頑張っておるなと、こう思っております。  六十三年度は二十九億円増の四兆五千七百六十六億で、これで賄うと、こういうことでございますが、四十人学級も六十六年を完成年度として最大限の努力をしてまいりますし、六十三年度はもうそれで賄いますが、以後、これ教育改革を進め教育の重要性を見たときに、教育改革の推進大綱を出されておりながら財政部分はどうなっておるかと、これが一番重要な御指摘だと思うのでございます。  その点は私も読んでみましたが、なかなか難しいのでありまして、「教育財政の改革」の中に、前段はもう読みませんが、「施策の一体的推進を図る必要がある。このため、教育財政において、これらの文教施策の全分野にわたり、臨時教育審議会答申の趣旨に沿って、教育改革を推進するため、必要な資金の重点配分等財政上配慮する。」、こういうことでありまして、非常に難しい日本語でこれよくわからぬわけでございますが、教育財政の中で重点配分をしろというのか、教育費全体を一般歳出の中で重点配分しろというのか、なかなか読みにくいところでございますので、六十三年度はもうこれで賄わしていただきますが、六十四年概算要求の任にありました節は、大蔵大臣を前にして申しわけないんですけれども、これは全体の中での重点配分ではないかということで頑張りたい、こう思っております。よろしく御支援のほどお願いをしたいと思っております。
  244. 林ゆう

    ○理事(林ゆう君) 以上で久保亘君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  245. 林ゆう

    ○理事(林ゆう君) 次に、広中和歌子君の質疑を行います。広中和歌子君。
  246. 広中和歌子

    広中和歌子君 新たな時代をあらわすキーワードにいろいろございますが、特に国際化とか高度技術、情報化社会、高齢化社会などがございます。こうした来るべき社会の要請に教育はどういうふうにこたえているか、そういう観点に立って以下質問させていただきます。  昨年八月に出されました臨教審の第四次答申の中でも、個性化、多様化、国際化を強調していらっしゃいます。そして生涯学習への移行、それをうたっていらっしゃいます。  まず、個性化とか多様化、そういう視点にかかわる問題として、大学入試資格検定試験についてお伺いいたしますが、これはどういう趣旨で、そして毎年何名ぐらい受験し、合格率はどのようなものか、そして平均年齢、そういうものについてまず簡単にお答え願います。
  247. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 御指摘のいわゆる大検に関してでございますが、この制度は昭和二十六年から発足いたしております。趣旨といたしましては、真にやむを得ず独学せざるを得ない者に大学の受験資格を与えるということで発足したわけでございますが、二十八年の制度改正で、高校教育に在籍している者でも通信教育や定時制課程に在籍している者は受験を認めると、こういうふうな制度で今日に至っております。  全体の姿でございますが、一番直近の例で申し上げますと、六十二年度でございますが、受験者が一万一千六百人余でございまして、合格者が二 千九百人余、約二五%でございます。    〔理事林ゆう君退席、委員長着席〕 この受験者、合格者の割合は大体二五%程度でございますけれども、近年の傾向といたしましては非常に受験者がふえてきたというふうな実態がございまして、その傾向は五十八年度は約四千人の受験者でございましたものが、以下年次を追いまして五千人、七千人、八千人、一万一千人と、こういうふうにふえてきておるというふうな現状でございます。
  248. 広中和歌子

    広中和歌子君 特に最近の傾向として年若い受験者がふえているというふうに伺ったわけですが、十六歳、十七歳、十八歳、この年齢層の人で受かった人の数をお知らせください。
  249. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 御指摘の点につきましては、大検の合格につきましては十一科目または十二科目というふうなことがその合格の要件でございますが、一度に十一科目、十二科目を修得することはなかなか負担が多いということで、十六歳あるいは十七歳でも一部ずつ受験を認める、そして科目を少しずつとっていくというふうな趣旨から若年齢での受験を認めてきたわけでございますが、先ほど申し上げました六十二年度の例で申しますと、十七歳での合格者は百五十八人でございます。それから十六歳、これはちょっとレアケースでございますが、十六歳の場合は三十六人というふうな合格者が出ておる実情にございます。
  250. 広中和歌子

    広中和歌子君 幾らレアケースでありましても十六歳で三十六人、十七歳で百五十八人受かっているわけですが、彼らに大学受験資格はございますんでしょうか。
  251. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 大学入学資格検定規程、省令がございまして、十八歳になるまでは受験資格は与えられないという制度にいたしております。
  252. 広中和歌子

    広中和歌子君 なぜ例外を認められないのか、どうですか。
  253. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) この点につきましては、いろいろな御意見もあろうかと思いますが、やはり第一点といたしましては、全体の高等学校教育制度の本体の方向で申しますと、十八歳で高校を卒業し大学に入る、これが一つの基本類型としてあるわけでございまして、これとのバランスの問題、これが一つでございます。  それから第二点は、制度の趣旨として若年者の受検は認めてはおりますけれども、もし十六歳、十七歳で合格者に認めるといたしますならば、それを目指したいわゆる予備校通いとか受験競争の激化とか、そういうふうな問題が出てくる。  それから第三に申し上げられますことは、やはり後期中等教育段階の生徒の問題としては、学力の問題だけではなくて、知育、徳育、体育という全体の整合性のとれた人間教育というのが趣旨でございまして、大検のみに頼る大学入学資格ということであっては、やはり日本の教育全体の姿としていかがであろうか。ほぼそういうふうな考え方で、十八歳の年齢に達するまでは大学受験については御遠慮をいただくと、こんな趣旨でございます。
  254. 広中和歌子

    広中和歌子君 御趣旨は大変よくわかりますし、できるだけ多くの人が普通の高等学校教育を受けるべきだと思いますけれども、やはり例外というものを少しずつ認めていく、そういった多様性も出てきてもいいんではないか。中学高校一貫教育というのは既に私立などで行われておりますけれども、聞くところによりますと、五年間で文部省の所定の教科を終わってしまう。一年間余るわけですけれども、大学を受験するわけにいかない。十八歳まで受験できない。家庭が豊かな場合でしたら、例えば外国に留学さすとかなんとかといろいろあるわけでございますし、また働くということもいいかもしれませんけれども、しかしながら、いろいろこれからの世の中、多少の例外があってもいいんじゃないか。  かつては、かつてというのは戦前のことでございますけれども、高等学校受験が中学四年そして五年と二度あったわけでございまして、こういうようなことを考えましても、少し御検討なさってもいいんじゃないかというお尋ねをしたいんですが、文部大臣お願いいたします。
  255. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 細かいことでございますので先に私の方から若干お答え申し上げたいと思いますが、先生御指摘のように、後期中等教育のあり方は私どもも個性的、多様的であってしかるべきだという考え方を持つわけでございまして、臨教審答申もございますので、今後の問題としては高等学校教育の本体についても個性化、多様化ということを考えていくべきである。その一環といたしまして、六年制中等学校のあり方というものが先般も答申といいますか、審議の取りまとめをいただいております。  しかし、例えば専修学校と高等学校教育の関係をどのように考えるかとか、それからまた諸外国にございます高等学校教育の、あるいは中学の飛び級というものをどういうふうに考えていくかとか、それから学年制本体の問題として高等学校教育で学年制をどう考えていくか、喫緊の問題としてはいろいろな課題を私ども考えておるわけでございまして、大検の問題だけを取り上げて考えますとなかなか問題がございますけれども、後期中等教育全体の問題としていろいろ先生御指摘の問題を含めて私どもは取り組んでまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  256. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 大検についての御指摘で、具体のことにつきましては政府委員からお答えをいたしました。  大まかなお答えになると思いますが、確かに先生がおっしゃいます多様化、個性化の中では多少例外も考えていいんではないか、それはもう温かい御配慮としてはよくわかります。ただ、今申したように全日制生徒との整合性もございますし、それから教育全体として、今私の言っているのが合っているかどうか、大体今まではアメリカ系の教育を志向してきたと思うんですが、イギリス系ですともうちょっと高校時代から専門化して、そして大学というのはもうエリートというような感じになってまいります。  そういう意味で、日本の教育全体がどっちにいつ向いていったらいいのか、あるいは英才教育と言ってしまっていいかどうかわかりませんが、英才教育としてのあり方とか、それから前段申したように全日制の生徒、あるいは専修、各種学校との関係、そして英才教育はさることながら、それが受験競争を激化させることのないような、こういうような横の連携をよく考えていきませんとやっぱりいかぬのではないか、そういうことでもう少し総合的に考えていくべきことではないか。御趣旨の心はわかりますけれども、その整合性をやはり考える余地が多分にあるというふうに思います。
  257. 広中和歌子

    広中和歌子君 おっしゃることもよくわかります。整合性ということもあると思うのでございますけれども、やはり学校教育ということにどうしてもなじまない特定の年齢、特に十七、八歳、そういったようなお子さんもあるわけでございますから、ともかく少しずつ例外を受け入れていくような方向に教育が変わっていけばいいと、そういうふうに思うわけでございます。  特に、ローアーリミットというのは十八歳なんですが、アッパーリミットというのはあるんですか、例えば大学受験に関してですけれども。
  258. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 諸外国ではあるようでございますが、私ども日本の場合にはございません。
  259. 広中和歌子

    広中和歌子君 そのことを伺って大変驚いたわけでございますけれども、原則的には、例えば東京大学に六十歳でも入学できる、そういうことでございますね。
  260. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 御指摘のとおりでございます。
  261. 広中和歌子

    広中和歌子君 高齢化を迎え、また産業構造の変化に直面する中で多くの人々が、人生は一つのキャリアではなく二つ、三つ、そうしたキャリアの時代になっているわけでございますけれども、人生の転機に立つ人が新たな学習の機会を得、そして時代のニーズにマッチした技術を獲得し、そ して再就職する、そういうようなことが教育を非常に活性化し、また多様化し、そして今非常に問題になっております大学受験、受験競争と言われておりますけれども、ある年齢に集中したところの競争、そういうものがなくなってくるのではないかと、そんなふうに思うわけでございますけれども、社会人にとっての学習の機会、そういうものにはどのようなものがございますでしょうか。
  262. 齋藤諦淳

    政府委員(齋藤諦淳君) お尋ねの件につきましては、大学公開講座等がそれに当たるわけでありますけれども、現在約三十三万人がそういう大学公開講座を受けております。それからなお、高等学校等においても近年相当ふえておりますけれども、高等学校の公開講座につきましても、特に六十三年度から国の補助金を出しましてこれをさらに振興するようにいたしたい、こういうふうに考えているところでございます。  なお、大学の学生そのものに社会人が入学するという、こういう制度も他方あることはあるわけでございますが、日本の場合にはまだその絶対数は非常に少ないという、こういう現状でございます。
  263. 広中和歌子

    広中和歌子君 なぜ少ないと思われますか。
  264. 齋藤諦淳

    政府委員(齋藤諦淳君) 日本の場合には、臨教審等でも再三問題になったわけでありますけれども、いわゆる若年一括採用といいますか、労働市場が若年の卒業者を集中的に雇用するという、そういう習慣が非常に強いために、できる限り若い間に卒業したい、そういう社会的な情勢が一つ非常に大きいのではないか、こういうふうに考えられる次第でございます。
  265. 広中和歌子

    広中和歌子君 それは年功序列賃金と関係あるとお思いになりますか、労働大臣、お伺いいたします。
  266. 清水傳雄

    政府委員清水傳雄君) お答え申し上げます。  確かに我が国の雇用慣行、年功序列賃金を中核といたしました終身雇用制度というのが一般的でございまして、こうした雇用慣行というものがいろいろな意味で今のような影響も及ぼしている、こういうふうに思っております。
  267. 広中和歌子

    広中和歌子君 この雇用慣行でございますけれども、最近、終身雇用とか年功序列の賃金体系が崩れ始めているというようなことはよくマスコミで聞くのでございますけれども、実態はどうなんでしょうか。そう言いましてもお答えしにくいと思いますけれども、初任給の推移と、それから例えば四十歳でも五十歳でもよろしいですけれども、ある特定の年齢の平均賃金、平均年俸ですね、その格差というのはどういうふうになっておりますでしょうか。
  268. 清水傳雄

    政府委員清水傳雄君) お答え申し上げます。  統計の結果で接続する範囲で見てまいりますと、二十歳から二十四歳の賃金を一といたしまして、いわゆる役職に相当する四十歳から四十四歳層、あるいは部長の役職に相当する五十歳から五十四歳層、こうしたものの対比を見てまいりますと、二十—二十四歳層を一といたしますと、四十—四十四歳層では五十年が二・五倍、五十五年が二・六倍、六十一年が二・五倍と、こんな推移になっておりまして、また部長あたりに相当いたします五十歳から五十四歳層、これは五十年が三・〇倍、五十五年が三・二倍、六十一年が三・一倍。格差としてはほぼ横ばいの傾向にございます。  年功序列賃金体系がいろいろ変わってきているとかそういうふうな御議論考え方もあるということも認識いたしておりますけれども、統計からいたしますマクロ的な結果からいたしますと、基本的な部分というのは変わらなく推移してきているんじゃないか、こんなふうに思っております。
  269. 広中和歌子

    広中和歌子君 ただ、昭和三十年ぐらいからですと、いわゆる年功序列賃金といったような日本的経営のスタイルというんでしょうか、そういうものが言われ始めた時期とそれから現在とは大分違うような気がいたしますのですけれども、例えば課長と初任給の差が前は七倍ぐらい開いていたなんて聞くのでございますけれども、そういう実態はないんですか。
  270. 清水傳雄

    政府委員清水傳雄君) 今手元にその三十年代の資料を持っておりませんけれども、いわゆる年功序列賃金体系あるいは終身雇用制度、そうした基本的な考え方というのは、やはり新規学卒を採用し、それから属人的なと申しますか、年功に基づく給与体系、最近はそれに仕事給的なものを加味いたしました総合給的な形をとっているのが支配的な傾向でございまして、能力給的なものの割合というのは若干ふえてきてはおるわけでございますけれども、基本的には、先ほど申しましたような形で、年功序列賃金体系というのはいろいろな環境変化によりまして周辺部分で若干の修正的な動きというものはこれは加わってきているだろうと思いますけれども、基本的には維持されて来つつあるんじゃないか、こんなように考えております。
  271. 広中和歌子

    広中和歌子君 ちょっと視点を変えまして、社会教育の方に戻らせていただきたいと思うんですけれども、いわゆる各地方自治体が行っている社会教育というのがございますね。それは教養が主体であるというふうに受け取ってよろしいでしょうか。それに比べまして、専修学校、それは主に私立であり、それがどちらかというと技術教育を行っている、そういうふうに解釈してよろしゅうございましょうか。
  272. 齋藤諦淳

    政府委員(齋藤諦淳君) 一般論といたしましては趣味、教養的なものと、他方、技術といいますかあるいは職業関連の技能と申しますか、そういうものもそれぞれ社会教育の態様には入っておるわけでございますけれども、実態は、先生御指摘のように趣味であるとか教養であるとか、社会教育ではそれが非常に多くなっております。  他方、専修学校におきましては、専門的な技術なりあるいは職業に関連する技能知識というものを対象にしておる、こういう傾向が強いわけでございます。
  273. 広中和歌子

    広中和歌子君 専修学校の就職率というのはいかがでございましょうか。
  274. 坂元弘直

    政府委員坂元弘直君) 専修学校は、先生御承知のとおりに、高等学校卒業生を対象とする専門課程と中学校卒業生を対象とする高等課程と、それから学歴を問わない一般課程と、三つに分かれておるわけでございますが、それらを総合的に平均いたしますと七〇・一%になっております。工業、医療、衛生、社会福祉関係の就職率は九〇%でございますけれども、文化・教養、家政の分野で低いために全体としては七〇%でございます。  ちなみに高等学校卒業生を対象とする専門課程の卒業者だけについて見ますと、これが八五・八%、すべての分野の平均でございます。  それから、高等課程で申し上げますと八〇・八%ということになりまして、一般課程を含めますと全体で七〇・一%ということでございますので、傾向とすると一般課程の専修学校というのはどちらかというと文化・教養関係が中心になっているんじゃないかというふうに考えているところでございます。
  275. 広中和歌子

    広中和歌子君 私も数年前から、専修学校が非常に社会のニーズに合った技術を提供し、そしてそこに多くの若者たち、また社会人が参加し、そしていい就職率を得ているということは社会の多様性ということに関して非常にいいことだと思っているわけですけれども、一方、私立というのはある程度営利を目的といたしますので、公立の公的な社会教育に関しましても教養だけではなくて、もっと再就職につながるような、また新たな社会のニーズにつながるような科目も必要ではないか。特に、これから必要となってまいりますところの福祉関係、それから特にボランティア養成なども含めましたそうした科目とか、それから外国人のための日本語教育法、教え方、そういったものもぜひぜひやっていただかなければならない新たな科目だと思うのでございますけれども、いかがでございましょうか。
  276. 植木浩

    政府委員(植木浩君) 先生おっしゃいますように、外国人に対する日本語教育はこのところ特に重要になっているわけでございます。文部省といたしましてもいろいろなアプローチをやっており ますが、例えば、まず教員の養成ということが非常に大事なので、大学の教員養成学科を増設したり、あるいは教員の資質向上ということで日本語教員のための能力検定試験を初めて先般行ったり、さらには日本語教育センターを国語研究所に設けてございますが、ここで教材の開発を行ったり、あるいは留学生については留学生のための教材開発センターを先般つくったり、さらにいろいろな日本語学校の関係者を集めまして研究協議会を開いたりということで、多角的なアプローチをして日本語教育の振興を図ろうと、今やりつつあるわけでございます。
  277. 広中和歌子

    広中和歌子君 現在は、最近でございますけれども、なかなか雇用の状況はよいようでございますが、一時、円高不況そして企業城下町の失業問題、そういうようなことがよく言われたわけですけれども、雇用のミスマッチが言われる中で、そういうような企業城下町における大量失業とか、例えばこの前の国鉄の民営化のような場合でございますね、そういうときには失業した人に対しては失業保険が入るんでしょうけれども、それと同時に教育も何かやっていらっしゃるんでしょうか、お伺いいたします。
  278. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 離職者の職業訓練におきましては、御承知のように、公共の職業訓練施設で訓練を行っておることが一つであります。もう一つは委託訓練、ただいまお話に出ておりますような専修学校、各種学校等に委託する場合には補助金が委託費の方から出ておる、こういう制度があるわけでございます。また、企業内の在職者の訓練におきましても、各種学校等へ委託する場合におきましては同じように委託費を出しておる、こういうことで助成をしておるわけでございます。前の場合は、離職した場合は、生活費の方は雇用保険で支給を受ける、それから受講料の方は官の負担、こういうことでございますから、ある意味の補助と同じような形をとる、こういうことであります。
  279. 広中和歌子

    広中和歌子君 伺って大変よかったと思いますけれども、失業した人だけ集めてというんじゃなくて、さらに大きな社会の中でいろいろな選択ができるように、専修学校にも成人のための奨学金というんでしょうか、育英資金またはローン、補助金、そのような形で労働省そして文部省のタイアップされた対応を期待したいところなんでございます。  さらにお伺いいたしますけれども、大体において、日本は原則的には年齢制限がないにもかかわらず、社会人は日本の普通の大学に入りにくい、それから工業高校とか商業高校といった公立の学校にも入りにくいわけでございますけれども、こういうところをもうちょっと一般に開放していただけないかどうか。これは前から私申し上げたかったことなんですけれども、工業高校とか商業高校というのは歴史的にも非常に長いものがございまして、特に京都なんかですと、もう百年の歴史がある。地理的にも町の真ん中に土地を持っているわけでございますけれども、そういうところに運動場を除いてでも大きな高層化した建物を建て、高校生だけではなくて一般の人にも、そして例えば新たな技術を必要とする人、そういう者に開放できないか。  特に技術教育に関しましては最新式の機械が必要なわけでございまして、京都のことを申し上げて恐縮なんですけれども、いまだに旋盤とか、何か古い古い機械が置いてあるわけですね。やっぱり最新式の技術で学びたい、学ばなくちゃならない、そういう時代のニーズがございますので、一つの学校のためにそうした費用というのはなかなか出ないんじゃなかろうか。しかしながら、さらに広い社会人を含めた教育ということを考えますと、垣根を払いますと、もっと予算などもつけていただけるのじゃないかと期待しているのでございますけれども、いかがでございましょうか。
  280. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 先ほどからの御指摘を伺っておりました。いろいろ御指摘でありますが、全体として生涯学習のこの世の中で、もう少し専門的な、専修学校的なものを広げていけないものか、そして、社会人は入学自由とは言うけれども、もう少し学校の開放を広くできないものであろうか、そういう中では、町中であいている部分にもう少し集中的に機材も入れ、そして社会人の修養の場にしたらどうか、こういう一貫した御指摘のように伺っておりました。  前段からお答えしようと思っておりましたが、確かに生涯学習という中で、これから学び加え、学び補う、それは単に一つには学問をということもありましょうし、それが技術と同時に御職業に結びつけばなお結構なことでございますので、専修学校などにも大型設備の補助を充実してまいりましたり、それから研究委託事業というのを六十三年度から始めまして、個々には大した予算ではないかもしれませんが、八十校ばかりこういうことをしたらどうか、そしてそれに対する新しい機材があればその機材の補助もいたしましょう、こういうことで進めておるわけでございます。  そして、学校の門を広くということでありますが、これはまさに入学の選抜の多様化によりまして、ここ数年はやはり社会人が大学その他に入学しやすくなったという声もございます。もう一つは、また、ゆとりのある方と同時にゆとりの大変ない方、お勤めになりながら、あるいは生活に余裕のない方々にとりまして、例えば単位制高校というものを考えられておりますし、これはまさに働きながら社会人の方にも門を広くということも含めまして、先生の御指摘が相当やはり、心は一つですけれども、幅広い御指摘でございましたので、私どもも心して幅広く対応していくべきであるなということを痛感いたしながら拝聴しておりました。
  281. 広中和歌子

    広中和歌子君 じゃ、国際化の方に問題を移らせていただきます。  国際化の中で留学生を受け入れるということに関しましては、これまで外務委員会でも、そしてまたここの委員会でも既に多くの質問が出ましたのでそれはちょっと横に置きまして、今度は研究者の受け入れ、そしてまた、日本の研究者がさまざまな形で海外に出ていくわけですけれども、その援助、そういったことについても伺ってみたいと思います。  日本では、少なくとも日米関係に限りますと、例えば日本から出ていく人は年に二万人で、一方受け入れる方は五千人というような数字を日本経済新聞で見たのでございますけれども、非常な出超であるというふうに理解いたしますけれども、現在の受け入れ体制、そして今後、外国人研究者をもっとふやしていく、そういう御予定がおありになるのか。そして、例えば東京大学とか、また文部省関係、国関係の研究所、そういうようなところでの研究者受け入れの実態などについてお伺いさせていただきます。
  282. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 具体には政府委員からお答えさせますが、今おっしゃったように、まさに日本は経済大国と言われる中で、かつて日本は外に学んでまいった時代がございます。これからはむしろ日本が受け入れ体制をとりまして、そしてそういう意味から世界に貢献をしていく時代に入ってきておる、こう思いますので、まさに先生の御指摘は当を得たものと思います。  例えば外国人研究者の受け入れにつきましては、いわゆるフェローシップ制度というものがございまして、これを拡充していくということにいたしております。これは大体米、英、仏、西独が中心でございますが、博士号を取られた直後の若い方々を日本に受け入れようと。その宿舎その他も完備しなければいかぬわけでございますが、幸い今国立学校で五、六百、全部合わせて七百室ぐらいはございますが、その受け入れ体制万般に心を砕いていくべきだ、こう思っております。詳しくは政府委員から……。
  283. 植木浩

    政府委員(植木浩君) 先生今おっしゃいましたように、日米間の研究者の交流、国立大学に限りますと、こちらからアメリカへ行く場合が約一万九千人、それからアメリカから日本へ来る場合が五千五百人ぐらいということになっております。ただ、政府予算で支弁をしているという点にな りますと、参考のために申し上げますが、米国との間では行ったり来たりは——失礼いたしました、今申し上げましたのは総数でございますが、アメリカだけで国立大学分をとらえますと、派遣が六千人、受け入れが千三百人ぐらいでございます。合計七千人の人が行ったり来たりしているわけですが、日本政府が支弁をしている、米国政府が支弁をしているというふうにとらえますと、そのうち日本政府支弁が千五百人ほど、米国政府支弁が千百人ほどということで、政府としてはかなり努力をしてきているということでございます。  それで、今大臣が申し上げました点でございますけれども、私どもとしては学術審議会等の答申もございまして、積極的な能動的なひとつ国際交流をやりたいということで、受け入れにも大いにこれから重点を置いていきたいということでございます。  それで六十一年度、これは米国に限らず申し上げますと、文部省予算で招聘したのが、外国人研究者が約二千四百人という数字で、今申し上げましたように受け入れ体制という点では研究用の宿舎を整備する、あるいは国立大学等におきます国際交流事務組織の拡充を行うということで、宿舎に例をとりますと、六十三年度につきましては九国立大学に百六十五室を新たに研究者のためにふやしたいというような具体的な努力もいたしております。
  284. 広中和歌子

    広中和歌子君 それから、これはお答えは結構なんですけれども、ぜひ御要望させていただきたいのは、短期の研究者のインビテーション、短期の一カ月以内とか、そういったようなのも許していただきたいことと、それから国際会議に出席する、国際会議というのはいろいろあるわけでございますけれども、招待される人は別といたしまして、若い人たち、研究者が参加したいというときに前もってわかっているわけじゃないわけですね、三カ月とかせいぜい半年ぐらいで。そういう方々が旅費がないんです。そのために、出られるべき、出たら非常にお互いにとっていい国際会議にも出席できないという現状がございますので、ぜひこの点も御配慮いただきたい。後ほど陳情に伺います。  時間がございませんのでODAの方に移らせていただきますけれども、JICAがやっていらっしゃいます青年海外協力隊、そしてシルバーボランティアというのがございます。デテールにつきましては省略いたしますけれども、そのシルバーとそれからヤング、青年の方、その中間層、先ほどからいわゆる人生二つ三つのキャリアの時代になって、例えば人生の中間、四十歳ぐらいでキャリアチェンジをしたい、そういうようなときに、自分自身のためもあって協力隊に参加したいといった層もあるのではないか。そういう方々への配慮があってもいいんではないかと思うのでございますけれども、外務大臣いかがお考えでしょうか。
  285. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 現在は御承知のとおり青年海外協力隊、これは累計七千八百人ぐらいになりました。したがいまして、非常にニーズが高うございまして、さらにもっと欲しいという要請が各国から届いております。  いろいろと、行って帰ってきた場合にどうなるんだ、いすがなくなっているよというようなことではいけませんので、こういう面におきましても産業界と外務省と連絡をとりまして、そしてもっと多くの人たちを入れるようにしてくれないかという話を今しておるわけであります。  だから、シルバーとヤングとの間が、では需要があるかどうか、そうしたことも考えてみる必要があると思いますから、一つの先生の御指摘だと思っていろいろの面におきまして研究をいたします。
  286. 広中和歌子

    広中和歌子君 アメリカのクライスラー社の会長のアイアコッカ氏は、アメリカではピースコーというのがあるわけですけれども、ピースコーに行った人たちは最高の人材である、そんなふうに言いまして企業に働きかけてくれているそうでございます。日本でもそのような動きがあれば大変すばらしいと思うわけでございますけれども、日本の協力隊の目的は、どちらかというと技術供与というんですか、お教えする、そういう立場に立っているというふうに伺うわけでございますけれども、情けは人のためならずということがございます、もっと日本人が海外に多く出ていって、そして相手の国をお助けする、そういうことがひいては日本文化を外国に知らせることにもなり、そして外国文化をまた外国人と共存するという体験を得た日本人がふえることでございますので、ぜひぜひこれは数をふやしていただきたいことが一つ。  そして、発展途上国に限ることなく先進国にも、例えば日本語教師の派遣、そういうようなことでぜひ前向きに積極的にやっていただきたいということを御要望させていただきます。
  287. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で広中和歌子君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  288. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、佐藤昭夫君の質疑を行います。佐藤昭夫君。
  289. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 私、二十八分という極めて限られた時間でありますので、答弁はぜひ簡潔にあらかじめお願いをしておきたいと思います。  そこで、まず日本の学術研究の未来に関する重大事として、日米科学技術協定について質問をいたします。  先日来の政府説明によりますと、三月三十一日大筋合意が行われたが、情報の取り扱いに関する条項の中に安全保障という字句がある。これは研究、技術の内容いかんでは秘密扱いが導入されるのではないかという心配があるのですがどうでしょうか、外務大臣。
  290. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 簡単にお答え申し上げます。  まず日米科学技術協力協定の概要でございますけれども、まず科学技術情報の公開の原則というものがこの協定でもって確認されております。したがいまして、科学技術情報というのは、可能な限り広範な普及が図られる、こういうことになるわけでございます。  確かに先生今御指摘のとおり、安全保障という字句は協定の中に用いられておりますけれども、これは我が国の制度を何ら変えるものではございません。
  291. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 公開の原則が明確にされておるということでありますが、しかしアメリカでは、安全保障と矛盾しない範囲の公開原則だというような意味の説明を国内向けにしておるという報道があります。どちらが真実でしょうか。
  292. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) お答え申し上げます。  この安全保障という字句を協定に挿入することになりましたのは、主としてアメリカ側の事情によるものでございまして、アメリカは安全保障と情報の公開の関係に関しての一般法を持っておるわけでございますけれども、日本につきましてはそういう一般法がございませんので、何ら日本の制度を変えることを義務づけているものではございません。
  293. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 しかし、そのように言われようとも疑問も消えないわけでありますが。  ところで尋ねますけれども、日本の国内法として研究交流促進法による国際約束の実行義務、ココム、外為法、防衛関連特許協定、こういったものなどがありますけれども、これらでアメリカの要求には現国内法体制を変えなくても対応できるという政府の意味なんでしょうか。
  294. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) この協定は現在の日本の国内法令のもとでの協定でございまして、そのとおりでございます。
  295. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 もう一遍確認をいたしますけれども、日本の国内法は変えないと、外務大臣もう一遍どうぞ。
  296. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) この協定は、たとえ安全保障という文字が入っておりましても、今審議官が申しましたとおりに、これはアメリカ側の話であって、我々といたしましては日本の現行法令 の枠内における協定の改正である。したがいまして、ただいまの政府委員の答弁のとおりでございます。
  297. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そういたしますと、外務大臣、アメリカから安全保障上の秘密扱いが要求をされたという問題が出た場合に、公開の原則の見地からアメリカのそういう主張を日本としては拒否するということになるんでしょうか。
  298. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) これは昭和五十五年大平・カーター時代に結ばれた協定でありまして、非常に日米間の科学技術に関しまして発展並びに共同研究が進んでおるわけであります。あくまでも目的は平和ということでございますから、したがいまして科学技術に関する限り、ただいま公開の原則というものをお互いに確認し合ったわけでありますので、そうしたものに関しまして新しい規制をするという必要は全くない、これが私たちの考えであります。
  299. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 繰り返してくどく言うようでありますけれども、しかし今日まで何回か外務省の役人の方に私の部屋へ出向いていただいて聞きます中で、まだあと細目協定といいますか、細目の相談が残っている、こう言われますので、依然として危険が、危惧が払拭をされないのですね。しかし外務大臣が今のようにおっしゃった、日本学術会議なども挙げて学者、研究者、反対をしている問題でありますので、そういった日本の学問研究の自由と発展のために、こうした安保条項は断固拒否をするということでひとつ貫いていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  そこで、こうした細目協定で逃げ込んでいく危険、これが宇宙基地問題でもあらわれているんじゃないかというふうに思うんです。アメリカの国防総省が利用できる道を開くために、協定本文とは別に、米国は国家安全保障目的のために使う権利を保有する、こういうことを基本的に認める書簡を日本とアメリカ、欧州、カナダ等、こういう書簡を交換することになったとの報道がありますが、事実でしょうか。
  300. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 宇宙基地交渉、もう一年半以上やっていると思いますけれども、今大詰めに確かに入ってきております。しかしながら、まだ交渉中でございますので、かつ、交渉中と申しますことは何も合意されているわけではなくて、交渉中でございまして、その内容につきましてはまだコメントないし御説明をすることを差し控えさしていただきたいと思いますが、いずれにしましても私どもは、この協定の交渉に当たりましては我が国の基本的な立場を十分踏まえて対処してまいりたいと思っております。
  301. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 またもや、交渉中だから国会の席上では説明ができないというそういう論法でありますけれども、しかし二月の十二日、経団連の宇宙開発推進会議、ここにおきまして科学技術庁の中津川審議官が、早ければあと数週間で合意できようと、二月十二日にそういう発言をしている。そしてその内容は経団連週報二月二十二日号に掲載されているわけであります。私は、交渉中ということで国民に真実を語ることを避けながら、実際には事が進んでいるんではないかというふうに思わざるを得ぬのでありますけれども、この点は言わないというんですから私の推測を、危惧を申し上げておくわけであります。  そこで、あれこれ言うわけですけれども、米軍が宇宙基地から得られるところの結果を軍事目的に使うこと、そういうことを日本としては認めるのか拒否をするのか、ここの基本態度、外務大臣どうでしょう。
  302. 川崎雅弘

    政府委員川崎雅弘君) ただいまのお尋ねに対してお答えを申し上げますが、先般の予算委員会の席においてもお答えを申したかと思っておりますが、昨年の二月の時点でそういう、米国政府から正式に交渉の場において、米国防総省がユーザーの一機関として使うという可能性は残してほしいというような説明があったわけでございますが、その後事態は変わっておりません。なお、どういう形でまとまるかというのは先ほどの外務省からの御答弁のとおりでございますが、私どもとしては、宇宙開発に課せられております基本的な我が国の立場というのを十分守って、それで今後の交渉に対応していきたいと思いますし、過去もその方針で対応してきたつもりでございます。
  303. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 今の御説明は、ユーザーの一員として使う道は開いておいてほしいと。こういう話があったということは、宇宙基地における研究の結果をいよいよ米軍が使いたいということを言い出したときに、日本側は拒否をするのかそれに同意をするのか、ここをきっぱり答えてください。
  304. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 今科学技術庁の方から答弁申し上げましたように、将来の利用の可能性は残しておきたいというだけでございまして、現在その具体的な利用計画があるわけではなく、宇宙基地をいかなる形で利用するかといった諸計画等々は全く不明でございまして、したがいまして、申しわけございませんけれども、可能性にとどまる問題について御回答することは差し控えさしていただきたいと思います。
  305. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 肝心な点になると、またそういう将来の問題について仮定の問題は何とも答えられない、こういうことでありますけれども、しかしどうですか、科学技術庁長官、お尋ねをします。  本来日本には、宇宙の開発研究は平和利用に限るという国会決議や宇宙開発事業団法というものがあります。こういう点から考えてみて、軍事目的利用に日本が加担をするということは、こうした国会決議や事業団法に照らして許されないことだということじゃないでしょうか。
  306. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) そもそもこの宇宙ステーション計画が平和目的のためのもの、また民生用のものであるということにつきましては、本計画の全参加国間で確認をされております。そのように承知をしております。  また、ただいまの内容等につきましては、先ほど来外務省、科学技術庁からも申し上げておりますとおり交渉中でございまして、内容のあれにつきましては差し控えさしていただきたいと思いますけれども、我が国としては、何度も申し上げておりますとおり、宇宙の平和利用等に関する我が国の基本的立場を十分踏まえて対処をしてまいる所存でございます。  それから、米国防総省の問題も、今外務省からお話しのとおり、利用する可能性を閉ざさないでほしいとの希望を米国防総省が持っているということをアメリカ側から説明を受けておりますけれども、現在具体的な利用計画があるわけではございません。  繰り返しますけれども、いずれにしても我が国としては、宇宙の平和利用等に関する我が国の基本的立場を今後も十分踏まえて、それを貫いて対処してまいる所存であります。
  307. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 国会決議や事業団法のこの立場を堅持して今後も貫いていくんだという、結論はそういう御答弁で、それはそれで結構だと思います。  そうなりますと、宇野外務大臣、どうでしょうか、さっき審議官が言われるように将来の仮定の問題については答えにくいというそういう歯切れの悪い答弁じゃなくて、外務省としても、この国会決議、事業団法、その立場で頑張っていく、その立場を堅持してやっていくというふうに外務大臣としてもお答えになってしかるべきじゃないでしょうか。
  308. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) もう両省の政府委員が答えましたとおり、我が国は宇宙開発事業団におきましても平和利用ということが明らかにされておるわけでございますね。そうしたことで宇宙の平和に貢献したい、もって我々のその使命を達成したい、こういうことでございますから、アメリカがどうのこうのまだはっきりしたことのないときに、私はこうしますああしますと言わなくても、我々といたしましては、宇宙に対する平和の貢献、この線でやる、これで御理解賜ればよいと思います。
  309. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 両大臣の御答弁はそれなりに承りました。そういうことであれば、言われるようなことであれば、審議官がああいうややこしいこと をくだくだ言わぬようにたしなめていただきたいということを申し上げておきたいのであります。  そこで次に、大学新テストの問題で文部大臣に尋ねます。  今国会に臨教審答申の具体化として提出されている六法案、これは戦後教育の原点であります憲法、教育基本法に真っ向から反するものでありまして、例えばその六法案の冒頭に出されています国立学校設置法、その中の新テスト一つとってみても重大な問題があります。今日の教育問題を解決するにはどうしても入試地獄の解消が急務である。とりわけ国立大学の入試のあり方が高校以下の教育にも重大な影響を与えているだけにその改善が必要であります。ところが現在実施されている共通一次テストには大学学部の序列化、偏差値による輪切り問題など多くの弊害があり、その解決が求められていますのに、猫の目のように入試方法が毎年くるくる変わる、このことが一層高校での進路指導などを困難にしているのであります。  そこで、文部大臣にお尋ねをいたしますが、一体新テストで共通一次試験の弊害がなくなるのかどうか。だれもなくなるとは言っていません。むしろ高校側からは、進路指導が今以上に困難になるという、そういう声が強いと。臨教審答申さえその第一次答申で、共通テストは共通一次試験の種々の問題点を解消するためにこそやるんだと、こう言っているのでありますけれども、文部省としては、どういう弊害がなくなるのか、なお残る問題は何なのか、どこまで詰めた研究をしていらっしゃいますか、文部大臣。
  310. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 新テストについてお尋ねでございます。この新テストというのは新たに始めることでございますが、過去の実績といえば共通一次でございますが、共通一次は参考にすることはできる、こう思います。参考にいたしますと、いい面、悪い面両方取り上げて研究する必要がありまして、いい面としては難問奇問がなくなった、非常に良質な出題であるということが指摘されておりますし、それから入試が多様化したために、例えば推薦入学の道が開かれた、あるいは帰国子女への道が開かれた、あるいは社会人の入学の道が開かれたという点もありまして、これはいい方に取り上げられるんじゃないか。それから短所としては、先生おっしゃったように、序列化が顕在化したとか、輪切りの問題ですとか、そういうことがございまして、その両方をやっぱり勘案していく必要があろうと思います。  今回、六十五年から実施したいと言っております新テストは、その間に国公立並びに私学、それから高校の方々も入れておりまして、高校の方々の関係者の意見も伺って、そして今後教育あるいは入試の多様化、個性化を進めるということを第一義に考えますと、多様化、個性化を進めるためは新テストは有効だと、こういうまとめをいただいたものでございますからそれを進めていく。また、進めるについて今度は私学にもこれを利用していただくということと、入試センター事務につきましても高校の関係者を入れる、そういうことも含めて今までの長所を伸ばし、短所を改革していこう、こういうことでございます。
  311. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いろいろ改善点をおっしゃいましたけれども、それは新テストの実施によってこそ改善が図られ得るという、そういうものじゃないと思うんです。改善しようと思えばいろいろほかの手段によってもやれる問題。伺いますが、いわゆる試行実施ですね、文部省の好きな試行ですけれども、初任者研修で好きな、やったんですか。
  312. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 今回の新テストにかかわる試行でございますけれども、昭和六十二年度におきましては試行に至らず、このテストに関する説明会の実施あるいは入試センター等について各大学関係者の視察等の事業を行ったところでございまして、六十三年度におきまして試行を行うということを予定いたしております。
  313. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 試行はこれからだと、こういうことで試行もまだやっていない。その上に、弊害がなくなるのかなくならぬのか、そこもはっきりしていない。一体何のための新テストの実施なのか。受験生を惑わせ、国民を愚弄するというもの以外の何物でもない。くるくると制度を変えて、しかも仄聞するところによりますと、文部省は補助金を使って、私学の新テストへの参加の率を高めるために補助金でいろいろと誘導しているという、これがもし事実だったらこれはもう重大なことであります。私はこの新テストの来年十二月実施を取りやめるべきだというふうに思うわけでありますが、新テスト問題一つ見てもこんな調子であります。  先ほど同僚議員も触れられましたように、文部省はその施策をごり押しするために、反対する教職員の運動——署名、ビラ配布、集会、デモ行進に至るまで禁止するという通達を出しているということは、まさに今次六法案をファッショ的に強行しようというその本質を示したものだといることで、私もこの通達には断固抗議をしたい。こういう状況ではこの六法案について国会としての民主的審議が保障されない、一遍文部省は出直せということで、通達と六法案を撤回してひとつ出直してもらいたいということを強く求めておくものであります。答弁は要りません。  次に、関西学術研究都市問題について聞きます。  私は今まで何回か予算委員会の分科会や建設、科学技術委員会などで確かめてまいりましたが、その都度各大臣は軍事研究導入の意図はないというふうに明言をされてまいりました。冒頭触れておりますように、今日科学技術研究の軍事化の危険が一段と強まっている現在、改めて軍事研究導入の意図はないということを政府として明言をいただきたい。学研都市の主管大臣であります国土庁長官、どうでしょうか。
  314. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) そのような話はまだ聞いたことがございません。佐藤さん以外からは聞いたことはございません。
  315. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いやいや、その聞かれているか聞かれていないかはともかくとして、そういう導入しようという意図はないというふうに解してよろしいんでしょうか。念のためにもう一遍。
  316. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) そのような計画も全くございません。
  317. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 現在、国の研究施設として建設着手されているのは国際高等研究所、電気通信技術研究所、この二つだけであります。現地では、学研都市というよりは宅建都市、要するに住宅ぽっかりにどっどっどっどっと力がかかっていくという、こういう言葉が出るほど実態の姿はそういうことであります。しかもその住宅は、高額の建て売りばっかりで低家賃の公営住宅はない。こうした問題について、低家賃の住宅建設の問題で国としても十分な検討、指導を行っていただきたいと思いますが、これは建設省ですか。
  318. 片山正夫

    政府委員(片山正夫君) 先般承認されました学園にかかわる住宅地の開発構想におきまして基本的事項が定められまして、具体的なものにつきましては、既に建設がされた分を除きまして、今後検討されていくことになりますが、公団住宅につきましては既に三千余戸建設がなされておりまして、今後の計画につきましては、需要動向を見ながら検討がなされていくものと考えております。また、公営住宅につきましては、公営住宅は利便性の高いところに需要が強いという、そういう特徴がございますので、一方この開発地は都市の郊外部に位置するということから、現在のところ公営住宅の計画はないところでありますけれども、なお需要動向を見ながら必要があれば検討を進める、こういう考えであります。
  319. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 大阪の通勤圏にも非常に近くて決して需要が少ないといったようなことではないので、ぜひ鋭意検討、指導をしてもらいたいと思うわけであります。  学研都市がこういう姿になっている、それには実はわけがありまして、この学研都市推進機構という法人、要するに学研都市建設推進の旗振り役の機構でありますけれども、そこの理事は十五名のうち十名が関西財界の代表クラスが名を連ねて おる、占めておる、三分の二がそうなんですね。こういう状況のもとでありますから、ぜひとも考えてもらいたいと思いますのは、地元に過大な負担、それは結果は住民の負担ということになりますし、そういうことにならないよう、住みよい町がつくられていくよう、住民合意のもとに事が進められますように国としても指導をしてもらいたいと思うのでありますが、これは国土庁長官ですかね。
  320. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 御承知のように、あの地域につきましては民間主導型で二十一世紀に先導的な役割を果たせる文化学術研究都市をつくろうということでございますので、したがいまして産業界、官界、学界一体になってこれが進められているわけでございまして、住民の代表であります府県知事も積極的にこれに参加しているわけでございますので、御趣旨は十分達成されていくものと考えております。
  321. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 民間主導型とおっしゃっても、わざわざこの学研都市建設のために国が国会で法律までつくって、いわば国家的プロジェクトとしてやっている事業でありますから、そういう点を踏まえて、国としても適切な指導をすべき点は指導するということでぜひやっていただきたいというふうに思うわけであります。  それと、きょうはもう時間がありませんから質問をすることができませんが——あと一分になった、それならもう一つ別の問題をお聞きいたします。  昭和六十年十一月五日の当予算委員会で、我が党の神谷議員の質問に対して当時の中曽根総理は、いわゆる「核の冬」問題に関して、我が国独自の研究をよく検討したいというふうに答えられたのでありますけれども、実際は進んでいません。国連の共同研究に日本から一人だけ派遣しているという姿でありまして、日本独自の研究が着手されているわけじゃない。最近、日本学術会議の近藤会長が、ICSU、国際学術連合のもとでの「核の冬」研究が日本も一つとして含む特定地域対象の研究として継続をされることに日本の科学者も参加していこうという発言をなされておりますけれども、そうなった場合、これらの研究に、中曽根発言もあり答弁もあり、政府として積極的に協力、援助をしてもらいたいというふうに思いますが、総理発言との関連でありますので、官房長官、御答弁願います。
  322. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 日本学術会議の近藤会長は環境科学の泰斗でありまして、環境問題に対して高い見識を有しておられまして、さきにモスクワで開催された会議にも科学者として出席をいたしておるところでございます。  この「核の冬」問題につきましては、政府といたしましては核戦争の気象に与える影響について深い関心を有して、これまで種々の研究結果の把握に努めてきたところでございまして、かかる観点から政府といたしましても、今御指摘がありましたが、専門家に国連に参加を願って、この問題で検討を願っておるところでございますので、当面はこの国連の検討の結果を待ちたい、こういうふうに思っております。
  323. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 それじゃ消極的ですね。しかし時間になりましたから、これで終わります。
  324. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で佐藤昭夫君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  325. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、小西博行君の質疑を行います。小西博行君。
  326. 小西博行

    小西博行君 だんだん時間が少なくて十八分であります。  きょうは、特に先ほど同僚議員の方もおっしゃっておりましたが、やはり教育改革というのが非常に今大きな問題だろうと思います。ましてや臨教審で三年間も検討していただきまして、しかも教育改革の中身が具体的に今出ているわけであります。そういう意味で、私もやはり全体的に見ますと予算の伸びが非常に少ないのではないかなという感じがしてならないわけでありますけれども、予算折衝の段階で当然改革すべき項目を具体的に文部省が挙げられて、そして大蔵省との折衝というのは相当やられたんじゃないか。  その結果が残念ながら非常に少ないという感じであります。改革をやるためには当然私はお金がかかる分野が多いのじゃないか、そういうふうに思いまして、まず文部大臣のその辺の所感、考え方、これをお伺いしたいと思います。
  327. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 教育改革はもう大変重要な国家的な政策だと、こう思っておりまして、教育そのものが大事でありますが、特に先生おっしゃるように教育改革本格実施の年という意味におきまして心を新たにしております。六十三年度予算は御存じのように二十九億プラスの四兆五千七百六十六億でございまして、これで賄ってまいるために内部の重点配分はいたしたつもりでございます。ただ、これから教育改革を進めるに当たりましていろいろやはり国家の公財政支出も必要になってまいりましょうから、今後来々年度にかけましてさらに努力してまいるつもりでございます。
  328. 小西博行

    小西博行君 大蔵大臣にお伺いしたいと思うんですが、教育の問題というのは今大変いろんな問題が出ておるわけです。  この間は留学生問題を私は質問させていただきましたし、あるいは研究者の問題あるいはその受け入れの大学の研究機関のあり方、たくさんの問題があろうかと私は思います。先ほど申し上げましたように文部大臣はとにかく文教予算をとるべく大変努力されたんじゃないかというふうに思いますが、その辺大蔵大臣としてはどうだったのか。私は応援する立場でありますから何としても予算をいただきたいという気持ちなんですが、大蔵大臣の御意見をお間きしたいと思います。
  329. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御承知のように、財政上の事情からやむを得ず長いことマイナスシーリングを続けてまいったわけでございますが、教育関連は、先ほど文部大臣もお答えでございましたが、シェアとしては〇・一ポイントぐらいを上下するような、とにかくシェアが落ちないようにということはお互いに努力をしてきたわけでございます。今年度は実額では少し六十三年度はふえておるわけでございますが、それで六十四年度の財政をどうするかということは実はこれからの問題でございます。まだ方針を決めておりませんが、おっしゃいますように、これは非常に大事な問題でありますことは私どもよくわかっております。将来を考えますと、あるいは最も大事なことの一つだということもよくわかっておりますから、また文部大臣ともいろいろ御相談をしてまいりたいと思っております。
  330. 小西博行

    小西博行君 教育改革というのは一般の産業の中での合理化とかいう問題とは違いまして、先ほど入試の問題なんかで出ましたように、やっぱり改善すればそれが安定的にある程度長く続くような状態でなければ大変困る問題だろうと、私はそういうふうに思っておるものですから、特にその点も十分配慮していただいて優先的に当然決めなければいけませんので、そういう分野をよく整理されてやっていただきたい、そのように考える次第です。  ところが、この予算をいろいろ見てみましても、圧倒的に人件費というのが多うございまして七六・五%、六十三年度ですね。したがって、二三・五%が具体的ないろんな改革にもつながるんだろうというふうに思いまして、この少ない金額でどのように文部大臣の実力を発揮されるのか。一番心配で難しいというのはどういう点でしょうか、もしございましたら。
  331. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 特に今私の頭にありますのは、八項目に上ります教育改革推進大綱に従って進めていく問題にございます。特に、その一番目の生涯学習だけ見ましても、これは全国的なことでございまして、これをネットワーク化していく、そしてそれの情報を的確に提供していく、そしてまた施設の整備をする。これだけ見ても各省庁にわたりますし、相当心してかからなければなかなか難しい問題でございますので、特に とは申しませんけれども、すべての面でこれは物心ともにやはり心を定めていくべきことであるなということは感じておりまして、先生の御指摘は御鞭撻と受け取って頑張るつもりでございます。
  332. 小西博行

    小西博行君 教育というのは、私は一番大切なのは小学校時代だろうというふうにいつも思うんですね。そして実は、生徒というのは小学校の一年に入るときというのは非常にわくわくして希望に満ちて入るわけですが、ただ、生徒の方から先生を選べないという問題がございます。したがって、非常にいい先生にめぐり会うということが、将来の学究生活に入る場合でも非常に大きな影響があるということですから、私は教育の問題というのは何か形ばかり整えても、やっぱり中身の整備をしていくというのが一番大きな問題だろうと。  私なんかも実は大学で行動科学というのを勉強させてもらったわけですが、この動機づけですね。それは私は、その先生が非常に知識があるからできるという問題でもないし、やっぱり行動づけということだろうと思うんですね。産業心理学と企業では言っていますけれども、そういう分野のうまい計画というものがなければ教育というのは非常に難しいだろうということを思いまして、私は何も予算で施設だけを十分にすればそれでできるという立場ではございませんから、そういう中身の整備をこれから先もひとつやっていただきたい。そして国際の中において、なるほどいい教育をされているというような形が私は理想ではないか、そのように考えますので、ひとつ頑張っていただきたいというふうに思います。  次の問題ですが、放送大学、実はもうこの放送大学の法案が出たときに私は文教委員会のメンバーでございましたので、いろんな問題点について議論もさせていただいたし、これはもちろん生涯教育という一つの大きな柱がございます。臨教審の答申の中でもそれを大きくうたっているわけです。しかし、全体的に見て少しおくれているんじゃないかという感じがしてならないんですが、その辺の実態はいかがなんでしょうか。
  333. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) お答えする前に、先生から御指摘されました施設だけではないということは適切な御指摘だと思います。人が人を教えることでございますので、心して参ります。  今の放送大学でありますが、これは生涯学習の重要な一環でございますが、ただエリアが関東地区に絞られております。たまたま私の出身県はエリアに入っておりまして、そこで学んでおられる方々の大変生きがいを感じるという意見を耳にしておりますが、その中でこれをぜひ全国エリアに広げてもらいたいという御要望がございます。今、有線放送でこれを逐次進めておるところでございますけれども、将来にわたりましては二つの方法——一つは放送衛星のチャネル、独自に上げますと七十年代と、こういうことでありますが、六十五年、六十六年に相次いで放送衛星が上がりますので、そのチャネルを使わせてもらう場合には費用がどのくらいかかるかということも検討の一つであります。  もう一つは、働きながらあるいは家庭におられながらという方が放送大学の放送をビデオに撮って御自分の都合のいい時間に学習なさるということがありますので、いっそそのビデオの配付を全国規模でやった場合どのような効果と費用がかかるかということも一つの検討事項であろうと思います。同時に、学習センターを全国的に広めていく必要がございまして、こういう幾つかの方法を総合的に検討しておるところでございまして、その検討経過、並びに具体のことの御質問がありましたら政府委員にお答えさせます。
  334. 小西博行

    小西博行君 これは別に通告はしていなかったんですけれども、あの当時、私も人を教えたという経験がある立場ですから、テレビを通じて講義をするというのは非常に難しいのではないか。冗談の一つも普通は言っても、テレビの前ということになりますと非常に標準型というんでしょうか、そういう格好になって魅力のない講義になりはしないかということが大変私は心配の一つの種であったんですけれども、そういうような世論調査、いわゆる学生さんとのコミュニケーションといいますか、そういうものをどなたか調査をされた方がいらっしゃるか、もしあればお答え願いたいと思います。
  335. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) おかげをもちまして放送大学は、六十年に学生を受け入れましてから、六十三年度にはいよいよ完成年度ということで、来年の春には第一回の卒業生が出るというところまで来ておるわけでございます。  私の手元に先生の御質問の資料を持っておりませんけれども、放送大学側といたしましても、それからお隣に放送教育開発センターというのがございますが、両者協力いたしまして、特に学生との間のいろいろなコミュニケーションを図り学生側のいろいろ意見等も受け入れていくということで努力をしていると聞いておりますので、またその資料等が私ども手元にも恐らくあると思いますので、別の機会に先生に差し上げるようにいたしたいと思います。
  336. 小西博行

    小西博行君 当初の基本計画というのがございますね、それを見ますと、これは学生総数が四十五万三千人とかいうような非常に大きな数字が出ておりますし、また世論調査をしても、相当大勢の方が勉強したいというふうな御希望だということでこの法案通過ということになったんですが、全体的に計画を見まして、やっぱり放送衛星、これを間違いなくずっと計画的に、あれは大体普通は七年しか寿命がないわけですが、ちゃんとそれが故障した場合でもすぐ次のやつでできるような体制をひとつつくるということでしょうね。  そして、大体全国八〇%網羅できると。あとは、さっき大臣がおっしゃったようにスクーリングをする場所、大学ですね。そういうところの整備をどうするかとか、そこでまた具体的に教える先生が、今の先生が代講して十分なのか。こういうことが、すべて将来計画にうまく生きるかどうかということの問題になるんですね。  特に放送衛星ですね。衛星が果たして、六十五年、六十六年に打ち上げられる「ゆり」の三号a、b、これがもう間違いなく放送大学用に確保できるんでしょうか。
  337. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 放送衛星につきましては、郵政省等におきまして現在BS3の第三号の打ち上げの計画を進めているというところでございまして、先生のお話にもございましたように六十五年度に本機を打ち上げ、六十六年度に予備機を打ち上げるという予定になっております。本機の方のチャネルにつきましては使用計画が定まっておるという状況でございますが、予備機の方についてはまだ必ずしも明確に決まっていないという状況があるようでございますので、先ほど大臣からもお答えいたしましたように、予備機について何らかの利活用ができるかどうかという可能性等も含めまして現在私ども検討している最中でございます。
  338. 小西博行

    小西博行君 この衛星というのは国際的にいろいろ決まりがありまして、日本としては八チャンネル使えるというようなことがありますので、その辺の関連性をやっぱり十分整備して、そして計画を密に私はやっていっていただきたい。同時に、それだけではいけませんので、全国のそういう受け入れ態勢というのを計画を密に立てて具体化していかなきゃいけない。これは大臣、えらい金がかかるんですよね。御存じだと思うんですが、これは四百二十億ですか、最終的には、というような施設の費用がかかる、そういうような計算が出ておりますので、それは恐らく細部の細かい計算もしているだろうと思いますので、ひとつよく検討をしていただきたいと思います。  時間がだんだんなくなりましたから、最後に、先ほども同僚議員の方から研究者の国際交流というお話がまた出てまいりました。私はこの間、利根川博士のお話を間接的に伺っておりましたら、日本には技術政策というのはある、ただ科学政策というのは日本には存在していないというような非常に手厳しいお話がございました。外国人も当然研究者で来るわけですから、向こうの学者その ものが日本の研究機関に魅力があるか、あるいは具体的に研究者に魅力があるか、そういうことで初めておいでになるわけですね。  いろんな議論の中には、宿舎が完備していないから来ないんだという説もありますけれども、私はそれよりもむしろ研究者という場合は、今申し上げたような研究の題材とか中身の問題、そして日本へ来て研究したものが将来自分が発展するために非常に大きな功績になる、そういうものだろうと思うんです。  そうして見ると、どうしても基礎研究的な分野を拡大できるような、つまり独創性のあるそういう学者をこれから養成していかなきゃ、国際交流だといっても向こうは余り来ない。日本は魅力があってどんどん行くというような形というのはなかなか来得ないんじゃないかという気持ちを私自身が持っておりまして、日本におけるそういう研究体制の確立。例えば科学技術協定なんかでも出てきますし、いろんな、最近問題になっておりますけれども、研究の成果をどう配分するのかという問題も一つですね。それからどうしても研究体制というのが日本と海外、外国との場合にかなり違うのではないか。  そして、この間ちょっとお尋ねしました学位の問題ですね。日本で学位を取るというのは大変なことであります。つまり、実績がなければ学位はもらえないというような文言になっている。アメリカあたりではそうじゃなくて、将来の研究者としての可能性を十分認めるということで将来に対する期待を持って学位を認定する。しかし、日本の場合はドクターコースというのがあるんだけれども、それを出ても学位がもらえないというような問題点が相当ある。特に文科系というのは非常に学位が取りにくい。もう相当の先生方でも学位を持っていない。ましてや若い研究者にはなかなか学位を与えない。そういうような非常にひずみがありまして、従来も文部省にそういうような質問を申し上げますと、検討いたしますという言葉だけはいい返事をいただいておるんですが、さっぱり進んでいないような感じがいたします。  それは私は何もこの日本だけの問題ではなくて、そういう研究者のお互いの交流とかいうことになりますと必ず問題になってきます。もう現在でも相当問題になっておりますから、とにかくそういうものを含めて教育改革というのを思い切ってやっていただきたい。それが私の要望であり、お答えを最後にいただいて質問を終わりたいと思います。
  339. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 的確な御指摘だと思います。基礎研究が全然ないと、こういう手厳しいことでありますが、おくれておるのだろうと思います。どうしても生産技術の方に進む。これはやはり民間のエネルギーが主になりますと、時間的に六、七年ぐらいで結果が戻ってくるという商業ベースが主になってまいりますと、どうしても基礎科学という面で、基礎科学となりますとやっぱり二十年、三十年のサイドで考えなければならない、その面では公財政支出がやっぱり必要であろう、こう思います。  二番目の御指摘は、その組織、方法でございますけれども、やはり利根川博士と私もお会いしましたけれども、日本の研究体制あるいはプロフェッサーあるいはアシスタントプロフェッサー、そのあたりの研究体制の方法というものも御指摘は確かに適切なことだと思っております。  そして最後に、いろいろ外国からの若手研究者も日本に入れるようにフェローシップ制度を拡充しておりますが、学位の問題は確かになかなか難しいという面がございまして、それがはっきり言って留学生諸君にも影響を与えておりまして、日本で学ぶのはいいけれども、学んでも学位が取りにくい、取ってもなかなかそれが東南アジアその他では活用と申しますか、認められない面が多い。そういう面もございまして、今特に三点の御指摘は十分心していくべきことと思います。
  340. 小西博行

    小西博行君 終わります。
  341. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で小西博行君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  342. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、秋山肇君の質疑を行います。秋山肇君。
  343. 秋山肇

    秋山肇君 私は教育問題に関連して、二、三質問いたしたいと思います。  さきの三月三十日に国立大学協会は来春の国立大学入試の方式について公表したわけですが、これを見ましても、毎年のように変わる入試方式、戸惑うのは学校の先生だけではなく、やはり受験生とその親御さんではないかと思います。昨年の八月、臨教審の最終答申が提出され、それについて賛否両論が出ました。個性重視を基本的な原則として学校や学歴中心の考えを是正するため、生涯学習体系への移行を改革の柱としたことは評価できると思います。その後十二月には、文部省の教育課程審議会が二年余りにわたって検討してきた幼稚園、小中学校、高等学校の新しい教育内容のあり方について中島文部大臣に答申したわけであります。  私は、これらの答申の内容を見ていつも不思議に思っていることがあるのですが、この答申の内容を実際に具体化した場合の財源の手当ては考えてあるかということであります。確かに一つ一つとってみると理想とすべき、こうありたいという内容になっております。しかし、教育の制度、システムを変えようとすると何百、何千という金がかかるわけですし、もっと具体的に言うならば、現場ではコンピューターやパソコンを授業に導入しようとしても一学年に数台しかない、各学年持ち回りでしか使えない、一時間しか使えないというような状況すら生まれておると思います。  文部省では、これらの答申を見てその財源の確保についてどのようにお考えをお持ちですか。先ほど来文部省の予算が少ないというのが各委員からの御質問ですけれども、お答えいただきたいと思います。
  344. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 御指摘のことは教育を進める上にも、特に教育改革を進める上に非常に重要なことでありまして、六十三年度は計上いたしました範囲内で最大の努力をしてまいりたいと思っておりますし、その中でも重点配分はいたしました。ただ、これから教育改革を実際に進めますと、これは中長期の問題でございますから、六十三年度のみならず六十四年度以降に一層やはり拡充を図らなければならない点でございまして、大綱の中にも重点配分という言葉がございますので、六十四年度以降さらに御趣旨を体して渾身の努力をいたしてまいりたいと思います。
  345. 秋山肇

    秋山肇君 ぜひ頑張っていただきたいと思うわけでございます。  これまでの臨教審の幾つかの答申、改善案を見ましても、それに対応する予算措置がとれるかというとなかなか疑問なわけです。国家予算の絡みから見ても、制度の改革、いろいろな教育システムの導入に伴う費用等、実行に移すだけの実質的な予算がつけられるのかどうか、国の予算がまともにつかないのに県や市の予算でつくわけはないのであります。  これまで臨教審の最終答申以降、現場の方々にいろいろと意見を聞いてまいりました。その結果、何といっても多かったのが、答申が出たところで大して変わりはしない、議論はもういい、要は今の教育を変えようとするのは一つの方向性とそれを実行する力、つまり予算措置だという声でした。現場の改善を図るためには、それに見合う予算がつかないと変わりっこない、これは現場の方々の偽らざる気持ちではないでしょうか。  このことは先ほどもお答えをいただきましたけれども、再度お考えをお聞きしたいと思います。
  346. 川村恒明

    政府委員(川村恒明君) 先ほど大臣からお答え申し上げましたように、教育改革を実施するためには、おっしゃるとおりやはりそれに伴う財政措置が当然必要なことは御指摘のとおりでございます。  先ほど大臣が申し上げましたように、文部省の予算は四兆五千七百億ございますけれども、全体 がその教育改革に関連する予算だということになります。その中でもその教育改革に直接関連する経費というものをとってみると、それはやはり今度御審議をただいまいただいております六十三年度予算案にもそれなりの事項それぞれについて計上させていただいておるわけでございまして、こういうことは先ほど大臣からお答え申し上げました推進大綱に沿ってこれから施策を進めていく、やはりその全体の施策の中で必要な予算の計上に努めてまいりたい、こういうことでございます。
  347. 秋山肇

    秋山肇君 お金をつければいいということでもないし、やはり教員の資質の向上というのが大事なことだと思うんですが、この点についても、ただ教育関係の大学を出て教員になるということだけが果たしていいのかどうかということを提言しておきたいと思います。  今、文部大臣の机の前に何冊かの本をお渡ししておきました。最近、子供から大人までを巻き込んで漫画ブームが起こっております。一月二十六日のサンケイ新聞によれば、少年少女漫画雑誌の一昨年一年間の総発行部数は七億七千七百万部ということであります。本が売れない時代と言われているのに漫画だけが盛況を示しているわけです。しかしこの中に、ローティーンの少女を主人公にわいせつ場面が繰り返し出てくる漫画も多く、このような漫画の少年に及ぼす影響が懸念されております。  私も調べてみましたが、漫画とはいえその過激な性描写には大人の私も目を覆うばかりであり、これを十代の少年少女が読んでいるかと思うと、その心身への影響等についての懸念を感じるわけであります。資料としてその中の幾つかの雑誌をそこに置いてありますけれども、ごらんいただくとわかりますが、表紙を見るのと中とは全然違うわけで、昨年の十一月十二日の週刊新潮にも出ておりましたけれども、ある母親が一般の漫画だと思って間違えて子供の誕生日に子供に買ってあげたらば、中を見たらびっくり仰天をしたということであります。  警察庁ではこのような漫画雑誌の実態をどの程度把握しておりますでしょうか。
  348. 漆間英治

    政府委員(漆間英治君) 御指摘のとおり、私どもの常識ではいかがかと思われるような内容のものが記載されております子供向けの漫画雑誌が出回っていることは、よく承知をいたしております。その種類や発行部数がどれほどに上るかということについては正確には把握いたしておりませんが、一説によりますと、月刊誌だけでも七十から八十種類が出回っているのではないかというように聞いております。
  349. 秋山肇

    秋山肇君 今お答えがあったわけですが、かなり多くの雑誌が出回っているわけで、これらの雑誌は一般の書店やコンビニエンスストア等でも堂堂と置かれております。簡単に少年少女の目に触れるような状況にあるわけですけれども、これらの雑誌が少年少女に及ぼす影響を文部省としてはどのようにお考えになっておりますでしょうか、大臣からお考えをお聞きしたいと思います。
  350. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 今ちょっと拝見をいたしました。  私も子供が小さいころ一緒に漫画雑誌を喜んで見た一人でございますけれども、もう少し劇画と称しても、いろんな漫画と称してももっとさっぱりしたものでございまして、子供と一緒に喜んで話題にできるものでございましたけれども、なるほどこういうものが一般に出回っておるということはやっぱり憂慮すべきことであろうと。  ただ、それに対して、答弁書を読むわけじゃございませんけれども、ちょっと読んでおりました。出版関係者の自主的な努力に期待、こういうことがまず出てくるわけでございます。それから、親や社会が関心を持って地域の教育環境の浄化を図る活動の推進と。このあたりしかないのかなと、答弁書を見ながら残念がっておるのもおかしな話でございますけれども、実際に表現の自由ということを言われますと、どうもなかなか難しい点がございます。ただ一般に、一時、例えばこういう本でなくて看板ですとか、ああいうものを浄化しようというのは、地域のお母様方の努力によって大分外されましたり、絵とか写真はやめて表題の文字だけにするとか、そういうことは成功したようでございますので、それをこういう出版界にどこまでできるか。実は憂慮すると言いながら、この具体的なお答えがなくてちょっと残念でございますけれども、よく研究してみたいと思います。
  351. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で秋山肇君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  352. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、下村泰君の質疑を行います。下村泰君。
  353. 下村泰

    下村泰君 これは文部大臣、通告はしてございませんけれども、多分もう文部省の方でも御存じのことと思うんです。せんだっても二十二日の文教委員会のときに、相模原市の市立の中学校で障害児の卒業生の名前がアルバムとかそれから受付その他から削除されておったということを、たしか大臣にお話し申し上げた。  その節、こういうことがないようにひとつ願いたいということを申し上げたんですけれども、数日を経ずして今度は浜松の方でも同じようなこと、しかも浜松の場合は、浜松市立八幡中学校で、これは校長さんの名前は石川篤さんとおっしゃるんだろうと思いますけれども、百四十四人の卒業生のうち特殊学級の生徒が八人なんです。「一般の卒業生アルバムに写真、名簿とも掲載せず、一人ひとり別の「特製アルバム」を渡した」と。しかもこれは「市販のアルバムに、入学から卒業までのスナップ写真を集めて張ったもの」。これはいいことはいいんですよ。個人個人に卒業するまでの経緯を写真にして渡したというのは、これは大変結構なんです。  ところが、全体の中に入れてないんですね。この校長は「形式的なアルバムにせず、熱意をもって個々の記録を集めた。個々に当たったわけではないが、親も承知してくれているはずだし、問題があるとは思えない」、こういうことを言っているんです。個々に、個人個人につくってやったのは結構なんですけれども、全体の生徒の中から外れているわけですね。そうしますと、何のための卒業アルバムかわからないんだ。全体と一緒に写った卒業アルバムがあってそのほかに個々に渡してあるとすれば、これは大変すばらしいことだと私は思うんですがね。  それで、この校長さんは「特殊学級卒業生や保護者、普通学級の卒業生からも、一緒の方がいい、という声はなかった」と。ちょっとこれは校長さんの感覚としてはおかしいじゃないかと思うんです、教育者としては。一般からの、ほかのPTA、恐らく健常者でしょう、健常者のお母さん、お父さんからいろんな文句は出なかったということをおっしゃりたいんだろうと思うんです。  それからもう一つは、健常者の親御さんたちが意外と嫌う傾向もあるんですね、こういう特殊学級の生徒さんたちと一緒に何かをするということを。そういうことからこういう配慮をしたのかどうか知りませんけれども、こうなりますると、その都度その都度教育委員会の方まで福祉教育をせにゃならぬような感じになってくるわけなんです。  ですから、一片の通達を出したとか通知書を出したとかいうのでなくて、本当に心からの、特殊学級の生徒といえども教育をしてほしい、こういう感じを私は抱くんですけれども、大臣、どういうふうにお考えでございましょうか。  それと、今後どういうふうな対策をお立てになるおつもりでしょうか。ちょっと聞かせてください。
  354. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 事実関係につきまして簡単に申し上げます。  先生御指摘の浜松の三中学の件、私どもも若干調べておりますが、御指摘のとおり、卒業アルバムについて若干問題がございまして、確かに一年生のときから計画的に自作のアルバムをつくらせるという方針があったということは事実でござい ます。しかし、卒業の時点において全体の卒業生とともに特殊学級の児童生徒をどういうふうにちゃんと扱っていくかと、これまた別の問題でございますので、この点は三つの中学それぞれ若干考えが違うようでございまして、ある中学は去年までは別だったけれどもことしは一緒にしたというのもございます。それから、八幡中学校はやはりことしも別の扱いであったと、こういう経緯がありまして、私どもとしてはやはり障害児の子供たちをより以上の温かい配慮で当該学校で卒業アルバム等についても扱うべきだという考えは持っておりますので、いろいろな機会にこの点についてはさらに配慮をしてもらうような指導をしてまいりたいというふうに思っております。
  355. 下村泰

    下村泰君 局長からはせんだってもお話を伺ったんですけれども、とにかく通り一遍のやり方じゃなかなか、こういうのが後から後から出てきているわけですね、学校の方が。  ですから、今申し上げましたように、下手をすれば教育委員会の人を教育したくなりますわね。校長個人の感覚でもってこういうことをされたんじゃこれもかなわないと思うし。ですから、ただ単に通知だけじゃとても済まないと思うんですよ。そういうことについてひとつ大臣からも一言。何か確約しておいていただかないと。
  356. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 同じ学びやで学んでこられた方でありましょうから、卒業写真に一緒に写るということはこれはもう大切なことでありまして、私どもはやっぱり卒業写真というのは大事にいたしますので、事実関係はいろいろございましょうけれども、局長も言っておりましたように、いろんな考え方がありましょうけれども、一層御趣旨に沿って指導するようにいたします。
  357. 下村泰

    下村泰君 昨年の春に全国の盲学校、聾学校それから養護学校、殊に肢体不自由、知恵おくれ、こういう方々の高等部を卒業した人たちの、その後の進路状況はどういうふうになっておりましょうか。
  358. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 御指摘の、盲聾養護学校の卒業生の進路でございますが、盲学校について申し上げますと、本科の卒業生につきましては四七%が専攻科に参っております。それから、就職者が二三%。この四七%専攻科に進学いたします方々は、専攻科で三年やりまして、あんま、はり、きゅう師の資格を得て就職する。恐らく、盲学校の卒業者は本科、専攻科を経てほとんどの方が就職できるという状態になっております。  それから、聾学校につきましては進学者が三六%、就職者が三六%ということでございまして、進学者はやはり専攻科に参りまして、約七割程度の方々は専攻科、本科を経て就職をされる。  問題は、実は養護学校にございまして、専攻科が養護学校にはございません。したがいまして、専攻科には一%ぐらいしか進学しないわけでございますが、就職者が二九%、三割でございます。そしていわゆる無業者という形でその他の方々が約四〇%というふうになるわけでございまして、そのほかに教育訓練の機関等への入学者が約八%というふうになっております。  そういう意味から申しますと、盲聾学校につきましては、就職についてはほぼある程度の進路がセットできるわけでございますけれども、養護学校につきましては、なかなかこれからの課題が多いと、こういうふうに感じております。
  359. 下村泰

    下村泰君 これは私のいただいた資料でございますけれども、これは今局長がおっしゃったのとほとんど同じです。ただ、一番問題なのはこの無業者ですね。無業者の内訳はどういうのかと申しますと、私の方も時間がございませんから先へ行きますけれども、入院をしていたり、あるいは施設に入所していたり、在宅していたり、あるいは作業所と。この作業所というのは小規模作業所で、ほとんどこれはこの方たちを引き取っておるというのが現状ですね。  そこで、都の方の教職員の方々がつくってくださったデータなんです。これを見ますと一番よくわかるのでございますけれども、とにかく作業所とそれから生活実習所、在宅でほとんど半分以上が終えるわけです、頭数といたしましては。一体労働省ではこういった、まして雇用率もせっかく伸ばそうとしているのにもかかわらず、なかなかこういう方の進路がうまく先が見えてこない。労働省としては今後どういうふうな施策をお持ちなのか、ひとつお伺いいたします。
  360. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 養護学校の卒業生に対しまして、今お話があったとおりでございまして、労働省としましても、養護学校の卒業生の中で就職希望される方についてはその適性、能力に応じまして就職できるように最善の努力を果たさなければいけないということで、今までも学校関係者と緊密な連絡をとりながら、早い時期から職業相談あるいは職業指導、求人開拓等をやってきたわけでございます。しかし、先ほどデータが示しておりますように、必ずしも万全ではないと思っているわけでございます。  これからもいろんな面で対策を講じていかなきゃなりませんけれども、とりわけ今お話がありました共同作業所の問題でございますが、実は、雇用納付金制度等を活用いたしまして、助成金等を雇用の関係があった場合には出せるんですけれども、そうでない場合には納付金制度の趣旨からいいまして出しがたいというのが実態でございます。ただ、福祉のことでございますので、これからは関係行政機関と十分新たな検討を行いまして、何らかの措置がないものか研究を進めたいと考えておるところであります。
  361. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で下村泰君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  362. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、青木茂君の質疑を行います。青木茂君。
  363. 青木茂

    ○青木茂君 九分でございますから、私五分以内で二つの質問を申し上げて、当局の方で三分以内でお答え願って、私がまた御質問して、最後に大臣の御見解を伺って終わりにしたいと思っております。  第一問。これは二十年前を思い出すんですけれども、私二十年前にある国立大学で経済学の教授をしていたわけです。そのとき、教授会の下部組織で、学生に奨学金を与える委員会委員長をずっとやっておりました。奨学金だから、できるだけ貧乏というのか所得の低い学生にやりたい。そこで、所得の多い少ないの基準を納税額に求めて、奨学金とか授業料免除の配賦をしておったわけでございます。そうすると、変なことが起きまして、ちょっとしたサラリーマンの子供は高額所得者になって、奨学金とか授業料免除の対象から外れてしまうんですね。お医者の息子だとか、もう立派な店を構えている事業者の息子が貧乏人になって奨学金を受け取ってしまう、こういう矛盾が出まして、おかしいというわけで、そのころから私は税法の勉強を始めたんです。そのときは源泉徴収という言葉すら知らない全くの素人だったんです。この税法の勉強を始めているうちにやはりクロヨンの存在ということに気がつきまして、今みたいなことになってしまったということなんです。  奨学金や授業料免除の基準において、まだ、所得基準と申しますか、収入の多寡、これはもう客観的には納税額しかないんだから、これでやっていらっしゃるかどうかということを伺いたいのが第一問。  それから第二問は、今度は大学の教師、特に非常勤講師の問題でございますけれども、これが余りにも低賃金というのか安過ぎます。国立大学で、週一回行きまして、月額ですよ、一万一千二百六十六円ですわ、給料が。交通費は自弁です。それから私立大学で、もう最高で月額二万五千円です。答案の審査料、私立大学に至っては一千枚から二千枚の答案を調べる、これはゼロですわ、手当が。そうなりますと、本当に扇風機で答案をぶっ飛ばしてあれするという気持ちもわからぬではないわけですね。これを何とかしないと、これは日本の頭脳は外へどんどんどんどん出ていってしまうのではないか、こう思うわけなんです。  この二問につきまして当局の御見解をちょうだいしたいと思います。
  364. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) 第一問の日本育英会の採用基準の方を申し上げさせていただきますが、学業成績と家計収入というこの二本立てで採否を決しておるわけでございます。そのうちの家計収入につきましては、もちろん各家庭の収入額を市町村長の発行する所得証明書でございますとかあるいは源泉徴収票あるいは確定申告の写し等によって確認をして、一定の基準に当てはまるかどうかということで措置しておるわけでございますが、その中で特に給与所得者の場合につきましては、所得税の場合等も参考にいたしまして給与所得者の場合の控除という措置を講じておりまして、一般の給与所得者以外の家庭とのバランスをとるように努めているところでございます。
  365. 古村澄一

    政府委員(古村澄一君) 非常勤講師の給与でございますが、現在予算単価では一時間当たり三千九百十円、これは公務員の給与のベースアップに合わせまして毎年上げてまいっておりますが、そういう積算単価でございます。  そこで、外部から来ておられる方には、やっぱりそれではなかなか賄えないということで、四千七百六十円というものを基礎にしてやっていただく。各大学におきましては、それぞれの経験年数、いわゆる若い方から非常に経験を持った方もおられますので、そういった方についてはそれぞれの大学においていろんな段階を設けて支給基準をつくっております。例えば東京大学では、一番低いのが一時間当たり二千七百四十円でございますが、一番高いのが五千二百円という間で、七段階ぐらいの水準をつくっているというのが現状でございます。
  366. 青木茂

    ○青木茂君 伺ったんですけれども、まず第一の問題についてまして、幾ら何でも、つまり私どもはクロヨンというものを前提にするから、それは確かにそうなんですけれども、現実はそうだったんです。サラリーマンは奨学金の対象から外れて、マイカーで学校へ来る子供がもらっちゃうというような変なことになっていたんです。  それともう一つ、もしこういう実態があるとするならば、これは奨学金だけじゃございません。老齢福祉年金のカットの問題だって、保育園に入る問題だって、幼稚園の就園の奨励費をもらう問題だって皆これは所得基準なんですよ。そうすると、この所得把握の不公平というものあるいは制度的な不公平というものが皆給与生活者、サラリーマンに影響をしてくる。これでは本当に日本の高度成長を支えたサラリーマンの皆さんに失礼だし、ちょっとかわいそうだと僕は思うんですよね。税の問題だけじゃないんだから。これを一つどうしても申し上げておきたいと思います。  それからその次の非常勤講師の問題でも、今御答弁がございましたように、一時間二千七百四十円、一番低いのがね。それから一番高くて五千二百六十円。これは、大学の先生というのは日本の頭脳ですからね。最高級の待遇がなければみんな行かないですよ。だってタクシー代を払ったらゼロになってしまうし、講義を終わって学生にたかられたら、これで赤字が出ちゃうわけですからね。そういう問題が多々ある。そこで大学教育の質を落としてしまう。私学なんかはそこをうまくして、専任をできるだけ少なくして、非常勤で埋めておいてゆとりを生み出すというようなことも多々あるというような現実でございますから、ここら辺はどうしても私は改めていただかないと大学教育が成り立たないんじゃないか、あるいはサラリーマンの子供はかわいそうじゃないか。  この二点について最後に文部大臣の御見解を承りまして、終わりにいたします。
  367. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 奨学金あるいは授業料の免除措置について御指摘でございますが、その家計収入を税金面で捕捉するということになりますとやはり今のようなことになるのでありましょう。その点はむしろ今度は税制上で捕捉率を高める、これ以外にないんで、もし税金以外で所得を確かめられる方法があれば、また御指摘いただけば参考にしたいのですが、今のところ税金でとなるとそういう面が出てまいるのでありましょう。  それから非常勤講師につきましては、確かに二千円台から最高で五千円台、これはまたなかなか厳しいものだなと思っております。ただ、私自身ちょっと経験がございません。この点はよく勉強させていただきたいと思います。
  368. 青木茂

    ○青木茂君 終わります。
  369. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で青木茂君の質疑は終了いたしました。  これにて教育に関する集中審議は終了いたしました。  明日は午前十時十分から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時五分散会