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1988-03-26 第112回国会 参議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月二十六日(土曜日)    午前九時開会     ─────────────    委員の異動  三月二十五日     辞任         補欠選任      石本  茂君     小野 清子君      二木 秀夫君     永野 茂門君      降矢 敬義君     鈴木 貞敏君      近藤 忠孝君     神谷信之助君  三月二十六日     辞任         補欠選任      小山 一平君     安恒 良一君      峯山 昭範君     和田 教美君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         原 文兵衛君     理 事                 伊江 朝雄君                大河原太一郎君                 小島 静馬君                 林  ゆう君                 吉川 芳男君                 久保  亘君                 矢原 秀男君                 吉川 春子君                 三治 重信君     委 員                 石井 道子君                 岩上 二郎君                 小野 清子君                 梶木 又三君                 金丸 三郎君                 工藤万砂美君                 坂元 親男君                 志村 哲良君                 下稲葉耕吉君                 鈴木 貞敏君                 中曽根弘文君                 中西 一郎君                 永田 良雄君                 永野 茂門君                 野沢 太三君                 増岡 康治君                 松岡滿壽男君                 稲村 稔夫君                 小川 仁一君                 大木 正吾君                 千葉 景子君                 野田  哲君                 安恒 良一君                 猪熊 重二君                 及川 順郎君                 和田 教美君                 神谷信之助君                 橋本  敦君                 勝木 健司君                 秋山  肇君                 青島 幸男君                 青木  茂君     国務大臣        法 務 大 臣  林田悠紀夫君        外 務 大 臣  宇野 宗佑君        大 蔵 大 臣  宮澤 喜一君        通商産業大臣   田村  元君        運 輸 大 臣  石原慎太郎君        建 設 大 臣  越智 伊平君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    梶山 静六君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       伊藤宗一郎君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  奥野 誠亮君     政府委員        警察庁警備局長  城内 康光君        総務庁統計局長  百崎  英君        青少年対策本部        次長       倉地 克次君        経済企画庁国民        生活局長     海野 恒男君        科学技術庁科学        技術政策局長   加藤 昭六君        科学技術庁研究        開発局長     川崎 雅弘君        科学技術庁原子        力局長      松井  隆君        国土庁長官官房        長        清水 達雄君        国土庁長官官房        会計課長     佐々木 徹君        国土庁土地局長  片桐 久雄君        国土庁大都市圏        整備局長     北村廣太郎君        法務省刑事局長  岡村 泰孝君        外務大臣官房領        事移住部長    黒河内久美君        外務省アジア局        長        藤田 公郎君        外務省中近東ア        フリカ局長    恩田  宗君        外務省条約局長  斉藤 邦彦君        大蔵省主計局長  西垣  昭君        大蔵省主税局長  水野  勝君        大蔵省理財局次        長        藤田 弘志君        国税庁次長    日向  隆君        文部省初等中等        教育局長     西崎 清久君        文部省高等教育        局長       阿部 充夫君        文部省高等教育        局私学部長    坂元 弘直君        文化庁次長    横瀬 庄次君        厚生省社会局長  小林 功典君        社会保険庁医療        保険部長     土井  豊君        通商産業省機械        情報産業局長   児玉 幸治君        資源エネルギー        庁長官      浜岡 平一君        資源エネルギー        庁長官官房審議        官        逢坂 国一君        運輸省地域交通        局長       熊代  健君        運輸省航空局長  林  淳司君        建設大臣官房会        計課長      鹿島 尚武君        建設省建設経済        局長       望月 薫雄君        建設省都市局長  木内 啓介君        建設省住宅局長  片山 正夫君        自治省行政局選        挙部長      浅野大三郎君        自治省財政局長  津田  正君        自治省税務局長  渡辺  功君     事務局側        常任委員会専門        員        宮下 忠安君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○昭和六十三年度一般会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和六十三年度特別会計予算内閣提出衆議院 送付) ○昭和六十三年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 予算委員会を開会いたします。  昭和六十三年度一般会計予算昭和六十三年度特別会計予算昭和六十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。     ─────────────
  3. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) この際御報告いたします。  昨日の委員会において久保委員から発言のありました暫定予算にかかわる問題につき、理事会における協議の結果につき御報告いたします。  昨日の理事会において、自由民主党の林理事から、当予算委員会審議と並行して念のため暫定予算編成準備に入るよう政府に要請したい旨の発言があり、各党の理事がこれを了承いたしましたので、委員長から官房長官大蔵大臣に対してその旨申し入れました。  これを受けて官房長官から、当理事会において、政府といたしましてはこのことを重く受けとめております。一日も早い予算の成立を願い、予算審議が円滑に進められるよう、政府といたしましては引き続き最大限の努力を払う所存でございますが、御要請に沿うよう念のため所要の準備に着手したい旨の発言がありました。  以上、御報告いたします。     ─────────────
  4. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) それでは、これより一般質疑を行います。橋本敦君。
  5. 橋本敦

    橋本敦君 いよいよ政府税調素案なるものが出されたわけでありますが、私どもはこれを見て、働く国民にとってはわずかの減税と引きかえにいよいよ大型間接税が出てきた、まことに重大な問題だ、国民世論に背を向けるのも甚だしいと、こんなふうに受けとめているわけでありますが、大蔵大臣としてはこの素案についてどのような所見をお持ちでしょうか。
  6. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 税制調査会におきまして、昨年暮れの政府の諮問に基づきまして、所得消費、資産の間でバランスのとれた税体系というものを御検討願っておる、その中途段階における素案というふうに伺っております。すなわち、地方におきまして二十回に及ぶ公聴会をされましたが、その際には案を持たずに広く地方国民意見を聞くということで、そういう機会を経ました後、各委員がその公聴会の体験をも踏まえてこのたびいわばたたき台のような形で素案をつくられた。承るところでは、この素案をもとに再度国民意見を聞かれた後最終的な答申をされる予定である、その中途段階承知をいたしております。
  7. 橋本敦

    橋本敦君 内容について御所見が今の段階でありませんか。
  8. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) したがいまして、税制調査会としては、そういうプロセスの中における中途段階たたき台として考えられたものと承知しておりますので、特段私からただいま申し上げることはございません。
  9. 橋本敦

    橋本敦君 今大臣もおっしゃったように、二十回の公聴会というお話がありましたが、公聴会では大型間接税について反対という意見が圧倒的に多数であった。新聞等でも報ぜられ、当委員会でも問題にしたところでありますが、これを今後のたたき台ということにしても、それらの公聴会をせっかくやって、その公聴会意見を十分踏まえるならば大型間接税ということが出てきてはならぬはずです。これが出てきているというのは、税調自体がまさに大型間接税へ踏み込んでいく、そのことは公聴会等意思を無視してもやるという姿勢、これをあらわしているものだとしてまことに不当ではないかと私は思うんですが、大臣の御所見はいかがですか。
  10. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほども申し上げましたように、公聴会におきましては一つの案を具してそれについての御意見をということでありませんでしたので、活発に幅広い御意見があったと伺っております。これを一元的にかくかくであったと総括して申し上げることは難しいようでありまして、いろいろな御意見があった。不公平税制についての御意見も多かったし、それから直接税、殊に所得税負担が重いというお話もありましたし、間接税についてのいろんな御意見もあった。それは一つにまとめて申し上げることが難しいほど幅広いいろいろな意見であったようでございます。  その中から、税制調査会としては例えば不公平税制と言われるものについての考え方、あるいは直接税、所得税法人税等についての考え方、これらはいずれも素案でありますが、それとともに間接税についての考え方素案を出された、そういう経緯であると承知をしております。
  11. 橋本敦

    橋本敦君 大事な間接税問題について的を当てた御意見にはなっていないわけですが、何のための公聴会であったかということが問われねばならぬ不当な事態だと私は思います。  議論を先へ進めますけれども、この素案によりますと、所得税最高税率引き下げ、これは前にやられた分と合わせますと二〇%になる、こういうことになってまいります。その反面、庶民の税率引き下げがどうかということを見ますと、年収五百四十二万円程度以下の場合にはわずか〇・五%、つまり一〇・五%から一〇%への引き下げというわけでありますから、それを超す中間所得者の場合にしてもせいぜい二、三%という程度にすぎない。これは言うまでもなく高額所得者ほど極めて大きい減税だということになっている事実は、これは大臣も否定なさらないでしょうね。
  12. 水野勝

    政府委員水野勝君) 先般の素案で示されております考え方は、六十一年の税制調査会抜本改革答申考え方を受け継いでおるものと思われるわけでございます。大多数のサラリーマンにとりましては、同じようなライフサイクルを通過するとすれば、その適用される税率というのは一本ないし二本でよろしいのではないかという考え方でございまして、お示しの五百四十二万円、このあたりでございますと、サラリーマンの四分の三はここに含まれるわけでございます。  一方、諸外国の例を見ますと、最低税率と申しますのは大体一五、六%から二〇%前後でございますので、最低税率としては一〇%というのがぎりぎりの水準ではないかと思われるわけでございます。そうした点を勘案いたしまして、今回の素案でもそういうふうな方向で取りまとめられている。ただ、これは改正案の一例ということでございますので、こうしたものをまさにたたき台として今後御議論が行われるものと考えております。
  13. 橋本敦

    橋本敦君 私の挙げた数字は間違いないでしょう。
  14. 水野勝

    政府委員水野勝君) ただいま申し上げたような考え方で取りまとめられていると思いますが、それにつきましてはいろいろ御議論もあり、今後恐らく幅広い御議論が行われるのではないかと思うわけでございます。
  15. 橋本敦

    橋本敦君 評価を聞いているんじゃない。数字は間違いないねと確認しているんです。時間たちますよ。はっきり言ってください。
  16. 水野勝

    政府委員水野勝君) これは税率につきましての改正案の一例でございます。税体系全体といたしまして、どのような階層の方がどのような御負担変動があるか、これは全体がまとめられてからのまた御議論ではないかと思うわけでございます。
  17. 橋本敦

    橋本敦君 私は数字を聞いている、こういう数字になっているねと言って。全体の体系評価は聞いておらぬよ。何でもないことじゃないですか。
  18. 水野勝

    政府委員水野勝君) 素案で示されております税率は二百万までが一〇%から、五百万、七百万と五%刻みになりまして、千五百万のところからは五〇、こういう六段階刻みでございます。
  19. 橋本敦

    橋本敦君 私の質問を聞いてくれていますか、あなたは。それじゃこう聞きますよ。  年収五百万円のサラリーマン幾ら減税になりますか。年収一千万以上がまた問題ですが、年収一千万の人で所得税幾ら減税になりますか。
  20. 水野勝

    政府委員水野勝君) これは税率につきましての改正案の一例として掲げられてございます。その点につきましては、さらに人的控除をどうするか、これにつきましても見直しが行われるということが示唆されてございます。したがいまして、それぞれの階層の方がどのような負担変動になるか、これは全体が取りまとめられてからの数字でございます。
  21. 橋本敦

    橋本敦君 控除制度は現在のままとして計算はすぐできるんですよ。新聞にも出ているじゃないですか。年収五百万で一万九千円、年収一千万を超えると二十二万円も減税になるんですよ。約二万と二十二万の違いがある。高額所得者に対する大変な大減税。まさに民主的な原則である累進性それ自体を骨抜きにするんじゃないですか。  次に移りますけれども、こういったようなことをやって片方でいわゆる間接税として三方式が出てきたわけですね。大臣、この三方式タイプでやるとすれば大臣としてはどれが妥当であるかお考えがありますか。
  22. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほども申し上げましたとおり、素案段階でございますから特に考えを申し上げる段階でないと思います。
  23. 橋本敦

    橋本敦君 その一つEC型付加価値税というのが出ておりますが、これは廃案となった売上税とどう違うんですか。
  24. 水野勝

    政府委員水野勝君) 素案の中での間接税につきましては、二つと申しますか三つと申しますか四つと申しますか、その粗筋は出ております。しかしながら、重要な点につきましてはなお検討すべき課題としてのものが幾つか掲げられてございます。したがいまして、そういう全体としての取りまとめられた結果といたしましてどのような姿になるか、これは素案でございますからまさに今後の御議論になる。それによりまして従来のタイプとどのような点が同じであるか違うか、そういうことでございますから、この素案の観点からそういう御議論は少しまだ、私どもとしてもまさに今後の検討を注視してまいると、そういうことではないかと思うわけでございます。
  25. 橋本敦

    橋本敦君 率直に答弁しなさいよ。あの素案の中にある三方式一つEC型付加価値税、これは売上税と基本的に構造、仕組みが同じだということはだれが見ても明らかですよ。あなた専門家でしょう。こんなことがわからぬでどうするんですか。もう一遍答えてください。基本的に構造、仕組み、建前は同じでしょうが。
  26. 水野勝

    政府委員水野勝君) 基本的には二本のものが素案として掲げられてございます。それが多段階のものでございまして、一方は累積を排除する、一方は累積の点につきましては考えない、こういう大ざっぱな素案のようでございます。
  27. 橋本敦

    橋本敦君 累積考えるのが、それが売上税と基本的に構造が似ているじゃないか。なぜ質問に答えないんだ。  取引高税というのも出ているが、これについては、これは戦後一時行われてすぐ廃止をされた。中曽根総理もこれはやらぬとはっきり言っておられた。これは大臣も御記憶ございますか。
  28. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 素案段階でございますから私はコメントをいたさないと申し上げておるのであります。
  29. 橋本敦

    橋本敦君 中曽根総理取引高税のようなことはやらぬと、こう言明された事実があったのは御記憶がございましょうかと、こういうことです。
  30. 水野勝

    政府委員水野勝君) 衆議院段階におきましてもろもろの御答弁あるいは御見解が述べられているということは承知いたしてございます。
  31. 橋本敦

    橋本敦君 ちょっと委員長、きちんと答弁させてくれませんか。そんなことは聞いていない。ちょっと理事、お願いします。
  32. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 速記をとめて。    〔速記中止
  33. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 速記を始めて。
  34. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今調べてみますと、昭和六十年の二月二十日に衆議院予算委員会において、御質問に対して、多段階、包括的、網羅的、普遍的云々ということとの関連で、「昭和五十四年十二月の国会決議により財政再建の手法としてとらないこととされたいわゆる一般消費税(仮称)、及び戦後一時期我が国で実施された旧取引高税といったものを念頭に置いて申し上げたものであります。」ということを中曽根総理大臣が言っておられます。
  35. 橋本敦

    橋本敦君 多段階、包括的な投網にかけたようなこととして、その一つとして取引高税のようなことはやらないということを念頭に置いて述べておる。はっきりしているんです。  先進諸国EC諸国等取引高税をやっている国はどこかありますか、ありませんか。
  36. 水野勝

    政府委員水野勝君) かつてドイツにおきましては四%までの取引高税が行われておりました。これが西ドイツの場合には四十三年に付加価値税タイプに移行しておりますが、東ドイツの場合はそのまま取引高税的なものが実施されているようでございます。
  37. 橋本敦

    橋本敦君 EC諸国でと聞いているんですよ。ないんですよ、どこも。  一般消費税について聞きますが、この一般消費税もまた、先ほど中曽根総理答弁にもありましたが、国民の批判によってやれなかったものであることは明らかである。だから、三つタイプを出してきたけれども、この三つとも国民の審判によって全部だめだということがはっきりしているやつですね。だから、言ってみれば亡霊の復活のようなことをやってくるわけだ。こんなことは民主政治の大道として私は許されることじゃないと思う。とりわけこの一般消費税というのは国会決議にも反することは明白だと私は思いますが、大臣の責任ある御答弁を聞きたい。
  38. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その点につきましては竹下総理大臣が何度かお答えをしていらっしゃいますが、そのような昭和五十四年の十二月の国会決議がありまして、その後政府としては、この決議趣旨は民間が減量経営をしておられるのに政府はそういう努力を少しもしていないという御指摘というふうに考えまして、いわゆるマイナスシーリング、ゼロシーリング等々の財政改革をずっと続けてやってまいりました。  それからほぼ十年近い日時がたっておるわけでございますが、あの国会決議の中で言っておられますように、いわば、政府減量経営をやってそうして歳出を削減せよ、それから税制公平感を実現するように、また既存の税制の基本的な見直しをするようにということを述べておられまして、政府としてこの十年近くやってまいりましたことはこの国会決議に沿うものであった、その結果としてこのたびどういう間接税あるいは税制改正をお願いするかということをただいま検討しておる、そういう段階考えております。
  39. 橋本敦

    橋本敦君 これは大臣のせっかくの答弁ですけれども、そうは考えられませんね。  そもそも国会決議違反ではないかという問題になったときに渡辺政調会長はどう言ったかといいますと、一遍やった国会決議を変えない方がおかしいんだということで、事実上抵触することを認めた上で変えるべきだという意見を言った。山中税調会長は、税制抜本改革という問題はこの決議対象外だと、こう言った、対象外だ。そして竹下総理は、今大臣答弁されたように、税制抜本改革はこの決議趣旨に沿う。転々としているんですよ。  国会決議を、政府はあるいは自民党の責任ある人たちはそれぞれ好きなように解釈するなんてもってのほかですよ。国会決議というのは国会が責任を持って決議している、政府の解釈によって決まるものじゃない。大臣、どうお考えですか。
  40. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはそのとおりだと思います。国会決議をどのように解釈されるかは、有権的にはこれは国会のなさることであります。
  41. 橋本敦

    橋本敦君 その決議一般消費税はその仕組み、構造等につき十分国民の理解を得られなかったとはっきり断定をしている。それがゆえに、財政再建が幾ら緊急の課題ではあっても、一般消費税ということはやらないということをはっきり決めている。だから、これがまさに国会決議違反だということについて、総理大臣がどうおっしゃっても、国会意思はこれは国会として明白にしていくつもりです。
  42. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 関連質疑を許します。神谷信之助君。
  43. 神谷信之助

    神谷信之助君 そこで大蔵大臣に伺いますが、一般消費税を導入しますと必ず物価にはね返って物価が上昇するという状況になるというように思いますが、これはもうそのとおりお認めになりますか。
  44. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) どういう形をとるかにもよりますが、いずれにしても消費者負担に転嫁せらるべきものでございますから、その限りにおきまして、一遍限り物の考え方としては物価水準に影響を与える、こう考えるべきものと思います。
  45. 神谷信之助

    神谷信之助君 昭和五十三年、当時一般消費税問題が問題になっていた時期ですが、大蔵大臣官房審議官をやっておられた伊豫田敏雄さん、国税庁次長までやられた人ですが、この人が「経済人」という雑誌の昭和五十三年十月号で次のように言っておられるんですね。  五%の一般消費税を新たに課するとすると、物価は五%上がります。これは、物価が上がったというのではなく、増税反映そのものであり、言いかえれば増税そのものです。確かに皆さんの可処分所得は実質的には五%少なくなります。しかしそれが増税なんですから、それは仕方がない。 こういうようにおっしゃっているんですが、これは今日でも、一般消費税を導入するということになると五%、そのまま五%というのはちょっと短絡的ですけれども、今おっしゃった物価に影響するという点からいえばそういうことがあるということ、それは増税の反映なんだというように理解してよろしいですか。
  46. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのような一般消費税と同時にどのような税制改正が行われるか、どういうことの一環であるかにもかかると思います。すなわち所得税、住民税等々、あるいは法人税等減税が行われる、それと同時にそういうものが行われる場合もありますでしょうし、そうでない場合もございますから、そういう状況によると思いますが、仮にその部分だけを切り離しまして、あとのことを全部忘れましてその部分だけを切り外しましたら、それは消費者に対してそれだけの負担の増になるということは明らかだと思います。
  47. 神谷信之助

    神谷信之助君 問題はそこからです。  今それ以外のものを捨象して一般消費税の導入だけを切り離して考えればそうなるとおっしゃいました。それに続いて伊豫田さんはこう言っているんですね。   そうだからといって、皆さんの給料を五%上げてくれという要求が出てくると、ぐるぐる回りして、経済全体として見ると増税の効果がなくなってしまうということです。 こういうようにおっしゃっている。だから、増税の効果をちゃんと確保しようとすると賃金も引き上げたらいかぬ、そのほかのいろんな、今おっしゃった他の面の減税で相殺するとか、そんなことをしたのでは増税の効果というのは上がらない、こういう趣旨を強調されているわけです。  そうしますと、片一方、竹下総理は六つの懸念を述べておられます。その中で、所得の低い人に過重な負担を強いるのではないかという懸念の解決については、政策の中でそれらの問題が解消される方途がある、生活保護基準は毎年変わり、歳出面で手当てをする部分があるとか、社会福祉予算の手当てとか、所得税減税での対処などをお示しになっているんですが、これは結局伊豫田さんのそういった単純な見解を否定しているものだというように思いますが、それは間違いありませんか。
  48. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどはその部分だけを切り離してお答えを申し上げたわけでありますが、竹下総理の言われましたことは、現実の政治においてはそういうことではありませんで、ほかに例えば所得税減税が行われるとか住民税の減税が行われるとか、あるいはこの税によりまして得られた歳入が歳出面では生活保護の基準の引き上げになったり、あるいは社会保障のもろもろの施策になったりいたしてまいりますから、全体の効果として御判断を願いたいというのが竹下総理の言われたことでございます。
  49. 神谷信之助

    神谷信之助君 しかし、生活保護基準はこれもやっぱりぐるぐる変わったり、あるいは歳出の面の手当ても毎年の予算査定のときぐるぐる変わっていくわけです。現にこの数年間はそういう社会保障関係の予算というのはどんどん減らされてきているでしょう。あるいは地方負担になる。あるいは国保の料金、保険税でも毎年のように値上げになる。そういう状況が現にやられてきているわけです。  そうすると、税金を一遍決めて、そして負担がかかってくるやつは後で手直しをします、政策的に手直しをしますとおっしゃったって、現実にはそれは信用できない、いつでも変えられる、こういう状態になるということを私は特に強調しておきたいと思います。  終わります。
  50. 橋本敦

    橋本敦君 大臣、今度の素案は、大臣政府がおっしゃってきたいわゆる直間比率の見直しという方向は大いに進んでいく方向になっているというように判断されておられますか。
  51. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、先ほどから政府委員が申し上げておりますとおり、例えば所得税につきましても人的控除等々が述べられておりませんから歳入をはじくことは困難でございますし、間接税につきましても、税率はもちろんでございますが、構造そのものも極めて抽象的でございますので、歳入をこれから計算することは本質的に不可能でございます。したがいまして、これがどのような直間比率になっていくかということは、これからこれに肉づけをしてまいりませんと、この素案ですら実は出てこないということではないかと思います。
  52. 橋本敦

    橋本敦君 大蔵省に伺いますが、新聞等ではこの素案の直接税部分の減税は約四兆円というように試算しておりますが、大蔵省はどう見ていますか。
  53. 水野勝

    政府委員水野勝君) ただいま大臣からも申し述べましたように、幾つかの点と申しますか、かなりな点でまだいろいろの選択肢が残されておりましたり中身が確定していなかったりするところでございますので、具体的な金額につきましては私どもとしても申し上げてはおりません。
  54. 橋本敦

    橋本敦君 新聞が約四兆円と言っていることは間違いですか。
  55. 水野勝

    政府委員水野勝君) 新聞もそれぞれのお考えによりまして試算をしたりしていることと思いますので、それが間違いであるか正しいかということにつきまして、私どもも、その新聞の御判断ということでございますのでちょっと申し上げかねるところでございます。
  56. 橋本敦

    橋本敦君 間違いとは言い切れませんよ。  だから、直接税部分で四兆円を減税する、そして今度は間接税部分では四兆円以上の増税をやらなければ、まさに政府が言っているところの増税効果なんて出てこないんです。だから、三つタイプのどれをとろうとも、少なくとも四兆円以上五兆前後の大型間接税により大増税になる方向が示唆されている素案だ、こう言って差し支えないと思うんですよ。  こういったものは、まさに今日国民が反対している大型間接税をやっていくという大きなステップにしようとしている、そういうわけですから、私はこんなものは断じて許されないということを明らかにして、次の質問に移っていきたいと思います。  私は次の質問としていわゆる大韓航空機事件に関連をいたしまして質問いたしますが、この事件に関して我が国の偽造旅券が使われたという事実、これは極めて重大であります。この点について捜査権は日本にあることは明白だと思いますが、その点について、外務大臣、法務大臣、どうお考えでしょうか。
  57. 藤田公郎

    政府委員藤田公郎君) 偽造旅券の問題につきましては、外務省といたしましてもこれまで旅券の専門家を韓国に派遣する等の調査を進めてきております。ただ、この問題は具体的な事件の証拠の収集に関する問題でもございますので、捜査当局とも緊密に協力をしながら、今後この偽造旅券の問題につきましてはどういうふうに扱うか、あらゆる事情を総合的に勘案しながら適切に対処してまいりたいと思います。
  58. 橋本敦

    橋本敦君 法務大臣、捜査権が日本にあることは間違いないかと私聞いているんですが。
  59. 岡村泰孝

    政府委員(岡村泰孝君) 偽造旅券の行使につきましては、偽造公文書行使罪の成立が考えられるところでございます。この罪につきましては、刑法上、何人がどこで犯してもその国外犯については処罰できるという規定が設けられております。そういう意味において我が国の捜査が行うことができるわけでございます。  ただ、現実の問題といたしまして、外国で捜査を行います場合にはやはり外国の主権の問題があるわけでございまして、そういう意味での制約はあると思います。具体的にはやはり捜査共助という方法によることになろうかと思います。
  60. 橋本敦

    橋本敦君 捜査協力の関係で、警察庁は韓国へ派遣をして捜査をされたという事実があるわけで、それに関連して聞きますが、この蜂谷真一、蜂谷真由美名義の偽造旅券、この旅券は偽造された場所はどこだとお考えですか。
  61. 城内康光

    政府委員(城内康光君) お答えいたします。  本件の偽造旅券は蜂谷真一という実在の人の名前を使っておるわけでございます。その関係について調べましたところ、その偽造旅券の作成に、北朝鮮の秘密工作員であることが明らかな宮本明こと李京雨が関係していたということがわかっております。それからまた、金賢姫からのいろいろな事情聴取で、一九八四年、金賢姫が招待所におりましたときに、その年の七月に旅券用の写真を撮影し、それからまた八月にそれに署名をしたというようなことがわかっております。そういったいろいろな諸点を総合いたしまして、北朝鮮において偽造されたというふうに私ども考えております。
  62. 橋本敦

    橋本敦君 この旅券の行使の関係で聞きますが、これについて、金賢姫らはこの偽造旅券をどこで受け取ったと言っておるんですか。
  63. 城内康光

    政府委員(城内康光君) お答えいたします。  ブダペストからウィーンに向かう車の中で渡されたというふうに承知しております。
  64. 橋本敦

    橋本敦君 じゃ、ブダペストまではどこの国の国籍の旅券で行っておるんですか。
  65. 藤田公郎

    政府委員藤田公郎君) これは北朝鮮の旅券でございまして、ハンガリー当局もそういう入国があったということを発表いたしております。
  66. 橋本敦

    橋本敦君 ウィーンへ向かう車中でこの偽造旅券を金賢姫に渡したのはだれですか。
  67. 城内康光

    政府委員(城内康光君) お答えいたします。  金賢姫から聞いたところによりますと、ブダペストに駐在しております北朝鮮の外交官であるということでございます。
  68. 橋本敦

    橋本敦君 その名前の情報も入っているはずですが。
  69. 城内康光

    政府委員(城内康光君) お答えいたします。  当該人物の名前でございますが、米国の発表によりますと、在ブダペスト駐在の北朝鮮外交官ハン・ソンサムというふうに言うということを承知しております。
  70. 橋本敦

    橋本敦君 その偽造旅券を使ってユーゴのベオグラードにも行っておるということをユーゴ当局の発表でも確認されているように思いますが、どうですか。
  71. 城内康光

    政府委員(城内康光君) お答えいたします。  ユーゴに入ったという事実は私ども承知しております。
  72. 橋本敦

    橋本敦君 ですから、したがって捜査当局の判断を聞きますが、この偽造旅券を金賢姫らが行使した事実は、そこからバーレーンに行くわけですが、その経路については客観的事実として十分裏づけられるというように思いますが、どうですか。
  73. 城内康光

    政府委員(城内康光君) お答えいたします。  偽造旅券の行使につきましては、バーレーンにおけるものはおおむね捜査的には確定しております。現在外交ルートを通じてバーレーン当局に調書作成を要請するなどの証拠化の措置をとりつつある、こういうことでございます。
  74. 橋本敦

    橋本敦君 そうすると、警備局長に伺いますが、先ほど法務省刑事局長がおっしゃったように、この偽造旅券の行使、つまり偽造公文書の行使という罪は成立するということについては確信がありますね。
  75. 城内康光

    政府委員(城内康光君) お答えします。  先ほど法務省の刑事局長から答弁がありましたように、この事件につきましては偽造有印公文書行使被疑事件として現在捜査中であるということであります。
  76. 橋本敦

    橋本敦君 いや、捜査中であることはわかっておるからずっと聞いておる。  その被疑事件としては十分客観的に犯罪成立に至る証拠の収集は可能だという展望はあるでしょうと、こう聞いている。
  77. 城内康光

    政府委員(城内康光君) お答えします。  繰り返すようで恐縮でございますが、先ほど申し上げましたように、それを現在証拠化しつつあるという過程でございます。
  78. 橋本敦

    橋本敦君 まあそれはいいでしょう。  そこで自治大臣の御判断を伺いますが、日本の法を犯し、偽造旅券を行使した金賢姫という人物は北朝鮮の工作員であったというこの判断は、国家公安委員長としてもいろんな証拠からなさっているのではないかと思いますが、御判断はどうですか。
  79. 城内康光

    政府委員(城内康光君) 技術的な事柄でございますので、私からお答えいたします。  金賢姫の供述は、いろんな点で信憑性があるというふうに私ども考えております。金賢姫は、全く自己にとって不利益な供述をしておりまして、それは大変自然であり、また具体的な内容になっております。そういったことは、一月十五日のテレビなどの公開記者会見のインタビューなどでも明らかでございますし、また私どもの捜査員、警察庁の係官が韓国に赴きまして二回にわたって事情聴取をしたということからも、大変心証を得ておるわけでございます。それからまた、金賢姫の供述につきましてはいろんな点で裏づけがとれておるわけでございます。  そういったような点を総合的に考えて、私どもは北の関与があるというようなことを考えているわけでございます。
  80. 橋本敦

    橋本敦君 ところで、この金賢姫を教育したウネあるいはウンへなる人物の問題ですが、この人物については鋭意調査を遂げられておるようですが、経過はどうですか。
  81. 城内康光

    政府委員(城内康光君) お答えします。  この恩恵の所在捜査の進捗状況でございますけれども、李恩恵なる人物を割り出すために、身元に関する情報及び似顔絵をもとにしまして、家出人の手配データなどを利用して、現在幅広く類似の行方不明者について調べておるところでございます。また、ポスター、チラシなどを全国に配布して、広範な広報活動をやっておるわけでございます。  特に、本件につきましては捜査というよりはむしろ人捜しという分野でございますので、情報などを国民にできるだけ多く提供して御協力を得たいということでございまして、現在進行形であるということでございます。
  82. 橋本敦

    橋本敦君 これは、警察としてはこの恩恵なる人物は日本女性で、日本から拉致された疑いが強いと見ているんじゃありませんか。
  83. 城内康光

    政府委員(城内康光君) お答えします。  そのように考えております。
  84. 橋本敦

    橋本敦君 それが事実はっきりいたしますと、これはまさに外国からの重大な人権侵犯事件であり、我が国の主権をも侵害する重大な事犯の可能性を含んでいる重大な事件である。ですから、これがはっきりしますと、当然本人の意思を確認して、主権侵害の疑いがあれば原状回復を要求するなど、政府としての断固たる措置をとる必要がある。  外務大臣、今までの捜査の経過、答弁をお聞きになってどう御判断でしょうか。
  85. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 警察当局からの答弁どおり、ただいま鋭意捜査中でございますから仮定の問題なのかもしれません。しかし仮に、真相究明の結果主権が侵害されたということが確認された場合には、当然日本は主権国家でございますから、それに対する措置を講じなければならない、かように考えています。
  86. 橋本敦

    橋本敦君 国家公安委員長として、この恩恵の拉致事件についてどう御判断ですか。
  87. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 問題の女性の身元割り出しは困難な面があることは否めないことでありますけれども、日本から拉致をされた疑いの持たれることから、事態の重大性にかんがみ、今後とも国民の協力を得つつ力を尽くす所存でございます。
  88. 橋本敦

    橋本敦君 拉致事件について言いますならば、単に問題はこれだけではなくて、昭和五十三年七月と八月、わずか二カ月間に四件にわたって若い男女のカップルが突然姿を消すという事件が立て続けに起こっているのであります。これは極めて重大な事件でありますが、福井、新潟、鹿児島そして富山、こうなりますが、一件は未遂であります。  警察庁、簡単で結構ですが、この三件の事件の概要について述べてください。
  89. 城内康光

    政府委員(城内康光君) お答えいたします。  まず、五十三年の七月七日に福井県の小浜市で起きました男女の行方不明事件についてでございますが、当該男性は七月七日に同伴者とデートに行くと言って軽貨物自動車で家を出たまま帰宅しなかった。自動車はキーをつけたままの状態で発見されております。当該女性はデートに行くと言ったまま帰宅しなかったけれども、この同伴者と結婚することになり大変喜んでいた状況がございまして、自殺することは考えられません。  それからまた、同年七月三十一日に新潟県の柏崎市で起きた事件でございますけれども、やはり当該男性が家の者に、ちょっと出かけてくる、自転車を貸してくれと言って自転車で出かけたまま帰宅しなかった。自転車は柏崎の図書館前に置いてあったのが発見されたわけであります。当該女性は、勤務先の化粧品店で仕事が終わった後、同伴者とデートすると店の従業員に話しておりまして、これも家出などの動機はございません。  それから三つ目に、同年八月十二日に鹿児島県で起きた事件でございますが、当該男性は同伴者を誘って浜に、海岸に夕日を見に行くと言って出たきり帰宅しなかったということでございます。十四日の日に、その浜のキャンプ場付近でドアロックされたまま車両が発見されております。女性も家の者に、同伴者と浜へ、海岸に夕日を見に行くと言って出たままであるということで、これも動機はございません。  それから、富山県で起きました未遂事件のことでございますけれども、この事件につきましては、八月十五日の午後六時三十分ごろ、海岸端を歩いていた被害者である男女が自分たちの乗車してきた自家用車の駐車場に帰るために防風林の中を歩いていたということで、そうしたら前方を歩いていた四人組がいきなり襲いかかって、防風林内に引きずり込んでゴム製猿ぐつわあるいは手錠、タオル等を使用して縛り上げて、それぞれ寝袋様のものに入れたと。そして現場から数十メートル離れた松林内に運んで放置したということで、原因はわかりませんがその四人組はいなくなりまして、その後その男女は別々に自力で脱出いたしまして一一〇番した、こういう事件が発生しております。
  90. 橋本敦

    橋本敦君 未遂事件を除いて忽然と姿を消した三組の男女について、今も動機はないとおっしゃいましたが、いずれも結婚の約束をして挙式を目前にしている。そういうわけで家族も、家出などは絶対考えられない、こう言っておりますし、さらにまた残されたカメラを現像してみますと、仲よくそれぞれ写真を撮ってそのまま残しているということで、こういう笑顔を残して蒸発してしまうということも、これも異様である。こういうことから、当然これは誘拐された、こう見るのが当然だと思いますが、どうですか。
  91. 城内康光

    政府委員(城内康光君) おおむねそういうことではないかというふうに考えております。
  92. 橋本敦

    橋本敦君 したがって、水難で海で死んだとか、自殺をしたとかいったような状況も一切ないわけですね。  そこで問題は、この三件について幾つかの点で重要な共通点がある。いずれも日本海側の浜辺、これが犯行現場と目される。それから若い男女がねらわれている。それからもう一つの点として言うならば、全く動機が何にもないということと、その後営利誘拐と見られるあるいはその他犯罪と国内で見られるような国内的状況が一切ない、こういう状況がはっきりしている。いかがですか。
  93. 城内康光

    政府委員(城内康光君) 諸般の状況から考えますと、拉致された疑いがあるのではないかというふうに考えております。
  94. 橋本敦

    橋本敦君 未遂事件で遺留した物品があったようですが、これについての検討で犯人像は何か出てきませんか。
  95. 城内康光

    政府委員(城内康光君) お答えします。  遺留品について見ますと、ゴム製猿ぐつわ、手錠、タオル、寝袋などがあるわけでございますが、その使われましたタオルのうちの一本が大阪府下で製造された品物であるということがわかっておりますが、他のものにつきましてはいずれも粗悪品でありまして、製造場所とか販売ルートなどは不明でございます。
  96. 橋本敦

    橋本敦君 袋とか手錠とか、はめた猿ぐつわとか、日本で販売している、日本で製造されている、そういった状況は一切なかったわけですか。
  97. 城内康光

    政府委員(城内康光君) お答えします。  そういった点につきましては、もちろん手を尽くしていろいろ調べたわけでございますが、結果として、先ほど申し上げたように、製造元とかあるいは販売ルートなどがわからなかったということでございます。
  98. 橋本敦

    橋本敦君 ところで話は変わりますが、大阪でコックをしていた原さんという人が突然誘拐されたらしくて所在不明になった。ところが、この原氏と名のる、成り済ました人物が逮捕されてこのことがはっきりしてきたという事件があるようですが、警察庁、説明してください。
  99. 城内康光

    政府委員(城内康光君) お答えします。  ただいま御質問にありました事件は、いわゆる辛光洙事件というものでございます。これは韓国におきまして一九八五年に摘発した事件でございます。その事件の捜査を韓国側でやったわけでございますが、私どもはICPOルートを通じてそういったことを掌握しておるわけでございまして、それによりますと、一九八〇年に、大阪の当時四十三歳、独身の中華料理店のコックさんが宮崎の青島海岸付近から船に乗せられて拉致されたというような状況がわかっております。
  100. 橋本敦

    橋本敦君 辛光洙とはどういう人物ですか。
  101. 城内康光

    政府委員(城内康光君) お答えいたします。  本件につきましては、私どもの方で捜査をしたわけではございませんので十分知り得ませんが、私どもとしては恐らく不法に侵入した北朝鮮の工作員であろうというふうに考えております。
  102. 橋本敦

    橋本敦君 共犯があると思いますが、共犯者はどういう名前ですか。
  103. 城内康光

    政府委員(城内康光君) お答えいたします。  共犯者としては、名前が出ておりますのは、同じく北朝鮮工作員の金吉旭という名前が出ております。
  104. 橋本敦

    橋本敦君 その金吉旭は、日本女性の拉致という問題について何らか供述しているという情報に接しておりませんか。
  105. 城内康光

    政府委員(城内康光君) お答えいたします。  この北朝鮮工作員金吉旭が一九七八年に次のような指示を上部から受けておるということを承知しております。すなわち、四十五歳から五十歳の独身日本人男性と二十歳代の未婚の日本人女性を北朝鮮へ連れてくるようにという指示を受けていたということでございます。
  106. 橋本敦

    橋本敦君 それらが事実とするならば、恐るべき許しがたい国際的謀略であると言わなければなりません。  外務省に伺いますが、同じ昭和五十三年、私が問題にしている一連の事件と同じ年ですが、レバノンでも女性の誘拐事件があったというそういう情報を御存じですか。
  107. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) 昭和五十三年の十月三十日から十一月九日までの間に、数回にわたりまして「アンナハール」、それから「ロリアン」というレバノンの日刊紙が誘拐事件について報道している、その報道内容は承知しております。
  108. 橋本敦

    橋本敦君 説明してください。
  109. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) 内容は、昭和五十三年の春にレバノン人女性五名、これは四名と言っている新聞もございます、が、東京または香港のいずれかのホテルで働くためと言われ、レバノン人に連れられて出国し、最終的には平壌に連れていかれ、訓練キャンプにおいて柔道、空手、諜報技術等を学ばされたが、昭和五十四年秋までにすべての女性がレバノンに帰国した、こういう事実が報道されております。
  110. 橋本敦

    橋本敦君 その事実が発覚をして、レバノンのブトロス外務大臣が北朝鮮に厳重に抗議をして、ようやくみんなレバノンに帰ることができたというのが事実じゃありませんか。
  111. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) 私ども承知しておりますのは新聞の報道でございまして、新聞の報道によりますと、レバノン外務省儀典長が当時の北朝鮮通商代表部、レバノンにある通商代表部に申し入れたということだそうでございます。
  112. 橋本敦

    橋本敦君 だから、基本的に私が言っている事実に合っているわけです。  もう一つ、外務省、こういう事実を知っていますか。つまり、昭和五十三年六月のことですが、韓国の映画監督の申相玉氏とその夫人の崔銀姫、この二人、これの拉致事件が起こっていた。この二人はその後脱出をして今アメリカに在住しているようですが、御存じですか。
  113. 藤田公郎

    政府委員藤田公郎君) 私ども承知いたしておりますのは、女優の崔銀姫さんが五十三年の一月、映画監督の申相玉さんが同じ年の七月にそれぞれ香港で北朝鮮に拉致をされ、特に監督の方は後を追って行かれたわけですが、投獄をされたりしてしばらく北鮮におられた後映画作製に従事をされ、すきを見て昭和六十一年三月、オーストリアにおきまして米国大使館に逃げ込まれた、日本のジャーナリストの協力を得て逃げ込まれたそうですが、ということが三月に報道が行われまして、五月にお二人が米国において記者会見をされて詳細な事実関係の発表をしておられます。  ちなみに、明らかになります前に、五十九年には韓国の国家安全企画部が既にこのお二人が北朝鮮に拉致されたという発表を行いまして、これがうそだという応酬などが双方であったわけですが、結果的にお二人が出てこられた。それで、真相と申しますか、韓国側の発表どおりのことをお二人が詳細に説明をされたということでございます。
  114. 橋本敦

    橋本敦君 外務省にもう一点聞きますが、その申相玉氏あるいは崔銀姫氏ですが、北朝鮮に連行されたときに、いわゆる東北里招待所、これは訓練所とも金賢姫は言っておりますが、その訓練所で日本人を目撃したということを言っているという情報があるようですが、事実はどうですか。
  115. 藤田公郎

    政府委員藤田公郎君) 私もこの金賢姫事件の起こりました後報道で拝読した覚えがありますが、現物は今持っておりません。
  116. 橋本敦

    橋本敦君 捜査当局に伺いますが、この発言は恩恵の捜査とも関連し、私が指摘した三組のアベックの拉致事件とも関連をして、東北里で日本人を目撃したというこういう証言というのは、捜査上は非常に大事な関心を持たなくちゃならぬ、あるいは捜査の重大な端緒にもなり得る、こういう発言、情報だとこう思いますが、どうお考えですか。
  117. 城内康光

    政府委員(城内康光君) お答えいたします。  東北里でその李恩恵なる人物が日本人を見たというのではなくて、その東北里で李恩恵とそれから金賢姫が一緒だったときに、金賢姫が李恩恵から自分、つまり李恩恵が金正日の誕生パーティーに出たときに日本人の自分と同じような境遇の、つまり拉致されてきた日本人の男女を見たということを言ったということを伝え聞きしておるわけでございます。
  118. 橋本敦

    橋本敦君 いずれにしても、その訓練所から脱出をしてきて現にアメリカにいるというこの二人については、十分な情報を収集するという意味で関心を持って調査をしてもよいと私は思って聞いておるんですが、どうですか。
  119. 城内康光

    政府委員(城内康光君) お答えいたします。  今の監督とそれからその女優さんのことにつきましては、我が国の法令違反ではございませんので捜査対象というふうなことではありませんが、十分関心を持っているところでございます。
  120. 橋本敦

    橋本敦君 外務大臣、自治大臣にお聞きいただきたいんですが、この三組の男女の人たちが行方不明になってから、家族の心痛というのはこれはもうはかりがたいものがあるんですね。  実際に調べてみましたけれども、六人のうちの二人のお母さんを調べてみましたが、心痛の余り気がおかしくなるような状態に陥っておられましてね、それで、その子供の名前が出ると突然やっぱりおえつ、それから精神的に不安定状況に陥るというのがいまだに続いている。それからある人は、夜中にことりと音がすると、帰ってきたんじゃないかということで、その戸口のところへ行かなければもう寝つかれないという思いがする。それからあるお父さんは、突然いなくなった息子の下宿代や学費を、いつかは帰ると思って払い続けてきたという話もありますね。  それから、御存じのように新潟柏崎というのは長い日本海海岸ですが、万が一水にはまって死んで浮かんでいないだろうかという思いで親が長い海岸線を、列車で二時間もかかる距離ですが、ひたすら海岸を捜索して歩いた。あるいはまた、一市民が情報を知りたいというのは大変なことですけれども、あらゆる新聞、週刊誌を集めまして何遍も何遍も読んで、もう真っ黒になるほどそれを読み直している家族がある。こう見てみますと、本当に心痛というのはもう大変なものですね。上海でああいう悲惨な事件も起こりましたけれども、家族や両親にとっては耐えられない思いです。  こういうことで、この問題については、国民の生命あるいは安全を守らなきゃならぬ政府としては、あらゆる情報にも注意力を払い手だてを尽くして、全力を挙げてこの三組の若い男女の行方を、あるいは恩恵を含めて徹底的に調べて、捜査、調査を遂げなきゃならぬという責任があるんだというように私は思うんですね。そういう点について、捜査を預かっていらっしゃる国家公安委員長として、こういう家族の今の苦しみや思いをお聞きになりながらどんなふうにお考えでしょうか。
  121. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 昭和五十三年以来の一連のアベック行方不明事犯、恐らくは北朝鮮による拉致の疑いが十分濃厚でございます。解明が大変困難ではございますけれども、事態の重大性にかんがみ、今後とも真相究明のために全力を尽くしていかなければならないと考えておりますし、本人はもちろんでございますが、御家族の皆さん方に深い御同情を申し上げる次第であります。
  122. 橋本敦

    橋本敦君 外務大臣、いかがでしょうか。
  123. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) ただいま国家公安委員長が申されたような気持ち、全く同じでございます。もし、この近代国家、我々の主権が侵されておったという問題は先ほど申し上げましたけれども、このような今平和な世界において全くもって許しがたい人道上の問題がかりそめにも行われておるということに対しましては、むしろ強い憤りを覚えております。
  124. 橋本敦

    橋本敦君 警備局長にお伺いしますが、これが誘拐事件だとして、時効の点を私は心配するわけであります。しかし、今国家公安委員長もお話しのように、あるいは外務大臣お話しのように、これが北朝鮮の工作グループによる犯行だというそういう疑いがある。これが疑いじゃなくて事実がはっきりするならば、これは犯人は外国にいるという状況がはっきりしますから、その意味では時効にはかからない、そういうことは法律的に言えるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  125. 城内康光

    政府委員(城内康光君) お答えいたします。  まず、一連の事件につきましては北朝鮮による拉致の疑いが持たれるところでありまして、既にそういった観点から捜査を行っておるわけであります。  一般論としてお答えいたしますと、被疑者が国外に逃亡している場合には時効は停止しているということが法律の規定でございます。
  126. 橋本敦

    橋本敦君 そこで外務大臣、この問題が北朝鮮工作グループの犯行だという疑いがぬぐい切れないわけですけれども、そうだといたしますと、大臣先ほどからおっしゃったように、誘拐された国民に対する重大な人権侵犯、犯罪行為であると同時に、我が国の主権に対する明白な侵害の疑いが出てまいるわけですね。だからそういう意味では、そういう立場で大臣がおっしゃったように主権国家として断固たる処置を将来とらなくてはならぬ、これは当然だと思いますが、その点については私はもう既に国民世論だと思うんです。  例えば二月九日の読売新聞は、「日本の浜を無法の場にするな」、こういう表題で、  とまれ、「李恩恵」という人物についての真相解明を急ぐべきであり、北朝鮮側によるら致が事実とあれば、わが国は北朝鮮に対し、原状の回復を求め、同時に、その責任の所在を明確にするための適切な措置をとることが必要である。   わが国からわが国民をら致するような国に対しては、それがどの国であれ、動機が何であれ、毅然として対応すべきである。わが国がそのような非人道的無法行為の現場にされるいわれはまったくない。 こう言っておりますし、また同じ日の朝日新聞は、   事実とすれば、日本の主権にかかわるきわめて重大な事件である。他の国の機関が、日本国内から力ずくで日本人を連れ去るといった理不尽なことが、許されるはずはない。   日本の警察が北朝鮮にら致されたのではないかとみている三組の男女についても、疑惑は大きく膨らんでいる。 こういうように言っておるわけですね。  私は、政府として、こういう重大な主権侵害事件として、これから事実が明らかになるにつれて毅然たる態度で原状回復を含めて処置をしていただきたいということをもう一度重ねて要求するのでありますが、いかがですか。
  127. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 先ほども御答弁申し上げましたが、繰り返して申し上げますと、ただいま捜査当局が鋭意捜査中である、したがいまして、あるいは仮定の問題であるかもしれぬ、しかしながら、仮にもしもそうしたことが明らかになれば主権国家として当然とるべき措置はとらねばならぬ、これが私の答えであります。
  128. 橋本敦

    橋本敦君 私はきょう、三組の男女、それから未遂事件について被害に遭った人の名前はここでは言いませんでした。警察の方も名前はおっしゃいませんでしたが、しかし捜査はほとんど公開捜査でなされておりますから名前等も明らかですね。また、公開で全国民に協力を呼びかけておられる家族もあるわけです。そうして、家族が一番心配しているのは、いつかこの問題が大きな問題になってくる中で、連れていった先で殺される心配があるのではないかということが本当に悲痛な心配であるんですね。そういうことも含めて私はきょうは名前なしに言いましたが、客観的には氏名等ははっきりしております。  私はこの問題は、日本国内において断固としてこういった不法な人権侵害や主権侵害は許さない、この男女を救わねばならぬという国民世論がしっかり高まることと、国際的にも相手がどこの国であれこんな蛮行は許さぬ、そして誘拐された人たちは救出せねばならぬ、それが人道上も国際法上も主権国家として当然だという世論が大きく沸き起こりまして、こういう世論の中でこそ、命の安全を確保しながら捜査の資料を次々と引き出し、捜査の目的を遂げ、そして法律的にも事実上もきちんと原状回復を含めた始末をする、こういう方向が強まると思うんですね。隠してはいけない。恐れてはいけない。我が党も、相手がどこの国であれテロや暴力は一切許さないという立場で大韓航空機事件でも対処しているわけですが、そういう立場で、これらの人たちが救出されること、日本政府が毅然とした対処をとることを重ねて要求したいのでありますが、そういう問題について法務大臣の御意見を伺っておきたいと思います。
  129. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) ただいま外務大臣国家公安委員長から答弁がありましたように、我が国の主権を侵害するまことに重大な事件でございます。現在警察におきまして鋭意調査中でございまするので、法務省といたしましては重大な関心を持ってこれを見守っており、これが判明するということになりましたならばそこで処置をいたしたいと存じております。
  130. 橋本敦

    橋本敦君 官房長官、突然で恐縮でございますが、上海における修学旅行生の大変な惨事につきまして政府も心を痛めておると思うのですが、中国政府から竹下総理あてに何らかの伝言があったのかどうか、そしてそれに対する日本政府の対応について、政府を代表して官房長官として御説明をいただきたいと思うんですが、いかがですか。
  131. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 私からも改めて、今回の事故に際しまして、事故に遭われた生徒の皆さんに深く哀悼の意を表しますと同時に、御家族の皆さん、かたがた関係者の方々に深いお見舞いを申し上げる次第でございます。  今お尋ねのありました件につきましては、二十五日の夕刻、北京の我が方大使館及び在京の中国大使館を通じまして、李鵬総理代行から竹下総理への見舞い電を受領いたしました。右見舞い電では、李鵬総理代行から死傷者の家族に対する心からのお見舞いの意と、全力を挙げての救助活動と事故処理について李鵬総理代行の強い意思が示されております。  今回の事故でこのような多くの死傷者の出ましたことはまことに残念なことでございまして、政府といたしましても、昨日閣議が終了いたしました直後竹下総理からじきじき私にお話がございまして、外務大臣、文部大臣、運輸大臣初めそれぞれ閣僚に対して、全力を挙げて政府としてなすべきことについて御指示がございました。早速浜田外務政務次官を御家族とともに現地に同行せしめまして関係者の便宜を図るとともに、中国側の協力を要請せしめておるところでございます。  いずれにいたしましても、中国政府及び関係機関は困難な状況のもとで救出活動に全力を挙げて取り組まれたと理解をいたしております。今回の見舞い電は中国政府の本件事故処理に対する真剣な意図のあらわれと認識をいたしており、政府といたしましては引き続き中国側として対応していただくことに対しましてなお一層の協力をお願いいたしておるところでございます。  以上です。
  132. 橋本敦

    橋本敦君 二つの問題を私は聞きたいんですが、一つは、被害者となった、犠牲となった人たち、けがをした人たち、それから家族を含めて、どんなような今後の援助態勢を補償態勢も含めて進めていってあげるかということについて、政府はどう協力するかという問題、もう一つは、この事故の責任、原因を究明して、これは中国政府がやるんでしょうが、その責任と原因を明らかにして、それに応じた中国側の責任も明確にとってもらわなくちゃならぬという問題がある。こういったことを含めて、今後政府の対応をどういうようになさっていかれるか、被害者に対する十分な対応をするためにこの二点をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  133. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 第一点の補償の問題でございますけれども、正直申し上げて今この事件の処理が錯綜いたしておりまして、専ら亡くなられた生徒の体をどうするかというような問題等を含めまして、恐らく今混乱しておるさなかだろうと思います。したがいまして、政府としてはこの事後処理に最善を尽くして御家族の皆さんあるいは関係者の皆さんに精いっぱいのお手伝いをするというところでございまして、率直に申し上げまして、現段階でその後にかかわりまする補償の問題等につきましては、今この問題に入って考えをまとめるような時期でないことをひとつ御理解いただきたいと思います。  いずれにいたしましても、今後においてそうした問題が起こってまいりました場合には、特に国内で起きた事柄でございませんので、対外的な相手国あるいは相手のいかなる機関との交渉になるか、また当事者同士がどういう形になるか、そういうことを含めまして、政府としてはお手伝いすることがあるとすればこれは当然していかなきゃならないことだというふうに考えております。  それからもう一点、原因と責任の件につきましては、これまた今事故発生直後でございましたので、第一義的には、この事故発生が中国上海地点において行われているということにかんがみまして、中国側が原因究明を図ってまいることだろうと思いますが、被害者、事故を受けた者が日本人であるという立場からも、我が方としても十分その原因について相手国と相談をいたしていくことは当然のことだろうというふうに考えております。
  134. 橋本敦

    橋本敦君 終わります。
  135. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で橋本敦君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  136. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、三治重信君の質疑を行います。三治重信君。
  137. 三治重信

    ○三治重信君 まず最初に、きのうも問題になりました政府の行った有識者世論調査、民社党もこれは少し露骨な誘導的調査である、こういう結論に達しまして、この予算委員会の場で厳重に抗議を、非常にまずい調査だったと、こういう意見をしっかり言うようにと、こういうことでございます。何もこういうことまでしなくても、本当に政府税制改革をやるというならば、かえって税制抜本改革について反対世論をむしろ起こすようなことになりはせぬか、こういうふうに思います。  そこで、改めて世論をしっかり反映させるために、政府税調もさらにきょうの新聞だとあと五回ほどやるというようなことになっておりますが、今後党税調を経て政府の原案ができた場合に、政府としてさらに公聴会というんですか、世論の意見を聞くというような手段をとる意思があるかどうか。
  138. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先般いわゆる千人の有識者にかなり具体的に御意見を伺いましたのは、いわゆる世論調査というようなものではもとよりございませんし、専門の方々が文字どおりどのような意見を持っておられるかということの、こちらから資料も同封いたしまして、文字どおりまたグループによるお考えの違いも知りたい、こう思ってしたものでありまして、誘導というような意図を全然持っておりませんでした。大変に参考になる答えをいただいたと思っております。  それから、今税制調査会で昨日素案というものを出されましたが、調査会はこれを恐らく四月の中旬ごろに全国何カ所かで公聴会を開いて意見を聞くという案を持っておられるように承知をいたしております。その後調査会として答申に向かってさらに公聴会の結果にかんがみて検討をしていかれるものと考えておりますが、政府といたしましていつ成案を得るかということが、したがいましてまだ未定でございます。  私どもの自民党の党の方でも税制調査会というものがございまして、そこでもいろいろ議論のあるところでございますが、ここでは全国のいわば職能団体とでも申しますか、いろいろな団体を幅広くお招きして忌憚のない意見を聞かしていただきたい。これはかなり大がかりにそういうことを何日かかけてお願いをしたいと党では考えておるわけでございますが、それを離れまして政府成案をつくります、あるいはつくりつつある段階で何か公聴会のようなものをということは、ただいまとしては考えておりません。また、世論調査といたしましてもせいぜい一万人ぐらいでございましょうから、問題の本質はやはりそれだけで非常に参考になる資料が得られるかどうか、ただいまはこれという計画を持っておりません。
  139. 三治重信

    ○三治重信君 今は政府税調も全般的な改革の一部が新聞に出たわけなんですけれども、今度の抜本改革をやられるならば、これは国税と地方税の関係も抜本的な改革の案をぜひひとつ案として国会へ出されるように考えてもらいたい。国税ばかりやるということじゃなくて、その重点はやはり何といっても地方の自治の確立ということになると、地方の財源確保ということが新しい観点から見られなくちゃならぬ。殊に間接税なんかをやるということになると、間接税なんというのはやはり各地の事情に応じて各地方自治体が徴収した方が摩擦が少ないようにも感ぜられるわけでして、地方税の財源確保についてどう配慮されるのか、自治大臣大蔵大臣と両方から御意見を伺いたいと思います。
  140. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはごもっともな御指摘でございます。廃案になりましたが、昨年の税制改正におきましてもその点は新しい工夫を加えておったつもりでございますが、御指摘の点は今後ともよく考えていかなければならないと思っております。  なお、それとは別に国と地方との税源配分、それから行政の配分ということは古くて新しい大問題が実はおっしゃるようにございまして、これは絶えずやはり検討を続けていかなければならないことと思っております。
  141. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 大蔵大臣がお答えになられましたように、まず国、地方を通ずる事務配分あるいは地方団体間の財源調整その他もろもろの問題がございます。ですから、まず税制改正ではむしろ広範な意味で税の公平とかあるいは必要最小限度の財源確保、こういう問題があるわけでございますから、国民全般としての税負担、それがまず第一段にあって、そして内部的な問題というと大変言い方がおかしいのでございますけれども、国と地方のいわば地方自治進展のためにどう財源を配分すべきか、こういう問題があるわけでございますが、私ども税源を拡大、拡充することには私的には賛成なんでございますけれども、むしろ三千三百に及ぶ各地方自治団体、それぞれよって立つ基盤が違います。ですから、普遍的で安定性があって伸長性のあるような税源というものを考えますと、むしろ今減税の対象になる住民税、あるいは今問題になっている固定資産税、あるいは自動車税、電気税、こういうものがある意味で普遍性や安定性がある税源でございますが、これを増課をするという方向で考えられるのかどうなのか、こういう問題になってみますとなかなか問題が多うございます。  いずれにしても、今先生御指摘の間接税のようなもの、これは国民全般が、もしもやるとすれば負担をされるわけでありますから、その一定比率をどんなふうにするか、あるいは交付税的な制度で見るべきものなのかどうなのか、こういうものが税制改正に当たって大切な問題点ではないかと思いますし、税制改正がなくても、国と地方の税の配分あるいは財源の配分というものは事務やその他の見直しとともに大切な問題でございますので、検討して立派なものをつくり上げてまいりたいと思います。
  142. 三治重信

    ○三治重信君 ぜひひとつ、間接税のことばかりに気をとられたことでなくて、どうせこういう機会ならば、どうしてもやるとおっしゃるならば、これはむしろ地方財政というものを中心に税の改革ということを新しい観点でひとつ考えてほしいと思います。  次に、資産所得が非常に逃れておるということで、今度の改革で大きな問題になっております。昨年のマル優の廃止によって利子の源泉徴収が行われたわけなんですが、資産所得を本当に把握するということになると、まず第一段階とすればやはり分離課税制度というものを確立して、その上に総合課税というものをやった方がいいだろうと思うんですけれども、こういう資産課税についての分離課税の徹底と、所得税、法人税との総合課税との関係を基本的にどういうふうに考えておられるか、ひとつ御説明願います。
  143. 水野勝

    政府委員水野勝君) 所得税につきましては、これは総合累進課税ということが大原則でございます。ただ、今お話しのございました資産所得につきましては、その大量性と申しますか、金融商品で申しますと非常に浮動性がある、多様性がある、そうしたもろもろの特質があるわけでございます。したがいまして、その資産所得の性格に応じまして、その段階での事情に即しましてもろもろの特殊な課税方式が行われることがあるわけでございます。  昨年、利子所得につきましての改正をお願いいたしましたが、これは初めて郵便局にも課税の手続をお願いする、それからまた地方団体で初めて利子割というようなもので源泉徴収をお願いする、そうしたもろもろの特異な要素がございましたので、原則としては一律分離課税ということをお願いいたしたわけでございます。ただ、この点につきましては、国会での御修正をいただき、五年経過したところでと申しますか、総合課税への方向も含めまして見直しをするようにという規定をお入れいただいておるところでございます。まさにこうした形が資産所得課税におきましては必要な場合があるわけでございます。
  144. 三治重信

    ○三治重信君 利子課税の分離課税ではそういう修正ができたわけなんですけれども、資産課税のうちでも、今度租税措置で譲渡所得の分離課税制度を新しくつくられたわけですが、こういうような土地の譲渡所得のような、これは一時所得になるんですか、雑所得になるんですか、こういうような譲渡所得でたまにしか出ないということのやつならば分離課税で総合課税をやめてもいいんだが、利子とか配当とか、こういうような毎年資産の果実から出る所得を分離課税で総合課税しないということは、何のために所得税で累進課税をやっているのか、法人税もやっているのかと。こういうことは税の体系を乱すと私は思うんです。  だからぜひ今度の抜本改正で、五年を待たずして、そういうような分離課税を進めるとともに総合課税というものを残していく。そのためには、やはりグリーンカード制度にかわる納税者番号制度とかなんとかというのは、これはやり方について、実施は若干おくれてもいいけれども、そういう基本姿勢を離れてしまうとこれは新しい不公平税制をつくる、こういうことになりはせぬかと思うんですが、御意見はいかがですか。
  145. 水野勝

    政府委員水野勝君) 御指摘のとおりであろうかと思うわけでございます。昨年の利子のときの国会修正もそういう御趣旨であったかと思うわけでございます。  ただ、先ほど申し上げました資産所得につきまして、特に金融商品でございますと非常に大量であるとか非常に流動的であるとか、そういう特質がございます。そうした場合に、その捕捉と申しますか、そうした手段と申しますか、そういう面におきましてある程度の担保がございませんと、かえって実質的に不公平な結果を招くという点があるわけでございます。  そうした意味におきましては納税者番号制度といった問題がそこに出てくるわけでございますが、昭和五十五年にお願いをいたしましたグリーンカード制度が御承知のような経緯をたどってきたということもございますので、この点については相当慎重に対処してまいったわけでございますが、やはり当時とはいろいろ社会の意識も変化してきておる、ここでもう一度番号制度といったものにつきまして正面から取り組みまして、資産所得課税にどのように取り入れることができるかということを取り上げまして、税制調査会におきましても小委員会をつくりまして検討を開始しておられるところでございます。  そういう意味におきましては御指示のような方向性は失われてはおらないわけでございますが、何と申しましても、資産所得につきましてはかなりそうした特質がございますので、そうしたものを見きわめながら、しかし大きな方向は見失うことのないようにしながら適切な課税のあり方を検討してまいる必要がある、このように考えるところでございます。
  146. 三治重信

    ○三治重信君 今納税者番号の問題も出されたわけですが、グリーンカード制度が、せっかくつくった法律をまた廃止するというふうになった大きな原因は何だと反省しておられるわけですか。
  147. 水野勝

    政府委員水野勝君) グリーンカード制度は、本来は少額貯蓄非課税制度を御利用になる方の番号制度であったわけでございますが、そのほかの金融資産につきましても本人確認のためにこれを用いることとされていたわけでございます。  金融商品につきましては、先ほど申し上げましたような大量性、浮動性、流動性といったような特質がある、これが番号ということによりまして、税務当局と申しますか、そういった公的な機関にすべての情報がインプットされてその捕捉が行われるというところまで恐らく御心配が先行したのではないかと思うわけでございます。その他もろもろ、いろいろな事情があったかと思うわけでございますが、現在もう一回番号小委員会で、そうしたものも想起しながら検討をお願いしているところでございます。
  148. 三治重信

    ○三治重信君 私はこのグリーンカード制度がせっかくできたやつが廃止になった主な理由は、やはり何というんですか、税務当局がグリーンカード制によって資産所得の預金の源泉を探ろうとしたというのがふわっといって、せっかく偽名でつくっていた預金とか何かが、どこからその金をつくったんだという源泉を探られるということで、非常に不安になってえらい反対運動が起きた。したがって、新しい制度をつくるときには、過去を余り問いたださぬということをはっきりやってもらわぬと、これは今まで隠した四百万円なら四百万円、四千万円なら四千万円はどこでもうけたんだ、それはどこからもらったんだというようなことをやるから、これでふわっと不安が出てくる。そこをしっかり、新しい制度をやるけれども過去のことは問わないんだということをしっかりやって、グリーンカード制度をぜひひとつ、番号制を検討してもらいたいと思います、これは私の意見ですが。  次に、今度一般消費税大型間接税というのが大問題になっておるんですが、その中で目的税ないし受益者課税という問題が余り議論されていない。ただ幅広く薄くということだけれども、目的税ないし受益者負担というものも直接税も、何というんですか、都市計画税のような直接税もあるんですけれども、大部分がやはり間接税になるんじゃないかと思うんですが、こういうふうな受益者課税というものと大型間接税との関係をどう考えられておるか。
  149. 水野勝

    政府委員水野勝君) 先般、昨年御提案申し上げました改革案におきましては酒、たばこ、こういったものは原則としては新しい間接税の対象になっていただく、しかし揮発油税でございますとか石油税、こういったものは全くそのまま独立で課税体系は別とする。そのような整理は行われておったわけでございますが、今回それがどのような方向で検討されるのか、それはまさにまだ素案段階で、具体的な間接税の姿も明らかでございませんので、そうしたものの固まっていくその過程で検討がされていくのではないかと思うわけでございますが、御参考のために、素案におきましては、既存の間接税については、直面している諸問題を根本的に解決する観点から、それぞれの税目の特性、仕組み等にも留意して見直しを行うというような方向でおまとめになっておるところでございます。こうした方向で今後検討がされると思いますので、具体的に目的税、御指摘のように間接税が多いわけでございますが、それがどのように検討されるかにつきましては今後の問題でございます。
  150. 三治重信

    ○三治重信君 自治省、この目的税また受益者課税の一つに私は都市計画税があると思うんですが、これを固定資産税と同じように考えて軽減の問題がよく新聞に出るんですけれども、これは土地がどんどん高くなるというのは、やはりそこに非常に土地の利益があるからなんで、それは公共事業をやればやるだけ、また区画整理なんかをやればやるだけ土地の値段が上がるわけなんだから、そういうような費用を都市計画税で負担をさすというのはこれは当然なことなんだが、こういうような考え方をいかにも固定資産税の附属課税みたいに考えておるのはこれは間違いだと思うんですが、どうなんですか。
  151. 渡辺功

    政府委員渡辺功君) 都市計画税は、御指摘のとおり都市計画事業それから土地区画整理事業に要する費用に充てるための目的税であります。したがいまして、その税率につきましては地方税法で制限税率という形で税率を設けております。その制限税率の範囲内で各地方団体が具体的にその税率水準をどの程度にするかということについては、地域のその地方団体地方団体ごとに都市計画事業等の事業量も違いますし、いろいろ事業費の実態も違いますので、それに応じまして自主的判断にゆだねることが適当であると考えているところでございます。つまり委員御指摘のように、都市計画税はそういう意味の目的税でございますから、そういう事業とかそういうこととの関係で地方団体がその議会の判断もあって決めていくことで、固定資産税と単なる類似で物事を考えるという性質ではない、そういう趣旨の税である、こういうふうに考えております。
  152. 三治重信

    ○三治重信君 したがって、そういう考えだから、公共事業をどんどんやっていくということになれば目的税、固定資産税、都市計画税の制限税率の制限の上を上げるように、ぜひひとつ検討を願いたいと思います。  それから所得税関係のやつですが、我が党は基本的にこの所得の累進を緩和さす、あるいは何というのですか、ほかの事業者の法人成りやみなし課税との対比からいって、二分二乗方式が私たちはこの不公平税制を直す一つの一番手っ取り早い手だと思っておるんですが、二分二乗方式というものをなぜとれないか。これはとっている国がヨーロッパなんかはあるんですね。やはり日本みたいに事業主が法人、後でまた問題にしますが、すぐ法人成りをやっている、法人で処理する、それからみなし法人まで認めている。こういうこととの対比でいくと、いわゆる妻の特別控除制度から一歩進んで二分二乗方式というものをさらに検討しないと最終的な不公平税制というのは直らぬと思うんですが、どうですか。
  153. 水野勝

    政府委員水野勝君) 一つのお考えだと思うわけでございますが、ただ二分二乗はアメリカ、ドイツ、フランス等において行われておるところ、それぞれ特殊な事情が背景にあって行われているようでございます。ドイツの場合は、そもそもは夫婦というものの所得は強制的に合算されていた。これが憲法違反じゃないかということで問題になって、二分二乗の選択ができるようになったという事情があるようでございます。またアメリカにおきましては、州によりまして民法が違う。独立財産制のところと共有財産制のところがあって、その民法の方式によりまして税負担が異なるというのは不公平だということから、どのような州におきましても二分二乗方式も選択できるように連邦所得税が改正になった。そういう経緯もあるようでございます。また一方、現在イギリスにおきましては、まだ必ず夫婦の所得は強制的に合算されるという所得税がございまして、これが現在イギリスでは夫婦独立的に課税を受けられるようにする方向に今動き出しつつあるということでございます。  我が国は、戦後シャウプ税制によりまして夫婦はそれぞれ稼得者単位で課税になるということになっておりますので、そういう意味におきましてはむしろ問題は少なかったわけでございますが、そうした方向で進んでまいったところ、事業所得者につきましては、むしろこれを給与の支払いという形で分散できるように、分割できるようになってきている。そうした方向に対してどのように対処するかというのが日本の所得税の今の問題点ではなかろうかと思いますが、御指摘のように一挙に二分二乗に参りますと、これは少し所得変動が、特に階層別に見て高い所得層にその分割の二分二乗のメリットが及ぶような傾向があるとか、二分二乗ということは根っこにおきましては、その夫婦の所得を合算するという思想がございますので、これが果たして現在の個人単位課税の思想と一体相入れるものかどうか基本的にいろいろ問題がある。  そういうことから、税制調査会におきましても検討はされましたが、そこまではなかなかいけない。そこで、配偶者特別控除といった、これのいわばその思想を取り入れながらその方向に一応参った。しかし、二分二乗という問題も今後いろんな機会に検討、議論がなされる問題であろうかと思うわけでございます。
  154. 三治重信

    ○三治重信君 この問題は根本的な改革になるわけですから、今後、ひとつほかの事業主の税の徴収のやり方との関連考えてもらわぬと――この二分二乗方式だけがいいの悪いのという問題じゃなくて、サラリーマンと事業主と、取られる側の立場でお互いに隣を見て不公平があるかどうかというのを感ずるわけなんで、取られる側から見た制度というものをひとつ考えてこれを検討してもらいたい、こういうふうに思います。  そして、この所得税のうちでそういうような個人の事業者、ティピカルな例でいわゆる俳優とか学者、歌手、こういうのがみんな今法人成りで事務所をやったりなんかしてやっているわけなんだけれども、いかにも日本は法人が多い多いというけれども、これは税務のために法人というものが何十万とふえているんじゃないかというふうな感じを持つわけなんです。  これは税の執行上本当に考えぬと、法人というものが日本はいかにも多くて、産業活動が隆盛のようにとれるけれども、実は税の――脱税と言っちゃ悪いんで、節税のために、この組織を徴税される側が個人の事業から法人成りの法人に登記する。それからみなし法人をやれやれということになってくる。みなし法人は、まさにそういう個人事業主が、法人なんかにせぬでも事業はできるのに法人にして税金対策としてやるために法人になっている。法人にするまでにはいかぬけれども同じことじゃないかということで、制度上はだんだんみなし法人なんというわけのわからぬことになっちゃっているわけなんだが、これとの関係で法人成りを、できるだけそんなばかなことをせぬでも税は公平に執行しますよと、こういうことで申告制度の経費の見方を、基準を直されたらどうかと私は思うんですが、いかがですか。
  155. 水野勝

    政府委員水野勝君) かつて私どもも、法人成りは一体どういう動機でなさるのかということで調査をしたことがございますが、やっぱり一番大きい理由は、経理上企業と家計が分離されて経営成績がはっきりする、それからまた、取引先との関係で信用力がそれだけふえる、こういう考え方が多かったわけでございます。しかしもちろん、税金が安くなると考えた、そういう御回答もございました。  戦後一時期、非常に所得税税率が高く、法人に比べますとかなりな総合累進課税が行われる、そうした時代に、かなり税の面から法人成りの問題が論じられたことはございますが、最近は、税の問題から法人成りに向かうという傾向がそれほど多いというふうにも先ほどの調査からは私どもは感ぜられなかったところでございます。  それからまた、税制上は、同族会社の場合には一定の行為や一定の計算が税制上ふさわしくないというときにはこれを否認できる規定もあるわけでございますので、そういったものを活用しながら、もしおかしなことがあれば対処をする。しかし、法人格を取得できるという営業上の事由があるところ、それを税でもって真っ正面から規制していくとか、そういうことはやはりいかがかなと感じるところでございます。
  156. 三治重信

    ○三治重信君 だから、徴税の基準を明確にしたり、そういうふうなむだなことをやらぬでもいいような徴税のことに頭を使いなさい、こういうことなんで、これは真っ正面から法人成りをとめようといったって、制度があるやつをとめられるわけじゃないんで、それは納税者の方の選択の問題だから、選択の方でわざわざ迂回をして無理に法人にならぬでもいいですよと、こういう税体系をぜひつくってもらいたいと思います。  次に法人関係でございますが、先日の公聴会のときも、税金を払わない大企業、これがタックスヘーブンやタックスエロージョンのもとをなしている。しかも、日本の企業が大企業化し多国籍企業化して、これを放置していて何の間接税ぞやと、こういう議論公聴会で非常にあったですね、一つ。  それで、一つ例示として、これは事実は私は知らぬのですが、雑誌なんかを見ると、アラビア石油は非常に事業として成功し、えらい利益が上がったように報告されているけれども、国税は一銭も納めていない、こういうようなことになっているんだが、アラビア石油を例にしてこういうようなタックスヘーブンやタックスエロージョン、大企業の税の体系をひとつ御説明願いたい。またその対策を今度税制改革でどういうぐあいに考えているか。
  157. 水野勝

    政府委員水野勝君) 一般論として申し上げますと、石油等の採掘に当たりましては、その現地におきましてかなりな税負担を負うようでございます。したがいまして、そうした会社の外国でそのような課税を受けたそうしたものがかなりな高額なものでございますと、日本国内におきますところの法人税の計算上は税額として算出されてまいりますが、外国税額控除制度によりまして納付税額としてはなくなるという現象はあり得ることでございます。  しかしながら、そうした会社でございましても、日本国内に立派な本社がある、それから相当な方々がそこで働いておられるというときに、国内におきましての発生所得がゼロで納付税額はゼロ、全部外国で納めていますということがどこまで実態に即した議論として通用するのか、そこらの点につきましては、やはり最低限度のものは、日本国内におきますところの発生所得とそれに対応する税額もあるというのがやはり自然ではないか。それは経費と収入の配分の問題でも、国内国外の配分の問題でもあろうかと思いますが、最低限度の国内所得分というものはあってしかるべきじゃないかということで、昨年御提案申し上げた法人税制の改正におきましては、例えば少なくとも一〇%は国内所得である、それに対応する算出税額はあり得るというような方向での改正を御提案はいたしたところでございますが、これは廃案になってございます。  こうした問題意識はなお私ども持ってございますので、今後法人税につきまして御提案を申し上げるときには、こうした問題も含めて成案を得て御審議をお願いするようにいたしたいと考えておるところでございます。
  158. 三治重信

    ○三治重信君 次に、法人については租税特別措置がこの間提案されたわけですが、まだこれは今後とも検討されるところと思うんですけれども、今度の抜本改革で法人税は税率を三七・五か何かに下げる、そのかわり課税ベースを広げる、こういうことを言われておるんですけれども、この間の租税特別措置のほかにさらに検討項目として課税ベースを広げる項目はどんなものが内容としてありますか。
  159. 水野勝

    政府委員水野勝君) 昨年御提案申し上げた改革法案におきましては、課税ベースの拡大につきましては受取配当の益金不算入制度の見直し、それから引当金につきましては賞与引当金を段階的に廃止するという御提案、そうしたものが主たるものでございました。  今回税制調査会におきまして御論議いただいておりますのは、そのほか借入金によって土地を取得した場合のその利子の取り扱い等の問題も新しく検討されておられるようでございます。
  160. 三治重信

    ○三治重信君 今までの議論だと、法人の数からいくというと赤字法人が半分もある、こういうことを言われるんですけれども、確かに自由社会だからもうかる企業もあれば赤字の企業もあるのは当然だけれども、これは半分というのは少しいかにもひどいんじゃないか。この中で私が知っているのでも、結局損失の生まれるような事業の初めだとかそれから資産の保有のためとか、そういうふうに別会社をつくってもうかるまで赤字会社をつくっておって、そうしてもうかるようになってくると本会社に合併する、こういうふうに常に親会社としては損の企業を二つ三つ抱えていることによってその利益を少なくやっていけるために別々の法人をつくっておる、こういうのが相当あるだろうと思うんです。  こういうことからいくというと、法人住民税は所得がなければ課せられないけれども、殊に地方行政、国も法人税で、形式上はとにかく、赤字でやっているところから金を取るわけにはいかぬだろうけれども、こういうふうないわゆる節税対策として随分態様があるということ、赤字法人が半分以上あるということを前提にすると、やはり地方税として、法人に所得があろうがなかろうが地方の行政にお世話になっている、こういうようなことから法人全般の所得に対して法人税をかける、法人に対して変わった立場で。法人がそこに存在する、こういうことによって外形課税ができるような体制を考える、この赤字法人対策というものがやはり地方税の関係から重点的に取り上げられるんじゃないかと思うんですが、これに対する御意見
  161. 渡辺功

    政府委員渡辺功君) 赤字法人問題も含めまして、地方税として外形的な課税をするということでそうしたことに対処をすべきではないかという御趣旨お話でございます。  事業税の外形標準課税の導入問題というのは、事業税の性格の明確化あるいはその地方税源の安定的確保等の観点からいたしまして、税制調査会等におきまして検討が進められてきたところでございます。この導入問題につきまして、税制の抜本的見直しについての答申におきましては、新しいタイプ間接税の導入に当たって、現行の事業税に加えて新しいタイプ間接税の一部を地方間接税とすることにより、この問題の現実的解決を図ることとするという考え方が示されたこともあり、あるいはそういう考え方や新しいタイプ間接税の類型、仕組みの具体化に対応して、国、地方を通ずる税財源配分のあり方等の関係にも留意しつつこの問題を処理していくべきだという考え方も示されたところでございます。    〔委員長退席、理事林ゆう君着席〕  このように、税制調査会におきます審議の経緯等においても示されておるとおり、この外形標準課税導入の問題は間接税のあり方との関連において検討することが適当であるということとされておりますことから、今後におきましても税制改革の検討課題一つといたしまして引き続き検討、御審議いただけるものと思っておりますし、そうした検討を進める必要があるものと、こういうふうに考えておるところでございます。
  162. 三治重信

    ○三治重信君 法人で資産所得を、株式や配当や債券の利子が源泉徴収されるんですが、それは法人税を納めるときに、先に納めたものとして差っ引かれる。これは非常に正しいことだと思うんですが、もしも利益が源泉徴収された二割よりか少なくなったときには、源泉徴収で取り立てた税金は返すんですか、返さぬですか。今度損失の翌年繰り越しとかなんとかというやつを、今まで停止していたやつが全部直ったということで赤字がどんどん繰り越されるようになってくると、せっかく財テクで取って源泉徴収しても、赤字法人になってくるとどんどんその税金を返すという、こんな格好になるんですか。
  163. 水野勝

    政府委員水野勝君) 原則といたしましては、これはもし納付する法人税額よりも源泉で取られた部分が多ければ、それは還付がされるわけでございますが、現在特例措置といたしまして、これはすぐには還付しない、一定期間経過後にこれをお返しするというふうな特例が現在行われてございます。
  164. 三治重信

    ○三治重信君 これはせっかく源泉徴収したやつを返すなんというのは少し考え物だと思うんです。会社そのものが本来の営業で損したやつを、財テクというのはこれは欲だからいいかもしれぬけれども、これは考え物だと思う。  それから厚生年金の保険料、従来とも大蔵省の方はどんどこどんどこ法人成りを認めてやっていくと、こちらは法人だとみんな雇用者と被用者が出てくることになる。そうすると、社会保険の体制と違ってくるわけなんです。そうするとこれに対して、健康保険なり国民健康保険でもこういうような法人の同族法人には、事業主、妻でもおばあちゃんでも給料が払われれば必ずそういう健康保険なり国民健康保険をきちんと適用される、こういうふうに考えて適用を改めてやっているのか。みなし法人みたいなやつはどうにもならぬのかどうか。
  165. 土井豊

    政府委員(土井豊君) 法人の健康保険への適用の問題でございますが、お話がありました同族法人につきましては、これは法人でございますので、その事業所で一人でも従業員を使用している場合には強制適用になるということになっております。    〔理事林ゆう君退席、委員長着席〕  なお、小規模事業所についてはどんどん適用拡大しておりますが、一人二人のものはことしの四月からということにいたしております。  それからもう一つの、みなし法人の関係でございますけれども、これはあくまで個人の事業所でございますので、健康保険法上は一定の業種で五人以上の従業員を使用する場合のみ強制適用ということになっているわけでありまして、それ以外のものはこれは適用にならないということになっております。
  166. 三治重信

    ○三治重信君 同族法人の本来は被用者じゃない、税金のために女房が働いているようになり、おばあちゃんが重役で俸給をもらう、こういうようなのを今度は厚生省の方は健康保険の適用をきちんとする、俸給をもらう者として主人も女房も、おじいちゃん、おばあちゃんにもきちんと適用さす、こういうふうなことをやろうとしているわけですから、これはひとつ国税の第一線がこのやり方にきちんと協力するようにぜひしてもらいたいと思うんですが、御意見いかがですか。
  167. 日向隆

    政府委員(日向隆君) 制度を適正に執行する立場といたしまして、私ども、今委員御指摘になりましたような制度が実施されれば、それについては十分気をつけて執行してまいりたいと、かように考えております。
  168. 三治重信

    ○三治重信君 ここで一つ問題は、税の徴収方法についていろいろの案があるわけなんですが、ぜひひとつ考えてもらいたいのは、税の公平というとかける方のことから公平だということばっかり考えて、取られる方の側を考えていない。  例えばEC型間接税というのは、これはヨーロッパの方では、聞くところによれば、毎月納税義務が発生して、年に十三回も帳簿をつくって納めにゃならぬというふうなのと、それから、何ぼそこで理論はうまくてもやはりそこに帳簿から漏らしていくアングラ経済が非常に発達してくる、こういうふうな、取る方からは完全に徴収したと思っていても、取られる方から見れば、帳簿をばあっと外したり、コンピューターも、これは税務の方でマル査のあの映画みたいなもので非常に御苦労になっておると思うんだけれども、やはり今度の税制考える場合に、取る側からの公平という発想から、取られる者、納める者が公平に納めるというふうな立場の税制改正をぜひひとつ案としておつくり願いたい。  その一つの例として、地方住民税ですが、所得税はそのときの給料で天引きされているんですが、地方住民税は前年度のやつで課税されるんですね。転勤される、退職されるということで、もう月給がなくなっているにもかかわらず前年度の月給で地方税が取られる。これはぜひ直してもらいたいと思うんですが、どうですか。
  169. 渡辺功

    政府委員渡辺功君) 住民税におきましては御指摘のように前年所得課税方式を採用しておりますけれども、これの理由といいますのは、住民税の課税のための調査、決定について所得税との二重行政を排除する、それから簡素化を図る、こういう観点があるわけでございます。そういうメリットがある反面、ただいま委員御指摘のようないろいろな声があることも事実でございます。  しかし、この課税事務の簡素化を図るという観点からこうした制度をとっていることにつきまして、それをもし、二重行政にあえてたえて現年所得課税に改めるということになりますというと、やはり納税者それから特別徴収義務者――市町村の課税当局の手間暇とかということは別にいたしまして、そういった納税者側の事務負担を著しく増大させることになりまして、その点が、今までいろいろ御指摘もございますけれども、検討の結果これは非常に困難であるということになってきている理由なのでございます。
  170. 三治重信

    ○三治重信君 これはぜひひとつ、抜本改革だから、こんなときでなければ課税根拠を変えられないと思うので、これはもうすべての人が困っているわけです、転勤したり退職したりした後前年度の税金を取られるというのはすべての人が困っているわけだから、これぐらいは直さぬと、税制改革なんというのは何のためにやるんだ、こういうことを言われてもやむを得ぬと思うんです。  それで一つ、税務行政の機械化や、それから国際の、例えば多国籍企業の先ほど申し上げたようなやつをやる場合の法案が何ぼ整備されても、やはり税の実調を行わなければ効果が十分保てない部面があると思うんですが、今の税調の程度で課税漏れや脱税をたくさん挙げているから大体こんなところだと思うのか、それとも、税制はうまいところへいっても実際上不公平税制を直すには税調をしっかりせにゃだめだということで、税調をどの程度上げたらいいと考えられているか。
  171. 日向隆

    政府委員(日向隆君) 御承知と思いますが、今、申告所得税、営庶業所得について税務調査の割合を見ますと、直近の六十一年度で三・八%、法人税について見ますと、同じく直近の六十一事務年度で九・三%ということになっております。  この実地調査割合が適正かどうかという点についてのお尋ねかと思いますけれども、私ども申告納税制度のもとにありまして適正な申告を期待するのは、これは調査だけではなくて、納税者の納税道義の高揚に基づく自主申告、または記帳等の整備に基づくいわば納税環境の整備、こういったものと、そしてまた、そういう状態において申告されなかった人に対する正直に申告した方とのバランスを図るための調査の充実、こういうものを総合して適正申告を期待しているところでございますので、実地調査割合を高めることだけではないとは思いますものの、やはり私どもといたしまして執行の立場から申し上げますれば、現在の実地調査割合がもう少し上がっていけばもっとその点が充実してくるのではないか、かように考えております。
  172. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で三治重信君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  173. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、秋山肇君の質疑を行います。秋山肇君。
  174. 秋山肇

    ○秋山肇君 昨今東京では一点集中是正が叫ばれていて、遷都論が盛んに議論されているわけであります。現在各自治体でいろいろな博覧会やイベント等が計画、開催されているわけですが、それだけでなく、地方活性化のためには長期的な視点に立った計画が必要と思います。  日本は政治と経済が密接に結びついており、政府機関の地方移転は実質上無理であり効果も少ないと考えます。したがって、政府機関の地方移転については、首都機能が東京圏に展開配置するいわゆる展都といいますか、が現実的には効果的であると考えますが、大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。
  175. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 現在政府が進めようとしておりますのは、首都機能を一括移転の場合でもついていく必要のない政府関係機関はこの際二十三区の外に移転したい、こう考えているわけでございます。その中には、関東一円を管轄区域にしている地方支分部局が相当の分量を占めると思うわけでございます。当然これらは関東の区域以外に出ることはないわけでございますので、お説のようなことになると思います。
  176. 秋山肇

    ○秋山肇君 東京にすべてが集中して土地が値上がりをする、人が住めないような状態になってしまうことを皆が望んでいるわけではないと思います。多少家が遠くなったにしても、新幹線やリニアモーターカー等の交通網を整備し通勤しやすいようにしてあげることが必要であると思います。今は新幹線で通勤というととてもとてもというような状況ではありますけれども、そう遠くない将来、新幹線で気軽に通勤できる時代が来るのではないかと思います。  首都圏へ続く交通網の整備と同時に、この首都圏内、特に都内の交通網の整備が重要であると思います。そこで、現在都で計画されております交通網の整備計画のうち地下鉄十二号線建設計画についてお伺いをいたしたいと思います。  この十二号線は新宿―練馬光が丘間の放射部と、新宿―六本木―浜松町―御徒町を経由して再び新宿に至る環状部から成っておりまして、昭和四十九年八月三十日に路線免許を得ております。さらにこの線は、国における都市政策と一貫性を保ち、日本の首都であり国際都市でもある東京の多心型都市構造への転換を促進し、沿線各地域の再開発と活性化に寄与し、住民の利用向上などを図る上から極めて重要な路線であり、国の内需拡大の要請にこたえるプロジェクトでもあるというふうに思います。  それらを踏まえまして、東京都では建設主体を第三セクター方式にして取り組む予定であるということですが、この地下鉄十二号線を第三セクター方式により建設することについて運輸大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  177. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 東京都は、地下鉄十二号線の環状部につきましては、建設費が非常に巨額であるために多様な民間資金を導入するとともに、関連開発事業の施行によりまして建設費負担の削減をする必要があること、また全線同時開業のために一時的に多数の建設要員を確保しなければならないこと等の理由から、その建設は第三セクター方式によって行いたいとしております。こうした考え方は地下鉄十二号線の環状部の特殊性に基づくものでございまして、運輸省としましても確かに一つの整備方式であると考えております。
  178. 秋山肇

    ○秋山肇君 これに対して、今までに例がないわけですけれども国土庁長官、外からの交通の問題、土地の鎮静化ということもあると思うんですが、運輸大臣の方のお考えと同時に外からまた応援をしていただかないといけないと思うんですが、この点についていかがでしょうか。
  179. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 東京は過密を解消させる以外に秩序ある都市の姿に改革していかなきゃならない、そういう問題もあわせて持っているところだと、こう思っています。そのためには今おっしゃいました交通網の整備は非常に重要なことだと思うわけでございまして、そういう意味において、私の方から運輸大臣にお願いするようなこともいろいろあるわけでございますし、一緒になってそういう努力をしていきたいなと思います。
  180. 秋山肇

    ○秋山肇君 大蔵大臣、お伺いしますが、この問題について、補助金は大蔵大臣の御所管だと思いますが、お考えを聞かせてくださいませんか。
  181. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そういうお話がありますことは承知をしておりますし、またそれは一つの方向であろうというふうに考えておりますが、さてそれを国庫補助との関係でどういたしますか、今後具体的に計画が進みますに従いまして検討してまいりたいと思います。
  182. 秋山肇

    ○秋山肇君 これから東京都からも再三要望、お願いが来ると思いますけれども大蔵大臣を初めとして各省庁連携をしていただいてこの実現に御協力をお願い申し上げたいと思います。  昨年から地価監視制度が厳しくなったわけですが、これは売買する土地の値段が高過ぎる場合行政側が指導価格を出す、そして勧告によって値段を引き下げるかあるいは取引を正常なものにするということになるわけですが、最近、何かこれを悪用している、実際の売買でないのに役所側の値段を推しはかろうということかもしれませんが、そういうようなことが一月でしたか、NHKの「土地はだれのものか」にも出ましたし、先日の朝日新聞の天声人語でも取り上げられているわけですけれども、この問題について国土庁長官のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  183. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 不動産の売買をやっている方が指導価格を瀬踏みしたい、そのためには一応契約が整っているような姿をして届け出をする、それに対する行政側の対応によって指導価格が那辺にあるかということを探ろうとする、そのために事務はふくそういたしまして地方公共団体側が大変迷惑をしているというような事例が間々あるわけでございます。現実に契約が整っておりませんのに契約が整っているように見せかけて届け出をするわけでございますので、これはまさに虚偽の届け出でございます。虚偽の届け出をします場合には国土利用計画法の罰則の適用を受けることになるわけでございます。そういうことでもございまするので、地方公共団体の窓口で十分に指導を徹底する、そういうことのないように自粛を求める、さらに二月には業界に対しましても国土庁から国土利用計画法の建前を守ってもらって自粛していただくような指導通達を出したところでございます。
  184. 秋山肇

    ○秋山肇君 この問題は、人件費がふえてしまうわけですし、税金のむだ遣いにつながるわけですから、ぜひひとつこの指導徹底というのをお願い申し上げたいと思います。  本来、続いて建設大臣にお聞きをしたいんですが、建設大臣は一時からという御出席をお願いしていますので、ちょっと質問が違うところにいっちゃいますけれども。  法人事業税の分割基準についてお伺いをしたいと思います。  現在、自治省では法人事業税の分割基準について見直しに着手しているとのことですが、これまでの経緯を簡単に説明していただきたいと思います。
  185. 渡辺功

    政府委員渡辺功君) 現行の事業税の分割基準につきましては、昭和四十五年度に改正いたしまして以来、基本的には見直しが行われておりません。  近年、産業構造の変化、工業技術の変革等産業経済の著しい変化に伴いまして、製造部門においてはオートメーション化が進行いたしまして、また、管理部門においてはOA化が進展する等、事業活動における工場と支店部門と本社部門との関係の態様に変化が生じてきている、こういう認識をしているところでございます。  これに即応するように、分割基準の見直しを行うべく、学識経験者、企業実務者等七名の委員から成ります研究会を昨年七月十四日に設置いたしましたところでございます。現在まで研究会を五回開催し、また現行の分割基準の妥当性、それから社会経済情勢の変化の状況等を検討いたしますとともに、神奈川県等六府県におきます実地調査、課税庁それから企業、両方でございますが、そうした実地調査、それから分割法人に対する抽出調査を実施したところでございまして、これらの調査結果等を踏まえて、早期に結論を得る方向で検討をお願いしている、これが現在までの状況でございます。
  186. 秋山肇

    ○秋山肇君 現行の分割基準はどのようになっていますか。
  187. 渡辺功

    政府委員渡辺功君) 現行の分割基準は、事業の種類に応じまして若干相違がございます。  まず、電気供給業におきましては、課税標準の総額の四分の三を発電所の固定資産の価額で、他の四分の一をその事務所等の固定資産の価額で分割する。それから、ガス供給業、倉庫業におきましては、事務所等の固定資産の価額で分割する。それから鉄道事業、軌道事業においては、軌道の延長キロメートル数で分割する。それから第四番目に、銀行業、保険業におきましては、課税標準の総額の二分の一を事務所等の数で、他の二分の一を事務所等の従業者の数で分割します。ただし、この場合資本金の金額が一億円以上の法人にありましては、そのうち本社に勤務する従業者の数を二分の一として算定する、こういうことをやっております。  なお、さらにその他の事業でございますが、これが一般的な姿でございます。事務所等の従業者の数で案分いたしますが、資本等の金額が一億円以上の法人にありましては、そのうち本社に勤務する従業者の数を二分の一として算定する、こういう制度をとっております。
  188. 秋山肇

    ○秋山肇君 今御答弁にあったんですが、分割基準は従業員の数となっていますが、従業員の数については、資本金等が一億円以上の法人の本社従業員数を二分の一とするということになっているわけです。ということは、東京の場合、各企業の本社が集中していることもあり、この適用を多く受けているわけですが、今回の見直しはどのような方向に進められておりますか。
  189. 渡辺功

    政府委員渡辺功君) 事業税の分割基準は、従来から社会経済情勢の変化に応じた事業活動とその行政サービスとの受益関係を的確に反映させ、税源帰属の適正化を図る、こういう観点から検討されてきたものでございます。  この分割基準の見直しにつきましては、先ほど申し上げましたような経済のソフト化、産業の空洞化の進展等、産業経済の著しい変化に伴いまして、製造部門においてはオートメーション化が進むとか、管理部門のOA化とか、こういう状況にかんがみまして、工場等支店部門と本社部門の関係の態様に変化が生じているという、そういう認識で見直しを検討する必要があるものと、こう考えているわけでございます。そうした観点で、昨年来研究会を設置した、こういう経緯もございます。  したがいまして、現在そうした認識を基礎としまして早急に結論を得たいということで、そういう方向で検討をお願いしているところでございます。  分割基準につきまして見直しをすべきであるという方向につきましては、研究会のメンバーの方々の大方の意見もそういう方向で検討が行われている。しかし、現在のところまだ具体的にどういう方法で行うかというようなところまでは至っていないというのが現在の段階でございます。
  190. 秋山肇

    ○秋山肇君 現在東京都が富裕であるという東京富裕論が聞かれているわけです。これは地方税収の地域的格差が拡大し、東京都に税収がますます集中しているという主張をその論拠としているわけです。  しかし、私の調べたのによりますと、人口一人当たり租税負担額は、昭和六十年度の各都道府県の決算によれば、東京が国税百万円ちょっと、地方税が三十四万円弱、合計百三十四万円でトップ、それに比べて島根県は国税十万弱、地方税が十二万弱で二十二万弱で四十位、鹿児島県が二十一万円で四十五位といったところで、確かに東京が負担額ではトップなんですが、実質的な配分、つまり地方税、地方譲与税、地方交付税、国庫支出金の割合を見てみますと、前に言いました島根県が合計で五十九万円で全国トップで、鹿児島県は四十四万で全国六位、東京に至っては四十万円で二十一位ということで、還元率からいったら東京はよそに比べて三分の一というわけですから、つまりこれはどういうことかというと、東京都は税を負担する額は多いが実質的には還元される額が少ないということで、これでもわかるように、地方団体間の財源格差は現行制度により均分化されているというふうに思います。  このような現状があることについて、御当局はどうお考えですか。
  191. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 地方団体間の財源格差につきましては、現行の地方交付税制度を通じてその均てん化に努めてきたところでございますことは御案内のとおりであります。  最近、東京への一極集中が顕著となり、税源の地域的な偏在傾向がさらに強まっている面もございますけれども、他方、地価の高騰、都市の再開発、首都としての特殊な財政事情が少なくない等についても留意する必要があると考えております。今後とも地方団体の要望、意見等を踏まえつつ、国土の均衡ある発展が図られるように地方税財政対策を適切に講じてまいりたいという思いでございます。  確かに東京の一人当たりの負担率が全国で一位でございますが、今御指摘がありましたように、すべての投資額を合わせますと二十位程度に下がっていることは御案内のとおりでございますが、これはやはり集中のメリットにより能率化、効率化が図られているというか、その利点があるというふうに感じております。ただ、現在言われておりますのは、昭和三十五年程度の東京都の税収の全国シェアは多分二二、三%、それが二十年たった昭和五十五年には一七%強までシェアとしては下がったわけです、税収はふえながらも。ですから、その意味では地方分散というか、地方の活力が増したと言ってもいいのでございますけれども、この二年ないし二年半で、約五%地方分散ができたものがその半分、約二、三%を戻したという現実がございます。これはやはり東京に一極集中が進み、必ずしも税収だけで判断をするわけではございませんけれども地方のシェアがそれだけ減ったということは、地方のいわば活力が低下をした、そういうことがございますので、一番懸念をすべきことは、東京に税収が集まることが悪いことではなくて、東京以外の地域のシェアが減ってまいる、これは大変問題でございますから、交付税その他でいわば激変緩和というか、その凹凸是正をしながら地方の振興を図ってまいる、これも当然な役割だと思いますので、今後もそういうものに努力をしてまいりたいと思っております。
  192. 秋山肇

    ○秋山肇君 今大臣から御答弁いただきましたけれども、私が問題だと感じるのは、法人事業税というのは事業活動と公共サービスとの受益関係に着目して課せられるものであり、このような性格を有する事業税の分割基準については関係都道府県ごとの事業の活動量及び受益の程度等を適切に反映することが求められていると思うわけであります。したがって、この分割基準が地方団体間の財源調整機能に用いられるということは応益負担という事業税の性格を否定することになると思うんですが、この点ではどうでしょうか。
  193. 渡辺功

    政府委員渡辺功君) 御指摘のように、法人事業税の分割基準というものは事業活動と地方公共団体が提供する各種の行政サービスとの受益関係に着目されるという法人事業税の税としての性格ということを踏まえまして、事務所等が所在する道府県において課税する、こういう場合に、二以上の道府県において事務所等を設けて事業を行う場合において一定の基準によって課税標準を関係道府県に分割する、こういうことでございます。  したがいまして、適切な課税権をそれぞれの道府県が行使するということのためのものでございます。事業税の分割基準はこういう事業税の性格で、ただいま委員もそういう御指摘をいただいたと思うのでございますが、設けられているものでございますから、従来からやはりそういう観点で社会経済情勢の変化であるとか、あるいは事業活動の状況の変化であるとかいうことを踏まえて分割基準を的確に見直していく、こういう観点から検討されてきたものでございます。何か恣意的に財源調整を目的として考えていくというものではございません。ただし、そういう経済情勢の変化に応じた事業活動、行政サービスとの関係ということも検討した結果、適切な結果としてのそういう財源調整ということが生ずる、これは否定しないところでございます。
  194. 秋山肇

    ○秋山肇君 大臣に一時からでよろしいという約束をしていましたから……。質問の時間が早まっていますので質問がちょっとあちこちにいっちゃっいますけれども、違った質問に入ります。  先日の予算委員会で、私どもの野末委員から宗教法人について質問を行いました。文部大臣ほか、いろいろの御答弁をいただきましたが、きょうはまたそれを一歩踏み込んでみまして、地方税の関連から幾つかの疑問を投げかけたいと思います。  現在、宗教法人は唯一、収支報告を監督官庁に届け出なくてもよいことになっているということですが、そのため大半の宗教法人の収支状況は全くわからなくなってしまっております。どうして宗教法人は収支報告の義務がないのでしょうか。
  195. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 御指摘のとおり、宗教法人法におきましては、宗教法人に対して収支について所轄庁に報告するという義務を課しておりません。  この立法の趣旨でございますが、これは信教の自由と政教分離という憲法の強い要請を基礎にいたしまして、宗教法人の日常的な、これは経理も含めてでございますが、日常的な運営については自主的、自律的になされるべきであるというような前提に立ちまして、そういった日常活動に対する公の関与というものを極力薄めるという方向で発しているという、その一つだというふうに解釈しております。  なお、そういった法人の自主性を尊重することによって毎年度の収支を主務官庁に報告義務を課していないという例はほかにもございまして、例えば私立学校法における学校法人などはそうでございます。  ただ、宗教法人について、また戻りますが、課してはおりませんけれども、収支計算書を作成した場合にはその備えつけ義務を宗教法人に課しているという、そういう制度はございます。
  196. 秋山肇

    ○秋山肇君 学校法人は出さなくていいといっても、私学助成の関係でやはり経理の内容をきちっとしていなければ助成の対象にならないわけですから、宗教法人とおのずから違うと思うんですが、じゃ宗教法人の経理の把握はどのようにして行っていますか。
  197. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) ただいまお答え由しましたように、宗教法人法上所轄庁に対しての収支報告というものが義務づけられていないものですから、一般的には所轄庁は宗教法人の経理についての把握はしていないわけでございます。  これは先ほども申しましたように、宗教活動に対する公の関与というものを日常の形ではできるだけ払拭をする、これは経理も含めてそういうふうな仕組みをとっているのが宗教法人法でございまして、そのかわり、一つの顕著な事象、例えば収益事業に対する規則の認証でありますとか、あるいは不適正な収益事業が行われました場合の事業停止命令でありますとか、そういうような制度が別にございまして、それで宗教法人の活動の適正化を担保しているというような形になっているのだというふうに理解をしておりまして、そういうような例えば収益事業を行う場合とかあるいは収益事業の停止命令をかける場合、そういうときには当然宗教法人の経理面について十分把握をしていなければなりませんので、その場合には当然把握をするということになろうというふうに思います。
  198. 秋山肇

    ○秋山肇君 随分、何というんですか、我々の税金を捕捉することからすると、またほかの法人のところからすると差があり過ぎるように思うんですが、ほかの公益法人の収支報告、経理の把握はどうなっていますか。
  199. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 宗教法人以外の法人と申しますと、私どもの所管しておりますのは民法によりますいわゆる財団法人あるいは社団法人ということになりますが、これにつきましては、文部省所管の他の法人と同じように、毎年度ごとに事業の状況それから収支計算等を内容といたします事業報告の提出を受けております。それからまた適宜個別の立入検査等もございまして、そういうものを実施しているわけでございまして、これにつきましては、民法及びそれに基づきます省令によりまして所管の法人の経理状況を把握しているところでございます。
  200. 秋山肇

    ○秋山肇君 そうすると、宗教法人の資金量、資産というのは全く把握できていないということになります。  ここで、宗教法人の主な収入について簡単に説明していただきたいと思います。非課税部門と、そうでない、今の説明の部分ですね。
  201. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) これはただいま申しましたように収支報告についての義務づけができておりませんので、その収入源の詳細については把握していないわけでございますが、ただ、従来過去にいろいろ調査をいたしましたときにその事業についての調査結果がある程度ございまして、それによりますと、宗教法人の収入の種類といいますのは、本来の宗教活動に基づく収入、それから公益事業から出てくる収入、それからもう一つが収益事業から出てくる収入、大体この三つに大きく分かれようと思います。  やはり一番多いのは本来の宗教活動から来る収入で、宗教活動以外の公益事業を行っている法人というのは全体でどのぐらいあるかという調査につきましては約一四%ぐらい、それから収益事業につきましては全法人の三%程度というふうなことが一応数として出ておりますので、そこから推計いたしますとその順序に収入の多さが決まっている。その程度の把握しか私どもとしてはできません。
  202. 秋山肇

    ○秋山肇君 宗教活動による収入といったって、何と何が宗教活動だかわからないわけですよ。それから公益事業は何であるか、収益事業による収入は何であるか、その具体例で、例えば戒名料はどこに行くのかとか、その辺でずっとやってください。
  203. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 戒名料につきましては宗教活動による収入だというふうに考えております。ただ戒名料というものが、対価といいますか、戒名をつけることに対する対価というようなことがはっきり決められているときに、決められているということが宗教活動としてどうかというような、これはもともと宗教活動に対する寄附というのは檀信徒の宗教心の発露として自発的に出るものというふうにも考えられますので、そういうものがはっきり対価として決まっているというような形はどうかと思いますけれども、全体としては宗教活動による収入というふうに考えております。
  204. 秋山肇

    ○秋山肇君 今私の言ったのは例えば例として言ったので、あと宗教活動による収入にはそのほかに何があるか、公益事業による収入は具体的には何があるか、収益事業による収入は何があるか、それぞれ言ってくださいよ。皆さんわからないんだよ、何がどこに入るのか。
  205. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 例えば寺院に関して言いますと、お布施とかあるいは護持会等からの会費収入とか、そういうようなものが宗教活動というふうに考えられます。  それから不動産から出てくる地代とかあるいは家賃収入、不動産収入というようなものについては、これは収益事業というふうに考えられております。  それから公益事業と申しますのは、学校とか、あるいは社会福祉事業でありますとか、あるいは博物館とか、そういうような幾つかの種類が、これは限られておりますけれども、そういう種類のものでございます。
  206. 秋山肇

    ○秋山肇君 今東京では墓地が不足しているんですけれども、霊園、墓地の経営というのはこれはどっちに入りますか。
  207. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 墓地の経営につきましては公益事業ということで、これは規則に認証を受けてやるべきことというふうにされております。
  208. 秋山肇

    ○秋山肇君 そうですか。これは私が調べたのでは、宗教活動による収入に霊園が入っているけど。
  209. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 失礼いたしました。  墓地の形態によるのだと思います。寺院の中に、通常、境内の中にある墓地というものはこれは宗教活動だそうでございますが、別に墓地として経営しているような場合ですね、墓地公園のような形態で経営している、その場合は公益事業に当たる、そういうふうに理解をしております。
  210. 秋山肇

    ○秋山肇君 ちょっとそれは納得できないんですよね。お寺さんがあちこちにやっているものもあるんですが、それは言ってもなかなか答えが出ないんだと思いますけれども、そのように宗教活動の収入というのはちょっとわからない、戒名料にしてもつかめていないということで、今結構戒名料というのは二百万、三百万を払うわけですね。そうすると、二百万、三百万というのは一人のサラリーマン年収分に当たるわけですから、これは別に悪く言うつもりはないんですけれども、時間給にして割ったら、お坊さんが四時間来たとして、二百万払ったら一時間五十万になるわけですけれども、その点はどうでしょうかね。
  211. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 戒名料というものにつきまして先ほどちょっと申し上げましたけれども、二百万、三百万というお話ですと私も随分高額じゃないかなというふうに思いますが、ただ先ほども申しましたように、一般的には檀信徒の宗教心の発露として自発的に納められるというものでございまして、それから宗教法人というのは、先ほどお話もございましたけれども、本来的には宗教活動に伴う収入によって宗教活動を行うという、宗教活動以外のことでなく、その宗教活動自体の中で収支が償われるというようなことが本来適正だというふうに思うわけでございますが、したがいましてその中で、檀信徒の間でどのような形で支出収入がなされるかというのは、一概に額の高低を論ずるというのが適当かどうかちょっと問題があるというふうに思います。  したがいまして、その宗教法人の経営全体の中でどういうふうに戒名料が位置づけされるかというようなことに関連するのではないかというふうに思います。
  212. 秋山肇

    ○秋山肇君 その檀信徒の、確かに自分の気持ちで出すものだと言いますけれども、お寺さんによればこれだけ持ってこなきゃということを言うわけですよ。皆さんそれを経験されているわけですよね。そういう実情があるわけですけれども、それではこの戒名料、大蔵大臣にお聞きしますが、相続税の申告のときに戒名料としてあるいはお寺さんにお布施として納めたお金、これは領収書がなくても相続税の控除の対象に認めてくれますか。
  213. 日向隆

    政府委員(日向隆君) 相続税の対象となる相続財産は、相続財産の価額から被相続人の債務及び葬式費用の金額を控除したものだと、これは委員承知と思いますけれども、この問題の葬式費用には、葬式、葬送またはこれらの前後において生じた葬式に伴う通常の出費というものが入っておりますので、今お示しの戒名料につきましては葬式費用として取り扱うということになっております。  この場合、お尋ねの領収書がなくても認めるかということでございますが、その戒名料の支払いの支払い日、支払い先、支払い金額等の明細を明らかに申告していただきまして、その支払いについて私ども確実であるというふうに認定しました場合には、葬式費用の一部としてこれを認めることにしております。
  214. 秋山肇

    ○秋山肇君 今、税務署の調査はうるさくて領収書がなかったらなかなか、何でも認めてくれないでしょう、普通ね。だけれども、それについては認めるということ、これただ一つじゃないですか。その点どうですか。普通の税金の申告とも一緒に兼ね合わせて答えてください。
  215. 日向隆

    政府委員(日向隆君) 通常の場合、領収書等によってその支出の事実を確かめるという手法を私どもとっておりますけれども、戒名料の場合に限らず、一般的にその出費の事実が具体的な方法で証明された場合には、その事実の認定の問題でございますから、これが唯一の例外ということではなくて、その他の場合でもそれを認める場合があり得るかと思います。
  216. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 秋山肇君の残余の質疑は午後に譲ることとし、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十五分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  217. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 予算委員会を再開いたします。  昭和六十三年度総予算三案を一括して議題といたします。  休憩前に引き続き、秋山肇君の質疑を行います。秋山肇君。
  218. 秋山肇

    ○秋山肇君 何かゴルフで一番ホールからスタートしたのに二番に飛んでいったり、また一番ホールに戻ってきたような質問でありますから、建設大臣はその一番ホール、私がどういうドライバーショットを打ったかおわかりにはならないと思いますが、真ん中へ飛んでいっていますから、そのつもりでお考えをいただいて、ホールアウトまでぜひおつき合いをいただきたいというふうに思います。  不動産業者の地方における土地売買が活発化をしております。建設省はこの動向を把握しておられますでしょうか。
  219. 望月薫雄

    政府委員(望月薫雄君) 建設省におきましては、不動産業者の個々の取引とかあるいは全体的な土地取引の動向について調査は実は行っていませんものですから詳細にいては承知しておりませんけれども、近年、諸機能の集積がかなり高いいわゆる地方中枢都市などにおきまして再開発事業等が行われるということの中で、中心商業、業務地等でビル用地が非常に要望が高まっておると、こういった過程で先生今お話しのような不動産業者などの土地取引が活発化しつつあるというようなことは、時々業者等を通じて耳にいたしておるところでございます。
  220. 秋山肇

    ○秋山肇君 不動産業者の地方での土地売買は地方での地価上昇の大きな原因になるというふうに思いますが、建設省のお考えはいかがですか。
  221. 望月薫雄

    政府委員(望月薫雄君) 実は先ほど申しましたように、実態をつまびらかにいたしておりませんものですから確信を持って御答弁することができないわけでございますけれども、要するに、事務所ビル需要などを背景として不動産業者などが言うところの高値で取引するというようなことがもしあるとすれば、先生おっしゃったような心配もなきにしもあらずと、こんなふうな受けとめ方をしておる次第でございます。
  222. 秋山肇

    ○秋山肇君 ぜひ東京の二の舞を地方の都市に及ぼさないようにお願いをしたいと思います。  次に、都市における農地のあり方についてお尋ねをいたします。  インフラ整備のなされた介在農地が宅地化されずに残存することについて、建設省はどのようにお考えでしょうか。
  223. 越智伊平

    国務大臣(越智伊平君) 先ほど質問政府委員答弁いたしましたが、土地取引業者の問題でございますが、中に特によくないのもおるような話を聞きますので、今回取引業法を改正いたしまして強化して指導をしていくつもりであります。  今の都内の農地の問題、都内にかかわらず大都市圏の農地の問題でありますが、今、市街化区域内の農地につきましては、点在しているものは一カ所にまとめてもらって、なかなか難しいのでございますけれども交換分合等をして逆線引きをして調整区域にしたい、また、調整区域の中で優良なところは宅地開発をしていくと、こういうことで御協力もいただき指導をしていくつもりであります。
  224. 秋山肇

    ○秋山肇君 そうすると、今の大臣のお答えで逆線引きということもお考えになっているということですが、現在、市街化区域農地の宅地並み課税についての建設省のお考えはいかがですか。
  225. 越智伊平

    国務大臣(越智伊平君) これはなかなか難しい問題が存在しておることは御承知のとおりであります。でございますから、市街化区域内におきましても本当に長期営農をしてまたこれをずっと持続する、それがある程度のまとまっておるところは、先ほど申し上げましたように逆線引き、点在しております小さいところはできるだけ宅地に供給をしてもらいたいと、こういう指導をいたしております。でき得れば、交換分合をしてでもやっていくということで進めていきたい。でございますから、十分その点の指導を各地方自治団体にもお願いしておるところであります。
  226. 秋山肇

    ○秋山肇君 なかなか難しい問題だと思うんですね。それで、今お答えにもあったけれども、長期営農継続制度は恒久的な固定資産税制と位置づけられているわけですから、これに合った都市計画制度ですね、区画整理をやったところというのは住宅にするつもりで区画整理をしているわけですから、そういうところに果たして農地が、今のは長期営農すれば農地として認められるわけですね。ですから、その辺のことを考えると、自治省の方のお考えと建設省の逆線引き、今大臣もおっしゃっていましたけれども、このこととの関連といいますか整合が難しいと思うんですが、いかがでしょうか。
  227. 木内啓介

    政府委員(木内啓介君) 先生の御指摘、大臣の御返事ありましたように、建設省としましては、市街化区域内の農地でもある程度のまとまりのあるもの、例えば五ヘクタール以上とかそういったものは極力線引きの外へ、調整区域に持っていくということでいわゆる逆線引きの指導をしておりますし、また地方公共団体もその線に沿ってやっておりまして、今度の第二回見直しでも相当規模の逆線引きが出てきているわけでございます。  それで、先生の御質問でございますけれども、確かに現在の長期営農制度というのはございますので、市街化区域内でも、長期営農をするという意思がありますといわゆる宅地並み課税がかからないという制度がございます。したがいまして、市街化区域内にあっても損にならないということでございますから、調整区域へ出ていくインセンティブというのは自主的にはなかなかそれだけではわかないわけでございます。  ところが、この長期営農制度も、十年以上営農をするとおっしゃっている方が長期営農制度の仕組みを受けているわけでございますから、逆に都市計画の方がちょっとリードしまして、市街化区域というのはもともと十年以内に宅地化すべきところですから、十年以上営農されるということであるならばどうか調整区域の方へ移っていただきたいというふうな指導をして、きめの細かい対応をしておるわけでございます。その結果、調整区域へ移ったのもだんだん出てまいりまして、まとまった土地はかなりの程度調整区域に移っております。そういう方針で調整をとってまいりたいと考えている次第でございます。
  228. 秋山肇

    ○秋山肇君 理想的には、それは調整区域に行くということはわかるんですけれども、やはり二十三区の中からそれじゃ調整のところに行くということじゃなくて、今大臣のお考えも、私は逆線引きは逆に二十三区内の、あるいは市街化区域の中での交換をして逆線引きというのは無理なんじゃないかなと思うんですが、その点ちょっと食い違っているみたいなんですが、どうでしょうか。
  229. 木内啓介

    政府委員(木内啓介君) 先生御承知のように、例えば東京二十三区はほとんど市街化区域でございますし、その中に少し小さくある農地を逆線引きというのは事実上なかなか難しいわけでございまして、こういったものは、一つ大臣が申されましたように交換分合さえできればまとめた形で処理できるという問題がございますけれども、できればそれは生産緑地制度というのがございますので、長期営農ということで、いわば暫定的な話じゃなくて生産緑地という法的に決められた方向へ導くのが一番正当だと思われますけれども、なかなか生産緑地制度も現在の宅地並み課税制度の前提のもとには余り動いてないという状態でございます。筋論としましては、やはり生産緑地の方へ持っていくという形が筋かと思われます。
  230. 秋山肇

    ○秋山肇君 今のお答えでわかるんですけれども、やはり二十三区の完全な市街化区域の中で緑地として残していく、生産緑地として残していくという中で交換という手法にみんなが乗ってくるかというと、実際の腹は高くなったら売りたいとか、相続があったら売らなきゃいけないという問題があるからなかなか現実としては難しいと思うんですが、その点についてどうですか。
  231. 木内啓介

    政府委員(木内啓介君) おっしゃるとおり、現実としてはなかなか難しいという面がございます。したがいまして、長期営農の宅地並み課税の方もいろいろ厳格に執行するとかいうふうなことでそれ自体も検討しておりますけれども、それとあわせて、生産緑地をもう少しやりやすくするためにどうしたらいいかということもあわせて今勉強していこうと思っている次第でございます。
  232. 秋山肇

    ○秋山肇君 それに関連してというわけじゃないんですが、用途、容積の見直しが今行われていますね。それで、都市計画で道路のセットバック等が決まっているところに限ってこの緩和を認めると。前から大臣とやっていますけれども、私の質問が舌足らずなのか、大臣の方がのみ込んでいただけないのか、ちょっと、何かその下がった分だけを自分の利益に上げてくれということにとられているようなんです。私が言っているのはそうじゃなくて、六メーター、八メーターと都市計画が決まっている部分について、下がった人に対してはそれをプラスを乗っけてやってくださいよということを言っているんですが、その点についてお考えをお聞きしたいと思います。
  233. 越智伊平

    国務大臣(越智伊平君) お話のとおりであります。私どもは、やはり容積率の緩和といいましても、確かにそのこと自体は結構でありますけれども、道路、下水、あるいは建設省の担当ではございませんけれども水道、こういうものの容量、こういうことを十分配慮してやらないと、ただ上へ伸ばすだけ、容積をふやすだけでは難しいから、道路とか下水あるいは水道、こういうものの整備を兼ねて進めていくと、こういうことであります。
  234. 秋山肇

    ○秋山肇君 土地問題はやはり今のそういう住民の協力、農地の問題、それから遊休地の利用をしていくということで、この間公述人の伊藤先生もおっしゃっていましたけれども、これは勇断をもってやらないとなかなかできないというふうに思います。ぜひひとつ建設大臣のお骨折りをお願いして、この関連についての質問を終わります。  また宗教法人に戻りますけれども、さっき途中で覚えていると思いますから、宗教法人を名のっているだけで収益事業を行わない限り都道府県民税や市町村民税は全くの非課税であり、また事業税や事業所税も非課税となっている。これも一般的に見ると、我々から見るとおかしいと思いますが、法的な根拠はどうですか。
  235. 渡辺功

    政府委員渡辺功君) 宗教法人を含め公益法人等に係る収益事業の範囲というものにつきましては、地方税であります法人住民税、事業税におきましては法人税と同一のものでございます。  そこで、その宗教法人を含めた公益法人の非課税とされている根拠でございますが、法的根拠としましては、個別に申し上げますと、道府県民税については地方税法第二十五条第一項第二号に定めがあります。市町村民税については、地方税法第二百九十六条第一項第二号というように、事業税についてもあるいは事業所税につきましてもそれぞれ地方税法に規定されているところでございます。
  236. 秋山肇

    ○秋山肇君 一般から見るとおかしいわけですけれども、それと、宗教法人がいろいろな名目で集めて銀行など金融機関に預けた現金の利子配当等が税金がかからないという点であります。  これは所得税法第十一条「公共法人等及び公益信託に係る非課税」が法的根拠となり、宗教法人が集めた現金を銀行などの金融機関に預けた際の利子配当を非課税とする条文であります。折しもこの四月一日からマル優が廃止になるわけで、預金利子等に対して一律二〇%の分離課税になり、庶民にとっては納得がいかないわけでありますけれども、大蔵省としてはこの宗教法人の金融収益の課税についてはどのような見解をお持ちでしょうか。
  237. 水野勝

    政府委員水野勝君) 御承知のように、宗教法人を含む公益法人につきましては、課税の対象は収益事業を営む場合に限られるということでございます。収益事業でございますので、事業所を設けて継続的に一定の業務を行われるという場合でございます。そういう趣旨で、収益事業の課税の範囲が法人税法施行令で具体的に列挙をされておるわけでございますが、金融収益となりますと、それが業務を行った結果としての収益であるかどうかということでございまして、したがいまして原則といたしましては金融収益は課税対象外とされているところでございます。  しかしながら、そうした課税のあり方が適当かどうかということにつきましてはやはり議論のあるところでございまして、税制調査会でもその点はしばしば議論はされるところでございます。しかし一方、公益法人一般として考えますと、一定の基金を設けてその収益でもってその基本的な業務を営むという場合もございますので、金融収益につきましての課税の問題というのは、そこらの公益法人の根幹にもかかってくる場合もございますのでなかなか難しい問題でございます。しかし、やはりそこは公益法人等の性格、活動実態も十分勘案しながら、応分の税負担を求めるということについて検討を続けることが適当であるというのが税制調査会考え方でございまして、こうした方向に沿いまして私どもも勉強はいたしておるところでございます。
  238. 秋山肇

    ○秋山肇君 東京国税局では毎年宗教法人に対する源泉所得税の調査を実施していると聞いております。昭和五十八年の調査結果を見ますと、三百七件の宗教法人を調査し、その結果、九一・九%に当たる二百八十二の宗教法人の幹部が脱税をしていたということです。このときはたしか、住職などの給与の額が日常の生活ぶりから見て著しく不自然な仏教寺院の宗教法人に限って調査しているわけでありますけれども、最近の調査の結果はどうなっていますか。
  239. 日向隆

    政府委員(日向隆君) 宗教法人の源泉監査につきまして東京国税局が実施しました調査の結果は、今委員が御指摘したとおりでございます。私ども、宗教法人の源泉監査の対象といたしまして、十八万三千の宗教法人のうち源泉徴収義務のある宗教法人は三万九千九百八十八件というふうに把握しておりまして、これに対します調査でございますが、最近の一番新しい数字で申し上げますと、三千六百七十一件の調査、指導をいたしました結果、非違のあった件数は二千八百八十件、非違割合は七八・五%、これは全国の数字でございますから東京の数字よりちょっと非違割合は低くなっておりますけれども、これによる追徴税額は加算税を含めまして三十億円でございます。
  240. 秋山肇

    ○秋山肇君 そのように多いわけですけれども、過去三年間の宗教法人の大口調査事例があると伺っておりますが、課税漏れの額、追徴税額はどのくらいになるんでしょうか。
  241. 日向隆

    政府委員(日向隆君) 過去三年間という数字は今手元に持ち合わせておりませんので御容赦をいただきたいと思いますけれども、宗教法人に対します課税関係は二つございまして、一つは、ただいま議論になっておりますように、その宗教法人がいわゆる収益事業――法人税法施行令に規定、三十三限定列挙されておりますけれども、そういう収益事業を営んでいる場合でございまして、これに対する課税事績、調査事績を申し上げますと、直近の六十一年事務年度で調査件数は四百二十三件、非違のあった件数は三百九十五件、その非違割合は九三・四%、これによりまして申告漏れ所得として把握したものは十四億円でございます。  源泉徴収の問題につきましては、先ほど私が申し上げましたので省略さしていただきます。
  242. 秋山肇

    ○秋山肇君 ここに私資料を持っているんですけれども、その源泉を払う原資があるわけですね。ですから、その課税漏れ給与の資金源の主なもの、それから課税漏れの給与の使途の主なものを幾つか挙げてください。
  243. 日向隆

    政府委員(日向隆君) 先ほど委員が御指摘になりました東京国税局の調査事例に即して申し上げますと、課税漏れ給与の資金源は、まず全体の割合で最も大きなパーセントを占めるものはお布施収入でございまして、これは三十億円程度で、全体の六八・七%に達しております。次にございますのが個人的な経費のつけ込みでございまして、これは六億円程度でございまして、大分全体の順位は、ウエートは下がりますけれども、一四・四%でございます。  それから、課税漏れ給与の使途でございますが、一番大きなウエートを占めておりますのは、預貯金等として蓄財しているというのが二十九億円程度、全体の六五・六%でございまして、その次が生活費として費消しているというのが九億円程度、全体の二一・八%でございます。
  244. 秋山肇

    ○秋山肇君 今それの四番目の順位になっているのをちょっと言ってください。言いにくいでしょうけれども、これははっきり言ってください。
  245. 日向隆

    政府委員(日向隆君) 課税漏れ給与の資金源の三番目は葬儀収入でございまして、それから四番目は墓地の永代使用料収入でございます。  それから課税漏れ給与の使途は、三番目が使用人等に対する薄外給与でございますし、四番目は住職等の遊興費でございます。
  246. 秋山肇

    ○秋山肇君 全国で十八万三千というんですから、これはそのうちの一部の法人だと思うんですけれども、やはりこの辺、氷山の一角だと思いたいんですが、そうではないような気がするんですが、その点はどういうお感じを持っていますか。
  247. 日向隆

    政府委員(日向隆君) 調査は、私ども委員も御存じのように、各種の資料、情報を集めまして、その中で申告その他の事績と突き合わせまして、私どもが問題となっている法人について実施するものでございますから、これをもってしましてすべての宗教法人に引き直すことはいかがかと思いますけれども、私どもやはり問題のある宗教法人につきましては、鋭意課税上有効な資料、情報の収集に努めまして、的確な調査をなお一層努力して実施してまいりたい、こう考えております。
  248. 秋山肇

    ○秋山肇君 私がさっきからお聞きをしているのは、一般の税金を払っている人のことからすると本当にルーズだなというふうに思いますし、今課税漏れ給与の資金源と課税漏れ給与の使途ということで四つずつ出たわけですけれども、こういう現実があるということを御認識いただきたいというふうに思うわけです。  信教の自由はもちろん尊重されなくてはいけないと思いますけれども、だからといって、宗教法人を営利のために悪用してはならないというふうに思うんです。六十三年度予算では宗教法人の実態調査を行うべく調査費の計上がされているということですが、この実態調査の主な目的、それとどのような項目について調査されるつもりなのかを、現時点でわかる範囲で具体的にお答えをいただきたいと思います。
  249. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 現在御審議をお願いしております予算案の中に、宗教法人の事業調査についての実施経費を計上しておりまして、それについては御指摘のとおりでございます。  現在、その内容につきましては検討中でございますけれども、一応考えております範囲で申し上げますと、対象法人は十八万法人の約一〇%ということで一万八千法人でございます。  それから目的といたしましては、一つは最近の宗教法人の収益事業等をめぐって生じております問題への対処というのが一つでございますし、もう一つは、もう少し長期的に宗教法人制度の適切な運営に資するというのが目的でございます。  方法といたしましては、六十三年と六十四年の二カ年間にわたって実施をしようと。調査項目でございますが、事業の内容というのが主なねらいでございますけれども、事業の種類あるいは事業を行う目的とか趣旨、それから事業を行う組織、その規定の内容、それから役職員、施設それから事業収益の内容とか使途とか、そんなようなことについてこれから内容をもう少し詰めてまいりたいと思いますが、大体そういうことを考えております。
  250. 秋山肇

    ○秋山肇君 一万八千三百、一〇%にすると言うんですが、それで今の御説明ですと、収益事業の方を重点的にするということだと、先ほどの説明で収益事業をやっているのは三%しかないわけですよ。だから、これでは意味がないと思うんですが、その点どうですか。
  251. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) この点につきましては、収益事業だけではなくて事業全体についてでございまして、収益事業、それから公益事業、その他の――その他のといいますか、もともとの本来の宗教活動の事業というものも全部、一応いろいろな事業の内容別に分けまして調査をしたいというふうに考えております。
  252. 秋山肇

    ○秋山肇君 それは文化庁さんね、やはり調査をするということからいったらば、宗教法人の一番の目的というのは宗教活動による収入ですね、これが一番でしょう。それで、公益事業による収入を得ているのは一四%だとさっき説明なさったわけですね。それから、収益事業をやっているのは三%だと。今あなたの答えというのは一番少ないところから答えているわけだよな、そうでしょう。そんなことは普通の社会の調査をするという常識からいったら反対ですよ、おかしいですよ。ちょっともう一回答えてください。
  253. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) お答えの仕方が少し適切ではなかったかもしれませんが、その大きさの順番からいえば宗教活動の事業、それから公益事業、収益事業ということになろうかと思いますが、そういう事業の仕分けに従ってそれぞれ調査を実施したいということでございます。
  254. 秋山肇

    ○秋山肇君 それは、だから最初の答えが十八万三千ある、一〇%で一万八千三百について調査活動をすると言っていながら、今の答えじゃなくて言っているわけでしょう。収益事業から入りますと言っていたわけです、あなたの答えは。だから、そうじゃないと思うんですよ。一万八千三百やるならやるで、全部その宗教法人の本来の一番の目的のものから入っていかなければおかしいというふうに言っているんですけれども、その点について答えてください。
  255. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) 私が収益事業をめぐるというふうに申し上げたからかと思いますが、これは現在の宗教法人についていろいろと不祥事に関して報道されておりますのは主に収益事業であるためにそう申し上げたのでございまして、宗教法人に関する問題の全体について対処するためというふうに申し上げるべきだったと思います。したがいまして、私今申し上げましたように一〇%を抽出いたしましてそれぞれを三つの事業に分けて調査をしよう、そういうことでございます。
  256. 秋山肇

    ○秋山肇君 国民の皆さんが税金を払うというのは血と汗で稼ぎ出したものですよね。ですから、それがやはり納められたものを使われたところが、行方というものがきちっとしていなきゃいけない。そういうことからすると、私がきょう聞いている問題もその点について聞いているんですから、文化庁もその点を踏まえて調査に入っていただきたいと思うんですが、もう一度決意を聞かしてください。
  257. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) これから内容についていろいろ検討してまいりますので、ただいま先生の御趣旨につきましては、重々銘記いたしまして検討していきたいと思います。
  258. 秋山肇

    ○秋山肇君 自治省にお聞きしますけれども、全国の固定資産税の非課税地の面積、非課税地というか、課税されている面積と非課税とどのくらいあるか教えてください。
  259. 渡辺功

    政府委員渡辺功君) 固定資産税の課税地、非課税地につきましては、私ども概要調書というのを毎年夏でございますがとりますが、そこで把握しております。  これによりますというと、昭和六十一年度のを私ども把握しているところでございますが、評価総地積、これは課税地でございますが約十六万平方キロ、それから非課税地積が約十八万七千平方キロということになっております。
  260. 秋山肇

    ○秋山肇君 このうち、非課税の中で宗教法人、学校法人等の所有主体別の非課税面積を把握していますか。
  261. 渡辺功

    政府委員渡辺功君) 非課税地につきましてはその性質上本来税務統計上は把握されないわけなんでございますが、この非課税地を私どもとしてはぜひ全体的な姿としては把握したいということで概要調書において報告を求めているところでございます。  これは地目別の地積について報告を求めることにしておりますので、山林とかそういう地目については一応報告の内容を集計しております。しかしながら、宗教法人であるとか学校法人だけじゃございませんで、所有主別の具体的な内訳ということは把握されておりませんので、御了承いただきたいと思います。
  262. 秋山肇

    ○秋山肇君 そうしますと、日本の国土は三十七万か八万平方キロですか、そうすると十六万平方キロしか課税されていないというとその割合は、税金を取っているところというのは日本の国土の幾らでもないということになるんですが、その点はどうですか。
  263. 渡辺功

    政府委員渡辺功君) ただいま申し上げましたように、地目別には報告を求めるように様式を定めてとっております。市町村もそれは非課税地ではございますけれども、かなりそれなりに対応して報告してもらっている、こう思っているわけですが、それによりますと、非課税地の中で最も大きな部分を占めますのは山林でございまして、国有林であるとか、県有林、市町村有林というような林野でございます。それから、その次に大きな面積で、約六万ぐらいだと思いますが、その他というのがございます。その大半は道路用地などではないかということでございまして、また、そのその他の中にいろいろ所有者別の非課税地積なんかも入っているというふうに私ども見ておりますけれども、その内訳は先ほど申し上げましたようにつまびらかにいたしておりません。
  264. 秋山肇

    ○秋山肇君 やはり、全国でじゃなくて、逆に言うと固定資産税がことしは評価がえになって上がっていくわけでしょう。そうすると、この課税されている部分が十六万平方キロだということになると随分少ないわけですけれども、その非課税のところを取れという意味じゃなくて、私はその辺をきちっと、どこがどういう割合で国が使っているところ、道路が使っているところ、地方公共団体が使っているところ、それから今の宗教、学校とか法人が使っているところというようなきちんとした色分けといいますか、面積は日本の国土ですから把握ができると思うんですが、この点はいかがですか。
  265. 渡辺功

    政府委員渡辺功君) 冒頭申し上げましたように、税の中にはたくさん非課税というのがございます。固定資産税もそうなんでございますが、税務当局としましては税務の課税ということの集計をいたしますので、課税地であるとかあるいは課税標準特例地であるとか、こういうものについてはきちっと把握できますけれども、非課税地につきましては特別の調査を大々的にやらないとならない。例えば地籍調査のようなことを一つ考えていただいてもそういうことがどういうことかということを御想像いただきたいのでございますが、そういうことをやってやれないことはないではないかという御指摘であるとすればあるいはそうかもしれませんが、それは税務当局だけの範囲で正確なところはなかなか把握しがたい。私どもこういった問題にもし対応するとすれば、何かの形で抽出調査をしながら推計をするとか、いろんな方法をとる以外にないんじゃないかというふうに考えております。
  266. 秋山肇

    ○秋山肇君 税務当局だけでは無理かもしれませんが、この点はそれぞれの省庁で連絡を取り合ってきちっとした方がいいというふうに思うんです。  というのは、国税、地方税それぞれの観点から見ますと、宗教法人の職員、例えば僧侶にしても一応源泉税を払っているわけですが、固定資産税に関しては原則的に非課税であるわけで、例えば境内の中にある本堂、これらの部分は非課税にしても、敷地内にある住職の自宅、これはどうなのか、その他僧侶の住居部分、これに関してはどのように扱われているのかというふうに思うわけです。さらに、自宅部分に課税しているケースがどの程度あるのか、まあ、これはどの程度あるのかと私聞いていながら、ないだろうと言ったらおかしいんですが、あるのか。例えば都内ですね。この近くの一等地の中にある宗教法人の境内に住んでいたらそれは税金を取られていない。その隣に住んでいる人たちは高い固定資産税を取られているということを皆さんがわかったら、どうやって納得させると思いますか。
  267. 渡辺功

    政府委員渡辺功君) 固定資産税におきましては、宗教法人が専らその本来の用に供する本殿、拝殿、庫裏等の境内建物及び境内地については非課税ということになっております。これは法律で定められているところでございます。  それで、これらのものは宗教の布教、護持のために必要なものとして非課税とされているものでございますけれども、住職等の日常生活の用に供されている庫裏につきましては、住職等が特にこれを他の目的のための用に供しない限り、この寺院全体の一体としての管理のために起居しているというふうに考えられているところから、寺院の宗教目的のために必要だというふうに考えられるところでございます。そして法律は、御高承のとおりでございますけれども、宗教法人法第三条に規定する「境内建物及び境内地」とありまして、その宗教法人法の三条一項というところに「本殿、拝殿、」ずっといきまして「庫裏、教職舎、宗務庁、」というようなことが列挙されておるわけですが、そうした根拠によりまして非課税とされているわけでございます。
  268. 秋山肇

    ○秋山肇君 そうしますと、大蔵省にお聞きしますけれども、源泉税も取らない方がいいんじゃないですか。
  269. 水野勝

    政府委員水野勝君) これは公益法人の方々でも、源泉税の場合はその住職の方あるいは公益法人の役員の方、そうした方々の全く個人的な生活、消費生活のために費やされる部分、これは一般的に広く所得税をお願いしている。その世界の中にはその点はお入りいただくのが至当ではないかと思うわけでございます。
  270. 秋山肇

    ○秋山肇君 すると、自治省と大蔵省とおかしいんじゃないですか。宗教活動をしていれば何でもただでいい、片方は個人の生活をしている部分については当然源泉は取らなきゃいけないということだったらおかしいでしょう。ちょっとその辺整合して答えてください。
  271. 渡辺功

    政府委員渡辺功君) 所得課税につきましては国税、地方税同じでございますので、そういう意味の整合はとれておると思うのでございます。したがいまして、国と地方といいますか、国税と地方税との違いというよりは、固定資産税において一体宗教法人が専らその本来の用に供する境内建物及び境内地というものに入るのか入らないのか、こういう議論なんだろうと思います。  そこで、先ほどちょっと申し上げましたが、本堂等と一体として、境内建物の一群の建物全体の管理と一体となっているような起居する、庫裏と言われるようなものは大体そういうものだという社会通念があるわけですが、そういったものについては宗教活動全体と区分がなかなかできない。もちろん、住職が住むものでも別のところに住宅があるというような場合はそれは別のものだというふうに観念される。そこのところの区分けといいますか、そこが固定資産税の物をつかまえているわけでございます。そういう趣旨に御理解をいただきたいと存じます。
  272. 秋山肇

    ○秋山肇君 理解できないけれども、先へ行きます。  それで、私は別にお寺さんをいじめようと思っているわけじゃないんですが、実は私、先日私の友人の奥さんが突然四十五歳で亡くなったんです。宗派は曹洞宗の方でしたが、北海道出身でしたので、川崎ですけれども、近くに知っているお寺がないかということで、近くのお寺に通夜をやってください、お葬式をやってくださいと幾つも行ったんですけれども、宗派が違うからだめだと言って受けてもらえなかったわけです。そして、それで川崎の市営葬祭場でやっと見つかってお葬式はしました。今度はお墓が必要だということで、お墓を購入したいので宗派の違うお寺さんに行ったら、それじゃお墓を売りますと言うんですよね。  この辺で、宗教というのはそうじゃない、人の因っているときにこそ手を差し伸べるべきだと思うのに、金になるときは手を出してきて、そうじゃないときは理由をつけるということがおかしいと思うので、宗教法人というものは公益法人の中の一つであり、そのため税の優遇措置を受けているのでありますから、他の公益法人と比べはるかに優遇措置を受けているのにもかかわらず、具体的な形で社会への還元を行っている宗教法人が非常に少ないのではないかと思うのです。公益性を発揮しない宗教法人に対し、どうして税制面で優遇措置が行われなければならないのか大変疑問に感じるんですが、この点について最後に大蔵大臣の御所見をお伺いして質問を終わります。
  273. 水野勝

    政府委員水野勝君) やはり宗教法人を含む公益法人、これは基本的には普通の法人とはやはりその存立の目的、性格が違うのであろうと思われます。しかし、民間と申しますか、一般の経済活動と競合するような場合、そうした場合につきましては、これは所得税、法人税それぞれお願いをしたい、こういう基本的な考え方で区分をし、制度化されておるところでございます。  したがいまして、どこの分野までが民間と競合し、営利事業と競合して課税のアンバランスが生ずるかという点につきましては、常時私どももそこは勉強し、検討を続けてまいるつもりでございますけれども、基本のところはやはり一般の法人とはそこは一線は違うのではないか。それは否定することはなかなか難しいように考えるわけでございます。
  274. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 基本的には、ただいま主税局長が申し上げたとおりと思いますが、いわゆる収益行為の中でも、本来の宗教活動を助けるためという部分はそれは私はあるであろうと思うのでございます。しかし、それを超えて全く普通の営利企業がやるのと似たようなことを似たような目的でやられる、あるいは法人の行為でなくて、それが個人のいわば生活あるいは個人の収入といったようなことと非常に近くなってきているような場合には、これは原則は原則でございますけれども、そうばかり考えるわけにはいかない。  しかし、税法としては、法の決め方としては今のような原則を立てる以上になかなかそこは進めませんで、要は法人そのものが、本来の趣旨にかんがみてその辺の活動を御自身で自律していただきたいということと、また監督官庁もあることでございますので、監督もお願いをしたい、そういうふうに考えるところでございます。
  275. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で秋山肇君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  276. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、青島幸男君の質疑を行います。青島幸男君。
  277. 青島幸男

    ○青島幸男君 私は、まず原子力発電のことに関してお尋ねを申し上げたいと思います。  最近では余り世界各国で原子力発電に積極的でなくなってきているというふうに受けとめておりますけれども、先進諸外国の最近のこの原子力発電に対する対応の仕方、格好というものをまず通産省にお尋ねいたします。
  278. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 世界の原子炉の設置状況を見ますと、昨年の末で、アメリカが百三基、フランスが四十八基、ソ連が四十九基、日本が三十六基、西ドイツが十九基、カナダが十八基、イギリスが三十八基、スウェーデンが十二基、こういったあたりが上位を占めているところでございます。  チェルノブイリ以降、スウェーデンとかそれからイタリアなど一部のヨーロッパの諸国におきまして見直しが行われていることは事実でございますけれども、基本的には、先般来日いたしましたブリックスIAEA事務局長も述べておりますとおり、経済性あるいは酸性雨の問題がないこと、それからいわゆる二酸化炭素濃度の上昇に伴う温室効果の問題がないこと等々から見まして、他の電源と比較してすぐれた電源であるという見方が依然として一般的でございます。  また、昨年開催されましたIEAの閣僚会議におきましても、原子力発電の推進につきまして合意が得られているというような状況でございます。
  279. 青島幸男

    ○青島幸男君 いや、一方でそういう動きがあるかもしれませんけれども、例えばスイスでは今後四十年以内に原発を全廃しようというような動きが出ておるようですし、エジプトも原発計画を変更した、これも首相発表でございますし、オーストリア、ツペンテンドルフ原発では解体、それからウィーン原発も解体、これ国民投票でそういう結果を得てそうなっているということですし、スウェーデンは二〇一〇年までに原発を全廃したいというように政府決定をしているようですし、デンマークは一九八五年三月に原発は持たないという国会決議をしておるようですし、アメリカなどでも原発の閉鎖とかキャンセルというようなものも行われているというように聞いております。  それから、イタリーではこれが国民投票をいたしまして、八〇%の反対のもとに原発をつくるのをやめようじゃないかというような立場に今考え方が向いているようです。政府が原発建設の白紙撤回を考えているということですね。そして、この問題については大変に議論を国内で生みまして、この混乱の中でゴリア首相は十一日に辞表を提出するというようなことで、イタリーの国民の間では非常に関心が高いということでございますね。それで、我々ふだん考えますと、イタリーの民族性といいますか、大変に陽気で楽天的だというふうな感覚で見ておりましたけれども、このイタリーの方々が、国民投票で八〇%もの方が原発に反対しているということが明らかになって、これをやめる方向に議論が進んでいるというようなことを考え合わせますと、やっぱり世界の趨勢としては原発に不安を抱いているというような気がするんです。  こういうふうに対応が変わってきているということをたしか通産省だってわかっているはずだと思うんですけれども、対応が変わってきた原因は何だとお考えですか。
  280. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 基本的には、チェルノブイリ事故さらにはその前のスリーマイル・アイランドの事故というような経過がございまして、安全性をめぐる問題につきましていろいろと議論が出てきているというようなところがやはりあろうかと考えております。  また同時に、第一次、第二次石油ショック以降かなり石油価格が上昇いたしまして、全般にエネルギーの供給力が上昇してエネルギー需給が緩和をしているというような状況も、当面影響をしているのではなかろうかと考えております。
  281. 青島幸男

    ○青島幸男君 それは石油の価格が下がったことも確かに影響はしていると思いますけれども、世界じゅうのこれにかかわる方々の不安がそういう方向に走らしているのではないかと考えるわけです。つまり、チェルノブイリだとかスリーマイル島の事故を見ますと、原子力発電のあの炉というものは、一たん間違って爆発でもいたしますと、原子爆弾といいますか核爆弾がおっこったと同じ結果をもたらすわけでありまして、チェルノブイリを見てもわかるとおり、ウクライナ一帯が大変に汚染をされている、しかも西北の風が当時吹いていたらしくて、ヨーロッパ一帯に死の灰が降るというような状況から考え合わせますと、大変危険だということはもう明白だと思うんです。ましてや国土の狭い我が国でこういう事故が起きたりしますと、これはもう国民全員の死を意味するんじゃなかろうか。即座に死ぬのならまだしも、不治の病というような格好で苦しみのうちに死ななきゃならないというようなことを想像しますと、ぞっとするわけであります。  事故も、信ずべき筋からいろいろとそれに近い事故があった、もうちょっとでスリーマイルにいくところだったというような、ニアミスと申しますか、そういう事故もあったやに私は聞いておりますけれども、通産省に報告されております事故の件数と実態をお知らせください。
  282. 逢坂国一

    政府委員(逢坂国一君) 故障、トラブルの件数の御報告の前に一言。  ただいまのお言葉でございますが、原子力発電所のとそれから原爆と同じだ、こういうようなのは全くの誤りでございます。これは、原子力発電に批判的な方々の中でも少しシステムその他を御存じの方は、その辺はよく御理解いただいているところであります。  それからもう一点は、安全性の問題につきまして、放射性物質が原子力発電所の原子炉の中にある、こういうことは十分事実でございますし、これを防ぐための対策というのを私どもは随分力を入れてやっておるわけでございます。チェルノブイルの事故が起こりましたために、同じようなことが起こるのではないか、こういうようなことを心配されている向きは私ども承知しておりますが、この問題は私ども、起こりまして以来、原子力安全委員会を中心といたしまして徹底した事故原因の究明をいたしまして、その報告にありますように、我が国の原子力発電所では起こり得ない事故である、こういうことが結論でございます。  最近の原子力発電の問題に伴います関心が高まっておりますので、事故と先ほど言いましたが私どもは事故とは思っておりません。機器の故障、トラブル等の件数が多いのではないかというふうに思われるかもしれませんが、そういうことはございません。もう六十二年度、年度末でございますが、法令に基づきます報告件数は、今年度、六十二年度十九件でございまして、六十年度、六十一年度それぞれやはり十九件でございますので、全く増加しているということではございません。たまたま関心が集まったためにそういうことが目についたのではないか、そのように思います。
  283. 青島幸男

    ○青島幸男君 そういうお答えが返ってくるとは思っておりましたけれども、しかし、未発表の分を入れるとチェルノブイリ級の事故が起こりそうだったというようなこともかなり報告されておるようでございまして、私も大変不安に感じておるわけです。  それで、我が国の方々はどういう考え方を持っているかというと、「原子力に関する世論調査」というこれ総理府で出したものですけれども、原子力発電に対する不安。原子力発電について何らかの不安、心配に思うことがあると答えたのは八五・九%ということでございまして、事故や故障などで放射能が漏れるからとか、放射線が人体や子孫に影響を与えるからということ、それぞれ四〇%近くの方がお考えになっていらっしゃる。廃棄物の保管や処理、処分などが十全、十分でないからというような不安もあるんでしょう。いずれにいたしましても八六%近くの方々が原子力発電に対して不安に思っているということでございます。こういう不安があればこそ、伊方原発の出力調整実験に対して全国から五千人もの方々が集まって反対をされたということだろうと思います。  それで、今あります原発もやがては耐用年数が来て廃棄されるというようなことも考えられるわけですけれども、廃棄物の処理を含めまして炉の廃棄などについての方法、どういうふうになっておりますか、お知らせください。
  284. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 発電用原子炉の寿命は、一般的には三十年から四十年と目されておりますけれども、今後の品質管理の向上によりましてさらに長寿命化が図られると見込まれておりまして、日本で具体的に日程に上がってまいりますのは、早くても昭和七十年代に入ってからではないかと見込まれております。  廃止対策につきましては、総合エネルギー調査会の原子力部会におきまして昭和六十年七月に報告が出されております。運転終了後五年から十年間密閉管理をいたしました後に、三年から四年かけて解体撤去するいわゆる密閉管理・解体撤去方式というものが望ましいと報告をされているわけでございます。これに必要な技術につきましては、既存の技術でも十分対応可能でございますけれども、一層の改善を目指しまして開発に取り組んでいるところでございます。
  285. 青島幸男

    ○青島幸男君 しかし、廃棄物に対しましても、特に高濃度のものを廃棄する方法が明確に確立されていないというのが現状だと思います。  財団法人電力中央研究所は、二十三日、原子力発電に伴って排出される高レベル放射性廃棄物の処理について、欧州共同体の超ウラン元素研究所と共同研究していくことで合意したということですね、三月二十四日の報道ですけれども。ですから、廃棄物の処理に関してこれから研究をしていくというような格好で対応するということが、もう既に原子炉が動いている状態の中でこれだというのはちょっと手おくれな感じも私否めないと思うんです。いずれにしましても、放射能が弱まるのが、放射能の半減期が数十年というのもあるかもしれませんけど、プルトニウムのように何万年もかかるというようなものから考え合わせますと、廃棄の仕方も確立されていない、だからこそ六ケ所村は村を分けて賛成、反対ということで世論を沸かしているんだと思うんです。  この廃棄物処理の危険ということを考え合わせますと、NHKのドキュメントでも私見ましたけど、いずれにしましても炉を建設して、しかもその炉を廃棄するときに炉の中に非常に高濃度の物質が充満している、これをすべて安全を見越して廃棄するというようなことを考えますと、大変な労力と危険を冒してやらなきゃならないわけですから、安全を考えると大変な労力と金がかかるということを考え合わせますと、炉の建設から運転、それから廃棄してこれが安全に処分されるまでというようなものを通算考えますと、大変高くつくんじゃないかという気がいたします。  しかも子々孫々にまで廃棄物を地中に残すということで、例えば二千年前のローマ時代にそういうものがあったとして、我々が今遺跡を掘り出したらそういうものが出てきたといったらどういう感じになるかということ、これが子孫たちにそういう危険のツケを回してしまうというふうなこと、これが大変な間違ったことを我々はしているんじゃないかという気がするんですけれども、我が国の今後の原発への対応のあり方も少し変えていいんじゃないかという気がしますが、大臣、御所見はいかがでしょうか。
  286. 田村元

    国務大臣(田村元君) 青島さんのおっしゃるお気持ちは、政治家でございますから私もよくわかります。私自身自分の地元で原子力発電所を設置するかどうかでもめておりますし、それで随分賛成、反対両方の意見を聞いて、いろいろと自分の立場でまた悩みもあるわけであります。同時に私は、いつぞやでございましたか、ここで申し上げたことがありますが、長崎で原爆被爆しておりますから被爆者手帳を持っております。そういう非常に微妙な自分の感覚、神経というものがありますから、なおさらのこと原子力発電に対して私自身も神経質になっておることは事実でございます。  ただ、率直に申しまして、今後のエネルギーをどうするかということになりますと、非常な悩みを率直に言って感ぜざるを得ない。原子力発電に対してあるいはその他の問題に対して批判、反対はありますけれども、その意見は全国にたくさんありますけれども、じゃそれにかわる案はということになるとなかなか御提示がないわけであります。  と申しますのは、石油の寿命はあと三十年とも言われ、四十年とも言われております。よく見ても四、五十年ということでございましょう。しかも石油自身の現在の情勢から言っても非常に不安定で、政情のフロートやいろんなことがございますから、先般もオタイバさんがやってきて十八ドルぐらいで原油を安定させたいと言っておりましたけれども、その方針を放棄して一種のダンピングのようなことになってきたという一面もございます。しかも不幸なことに、石油を生産する地域は世界で最も政情の不安定なところが多いわけであります。そういうこともございますので、原子力発電も含めましていろいろと新しい代替エネルギーの開発というものに通産省は取り組んでおります。  我が国は残念ながら資源がありません。エネルギー体質はまことに脆弱であります。しかも、今原子力発電に対して反対を打ち出されました国々を私はうらやましくさえ思うことは、その国々に比べて日本は大工業国であって、工業で飯を食っていかなきゃならぬような面がありますから、エネルギーに対する必要度というものがまた極端に異なってくるわけでございます。  そういうことでございまして、例えて申しますと、いい機会でございますから申しますならば、石炭、天然ガス、ローカルエネルギー等につきましては既に実用化されて、そして導入促進策を講じておりますが、石油なき後どうするか。そうなれば、内燃機なんかは石炭でも液化しなきゃならない。その石炭液化の予算だって、先般の御質問もありましたが、多いときもあれば少ないときもあるというようなことでございます。石油の価格にもよります、円高にもよります。そういう点で、石特会計という特定資金が枯渇してくれば苦しい思いをしなきゃならぬ。しかし、これは続けなきゃならない。また、クリーンなエネルギーでございます太陽光、あるいは風力、波力等の新エネルギーにつきましても、その実用化へ向けて各種の技術開発を行っておりますが、その実現はまだまだ多年月を要すると思います。  でございますから、海外炭や中小水力等の石油代替エネルギー資源の確保にも努めておりますけれども、日本はもう水力発電も御承知のように自然を破壊するとおしかりを受けるほどダムももうほとんどつくり尽くされたと言ってもいいぐらいつくられてまいりました。でございますから、そういうふうに考えますと、我々は原子力発電というものの安全性を確保しながら、これにもやはり頼っていかざるを得ないという苦しい立場もございます。石油依存度は、四十八年度が七七・六%でございました。六十一年度は五六・八%、恐らく昭和七十五年といえば西暦二〇〇〇年でございます。二〇〇〇年における石油依存度は四五%以下に抑えていかなきゃならぬのじゃないかというふうにも思われます。  でございますから、そういう点で非常に深刻な思いをして代替エネルギーの開発に取り組んでおりますが、我々はもう石油が枯渇するということを考えれば、将来日本の生命にもかかわってくるエネルギーというものを子供や孫につないでいかなきゃならぬのでございます。その悩み大きいエネルギー事情と我々は取り組んでおるわけでございます。もちろん、原子力発電の安全性というものは、的確にこれは我々は確立していかなきゃなりません。IAEAのブリックス事務局長が先般参りました。安全を保障してくれました。また、IEAの閣僚会議に私も出ましたが、世界の先進国はなお原子力発電を必要とするという合意に達した。皆それぞれにそういうことで原子力発電というものを今後も志向していかなきゃならぬこの世界的な趨勢、やはり、幾つかの国は反対かもしれませんが、世界的には先進国はそれを志向せざるを得ないということもひとつ御理解を賜りたいものでございます。
  287. 青島幸男

    ○青島幸男君 るると御説明をいただきまして、大臣のお立場からすれば苦衷のほども私お察しできます。いずれにしても安定的なエネルギーの確保というものがなければ、我が国の経済も国民生活すら送れないという状態です。  歴史的経緯から見まして、あの時期に原子力発電に依存しなければならなかったという感じもわからないわけじゃないんです。というのは、一時期我が国が経済成長を遂げる過程で、中近東から来るオイルの上に乗って産業も活発化し、我々の生活もよくなってくるということで、いずれにしてもオイルの上に乗って経済も国民生活も成り立っていると、しかも九九%以上輸入に頼っておるという状況の中でオイルショックが来たわけですね。あのときのことを考えますと、本当にこれから先どうして経済をやっていくんだろう、どうして国民生活を支えていくんだろう。トイレットペーパーの不足を予見してスーパーに奥さん方が殺到するというような、ちょっと今考えると不可思議に思えることすらあったわけですね。  ああいう状況のときに、もし安全なものだったら原子力発電に頼らしてもらったらいいんじゃないかという気持ちもあって、当時一応の技術的な確立は見ていましたから、これに移行しなきゃならなかったという感じもわからないではないんです。しかし、今になってこうしてみますと、先般もクリーンエネルギーの開発について大変苦労なすっているというお話も伺いました。液化の石炭をつくろうということで毎年予算もとって研究をしているんだけれどもなかなか成果が上がらない。上がらないと言いながらもこれをやっていかなきゃならないという大臣お話です。  私は先般質問にお立ちになった方とは反対の考え方でして、どんなに金がかかっても命にかかわることではないからして、やっぱり代替エネルギーを我々の手で何とかつくっていって、これからの子供たちに対する、国土に対する危険を少しでもとっていくような努力は延々と積み重ねていかなきゃならないと思いますね。実際に、少しぐらいの予算をけちったために命を失うということになっては大変だということで、クリーンエネルギーの開発というのも延々と続けていなければなかなからちが明かないというのもよく承知しております。  しかし、今になってみますと、バレル十八ドルというようなことで、命の危険を冒してまで原発に頼らなきゃならない状況では現実はない。先々、今大臣お話しになられましたように、三十年、四十年先どうなるかわかりません。しかし、新たな石油資源の開発とか化石燃料の開発もあるかもしれません、発見もあるかもしれません。その辺まで考えますと、命が大事だということを考えると、国民の皆さん方に少しぐらいの耐乏に耐えていただくというようなことをしてでも原発に依存するというそのパーセンテージを、今発電の場合原発に対する依存度が三〇%を超えたそうですね、これを弱めていくようにしなければならない、これは政治家としての私は大いなる決断だと思いますね。こういうことを勇気を持っておやりになれば後世の史家が絶賛をすると私は思うんです、お互いさま生きていればの話ですけれども。事故でもあれば全員死ぬというようなことになりますと、後世の史家がと言っている場合じゃないかもしれませんけれども。  クリーンエネルギーの問題ですが、石油危機のときにあれだけ大騒ぎしましたけれども、のど元過ぎれば熱さを忘れるですか、一時は波の力にまで頼って発電をしようじゃないかというところまで研究が進んでおりました。今やちょっと忘れられた感じになっておりますけれども、これはお願いですが、重ねて研究開発に努力をなすって新しい技術が日夜日ごとに開発されている状況でありますし、太陽エネルギーにしてもそれから石炭の液化にしてもますますの御努力があってほしい、これは要望ですけれども、いかがお考えですか。
  288. 田村元

    国務大臣(田村元君) まこと示唆に富んだ御意見で、今の御意見は大切にしていきたいと思います。  ただ政治というのは難しいものだと青島さん、私は思うんですよ。それは、オイルショックが来れば政治が悪い、じゃオイルショックが来ても大丈夫なように備蓄をしようとして備蓄をすればむだ遣いするな、それじゃそうですかといって備蓄をぶん投げてもしオイルショックが来たら何しているんだと、とにかく難しいものでございます。私は通産大臣になって、よくもまあ半導体にしても東芝にしても、あるいは何から何まで、あげくの果てが白島なんて、あの備蓄の問題、私は事故が起こって初めてあれがあるということを知ったんですが、それにしてもいろんなことが起こりました。それとて皆悪気があってやったわけじゃないけれども裏目に出ている。政治というのは難しいものだと思います。  いずれにいたしましても、政治というものは、行政もそうでしょうけれども、こういうような猪突型じゃいかぬと思うんですね。今の御意見もよく踏まえながら、今後とも代替エネルギーの開発、大号令をかけていきたいと思います。
  289. 青島幸男

    ○青島幸男君 私感銘を受けましたのは、大臣お話の中に、原発をやめようという国がある、その国をうらやましいと思うという御発言がありましたけれども、そういうお気持ちでおいでいただけば依存を低めていこうというふうにお考えになっているんじゃないかということを拝察いたします。よろしくひとつ代替エネルギーの開発とともに、原発の依存度を低めるように御努力をお願い申し上げたいと思います。  次の問題に移りますが、上海で起こりました事故、その後の情報を調べますと、思ったよりずっと悲惨な状態になっておるということで胸を痛めておるわけでして、本当に命を落とされた学生諸君には心から、それから御家族にお悔やみ申し上げたいと思いますし、けがをなすった方にもお見舞いを申し上げたいと思いますけれども、交通事故という、ああいう大規模輸送というものが一朝事あると大変な悲惨なことを起こすんだということを考えております。  折しも、我が国は青函トンネルも開通いたしましたし、四国への橋もかかりまして、これで全国が一本のレールでつながったということで、改めて交通鉄道網時代が認識され直してくるんじゃないかというような声もあります。そのゆえにJR各社に対する国民の期待もまた非常に大きなものになっていると思います。  そこで、運輸大臣としては交通行政が安全に保たれるようにますますの督励といいますか、監督に力を注いでいただきたいというふうに思いますけれども、御決意のほどをお聞かせください。
  290. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) もうおっしゃるとおり、安全の確保というものは運輸の事業の最優先事項、大前提でございますので、それをなお徹底するようにこれからも指導していくつもりです。
  291. 青島幸男

    ○青島幸男君 御決意を承りまして、そのようにお願いを申し上げます。  先般、石垣島空港の問題で、委員会等で石原運輸大臣が御発言になったということで多少論議がありましたけれども、関係方面に物議を醸したり、あるいは省内に多少の混乱が起こるというようなことを招くにしても、実際に信念を持ってお考えになっていらっしゃることをつまびらかにするということは勇気の要ることだし、私はそれはそれなりに敬意を表したいと思います。  あの開発にしましても、空港をつくったからといって観光開発が進むとは限らないわけですね。多少とも観光開発が進むにしても、そうなってくると今度本土からの企業、大企業が入ってきて乱開発を進めたりするということで、結局は地元に余り利益をもたらさないという結果も幾つかありました。そういうことからすると、空港をつくるためにサンゴ礁を埋め立てるということは尚早だという気はどうしても否めないんですけれども、空港の滑走路を延長するよりも、むしろ新しいタイプの飛行機の開発に期待する方が私はいいんじゃないかという気もしているんですね。  それで通産省、この間私もニュースで拝見したんですけれども、STOL機という非常に滑走路を短く離着陸ができるという飛行機の実験が行われたと聞きましたけれども、この実験の結果と今後の成り行きなどについておわかりでしたら教えてください。
  292. 川崎雅弘

    政府委員(川崎雅弘君) 科学技術庁の方からお答えを申し上げます。  ただいま先生御指摘のものは、昭和五十二年度から開発に着手してまいりました短距離離着陸性能を持ったいわゆるSTOL機と言われているものでございまして、昨年の十月に九百メートル以下で離陸する実験を始めておりましたところ、先般今度は四百五十メートル以内で着陸するという初めての実験を行ったものでございます。今、これから六十三年度もこういう飛行実験を繰り返しましていわゆる技術的な成果をデータベース化してまいる、将来の開発に備える準備をするというような内容でございます。  なお、「飛鳥」自身は実験機でございますので、機体自身はC1という国内で開発されました輸送機の機体をそのまま借用しておるわけで、直ちに人が乗れる状況にはなっておりません。
  293. 青島幸男

    ○青島幸男君 それから、ジェット機ができてからプロペラ機が駆逐されたという格好で推移しているわけですけれども、実はプロペラを回して空気の中をかき回して前へ進むというのはどうしても時代おくれで、ある程度限界があるということで放てきされていたんですけれども、今度は新材質で薄い扇風機といいますか、むしろ船のスクリューに似た格好の六枚羽とか八枚羽とかというプロペラを開発して、これで非常に音も低いし、短距離で離着陸ができるというようなタイプの飛行機を今アメリカで開発中だというふうにも聞いております。  ですから、もしそういう短い滑走路で離発着ができる大型の飛行機というようなものの開発が進めば、何も方々の空港で大事な自然を破壊して滑走路を延ばさなきゃならないというようなこともなくて、八方丸くおさまるんじゃないかという希望的な気持ちで私はおるわけですけれども、なかなかそうもいかないかもしれません。しかし、航空機の歴史はたかだか六十年かそこらですし、急にそういうことが日進月歩あるとも思われるわけです。  石垣の場合にしても、気持ちはわかるんですよね。一回羽田から那覇へ行って、那覇から乗りかえていって六万ぐらい金がかかる。だったら石垣へいきなりジャンボクラスの飛行機が着けば観光も進むんじゃないかという短兵急なお考えで自然破壊をしてしまうというようなことが考えられているわけで、それはやっぱりもう一回考え直さなきゃいけないんじゃないかと思います。何ですか、先ほどのニュースですと、羽田空港が年間の利用客が三千万人を超えたというような大変なことでございまして、こういう事態ともかかわり合いますと、近い将来に航空機行政にもいろんな変革が起きるんじゃないかという気がしますけれども、その辺も絡めて運輸大臣、どうお考えでしょうか。
  294. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) まず一般論から申しますと、日本は非常に国土が狭小なものですから、既存の飛行場を延ばすということは非常に時間もお金もかかります。今、地方で活躍しているYS11、これは立派な飛行機ですけれども、そろそろ耐用年数の限界に来まして、これにかわるもう少しキャパシティーの多いジェット機がないかと思っておりますが、残念ながらこれに該当する飛行機がなかなかございません。また、あっても非常にコストが高いという問題もあります。  もう一つ石垣に限って申しますと、年間七十万を超す乗客がおられるわけで、東京から直行便があれば非常に便利だと。ただ、そのためには二百五十人を超す中型の旅客機が発着できる飛行場となると、二千メートルということで、今の飛行場の中で離発着できる、しかも二百五十人を運べるような飛行機を探すんですが、これはもう今のところ全くございません。また、「飛鳥」も非常に期待しておるんですけれども、これも先ほど説明があったようにデータをとるだけの実験機でありまして、仮にあれが実用化されたとしても、C1というのはせいぜい六十人ぐらいしか運べませんからとても該当しないということで、新しい機材の開発は非常に時間とお金がかかると思われますが、日本のような地理的条件のある国にとって、本当に自国製であろうと外国製であろうと、中型でおっしゃるようなSTOLのジェット機が開発されることは非常に望ましいと思いますけれども、なお期して待たなくてはならないと思います。
  295. 青島幸男

    ○青島幸男君 通産大臣と運輸大臣、御退席くだすって結構です。  自治省にお伺いをいたします。  自民党は、企業の政治献金枠をふやす作業をしているというふうに承っておりますが、これは政治資金はできるだけ個人の拠出によることが望ましいというような理念でつくられております現行の政治資金規正法の理念にかなり反すると思うんです。それから、現行法の五十五年の改正時に、五年後に見直したらどうだということになっていたわけですけれども、もう十年近くたつんですけれども一向にこの見直しが進捗しない。あるいはそれ以上に企業の政治献金枠をふやすという全く反対の方向にいっているということはなかなか理解し難いんですが、これについて自治大臣の御説明を承りたいと思います。
  296. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 自民党の選挙制度調査会の政治資金等に関する小委員会において政治資金規正法の改正について議論がされていることを承知いたしております。これは物価調整的見地からの寄附限度額の見直しなどを行おうとすると聞いておりますが、今後さらに自民党内において議論されるものというふうに思います。  いずれにしても、政治資金のあり方は選挙制度と密接な関係を持ち、また政党の財政基盤にかかわるところから、各党の政治活動に直接関連してくる問題でもありますので、各党において十分に議論を尽くしていただくことが必要であるというふうに考えております。  なお、個人献金の強化は望ましい方向だとは思いますけれども、企業なども一つの社会的存在でございますので、それらが行う政治献金がよくないと決めてかかるのはいかがなものかというふうに考えております。  なお、政治資金規正法は、施行後五年を経過した際に見直す規定があるわけであります。御指摘のとおり五十年の法改正において附則第八条といういわゆる見直し規定が設けられておりまして、自治省といたしましても、過去の収支報告書にあらわれた政治資金の状況についていろいろと分析を行うとともに、政治資金に関する各方面の意見や諸外国の政治資金制度について資料の収集などに努めております。しかしながら、政治資金規正法の見直しについては、選挙制度のあり方と密接な関係を持つとともに、各党のよって立つ財政基盤が異なっておりますので、今後とも各党の政治活動に直接影響を及ぼすものであるので、自治省としても事務的に案をまとめるということは容易ではなくて、まず各党間で十分に議論を尽くしていただきたいと思っております。
  297. 青島幸男

    ○青島幸男君 大体予想どおりのお答えでございますけれども、この問題につきましてはまた改めて大蔵大臣にもたくさんの質問を用意させていただいて、今後の機会にまちたいと思います。  自治大臣、御退出なすってよろしゅうございます。  あとは文部省にお尋ねをしたいんですけれども、何ですか、文部大臣は御所用と申しますか、高校野球の始球式に臨まれるということで、青少年育成のお立場から結構なことだと思ってはおりますけれども大臣がおいでになれば御意見も承りたかったんですけれども、以下は文部省にお尋ねをいたします。  最近の中学、高校の問題ですけれども、大変に理不尽と思われるような校則に縛られて、学生、生徒が非常に苦痛を強いられているというようなニュースもあるんですけれども、中学、高校における学校の規則、校則のありようについては文部省はどういうふうにとらえていらっしゃるのか、まずそこからお尋ねいたします。
  298. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 先生既に御案内のとおり、学校教育におきましては知徳体の調和ある発達ということで、それぞれの発達段階に応じまして学校教育の目標の達成のための共通のルールというのがやはり必要でございます。その点では、集団生活であるということや、知徳体の点ではそれぞれ未発達の段階にあるというところから、必要な遵守すべき事項ということで生徒心得とか校則というものが必要であるということがやはり私どもは適切なことだというふうに考えております。  ただ、多々御指摘がある点は、やはり校則、生徒心得が余りにも瑣末的になっているとか、あるいは管理主義的になっている、いろいろ御批判のあるところはよく承知しておるわけでございまして、その点につきましては私どもも十分留意しつつ現在も指導をしておるところでございますが、今後もその点については学校等を、教育委員会を通じてではございますが、指導に努めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  299. 青島幸男

    ○青島幸男君 その辺が問題なんですけれども、余りにも瑣末的なものが多いんですよ。靴下にワンポイントマークが入っていただけで停学だとか、髪の毛にパーマをかけると退学だとか、男子生徒は全員頭を坊主にしなければ退学を命じるというような、ちょっと人権じゅうりんに近いような、個人の表現の自由ということもありますし、頭を丸めようと伸ばそうと学校教育と余り深いかかわりがないように思うんですけれども、そういう理不尽とも思われるような校則で学生、生徒を管理するというような格好で教育の場に臨むというのは、伸び伸びとした創造力を養うというような一番大事な青春の時期にそういう発想の芽を摘んでしまうという気がしますので、実態をよくとらえられてもうちょっとちゃんとした指導が行われてしかるべきだと私は思いますので、その点御留意願いたいと思います。  もう一つは、バイクの免許を取ると退学と、こういう学校があるんですね。十六歳になりますとバイクの免許を取ることは法律的には認められているわけですし、免許を取ったために退学になったというようなことはむしろこれは憲法違反みたいな気もするんですけれども、その点はどういうふうにお考えでしょうか。
  300. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) バイクの問題でございますが、この点は御案内のとおり非常に高校生を中心とした交通事故というものが多かったという時代がございました。そして、御指摘のとおり、免許を取らない、乗らない、買わないというふうな三ない運動というものが、これは保護者あるいは教育委員会、学校関係者、いろいろな各界各層からの声のまとまりとして各都道府県でやはり高校生についてはそういう点について十分留意しよう、そういう点が校則でございますか、そういうものに盛り込まれておるという実態がございます。これは約半数ぐらいの都道府県でそういう実態がございます。この点はやはりいろいろ規制の問題がございますけれども、そのことのゆえに非常に事故が減ったという実態も顕著でございます。  かつ、この点について裁判になったことがございまして、この点、地方裁判所の判断として、やはりこういう三ない運動というものは社会的な現象としての交通事故の問題、学校教育の高校生の立場という点から考えれば、それを校則で規制することも違法ではないというふうな判決も出ておるような現状でございますけれども、やはり社会的な現象としてのいろいろな子供たちとのかかわりということで、この点、三ない運動がある地域で必要であるということも認めざるを得ないというふうに私どもは現在考えておる次第でございます。
  301. 青島幸男

    ○青島幸男君 とにかく事故を怖がるというのはどこの親御さんも同じだと思うんですけれども、親御さんの方からむしろ学校に要求があって、免許を取らせない学校に、バイクで通わせないというようなことを学校側にむしろ父兄の方から要求が出てそういう結果になっているというケースも散見するようでございます。しかし、事ほどさように学校が全く理不尽とも思われるような校則で生徒を管理、縛っておりまして、例えば頭髪の問題なんかで裁判が起こったりしているのも幾つか聞くんですけれども、裁判を起こしましても、日本の裁判は御承知のように長引きますね、三年たちますともう卒業の時期を迎えるわけですから、本人に当事者能力はないというようなことになりまして、いつの間にかうやむやのうちに済んでしまう。こういうことが続きますと、学校の校則というのは非常に理不尽で嫌だ、しかしここを出なきゃしようがないんだからというので、学生、生徒の一部には犯罪者が、受刑者が刑期を終わるように、三年たったらこっちのものだということで、頭を低くして屈辱と忍従に耐えるというようなことになると、これは本当に教育の場としてそういうことがあったんじゃ仕方がないと思うわけですね。  それで、実際には今度はそういう学校、高校に通わないで、三年間受験勉強をして大学受験の検定試験さえ受ければ理不尽な校則に縛られることもないから、自由濶達に勉強ができる、青春も謳歌できるということで高校へ行かないというような方々もかなりの数出てきているようですね。こういう問題についてはどうお考えになりますか。
  302. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 校則の問題につきまして私どもの立場を少し補足させていただきますと、確かに先生の御指摘のとおり非常に瑣末的な校則の内容がある、これも事実でございます。それは内容の問題でございます。  それからもう一つ、私ども思いますのは、程度の問題として余りにも厳しく縛るという問題、これが少し行き過ぎている面がある、これも事実だろうと思います。  そこで、私どもはやはり校則の内容の問題とそれからその程度の問題、こういう問題を少し点検をすべしと、少しどころかちゃんと点検をしてもらいたいということを生徒指導の指導主事会議でよく指導しておる点が第一点でございます。  それから第二点は、やはりこれも内容の問題にかかわるわけでございますけれども、遵守すべき事項とそれから努力すべき事項、この辺の区別が校則の中についてない、何でも書いてある。そうすると、努力すべき事柄であるにもかかわらず先生方の監督のぐあいによっては守らなければならぬということになって、それが非常に厳しい懲戒的な先生のおしかりになる、こういうふうな問題が多々あるわけでございまして、これが行き過ぎますと、やはり御指摘のような学校へ行きたくないとか退学したいというふうになるわけであります。  したがいまして、私どもとしては、やはり校則なり生徒心得というものが必要である、これは前提でございますけれども、その内容と程度のあり方については十分地域なりあるいは学校の実情なりそれから児童、生徒の実態、こういうものを踏まえながら各学校において校長の責任のもとに十分見直しをすべきだというふうな指導を最近やっておるわけでございますので、この点は十分これからも努力してまいりたい、こういうふうに考えております。
  303. 青島幸男

    ○青島幸男君 その辺のところの監督をしっかりお願いしたいと思うんです。生徒の人権とか人格とか知性とかというものを一切認めないで、家畜をおりに囲うように管理してかかろうというような教育があれば、ますます高校に行きたがらない学生がふえてくるということになると思いますね。そういう理不尽な校則とか規則が嫌だからといって高校は選べますけれども、中学、義務教育の課程では選べないわけですから、選択の余地がないという格好で児童の考えをゆがめてしまうというのはいかがなものか、教育上ゆゆしい問題だと私は思います。  それから、学校に行かないで検定試験だけ受ければ大学に入れるんだからそれでいいじゃないかということを私は推奨しようと思いません。確かにそれは理論的にも実際も可能でしょうけれども、しかしただ三年間は、高校の時期というのは大学受験のために待機しろというときではないと思いますね。やっぱり高校に行ってそれなりの仲間との交流とか、ユニークな先生の教えに触れるとか、あるいは生涯つき合えるような友達との友情をそこで培うとか、そういうようなことはやっぱり高校三年間の生活の中に非常に大事な部分だと思いますね。  ですから、その三年間に創造性を伸ばしたり知性を伸ばしたりするというような方向で検討されるようにしていくという御努力もあるんでしょうけれども、高校に行かないという学生がいなくなるように私はしたいと思いますね。今みたいな格好でいきますと、高校の生活は空洞化しまして、高校にペンペン草が生えて検定試験の会場だけが満員になるというようなことになると、実にゆゆしき問題だという気がします。  それから、口幅ったいことを申すようですけれども、今の学生のあり方を見ていますと、中学は高校の、高校は大学の、大学は就職試験のための研修機関のような格好になっていまして、子供たちも伸び伸びとするどころか詰め込み教育で一から十までを覚えるというような、学校の規則には縛られるわ、塾には行かなきゃならないわ、ある程度の試験の点数はとらなきゃならないわということで行くわけですね。  大学の受験のありようにしても、さまざま考えられてはいますけれども、どうしても本人の創造性とかそういうものを採点するのは大変に難しいということから、事務的に煩雑でないようにするためにはやっぱり点数で区別するより仕方がないだろうということになりますと、どうしても受験生たちは事務処理能力だけ高いという子供で、人間性とか創造性とかというものは余り採点の範疇に入りませんので、ただ事務処理能力だけ高い人間が優秀な子供として選抜されていくようなことになりますと、事務処理能力というのは、何がいつどうなったかというようなことはコンピューターが一番得意な分野でしてね、コンピューターに一番できない、これからの若者に一番求められているものは何かというと、新しい考え方で物をつくっていくとか、あるいは感じたり芸術的な精神を養っていくとかということのはずですね。  それが疎外されていってしまうということで文部省もあるいはさまざまな学校関係者がその点を考慮なさっているんだと思いますけれども、大変難しいことだとは思うんです。現場の教師の問題もありますし、そういうことを含めましてそうあってほしいという願いは私ばかりでないので、その線で御努力ありたいと思いますが、いかがですか。
  304. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) ただいま先生御指摘の、学校教育の意味合いと申しますか意義というものが検定試験合格だけでなくて生徒同士の触れ合いとか、あるいは教師と生徒との関係とか集団生活とか、いろいろ人間的触れ合いの中で成長していくというところが学校教育の意味合いである、まさに私どももそういうお気持ちと同じような考え方で学校教育の推進を図るつもりでおりますが、やはりそういう点で、今回御指摘の校則につきましては、他律的な校則ということであってはならない、生徒が自律的、自主的に守る、そしてそれを行動的な規範としてみずからそれを実践に移していく、そういうふうなものでありたいというふうな気持ちがあるわけでございまして、管理主義的な校則ではなくて、自律的、自主的に生徒が守るべき校則であるということで、学校がこれを定め、児童生徒がそれを守っていくというふうな形のものにしていきたい、こういうふうな気持ちでおりますので、せっかく努力さしていただきたい、こういうふうに思っております。
  305. 青島幸男

    ○青島幸男君 終わります。
  306. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で青島幸男君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  307. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、青木茂君の質疑を行います。青木茂君。
  308. 青木茂

    ○青木茂君 昨日、国民が非常に注視しておりますところの政府税調のいわゆるたたき台ですか、素案が発表をされました。実は私、きょう小倉会長に来ていただきまして、本当にゆっくりと時間をかけて一問一答をやりたかったし、それは四、五日前に理事の方にもお願いをしておいた、それで昨日の五時、レクをやったんです。しかし、突然御出席願えなくなってしまったんですけれども、何かこれは理由がございましたんでしょうか。何か御存じの方。
  309. 水野勝

    政府委員水野勝君) 直接お聞きはしておりませんが、体調不十分というようなことを間接的にお聞きしております。
  310. 青木茂

    ○青木茂君 病気というのはお互いのことですから、これは全くやむを得ないことだと思って、快く了承をさしていただきたいと思います。  ただ、同僚議員の方から、おまえこの前えらいビーンボールか何かを投げたからどうだというようなことでからかわれましたけれども、あれはビーンボールじゃなくて直球を投げたので、ちょっとバッターボックスの位置が悪くてビーンボールに見えただけの話でこれはあれなんですけれども、それでまたそんな理由で御欠席になる方ではない。あの方の性格はよく存じ上げていますから、絶対にそんなことはないと、これは快く、本当に気持ちよく了承をいたします。ただその際、どなたかしかるべき方、おかわりの方にお願いをできませんかと、政府税調の中に、そういうふうにお願いをしたわけなんですけども、どうも皆さん御都合があったんですけれども、会長代理という方はいらっしゃるんですか。
  311. 水野勝

    政府委員水野勝君) これも間接的でございますが、会長代理という方もおられますが、この方がきょう親戚の御不幸で、御葬儀ということで、まことに恐縮でございますがというお話を申し上げたというふうに聞いております。
  312. 青木茂

    ○青木茂君 これは、快く了承じゃなくて、やむを得ず了承をさしていただきます。しかし、今この税の問題を論議する本当に大切な時期でございますから、大蔵大臣、大変御苦労でございますけれども、一人二役、大蔵大臣プラス税調会長でひとつよろしくお願いを申し上げます。  今度の税調の素案を見まして、私、どうも野球を九回の裏から始めて八回、七回へ戻っていくような感じがしたわけなんです。つまり九回の裏は間接税ですね。結論であるべき何かそれが全部の前提を抜いちゃって九回の裏へ来た、そこから始まっちゃった。大蔵大臣、いかがでしょう。税調の直接税の特別部会長の談話にございましたように、直接税の減税内容が間接税の規模によって決まる、これは逆じゃございませんか。どういうお考えでしょうか。
  313. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのような理由で税調会長、会長代理、御審議のお相手をできませんことを非常に遺憾に思っておられると存じますが、御了承をお願いいたしたいと存じます。  それから、私もできるだけお答え申し上げますが、実は税調の審議の経緯というものを私ここにおりますものですから余り詳しく存じませんで、主税局長に助けてもらいますので、どうぞお許しいただきたいと思います。
  314. 青木茂

    ○青木茂君 今の、直接税の減税内容が間接税の規模によって決まる、これはむしろ逆で、直接税の減税内容から審議するのが当たり前じゃないんですか。
  315. 水野勝

    政府委員水野勝君) 総理からの税制調査会への諮問は、全体として均衡がとれた安定的な税体系の構築ということでいただいているわけでございますので、どれからということでなしに、それぞれの税につきまして御審議を願い、それらは全体としての体系をなすものでございますので、同時的と申しますかそういう、どれからということでなくて、同時的に全体としてお取りまとめが行われるのではないかと思うわけでございます。
  316. 青木茂

    ○青木茂君 しかし、あれだけどうも多方面に多様のばらばらの素案では、たたき台というよりむしろ混乱と混迷を深めてしまうんではないか。たたき台だったら、自分の意見を出して、そして世論を聞いて素直に直す、これがたたき台のはずなんですけれども、どうもそうなっていない。これはいかがでしょうか。
  317. 水野勝

    政府委員水野勝君) 先般二月五日に税制調査会は「税制改革の基本課題」というのを取りまとめておられるわけでございまして、それは基本的な考え方体系として述べておられる。しかし、その中での検討課題としては四つの課題があるということで一括して御提示されておったところでございますが、今回のおまとめになられた素案もこの四つの項目に絞って、しかしそれぞれは全体としての考え方の中で統一されたものとして提示されておりますので、ばらばらということでもないだろうというふうに考えるわけでございます。
  318. 青木茂

    ○青木茂君 どうもばらばらのような気がしますね。  それじゃ、さっきビーンボールだとか素直な直球だとか言いましたから、野球の試合に例えまして、順序よくひとつ御質問を申し上げます。  まず、一回の表と一回の裏ですね。これは不公平是正こそやらなきゃならない。その不公平是正にも実は二つあるんですけれども、Aクラス不公平是正、つまり今まで不公平是正に泣いていたサラリーマンをどうやって制度面において減税をしていくかということが私はAクラス不公平是正だと思うんですよ。それに対して三つの不公平があるということは、生活白書でこの前申し上げたとおり、お認めいただいておるわけなんですけれども、ここに私資料を出したんです。資料の四ですね、「サラリーマンの不公平感 三つのポイント」、これはこれで企画庁よろしゅうございますか。――いらっしゃらないようですからいいです。これは国民生活白書そのままを写したんですから。  これはこの前もやりましたからこれ以上詳しくは申しません。申しませんけれども、私がもうしょっちゅうここへ立つたびに、背広をどうしてくれるんだ、ワイシャツをどうしてくれるんだ、ネクタイをどうしてくれるんだ、冠婚葬祭をどうしてくれるんだということを言いますけれども、あれは外国でどうだとかこうだとかいう問題じゃなしに、サラリーマン不公平税制是正のシンボルなんだということで、あれが正されなければサラリーマンは納得しないんだということで、再度申し上げておきたいと思います。  それから税調素案にあるように、税率刻みを少なくすることでいわゆる重税感、不公平感というのは果たして是正されるんだろうか、この点についてはいかがでございますか。
  319. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは昨年お願いいたしました所得税改正でも一部意図したものでございますけれども、やはり今一番重税感を持っておられる中堅のサラリーマン、子供さんの授業料であるとか、それからいろいろローンの返済金であるとかいったような、その方々が、従来のように税率刻みがかなり小そうございますと、どうしても昇給するたびに上の方のブラッケットへ行くという、そこのところのやはり重税感というものは緩和しなければならないのではないかというふうに考えておりまして、今度の素案では五百四十二万円までが一〇%でございます、これは夫婦、子供二人でございますが。それで八百八十九万円までが一五でございますから、大体前の段階サラリーマンの七割ぐらい、一五まで行きますと、ほとんどがこれでライフステージを、何といいますか、ほとんどこの中へ入るということは、重税感を私は緩和するのには非常に役立つのではないかと思います。
  320. 青木茂

    ○青木茂君 逆の意見もあるんですね。例えば昭和四十五年の四月二十三日、参議院の大蔵委員会でこの問題がちょっと討議されまして、政府答弁はちょっと逆のような感じが出ているんですよ。これをちょっと御説明いただけませんか。
  321. 水野勝

    政府委員水野勝君) 昭和四十五年の税制改正の御提案は、四十三年の税制調査会の基本的な税制のあり方につきましての答申というものを踏まえておるところでございます。  この四十三年のころの答申でございますと、当時の課税最低限は比較的今の水準と比べますと相対的に高いところにある。したがいまして、課税されるサラリーマンというのは五〇%台でございまして、現在は八割から九割合になってございます。したがいまして、当時の課税最低限の水準から始まるところの所得税の累進構造は、やはり当時としてはまだかなり所得再分配的な要素も強かったのであろうと思われます。したがいまして、割合税率刻みを頻繁につくっておったわけでございますが、当時は五%刻みでございました。  当時としては高度成長のまださなかでございましたので、ベースアップもかなり頻繁に行われる。そうすると、上がるときに一挙に五%上がるというのが、当時としては重税感と申しますか、そうした感じを与えているのではないか。むしろ下の方は二%、三%、四%刻みで始まってある程度水準になったときに五%の刻みにするのが適当ではないか、それが重税感と申しますか、負担感を緩和するのではないかという、これが四十三年のころの答申考え方のようでございました。したがいまして、むしろ刻み数としてはふやしたという考え方でございました。  現時点では、先ほど大臣からも申し述べましたように、全体としての所得水準が上がり、また大半のサラリーマンの方が納税者になる、そのサラリーマンの方というのは年功序列的に初任給から始まって一定の年齢で退職される、そのサイクルを繰り返されるとすれば、その中ではそれほど再分配ということをむしろ考えるよりは、余りその間累進税率が変わらない、一つないし二つの税率で適用が終わる、それによりまして働き盛りになったときに一番収入水準が高い、そのときに教育やローンの御負担が大きい、そういうときに一番累進が働くというようなことは避けて、どちらかというとフラット的な税率でいかがか、こういう考え方のようでございまして、ちょうど二十年前の答申でございますので、当時と経済情勢なり、所得水準なり、課税最低限の高さなり等がいろいろ違いますので、そうした点が考え方の相違としてあらわれておる。御指摘の四十五年の参議院におきますところの議事録も、当時としてのそうした考え方を背景に御審議をお願いしていたということではないかと思うわけでございます。
  322. 青木茂

    ○青木茂君 しかし、所得再配分の機能というのが直接税の一番いいところなんですよね。  続いてお願いしますけれども、四十五年の税調答申なんですね、税調答申にこういう問題をまた触れていらっしゃる、税率のところであると思いますけれども、それはどういうふうに書いてありますか。
  323. 水野勝

    政府委員水野勝君) ただいま申し上げましたように、四十三年七月に中期答申と申しますか、基本答申が出されました。これを、しかし相当な改正でございますので時間はかかるけれども、できるだけ早く実施するようにというような答申でございました。それで、その初年度の四十四年度におきましては三分の一程度が実施されたかと思いますが、翌年の四十五年度では、これはもう一挙に実現したらどうかということで、一方におきまして法人税の増税と申しますか、税率引き上げ等も含みつつ一体としての税制改正答申の残り全部を実現する、そういう四十五年の改正答申をいただいて国会に御提案をしたというのが当時の経緯でございます。
  324. 青木茂

    ○青木茂君 四十五年の税調答申に「中堅以下の所得者層の負担軽減を図るため、税率を次のように改める。」、これは七段階から十段階にふやしていますね。これは間違いございませんか。
  325. 水野勝

    政府委員水野勝君) 具体的には四十五年度の税制改正では十六段階を十九段階というふうに改正するように答申をいただいておりました。
  326. 青木茂

    ○青木茂君 私が伺ったのは、四十五年度の税調答申に、中堅以下の人の負担軽減を図るために税率を上げる、税率刻み数をふやす、こういうふうに伺ったんだけれども、どうですか。
  327. 水野勝

    政府委員水野勝君) 御指摘のように四十五年一月二十二日の答申では、「課税最低限の引上げ及び給与所得控除の拡充と関連し、主として中堅以下の所得者層の負担軽減を図るため、税率を次のように改める。」という答申でございました。
  328. 青木茂

    ○青木茂君 ですから、減税というのは刻みの問題じゃなしにどの所得金額をどの税率に当てはめるかということだと思います。それは大蔵大臣、そうじゃございませんか。
  329. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今御指摘いただいて私もなるほどなと思って伺っておったんですけれども、見ますと、これは青木委員はもう御承知で言っていらっしゃるんだと思いますが、昭和四十五年の経済成長率、名目で一五・八%でございます。そして四十五年から五十年の平均成長率一五・二%、今から思うと隔世の感がございますし、春闘の伸びを見ますと、四十五年が一八・五%、五十年が一三・一%。ですから、今から思いますと、このときはもう本当に税率を小さく刻んでいきませんと大変大きくなってしまう。  これからいいますと、恐らく今私が申しましたように、一〇から一五で大体おさまるというようなのは、やはり日本の経済成長がまあまあ、よくも悪くももう落ち着いてきたといいますか、三とか四とか五とかという、春闘も十幾つというようなことはもうちょっと考えにくい。やはりそれだけ日本の、何と申しますか、かつての高度成長というのが終わった、違ったものになりつつあるということに今度の税制改正は即応しようとしているのではないかと思います。
  330. 青木茂

    ○青木茂君 どうも一回の裏表でこれだけ時間がかかると九回まで行けないですから、次へ行きます。まだ一回です。  今度は低所得者層に負担がちょっと重くなる可能性もありますから、そうすると、人的三控除の引き上げはどうしてもセットで考えなければならないと思いますけれども、金額はともかく、人的三控除の引き上げという点については、大蔵大臣はどうお考えでしょうか。
  331. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは今度の素案におきましても、やはり何か考える必要があるのではないかというようなことが示唆されているように読んでおります。
  332. 青木茂

    ○青木茂君 それはありがとうございました。何か強く示唆されているような感じで私は読みました。  それから、これはちょっと税調会長でないと困るんだけれども、一橋大学の石弘光先生がお書きになりました「財政改革の論理」という本をお読みになったことがございますか。
  333. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは申しわけありませんが、ございませんで、どういうことが書いてあるかは実はちょっと聞きました。
  334. 青木茂

    ○青木茂君 実はこの本に非常に精緻に学問的にクロヨンの存在が証明されているわけですね。私もこんなに精緻じゃないけれども、アバウトで表の二でクロヨンの検証をやってみました。九・六・四という割合はともかく、所得把握の不公平はあるんじゃないかと思うんですけれども大蔵大臣、いかがでしょうか。
  335. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 国税庁からお答え申し上げますけれども、この数字はともかくとして、そういうようなお話があることについては、税制の面でもまた行政の面でも一生懸命それを解消しようと努めておるのが現実だと思います。
  336. 青木茂

    ○青木茂君 ありがとうございました。  それから、サラリーマンの不公平感をなくすためにすぐ消費増税に向かっていくのは少し短絡だと思うんですけれども、ちょっとこれはどちらに伺ったらいいんでしょう、いわゆる世帯分布ですね、世帯数の比率、これはどなたかがお答えください。
  337. 百崎英

    政府委員(百崎英君) 六十年の国勢調査の結果によりますと、総世帯数が三千七百九十七万九千九百八十四世帯ございますが、そのうち世帯主が農林漁業に就業している世帯が二百五十六万八千八十、それから世帯主がいわゆる自営業の世帯が四百九十八万四千八百五、それから世帯主がいわゆるサラリーマンの世帯が二千六百一万二千四百九十八ということでございまして、農林漁業に就業している世帯が六・八%、自営業の世帯が一三・一%、サラリーマンの世帯が六八・五%となっております。
  338. 青木茂

    ○青木茂君 その比率で見ますと、消費者に転嫁といいますけれども消費者の七割がサラリーマン及びその家族だと。そうなると、所得段階で税金は減らしてあげます、しかし消費段階サラリーマンよたくさん出してくれと。同じことですから、これは慎重にお考えをいただきたい。これで一回の裏表の攻防は終わります。  今度は二回。Bクラスの不公平是正なんです。Bクラスの不公平是正は、今まで不公平で非常にメリットのあったところを直して税金を余計にいただきましょうというのがBクラスの不公平是正なんです。そのうちの一番問題になっているのはキャピタルゲインなんですけれども、これはいかがでしょうか。今どういう方向でしょうか。
  339. 水野勝

    政府委員水野勝君) この問題につきましては、先ほどの二月五日の「基本課題」でも取り上げられ、今回の素案でも付言されておるところでございます。とにかく前回一応は五十回、二十万株を三十回、十二万株にするなどその合理化には私どもも努めたところでございますけれども、やはりこの問題はなお放置できないという御議論が非常に多い。こういうことから、税制調査会でも抜本的にひとつ検討してみようと。従来の少しずつ課税範囲を広げていくというのではどうも問題の解決にならないということで、踏み込んだ検討をされようということで取り上げられておるわけでございます。  ただ、具体的な方式になりますと、いろいろまだ問題点もあり考え方もあるということで取りまとめられるまでには至っていないようでございますが、従来の路線とは少し違った踏み込み方で取り上げられているというのが実情でございます。
  340. 青木茂

    ○青木茂君 次に、先ほど非常に議論になりました宗教法人、学校法人あるいはその他の公益法人についてはどういう方向でしょうか。
  341. 水野勝

    政府委員水野勝君) この点が主として絡みますのは法人税の世界でございますが、法人税の世界におきましては、まず課税範囲につきましては、実態に応じてなお引き続きよく検討していくという方向が一つ示されております。それから税率水準につきましては、これは一般的には普通法人、中小法人は下げる方向で検討されていますが、公益法人についてはこの水準は据え置いたらどうかというような方向が出されてございます。
  342. 青木茂

    ○青木茂君 何となくなまぬるいですね。しかし時間がないから、もう一つ、医師優遇税制はどうですか。
  343. 水野勝

    政府委員水野勝君) 御承知のように、所得税と事業税両方に特例があるわけでございます。所得税につきましては、昭和五十四年度の税制改正で、それまでの七二%一本だけの概算経費控除でございましたのを所得水準に応じまして四段階のものに改められておるところでございます。この金額が固定化されておりますので、その適用水準は約十年経過した現在ではかなり適用者は減ってまいりまして、五割強と申しますか、六割弱の方々の利用というふうにまで狭まってきております。事業税の点は、これは地方税でございますけれども、少なくとも国税、所得税並みの扱いぐらいにまでは縮減できないかというのが従来の税制調査会考え方で、毎年答申はいただいておるところでございます。今回の素案でも取り上げられているところでございます。
  344. 青木茂

    ○青木茂君 そうすると、今回の素案では、例の健保収入経費最高七二%というのはいじられていないわけですね。
  345. 水野勝

    政府委員水野勝君) 四段階ございます。最高七二というのがございます。その点についての具体的な改正案は示唆されるまでには至っておりません。
  346. 青木茂

    ○青木茂君 次に、天下の悪法であるというみなし法人はどうですか。
  347. 水野勝

    政府委員水野勝君) これは昨年の改正で御提案申し上げまして、事業主報酬の水準を前三年間の平均の所得の八割にとどめるというところで頭打ちを置かせていただいたところでございます。この点をめぐりましてはなおその後も議論はございます。したがいまして、税制調査会でもこの点は検討を要する問題として指摘されているところでございます。
  348. 青木茂

    ○青木茂君 これはぜひなくしてほしいですね。引き続き検討じゃなまぬるいですね。  それからもう一つ、次は家族従業員ですね、白色、青色の。これにも給与所得控除を認めちゃっているんですけれども、これは経費の二重取りみたいなところがありますけれども、この点は触れられておりますか。
  349. 水野勝

    政府委員水野勝君) 今回、その点につきましては具体的にはお触れになってございません。
  350. 青木茂

    ○青木茂君 今伺ってきますと、このBクラス不公平是正は結局はマル優廃止だけが先行してしまって後には何も残っていないというのがどうも庶民の感覚ですから、このBクラス不公平の是正は強くこれからも推進をしていただきたいというふうに存じますけれども大蔵大臣いかがでしょうか。
  351. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昨年抜本改正を御提案いたしまして廃案となりました段階、それに至ります段階と今回の税制調査会がいろいろ検討していらっしゃる段階と比べますと、やはり不公平感、あるいは不公平税制とおっしゃいますが、それでもよろしゅうございますが、それについての国民の関心が非常に高い、したがってこれをきちんとしないと次の話に非常に入りにくいということが昨年と異なりましてといいますか、昨年よりかなり強く関係者に認識されるようになりました。したがいまして、そういう観点からそれらの問題もやはり税制調査会でいろいろに考えておられるのでございますけれども、最終的な表現にはいろんな微妙なところもございますので、その辺は私どももよく心得てやらなければならないと思います。
  352. 青木茂

    ○青木茂君 とにかくAクラス不公平是正から始まってBクラス不公平是正へいっていただきたい。  これで二回の裏表を終わります。  三回ですね。三回目は、このサラリーマンの不公平を改めるのにいろいろ三つのポイントを直してくれるのが一番いいけれども、間に合わないということになれば、思い切って給与所得控除を引き上げてサラリーマンの重税感をなくすというような方向というものはお考えじゃございませんか。
  353. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは先ほど申しましたように、人的控除というのはある程度考えなきゃいけないということは素案も言っておられますけれども、給与所得控除というのは平均しますと三分の一になっておるそうでございますので、これは実はかなりいっているという感じが私はしております。
  354. 青木茂

    ○青木茂君 そうすると、給与所得控除の内容的性格は一体何でしょうか。
  355. 水野勝

    政府委員水野勝君) 一昨年の税制調査会の基本的答申の中でもその点がいろいろ議論されておりますが、要約いたしますと二つの要素がある。一つは、サラリーマンにとりましての必要経費、これの概算控除であるということ。それからもう一つは、サラリーマンが雇用されておる、その雇用されて働くことによるところの他の所得との関連におきますところの特殊性、その担税力でございますとか、時間的、場所的拘束を受けるという性格、もろもろの特殊な所得の性格、これに対する配慮。この二点に要約されるという考え方になってございます。
  356. 青木茂

    ○青木茂君 今の御答弁を受けまして、四回に入ります。  それは課税最低限についてですね。課税最低限の御発表があるんですけれども、これは給与所得者にのみあって、事業所得者の課税最低限というのは発表されていなんですけれども、これはどういうわけですか。
  357. 水野勝

    政府委員水野勝君) ただいま申し上げましたように、サラリーマンには概算控除としての給与所得控除がある。これはもう一律的に適用されるわけでございます。ことし特定支出控除という制度が発足いたしておりますが、この適用状況はこれからでございますのでまだ明確ではございませんので、ほとんどのサラリーマンの方については課税水準としては機械的に給与所得控除が適用になる。したがいまして、そうしたものを適用したところでの課税最低限はこのくらいであるということは一律に一義的にお示しをできる。  これに対しまして事業所得者の場合には、青色事業者であるか白色事業者であるか、それからまた青色事業者の場合に専従者給与をどうされているか、みなし法人を選択されているかどうか、白色の事業所得者の場合でも、専従者がおられるのかどうか、その専従者が奥さんなのかお子さんなのか、それぞれによりまして控除額がばらばらでございますので、恐らくその事業所得者の事業経営自体が千差万別であろうかと思いますので、一義的に課税最低限としてお示しするというのはなかなか難しいということから、従来からこの点につきましては特段の数字をお示しはしていないところでございます。
  358. 青木茂

    ○青木茂君 課税最低限というのは税金をかけてはいけない生活費なんだから、それが職業によって示されたり示されていなかったりするのはちょっとおかしいような気がしますね。特に、今給与所得控除の問題が出ましたけれども先ほどの御答弁で給与所得控除というのの若干部分はサラリーマンの必要経費だと。必要経費を生活費の中に入れるというのはどういうわけなんですか。
  359. 水野勝

    政府委員水野勝君) 課税最低限とサラリーマンの場合に申し上げるのは、この年収水準からは所得税がかかります、それ以下はかかりませんという意味で便宜申し上げているところでございます。したがいまして、その中身が最低生計費であるとしてお示しをしているわけではございませんので、課税最低限としてわかりやすく一般的に申し上げる水準としてという意味におとりをいただければと思うわけでございます。  したがいまして、先ほどの概算経費控除という部分もございますけれども、これはもう一義的に適用されるわけですので、一般的にサラリーマンの方、この水準からはかかるかからない、こういうものを便宜お示ししているということで御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  360. 青木茂

    ○青木茂君 そうですか、その解釈は初めて聞いたんだ。これは私は今聞いたから理解しても、財政学者、税法学者はみんな理解しませんよ。課税最低限というのは最低生活費だと思っているんじゃないですか。これは初めて聞いたから保留をしておきます。そうすると、課税最低限の国際比較をやる意味もないような感じがしますね。しかし時間がたちますから次へ進みます。  課税最低限、そうすると二百六十二万ですか、これはこれでいいですね。私は、必要経費というのは収入から経費を引いて所得が出るんだから、必要経費というものは抜くべきだと思う。思うけれども、そういうふうに言われてしまうと、つまり単なる目安で、かからないという金額だけの話だと言われてしまえば議論が発展しないんですけれども、もう一つ言えば社会保険料控除、これは家計調査によれば非消費支出になっているわけだ。この非消費支出のものを消費支出の中へ入れていくというのはどうなんですか。
  361. 水野勝

    政府委員水野勝君) ただいまも申し上げたところでございますが、課税最低限としてこの年収二百六十二万と申しますか二百六十一万九千円と申しますか、この水準までの給与の支給を受ける場合はこれはかかりません、それを超えます場合には所得税がかかりますと、そういうものとしてお示しをしておるところでございますので、その内容についてそれが非消費支出も入っている、あるいは非消費支出でございますと恐らく所得税や住民税もございますが、そういったものはこの積算の中には入ってこない。課税最低限でございますから、かからない水準ですからそれはあり得ないわけでございますけれども、とにかくこの金額になりましたら所得税をお願いすることになりますということですので、そこは保険料も含めて御議論いただくのがわかりやすいのではないか。社会保険料を控除した残りの金額が幾らである場合には課税が始まります、始まりませんというよりは一本でお示しをする方がむしろわかりやすいかなということでございます。
  362. 青木茂

    ○青木茂君 それは新説ですよ。僕らは課税最低限というのは税金をかけてはいけない最低水準だと思っておりました。これはいろいろ学会でも聞いてみなければいけないことですね。  五回へ移ります。五回は、実は長寿社会とか財政健全化と今度の税制改正関連性を問題にしたいということなんですけれども、これは時間がございませんから五回は省略します。  六回。六回でいよいよ間接税に入るわけなんですけれども、そういう手順を踏んで我々は間接税をやるのかやらないのかというところに論理を展開していかないと僕はおかしいと。だから、九回の裏から始めては困ると言ったのはそういうことなんですね。  まず、六回として間接税ですけれども間接税三つの類型が素案では発表されておりますけれども大蔵大臣、答えにくいかな、どれが一番いいと思いますかね。
  363. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは税調で、いわばたたき台としてこれから世論をお聞きになろうというのでございますので、私としてはコメントを差し控えさせていただきたいと思っております。
  364. 青木茂

    ○青木茂君 しかし、税制改正国民注視の的であり、ここは国会であって、国政の最高機関なんだから、税調依存、既に税調のたたき台も出たわけですから、それじゃちょっと困るんじゃないですか、責任者として。
  365. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まず、御検討をお願いしてお答えくださいといって諮問をしておる方の立場でございますから、そのお答えが出ませんうちにああだこうだと申すことは、そうは申しましても差し控えるべきだろうと思います。
  366. 青木茂

    ○青木茂君 その答えが三つ出ちゃったわけなんですよ。だから、たたき台といったって論議のしようがない、そうお思いになりませんか。
  367. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いえいえ、ただいまこうやって御議論なさっておりますように、恐らく世の中ではあの三つでどれがいい、悪いという御議論はいろいろに出てくるでございましょうし、それがたたき台の意味であろうと存じます。  恐らく税調としましては、そういう世論のいろいろの御議論をお聞きになりながら、最終的にどういうふうにまとめていくかということをその後に御検討になられるのだと思います。
  368. 青木茂

    ○青木茂君 あの三つ併記では、世論といっても議論のしようがないような気がしますね。  時間を食いますから意見を言っておきますけれども、EC型が一番いいに決まっておるんですよ、もし入れるとすれば。これはクロヨン摘発になりますから。ただ、それを避けまして、帳簿型とかいわゆるアカウント型、つまり妥協の中で所得が完全に捕捉されないような形のものを入れていくということは、これはもう税調の問題じゃない、政治の問題ですから。そういうことはございませんね。
  369. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 最後は何と申しましたか。
  370. 青木茂

    ○青木茂君 そういうことはございませんかと。つまり、事業者を納得させるために何かちょっと所得把握がルーズなもの。
  371. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 恐らく国民のお立場からいいますと、今おっしゃいましたようなことも含めましてあの三つの案をきっと考えられるのであろうと思います。  今おっしゃいましたようなことは、直接に間接税に関係ないようなものの、その他のことに関係がございますから、国民の方ではそれもお考えになっていろいろ判断をされるのではないかと思います。
  372. 青木茂

    ○青木茂君 とにかく前回、先年あれだけもめて廃案になったものが単なる化粧直しで出てきているわけなんですから、今なぜ大型あるいは新型なのかということが非常に疑問であるということは申し添えておきます。  七回へ入ります。これは大蔵大臣としてはどうなんでしょうか、品目に例外はあった方がいいと思いますか、ない方がいいと思いますか。それもだめですか。
  373. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それも実は余り具体的になりますので申し上げにくうございまして、かねて国会で申し上げておりますことは、広く薄くみんなにわかりやすいようにということを申し上げておるのでございますが、この段階になりますと、これについて論評することはそういう意味では差し控えさせていただきたいと思います。
  374. 青木茂

    ○青木茂君 そこら辺で困っちゃって、議論が進まないんだけれども、進まないのを覚悟で第二問を出しますけれども、では税率はどの程度をお考えですか。
  375. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) どうも申しわけないことでございますけれども、基本的に今の段階で私がコメントしてはいけないことなんだろうと思っておりますので、御了解をお願いいたします。
  376. 青木茂

    ○青木茂君 今度の税調素案国民が一番知りたがっている税率の問題、免税品目の問題、免税――売上税のときは一億円ですね、あの問題、これはすべて霧の中なんですよ。この霧の中で果たしてあれでもって国民の世論を聞くといっても聞くことができるんだろうかという危惧を非常に私どもは強く持つ。むしろ混乱させてしまうんじゃないか。税調会長がいらっしゃらないから、それは大蔵大臣のお立場もわかるから無理には聞きませんけれども国民が混乱するようなたたき台というものは僕は出すべきではないと思いますね。  八回へ行きます。仮に間接税という問題を取り上げましても、一番いいと言われるEC型を取り上げましても、そこには五つのシンドロームというのがあるとよく言われております。  第一のシンドロームはいわゆるデンマーク・シンドロームというものですね、これをちょっと大蔵省の方で御説明いただけませんか。
  377. 水野勝

    政府委員水野勝君) 御質問のシンドロームというお言葉を必ずしも私ども理解ができているかどうかはわかりませんが、御通告をいただきました質問の項目によりましてお答え申し上げると、デンマークの付加価値税は二二%という一本の単一税率で構成されているというところが特徴になっているということではないかと思います。
  378. 青木茂

    ○青木茂君 フランスの付加価値税の総指揮官と言われておるルブランさんがこの前、来日されて講演をしたんですけれども、あの講演はお聞きになりましたか。
  379. 水野勝

    政府委員水野勝君) 直接は講演としてはお聞きしておりませんが、それを取りまとめられたもの等ではお読みしております。
  380. 青木茂

    ○青木茂君 あそこでシンドロームという言葉をルブランさんが使っているわけですね。そうすると、デンマーク・シンドロームは単一税率なんですよ。これは、単一税率の場合は税率を上げやすいという欠陥はございませんか。
  381. 水野勝

    政府委員水野勝君) その講演のまとめられたものでお読み申し上げますと、「デンマークでは、単一の税率を適用しているので、事務手続も簡素である。又、少々引き上げるだけで多くの税収が入るという意味で、政治的にも歓迎される。」というような記述がございます。
  382. 青木茂

    ○青木茂君 次はフランス・シンドローム、これはデンマークと違って複数税率ですね。これの長短はいかがでしょうか。
  383. 水野勝

    政府委員水野勝君) 同じ御指摘の講演でございますと、フランスは税率の数の多さでは世界一である、主な税率でも四種類ある、さらにそのほかにも特別税率がある。これが事務を煩雑化させるものである、このような記述がございます。
  384. 青木茂

    ○青木茂君 複数税率の場合は、複数税率というのか軽減税率、分捕り合戦になって非常に政治的に混乱するというようなことをルブランさんはおっしゃったけれども、日本で複数税率をもし採用した場合は、これはやっぱり大変なことになるというふうに思いますけれども、今度は日本でそれを採用した場合はどうか。やっぱりそういうおそれはございますか。
  385. 水野勝

    政府委員水野勝君) 先ほど大臣から申し述べましたように、そのあたりについてはまだ税制調査会も何らの方向を出されていない。税制調査会素案と一緒に、素案に基づき検討すべき主なポイントとして幾つかの点を挙げておりますが、その中でも税率もこれからの問題であるということにされているところでございますので、我が国の場合についてとやかく申し上げるのはいかがかと思うわけでございます。
  386. 青木茂

    ○青木茂君 どうも国権の最高機関、しかも予算委員会が税調に寄りかかり過ぎられるとどうにもならない点があるんですけれども、まあ続けます、ついでだから。  イギリス・シンドローム、これはゼロ税率ですね。これの長短。
  387. 水野勝

    政府委員水野勝君) これも御質問の御趣旨から考えまして、恐らくイギリスの問題はゼロ税率があるというのが特色ではないかと思うわけでございます。これにつきましてはECの委員会が、どうもゼロ税率というのは好ましくないというような指令と申しますか、勧告と申しますか、出しておられるようでございます。
  388. 青木茂

    ○青木茂君 今まではルブランさんの受け売りですけれども、あとは私ですけれども、アメリカ・シンドローム、仮に、つまり地方税で税率がばらばらの売上税というものですね。これは仮に日本で採用した場合どうなりますかね。
  389. 水野勝

    政府委員水野勝君) まさにアメリカは州税として行われておりまして、州の自主的な課税権というものも非常に強いようでございますので、これはそれぞれの各州の財政需要等に応じて恐らく定めておるものと思われるところでございまして、三%から四%、五%、高いところで七・五%ぐらいというものもございますが、恐らくこれは連邦制によるところではないかと思うわけでございます。
  390. 青木茂

    ○青木茂君 こういう間接税、日本ではどうですか、好ましいですか好ましくないですか。これも税調論議ですか。
  391. 水野勝

    政府委員水野勝君) これは素案で述べられているところでございますけれども、特定の段階に課税をお願いをするということになりますと、それは問題が多い、特定の分野に偏ることのないように配慮をする、そういうところからすると、単段階というのは適当でない、こういうふうな考え方が述べられてございます。
  392. 青木茂

    ○青木茂君 最後は日本シンドローム、去年の売上税ですけれども、これは例外分捕り合戦ですね。今度検討される間接税、去年の例外分捕り合戦というような方向に流れるのが一番怖いわけなんです。これについては、大臣たまには。
  393. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは去年の経験を申し上げるのでございますから申し上げますが、やはり何が例外で何が例外でないかということの説明が本質的に非常に難しいんだと思いますけれども、果たせるかな非常に難しいことになりまして、そうしていろいろクイズまがいの笑い話が出たりいたしましてどうもすっかりちゃらされてしまったというようなこともございます。  それからまた、それを別にいたしましても、現実にどういうものを例外に置くのか、どういうものを非課税に置くのかということは、判断の物差しをよほどしっかりしておきませんと一つの説得力を持って説明することはなかなか困難でございますから、現実にはやはりいろんな意味での妥協の産物として決着するしかない、そういう性格を持っておるということを感じました。
  394. 青木茂

    ○青木茂君 その妥協の内容で私は政治的にも経済的にも社会的にも混乱が出てくるのではないかと思うわけでございます。  この五つのシンドロームを私がここで長々と申しました理由は、一口に間接税と言ってもこれだけの問題点があるんだと、その問題点をどんどんどんどん詰めていかずに、つまり我々がどういう女性と結婚さしてくれるかというのを詰めていかずに結婚式の日取りだけ先に決めちゃって、さあ秋だ何だと言うのでは、これは国民の納得のいくものができないんですよ。だから、これだけまだ膨大にいろいろ詰めなきゃならぬ内容がある。そうすると、これは慎重かつかなり長期的にやらなければいけない問題じゃないかと思っておるわけなんです。これはどうでしょうか。
  395. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはそのとおりであると思っておりまして、私どもある意味では昭和五十四年から実はこの問題に取り組んでおるという気持ちがございますけれども、その間ちょっと忘れられたりしておりますから、十年間やってまいりましたというのは少し大げさかもしれません。しかし、昨年これについて大変にいろいろ国民的な関心がございましたから、あのころからは随分いろいろ御議論をいただいておると思いますので。  それで、青木委員も言われますように、この周辺の問題はそれは議論をすれば随分いろいろございますけれども、やっぱり中核の問題になってきませんと本当に国民的な関心というものは起こってきにくいということがございますものですから、それは周辺の問題にどんなに時間をかけましても、中核の問題がどうなんだというところへいかなければやっぱり本当の御議論というものはなかなか白熱してこないというようなところもあるのではないかと思います。決して結婚の日取りをまだ決めておりませんで、なるべく早くとは思っておりますけれども、十分御議論国民にもいただきたいと思っております。
  396. 青木茂

    ○青木茂君 しかし、国民の関心の対象は、もちろん中核は必要です、しかし中核は何か、今まででおぼろげながら国民はわかっているんですよ。国民が今注視しているのは周辺の問題なんです、税率はどうなんだ、免税品目はどうなんだという。だから、それがある程度たたき台素案で出なきゃ議論のしようがないと思うんですけれども、どうでしょうね。
  397. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 税調のお立場は、これだけの前回は何もなしの公聴会をやられまして、今度はこれぐらいのところでひとつ、この先がどうなんだということから、国民がどういうふうに考えていらっしゃるかを聞いて、そうして次を考えようとしておられるのだと思います。
  398. 青木茂

    ○青木茂君 本当に毎回愚痴るようですけれども、きょうは本当に大蔵大臣に伺えば非常に酷なことを伺っておるわけですから、こうしておきましょう。  それから、最後に九回の表ですね。九回の表で、お配りいたしました資料の三をちょっと見ていただきたいんです。少なくとも長い年月人的三控除の合計額、これを四人家族で考えてみて、人的三控除の合計額は生活保護基準を上回るというものでずっと来ておったんですよ。例えば昭和四十六年から五十一年までの間は、生活保護基準が平均でとって七十一万、人的三控除の合計額が九十一万ですね、これが基本だったんですよ、四十年代の。ところが五十年代に入りましてから、人的三控除の合計額がどんどんどんどん生活保護基準の年額、これは生活保護基準は米価調整なんということがありますからこれはあくまでおよそですけれども、どんどん生活保護基準から下回ってきているわけなんですよ。これは私は、税法のいわゆる人的三控除、これも人的三控除みたいなのは税金をかけてはいけない最低生活を意味することじゃない、取る側が勝手に決めたものだと言われてしまえばそれまでだけれども、とにかく四十年代は生活保護基準を上回っておったものが五十年代に入ってどんどん差が開いてきている。  これはいかなる理由によるものでしょうか。
  399. 水野勝

    政府委員水野勝君) 先ほども申し上げましたように、昭和四十年代までの高度成長期におきましては多額の自然増収が生ずる。これは高度成長のまた反映でもございますが、その相当な部分を毎年所得税減税に充てまして控除の引き上げ等々が行われてきたところでございますが、昭和五十年におきまして特例公債の発行が始まるということから、この五十年代に入りましてからは本格的な所得税減税というのは、この表でもございますように五十二年に上がっております。それから五十九年に上げられておりますが、この二回だけ行われておるところでございます。そうしたところから、税収全体に占める所得税のウエートでございますとか、ミクロ的な勤労者の税負担でございますとか、そういったものが著しく大きくなってきている。そこで、今回そうしたものをどう考えるかというところから始まりまして、税制改革につきましての検討をお願いしているところでございます。  したがいまして、今回の素案でも控除をどう考えるかという点も入っておるところでございますが、しかしそうは申しましても、一方この三控除の水準、それを達したところでの課税最低限といった水準は、世界的に見ますと割合いい水準になってきているというところも背景にございまして、五十年代におきましてはこうしたお示しのような水準に推移をしてきておるところでございます。
  400. 青木茂

    ○青木茂君 先ほどの説明で、課税最低限というものを世界的水準と僕は比較するファクターがないと思うんですけれどもね。課税最低限というのを何か決める世界的統一基準はあるんですか。
  401. 水野勝

    政府委員水野勝君) 特段そうしたものにつきましての国際的な統一基準というものはございませんで、我が国といたしまして給与所得者の場合、こういったものをとって課税最低限を示すというところで便宜そうしたものをとらせていただいているところでございます。  外国でどのように比較しておりますか、その点につきましては必ずしもつまびらかにいたしませんが、日本におきましてのとり方、これを諸外国のものにも適用してみまして、給与所得者の場合そうしたものの比較は一応させていただいているというところでございます。お話のような国際的統一基準といったものは、確たるものは存在はいたしてございません。
  402. 青木茂

    ○青木茂君 税というのはその国の歴史、風土、そういうものを総合的に反映するものなんですよ。だからそんなに簡単に国際比較ができる性格のものではないと私は思います。今御説明がございましたように、課税最低限が最低生活水準の比較なら私は世界的に国際比較をやる意味はあると思います。  日本が都合のいいように計算しておいて、その日本計算に合わせて外国のやつを幾ら出したって、高いだ低いだ言ったって、これは何の意味もないじゃないかと思わざるを得ないんですけれども、どうでしょうね、大蔵省。
  403. 水野勝

    政府委員水野勝君) 御指摘のように、社会情勢も違い、税制もそれぞれ違うわけでございます。  例えば御承知のように、諸外国には給与所得者について実額控除制度がございますから、実際の話どの程度の収入水準まで平均して課税になっているかなっていないか、これは実額控除と概算控除、どのくらいの方にどのくらいの割合で適用しているか等々にもよると思いますので、あくまで日本流の比較によりますところのものは全く一つの目安という意味ではおっしゃるとおりかと思うわけでございますが、実額控除制度の適用まで織り込んだ綿密なものというものもなかなか難しいところがございますので、従来はこうしたものでお示しをしているところでございます。
  404. 青木茂

    ○青木茂君 それはわかるんです。わかるからこそ課税最低限が国際水準より高いから大丈夫だという論理の展開にはならない。日本のやり方で計算して外国の税法をそれに都合よく合わせただけだ、それは無理だと。だから、私はそこを強く言っておるわけなんです。ましてや、この課税最低限に関しますところの判例がここに出ていますね、最高裁の判例と東京地裁の判例。健康で文化的な生活の計量的基準は生活保護基準に求めるんだと。あるいは、課税最低限が現実の生活条件を無視したことが一見して明白な場合は違憲の疑いが生ずる。  だから、やはり課税最低限というものは税金をかけてはいけない最低生活を意味するという前提に立つからこそ僕はこういう地裁、最高裁の判例が出るんじゃないかと思うわけなんですね。これをどうお考えでしょうか。
  405. 水野勝

    政府委員水野勝君) 課税最低限と最低生活水準という問題についてはいろいろ御議論があるところでございまして、課税最低限、これはその一つの論拠としては、もちろん最低生活水準と申しますか最低消費水準と申しますか、そういう論拠、これが一番学説としては多いところでございます。しかし、そうしたものとそれから歳出等も勘案しながら税務執行と申しますか、どれだけの方々にまでこういう所得税という形で御負担をお願いするのがいいか、そういう負担配分の問題、それから執行との関連の問題、いろいろ議論があるところでございます。  シャウプ勧告のような考え方でございますと、政府というものも最低生活に必要な一つの支出対象である、そういう考え方もないことはないわけでございますので、最低生活水準だけでもって課税最低限が決められるというものではないのではないかと思いますが、しかし、それが重要な要素であるということはおっしゃるとおりであろうかと思います。
  406. 青木茂

    ○青木茂君 そうなりますと、政府最低生活費が余り膨張する、いわゆる大きな政府ですね、大きな政府になってくると国民はたまったものじゃないわけですから、今度の税制改正が行革ギブアップ税制であるというふうに言われないように中曽根内閣以来の行政改革を推進する、こういうことは変わりませんね、大蔵大臣
  407. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 変わりません。
  408. 青木茂

    ○青木茂君 時間が来てしまったようでございますけれども、今野球に例えましてるる申し上げてまいりました。こういう議論を詰めに詰めて初めて九回の裏で税制の抜本的改正ということが私は行われるんだと思いますね。そういう議論を非常に簡単に済ませておいて、もうことしじゅうに案を出すんだでは余りにも拙速だと。拙速だということは必ず後から後悔しますし、また国民の反撃を買うことになります。  とにかく、我々は税金を払う義務があります。ありますけれども、徴税側の論理だけで取られる義務はないということだけ強く申し上げて質問を終わります。ありがとうございました。
  409. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で青木茂君の質疑は終了いたしました。  これにて一般質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十分散会