運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1988-03-24 第112回国会 参議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月二十四日(木曜日)    午前十時二分開会     ─────────────    委員の異動  三月二十三日     辞任         補欠選任      高桑 栄松君     猪熊 重二君      広中和歌子君     和田 教美君      勝木 健司君     関  嘉彦君      平野  清君     青木  茂君  三月二十四日     辞任         補欠選任      坂元 親男君     増岡 康治君      吉井 英勝君     佐藤 昭夫君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         原 文兵衛君     理 事                 伊江 朝雄君                大河原太一郎君                 小島 静馬君                 林  ゆう君                 吉川 芳男君                 久保  亘君                 矢原 秀男君                 吉川 春子君                 三治 重信君     委 員                 石井 道子君                 石本  茂君                 岩上 二郎君                 梶木 又三君                 金丸 三郎君                 木宮 和彦君                 北  修二君                 工藤万砂美君                 坂野 重信君                 志村 哲良君                 下稲葉耕吉君                 中曽根弘文君                 中西 一郎君                 永田 良雄君                 野沢 太三君                 林 健太郎君                 降矢 敬義君                 増岡 康治君                 松岡滿壽男君                 稲村 稔夫君                 小川 仁一君                 大木 正吾君                 千葉 景子君                 野田  哲君                 安恒 良一君                 猪熊 重二君                 及川 順郎君                 和田 教美君                 近藤 忠孝君                 佐藤 昭夫君                 関  嘉彦君                 秋山  肇君                 青島 幸男君                 青木  茂君    国務大臣        法 務 大 臣  林田悠紀夫君        外 務 大 臣  宇野 宗佑君        大 蔵 大 臣  宮澤 喜一君        文 部 大 臣  中島源太郎君        厚 生 大 臣  藤本 孝雄君        農林水産大臣   佐藤  隆君        通商産業大臣   田村  元君        労 働 大 臣  中村 太郎君        建 設 大 臣  越智 伊平君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    梶山 静六君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  高鳥  修君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  瓦   力君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       中尾 栄一君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  堀内 俊夫君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  奥野 誠亮君    政府委員        内閣官房内閣安        全保障室長        兼内閣総理大臣        官房安全保障室        長        佐々 淳行君        内閣法制局長官  味村  治君        総務庁長官官房        審議官        兼内閣審議官   紀 嘉一郎君        総務庁行政管理        局長       佐々木晴夫君        総務庁行政監察        局長       山本 貞雄君        総務庁統計局長  百崎  英君        防衛庁参事官   小野寺龍二君        防衛庁長官官房        長        依田 智治君        防衛庁防衛局長  西廣 整輝君        防衛庁経理局長  日吉  章君        防衛施設庁総務        部長       弘法堂 忠君        経済企画庁総合        計画局長     星野 進保君        環境庁水質保全        局長       渡辺  武君        国土庁長官官房        長        清水 達雄君        国土庁長官官房        会計課長     佐々木 徹君        国土庁計画・調        整局長      長沢 哲夫君        法務省民事局長  藤井 正雄君        法務省刑事局長  岡村 泰孝君        法務省入国管理        局長       熊谷 直博君        外務大臣官房審        議官       遠藤 哲也君        外務省中近東ア        フリカ局長    恩田  宗君        外務省経済局次        長        内田 勝久君        外務省条約局長  斉藤 邦彦君        外務省国際連合        局長       遠藤  實君        外務省情報調査        局長       山下新太郎君        大蔵大臣官房審        議官        兼内閣審議官   土居 信良君        大蔵省主計局長  西垣  昭君        大蔵省主税局長  水野  勝君        大蔵省理財局長  足立 和基君        大蔵省理財局次        長        藤田 弘志君        大蔵省理財局た        ばこ塩事業審議        官        宮島 壯太君        大蔵省銀行局長  平澤 貞昭君        国税庁次長    日向  隆君        文部省初等中等        教育局長     西崎 清久君        厚生大臣官房総        務審議官     黒木 武弘君        厚生大臣官房審        議官       川崎 幸雄君        厚生省健康政策        局長       仲村 英一君        厚生省保健医療        局長       北川 定謙君        厚生省保健医療        局老人保健部長  岸本 正裕君        厚生省生活衛生        局長       古川 武温君        厚生省薬務局長  坂本 龍彦君        厚生省社会局長  小林 功典君        厚生省児童家庭        局長       長尾 立子君        厚生省保険局長  下村  健君        厚生省援護局長  木戸  脩君        社会保険庁年金        保険部長        兼内閣審議官   佐々木喜之君        農林水産大臣官        房長       浜口 義曠君        農林水産大臣官        房予算課長    上野 博史君        農林水産省経済        局長       眞木 秀郎君        通商産業大臣官        房総務審議官   山本 幸助君        通商産業省通商        政策局次長    吉田 文毅君        通商産業省貿易        局長       畠山  襄君        通商産業省機械        情報産業局長   児玉 幸治君        工業技術院長   飯塚 幸三君        工業技術院総務        部長       山本 貞一君        資源エネルギー        庁長官      浜岡 平一君        資源エネルギー        庁石炭部長    鈴木 英夫君        中小企業庁長官  岩崎 八男君        運輸大臣官房国        有鉄道改革推進        総括審議官    丹羽  晟君        労働大臣官房長  清水 傳雄君        労働省労働基準        局長       野見山眞之君        労働省労働基準        局安全衛生部長  松本 邦宏君        労働省職業安定        局長       岡部 晃三君        建設大臣官房長  牧野  徹君        建設省建設経済        局長       望月 薫雄君        建設省都市局長  木内 啓介君        建設省河川局長  萩原 兼脩君        建設省住宅局長  片山 正夫君        自治省財政局長  津田  正君    事務局側        常任委員会専門        員        宮下 忠安君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○昭和六十三年度一般会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和六十三年度特別会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和六十三年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 予算委員会を開会いたします。  昭和六十三年度一般会計予算昭和六十三年度特別会計予算昭和六十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  これより一般質疑を行います。稲村稔夫君。
  3. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 我々日本人の周りには輸入食料が非常に大量に出回っているということになるわけであります。それだけにその安全については非常に関心のあるところであり、これまでも何回か同僚議員からの質問もございました。それらを聞いておりましてもまだ私は吹っ切れないものが残っておりますので、きょうはその辺をいろいろと伺いたいと思います。  まず最初に、この輸入食料の安全に対する厚生大臣基本姿勢について伺っておきたいと思います。
  4. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 御指摘ございましたように輸入食品は最近増加傾向にございまして、量的にも約三分の一は輸入食品だと言われておるわけでございます。そういう背景を考えますと、今後、特に国民の健康を守るためにはこの輸入食品安全確保は非常に重要な課題だと考えておるわけでございまして、国民の健康を守るために最大限努力をしてまいらなければならない、かように考えております。
  5. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 最大限の御努力をなさる、こういう御答弁をいただいたわけでありますけれども、大変失礼なんですけれども、私はその最大限の御努力というのが本当に大丈夫なのかといういわゆる信頼との関係の中ではまだ疑問が残っております。  そこで伺いたいのでありますけれども大臣衆議院予算委員会で、収穫後の農薬について残留農薬基準をつくると答弁しておられます。それは一体いつできるのか、そしてその進捗状況はどうなっているのか、それをお聞かせいただきたい。
  6. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) ポストハーベストの問題でございますが、これは外国におきまして収穫後専ら保存のための殺菌などの内容の農薬でございまして、我が国ではほとんどそういう習慣がございません。しかし、輸入食品増加傾向にある今の状況の中でポストハーベストを使った輸入食品が入ってくるわけでございまして、この安全基準につきましては、現在WHO国際基準がございましてそれを準用しておるという現状でございます。それに対しまして、我が国輸入食品ポストハーベスト安全基準についてつくるべきではないかと、こういう御指摘があったわけでございますので、今後検討してそういうものをつくってまいりたい、こう御答弁申し上げたわけでございます。  今後の進め方につきましては、今の段階ではまだ申し上げるという状況ではございませんが、努力してまいることは間違いありません。  以上でございます。
  7. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 これは厚生省が昨年九月の農林水産委員会で私に対しても、六十年から年次的にその計画に入っておる、こう言っているんですから、その後の進捗状況というのは具体的にあるでしょう。どんな状態になっておるか、聞かしてください。
  8. 古川武温

    政府委員古川武温君) 委員指摘のように、六十年度から予算措置をいたしまして調査等に入っておるわけでございますが、できるだけそうした進捗を速めて、国民の期待にこたえるようにまとめていきたいと思っております。
  9. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そんな抽象的なことじゃ困るんですよ。いいですか、年次的に準備に入っているその途上だと言っているんですから、どういう状態になっているか、それを教えてくれなきゃ困ります。
  10. 古川武温

    政府委員古川武温君) 検査の項目につきましては、FAOWHO基準、あるいは諸外国におけるそうした農薬使い方についての実態等そうした現状、あるいは現に規制している諸外国のそうした基準、そうしたものをまず集めている段階でございます。
  11. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 しかし、輸入食料はどんどんと入ってきているんでしょう。そうしたら、入ってきているんだったら当然もう既に具体的なことに着手していなきゃいけないのじゃないですか。そう思いませんか。
  12. 古川武温

    政府委員古川武温君) 当面の問題につきましては、先ほど大臣の御答弁がございましたように、この問題については大変大きなものと考えておりまして、問題のあるものにつきましてはFAOWHO基準というものを、あるいはその輸出国基準というものを参考にしながらこれに対処しているわけでございます。
  13. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 今の農薬基準をつくるために六十年からと言うのですが、六十年から何年たっていますか。こんなに大変な時期に、まだ外国資料を集めているという段階なんですか。それでいいと思っているんですか。
  14. 古川武温

    政府委員古川武温君) 決してこういうふうなマンマンデーでよろしいとは思っておりません。ただ、この問題は、国民健康面からの見方と、もう一つはやはり食料をどう確保するかという問題等もありまして、その基準等の引き方、そうしたものは十分に現状実態というものを調査しなければその土俵づくりができない、こういう状況にございます。
  15. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 ポストハーベストで使われているものは大体わかっている、特にアメリカのものはわかっているということだと思うんですが、それらについて分析をしたということはありますか。さらに、そういうものについての毒性で試験などはやったことはありますか。
  16. 古川武温

    政府委員古川武温君) ただいま食品の品目につきまして具体的に御答弁する資料を持ちあわせておりませんが、年間何件かというふうな件数を設定しまして、その農薬食品等につきまして慢性的な毒性等を含めまして検査を続けております。
  17. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 残留農薬基準をつくるということは、きちんとしたデータが必要だということでしょう。そうしたら、そのデータというのは今どの程度まで積み重ねられている形になりますか。
  18. 古川武温

    政府委員古川武温君) 六十年からのことにつきまして、目的は残留農薬基準設定でございます。それで輸入農産物残留農薬実態調査をしていると申し上げました。それからFAOWHO国際機関安全性データ、これは個々の薬品についてそれぞれまとめられておるわけでございます。それもまた順次発行されますので、時間的な経過もございます。それから食品中の残留農薬分析方法設定というのもそれぞれございます。そうしたものについて行ってきております。
  19. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 だからいつごろまでにできるのかということを私は大変心配しているんです。いつまでたってもそれはなかなかできないということであったら、食料の方がどんどんどんどんと我々の周りに来るわけですから、その辺のところは急ぐ気はあるんですか。
  20. 古川武温

    政府委員古川武温君) 委員指摘のように、急いでまとめなければいけないということは十分承知しております。最大限努力を続けてまいりたいと思います。
  21. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 こんな状態の中だったら、めどを立てなければどうするんですか。めどはいつごろに置くんですか。
  22. 古川武温

    政府委員古川武温君) できるだけ早い将来においてまとめたいと思っております。
  23. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 六十年から年次的に段階的にとまで僕には答えていて、そしてめども立っていない。こんな無責任なことがありますか。
  24. 古川武温

    政府委員古川武温君) 委員のきつい御叱正、十分私どもも心しております。  ただ、この問題につきましては関連の各所掌もございます。そうしたところの考えも十分参酌し、そうしてそれぞれの省庁の知恵を集めてまとめていかなければなりません。したがいまして、ここの席でいついつまでというお約束をしかねるわけでございます。御了解を賜りたいと思います。
  25. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私はもう怠慢だということ以外にないと思うんですけれども、それでは、めどを立てて明らかにして我々に報告をするというその作業を早急にやる気がありますか。
  26. 古川武温

    政府委員古川武温君) 厚生省としましては早急にこれをまとめたいと考えております。そうしてその考えを各省庁に御連絡し、そうして協議いたしましてまとめさせていただきたいと思います。
  27. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 大臣、このことを一つとってみましても、あなたが基本姿勢で述べられたことと随分違うじゃないですか。めどを立てられますか、どうしますか。これは今度大臣のお考えを聞きたい。
  28. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 最初申し上げましたように、ポストハーベストの問題は、我が国外国では習慣が違いますし食料生産量も違います。我が国の場合には貯蔵するというような問題は余りないわけでございますけれども外国の場合には生産から貯蔵してそれから消費と、こういうことになりますので、したがってそのための保管用農薬を使う、こういうことでございます。そういうことでございますから、国内収穫後に使う農薬に対する安全性基準というものがないわけで、またありましても少ないわけでございまして、そういう点を改めるために国内で独自の基準をつくろうと、こういうことでございます。  ただ、これには関係省庁との協議といいますか、御協力も要るわけでございまして、現状におきましては国際基準を使いながらできるだけ早く国内基準の整備を図りたい、こういうことで今日まで来たわけでございますが、今のいろいろな御指摘、私もごもっともなことだと思いますので、早急に関係省庁協議の上めどをつけまして御報告申し上げたいと思いますので、御理解いただきたいと思います。
  29. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 ぜひ早急にめどを立てていただきたいと思います。  それで、大臣、今あなたは残留農薬基準にないものは国際基準を当面使っているという意味のことを言われました。しかし、それもちょっと私不思議なんですけれどもポストハーベストアプリケーション国際基準というものはあるんですか。
  30. 古川武温

    政府委員古川武温君) 国際基準と我々申し上げておりますのは、FAOWHO農薬部会がリコメンド、勧告しましたものを申し上げております。
  31. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 これは残留農薬に関する勧告であって、ポストハーベストについてのものではないですね。
  32. 古川武温

    政府委員古川武温君) ポストハーベストにつきましては、FAOWHO部会でもこれを農薬と見ております。そしてその勧告した中身には、ポストハーベストとしての使い方も含めて基準値設定しております。
  33. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そういたしますと、アメリカポストハーベスト規制値FAOのこれとはかなり違って、アメリカの方がうんと高いという場合が結構ありますね。その場合はどうですか。
  34. 古川武温

    政府委員古川武温君) 個々に見ますと、アメリカの決めたもの、それとFAOWHO勧告したもの、この値には委員指摘のように違う部分もあります。
  35. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 ポストハーベストというのは収穫後にも使用するわけですから、どうしたって高くなってくるんですよ。だから、FAO基準というのは必ずしもポストハーベストで適当であるかどうかというのには問題があるということで、アメリカは逆に少し高いのではないだろうか、かなり高いものもあると、こういうことじゃないかと思うんですね。  そこで、そういうものに対して我が国で今のポストハーベスト農薬残留基準をつくるということは、これは今度は我が国でも使ってもいいということになりますか。
  36. 古川武温

    政府委員古川武温君) 農薬の使用の基準につきましては、私どもから申し上げるのは少しフライングだとは思います。ただ、我が国農薬というものは、ポスト、プレというものを区別せず、一般的に農薬というふうな考え方で定めております。
  37. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 農薬農林水産省の管轄だということをおっしゃりたいんでありましょうけれども、しかし農薬取締令ではその使い方まできちんと全部規定をしているわけですね。そうすると、ポストハーベストアプリケーションで使えるものというのはほとんどないでしょう。
  38. 古川武温

    政府委員古川武温君) 一般的に申しますと、ポストハーベスト使い方はないと言っていいと思います。しかし、例えば米その他長期に保存するものについては、やはりポストハーベスト考え方でこれを使っていかないとその食品の品質が落ちていくという面がございます。一つの例で申し上げれば薫蒸剤でございます。
  39. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 ほんの例外的に幾つか薫蒸剤があるというだけのことでありまして、そうすると問題は、その残留基準をつくったら農薬取締令も改正をしなければならぬようなことになりますか。
  40. 古川武温

    政府委員古川武温君) 農薬取締規則ですか、これを改正するかどうか、今後の検討にあろうと思います。
  41. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そこで、ちょっと角度を変えまして、FAOWHO基準というのが日本の場合よりもかなり甘いというものが多いわけであります。なぜ日本の方が厳しいんですか。
  42. 古川武温

    政府委員古川武温君) 日本残留農薬基準と比較して、あるいは添加物基準と比較してのお話だと思いますが、日本基準の決め方とFAOWHO基準考え方というものが相違がございます。また、ポストハーベストというものについて言えば、日本基準ではそういうものを念頭に置いておりません。したがいまして、この薬の使い方その他によって基準というものは動くものと考えております。
  43. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そうすると、我が国残留農薬基準というのはこれからも動かすんですか。
  44. 古川武温

    政府委員古川武温君) 残留農薬基準につきましては、現在の考え方国民の健康は十分守られているものであります。ただ、今御議論になっておりますポストハーベストという使い方になりますと、今残留農薬基準考えている考え方だけでこれを考え切れるかということがございます。また一方、FAOWHOが決めている農薬の残留している基準勧告値でございますが、これはやはり国際的に、専門毒性の学者まで含め、FAOWHOという、WHOは世界保健機構でございます、そうした専門の学者も集めて一つ基準というものを決めておりますから、この基準というのが直ちにこれが安全でないとかそういう議論にはならない、こう考えております。
  45. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 安全でないということを言えないと私は言っているのではないんです。日本の場合に厳しいというのはそれはなぜかというふうに聞いたんです。そして厳しい方がこれは正しいのではないかと思うから聞いているんです。その辺はどうですか。
  46. 古川武温

    政府委員古川武温君) これは農林サイドの方で、ポストハーベスト農薬使い方実態、そうしたものを含めまして御答弁すればよろしいと思いますが、私から申し上げさせていただきますと、ポストハーベストを含めた農薬使い方というのは、例えば添加物のような場合には、その食品に対して一定の添加物を加える、こういうふうなことで基準値というものを明確に決めていけます。しかし、FAOWHO農薬基準として考える際には、各国それぞれ気候も、あるいはその食品の保存状態、保存方法、すべて条件が違うわけでございます。そして、それについて食料がよい品質で長期間保存できるためにその農薬を使うときには、その農薬使い方というのはそれぞれ条件によって変わってくると思います。  したがいまして、農薬基準値勧告された値というものは、その地域その条件によっていろんな値が出てくる。その値の一つ一つをいい悪いではなく、その全体を、人がこれを食した場合にトータルとして安全かどうか、こういう判断が入るのだろうと思っております。そして両サイドから一つ基準値というものを、最高でもこの残留している農薬の値はこれ以下でなければならない、こういう決め方になると思います。  したがいまして、また個々食品については基準値は定められたものよりずっと低いようになるようでございます。そして、現在外国等の資料を拝見した範囲内で申し上げますと、そういうふうな決め方をした上で実際に摂取量というものを分析してみると、ADIを超えるものではない、そういうふうな例はなかったというふうな字句も見えます。これは文書の上のことでございますから、こういうところで自信を持って申し上げることではございませんが、そういうふうな実態だと、そして安全についてはそういうふうに考えられるのじゃないかと、こう思っております。
  47. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私は納得できません。それがポストハーベストで利用されようが、農薬として残留していようが、食べるのは同じなんでありますから、ということであれば基準値は同じふうにして考えてもらわなきゃならぬというふうに考えるんですが、いずれはいたしましても、我が国データに基づいて、我が国の試験に基づいてきちんとした対応をしてもらうのは当然だと思うんですが、この辺を大臣からきちんとした御答弁をいただきたいと思います。
  48. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 御指摘のように考えております。今後とも最大限努力をいたしたいと思います。
  49. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 まだ納得できないことばかりが残っているのでありますけれども、あと少し事務方の皆さんにも伺っていきたいと思います。  使用後の化学物質は、農薬取締法に、あるいは残留農薬基準というのがないものというのは、法的には食品衛生法の適用になるのが当然ではないかというふうに私は考えておりますけれども、この点はどう考えていますか。
  50. 古川武温

    政府委員古川武温君) 食品にいろいろなものが付着している、そういうふうなことで、四条違反というふうなことでこれを問題にせよと、こういうふうな趣旨かと思います。  先ほど申し上げましたように、ポストハーベストについての農薬についてだけ申し上げますと、これにつきましてはFAOWHO勧告値もあり、また輸出国におけるそれぞれの基準もございます。そうしたことでございますので、直ちにこれが四条違反となるかどうかということにはならない、こういうふうに考えております。
  51. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 FAOの規定だとかそういうことについて伺っているんではない、我が国の法律について伺っているんです。我が国の法律で今対応するものといったら、農薬取締法と残留農薬基準とかそういうもの、それから食品衛生法、こういったものがあるということであって、何かそれ以外に法的な根拠というのがあるんですか。
  52. 古川武温

    政府委員古川武温君) 食品、そして健康に関する問題でございますから、これは食品衛生法の中で対処すべきものだと考えております。
  53. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 それでは、そこでもう一度確かめておきます。  そうすると、ポストハーベストに使われているものも我が国の法律でいけば食品衛生法で、残留農薬基準のないものは食品衛生法の対象になる、こういうふうに理解をしてよろしいですか。
  54. 古川武温

    政府委員古川武温君) 同じ答弁を繰り返すようでございますが、国際的な慣習あるいは国際的な基準、そうしたもので安全と認められているものにつきましては、これを直ちに四条違反というふうに判定はしかねるものでございます。
  55. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 我が国の法律に照らしたら、ほかのものがなかったら食品衛生法を適用するしかないのじゃないですか。
  56. 古川武温

    政府委員古川武温君) 食品衛生法で、健康あるいは安全にとって危険性のあるもの、これは取り締まっていかなければならないものだと、こう思います。
  57. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そうすると、ポストハーベストで使われたものも安全でなければ食品衛生法として適用する、こういうことになりますね。
  58. 古川武温

    政府委員古川武温君) ポストハーベストにつきましては、国際的にも農薬として考えられております。したがいまして、農薬としてのはっきりした位置づけをし、そしてこれについての残留の基準をつくっていく、そしてこれについては鋭意努力していく、こういうふうなことになろうと思います。
  59. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 ところが、OPPとTBZはかんきつ類の食品添加物ではないんですか。
  60. 古川武温

    政府委員古川武温君) おっしゃるとおりでございます。
  61. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 これはポストハーベストとして、農薬としてもう使われているということになるんですけれども、これはどっちなんですか。
  62. 古川武温

    政府委員古川武温君) 今ポストハーベストというものを考えて、そして国際的にこういうふうに大きな流通の輪の中で食品が働くという現実を眺めてみますと、こうした食品に添加するものあるいは食料の保存に使うもの、こうしたものがポストハーベストという概念で使われるものにつきましては国際的な考え方に沿ってこれをまとめるべきだと、こう考えております。
  63. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そうすると、OPP、TBZも対象を添加物からほかのものにかえる、農薬にかえる、こういう意味ですか。
  64. 古川武温

    政府委員古川武温君) 現在はそうしたあれがございませんので、食品添加物としてこれに対処しております。近い将来、各省と十分協議しましてポストハーベストについての考え方がまとまり、それについての対処方針が明確になれば、またそのときにあるべき姿になろうと思います。
  65. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 どうもこの問題は議論をしていればしているほどわからなくなってくるし、不安が出てくるばかりでありますので、これは改めてまた議論を十分にしなきゃならない、こんなふうに思っております。  いつまでもこれをやっていると時間ばかりとっていきますので、さらにもうちょっとほかの点で厚生省に伺っておきたいと思います。  輸入食料検査について、先日の質問に対して、必要なものは検査をしている、こう言われましたけれども、輸入件数の一一%程度しか検査をしていないという実情などを見てまいりますと、検査が必要なものとはどんな場合を言うんですか。
  66. 古川武温

    政府委員古川武温君) 輸入食品検査につきましては、委員御案内のとおりでございますが、まず書類で届書というのがございます。これによって明確に調べていくわけでございます。そしてこの書類審査というものは、中身は商品説明書、この中には製造方法、主要原材料あるいは成分等があり、また今までいろいろな輸入に際してのトラブル、例えば輸送途中において事故があった食品ですとか、初めて本邦に輸入されるもの、あるいは過去に違反があったもの、そうしたものもわかるわけでございますので、そうした観点から必要なものについては検査をする、こういうふうなことにしております。
  67. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 検査をしないものというのはどうやって安全だと保証するんですか。
  68. 古川武温

    政府委員古川武温君) 輸入届書を詳細に申し上げればよろしいわけでございますが、そうした書類審査によって一応の見当というものはつくわけでございます。そして今、そういうふうなことで書類審査だけで安全と言い切れるのか、こういう問題でございます。もちろんこれは食品衛生法の建前から全数検査ということではございませんので、一匹のネズミも漏れないのかということについては、漏れはあると、こういうふうには思います。しかしその数は非常に少ないのではないか。  今一一%と申し上げたのは、ここずっとその程度の検査の率で推移しております。そして、昨年あるいは一昨年あたりは、そうした検査の結果不合格、不適とされるものは一%あるいは一%を割るような状態でございます。したがいまして残り九割——これは件数でございます、重量でございませんが、その件数のものにつきましてそれでは一%の危険性があるのじゃないかということにはならない。これはしっかりした専門食品衛生監視員がしっかりと審査しておりますので、相当低い率、こういうふうなものでございます。  それにつきましては、海際、空際を通過した食品につきましては各都道府県の所管の役所でそれぞれ収去検査を通して、輸入食品について漏れがあったかどうか、あった場合にはさらにそれをフィードバックして、輸入の際にその資料をもってさらにそのものについては詳しく検査をする、こういうふうなシステムになっておりますので、年次そうしたもの、不届きな品が入るということは少なくなっているであろうと思っております。
  69. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 たしかスルファジミジンの検出という場合には、これは外電が一つの動機だったというふうに思いますがね。そうすると、結局、書類審査をやられたり、いろいろ万全だと今言われるけれども、よそから知らされなかったらわからなかったというようなことがあるのじゃないですか。
  70. 古川武温

    政府委員古川武温君) 委員おっしゃるように、アメリカから輸入された豚肉の件、これについては、各国の情報にアンテナを伸ばしております。そのアンテナの中にかかった一件でございます。しかし、そうするならば漏れがあるじゃないかと、こういう御指摘でございますが、こうした情報入手というものをしっかりとやっていきながら、事前にそうしたものが水際で押さえられるように今後とも努力したいと思っております。
  71. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 書類審査で安全だということを確認するということを言われたんですが、その書類審査の中で、どういうものがきちんとしていれば安全を保証するというその保証になるんですか。
  72. 古川武温

    政府委員古川武温君) これは専門食品検査員、こうした者の勘に属することがありまして、大変あれでございますが、書類に目を通しますと、一定の基準で、どこで、いつつくられたものというふうなもの、あるいはその製造がどこで、どういうふうな成分があると、こういうふうになります。例えばヨーロッパから入りますいわゆる香料、そうしたものについてはこれは臭い、あるいはどこどこから入りました豚肉についてはこれは危ない、こういうふうなことで、従来の経緯の蓄積がございます。そうしたところでその辺をしっかりとつかまえまして検査に回すわけでございます。  なお、それらの情報につきましてはこの一月からコンピューターに入れまして、従来の履歴がすぐにわかるような仕組みになっておりますので、その辺の漏れもなくこの対応ができるのではないかと、こう考えております。
  73. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 書類審査できちんとやると言ったけれども、書類審査じゃないじゃないですか。それじゃ勘審査じゃないんですか。この問題も本当に乾かない問題だと思います。もう少しこれももっと詰めなきゃならぬというふうに思っておりますが、きょうはこの程度にしておきましょう。  ただ、我が国基準をつくるという上で、私はここでちょっと伺っておきたいのですけれども、環境庁の管轄で登録保留基準というのがありますけれども、これは一体どういうものなんでしょうか。何の目的のためにつくられたどんな基準なんでしょうか。
  74. 渡辺武

    政府委員(渡辺武君) 御答弁申し上げます。  我が国におきまして、農薬農薬取締法に基づきまして農林水産大臣の登録を受けなければ販売できないことになっております。農林水産大臣が登録をされます場合に、その登録を認めるかどうかの判断をする基準、これが先生御指摘農薬登録保留基準というようなものでございまして、それは環境庁において作成をいたしておるわけでございます。  基準といたしましては、人の健康の保護と環境の汚染の防止という観点に立ちまして四つの基準がございます。四種類の基準がございまして、一つは作物残留性に係る基準でございます。二番目は土壌残留性に係る基準でございます。三番目は水産動植物への毒性に係る基準でございます。四番目が水質汚濁に係る基準でございます。  今御議論いただいておりますことに関連いたしますと、特に重要なのはこの作物残留性に係る基準というように考えますが、これにつきましては個別農薬ごとに農作物への農薬の残留量の基準を定めておりまして、この基準を超えて作物中に残留する農薬であればその農薬の登録は保留される、認められないということになるという性質の基準でございます。
  75. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 その残留を超えると登録が認められないと言いますけれども、残留を超えているかどうかという確認はどういう形でされるのですか。
  76. 渡辺武

    政府委員(渡辺武君) 私たちのつくりました基準を農水省で判断をされまして、具体的に登録申請が出てきているものをもってそれに当たるかどうかの判断を農林水産省の方でやられておるわけでございます。
  77. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そうすると、これは基準だけはおつくりになったけれども、あとの実行は農林水産省任せ、こういう形になるわけですか。
  78. 渡辺武

    政府委員(渡辺武君) 農林水産省任せと申しますか、もともと農薬の話でございまして、基本的には生産から流通、それからそれの使用にわたりまして農林水産省が基本的に所管をしておる作業、仕事でございます。その中の登録保留基準という部分だけを環境庁が所管をしておりますが、それは農薬がこの世の中に出ていくときに、環境なり人の健康の確保という観点から、このような基準のものである限りそれはいいだろうという基準を環境庁としてつくっておるという分担をいたしておるわけでございまして、具体的な個々農薬がこの基準に合うかどうかというような御判断は、先ほど申しましたように農林水産省で行うことになっておるわけでございます。
  79. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私は、本来人の健康に重大な影響を与えるものでありますから、厚生省に重大な関心を持ってもらうのと同じように、環境庁もその辺には重大な関心を持っていただいて横の連絡は十分やっていただかなければならないけれども、ただ基準づくりだけで終わるようなことがないように、環境庁としてもきちんとした監視体制というようなものをつくっていくくらいのことをお考えになったらどうかと思うのですけれども、その辺はいかがですか。
  80. 渡辺武

    政府委員(渡辺武君) 御指摘の点でございますが、先ほど申し上げましたように、農薬の登録をするかどうかの基準をつくっておるということでございまして、今議題になっております個々食品安全性をチェックするための基準をつくっておるわけではございません。したがいまして、例えば食品衛生法の場合のように、個々食品の中にその基準が確保されておるかどうかといったようなチェックを具体的にする基準ではございませんので、その点は御理解を賜りたいと思うのでございます。  いずれにいたしましても、環境庁といたしましても、この農薬につきましてはそれが環境への影響あるいは人の健康への影響に非常に大きなかかわりを持っておるものでございますので、その安全性の確保につきましては今後とも万全を期してまいりたいというように考えておる次第でございます。
  81. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 この点については、事務方の答弁がありましたけれども大臣はいかがですか。
  82. 堀内俊夫

    国務大臣(堀内俊夫君) 先ほど来聞いておりまして、先生の御懸念はよくわかります。ただこの場合、チェックの問題まで私どもに言われると、行政改革の問題に入ってくるので私からコメントするわけにはいきません。
  83. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 チェックまでいけるかどうかという問題は別にして、それでは環境庁としては重大関心を持って今後対応していただきたい、そのことだけは強く要望しておきたいと思います。  時間も経過をしておりますので、次の問題は入らせていただきたいと思います。  きのうの本会議における我が党の糸久議員の質問のうちで、地方負担の増の問題とかかわりがあります国の補助負担率の引き下げの特別措置について、これは自治大臣と大蔵大臣の御答弁にニュアンスの違いがあるように私は思われたのでありますが、これはもう一度確認したいのであります。六十三年でこの特例措置が切れますが、六十四年以降補助負担率の引き下げをどうするのか、それぞれお伺いしたい。
  84. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 昨日も本会議で申し上げたことでございますが、この暫定措置の期間終了後におきましての国庫補助負担率の取り扱いにつきましては、今後の諸情勢の推移、国、地方の役割分担及び財源配分のあり方等を勘案しながら、関係省庁とも協議の上決定をしてまいりたいと思いますが、できるだけ速やかに検討を開始したいと思っております。
  85. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 国庫補助負担率の引き下げは、国の極めて厳しい財政事情を背景として六十三年度までの暫定的措置として行われているものであります。でありますから、昭和六十四年度以降の補助負担率の取り扱いについては、原則としてもとの補助負担率に戻すべきものと考えておりますが、具体的には六十四年度の予算編成時までに関係省庁協議の上定められることとなっております。  自治省としては、各事業の性格、国庫補助負担制度の意義等を踏まえつつ、国として責任が全うされるよう、また地方財政の健全かつ安定的な財政の運営の確保が図られるように検討を進めていく考えでございます。
  86. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そういたしますと、これは特例法の延長もあり得る、そういう意味でおっしゃっているのですか。
  87. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) それはまさにこれから予算編成時の具体的な内容を含めてでございますけれども、私は、原則としてもとの状態に戻るべきだ、三年前の状況とは既に変わっているわけでございますから、原則としてという言葉を使っておりますが、三年前の状況とは全く財政規模も何も変わっております。それからそれぞれの国、地方の財政事情も変わっておりますので、そういうものの性格を踏まえながら、これから検討してまいるということであります。
  88. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 もし特例法の延長もあり得るということになると、これは非常に大きな問題なんでありまして、今自治大臣からの御答弁をそのとおり受け取らせていただけばそれでもわからぬわけではありませんけれども、しかし同時に、やはりその可能性を残しているとすると非常に問題だと思うんです。六十年に一年限りということで一度やりました。そして六十一年度に今度は三カ年ということでまたやった。何のために期間を決めたのかと、こういうことにもなってくるわけであります。その辺のところ、くどいようですけれども大蔵大臣、これは特例法の延長も含めて考えておいでになるんですか。
  89. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先ほどお答え申し上げたとおりでございます。
  90. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 それでは、ちょっと角度を変えてお伺いをいたしましょう。  六十一年度の地方財政に対する影響額として措置をされたものの中で、建設地方債が充てられている暫定加算分というのがあります。これは大蔵、自治両大臣の覚書はどういうふうに書いてありますか。
  91. 津田正

    政府委員(津田正君) 自治、大蔵大臣の覚書によりますいわゆる暫定加算の問題でございますが、このような覚書でございます。「今回の補助率の引下げ措置等が昭和六十一年度から昭和六十三年度までの暫定措置であることにかんがみ、暫定的に、昭和六十六年度以降に精算すべき地方交付税交付金の額に加算されるものとし、その取扱いについては、」、ちょっと枝葉の文章がございますが、その取り扱いについては、「暫定期間終了後、両省間で調整するものとする。」、このような覚書がいわゆる暫定加算でございます。
  92. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 「その取扱い」というのは一体どういう意味ですか。
  93. 津田正

    政府委員(津田正君) 昭和六十六年度以降の地方交付税総額への加算の額、時期等の具体的な方法などについて協議がされる、こういうことでございます。
  94. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 法定の分の四百七十億円の場合は加算をする、こういうことになっていますね。そうすると、これは「その取扱い」というのは加算の額も含めるということですか。
  95. 津田正

    政府委員(津田正君) 法定の額につきましては、それぞれもう国会の御審議を経て法律上何年度は幾ら、こういうふうにお決めいただいておるわけでございます。したがいまして、暫定加算の方につきましては一応総額ということは頭に置いてございますが、その額も含めてまた時期、方法等を今後調整すると、こういうことでございます。
  96. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 過去に暫定加算というのは何回かやっていると思いますが、年度別と合計をちょっと教えてください。
  97. 津田正

    政府委員(津田正君) いわゆる暫定加算の額は現在まで八千四百四十億円に上ってございますが、六十年度分が千億、六十一年度分が二千四百四十億、六十二年分が二千四百八十億、今回御提案申し上げております地方交付税、地方財政対策に絡んだ六十三年度のものが二千五百二十億、合わせて八千四百四十億でございます。
  98. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 あなたが総額と言ったのはこの八千四百四十億円ですか。
  99. 津田正

    政府委員(津田正君) さようでございます。
  100. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そうすると、これが六十六年度以降というんですけれども、暫定加算の期間終了後というのはいつからという意味ですか。
  101. 津田正

    政府委員(津田正君) 暫定加算期間終了後というのは、六十三年度までの現在の補助金カットの暫定期間、それが終わった後で調整しよう、しかし加算等は六十六年度以降ということは書いてございます。
  102. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 補助負担率が一方では引き下げられ、そういうことでもって地方債が増発をされて、他方では地方が過去の約束に基づいて取れるというか、国からもらえるものということになっているいわゆる臨特というのを次々先送りされている。これでは地方は利子のつく借金をしながら国の方では繰り延べをされる。こういうことでどうも私は納得ができないのですけれども、このような状態を自治大臣はどういうふうにお考えになっていますか。
  103. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 地方財政を見ますと大変厳しい状況でございますから、後年度にいろんな問題を残さないことは望ましい形でございます。さは言うものの、国の財政自身も確かに百六十兆余の公債発行残高を持ち、歳入面を見ましてもさほど新しいものがない。そういうものをいろいろ考えてみますと、よく言われるように車の両輪論、決して私は国の責任を回避すべきだということで申し上げるわけではございませんが、地方栄えて国滅びていいという形にはなりませんし、さりとてまた国栄えて地方滅びていいということにはなりませんので、その両々の関係をよく見きわめていかなければなりませんので、単年度単年度で解決ができればさらにいいにこしたことはございませんけれども、後年度に問題を送っているという現実はそういうことから起きていると思います。
  104. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私は、これからさらにいろいろと伺いたいと思うことの中で、どうもそこのところをはっきりさせていただかないと困るのですけれども、やむを得ず後年度にみんな送っているというのですがね。この状態では非常に地方はこれから困るということになると思うんですが、自治大臣は、あなたの任期中にこれを何とかしたいというふうには思いませんか。
  105. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 気持ちの上ではなるたけ整理を進めて、将来の明るい展望を築いていきたいと思っております。  しかし御案内のとおり、このいわゆる補助率カットを除く分野については経常収支はようやく収支均衡いたしましたので、中長期的には明るい展望が開けていると思いますので、一番当面の大きな問題は国の財政事情がよくなり、先ほども申しましたように、この暫定的な補助率カットの問題さえ解決ができれば大きな方向としての展望が開けるということでございますので、この問題に精力的に取り組んでまいりたいと思います。
  106. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 それではなかなか納得できませんけれども、仕方がありません。次の方に入ります。  地方債問題でありますけれども、補助負担率の引き下げ措置に対して、投資的経費だけでなく経常経費にも、また国保の地方負担増分にもその一部を地方債増発で対応している。この点は地方財政法第五条に違反しないかと思いますが、どうですか。
  107. 津田正

    政府委員(津田正君) この数年来の地方財政対策におきましては、御指摘のとおり経常経費部分の補てんにおきましてもマクロとしては地方債を充当してございます。ただ、具体的な個々の団体への財政措置といたしましては、原則として基準財政需要額に算入すると。じゃ、マクロとその個別の団体との措置の違いというものは何でやっておるかと申しますと、先生も御承知と思いますが、投資的経費におきまして従来から地方交付税の基準財政需要額に算入しておったものを、経常経費分のカット分等に係るものの額を追い出して、いわゆる投資的経費に充当されておった一般財源を追い出してそちらの方は地方債で手当てする、経常経費分につきましては交付税で対応する、このような形をとっておりまして、決して地方財政法には違反するものではないと、このように考えております。
  108. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 どうもそれがわかりませんね。投資的経費の部分というか、経常経費分の地方債というのは、そうすると地方債を充てるというけれども、それは結局投資的経費でもって手当てしている、こういうことですか。
  109. 津田正

    政府委員(津田正君) 投資的経費についての交付税算入を減らしまして、それを経常経費分の方に回し、足らなくなった投資的経費の財源を建設地方債で充てる。こういうことでございますので、地方債は投資的経費に当たっておる、こういうことでございます。
  110. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そうすると、自治体の実際の運営は、投資的経費の方はみんなほとんど地方債だけにしてしまって、あと自由がきかないで、経常経費に自由がきく経費はみんな持っていかれる、こういうことになりませんか。
  111. 津田正

    政府委員(津田正君) 投資的経費の方の起債充当率が高まっておる、逆に言えば投資的経費に回る一般財源は少なくなっておる、こういうような形になります。
  112. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 ちょっとまた角度を変えますが、公債費負担率というのがあります。これほどの程度が赤信号でどの程度が黄信号ですか。
  113. 津田正

    政府委員(津田正君) 地方行財政は住民生活に密着しました行政の責任を有しておりますので、例えば都道府県でございますと学校の先生あるいは警察官を抱え、市町村では保育所あるいは清掃等の事務をやっておるわけでございまして、構造的に申しますと、いわゆる硬直的な経費が大きい、これが一つの形でございます。財政構造上人件費、扶助費等のものが多いわけでございます。  具体的に例として数字を申し上げますと、昭和六十一年度決算によりますと市町村の経常収支比率が七九・五%になっております。そのうち公債費を除いた率、いわゆる人件費、扶助費等でございますが、これが六五%程度になってございます。したがいまして、市町村におきまして残りの三五%の一般財源をどのように振り向けるかと、こういうようなことになります。その場合に、いわゆる公債費は既に行った事業のツケ払いでございます。そういう意味におきまして六五%、残った三五%の、それが半分以上公債費で食われるとなりますと、いわば後追い行政で、前向きの行政のやる部分が少ない、こういうような考え方ができるかと思います。  そういうことで申しますと、六五%が人件費、扶助費等で食われ、残り三五%、その半分一七・五%というのが一つの仕切りかと考えますが、私ども一般的には公債費が一五%を占めると黄色信号、二〇%になりますと、むしろ前向きの経費をやる部分がかなり少なくなってくるわけでございますので赤信号と、こういうふうに市町村等を指導しておるわけでございます。
  114. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 二〇%以上が赤信号とおっしゃいましたが、四十九年には二〇%以上という団体はゼロですよね。現在はこれが何%になっていますか。
  115. 津田正

    政府委員(津田正君) 六十一年度の決算で見てみますと、二〇%以上の団体は千八十二団体でございます。三千三百のうちの千八十二、こういうような数字で、かなり財政が硬直化しておる団体が多くなっております。
  116. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そこで、ことしは今度はNTT株の売却の中から地方に貸し付けられるというものがあります。これはこの中に入っていますか。
  117. 津田正

    政府委員(津田正君) 計数的に出ておりますのは六十一年度決算でございますので、まだNTT分というものは入っておりません。
  118. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 これも補助金的に使われるというふうに思いますけれども、そうすると、これは公債費と同じような取り扱いになりますか。
  119. 津田正

    政府委員(津田正君) まさしく補助金のかわりに起債と、地方団体にとっては地方債の一種になるわけでございますが、このNTT株によります貸し付けは、御承知のとおり法律によりまして、当該貸し付けの対象とした事業に係る国の負担または補助については、別に法律に定めるところにより当該貸付金の償還時において行うものとすると。いわば補助金のつなぎというような性格のものでございますので、地方団体におきます財政負担としては、こういうような償還時に国の方から金が来るというものでございますので、地方団体自体の負担にはならないものと考えております。
  120. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 これは、事業に対して全額貸してもらえるのですか。そうでなければ自治体のこれに基づく負担というのがまた別にあるということになりますがね。
  121. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 補助金部分が無利子貸し付けということでございますので、補助率相当額が無利子貸し付けで参りますので、自治体側の裏負担は同じようにございます。
  122. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そうしますと大蔵大臣、この間同僚議員にお答えになっていた中で、NTTのこの分は橋とか道路とか、いろいろとそういうものを一遍にしてもらうという意味だという御答弁がありましたが、これはそれなりに自治体の負担もふえるということを意味しますので、そうすると、やはりこれは問題があるのじゃないかと私は思いますけれども大臣はどういうふうにお考えですか。
  123. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 要するに、公共事業の十年間の事業費の前渡しというふうにお考えくださればいいわけでございますから、無論地方自治体でそういうことを御希望なさらなければそういうことが起こるはずはございませんので、面的開発を必要とされる、それも仮に二年とか三年とかで一挙にやってしまいたいとお考えのときに、十年間に公共事業費の補助金を差し上げておったのでは、これは間に合いませんから、いっときにお渡しをして、そうして十年たちますと償還期になりますが、そのときに公共事業の補助を計上すれば、これはもう自治体としては、それでいわば右のポケットから左のポケットといいますか、その分は負担にならずに済むわけでございますから、もともと自治体の負担分というものは普通の公共事業と同じようにこれはあるわけでございますが、それは自治体がそういう公共事業を希望されるかされないかという、そういう自治体側の選択によるわけでございます。
  124. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 自治体側の選択というふうに今大蔵大臣の御答弁がありましたが、私は景気浮揚も非常に重要なことでありますから、それは大事だというふうに理解しています。それから、今のようにいろいろと便利な資金を利用するということも決して悪いというふうには申しません。しかし先ほどから自治省に伺っているように、地方自治体の公債費負担率というのはかなりこれから問題になってくる。そういうふうに思うのでありまして、このNTTの分も加えていきますとかなりその負担率が高くなってくるということが心配をされるんです。私はその辺のところが特にこれから先地方財政の硬直化をもたらすのではないか、問題なしとしないのではないかというふうに思うんですけれども、自治大臣の御見解を伺いたい。
  125. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 事業費の増加というか、その意味では負担が応分にあるわけでございますから、硬直化と言われれば、広範な意味では硬直化が進むということになりますが、このNTT株の利用については、今大蔵大臣からお答えがございましたように、償還時に国が負担金または補助金という形で交付されるわけでございますから、その貸付金の償還財源、NTTのその財源だけを考えれば、制度上国が全額負担するという形になりますから、この問題での硬直化は全くあり得ないと私は思いますし、大蔵大臣が言うように、嫌ならば借りなければいいと言われますけれども、たくさん利用して、その分のあれは、もともと補助金その他で補給をしてもらうという建前をとって事業を推進してまいることによって効果を上げたいと思っております。
  126. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 地方債の問題とあわせて私が地方財政で非常に心配をしておりますのは、六十六年度以降というものにみんな繰り延べをされているということ。六十六年度以降交付税特会の返済も始まるわけでしょう。何もかも六十六年度以降にみんな繰り越していってしまってというようなことで、今、仕事をするためにいいけれどもということでいろいろとNTT資金や何かをみんな使ってしまいますと、そのときになってから非常に困るということが起こると思うんですが、その辺はいかがですか。
  127. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 確かに、昭和六十六年度以降の交付税特別会計の借入金の返済が始まることを勘案して、これらに係る負担を軽減し地方財政の中期的な健全化に資するため、昭和六十二年度第二次地方財政補正措置において特別借入金の一部を繰り上げて返済をしたほか、これまでの地方財政対策において、既往の臨時特例交付金を六十六年度以降の地方交付税総額に加算すること等の措置を講じているところでございますが、いずれにせよ、この六十六年度以降にそういうもののしわ寄せが起こるということは予想されるわけであります。  ただこれは、地方財政計画、もちろん自治省の一義的な責任ではございますけれども、もろもろの財政対策を今行っているのは、大蔵省その他とも密接な協議を行っているわけでありますから、六十六年度以降、勝手に自治体がやったんだからあとは勝手にしろという国の態度であるはずがございませんし、それは先ほど申しましたように、両々相まって、今の苦しい財政事情の中でも内需の振興を図り、産業構造の転換を図るために思い切った政策をとることの方が国、地方を通じてよろしいという観点から行っているわけでありますから、これが成功をおさめれば、六十六年度以降においてそういうものがまた集中的に償還が始まる時期に、苦しい状況ではございましょうけれども、それまた知恵が出てくるものというふうに、楽観をするわけではございませんが、懸命な努力を払えばやり通せるものだというふうに信じて頑張ってまいります。
  128. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 ちょっと自治大臣、楽観的に過ぎるんじゃないかというふうに思うんですよね。そして、そのときが来ればいろいろと知恵が出てくるんじゃないかというようなお話もありましたけれども、私はそれではとても納得し切れない。だから最初のときに、特にこの暫定加算というのが、総額が交付税に加算されるというふうに確認できるのかどうかということをくどいくらい念押しをしたわけであります。それだけに、これがそのときになってから減ったというんじゃとてもじゃないけれどもたまりませんからね、六十六年度以降に。その辺のところもありますので、自治大臣にその辺は特に頑張ってもらいたいと思うんですが、もう一度御見解を伺って自治問題は終わりたいと思います。
  129. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 法定事項にしてあればこれにこしたことはございませんけれども、この問題が起こった時期を今振り返ってみますと、それなりのいわば財政の大変な苦しい時期、しかも内需の振興をしなければならない、それぞれ自治体には固有の行政サービスをしなければならないという、その中でとられたもの、私は最大限努力を払ってなおかつ未解決の部分を後に残したというふうに——後でだめだということではなくて、ここまでは最小限度国としても責任が負えるけれどもこの後の暫定措置はお互いに協議いたしましょうと、そういうことになっておりますので、その時期だからといってそういう行政サービスを進めなかった方がいいのかどうなのかということになりますと、私はそれでもなおかつむしり取ってもやれという言葉で、裏を返せばそうでございましょうけれども、むしり取るものがなければこれはどうしても対応できませんので、私はやはり国民生活や産業全般のことを考えれば、結果まだ不透明な部分がございますけれども、恐らく法定措置と同じような処置が、全部とは言いませんけれども相当な部分になされるということを確信して行ってまいりましたので、その解決のために努力を払ってまいりたいと思います。
  130. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私は自治大臣の今の御決意はよくわかりました。しかし、御決意がわかったからといって大丈夫だという確信を持つにはまだ至っておりませんで、非常にその辺はシビアに見ていかなきゃならない問題ではないか。むしろ私どももこれからその辺は強くきちっと審議の中で明確にしていかなければならないし、地方にしわ寄せをするようなことが今後起こってはならないと思いますので、その辺は特に申し上げておきたいというふうに思います。  それからさらに、いわゆるこういう基本的な自治問題ではありませんけれども、後ほど私は中小企業についてお伺いをいたします。その中でもまた自治大臣にはちょっと伺いたいことがございますので、これは通告しておりませんけれどもひとつお願いをいたします。  私は、中小企業対策といいましても、小零細企業についてのことを伺いたいのであります。  本国会に提出をされている融合化法というのは、これは家族全員でもう真っ黒になって働いているとか、一、二名の雇用者とか、そういった小零細規模の製造業の場合に利用できる制度かどうかというのにちょっと疑問があるんですけれども、その辺はいかがでしょうか。
  131. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) 確かに零細企業が非常に多うございますので、その母数に比べてどうかという問題はあろうかと思いますけれども、例えば今全国で七百ぐらい異業種交流グループがございますけれども、そういう中にそういう小規模企業経営者が非常に多く入っておられますし、また昨年秋、この融合化法の準備段階で調べましたアンケート調査におきましても、こういう融合化法ができ、そういう制度ができたら活用したいという答えの約四割は二十人以下の零細企業者で占められておるということでございますので、必ずしもこれがそういう中小企業者でも上層部だけのものであるというふうには考えておりません。
  132. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 しかし、土曜日も平日も同じように働いているこういう業者が、例えば第一段階の交流というのにも参加するというのはなかなか大変じゃないか、そういう余裕はないと思うんですけれども、その辺のところをお考えになったことはございますか。
  133. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) できるだけ配慮をしておりまして、例えばそういう異業種交流グループの開催、これもそのメンバーの出席の都合がいい時期というようなことで、夜とかそういうことでお互いに決めてやってもらうようにしておりますし、先ほど申し上げましたように、従業員数人規模の経営者がそういう中に入っている例は非常に多うございます。
  134. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 さらに、例えば新分野へのめどを立てて組合を仮につくったといたします。今年度のように補助金の対象になるものが五十組合程度というのでは、そういう小さいところが組合をつくってもこれはなかなか順番が回ってこないというようなことになっていくのが現実ではないかと思うんですけれども、いかがですか。
  135. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) 確かに、果たして今年度五十件で足りるかどうか、これは法律が成立しまして制度施行の段階で希望をとってみなければわかりませんけれども、おのおのの組合、企業がおのおの例えば十企業ぐらいでつくっておるのが通常でございますが、そういう中にそうした小規模企業も一メンバーとして入っている、こういう例は多く出てくるかと期待しております。
  136. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 それでは、ちょっとまた角度が変わりますけれども、参考までに伺っておきたいんですけれども、その新分野事業がもしパテントを取ったという場合、その場合のその所有権はどうなりますか。
  137. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) これはその組合のものになります。
  138. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 これはその組合の所有ということになるんですね。そうすると、かつての加速的技術開発支援事業というのとは違いますね。
  139. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) 加速的技術開発は中小企業事業団の委託事業としてやっております。
  140. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そこで、労働省にも伺いたいのでありますけれども、私の地元は三条、燕という地区で、ここのところ指を失うプレス事故が非常に多発をしております。小零細規模の製造業における最近の労働災害事故の発生の傾向というのはどういうふうになっておりますか。
  141. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) まず、三条におきます小零細企業のプレス関係の事故につきましては、御指摘のとおり、六十二年度は六十一年に比べまして増加いたしておりまして、その原因等につきましては安全装置が適切に使用されなかったというような事態が多いようでございます。  それから、中小企業におきます労働災害の状況でございますが、長期的には件数は減少してきておりますけれども、その災害の発生状況等につきましては、産業全体平均に比べて発生の度合いが三倍程度高いというような状況で、中小企業における災害防止が緊急の課題であると考えております。
  142. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 最大の課題だということはわかりましたけれども、なぜそういう形になったのか、原因はどこにあるとお考えになりますか。
  143. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 災害防止につきましては、まず機械の安全化を図るということが重要な課題でございまして、このために機械の本質安全を重点的に進めておりますけれども、これらの機械の安全度合いは必ずしも十分でないということ、あるいは場合によっては生産に気を奪われて安全装置を十分に確保しないままに機械を動かすというような例も見られるところでございますので、従業員に対する安全教育そして機械の安全等、両面にわたりまして総合的な対策を講じているところでございます。
  144. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私はその原因というのは、今お話しのはそれは現象であって、原因というのは仕事が忙しくなってきて結局コストに追われるという形、コストの低下に対応しなければならぬというそういう形で随分急がされているからではないか、こんなふうに考えております。その辺私は、あえて自治大臣に残っていただきましてまことに申しわけございませんけれども、これはそれぞれの地方の持っている一つの特徴的なところというのは結構あるはずなんです。  地場産業と言われるようなものは非常に多くがそういうものなわけなんですが、そうするとこういう状況を、これから通産大臣の御見解も伺いたいと思っておりますけれども、特に地方自治体としていろいろな手当てを考えておられると思いますけれども、例えば異分野融合法というものでいっても、県が取り組むというものが結構あります。こういうものに対して、先ほど公共事業の手当ての方をいろいろと伺いましたけれども、こういうものについての手当て、自治体に対する手当てというのは、何か特別の枠というのを考えていただかないと、それこそ地場産業そのものがみんなだめになるんじゃないか、そういう危惧があるんですが、その辺はどういうふうにお考えになりましょうか。
  145. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) 特に地方自治体、都道府県を中心にいたしましていわゆる地域の産業対策、最近とみにこういうものがこの十年来活発になってまいりましたし、いわゆる地方開発計画、それぞれの都道府県やあるいは市町村の広域的なもので取り組んでおりますし、都道府県は都道府県なりに商工行政を通じて、特に金融面やあるいは試験研究施設に対する独自の助成を行ったり、そういうものを行っておりますので、私どももあとう限りそういう自治体独自の単独的な事業に対してはこれから財政的な支援も行いながら、その充実拡大に努めてまいりたいと思っております。
  146. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 念を押すようで恐縮でございますけれども、今産業構造政策というのが一方では通産省によっていろいろと進められております。それだけに、その構造転換ということの中から取り残されていく部分というのがかなり出てくるのではないかということを心配しておりますので、そこで自治体の対応ということでそれぞれ苦慮されているところが多いと思います。ですから、ぜひそうした配慮をしながら今後の体制、公共事業だけでなく、それこそドラスチックに大きく変わろうとしているものがあるわけでありますから、そういうところにもかなりの大きな配慮をしていただきたい、このことを要望申し上げておきます。  そして、もう時間が幾らもなくなりましたからまた通産省の方にお伺いをいたしますが、要するにこういうふうに小零細企業というものの製造業の多くは、上の方はみんな合理化してしまいますけれども、なかなか合理化し切れないその最末端の部分というのが残っているというような形になっているんだと思います。こういう、合理化し切れない、限界があるという、そういう小零細企業の救援対策というのは何かお考えになっていますでしょうか。
  147. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) 確かに小規模企業は数も多くまた分野も非常に種々でございますので、非常に統一的なまとまった対策をとりにくいのでございますけれども、私ども五十七年以来この厳しい財政状況の中で中小企業予算もまた減少せざるを得ませんでしたけれども、小規模企業対策だけは逐年わずかずつでも増加を確保してまいりました。  六十三年度におきましても約三%増の四百五十億を小規模企業対策として確保し、いろいろな経営指導あるいは地場産業の育成あるいは後継者対策等をやっております。また、特別にこの円高対策としてとりました新転換法、これの国民公庫を通ずる小規模企業への転換融資、これもこの二年間に約四千六百件融資が活用されております。また御承知の中小企業の信用保証体系、今残高十兆円になっておりますが、これの活用者は約百三十四万件。したがって、中小企業全体が六百五十万としますと、中小企業の五軒に一軒はこの信用保証体系を活用しているというようなことで、なかなか数が多く、十分とは言いかねる面もあろうかと思いますけれども、小規模企業対策についてはそれなりに十分配慮をしてまいりたいというふうに考えております。
  148. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 例えば受注単価の大幅引き下げなんかを防ぐ方法があるんでしょうか。あるいは、アジアNICS等に単価の安いものがどっと発注されてしまうということを防ぐというような方法があるんでしょうか。
  149. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) これは取引でございますので、人為的にそれを防ぎましても、それ自体なかなか現実の合理的な取引が確保できるというわけにはまいりません。したがって私どもとしては、支払い遅延防止法等によりまして不法なそういう引き下げ、そういうものについては公正取引委員会と一緒に監視の目を光らせておりますけれども、そういう環境条件の中で、できるだけそういう小規模企業も含めそれに対応できるように支援することが私どもの務めではないかと思っております。
  150. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 大臣、私はどんなふうにしても構造政策からこぼれていかざるを得ないという小零細企業というのが結構今後も出てくるのではないだろうか、そういうことを心配いたします。それだけに特に小零細企業については御理解をいただきたいと思いますけれども、対策を立てていただきたい。そういうあれがないと、農業と同じような形のものがあると思うので、それを心配しております。特に中高年齢層がそこでもってはみ出されていくということにもなります。その辺の雇用の問題等もありますけれども、全体を含めて御見解を聞かせていただきたい。
  151. 田村元

    国務大臣(田村元君) 私は、燕と酷似といいますか、非常によく似ております関へ先般行ってまいりました。今あなたが幾つかの点を御指摘になった、私も全く自分自身で指摘したいようなことがその中には含まれておりました。  中小企業といいましても、ちょっと見には大企業と見間違うような大きいものもありますし、中には家族でやっておる零細企業もあります。でございますから、例えば内需型へなるべく転換せしめるとか、あるいはまた協業化を進めるとか、関なんかも大分協業化が進んだようでありますが、そういうことでこれから、結局規模の大きいものに対する対策というのももちろんしなきゃなりませんけれども、これは自分で生きていく力を持っているんですね。規模の大きいものだったら、第一、銀行が簡単に倒しはしません。ところが小さい零細企業というのは、これは本当にわずかなお金のことで一家心中も起こしかねないようなことでありますから、そういう点でけさも実は中小企業庁に私から注文をつけておきましたが、そういう非常に零細な業者をどのようにして勇気づけていったらいいのか、救っていったらいいのか、あるいは方向を示唆していったらいいのか、一遍十分に細かいことまで洗い直して持ってこい、こう言って私は指示したところでございますが、思いを新たにして頑張る所存でございます。
  152. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 雇用の問題、労働大臣から聞かしていただきたい。
  153. 中村太郎

    国務大臣(中村太郎君) 御指摘のように、構造転換が進捗する中ではいろんな雇用問題が発生をいたしております。特に今御指摘のありました中高年齢者の雇用情勢、極めて厳しいものがあると承知をいたしておるわけでございます。  このことにつきましては、従来から三十万人雇用開発プログラムの中におきましても真剣に取り組んできたわけでございますけれども、来年度は新たに産業、地域、特に年齢間のミスマッチ解消のための雇用プロジェクトを推進しますけれども、わけても中高年齢者は非常に失業率も高い。同時にまた求人倍率は低い。こういう中で、この雇用問題が最重点な課題であると承知をいたしておるわけでございます。  今もそうでございますけれども、まずこのためには、第一に六十歳定年の定着あるいはそれを基盤にしまして雇用の継続、これを推進してまいりたいと思いますし、さらに高齢者の能力、適性に応じました職業訓練等を行いまして能力開発を積極的に推し進めていくこと、さらにはまた定年退職後における、あるいは中小企業の転換に当たりましても人材シルバーセンター等の活用によりまして短期的臨時的な就業の場の確保とか、あるいはプロジェクトにおけるもろもろの助成金制度を活用いたしまして何としても就業の場を確保したいという、あらゆる角度から総合的な施策を強力に進めていかなければいけないというふうに感じ取っておるわけでございます。
  154. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で稲村稔夫君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  155. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、工藤万砂美君の質疑を行います。工藤万砂美君。
  156. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 私は、主として内政面につきまして所管大臣にお伺いいたしたいと存じます。  まず第一点は四全総についてでありますが、第四次国土総合開発が明年度から出発するわけでありますけれども、三全総まではいわゆる国土の均衡ある発展ということが全総の哲学と申すものであり、その方策としていわゆる地方の時代という政策をキャッチフレーズとして、過疎で悩む地域の国民から大きな期待を持たれた三全総でありましたが、四全総の中心となりますものはいわゆる多極分散型国土形成と申しておられますけれども、三全総の方策と四全総とは基本的な面でどのように異なるのか、まずお伺いしたいと思います。
  157. 長沢哲夫

    政府委員(長沢哲夫君) 三全総につきましても四全総につきましても大変御理解のある御指摘をいただいたわけでございますが、三全総では一言に開発方式を定住構想、四全総では交流ネットワーク構想というふうに呼んでおります。これは違うものではなくて、内容的には定住構想を発展的に継承した考え方でございまして、三全総時代、地方定住を目指して地域主導の地域づくりを進めてまいりました。それにさらに地域間の交流の活発化という要素を加えまして、一言で言いますと定住プラス交流という考え方で交流ネットワーク構想を打ち出してございます。したがいまして、異なるものではなくて発展的に継承した計画であるというふうに御理解いただきたいと思います。
  158. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 そこで申し上げたいことは、国土開発の現況を見る一つの目安として計算いたしますと、各地域の国民生産額から割り出しますと、国土のいわゆる一平方キロメートル当たりの一年間のGNPというのは五十九年度で八億二百万円でありますけれども、都道府県別に見ますると、最高はもちろん東京の二百三十六億円で、最低は北海道の一億四千八百万円でありまして、実に最高の百五十五分の一でございます。そして全国平均の五・四分の一でありますが、全国最低がもちろん四十七位の北海道、そして岩手県が四十六位、高知県が四十五位、島根県が四十四位というように、北海道は別として、偉い方が出ている地域はなべて最低に近いのも不思議な現象であると私は思うのであります。  さらにまた、人口の定着面でも、一平方キロメートル当たり全国平均が三百十八人でありますが、北海道は六十八人で五分の一でありまして、全総での定住構想を推進するゆえんもここにあると私は思いますが、このアンバランスをできるだけ圧縮していくためには今後どのようにしていくのか、お伺いをしておきたいと思います。
  159. 長沢哲夫

    政府委員(長沢哲夫君) 御指摘のような地域間のアンバランスを解消し国土の均衡ある発展を目指して、そのことを多極分散型国土の形成というふうに四全総ではうたっておりまして、そのためには、東京圏だけでなくて関西圏、名古屋圏あるいは地方中枢・中核都市、さらには地方の中小都市、農山漁村に至るまで、各地域が人々の定住の場として活性化し、発展することが必要でございます。そのために、一つには地域主導による地域づくりの推進を三全総に引き続いて進めますとともに、またそのための共通の基盤となります交通、情報通信体系の整備あるいは地域相互間での人材交流、経済交流、文化交流といった交流機会の増大策を推進していく。そのための先導的な戦略プロジェクトといたしまして、産業技術拠点あるいは国際空港等による国際交流拠点の形成、あるいは高規格幹線道路、コミューター空港の整備、こういった方策を確実に推進していくことといたしております。  さらに、東京一極集中を是正する具体策といたしまして、工業の分散再配置政策あるいは政府機関の移転再配置等の検討推進、全国的な文化研究施設の原則東京外立地あるいは事務所立地の地方都市への誘導措置の検討等々の具体策を検討推進してまいることにいたしております。  また、この四全総推進の一環といたしまして、本国会に多極分散型国土形成促進法案を提出すべく、現在準備中のところでもございます。
  160. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 そこで、四全総にかかわりの深い公共事業について二番目としてお伺いするわけでありますけれども、三月十日でありましたか、新聞報道によりますと、大蔵省は公共事業の執行に当たっては繰り上げ発注方式、すなわち前倒しを行わず「自然体方式を採用する方針を固めた。」と言われますけれども、その理由についてお伺いをしたいと思います。
  161. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいま大蔵省といたしましても、したがいまして政府全体といたしまして、そのような決定をいたしたことはまだございません。恐らく新聞の報道は現在の経済情勢等等を見ましてそういう予測をいたしたものかと思いますが、政府といたしましては、予算案が成立いたしました後に態度を決定いたしたいと思っておるところでございます。
  162. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 新聞報道によりますと、景気は拡大をされた——確かであります。それから前年度比二〇%という高水準確保ができた、内需拡大に対する諸外国のいわゆる評価が高いという理由からというように書かれているわけでありますけれども、私は、宮澤喜一の資産倍増論を地でいくような内需拡大政策であり、副総理に対して心から敬意を表してやまないところであります。  しかし、積雪寒冷地であります東北や北海道は工事の施行期間がわずかに六カ月前後と非常に短期間でありまして、せっかく予算を御配慮いただきましても消化が困難になるというような心配があります。したがいまして、自然体方式を採用するとするならば、東北、北海道の自然環境に適応した発注をするということになりますと、積雪寒冷地に対しましては当然前年度程度の前倒しをしていただかなければならぬなと、かように考えるわけでございますけれども、この点はいかがでございましょうか。
  163. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) したがいまして、政府といたしましては国会におかれまして一日も早く予算の成立をお認め願いたいということをこいねがっておるわけでございますが、予算成立後におきましてただいまの工藤委員の御指摘の問題は決定をしてまいりたいと考えておりますが、しかしいずれにいたしましても、仮に、過去におきまして、いろいろ調べておりますと自然体のときのこともございますが、その場合にも積雪寒冷地関係の事業等については早期実施に努めるということを必ず決めていたしておりますので、その点は事情は今日もいよいよそうであるということはよく存じておりますので、十分に御発言の点は念頭に置いておかせていただきます。
  164. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 御配慮をいただくように心からお願いする次第でございます。  次に、共同企業体の問題について中央建設業審議会から昨年八月に答申がなされたと伺っておりますけれども、その内容について、そして建設省の対応についてもお伺いをしたいと思います。
  165. 望月薫雄

    政府委員(望月薫雄君) お話しのように、昨年の八月十七日に中央建設業審議会から、今後の共同企業体のあり方についてという御答申をいただきました。この答申のねらいでございますけれども、率直に言って、現在まで共同企業体は大変効用を果たしてまいっているわけでございますけれども、一部に安易な活用というものがいろいろとまた問題を生みつつあると、こういう基本認識を言われているわけでございます。  その内容としては、特に不良不適格業者が参入するとか、あるいはペーパージョイントが行われがちであるとか、あるいは施工の効率性がだんだんおかしくなってくるとかいうようなことが弊害として出てきていると。こういったことにかんがみまして、今後本当に技術と経営にすぐれた企業を健全に発展させる、こういったことのためには、いわゆるこの企業体のあり方について一つの道筋をつける必要がある、こういった御提言であるわけでございます。  中建審の答申の骨子は、対象工事だとか、あるいは構成員の資格などに関します基準、これは運用基準と我々は俗に言いますけれども、この運用基準を示していただいたところでございまして、今後この基準を各発注機関が具体的に定めることで適正化していくようにと、こういうものでございます。  それで、これについての私ども考え方でございますが、確かに中建審で御答申いただきましたような一部弊害的な現象が出ているということもこれ否定できないところでございまして、率直に言いまして行き過ぎの是正、要するに非効率化、不良不適格業者の市場への参入を排除するということはやっぱり大事なことである、こういうふうに考えております。  したがって、共同企業体の活用というものはやっぱり本来的な原点に戻って、技術力の結集等によって効果的な施工が確保できると認められる場合だとか、あるいは中小建設業者の育成振興、これを適切に図ることができると認められるような場合について、今申しました中建審の言う「適正な基準」というものに準拠しまして各発注者がしっかりやっていこうと、こういう構えでおるところでございます。
  166. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 今言われましたようないろいろな弊害があるということも承知をいたしておりますけれども、もともとは、昭和二十六年に共同企業体方式が導入をされましたけれども、その目的というのは、言うならば中小建設業者の育成と活用という精神で始まったものであろうと思いますけれども、その精神には現在もなお変わりはございませんか。
  167. 望月薫雄

    政府委員(望月薫雄君) 御答申の中身、先生も御承知のことと思いますけれども、やっぱりこの共同企業体のあり方については大きく言って二つの類型を概念いたしております。  それは、大規模な工事、特に高度の技術を要するものについての部門として特定建設工事共同企業体、こういったものを一つ考えると同時に、今お話しの中小企業等を念頭に置いた、どっちかというと小規模な事業等を頭に置いてのものとなりますけれども、経常建設共同企業体、こういったものが一つ提言されておりまして、その経常建設共同企業体につきましては、先ほど来申しましたように、中小建設業者の施工力、経営力の向上というものについて着目していきたいと、こういう姿勢でございます。
  168. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 そこで、政府の御指導をいただきながら中小建設業が各地域ごとに今まで取り組んできた歴史というものもありまするし、また秩序というものもあるわけでありまして、これらを尊重しながら建設行政を進めることは私は極めて重要なことであろうと思うわけであります。したがいまして、共同企業体における代表者の選定方法につきましては、特定建設工事については施工能力の大きい者ということは理解できますものの、いわゆる経常建設工事までも必ず上位等級の者と固定してしまいますと、中小建設業の受注の機会が希薄になってくる心配があると思いますけれども、この点はいかがでしょうか。
  169. 望月薫雄

    政府委員(望月薫雄君) 共同企業体の代表者の決め方の問題でございますけれども、今の中建審の御答申の中でも、いうところの経常建設共同企業体、これにつきましては代表者は構成員において自主的に決めると、こういう基本線をお示しいただいております。ですから、私どもこれについては特にいわゆる上位ランキングの者とかいうふうなルールは別になくて、本当に皆さん方構成員の相互間でお決めいただくべきものと、こう考えておる次第でございます。
  170. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 ありがとうございました。そういう御配慮をいただきながら、ひとつ行く末に御努力を賜りたいと思います。  そこで、各事業者の格付の問題について伺いますけれども、公共事業の発注官庁というのはどのぐらいございましょうか、お示しいただけますか。
  171. 牧野徹

    政府委員(牧野徹君) 先生の今のおただしは、公共工事の発注主体の数でございますか。——これはちょっとただいま手元に資料がございませんので、正確な数は申し上げられない次第でございます。
  172. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 と申しますことは、各発注官庁によって同じ事業者が著しく格付が異なることがしばしばあるわけであります。例えばAクラスでもよその官庁へ行きますとCクラスというように、極端に格付が下げられている状態もあるわけでございます。しかも実績がないと指名を受けられないという問題もございます。十分な施工能力と経験を持っていても参加できないということは、その発注省庁のいろんな御都合もありましょうけれども、自分たちの町に発注をされる工事について参入できないという怨嗟の声が非常に多くあるわけでございますので、地元業者育成という観点からも各付と発注について善処をすべきだと考えますけれども、この点はいかがなものでしょうか。
  173. 牧野徹

    政府委員(牧野徹君) 公共工事を発注いたします際には、それぞれの発注主体が定める指名基準によって行っておることは御承知のとおりでございます。私どもの直轄で申し上げますと、私どもは建設業者の経営状況なり地理的条件等八つの指標を総合的に勘案して行っておりますが、このやり方は中央建設業審議会の御建議の趣旨にも沿った内容でやっておるわけでございます。当然、各それぞれの発注者の方々は公正的確な指名が行われるように努めておられることと思いますが、たまたま私どものこの発注機関相互の連絡調整の場として中央公共工事契約制度運用連絡協議会という場も用意されております。こういう場も通じまして、先生のお話につきましても伝えて話し合ってまいりたいと、かように考えております。
  174. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 工藤万砂美君の残余の質疑は午後に譲ることとし、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十六分休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  175. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 予算委員会を再開いたします。  昭和六十三年度総予算三案を一括して議題といたします。  休憩前に引き続き、工藤万砂実君の質疑を行います。  関連質疑を許します。石井道子君。
  176. 石井道子

    ○石井道子君 工藤委員の公共事業に関する質問に関連をいたしまして、高齢者の住宅対策についてお伺いをしたいと思います。  長寿社会においては、安定した老後を過ごすために医療、健康、福祉、雇用対策も大変大切ではありますけれども、老人の多様なニーズにこたえて住宅を供給いたしまして、安心して住めるようにしてあげることも大変大事なことではないかと思います。総務庁の老後の生活と介護に関する調査によりますと、子供夫婦と同居して世話をしてほしいと願っている人が六割以上ございますし、体が弱くなったりいたしますと八割以上の方が同居を希望しております。  また、最近の厚生行政におきましては、老人医療や老人介護対策の中でも在宅ケアを充実させる制度が進められております。住宅建設を進める上で、老人が家族と同居をしたりあるいは在宅ケアが可能な住宅のスペース、構造、設備についてどのような対策を進めていられますでしょうか。六十二年度から行っておりますシルバーハウジングモデル事業も今後どのように発展させていきますお考えでございましょうか、お伺いをしたいと思います。
  177. 片山正夫

    政府委員(片山正夫君) 高齢者の住まいやすい住宅ということで設計上の考慮として考えておりますのは、まず床が滑りにくいというようなこと、それから段差の解消というのがあります。小さな段差でもよく転びますので、そういうことで段差の解消あるいは手すりの設置、浴室でありますとか廊下、階段あるいはトイレにつきましても手すりを設置する。さらに必要に応じましていろいろな設備、機器を設置する、こういうことが考えられておりまして、また老人室の位置としましては一階が望ましい、こういうふうに考えております。住宅の広さの関係につきましては、例えば公団住宅におきましても大型住宅を供給するというようなこと、あるいはまた公庫融資につきましても、老人同居の場合には通常のものよりさらに割り増し融資を行う、こういうような措置を施策として講じておるところであります。  それからシルバーハウジングの構想でございますけれども、これは厚生省と建設省との共同研究によるところでございまして、まず日常生活上自立可能な高齢者を対象にいたしまして、高齢者の先ほどお話ししましたような、設計に配慮された住宅あるいは団らん室等の設備、そういうものをつくりますと同時に、ライフサポートアドバイザーが日常の生活指導でありますとかあるいは安否の確認、あるいは緊急時における連絡等のサービスの提供、これを組み合わせたものでございまして、建設省の方としましては、計画をつくる場合の計画費に対する補助あるいは公営住宅を行います場合について補助の拡充を行う一方、厚生省の協力によりましてライフサポートアドバイザーによるサービスの提供を受ける、こういうことでございます。現在六十二年度でモデル的に五地区が進行しております。
  178. 石井道子

    ○石井道子君 次に、下水道と公園緑地対策についてお伺いしたいと思います。  最近の六兆円の緊急経済対策など積極的な経済政策によりまして、六十三年度予算も公共事業費の予算が大変な大きな伸びを示しているわけでございまして、大変喜ばしい限りでございます。この際特に配慮していただきたいと思うことは、従来の経済性や利便性の追求のみではなくて、経済大国にふさわしい精神的な豊かさとかあるいは生活の質を向上させるための快適な居住環境を創出することに積極的になっていただきたいということでございます。快適な環境には緑は欠かすことができませんが、我が国の公園緑地面積は一人当たり全国平均で四・九平方メートル、東京二十三区で二・三平方メートルにすぎません。大変緑化対策の貧困を感ずるわけでございます。  また、河川や湖沼の水質汚濁防止のために下水道や合併浄化槽の整備が急がれておりますけれども我が国の下水道普及率は全国平均で三七%でございます。和歌山県などは二%にすぎません。今後この普及率をどのようにして改善をなさっていくお考えでございましょうか。また、環境保全の観点から下水道予算の重点配分を考えるべきではないかとも思います。行き過ぎた開発による環境破壊が人災を招くことも時々見られることもありますが、環境対策がとかく後追いになりがちでございますので、良好な居住環境、都市空間の形成を図るために先行的計画的な都市計画の取り組みが必要だと思われます。この点についての対策をお聞かせいただきたいと思います。
  179. 木内啓介

    政府委員(木内啓介君) お答え申し上げます。  まず最初に、下水道についてでございますけれども昭和六十一年度末の我が国の下水道普及率は先生御指摘のように約三七%と、欧米の諸国はおおむね概算でございますけれども七〇から九〇%ぐらい普及しているのに比べまして立ちおくれておるわけでございます。このため六十一年度を初年度とする第六次の五カ年計画を現在実施中でございまして、これができますと目標普及率は四四%になるわけでございますけれども、まず第一にその完全達成に向けまして現在鋭意努力しているところでございます。なお、下水道は都市によって普及率に大分違いがございます。これからは大都市のみならず地方のおくれた地域について特に重点的に実施してまいりたいと考えておるわけでございます。なお、昭和六十三年度の予算案につきましては対前年度比で二二%の伸びをお願いしておる次第でございます。  それから公園につきましては、六十一年度末の都市公園の整備率は、六十一年度末でまだ推計でございますけれども、一人当たりちょっと先生の御指摘より多くて五・一平方メートル、それでも欧米の諸国の平均水準は主要都市におきましては二十ないし三十平米ということで大変違いがございます。このため六十一年度を初年度とする第四次の五カ年計画、これが終わりますと目標水準が五・七平米まで上がるわけでございますけれども、その完全達成に向けまして努力しているところでございます。なお、昭和六十三年度におきましても予算案におきましては前年度比二五%の伸びでお願いいたしているところでございます。一生懸命努めさせていただきたいと思います。
  180. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいま御指摘の点は、私も非常に実は関心を持っておるところでございまして、石井委員の言われましたことはまことにごもっともだと思います。昨年社会資本整備勘定を導入いたしましたので、その機会に執行官庁に対しましてもそういうお願いをいたしておりまして、執行官庁でもただいま政府委員の言われましたようにその点は非常に考えていただいておるようでございます。  ただ、なかなか公共事業のシェアというものが御承知のように非常に細かくお互いが見ておるものでございますから、いわば平等にと申しますか、殊に長年マイナスシーリングをやりましたものですから、マイナスシーリングというのは結局そのマイナス分をお互いに平等に分け合うしか方法がないというような官庁の物の考え方がございまして、なかなか実施官庁でも苦労していただいたように思います。例えば下水道で申しますと、今お話がございましたが六十二年のシェアは一〇・九一でございますが、六十三年には一一・二九になっていまして、これは全体が大きいものでございますから一ポイントでも非常に金額的には大きゅうございまして、六千五百六十億から八千十億、公園の方も一・四五から一・五四でございますか、八百七十億から千八十億と、いろいろ執行官庁でも苦労をしていただいておるようでございますが、おっしゃいますような方向というのは大変に大事なことではないかと私どもも思っております。
  181. 石井道子

    ○石井道子君 ありがとうございました。以上です。
  182. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 御丁重な御答弁ありがとうございました。私に対しましてはできるだけ簡単に、簡略にひとつ御答弁いただきたいと思うわけであります。  そこで、三点目にエネルギー問題についてお伺いするわけでありますけれども昭和六十二年度の日本のエネルギーの総需要量と六十七年度の総需要量の見込みについてお伺いをしたいと思います。
  183. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 前提といたしまして数字の確定をいたしております昭和六十一年度でございますけれども、原油換算で約四億三千万キロリッターでございました。円高不況の影響等もありまして、対前年度比では一・二%の減でございました。六十二年度はまだ数字が固まっておりませんけれども個々のエネルギーの動向等から推察をいたしますと、多分三%前後の伸びを見せるのではないかと考えております。  昭和六十七年度につきましては公式の見通しはないわけでございますけれども、昨年の十月に総合エネルギー調査会で策定をいたしました長期エネルギー需給見通しで昭和七十年度の数字がございます。七十年度まで年率にいたしまして一・五%の伸びが見込まれているわけでございますけれども、この一・五%の伸びが全く算術的な計算でございますが六十七年度まで続くということで試算をいたしてみますと、四億七千万キロリッターぐらいのレベルに原油換算でなるのではないかと見ております。
  184. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 後で御質問申し上げる八次政策との関連がありますので、切りのいいところでの六十七年度をお伺いしたわけでございますけれども、その総需要量見込みの中で、外国の輸入炭と国内炭の需要見込みについてはどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  185. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 先ほど申し上げました見通しにおきましては、昭和六十一年度におきましても、また七十年度におきましても、石炭のシェアは約一八・三%と見ているわけでございます。六十七年度の数字は先ほど申し上げたように公式のものはないわけでございますが、先ほどと同様に六十一年度から七十年度までの伸び率を単純に六十七年度まで適用いたして一つの試算をいたしてみますと、石炭需要量の見通しは約一億一千四百万トンでございます。  七十年度についてでございますけれども、第八次対策以降の国内炭の供給規模というものは現段階では確たる数字を決め得ないものでございますから、七十年度についても数字はないわけでございます。ただ、御承知のとおり六十六年度に終わります第八次石炭対策では、供給規模を約一千万トンということで考えているわけでございますので、仮にこの一千万トンと今申し上げました一億一千四百万トンという数字を比べますと、輸入が十で国内炭が一というような一つの試算はできるかもしれないと思います。
  186. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 八次政策を立案するということについては、その前提となりますものはやっぱり何といっても八次以降の需要がどうなるかということがわかりませんと政策も組めないわけでございますね。  そこで、今あなたの御答弁ですと、十対一ぐらいの考え方だということでいきますと、一億一千四百万トンに対して一千百万トンぐらいは六十七年以降といえども国内炭の需要があるというふうに考えていいんですか。
  187. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) ただいま申し上げました数字は、第八次対策の終わります六十六年度の数字を仮にそのまま使ってみればということで申し上げたわけでございます。第八次石炭対策の実施に、現在はいわば政府もそれから労使も一体となって取り組んでいるところでございまして、まずこれを実行することが第一だと思っております。  第八次石炭対策以降の国内炭の供給規模につきましては、第八次政策の実施状況を踏んまえながら今後のエネルギー情勢、内外炭の動向、その中での国内炭の役割といったものを総合的に勘案いたしまして、適正な生産体制を確保するという観点から改めて検討するということになろうかと思っております。
  188. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 八次政策でいろいろと政府のてこ入れが行われているわけでございますけれども、やはり何といっても炭鉱の労使も八次政策以降について非常に心配をしているということだけは御承知おき願いたいと思うわけであります。  そこで、お伺いしたいことは、電源開発株式会社の株式所有の内訳をパーセントでひとつお知らせいただけませんか。
  189. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 現在、電源開発株式会社の発行株式数は七千六十万株でございます。そのうち政府が保有をいたしておりますのが現在のところ五千二十八万三千株でございまして約七一%でございます。残りは九電力会社が保有をいたしております。
  190. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 その電発の中で六十二年度現在の電発の使用量で、その中で外国炭と国内炭の内訳をお尋ねしたいと思います。
  191. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) これにつきましても六十二年度の数字はまだ確定をされていないわけでございますが、六十一年度の実績を申し上げてみますと、合計いたしまして七百三十四万トンの石炭を消費いたしております。そのうち国内炭が三百二十四万トン、海外炭が四百十万トンでございます。六十二年度もほぼ終わりかけているわけでございますけれども、現在の感じでございますと、それぞれ一〇%程度ふえるのではないかという感触を持っております。
  192. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 これに関連いたしますけれども、西ドイツで行われているコールペニヒ制度というものがあるわけでございますけれども、これはどういうものか御説明いただきたいと思います。
  193. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 御指摘のコールペニヒ制度は、西ドイツで一九七四年から採用されている仕組みでございます。電力料金に対しまして一定率のコールペニヒと呼ばれます石炭調整税を賦課いたしております。その賦課率でございますけれども、現在は、一九八七年では七・五%と承知をいたしております。これによって賦課いたしましたものを財源といたしまして、電気事業者が使用いたします国内炭に対しまして価格差補給を行っているというぐあいに承知をいたしております。
  194. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 そこでお伺いしたいのは、戦中戦後の日本の産業経済の中枢をなして、しかも戦後の復興の原動力となってきた石炭産業、そしてまた黒ダイヤの戦士などと言われた時代と比較いたしますと、まさしく現在は見る影もない産炭地でありますけれども、それなりに石炭政策の中でも八次に至る対策をおとりいただいてまいりました歴代の政府に対しまして、衷心より敬意を表する次第でございます。  しかし今日では、洪水のように入ってくる流体エネルギーあるいは安い外炭、そして原子力エネルギーなどに責めさいなまれて、加えて前川報告による産業構造の転換を強いられるなど、まさに四面楚歌の国内の石炭産業でありますが、エネルギーを制する者はその国を制するということわざがありますように、私は単に経済理念のみで炭鉱を整理していくべきじゃないと考えざるを得ないわけであります。国内の食糧も全く同じことが言えると思うわけであります。  確かに、日本の炭鉱も深部に移行をしておりまするし、合理化を急ぐために事故も多くなっておりますけれども、これはやはり安定した需要先がないことも大きな原因となっておるわけであります。先ほどの御答弁からまいりますると、石炭の需要は増大していく傾向にあるというふうにお答えいただいているわけでありますが、特に電発は国が七一%も資本を有しているわけでありますから強力な指導力を持っておりまするし、説明をいただいたコールペニヒ制度を準用する形式で国内炭の需要の増大ができると思うわけであります。  はたまた、各電力会社が電発の石炭引き取りによってコストアップになる場合、やはりその価格差補てんをできるだけしてあげるということと、円高メリットでカバーをして、カバーをし切れない面については今申し上げたような価格差補給金を出してあげて、石特会計から助成するなどということを考えていくことこそが、現存炭鉱を持続し、手っ取り早い産炭地域振興政策になるわけでありまして、これこそまさしく前向きの石炭政策であると信じますけれども、御所見はいかがでしょうか。
  195. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 石炭産業の背後に御指摘のような戦中戦後の長い歴史があるということは私どもも十分認識をいたしているところでございまして、そういった観点から格別の取り組みをいたしているつもりでございます。いわゆる国内炭に対する需要の確保につきましては、やはりそれぞれの国のいろいろな産業界の状況でございますとか過去の経緯とかございますので、お国柄に合った政策手段を選択していくということではないかと考えております。  日本におきましては、御高承のとおり、第八次石炭政策の策定時に、電力業界を含みます各需要業界のぎりぎりの協力を得るということを前提にいたしまして、石特による過剰貯炭対策、生産規模縮小円滑化対策等を講じておりますことは御承知のとおりでございます。この需要業界のぎりぎりの協力ということにつきましては、基本的には需要業界サイドでの先ほど御指摘のような戦中戦後の長い歴史等を踏んまえながら御協力をいただくというのが基本でございますけれども、やはりその背後に石炭の輸入割り当て制があることも御承知のとおりでございまして、通産省関係でただ一つまだ輸入割り当てが残っているわけでございます。  国内炭がどこでどういうぐあいに使われるかによりまして、輸入炭との価格差というのは一概には申せないわけでございますけれども、やはりトン当たり一万円以上格差があるということは否めないと思うわけでございまして、一千万トンを引き取っていただくということは一千数百億の負担をしていただいているということになるわけでございますし、また、先ほど御説明申し上げましたように国内炭の消費の三割以上を電発が引き受けているわけでございますので、結果的にはこの負担分の三割以上を電発が担いでいるというようなことにもなるわけでございまして、日本日本なりに需要サイドの協力というものが行われていると理解をしていただければと思うわけでございます。
  196. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 お国柄に合った石炭政策というようなものがあるというふうな御答弁でございますけれども、今石炭産業が非常に困っておりまする問題の中で新共同石炭株式会社という問題がございます。これにNEDOが参入いたしまして国が直接関与できることになりましたことは、干天の慈雨というような感があるわけでございます。  貯炭買い上げをしていただいておりますけれども、まあ結論としては貯炭を担保に金融を少しでも緩和をしようということでございますが、来年度からその炭鉱が買い戻しをするということになるわけでございまして、新たな販売面での苦労があるわけでございますから、せめてこの貯炭分のみでも早急に電発を含めて政府がユーザーに引き取りをいただくように折衝すべきであると考えますけれども、その辺はどうでしょうか。
  197. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 御指摘のように、新エネルギー総合開発機構の出資を受けました新共同石炭株式会社が、この第八次石炭政策遂行期間中に石炭各社が一時的に抱えます過剰在庫の買い上げを行っているわけでございます。現在の過剰在庫買い上げ残高は約三百六十万トンでございます。この仕組みは、基本的にはただいま申し上げましたように需給の一時的なアンバランスの調整を目的にいたしているものでございまして、随時これは需要サイドに引き取っていただくものでございますけれども、結果的にはまた買い増しを行うというようなことにもなろうかと思われるわけでございます。  しかし、第八次対策実行期間中に、ユーザーサイドにも協力を求めまして順次その残高の解消を図りまして、八次対策が終わりますときにはこの残高が解消されているという方向に持っていきたいというぐあいに考えております。こういう面でも引き続き需要業界の協力を求めていきたいと思っているわけでございます。
  198. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 そこで、石炭価格についてお伺いしたいと思うわけであります。  工業技術院で石炭のガス化、液化などの研究が行われています。なかんずく水素研究が行われていますけれども、その進捗状態をお伺いしたいと思います。
  199. 飯塚幸三

    政府委員(飯塚幸三君) 先生御指摘のように、私ども通商産業省におきましては、サンシャイン計画の一環といたしまして石炭から廉価でかつ効率的に水素を製造する技術について開発を進めておりまして、昭和六十一年度からパイロットプラントによる開発を実施しているわけでございます。  現在の計画では、昭和六十一年度から六十五年度半ばにかけまして石炭処理を二十トン・パー・デー、一日二十トン規模のパイロットプラントの設計建設を実施いたしまして、昭和六十五年度半ばから六十八年度半ばにかけて運転研究を行うことにしております。その後デモンストレーションプラントのフィージビリティースタディーを行うという計画でございます。既に、昭和六十二年の五月から千葉県の袖ケ浦町におきましてパイロットプラントの建設に着手をしておりまして、現在設備の設計製作及び据えつけ等を計画的に進めているところでございます。
  200. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 コストが非常に低廉で需要が増大するというふうに我々は聞いておるわけでございまするし、従来の水素製造からいいますと、三分の一ぐらいのコストでできるというふうに聞いておりますから、これはひとつ早くその研究を完成されて、できれば八次政策中に実用化ができるように、これは予算面でも配慮をしていただきたいと思うんですけれども、これは御要請だけにとどめておきます。  いずれにしても、日本の石炭産業というのは推定埋蔵量で二百億トンというふうに言われておるわけであります。したがいまして、一千万トン平均といたしましても二百年も続く日本の石炭産業でありますから、国内エネルギーとしてはこれは大事に大事にしていくべきだと思いますけれども、これも御要請だけにとどめておきたいと思います。  さて、四番目に中小企業対策についてお伺いをしたいと思うわけでありますが、故人になりましたけれども日本商工会議所の会頭でありました永野重雄さんが商工会議所の月刊誌で「石垣」という機関誌を出して、今日もなおかつ続いておるわけでございます。その命名に当たっては、「石垣」と名づけたわけでありますが、その理由は、数百年も微動だにしないいわゆる城の石垣は、色合いや形が違った大きな石と小さな石とがすき間なくしっかりと組み合わされているからであり、大きな石はもちろん大手企業、それから小さな石は中小企業でありまして、その小さな石一つがこほれ落ちてもやがてはその石垣は崩壊するであろうと言われております。まさしく私は名言であるなと思うわけであります。  先般、この委員会におきまして田村通産大臣は、日本の企業は九九・四%が中小企業であると申されましたけれども、その日本の中小企業で生活をしている国民の数というのはどのぐらいになりますか。
  201. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) 全人口という意味ではなかなか数字的にわかりませんけれども、事業所統計によりますと、中小企業で働く従業者、これは家族従業者も含めまして三千九百五十一万人、これは非一次産業の全従業者数の八〇・六%に当たるというふうになっております。
  202. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 時間が追ってきましたから中身はちょっと割愛をさせていただく面が出てまいりますけれども、例の円高不況に突入したときから、産業の空洞化と叫ばれてその対策に重点が置かれてきたわけでありますが、それがさらに地域の空洞化に移りつつあります。  経済企画庁では日本列島を九つに分析をしたデータを出しております。北海道、東北、関東、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州でありますけれども、昨年の六月の景気指数を発表した内容によりますと、五十五年に比べて全国平均が一一五%になったというようなことが言われております。この中で北海道は一番最低で九七・一であります。秋口にかけての緊急経済対策をいただいてようやく一〇〇になりましたけれども、全国平均が一二六というふうになりまして、本州とは依然三〇%近くも格差があります。この格差是正のための予算の重点配分等の御配慮をいただかなければなりませんけれども、問題は、最近急激に中小企業の商業圏というものが侵食されつつあります。その原因者となっているのが大型店あるいは生協、農協、そしてJRであります。したがいまして、まずこの生協の本来の目的というものをお伺いしたいと思います。
  203. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 生協は、消費生活協同組合法第一条に規定されておりますように、「国民の自発的な生活協同組織の発達を図り、もって国民生活の安定と生活文化の向上を期することを目的」として設立された法人でございます。その役割は組合員の相互扶助組織として生活の経済的文化的改善向上を図ることにあると理解しております。
  204. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 その中で大事なことは、生協の一〇〇%資本のダミー会社が一般商社と同じ商行為を行っておりますけれども、これについてはどう考えておりますか。
  205. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 生協がその事業を実施する上で関連会社を設立している例が見られます。我々も若干行き過ぎな面があったなという気もいたしております。そこで、生協のあり方に関する懇談会の、これは六十一年十二月に出たものでありますが、その報告を受けまして、昨年の六月三十日に通達をもちまして関連会社に対して次のような指示をしたところでございます。  第一に、生協がその事業を円滑に実施するため加工、運送など販売業務と労働条件が著しく異なる業務、それから農協その他の協同組合等との共同業務、こういうものを処理する子会社など、これはやむを得ませんけれども、こういうものに限って設立を認めるというふうに限定をつけたわけでございます。  第二、関連会社の設立に当たりましては、組合員の民主的運営を確保するためにその目的、事業計画、収支見込み等について総代会の議決を得るとともに、行政庁に対して関連会社の定款、事業計画等を届け出ることにしております。さらにこれを受けまして日生協が自主運営基準の見直しを行いまして、いろいろその関連会社の設立についての見直しを図っているところでございます。
  206. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 さらに将来心配されますことは、JRが各社とも黒字に転換するために、なりふり構わず商工業界のシェアを奪うような営業をしたり、あるいは生協と同じようにダミー会社を創設して商売を始めつつありますけれども、このJRの商業活動についてどのように御指導をいたしておりますか。
  207. 丹羽晟

    政府委員(丹羽晟君) お答え申し上げます。  JR各社に対しましては、国鉄の分割・民営化の趣旨にかんがみまして、活力ある経営をしていただくよう、鉄道事業以外の部面につきましても幅広く事業分野に進出することを認めることとしております。本業との関係におきましては、鉄道事業の適切かつ健全な運営に支障を及ぼすおそれがないという場合に限るわけでございますけれども。それで、ただ個々の事業の進出の場合につきまして、JR関係の会社法の十条という規定がございまして、中小企業に対する配慮規定でございますけれども、そういう規定と、それから国鉄改革法関係を御審議いただきましたときの衆参両院の附帯決議がございます。その趣旨に基づきまして、中小企業者の事業活動を不当に妨げたり、またはその利益を不当に侵害することがないように会社に対して現在私ども指導しておるところでございます。  それから、JR各社が出資いたしまして実質的に支配関係を有するような会社がまた別の事業に進出するというようなことがあるわけでございますけれども、そのような事業活動を営もうとする場合につきましても、地元と十分話し合って調整をするように、親会社であるJR各社を通じて可能な限り指導してまいりたい、かように考えております。
  208. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 「利益を不当に侵害することのないよう特に配慮しなければならない。」というふうになっているわけでありますから、十分その点はしりかりやっていただきたいと思います。  そこで、最後になりますけれども、中小企業の商業権を守って、中小企業の憲法とも申すべき中小企業基本法を遵守するには、二つしか私は方法はないと思っておるわけであります。一つは、生協、農協の本来の使命に立ち返って厳正な運営をするということ。いま一つは、本来の目的を体しながらも、思い切って法改正を含めてあらゆる優遇策を廃止するものは廃止して、いわゆるイコールフッティングで、同じ条件で商業活動をさせるべきであるという考えも持っているわけでありますけれども、最後にこれに対する御存念を伺っておきたいと思います。
  209. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) 生協がその理念に従って活動をすること自体はその分野の問題でありますが、そのことが新規出店あるいは員外利用、こういう面で商店街あるいは小売店、こういうものに大きな影響を与えているという事例が過去にも現在もしばしばございます。特に北海道あるいは近畿地区、こういうところにそういう摩擦の現象が多く発生していると考えております。したがいまして、大型店抑制という一方における小売商業者の利益の擁護、この政策との調整というものを十分考えてそういう出店調整等をやっていただくよう、私どもしばしば関係省庁に御要望をし、具体的なケースごとにそういう調整がとられてきておるというのが現状でございます。  それで、生協を含めた協同組合事業に対して、例えば税制等でのいろいろな優遇策が現在とられております。これについてどうするかということは、そういう生協なり他との調整以外に、またそのもの自体としての理念の問題もございましょうから、これについて現在自民党内でも政策的にこれをどうするかという検討が進められているというふうに承知しておりまして、そういう検討の行方を見守っていきたいと思っております。
  210. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 ありがとうございました。
  211. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で工藤万砂美君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  212. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、猪熊重二君の質疑を行います。猪熊重二君。
  213. 猪熊重二

    猪熊重二君 公明党の猪熊重二と申します。当委員会における質問は初めてですので、よろしくお願いしたいと思います。  一番最初に、脳死及び臓器移植の問題について若干伺いたいと思います。  御承知のとおり、本年一月十二日、日本医師会が「脳死および臓器移植についての最終報告」を発表しました。で、同じ十九日、日本医師会は理事会において右最終報告を承認し、各都道府県医師会にその旨を通知いたしました。問題は、この報道を受けて国内の二、三の大学や国立の研究機関が、心臓その他の臓器移植の実施を近く行うというふうなことを表明しているところにあります。  まず、厚生大臣に対して、この日本医師会の最終報告を全体としてどのように受けとめておられるか、お伺いしたいと思います。
  214. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 御指摘の、日医の生命倫理懇談会におきまして脳死と臓器移植の問題の最終報告がございました。専門家の貴重な御意見として私ども受けとめております。また、脳死を人間の死と判定するという判断は世界先進国の一つの大勢、また臓器移植につきましても、欧米先進国におきましては数千例の心臓、肝臓の例があるわけでございまして、これも大きな潮流であると認識しております。  しかしながら、この脳死並びに臓器移植の問題につきましては、国民の皆さん方の理解と御納得というものは必ずしも得られていないというふうに私ども判断しておるわけでございまして、この問題については慎重な対応というものが必要であり、厚生省といたしましては、そのために正確な情報であるとか研究であるとか、そういうことについて提供してまいらなきゃならない、かように考えておる次第でございます。
  215. 猪熊重二

    猪熊重二君 この日医の報告の中で、以下申し上げる四点についてどのように記述されているか、その内容と、この記述内容に対する厚生省の見解を伺いたいと思います。  まず一点目は、脳死の判定基準について。二点目は、脳死の判定方法について。三点目は、特別の立法を要せず現在において脳死を個体死と認め得るか否かという点。第四点は、同じく特別の立法を要せず現在において既に心臓移植は可能であるかどうか。この四点についての答申の内容と、これに対する厚生省の所見を伺いたい。
  216. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 脳死の判定基準につきましては、日医の報告で、厚生省がお願いいたしました研究班の判定基準を必要最小限の基準とするということでお認めいただいておるようでございます。  それから判定の手続でございますけれども、これにつきましてもおおむね妥当であるということで評価されておると考えております。  それから、脳の死を個体の死とすることについて、あるいは脳の死を前提とした臓器移植についての問題でございますけれども、いずれもこの日医の報告では、それが可能であるということで御報告されておるところでございまして、厚生省といたしましても全般的にこの報告は、ただいま大臣からも御答弁がございましたけれども、評価すべきだと考えておりますが、一般的に国民の十分な理解、納得が得られるかどうかというところが今後の推移であろうと考えております。
  217. 猪熊重二

    猪熊重二君 今の四点の中で、一番最初の脳死の判定基準という問題が非常に重要だと思うんです。要するに、脳死の判定基準というものが確定していなければ、ある場合には脳死であり、ある場合には脳死でないというふうないいかげんな判定になったらえらいことになる。  それで、脳死の判定基準国内的に単一に確定されるべきであるか否か、それについての御意見を伺いたい。
  218. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) ただいま御指摘の脳死の判定基準でございますが、日医の報告書におきましても、複数の判定基準があっても差し支えないというふうな御見解でもございます。  ただ、私どもが研究班でお願いいたしましたいわゆる竹内基準でございますけれども、この基準は、この日本医師会の最終報告でも必要最小限の判定基準であるということでお認めいただいているわけでございまして、それにそれぞれのお立場からの若干の判定基準等をつけ加えるような形で、複数あっても差し支えないということだと考えております。
  219. 猪熊重二

    猪熊重二君 この報告書自体の中に「脳の死の判定基準としては、竹内基準が一応あるものの、さらに検討を深め、研究と技術の進展に応じて、よりよいものに改めていくことが必要である。」とか、あるいは「脳死の判定方法としての竹内基準に対してはいくつかの疑問が提起されている。これらに対しては適切な方法でそれに答え、疑問を解消していくことが必要であろう。」と、こう述べているんです。  要するに、私が言いたいのは、まだ確定的にどこへ出しても全然変動しないという基準じゃなくて、今後も検討せにゃならぬという基準だということになっている。こんな基準で脳死であるかないかというふうなことを判定されたらたまったものじゃない。こんな変動する可能性がある基準を脳死判定の基準として妥当であるというふうに厚生省がお考えになる理由をもう少し伺いたい。
  220. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 先ほど申し上げましたように、この脳死の竹内基準は、日本医師会の報告書では必要最小限の基準とするということでお考えのようでございまして、それに加えて、基本はいずれも同じであるけれども、その細部についてだけ異なっていることで複数の基準があるようだということで断じておられるわけでございまして、「各機関によって作られたそれらの基準は、細部にわたってまで形式的にむりに統一する必要はない」ということでございまして、「確実に判定されるのであれば、それでさしつかえはなく、それぞれの判定者の責任において判定がなされればよいといえよう」ということで日医の報告書はお書きいただいているわけでございまして、個々の医療行為の内容でございますので、私どもといたしましては医師の判定ということにお任せするということは妥当だと考えております。
  221. 猪熊重二

    猪熊重二君 今後も変更する可能性がある脳死の判定基準によって現在脳死だと判定されて、その結果、日医の報告によれば、心臓を取り出されるわけです。死ぬわけです。後になって、あのときにまだ要件が一つ足りなかった、これ追加しなきゃならなかったというふうなことになったら、人間の命をどう考えておられるんですか。もう一度お伺いしたい。
  222. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 現在の医学の水準でこのような基準を決め、いろいろの手続きで判定上の留意点とか判定の手順とかお決めいただいて、今学会的に申し上げますとこのような基準で定めるのが脳の死であるということでお決めいただいているわけでございまして、将来医学がさらに進歩した場合にまた別な基準と申しますか、これをさらに発展的にした基準というのが生まれる可能性があるということでは、そういう意味では正しい御指摘だと思いますけれども、現在の医学水準ではこれが妥当であるということで私ども考えております。
  223. 猪熊重二

    猪熊重二君 この問題、同じことを何回やってもしようがありませんので……。  ところで、この日医の報告に基づいて、厚生省の所管である国立循環器病センターで心臓移植をすることについての計画が進んでいるということですが、現在どのような状況になっておりますか。
  224. 川崎幸雄

    政府委員(川崎幸雄君) 御指摘の国立循環器病センターにおきましては、免疫学的な研究あるいは医師の修練といった臓器移植のための研究等は行っておりますが、現時点では臓器移植を実施いたします具体的な計画はないというふうに聞いております。
  225. 猪熊重二

    猪熊重二君 そうすると、今具体的な計画はないと言うけれども、今後もしこの循環器病センターにおいて心臓移植を行うというふうなことが現実の課題となったときに、厚生省としてはこれについてどのようにお考えなんでしょうか。
  226. 川崎幸雄

    政府委員(川崎幸雄君) 臓器移植の問題につきましては、脳死をもって個体死とするかどうか、あるいは脳死判定のあり方等の問題が現在各界において議論されている段階でございます。したがいまして、国立循環器病センターにおきましては、臓器移植を行うことにつきましては慎重な対応がなされるべきものだというふうに考えております。
  227. 猪熊重二

    猪熊重二君 慎重な対応というのはどういうことなんですか。厚生省の所管の医療機関においてこのような現在の日医の報告に基づく心臓移植手術が行われるとした場合に、厚生省としてはただ慎重な配慮を求めているだけで、やめろとかやれとか、そういう具体的な方針としてはどうなっているんですか。
  228. 川崎幸雄

    政府委員(川崎幸雄君) ただいま申し上げましたような状況の現段階におきましては、この問題につきまして十分慎重な態度をとって対応をすべきであるというふうに申し伝えておるところでございまして、そういうふうに理解をいただいているところでございますし、現段階ではそういった実施の計画というものは持っていないというふうに聞いておるところでございます。
  229. 猪熊重二

    猪熊重二君 私が聞いているのは、慎重にやられるのは結構だけれども、結論的にどうするのか。私自身としては、脳死を個体死とする法意識が国民に定着するまではやるべきじゃないというのが私の意見なんです。だから私は、やめるべきだ、厚生省としてやめるような方策を講ずるべきだと思うんですが、いかがですか。
  230. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 御理解をいただかなければならぬことは、一般的に、医療行為につきまして厚生省が指揮命令をする、そういうことはできないわけでございます。したがって、国立病院といえども国立療養所といえども厚生省がそういう医療行為について指揮命令をする権限はありません。  しかしこの問題は、御指摘のように臓器移植というのは、まず脳死が人間の死と認定しなけりゃならないわけでございまして、この問題についてまだ国民の理解と御納得を得られていない、そういう段階でございますから慎重にやらなけりゃならぬ。したがって、臓器移植をするような場合については十分にその病院なり機関におきまして倫理委員会等をつくり、しかも外部からも専門家をその委員会に入れるとか、また可能な範囲でその議論を公開するとか、広く国民の御理解と納得の得られるようなそういうやり方をした上で対応をしていただきたい、慎重にお願いしたい、こういうことを申し上げているわけでございます。
  231. 猪熊重二

    猪熊重二君 ちょっと話を進めます。法務省に対してお伺いします。  現在、刑法百九十九条の殺人罪と、同法百九十条の死体損壊罪における死の判定基準、それから民法八百八十二条、相続開始の原因である死の判定基準、これはいかなるものをもって判定基準としているのか。その法的根拠はどうなのか。この判定基準を変更するとすればいかなる手続によって変更が可能なのか、お伺いしたい。
  232. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 死の判定につきましては、基本的には医学上の問題であり、また国民の生死観とかあるいは倫理観、宗教観、そういう考え方によって決まっていくべきものであると、かように存じております。  日本の法律におきましては、死についての定義は先生御承知のようにございません。外国の法制におきましては、この脳死を死とするという法律があります。また、脳死を死としておりまするけれども法律では定めていない国もあります。また、日本と同じように法律におきまして死の定義を全然していない国もあるわけでございます。  そこで、やはり先ほども厚生大臣がおっしゃいましたように、この脳死につきましてはさらに国民がどういう考え方を持つかということが問題でありまして、これは慎重にしていかなければならない問題である、かように存じておりまして、したがって法律でこれを取り扱う場合におきましても、今まで心臓死をもちまして判例もあるわけでございまするが、まだ脳死のところまでいっていないというのが実情であると、かように認識をいたしております。
  233. 猪熊重二

    猪熊重二君 今の質問の後半の方についての御答弁がまだ私はっきりわかりません。現在の法規の適用はおいて、死の判定を何でやっているか。これを心臓死としてやっている、これはわかるんです。その心臓死の死の判定基準をもし今後変更するとすれば、いかなる法的手続によって変更が可能なのであるか、この点をお伺いしているわけです。
  234. 岡村泰孝

    政府委員(岡村泰孝君) 大臣が御答弁されましたように、現在、死の定義に関しましては法律がないわけでございます。しからばいつをもって死と判定するかということでございますが、これは、現在のところ三徴候説によりまして心臓死という判定がなされておるところでございます。これはやはり社会通念に従ってそういう判定がなされているところであります。したがいまして、死の判定の時期を変更するという場合は、社会通念と申しますか、国民の合意といいますか、こういったものが変わってくればそれに伴いまして死の判定の時期も変わってくる。したがいまして、法律で規定しなければ死の判定時期を変えられないというものではないということでございます。
  235. 猪熊重二

    猪熊重二君 内閣法制局にお伺いします。  今の問題と同じですが、これが内閣の見解ということでお伺いしてよろしいでしょうか。いかがでしょう。
  236. 味村治

    政府委員(味村治君) ただいま法務大臣及び法務省の政府委員からお答えになりましたとおりでございまして、法律論といたしましては死についての定義はございません。刑法の百九十九条で「人ヲ殺シタル者ハ」と、こうなっておりますので、人といえば生まれてから死ぬまでということで、その「人」の解釈といたしまして、その死の時期はいかんということが問題になっているわけでございまして、その解釈として、現在の現行法の考えを先ほど刑事局長がおっしゃったわけでございます。したがいまして、この解釈が変更になるということになりますというと、死の定義は、死について刑法の百九十九条の「人」というものの範囲が変わるということにも相なるわけでございます。    〔委員長退席、理事林ゆう君着席〕  しかし、その解釈というものは、これは元来人の死でございますから医学的知見、これが非常に重要なことでございますが、それを基礎といたしまして、人の死というのは非常に荘厳な厳粛な事実でございますので、社会的に重大な関心事を寄せられていますし、社会的な感情、社会観念、そういったものがございますので、死についての社会通念が変わりますればその死の死亡時期についての考え方も変わってくる、刑法の解釈も変わってくるということでございまして、そういう場合には法律の制定を要しませんで、そのような脳死ということが仮に社会的に認められるということはなりますれば、法律の改正を要せずして、脳死によって個体死と認められた後の「人」ということはあり得ない、これはもう死体にすぎないということになるわけでございます。
  237. 猪熊重二

    猪熊重二君 ちょっとまた観点を変えます。法務省にお伺いします。  以上のいろんな御答弁を前提として、いわゆる筑波大学腎臓移植告発事件についてお伺いします。この事件について、告発人らの告発の趣旨の概要を明らかにしていただきたい。
  238. 岡村泰孝

    政府委員(岡村泰孝君) 御指摘の事件でありますが、昭和六十年二月十五日に、東京地検に対しまして筑波大学の医師ら三名を被告発人として告発がなされております。本件につきましては、昭和六十年六月二十七日、水戸地検に事件を移送いたしまして、現在水戸地検で捜査中でございます。  告発事実の要旨でございますが、一つは殺人ということであります。昭和五十九年九月二十六日に臓器移植の目的で患者の身体から腎臓等の臓器を摘出して殺害したという事実であります。二つ目が死体の損壊であります。この患者の死体から肝臓等を摘出して研究目的に使用するなどしたということであります。三つ目が虚偽公文書作成であります。患者の死亡診断書を作成するに当たりまして虚偽の死亡日時を記載したということであります。  これが一番最初の告発事件でございますが、その後昭和六十年十二月九日に、水戸地検に対しましてやはり三名の医師を被告発人といたしまして傷害致死によって追加の告発がなされております。これは臓器の提供を受けました者が死亡したというこの事実をとらえまして、傷害致死ということで告発がなされているものであります。
  239. 猪熊重二

    猪熊重二君 この事件の告発の要旨は大体わかったんですが、現在における捜査の状況をお示し願いたい。
  240. 岡村泰孝

    政府委員(岡村泰孝君) 現在、いずれの事件につきましても水戸地検で捜査中でございますので、具体的な事柄につきましては答弁いたしかねるところでございますが、水戸地検におきましては、事実関係の捜査とともに本件では脳死ということが一つの問題でございますので、その点につきまして慎重な検討を続けているところであります。
  241. 猪熊重二

    猪熊重二君 私も素人なりに考えれば、今の告発に係る事実は調べるのにそんなに難しいことじゃないことだと思うんです。そして、従前の心臓死を前提にする限りこれは殺人罪であることは明白だと私は思うんです。だとしたら、事実の捜査もいいけれども、いつになったら捜査が終わるのか、今後の捜査の見込みはどうですか。
  242. 岡村泰孝

    政府委員(岡村泰孝君) 先ほど申し上げましたように、脳死問題等につきましても慎重な検討をいたしているところでございまして、今の段階で、いつごろ捜査が終わって処分になるかという見通しは申し上げられる段階ではございません。
  243. 猪熊重二

    猪熊重二君 この告発事件のうち、既に死体損壊罪と虚偽診断書作成罪は三年の公訴時効を完成していて、仮に有罪と考えたとしても、もう公訴提起できない状況になっている。検察庁が三年も四年もだらだら捜査していることによって結果的に公訴時効を完成させている。このことについて法務大臣の御意見を伺いたい。
  244. 岡村泰孝

    政府委員(岡村泰孝君) ただいま御指摘のありましたうち、虚偽公文書の作成につきましては時効が七年でございますので、いまだ時効にかかっておりません。ただ、死体損壊罪につきましては、御指摘のありましたとおり公訴時効の期間が三年でありますので、時効が完成いたしているところでございます。  ところで、本件一連の告発の中心となるべき事実は、やはり殺人という事実であるわけでございます。死体損壊罪はこれと一連の関係にあるところでございます。本体であります殺人罪につきまして検察当局が現在捜査中であるわけでございまして、これと関連する死体損壊罪についてのみ先に処理するというのは必ずしも妥当な措置ではないというふうに考えられるところでございます。また、死体損壊罪につきましての告発は、時効が完成する前に取り下げられているという事情もあるわけでございます。こういうような事情を考慮いたしまして、死体損壊罪だけを切り離して時効完成前に処理するという措置はとっておらないところであります。
  245. 猪熊重二

    猪熊重二君 私が申し上げたいのは、この告発事件に関連する問題として、脳死の判定基準はどうか、脳死の判定方法はどうなんだと、あるいは脳死を個体死と認め得るか否かというふうな国民的課題が含まれているわけなんです。これを検察庁だけでどうだろうこうだろうと考えていて結論を、十年、二十年やって、どうもわからぬわからぬと言っているよりは、この件自体を公訴提起して裁判所における判断というものを仰いだらどうですか。裁判所において両当事者の医学的なあるいは各種の訴訟資料に基づいて判断すること、裁判所自体の判断を得るということ、このことも脳死の問題に関して解決していく一つの方法として妥当な方法じゃなかろうかと私は考えるんです。この点、法務省だけで、検察当局だけでどうしようこうしようと考えて、結果的に起訴しないで時効が完成して終わりというふうなことは、まるで日医のこの方針を消極的に黙示的に認めることになる、このように思いますが、法務大臣いかがでしょうか。
  246. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 先生のおっしゃることもごもっともでありまするけれども、この死を心臓死とするか、あるいは脳死とするかということは非常に今難しい問題でありまして、その難しい問題に検察当局が挑んでおるというところでございます。  私は法務大臣といたしまして検察当局を信頼いたしておりまして、間もなく最終的な判断を出してどうするかということを決めていくものと、かように考えておりまして、やはり検察に今係っておる事件でありまするので、検察としても最大の努力を尽くすべき職責を持っておるわけでございまするので、もうしばらくお待ちを願いたいと存じます。
  247. 猪熊重二

    猪熊重二君 この問題に関する最後として、厚生省、法務省、それから内閣官房等においても、どうやってこの問題を国民的に討議して解決していくかということについての所見を承りたいと思います。
  248. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 先生御指摘のように、この問題はさまざまな行政分野にかかわる問題でございまして、私どもといたしましても十分に関係いたします省庁と連絡をとり合って進めていかなければならない、さように考えております。
  249. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 脳死につきましては、国民の生命観や倫理の問題に大きくかかわりますので、広範な見地から十分議論が尽くされ、国民的合意が形成されることが必要と考えております。  政府といたしましては、脳死の問題が厚生省、法務省のみならず、さまざまな行政分野に係ることにかんがみまして、昭和六十二年七月から総理府が窓口となりまして、脳死に関する関係省庁連絡会議を開き、関係省庁間の意見交換を行っておるところでございます。  いずれにいたしましても、本件はもうしばらく、議論の水準線がどの辺に落ちつくか、今後における各界の議論の動向等を見極めつつ諸般の角度から慎重に対処すべき問題と考えております。
  250. 猪熊重二

    猪熊重二君 今の問題についてはありがとうございました。  次の問題を質問させていただきます。主として外務省にお伺いしたいと思います。  国際人権規約B規約の国連に対する報告、これの国内報告の問題について若干お伺いしたいと思います。この問題については、過日の当委員会において千葉景子委員からも質問がありまして、一応の御答弁もいただいたわけですが、私としては非常に納得できない。  外務大臣にお伺いする。国際人権規約B規約に基づく国連への報告内容を、報告と同時に直ちに国内に発表しないということについての法律上の根拠、もしくは法律上の根拠がなければ、いかなる根拠に基づいて発表しないのか、お伺いしたい。
  251. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) これは御承知のとおりに、締約国の義務として報告書は出す次第でございますが、その内容におきまして委員会で審査がなされるわけで、もう少し国連事務局といろいろ準備をし協議をして、そして翻訳の手続、さらには修正がもしあらば修正、そうしたことを経て初めて国連文書となると、こういうわけでございますので、それまでに直ちにということはちょっとできかねる話で、そういうような経緯を考えてまいりますと、無用の混乱を避けなくてはならない、ずっとそういうようなしきたりでございますから、したがいまして、既にこの問題は関しましてはいろいろ御質問ございましたが、現段階では公表できない、国連文書としてまとまったときに同時に公表いたしたいと、こういう経緯でございます。
  252. 猪熊重二

    猪熊重二君 我が国と同じように直ちに国内に公表しないという国と、全く別個に国連に対する報告と同時に国内公表している国についてお伺いしたいと思います。
  253. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) お答えいたします。  代表的な西側先進諸国を数カ国調査いたしましたところでございますが、ほとんどの国で、国連より国連文書として配付、公表される場合以外、特に国内での公表は行っていないというふうに承知いたしております。  例を挙げますと、調査いたしました国のうち現在まで回答が寄せられておりますところがイギリス、西ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、ベルギー、カナダ、オーストラリアでございまして、このうちカナダを除きましては国連文書として配付、公表される以外に特に国内での公表は行っていないということでございます。
  254. 猪熊重二

    猪熊重二君 今の御答弁は、私がことしの一月八日に外務省に調査してくれと言って、二月ぐらいになってやっと出てきた調査と同じなんです。しかも私は、この質問をする前にさらに言っているわけです。国連に報告すると同時に直ちに国内公表している国として、今外務省で言ったカナダのほかは、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、ニュージーランドというふうな国があると私は伺っているんですが、いかがですか。
  255. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) ただいま委員指摘の国のうち、フィンランドについては調査結果が参っておりますが、それ以外のところは現在さらに調査中でございます。  フィンランドにつきましては、実はけさ報告が参りまして、フィンランドとしては、国連文書として配付、公表された後は公表されるということでございまして、報告書が国連に提出され、国連文書として公表される間に若干の内容の修正あるいは体裁の変更等があり得るためである、こうしております。
  256. 猪熊重二

    猪熊重二君 私が一月八日に外務省に調査するように言って、自分のところに都合がいいようなことだけ調査されても困る。それから二カ月半もたっているじゃないですか。そして私が言ったら、ようやくフィンランドだけ言ってきた。私が知っている限りでは今申し上げたような国があって、しかもこれらの国は外国から、例えば日本からこういう報告についてお伺いしたいと言えば、国連に報告すると同時に外国の一市民に対してまで報告書を出している。こういう取り扱いに比べて外務省の取り扱い方法というものは、先ほど外務大臣は国際慣行というふうなことをおっしゃったけれども、私から見れば全然国際慣行でも何でもありゃしない。外務省の秘密主義にほかならぬと思う。これに対して、国民の知る権利との関係について外務大臣の所見をもう一度お伺いしたい。
  257. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) もちろん国民には知る権利がございます。その知る権利への配慮というものを私たちは当然しなければなりません。だから今国連局長からお話しいたしましたとおり、西欧諸国のほとんども我が国と同様の措置をとっております。さような意味合いにおきまして、やはり国連文書として発表されたとき同時に公表して、国民の知る権利にこたえる、これが現在の外務省の考え方であります。
  258. 猪熊重二

    猪熊重二君 私がこのことを特に強調して申し上げるのは、この文書が国連は報告された後に国連の人権専門委員会はおいて各種討議がなされるわけです。この人権専門委員会はおける各種討議に際して、その専門委員日本政府の報告が異実に公正であるか、妥当であるかということの資料日本国民は提示して、人権委員会において正当に審議してもらう権利がある。この権利を保障するためには、国連に報告すると同時に国内発表することが国民に対する外務省の義務だと思うから申し上げているんです。  いずれにせよ、外務省としてはこれを公表しないとおっしゃるんでしたら、女子差別撤廃条約に基づく同じような国連の報告に対してはどのように取り扱いますか。
  259. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 女子差別撤廃条約に基づく報告書につきましては、国連に提出いたしました後に、国連文書として国連文書の形となりましたときに国会に、衆議院及び参議院の外務委員会の方にこれを配付いたしました。
  260. 猪熊重二

    猪熊重二君 これは非常に重大なことです。なぜかというと、この女子差別撤廃条約における条約承認に関する衆議院及び参議院の外務委員会における審議及びその審議に対する政府の答弁と今のお答えは全く違っている。  まず、衆議院の外務委員会においてどのような質疑がなされ、政府からどのような答弁がなされたか、お伺いしたい。
  261. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 衆議院の外務委員会の討議でございますけれども、この質疑におきまして、当時の安倍外務大臣、それから国連局長、いずれも答弁しております。これにつきましては、国連に報告いたしましてその後国会に報告するということを答弁しております。
  262. 猪熊重二

    猪熊重二君 私がこれを申し上げたんじゃ私の持ち時間が少なくなって非常に困る。  しかし、衆議院の外務委員会はどういうふうになっているか。国連局長は「条約の実施に関します政府報告、これは公に公表する報告でございますので、私どもとしては、報告をいたしました場合には、それをいつでも、どなたにでも手に入るようにいたしたいと思います。」と答弁している。それから、土井たか子委員の同じような質問に対して、安倍外務大臣は、「国会にもきちっと報告しなければならない問題」だと。あるいは、さらにもっと明確には、やはり国際連合局長が「国連に報告いたします報告は、直ちに」——直ちにと書いてある、「直ちに国会の方にも御提出申し上げたいと思います。」、こういうふうな審議がなされているんですが、あなたの言うような、国連文書として公表になったらその時点でやるなんということはこの会議録には一つもない。いかがですか。
  263. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 答弁の中で、今委員指摘のように、「国連に報告いたします報告は、直ちに国会の方にも御提出申し上げたいと思います。」と、こういうくだりもございます。また他方、別の箇所では、これはまた別の国連局長でございますが、いずれにいたしましても、国連に提出する報告は国連に提出した後に国会の方に報告する考えでありますと。  いずれにいたしましても、国連に提出いたしました後に国会に報告するわけでございますけれども、その場合に、国連の文書として形をとりますまでに実は内容の修正その他があり得るわけでございます。したがいまして、その形になったところで誤解を避けるために報告を申し上げる、あるいは公表するということでございます。  他方……
  264. 猪熊重二

    猪熊重二君 そんないろいろ能書き聞かなくていいんです。あなたは衆議院外務委員会、参議院外務委員会の会議録を全部読んだんですか。日本語が読める限りにおいてはあなたが言ったような結論は出てこない。私は全部読んで全部まとめてある。そんな、国連が公表したらその後国内発表しますなんということは一言も書いてない。外務大臣いかがですか。
  265. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 当時の国連局長が直ちにと、こう答えていることが今おっしゃったところだろうと思いますが、それが報告をした後に直ちになのか、あるいはまた先ほど私が申し上げた順序によってするということなのか、そこら辺いろいろと、外務省内におきましてもやはり役人のサイドの発言でございますから問題になっておることは事実であります。  しかし、私が大臣になりましてからはずっと今お答え申し上げましたとおりの方針でやっておりますし、また安倍さんも私の申し上げた方針に従いまして、そうした趣旨でお答えになっておる、かように私は考えております。
  266. 林ゆう

    ○理事(林ゆう君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  267. 林ゆう

    ○理事(林ゆう君) 速記を始めて。  ただいまの件につきましては、理事会において協議いたします。
  268. 猪熊重二

    猪熊重二君 理事会の協議の御参考までに申し上げますと、今私が申し上げたのは衆議院外務委員会の議事録なんです。これに対して参議院の外務委員会における議事録もほとんど同趣旨、しかも参議院においては、直ちに国内発表しろという附帯決議があって、これに対して安倍外務大臣が、その決議を尊重してその趣旨に従ってやりますと、こういうところまで言っているわけです。この辺も含めて理事会でよく協議していただきたいと思います。  私のこの問題に対する質問はこれ以上進められませんので、一たんこの問題はこれで打ち切ります。
  269. 林ゆう

    ○理事(林ゆう君) 関連質疑を許します。和田教美君。
  270. 和田教美

    和田教美君 外務省の遠藤審議官が、去る十六日の当予算委員会で、公明党・国民会議の伏見委員の日米科学技術協力協定の改定交渉についての質問、つまり何がもめているか、アウトラインを示せという質問に対しまして、ここに速記録がございますけれども、「私、この国会の場で、公式の場で交渉の具体的な内容につきまして申し上げるのは、やはり交渉相手もあることでございますし、妥結まで差し控えさしていただきたい、」と答えております。  そこで外務省にお尋ねいたしますけれども、なぜ国会の場だから交渉のアウトラインを説明することができないのか、その理由を明確に御説明を願いたいと思います。
  271. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 御指摘の伏見先生に対する私の答弁でございますけれども、確かに若干説明に言葉足らずの点がございまして誤解を与えましたことにつきましては申しわけなく思っております。  ただ、私の言わんとしました意図は、交渉が実は十月半ばぐらいから始まりまして、現在も行われているわけでございますけれども、交渉の具体的な内容につきましては、公にすることは交渉継続中でございますから差し控えさしていただきたいと、公にすることはという意味で申し上げたわけでございまして、その点私の発言に若干誤解を与えましたことを申しわけなく思っております。
  272. 和田教美

    和田教美君 公の場じゃなくて、公の場という膏薬の前に、「私、この国会の場で、」ということがちゃんと速記録に載っております。この速記録の写しは、きのう外務省の方に届けてありますが、「国会の場で、」というのは、僕は非常に不適当だと思うんですが、取り消しますか。
  273. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 私が申し上げましたのは、実は国会というのは国政の最高の場であって、最も公式的な場である、こういうふうな趣旨で使った言葉でございます。
  274. 和田教美

    和田教美君 それは非常に問題だと私は思います。  憲法七十三条に、内閣が行う行政事務の一つとして外交関係を処理するということがございます。これがいわゆる外交権は政府にあるという根拠になっておるわけでございますが、しかし国会は国権の最高機関であって、国会による外交の民主的コントロール機能は憲法で保障されていると私は考えます。しかも、憲法六十三条には、内閣総理大臣その他の国務大臣は、議院に答弁または説明のため出席を求められたときは出席しなければならないという規定がございます。  そして、この六十三条の規定について、昭和五十年六月五日の参議院法務委員会で、当時の吉國内閣法制局長官は、この六十三条の規定は政府に答弁し説明する義務があると解していると、こういうふうに答えております。  そこで法制局長官にお尋ねしたいんですが、この七十三条の規定と六十三条の答弁義務、この規定との関係についてどうお考えになっておるかお聞きしたいわけでございます。
  275. 味村治

    政府委員(味村治君) 憲法七十三条の規定によりまして、外交関係の処理が内閣の職務とされていることは先生の御指摘のとおりでございます。他方、憲法六十三条は、これは国務大臣の議院出席及び答弁義務を規定しているわけでございますが、内閣総理大臣その他の国務大臣が議院に出席した場合、議案について発言する権利がありますと同時に、答弁または説明を求められました場合には、これに応じて答弁をするという義務があるということをこれは当然の前提としているというふうに解されるわけでございまして、したがいまして、出席して答弁を求められました国務大臣がその義務を厳粛に考えてその義務を履行すべきであるということは、これは当然の憲法上の要請でございまして、外交関係の事項につきましても例外ではないというふうに考えております。  ただ、先ほど先生が御引用になりました昭和五十年六月五日の吉國内閣法制局長官答弁にもございますように、合理的な理由がありますときは、その理由を明らかにして答弁を差し控えるということも許されるんだということを申し上げているわけでございまして、そういう場合には憲法六十三条には違背しないんだというふうに解されるわけでございます。  先ほど外務省の政府委員からも御説明がございましたが、条約とか協定の締結を目的といたします外交交渉の過程で行われます会談の具体的内容などにつきましては、これは国際的な外交慣行とかあるいは外国との信頼関係の維持とか、あるいは外交交渉を効果的に遂行するためとか、そういったようないろいろな事情から秘匿する必要性がある場合が通常であるということであろうかと思いまして、そういう場合には答弁を差し控えることも許されようかと存ずるわけでございます。
  276. 和田教美

    和田教美君 令の説明は全く納得できません。そうすると外交交渉は全部秘匿する必要があるということになりますけれども、これは憲法六十三条の趣旨と全く違うと私は思うわけで、答弁を差し控えたいということがあり得ると思います、外交交渉ですから。しかし、決して無制限ではないと思います。少なくともこの六十三条の規定からいえば、政府は外交交渉についてもなるべく可能な範囲で国会に説明をするということが義務だと思うんです。そういう意味で、国会に対して、特に国会ということを指摘してこういう答弁をするということは非常に不穏当だと思うので、この点は私は外務省で取り消していただきたいと、こう思うんですが、いかがですか。内閣法制局長官とそれから外務省の答弁を求めます。
  277. 味村治

    政府委員(味村治君) ただいま私が申し上げましたことは、外交交渉の過程につきましては、先ほど申し上げましたように、国際的外交慣行等いろいろな事情がございますので、秘匿の必要性がある場合が通常であるということを申し上げたわけでございまして、そういう秘匿の必要性があるからこそ答弁を差し控えることが許されるんだということを申し上げたわけでございます。そういう秘匿の必要性がない場合には、これは憲法六十三条の規定の趣旨に従いまして、当然に答弁をすべきことは言うまでもございません。
  278. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 先ほど御答弁申し上げましたように、この日米科学技術協力協定の交渉につきましては、新聞等々では確かにいろいろな報道がなされているのは事実でございますけれども、交渉の具体的な内容につきまして、特に国会というのは、繰り返しでございますけれども、最もやはり公式的な場ではなかろうかと私は思うわけで、そういったような場で、ここで公式に内容を明らかにするということは交渉妥結までは差し控えさしていただきたいというのが私どもの立場でございます。
  279. 和田教美

    和田教美君 国会の場だから言えないと。それじゃ非公式なら言えるんですか。これは全く六十三条の趣旨と反すると思うんです。国会の場だからこそ最大限言わなきゃいかぬというのがこの憲法六十三条の規定だと思いますが、取り消さないと言うのなら、私はその点は全く納得できませんから、ひとつ御協議を願いたいと思います。
  280. 林ゆう

    ○理事(林ゆう君) 速記をとめて。    〔午後二時三十六分速記中止〕    〔午後二時四十九分速記開始〕
  281. 林ゆう

    ○理事(林ゆう君) 速記を始めて。
  282. 和田教美

    和田教美君 今の問題について法制局長官にもう一度お尋ねいたしますけれども、政府には六十三条で答弁義務があるということは認められたわけですけれども、この当時の吉國法制局長官の法務委員会における答弁では、「この説明なり答弁の義務なりは憲法上の厳粛な義務でございますので、その範囲を確定するについてはきわめて厳正に考えなければならない」ということを述べておるわけです。  ところが、今の法制局長官の答弁では、まるで外交案件についての交渉中の問題は、全部これはこの例外規定に当てはまるというふうな拡大解釈であって、これは要するに全く答弁が拡大されてきている、違ってきているというふうに私は理解するんですが、いかがでございますか。
  283. 味村治

    政府委員(味村治君) この昭和五十年の吉國内閣法制局長官の御答弁申し上げた事案というのは、外交上の事案についてのものではございませんので対象が異なるわけでございます、具体的な問題は。ただ、その際に吉國長官はこういうふうに申し上げているわけでございます。「答弁あるいは説明を求められた事項が、全く当該内閣総理大臣あるいは国務大臣答弁すべき事柄ではないというような合理的な理由がございます場合には、その理由を述べまして答弁をいわば差し控えることがこの義務に違背するということには相ならぬと思います。」と。つまりそこでは、一般的な理論といたしまして、合理的な理由がございますればその理由を述べまして、それで答弁を差し控えましてもこの憲法六十三条の義務には違背しないんだということを申し述べているわけでございます。  それで、私の先ほど申し上げました答弁は、この一般的な論理を前提といたしまして、そして外交交渉の過程で行われる事柄につきましては、これは国際的外交慣行等にかんがみまして秘匿する必要性がある場合、秘匿するというのは要するに隠すわけでございますね、公開しないという必要性がある場合が通常でありますので、そういう秘匿する必要性がある場合には答弁を差し控えるということもこれは合理的な理由に入るんだ、合理的な理由によって答弁を差し控えていることになると、このように考えたということを申し上げたわけでございます。
  284. 和田教美

    和田教美君 そうだと、今の私の言ったように、外交交渉に関する問題は全部答弁を差し控える合理的な理由がある、こういうふうにお考えなんですか。
  285. 味村治

    政府委員(味村治君) これは、私は外交当局ではございませんのでそこまで申し上げるわけにはいかないんですが、最高裁判所の判例がございまして、これは昭和五十三年五月三十一日の判決でございます。いわゆる西山事件に関する判決でございます。そこに「条約や協定の締結を目的とする外交交渉の過程で行われる会談の具体的内容については、当事国が公開しないという国際的外交慣行が存在するのであり、これが漏示されると相手国ばかりでなく第三国の不信を招き、当該外交交渉のみならず、将来における外交交渉の効果的遂行が阻害される危険性があるものというべきである」と、こういうふうに述べておるわけでございます。
  286. 和田教美

    和田教美君 全く今の答弁では納得できませんし、それから、先ほどのなぜ国会で言えないのかということについての明確な答弁もございません。これでは私納得できません。
  287. 林ゆう

    ○理事(林ゆう君) 速記をとめて。    〔午後二時五十三分速記中止〕    〔午後三時三分速記開始〕
  288. 林ゆう

    ○理事(林ゆう君) 速記を始めて。  ただいまの件につきましては、理事会において協議いたします。
  289. 和田教美

    和田教美君 最後の質問ですけれども、先日の政府答弁によりますと、交渉妥結まで内容に関する答弁はできないということです。それでは交渉が妥結した後、この改定協定、これは承認案件として国会にかけるつもりですか。    〔理事林ゆう君退席、委員長着席〕 もし、かけないということであれば、交渉中は今の答弁のように内容は一切明らかにできない、そして妥結をすれば国会に諮らず署名、調印、すぐ発効ということになると、一体国会としていつの時期にこの問題を論議して意見を言い、政府に対する民主的コントロールの機能を果たすことができるのか。政治家としての外務大臣の御見解をお聞きして、私の質問を終わります。
  290. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) ただいまの御質問の前半の部分についてお答えいたします。  日米科学技術協力協定は現在交渉中でございますので、そのまとめられましたものが国会の承認を要するような内容のものになるかどうかということにつきましては、交渉結果にかかわることでございますので、現段階で明確に申し上げることは困難でございます。しかしながら、現行の日米科学技術協力協定は国会の承認を要しない行政取り決めとして締結されておりますので、もしその基本的性格が変わらないとすれば、新協定も国会の承認を必要としない行政取り決めとして締結されることが予想される次第でございます。
  291. 和田教美

    和田教美君 外務大臣、後半の点について。
  292. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 今条約局長が説明したことが非常にきちっとした説明じゃなかろうかと思います。したがいまして、もちろん条約というものは、憲法にも定めますとおりに、事前あるいはまた時宜によっては事後、こういうふうに国会の承認を経て決定するという段取りが書かれております。  年号は忘れましたが、大平三原則というのがありまして、その大平三原則で国会の審議についてどうするかという三つのケースが示されておりまするが、そのケースに今回交渉中の協定がどういうふうな関係になるか、そういうことを考えますと、今ここでこの批准を国会にお願いする場面が来るか来ないか、こういう問題もまた残っておるわけでございます。そのことを今条約局長が言ったような次第でございまして、既に、この内容が大きく変更しないものならば、この協定そのものは十二分に国会でももう見ていただいておって実施をしておるやつでございますから、あるいはそうした意味合いにおきましては、もしこの協定において大平三原則に何ら関係ないということになればそうした段取りはないかもしれません。  しかし、本来この協定が、言うならば取り決めにすぎないというふうな扱いになされておりますから、重大な変更がない場合には、今条約局長が申しましたとおりに、行政府同士の取り決めであるというふうなことになれば、あるいは国会にお諮りする時間あるいはそういうチャンスはないかもしれない、こういうふうに私は考えております。
  293. 猪熊重二

    猪熊重二君 大変時間が遅くなって申しわけないんですが、私の持ち時間がもう少しありますので、もう一つの問題についてお伺いさしていただきたいと思います。  民間マンションの塩害及び瑕疵担保責任の問題についてお伺いします。  この問題については、ことし一月二十九日、我が公明党の塩出啓典議員から内閣に対して質問主意書を差し出しました。これに対する答弁書が送付されているわけですが、この答弁書の内容がほとんど質問に答えていない。議員の質問主意書に対する答弁のあり方をも含めて建設省にしっかりとお聞きしたいと思います。  まず、塩分を多量に含んでいる海岸の砂をマンション建築のコンクリートの材料として使用することの当否を含めて、マンション建築用コンクリートの塩分含有量について建設省としてはどのような規制をしているのかお伺いします。
  294. 片山正夫

    政府委員(片山正夫君) 鉄筋コンクリート造の骨材としまして、山砂が少なくなってまいりまして、その量の問題から海砂を使わざるを得ない状況になっております。このために、コンクリート中の塩分の問題が大きな問題として浮かび上がりまして、これに対します建築規制としましては現在総量規制というのをやっております。コンクリート中の塩分の総量を規制するということにしておりまして、これは生コンクリートの状況、例えば水・セメント比でありますとかスランプ値等いろいろございますけれども、そういう状況によりまして数字は違いますが、一般的な場合はコンクリート一立方メートル当たり〇・三キログラム以下という規制を行っております。
  295. 猪熊重二

    猪熊重二君 そのような規制は、具体的にはどのような法規に基づいて実際の現場の民間マンション建築業者を規制していることになるんでしょうか。
  296. 片山正夫

    政府委員(片山正夫君) 建築基準法の施行令第七十二条に、鉄筋コンクリート造のコンクリートには鉄筋をさびさせるような塩が含まれてはいけない、こういう規定がございます。この解釈としまして、建築指導課長通達を出しておりまして、したがいましてこれは建築基準法上の一つの法令に基づく基準でございます。
  297. 猪熊重二

    猪熊重二君 そのような塩分総量規制の通達を出したということで、この通達に基づいて現場の民間マンションにおいて塩分総量規制がどのように実施されているかお伺いします。
  298. 片山正夫

    政府委員(片山正夫君) 塩分の総量規制を施行いたしましたのが六十二年の十月からでございます。それまでは別の基準を使っておりまして、それは砂の中に含まれる塩分量を規制しておったわけでありますけれども、その後におきまして、砂以外からの、例えばコンクリートに入れます混和材等からの塩分も問題になりまして、総量規制の方が望ましいということで基準を変えたわけでございます。したがいまして、この基準を変えたことに伴いまして、これは半年間でございますのでその実態がどうなっているかについてはまだ建設省としては掌握してございません。近く調査をする予定にしております。
  299. 猪熊重二

    猪熊重二君 そうすると、塩出議員の実施状況はどうなっているかという質問に対して、昭和六十二年十月一日以降総量規制に完全に移行しているということの答弁の意味は、実施状況に対する質問に対する答弁としてはほとんど答弁の体をなしていないと思いますが、いかがですか。
  300. 片山正夫

    政府委員(片山正夫君) 主意書におきまして完全移行というような言葉を使って御答弁申し上げておりますけれども、このことは、総量規制の基準を実施するに当たりまして、これは生コンクリートを工事現場におきまして機器をもちまして測定するという大変新しい手法でございまして、この機器が普及する間かなりの時間を要するということで、六十一年の六月にこの基準を発表しましたが、その実施の期間は六十二年の四月一日と、約一年近い猶予期間を持ちましたけれども、なお実際的に機器が普及しませんと実効は上がりませんので、六十二年の四月から九月までの間は古い基準と新しい基準の両建てで適用しまして、十月から古い基準を廃止いたしまして新しい基準のみの基準にした。そういう意味で完全に移行したというような表現を使ったところであります。
  301. 猪熊重二

    猪熊重二君 そうすると、規則において完全に実施されるような方向に行ったということだけであって、実際にこの基準が守られているかどうかということについては、何ら実態調査もしていないし、現場の状況はわからぬ、こういうふうなお答えのようです。  しかし、建築基準法第七条によれば、建築工事が完了した旨の届け出を受けた場合、建築主事は建築物の適法性につき検査することになっております。この建築物の適法性の検査という中に民間マンションの塩分総量規制も入っているんでしょうか。
  302. 片山正夫

    政府委員(片山正夫君) 総量規制の実態、普及の状況につきましては、六十二年の四月に基準を実施いたしまして五月時点でもって、つまり両建ての期間でありますけれども、その期間でどの程度実施しているかというところを調べましたところ、約半数が総量規制にもう既に一月の間に移行している、こういうことを踏まえまして十月の施行に自信を持って臨んだところであります。  なお、民間マンションにつきましては、当然この基準が該当することになりますので、これも基準法上の検査の対象になります。
  303. 猪熊重二

    猪熊重二君 そうすると、実際に建築主事は完成した民間マンションに行って、果たしてこの塩分総量規制が適法に行われているかどうかというふうなことを、実際問題としてどんなことをやって検査するんですか。
  304. 片山正夫

    政府委員(片山正夫君) 生コンクリートの段階で塩分を測定いたしまして、検査に行く時点では当然建築物はでき上がっておりますので、コンクリートは硬化しているわけでございますので、通常の場合は、そういう場合につきましては工事結果報告書というのを施工者に出させております。これをまた建築士である工事監理者が確認することにしておりまして、通常はその報告書に基づいて判断をいたす、こういうことにしていますが、疑わしい場合につきましては、具体的に試験片を既に建て上がっております建築物の躯体から取り出しまして化学検査をするということも場合によってはあり得ます。
  305. 猪熊重二

    猪熊重二君 建築士である工事監理者によって設計図書のとおり実施されたことが確認されたものについては、現場の検査は要らぬというふうな規定になっておるらしいですけれども、いわゆる巷間言われるところによると、実際には建築士である工事監理者などというものはいなくて、施工業者が完了した後設計事務所を訪れて工事完了届への記名、押印をしてもらっている、それだけで処理しているという場合があるなどと言われていますが、そのようなことについて建設省としては把握しておりますか。また、仮にそういうことがあるとすれば、そのようなことがないような方策としてどのようなことをお考えでしょうか。
  306. 片山正夫

    政府委員(片山正夫君) まずそういう名儀貸しのたぐいの話は、事実関係は承知しておりません。しかしながら、万が一そういうことがありますればこれは厳正に対処しなければなりません。工事監理者を置かないで建築工事を行いました場合につきましては、建築基準法第五条の二に規定がございまして、これは所要の罰則規定も適用されることになりますし、また建築士につきましては、不誠実な行為をしたということで建築士法第十条でもってこれも懲戒処分の対象になります。
  307. 猪熊重二

    猪熊重二君 いずれにせよ、せっかく二十年も二十五年ものローンで買ったマンションが十年でぼろぼろになってくるなんということになったら困るんです。工事監理者に対する監督を厳重にして誤りないようにしていただきたいと思います。  次に、同じように民間マンションを買った人が大変に困っている問題は、買って何年かしてあちらこちらにいわゆる隠れた瑕疵、目に見えないマンションの欠陥が発生することです。  そこでまず法務省にお伺いしますが、マンション建築及び売買に関して右のような隠れた瑕疵をどのように規定しているか。まず建築工事請負人の注文主に対する担保責任及びマンションの売り主である分譲業者が買い主に対して負担している担保責任についてお伺いしたい。
  308. 藤井正雄

    政府委員(藤井正雄君) まず売り主の担保責任についてでございますが、民法上、建物に隠れた欠陥があるというときには、その欠陥がわかったときから一年以内に買い主は売り主に対して売買契約の解除をするか、または損害賠償の請求をすることができるという定めになっております。  次に請負の場合でございますが、建物の注文者は、建物に瑕疵がありました場合には、木造などのときは引き渡しを受けた後五年以内に、コンクリートづくりなど堅固な建物の場合には引き渡しを受けた後十年以内に請負人に対して瑕疵の修補または損害賠償の請求をすることができる、こういう定めになっております。
  309. 猪熊重二

    猪熊重二君 この法定の担保責任について、特約的にこれを免除し得るかどうかについての法の定めはどうなっておりましょうか。
  310. 藤井正雄

    政府委員(藤井正雄君) 売買におきましても請負におきましても、当事者は請負人あるいは売り主が瑕疵担保責任を負わないという特約をすることはできることになっております。しかし、この場合においても、そのような瑕疵の存在を知って相手に告げなかったときは責任を免れるわけにはいかないというのが民法の定めでございます。
  311. 猪熊重二

    猪熊重二君 今法務省の方からお伺いしたように、民法自体においては、例えば請負人の担保責任の期間は五年、十年という非常に長期なものを規定しております。また、売買において売り主の担保責任は瑕疵、欠陥がわかったときからということで、わかるまでが三年であろうが五年であろうが、そのわかったときから一年間に瑕疵担保責任を追及できる、こういう規定になっている。ところが、実際のビル建築請負契約もしくはビル、マンション売買契約においてこの担保責任の規定がどのようになっているか、どのように取り扱われているか建設省にお伺いしたい。
  312. 望月薫雄

    政府委員(望月薫雄君) 民法上の扱いにつきましては先生お話しのとおりでございますが、要するに、宅地建物の取引につきまして申し上げさしていただきますと、業者の瑕疵担保期間、これは現在宅地建物取引業法、宅建業法と言わせていただきますけれども、これで引き渡しのときから二年末満の特約は禁止されています。言いかえれば二年以上という特約が考えられる、こういうことになるわけですが、こういった規定が置かれた経緯をちょっと申し上げさしていただきますと、昭和四十六年以前に業者の売買契約におきます売り主の瑕疵担保期間は通常引き渡しの日から一年という短いものが多かったわけでございますが、こういったことのために買い主が瑕疵を発見するために十分な期間がないままにいろいろの問題が起こるとか、あるいはまた、一般的には一年、春夏秋冬、四季を二回くらいめぐれば大体建物の隠れた瑕疵か見つかるんじゃないか、こういった考え方から今のような規定が入ったものでございます。  瑕疵担保期間の現状は今言ったようなことでございますけれども、一般的に買い主の方は、消費者の方はできるだけ長くしてほしい、こういったことがありますし、一方で売り主の方、業者の方はできるだけ短かくということを考えるのが通常と思います。こういった中で、しかし一般的にはこういった瑕疵担保の考え方というものを踏まえて取引価格が決められているとか、あるいは責任期間がいろいろと考慮されている、こういったもので個々の契約が成立している、こういうふうに理解している次第でございます。
  313. 猪熊重二

    猪熊重二君 民法の瑕疵担保規定について先ほどの民事局長のお話のように、この特約排除の合意ができる、しかし、建設省としてそれでは消費者の立場を考えるとちょっと気の毒だということで、瑕疵担保責任を二年間は負担しなければならないというふうな意味において宅建業法を制定したと。これは私も非常に消費者保護のために結構だと思うんです。ところが今おっしゃった、瑕疵の発生が一年や二年じゃなくて三年以降も非常に瑕疵が多く発生している。そうすると、せっかく建設省で二年間の瑕疵担保責任を法定することを考えたとしても、それ以降の瑕疵については全然消費者は保護されていない。  そこで建設省にお伺いしたい。  建設省の一つの局である建設省計画局が建築工事瑕疵問題調査委員会というものを発足させて、ここが昭和五十八年三月、この瑕疵の発生時期について報告書に記載してあります。どのように記載されていますか。
  314. 望月薫雄

    政府委員(望月薫雄君) お話のように、五十八年の三月に私ども瑕疵問題調査委員会からの報告書をいただいておりますが、その報告の内容をちょっと申し上げさしていただきますと、要するに、雨漏りだとか建具の不良などのいわゆるふぐあい、こういった発生件数が入居後の年数経過とともにどういうふうに変わっているかということをちょっとここで御報告さしていただきます。  調査対象住宅に対しましてふぐあい発生件数、これを延べでその割合を見てまいりますと、入居後一年の場合に一四五%、二年の場合で一五九%、あと三年以降を申し上げさしていただきますと、三年で九四、四年で七五、五年で六八、五八、四八、三八、四一%と、こういう格好になっておりまして、入居後十年の場合で見ますると一六%と、こういったふうになっております。  ただ、これはもう先生も報告書を御存じかと思いますけれども、いわゆるふぐあいという調査をさしていただいたものでございまして、これが直ちにいうところの瑕疵であるかどうか、この辺については点検したものではございませんので申し添えさしていただきます。
  315. 猪熊重二

    猪熊重二君 同じように建設省に対して、昭和五十四年三月三十日、行政管理庁の行政監察の結果として、民間分譲中高層共同住宅いわゆる分譲マンションの瑕疵の問題についてどのような勧告が行われていますか。
  316. 望月薫雄

    政府委員(望月薫雄君) 一つは、瑕疵担保責任期間の問題と住宅保険制度の検討ということでございまして、特に宅建業法に基づく二年間の特約が適当かどうか疑問である、こういった点が一点でございます。  それから瑕疵担保責任特約期間の最低限度の延長について検討するとともに、あわせて住宅保険制度の導入について検討する必要がある、こういった趣旨の報告をいただいております。
  317. 猪熊重二

    猪熊重二君 同じく建設省の関連した審議会である住宅宅地審議会会長から昭和五十四年九月十一日に、この宅建業者の瑕疵担保責任の問題の期間についてどのような答申がなされていますか。
  318. 望月薫雄

    政府委員(望月薫雄君) これは瑕疵担保責任につきまして現在二年末満の特約を禁止しているという、先ほど申し上げたとおりでございますけれども、このことにつきまして、購入者保護の見地から最短特約期間を延長すべきであると考えられるので、建設業者の施工上の瑕疵担保責任期間との調整を図りながら延伸すること及び業者の契約上の補修責任の充実強化について検討すべきである、こういった内容でございます。
  319. 猪熊重二

    猪熊重二君 建設省自身の計画局の調査報告、あるいは審議会会長からの報告、あるいは行政管理庁、あらゆるところから二年間の瑕疵担保責任は消費者保護にならぬ、もっと延長するべきだということがもう十年も前から言われているんです。全然それを延長しない。延長しない理由はどこにあるんですか。
  320. 望月薫雄

    政府委員(望月薫雄君) このことは私どもも常に検討してまいっている次第でございまして、とりわけマンション管理の徹底、特に施工管理の徹底、これにつきましてはしばしば関係業界等に対して指導を強化している次第でございます。  問題は瑕疵担保期間の延長の問題でございますけれども、これにつきましては瑕疵であるかどうかの判断、これは期間が延長されますと非常に判断が技術的にも難しくなる、あるいはまたそれに伴って費用の最終負担者をどう考えたらいいのかというような問題が大変難しい問題を抱えております。そういったことで、私どもとしてはこの瑕疵担保期間の延長問題については大変困難をきわめておるわけでございますが、当面大事なことは、この宅地建物のいわゆるふぐあい、こういったものについて引き渡し後二年以上たった場合でもいろいろと発生してくるという事実もございますので、管理の強化というものについてさらに充実してまいりたいと、こういうふうに考えている次第でございます。
  321. 猪熊重二

    猪熊重二君 瑕疵か否かの判断が一層困難になると。確かに困難になるんです。期間が経過すれば経年変化によるものか、瑕疵なのかわからぬということはそれは私もわかる。しかし、それによって二年間だけに瑕疵担保責任追及権を限定されることによる消費者の不利益と、それによって利得する宅建業者、建築業者の利益と、どちらを大切だと考えているんですか。
  322. 望月薫雄

    政府委員(望月薫雄君) 先ほども申しましたように、瑕疵担保の期間の問題と物件の販売価格などなどの問題がこれ連動しているものであると認識している次第でございまして、私ども建設省としましては当然に消費者保護を非常に重視しております。  そういった中ではございますが、今申しましたような事情、経過の中で、これを何年に延ばせばいいというふうな結論をなかなか導くことができないというのが現状でございます。
  323. 猪熊重二

    猪熊重二君 きのうやきょうの問題じゃなくて十年の問題なんです。十年たったらおんぼろマンションだったら壊れちゃうじゃないですか。なぜそれをもっと消費者保護の立場に立って期間延長しないのか。それから費用負担の問題があるというけれども、瑕疵担保責任の費用負担は売り主が負担することに一〇〇%決まっているんです。時間が来ましたので、建設大臣のこれに対する御意見をお伺いして終わりにしたいと思います。
  324. 越智伊平

    国務大臣(越智伊平君) 途中で抜けまして失礼をいたしました。  政府委員から答弁をいたしましたが、この瑕疵担保は非常に難しい問題であります。確かに消費者保護、購入者保護を行っていかないといけないと思います。これは、第一点は、施工管理を厳重にして瑕疵が起こらないようにすること。また、検査も行いまして、この検査というのは材料その他すべての検査を厳重に行いまして、例えばコンクリートならコンクリートが適正なものであるということをきちっと検査をして使用させる、こういうことが大事であろう、かように思います。  さて、二年を延ばすかどうかという問題は、いろいろ長い歴史もありますし、非常に難しい問題もございますので、今後検討はしてみますけれども、その後もしそういうことが起こった場合に保証ができるような制度、何かそういうことを考えないといけないのではないか。例えば材料についてそういう保証つきの材料を販売しておるようなところも一部ございます。例えばトタン板といいますか、こういうものの施工を含めて、もし悪くなったら長く保証します、こういうこともございますので、そういう制度とあわせて検討をしてみたい、かように思う次第であります。
  325. 猪熊重二

    猪熊重二君 どうもありがとうございました。
  326. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で猪熊重二君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  327. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、関嘉彦君の質疑を行います。関嘉彦君。
  328. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 本日は広い意味の日本の安全保障に関する問題を取り上げます。  まず最初に外務大臣に質問いたしますけれども、INFの協定が昨年の暮れ米ソ両国の首脳によって署名された、調印されたということはまことに喜ばしいことでありますけれども、このようなINF協定の調印を成功にまでもたらした大きな要因というのは何であるか、そのことと、それから日本では、1NFの協定が調印されたからデタントの方向にだんだん向かっていくんだ、したがって防衛の問題なんかは余りする必要はないんじゃないか、そういう意見もあるんですけれども、外務大臣はINF調印以後の国際情勢をどのように認識しておられますか。その二つをお伺いします。
  329. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 戦後四十三年を顧みて、お互いに戦力のバランスあるいはまた核兵器、そうしたものが一つの戦争の抑止であったことは事実であるかもしれませんが、余りにも最限なき核兵器の拡大というものがどうであろうかということは、米ソ両国においてもいろいろと考えられたことであろうと私は考えます。したがいまして、直接米国はそれを主唱すべく歴代のソ連書記長に申し入れをされたことも事実でございますし、粘り強くこの交渉をなされました。そして、それを日本を初めとする西欧各国が、西側が結束して推したということがINFグローバル・ゼロの一つの成果ではなかったか、かように私は解釈いたしております。  今、関先生がおっしゃったように、ではこれだけでデタントかと申し上げますと、決してデタントではございません。はっきり私申し上げたいと思いますが、デタントという言葉は今はもうアメリカでは余り使われておりません。なぜかならば、かつてはアメリカ政府も懸命になりまして緊張緩和、緊張緩和とやっておったのでございますが、残念なるかな、その第二回目のSALT交渉の最中に、御承知のアフガン侵攻という重大事故が起こりました。地域紛争をやっておる、まさにデタントの反対じゃないかというようなことで、デタントという言葉は自来アメリカでは余り使われなくなりました。だから我々といたしましても、今日のわずか四、五%のこのグローバル・ゼロというものは大いに歓迎すべきことであるけれども、デタントではありません、あくまでも核軍縮の第一歩でございます、こういうふうに評価しております。
  330. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 今後米ソ間の軍縮交渉を進めていく上において、やっぱり自由陣営諸国があくまで団結していることがその成功をもたらす要因であるということを私も感じております。  それに関連しまして、防衛庁長官にお伺いいたしますけれども、ゴルバチョフが書記長に就任以来、確かは外交のスタイルなんかも変わってまいりましたし、国内の改革なんかも進めているように思うんですけれども、ゴルバチョフの就任以降アジアにおいて、極東及び東南アジアですけれども、ソ連の軍事力の動向はどういうふうになっておりますでしょうか。
  331. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) ゴルバチョフ書記長が一九八五年三月に就任いたしまして、その後一九八六年の夏には有名なウラジオストク演説で、極東アジアにおける一種の平和攻勢ということが行われたわけでございますけれども、書記長が就任した以降も極東ソ連軍の増強の趨勢は今のところ変化は見られていないと私どもは見ております。  ちょっと比較を若干さしていただきますと、一九八五年当時と比べまして、地上兵力では四十一個師団三十七万人から四十三個師団三十九万人に増強されております。海上兵力につきましては、八百三十五隻百七十八万トンから八百四十隻百八十五万トンに増強されております。このうちでも特にキーロフ級原子力ミサイル巡洋艦、それから非常に記憶に新しいところでございますけれども、昨年の十二月はソブレメンヌイ級及びウダロイ級のミサイル駆逐艦三隻が新たにヨーロッパ方面から回航されてまいりました。  航空兵力につきましては、一九八五年当時約二千二百機でございましたのが、二千三百九十機に増強されております。これも質的な増強が特に目立ちまして、一九八五年当時はまだいわゆる第三世代の航空機と言われておりましたのが、書記長就任後に最新型のSU25あるいはSU27というような新しい飛行機が配備されておりますということで、現在のところその増強の趨勢には変化ないというふうに見ております。
  332. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 先般来、衆議院、参議院の予算委員会で、日米防衛協力のための指針との関連で米軍の来援の問題が論議されたことは、国民の蒙を開く意味において私は非常に有意義であったと思いますけれども、どうもその答弁の方が必ずしも明白でないので、もう一度ここで取り上げたいと思います。  瓦長官の一月の訪米で決まった有事の際の米軍来援についての共同研究が、第一段階としてどの程度の来援が期待できるか、そういうふうな研究からスタートするのは私は当然だろうと思う。しかし、ある程度の来援が期待されるということになりますと、その研究に従って作戦計画が立てられるわけですから、したがって平時の受け入れ国の支援の協定なりあるいは戦時における受け入れ国の支援協定、あるいはそれに関連した有事法制、そういうことが研究の結果として論理的には当然結論されると思うんですけれども、いかがでしょうか。
  333. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) お答えいたします。  有事来援研究は、先生御指摘のとおり、指針に基づく共同作戦計画の研究の一環として行われるわけでございまして、有事における時宜を得た米軍の来援、これについて研究するものでございます。その過程で、今これまた先生御指摘のようは、ポンカスであるとかそうした問題が取り上げられるか否か、これも今後の日米間の検討によるものでございまして、まずその指針に基づいて研究をしようということが一つの課題でございます。  また、有事におきましてのホスト・ネーション・サポートであるとか、有事における在日米軍の行動にかかわるいわゆる法制の研究、こうしたことは一般論として必要であるということは言をまたないところでございますが、今回の研究とは別にいたしまして改めて取り上げられるべき問題である、かように考えておるものでございます。
  334. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 第一段階としてそういう研究をされるのは私は当然だと思うけれども、そこで終わつてしまって第二段階以降はやらないつもりでございますか。
  335. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 研究の内容の仕分けの問題でございますが、まずガイドラインでもさまざまな研究なり共同訓練等が行われるようになっております。今回行おうとしております有事来援研究と申しますのは、ガイドラインの中にあります作戦計画の研究、これの一環といいますか、延長線上のものだというように理解をいたしております。  一方、同じガイドラインの中で後方支援なり相互支援、いわゆるホスト・ネーション・サポート等を含む問題も研究することになっておりまして、これらは今申し上げた作戦計画の研究であるとか、あるいは平時におきましては共同訓練等をやりますりそういったもろもろのオペレーションなり訓練、そういったものを通じてそれぞれの場面で相互支援の問題というのが出てまいります。そういったことで、それぞれの研究を行った段階で後方支援なり相互支援の問題が幾つか出てまいると思いますが、それらがある程度出そろったところで改めてやるということにガイドラインはなっておりますので、それはそれでいずれ取り上げてやる時期が来るというように考えております。  一方、もう一点御指摘の有事法制の問題でございますが、これは有事来援というようなことではなくて、在日米軍のステータスになった米軍が我我と共同対処行動をする、それに必要な法制上の諸問題の研究ということで、これまた重要なことでございますが、これはガイドラインの枠組みとは別に、それなりの手続と枠組みを持ってやるべき必要な研究だろうとは思っておりますが、そういう性格のものだと思っております。
  336. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 論理的に言えば、私は当然にさっき言ったような問題の研究にまで及ばなければならない問題じゃないかと思う。というのは、大学の研究室の中で研究しているのでありますならば、単に客観的にどういうふうになっているということだけで結構なんですけれども、政府のやる研究でしょう。政府はやっぱり何かやるために研究するわけでしょう。  それで、その問題をもう少し追及したいと思ったんですけれども、官房長官は新聞記者会見で中座されるそうですから、官房長官の方にお伺いします。本来は総理にお伺いすべきことかと思うんですけれども、官房長官の方にお伺いしたいと思います。  この研究は、確かに日米双方を法制的、予算上あるいは行政上義務づけるものではないということは明らかにされておるわけですけれども、しかし、今申しましたように、政府のやる研究でありますならば、それぞれ国会があるわけですけれども、もしそれぞれの国会が承認されれば行政府としては双方の合意を得たものについては協定を結ぶ、そういう意思を前提にしなければ、子供の研究じゃないわけですから無意味じゃないでしょうか。  それで、今までの政府の対応を見ておりますと非常に不満なんですけれども、どうも取り組み方が逆じゃないか。つまり、有事来援なら来援についての話し合いを防衛庁が始めるに当たっては、まず政府が安全保障会議なんかにかけて、諮って、有事来援に関する戦時受け入れ国支援協定ですか、を結ぶことが必要であると思う。そういうことを決定してから、それで防衛協力についてのガイドラインに従って、防衛庁に対してこういう趣旨に従って研究を開始しろと、そういうのが私はシビリアンコントロールじゃないかと思うんです。  どうも政府のやり方を見ておりますと、事務当局でまず最初にやらしておいて、そしてだんだん必要になってくれば有事来援、戦時受け入れ国サポート協定なんかを結ぶようになる、そういうふうに何かボタンを余り人の目につかないようなところの下の方からまずかけて、そしてだんだんだんだん上の方にかけていく、私は逆じゃないかと思うんです。こういった総合的な判断を必要とするような問題、外交、防衛に関するこういった問題については、しかも国民の権利義務に非常に関係のある問題については政府が腹を決めて、まず上のボタンから、みんなが見ている上のボタンをかけて、そしてそれを事務当局におろしていくのが私は筋じゃないかと思うんですけれども、どうも政府の取り組みは逆じゃないかと思う。官房長官、どうですか。
  337. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 先生御指摘のような御意見もあろうかと思いますが、政府としては、先ほど防衛局長からも答弁ございましたが、例えばポンカスの実施という問題につきまして、有事来援研究を行った後にその必要性を含めて改めて検討すべき問題であると考えておりまして、有事における在日米軍の行動にかかわる法制については本研究と本来別個の問題と考えており、あらかじめ法制等の問題について検討するといった考えをとっていないことを御理解いただきたいわけでございます。  先生御指摘の問題につきまして、この防衛問題について広く、ボタンの話がございましたが、政府としてなさなければならない研究その他につきましては、十分研究をいたしまして、国会並びに国民の御判断をいただくというのも考え方としては私は理解できるところでございますが、現時点におきましては、いろいろ研究につきましては、有事法制の研究等につきましても、本来的に言えばやはりすべて研究を終えて、そしていかなる場合にも対処のできるような法制的な体制を整えておくことが法治国家としては至極当然なことだろうと思いますが、今の段階におきましては鋭意国会の御指摘もいただきながら、それぞれ分類に分けまして検討中であるというのが今の立場でございます。
  338. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 どうもはっきりのみ込めないんですけれども、それでは今の研究を進めていって、どうも有事受け入れ国支援協定が必要であるという段階はなりましたら、それじゃもうそこでそれ以上の研究はやめて、ここでストップしましょうということをアメリカ側に言うつもりなんですか。
  339. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 若干補足して申し上げますが、御承知のとおり安保条約を結んで以来もう三十年近くなるわけでございますが、何せ、かつてアメリカが余りに強大だったものですから、安保条約さえあればというようなことで、具体的に日米が共同対処行動をするというようなことの研究というものを全く行っていなかった。それが、ガイドラインができて、さてやろうということで、我々としては全く未経験の分野でございますので、例えばそういった具体的な作戦行動なり、あるいは平時における共同訓練なりは関連して、どういうお互いの支援が必要であるかというニーズそのものがまだつかめていない。そういったために、やはりまず作戦計画研究をやったり、あるいは有事来援研究をやる、あるいは共同訓練を実施する、そういったことの積み重ねによりまして、初めてそのために必要なホスト・ネーション・サポートの内容なり、あるいは法制的な問題点なりというものがもう少し研究しないと浮かび上がってこない。そういったものをかねがね勉強しておりますればそういったことにあるいは直もに入れるかもしれませんが、その前段階としてのもろもろの作業が必要であろうというのが現状でございます。
  340. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 そういうふうにお答えになるだろうと思ったのですけれども、ホスト・ネーション・サポートの協定は、本当に日米安全保障条約を効果的に運用するつもりであればそういうのはなくてはならないわけなんですよ。それをはっきり政府が腹を決めて、そして防衛庁に、したがってこういう方針で研究しなさい、そういうことを言わないものですから、何か国民の間に政府の防衛姿勢に対する不信の念を招いている。私はこれは非常によくないことだと思う。何か問題が起こったら、それはもうお役人の方の責任で任しておくんだ、政治家は知らないんだと。そういうのでは私は本当のシビリアンコントロールというのはできない。シビリアンコントロールというのは、政治家がこれだけの資材、これだけの人員で国を守りなさい、それ以上のことは自分たちが決めるから、根本方針をまず決めて、そしてそれに従って文官なり武官にこういうふうなことをしなさいということを言うのが私は本当のシビリアンコントロールじゃないかと思う。今のままにしておいたら非常に危ない。シビリアンコントロールがあるいは崩れていくかもしれないし、それよりも私はむしろ国民が何か政府のやっていることはうさん臭い、政府の防衛姿勢に対して不信の念を持つのじゃないだろうか。そのことを私は心配しているんです。もう一度、官房長官。
  341. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 関委員のお考えにつきましては、私自身も極めてよく理解できるところだろうと思います。しかしながら、防衛に関しましての国論も必ずしも一致しておらない点もございまして、政府としては、全国民の理解を得ながら日本の安全を確保していくという立場で、御指摘にありましたような種々の法制的な措置も順次これを制定してきておるところでございまして、いろいろ御指摘をいただいておる法制をしっかり確立しながら、日本の安全について国民が安心して対応のできるように政府としての姿勢をしっかり整えていかなきゃならぬと思っております。
  342. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 まだその答弁は不満なんですけれども、官房長官は記者会見をされるそうですから、まだ一つ問題を残しておりますけれども、もし私の持ち時間内に帰ってこられればそのときにすることにいたしまして、どうぞ記者会見の方へ、結構です。防衛庁長官の方も結構でございますから。  次は、これも広い意味の日本の安全保障に関連することですけれども、国際経済摩擦の問題、これを取り上げたいと思います。  防衛と経済とは論理的には確かに別でありますけれども国民の心理としましては、経済関係が悪化すれば防衛協力にも影響してくるわけです。先ほど言われましたように、自由陣営が団結しているということが何よりも世界の平和のために私は必要だと思うんですけれども、どうも最近の日本の国際経済を見ていますと、何かそこにひびが入りつつあるのではないか、そういう懸念をする次第です。例えば過去半年間とりましても、昨年の十一月十日にはガットの理事会で日本とBC間の、ECの方の提起ですけれども、酒税の問題についてクロの裁定がありました。それから、本年の二月の理事会では、我々の記憶に新しいように、農産物の残存十二品目のうちの十品目についてクロの裁定が下されたわけであります。また、今月に入りましては、日米半導体協定についてパネルが裁定して、その内容を内示してきている。まだ発表はしていないようですけれども、内示してきているわけです。半年の間に三つもこういうガットの裁定を受けるということは私は不名誉なことではないかと思う。  やはりできるだけこういった摩擦を未然に防いでいく、あるいは早急に解決していくということが必要だと思うんですけれども、その場合にやはり一つの国際的なルールに従って解決していくことが私は必要だと思う。そうでないと、力の強い国であるとか声の高い国、そういう国だけに有利になるような解決をしていったのでは日本は孤立してしまうんじゃないか。やはり国際的に通用する一般原則に従って解決することが必要と思うんですけれども、外務大臣、最近の経済摩擦の状態をどういうふうに考えておられますか。
  343. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 私もガットに出席して、直接欧米の主要国家の代表と話し合った一人でございますが、やはり口を開けば日本は一千億ドルの黒字を抱えておる、言うならば大だんなではないか、それが何をいろいろと言いわけをしているんだというのが一口にして言う日本に対する国際間の考え方でございます。  確かに我が国は自由貿易によって伸びたことはこれはもう事実でございます。私よく言いますが、戦前はむしろ貿易振興のために自国通貨の平価を切り下げて輸出の振興を図った、それがために諸外国は関税並びに非関税障壁を設けて世界の貿易はシュリンクした、そういうことから戦争も始まった、その反省の上に立ってガット体制なり、あるいはIMFなり、そうした自由体制がとられて、そして本当に米国の二十分の一の国力しかなかった日本が、戦後四十年たちました二、三年前には米国の二分の一までGNPは迫ったと。こういう経緯を考えますと、やはり私たちはその間に確かに自分みずから努力したところもあるが、資源もいろいろと提供してもらった、あるいはいろんなサービスも受けた、なかんずく安保条約によって守られていたと。いろんなことを考えますと、やはりもう少しく日本は国際化しなければいけないんじゃないだろうかと思う面がたくさんあるわけであります。  よく諸外国の国会の方々が来られますと、私は次のように言うことにしています。本当にありがとうございました。しかし、日本努力したんです。その結果、体がでかくなり過ぎてしまいまして、言うならばちょっと衣服が身に合うようになっておりません。そでやらズボンが粒かくなってしまいました、早急にこれを調達したいと思います、調製したいと思います。だから、そのためには多少時間も必要でしょう、それをひとつガットにおいて我々も申し上げておるんですから御理解のほどをと申し上げておるわけでございますが、ほとんどガットに出た場合にはクロになるであろうと想定されます。これでは困ったものだと私考えておりますので、今二、三の問題もいろんな国国との間においてガット提訴か、いろいろ言われておりまするが、極力過去の経緯にかんがみまして、辛抱強く二国間で起こった問題は二国間でおさめていきたい、こういうような気持ちでございます。
  344. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私、戦前日本が戦争に巻き込まれた経緯をこの目で見てきた一人ですけれども、どうも日本では、平家と海軍と国際派というのはいつも弱いんで、源氏と陸軍と民族派といいますか、これが非常に声が強い。あの戦争が起こった経過を見ていましても、政治家が本当に腹を決めてあのナショナリズムの傾向を押しとどめる機会は何回かあったと思うんですけれども、どうしてもそういう国際派の傾向、国際的な主張をするのは弱腰外交であるとかいつも非難されてきて、それで本当に頑張らなくちゃならないときに政治家が頑張れなかった。  私はそういうことを二度と繰り返してはならないと思っておりますけれども、先ほど外務大臣言われましたように、現在の国際的に通用する貿易のルールというのはガット以外にないわけですね。ガット自体というのは戦争直後にできたんですから非常に不完全なものがあって、次から次に継ぎ足しているので非常にややこしい。私のように脳軟化症が始まった人間はあれ何遍読んでもなかなか理解できない点があって、非常に入り組んでいる。  それで、私はああいうのをもっと改善していく必要がある、強化していく必要があると思うんですけれども、先ほど言われましたように、どうも今までの経過を見てみますと、非常にナショナリスティックな傾向が声高に叫ばれて、そして結果においては徐々に一歩一歩、一歩下がつて頭を下げている。私はこれは非常に危険なことじゃないかと、非常に国民の間に、何か外圧に屈しているんだ、弱腰外交じゃないか、そういう屈折したナショナリズムが日本人の間に起こってくる。これを私一番心配しているわけです。  その意味で、やはり日本はガットのおかげでこれだけ繁栄してきたのであるから、これだけの経済大国になってこれだけの貿易黒字を持っているんだから、むしろ日本が率先してあくまでガットを守っていくんだ、その覚悟が必要だろうというふうに考えておりますけれども、もう一度外務大臣
  345. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 昨年、たまたま四十周年の記念がガットで行われまして、そのとき、私といたしましては基調演説をやったんですが、今委員がおっしゃったようなイデオロギーと、そういう理念で私といたしましてはガットに寄与しなければならない、そのために日本外交は世界に貢献し、世界に開かれる国家でなくちゃならぬ、それが外交の基軸であるということを申し上げた次第でございます。  今後はウルグアイ・ラウンドというところで、さらに四十年前につくられたガットにはやはり相当ほころびも見えます。どうやってガットの意思を決定するかという問題等々、やはりもう少しくはっきりさしておかなくちゃならない問題もございましょう。また、戦後でございますから、お互いに食糧危機を訴えておったときと、四十年たってもう世界じゅうが平和で戦争がない、破壊がない、破壊がなければ物余る、物余れば値段下がるということで、その代表的な農業にまでいわゆる貿易関税の問題が大きく拡大される時代となったということも、やはりこれは我が国としても十二分に考えなくちゃならない問題ではないだろうか。  今、実に農業問題で私たちは一番苦しい立場におります。したがいまして、その苦しさを訴えながらも、やはりガットの精神の高揚は図っていかなければならぬというのが今の日本の率直な立場ではなかろうかと、かように存じておりますが、やはりガット精神を失えば、保護主義になればもうがたがたがきてしまいます。そういう意味でぜひとも自由貿易主義は守っていかなければならない、これを真髄としなければならない、かように思っております。
  346. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 質問の順序としましては、通産大臣に先に質問をすることになっていましたけれども、ちょっと出席がおくれるそうでございますので、順序を逆にして大蔵大臣に質問いたします。  昨年の六月十九日の決算委員会でウイスキーなんかの酒税の問題を取り上げました。ウイスキーをお好きな大蔵大臣、非常に関心を持って聞いておられたように思いますけれども、そのときにウイスキー類の中身の表示なんかの問題と並んで、スピリッツとウイスキーとの差別税、この問題を取り上げましたところ、いろいろな事情があるので簡単にはいかないんだというふうな趣旨でしたけれども、ただ最後に、やはりこの問題がイギリスあたりからガットに何か提訴される、そのことも非常に気にかかるということを言われました。果たせるかな昨年十一月十日、ガットはパネルの報告書を審議しまして、日本に改善措置を勧告してきたわけでございますが、その内容は一体どういう内容でございますか。
  347. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 総括的に申し上げれば、日本の酒税制度が内外産品について差別的ではないかということでございますが、具体的に申し上げますと、ウイスキー類につきましては、二級も含めて同種産品でありながら輸入ウイスキー類のほとんどが特級として課税されている、この点は差別的ではないか。それから第二点目としては、リキュール類等につきまして、エキス分による税率適用区分がある。これも同種の産品に対する内外差別的な課税ではないか。第三点といたしましては、しょうちゅうを含む蒸留酒、これは同種産品とは言えないにしても、直接競合、代替可能関係にある、そういうことからいたしますと、しようちゅうと他の蒸留酒との間の従量税率の差が余りにも大きくて、国内産品に保護的となっているのではないか、こうした点が主なガットの指摘でございます。
  348. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 今言われた三点のうちで、第一点と第二点は昨年廃案になりました酒税法の改正案で大体カバーされているのではないかというふうに考えます。したがって、同じ法案を今度また提出されればその問題は解決すると思いますけれども、三番目のしょうちゅうなんかの税金の差が非常に大きい。この問題についてはどのように対処されるつもりでございますか。
  349. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) そこで、そういうようなガットの勧告が十一月にございましたので、昨年関委員に政府案として考えておりますところとして御説明いたしたところでは、このガットの条件を満たさないことになったわけでございます。したがいまして、改めましてことしの一月にこれはちょっと特別な扱いをいたしたわけでございますが、今年度の税制要綱の決定に当たりまして、酒税だけは多少具体的な決定をいたしました。  その一つは、従価税を廃止するということは、これは従来の考え方でございます。それからウイスキーは、スピリッツというようなものはやっぱりウイスキーであるということはどうもそう考えざるを得ないということで、ウイスキーの級別というものをなくすことになりました。したがって、今申しますと、特級、一級、二級税率は一本である、それから、しょうちゅうの税率を上げなければならないということになりまして、それによって蒸留酒間の税率格差を少なくすると、これだけのことを閣議決定いたしまして、法案の提出は御承知のように抜本改正の一部と考えておりますものですから、そのこともつけ加えまして関係各国に政府の態度を伝えたと。  したがいまして、この中で恐らくややもう一つ明確でないと御指摘がありますのはしょうちゅうをどのぐらい引き上げるのかという点でございますが、これはまだ具体的にきちんとは決まっておりません。格差を小さくしなければならないというところまでははっきりしております。  それで、今これを受けました主として関心国側の反応は、日本政府がそういうことを正式に閣議決定をしておりますので、法案がすぐにそれを追っかけませんでも、それは抜本改正の一環だということでそれはそれで了解をすると。ただその際、恐らく先方は抜本改正というものが余りおくれるものではないだろうなということは考えておると思いますが、一応そういうことで、我々としてはガットの勧告を実行する形でこれを方針決定いたしまして関係各国にも伝えた、こういう段階でございます。
  350. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 そうすると、酒税の改正だけは大型間接税といいますか、一般間接税と切り離して提案されると理解していいですか。
  351. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) その点は、実はいわゆる抜本改正、酒税もかなり大きなメジャーアイテムでございますので、やはり抜本改正の一部として酒税法の改正を御提案いたしたいと思っておりますが、その際、いわゆる幅の広い間接税とその酒税とがどのような関係に立つかということについては、幅の広い間接税の態様が御承知のようにまだ決まっていないものでございますから、今のところ未定でございます。何かの調整をする必要があるかどうかということを含めまして、やがて決定をしなければならない問題でございます。
  352. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 昨年六月の決算委員会のお答えよりも非常に改善されたお答えで結構だと思いますけれども、この酒税の問題はやっぱり切り離して、間接税、一般消費税の問題は、これはいろいろ野党側の反対もありますし、すぐできるかどうかわからない問題で、これは論理的には切り離せる問題じゃないかと私は思うんですけれども、切り離して出すお考えはまだ未定ですか。
  353. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) と申しますよりは、ただいまといたしましては、税法の抜本改正をできるだけ早い機会に成案を得たいと考えておりますので、その一部というふうに考えております。
  354. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 その問題、押し問答していましても仕方がありませんので、農水大臣いらしていただきましたので質問いたします。  農水大臣というのは、先ほど私、例に言ったんですけれども、いわば平家と海軍と国際派、片一方が源氏と陸軍と国内派、この板挟みに遭って非常に苦労しておられる。御同情申し上げます。また、今月末アメリカに行かれるそうですので御健闘をお祈りする次第ですけれども。  先ほど来私外務大臣なんかに言っていますことは、やはり日本はガットの恩恵を受けてこれだけ進歩してきたのであるから、何か自分の都合のいいときだけガットを利用する。そして、自分の都合が悪くなってくると何か背を向けるような態度をとることは、日本の国際的な名声あるいは国益上非常に私は有害であるというふうに感じております。  それで、その点からまず最初に、先般の残存十二品目のうちの十品目について、ガットのパネルが昨年の十月末だったと思いますけれども、クロの裁定を内示してきました。それから、結局二月の理事会で十品目について一括受け入れを表明したわけですけれども、その受け入れに際して、政府はでん粉、乳製品については異議申し立てをしつつこれを受け入れたわけですね。そういう異議申し立てをすることは、法的にどのような効果があるのか。これは外務省ですか農水省ですか、法的にどういう効果があるのか、そのことをまずお尋ねしたいと思います。
  355. 内田勝久

    政府委員(内田勝久君) お答え申し上げます。  我が国は二月の理事会で、先生御指摘のパネルの報告採択に応ずるに当たりまして、乳製品とでん粉について、ガット十一条の解釈の一部と国家貿易に関するガットの関連条文の解釈に同意するものでないという立場から、我が方の立場を留保した次第でございますが、この留保したという我が方の意図につきましては、そのパネル報告が採択されたことをもって、この報告中のガットの十一条及び国家貿易に関する条文の解釈がガットの一般的な解釈として確立されたものとみなすべきでないという考え方を表明したものでございまして、将来他の案件においてこのような解釈が使用されることに対して我が方の立場を留保するということでございます。  したがいまして、この留保をしたわけでございますが、この留保自体は、先生御指摘のこれが法的にどういう効果を持っているかということになりますと、ガットの勧告の効果自体に何ら影響を及ぼすものではないというように考えている次第でございます。法的には、したがいましてガット上の違法性がそのまま残っているということでございます。
  356. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 そうすると、でん粉あるいは乳製品なんかについてもし数量制限を続ければ、当然にほかの関係各国から対抗措置をとられても仕方がない、そういうことですね。
  357. 内田勝久

    政府委員(内田勝久君) ガットパネルの勧告につきましては、妥当な期間の範囲内でそれを実施することが求められているわけでございますので、それが実施されないことになった場合におきましては、これは二国間での話し合いの問題に基本的になるわけでございますけれども、ガット上は対抗措置が認められることがあるということでございまして、また、そういう相手国側からの対抗措置というものを回避する一つの手段といたしましては、我が国の方からある種の代償を必要とする、そういう事態が発生するということも考えられると思います。
  358. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 それでは農水大臣にお伺いいたしますけれども、十二月の総会のときには日本は受諾の延期を表明したわけですね。それで結局、二月の理事会でそういう異議は申し立てつつそれを受け入れることを表明したわけですけれども、なぜ十二月の段階で受諾することをせずに延期されたのか、延期することによってどれだけのプラスがあったのか。どういうふうに考えておられますか。
  359. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 我が国は、昨年十二月のガット総会においてパネル報告のうち、乳製品及びでん粉にかかわる部分並びに国家貿易に関する解釈にかかわる部分は法理的に受け入れることができないが、その他の部分は採択に応じ得るとして部分採択を主張いたしました。しかしながら、部分採択を支持する国はなかったために、我が国は、パネル報告の採択問題の検討になお時間を要するということで、本件を二月のガット理事会まで延期をしていただいた経緯がございます。  なお、二月のガット理事会において我が国は、ガット加盟国の一員としてその紛争処理手続を尊重する観点から、パネル報告書の一括採択に応じたことは御承知のとおりでございます。
  360. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私は、昨年の十二月の総会あるいはその前の既に内示があった段階において、やはりこの裁定は通る、そういう見通しをつけて、その段階で処置しておれば、何か日本に対して非常な不評判のようなことを招くことはなかったんじゃないかと思うんですけれども、なぜ少なくとも十二月の段階で採択ができなかったのか。どういう事情があったんですか。
  361. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 今一連の理由を申し上げたわけでございますけれども、重ねての御質問でございます。  十二月の総会において八品目は数量制限の撤廃をするという意思表示をいたしました。そして、二品目は今申し上げたとおりのことでございます。我が国の内政と直接絡んでおる問題でもございますので、円満に外交、内政ともども関係者に理解を仰ぐための時間は必要である、こういうことで時間をとらせていただきました。ただ延ばせばいいということで延ばしたのかということをほかの方から言われたこともございます。ございますが、そういうことではない。円満に処理をするために時間をおかしいただいたと。結果は、時間をかりてよかったなと思っております。
  362. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 国内的には時間をかりてよかったかもしれませんけれども、国際的には私は日本の評判を落としたのじゃないかと思うんです。プラスとマイナス双方の点があったと思いますけれども、先ほど来申しましたように、農水大臣の立場というのは非常に苦しいだろうと思います。しかし、国内措置は国内措置としてそういう被害を受ける農民の方々に対して十分手厚い手当てはすべきだと思いますけれども、やはりこういう問題につきましては、あくまでガットの精神に従って解決をする。したがって、もしガットのパネルの裁定でクロになることがはっきりわかっているような問題については、提訴されるまでもなく、国内的にはいろんな摩擦があるかもしれませんけれども、やはり政府の責任において反対を抑えて決断してやっていく、そういう姿勢が私は今後の牛肉とかかんきつ類の問題についても必要じゃないか。  この問題は今係争中の問題ですから詳しくは申しませんけれども、どのような問題につきましても、やはりあくまでガットの精神を尊重して、そしてもう結果がわかっているような問題については早く譲歩する。そうしないと、何か一歩一歩譲歩していってそれで結局ガットの裁定を受け入れる、あるいは外国の圧力に屈するということは、これは国民のために非常によくない。あるいは外国人に対しても、日本というのは圧力を加えてバッシングすれば屈服する国だ、何かそういう印象を与えることは一番よくないことだと思いますので、その原則を農水大臣に今後守っていただくように希望しておきます。  個々の問題についてはお答えにくいでしょうからいいですけれども、その原則だけは、そのことをお願いしたいと思いますけれども、よろしゅうございますか。
  363. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 委員おっしゃいますように、ガットの精神は尊重しなければならぬと思っております。加えて、大分年月も経ておるこのときに当たりまして、ニューラウンド、ここでも新たな観点から議論をしようということで、その議論は既に始まっております。そして、これから先、約二年半で一つの結論が出ればという大方の国々の理解のもとに話し合いが進められておるところであるということもつけ加えておきたいと思います。
  364. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 通産大臣、お忙しいところ時間を割いて来ていただきましたので、通産大臣にお伺いいたしたいと思います。  今までほかの大臣に対して私が訴えてきたことは、日本はやはりガットの原則に従って、つまり貿易に関する一般的な国際的なルールというのは今のところガット以外にないわけですから、ガットのルールに従って問題を解決していただきたい。むしろガットにいろんな不備な点なんかもありますから、それを整備して強化していく、その方針で国際摩擦を解決していただきたいということをほかの大臣にも言ってきたところです。  通産大臣に対して質問したいと思っていますのは、日米半導体協定に関しまして、ECがガットに提訴して、そのパネルの裁定が最近関係国に内示されてきたはずであります。その内容はまだ内示の段階ですから発表できないかと思うんですけれども、新聞なんかに報ぜられているところによりますと、第三国市場でのダンピング防止のためのメーカーの輸出価格の届け出義務であるとか、あるいは通産省の需給見通しの作成は第十一条一項の輸出数量規制禁止に違反する、あるいは行政指導も十一条違反というふうな裁定であるというふうに報じておりますけれども、大体のアウトラインとしてはそれでよろしいでしょうか。
  365. 田村元

    国務大臣(田村元君) 日本とEC間の半導体問題につきまして、ガットのパネルから報告案について確かにこのほど内示がございました。現在その内容を詳細に分析いたしております。どういうふうに対応すべきか、対応策も検討しておるところでございます。この報告書案の内容につきましては、最終的に多分五月四日、ガット理事会において審議されるものでございますので、ガットの慣行というのがございまして、それまで公式の表に出しちゃいかぬということでございます。現段階でコメントができないことは大変申しわけございませんけれども、この点はガットの慣行で各国が守っておることでございますので御理解をいただきたいと思います。  ただ、言えますことは、ガットで決められたというか、ガットの精神というものはやはり守らなきゃならぬと思いますし、それから、今度のウルグアイ・ラウンドの中間レビューが十二月ごろにございます。そこでどういうふうに内容が充実していきますか、そこいらについても十分の対応をしていきたいというふうに考えております。
  366. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私が言ったことが本当であるかうそであるかということはなかなか言いにくいだろうと思いますけれども、大体、私の得ている情報によりますと、それほど大きく外れていないように思います。そうした場合に当然日米半導体の改定をやらなくちゃいけないだろうと思うんです。改定交渉をアメリカと始めなくちゃならないだろうと思う。それでその場合、つまり第三国市場のダンピングなんかの問題、その場合にやはり留意すべきことは、いかにアメリカの要求であってもガットの精神に従って改定していく、その方針を堅持していただきたいということと、さらに昨年アメリカは、外国製品の日本市場参入割合が彼らの要求を満たしてない、そういう理由で制裁措置、一〇〇%の関税をパソコンであるとか電動工具なんかにかけて、事実上の輸入禁止ですね。この問題は決算委員会でも田村大臣に対して質問したことなんですけれども、こういった制裁措置そのものは私はやはりガット違反ではないか。もともとがガットに違反しているところの協定に違反しているからといって制裁措置をやるということは、その制裁措置そのものがガットの違反ではないか、そういうふうに考えるんですけれどもアメリカの方でそれを改める意思がない場合にはこちらからガットに提訴したらどうかと思うんですけれども大臣、いかがでしょうか。
  367. 田村元

    国務大臣(田村元君) 日米半導体協定につきましては、日本政府は誠実にこれを履行しておるのであります。米国の対日制裁措置は何ら理由のない措置でございます。アメリカの対日制裁措置は明らかにガット違反であります。ガットの一条、最恵国待遇違反、二条の関税の一方的引き上げ、明らかな違反でありまして、我が国アメリカに対してできるだけ早期は撤回すべく、ガットを含めあらゆる場を通じて対処していく所存でございます。今度パネル報告等も踏まえていろいろと検討しなきゃならぬと思います。
  368. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 時間がなくなりましたので最後の問題、国際的な人権の問題についてお伺いいたします。  日本の広い意味の安全保障のためには、やはり国際的な世論から孤立しないということが必要であろうと思うんですけれども、下手をすると日本が孤立化を招きかねない問題の一つが南ア政府の、南アフリカ共和国のアパルトヘイト政策への対応の問題であろうと思います。確かに南ア共和国は、日本にとってのレアメタルなんかの重要な供給源でもありますし、単なる理想論のみでいかないということは私も承知しているつもりですけれども、円ベースでは確かに下がったにしても、やはりドルベースでふえているというふうなことは、これは国際的な逆風を受ける一つの原因になるのではないかと思います。それで、政府の方でも経団連なんかの経済団体は対して貿易の自粛を求められたそうですけれども、どの程度の貿易の減少を求められたのか。それから、自粛を求めてもその効果がない場合、どういう対策をとられるつもりか、そのことをちょっとお伺いしたいと思います。
  369. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) この問題は非常に国際的な関心事でございまして、先ほど申し上げましたように、やはり日本が黒字国であればあるほど、この問題に関しまして、火事場泥棒的なことまで日本はやるのかいと、こういうような国際的な非難があることも事実でございます。このことは大変我が国の名誉に関する問題でございます。したがいまして、外務省といたしましては、経団連並びにその後に同友会、この幹部の方々に集まっていただきまして率直にお訴え申し上げました。そして、自粛を要請いたした次第でございます。  ただ、今先生も御指摘のとおりに、レアメタル等々我が国にとりましても必要欠くべからざる商品があるいは中にはあるかもしれませんし、また経済制裁と一口に言ってみましても、これは現在行っておりません。経済制裁をしてもし南アのどこかの企業がつぶれるとかあるいは雇用がそれだけ失われるということになれば、被害者である黒人にその累が及ぶわけであるというので、非常に慎重を期さなければならない問題でありますが、昨年、たとえ極端な円高ドル安の結果とは申せ、第一位になったということが問題でございますから、ひとつ八七年対比八八年というものが昨年どおりであっては困りますし、それよりも低くなるということを私たちはお願いします。しかし、第一次的にはやはりこれは商品の問題であります。したがいまして、十二分に通産省とも連絡をとりまして、もちはもち屋だから、通産省でひとついろいろと業界の指導にも当たってもらったらいかがであろうか、私たちはかように判断して、今日両省の緊密な連絡をとっておるという段階であります。
  370. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 時間がございませんのでもうこれ以上は申しませんけれども、政府の責任において例えば二割なら二割下げろ、そういうふうなことを言わないと、単に財界に適当に自粛してくれでは向こうの方が困ってしまうんじゃないか。やはりそういう点においても私は政府のリーダーシップが今一番大事な点じゃないか。防衛の問題もそうですけれども、そのことを希望いたしまして、私の質問を終わります。
  371. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で関嘉彦君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  372. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、安恒良一君の質疑を行います。安恒良一君。
  373. 安恒良一

    ○安恒良一君 まず私は通産大臣にお伺いしたいんですが、政府は石炭の液化に非常な補助金を出されていますが、具体的にそれらの事業とその成果についてお聞かせください。
  374. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 石炭液化につきましては、我が国では基本的にはいわゆるサンシャイン計画によって対応いたしておりますけれども、そのほかに、既に終了いたしておりますがSRCIIプロジェクト、それからEDSプロジェクトというようなものがあったわけでございます。  現在進行中のサンシャイン計画の方でございますけれども昭和五十年度以来、歴青炭の液化技術につきまして国立の研究所あるいは新エネルギー総合開発機構等におきまして小型のプラントの研究を進めてまいりましたけれども昭和五十八年度にその成果を総合いたしまして、技術的にも経済的にも世界のトップレベルと目される液化方式、一般にNEDOLプロセスと呼んでおりますけれども、それのパイロット研究に取り組んでいるところでございます。  また、これと並行いたしまして、昭和五十五年度以来、オーストラリアのビクトリア州の褐炭の高度利用という観点から、日豪間の国際協力という位置づけを与えまして、褐炭の液化技術の開発にも取り組んでいるところでございます。五十トン・パー・デーのプラントでございますけれども、六十一年末にこのパイロットプラントの建設が終わりまして、現在いろんなパターンでの運転研究に取り組んでいるところでございます。ことしに入りまして、こはく色の油が初めて出てきたというような状況になっているわけでございます。  なおSRCIIにつきましては、米国及び西独との国際協力プロジェクトということでスタートいたしたわけでございますけれども昭和五十六年度に実証プラントの設計の取りまとめを終わったというところで終了をいたしております。これらの成果は、ただいま申し上げましたサンシャインプロジェクトに活用されているわけでございます。  それからEDSにつきましては、日本の民間企業が昭和五十三年度からメジャーでございますエクソンのプロジェクトに参加をしたわけでございますけれども、六十年にパイロットプラントベースの研究が終わっております。これは状況が整えば実証プラントへ移行することが可能であるというような状況になっていると承知をいたしております。
  375. 安恒良一

    ○安恒良一君 大臣、ちょっと少し詳しく聞きたいんです。何かえらい成果があったように言われていますから。  日本アメリカ、西独によるSRCプロジェクトは一九八一年に私は失敗をしていると思いますが、その理由は何でしょうか。
  376. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) SRCIIプロジェクトでございますけれども、先ほどちょっと御説明申し上げましたが、石炭処理量六千トン・パー・デーのいわゆる実証プラントベースの開発を目的としたものでございまして、国際研究協力というような位置づけを与えられまして、昭和五十五年七月から日本も正式に参加をいたしたわけでございます。日本アメリカ、西ドイツ三国の共同事業という性格を持っていたわけでございます。体制が整って設計等が進んでいたわけでございますけれども昭和五十六年の六月になりまして、米国サイドから、政権の交代というような状況もございましたが、コスト増加が大幅であるというような理由からこのプロジェクトを打ち切ろうというような提案がございまして、西ドイツもこれに同調をいたしましたものですから、日本としてはいろいろと説得をいたしましたけれども、先ほど申し上げましたように、最終的にはこのプロジェクトをその年の八月に終了させるということに合意したわけでございます。  ただ、それまでの間に設計等の段階で得られました研究成果は我が国にも供与されているわけでございまして、先ほど申し上げましたように、これらの成果はサンシャインプロジェクトの推進の過程でそれなりに吸収をし、活用をされているというぐあいに考えているわけでございます。
  377. 安恒良一

    ○安恒良一君 もう少し正直に答えてもらわぬと、後でだんだん行き詰まっちゃうからね。  米国のEDSプロジェクトが一九八五年に終了して、その後継続されていません。十分な成果が出て、世界のエネルギー事情に問題が生ずればいつでも実用化される状態にありますか。また、継続されなかった理由は何ですか。
  378. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) EDSプロジェクトの方は昭和五十一年に米国エネルギー省あるいはエクソン系企業等によって開始されたものでございまして、日本からは、石油企業等が合同で設立をいたしました日本石炭液化技術開発株式会社が五十三年からこのプロジェクトに参加をいたしたわけでございます。このプロジェクトは二百五十トン・パー・デー、先ほど申し上げましたSRCIIは実証プラントでございましたけれども、これはパイロットプラントの段階のものでございまして、必要な技術開発を六十年に終了いたしているわけでございます。これにつきましては、それぞれの参加企業が諸データの蓄積を行ったわけでございまして、状況が整えば実証プラントへ移行することは可能だという段階にあると承知をいたしております。  ただ、先生御承知のように、その後石油の価格が大きく下落をするというような局面がございまして、昨年来また少しずつ持ち直しつつあるわけでございますけれども、現在の石油価格というものに照らしますと、これを実証プラント、さらには実用プラントへ直ちに移行するという状況にはございませんので、いわばデータの蓄積を終えたところで状況を見ているということでございます。
  379. 安恒良一

    ○安恒良一君 それじゃ、具体的に聞きましょう。  政府は一体これまで石炭の液化事業にどれだけの経費をつぎ込んだか、年度別総合計の推移を示してください。そして、その中で今日十分採算がとれ、液化に成功した事業は何でしょうか、失敗した事業は何でしょうか。
  380. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 特別会計それから一般会計を合計いたした数字を申し上げます。なお、予算支出が始まったのは五十四年度でございます。六十一年度までは決算ベースの数字が出ておりますのでこれを使いまして、六十二年度、六十三年度は予算ベースの数字ということで御理解いただければと思います。  トータルにつきまして年度別に申し上げますと、五十四年度十五億円、五十五年度約六十四億円、五十六年度七十三億円、五十七年度二百二十七億円、五十八年度百七十九億円、五十九年度百九十四億円、六十年度百九十三億円、六十一年度百七十八億円、六十二年度百四十五億円、六十三年度百二億円でございまして、合計をいたしまして約千三百七十一億円でございます。このうち、SRCIIの分担金が六十七億円、それからEDSの補助金が約二十一億円でございます。現在進行中のサンシャイン計画分が合計をいたしまして千二百八十三億円でございます。  それぞれ成功、不成功をどういうぐあいに評価するかということでございますが、基本的には先ほど申し上げましたように、五十四年度ごろ、いわば第一次石油ショックの後、第二次石油ショックになろうかというような時期にスタートしたわけでございますけれども、石油価格が大きく当時とは状況が変わっておりますので、実用プラントという域に達しているものはないわけでございます。  それから、SRCIIにつきましては先ほど申し上げましたように実証プラントベースが目指されたわけでございますけれども、それ以外のプロジェクト・EDSあるいはサンシャインの二つのプロジェクトはいずれもパイロットプラントベースのものでございます。それぞれデータを蓄積いたしまして、次の段階は実証プラントに移り、さらに実用プラントへ移っていくというものでございまして、この辺は今後の石油価格の動向いかんによろうかと考えておりますけれども、一九九〇年代唯は次第に石油の需給が逼迫いたしまして、OPECの市場支配力が再び高まってくる、石油の価格も上がってくるということが見込まれているわけでございますので、二十一世紀での実用化というような観点から考えられるべきものではないかと思っております。  現在動いておりますパイロットプラントといたしましては、先ほど申し上げましたオーストラリア・ビクトリア州の褐炭液化プラントがあるわけでございますけれども、幸いにいたしましてプラントの建設が終了いたしまして、さまざまなパターンでの運転試験が行われるようになりまして、最近は、先ほどちょっと申し上げましたが、こはく色の油がプラントから出てくるというような状況になっているわけでございます。
  381. 安恒良一

    ○安恒良一君 それじゃ、液化油一バレルの価格を幾らぐらいに想定していますか。また、現在の原油価格との比較はどうですか。
  382. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 現在日本が取り組んでおりますサンシャインプロジェクトにおきましては、いろいろな前提があるわけでございますけれども、現在の為替レート百三十円パー・ドルというような状況を前提に置きまして試算をいたしてみますと、原油換算ベースで三十ドル・パー・バレルというあたりで石油との競争力を持ち得るのではないかというように見ているわけでございます。  今後の石油価格の見通しにつきましては、これはさまざまな見方もありまして不透明ですが、多くの機関としましては、二〇〇〇年前後に二十五ドルから三十五ドルぐらいの幅で見込んでいるというところが多いのではないかと思います。
  383. 安恒良一

    ○安恒良一君 現在幾らかと聞いているんだ、石油が。二〇〇〇年の話は聞いていない。
  384. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 現在日本へ入着をいたしております石油の価格は、CIFベースで十八ドル弱でございます。
  385. 安恒良一

    ○安恒良一君 大臣、お聞きのとおり石炭液化事業というのはこれまで巨額な資金をつぎ込んでいますね。かれこれ両方合わせますと三千億ぐらいの金をつぎ込んでいるんです。ところが、これといって成果を上げたのが一つもない。  そこで、六十三年度予算でいわゆるこの石炭液化技術開発補助金が大幅に縮小されていますが、その理由は何でしょうか。
  386. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) サンシャインプロジェクトのうち褐炭液化の方につきましては、大体予定どおりのスケジュールで進んでいるわけでございます。歴青炭液化につきましては、これまでパイロットプラントの設計を進めてきたわけでございますけれども、御高承のとおりの石油特会の資金繰りが大変苦しい状況になってまいりまして、あらゆるプロジェクトの見直しを行ったわけでございます。歴青炭液化につきまして開発スケジュールを三年程度後ろ倒しにする、それからパイロットプラントの規模を二百五十トン・パー・デーから百五十トン・パー・デーに縮小したという結果でございます。
  387. 安恒良一

    ○安恒良一君 新聞報道によりますと、石炭液化の新規開発を凍結したという報道がされていますが、それが事実でありますと、凍結の理由は何か。率直に言って、資金を投入した割に効率が悪いからではないでしょうか。
  388. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 先ほど申し上げました歴青炭液化プロジェクトの今後の取り扱いにつきましていろいろな議論をいたしましたときに、あるいは中止論というような報道もあったわけでございますけれども、結論から申し上げますと、さっき申し上げましたように、二十一世紀へ向けてのプロジェクトでございますので、やはり根を絶やすことは避けたいというような考え方で、今申し上げたスケジュールの後ろ倒し、規模の縮小というようなことで対応したわけでございまして、放てきという事実はございません。
  389. 安恒良一

    ○安恒良一君 日本で今産出されている石炭を全部かき集めまして液化した場合に、それはどのくらいの量になって、日本の石油量の何%を賄うことになるでしょうか。
  390. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) ちょっと突然の御質問でございますので正確な数字がございませんけれども、御承知のとおり約一千万トンの生産が行われているわけでございまして、日本全体のエネルギー供給の約二%弱を賄っているということでございます。液化いたしますと、もちろん得率等が絡んでまいりますので一%強というような感じになるかどうかだと思います。
  391. 安恒良一

    ○安恒良一君 突然の質問なんて失礼だから取り消してください、ちゃんと通告してありますから。 以上のような状況ですね、大臣。でも、性懲りもなく今後どうも続けたいというふうに言われています。  そこで、今盛んにオーストラリアでやられていることの試験プラントを言われていますから、これは試験プラントは試験運転だけで完了なのか、それとも事業ベースに乗せる予定か。また、その際、オーストラリアのビクトリア州でやられているような経費がどのくらいかかると思いますか。
  392. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 現在はパイロットプラントという段階でございまして、プラントができ上がりました後、これから約三年度間かかりますけれども、さまざまの形で圧力でございますとか、あるいは温度とか触媒とか、こういうものをいろいろなバリエーションのもとで動かしましてデータを蓄積する予定でございます。そこから後は、次には通常一日当たり数千トンベースの実証プラントというような段階考えられるわけでございますけれども、この段階をどう扱うかということにつきましては、オーストラリア側の意見もございますし、今後協議を重ね、また検討を続けていくということになろうかと考えております。
  393. 安恒良一

    ○安恒良一君 経費が幾らかかるかと聞いている。
  394. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 今褐炭につきましてちょっと数字を整理しておりますので、後ほどお答えさしていただきたいと思います。——先ほど申し上げました数字のベースで申し上げますと、六十三年度予算案まで合計をいたしまして八百九十二億円かと存じます。
  395. 安恒良一

    ○安恒良一君 いや、今後の事業日程を聞いたでしょう。
  396. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) これも今ちょっと整理さしていただきます。——今後三年度間で百五十億円程度かと存じます。
  397. 安恒良一

    ○安恒良一君 そこで、これは長官じゃなくて大臣にお聞きしたいんです。それから大蔵大臣にもお聞きしたいんですが、私はやはり、今の私との一問一答をお聞きくださるとわかるように、石炭の液化の資金投入はもうやめるべきじゃないか、国費のむだ遣いだと思う。既に五十七年度の予算審議の際は、当時我が党の山田委員が液化の見通しの困難性を指摘して、巨額の金を投じる必要はないじゃないかということを指摘したんです。そして、凍結をしたらどうかということも指摘したんですが、なぜか政府の皆さんは我々野党の警告には耳を傾けません。私はやはりもっと早く石炭液化のプロジェクトをやめておれば今日までの約三千億という金が——しかも今後の見通しも今聞いたとおり全くない、石油との採算性も合わない、こういうことについて政府も野党がせっかく提言をしたときに耳を傾けないとこういう国費のむだ遣いになりますが、この点について両大臣の御意見をお聞かせください。
  398. 田村元

    国務大臣(田村元君) 私はこの問題で実はいろいろと考えてみたんです、やはりやらなきゃしようがないだろう、続けなきゃなるまいと。それは、エネルギー問題というのは中長期的に考えなきゃならぬもの、特に長期的観点から見なきゃならぬものだと思います。石油の寿命というのは三十年とも言われ、四十年とも言われております。化石燃料として賦存量が多くて可採年数が石油に比べて百四十年程度も長いと言われておる石炭は、やはり重要なエネルギー資源であろうと思います。  我々は石油が無限にあれば別にどうということはないと思うんです。おっしゃるとおりだと思います。けれども、今からもう目の前、三十年、四十年といえば目の前であります、もう終戦以来四十年以上たちました。そうでございますから、石油がなくなった場合のときどうするか。それは今からいろんな点で検討しなきゃならぬと思うんです。例えば内燃機関は液化が必要でございます。我が国自身のエネルギー安定供給ということもあります。それから、世界のエネルギー問題の解決にも貢献しなきゃなりません。それは、日本は資源はありませんけれども技術は持っております。でございますから、この技術をもっともっと高めていかなければならないと思います。  それから、OPECの石油価格戦略を牽制する意味もございます。でございますから、例えば一番OPECからたくさん油を買っておる日本が、もう油以外は手を出さないよ、石炭の液化もやめた、あるいはもう反対も多いから原子力発電もやめたと、もう石油だけにするよと言ったときにどうなるでありましょうか。そういう戦略も私はやっぱり要ると思うんです。  でございますから、これは長い目で見て、それはいろいろとあるでしょう、私は専門家じゃありませんからわかりません。エネ庁長官はいろいろと答えておりましたが、あえて一歩譲って私が安恒さんと同じ考えの立場に立った場合でも、こういう将来を考えるとき、しかも日本は資源が何にもないんですから、やはり試行錯誤を重ねても私はこの技術開発はしなきゃならぬ。後世の我々の子供や孫のためにしてやっていかなきゃならぬ、私はそう思うんです。  私は同じ質問をエネ庁長官にいたしました。石油だけに頼ってあと三、四十年だが、石炭の液化以外に何があるかねと。そうしたら、なかなかやっぱりいろんなものを研究してみなきゃわからぬのですね。でございますから、そこいらのことももう安恒さん十分御承知のところでございましょうが、まあ私はあなたの博学は昔からよく存じ上げておるのであれだが、そういうことも考えていかなきゃならぬのじゃなかろうか。  大蔵省に対しては金がかかって申しわけありませんけれども、三十年、四十年たって、もうストーブのなにもなくなったよ、内燃機関のもなくなったよ、電気ももう燃す物がなくなったよとなったら大変なことになりますから、これはやっぱり今から技術の蓄積、進歩を図っていかなきゃならぬと私は思います。
  399. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 所管大臣の御判断を尊重いたしたいと思います。
  400. 安恒良一

    ○安恒良一君 大臣、そんな立派なことを言われるんなら非常に矛盾しているんですよね。ことし、今までの投入予算を、あなたのようなお考えなら、大幅に縮小するのは私は間違いだ。さらに継続してやりたいとおっしゃるならば、大臣、わかりますが、ことしから大幅に研究開発の経費を縮小されているわけでしょう。それから、エネルギーというのは石炭だけじゃなくて、なかなか石炭は難しいんで、そのほかにも私はソフトエネルギーということの開発研究を続けることについて何も否定はしていないんですが、一方においては本年度予算を大幅に縮小しておきながら、どうも続けたいと。そこがわからない。それも聞いたんですがね、どういうことですか、それは。
  401. 田村元

    国務大臣(田村元君) 三十年、四十年先に石油がなくなるといえば恐ろしいような話ですが、まだ三十年、四十年あるわけです。ですから、石油価格、原油価格が安くなって、そして石特会計なんかが欠乏してきたと。やっぱりそうなれば、しかも今原油は安いんですから、だから原油の安いときには少し手を緩め、そして今度はまたやるというふうにして、要するにこの研究開発の寿命を断ち切らないようにしていく、そこいらの伸縮の自在性はやりはりあっていいんじゃないでしょうか。
  402. 安恒良一

    ○安恒良一君 全くへ理屈ですね。研究というのは持続的にやらなきゃだめなんですよ、やっても難しいんですから。これより以上この問題について言ってもあれですから、私は警告しておきます。再び何年か後にまたこの警告を受けないようにひとつしていただきたい。  次に、首都機能分散がいろいろ言われていますが、私は首都機能分散よりも、一番重要なことは政府の権限の移譲が促進されない限り大都市集中構造は改まらないと思う。  そこで、国の許認可事務及び機関委任事務のあり方の見直し、これを自治体に移せという趣旨の指摘が臨調や行革や、その他いろいろで指摘をされていますが、この移行状況はどうなっているのか、一括して総務庁長官の方からお願いします。
  403. 高鳥修

    国務大臣(高鳥修君) ただいま委員指摘のように、臨調、旧行革審等におきましては、地域住民に直結する仕事については、その権限を含めてできるだけ地方自治団体に移譲すべきものであるという趣旨、特にまたそれは住民と直結している市町村を中心に移譲すべきであるというふうに臨調では指摘をされておるわけでありまして、そういう趣旨を踏まえて指摘事項が二百九十九、臨調並びに旧行革審を含めまして二百九十九事項であったというふうに記憶いたしておりますが、その大部分を実施いたしまして、現在八項目が未措置ということになっておるというふうに承知いたしております。
  404. 安恒良一

    ○安恒良一君 私が聞いたのは、臨調、行革だけじゃなく、その他いろんな政府関係委員会からも指摘をされている。  そこで、私から具体的に少しお聞きをしたいと思うんですが、厚生省、建設省、それから農水省、きのう私が、いわゆるまだ実行できてないやつ、具体的にどのくらいの数字があるかということの資料をお願いしましたから、それを説明してみてください。
  405. 黒木武弘

    政府委員(黒木武弘君) 厚生省関係でございますが、先生から御指摘を受けました資料に基づき整理してみました。  その結果でございますけれども、百十六項目あったわけでございますけれども、その中で臨調、行革審の答申に盛り込まれておりました事項が二十一項目ございます。これは全部処理済みでございます。残りの九七五項目でございますけれども、その中で十二項目につきましては措置をいたしております。したがいまして、百十六項目の中から二十一項目は臨調答申の関係で措置済み、それからあと十二項目は厚生省独自の判断で措置をしたということでございますから、残り八十三項目がいわば未措置になっておるわけでございます。この大半は、県の事務を市町村の事務への権限移譲、それが五十九含まれておりまして、あと二十四が国の事務を都道府県ないしは市町村へという形の事務でございます。
  406. 牧野徹

    政府委員(牧野徹君) 昨日先生から御指摘のありました資料につきましては、建設省関係では項目は全体で八十七項目ございます。そのうち臨調あるいは行革審で御指摘のありました件につきましては建設省はすべて実施をしておりますが、それ以外の部分で各界各層の御要求のうちまだやってないのは六十九件ございます。
  407. 越智伊平

    国務大臣(越智伊平君) お尋ねの事項につきましては、今官房長からお答えしたとおりであります。  資料要求で大変おくれまして、しかもその連絡が不十分であった、この点についておわびを申し上げ、今後こういうことのないように十分注意をしてまいりたいと思います。
  408. 浜口義曠

    政府委員(浜口義曠君) 臨調あるいは行革審等等はよりまして御指摘のあった項目は機関委任事務関係、農水省関係といたしまして二十一項目、それから許認可の関係十二項目ございまして、この項目等につきましては、項目の指摘に沿ってすべて措置をしております。  なお、先生お話しの、臨調の過程におきまして出された項目等触れられた項目につきまして、昨夜からけさまで照査したところによりますと、その部分、公表されている部分じゃございませんが、触れられた部分について、農水省関係はいわゆる未実施と言われる点については四十五項目でございます。
  409. 安恒良一

    ○安恒良一君 これは特別に厚生、建設、農水を調査したんじゃありません、全省にお願いしました。名誉のために言っておきますが、経済企画庁以下十省庁はすべてを実施しています。残りの、一番実施率の悪いところの大臣に聞いたわけです。  そこで、私は少し聞きたいんですが、どうも日本の官僚というのは、フランスの官僚と同じように非常に優秀でありますが、やはりパーキンソンの法則といいまして、権限の移譲をして部下が減ることには物すごい抵抗をするわけです。  まず厚生大臣にお聞きします。指摘の中の、民生委員の委嘱をどうしておやりにならないのですか。  建設大臣にお聞きします。地すべり防止区域の指定、ボタ山の崩れ防止区域の指定をどうして権限移譲されないのでしょう。  農水大臣にお聞きします。果樹農業振興特別措置法の第八条に基づく報告は、県と国でダブっている、一本化すべきだとありますが、私はこんなこと等はすべてやっていいことだと思いますが、その理由を説明してください。
  410. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 民生委員についてお答えいたします。  先生もよく御承知のように、民生委員はボランティア精神に基づきましていわば善意でいろいろな社会福祉関係の仕事をしていただいているわけでございます。その民生委員につきましていろいろ御意見も徴したわけでございますが、全員一致して、ぜひ厚生大臣の任命にしておいてほしいという意見でございました。先ほど申し上げましたように、まさに善意の活動でございますので、もしこれを変えますと、長年培ってきました自信と誇りと申しますか、が失われまして、活動の低下を来すんではないかという心配がございましたので、そこまでちょっと現段階では踏み切れなかったというのが実情でございます。
  411. 牧野徹

    政府委員(牧野徹君) ただいま御指摘の地すべり防止区域の指定あるいはボタ山の崩壊防止区域の指定でございますが、これは指定をいたしますと私権制限等強い行為規制もかかりますので、それにつきましては公益的な判断も必要ということと、この区域の中には一級河川にかかわるものもございますが、これにつきましてはやはり国土保全上特に重要だというふうなことで、私どもは移譲はなかなかできないというふうに考えておる次第でございます。
  412. 浜口義曠

    政府委員(浜口義曠君) 果振法八条の関係でございますが、これにつきましては、国の立場といたしまして果樹振興等の全国的な観点からデータをとって対応していきたいというふうに考えておるわけでございます。  なお、国と県との重複の部分については、その提出しました資料にも書かしていただきましたように、重複を避けるような形で調整をしていきたいというふうに考えます。
  413. 安恒良一

    ○安恒良一君 そこで、官房長官にお聞きしたいんですが、例えば今民生委員の委任なんかを、私は民生委員がどんな人であるかというのはやっぱり県や市町村長が一番よくわかると思うんですね、それを何で厚生大臣が任命しなきゃならぬか、今の理由ではわかりません。ですから、各省庁だけに任しておくとこういうことがいろいろ起こってきますから、私はこういう問題について、本当は総理がおいでになれば総理にお聞きしたいんですが、おいでになりませんので、いろいろの指摘事項についていま少し督促をしてやらしていただきたいと思いますし、厚生大臣、もう一遍はっきり言ってください。何で民生委員を、民生委員というのは知事や市長の方が、その地元の人ですからどういう人がふさわしいかよく知っているんですから、それを厚生大臣が全国一本でやらなきゃならぬという理由が私はわかりませんから、まず厚生大臣から答えてもらって、今後の促進について官房長官はどうお考えか、お聞かせください。
  414. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) なかなか難しい問題だと思います。  局長から御答弁申し上げましたように、民生委員の仕事の内容が社会奉仕、しかも手当が少ない中で極めて重要な仕事をしておる、そういう方々に対していわばおこたえをする形であるというふうに考えているわけでございまして、関係者の希望が非常に強いということを念頭に置きますと、今のままで推移するのがいいのではないかというふうに考えております。
  415. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 今安恒委員指摘の問題につきましては、各地方自治団体からの要望事項かと承っております。したがいまして、既に臨調その他で決定をいたしたことを現在は忠実にこれを実行しようということでございますので、そうした点についてまで今及んでおりませんが、いずれにいたしましても、いろいろ御要望がございました点につきましては、それぞれ関係省庁を通じまして勉強をさしていきたい、こう思っております。
  416. 安恒良一

    ○安恒良一君 かつての臨調は国の権限の地方移譲には極めて熱心で、昭和五十七年十月にこれに関する一つの冊子をまとめたと聞いておりますが、この冊子について提供してもらいたいんですが、どうですか。
  417. 佐々木晴夫

    政府委員佐々木晴夫君) 先生御承知のとおり、臨調は昭和五十八年の三月に存置期間の到来をもって解散いたしたものであります。その会議の運営につきまして、第一回の会議におきまして、何物にもとらわれず自由濶達な論議を行うために議事を公開しないことを決定いたしているわけであります。  御指摘資料は、臨調の許認可等の整理合理化を検討する第三部会におきまして、その部会の参与等が論議するためのあくまでも基礎資料として関係省庁の御協力を得て作成したものであって、その当時でも臨調の部内資料として公開されなかったものと承知をいたしております。このような資料の性格につきましては、臨調解散後臨調の資料等を引き継いだ総務庁におきましても、臨調当時の運営の考え方資料の取り扱いに即して措置することを基本とすべきである、このように考えております。  したがいまして、御指摘資料の提出につきましては、大変恐縮でありますけれども差し控えさせていただきたい、このように存じておるわけであります。
  418. 安恒良一

    ○安恒良一君 私は、その資料をここに持っているんですけれどもね。  そこで、官房長官に少しお聞きしたいんですが、公的な諮問機関はすべて公開をすべきだというのが私の立場です。やむを得ず非公開とする場合といえども、一定の期間を経たならばその議事録及び関係資料は公開するべきじゃないでしょうか。でないと、政府の関係諮問委員会でのメンバーが発言したり討論された資料が永遠にわからないということでは、私は民主的な国家としては困ると思いますが、官房長官どうですか。
  419. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 審議会の資料といたしましては、議事録や審議会付議資料等がいろいろございまして、これを公開するかどうかというのは、それぞれ審議会の設置目的、任務、性格等に照らして審議会自体において決定されるべきものであると考えております。  そこで、今御指摘の、非公開とされた資料も一定の期間後公開すべきという御意見でございますが、これは公開の原則、ディスクロージャーというのは、国民に開かれて公開していくことも一つ考え方かと存じますが、審議会は審議会なりにそれぞれいろいろございまして、その審議会がそれぞれに決定をして諸般の情勢を判断しながら公開すべきものは公開していくということになろうかと思いますので、一律にすべて一定の期間を経たらこれを公開するということはいささか困難かと存じます。
  420. 安恒良一

    ○安恒良一君 それじゃ官房長官に聞きますが、秘密文書の取り扱いについて事務次官会議で申し合わされたルールがあるそうですが、それの概略を説明してください。
  421. 佐々木晴夫

    政府委員佐々木晴夫君) 昭和四十年四月十五日に、事務次官等会議の申し合わせでもって、御指摘のとおり「秘密文書等の取扱いについて」というのが定められております。  その中身としましては、「秘密保全を要する文書」「は、必要最小限にとどめる」。  「秘密文書は、原則として次の種類に区分する」。これは、まず「極秘」でありますけれども、「秘密保全の必要が高く、その漏えいが国の安全、利益に損害を与えるおそれがあるもの。」。それから「秘」でありますけれども、「極秘につぐ程度の秘密であって、関係者以外には知らせてならないもの。」。  これにつきまして、この指定権者でありますけれども、「「極秘」の区分は、当該省庁の官房長局長又はこれらに準ずる者が「秘」の区分は、当該省庁の課長又はこれらに準ずる者がそれぞれ指定」をする。  それから、「秘密文書には秘密にしておく期間を明記し、その期間が経過したときは、秘密の取扱いは、解除されたものとする。」と。  その他、秘密文書の取り扱いにつきまして、ある程度各省の取り扱いの概要、こうしたものについて定めたものでございます。
  422. 安恒良一

    ○安恒良一君 「秘密文書には秘密にしておく期間を明記し、その期間が経過したときは、秘密の取扱いは、解除されたものとする。」という申し合わせもあったのじゃありませんか。
  423. 佐々木晴夫

    政府委員佐々木晴夫君) 今お答えの中にありましたけれども、そのような規定がございます。
  424. 安恒良一

    ○安恒良一君 そうしますと、お聞きしたいんですが、これは非常に臨調事務局の労作です。我々が進んでいるかどうかチェックするためには、これがぜひとも必要なんです。  そこで、この五十七年十月の文書はいつになったら解除——国家の極秘事項は解除にならぬことはわかりますが、これは極秘事項じゃありませんから、これはいつになったら解除されますか、この部外秘扱いを。
  425. 佐々木晴夫

    政府委員佐々木晴夫君) 先ほど申し上げましたように、臨調でもって内部資料としてつくられて、部内限りということでそれを前提として関係者からいろいろと御意見を聴取し、あるいは関係各省からこれについての見解を求めたわけであります。そこで、臨調の内部資料であるがゆえにそうした取り扱いは当分の間これを続けさせていただきたい、このように思っておるわけであります。  いつになればということでありますが、これは今後さらにその状況を見ながら検討すべきものである。実はただいま現に臨調の後で旧行革審があり、それから新行革審があり、そうしたような審議活動はなお続けておるということでありまして、この資料の公開につきましてはいろんな影響を考えなければいけませんけれども、いずれにしても現時点では私は望ましくないというふうに考えておるわけであります。
  426. 安恒良一

    ○安恒良一君 答弁になっていない。いつになったら解除するのかと聞いている。現時点のことは聞いていない。
  427. 佐々木晴夫

    政府委員佐々木晴夫君) 今申し上げましたように、現在新行革審が臨調の資料等を前提としてなお活動を続けておるということでございまして、新行革審の設置期間は法律によりましてなお二年有余を残しておるわけであります。少なくともその間はこれは適当ではない。その時点でもって改めて検討をさせていただきたい、このように思っております。
  428. 安恒良一

    ○安恒良一君 二年たったらそれは解除するということですか。
  429. 佐々木晴夫

    政府委員佐々木晴夫君) 今申し上げましたように、二年たちますとその時点で諸般の影響について検討させていただき、解除それから解除しない、そうしたものについて改めて検討をさせていただきたい、このように思います。
  430. 安恒良一

    ○安恒良一君 それじゃ納得できません。諸般の状況を検討して……。  というのは、これは非常な労作で、私たちはやはりこういうものは、どういうふうに実行できているか政治というものはチェックする必要があるんですよ。それを私が聞いたら、ほとんど臨調、行革が言ったことをやったと各省みんな答えている。ところが、今度は今になると、これは二年たった後もその時点でまた判断すると。そうすると、永久にそういうことになるじゃないですか。それじゃ国民はたまりません。政治、また私たちは、チェック機能を失うことになる。この点について、理事、扱ってください。
  431. 高鳥修

    国務大臣(高鳥修君) ただいま安恒委員指摘の文書につきまして、御質問があるということで私もいろいろ調べてみました。  それで、これは現在、臨調の当時事務局でありました行管からその文書につきましては総務庁が引き継ぎまして、大切に保管しているものであります。そもそも臨調の土光会長がその開会の最初に当たりまして、議事は自由濶達な意見をそれぞれ表明していただくために非公開としますということを宣明されました。そういう前提に立ちまして、なおかつまた各省庁に対してこの資料は、これは公開をしませんよ、部内限りでございますよということで意見を聴取したものをまとめたものでございまして、安恒委員よく御承知でありますが、これは臨調の指摘事項ではなくて、各省庁に対していろいろ地方自治団体等からの要望に対してどう考えるかということをまとめましたものでございますので、したがってそれは臨調の指摘事項ではございません。  しかしながら、今後行革を推進していく上においては大変重要な参考になる資料であるということは当然のことであります。それで、土光会長が公開しないと決めた上で、かつまた各省庁に公開しないことを前提として求めた意見でございますので、したがって今さら土光会長のところに私が公開をしてもいいですかと、こうお伺いに行くのも不見識な話でございまして、これは各省庁と御相談をしないと、私の方限りで公開できるという性格のものではまずはないだろうというふうに考えておることが一つございます。  ただし、これは秘密文書ではございませんので、したがって専門委員とか参与とかそういう方方にも渡っておる性格のものでありますから、何らかの方法でそういう資料を、今委員はお持ちであるというふうに言われたわけでありますが、そのお持ちの資料をもとにして御質問をされる分には、私の方で、これは職員が機密漏えいをしたからけしからぬなどといってその資料の出どころを追及する、そういう性格のものでもなかろうというふうに考えておるところでございます。
  432. 安恒良一

    ○安恒良一君 納得できません。というのは、これは各省庁じゃなくて、労働組合やいろんな団体のいろんな意見をこれは網羅されておつくりになって、大変な労作なんです。問題はこれがどう実行されていくかということを私たちは政治としてはチェックをしていかなきゃならぬわけですから、極秘文書の極秘でもありませんし議事録でもないんです。  ですから、そういうものを私はやはり公開していただく、しかも私はいつ公開するのかということを聞いているわけですから、理事、協議してください、この扱いを。このままじゃ困ります。こんなものは公開する必要がある。同じことを言ったってだめよ、それは。
  433. 佐々木晴夫

    政府委員佐々木晴夫君) 先ほども申し上げましたように、また長官からお話を申し上げましたように、現在新行革審でもってこういうものを基礎資料として、大変重要な資料でありますから、現に審議をいたしておる最中であります。したがって、現時点では私は適当でないと思いますが、二年後この行革審が終わります段階、その段階に向けて関係省庁、それから当時の、例えば第三部会と申し上げましたけれども、第三部会長等とこの資料の取り扱いにつきまして改めて協議をしてこの取り扱いを定めさせていただきたいと、このように思います。
  434. 安恒良一

    ○安恒良一君 答えになっていません。改めて協議するということ、だめ。
  435. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 速記をとめて。    〔午後五時三十五分速記中止〕    〔午後五時四十七分速記開始〕
  436. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 速記を始めて。
  437. 高鳥修

    国務大臣(高鳥修君) 重ねてお答え申し上げたいと存じます。  まず、当時の臨調、既に解散しておるわけでございまして、消滅しているところでございますが、幸い委員の方が御健在であられるので、したがって当時のいきさつ等について私も伺ってみたい気持ちがございます。なおかつ、また各省庁からそれぞれ公開しないということを前提にして聴取をしてまとめたものでございますので、私の方で当時のいきさつなどについて若干調べてみたいというふうに思いますので、二カ月程度の余裕を賜れば幸いであります。
  438. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  439. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 速記を始めて。
  440. 高鳥修

    国務大臣(高鳥修君) 大変恐縮でございます。重ねてお答え申し上げたいと存じます。  臨調の委員の皆様方の御了解が得られれば、二カ月程度の御猶予をいただきまして、御了解が得られればお出しいたします。
  441. 安恒良一

    ○安恒良一君 あのね、五十七年十月につくられた資料なんですよ。そしてこれは極秘とも何とも書いてない。部内資料なんです。ですから、私は二カ月ぐらいで努力してやっていただくことを強く要望しておきますが、今あなたは御了解が得られればとこう言われた。御了解を得て二カ月ぐらいで公開の努力をすると、こういうことですか。得てですか、得られればですか、それをはっきりしてください。それによって考えがあります。
  442. 高鳥修

    国務大臣(高鳥修君) 御了解を得るように努力をいたしたいと存じます。
  443. 安恒良一

    ○安恒良一君 ぜひ、大臣、ひとつお願いをしておきます。  次に、国立病院・療養所の問題を先に聞きたいと思います。  厚生大臣は、国立病院・療養所の統廃合を進められていますが、国立にふさわしい機能とか国立でやらなければできない仕事をやりたいと強調されております。  そこで私は聞きたいんですが、国立病院にふさわしいマンパワーの確保をどうするのか、高度専門的な医療に見合う医療従事者の質及び量は十分確保できる見通しをお持ちかどうか、聞かせてください。
  444. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 国立病院・療養所につきましては、今回の再編成計画によって今後の役割を果たすための機能強化を図りたいと考えているわけでございます。  委員指摘のように、相当大幅な医療スタッフの確保が必要であるわけでございます。今後とも引き続き所要の増員措置を行っていくように努力をいたしたいわけでございますが、一方では今度の計画におきまして経営移譲ということも考えておりまして、そういうことに伴って生ずる定員の余裕、あるいは統合ということによるスタッフの集約化などによりまして、医療スタッフの強化を図ってまいりたいと思っております。
  445. 安恒良一

    ○安恒良一君 抽象的ではわかりませんから、私に出していただいた資料で、厚生省が行っているところの百床当たりの従業員総数、医者、看護婦、それを各機関別にちょっと報告してください、開設者別にね。
  446. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 国立病院の百床当たりの医師及び看護婦の数でございますが、厚生省におきましては、医師が六・九、それから看護婦と准看護婦を足したもので三十二・〇。それ以外のところでございますが、文部省の大学等でございますが、これは医師が四十八・一、それから看護婦と准看護婦については四十六・五。それから労働福祉事業団、医師が十・九、看護婦が四十六・七等でございます。
  447. 安恒良一

    ○安恒良一君 もう少し、出した資料を正確に言ってください。あなたの都合のいいところだけ読んではだめだよ。
  448. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) それ以外の国立の機関でございますが、旧国鉄関係でございますが、医師が……
  449. 安恒良一

    ○安恒良一君 開設者別と言ったでしょう。百床当たりの従業員数、開設者別を言ってください。
  450. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 国立以外でございますね。医師につきましては、これは医師だけでありますが、都道府県が十四・〇、市町村が十一・五、日赤が十二・九、済生会が十一・八、厚生連が九・七、国保連が十五・五、社会保険関係団体病院でございますが、これが十四・九、公益法人が十一・八、医療法人が十一・一、学校法人が三十・〇、会社が十四・三、個人が十二・五、この中にはそれぞれ非常勤が含まれております。  それから看護婦でございますが、この中には助産婦、それから看護婦及び看護士、唯看護士あるいは准看護婦も含めた数字で申し上げますが、厚生省は三十二・九、その他の国の機関が四十七・三、それから都道府県が五十三・一、市町村が四十五・七、日赤が四十八・〇、済生会が四十五・八、厚生連が四十二・二、国保連が三十八・五、社会保険関連団体が四十六・四、それから公益法人が三十八・二、医療法人が二十九・一、学校法人が四十七・八、会社等が四十九・三、個人が二十七・四。  以上でございます。
  451. 安恒良一

    ○安恒良一君 厚生大臣、圧倒的に少ないですね。それじゃ今度は、一人夜勤の割合について資料を要求しておきましたから、一人夜勤の割合について説明してください。
  452. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 国以外のものにつきまして全体を見る数字ということで、これは日本看護協会が調べた数字で、五十八年の資料でございますが、一人夜勤は、国、これは厚生省でございますが、九・二%、それから文部省が三・〇%、その他が八・六%、それから都道府県はゼロでございます。市町村は三・二%、日赤がゼロ、厚生連等が六・〇、厚生団等が一・六、その他が五・九という数字になっております。
  453. 安恒良一

    ○安恒良一君 平均夜勤回数。
  454. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 平均夜勤回数につきましては、国は、厚生省でございますが九・六、それから文部省が十・〇、その他の国が九・〇、都道府県、政令市が八・五、市町村が八・八、日赤が九・七、厚生連等が九・二、厚生団等が九・五、その他が九・二という数字になっています。
  455. 安恒良一

    ○安恒良一君 一人夜勤の率は一番これは厚生省が高いんですね。そこで、この資料は非常に古いんですが、最近の資料はないんですか。五十八年の資料じゃちょっと論争しにくいんですが。
  456. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 先ほど答弁の中で触れましたが、五十八年十月の日本看護協会がお調べになった数字を御提出さしていただいたわけでございまして、看護協会は四年に一回この調査をやっておるということでございまして、直近の調査は六十二年で、現在集計中でございます。  それから、百床当たりの人員をはじきました調査は、毎年十月に実施しております病院報告は基づいて作成するものでございますけれども、六十二年十月、昨年の十月に実施した調査を現在集計中でございまして、今年の末ごろ公表できるという予定でございます。
  457. 安恒良一

    ○安恒良一君 なぜ厚生省みずから夜勤状態をやらないんですか、調査。
  458. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 一部の医療機関でなかなか正確な情報を出してくれないということもかつてあったようでございますが、お尋ねのような趣旨で私どもも夜勤の状態をできるだけ把握すべきだと考えておりますので、公的病院を中心に何らかの形で調査をしてみたいと思いますが、一方、現在、先ほど申し上げました調査の中で看護体制については医療施設調査でとるということもやっておりますので、そういうものもよく見まして、お尋ねの方向で努力をしてみたいと考えます。
  459. 安恒良一

    ○安恒良一君 厚生大臣にお聞きしますが、一人夜勤をなくすという指導を厚生省がやるわけですからね、それが調査を全然していない。そして、今のお尋ねの方向でやりたいというのじゃ困ります。厚生大臣、どうしますか、この調査。
  460. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 夜勤体制、夜勤回数について、先ほど申し上げましたように、現在は看護協会のデータを使わしていただいているわけでございますが、国でも何らかの形で把握できるような工夫をしてみたいと考えます。
  461. 安恒良一

    ○安恒良一君 把握の工夫じゃなくて、調査自体をやるんですかやらぬのですかと聞いているんだよ。何回も同じことを言わせなさんな。
  462. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) やる方向で検討いたしたいと思います。
  463. 安恒良一

    ○安恒良一君 大臣答弁してください。あんなことじゃ時間がもったいない、時間が。
  464. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 国立病院・療養所の医療スタッフ、また今御指摘の看護婦の方々、極めて実情は惨たんたる状況でございます。これは総定員法という国家公務員の枠内の問題でありまして、厳しい事情はよくわかるわけでございますが、よくこれだけのスタッフで今まで苦労してやってきてくださっているという気持ちも非常に強いわけでございます。こういう問題は、私といたしましてはいつまでも放置できないわけでございまして、国立病院・療養所の統合の問題も絡めてぜひ解決したいと思いますし、御指摘の調査につきましてはやります。
  465. 安恒良一

    ○安恒良一君 厚生省は七十床以上の病床を持つ大型看護単位がかなり多くあると思いますが、それは間違いありませんか、厚生省立。
  466. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 委員御存じのように、国立病院・療養所はかつて主として結核を扱っておった、結核の患者を収容しておったという歴史的な経緯から、今日なお大型看護単位を相当数抱えておるところでございます。
  467. 安恒良一

    ○安恒良一君 そこで大臣、ちょっと重ねてお聞きしたいのが、百床当たりの従業員数を厚生省がやっているところとその他国立で見ると、余りにも格差があるんですよ。そうすると、国家定員法というのは両方ともこれはひっかかっているわけです。例えば、私が言いますと、従業員数についてはこれを全部比較したら倍以上違う。医師数にほぼ五倍の開きがありますね。看護婦や准看護婦は約四割強の開きが同じ国立であるんですよ。その理由は何でしょうか、国家定員法というのはどっちにもかかっているわけですから。
  468. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) いろんな理由があるわけでございますが、厚生省の所管する国立病院及び療養所については、先ほど申し上げましたように、結核を担当しておったと、こういうことからそもそものスタートが非常にベースが低かった。それから、他の国立の中で非常に大きいのは大学でございまして、特に医師数につきましては、委員御存じのように、大学は医師の養成機関であるというようなことから、非常に多い配置をされておるというふうに私ども考えておるわけです。それ以外の国の医療機関についてはまた別の経緯があろうかというふうに思います。
  469. 安恒良一

    ○安恒良一君 答えになっていません。文部省、大学は六十七、そのほかたくさん国立がある。私はこの数を調べてきているんです。その他の理由があろう、それだけで何の答えですか。その他の理由があろうとは何だ。
  470. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 他の国立の医療機関は本来病院として発達をしてきておる。厚生省の国立病院、特に療養所でございますが、先ほど来申し上げたような点で職員の配置が非常に薄かった、そういう歴史的な経過の積み上げが一番大きな理由であったというふうに思っております。
  471. 安恒良一

    ○安恒良一君 じゃ、厚生省立の百とその他を比べてみてください。療養所とリハビリセンターはのけましょう。百五十四と、リハビリセンター百五十五をのけてあなたはそのことが言えるんですか。
  472. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) これは数字が違うわけでございますが、一般病院の入院患者百人当たりの職員数という数字を私どもは持っておりまして、これによりますと国立病院ですと医師は九・七、国立療養所は四・二ということになります。
  473. 安恒良一

    ○安恒良一君 僕の聞いたことに答えていません。入院患者当たりを聞いておりません。
  474. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) これは国立病院と療養所を比較するという意味でこういう数字を持っておるわけでございまして、今手元にはこの数字だけあるものでございますから、これで御参照いただきたいというふうに考えたわけでございます。
  475. 安恒良一

    ○安恒良一君 参照できません。大臣、やっぱり素直に答弁して、足らない点は足らないからふやすならふやすと言ったらどうなんですか。ああでもないこうでもないと、時間がもったいないです。実際少ないことは事実なんですから。どうですか。
  476. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 同じ国立病院同士で比較をして厚生省関係が極めて少ないと、こういう御指摘でございます。事実そのとおりでございますが、これはもう安恒先生御存じのように、文部省関係では一県一医科大学ということで総定員法の枠外で進められたという経緯がございますので、その点については、比較した場合に文部省関係の方が多いということになろうかと思いますけれども、しかし少ないということは間違いないわけでございまして、今後これは大きな課題だと受けとめております。
  477. 安恒良一

    ○安恒良一君 大臣、要望しておきますが、文部省関係だけじゃないんですよ。その他の国立も全部比較して非常に少ないんですよ。あなたたちがこれから国立にふさわしい医療をやるというなら、やはり医者や看護婦、パラメディカルワーカーをふやさなきゃできることがないんですよ。そのことについて今後のお約束をしてくださいと言っているんです。
  478. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) まず、医療スタッフをふやすことにつきましては、最大限努力をいたします。
  479. 安恒良一

    ○安恒良一君 厚生大臣、感謝されていいんですよ。大蔵大臣によく聞いてもらおうと思って一生懸命僕は言っているんですからね、感謝していいことなんです。  それじゃ次に行きたいと思います。今度の税制改革、二十一世紀を目指してということで、宮澤大蔵大臣も、あともう十二年なんだからすぐ来るんだと。そのときに大変になる大変になると言って、俗に言うオオカミが来た、オオカミが来たという話のようです、これは。  そこで、衆議院においてそれじゃどういう計算をしているかということを出してもらいたいということで、六十三年三月十日、厚生省、大蔵省、合作が出ています。これについて少しお聞きしたいんです。まず、こういうものをつくる際には、経済の成長率をどう見るかということによって非常に違ってきますから、経企庁長官、今後、もう十二年なんてすぐだとおっしゃいますから、経済の成長をどう見られましたか、この間。
  480. 星野進保

    政府委員(星野進保君) 現在経済審議会で新しい経済計画について検討中でございますが、現在まだあります「展望と指針」というのを一昨年の十二月にリボルビングを行いまして、その中で、従来名目成長率六ないし七%と言ったのを一%ほど落としまして、五、六%ぐらいは今後続いていくんじゃないかという改定をしたところでございます。
  481. 安恒良一

    ○安恒良一君 すると長官、これから約十二年ぐらいは五ないし六%の成長を続ける、こういうことでいいんですか。
  482. 星野進保

    政府委員(星野進保君) これはあくまでも昭和六十五年までの計画の改定でございます。
  483. 安恒良一

    ○安恒良一君 私は六十五年まで聞いていません。大蔵大臣がこれから十二年なんかはすぐ来るんだからと、こうおっしゃいますから、十年ないし十二年の経済の成長をどう見込んでいるかと聞いている。
  484. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは、御存じのように政府にそういう作業はございません。この資料は、ここに書いてありますとおり、年平均四%の場合、五・五%の場合、両方を仮定したものであります。この注に書いてございます。
  485. 安恒良一

    ○安恒良一君 注に書いていることはわかっているんですが、経済の成長率というのをある程度きちっと見込まないと、それに伴う税収がどうあるか、こういうことがやはり計算をしなければ出てこないんですよ。だから、できないならできないとおっしゃればいいんですが、片方の方はもう十二年がすぐ来るんだから、大変だからこうしなきゃならぬ、税制の方はそうお思いになる。しかし、経済を聞くと、いや実は五年間しかできない。これじゃちょっと政府の御主張で国民を納得させることにならぬのじゃないですか。
  486. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 実は、こういう将来の計画というものがなかなか政府の方針としてまとまりませんのは、おっしゃいますように長期の経済見通しがないからでございます。それは、今も経済企画庁の政府委員が説明されましたが、実際二十一世紀にわたっての経済見通しというのをある程度の精度をもってつくるということは、御承知のようにこれは簡単なことでございません。したがって、それがございませんから、その段階における国民負担であるとかあるいは社会保障の制度であるとか、そういったものについての政府としての政策決定が現実の問題としてできないということは御承知のとおりでございます。  そこでこの資料は、それにもかかわらず衆議院におきまして、そうは言ってもある程度機械的な計算というものはできないわけではないだろうというお尋ねがあって、そういう前提のもとでならこういうものをひとつ両省で作業をいたしてみますと、こういう前提でつくりましたわけでございますから、計画というよりは、これは実は一種の機械的な仮定計算でございますが、その裏づけに政府の経済計画がある、あるいは具体的な政策決定があると、そういうものでないことはここに御説明をしてあるとおりでございます。
  487. 安恒良一

    ○安恒良一君 このことを聞いているんじゃないのですよ、私は。これは読めばわかるんですから、宮澤さんに解説していただかなくても。私がこの前から聞いているのは、二十一世紀を目指してそれに必然的にかかる高齢化社会を念頭に税の改革を行わなきゃならぬとあなたたちはおっしゃっている。そこで、それじゃ二十一世紀までの十二年ないし十三年間の展望として年金や医療や各社会保険の福祉施設や各種の福祉の形態がどうなるのか、また経済の成長はどうなるのか、それに対する国の助成はどうなるのか等々、また一部負担はどうするのか、税金はどうなるのか、保険料はどうなるのかと、こういうことの計算をするときに、まず経済の成長、それからいま一つはこの経済の成長に見合った税収はどういうふうになっていくのか。また、その間における産業構造の変化、特に給与所得者がどのように勤労所得がふえていくのか、数がふえていくのかと、こういう基礎的なものがないで議論ができないからそのことを聞いているんだ。それについてお聞かせください。
  488. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これはもうおわかりのとおり、計画経済でも十何年先の精細な計画ができないことは御存じのとおりで、いわんや市場経済で昨今のように国際経済との関連が大きければ、今から十何年先の経済見通しを政策のベースとしてつくれということは、これは御承知のように注文としては難しい注文でございます。しかしそれがないなら、いかなる仮定計算もできないかと、こうおっしゃいますから、いや仮定計算は仮定計算としていたしてみますと、その際成長はここにございますように四%ないし五・五%、両様の形を想定いたしましたと。そうなるという意味ではございませんですよ。そういう想定のもとに一つの仮定計算をいたしてみましたと、そういうことでございます。
  489. 安恒良一

    ○安恒良一君 これは締めくくりまでの宿題にしてありますから、時間がありませんからこれ以上はやめましょう。  そこで、厚生省に少し聞きたいんですが、この中で年金や医療の将来数字が出ていますが、年金については私は現状をある程度引き伸ばしていくということはわかりますが、医療について今後の施策あるいは医療の適正化、そういうことを勘案しないまま、現行のままの伸びをそのまま使われるというのはまことに私は遺憾だと思いますが、その点はどうですか。
  490. 黒木武弘

    政府委員(黒木武弘君) お答えいたします。  御案内のように、医療費をどう推計するかというのは非常に難しいわけでございます。元来、大変ないろんな要素が絡まりまして難しいわけでございますけれども、私どもとしてはいつも使っております過去のトレンドでやはり伸ばさざるを得ないということで見込まさしていただいたわけでございます。もちろん医療費が伸びる要素は医学、薬学の進歩等で一方は伸びる要素があり、片一方では医療費の適正化という減らしていく要素もあるわけでございますけれども、そういうものを一一定量的にはじいていくということは非常に困難だということで、私どもは直近の実績をもとに医療費を推計さしていただいておると、こういうことでございまして、今後の政策努力あるいは政策変更、あるいは制度改革等は盛り込んでいないということでございます。
  491. 安恒良一

    ○安恒良一君 盛り込んでいないなんと言って威張ったらだめなんだよ、盛り込んでいないのを当たり前のことのように。  それじゃ、最近の医療費増加の要因はどうなっていますか、どう認識していますか。
  492. 下村健

    政府委員(下村健君) 医療費の増加要因でございますが、なかなかいろんな要素が絡みますので難しゅうございますが、大きなものとして考えられるのは、一つは人口増、それから人口の高齢化、これは高齢者の方が医療費がかかるということがございます。それから疾病構造の変化、それから医療の高度化、診療報酬の改定、その他のことが考えられます。  それで、六十三年度の国民医療費の伸び率一応五・二%と見ておりますが、その中で計量的にはっきりいたしておりますのは、人口増〇・五%、人口の高齢化一応一・二%、それから診療報酬の改定〇・五、残りちょうど三%になりますが、これが医療の高度化あるいは普及、そんなふうな内容であろうかと思っております。
  493. 安恒良一

    ○安恒良一君 その他というもの、これは俗に自然増と言われていますが、この中身を少しはっきりしてください。
  494. 下村健

    政府委員(下村健君) これはただいまも申し上げたわけでありますが、医療の高度化、具体的には医療機関が大型化するとか高度な設備を備えるとかいう形をとってあらわれるわけでございますが、あるいは医師増、病床数の増といった要素もこれに加わってくるかと思います。その他もろもろの要因がこの中には含まれていると思いますが、これを詳細に分析するということは現在のところはまだできておりません。
  495. 安恒良一

    ○安恒良一君 その他もろもろというのは何ですか。私も専門家ですから、そんなわけのわからぬことを言ってもだめですよ。
  496. 下村健

    政府委員(下村健君) 数字的に申しますと、医療費をはじきます場合には、患者数、それから一人当たりの診療日数、それから一日当たりの医療費、そういうふうな要素ではじくわけでございますが、最近の増加の結果として見てみますと、入院医療費の増が大きいというふうなことは非常にはっきりいたしておりますけれども、それぞれの要因ごとにこれを結びつけて定量化するということはまだ、私どももいろいろ研究をして努力をいたしておりますが、残念ながらできていない、こういう状況でございます。
  497. 安恒良一

    ○安恒良一君 私は、この点はもう何年か前からあなたたちに、そういうものはやっぱり定量化しないと議論にならぬじゃないかと。もろもろとか何とかかんとか。  そこで少し中身を聞いてみましょう。  それじゃ我が国の医療の中で諸外国に比較をいたしまして改めるべき余地のある点をどのように思いますか。
  498. 下村健

    政府委員(下村健君) 医療制度あるいは医療保険制度等、あるいは医療慣行も違っておりますのでなかなか一概に言えませんが、適正化というふうな面に即して言いますと、外国と比べて異なっておりますのは、一つは救急体制に関する問題、これは病院等が公立病院が多いというふうなことで、病院に対する投資あるいは増設の抑制というふうな面がかなり違ってきている。それからもう一点は、保険給付についての制限、制約といった面で、これは外国の場合は相当思い切った保険給付についての制約をやっている。その他の点については、一部負担でありますとかあるいは薬剤費の合理化でありますとか、大体私どもがやっているところとそう大差はないと、このように見ております。
  499. 安恒良一

    ○安恒良一君 不勉強ですね。高額医療機械が多いということ、検査費が多いということ、薬剤の比率が高いということ、それから在院日数が長い等々が特徴じゃないですか。なぜ言わないんですか、あんた、そんなことを。こんなことは違いますか、外国と同じですか。
  500. 下村健

    政府委員(下村健君) 言葉が足りなくて失礼いたしましたけれども、私ども適正化と言っている中には、診療報酬の合理化という問題が当然含まれておりまして、その中で私どもとしては現在の出来高払いの欠点を正していく、こう言っているわけでございます。その最大のものがただいま安恒委員がおっしゃいました三点、薬の問題、検査の問題、入院日数の問題、この三つでございます。
  501. 安恒良一

    ○安恒良一君 高額医療機械はどう。
  502. 下村健

    政府委員(下村健君) 高額医療機械は私ベッドの問題ということで申し上げたわけでございますが、日本の場合は救急体制面での医療制度の差というふうなこともありまして、我が国の場合なかなか外国のように十分に徹底できないという側面ではないかと思っております。
  503. 安恒良一

    ○安恒良一君 六十年以降の病床の増加数はどうなっていますか。それから、ベッド、一病床当たり医療費はどの程度ふえると思いますか。
  504. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 病床数の増についてお答えいたしますと、六十年が対前年増三万三百八十三床でございましたが、六十一年は四万一千五百九十二ということで、対前年一・三七の伸びでございまして、これは五十六年から六十年ぐらいの平均〇・九五ぐらいに比べまして一・三七ということで非常に高くなっておるのが現状でございます。  あと単価につきましては……
  505. 安恒良一

    ○安恒良一君 単価と数を聞いているのよ。六十年代以降病床が幾らふえて、一床当たりどのくらい医療費がかさむのかと聞いている。
  506. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 六十一年度でふえました病床が四万一千五百九十二ベッドでございまして、それが六十年以前の伸び率に比べまして一・三七ということで御説明したわけでございます。  一ベッド当たりの金額につきましては、保険局長から答弁さしていただきます。
  507. 下村健

    政府委員(下村健君) 一病床当たりの入院医療費でございますが、六十年実績で年間四百三十五万円ということでございます。
  508. 安恒良一

    ○安恒良一君 大臣、お聞きのとおりですね。一年間で四万ベッド、一病床当たり約四百万円の金がかかるんですね。ところが、昨年来都道府県単位で地域医療計画策定が進められていますが、その施行前ということで駆け込み増床の申請が目に余るものがあります。そういうものを放置しておって、単純に医療費を伸ばせばいいということじゃありません。  そこで、時間がありませんから私は宿題を預けておきますが、今後、医療の質を落とすことなく、効率的な医療資源を用いることによって国民医療費の伸びを国民所得の伸び程度に抑えることが私は十分可能だと思いますが、そういう点について締めくくり総括のときお聞きしますから、施策を出していただきたい。  以上で私の質問を終わります。
  509. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で安恒良一君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  510. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、吉川春子君の質疑を行います。吉川春子君。
  511. 吉川春子

    吉川春子君 まず、同和行政についてお伺いいたしますが、二つの重要な文書である啓発指針と意見具申、この関係について御説明いただきたいと思います。
  512. 紀嘉一郎

    政府委員(紀嘉一郎君) お答えいたします。  地対協六十一年意見具申は、同和問題の現状を踏まえ、同和問題の根本的解決のために、今後における地域改善対策について意見具申されたものでございます。  それから、地域改善対策啓発推進指針は、地対協の五十九年の意見具申、「今後における啓発活動のあり方について」の中で啓発推進のための指針の策定を行うべきことの提言がなされ、地対協六十一年意見具申の精神に沿って取りまとめ、今後の啓発活動の推進に当たっての参考として都道府県に送付したものでございます。
  513. 吉川春子

    吉川春子君 この地対協の政府側の構成メンバーはだれですか。
  514. 紀嘉一郎

    政府委員(紀嘉一郎君) お答えいたします。  地域改善対策協議会いわゆる地対協の委員は、関係行政機関の職員、これは事務次官でございますけれども十人、及び学識経験者十人の二十人で構成されております。委員内閣総理大臣が任名し、学識経験者の委員の任期は二年でございます。
  515. 吉川春子

    吉川春子君 総務、法務、文部などの事務次官が入っているんですね。
  516. 紀嘉一郎

    政府委員(紀嘉一郎君) 関係行政機関の方は総務庁、法務省、大蔵省、文部省、厚生省農林水産省、通商産業省、労働省、建設省、自治省、以上十省庁でございます。
  517. 吉川春子

    吉川春子君 啓発推進指針策定委員会の構成メンバーを報告してください。
  518. 紀嘉一郎

    政府委員(紀嘉一郎君) 専門家の意見を聞いて、総務庁で取りまとめたものでございます。
  519. 吉川春子

    吉川春子君 構成メンバーを聞いています、啓発指針の方。
  520. 紀嘉一郎

    政府委員(紀嘉一郎君) 啓発推進指針策定委員会の構成メンバーについてのお尋ねと思いますが、申し上げます。  文部省の初等中等教育局小学校課長、法務省の人権擁護局総務課長、福岡県民生部同和対策局長、埼玉県企画財政部長総務庁長官官房地域改善対策室長、朝日新聞編集委員の高木という方、労働省大臣官房参事官、それから兵庫県民生部地域改善局長、それに宇都宮大学の横島教授、以上でございます。
  521. 吉川春子

    吉川春子君 総務庁長官にお伺いいたします。  そういたしますと、各省庁が当然意見具申、啓発指針に責任を負って、この方向で同和行政を進めていく、こういうことですね。
  522. 高鳥修

    国務大臣(高鳥修君) そのとおりでございます。
  523. 吉川春子

    吉川春子君 文部大臣にお伺いいたしますが、文部大臣も同じ立場で責任を負っておられるわけですか。
  524. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 同和教育に関しましては、先生御指摘の意見具申についてるる書いてあるわけでございまして、これは政府機関としての答申、具申でございますから、文部大臣、文部省も当然その趣旨に沿って同和教育を行う、こういうことになっておる次第でございます。
  525. 吉川春子

    吉川春子君 趣旨に沿ってというか、この意見具申の中身に文部省も責任を負っている、こういうことに理解していいですね。
  526. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 御指摘のとおり、意見具申の内容に沿って措置を行う、同和教育を行う、そのとおりでございます。
  527. 吉川春子

    吉川春子君 もう少しお伺いいたします。  同和教育について意見具申では、一般の国民の中にかなり批判的な意見が見られるというふうに書かれておりますけれども、総務庁、どのように指摘されていますか。
  528. 紀嘉一郎

    政府委員(紀嘉一郎君) 地対協六十一年意見具申の中で、「今後の地域改善対策の在り方」という項がございます。  その中で、「地域改善対策の実施の適正化のための具体的措置」というところに書かれておるものでございますが、  同和教育については一般国民の中にかなり批判的意見がみられる。この背景としては、同和教育において、人権尊重の理念が徹底されていないために、一般国民の理解がなかなか進まないこととともに、一部に民間運動団体が教育の場に介入し、同和教育にゆがみをもたらしていることが考えられる。同和教育については、啓発活動の一環として、今後とも推進していかなければならないが、その前提として、教育と政治・社会運動とを明確に区別し、教育の中立性の確立のための徹底的な指導を行うことが必要である。なお、その指導に当たっては、教育の中立性を確保する方策が明確に示されるべきである。 と提言されております。
  529. 吉川春子

    吉川春子君 もう一つお伺いしておきたいと思います。  啓発指針の中で、学校教育においていわゆる差別発言が起きたときはどのように対処すべきだと言っておりますか。
  530. 紀嘉一郎

    政府委員(紀嘉一郎君) 地域改善対策啓発推進指針の中の第二章に「啓発の主体、対象及び方法」というところがございまして、その中で学校における差別発言に関することが書かれておりますが、   差別発言等を契機に学校教育の場に糾弾闘争その他の民間運動団体の圧力等を持ち込まないこと   学校教育において留意すべきことは、同和教育の過程においてすら、いわゆる差別発言事件が起きることがあるが、その対処方法を確立することである。   児童・生徒の差別発言は、先生から注意を与え、皆が間違いを正し合うことで十分である。差別事件に限らず、どのような場合にも教育の場へ民間運動団体の圧力等を持ち込まないよう、団体は自粛することが望ましい。団体の自粛がない場合には、教育委員会及び学校は、断固その圧力等を排除すべきである。 と示されております。
  531. 吉川春子

    吉川春子君 そこで、文部省にお伺いいたします。  具体的な事例ですけれども、長野県豊野町の豊野中学校におきまして八六年七月に起きたいわゆる差別発言とされる事件について御存じでしょうか。
  532. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 御指摘のケースにつきましては、現在私どもは照会中でございまして、まだ直接都道府県から事態の詳細を聞いておるという段階には立ち至っておりません。しかし、先生御指摘の中学において、ある生徒の発言についてのいろいろな経緯があることは、若干の概要として承知いたしております。    〔委員長退席、理事林ゆう君着席〕
  533. 吉川春子

    吉川春子君 つかんでいらっしゃる範囲で、若干の概要について説明してください。
  534. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) このケースにつきましては、六十一年の七月の段階におきまして、二年生の男子が友人と口論となり、その発言の中で差別発言が行われたというケースでございます。  この発言について、関係生徒に対する事情聴取ということが運動団体から行われた、これがまず一つでございます。それから第二点といたしましては、この事件につきまして当該学校においての学習で教材化を行って授業が行われた。これが第二点でございます。特設授業という形でも行われておる。それから第四番目としては、運動団体等の関係で確認会が行われておる。こういうふうな事情が私どもの方へ入っておるわけでございますが、それぞれの細かい経緯と実情についてはまだ詳細に把握していない、こういうことでございます。
  535. 吉川春子

    吉川春子君 今おおむねおっしゃられましたけれども、運動団体というのは部落解放同盟のことですが、豊野支部の決定で学校へ関係生徒の実情を調査したいと申し入れました。学校側は、すべての責任は学校にあるので学校の調査を信頼してほしい、生徒の聴取はしないでほしいという意向を伝えましたが、断るとこの解放同盟が子供の自宅に行くというので、県教育事務所と相談の上やむなく認めたと。七月の二十一日、事情聴取が言った子、言われた子、聞いた子、計六人に行われたと。このことは、私が県教委その他から聞いたことで、今西崎さんの言われたことと合致するわけですけれども、こういうふうに中学校の中に運動団体の役員が来て、差別発言をしたとして子供から事情を聞くなどということは、私は教育への介入だと思いますが、この点は文部省としていかがでしょう。
  536. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 同和教育の実施に当たりましては、先生最初に御指摘ございました意見具申にもございますように、政治的中立ということが厳に守られるべきことでございます。  具体のケースのこの場合の同和団体とのかかわりということのお答えはちょっと差し控えますが、一般論といたしましては、同和教育における差別発言があった場合には、学校が教育の課題として主体的に処理する、これが原則でありまして、学校が教育の課題として主体的に処理し解決するという立場で学校がその問題についての指導に当たる、こういう立場で私どもも従来から指導しておりまして、この立場と長野県のケースとがどういうかかわりがあるかということは今後の調査を私どもなお続けてまいりたいと、こういうふうに考えております。
  537. 吉川春子

    吉川春子君 十分調査してほしいと思いますが、文部大臣、学校の中で起こった事件に学校に関係のない外部の団体が来てその子供から事情を聴取する、どうしてそういうことを言ったのかと、こういうようなことを聞くのはやはり教育への介入と言われても仕方がないんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  538. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 教育の中立性、それから教育への団体の介入という問題は個々具体の事案に即して考えてまいらねばなりませんので、私ども一般的に考えますには、やはり同和教育は地域の実情もございますし父兄の問題もございます。したがいまして、学校が学校教育として主体的に解決すると申しましても、やはり地域の団体なりあるいは父兄とのリレーションを図る、こういうことは必要であろうと思うわけであります。したがいまして、そのリレーションがいわゆる介入とかいわゆる圧力ということになってはもちろん中立性を阻害するわけでありますから、そのあたりにつきましての個別の事案のあり方ということについてはそれぞれの責任者が自覚を持って適切に処理すべきでありますし、私どももそういう立場での指導をしてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  539. 吉川春子

    吉川春子君 解同が中学校の生徒の事情聴取をしたということを文部省はつかんでいらっしゃらないのですか。
  540. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 御指摘の事案について、同和団体が学校に直接赴いて事情を聴取したということは聞いております。その限りにおいては、やはり出かけていって事情まで聞くということについてはいささか問題がありはしないか、こういう感じは持っておる次第でございます。
  541. 吉川春子

    吉川春子君 いささか問題がありはしないかどころじゃなくて、大いに問題があるというふうに思うわけです。こういう問題について私は文部省が今後ともよく事情を聴取して、そういうことがもしあったとすれば——あったのですけれども、あったとすれば断固としてやはり教育への介入は認めないという指導を貫くべきだと思いますが、どうですか。
  542. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 教育の中立性、それから学校教育への介入と申しますか、先生の御指摘ではございますが、個々の事態のケースケースによりましていろいろな現象形態がございます。今のお話であれば学校へ出向いて聴取する、これがやはりそういう点においていささか問題ありというふうな印象を持つわけでございますので、私どもはその原則に従った指導ということに相努めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  543. 吉川春子

    吉川春子君 その後、確認会がこの事件について持たれたという報告がありました。この確認会の主催、後援はどこですか。参加者、その内容についても報告してください。
  544. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) まだ詳細は私先ほど申し上げましたように聞いておらないわけでございますが、主催者は運動団体の地区協議会の主催である。行政側もかなりの数、出席しておられるようでございます。豊野町の教育委員関係者、学校関係者、長野地方事務所や県教委の関係者も出ておられるやに聞いておる次第でございます。
  545. 吉川春子

    吉川春子君 教育長や県数委は出ていたんですか。
  546. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) この点につきましては、私ども電話照会の聴取でございますから、その人数その他、確たるところでのお答えにはまだきょう自信がございませんが、照会によるところで私どもが聞いておる範囲では、今申し上げたような関係者が参加していたというふうに理解しております。
  547. 吉川春子

    吉川春子君 学校でいわゆる差別発言があったとして、それを解放同盟が主催する確認会に出席するというようなことは、校長、教育長、町長以下出席してその問題の確認を受けるなどということは、これもまた好ましくないことじゃないんでしょうか。
  548. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) その会の性格の問題があると思うわけでございますが、確かに確認会という名称である、それから主催者が先生御指摘のように同和団体であるということではございます。    〔理事林ゆう君退席、委員長着席〕  したがいまして、私どもはその会自体について、形式的に見ますといささか問題でございますが、恐らく出席者の意識というものがそこでやはり考えられるべきであろうかと思うわけでありまして、差別発言なり同和問題としての事案が起きた場合に、地域の実情なりあるいは父兄の問題、県、市町村、学校のリレーションの問題等を総合的に、この問題を前向きに解決するためにはいろいろ承知したいという意味で出ておるのか、その辺がやはり問題であろうかと思うわけでありまして、確認会という名称とそれから主催者が運動団体であるということだけで直ちに中立性の問題、介入の問題を判断することにはまだ私どもは一考を要するのではないかというふうに現段階では考えておる次第でございます。
  549. 吉川春子

    吉川春子君 総務庁、確認・糾弾会について啓発指針や意見具申はどう言っていますか。
  550. 紀嘉一郎

    政府委員(紀嘉一郎君) 確認・糾弾への自治体職員の出席については、啓発指針の第一章啓発の目的、テーマ及び内容のところでこのように載っております。  地方公共団体の職員が確認・糾弾の場に出席し、差別事件の処理を私的制裁にゆだねるがごとき印象を一般国民に与えていることは、行政職員として好ましくないことである。さらには、確認・糾弾については、民間運動団体の間にも厳しい批判があるところであり、このような場に行政職員が出席することは、行政の中立性の要請からみても、望ましくないことは明らかである。行政職員が憲法の趣旨に忠実な法の遵守と中立性の堅持を第一義とすることなく啓発を行っても、国民の心からの受容を期待し難いのは当然である。行政が姿勢を正さずして、真の啓発はあり得ない。 と、こう示しております。
  551. 吉川春子

    吉川春子君 西崎局長も、今読み上げたものについて異論があるわけではないんでしょうね。
  552. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) この点につきましては、私ども全く異論はございません。
  553. 吉川春子

    吉川春子君 私は、この確認会の記録を持っているんです、写真もありますけれども、この運動団体の旗が二つありまして、ここに全部自治体の職員その他が出ているわけですね。そして解放歌の一番、五番、七番も斉唱して、そういう中で追及されているんですよ。こんなのは行政の主体性はないじゃないですか。教育への介入じゃないですか、どうですか。
  554. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) ただいま先生御指摘ありましたものは私まだ拝見しておらないわけでございまして、最初申し上げましたように、直ちに電話照会等で今相努めておるわけでございます。したがいまして、その確認会自体の内容が今私がそのとおりですと申し上げました趣旨と著しく背馳しておるということであれば、これは極めて遺憾な確認会であるというふうに申し上げることになろうかというふうに思うわけでございますので、この点も含めて今後都道府県教育委員会等の調査にゆだねさせていただきたいというふうに思う次第でございます。
  555. 吉川春子

    吉川春子君 文部省に要求しておきます。  このことをよく調べて、そしてその結果について私にきちんと報告していただきたいと思います。どうですか。
  556. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 私どもも現在調査中でございますので、当然そのようにさせていただきたいというふうに思っております。
  557. 吉川春子

    吉川春子君 ぜひとも大臣にお答えいただきたいんですが、学校教育の場で未熟な子供たちはいろいろなことを引き起こすわけですけれども、それを一々外部の団体が入ったり、あるいは確認会などという形では、私に言わせればこれはもう生徒のつるし上げのようなことになると思うんですね。そういうことについて、やっぱり学校教育の問題は学校の場で先生が責任を持って解決していく、こういう立場を貫いていただきたいんですが、どうですか。
  558. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 学校内で生じました差別事件は学校が教育の課題として主体的に処理し解決するのが原則でありまして、この原則に従って指導してまいりたいと思いますし、また地対協の意見具申におきましても、教育の中立性確保のための指導は必要である旨提言を受けております。従来から同和教育の推進に当たっては教育の中立性を守るよう指導してきたところでありまして、今後とも引き続き指導いたしたいと思います。
  559. 吉川春子

    吉川春子君 総務庁にお伺いいたします。  長野県では確認・糾弾会への出席が公然と公務出張として行われているんですけれども、こういうことは好ましくないんじゃないでしょうか。
  560. 紀嘉一郎

    政府委員(紀嘉一郎君) 先ほど読み上げました推進指針に即して言いますならば、望ましくないと思います。
  561. 吉川春子

    吉川春子君 望ましくないことはやめるように指導してほしいと思います。
  562. 紀嘉一郎

    政府委員(紀嘉一郎君) 地域改善対策における啓発というのは、それぞれの地域の諸条件に配慮しながら進めていく必要があります。今後とも各方面の意見を聞いていくこととしておりますが、地方公共団体の行う啓発事業については、この指針を参考として事業が行われるよう関係省庁と連携を図りつつ指導してまいりたいと思います。
  563. 吉川春子

    吉川春子君 この指針の方向でということですね、確認しますが。
  564. 紀嘉一郎

    政府委員(紀嘉一郎君) この推進指針の方向でということでございます。
  565. 吉川春子

    吉川春子君 長野県では、ほかの自治体でもこうしたいわゆる差別発言事件とされた事件が多発しているんですが、私が昨年現地調査をしたときに、ある生徒が僕はこのことを一生忘れないだろうと語っていたという話を聞いて、子供の心を深く傷つけているこの種の事件が町や県の教育委員会の指導のもとに行われていることに私は強い疑問を持ちました。  文部省は、意見具申、啓発指針を否定するような同和教育を是正するように指導なさっておられるんでしょうか、全国的な問題で伺いますが、どうですか。
  566. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 同和教育の充実は学校教育の中で大変大事なポイントに私どもはいたしておるわけでございまして、従来から毎年「同和教育資料」というかなり厚い冊子をつくりまして、都道府県・市町村教育委員会までそれを及ぼしておるわけでございます。その中に同和教育の基本方針というものが三つ掲げられておりまして、第一は憲法、基本法の精神にのっとって基本的人権の尊重ということでの教育の推進。それから二番目が、やはり具体的な展開で全国民の正しい認識と理解を求めながら、地域の実態に応じて配慮をして同和教育を推進する。それから第三に、やはり同和教育を進める場合には教育の中立性が守られなければならない。こういう三つの方針はもう長年私どもは基本方針として掲げまして、さらに先ほどから御指摘の意見具申等にも触れながら、同和教育担当の指導主事会議というものを持っておるわけでございまして、そういう点で全体の同和教育の推進、充実を図っておるというのが現状でございます。
  567. 吉川春子

    吉川春子君 長野県におきましては同和教育の基本方針を定めていますが、その冒頭に、部落差別は日本の民主化を妨げる壁であり、部落の完全解放を目指す同和教育は民主主義教育の基底であると書かれています。このような同和教育は憲法、教育基本法の定めるものとは異なるものでありますし、いわゆる差別事件なるものが多発する背景にもこういうことがあるということを私は指摘しておきたいと思います。  総務庁にお伺いしますけれども、啓発指針について豊野町議会で町長、教育長は、この文書は正式には届いていない、言うなれば奇怪な文書だと思う、政府では同和対策室長が勝手に出した、室長は更迭されたなどと議会で答弁しておりますが、こんなことはないんでしょう。
  568. 紀嘉一郎

    政府委員(紀嘉一郎君) 先ほど読み上げましたように、啓発推進指針については、総務庁としては今後の啓発の参考になるものとして指導していく方針としております。
  569. 吉川春子

    吉川春子君 否定されたんですね。
  570. 紀嘉一郎

    政府委員(紀嘉一郎君) 啓発指針に基づいて今後とも啓発について指導していきたい、こういうふうに申し上げたわけでございます。
  571. 吉川春子

    吉川春子君 こういう事実はなかったんですか、それを伺っています。
  572. 高鳥修

    国務大臣(高鳥修君) 職員の更迭の話であれば、そのような事実はございません。それは退職をされたのは、ちょうど何といいますか、退職の時期になったので退職をされた方がありますけれども、そのゆえに更迭をされたなどという事実はございません。
  573. 吉川春子

    吉川春子君 また、長野県が、本指針の内容が必ずしも本県の実態に即したものではないと理解している、本指針が示されたことにより従来からの考え方を変えるものではないなどとしています。  こういう自治体に対してはどうしますか。
  574. 紀嘉一郎

    政府委員(紀嘉一郎君) 我々としましては、啓発指針というのは市町村に徹底して伝達されたというふうに聞いております。  なお、仮にそのような意見を述べるところがあるとしても、我々は粘り強くこの啓発指針に沿って啓発が行われるように指導してまいりたいと思います。
  575. 吉川春子

    吉川春子君 総務庁長官、この問題の最後にお伺いいたしますが、今後とも啓発指針の内容に沿って同和行政を進めていく、こういうことでよろしいわけでしょうか。決意をお聞かせください。
  576. 高鳥修

    国務大臣(高鳥修君) ただいま御論議いただいておるところでありますが、いわゆる啓発指針なるものは意見具申に基づいて策定をしたものであります。意見具申に指摘されているところを踏まえまして作成した啓発指針は適切なものであると私ども考えておりまして、この啓発指針に基づいて関係省庁にひとつやっていただくように粘り強く推進してまいりたいと、このように思っております。
  577. 吉川春子

    吉川春子君 ぜひ啓発指針、意見具申、その立場でやっていただきたいというふうにも思いますし、また、同和教育を正しい形で推進していただきたい。今私がいろいろ指摘しましたけれども、そういうことについては十分受けとめていただきたいと思います。  次に、アパルトヘイトの問題についてお伺いいたします。  日本政府は南ア政府に対して制裁措置をとっているわけですけれども、南ア政府の行うアパルトヘイトとはどういう政策なんでしょうか。
  578. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) アパルトヘイト政策を簡単に申し上げますと、三点、一つは黒人、有色人種に対する参政権を与えない、それから住居を制限する、それから教育を別にする、そういうことでございます。
  579. 吉川春子

    吉川春子君 ホームランド政策というのはどういうのですか。
  580. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) 南ア国内に一定の地域を設けましてそして黒人に対しその地域に住むことを要求し、そこで自治を与える、かような形になっております。
  581. 吉川春子

    吉川春子君 黒人に対する教育はどのように行われていますか。
  582. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) 白人と差別された教育が行われております。
  583. 吉川春子

    吉川春子君 外務大臣、アパルトヘイトに反対して拷問で殺された黒人指導者スティーブ・ビコの生涯を描いた「遠い夜明け」という映画をごらんになったと伺っていますが、御感想についてお聞かせいただきたいと思います。
  584. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 十年前の物語で現在はそれよりもひどい、こういうことを聞きましたので、ひどい国だなと思っております。
  585. 吉川春子

    吉川春子君 日本政府は南アに対してどんな制裁を行っているんでしょうか。貿易その他の措置について説明してください。
  586. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) 項目にわたりまして十何項目やっておりますが、主要な問題は、まず日本は外交関係を有しておりません。それから、投資及び融資を規制したりということ、そのほか武器の輸出禁止あるいは軍隊、警察等に対するコンピューターの輸出の禁止、そういう一定の貿易の制限、そのほか観光ビザを南ア人に対して発給しない等々を行っております。
  587. 吉川春子

    吉川春子君 観光、ビジネスのビザの発給停止をやっているということですが、効果は上がっているんですか。
  588. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) 効果が上がっているかどうか大変判断が難しいと思います、南アからの観光客というのはもともと少のうございますので。ただ、具体的な数字は法務省の方からお答えいたします。
  589. 熊谷直博

    政府委員(熊谷直博君) 法務省の方で集計をいたしまして、それで出入国管理統計年報というもので公表をいたしております数字に基づいて、今お尋ねの南アからの観光といいますか、法務省の入国管理法にありますいわゆる四—一—四という、これは観光ばかりじゃなくて短期滞在その他の若干の目的の在留資格でございますけれども、入国資格でございますけれども、五十七年から六十一年までの分を逐年数字を申し上げます。五十七年六千三百五人、五十八年七千二百二十八人、五十九年六千百五十六人、六十年二千四十四人、それから六十一年千二十九人でございます。
  590. 吉川春子

    吉川春子君 これは観光とビジネスと両方、分けて言ってください。
  591. 熊谷直博

    政府委員(熊谷直博君) いわゆるビジネスの目的で入国した人は今の数字には入っておりません。  ビジネスの方を申し上げます、五十七年から逐年について。五十七年が千四百九十一人、五十八年が千六百三十人、五十九年が千八百五十七人、六十年が千五百六十三人、六十一年が千三百六十一人でございます。
  592. 吉川春子

    吉川春子君 日本からの出国の数はどうなっていますか。
  593. 熊谷直博

    政府委員(熊谷直博君) 南アに向けての日本からの出国者でまず観光、これも純粋な観光ばかりじゃなくて観光とか訪問とか短期の留学みたいなものが入りますが、観光その他ということで把握しております数字を逐年で申し上げます。五十七年が七百三十人、五十八年が七百八十八人、五十九年が九百二人、六十年が九百八十九人、六十一年が七百八十一人。  それから商用の目的、短期商用とか業務ということで出国している者が五十七年二千二百二十九人、五十八年二千百六十八人、五十九年二千六百五十五人、六十年二千四百八十九人、六十一年二千三百六十三人。このほか海外支店等への赴任という形で出国している人たちがおります。  ついでに申し上げますと、五十七年が百六人、五十八年が百三十四人、五十九年が百六十七人、六十年が百九十人、六十一年が二百人ということになっております。
  594. 吉川春子

    吉川春子君 これは、ビザの発給停止とそしてまた日本から外国へ行く場合にも制限するということですが、そういうことが数字に一向にあらわれてない、むしろふえているのはどういうわけでしょうか。法務省、わかりますか。
  595. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) 南アとの関係は、南アの国民に対する観光査証の発給の停止とそれから我が国国民が南アに観光で行くことの自粛を要請する、こういうことでございまして、それに関する限りは南アからの観光による日本への流入というのはないというように考えております。
  596. 吉川春子

    吉川春子君 そうしますと、ビジネスで南アに行く数は全然制限してないわけですね、数字から見る限り。
  597. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) さようでございます。
  598. 吉川春子

    吉川春子君 官房長官、政府で南アに対する制裁ということで、これも一つ挙げたんですけれども、これが全然効果が上がってないというのはどういうことでしょうか。本気でおやりになっているのかどうか。
  599. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) ビジネスのビザの問題でございますが、日本は南アに対しては貿易は非常に限られた関係での停止、制限をしておるのでございまして、通常のビジネスはやるという前提でございますので、その点は御了解いただきたいと思います。
  600. 吉川春子

    吉川春子君 通常のビジネスはやると。制限したところもあるからかえってふえたところの方が多いということですね、トータルで。
  601. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) 先ほどの法務省の統計によりますと、駐在ということで行かれる方に対するビザの発給の数はふえております。
  602. 吉川春子

    吉川春子君 要するに、ビジネスで行く数はふえているんですよね。これは経済活動が本当の意味で制限されていないということではないかと思いますが、その点について後でもう一度お伺いしたいと思います、官房長官に。  それで、南アとの貿易額はどうなっていますか。
  603. 田村元

    国務大臣(田村元君) 円ベースで、一九八一年には八千六百九十一億円、八四年には八千百六十億円、八五年には六千八百六十五億円、八六年には六千七十一億円、昨年は五千九百七十六億円と三年連続減少しておりますが、これがドルベースになりますと、円高の関係がありまして、八一年は三十九億五千万ドル、八五年に二十八億六千万ドル、一九八六年には三十五億八千万ドル、昨年は四十一億二千万ドルと前年比一五%増になっております。円ベースでは一・六%減になっておりますが、ドルベースでは一五%の増、こういうことになっております。
  604. 吉川春子

    吉川春子君 世界各国が、日本の貿易がふえたというふうに非難しているわけですが、これはもちろんドルで言っているんですね。
  605. 田村元

    国務大臣(田村元君) こういう種類の統計はドルでございます。
  606. 吉川春子

    吉川春子君 ドルで断然世界一に躍り出た、こういうことなんですけれども、南ア政府に対してこれでは制裁にならないと思うんです。  ジェトロが南アにあるのはどうしてですか、ジェトロが南アにある理由というのは。おかしいじゃないですか。
  607. 畠山襄

    政府委員(畠山襄君) ジェトロが南アにございますのは、ヨハネスブルグに事務所があるわけでございますけれども、南部アフリカ地域、南アも含めましてナミビアとかそれからボツワナ、レソト、スワジランドとこうございますが、それら全体の経済情勢の把握ということを目的としておりまして、現在のところは貿易振興活動につきましては慎んでいるところでございます。
  608. 吉川春子

    吉川春子君 貿易振興会が貿易活動を慎んでいる、であれば南アにいる必要はないんじゃないですか。
  609. 畠山襄

    政府委員(畠山襄君) さっき申し上げましたこの諸地域の情報把握にここのヨハネスブルグという場所が非常に適しておるということが一つと、それからジェトロは貿易振興機関ではございますが、ジェトロ法によりますと、貿易振興を統合的かつ効率的にやるということになっておりまして、その個々の地域に置いてありますジェトロの事務所が、置いてあるからといって直ちにそのそれぞれの国と貿易を振興しなくちゃいけないということには必ずしもなりませんので、現在は情報収集ということで活動をしているわけでございます。
  610. 吉川春子

    吉川春子君 ジェトロは世界各地にあるわけですけれども、貿易を振興しない国に置いているんですか。
  611. 畠山襄

    政府委員(畠山襄君) このケースについては、現在のところ、貿易を振興する目的でなく、情報を収集するということで置いているわけでございます。
  612. 吉川春子

    吉川春子君 大臣、ジェトロが南アにあるということ自体、日本が経済制裁にはっきりと乗り出すという意思表示にはならないと思いますけれども、お考えを変えるつもりはありませんか。
  613. 畠山襄

    政府委員(畠山襄君) 経済制裁を行っております国はECとかいろいろありますけれども、それらも幾つかの国が外交機関とは別の商務官とかそういったものを、ジェトロ類似の機関を南アにも置いておりまして、したがいまして一般論といたしましてですけれども、そういうジェトロみたいなところがあってそしてそれが情報収集をやっておっても、別にそれによって制裁の効果を損なうとかそういうことはないと考えております。
  614. 吉川春子

    吉川春子君 どうしても南アにジェトロがなければならないらしいですね。  貿易の増大は政府は好ましいと考えるんでしょうか。大臣、貿易額の増大、いかがですか。
  615. 田村元

    国務大臣(田村元君) これはいろんな姿がありましょうけれども、国際的な一つの動向として日本も歩まなきゃならぬ道があるし、そして同時に国際協調の枠組みの中でまた日本は行動しなきゃならぬところもあります。でございますから、私があえて申し上げるならば、貿易がふえるなんてとんでもないことを言わないでくれということでございます。
  616. 吉川春子

    吉川春子君 来年は貿易額が世界第五位ぐらいになるんでしょうか。
  617. 田村元

    国務大臣(田村元君) 神ならぬ身の知るよしもありません。
  618. 吉川春子

    吉川春子君 失礼ですが、無責任な答弁だと思うんですね。やっぱり貿易額がこんなにふえたということに対して世界じゅうから非難が寄せられているわけですし、このことについて何か方針がなくて、神頼みなんですか。
  619. 田村元

    国務大臣(田村元君) 神頼みと申したわけではありません。私は神様じゃないからわからないと言っただけのことです。それは、今からわかるようなことなら、例えば経済見通し等もそうです、はっきりとそれじゃ共産党の方でおわかりでございましょうか、来年のことを。これはお互いわからぬと思うんです。(「開き直るじゃないか」と呼ぶ者あり)開き直っておるわけじゃありませんよ。  ただ、これをひとつお読みいただきましたか。一部の新聞に出ておる、きょうの新聞ですよ。  三菱重工楽、三菱商事は南アフリカ鉄鋼公社向け商談として、現在最終段階にある製鉄圧延プラント約三百五十五億円の入札を辞退することとした。辞退要因として、他の大型案件受注による人繰り難としているが、対南ア貿易に対する世界批判を配慮したもの、という記事が出ております。
  620. 吉川春子

    吉川春子君 それが要するに通産省の強力な指導でそうなったというふうにおっしゃりたいわけですね。
  621. 田村元

    国務大臣(田村元君) そういうこと、ちょっとも言っておりません。
  622. 吉川春子

    吉川春子君 そうしますと、やはり通産省の指導によって貿易額がこんなに世界一位になったということはけしからぬことだと、だから何か手を打って、経済見通しはわからないというふうにおっしゃいましたけれども、これについては確実に手を打てば方法はあるんじゃないですか。何も打つ手をしないでそれはちょっと無責任じゃないでしょうか。
  623. 田村元

    国務大臣(田村元君) いや、やるべきはやっております。
  624. 吉川春子

    吉川春子君 どういうことをやっているのかお聞かせください。
  625. 田村元

    国務大臣(田村元君) 実は、先般私はジェトロの理事長に事務所の問題で、御承知と思いますが、注意をしたら、某一流紙からたたかれまして、なかなか難しい問題でございます。世の中難しいもので、褒める者あればけなす者ありで、でございますので、要するにいろいろとやっておるということでございます。
  626. 吉川春子

    吉川春子君 そうしますと、貿易額を制限する、そういうこともやっていらっしゃるわけですか。
  627. 田村元

    国務大臣(田村元君) 日本の企業にもそれなりのモラルというものがわかっておると思います。
  628. 吉川春子

    吉川春子君 その企業のモラルに期待をして世界からの非難をかわそう、これが通産省の基本的な戦略ですか。
  629. 田村元

    国務大臣(田村元君) そうじゃありません。モラルを自覚するようにうまくやっておるわけです。
  630. 吉川春子

    吉川春子君 アメリカもGMとかフォードとか大企業が撤退したり、世界的にそういう南アに対する制裁が世論としてあるときに日本の貿易額がどんどんふえているということは、日本の企業のモラルに期待できないということのあらわれだと思いますけれども、もっとガイドラインを決めるとか、そういう具体的な手だては講じないんですか。
  631. 田村元

    国務大臣(田村元君) 貿易量はふえておりません。先ほど申し上げたように減っております。日本日本の円でやっておりますから、計算を。けれどもそれが円高ということで、アメリカの場合はいいですよ、アメリカは基軸通貨が自国通貨ですからそのままですよ。日本の場合は円で減っておるのにドルで計算すると上になってくる。こういうことでございますから、貿易量や貿易額がふえておると言われるのは、これは心外でございます。日本は企業の手取りは円でございますから、ドルでいただいてもそれは円にかえるわけでございますから、ですからそれは迷惑でございます。  しかし、率直に言いまして、外務省を中心として我々十分の対応をしておるわけでございます。先般来、外務大臣が随分業界にも忠告もされた。我々はそれの後の支えもしたわけです。でございますから、一概にそういうことを言われましても困ります。アパルトヘイトに対しては憎しみを感じております。
  632. 吉川春子

    吉川春子君 経団連からいろいろお話があったということですが、経団連では現在外務、通産両省で検討している基準を急ぐように要請すると、こういう記事を私新聞で見たんですけれども、そういう要請があったんですか。
  633. 吉田文毅

    政府委員(吉田文毅君) 基本的な考え方を申し上げたいと思います。  我が国を含めまして関係国がとった南ア措置につきましては、それぞれ国情の違いを反映しながらも、その目的は、いずれも、先ほど来大臣が御説明申し上げておりますように、アパルトヘイト撤廃に向けた改革を促すということで考え方は一致しているというふうに理解をしております。このような観点からもろもろの措置を講じているという点につきましては恩田局長答弁申し上げたとおりでございまして、我が国としましては、関係国のとった措置の効果を損なうことは厳に慎むべきであるというふうに考えておりまして、このような観点から一昨年来関係業界に対しましてはこのようなことのないよう繰り返し要請をしてまいっております。  南アをめぐる情勢の推移を見守りながら、これまで講じてきました南ア措置を堅持するとともに、業界に対しましてかねてから慎重に対応するよう要請をしてきたところでありまして、今後とも慎重に対応するというのが基本的な方針でございます。
  634. 吉川春子

    吉川春子君 質問をしたのは経団連から言ってきたことについて基準づくりを急ぐのかどうか、こういうことです。
  635. 吉田文毅

    政府委員(吉田文毅君) 南ア貿易に関しまして何らかの基準を設けまして貿易額を制限している関係国はないというふうに承知をしております。もちろん、先ほど来説明しておりますように、国際的な協調のもとでいろいろな対策を各国講じてまいっているわけでございます。
  636. 吉川春子

    吉川春子君 そうすると通産大臣、これからもこの貿易額その他の基準はつくる考えはないと、こういうことですか。
  637. 田村元

    国務大臣(田村元君) 基準といいましても、具体的にどういう基準をつくるのかということになりますとなかなか難しい問題があると思うんです。例えば、A社に対して何を売るな、B社に対して何割減らせと、これはなかなか難しい問題ではあります。  私が先ほど来申し上げておるのは、やっておるんです、外務省と十分相談——私どもの通政局長の村岡君と外務省の恩田君とがしばしば会いまして、そして十分意思の疎通を図ってやっておるんです。でございますからああいうような新聞記事が出てきたわけです。でございますから、どうかその点はお認めを願いたいんです。私もきりきり詰められましてもなかなかそれは具体的に申し上げることのできない場合もあります。先ほどの安恒さんの御質問の資料を出せというのならまだ簡単かもしれないけれどもと言うと悪いけれども、私の場合実際問題、世界的に大きな影響を与えることでございますから、だからこれからの実績を見てくださいとしか言いようがありません。じゃ、どれだけになるんだと、それは私も今から何百何十何億になるなんという、それはちょっと私も言えないですよ。
  638. 吉川春子

    吉川春子君 いろいろな手を打っていらっしゃるということは私、資料をいただいて知っているんですが、その効果が上がっていないということを今申し上げているんですが、見守っていてさらに効果が上がらないという場合は新たな手を打ちたい、そういうことですか。
  639. 田村元

    国務大臣(田村元君) それは効果が上がらなければまたそのときに考えなきゃならぬ。これは通産省だけの問題じゃございませんから、外務省を中心に我々の分野も相談をするということでございますから、だから、例えば外交旅券の問題等あるいは外交関係とかという一番大きな問題はやっぱり外務省でございます。でございますから両省が十分相談をしてこれから対応していく。それはこういう問題は、一つの手を打った、結果がどうあれもうそれで終わりというものじゃないと思うんです。その都度その都度の対応というものが要ると思います。
  640. 吉川春子

    吉川春子君 外務大臣にもお伺いします。今日本が打っている手がなかなか実効が上がっていないわけですけれども、外務大臣としてはこの南アの制裁についてどういうふうにお考えでしょうか、実効が上がらないものについて。
  641. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 実効は上がると思います。また、今日までいろんな面で上がっていると思います。真剣なんです、私たちも。やはりこれだけ大きくなった日本、それが変な目で見られているわけですから、そういうことがあっては全国民が迷惑するわけですから、したがいまして財界の方も、もしも実績が去年どおりとか横ばいとか、そのようなことがあったら、もうはっきり数字が出てくるんです。だから、この間私は記者懇でもう選挙と同じだ、票が出てくるんだから、努力したかしなかったかはっきりするじゃないかと、こう私は言ったんです。だから、今申し上げたとおり、通産大臣も一生懸命やっておられる、私たちも一生懸命やっておる。どういう方法でやっているんだと。輸入、輸出あるいは業界、業種、取り扱い品目、それぞれ違います。だから、私は先ほどもちはもち屋にお任せ願いたい、こういうふうに言いながら、我々通産省と外務省とは密接な連絡をとっておる、こういうことでございます。
  642. 吉川春子

    吉川春子君 質問の角度を変えます。  南アから輸入している日本の電力会社の使う一般炭の量、これは過去十年どうなっていますか。特殊法人を含むその他の電気業での使用量についても伺いたいと思います。
  643. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 最近の実績は、わかっておりますのは暦年ベースの昭和六十二年でございます。  まず、これについて申し上げますと、南アからの石炭輸入量は合計をいたしまして七百五十五万トンでございます。前年に比べまして一四・五%の減少でございます。このうち一般炭、これが御質問に触れてくるわけでございますけれども、全体の三分の一でございまして、二百五十五万トンぐらいでございます。この中で電力が購入をいたしておりますものが一般炭の中の半分でございます。したがいまして、全輸入量の中の六分の一ぐらいというような感じになります。さらに、電発が電力業界全体の中で輸入しております石炭の中で占めております割合は大体三分の一ぐらいでございまして、南アの場合にも大差ないと申し上げていいかと思います。したがいまして、雷発が占めておりますシェアは十八分の一ぐらいというような感じになるわけでございます。  なお、過去十年の数字はちょっと手元にないわけでございますけれども、トータルの数字で過去を今持っております資料でさかのぼって申し上げますと、一九八六年が、先ほど申し上げましたように一九八七年の七百五十五万トンに対しまして八百八十四万トンでございます。それから一九八五年が八百六十二万トンでございます。八四年は七百七十八万トン、八三年は五百九十五万トン、八二年は五百九十一万トンでございます。振り返って傾向を見ますと、八六年までは増加をいたしておりましたけれども、八七年から減少に転じているという状況でございます。
  644. 吉川春子

    吉川春子君 今丁寧に数字を報告してくれましたが、今私の申し上げたので言うと、五十二年はゼロ、六十一年は四十二万トンと、こういうふうになっているわけですが、電力会社の使う石炭の輸入量が十年前に比べると非常にふえている。こういうことに対して、政府が指導権限を持っているわけですから、これはもっと指導なさったらいかがですか。
  645. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 一般的な傾向といたしましては、供給源の多角化というような考え方がございましたので、先ほど申し上げたように、ある時期まで増加いたしておりますけれども、それ以降につきましては、先ほど来るる関係局長あるいは大臣から御説明しておりますように、慎重の上にも慎重を期するということで対応をいたしているわけでございます。
  646. 吉川春子

    吉川春子君 アメリカは南アの石炭に対してどういう態度をとっているんですか。
  647. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 輸入を禁止いたしております。
  648. 吉川春子

    吉川春子君 アメリカで輸入禁止しているのに、日本じゃどうしてそういうふうにできないんですか。まして電力とか公共のものに使うものについては、もっときちっと指導なさったらどうでしょう。これは通産大臣にお伺いします。
  649. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 米国は石炭以外にウラン、銑鉄、鋼材、鉄鉱石、繊維、農産物の輸入を禁止いたしているわけでございます。先ほど来、それぞれの国の状況に応じまして適切な対応を図っているという考え方でございまして、そういう流れに沿っております。ただ、米国が石炭の輸入を禁止いたしましたのに日本がふえるというようなことがありましては全くの論外でございますので、先ほど申し上げましたように慎重の上にも慎重を期するということで対応をしていきたいということでございます。
  650. 吉川春子

    吉川春子君 一般企業の規制についてはさっきなかなか渋かったわけですけれども、政府が権限を持っているこういうようなところについてはもっとその権限を行使したらいかがでしょうか。大臣じゃないと無理でしょう。
  651. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 電気料金とかあるいは安全保障という面では確かにほかの産業以上の規制がかかっていると思うわけでございますけれども、原料をあるいは燃料をどう調達するかというようなことにつきましては、電力業もほかの産業と基本的には同じ立場にあると思っております。先ほど来お話があるような日本の置かれております状況を踏んまえまして、電力につきましても、重ねて申し上げますが、慎重の上にも慎重に行動するように要請をしてまいるつもりでございます。
  652. 吉川春子

    吉川春子君 慎重の上にも慎重にということは、要するにきちっと指導する、そういうことですか。
  653. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 先ほど来関係局長あるいは関係大出から御答弁がございましたような線に沿いまして対応していくということでございます。
  654. 吉川春子

    吉川春子君 通産大臣、これは政府が権限を行使できるわけですから政府としてももっとお考えいただきたいと思いますが、いかがですか。
  655. 田村元

    国務大臣(田村元君) 権限とおっしゃいますけれども、実際に企業にこれを買うべしと国家権力の発動をして、買わなかったら処罰するぞと、これはちょっと自由経済のもとにおいてできないと僕は思うんです。それは矛盾したこともありますけれどもね。日本国内炭を押し売りしましたから、それは矛盾したこともあります。ありますけれども、やっぱり基本的に言えばそういうことだと思うんです。けれども、先ほど来申し上げておりますように、実績を見てくださいということを申しております。今私があなたの御質問をお受けして、そうです、やりましょうやと言えば、また一方で物議を醸すわけですよ。難しい問題がございます。でございますから、どうか我々の努力というものをしばらく見守っていただきたいということをお願いするわけでございます。
  656. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  657. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 速記を始めて。
  658. 吉川春子

    吉川春子君 天皇在位六十年の金貨のために、金をどれぐらい輸入なさったんですか、大蔵省。
  659. 足立和基

    政府委員(足立和基君) 十万円の記念貨幣製造のために輸入いたしました金地金の数量は三百二十四トンでございます。
  660. 吉川春子

    吉川春子君 その金はどこのものだかおわかりですか。
  661. 足立和基

    政府委員(足立和基君) 輸入相手国は、イギリス及びアメリカでございますが、取引の具体的な内容につきましては、金につきましては公表しないということが国際慣行でございます。いずれにいたしましても、この金は金市場から調達いたしてございますので、どこの国の産出された金であるかということは特定ができないわけでございます。
  662. 吉川春子

    吉川春子君 それでは、それが全部南アの金だということも否定できないでしょう。
  663. 足立和基

    政府委員(足立和基君) 金市場から調達したものでございますので、一切どこの金であるかということはわからないわけでございます。
  664. 吉川春子

    吉川春子君 たとえ南アからであろうと、こんなにたくさんの金を輸入しても構わない、そういうことですか、南アの金だろうと。
  665. 足立和基

    政府委員(足立和基君) 記念貨幣の製造につきまして、必要な金を輸入したわけでございます。
  666. 吉川春子

    吉川春子君 日本は経済制裁をいろいろやるとか、クルーガーランド金貨の輸入禁止とか言っていますが、こういう形で南アの金が大量に日本に輸入されたという疑いもあるわけなんです。イギリスのエコノミスト誌によりますと、「日本の買った金の大部分は、直接南アフリカからではなく、アメリカやヨーロッパを通じて入っている。だが、そのうちどれくらいの金が南アフリカで採掘されたものであるかを特定することは不可能」と言っています。そして、「日本が本当に南アフリカ政府を制裁しようとするならば、年間およそ五億ドルにのぼる石炭や、金の輸入を削減すべきである。」と、こういうふうに言っているわけなんです。指導する立場の政府が率先して南アとの貿易に貢献しているようでは世界の批判を浴びても仕方がないというふうに思うわけです。  ことし二月、アメリカの黒人議員連盟の抗議の書簡が総理あてに送られてきたと思いますけれども、それについて御存じでしょうか。
  667. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) 二月二十二日、在米大使館を通じて、米国黒人議員連盟議長ダイマリー下院議員より総理あてに書簡が参りました。内容は、日本が南アの最大の貿易相手国になったことに懸念を有していて、南アとの貿易の拡大を停止させるためいろいろな努力をしてほしいという要望を伝えてきた書簡でございます。
  668. 吉川春子

    吉川春子君 官房長官、それに対してどうなさるんですか。
  669. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) これに対しまして、竹下総理より御返事を出していただいてございます。その内容は、従来から日本は厳しい対南ア規制政策を実施していること、それから、我が国の対南ア貿易関係我が国の断固とした対南ア政策に誤った印象を与えることのないよう財界に対して働きかけている旨、そして財界も責任ある態度で行動すると確信していると、かような御返事を出していただいてございます。
  670. 吉川春子

    吉川春子君 国連が日本に対して名指しで南ア政策を批判したことがありますが、どういうものですか。
  671. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 最近の国連の場におきます我が国に対する言及は、昨年秋の第四十二回国連総会及び本年二月、ともにガーバ・ナイジェリア国連常駐代表が、反アパルトヘイト特別委員会議長として行ったものでございます。内容は、我が国が第一の対南ア貿易相手国となったことを遺憾とし、貿易関係断絶のため我が国の追加的措置を求めるものであります。我が国はこれに対しまして、貿易が第一位になったのは円高の影響が大きいということを指摘しております。
  672. 吉川春子

    吉川春子君 外務大臣にお伺いしますが、このような世界の批判についてどのように受けとめていらっしゃいますか。
  673. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 昨年は、先ほど通産大臣が申されましたとおり、極端な円高ドル安、この結果一位になって非常に残念でございます。せっかく努力をしておりましてもそういうことがあってはいけませんから、私は異例のことではありますが、経団連並びに同友会の方々に来ていただいて、そしてこの出席された方々もしっかりやります、お互いに、そのように火事場泥棒と言われちゃたまったものじゃありませんと。まさにそのとおりでありますから、そのようにそれぞれがかたい決意で帰ってもらっておりますから、ただいま総理大臣もそういう実績を踏まえていろいろな方々に手紙を送られたと、かようなことでございますので、また私といたしましても、先ほど申し上げましたとおり、恐らく結果が出るわけですから、財界におきましても、恐らくもし私たちの最も避けなければならない結果を出したその企業は、国民的糾弾を浴びるだろうと私は思います。
  674. 吉川春子

    吉川春子君 南アは日本人をどういうふうに扱っているんですか。
  675. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) 法律上は有色人種として扱っております。
  676. 吉川春子

    吉川春子君 そうしますと、南アが差別の対象としている有色人種として日本人も扱われているわけですね。
  677. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) 法律上の扱いはそういうことでございます。
  678. 吉川春子

    吉川春子君 外務大臣日本人が名誉白人というふうに言われていることについて御感想はどうですか。
  679. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 初めて聞きましたので、まだ感想はございません。
  680. 吉川春子

    吉川春子君 南ア政府は日本人を名誉白人という扱いにしておりますけれども、実際は今答弁があったように有色人種として差別の対象にしているわけです。こういうようなことを考えたときに、やはり私たちは黒人に対するアパルトヘイト政策、そういうことをやっている南ア政府が、日本人に対してもそういう差別の目を向けているということを指摘しておきたいと思います。そしてやはり、本当に黒人たちが苦しんでいるこういう問題に対して、日本が経済大国となって経済的に、アパルトヘイトをやっている南ア政府を支えるようなことがあっちゃいけないと、そういうことを強く指摘しておきたいと思います。  質問を変えます。——ずっと質問をやれという御要求なので、最後までやります。  大型間接税導入論の論拠の中心は所得平準化論と高齢化社会危機論です。平準化論についてはきのうのこの委員会で近藤委員が、具体的データに基づき、平準化どころか逆に格差は広がり、主に低所得者層に負担増になっていることを明らかにしました。きょうは高齢化社会危機論、今老人一人を働く人六人で支えているが昭和百年には二人で一人を支えなければならない。こういう論拠のないことを明らかにしたいと思いますけれども、まず大蔵大臣、二人で一人を支えるということがそんなに大変なことなんでしょうか。
  681. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私は、二人で一人を支えると申し上げたことはありません。
  682. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 関連質疑を許します。近藤忠孝君。
  683. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 大臣が言ってないと申しますが、自民党のパンフにはちゃんと書いてありますね。それから、これはしばしばこの委員会でも、現在は六人に一人、しかし二十一世紀になれば二人ないし三人が一人を養う、だから大変なんだということなんですよ。これについて私はきのうと同じように具体的なデータ、数字に基づいて全くこれが、これはもういいかげんなものだということを指摘したいと思います。そして、私がこれを指摘しまして、きのう同様に反論がうまくいかぬと二つの重要な大型間接税導入の論拠が崩れるわけですから、ひとつおやめいただきたいということを申し上げたいと思います。  まず、生産年齢人口と就業者人口は今後どう推移するか、厚生省、労働省お答えいただきたい。
  684. 岡部晃三

    政府委員(岡部晃三君) 就業者数につきましては、一九八五年五千八百七万人、二〇〇〇年約六千三百十万人、二〇一〇年約六千四百八十万人と予測をいたしております。なお、二〇二五年の就業者数につきましての試算は行っておりません。  また、生産年齢人口十五歳—六十四歳につきましては、昭和六十一年十二月の厚生省人口問題研究所の推計によりますというと、一九八五年八千二百五十三万人、二〇〇〇年八千六百二十六万人、二〇一〇年八千三百四十二万人、二〇二五年八千百十万人となっております。
  685. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 大きく見ると、生産年齢人口は減少していく。ただ、就業者人口は将来ふえていくわけですね。これはなぜなんでしょうか。
  686. 岡部晃三

    政府委員(岡部晃三君) 生産年齢人口が減少する中にありましても就業者数が増加すると予想している背景といたしましては、引き続き女性の職場進出が増大すると予想される部分が大きいと考えております。
  687. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 さらに高齢者の就労年齢も上昇していくんだろうと思います。  そこで、生産年齢人口は十五歳から六十四歳までと言うのですが、要するに働く人が支える、これがいわば分母ですね。そうしますと、十五歳から六十四歳の中には働いていない人が相当含まれています。生徒、学生、専業主婦など。反面、六十五歳以上で働いている者もたくさんいるわけですね。となりますと、大蔵大臣、これは働く人を分母にする以上、就業人口で考えるのが正しいんじゃないでしょうか。
  688. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) またきのうと同じような一種の独特のお話ですけれども、結局私が申し上げているのは、高齢者がふえますということを申し上げているんですね。それでおっしゃるのは、それでも就業している人もあるだろうと。それは大変結構なことだと思うんです。たくさんの方が就労されるのは結構でございますけれども、就業者であろうとあるまいと高齢者であることには間違いない。それは医療や年金を必要とされる方であるという論理にはちっとも変わりはない。ただ、たくさんの方が就労されていることは大変いいことだと思います。
  689. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 高齢化社会になって幾ら費用がかかるかという問題と、今言っている議論は別なんです。六人で一人支える、二人ないし三人で一人を支える、要するに支える数ですからね。いわば分母ですね。分母の場合に、働く人ですよ。となると十五歳から六十四歳なんという、そういう生産年齢人口を分母にするんじゃなくて、実際に働いている、だから就業者人口、これを分母にするのが正しいんだろうと、こういう質問なんです。
  690. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私の言うのは、その就労者人口の中にも六十五歳以上がいるわけですから、それは分子にしてあるので、それをまた分母にしたのでは話がこんがらがっちまうと、こう言っているわけです。
  691. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 政府の計算、また自民党の計算もそうですが、分母は生産年齢人口、だからこれは六十五歳以上は入っていません。そうでしょう。私はそうじゃなくて、分母は実際に就労する、先ほど統計が出た就業者人口でいくのが正しいだろうということなんです。
  692. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) そういう御議論があっても一向差し支えないんですけれども、私の申しますのは、就労者であろうとあるまいと六十五歳になられれば年金とか医療とかそういうことが、つまり社会の余計な、それだけ余分の多くの負担になるということには変わりがないのでございますから、それを分子にした議論をしておるのでございますと、こう言っているわけです。
  693. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 分子と分母を混同しているようです、私、近藤だけれども、大蔵大臣は混同していますね。まあしかし、余り分母が正確でないということがわかりました。  今度は分子の問題です。支えられる側、これは六十五歳以上の人口だけじゃいかぬと思うんです。子供も含まれる。さらに大事なことは、働く本人自身とその家族もこれはやっぱり働く人によって支えられるんですよ。だから、分子は全人口じゃないか。どうですか。
  694. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) そういう議論だってできます。
  695. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 じゃ、そこでそういう人口で厚生省、総人口の推移と就業者一人当たり総人口の推移をお述べいただきたい。
  696. 黒木武弘

    政府委員(黒木武弘君) 総人口当たりの就業者数のお尋ねでございます。先ほど労働省から御答弁申し上げました就業者数で総人口を割ったものでございます。昭和六十年二・〇八、昭和七十五年二・〇八、昭和八十五年二・一〇でございまして、いわば国民約二・一人に対して一人が就業者ということで推移するわけでございますが、厚生省の立場からいいますと、この総人口、人口がこれから非常に急速に高齢化していく、ここのところが非常に私どもは問題だというふうに考えているところでございまして、今申し上げました数字は総人口の変化を、質的な変化を入れずに単純に総人口対就業者数の割合を示せばほぼ国民約二・一人に一人が就業者の割合で推移するということでございます。
  697. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 だから費用の問題は別におくのが正しい議論なんで、今までは六人に一人から二人に一人になる、それじゃ大変だというのでみんなびっくりしたんです。しかし、手品の種を明かしますと、就業者一人当たりが支える必要のある人口は現在と変わらない。二人で一人なんですね。だから、高齢化社会論、危機論全く論拠がないじゃないですか。医療費などこれは別の問題ですからね。どうですか、今まで言っていた論拠。
  698. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 同じことを何度も申し上げるんですけれども、今、分母に就業者人口を置くのでございましょう。それで分子に総人口を置くのでございますね。それでその割合が今二・〇八である、昭和七十五年で二・〇八である、昭和八十五年に二・一、そういうお答えであった。それはそれでよろしいんですが、その就業者の中にはだんだんお年寄りがふえていくわけでございますから、ということを私ども申し上げているんです。つまり、六十五歳以上の方だって就業者でございますね。そういう方々の社会的な負担をどうするかということを議論しているんですから、そういう御議論は私はあっても別に悪いとは申さないんですが、私どもの申していることはそういうこととは違うんです。
  699. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 ですから、費用の問題はこれは別の問題なんですよ。今まで六人に一人とか二人に一人なんていうそういう議論は根拠がないことは今の議論で明らかですから、ひとつそういうことを使うのはおやめいただきたいということを申し上げて、その答弁を求めて関連を終わります。
  700. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それでは、せっかく私の申し上げたことがわかっていただいていないんで、残念でございます。
  701. 吉川春子

    吉川春子君 建設省にお伺いします。  四十年前、キャサリン台風のときに、日本第二の河川利根川が、埼玉県大利根町で決壊して大災害となりました。もし、今同じ場所で利根川が切れればどうなるのか。建設省はこの件についてシミュレーションを行ったと聞いております。そこで伺いますが、キャサリン台風のときの被害の状況はどうだったんでしょうか。
  702. 萩原兼脩

    政府委員(萩原兼脩君) お答えをいたします。  当時、内務省関東土木出張所、現在の建設省関東地建でございますが、その調査結果でございますが、管内全域では死者一千百三十一人、負傷者二千四百三十六人、浸水家屋約三十二万戸、このように記録されております。
  703. 吉川春子

    吉川春子君 被害総額、浸水家屋、はんらん河川数、洪水が東京湾に達するのに要した日数をお伺いします。
  704. 萩原兼脩

    政府委員(萩原兼脩君) お答えをいたします。  先生御指摘の点は栗橋地点の決壊にかかわるものかと思いますので、その数字を言い直しさせていただきますが、はんらん面積は四百四十平方キロ、被害を受けました人数の総数は六十万人、被害を受けました家の棟数は約十五万棟。被害額でございますが、当時推計値がございませんが、後で推計しましたものかと思いますが、当時のお金にいたしまして約七十億円、現在のお金に置き直しますと九百億から約一千億、それから被災河川数とおっしゃいましたが、これは管内全部の数といたしまして四千四百五十河川といり記録が残ってございます。以上でございます。
  705. 吉川春子

    吉川春子君 大変な被害額だと思いますが、シミュレーションの結果はどういうことになったんですか。
  706. 萩原兼脩

    政府委員(萩原兼脩君) お答えをいたします。  私どもが部内的に行いましたいわゆるシミュレーションでございます。同じような雨が降りました場合に、現状で方一破堤をいたしますとどのような洪水がはんらん区域内で挙動したかという結果でございますが、その結果、はんらんすると考えられます面積は五百五十五平方キロ、それから五十五年時点でございますが、多分被害に遭うだろうと推定いたしました人数は約百八十万人、それから被害を受けることになるであろうと推定いたしました家の数が約三十六万棟。以上でございます。
  707. 吉川春子

    吉川春子君 これによって被害を受ける自治体の数はどうなっていますか。それから東京まで水につかるわけですね。東京は何メートルぐらいになるんですか。
  708. 萩原兼脩

    政府委員(萩原兼脩君) お答えをいたします。  町村の数のきちっとしたものは手元にございませんが、地形が原則的に四十年前と全く変わっておるということはございませんので、実際に二十二年当時受けました市町村がほぼ今回も被災地域になろうかと考えております。  また水深でございますが、一番深いところは恐らく二メートルを超えるところが出てこよう。ただ大半は一メートル前後の浸水、高さになるのではないかというふうに考えております。
  709. 吉川春子

    吉川春子君 そうしますと、今の御報告を伺いますと、四十年前に台風で決壊したときと比べて被害が大分大きくなるように思いますが、その原因はどういうところにあるんでしょうか。
  710. 萩原兼脩

    政府委員(萩原兼脩君) これはやはり二十二年当時浸水いたしました地域が首都圏の都市化によりまして大変人口が稠密になり、また資産が増大した結果かと考えます。
  711. 吉川春子

    吉川春子君 私、これを文書館から借りてきたんです。(資料を示す)これは水害の被害状況、東京と埼玉なんですけれども、これだけの黒いところが全部水につかる。こういうすさまじい被害があって、それに基づいてのシミュレーションだったんですが、このシミュレーションの結果をごらんになって大臣としてはどんな感想をお持ちでしょうか。
  712. 越智伊平

    国務大臣(越智伊平君) ただいま河川局長からいろいろ御説明を申し上げました。備えあれば憂いなしと。要は治山治水、これに全面的に努力をしていく、こういうことであります。
  713. 吉川春子

    吉川春子君 もし四十年前と同じ雨量が降った場合、今の利根川の切れる危険はあるのかどうか、同じところはもう二度と切れないのかどうか、その辺は建設省いかがですか。
  714. 萩原兼脩

    政府委員(萩原兼脩君) お答えをいたします。  破堤から四十年たっておりますので、その間に上流に五つも大きなダムをつくってございますし、堤防につきましても大変補強をいたしておりますので、二十二年被災をいたしました当時のその地点の洪水の流下能力に比べますと、ダムを除きましても多分五割増しぐらいになっておろうかと思います。そういう意味で、同じ雨が降りましても、危険度は当時と比べますと大変下がってきておるという判断をいたしておりますが、利根川も大変大きい川でございます。本川だけでも二百キロ以上ある川でございます。したがいまして、どの箇所についてもすべて安全かということはまだまだ自信を持って安全であるというお答えができない段階かと思っております。
  715. 吉川春子

    吉川春子君 そうしますと、裏返して言えば、どこが切れるかわからない、どこが切れても不思議ではないというふうにも言えるわけですか。
  716. 萩原兼脩

    政府委員(萩原兼脩君) 先生も御存じのように、堤防といいますのは工場で製品をつくる感じとは全く違いまして、藩政時代、いわゆる徳川の時代からつくっております堤防をそのまま利用して私ども明治以降補強しているところもございますし、その中が本当のところどうなっているかということは、これはなかなか何百キロもありますものについて全部を知ることは難しいわけでございます。出水の都度、危険なところは全力を挙げまして私どもいわゆる修繕をしておるわけでございますが、何年かたちますとそれぞれの堤防の条件、地盤沈下するところもございますし、構造物の周りに水道が自然にできてしまうこともございます。その辺をどう考えるかと言われますと、やはり絶対に切れないという言い方はなかなか難しいのではないかと考えております。
  717. 吉川春子

    吉川春子君 関東にはほかにも荒川とか、中部地方には信濃川、千曲川とか、関西には淀川とか、一級河川が全国でたくさんあるわけですけれども、利根川はなかなか危険だということはわかりましたが、ほかの河川はどうなんでしょうか。ほかの河川はもう改修が進んでいるんですか。
  718. 萩原兼脩

    政府委員(萩原兼脩君) お答えをいたします。  私ども河川の改修をいたします場合に、実際は百年あるいは二百年に一度ぐらいの洪水でも大丈夫なようにということを究極的には目指しておるわけでございますが、現在のところやはり、戦後の四十年間でそれぞれの河川で起こりました最大の洪水、これに対してはそれぞれの川が何とかもつようにということで工事をやっておりますが、先生のおっしゃいます幾つかの川を含みますいわゆる大河川では、そういう戦後の最大の洪水に対してどうかということでございますと、大体六割ぐらいは持ちこたえられる区間ができておるかと、そういうふうに判断をいたしております。  それと利根川を比べますとどうかということでございますが、やはり利根川は日本で一番大きな川、また首都圏を控えておる川でございますので、その六割よりは多少上の水準になっておろうかと、そういうふうに考えております。
  719. 吉川春子

    吉川春子君 そうしますと、全国にある一級河川の中で利根川の方は比較的力を入れて工事をしているから安心だけれども、ほかの方はそれほどでもないと言うとちょっとあれですけれども、利根川にとにかく一番力を入れていると、こういうことなんですね。一番というか、とにかくそういうことですか。
  720. 萩原兼脩

    政府委員(萩原兼脩君) 川の形態というのは千差万別でございますし、はんらん区域の中にございます都市の大きさ、その他千差万別でございますが、私どもはどの河川だけをということはないわけでございまして、そういう背景を勘案しながら結果的にはそれぞれの河川の重要度に応じてバランスがとれるような改修を心がけておるつもりでございます。
  721. 吉川春子

    吉川春子君 そうしますと全国にある河川、利根川、そのほかの河川、どこも例外ではないと、大体似たりよったりでいろいろな危険があるということが今の答弁からわかりましたが、具体的に四十年前に決壊いたしました大利根—栗橋、ここの堤防工事の進捗状況ですね、完成堤防の進捗率はどれぐらいになっていますか。
  722. 萩原兼脩

    政府委員(萩原兼脩君) お答えをいたします。  御指摘の地先でございますが、堤防といたしましてはほぼ八キロほど、八千五十メートルほどその区間に整備を要する堤防があろうかと思います。断面的に私どもが意図しております断面、いわゆる完成断面になっておりますものが四千四百三十メートル、ほぼ五五%ぐらいかと考えております。もちろん、そのほかは堤防ができていないということではございませんで、少なくも計画高水位までは高さができておるということでございます。そういうことでございます。
  723. 吉川春子

    吉川春子君 計画高水位まで堤防の高さができているというのはどういうことですか。ちょうど水の高さと堤防の高さが同じということじゃないんですか。
  724. 萩原兼脩

    政府委員(萩原兼脩君) お答えをいたします。  先ほど申し上げましたように、私ども究極の目的としては、百年に一回あるいは重要なところは二百年に一回ぐらいの洪水が起こっても十分安全なような堤防をつくることを目指しておるわけでございまして、それに対応する断面をいわゆる完成断面と申しております。しかし、先ほど申し上げましたように、それでは事業の量が膨大になり過ぎますので、当面、戦後の四十年間でそれぞれの川で一番大きかった洪水、これは守れるようにということになりますと、結果的に工事を分割いたしまして、さしあたり計画上の高水位のところまでまず盛ることを全川にわたって早く仕上げる。そこまで行きましたら、次は完成断面に向かって工事を進めていく。粗っぽい言い方でございますが、粗っぽく言いますとそういうやり方をしておるわけでございまして、計画高水位でとめておる堤防が大変多いわけでございます。
  725. 吉川春子

    吉川春子君 そうしますと、利根川全体で聞きますけれども、この四十年の間に堤防が完成した、完成堤防の率はどれぐらいになるんですか。
  726. 萩原兼脩

    政府委員(萩原兼脩君) ただいまの定義で申しますと、これは本川だけに限らしていただきますが、利根川の本川で堤防をつくる必要のある長さが四百九十二キロあると考えてございます。それのうち百三十一キロが完成堤防と言えるのではないかと思っておりますので、率で申しますと二七%程度、切り上げて三割程度、こういうふうに認識をいたしております。
  727. 吉川春子

    吉川春子君 二七%、戦後四十年かかってといいますか、完成したということですから、大変前途遼遠だと思うんですけれども、これでは住民の安全というのは守られないんじゃないか。なぜこのように計画がおくれているのか伺いたいんですが、その前に、これは完成するのはあと何年かかるんですか。
  728. 萩原兼脩

    政府委員(萩原兼脩君) お答えをいたします。  おくれているという認識はなかなか、何と比較しておくれているということになるか難しいところでございますが、それはおくといたしまして、あと何年ぐらいというお話でございますが、先ほど申しました、まず戦後起こりました最大洪水に対応するのに安全になる時期がというのは、大体私どもの試算ではあと十五年ぐらい、つまり二十一世紀初頭ぐらいを考えておりますし、二百年あるいは百年という大洪水にも大丈夫かということになりますと二十二年ぐらい。ただ、これは私ども「国土建設の長期構想」というものを六十一年八月に出しておりまして、これが二十一世紀初頭の国土建設の姿を描いた構想でございますが、それに事業費の伸び率を一割程度に見込んだことがございまして、その数字を使いますとただいま申し上げましたような年数になるということでございます。
  729. 吉川春子

    吉川春子君 あと十五年とか二十二年とか待たないといけないと大変だと思いますけれども、これに要する費用は、例えばことしの計算でいくとあと幾らぐらいかかるんですか。
  730. 萩原兼脩

    政府委員(萩原兼脩君) お答えをいたします。  いろいろ概算の部分がございますが、まず戦後の最大洪水に対してはという試算で申しますと、あと一兆二千億ぐらいかと考えております。また、百年二百年の洪水にということになりますと二兆七千億ぐらいかかろうか、これはいわゆる直轄の主要部分の区間でございますが、そのように私ども推算をいたしております。
  731. 吉川春子

    吉川春子君 あと一兆二千億とか二兆七千億とかのお金を二十二年もたたないと出せないというのはどういうことなんでしょうか。これは大蔵大臣にお伺いいたします。
  732. 萩原兼脩

    政府委員(萩原兼脩君) 利根川だけを見ていただきますとそういうことになるわけでございますが、利根川に準じます重大水系と申しますものが我が国全国に百九本あるわけでございます。それが全部二兆、三兆かかるということではございませんが、やはりそういうものを全部足しますと十五年なりなんなりの間に五十七兆円ですとか六十兆円の改修費用が要るわけでございますので、その中の利根川という目で見ていただければということかと思います。
  733. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 今の御質問は、恐らく治水事業について大蔵省はどう考えているか、こういう御趣旨だと思いますが、私ども治水事業につきましては、国土保全の観点からいいましても国民安全確保という観点からいいましても、大変重要な公共事業だというふうに思っております。限られた財源でございますので、結局その配分の問題でございますが、私どもは治山治水、こういった基本的な公共事業につきましては終始一貫重点を置いているつもりでございます。  六十三年度予算におきましても、治山治水事業、これは下水道、公園と並びまして、六十二年度に比べましてシェアをふやした事業でございます。私どもは治水事業につきましては、終始こういった姿勢でもって臨んでいるわけでございまして、六十三年度におきましては、事業費におきまして約一兆七千三百億というものを確保しております。
  734. 吉川春子

    吉川春子君 それでは道路の建設改修のために注がれた予算と比較してみたいと思いますが、五十七年から六十二年までの間、幾らですか。
  735. 萩原兼脩

    政府委員(萩原兼脩君) 数字にかかわりますものでございますので、私の方から読ましていただきます。  五十七年度、これは総額、有料、一般道路入ってございますが、四兆九百八十九億円、五十八年度四兆二千三百五十五億円、五十九年度四兆三千二百六十二億円、六十年度四兆六千九百三十九億円、六十一年度五兆七百七十七億円、六十二年度五兆七千五百三十二億円、このように当初予算でなっておろうかと思います。
  736. 吉川春子

    吉川春子君 それをトータルしますと十二兆四百七十億になるんですが、河川改修につぎ込まれた予算は同じ年度で、トータルでいいです、幾らになりますか。
  737. 萩原兼脩

    政府委員(萩原兼脩君) ちょっと手元に足してございませんので恐縮でございますが、一兆二千億オーダーのものが六年間続くわけでございますので、七兆数千億になろうかと思います。もちろんこれは河川改修だけでございませんで、ダム、砂防、いわゆる治水事業という数字と考えていただければと思います。
  738. 吉川春子

    吉川春子君 河川改修につぎ込まれた予算は二兆六千億ぐらいなんですね。道路の予算と比べまして何分の一かで、大変少ないわけなんです。さっき局長が治山治水において大変重点を置いているというふうにおっしゃられましたけれども、道路の予算と比べてこういうふうに少ない。これはどういうことなんでしょうか。
  739. 萩原兼脩

    政府委員(萩原兼脩君) 私がお答えしてよろしいかどうかのあれはあるのでございますが、私どもが所管いたします公共事業はそれぞれやはり事業目的がございまして、その事業目的に沿いました公共事業を計画的に実施するということがございます。また、事業の種類によりましては特定財源等財源的な面でいろいろな差がございます。そういう本体事業目的があるということと財政制度上の問題等でいろいろ公共事業には総体の事業量の差が出ておろうかと考えておるわけでございます。
  740. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 突然の御質問なものですから数字を持ってきていないわけでございますが、私が終始治山治水のような事業に重点を置いていると申しましたのは、戦後ずっと一貫して治山治水事業についてはできるだけの配分をしてきたということでございます。  そのシェアにつきましては、戦後シェアの固定化ということを言われますけれども、長期的に見ますと非常にシェアは変わってきております。二十年代、三十年代、戦後しばらくの間というものは公共事業の主体はむしろ治山治水といった国土保全系の事業でございまして、その後産業基盤というふうなことで道路がうんと伸びた時代もございますが、そういう時代でありましても基本的には治山治水事業のような基本的な事業については重点を置いてきた、先ほど申し上げたとおりでございます。  現時点で道路と治水事業とどちらが多いかと言われますと、それは道路でございますが、長い目で見ますと道路のシェアは落ちてきているということが言えると思います。
  741. 吉川春子

    吉川春子君 大蔵大臣にお伺いいたします。  軍事予算のことを考えると本当に悔しいわけです。P3C百機あれば利根川なんて一年で改修が済むわけですけれども、それもありますが、同時に、同じ公共事業の予算の中で、高速道路その他道路関係の予算に比べて河川改修の予算が大変少ない。それで大変な被害も発生しているわけですし、もう一度そこが切れないという保証がない。ちょうど今、四十年前に切れたところがまだその堤防が完成していないんですよね。それぐらい工事がおくれている。  だから私は、やはり災害から住民を守る、安全に暮らせるようにする、そういう意味で、高速道路も大事かもしれないけれども、しかし河川改修の予算がこんなに十五年、二十年たたないと一兆数千億の予算がつかないなどということでは沿川住民の安全も守られないと思うんです。これは私は利根川で言っておりますけれども、全国同じだという答弁があったわけでしょう。そういうことについて、大蔵省としてこういうところに予算をきちんとつける、そういう決意を大臣から伺いたいし、その予算をとるという決意を建設大臣から伺いたいんですが。
  742. 越智伊平

    国務大臣(越智伊平君) 政府委員からいろいろお答えを申し上げました。  昭和二十二年の災害時と今とは様相が変わっております。御承知のように昭和二十二年、戦後であります。戦時中に山を乱伐いたしました。山林の乱伐、ちょうど昭和二十二年ごろは根元が腐食いたしまして、また切り枝が落ちて山の崩壊というのが非常に激しかった、こういうこともございます。戦後ずっと治水——先ほども申し上げましたが、治山、農水省予算の方は答えておりませんので、植林あるいは治山、こういう面も戦後ずっとよくなってきております。  それでは絶対安全かといいますと、これは自然を相手のことでございますし、要は安全度を高めていくということに今努力をいたしておる次第であります。先ほどもお答えいたしましたが、利根川をとりましても戦後二十二年以降ダムを五つつくっておりますし、今二カ所工事中であります。これによってもかなりの治水、これはできると、こう思うのであります。  それでは絶対大丈夫かというと、そうは断言できないわけでございますけれども昭和二十二年当時よりははるかに安全度は高くたっておる、これが実情……
  743. 吉川春子

    吉川春子君 危なくなっているんです。危なくなっているというのがずっとさっきからの……
  744. 越智伊平

    国務大臣(越智伊平君) いやいや、そうは言っておりませんよ。先ほどお答えしたのも、当時よりは河川のみでも五〇%安全度は高くなっておる、こういうことであります。それに、奥のダムでの調節はさらに山での治山治水でございますから、当時よりははるかに安全度が高くなっておる。それではそれで絶対大丈夫かというと、降雨量とかいろいろなことで絶対に安全だ、こうは思っておりませんけれども、万一のことがないように今鋭意努力をしておる。危険危険と言いますと非常に皆さんが心配なさいます。ですから余り危険危険と言うことも——万一そういうことがないように今安全度を高めておる、こういうことでございますから、その点御了解をいただいて、道路は道路で非常に急ぎますし、また河川ももちろんでございますし、住宅も大事でございますから、それは大蔵省といろいろ話し合いましてでき得る限りの努力をいたしております。ただ、大蔵大臣もいらっしゃいますけれども、社会資本が充実していないことだけはもういつも言われておるとおりでございますから、今後も努力をしてまいりたい、かように思う次第であります。
  745. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは世界第二の経済大国と言われるにしては、国土保全とか社会資本というのはやっぱり私は貧弱だと率直に思っておりますから、ちょうどここへ来てそういうことが内外とも言われておりますので、そういうそれだけのものをつくり出して立派にしていかなきゃならないと思っております。防衛費を割いたらいいとは私は思っておりません。そんな簡単なことじゃないと思うのでございますが、やっぱりこれは一生懸命国土保全、社会資本整備というのはやっていかなきゃならない課題だと思っております。
  746. 吉川春子

    吉川春子君 利根川関係五県では、沿川住民の不安な気持ちを訴えて、概算要求のシーリング枠を外して治水事業費の大幅増、治水事業第七次五カ年計画の完全達成、こういうことを求めているわけです。  政府の施策が経済効果優先で、やっぱり国民の生命、財産を守る、こういう観点が大変弱いことが、予算がなかなかつかなくてそして工事がおくれている、こういう一番の原因だというふうに思うわけです。  また、行政改革の名のもとに公共事業費の大幅な削減も行われてきたわけですけれども、ぜひ大臣、この沿川住民の、要するに川のほとりに住む自治体の切実な要求、建設省に出ていると思いますが、それをぜひ心にとめて頑張っていただきたいと思いますが、どうですか。
  747. 越智伊平

    国務大臣(越智伊平君) でき得る限り努力をいたします。安全度を高めるように努力をいたします。  ただ、お願いをしたいのでありますけれども、用地とか、また家屋の移転とか、この点にもひとつ御協力をいただかないと、金の問題だけでございませんから、やはりその点も御協力をいただいて、安全度を高めるようにいたします。絶対に危険がないかいうと、そうではございませんけれども、先ほど申し上げましたように、昭和二十二年よりは安全度は高まっておりますから、今後努力をいたしますから、ひとつ御協力をお願いいたします。
  748. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で吉川春子君の質疑は終了いたしました。(拍手)  明日は午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後八時十九分散会