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1988-03-17 第112回国会 参議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月十七日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  三月十六日     辞任         補欠選任      上杉 光弘君     坂元 親男君      鈴木 貞敏君     高橋 清孝君      中西 一郎君     本村 和喜君      福田 幸弘君     北  修二君      佐藤 昭夫君     内藤  功君      勝木 健司君     小西 博行君      野末 陳平君     秋山  肇君      平野  清君     青木  茂君  三月十七日     辞任         補欠選任      伏見 康治君     広中和歌子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         原 文兵衛君     理 事                 伊江 朝雄君                大河原太一郎君                 小島 静馬君                 林  ゆう君                 吉川 芳男君                 久保  亘君                 矢原 秀男君                 吉川 春子君                 三治 重信君     委 員                 石井 道子君                 石本  茂君                 岩上 二郎君                 梶木 又三君                 金丸 三郎君                 北  修二君                 工藤万砂美君                 坂元 親男君                 志村 哲良君                 下稲葉耕吉君                 高橋 清孝君                 中曽根弘文君                 永田 良雄君                 野沢 太三君                 林 健太郎君                 降矢 敬義君                 増岡 康治君                 松岡滿壽男君                 本村 和喜君                 稲村 稔夫君                 小川 仁一君                 大木 正吾君                 千葉 景子君                 野田  哲君                 安恒 良一君                 及川 順郎君                 広中和歌子君                 和田 教美君                 近藤 忠孝君                 内藤  功君                 小西 博行君                 秋山  肇君                 下村  泰君                 青木  茂君    国務大臣        内閣総理大臣        通商産業大臣臨        時代理      竹下  登君        法 務 大 臣  林田悠紀夫君        外 務 大 臣  宇野 宗佑君        大 蔵 大 臣  宮澤 喜一君        文 部 大 臣  中島源太郎君        厚 生 大 臣  藤本 孝雄君        農林水産大臣   佐藤  隆君        運 輸 大 臣  石原慎太郎君        郵 政 大 臣  中山 正暉君        労 働 大 臣  中村 太郎君        建 設 大 臣  越智 伊平君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    梶山 静六君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  高鳥  修君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (沖縄開発庁長        官)       粕谷  茂君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  瓦   力君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       中尾 栄一君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       伊藤宗一郎君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  堀内 俊夫君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  奥野 誠亮君    政府委員        内閣法制局長官  味村  治君        内閣法制局第一        部長       大出 峻郎君        内閣総理大臣官        房審議官     本多 秀司君        内閣総理大臣官        房管理室長    文田 久雄君        公正取引委員会        委員長      梅澤 節男君        公正取引委員会        事務局経済部長  柴田 章平君        公害等調整委員        会事務局長    稲橋 一正君        総務庁長官官房        審議官        兼内閣審議官   紀 嘉一郎君        総務庁行政管理        局長       佐々木晴夫君        総務庁行政監察        局長       山本 貞雄君        総務庁統計局長  百崎  英君        青少年対策本部        次長       倉地 克次君        北海道開発庁総        務監理官     中田 一男君        北海道開発計画        監理官      大串 国弘君        防衛庁参事官   小野寺龍二君        防衛庁参事官   児玉 良雄君        防衛庁参事官   鈴木 輝雄君        防衛庁長官官房        長        依田 智治君        防衛庁防衛局長  西廣 整輝君        防衛庁経理局長  日吉  章君        防衛施設庁長官  友藤 一隆君        防衛施設庁総務        部長       弘法堂 忠君        防衛施設庁施設        部長       鈴木  杲君        防衛施設庁建設        部長       田原 敬造君        防衛施設庁労務        部長       山崎 博司君        経済企画庁物価        局長       冨金原俊二君        経済企画庁総合        計画局長     星野 進保君        経済企画庁調査        局長       勝村 坦郎君        科学技術庁科学        技術政策局長   加藤 昭六君        科学技術庁科学        技術振興局長   吉村 晴光君        環境庁長官官房        長        安原  正君        環境庁自然保護        局長       山内 豊徳君        環境庁大気保全        局長       長谷川慧重君        国土庁長官官房        長        清水 達雄君        国土庁長官官房        審議官        兼内閣審議官   荒木  寛君        国土庁長官官房        会計課長     佐々木 徹君        国土庁計画・調        整局長      長沢 哲夫君        国土庁地方振興        局長       森  繁一君        法務大臣官房長  根來 泰周君        法務省民事局長  藤井 正雄君        法務省人権擁護        局長       高橋 欣一君        法務省入国管理        局長       熊谷 直博君        外務大臣官房長  藤井 宏昭君        外務大臣官房外        務報道官     松田 慶文君        外務大臣官房審        議官       遠藤 哲也君        外務省北米局長  有馬 龍夫君        外務省条約局長  斉藤 邦彦君        外務省国際連合        局長       遠藤  實君        外務省情報調査        局長       山下新太郎君        大蔵大臣官房審        議官        兼内閣審議官   土居 信良君        大蔵省主計局長  西垣  昭君        大蔵省主税局長  水野  勝君        大蔵省証券局長  藤田 恒郎君        大蔵省銀行局保        険部長      宮本 英利君        国税庁次長    日向  隆君        文部大臣官房長  古村 澄一君        文部省高等教育        局長       阿部 充夫君        文部省学術国際        局長       植木  浩君        文部省体育局長  國分 正明君        文化庁次長    横瀬 庄次君        厚生大臣官房総        務審議官     黒木 武弘君        厚生大臣官房会        計課長      多田  宏君        厚生省健康政策        局長       仲村 英一君        厚生省保健医療        局長       北川 定謙君        厚生省保健医療        局老人保健部長  岸本 正裕君        厚生省生活衛生        局長       古川 武温君        厚生省薬務局長  坂本 龍彦君        厚生省社会局長  小林 功典君        厚生省保険局長  下村  健君        厚生省年金局長  水田  努君        社会保険庁長官        官房審議官    渡辺  修君        社会保険庁年金        保険部長        兼内閣審議官   佐々木喜之君        農林水産大臣官        房長       浜口 義曠君        農林水産大臣官        房予算課長    上野 博史君        農林水産省構造        改善局長     松山 光治君        農林水産省農蚕        園芸局長     吉國  隆君        農林水産省畜産        局長       京谷 昭夫君        農林水産省食品        流通局長     谷野  陽君        通商産業大臣官        房総務審議官   山本 幸助君        通商産業大臣官        房審議官     末木凰太郎君        通商産業省通商        政策局次長    吉田 文毅君        工業技術院総務        部長       山本 貞一君        資源エネルギー        庁長官      浜岡 平一君        中小企業庁計画        部長       田辺 俊彦君        運輸大臣官房長  棚橋  泰君        運輸大臣官房会        計課長      黒野 匡彦君        運輸大臣官房国        有鉄道改革推進        総括審議官    丹羽  晟君        運輸省運輸政策        局長       塩田 澄夫君        運輸省地域交通        局長       熊代  健君        運輸省航空局長  林  淳司君        郵政大臣官房経        理部長      山口 武雄君        郵政省貯金局長  中村 泰三君        郵政省簡易保険        局長       相良 兼助君        労働大臣官房長  清水 傳雄君        労働大臣官房会        計課長      椎谷  正君        労働省職業安定        局長       岡部 晃三君        建設大臣官房長  牧野  徹君        建設大臣官房会        計課長      鹿島 尚武君        建設省建設経済        局長       望月 薫雄君        建設省住宅局長  片山 正夫君        自治大臣官房長  持永 堯民君        自治大臣官房総        務審議官     小林  実君        自治省行政局長  木村  仁君        自治省財政局長  津田  正君        自治省税務局長  渡辺  功君    事務局側        常任委員会専門        員        宮下 忠安君    参考人        税制調査会会長  小倉 武一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和六十三年度一般会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和六十三年度特別会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和六十三年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 予算委員会を開会いたします。  昭和六十三年度一般会計予算昭和六十三年度特別会計予算昭和六十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。     ─────────────
  3. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和六十三年度総予算案審査のため、本日、税制調査会会長小倉武一君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、外務省国際連合局長から発言を求められておりますので、これを許 します。遠藤国際連合局長
  6. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 国際人権規約B規約の第二回報告書に関しまして、本件報告書国連文書として配布されるまで公表を差し控えさしていただきたいと存じますが、御関心の部分につきまして御要請があれば、その要旨を後刻報告いたします。     ─────────────
  7. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) それでは、これより千葉景子君の残余総括質疑を行います。千葉景子君。
  8. 千葉景子

    千葉景子君 B規約報告書について御答弁をいただきましたが、この文書は本来国会に明らかにされるべき文書でございまして、議員からの要求があればその全文を明らかにしていただくこと、これを再度強く要望しておきたいと思います。  それでは、引き続いて残りの時間、アイヌ民族にかかわる諸問題について質問をさせていただきたいと思います。  中曽根総理単一民族発言をなさいまして、アイヌ民族皆さんあるいは国民から大変大きな批判を受けました。それを踏まえて今回、去る一月二十九日の参議院本会議における我が党菅野議員代表質問に対して、総理外務大臣は、アイヌ民族としての独自の宗教及び言語を有し、また、文化の独自性を保持していると認めながらも、憲法のもとで諸権利を否定されていないと御答弁なさっております。  まず、総理外務大臣少数民族であるアイヌの人々の生活実態、どうお考えになっていらっしゃいますか。
  9. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 私は、残念ながらまだそうした方々生活に触れたことはございませんが、いろんな書き物によりまして、本会議場答弁いたしたとおりのことであると思っております。  しかしながら、やはりそれらの方々憲法のもとにおいては一つの権利を同じように享受されていることを否定されておらないとは申すものの、差別ということに関しましては、あるいはそうしたものも否定できないのではないかと、かように考えております。
  10. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 外務大臣からお答えがございましたが、個別の差別事件というようなものが全く存在しないというふうには私も思っておりませんが、憲法のもと全く平等であるという事実認識の上には立っております。
  11. 千葉景子

    千葉景子君 今憲法のもとでは平等の権利を保有しているということでございますが、まだ現在残っている北海道土人保護法、この中には、取得した土地、個人の財産に物権などを設定する場合はアイヌ民族皆さん知事の認可を必要とする、こういうような差別的な条項が残っている。あるいは日常にも学校、結婚、就職などに厳然として差別がある、こう言われているところでございます。こういう問題についてもっと積極的な施策を講ずべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  12. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 御指摘の面に関しましては、十分調査もいたしまして、そして今のそれが知事に関する権限の部分ならば自治大臣とも御相談申し上げ、前向きの検討を行いたいと考えております。
  13. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 宇野外務大臣から申し上げたとおりと理解をいたしております。
  14. 千葉景子

    千葉景子君 この問題については、従前から総合的にアイヌ民族問題を考えるような審議機関が必要ではないかと言われておりまして、先輩の岡田春夫議員からもこのような質問が再度なされまして、五十年には福田国務大臣が、年度内という期限を切ってお答えすることは困難だけれども、審議会の設置について前向きでは考えてまいりたいと、こういう御答弁もなさっています。こういう総合的な機関窓口、これらを設置する必要があると思いますが、いかがでしょうか。
  15. 粕谷茂

    国務大臣粕谷茂君) 今御質問のありましたような関係で、昭和四十九年当時、ウタリ対策政府窓口について議論がありました。これを受けて、昭和四十九年の五月であったと思いますが、政府内に北海道開発庁窓口とする北海道ウタリ対策関係省庁連絡会議というのを設置して、それ以降、この会議を通じて関係省庁の緊密な連携のもとに北海道ウタリ福祉対策について協力し合ってきたというようなことでございます。これからも積極的にウタリ対策を推進していきたい。  ちなみに、関係省庁は十省あります。もう既に御承知とは思いますが、御参考までにちょっと申し上げておきますが、総理府、それから大蔵文部厚生、農水、通産、労働建設自治、それに当庁でございます。
  16. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で千葉景子君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  17. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) この際、内閣総理大臣から発言を求められておりますので、これを許します。竹下内閣総理大臣
  18. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 正確を期するために読み上げさせていただきます。  税制には負担の公平を初め各種の理念を満たすことが要請されるが、社会経済実態が一層複雑化、多様化している現在、単一税目により、これらを十分に満たすことは困難である。  いかなる税目も、それぞれの長所を有する反面、何らかの問題点を伴うことは避けがたく、税収が特定税目に依存し過ぎる場合には、その税目の抱える問題点が増幅され、税負担の公平な配分を妨げ、国民経済に悪影響を及ぼしかねない。  したがって、所得消費資産等課税ベースを適切に組み合わせた望ましい税体系を構築していくことが必要であると思う。  過去の経緯を振り返ると、所得消費資産等課税ベースの比重はそのときどきの個々の税制の仕組み及びそのもとでの経済諸活動の推移に応じ変化しているところである。  財政が大量の公債発行への依存を余儀なくされた五十年代以降、税制については本格的な税制改正がほとんど行われてきておらず、国税収入に占める給与所得に対する源泉所得税ウエートは一七・六%(五十年度)から二一・八%(六十一年度)へと増大し、所得課税ウエートも六七・二%から六九・八%へと上昇しておる。他方、個別消費税制度をとる消費課税ウエートは二六・八%から二〇%へと低下しておる。この間、資産課税ウエートは六・〇%から一〇・二%へと上昇しておる。  以上のように、税負担勤労所得を初めとする所得に対する負担に偏ってきた結果、税に対する不公平感重圧感が高まってきている。  現行税制を放置する場合には、今後の人口の高齢化の進展に伴い、勤労所得への負担の偏りは一層進み、不公平感重税感が増幅されるものと思われる。  しかしながら、所得消費資産等に対する課税比率については、望ましい税の組み合わせが選択された結果として出てくる数値であり、望ましい税体系あり方については、税制調査会等において精力的に御審議いただいている現段階では、具体的な数値を示すことは困難である。  以上、整理しましたものを朗読さしていただいた次第であります。     ─────────────
  19. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) それでは、これより安恒良一君の残余質疑を行います。安恒良一君。
  20. 安恒良一

    安恒良一君 せっかく整理をしていただいたんですが、すべて物事を税調に逃げられる。今度の税改革竹下総理総理政治生命をかけてやるとまで頑張っておられる方が、そういう言い方では全く不満であります。しかし、これをまた押し問答しても時間がたちますので、私はこの文章から次のように読み取りたいんですが、竹下総理、どうでしょう。  あなたが五十年度を挙げられました。五十年度の所得税構成比は六七・二、消費課税は二六・八、資産は六とこう挙げられました。さらにこの中で勤労所得税の数字も具体的に挙げられました から、あなたの言下を読み取りますとそういう税の構成に直したい、こんなお気持ちをお持ちだというふうに思いますが、どうですか。
  21. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この昭和五十年度というものに安恒さんが焦点を合わせられた。それで五十年というのはどういう年であったかなということも私考えてみますと、公債発行に踏み切りましたのは四十年度補正予算でございます。だから、三十九年までは、言ってみればオリンピックの年までは公債は発行されていなかった。それから、いわゆる特例公債を発行したのがまさに五十年でございますから、そうすると、四十年の場合はまだ率直に申しまして三十九年にOECD等に加盟しましたものの、先進国という範疇に国際的にどれだけ認められておったかということになると幾ばくか疑問も残る。  そうすると、五十年というものはまさに近代国家として先進国の仲間入りを果たした後であるが、しかし財政的にはついに特例公債に踏み切らざるを得なかったということ。そうなれば当然のこと、税の問題というのがまた非常に大きくクローズアップしてきた時期である。少し長くなりましたが、五十年というものを分析してみると、そんなことが言えるのかなというふうに思います。  そこで税制抜本改革に当たりまして、所得消費資産等に対する課税比率として特定数値を念頭に置いているわけではまずございません。この点につきましては各種課税ベースあり方に対する議論を深める結果、所得消費資産等課税ベース組合わせも決まってくるものでありまして、税制調査会において精力的に御審議いただいておる段階では、具体的な数値を示すことは困難だということは、また重ねて言わざるを得ないのではなかろうかと思います。
  22. 安恒良一

    安恒良一君 いや、そう言いながら所得消費資産等の均衡のとれたと言われた以上、均衡というのはこれはやっぱり数値なんですよね。ですから、総理が言いにくいだろうと思って、私は五十年の数値を挙げてみたんですから、私はそういうふうに推察しますが、そのところの気持ちはどうですかと聞いているんですから、もうちょっと何か答弁があってしかるべきじゃないですか。
  23. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 五十年と、それから最も近い決算が既に出た六十一年と比較した場合に、一つの乖離が生じておるという事実は私も認めます。
  24. 安恒良一

    安恒良一君 それじゃ、この問題をこれ以上やってもしようがありませんから、私はきょうはこの点について明確な回答をいただくことについて結構だと言うわけにいきませんので、率直に言ってまだこれからいろいろ予算の審議が進みます。そこで予算の総括段階までには、これからまた私がさらに総理にお聞きします数字も出てきますから、それらを含めて明確な答弁をしていただくことを強く要求して、その次に入っていきたいと思います。  それでは、まずひとつ主税局長要求しておきました資料に基づきまして五十年代、六十年代の所得課税消費課税資産課税、これがどういうふうになっているか、数字でちょっと説明をしてください。
  25. 水野勝

    政府委員(水野勝君) ただいま御指摘の数字につきましては、五十年度につきましては総理からも御答弁ございましたように、所得課税六七・二%、消費課税二六・八%、資産課税六%でございました。五年後の五十五年度におきましては所得課税六九・五%、消費課税二五・二%、資産課税五・三%となってございます。おおむね五十年代後半も同じような傾向をとりまして、最新の数字でとれますところの六十一年度におきましては、所得課税六九・八%、消費課税二〇%、資産課税一〇・二%となってございます。
  26. 安恒良一

    安恒良一君 そこで総理にお聞きしたいんですが、国税ベースで見ますと資産課税ウエートが非常に低いんじゃないか。たまたま六十一年は一〇・二になっていますが、今の傾向値から、これは歴代自民党内閣はいわゆる資本蓄積の優先、優遇税制、そういう財政政策をとってきたと思います。ですから私は、今ずっと数値が示されましたが、総理としてはこの資産課税比率をどこまで引き上げられる気持ちがあるのか。すなわち、所得資産課税の均衡を総理が提唱されていますから、総理の決意、考え方をこの資産課税についてお聞かせ願いたいと思います。
  27. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる所得税法の中における資産課税として利子、配当、この問題については昨年の臨時国会において利子課税というのには一つの答えが出た、そういうことが言えます。  それからもう一つは、不動産所得というものに対しての問題は、いわゆる譲渡課税の問題と一緒になって恐らく議論がなされていく問題であろうというふうに思います。  それからいま一つは、最近議論に出ております、従来からいえば固定資産税等に代表されるでございましょうが、いわゆる未実現の所得というものを対象にする資産に対する課税という問題も出てくるでございましょうから、それらをみんな議論して整理整とんしていかないと、比率の上に出てくるものもやはり今この辺が妥当だと言うことは難しいではなかろうか。ただし、直接税の中における資産所得給与所得に着目した税に対する不公平感は現実存在しておるではないか、こういうことでございます。
  28. 安恒良一

    安恒良一君 総理、OECDでの分析、それから我が国の税法学上の所得消費資産、この分析だけで議論をすると、例えば今総理がおっしゃったキャピタルゲインは所得税なら所得税という見方になるわけですね。それから土地の譲渡税もです。しかし、我々が今この国会でかなり議論しているのは、いわばキャピタルゲインというのはやはり資産課税的だと。これは税法学上じゃありませんよ。そういう議論をしているわけですから、そこのところもある程度心得て答弁をしてもらいたいと思います。  そこで、同じく主税局長に私が資料を要求しました国民所得比の所得消費資産課税比率の変化を五十年、それから飛び抜かして五十八年以降各年ごとにちょっと言ってみてください。
  29. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 国民所得比に対しますところの数値といたしましては、昭和五十年、所得課税七・九%、消費課税三・一%、資産課税〇・七%、合計一一・七%でございます。五十八年度以降につきまして申し上げますと、五十八年度、所得課税一〇・三%、消費課税三・六%、資産課税一・一%で、一五・〇%となってございます。五十九年度、所得課税一〇・六%、消費課税三・六%、資産課税一・一%、合計で一五・三%でございます。六十年度、所得課税一〇・八%、消費課税三・四%、資産課税一・二%、合計一五・四%でございます。六十一年度、所得課税一一・三%、消費課税三・二%、資産課税一・六%で、合わせて一六・二%となってございます。
  30. 安恒良一

    安恒良一君 総理のお手元にもその数字は行っていると思いますが、これで見ますと、国民所得比で見ますと所得課税が非常に重税になっている。特にその中で勤労所得税がさらに問題がある。  そこで、具体的な数字をちょっと言ってみますと、いわゆる所得消費課税比率はこれでは十対三なんです。それから所得資産課税は十対一なんですよね。ですから、このどちらの是正を優先すべきだというふうにお考えでしょうか。総理お答えください。
  31. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど安恒委員の御指摘になりました資産課税は、六十一年度では確かに一〇・二になっておるが、六十、五十九あたりは七、七、八というような比であってと、六十一が非常に高くなっておるがと、それはそのとおりでございます。そのとおりでございまして、この場合の資産課税は、御指摘になりましたように、相続税、それから有価証券取引税、印紙収入などを含んでおりますから、土地とか株とかいうものが多分この六十一年に大きく反映したと、それは御指摘のとおりなんでございますが、一方、国税と地方税とを合わせました額で見ますと、資産課 税というのは実はもう五十五年、五十年ごろから一三に近うございまして、五十八は一三・八、五十九は一三・七、六十は一四・三でございますので、国税につきましては安恒委員の言われますような現象が見られますが、地方税を合わせますと、これは地方税の場合には固定資産税、不動産取得税等が当然入るものと考えますが、意外に資産課税比率が高い、六十一年だけが高いのではなくて、合わせますとかなり高いのではないかという印象を持っておりますので、資産課税が軽課されているというふうには私は考えません。  殊に、安恒委員の言われましたように、株式の譲渡所得、土地の譲渡所得は、この場合には当然のことながら所得課税に分類されておるわけでございますが、実はそれには資産課税的な要素がございますから、いろいろ考えますと、資産課税そのものが我が国の場合もっと高くなければならないのかどうか、地方税、国税を合わせますと、私は必ずしもそうは言えないのではないかという感じを持っております。
  32. 安恒良一

    安恒良一君 私の要求した資料の中で地方税のこと、もちろん地方税は税の仕組み自体が資産課税ウエートを置かれていますからそうなっているんですが、私はやはり今国税の問題を一つの焦点に当てて議論をしているわけなんだ。ですから、いずれにしましても問題は、私はやはり国税の場合で見ますと六十一年の突出はありますが、どうも所得資産、こういう比率から見ると非常に——消費の方はこれで見ると大まかにラウンドナンバーにすると十対三になるわけですよね。ところが、資産の方はこれ大体ずっと、六十一年だけ除きますと大体十対一なんです。これはラウンドナンバーで見ていきますとそういうことです。  ですから私は、それはなぜかというと、非常に資料でもアンバランスが出ていますし、金持ち日本と言われています。それは何かというと、一部の資産家が巨額な資産をつくって、それでむちゃくちゃなことを今やっている。マネーゲームに走っている。ヨーロッパへ行って城を買ってみたり、アメリカへ行ってビルを買ってみたり、いろんなことをやっているわけですからね。そんなことを考えますと、私は何ぼ何でも国税の段階で十対一というのはやはり無理じゃないか、十対一。やはり将来、国の財源はこういう資産に重課税をかけるべきではないだろうか。例えばキャピタルゲインという問題も、これは税の分類上では所得ですが、そうじゃなくて一つの資産というふうに見て私は議論をしようということを前段言ったわけですから、それらを含めて国の財源がここに一つあるということは、総理、どうですか。
  33. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに安恒さんおっしゃいますように、区分の仕方で見ると、資産等ということになると相続税と取引所税、有価証券取引税、そして印紙収入、こういうことになって、私が所得税法上における所得の分類でちょっと申しました資産所得といえば利子、配当、不動産譲渡、こんなことで申し上げたわけでございますから、それについての私は分類を正確にいたしておりません、率直に申しまして。所得税法上の中における資産に着目した所得ということには分類しておりませんので、正確に数値等を申し上げる自信はもちろんございませんが、今いろいろ直接税の中でいわゆる所得税の中における不公平感というものは、その所得税の中の資産所得給与所得等においてあるという感じ自身は私も持っております。
  34. 安恒良一

    安恒良一君 どうも総理は感じだけで言われますが、私はこの点もはっきりお考えを総括のときまでにまとめておいてもらいたいと思いますのは、今総理が言ったような状況の中で、サラリーマンの一つの大きい不満というのはキャピタルゲインについてはもう課税するのが当然だという、これがサラリーマンの考えなんですね。そのほかに、今私が言いましたように、例えば土地の譲渡所得、これも所得税ということに税法上ではなりますが、これに対しても重税を課すべきだ等々、いわゆる資産課税、俗に言う資産課税ですね、税法上じゃなくて、に対してはっきりこれとこれはやっぱり増税するんだということについて、総理はどうもスローガン的で中身をおっしゃいませんが、少なくともこの次には、例えば資産課税についてはこれとこれとこういうものは増税しなきゃならぬのだと、こういうことについて、それから計数的にもひとつ総理、考えておいていただきたいということを申し上げます。  それじゃ次に、私がこの会場に配りました資料——失礼しました。一昨日、配ってあるそうです。これをひとつ見ながら総理お答えをお願いしたいと思いますが、これは政府の出した統計資料を私の方で整理したものにすぎません。  国民所得を基準にとってみますと、五十年と六十一年度を比較しますと、この間は二・一倍になっています。消費は二・二倍になっています。資産は実に三・九倍にふえています。これは数字が示しています。それから今度は、俸給所得と利子、配当所得、そして今度は賃金の伸びについて比べますと、五十年と六十一年を比べますと、賃金・俸給所得が二・一倍の伸びに対して、利子所得は二・四倍、配当所得は二・七倍に伸びています。ですから、これから見ると国民所得に対する比率で見ても賃金・俸給の割合が低下している一方、利子、配当所得が上昇していることがおわかりだと思う。  ところが逆に、給与所得税、利子課税、配当課税の動向を見ますと、五十年と六十年を比べますと、給与所得税が三・三倍と大きく伸びています。利子所得税は二・四倍、配当所得税は二・三倍にとどまっております。それからまた、同期間における国民所得に対する比率も、給与所得が二・二から三・五に飛びはねているのに対し、利子所得は〇・六から〇・七、わずかに上昇。配当所得に至っては〇・二の横ばいであります。  これらの資料の中で、国民所得の伸びの差だけ資産課税をふやせとか、消費所得への税を私は今のままでいいと言っているのではありません。しかし、以上の表を見ていただけばわかりますように、資産課税を改めるための基準を国民に示して、国民も納得する基準で均衡を図るように努力をしたらどうなんだろうか。ただ耳ざわりのいい言葉だけでいわゆるスローガンだけ言っておったのでは政府の責任は果たされないんじゃないかと思います。  ですから、均衡化の基準、またどのように均衡を達成するのか。現在政府にはないようでありますから、これらの資料等も提出をいたしましたから、早急に政府間で詰めて、どうぞ均衡値について考え方を次回示していただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  35. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 安恒さんからちょうだいしました資料で私なりに分析してみますと、賃金が二倍、税は三・三倍、資産所得たる利子、配当は二・四倍、税も大体同程度、勤労所得資産所得負担がアンバランスと。それから国民所得消費は二倍、資産のストックは三・九倍、そういうこと。それから国税収入の累年比較等を見させていただきますと、資産課税国民所得比は、五十年から六十一年で〇・七から一・六とか、いろいろな問題が指摘されておるわけでございます。こういう資料に基づいて、まさに税制調査会で御議論がいただけるものではないかというふうに思っております。  そこで、可能な限りの努力をいたしますが、仮にある時期までに税制調査会等の姿、形が少しあらわになったといたしましょうか。そうすると、幾ばくかの仮定の前提は置かしてもらわなきゃならぬけれども、精いっぱい御要請にこたえる努力はいたします。
  36. 安恒良一

    安恒良一君 総理が努力を約されましたので、私は重ねて申し上げておきたいと思いますが、やはり肝心なことをすべて税調に任せるのじゃなくて、今国民総理に聞きたがっていることは、所得課税構成比を何%下げてくれるだろうか、その場合の税の財源は消費税に取られるのか、それとも資産課税に取られるのか、どこをどう賄うのだろうかと、このことを国民総理から聞きたがっているんです。そのことを総理から聞いてこそ 国会における税改革議論はできるんですよ。  ですから、今のところ政府は答えようがないと、こういうことでありますが、私はそういうことをすると国会の税制論議というのは入り口でまた立ちどまることになると思う。あなたは国会でたくさん論議してくれと我々に言っておられるわけですから、そういう意味からいってもぜひとも今度は総括の段階までに、いろんな数字を申し上げましたから総理の考え方を聞かしていただくことをお願いして、この点は終わりたいと思います。
  37. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 関連質疑を許します。野田哲君。
  38. 野田哲

    ○野田哲君 今昭和六十三年度予算の審議が続けられておりまして、総括質疑では我が党の質問はこれが最後になりますので、この機会に総理大蔵大臣、関係大臣の見解を伺っておきたいと思うんです。  憲法六十条による昭和六十三年度予算の自然成立の日は四月八日であります。逆に言えば、四月七日までは参議院としての審議期間を保証されているわけです。例年の予算の審議日数の例を見ても、数日間はどうしても四月に入らざるを得ないと思うんですが、政府は暫定予算の準備をしておられますかどうか。
  39. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) この問題につきましては、過去におきまして当委員会において幾たびか委員長の御見解が示されておりますことは政府もよく存じておりますので、事の重大さは十分に認識をいたしております。  ただ、ただいまのところ、何とか予算の空白という事態を生ぜしめませんように、昭和六十一年三月二十八日の当委員会における御決議の趣旨等も踏まえまして、政府としては最善の努力を払いまして予算の一日も早い成立を期待いたしまして、当委員会が御審議を円滑に進められる上で政府といたしましても最大限の努力をいたしてまいりましたし、またいたす所存でございます。
  40. 野田哲

    ○野田哲君 空白が四、五日間でも生じたということになったときはどうされますか。
  41. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいまといたしましては、そのような事態が起こりませんようにひたすらこいねがっておる、政府といたしましては全力を尽くしまして御審議が円滑に進むことを願っておるわけでございます。
  42. 野田哲

    ○野田哲君 お手元にリストアップした資料をお配りしていると思うんですが、法務省それから郵政省、最高裁はちょっと連絡が不十分で見えていないと思うんですが、大蔵省、厚生省、それぞれ関係大臣から、リストに挙げている経費について支払い義務が生じた場合にはどういう対応をされますか、予算の空白の場合、お答えいただきたいと思うんです。
  43. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) まず、被収容者作業賞与金でございますけれども、これは監獄法によって収容者を釈放するときに支給するものでございますが、これは従来、空白期間が生じたときには協力団体であります矯正協会が立てかえ払いをしまして、それを予算成立後に国から矯正協会に対して支払うという方法をとっております。  それから供託金利子でございますけれども、これは法務局、地方法務局におきまして供託金としてお金を預かっておりますが、これを支払うときに利息をつける必要がございます。これは繰りかえ払いということで、会計法上認められた方法で処理をいたしております。  それから証人及び参考人の旅費でございますが、これは検察官が参考人を調べたときに旅費、日当をその請求によって支払うことになりますけれども、これは精算払いということでございます。  なお、裁判所の関係でございますが、国選弁護人の報酬も同じような取り扱いになるものと理解しております。  それから最後にございます法務省の食糧費でございますが、これは若干の持ち込みといいますか、若干の余裕がございますので、それを被収容者に食べさせておるという実情にございます。
  44. 中山正暉

    国務大臣(中山正暉君) 郵政省関連でございますが、郵便貯金の利子それから簡易生命保険の還付金につきましては、繰りかえ払いで出納官吏が持っておりますものでお支払いをいたしますので、御心配はございません。その後、郵便貯金特別会計それから簡易生命保険特別会計、郵便年金特別会計と郵政事業特別会計とで決済をいたしまして処理いたすことになっております。会計法の二十条に「郵政官署その他の官署の当該職員をしてその保管に係る歳入金、歳出金又は歳入歳出外現金を繰り替え使用せしめることができる。」と書いてございますし、予算決算及び会計令の第五十六条には、「郵政大臣は、郵政官署の出納官吏又は出納員をしてその取扱に係る歳入金、歳出金及び歳入歳出外現金を交互に繰り替え使用させることができる。」と書いてございますので、郵政省に関しては御心配ございません。
  45. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 大蔵省につきまして資金運用部預託金利子の御質問がございました。  この利子の支払いにつきましては、予算成立後に後払いをしたというのが六十一年度の措置でございます。
  46. 黒木武弘

    政府委員(黒木武弘君) 厚生関係の空白期間に対する対処でございますけれども、まず国立病院、国立更生援護施設における食糧費あるいは医薬品等購入費でございますけれども、前年度の持ち越し分で対処できると考えております。  それから年金給付における脱退手当金、死亡一時金でございますけれども、当然三月中に受け付けた分は前年度予算で支払うわけでございますが、四月受け付け分につきましては、受け付け後決定までに最低一週間は事務的に処理が必要でございますので、一週間程度の空白は支障がないと考えております。
  47. 野田哲

    ○野田哲君 今聞きますと御心配御無用と、こうおっしゃっているわけですから、四月七日まで目いっぱい予算審議を続けても何の心配もない、こういうことだと私は承りました。  そこで問題は、昭和六十一年三月二十八日の当委員会で、政府予算の年度内成立が期待し得なくなった場合には、財政法三十条の規定により対処するよう努力いたしますとの政府の回答を受けて、「来年度以降は国民生活に影響を与えないよう配慮して、財政法第三十条の規定に基づいて対処すべきであるとの意見が一致し、これを当委員会の決議とすることにいたしました。」と、こういう当時の安田委員長見解があるわけであります。  これについて、今の各省の答えを政府側としてはどう受けとめられておられるのか、大変矛盾があると思うんです。それからまた、予算委員長はどう取り扱われる方針であるのか、委員長の見解も承って終わりたいと思うんです。
  48. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) お許しをいただきまして政府の方から先にお答えを申し上げます。  ただいま各省庁から御質問に対しましてお答えを申し上げましたが、お聞き取りのように、これらはいずれも一種の何と申しますか、やりくりと申しますか、許された範囲での多少正常でないやり方で対処できないことはございませんがということを申し上げておるわけでございまして、好ましいことであるとは決して申し上げておりません。  御指摘の昭和六十一年の経緯をかんがみますと、三月の二十二日の段階予算委員会の与党を代表される理事から、政府に対しまして暫定予算の編成準備に入るようという御要請がありまして、政府はそのような御発言は重く受けとめておりますということを申し上げております。ただ、その後になりまして、御要請は重く受けとめておりますが、本年度においては諸般の状況を勘案し暫定予算の提出はお許しいただきまして、一日も早い本予算の成立をぜひともお願いいたしたいと存じますということを申し上げ、なお来年度におきましては云々ということを、ただいま御紹介のありましたようなことで申し上げたのであります。  したがいまして、ただいまの段階といたしましては、昭和六十一年三月二十八日における委員長 の御発言の趣旨、委員会の御決議は、政府といたしましてもよく承知をいたしております。それはよく承知をいたし重く受けとめておりますが、ただいまの段階におきましては、何とぞ当委員会におきまして一日も早く本予算の成立をお願い申し上げたい、このように考えておりますことを申し上げさせていただきます。
  49. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) ただいまの野田君の御質問に対するお答えについては、理事会において協議いたしたいと思います。
  50. 安恒良一

    安恒良一君 時間があと一分しかありませんから注文だけつけておきますので、次にあれしていただきたいんです。  政府は、税制改革の必要の中に高齢化社会の到来を挙げています。それに対する衆議院段階における最終段階で、二十一世紀初頭における社会保障の給付と負担の展望を明らかにされました。しかし、私これを分析しますと、これはほとんど従来予測された数字で、目新しいものはありません。さらに今後の高齢化社会にふさわしい政府の政策努力を盛った数字ではないのであります。国民がこれから高齢化社会へ向けての税制議論する場合に望んでいることは、少なくとも二十一世紀までの十二、三年間、すなわち年金、医療、各社会福祉施設、各社会福祉施設の提供の形態、また国の助成やかかわり方等々、高齢社会を想定した費用がどうなっていくのか。そして、自己負担社会保険負担税制負担等の区分の内訳をぜひとも十年分ぐらい出していただくことをお願いして、私の質問を終わります。
  51. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で安恒良一君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  52. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) この際、大蔵大臣から発言を求められておりますので、これを許します。宮澤大蔵大臣。
  53. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 過日、当委員会におきまして和田委員が為替介入額に関しまして御質問をされまして、それに対しまする御答弁を今日まで申し上げておりませんので、お許しを得まして御答弁を申し上げます。  為替市場における政府の介入が国民経済に大きな影響を与えるものでありますことは、先般の当委員会における和田委員の御指摘のとおりでございます。その意味におきまして大切な意味を持っておることは間違いのないところでございますが、これに関連いたします幾つかの数値を申し上げたいと存じます。  第一に、昭和六十二年中の外為資金の対民間収支は五兆四千二百七十三億円の散布超過でございます。  第二に、同じく昭和六十二年中の我が国の外貨準備高の増加は三百九十二億ドルでございます。  第三に、同じく昭和六十二年中の外国為替資金証券の残高の増加は六兆一千五百十億円でございます。  以上、和田委員の御質問に直接関係をいたします数値を御報告申し上げました。     ─────────────
  54. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、及川順郎君の質疑を行います。及川順郎君。
  55. 及川順郎

    ○及川順郎君 国際化の中で世界に与える日本のイメージというのは極めて重要でございますけれども、この点につきまして、先般来から経済問題に対する影響、これが我が国の影響が非常に大きくなっているということが議論されておるわけですが、私は、今後の方向といたしまして、もっともっと教育・文化・医療立国としてのイメージを前面に押し出しての国のかじ取りが必要ではないか、こういうぐあいに考えるわけですが、まず総理の御所見を承りたいと思います。
  56. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 我が国といたしまして、世界に開かれ、世界に貢献する日本と、こういう姿勢を確立して、平和への寄与と繁栄への国際協力を積極的に推進していこう。しかし、今及川さんおっしゃいましたとおり、平和に対する外交努力、これは当然のことであります。そうして、やっぱり客観的に感じておられるのが、経済政策面での国際協調と経済協力、こういうことに重点が志向されていはしないか、このようなある種の懸念からしての御質問だと思います。  おっしゃったように、文化学術文流の分野、医療の問題もおっしゃいました、そういう点でも積極的な役割を果たさなければならないと私も思いを等しくいたしております。
  57. 及川順郎

    ○及川順郎君 経済大国というこういう用語が横行しているわけでございますけれども、最近、パナマで政治、経済の混乱が続いている、アメリカのパナマへの経済制裁が続いているという状況の中で、さまざまな大国の処置に対する論評がございます。この点につきまして我が国政府としてどのような御見解を持っておりますか。この点につきましては総理並びに外務大臣の御所見を伺いたいと思います。
  58. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) せんだって、パナマにおきましては二人の大統領がおられて、一人は今パナマ国内を離れられて、ノリエガ将軍が支配する大統領が残っておられる、こういう状態でございます。経済的にはやはり日本とは非常に深い関係がありますが、一番近い国のアメリカでは、同将軍はいろいろと麻薬等々の販売をしておる。したがって、そうした麻薬がその手を通じてアメリカ並びに中南米に及ぶということは好ましいことではない。そんなことで経済制裁をしているところでございます。  だから、日本といたしましても、こういう場合の相手国政府をどのように取り扱うかという問題がございますが、クーデターのときなんかでございますと改めて承認するとか承認しないとかというような問題もございますが、今そうやって麻薬という一つの重大な人類に及ぼす影響大なる問題について、アメリカがいろいろ経済制裁をなしておる最中でございますから、我々といたしましては、その成り行きを慎重に見守る方がいいのではないか、こういう態勢をとっております。
  59. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ただいま外務大臣からお答えになったとおりの私も考え方を持っております。
  60. 及川順郎

    ○及川順郎君 十三日に青函トンネルが開業いたしまして、四月には瀬戸大橋が供用開始という状況、非常に華やかな開通の報道が続く中で、消えていく青函船に名残を惜しむ印象が私は非常に強く残ったわけでございます。  運輸大臣に伺いたいと思います。  現在、盛岡まで行っております新幹線、それから四国に乗り入れる新幹線、この新幹線問題につきましては、当委員会におきまして先日、やらないのではないという前向きともとれる御発言がございましたけれども、この二つの具体例をとりまして、北海道札幌まで新幹線を延ばすこと、それから四国へ乗り入れること、この新幹線につきまして経済性、必要性、計画の時期、この点についての所見を承っておきたいと思います。
  61. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 整備新幹線に関しましては、北海道線を含みまして今自民党と政府との間に二つの検討委員会をつくりまして、そこで財源の問題とそれから種々収支の見込み、その他地方の負担分とか、いろいろ条件を加味して順位の検討をしているわけでございます。八月までに結論を得るべく努力をしておりますが、北海道の場合には一応函館ということになっておりますけれども、先日私、青函トンネルを運転席に同乗しまして走った折に、トンネルも新幹線用の広軌が準備されておりますし、また、途中の半島の部分にも在来線が今走っているわけでありますけれども、新幹線の交差の土地なども確保されておりまして、やはり順位はどうなるかは別にいたしまして、日本の高速鉄道網の背骨を完成するために、函館だけではなしに、私の私見としては北海道の首都の札幌までつなぐことが望ましいのではないかという意見も述べたわけでございます。  四国の方は本四架橋が青函トンネルと同じような意味合いを持って本州をつなげるわけでありますけれども、これは整備新幹線の計画、一つ先の問題ではありますけれども、やがてはやはり検討の対象になり得るでしょう。また、政府が持って おります将来の高速鉄道網の中の有力な一つの手がかりになると評価しております。これは本四架橋の問題でございますけれども。  以上です。
  62. 及川順郎

    ○及川順郎君 青函トンネルの開業によりまして、一つは、このことによって青森、函館の地域が活性化していくという意見と、もう一つは、気がついたら地盤沈下していた、こういう二面性が懸念されるわけでございますけれども、これに対してふるさと創生論を唱える総理は、地盤沈下しないための国のてこ入れというものをどういうぐあいにお考えになっているか。  それから国土庁長官にも、地域の活性化あるいは地域対策という見地からこの点に対する考え方を述べていただきたいと思います。  それから北海道開発庁長官に、北海道の側から見たこの状況、今後の行く末に対してどういうようなお考え、見通しを持っておられるか、この点を伺っておきたいと思います。
  63. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) ただいまの問題につきましては四全総におきましても、青函トンネルの開通でインターブロック交流圏が形成されて、その間に一層経済地域の振興が図られると予測しているわけでございます。やはり両者間の交流が活発になることは間違いないじゃないだろうかな、こう思われるわけでございます。また、そういうことを予測して、既に青函トンネルを記念して博覧会が函館においても青森においても共同して開催される運びになっているわけでございます。  さらにまた、青森県と北海道で協議会を設けましてインターブロック振興計画を立てるという方向にも進んでおるわけでございますので、協議会でそういう具体の計画がまとまってまいりました場合には当然国土庁としてこれを支援していかなければならない、こう思っているわけでございます。
  64. 粕谷茂

    国務大臣粕谷茂君) お答えいたします。  青函トンネルの開通はかねてより北海道民の長年の悲願でありましたことは先生御承知のとおりでございますが、そういうことによって大量の人や物の迅速かつ安定的な輸送が確保できまして、今後の北海道の開発には一段とはかり知れないものが寄与されるのじゃないだろうか、こう思っております。特にトンネルの開通によりまして道南と北東北との二つの地域が緊密な接触が行われますので、一つの経済圏として新たに発展していくことが期待できるのじゃないだろうか、こういうふうにも思っております。  今国土庁長官がお話しになりましたように、道南地域においていろいろなイベントを考えておりますが、国土庁長官が申し上げました以外に、函館のテクノポリスの建設、それから函館、大沼などの無類の観光資源、これにトンネル開通の効果を生かしまして、内地からの観光客などに大幅に北海道においでいただくような、そういう地域の明るい見通しをつくっていこうじゃないか、こういうようなことでいろいろと考えておるわけでございます。  それから北海道開発庁としましては、函館新道の建設、それから空港、港湾の整備などを積極的に推進いたしまして、この地域の長期的な発展のために一層の努力をしていくという考えで今やっております。  最後に、先生のおっしゃるように、いいことばかり、楽観的に物を見るというばかりにはいかない、こう思います。地盤沈下のないようにぜひひとつ努力していきたいと思いますので、御鞭撻をお願いいたします。
  65. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 実はけさ、運輸大臣の御配慮で、私は特に工事関係者の皆さんとお会いする機会を得ることができました。  私自身、振り返ってみますと、関門ができましたのは私が中学生のときでございました。その後いわゆる山口・九州経済圏ということが言われるようになったなというふうに思っております。それから青函が昭和二十一年に地質調査に入っておりますから、私もまだ復員いたしましてまた学校へ帰っている当時でありました。実際工事が始まったのは昭和三十九年でございますから、鉄建公団ができた年であり、ほかにオリンピックがあったり新幹線ができたり、大変期を画した一九六四年というふうに思っておりました。先進国の仲間入りをした六四年であると同時に、いわば世界一のものをつくる工事の始まった年がまた三十九年だったなという思い出を実は深くしたところであります。  長くなって申しわけありませんが、昨年、青函連絡船がだんだんニーズによって変化して、多くの海員の方が陸へ上がっていくというドラマをNHKで二十分番組で十回やりまして、私にその評論をしてくれと言われましたので、三時間数十分一緒にして一遍見さしていただいたことがありますが、大変な変化を遂げまして、関門から本四架橋から青函から、日本列島が本当に陸続きになったというまさに快事であるということ、それによって、今もろもろお話がありました道南と北東北との共同した、一つの経済圏とでも言えるかもしれぬとも思うのでありますが、そういう発展が今後に期待できると同時に、しかし、あのドラマ化した映画を見たときの印象等からいたしますと、また別の意味におけるいわゆる地盤沈下というような課題が出てくる。  結局、その地域の方々がこれから一生懸命で努力され、それに対応するいろんな青写真を描かれたものを、四全総の精神に即して政府で可能な限りのサポートをしながら、やっぱりそういう地盤沈下というような懸念を具体的な問題として払拭していかなきゃならぬのではないかなと。感想めいたことを申しましたが、あえてお答えとさしていただいた次第であります。
  66. 及川順郎

    ○及川順郎君 この地域は日本の歴史の転換期で数々の文化遺産もございますので、ぜひ地盤沈下しないように手厚い御配慮をお願いしたい。これは重ねて申し上げておきたいと思います。  昨年暮れに南極の昭和基地空路開拓飛行のニュースが流れましたけれども、文部大臣にお伺いしたいんですが、三十二年間に及びます南極の観測活動の実績等を踏まえまして、最近は南極が学術調査から資源調査に傾斜しているというような憂慮の声も聞こえるわけでございますが、この点の認識をどのようにされているか、お伺いしたいと思います。
  67. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 南極観測は現在第三十次観測を実施しております。主に地質、生物を観測しておりまして、たまたま昭和基地周辺は隕石の収集が一番多いところのようでございまして、そういう点で大変貢献してきておるということも伺っておりますし、そういう意味では貢献度は大きい、こう考えております。  ただ、今おっしゃいますように、地質その他の研究の中で鉱物資源、こういうものも当然基礎的には研究対象にしていくと思いますが、これが一般の言葉で言えば乱開発につながりませんように、私どもとしては、領有権を別にいたしまして、今の南極観測がさらに今後効果を上げていくようにというふうに考えております。
  68. 及川順郎

    ○及川順郎君 最近の動きで指摘されている一つは自然環境保全の問題であり、もう一つが南極の領有権の問題であるわけでございますが、環境庁長官は南極の環境保全についてどのような御見解を持っておられますでしょうか。  それからもう一つは、領有権に対しまして外務大臣はどのような御見解を持っておられるか、お伺いしたいと思います。
  69. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 南極に関しましては条約がございまして、三十年たった暁、締結国のどちらかから提案してその運用に関して協議してもよろしいということで、具体的にはあと三年ばかりでその期限が来るわけでございますが、今のところどの国もそういうような動きはございませんし、また我が国といたしましては、この条約は半永久的な条約であってしかるべし、ましてや領土紛争など起こすべきところにあらず、領土分割なんかはあり得てはいけない、こういうふうな姿勢で今後も貫いていきたい、かように考えております。
  70. 堀内俊夫

    国務大臣(堀内俊夫君) 南極大陸というのは長く人の入らなかった地域でございますが、最近人間が入っていくというように環境が変わってまいりました。したがって、長く人間の住まなかった地域だけに、ここの生態系というものは自然環境としては非常に脆弱だという認識をしているところでございます。したがって、この地域の自然環境を保全するという意味で、人間が入ることによって別の種が入る可能性があるし、それによって生態系が乱れるという心配もございます。  この両面から南極条約というものが締結されておるんですが、これは外務省の所管になっておりますけれども、この条約自体の中で、現在基地を持っている国々、また条約に参加しておる国々の様子を見ると、まだ成熟しておらないなというように私は認識をしております。むしろ環境庁としては、南極のいわゆる大気圏のオゾンホールの方を懸念しておるというのが現状でございます。
  71. 及川順郎

    ○及川順郎君 外務大臣、仮定論ですけれども、昭和基地が領土権を主張するという根拠になり得るかどうか、その見解についてはいかがですか。
  72. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 条約のことでございますから私からお答えさせていただきますが、現在日本が入っております南極条約にも、南極条約の有効期間中にそれぞれの国が行います活動、例えば日本の場合でございますと昭和基地等々の活動は、それをもって領土権主張の根拠にはしてはいけないということがございます。したがいまして、南極条約が続く限り——これが大切な点でございますけれども、日本の活動は領土権主張の根拠にならない、こういうふうに理解しております。
  73. 及川順郎

    ○及川順郎君 総理、南極の領土権を主張してはならないということですから、今のこの資源開発競争に傾斜している状況に歯どめをかけ、またこれが平和的に活用されることを推進する意味におきましても、我が国として現行の南極条約を延長するという方針で積極的に関係各国へ働きかけるべきだと思いますけれども、内閣の責任者としていかがですか。
  74. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 我が国としては、今後とも現行の南極条約体制を維持発展させるという考え方に立って、他の条約当事国とも努力をしていくという考え方でございます。
  75. 及川順郎

    ○及川順郎君 外務大臣も同じ考えでございますか。
  76. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 総理のおっしゃったとおりでございます。
  77. 及川順郎

    ○及川順郎君 社会保障問題に移りたいと思います。  最近の国民医療費を増大させている大きな要因の一つが高齢者医療であるということはもう事実でございますが、医療費の軽減に対する対応策の中でこの高齢者医療をどう位置づけておられるか、その対策についてお伺いしたいと思います。
  78. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) 御指摘のように、今後の医療費を考えます場合に、高齢者の医療また医療費が極めて大きなウエートを占めておるわけでございます。医療費について言えば、現在総医療費のうちの二五%ぐらい、昭和八十五年には約四〇%ぐらいに伸びるのではないか、こういう推計もあるわけでございます。  我々といたしましては、高齢者の医療につきましては総合的に見直す必要があるというふうに考えておるわけでございまして、例えば無病息災という考え方から一病息災というようなことであるとか、また、住みなれた地域また自宅で療養をしていただくために在宅ケアを重視するということであるとか、また、介護とかリハビリ、そういう問題に重点を置くというようなことなどを含めまして、この点については総合的に見直していかなければならない、そういうふうに考えております。
  79. 及川順郎

    ○及川順郎君 今日の医療のあり方としまして、諸外国に比べて医師の診断やその技術に対する評価が非常に低い、こういう指摘があるわけでございますが、諸外国に比べまして、特に欧米先進国に比べて医師の技術に対する評価を対比したデータがありましたら、厚生省の方からお伺いしたいと思います。
  80. 下村健

    政府委員下村健君) 医師の技術料の国際比較でございますが、これはそれぞれの国の医療保険制度の仕組み、あるいは医療制度、医療慣行というふうなものがそれぞれ違いますのでなかなか困難でございますが、比較的我が国と似ております、やや出来高払い方式のような診療報酬点数表を持っている西ドイツと比較いたしますと、一九八四年現在で、往診につきましては西ドイツが二千百四十円、日本が二千円、それから静脈注射が五百七十円に対して日本が二百円、心電図については千三百円、日本が千五百円、それから盲腸、虫垂炎の手術でございますが、これが西ドイツが一万二千六百九十円、日本が三万七千五百円というふうなことで、物によりまして高低ございましてなかなか一概の比較ができないというふうな格好でございます。  アメリカあたりと比べますと、これはまた報酬の立て方が全然違ってまいりますが、アメリカの医療費はかなり高いということになっておりまして、技術料部分をとりますと差が出てくるというふうなこともあろうかと思いますが、アメリカの場合にはドクターフィーというふうな格好で医師の取り分というものが病院の収入とはっきり分けられているというふうな点もございまして、ちょっと単純比較は難しいという面がございます。
  81. 及川順郎

    ○及川順郎君 私が特に知りたかったのはアメリカの方でございまして、これにつきましては後で実態調査をした比較データを出していただけますか。
  82. 下村健

    政府委員下村健君) 直ちに比較できるデータというのはなかなか難しいのではないかと思いますが、アメリカの報酬が具体的にどうなっているかという点については資料を提出できるかと思います。
  83. 及川順郎

    ○及川順郎君 もう一つ、高齢者医療体制の一環で、在宅医療体制をもっと強化すべきではないかという感じが率直にいたします。患者が長期にわたっても安心して在宅医療が受けられるような制度が必要だと思うわけでございますが、これに対する厚生省の考え方を伺いたいと思います。
  84. 岸本正裕

    政府委員(岸本正裕君) 今後の老人医療におきまして、先生おっしゃるように、老人が長年住みなれた家庭で安心して療養生活が送れるように在宅医療を推進することは重要な課題であると考えております。  このためにいろいろな施策を行おうと考えておりますが、例えば在宅老人への訪問指導などのヘルス事業の充実を図っていきたい。また老人保健施設におけるデイケアの実施をしていきたい。老人診療報酬におきまして寝たきり老人に対する訪問看護料とか訪問診察料等の引き上げを図っていきたい。それから訪問看護のモデル事業を初めといたしまして在宅ケアの総合推進事業を実施いたしたいというようなことで、いろいろ多角的な施策を進めていきたいと考えております。
  85. 及川順郎

    ○及川順郎君 それからもう一点、医療費の国庫負担分の地方自治体へのしわ寄せ、これに対して地方自治体からとかくの問題点が指摘されておるわけでございますけれども、現在、全国の赤字国保団体を市町村別に見たデータがございますか。
  86. 下村健

    政府委員下村健君) 国民健康保険の状況でございますが、昭和六十一年度の国保の決算状況を見ますと、赤字市町村数が三百三十七でございます。地域的に見てみますと、北海道及び近畿の六府県でその約五割、百六十市町村がそういう地域に集中している。それから赤字の総額が千二百四十五億円ということになっておりまして、規模別で見ますと、都市部に比較的赤字が集中しているというふうなことになっております。
  87. 及川順郎

    ○及川順郎君 その原因をどういうぐあいに分析されておりますか。
  88. 下村健

    政府委員下村健君) 国保の赤字市町村を見ますと、大体継続して赤字になっておる市町村とそれから単年度赤字のような市町村と両方ございまして、現在の状況から見ますと、赤字の市町村数は減少するが赤字額が増大している。これは単年 度赤字のような市町村が比較的減って、継続的な赤字のところがますます赤字を出している、こんな格好になっているわけでございます。  その背景としては、ただいま申しましたように、地域的に比較的集中していて、しかも都市部の国保が赤字が多い、こういう格好でございます。地域的な集中ということの背景には、やはり医療費の地域差というふうな問題がある。それから都市で比較的出てくるということにつきましては、都市の国保というのは被保険者の把握を初めといたしまして国保加入者の流動が非常に激しいというふうな国保運営上の問題が背景としてあるというふうに考えております。
  89. 及川順郎

    ○及川順郎君 国民皆保険のもとで、医療保険制度につきまして国の負担、地方自治体の負担、それから事業主の負担、加入者本人の負担、ここに整合性が必要だという強い指摘があるわけですね。例えば老人医療は国の負担があるけれども退職者医療には全然ないというような、こういう整合性のない部分についての改善点、これに対してはきちっとメスを入れておられますか。
  90. 下村健

    政府委員下村健君) ただいまお話が出ました各保険者間あるいは保険制度間の不均衡という問題につきましては、私どもとしては給付と負担の両面にわたって公平を確保していくというふうな考え方をとっておりまして、これまでも、また今回も国保制度の改善をお願いいたしておりますが、そういった負担の均衡という方向に向かって一連の改革を行ってきた、今後もそういう方向で努力を続けていきたいというふうに考えておるわけでございます。  退職者医療と老人医療の国庫負担でございますが、老人医療につきましては、保険制度全体として老人医療費を共同で負担をしていく、こういう仕組みをとっておりまして、したがってこれについては老人医療制度発足の経緯も考えまして国庫負担をしている、こういう格好でございます。それから退職者医療につきましては、健康保険組合等を初めとする被用者の保険制度の共同負担、こういう格好になっておりまして、現在の考え方で参りますと被用者保険については国庫負担はしない、こういうことで参っておりますので、退職者医療につきましても国庫負担をしないということになっているわけでございます。  高齢者医療全体の問題につきましては、私どもとしては、今後全体的な高齢者の動向等を踏まえながら見直しの必要な時期もあろうかと思いますが、現在の考え方を申し上げますと以上のようなことになるわけでございます。
  91. 及川順郎

    ○及川順郎君 この点についてはなお改善の方向を見きわめていきたいと思っておりますが、自治体によりましては、例えば岩手県の沢内村なんというところでは、老人医療対策としまして予防医療に力を入れる、家庭診療なんかにもきちっと行ってよく食生活も指導するということで赤字から黒字に変えた、こういう実績を持っているところもあるわけでございまして、都市部においてもこういうことが推進されるように啓蒙をお願いしたいと思っております。  もう一つ、これに関連しまして、一九七七年アメリカ上院栄養問題特別委員会におきまして、五千ページに及ぶ食生活の改善に対するレポートが出されたということがございますが、厚生省ではこの資料については承知しておられますか。それと、この分析をもとにして日本の食生活改善に反映したという状況がありましたら伺っておきたいと思います。
  92. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 先生御指摘のレポートというのは、いわゆるマクガバン・レポートとして、米国の上院におきまして栄養と人間ニーズ特別委員会が一九七七年に公表しました「米国の食事目標」と題する報告書のことであると存じます。  この報告書で米国民の成人病予防のためにどのような食事をしたらいいのかというようなことについてポイントを示しておるわけでございますが、先生御承知のように、アメリカの場合には非常に脂肪類が多いとか糖類が多いとかいうことで成人病が非常に多い。心臓病が多い。日本においてはむしろ今までは低栄養ということが問題になったわけでありますが、最近の状況ではむしろアメリカと同じような状況がだんだん起こっておる、そういう意味でこの報告書は非常に示唆に富んだものだと思います。この中で、特に食事目標を達成するために食品の栄養成分表示というようなことの義務づけを提言しておるわけでございますが、私どもとしてもそういう動きを十分に参照させていただこうと思っております。
  93. 及川順郎

    ○及川順郎君 高齢化社会の医療ということから端を発して成人病、これを検討していきますと、やはり小さいときからの栄養のとり方等に非常に影響が出てくるということで、この点についての分析と文部省との連携を持ってこの点に対する対応をしておるような状況がございましたら、この点を御説明願いたいと思います。
  94. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 最近、我が国におきましても子供の肥満問題というようなことが非常に大きな問題になっております。厚生省といたしましても専門の先生方にお願いをして、いろいろこういう肥満の問題、あるいは若年者の成人病というような、非常に矛盾に満ちた言葉が今や起こっておるわけでございますけれども、こういう問題が将来の日本の国民資質の問題に非常に大きな影響を及ぼすということで、今の段階からそういう状況についての細かな分析、研究を行っておりますし、それをベースにした新しい食生活の指導というようなことにも力を入れようとしております。文部省ともこれらの点について十分連携をとっておりまして、例えば厚生省で策定しました日本人の栄養所要量に基づきまして、文部省におかれましても学校給食の所要栄養量基準というようなものも定めておられるところでございまして、今後とも十分さらに密接に連携をとってまいりたいと存じております。
  95. 及川順郎

    ○及川順郎君 文部省の方はどうですか。
  96. 國分正明

    政府委員(國分正明君) 御指摘のとおり、生涯を健康で過ごすというためには、バランスのとれた栄養の摂取ということが大事でございまして、このことは特に小中学校の段階で身につけるということが重要である、こういう観点に立ちまして、小中学校におきましては家庭科、それから保健体育科、それから学校給食指導の時間におきまして、健康と栄養の関係、あるいは食物と栄養の関係等について指導を行っているところでございまして、厚生省とも密接な連絡をとって進めているところでございます。
  97. 及川順郎

    ○及川順郎君 高齢者医療の問題でもう一点伺っておきたいわけですけれども、高齢者の生きがい、雇用、これは医療体制と非常に密接不可分な関係があるわけでございますが、この高齢者の医療面から見た厚生省の高齢者医療に対する考え方と、それから雇用、生きがい等から見た高齢者の医療体制のあり方に対する労働省の見解、労働大臣、この両面からの御意見を承っておきたいと思います。
  98. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 御承知のように、高齢者の失業率は今大変高いわけでございます。したがいまして、求人倍率は低いということになっておるわけでございます。現状においてもそうでございますけれども、これから高齢化社会というものは一層急激に押し寄せてくるわけでございまして、そういうさなかにありましては、どうしても今の日本の活力を維持していくためにはこの高齢者の雇用、就業の場の確保ということがこれからの重要な政策課題であるというふうに承知をいたしておるわけでございます。  その面からいいますると、お話がありましたように、まず高齢者の健康第一、もう一つは生きがい、働きがいという中での感じを持っていただくということでございますけれども、このことにつきましてはかねがね労働省としましては三つの柱を立てておるわけでございまして、何といいましても第一は、今の六十歳定年の定着が第一でございます。その次は、それを基盤の上に六十五歳ぐらいまでの雇用の延長、継続が図れないものかどうか、これを推進してまいりたいと思っておりま す。第三は、やっぱり高齢者の能力、適性に相応いたしました職業能力の開発事業、これの積極的な推進を図らなければならないと思いますし、さらにはまた生きがいを感ずる面におきましても、定年退職後の高齢者の短期的臨時的な雇用の場を確保することも大事なことであるというふうに考えておるわけでございまして、これらの柱を軸にもろもろの総合的な施策の遂行がどうしても必要であるということで、この面についてこれからも積極的な対応をしてまいりたい、このように考えております。
  99. 及川順郎

    ○及川順郎君 厚生省の方の考え方。
  100. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) 本格的な長寿社会を迎えまして、高齢者が安心して生きがいを持って生活をしていただく、そのための指針として六十一年に長寿社会対策大綱というものを決めておるわけでございまして、これはまさに人生五十年型から人生八十年型経済社会のシステムを構築して活力のある社会をつくっていく、こういうことでございます。  また、厚生省としては高齢者の医療、健康のために、御指摘のございますように、若いときからの健康づくり、栄養の問題、運動の問題、また良質な医療の提供ということに力を入れていくわけでございますけれども、そういう施策、政策が実効を上げるためには、その背景として例えば生きがいの問題であるとか居住環境が良好であるとか、それから雇用の面で充実するとか、そういうことが十分に行われる。そういう背景のもとに高齢者の健康増進もなお図られていく、かように考えております。
  101. 及川順郎

    ○及川順郎君 この問題について、今伺ってみますと共通点が非常に多いわけでございますけれども、この連絡会議のようなものの将来の発展充実についてはどのようにお考えになっておられますか。
  102. 高鳥修

    国務大臣(高鳥修君) 長寿社会対策につきましては、既に長寿社会対策関係閣僚会議というものが昭和六十年七月二十三日に設置をされておりまして、ここで各省庁それぞれ連絡をとりながらやっておる次第であります。
  103. 及川順郎

    ○及川順郎君 それは承知しているわけでございますが、その内容の充実について具体的に伺いたいわけです。
  104. 高鳥修

    国務大臣(高鳥修君) 委員御指摘のように、長寿社会の問題というのはこれからいよいよ重大になってまいりますので、それの閣僚会議が本当に充実したものになるように十分各省庁と連絡をとりまして進めてまいりたい、このように思っておりますし、特に総理が「ふるさと創生論」の中で「好老社会」という言葉を使って、お年寄りの方が生きがいを持って生活のできるような社会を築いていきたい、老いることが嫌われることではなくて、より豊かな老後というものを目指す社会をつくりたいということを提唱されております。そうした御意向も受けてひとつ対策を考えてみたいと、このように思っております。
  105. 及川順郎

    ○及川順郎君 具体的なこの動きについて、率直に言いましてまだ不満がございます。ぜひひとつこれは推進方をお願いしたいと思っております。  前に進めまして、年金制度が六十一年四月から新しい制度導入が始まったわけでございますが、第一号被保険者、この中で免除者数の最近の傾向、それから納付額と滞納額、この滞納率、このデータがありましたらお示しいただきたいと思います。
  106. 佐々木喜之

    政府委員佐々木喜之君) 国民年金の免除の状況と保険料納付の状況についてお答えをいたします。  新年金制度が施行された昭和六十一年度の保険料免除者数は約二百二十六万人でございます。この数は、強制の第一号被保険者に対しまして一一・九%という率になっております。昭和六十年度と比較いたしまして、免除者数は約三十五万人の減少、免除率は二・九%低下いたしております。  次に、保険料の収納の状況でございますが、昭和六十一年度におきますところの国民年金の保険料収入額は、制度改正直後の新しい年度でございますが、一兆二千百二十七億円になっております。未納の割合につきましては、昭和六十一年度、新しい制度になりまして、被保険者全体で見まして四・八%。なお自営業等、第一号被保険者のみで見ますと一七・五%という数字になっております。
  107. 及川順郎

    ○及川順郎君 要するに、現状を今の数字で分析いたしますと、どうも最近の傾向として免除者、滞納者が固定化してきているのではないか、こういう感じがするわけですけれども、この点に対する分析はどうお考えになっておられますか。
  108. 佐々木喜之

    政府委員佐々木喜之君) 個々の被保険者をとりまして固定しているかどうかという状況は把握いたしておりませんが、国民年金制度は御承知のように保険料の確実な納付が将来の年金給付に結びつくという仕組みがとられておりますので、従来から第一線の市町村におきまして各種広報を通じまして保険料納付の重要性について周知を図り、できる限り自主的な納付が行われるように努めてまいっております。毎月納付でありますとか銀行口座による保険料の振りかえ等を推進いたしまして納めやすい環境の整備に力を入れているところでございまして、このような対策を事業の最重点課題の一つとして今後とも推進してまいりたいと考えております。
  109. 及川順郎

    ○及川順郎君 六十年の三月でございますけれども、本院の審議の際にも指摘されておるわけでございますが、年金受給者が老後本当に年金を必要とするときに、フルペンションとしての五十九年度価格で基礎年金五万円、これを受け取れない人が出てくるという試算を発表しておりますね。今のような状況でそのような状況が改善されるという見通しをお持ちですか。
  110. 水田努

    政府委員(水田努君) さきの改革で、極力無年金者をつくらないようにしますために、従来のいわゆる保険料の負担能力のない方に対する免除のほかに、無年金者対策として、外国に在住していた期間を算入するとか、あるいは六十歳から六十五歳まで任意加入の道を開く等の方策を講じ、ただいま年金保険部長が申し上げましたように、保険料を納めやすい環境をつくっていくということで最大限の努力をし、極力低年金者が出ないように私ども努力をしてまいらなきゃならぬものと、このように考えている次第でございます。
  111. 及川順郎

    ○及川順郎君 そういうことを聞いているのではないんです。その姿勢を聞いているのではないんですよ、私は。要するに、この基礎年金の五万円を受給できないような加入者、こういう者が出てくる事態が解消されるかどうかという点についての御回答をいただきたいわけです。
  112. 水田努

    政府委員(水田努君) 六十年の国会審議のときに、五十九年の再計算の基礎として免除者をどの程度見込んでいるのだということの質問がございまして、これは一五%見込んでおりますと。それから滞納をされる、いわゆる未納者をどの程度年金計算上見込んでいるのかということに対しては、一〇%見込んでおりますと、このようにお答えしている次第でございます。
  113. 及川順郎

    ○及川順郎君 つまり受給できない加入者があるということですね。
  114. 水田努

    政府委員(水田努君) 免除者につきましては、免除の期間については国庫負担がつきますのでこれは無年金ということにはならない、いわゆる低年金という形になります。それから保険料を納めない方については、受給資格期間を取得していない、あるいは給付に結びつかない、こういう事態の生ずることはあり得るわけでございますが、私どもは、国民皆年金の体制下でございますので、そういう事態が生じないように最大限の行政努力をしてまいりたい、このように考えております。
  115. 及川順郎

    ○及川順郎君 総理、今のようなやりとりですが、国民皆年金という状況の中で、庶民大衆が一番年金を必要とするときに基礎年金の五万円、当時の試算である五万円というものが受けられない人ができないようにこの年金制度を改革する、改善していく、この約束を私はきちっとしていただきたいと思います。少なくとも六十四年、次期再計算期の時期が来るわけでございますけれども、 それまでにはこのような問題点をきちっと改善しておいていただきたい、このように思うわけでございますが、いかがでございますか。
  116. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 年金改革、これはかなりの時間をかけて、各党も土俵の上へ上がっていただいて、皆年金ということを念頭に置きながら構築してきた年金改正であったというだけに、制度的には最大限の措置があのとき講じられたと。  その当時からも、次の計算期までにさらにこれに対しての無年金者が結果として生じないように努力しろと、こういう趣旨の御質問が一番集中して行われておったというふうに私も思い出すわけでございますが、今確かに広報活動でございますとかあるいは環境づくりでございますとか、いろんな努力をいたしておりますが、私は当時からの考え方、そして今の御主張というものの線に沿って、さらに具体的な努力をしなきゃならぬ課題だというふうに思っておるところでございます。
  117. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 関連質疑を許します。矢原秀男君。
  118. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 六十二年の七月二十三日に企業年金等研究会の山下座長から当時の厚生大臣斎藤十朗殿に対して、「厚生年金基金の育成普及方策のあり方について」の中間報告が出されております。この中で資産の運用について、一つは「厚生年金基金の積立金は、毎年二〇%近い伸びを示し、昭和六十二年三月末で、計約十四兆五千億円の巨額に達しており、さらに、今後とも、増大を続けることが確実である。この積立金から得られる資産運用収入が掛金を上回っている厚生年金基金がかなり見られるように、資産運用の重要性は高く、その成果は将来の掛金や給付水準に大きく影響する。」、こういう云々の中で今日まで検討が進められているわけでございます。  そこで、公取委員長にちょっとお尋ねいたしますけれども、大蔵省、厚生省両省の合意で今回厚生年金保険法百三十条第四項の見直しを見送った、こういうふうに聞いているわけでございます。厚生年金基金創設時には基金の長期運用をする機関がなく、法的に特定の二業種のみに基金の運用を委託した経過というものがあるのでございますが、現今基金の長期運用をする可能な機関が種々育ってきておりますので、新しい競争原理の導入、安全効率の運用、こういう経済体制という一面からも判断されると思うんですけれども、厚生年金保険法百三十条第四項の見直し、この規制緩和の対象というものはあり得るのかどうか、これは公取委員長にお尋ねしたいと思います。
  119. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) ただいま委員が御指摘になりました点は、現在の厚年法百三十条を一つの政府規制として考えた場合に競争政策上どう考えるのかという御質問かと思いますけれども、一般的に言われておりますことは、これは釈迦に説法のような議論で恐縮でございますけれども、政府規制を問題にする場合に二つの角度がございまして、政府規制がある以上はそこに何らかの公共目的という政策目的があるわけでございますが、その政策目的の妥当性の問題、それから、仮にそういう政策目的を達成するために政府規制の方法によらずに市場原理なり競争原理によって十分そういう目的が達成されるんだという場合には、なるべく政府規制というのは必要最小限度にとどめるべきであろう、これは基本的な考え方であろうと思うわけであります。  ただいまの厚年法百三十条の問題につきましては、私どもが伺っております限り、やはり年金政策とか金融政策、いろんな政策上のまず議論といいますか、検討がなされなければならないということで、関係省間で今後掘り下げた検討が行われるということでございますので、当面は私どもはそれぞれの政策当局の作業の推移を見守ってまいるという立場でございます。
  120. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 三月十五日に確認書が確認をされているわけでございますが、この件について大蔵大臣と厚生大臣に、その具体的な確認の意思というものをここで明確にしていただきたいと思います。
  121. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) 厚生年金基金の資産運用の運用方法を拡大する、その方向で両省が協議をする、こういう趣旨でございます。
  122. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) この問題につきまして厚生省、大蔵省の間で先月以来鋭意協議を行ってまいりましたが、この問題につきましては今回の改正は見送りまして、引き続き両者間で鋭意意見交換を行っていくということを合意したわけでございますが、今後の検討に当たりましては、厚生年金基金は公的年金制度の一環であるということにもとより留意をいたさなければなりませんが、年金加入者の利益という観点から各方面の意見を伺いつつ、幅広い検討を行ってまいりたいというふうに考えているところであります。
  123. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 ここで問題になっておりますのは企業年金の加入の問題でございますが、六十一年度は厚生年金の加入者は二千八百万人、企業年金の加入者が七百二十六万人でございますが、この普及率の低い理由、厚生大臣、この原因は何ですか。そうして、六十三年度の改正案ではどういうふうなこれらに対応する具体案というものを盛り込んでいかれようとしているのか伺います。
  124. 水田努

    政府委員(水田努君) 厚生年金基金は、先生御指摘のとおり、昭和四十年代は急速に伸びましたが、五十年代に入りまして非常に微増という、横ばいという感じになっておりますが、やはり伸び悩んでおります理由の一つは、基金制度というのが必ずしも国民の中に周知徹底されていないという点が一つありはしないか。それから二番目に、基金の給付というものが必ずしも十分でないために魅力がないという面がありはしないか。それから三番目に、基金をつくります認可基準等に一つハードルの高さがありはしないか。私ども、こういうことが障害になっているのではないかということで、総じて申し上げますと、魅力のあるそれからつくりやすい基金をつくるという方向で、今国会に法案を提出すべく現在準備を進めているところでございます。
  125. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 私はこの関係で一つ提言をしたいんですけれども、中小企業の場合は同種の企業年金、同種同業ですね、そして今度の改正案に盛り込んでいらっしゃいますのは、工業団地での異業種は認めていこうかと、こういうことになっておりますけれども、通産省から商工委員会に提案をされております異業種の融合化法案というものが活性化の中で出ているわけでございますが、工業団地だけではなしに地域型基金の認可というものも提言されているわけですから、その地域の異業種の企業というものもやはり企業年金の枠内に入れる、こういうことを厚生大臣、やっぱり考えていくべきではないんでしょうか。
  126. 水田努

    政府委員(水田努君) 今御指摘されました地域型の基金というのは、これは認可事項にかかわることでございまして、直接には法案と関係のない事項でございます。今回の改正法案を昨日年金審議会に諮問いたしまして御答申いただいたのに、地域型の基金の創設を検討すべきである、こういう御答申をいただいておりますので、厚生省といたしましては改正法案が成立後、省内に検討のためのプロジェクトチームをつくりまして、早ければ六十四年度からそういうものについての認可体制がとれるように準備、検討を進めてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  127. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 総理大臣に最後に御質問を申し上げますけれども、企業年金の自主運用における受託機関の拡大方向、協議の合意がありますけれども、百三十条第四項の見直しについての御意見がございましたら、それからもう一つは、高齢化社会における企業年金についての将来展望、この二点、総理の御見解がございましたら伺っておきたいと思います。
  128. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) 総理の御答弁の前に。  最初の御質問につきましては、具体的に運用の拡大、その中身についてこれから両省で協議をするわけでございまして、いろいろな御意見を念頭に置きながら進めてまいりたい、かように考えております。
  129. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この運用の問題というのは、最初は郵政省の郵貯、簡保、そういうところ から議論が始まりまして、それから、だんだん累積した厚生年金基金の積み立て、こういう議論に入ってまいりまして、結論からいいますと、事務次官同士の覚書でございましたか、予算編成の際に最終的には行われて、これから拡大する方向で話し合いを詰めていこうと、こういうことであったというふうに記憶しております。それで、これはいわば所管する者が有利運用に携わった方がより効率的か、あるいは一元化でプロがやった方がより効率的かとかというふうな基本的な議論もあったことがございますが、今両省で作業しておられることに対して私は今見守っておるという段階だと言わざるを得ません。  それから後段の問題につきましては、年金改正の御議論をちょうだいした際も、いわば自立自助というような形の中で今後とも企業年金というものを育成する環境をよりつくらなければならぬという方向で、今日もなお努力しておられるというふうに承知をいたしておるところでございます。
  130. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 及川順郎君の残余質疑は午後に譲ることとし、午後一時まで休憩いたします。    午後零時二分休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  131. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 予算委員会を再開いたします。  昭和六十三年度総予算三案を一括して議題といたします。  休憩前に引き続き、及川順郎君の質疑を行います。及川順郎君。
  132. 及川順郎

    ○及川順郎君 国民年金、厚生年金の受給者は六十二年度末で約一千八百万人に上っている。この年金受給者に対する支払い通知の方法と通知書の形態をまず示していただきたいと思います。
  133. 佐々木喜之

    政府委員佐々木喜之君) 厚生年金保険、国民年金の支払いでございますが、支払いは受給者が希望する銀行等の金融機関の口座に振り込む方法と、それからやはり受給者が希望する郵便局で受け取る方法と二通りございますが、いずれの場合も支払いの都度社会保険庁の方から受給者に対しまして振り込み通知あるいは支払い通知書を発送しております。これははがきで行っております。
  134. 及川順郎

    ○及川順郎君 はがきで行っているということで、実は私も資料を持ってきておりますけれども、年金の金額が丸見えなんですね。これ非常に個人のプライバシーが侵害されるということで、手元に読売新聞さんを初めとして各紙に寄せられました受給者の声、これを私全部集めてみましたけれども、これは膨大な数ですね。こういう事態に対して、受給者の不満が沸騰しているということを総理は御存じでいらっしゃいますか。
  135. 竹下登

    国務大臣竹下登君) プライバシーに関することでございますので、そういう不満といいますか、があることは私も聞かされておりました。
  136. 及川順郎

    ○及川順郎君 この改善につきましては、第百二国会でも、本院における年金法改正審議で附帯決議にも盛られていることなんですね。大変年数がたっておるわけでございますが、それまでにどのような改善の努力をなさいましたでしょうか。
  137. 佐々木喜之

    政府委員佐々木喜之君) お尋ねのプライバシー保護の観点からの改善要望、これは十分承知をしております。また、国会でいろいろ御議論がございました経過も承知をいたしておりまして、この改善方策について検討を行っているところでございます。この検討の内容でございますが、支払い通知書の作成は、何しろ膨大な受給者に対しまして限られた時間内で迅速かつ確実な処理を行わなければならないという要請がございますので、このような要請にこたえられる実現可能な方法につきましていろいろ現在検討しているという状況でございます。
  138. 及川順郎

    ○及川順郎君 中身をもう少し詳しく言っていただけませんか。
  139. 佐々木喜之

    政府委員佐々木喜之君) 少しく具体的に実態を交えまして御説明申し上げますと、私どもの方で扱っております通知の枚数でございますが、一年間に大体六千万枚でございます。はがきの通知をいたします場合も、はがきを連続用紙で印刷をいたします日数が限られておりますので、限られた期間内に一日百万を超すような枚数、最大二百五十万通ぐらいの処理をしないといかぬというような状況でございまして、御要請のございますプライバシー保護のための措置と、この限られた時間内の迅速な処理というものをどうやって両立させてやっていくかというのが検討の最大の眼目でございまして、その点についていろいろ具体的な方法はないだろうかというようなことを検討しているわけでございます。
  140. 及川順郎

    ○及川順郎君 今の事務処理にどのぐらいの日数かかっておりますか。
  141. 佐々木喜之

    政府委員佐々木喜之君) 受給者の数は先生申されましたように毎年ふえているわけでございますけれども、現在大体千八百万人でございます。これに対する通知書を印刷いたします日数は最大で八・五日ぐらいということでございます。その期間内に通知書を作成しないといかぬというような状況でございます。
  142. 及川順郎

    ○及川順郎君 この日数でできる範囲の具体的な金額が丸見えにならないような工夫、こういう工夫に対してはどういうことを具体的に工夫いたしましたですか、検討の中に出てきている種類を言っていただけませんか。
  143. 佐々木喜之

    政府委員佐々木喜之君) 限られました日数の中で処理しなければならないという前提がございますが、現在検討しておりますものといたしましては、封入による方法は、これは技術的に相当手間と時間がかかるということでございますので、これにかわるような方法、例えばはがきを使いまして、かつプライバシーが守れるような方法はないかというような検討を今いたしているところでございます。
  144. 及川順郎

    ○及川順郎君 受給者の人たちからは、そのほかにも二、三点合わせまして具体的な改善の提言、これが書かれているわけです。こういう声が新聞社に寄せられているということは、私は厚生省の中にも来ているのではないかという感じがするんですけれども、こういう受給者の声をどのように受けとめておられますか、またどのぐらい来ておりますか。
  145. 佐々木喜之

    政府委員佐々木喜之君) 具体的な御提案というようなことで私どもの方へ来ておりますのは、例えばはがきに印刷をいたしまして、その印刷をいたしました金額の上にシールのようなものを張りまして、受け取った人がそれをすぐには見られないようにする。本人がそのシールをあけることによりまして初めて金額を知り得る、こういうような方法はどうかという御提案がございます。この点につきましては、ただいまそういったやり方についてまだ開発途上の段階でございまして、私どものところではその信頼性というような面で検討をいろいろしているという状況でございます。
  146. 及川順郎

    ○及川順郎君 今シールを張るお話が出ましたけれども、既に民間の金融機関や保険会社、ここではもう導入しているんですよ。現実に東京都では固定資産税、個人事業税の振りかえ済みのお知らせ、これは今おっしゃっておりましたシークレットラベル方式が導入されているわけですね。厚生省の中でも、援護年金支払いのお知らせにつきましてはこのようなことをやっている。  このようなことを私が言いますと、事務量が膨大だということを言うかもしれませんけれども、私が民間試算で試算をしてもらったところによりますと、大体今の数で十日前後で処理できるという試算が来ております。そういう状況がわかっていながら、以来何年間もこのことを放置しているということは、これは私は厚生当局の怠慢であると思うんですけれども、いかがですか。
  147. 佐々木喜之

    政府委員佐々木喜之君) 民間の金融機関等でシール張り方式を採用しているということも聞いておるわけでございます。  ただ、私どもの事情を申し述べさせていただきたいと存じますが、民間の場合は、例えば一日の処理が何万というようなレベルでございます。私 どものところはそれをさらに二けたぐらい上回る処理をこなさなければならないという状況でございます。その処理の迅速性の問題が一つございますのと、もう一つは信頼性、確実性の問題でございまして、大勢の受給者の方に確実にお知らせをしなければならない。途中におきましていろいろ不都合が生じますと社会的に影響もかなり大きなものになりますので、そういった点につきましていろいろなお検討しなきゃならないということでございまして、いわば新しいやり方については今開発途上にある、それについて私どもいろいろ検討しなければならないというふうに考えております。
  148. 及川順郎

    ○及川順郎君 開発途上で信頼性の問題を言われましたけれども、それは私は理由にならないと思うんです。既にもう導入しているところがあるということは技術的に証明されているということですよ。  それからもう一つは、日数の問題ですけれども、私がさっき十日前後でできるということを申し上げましたのは、今のやっております受給者に対して、この数から算定した試算の数字です。十日前後だったら、さっきは八・五日かかっている、今の日数に一日半加えればできるわけですよ。理由にならないじゃないですか。
  149. 佐々木喜之

    政府委員佐々木喜之君) 事実関係にわたる数字を挙げた説明で甚だ恐縮でございますが、今のラベルの機械でございますが、一日の処理能力がどのくらい見込めるかということでございます。その辺はまだ開発途上にあるわけでございますが、例えば一応一日三万という能力を持っておりましても、これを相当多数連結いたしまして事務を処理しなきゃならない。それだけ大量の機械を置くということになりますと、そのスペースの問題、あるいはまたそれを扱う職員の問題、いろいろ問題がございまして、信頼性の問題を別にいたしましても、なおかついろいろ検討させていただきたいというふうに考えております。
  150. 及川順郎

    ○及川順郎君 答えになっていないですね。今のこの機械の信頼性は、もう既にそれでは導入している東京都や、それから民間の保険会社、これは信頼性のないのを導入しているということですか。もう一回答えてください。
  151. 佐々木喜之

    政府委員佐々木喜之君) 繰り返しになりますが、処理時間が限られているという点がございます。一年に一回の通知でございますると、その点は若干日数の余裕もあろうかと思います。私どものところは、日数はぎりぎりの日数を使っております。したがいまして、その点が一つ違っておるという点と、それからこれも繰り返しになりますが、処理枚数でございまして、現在導入しておるところの実態を調査いたしますと、例えば一日十万枚程度の処理というような例もあるようでございます。私どものところは、それよりもけたが違ってきているという状況でございまして、そういう大量処理についてはなお信頼の問題を詰めないとならぬというふうに考えております。
  152. 及川順郎

    ○及川順郎君 これは話になりません。
  153. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) 私も先生と同じ疑問を感じまして事情を聞きましたところ、大体民間の場合には一日二万枚ぐらい、我が方の場合にはピーク時で一日二百五十万枚、分量に相当差がある関係で、正確さと迅速さ、こういう要件もプライバシーの保護と同様大事であるということから一応私なりに納得したわけでございますが、段々御指摘の点も拝聴いたしておりまして、私なりに事務能力が現状においてシステムとしてどれぐらい進歩しているか、開発されているかということを勉強してみたいと考えておりますので、しばらくお時間をいただければ幸いだと思います。
  154. 及川順郎

    ○及川順郎君 期限の見通しはできますか。
  155. 佐々木喜之

    政府委員佐々木喜之君) いろいろ検討事項もございますので、ただいまこの段階でいつごろというようなめどはちょっと申し上げかねるのでございますが、御要望の強いことは重々承知しておりますので、できるだけ速やかにという気持ちで取り組んでまいるつもりでございます。
  156. 及川順郎

    ○及川順郎君 これ以上押し問答してもこれは話にらちが明かないわけでして、いずれにしても、この処理能力その他につきまして実際に私も目で見、調べてみました。処理能力も十分あります。しかも、それが一挙にということが難しければ段階的に入れたっていいじゃないですか。お年寄りがせっかくいただく年金、それを事前に金額で見られる、誤配によって隣のうちに、あなたは幾らもらっているということが自然にわかってしまう、こういうことが現実に起きている。何年間もかかって検討してまだ結論が出ないなんというそういうお役所仕事では、お年寄りを大事にするなんというのはうたい文句でしかないと私は思うわけです。  総理、ことしは世界人権宣言四十周年、お年寄りの人権を守るという温かい行政サービスとして、六十三年度予算、この中から具体的にこれを実現する方向で努力する、その確約の私は御答弁をいただきたい、このように思うんですけれども、総理いかがでしょう。予備費を使っても結構です。
  157. 竹下登

    国務大臣竹下登君) あらかじめ予見せざりしことに対して予備費の使用ということもございますが、予算の中でどうやりくりするか、あるいは項の中で移流用でやりますとか、その辺はよく私も今の御質問に対して正確にお答えする準備が率直に言ってございません。  ただ、予算問題は別といたしまして、今の御提言については、厚生大臣からお答えいたしましたように、努力すべき課題であるというふうには私も重く受けとめております。
  158. 及川順郎

    ○及川順郎君 重ねて、ぜひ六十三年度中にお年寄りが納得のいく改善方法を示していただくことを期待いたします。  次に、輸入食品の安全確保の問題について。最近輸入食品が非常に多くなってきておるわけでございますが、この輸入食品の件数と輸入数量につきまして、年度別にここ五年ぐらいの数値をもし統計データがありましたらお示しいただきたい。
  159. 古川武温

    政府委員(古川武温君) 輸入食品の件数と輸入重量につきまして五十八年からでよろしいでしょうか。
  160. 及川順郎

    ○及川順郎君 結構です。
  161. 古川武温

    政府委員(古川武温君) 五十八年、輸入件数三十八万五千件弱、トン数で二千百九十二万トン。五十九年、三十六万四千件余り、重量で二千二百四十七万トン。六十年、三十八万五千件、二千二百六十七万トン。六十一年、四十七万七千件、二千二百二十八万トンでございます。
  162. 及川順郎

    ○及川順郎君 非常に数字としては大きな数字でございますが、五十八年以降の輸入食品のうちで、安全性のチェックに当たった件数と、そして不適格、不合格となったものの件数の内訳を示していただけませんか。
  163. 古川武温

    政府委員(古川武温君) 同じ期間で申し上げます。  五十八年は検査件数が三万二千四百件余り、不合格件数が四百六十九件。五十九年が三万五千二百件、不合格件数が四百四十四件。六十年が三万七千九百件、不合格件数が三百八件。六十一年が五万三千四百件で不合格件数が五百五十八件でございます。
  164. 及川順郎

    ○及川順郎君 大変な数になっておるわけでございますけれども、この輸入食品の検疫の検査体制についてその要員等を示していただけますか。
  165. 古川武温

    政府委員(古川武温君) 輸入検査につきましては、事前に輸入届書をとりまして、これにより食品の内容その他書類審査を行いまして、必要なものについてはそのものにつきまして行政検査あるいは自主検査を指示いたしまして検査をする、こういうふうなことで、不適格なものがあれば廃棄、積み戻し等の処分をいたします。  これに当たります検疫所の食品衛生監視員の数でございますが、二十の検疫所に七十五名を配置しております。
  166. 及川順郎

    ○及川順郎君 輸入植物の病虫害をチェックする人が六百人以上いるというぐあいに聞いているわけですね。これに対して七十五人というのは、私たちの食生活の安全を守るということではお寒い 体制ではないかと思いますけれども、現在審議しておりますこの予算の中でこれを十倍ぐらいにする計画を持っていらっしゃいますか。
  167. 古川武温

    政府委員(古川武温君) ただいま植物防疫の方の担当職員は六百名あるのに対して、食監の方は七十五名というのは大変少ないではないか、それで十分なのか、予算等十分な措置をする考えはないか、こういうふうなことでございます。  予算につきましては御審議いただいているところでございますが、食品衛生監視員につきましても年次増員をお願いしているところであります。また、その検査に当たる経費につきましても年次増額のお願いをしてまいっております。  そして、そういうふうなことにあわせまして、この検査が国民健康の上でしっかりと行われるようにするため、例えば統計情報部の大型コンピューターと検疫所を結びまして迅速な照合審査ができるような仕組みとか、あるいは高度の検査ができる備品等を配置するとか、こういうふうな努力をしてその体制の整備に努めております。
  168. 及川順郎

    ○及川順郎君 食品の中では農産物の輸入品も大変多くなってきておるわけでございますが、この安全性について農林大臣はどういう御見解をお持ちになっていらっしゃいますか。
  169. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 安全でなければ食糧ではない、こういう考え方で安全対策はしっかりやらなければならぬと、こう思っております。  残余は実務者から答えさせます。
  170. 谷野陽

    政府委員(谷野陽君) ただいま大臣からお答えいたしましたような基本的な考え方に従いまして、厚生省の方におかれまして食品衛生法に基づき適切に対処をいたしていただいているというふうに考えておりますが、私どもの立場といたしましても、植物防疫その他の観点から所要の対策を講じているところでございます。
  171. 及川順郎

    ○及川順郎君 聞くところによりますと眞木・スミス会談が行われたようでございますけれども、その中で代償措置等についても言及されたということを伺っておるわけでございますが、どう考えているのか、農林大臣、お答えいただけますでしょうか。  それから、アメリカの包括貿易法案に米、牛肉、かんきつに関する対日条項が盛り込まれたと、これもちょっと耳にしたんですけれども、こういう状況はございますか。
  172. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) お答えをいたします。  まず包括貿易法案についてでございますけれども、けさも一部報道をされておることを私も見ました。このことにつきましては、基本的に米国議会における立法作業の一過程であるということからして、直ちに私が取り上げて言及するのはいかがなものかと思っております。いずれにいたしましても、米については自由化はしない、言わずもがなのことであると、こう私は答弁をいたしておりますし、総理からもしばしば米の自由化はしない、自給をしてまいる方針に変わりはないと、こう申し上げているところでございますし、牛肉、かんきつにつきましては、これは早くテーブルに着いて話し合おうと、こう言っている、政府間の話し合いでございますのでその考え方に変わりはない、こう申し上げておきます。  なおまた、眞木・スミス会談と申しますか、何としてもテーブルに着いてもらわねば困るということで眞木経済局長を派遣いたしておりますが、現地で眞木経済局長が報道関係者に会見を求められ、申し上げておるとおりのことをまた申し上げたいと思います。  十五日から十六日にかけてUSTRスミス大使等と非公式に会い、牛肉、かんきつについては二国問の話し合いによる現実的な解決に向けて交渉のテーブルに着くよう主張した。これに対してアメリカ側は、自由化時期の明示がなければ交渉に入るわけにはいかないと従来どおりの立場を繰り返しておると。さらに米側としては、八八年四月一日に自由化が行われるべきものという基本的な考え方であり、我が方は経緯として明らかなように、随分時間はかかっておりますけれども四月一日から自由化をするという約束をした覚えはない、こういうことで、もしこの自由化の時期云々によりテーブルに着くことがおくれるようなことがあれば今度先様は代償の問題が起きてくる、こう指摘をしたということの報告を受けております。  けさもそれに関連した報道がなされておりまして、同盟国、パートナーとしてのスタンスに立った言動としてはいかがなものか、私もいささか感ずるところがございます。そして、いずれにいたしましても、前々から申し上げておりますように、友好国であれば報復とかあるいは代償だとか、そういうことではなしに話し合いをしようと、こう言っているのでありますから、私は、もし伝えられるようなその言葉について、真意が那辺にあるかを確かめなければなりませんけれども、率直に私の感じをむき出しに言わせていただければ極めて不愉快な発言である、代償措置をこの時点で求める、テーブルにも着かずに求めるということは甚だ不愉快である、こういうことを率直に国民皆さんの前に申し上げておきたい、あなたにも答えておきたい。  以上であります。
  173. 及川順郎

    ○及川順郎君 しっかりお願いします。  政府が四十年代の前半に肝いりしまして推進をしました酪農ですが、ECに追いつけ追い趣せというこういうかけ声でやりましたところの酪農の改善ですが、いよいよ今年度から元利償還期に入るわけでして、私は二月初頭に北海道の根室管区の酪農視察をしてまいりましたけれども、そこで当時七・二%の償還利払い、これが非常に重荷になっている。この利子は利子としてこれは尊重しなければならないし、またそのとおりで、これを変えることは難しいということは承知しているけれども、これにかわる対応処置として、せめて実質支払いの金額が四%内外におさまるような対応処置をぜひ国としても考えていただきたい、こういう強い酪農家の要請があったわけでございますが、農水省として具体的にこの問題に対する対応、お考えがその後具体的に詰まったかどうか伺っておきたいと思っております。
  174. 松山光治

    政府委員(松山光治君) お尋ねの点は根室の新酪農村の建設事業に関するものかと考えますが、御指摘のように、四十八年度から五十八年度まで事業をいたしまして、大規模な畜産基地が建設されたわけでございます。五十頭規模の酪農経営として入植ないしは整備されましたものが二百二十三戸、増反いたしましたものが六百十九戸、こういうことになってございます。皆さんそれぞれそれなりの御苦労があるわけでございますけれども、北海道庁の調査によりますれば、一応多数の者が円滑な償還が期待できるというそういう状態になっておる。ただ、一部には償還がなかなか難しい問題を持っておる、こういうことも承知をいたしております。  そこで、私どもといたしましては、やはりそういった農家につきましては生産コストを引き下げる、あるいは的確な経営なり財務管理を必要とする、こういうことで特別の営農指導を道を中心にしてやっていただいている。そのほかに自作農維持資金の融通等の措置も講じておるわけでありますけれども、御指摘のような今年度からの償還ということがございますので、利子負担を直接軽減するというのはなかなか難しい問題がございますけれども、公団への償還が円滑にまいりますように、償還が困難な農家がその償還金の一部を農協等の金融機関から借り入れる、そういたしました場合に、都道府県と国と一緒になりまして利子補給を行いまして、今御指摘になりましたような農家の負担が四・〇五%ぐらいを今予定しておるわけでありますけれども、そういった手当てをいたします償還円滑化特別対策事業というのを実施すべく今用意をいたしておるところでございます。  以上でございます。
  175. 及川順郎

    ○及川順郎君 次に移らせていただきます。  円高差益還元で経企庁が、六十年の十月から十二月、それから昨年の十月から十二月の対比で、六九・六%還元分はある、還元率は約七割達成したというこういうことが公表されまして、庶民感 覚から言うとなかなかそういう感じが出ないなという感じで実はいろいろと調べてみました。  それで、総務庁統計局で出しております小売物価統計調査報告、この本に基づきまして主なものを経企庁の当局で抜き書きをしまして、大体この統計調査をやった同時期と比較をしてみましたら、実際に消費者に入ってくるときには七割はおろか横ばいあるいは一〇%、二〇%、こういう状況が出ている。民間の雑誌に出ておりますのも見ましたら、大体同じような傾向である。この辺の落差というものは非常に大きいという感じがするんですけれども、この辺の分析、検討はどのようにお感じになっていらっしゃいますか。
  176. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 大変多岐にわたりまして勉強家で知られております先生に御答弁するアイテムの問題のこともございますから、政府委員にまず答弁させてみたいと思っております。
  177. 冨金原俊二

    政府委員冨金原俊二君) お答えいたします。  私どもが円高差益の発生状況と還元状況を一応試算いたしておるわけでございます。その際の前提といたしましては、発生につきましては、プラザ合意つまり六十年の九月以前の一年間の輸入構造というものを一応前提にいたしまして、当時為替は一ドル二百四十円程度、それから石油につきましては一バレル二十八ドル程度だったと思いますが、そういう輸入構造で、円高によりあるいは原油安によりましてどれだけ差益が発生したかということを一応計算を四半期ごとにしているわけでございます。その累計額が昨年の十二月までに大体三十兆円ぐらいという計算でございます。  一方、還元につきましては、プラザ合意前の比較的中成長で安定をしておりました経済状況のときに、例えば消費者物価につきましては二%程度上昇をしていたわけでございます。これは一面では、サービス価格のようなものは労賃コストの上昇である程度上がらざるを得ない。消費者物価の中で大体四五%ぐらいのウエートを占めておりますから、少なくとも消費者物価が中成長のときには二%程度は上昇するという傾向がございました。  その後、プラザ合意以後物価が円高や原油安の影響で非常に落ちついてまいりまして、最近は御承知のとおりほとんど上昇していないということでございますものですから、その差額分は価格に円高や原油安の効果が反映されたものというふうに考えて計算をしているわけでございます。したがいまして、投資とかあるいは輸出についても似たような考え方で計算してまいりますと、累計額で約二十一兆円ぐらいは、つまり価格がその分だけ、本来二%程度消費者物価については上がるかもしれないものが安定しているということの差額が価格に反映されているという計算をしたわけでございます。  それに対して個々の価格について、先ほど先生の方で七割還元されているというのは実感として合わないではないかということでございますが、実感と確かに合わないということについてはある程度感覚的にわかるわけでございますが、我が国経済の場合に全体で見ますと、物によって違いますけれども、経済構造の中で輸入の依存度が大体八%ぐらいでございます。その八%部分が円高や原油安で非常に安く入ってくる。ところがそれが加工されまして最終段階になりますと、つまり国内部分が九二%ぐらいでございますから、この部分の何がしかのところは当然ある程度時間の経過とともに価格は、例えばベースアップがあるとかコスト上昇があるとかということで上がってまいります。したがって、その輸入された八%の部分がかなり円高や原油安で効果がございましても、物価全体として見れば価格がゼロかあるいは場合によっては若干上がるということもある。それが消費者物価で余り下がっていないのではないかという話でございます。  したがって一般的に、これは若干の誤解があろうかと思いますけれども、円高で四割や五割安くなったんだから、二、三割は価格が安くなっていいのじゃないかというふうにもしお考えの向きがあるとすれば、日本の経済構造から見てはなかなかそういうわけに一般的には言えない面があるということはひとつ言えるのではないかと思います。  それからもう一つ、実感として感じられないというのは、実は今申しました経済構造の中で、原材料を輸入して加工し、最終段階に至るまでにどうしても時間がかかります。大体平均的に申しますと七カ月程度はかかるわけでございまして、水際では確かに安くなっている。ところが末端に来るまで時間がかかってしまうということもございまして、時間がかかる間になかなか感じられないという面があるのではないか。  もう一つつけ加えますならば、急速な円高になりまして、為替レートで内外の価格を比較するということが行われます。これについてはいろいろ議論がございますけれども、どうしても海外旅行なんかされるとそういうことを感じられるわけでございますが、そうすると少々下がってもやっぱり割高ではないかというふうに感じられるわけでございまして、いろんな要因から実感と差益還元の私たちがやっておりますものとの間にどうしてもギャップがあるという御指摘は、ある程度は今申し上げたようなことから起こってくるのではないかと考えております。
  178. 及川順郎

    ○及川順郎君 今おっしゃられたようなさまざまな要因につきましては私も検討しておりますけれども、この個々の問題について論議をするということよりも、やはり現実に国民が円高の恩恵を受けているというこういう実感が得られるような努力、これをぜひ工夫し、御勉強していただきたい、このように思います。  それで、運輸大臣に伺いたいわけでございますけれども、これも国際航空運賃に格差が出ているということがたびたび指摘をされているんですね。きょう渡しました資料は、これはまことに恐縮でございますが、総務庁資料の原資の方だけ書きまして、これをまとめていただいたのは経企庁の担当官の方にまとめていただきまして、ちょっと一時説明が抜けておりましたけれども、これと一緒に私はほかの件でこの国際航空運賃の資料をちょっと取り寄せてみました。  例えば、六十二年十二月末現在でロサンゼルスでは、東京—ロサンゼルスを考えますと、片道ベースで搭乗券を買いますと、東京で買うと十六万八千四百円、アメリカで買いますと円換算で十一万一千八百円ということなんですね。ひどいのになりますと、東京で買うのが差額がものすごくあるというのは東京—香港間。東京で買いますと十万三千八百円、これが向こうで買いますと三万六千八百円程度、こういう状況の原因ですね、いろんな発地国建てになっているというこういう今の国際航空運賃の体系にもよるでしょうけれども、円高差益分でこれもっと下げられる要素があるのではないかという感じが率直にするわけでございますが、いかがでしょうか。
  179. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 実は私も就任前、委員と同じ疑問を持っておりまして、その質問を就任早々いたしました。そこで判明しましたことは、巷間よく、円が高くなったのに日本建ての、日本から出ていく便の運賃は一ドル二百九十数円建てになっているんじゃないかという誤解がございますけれども、これは全く違いまして百六十四円に今はなっております。これをさらに百五十円を切るような形の努力をすべきだと思いますし検討しておりますが、いずれにしろ今御指摘のように発地国建てになりますと、これはその国の商品になるわけですから、同じ日航に乗って東京から香港へ飛んでいく値段と香港から同じ日航に乗って帰ってくる値段と、つまり同じビーフステーキの値段が向こうとこっちと違うみたいに、為替の高低で違ってくるのはどうしても仕方ない現象でございますが、それでもなおその格差を埋める努力をしようということで今までできるだけの努力はしてきたつもりでございます。  ちなみに昭和六十年度以降太平洋線、欧州線、オセアニア線及び東南アジア線では数次にわたって日本発運賃の値下げを行いましたし、また、東南アジアから飛んでくる便に関しては向こう側の 運賃を上げてもらう努力もしているわけでございますが、なおこれからもそういう努力をしまして方向別の格差をとにかく是正する努力をするつもりでございますが、ただ、ダンピングはこれまた国によって事情が違いまして、そこがちょっと別の要素であることは否めません。
  180. 及川順郎

    ○及川順郎君 この問題はまた後に譲ります。  先ほど政府委員の御説明にもありましたように、まとめますと三十兆円の円高還元分がある、こういうぐあいに言いましても、商品価格にすると一円以下とか一、二円とか、こういう状況になってくるわけですね。このわずかなものを還元されても国民は喜ばない、こういう状況があるわけです。しかし、そういうことを扱っている企業にもこれは出そうという気持ちがあるわけですね。  一つの提案ですが、これを出そうという気持ちがあるならば、それを業界なりでまとめて、これを基金のような形で受け皿をつくりまして、その基金を福祉関係の施設だとか、あるいは国際国家の中で外国からの留学生に対する施設に役立てるというような、そういう工夫をして還元が目に見えるような形でやるということは、国民に対して納得のいくような施策の一つであるというぐあいに感ずるんですけれども、その点に対して総理はいかがに考えていらっしゃいますか、経企庁長官のお二人から御見解をお伺いいたします。
  181. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 大変に含蓄のある、しかもなおかつ、ためになる論議そのものでございますから、私も真剣に受けとめてこれは研究課題だなと思っておりますが、同時にまた、私自身個人といたしましてもそういう問題点について関心を持ちまして、還元といいましても先ほど言いましたようにわずかな一円、二円、三円ぐらいの還元だったらば、お互いに共存し合ってそしてまたシェアし合って、それをまとめたものを留学生の対策といいましょうか、福祉対策とかその他に充当した方が、あらゆる意味においてよほど社会的な価値観になるんじゃないか、こういう仰せかと思います。  私もそう思っておるのでございますが、これはやはり何といいましても企業そのものにもよるわけでございまして、非常に賛同してくれる企業もございますが、中にはそう思っていない企業もあるというようなこともございまして、円高差益そのものは、基本的に自由競争のもとで物価の低下を図ることによって消費者に還元されることが最良の道だというその方向をとっておるわけでございます。  差益の額はたとえそれが僅少でありましても、値下げしにくい、されにくくとも、どういう形においても、例えば特定日を設けて安売りをするような形をとるとか、あるいは商品を限って値下げを行うというような形で還元する方法も考えられておるところでございます。したがいまして企業が、これは先ほど申しましたように、自主的な判断に基づいて還元方法を工夫していただくということが考えられる一番の問題点でございますけれども、政府としては、今後とも消費者の各位に情報提供などを通じまして、そして円高差益がより一層、先ほどの政府委員答弁にもございましたように、まだまだ委員御指摘のとおりそれが実感としてわいていないという御指摘がございますので、その点を十分に物価面に反映されていくように努めていくべきことであるということに考えておる次第でございます。よろしくお願いいたします。
  182. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今のお話でございますが、これは議論してみますと、特定の業種があるいは原油安とかあるいは円高等によって差益があって、それを臨時利得のごとき取り扱いをして、臨時利得税というような形でもってある種の目的税というような議論を私も聞いたことがございますけれども、本来は競争原理の働く中で消費者に還元されていくというのが建前でございます。  したがって、考え方を仮にひとつ整理してみますと、留学生対策でございますとか、今企業の方でも、例えば独身寮なんかがあいておったりしたところを自分の企業の冠を付して、そして奨学金のかわりに使うような工夫をしていただいております。そういう受け皿がありましたらば、そういうところへ自発的に参加してもらうというようなことが政策としてはやっぱり本筋なのかなと、こんな感じがいたしておるところでございます。
  183. 及川順郎

    ○及川順郎君 小倉税調会長、きょうはありがとうございます。  先般来から本委員会における御発言を承っておりまして、一面では資産課税強化が審議の基本方針の一つである、強化をするということがこれが一つの柱であるという状況を踏まえながら、もう一点では、この直間比率是正が不公平税制につながるというこういう点も非常に論議として強まってきているという税制調査会の中の論議の状況を述べられているわけでございます。  私は特に、所得税の総合課税制度が崩壊した中で取り残されているサラリーマンの勤労所得税に対する重税感ですね、これを取り除く議論。それからもう一つは、事業法人の土地、株式の再評価課税。あわせまして、赤字企業などで事業・法人税等を納めていない赤字法人に対する課税負担の研究。それからもう一つは、キャピタルゲイン課税の強化。これなどは原則としてはその方向、前向きの検討をするということで今論議が進んでいるようにも承りますけれども、この点に対する論議の最近の状況、また税調会長のお考えを聞かしていただければと思うわけでございます。
  184. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 御質問の点、多岐にわたるようでございますが、まず、不公平税制ということで一番端的にこたえなきゃならぬというふうに税制調査会の中で衆目一致しておりますところは、サラリーマン勤労者の所得税の軽減ということであります。実証的にはなかなか難しいことでありますけれども、他の職域の人々と比べて、サラリーマン、特に中堅層のサラリーマンの重税感というのは否定すべきものでないということで、そこに重点を置いた所得税の軽減という方向で今具体的な考え方を取りまとめ中であります。  その次には、今お話しの、やはりこれも不公平税制の一つのあらわれとして論じております資産税、これ資産税は二通りございまして、資産そのものに対する課税資産所得に対する課税と両方ございますが、資産そのものに対する税は、これは主として地方税、市町村税の固定資産税ということであります。なおほかに保有税というのがありますけれども。この固定資産税を強化すべきだという意見もありますが、これは年々の支払いにかかわる税金でありますので、これを売らなければ固定資産税が払えないというようなことになるのは、これは市町村税としての本来の趣旨に合わないのではないかというふうな疑問もあるわけでありまして、時価が上がれば当然に固定資産税も上がるというふうな処置はこれまでとらずに緩和、調整をしているような実情であります。  したがいまして、残る問題は資産処分による利益あるいは資産から生ずる利益、なかんずく有価証券のキャピタルゲインと言われているものでありますが、これらについては重課をしていくという方向で、具体的にどうすればいいかということをただいま検討中でございます。具体的な問題につきましてはまだ、特に納税者番号等についてはまだ具体的な結論は得ておりません。これについてはいろいろ問題もありますので、少し時間がかかるというふうなことかと思います。  それにもう一つお尋ねの中の法人税のことでありますが、法人税についてはいろんな仕組みがありまして、少し厄介な、複雑なことになっておりますが、引当金だとかといったような点、あるいは配当軽課といったような点、あるいは配当の益金不算入といったようなことについては、できるだけ考え方を整理して、法人税の中で財源を生み出すということがまず大事であるように思いますが、そういうことを主にしまして法人税を軽減して、これは国際的な公平といいますか、国際化に対処するようにしたらどうかという考え方であります。  赤字法人のことについては、これほとんどこの数年来といいますか、あるいはもっと数年来以前 かもしれませんが、毎年税制調査会の中あるいは外でも議論があるようでありますが、どうも考え方としまして、法人税というのはもともと所得課税だという頭がありますと解決がつかないのですな、これ。したがって、所得課税という範疇外のものとしては、地方税として外形標準も可能な事業税というのがあるわけですから、そこで考えたらどうかという意見と、それから赤字法人でも何か所得以外に税金を多少は負担してもらうという考え方はないかということがあるわけですが、これはあるいはお気にさわるかもしれませんが、新しい形の間接税の導入ということがそれになるんじゃなかろうか。所得には税金がかけられないけれども、赤字法人でも必要な消費はするわけですから、消費を通じて税金を払っていただくということがむしろ公平にかなうのじゃないかという意見もございます。  それからもう一つ、細かい話ですけれども、赤字になるすれすれのような法人では、交際費について一部経費として認めておるわけですが、あれをやはり圧縮するとか、五千万円以上の大法人と同じように交際費の経費として否認したらどうかという御意見もございます。それらを交えまして、赤字法人についてどういうふうに考えるか、まだ結論を得ておりませんが、検討中でございます。  大体以上でございます。
  185. 及川順郎

    ○及川順郎君 会長、ありがとうございました。  大蔵省に伺いたいんですが、我が国の法人企業の所有する土地は全体で幾らでしょうか。
  186. 藤田恒郎

    政府委員(藤田恒郎君) 我が国の法人企業の保有いたします土地の価額に関する調査といたしましては法人企業統計調査というのがございます。その六十一年度によりますと、この調査の対象になっております全企業の所有いたします土地の帳簿価額でございますが、これが五十七兆九千九百三十一億円ということになっております。
  187. 及川順郎

    ○及川順郎君 この巨額な含み資産とも言える、これは十分な担税力があるんじゃないかと思いますけれども、これを課税の対象財源として着目するということについて、総理大蔵大臣はどのような御見解を持っていらっしゃいますか。
  188. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) その場合の課税が何に対する課税であるかということがやはり問題であろうと思います。  恐らく御指摘の意味は、法人の場合は、持っておると値上がりをしていきます。個人でございますと相続税でそれが時々徴税されていくわけですが、それがないという、ここに御着目であることは、これは確かに私は一つの視点だと思うのでございますが、仮にこれを一種のキャピタルゲインであると考えますと、それは実現しない所得でございますから、担税力にはもう非常に限りがあると考えざるを得ませんし、いや保有しているという事実に対して潜在的に財産がふえているということであれば、それは保有税としてであれば固定資産税が適正に評価されているかということになってまいるのではないかというふうに考えております。  また、現実の問題といたしましては、そのような大きな土地を持っております企業は概して装置産業でございますので、一種の素材、資材を生産する企業に多い。必ずしも好況の企業ではございませんで、そういうところに非常に大きな負担がかかっていく。担税力はどうかといったような問題がございまして、視点はわかりながらなかなかこれという新しい課税の方法は私は見つけにくいのではないかということを考えております。
  189. 及川順郎

    ○及川順郎君 我が国の企業の中で法人税を全く納税していない赤字法人は全体企業の何%ぐらいでしょうか。
  190. 日向隆

    政府委員(日向隆君) 事業年度が昭和六十一年二月一日から昭和六十二年一月三十一日までの間に終了した休業生産法人等を除く内国普通法人について行いました私どもの会社標本調査の結果によりますと、全法人数は百七十万二千件でございまして、このうち赤字法人数は九十二万四千件でございます。赤字法人割合は五四・三%に相なろうかと思います。
  191. 及川順郎

    ○及川順郎君 それでは、資本金別に十億円以上五十億円未満、五十億円以上百億円未満、百億円以上という三段階に分けまして、赤字企業のこれに対する数、あわせて赤字企業ではないが赤字企業と同様に納税をしてない企業数も示していただきたいと思います。
  192. 日向隆

    政府委員(日向隆君) 統計データの出典は私が先ほど申し上げましたところでございまして、それは省略させていただきます。  今お示しの資本階級区分で申し上げますと、資本金十億円以上五十億円未満で見ますと、全法人数二千百四十件のうち赤字法人数は五百七十五件でございます。したがいまして赤字法人割合は二六・九%。資本金五十億円以上百億円未満で見ますと、全法人数四百三十二件のうち赤字法人数は百二件でございまして、赤字法人割合は二三・六%。また、最後におっしゃいました資本金百億円以上で見ますと、全法人数四百七十二件のうち赤字法人数は八十件でございまして、その赤字法人割合は一六・九%でございます。  なお、御指摘になりました赤字ではないけれども法人税を納付していないという企業数でございますけれども、これにつきましては私ども、その試験研究費が一定の基準を超えておりますとそれは税額控除をされるという制度ないしは外国法人税の税額控除という制度、またさらには、内国法人から受け取った利子配当等にかかる源泉所得税額の税額控除といった制度がございまして、それによりまして今おっしゃいましたように赤字ではないけれども法人税を納付していないというケースがあろうかと思いますけれども、それについて具体的な計数は把握しておりませんので、それに関する計数面での御答弁は御容赦いただきたいと思います。
  193. 及川順郎

    ○及川順郎君 資本金十億円以上で約四社に一社は法人税を納めていない、これは何らかの形で今おっしゃったような内容に対する、企業に対する課税の方法を工夫すべきではないかと思いますが、いかがですか、大蔵大臣。
  194. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは一般的に法人が企業活動をしますときにいろいろな社会の便益を受けておる、それにもかかわらず税金を払っていないという、そういうこれも一つの視点であると思うのでございますが、詰めていきますと、法人税というのはやはり所得に対する課税であるというふうに帰着せざるを得ないものでございますから、所得がないというときにその課税があるかという、どうしてもそこのところがうまく——つまり外形標準だけで取れるかということになってしまいます。先ほど税調会長が言われましたように、そういうものに交際費とか寄附金とかいうものの免税を認める、経費処分を認める必要はないじゃないかということは、これは確かに私は検討に値することだと思いますが、所得がないときに所得課税をするということになかなか難があるということじゃないかと思うのでございます。
  195. 及川順郎

    ○及川順郎君 実際に法人はそれを担保にしてお金を借りて、そして運用しているわけです。こういう活用の面から考えますとなお工夫の余地があるのではないかと思いますので、これはぜひなお前向きで検討をお願いしたいと思います。  最後に、六十二年度の税収は当初見通しから大幅に狂っているということは当然でございますけれども、最終的にはこれは膨大な数になるのではないか、こういう感じがするわけですけれども、これにつきまして、税収見込みが狂いを生ずる原因につきまして、私は昨年七月の決算委員会で大蔵大臣に御質問をした経緯がございます。その狂いを生ずる原因の一つに、昭和四十九年度と五十三年度の二度にわたって税の所得区分を変更している、ここに起因しているのではないか。これはやっぱり改善する方向に、税収の多いときに改善したらどうかということを御提案申し上げました。  だけれども、そのときの大臣の、指摘はわかるけれどもこのぐらいの税収ではまだ難しい、こういうお話であったわけでございますが、今回この 三月期決算では相当な量に増収分がなると思いますので、こういうときにこそ本来あるべき姿に区分を直すべきだ、こう思いますけれども、これについての総理大蔵大臣の御見解を伺って終わりにしたいと思います。
  196. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 十年ほど前にそれを変えましたわけでございまして、今の制度は結局納税義務が発生したその時点のものはその年度の歳入になる、こういうことで整理をしておるわけでございます。三月決算期の法人の納税義務が三月に発生いたしますので、猶予期間が二カ月でございますから、五月の末まではその年度の歳入になるということは一つの筋道の立った区切り方であるというふうに考えております。  金額の問題で申しますと、例えば昨年の五月にはたしか一月で五兆数千億の税金が入っております。その中で、法人税だけで四兆八千億であったかと思います。しかもそれがみんな金利の問題がございますから、最終日に近いところで払い込むという、税収としては最終日にぼこっと五兆円といったような税金が入ってくるというようなことがございまして、そういうことがまた予測を非常に難しくしております。  しかし、それは動かしましてもそうかもしれませんけれども、それが一番年度の最後に大きく来るものでございますから、そういうことは確かに予測を難しくしている原因になっておりますことは否めませんけれども、しかしその年度に発生した納税義務はその年度の歳入になるというのは、私は一つの一貫した処理の仕方であると思っておりますものですから、ただいまはこのままやらしていただきたいと思っておるわけでございます。
  197. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 大蔵大臣からお答えがあったとおりでございますが、あの当時御批判をいただいたのは、要するに次年度の税収の一カ月を先食いしてつじつまを合わせるのじゃないか、こういう議論が主体でございました。しかし、論理的にはまさに納税義務の発生、今お話のありました、特に法人というのはまだ三月期決算というのが大変多いわけでございますが、そういうものを考えてみますと、今戻すということは、もとに戻すと申しましょうか、これは実際問題としては難しいことじゃないか。  あのときの議論からいたしますと、あのときは先食いしている、これがけしからぬ、こういう議論でありましたが、今度返すということになると、またそれなりに発生義務の生じた時点からというものの論理性の中で今日まで定着しておって、しかも三月期決算というものは法人のかなりの部分であるということになると、返せ、はいというわけにはこれは難しい問題だなと思っております。
  198. 及川順郎

    ○及川順郎君 どうもありがとうございました。
  199. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で及川順郎君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  200. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、内藤功君の質疑を行います。内藤功君。
  201. 内藤功

    内藤功君 二月の三宅島の村議選はNLP基地問題が最大の争点でありました。この結果は反対派の議員が十四議席中十一を占める、反対の意思が明確に示されたと思いますが、総理のこの御認識を伺いたいと思います。
  202. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 選挙結果のことは重々承知いたしておりますが、従前しばしば申し上げておりますとおり、日米安保体制は我が国にとりましても、また国民の平和と安全のため、さらには繁栄のためにも必要欠くべからざる体制でございます。    〔委員長退席、理事林ゆう君着席〕  そうした観点から申し上げましても、艦載機の訓練というものはやはりその練度が問題でございまして、我が国を守ると言っていただく以上はやはり優秀な技能によって守っていただかなくちゃなりません。その意味でも特に航空母艦艦載機の訓練というものは大変なものでございますから、私たちといたしましても三宅島が最適の場所である、こういうふうに考えておりますので、今後住民の方々のさらに深い御理解、御協力を賜るべく努力をいたしたい、かように考えております。
  203. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ちょうど今、きょう五時に発表するQEの報告が来まして、ちょっと失礼をいたしました。外需三角、内需プラス、かなりのいい結果だなと思っておったものですから、つい私が後から立つようになりましたことをおわびいたします。  村議選の結果は十分承知しておりますが、今外務大臣からお話のあったとおり、まさに設置場所として最適だという判断に立ってこれからもなお御理解を得るような努力を続けなきゃならぬというふうに考えております。
  204. 内藤功

    内藤功君 今お話があったようなことを、繰り返し四年の間予算と人員を使ってやったんだが、選挙の結果は反対の意思が明確だと、このことはお認めになりますね。
  205. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 選挙の結果は、これは率直に私ども認めております。
  206. 内藤功

    内藤功君 村議選で推進派の最高責任者が惨敗を自認しておるわけであります。島民の意思は明確であります。  総理に伺いたいんですが、当面、本年度内のボーリング地質調査はおやめになるべきだと思いますが、いかがですか。
  207. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはいわゆる資料収集のための事前調査であるという意味において、なお御理解を得るべく努力したいと思っております。
  208. 内藤功

    内藤功君 年度内のボーリング地質調査はおやめになるべきだと思いますが、いかがですか。
  209. 友藤一隆

    政府委員友藤一隆君) お答えいたします。  今お尋ねのございました地質調査はボーリングによって実施するものでございますが、これは三宅島の中の着陸場としての適地を、どういうところがよろしいのかということでの資料収集のための事前の予備調査の一環でございまして、私どもといたしましては関係の土地を借り上げまして所要の自然公園法に基づく手続をいたしました上で実施をしたい、極めて事務的なものでございまして、ここに着陸場を、訓練場をつくるという建設そのものではございませんので、ひとつ御理解を賜りたいと思うわけでございます。  その実施につきましては、できるだけ平穏に私どもも行いたいということで考えてはございます。現在まだ準備が整っておりませんが、一連の手続が整いますればできるだけ早く実施をさせていただきたい、かように考えておるところでございます。
  210. 内藤功

    内藤功君 施設庁長官、年度内にもやるんですか、どうですか。
  211. 友藤一隆

    政府委員友藤一隆君) これは、準備が整えばやりたいと、かように考えております。
  212. 内藤功

    内藤功君 地方自治体というのは憲法の条章に基づいて団体自治及び住民自治の権能を有しております。  総理はこの憲法の地方自治の原則そのものは尊重されますか、お認めになりますか。
  213. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 防衛庁長官でございますが、お答えをいたします。  憲法に定められております地方自治の本旨はもとより遵守しなければならない、かように考えておるわけでございます。  三宅島の艦載機離着陸練習場の建設の問題につきましては、これは国の事務でございまして、また法律の制定を行うものではございません。憲法九十五条の住民投票、こういったことも考え合わせてみましても、かかわりないものと、かように考えておるわけでございます。  いずれにいたしましても、関係住民の御理解また御協力をいただきながら、私どもとして最大限の努力をしてまいりたい、かように考えております。
  214. 内藤功

    内藤功君 憲法九十五条は衆参両院で可決された法案でも住民の過半数の同意の投票がないと法律として成立しない、住民の意思というのはかように強く保障されておるのであります。四年間に選挙を四回やりましたね、NLPを争点として。 リコールを一回やっている。全部大多数、圧倒的多数が反対なんですよ。これを尊重して米政府に対してNLPの断念を明言するということが、私は憲法の精神に立った総理の責務、政府の責務だと思いますが、いかがですか。
  215. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) ただいまもお答えをいたしましたが、もちろん三宅村の村民の御意見を尊重してまいるということは大切なことだと思っておるわけでございますし、さように取り組んでまいりたいと考えております。  法律上三宅村の同意は必要かと、こういうことになりますと、先ほども申し上げましたように、関係住民の御理解をいただくべく最大の努力を重ねてまいりたいと、かように申し上げておるところでございます。
  216. 内藤功

    内藤功君 前内閣のあしき遺産を承継することはやめていただきたい。この三宅島については、自然の美しいところであります。村民の意思は四年間明確であります。これを断念することを政府が速やかに決定し、そしてこのような紛糾を一日も早くやめることを私は重ねて要望するものであります。  次に、世界文化遺産・自然遺産保護条約の締結の問題を伺いたいと思いますが、この条約の現在の締約国数、これはどのくらいになっておりますか。
  217. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 現在九十八カ国でございます。
  218. 内藤功

    内藤功君 昨年七月の委員会でも聞きましたが、今国会にこれを提出すべきだと私は思うんですが、この提出の問題はどうなっておりますか。
  219. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) この条約の趣旨は望ましいものであると考えております。  だから、締結できるように、やはり実施体制なりさらには負担の問題もございましょうから、財政上の負担の問題等々関係省庁と十二分に話し合いを得まして結論を得たいというのが現在の状況であります。
  220. 内藤功

    内藤功君 環境庁長官に伺いますが、この条約は、日本の美しい自然、今の話の三宅島で言えば珍しい鳥、サンゴの地球上の最北限であります。石垣島にもサンゴ礁はあります。三宅島は東洋のガラパゴスと、こう言われておる。こういう美しい自然文化遺産を守るということは政府の国際的、国内的責務じゃないかと思いますが、長官の本条約の認識について伺いたい。あわせて条約締結についての決意を伺いたい。
  221. 堀内俊夫

    国務大臣(堀内俊夫君) まず第一点の、この条約に加盟するということは望ましいと考えております。  第二点の問題は、富士箱根伊豆国立公園地域内にある重要な自然遺産であります。殊に三宅島の中には鳥獣保護区域も決められております。そういう意味において、我が国でも非常に大事な地域であると認識をしております。
  222. 内藤功

    内藤功君 日本はこの条約の議長国であります。ただ検討中というのでいつまでもこれ延ばすわけにいかぬと思うんですが、その目途をお示しいただきたい。目途、いつごろまでにこれを締結する方針であるか、具体的にお願いをしたい。
  223. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 先ほど外務大臣の御答弁にもございましたように、国内的な実施体制の整備の問題、それからさらに財政負担の問題等現在協議をしておりますけれども、この国内的な実施体制がどのような形になるか、その辺を見きわめまして、できるだけ早期に締結の方向へ向かいたい、こういうふうに考えております。
  224. 内藤功

    内藤功君 次に、防衛本庁を今の檜町から市ケ谷へ移転する計画があると聞きますが、その概要と本年度の関係予算をお示しいただきたい。
  225. 児玉良雄

    政府委員(児玉良雄君) お答えいたします。  防衛庁本庁の庁舎があります檜町地区は周辺の商業化が進んでおりまして、防衛庁としましては国土の有効利用という観点からこれらの施設を市ケ谷に移転をさせまして、これに伴って首都及びその近郊にあります防衛施設の再配置を図るというのがこの計画であります。  その計画の概要を申し上げますと、檜町にあります内局、統幕、各幕、施設庁などが市ケ谷、その他を十条に再配置いたしまして、市ケ谷にあります東部方面総監部であるとか学校であるとか補給部隊などを朝霞、大宮、目黒、十条などに再配置するというのがその骨格でありまして、その他大宮、芝浦などにある部隊がその他のところにこれに関連して移転をするということになっております。  六十三年度につきましては、この計画を特特会計で実施するということになっておりますが、調査、設計のための経費約十二億円をお願いしておるところでございます。
  226. 内藤功

    内藤功君 地元で強い反対運動が起きております。江藤隆美氏が中曽根内閣の建設大臣のときに、「六本木の防衛庁は高度の情報機能を備えていません。そこで市ケ谷の実働部隊を朝霞基地に移し、ペンタゴン以上の情報機能を備えた防衛本庁を作るよう各方面にお願いしています」と。これは「月刊政界」という雑誌の一昨年の四月号で、ペンタゴン以上というのですね。防衛庁長官、かような御認識でございますか。
  227. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) ただいま参事官より概要について御説明をいたしまして、今、江藤前建設大臣の雑誌の対談における記事につきまして御質問でございますが、今ほど説明のありましたとおり、国土の有効利用ということで市ケ谷の方に移転をするわけでございますが、もちろん現在の機能を移転するということでございまして、ペンタゴン以上という御質問でございますが、その点について私はお答えする立場にはございませんが、今の檜町から市ケ谷へその機能を移転すると、かように御理解をいただきたいと思います。
  228. 内藤功

    内藤功君 ペンタゴン以上というのが大事なんです、これが。防衛庁の内局でいいですが、ペンタゴンというのはどのくらいの情報の予算、人員を持っておりますか。
  229. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 江藤先生がどういうおつもりで言われたか私どもよく理解しておりませんが、いずれにしましても私どもも、ペンタゴン、アメリカの国防総省がどの程度の通信情報機能なりを持っているかということは十分承知しておりませんので御理解いただきたいと思います。
  230. 内藤功

    内藤功君 最近出ました本で、ペンタゴンというのは、情報通信支出、国防総省を中心に八五年で二百六十億ドル、情報収集の軍人職員三万三千四百人を擁しておるという、これは私はある書物で見ました。とにかくこれ以上というのは、これは重大なことであります。  檜町の中央指揮所はつぶすわけですが、幾らかけましたか。
  231. 児玉良雄

    政府委員(児玉良雄君) 檜町にあります中央指揮所の建設費のうち、建物の建設費は約三十六億円でございます。
  232. 内藤功

    内藤功君 建物の建設費以外にいろいろ経費がかかっていますね。締めて幾らですか。
  233. 児玉良雄

    政府委員(児玉良雄君) 内部に配置いたします機材などの経費約四十九億円を足しまして、合わせて約八十六億円でございます。
  234. 内藤功

    内藤功君 初めから全部言ってもらいたいですね。これ以上のものをつくる。本当にむだ遣いだと言わなきゃなりません。  新宿区は、去年の十一月に内閣総理大臣防衛庁長官に対する意見書を採択して、自分たちは、新宿区というのは「戦争の惨禍を訴え、永遠の平和を築くための諸事業を推進している」、今度の移転計画は「それに反するもので容認できない」、平和都市宣言をした「新宿区に移転してくることはふさわしくないと考え、本計画の撤回を強く要請する」、こういう意見書を出しております。  この自治体の意思を尊重していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  235. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 新宿区議会の決議につきましては承知をいたしておりますが、我が国はもとより平和国家として国の安全、さらに国民生活の確保ということに努めてまいるわけでございますが、こうしたことを踏まえて、地域の方々の理解を得ることももちろん必要でございまして、このたびの防衛本庁の移転につきましては、国土の有 効利用ということでもございますから、地域の方々の御理解を得べく、さような努力もしたいと考えております。
  236. 内藤功

    内藤功君 ところで、現在の港区檜町の防衛庁の土地は時価で言うと一兆五千億円以上と、こういうふうに言われておりますけれども、防衛庁の土地売却、施設建設につきまして、文部省の国立学校特別会計のような方式をとることを勉強さしてもらうということを、六十年十一月二日の当委員会で時の大蔵大臣竹下さんが御答弁なすっておるんですが、この点はそういうお考えがおありなんですか。これは現蔵相、元蔵相、お二人にお伺いをしたいんです。
  237. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 技術的な問題でございますので私から御説明いたします。  現在の予算制度は基本的には予算単一の原則に立っておりまして、特別会計の設置につきましてはできるだけ限定的にということでございまして、今回の計画につきましては特特会計で十分やれるものでございますので、今先生が示唆されたような特別会計の新設、必要でもありませんし好ましいことでもないというふうに考えております。
  238. 内藤功

    内藤功君 総理、御答弁があったものですから、いかがでございますか、それでよろしゅうございますか。
  239. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 当時の問題と今日の時点の若干環境の相違がございますが、いわゆる特特会計というもので私も処理できるものだというふうな結論に、当時そう時間を置くこともなく達したことでございます。
  240. 内藤功

    内藤功君 次に、いわゆる有事来援問題ですが、いろいろ議論がありました。  まず、有事来援の場合の日本有事と言いますけれども、それはもう第五条の場合だと、こういうふうに答弁しているんですけれども、日本有事に至る原因、態様は三つぐらいあると思うんです。一つは、日本だけが攻撃され単独で対応する。二つ目は、ヨーロッパ、中東、極東から波及をしてくる。それから三つ目は、世界的規模の戦争の一環。大体こういうことが今までの論議を整理すると出てくると思いますが、これはいずれの場合を言うのか、あるいはいずれをも含むという意味なのか、明確にしていただきたい。
  241. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 本委員会でもたびたび申し上げてまいりましたが、有事来援研究はあくまで我が国有事の場合、すなわち、我が国に対する武力攻撃がなされた場合に我が国防衛のために米軍の来援、これが時宜を得て得られるかどうかということを研究するのが目的でございまして、今委員お話しのように、有事に至る経過であるとか原因等につきまして研究をするものではございません。
  242. 内藤功

    内藤功君 そうすると、今私が挙げた三つの場合、いずれの場合であると、結局日本有事、日本に対する武力攻撃というものがあればそれはもういわゆる来援研究の日本有事である、こういうことですね。
  243. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ただいま防衛庁長官からお答え申し上げたとおり、今回の研究は日本有事、日本に対する侵略が生起した事態においてどうするかという研究でございまして、それに至る経過については先般来外務大臣防衛庁長官がお答えしたように、これらも千差万別であろうと思いますが、そういったことを研究するものではないということを申し上げておるわけであります。
  244. 内藤功

    内藤功君 そうすると、千差万別いろんな原因、経過から日本に対する武力攻撃があった場合、こういうふうに理解をいたします。  次に、有事来援研究というのは日米防衛協力指針、ガイドラインに沿った研究、あるいは延長線の研究と言いますが、そうですね。
  245. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ガイドラインにおきます作戦計画の研究、この一環、この延長線上のものというふうにお考えいただきたいと思います。
  246. 内藤功

    内藤功君 そこで、有事来援研究とガイドラインの関係を聞きますが、ガイドラインを見ますと、いわゆる1のおそれのある場合、それから2の武力攻撃の場合、この両方の場合に後方支援というのが出ております。有事来援研究というものはこの両方の場合を含むのか、それともいずれか一方かという点を伺いたい。
  247. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) どちらでもありません。
  248. 内藤功

    内藤功君 どちらでもないというのはどういうことですか。
  249. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 今先生がお挙げになりましたのは相互支援の研究でありまして、相互支援の研究については、ガイドラインにも書いてあると思いますが、作戦計画研究とか、その他のもろもろの研究、そういったことが行われた結果見出された相互支援についてやるということで、今回やりますのは、先ほど申し上げたように作戦計画の研究の一環のものであるということで、相互支援の研究ではございませんから、いずれも入らないと申し上げておるわけであります。
  250. 内藤功

    内藤功君 相互支援と私は聞いていませんよ、後方支援と聞いています。
  251. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 後方支援と相互支援と同様な意味で使っておると思いますが、日米双方が後方に対して支援をするというものであります。
  252. 内藤功

    内藤功君 そうすると、伺いますけれども、これは三月十五日の日本経済新聞でありますが、これには、防衛庁筋は有事来援研究について「日本単独有事に加えて中東や朝鮮半島など第三国との同時有事も研究対象になるとの見通しを明らかにした。」と、こういう大変明確な記事が書かれております。  私は、中東、朝鮮有事の際の来援研究、例えば今までずっと議論されてきたポンカスだとかあるいは輸送船、輸送機の準備だとか、こういう来援の研究を中東、朝鮮などと同時に行うということにこれはなるんじゃないか、これはどうも非常に大きな問題だと思うんですが、これはいかがですか。
  253. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 新聞の報ずるところということでございまして、内容につきまして一々コメントすることは差し控えたいと思いますし、また、さようなことが筋からということでございますが、関知しないところでございます。  いずれにいたしましても、我が国有事の場合に米軍の来援が得られるかどうかということの研究でございまして、これまた、さきに御答弁申し上げましたが、経過であるとか原因等につきまして研究をするものではないということでございます。
  254. 内藤功

    内藤功君 私は、この議論は大変国の行き方自体に関する問題だと思うので、総理にこの有事来援研究についての御認識をちょっと整理してお伺いしたいんです。  三点ありますが、一つは日本有事とはさまざまの態様が考えられているんだけれども、中でもギン元在日米軍司令官が米議会で証言しているように、全世界的な戦争の一環として起こる可能性が極めて高い、これが軍事専門家の大体内外ともほぼ一致しているところでありますが、総理はこの点御認識をいかに持っておられるかという点を伺いたい。
  255. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) これまた先般来たびたびお答え申し上げているように、我が国に対する侵略が生起するという条件といいますか、そういう前提についてはいろんな考え方があると思います。したがって、それについては千差万別で、これが非常に蓋然性が高いとか、これが可能性が少ないとか、そういうことを申し上げることは適当でないということをかねがね申し上げておるわけであります。  なお、米側の軍人の方々が米ソ対決あるいはグローバルな対決というものに常に主眼を置きがちであるということは、彼らがグローバルな行動をし、グローバルなパワーバランスということを考えておるということから、また一つの当然な物の考え方でありますけれども、私どもは、そういった例えば米ソが直接対決する、グローバルに対決するというようなことは、現在のような核相互抑 止の状況下では非常に起こりにくい事態であろうと、蓋然性から考えれば非常に低いというふうに考えております。
  256. 内藤功

    内藤功君 総理の御答弁をいただけないんですが、第二点目として、これは総理にお答えいただきたいんですが、いわゆる米軍が日本に来援するとか展開するとかいうことを非常に我々は軽く論議しているようにも見えますけれども、実は第一義的にこの米軍ですね、米軍は全世界的な冷厳なやはり彼らの国益と戦略戦術というもののまにまに、それに基づいて行動するんだということは、総理、基本的にお認めになりますか。
  257. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 我が国に侵略または武力行動が行われるといいますときに、今申し上げておりますように、有事来援ということで米側の来援が得られるかということでございますが、日米安保条約に基づきまして我が国防衛のためにいわゆる行動するわけでございます。でありますから、我が国の有事、これを踏まえましてこの研究が行われるということを御承知賜りたいと思うわけでございます。  なお、我が国有事の目的をもって米軍の来援が得られるというようなことでありますれば、それによりまして対処するわけでありまして、米側が日本有事に、言ってみますれば戦線の第一線に立つということは、極めてこれは日米安保体制の中で我が国にとってみますと安全を確保してまいるためには大変ありがたいといいますか、大事なことにも相なるわけでございますから、このことにつきまして研究をしてまいるということで御理解は得られると思います。
  258. 内藤功

    内藤功君 整理して考えてみると三点目は、これも総理に伺いたいんですが、いわゆる来援米軍は日本国土を遠慮なくその軍事的合理性の考え方のもとに武力行動の戦場として、あるいはさらに前進根拠地、出撃拠点として使用する結果になるとはお考えになりませんか。この御認識はいかがですか。
  259. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) どうも先生の御質問を聞いておりますと、米軍の来援というのが米軍自体のあるいはアメリカ自体の何か国益を追求するために独自の能動的な行動をとっておるというようにとれますが、そうではございませんで、我が国は日本の安全を守るために日米安保体制というものを組んでおります。その日米安保体制に基づきまして、我が国に対して不法な侵略が行われた場合アメリカが支援に駆けつけてくれるわけであります。そういうものでありますので、先生のおっしゃるような御質問そのものが余り適当ではないのではないかというように考える次第であります。
  260. 内藤功

    内藤功君 今総理に指名したんですが、みんな答弁は防衛局長とか防衛庁長官ですね。これは相当大事なことを私は聞いているつもりなんですね。総理、いかがですか。
  261. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いずれそういうことになろうかと思いまして整理をいたしておりました。  第一の問題につきましては、軍事専門家の認識といたしましては、さまざまな事態が予測されるというのはこれはあり得ることであろうと思います。私自身は軍事専門家ではないという前提においてお答えいたしましても、軍事専門家の間ではもろもろの議論があるということは私もそのように考えております。どれが蓋然性が高いかという問題になるとまた別の議論も出てくるだろうと思いますが、それをも含めていろんな議論があるだろうと思います。  それから第二の問題については、第一義的にやはり世界の平和と安全、こういうことが前提に置かれた行動になるだろうというふうに思っております。  それから第三番目の問題は、まさに我が国の有事の際に日米安保条約というものでそれに対応するということになっておるわけでございますから、安保条約の範囲内においてそれらのことは行われるものであるというふうな事実認識をいたしております。
  262. 内藤功

    内藤功君 私の質問がどうのこうのという声がありましたけれども、この憂いは私自身だけじゃないんですね。実はプロ中のプロで、元防衛研修所の第一研究室長の前田寿夫氏はその著書でこう言っております、来援について。この本です。  米軍が入ってきた途端、日本政府は自由な意思決定能力を完全に喪失するはず。自衛隊は満身創痍。戦争の主導権は米側に握られる。事前の取り決めがあろうと力関係から当然。その後は米国の国益と米軍の戦略戦術のまにまに日本国民の運命は翻弄される。日本人が犠牲になってもやむを得ない。都市爆撃で大量の日本人が死んでもやむを得ない。ある地区を敵にゆだねてもやむを得ない。このむごたらしいシナリオを途中で打ち切る能力は日本にない。  こう書いております。有事来援の持つこの深刻な側面を、しかも防衛研修所の中の重要な職にあったプロの意見でありますけれども、これを単に質問が適切でないとかいうことで一笑に付せるんですか。
  263. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) おやめになった方が著書として著しておられることにつきましてコメントする立場にもございません。  以上でございます。
  264. 内藤功

    内藤功君 これは防衛研修所当時に一佐クラスに講義をしたその講義録をもとにお書きになったものですね。当時そういうことを部内でもちゃんと講義しておられたということを、長官、考えていただきたいと思います。米軍は、日本の自衛隊と違って、来援した場合、日本の政府総理の指揮監督下に置かれません。日本国憲法の制約も受けない部隊であるということを最後に私は申し上げておきたいと思います。  問題を次に移しまして、税制問題に関連をしてお聞きしたいと思います。    〔理事林ゆう君退席、委員長着席〕  二月から三月にかけまして政府税調の地方公聴会が開かれましたが、その傍聴者数、発言者数、それから国民の関心度等については政府はどのように御認識でありますか。
  265. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 二十カ所で行われました公聴会におきまして、意見をお述べいただいた方は百二十一名でございます。一方、傍聴者の方からも御発言があり、その発言者は約二百名でございます。また、傍聴者を含めた総入場者数は約五千名でございます。
  266. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 関連質疑を許します。近藤忠孝君。
  267. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 この公聴会はどこも大入りでありました。国民の関心がそれほどにも高かったということを示すものであります。しかし、公述人の選定は不公正だと、こういう批判も大変強いのであります。大蔵省に都合のいい者中心に選んだのではないかという批判であります。どんな基準と方法で公述人を選定したのか、まずお答えいただきたい。
  268. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 私どもは税制調査会の事務局としてお手伝いをしておったわけでございます。この具体的な公述人の選定につきましては、その開催地での地元の御意見、それから全国的なバランス、そうしたものを考えながら公聴会としての趣旨に即するような公述人を選んで準備申し上げ、税制調査会長に委嘱をしていただいたところでございます。
  269. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 広く国民から意見を聞くという以上、また公述人という以上、これは公募によって決めるべきだったのではないのか。なぜ公募によって決めなかったのか。
  270. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 二十回にわたり行われましたけれども、それは全都道府県というわけでもございません。こうした限られた機会での公聴会でございますので、できるだけ広い範囲から公聴会の趣旨に即するような御意見を承りたいということで選定をし、準備を申し上げたところでございます。公募という御意見もあることは承知いたしておりますが、公募となりますと、こういう立場からぜひ発言をいたしたいという方々が中心になる。一方、そういう方々も含めまして幅広い観点から御意見をお承りしたいという観点から、い ろんな立場を考慮して準備を申し上げるということも一つの適切な方法ではないかと考えたわけでございます。
  271. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 それは公募によらない理由にはならぬと思いますね。私の知っている税理士さんが、これはやっぱり大型間接税反対の立場で公述人になりたいという申し出をしたのでありますが、もう決まっておるというのでこれは受け入れられなかった。また東京、これが最後でしたが、荒川区では公述人は全部賛成の立場、これはもう会場から大変な抗議の声も出たわけであります。これは余りひどいというので、小倉税調会長も、公述人の選び方が本当に公正とは言えないと言われても仕方がないと、人選の偏りを批判しているわけであります。これで公聴会と言えるのか、これは問題です。税調会長からしかられたことについて大蔵大臣、大体しかられたという認識があるのかどうかも含めてこのことについてお答えいただきたいと思います。
  272. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 荒川のことをちょっと伺いましたんですが、税調会長に御意見を、日本全体、このたびの二十回でございますかの公述人の選び方等々何か不行き届きがございましたかということを伺いましたら、いやそういう印象は受けていない、たまたまそういう例が何かあったということは聞いたけれども、ということでございました。
  273. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 どうも、しかられたのにしかられたという認識がないというのは、これは大変私は重症だと思いますね。しかし、こういう偏った人選、これは一つ問題ですが、私はそれ以上に問題なのは、大蔵省がそうやって選んだ人選であったけれども、この公述人から反対の意見がたくさん出たという、このことが大事だと思うんですよね。このことについてどうお考えですか。
  274. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) やはり人選が公平であったということだと思います。
  275. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 いや、公述人は公平でなかったわけですね。しかし出てきた意見は、にもかかわらず大型間接税反対と。傍聴人からの発言も含めますと、圧倒的多数はこれは反対なんです。  傍聴人の方はどういうことで選んだんでしょうか。
  276. 水野勝

    政府委員(水野勝君) それぞれの地元で新聞等により広報をいたし、準備をいたしたところでございまして、その御出席をお申し出いただいたわけでございます。大多数のほとんどの会場では希望者がかなりオーバーいたしておりましたので、それは抽せんによりお選び申し上げさせていただいたわけでございます。
  277. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 抽せんだからこれは公正なんです、こちらはね。その結果、発言者総数のうち大型間接税についての意見を述べた者の数、そのうち賛成意見、反対意見、賛否不明の数はどれほどでしたか。
  278. 水野勝

    政府委員(水野勝君) それぞれ税制につきましてのいろいろな御意見はお持ちで、それを御発表いただいたわけでございますが、単一税目に絞り、それにつきまして賛否を明らかにということで御発言をいただいたわけでもございませんので、そうした統計と申しますか整理は行ってございません。
  279. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私と大蔵省の長いつき合いで、大蔵省に不利な資料はまずつくらないし、出さないということです。これは竹下さんの時代からそうですね。  私が調査してみますと、発言者総数のうち、大型間接税についての反対者、これは百三十、そして賛成は九十四、不明五十八、賛成者は発言者の一九%、賛否表明者の二七%にすぎないんです。これに比べて反対者は発言者の五〇%、賛否表明者の七二%に及ぶわけであります。これは圧倒的多数なんですね。にもかかわらず、これを無視して今進もうとしておるんです。しかし私は、これはもう指名された国民の意見ですから、公聴会の意見を踏まえてということであれば、そういうことに耳を傾ける、大型間接税導入断念というのは正解だと思うんです、これは政府税調の審議は別にしましても。このことについて最後に総理の見解を承りたいと思います。総理です。
  280. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) やはりこういう公聴会というのは大変に難しいことを国民にお伺いしているわけでございますので、その結果がシロであったかクロであったかというようなことはなかなか簡単に私は断じてはいけないのだろうと思います。もとより、もう絶対反対という立場の方はこれは比較的明瞭にそれをおっしゃられるんだと思いますけれども、いろいろ条件によると思われた人があったり、あるいはいろいろ是非得失を考えてみてちょっと簡単には言えないなという方があったり、私はいろいろであろうと思いますので、したがって何がどういう条件のもとでも反対だという方はこれはもう非常にはっきり出るのでございましょうけれども、全体として私は、近藤委員の言われたように反対の方が多かったんだというふうに考えてはならないのではないか。もちろん、簡単に賛成の方が多かったと申しておるわけではございません。問題が複雑でございますから、やはり国民がいろいろに考えておられる。まあそのことが公聴会の一つの目的であったと私は思っておるのでございます。
  281. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 総理
  282. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 大蔵大臣がお答え申し上げたとおりでございますが、中には私のように言語明瞭、意味不明の方もあったかもしれません。これは取り方によってでございますけれども。しかし、近藤さんにも長い間のつき合いでございますが、お互いのプライドを汚さないようにいつも言葉を選んで丁寧に丁寧にお答えしてきたつもりでございますので、丁寧過ぎで時に言語明瞭、意味不明と言われたこともあったのかなという反省もいたしておりますけれども、単純な割り切り方で物を決するというのはぎりぎりの段階まで避けるべきものじゃなかろうか。それが話し合いによる民主主義というものじゃなかろうかなと、このように日ごろ感じております。
  283. 内藤功

    内藤功君 お二人ともなかなかうまい答弁が出ないものだからいろいろ言われますが、近藤議員が言ったように、新大型間接税の賛成者は発言者の一九・一%、反対者は発言者の五〇%、賛否表明者の七二・三%、この歴然たる数字が今の世論を示していると思いますね。  次に私は、みんなが望んでいる一つは、さっきもお話がありましたが、サラリーマンの課税最低限の引き上げの問題であります。切実な要求ですよ。戦後税制の重要な原則の一つに、最低生活費、生計費には税金をかけないという原則があります。竹下総理や宮澤蔵相もこの原則は国会の中の御答弁でお認めになっていると思いますが、再度確認をいたします。生計費非課税ですね。
  284. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 直接税についてはそういうことは言えるだろうと思います。
  285. 内藤功

    内藤功君 総理
  286. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今大蔵大臣からお答えしたとおりであります。
  287. 内藤功

    内藤功君 大蔵省に伺いますが、昭和六十二年の課税最低限は、勤労者、サラリーマンの夫婦子供二人の標準世帯で幾らになりますか。
  288. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 二百六十一万五千円でございます。
  289. 内藤功

    内藤功君 ボーナスが一年に四カ月分として計算しますと、一カ月十六万三千六百円程度の収入にしかすぎませんですね。  そこで文部大臣、お伺いしたいんですが、東京で親元から通っているんじゃない大学生が、授業料を除いて一カ月に生活費はどのぐらいかかるとお思いですか。計算したことがありますか。
  290. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 文部省では学生生活調査というのを一年置きにやっておりますので、六十一年で申し上げますと、大体月十一万から十二万円前後であると承知しております。
  291. 内藤功

    内藤功君 最近私学の教員組合が調べたのはもう少し高いですね。私も何人かの学生に聞いてみると、この十一万、十二万というのは非常に安い方、実際はもう少し高いですね。大学生一人でもこれだけかかる。さっきの一カ月十六万三千六百 円という数字では、夫婦子供二人、健康で文化的な最低限度の生活ができるとお思いでございましょうか、大蔵大臣。
  292. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 大学生ですらとおっしゃいましたけれども、大学生は割にいい生活をしている人が少なくないように思います。  それで、健康で文化的だとおっしゃいますと、これはいわゆる最低生活ということと事実問題としては多少ちょっと余裕があることを言っているのではないかと思うのでございますが。
  293. 内藤功

    内藤功君 余り納得できません。  それじゃ聞きますが、昭和五十二年の課税最低限は幾らでございましたか、大蔵省。
  294. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 先ほどお示しの基準でいきますと、二百一万五千円でございます。
  295. 内藤功

    内藤功君 総務庁長官にお伺いいたしますが、消費者物価指数ですが、昭和五十年を一〇〇とした場合に昭和六十一年、昭和五十年から六十一年ですね、五十年としましたのは、さっきの五十二年というものの直近だからでございますが、この指数はどのぐらいになりますでしょう。
  296. 百崎英

    政府委員(百崎英君) 昭和六十年を基準年次といたします全国消費者物価指数をもとにいたしまして、これを昭和五十年を一〇〇といたしまして換算いたしますと、六十一年は一五八・九となります。
  297. 内藤功

    内藤功君 十一年間に消費者物価が五八・九上昇しておりますから、この五十二年の、先ほどお示しの二百一万五千円の課税最低限は、これはこの割でいきますと三百二十万円余に計算上なります。私は、少なくとも三百万円以上に引き上げろという要求、非常に控え目だと思います。我が党も三百万以上というのを出しておりますが、ほかの団体も出しておられますが、これは当然のことじゃないかと私は思うのです。現在の状況から見て、この要求はむしろ控え目過ぎるぐらいだと思っておりますが、宮澤大蔵大臣、いかがでございましょう。
  298. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは、昭和五十年から今までの十三年でございますか、こういう財政事情でございましたし、それからそう申しましても今の我が国の課税最低限が諸外国に比べて大変に低いかといいますと、むしろそうではございませんで、かなり最低限としては高い方でございますから、今五十年を固定されて消費者物価一五〇、一六〇でございますか、お掛けになるのは、一つの計算といたしまして我が国の課税最低限が大変に低過ぎるというふうに私は思わないんでございますが。
  299. 内藤功

    内藤功君 購買力の平価換算をいたしますと、アメリカ、西ドイツの方が高いんです。これはいかがでございましょうか。
  300. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは、恐縮ですが、その購買力平価をそこで持ってくることにもまたちょっと異存がございます。
  301. 内藤功

    内藤功君 私の方で計算したものがここにございます。西ドイツ、アメリカの方がよほど購買力平価換算で向こうの方が高いんです。ですから、この議論はやはり生活実態に立ってお考えにならないといけないと思います。  ところで、問題は政府・与党の幹部がしばしば三兆円以上の減税を言っておられるんです。中には三十兆という人もいるんだそうであります。その財源は一体総理、どういうふうにお考えなんです。
  302. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 三十兆というのは十年間という意味じゃないかと思うのでございますが、それはそれといたしまして、この減税というもの、昨年廃案になりました売上税と同じ時点に出した一つの試算もございます。そうしたものを総合的に勘案いたしますと、財源はそれこそ所得消費資産段階に均衡のとれたものの中から浮かび上がってくると、こういうふうに考えております。
  303. 内藤功

    内藤功君 政府・自民党としての財源は具体的にどういうところから持ってくるのか、これが一番国民の聞きたいところなんです。いかがでございましょう。
  304. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いつも申し上げますが、私は自由民主党総裁であることは事実でございますが、国会の中で話し合いによって行われたことにつきましては、行政府の長としての立場からコメントを差し控えるということを今日まで貫かしていただいておるわけでございます。したがいまして、自民党は自民党として、また他の三党は三党として、いろいろ今専門家の高度な皆様方の議論の中でこの成果が上がり得るものであるという期待をいたしております。
  305. 内藤功

    内藤功君 総理は同時に総裁でもありますし、そのことをおくとしても、政府・与党の最高幹部、首脳は日常的にいろいろ御連絡があるわけでございますね、協議をしてやっております。いやしくもこういう今国民注目の問題についてこのような重要発言を、私名前は言いませんけれども、与党のそうそうたる幹部が毎日のように言っておられますね。テレビでも言っておられますね。そういう発言について、その財源をどうするかということについて責任をお持ちになれないとは私は思えない。いかがでございましょうか。重ねてお伺いしたいと思います。
  306. 竹下登

    国務大臣竹下登君) それこそ重ねて申し上げますようですが、最高の専門知識を持ったお方で今議論をしていただいておるところでございますから、もう一遍申し上げますと、私は確かに自由民主党総裁でありますが、国会に出て公式な場で答弁するときは国会で指名を受けた行政府の長としての立場というものにこだわり過ぎるほど今日までもこだわっておりますし、これからもこだわり続けたいというふうに考えております。
  307. 内藤功

    内藤功君 総理に一番今のお言葉で、失礼ですが、欠けていると思うのは、国民にまた国会議員に率直に語りかけるという、この姿勢の欠如だと私はあえて直言申し上げたいと思うんです。  話し合いをやっているからとおっしゃいますけれども、一般国民も傍聴できない、報道関係者も入れない、会議録もつくらない、天下の公党である日本共産党も入らない、こういうところで自民党は財源を論じ、あるいは論じようとされておるけれども、国権の最高機関のこの場で、正面からの御質問にはお答えになれないんですか。
  308. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 行政府の立場の問題はこれ以上申し上げることは差し控えさしていただきますが、今せっかくこの議論をなさっておる、それから政府としては今バランスのとれた税体系あり方政府税調に諮問しておるというその限界だけは申し上げなきゃなりませんし、成案を得たらまたこの場所で内藤さんとも堂々と議論をし合うということであろうと思っております。(「共産党を抜いているじゃないか」と呼ぶ者あり)共産党がお入りになっていないという点についてのコメントは公党に対してまた非礼に当たりますから申し上げません。
  309. 内藤功

    内藤功君 何も非礼なことはありません。  私は第二税制協だと思うんですよ。これは衆議院でもほかの党の方がはっきり言われましたが、このままじゃ第二税制協のようなものじゃないですか、今の協議というのは。国会があるんだけれども、ほかでやっているからちょっと待ってくれ、まとまったら内藤さんに話すと、これじゃ国会はあってなきがごとしですね。
  310. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いや非礼に当たると申しましたのは、私一遍取り消したことがございます。ある機会に質問がございまして、仲間外れにおなりになっておると、こういう表現をしたものですから、仲間外れというのは適当でなかったなと思って、非礼を感じて取り消したことがございますので、そういう表現にならぬように気をつけなきゃいかぬと思っておるところでございます。
  311. 内藤功

    内藤功君 いみじくもおっしゃったように、まさにこの天下の公党である日本共産党を除いたところの、報道関係者も入らない、会議録もつくらない、そういったところの話し合いを国会の論議より優先している、こういうことじゃありませんか。そこで言えないんですね、これは、財源を。ここで本当に聞きたいですよ。少なくともEC型付加価値税か、あるいは何か取引高税か、あるい は単段階かと、どんどんどんどん一方じゃこう発言がなされておりますね。それをこの国会では、私がこれだけ聞いても財源についてはそれ以上明らかにできないんですね。
  312. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 政府としての立場は、重ねて申し上げますように、バランスのとれた税体系はいかにあるべきかというのを税制調査会へ、きょうの議論なども正確に報告しながら、これに今諮問をし、答申がいずれ出るだろうことを期待しておる、こういう立場です。  いま一方は、国会の中で御相談があって、結果として今、エクセプト・ワンとでも申しましょうか、共産党をお除きになってこのお話し合いが進んでおると。それについて内藤さんの立場で内藤さんの立場を主張されるのは私一向に悪いことだとも申しません。それはそれで結構なことでございましょうが、行政府たる私が、それに対して仲間外れの、じゃ理由はここにあったんだとかというようなことを言うべきことではなかろうというふうに思っております。
  313. 内藤功

    内藤功君 これは一党一派の立場だけじゃございません。国会が本当に国権の最高機関としての面目を発揮できるかどうかという問題の指摘であるということを申し添えておきたいと思うのですね。  それでは次に国税庁に伺いたいんですが、税務職員の最近の納税者に対する接し方について、非常にたくさんの問題、苦情が来ておりまして、私もここに持ってきておりますけれども、税務運営方針というものに照らして私が非常に問題だと思うものを幾つか指摘したいと思うのですね。  一つは、これ、名前や何かは私はあえて控えますが、酒気を帯びて納税者宅に調査、督促等に赴く。  それから、美容院に無通告で調査に入って、レジをあけさせて一週間の伝票を持ってこさせて、店員さんが社長に連絡の電話をしているのに対して、お前も同罪だと大声でどなると。  三番目は、飲食店経営の女性の方ですが、午前三時ごろに仕事を終わって帰宅をされたと。そして睡眠中ですね、午前中ですが、職員が二人でベルを押して表に立って待っている。近所の人は、何か悪いことをして警察の方が張り込んでいるんじゃないかと心配する。  四番目に、東京では五人家族で年四百八十万なければ生活できない、修正申告しろと。さっきの話じゃありませんが、四百八十万なければ生活できない、こう言って変えさせる。  五番目に、納税者たる夫の留守中、奥さんしかいない家に入り込んで修正申告をさせる。それも初めは八百万でどうだと。高いというと六百万、それじゃ四百九十万。何とかのたたき売りみたいに、最後に四百九十万で申告書に判こを押させる。  私は、これはいっぱいありますが、時間がないから申しませんが、本当にこういうことが今行われている。大多数の方はまじめにやっておられると思いますよ。しかし、こういう例はやっぱり税務運営方針に照らしてきちんとしないとこの税に対する不公平感というものはますます大きくなっていくという観点から、私は国税庁次長にこの点についての御見解、またどういうふうに御指導、教育研修などをおやりになるつもりかという点も含めてお伺いをしたいと思うのです。
  314. 日向隆

    政府委員(日向隆君) ただいま委員が御指摘になりました税務運営方針につきまして御説明申し上げますと、御存じとは思いますが、現在の税務運営方針は、昭和五十一年四月に策定されまして以来今日まで約十二年間にわたって私どもの教範として存続しておりまして、これについて私どもは当然のことながら職員に教育研修を行ってきております。したがって、十二年間にわたって機会あるごとにそういうことを行ってきておりますので、このことは職員一人一人についてかなり周知徹底されている、かように考えております。  そこに書かれております税務調査に関するくだりでございますけれども、これも御案内と思いますけれども、基本的には、税務調査の公益的必要性と納税者の私的利益の保護との衡量において社会通念上相当と認められる範囲内で、納税者の理解と協力を得て任意調査、国犯法に基づく強制調査とは違いまして、任意調査は行うということになっているわけであります。  今幾つかの具体的な事例を委員が御指摘になりましたが、その具体的な事例について私現在存じ上げておりませんので、そのことに即してお答えすることはお許しをいただきたいと思いますけれども、私が今申し上げました一般的なスケールに照らしましてこのような御指摘の事柄がどういうことであるか、やはりこの見地から判断をされるべきことだと、こう考えております。仮に、このような見地から見まして今御指摘になったようなことが不適当なことであるといたしますと、その事情、原因等をよく明らかにいたしまして、私といたしましては不適当なことと判断されました場合には是正してまいりたい、かように考えております。
  315. 内藤功

    内藤功君 これはきょう一つ一つの事例について細かく質疑する時間がありませんが、別に機会を改めまして具体的な、今あなたがおっしゃった原因、事情をそれぞれ明らかにした上で説明、釈明を求めたい、こういうふうに考えております。  最後に私は、高齢者の住宅問題及び福祉問題について伺いたいと思うんですが、その前に、竹下総理はその御著書の中で高齢者が幸せになる世の中ということを強調しておる。しかし、この竹下さんの本を見ますと、働く意欲の強いお年寄りが日本には多い、働きながら老後を楽しむことのできる社会をつくっていく必要がある、こういう点を指摘しておられるんですが、健康、体力が衰えて働けなくなったお年寄りについての政治家としての指摘、何らお触れになるところがない。この点はどういうふうに総理としてお考えか、まず伺っておきたいと思うんです。
  316. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私の書きおろした著書に関する私なりの反省をしてみますと、一つは、好老社会という言葉を一応選んで使ってみたことがございます。好老とは嫌老に対する反語という意味において使ってみましたけれども、これは余り適切でなかったかなというような反省をいたしております。それからいま一つ私が書きおろしの中で指摘したのは、今内藤さんがいみじくも指摘された、言ってみれば、長年の蓄積等に基づいて、人生をみずからの可能な限りの勤労の中に健全な老後というのを前提にしたものではなかったかなというふうに、自分なりにも思っております。これは別に決して政策を訴えたというものではございませんけれども、今おっしゃった、いわば健康を害した場合の問題でありますとか、あるいは痴呆性を帯びた状態の問題でございますとかいうような点については、自分なりに適切な論理の展開をあの書物の中で行ったとは私も思っておりません。
  317. 内藤功

    内藤功君 特に最近の高齢化社会、さらに最近の大都市を中心にする地価の高騰、こういう中で高齢者の住宅問題というものは非常に深刻なんですね。これは政府の御担当に、どなたの大臣かわかりませんが、この現状認識と対策、それに対する予算の裏づけというものを伺いたいんです。
  318. 越智伊平

    国務大臣(越智伊平君) 御承知の、非常に地価が高騰いたしまして、家賃も上昇をいたしております。でありますから、高齢者あるいは母子家庭あるいは身体障害者等々、弱い立場の方々は大変であろう、影響が大きい、こういうふうに存じます。  予算の問題につきましては、今特に高齢者ということではございませんけれども、公団住宅等に高齢者向きあるいは融資に親子ローン、こういうものを創設いたしましてその対策にも臨んでおるということであります。
  319. 内藤功

    内藤功君 そういう生易しいものじゃないんです。  特養老人ホームの問題、これも広い意味の住居の問題ですが、現在大都市では地価高騰で建設が非常に困難です。  厚生省に伺いますが、寝たきりのお年寄り、要 介護老人の推移ですね、それからそれに対応する特養老人ホームの推移、将来の必要数、そういったものを概括的にお述べいただきたい。
  320. 小林功典

    政府委員小林功典君) まず、寝たきり老人数の推移でございますが、この十年ぐらいを考えてみますと、昭和五十三年約四十三万人、五十六年に約五十一万人、昭和六十一年には約六十万人となっております。これは将来まだふえますし、我々の試算では昭和七十五年には約百万人になるというふうに推計をしております。  次に、特別養護老人ホームの定員につきましては、昭和五十三年に約六万二千人、五十六年に約九万人、六十一年に約十二万七千人でございまして、七十五年の百万人に対する特養の定員は約二十四万人は必要であると、このように考えております。
  321. 内藤功

    内藤功君 全国の待機者数はどのくらいと把握していますか。
  322. 小林功典

    政府委員小林功典君) 現在、約二万人というふうに把握しています。
  323. 内藤功

    内藤功君 東京都だけでも三千百を超えておりますね。こういう重大な事態なのに総合的な対策は全く我々に示されておりません。  そこで、建設省にお聞きしたいのでありますが、この大都市部の地価高騰に伴って特別養護老人ホームなどの福祉施設の建設難がある。一つは、国有地をできるだけこういう地方自治体の要望にこたえて提供し、低廉な価格で売り払うという、そういう努力。二つ目は、用地費に対するこの異常事態での国庫補助の御検討の考えの有無。それから三つ目は、これは厚生省にお伺いしたいんですが、厚生省令を緩和してもう少し小規模の特別養護老人ホームができるように、現在五十人以上ですが、これを三十人以上と、例えばそういうふうに緩和をして、本当に今まで高齢者が住んでいた町に近いところに、しかも小規模でたくさんできるような、そういう方向にすべきだという意見が運動をやっている方とか地方自治体の方に多いわけですが、この三点について建設厚生両省のお考えを伺いたい。
  324. 越智伊平

    国務大臣(越智伊平君) 国有地の売却、これは建設省の担当ではございませんので、私の方から今お答えをするというわけにはまいりません。  また、宅地の補助、老人ホーム等の補助、これも、これは多分厚生省でないかと思いますが、建設省ではその補助はちょっとできない、かように御回答を申し上げます。
  325. 小林功典

    政府委員小林功典君) まず第一の国公有地の優先供給という問題でございますが、これにつきましては、東京を初めとします大都市部におきます特別養護老人ホームの用地取得に関しましては、我々は基本的には各地方自治体に対応をお願いすべき問題である、このように認識をしております。  ただ、国といたしましても、既に用地取得費に対する低利融資制度、これは社会福祉・医療事業団による融資制度でございますが、こういうものやあるいは国有地の処分等、いろいろ所要の措置を講じておりますので、今後ともこうした制度の活用に努めてまいりたい、それによって対応したいというふうに考えております。  それから、第二の特別養護老人ホームにつきましての用地取得の国庫補助制度の問題でございますが、これは土地は建物と違いまして永久資産になるものでございますから、やはりこれは国庫補助制度にはなじまないというふうに考えております。ただ、厚生省といたしましてはこれまでもいろいろ措置を講じております。例を申しますと、第一に、普通、社会福祉法人が施設を建てます場合には原則はあくまで自己保有というのが原則でございますけれども、大都会なんかにおきましてはなかなか自前の土地を持つことが困難であるという点に着目をいたしまして、特例的に地上権あるいは借地権といったそういう利用権でも結構ですという措置も講じておりますし、第二に、先ほど申しました社会福祉法人の用地取得について事業団の低利融資をやっているということもありますし、また、都会でいろいろ知恵を絞られた例を見ますと、他の施設といわば合築をして複合化いたしますと、非常に限られた用地でも有効に活用できるということで、そういう措置も講じておるわけでございます。したがいまして、そういう各種の措置を効率的、有効に活用してやっていくべきではないか、これが我々の考え方でございます。  それから第三点、特別養護老人ホームの定員の規模のお話がございました。確かに現在五十人以上ということになっていますが、これにつきましてはやはり施設の安定的な運営を図ると。つまり入所されている方がお年寄り等でございますから、どうしても不安定な経営になっては困るという意味におきまして、五十人というのを我々としては遵守する必要があると考えておりますけれども、これにつきましては、こういう要件の緩和というよりも、むしろ先ほど来申し上げておりますように、借地の活用でありますとか、あるいは低利融資制度の活用でありますとか、あるいは他の施設との合築による有効活用とか、さらには国有地の処分といういろいろなそういう施策を組み合わせて対応をしていきたい、このように考えております。
  326. 内藤功

    内藤功君 非常に不満でありますが、私の先ほど指摘した三点をさらに検討することを強く要望しておきます。  さらにもう一つの高齢者の問題は、今問題になっている公団住宅の建てかえ計画の問題ですね。そこに住む年金生活者などの高齢者の生活が大変脅かされております。私、先日武蔵野市の緑町団地、板橋区の蓮根町団地、この二つの大きな団地に行きまして高齢者のお話を中心にお聞きしてきましたが、この方々が一致しているのは、戦争で大変苦労して子供を育てて、民間賃貸アパートを何十回も、多い人は三十回ぐらい引っ越した、そうして余儀なくされてようやく抽せんに当たって、昭和三十年代の初期に公団住宅に入った。これはもう公的機関が後ろについている住宅だ、国が後ろについている住宅だ、耐用期間も七十年だ、絶対に追い出されることはない、生涯ここで暮らせると安心していたというのですね。みんなそう言っています。  ようやく年金生活に入った、ちょうどそのころ三十の人が今は六十幾つになりますが、そういう途端に建てかえ計画が出てきたと。建てかえ計画というと、例えば二DKで、ある方は二万四千円が八万八千円に一挙になる、四倍くらいになる、これでは建てかえ後も事実上住めない。現居住者、特に収入がこれから減る、あるいはなくなる高齢者の方が住み続けられないような建てかえなら、これはやってもらわない方がいい、むしろ今のままでもやむを得ないというような御意見が、私のずっと聞いてきた中で大変切実に多くあったのでございます。  これは建設大臣、この高齢者の叫びにどういうふうにおこたえになるか。厚生大臣も、この高齢者の対策の一つです、どういうふうにおこたえになるつもりかということを一点お伺いしたいと思います。
  327. 越智伊平

    国務大臣(越智伊平君) 公団住宅は決して追い出しはいたしておりません。ただ、今の住宅事情でございますから建てかえは進めておりますけれども、入居者の方々と十分話し合って対策を立てております。でありますから、確かに新しく建ちますと家賃が高くなる。どうしてもそれに耐えられない人は他の公団住宅に移転をしてもらうとか、あるいは家賃が上がりましても段階的に緩和処置をとって上げていくとか、そういうことで十分入居者の方々と話し合いをして進めていくように指導をいたしております。決して出ていけということで追い出しはいたしておりませんから、今後もそういうことのないように特に指導をしてまいりたいと思います。
  328. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) 厚生省といたしましては、住宅にお困りのお年寄りの場合につきましても福祉施設等へ入居していただくように対応したいと思います。
  329. 内藤功

    内藤功君 これはもう根本問題になると思うん ですね。公団住宅には自治会がありますから、自治会を代表とする住民と話し合うように指導する、これ自体は結構だと思います。とことん話し合って、高齢者の方が路頭に迷うことのないようにしていただきたいと、重ねて要求をしておきたいと思うんです。  私は、次のような提案を最後にしたいと思うのは、一つは民間アパートの賃借、これに対して高齢者についての家賃補助制度というものを検討していただきたいということ。もう一つは、今中野区その他で先駆的にやっておりますけれども、民間のアパートを区が借り上げて、特にひとり暮らしの住宅にお困りのお年寄りから順番に区が責任を持って入れていく、こういう努力をしておりますが、国としても民間アパート借り上げ制度というものを検討する必要があるんじゃないか。さらに、欧米で行われております老人集合住宅、これはもうドイツなんかではすばらしいのができておりますが、こういうものを真剣に早急に建築する考え方をとるべきじゃないかというふうな考えをかねがね持っておるわけでございます。また党の政策にもこれを出しているわけでございますが、建設大臣、厚生大臣、この抜本的な、高齢者時代に伴う、また地価高騰に伴う高齢者の住宅対策というものについてのビジョンをお持ちでないのかどうか、お示しいただきたい。  これをもって私、質問を終わりたいと思います。
  330. 越智伊平

    国務大臣(越智伊平君) 先ほども申し上げましたが、公団がいろいろお話し合いをいたしますのは、公団、すなわち家主と入居者の間での契約になっておりますから話し合いをすると、こういうことであります。  また、公団には老人向けの住宅、この部分もとっておりますし、第一番は災害等のときにお困りの方を優先して入れる。また次には、老人の場合は競争率も低くしたり、いろいろ工夫をして老人に対しても努力をしているところであります。
  331. 藤本孝雄

    国務大臣(藤本孝雄君) 厚生省といたしましては、特別養護老人ホーム、また養護老人ホーム並びに軽費老人ホームなどの福祉施設の整備をもちまして対応いたしてまいりたいと考えております。
  332. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で内藤功君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  333. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、小西博行君の質疑を行います。小西博行君。
  334. 小西博行

    小西博行君 それでは、きょうは主として我が国に留学しております外国人の留学生の問題についてお尋ねしてみたいと思います。  御承知のとおり、一月一日からこちらまで見ましても、留学生の問題というのは新聞紙上に相当大きく報道されております。もちろん悪いことばかりじゃなくて、ボランティアで子供さんを、留学生の面倒を見ているという明るいニュースもございますが、圧倒的に暗いニュースが中心であります。  そこで政府にまずお伺いしたいのは、そのような実態調査、これは文部省あるいは法務省、それぞれもう相当やっていらっしゃるんじゃないかと思いまして、それをまずお伺いしたいと思います。
  335. 植木浩

    政府委員(植木浩君) 最近、留学生の数が大変ふえておりますが、文部省といたしましても留学生に対する実態の把握に努めるという意味で調査を行っております。それから各大学等でもまた留学生について調査をしておりますし、また地方公共団体といいますか、あるいは地方の民間団体、こういったところでも留学生の実態を調査しているものがございます。
  336. 小西博行

    小西博行君 その実態の中身を知らしていただきたいわけです。
  337. 植木浩

    政府委員(植木浩君) 文部省の方では留学生交流状況調査というものをいたしております。これは各大学あるいは高等専門学校、専修学校に調査票を出しまして留学生関係の調査をしているわけでございますが、例えば留学生関係の大学の紹介あるいは留学生活の手引、こういったものをどうやって留学生に知らしめているかというような点でございます。  それから、大学等におきます日本語教育をどうやって実施しておるかという点が第二点でございます。それから留学生のための日本語の教育教材、これをどのようなものを作成して使っておるかという点もございます。それから、留学生の宿舎の状況あるいは民間の下宿、アパートへの入居の状況。それから、私費留学生に対する民間奨学金の支給状況、さらには大学の基金によります奨学金の支給状況、あるいは私費留学生に対します授業料減免の実施状況。そして帰国留学生に対してアフターケアを大学としてどのように実施をしておるか、あるいは留学生交流のために大学の中で委員会等をどのように設置しておるか、そういったような点を調査いたしております。
  338. 小西博行

    小西博行君 そのことはよくわかるんです。  私がお聞きしたいのは、現実に二万二千幾らというような大勢の留学生が日本へ来て生活をしながら勉強する、こういう実態を、大変生活が苦しいとか、あるいは授業を実際聞いてみて自分の専門とはかなり違うとか、そのようないろんな問題点実態調査をされていますかということなんです。
  339. 植木浩

    政府委員(植木浩君) 留学生の生活状況の調査につきましては、例えば財団法人日本国際教育協会であるとか、先ほど来申し上げております一部の大学あるいは地域の団体等でも行っておりまして、どのくらいの収入があってどのくらい支出があるかというようなことをやっております。  それから、大学におきます教育、指導についての状況については、例えば広島大学などで大変詳しいよい調査を行って出版物になっております。
  340. 小西博行

    小西博行君 広島大学の大学教育研究センターというので、こういう一九八二年と八八年、非常に詳しいものが出ております。特に、この八二年のものは留学生のいろんな言葉が率直に語られているわけです。そういう意味で私は非常に参考になると思います。そういう意味で、せっかくこのようないい資料をつくっていただいているわけでありますから、最近発生しておりますいろんな問題、これをどのように対策をとって、諸外国からその信用を失しないようにするかというのが実は政治的な大きな課題であると私は思うんです。  そういう意味で現状の具体的な政府としての調査がおくれているんじゃないかというので、これは委員会の中でももう随分前から再三言われているわけです。ところが、現実になかなか具体的な調査を政府としてはまだ十分やっていない。特に留学生は、もう御承知だと思いますが、東京であるとか大阪であるとか主にそういう大きな町にほとんどの方が来ておられるわけです。ですから、特に住宅問題その他になりますともう大変悲惨な状況である。留学生に私も実際何人かにお会いしました。本当に厳しい状況です。そういうことについての調査をもししてないのであれば、これからしていただきたい。このことに対してのお答えをいただきたいわけです。
  341. 植木浩

    政府委員(植木浩君) ただいまも申し上げましたように、いろいろと調査をしておりますが、なお留学生の実態をよりよく把握するように調査のやり方等につきましてもさらに検討してまいりたいと思っております。
  342. 小西博行

    小西博行君 総理にお尋ねしたいと思うんですが、中曽根総理も一〇二国会で、特にお互いの国の青年同士の人事の交流というものが非常に国際化の社会の中では大切だというように言われております。これは所信表明で言われております。それからまた、竹下総理も今国会の所信表明で、留学生の受け入れについては真剣に考えていくと、このようにおっしゃっておられるわけです。今のいろんな質疑を聞いていただきまして、決意を新たにお答えを願いたいと思います。
  343. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 留学生問題、大変御関心を持っていただいておることに敬意をまず表します。  有識者の方からいろんな提言をいただいておる わけでございますが、私なりに最近の事例を一つだけ申し上げますと、確かにいわゆる円高によって、日本政府が出しておるのではない私費留学でございますとか、向こうの、相手国の経費でこちらへいらっしゃっておる人は大変だということで、それは授業料の減免措置とかいろんな措置が行われておる。  いま一つ、これは実際は同友会の動きの中で企業が受け入れたらどうだと、こういうような具体的なお話がありまして、そこでまずは最終的に文部省と相談して結論を出さなきゃいかぬ問題であると思いますが、通商産業省の方で一応各企業を当たってみてもらいました。ところが、私が思っておる以上にいわゆる独身寮というものに空室がある。ただ、四月に新入社員の方がお入りになりますからその後の動きが若干私も気になってはおりますものの、そういうところへ日本人と一緒になっておられることがまた大いに意義があることでございますので何か工夫がないものか、あるいはその企業の冠を付した奨学金制度とマッチングさせて、実質上安価にして良質な、またいい環境での日本留学の滞在というようなことを今鋭意検討を進めておるところでございます。  これは別に予備費を必要とするとかということでもございませんので、これが何とか実現しないかという一例を申し上げただけでございますけれども、そういうことについてもきめの細かい配慮をしていかなきゃならぬ課題だというふうに思っておるところでございます。
  344. 小西博行

    小西博行君 確かにそういう宿舎の件とか奨学金の問題とか、いろいろございます。ただ私が思いますのに、先進諸国と比較いたしてみますと、もう全然、総理、話にならないわけです。もちろん留学を受ける人数も違いますし、奨学制度も違うし、ましてや自分が寝泊まりする宿舎なんかということになりますと、ほとんど心配が要らないというのが先進諸国の実態なんですね。  そこで、政府の方では二〇〇〇年までに十万人の留学生を受け入れるというようなことがもう既に決定されたような状態で一般にはとられております。恐らく具体的にこれから先どのように各条件を満たしていくかというのは大変なことだと思うんですが、そのことについて間違いなく、これは詳細設計をしているので計画どおりやるんだというようなことをもう計画としてお持ちなのかどうか、文部大臣にお伺いしたいと思います。
  345. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 確かにお尋ねのように、現在二万二千人でございますけれども、二〇〇〇年初頭に十万人ということで、これは計画達成には相当やはり腰を据えてかからなければいかぬと思っております。それには、これは人の問題でございますから、特に留学生は我が国に来ていただいて将来ともども有為な人材としてそれぞれの国とのかけ橋になっていただける重要な人材であります、したがってただ来ていただくという以上に、魅力ある留学生生活そして就学生生活、これをしていただかなきゃならぬわけでございます。今の宿舎だけを取り上げましても、鋭意努力いたしておりますが、現在四分の三はまだ下宿、アパートに住んでいらっしゃるわけでありますから、その点で国費の留学生会館もつくらなければならぬ、それから総理がおっしゃいましたように、民間の宿舎、社員寮、その他の開放もお願いをし、それから民間の奨学財団と申しますか、あるいは宿舎建設財団、この方への寄附もお願いをしてそこからの力もおかりするということも含めまして、総合的に相当力を入れていかなければならぬと思っております。  また、こちらへ来ていらっしゃることについては、国費留学生の拡充ですとか教育指導体制の充実ですとか日本語教育の充実ですとか、それと同時に、来られる前の情報提供と申しますか、我が国の状況を知っていただく、それから学校を選んでいただく資料を充実させる、それから留学生生活が終わられました後どのような状態でどのようなところでお働きいただけるのか、それもアフターフォローを十分いたしませんと、前後のものも含めましてそこがむしろこれから重要になってくるかもしらぬ。あわせまして努力しなければいかぬ。これは相当な努力が必要だと、このように考えております。
  346. 小西博行

    小西博行君 今総理がお聞きのように、確かに大ざっぱな形で、前期、後期ということで一九九二年を一応前期としているわけですが、後期は二〇〇〇年、こういうことで日本語学校の先生は六千からだんだんふやしていく。計画としては非常に見事な計画が立っておるんですね。ところが、現実にそれをどうやって充足していくかというところが私は大変じゃないか。今大臣がおっしゃったように、宿舎の関係は企業にもお願いする、それから一般の法人にもお願いする、財団にもお願いする、こうおっしゃるんですけれども、たくさんの問題が実はあり過ぎまして、私これからそういう問題についてお聞きしたいと思っておるわけですが、相当細かい詳細な計画を立てて詰めていかないととてもとてもこれは約束にはならない、調べれば調べるほど難しくなるような計画だと、このように私は思いますので、個々についてはまたお尋ねしてみたいというふうに思います。  私はまず、日本語教員、これをふやしていかなければいけない、今大臣がおっしゃったとおりだと思うんです。つまり、外国から日本へ来る場合には、必ず日本語の検定試験を受けてそしてパスポートをもらって日本へ入ってくるわけです。ですから、相当日本語ができるという前提なんですが、実際入ってきてみたら、まあ少なくとも六カ月や一年間勉強してもなお足らない、こういう状況なんです。  だから、日本人、いわゆる日本語学校の先生をどうやって充実していくかということで、ついこの間、これは初めてのケースですね、検定試験を実はやっています。多分あれは五千人ぐらいの日本人が押しかけて試験されたと聞いているんですが、これは日本国際教育協会ですか、これが主催でやっているというんですが、その実態の内容、例えば教育内容をどうやって試験したんだとか、あるいは語学なんかというのは全然要らないのか、その結果についてもしまとめていらっしゃったら教えていただきたいと思います。
  347. 植木浩

    政府委員(植木浩君) ただいま先生おっしゃいましたように、今後留学生を大幅に受け入れ、あるいは海外での日本語教育学習者の増加に対応しまして日本語教育を振興するという場合、文部省としては大学等におきます日本語学科等を設置して日本語教員を養成いたしております、それと同時に、いろいろな形で日本語を教えている学校等がございますが、そういうところの日本語の教員の方あるいはこれから教員になろうとする方、そういう方々の専門性の確立と水準の向上のために、初めて先般日本語教員検定試験というものを日本国際教育協会を通じて実施いたしたわけでございます。  この試験は、日本語の構造に関する知識あるいは日本語の教授法に関する知識、能力、そういったものにつきまして出題をいたしたわけで、五千八百人余りの方が応募をいたしたわけでございます。  この内容といたしましては、筆記試験のほかにヒアリングも課してございます。何分にも初めての経験でございますので、私どもとしては今回の経験をもとにさらに充実した試験を行っていきたいと思っておりますが、こういった試験を行うことによりまして、先ほど御指摘ございました留学生の日本語能力というようなものもだんだんに向上してくる一助になるかと思っております。
  348. 小西博行

    小西博行君 採用数は決まっているんですか。
  349. 植木浩

    政府委員(植木浩君) 採用数はまだ決まっておりません。明日、合格者が発表されるという予定でございます。
  350. 小西博行

    小西博行君 とにかくできるだけ早くそういうシステムをぱちっとつくっていかないと、とてもこれはもう間に合わないような感じが実はしております。  それからもう一つは、とにかく海外で日本語を教えなきゃいけないんです。そのためには、最近は日本から海外にどんどん留学もふえております ので、そういう方々が学生で教えるのがいいか悪いかというのは私わかりませんが、例えば卒業した後にそういう財団なりあるいは国の機関という形で、向こうで就職をされて日本語の教育をできるような、そういうシステムをつくらないとなかなかこれはまた間に合わないんじゃないか、そういう感じがいたしておりますので、これは文部大臣その提案はいかがでしょうか。
  351. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 御趣旨はよくわかります。ちょっと技術的には政府委員から。
  352. 植木浩

    政府委員(植木浩君) 海外での日本語教育の振興につきましては、主として外務省とか国際交流基金が実施をいたしておりますが、文部省もいろいろと協力をいたしております。文部関係では、例えば中国とかマレーシアで、政府が留学生を日本に派遣するという場合にそれぞれの大学等で予備教育コースをつくっておりますが、こういうところに文部省の方からも、それから国際交流基金からも日本語教員等を派遣いたしております。  それから、やはり日本へ日本語能力を持って留学生が来るということが大変いいと思いますので、今後とも海外におきます日本語教育の振興のために、外務省とも協力をいたしまして文部省としても努力をいたしたいと思っております。
  353. 小西博行

    小西博行君 私、確かに日本語を教えるということは大切なことだと思うんですが、もう一つはやはり、日本へ来た場合にもう必ず日本語の教育とあるいは日本の事情について六カ月から一年ぐらいずっと教育してそれから大学へ入るわけです。ですから、留学生にいろいろお話を聞いてみますと、日本の先生はもうほとんど語学に弱い、英語圏から来た場合でも、東南アジアでも最近は英語は相当しゃべりますから、英語がほとんどできない日本語の先生が多いものだから、なかなかその辺の事情を短い時間で納得するのにはもう大変なんですということですから、私は日本語の先生は、その中でやっぱり語学的な多少の会話とかそういうものは必ずやったらどうだろうか。外国人が来て六カ月とか一年である程度マスターされるわけですから、私は、そのことがむしろ日本の事情について大変詳しく相手に伝わることではないかと、このように思うんですが、その点はいかがですか。
  354. 植木浩

    政府委員(植木浩君) 確かに先生御指摘のとおり、外国人留学生に日本語を教える場合に、できればそれぞれの母国語をよく知っていた上で教える方がはるかに適当であるということでございます。その点につきましてはいろいろと努力はしておりますが、そう一気にもまいらないわけでございますが、例えば先ほどお話し申し上げました日本語教育能力検定試験の中で対照言語学的な出題もしたり、まだささやかではございますが、そういった日本語の特徴を的確に理解するためには外国語の知識も必要であるということでやっております。しかし、この点はまだまだこれからの課題であろうかと思います。
  355. 小西博行

    小西博行君 ぜひそのようにしていただきたいと思います。  情報の提供という分野にひとつ入ってみたい。  先ほど大臣が、海外に対して日本の実情をやっぱり正確に伝えていく、そのことが非常に弱いと、今の段階では。だから誤解をされて、何となく日本へ行けばすばらしい学生生活ができる、このように錯覚をされている方も相当おられます。特にこれは留学生とは別ですが、就学生というのはいわゆる日本の言葉を習いに来るわけですが、これはほとんどアルバイトをされて頑張るわけですが、相当大きな誤解がある。だから、日本へ行けば住まいも何も大丈夫だというのがとんでもないことだというようなことで、国際的な大きな信用失墜をこれまたする可能性が私あると思うんです。  そこで、世界各国に、できれば先進諸国もそうでありますし、東南アジアぐらい、詳しい留学するための日本のそういう実態、この資料をぜひ置いていただきたい。  今いろいろお話がございましたが、私ここへ一冊だけこういうのを持ってきたわけです。(資料を示す)これは恐らく日本の紹介、これは英文ですけれども、大変大きなものだと思うんです。ところが、実際これの中を見てみますと、日本の大学はほとんど全部入っておるわけです。ところが、どの学科でどの先生は何をやっているかというのは全然入っていない。科目だけですね。私の専門だったら経営工学ということだけしか入っていないものですから、実際に留学してきた場合には、国費留学もそうですね、大学を自分で選ぶ権利はないわけです。しかも、どの学科というのは、大体自分に近い学科を割り当てられるわけです。来てみたらとんでもないと、先生も自分の肌に合わないというのがかなりあるということですから、私はこういうものの情報という意味で、これはもちろん在外公館のところへ置いて相談に乗るということもいいでしょうけれども、何かほかにそういうものができないだろうかという気がするんですが、その点に絞ってお答え願いたいと思います。
  356. 植木浩

    政府委員(植木浩君) 留学する人々に対するオリエンテーションといいますかカウンセリングといいますか、情報の提供は大変大切なことでございます。  現在、先ほど先生もおっしゃいましたように、文部省で先ほどの英文の大学一覧、これも長い間かかって初めてつくったわけでございますが、これを在外公館にお送りしております。そのほか関係の大学等で英文のカタログをつくる機運が高まってきておりまして、これらも文部省で入手したものは在外公館にお送りしまして、それを見ますとかなり詳しいことがわかるわけでございますが、まだまだ全部の大学について送っているというような状況ではございません。やはりそういった在外公館におきます留学情報の提供ということが大事でございますが、文部省といたしましても先ほど来申し上げております留学生の世話の中心的な団体でございます財団法人日本国際教育協会、東京に留学情報センターを設置いたしまして、ここで海外からの問い合わせ、年間三千件余りの問い合わせ、照会に応じているということで、少しずつは努力いたしておりますが、まだまだやはりこれからでございます。
  357. 小西博行

    小西博行君 これは文部省がつくると、総理、だめなんですよ。というのは、各大学がありますね、そして研究室があります。大体字数にして同じようなものをつくるでしょう、多分。詳しく、この先生はこういうことをたくさんやっているということは恐らく書けないだろうと思うんです。皆さん平均的に非常に簡単に同じような形でまとめて提出しないと、ある先生には失礼に当たるということもまた出てくるだろうと思うんです。私は、そういうものを文部省から出すよりもむしろ何かそういう財団をつくって、その中で詳しい方がそれぞれの分野でやっていただいたら完璧なものになるんじゃないか、私はそういう感じがするんです。  ですからその辺も、これは財団ということになるんですけれども、東京のフルブライト財団というのがあります。三日ぐらい前にここへ私が行って、アメリカへ留学する場合のいろんな資料を下さいと言ったら、物すごく丁寧ですね。まず、行ったら担当官が出てこられて、通訳の方もちゃんと呼んでいただいて、応接室へ入ってコーヒーをいただいて、そしていろんな資料はもうすぐにコピーで出る。そして、足らないものは後で送りますと言ったらすぐ送ってまいりますね。親切なあの感じというのが私は実はこれから海外に対して重要じゃないか。韓国の留学生、中国の留学生にもちょっとお聞きしたんですが、やっぱり大使館へお邪魔していろいろお話をするんだけれどもなかなかそういう親切な感じでは説明してもらえないんですよ、こう言うから、それはそうだろう、この中身そのものがなかなか在外公館の方もわからないだろうと思うんですね。  その辺の事情がやはり詳しくわかるような情報を流さない限りは、日本には全く何にも情報がない。なぜ留学してきたんですかという質問に対し ては、やっぱり先輩からどこそこの大学の何々先生は非常にいい人だ、専門的にもすばらしい人だという情報を得たとかいうようなことがほとんどなんですね。大学の先生。これは、日本へ留学して、あるいは日本の学者と交流がある、そういうことで大体五〇%ぐらいの人がその情報を聞いて来るわけです。ところが、そういう情報のない国もあります。その場合、実は来られてから大変な問題が次々と出てきている。  というようなことがありまして、現在の段階では文部省あるいは国際交流基金、日本学術振興会ということで大体全世界に十一カ国、百三十二名の職員がいるわけです。だから、私はこれじゃとってもとっても比較にならない。先ほど申し上げましたフルブライト委員会というのは百二十カ国にオフィスを持っている。これは人数はちょっとデータがないんですけれども、イギリスはブリティッシュカウンシル、これは約八十カ国、四千四百名。それから西ドイツ、これはフンボルト財団、三千五百人。このように大勢の専門家をそれぞれの国に置いて、しかもいろんな資料でどんどん国の内容の説明、大学の説明をやっている。  そういうことで私は、この財団関係、これから先いろんな税制措置やなんか大蔵大臣にお願いして、もっと寄附が楽にできるような体制にしていかなければいけない、こんな感じがしているわけですが、文部大臣、何か中心になってそういうようなものを民間にどんどん働きかけていくというような気持ちがおありですか。
  358. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 先ほども申したように、そういう情報提供というのは大変必要でありまして、先ほどお持ちになっている本もやっとそれを一冊つくりましたところでございまして、そういう意味では民間の力を大いにかりてもその徹底を図ることは必要だと思っておりますので、これからどういう形でさあお願いをするかまとめてみまして、お願いできるところがあれば私からもよく御協力をお願いしつつ徹底をしてまいりたいと思っております。
  359. 小西博行

    小西博行君 外務大臣にお伺いします。  在外公館にこういうような情報センター的な立派なものをまずはつくっていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  360. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 先ほど来いろいろと御高説を承りまして、一々うなずくばかりでございます。現在はもう少しくやはり足りない面がございますから、努力をいたしたいと思います。  なおかつ、外務省は今そういう問題にいろいろと力を尽くしたいと思いますから、過般来我が国を代表する経済団体ともお目にかかっております。昨夜もお目にかかりました。そして、この問題に関してなお一層いろんな面での財界の御協力などをお願いする。いずれ文部省、外務省等相連絡してやっていかなくちゃならぬ。特に先ほど御指摘のありました十万人体制というのはもう大変なことでございますから、このことはもう総理もASEANでも言明されたというふうな経緯がございますから、ぜひともそれに対処しなくちゃならない、かように存じております。
  361. 小西博行

    小西博行君 ぜひお願いしたいと思います。  次に移りますが、奨学金の問題、これは留学生に対する奨学金です。  これはもう既に、国費留学なんていうのは割合、金額がいい金額といいますか、世界の先進国並みというふうに私考えてもいいと思うんです。大学院レベルで大体月に十七万六千五百円、そして大学、これは十三万三千五百円というようなことですから、まあまあこれぐらいの金額だったら世界にも評価されるんじゃないか、こう思いましていろいろ調べたら、実は給付される人数が大変少ない。現在で四千三百四十五人ということになっているわけですね。これからもこういう分野をどんどん広げてもらいたい。もちろん、海外から日本へ留学するという場合、国費留学の場合はドクターコースというのが割合多いんです。修士課程とかドクターコース、しかも理科系というのが割合多いんです。というようなことで、恐らく学位を取って帰りたいとか将来研究機関で働きたい、こういうような非常に具体的な目標があるものですから勉強も相当やられるという傾向がありますので、この辺をもう少し拡大していただきたい。  そして同時に、この金額というのは、先ほどちょっと日本の学生が十一万とか十二万ぐらいというようないろんなお話があったんですけれども、留学生が来て生活するのに、これは東京と大阪とあるいは筑波とは大分違うと思うんですが、大体どのぐらいの金額が必要だというふうに——これは文部大臣にお伺いしたいと思うんですが、月にどのぐらいあれば十分だと、まあまあと、学生生活ですからぜいたくするという意味じゃありませんが、お考えでしょうか。
  362. 植木浩

    政府委員(植木浩君) 先ほど来申し上げておりますように、いろいろな調査をいたした結果では、地域によって違いますが、大体月額八万円から十万円ぐらいの支出をしている方が多いわけでございます。したがいまして、私どもとしても、大体そのぐらいの金額が留学生の方が平均して日本の勉学生活に必要である、このように考えております。
  363. 小西博行

    小西博行君 それはもう私は大変誤解だと思います。最低どのぐらいの生活をしていますかということを留学生に聞いたら、八万円から十万円ではぎりぎりですと言うんですが、恐らくそうです。で、それ以外にも大体二、三〇%はもうみんなアルバイトをしないとやっていけない。都内のことを考えていただいたらすぐおわかりだと思います、下宿その他。ですからそんなに簡単なものじゃない。  だから、もしそうであれば、こういうものを計算する場合の積算基準というのは何かおありでしょうか、示していただきたいと思います。積算基準。
  364. 植木浩

    政府委員(植木浩君) 国費留学生制度ができましたのが昭和二十九年でございますが、そのときに諸外国の留学生制度を調べまして、諸外国の留学生の奨学金、例えば日本から外国が呼ぶ奨学金、そういうものを調べまして、大体それと均衡をとっていこうというような形で当初スタートしたと承っております。その後、物価の上昇率とかそういったいろいろな経済的な要素を織り込みまして、年々金額を充実して今日に至っておるということでございます。
  365. 小西博行

    小西博行君 それでは、諸外国というお話が出ましたから、諸外国、例えばアメリカであるとか西ドイツあたりではどの程度の人数、あるいはパーセンテージでもいいですが、奨学金をいただいているのか、答弁願います。
  366. 植木浩

    政府委員(植木浩君) アメリカの場合のデータきりないのでございますが、アメリカのインスティチュート・オブ・インターナショナル・エデュケーションという留学生関係の世話機関がございますが、ここでの調査によりますと、奨学金の受給者が三〇・一%、自費等が六九・九%となっております。人数のオーダーはこれは合わせて三十四万人ぐらいという大変大きなスケールでございます。奨学金の受給者は、米国政府の奨学金が二・〇%、それから母国の政府、大学の奨学金が一一・一%、その他米国内の民間奨学金、米国外の民間奨学金、米国の大学の奨学金等となっておりますが、そういった奨学金の受給者は三〇・一%でございます。日本の場合は、そういった同じような調べをいたしますと、奨学金等の受給者は六三・五%、自費その他は三六・五%ということで、アメリカよりははるかに高い数字になっております。ただ、もとの台が二万二千人ということで、大変まだ数が全体としては少ないという問題がございます。  それで、奨学金等の受給者の内訳を日本の場合申し上げますと、国費留学生、日本政府の奨学金の留学生が一五・六%、それから外国政府派遣留学生、外国政府からの奨学金が四・五%、それから民間奨学団体の奨学金が八・二%、大学等の奨学金による奨学金が三・五%、それから授業料の減免対象者が三一・七%となっております。ただし、日本の六三・五%は授業料減免対象者と民間 奨学団体の奨学金の受給者が若干ダブることも考えられますので、実質ではもうちょっと低い数字にはなろうかと思います。
  367. 小西博行

    小西博行君 これは総理、奨学金というのは物すごくややこしいですね。いろんな減免措置とさっきおっしゃいましたが、そういうのもありますしね。ですから、一概にどこの国が幾らだから高いという表現も非常にしにくい面もありますけれども、しかし民間のそういう財団というのが非常にきめ細かい運動をやっているわけです。ですから、これはもう恐らく議員の中でも昔留学された方もいらっしゃると思うんですが、非常に手厚い状況という感じがして、一概に比較しても実はもう話にならないような状況なものですから、ぜひともこれから先、そういう意味で、この奨学金制度も先ほどの情報提供と同じようにひとつ整備をしていただきたいなと。そうしないと、とても十万人体制までは追いつかないという感じが私しておるものですから、お願い申し上げたいと思います。そして、特に東南アジアですね。円高不況ということで減免措置ということをやっているんですが、これは限られた期間ということなんですけれども、あれはかなり人数的にはふえていくんだろうと思いますが、まだ現在では相当少ないですから、ああいう問題もぜひとらえていただきたいと思います。  それじゃ次に、宮澤大蔵大臣にちょっとお聞きします。実はこれは十二月八日の決算委員会、我が党の関先生の方から御質問されたと思うんですが、例の国費留学生に対してお金を支給するという日にちの問題です。国立大学の場合は大体毎月十日ごろいただける、ところが私学の場合は同じ国費留学であっても二十四、五日になってしまう、これは会計法上のいろんな問題がある、改善ができれば早い段階で改善しましょうというような答弁をいただいておるものですから、もしいい答えが聞ければということで御質問申し上げます。
  368. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) あれは御指摘がございまして、たしかこのたび改めるように決めたはずでございます。ちょっとお待ちくださいませ、詳細申し上げます。
  369. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 国費留学生の中で、国立大学に行っている方と公私立大学に行っている方との間で、支給に十日ぐらいおくれがあるというのが現状のようでございますが、文部省の方でいろいろ工夫をされまして、四月から改善するということでございます。
  370. 小西博行

    小西博行君 それはいい答えを聞きました。やっぱり何か我々が給料をもらうのでも、十日にもらうのと二十五日にもらうのでは大分値打ちが違うような気がいたしますし、差があるということはやっぱりいけないと思うんです。そのことは、直していただいて大変感謝申し上げる次第です。  特に私費留学生、今お話がありました。私費留学生が実は大変なんですね。そういう意味で私費留学生についてちょっとお尋ねしたいと思うんですが、学習奨励費というのが出ておるわけです。これは学部いわゆる大学で月四万円、それから大学院で六万円ですね。その場合に、留学生生活上、留学生が生活していくわけですが、経済的な援助が必要で、学業成績が優秀な者に対して援助すると。「留学生活経済的援助が必要で」という言葉が入っているんですね。それも先ほどのあれとちょっと同じようになるんですが、その辺の積算基準といいますか、その辺をひとつお聞きしたいということ。それから授業料の減免措置というのが最近とられております。これも非常に喜んでおられますね。これも「安定した勉学生活が困難な」という言葉が一つ入っているわけですね。これは私学の学生の場合は申請してほとんど合格するというようにとっていいんでしょうか。この二点をひとつ。
  371. 植木浩

    政府委員(植木浩君) 学習奨励制度というのが現在ございまして、財団法人日本国際教育協会を通じまして学部レベルで月四万円、大学院レベルで月六万円、先生が御指摘のとおり私費留学生に対する援助策を講じておるわけでございます。各大学等から推薦をいただきまして、それをさらに財団法人日本国際教育協会の中で選考しておるわけでございますが、その対象といたしましては、やはり経済的な援助が必要と認められる者、それから人物、学業ともに優秀な者ということをその対象といたしておるわけでございます。  また、授業料の減免につきましても、経済的に困っておられる方というようなことはもちろんあるわけでございますが、近年の円高に伴う対策といたしまして、特に私立大学におきます私費留学生に対する授業料減免という点ではほとんど大部分をカバーできるようなつもりで措置をいたしておるわけでございます。
  372. 小西博行

    小西博行君 それにいたしましても、この日本の先ほど申し上げた国費留学生、それから私費留学生全部合わせますと、私の計算では大体六千六百人前後ぐらいが何かの形で受けることが可能なんですね、受けているんです。ところが、もともとは二万二千人ということですからね、やっぱりまだ三分の一ぐらいしかそういうものが渡らぬのかなと、そういう感じがしておりまして、これをもう少し拡大していかないとぐあいが悪いというのが実は実感なんです。総理、もしお考えがありましたら答弁を願いたいと思うんです。
  373. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私なりにささやかな勉強をしてみますと、四つ問題点があるのかなと。一つはやっぱり国費留学生の数そのものの問題だ。それから二番目が私費留学生の対策である、各種奨学資金等をも含め。それから三番目が宿舎の問題だなと。それから四番目は、文部大臣からもちょっとお答えがあっておりましたが、東南アジアへ参りましても、日本で留学生であった皆さん方の会ができておって、国会議員の方々でもそのお世話をいただいている方、数ございますけれども、それがだんだん実効を上げておる、友好の第一線にあってと。したがって、そのフォローアップの問題を含めて大体四点なのかなと、こんな私なりに整理をしてみました。  したがって、数の問題ということになりますと、これは予算上の問題ということになってくるだろう。それから私費留学生の問題につきますと、今も奨学資金制度というのは、大学もでございますが、いわゆる冠をつけたので、この間ちょっと見てもたしか五、六十あるような気がいたしましたが、それぞれがまた単価が違いましたり、それから趣も異にしておるような点があるようでございますが、これらをそれこそ協会とも相談して、ある程度いい意味における整理整とんをする必要があるのかなと感じました。  それから宿舎の問題は、幾ばくか思いつきでございましたけれども、私がかつて官房長官をしておりましたときに、内閣官房長官公邸に住んでおって、カナダの学生一人ホームステイをやっておりましたが、先般カナダへ行きましたら、もう四十にもなりまして立派な社会人になって、いいことをしたなあという気持ちが素直にありました。  したがって、冠をつけた形でもいいから宿舎の問題、とりあえずあれだけ、私が期待しておったよりははるかに余計の空き室があるというようなことを活用するのも一つの考え方かなと、こんな感じを持ちながら、十万人と一口に言っても本当に大変でございますし、それからASEAN首脳会議における、ある意味において目玉とも言うべきものでございましただけに、これらの施策については文部省が中心になりまして、その省のみでなく、各般のこの関係から整理整とんして実現を期するような方向に持っていかなきゃならぬなというようにやや思い込んでおるという現状でございます。
  374. 小西博行

    小西博行君 今総理からお話をいただいたように、やっぱり国費留学生が余りにも少ない。しかし総理、先へ進みますけれども、二〇〇〇年の計画を見ますと、大体十万人構想というのは国費留学生一万、私費留学生九万になっておるわけですよ。今よりもまだ比率が悪くなるんです。だから、あれは民間でひとつ頼みますよというような計画なんですよ、総理は御存じだと思いますけれども。逆方向に進まなければあの計画は達成できな いような内容になっているんです。だから私はそこが非常におかしいんじゃないかと。やっぱり政府が思い切って留学生をどんどんとって、そして国際的な責任を果たすとか、あるいは日本の事情についてわかっていただきたいとかいうのであれば、逆でないといけないと思うんですね。比率が逆になるんですよ、ますます国費留学生が少なくて私費がふえる。こういう計画が政府の提案で堂々と出ていますから、そこを考えていただきたいと思います。  大蔵大臣にひとつまたお願いしたいんです。民間奨学団体というのをどうしてもこれから先外国並みにふやしていかなきゃいけない。そこで、税制の控除ということにどうしてもなるんです。法人の関係は民法三十四条で書いていますね。通常の二倍までの損金算入ができる。あるいは所得税の方は限度が百分の二十五ですか。これをアメリカのやつと比べてみますと、アメリカなんというのは全部撤廃しているんですね。だから、ほかにいろいろな税があるかもしれませんけれども、割合寄附しやすいような状況になっているように私は文献で見たんですけれども、その辺は大蔵大臣どうでしょうか。
  375. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 御指摘のように法人税につきましては、特定の公益法人の場合でございますと通常の損金算入金額の倍の枠を使って寄附ができる。これは特定の公益法人の場合でございますが、さらに、個別に指定を受けた指定寄附金の場合になりますと、法人税の場合にはこれはもう無制限に損金算入が認められるということでございます。個人の場合は、ただいま申し上げた二つのケースにつきまして二五%の限度がある。  一方、アメリカの方を見てまいりますと、アメリカは個人の場合には所得の五割という限度がある。しかし、法人税の方につきますと一〇%の限度があるわけでございますので、日本とアメリカと比べてどちらが有利ということも果たして言えるかどうか。それからまた、我が国の法人の全体としての寄附の枠のお使いになっている実績を見ますと、まだ普通の寄附金の枠の四割台でございますので、まだまだお使いいただける余地はあるのではないかとも考えられるわけでございます。
  376. 小西博行

    小西博行君 いろんな団体といってもそれぞれ違いますから、一概にこの短い時間で議論はできないと思うんですが、いずれにしてもアメリカというのはそういう財団がたくさんありまして、留学生に対する面倒見というのが非常にいいというのは私も聞いているわけでして、そういう状況を日本の中で一日も早く実現していかないと、先ほどのような私費留学生ばかりどんどんふえたって本当に対応できるんだろうか、こういう感じが私はするもんですから、その辺に力を入れていただきたい。それから、国も思い切って、一対九というようなことにならないように、せめて三対七の方向で行きますというんだったらこれはわかるんですけれども、逆になっておりますので、ひとつ総理にこれはお願いしたいというふうに思います。検討していただけますでしょうか。
  377. 竹下登

    国務大臣竹下登君) もう一つ私が勉強さしていただいた中で、先ほど先生からもお話があっておりましたフルブライトの留学生を見ますと、日本人でお世話になったのが六千人。そうすると、これが今相当な我が国の知能の中心とでも申しますか、そういうことを念頭におきますと、それはより一層充実しなきゃならぬという感じを深くいたしたわけでございますが、いずれにせよ識者の意見等を聞きながら、これは国際目標ともなったような問題でございますので、これについては充実を期していくという考え方でこれから着々と進めてまいろうと思います。
  378. 小西博行

    小西博行君 頑張っていただきたいと思います。  時間が大分なくなりましたが、宿舎の件についてお尋ねしたいと思います。  留学生の困っている一つに宿舎、自分の住まいという問題があると私は思うんですけれども、先ほど実態調査についてお話がございましたが、それでも例えば日本の大学の中にそういう留学生専門の宿舎を持っている、これが二千六百九十二名入っております。それから民間団体が設置する宿舎というのがありまして、これは千百九十二人、大学が設備する一般の学生と一緒に入るというのが千三百五人。これが将来二〇〇〇年になったらどうなるかというのもまた計画が出ております、これは文部省の中に。それを具体的に展開していかなきゃいけないという大きな宿題が実はあるわけです。それにしても、こういう宿舎に現在入っているのが大体二三・五%です。あと七七%前後の人は一般のアパートを借りたり、マンションを借りたり、これは共同で借りる場合もあるでしょうが、そういう状況になって生活苦の原因にもなっているわけです。  そこで、できればこういう宿舎をできるだけ公的な留学生宿舎としていろんなセクションの中でやってもらえないか。例えば建設省なんかですと、当然県営、市営、住宅公団とかいうのがございまして、現在は大体百人ぐらいの留学生を預かっていただいておると思うんですが、そういうことであるとか、あるいはそのほかにも国にいろんな施設があると思うんです。そういうものを積極的にやっていただけるのかどうか、関係の大臣の方からお答え願いたいと思うんです。
  379. 越智伊平

    国務大臣(越智伊平君) 今の公的住宅につきましては、非常に難しい。これは後ろ向きではございませんけれども、率直に言って今の制度で建設行政、住宅対策、この住宅対策というのは低所得者の無差別ということが原則でありますので、特別にこれをつくるというのは今の建設行政では、今の制度ではちょっと無理でないかと。ただ、今もお話がございましたように、登録をし、また就学をしておる人で真に困っておる人は公的住宅に入っていただく、こういう制度は今つくっておりますけれども、専門的につくるというのは今の制度ではちょっと無理ではないか、こういうふうに思います。
  380. 小西博行

    小西博行君 大蔵省にまたお聞きしたいんですが、留学生奨学団体がそういうものを建設するという場合にはいろいろ税制的な控除があるんでしょうか。
  381. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 学生につきましてのそうした宿舎を用意する、そうしたことを目的とする法人は、先ほど先生お示しの特定の公益法人につきましての寄附金制度の対象になるものでございまして、これが留学生の場合でも適用になるわけでございます。また現に幾つかのそうした適用になっている例がございます。
  382. 小西博行

    小西博行君 ぜひそういうことを総合的に一遍検討していただいて、何としてもあと四年後にはたしか六千ぐらいの住宅をつくらなければさっきの計画にいかない。これはもう大変なことだと思うんです。そういう意味で、本当に内部でよく検討していただきたいというように思います。そういうものができもしないのに、とにかく留学生をどんどんPR、呼んでくるというのも果たしてどうなのかという感じがいたしますので、反日運動の闘士になっておるというのも時々聞きますから。しかしこれは昔の留学生というのはほとんどそういうことがないということも逆に聞いております。戦時中に来られていた留学生の方が何人か文献に書かれておりますが、食べることは大変貧しかったんだけれども日本人のハートが温かかった、こういう表現をしております。最近は豊かになっておるんだけれどもどうもその辺がいけないということですから、せめて宿舎とか生活ができる、ぎりぎりの状態でもまあできるという条件づくりだけはぜひしていただきたいというふうに思います。  宿舎の件で経済同友会なんかが、先ほどおっしゃったように社員寮なんかを、できるだけあいているところを使っていただくとか、あるいはロータリークラブとか青年会議所、これはホームステイ、これを積極的に展開してもらったりということをどんどんやっておるわけですから、国とかあるいは国際教育協会、こういうセクションももう少し積極的に今それぞれやっておられるようなことに対して努力してもらいたいと思うんですが、 どうでしょうか。
  383. 植木浩

    政府委員(植木浩君) 文部大臣が主宰をいたしまして留学生交流推進のための会議を開いたり、そういう中に住宅問題ということで住宅・都市整備公団の総裁にお入りいただいたり、地方公共団体の代表にお入りいただいたり、いろいろと工夫をしております。  最近ようやく、そういうことで社員寮の開放であるとか公営住宅にも入居を認めていただけるとか、そういった動きが出てきておりますので、今後とも文部省としても一生懸命そういった点の機運を盛り上げていきたいと思います。
  384. 小西博行

    小西博行君 ぜひお願いしたいと思います。  それからもう一つは、非常に留学生が奇異に感じていることがあります。例えば、民間のアパートに入るときに敷金とか礼金というのがあるでしょう。今、私ちょっと東京を調べたら敷金が大体二カ月分、礼金が二カ月分だそうです。それで家賃は大体一月前に支払うというのが通常だそうです。この敷金というのは将来返ってくるやつなんでしょう。礼金は不動産屋が取っていく。これが留学生にとったら最初からの非常な不信感になるというんです。だから、そういう説明を十分する。来ていただいた場合には、わかると思うんですがこの辺の説明が難しいと。国費留学生の場合にはそういう最初のいろんな費用がかかるものですから、大体月に九千円から一万二千円ぐらいの手当を出しているのだそうです。そういうようなシステムになっているというようなことなんですが、これは非常に評判が悪い、この中の実態調査なんかでは大変評判が悪い。  そういうことで文部大臣、これは上手に説明するようなふうに何かつくりまして、そういうことをやってもらえませんか。
  385. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) 先ほどの一環でございまして、風習が違う、慣習が違うということは、やはり初めてその国に入られた方が一番迷われるところだと思いますので、こちらに来られる前に、そういう習慣があればそれを事前に知っていただく方策が必要でありましょうし、それはおっしゃるとおりだと思います。  私どもも、ある一方ではそれを、国によって特殊なシステムがあれば事前にお知らせしなければならぬ。そして、そのシステムをクリアする何かの知恵をまた別に出さなければいかぬかなと、こう思っておるわけでございます。
  386. 小西博行

    小西博行君 時間がありませんから、学位の問題をちょっと触れておきたいと思うんです。  我々は、日本で学位を取ればこれは最高のものだというふうにいつも思いますけれども、しかし留学生がどのように感じているかという、これもまた実態調査が実際にあるわけです。これは日本で学位を取られる、アメリカで学位を取られる、それぞれ国へ帰って研究機関にいる、そういう人たちからのアンケートなんです。日本の学位というのは一体どうなのかというようなアンケートもあるんですけれども、やっぱりかなり評判が悪いです。日本の学位というのは評価されているかという答えは二一・二%、アメリカが六六・三%、ヨーロッパが四八・六%ですね。そのように、学位はなかなかもらえないのが日本の現状です。  これはいろんな資料をとって調べてみたんですが、アメリカなんというのは物すごい数の学位が取れる。留学生が入っていて、その割合ですね。日本の場合は、来ましても特に文科系というのはほとんど学位が難しい、厳しい。もちろんあれは、論文を書く場合に日本語で必ず書かなきゃいけないという大学もあります。特に文科系の場合は必ず日本語で一つは論文を書かなきゃいけない、あとは英語であろうがドイツ語であろうがと、大体こういう格好になっていると思うんですがね。その辺の改善を相当しなきゃいけない。日本の学位システムといいましょうか、大学院制度というのは、大学院を一応終わったら学位をくれるというのじゃないんですね。別にレポートを提出して、そしてそれが合格すればくれる。アメリカなんかとは相当違います。アメリカの場合は、将来研究者として可能性があるという人に学位を出すわけです。日本の場合は相当実績がなければ出さない。ましてや主任教授が自分も持っていないのになぜおまえにやらなきゃいけないかということすらあるんですね。  その辺の実態文部大臣はご存じかどうか、これからの学位に対する改善、もう時間がありませんから最後にお願いしたいと思います。
  387. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) まさに一番大事なところだと私も思っております。  私が特にASEAN方面で留学に関しますいろいろなお話を聞いたときに、この学位の問題が一番大きな問題として出てまいりました。  私が調べてみますと、留学生の方々が学位を取られる率というのは割に高うございまして、大変優秀な方が多いんだなという感じはいたします。ただ一番、端的に言って、ASEANあたりで伺いますと、日本へ行って留学生活をそれなりにさせてもらった、しかし大学を出てそして学位を取るのは大変だ、たとえ取ってもそれが余り利用、活用というか評価されない場合が多い、何のために留学生生活を送って学んだんだろうかと、要するにそこから後の問題が出てくるということが多いようでございます。日本の場合の学位は理科系は割によろしいんですけれども文科系は、留学生が取りにくいというんじゃなくて日本人自身も取りにくいという点がございまして、その点まさに改革せにゃならぬことだと思っております。  その点でそれは問題点としておりますので、私の総論の後にちょっと一言実務の方からお答えさせます。
  388. 植木浩

    政府委員(植木浩君) ただいま大臣がおっしゃいました学位の取得率、留学生は日本の学生よりはやや高いような数字が出ております。修士課程で文科系で九六%、理科系で九八%、それから博士課程の理科系は八四%ですが、大臣がおっしゃいましたように文科系が低いということで二六%でございます。しかしながら、これは日本人の学生では四%というところで、もとのところは、やはり学問の性格にもよりますけれども、人文社会系の博士のところでやはり旧来のといいますか、そういった博士号の考え方がいまだにございまして、文部省としては先生が先ほどおっしゃいましたように、研究者として自立できるというところで博士号を出してほしい、一人前の研究者ということではなくて自立というところで出してほしいと繰り返し指導しておりますが、今後ともそういった指導を大学の方にさらにいたしてまいりたいと思います。
  389. 小西博行

    小西博行君 終わります。
  390. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で小西博行君の質疑は終了いたしました。(拍手)  明日は午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十八分散会