運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1988-03-16 第112回国会 参議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月十六日(水曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  三月十五日     辞任         補欠選任      北  修二君     福田 幸弘君      坂元 親男君     上杉 光弘君      二木 秀夫君     鈴木 貞敏君      馬場  富君     伏見 康治君      沓脱タケ子君     近藤 忠孝君      青木  茂君     平野  清君  三月十六日     辞任         補欠選任      広中和歌子君     及川 順郎君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         原 文兵衛君     理 事                 伊江 朝雄君                大河原太一郎君                 小島 静馬君                 林  ゆう君                 吉川 芳男君                 久保  亘君                 矢原 秀男君                 吉川 春子君                 三治 重信君     委 員                 石井 道子君                 石本  茂君                 岩上 二郎君                 上杉 光弘君                 梶木 又三君                 金丸 三郎君                 工藤万砂美君                 坂野 重信君                 志村 哲良君                 下稲葉耕吉君                 鈴木 貞敏君                 中曽根弘文君                 中西 一郎君                 永田 良雄君                 野沢 太三君                 林 健太郎君                 福田 幸弘君                 降矢 敬義君                 増岡 康治君                 松岡滿壽男君                 稲村 稔夫君                 小川 仁一君                 大木 正吾君                 千葉 景子君                 野田  哲君                 安恒 良一君                 及川 順郎君                 広中和歌子君                 伏見 康治君                 和田 教美君                 近藤 忠孝君                 佐藤 昭夫君                 勝木 健司君                 野末 陳平君                 下村  泰君                 平野  清君    国務大臣        内閣総理大臣   竹下  登君        法 務 大 臣  林田悠紀夫君        外 務 大 臣  宇野 宗佑君        大 蔵 大 臣  宮澤 喜一君        文 部 大 臣  中島源太郎君        厚 生 大 臣  藤本 孝雄君        農林水産大臣   佐藤  隆君        通商産業大臣   田村  元君        運 輸 大 臣  石原慎太郎君        郵 政 大 臣  中山 正暉君        労 働 大 臣  中村 太郎君        建 設 大 臣  越智 伊平君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    梶山 静六君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  高鳥  修君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (沖縄開発庁長        官)       粕谷  茂君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  瓦   力君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       中尾 栄一君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       伊藤宗一郎君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  堀内 俊夫君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  奥野 誠亮君    政府委員        内閣法制局長官  味村  治君        内閣法制局第一        部長       大出 峻郎君        内閣総理大臣官        房審議官     本多 秀司君        警察庁長官官房        長        森田 雄二君        警察庁刑事局長  仁平 圀雄君        警察庁刑事局保        安部長      漆間 英治君        警察庁交通局長  内田 文夫君        警察庁警備局長  城内 康光君        総務庁長官官房        審議官        兼内閣審議官   増島 俊之君        総務庁長官官房        会計課長     八木 俊道君        総務庁行政監察        局長       山本 貞雄君        北海道開発庁計        画監理官     大串 国弘君        防衛庁参事官   小野寺龍二君        防衛庁参事官   福渡  靖君        防衛庁参事官   児玉 良雄君        防衛庁参事官   鈴木 輝雄君        防衛庁長官官房        長        依田 智治君        防衛庁防衛局長  西廣 整輝君        防衛庁教育訓練        局長       長谷川 宏君        防衛庁経理局長  日吉  章君        防衛庁装備局長  山本 雅司君        防衛施設庁長官  友藤 一隆君        防衛施設庁施設        部長       鈴木  杲君        防衛施設庁建設        部長       田原 敬造君        防衛施設庁労務        部長       山崎 博司君        経済企画庁調整        局長       横溝 雅夫君        経済企画庁総合        計画局長     星野 進保君        科学技術庁科学        技術政策局長   加藤 昭六君        科学技術庁科学        技術振興局長   吉村 晴光君        科学技術庁研究        開発局長     川崎 雅弘君        科学技術庁原子        力局長      松井  隆君        科学技術庁原子        力安全局長    石塚  貢君        環境庁大気保全        局長       長谷川慧重君        沖縄開発庁振興        局長       塚越 則男君        国土庁長官官房        長        清水 達雄君        国土庁長官官房        会計課長     佐々木 徹君        国土庁計画・調        整局長      長沢 哲夫君        国土庁地方振興        局長       森  繁一君        法務省人権擁護        局長       高橋 欣一君        外務大臣官房長  藤井 宏昭君        外務大臣官房審        議官       遠藤 哲也君        外務大臣官房領        事移住部長    黒河内久美君        外務省北米局長  有馬 龍夫君        外務省欧亜局長  長谷川和年君        外務省中近東ア        フリカ局長    恩田  宗君        外務省経済局長  佐藤 嘉恭君        外務省経済協力        局長       英  正道君        外務省条約局長  斉藤 邦彦君        外務省国際連合        局長       遠藤  實君        外務省情報調査        局長       山下新太郎君        大蔵省主計局長  西垣  昭君        大蔵省主税局長  水野  勝君        大蔵省銀行局長  平澤 貞昭君        文部大臣官房長  古村 澄一君        文部省初等中等        教育局長     西崎 清久君        文部省高等教育        局長       阿部 充夫君        文部省学術国際        局長       植木  浩君        文部省体育局長  國分 正明君        文化庁次長    横瀬 庄次君        厚生大臣官房総        務審議官     黒木 武弘君        厚生省保健医療        局長       北川 定謙君        厚生省生活衛生        局長       古川 武温君        厚生省薬務局長  坂本 龍彦君        厚生省社会局長  小林 功典君        社会保険庁長官        官房審議官    渡辺  修君        農林水産大臣官        房長       浜口 義曠君        農林水産大臣官        房予算課長    上野 博史君        農林水産技術会        議事務局長    畑中 孝晴君        食糧庁長官    甕   滋君        林野庁長官    松田  堯君        水産庁長官    田中 宏尚君        通商産業大臣官        房総務審議官   山本 幸助君        通商産業大臣官        房審議官     末木凰太郎君        通商産業省通商        政策局次長    吉田 文毅君        通商産業省貿易        局長       畠山  襄君        通商産業省産業        政策局長     杉山  弘君        通商産業省機械        情報産業局次長  岡松壯三郎君        工業技術院長   飯塚 幸三君        資源エネルギー        庁長官      浜岡 平一君        資源エネルギー        庁長官官房審議        官        逢坂 国一君        資源エネルギー        庁公益事業部長  植松  敏君        特許庁長官    小川 邦夫君        運輸大臣官房審        議官       金田 好生君        運輸大臣官房会        計課長      黒野 匡彦君        運輸大臣官房国        有鉄道改革推進        総括審議官    丹羽  晟君        運輸省運輸政策        局長       塩田 澄夫君        運輸省地域交通        局長       熊代  健君        運輸省航空局長  林  淳司君        海上保安庁長官  山田 隆英君        労働大臣官房長  清水 傳雄君        労働省婦人局長  佐藤ギン子君        労働省職業安定        局長       岡部 晃三君        建設大臣官房会        計課長      鹿島 尚武君        建設省建設経済        局長       望月 薫雄君        自治大臣官房長  持永 堯民君        自治省行政局長  木村  仁君        自治省財政局長  津田  正君        自治省税務局長  渡辺  功君        消防庁長官    矢野浩一郎君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局刑事局長   吉村  眞君    事務局側        常任委員会専門        員        宮下 忠安君    参考人        税制調査会会長  小倉 武一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和六十三年度一般会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和六十三年度特別会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和六十三年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 予算委員会を開会いたします。  昭和六十三年度一般会計予算昭和六十三年度特別会計予算昭和六十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。     ─────────────
  3. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和六十三年度総予算案審査のため、本日、税制調査会会長小倉武一君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) それでは、これより総括質疑を行います。稲村稔夫君。
  6. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 最初に原発について伺いたいんですが、先日、日本原電敦賀原発の一号機と二号機が続いて事故を起こしておりますが、その原因について御説明をしていただきたいと思います。
  7. 浜岡平一

    政府委員浜岡平一君) お答え申し上げます。  敦賀二号機でございますが、三月四日の午後十一時三十三分、定期検査後の立ち上がり運転中、八十七万キロワット、七五%の出力運転中でございましたけれども、自動停止いたしました。  停止原因は、中性子束レベルを計測いたします装置校正作業中に、作業員が四回路ある中性子レベル計測装置のうち、一回路のみを切り離しまして作業をいたしますべきところを、過って二回路を切り離しましたためにこういうことになったということが判明をいたしました。このために、対策といたしまして、作業要領書の見直し、作業管理及び教育訓練の強化を図ることといたしまして、所要の指導等を行いました後、三月十日に発電を再開いたしました。  敦賀一号機でございますが、これは定格出力運転中、三月六日午前十時五十五分、三台ある原子炉循環ポンプのうち一台が停止をしましたために出力低下をいたしました。原因詳細調査のため、三月七日の午後九時三十分、発電停止いたしました。ポンプ停止原因は、ポンプ駆動装置自動電圧調整装置に用いられております制 御用の半導体の不調によるものと判明をいたしましたので、対策といたしまして、当該制御用半導体を含む回路基盤を新品に取りかえますと同時に、他のポンプに用いられております制御用半導体につきましても取りかえを行いました。  なお、同機は、三月十五日正午に原子炉を起動いたしております。  以上でございます。
  8. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 一号機の事故ですね、循環ポンプ停止をしてから、直ちにとめて点検をしないでしばらく運転していたのはどういうわけですか。
  9. 浜岡平一

    政府委員浜岡平一君) 御指摘のとおりでございまして、出力低下をいたしましたのが午前十時五十五分でございまして、停止をいたしましたのが次の日の午後九時三十分でございます。
  10. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 時間を聞いているんじゃない。原因を聞いているんです。
  11. 逢坂国一

    政府委員逢坂国一君) 敦賀の一号の再循環ポンプ三台のうち一台が停止したわけでございますが、その後出力を、三十七万の定格でございますから十五万程度に維持いたしまして、電源回路その他の点検をしていたわけでございます。その点検が、多分電源であるということはわかっておったわけでございますが、どの半導体が悪いのかということが特定できなかったので、それを手動停止いたしまして再度詳細な調査に入った、こういうことでございます。
  12. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 ちょっと私の聞いていることにお答えになっていないんですけれども、要するに、原子炉という大事なものに何が起こったかわからないときに、なぜとめて点検をしなかったのですかと聞いているんです。
  13. 逢坂国一

    政府委員逢坂国一君) 再循環ポンプと申しますのは三台ございまして、それで今のいろんな故障原因によりましてとまることがあるわけでございまして、そのとまった状態でそれが復帰できるかどうかということで時間を待つということでございまして、特に再循環ポンプそのもの停止したからといって急に安全上問題になるというものではございませんので、それで決められた手順に従いまして出力を落として調査に入っていた、こういうことでございます。
  14. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 それでは伺いますが、浜岡原発でも二月の一日でしたかに、やはり再循環ポンプが二台とも停止したという事故がありましたね。これの原因は何だったんですか。
  15. 浜岡平一

    政府委員浜岡平一君) 浜岡原子力発電所一号機でございますが、定格出力運転中のところ、二月一日に原子炉循環ポンプ二台が停止をいたしまして、原因調査及び設備点検のために二月の二日に原子炉を手動停止いたしました。  ポンプ停止原因は、同ポンプ駆動装置保護用検出器電源に用いられております電磁式スイッチ一台の焼損によるものと判明をいたしました。このため、類似の電磁式スイッチ、これは当該品を含みまして全体で百二十五に及びますが、これの全部の取りかえを行いました後に、二月十九日に発電を再開いたしました。
  16. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 その場合も、ではそのスイッチがなぜ焼き切れたんですか、特にスイッチが焼き切れた原因はわかっているんですか。
  17. 逢坂国一

    政府委員逢坂国一君) スイッチ原因は、非常に長い間使っておりますので、劣化であるというふうに判定しております。
  18. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 この装置は一応停電をしてもいいようにということでいろいろと設計をされていると思うのでありますけれども、いずれにしても、こういう制御装置スイッチが焼き切れたということ、そのことには非常に問題があるのではないかというふうに思います。  ポンプ自動制御故障したということはすべての自動制御故障が起こり得るということ、これをまた示唆しているということにもなると思うんですが、その辺お考えはいかがですか。
  19. 逢坂国一

    政府委員逢坂国一君) その辺の判定のことを御説明するには、まず再循環ポンプ役割というのをお話ししなければ理解いただけないかと思いますが、再循環ポンプと申しますのは、原子炉を冷却するメーンのループのほかに、原子炉の中の水のまざりぐあいをよくするためのもう一度水を回すという役割でございまして、これが停止いたしますと、ボイド——泡がつぶれる、つぶれることによりまして出力が上昇するということであります。ですから、このポンプ停止いたしますと泡がふえますので原子炉出力低下するということになります。  それで、これが安全上どういうことかということですが、それは泡がふえますので出力が自動的に落ちるというだけでございまして、安全上の問題としては、再循環ポンプ停止が即原子炉運転そのもの発電所全体の運転に安全上問題になるということでもございません。  それから今の原因ポンプのさらに電源側のものでございまして、電源側スイッチ故障したということでございますので、いわばメーン施設からすればずっと外れたところ、附属施設関係ということになります。ですから、これが故障したことが即発電所運転そのものに非常に安全上問題になる、こういうことではございませんので、先ほどから申し上げておりますように、故障程度はそれほど大きな問題ではないというふうにとらえまして、安全上の問題はないというふうに思っております。
  20. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 泡が発生するから出力低下をする、こう言われたけれども、何かの要因があって泡がつぶれる、中の圧力が上がって泡がつぶれるということが全然ないということじゃないでしょう。例えば圧力逃し弁がうまく作動しなかったというようなことだって起こり得ることだと思いますし、人為的な操作ミスが何かあるということだって起こり得ることだと思うんですが、その辺のところは全然お考えにならなかったんですか。
  21. 逢坂国一

    政府委員逢坂国一君) 泡がふえて圧力が上昇するというふうな安全上の問題にさらに発展いたしますといろんな安全装置が働くわけでございまして、圧力逃し弁もございますし、その辺の今の過渡変化、私ども過渡変化と言っておりますが、そういう過渡変化事故に発展しないようにいろんな対策をしているわけでございます。もし反応が上がれば、当然コントロールロッドがございますので、原子炉停止自動停止の方向へいきますし、それから圧力が上昇すれば逃し弁が働く。こういうことでございまして、今回の場合のように再循環ポンプ電源側故障でもってとまったということであれば冷却系統はほとんど過渡変化としては大きくないわけでございまして、圧力などそういう設定値に至るほどの大きな過渡変化に至らない、こういうことでございます。  発電所設計そのものからいいますと、そういう過渡変化からいろいろなさらに大きな変化へ、故障原因にいくとか、あるいはさらに大きく発展いたしまして事故にいく、こういうようないろんな多段階の想定をいたしまして安全審査で検討いたしまして、そしてなるべくといいますか、最後のとりでといいますか、一番最終的には発電所安全性というのは外部に放射能を放出しない、こういうところを考えておりまして、これを私ども原子力発電所設計では多重防護思想でやってございます。
  22. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 ちょっとそう言われますけれども、後でこれはやりますけれども、人為的な操作ミスなどということがあって、そういう多重防護もうまく働かなかったということだってあり得るんじゃないかということを心配いたします。現に敦賀一号機、去年の十月に作業員操作ミス事故を起こしているでしょう、どうですか。
  23. 逢坂国一

    政府委員逢坂国一君) 事故に至らないようないろんな対策をしているということを今お話し申し上げましたが、多重防護思想前提となっておりますのは機器故障、これはあり得る、それから人のミス、これもあり得るという前提でございまして、それが重なったり拡大したり、そういうふうにしないようにいろんな安全装置自動装置検出装置を配置しているわけでございまして、現在起こっている機器故障ミス人為ミス、これはございますが、それが大きな事故に発 展する要因の前に、うんと前の段階で十分に防止されておりまして、安全系統その他検出装置が健全に働きまして、そして自動停止ないし出力を落とすという段階で正常にとまっておるということでございますので、ミスがあるから即問題ということではございません。ミス及びその故障程度、それがどの程度安全に影響を及ぼすかということで問題になるのではないか、そういうふうに思います。
  24. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 どうもいろいろと議論の中には平行線になる部分があるような感じがいたします。  そこで、通産大臣にお伺いしたいのでありますけれども、いずれにしても、原子炉という一つ間違えば大変なことになるというものを扱っておるわけであります。先ほど来あれしたように、ポンプの制御をするという装置故障したということは、言ってみればほかの制御装置故障し得ることがあり得るというそういうこともありますし、人為ミスというものと重なるということもないわけではありません。いろいろとそういうことを考えて、安全第一というのを考えていったときは、異常が出たときは原子炉運転をとめて点検をすぐやるというようなことを原則にすべきだと思いますけれども、そういう運営はされませんか。
  25. 田村元

    ○国務大臣(田村元君) これは非常に高い学問的なサイエンスの問題でございますから、専門家が参っておりますので専門家の方から、審議官側から御答弁をいたさせたいと思います。
  26. 逢坂国一

    政府委員逢坂国一君) 原子力発電所の部品は、いろいろ数え方にもよるわけでございますが、約二百万個、数え方によると五百万個とも言われております。いろいろ故障を少なくするための努力という品質管理その他をやっておりますが、ある確率では部品に故障ができる、あるいは先ほど説明しましたように十五年も二十年もたちますと中には劣化をしてくるものもある。ですから、それを取りかえなきゃいけないということにもなるわけでございます。  今先生の御質問に対する答えでございますが、したがいまして機器故障がどの程度であるかということによりまして、それは運転停止して点検をすべきかあるいはそのまま継続して修理をできるか、こういうことはそれぞれ内容によって違うわけでございまして、一律とめなきゃいけないということもございませんし、またずうっと運転してもいい、必ずいいということでもございません。ですから、そこら辺の判断が大変難しいことでございますが、実質的にはこれは安全第一ということで、なるべく慎重に運転するようにということは私どもはきちっと指導しておりますが、一律故障があったら必ずとめなきゃいけない、こういうことではないように私思います。ですから、その内容によってとめなきゃいけないし、あるいは運転しても構わないということだと私どもは判断しております。
  27. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 幸い大事故というものにつながるものでなかったということでほっとしているわけですけれども、いずれにしても、私は少し見解が違いまして、安全第一を考えていったらやはり停止をするということを原則にすべきだ。それでなければ、企業は経済面を考えていきますからいろいろと無理をするということだってあり得る、こんなふうに思いますけれども、これはもう御答弁は要りません。  そこで、次に原発の資料の公開のあり方について伺いたいと思います。  昨年十月の敦賀原発一号機の事故に関連して、衆議院の予算委員会でも資料が問題になりましたけれども、公開された文書は二十三ページ中十二ページが塗りつぶされていた、こういう問題がありまして、通産大臣からも提出についてのいろいろ御答弁があったようでありますが、この墨で塗って一部を削って公開をする、あとは公開しない、こういう判断をしたのはどこのだれということになるんでしょうか。
  28. 浜岡平一

    政府委員浜岡平一君) ただいまお話のございました敦賀一号機のトラブルに関します資料の公表でございますけれども、第一次的には住民サイドから福井県あるいは敦賀市に請求があったわけでございまして、それぞれ県及び市におきまして対応をされたものでございます。
  29. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 すると、それは墨で塗る判断をしたのは市ですか、県ですか。
  30. 浜岡平一

    政府委員浜岡平一君) それぞれ県あるいは市の御判断であったと承知いたしております。
  31. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 それぞれというのは、では県と市が相談してそうしたというのですか。そこをはっきりさせてください。あるいは企業から要求があったのですか。
  32. 浜岡平一

    政府委員浜岡平一君) 六十二年十月二十三日に、まず敦賀市民から敦賀市長に対しまして資料公開の請求がございました。十二月八日に敦賀市は福井県と協議の上で資料を公開いたしました。その際、黒塗りの部分があったわけでございます。  十二月の中旬から下旬にかけまして、福井県民から今度は福井県に対しまして合計二回の公開請求がございました。六十三年の一月上旬でございますが、福井県は公文書公開条例に基づきまして資料を公開したわけでございますが、一部白抜きされていたものがあるわけでございます。
  33. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 その白抜きにするという判断をどこがしたのかということを聞いているんです。白抜きなり墨なり塗って公開をしないという判断をどこがしたのかという……。
  34. 浜岡平一

    政府委員浜岡平一君) 第一段階におきましては、敦賀市が福井県と協議の上お決めになったということでございます。  第二段階につきましては、福井県がお決めになったということでございます。
  35. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そうするとその中で、ここの部分を消さなきゃならないという判断をかなり市の立場でそういう専門的な観点を持った人がいるんですか。
  36. 浜岡平一

    政府委員浜岡平一君) 御担当の方が当然おいでになると理解をいたしております。  もちろんこの公開に際しましては、福井県と敦賀市、それから日本原子力発電株式会社との間で、昭和四十六年に原子力発電所周辺環境の安全確保等に関する協定、いわゆる安全協定が締結をされておりまして、企業との意見調整はあったものと思われますが、最終的な判断は市なり県が行われたと理解をいたしております。
  37. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 結局、企業の要求があって市の方がそういうふうな判断をせざるを得なかった、こういうことなんだろうと思うんです。これは、私は公開の原則というものから考えていってやはり問題があるのではないか、そう思います。  そこで、特にこうした企業からの要求に基づいてその一部が未公開になるという点についてはどう考えますか。
  38. 浜岡平一

    政府委員浜岡平一君) 原子力の安全に関連をいたします資料を公開いたしますことは、国民の理解と協力を得て原子力の開発利用などを進めるという観点から重要であると認識をいたしております。  敦賀一号炉のケースにつきましても、基本的にはこういう認識を踏んまえて対処すべきものでございますけれども、一部の情報につきましては、核物質の盗難防止でございますとか、あるいはノーハウなどの財産権の保護などの観点から、その公開につき慎重を期すべきものがあることも事実でございます。  ただ、こういったものにつきましても、企業機密等に名をかりましていたずらに非公開とすることは適当でないと考えておりまして、ケース・バイ・ケースの適切な対応が望ましいと考えております。  なお、今回の資料につきましては、現在私どもの方でも改めて一つずつ内容をチェックいたしております。公開をするかどうかにつきましては、やはり一つずつのデータにつきましてイエスと考えるかノーと考えるか、いささかの幅があろうかと考えております。そこで、現在、今後とも県なり市なりの当局者が第一次的には地域住民との正面に立たれるわけでございますので、やはりこの 判断のすり合わせが大変必要だと考えておりまして、個々のデータに即して意見のすり合わせを再度やってみました。最近になりましてほぼ意見調整を終えております。ごく一部を除きましてかなり追加的に公開をできるものがあると判断をいたしておりまして、ほぼその調整が終わっておりますので、近日中に関係資料を御提出申し上げたいと考えております。
  39. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 それではできるだけ早くその資料をいただきたいと思います。  次に、私は新潟の出身でありますけれども、柏崎刈羽原発では、その地質調査の生のデータを一号炉のときは全部公開をいたしておりました。ところが、二号炉以降は生のデータは出してこないということなんでありますが、これは、たとえ地質調査であろうとも生のデータは出してはならないというようにまさか国側が指導したというわけじゃないでしょうね。
  40. 逢坂国一

    政府委員逢坂国一君) 地質調査の資料は安全審査の基本でございます。設置に当たりまして、その原子炉が置かれる場所の地質を十分に証明できるものが必要でございます。それで、安全審査に当たりまして地質調査の関連の柱状図という、地質を測定した結果をまとめたものを必ず添付する、こういうことでございます。お話のことがどの程度の生のデータというようなことか私すぐには推測できかねるわけでございますが、今の安全審査で必要なものは当然公開されております。 そういう公開を原則とするという方針でございますので、そういう指導をしたという事実はございません。出すなという指導をしたという事実はございません。
  41. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 出力調整試験の安全性について私なりに勉強したいと思いまして、試験運転の状態を記録しているチャートのコピーの資料を要求しましたら、いただきました。ところが、これはみんな手でプロットしたものでありまして、これは、極端な物の言い方をすれば、ちょっと調子の悪いところを修正してみたってできないわけではない、極端に言えばそういうことにもなりますから、これはチャートのコピーがいただきたいと思いますけれども、その辺はいかがですか。
  42. 浜岡平一

    政府委員浜岡平一君) 昨年の十月と本年の二月に伊方発電所で実施されました出力調整運転試験につきましては、先般実測データを忠実に書き写しました資料を御提出申し上げております。五ミリから一センチぐらいの厚さにまたがるものでございまして、私どもとしましては、これが忠実に実測データに即したものであると判断をいたしておりまして、このデータによりまして当該調整運転が安全無事に行われたことは十分確認できると考えております。  なお、先生の方から、五十五年から五十八年にかけまして東京電力の福島第一発電所で行われました調整運転につきましても資料のお話があったわけでございます。何分にも五年から八年前と古いものでございますので、現在私どもの保有しておりますデータ等をチェックいたしておりますけれども、考え方といたしましては、試験が無事かつ安全に行われたことを十分確認できるデータを御提出申し上げることができるかどうか、倉庫等をチェックいたしているところでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  43. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私は、先ほど言いましたように、例えば記録間違いということだってあり得るわけなんでしてね、だからチャートのコピーが欲しい、こう言っているんです。チャートのコピーというのは出せるんですか、出せないんですか。
  44. 浜岡平一

    政府委員浜岡平一君) 私どもの職員が現地に赴きまして、実際のチャート等は計測器に装着をされているものでございますし、また大変膨大なものでございますから、現地で実際に現物に照合してみるということしか適切ではないと考えておりまして、そういう観点からチャートとの照合を行っておりますので、あの実測データのコピーにつきましては内容的には十分御信頼いただきたいと思うわけでございます。
  45. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 衆議院の予算委員会では、実測データの要求に対して御相談させていただきたいという答弁をしているでしょう。どういうんですか。
  46. 浜岡平一

    政府委員浜岡平一君) 今申し上げましたように、実測データがチャート等に照らしまして間違っていないということにつきましては、私どもの方で関係職員を派遣いたします等最善の手を尽くしまして、内容が間違っていないということを確認させていただきたいということでございます。  さらに、御提出申し上げております実測データの細部につきまして、具体的に数字等の御要請がございましたら、それに即しましてさらに細かい数字等を提出させていただくことも十分可能であろうかと考えております。
  47. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 それじゃ、さらに私の方ももう少し内容も検討させていただきたいというふうに思いまして、これは以上にさせていただきます。  そこで、次に入らせていただきますが、二号機の事故は完全な人為ミスですね。一号機も人為ミスを起こしていますけれども、これは何か敦賀原発に特別な事情があるんですか。
  48. 逢坂国一

    政府委員逢坂国一君) 結論から申しますと、特に敦賀に問題があったということではございません。故障、トラブルをずっと統計をとっておりますが、故障、トラブルの報告のあったものは六十二年度十八件でございまして、六十年度、六十一年度、両方それぞれ十九件でございますので、六十二年度は特別数が多い、こういうことでもございません。  人為ミスという御指摘でございますが、これは先ほど来説名しておりますように、ほかの機器が安全に働きまして停止いたしましたので、安全上のそれ以上の発展はなかったわけでございます。いわば単純ミスといいますか、そういうのは各発電所、全国で見ますと大体二件から四件ぐらいございますので、特別敦賀だけということでもございませんし、ことしだけ特別たくさん出ている、こういうことでもございません。 ただ、最近原子力についての関心が高いので、そういうことがいろいろ報道その他で数多く出るということで先生のお目にとまったのではないか、そのように思っております。
  49. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 それにしても、今度の、この二月に東京で開かれた国際原子力機関のマン・マシン・インターフェース国際会議で、ここの責任ある方が人為ミスの六八%が保守、点検中に起きているなどと言って、国際的にも警告をするなどという立場に立ったそういうところで、なぜこんな単純なミスが起こったんですか。
  50. 逢坂国一

    政府委員逢坂国一君) 御指摘のものは、私が実は発表さしていただきましたが、そのときの各国の状況、議論の過程を見ますと、日本は非常に稼働率もいいですし、それから自動停止の回数も少ないということでございまして、総体的には日本の運転はいいのでございますが、世界的に見ましてもそういう人為ミスというのはあるわけでございます。これをどうにかしてなるべく減らしていきたい、こういう考え方での会議でございます。  ですから、そういう実情のもとで特にふえているわけではございませんか、毎年ほぼ同じぐらいの件数が出ている。これをなるべく減らしていこうと、世界的に見ていろんな情報交換をしながら、あるいはヒューマンファクターその他の検討をしながら、人の面で人為ミスを減らしていきたい、こういう趣旨でございまして、特に指摘してこれが問題というか、すぐ直ちに不安全だからこういうことが出ていると、そういう発表をしたわけではございません。
  51. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 聞いていることにどうもずれが出ているんで、聞いていることに対する答弁のずれなんですが、私は権威を持っているような人のところで何でこんなミスが起こったのかというふうに聞いているんです。  それで、これは特に下請作業員ミスということですが、そうですか。
  52. 逢坂国一

    政府委員逢坂国一君) 四回路のうち二回路を外してしまったという、そのことでございますが、これは校正を行う場合にベテランの人、もち ろんベテランな方なんでございますが、定期検査で一連のものを行いまして、最初の一つを終了して次にかかるときに、表側のヒューズを外してまたそれと同じものを裏側のケーブルで外すという作業に、間違って表のヒューズを外している隣のケーブルを外したと、こういうことでございまして、いわば非常に単純なミス、技能が悪くて外したと、そういうことでもございません。これは必ずペアになりまして下請というか、下請ですけれどもベテランの方ですが、この人と発電所の保安の責任を持っている日本原子力発電所の人とがそれぞれ番号を確認し合ってやるべきところをそれをしなかったと、こういうことでございます。権威あるという、そういう意味では非常に経験の豊かな方ではございますが、そういう単純なミスをすることがあるという例だったと思います。
  53. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私は、そのちょっとしたミスというのが重大事故につながることがあるということを非常に心配しているんです。世界における原発の重大事故というのは人為ミスに起因している場合というのが結構あるでしょう。我が国の場合は幸いにしてそういう重大ミスというのは起こっていないからいいんですけれども、これからだんだんと稼働して年数が古くなるに従ってそういう危険性というのが出てくるでしょう。だから小さなミスも逃してはならぬ、こういうことになるんじゃないかと思うんですよ。
  54. 浜岡平一

    政府委員浜岡平一君) 全く御指摘のとおりだと思います。やはり機械と人間の接合面につきまして従来以上に気を配っていくことが必要だと考えております。  第一には、やはり人の資質を一段と向上することだと考えております。従来からも資格制度の運用あるいは訓練の充実等に意を用いてまいりましたけれども、この面にも一段と力を注いでまいりたいと思います。  それからもう一つは、作業手順、あるいは管理方式の問題だと思います。今回のトラブルにつきましても、その実態にかんがみまして、今回私どもといたしましては、四つの計測装置につきましてそれぞれかぎを別にすると、それから必ずいわば表と裏で呼び合うというような指差呼称といった仕組みをマニュアルの中に取り込むというようなことを指導いたしました。あらゆる面でこういったマニュアルの一段の充実ということが必要不可欠なのではないかと考えております。  私どももこういった観点からヒューマンファクターの問題には特に意を用いておりまして、財団法人原子力工学試験センターの中にヒューマン・ファクター・センターといったものも発足をさせておりまして、このヒューマンファクターの問題、ヒューマンエラーの問題につきましては、従来の経験を踏まえ、さらには他の業界の経験も踏まえ、さらには人間工学、心理学、教育学、医学等の幅広い学際的な研究といったものも取り込みまして、こうした問題に真剣に対応していかなければならないと考えております。
  55. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 これについては、科学技術庁はどういうふうに考えられておりますか、ヒューマンエラーについて。
  56. 伊藤宗一郎

    ○国務大臣(伊藤宗一郎君) 先生御指摘のとおり、原子力発電所の異常や故障につきましては人為ミスに起因するものがございます。機械の信頼性は技術の進歩により向上させることができますけれども、それを操作する人間の信頼性につきましては、作業環境、心理学的条件等種々の要因に影響される場合がございまして、いわゆる人的因子、ヒューマンファクターによる原発事故を防止するために科学技術庁におきましても体系的に研究を行っております。  一つには、日本原子力研究所におきまして人間の振る舞いの信頼性の評価手法などについて真剣に研究を行っております。また、人的過誤、エラーの発生の防止、あるいは影響緩和に関するもの、マン・マシン・インターフェース等につきましては、やはり日本原子力研究所及び動燃事業団におきまして異常診断手法、運転支援システムなどの研究開発を実施しております。また、原子力発電所安全性、信頼性の向上の一環として、民間におきまして新型制御盤、運転支援システムなどの開発が行われ、その成果は随時実プラントにおいて採用されてきております。なお、このほか大学等におきましても基礎的な研究が進められているところでございます。
  57. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 大学等でもという今お言葉がありましたが、文部省ではこの辺どのように掌握しておられますか。
  58. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 文部省としましても、加速器科学ですとか宇宙科学その他大型設備のものもございますので、もちろんテクノストレスとかあるいは人間心理学の方から人間的にもミスのないように極力研究を進めております。  細かくは、もしありましたら政府委員からお答えいたします。
  59. 植木浩

    政府委員(植木浩君) ただいま大臣からお答え申し上げたとおりでございますが、機械やシステムの側と同時に人間の側、ヒューマンファクターによる事故の防止ということで、工学関係でございますと安全工学、あるいは医学、心理学、生理学、それから教育学、そういったところで研究をしておりますが、確かにさらにこういった人間と機械、あるいはシステムとのインターフェースにつきましての研究を学際的に進める必要があろうと思っております。
  60. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 それぞれ伺いましたけれども、私こんなことをあれしましたのは、特に総理、今のやりとりの中で、もし我が国が技術先進国として世界に貢献するということで胸を張るといたしましたならば、まさにこうした技術とともに裏腹なヒューマンエラーについても世界のトップを行く、そういう研究体制があって初めて胸が張れるのではないだろうか、そんなふうにも思うんですけれども、その辺どういうふうにお考えになっていますか。
  61. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) もとより専門的な知識を有するわけではございませんか、今の問答を聞かしていただきました上の私の率直な感想を申し述べます。  安全性に万全を期するということになりますと、どちらかといえば施設等のハードの面ということが私ども素人にもすぐ頭へ入ってまいります。しかし、人間と機械の接点における今おっしゃいましたまさにヒューマンファクターというものが大変に重要なものであるという、そういう面からする安全性の確保というのが重要なものであるということを私は問答を通じながら感じ取らしていただいたわけでございます。いわば巨大技術と人間関係とでも申しましょうか、そういうところに、今御指摘がありましたように、今後世界に冠たる技術を誇る国として、安全性の面におけるヒューマンファクターというような問題もやはり研究を大いにしなきゃならぬ課題であるというふ、うに私なりに感じ取ったことを率直に申し上げます。
  62. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 いずれにしましても、我が国の科学の進歩とともに巨大技術とともに、それこそ悲惨な事故というものがいつも裏腹についている。このことを常に忘れないで対応を考えていっていただかなければならない、こんなふうに思うわけであります。そういう観点からいえば、先ほど来の原発事故に対しての対応というのは私はかなり不満であります。それぞれ問題があると思いますけれども、これはまた改めて議論をさせていただくということにいたしましょう。  時間の関係もありますから、きょうは次に入らせていただきます。  次は、国際的な農畜産物の輸入自由化要求の圧力にどう対応するか、こういう問題であります。  まず牛肉、かんきつについて、今どんな状況になっていますか。
  63. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) お答えいたします。  委員御案内のとおり、今牛肉、かんきつの問題につきましてはお互いに日米両国で話し合おう、こういうことにつきましてテーブルづくりをやっておる、こういうことでございます。きょうただいま現在テーブルはできていない。しかし、なる べく早くテーブルに着く話し合いができる、こういう状況の中で我が方の主張も十分アメリカにもわかってもらいたいものだ、こう思っております。
  64. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 テーブルができていないということでありますが、けさの新聞などにもかなり厳しい状況が載っております。  アメリカがガットへも提訴をするということを含めて公式に申し入れてきたのはいつですか。
  65. 佐藤嘉恭

    政府委員佐藤嘉恭君) お答え申し上げます。  牛肉交渉につきましては、日米間でかつて御案内のとおりの了解が存在しておるわけでございますが、その期限がこの三月の末に切れることは先生御案内のとおりであろうと思います。その後にどういう状況になるかということにつきまして、アメリカ側はアメリカ側の立場という観点からいろいろな主張がございます。したがいまして、今先生が御指摘になりましたガットへ本件を持っていくかどうかということについて、これまでいろんな機会にアメリカ側から指摘がなされてきているということでございます。  いついかなる場でなされたかということにつきましては、必ずしも特定できるわけではございませんけれども、これまでのいろんな日米間の対話の中でアメリカ側の考え方として指摘がなされてきているというふうに御理解をいただければと思います。
  66. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 眞木局長が渡米をされるのに当たって了解を求めてこられた政府の文書の中には、四月にもガットへ提訴をするとアメリカ政府は言っている、こうなっているけれども、これはいつ言ってきたんですか。
  67. 浜口義曠

    政府委員(浜口義曠君) 二月の十一日に、先生御案内のとおり、農林省の経済局長が訪米いたしまして、当方よりUSTRスミス大使に対して早急に話し合いのテーブルに着くように申し入れをしたところでございまして、この場合、米側は自由化時期の明示を条件としたものでなければ協議に入れないという立場を強調したわけでございますけれども、このまま三月末の期限切れを迎えた場合には四月早々にも本件をガットに提訴する旨我が国に正式に申し入れたところでございます。  先ほど外務省の局長から、これまでもいろいろな場面において米国政府関係者はガット提起について言明しているということについてお話をいたしましたけれども、私どもの理解しているところでは、理解していると申しますか、私どもの関知しているところでは、我が国に対して正式に申し入れがあったのは二月の経済局長訪米のときが最初だというふうに考えております。
  68. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 二月十一日が最初ということでありますけれども、察知をされるのはその前にもいろいろと察知をされたのではないかというふうに思います。日米首脳会談が行われたときにもう具体的にこの問題が出たということでありましたから、そのとき直接会談に臨まれた総理はどんなふうにこのアメリカの態度というのを受け取られましたか。
  69. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 私が日米首脳会談に行くまでにいろんな折衝がそのつかさ、つかさで行われておったという事実はございますが、レーガン大統領から、日米首脳会談におきましては農業についても日本の消費者が自由に選択できるよう輸入障害を除去することが望ましい、こういうことがあって、例示として牛肉とかかんきつとかと、こういう表現であったわけでございます。これに対して私の方からは、我が国がいつも言うことでございますが、世界最大の農産物の輸入国であることを述べます一方、我が国としても同時におととしの暮れに出ました農政審等のことも念頭に置きながら、消費者の立場も考えていかなければならないという趣旨の私から応答をいたしたということでございます。  いずれにせよ、この牛肉、かんきつ問題については、その前にもいろいろ話しておりましたが、両国の立場の違いはございますけれども、円満な解決を目指して一日も早くテーブルに着こう、こういうことが必要であるというふうな立場を考えておるところでございます。  なお、もう一つ前の基本的な問題としましては、これだけ広範な関係ができてくればトラブルがいろいろ起こってくることもあろうと。それはやはり日米両国の共同責任で解決をするという一つの基本理念をお互い確認しようではないか、それが前段にあったこともつけ加えさしていただきます。
  70. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 つかさ、つかさというお話もありましたが、つかさの話がうまく全然煮詰まっていないのに例示がぽんと出たというところに随分厳しさがあったんじゃないかと思いますけれども、そうすれば、その厳しさを感じられたならば私は早い対応というのが必要だったと思いますけれども、その辺はいかがですか。
  71. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 日米両国首脳会談で話が出たときの厳しさ、そのとき厳しさを感じておっていいんじゃないかということでございますが、これには実は御案内のように長い長い経緯がございまして、中川一郎農林水産大臣のころからの話でございますし、中川・ストラウス会談、あれ以来もう十年もたつということでございまして、ずっと厳しい話し合いの経緯があるわけでございます。しかし、長い時間がたてばたつほど厳しさは加速をされておるという認識を持っておることは事実でございます。そういう経緯に基づいて両国首脳の会談に関連をいたしまして例示をされたものと私は理解をいたしておるところでございます。
  72. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 アメリカは何かというと通商法三百一条の発動をにおわせたり、あるいは議会の動向を背景にしながらガットの提訴などということで王手をかけてくる、こういうような格好になっているわけであります。交渉相手があることでありますから内容は言えないといたしましても、こういうやり方に対して何らかの対抗手段をお考えになっておりますか。
  73. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 三百一条の問題については、一昨年米の問題も出てまいりました。いろんなときにいろんな形で出てまいりますけれども、私どもは私どもなりの考え方があるわけでございまして、私どもの日本の農政、日本の食糧政策というものの中での話として十分理解をしてもらわなければならない。しかし、一方では二面的な問題があるわけでございまして、一方においては国際化をしておる現実、これを認識する必要がある、その中で孤立をしてはならない。同時に、もう一方におきましては国内の政策として私どもは国民に安定的な食糧の供給体制、これをつくり上げていかなければならぬのでございますから、そのことを忘れて国際化といえども譲れるものと謝れないものが出てくる、こういうことでございます。
  74. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 これは私は外務大臣にもちょっと伺いたいんですが、こういう圧力をかけられているときというのは、外交交渉というのは物すごくやりづらいでしょうね。何かそういう対抗手段がないとやりづらいんじゃないですか。
  75. 宇野宗佑

    ○国務大臣(宇野宗佑君) もちろん三百一条というのはもう内容を御説明申すまでもなくアメリカ自体の問題でございますが、事ごとにこの三百一条を発動するがいいかいいかというようなアメリカの態度は極めて遺憾であるということで、外交折衝の場合にしばしばこちらからも強くその自制を促しておるというのが現状でございます。  したがいまして、日本として同じような対抗手段をとればどうかというようなことはあるいは意見であるかもしれませんが、やはり我々といたしましては今日の日本の経済的な立場を考え、世界に対する立場等々を考えますと、いろいろの面におきましてガット精神を尊重して辛抱強く交渉を続ける以外にないというのが今日の日本の立場である。  決してアメリカから押しつけられて負けているとかそういう問題ではなくして、やはりアメリカに対しましても、保護主義がもし台頭したならばせっかく戦後世界の知恵を集めて自由貿易主義で拡大された世界貿易がまたシュリンクしますよ と、こういうことでございますから、三百一条もそのような意味合いにおきまして大統領の権限、そうしたものに対する議会との関係もございましょうし、やはり我々といたしましては、今日自由貿易主義者日本としての立場を重んじながらアメリカに一つ一つの交渉においてその立場を宣明することが必要であろうと、かように考えております。
  76. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そこのところもいろいろと意見の違いがあるかもしれません。特に、幾ら仲のいい友達であっても、やっぱりけんかするときはけんかもしなきゃならぬし、力でかかってこられたときは力で対抗しなければならぬときもあるというのが普通なのでありますから、その辺のところは私はやはり対抗手段を考えていただいてもいいんじゃないかというふうに思っております。  特に、我が国というよりも、本院の農林水産委員会では何回も農産物輸入自由化についての反対の決議をやっておりますし、衆議院でもやっておりますし、そういう国会の意思というようなものも十分に踏まえていただいて頑張っていただかなきゃならぬ、こんなふうに思うわけでありますが、特に何か私はどうもアメリカにばかり気がねをしているように思えてならないんですけれども、もう一度その辺。
  77. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 日米はパートナーであるということで、友好国としてその関係を阻害しないように私も政治家の一人として当然考えるべきだと思っております。そういう中にあって、アメリカからの圧力、それに屈しつつあるのではないかというような意味のお言葉でございますけれども、私自身が圧力を感ずるというようなことは思っておりません。円満に話し合えば必ず理解される、結論が出ると。でありますから私は、私の字引に報復という言葉はない、こう言っているのでございまして、しかし、いささかいら立ちも、あるかないかと言われれば、それは私はあるかもしれないけれども、それを言ったのではならぬと自分に言い聞かせながら、辛抱もしながら我が国の主張を適していると。ここらの気持ちはお察しをいただきたい、こう思うわけでございます。
  78. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 どうもナポレオンに変わられたんであれですが……。アメリカは十二品目のガット提訴で結局いい経験をしたと。だからガットを伝家の宝刀にした、こんなふうにも言われているわけであります。  そこで、経済企画庁長官に伺いたいのでありますけれども、経済企画庁首脳が過日、牛肉、オレンジの自由化は不可避だと発言をしたという新聞報道があって、あなたが後で釈明をしておられますけれども、これは一体どういうことだったんでしょうか。
  79. 中尾栄一

    ○国務大臣(中尾栄一君) 委員にお答えいたします。  この問題は、もう既に衆議院の予算委員会でも話に出たのでございますが、実はちょっと内部的な話を申し上げますると、自由民主党というのは農林関係の委員は非常に多いのでございます。例えば簡単に言えば、米の問題などは基本問題小委員会、私も初代の小委員長でございましたが、二百五十名くらいおるんです。あるいはまた畜産関係においても二百名ぐらいいる。特に、なかんずくそういう問題で一番これを阻止しなければならぬというところから、二百名近いメンバーがこの問題には統合しておるわけです。そこで、私も同時に自由化阻止の方の初代小委員長をやっておりましたのでそのいきさつはよくわかっておりまして、先ほど佐藤農水相の言ったとおり、中川農水相あるいはそれをさかのぼってストラウスの時代から、大変にこの問題は強い、厳しい態度で日本に臨んでおったことは事実でございます。  それ以来十数年たっておると、こう判断してもおろし、私はそういう中にあって、現在総合農政調査会の顧問もやらしていただいておりますから、実は記者懇の中でもこういう話をした。たまさか連動してうちの経企庁の職員がメモをとっておりましたから、メモを読ませていただいた方が簡潔だと思います。ずっと読みます。  私は——というところはこれは私の言葉でございます。私は、アメリカが自由化を求めて強い主張をしていること、すなわちある人は五年と言いあるいは三年と言い、二年と言い、よく考えなければだめだと農林省の職員等には言っており、関係者にもわかってもらいたいとも思っておる。ただ、日本国内には和牛や米など守ってやらなければならないものもあるので、農林関係の議員をなるべく多くアメリカに派遣することなどによって双方の理解を図る必要がある。いずれにしても、現状打破については話し合いを続けることが最重要だと思うと、これを申し述べているわけです。  したがいまして、あくまでも私の立場は、アメリカは強いよ、しかしながら、御承知のように日米間はイコールパートナーという言葉を使い始めたのは、アイゼンハワーと岸信介先生の時代にゴルフをともどもしながらイコールパートナーという言葉を使ったのでありますが、それ以来もう二十年以上にわたってイコールパートナーであることは事実たけれども、譲るべきものは譲る、しかし譲るべきでないものは断固として守っていくという基本方針はこれはもう佐藤農水大臣の言うたとおりでございまして、一衣帯水という言葉があるとするならば、農林部会員が二百数十名おる、なかんずくその中においても重立った幹部もおります。重立ったつかさ、つかさの幹部は一衣帯水の意識を持っていくのが原則になっておりますから、これははみ出したような形があるわけはないのでございまして、その点は重ねて委員の方にも御答弁を申し上げておきたい、私はこのように思っております。
  80. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 あなたが釈明をされた内容を私は実は聞いていたんじゃなくて、経済企画庁首脳がどうしてこういう発言をされたかということを伺っているんです。
  81. 中尾栄一

    ○国務大臣(中尾栄一君) その経済企画庁首脳というのは私のことでございまして、恐らく経済企画庁の職員も農林省の職員も何らこの問題には責任はございません。私が記者懇の中でアメリカが強いという状態を言いながら、なおかつ後段があったわけでございますが、その後段の部分はスリップされたという点も否めない事実でございまして、私自身の言い方が悪かったのかもしれません。その点においては私自身も皆さん方関係者にいろいろの意味における誤解、偏見を与えたことは申しわけないことだな、このように思っておる次第でございます。  以上です。
  82. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 意図は、じゃ今お聞きをいたしました。ただ問題は、こういうふうに新聞に書かれたということがアメリカ側のまた姿勢にも、アメリカ側に有利と判断させる、そういう要因にもなりかねないというようなこともありますから、非常にそれこそ言動というのはよほど気をつけていただかなきゃならない難しい時期にですね、気をつけていただかなきゃならぬ、そう思うので、そこのところは特に要望をしておきたいと思います。  そこで、総理に伺いたいのでありますけれども、この牛肉、オレンジの関係ばかりではありませんで、日米の建設交渉なども今デッドロックに乗り上げていると言っていいのかもしれないと思いますけれども、それから、後で私が伺いたいと思っている水産問題にいたしましても、北洋の問題だとかなんとか、ここのところずるずるずるずるとアメリカ側から大きな力でどんどんと押されて一歩一歩後退をしていっている。言ってみれば、貿易経済の面ではアメリカ側はみずからの主張というものを、多少理不尽なところが私どもはあると思っても、それをどんどん押し通そうとするように動いています。こういう日米経済摩擦増大傾向というものを、これは非常に私は困ったものだと思うんですけれども、こういうことに対して、先ほど首脳会談の話もちょっとありましたけれども、今後どう対応していこうとしておられるのか、その辺をお聞かせいただきたい。
  83. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 先ほどもお答えいたしましたように、これだけ世界の三分の一のGNPを 両国を合わせれば持つ。世界経済全体に与える影響も大きい。したがって、両国間でも交流の範囲が広まれば広まるほどいろんな問題は生じてくるだろう。これはまさに共同作業という理念に基づいて、しかも、それが縮小均衡の形にならないで拡大均衡の形の中で共同作業の精神でやっていこう、こういうのが基本姿勢でございます。  しかし、今おっしゃいますように、要するに事ごとに三百一条の発動というようなものをちらつかせてと、こういうような御印象もあろうかと思いますが、そういうことでやったところで、それはまさに対話と協調とには反することであって、両国の共同作業の理念にも反することだ、それで問題が解決するものじゃないということを事あるごとに主張をしておるわけでございます。  やっぱり私も、若干長くなりましたが、表現も変わってきたなと思うのは、ある段階の人は、例えばかつての大蔵大臣時代の話にもなりますけれども、いわゆる経常収支の黒字に対して結果としてそれがアメリカの財政赤字にファイナンスしておるのじゃないか、還流しているんじゃないか、偉大なるとは言いませんが資本提供の役割を果たしているんじゃないか、こういう主張をいたしますと、ああそれはありがたいことだ、それに対しては恩返ししなきゃいかぬから、貴国の消費者に口に入るものだけは安い物をお送りした方が私どもとしての恩返しの道ではなかろうかなどという若干のジョークも加えながら、そういうやりとりもあることは事実でございます。  しかし、そのやりとりはお互い幾ばくか相手の立場を尊重しながらの一つのウイットみたいなものであろうかと思いますけれども、基本というものはやっぱり縮小均衡ではなく拡大均衡の中で、しかも共同作業でやっていこうと、お互いが。日本は議院内閣制でございますから非常に話のしやすい立場にありますが、アメリカの場合は議院内閣制ではございません。したがって、それらの違いをも理解しながらやはり共同作業でやっていこう、抗争と対立の中には進歩はなく、対話と協調の中にこそ発展がある、こういうようなことでこれからも対応していかなきゃならぬことであろうというふうに考えております。いささかお答えが長くなりました。
  84. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そういうふうに言っておられるけれども、現実はどんどん、特に食糧関係、農畜産物関係については追い込められているような気がしてなりません。そしてその一方では、何か防衛関係の協力だけは特別親密になるような感じがするわけでありますけれども、結局片一方で失っていくもの、防衛のために失っていくものというような形になることを一番恐れるんですけれども、そんなふうにはしないという約束をしていただけますか。
  85. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) いわゆるよく言われる防衛とのリンクで物を議論していこうという考え方は、私は経済は経済としてやはりその立場から論議すべきものであるという考え方に立って御趣旨を踏まえて対応していきたいと思っております。
  86. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 次は、ウルグアイ・ラウンドにおける農業グループの交渉について伺いたいというふうに思います。  我が国の提案のポイントは何か、そしてアメリカの提案の概要、そしてその他の各国の提案の違いと我が国との共通点、そういうものをちょっと要領よく教えてください。
  87. 浜口義曠

    政府委員(浜口義曠君) 先生お尋ねのまず我が国の提案の思想でございますけれども、昭和六十二年のOECD閣僚理事会のコミュニケ、あるいはベネチア・サミットの経済宣言の中に合意されました農業に対します食糧の安定供給の確保、あるいは環境保全等純経済的でない社会的及びその他の要請というものに配慮しなければならないというふうに我々は考えているわけでございます。また、農産物の世界最大の輸入国としての我が国の基本的な立場、そういうものを十分反映いたしましてルールづくりを求めたという提案にしようという意欲でございます。その具体的内容といたしまして、食糧自給力の低い国が基礎的な食糧の国内生産の安定を図る観点から輸入制限を認めること、あるいは食糧不足時における輸出国の輸出制限措置について輸入制限とのバランスのとれた規制を課すこと、あるいは輸出補助金を段階的に撤廃すること等が日本の提案の主な点でございます。  これに対しまして、先生お尋ねの、米国はそれではどうかということでございますが、米国あるいはケアンズ・グループの提案は、長期的にはすべての輸入障壁及び補助金を撤廃すべしというのが論点になっております。ECにつきましては、貿易をゆがめる措置の削減といたしまして短期、長期の二面性の方策を提案しているところでございますが、特に酪農品についての生産制限というのを短期的措置として強調しております。その他北欧諸国におきましては農産物の輸入国の立場、そういうことで直ちに供給の削減を行うことの必要性と輸入食糧の制限のルールの明確化を強調した提案が行われております。  昨年の農業交渉の中で、七月に先ほどの米国提案が行われました。十月にECの提案、さらに我が国は十二月三十六日に提案を行いまして、去る二月十五日、我が国の外務省あるいは農水省から関係官が参りまして先ほど申し上げました提案を強調して討議が行われたという状況でございます。
  88. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 ガットの十二品目問題のときには我が国は孤立化させられたという形にあります。今度の交渉というのはこれからの農畜産物の貿易ルールづくりということになるわけでありますから、ここで一つ間違えますと、それこそ我が国農業は成り立たなくなってしまう可能性だって出てまいります。そういう意味では、我が国提案を何としても理解していただいて受け入れられるようにならなきゃならぬのじゃないかというふうに思いますけれども、この点について、担当の農林水産大臣あるいは外務大臣の決意を聞きたいと思います。
  89. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) おっしゃるとおり、ニューラウンド、ウルグアイ・ラウンドの決着というものは、これからの我が国の農政あるいは食糧政策にこれまた禍根を残してはならないわけでございます。それがもとで大変なことになっていったわいということになったらまさに大変でございますので、私どもは今事務局から説明申し上げましたような内容で粘り強くやってまいる、こういうことでございます。そして世界の国々にもいろいろ理解をいただかなければならない、こう思っております。  これから二年半ぐらいかかるんでしょうか、そういう一つのめどもあるようでございますが、十分ひとつ我々の考え方を理解してもらうように最大限の努力をしてまいらなければならぬ、こう思っております。
  90. 宇野宗佑

    ○国務大臣(宇野宗佑君) ガットに関しましての日本提案は今申されたとおりでございますが、その前にガットで協議をしなくてはならない問題もたくさんあるんです。で、閣僚クラスの会議を本年の末にしようと。そのときには、アーリーハーベストと申しまして、より効果的なものを早期に妥協しようじゃないかという話も今日出ております。農業問題がアーリーハーベストになるということはあり得ない、これは我々の主張でございます。  特にガット機能の強化という問題がございまして、この中には実は二国間の話がいいのだろうかどうだろうかという話もあるわけでございます。例えば二国間だけで話をいたしますと他国を排除するような場合がある、二国だけが話し合って利益を享受する場合がある、そういうふうなこと等々もございまして、いろいろとガット機能というもの、意思決定をどういうふうにするかというもの、そうした基本的な考え方をまず私たちはきちっと決めていかなくちゃならぬ。  何分にも参加国が九十五カ国ございます。そうした中におけるところの問題でございます。だから農業問題に関しましても、先ほど来農林水産大臣が申されましたとおり、私たちはやはり唯一のネットの輸入国であるという立場の各国に対する 理解を深めつつ、我が国の主張を貫いていきたい、かように思っております。
  91. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 いずれにいたしましても孤立しないように、共通点等を十分に巧みに生かしていただきまして頑張っていただかないといけないと思いますので、精いっぱいの御努力をお願いしたいと思います。  そこで、とにかくガットの十二品目、特に八品目の自由化をしなきゃならなかったということは、私はもう本当に残念だと思うわけであります。こんなふうにならないようにということを願いながら、ひとつ頑張ってもらいたいと思っているんですが、そこで、その八品目の自由化について伺いたいと思います。  農林水産大臣はしばしば地域農業に禍根を残さないというふうに言われておりますが、禍根を残すというのはどういうことですか。
  92. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) いろんなところで私お答えいたしておりますが、御質問でございますので重ねて申し上げておきたいと思います。  地域農政、これを大事にしていかなければならない。それは、日本の食糧政策の中においても、また地域の活性化という点からも、国民経済に大きく影響するこの農業問題をおろそかにするわけにはいかない。そうしてその地域その地域で農業をやりながら生きてきた方々が生きていかれるようにしなければならぬのである。それに阻害が出るというようなことになってはならぬ、すなわち禍根を残してはならぬ。こういうことで真剣な対応を進めておる、こういうことでございます。
  93. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そのことについてはどうも疑問が残りますが、その前に総理にちょっと伺いたいんです。  先日の御答弁の中で、国民の納得する価格の構造改善、たしかそんなふうな意味のことを言われたと思うんですが、これは私によくわかりませんので、わかりやすく説明していただきたいと思います。
  94. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 正確にどう書いてあったかは私も今定かには記憶しておりませんが、おととしの暮れ農政審の答申をもらいましたときに、これが今後の日本の農政のいわば教科書になるのかなと思って、かなりの時間をかけてその説明を聞かしていただいたことがございます。  そのときに私なりに感じましたことは、これは、地球上に生存する人類が安価にして良質なものをそれぞれのところから自由に取引し享受できる体制というようなことが仮に自由主義貿易を定義づける定義といたしますならば、しかしそれぞれのいわゆる国土狭隘とかそういう地理的な条件というものがあって、まさにそれが完全に野放しで、地球上にある一番安価にして良質なものをという状態にはなり得ない。しかしながら、これだけ国際化した場合に、やはりそこにはいわゆる良質にして安価ということに対する消費者志向もあるだろう。しかしこの辺なら国民経済全体を考えたときに消費者としても納得できる、というような相互の納得というもの、もとよりいわゆる生産者の所得保障というものが一方に存在し、そうして経済全体を考えたときに、消費者のおよそ納得できる価格というようなものが生産者と消費者の相互認識において生ずるようなものが適当ではなかろうかなというふうに漠然と考えておるところでございます。
  95. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 構造改善と言われるんですが、そうするとこれは農業だけの構造改善をお考えになっているんですか、それとも産業全体を含めて全体的に構造を変えていく、そういうふうにお考えになっているんですか。
  96. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) よく言われます私どもが従来使ってきた構造改善というのは、昭和四十七年でございますか、予算編成の際、当時農林省が部内でいろいろ検討されて、行政管理庁と協議をなされて、伝統ある農政局とか農地局とかいう言葉がなくなりまして、構造改善局とか流通経済局でございましたか、そうした機構改革がなされましたときに、私は、農政の転換の一つの大きな文字の上に見えた柱だなという感じを持ったことがございます。それ以来かなりの期間私は、構造改善政策といえば、どっらかといえば農業ということが私の念頭にあったことは事実でございます。  しかし、今日国際化した場合に一般的に使われる構造政策というのは、農業に限ったものではなく広範な産業経済全体にわたる構造政策ということではなかろうかと思いますから、あえて言うならば、農業に関する構造政策についてはというふうに言わなきゃならぬように今日なったなというふうな印象を持っております。
  97. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そうすると、私はむしろ問題だというふうに思うんです。農業の構造政策というのはこれは規模拡大を中心にして行われていくというふうになると思いますし、そこへいろいろと投資をされるということになれば、これはむしろ逆にコストは決してそんなに安くならないということになるのじゃないかと思いますが、どうですか。
  98. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 総理の答弁を若干補足いたしますと、昭和四十五年であったかと思いますが、間違っておったらお許しいただきたいと思いますが、四十五年に構造改革の基本方針が出て、四十七年、今総理がおっしゃるように食品流通局と構造改善局ができることになった、こういうことでございます。そして、今お尋ねの規模拡大、構造改善というのは規模拡大ではないかと、まさにそのとおりでございますが、加えて、規模拡大でもあり土地改良という問題もあり、規模拡大といえば、所有権と利用権の分離、これを意識した一つの規模拡大もあり、さらにまた、二種兼業が多い農業ではございますけれども、担い手対策、こういうことも含めて、各般にわたるファクターを全部含めての農業構造改善である、こういうことで御理解をいただければいいのではないか、こう思います。
  99. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 どうも言葉のやりとりだけでははっきりしませんから、農水省事務当局にお答えいただきたいと思います。  例えば水田にいたしまして、北海道の水田は平均耕作反別はどのくらいで、単収はどのくらいでしょうか。内地の代表的なところで結構ですけれども、平均経営面積と単収をちょっと教えてください。
  100. 浜口義曠

    政府委員(浜口義曠君) 先生御案内のとおり、日本の水田経営の場合、水田面積、水田を含めまして農家の経営は、達観して申し上げまして、諸外国等々の大きさ、アメリカ等々の大きさを比べましても、大体一ヘクタールというふうにお考えいただいていいと思います。先生御案内のとおりでございます。この点に対しまして北海道でございますが、北海道におきましては、先ほど来御議論になっております構造改善というものが進みまして、大体十五ヘクタールというふうな面積というふうにお考えいただいていいと思います。  この場合におきまして単収でございますが、現在を通じまして平均単収は大体五百キロを切っているというふうな状況でございます。もちろんこれについては、八百キロをとっているところもございますし、あるいは湿田、あるいは条件が悪いところで三百五十キロというところもございますが、水田につきましてはほかの作目と異なりまして水というものを使っておりますし、また先祖伝来の我が国の英知が結実しております水田というようなことから、大体平均的なところでばらつきはございませんけれども、そういう状況にあるというふうに我々理解しております。
  101. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 単収は北海道も内地も同じですか。
  102. 浜口義曠

    政府委員(浜口義曠君) 北海道の問題も大体あわせまして今申し上げましたように、ほかの、例えば大豆とか小麦とかいったような形での北海道のものとそれ以外の都府県の場合との差があることに比べますと、大体同じというふうに理解しております。
  103. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 その北海道で水田経営が厳しくなって土地を手放すという人たちが出てきているというテレビの報道かきのうあったばかりであります。大体一町歩のところを十五町歩にしたところでこうやって四苦八苦しているということであり ますから、規模拡大というのは非常に問題があるのじゃないかと思いますけれども、その辺はいかがですか。
  104. 浜口義曠

    政府委員(浜口義曠君) ただいまの先生の御指摘の昨日のテレビの具体的内容については、実は私は見ておりません。  ただ、今のお話のところにつきまして一言二言ちょっと補足させていただきますと、先ほど来御議論の焦点になっております農政審議会の六十年十一月の御報告の中に、この報告におきましては一つの生産性の向上を掲げまして地域の実情に応じました足腰の強い構造改善が提案されているわけでございますが、その中に試算という形で、おおむね七十年度を見通しまして、生産性の向上を図りつつ現在のコストを約半分まで下げていこうという試算がございます。これは地域地域に応じまして、あるいは一毛作あるいは二毛作といったようなもとで、いわば日本古来の田畑輪換といったものが中心に据えられているところでございますけれども、この場合におきまして大体四十へクタールといったものを頭に置いているものが一つあります。あるいは中規模のものもあります。  その場合の一つの路線といたしまして、先ほど来申しておりますように日本の規模というのは極めて零細でありまして、極端な場合一ヘクタールということもございますので、一つは、地域地域におきます足腰の強い経営で個別にそういう規模をなるべく大きく図っていく、一ヘクタールが三ヘクタールになっていくという路線もあろうと思いますけれども、それ以外に、例えば集落を通じましてその中で協力をしていただくという地域システム等もございます。そういった意味で、先ほど来のような農地の移動の問題もございますけれども、そういう形で生産性の向上というものを我が国の農業の発展の中で取り入れていくものではないかというふうに考えているところでございます。
  105. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 いろいろと言われるけれども、時間ばかり食うので困るんですが、問題は、規模を拡大しても生産性の向上も思うように上がっていかないし、そして今の北海道とそれから本州との比較に見られるように、本州が北海道並みになったって生産性がまたそれだけうんと上がってなかったら何にもならないじゃないかということもあるわけですね。だけれどもそう簡単になかなかいかないでしょうということを私は言いたいわけであります。  それからまた、さらに事務局に伺っておきたいけれども、畜産の場合には特に負債問題が随分問題になっておりますけれども、この負債はどうして生じていますか。
  106. 浜口義曠

    政府委員(浜口義曠君) 畜産の場合のいろいろな負債の要因でございますけれども、これは一つは、諸外国がかなり長い期間を通じましてなし遂げた近代化というものを、戦後の極めて短期間にいろいろな投資を集中的に行ってきたということに主たる起因があるというふうに考えております。
  107. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私は、畜産もその規模をだんだんと拡大していく中で設備投資だとかそういうものが借金ということで非常に大きな圧迫になってきている、こういうふうに理解しています。この辺のところの解決を図っていかなければならない、そういう問題があります。だからこそ、牛肉、オレンジの場合も頑張ってもらわなければならぬという要因の中にそれがあるんです。現状のままだって大変なんですから、これを何とかしてもらうことの方が先なんじゃないですか。禍根を残さないと言うけれども、まずやらなきゃならないことがあるんじゃないですか。そしてそれでやっぱり禍根が残るんじゃないですか。こういうことを伺いたい。
  108. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 委員おっしゃることはよくわかります。規模拡大というのは困難である、そんなに甘く見ているなよ、なかなか大変なことだよと。しかし、これは御激励の言葉として受けとめておきたいと思います。困難でありましても規模拡大はやらねばならぬと考えておりますし、団体筋におきましてもその気になっておりますから、それをこういう場でまただめだ、だめだと言うと、だめになるのであります。そうだそうだ、行こう行こうということで、私を激励してくださる、またあらゆる関係者の激励につながるようなお言葉と拝察できれば非常にありがたいことである。もとより負債の問題もそうでございます。おまえは借金かずいて大変じゃないか大変じゃないかと言ったんでは本当に大変になる、ということは私が地方に参りましても厳しく言われるのであります。将来に展望がない、明るさがない、みんなで寄ってたかってだめだ、だめだと言われているがどうするんだと。私を信頼していただいて、どうかひとつ一緒にやっていこう、こういうことで日本の食糧政策の遂行、こういうことに焦点を絞って努力しているところでございますので、よろしくこの上ともの御協力をお願い申し上げます。
  109. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 大分気負った御答弁をいただきました。非常に私は、難しいものは難しいなりにそのことをやっぱり腹に置いておられると思いますが、それだけに心配もしておりますので申し上げております。またさらに、これはそれこそ所管の委員会で十分に議論をしなきゃならない、そういう課題でもありますので、ひとつよろしくお願いをいたします。  ここで沖縄開発庁長官にちょっと伺いたいと思いますけれども、衆議院の予算委員会でパインの調整品自由化問題で、何かアフリカの牧草が酸性土壌に向いているということで、沖縄に飛んだ関係者と話し合った、こう御答弁になっておりますけれども、これの話し合いというのはどういうふうにして行われて、どういう結果だったんですか。農林水産省とも相談の上でのことなんですか。
  110. 粕谷茂

    ○国務大臣(粕谷茂君) お答えをいたします。  沖縄のパインは地域の重要な農産物であることは御高承のとおりでございますが、地域農業に悪影響を与えないようにというようなことで、終始私は開発庁長官に就任してからそのことを考えてまいりました。  今御指摘の、多分アフリカ原産のブラキャリアのことであろうと思うんですが、この牧草は非常に荒廃地とか酸性土壌に強くて生育が旺盛である、こういうことをかねがね研究者から聞いておりましたものですから、大きな将来展望として、ただいまの時点での話でなく、やはり沖縄は広範にわたって酸性土壌であるということがありますから、どうしても水の確保と酸性土壌の克服というのが至上命題でございますので、そういったことに何か役立つことになりはしないだろうか、こんなような気持ちもありましたものですから、一般論として、就任早々に沖縄に行きましたときに、農家の方とは立ち話でございましたけれども、小雨まじりの寒い日でしたが、西表でお話をしました。同時にまた、詳しい話は、琉球大学の附属熱帯農学研究施設というのがあるんですが、そこへ行きまして、農学部長の高橋宏先生とお話をいたしました。そのときの会話では、粕谷さん、随分研究なさっておりますね、やはりこの酸性土壌の克服ということは大切なことなんですというんで、意見の一致を見たような状況でございました。  しかし、私どもが願っておりますのは、何といっても沖縄の現状では他作目に転換をするということはほとんど考えられないことでございますので、そういう状況の中で、本島の北部並びに八重山地域でパイン栽培を営んでいる農家に悪影響を与えない、そういうようなことで国内措置、国境措置をしていただきたいなという念願を込めておりましたが、幸い農水省では十分そういうようなことを御考慮していただいて、プロジェクトチームを組んで種々御検討をしていただいている、こういうことでございますので、我々も今後連携を密にしまして協力していきたい、また努力をしていきたい、こういうように思っております。
  111. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 善意で御努力されたことはよくわかりますけれども、牧草ということになりますと これは畜産との関係がかなり密接なものがございますし、沖縄の経営と畜産との関係、どういうふうに考えるかというようなこと、やっぱり今後の問題として考えていかなきゃならない問題ですから、私は、そういう御提起をなさるんでしたら、ぜひまた農林水産省とも横の連絡を十分とった上でやっていただいた方がよりベターだったのではないだろうか、そんなふうにも思いますので、これは御忠告を申し上げておきたいというふうに思います。  次に、厚生大臣に伺いたいのでありますけれども——厚生省でいいです。  先日、アメリカから輸入された豚肉から発がん性の疑いのあるスルファジミジンが検出をされましたということでありますけれども、これはどのような経路で発見をされて、どう対応されたんですか。
  112. 古川武温

    政府委員(古川武温君) 御指摘の件につきましては、本年の二月初めでございましたが、米国において自国産の豚肉にスルファジミジンが見つかっている、こういうふうな発表といいますか、これはアメリカ内のAPですか、そうしたものが報じたものでございます。その情報を得ましたので、厚生省としては直ちに在京の大使館に連絡をとり、その事情を照会いたしまして、二月十九日から米国産豚肉について検疫所において輸入時に全ロットを検査する、こういうふうな体制をとったわけでございます。また同時に、既に輸入されている米国産の豚肉もあるわけでございますから、府県に検査、これは倉庫に保管してあるこうしたものの検査を依頼したところでございます。  その結果でございますが、二ロットからスルファジミジンが検出されております。倉庫、国内の分については検出されておりません。
  113. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 外国から輸入するものにいろいろと化学薬品が使われているということがあるわけでありますけれども、こうした化学薬品に対するチェック体制というのが非常に気になります。厚生省が食糧あるいは農畜産物の直接食べるものの輸入に対して検査をする体制はどういうふうになっていますか。
  114. 古川武温

    政府委員(古川武温君) ここのところ輸入食品の件数は非常に伸びております。量から申しますと国民の食品の三分の一以上が輸入食品、こういうふうなことになっておりますので、厚生省としても輸入水際といいますか、空際も含めてこの検査をしっかりやらなければならない、こう考えております。  そこで、委員御案内のこととは思いますが、二十の検疫所に七十五名の食品衛生監視員を配置いたしまして、輸入食品にりいては届け出制になってございますが、その書類を審査し、必要なもの、あるいは抜き取りと言うのでしょうか、一〇%程度をめどとして検査を実施することにしております。それでまた、食品、健康を阻害するようなおそれの多いものにつきましては、特別にこの検査とは別に全ロットを検査する、こういうことを随時指示していく、こういうふうなことでございます。ただいま御質問の米国産の豚肉についても、そういうことで全数の、全ロットの検査をしております。  そこで、この市場開放によりまして、あるいはその前から件数の増はあるわけでございますが、まず一つ、食品衛生監視員の数でございますが、市場開放して以来の数字を申し上げますと十数名の増、委員どうおとりになりましょうか、そういうふうなことでその体制についても、人の面についても努力をしておる。  それから輸入食品の検査の経費でございますが、これも同じ期間に倍増する、こういう努力をしております。  そして、人だけではいけませんので、輸入食品の監視情報というものを統計情報部にございます大型のコンピューターと結びまして端末を検疫所に置く、こういうふうなことでコンピューター化して漏れのないような検査体制というものをとっております。また、検査が勝負でございますから、検査機器の整備についても十分力を入れ、また技術者の技術研修等もやりながら安全対策に努力しているところでございます。
  115. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 どうも私は、聞くたびに背中が寒くなるんですよね。というのは、二十カ所に七十五名しか、七十五名しかですよ、監視員がいないということなのであります。言ってみれば、入ってくるものを水際で完全にチェックしていくということはこの体制では到底不可能だというふうに私は思います。十数名の増などというふうに言っていますけれども、随分のんきな話なのでありまして、私から言わせていただけば、それこそ抜本的な体制の変革をやらなければ困るのではないかというふうに思っています。この辺のところはまたさらに、このことだけでもかなり突っ込んでいろいろとお聞きしなければならないという問題でもありますので別の機会に譲りたいと思いますけれども、いずれにしてもこういう非常に大きな問題があるということであります。  自由化にかかわる総合対策というのは、農水大臣は一生懸命、地域農業に禍根を残さないようにということで奮闘しておられるけれども、しかし地域農業というばかりではなくて、へたをすると国民に禍根を残すということだって起こり得るわけなのでありまして、これはまさに総合的な対策というものが私はどうしても必要だと思うんです。今までも一定程度のことはしておられると思うけれども、特に自由化はこれからどんどんと攻め込まれてくるだけに、自由化対策というのは本当に腰を入れた総合対策をやっていただきたいというふうに思います。その辺、総理はいかがでございましょうか。
  116. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 御指摘のとおり、ただ一面的にとらえてだけの対策というものでは私は対応できないと思っております。総合的とおっしゃいましたが、我が方で言えば、いわば政府一体の責任という形で対応すべきものであるというふうに考えております。
  117. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 ぜひそうしていただきたいと思いますし、その総合対策については、また私どもも十分に推移を見詰めていきながら必要に応じていろいろ積極的な提案をすることもあるかもしれませんが、ひとつよろしくお願いしたいと思います。  次に、水産問題について伺いたいと思います。  日ソサケ・マス交渉がデッドロックに乗り上げて一たん中断されました。その経緯あるいは対立点、これを説明していただきたい。
  118. 田中宏尚

    政府委員(田中宏尚君) ことしの日ソサケ・マス交渉は二月二十九日から開催されましたが、日ソ双方の主張に大きな隔たりがございまして、残念ながら三月十四日に協議を一たん中断した次第でございます。  今回の協議で隔たりの大きかった点といたしましては、一つは、ソ連側が一九九二年までに沖取りを全面禁止するということを提案してきた点でございます。それからもう一つといたしまして、本年のサケ・マス漁業につきましてもいろいろと隔たりがございます。漁獲クォータでございますとか、あるいは操業水域、あるいは取り締まりの強化という点につきまして、両者の間に隔たりがあったということでございます。  こういうことで両者間の協議が詰まりませんで十四日に中断ということになったわけでございますが、これからはできるだけ早く協議を再開して、関係漁業者とも十分相談しながら、我が国として受け入れ可能な結論というものを得られるように最大限の努力を行ってまいりたいと思っております。
  119. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 米ソ間に経済交流が積極化され始めてきております。漁業の分野でも、消息筋の話ではモスクワで、ソ連水域での米国漁船の操業の話だとか、漁業合弁事業の話だとか、北洋全般における海洋秩序について話し合われるなどというような情報がありますけれども、これは事実ですか。
  120. 田中宏尚

    政府委員(田中宏尚君) ここのところ米ソ間の漁業関係でのいろいろな話し合いなり討議等がなされていることは、ただいま先生から御指摘があ ったような事実でございます。
  121. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 米ソ間でこういう話がされていると。今度ワシントンで、やはり米ソ間でベーリング公海における資源管理や海産哺乳類の問題等で話し合うということも聞きましたが、これも事実ですか。
  122. 田中宏尚

    政府委員(田中宏尚君) 今月の下旬にベーリング公海問題に関する専門家間の打ち合わせ会議というものがワシントンで開催されるというふうに聞いております。
  123. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 米ソ間の経済交流がこういう形で積極化されていくと、サケ・マスに限らず、北洋から我が国がどんどんどんどん締め出されていくということになりませんか。
  124. 田中宏尚

    政府委員(田中宏尚君) 昭和五十二年の二百海里スタート以来、二百海里体制というものが世界的に定着してまいりまして、それぞれの国がそれぞれの二百海里内での漁業資源についての自国化努力といいますか、みずからの国民が魚をとりみずから付加価値をつけるという方向に動いてきていることは事実でございますし、それからサケ・マスについての母川国主義というものも世界的に確立してきたということも事実でございますので、ここのところ毎年、北洋を初めといたします遠洋漁業というものが厳しい局面に直面しているということは先生御指摘のとおりでございます。
  125. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 結局どうも、アメリカの水域からも我が方は追い出されるということになりそうだという状況の中にあります。そして今度はソ連の方も四年後は沖取り禁止なんということになる。そうすると、結果として米ソの間での北洋の秩序ができてしまって我が国は入るすきもなくなってしまう。こういうことになったときに、二百海里だけで生きていける、こういうことになりますか。その辺はどう考えていますか。
  126. 田中宏尚

    政府委員(田中宏尚君) 特に北洋におきますソビエト、アメリカというものは二大沿岸国でございまして、この国の二百海里体制なり母川国主義というものが浸透するにつれて日本の立場が厳しくなることは当然でございますけれども、その他の公海なりその他の二百海里という地域での日本とそれぞれの国との協力関係あるいはいろいろな関係の深まりというものもございますので、そういうところの協力関係を今後も推進してまいりたいと思っておりますし、それから日本の周辺、みずからの二百海里、これの漁場としての再構築というものにつきましてもいろいろと手だてを講じておりますので、そういうみずからの二百海里の再構築、それから粘り強い外交、それから新しい漁場についてのいろんな協力関係、こういうものをトータルいたしまして、何とか我が国の水産業が今後とも立ち行くような努力というものを積み上げてまいりたいと思っております。
  127. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 今までも漁臨法、漁特法等によって北洋から締め出されたものを中心にしていろいろと救済の手を差し伸べてきましたということでありますけれども、だけれども大幅に減船したり、あるいは失業者というか就労がなかなか厳しい状況の中へ追い込まれたり、雇用関係なんかが厳しい状況になってきたりしているわけでしょう。どんどんと割り当て数量も減ってきているというのが事実でしょう。  ということになってきますと、我が国がどうしてこんなふうにまで追い込まれてきたのか、そこのところを分析してどういうふうにお考えになっておるか。これはやっぱり外交の関係から見ていただくのがいいのじゃないかと思うけれども、どうですか。
  128. 宇野宗佑

    ○国務大臣(宇野宗佑君) ずっとおっしゃるような現状で、将来憂うべき面もたくさんございます。だからよほど外交面で努力をしなくてはなりませんが、やはり二百海里水域というものが決められたところからそうした宿命的なものがあったのではないか。米国に対しましては、この問題は先般の国務長官との間におきましても我が方より提起いたしております。また、ソ連問題は今日中断されておりますが、ことし後半にも行われますソ連外務大臣との間におきましても当然話題として提起をし、やはり今日米ソ並びに日米、日ソという関係がどれだけ重要なものであるかという問題から相互理解を求める以外にないのではないか、私はこういうふうに思っております。
  129. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 いずれにいたしましても我が国の北洋漁業にとっては重大な問題でありまして、先ほど申し上げたように米ソのイニシアチブでもって北洋の秩序ができ上がってしまう、こんなことにならないように、これからの対ソ交渉というものを対米交渉とあわせて一生懸命頑張ってもらいたい、そういうふうに要望して、もう時間がなくなってきましたから次へ移ってまいりたいと思います。  次に、森林・林業問題について伺いたいと思います。  我が国には民有林の造林の一八%を実施してまいりました造林または林業公社というのがありますが、その事業資金の八二%が借金になっております。これはもう償還期限が到来しているのに植栽樹はまだ伐期に至っていない、償還財源をどうするかという問題がありますが、具体的対策がありますか。
  130. 松田堯

    政府委員(松田堯君) 林業公社は三十六道府県に四十公社あるわけでございます。三十四年から公社が設立されておりまして、早いところから今先生がおっしゃいましたように事業資金の返済が迫ってきている、また多くなってきている、こういう状況にあるわけでございます。  林業公社はなかなか造林の進まないところで造林をやっていただいている事業体でございますので、これまで造林補助金につきましても一番優遇した対応をしてきたところでございますし、制度資金としての農林漁業金融公庫の資金につきましても、融資条件の改定といったようなことに努めてきたところでございます。また、公社の役割が単に造林だけではなくて分収育林等の推進といったような役割も担っていただくような方向づけをいたしておりますので、そういったようなことの施策を展開する中で、造林公社の育成強化に努めてまいりたいと思っております。
  131. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 杉の利回りが一、二%と言われるでしょう。そうすると三・五の低利資金でも、これ、どうなりますか、返済困難じゃないですか。
  132. 松田堯

    政府委員(松田堯君) 公社設立当時は間伐材等の収入も期待していたところでございますが、なかなか間伐材が処分できない、売れない、こういったような事態になっておりますので、資金事情等は非常に窮屈になってきている、こういうことで考えております。
  133. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 だから具体的に対策を、融資だけではどうにもならないので、何か具体的にこれを救済する手段を考えていますかと、こう聞いているんです。
  134. 松田堯

    政府委員(松田堯君) 昨年公庫資金の運用につきまして見直しをいたしまして、貸付期限あるいは据置期間のそれぞれ十年の延長を図ったところでございます。今後とも公社のあり方につきまして検討を進めてまいりたい、このように考えております。
  135. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 これは債務保証を県などの自治体がしています。それから利子は貸し付けたりしております。しかし、今これが回収の見込みがないという格好になってしまうと大変なことだと思うんですけれども、自治省、何か対策をお考えですか。
  136. 津田正

    政府委員(津田正君) 造林公社あるいは林業公社の経営というのが借入金の増大等で極めて厳しい状況にあるわけでございまして、自治省としましてもかねてより林野庁に対しまして造林資金の融資制度の改善等について要請を行っておったところでございます。  先ほど林野庁から御答弁がございましたように、六十二年度におきまして造林資金の償還期限あるいは据置期間の延長等の融資条件の改善が行われておりますが、今後におきましても公社の経営改善が図られるよう林野庁と十分相談してまいりたい。また、先ほども出ておりましたように、 いわゆる間伐材の需要拡大ということが地域活性化というような中で効果があるように、私ども、そういうような地域活性化の点でも考えてまいりたい。また、全般的に林野行政費に対する交付税の配分というものについての充実を考えてまいりたい、かように考えております。
  137. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 いずれにしましてもなかなか大変な問題だというふうに思うんです。  間伐材の問題が出ましたが、この間伐材の利用問題などもいろいろとあるわけであります。細かいことは所管の委員会でまた議論させていただくことにしたいと思いますが、とにかくこれは何とか早急に手当てをしていただかなければならない、こういう問題でありますから、特にお願いをしておきたいと思います。  次に、都市部では地価の高騰による相続税が随分問題になっているわけでありますけれども、森林についてはちょっと事情が違うのではないかというふうに私は思っております。  それは、相続税を納税するために結局幼齢樹のうちにどんどんと伐採をしてしまうというようなケースもかなりあります。それから、間伐をしてしまって後は植栽もしない、そういう問題なども起こってまいる、経費が結構かかりますから。そういう問題なども起こってまいりましたり、それからさらに、相続による林地の細分化だとかなんとかというような問題などもございます。そういったいろいろな問題が起こってまいりまして、これはもう御承知のように、緑の保全というのは国土の保全とか水資源の涵養とか空気の浄化とかといういろんな面で公益的なものを持っているだけに、こういう状況は私は大変憂うべき状況だというふうに思うんです。  そこで、伐採をしたときに納税をすればいい、こういうような制度にするということができないだろうか。あるいは、国の方針に従って、森林計画に沿って林業経営をしている間は納税猶予をしてやるとかなんとか、そういう特別な措置を考えるとか、具体的なことはまた担当のところといろいろと御相談いただくとしても、何かそういう特別な措置が考えられないだろうかということを最後にお聞きして、もう私の持ち時間がなくなりましたから終わります。
  138. 松田堯

    政府委員(松田堯君) お話にございましたように、林業は生産期間が非常に長い、また公益的機能を持っている、こういったような特殊性にかんがみまして、従来から、立木の評価をその時価の八五%にする、あるいは今お話がございましたように、施業計画をつくっていただきまして計画的に伐採、造林等を行っていただく場合には二十年以内の不均等償還ができる、こういったような特別の措置を講じてきているところでございます。  昨年この相続税につきましても全体を見直しまして、立木評価の基準を改めまして二割程度軽減いたしております。また、施業計画に基づきまして延納する場合の利子税につきましても引き下げをいたしておるところでございます。  今後とも、厳しい情勢でございますので、また緑資源を確保するといったようなことがますます重要になってまいりますので、検討を続けてまいりたいと考えております。
  139. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で稲村稔夫君の質疑は終了いたしました。  午後一時十分まで休憩いたします。    午後零時十分休憩      ─────・─────    午後一時十三分開会
  140. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 予算委員会を再開いたします。  昭和六十三年度総予算三案を一括して議題といたします。  これより伏見康治君の質疑を行います。伏見康治君。
  141. 伏見康治

    伏見康治君 私は日本学術会議の会長をしばらくしておりまして、その時代から南アフリカの科学者に対するビザが出にくいということで大変苦労をしてきたわけでございます。そして、それがいまだに尾を引いておりまして解決していないと思いますので、その点について特に外務大臣の御意向を承っておきたいと思っております。  ちょっと事情を申し上げますと、日本学術会議はICSU、インターナショナル・カウンシル・オブ・サイエンティフィック・ユニオンズという世界的な意味における学術会議に参加しておりまして、そこから出ておりますいろいろな考え方に倣うことになっているわけでございますが、ICSUの方ではフリー・サーキュレーション・オブ・サイエンティスト、科学者の自由交流というものを非常に大きな原則だと考えておりまして、そのために絶えず闘っております。初めのころは、御承知のとおりに共産圏でいろいろな国際会議が催されるようなときには、その共産圏の方々が気に食わない科学者を入れない、ビザを出さないということがしばしば起こりまして、いつもそれに対してICSUは闘ってきたわけでありますが、近ごろ最も問題になりますのは南アフリカの方がよその国へ出るときのビザ問題でございます。特に日本に来られるときのビザ問題であります。  外務省が国連主義というものを高く掲げられて、国連が南アフリカのアパルトヘイトを懲罰する決議をなさいまして、その決議に従って南アフリカの科学者を入れまいと努力なさっておる点もよくわかるわけでございますが、二つの原則、つまり科学者の自由交流の原則というものと、それからアパルトヘイト懲罰の原則というものの間の折り合いを外務大臣としてはどういうふうにお考えになっているか伺いたいと思います。
  142. 宇野宗佑

    ○国務大臣(宇野宗佑君) 私も科技庁長官当時に先生に非常に御厄介になってありがとうございました。  南ア問題に関しましては非常に難しい問題がございますので、一応日本といたしましては、国連決議等々もこれあり、その線に沿いまして学者あるいはスポーツ、文化等の交流を一応は禁止しておるという問題でございました。しかし、過去に余り禁止し過ぎていろいろ問題もあるということも指摘されておりますので、今後はビザ発給に際しましては国連のそうした決議に反せざる範囲内においてどうするべきであるか慎重にこれは検討したい、かように考えております。
  143. 伏見康治

    伏見康治君 いろいろ外務省としても努力されまして、できるだけICSUの意向を組み入れてビザ発給を心がけていただいておるのでございますが、残念ながら日本学術会議がICSUの次の総会を日本に誘致するということがこのビザ問題でついにだめになりまして、お隣の中国、後から手を挙げたんですが、中国に総会をとられてしまいました。  そればかりでなくて、その後ICSUの傘下にございますサイエンティフィック・ユニオンズというのがいろいろございます、物理とか化学とか。それぞれが計画しております国際会議で、ことしじゅうに日本で予定されている国際会議がたくさんあるのでございますが、そういう国際会議の主催者と申しますか協賛と申しますか、そういうスポンサーの立場からICSU関係のいろいろな国際連合がみんなおりてしまうということを通告しておりまして、学術会議は今非常なピンチの状態に陥っておりますので、この辺で外務大臣がさらによくお考えくださることをお願いいたしたいと思うのでございます。  私は学者だものですから、学者というものは時計を卵と間違えてゆでたりするというところがございますのですが、近ごろ新聞を拝見いたしますと、南アフリカと日本との間の通商貿易の額というのが非常に突出して世界一になっているとかいうような記事がございました。そうすると、アパルトヘイト懲罰の動議というもの、これはそういう原則というものと通商の自由の原則というものの争いかとも思うんですが、通産大臣はどういうふうにお考えになっているか伺いたいと思います。
  144. 田村元

    ○国務大臣(田村元君) アパルトヘイトの問題は人道上の問題でございますから、これはもうそう いう姿勢で、そういう心構えで対応しなきゃならぬことは申すまでもございません。  こういう観点から、我が国は諸外国との協調のもとでこれまでアパルトヘイトを、執行機関へのコンピューターの輸出の不許可とか、あるいはクルーガーランド金貨の輸入の自粛とか、あるいは銑鉄、鋼材の輸入の原則不承認等々いろいろな貿易制限措置も実施してまいりました。それから、やはり我が国として関係国のとった措置の効果を損なうようなことをしちゃいけませんから、この点は厳に戒めていかなきゃならぬと思います。  そういうことでございますが、確かに絶対論からいえばやはり日本の貿易の額は多いという、これはもう認めざるを得ません。でございますから、国際的協力スキームのもとで着実にアパルトヘイトへの精神を生かしていくということでございましょうが、それはそれといたしまして円高というのがもうべらぼうに響いているんです。  ちょっと数字で申し上げますと、日本と南アの総貿易額は円ベースで一九八一年には八千六百九十一億円でございました。それが一九八五年には六千八百六十五億円、八六年には六千七十一億円。昨年は五千九百七十五億円と毎年減っておるんです。ところがこれをドルベースにいたしますと、八一年に三十九億五千万ドルが八五年には一たん二十八億六千万ドル、その後円高の影響によりまして八六年には三十五億八千万ドル、昨年は四十一億二千万ドルというふうに二けた台で伸びていったということもございます。  でございますから、絶対論として申せば先ほど申し上げたように、少ないかといえば私は少ないとは思いません。相当な額だと思います。しかし、それはそれとして先ほど申し上げたような対応をしなきゃなりませんが、数字はそういうような、ちょっと数字のマジックのようなものが入ってきたということも言えるんじゃないでしょうか。
  145. 伏見康治

    伏見康治君 円高が表面的な数字を拡大して見せているという点は納得のいけるお話だと思うんでございますが、ついでに大臣にはむしろ数量ベースではどういうことになるかという数字を示していただけるとよかったと思いますが、日本は随分長い間エコノミックアニマルという評判を受けておりまして、あらゆる基準というものを全部もうけることにばかり注ぎ過ぎてきたという感じがするわけでございますが、先ほども南アのビザ問題で学問の方の学術交流の自由という原則というものに対しては相当日本はたじたじとしていると思うんですが、どうもエコノミックアニマルの方ではあくまでも尊大に構えているといったような感じもしないわけではないわけなんです。総理大臣はその辺のバランスをどういうふうにお考えになるか伺いたいと思います。
  146. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 伏見先生御指摘のとおり、南アとのスポーツ、文化、教育交流規制というものがあり、今おっしゃいましたICSUというものがあって、この二つのはざまにあっての対応、こういうことで個々の事例について我が国の南ア政策に反しない範囲で学術関係での科学者自由交流の原則を尊重しながら対応して今日まで外務省としてはこられたというふうに思います。  それが一方、貿易面においては、最近新聞紙上等でも見受けるように、大変第三国が自制したものを日本がそれに取ってかわるというようなことが一番いけないわけでございますが、しかし通産大臣からもお話がありましたように、対応は大筋はやっぱり円高というのが大きく響いておるなというふうに考えておりますが、今通産省、外務省等、時々新聞でも御散見いただくように、これに対して適正な対応を行政指導でございますとかということでおやりいただいておるであろうというふうに思います。が、原則的に先生のおっしゃるエコノミックアニマルと実際言われましたそういうものがいろんな国際場裏において野方図であるということは、大国になっただけに自粛すべきものであるという考え方には私も賛成でございます。
  147. 伏見康治

    伏見康治君 外務大臣に伺いたいと思うんですが、私は最大の国防、セキュリティーというものは外交によって行われるべきものだと思っておりますので、日本の外務省がもっと盛んに活動してくださることを切に希望したい、そういう観点から質問をいたしたいのでございますが、日本の外務省の予算というものは諸外国、例えばフランスなんかはフランスの外務省が全体の予算の中で占めている予算に比べて何か少ないような感じがいたしますんですが、その辺の国際比較をまず教えていただきたいと思います。
  148. 宇野宗佑

    ○国務大臣(宇野宗佑君) 外務省の使命は、昨今特に内政外務一体なりということにおきまして内政にも深い関心を有しておりまして、対外的にはやはり開かれた日本、貢献する日本、このためには在外公館の活躍というものが一番必要ではないか。手ぶら八貫じゃ外交になりませんから、そういう面におきまして、御承知のとおり本年度ODA、この予算は非常にたくさん伸ばしていただきまして、一応予算といたしましては初めて七千億台に達した。これを用いまして、もっと無償がふえるといいのでございますが、三国間円借款等を通じて活躍できるのじゃないかと、かように存じております。  しかし、今御指摘のとおりに、もう一つはやはり手不足ではないのかという問題になりますが、確かに在外公館一つをいろいろ例にとってみましても、欧米先進国とは大きな隔たりがあるというのが現状でございます。そんなことで、私も現在は、少数精鋭で頑張ってくれと、こう申し上げておりますが、本年度も関係各省特別の配慮をしてもらいまして、大枠では減員という中におきましても外務省だけは百二名ばかりふやしてもらったという経緯もございますから、今後この努力は私たち自身もさらに続けて、国会の諸政党の御支援も賜りながら外交の実を上げたい、かように考えておる次第でございます。  特に我が国のやはり平和、独立、安全というものに関しましては、これはもう外務省が果たす役割は大きいのではないか。直接的にはこれは防衛庁がおやりになる問題ですが、それもやはり憲法上の幾つかの我が国の特色がございますから、そうした線に沿いまして、決して経済大国、軍事大国にあらずと、こういうことで我々は外交を進めながら、なおかつやはりアジア並びに世界の平和にも貢献するようないろんな方策を今後積極的に講じなければならない、こういう気持ちでやっていきたいと思っております。
  149. 伏見康治

    伏見康治君 大変力強いお答えをいただいてありがたいのでございますが、私昨年十月の初めにストラスブールで欧州評議会の何か催す会合に出席させていただいたんですが、その際もパリの大使館とかいうところの、あるいは領事館の方とかいうのがたくさんお見えになって大いにサービスしていただきまして感謝にたえないんですけれども、少し国会議員へのサービス過剰じゃないかと思うんですが、つまり本来なさるべきお仕事がほかにもたくさんあるのにどうも国会議員の御機嫌をとっておかないと何かぐあいが悪いということなんでしょうか、サービスを受けた身としてそういうことを言うのは甚だおこがましいことでございますが、その辺のところもお考え願いたいと思うんです。  やっぱり一番気になりますのは、御努力によって外務省の予算がどんどんふえているというお話を伺って非常に力強く感ずるわけですが、防衛庁の方の予算もすごい勢いでふえているんじゃないかと思うんです。その方と比較してどういうことになるかということを防衛庁の方から伺いたいんですが。
  150. 瓦力

    ○国務大臣(瓦力君) お尋ねの件につきまして、経理局長よりつぶさに御報告させます。
  151. 日吉章

    政府委員(日吉章君) お答え申し上げます。  先生の御指名でございましたが、私の方から防衛庁の予算と外務省の予算の比較をいたしますことはいかがかと思いますが、防衛庁の予算につきましては、六十一年度から中期防衛力整備計画という五カ年計画を立ててございまして、これでは十八兆四千億、六十年度実質ベース価格でございますが、こういう計画を立ててございます。それ に基づきまして仮に定率でこれを伸ばしていくとしますと、大体年五・四%ずつ伸ばしますとこの計画が達成されることになっておりまして、六十一年度、六十二年度の予算はおおむねこういう比率で伸ばした形でお認めいただいております。ただいま御審議をいただいております六十三年度予算もおおむねこういう定率で伸ばしていく形での予算編成をさしていただいておりまして、これを御審議いただいているところでございます。
  152. 伏見康治

    伏見康治君 外務省の予算と比較することは避けられたようでございますが、後で数字をよく眺めながら考えてみたいと思います。  外務省の予算のほかに、お金のほかに外務大臣に伺いたいのは、外務省で外交官としておられる方々の人数ですね、それもどんどんふやしていただきたいと思うし、それからまた外交官を外交官らしい働きができるように育てるということも極めて大事だと思うんですが、その両点について大臣のお考えを伺いたい。
  153. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) お答え申し上げます。  外務省の定員は六十三年度予算におきまして四千百四十八名ということでございまして、これは前年度比八十八名の純増ということをいただいておるわけでございます。過去五、六年をとってみますと、大体八十八名、九十名ぐらいの純増をいただいておるということでございまして、これ自体は、総定員を削減しているというこの状況の中におきまして、外務省の定員が大事であるという御認識を政府全体としていただいておるその結果であるというふうに存じております。  ただし、なお諸外国と比較いたしますと、この数字というものは、アメリカはもちろんのこと、イギリス、ドイツあるいはイタリー、さらに開発途上国の多くの国に比しましてなお低いということでございますので、外務省といたしましては五千人体制ということを掲げましてさらにこの定員の増強をお願いしていく、こういうことでございます。同時に、先生御指摘のとおり定員というものは頭数でございますけれども、一人一人が有効な教育訓練を受けるということは極めて大切でございますので、いろいろな面での研修、まず入りましての最初の研修とか、あるいはその後海外に二年ないし三年派遣いたしまして、語学を中心に研修させるというようなこと、研修制度につきましても外務省はこの予算の中におきまして最重点事項の一つとしていろいろな施策を講じておるところでございます。  なお、定員につきましては、予算との関連で申し上げますと、外務省の全予算の中の最重点事項がこの外務省定員でございまして、この点は昭和五十四年以降変わっておりません。
  154. 伏見康治

    伏見康治君 次に伺いたいのは、いろいろな国際機関、例えば国際連合とかいうような、そういうところへ日本人が職員として参加しておられるわけです。こういう国際機関に対して日本は、金銭的には徐々にでしょうけれども相当貢献度をふやしておると思うのでございます。私、国際機関へ方々へ出かけますと、いかにも日本人の数が少ないという印象がいたしますんですね。国際機関にもっと日本人をたくさん出す工夫というものが何かあるのではなかろうか。これはもちろん日本国の出身である人を国際機関の中に送り込むのであって、日本政府の出先を出すという外交官の場合とは話が違うと思うんです。国際機関の中で日本人がもっと世界的視野に立って活躍する方をふやすように御努力を願いたいと思うんですが、外務大臣どうお考えになりますでしょうか。
  155. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) ただいま先生御指摘のように、国際機関、特に国連を中心といたします各国際機関におきます日本人職員の数は、日本が拠出しております、あるいは分担しております財政的な貢献の度合いに比べまして非常に少ないということは現実でございます。したがいまして、私どもといたしましては、国連を初めといたします国際機関における日本人の職員数の増加及び高級職員等の配置等につきましては非常に重要な問題である、こういうふうに認識しております。そのために今外務省といたしましては、例えば国際機関の人事センター、こういうものをつくりまして、これは外務省の中につくったわけでございますが、日本人職員の統一的な送り込みを推進しておりますし、また国連その他の機関からの採用ミッションというものを日本に勧誘いたしまして、これを受け入れているということはございます。  それからさらに、日本がとりあえず我が国の経費負担で若手の有用な人材を送り込む、将来正規の職員に育てていく、そういった、いわゆるJPOと申しますけれども、ジュニア・プロフェッショナル・オフィサーという制度も実施をしております。それから、特に高級職員につきましては我が方から国際機関の幹部に機会あるごとにこの採用を働きかけております。総理大臣あるいは外務大臣が国連の事務総長とお会いになりますときには、必ず日本人の職員、特に高級職員を採用してくれということを要望されているわけでございます。  現在、国連が例えば行財政改革のために人事の凍結であるとか削減をしております。したがいまして、我が国が日本人の職員を増加させたいというのと、その側面がたまたま必ずしも最もいい環境にあるとは言えませんけれども、引き続き量質ともに日本人の職員の改善ということに努めていきたいと思っております。
  156. 伏見康治

    伏見康治君 大変いいお話を承ったと思いますが、その方向でますます御努力をお願いいたしたいと思います。  次に、国際開発大学といったようなものが構想されているというふうに伺いました。 いろいろな国際関連の大学があると思うんですが、例えば国連大学とか、これは日本がイニシアチブをとってできているものだと思うんです。 それから国際大学というものもあるように伺っておりますが、そういう際に、さらに重ねて何か国際開発大学というものも構想されているという、この構想はどういうところにあるのかを伺いたいと思います。
  157. 宇野宗佑

    ○国務大臣(宇野宗佑君) 国際大学はもう現在新潟県にございまして、私立、そして大学院レベルと、こうお考え賜ればいいんじゃないかと思います。  国連大学の方は、先生もう十分御承知のように国連の一機関でございまして、学生なき大学と、最初は学生も入れてつくろうかというお話もあったんですが、それではまたいろいろ問題があろうから、全世界における大学と交流をし、研究所と交流をし、そこで世界平和に有益な勉強をしようということでこれは我が国に設けられたわけでございます。  続いて私たちが考えておりますのは、現在検討中でございます。やはり文部省の御意見も伺いたい、かように思っておりますが、検討中でございますが、先ほど申し述べましたとおり、これからの日本の使命というものを考えました場合には、やはり開発ということを念頭に置いておかなければなりません。特に途上国の人口の出生率が先進国の二・二倍だというふうに聞いておりますし、さらには毎度三千万ふえておるというふうな人口趨勢から考えてみましても、やはり今後アメリカとか日本とかヨーロッパ、そうした先進国がこういう問題を本当に人道上の問題として考慮を払いながら、また南北お互いの依存、これを強化するためにも相互依存という立場からも考えなくちゃならない問題はたくさんあるわけですが、特に我が国といたしましては、そうした中においてどういう人材を養って、その人材がそうした意味で働き得るか、これをやはり考える必要があるんじゃなかろうかということから出発した構想でございます。
  158. 伏見康治

    伏見康治君 これはとにかく大学ですから、文部省はもちろん大いにかかわりがあると思うんですが、文部大臣はどういうふうにお考えになっているか、伺いたいと思います。
  159. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 国際開発大学の構想につきましては、今外務大臣がお述べになったとおりでございまして、まだ検討中の部分も多いことと思いますが、その中心は、やはりODAの実施効率を中心といたしまして、国際間で貢献でき る事柄がいろいろ多いと思いますが、その中のやはり人づくりを中心にいたしまして考えておられる、これは大変結構なことだと思いますし、その過程におきましても外務省からいろいろ御相談にはあずかっておるわけでございます。ただ、外務大臣おっしゃいますように、これからまだ検討項目もございますので、外務省の調査検討を受けましてできるだけの御協力はしてまいりたい、こう思っております。
  160. 伏見康治

    伏見康治君 文部大臣のお答えも大変結構ではございますが、ただ、とかく省庁間の縄張り争いとかいうのがありまして、まともなものが時々ひん曲がったものになるケースもございますので、外務大臣と文部大臣が仲よくやってくださることを切に希望いたします。  次に、総理に伺いたいのですが、物を読みますというと、総理大臣は平和戦略問題研究所というものを構想しておられる。前の総理大臣の中曽根さんも似たようなことを言われていたと思うんですが、これはどういう構想のものであるか、ちょっと説明していただきたいと思います。
  161. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 平和戦略研究所と、いろいろ考えて、戦略という字を取りまして、ミリタリー的な印象が少しでも少ない方がいいだろう、国際的には戦略という言葉があっても別に不思議でないと申しますけれども、今私は平和研究所構想と、こういうようなことを言っております。  そもそも、グローバルな視点から世界の平和と安定に貢献していくこと、そういうことは大変大事なことだ、しかも、経済大国と言われ、先進諸国にそれぞれこの種の研究所があるから、何か総合的なものができないものだろうかな、先輩のいろんな忠告もありまして、したがって、平和思想とは何ぞやというところからの研究も一つのあり方なのかなというようなことを自分なりに考えたことはございます。それで、それを私の書きおろしの書物にしたこともございます。が、具体的には既存のいろんな機関がございます。政府が関与しておるものもございますし、民間のものもございます。それらが総合して一番力が発揮できるような仕組みはないだろうかということを今研究といいますか、勉強しておるという段階であると申し上げなければならぬのかなというふうに思います。  中曽根前総理も基本的には同じような考え方でこの構想を持っておられ、折々聞いてみますと、これはやはりいろいろ自分としては考えてみたが、中曽根前総理の構想はあくまでも民間主体でやるべきものではなかろうか。既存のいろいろな機関というものを統合したりするようなことよりも、民間機関としてそれらも同じように機能していくような方法はないかということを模索しておられるというふうに聞いておりますが、この問題を中心に議論し合ったというような段階には立ち至っておりません。
  162. 伏見康治

    伏見康治君 御承知のように、スウェーデンにはSIPRIという大変立派な研究所がありますし、イギリスにもございます。私たちが世界の軍備状況を知ろうと思うとまず見るのがSIPRIの年鑑でございまして、そういう仕事を平和国家である日本がなぜしていないのか。世界にそういうデータを供給するような立場に日本があるべきであるということを久しく考えておりました。随分おくればせだとは思うんですが、国の責任を負っておられる方々がとにかくそういうものをおつくりになるというのは大変歓迎したいと思うんです。  ただ、おつくりになるときに中立性というものをよく守っていただきたいと思います。 つまり国際平和の問題でございますから、国と国との間の争いをいわばおさめるわけですから、それはあくまでも国も超越した意味の中立性を持っていないといけない。それはストックホルムのSIPRIが国際的機関であって、スウェーデン政府は金は出しているんですけれども、実は運営は全部むしろ外国人に任せておるわけです。それと同じような意味の中立性というものをぜひこれから具体的にお進めになる上での条件としていただきたいことを切にお願いいたします。  そこで、話は変わりまして、現在、日米科学技術協力協定の改定交渉が進んでいるそうなのでございますので、主としてこれはアメリカとの交渉でしょうから、外務大臣や科学技術庁長官というのが主な対象になると思いますが、お伺いしていきたいと思っております。  まず最初に、この科学技術協力協定が今改定される、何かたびたび期限を延ばして議論が大変もめているというふうに新聞には書いてございますのですが、その事情をまず伺わさしていただきたい。これは外務大臣でしょうか。
  163. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 実は、私が日本側の代表を務めておるものでございますから、私からまずお答え申し上げたいと思います。  実は去年の十月の半ばぐらいからアメリカ側と約六回ばかり交渉を重ねたわけでございます。もちろんこの目的は、日米の科学技術協力をどうやって拡充していくか、その枠組みをつくりたいということで、なるべく早く合意に達するように努力しておるわけでございますけれども、今のところはいつできるということは申し上げられませんが、なるべく早くということでございます。  何が、どういうふうなところがもめているのか、どういうふうなところがということにつきましては、非常に申しわけないのでございますけれども、交渉中のことでございまして、具体的内容につきましては妥結まで御説明を控えさしていただきたい、こう思っておりますので、ぜひこの点御了解いただきたいと思います。
  164. 伏見康治

    伏見康治君 交渉中であるからお話しできないという話を同僚議員の質問に対してもたびたび言われているようなのでございますが、もう少しアウトラインぐらいはおっしゃっていただけてもいいはずだと思うのでございますが……。  例えばネーチャーという英語の科学雑誌がございますね。近ごろ日本でも印刷しているくらいよく読まれている雑誌ですが、それの二月四日号を拝見しますというと、この問題をエディトーリアルで批判しているわけです、日本とアメリカでもって非常にもめているという話を書いて。そしてしかも、我々日本人にはうれしいことに、アメリカの言う方が難題である、日本もっと頭振れというようなことが書いてございます。 外国の雑誌にも知られているようなことをどうして我々に教えていただけないのか、どうも不審にたえないんですが、どうなんでしょうか。
  165. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) お答え申し上げます。  今先生の御指摘のネーチャーは私自身も読んだわけでございますけれども、いろいろな報道等がこの協定につきましていろいろ書くことはあれでございますけれども、私、この国会の場で、公式の場で交渉の具体的な内容につきまして申し上げるのは、やはり交渉相手もあることでございますし、妥結まで差し控えさしていただきたい、こういうふうに思っておるわけでございます。 申しわけございませんけれども、ぜひこの点御了解いただきたいと思います。
  166. 伏見康治

    伏見康治君 それでは、まず聞けることを聞きたいと思うんですが、この協定改定前のこれまでの協定ですね、これは一体何をしてきたのでしょうか。
  167. 吉村晴光

    政府委員吉村晴光君) 現在の日米科学技術研究協力協定の活動状況につきましてかいつまんで御報告を申し上げますと、この協定のもとではエネルギー研究開発協定で合意されております分野以外の分野、すなわち、具体的に申し上げますと宇宙とか基礎物理、ライフサイエンスといった分野での協力活動が行われておるわけでございます。  テーマの数といたしましては、第一回目の合同委員会で採択されました四十八テーマ及びその後追加が合意されました宇宙ステーションというものを合わせまして四十九でございまして、中には不活発なものもございますが、一応そういったテーマのもとに進めさしていただいておるという状況でございます。  協力の形態でございますが、一部本格的な共同研究と言えるようなものもございますが、全般的に見てまいりますと、専門家レベルでの情報交 換というのが非常に多いという状況でございます。  以上でございます。
  168. 伏見康治

    伏見康治君 重ねて追加してお伺いいたしますが、その共同研究をやった結果、何かその成果が上がっているんでしょうか。その上がった成果について、それをどっちのものにするといったような議論がなされたんでしょうか。
  169. 川崎雅弘

    政府委員(川崎雅弘君) それではお答え申し上げます。  幾つか行われておるものの中で、例えばアルコール中毒に関する研究という、これは日本側の窓口は主として厚生省が担当されておりました。そういうような問題についてのデータの交換といったようなものとか、あるいはワクチン予防接種、あるいはワクチンといった分野での共同研究。それからもう一つは、現在実験指針という形で整理してございます組みかえDNAの実験にかかわる基準づくりといったようなものが幾つかの成果の一つでございます。  また、宇宙分野等につきましては、気象衛星を相互に利用し合いまして雲の厚さをはかるというようなことについても一つの方法を開発をいたしております。これは担当は主として気象庁が日本側としては担当しております。そのような例が幾つかございます。
  170. 伏見康治

    伏見康治君 伺うと本当の情報交換の程度であって、共同研究といったようなところに踏み込んでいないと思うんですが、その程度のことで過去何か問題を起こして改定しなければならぬといったようなことが起こったんでしょうか。そういう事実はあるんでしょうか。
  171. 川崎雅弘

    政府委員(川崎雅弘君) これまで私どもの方で全体的に外務省と一緒に見ておりますが、個別具体的な点で支障があったということは全くございません。むしろ緩い協力の枠組みということで、逆に研究者間の自由な発想が相互に闘わされ、討議できたという意味では成果があったものというふうに評価をいたしております。
  172. 伏見康治

    伏見康治君 そういうお話を承るというと、この協定を改定するということの必要性はとんと考えられないんですが、つまりアメリカ側は従来のこういう協力協定を超えてしまって質的に違ったものを今つくろうとして、恐らくそのために大もめにもめていると私は推測いたします。そうして、もし質的に変わるものが議論されているとすれば、また国会としてはもうちょっと伺わないと話にならないと思うんですが、その点はどうなんですか。
  173. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) お答え申し上げます。  今の協定はちょうど八年前の一九八〇年につくられた協定でございまして、その後かなり時間もたちまして、日本とアメリカが名実ともに科学技術の分野で世界の両先進国になったと、こういうような事実を踏まえまして、現在の協定それ自身に先ほども答弁申し上げましたように支障はないわけでございますけれども、より高い次元といいますか、より高い次元かつ広い範囲で日米間の協力を進めたいと、こういう拡大という方向に向かっての改定交渉でございます。
  174. 伏見康治

    伏見康治君 それでは、どういうふうに改定なさるのかまだ教えていただいておりませんけれども、基本姿勢というものはあると思うんですね。どういうふうに改定するかという方向性、それぐらい教えてくだすってもいいでしょう。
  175. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 極めてちょっと抽象的で申しわけございませんけれども、何とかして日米間の科学技術協力、物の協力あるいは人の協力等といろんな形態があると思いますけれども、それを何とかして拡大しようという拡大という方向、その枠組みをどうしたらいいかという方向に向かっての交渉でございます。
  176. 伏見康治

    伏見康治君 少し問題点になりそうなところを伺って何とかお答えを引き出そうかと思うんですが、アメリカ側は共同研究をやって何か成果を上げたときに、その成果が一体どっちのものになるかということを極めて心配しておると思います。  従来のアメリカと日本とのいろいろな紛争を眺めておりますと、日本はいつもただ乗りをやって、アメリカからいい情報だけもらって、そして経済的な利益だけ上げているのではないかという猜疑心をお持ちになっておるようで、その点から共同研究をやった結果の果実が一体どっちに行くのかということをいつも問題にしているように思えるんですが、そういうことも議論なさるわけですね。
  177. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) お答え申し上げます。  現在の協定にも、いわゆる先生おっしゃっている知的所有権の保護ということだと思いますけれども、これは極めて一般的な規定でございます。その今の協定、現行協定に基づきましていろんな実施取り決めが結ばれておるわけでございますけれども、その実施取り決めの幾つかには発明の成果というものをどういうふうに配分するかというふうな規定が置かれているわけでございます。これはもう先生御承知のとおりでございます。  知的所有権の保護の重要性、知的所有権の重要性というのは日米とも非常に認識しておりまして、そういうふうな認識に立ちまして、これは具体的にどういうふうにするかという交渉の内容につきましては、全く申しわけございませんけれども、今非常な微妙な点でございますし、答弁を勘弁していただきたいと思います。
  178. 伏見康治

    伏見康治君 今お答えの中に知的所有権という言葉が出てきましたので、それに対して少しお伺いしたいんです。  知的所有権の問題は一国の中で考えてもなかなか難しい問題ですが、これはすぐれて国際的な問題でもありますために、伺うところによると、WIPOであるとか、あるいはガットであるとかいうところでいろいろと議論されているそうでございます。それから、アメリカと日本との間ではバイラテラルないろんな交渉の場面でやはりこの知的所有権問題というのは話題になっているようでございます。  その知的所有権の中で発明の特許ということを考えてみますというと、アメリカはいろんな意味でほかの国と違っておりまして、日本とも違い、ヨーロッパとも違っているという点がございます。  例えば特許の先発明主義で、日本なんかが先届け出主義ということに対して、別の立場をとっておられるようですね。どっちがいいかと申しますと、私は日本の立場の方がいいと思うんですが、そういうとにかく国際間のやり方の違い、知的所有権という言葉はだれでも納得できるわけですけれども、それを具体的にどう考えるかという点についてはいろいろな国の事情によってそれぞれ違いがあるわけです。そういうものをどういうふうに他国との交渉の中でまとめていかれるか。これは特に通産大臣も御関心があると思うのでちょっと伺いたいんですが。
  179. 小川邦夫

    政府委員小川邦夫君) 御指摘のように、今特許制度について世界的にハーモナイズすべきであるという議論が非常に高まっておるわけでございますが、その背景と申しますのは、もともと御案内のように特許制度は百年前にできましたパリ条約、これが今も続いておる条約でございます。各国の自主性にその制度をゆだねるという形であったわけでありますが、最近のような世界的な技術競争の活発化だとか、あるいは企業活動、技術開発も含めての企業活動の国際化という状況のもとでは、どうも各国の特許制度がばらばらでは不便で仕方がないという世界的な声が起こっておるものですから、御指摘のとおり国際的に特許制度のハーモナイゼーションという問題が高まってきておるわけでございます。  三つの場で議論がなされておりまして、一つは御指摘のようにWIPO、世界知的所有権機構での議論でございます。それから第二には、日米欧の三主要特許庁間で特許制度のハーモナイゼーションを図ろうとしております。三つ目は、御指摘のガットの場での制度のハーモナイゼーションでございますが、先生御指摘の先発明、先願主義という議論は、主としてそのWIPOの場及び三極特許庁会合で議論なされておるところでございま して、確かに先発明主義という仕組みをとっておるのは現在ではアメリカとフィリピンだけであって、あとはヨーロッパ、日本を含めて先願主義というふうにむしろアメリカがユニークな仕組みを持っておるということでございます。  ただし、どこの国でも少しずつ特殊性は持っておるところでございますので、アメリカだけが直すとかそういう議論ではございませんで、各国がそれぞれの特殊性をなるべく直して全体として特許制度が世界的に共通化するように努力しようということで、今申し上げましたいろんな場でハーモナイゼーションの努力をしております。したがって、日本の立場といたしましても、当然こういった特許制度のハーモナイゼーションというものは世界的な要請であるという認識に立てば、当然それに向けて日本としても積極的にその実現に向けて貢献すべきであるというふうに考えておりますので、それぞれの場においてそのような方向で努力を続けておるところでございます。
  180. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 関連質疑を許します。和田教美君。
  181. 和田教美

    ○和田教美君 今のこの日米科学技術協力協定交渉が難航しておるという問題、それから知的所有権をめぐっての日米の食い違いというふうな問題、これはいわゆる日米摩擦という問題が対象範囲がますます広がってきたということの証明ではないかというふうに思うんですが、私は当面の経済摩擦、それから貿易摩擦というふうな問題に限ってひとつ質問をいたします。  まずアメリカの包括貿易法案の問題でございますけれども、通産大臣にお答えを願いたい。今ようやく上下両院の調整の山場に差しかかったというような報道がございますが、一番保護貿易主義の色の強いゲッパート条項はどうやら削除されるようですけれども、そのかわりに上院案のスーパー三百一条、これはどうもいきそうだということで、そうなればどう影響があるのか。さらに東芝制裁条項あるいは反ダンピング法の強化なども入っておりますけれども、この辺について通産省として大体どういうふうに受け取っておるか。それから、全体として保護貿易色というものは多少は薄まるのか、そういう問題も含めてひとつ通産省の対応もお答えを願いたいと思います。
  182. 田村元

    ○国務大臣(田村元君) 包括貿易法案でございますが、米国議会で昨年の九月に両院協議会が設置されました。ところが、ほとんど審議がなされないままにずっと参りました。先月からようやく審議が再開されたところでございます。  この包括貿易法案の見通しについてはいろいろな見方があると思います。しかしながら、昨年のいわゆるブラックマンデーにおける株式の暴落、その後保護主義的な貿易法案は世界経済を混乱に陥れるという考え方がアメリカでも非常に強まってまいりました。それから、最近におけるアメリカの貿易収支の改善がなかなか著しくなってきたというような好材料もございます。でございますので、一概にどうなるかということを今私ども予見もできませんが、ただ保護主義的な法案が成立することのないように期待しております。  現に、アメリカ政府も去る一月の日米首脳会談の際に、レーガン大統領が保護主義法案に対しては拒否権を発動するということを保証いたしました。というように、保護主義に対して反対という態度が非常に行政府でも強まってまいりましたから、今後とも強く働きかけていきたいと思っております。  それから新聞等でいわゆるゲッパート条項というものがこれで消えたんじゃないかというようなことを言っておりますが、これも大統領選挙の姿から見たんでしょうけれども、我々はすぐにそういうふうに即断することはいかがなものだろうかと慎重に構えております。  この貿易法案、二月末から通商関連法案を担当する両院協議会第一分科会を中心にして、まず調整が容易な条項から調整が進められるというふうに聞いておりますが、このゲッパート条項それからスーパー三百一、アンチダンピング条項等、上院下院両院間で対立が非常に大きい、調整に手間取ることが予想される条項は今週になって調整が開始されたところというふうに私ども承知しております。これらの条項の中には、貿易を縮小均衡に導くおそれがあるというような、あるいは問題の多い保護主義的な条項、そういうものが数多く含まれておるということは事実でありまして、政府としましては今後とも機会あるごとにこういうような条項が成立しないように働きかけていく所存でございます。  そういうことでございますが、特に外国企業制裁条項でございますけれども、これはココム違反に対する制裁条項であります。現在両院協議会第三分科会において調整がなされておるそうでありますが、このような条項はココムの申し合わせの趣旨に反するものであります。もう明らかに反しております。ココムの申し合わせというものは、参加各国がそれぞれの国内法制によって主体的に実施すべきものである、これはもう基本的なココムの考え方なんですね。でございますから、それに反するということはココムの結束自体も揺るがしかねないようなことになりましょうし、我が国としては断じて承服することはできません。  この問題が中身が強まろう、薄まろうということは別問題。それは薄まることは強まることよりは結構でございましょうけれども、しかし薄まろうと、そういうものがあることに問題があるのであって、私どもは我が国には先般改正していただいた立派な外為法もございます。でございますから、我々の手で我々の国内の問題は処理していく、第三国からの要らざる制裁は断じてお断りを申し上げたいと思います。
  183. 和田教美

    ○和田教美君 もう一つ通産大臣にお尋ねしたいんですけれども、日本の輸出製品に対する反ダンピング攻勢ですね、これが最近アメリカやECの中に強まっておるという問題です。  アメリカでは今商務省を中心に日本の輸出品のダンピングというような問題を調べているといいますし、ECでも日本の現地進出企業が日本から輸入する部品の幾つかに反ダンピング関税をかけるという動きが出てきております。我々はもちろんこういう動きの論拠については非常な疑問を持っていますし、きちっとした対応をしていただきたいと思うんですけれども、しかしその反面、どうも日本の輸出メーカーの輸出品は、通産省の調査によってもかなり日本の市場価格より割安で輸出しているというふうなデータもございますね。これじゃやっぱり外国からダンピングだと言われる一半の理由はあると思うので、どうも通産省の話を聞いても、大体その円高分の四、五〇%ぐらいしかつまりその価格に転嫁していないというふうな話を聞くのですけれども、一体どの程度の転嫁率になっているのか、またこの問題の対応はどうかをお聞きします。
  184. 田村元

    ○国務大臣(田村元君) ドルベースの輸出価格の上昇率は最近の円レートの上昇率と必ずしも一致しているわけではございませんが、その背景として円レートの上昇が急激であったためというタイムラグというものが生じたことは事実でございましょう。それに加えまして、円高原油安による原材料の大幅なコストダウンがあった、また企業が本当にそれこそ血のにじむような企業の合理化をやった、それによってコストダウンが実現したなど、いろいろと事情があることも事実でございます。  こうした事情は品目によっても異なります。業界によっても異なります。どの程度の値上げが行われるべきかは、ちょっと一概には論じられないものがございます、それはもう品物それぞれでございますから。したがいまして、一概に日本製品の輸出価格に最近の円高が十分反映されていないということはちょっと言いにくいんじゃないだろうかというふうにも思っております。  なお、いずれにいたしましても、ダンピング問題は基本的には企業の問題でございますし、特に現実に対する対応であり、モラルの問題でもあると思います。通産省としてもその動向を十分注視してまいりたいというふうに考えております。
  185. 和田教美

    ○和田教美君 それから当面の緊急に対応を要する経済摩擦、さっきから午前中も話が出ておりま した牛肉、オレンジの問題、それからもう一つは建設摩擦といいますか、公共事業への米企業の参入問題というのがあるわけですが、それについてまとめて質問いたします。  まず、農水大臣にこの牛肉、オレンジの問題について二つばかりお聞きしたい。  どうも、アメリカから非公式な代案みたいなものが出ているという報道がございます。それは、三年以内に自由化しろというふうなことを骨子としているものだということですが、それは大体そういう線になっているのかどうかということ。それから、日本側は五年後をめどに段階的に自由化するというふうな案が自民党の中などに出つつあるという報道がございますが、それは事実か。さらに、今の状況で三月中に農林大臣がアメリカに行って、何とか交渉のラウンドに着けるというふうな状況なのかどうか。その三点をお尋ねいたします。
  186. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) まとめてお答えをいたします。  報道についての御質問でございますが、固有名詞を挙げるのはどうかと思いますので固有名詞は挙げませんけれども、一部報道につきましては困惑をいたしておるということがしばしばでございます。その都度、その機関に対しまして厳重に抗議もいたしてきたところでございます。  その一部の報道をもとにして今例示をされました、自由化を三年以内にやるとかあるいは五年という書き方があったり、あるいはまた私の訪米の時期を推測して政府筋が決めたとかというような報道、全部これまとめると先ほどの質問三つになりますが、私はそのようなことはただいま考えておるものでもございませんし、まだ決定はしていない。特に牛肉、かんきつについては話し合いのテーブルがないのでございますから、テーブルづくりを今やらしておるところでございますから、そういうことで、テーブルがないのに私が行くはずもないし、三月中に行くかと言われれば、その予定は立っておりません。
  187. 和田教美

    ○和田教美君 建設摩擦の問題については、ベリティ米商務長官から松長氷駐米大使に最近書簡が送られて、アメリカの企業の参入問題についてのいわば最終要求が出たという報道がございます。これについて、こういうことがあったのかどうか、外務省ないし建設省でひとつお答えを願います。
  188. 佐藤嘉恭

    政府委員佐藤嘉恭君) お答え申し上げます。  いわゆる建設市場への参入の問題、この場合には公共事業の市場への参入の問題ということでございます。  この件につきましては、二月に東京で交渉を行い、また三月冒頭に協議が行われたわけでございます。そういう成果を踏まえまして、ベリティ商務長官から松永駐米大使にアメリカ側の交渉の立場と申しましょうか、あるいは個々の問題につきましての要望といったようなことを整理いたしまして、大使に伝達してきたということでございます。これらの中身につきましては、目下私どもの内部で協議をしているところでございます。
  189. 和田教美

    ○和田教美君 最後に、総理にお答え願いたいんですけれども、今のようなこの二つの問題、これはいずれ政治的な決断を必要とする問題だと思うんですが、総理のお考えをひとつお述べ願いたいと思います。
  190. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 牛肉、オレンジの問題につきましては農水大臣からもお答えがございましたが、確かに首脳会談においても、例示として牛肉、オレンジ問題が出たことはさきにも申し上げたように事実でございます。  そこで、基本的には日米相互の共同責任において解決しようということで、いずれにせよ、早めにテーブルに着くことが肝要だというところまでで私どもの会談は終わっておるわけでございますが、そのテーブルに着く前提というものにおいて、今農林水産省の代表が大変苦悩といいますか苦吟しておられるという問題であると思っております。  これにつきましては、当然我が国における対策というものも並行して考えなきゃならぬ問題でございますが、今のところ大変テーブルづくりのために微妙な段階でございますので私が感想を申し述べるということは差し控えたいと思いますが、政府一体の責任で当たらなきゃならぬ課題だというふうに考えております。  それから公共事業の問題につきましては、私も建設大臣を随分古い話になりますけれども経験しておりまして、まず、私が訪米いたしました際、それまでに相互の仕組みの相違を理解する段階ではなかったかなというふうに思っております。そうして、我が方からいわばたたき台のその前ぐらいなのを出しまして、その後二月へ入ってから今日まで、東京でやったりワシントンでやったりしておるわけでございますが、交渉の——我が方は当時、今おかわりになりましたが、アメリカにおいての窓口であった佐藤公使がまた外務省の経済局長に帰っておりますから、まあ一貫性がある。が、相手の方は若干人もおかわりになったというような点もございまして、確かに客観的に見ますと、当時の雰囲気からすると少し長引いているなと、こういう印象を与えておることも事実であろうと思います。ベリティ商務長官も割りに新しい人でございますけれども、このべリティ商務長官が今日までの米側のいろいろな主張をおまとめになって、それらが松永さんの方へ伝えられたのではなかろうかと、まだ私も詳しく読んだわけじゃございませんけれども。  いずれにせよ、この問題につきましては、私はさらに協議を続けていく中で相互理解が成立する可能性のあるものであるというふうに期待をいたしておるところでございます。
  191. 伏見康治

    伏見康治君 次に、私は秘密の問題を取り上げてみたいと思っておりますが、元科学者という立場で申し上げますと、科学の研究の発達にとっては、すべての研究の成果が公開されるということが非常に重要な要件になっているわけです。  非常に古いお話でございますが、三百年前にはニュートンとライプニッツとがどっちが微積分を先に組み立てたかでもって大論争が起こっていまだに続いていると思うのですが、そういう紛争がたびたび起こりましたものですから、今から百年ぐらい前にイギリスのマイケル・ファラデーが、先に学会誌に載せた方が勝ちであると。それで、今でもいろいろな学会誌には、この論文を何月何日に受け付けたかという受付日が必ず書かれることになっておりまして、それによってその学術論文の内容がほかの人よりは先に出たということを、いわゆるプライオリティーを確立したわけです。特許制度というものも全く同じ趣旨でできていると思うのですが、特許制度の方はお金に絡むものですから話が大分違いますけれども、学問の世界では発見の、発明の名誉だけが問題になるわけです。  そこで日本の特許制度というものは公開の精神というものをよく酌んで立派にできていると思うのですが、しかしそれは戦後のことでございまして、戦争前には軍事機密に触れる特許をどうするかという問題があったはずでございます。近ごろは、日本とアメリカとのいろいろな交渉の場面で、アメリカが秘密特許の制度を持っておりますためにいろいろといざこざが発生していると思うのです。  まず特許庁の方に、日本の特許制度の中での公開の原則ということをお聞かせ願いたいと思います。
  192. 小川邦夫

    政府委員小川邦夫君) 御質問の趣旨を、日本の特許制度の公開制度の精神がどこにあって、それと五六年協定とのかかわりというふうに理解さしていただきますと、確かに御指摘のように、特許制度は発明の保護を一方で図る、他方ではこれを公開して広く利用していただくということによって一般の技術水準向上を図るわけでございます。したがいまして、出願のありました発明は公開するということが特許制度の原則になっておるわけでございます。他方、その一九五六年協定と 私ども申しますが、この協定第三条の内容は、いわゆる一般的な秘密特許制度ではなくて、三条にも書かれておりますように、米国で秘密に保持されておる特許出願に係る発明であって、アメリカ政府から日本国政府に防衛目的のために提供されたものについては我が国に特許出願があった場合に限り我が国でもこれを公にしないという、極めて限定的な措置であると受けとめております。  なお、この仕組みにつきましては国会の御承認を得ております条約の規定に基づいておりまして、国内法としての効力を持っておりますし、また特許法上も明文の規定がございまして、「条約に別段の定があるときは、その規定による。」ものと明記されているところでございます。
  193. 伏見康治

    伏見康治君 今御説明がありましたように、アメリカさんとの交渉の中で日本の公開原則の特許制度の中に秘密特許が入りかかっているわけでございますが、これはとにかく、特許制度にとって公開するということは非常に大きな原則でございます。つまり、もともとそういう制度を設けたのは、発明したことが広く世の中に利用されることを念願しているからこそ公開するわけでございまして、公開することによって発明者が損をしてはならないからその発明者の利益を擁護するために特許制度というものができたわけで、公開するのでなければ、その発明者は発明したものを一生懸命抱きかかえていて世の中に知られないようにするだけのことに終わると思うんですね。むしろ世の中に大いに利用させるということを根底にした公開の原則だと思いますので、それをお忘れにならないように願いたいと思うんです。  アメリカさんとのつき合いで秘密が入っていたときにそれをどううまく取り扱っていくかがなかなか大事だと思うのでございますが、今お話しの五六年の日米防衛技術協定に秘密協定を入れる最初の兆候があらわれているわけでございますが、これは今言われたように、その中に国内法に優先するような条項が書いてあるからそれでいいんだというお話なんですが、それはどうも私は法律家でないのでわかりませんけれども、素人考えで甚だ困ったことだと思うんです。つまり二つの法律が共存しているということになるおそれがあると思うんですが、それが矛盾したときには一体どうするおつもりですか。例えば、アメリカさんが秘密特許として押しつけてきたものと同じ内容のものを日本の発明家が全くそれを知らずに発明なさって特許申請したときにはどういうことになるんですか。
  194. 小川邦夫

    政府委員小川邦夫君) 今御質問の事例は、日本の企業ないし個人の方がアメリカの秘密特許出願とは無関係に独自に開発された技術について日本で特許出願された場合どうなるか、こういう御趣旨と理解いたしましたが、そういった場合につきましては、現在の五六年協定及び議定書の枠組みでございますと、たまたま結果的に内容がアメリカの秘密特許出願と同じでありましても通常の特許手続に従って出願、公開等の処理が行われるものと理解しております。
  195. 伏見康治

    伏見康治君 そういう立場で全部貫けるものといたしますというと、話は割合に簡単だと思う。つまり、国内の人に関する限りは国内法が厳然として適用される、アメリカから言ってきたものだけちょっとどこかで預かっておくというようなことだと思うんですが、話が進むと恐らくアメリカさんは、それだけでなくて、日本が後から出してきたものを排除するようなふうに話が変わっていくおそれがあると思いますので、特許庁の方々、それから外務省の方々にその点を大いに頑張っていただきたいと思います。  報道によりますというと、四月末までに秘密特許をどう実施するかというその実施取り決めが完成するといったようなことが報道されているわけでございますが、エージアン・ウォールストリート・ジャーナルというのに例えばそういうことが書いてございますが、これは本当ですか、うそですか。
  196. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) お答え申し上げます。  先生が御指摘になられました記事を私も拝見しておりますけれども、今まさにこの細目手続の話し合いをしているところでございまして、いつこれがまとまるかわからないという状況でございます。
  197. 伏見康治

    伏見康治君 MDAの協定の中にも秘密問題が書かれていると思うんですが、一九五六年の協定とMDAの中に含まれている話とはどういう関係があるんでしょうか。
  198. 宇野宗佑

    ○国務大臣(宇野宗佑君) MDAの方は日米相互防衛援助協定というやつでございまして、アメリカから装備の提供を受けるというときにはその協定に基づいて受けます。ただし、三条でやはり秘密を守りなさいということが書いてあるわけでございます。これも既に国会で御審議を賜りまして、そして御承認を賜っておるような協定であります。
  199. 伏見康治

    伏見康治君 次に、SDI協定というのができたわけですが、SDIでもこれは多分に軍事機密に関係したことが出てくるのでしょうから、秘密問題が当然起こると思うんですが、ここではその問題はどういうふうに取り扱われているんでしょうか。SDI協定ではどうなっているか。
  200. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) SDI参加に関する協定の中では、その第三項において、我が国政府の義務は、国内法及び日米間の協定の枠内においてすべての必要かつ適切な措置をとるというふうになっておりまして、これによって処理されております。
  201. 伏見康治

    伏見康治君 次に、ココムに関連してお伺いいたしたいと思うんですが、ココムリストというものを承知してお役人がいろいろなことをやっているんだと思いますが、それに関する秘密保持に関連してはどういう制度があるんでしょうか。
  202. 畠山襄

    政府委員(畠山襄君) ココムのリストというものは一応秘密になっておりますし、それからココムの会議の中で議論されることも一応秘密になっておりますけれども、これは今おっしゃ、ったSDIみたいな軍事情報そのものではございませんので、ですから通常の秘密保持のルールに従って処理をしていくことになるわけでございます。したがいまして、例えば通産省の人がそれを漏らしたというようなことになりますと、国家公務員法の通常の規定が働くというようなことで対処いたしているわけでございます。
  203. 伏見康治

    伏見康治君 ココムの問題は非常に世間を騒がしたと思うんですが、今から考えてみると少し騒ぎ過ぎではなかったかという印象を免れないと思うんです。  最近の何かアミテージ国防次官補の発言によると、例の工作機械と潜水艦の音とは因果関係がないとか言っているんですが、通産大臣、その点はどうお考えになりますか。
  204. 田村元

    ○国務大臣(田村元君) アミテージ次官補のアスピン下院軍事委員長あての書簡を入手いたしました。これを検討いたしましたところ、このレターは、直接に因果関係を論じたものではなくて、米側に追加的なコストというものが生じたかどうかということについて議論したものである。したがいまして、ソ連原潜のスクリュー音につきましても、ソ連は東芝機械株式会社、いわゆる東芝マシーンの最初の不正輸出の三年前から静かなプロペラを有していたと述べているだけでありまして、東芝機械の不正輸出とソ連原潜のスクリュー音低下との間の因果関係を否定しておるものではありません。  このソ連原潜のスクリュー音の低下といいますのは、国会において防衛庁がしばしば答弁しておるところでございますが、突然起こったというものではございませんで、漸進的に進んだものでございます。あるときに瞬間にぱっと静かになるというものじゃない。でございますから、東芝機械の工作機械の輸出前にスクリュー音の低下が仮にあったとしても、その後に輸出された東芝機械の工作機械によってもスクリュー音の低下がさらに進んだということは少なくとも論理的には想定し得るところでございます。しかし、それを断定するわけにもまいりません。  東芝機械の不正輸出とソ連原潜のスクリュー音 低下との因果関係につきましては、かねてから国会で御答弁申し上げておりますように、嫌疑は濃厚という心証を得ているところでございます。特に、私は二度も向こうへ行きまして、率直に言って相当激しくやり合ってまいりました。私は、日本の国内の対応というものの万全を期したのであって、米側の制裁というものに対しては厳しい反抗をしたわけでございますが、そのときの向こうとの話し合いも、嫌疑は濃厚という心証をこれはもう抱かなかったと言えばうそになるというふうに思います。
  205. 伏見康治

    伏見康治君 ともあれ、東芝事件を契機として外為法の改正が行われて、その結果日中貿易とか日ソ貿易にいろんな影響が生じているというふうに伺っておりますが、その実態はどんなことになっているでしょうか。
  206. 吉田文毅

    政府委員(吉田文毅君) まず、日ソ貿易について御説明申し上げます。  我が国の対ソ輸出は、八五年の二十七・五億ドルから八六年には三十一・五億ドルと増大しております。八七年には二十五・六億ドルへと減少を示しました。その八七年の減少の原因でございますが、主としてソ連側におきまして石油価格の下落によりまして外貨収入が低迷していること、またソ連国内で進められております対外経済関係の組織改革等の影響によるものというふうに考えられます。一方、ソ連からの輸入でございますが、八五年の十四・三億ドルから八六年には十九・七億ドル、八七年には二十三・五億ドルと順調に増加をしてまいっております。  次に、日中貿易でございます。  我が国の対中輸出は八四年の七十二・二億ドルから八五年には百二十四・八億ドルに急速に拡大をした後、八六年九十八・六億ドル、八七年には八十二・五億ドルへと減少をしております。これは、八五年の中国の経済過熱状態の反動によりまして、中国側におきまして耐久消費財を中心に輸入の抑制を行っていること、また円高によりまして日本製品の競争力が低下したことなどによるというふうに考えられます。他方、中国からの輸入でございますが、八五年の六十四・八億ドルから八六年に五十六・五億ドルへ減少しました後、八七年には日中貿易史上最高の七十四億ドルというふうに大幅に拡大をいたしております。 対中輸入が八六年に原油価格の下落のため減少したわけでございますが、八七年には原油価格の回復や円高等を背景に拡大したことによるというふうに考えております。
  207. 伏見康治

    伏見康治君 いろいろと秘密を押しつけられる兆候がいろんなところにあらわれているんですが、もう一つ伺いますが、ゼネラル・セキュリティー・オブ・ミリタリー・インフォメーションのアグリーメントというのがいろいろな国々とアメリカとの間で結ばれているというふうに伺っているんですが、日本はこういうものを結べといったようなことを言われているんでしょうか、どうでしょうか。外務省にお伺いいたします。
  208. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 今御指摘になられましたような取り決めを締結する気持ちは持っておりません。
  209. 伏見康治

    伏見康治君 もう一つ科学者として心配なことを申し上げますと、NASAが宇宙ステーション、スペースステーションというのを、大きなものを構想しておりまして、日本やヨーロッパに参加を求めて、日本は参加することになっているわけですが、それが初めは平和利用というかけ声であったのが、DODが一口乗せろと言い出して、何か混乱しているように伺っております。 どういうことになっているのか伺いたいと思います。これは外務省か科学技術庁、どっちですか。
  210. 伊藤宗一郎

    ○国務大臣(伊藤宗一郎君) 宇宙ステーションの計画は、宇宙における人類の活動を飛躍的に拡大し、地上では得ることのできない材料の製造を可能とするなど、人類にとって非常に有意義なプロジェクトでございます。また、我が国にとりましては、欧米に比べ立ちおくれている有人宇宙活動のための技術、宇宙環境利用技術を習得するまたとない機会でもございますし、国際協力の観点からも積極的に参加すべきものと認識をしております。  御指摘の点につきましては、米側より、将来他の米国政府機関と同様に米国国防総省が宇宙ステーションを利用する可能性を閉ざさないでほしいとの希望を持っているが、現在具体的な利用計画があるわけではないとの説明を受けております。宇宙ステーションの協力は現在交渉中の案件でもございますし、交渉の具体的内容を今申し上げるわけにはまいりませんけれども、我が国としては、宇宙の平和利用等に関する我が国の基本的立場を十分踏まえて対処してまいる所存でございます。
  211. 伏見康治

    伏見康治君 力強いお話を伺って多少安心したんですが、どうぞ宇宙の平和利用の原則に徹底していただきたいと希望いたします。  大分時間がなくなってまいりましたので少し飛ばしまして、世界情勢の大変化と日本という関連で御意見を伺いたいと思うんです。  御承知のようにレーガンとゴルバチョフの間でINFの全廃という一大決断がなされました。これまで専ら核兵器は増加する一方でございましたのを、とにかく核兵器を減らす方向に向かって物が動き出すということはこれは世界的な意味の大転換期だと私は考えます。もとより、それで減らされる核兵器の数というものは全体の保有核兵器の数%にすぎませんので、全核兵器をなくしてしまうという私たちが持っている希望に対しましてはほんのわずかでしかないんですけれども、しかし向きが変わったということは大変大きな変化だと思います。戦略核兵器、つまりソビエトと合衆国との間での大陸間の弾道弾のことですが、これも少なくとも近いうちに半減するという交渉が進展しているようでございます。そういうこともございまして、核兵器が伸びる一方であった今までの状相から見ますと、とにかく大変換が起こっている。  それからソビエトの国内事情を考えてみますというと、ゴルバチョフのペレストロイカという一つの改革運動が起こり始めて、私はこれは第二の革命だと思うんですけれども、そういう改革運動が起こり始めまして、非常に様子が変わってきている。先ほど申し上げましたINF交渉を成功させたのも実はこのペレストロイカという思想が物を言っていると思うんですが、そのほかの面でもこのペレストロイカの思想というものはいろんなところにあらわれてくるはずだと思います。特に、日ソ間の平和条約問題というようなものの中でこのペレストロイカ的精神というものが大きな変化を与えるのではないかと私は予想しております。  一方、アメリカを見ますというと、レーガン政権が末期になりましていろんな変化が起こりつつあると思いますが、一番顕著なのは、ワインバーガー国防長官がいなくなってカールッチという新しい長官が出てきて、今までの軍事優先の立場から軍事を抑制するという方向へ変わってきているというのもアメリカの大きな変化だと思います。  こういう大きな変化考えてみますというと、日本は一体それに対してどういうふうに考えたらいいか、どう対処するのかということは非常に突き詰めて考えなければならない重大問題だと思うんですね。日本は昔から、前から決まっていることはよくできるけれども、変化したことの状況に対しては対応できない。太平洋戦争における日本の兵隊さんがそうであった。つまり訓練された状況の中ですと日本の兵隊は非常に強いんですが、状況が一たび変化するというと全然問題にならないとアメリカ兵に言われてきたわけでありますが、日本国民全体がそういう精神構造を持っていると思うんです。  それでこの大変化に対して、総理大臣を初めとして外務大臣、通産大臣、大蔵大臣の方々がどういうふうに考えておられるか伺いたいと思います。
  212. 宇野宗佑

    ○国務大臣(宇野宗佑君) しばしばお答えいたしておりますが、INFのグローバル・ゼロ、これは歓迎しましょうと。 それは核兵器の軍縮、その 第一歩である、核軍縮の第一歩として評価しましょう、こういうふうに申し上げております。  ただ、第二番目のこれからの戦略核なりあるいはまた二国間紛争、さらには地域紛争、さらには人権と、いっぱい仕事があるわけですが、これに対する米ソ両国の御努力に対しては敬意を評し、そうしたことが実現することをお祈りいたしましょうと。しかしながら、INFが全廃されたからといって、今先生も御指摘のとおりわずか数%の問題でございますから、直ちにそれをもって世界はこれで平和なんだと断ずることはできないであろう。ますます私たちは西側の一員といたしまして、またアジア・太平洋諸国の一員といたしまして、本当の意味の世界平和に貢献すべくその団結を固めながら米国を御支援申し上げて、それによってそうしたいろんな問題の解決が図られることを歓迎する、これが私たちの考え方であります。
  213. 田村元

    ○国務大臣(田村元君) 私からお答えしようと思っておったことを非常に的確に外務大臣が答えたようでございます。全く同じ意見というふうにお受けとめを願いとうございます。
  214. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 冒頭に言われましたように、核軍拡の方向が変わった、縮める方向に向かったということは非常に大事に考えるべきことであって、我が国が長いこと唱道してまいったことが正しいということを証明しつつあると思います。したがって、自信を持ってこういう今までの我々の方針を堅持していくべきである。もちろん世界全体が平和になったわけではございませんから油断をしてはならないことはもとよりでありますが、大きな方向はそういうふうに考えるべきだと思います。
  215. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 先生の向きが変わったという言葉は非常に印象的に私承らせていただきました。  しかしながら、今それぞれお話がありましたように、無条件なムードだけのデタントということではなく、やっぱり現実をしっかりと見きわめなければならないなということが一つと、それからペレストロイカというものが、これはゴルバチョフさんがいろいろな行動をされるに当たっての環境の変化としては私も同じように役立ったのではないかというふうに思います。そこで日ソ関係ということになった場合に、いわゆるそういう改革というものがムードの中で領土問題の棚上げとか横に置くとかいうことは基本原則としてそれはならないということを踏まえていなけりやならぬではなかろうかということ。  それからもう一つ先生がおっしゃった表現の中に、変化に対応することが下手な国民。私はその考えを等しくいたしておりましたが、最近変わってきておりまして、考えてみれば、あの戦前、戦中、そうして食うに精いっぱいの時代から前進の時代へ、また二ドルの原油を巧みに使った高度経済成長の時代へと、そして国際化の今日というようなことを考えてみますと、変化に対応するという柔軟性というのはむしろ今日我が国の国民の、我々より後輩の方に芽生えてきているのではないかなと。先生を老人扱いにするという意味では決してございませんが、そんな感じがいたしておることを率直に申し上げます。
  216. 伏見康治

    伏見康治君 続いて、総理大臣にもう一つ伺います。  聞くところによりますというと、五月の末から何週間かあります国連の軍縮特別総会に総理大臣は御出席になられる御予定とか伺っておりますが、そこで非常に立派な演説をなさっていただけるものと期待しているわけです。率直に申しまして、中曽根さんほどパフォーマンスが竹下さんは上手でないと思いますので内容のあるお話をしていただけるものと大いに期待しているわけですが、その一端を同わさせていただきたいと思います。
  217. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 私も軍縮特別総会には出かけたいと思っておることは事実でございます。その演説を私が今考えておるわけでもございませんが、「第三回国連軍縮特別総会についての日本政府見解」というのを昭和六十二年の四月三十日付で国連事務総長あてに提出したと。そのものを読んでみますと、「我が国は、第三回国連軍縮特別総会の開催を重視。核の惨禍が繰り返されないことを強く念願し、自らも非核三原則を堅持している我が国としては、同特別総会において全面完全軍縮、特に核兵器の廃絶という人類共通の究極の目標に向かってたゆまぬ国際的努力が払われることを強く期待。」しておるという見解を送付いたしておるわけでございますが、私もこの送付した見解と等しい見解を持っております。
  218. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で伏見康治君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  219. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、小川仁一君の質疑を行います。小川仁一君。
  220. 小川仁一

    小川仁一君 最初に、朝日新聞社の静岡支局爆破未遂事件に続いて中曽根前総理に対して脅迫状が届いたという記事を見ました。赤報隊なるもの、どのような意図を持って民主主義に攻撃をかけようとするかわかりません。かつて我が党の浅沼委員長もテロに倒れた、こういう事実を思い起こしながら、政治と言論の自由を最もとうとぶ報道に対するこの脅迫を許すわけにはいかない、こういう立場を私は議員の皆さんと同じように感じているわけでございます。  このような課題に対して、政府も一つの手段、非常に大事な方法、決意をお持ちだと思いますが、捜査経過を踏まえながらその決意をお聞かせ願いたいと思います。
  221. 仁平圀雄

    政府委員(仁平圀雄君) 事件の概要と捜査状況について私からお答えさせていただきます。  中曽根前首相のところへの脅迫事件でございますが、一昨日の三月十四日の午後三時ころ、高崎にございます事務所に赤報隊一同を名のる者から脅迫状が郵送されてきたわけでございます。昨日、事務所の方から地元の高崎警察署の方に届け出がございまして、警察としては認知したわけでございます。  警察といたしましては、脅迫事件といたしまして文書の提出をしていただきますとともに、これまでの一連の事件との関連性を念頭に置きまして所要の捜査に入っているわけでございます。  本事件と一連の事件との関連性についてでございますが、本件の文書が赤報隊一同を名のる者から出されていること、消印の郵便局及び日付が朝日新聞静岡支局における爆破未遂事件の場合と同じであること、文章中に静岡の犯行を自認するような記述があること、文書の形式、表現、記載内容等が一連の事件における犯行声明と酷似していることなどからいたしまして、本件が一連の事件の同一犯人あるいは同一グループによって敢行された可能性が強いと見まして、目下最終的な鑑定を急いでいるところでございます。  一連の事件につきましては、現在関係府県警察に特別捜査本部を設置いたしますとともに、全国の警察組織を挙げて捜査中でありまして、本日も警察庁におきましては、警察庁長官以下が出席いたしまして関係府県警察の捜査担当課長を招致いたしまして緊急の捜査会議を開催しているところでございますが、この中曽根前総理への脅迫事件を含めまして一連の事件は、民主主義社会の根幹を揺るがすような極めて重大、悪質な事件でございますので、全国の警察の総力を挙げまして取り組み、早期解決を期するよう強く指示したところでございます。
  222. 小川仁一

    小川仁一君 捜査経過はわかりました。  言論の自由が一番とうとばれる政治家、これは政治的な思想、信条の違いはあったとしても、そのことがテロの対象になる、あるいは民主主義の基幹である言論の自由を保障され、しかも国民に対して情報を提供する報道機関がテロの対象にされる、朝日新聞から今度は毎日新聞、東京新聞という新聞名まで固定した状況が犯行声明文に出されているようでありますが、これは単に警察権をもって強行的に捜査するという課題だけではなしに、社会の基礎につながる幾つかの課題もまたあるような気がいたします。したがって、そういうものを含めて総理の毅然たる見解をお願いしたいと思います。
  223. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 捜査の内容については今申し述べたとおりでございますが、私もこの問題、いかに思想、信条を異にするも、また言論の自由というものが保障されておる近代社会の中でこのようなことはあり得べきことでないと。恐らく先生がおっしゃっておるのは、いわゆる刑事事件としての捜査、それと別に各団体等がいろんなアピールもしておりますが、私どもがそういうものが許されないということ自身をこの席等を通じて発言することによって、国民全体がそれらに対する批判というものを惹起し、それがまた現実捜査にも役立ち得る環境づくりの一環となれば幸いであろうというふうに考えております。
  224. 小川仁一

    小川仁一君 言論の自由に関しては特に一層の毅然たる態度をおとり願うように総理並びに国家公安委員長にお願いをして、次の質問に移らしていただきます。  これはちょっとニュアンスの違う問題ですが、先日ある会合で竹下総理の書かれた「ふるさと創生論」というものの話が出ました。これは「創生」という言葉は熟語にないんです。広辞苑にも国語大辞典にもないんです。それで、よく見ると「創」という字は傷でございます。ふるさとに傷を生ずるという意思はないだろうと思いますので、さらに「創生」を探してみましたら、民草という「蒼生」もございました。それから草むらが生えるという、群がり生えるという「叢生」もございました。もう一ついったら「増税」という言葉がございました。まさかふるさと増税論ではないだろうと思いましたけれども、何か今の政治情勢の中にふるさと増税論、ぴったりだなあなんというふうな話も出たわけでございます。これは大変失礼な申し上げ方でお許しを願いたいと思いますが、しかし、やっぱり総理、今、日本語は非常に乱れておりますから、どうか日本語の正確なお使い方その他一層の御指導をお願い申し上げたいと、最初に大変失礼なお願いを申し上げておきます。  続いて、こういう事態の中で売上税、続いての新型間接税について申し上げますが、政府はずうっと売上税の廃案の後も新型間接税を続けておられますが、売上税のときは私の補選で六三%もの反対が投票としてあったし、大阪補選の先日の票を見ましても、社共合わせてやっぱり六十数%が新型間接税に反対している。こういう状態になりますと、おのずから国民の審判なり意図する方向が決まっているのではないかという感じがいたしますので、この点についての御見解を伺いたい。
  225. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 別に最初に答弁を求められたわけじゃございませんが、ちょっと「創生」のことをわずかな時間お話ししてみたいと思います。  「創生」という言葉は辞書には載っておりません。新しい社会を創造し生育させていこうといったような私自身の気持ちをあらわした新語であると言った方が的確かなというふうに思っておりますが、国語学者でもない私が新語をつくるなんというのも本当に大それたことだなとも思っておるわけでございます。これはこれぐらいにしておきます。  それから次の問題でございますが、確かに選挙の結果についてお融れになったのは事実でございますが、私自身の考え方を見ますと、売上税が廃案になったというまず反省の上に立たなきゃいかぬということは事実であります。その反省の上に立って、されば国民の皆さん方の理解と協力を得られるような、それこそ所得、消費、資産の間でどのような均衡のとれたものが理解を得られるものかということを今、国会の論議等を通じながら模索しておるという段階であろうと思っております。  それから、選挙の結果というものは、これは私、本人様を前にしてちょっと言いにくい話でございますけれども、やはり私は当時の政治情勢で、おっしゃった意味を全部否定しようなどとは思っておりませんが、いわば属政党的なものと属人的なものと、そういうようなものが得票という集計において収れんされていくのが選挙の結果でございますから、そのときどきの政策そのものをとらえて、それはだからとるべきでない、とるべきだという判断のすべてにそれを標準に置くべきものではなかろうというふうに考えております。
  226. 小川仁一

    小川仁一君 昔は、税金というのはお上から押しつけられたものという印象が非常に強かったんです。年貢とも言いました。したがってそれに対抗して、意見を発表する能力のなかった庶民は一揆を起こしているんです。一揆をある意味では肯定しなきゃならない要素の中にこの年貢という状況が存在するわけでございます。  今新しい形の税金、こういうものが出てこようとするならば、当然のことながら、一揆ではなくて国民の意思を十分聞く、こういう状況が絶対必要になると思うんです。特に庶民は税を通してその税金の向こう側にどんな社会があり、どんな経済があり、どんな政治があるかということを敏感に知るんです。それがこういう投票にあらわれてくる。こう思いますだけに、非常に慎重な討論と、同時に、この税金によって一体どういう政治的な方向を築こうとしておられるのか、国民の意図にどうこたえようとしているのかという点についてもお話をいただければありがたいと思います。
  227. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) そもそも、大体議会制度というのができ上がったのは、何世紀でありましたかちょっと定かには記憶しておりませんが、イギリスで羊毛から取れますところの税の使い道をどうするかと、こういうことから議会政治というものはでき上がったというふうなことを教えられたこともございます。我が国の明治二十三年七月一日——七月は選挙の日でございますが、明治二十三年の議会政治ができていくまでの参議制度とかいうようなものを読んでみましても、大体租税の使い方というようなことが、そういう参議制度なり議会制度なりが構築されてきた一つの過程にあったものだというふうに私なりに理解をしております。したがって、租税というものが国民生活にも大変重要な要素を持つことであるということは、私も問題意識は等しくしておるところであります。  したがって、なおのこと、もう四十年、厳密には四十年弱でございますか、当時のシャウプ勧告に基づく税制の中で今日までやってきた税制の中に、いろんなゆがみ、ひずみというものができてきた。それが不公平感となり、それが不均衡感を呼び、いろんな議論が行われておるときに、さて均衡のとれたものは何がいいかと、こういうようなことをお互い相談してみようじゃないかというのはまた国政に参画する我々としての使命の一つではなかろうかというふうにまずは思っておるところでございます。  そこで、そうなればやっぱり選挙で信を問うべきだというお考えでございますが、参議院にあっては六年間、我々衆議院にあっては四年間、国民から信託されたこの期間というものの中で、国民生活のためには現在また将来にわたって何がいいかということを、それこそいつも申し上げる言葉でございますが、大事に大事にしながら、この期間に国民の負託にこたえていく努力をするというのがまず第一義的にあるものではなかろうかというふうに考えております。
  228. 小川仁一

    小川仁一君 同僚安恒議員が新型間接税問題についてはその基本をお尋ねしておりますから、それの質問は一応後に回していただいて、税調会長に御出席を願っておりますのでそちらの方に幾つかの御質問をお願い申し上げます。  まず第一、宮守村に御苦労さまでございました。私も宮守村の公聴会を傍聴いたしておりました。  そこで、その際の経過、全部は申し上げませんが、会長は公述人の方に対して、現在の行政費を節約しようとすればどの費用を削減するかといったような趣旨の御質問をなさいました。答えは、防衛費というのは女の方三人からの答えであったし、男も五人のうち一人そういう趣旨の発言でございましたが、こういう問題をどのように受けとめておられますか、お聞きしたいと思います。
  229. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 宮守村の公聴会に先生もおいでになっていただいたそうで、ありがとうございました。  そのときのお話でございまするけれども、歳出について節減をしなければならぬ、あるいは行政についての経費の合理化ということが必要であるということは、これもう恐らく何人も否定すべからざるところでございますが、費目についてどういう項目の削減かということになりますと、これはそれぞれ意見があるところでございまするし、また、税制調査会ではそこまで立ち入って審議をするということはいたしておりませんので、私どもとしまして、各公聴会で述べられましたそういう具体的な歳出節減につきましての御意見について、こちらの方から意見を差し挟むということは適当ではないというふうに存じておりました。
  230. 小川仁一

    小川仁一君 その際農民の皆さんが、農村には納める税もない、こういうかなりきついお話をなさいましたが、あの地帯においでになり、あの地域をごらんになり、そういう発言をお聞きになりながら、農民のその声にどういう御感想をお持ちになったでしょうか。
  231. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 宮守村だけでもございませんが、宮守村で特に私も感じましたことは、何といいますか、今おっしゃったことと似ていますが、我々は、農民か農家の主婦の方一人二人でございますが、私どもは国税を納めたくても納めるような所得がないんだというそういうことを、別に訴えではなくて事実のような話をお聞きしたわけです。それは確かにそうおっしゃればそれはもっともなことだろうとうかがわれます。  と申しますのは、日本の農家所得、全体といたしまして大体兼業所得が大部分でありまして、農業所得はその一部であるということでありますから、農業所得でもって国税を納めるということは非常に限られた農家ということになるかと思います。どれくらいか私にもよくわかりませんけれども、国税庁の統計などによりますと三十万というような数字もあるらしいんですけれども、恐らくそんなところだろう。私の推算いたしました、いわゆる自立経営農家というふうに勤労者の所得と同じような所得が農業によって得られている農家というのは、現在では農家の五%、多いときでも農家の一割程度であったかと思いますが、そうしますと、多いときで四十万、少ないときで二十万ということでありますから、ほぼそんなところでありますから。  私、今のお話で思い起こしますのは、ほかのところだったと思いますが、農業団体、農業関係の方が集まっている席で、よく世間ではクロヨンと言われておるけれども、皆さんはどうしてそれについて反論しないのかということを聞きましたところ、だれもいきり立って反論しようとする人はいないわけですね。と申しますのは、それは我々のことではないというふうな感じを皆さんが持っておられるということを感得したこともございます。
  232. 小川仁一

    小川仁一君 直接会長からお話を聞いたこともありませんし、また国会での御報告も、体系的なものも聞いておりませんが、マスコミ等に載ったことでそのときどきの会長のお考えを我々うかがい知るだけでございます。したがって、それに基づいて幾つかお聞きしますから、もしそれが間違いであったら、そんなことは言っていない、間違いであると、こういうふうにおっしゃっていただけばいいと思います。  まず、この公聴会の公述人、これは公正に選ばれているかどうかということに幾らかの疑問を持たれたような談話がございました。私もそう思うんです。大蔵省が後ろで仕組まれた公聴会じゃないか、こんな実感を持つんですが、この件に関しての会長の御意見と大蔵省の弁解があったらどうぞ弁解をしていただきたい。
  233. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 各地で催されました公聴会での参考人としての陳述者の選定、これは各方面から大変関心のあったところのようでありまして、御質問のようなことが公聴会の席上でも出たことがございます。傍聴人の方などから。しかし、公聴会の公述人の選定は非常に重要なことでありますので、大蔵省の出先である財務局あるいは国税局あるいは府県、町等とも十分御相談の上で選定されておりますので、そう不公平なことがあったとは思いません。  ただ、個々の公聴会を見てみますと、それは地方地方の特色が反映されておりまして、必ずしもその各職域あるいは各経済関係の関係者がまんべんなくバランスがとれて選定されたというわけにはこれいかないことがあったかと思います。これはまあやむを得ないところかと思います。  ちょっと目立ったようなところで申しますと、例えば主婦の代表といったような方が見えないというようなところもあったかと思いますが、しかし、これは個々にそういうことを申し上げましても、これちょっとなかなか難しい問題でありまして、公聴会全体として眺めますれば、いろんな団体、いろんな職域、その他の方々が網羅されておるということで、そう著しい不公平はなかったというふうに考えております。
  234. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 私ども税制調査会の事務局としてお手伝いを申し上げている立場から申し述べますと、今回の公聴会におきますところの公述人につきましては、公聴会という趣旨に極力即しますよう、できるだけ広範な分野の方々からそのお考えをお伺いするという見地から候補者の方々の一応の選定をし、会長にお願いして御依頼を願っているというところでございます。  具体的には、地元の御意見も踏まえ、また開催地域の経済、社会的な特性、それから二十カ所におきましてお願いをいたしましたその全国的に見た分野別のバランス、このようなもろもろの情勢を考慮いたしまして人選を申し上げ、会長にお願いをしたところでございます。
  235. 小川仁一

    小川仁一君 もう一つ、これもあるマスコミのインタビューでお答えになった会長のお話ですけれども、「あの売上税だって、自民党がそうおっしゃるなら、それも結構でしょうとオーケーしたんだよ。」「政府税調の案はまだ決まっていなかったんだ。それを党側がお決めになったということなんだ。政府税調案なんかはだいぶ違っていたけどね。」、こんなふうにお話ししておられますが、ここで党税調と政府税調というもののあり方、そしてそういうものがどのような形で一つの討議を進めていかれるのか、その関係を会長並びに大蔵大臣からお話をお聞きしたいと思います。
  236. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 私から御説明いたすべきかと存じます。  政府税調は法律によりまして総理府に設けられました総理大臣の諮問機関でございます。税制の基本となるべき事項について総理大臣の諮問を受けて答申をしていただくということでございまして、今回は、昨年の暮れに税法の抜本改正に関して、所得、消費、資産のバランスのとれた税制というものをどう考えるかという趣旨の諮問を申し上げまして御答申を待っているところであります。それに向けまして税調としては精力的に御審議を願っておるということでございまして、私どもとしましては、その御答申を待ちまして税制の抜本改正につきまして成案を得て、国会の御審議を仰ぎたいと考えているところであります。  他方、党税調は、自民党の中におきまして組織をされております税制に関する調査会、これも大変に長い歴史を持っておりまして、毎年何がしかの税制改正がございますから、その大なり小なりに従って、普通は年末に向けてでございますが、非常に詳しく詰めた審査をいたしております。したがいまして、それなりに、現職の議員でございますが、たくさんの議員の方が税制については非常な高い、今や専門的な知識を持つに至っておりまして、そういう方々によって審議が行われております。  通例、片方で政府税調の答申の作業が進んでいく、他方でまた、普通でございますと年末が多いわけでございますが、党税調は党税調の立場から問題に向かって税制改正の審議を進め、成案を固めていく。二つのことは制度としては一応切り離されておりまして直接の関係はございませんけれども、同じ問題を扱っておりますから、その審議 はしばしば並行して行われていくことが多い。一番よくございます形は、政府税調がある程度のところまで案をまとめていかれましたときに、政府としてはそこらの案について党税調にもさらにそれを詰めていってもらうといったような、いわば両方の間の審議の内容と時間との調整を図りながら最終的に政府案を決定していく、こういうようなことをいたしております。
  237. 小川仁一

    小川仁一君 結局は、政府税調というのは党税調の下請機関的性格を持つということですか、今のお話を端的に言えば。
  238. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 全くそうではございませんで、議院内閣制でございますから、これは税法によらず何でもそうでございますが、政府が最終的に政府案を決定いたしますときには、自民党の決定機関である総務会、あるいはその前段階で政務調査会の政策審議会の議を経ていたすことになりますので、政府案決定に至るまでに党とそういう調整機関が、これは税法に限らずございます、税法の場合でも同じでございますが、そういうことはございます。しかし、それは政府案を政府が決めますときには政府税調の意見を受けて決めておるのでありまして、したがって政府税調が党税調の下請であるというようなことは一切ないわけでございます。
  239. 小川仁一

    小川仁一君 そうすると、ここで小倉会長にいろいろ聞いても、結果としては、そこでお話し合いした我々の意見や何かを、会長とお話し合いしたこと自体は最終的には政府税調の中に生かされたとしても、党税調が政治的な立場で物を決めてしまえばそいつはすっ飛んでしまう、こんなふうな感じがするんですが、そうなりませんか。
  240. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 政府税制調査会は、先ほど申しましたように、法律に基づいて設置され、総理大臣の具体的な諮問に基づいて答申をされるのでありますから、その答申は政府が意思決定をいたします上で極めて重い意味を持つものであります。他方、政党内閣でございますから、政府が最終決定をいたしますときには、これは党と相談をし、党と調整をいたしまして決定することはこれは御理解をいただけるところでございますから、そういう意味では、政府が最終的な意思を決定するときに党と相談をし協議をするということは、これは政党政治としては当然のことであろうと思います。
  241. 小川仁一

    小川仁一君 小倉会長、今のお話の中で何か御意見ございませんでしょうか。
  242. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 特に意見を差し挟むようなことはございませんけれども、党の税調と政府の税調の関係というのは、余り、何といいますか、ルールというようなものは別にあるわけではございませんので、お互いに恐らく、党の税調の方をよく知りませんけれども、政府税調でどういうことをやっておるかということは役所を通じて御承知の上でいろいろまた判断をされているということでございまするし、また私どもの方は、党の税調でどういうことが問題になり、どういう方向に固まりつつあるかというようなことは政府を通じて私どもが承知するということでございまして、全然別な組織で別々に審議はしておりますけれども、特にやっぱり相通ずるものが何となくありまして、そんなにちぐはぐなことは起こらないということであります。  ただ、何と申しましても、政府税調の方は党との関係のない方が大部分でありまして、中には学者の方もおられまするし、労組の方もおられまするし、評論家の方もおられるというわけで、なかなか自民党の税制調査会の考え方と同じようになるということはむしろ難しいのでありまして、そこをうまく調整をするというのが政府の方の苦心のあるところでしょうし、私どもも別にそう無理無理党の税調に盾を突くというような考え方はしておりません。
  243. 小川仁一

    小川仁一君 またさっきのインタビューの記事に戻りますけれども、政府税調では党税調が決めたんだからどうぞといったような種類の談話で、政府税調案なんかは大分違っていましたというふうな種類の発言をしておられるので、ひとつ政府税調であられるあなたが、去年は売上税問題の後辞表をお出しになっている。こういうことも抗聞をしておりますと、この関係がどうもわからなくなる。もっと自信を持っておやりになっていいのではないか、こんな感じがするんですが、いかがでございましょうか。
  244. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) これもまず私からお答えをさしていただきたいと思いますが、昨年の秋になりまして、税制調査会の皆様方の任期が一応終了いたしました。小倉会長には実はもう十数年お務めをいただいておりまして、普通でございますと、多い方でも八年というようなことでございますので、当然会長としては、そういうルールもあり、もう長いことおまえたちのために働いたので、この際やめさしてほしいということをおっしゃいまして、いろいろなことから考えますと、それはもうやむを得ないことで、私どもとしても、そうおっしゃればと申し上げるのが普通でございますけれども、この非常に大切な、何十年に一度という税制の抜本的な改正の時期でございます。しかも、昨年政府提案がああいう結果になったという経緯もございますので、まことに申しかねることでございますが、何十年に一遍のことでございますので、たって御再任、御留任をお願いいたしたいということを、私直接お目にかかりましてお願いをいたしました。  それまでは辞意が大変かたくおられるようにお見受けをいたしましたが、たってお願いをいたしまして任におとどまり願ったという経緯がございますので、私から御報告いたします。
  245. 小川仁一

    小川仁一君 税調委員の委嘱、人選の基準がございましたらお知らせ願いたいと思います。
  246. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 先ほど大臣から申し述べましたように、税制調査会は内閣総理大臣の諮問を受けて税制に関する基本的な事項を調査審議いただくということで設置されておるわけでございます。こうした目的に資するために、広く各界各層の学識経験者を総理府にお願いして任命をいただいているところでございます。
  247. 小川仁一

    小川仁一君 税制調査委員であり、間接税特別委員である佐治敬三さんという方がおられます。産業構造審議会委員もしておられますこの方の御発言、マスコミ等で御存じと思いますが、大蔵大臣、あの発言に対しての御意見がございましたらお伺いしたい。
  248. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 佐治敬三氏はその御発言について、自分としてまことに至らない不適当な発言であった。したがって、陳謝してこれを取り消すということを本日公に言われておりますので、それを越えまして私がつけ加えることはございません。
  249. 小川仁一

    小川仁一君 東北の一部にも岩手県というのがありまして、そこに原敬という元総理大臣をした人がおりました。この人は、号して一山、こう言いました。総理、御存じと思いますが、この原敬の評価や一山と号した由来等をもしおわかりでしたら一言述べていただきたいと思います。
  250. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 原敬先生のことは、それは私どもも書物で読ましていただいたことはございますが、それは先生の方が御出身地も一緒でございますので詳しかろうと思っておりますが、たしかこの一山、一山百文でございましたか、という言葉を、まあ私も似たようなところの育ちでございますので気持ちの上では理解できておるような感じがいたしております。
  251. 小川仁一

    小川仁一君 一山というのは、白河以北一山百文という東北べっ視に対する痛烈な抵抗であったわけでございます。  ここでまた、東北の熊襲の子孫として先ほどの話を聞いておりますと、これは蝦夷だろうと私は思っていたんですが、この発言は明らかな民族的な差別だと思います。いかがでございましょうか。
  252. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 今大蔵大臣からお話がありましたように、その陳謝されたという事実を事実として私はお認め申し上げたいというふうに思っております。
  253. 小川仁一

    小川仁一君 加えて、あほうな者がいる。辞典で引いてみましたら、これはばかということなん ですね。人格も人間性も否定するような言葉を吐いているような人が、何ですか、政府の委員として、最も国民が関心のある税制調査会の委員として、さらに一番課題である間接税の特別委員として適任であるかどうか、大蔵大臣、委嘱したあなたのお言葉、見解をいただきたい。
  254. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 佐治さん御自身が誤りであったと陳謝をしておられますので、私はそれをもってこの問題はおのずからそれ自身で終局していくのではないかと思っております。
  255. 小川仁一

    小川仁一君 そんなことはない。民族的な差別、地域的な差別、人間性否定の言葉を吐くような者が政府の委員として存在するということについてはそれを委嘱した人の責任があるはずだ。どういう責任をとるか明確にしてもらわないうちは次へ進みません。
  256. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 立場を変えて考えまして、私日身誤りをいたすことがございます。それを御本人が誤りと認めて陳謝をされたということで、このことは私自身はそれで御本人としての問題の処理をされたと考えております。
  257. 小川仁一

    小川仁一君 あなたはどういう責任をとるの、委嘱した人が。
  258. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 任命権者という表現が適切か、委嘱したのは内閣総理大臣でございますので、私……
  259. 小川仁一

    小川仁一君 大蔵大臣かと思っていた。
  260. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) いや、これは御案内のとおり、たしか総理府設置法に基づくものでございますから、それで地方税がございますので両税がございますから、かつての総理府の長たる、今でもそうでございますが、内閣総理大臣が委嘱するということになっておりますので、その委嘱の責任はせんじ詰めれば内閣総理大臣にある、こういうことになろうかと思っております。  私自身、学識経験者であるということについては今さら申すまでもないことでございますが、今の発言については大蔵大臣がお答えしたとおりであるというふうに考えております。
  261. 小川仁一

    小川仁一君 新型間接税の特別委員でございます。新型間接税を佐治さんがやっているんだといって宣伝して歩いたら東北地方はどうなるかわかるでしょう。そうじゃなくても売上税の一揆があった。そういう状況の中でこういう方を残しておくということは私は非常に問題があると思うんです。陳謝はしたが辞表を出しているという話はなかった。多分、小倉会長も大変困ったことになったと思っておられると思うんです。そういう意味からいっても、本当に国民の信頼をおけるような税制をつくろうとするなら国民から批判を受けているような人はみずから辞表を出すべきだと思うが、そういったようなことを含めて総理の善処をお願い申し上げます。
  262. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 小川さんの意見は意見として私なりに十分承らしていただきました。
  263. 小川仁一

    小川仁一君 個人の問題になりますからこれ以上は追及しませんが、十分な配慮をお願いします。  それでは次に、原子力協定問題に入ります。  今国会に提出されている日米原子力協定に関連して、原子力三原則といわれるものについての御説明をいただきたい。
  264. 伊藤宗一郎

    ○国務大臣(伊藤宗一郎君) 我が国の原子力研究開発利用は、原子力基本法に基づきまして、平和の目的に限り、安全確保を大前提に、自主、民主、公開の原則にのっとり推進をしております。  原子力は経済性、供給安定性においてすぐれたエネルギーでありまして、資源の乏しい我が国においては基軸エネルギーとして位置づけ、その開発利用を着実に進めることが肝要であると存じております。このため原子力開発利用長期計画に沿って、安全性の一層の向上、核燃料サイクルの体系的整備、創造的革新的領域における研究開発の推進、主体的能動的国際対応の展開等の重要課題の達成に全力を傾注してまいる所存であります。
  265. 小川仁一

    小川仁一君 八四年の秋に行ったフランスからのプルトニウムの海上輸送について具体的な内容をお伺いしたい。
  266. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 昭和五十九年でございますけれども、フランスからプルトニウムを日本に輸送いたしました。  その輸送のやり方でございますけれども、これは日本の電力会社がフランスのCOGEMAという会社に再処理をお願いしてございまして、そこから回収されたプルトニウムを船舶によって日本に持ってきたわけであります。これは、具体的には日本籍の貨物船を利用いたしまして、昭和五十九年の十月でございますけれどもフランスを出まして、それから大西洋を通って、それからパナマ運河を通りまして、さらに太平洋を航行して日本に持ってきたということでございます。
  267. 小川仁一

    小川仁一君 買い取り価格、輸送者、その費用、そして費用の負担者、さらに輸送のルート、そのルートが公表されない理由、根拠について御説明願いたいと思います。
  268. 松井隆

    政府委員(松井隆君) まず、先ほどちょっと私、概念的に輸送ルートについては御説明申し上げましたけれども、御案内のとおり、もともとプルトニウムという問題につきましては、核ジャックと申しますか、そういった核の拡散の防止という建前上非常に厳密な管理をしなくちゃいけないということがございます。かかる意味で事前にはそういった輸送方法、輸送ルートについては発表しないということにしてやっている次第でございます。  それから輸送の実施当事者でございますけれども、これは動力炉・核燃料開発事業団、ここがその持ってきましたプルトニウムを高速増殖炉の実験炉「常陽」に使うということで、動力炉・核燃料開発事業団が実施主体という形でやりました。  それから費用でございますけれども、今ちょっと詳細にデータを持ってございませんけれども、約数億円というふうに承知しております。
  269. 小川仁一

    小川仁一君 負担者は。
  270. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 負担者は、当然のことながら動力炉・核燃料開発事業団が負担しているということでございます。
  271. 小川仁一

    小川仁一君 この海上輸送が軍艦によって護衛されたという話を聞いておりますが、その具体的状況について説明してください。
  272. 松井隆

    政府委員(松井隆君) その輸送につきまして軍艦の護衛というお話がございましたけれども、私どもは軍艦の護衛を要請はしておりません。  ただ、御案内のとおり、当時からも既にございますけれども、国際的な輸送の基準がございます。これはIAEAで定めたものでございますけれども、それに従った形で、例えば船の一部の改造を行うとかそういった、あるいは連絡網をはっきりするとかそういった措置はとってございますけれども、特に私どもから軍艦の護衛を依頼したということはございません。
  273. 小川仁一

    小川仁一君 いや、状況を聞いているんだ。依頼したかどうか聞いたんじゃないんだ。
  274. 松井隆

    政府委員(松井隆君) この輸送船からの話によりますと、その輸送途中において時折軍艦らしいものがいたという話は聞いてございます。
  275. 小川仁一

    小川仁一君 そうすると、軍艦の護衛というものは直接なかったと、こう認識していいですね。
  276. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 先ほどお答えしましたとおり、私どもから軍艦の護衛は要請してございません。  ただ、今申しましたとおり、事実として、輸送船の話によれば、その周辺にそういう軍艦がいたということがあるというふうに聞いております。
  277. 小川仁一

    小川仁一君 そんな話ありますかね、周辺にいたというだけの話が。そんなふうな言い方をしていたんじゃいつまでたっても話があきませんが、フランスから海軍がパナマまで、パナマを越えてからアメリカ、そして日本領海に入ってから海上保安庁、これが護衛したことは間違いないじゃないですか。そんな、時折いたような話をしないで明確に答えなさいよ。
  278. 松井隆

    政府委員(松井隆君) それにつきましては、先ほど申しましたとおり、我々から要請したわけでございませんけれども、そういった事実はその輸送船は知っておりまして、恐らくこれはそういっ た形でフランスあるいはアメリカの軍艦等が警護したのではないかというふうに推測はされます。(「海上保安庁は」と呼ぶ者あり)海上保安庁につきましても同じくでございまして、私どもから海上保安庁にはその警護の要請はしてございます。
  279. 小川仁一

    小川仁一君 答弁のうちに入らぬよ。
  280. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 先ほど申しましたとおり、海上保安庁につきましては私どもからその警護については要請してあります。(「話が違うじゃないか」と呼ぶ者あり)いや、私どもから海上保安庁に対してその護衛については要請しております。(「さっきの話と違うじゃないか」「さっきの答弁を訂正しなさい」と呼ぶ者あり)さっきの答弁は訂正いたします。
  281. 小川仁一

    小川仁一君 海上保安庁は来ていないけれども、担当の大臣がおられるから話ができるでしょう。海上保安庁としてはどういう法的根拠に基づいてこういうふうなものの要請がされたんですか、担当者がおられましたらお願いします。
  282. 山田隆英

    政府委員(山田隆英君) お答えいたします。  海上保安庁といたしましては、海上保安庁法によりまして海上の交通の安全及び海上の治安の維持について所掌事務が定められておりまして、この件につきましては科学技術庁から警備の協力についての御依頼を受けまして、それに基づきまして巡視船を派遣する等の措置をとったわけでございます。
  283. 小川仁一

    小川仁一君 そうすると、領海外については一切警備の要請はしていないと確認していいですね。  それからもう一つ、領海内についてはあなたは安全と言ったけれども、その日の航行警報なんかも全然出してないですね。午前二時の夜中に東京港に着いたというふうな、一切民間にも何にもその船の航行を警告しないで航行しているんだが、それが交通の安全とどうかかわる。
  284. 山田隆英

    政府委員(山田隆英君) 航行警報等については特に出しておりません。私どもといたしましては警備あるいは海上交通の安全上必要な措置ということでとらしていただいております。
  285. 小川仁一

    小川仁一君 民間の船は東京湾を走っているんですよ。そこを勝手に走ってきて、しかもプルトニウムを積んだ船が無断りで走ってきて衝突なんか起きたらどうしますか。こういうことについての配慮はどうだったですか。
  286. 山田隆英

    政府委員(山田隆英君) 航行警報ということでは出しておりませんが、私どもは、東京湾に東京湾海上交通センターというのがございまして、そこで東京湾に出入する大型船について一種の航行管制みたいなものをしておるわけでございますが、その東京湾海上交通センターに対しましては航路通報というものをさせまして同センターとの連絡を緊密に行わせております。
  287. 小川仁一

    小川仁一君 この輸送全体の主管官庁はどこになるんですか。それから護衛とか警備というふうなことを依頼したり主宰する官庁はどこになるんですか。
  288. 松井隆

    政府委員(松井隆君) このプルトニウムの輸送全体につきましては先ほど説明しましたとおり、動力炉・核燃料開発事業団が主体になってやりました。そういう意味では科技庁が主管官庁でございます。もちろんそれぞれつかさ、つかさはございますから、例えば海上保安庁にお願いすることはお願いするという形でやっている次第でございます。
  289. 小川仁一

    小川仁一君 つかさ、つかさがはやりますな。  プルトニウム輸送を護衛したアメリカの海軍の費用について、アメリカの議員が、日本側がこれを負担すべきだという意見を出しているという事実を御存じだと思いますが、これでもなおかつ科技庁は、軍艦が時々見えたなんていうふうな物の言い方でこの実態を切り抜けようとなさいますか。
  290. 松井隆

    政府委員(松井隆君) まず米国の艦船による護衛につきましては米国独自の判断でやられたというふうに私ども理解してございまして、そういう意味では私どもの方にそういった費用の請求、そういうものは来てございません。
  291. 小川仁一

    小川仁一君 だんだん違ってきたな。さっきの意見を全部整理して一括して言ってくれよ、防衛関係。矛盾してだめだ。
  292. 松井隆

    政府委員(松井隆君) まず昭和五十九年のプルトニウム輸送につきましては、実施主体は動燃事業団でございます。それでそれのルートにつきましては、フランスから大西洋を通りまして、パナマ運河を経由して、それから太平洋を横断して日本に来たというルートでございます。それからその経費につきましては、今ちょっと詳細を知っておりませんけれども、数億円というふうに聞いております。それからその護衛につきましては、私どもの方からは、まず海上保安庁に関しましては警護につきましてお願い申し上げております。ただ、アメリカ、フランスに関しましてはそういった警護の要請はしてございません。事実として先ほど申しましたように、輸送船の報告によれば海洋でそういった艦船が見られたということでございます。  それで先ほど申しましたとおり、アメリカについては恐らくアメリカ独自の判断、フランスはフランスの独自の判断ということでやられたというふうに承知しておりまして、費用の請求につきましては私どもそういう国から請求があったという話は聞いておりません。  以上でございます。
  293. 小川仁一

    小川仁一君 質問していくといろいろニュアンスの違った答弁をされるのですがね。国際的な取り決めか何かでこういうプルトニウムのハイジャックを恐れているという状況があるなら、そういうものを防護する機構とかあるいは相互の国の連絡とかそういうものがあってやっているから太平洋をアメリカの船がついてきているんじゃないかというふうな感じもするのです。アメリカ独自で勝手に日本の船を、動燃の船を護衛したなんという話は、話としては言うかもしれないけれどもちょっと納得できません。そういう大きな仕組みとか組織とか何かがあるんですか。科技庁長官いかがでございますか。
  294. 松井隆

    政府委員(松井隆君) この仕組みでございますけれども、現在日米でも原子力協定があるわけでございまして、当然そういったプルトニウムの輸送という場合には現行協定におきましてはアメリカの個別同意という仕組みがございます。それからもちろん出す国のフランスの同意もございます。そういう意味では、日仏それから米ということで本件につきましてはもちろん当然のことながら事前にどういう格好でやるという相談がありまして、そういう形でもって行われているというふうになっているわけでございます。先ほど申しましたように、それ以外にIAEA、国際原子力機関では、そういったものの全体の輸送を核ジャックから守るためにどういうふうにあるべきかという一定の基準、そういうものがございまして、そういうものにのっとってこれを実施したというわけでございます。
  295. 小川仁一

    小川仁一君 そういう答弁じゃわからぬ。
  296. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  297. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 速記を始めて。
  298. 松井隆

    政府委員(松井隆君) まず国際的な枠組みから申し上げたいと思います。  IAEAという国際原子力機関がございます。そこでそういったプルトニウム輸送に関しまして、核ジャックを防止するということからの一つの基準、ガイドラインがございます。これはガイドラインでございまして、もちろんそれに従ってやらなくちゃいけないと我々考えているわけであります。それで、そのガイドラインに従って、昭和五十九年の船はそれに従って輸送しているわけでございます。そのガイドラインには、例えば日本あるいはフランスあるいはアメリカの艦船が護衛しなくちゃいけないというところまでは規定されておりません。具体的に船の中身につきましてはそういったガイドラインに沿った措置をとって輸送したわけです。  ところが、先ほども先生の御指摘にありました、これをやりますについては当然私ども、アメ リカ、フランスとも相談するわけでございます。それで、フランス政府、アメリカ政府の独自の判断で艦船を出したというふうに聞いているわけでございます。私どもがこれにつきまして特に要請したということではございませんで、これはやはり国の方の独自の判断というふうに聞いておるわけでございます。そういった形でプルトニウムをフランスから大西洋、パナマ運河、それから太平洋を通じて日本に運んできたという次第でございます。
  299. 小川仁一

    小川仁一君 じゃ相手国が、フランス、アメリカが護衛したということを知っているわけですが、その費用をアメリカ議会の中でマコウスキー議員という人が日本に負担させるという発言をしておりますが、その経過はどうなっていますか。
  300. 松井隆

    政府委員(松井隆君) アメリカ議会の中でそういった議論があったということは私も承知しております。ただ事実は、アメリカ政府から具体的な費用の請求は来てございません。
  301. 小川仁一

    小川仁一君 来たらどうしますか。
  302. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 何分昭和五十九年のもう昔の話でございますし、そういうことがあるというふうにはちょっと考えられないものでございますから、仮定の質問にはちょっとお答えは遠慮させていただきます。
  303. 小川仁一

    小川仁一君 現に議論があって要求が出てくるという可能性があるということを知っていながら仮定のと言うが、そうすると、来ても払わないつもりですね、昔のことですから。
  304. 松井隆

    政府委員(松井隆君) それにつきまして、昭和五十九年の話でもございますから、もし来たらどうかという御質問でございますけれども、そのときには、そのときに少し考えていきたいというふうに考えております。
  305. 小川仁一

    小川仁一君 来たらどうするんだ。そんな答弁で、来たときは来たときみたいな話をされたって答弁にならぬですよ。  それでは、原子力協定を締結する理由並びにプルトニウムの性質、毒性について御説明願いたいと思います。
  306. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 私からまず先生の第一番の御質問に対してお答え申し上げたいと思います。  現行の日米原子力協定は二〇〇三年までたしか効力を持っているわけでございますけれども、やはり時の政権の政策等々に左右されるところもありまして、日米の原子力関係をより長期的な安定的な関係に置きたい、それが一つと、いま一つは核不拡散というものについてより強固にこれを守っていこう、この二つの観点から新原子力協定を調印したわけでございます。これが第一点の先生の御質問に対する答えでございます。
  307. 松井隆

    政府委員(松井隆君) プルトニウムでございますけれども、先生御案内のとおりプルトニウムというのは人工的につくられた核種でございます。それで、これが万が一体内に入った場合にはアルファ線という放射線を出しまして、体内の特定の部位に集まって、長い間そこにアルファ線を放出するという問題があって非常に危険な物質である、こういうふうに言われております。
  308. 小川仁一

    小川仁一君 このプルトニウムは核兵器には利用できないと説明してきたが、そのとおりですか。    〔委員長退席、理事林ゆう君着席〕
  309. 松井隆

    政府委員(松井隆君) プルトニウムは核兵器に利用できるというものでございます。したがって、先ほど申しましたとおり、これの核ジャックあるいはそういうことに非常に各国が神経質になっている問題でございまして、プルトニウムは原爆の材料になるというものでございます。
  310. 小川仁一

    小川仁一君 今までの説明とちょっと違うような気がしますがね。プルトニウム239は核兵器の材料にはならないというのが政府の見解じゃなかったですか。
  311. 松井隆

    政府委員(松井隆君) プルトニウムは核兵器の材料になるものでございます。
  312. 小川仁一

    小川仁一君 協定附属書第五がつけ加えられた理由と経過並びに輸送方法が海上から航空に変わりました。航空輸送の安全性についての具体的な御説明をお願いします。
  313. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 先生の御質問の二点。  まず第一点でございますけれども、この新しい協定の実施取り決めの附属書五ができたわけでございますけれども、これはやはりプルトニウム、前回の場合は個別の承認を得てフランスから日本に持って帰ってきたわけでございますけれども、これを包括化しよう、こういうことが一つと、それから他方、同時に輸送につきましては、核ジャック等々を避ける意味で非常に厳重に輸送してこよう、この二つの要請からこの附属書五ができたわけでございます。  それから第二番目の、なぜ船から飛行機に変えたんだと言われる点でございますけれども、これは最大の理由は、やはり船にいたしますと四十数日かかったわけでございますし、飛行機にすると時間が非常に短くなるということで、いわゆるプルトニウムの核ジャックの危険性といいますか、可能性をより少なくしよう、こういう観点、つまり核ジャックの観点からでございます。
  314. 小川仁一

    小川仁一君 シージャックとハイジャックはどっちが多いですか。
  315. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 私、シージャックと飛行機の、エアジャックというのでございますか、どちらが多いかあれなんでございますけれども、このプルトニウムに関します場合に、単なる飛行機で運ぶことばかりではなくて、同時にこの飛行機を、エアジャックですか、エアジャックから守ろうという幾つかの措置がこの附属書五に盛り込まれているわけでございます。したがいまして、極めて常識的に申し上げれば、プルトニウムの輸送がこの附属書五においてなされる限りは、私は可能性としましては飛行機の方が少ないのではないかと思っております。
  316. 小川仁一

    小川仁一君 航空輸送についてアラスカ州知事や、カナダ政府の運輸大臣、クロスビーとおっしゃる方ですか、反対しておられます。これについてですが、日本の運輸大臣はこの航空輸送についてどういうお考えをお持ちですか。あったらお聞かせ願いたい。
  317. 石原慎太郎

    ○国務大臣(石原慎太郎君) 航空輸送に関する技術がどこまで開発されているかつまびらかにいたしませんが、万が一航空機事故が起こったときは大変なことになりかねません。ですから、そういう、海に落ちるにしろ陸に落ちるにしろ、墜落自故が起こったときに、それでもなお使用されたプルトニウムが露呈し放射能が拡散流出しないということが完全に保障された完璧な容器ができぬ限り、航空の運輸は実施されないことになっているはずだと思いますし、またされるべきではないと思います。
  318. 小川仁一

    小川仁一君 一九八八年のエネルギーと水資源歳出権限法案の修正、これはマコウスキー修正案とも言われておりますが、これについて今の関連で御説明願いたい。
  319. 松井隆

    政府委員(松井隆君) プルトニウム航空輸送容器の安全性と申しますか、そういうものにつきまして、昨年の十二月二十二日にマコウスキーというアメリカの上院議員が提出いたしまして、その法案が十二月二十二日に可決成立してございます。それで、それは、それまではアメリカではニューレグ〇三六〇というプルトニウム輸送容器の安全基準がございまして、それで既にアメリカでは国内でPAT1、PAT2という二つのタイプの容器ができておりまして、それで輸送しているわけでございますけれども、それに加えて新たにマコウスキー修正案が付加されたということだというふうに思っております。  それで、内容でございますけれども、簡単に申し上げますと、このマコウスキー修正案のポイントは、米国の領空を通過する外国から外国へのプルトニウム航空輸送、これはまずNRCが、NRCというのはアメリカの原子力規制委員会でございますけれども、そこが輸送物の安全性を確認し、議会に対して認定しない限り行ってはならないというのが一点でございます。  それで、具体的にその安全性を認定するために 幾つかの要件をつけてございます。  まず一つが、実スケール輸送物の最高巡航高度からの落下試験をやりなさい。それからもう一つが、実スケール輸送物を搭載した貨物機の墜落試験、ただし、この墜落試験に関しましては、原子力規制委員会が独立の科学財団と協議の後、容器の開発過程で行った試験時の容器にかかった応力が最悪の事故時にかかるであろう応力を超えると決定すれば省略していいという条件がついております。  それでもう一つは、今言った二つの試験を実施して試験中に容器が破壊せずに内容物が漏出しなければ輸送物は安全であると認定するということでございまして、さらにそれをアメリカの国内法でございます国家環境政策法によって評価しましょうということでございます。  それで、さらにそのほかに、そういったもののやった試験のパラメーターについては公表しなさい、あるいは公衆がコメントする機会を設けた後最終的に原子力規制委員会が決定するというようなことでございまして、ただこれには、この手続は現在アメリカに存しております既に認定された容器には適用しない等々の条件をつけたやつでございますけれども、そういったいわゆるマコウスキー修正案、マコウスキー法案が十二月の二十二日に成立してございます。
  320. 小川仁一

    小川仁一君 我が国ではそういう容器の基準をつくっておりますか。
  321. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 現在、我が国の基準につきましては、原子力安全委員会で検討を開始しておる次第でございます。
  322. 小川仁一

    小川仁一君 当然、協定によってNRCの基準に沿ったもの、さらにはマコウスキー議員の修正案によったものがつくられなきゃならないと思いますが、NRCの基準をお出し願いたい。十二日から頼んでいるけれども、たったこれ二枚しか来ない。まさかこれ二枚がNRCの基準だとは思わないから、全文をお出し願いたい。
  323. 松井隆

    政府委員(松井隆君) NRCのニューレグ〇三六〇というのが基準でございますけれども、それにつきましては要点をまとめたのを先生に御提出したと思っております。全文につきましては、まだ和訳したものがございませんもので、英訳でもよろしかったらすぐにでも提出いたしたいと思っております。
  324. 小川仁一

    小川仁一君 提出を要求しているのは十二日からです。出さなきゃ審議できないよ、これでは。提出を要求します。
  325. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 先ほど申しましたとおり日本語全訳のものがございませんもので、もしあれでございましたら、英語のままでそのまま提出させていただければと思っております。
  326. 小川仁一

    小川仁一君 英語で、英文で議会に資料を提出したという前例がございますかな。あったらいたし方ありませんが、こういう重要なものを今の段階になって部分的なものだけ要点を和訳してくるなんていうふうな資料の提出の仕方じゃ、これはプルトニウムというのは大変なものですからね、核兵器の材料にもなる、すごい毒性を持つ、そういうものを全文出していただかなければこれからあとの質問はできませんよ、私は。    〔理事林ゆう君退席、委員長着席〕
  327. 松井隆

    政府委員(松井隆君) では、現在のニューレグ○三六〇の全訳を至急やりまして、御提出させていただきたいと思います。
  328. 小川仁一

    小川仁一君 そうすると、おれは質問はそれからやればいいわけか。
  329. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 小川君、質問を続けてください。
  330. 小川仁一

    小川仁一君 どうすればいいの。
  331. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 先生に提出いたしました資料、ニューレグ〇三六〇の和訳部分のところでございますけれども、これはそのニューレグ○三六〇のエッセンスを書いてございまして、つまり具体的に申し上げますと、どういった試験をどういった条件でやるか、どういったものを合格の要件にするかということでございます。もちろん、先ほど申しましたとおり、至急全訳をいたしまして先生に御提出申し上げますけれども、基準の内客は大体この点全部網羅されているというふうに理解してございます。
  332. 小川仁一

    小川仁一君 わかりませんな。だって、これからその中身を質問しようというときに、訳がなければ質問できません。——それじゃ、その訳はいつできますか。前から頼んであるじゃないか。
  333. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 三日間でやりたいと思います。
  334. 小川仁一

    小川仁一君 ばかにするなよ。十二日から頼んでおいて、きょうまでできないでおいて、きょうになって三日でできるなんて、そんな態度じゃもう審議できない。人をばかにしている。そんななめてかかるんじゃないよ、こっちはちゃんと頼んでいるんだから。
  335. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  336. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 速記を始めて。
  337. 小川仁一

    小川仁一君 それじゃ、当然科学技術特別委員会にこの法案が提案されるはずでございますから、私だけじゃなしに科学技術委員の皆さんだってこれは必要なはずです。前から来ているものを、皆さんは英語が達者でわかるかもしれないけれども、科学技術委員がみんな英語がわかるとも思えませんから、ひとつ訳しておいていただいて、きょうはそこのところは後に回して次へ行きます。  プルトニウムを積んだ航空機が着陸する飛行場の予定、第五条に基づいてどういうところを考えておられますか。
  338. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 日米の新協定によりますと、プルトニウムの航空輸送につきましては包括同意になっているわけでございますけれども、具体的に実施する場合に事前にまず輸送計画を作成するというふうになってございます。それで輸送計画につきましては、そこではもちろん輸送当事者は当然のことでございますけれども、その他例えば日米両国の政府、あるいは最初に飛行機が出ます例えばフランスであるとかイギリスであるとかそういう国の政府、それから経路もございますものですから経路の関係する政府、そういうところの協力それから援助、そういうものの上で具体的に輸送方法、輸送ルート、そういうものを具体化して、そこで輸送計画が決まるわけでございます。それで、したがって現在どこを輸送の空港にするか、そういうことについては一切私どもまだ検討する段階には立ち至っておらないというのが現状でございます。
  339. 小川仁一

    小川仁一君 しかし、着陸する飛行場というのは、例えば花巻飛行場は滑走路が狭くて無理でしょう。そうすると、一定の条件というものがあるはずだ。そういうものが着陸する可能性を持つ条件のある飛行場は幾つあるか。どこですか。
  340. 松井隆

    政府委員(松井隆君) これから検討することでございまして、まだそこまでお答えできるほどの詳細な内容の詰めは行っておりません。
  341. 小川仁一

    小川仁一君 じゃ、質問を変えます。  領海内に入ったら海上保安庁が船を警備したと言いましたね。今度そういう飛行機が国内の飛行場に着くときは領空内を警備しますか。護衛しますか。どこが当たりますか。
  342. 松井隆

    政府委員(松井隆君) そこのところまではまだ、国内でどういうふうに警護を頼むかというところまでまだ検討に至っておりません。これから逐次そういう計画をつくる段階で固めていきたいというふうに考えてございます。
  343. 小川仁一

    小川仁一君 飛行機を警備できるのはその能力を持ったところですが、日本ではそういう能力を持ったのはどういうふうな部隊ですか。
  344. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 領空侵犯等に対する対応措置については自衛隊が任務を持っております。
  345. 小川仁一

    小川仁一君 侵犯なんか聞いていないよ、何も。どういうことなんだ、今の答弁は。
  346. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 今、国会で御審議を願います今回の日米の新協定によりますと、飛行場での具体的なそういった警備が必要ということは明記されてございませんでして、一定の距離隔離しろとか、人が近づかないようにしろとか、そうい った基準はございます。いずれにしろ、先生御指摘の事項につきましては、これからどういうふうにやっていったらよろしいかということを私ども考えなくちゃいけない事項というふうに思っております。
  347. 小川仁一

    小川仁一君 核ジャックが大変だからといってアメリカやフランスの軍艦かついてきた。日本でも海上保安庁がついた。そういう経験の中から、飛行機で来るのなら当然核ジャックを心配してつかなきゃならない。しかし、それを今から検討するといったって、この附属書をやって、飛行機で運搬するということが決まった事態で、どこへ頼むかぐらいも頭に浮かばなかったとすれば、こういう協定書や附属書は不要のものだ、意味がなくなってくる。そういうふうに、検討中だから、研究中だからということで逃げられてはこの問題は審議できませんから、今想定されている部分について、附属書をつくった時点での想定、経験の上からの——あるいは、全然そういうことは想定していないというんなら、附属書を含めて協定はやるべきじゃない。これについてはっきりしたお答えをいただきたい。これはもう大臣だ。
  348. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 私から先に答弁をさせていただきたいと思います。  飛行機を使いましてフランスなりイギリスから持って帰りますときに、幾つかの条件をこの協定にはつけてございます。一つは、北極圏。もう一つございますけれども、主として北極圏を考えているわけでございます。それから、専用貨物機で運んでくること。さらに、その専用貨物機への武装護衛者の同乗。それから輸送関係者が信頼性のある人かどうかということの確認。それから、先ほど原子力局長が申しましたように、途中の空港にもしとまることがあり、あるいはその出発空港におきましても、飛行場においてその飛行機を横に隔離しておく。それから輸送容器の安全性。それから、特別な通信機器を備えていまして、その飛行機に何か起こったとき、あるいは地上との間が常に交信できるようにというようなこと。それからオペレーションセンターを設けるということ。それから、万が一の緊急のときはどうするかという計画書を作成すること。それから最後でございますけれども、こんなことがきっちりできたんだなという関係各国の確認。こういうふうな条件が満たされることが必要である。こういうふうなことになっております。
  349. 小川仁一

    小川仁一君 私は附属書を見て物を言っているつもりなんです。したがって、当然附属書を受け入れて大筋つけた協定ができるとすれば、それに対応する国内の体制というものがある程度研究されるのが至当だと私は思います。私の質問が無理であればこれは大変申しわけないけれども、こういう状況がある中で、研究不十分でこんな協定を結んだってどうにもなりませんよ。北極路というふうな航空路も決まった。アンカレジは反対だと言って、アラスカも反対だと言う、カナダも通さないと言っている。どこを通ってくるの。実現不可能な協定をやる必要はないと思うんで、協定はやるべきでない、こう思いますが、それについて責任者の方の御答弁をお願いしたい。
  350. 宇野宗佑

    ○国務大臣(宇野宗佑君) これはもう既に政府間で合意をいたしております。  重要な問題でございまして、特に我が国では、御承知のとおり核燃料サイクルということを確立して将来の資源小国に備える、こういうことでございまして、国務長官と私の会談におきましても、政府間の合意を早く進めてしまったんだから、アメリカの国会において議論があるらしいがあとはこの点は当然政府が責任を持ってほしいということを申し入れまして、最近はアメリカの国会におきましてもこの協定を批准することにおおむね合意が得られつつあるという報告を受けております。  試みにアメリカの国会の流れを申し上げますと、二つあります。その一つは、プルトニウム、核は性悪説であると言うて、そうしたことから反対される一つのグループもあります。またもう一つは、今御指摘のように、飛行機で運送する場合のその飛行機の下に選挙区を持っている方々の反対意見というものもあります。これがおおむね二つのアメリカの現在の反対でございますが、アメリカ政府とされましては、この方々に対しましても十二分に説明をされておる段階でありまして、非公式ではございますが、アメリカも当然政府間の協定に対しては議会にも承認してもらう用意ありと、こういうふうな報告を得ておる次第でございます。  今御指摘の、ではどのようにするかという問題に関しましても、当然政府の各省庁関係、急いでやらすべきものであろうと私は考えております。
  351. 小川仁一

    小川仁一君 アメリカの議会の中でも非常に反対の意見が強いということもこれは外相は御存じだろうと思います。そういうふうな状態で内部でも条件が、先ほどから聞いていると一つも整っていない。こういう状況の中では私はあえて急ぐべきでないという意見を申し上げて、次へ移ります。  文部省に伺います。  文化庁の予算、三百五十億。文化国家日本、中曽根総理はたくましい文化とおっしゃった。 これは一けた間違っているんじゃないですか。文部大臣の御見解をお伺いしたい。
  352. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 確かに、文化というのは一朝一夕にできるものではございません。  私は、文化というのはその国の風土、歴史、それからそこに住む代々の人々の魂の哀歓が折り合ってできた遺産が文化だと、このように思っておりますので、したがって過去から現在、現在から未来へと続いた施策が必要だと。これは当然でございますが、特に過去のものは今手を入れないとなくなってしまうというものがございます。それから、将来にわたって進行させていくべきものがございます。せめて、現在あるべきものの中で、そして庶民の中で、民間の中ではぐくまれ、培われていくべきものは民間の手にできるだけはぐくむ力をお任せするということも必要だと思いますが、その前後はまさに文化に公財政支出はある程度必要でございますので、この点の重要さは十分考えておるところでございますが、今のあれが少ないか多いかと申されますと、絶対量のことでございますから——ただ、六十三年度は四%アップの三百七十八億と。三百八十億というのが胸を張って言えるかというと、なかなかそうではございません。  しかし、六十三年度はこれで賄わせていただくということでございますが、その次には今の先生の言葉を激励と受けとめさせていただきまして、一生懸命頑張ってまいりたい、このように考えます。
  353. 小川仁一

    小川仁一君 文化国家日本、今私は、ある程度財政的に余裕のある時期に、思い切って文化に対して、文化の創造に対して予算を注ぎ込むべきときである。心の豊かな日本人、こういう言い方も総理はしておられます。総理、これはとっても恥ずかしくて世界じゅうに持って歩けるような予算じゃないですよ。予算というのは補正予算もありますしいろいろありますけれども、ひとつ総理、ここで一けた間違えたとおっしゃっていただけませんか。
  354. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 予算は、それぞれ積み上げてきたものを査定しながら、最終的には内閣一体の責任で積み上げて、そうして国会で御審議をいただくのは現状において最良最善のものだという考え方で御審議いただくわけでございますから、一けた間違いでありますなどということを申し上げるわけにはまいりません。まさにそのけたどおりでございます。
  355. 小川仁一

    小川仁一君 クマゲラという鳥があるんです。天然記念物です。これは岩手県の葛根田にいる鳥なんです。南限です。それで、この生息するブナ林を切らないようにというお願いをして、林野庁の英断で切らないことにしたんです。林野庁も環境庁も、それを含めて自然保護のために研究会をおつくりになった。私は文化庁も一緒になってやってほしいと思ったが、文化庁の方は予算かないからやれない。天然記念物を指定している文部省 の方がそれをやれないんですよ。これは気の毒だと思うんです。こう考えますというと、まさにそのとおりだと言われても何としてもこれは納得できない、こういう気持ちです。  それからもう一つ、天然記念物の指定問題について言いますが、鳥は個体を天然記念物に指定するんです。飛ぶんです。クマゲラで言いますと、ねぐら木があります。ねぐら木は天然記念物じゃないから切っても構わないんです。新潟のトキの例があります。これからの天然記念物、文化問題を考えるときに、飛んで歩くような、鳥のような個体だけを天然記念物にしないで、当然その生息地を天然記念物に指定しなければ、これは鳥類もそれから獣類も、天然記念物という名だけはあるけれども絶滅してしまう、こういう可能性を持つわけです。そこで、天然記念物の指定について御意見を伺いたい。
  356. 横瀬庄次

    政府委員(横瀬庄次君) クマゲラのただいまの先生の御指摘につきましては、昨年八月の環境特別委員会でも御指摘をいただきまして、その後で私ども文化庁としてもいろいろ検討したわけでございます。しかし、現在の鳥類にかかわる天然記念物につきましては、その繁殖の時期に群れて営巣する地域とか、あるいは渡りの時期に集団で渡来する地域というものについては指定されている例があるわけでございますが、特定の鳥の種類についてその生息にかかわる地域全体を指定するということは実際にはほとんどない実情がございます。これはやはりその鳥類について、一つは繁殖とか、その採餌とか移動とか、そういう生息の実態を把握することが非常に難しいということ、そして、例えばクマゲラについて確実な科学的知見というものが非常に少ないということと、それからもう一つは、やはり鳥類でございますので生息に必要な範囲というのは非常に広いわけでございます。そういたしますと、そういったものを対象とする指定といいますと、やはりこれは指定する場合には土地の所有者とか林業関係者とかそういう方々との調整、同意を得る必要がございますので、実際問題としてこの調整が非常に困難であるというようなことでございます。  ただいまお話がございました、そういうことでこの地域指定ということについてのすぐの結論というのはなかなか無理でございますけれども、ただ、もちろんその生息について我々は保護しているわけでございますので、その保護について関係者の御協力を得ることはぜひ必要でございます。  それで、先生今御指摘がございました調査につきまして、これは先ほど申し上げましたように、クマゲラの生息の保護についていろいろ御説明する上にこの生息の実態というものを把握する必要がどうしてもあるわけでございますので、北海道の方では比較的行われているわけでございますが、東北のクマゲラについてはまだ十分解明されていない部分が多うございますので、文化庁といたしましては、専門家に委嘱して調査研究を行うということについて検討してみたいというふうに思っております。
  357. 小川仁一

    小川仁一君 いずれにしても、文化庁も文部省ももう少し文化予算を、総理と大蔵大臣と大げんかをしてでもいいからとってくださいよ。そうしなきゃ日本の文化の向上はあり得ません。意見だけ申し上げておきます。総理大臣よろしく。  さて、その次、学校給食問題に入ります。食生活も変わってきました。共働きもあります。こういう状況の中で、学校給食は義務教育活動に不可欠な教育活動の一環として位置づけられておりますが、この点について文部大臣の御見解を伺いたい。
  358. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) おっしゃるとおりだと思います。
  359. 小川仁一

    小川仁一君 農林大臣に伺いますが、今米の消費が非常に問題になっております。地域によっては農民自身の自主的に消費しなきゃならない米を持って学校へ行って米飯給食をしている。米飯給食をするということはその子供の将来の食生活をもやっぱり一つの位置づけをする、こういう形にもなります。ですから学校給食というものを大事に考えていただきたいと思いますが、大臣の見解を。
  360. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) お説のとおり、学校給食は大事だと思っております。
  361. 小川仁一

    小川仁一君 皆さん大事に思っておられる割合には、今度は文部省では学校給食課がなくなる。そして競技スポーツ課とかというのがふえるわけです。それも必要だと私は思います。しかし子供の将来を考えた場合には、どうしても学校給食課を廃止するということは大変なことなんだという実感を持ちます。子供を持っている母親たちも、今のようなセンター方式とか、あるいはパートの調理人が調理をしているというような学校給食は望んでおりません。ぜひとも自校給食で、しかも米飯で、そして子供たちの食生活を慣習づけよう、こう考えているんです。ぜひこれは学校給食課をなくすることをお考え直しいただきたいと思いますが、文部大臣いかがでございましょうか。
  362. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 基本的なことをまず私から申し上げますが、学校給食については重要だとお答えをいたしましたとおり、これからもさらに充実をさしていきたい、こう思っております。今学校給食課という課名をお出しになりました。給食という文字が消えるのは何がしかそれは寂しい感じがなさると思いますが、私どもが考えておりますのは、学校給食、この占めてきた使命というのは非常に重いと思いますが、今おっしゃいますように、現在米飯給食が週二回程度でございます。これを週三回程度にふやしたいと思っておりますし、ただ、学校給食というもののやはり範囲というか、重さというものをもう少し私どもも自覚していこう。それには給食に使われております食器、これも今アルマイトあるいは先割れスプーンというものがまだ使われておるところがございますが、この点も徐々に陶器にかえていきたい。そして、せっかく米飯給食をふやすなら、これはできれば木のはしにかえてまいりたい。そういう食文化の中から、さらにはランチルームというものもつくってまいりたいということで、六十三年度ではランチルームに二億三千万ほどの予算も増加してとったわけでございます。  それともう一つは、健康というものは、この間も御質問がございましたけれども、小学校、中学校に成人病がふえておるということがございます。これは家庭との密接な連携の上でやはり食生活上の連携もしていかなきゃならない。そして食事が終わったら、その割れる陶器を片づけてみる。これはお母様に反対があるかと思いましたが、それほど反対はございません。やっぱり家庭生活の中で使われておる日本の自然な食器で食べ、そしてそれを片づける、片づけ終わったら歯を磨くというようなことから、食の内容それから食生活と前後した生活態度並びに健康の増進、こういったものを一貫いたしまして学校教育の中でさらに高めようということでございますから、そういう意味で給食とだけ言ってよろしいかどうか。  そういう面で今一つ考えておりますのが、健康教育課というような課にいたしまして、実際の給食の中身は充実させ高めていく方に向かわせたい、こういう意味でございますので、一つお願いするとすれば、その課の名前だけがひとり歩きして、給食という名前があれば一生懸命やっておる、給食という名前がなくなったら給食自体がなくなってしまうのか、こういうふうにはお考えいただきませんで、もちろん法律の上でも学校給食法は残るわけでございますし、その点では一層充実するというふうに御理解いただきますように、この際切にお願いをいたしておきます。
  363. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で小川仁一君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  364. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、千葉景子君の質疑を行います。千葉景子君。
  365. 千葉景子

    ○千葉景子君 まず最初に、エイズ関連の問題について質問をさせていただきたいと思います。  私は、実はけさ起きて朝刊を読みまして非常にびっくりいたしました。というのは、昨日も厚生省 の皆さんと血液行政について話をさせていただいていたわけですけれども、読売新聞の朝刊によりますと、厚生省が「血液自給を本格推進」、来月検討委員会に諮るというような記事が載っております。これは大変重要な問題かと思いますけれども、この点について、まずこの新聞記事でございますけれども、この真偽のほど、そしてまた、このとおりであればその内容等についてぜひ御報告いただきたいと思います。
  366. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) 血液事業につきましては、従来からできるだけ国内の献血によって必要な血液を賄う、こういう政府の方針に基づいていろいろな事業を実施してまいっております。ただ、現実にはなかなかその目標の達成にまでは至っておりませんで、外国からも輸入をしておるというのが実情でございます。  そこで私どもとしては、既に五十九年から六十一年にかけまして血液事業検討委員会というところで各種の血液事業の検討を進めていただきまして、その御意っみをもとにいたしまして新しい血液事業を進めてきております。例えば、昭和六十一年の四月から、従来二百ミリリットル献血というのが一本でございましたけれども、これを四百ミリリットルの献血もあわせて行う、あるいは血液のうちの必要な部分だけを取り出すという成分献血というものも実施する。その他いろいろ献血者登録制度でございますとか、あるいは献血組織の育成というようなこともやっておりましたが、なお今日の状況にかんがみまして、さらにこの事業の一層の推進を図りたいということで、実は昨年の九月に新血液事業推進検討委員会というのを設置いたしまして、そこで既に御検討をいただいておるわけでございます。  したがいまして、けさの新聞の記事は、私どもが従来から進めようとしていたことの内容が出ておるわけでございまして、このきょうの記事になった理由は私どもはよく承知しておりません。しかし、考え方としては、ここにありますように直ちに義務化とか、そういったところについては問題がございますので、具体的に今そこまでと考え方を固めているわけではございませんけれども、いずれにしても、従来からの方針をさらに推進して、できるだけ国内の自給体制を確立したい、こういうことでございます。
  367. 千葉景子

    ○千葉景子君 これまでの血液行政を見ておりますと、我が国というのは薬づけ医療の横行、国際的にも異常な大量消費がなされている。聞くところによると、世界の三分の一とも言われ、吸血鬼というようなありがたくない名前までいただいている現状です。こういう中で、今御答弁をいただきました対策を進めていらっしゃるということですけれども、これまでの対策あるいは血液行政のあり方、どういう認識のもとに、そして反省の上に立って現在行われているのかお聞きしたいと思います。
  368. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) これまでの経緯について少し御説明申し上げますと、昭和三十九年に「献血の推進について」という閣議決定がございました。これ以前の我が国の血液事業は、医療に用いる血液の大部分がいわゆる売血によって賄われておりましたために、何回も採血をするような人がおりまして、輸血用の血液の品質低下でありますとかその他多くの問題が生じていたわけであります。  このために昭和三十九年八月に、できるだけ早い時期に必要な血液を献血によって確保するための体制を確立するという趣旨で閣議決定が行われたものでございます。その後、この閣議決定に基づいていろいろな事業を行いました結果献血量も次第にふえてまいったわけでございますが、同時に血液の使用量も非常にふえてまいりまして、実際に医療の現場で用いられる血液を賄うためには国内の献血だけではどうしても不足を来してまいりました。そこで、一定の種類の血液製剤については輸入ということになっておるわけでございます。  しかし、先ほども申しましたように、やはり目標といたしましては、できるだけ国内における必要な血液を献血で賄う、こういう趣旨で私どももいろいろ対策を進めておる段階でございます。ちなみに、現在いわゆる全血輸血と申しますか、一般の血液を輸血する場合、あるいは血液血漿製剤というようなものにつきましては、これはもう全部国内の献血で賄われておりますが、いわゆる血漿分画製剤と申しまして、血液のうちの一定の成分だけを取り出していろいろな手術なり治療の際に使う、また血友病の治療のために血液凝固因子製剤というものを使っております。その部分につきましては、非常に使用量がふえたために現在やはり輸入に頼っているという実情でございます。こういったところを、できるだけ新しい考え方で今後国内献血で賄うようにさらに事業を進めていきたいというのが私どもの考えでございます。
  369. 千葉景子

    ○千葉景子君 今御答弁の中にもありましたように、昭和三十九年に「献血の推進について」という閣議決定がなされているわけです。三十九年から現在までといいますと二十年以上経過をしている。一体その間具体的にどんな啓蒙活動なりあるいは献血の組織化が進展をしてきたのか。現状を見ていると行政としては怠慢としか言えないような現状ではないかと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
  370. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) ただいまお答えしました閣議決定以来私どもは、日本赤十字を中心にいたしまして各地に採血のためのセンターあるいは出張所、また移動採血車というものを設けまして、そこで献血ができるだけ広範囲にできるように進めてまいっております。  この実績でございますが、昭和五十年代の初めごろには、例えば献血者で申しますと四百万人台でございましたが、現在既に八百五、六十万人に達しておりますし、また献血量にいたしましても、昭和五十三年に大体百万リットルぐらいでありましたものが六十一年には百八十万リットルになっている。量的には伸びてきておるわけでございます。また、人口対比で見ますと献血率が大体七・二%でございまして、これ自体は世界の先進諸国と比べても決して低い方ではございまん。しかし一方において、医学、医術の進歩、医療の高度化等によって血液の使用が非常にふえたという面がございますので、まだ完全自給というところには至っておりませんが、できるだけその目標に向かって努力をしていきたいと考えておるところでございます。
  371. 千葉景子

    ○千葉景子君 これについて厚生大臣の御意見はいかがですか。
  372. 藤本孝雄

    ○国務大臣(藤本孝雄君) 国内で必要とする血液を国内で自給する、これはまさしくそのとおりでありますし、一つの大原則だと思います。我々はそういう意味におきまして、国内における血液の需要に対して十分に供給できるような体制をこれからも十分力を入れて進めていかなければならないと考えております。特に、先ほどから局長答弁で申し上げておりますように、手術用の血液は自給ができておるわけでございますけれども、血液製剤の原料になる血液、献血による血液というものが日給できない、ほとんど外国から輸入しておる、こういう状況でございまして、その解決のために昭和六十一年の四月から新しい血液事業というものをスタートさせておるわけでございます。ただ、十分に実効が上がっていないという点については私もそのように認識しております。  今後の問題としては、供給と需要の両面にわたって十分に考えていかなければならないわけでありまして、需要の面については適正な需要を推進していくようにお願いしたいし、また供給の面につきましては、先ほどから申し上げておりますように、六十一年の四月からスタートした新しい血液事業をさらに拡充強化をして、一日も早く外国から血液製剤の原料の血液を供給してもらわなくていいように、献血による自給体制を図るように努力してまいりたい、かように考えております。
  373. 千葉景子

    ○千葉景子君 今後の取り組み方はぜひその基本方針にのっとって具体的に進めていただきたいと思いますが、これまで血液製剤は輸入血液に頼ってきた。これが現在大変大きな問題を生ぜしめて いるのではないでしょうか。とりわけ血友病患者の皆さんが、輸入される汚染された血液によって、それでつくられた血液製剤でエイズ感染をなさったという問題で、大変大きな社会問題になっているわけです。エイズ問題というのは、そういう意味では血友病患者の皆さん、感染者の皆さんの問題を解決しないでは先へ進まない、そういうふうに考えるわけですけれども、この血友病患者の皆さんに対する救済問題、これについては大臣いかがお考えでしょうか。
  374. 藤本孝雄

    ○国務大臣(藤本孝雄君) エイズ対策の問題で最も重要なことは、私はまずエイズという病気を蔓延させないように全力を挙げることだと考えております。  御承知のように、エイズに感染をいたしますと四〇%が発病し、そのうち九〇%は死亡に至る。しかも特効薬がまだ発見されていないという極めて恐ろしい病気でございます。同時に、今の世界の現状を申し上げてみますと、全世界で五百万人から一千万人エイズの感染者がいると言われておりますし、また患者について言えば、アメリカでは約五万人、世界全体では七万七千人、日本では幸いにも六十二名でございます。WHOの推測によりましても、今後四年間で全世界でエイズ患者が百万人になると、まことに恐ろしい推計も出ておるわけでございまして、我々としては、まずエイズ対策の第一の問題は、この恐ろしいエイズの病気をこれ以上蔓延させないようにすることが肝要かと思っております。火事に例えて言えば、アメリカの状態は家じゅうが燃えている、ヨーロッパの状態は家具が燃えている、日本はじゅうたんが焦げている、こういう状況でございますので、まずこのことが一番我々にとっては大事な問題だと思います。  しかし、このエイズ対策、つまりこの病気を蔓延させないように対策を進めていく過程において、御指摘のように、非常に重要な問題としてこの血液製剤によるエイズ患者の問題があるわけでございます。  昨年の九月の十六日でございましたか、前斎藤厚生大臣と千葉先生の社労委員会におきます質疑の状況も会議録で読ませていただきました。その当時、斎藤厚生大臣は、この血液製剤に起因したエイズ患者については千葉先生にお約束をしているわけでございまして、それは発症予防のために自己負担なくして薬が使えるようにする、また相談事業も行う、これはまさに六十三年度予算案の中に盛り込まれているわけでございます。しかし私は、先ほどから申し上げておりますように、エイズ対策を進めていく上で、この血友病患者の中で、まだ比較的少ないわけでございますけれども、エイズ患者の方々の対策というものはもっと救済を進めていくべきだ。また、さきの衆議院の予算委員会における総理の御答弁もあるわけでございまして、現在さらにこのエイズ患者の救済についてどういう方策があるかということを事務当局に今指示をしているわけでございまして、その案がまとまればそのような方向でぜひとも、気の毒な、不可抗力によってエイズの患者になられたこの血友病の関係者の方々に対しては救済を申し上げたいと思います。  いささか長くなりまして恐縮でございます。
  375. 千葉景子

    ○千葉景子君 今気の毒だというお言葉があったわけですけれども、私は、気の毒というよりはむしろやはりこれは国の責任ではないかというふうに思うわけです。  最初に述べましたように、血液行政、それが輸入の血液に頼っていた。アメリカなどは売血の血液がほとんどだというふうに聞いております。そういう意味では、そういう輸入の血液に頼っていた問題、それから最近取りざたをされております加熱製剤への転換がおくれたことなども、これはエイズ感染者を増加させた要因ではないだろうかと思うのですが、この加熱製剤への転換について、厚生大臣はいかにお考えでいらっしゃいましょうか。
  376. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) アメリカにおきまして血液製剤からエイズに感染する例が出てきたという情報を我が国でもキャッチいたしまして、そのためにいろいろな対策をとってまいったわけでございます。  その主なものといたしまして、加熱処理製剤の開発ということがございます。アメリカで開発の指示が行われた直後、日本でも開発の指示をいたしましたわけでございますが、やはり血液製剤を加熱した場合に、本当に人体に対して有害な副作用がないかどうか、これを十分に確認する必要がございましたので、我が国においては一年数カ月をかけていわゆる臨床試験を実施したわけでございます。これはやはり国の医薬品の安全対策として欠かせないものであったわけでございまして、このような必要な臨床試験を行ったということによって結果的にはアメリカの開発に比べて若干時日は後になったわけでございます。  しかし、これは当時の科学技術水準からして最大限の努力を行ったわけでございまして、またその承認手続などについても通常の場合に比して異例の早さで行ったということでございますので、私どもとしては当時としては最大限の努力をもって処理したと考えておる次第でございます。
  377. 千葉景子

    ○千葉景子君 最大限の努力をなさったということですが、じゃ、若干ちょっと事実関係について確認をさせていただきたいと思うのですが、アメリカでは一九八三年の三月に米国防疫センターが、血友病患者のエイズ感染は血液製剤が原因と見られるということを指摘し、米食品医薬品局がトラベノール社の加熱凝固製剤を承認していると、こういう事実がございますが、これらの米国防疫センターの報告あるいは米食品医薬品局の承認の事実、こういうものは厚生省としてはいつ認知をされましたか。
  378. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) ただいまお尋ねのアメリカにおける加熱処理製剤の承認、これは実は肝炎対策用のものでございました。一九八三年三月におきますのは肝炎対策用でございます。アメリカにおいてエイズのための加熱処理製剤の開発指示が行われたのが一九八三年の五月でございます。我が国でもこの情報をいち早くキャッチいたしまして、翌月、六月には厚生省にエイズ研究班を発足させまして、さらに血液製剤のメーカーからもその対策案についてこちらに意見を提出させたわけでございます。そして、五十八年の八月には加熱処理製剤の早期開発を指示いたしております。  また、アメリカでは五十九年の二月に加熱第八因子製剤の承認がおりておりますが、我が国においてもこの事実はその直後にこちらで承認をしておりますが、当時はまだ我が国では臨床試験が始まったところであった、こういうのが事実でございます。
  379. 千葉景子

    ○千葉景子君 これはすぐに事実をお知りになったということですが、それから我が国で加熱製剤の承認がなされるまで二年以上経過をしているということでございますけれども、この二年というのは非常に長い時間ということになります。この間、疑いはあるけれども、これまでの非加熱の製剤が出回っていたということになります。この二年間という時間についてどう考えられていますか。
  380. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) アメリカの加熱因子製剤が承認されましたのが五十九年二月でございます。日本で承認されましたのが六十年の七月でございまして、大体一年四、五カ月という開きはございます。しかし、我が国におきましては、最初にも申し上げましたとおり、日本人の体の中で加熱した血液製剤が本当に副作用なしに使えるものかどうか。特にこの凝固因子製剤というのは、血友病の患者さんがいわば一生使うものである、非常に長期にわたって使うものでありますので、臨床試験においてもやはり一年ぐらいの経過を見る必要があったということでございます。また、それと同時に、しかしながら臨床試験の実施の方法といたしまして、通常百五十例ぐらいを要求するわけでありますけれども、私どもはできるだけ早期に開発したいということで大体四十例ぐらいでこれを了としたわけでございます。また、承認審 査の段階におきましても、他の申請品目を飛び越えてこれだけを特別に早期に承認をしたということで、最大限の努力をもってこの事態の処理に当たったと考えておるわけでございます。
  381. 千葉景子

    ○千葉景子君 この間、国内の血液使用などはできなかったでしょうか。
  382. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) 国内血についても、実はこの血友病患者のための製剤というものはございました。しかしそれは、例えば医者が点滴で長時間にわたって使わなければならないとか、あるいはアレルギー等の副作用があるということで、従来から使ってはおりましたけれども、できれば他のタイプの製剤に切りかえたいというのが関係者の希望でございましたし、また患者の方もそれを希望しておられました。そしてこの新しいいわゆる凝縮型の血液製剤ができたことによって、自分のうちで注射ができる、それから副作用も少ない、こういうことで非常に喜ばれまして、やはり従来の国内血による使用よりははるかに便利であるということになったわけでございます。したがいまして、非加熱の製剤についての問題はございましたけれども、できるだけ早期に加熱に切りかえるという方針で臨んだわけでございます。
  383. 千葉景子

    ○千葉景子君 この血液製剤の承認がなされましてからすぐに非加熱の製剤の回収は指示をなさいましたか。なさったとすれば、それはいつなさいましたか。
  384. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) 六十年の七月に承認をいたしまして、直ちにメーカーは新しい加熱製剤の製造に取りかかりました。そして、国家検定というものが必要でございますので、これを経た後、同年の八月ごろから市場に出したわけでございます。しかし、一度に全需要を賄うだけの量というものは確保することが困難でございましたので、それから大体二、三カ月かかって従来の非加熱製剤と順次交換をしてまいりまして、大体六十年の十一月ごろまでには古い方を全部回収いたして新しいのに切りかえたということでございます。この間やはり非加熱製剤といえども患者にとってはこれを使用しないわけにはいかないという、またほかに使う医薬品かない、こういう性質のものでございますので、一斉に回収してしまうということは患者の生命にもかかわるという、そういう問題があって一斉回収はいたしておりませんけれども、できるだけ早い時期に新しいものと交換する、こういう処理を行ったわけでございます。
  385. 千葉景子

    ○千葉景子君 じゃ、一斉に回収の指示、あるいは一斉回収などはなさっていないということでございますね。
  386. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) 承認後既に新しい製剤との交換が進んでおりましたので、一斉回収指示ということは直接はいたしておりません。しかし、現実にメーカーが新しいもののできる都度古いものと交換をしてまいったわけであります。
  387. 千葉景子

    ○千葉景子君 厚生省は、この加熱製剤の承認がなされて、非加熱製剤ですね、これが全部転換をし、回収をし終わった、それはいつごろだかきちっと把握をなさっていますか。
  388. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) 私どもとしては大体六十年の十一月ごろには交換が終わったというように理解しております。
  389. 千葉景子

    ○千葉景子君 理解をしているということは、メーカーなどに自主的に任せていたということですか。
  390. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) メーカーから交換の状況等について報告をさせまして、その大体の、全体の交換が終わったという理解をいたしたわけでございます。
  391. 千葉景子

    ○千葉景子君 非常にこういう問題についてメーカー任せ、報告を受けるということですけれども、かなり厚生省としてはいいかげんな対応をなさっていたのではないだろうかと思わざるを得ないんですね。  先ほどお話にも出ましたけれども、血友病患者の皆さんはこれを使わなければならない、こういう立場にあったわけですから、そういう意味では、まさに避けることができない一方的な被害者であるというふうに言わざるを得ないかと思うんです。そういう意味では、法的に責任を云々とまでは言いませんけれども、国として患者の皆さんに、先ほど厚生大臣からも話がありましたけれども、きちっとした補償をしていくというような方向をやはりもう打ち出すべきではないでしょうか。
  392. 藤本孝雄

    ○国務大臣(藤本孝雄君) 先ほど申し上げましたように、血友病患者の中でエイズ患者になられた方々に対しての救済はやらなきゃならない。どういうことがやれるかということの検討中でございまして、まだその時期ではありませんので、御理解いただきたいと思います。
  393. 千葉景子

    ○千葉景子君 これについては、検討をなさり、逐次国会の方に報告をいただきたいというふうに思います。  次に、今エイズの関連の問題をお聞きしましたけれども、やはり私たちの健康に関連する問題でインフルエンザの問題がございます。  ことしもインフルエンザの予防接種、昨年からですね、六十二年度、各自治体などで予防接種が実施されているようでございますけれども、そこでまずお聞きをしたいと思いますが、六十二年度、インフルエンザ予防接種の実施状況を御報告いただきたいと思います。これは接種率あるいは接種の方法、これについて御回答をいただきたいと思います。
  394. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) インフルエンザの予防接種の問題については現在各所でいろんな御議論があるわけでございますが、インフルエンザが非常に大きな流行をまだまだ起こしておるという現状において、これを防ぐのは予防接種以外にはない、こういうことでございまして現在も続けておるわけでございますが、六十二年の全国の接種率は、第一回目が五一%、それから第二回目が四二%というような数字になっているわけでございます。市町村別に見ますと、接種率は非常に高いところ、それから低いところもございます。
  395. 千葉景子

    ○千葉景子君 今、一回目が五一%、二回目が四二%ということですが、インフルエンザの予防接種というのは二回をやるということで意味があるというふうにこれまで厚生省も言ってきているわけですけれども、二回接種したその接種率というのは出さないんでしょうか。
  396. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 両方を完結したという意味では二回目の四二%という数字になるわけでございます。
  397. 千葉景子

    ○千葉景子君 これは二回とも接種した接種率と解してよろしいですか。
  398. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) そのとおりでございます。
  399. 千葉景子

    ○千葉景子君 大変接種率が近年の中では低下をしていると言ってよろしいんじゃないかと思うんです。  厚生省はこれまで、インフルエンザの予防接種については、市町村が法により義務づけられた接種としての位置づけを明らかにして、なお予防接種の効果についても十分な啓発を行って、そして対象者の自発的な接種を呼びかけていくというふうに言われ、同意方式なども採用されてまいりました。その結果、むしろ接種率というのは近年に比べて激減をしていると言っても過言ではない、かと思いますが、この結果について厚生省はどうお考えですか。
  400. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 予防接種率が六十二年は減少をしてきた、それは事実でございますが、なぜそういう状況が起こっておるのか。いろんなことが現在も考えられるわけでありますけれども、私どもとしても、今後ともさらにその理由あるいは原因というものを分析する必要があると思います。しかし、ワクチン以外に有効な予防方法がない、こういうことから考えますと、今後ともさらに国民の御理解を得るようさらに我々としては努力をしてまいりたい、このように考えているわけでございます。
  401. 千葉景子

    ○千葉景子君 ことしも各市町村などの実態を見ますと、少ないところでは本当に数%、あるいは長野県の軽井沢などでは、もうこんなものは効果がないから接種は見合わせるというようなことも ございますし、埼玉県の上福岡市などでは集団接種の中止を求める請願が議会の全会一致で採択をされている、こういう実態もあるわけでございます。  こういう中で、厚生省はこれからも理解を求めていくということですけれども、一体行政の目標としてはどのくらいの接種率を確保していきたいと、それが必要だというふうに考えていらっしゃいますか。
  402. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) このインフルエンザの予防接種の問題というのは生物現象でございまして、数量的にどこまでということはなかなか明確に言うことが非常に難しいわけでございます。集団免疫効果については、これをそう明確に示すデータが現在のところまだ確立をされていないわけでありますが、それぞれ予防接種を受けた個人の方についての発症の予防あるいは重症化の防止ということは科学的に証明をされておりますので、そういう段階でございますので、今後とも予防接種の率を上げていく、こういう努力を私どもとしてはさらに進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  403. 千葉景子

    ○千葉景子君 率を上げていくと言いますけれども、どのくらい目標として率を上げていきたい、こういうことは当然あるはずじゃありませんか。もしないんだったら、別にことしの実態を見てそんなにこれからも接種率を上げようということにそう極端にこだわる必要はないのではないかと思うんですけれども、そうすると、これまで何にも目標もなく実施を続けてきたということになりますけれども、いかがですか。
  404. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 従来ですと大体六〇%前後のところで水準を保っておったわけでございまして、できればその線を回復、維持していきたいというふうに考えておるわけでございます。  ただ、この問題は、流行の大きさと、それからその予防接種をするという、非常に言ってみれば社会的なコストのかかる問題でございますので、そういう両者のバランスの上に立って各都道府県あるいは市町村も判断をしている点があると思います。
  405. 千葉景子

    ○千葉景子君 その六〇%程度確保することによっていかなる効果が生ずるんでしょうか。ことしは四二%ということですけれども、これと比較していかがですか。
  406. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 先ほども申し上げましたが、このインフルエンザの流行というのが常に予防接種をしない場合にどのくらいの一定の数字になるか、あるいは予防接種をすればどのくらいまで下がるかということは、これはなかなか判断が難しいわけでございます。しかし、経時的にずっとここ十年くらいの経過を見ておりますと、流行がやや小型化をしてきておる、こういう傾向にもあるわけでございます。  なお、ただことしはまたやや流行の兆しが見えておるというようなことで私どもは心配をしているわけでありますが、そういう意味で何%になればどのぐらいに抑えられるか、これは非常に判断が難しいわけでございますが、個々の接種を受けた方にとってはその発病が防止されている、あるいは重症化が抑えられているということから考えて効果があると、私ども、それは当然専門家の意見も踏まえてでございますけれども、そういう判断をしているわけでございます。
  407. 千葉景子

    ○千葉景子君 要するに、何%になったから特に集団的な防衛効果あるいは社会的な防衛効果があるというはっきりしたことはわからないんですよ。厚生省のインフルエンザ流行防止に関する研究班でもこのことは明らかにしているところなわけですけれども、こういうことしの実態あるいは集団的な免疫効果、こういうものがほとんどはっきりしないという状態の中では、そろそろ集団でやる予防接種、これについては再検討すべきではないかと思いますけれども、それについて伺いたいと思います。  まず、この予防接種の実施についてですけれども、これは臨時に行われる予防接種ですが、この臨時の予防接種の実施の判断はだれか行いますか。
  408. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) これは基本的には都道府県知事あるいは市町村長が行うということになっておりますが、現在、この十年来の状況を踏まえて、厚生省としては予防接種を継続していくという基本的な方向で指導を申し上げているところでございます。
  409. 千葉景子

    ○千葉景子君 こういう集団的な効果がはっきりしない、そしてこれだけ接種率が低下をしているという中で、その指導というのをもう見直されたらいかがでしょうか。
  410. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 先生のそのような御主張ではございますが、やはりさらに国民の理解を得ながら現在の状況を維持していきたい、これが厚生省の立場でございます。
  411. 千葉景子

    ○千葉景子君 以前にもお聞きしたことがあるんですが、判断は都道府県の知事あるいは市町村長がなさる。この判断について厚生省としては、その判断に対してそれがいかぬとか強制をする、そういうような立場にはないわけですね。
  412. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) これは法的には義務接種と、こういうことになっておりますが、そこはそれぞれのいろんな状況がそこにあるという前提に立っておりますので、強制という考え方はないわけでございます。
  413. 千葉景子

    ○千葉景子君 厚生省は予防接種の実施要領というものをつくっておりまして、その中で対象者を保育所、幼稚園、小中学校、こういうことで要領をつくっていらっしゃいますけれども、この実施要領というのはどういう意味を持っていいますか。
  414. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) この予防接種は先生御存じのように予防接種法に基づくわけでございますが、それを具体的に適切に行っていくために詳細な説明をしておるわけでございまして、これは局長通知という形で都道府県知事にあてて示しておるわけでございます。
  415. 千葉景子

    ○千葉景子君 これは予防接種実施の判断をする知事あるいは市町村長の権限を制約する、これに基づかなければならないという意味を持っているでしょうか。
  416. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 法に基づく行政の指導でございますので、そのように理解をしていただきたいと思います。
  417. 千葉景子

    ○千葉景子君 今回このように接種率が下がってきたわけですけれども、集団で予防接種をこれまで行ってきた、そしてこれをやる法的な根拠、それから集団接種でやるメリット、デメリット、こういうものはどこにありますか。
  418. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 集団でやるかどういう方式でやるかについては別に法は定めていないわけでございますが、現実問題としてインフルエンザの被害を一番受けるのは小中学校、集団生活をしているそういう方々であります。そういうことから考えますと、どうしてもそこへ重点を置いて考えたい。  それから集団でやる効果とそのデメリットでございますけれども、これは御存じのように、集団でやるということは非常に効率性が高い、こういうことでございます。一方、デメリットというのは、非常に画一的にやるということで、いろんな重要な阻害要件を持っておるような場合にそれを見落としてしまう心配がある、こういうことがあるわけでございます。  したがって、今回の厚生省の指導の方針の中で、個別のいろんな、被接種者の健康状態、あるいはそれを含めた保護者のいろんな考え方、そういうものについても十分配慮をして、その上で予防接種を進めるということを期待しておるわけでございます。
  419. 千葉景子

    ○千葉景子君 厚生省はこれまでも集団接種でやることは効率的だと、多数に一斉に接種ができるというようなことも述べてこられているわけですね。しかし、ことしのような接種率の低下によって、もう集団でやっているというその効率的だというメリットは失われてきているんではないだろうか、そういうふうに思うわけです。そしてその反面、画一的だとさまざまな事故なども起きやすいという点を考えますと、集団接種方式、これは 法で定められているものではないということですから、これはこの際、検討し直すということをされたらいかがでしょうか。
  420. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 先ほど来申し上げておる理由から、今後ともこういう方向で関係者の理解を得ながら維持をしてまいりたいと、こう思っております。
  421. 千葉景子

    ○千葉景子君 同じことの繰り返ししかおっしゃらないわけですけれどもね。  予防接種ハンドブックという中には、むしろ個別接種方式は「健康被害の発生を少なくすることが期待できる」、そして「個別接種体制の整備を推進する必要がある。」というふうなことを挙げられているわけですけれども、この推進力、この個別接種体制、こういうものについてはどのように取り組まれているんでしょうか。
  422. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 確かに個々の被接種者を一人一人ということが本来ならば一番望ましいわけでございますけれども、現実問題として、それは非常にコストもかかる、あるいは時間もかかるというようなことで、現在の方法の中で個々のいろんな問題点をきちんと把握しながらやるという方向が一番現実的ではないかと考えております。
  423. 千葉景子

    ○千葉景子君 そういう経済的な問題と、そして本当に子供たちの個々の健康、あるいは身体、生命ですね、こういうものと一体どっちが大切で、どちらに重きを置かれているんでしょうか。
  424. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) もちろん、個人個人の生命の問題、健康の問題、非常に重要だというふうに考えておりますが、これも現実問題としてどこで妥協をするのか、そういう個々のいろんな被害の発生をする可能性、そういうものを別の方法で抑えていく、そういう両面相まって現実的な予防接種のやり方を考えていきたいというふうに思います。
  425. 千葉景子

    ○千葉景子君 別な方法で考えられているというんですけれども、それでは、インフルエンザの予防接種の副作用による事故ですね、こういうものがどのくらいあるか、厚生省は把握されていらっしゃいますか。
  426. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) インフルエンザの予防接種の健康被害、これに対する救済の制度があるわけでございますが、この制度に乗っていろんな申請がなされておるわけでございますが、非常に重度な障害、あるいは死に至るような障害、これは非常に数が少ないわけでございまして、年間、ゼロの場合が非常に多いわけですが、一ないし三というような数字になります。なお、軽度な障害につきましては、年間、最近二例とか五例とかいう数字でございます。
  427. 千葉景子

    ○千葉景子君 少ないということですけれども、年間一から三、重度あるいは死に至るというような副作用事故があるわけですね。あるいは軽度のもの、これは申請をなされないさまざまな事故というのは相当な数に上るだろうと思いますけれども、これらについての事故調査原因の究明、こういうことについては厚生省はどのように取り組まれていますか。
  428. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) いろんな場面でこういう生物学的な製剤についての事故の防止ということの研究努力は進めておるわけではございますが、本来こういう生物学的製剤の持っておる制約として、どうしてもそういう問題がゼロにはならないということがあるわけでございますが、今後ともそういう問題について研究の分野でも大いに努力をしておりますし、さらに事故の少ないインフルエンザワクチンの開発というようなことも進めておるわけでございます。
  429. 千葉景子

    ○千葉景子君 そういうことを言っているんではなくて、接種による副作用事故について、厚生省はその数、あるいはその副作用事故の起こった年齢、あるいは接種の場所、接種の方法、そしてその原因、こういうものを把握されていらっしゃるかと聞いているんです。
  430. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 先ほど申し上げた事例についてはすべて把握をしておるわけでございます。  個別の事例について、年齢、接種場所等を詳細に明らかにするということは、個人が特定されるという心配もございますので、現段階ではプライバシー保護という観点からもそれらを公表するということは差し控えさせていただいているところでございます。
  431. 千葉景子

    ○千葉景子君 プライバシーというふうにおっしゃいますけれども、別に個人の名前を公表したりせいと、こういうことを言っているわけじゃないんですよ。  例えば、幾つぐらいのお子さんがどういう接種方法によって、そしてどんな原因で副作用の事故が起こったのか、こういうことを明らかにしていただきたい、把握をしているのかどうかというふうに私は聞いております。
  432. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 現在先生のお求めになっている細かな資料まではここで持っておりませんので、必要がございますれば後ほどまたデータを提出させていただきたいと思います。
  433. 千葉景子

    ○千葉景子君 これは私従前から知らせてほしいというふうに言っておりますよ。しかし出していただいていない。今後この事故例については調査報告を出していただけるんですか。それはお約束いただけますか。
  434. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 健康被害の救済制度に乗って報告をされたものについては先ほど申し上げたようなことでございますので、その点については御報告を申し上げることができると思います。  それから、その周辺にまだどういう問題があるかというようなことについては、市町村でいろんな専門家を含めて議論をしながら、本当に予防接種と関係があるのかどうかというようなことは現場でもきちんと詰め、ほかの病気でたまたま事故が重なるというようなことも非常にケースが多いわけでございます、非常に大量の数を扱うわけでございますのでそういうことにぶつかることも多い。そういうものが都道府県を通して厚生省に進達され、それが専門家の議論を経て先ほど申し上げたような数字になっている、こういう経過でございます。
  435. 千葉景子

    ○千葉景子君 数字だけを聞いているのではないんですよ。事故の内容ですね、それについてきちっと報告をしてほしいと言っているわけです。  厚生省はこの接種をこれからも続けていきたい、接種率を上げていきたい、そういうことをおっしゃっているわけですよね。そういう義務として履行されようというならば、その中で起こる事故についてはきちっと調査をして国民に明らかにする、そして事故防止を図っていかなきゃ、これは恐ろしくてこんな接種を受けていられないじゃないですか。いかがですか。
  436. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 特にそういう点について資料を押さえている、そういうことではございませんので、必要に応じてまた十分に適切な材料を御報告申し上げたいと思いますが、予防接種の被害者の認定制度が創設されて以後、現在認定をされたケースが八十六ございます。それらについては死亡された方もございますしあるいは障害年金を受けておられる方もあるわけでございます。  その数字を簡単に申し上げますと、現在、医療手当あるいは医療費の支給を受けているケースが六十三、それから障害児の養育年金を受けているケースが六、それから障害年金、これは十八歳以上でございますけれども、そういうものを受けているケースが十三、死亡一時金を受けたケースが四、こういうことになっております。
  437. 千葉景子

    ○千葉景子君 全然すれ違っているんですけれども、その数、結果、今どういう補償を受けているかということではなくて、その事故原因がどういうところにあるのか、そういうところを明らかにしていただかなければいけないわけですよ。それについて出せるのか出せないのか、はっきりしていただきたいと思います。
  438. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 先ほど来申し上げておるわけでございますが、事故原因というのは予防接種を受けたという事実以外に全く理由が見当たらないもの、これを被害者として認定している わけでございまして、生物学的な製剤でございますので、そういう免疫の異常反応とかそういうことで障害が起こるわけで、それは脳の障害を起こすケースもございますし、あるいは手足の運動機能が障害を起こすというようなケースもあるわけでございますが、こういうもののメカニズムとか理由とか、そういうものについては現在の医学でもなかなか解明し切れないという状況にあるわけでございます。
  439. 千葉景子

    ○千葉景子君 ちょっと、時間がもう本当にたってしまうんですけれども、事故報告をしていただけるのかどうか、それだけをはっきりと答えていただきたいと思います。
  440. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 先ほど来申し上げておるとおりで、必要なものは御報告をさせていただきたいと思います。
  441. 千葉景子

    ○千葉景子君 それじゃ全然回答になっていないじゃないですか。ちゃんと調査報告を出せるのか出せないのか、それを聞いているんですよ。
  442. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 必要なものについて、後刻報告をさせていただきます。
  443. 千葉景子

    ○千葉景子君 これまで出さないと言っていたんですよ。どういうことですか。必要なものとかじゃなくて、報告をきちっと出すか出さないかを聞いているんですから。
  444. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 個人のプライバシーにかかわらない範囲で出させていただきます。
  445. 千葉景子

    ○千葉景子君 それはいつまでに出していただけますか。
  446. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) 早急に出させていただきます。
  447. 千葉景子

    ○千葉景子君 早急と言ってもはっきりしませんけれども、この予算委員会の間に報告をいただけますか。
  448. 北川定謙

    政府委員(北川定謙君) そのようにさせていただきます。
  449. 千葉景子

    ○千葉景子君 じゃ、これについては、それを踏まえてまた後日質問をさせていただきます。  それでは、次の課題を質問させていただきたいと思います。  竹下総理は、これまで常々、物事を頭でよく整理をして考えるようにしているというふうにおっしゃっていらっしゃいますので、多分施政方針演説などもよくよく整理をなさって訴えられたというふうに思います。しかし、あれを読ませていただいて、どうしても何か忘れていらっしゃるものがあるんじゃないか、そう思えてならないわけです。  我が国が平和に徹し、世界に貢献する日本の姿勢を確立することが必要である、それからこの予算委員会の冒頭でも、まあどちらかと問われれば護憲の立場だということもおっしゃっていらっしゃいますけれども、何かこの間忘れていることがないか考えていただきたいと思うんですが、私は、それは一つはやはり人権の問題ではないかと思うんです。  中曽根前首相は時々人権ということについて触れていらっしゃいましたけれども、竹下総理の施政方針演説の中ではこういう問題はとりわけに触れられていないように思いますが、この人権の問題についてどう認識をされていらっしゃいますか。
  450. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これは最も基本的な問題である。強いて、先生に非礼になるかもしれませんが、触れるというよりも、触れなくてもみんなが自覚しておる問題じゃないか、あえてお答えさしていただくならば、非礼でなかったらそういうお答えをお許しいただきたいと思います。
  451. 千葉景子

    ○千葉景子君 竹下総理は、人権問題について、現在我が国の中でどんなことが課題であるというふうに思いますか。
  452. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) いろんなことがございますが、もろもろの差別とかそうした問題がいろいろ議論されておるというふうに考えております。
  453. 千葉景子

    ○千葉景子君 もろもろのと言われても、全然それは内容がわからないわけで、もう少し具体的にこれから解決していかなければいけない課題としてどんなことを頭に描かれますか。
  454. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) やっぱりもろもろということで御判断いただきたいと思います。
  455. 千葉景子

    ○千葉景子君 もう少しこの問題については鋭い目を向けて、こういう課題についてはことしこそ取り組んでいこう、こういう姿勢をやはりとっていただきたいと思うんです。  ことしは世界における人権の分野でも大変重要な節目になっておりますけれども、どんな年であるかということを総理大臣は御存じですか。
  456. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) そのことは承知しております。  幾ばくか整理したものをお答えいたします。子供、老人、女性、障害者等に関する人権問題、それから報道関係等によるプライバシーの侵害問題、それから社会の国際化に伴います外国人のお方の人権問題、それから差別問題等広く社会のあらゆる局面、いわゆるもろもろでございますが、等に関する人権問題、こういうものが存在しておるであろうというふうに思っておるところでございます。
  457. 千葉景子

    ○千葉景子君 それは先ほどの問いの回答のように思いますが、ことし世界的に非常に節目の年である、それを御存じかどうか質問させていただきたいんですが、いかがですか。
  458. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) わかりました。世界人権宣言四十周年の取り組み、こういうことであると思います。
  459. 千葉景子

    ○千葉景子君 メモの順番を間違えられたのかどうかわかりませんが、確かに世界人権宣言四十周年の年に当たっております。この中で国連は決議を行い、人権についてさまざまな勧告あるいは提案などを行っているわけですけれども、こういう国連の提案などについて、総理はどのように対処をなさるおつもりでしょうか。
  460. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) あらゆる機会をとらえて、そして世界人権宣言の周知を図っていくということであろうと思っております。
  461. 千葉景子

    ○千葉景子君 幾つか具体的にお尋ねしたいと思うんですが、その中で国内レベルでできることということで、十二月の十日には人権デーを定めるとか、あるいは国家元首、政府の長などの人権に関する特別メッセージを出すとか、それから人権の分野における国連の国際的文書の未批准国はその締約国となるよう特別な検討を行っていくとか、こういうものが内容として提起されているわけですが、これらについてはいかがですか。
  462. 林田悠紀夫

    ○国務大臣(林田悠紀夫君) 先ほど総理からお答えがありましたように、ことしは人権宣言の四十周年目に当たります。そこで十二月四日から十日までを人権週間と定めまして、その間に、東京におきましては人権の記念大会をいたし、また各地方におきまして、今御指摘のありましたような人権デーをつくり、いろんなパンフレットとかあるいははがきなどを用意いたしまして、人権を擁護するというキャンペーンを大々的にやりたいと、かように考えております。
  463. 千葉景子

    ○千葉景子君 人権の分野における批准をしていない条約などについては、今後どう取り組んでいかれるおつもりでしょうか。
  464. 宇野宗佑

    ○国務大臣(宇野宗佑君) いろんな条約がございますが、その趣旨、目的並びに国内法等の整備、そうしたことを十分検討いたしまして、極力この締結に向かいたいと、こういう考えであります。
  465. 千葉景子

    ○千葉景子君 では、その中で非常に重要な問題について具体的にお尋ねしたいと思います。  我が国では国際人権現約、A規約、B規約、ともに批准をしておりますが、そのB規約の選択議定書、これはこれによって国内で法差別などを受けたときに国連へ提訴ができる、不服の申し立てができるという、そういう内容を持つ選択議定書、これの批准がなされていないわけですけれども、これは何か理由がありますか。
  466. 宇野宗佑

    ○国務大臣(宇野宗佑君) 今指摘されました議定書、今おっしゃったとおりに個人のいろんな人権問題、これを通報することができる、それを国際機関において検討する、そういうような内容でございますね。しかし、そうしたことが事実機能するかしないか、そうしたことを十分確かめてやり たいという考え方であります。
  467. 千葉景子

    ○千葉景子君 機能するかどうか、それはこういうものを批准して利用する場合があるかどうかやってみなければわからないことですけれども、具体的にはどういうことを考えていらっしゃるんですか、その機能するというのは。
  468. 宇野宗佑

    ○国務大臣(宇野宗佑君) 実効的な制度として機能するかどうかということが一つと、もう一つは国内法等整備との関係、こうした問題がございますから、十二分にその点を検討しようということでございます。
  469. 千葉景子

    ○千葉景子君 実効性という意味では、これはその選択議定書を批准することによって、何かあればいつでも個人が不服申し立てをできるということですから、十分に実効性はあるのではないかと思います。  国内法との関係、どんなところが問題になりますか。
  470. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) まず国内法との関係でございますが、これは個人が直接国連の方に訴えるということでございますけれども、それによりまして例えば我が国の司法権の独立との関係、この辺がどうなるか、そういった問題もございます。  それから先ほど委員が御質問なさいました実効性という点でございますけれども、これにつきましては、こういった個人の通報制度ということにつきまして我が国は未経験でございます。これについては幾つかの国がこういった条約を批准しておりますけれども、それは実は欧州でありますとか、既にその地域としてこういった制度を採用しているというところでございまして、我が国といたしましては、そういった観点からこの各国の運用状況、それもできるだけ広い諸国における運用状況、そういったところを見きわめたいということでございます。
  471. 千葉景子

    ○千葉景子君 しかし、総理も言っていらっしゃるように、非常に我が国も国際的に重要な役割を果たさなければいけない、こういうことを言われているわけですよね。この不服審査機関である人権専門委員会には日本政府も委員を推薦していらっしゃいますね。
  472. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) B規約の専門委には日本からも出席しております。
  473. 千葉景子

    ○千葉景子君 だとすれば、そういう、委員は派遣をしている、しかしながら自分の国のことについては批准をしないということになるわけですけれども、おかしくありませんか。
  474. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) B規約自体は大変広範な内容を含んだ規約でございまして、このB規約の選択議定書は若干特殊な地位を持っているわけでございます。 したがいまして、B規約全体に対する日本政府の態度というものとこの選択議定書に対する態度というのは若干特殊であるということでございます。
  475. 千葉景子

    ○千葉景子君 ただ、今世界が国境を越えて広くなっている時代ですけれども、これは例えばこの選択議定書に加入している国の人が日本で何か人権の侵害を受けたという場合、日本で選択議定書に批准をしていないということになりますと、これによる救済申し立てというのはできませんね。
  476. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) できません。
  477. 千葉景子

    ○千葉景子君 逆に今度は、日本の国民が外国に在留をしてそこの国が選択議定書を批准していれば、申し立てはできますね。
  478. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) その場合はできます。
  479. 千葉景子

    ○千葉景子君 そうなると、国際的に見ても非常に片手落ちじゃないか。やっぱり相互の人権を確立していこう、お互いに監視をしていこうということから見れば、この選択議定書を批准しないということは国際的にも非常におくれた立場ではないかと思うんですが、いかがですか。
  480. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 日本の場合、内外人平等ということがございますので、その点は国内法でもカバーできると思います。
  481. 千葉景子

    ○千葉景子君 これだけ、我が国も国際的に経済大国である、そして国際社会における責任も大きくなってきたというときに、この選択議定書への加入をして、そして世界が注目する中で日本が人権の面でもやはり先進国だと言われることは、非常にこれからの国際関係の中でも大切なことであり、長い目で見ればむしろ有効な投資とも言ってもいい問題ではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。安倍前外相も中曽根前首相も前向きに検討すると言っているわけですけれども、いつも前向き前向きで一向に進行がないという状態なんですけれども、一体この前向きはいつになったら回答が出るんでしょうか。
  482. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 先ほども申し上げましたけれども、各国の運用例の積み重ね等を十分把握して、その上で判断したいと思っております。
  483. 千葉景子

    ○千葉景子君 むしろこういう問題については、日本はエコノミックアニマルだとばかり言われないためにも、率先してこういう問題に取り組み世界の信頼を得る、こういうことが大切ではないかと思うんです。そういう意味では、この取り組み方について、総理大臣、お考えを伺いたいと思います。
  484. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) したがって、正確に申しますならば、前向き後ろ向きと言うとまた表現がちぐはぐでございますから、その方向に向かって検討をいたします。
  485. 千葉景子

    ○千葉景子君 このままですといつになったらこの回答が出るのか一向にわからないわけですけれども、いつまでも日本が笑われないようにぜひ取り組みを進めていただきたいというふうに思います。  次に、これに関連しますけれども、この国際人権規約B規約、これは国連への報告が義務づけられておりますが、昨年十二月二十四日にこのB規約に関する報告書を国連の方に提出されましたね。
  486. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 提出いたしました。
  487. 千葉景子

    ○千葉景子君 その報告書、その内容を明らかにしていただけませんでしょうか。
  488. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) この報告書は、第一回目の報告に続きまして、その後五年間のこのB規約の各条に関します実施状況、これを報告したわけでございますけれども、これはB規約の人権委員会による検討のために国連に提出したものでございます。  したがいまして、この趣旨からいきまして、国連側がこの委員会の検討に供するため国連文書として配付するのを待ってその内容を公表させていただきたいと思います。
  489. 千葉景子

    ○千葉景子君 何か国連の方から、これは事前に国民に明らかにして、あるいは国会での討議に付してはいけないというような規制でもあるんでしょうか。
  490. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 禁止はされておりません。
  491. 千葉景子

    ○千葉景子君 じゃこれは国会に明らかにして、こういう報告をすると。これは報告をすることによって日本はこういう状況にあるんだということが明らかになるわけですから、国民にとってもそれから国会の我々にとっても大変関心の深いところなわけです。そういう意味では、国会を尊重する意味でもこの内容を提出、あるいは明らかにされる必要があるんじゃないかと思いますが、いかがですか。
  492. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 禁止されていないと申しましたけれども、実は国連のこのB規約の委員会の審査のために出したわけでございまして、各国とも、ほとんどの主要国は国連から文書として公表されるという場合以外には国内の発表を行っていないというのが現状でございます。
  493. 千葉景子

    ○千葉景子君 別にほかの各国がやってないから日本がそれに倣ってやらなければいけないという理由はどうも一切ないようなんですけれども。これまでも、その報告に基づいて、ふたをあけてみたらとんでもないことが書いてあったというようなことも過去我々は経験しているわけです。だとすれば、やはり事前に、こういう報告をするがいかがなものか、こういうことを国民に問う、あるいは国会で審議をする、当然のことじゃないですか。
  494. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) これは各国の間でほぼ確立いたしました慣行でございますので、それから もう一つ、この報告書自体は四月に国連文書として報告されるということになっておりますので、もうしばらくお待ちいただきたいと思います。
  495. 千葉景子

    ○千葉景子君 別にもうしばらく待てという問題ではなくて、国民の権利についての文書、こういうものですから、やはり国会を中心にしている我が国としては国会に提出をして、そしてそこで十分に検討した上で、そして国連にはっきりとした、きちっとした報告をすべきではないだろうか、そう思いますが、今後検討なさるお気持ちはありませんか。
  496. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 問題によりましてはそういうことも検討させていただきたいと思います。
  497. 千葉景子

    ○千葉景子君 問題によってはというのは、それはそちらで選択されても困るわけですよ。どういう内容で報告をされていくのか、これは私たちの権利にとっても大変重要な関連のある問題なわけです。場合によってはとか中身によっては、そういうことで回答なさるのではなくて、今後国会へ報告をしてそして十分な検討をする、こういう方向で検討するかどうか、その点についてお答えいただきたいと思います。
  498. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) やはり基本的には、これは政府の責任で提出するものでございますので、これが国連で発表されるまで公表を差し控えさせていただきたいと思います。ただ先ほど、原則としてはそういったことでございますけれども、問題によっては事前に御相談することもあり得る、こういうことを申し上げたわけでございます。
  499. 千葉景子

    ○千葉景子君 政府の責任ということであれば、それを国会が知るということは当然のことじゃないだろうかというふうに思うんですけれども。問題によっては公表するというのは、じゃ何を、どういう点については公表あるいは報告されたいというふうにお考えなんですか。
  500. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 例えば、幾つか既に報道がございましてあるいは誤解を生ずるおそれがあるような問題につきましては、場合によってはその要旨をあらかじめ御報告するということはあるかと思います。
  501. 千葉景子

    ○千葉景子君 公表なさらない、だから誤解を生むようなことになるんじゃないですか。きちっと答弁をしてください。
  502. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 基本的には政府の責任で作成しその報告をさせていただきたいと思います。
  503. 千葉景子

    ○千葉景子君 全然、答弁がその都度違うじゃないですか。はっきり統一させてください。  出すのか出さないのか。場合によっては出すなら、どういうときには出すのか。
  504. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 政府の責任で提出いたしまして、その責任は政府がとるということでございます。
  505. 千葉景子

    ○千葉景子君 公表するという話もさっきなさっていたと思うんですけれども。  先ほどから答弁がくるくる変わるわけですよ。ある場合には公表をするとおっしゃったり、あるいは誤解を招くようなことがあるからそのときには公表をするとか、統一したきちっとした、公表するのかしないのか、あるいはもし場合によってというならば、どういうときにどういう問題については公表するのか、はっきりと答弁をいただきたいと思います。
  506. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) いずれにしても、原則として政府の責任で行います。それはまた、政府が判断して政府としてその発表をする場合もあるかもしれません。しかし、いずれにしても、原則としては政府の責任において提出し、国連の発表を待つということでございます。
  507. 千葉景子

    ○千葉景子君 公表するかどうかを聞いているんですよ。
  508. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 速記をとめて。    〔午後六時十八分速記中止〕    〔午後六時五十三分速記開始〕
  509. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 速記を始めて。  ただいまの件につきましては、理事会において協議いたします。  千葉君の残余の質疑は明日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時五十四分散会