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1988-03-14 第112回国会 参議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月十四日(月曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  三月十二日     辞任         補欠選任      久世 公堯君     工藤砂美君      佐藤謙一郎君     降矢 敬義君      鈴木 貞敏君     斎藤 文夫君      田辺 哲夫君     北  修二君      福田 幸弘君     岩上 二郎君      本村 和喜君     中西 一郎君      峯山 昭範君     及川 順郎君      勝木 健司君     井上  計君      秋山  肇君     野末 陳平君  三月十四日     辞任         補欠選任      出口 廣光君     林 健太郎君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         原 文兵衛君     理 事                 伊江 朝雄君                大河原太一郎君                 小島 静馬君                 林  ゆう君                 吉川 芳男君                 久保  亘君                 矢原 秀男君                 吉川 春子君                 三治 重信君     委 員                 石井 道子君                 石本  茂君                 岩上 二郎君                 梶木 又三君                 北  修二君                 工藤砂美君                 斎藤 文夫君                 坂野 重信君                 坂元 親男君                 志村 哲良君                 下稲葉耕吉君                 田中 正巳君                 中曽根弘文君                 中西 一郎君                 永田 良雄君                 野沢 太三君                 林 健太郎君                 降矢 敬義君                 増岡 康治君                 松岡滿壽男君                 稲村 稔夫君                 小川 仁一君                 大木 正吾君                 千葉 景子君                 野田  哲君                 安恒 良一君                 及川 順郎君                 広中和歌子君                 和田 教美君                 市川 正一君                 橋本  敦君                 井上  計君                 野末 陳平君                 下村  泰君                 青木  茂君    国務大臣        内閣総理大臣   竹下  登君        法 務 大 臣  林田悠紀夫君        外 務 大 臣  宇野 宗佑君        大 蔵 大 臣  宮澤 喜一君        文 部 大 臣  中島源太郎君        厚 生 大 臣  藤本 孝雄君        農林水産大臣   佐藤  隆君        通商産業大臣   田村  元君        運 輸 大 臣  石原慎太郎君        郵 政 大 臣  中山 正暉君        労 働 大 臣  中村 太郎君        建 設 大 臣  越智 伊平君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    梶山 静六君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  高鳥  修君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (沖縄開発庁長        官)       粕谷  茂君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  瓦   力君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       中尾 栄一君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       伊藤宗一郎君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  堀内 俊夫君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  奥野 誠亮君    政府委員        内閣法制局長官  味村  治君        内閣法制局第一        部長       大出 峻郎君        警察庁刑事局長  仁平 圀雄君        警察庁刑事局保        安部長      漆間 英治君        警察庁警備局長  城内 康光君        総務庁長官官房        会計課長     八木 俊道君        総務庁行政監察        局長       山本 貞雄君        北方対策本部審        議官       鈴木  榮君        北海道開発庁総        務監理官     中田 一男君        防衛庁参事官   小野寺龍二君        防衛庁長官官房        長        依田 智治君        防衛庁防衛局長  西廣 整輝君        防衛庁教育訓練        局長       長谷川 宏君        防衛庁人事局長  松本 宗和君        防衛庁経理局長  日吉  章君        防衛庁装備局長  山本 雅司君        防衛施設庁長官  友藤 一隆君        防衛施設庁総務        部長       弘法堂 忠君        防衛施設庁施設        部長       鈴木  杲君        防衛施設庁建設        部長       田原 敬造君        防衛施設庁労務        部長       山崎 博司君        経済企画庁調整        局長       横溝 雅夫君        経済企画庁物価        局長       冨金原俊二君        経済企画庁総合        計画局長     星野 進保君        科学技術庁科学        技術振興局長   吉村 晴光君        科学技術庁研究        開発局長     川崎 雅弘君        環境庁水質保全        局長       渡辺  武君        沖縄開発庁振興        局長       塚越 則男君        国土庁長官官房        長        清水 達雄君        国土庁長官官房        審議官        兼内閣審議官   荒木  寛君        国土庁長官官房        会計課長     佐々木 徹君        国土庁計画・調        整局長      長沢 哲夫君        国土庁大都市圏        整備局長     北村廣太郎君        法務省刑事局長  岡村 泰孝君        法務省入国管理        局長       熊谷 直博君        外務大臣官房外        務報道官     松田 慶文君        外務大臣官房領        事移住部長    黒河内久美君        外務省北米局長  有馬 龍夫君        外務省経済協力        局長       英  正道君        外務省条約局長  斉藤 邦彦君        外務省国際連合        局長       遠藤  實君        大蔵大臣官房会        計課長      佐藤 孝志君        大蔵省主計局長  西垣  昭君        大蔵省主税局長  水野  勝君        大蔵省国際金融        局長       内海  学君        文部省初等中等        教育局長     西崎 清久君        文部省教育助成        局長       加戸 守行君        文部省高等教育        局長       阿部 充夫君        文部省高等教育        局私学部長    坂元 弘直君        文部省学術国際        局長       植木  浩君        文化庁次長    横瀬 庄次君        厚生大臣官房総        務審議官     黒木 武弘君        厚生省保険局長  下村  健君        農林水産大臣官        房長       浜口 義曠君        農林水産大臣官        房予算課長    上野 博史君        農林水産省経済        局長       眞木 秀郎君        農林水産省構造        改善局長     松山 光治君        農林水産省農蚕        園芸局長     吉國  隆君        農林水産省畜産        局長       京谷 昭夫君        農林水産省食品        流通局長     谷野  陽君        食糧庁長官    甕   滋君        通商産業大臣官        房審議官     末木凰太郎君        通商産業省産業        政策局長     杉山  弘君        通商産業省立地        公害局長     安楽 隆二君        通商産業省生活        産業局長     鎌田 吉郎君        工業技術院総務        部長       山本 貞一君        中小企業庁長官  岩崎 八男君        運輸大臣官房審        議官       金田 好生君        運輸大臣官房国        有鉄道改革推進        総括審議官    丹羽  晟君        運輸大臣官房国        有鉄道改革推進        部長        兼内閣審議官   井山 嗣夫君        運輸省地域交通        局長       熊代  健君        運輸省航空局長  林  淳司君        労働大臣官房長  清水 傳雄君        労働大臣官房審        議官       斎藤 邦彦君        労働省労政局長  白井晋太郎君        労働省職業安定        局長       岡部 晃三君        労働省職業安定        局高齢者対策部        長        竹村  毅君        建設大臣官房会        計課長      鹿島 尚武君        建設省都市局長  木内 啓介君        建設省河川局長  萩原 兼脩君        建設省道路局長  三谷  浩君        自治省税務局長  渡辺  功君        消防庁長官    矢野浩一郎君    事務局側        常任委員会専門        員        宮下 忠安君    参考人        税制調査会会長  小倉 武一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和六十三年度一般会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和六十三年度特別会計予算内閣提出衆議院送付) ○昭和六十三年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 予算委員会を開会いたします。  昭和六十三年度一般会計予算昭和六十三年度特別会計予算昭和六十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。     ─────────────
  3. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和六十三年度総予算案審査のため、本日、税制調査会会長小倉武一君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) それでは、これより総括質疑を行います。市川正一君。
  6. 市川正一

    市川正一君 戦後四十三年目を迎えた今日、軍事費のGNP一%枠の突破や七年連続の異常突出など、軍事大国化への道を歩む今の自民党政治に対して国民は大きな不安と疑念を持っています。  朝日新聞の毎土曜日に読者の投稿する短歌「朝日歌壇」、私時々拝見しておりますが、毎回のようにあの侵略戦争への厳しい反省、戦前の暗黒政治への激しい怒り、平和と民主主義への熱い思いがうたわれております。その一首でありますが、一月三十日付で、昨年度の入選作の中から選者のお一人の馬場あき子先生が選ばれた甲府市の堀田静さんの作「国家秘密法の成るを憂いてひとり来し千鳥ケ淵に氷雨ふるなり」。この堀田さんは今九十二歳の元小学校校長だった方だそうでありますが、選ばれた感想として、千鳥ケ淵納骨堂に参拝し、「霊前にたった私は、征きて還らぬ教え子たちの姿を思い、その霊に何の報いもできないことに忸怩たる思いでした。」、こう述べています。  今こそ私どもは日本の戦後政治の原点というものをしっかりと見据えるべきときである、そういう立場に立って以下の質問を行うものであります。  まず最初に、憲法に保障された民主主義国家権力によって侵されている重大問題として、我が党の緒方国際部長宅や、上田委員長参議院議員宅、さらには斎藤勇町田市議宅など相次ぐ電話盗聴事件についてただしたい。  去る三月七日東京地裁は、緒方国際部長宅盗聴事件に対する付審判請求を、犯行は認めながら、ひそかに行ったから職権乱用にならないという驚くべき理由で棄却いたしましたが、その不当な判決でさえ、現職警察官電話盗聴犯罪そのものについては「許されるべきではないことはもとよりであり、法治国家として看過することのできない問題というべきである」、こう断じております。  総理、この事件の性格を総理憲法にかかわり、法治国家として看過できない重大問題として厳粛に認識されているかどうか、まずお伺いいたしたいと思います。
  7. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ただいまも御指摘がありましたように、付審判請求につきましては、東京地裁において請求棄却決定がなされておるという事実を承知いたしております。お尋ねの件につきましては、検察庁において所要捜査を遂げた上で適切な処分がなされたものというふうに私は理解をいたしております。
  8. 市川正一

    市川正一君 問題はその中身です。「法治国家として看過することのできない問題というべきである」と、こう言っておりますが、この点はいかがですか。
  9. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まさに所要捜査を遂げた上で適切な処分がなされておるということは、やっぱり看過していないからこそなされた処分であると思います。
  10. 市川正一

    市川正一君 それでは法務省に聞きますが、検察当局も昨年八月二十六日、衆議院法務委員会での我が党安藤議員質問に答えて、本件盗聴行為複数現職警察官によって行われた事実を認めているが、間違いないですね。
  11. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) お尋ね事件につきましては、検察庁におきまして所要捜査を遂げまして適正な処分がなされたわけであります。また、先生指摘のように、この事件付審判請求につきましては、東京地裁におきまして請求棄却決定がなされたのであります。  それで、私といたしましては、具体的事件に対する裁判所決定につきまして法務大臣として意見を述べることは差し控えたいと存じております。
  12. 市川正一

    市川正一君 私が聞いているのは、八月二十六日に岡村刑事局長が、「捜査の結果、神奈川県警本部警備部公安一課に所属する二名の警察官が関与していたことが判明」したと。議事録がここにあるんですよ。間違いないんでしょう。
  13. 岡村泰孝

    政府委員岡村泰孝君) 東京地検におきましては、本件につきまして起訴猶予処分にいたしたわけでございます。その前提といたしまして、警察官本件盗聴行為に関与しておったという事実が認められるということを前提にいたしまして起訴猶予処分にいたしたところであります。
  14. 市川正一

    市川正一君 起訴猶予というのは、明らかに犯罪が行われているが何らかの事情で起訴は勘弁してやるということだけのことです。検察当局裁判所現職警察官犯行だと認めておるんです。特に東京地裁決定総理はお読みになったんですか。林、久保両名の現職警察官が他の複数警察官共謀の上行った組織的犯行と推認し、テープ音を消すなど証拠隠滅まで断定しているんです。  そこで、警察庁長官に伺いたいんですが、前任者山田警察庁長官は去年の五月七日の本院予算委員会で我が党の上田議員質問に答えて、「警察におきましては、過去においても現在においても電話盗聴ということは行っていない」と、こう言明しております。しかし、これが全くの事実に反する虚偽の答弁であることは今のやりとりで明らかです。今度の地裁決定もそれを実証しています。警察庁はこの答弁を取り消しなさい。
  15. 城内康光

    政府委員城内康光君) お答えいたします。  御質問国会答弁につきましては、昨年九月三日の参議院地方行政委員会で共産党の神谷議員質問に対しまして当時の山田警察庁長官答弁しておりますとおり、そのときの認識判断報告に基づいてそのように申し上げたということであると承知しております。
  16. 市川正一

    市川正一君 私の聞いているのは五月七日の上田質問ですよ、上田質問。あなたは神谷と言っている。
  17. 城内康光

    政府委員城内康光君) お答えいたします。  上田委員質問に対しましてそのような答弁をしておるわけでございます。上田質問におきまして当時地方行政委員会において答弁した中身答弁しておるわけでございます。
  18. 市川正一

    市川正一君 過去におきましても現在におきましても電話盗聴ということは行っていないと。これは事実に反するじゃないか。だから、取り消しなさい。
  19. 城内康光

    政府委員城内康光君) お答えいたします。  本件につきまして神奈川県警において内部調査を行いましたけれども、盗聴について職務命令を発したことはないという報告を受けておりまして、神奈川県警として行ったものではないと承知しております。
  20. 市川正一

    市川正一君 それでは、再度岡村刑事局長に伺いますが、東京地裁処分決定の直前に、神奈川県警本部長から東京地検検事正あて再発防止に努めるという趣旨文書提出があったことを明らかにしていますが、間違いありませんね。
  21. 岡村泰孝

    政府委員岡村泰孝君) そのとおりであります。
  22. 市川正一

    市川正一君 国家公安委員長に伺いますが、警察が今後はやりませんからどうかお目こぼしをという、そういう文書提出したということは、現職警官による電話盗聴という犯罪行為があったという事実を検察庁に対しては認めたということではありませんか。それでもまだやっていないというしらを切るつもりですか。この点、国家公安委員長からひとつ所見を承りたい。
  23. 城内康光

    政府委員城内康光君) お答えいたします。  ただいまの御質問文書関係でございますが、当時、東京地検から神奈川県警察本部に対して対処方針についての打診がなされた。その文書の中で、一部の警察官盗聴ということで問擬されたことについて遺憾の意を表明しておるわけでございます。そしてまた、相応の懲戒処分を行うとともに、再発防止に向けてそういうことで再び疑惑を受けないように今後是正措置を講ずるというようなことについてお約束をするような趣旨の書面を提出したというふうに理解をしております。
  24. 市川正一

    市川正一君 やったかやらないかということについてはどうなんですか。いまだにやっていないというふうにはっきり言えるんですか。
  25. 城内康光

    政府委員城内康光君) お答えいたします。  再度繰り返すようで恐縮でございますが、神奈川県警といたしましては早速内部調査をいたしまして、いろいろ関係者について聞きまして、その結果、職務命令も発せられていないし、また神奈川県警としてそういうことをやったということはないというようなことであったという報告を受けております。
  26. 市川正一

    市川正一君 東京地裁決定は、再度繰り返しますが、林、久保両名の現職警察官が他の複数警察官共謀の上行った組織的犯行と、こう断定しているんでしょう。にもかかわらずいまだに言を左右にしている。私は、再発防止ということを今警察文書を出したと言うんだが、その舌の根も乾かぬうちに、一月十四日、緒方国際部長宅と所も同じ町田市で、我が党の斎藤市議宅盗聴器が据えられている。しかも、重大なことは、斎藤市議が現場の保全を求め、NTT側も同意したにもかかわらず、町田警察署証拠物件がないと告発を受理できないということで盗聴器を持ち去っております。  では、この捜査結果はどうなったのか、報告してもらいたい。
  27. 漆間英治

    政府委員漆間英治君) お尋ね事件につきましては、一月十四日、NTT町田電報電話局から有線電気通信法第十三条の疑いによりまして町田警察署告発状提出がございました。現在これを受けて警視庁町田警察署において捜査中でございます。
  28. 市川正一

    市川正一君 捜査結果はどうなったのか。
  29. 漆間英治

    政府委員漆間英治君) 現在のところ被疑者は検挙に至っておりませんが、今後とも多角的に捜査を進めてまいりたいと考えております。
  30. 市川正一

    市川正一君 あれからもう三カ月たっておる。目下捜査中でどうなのですか。だから、結局この事件警察がやったという疑いを持たれても仕方がないじゃないですか。はっきりしてください。
  31. 城内康光

    政府委員城内康光君) お答えいたします。  警察警察活動というのは、適法性妥当性、そういったものが非常に大事である、そのことについていささかでも国民疑惑を受けるようなことがあるといけないというふうに考えまして、昨年の八月に通達を発しまして、そういう疑いを受けることのないように是正措置を現在強力に講じているわけでございます。  ただいまの御質問町田斎藤市議宅にかかわる事件につきましても、ただいま保安部長が答えましたように所要捜査を鋭意しているということでございます。
  32. 市川正一

    市川正一君 国民は、現職警察官盗聴事件をやりながらそれが罰せられない、そういうことに対して重大な疑惑を持っています。しかも、そういう事態が各地に盗聴事件を次々と引き起こしているではありませんか。  竹下総理に伺いたい。今お聞きのように、緒方国際部長宅への電話盗聴現職警察官犯行であることは検察当局も認めている。裁判所も認めています。ただ起訴猶予にしただけのことです。ということになれば、電話盗聴というのは、ニクソン大統領辞任したあのアメリカのウォーターゲート事件をとるまでもなく、民主主義の根幹にかかわる重大事件です。こういう権力犯罪が野放しにされるならば、日本民主主義はまさに危機です。総理はこの問題に徹底的にメスを入れて国民政治への信頼を回復すべきであると思いますが、いかがでしょうか。
  33. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この種の問題、私もいいことだと思っておるわけではもとよりございませんが、今お答えもございましたように捜査中というものでありますならば、その捜査を厳正に見守っておるということに尽きるかと思います。
  34. 市川正一

    市川正一君 見守っている間に日本民主主義はどんどんこういう形で侵犯されているんです。国民の基本的人権が侵されているんです。どうか総理が積極的にこの問題にメスを入れる、そういう指導性を発揮していただきたい。  同様の問題の一つとしてこの機会に総理にお伺いしたいのは、十二日に朝日新聞の静岡支局に赤報隊の名で時限爆弾が仕掛けられました。小尻記者の命を奪った昨年五月の阪神支局以来四回目です。しかも、今度は毎日新聞、東京新聞にも矛先を広げようとしております。暴力、テロで言論、報道の自由に対する脅迫、断じて放置することはできません。  国家公安委員長並びに総理に伺いたい。阪神支局事件以来十カ月、今捜査はどうなっているのか。また、総理御自身の本件への決意のほどを承りたいと思います。
  35. 仁平圀雄

    政府委員(仁平圀雄君) 刑事局長でございますが、捜査状況について御報告申し上げたいと思います。  一連の事件につきましては、それぞれ関係府県に刑事、警備両部門から成ります特別捜査本部を設置いたしますとともに、警察庁指定事件といたしまして全国警察の組織を挙げて捜査中でございます。  現在推進しております主なる捜査事項といたしましては、一つは発生現場を中心とした地取り、聞き込み捜査、二つは犯行に使用された猟銃及び散弾実包の捜査、三つは犯行声明文に使用されたと認められるワープロの捜査、四つは犯行声明文に記載された赤報隊に関する捜査でございます。  それぞれの捜査項目につきまして目下全力を挙げて捜査いたしておるところでございますが、現在までのところ犯人に結びつくような有力な線は出ていないところであります。いずれにいたしましても、早期に解決すべく今後とも努力してまいる方針でございます。
  36. 梶山静六

    国務大臣(梶山静六君) お尋ね事件は、一連の朝日新聞社に対する襲撃事件等の関連をも考慮いたしながら、現在関係警察を督励いたしまして緊密な協力のもとに鋭意捜査を続行中でございます。  私といたしましても、この事件の社会的重大性にかんがみまして、犯人を是が非でも早期に検挙してもらわなければならないと考えております。多大の関心を持って捜査の推移を見守り、また督励をして早期解決に当たってまいる覚悟でございます。
  37. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 公安委員長が今申し述べましたとおり、多大の関心を持って捜査の推移を見守ると同時に督励をする、このようなことを考えております。
  38. 市川正一

    市川正一君 総理、この問題の性格を総理としてはどういうふうに御認識でしょうか。
  39. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まさに社会的重大性というものをこの問題については感じております。本当に私どもとして心情的にも事実的にもこれはまことに残念なことだ、そしてまことに重大な問題だという問題意識を持っております。
  40. 市川正一

    市川正一君 まさに警察がだれのために存在しているのかという問題が今問われていると私は思うんです。現職警察官が身分を隠してひそかに国民の、あるいはまた政治家の国会議員の自宅に盗聴器を据えつける、こういうことは断じて許せない。私は、そしてまた国民は、厳しくこの問題を見詰めているということを改めて申しておきたいと思います。  さて、先日の参議院大阪補選で大阪府民は自民党政治とそのもとでのなれ合い政治に厳しい審判を下し、直間比率の見直しを公約した自民党とその候補を破って我が党の吉井英勝君が勝利いたしました。後ろに吉井君が来ておりますけれども、御紹介しておきます。岩手の小川仁一さんも見えております。本日、私の関連質問に吉井君に立ってもらうつもりであったんです。ところが所属委員会を決める本会議がまだ開かれないために残念ながらやれなくなりました。まことに遺憾であります。  まず、私、竹下総理が大阪補選の結果を謙虚に受けとめる、こういうふうにおっしゃいました。ところがその後やっておられることは全く逆のことです。自社公民の四党合意について自民党総裁としての竹下総理に伺いたいんですが、「財源については、社公民三会派の要求する「不公平税制等の是正」及びその他の項目」を含め各党政策担当者で協議する。」、こうありますが、自民党はこれによって独自の財源案を出せないことになったんですか、それとも出せるんですか。
  41. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 自民党総裁としてと、こういう前提がございましたが、私は、これは長い間それを私自身守ってきて定着さしておりますのは、行政府の責任者としての立場にあることは事実でございますので、したがって、この四党国対委員長会談の合意というものは政党間の話し合いで、きょうからそれに基づく政策担当者会議が行われるものである。したがってそれに対して行政府がコメントすることは差し控えるべきである。これは、私、国会議員当選以来今日まで守り続けてきた姿勢でございます。
  42. 市川正一

    市川正一君 独自案は出せるんですか、出せないんですか。
  43. 竹下登

    国務大臣竹下登君) それらの問題は政党間の話し合いでございますから、行政府の立場にある者として国会に対するコメントというものは差し控えるべきであるという姿勢を今日まで貫いておりますから、これからも永遠に、永遠という言葉は適切ではございませんけれども、そういう姿勢を私は貫きたいと思っておりますから、残念ながら今のお尋ねに対してお答えする立場にはございません。
  44. 市川正一

    市川正一君 きのうのNHK「国会討論会」で自民党の渡部国対委員長は、野党から間接税抜きを盛んに言われたが、私はやるともやらないとも言えないと終始言ってきた、こういうふうに述べられております。また、先日の本委員会のやりとりの中で宮澤大蔵大臣は、四党合意について「「その他の項目」を含め」とあるので、こういうラインで各党協議が展開すると推測する、こういうふうに述べて、新型間接税も論議の対象になるという考えを示されたんですが、そういう成り行きになるんですか。
  45. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) せんだってもそのお答えをいたします前に前置きとして申し上げたことでございますが、与野党の国対委員長が苦労をしてこの合意をされた経緯も存じております。したがって、本来政府としてそれらについて有権的にあれこれ申すべきことでないのみならず、そのような長い経緯がございますから余計にあれこれ申し上げることは差し控えるべきであるということを申し上げました上で、なおお尋ねでございましたので、この書かれましたものを読みますと、ただいまお話しになりましたような「「その他の項目」を含め」とも書いてございますので、恐らく各党政策担当者間でいろいろな御協議が行われるであろう、そう推測をいたしますというふうに申し上げたのであります。
  46. 市川正一

    市川正一君 渡部国対委員長はここに見えませんのでこれは置いておいて、要するにフリーハンドなんです。きのう総理は早稲田の記念集会で、「やると思えばどこまでやるさ」という気炎を上げられたようでありますが、秋の臨時国会に大型間接税をやり抜く、そういう決意を改めて表明されておる。事態は何事も変わっておらぬのです。国会の正規の機関とは何の関係もない新しい密室協議の場をつくる。共産党排除は続ける。名前は変わっても、やることはあの税制協そのままではありませんか。  では、その税制協というのは何だったんですか。十二回の密室会合を持って、伊東座長がマル優廃止という中間報告を出しました。これが政府にマル優廃止法案を出させる大義名分に相なりました。私ここに持ってまいりましたのは、社会党が出しておられる「政策資料」です。この中に税制協の討議経過なるものが載っております。それによりますと、社公民三党は中間報告には反対だ、こう言いながら座長が座長の責任でやられることはやむを得ない、こう言ってマル優廃止の報告書を出すこと自体は容認しているのであります。  私、今度の四党協議、これも減税というえさで、言うならば柳の下の二匹目のドジョウをねらっているのが、総理、本音じゃないんですか。どうですか。
  47. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 各党間の話し合いについての論評は差し控えさしていただきたいと思いますが、お尋ねの脈絡からいたしまして、私も昨日「国会討論会」は見せていただいておりました。それそのものにも論評を加える立場にはございませんが、次に私の「やると思えばどこまでやるさ」という、これは「人生劇場」の話でございますが、田舎から上京してきました青成瓢吉という青年が早稲田大学に学んでおりますと、何となく自分にこのイメージをダブらせながらそういう青春時代を過ごしたという思い出話をいたしましたので、これは税制とも行政とも関係のない話でございますだけに、あなたにも青春時代はあったでございましょうから、御寛容をいただきたいと思います。
  48. 市川正一

    市川正一君 竹下総理はたしか大正十三年の生まれ、私は大正十二年、同じ世代です。だけど今の、尾崎士郎「人生劇場」の話じゃないんです。この秋の臨時国会で大型間接税をやるという、そういう決意は変わらないということを、私はそういう形でお伺いしているんですが、そういうことですか。
  49. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに国会の召集権は政府にございます、窮屈な話をするようでございますが。しかし今、秋に臨時国会を開くということを決めたわけでもございませんし、また政府としては税制調査会へそれこそあるべき税制の理想像というのを今諮問申し上げておる、こういう段階でございますので、それを受けて最大限尊重して法案を作成し国会で御議論いただくという立場は持っておりますものの、臨時国会をいつ召集するなどということを決めておるわけでもございません。  あなたは大正十二年のたしか九月で、私は十三年の二月でございますからまさに同級生そのものでございますけれども、きのうの場合は、これはまあ申しわけない話でございますけれども、みずからの青春を顧みたというある種のロマンを申し上げたわけでございます。
  50. 市川正一

    市川正一君 小倉政府税調会長、きょうはどうも御足労さまでございます。土曜日は大変お待たせいたしました。  今総理から政府税調云々の発言があったんですが、くしくも四党合意が成ったときに、政府税調は会長も出席なすって四つの基準を発表されました。ということは、この税制改革をめぐっての政府税調の今後の進め方、要するに四党合意にかかわりなしに進めていく、また、その見通しはどうなのか、これらについてひとつ御報告を願いたいと思います。
  51. 小倉武一

    参考人小倉武一君) ちょっとお答えがしにくいお尋ねでございますが、と申しますのは、与野党の減税についての合意は大筋の合意でありまして、その後、与野党間で協議を続ける——何でもきょうあたりから始まるんだそうですが、というようなことになっておりまして、その経過は多分我々にはなかなか承知できないようなことになるのじゃなかろうか、結論が出れば承知できるでしょうけれども。したがいまして、とりあえずは政府税調は政府税調として税制の抜本的改革の作業を進めていく。無論政府からあるいは与党を通じて諸党の間の協議会の様子が、ある段階といいますか、ある種の結論に近いようなものが出てくるようになりますればあるいは御連絡があるかもしれませんが、それはまたそのときのことにしたいと思います。
  52. 市川正一

    市川正一君 私は、今の税制改革をめぐる問題の中の一つの焦点である直間比率の見直し問題について問題を進めていきたいと思います。  自民党の安倍幹事長は一月十八日に直間比率を五分五分にシフトしたいと言っておりますが、そうなれば間接税はどれだけの増税になるんですか。
  53. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 機械的に申し上げますと、直間比率を直していくという場合には、現在間接税を上回っている直接税を減らしていくということもございますし、それぞれについて手直しをしていくということもございますので、一概にそれがどのような税制改正につながるかということは申し上げにくいところでございます。
  54. 市川正一

    市川正一君 この問題は今までもいろいろ議論されて、五対五のシフトでいきますと十兆三千億円、そういう増収になるということは政府自身が再三にわたって言明しているところであります。そうしますと、国民一人当たりにして八万円、四人家族で三十二万円です。去年の売上税でも二兆九千億円、四人家族で十万円。ですから売上税の三倍以上、まさに超大型であります。  そこで私伺いますが、一昨年の衆参同時選挙において、直間比率の見直しというのは、総理、公約になっていたんですか、そういう文書があればひとつお見せいただきたい。
  55. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 選挙公約と申しますといろんなことが言えると思いますが、正確に言えば、当時各党が発表いたしました選挙公約としての政策大綱というものであるかなと。それには確かに税制改革ということはうたってございます。が、直間見直しという表現は使われていなかったではないか。おととい持ってきておりましたが、ちょっときょう忘れましたので、その言葉はなかった。強いて今市川さんがおっしゃいますのは、いわゆるその後党本部で総裁がお話をしましたときに、国民が反対し党員が反対するようないわゆる大型間接税と称するものはやらないという演説をしたということを各都道府県連支部に流した文書、それが今日まで公約だ公約だと言って使われた文書ではないかな、こういうふうに思っております。
  56. 市川正一

    市川正一君 私ここに持ってきたのは、おととしの同時選挙のときの自民党の「わが党の公約」、まさに選挙政策、公約であります。ずっと見ましたけれども、どこにもありません。有権者に隠さなければならなかったんです。なぜなら、直間比率の見直しというのは、先ほど数字も挙げましたが、まさに大型間接税そのものなのであるからであります。ここの公約にないばかりか、総理を初めここにいらっしゃる閣僚の八割の方が、大型間接税はやりません、こう公約して当選してこられたではありませんか。総理、重ねてその事実をはっきり確認していただきたい。
  57. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今、抜き出したものだけはございました。自民党選挙公約、昭和六十一年六月、いわゆる抜本的改正、「所得税、住民税の抜本的改正と減税の断行」、こういうことが書かれてあるわけでございます。  直間比率という問題は、私よく申し上げておりましたのは、あらかじめ固定的に決めるべきものではなく結果として生ずるものであるということを申しておりました。しかし、その結果として今日現存する直間比率というものが、昭和三十年来今の言葉をおかりするならば五分五分であったものが今日こういうことまでなっておるというのは、これは税を論議する者としてだれしもそこに関心を持つのは当然であって、そこから、ではどういう形のものが一番いいかなということについて今模索しておる、国会の御議論等を通じて国民の合意が那辺にあるかということを模索しておるというのが現状でございます。  それから大型間接税云々という公約の問題、これは私個人にかかわる問題でございますので、私もそういう質問を受けて、あなたも署名しておるじゃないかと言われたことがございます。よく私なりに調べてみまして、選挙が終わりました後、上部団体へどうしても出さなきゃいかぬので顔を立ててくれと言って、顔を立てましょうと言って、その署名したのも署名した方でございますが、頼みに来られたのも頼みに来られた方だなと思いながら、しかしこれは私個人の周囲の問題で処理すべき問題でございますから、余り公にあげつらうなどということはしないようにしようと、こう思っておるわけでございます。  だから、中曽根前総理が党本部で演説されて各都道府県支部へ流されたという、国民が反対し党員が反対するようなものをだれもやるわけはございませんので、そのことはだれしも思っておるのじゃないかなと、こう思っております。
  58. 市川正一

    市川正一君 国民は、それぞれの政党、それぞれの候補者が国民に約束をした政策、公約に基づいて選択をするわけです。ですから、国民にうそをついて獲得した多数議席で公約違反の強行を図ろうとするのは、まさに国民主権そのものに対する重大な侵犯とは考えませんか。総理、いかがですか。
  59. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 重ねて申し上げるようでございますが、税制問題について左記のとおり発言がありましたのでお知らせいたしますということで、国民が反対し党員も反対するような大型間接税と称するものはやる考えはないと、こういうことを通達したことがあることは事実であります。別にうそをついて選挙で当選したというふうには私は思っておりません。先ほども大阪の選挙についてのお話がございましたが、各人各人が自分の思う政策を主張して、それが支持を得たときには当選するし、支持を得なかったときは落選するというのはこれは選挙の厳粛な事実そのものではないかなというふうに思っておりますので、うそをついて選挙をやったなどということを私考えたことはございません。
  60. 市川正一

    市川正一君 あの選挙のときに、総理も覚えているでしょう、中曽根前総理は、この私がうそをつく顔に見えますかと言うてうそをついたんですよ。これはもう国民は皆知っていますよ。  結局、総理はいろいろ言うが、国民の審判を求めれば大阪補選のように自民党が大敗することは目に見えている、だから選挙のないことしじゅうに押し切ってしまう。宮澤大蔵大臣が去年十一月、あの売上税で喪に服さなければならないと、しかし、今の時期を逃したら、選挙のないことしを逃したらチャンスはないというふうに竹下総理とお話しになっていたそうですが、それが本音です。  私は、あくまでも大型間接税をやると言うのならば、解散、総選挙で信を問う、これが議会政治の常道ではありませんか。議会制民主主義の当然のルールではありませんか。この点、責任ある御答弁を求めたいと思います。
  61. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは重ねて申し上げるようでございますが、市川さんは六年間という信任を国民からお受けになったわけです。私は衆議院議員でございますが、四年間の信任を与えていただいておるわけです。この四年間というのは、何遍も言うようですが、大事に大事に、大事に大事にしなきゃならぬ。その大事に大事にしながら、その中で国民のコンセンサスが那辺にあるかということを冷静に見詰めていくというのが私はあるべき姿ではないかというふうにまずは考えております。
  62. 市川正一

    市川正一君 大事に大事というのは、うそをついて獲得した三百議席を大事にするというだけのことです。私が聞いているのは、議会制民主主義の当然のルールとして、もしも大型間接税をやるというのだったら、解散して総選挙で国民の信を問うのは憲政の常道じゃないかということです。その点どうなんですか。
  63. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 憲政の常道とは、与えられた任期を大事にすることがまず常道でございます。これは一番それこそ大事なことだと思います。それは国会がどうしても機能しなかったときとかいろんな場合解散権というものは確かに内閣に存在しておりますが、本当にそれを行使するということはこれは最高の政治判断を要する問題であって、まずは私どもは与えられた任期というものを大事にして、国民に対してその負託にこたえていくというのが常道のさらにもっと上の常道だというふうに私は思っております。
  64. 市川正一

    市川正一君 まさに国民不在、国民無視の態度です。国民の意思を問わないで、国民の意思に反してやっていくそういう憲政というものはありません。  そこで、政府は税制の不公平ということを盛んに言います。しかり、不公平はあるんです。しかし、それは今総理が言うような直接税と間接税の関係にあるのではありません。  再度小倉会長にお聞きいたしたいと思います。会長御自身、不公平税制についていろいろ述べておられます。例えば朝日新聞のインタビューで、「不公平が明瞭なのは、株でもうけた所得への課税とか、要するに資産課税ですよ。」「それらをうまく税金でつかまえているかと言うと、そうじゃない。その結果、貧富の差が大きくなってくる」と述べていらっしゃるんですが、不公平税制についてそのように認識されていると承知してよろしゅうございますか。
  65. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 不公平税制というものにつきましてどういう考えを私が持っておるかというお尋ねでございますが、これは、例えば最近でございますが、先般税制調査会で、ある委員の方が、政府は、政府というより税制調査会として、不公平税制とは何かということを列挙してみたらどうかと、そういう御希望もございましたけれども、各委員の意見あるいは関係しておった政府関係の人の意見を総合しますと、これはなかなか列挙するというわけにはまいらない。といいますのは、いろいろ立場立場といいますか、考え方の相違があって、何が不公平であるかということについては、税制調査会というような小さな枠の中でも必ずしも意見の一致を見ることができないだろうというふうなことだったと思います。  それはそれといたしまして、非常に形式的に申しますと、税法には所得税法なり法人税法というのがございまするし、片や祖税特別措置法という膨大な特例措置がたくさんございます。形式で申しますと、本法である所得税法なり法人税法なりその他の個々の税法、これが不公平でない本当の——本当というと語弊がありますが、公正な税制である。そして、特別措置法でもって例外をつくっているのがこれが不公正な税制であるというふうに言えないこともないと思いますけれども、どうもそうも言えないのであります。と申しますのは、本則自体に例外が書いてあるのがございます。したがいまして、そういう形式論だけでもなかなかこれ割り切れないということであります。  しかし、私どもいろいろ論議を通じて結論的に申し上げられますのは、今お尋ねの資産に関する税というのが、どうも所得なりに関する税と比べて不公平なことになっているのではないかというのが大方衆目の一致するところじゃないかと思います。したがいまして資産、特に資産から生ずる収益についての課税の強化というのが私どもの今後の税制改革に当たりましての一つの方針となっていると申し上げてよろしいと思います。
  66. 市川正一

    市川正一君 小倉会長が資産税、すなわち不公正は直接税と間接税の関係ではなくて直接税の中に、言いかえれば大金持ち優遇にあるんだということを今おっしゃいました。先ほどのインタビューの中で会長は、「大きな声では言えないが、株でかせいで政治資金とかにしている人が困っちゃうんじゃないか、」と漏らしておられましたが、もう既に相沢問題も表ざたになっておりますし、きょうはどうぞ遠慮なしに大きい声でおっしゃっていただきたいと思います。  さらに、会長は週刊朝日で、年収二百万円の人でも十数億円の人でも同じ所得税率でいいんだという考え方について、「プリンシプルが抜けちゃっているんだな。ついていけねぇや。」と、こう述べていらっしゃいます。私は関西弁ですから歯切れがよくないかもしれませんが、ついていけねえやと。ということは累進性はきちんと守るべきだというお考えと理解してよろしいわけですか。
  67. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 税の不公正の問題につきましては、これは人によっていろいろ意見が違いますけれども、多くの方々の、特に税調の中の方々の意見を総合してみますと、一つはやはり所得課税と消費に対する課税との間に調和が欠けておるのではないかという点が一つございます。もう一つは、先ほどお話の出ましたような資産課税、特に資産所得課税についての課税のあり方が公正を欠いておるのではないかというのが次にございます。  それからさらに、所得税そのものについてどういう税制が公正であるかという点については、従前から所得を総合して累進課税をする、これが最も公正な税制であり、そういう所得税を税の根幹とすべきであるというのが伝統的といいますか、私ども税に関係いたしました前期——前半と後半と分けますと、前期は税制調査会でも専らそういう考え方であったかと思います。  ところが、その後どうも原則はなるほどそれでよろしいかもしれませんが、それで徹底するわけにもいかないというようなのがこの数年来の税調の中の考え方でありまするし、また外の御意見などを聞きましてもそういう御意見が相当ありますようになりました。  と申しますのは、理想的な所得を総合して、そしてそれに累進税率をかけていくという一点張りでやっていけばかえって税を逃れるという傾向が生じてくる。それをどういうふうに抑えていくか、あるいは税収なり徴税なりについて周密な措置をとっていくかという方策もあり得るわけですが、これはなかなか難しい。そこで、所得税を通ずることによって生ずる不公正というものもあるということを認識しますならば、それならば消費に税金をお願いするということによって公正のバランスをとれるのではないかという説がだんだんと有力になってきた、こういう状況もございます。  そういったようなこともございまして、今後の税制についての基本的方針というのは、公正ということを垂直的な公正ということだけではこれなかなか回らない。やはり水平的な公正——水平的な公正ということも、同じ金額の所得を得られる人が同じ所得税を納めるということではなくて、消費と所得との間、あるいは資産も中に入るかと思いますが、その間のバランスをとるということがよりよく公正に適するのではないかという意見がだんだんと強くなってまいりまして、そのような考え方を今後の税制改革の中にどう織り込むかということが税制調査会の仕事になっておる、こういうのが実情かと思います。
  68. 市川正一

    市川正一君 要するに私、週刊朝日のインタビューでの発言を引用してお聞きしたのですが、総合性また累進性、その原則を会長も認められました。それが今ゆがめられているんです。不公平の最たるものは有価証券あるいは高額貯蓄、土地、こういう大金持ちの広い意味でのキャピタルゲインであります。これはどれ一つとっても間接税ではなしに直接税の問題であります。  ところが、四月からマル優廃止で庶民には大増税です。一方、大金持ちの巨額な預金金利に対する税金は、従来所得税三五%だったのに四月からは所得税一五%、住民税五%、計二〇%という大幅引き下げです。  竹下総理、これが不公平の是正ですか、そうお考えですか。
  69. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先般の税制改正におきまして、御指摘のように資産としての土地あるいは資産としての有価証券等について、それから生ずる所得等に関する課税を強化いたしましたことは御承知のとおりでございます。  それから少額利子の課税についても御指摘がございましたが、これは基本的には分類すればやはり資産所得であることには間違いない。殊にこの制度は、実は相当大きな資産を持っておる人々にいわば利用されておったという事実がございますので、ああいうふうに制度を改めることによって、これも大きな資産に対する資産所得の課税を強化することになったと考えております。
  70. 市川正一

    市川正一君 要するに、金持ち優遇の不公平は温存するどころかますます拡大しているというのがこの実態です。  そこで小倉参考人、どうも御苦労さまでした。お引き取りいただいて結構であります。  大型間接税、薄く広い間接税、これはどういう名称、どういう形態になろうとも、要するにあらゆる商品、サービスに税金をかけ最終消費者に負担をさせるという大衆課税、大増税の仕組みには変わりはありません。  ところが、総理は最近六つの懸念なるものを挙げられました。これは単なる懸念ではなしに、大型間接税そのものの特性、そのものの本質だと言わざるを得ません。例えば大金持ちほど負担が軽く、貧しい者ほど重くなる逆進性についても、総理はこれを中和し緩和する、こう言うておられます。ところが、日経新聞の三月八日付でありますが、逆進性を緩和しようとすれば、ゼロ税率、軽減税率、割増税率、免税制度、簡易申告制度等々さまざまな措置を導入したけれども、これをやればやるほど、簡素な税制どころか複雑怪奇なものになってしまったとEC諸国の実例を紹介しております。まさに二律背反です。私は打つ手がないと思うんですが、どうですか。
  71. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 先般の衆議院の予算委員会におきまして大型間接税の定義の答弁の中で、厳密な定義は難しい、国民一般に言葉にまつわる幾つかの懸念が生じておるというので、六つの懸念というものを申し上げてきたわけでございます。間接税というものそのものの私はその懸念を申しましたが、今まさに市川さんがおっしゃいましたいわゆる逆進性の問題をまず申し上げたわけでございますけれども、これは確かに逆進的な税体系となって所得再配分機能を弱めるのではないか。今小倉参考人もおっしゃっておったように、所得再配分というものが税の、前半という言葉をお使いになっておりましたが、そのことがございました。  前半のもう一つ前にいきますと、共産国家などは考えようによればあれは全部が間接税であるわけです。すなわち国営企業の中で、物価の中に国民の共通な経費というものが負担されておるわけですから、あるいは間接税というのがむしろ先にあっておったかもしらぬという、これは税理論をお互い論議していきますとそういう発展形態をたどるのかな、こういう感じもいたすわけでございますが、確かにだれが、今でもそうでございますが、だれが、どんな所得の方がたばこをお吸いになろうとそれは同じ税率がかかっておりますから、逆進性があるというそのこと自体を私は否定する考え方はございません。  しかしながら、逆進性というものをどういうふうにして緩和していくか。むしろそこでは国民全体の所得分布というものが、かつて一分位と五分位とを比較したときに十倍であるとかというようなものが、だんだんだんだん二・九倍というようなところへ下がって、総体的に所得が均衡すればするほど、国民共通の経費は薄く広く納税の義務にそれぞれ応じていただこうではないか、こういう考え方が当然として出てくるわけでございます。したがって所得再配分機能というもの、戦後のシャウプ税制等は総合課税による所得再配分機能というものをずっと今日まで貫いてきたわけですが、そこにまた何が生じたかというと、努力と報酬の一致、すなわちいわば勤労意欲を失うというおのずからの限界というものにも突き当たってきた。  だから所得と消費と資産の間でどのような形でお願いをするかというのが今まさに問題点として議論されておるところであるというふうに私は考えておるわけでございますから、本来間接税というものの持つ所得に対する逆進性というものは、間接税それだけを考えないで総合的な税体系の中、そして経済事情等を勘案して考えるべき時期にまさに来ておるではないか、こういうことをしょっちゅう申し上げておるところでございます。
  72. 市川正一

    市川正一君 どういう形、どういう名称をとろうとも、こういう大型間接税が大衆課税、しかも最悪の大衆課税であるということは世界の歴史が示しておるところです。国民が今求めているのは増税ではなしに減税です。それも最高税率を引き下げる金持ち中心の減税ではなしに、低所得者や平均的な勤労者に厚くなるように課税最低額を少なくとも三百万円以上に引き上げる。我が党はそういう立場から所得税二兆二千億円、住民税八千億円、計三兆円の減税を主張しております。こう言うと、政府は、じゃ財源はどうするんだ、財源対策を口実に大型間接税を持ち出してくるんです。しかし、財源はあるんです。大企業や大金持ちからきちんと税金を取る。先ほど挙げましたキャピタルゲインはその一例であります。  もう一つどうしてもメスを入れなければならないのは、最大のむだ遣い、異常突出を続ける軍事費です。  まず伺いたいんですが、アメリカのアミテージ国防次官補が二月二十五日、日本の来年度防衛予算は世界第三位になる瀬戸際に来ていると講演しておりますが、その部分を御紹介していただきたいと思います。
  73. 日吉章

    政府委員(日吉章君) お答え申し上げます。  委員ただいま御指摘の米国防次官補アミテージ氏の講演でございますが、それの背景とその内容について御説明申し上げたいと思います。  米国政府は従来から我が国の防衛努力を評価してきておったわけでございますが、最近に至りまして米国議会を中心としまして我が国に対します極端な防衛努力の要求が見られるところから、アミテージ次官補は我が国の防衛努力を十分に理解しておりまして、それを十分説明することによって米国及び米国議会内における理解を得ることを意図した、そういう背景をもってなされたものでございます。  そして、ただいま御指摘の講演の内容、そのくだりでございますが、日本の一九八八年防衛予算は英国、フランス及び西独のレベルを凌駕するに近いところに来ている、もしこれらを凌駕するとすればそのときには世界第三位の防衛予算となろうと。さように、今申しましたような背景のもとに今申しましたような内容の講演をいたしております。
  74. 市川正一

    市川正一君 この問題は去年の五月、本委員会で我が党の上田議員が、NATO方式で試算した結果日本軍事費は米ソに次ぐ第三位の軍事大国になりつつあるということを指摘いたしました。こういう資料も配付いたしました。(資料を示す)まさに今回のアミテージ発言はこのことを裏づけるものではないですか。当時、上田質問に対して政府側は言を左右にしてこれを認めようとしませんでしたけれども、今日においてこの上田質問に対してどう考えますか。
  75. 日吉章

    政府委員(日吉章君) 当時の上田委員の御質問の計数を定かに記憶いたしておりませんが、私の記憶によりますれば、上田委員が御指摘になられました各国の防衛予算は直近時点でございましたので、防衛予算そのものでございまして、NATO定義に換算したものではなかった、かと思います。それに対しまして我が国の防衛予算につきましては、この防衛予算にいろいろ御議論がございますが、日本の防衛予算に旧軍人遺族等恩給費、それから海上保安庁予算、これを足していたかどうかわかりませんが、その両者全額を足したものと、それからNATO方式に換算していない西欧主要諸国の国防予算そのものとを御比較になっておられたのではないかと思います。  こういうふうな比較をいたしますと確かに日本の防衛予算は大きくなりますが、等しいNATO方式で換算いたしますと、最近直近時点の防衛予算を最近直近時点の為替レートで換算いたしましても、アミテージ次官補が申しておりますように、これら西欧主要諸国を凌駕するレベルには達しておりません。
  76. 市川正一

    市川正一君 おとといのこの委員会で防衛庁は、日本の防衛費は世界で六番目だと言うております。我々は第三位グループに入ろうとしている。第六位と言うならばそれなりの資料があると思うんです。資料をこの国会に出してほしい。
  77. 日吉章

    政府委員(日吉章君) 一昨日の委員会におきまして私が御答弁申し上げましたのは、六位になると申し上げたのではございませんで、一覧性のある統一的な基準によります比較すべきものは英国の国際戦略研究所のミリタリー・バランスしかございませんと。これはいかんせん直近時点でも一九八五年でございまして、これによりますと、いろいろな留保がつけられておりますが、日本は八位になってございますと。ただ、このミリタリー・バランスには一覧性のない形で各国の最近時点の防衛予算が掲げられておりますので、これを比較することが果たして妥当かどうかは別といたしまして、これを直近時点の為替レートで換算し直しまして一覧性のあるものにあえて並べてみますと、米ソ、それから西欧三カ国に次ぐ数字に日本の数字はなりますと、こう申し上げたわけでございます。
  78. 市川正一

    市川正一君 資料はどうですか。
  79. 日吉章

    政府委員(日吉章君) これは単純に計算の問題でござますから、計算しまして並べてお出しすることはできます。
  80. 市川正一

    市川正一君 私が要求したのは、マンスフィールド大使自身もNATO方式で言えば日本の防衛費は一・六倍になると言っている。ですから、今の資料を提出してもらえるんですね。確認しておきますよ。
  81. 日吉章

    政府委員(日吉章君) ミリタリー・バランスの関係の部分を抜粋いたしまして提出させていただきます。
  82. 市川正一

    市川正一君 軍事費の伸び率について、八七年のアメリカ国防総省の「共同防衛への同盟国の貢献度」という報告書があります。これが原文で翻訳もありますが、その中で七一年から八五年にかけての日本及びNATO諸国並びにアメリカの防衛予算の実質増加率がそれぞれ幾らと述べていますか。
  83. 日吉章

    政府委員(日吉章君) 委員ただいま御指摘になられました米国防省の報告書に防衛費の伸び率、実質が出ております。ところが、この実質の計算根拠が必ずしも明らかでございませんが、同報告書そのままを引用いたしますと、一九七一年から一九八五年までの十五年間の日本の伸び率は約一三〇%、米国は約二〇%、米国を除きますNATO諸国は三〇%強と、こういうふうになっております。しかしながら、いずれにいたしましても我が国は、大綱に定めます平時から保有すべき防衛力の水準を目標に着実な防衛力整備を進めているところでございまして、国情の異なる他国と単純に伸び率で比較することはいかがなものかと思われます。ちなみに、防衛費の絶対額の水準につきましては、ただいま私がお答えいたしましたような水準に我が国の防衛費がなっていることは御案内のとおりでございます。  なお、先生ただいま御指摘になられました米国のこの報告書でございますが、この報告書は全体としては日本の防衛努力が足りないという記述に主眼が置かれておりまして、それを受けまして、この点は日本も認めており一九七一年から八五年まで防衛努力をしていると、こういうふうな記述のところに引用されていることをつけ加えさしていただきたいと思います。
  84. 市川正一

    市川正一君 防衛費は今世界の第三位に迫りつつある。また、この間の伸びは日本が一三〇%、アメリカ二〇%、NATOが三〇%。これが実態です。まさに軍事大国に日々刻々と前進しておる。  次に、先ほどのアミテージ次官補が日本の駆逐艦、P3C、戦術戦闘機などの戦力について述べている部分がありますが、これを紹介してください。
  85. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) アミテージ次官補の演説は、先ほど経理局長答弁にもございましたとおりの意図によるものでございます。その前提でその部分を読み上げさせていただきます。   極東におけるソ連の強大なプレゼンスに対処するために、日本は、海上自衛隊に護衛艦五十隻以上を保有している。この隻数は、西太平洋及びインド洋の全体をカバーしている米国第七艦隊の保有する二倍以上の数である。一九九〇年までには、日本の保有又は発注中の護衛艦の合計数は、イージス防空システム搭載艦二隻を含め六十隻になるだろう。対潜航空機については、米国は第七艦隊にP3—Cをおおよそ二十三機保有しているが、日本はウラジオストクに近接する基地に百機を配備することになろう。日本の航空自衛隊は、F—4ファントム百機を保有し、また、一九九〇年までにはF—15イーグル約二百機を保有することになろう。三百機という数は、米国本土を防衛するため保有している戦術航空機の数とほぼ同数である。 以上でございます。
  86. 市川正一

    市川正一君 アメリカ第七艦隊は西太平洋とインド洋の全域を守っております。その第七艦隊と比べても日本の駆逐艦は二倍以上なんです。P3Cはアメリカの四倍以上を計画している。まさにP3C大国です。こういう膨大な軍事予算、こういう肥大した軍事費、ここにこそメスを入れるべきです。ここにこそ財源があるんじゃないですか。我が党は、予算案は衆議院を通過いたしましたけれども、防衛関係費を少なくとも正面装備費や日米共同訓練費、また思いやり予算、これを中心に半分以上削減することをあくまで要求することをここで明らかにし、防衛問題そのものに入っていきたいと思います。  今、INF全廃条約が結ばれ、戦略核兵器の半減問題が米ソ間で交渉されている。大きく核軍縮の機運が盛り上がっているときにこういう大軍拡、まさに世界の大勢に逆行するものであります。この際、自民党総裁としての竹下総理に伺いたいんですが、私ここに持ってまいりましたのは自民党が出している核パンフ、「「非核都市宣言」は日本の平和に有害です」という中に、通常兵器がなくならない限り核兵器は必要、こうあります。これが自民党の公式見解か、お伺いしたいと思います。
  87. 竹下登

    国務大臣竹下登君) しかし、核兵器の廃絶が達成されても通常兵器やBC兵器が同時に廃絶されない限り核兵器の廃絶は逆に世界を戦争に巻き込みかねませんと、こういうくだりがあることは事実でございます。だから今度のINF全廃交渉に関しましても、このことは大変いいことである、大きく第一歩を踏み出したことである。しかしいろいろいつも議論いたします終局的な核の全廃、こういうことをいつも言っているわけでございますが、まさにその戦略核の問題、それから通常兵力の問題、地域紛争の問題、それらが現実今日あるという事態は私どももこれをないがしろにしておるわけにはまいりません。現実問題としてやはりまだ力の均衡の上に保持されておる平和と安全だというふうな問題意識を持たざるを得ないということを私ども常日ごろ申し上げておるところでございます。
  88. 市川正一

    市川正一君 私の質問をよく理解していらっしゃらないのかもしれないけれども、通常兵器がなくならない限り核兵器は必要だ、こう書いてあるんです。だとすれば、これは事実上核兵器を永久に認めることになるじゃないですか。現に、一月にアメリカに行って日米防衛首脳会談をやられた瓦長官は、通常兵器をもっと強化しようと言う。こういう姿勢というのは、私は日本国民的悲願に反するものだと思うんです。ことし一月の日米防衛首脳会談の合意に基づいて進められている有事来援の研究にまさにその姿勢があらわれておると思うのでありますが、関連質問をお許し願いたいと思います。
  89. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 関連質疑を許します。橋本敦君。
  90. 橋本敦

    ○橋本敦君 今、米軍の有事来援に関係をして、その研究が今後なされるということが非常に大きな問題になってきたわけであります。そういうことで、研究課題とされる有事来援の米軍のための有事法制、これは一体どういう内容のものになるのか、これは国民にとって極めて重大な問題であります。西廣防衛局長はこの点について、我が党の柴田議員の質問に対し、二月二十九日の衆議院予算委員会では、有事の際、米軍は我が国自衛隊と共同対処行動をとるので自衛隊に対する有事法制はほとんど米軍にも必要である、こう答弁しています。そして、先日はこの予算委員会において、そういった米軍のための有事法制は自衛隊法とは別の立法になるだろう、ここまで言っております。この点は、まず確認しておきますが、間違いありませんか。
  91. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) まず二つの点をお答えしたいんですが、先生の御質問の前段で有事来援に関連をしてと、こうおっしゃいましたが、私どもは、有事来援研究というのは我が国有事に際して米軍の時宜を得た来援をいかにして得るか、どの程度の規模のものが来るであろうか、そういった研究をしたいということでありまして、私はそのこと自体に国内法制との関係は生じないというように考えておりますし、従来そのようにお答えしていると思います。  一方、米軍の有事における行動に伴う法制といいますものは、在日米軍の行動に伴ってあるいはそういうものも必要になろうかと思います。その点に関しては、一般論として、この有事来援研究とは別の範疇のものだということでお答え申し上げておりますが、今回もその意味でお聞き取りいただきたいと思いますけれども、米軍の行動というのは、日米が共同対処行動をやります。しかも我が国内で行動するということでありますから、自衛隊の足らざるところを補ってもらう、あるいは自衛隊の力の不足する部分を共同でやっていただくということでありますから、自衛隊の行動の内数で米側も動くであろう、内枠の中で米側も動くであろうということは当然予想されるわけでありますから、その行動に伴う法制上の問題点というのは、現在自衛隊の行動にかかわる法制上の諸問題を検討いたしております、その問題点の中に含まれるであろうということを先般来申し上げておるわけであります。  なお、つけ加えて念のために申し上げますが、有事法制の問題は、有事法制を我々立法しようと現在考えておるわけじゃございませんで、現状の法制ではどういう問題点があるかという問題点の洗い出しをやっておるわけでございますから、そういった問題点について言えば、米軍の行動に伴う問題点というのは、自衛隊の行動に伴って生ずる問題点が幾つか上がってくればその中のものではなかろうかということを申し上げたわけであります。  なお、立法という話になりますと、自衛隊のための法律と米軍のための法律は別だということも一昨日申し上げたとおりであります。
  92. 橋本敦

    ○橋本敦君 前提について、米軍の有事来援に関連をしての研究ではない、それと別に米軍のための有事法制の検討はあるというような、そういう言い方でありますが、いずれにしても、米軍の有事来援に関連をして問題になってくる重大問題であるかかわりはこれは否定できないはずです。  防衛庁長官に伺いますが、その米軍の軍事行動の必要のための有事法制というのは、自衛隊のための有事法制を今検討しておる、それとほとんど内容的には変わらないものになる可能性があるという今の見解は、防衛庁長官も同意見ですか。
  93. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ただいまの私の答弁が十分御理解いただけなかったのではないかというような御質問だったのでもう少し補足して申し上げますが、私が申し上げたのは、必要になる法制が同じものになるとか、そういうことじゃございませんで、問題点の洗い出しを現在やっております、自衛隊の行動に関して。問題点が仮に十なら十上がったとしますと、その外ではない、そのうちの一つか二つかわかりませんが、外ではない、同じであるというふうに申し上げておるわけじゃございませんので、そこを御理解いただきたいと思います。
  94. 橋本敦

    ○橋本敦君 外ではないんだから一緒にダブってくる、オーバーラップするんですよ。長官、間違いないですね。簡単な話だから……。
  95. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 今防衛局長が御答弁をいたしましたが、洗い出し等につきまして勉強をしておるということでございまして、防衛局長答弁に同じでございます。
  96. 橋本敦

    ○橋本敦君 では、今自衛隊の有事法制、百三条についてどういう洗い直しをやっていますか。
  97. 依田智治

    政府委員(依田智治君) お答えいたします。  自衛隊法百三条の関係というのは、自衛隊の防衛庁の所管事項に関する有事法制研究でございまして、これは五十二年に総理の御了解を得て始めまして、以後五十六年四月に中間的に第一分類、この防衛庁所管を御報告し、国会にも御報告したところでございますが、要点をちょっと申し上げますと、まず自衛隊法百三条というのは有事における物資の収用、土地の使用等についての規定でございますが、細部について政令を定めることになっておりますが、その政令がまだ定まっていない、その政令の中身をもし定めるとすれば、例えば物資の収用等を要請する者をだれにするかとか、知事が保管する施設について細部は政令となっていますが、そういう政令をどうするか、こういうような問題、また収用を行う場合の公用令書の記載事項、こういうようなものがないというようなことは、この当時の別紙として御紹介しておるところでございます。  なお、この規定のほかに例えば居所が不明のような場合とか、相手にやろうとしたけれども居所が不明だとか、それから工作物があった場合に撤去しなければ使えないけれども、撤去する手続についての規定がないとか、それから災害救助法等では命じた場合にそれに従わなければ罰則があるわけでございますが、これについては慎重な検討を要するということも記述してございますが、こういう罰則の問題等もない。それから、現在の規定は防衛出動が発動されて初めてこの百三条が生きてくるということになっておりますが、そもそも発動されたというときはもう侵略があったときでございますので、むしろ防衛出動待機命令の時点あたりからやっぱりこれは考える問題ではないかというような問題が提起されております。  以上でございます。
  98. 橋本敦

    ○橋本敦君 要するに、いざというときには自衛隊のために国民の財産、物資、それから土地、建物、そしてまた、そういったことも含めて、いわゆる強制収用されるということについて検討がなされておるわけですね。だから、したがって米軍に対する有事法制もその外でないとなると、これもまた米軍の有事法制の内容として、当然米軍のためには一方的に国民の財産が強制使用されるということが検討されることになる、そういうことですね。
  99. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 米側にとってどのようなものが必要であるかということは今後の問題でございまして、自衛隊の検討が終わり、その後政府全体で行うということは先ほど来申し上げておるわけでございますが、ただ、先生質問の中で土地を取り上げてしまうとか、いろいろおっしゃいましたけれども、土地は使用するだけでありまして収用するわけじゃございませんが、いずれにしても戦場において陣地等をつくるということでございますので、その時点でそこに住民の方がおられると当然被害を受けるわけでございまして、避難等をされる、そういう状況になるわけであります。  通常の場合、この種強制措置というものは私ども必要がないというふうに考えております。一般的には契約行為でできる。特に戦場のような、そこで耕作をしたりすることができないような状況下では、避難するに際して借り手もないところを国が借りるということはより土地を持っている方にとっては有利でございますので、そういう心配はないと思いますが、念のためにそういう措置もできるような法制になっておるわけでございます。その点は御理解いただきたいと思います。
  100. 橋本敦

    ○橋本敦君 つまり否定されないわけですよ。  さらに、自衛隊法では、有事の際には医師、看護婦などの医療従事者やら船舶、自動車、鉄道といった輸送業務に従事する者に対して強制従事命令まで出せる。これが米軍のためにも出される、こうなりますと、まさに有事法制は米軍のため日本国民がアメリカの軍事行動で駆り出される。憲法で保障された財産も制約される。重大な問題ですね。  しかも、これが五条で言う日本有事の場合だけでなくて六条に基づく米軍の極東有事の際にも使われる、こうなりますと一体どうなりますか。こんなことが日本の恒久平和あるいは人権保障を貫く憲法上許されますか。こんなことは直ちに検討をやめるのが憲法の当然の筋ではありませんか。総理、いかがですか。このことを強く求めておきます。
  101. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 我が国有事の際の米軍の来援というのは、やっぱり安保条約というものがある限りにおきましては、それはまさに安保条約の核心部分であると思っております。  したがって、今研究を、五十二年、福田内閣のときだと思いますが、から始めて今日に至っておるわけでありますが、私自身もいろいろ聞いてみると、米軍の行動に関しましても大体同じようなことが予測されるなと、こういうことは確かに私自身も感じておりますが、我が国有事というのはあってはならないことでございますけれども、そういう場合を想定した場合、私は、その問題が我が国のいわゆる人権その他いろんな問題を惹起することは十分わかりますがゆえにこそ慎重でありますが、全く研究すべきものではないという判断には立ちません。
  102. 橋本敦

    ○橋本敦君 六条の関係はいかがですか。  委員長、済みません、質問が一つ残っているんです。日本有事だけでなくて極東有事の場合にもそういうことになるとすれば大問題ではないか、この点の答弁はどうですか。
  103. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 今回の研究は六条には関係ございませんし、また、いわゆる極東有事における米軍の行動にかかわる法制の問題につきましては、現在、その要否も含め全く検討の対象といたしておりません。
  104. 橋本敦

    ○橋本敦君 六条の心配があるんです。
  105. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 先般来政府が申しておりますように、今回の研究と申しますのは我が国に対する武力攻撃が行われる際の米軍の来援についての研究でございまして、第六条、いわゆる極東にかかわることは研究の対象となっておりません。
  106. 橋本敦

    ○橋本敦君 宇野外務大臣は先日、当面五条だけれども六条は全く否定しないという趣旨答弁をしていますよ。それと食い違いがあるという指摘をしているんです。これは理事協議ではっきりしてください。食い違いですよ。
  107. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) この間整理をしてお話をしました。よく聞いていただければおわかり願うと思いますが、今回の勉強は五条に限る、日本有事だけであって、いわゆる極東有事には及びませんとはっきり申し上げております。ひとつその点だけは御理解願います。
  108. 橋本敦

    ○橋本敦君 いやいや、納得できない。六条は全然関係ないとは言わなかったんです。納得できませんが、終わります。
  109. 市川正一

    市川正一君 今の問題は明白に食い違います。この問題については後で私が議事録に基づいてきちっと決着をつけましょう。  ただいまの有事来援にかかわって防衛庁に伺いますが、アメリカの一九八九年の軍事態勢報告の八十ページ、日本の戦時受け入れ国支援協定に関して記述しておる部分を紹介してほしいと思います。
  110. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 当該部分、仮訳でお読みいたします。  一九七八年の防衛協力のための指針は、将来戦時接受国支援についての諸合意に至ることのあり得べき研究の実施を定めている。しかしながら、同指針は、そのような研究作業結果によっていずれの政府に対しても義務を負わせないことを明らかにしている。したがって、日本によって非常時立法が制定されない限り、正式な拘束力のある合意は実現されないであろう。
  111. 市川正一

    市川正一君 アメリカ側はかくのごとく、戦時における受け入れ国による支持合意の問題、あるいはまた有事立法の制定を強力に日本に求めております。  ところで、総理に伺いたいのは、政府はしきりに日本有事の場合ということで研究を進めると言う。しかし、日本だけが独立した形で攻撃され、単独で対応しなければならないというような事態はあり得ないということは、アメリカ議会でのギン元在日米軍司令官あるいはウェスト国防次官補等々の証言でも明らかなところであります。  あり得ることは、日本は攻撃を全く受けていない。平時である。ところが米軍が、極東有事だということで、日本側が法制上も財政上も協力して、事前集積、いわゆるポンカスした装備や弾薬などを使って作戦行動を行う、そういう事態です。このときにどう対応するんですか。
  112. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先ほど来外務大臣が明白に申されておりますけれども、在日米軍が我が国と対処行動を行うのは、我が国有事、五条事態に初めて対処行動を行うわけでございまして、その点についてたびたび申し上げておるわけであります。    〔委員長退席、理事林ゆう君着席〕 六条事態において我が国において共同対処行動が行われたり我が国防衛のための来援活動が行われるということではないということをまず御理解いただきたいと思います。  それからポンカスについてのお話がありましたが、ポンカスについては、これまた本委員会で何度かお答え申し上げたと思いますけれども、これは陸軍部隊の事前装備の中のユニットセット、いわゆるある単位部隊の軽装備の人員が来れば、そこで直ちに部隊編成ができて活動できるようにする、そういったものをポンカスと言うと思います。  したがって、それが仮に、仮定の話でございますが、日本有事の際に使われるべくそういったものがされておるとしますと、そこに人員が来てその装備を使えば直ちに部隊編成ができるということで意味があるわけでございまして、それを他地域に持っていくということになりますと、せっかくそこに置いてありますものをもう一度こん包し直してそして運び出すということになりまして、それは必ずしも合理的なことではない。だからこそ米議会等は、ポンカスを新たに行うということについては、米軍の行動の柔軟性が失われる、つまりその国にそれが固定されてしまうということで消極的であるわけでございまして、その点を十分御理解いただきたいと思います。
  113. 市川正一

    市川正一君 おととい本委員会で総理も外相も、事前集積、いわゆるポンカスされた装備を持って米軍が直接戦闘作戦行動のために出動する際それが事前協議の対象になるのだと、そのことだけを強調して問題をはぐらかされましたが、しからば、ポンカスで装備した米軍が直接戦闘作戦行動には該当しない日本国外への移動をする形をとった場合には事前協議の対象になるんですか。
  114. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 事前協議には三つのケースがありまして、私が申し上げましたのは、御承知のとおりに、日本の区域、施設から米軍が直接戦闘作戦行動に出る場合、これは事前協議の対象である、そのときには日本はイエスなのかというふうな御質問に対しまして、イエスもあればノーもあると、総理も私も同じお答えをしたわけでございます。
  115. 市川正一

    市川正一君 今の場合、移動する場合はどうなんですか。私の質問に答えてないじゃないですか。
  116. 林ゆう

    ○理事(林ゆう君) 市川君、立って質問してください。
  117. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 移動する場合というと、どこへ移動するのでございますか、質問を返しますが。
  118. 市川正一

    市川正一君 答弁してください。
  119. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) ただいま外務大臣が御答弁申し上げたとおりでございまして、日本国から行われる戦闘作戦行動のための基地としての施設、区域の使用は事前協議の対象となります。これは従来より国会でたび重ねて議論されている点でございますけれども、日本国からの単なる米軍隊の移動は事前協議の対象とならないという形になっております。    〔理事林ゆう君退席、委員長着席〕
  120. 市川正一

    市川正一君 私が聞いているのは、戦闘作戦行動には直接行かないで、ある国に移動してそこから行くという場合にはどうなんですか。
  121. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) ただいまお答えしたとおりでございますけれども、そのような移動は事前協議の対象になりません。
  122. 市川正一

    市川正一君 しり抜けじゃないですか。  例えば、ベトナム戦争のときに米軍が沖縄の嘉手納基地から直接ベトナム爆撃、すなわち直接戦闘作戦行動にも出動しておりますけれども、この場合事前協議はあったんですか。
  123. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) この点も当時から繰り返して国会で議論されている点でございますけれども、ベトナムの場合は、米軍が日本の施設、区域から直接戦闘作戦行動に従事するために出撃していったというケースではございませんので、事前協議の対象になっておりません。
  124. 市川正一

    市川正一君 そんなばかなことはないじゃないですか。どうして事前協議の対象にならぬのですか。
  125. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) その点を先ほどから御答弁申し上げているつもりでございますけれども、この戦闘作戦行動とは直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動を指すものであって、ベトナムの場合はこのような形態で日本国から出撃していったわけではございませんので事前協議は行われておりません。ちなみにこれは国会におきまして非常にたび重ねて議論がされておりまして、我が国のこの考え方というのは非常にはっきりした形で何度も御答弁申し上げております。
  126. 市川正一

    市川正一君 何回討議したか知らぬけれども、筋が通らぬじゃないですか。言うていることとやっていることが全くしり抜けです。  さらに聞きますが、ポンカスした装備を、日本は平時だけれども極東有事だということで、例えば朝鮮半島で有事が起こったということで米軍が移送する場合、これは事前協議の対象となるんですか。外務大臣、どうですか。
  127. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) そのようなことが実際上は起こりにくいであろうということは先ほど防衛局長が御答弁申し上げたとおりでございますが、一般的な理論上の問題として申し上げれば、資材だけが例えば韓国へ移動されるという場合はこれは事前協議の対象になっておりません。
  128. 市川正一

    市川正一君 これもしり抜けです。骨抜きじゃないですか。  具体的に、例えばあのベトナム戦争のときに相模原基地からベトナムに向かってどんどん戦車が送られました。そのときに事前協議はあったんですか。
  129. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) これは事前協議の対象になっておりません。
  130. 市川正一

    市川正一君 じゃ全くフリーハンドじゃないですか。昭和五十年十二月の衆議院内閣委員会、そのときの政府答弁も、朝鮮半島有事で米軍が行動する場合、補給は自由であり事前協議の対象にならない。これが現に今ずっとやられておるんです。  おととい外相は、事前協議があるんだ、しかもイエスもあればノーもある、だから御安心ください、そう言ってここで答弁されました。では今まで事前協議は一回でもあったんですか。また、ノーと言ったことは今までかつてあるんですか。
  131. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 今まで事前協議があったことはございません。
  132. 市川正一

    市川正一君 結局一回の事前協議もない。現にベトナム侵略戦争のときに日本が基地になっている。そして日本から出撃している。これも野放しですか。大臣、どうなんです。
  133. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 先ほど来政府委員が申しておりますし、この議論は何度も国会でなされております。したがいまして政府の答弁は少しも変わりはございませんが、第六条に言われるところの三つのケース、一回もなかったから事前協議がないわけであります。
  134. 市川正一

    市川正一君 今度は事態がさらに深刻化するわけです。日本が直接ポンカス、今度の有事来援ということで、日米一体になって体制をつくる。そして装備を集積して、アメリカが中東や極東で有事を引き起こした場合日本をもろに巻き込んでいく。今度は日本が直接加担するわけです。集団自衛権に踏み込むんです。そういう事態になるんだという、そのことは外務大臣、認識されていますか。
  135. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 有事有事という話から出発しますといかにも有事がそこに来ているように見えますが、全く有事は来ておらぬわけでありまして、そういう有事を抑止するということが大切なんであります。日米安保条約は、まさに過去四十三年にわたって有事を抑止いたしております。したがいまして、さらに日米安保条約の効果を上げるために平時において第五条に基づく勉強をするということは、まさにもって抑止でございます。だから、私たちはそういう意味で勉強しておる、抑止というものがあって初めて有事というものが避けられるのである、こういうふうにお考え賜りたいと思います。
  136. 市川正一

    市川正一君 その日米安保条約というものは、一体どういうものなんですか。ポツダム宣言、これは戦後の平和民主日本の出発点たるものでありますが、第十二条にはどう述べているんですか。外務省、はっきりさせてほしい。
  137. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) ポツダム宣言第十二条をはっきり申し上げますと、日本においてこの宣言が採択されて終戦となり、私は意訳をしておるわけですが、その後国民の自由意思によって平和的傾向を有する新しい政府が誕生したときには占領軍は撤収すると書いてあるわけです。
  138. 市川正一

    市川正一君 「連合国ノ占領軍ハ直ニ日本国ヨリ撤収セラルベシ」と。サンフランシスコ平和条約の第六条はどうなっておりますか。
  139. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 同じように、この条約の発効後九十日以内に占領軍は撤収すべしと書いてある。そして、その後書きの方におきましては、新しい政権が一国または二国以上を相手として協定を結ぶときには駐留軍としてある国の軍隊が駐留、駐屯することを妨げないものであると書かれております。だから、今市川委員がおっしゃいましたポツダム宣言も、また講和条約も、ともに占領軍は撤収すべしということが骨幹であります。
  140. 市川正一

    市川正一君 にもかかわらず、日本に今アメリカ軍が駐留しそして基地を置いているんです。このただし書きで安保条約が結ばれた、そうおっしゃりたいわけです。しかし、この安保条約がアメリカの占領支配の事実上の延長であり、いかに屈辱的なものであったかは当時の多くの記録や文献が実証しています。  時間がありませんから、その一つを紹介するだけですが、その当時直接条約交渉に当たった西村熊雄外務省条約局長も、いろいろの著書で書き残しておりますが、「日本の安全保障」という本、ここにもありますが、ここで「ポツダム宣言、降伏文書、極東委員会の対日基本政策」「を御破算にして、日本を自分らの安全保障体制の中に組み入れる、要するに共産圏諸国を除外する他の連合国だけで日本に独立を回復させて」軍事保障体制の中に組み入れる、要するに「軍備制限条項を置かないで再武装させ、また経済的にも強大に一日も早くならし、そうして平和条約締結と同時に米英陣営の防衛体制の一環として取り入れようという百八十度の方向変換がありました」と、こう述べております。この証言にも明らかなように、そもそも安保条約はこうしたアメリカの戦略に基づいて結ばれたものであり、また日本の平和と安全を守るためのものでないことはその当初からの性格でありました。言うならば、ポツダム宣言からもあるいはサンフランシスコ平和条約からも一時的、例外的なものとしてとらえているものです。  そこで、この際総理にお伺いしたいのでありますが、この日米安保条約はどういう状況になればなくすと考えているんですか。
  141. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 現実問題としまして、今日まで平和が維持されてきて、それが日本国の繁栄に、そして今後世界に果たさなければならない役割にと、その現実問題は日米安保条約というものが存在し平和が維持されて戦禍に巻き込まれることがなかったという、そういう抑止が働いたということがすなわち今日の繁栄につながっておるということをまず第一にお考えいただきたい、そのように考えます。
  142. 市川正一

    市川正一君 いつなくすんですか。
  143. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 仮にもし、かつて言われたごとく、いわゆる世界の平和と安定というものが国連軍そのものによってすべて対応できるという状態に仮になったとすれば、それはその時点、また我が国自体で判断すべき問題ではなかろうかと、このように考えます。
  144. 市川正一

    市川正一君 ということは、不要となるような環境ができるまで続けるということになるわけでありますが、その日米軍事同盟こそが緊張を激化している。それに固執している限り緊張緩和に逆行することは先ほど来の議論で明らかでありますが、現行安保条約の第十条が規定しているように、改定されてから十年後、すなわち一九七〇年以降は、一方の政府が終了させる意思を通告すれば一年後には終了する、すなわち廃棄することができるわけでありまして、いつでも安保を廃棄する条件は整っております。今こそ戦後政治の原点、日本憲法の原点に立って安保条約をなくし、真の平和と安全の道に進むべきであることを強く主張して次の問題に移りたいと思いますが、ちょっと休憩をいたしたいと思います。
  145. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 市川正一君の残余の質疑は午後に譲ることとし、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十六分休憩       ─────・─────    午後一時開会
  146. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 予算委員会を再開いたします。  昭和六十三年度総予算三案を一括して議題といたします。  休憩前に引き続き、市川正一君の質疑を行います。市川正一君。
  147. 市川正一

    市川正一君 最近、連続立体交差化事業などで、ホームが平地より高い高架駅、あるいは駅舎や改札が高い橋上駅、また、地下深くにつくられた地下駅がふえておりますが、それに伴う利用者対策、障害者対策が求められております。このほど我が党が独自に行った調査を御参考に資料として配付さしていただきました。これによりますと、駅利用者からエスカレーター設置が強く求められているところが二十都道府県で二百三十駅となっております。お年寄り、病身の人、妊婦、障害者はもとより、元気な人でも利用者の切実な要求となっております。  運輸大臣にお伺いしますが、こういう駅にエスカレーターあるいはまたエレベータを設置するよう鉄道事業者に指導する必要があるのではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  148. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 高齢化社会でございますし、また身障者の方々も昔と比べて社会的に活躍をされておりますし、でき得ればすべての駅にエスカレーターが設置されることが望ましいとは思いますが、既存の駅などは構造上不可能なこともございまして苦慮いたしておりますけれども、いずれにしろ、新規の駅などもこれが積極的に実現するように指導している段階でございます。  ただ、経済性の問題もありまして、費用のかさむことでもありますので、そこら辺の基準といいましょうか、限界点をどこに置くかということは非常に難しい問題ございますけれども、いずれにしろ、結論から申しますと、すべての駅にそういう施設があるということがもとより望ましいと心得ております。
  149. 市川正一

    市川正一君 首都圏の私鉄大手七社を見てみますと、高架、橋上、地下駅は二百二十二駅あるんですが、そのうち二十八駅にしかまだ設置されておりません。今運輸大臣から積極的な御答弁をいただいたんですが、今ある駅についても具体的計画を私鉄に持たせるように指導していく必要があると思うんですが、御所見を承りたいと思います。
  150. 熊代健

    政府委員熊代健君) お答え申し上げます。  現在、私鉄だけとりまして関東の大手の七社で先生今二十八というふうにおっしゃいましたけれども、現時点では三十三駅エスカレーターないしエレベーター。で、大臣もお答え申し上げたように、サービス向上ということ、あるいは身体障害者の対策としてもこれを進める。大手私鉄につきましては、我々五カ年計画で、輸送力増強安全対策、サービス向上ということで逐次計画的にやらせております。五十七年度からの六次が終わりまして、六十二年度から第七次輸送力等増強計画。その中には七社で十七駅、先ほど申し上げた完成したものも含め、六十二年度に完成したものも含みますが、十七駅三十七基の設置を一応計画しております。  大臣も答弁いたしましたように、高齢化社会に対応するとか、あるいは駅が高くなるあるいは深くなるということに対して、今後我々としても駅設備の改良に、そういう計画的な整備の中でより重点を置いていきたいというふうに考えております。
  151. 市川正一

    市川正一君 竹下総理に伺います。  政府は、八三年から九二年までの十年間を「国連・障害者の十年」と位置づけて、昨年六月後半期計画を立てておりますが、高齢者も含めた総合的な交通弱者対策の確立が急がれております。障害者対策推進本部長である竹下総理に今後の推進についての決意のほどを承りたいと思います。
  152. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まずは障害者対策に関する長期計画、これを中心といたしまして、今運輸当局からもお話がございましたが、鉄道駅におけるエスカレーター等の設置等についても、新設時や駅施設の改良時等に合わせて整備を進めていく、具体的にはそういうことになろうかと思いますが、いずれにせよ、高齢化社会がやってきて、そうしてまた身障者の方々の社会的な活動分野も広くなって、そういう問題意識を前提にして対応を急がなければならないことであるという意味においては、意見は同じくいたしております。
  153. 市川正一

    市川正一君 次に、国鉄の分割・民営化からちょうど一年たちました。未解決のままの長期債務など重要な問題がなお山積しておりますが、本日は国労、全動労に対する非人間的な差別問題に限ってただしたいのであります。  まず、労働省に伺いますが、JR発足以降全国の地労委に訴えられた件数は全体で幾らか、そのうちJR関係は幾らですか。
  154. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  昭和六十二年に全国の地労委になされました不当労働行為救済申し立ての件数は、五百七十八件でございます。JR各社及び清算事業団に対してなされた不当労働行為救済申し立ては三月八日現在で百八十二件であり、うち十一件は既に取り下げられておりますので、現在係属中のものは百七十一件でございます。
  155. 市川正一

    市川正一君 約三分の一がJR関係です。そのJR関係で勧告や命令が出されたのは何件でどんな内容ですか。
  156. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  地労委によります実効確保の措置の勧告等は三月八日現在計三十八件の事件について行われております。それから救済命令は一件でございます。
  157. 市川正一

    市川正一君 内容で少しありませんか。
  158. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) 内容で現在手元に持っておりますのは、救済命令が出されました一件でございますが、東京都の地方労働委員会から先般なされた命令でございまして、命令の事案の概要は、国労東京都地本等がJR東日本新宿車掌区長が国労組合員である車掌Aを内勤の運転担当から実質的に二段階下の業務である電車乗務に担当業務の指定変更を行ったということで、不当労働行為として東京都労働委員会に救済申し立てを行ったものでございますが、これに対しましてJR東日本は、このAの業務は指定がえされても職名は同じで車掌であり、給与面での不利益がないこと、Aの業務変更は、Aが小集団活動に熱心でなかったことによるものであることということで反論いたしていたものでございます。  この件につきましては、先般東京都地方労働委員会の命令が出まして、命令の主文におきましては、被申立人東日本旅客鉄道株式会社は、申立人国鉄労働組合東京地方本部八王子支部新宿車掌区分会所属の組合員Aに対し昭和六十二年六月八日付で行った内勤の運転担当から電車乗務への指定がえを撤回し、内勤の運転担当に復帰させなければならないという命令を出しております。
  159. 市川正一

    市川正一君 今の東京地労委の救済命令も、紹介があったように、悪質な支配介入の不当労働行為であると、こう断じております。JRだけで全体の約三分の一を占める。しかも、地労委の勧告や命令すらこれを無視して従おうとしない。  中村労働大臣に伺いますが、こういう態度、特に国の一〇〇%出資会社であるJRの態度を正当、正常なものとお考えでしょうか。
  160. 中村太郎

    国務大臣(中村太郎君) ただいま御報告申し上げましたように、国労等から百七十一件に及ぶ多数の救済の申し立てがなされておるわけでございます。そのうち一件につきましては救済命令が出されました。しかし、このことにつきましては、JR東日本の方からさらに再審査の申し立てがなされておるわけでございます。  私どもとしましては、現在いずれも労働委員会に係属中の事案でございますので、この際、このとき、この事案に対するとかくのコメントをすることは適当でないというふうに承知をいたしております。ただ言えますことは、労働省としては、かねてから、不当労働行為はあってはならない、こういう前提に立ちまして労使双方を指導いたしておるわけでございまして、今後ともこういう方針で進みます。ただ、JR各社におかれましても、一日も早く正常、良好な労使関係が形成されますことを心から願っておるところであります。
  161. 市川正一

    市川正一君 国鉄の分割・民営化法案のときにも、所属組合によつて差別はしないというのが政府のかたい約束でした。しかし、今ここに報告されたような事態が今白昼公然と行われているんです。  私、御紹介をしたいと思うんですが、JR西日本の事業分室、ここはすべて運転職場からの配転者で、運転士あるいは車両の検査係などベテランの国鉄労働者が各駅の売店、うどん屋、カレー店、喫茶店、アイスクリーム店等に送り込まれております。ここに、その一人である中矢さんという方の奥さん多津子さんの手記があります。こう言っています。   毎日通勤で通る場所だけど、夫が売っているアクセサリー売場をどうしても見る気がしなくて、ずっとさけていました。でも、八月十九日、とうとう決心してその場所に行ってみました。中央コンコースのど真ん中にワゴン車がおいてあり、その上に一個千円のアクセサリー。夫と同じ場所に立ってみて、「これはさらし者やなー、さらし者以外の何者でもないなー」と心の底から怒りがこみ上げてきました。行きかう人の群れのなかで、武骨な中年男が千円のアクセサリーを所在なげに売っている。「何でやのー」と叫びたい。 そして、  なぜベテランの機関士や検査係がこんなことをさせられなければいけないのでしょう? こう結んでいます。  石原運輸大臣、この心情、おわかりになるでしょうか。
  162. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 原則的には仕事に貴賤はあるわけではございませんで、また、新生JRもいろいろ新しい発想、多様な発想で新しい商品の提供をして実績を上げているわけでございますから、個々の方々には過去の職掌に比べて御不満があるかと思いますけれども、しかしやはり、JRの新しい進み方に私は職員のすべての方々が旧来の立場を超えて御協力を賜ることが望ましいと思っております。
  163. 市川正一

    市川正一君 ベテランの運転士、ベテランの検査係、こういう人が——その職場では人が足らぬのです。ところが、今言ったように喫茶店にうどん屋に——そういうお仕事が決してどうのこうのとは申しませんが、実際にこのままでは国鉄の運行が危険だという状態にまでなっているんです。先月の三日に私が実際に体験したんです、あの雪のときに。私はひかり二八八、新大阪から九時に乗って帰る途中に、着いたのはとうとう朝の、午前五時です。五時間のおくれです。なぜか。そのときの原因を調べてみたら、結局、広域配転で来た新しい運転士がエアブレーキ事故を直せぬのです。だから、やってきた対面のひかり号をとめてその運転士に直さしたというような事件が実際起こっているんです。私は、こういうことがあってはならぬということです。  採用差別によって、いまだに国鉄清算事業団に五千二百人の就職未定者がいるんです。この中には、JR九州での問題でありますが、国鉄職員であった夫をがんで亡くし、三人の子供を抱え女手一つで育てていかなければならない未亡人まで、JRは非情にも採用を拒否いたしました。つまり、国労組合員であるからであります。ところが同じ地域で、国労を脱退した三組の夫婦の元組合員は全員採用されています。清算事業団に残された人たちは、この一年間、来る日も来る日も机にただ座っているだけ、こういう非人間的な扱いが許されていいんでしょうか。  竹下総理、石原運輸大臣、国鉄の分割・民営化の審議の際に、中曽根総理や橋本運輸大臣は、政府の責任において一人も路頭に迷わせない、こう繰り返しました。私も追及いたしましたし、竹下総理大臣もそのとき大蔵大臣としてここにいらっしゃいました。この約束を必ず果たされるよう、総理並びに運輸大臣のお約束、確認をいただきたいと思います。
  164. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 清算事業団職員の再就職対策につきましては、未定の職員が六十三年三月一日現在で五千八十人にまで減ってまいりました。まあ順調に推移していると思われます。ただ、残った方々につきましては、今後も引き続き各方面の御協力をいただきながら、全国的な観点から再就職対策を積極的に行っていくつもりでございます。
  165. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 大要運輸大臣からお話があったとおりでございますが、各方面の協力によって五千人にまで至ったわけでございますから、これからも円滑な再就職が図られるように、誠心誠意これに当たってまいります。
  166. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で市川正一君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  167. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、井上計君の質疑を行います。井上計君。
  168. 井上計

    井上計君 私は、具体的な質問に入る前に、ある人から総理への伝言を頼まれておりますので、まずそれを総理にお伝えいたしたいと、こう思います。  去る二月の二十六日でありましたが、札幌で中小企業者の会合がございました。それに招かれていったわけでありますが、私、お話をした後、懇談会でいろんな意見交換を行いました。そのときに参加者のある人がこのようなことを言われました。この方は早稲田大学を卒業して現在七十歳、まだ元気で第一線で頑張っておられるわけでありますが、最近はもう肩身が狭くて困るんだと。それは高齢化が進んで、十年後には大変なことになるということはわかるけれども、しかしそのために財源が絶対必要だと。だから、安定した財源を確保するためには税の抜本改正即間接税の導入は当然だというふうな論議が非常に多くあるし、また竹下総理もそれをしばしば言っておられるけれども、我々としてはまことに肩身が狭くなってきたと、こういうことであります。  現在七十歳前後、それ以上の人は戦争中あるいは戦後の苦難の中を生き抜いてきて、しかも、戦後のあの混乱の中で現在の繁栄のいわば基礎をつくった、大変貢献された人でありますから、そのような人がそのような寂しい思いをしているということについては、やはり政治の場で十分考えていかなくちゃいけないと、こう思います。総理がおっしゃっていることが違っているとかどうとかという意味じゃありませんけれども、このようなことを、そういうふうに寂しく感じておる方から、機会があればぜひ総理にお伝えをしてほしい、そうして私たちももっと元気で働きたいんだから、年寄りの働く場所、雇用の場を確保することも同時にお考えをいただきたい、こういう伝言でございます。  せっかくの依頼でありますから、この機会に総理にお伝えを申し上げますので、多分このテレビ中継をこの方は見ておられるのではなかろうかと思いますが、できますればその方に対してあるいはその方と同様な気持ちを持っておる大勢のいわばお年寄りの人に対して、何か総理のお答えをいただければ大変ありがたいと、こう思います。
  169. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 高齢化社会、これは好むと好まざるとにかかわらず訪れてくるものでございます。むしろ、今おっしゃったとおり、可能な限り高齢者は高齢者として今までのノーハウ、いろんな蓄積があるわけでございますから、具体的には定年延長という問題もあるでございましょうが、それらも含めて、可能な限り長期間世のため人のため、あるいは社会のために働いて尽くしていくという、そういう雇用対策というようなものが大変生きがいある施策ではなかろうかと私自身も思っております。  肩身が狭いとおっしゃいますならば、井上さんもそうでございますが、私も明年からマル優年齢に達します。マル優年齢というこれも定義じゃございませんが、必ずしもこの言葉があるわけではございませんが、そうすると、振り返って考えてみると、我々の時代に可能な限り稼得能力のある我々の後に続く皆さん方が世代間不公平を感ずるような負担感をもたらさないように直しておくことが、やがてお世話になる我々の務めではないかなと、こういうふうにも考えておるところでございます。
  170. 井上計

    井上計君 ありがとうございます。  総理の今のお答えについての質問はまた後ほどに譲ります。  さて、総理は去る一月二十五日の本国会での施政方針演説で、内外の多くの課題に取り組むことは、「調和と活力」を目指すことである。日本と世界の調和を図り、国内におけるさまざまな不均衡や不公平の是正に努め、活力に満ちた社会を築くこと、これこそ今政治に強く求められている課題である。私は、当面直ちに対応すべき政策課題、また、各界各層の英知を集め長期的観点に立って検討していくべき課題を整理しつつ、これらの問題に対処し、国民の皆さんの負託にこたえていく決意であると、このように力強く述べておられます。  そこで、お伺いいたしますが、総理のこれが政治信条であり、竹下内閣の基本方針と理解をしてよろしゅうございますか、お尋ねをいたします。
  171. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私なりに整理して述べたものでございますから、そのように理解していただいて結構だと思います。
  172. 井上計

    井上計君 大蔵省に伺います。大蔵大臣でなくても結構であります。  去る二月の五日に衆議院の予算委員会におきまして我が党の永末副委員長が要求した資料が、去る十日に大蔵省、厚生省の連名で提出をされました。「二十一世紀初頭における高齢化状況等及び社会保障の給付と負担の展望」ということであります。ところが、永末副委員長が要望しましたのはこの資料ではございません。永末副委員長は、高齢化社会が実現したときに、そのかなりの部分を財政が担わなければならぬと言われるなら、これを明確にしてほしいと、こういう要求をしたわけでありますが、この資料は必ずしも永末要求にこたえていない、こう思うのでありますが、大蔵省はどのようにお考えでおられましたか、お尋ねをいたします。
  173. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 衆議院で提出いたしました資料は、社会保障の関係の長期的な推計ということでお出ししたものでございます。  今の先生の御質問によりますと、そういったものも踏まえた全体としての財政の長期的な展望を示すべきであったと、こういう御趣旨かと思うのでございますが、財政の問題につきましては、社会保障の世界だけに限定いたしましても、その推計に基づきましてどういった制度、仕組みに変えていくべきか、それからどういう負担の中で財政負担の仕組みを考えていくべきか、そういった問題もございますし、その他の費目につきましては、社会保障と違いまして、そのときそのときの状況に応じまして、どういう形でそのときの財政需要を賄っていくかということを決めていくべきものでございまして、長期的に財政はこうなるだろうということをお示しすることは困難でございまして、私どもはもともとああいう形でやるならば一応の推計をお示しできるということでお出しした次第でございます。
  174. 井上計

    井上計君 今の御答弁はちょっと私、腑に落ちません。まあしかしともかくとして……。  ところが、去る十二日に大蔵省と自治省は租税負担率等々の試算の結果をまとめて、六十三年度の国税、地方税合わせた租税負担率二五・五%、今後の名目成長率から八十五年度の租税負担率は二八・一%になるというふうな、率直に申し上げると、やや不安感を助長するような資料が新聞に出ておるんです。これは正式に発表された数字ですか。
  175. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 租税負担率につきましてのもろもろの長期的と申しますか、中期的な試算を出せという御要求はしばしばあったわけでございますが、それの前提となります経済動向等をいかに置くかということで非常に難しい、またそのような長期的なものを果たして出していかがなものかということから、今まではその点はお出しをしてなかったのでございますが、先般、先ほどのお話の社会保障関係の推定と申しますか、仮定計算をお出しさしていただいた。そのときに一応国民所得なり経済成長の仮定数値を決められたわけでございますので、その同じ仮定数値を用いれば、そしてまたこれを単純に推計すればこういう数字になるということを、衆議院の他の委員会におきまして前から御要求がございましたので、そうした点でお答えをする意味で算出した次第でございます。
  176. 井上計

    井上計君 それをとやかく言いません。ただ、十日に提出された永末要求に対する資料の中にこのようなものが全く盛り込まれていなくて、そして十一日に大蔵省がどのような形か知りませんけれども、正式発表とは言いませんけれども発表されたもの、あるいはお考えのものが十二日にある新聞に報道されておるということについては、やはり我々としては理解しがたいし納得できないということを実は申し上げたわけでありますから、あえて御答弁要りませんけれども、そういう面についての配慮を十分されないと、何かそこに作為的なものがあるんではなかろうかという疑いを我々が持たざるを得ない、こういう意味でお尋ねをしたわけであります。  さて、そこでこの資料について若干伺います。  厚生省、大蔵省連名になっておりますけれども、特に厚生省に伺いたいと思いますが、この資料によりますと、年金受給者は六十年から七十五年の十五年間で四七%の伸びである、このように示されております。ところが、社会保障費関係につきましては、六十三年—七十五年の十三年間で成長率四%の場合には二・四倍、五・五%と見た場合には二・七倍、さらに社会保障負担についても同じく二倍、それから二・三倍、国庫負担についても二・一倍、二・五倍というふうに非常に高い伸び率が実はこの数字であらわれておるわけですね。一方、国民所得の伸び率等、また先ほどのいろいろなところから考えまして、この社会保障給付費、負担率あるいは国庫負担等についての伸びはかなり過大に見てあるなという感じが実は率直にしますけれども、いかがでありますか、お尋ねをいたします。
  177. 黒木武弘

    政府委員(黒木武弘君) お答えいたします。  年金受給者数の増大に比べまして給付額あるいは負担額等が多過ぎるんじゃないかという御懸念だと思います。  御指摘のように、年金受給者は、現在から七十五年時点におきまして一・四七倍にふえるわけでございます。私どもの給付額の試算は、受給者増とそれに一人当たりの年金額がどれぐらいふえるか、両方の相関で給付額なり負担額を出しているわけでございます。したがって、受給者増は一・四七倍ふえてまいりますけれども、一人当たりの年金額が国民所得にリンクして年金額もやはりふえるだろうということで私どもは計算をいたしておるわけでございます。それに年金の成熟化等が加わりまして、結論的には受給者増を上回る給付額なり負担額という推計結果が出てまいったということでございます。
  178. 井上計

    井上計君 どうも私、実は数字に弱いので今お答えを聞いておってもちょっと納得しがたいのですが、また別の機会に譲ります。しかし、今おっしゃるとおりだとすると、別に今度は自己負担等々の収入増については余り加味していないというふうにも聞こえます。またこれは別の機会に譲りますが、いずれにしてもこの数字はかなり過大だなあと、こんなふうな感じが率直にいたしておるということについてはまた御検討をひとつお願いいたしたい、こう思います。  それから次に、やはりこの資料でありますけれども、今後の人口増、高齢者の増加等々、これは当然でありましょう。ところが、同時にそこで起きる問題は、十四歳以下の人口減という問題があるんですね。十四歳以下の人口減があれば、当然そこに国庫負担や教育費等々の負担が大幅に減ることは確実なんですが、これは全く考慮されていないと、こういうことですか。
  179. 黒木武弘

    政府委員(黒木武弘君) 十四歳以下の人口の減少関係が反映していないではないかというお尋ねだと思います。  御案内のように、十四歳以下の人口は六十九年ぐらいまで減少してまいりますけれども、七十年から再び増加をいたします。したがいまして、七十五年の時点では現在からやや下回るわけでございますけれども、八十五年時点では現在とほぼ同様になるというのが一つでございます。  二つ目には、社会保障給付の関係で今回の推計をいたしたわけでございますが、社会保障の給付の関係は、児童数との相関よりもむしろ児童を取り巻く環境、例えば婦人の方の職場進出とか母子家庭の状況とか、そういう要素の方が給付の方にはより密接にかかわる。そういうものの推計はなかなかできにくいということで、結論から申しますと、人口については現在の時点が七十五年では若干下回りますが、八十五年には同じようになる。それから児童福祉関係の費用、社会保障の費用というのは児童数にリンクするよりもむしろ国民所得とか、あるいは児童を取り巻く環境に大きく左右されるということで、御指摘のように年少人口の人口数の減少は見込んでおりませんけれども、おおよその姿を判断していただく資料としては今回の見積りでいいのではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
  180. 井上計

    井上計君 何かお答えを聞いておると、都合のいいものはきちっと出すけれども、都合の悪いものはなかなか算定が難しいからあえて避けたというふうにも受け取られます。  それはさておいて、このほかにも今後定年延長の問題、六十五歳以上の働く人たちがふえるという問題、そういうふうな、もちろん不確定要素はありますけれども、そういうことを考えると、必ずしもこの資料は、現在国民にこうです、だからこうですというふうな決めつけるような形のものとしては適当でない、こういう印象を持っておりますので、特にこのことを申し上げておきます。今後のまた検討課題ということでぜひひとつその点もお考えをいただきたい、こう思います。  なお、この資料によりますと、医療費の今後の伸び等につきましては、今後の医療行政の努力目標というふうなものはこれまた余り加味されていないなあ、だから、実際医療費はこんなに伸びないであろうということも感じられます。それらの点についても厚生省の努力を大いに期待をし、余りにも高い医療費の伸び等についての抑制政策はさらに努力をしていただくということを要望しておきます。  そこで、関連をして厚生省にお尋ねいたしますけれども、一昨年の四月の当予算委員会並びに補助金の特別委員会で私が厚生省に提言をし、お尋ねをしたことがあります。これは今後の医療制度を改革していくにおいても、さらにまた、地域医療を充実するために必要だということで申し上げたのでありますが、政府管掌の健康保険と、私が所属しております印刷健康保険組合との決算書を対比いたしまして、いかに健康保険組合が経営努力をしておるかというふうなこと等を申し上げて、それには従来認められていない地域の健康保険組合を設立すべきであるということを主張いたしました。当時の総務庁長官、さらに厚生大臣も大変御納得をされまして、制度を変えて昨年の四月から地域健保の設立を認められたと聞いておりますけれども、現況どうでありますか、その後の状況はどうか、お伺いをいたします。
  181. 下村健

    政府委員下村健君) 地域健康保険組合につきましては、御指摘がございましたように、いろいろなメリットも考えられるというふうなことで、現在具体的な事例についていろいろ審査をいたしている状況でございます。ただ、具体的な数字を検討してみますと、これは地域ごとにいろいろな条件の違いというものが当然出てくるわけでございますが、現在の状況でこれからの老人医療費の増加というふうな問題を考えてみますと、かなり数字的には難しいということで時間がかかっておりますが、早ければ幾つかのものについて、一、二のものについて数カ月以内にその設立を認めるような状況になってくるかというふうに思っております。
  182. 井上計

    井上計君 私の知る範囲では、なかなか厚生省は余り積極的にこの指導をしておられぬではないかというふうにも感じられますが、一層のひとつ御努力を切に期待しておきます。  次に、農業問題等について伺いたいと思いますけれども、先ほど申し上げた総理の施政方針演説の中で、当面する課題ということの大きな一つに農業政策の転換があろうと、こう思うわけであります。  この十年間を振り返ってみると、すべての点で大変なさま変わりであります。ところが十年前と比べて余り変わっていないなと、それからまた変えようとしていないのではないかと思えるような政策の一つに農業政策があるのではなかろうか、こう思います。今や、このような情勢の中で農業政策の転換というものについては避けて通れない、このように考えますが、総理の御認識を伺います。
  183. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 農業を取り巻く環境、国際的にも国内的にもそういう大きな変化があることは私もそのとおりだと思っております。したがって、何を指針に農業政策を進めたらいいかな、おととしの暮れでございますが農政審議会、近いところではあの審議会でしっぽりと御議論いただいたものがやっぱり指針として底辺に置くべき問題ではないかなというふうに私は考えております。  それは一方、農業の生産性向上を図ると同時に、書かれてあることは、適正な価格でと、こう書いてあります。農産品が食糧の安定供給に適正な価格で努めるということが基本とされておりますので、そうなるとやはり、供給を受ける方は一億二千万、最終的には皆消費者でございますから、消費者というものを立場に置いた一つのあり方というものを基本に置いて施策を進めていかなければならない。今のところ教科書になりますのは、おととしというと何か古いようでございますけれども、おととしの暮れの農政審の答申であるなというふうに私は最近読んでおります。
  184. 井上計

    井上計君 農林大臣に伺います。  今、総理から御見解を伺いましたけれども、ただ総理の今御答弁の中に、おととしの農政審の答申、若干古いというふうなお話がある。確かにあれ以降随分と変わっていると思うんですね、取り巻く環境あるいは世論。そこで、現時点でこの農業政策の転換について農林大臣はどのようにお考えか、御見解を承ります。
  185. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) お答えいたします。  総理から農政審報告に関連してその中身にも若干触れられましたので、重複を避けて率直な見解を申し述べたいと思います。  国際化は急速に進んでおります。そういう中にあって、とかく農政がかかわる関係者には、急激にハンドルを切り切るものと切れないものといろいろあると思います。そういう意味では、当面して短期的に対応ができるものと、さらに時間をかけてやらなければならない中長期的、あるいは長期的な展望の中にということで対応しなければならぬ問題がございます。長期的展望に立った答申が農政審の報告でございます。これを受けてさらに具体的にいろいろなセクションで勉強を始めておるということでございまして、しかし今一番生産者においてもあるいは消費者においても心配をされておる点は、急速なこの国際化の中で将来一体どうなっていくのだろう、その点が一番不安に思っておられるところではないか。  そういう意味では今申し上げるように、中長期的、長期的な展望に立って、やがてはこうなっていくんだよ、だからこうしなければならない。こうしなければならないという中にやはりおいしい話ばかりではない、お互いが汗を流して国際化の中で我が国の食糧政策を遂行していく。そのために生産者も一汗かいてもらわねばならぬ、私どもも行政の立場で一汗かく。消費者のニーズも含めてまた流通関係業界の御意見も徴しながら我々は進めてまいらなければならない。その場合にわかりやすく進めなければならない、こう考えております。
  186. 井上計

    井上計君 佐藤大臣からかなり明確なお答えをいただきました。私も、農政は素人ではありますけれども、全く同感に思います。  ただそうなりますと、そこでやはり国民世論といいますか、世論がこれは即時に変えるべきだというのがいっぱいあるんですね。あるいは農業自体の中にもこれはもう適当でない、このような環境に対応するためには即時変えるべきだというふうないろんな意見が最近かなり出ておるようであります。  その一つとして申し上げたいのは、これまた一昨年の補助特委員会でも私は指摘をしたわけであります。総理の地元の中海の干拓とそれから宍道湖の淡水化計画、その後も地元の反対がさらに激化して、新聞報道等を見てみましても、言えば食糧難時代の計画を依然として継続しておる、この農政はおかしいという意見が随分あるわけですね。  私はまた、むだというふうな面からも指摘をしたいんですが、六十三年度予算の中にこの干拓事業に六十億円計上してあると聞いておりますが、さらに今後二百七十億円を必要とするというあの計画を私は即時やめるということに何らか問題があるのであろうか、こんなふうに考えておりますが、これはいかがでしょう。農林大臣、どうお考えでありますか。
  187. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 時代の進展、環境の変化等に応じて一たび決められた計画というものを変えなければならないということもあるという一般論はございます。そういう一般論の場合に、やはりむだにむだを重ねた結果にならないように取り組んでいかなければならない、これが一般論としての基本的な考え方でございます。  今お話しのございました中海・宍道湖干拓事業のことにつきましては、実は昨年秋に淡水化試行のことについて農水省で案を出しました。そして、二つの県にまたがっておるものでありますから、それぞれの県においてひとつ御検討いただきたい、御回答もまたいただきたい、こういうことで三月末を待っておるわけでございます。この間に、私のところへいろんな陳情、強い要請、いろいろございます。今またここでも御議論を提起されたわけでございますが、そうした意見を聞きながら、賛成の、今までどおりやれという町村もあるのかどうか、しかしいずれにしても淡水化試行ということに賛成をするというような町村もあるようでございますが、私どもは県当局の今日における判断、それをもとにしながら、また国会での御議論、そしてむだにむだを重ねてはならないという一般論としての意見も頭に置きながら現実的な対応をしてまいらなければならぬ、こういうことで三月末を待っておるわけでございます。
  188. 井上計

    井上計君 お話はわかりました。  ただ、いろいろ地元の状況、私どもは新聞報道以外に知ることはできぬわけでありますが、地元の報道によると当初は賛成者が多かったが現時点では沿岸住民の七十数%が反対であるというふうなこと、さらに二つの県にまたがっておるから大変難しいわけでありますが、なかなか県当局はいろんな理由等からして決めかねておるというふうなこと、したがって要は国がどうすべきだという指導性を発揮すべきだと思います。  これは総理の地元のことでありますから、総理、何か御所見があればひとつお伺いいたしたいと思います。
  189. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに御指摘なさいましたとおり、中海に干拓をしてそして農地をつくろう、その際宍道湖を淡水化、真水にしようということ、私はまだ農村青年運動をしておりました当時からの出来事でございます。そして県議会におりますとき、そういう事業が昭和の国引きというような言葉で、全体として大変な大事業としてみんながそれを推進しようという雰囲気にあったことは事実でございます。まあ世の中が変わったことも事実でございますが。  今農業を営んでいらっしゃる方々は、自分の負担をも含めて多額の投資をして、やがて淡水化するであろうという前提の上に立ってポンプアップ等を含めいわゆる基盤整備のために努力して今日に至っておられる。しかし、今農業そのものに対する考え方も違ってきた一方、いわゆる自然環境保存という問題が、これはかなり古くからというよりも比較的新しくそういう問題が起こっております。したがって、地元のことでございますので私も事情は承知いたしておりますが、県知事さんなり県議会なり関係方面で、農林水産省に対しとりあえず淡水化の試し行いをやるかということに対する御返答について今鋭意御協議なすっておる段階と聞いておりますので、その自主的判断におまちするしか今のところはないなと、こう思ってこれを静かに見守っておるところでございます。
  190. 井上計

    井上計君 総理のお立場、大変難しいことはわかりますし、今の御答弁程度で仕方がないのかなという気持ちはしますけれども、何しろ昭和三十八年から既に七百億円以上の巨費を投じておる。それが当時と現在とでは全く様相が変わっておる、条件が変わっておるという中で、確かにそういういろんな事情があるでありましょうが、引き続いてやることがいいかどうかということについてはおのずから答えが出ておると思うんですが、そういうようなこともお考えいただきまして、やはり総理がリーダーシップをおとりいただく必要があるのではなかろうかということを要請しておきます。  さて次に、最近の大きな問題は何といっても農産物の自由化問題であろう、こういう理解をしております。避けて通れない問題という私たち国民の多くの気持ち、これがあるわけでありますが、農林水産大臣のこの自由化問題についての御所見をまず承りたいと思います。
  191. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 再々議論になっておる問題でございます。  国際化の中で孤立をしてはならない。しかし一方、我が国の農政、そして食糧政策に、特に地域農政に禍根を残すような結果になってはならない。こういうことで八品目問題につきましても、これはガットの理事会で十品目、しかしその中で二品目はこれは自由化は困難でございますよということをガット理事会の場で記録に残しつつ、そしてこれをガットの法理上やむを得ざるものとして受け入れをいたしました。しかし、その受け入れる直前に、内閣全体の問題としてこれに対応しなければならない、こういうことで考えまして、我が省にプロジェクトチームを設置いたしまして、そこでよく検討して、一品目ずつ検討をいたしまして、それをもとにして、またアメリカとの話し合いももちろんしながら対応をしている、こういうことでございます。  いずれにいたしましても、国際化の中で非常に難しい問題になっております。しかしまさに避けて通れない。その中にあって、我が国農政をどう進めていくか、食糧政策をどう成功させていくか、そして今までそれで生きてきた人に不安のないようにどうするかということを深刻、真剣に考えて今努力をしておるところでございます。
  192. 井上計

    井上計君 大臣からまことに明確な御答弁、テレビを通じてお聞きになっておる消費者の方も、また関係する農家の方々も御理解をしていただいた、こういうふうに思います。  ただそこで、今生きてきた人たちの不安をなくすための努力、これは絶対必要であるわけでありますが、いずれにしても、努力をしていただかなければ、自由化によって大変な被害、影響を受ける人が多いこともこれは事実なんです。といって、失礼ですが、従来と同じような過保護に堕するようなそのようなことでは、これは決して不安の除去ということとはまた違ってくると思うんです。そのようなことを十分お考えいただきたい、こう思います。  その不安を感じておる特に最たるもの、幾つかありますけれども、先般沖縄に参りましたときに直接こういう話を聞きました。  沖縄のパイン農業、これはもうどうにもならぬではないか、一体どう考えてくれるんだ、このような切実な声を聞いたわけであります。また北海道でも、乳製品、でん粉等については転業もできない、転作もできない、一体どう考えてくれるんだ、そういうふうなまことに切々たる声が実は耳に入ってまいりましたが、これはひとつ沖縄開発庁長官及び北海道開発庁長官である粕谷長官はどういうふうにお考えでありますか、お聞かせをいただきたい、こう思います。
  193. 粕谷茂

    国務大臣(粕谷茂君) 井上委員には大変沖縄、北海道のことを御心配いただいておりましてありがとうございます。御指摘のとおりであります。  私は、就任早々沖縄へ飛びましたときに、第一番に八重山地区でパイン農家の方々とつぶさにお会いをいたしました。大変な御心配ぶりでございました。おっしゃるとおり、傾斜地とそれから酸性土壌のところでパイン栽培をやっておりますから、他作目に転換するということは非常に難しい状況にあります。特に、本島の北部、それから八重山地区がその主産地でございますから、これに対しては特別の措置を講じて、ぜひひとつ自由化に伴う激変緩和策を考慮していただきたいということで我々は昨年来念願をしてまいりました。事務当局レベル、私ども自身から農水省を初めとする各省庁と連絡を密にしまして、その対策にぜひひとつ心魂を傾けてこれらの農家の方々の期待に反しないようなことを考えていただきたい、こういうことで今引き続いて関係省庁と連携をいたしてやっております。幸い農水省も非常なてこ入れをしていただいておりますようでございますから、今後不測の悪影響を回避するために、国内措置あるいは国境措置などをいろいろとお考えいただけることだと、こんなふうに思っております。  それから北海道の方でございますが、これまた、昨年来ガット問題が出ましたときに、何といっても北海道は日本の食糧基地だと言われるぐらい、お米一つとりましてもその生産高は第一位でございますから、この心配を私どもいたしておりました。しかし、その後の経過を見ておりますと、今農水省が子細に御答弁なさっておりましたけれども、でん粉とか乳製品の二品目については、こちらの主張をかなり強めていただいておるようでございまするから、今後にそれを大いに期待していきたい、こういうふうに思っております。  北海道開発庁としては、地域経済の開発、発展のために努力をするという立場から、これまた引き続いて農水省と連絡を密にして、農業生産の展開が図られるように、特に自由化の傾向はなかなか避けられない、こういうふうに思います。そういうような状況の中で低コスト、高品質のものを生産するというために欠かすことのできない農業基盤の整備などを中心にして努力をこれからしていきたい、こう思っております。
  194. 井上計

    井上計君 いずれにしても、これは全国的に大変な農業の問題であります。特に、沖縄の地理的な条件、あるいは北海道の現在の状況、北海道は特に二次産業はほとんど壊滅状態でありますから、やはりそれらを考えますときに、沖縄と北海道については特にきめ細かい手厚い配慮が必要であるということで今長官にお伺いしたわけでありますが、農水省と一緒に、特に北海道、沖縄の農産物自由化に伴って起きる問題等については御努力をひとつ一層されるよう要望しておきます。  そこで農林大臣にもう一つ伺いたいんですが、私はもう大臣よく御存じのように農業は全く素人であります。素人が実は生意気なことを言っているので大変失礼なんですが、たまたま昨晩テレビを見ておりました。大臣ごらんになったかもしれませんが、報道番組。ここで実は聞いてびっくりしたわけであります。  それは、牛肉の自由化の対策として北海道の牧場経営者、それから東北、福島県の牧場経営者等々にインタビューが行われておりました、牛肉の自由化についてどう考えるかということで。さらに、そのようないわば畜産農家の集まりの勉強会等々での取材またインタビュー、これが実は報道されておりました。  時間の関係がありますから端的に言いますと、それらの人たちが堂々と、これは匿名じゃない、堂々とインタビューに答えておる中の発言に、我々は自由化に十分対応できる、特に円高で飼料が非常に安くなって、これを自由に購入することを許すのなら対応できるという発言もありました。それから、農協が勧めておる濃厚飼料だけ指導しておって、農協の指導に従っておったらとてもじゃないが牛肉の値段は安くならぬ、これも言いました。それから、助成金や貸し付けを受ける場合の規制が厳しくて必要以上のむだな建築費がかかる、だからコストが高くなってとても採算がとれぬ、こういう発言もありました。もっと驚くことは、牛肉の自由化に今心から反対をしている人は役所と農協だけだと、こう言っているんですね。私はまあびっくりしたわけです。  これが全部の声だとは言いません。これが全部の農家の声を代弁しているとは言いませんけれども、しかしインタビューに堂々と答えてこれを言っておるということは、これは事実なんですね。私は、畜産農家だけでなくて他の自由化対象品目に影響を受けると言われている農家の人たちの中にもこういうふうな声があるのではないかなという気持ちを従来から持っておりますが、特にきのうの番組を見て非常に強く感じたということですが、農林大臣どうお考えでしょうか。
  195. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 今、後ろに聞きましたら、その番組は十一時過ぎからの番組で……
  196. 井上計

    井上計君 六時半ごろ。
  197. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) ああそうですか。まあ、いずれにしてもですね、十一時過ぎと聞いたものですから、そのころもうくたびれて寝ておりましたので見ておりませんけれども、率直に申し上げて、生産者の中にもいろんな自由な御意見をお持ちの方はいるということは否定すべきでないし、否定をいたしません。いろんな意見がございます。また、消費者の中にもいろんな意見がございます。  そういうことで、それぞれの御意見があるのはわかっておりますけれども、しかし大方の意見は、ただいま現在を申し上げれば、牛肉を自由化してよろしいと思っておられる方はまあ一部の方ではないかな、こう私は率直に判断をいたしたいと思います。  役所と農協だけが自由化に反対しておるということが出ておったそうでございますけれども、我が省といたしましては生産者の体質改善すべきはしなければなりませんし、農協の体質改善も必要でございましょうし、もちろん流通関係者あるいは消費者のニーズというものに率直にこたえなければなりませんし、各般における御意見を十分踏まえまして、そして手順を尽くして我々の考えておる政策を実践する。竹下内閣は手順を大事にする、こういうことでございますので、私も手順を大事にして——ただ、残念ながら私自身PRが下手でございますから、そういう意味では徹底しない部分があるかもしれません、誤解を受けている部分があるかもしれませんが、いずれにしてもそういう考え方で今取り組んでおる。特に日米関係の問題でもございますし、慎重な対応を今進めておるところである、こういうことでございます。
  198. 井上計

    井上計君 佐藤大臣がPRが下手だとは決して思いません。明確にお答えいただけますし、かなり思い切っておっしゃっていることについては私も敬意を持っておりますから、決してそのようなことは思っておりません。ただ、そういう声が、もちろん全部とは言いません、一部でありましょう。しかし、現実にテレビを通じて堂々と流れるということが重大だと。だから、全く事実無根だとは言えない。そこでそういう声があるということをお考えいただいて、今後さらに善処をしていただきたいと、こういう要望であります。  総理は食管法についてどういうお考えでおられますかまずお伺いをし、また、若干それについての食管法で現在くくられている麦の問題について、おととしも提言しましたけれども、再度この問題を提言いたしたいと、こう思いますが、まず食管法についての総理の現在の御認識をお伺いします。
  199. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 食管制度——米を「政府が責任をもって管理することにより、生産者に対してはその再生産を確保し、また消費者に対しては安定的にその供給責任を果たす」、そういう言葉そのものが意味するように、その根幹は私は今後とも堅持すべきものであるという基本的な考え方に立っております。で、運営改善を適切に図っていかなきゃならぬ面があるというふうには私も常日ごろ感じております。
  200. 井上計

    井上計君 総理の食管制度についてのお考えはわかりました。しかし、運営については改善をしていくべきだということであります。当然でありましょう。  まあ、米の問題はいろんな問題があります。複雑であります。きょうはこの米の問題には特に触れません。が、食管制度の中で米と同じように厳重にくくられておる麦の問題について率直に申し上げます。私は、もう現在麦を自由化することについては、まあ若干問題は残るでありましょうが、それほど大きな問題はない、むしろメリットの方が大きいと、こう考えておりますが、この問題も政策の転換で十分対応できる、カバーできるというふうに考えます。  そこでお尋ねするのは、四十四年に水田利用再編対策が制定され米の減反政策によって生まれたこの補助金は、五十一年度から六十年度までの十年間だけでも二兆五千八百億円。六十一、六十二年度を加えると三兆円を超えておるわけですね。この十年間の農林水産関係予算の二十八兆七千四百億円の九%に達しておるという大変な額ですね。これらのものがこのように使われていることが現時点——過去は言いません、現時点でも果たして必要かどうか。転作奨励補助によってかなり麦の方に転換しておる。それによって麦の増産が十年前の五%から最近では一四%までアップしているそうでありますが、金を使って麦をつくらし、麦をつくることによってさらに大変な実は赤字が発生しておるという二重の問題、私はおととしも指摘をしましたが、一向にその後それについての検討が加えられていないということでありますが、どのように最近お考えか、そこら辺を農林大臣に伺います。
  201. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 麦を食管制度とは切り離したらどうかというような御意見でございます。米麦を一本に管理をしているということでやってまいりました。そして、五十三年度ですか、転作等の問題も関連してまいりますけれども、水田利用再編対策、これを進めてまいりまして、そして先刻来、水田農業確立対策、これに関連をいたしまして国内産麦の生産性の向上、品質の改善、こういうことについて努力を続けておるところでございます。しかし、輸入量も相当あります。そういう中にあって消費者のニーズを考えますと、やはり小麦の需要も相当なものでございますから、これがひとつ安定的に供給することができるように努力をしなければならない、こう思っておるところでございます。  そういうことを考えますと、国内産麦の安定的な生産体制をつくり上げておる途上において、これが水田農業確立対策の関連において多少の出費もございます。ございますけれども、これはこれなりに進めていかなければならない。しかしまた、政府買い入れ価格の算定方式などについても改善を加えてきたところでございますので、それなりの検討は進めておる。何にもしていないわけではないのでございますので。  あと、数字的なことを含めて食糧庁長官から答弁を補足させます。
  202. 井上計

    井上計君 大臣のお答えとしてはこれは公式答弁、さもありなんと思いますが、それは結構です。ただ、今のお答えの中に入っておりました安定供給のために国内産麦を今後とも増産をするという、これについて私は大変な異論があるということ、これは申し上げておきます。  そこで食糧庁長官にお伺いしますが、国内麦の買い上げが若干下げられることになっておりますけれども、幾らになったのか。本年の買い上げ数量は幾らなのか、予想量は。また最近の外麦の輸入価格は、これは食糧の小麦でありますが、平均をして幾らなのか。数量はどうなのか。それに対し政府の売り渡し価格はどうであるのか。そこでそれらのものについて、いわば率直に申し上げてこの差額は事実上は消費者負担になっていると思うんですね。これらのものはどのぐらいの金額になっておるのか。以上お答えをお願いいたします。
  203. 甕滋

    政府委員(甕滋君) お答えをいたします。  昭和六十二年産の国内産小麦の政府買い入れ価格でございますけれども、先生指摘のようにいろいろ諸情勢も変化しておりますし、これまでなかったことでございますけれども、前年の引き下げに引き続きまして四・九%の引き下げを行ったところでございます。トン当たりにいたしますと十七万三千七百五十円となっております。外麦につきましては、現時点におきましては最近の円高等もございまして政府買い入れ価格はトン当たり二万八千円程度となっております。また、政府売り渡し価格はトン当たり七万九千円程度と見込んでおるところでございます。小麦の政府売り渡し価格につきましては、本年産麦の政府買い入れ価格の引き下げ、あるいは最近の外麦の輸入価格の動向を総合的に考慮いたしまして、昨年の平均五%の引き下げに続きまして本年二月一日から平均六・二%の引き下げを実施したところでございます。  最後に、外麦についての損益に関する御質問がございましたので申し上げますと、六十二年度予算で見込んでおりますのが千五百七十二億円、六十三年度予算におきましては千五百五十億円の差損ということでこれを見込んでおるところでございます。
  204. 井上計

    井上計君 長官ね、外麦については差損、そういう言い方でいいです、わかりました。  今、外麦の政府買い入れ価格平均してトン二万八千円と言われました。これはレートは幾らで見ているんですか。
  205. 甕滋

    政府委員(甕滋君) レートにつきましては、年度を通じまして百四十五円の見込みとしております。
  206. 井上計

    井上計君 百四十五円で見て二万八千円、最近のレートで見ますともっと安くなっていることはこれは当然だと思います。端的に申し上げて、二万八千円としても、二万八千円で輸入したものを七万八千円で売っているわけですね。したがって、この差額五万円。五万円だれが損しているのかというのは、率直に言って最終的には消費者が損をしておると、こういう形です。この年間約千五百億円を超える利益を何に充てているかというと、十七万三千七百五十円で買い入れた、しかも、その自給率一四%の国内麦を買い入れたその差損に充てておると、こういうことなんですから、やはりこれは一般消費者から見ると不合理だと言わざるを得ない、こう思います。これについてやはり善処すべきである。  先ほど大臣はいろんなことをおっしゃいましたけれども、それは大臣の言われることはよくわかるんです。しかし、ただ理論だけでこの麦の問題を処理することはよろしくない。国民感情を考えるときには早急にこの問題をお考えいただきたい。同時に今、食管法で麦もくくっておる、こういうふうな形になっておる。しかし、調製品や製品については輸入自由ですよね。だからこの数年間、特に昨年あたり調製品や加工品の輸入は激増していると、こう聞いておる。これは新聞報道にもあります。しかも調製品という名によって米の粉、麦の粉の中に砂糖だとか塩だとかいろんなものをまぜて輸入をする。そうしてこれを砂糖だとか塩は分離してこれだけ使うというふうなことが最近随分多いようですね。  何か去年大変よく売れた機械の一つに、そのような砂糖や塩等のまじっておる粉を、米の粉や小麦を分離する機械がべらぼうに売れているということからして、いかに多いか。それは結局日本の産業体系を壊しているわけです。特に中小企業の食品メーカー等においては大変な圧迫を受けているのですね。だから、それらをあわせて考えるときに、麦を自由化するということについては何ら支障がない、私はむしろ益の方が大きいと考えておりますので、今一度お答えをお願いします。
  207. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) せっかく井上先生の御提言でございますけれども、一口に言えば自由化する考えはございません。  食管会計の中でこれも私自身が、そう農林水産省が威張って言える話ではございませんけれども、決して威張って言うわけじゃございませんけれども、過去において外麦が非常に高くて、今と逆の状態ですね、そういうことで消費者にはどうなっていったか。今とまた逆の場合も過去には例があるわけでございまして、今のところ、私自身は麦の自由化ということは考えておりません。しかし、もっとそうならそうでわかりやすくしなければならぬというのはお説のとおりでございます。努力をいたして解説これ努めていきたいと思っております。
  208. 井上計

    井上計君 この問題は総理にお聞きしようと思ったのですが、大臣が既に麦について自由化する意思は今のところないとおっしゃいましたから、これ以上総理にお聞きしてもこれは総理も同じお答えであろうと思いますから省略します。  ただ、今の現時点でのお考えはわかりますけれども、しかしこの考え、その方針がこれからも続くということについては私はもっと大きな問題をつくり出すであろう。これは大きな政治問題、国民世論の反発を食う。これが、後で申し上げようと思っておったのですが、税制改革に大変な影響を受けることも事実ですよね。国民に幾らこうです、ああですと言っても、こんなに我々に犠牲を払わしておきながら、その犠牲の解決もしようとしないで何でだというふうなこともありますね。だから、過去において小麦が、輸入麦が暴騰して非常に困ったと言われます。それは十数年前の話ですよね。十年以上前のことがこれからもあるからどうということについては、ちょっといささか説得力に欠けるのではなかろうかと、こう思いますからあえて申し上げておきます。  次に、実は関連します農協の問題であります。時間がありませんから簡単に申し上げますが、農協が本来の農協の精神に戻ってほしいという要望は最近非常に強いようであります。聞きますと総務庁は、前々玉置総務庁長官が強く打ち出されまして、農協の強い抵抗を押し切って農協の行政監察を昨年一月から行ったと、こう聞いておりますので、その結果、またその結果の取り扱いをどうお考えか、総務庁長官に伺います。
  209. 高鳥修

    国務大臣(高鳥修君) ただいま委員指摘のように、亡くなられました玉置前々長官から強い指示がありまして、全国農協についてそれぞれ監察を実施いたしたところであります。都道府県は二十六都道府県にわたります。それから単位農協につきましては百数十農協にわたりますが、農協自体、総合農協が四千二百余り、それから専門農協が四千三百ぐらいございますので、したがって百数十と申しましてもそのすべてではもちろんないわけでありますが、しかし問題点の所在についてはある程度把握できたのではないか、このように考えております。  その結果でありますが、過ちなきを期するためにただいま最終的な詰めを行っておりまして、そう遠からぬうちに監察結果について報告をし、発表することができるというふうに考えております。
  210. 井上計

    井上計君 現時点でその結果はどうですか、勧告はどうですかということを伺っても御答弁は難しいと思う。ただ、新聞にははっきり出ていますね、農協の改善、初の勧告をすると。いろんな問題が出ております。だから、早くひとつ勧告をして、それをまた農林大臣は謙虚に受けとめていただいて、農協についての行政監察を十分やっていただいて、農協の体質改善、本当の農協本来の姿に戻って、すべての農民から期待され、信頼され、喜ばれるような農協に早く立ち戻るように御指導をひとつ特にお願いしておきます。  時間がだんだん切迫しますから次の問題に移ります。  総理、今私はあれこれ申し上げました。しかし、その目的はまだまだ多くのむだがたくさんありますよということなんですね。政策の転換によってまだ節約できるものがたくさんありますよと、こういうことなんです。その目的で申し上げたんですね。ところが、総理はどうも、最近総理のお考え、言動、また所信表明演説から見ても、失礼でありますが、行財政改革については熱意が冷めておるのではなかろうかという感じがするんですが、いかがでありますか。
  211. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私も今井上さんがおっしゃったような批判があるということを承知しておりまして、それだけに余計なことを事ある機会をつかまえて、要するにせっかく押し上げた荷車が手を放すと一挙に坂をがらがらとおりてきてしまう、そういうことであってはならぬという表現を最近時に触れ特に主張をしておるところでございます。  確かに昭和五十四年十二月の財政再建に関する決議でもそのとおりでありまして、まず行政改革をやって、それによって財政再建に資しなさい、そして二番目にはいわゆる歳出の適正化を行いなさい、その上で税制改革を抜本的にやりなさい、こういうのがあの決議の趣旨でありますだけに、事実、みずからのここのところ過去五、六年を振り返ってみますと、行政改革について一生懸命やってきたような気がいたしております。その果実がNTT売却資金等において活用されるようになったということが、あれで一つの果実が生まれたんだというので、むしろ気を緩める要因になってはいけないなということを一つは自分に教えております。  それから二番目の行財政改革、財の方でございますが、これも長い間、私の予算は本院においても縮小均衡であるといって随分批判を受けたわけでございますが、やはりその前提にありますところの財政改革の一つの目標、第一段階は、六十五年度赤字公債体質からの脱却とか、その後今度は公債残高自身を低めていく努力とか、そういうものは初心に返っていつまでも守っていかなきゃならぬ課題だと。だから、ことしの予算編成に当たりましても、その内需拡大の問題と財政改革の問題を両立させなければならぬというところに大変な苦心を払って、さらに、各関係者には結果として強制したことになるわけでありますが、経常費部門における削減というのは依然として従来の方針を貫いていった。したがって、おっしゃいますとおり、やはり行政改革そして財政改革、これはきちんと踏まえた上でのことであらなければならぬ、断じて後退を許すようなことをしてはならないと思っております。
  212. 井上計

    井上計君 総理のお気持ち、また御決意、よくわかります。特に気を緩めることなくと、こういうお話です。しかし一般がどうも最近の感じは、今総理がそういう批判があることも承知しておると言われましたように、JRあるいはNTTあるいは日本たばこ産業等々ができた、これでどうも行財政改革は終わりだと思っておるのではないかというそういう疑いがあることは事実なんですね。  だから、今後とも行財政改革は強力にお進めいただかなくちゃなりませんが、そこで今総理のお話からちょっと感じる一つ不審点、不審というとちょっと表現がおかしいかもしれませんが、六十三年度予算の一般会計五十六兆六千九百九十七億円のうち実に二五%の十四兆二千億円が実はまだ補助金なんですね。この補助金は、経常経費一〇%のマイナスシーリングの中で実は補助金がふえておるんですね、去年から見て。これ特に今細かい点はいろいろと御答弁要りませんが、そういう点から見て、何か行財政改革は後退だ、後ろに退いておるんではなかろうかという印象を受けますので特に申し上げた。特に要望をしておきます。何かお答えありましたら。
  213. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 従来、できるだけ補助金の整理合理化、統合を進めてまいりまして、だんだん削りにくくなっておるということは事実でございますけれど、ある意味で目的を達しましたものはできるだけ早く整理をするということは今後も努力を続けてまいらなければならないと思っております。
  214. 井上計

    井上計君 大蔵大臣今お答えいただきましたが、六十三年度は、前年度から見ますと補助金が〇・九%の千二百二十四億円ふえておる、私の持っている資料では。件数が二千三百七十二、六十二年が二千四百三ですから若干件数は減っておるが、補助金は逆に〇・九%ふえておるという事実があるわけですから、行財政改革がかなり後ろに退いておるという印象はこれからも持てますので、総理お話しのようなことで十分御配慮をちょうだいいたしたい、御努力をお願いするということであります。  そこで総理総理は既にもう当委員会でいろいろと御答弁されておりますが、間接税については六項目の懸念を挙げておられます。この六項目の懸念を解消するためにこれから努力をするんだ、こうお述べになっております。私は六項目の懸念を解消するための大変な努力だと思いますが、同時に、今申し上げた行財政改革と税の抜本改正は一体のものでなくちゃいかぬわけですね。したがって政府は行政改革、財政改革にこれだけ努力をしておるんだ、あるいは努力をしたんだという形を国民理解しないと、幾ら総理が六つの懸念の解消に努力されても国民のなかなか納得や合意は得られぬではないかと思いますが、お考えはどうでしょうか。
  215. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはまさにまだやることがほかにあるんじゃないか、国民の皆さん方がこういう感じ方をしていらっしゃるときに、なかなか今おっしゃったように六つの懸念だけを国民の皆さん方との議論の素材として提供するというのは、私もそれだけではいけないと思っております。だからこそ、先ほど御指摘ありましたように行財政改革、まさに五十四年暮れの決議を見ましても、国民福祉充実のためには安定した財源が必要である、そして一般消費税(仮称)によらず、まずは行政改革、歳出削減、税制の抜本的改正、こういう順序であれは苦心して本院でおつくりになった文言でございますだけに、それはそのままやっぱり今日もいただいていなきゃならぬ問題だというふうに思っています。まだほかにもやることがあるんじゃないですかと、こういう中で六つの懸念だけで議論をいたしましょうということは私もとるべきでないと思っております。
  216. 井上計

    井上計君 大蔵大臣に伺います。  きのうある新聞報道によりますと、六十二年度の税収は当初に比べて四兆円、さらに第二次補正後においても約二兆円の増収が確実視されておるという新聞報道でありますが、事実でありますか、お伺いいたします。
  217. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) その報道は私も読みましたが、遺憾ながら事実でございません。
  218. 井上計

    井上計君 事実でないと言われると実は後の質問が出ないんですが、これはかなり信頼すべき筋からの報道のようですが、調査で明らかになったと、このように書いてありますが、事実でないとすると、大蔵省は直ちにこの新聞に対して訂正申し込みをしてもらわぬと困ると思うんですがどうでしょう。
  219. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 事実でないと申し上げましたのは、大変端的に申し上げましたが、ただいまのところそのような予測を立てる理由がない、根拠が乏しいということでございます。つまり、今の段階で今年度どのぐらい自然増収があるだろうかということは実は大変に読みにくい。と申しますのは、ここまでのところ比較的税収は順調に参ってきたわけでございますけれども、暮れに所得税の年末調整がございまして、減税が大変効いて、当然のこととは思いましたが、大変に源泉所得で効いてまいりまして、それから確定申告で今度は申告分に相当大きく響くということがもう間違いのうございます。それから、有価証券取引税なども昨年ある時期には大変な勢いでございましたが、どうもこれも御承知のようなことで少し伸びが鈍りぎみであると。結局のところは、ことしの三月期の法人決算がもう唯一のと申すぐらい大きなどっちへ振れるかの要因でございまして、法人の決算は私は決して悪いと思っておらないんでございますけれども、昨年の三月期に随分各法人が営業外のいわゆる財テク等々で決算をしてくれておりますので意外によかった。  そういうことからいいますと、その上にさらにということがなかなかただいまの段階では予測が立てにくい。ひっくり返して申しますと、ここらあたりのところまでは比較的順調でございましたが、減税が効いてきましたり、その他の理由でちょっと報道されましたような大胆な予測は私どもまだできにくいというふうにひとつ御理解をお願いいたしたいと思います。
  220. 井上計

    井上計君 どうも宮澤大臣からそう言われると後が続かないんですが、いろいろとお答えありましたけれども、確実ではないけれどもかなりこれに近いものがあるというふうな認識も私自身持っておりますし、とすると与野党合意の、きょうから始まっておるようでありますけれども、減税財源をどうするかということについて全く減税財源がないという議論はこれは成り立たない。かなり減税財源はあるというふうなことから私が申し上げるのは、何も増減税同時決着だとか、あるいは大型間接税によらなければ六十三年度そのような減税はできないとか、あるいは六十四年度も無理だとかというふうな論議を余り強くされる必要はないということを特に申し上げておきます。  そのほかに、今後の自然増収の問題は見通しつきません。しかし、マル優廃止に伴う税収も、六十四年度は平年度になればどうも政府の予測より大分多いというふうに私も思います。少なくとも三千億ないし四千億ぐらいは多いのではなかろうかと、こんなふうな感じもしますし、また不公平税制の一環でありますけれども、タックスヘーブン対策をもっともっとやれば、かなりこの面での税収もふえるし、さらに赤字法人企業が非常にふえておりますが、一億円以上の資本金大法人が一万六千社のうち五千社赤字法人ですね。これなんかは、言い方は悪いですが、節税を上手にやり過ぎて殊さら赤字になっているという法人も相当あるわけですね。そういう面の調査をされるとかなり財源が出るであろうということを申し上げておきます。  そこで、この問題の結論としては、総理、余り急いで大型間接税どうとかううんと言われて国民の間に混乱を起こして、また昨年のような拙速であのような混乱を起こすことは、もう国全体として、私個人としても大変なマイナスだと、こういう昨年の反省を私もしておるわけですから、そういうことの起きないように、どうかひとつ十分時間をかけて国民が納得できるようなそういう線を早くつくり出すための御努力をお願いいたしたい。秋にううんとかというふうなことはいささか早過ぎる。このことを申し上げてこの問題についての締めにしますが、総理のお答えをお聞きいたします。
  221. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに昨年の反省ということから思いますと、今井上さんはみずからの反省をも加えてという趣旨の御発言がありましたが、私ども今政府側としても、また当時与党の一人であった私といたしましても、いささか国民理解と協力を得るに至らなかったということについては拙速ということを否定するわけにはまいらないと思っております。したがってこそ、この国会等の議論でかなり濃密な議論をやっていただいておりますので、それを吸い上げながらそれを正確にまた政府税調等にお伝えすることによって、それこそ所得、消費、資産の間で均衡のとれたあるべきいい税制の姿というものを出していただくように諮問申し上げておる段階であるということになろうかと思います。
  222. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先ほどのお尋ねに関連いたしまして私の立場から一言つけ加えさせていただきたいと思います。  自然増収のことでございますが、ただいままだ定かに予測をし得ないのでございますが、仮に自然増収が出るようでございますと、今年度も特例公債を出しておりますので、したがいまして、もし自然増収がございますと予定しております特例公債の発行分を実は取りやめるのが本筋でございます。それは金利をやはり払うわけでございますので、そういう要素がございまして、年度末にもし自然増収が出ますようでございますと、特例公債の発行をその分だけ取りやめるという問題がございますことを、お気づきでございましょうけれども、つけ加えさせていただきます。
  223. 井上計

    井上計君 今大蔵大臣、まあ弁解というか釈明というか、予防におっしゃったんだと思いますが、本当はそのことでもっともっと論議したいのです。おっしゃったことはわからぬわけじゃありませんが、それについては私どもは異論を持っておるということだけ申し上げておきます。  時間が大変短くなりまして十分これからいろいろな質問がどうもできにくくなったのでありますが、重要な中小企業問題等につきまして端的にひとつお尋ねをいたします。  現在世界的に中小企業待望の時代だと、こう言われております。先進工業国を中心として経済活力のかぎは中小企業にあると、このように言われておりますが、それだけに我が国の中小企業政策というのは一段と重要性を加えるであろうというふうに思うわけであります。中小企業の育成がまず先決問題でありますのは、技術水準向上の基礎、中小企業工業への技術移転等々から考えますともう絶対必要であります。中小企業は、六十年九月のG5以来、あの急激な円高の中で大変な苦労をしてまいりましたけれども、あえて評価しますけれども、幸いに国の中小企業政策の浸透等、それからそれらの中小企業者の自助努力で余り多くの犠牲者を出さないで今日に至っておりますが、しかしまだまだ大変であります。  そこで、今後中小企業の構造改善転換期等に向かって構造改善をどうするかというふうなことが重要な問題であります。まず通産大臣から御所見を承ります。
  224. 田村元

    国務大臣(田村元君) 我が国の非常に特色と申しますのは、中小企業が産業の根幹をなしておるということであろうと思います。事業所の数でいいますと九九・四%が中小企業であります。また従業員数からいいましても八一・四%が中小企業ということでございますから、その重要度は当然推して知るべしでございます。で、我が国の中小企業は機動性に富んだ事業活動、これを国民経済のあらゆる分野において展開することによりまして我が国経済社会の基盤をなしております。また、雇用の確保あるいは地域経済の発展のためにも中心的な大きな役割を果たしておるわけでございます。  六十年秋を境とする急激な円高、そうしてその円高が定着いたしてまいりました。輸出型中小企業を初めとして我が国の中小企業に非常に深刻な影響を与えたことは事実でございます。また国際化の進展、技術革新、情報化の進展等、中小企業を取り巻く環境は大きく変化しております。一般に経営基盤が脆弱でございますし、また経営資源に乏しい中小企業は今後厳しい対応を迫られるものというふうに私ども認識をいたしております。  通産省といたしましては、中小企業がこれらの当面する厳しい環境変化に的確に対応して、健全な発展を遂げられますようにいろいろな方途を考えて、またこれを講じております。    〔委員長退席、理事林ゆう君着席〕  まず第一が構造転換対策として融合化法案、これは今衆議院の商工委員会でお世話になっております。当然参議院でまた井上さんに特別にお世話になることと思いますが、これを核とする融合化の促進施策。つまり一個一個の中小企業ではなかなか大変だと。三人寄れば文殊の知恵と申しますか、皆で、異分野でお互いにノーハウ、技術を出し合って立派なものにしていこうやという融合化、これは法律によって促進をいたしたいと思っております。  それから新転換法を核とする事業転換対策でございます。また特定地域法、これを核とする地域中小企業対策、下請中小企業対策あるいは国際化対策というようなものを展開いたしますとともに、金融の円滑化、また信用保険法の改正による信用補完制度の拡充、これは中小企業が、中小企業だけじゃありませんけれども、日本の産業が大きく金融、いわゆる金繰りということに依存するというふうになってきておりますから、この金融の円滑化と信用補完制度というものは当然拡充して大いに中小企業に御利用願いたいと思っております。  それから中小企業大学校の整備等によりまして人材養成を強化していくとか、情報化への対応、それから技術力の向上というものを推進するということで小規模企業対策あるいは中小小売業対策などに大いに報いていきたいというふうに考えております。
  225. 井上計

    井上計君 通産大臣から諸般にわたって明快なお答えをいただきました。私も大変意を強うして、大いに期待をいたしております。  そこで、中小企業庁長官に具体的な問題について二、三お伺いをいたします。時間の関係で一括して申し上げますから、恐縮ですがひとつお答えをいただきたい、こう思います。  まず、現在の中小企業の景況についてであります。次に、バランスのとれた国土の発展のためには、景気の回復がおくれておる地域が実は大変多くあります。それらの地域の中小企業の転換を促進するためには、地域経済の活性化、これにはやはり都道府県だけでなくて、かなり国が乗り出していかなくちゃいかぬという面がたくさんあります。例を挙げますと、私の選挙区の愛知県におきましては、瀬戸だとか半田とか常滑というふうな地域は陶磁器や綿の主要産地でありましたから、したがって大変困難な事態に直面をしておる。特定地域に指定されまして、デザイン等内需に転換する努力を懸命に行っておりますが、容易なことではありません。これらについて今後どのようなきめ細かい指導をお考えになっておられるのか。さらに不況地域の中小企業振興のために地方公共団体がもっと積極的に乗り出すように、また乗り出せるように国は新産業の発掘や育成等の後押しをすべきであろう、こう考えます。  それから次に、特定地域法で指定されておる全国五十一地区、二百十六市町村、この指定されておりますその他の地域、この指定以外の地域にもやはりこれに準じた、地域の実情に応じたきめ細かい構造改善対策が必要であろう、こう考えますが、どのようにお考えでありますか、以上の点、ひとつそこまでとりあえずお答えをいただければ、こう思います。
  226. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) 中小企業の景況全体としましては、おかげさまで、大企業より若干おくれましたが、昨年の秋ごろから好況の段階に至っていると思っております。    〔理事林ゆう君退席、委員長着席〕 例えば昨年の十—十二月期、これは生産は前年同期比六・六%の増加ということでありましたし、倒産も逐月減少をしております。ただ、景況の二面性といいますか、片や輸出型中小企業、特に輸出産地あるいは企業城下町、こういうところでは依然生産それから輸出も下げどまっておりません。その縮小率は減少してきておりますが依然まだはかばかしくない、こういう状況であるというふうに判断をしております。  それから特に集中して円高等の影響を受けておりますそういう地域、いわゆる特定地域と言っておりますが、こういうところについては、先ほど大臣も申し上げましたように、特定地域法でいろいろな支援策を講じてきております。中小企業そのものの振興、それから地域の振興、御指摘のとおり、その二点あると思います。特に地域について、その地域のいろんな環境条件等を活用していろいろな再生の方向を見出そうという努力が今始まっておりまして、そういう地域には地方自治体の努力に対して今年度からいろいろなフィージビリティーの研究を我々としても支援していきたい、そのような制度を考えておるところでございます。  それから、その前に新転換法という業種対策を打ちましたけれども、そういう業種なり地域なりというのに特定せず、日本国全体にいろいろ中小企業、円高で苦しみ、その対応に悩んでおられるそういう個々の中小企業者が大事ではないか、こういう御指摘でございます。そのとおりだと思いますので、そういうものとして今回の融合化法も考えておりますし、さらにより直接的には、今回そういった地域や業種に特定することなく、特別のそういう構造調整対策貸し付けというようなものを六十三年度から講ずることとしておるところでございます。
  227. 井上計

    井上計君 時間があればもっと詳細にわたってお伺いいたしたいんですが、恐縮ですが、あともう一、二長官に伺います。  もう一つは中小企業の下請企業の問題であります。  下請企業がもしだめになったら我が国のすべての大企業が成り立たなくなると申し上げても過言ではなかろう、こう思います。したがって、下請中小企業の活力を維持するために今後我が国のいわば産業政策をどうするかという観点からぜひまた大いに御努力を願いたい、こう思いますが、特に最近は産業構造転換の中で親企業の海外進出が非常にふえているんですね。それらのその他の変化に対応するために中小企業の業種を超えた提携、異業種交流、今ちょっと大臣の御答弁にもありました、また長官の御答弁にもありましたこの融合化について、今国会に法案が提出されておりますけれども、この融合化についてもう少し詳しく御説明、お答えをいただきたい、こう思います。
  228. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) まず下請問題でございますけれども、この円高の景気の下降段階では、下請産業の受注量、受注単価ともに非常な低下をしておりました。しかし、これも全体として見ますと、昨年秋以降特に受注量の面では著しい改善が今生じつつあると思っております。受注単価につきましてもようやく上昇傾向になっておる、そのように判断をしております。  ただ、御指摘のとおり、下請構造そのものが今非常に大きな転換期にあるというふうに認識しておりますので、そういう下請産業、中小企業の振興という点については、私どもも昨年以来非常に意を用いてまいりまして、例えば下請アドバイザー制度というものをつくりましたし、各ブロックごとに下請企業の新しい製品についてテクノフェア等でその紹介をしてまいりました。非常に好評でございます。それから下請の企業の転換のための特別の技術開発対策、あるいは融資制度、こういうものを今つくっております。  ただ、御指摘のとおり、今後日本経済全体の国際化の中でこの下請構造がどのように変化していくか、これは非常に今後重要な問題だと考えておりまして、鋭意そこらの動向については今後一、二年の動きというものを十分検討していきたい。要は、そういうのに耐えられる技術開発力、経営力、そういうものを持てる下請企業を育成することである、そのように考えております。  御指摘の融合化というのはそういうものの一環としても考えておりまして、この二、三年、特に中小企業者の間でそういう業種、業際を超えて企業が結びつこうという動きが非常に活発になってまいりました。私どもが把握している限りでも、全国に七百グループぐらいそういうグループが存在いたします。したがいまして、そういう自分の小さな枠の中の技術の蓄積、経営ノーハウ、資金力、そういうものが全部他と合わさることによって新しい事業機会をつくっていく、そういう動きを私ども今後の日本経済の構造転換の非常に重要な動きというふうにとらえまして、今回融合化法というものを御提案申し上げておる次第でございまして、あえて言えば中小企業の交流段階、それから具体的な技術その他の開発段階、それから幸いにしていろいろな事業化のめどがたちましたときのその事業化段階、その各段階についていろいろな支援策を今後講じてまいりたい、そのように考えております。
  229. 井上計

    井上計君 詳細なお答えをいただきまして、大分理解をいたしました。  今長官答弁のように画期的な政策だというふうに私も評価をしておりますが、そこで通産大臣、ところがその政策が幾ら立派でも問題は実行いかんということになりますが、これを実行していくために中小企業担当大臣としてどのような決意をお持ちであるか、いま一度お伺いします。
  230. 田村元

    国務大臣(田村元君) 一口に言えば異常な決意を持っておるということでございますが、やはり、体を寄せ合っていく、そして新しい生き方を模索していく、それを国が支える、これは僕はすばらしいことだと思うんです。ですからそういう意味で、それこそ陣頭指揮と言いとうございますが、私がいつまで通産大臣をいたしますやら、それは竹下総理に聞いてくれでございますけれども、在任中はもちろん、やめてからでも私はこの問題は終生の仕事として取り組んでいきたいなとすら思っておる次第でございます。
  231. 井上計

    井上計君 ぜひいつまでも通産大臣を続けていただくように、ひとつ総理に私からもお願いをしておきます。  そこで、総理は、中小企業の発展は我が国経済の活力の源泉である、このようにやはり所信表明演説で強くお述べをいただいておりますが、今通産大臣並びに中小企業庁長官からお話しになりましたこの施策を遂行するために、強力に進めていくために、ぜひ総理のひとつ御決意、御所見を承りたい、こう思います。
  232. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 井上さんからのお話にもありましたように、ちょうど昭和六十年九月二十二日、G5、その六十一年早々に私は、きょう御指摘なさいました産地をも含めて一遍現地へ行ったことがございます。そのときに言われたことは、この急激な円高基調というものを、私に対してですが、あなたがおつくりになりました、ところがそれに対する温かい手は中小企業庁が伸べてくれております。幾ばくか皮肉もあったのでございましょうが、非常に素直に私にそういう発言をいただいたわけであります。  それから帰りまして、六十一年度予算の中で、またもろもろの法律案も含め、中小企業がこれに対応していくための業種転換でございますとか、いろんなことについての政策上の配慮を政府一体となってこれをやったわけです。それによくぞ順応して今日来ていただいたなという気持ちは私にもございます。しかし、まだ地域別、業種別、その苦しみが依然として残っておる地域があることも私も十分承知いたしておりますが、きょう通産大臣、中小企業庁長官がかなり具体的にお述べになりましたような線で私もこれに対しては万全を尽くしていかなければならない、このように感じております。
  233. 井上計

    井上計君 総理、大いに期待をしております。お願いをいたします。  そこで、やはり中小企業問題でありますが、中島文部大臣にお伺いしたいのであります。  中島文部大臣はもうずっと以前から十分存じ上げておりますが、中小企業問題には大変御熱心な方であり、また非常に御理解の深い方でありますからよくおわかりだと思いますが、今総理や通産大臣、中小企業庁長官等がお述べになったいわば中小企業の現況等はもうおわかりのとおりであります。ところが、中学校、高校の社会科教育の中に、依然として古い資料に基づいた、いわば二十年か三十年前の中小企業のイメージをそのままにしたような実は教科書があることがわかったんです。これについてはひとつ至急御検討いただいて善処していただかなくちゃいけない、こう思っておりますが、時間の関係で申し上げません。資料は土曜日に質問通告のときに文部省にお渡ししておきましたからごらんをいただいたかと思いますけれども、いかがでございますか、御感想は。
  234. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 御指摘の教科書記述の問題でございますが、御案内のように、従来から大企業それから中小企業の問題につきましては生産性格差、賃金格差という面が沿革的な状況もあり取り上げられてきているという点は確かでございます。ただ、現在の姿で申しますと、やはり中小企業が新しい技術で積極的な役割を講じているというふうな点もございまして、かなりの教科書では中小企業の積極的な役割ということで、イニシアルで申し上げますとT社、J社あるいはD社等では、一つだけ御参考に申し上げますと、中小企業の新しい技術や製品の開発への努力も見られるとか、高い専門的知識や技術を生かして広い分野で伸びている企業もある、こういう教科書もございます。  ただ、先生指摘のS社につきましては、二冊出ておりますけれども、一つは中小企業基本法のことしか書いてない、それからもう一冊は何らその積極的役割に触れていないという点はあります。これは、私ども経過を調べておるわけでございますが、やはりこの触れておらない教科書につきましては、賃金格差の問題、これを非常に重点的にとらえて少し書き込んでおるわけでございます。したがいまして、やはり著者、編集者の立場からしますと、執筆の角度がそういう点に非常に重点が置かれている、中小企業を真正面からとらえた記述になっていない、こんな事情があるものでございますからそうなっているわけでございますけれども、今後私どもは、中小企業問題についてはその積極的な役割という点も踏まえて教科書検定においても十分努力してまいりたい、こういうふうに考えております。
  235. 中島源太郎

    国務大臣中島源太郎君) せっかくのお尋ねでございます。私も先生からいただいた参考資料は一読させていただきました。率直に申しまして、個人的な主観を許されれば、その資料に関する限りちょっと古めかしい記述だなという感じは持ちました。どこがそう感じるのかと思いまして見てみますと、やはり中小企業の積極的な面、現在中小企業を取り巻く環境は厳しいものがありますけれども、その中で常に設備投資その他半歩、一歩早く積極的に取り組んでおりますし、むしろ九九・四%の事業所数を持ち、八割の従業者数を持っておる中小企業が産業の基幹をなしておる、そしてその大宗を担っておるという点の積極的な面が欠落しておるか、やや記述が希薄だという感じがありまして、それ以外のところは、間違った記述ではないわけでありますけれども、中小企業基本法ができた一九六三年当時を中心に書かれたような感がございますので、今の教科書は間違いではありません。ただ一方、希薄な部分をもうちょっと書き込んでもらってもいいのではないかという率直な見解を持ちましたので、技術的には今局長がお答えした方向で進めさせていただきたいと思っております。
  236. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 関連質疑を許します。三治重信君。
  237. 三治重信

    ○三治重信君 文部大臣にお尋ねいたします。  現在、海外勤務者や国内転勤者等で単身赴任が非常に多くなっているように思われるわけなんです。例えばナゴチョンとか、それから海外へ行ってみても一人で来ておる。こういうぐあいになってくると、高校教育というものが中堅の家庭で母子家庭と同じようになってしまう。また、海外生活者は国際交流をやっていく上において夫婦で、家庭単位でつき合うというのが普通なのが、日本人だけが一人だけで行って家庭づき合いができない。  こういうことを考えると、各都道府県ごとに全寮制の高校を相当つくっていいんじゃないかと思うんですが、これに対する御意見をお伺いしたい。また、現在どういうふうな計画を持っておられるか。
  238. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) 先生おっしゃいますように、海外勤務者にとりましての悩みの種の一つであろうかと思います。現在、公立高等学校としましては、東京都におきましてこれらの残留子女を収容するための全寮制高等学校が一つあるだけでございますが、一方、帰国子女の受け入れに関しまして私立の高等学校では相当数の全寮制高等学校等もございまして、残留子女の受け入れも同時に行っているような状況でございます。  しかし、これらの問題につきまして、いずれも全寮制高等学校が今申し上げたような形で残留子女を収容している数が非常に少のうございます。基本的には、やはり受験のためにあるいはその他どの高等学校へ入りたいかというそういう目的等、あるいは大学の受験の関係等もございまして、いわゆるそういう高等学校が設置されたからそこへ安心して預けて行くという形にはなかなかなっていないのが現状ではないか。そんな感じはいたしますが、いずれにいたしましても高等学校の、都道府県の御意向等も十分に確かめてまいりたいと考えております。  なお、帰国子女あるいは残留子女の教育の問題につきましても、四月から学識経験者等によります本格的な検討を開始したいと考えている次第でございます。
  239. 三治重信

    ○三治重信君 それからそれと関連して、世界の中の日本を推進していくという国際化が非常に言われておるわけなんですが、これで今現在のところ、日本から海外への留学生あるいは海外から日本への留学生、こういうことが今現段階じゃないかと思うんですが、最近の報道をちょっと見ると、海外から日本へ大学を設置したいという希望もあるようだし、日本も海外、ロンドンとかニューヨークに日本の大学をつくるというようなことも聞かぬわけではない。こういうふうなときの法制上、文部省として、海外から日本への大学、それから日本から海外への大学の設置、こういうものについてどう考えられているのか。また、こういうものは本当に海外の援助資金のODAを積極的に使うようなことを考えたらどうかと思うんですが、ひとつよろしくお願いします。
  240. 阿部充夫

    政府委員(阿部充夫君) ただいま御指摘がございました大学間の国際交流と申しますか、あるいは各国間で大学の分校等をつくっていくというような課題がございます。この点は、これからの高等教育を考えるに当たりまして、これから大変重要な課題になってくるというふうに私どもも認識をいたしておるわけでございます。  御指摘の法制度等の面に関しましては、先般臨時教育審議会の答申がございまして、いろいろ国際化等の観点から、例えば現在の大学設置基準等につきまして十分な検討をする必要があるという御指摘もいただいておりますので、昨年学校教育法の改正によって設置をお認めいただきました大学審議会において、もろもろの大学改革の諸課題の中で、例えば大学設置基準の大綱化、簡素化あるいは弾力化等といったような諸問題につきまして既に審議を開始していただいておるわけでございますので、そういった中で御指摘のような点につきましても十分視点に置いて検討を続けさせていただきたい、かように考えております。
  241. 英正道

    政府委員(英正道君) 御質問の後半の点、すなわち日本の大学を海外に設立するに際しましてODAの予算が使えないかという点について御説明申し上げます。  ODA、政府開発援助は、開発途上国の経済開発、福祉の向上に寄与することを主たる目的としております。途上国の人材開発のために高等教育の分野において支援を行うということは、一般的にODAと認定し得ると思います。途上国自身の教育機関の建設につきましては、先方の政府から要請がある場合には、ODAの案件として検討が可能というふうに考えます。  他方、日本の大学が途上国に分校のような大学を建設するということにつきましては、ODAは途上国の主体的な自助努力を支援するという基本的な考え方に立つものでございますので、一般論としてはODA予算の使用は困難かと思われます。
  242. 三治重信

    ○三治重信君 こういう国際交流というのは多面的にひとつぜひ問題点を考えてやっていただきたいと思いますし、外務省も文部省と連携して、企業、経済ばかりじゃなくて、文化の交流といった場合にはやはり学校教育が中心で新しく世界の先導をやっていくということが必要じゃないかと思うんです。  それで、ひとつお願いしたいんですが、外国人の日本への留学についてどういうふうな態度をとっているのか。最近、いわゆる保証人を売買されているというようなこともあったりして、留学の状況、海外の現地でどういうふうにやっているのか、試験はどうやっているのか、そして今どの程度の希望者があってどれぐらい振り落しているのか、それを一括して逐次御報告願います。
  243. 植木浩

    政府委員(植木浩君) 海外からの留学生を日本に迎え入れることは、それらの国々との国際理解を促進し、あるいは親善友好を促進するという点からも大変重要でございますし、また海外の青年が日本の大学等で勉強したい、こういう進学意欲に対して日本が手を差し伸べるという点からも、教育的な意味からも極めて重要であると思います。今先生が具体的ないろいろな状況についての御質問でございますが、現在、日本の大学では約二万二千人留学生がおりまして、そのうち国費留学生、日本政府が奨学金を支出して受け入れます留学生が三千五百人、私費留学生が一万七千七百人、そのほか外国政府がみずから留学生を派遣する学生が約千人ほどおります。  国費留学生につきましては、日本の大学と海外の大学との交流関係がございますが、そういった関係を通じまして、在外公館あるいは日本の大学からの推薦に基づいて文部省の方に候補者が参ります。文部省では、学識経験者によって構成されております選考委員会、ここで意見を聞きました上採用を決定して、その後渡日をいたしまして、日本語教育機関や大学等に入学をしているという状況でございます。  なお、私費留学生につきましては、通常あらかじめ日本に来る前に、大学院レベルでございますと日本の大学の入学許可を取りつけて参ります。それから、学部レベルの志望の留学生は日本語学校等の日本語教育機関、こういったところの入学許可を取りつけて渡日しておりまして、学部レベル等の場合はさらに一年程度日本で勉強した上で各大学等に入学をする、こういうことになっておるわけでございます。
  244. 熊谷直博

    政府委員(熊谷直博君) 入国管理面でどういう条件を付しているかということをお答え申し上げます。  外国人留学生が日本へ留学目的で入国する際に、留学の目的が十分に果たされるようにいろいろな条件を付しておるわけでございます。まず、国費留学生、私費留学生を問わず、必要とされるものとしまして二つございます。それは、一つは、留学先である大学等の入学許可がきちんとあることが第一でございます。その次に、本邦在留中の諸経費の支払い能力がある、そういうことが必要である、これが第二でございます。さらに、私費留学生の場合に必要とされるものといたしまして、我が国に居住する確実な身元保証人が存在するということでございます。これらの書類を入国の前の在外における査証申請の際に用意してきてもらうということになっております。  なお、留学生は留学先において勉学を継続するということが在留条件の一つでございますので、学費等を調達する必要から、勉学に支障を生じせしめない範囲で日本において週ほぼ二十時間を超えない限度でアルバイトを認めるというようなシステムにしております。
  245. 松田慶文

    政府委員(松田慶文君) 外務省在外公館におきましては、国費留学生の選考及び私費留学生に対する留学関係諸情報の提供あるいは日本語教育の実施等を含む便宜供与を行っております。先ほど文部省からも御説明がございましたが、国費留学生の場合は各国における御要望が極めて高く、非常に激烈な競争となっております。例えば大学院レベルで申しますと競争は十三倍、学部レベルですと競争は三十三倍となっております。このような大勢の応募者をいろいろな過程で選考、準備いたしまして、日本へお呼びするお手伝いを在外でいたしております。
  246. 井上計

    井上計君 次に、先般発表された四全総に基づいて各種の問題等具体的にお伺いすることを用意しておりましたが、時間がなくなりましたので端的に二、三伺います。  まず、現在の日本というのは一極肥大の奇形国家と言われても仕方がないほど東京に一極集中をいたしておりますが、これらの現状について総理はどのような御認識をしておられるのか。あわせてまた、国土庁長官は、多極分散型国土形成についていろいろと四全総にうたってありますが、当然お考えだろうと思いますが、その二点についてまず最初にお伺いをいたします。
  247. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 御指摘のように東京一極集中が加速されているような今の姿でございます。そのような状態を踏まえまして、四全総では東京一極集中を是正して多極分散型の国土を形成するんだとうたっているわけでございます。やはり地方にもそれぞれ核となるものをつくっていく。それを中心にして地域社会の活性化を図っていかなきゃならない。そのことを通じて国土全体の均衡ある発展に資していこうと。同時に、この東京周辺は余りにも過密になっているわけでございますので、秩序ある整然たる姿に立て直していかなければならない。その場合にも、やはり東京にも副都心、東京周辺におきましても業務核都市をつくっていって、それらを中心にして地域社会を形成することにすれば、ある程度職住近接の良好な社会をつくることも可能になっていくのじゃないかというふうに考えているところでございます。
  248. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 大要奥野大臣からお答えがございましたが、私自身反省してみましても、一生懸命で金融の国際化というようなことを進めてまいりました。そのときからも懸念をいたしておりましたが、そういう国際化とか情報化の進展に伴いまして、一層人口集中、諸機能の一極集中が進んだんじゃないかという一つの反省をしております。そこで、土地問題が起き、そして居住環境の問題が起きたと。せっかく先輩から受け継いだまさに貴重なこの国土というものを均衡ある発展をせしめて、良好な状態で子孫に引き継いでいかなきゃならぬという使命感から、四全総の方向というのを私は大変評価しておる一人であります。
  249. 井上計

    井上計君 今国土庁長官のお答えにちょっと出ておりますけれども、多極分散型というふうなことと並行して、このところ遷都論、分都論等々が花盛りであります。しかし、これは二百年、三百年の長期展望の中で考えることでありますから慎重にまた国民の合意を得る必要がありますけれども、私はどこか、適当な時期が来たら国土庁あたりは遷都あるいは分都の場合の受け皿としてはこういう条件が必要だということもお示しになる必要もあるんではなかろうかと、こう考えております。  先般、通産省の若手官僚が論文を発表しました。その中にいろんな条件、六つの条件、その適合しているところの地域を発表していますが、一番が名古屋周辺、二番が浜名湖周辺、こういうことになっておりますが、ひとつ国土庁長官、どんな御見解をお持ちでしょうか、お願いします。
  250. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 東京から都市、産業機能の分散を図る、そのためにも率先して政府関係機関の分散を図っていきたい、こういうことで今内閣としてその問題に取り組んでいるわけでございます。  その場合に、最も基本的なものが首都機能一括移転ということでございまして、今遷都という言葉でお述べになりましたが、そのことにつきまして与党の自民党の中でも首都機能移転に関する調査会が設けられておるわけでございます。三年をめどにして結論を出すということになっておるわけでございます。国土庁としてもこの問題の検討をしているわけでございますけれども、やはり国民の間に議論が十分熟してきて、そしてある程度の方向が出てきた上でございませんと、どの地域がいいとかいうようなことに触れることは穏当ではないのじゃないだろうかなと、こう思っておるわけでございます。  御指摘になったところ、いずれもみんないいところであろうとは思います。
  251. 井上計

    井上計君 我田引水ではございませんで、公平な立場で、一番いいところは第一番に名古屋周辺、二番目が浜名湖周辺と、私じゃないですよ、論文に出ておるということを申し上げたんです。  そこで通産大臣、通産大臣は遷都の条件地としては浜名湖周辺が最適という先般何か発言をされて、新聞に大きく報道されていますが、ひとつお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  252. 田村元

    国務大臣(田村元君) あれは通産大臣としてしゃべったわけでもないんで、たまたまあるときに新聞記者諸君とおしゃべりをしておりまして、茶飲み話というか、酒飲み話のようなことで私は申し上げたのであります。ですから、ちょっと大げさになっていささか面映ゆい気持ちもいたしております。  実は、昭和三十年代でございました、私がまだ若き代議士時代、今は亡き河野一郎先生が我々若手を集められた。といいますのは、私は旧大野派でございますが、大野派、河野派の親睦会がございました。そのときに、我々若い連中に、当時はキャンベラブームでございました、オーストラリアの。これからの日本はもう東京が過密化しないうちに、今さら名古屋のようにきれいに東京はもう都市計画もできないから、私権の問題があるから、だからこの際もう過密化しないうちに国会議事堂をどこかへ移しておくということがいいことじゃないか、そうすれば全部官庁はついていくからということから、日本のど真ん中、風光明媚、気候温暖とすべてにおいて浜名湖の奥、浜名湖奥が一番すばらしいと自分は思うということで、非常に熱っぽく言われたことがあるのです。それが私の頭にこびりついておったんです。  先般、私はある機会にヘリコプターに乗ってあの上を通りました。そしてつくづく思ったことは、ふと河野先生のことを思い出しまして、ああなるほどこれはすばらしいなと。ほとんどまだ未開拓の農地だし、浜名湖、これはヨットハーバーでもあるいは外国人が来たときのクルージングでもこれはすばらしい、こんないいところがあるだろうかと。我が三重県と言いたいけれども、どうも英虞湾じゃ小さ過ぎる、これはすばらしいと思って私は本当に感心したんです。  それでたまたま名古屋周辺で、新名古屋国際空港の話も出ておりますし、湾岸道路の話しも出ておりますし、あるいは伊勢湾架橋の問題も出ておりますから、そういういろんな面でこれはすばらしいと思うよと。浜名湖を褒めても私は票にもならないんですけれども、向こう三軒両隣でございますので、隣県でございますので、静岡は私ども海を隔てた隣県でございますから、そういうことで土地カンもありますのでそういう話を申し上げたということで、通産大臣という立場と絡められちゃ迷惑でございますけれども、この考えは私個人としては間違っておると思いませんし、同時に河野一郎先生のあの炯眼というものはすばらしかったと、まさに先見の明というような感じを今でも抱いております。
  253. 井上計

    井上計君 通産大臣として絡めてはおりませんが、大臣のそのようなお考えの中には中部圏がさらに今後我が国の中枢地域として絶対重要だ、必要だ、さらに発展さすことが必要だというお考えがやはり腹にあってだろうとこういう理解をしております。  そこで、この中部圏を今後の産業技術中枢地域にするためにいろんなことが必要でありますが、時間がありません、端的にお願いしますけれども、まず航空宇宙産業、セラミック産業等々の先進県でありますから、そこに対してもっと通産省、科学技術庁もお考えをいただきたい。航空宇宙研究所の移転等々についてもお願いをいたしたい。セラミック産業についての助成振興策についてもさらに活発にお願いをいたしたいとこう思います。  同時に、このような地域の今後の将来を考えますときには、何といっても交通アクセスの問題であります。中央新幹線、運輸大臣、随分御熱心にいろいろと御検討をいただいておりますけれども、リニアモーターカー等についての中央新幹線の建設、さらに建設大臣は、東名、名神道路は現在あのような状態でありますから、第二東名、第二名神等についての建設もぜひお願いをいたしたいし、また筑波と同規模、それ以上の研究学園都市はやはりぜひ中部に必要だとこのように思っておりますが、いろいろと申し上げましたけれども、ひとつ所管の大臣からお答えをいただければありがたいと思います。
  254. 田村元

    国務大臣(田村元君) 十分承っておきます。
  255. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 当庁としても、第四次全国総合開発計画に中部地方が日本の代表的な産業技術の集積地域として指定されておりますことに沿いまして、的確に対処をしてまいりたいと思います。
  256. 石原慎太郎

    国務大臣石原慎太郎君) 中央新幹線に関しましては運輸省としては長期の課題と心得ておりますが、既にございます東京—大阪間の新幹線にかわるより高速な高速鉄道ということで、リニア化も十分考慮の対象になり得ると思っております。ただ、距離が長距離にわたりますとトンネル等の条件がございますので、このためにはさらにトンネルを構えての大きな実験を果たさなければ実用にはこぎつけないと。  いずれにしろ、一方では整備新幹線の問題がございますので、この見通しがついてからということで心得ております。
  257. 越智伊平

    国務大臣(越智伊平君) 遷都、分都の問題はいろいろ議論が今後あるであろうと思いますが、それとは別に、東名、名神につきましては、大変ふくそうをいたしておりますので今調査を進めておりますが、非常に急ぐところから事業化を進めてまいりたいと、かように存じます。
  258. 井上計

    井上計君 どうもありがとうございました。
  259. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で井上計君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  260. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 次に、大木正吾君の質疑を行います。大木正吾君。
  261. 大木正吾

    ○大木正吾君 まず総理に伺いますが、景気政策についての認識なんでございますけれども、昨年の十月前後の景気対策、あれ以降大変税収もよくなったし、景気は上向いておるわけでありますが、結果的にはあのときの約六兆にわたります景気政策そのものは、言えば緊縮型経済政策から、膨張とは言いませんが、成長型に変わったという認識でよろしゅうございますか。
  262. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私は、率直に申しまして、政策転換だというふうには整理しておりません。やはり、財政改革というものを念頭に置いて、しかも内外のニーズに呼応した弾力的な財政運営の一つだと、こういうふうに考えて位置づけをいたしております。
  263. 大木正吾

    ○大木正吾君 どうも総理答弁がだんだんうまくなってきまして、大蔵大臣の初期はもっと素直にお答えいただけたんですけれども、このごろはあちこちうまくはぐらかされる点が多いんですが、実際問題としてその後に、これは他にもいろんな影響があったでしょう、例えば在庫が非常に払底するとか、NTTの株の問題、たくさんあったでしょうけれども、少なくともベネチア・サミット以降の政府のあの六兆の政策というものは相当大きなやっぱり影響を与えたことは間違いないわけですから、国民一般としますれば、政府の景気政策転換というふうに受けとめている方が多いと思うんですが、もう一遍その辺少し、余り回りくどくなしにはっきり答えてもらえませんか。
  264. 竹下登

    国務大臣竹下登君) やっぱり私は、それは大木さんと議論を始めて既に長いわけでございますけれども、五十五年度予算、前年度の一〇%で抑えるということを決めたあのときから財政改革路線というのは今日も続いておるんじゃなかろうかと。今御指摘にもありましたように、行政改革の果実とも言うべきNTT株の売り払い代金の活用とか、そういうことでいわゆる内外の要請にこたえた内需拡大の予算が結果として組めた。ありがたいことだというふうに思っております。
  265. 大木正吾

    ○大木正吾君 そこで議論のやりとりをしていても仕方がありませんから内容に入りまして少しく伺いますが、言えば、景気が上向いてきましたその背景というものについてはどんなものがありましょうか。大蔵大臣から伺いましょうか。
  266. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 今総理のお話にもございましたが、財政としては財政再建の問題も抱えておりますから二つの矛盾した命題を同時に満たすようなことを、いろいろ苦労をずっとしてきたわけでございますが、おっしゃいますように、昨年の緊急経済対策というのは立ち直りのいいきっかけになったことは確かだと思いますが、同時に、プラザ合意以来非常に急激な円の上昇がございまして、大変に企業は苦しんだ。企業ばかりでなく労働側も当然そうでございますが、苦しみましたが、その中からやはり、いわば新しい生きる道を見つけることに、その努力に成功しつつあるということではないだろうか。つまり、輸出に過度に依存する体質から転換をしつつある、あるいは前川報告に言われますような諸命題を何年間かで片づけるということに国全体のコンセンサスができ上がりつつあるということ。そして、そうしておりますうちに今度は円高そのもののメリットがやはりだんだんに国民経済に感じられるようになってきた、そのように申し上げたらいかがかと思います。
  267. 大木正吾

    ○大木正吾君 少し不思議な話がこれはございますけれども、大体予算が余った際には、経常予算から余りが出た場合には国債の返還資金に積み立てていく、こういうふうな形に財政が流れてきたと思うんですが、七年間ぐらいはほとんど一兆円ぐらいずつ予算に組みまして半分ぐらいしか実際には積み立てができなかった経過がありましたでしょう。そして急遽六十二年、六十三年に入ってから一兆を超えたものが出てきた、こういう経過がありますね。  この辺の問題についてはどうも私、いろんな資料をめくって見ているんですが、背景がよくわからないんですが、これは局長さんでも結構ですから少し、要するに赤字公債あるいは特例公債の返還が急激にできてきた背景という問題について担当者の方からお話し願えませんか。
  268. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 予算でございますので、歳出面と歳入面と両面があるわけでございます。  歳出面におきましては、ここのところ一貫いたしまして一般歳出の削減ということで努力をしてまいっております。五十八年度から、一般歳出につきましては各省の御協力を得ながら前年度予算額よりも下回るという予算を六十二年度まで組んでまいりました。六十三年度におきましても一・二%程度の増加にとどめております。六十一年度、六十二年度に急激によくなってまいりましたのは歳入の面でございまして、税収が六十一年度の後半から非常によかったということが歳出歳入合わせたところで特例公債の減額を大きくすることができたその一番大きな要因ではないかな、こういうふうに思います。
  269. 大木正吾

    ○大木正吾君 その歳入がよくなったという問題についての中身、もう少し詳しくお話しください。
  270. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 税収の伸びをこの十年間ぐらい見てまいりますと、第二次オイルショックのございました五十四年までは一けたぐらいの実質伸び率でございましたが、第二次オイルショック後、五十六、五十七、五十八と、ここのあたり低下してまいりまして五%未満となってございます。それから、先ほど大臣から申し述べましたような背景、円高差益の発生、そうしたことが原因いたしまして五十九年七%、六十年六%、そして六十一年は八・八%このように伸びてまいった。特に六十一年度の九%近い伸びが現在の歳入のと申しますか、財政の状況に寄与をしているのではないかと思うわけでございます。しかし、六十一年の税収弾性値を見ますと二・一でございます。これはこうした弾性値の数値をとり始めて以来最高のものでございますので、こうしたものが永続するものであるかどうか、この点につきましてはなおよく情勢を見る必要があるのではないかと考えているところでございます。
  271. 大木正吾

    ○大木正吾君 私が伺っているのは、もうちょっと細かく聞きたいわけです。  結局、いわゆる財テクというものも大分騒がれていますしね。そういった意味合いで、企業が在庫が減りまして、そして本業の方にずっと流れていって景気がよくなっているのか、そのために法人税がふえてきているのか、あるいは財テクでもって結果的には別の方の仕事でもって金を動かしてもうけているのか、そういったことも計数としてはわかるでしょう。きょうお手持ちじゃないですか。
  272. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 先ほど申し上げました、特に税収が好調でございましたのは六十一年度税収でございまして、補正後予算に対しまして二兆四千億円の増収が生じたわけでございますが、この五割以上は法人税でございます。法人税の中身を見ますと、御指摘のように生産活動から来るものはそこそこでございますが、ただいま御指摘のような財テク的な資産の処分によるものがかなり多かったように見受けられます。それから有価証券取引税、印紙税、こうしたもの、株、土地等の既存資産の移転によるものがかなりの伸びを示してございます。二兆四千億円の増収のうち私どもはその六割程度はそうしたやや財テク的な増収によるものではないかと推算しているところでございます。
  273. 大木正吾

    ○大木正吾君 宴の後の寒風ではたまりませんからね。こういった景気のいいときにはうはうはとみんなしちゃうんだけれども、少しやっぱり中身を子細に検討しておくことがどうしても必要でしょう。ですからこれをしつこく聞いているんです、私の方でも若干調べたものがございますけれどもね。ですから、こういった状態が本当は恒常的に十年も続けば非常に話は都合がいいと思っているんだが、宮澤さんはよく御存じでしょうけれども。  しかし、なかなかそういかない。一過性のものか中期性のものか、そういった判断が非常に大事な段階だろうと私は思うんですよね。ですから、そういった意味合いで少しく大蔵省へ文句を言いたいこともございます。例えば、定率繰り入れについてはほとんど見送ってしまったという問題とか、あるいは地方財政問題についてずっと凍結してしまって、言えばいつ返すかわからぬという問題もありますわね。そういった問題について文句を言いたいことはありますが、一番の問題の底にありますものは、現在の景気が向上している状態の根っこに何があるかという問題ですね。ここのところをしっかり押さまえておかなくちゃいけないという問題について宮澤蔵相、もう一遍何か答えはできませんか。
  274. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) その問題は大変に私どもも大事な問題であると思い関心を持っております。実は済んだことではございませんで、今後の経済の運営を占う上で大変に関係があることだと思っております。殊に、六十一年度の税収はただいま主税局長が申し上げましたように、いわば一過性とも思われるものが大きゅうございまして、二以上の弾性値というのはまことに異常でございますから。問題はこの六十二年度の法人税なんというものが今度はそう一過性のものでなくて、本当の営業利益から出てくるようにどれほど正常化していくかということであろうと思いまして、これはこれからのことにも関係がございますので、深い関心を持っております。  それで、あえて申しますならば、六十一年度はそういうことでございましたが、昨年の夏ごろから景気がやや好転し始めまして、ただいまはまあまあ正常な上昇期にあると。この節は国外の要因、我が国から国外へ、国外から我が国への影響が非常にお互いに大きゅうございますので今後のことを我が国だけで卜するわけにはまいりませんけれども、国際的にまあまあ異常なことがないということでございますと、この経済のまあいわば正常化と申しますか、上昇と申しますかは、いわば前川リポートにありますような命題をこなしながら持続をしていくようにしなければならない。また、現実に社会資本は極めて不足でございますから、しなければならない仕事はたくさんございますわけですし、雇用も大変よくなってはまいりましたが、地域的にはいろいろな問題があって、なお雇用を創造しなければならないというような状況でございますから、まだまだ経済運営を誤りさえしなければこの状況を持続していけるのではないかというふうに思っておるわけでございます。
  275. 大木正吾

    ○大木正吾君 しつこいようですが、総理にもう一遍伺いますが、実は私大変心配していますことは、外圧という中における六兆の景気政策、こういった問題ですね。この辺のことがどの程度G5なり、G7でもいいですけれども、そういう中でもって約束されているかどうか、もう少しはっきりといいましょうか、私たちにわかるようにお話をしていただけませんか。
  276. 竹下登

    国務大臣竹下登君) あるいはできるだけ近いところの政策協調の話の方が適切かと思いますが、私ども、当時は初めての試みでございました六十年の九月二十二日のG5の際、やはり基本的には幾ら何でも今のドルが他の通貨に比べて高過ぎるという協調認識でありました。そうしてそれには共同行動をする、こういうようなことがございましたものの、基本的にはそれだけで本当の通貨の安定ということはあり得ない、やはり政策協調だと、こういうことになりますと、当時から内需拡大施策というものが、日本側に総合して課せられた宿題とでも申しましょうか、そういう考え方であったことは事実でございます。  したがって、それをいろいろ詰められまして、六十一年度の当初予算というのは、まだ私は大蔵大臣でございましたけれども、これはそれほど内需志向型とは必ずしも言えなかったと思うのでありますが、今おっしゃっております六兆円規模の補正予算というところから内外のニーズにこたえ得る政策協調が現実化していった、こういうことではなかろうかなというふうに、過去を振り返ってみてあるいは分析ができるのではないかと思っております。
  277. 大木正吾

    ○大木正吾君 いずれにいたしましても、非常に今後の経済動向なり財政問題を占うについて大事な問題ですから伺っているわけでございますけれども、この間の同僚委員質問の中にもございました二十四兆の例の公債に対する定率繰り入れの停止問題とか、地方へのツケ回しの問題とか、こういったものもございますし、同時にそれ以外に、ちょっとこれは仮定計算でございますから余りここでもって確信を持って私言えるわけじゃありませんけれども、例えば六十五年になりますと、赤字、建設公債合わせまして国債残高が百六十八兆。昭和七十年になりますと百八十五兆。そして七十五年には百九十八兆。これはもちろん成長の度合いとか景気の波は別にその根拠をよく調べておりませんですが、大蔵省等から出た資料によってちょっと申し上げているわけでございますが、こういったことを考えたときに、二十四兆問題もそうでございますけれども、一体これからの財政問題について国民の一人として、また国会議員の一人といたしまして一体どういうふうにこの種の赤字財政を立て直していくのかという問題について非常に心配な面があるので、これは大蔵大臣の方から答えてもらいましょうか。
  278. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ちゃんとした及第点の答えはなかなか事の性質上、大木委員がもうよく御承知のように、申し上げにくいのでございますけれども、現在一般会計の国債費が二割になっているということは、これは何としても財政が何かのときに対応する弾力性を失っているということでございます。これはどう考えましても間違いがございませんから、そのような国債費の増大につながるような新規発行というものをとにかくできるだけまず赤字公債についてやめたい、こういうことが六十五年度依存体質からの脱却という問題であることは御承知のとおりでございます。  さて、しかしそれでもなお建設国債はそこでやめるとはまだ申し上げておりませんわけでございますし、おっしゃいましたように、せんだっても政府委員から申し上げました十一兆円ぐらいのツケ回しの問題もあるといったようなことでございますから、経済運営が順調に行われまして、比較的高目と申しますか中ぐらいな成長がしばらくの間見込まれますならば、ある程度の税収の増が期待できる、そういう状況をやはり基本的に経済財政の運営の中でつくっていくということではなかろうか。既存の債務がこれだけございまして、しかも建設国債はなお六十五年でゼロにするということを申し上げておるわけではございませんから、しばらくそういう状況はやはり続いていくであろう。それに対して経済運営を、まずまず間違いなく比較的、非常に低目でない成長というものを実現していくということが、それによって、国民経済の資源によって過去の債務を支払っていくということではなかろうかと思います。
  279. 大木正吾

    ○大木正吾君 六十五年の赤字国債の脱却問題ですね、これについて私自身も一部、一円といえども残しちゃいかぬとか、あるいは少しは持ち越しが仮に半年延びるとか、そんなけちなことは言いませんけれどもね。  ただ、宮澤さんは非常に専門家ですから伺っておきたいんですが、日本の貯蓄過剰状態という問題と考えたときに、一体この二百兆になんなんとする建設公債、これはトータルしたものでございますけれども、どの程度の貯蓄と投資のバランスというか、あるいは公債の残高のバランスといいましょうかね、そういったものを頭に置いたらいいんですか、その辺は検討されたことがございますか。
  280. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは政府が正式に検討したことはないと思います。  私、大蔵大臣でございますので、ただいまの御質問には大変にお答えが事の性質上申し上げにくい。ただ、それに直接お答えせずに一つ言えることは、我が国の経済の潜在力に対する信用と申しますか国際的な評価はやはり非常に高いということ、これは申し上げてもよろしいことだと思います。もう一つは、しかし財政という立場で申しますと、一般会計の二割が国債費になってそれがなかなか低下していかないということは、これはいかにも財政としては弾力性がないということでつらいことである。そういうこと、二つのことだけは申し上げられると思います。
  281. 大木正吾

    ○大木正吾君 二割が消えてしまうということは、私自身も、本当に自分が払った税金の二割が公債の金利あるいは返却等に消えていってしまうんだ、こういうことになりますと、客観的には非常にこれは大変なことだなという気持ちはよく自分でもわかるんです。  ただ問題は、しかし逆に言いますと貯蓄が非常にだぶついているでしょう。今銀行なんかへ行ったら、新しい制度か何か知りませんが、この間もちょっと友達から聞きましたら、例えば自分の土地など物件があります。担保に入れてください、そうしたら黙って三兆円貸しますと。その金は自分が借りておかなくたっていい、枠としまして、宮澤さんの枠として貸しておきますと。これは私とはけたが違うでしょうけれどもね。そのときに結果的に出た話は、あなたがもし株をお買いになったら、株の分だけ、五百万なら五百万分だけは言えば利息はいただきます、こういう話なんですよね。銀行に随分金がだぶついているなということを数字の面ではいろいろ見ますけれども、現実に問題にぶつかってみて私はびっくりしちゃうんです。私、だから逆のことを聞いているんですよ。二十が十五になりたい、早く。十三にしたい、十にしたいと、十が一番いいのかどうか。しかし、十から逆に八、七、五といったときに、この金余り現象との関係におきまして経済が少しまた逆に変な格好にいく心配はないですか。そういった研究は要りませんか。
  282. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 逆のことをお聞きになっていらっしゃることは先刻から私は実はわかっておるわけなんでございますけれども、いかにも大蔵大臣としては国の借金が大きくなりますことはやはりつらいものでございますから、できるだけ大きくしていきたくない。もとより、先ほども申し上げましたが、我が国の経済の信用というものは非常に大きなものでございますから、国が発行する国債、それが金融資産として十分に評価されている、それについての心配は一切ないということも事実でございますけれども、ただいまのお尋ねにはなかなかお答えを申し上げにくい、お許しをいただきたいと思います。
  283. 大木正吾

    ○大木正吾君 それじゃこれ以上この話は追求いたしません。もう一遍もとに返りまして、NTTの株についてちょっと関連質問をいたしましたときに、宮澤さんの方から、結局こっちのポケットに金を借りましてこっちから出ていきます、こういう話がありましたね。これは一種の手品ですわな。こっちから入るときは卵であった、こっちからハトが出てきました、こういう形が出てくるでしょう。こっちでは要するに公共事業として、ただでもって貸し付けてもらうわけですよ。こっちでは補助金で出ていくわけですからね。中をずっと体内を通っていくわけだけれども、卵がハトに化けて出ていくわけです。その辺の認識はどうなんですか。
  284. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) あれは私が御説明が長くなると思いまして少し簡単に申し上げ過ぎたのでございますが、いわゆるBタイプの社会資本整備勘定からの支出というのは、地域がいっときに地域開発をされますと、地方にあることでございますが、河川も街路も道路も下水もあるいは治山治水も一緒にやらなきゃならないという必要がこれございます。また、そうしてあげましたら地域開発が三年なり五年なりで済むわけでございますが、そうするとそこへいっときに公共事業費をかれこれ投入することになります。この金は、しかし十年なら十年、あるいは何年かの間に国がその公共事業費を新たに計上することによって地方から返還の財源を補助金という形でつくって、その金は国に戻ってくるということを申し上げたわけでございますから、それならば補助金のいわば前渡しかとおっしゃればそれが一番端的な表現であって、十年なら十年間の補助金をそういう地域開発の必要なところへ前渡しを申し上げる、こういうふうに申し上げようとしたのであります。
  285. 大木正吾

    ○大木正吾君 ここには相当、地方の市長さんとか県知事さんをやった経験者がおられるはずですけれども、橋をかけるのに突貫工事をやりまして、例えば十億ずつのものを十年間計画を立てましたものを、百億もらったら一遍に一年間のうちにやっちまう、こういったことは乱暴な話なんですよね。できませんね。短縮してもせめて三分の一かあるいは半分ぐらいのものでしょうね。そういうものをやっぱりもっと常識的に説明してもらいたいんですよ、一つは。  もう一つは、この借換債の問題ですけれども、借換債問題になぜNTTの売却益がある間にもうちょっとこの方について工夫がされないのか。何で高い利息のものをいつまでも抱えているか私はわかりませんので、その辺の問題についても聞かしてください。
  286. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 前者の問題は、五年かかる橋を二年でつくってしまえということではございませんで、地域の面的開発といたしますとそこにはいろんな公共事業がいっときにつまり参画をしなければならないわけであって、下水道を十年かかっていてはいけないわけでございますし、河川も一緒にしなきゃならないところもあるし、街路もそうでございましょう、公園もそうかもしれない。いっときにそれを集中する。全体としては百億ということになってくるかもしれませんが、そういう必要がございますときに前渡しをする。一括して、よくリージョナルファイナンシングとか言っておりますけれども、そういう意味があるということを申し上げようとしたのであります。  それから次の問題でございますが、借換債を、NTTの株式があればあえて借りかえずに現金償還すればできるではないかとおっしゃいますことは、できないことはございません。が実は、いろんな問題を含んでおりまして、私どもとしては、これ選択の問題でございますから、あれだけのNTTの余裕金がございましたら、その年に償還になりますものはこれは当然償還をいたさなければなりません。それで残りましたものはこの際内外の要請である社会資本整備に使っておいて、御承知のように出し切りにするのではございません、返ってまいりますから。そのときに公債償還に使えばいい、これは選択の問題であると存じます。  なお、同時に、もし国債について繰り上げ償還ということになりますと、これはいわば時価で買い上げなければならないということになりますので、国債の相場がかなりよろしゅうございますので、それをやりますと国庫としては結果的には実は損をするということに極めてなりやすい、額面で償還というわけにまいりませんから。そういう事情もございまして、それは金融秩序を考えますとそこには一つやっぱり問題があるというふうなことも申し上げられると思います。
  287. 大木正吾

    ○大木正吾君 今の最後の借換債問題については私の方から意見がありますが、時間がむだですから省きます。  私は企画庁の長官に伺いたいと思いますが、今のことと関連して、恐らく話は聞いていただいたと思うんですが、要するにことしの場合の経済見通しは一応出ているわけですね。問題は、これはやっぱり例えばの話が、NTT債があと三年間は売れますよと。三年間に約四兆から五兆近い、その間はこれ若干相場は変動しますからね、もっとふえるかもしれません。なくなっちゃうことはない。三年売ったらもうないことははっきりしているんですよ。そういったことを考えたときに、四兆から五兆といったら相当なもので、税収にしたら大変な額ですからね。そういったものがなくなったときに仮に経済計画を立てるとしたとき、私の感じでは、住宅などにいたしましても、東京都内はみんなそうですよ、相続税を逃れんがためにやっぱりやっているんです。マンションづくりをやっているんです。  そういったことを考えたときに、ことしみたいに百七十万戸なんてばかなことはないですよ。同時に、運よく民間設備が枯渇して、そして設備がぐんとふえていくこともないですね。そういった面で、書いた文書をちょっとちょうだいして読んだんですけれども、これについて、もう少し内容的なことについて長官の方から話を、いわば項目的に、例えば民間住宅はどうなるだろうかとか、あるいは設備投資がどうなるだろうかとか、そういった面についてと、同時に海外との関係についてどうなるか、そういった問題について聞かしていただけませんか。
  288. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 大変に総合的な御質問でございますから、私の答弁の後また政府委員を立たせるかもしれませんけれども、お許し願いたいと思います。  まず、御趣旨のほどが、そういう意味における大変な価格差を抱えていながら、どういう形で六十三年度の経済情勢、この現状をとらえていかなければならぬか、こういうような仰せかとも思いますが、まず第一に、六十三年度の我が国の経済そのものにつきまして全般的に私どもの概念として持っておりますのは、外需そのものは対外不均衡そのものの是正過程を反映して引き続きマイナスの寄与度になることは間違いない、こういうように読んでいるわけです。  一方、内需の問題は、景気回復の二年目を間違いなく迎えておる、そういうとらえ方でございまして、一つは個人消費が雇用者所得の着実な伸び等によりまして堅調にさらに推移をしていることだけは疑いなき事実である、これは見込まれておるということです。また、設備投資そのものが非製造業におきましては堅調に推移しておりますから、製造業においても内需関連分野の投資が増加すると見込まれておることも事実でございます。こういうことを考えますると、引き続き好調を継続できることは大体見通しがついているのではないか、こういう考え方に私どもは立っております。  以上あわせますと、六十三年度そのものは景気回復の局面においては二年目を迎えて、全体としてはやっぱり御指摘がございました内需を中心とした着実な成長につながっているものと考えておる次第でございます。それがゆえに私どもも自信を持って三・八%という数値をはじいたわけでございますけれども、多少なりともその点においての説明不足の点は政府委員に補わせたい、こう思っております。
  289. 大木正吾

    ○大木正吾君 政府委員がだれも出てきませんから私の方からもう一遍言いますが、聞いていることはこういうことなんですよ。要するに、ことしの問題とか来年の問題を直ちに言ったわけじゃないんですよ。問題は、私が例として挙げました、NTTの株式を三年間で売り切りますよと。いいですか。結局昭和六十五年には売り切るんですよ。その後の経済動向はどうなるかについて、あなた方の方では、こういった書いたものが一般論として出ていますよと。しかしこれについてどういう作業をしているか、どういうふうにそのときになって冷たいような風が吹くかどうかわからぬけれども、あなたは簡単におっしゃったけれども、私も経済審議会のメンバーをやったことがあるんですよ。五年計画がもったためしは絶対にないんです。三年間でもって大体において波が来ることは間違いない。これはもう竹下さんよく御存じのはずですよ。そういった経験があるものですから伺っている。事務当局でだれか、そんなに細かな数字は要らぬから答えてもらいたい。
  290. 星野進保

    政府委員(星野進保君) 御質問の件は経済計画、現在経済審議会で御検討いただいている最中の件についてでございますのでお答え申し上げたいと思いますが、現在ちょうど、どのくらいの成長率がいいか、そのためにはどのくらいの政策が必要であるか等々につきまして今ちょうど経済審議会で検討していただいている最中でございます。今御指摘がございましたように、政府としての財源問題をどういうふうに考えるか等、それらにつきましてもなお検討中でございますので、現在お答え申し上げるような資料を私ども持っていないのは残念でございます。
  291. 大木正吾

    ○大木正吾君 時間がもったいないから、もうちょっとあなたこれ、そんないいかげんな答弁ではだめだよ、作業中の経過をもうちょっと説明しなさいよ。
  292. 星野進保

    政府委員(星野進保君) 現在、経済審議会におきまして部会を四つつくりまして、一つは企画・公共部会というところでフレームその他につきまして御検討いただいている最中でございます。それから、あと国民生活部会、それから国際経済部会、それからもう一つは地域・産業部会、四つの部会をつくって御審議をいただいておりまして、結論は今のところ各部会の報告を四月いっぱいぐらいにちょうだいする予定にしておるわけであります。  それで、しからばそれじゃそれぞれのところで、何を主なところでポイントとして議論が今までのところ出ているかということの御質問かと思いますが、一つは企画・公共部会におきまして、経済成長率等につきまして一体現在の、今の内需主導型の経済成長に最近転換してまいりましたが、この転換してきた経済成長率というのが果たして内需型のままでこれからの計画期間中、つまり現在一九九二年までの五カ年間を計画期間としようとしておることでございますので、その期間中、内需型のままで推移していけるものかどうかということについていろいろと御検討いただいております。  それで、先ほど先生が住宅問題についてもちょっとお出しになられましたが、住宅につきまして現在確かに百七十万戸あるいは月によりましては百八十万戸といったような勢いで現在のところ伸びておりますが、これが平常ベースに戻った場合に一体百五十万戸ぐらいになるのか、あるいは一時悪かったように百二十万戸ぐらいに落ちるのかとか、そういうようなことについて現在鋭意御議論をしていただいているところでございます。  それからさらに、恐らく先生御関心がおありかと思いますのは、国際経済部会におきまして、これからの世界経済につきまして一体どういうふうになるかというようなところも恐らくこれから御議論をされるのかもしれませんが、私どもといたしましても現在御検討いただいている最中であります。  これも考え方を申し述べろということでございますと、二つの大きな流れがございまして、一つはいわゆるソフトランディングしていくのかどうか。つまり現在、大体四%ぐらいの工業製品の貿易というのが世界の中の常識になっておるわけでありますが、これはこれからアメリカが新大統領が選出された後に果たして調整過程に入るのかどうか。入ることによりましては恐らくグラム・ラドマン法等の適用をなされてまいりますと、世界的な需要の低下ということが考えられるだろう。そういうことになりますと、今までの四%の世界の工業品貿易というのが少し落ち目になってくるのじゃないんだろうか。その場合には一体どういう世界経済になるんだろうか。しかし、もしグラム・ラドマン型でやっていただければこれはソフトランディングになるだろう。しかしもしそうじゃない場合には今度はクラッシュ型という格好で、そのまま放置、今のいわゆる国際不均衡をそのままにしておきますと、それをマーケットの方が強制的に調整するというようなことが起こった場合にはクラッシュ型になるんじゃないかというようなことを国際経済部会の方でも御検討いただいている最中でございまして、まだ残念ながら結論が出ておりませんので、まことに申しわけないのでございますが、今の段階でどうだと言われても私どもお答えするものは持っていないということで、御審議の過程はこんなことだということを御報告申し上げます。
  293. 大木正吾

    ○大木正吾君 大体作業の過程はわかりました。特に後段でつけ加えてもらったところが聞きたかった重点なんでありますけれども、通産大臣もここにおられますが、構造調整ということはどうしても避けて通れぬ問題ですわね、産業をどんどんどんどん変えていかなきゃならぬのですから。私はだから願わくはNTT債でも五年ぐらいもっと売れていればいいと思ったんです、実際言ったらね。その間にこっちで踏ん張って、そしてどんどん構造調整していきまして、それは為替の方が百三十円から三十五円ぐらいでずっと安定してゾーンができていけば一番いいと思っているんですよ。だから、経企庁長官によく聞いておいてもらいたいことは、この部会の中でもって、作業の中で私はアメリカに遠慮しちゃいかぬと思うのよ、もう。アメリカに遠慮しちゃいかぬ。百二十七、八円、今落ちついていますけれども、絶対遠慮しちゃいかぬですよ。  大体、今度出てきた包括法案にいたしましても、日本に対してのたたきですよ、これはね。一方では、どうですか、財政赤字の削減問題についても軍事費についても余りいいところはやってないですよ。みんなあなた、かけっぱちばかりやっておるんですよ。国民全体が日本よりよっぽどいい生活をしているんです。そういった中でもって非常に大事な問題、やっぱり為替レート問題は大事ですからね。そういったものが日本として、日本の経済計画にはきっちり対外問題を主張している、こういったことが大事な問題ですから、そこのところはよく頼んでおきますよ。
  294. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 大木委員も長い間私どもの経済審議会の委員を兼ねていただいておりましたから、大変に熟知していただいていることと思いますが、私ども何もアメリカ側の立場に立ってだけ譲歩していくというような形は取り得ませんで、この問題点を含めまして今度の経済計画というものを多くの、四部会に分かれた形でずっと審議しておる。その途次においても相当その問題点は論議されておりますので、大木委員の満足していただけるような報告ができるのではなかろうかなと、このように考えております。
  295. 大木正吾

    ○大木正吾君 忙しい方を相手にしているものですからちょっと順序が前後するかもしれませんが御勘弁いただきたいんですが、次に税制問題についてお伺いいたします。  税調会長、お忙しいところをどうも、また、きょう税調があったそうでございまして、お疲れのところをありがとうございました。  まず、税調会長に伺いますが、税制の公平という問題についての理念ですね、これについて税調会長はどういうふうにお考えでございますか。
  296. 小倉武一

    参考人小倉武一君) 税制調査会で税の公正という理念はどういうことかということは、私勉強不足で余りうまくお答えできるようなふうには審議はしておりませんのですけれども、しかし随分長い間税の不公正是正ということは税制調査会としても宿題でございまして、したがいましてどういうところが不公平と言われるかということについてはおぼろげながらでも承知しているつもりでありますけれども、一番最近になって、不公平と言われるのはサラリーマン労働者の所得税、これが他の業種、自営業種といいますかあるいは中小企業といいますか、と比べて不公平になっておるんじゃないかという、これはなかなか比べるのは難しいんですけれども、そういうふうに言われております。これは、税制自体もありますけれども、一つは、税の把握が業種によって若干違うということもあるんでしょう。そういうようなことでサラリーマンと他の業種との不公平、これが一つの大きな問題となっております。  もう一つは、所得と消費についての税の不公平といいますかアンバランスといいますか、そういうことがやっぱり指摘されております。これは割と新しいことでありまして、これは直接税に属しますけれども、所得税中心の税制では、これがうまく機能するといいますか、うまく仕組まれてそしてうまく機能するならばそれが最も公正であるというふうに考えてきたのでありますけれども、なかなか所得の把握というのは難しいところもあるというようなことで、所得だけに依存するということはかえって税の公正を欠くのではないかという、最近そういう議論が多くなりまして、したがいまして所得税制で欠けるところは消費に対する税でもって補うというような考え方が生じてまいっております。  これは非常に異論のあるところといいますか、議論のあるところでありますが、所得税につきまして完璧を期するということはこれは長い歴史の上からいいましてもなかなかできなかった、また現在もできていないということでありますので、そういう意味でも所得に関する税のほかに消費についての税もお願いするということにしたらどうかと。ところが、無論、消費税につきましては個別消費税が現在もあるわけでありますからそれでいいじゃないかという御意見もございますが、この個別の消費税が、それ自身がまた不公正といいますかアンバランスといいますか、というようなことになっておる。かてて加えて、消費にかかる税、間接税でございますが、そのウエートが税収の上で非常に縮んできておるというようなこともございます。そういうことを直すのがむしろ公正に合致するのじゃないかというようなことも論じられておりまして、そういうことも考えなきゃならぬじゃないかと思います。  もっとも、それは概論的な話でございまして、個々の税制につきましてもいろいろございます。例えば法人税につきましては、一つは、最近国際化の時代でございまするので、外国と比べて日本の法人税は高過ぎるのではないか、国内の産業の空洞化ということが生ずる一つの要因としてそういうことが言われるようになってきておるわけです。日本が世界一高いわけでもありませんけれども、一番高い西ドイツでも法人税を下げようとしておるようであります。したがいまして、日本も世界一高いというようなことになりましても困りますので、これはひとつある程度適正なところに落ちつけるということが多くの方面からの要望でございまして、これについてある程度お答えをするというのが税の公正に適する。  税の公正というのはそもそも大体個人所得についての話でありますが、こういう国際化の時代につきましては、法人についても国際的に公正なところに落ちつけるというふうなところにまでなってまいっておりますので、税の公正ということを図ることはなかなか難しい問題でありまして、何が公正かということにつきましては、やっぱり昔から言われておりますように、昔といってもそんな昔じゃありませんが、所得税中心の税制になりました先進諸国におきましても、垂直的公平といったような原理だけではいけないのではないかという反省があって、累進税率を緩和するというようなこともむしろ税の公正に適するのじゃないかというふうな議論もございまして、その辺もある程度やはり考慮しなければならぬのではないかといったように感じております。
  297. 大木正吾

    ○大木正吾君 会長、もう一問だけお願いいたしたいんですが、今の御回答の中にございました中で、西ドイツが一番高い法人税率ということがございました。これについて、最近の政府なり自民党なり税調の中にも、法人税を下げるという話も非常にはっきり出てきているわけでございますが、そうなりました場合には、当然の問題として法人に関する特別措置等は全部撤廃すべきと、こう考えるんですが、その辺のことはどうでしょう。
  298. 小倉武一

    参考人小倉武一君) お尋ねのように、法人に関する特別措置はできるだけ整理するといいますか、合理化していくというふうな考え方で当然考えて、税調でもそういう方向で処理したいというふうに考えておりますが、いわゆる特別措置というものが一体税の公正を害するような特別措置なのか、あるいは法人の経営、経理の上から当然必要とされるような措置もありますので、その区分がなかなか難しくて、若干、どれが整理されてしかるべきものであるか、どれはなお温存——温存と言っては語弊がありますが、維持しておいてしかるべきものであるかについては、なお多少議論がございます。しかし、その議論にかかわりませず、大筋においてはお話しのようなことでいたしたいと思いますが、法人税の減税の規模にもよりますが、法人税制の中での合理化だけで必要な法人税の減税の財源を賄えるかどうか、これはちょっと難しいような気がいたしております。
  299. 大木正吾

    ○大木正吾君 会長、お疲れでしょうから結構でございます。どうもありがとうございました。  それでは政府の側に伺いますが、まず、不公平税制の是正という言葉が盛んにはやるわけでございますけれども、中曽根さん以来、竹下さんになっても大分変わってきているわけでございますが、その変わり方の根底にもう少し、哲学と言うとちょっと言い過ぎになりますが、今の税の理念というか、その辺の問題を飛び越えて政策的な面に少しくやっぱり走り過ぎている感じがしないでもないんですが、その辺総理はどういうふうにお考えですか。
  300. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 不公平税制という言葉が使われますと、かつては本当は一番答弁に困っておりました。なぜならば、税制は租税法定主義で、国会という権威あるところで議了された法律に不公平があるという表現は国会に対してこれは非礼だという考えが私にありました。そうすると、論理的には、今もお話があっておりました、いわば税法というものはそれぞれ公正が貫かれて、政策目標とはいえ租税特別措置というものは公正を曲げておる部分だという理解の仕方もできる。さようしからば、不公平税制の是正といえばやっぱり特別措置というものから取りかかるべきであるというのが、大体ここのところ六、七年前ぐらいはその話じゃなかったか、それで、いや不公平感があるということになりますと、これは非常にわかりやすくなってきたんじゃないかなと。  そうすると、その不公平感というものには何があるかというと、垂直的不公平と水平的不公平とかいろいろございますが、やっぱりとかく自分を中心として考えがちなところに不公平感というものがあるんだな、こういうふうにも思ってみたわけでございます。それともう一つは、その場合は執行の問題がございます。同じ所得税法の中にありましても、事業所得と給与所得の関係において捕捉の問題に対して不公平感がある、こういう議論がだんだん積み重なってきて、近ごろ不公平税制と一口に言いながら、不公平感というものが基礎になって不公平税制という言葉が使われてくるようになったのではないかなというふうに私は思っておるところであります。  前置きが長くなりましたが、したがって税の理念とは何事だ、こういうことになりますと、やっぱり国民共通の経費、すなわち国が存在していくための必要経費というものを可能な限り、国営事業とかいろんなもののあるところもございますけれども、やはり租税によってその負担を国民がそれぞれ負う。その中で可能な限り不公平感がないようにしていくということで、今、たびたび言うようでございますが、所得、消費、資産等についてバランスのとれた税制の構築について御議論をいただきたい、こういうことになるのではないかなと思って常日ごろ頭の整理をしておるところでございます。
  301. 大木正吾

    ○大木正吾君 まさしく竹下答弁なんですね。不公平税制、不公平ということをきっちり言い切ったらいいのに、感と言う。何か言葉からすると非常に幅が広くて、そしてつかみにくいですね、これ。雲か空気みたいなものですな、結局、感ですからね。あなたが考えている感ですからね、私が考えている感ですから、これは。ひっつかみにくいですね。  もしその程度の問題であれば、現在の不公平感というものは、この二、三年間の経済状況の変化の中で最も厳しい不公平感があるというように感じるものは、一体今あなたがおっしゃった所得、消費、資産の中ではどれが一番強いと感じますか。
  302. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 重ねて申し上げるようですが、私が不公平感という言葉を使わしていただいているのは、税制に不公平があるということになると、租税法定主義で国会で決めてもらったのに不公平があるという表現は行政府として失礼だと思って言わない癖がついておるわけでございます、これは。が、不公平感は確かにあるということで私なりの心の整理をさしていただいて、言葉を選んでお話をしておるわけでございます。  さて、それじゃその不公平感というのは今どこに一番あるかと言われますと、私もこれですとずばり申し上げるわけにはいきませんが、国会の論議等を通じて感じておりますのは、一つは、直接税の中における所得、なかんずく源泉徴収を受けられる方々の、いわゆるサラリーマンの勤労所得と資産所得というものの中に不公平感というものを感じていらっしゃるんじゃないかな、これは直接税の中における不公平感の一つの例ではないか、それが具体的に言えばキャピタルゲインの問題等がクローズアップしてくる一つの背景ではないかというふうに思います。それから所得税法の中において、これも同じようなことでございますけれども、いわば今度は事業所得とそして給与所得との間の不公平感、これも直接税の中でお感じになっておるものではないか。  しかしながら、それをだんだん議論してまいりますと、結果として今度は、所得の段階で納税の義務を果たすべきか、あるいは消費の段階で納税の義務を果たすべきかというような議論にだんだん議論がそこへ到達していく性格のものじゃないか、あるいは心の中では皆さんともに自問自答してそこまで達していらっしゃるというのが現状ではないかなと、これは少し読み過ぎになりますけれども、そういうことをかねがね考えておるところでございます。
  303. 大木正吾

    ○大木正吾君 これはもう答弁は要りません。私の勝手を言いますが、資産の問題についてはお触れにならなかったんですが、土地あるいは株の問題もそうでしょうけれども、そういった資産面のいわゆる不公平ですね、これは目に見えてやっぱり物すごく大きなものがありますからね。例えば、私が東京でもって百坪のうちに住んでいます。竹下さんはもちろんこれは比較になりません、何万坪でしょうけれども、しかし同じサラリーマンでもって百坪の島根県の方は、私に比べたらはるかに少ないですね。恐らく坪十万ぐらいだったら非常に少ない額でしょう。これは私どもの場合には五億もある、向こうは二、三千万しかない、こうなりますから、大変な違いなんですよね。そういったものこそがむしろ最近では不公平感として大きなものじゃないかと私は思っているんですが、これはあなたはなかなかその意見は撤回しないでしょうけれども、その辺の御感触を、何か意見がありますか。
  304. 竹下登

    国務大臣竹下登君) だから、私はいわゆる所得と資産に対する不公平感のところまでお話をいたしましたが、さらにその資産の中で分けてみますときに、今おっしゃったような不公平感というものもこれは存在しておるというふうに私も、そのとおり一つの問題点だという意識はございます。
  305. 大木正吾

    ○大木正吾君 大蔵大臣にお伺いいたしますが、法人税の不公平についてはどういうふうにお考えですか。
  306. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これは、不公平ということは必ずしも私はそう思いませんのですけれども、先ほど委員小倉税調会長にお尋ねになっておられました、いろいろ租税特別措置法に定められた幾つかのものの中に時として不公平があるとおっしゃる方がございますし、また何と申しますか、仮に受取配当の益金不算入にしてもあるいは配当分の軽課にしましても、これは物の考え方でございますから、もう少し重課していく、制度を直してもいいのではないかということは政府自身も実は今考えておるところでございますし、そういうことを仮に不公平と呼ぶか呼ばないかという問題はあると思いますが。それから党によりましては、法人の持っている殊に土地でございますが、これが逐年値上がりをしていって含み利益が生じていくことに何ら課税ができないことは、個人の場合には相続税があるのに比べて不公平だと言われる御議論がございます。私は、私自身はにわかにそう思わないのでございますが、そのような御議論が幾つかあると思います。
  307. 大木正吾

    ○大木正吾君 資本金百億円以上でもって日本の国内に法人税を納めていない企業があるかないか、その辺はどうですか。
  308. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それは例えば、海外に所得がございまして、我が国と当該国との二重課税の防止条約の結果、外国で払ったものを我が国の側から控除するという結果といたしまして、そういうケースはあるいはあろうかと思います。これはしかし、不公平と申しますよりは、我が国と一般的に国際的に認められた二重課税の回避に関するものであり、またある意味では、我が国の当該国、仮に発展途上国ばかりとは限りませんけれども、そういう国に対する一つの施策の結果であるということも申し上げられるだろうと思いますが、これもしかしちょっと引き過ぎではないかという御批判がありますものですから、政府としてもある程度その削減額を少し調整しなきゃならないのではないかというような問題意識は持っております。
  309. 大木正吾

    ○大木正吾君 政府と野党との交渉ではありませんから、ここでもって政府を責めても仕方がないと逃げられるかもしれませんが、この間衆議院でやりました例の与野党の話し合いですね。この中にはこういう言葉が最終回答といたしまして、二つ目でありますが、三野党の要求する「不公平税制等の是正」について各党政策担当者間において云々と、こうなっていますが、これは明らかに不公平であることを認めているわけでしょう。これは国の台所を預かる宮澤さんに相談がなかったわけじゃない、国対委員長が独自にやったわけじゃないと思うんですが、御承知ですか、この言葉は。
  310. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これは政府がかれこれ申し上げない方がよろしい合意事項でございますけれども、今おっしゃいました、かぎが書いてありまして「不公平税制等の是正」といいますのは、このときに野党から御提示のありました予算修正共同要求による歳出歳入増減表という歳入の部に、「2、不公平税制等の是正」「一兆七千億円」とございまして、その下に九つ項目が並べられております。かぎをいたしまして「不公平税制等の是正」といたしましたのは、この中身を与党としても別にこれ以上論じないまま、いわば野党が言っておられる、ここに挙げられておる「不公平税制等の是正」、このことを協議いたしましょうと、こういうふうにこの文章ができておるのであると思います。政府が余り口を突っ込むべき問題でございませんけれども、ここにかぎでわざわざ引用してございますのは、野党のお申し入れによるその文言をそのまま拝借しておるように観察をいたします。
  311. 大木正吾

    ○大木正吾君 不公平税制をめぐる法人絡みの問題について宮澤さんの答弁を伺って、そして今の具体的な生の話をお伺いしますと、非常にこれはやっぱり、与野党の話し合いでまとまったというものが、何というか、影が薄れてくる、こういう感じがするんですよね。あなた御自身当然この問題については相談を受けたんでしょう。前の方の、言えば「不公平税制等の是正」云々から始まって、税外収入、自然増収、建設国債、こういった問題については相談を受けつつやったわけではないんですか。
  312. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) この文章そのものは与党の責任において、野党国対委員長会談でまとめられたものでございます。無論、与党がこれを検討いたしますときに私どもも幾つかの相談は受けておりますのですけれども、私どもが野党の提示されたことについて、これが間違いだとか、あるいはこれは不適当であるとかいうことを申し上げるべき立場にはないと、政府は終始そういうふうに考えてまいりました。
  313. 大木正吾

    ○大木正吾君 いずれにいたしましても、私自身は、アメリカのまねごとをすることは割合日本は好きですからね、しかし税制だけはヨーロッパ型にしたいという流れが、だんだん竹下さんのうまい、何といいますか世論形成でつくられているのか、本当なのかうそなのかわかりませんけれども、そういった形勢だけれども、シャウプの方の、アメリカ自身はシャウプ税制が根幹ですわね。何でシャウプの方のこと、アメリカの方が大分好きなのに税金だけはヨーロッパ型を持ち込もうとする考え方なんですか。この辺はどういう御感触で竹下さんはお考えですか。
  314. 竹下登

    国務大臣竹下登君) シャウプ型と申しますか、日本の税制はコロンビア大学の当時若手教授であったでございましょう、先年お会いしましたときには大分お年をお召しになっておりましたが、シャウプ博士を中心とする若手学者が来まして、やっぱりシャウプさんの物の考え方、それから、当時の日本国民の担税能力というものがそこにあったと思うのであります。それでシャウプ勧告というものが出されて、とにかくそれが基礎となって今日までの税制が続いてきておる。いろいろな手直しはございましたけれども、きておることは事実でございます。  そこで、間接税論議をいたしましたときに、過去の税制調査会等のお話を、よく答申など、大木さんもまさに税制調査会の一人でもあったわけですが、いろいろ議論を聞いておりますと、いわゆる論理的にEC型付加価値税というものに対する評価がアメリカの単段階のセールスタックスよりは論理性が強いじゃないかというような御議論の流れというものが今日あるんじゃないか、私自身が税の専門家であるとは思いませんので、ここでこれが正しくこれが悪いとか言うつもりはございませんけれども、大木さん自身も税制調査会にいらしたときのことを想起していただきますと、想起することを強制するわけじゃ決してございませんけれども、論理的にEC型付加価値税の議論の方がなお濃密に行われてきたなということは、私なりに毎年の累次の答申などを読ましていただくとそんな感じを受けております。
  315. 大木正吾

    ○大木正吾君 この問題は、与党、野党四党の話し合いがあるようですからこれ以上突っ込みはやめますが、大蔵大臣に伺いますけれども、法人税率についてはドイツの次に日本が高いということはこれは間違いありませんか。
  316. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それもいろいろ御議論がありましてなかなか御議論が終結しないようでございますけれども、まあ実効税率を言えばやや高いのではないかというふうに聞いております。
  317. 大木正吾

    ○大木正吾君 私の手元にありますのは百億円以上という、日本で言えば相当なビッグの会社ですけれども、相当な数、これがいわば取引の大半を占めているわけです。九〇%を占めているんですが、その方々の大企業の実効税率は、これは相当有名な学者がつくった論文の中からお借りしたものでありますけれども、大体四〇%台と、こういう数字が出ているんですが、これは間違いですか。
  318. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 法人税の負担率を国際的に比較するというのは大変いろんな観点がございますので難しい面がございます。したがいまして従来から、国税と地方税を合わせ、それからまた、その配当分はその三〇%であるという仮定を置いて計算をさせていただくということがこの何十年来一貫した考え方になっておりますので、その観点からいたしますとただいま大臣から申し述べましたようにドイツの方が高いということはございますが、それはいろんな対象の取り方によりましていろんな数字があろうかと思うわけでございます。
  319. 大木正吾

    ○大木正吾君 いろんな数字があろうじゃなしに、あなたの手元のものをちょっともう少し内容で言ってくださいよ。
  320. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 私どもの手元にございますのは、日本が五一・五五、それに対しましてドイツが五六・五二というのが抽象的に毎回お出ししております数字でございます。  ただいまお示しと申しますか、お話しのございました百億円以上の会社の負担の比較というのは私ども現在手元にございませんので、お答えはちょっとできないわけでございます。
  321. 大木正吾

    ○大木正吾君 ここにこれ相当有名な論文なんですけれども、戸谷さんという方が書いた「法人税——その構造と負担——」というやつがあるんですよね。これは有斐閣から出ている立派な本なんですが、この中に出てきますのは、百億円以上の資本金の法人の場合には四三%という厳密な計算が出ているんですよ。こういったものは一切大蔵省は目を通さないといいますか、見るに値しない、こういうふうに考えているんですか。
  322. 水野勝

    政府委員(水野勝君) 昭和五十九年の税制改正に当たりまして一・三%上乗せいたしましたときには財界と申しますか、産業界とこの負担率につきまして繰り返し議論が行われ、いろんな論文や分析等も参照しつつ勉強いたしたわけでございますが、大変申しわけございませんが、ただいまの御引用のものにつきましてはちょっと私ども持ち合わせておりませんので、後日また勉強さしていただきましてお答え申し上げたいと思うわけでございます。
  323. 大木正吾

    ○大木正吾君 いずれにいたしましても、基本的に割合にアメリカと経済絡みの問題でも関係が深いわけですから、日本の場合には。ですから、そういった面からしても、大体経済圏が割合に深いつながりを持っている場合には税金あるいは、だから円とドルがいつも問題になるわけですから、そういう点からしますればやっぱり、宮澤さんとは意見が違いますけれども、言えばシャウプ税制の根幹で垂直型不公平を取りましてそれで水平にしていく、こういうような形のものが一番いい、こう考えているんですが、若干これは意見が違うようです。ただ問題は、そういった中でも言葉の端々には、なかなかここでは言いにくいでしょうけれども、不公平というものが、不公平感でもいいですよ、総理がおっしゃったんですが、感でもいいですけれども、そういったものが散見されるわけです。  いずれにしても、こういった要するに与野党のやり合いの問題とか、同時に私たちが現実に見ているいろんな税制の資料とかそういう点からしますれば、当然の問題として今回の場合には不公平を、不公平感を、感でもいいですよ、総理が言ったとおり、妥協しますよね。その中身を出しなさいよ。渡部君なんか三兆などと言っているんだからね。恐らく三兆も出す気はないでしょう、わなにかけようと思って言っているんでしょうけれども、それはそれといたしまして、いずれにいたしましてもそういった意味で私たちには非常に法人税、特に法人税についての不公平感が強いということを最後に指摘いたしまして、別の問題に入らしていただきます。  それでは、産業構造問題、構造調整問題についてでございます。  通産大臣にお伺いいたしたいのでございますけれども、現在の産業構造の問題について通産省はどういうふうにお取り組みでしょうか。その一般的な状況についてまず伺いたいんですが。
  324. 田村元

    国務大臣(田村元君) 円高等によりまして内外の経済環境が変化する中で我が国の構造調整は着実に進展しておると判断しております。具体的には、輸出は着実に減少しております。輸入は着実に増大しております。経済成長は、外需のマイナス分を内需が補う形で内需主導型に移行しつつあります。製造業を中心とした海外直接投資が大幅に増大いたしますとともに、製品輸入は大幅に増加いたしております。多くの製品分野で輸入品の浸透度が上昇いたしまして、国際水平分業が着実に進展をいたしております。製造業の高付加価値化が進展いたしますとともに、ニュービジネスの成長等によりましてサービス産業分野が拡大しつつあります等々の変化が見られるところでございます。このように構造調整は着実に進展しているところでございますけれども、対外不均衡というものは依然として巨額でございまして、引き続き構造調整を進めることが必要と思考いたしております。
  325. 大木正吾

    ○大木正吾君 私たちもあっちこっち回りまして、中部地区、さっき遷都問題で話題になりましたところあたりを見てきたんですが、トヨタ自動車さんなんかは二、三年後には相当にアメリカに出ていく、こういう話もありました。そういった中でむしろ構造調整が本格化いたしますのは、去年は百三十円、四十円ぐらいのときですか、同時に年末百二十円もありましたから相当ショックがございまして、最近、大臣がおっしゃったとおり、大分現地の意欲が高まっていることは認めるわけでございますけれども、現実の問題としてこれが、言えばいろんな問題点を引き起こすのは二年ないし三年後じゃないか、こういうふうに見ているわけでございますけれども、そういった場合に対して通産省が、特に労働省等と調整しながら、例えば産業の空洞化問題でありますとか、あるいは雇用のミスマッチの問題とか、そういった問題についてはどういうふうに対処されるお考えですか。
  326. 田村元

    国務大臣(田村元君) 急速な円高の進展等に見られます内外の経済事情の著しい変化によりまして、一部の業種におきましては事業規模の縮小、雇用問題の発生等の深刻な状況が発生いたしております。とともに、地域経済への大きな影響が生じております。御指摘のとおりであります。また、我が国企業の海外直接投資が急速に増大いたしますことによりまして、今後もこの傾向が進むと考えられますことから、国内雇用機会の確保等が極めて重要であると認識をいたしております。こうした地域雇用問題等に対処するために適切なマクロ経済の展開、そして新規事業分野の開拓等によりまして経済活力を維持し、あわせて雇用機会の創出に努めるとともに、雇用、関連中小企業及び地域経済への影響の軽減のために産業構造転換円滑化臨時措置法及び特定地域中小企業対策臨時措置法を柱とする事業転換、そして地域産業の活性化等、そういう支援等を進めてまいりたいと思っております。  御参考までに申し上げますと、技術革新によります雇用創出は、一九八〇年から二〇〇〇年の予測でございますけれども、新素材、マイクロエレクトロニクス、バイオテクノロジー等々で市場規模約二百三十兆円、雇用創出約百十七万人。それから、サービス産業の拡大による雇用創出が一九八四年から九五年までの予測で約四百四十万人。海外直接投資による雇用削減効果、これは逆に削減効果でございますが、八七年から九五年という予測で約六十万人弱というふうに計算をしております。これは八七年十二月のつい先般の「構造調整の進展と産業構造の展望」というところからはじいておりますし、技術革新による雇用創出は「二十一世紀産業社会の基本構想」八六年五月のこれによったものでございます。
  327. 大木正吾

    ○大木正吾君 大臣が忙しそうですから最後に大臣に一つだけ伺いますが、アメリカの包括貿易法案ですね、これについての見通し、現状、これはどうですか。
  328. 田村元

    国務大臣(田村元君) 非常に厳しいものがございます。御承知のように、下院の案は相当緩やかなものになっておるようでございますし、上院との間で協議会はなかなか厳しいものがあるようでございます。作業も相当急がれておるようでございますが、我が国としては保護主義というもの、報復や制裁というもの、保護主義というものが含まれておるということにおいては、その中身の濃淡を問わず絶対反対でございます。  そしてまた、アメリカの行政府も保護主義に非常に厳しい対応をしておるわけでございますので、私どもは事あるごとにアメリカの行政府を大いに督励いたしておりますし、EC諸国等ともいろいろと話し合って、お互いに力を合わせて保護主義、特に議会に強まりつつある保護主義に対して強く今後も働きかけていくというふうに考えております。  私どもはいかなる場合といえども保護主義を認めるわけにはまいりません。
  329. 大木正吾

    ○大木正吾君 大変力強い話がありましたので、その辺のことについてはぜひ今後の研さんをお願いしたいのですが、私が特にこの構造調整という問題について取り上げましたことは、結果的には冒頭総理から伺いました為替レート問題その他ですね、これが私たちが食べている米とか、あるいは着ている洋服、あるいは日本における住宅問題とか、そういった衣食住に関係するものは割合にアメリカのドルに比べて、大体二百二十円から二百二十二、三円ぐらいの値段でもって買わされたり使わされている、こういう状態ですね。そして為替レートの方は百二十七円か百二十八円、こういう状態があるわけです。  ところが、よく考えていきますと、為替レートの方は田村通産大臣が監督をされる分野が多いですね、結局。そういった、重厚長大もそうでしょうけれども、先端産業もそうでしょうけれども、その貿易絡みの中でもってレートが決まっていくわけでしょう。私たちは飯を、米を食っている、アメリカ人はパンを食っている、肉を食っている、魚を食っている、こういった問題でもってレートが決まるわけじゃないですね。主として貿易の絡みでもって決まるわけですね。  もう一つ決まる問題はやはり、ところが国民の生活に極めて関係の深い問題は、何だかんだ言いましても結果的には自分たち自身が日本の円でどれだけの生活できるかが大きな問題ですから、そういう関係でもって私たちはぜひこの為替レート問題、言えば構造調整問題については総理、税収がたくさん入ってきて結構だとか、そういうところも結構ですけれども、やはりここ四、五年の間に構造調整ということで相当に思い切ってやらないと、まさしく円が百円とかそういう状態になってしまうことがありますから、そういった面で総理のお考え方を少し聞かせていただけますか。
  330. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 先ほど通産大臣から技術革新による雇用増、サービスによる雇用増、あるいは海外へ企業が出ることによる雇用減等々の数字に基づくお話がございましたが、私どもも絶えずそんなことを念頭に置きながら今後の国内対策に努めてまいらなければならないというふうに基本的には思います。  そこで、構造調整の問題ということになりますと、今大木さんは、その前にいわゆる為替レートについて、短期的には実際問題彼我の金利差というようなことをよく聞いたりいたします。それから長期的にはやはりいわゆる経済のファンダメンタルズというようなことでございましょうが、それをさらに購買力平価の角度から恐らく御議論なさった。物事によって為替レートは違うじゃないかと。昭和二十三年ぐらいでございましたか、あのころは生糸は何ぼにする、三百六十円の前がもう一つありまして、生糸は何ぼにする、何は何ぼにするというふうな時代もあったようでございますが、三百六十円の固定相場からずっと続いて、そうしてフロートして今日になっておるわけでございますので、それに対応していくための産業構造調整というものを国内で、これは政府一体の責任、特に通商産業省が中心になってこれを行っていくということで、これに鋭意努めておるわけでございます。  したがって、いわゆる購買力平価から来る問題というのも、政策選択の場合にはもちろんこれをネグっていくべき問題じゃない。そういう購買力平価がそれぞれ違わないような産業構造というものに国内産業を導くような形で、これは農業問題ということが恐らく頭の中にもおありでございましょうけれども、それらについてもこれからいわば消費者が理解し得る価格における安定的供給というようなことを考えていかなきゃならぬだろう。それらを総合したものがこれからの産業構造の調整の問題点であって、引き続きこれには政府一体となって当たらなきゃならない課題だというふうに整理をいたしております。
  331. 大木正吾

    ○大木正吾君 為替レート問題と購買力平価問題について今総理の方から話がありました。私は、ぜひ構造調整問題について政府全体がしっかりした考え方を持ってやっていただきませんと、まさしく、言えば国内空洞化問題でありますとかミスマッチ問題がもっと激しくなりますから、そういう観点でお願いしたわけでございます。  そして、今の購買力平価と賃金の国際比較あるいは為替レート問題と相互に関連いたしまして、これは理論的にはなかなか話し合うものじゃないのでございますけれども、経済企画庁に伺った方がいいかと思いますが、円高差益の還元という問題につきましてどの程度に今は見ているか、同時に、これからどのような作業をされようとしているのか、それについて伺います。
  332. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 円高差益の問題は、もう何回となく御指摘もいただいておりますけれども、大木委員も既に御承知のとおり、私どもも鋭意この格差をなくしていくことに最大限の、また極力の努力を払っていかなければなるまい、こう思っておるわけでございます。  総合的に見ますると、大体六九・六%の還元がなされておる、大体七割近くなされておるという点が指摘されているわけでございますけれども、御案内のとおり三十兆円ぐらいの、まだまだその還元が完全に行き渡っておるということで満足しておられる方々は少ないということもこれまた現実の事実として認識しなければならない問題である、こう思っておるわけでございます。したがって、私どもとしては方向格差の是正であるとか、あるいは従来行われている慣行の是正であるとか、あるいはまたPRなどを通じまして、日本の市場のことの流布もまたPRもアメリカの市場に向かってしなければならぬ必要性を認めます。同時にまた、向こうからのどのようなマーケティングが日本にとって必要であるかということも、これまた一般の国民にわかりやすい形で知らしめなければなるまい、このように思っておるわけでございます。  ついでのことにはなりますけれども、購買力平価の問題で先ほどお話がございましたが、これは確かに種々の算出方法がございますがゆえに、各国の固有の生活様式のディファレンスがございますから、単純な比較は困難でございます。概して言うならば、円高が急速に進んだということがございまして、現在の段階では現実の為替レートとは乖離して我が国の物価水準はどうも国際的な物価水準よりも割高じゃないか、こう言われる指摘は免れません。  なおそれに付加して言わしていただくならば、住宅の問題についての割高感も強くございまして、これが実感との差を大きくしていることも否めない事実である、このように認識をしておるわけでございます。したがって、政府としましては、これまでの累次にわたる対策においては、三度にわたるガス料金の値下げ、電気料金の値下げもやりましたが、こういう円高差益の還元に努めてきている以上に、また内外格差等の問題は円高差益を還元するというだけでは解決でき得ない問題もあることを十分に認識をしながら、その意味で時間のかかる問題であることも十分これまた認識をしながら、今後とも公共料金についての差益の的確なる反映を図るとともに、経済構造の調整を進めていく中で、先ほど申し上げた規制の緩和を含めまして、輸入の促進、さらにPR、内外格差の縮小等に努めていくことに全力を挙げたいと、このように認識しておる次第でございます。
  333. 大木正吾

    ○大木正吾君 為替レートと購買力平価の差、大体九十円ぐらいのものがあるわけでございますけれども、でき得べくんば六九%までいったというものをせめて九〇%ぐらいまで企画庁長官の御指導によりましてしていただきますと、大分差が詰まってきますからね、理論的にはこれは余りそんなにぴっしりしたものじゃないんでしょうけれども、いずれにいたしましてもやっぱりそういった目でもって国民は物を見ていますから、そういった点で一段の努力をぜひお願いしておきたい、こう考えています。  労働大臣に伺いますが、雇用問題でございますけれども、最近の雇用情勢が後退しているということになっておりますが、特にこの中の常用工の問題を中心としまして現状の雇用状態について労働省の方からお答えいただけますか。
  334. 中村太郎

    国務大臣(中村太郎君) 御案内のとおり、高齢者の雇用機会というものは大変不足をいたしております。御承知のように今の失業率は二・六%なんですけれども、六十歳以上の高齢者の失業率が五・三%、求人倍率も〇・一〇と、こういう厳しい状況でございます。それにいたしましても、日本の社会がこれからも活力を維持するためには、何といいましても高齢者の雇用、就業の場を確保するということが大きな政策課題であると思っております。  労働省としましては、かねてからいろんな施策を施しておりますけれども、特に高齢者に対しましては、まずその前提となる六十歳定年の定着をさせる、その基盤に立って六十五歳ぐらいまでの雇用を延長するような方策を推進してまいりたい、これが第一点であります。  それから第二点としましては、高齢者の能力、適性に応じた職業能力の開発、向上を徹底的に敷衍してまいりたいと考えております。  なおまた、シルバー人材センターを来年度強化しますけれども、これらを活用いたしまして、臨時的あるいは短期的な雇用の場の確保ということ、さらに御案内のとおり来年度におきましては産業・地域・高齢者雇用プロジェクト、これを強力に推進してまいりまして、特に高齢者の雇用に対しましてはもろもろの助成、補助金制度がありますから、これらを最大限活用するなどいたしまして、いずれにいたしましても総合的な強力な施策を打ち立ててまいりたい、このように考えておる次第であります。
  335. 大木正吾

    ○大木正吾君 労働大臣は、現在労使関係でちょうど賃金が決まる時期に当たっておりますが、これについてもちろんお答えは、労使間で団体交渉で決める、こういうふうに返ってくるのかもしれませんが、政府側としてこれに対してはどういうような期待というか感触をお持ちですか。その辺について、答えにくいかもしれませんが、少し前向きな答えをいただけませんか。
  336. 中村太郎

    国務大臣(中村太郎君) 大木委員百も承知でございますけれども、産業の個々の賃金の決定というようなことは、これは私ももうばかの一つ覚えみたいに同じことばっかり言っているわけでございますけれども、労使間の自主的な判断によって決定されるということが建前でございますし、原則でもございますから、私どもとしましては、この問題につきましては、労使間で真剣に話し合いが行われまして、合理的かつ円満の中に最終決定がされますことを期待いたしておるわけでございます。  ただ、言えますことは、現状、働く人の生活の質の向上あるいは福祉の向上、さらにはまた内外から要請されておりまする内需主導によるところの経済の均衡ある発展、これに資するためにも、経済成長の成果というものを適切に賃金等に配分することは極めて大事なことだ、望ましいことであるというふうに承知をいたしております。
  337. 大木正吾

    ○大木正吾君 質問の最後になりますが、これも労働大臣に伺いますが、外国人労働者の問題でございますけれども、これについて一応資料はちょうだいしたわけでございますが、現況報告が多くございまして、今後の対策めいたものが割合に少ないといいますかスペースがないという形でもって、ただニュアンスといたしましては少しく厳しくやる、こういう話が書いてございます。  ただ、西ドイツ等では、むしろ相当厳しい法律などをつくって、外国人労働者についての受け入れ、あるいはそういった特にビザの違反等についても厳しいようでございますが、今後の外国人労働者問題について労働省は一体どのように対応されようとしているか、これについて伺わせてください。
  338. 中村太郎

    国務大臣(中村太郎君) 外国人労働者問題につきましては、目下検討のさなかでございます。労働省としましては、かねてから、日本の厳しい雇用情勢等の立場から申し上げまして、単純労働者は受け入れないということを原則として四十二年以降ずっと続けておるわけでございます。今の雇用情勢等を眺めましても、この大方針を変更するには私どもはちゅうちょをするわけでございます。  ただ、先ほど申し上げましたように、今、省内にありまする外国人労働者問題研究会で、各国のデータなども眺めながら真剣に論議を重ねておりまして、三月の下旬には大方その結論が得られるはずでございます。したがって、その結論を踏まえながら、さらには労使代表、学識経験者を踏まえました外国人労働者問題調査会を発足させまして、その中で多角的なあるいは多様な角度からの総合検討を行いたいというふうに考えておるわけでございまして、労働省としましては、今かくあるべき方向だというところまでいっていませんことをおわびいたしたいと思います。
  339. 大木正吾

    ○大木正吾君 終わります。
  340. 原文兵衛

    委員長原文兵衛君) 以上で大木正吾君の質疑は終了いたしました。(拍手)  明日は午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時九分散会