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国務大臣(
宮澤喜一君)
赤字公債の借りかえにつきましてお尋ねがございましたが、
政府といたしまして、ただいま
総理の言われましたように、
昭和六十五年度に
特例公債依存の体質から脱却しようということで、この
目標はやや現実性を高めてまいった、ぜひ実現をいたしたいと考えておるところでございますが、と同時に、
公債依存度も同時に引き下げてまいりたいと思っております。
ところで、この
特例例
公債の
償還の方法でございますが、現在借りかえをしておるいわゆる六十年
償還ルールをやって、おりますのは、いわばこれはやむを得ず
財政の事情からやっておることでございます。いわば、片っ方で新しく
特例公債を
発行いたしておりますので、借りかえでなく現金
償還をいたしますと、借金をするために借金をしているというような感じになってまいりますので、
新規特例公債を
発行しております間はどうもこの方法はやむを得ない。ただ、おっしゃいますように、将来に向けましてはできるだけ早く
早期償還に努めてまいらなければならない。これは、問題点は御
指摘のとおりだと思っておりますけれども、なかなか
財政の事情がそのようにまいりませんで、現在やむを得ず六十年ルールで
償還をいたしておるということでございます。将来としては、なるべく早く
早期償還に努めてまいりたいと思います。
それから、
税制改革に関します基本的な
考え方はただいま
総理大臣がお話しになられたとおりでございますが、結局、よく言われますように、今の時点におきまして、
我が国では生産年齢人口が大体六・六人に一人老人をしょっておるわけでございますが、
昭和七十五年になりますと四人で一人をしょわなければならない、八十五年になりますと三人で一人をしょわなければならないということがほぼ明らかでございますので、現在の
税制をそのままにいたしておきますと、現在ただいま給与に対する
源泉所得税及び
住民税は大体GNPの四・八%であると言われておりますが、このままの状態でいきますと、七十五年にはそれが七、八%になります。八十五年には一〇%ないし一三%ということになりまして、これは到底
勤労者として
負担できないような大きないわば
源泉所得税の
負担になる。
そういうことを考えますと、ただいまのような人口構成比から考えましても、
我が国のように
所得水準が高く、かつ
所得格差の少ない社会では、そのときに備えまして、なるべくこのような社会の
負担は広く薄くみんなでしょっていくような
税制を今から考えておくべきではないか。これは決して遠い将来のことではございませんで、二〇〇〇年までわずか十三年でございますから、今からこういう
制度をつくっておくことがどうしても必要ではないだろうか。そういう意味で、今回、
所得、
消費、
資産との間で
均衡のとれた
税制改正を考えさしていただきたい。
今という時点は、シャウプ
税制から考えますとほぼ四十年たっておりまして、それなりに
改正を必要とする時点に来ておると思いますが、将来を展望いたしますと十三年でまた二十一世紀ということでございまして、ちょうどそういう今の時点で抜本
改正を考えるならば、将来をも展望したものにいたしたいと考えるわけでございます。
さて次に、給与
所得税の軽減について、
人的控除あるいは
給与所得控除をもっと引き上げる形で行うべきではないかというお尋ねでございました。
それは確かに一つの方法でございますが、
我が国の場合には、御承知のように、
課税最低限はかなり高いところへ来ております。諸外国に比べましても非常に高い方の一つでございますから、この際の軽減の目的は、そのような
人的控除を上げることよりはむしろ
税率の累進度を緩めることではないか。すなわち、現在一番この
所得税で重税感が強いのは、ちょっと御
指摘もありましたが、子供の教育費であるとかあるいは
住宅費であるとか、そのような中堅の下あたりの
サラリーマンのところに一番重税感が強い。しかも、給与が上がっていきますと、すぐ上の累進の刻みにかかる。ここのところを緩和することの方が今一番
減税を必要としている層に対する有効な対策ではないかと私は考えておりまして、昨年も、
国会で成立をさせていただきました税法
改正によりまして、
所得税で一兆五千四百億円、
住民税はことしになりますが、合わせますと二兆円程度の
減税をさせていただいておりますが、今後に向かいましても、できるだけ累進構造の緩和、
累進税率の刻みを少なくするということで対処することが大事ではないかというふうに私どもとしては考えております。
それから、税収動向についてお話がございまして、
総理もお触れになりましたが、昨年あたり見ておりますと、租税弾性値が二・一という異常な数字になりました。また、六十二年度補正後も一・八三という、これはどうも数字としては非常に異常でございまして、やはり
土地の上昇であるとか株が高くなったとかいう意味での一過性の
所得、あるいは
有価証券取引税でもそうでございますが、どうもそういう要素が多いのではないか。したがって、同じことが今後繰り返されると考えることは適当でない。
ただ、現実には経済運営がかなり正常化し、好転しておりますので、今度は違った意味での正常な税収というものが多少は期待できるかとは思っておりますけれども、それは昨年までのものとはかなり性格の違ったものであろう。万一、
自然増収が出るということになってまいりました場合には、
政府としては
特例公債の
発行をなお予定しておりますので、これを減額をすべきものだと考えております。
自然増収がありますところへ
利子を払う
赤字公債を余計に
発行するということはこれは誤りでございますから、そういうふうに考えたい。そのような情勢になりましたらそういうふうにすべきものと考えておりまして、いずれにいたしましても、
自然増収は一過性のものでございますので、これをもって恒久
減税の
財源にすることはいかがなものであろうかというふうに考えております。
それから、
居住用財産の
買いかえ
特例は、御承知のように今度三千万円の特別控除をいたしまして
分離課税をすることになって、
軽減税率によって課税をすることになっておるわけでありますが、その際、二
世代以上にわたって居住の用に供し、かつまた御自分が住んでおられる、長期にわたって住まわれている家につきましては、それを手放されるということはよほどの事情がおありであろう、強い経済外的な何かの
理由であろうというふうに考えられますので、その場合には、この
特例を残しておいたらどうかということで御提案をいたしておるわけでございます。
それからもう一つ、
住宅取得促進税制の
適用対象者の
所得要件を千万円から三千万円に上げました。それは金持ち優遇ではないかというようなお尋ねであったと思いますが、
我が国の給与の体系が、会社に勤めておりますと大体退職時に向かってずっと給与の水準が上がります。そのときに
住宅を買うといったような、定年間際にそういうことをされる方が多いものでございますから、どうも千万円ではなかなかお気の毒な場合がある。三千万円というのは高いではないかということは、しかしこの方々も
累進税率をずっと払ってこられた方でありますし、またこの
住宅取得の
促進ということが内需
拡大ということにも密接に
関係しておりますので、三千万円まで広げますことが社会正義に反するというようなことではないのではないかというのが私どもの判断でございます。
それから、
たばこ消費税の
特例を
延長したことについておしかりがございまして、これはいかにもやらずに済みましたら済ませるべきことでございますけれども、御承知のように、
地方財政で補助金等の
整理合理化をいたしましたために、その手当てをしなければならないという問題がございまして、
税制調査会におきましても、ともかく新しい
間接税あるいは
税制改正との
関連で一年延ばすことは適当であるという判断をしていただきましたので、
昭和六十四年三月三十一日まで
延長することにいたしたのでございますが、この点はどうぞそのような事情であることの御理解をお願いいたしたいと存じます。
それから、
相続税につきまして、確かに
土地価格が上昇しておりますので、非常にあちこちで困難な事態が起こっておることをよく存じておりますが、ただ御
指摘のように、例えば六十坪なら六十坪の
土地というものはこれはいわば課税の外にする、基礎控除と申しますか特別控除と申しますか、という
考え方はどうだとおっしゃいますと、やはり東京における六十坪と過疎地における六十坪では非常な
金額の違いがございますので、どうもそういうわけにもまいらない。
結局、
相続税は、申すまでもないことでございますが、従量税ではなくて従価税であるということにどうもならざるを得ないのではないか。ただ、現実には都会地で親からもらった猫の額ほどの住んでおります
土地、実際非常に大きな課税になるということはこれはお気の毒でございますから、二百平方メートルまでは住居用あるいは事業用に従いまして三〇%ないし四〇%の減額をいたしております。この
考え方は一部
鈴木議員の御
指摘になりましたような
考え方を採用しているところでございます。
以上でございます。(
拍手)
〔
国務大臣中島源太郎君
登壇、
拍手〕