運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1988-01-25 第112回国会 参議院 本会議 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年一月二十五日(月曜日)     開 会 式  午前十時五十八分 参議院議長衆議院参議院の副議長常任委員長特別委員長参議院調査会長衆議院参議院議員内閣総理大臣その他の国務大臣最高裁判所長官及び会計検査院長は、式場に入り、所定の位置に着いた。  午前十一時 皇太子明仁親王殿下は、衆議院議長の前行で式場に入られ、お席に着かれた。    〔一同敬礼〕  午前十一時一分 衆議院議長原健三郎君は、式場の中央に進み、次の式辞を述べた。    式 辞   天皇陛下の御名代として   皇太子明仁親王殿下の御臨席をいただき、第百十二回国会開会式を行うにあたり、衆議院及び参議院を代表して、式辞を申し述べます。   現下、わが国をめぐる内外の諸情勢はきわめて多端であります。   このときにあたり、われわれは、わが国の現状と国際社会における立場を深く認識し、外に対しては、諸外国との相互理解協力をいつそう深め、世界の平和と繁栄貢献するとともに、内にあつては、政治経済各般にわたり、適切な施策を強力に推進して、国民生活安定向上をはかり、もつて国連の隆昌を期さなければなりません。   ここに、開会式にあたり、われわれに負荷された重大な使命にかんがみ、日本国憲法の精神を体し、おのおの最善をつくしてその任務を遂行し、もつて国民の委託にこたえようとするものであります。  次いで、天皇陛下の次のおことばを      皇太子明仁親王殿下から賜った。    おことば   本日、第百十二回国会開会式に当たり、この席に親しく臨めないことを、誠に残念に思います。   国会が、永年にわたり、国民生活安定向上世界の平和と繁栄のため、たゆみない努力を続けていることは、深く多とするところであります。   国会が、当面する内外課題に対処し、国権の最高機関として、その使命を遺憾なく果たし、国民の信託にこたえることを切に望みます。    〔一同敬礼〕  衆議院議長は、おことば書をお受けした。  午前十一時五分 皇太子明仁親王殿下は、参議院議長の前行で式場を出られた。  次いで、一同式場を出た。    午前十一時六分式を終わる      ─────・───── 昭和六十三年一月二十五日(月曜日)    午後三時二分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第二号   昭和六十三年一月二十五日    午後三時開議  第一 国務大臣演説に関する件     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、新議員の紹介  一、議員辞職の件  以下 議事日程のとおり      ─────・─────
  2. 藤田正明

    議長藤田正明君) これより会議を開きます。  この際、新たに議席に着かれました議員を御紹介いたします。  議席第五十六番、選挙区選出議員、大阪府選出坪井一宇君。    〔坪井一宇君起立、拍手
  3. 藤田正明

    議長藤田正明君) 議長は、本院規則第三十条により、坪井一宇君を地方行政委員に指名いたします。      ─────・─────
  4. 藤田正明

    議長藤田正明君) この際、お諮りいたします。  去る十九日、田代富士男君から議員辞職願が提出されました。  辞表参事に朗読させます。    〔参事朗読〕   昭和六三年一月一八日           参議院議員 田代富士男    参議院議長 藤田 正明殿     辞 表   私は、参議院議員を辞職いたしたく存じますので、参議院規則第一九〇条に基づき辞表を提出いたします。
  5. 藤田正明

    議長藤田正明君) 田代富士男君の議員辞職を許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 藤田正明

    議長藤田正明君) 御異議ないと認めます。  よって、許可することに決しました。      ─────・─────
  7. 藤田正明

    議長藤田正明君) 日程第一 国務大臣演説に関する件  内閣総理大臣から施政方針に関し、外務大臣から外交に関し、大蔵大臣から財政に関し、中尾国務大臣から経済に関し、それぞれ発言を求められております。これより順次発言を許します。竹下内閣総理大臣。    〔国務大臣竹下登君登壇、拍手
  8. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 第百十二回国会の再開に当たり、内外の重要な政策課題について、政府の施政の方針を申し述べ、国民の皆様の御理解と御協力を得たいと存じます。  私は、このたび、米国及びカナダを訪問して両国首脳と会談し、胸襟を開いた話し合いを行ってまいりました。また、昨年末、マニラにおいて開催されたASEAN諸国首脳会談に出席いたしました。これらの会談を通じ、国際社会における我が国への期待とその役割の大きさをこの肌で強く実感するとともに、内閣総理大臣就任後初の所信表明演説で申し上げたとおり、「世界に貢献する日本」との姿勢を確立し、日本の豊かさと活力を世界に生かしていかなければならないとの思いをさらに深くいたした次第であります。  今、世界は大きな変動のただ中にあります。長らく米国の圧倒的経済力によって支えられてきた国際経済の枠組みは変貌を遂げつつあり、今や日本及び西欧が米国と力を合わせて世界経済を支えていく時代となっております。また、戦略核兵器通常兵器の削減、地域紛争の解決など、平和、軍縮への道程はなおはるかでありますが、昨年末、米ソのINF全廃合意が実現し、核軍縮に向けて第一歩がしるされるなど、国際政治面でも注目すべき動きが見られております。このような世界的動向の中で、我が国の責任は、かつてなく重いものになってきていると言えましょう。我が国としては、第二の経済大国として、世界の繁栄に資するような経済秩序の構築、世界の平和の推進のため、最大限の貢献をしていくことが必要であります。  一方、国内では、物の豊かさだけでなく心の豊かさを重視し、これまでの経済発展の成果を真の豊かさへと結びつけていかなければなりません。私が「ふるさと創生」を唱えてまいりましたのも、このような考えに基づくものであります。  私は、このような内外課題に取り組むことは、言いかえれば「調和と活力」を目指すことではないかと考えます。日本世界の調和を図り、国内におけるさまざまな不均衡や不公平の是正に努め、活力に満ちた社会を築くこと、これこそ今政治に強く求められている課題であります。その際、私は、当面直ちに対応すべき政策課題、また、各界各層の英知を集め長期的観点に立って検討していくべき課題を整理しつつ、これらの問題に対処し、国民の皆様の負託にこたえていく決意であります。  明治二十三年の議会制度発足以来、あとわずかで百年に達しようとしております。この間、我が国民主主義は、多くの先人や国民の御努力により、幾多の困難を乗り越えて今日の発展を見るに至りました。当面の最大の課題である衆議院議員の定数是正問題につきましては、衆議院本会議の決議に沿って各党間で十分論議を尽くしていただき、その論議を踏まえながら政府としても最大限努力をしてまいります。  また、私は、政治倫理の確立を図ることは、政治に対する国民の信頼を得るための大前提であると心得、清潔な政治と規律ある行政の確立に努めてまいります。  以上の考え方に基づき、国政の各分野について、基本的な方針を申し述べます。  今日の国際環境は、東西関係の一層の安定化地域紛争の解決、さらには、世界経済持続的成長開発途上国の安定と発展など多くの課題を抱え、なお、厳しく流動的であります。このような環境の中で、我が国は、国際秩序の主要な担い手として、世界的な視野に立ち、より大きな責任と役割を積極的に果たしていくことが重要であります。特に、平和国家としての立場を堅持する我が国としては、政治経済文化等の面でより大きく寄与しなければなりません。  今般の訪米に当たってレーガン大統領を初め各界指導者と会談した際も、私は、我が国世界的視野においてみずからにふさわしい形で責任と役割を果たしつつあることを率直に申し述べてまいりました。私と大統領は、日米両国が力を合わせ、世界の平和と繁栄のため努力していくとともに、二国間に生ずる問題については、共同作業上り解決を図るとの基本姿勢を相互に確認をいたしました。これらを通じ、我が国外交の基軸である日米関係のさらなる発展の基礎を築き得たと考えております。  また、東西関係が全体として一層安定的なものとなるよう、INF条約に続き、戦略核兵器の大幅かつ均衡のとれた削減、地域紛争等の諸懸案の解決に向け、米ソ間の建設的対話がさらに進展することを期待するとともに、このための米国の外交努力を強く支援してまいります。本年五月から開催される第三回国連軍縮特別総会などの場においても、実効的な軍縮努力が一層増進されるよう訴えていく所存であります。さらに、イラン・イラク紛争、ペルシャ湾の安全航行の問題及び中東和平問題、あるいはカンボジア問題等早期解決に向けた努力を強化していくとともに、国連安全保障理事会の非常任理事国として、国連を通ずる協力などを積極的に進めてまいります。特に、国連等平和維持活動に対する非軍事的貢献を一層強化拡充するため鋭意努力していく考えであります。  国際テロは、民主社会に対する挑戦であり断じて許すべからざるものであります。昨年十一月発生した大韓航空機事件は、まことに遺憾であり、政府としては、テロ防止のための国際協力を積極的に推進してまいります。  我が国がさまざまな分野で国際社会に貢献していくに際し、まず、みずからの平和と安全を確保する努力が肝要であります。政府としては、日米安全保障体制を堅持しつつ、その円滑にして効果的な運用を確保するよう努力するとともに、平和憲法のもと、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とならず、非核三原則と文民統制を堅持し、節度ある防衛力の整備を進めてまいります。また、日米両国を取り巻く最近の経済情勢の一層の変化により、在日米軍経費が著しく圧迫されている事態にかんがみ、今後在日米軍従業員の雇用の安定を図るためにも日本側負担の一層の増大を図っていく所存であり、このため、在日米軍労務費特別協定の改正について、今国会において御審議をお願いする考えであります。  経済面での協力に関しては、世界経済秩序に大きな責任を有する我が国に対し、積極的な貢献を求める声が国際的に高まっております。  自由貿易体制を維持しつつ、開かれた日本市場を形成し、これを世界に提供していくことは、我が国世界に貢献するために極めて重要なことであり、また、貿易立国である我が国の発展の道であります。このため、政府としては、経済構造調整を積極的に進め、その成果を上げつつありますが、さらに、ガットウルグアイラウンド積極的推進に努めるとともに、我が国における内需主導型経済成長の定着、輸入の拡大、市場アクセスの改善、規制の緩和等を積極的に進め、対外不均衡の是正に全力を傾け、我が国経済世界経済と一層調和のとれたものとするよう施策を講じていく考えであります。  なお、農産物貿易については、我が国農業の健全な発展との調和を図りつつ、ガットウルグアイラウンドにおける交渉との関連を十分考慮し、適切に対処してまいります。  また、政府としては、今後とも、経済協力に重点的に配慮し、第三次中期目標について極力その早期達成を図るなど政府開発援助を拡充するとともに、開発途上国への資金還流措置の円滑な実施に努めてまいります。  我が国の果たすべき役割は、これら政治経済面だけには限りません。科学技術、教育、文化、スポーツなどあらゆる分野での国際交流を促進するとともに、地球環境の保全に努力してまいります。また、地球が人類共通ふるさとであるとの思いを込め、日本人一人一人の日常生活に根差した、地に足のついた国際化を進めるため、草の根外交を活発化することが必要であります。このため、海外からの留学生や若手研究者受け入れ体制の充実を図るとともに、外国青年招致事業の拡大、世界青年の船の事業の実施などを行うことといたしております。  私は、このような考えのもと、我が国が西側の一員であり、また同時にアジア太平洋地域の一国であるとの基本的立場を踏まえた外交を展開していく所存であります。  本年六月には、トロント・サミットが開催される予定となっておりますが、私は、同サミットにおいて、米国を初めとする西側先進諸国が結束をさらに強化するとともに、世界経済の調和ある発展のため政策協調を一層進めるよう最善を尽くしてまいります。このたびのカナダ訪問においても、マルルーニー首相との会談でこの目的に向けての協力を確認するとともに、日加関係の一層の推進につき合意したところであります。  西欧諸国は、北米諸国我が国とともに世界の平和と繁栄に対する大きな責任を担っており、これら諸国との協調は我が国外交の重要な柱であります。私は、西欧諸国の対日関心が高まっている今こそ、政治経済、文化などのあらゆる面において日欧協力関係に一層の厚みと幅を加えるよう努めてまいります。  我が国世界的視点から国際的貢献を行っていくに当たり、アジア太平洋地域重要性はますます増大しております。私は、内閣総理大臣就任後初の外国訪問としてフィリピンを訪れ、ASEAN首脳との会議に出席し、二十億ドルを下回らない額のASEAN日本開発ファンドの供与を表明し、対ASEAN協力への積極的姿勢を示したところであります。  また、我が国は、日韓友好協力関係を一層発展させるとともに、朝鮮半島をめぐる緊張緩和のための環境づくりに向けてできる限りの協力を行ってまいります。そのため、本年二月に就任される盧泰愚次期韓国大統領とも緊密に協力してまいります。また、秋のソウル・オリンピックが米国、中国、ソ連を初めとする世界の多数の国々の参加を得て開催される見通しであることはまことに喜ばしい限りであり、我が国としてもオリンピックの成功のため協力を惜しまない所存であります。  中国との間で良好かつ長期安定的な関係を維持発展させることは、我が国外交の主要な柱の一つであり、政府は、引き続き日中共同声明など両国間の諸原則を踏まえ、友好関係の一層の強化を図ってまいります。特に、本年は日中平和友好条約締結十周年を迎える年であり、両国首脳間の対話を実現し、相互理解相互信頼の増進を図る所存であります。  また、豪州、ニュージーランドを初めとする大洋州諸国との友好協力関係をさらに強化してまいります。  ソ連との間では、北方領土問題を解決して平和条約を締結することにより、真の相互理解に基づく安定的な関係を確立することが一貫した基本方針であり、政府は、引き続き、この方針にのっとって、日ソ関係を打開し、善隣友好関係を確立するため努力する所存であります。  我が国経済は、国内需要が堅調に推移し、企業収益増益傾向にあり、雇用情勢も改善するなど、拡大局面にあります。一方、世界経済は、ここのところ緩やかながらも息の長い景気拡大が続いておりますが、米国の財政赤字日本を含む主要国の対外不均衡、開発途上国累積債務などの問題が数多く残されております。このような状況の中で、米国において財政赤字削減等努力が続けられていることを評価するとともに、我が国としても引き続き主要国間の協調的な経済政策推進を図ってまいります。また、物価の安定を基礎としつつ内需を中心とした景気の着実な拡大を図り、持続的な安定成長を達成するため、引き続き適切かつ機動的な経済運営に努めることといたしております。  このため、昭和六十三年度予算においては、一般公共事業費について、昭和六十二年度当初予算に対し二〇%増という極めて高い水準を確保し、内外からの内需拡大の要請にこたえました。  為替相場の安定については、昨年末のいわゆるG7声明に基づいて主要国間の為替市場における協力が実施されておりますが、さきの訪米に際して、私とレーガン大統領は、これ以上のドルの下落は世界経済の成長にとり逆効果であるという認識を改めて共同発表において明らかにしたところであります。政府としては、今後とも政策協調為替市場における協力を通じ、為替相場の安定を図ってまいります。  また、我が国経済成長の成果を国民生活の向上に結びつけていくとの観点から、円高差益の還元もさらに進めてまいります。  円高等内外経済情勢の著しい変化の中で、一部の業種や地域においては、依然として景況は厳しく、雇用情勢も深刻であります。  政府としては、産業構造の転換が円滑に進むよう引き続き諸施策を講じていくとともに、厳しい環境変化に直面している中小企業がこれに積極的に対応し、健全な発展を遂げられるよう、新分野開拓推進を初め、構造転換対策等を強力に進めてまいります。  産業構造の転換や労働力高齢化等の進展の中で、雇用問題に適切に対処するため「産業・地域高齢者雇用プロジェクト」などの対策を強力に推進し、また、労働時間の短縮、労働者健康づくりなども進めてまいります。  農業については、内外の厳しい情勢に対応して足腰の強い、産業として自立し得る農業を確立するとともに、与えられた国土条件などの制約のもとで最大限生産性の向上を図り、国民の皆様の納得を得られる価格水準で食糧の安定供給が行われるよう、農政審議会報告を踏まえて、すぐれた担い手の確保、生産基盤の整備、農業技術の向上など各般にわたる施策の充実強化に努めるほか、農村地域活性化にも意を用いてまいります。  また、エネルギーの安定供給の確保を図るための施策についても、着実に推進してまいります。  国民生活質的充実地域社会活性化国際社会への貢献、経済摩擦の解消などの課題に取り組み、二十一世紀に向けて我が国経済の一層の発展を期していくためには、内外経済の展望の上に立って経済運営の中長期的な方針を明らかにし、国民や企業に自信と活力を与えていくことが必要であります。こうした観点から、私は、昨年十一月、経済構造の調整を一層強力に推進し、内需主導型の経済成長への転換、定着を図ることを基本とした新しい経済計画の策定について経済審議会に諮問したところであります。今後、同審議会での審議を踏まえ、経済運営の中長期的なあり方を早急に明らかにしてまいりたいと考えます。  財政については、次の世代に過剰な負担を残さないよう、一日も早くその対応力を回復していく必要があります。このため、昭和六十三年度予算編成に当たっては、歳出面において特に経常経費を厳しく抑制し、特例公債発行額は前年度当初予定額に比べ一兆八千三百億円減額し、公債依存度を一五・六%に引き下げることができました。このように、昭和六十三年度予算では、財政改革を着実に前進させるとともに、これまでの行財政改革の成果であるNTT株売り払い収入の活用などにより内外内需拡大の要請にこたえることができたと考えております。  しかし、昭和六十三年度末の公債発行残高は百五十九兆円にも達する見込みであり、財政事情は依然として厳しいものとなっております。このため、気持ちを緩めることなく、今後とも財政改革を強力に推進してまいります。  また、地方財政についても、所要の措置を講じ、その円滑な運営を期することとしております。  行政改革は、行政を取り巻く内外の環境の変化に的確に対応し、二十一世紀を展望した活力ある経済社会を構築していくため、避けて通ることのできない課題であります。このため、行政改革を引き続き強力に推進することとし、昨年末に、行政組織簡素合理化国家公務員定員縮減など昭和六十三年度に実施する事項を中心とした改革の方針を取りまとめたところであります。政府としては、この方針の着実な具体化を図ってまいります。さらに、行政機関等において国民の皆様と接触する職員の一人一人に行政サービスの向上に対する意識を徹底し、仕事のやり方を総点検し、国民の立場に立った親切な行政、真心のこもった行政を実現するため、「さわやか行政サービス運動」を展開していくこととしております。  また、地方公共団体自主性自立性の強化を図るとともに、地方公共団体における自主的、総合的な行政改革推進を図ってまいります。  今後の高齢化社会の到来、経済社会の一層の国際化を考えるとき、抜本的な税制改革の実現は、我が国にとって最重要課題の一つであり、国民の税に対する不公平感を払拭し、所得、消費、資産等の間で均衡がとれた安定的な税体系を早期に構築することが必要であります。  このような認識のもと、現在、税制調査会において税制の抜本的改革の全体像について精力的な御審議をお願いしているところであり、私は、このような場を通じ、国民各界各層の御意見を十分に伺いながら、抜本的税制改革について国民の納得が得られるような成案を取りまとめるとともに、その実現に向かって渾身の努力を傾けてまいる所存であります。  豊かな自然や住みよい都市環境地域における人と人との心の通い合い、住民の自発性に基づく町づくり村づくり地域づくりのための活動、そして家族の団らん、これらは私が目指す政治の一つの原点とも言うべきものであります。その意味で、各地方の活性化を促進するためには、ふるさとを育て、守っていく国民一人一人の活動にまつところが大きいと考えます。一方、政府としてもこれらの活動がよりよく発揮されていくよう、都市環境の整備、良質な住宅の供給や地域づくりへの支援、自然環境の保全など均衡ある国土づくりのための諸施策を積極的に講じてまいります。また、昭和六十五年に開催される予定の国際花と緑の博覧会について、諸般の準備を進めてまいります。  昨今の大都市等における地価高騰の抑制については、臨時行政改革推進審議会答申等を踏まえ、緊急土地対策要綱を定めたところであり、現在、土地取引適正化、住宅・宅地開発の促進など、この対策の着実な推進に努めているところであります。さらに、昭和六十三年度税制改正において、居住用資産の買いかえ特例の原則廃止を初めとする土地譲渡益課税見直し等を行うことにより、地価高騰の波及を防止し、また、土地供給の促進を図るなど地価対策に資することといたしております。幸い、東京の都心部等では地価上昇鎮静化傾向が見られるところでありますが、さらに、臨時行政改革推進審議会において、土地問題等に関し基本的かつ広範な検討を行っていただいているところであります。また、国会においても特別委員会が設けられ精力的な御審議がなされ、決議等も出されております。政府としましては、これら各方面での論議を踏まえ、国民的なコンセンサスの形成に努めることにより、引き続き、適正かつ合理的な土地利用の実現、適正な地価の形成に努力してまいります。  地価上昇の原因の一つは、東京への人口や諸機能の一極集中であります。政府としては、第四次全国総合開発計画の着実な推進等を通じ、都市・産業機能の地方への分散により、東京への過剰な依存からの脱却を図るよう努めてまいります。  また、この一環として、政府機関等地方移転推進していくこととしており、そのため、今般、移転方針について決定を行ったところであります。これに基づき、現在、いわゆる一省庁一機関移転の実現に取り組んでいるところであります。  第四次全国総合開発計画は、地域の創意と工夫を基軸とした地域づくりを基本とし、そのための基盤となる交通、情報・通信体系の整備と交流促進のためのソフト面の施策の拡充を内容とする交流ネットワーク構想推進により、多極分散型の国土の形成を図ることとしており、私が目指そうとする「ふるさと創生」と国土づくり考え方の基本を同じくするものであります。本年は、この四全総推進の一年目に当たり、国はもとより地方公共団体民間団体など多様な主体の参加、協力を得ながら、四全総で示された諸施策を総合的かつ強力に推進することとし、その一環として、関連法案の準備も進めているところであります。  また、北海道の総合開発及び沖縄の振興開発のための諸施策を引き続き積極的に推進してまいります。  さらに、広く国民に不安を与えるテロ・ゲリラ事件について、国民の皆様方の御協力を得てその防圧に努めるなど法秩序の維持、犯罪の防圧、検挙に努めるとともに、事故や災害に強い国土づくりを進め、人を信じ、まじめに働いている者が報われる社会、国民が安心して生活することができるような社会づくりに努めてまいります。  日本は、世界で一、二を争う長寿国となり、まさに人生八十年時代を迎えております。本格的な長寿社会の到来を控え、公平で安定した社会保障制度の確立を図るため、国民健康保険制度の安定強化のための見直しを行うとともに、医療保険、公的年金について、制度の一元化に向け一層の努力を傾注いたします。また、より豊かな老後の生活のため、企業年金の育成、普及を図ってまいります。国民一人一人が健やかに生きがいを持って安心して暮らすことができるよう、健康づくり対策を推進するとともに、老人保健事業の充実、在宅保健福祉サービスの拡充や特別養護老人ホームなどの整備などを進めてまいります。また、がん対策、エイズ対策を初め難病の克服に万全の努力を傾注していくほか、精神保健対策、精神障害者の社会復帰の促進など心の健康づくりを進めてまいります。  障害者、母子家庭等社会的に弱い立場にある方々へのきめ細やかな配慮を行うとともに、婦人が十分に能力を発揮し、男性と平等な立場で社会の発展に貢献できるよう諸施策を総合的かつ積極的に講じてまいります。  教育改革の推進は、二十一世紀に向けて我が国が創造的で活力ある文化国家として発展し、世界に貢献していく基盤を築くために、全力で取り組んでいかなければならない国政の重要課題であります。  私は、今の教育に最も強く求められているのは、日本人としての自覚に立って国際社会の中でたくましく活動できる個性的で心豊かな青少年を育成することであると考えます。そのため、臨時教育審議会の諸提言を受け、子供たち一人一人の個性を生かした創造的で多様な教育の実現を目指し、引き続き、道徳教育の充実、教員の資質の向上、大学入試制度の改革などを着実に実行に移していくこととしており、そのための法案の提出を含め諸般の施策を進めてまいります。  青少年の健全な育成を図ることは、国の重要な責務であります。このため、学校のみならず、家庭や地域社会における教育を充実させるとともに、青少年が野外で自然に親しむ機会の拡大、青少年による郷土理解や奉仕活動など地域における活動の促進に努めてまいります。生涯学習の振興と学術、文化の発展のための施策も充実させてまいります。  また、健康で充実した生活に対する国民の関心が高まっているところであり、政府としても、各地域で人々が生涯にわたりスポーツを続けることができるよう、施策を進めてまいります。特に、本年はオリンピックの年であり、国際的な競技会において我が国選手が活躍できるよう、計画的に競技力向上のための施策の充実に努めてまいります。  昨年、利根川進博士がノーベル医学・生理学賞を受賞されたことは、日本人全体にとって大変喜ばしいことでありました。政府としても学術研究の一層の推進に努めてまいります。また、超電導など新たな技術開発の地平線が開かれつつある中で、未来を開くかぎとなるような基礎的、創造的な科学技術の研究開発、さらには、この面での国際協力を積極的に推進してまいります。  以上、内政外交の重要政策について所信を申し述べました。  激しく変化する時代の流れの中で、私は、今日の繁栄を築かれた先人のひたむきな御努力に感謝し、賢明で勤勉な国民の皆様に心から敬意を表したいと存じます。そして、常に初心を忘れることなく、物心両面で調和のとれた日本、真の豊かさを実感できる開かれた社会の建設を目指して、さらに力強く前進してまいりたいと考えております。  我が国が平和に徹し、世界に貢献する姿勢を打ち出していくに当たっては、時には痛みを伴うことも避けられないと思います。その意味で、内政と外交はまさに一体であります。解決すべき数多くの課題に対しては、国民の合意を求めながら、信念と責任を持って、誠実に忍耐強く取り組んでいきたいと念願しております。  私は、国民すべての幸せと繁栄を心から祈りつつ、「調和と活力」の政治を目指し、これからも全身全霊を傾けて邁進する決意であります。  国民の皆様の御理解と御協力を重ねてお願いする次第であります。(拍手)     ─────────────
  9. 藤田正明

    議長藤田正明君) 宇野外務大臣。    〔国務大臣宇野宗佑君登壇、拍手
  10. 宇野宗佑

    国務大臣(宇野宗佑君) 第百十二回国会が再開されるに当たり、我が国外交基本方針につき所信を申し述べます。  現下の国際情勢は、さきの米ソ首脳会談、特に中距離核戦力全廃条約の署名に見られるように、東西間において歓迎すべき動きがありますが、世界各地ではなお紛争や混乱が続いており、全体として依然不安定な状況にあります。  世界経済を見ましても、先進諸国が緩やかながら成長を持続させていることは明るい要因でありますが、為替・株式市場の不安定、経常収支の大幅不均衡、保護主義圧力の増大、累積債務問題などの深刻な問題を抱えており、その先行きは楽観を許しません。  このような流動する国際社会の中にあって、我が国は今や世界の動向に大きなかかわりを持つ重要なメンバーとなるに至っております。資源に乏しく、世界全体の三百六十分の一ほどの狭小な領土と、世界の約四十分の一の人口しかない我が国が、世界の一割を優に超えるGNPを有し、一人当たり国民所得では世界最高の水準に達しているのであります。資源小国の我が国においては、一塊の資源をもむだにせず、一滴の石油をもおろそかにせず、ひたすら技術革新と経営改善に当たって今日に至ったのであります。このような国民のたゆまざる努力は、これを多としなければなりません。無論、この間、食糧を初め、資源を供給してくれた国があり、さらに安全保障、自由貿易といった面で我が国国際環境に恵まれてきた事実も忘れるわけにはまいりません。  したがって、国際社会の平和と繁栄のための役割をみずから率先して果たすことは、国際的に大きな地位を占めるに至った我が国責任であり、みずからの平和と繁栄確保する唯一の道なのであります。  私は、このような確信に基づき、外交に課せられた使命の重大さに身を引き締めつつ、「世界に開かれ、世界貢献する日本」を目指し、積極果敢な外交を展開していく決意であります。  現在の世界の平和が、力の均衡と抑止により維持されているという冷厳な現実は、今さら指摘するまでもありません。西側先進民主主義諸国としては、平和を確保するための抑止力を維持しつつ、ソ連を初めとする東側諸国との対話と交渉を進め、東西関係相互信頼に基づく、より安定した軌道に乗せるよう努力しなければなりません。私は、さきの米ソ首脳会談において、我が国がかねて主張してきた地球的規模での中距離核戦力の全廃が合意されたことを、一九八三年のウィリアムズバーグ・サミットで確認された西側の結束のたまものとして高く評価するとともに、核軍縮の第一歩として心より歓迎いたします。  しかし、戦略核兵器を初めとする他の軍備管理・軍縮問題に加え、アフガニスタン等の地域紛争、人権問題などの解決もまた肝要であります。これらの分野においても、実質的な進展がもたらされ、東西関係の全体としての安定化が図られるよう、私は期待します。したがって、我が国はそのためにも西側の一員として、引き続き米国努力を支援しなければなりません。また、我が国自身、実効的な軍縮努力が国際的に一層増進され、軍備のレベルが均衡のとれた形で一歩一歩引き下げられるよう、本年五月末より開催される第三回国運軍縮特別総会などの場においても強くそのことを訴えてまいりたいと思います。  日米安保体制を基盤とする米国との友好関係は、我が国外交基軸であります。政府といたしましては、日米安保体制を堅持し、その一層の円滑かつ効果的な運用の確保のため、引き続き努力してまいる所存であります。また、日米両国を取り巻く最近の経済情勢の一層の変化により、在日米軍経費が著しく圧迫されている事態にかんがみ、在日米軍従業員の安定的な雇用の維持を図り、もって在日米軍の効果的な活動確保するとの観点から、日本側負担の増大を図っていく所存であります。このため、在日米軍労務費特別協定改正について今国会において御審議をお願いいたしたいと考えております。  今般、竹下総理は米国を訪問し、レーガン大統領と実り多い会談を行いました。両首脳は、今や世界にとって決定的な重要性を有する日米関係を不動のものとし、両国が力を合わせて世界の平和と繁栄のため一層協力していくことについて意見の一致を見ました。さらに、日米間の二国間の案件については、共同作業を通じ、現実に一つ一つこれを解決していくことが両首脳の間で確認されました。  このように、今次首脳会談を通じ、今後の日米関係運営についての基調が設定されたことは極めて有意義なことであります。なお、私自身もその際、シュルツ国務長官及びカールッチ国防長官とそれぞれ会談し、主要な国際情勢、二国間の案件及び安保体制の一層の円滑な運用について忌憚のない意見交換を行いました。  また、米国に続くカナダ訪問において、日加両国の首脳が、来るトロント・サミットの成功に向けての協力を打ち出すとともに、日加両国間の協力関係の一層の前進のため、広範な分野協力と交流を進めていくことで意見の一致を見たことは有意義であったと思います。  さらに、西欧諸国は、今日の国際政治経済秩序を支えていく上で、北米諸国とともに枢要な役割を果たしておりますが、これら諸国との間で緊密な連帯と協調を図っていくことは、我が国自身の繁栄と安定を確保するためにも極めて重要であります。私は、先般来日されましたハウ英国外相と、日英のダイナミックなパートナーシップの幕あけに向けた会談を行い、ドクレルクEC委員とも率直な意見交換を行いました。今後とも、西欧各国とこのような対話を積極的に推進し、政治文化を含む幅広い分野で日欧関係の一層の強化を図ってまいります。  ソ連との関係につきましては、東西関係全般がさらに建設的方向に進むことにより、日ソ関係にもそれが好ましい影響となってあらわれることを期待しますが、現在の関係は、北方領土問題が未解決であることに加え、極東におけるソ連の軍事力の増強もあり、依然として厳しい状況にあります。我が国といたしましては、日ソ双方の努力により関係改善を行っていくことを希望します。しかし、そのためには、日ソ外相間定期協議の早期開催を含め、両国間の政治対話を一層強化拡大し、相互理解の増進を図っていくことが重要であります。北方領土問題を解決して平和条約を締結することにより、ソ連との間に真の相互理解に基づく安定的な関係確立することが我が国の不動の方針であり、今後とも、北方四島一括返還の実現に向けて、粘り強く努力を傾けてまいります。  東欧諸国につきましては、東西関係において、これら諸国との対話がより重要になってきている事実を踏まえ、各国の国情と政策を十分勘案の上、政治対話及び経済文化面での交流を一層促進していく考えであります。  翻って、アジア太平洋地域の一国たる我が国といたしましては、これら域内諸国との友好協力関係の増進を外交の重要な柱とし、各国の歴史や文化面での独自性を尊重しつつ、同地域の平和と発展のため今後とも積極的に貢献する所存であります。  私は、先月竹下総理に同行してマニラを訪れ、日本ASEAN首脳会議に出席いたしました。総理は、我が国軍事大国への道を歩まず、世界の平和と繁栄のために貢献していくとの立場を改めて主張されましたが、このような姿勢と理念は同会議我が国が表明いたしましたASEANに対する積極的施策と相まって、内外に高く評価されました。したがって、我が国は、今次会議において深められた首脳レベルでの信頼関係基礎に、ASEAN諸国との友好協力関係を一層緊密なものとするよう努める所存であります。また、この機会に行われましたフィリピン公式訪問において、竹下総理よりアキノ大統領に対し、民主主義に基づく国づくりの努力我が国としてできる限りの支援を行っていくとの方針を改めて表明いたしました。  カンボジア問題に関しましては、その早期解決を図るため、我が国といたしましても積極的に貢献すべく、ベトナム軍の撤退とカンボジア人の民族自決の実現を柱とする政治解決に向けた、シアヌーク殿下の真摯な努力を支援してまいる所存であります。  韓国では、先月の大統領選挙において民主正義党の盧泰愚総裁が当選され、二月には政権移譲が行われる予定であります。私は、韓国国民の建設的努力により、憲法改正を初めとする諸改革が順調に実施され、韓国が民主主義の道を一層力強く歩んでいることに、改めて敬意を表したいと思います。我が国といたしましては、今後も日韓友好協力関係を、より安定的な国民基盤の上に立って発展させていくことが一層重要であると考えます。本年九月ソウルで開催されますオリンピックには、既に米国中国ソ連を含め大多数の国が参加表明を行っており、私は、このことを心から歓迎するものであります。我が国といたしましては、今後とも、ソウル・オリンピックの成功と朝鮮半島における緊張緩和のために、できる限りの協力を行っていく所存であります。  中国との友好協力関係の維持発展は、アジアひいては世界の平和と繁栄にとっても重要であります。中国では現在、「改革と開放」の方針もと経済体制と政治体制の改革が大胆に推進されております。我が国といたしましても、かかる中国の近代化の努力を高く評価し、できる限り支援するとともに、今後とも日中共同声明、日中平和友好条約及び日中関係原則を踏まえ、両国関係の一層の発展のために尽力する所存であります。特に、本年は、日中平和友好条約締結十周年に当たっており、両国首脳間の対話実現を含め、両国間の相互理解相互信頼の増進のため積極的に努力してまいります。  インド、パキスタン等の南西アジア諸国との間では、近年要人往来も活発であり、我が国との関係は急速に緊密化しております。この地域では、南アジア地域協力連合が軌道に乗り、地域協力が進展しております。我が国といたしましては、引き続き同地域の安定と経済発展のために協力していく所存であります。  大洋州諸国との関係につきましては、豪州及びニュージーランドとの間の友好協力関係を一層拡大強化してまいります。また、近年その重要性を増している太平洋島嶼国との間でも、その平和と発展のために経済協力を一層推進し、関係強化していく考えであります。  アジア太平洋地域調和のとれた発展を目指す太平洋協力につきましては、政府といたしましても、これを積極的に支援してまいります。  中東における情勢は依然として流動的であります。  イラン・イラク紛争及びペルシャ湾の安全航行の問題に関しましては、紛争当事国と率直な政治対話を今後とも継続するとともに、同湾の安全航行確保のために昨年十月に決定されました諸措置の早急な実施に努めてまいります。また、我が国国連安全保障理事会の非常任理事国であることをも踏まえ、関係諸国及び国連事務総長とも協議しつつ、安保理決議第五百九十八号に基づく紛争の平和的解決へ向けて努力を重ねてまいります。現に私は、イラン外相の訪日を求め、親しく会談し、一方、イラク外相には特使を派遣して、双方に国連決議の尊重を強く要請いたしました。  中東和平の問題に関しましては、イスラエル占領下にある西岸・ガザ地区における最近の騒擾にも照らし、我が国といたしましては、国際会議開催等和平実現のための動きが進展するよう強く希望し、関係当事者への働きかけを含め、応分の努力貢献を行っていく所存であります。  また、アフガニスタンにおいて、ソ連の軍事介入が八年余りにわたり続いていることは、極めて遺憾であります。我が国といたしましては、ソ連軍の全面撤退を含む政治解決早期実現を呼びかけるとともに、国連による調停努力を支援してまいります。  累積債務問題を初めとする経済困難に直面している中南米諸国に対しましては、我が国は、資金還流措置経済・技術協力の拡充、貿易・投資の拡大を行い、経済再建と民主化の進展、定着のための各国の自助努力を支援する所存であります。  中米問題につきましては、引き続き域内諸国の和平努力を支持するとともに、中米地域経済発展を支援していく考えであります。また、真の中米和平が実現した暁には、この地域の復興開発のためできる限りの援助を実施する所存であります。  アフリカ諸国は、一部に食糧危機を抱えるなど、依然として厳しい経済困難の中にありますが、サハラ以南アフリカ諸国等に対する五億ドル程度のノンプロジエクト型無償資金協力実施を初め、アフリカ諸国の自助努力を積極的に支援してまいります。  我が国は、南アフリカ共和国のアパルトヘイト、すなわち人種隔離政策に断固反対し、各種の対南ア規制措置を講じております。今後とも、本問題の平和的解決のため、国際社会と一致協力し、努力を重ねていく所存であります。また、アパルトヘイトの犠牲者のための人道的援助及び南ア周辺諸国に対する経済協力強化してまいります。  世界経済持続的成長対外均衡是正及び為替市場の安定のためには、主要国が引き続き経済構造調整推進しつつ、マクロ経済政策協調をより一層強化することが不可欠であります。なかんずく、巨額な経常収支の黒字を抱える我が国は、内需拡大積極的推進、一層の市場開放、途上国への資金還流等の国際的な貢献を継続し、対外均衡是正に全力を傾けなければなりません。  また、国際貿易面では、ガット体制をより強化、改善し、その対象となる分野拡大する必要が生じてまいりました。このため、ウルグアイ・ラウンド交渉が進められており、我が国といたしましても、自由貿易体制の維持強化という共通の目標に向かって、諸外国協調しつつ努力していく決意であります。その際、交渉の具体的進展を内外に明示していくためにも、可能なものから早期合意を図っていくことが必要であります。広範な分野にわたる交渉の過程においては、各国とも国内経済構造にかかわる諸問題を見直すこととその改革が必要となるでしょう。我が国といたしましても、国の内外において痛みを分かち合いながら、世界経済との調和を積極的に図っていく決意であり、また、これがひいては我が国の長期的利益にかなうものと確信しております。この意味で、今日ほど内政と外交が深いかかわりを持っているときはないと言っても過言ではありません。  経済困難に悩む開発途上国への協力は、我が国国際的貢献の重要な柱であります。我が国は、第三次中期目標もと政府開発援助の拡充に努めており、政府は六十三年度のODA予算として対前年度比六・五%増を計上しております。  また、累積債務問題、一次産品市況の低迷等に見られるように、途上国をめぐる環境が悪化し、南北格差は拡大する傾向にあります。この中で我が国は、開発途上国のニーズの多様化に弾力的に対応できるよう、国際緊急援助体制の一層の充実、途上国の経済政策支援のための円借款の供与、前述のノンプロジェクト型無償資金協力実施、あるいは内貨融資の拡大等を行ってまいりました。今後とも、途上国に対する支援を質量両面から強化するとともに、国連等の場において建設的な南北対話促進するために、積極的に貢献してまいる所存であります。  世界各地の難民問題に対しましても、我が国は、資金及び食糧援助、並びにインドシナ難民の受け入れなどを通じ、今後とも積極的に貢献してまいります。  国連は平和維持、人権の擁護、人類の福祉向上などのため活動を行っている唯一の普遍的国際機構であり、今後も、政治経済社会等の幅広い分野において、人類共通の利益にかなった国際秩序を築き上げるため、ますます重要な役割を果たしていくべきものであります。  我が国は、加盟以来、国連重視政策をとり続けており、引き続き国連を通じる国際協力を一層強化していく所存であります。政治面では、安全保障理事会の非常任理事国としての重責を果たすべく、国際の平和と安全の維持のため外交努力を重ねてまいります。さらに、国連等平和維持活動に対する我が国の非軍事的貢献を一層強化拡充するため、鋭意努力していく所存であります。  昨年十一月の大韓航空機事件は極めて遺憾であり、かかるテロ行為は厳しく非難されるべきものであります。また、近年、凶悪な国際テロ事件が世界各地で起きていることは、海外にある我が国国民の安全を図る上でも看過し得ない問題であります。政府としては、いかなる国際テロにも断固反対するとの立場から、その防止のための国際協力推進していく所存であります。同時に、海外にある邦人の保護体制の整備に努めてまいります。  以上述べましたとおり、我が国が、名実ともに外に開かれた国際国家として繁栄していくためには、国際の平和と安定への寄与、世界経済の持続的発展のための積極的協力が不可欠であります。しかし、それだけでは十分とは申せません。世界の諸国民が物の豊かさだけではなく心を伴った豊かな文明を創出していく歴史的努力の中で、我が国がどれだけ独自の貢献をなし得るかが同時に問われているのであります。私は、外務大臣に就任以来、事ごとに我が国国際社会に占める大きさを痛感いたしております。すなわち、世界は、我が国に対し多岐にわたる要望を提起し、我が国がそれらにこたえ、世界貢献していくことを期待いたしております。このことはとりもなおさず、世界が、我が国に物だけを求めるのではなく、心を求める時代に入ったと言えましょう。  この意味で、我が国といたしましては、官民を挙げて、文化、学術、科学技術といった面での創造と世界的な交流を推進すべき役割をみずから引き受けるべきときに来ております。特に、人物交流を通じてこそ心も通い合うのであり、政府といたしましても、次代を担う青少年や留学生の交流、さらには、昨年から実施している語学指導などを行う外国青年招致事業等、幅広い交流を強化してまいります。また、かかる努力は、政府のみならず国民一人一人の課題でもあると考えます。私は、今後とも、地方自治体、民間各層の御理解と御協力を得つつ、このような国際交流の一層の推進を図ってまいります。  私は、外交実施体制を一層強化拡充することによって、今日、我が国外交が抱える多くの重要な課題に能動的かつ機動的に対応してまいります。  新しい世紀は目前に控えております。このときこそ、「世界に開かれ、世界貢献する日本」を実現するため、国家として懸命の努力を傾けなければなりません。国民各位及び同僚議員の力強い御支援をお願いする次第であります。(拍手)     ─────────────
  11. 藤田正明

    議長藤田正明君) 宮澤大蔵大臣。    〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手
  12. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 昭和六十三年度予算の御審議をお願いするに当たりまして、今後の財政金融政策の基本的な考え方につき所信を申し述べますとともに、予算の大綱を御説明いたします。  戦後四十年余りの間に我が国経済世界でもまれに見る発展を遂げ、国際社会に占める我が国の地位の向上は目覚ましいものがございます。これは、ひとえに国民の英知と努力の結晶であり、賢明な選択のたまものであります。しかし、他方、大幅な対外均衡等を背景に諸外国との間に種々の摩擦も生じつつあります。  今後、我が国がこれまでなし遂げてきた成長発展基礎に二十一世紀を目指して進むべき道は、対内的には、真に豊かで活力のある経済社会を建設し、対外的には、各国との協調を図りつつ、国際社会に占める地位にふさわしい役割を積極的に果たしていくことにあります。  昨年の我が国経済は、円高の進展、内外金融市場において見られた不安定な動きにもかかわらず、物価が安定基調を維持する中で、内需中心として景気が回復から拡大に向かった一年でありました。個人消費は堅調に推移し、住宅建設は高い水準にあり、さらに設備投資も着実に増加するなど国内民間需要は堅調に推移しております。これは、基本的には、民間経済活力によるものでありますが、政府といたしましても、繁急経済対策を決定し、その着実な実施に努めるなど、内需拡大に向けて最大限努力を払ってきたところであります。また、国際収支の不均衡是正の方向に進みつつあり、こうした我が国経済の現状及び政策運営につきましては国際的にも評価されているところであります。  一方、国際経済情勢を見ますと、先進国の景気は、物価の安定、低水準の金利等を背景に引き続き緩やかな拡大を続けております。しかしながら、主要国間の大幅な対外均衡、欧州諸国中心とした厳しい雇用情勢を背景に保護主義的な動きもなお根強く、また、開発途上国における累積債務問題も、いまだに解決を見ておりません。  私は、今後の財政金融政策の運営に当たり、このような我が国の置かれている状況を踏まえ、二十一世紀に向けての我が国の進むべき道を展望しつつ、以下に申し述べる諸課題に取り組んでまいる所存であります。  課題の第一は、内需中心とした経済持続的成長確保していくことであります。  景気回復二年目の局面における我が国経済の足取りを確実なものとしていくことは、国際的な政策協調観点からも重要な課題であります。  政府は、昨年夏に補正予算を編成して緊急経済対策実施するなど内需拡大に努めてまいりましたが、昭和六十三年度予算におきましても、厳しい財政事情もとではありますが、社会資本整備促進のためNTT株式の売り払い収入の括用を図ることなどにより、一般公共事業費について、前年度当初予算に対し二〇%増という高い水準確保したところであります。  金融面では、現在我が国の公定歩合は歴史的に見ても国際的に見ても極めて低い水準にあり、また、量的にも緩和された状況にあります。今後とも、金融政策の運営につきましては、内外経済動向及び国際通貨情勢を注視しつつ、適切かつ機動的に対処してまいる所存であります。  さらに、持続的成長確保していくためには、為替相場の安定が重要であることは申し上げるまでもありません。このため、昨年来、主要国間で積み重ねられてきた合意に沿って、政策協調為替市場における協力実施してまいりました。このような政策協調の実績を踏まえ、昨年末には主要先進七カ国の蔵相・中央銀行総裁による声明を発表し、ルーブル合意に立脚しつつ経済政策協調についての各国の積極的取り組みを再確認すると同時に、これ以上のドルの下落は世界経済成長にとり逆効果であるとの共通の認識を示したところであります。この点につきましては、先般の日米首脳会談においても確認されております。今後とも、各国との政策協調及び為替市場における協力を通じ、為替相場の安定を図ってまいりたいと考えております。  第二の課題は、財政改革を引き続き強力に推進することであります。  財政改革の目的は、一日も早く財政がその対応力を回復することにより、今後急速に進展する人口の高齢化や国際社会における我が国責任の増大など今後の社会経済情勢変化に弾力的に対応し、豊かで活力ある経済社会の建設を進めていくことにあります。  このため、昭和六十三年度予算におきましては、歳出の徹底した見直し、合理化等に取り組むことにより、特例公債発行額を前年度当初予定額に比し一兆八千三百億円減額し、公債依存等を一五%台にまで引き下げたところであります。これは昭和五十年度以来の特例公債発行下では最も低い水準であります。この結果、昭和六十五年度までの間に特例公債依存体質から脱却し、公債依存度を引き下げるという努力目標達成に向けて着実に前進することとなりました。  しかしながら、このような努力を行ってもなお昭和六十三年度末の公債残高は百五十九兆円に達する見込みであり、国債の利払い費は歳出予算の約二割を占めるなど、財政事情は引き続き極めて厳しいものとなっております。  来るべき世紀に向かって我が国内外から求められている課題財政が十分対応できるよう、今後ともこの目標に向けて財政改革をより一層強力に推進してまいる所存であります。  第三の課題は、税制の抜本的見直しであります。  今後の高齢化社会の到来、経済社会の一層の国際化を展望するとき、抜本的な税制改革実現は避けて通れない課題であります。  個人所得課税の軽減。合理化、利子課税制度の改組等は、昨年九月、臨時国会において実現を見たところでありますが、なお残された問題は少なくなく、税制改革は道半ばという段階にあります。  人口構成の一層の高齢化が進む中で、国民すべてが相互協力しつつ、国際化時代における我が国経済社会を豊かで活力あるものとして支えていくためには、国民の税に対する不公平感を払拭するとともに、所得、消費、資産等の間で均衡がとれた安定的な税体系を構築することが不可欠であり、早急に成案を得ることが必要と考えます。  このような認識もと、現在、税制調査会において、我が国にとって望ましい税制のあり方とその実現に向けての具体的方策につき、精力的に御審議願っているところであります。  国民各界各層の御議論等を拝聴しつつ、国民納得が得られるような税制改革関連法案を取りまとめるよう引き続ぎ最大限努力を傾けてまいる所存であります。  第四の課題は、我が国の国際的な地位の向上に見合い、調和ある対外経済関係形成に努めることであります。  世界的な対外均衡等を背景とした保護主義的な動きには根強いものがあります。我が国としては引き続き各国に対し対外均衡是正努力を求めると同時に、みずから率先して市場アクセスの改善、経済構造調整等を進め、自由貿易体制の維持強化に努めていく必要があります。  このような観点から、昭和六十三年度におきましては、特恵関税制度の改善、関税引き下げ、撤廃等の改正を行うことといたしております。  また、現在進められているウルグアイ・ラウンド交渉におきましては、その提唱国として各国と協調しつつ建設的な役割を積極的に果たしてまいりたいと考えております。  金融・資本市場の自由化、国際化を進めていくことは、我が国経済の効率化と発展に資するものであると同時に、我が国世界経済発展貢献していく上で大きな意義のあるものと考えております。  このような観点から昨年六月には「金融・資本市場の自由化、国際化に関する当面の展望」を発表し、その後、その方向に沿って、預金金利の一層の自由化、国内CP市場の創設、東京証券取引所における会員定数の拡大等の措置が講じられてきているところであります。  さらに、先物市場の整備拡充につきましては、証券先物市場の一層の整備、金融先物市場の創設及び海外金融先物取引の一層の自由化を進めていく予定であり、このため、所要の法律案を今国会に提出し、御審議をお願いすることといたしております。  今後とも、我が国金融・資本市場が内外に対して十分な貢献を果たし得るよう、主要先進国を初め諸外国とも意見交換、意思疎通を図りつつ、一層の自由化、国際化を進めてまいりたいと考えております。  開発途上国の自助努力を支援するとともに、累積債務問題の解決を図り、もって世界経済成長繁栄に資することも我が国の大きな国際的責務であります。  このため、政府開発援助につきましては、第三次中期目標について七年倍増目標の二年繰り上げを実施し、昭和六十五年のODA実績を七十六億ドル以上とすることといたしております。  また、開発途上国の開発・債務問題の解決に資するため、現在実施しております三百億ドルを超える官民アンタイド資金の還流措置の達成に全力を傾けているところであります。今後とも、IMFの拡大構造調整ファシリティーへの貸し付け、アジア開発銀行、米州開発銀行における日本特別ファンドの設置等を通じて、資金還流を積極的に図ってまいる所存であります。  次に、昭和六十三年度予算の大要について御説明いたします。  昭和六十三年度予算は、財政改革を強力に推進するとともに、内需拡大要請に配意することとして編成いたしました。  歳出面におきましては、国民健康保険制度の改革を初めとする既存の制度、施策の見直しを行い、特に経常経費について一層の節減合理化を行うとともに、一般公共事業費についてNTT株式の売り払い収入を活用すること等により前年度当初予算に対し二〇%増という極めて高い水準確保するほか、限られた財源を重点的、効率的に配分するよう努めることといたしました。  なお、国家公務員の定員につきましては、第七次定員削減計画を着実に実施するとともに、必要とされる新規行政需要についても極力振りかえによって対処し、増員は厳に抑制いたしました。この結果、行政機関職員について、三千六百五十五人に上る大幅な縮減を図ることといたしております。  以上の結果、一般歳出の規模は、三十二兆九千八百二十一億円と前年度当初予算に比べ三千九百八十七億円の増額となり、これにNTT株式の売り払い収入に係る産業投資特別会計への繰り入れ一兆三千億円、さらに国債費及び地方交付税交付金を加えた一般会計予算規模は、前年度当初予算に比べ二兆五千九百八十七億円増額の五十六兆六千九百九十七億円となっております。  次に、歳入面について申し述べます。  歳入の基幹たる税制につきましては、税制抜本的改革との関連に留意しつつ、最近の社会経済情勢等に即応して、当面早急に実施すべき措置を講ずることとし、土地・住宅税制について見直しを行うとともに、石油税について増収措置を講ずる等の税制改正を行うことといたしております。  税の執行につきましては、今後とも国民信頼協力を得て、一層適正、公平な税務行政実施するよう、努力してまいる所存であります。  また、税外収入は、前年度に比べ大きく減少しておりますが、可能な限りその確保に努めたところであります。  公債につきましては、以上の結果、その発行予定額は前年度当初予算より一兆六千六百億円減額し、八兆八千四百十億円となっております。その内訳は、建設公債が一千七百億円増の五兆六千九百億円、特例公債が一兆八千三百億円減の三兆一千五百十億円となっております。この結果、公債依存度は一五・六%まで低下いたしました。特例公債の発行等につきましては、別途、昭和六十三年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案を提出し、御審議をお願いすることといたしております。  また、昭和六十三年度においては、十四兆五千百二億円の借換債の発行を予定しており、これを合わせた公債の総発行額は、二十三兆三千五百十二億円となります。  財政投融資計画につきましては、内需拡大社会資本の整備資金還流措置推進等要請にこたえ、資金の重点的、効率的な配分に努めたところであります。  この結果、昭和六十三年度の財政投融資計画の規模は二十九兆六千百四十億円となり、前年度当初計画に対し、九・四%の増加となっております。  次に、主要な経費について申し述べます。  まず、公共事業関係費につきましては、さきに申し述べましたように、内需拡大に資するとともに社会資本の整備促進するため、NTT株式の売り払い収入の活用等により一般公共事業費確保を図ることといたしました。また、その事業別記分に当たりましては、生活環境向上に資するよう下水道、公園等の事業に特に配意するとともに、各地域への配分に当たっては、地域経済の実情に十分な配慮がなされるよう対処してまいる所存であります。また、住宅金融公庫の融資戸数の増加、貸付限度額の引き上げ、特別積立ローンの新設等、住宅対策の拡充を図っております。  雇用対策につきましては、最近の雇用情勢は総じて改善しているものの、産業間、地域間、年齢間には不均衡が見られるため、新たに「産業地域高齢者雇用プロジェクト」を実施することとし、その改善を図ることといたしております。  社会保障関係費につきましては、今後の高齢化社会においても安定的かつ有効に機能するよう長期的視野に立って制度を築き上げていく必要があり、このため、国民健康保険制度の改革等、各種施策の合理化、適正化に努めるとともに、老人や心身障害者に対する在宅福祉施策の拡充、健康づくり施策推進等、真に必要な施策については重点的な配慮を行うことといたしております。文教及び科学振興費につきましては、教育環境整備、生涯学習の振興、国際的な研究交流の促進基礎的、創造的研究の推進等施策充実に努めております。  中小企業対策費につきましては、中小企業を取り巻く環境変化に対応し、その近代化及び構造改善を促進していくため、異業種の経営資源の融合化の推進、特定地域中小企業対策充実等を図っております。また、農林水産関係予算におきましても、需要の動向に適切に対応しつつ、生産性の高い、産業として自立し得る農業確立に向けて、生産基盤整備等の施策に重点的に配慮いたしております。  経済協力費につきましては、資金還流関係予算経済開発等援助費を中心に第三次中期目標の着実な達成を図るとの観点から、政府開発援助予算について前年度を上回る六・五%増といたしております。防衛関係費につきましては、厳しい財政事情もとで、他の諸施策との調和を図りつつ、中期防衛力整備計画を踏まえ、その質的充実に配意しております。  エネルギー対策費につきましては、中長期的な需給見通しをも踏まえ、安定的なエネルギー供給確保等の施策を着実に推進することといたしております。  地方財政につきましては、昭和六十三年度の財源不足額は、地方税収の増加等により前年度を下回る一兆七千二百五十九億円と見込まれますが、地方交付税交付金の特例措置等の地方財政対策を講ずることとし、地方財政の適正な運営に支障の生じないよう配慮しております。地方団体におかれましても、歳出の節減合理化等をさらに推進し、より一層効率的な財源配分を行われるよう要請するものであります。  この機会に、昭和六十二年度第二次補正予算について一言申し述べます。  昭和六十二年度第二次補正予算につきましては、歳出面におきまして、給与改善費、国民健康保険特別交付金、義務的経費の追加等、特に緊要となった事項について措置を講ずることといたしております。また、歳入面におきましては、税収について一兆八千九百三十億円の増収を見込むとともに、前年度の決算上の剰余金の残額一兆九千三百四十億円を計上するほか、税外収入の減額を見込んでおります。この結果、特例公債について一兆三千二百二十億円減額することといたしております。  なお、昨年不成立となりました売上税法案関連の歳入歳出につきましては、この際所要の補正を行うことといたしております。  以上によりまして、昭和六十二年度一般会計第二次補正後予算の総額は、歳入歳出とも第一次補正後予算に対し二兆三百三十九億円増加して、五十八兆二千百四十二億円となっております。  以上、昭和六十三年度予算及び昭和六十二年度第二次補正予算の大要について御説明いたしました。御審議の上、何とぞ速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。  二十一世紀の開幕まであと十年余り。国際情勢は引き続き流動的ではありますが、幸いにも我が国経済は明るい展望を期待できる状況にございます。このような時期にこそ、これまで申し述べました諸課題を一歩一歩着実に実行していくことが重要であると考えます。  国民各位の一層の御理解と御協力を切にお願いする次第でございます。(拍手)     ─────────────
  13. 藤田正明

    議長藤田正明君) 中尾国務大臣。    〔国務大臣中尾栄一君登壇、拍手
  14. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 我が国経済の当面する課題経済運営基本的な考え方について所信を申し述べたいと存じます。  我が国経済は戦後四十有余年、目覚ましい発展を遂げ、今や国民総生産にして一日当たり約一兆円を生み出す規模にまで成長いたしました。また、対外面においても、我が国世界最大の債権国となるに至りました。  しかしながら、我が国は、縮小しつつあるとはいえ、いまだ膨大な経常収支黒字を有し、各国との間に種々の経済摩擦問題を抱えております。我が国といたしましては、今後、各国との政策協調国内経済構造調整等を通じて、国際的に調和のとれた対外均衡の達成に努めるとともに、世界経済調和ある発展のために、我が国の国際的地位にふさわしい貢献を果たしていくことが必要であると考える次第であります。  他方、国内においては、国民生活は、経済発展に伴い着実な改善を遂げているものの、今後は、この経済発展成果を住生活の改善や労働時間の短縮など国民生活の質的向上により一層振り向けていくことが求められております。  以上、内外の二つの課題を克服するためのかぎは、内需主導型の成長を達成する中で経済構造調整を進めることであります。経済構造調整は、これまで着実に進展してきているとはいえ、これをさらに進める上でいまだ数多くの困難が横たわっております。私は、これらの困難を乗り越えていくために何よりも重要なことは、我が国の次なる飛躍のために、たとえ痛みや負担が伴うものであっても、経済構造の変革が今こそ必要であるという共通の認識国民一人一人がしっかり持つことであろうと考える次第であります。  ここで、内外経済の現状について申し述べてみたいと存じます。  世界経済は、このところ緩やかながらも息の長い景気拡大を続けております。しかしながら、従来からの課題であるアメリカの財政赤字の縮減、主要国対外均衡是正発展途上国の累積債務問題等については、今後も解決に努めるべき課題として残されております。また、最近の株価、為替等の変動とその影響につきましても、十分注視していく必要があります。  一方、我が国経済は、一昨年末に景気転換点を迎え、昨年は政府の緊急経済対策の効果も加わり、景気は回復から拡大への道をたどってまいりました。国内需要は引き続き堅調に推移し、鉱工業生産の増加、企業の業況判断の大幅な改善、雇用情勢の改善が見られる等、景気は引き続き拡大局面にあります。また、輸出は一進一退で推移し、輸入は製品類等を中心に増加しており、経常収支の黒字幅はこのところ縮小しております。  このような内外経済の動向を勘案しますと、昭和六十二年度の我が国経済は、経常収支の黒字を縮小させつつ、内需中心景気拡大が維持され、実質経済成長率は、政府の当初見通しを上回る三・七%程度になるものと見込まれます。  以上のような状況を踏まえ、私は昭和六十三年度の経済運営に当たっては、特に、次の諸点を基本的な柱としてまいりたいと考えております。  第一の柱は、景気回復二年目における景気の足取りを確実なものとするため、内需中心とした景気の持続的拡大を図ることです。同時に、雇用の安定及び地域経済活性化にも努めてまいります。  このため、最近における急激な為替レートの変動に対しては、主要国との協調的な経済政策実施推進しつつ、円レートの安定化を図る一方、急速な円高の進展等により影響を受けた地域などに十分配慮しながら、引き続き適切かつ機動的な経済運営に努めてまいる所存であります。  具体的には、まず、内需拡大を図るため、昭和六十三年度予算におきまして、NTT株式の売り払い収入の活用等により、一般公共事業費は、前年度当初予算に対し二〇%の伸びを確保したところであります。また、既に実施が決まっている住民税減税のほか、住宅取得促進税制の拡充などの住宅建設促進施策実施することとしております。さらに、民間活力最大限発揮されるための所要の環境整備中小企業の経営安定化、構造転換等のための各種中小企業対策、「産業地域高齢者雇用プロジェクト」等の雇用対策などにつきましても積極的に推進することとしております。  金融政策にっいては、内外経済動向及び国際通貨情勢を注視しつつ、適切かつ機動的な運営を図る必要があると考えております。  土地問題については、地価高騰に対処するため、昨年十月に決定した緊急土地対策要綱の着実な実施等土地対策の効果的かつ総合的な推進を図ってまいります。  こうした内需拡大のための努力は、経済構造調整のための諸施策と相まって、我が国対外均衡是正にも資するものと考えます。  昭和六十三年度の我が国経済は、以上のような政府の諸施策と民間経済活力一つとなり、引き続き対外均衡是正を進めながら、内需中心とした着実な拡大が図れるものと考えられます。この結果、昭和六十三年度の実質経済成長率は三・八%程度になるものと見込まれます。  第二の柱は、自由貿易体制の維持強化に向けて率先して努力するとともに、調和ある対外経済関係形成世界経済への積極的貢献を図ることであります。  このため、まず、保護貿易主義の抑止と貿易の拡大均衡を目指して、国際協調経済構造への変革を推進する必要があります。その際、我が国市場の積極的な開放等による市場アクセスの改善を図るとともに、ウルグアイ・ラウンド交渉の一層の進展に貢献してまいりたいと考えております。  発展途上国への経済協力については、我が国の国際的地位にふさわしい役割を果たしていくことが重要であります。このような観点から、政府開発援助の第三次中期目標については、その早期達成を図るとともに、発展途上国への資金の還流を拡大するため、積極的な役割を果たしていく必要があると考えております。  第三の柱は、物価の安定と国民生活の質的向上に努めることであります。  物価の安定は、国民生活の安定のための基本要件であります。物価の動向を見ますると、これまで累次にわたる円高差益還元策等が実施されたことに伴い、円高等のメリットは国民経済全体にかなり浸透してきているものと考えられ、こうした状況を反映して、我が国の消費者物価上昇率は、過去二年続けて一%を切るなど最近の物価動向は極めて落ちついた動きを示しております。政府といたしましても、最近では、電気・ガス料金の三度目の引き下げ等に努めてきたところでありますが、今後とも、公共料金について円高差益の的確な反映を図るとともに、輸入の促進、消費者への情報提供等を通じて円高などのメリットの一層の還元に努めることにより、物価の安定を図ってまいる所存であります。  このような施策を推し進めることにより、物価は引き続き安定基調を維持するものと考えられ、昭和六十三年度の卸売物価は〇・三%程度、消費者物価は一・三%程度の上昇にとどまるものと見込んでおります。  なお、私は、国民生活の質の改善を図る観点から、規制の緩和等経済構造調整のための施策推進し、内外価格差を縮小して国民納得できる物価水準を達成していくという考え方が、今後の物価対策を進める上で重要であると考えております。  さらに、豊かで質の高い国民生活実現するためには、住宅社会資本、余暇時間等の面でまだまだ課題が残されております。こうした観点から、住生活の質的改善等国民生活充実向上のための施策について、積極的に検討するとともにその推進努力してまいる所存であります。  また、国民が安心して充実した消費生活を送ることができるように、悪質な商法による被害の防止等の消費者保護施策推進するとともに、消費者教育の充実を図ってまいりたいと考えておる次第であります。  第四の柱は、新しい中長期的な経済運営基本方針を速やかに策定することであります。  我が国経済を取り巻く内外の諸情勢は、ここ数年の間、対外均衡の大幅な拡大、円高の急速な進展等に見られますように大きく変化いたしました。さらに、これまで述べてまいりましたように、我が国は、国民生活の質的向上地域経済活性化、経約拍摩擦の解消、国際社会への貢献等の課題に緊急かつ重点的に取り組んでいかなければなりません。  このため、内外経済の中長期的な展望の上に立って、新しい経済運営基本方針内外に明示することにより、国民企業に自信と活力を与え、二十一世紀に向けて我が国経済のさらなる発展を期したいと考えます。こうした考え方から、政府は、昨年十一月新しい経済計画の策定について経済審議会に諮問を行い、これを受けて去る一月二十二日、経済審議会は新計画の基本考え方と検討の方向を取りまとめたところであります。  新しい経済計画においては、経済構造調整を一層強力に推進し、内需主導成長への転換定着を進めることを基本方向としつつ、経済運営のあり方を検討してまいりたいと考えております。その際、主要な政策課題として、第一に経済発展成果国民一人一人の生活に十分生かし、豊かさを実感できる国民生活実現すること、第二に東京への過剰な依存から脱却し、第四次全国総合開発計画で示された多極分散型の国土形成していくこと、第三に日本の豊かさと活力を生かし、世界貢献していくことの三点が重点になるものと考えておる次第であります。  今後、この新たな経済計画をよりどころに中長期的な経済運営を行ってまいる所存であります。  以上、我が国経済が当面する主な課題経済運営基本方向について所信を申し述べました。  政府経済運営は、単なる経済諸指標についての数字合わせをもって足りるものではないことは言うまでもありません。世界経済の動向と我が国経済社会についての中長期的展望を踏まえて、常に国民生活向上と人間性豊かな社会の建設を目指して行われるべきものであります。私は、そうした経済運営が、所得水準にふさわしい国民生活の質の画期的な向上世界に開かれた文化社会実現を可能とし、国民が将来の生活設計を希望を持って描くことができる環境をつくり出すものと信じます。  冒頭でも触れましたように、我が国は、今や一日一兆円の国民総生産規模となり、しかも、世界最大の債権国となりました。経済運営のかじ取り役としての責任の重大性を改めて痛感するものであります。私は、この演説の締めくくりとして、国民皆様に次のことを特に申し上げたいのであります。それは、我が国民は我が国世界経済の中で大きな地位を占めるに至った現状を十二分に認識し、「開放社会の精神」に徹し、世界の国々が同じように豊かさを享受できる環境づくりに今後積極的に貢献していかなければならない立場に立ち至ったということであります。我が国民生活のより一層の向上も、内需拡大も、経済構造調整も、世界経済との調和も、すべては国民の「開放社会の精神」に裏づけられてこそ、初めて意義のある成果が期待できるものと考えます。  私は、こうした認識もと、今後の我が国経済のかじ取りを行っていく所存であります。  国民皆様の御支援と御協力を切に切にお願いする次第であります。  ありがとうございました。(拍手
  15. 藤田正明

    議長藤田正明君) ただいまの演説に対する質疑は次会に譲りたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 藤田正明

    議長藤田正明君) 御異議ないと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十二分散