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1988-05-12 第112回国会 参議院 法務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月十二日(木曜日)    午後二時開会     ─────────────    委員の異動  四月二十八日     辞任         補欠選任      下稲葉耕吉君     杉元 恒雄君  四月三十日     辞任         補欠選任      吉川 春子君     宮本 顕治君  五月六日     辞任         補欠選任      杉元 恒雄君     下稲葉耕吉君      宮崎 秀樹君     土屋 義彦君      宮田  輝君     中村 太郎君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         三木 忠雄君     理 事                 工藤万砂美君                 鈴木 省吾君                 猪熊 重二君                 橋本  敦君     委 員                 下稲葉耕吉君                 徳永 正利君                 中西 一郎君                 長谷川 信君                 林  ゆう君                 秋山 長造君                 千葉 景子君                 関  嘉彦君                 西川  潔君    国務大臣        法 務 大 臣  林田悠紀夫君    政府委員        法務大臣官房長  根來 泰周君        法務大臣官房審        議官       稲葉 威雄君        法務省民事局長  藤井 正雄君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局刑事局長   吉丸  眞君    事務局側        常任委員会専門        員        片岡 定彦君    説明員        警察庁警備局外        事課長      國枝 英郎君        大蔵省主税局税        制第三課長    野村 興児君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○不動産登記法及び商業登記法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     ─────────────
  2. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  不動産登記法及び商業登記法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。林田法務大臣
  3. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 不動産登記法及び商業登記法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、最近における登記事務処理状況にかんがみ、電子情報処理組織を用いて登記を行う制度の導入を図る等のため、不動産登記法及び商業登記法の一部を改正しようとするものでありまして、その要点は、次のとおりであります。  第一に、登記事務処理円滑化を図るため、法務大臣の指定する登記所、すなわち指定登記所においては、登記事務の全部または一部を電子情報処理組織によって取り扱うことができることとしております。  第二に、電子情報処理組織によって取り扱われる登記事務においては、登記簿に記録されている事項の公開は、その全部または一部を証明した書面、すなわち登記事項証明書、及びその摘要を記載した書面交付方法によるものとし、指定登記所中別に法務大臣の指定する登記所管轄に属する不動産または会社等についての登記事項証明書は、指定登記所中別に法務大臣の指定する他の登記所においても交付することとしております。  第三に、登記事項証明書の効力を明確にするため、この書面は、民法、民事執行法その他の法令の規定の適用については、登記簿謄本または抄本とみなすこととしております。  第四に、指定登記所中別に法務大臣の指定する登記所管轄区域内に本店を有する会社が、本店及び支店所在地において登記すべき事項について支店所在地においてする登記申請する場合において、当該支店指定登記所中別に法務大臣の指定する他の登記所管轄区域内にあるときは、その登記申請は、本店における登記申請と同時にする場合に限り、何ら添付書面を要せず、手数料を納付して、本店所在地管轄する登記所を経由してすることができることとしております。  第五に、不動産登記については、現行不動産登記法上の諸制度改善合理化を図るため、担保権に関する登記抹消手続の要件を緩和するほか、閉鎖された登記用紙保存期間の延長、登記事項に変更がないこと等の証明制度廃止等の措置を講ずることとしております。  また、商業登記については、現在無料とされている商業登記簿閲覧受益者負担原則等の見地から有料化し、手数料を徴することとしております。  以上がこの法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  4. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。     ─────────────
  5. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  本案の審査のため、参考人出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  8. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  9. 千葉景子

    千葉景子君 ただいま法務大臣の方から今回の法案の提案の理由を説明いただきましたが、この法案に入る前に一般質疑にかかわる問題でございますが、一、二点だけ質問させていただきたいと思います。  まず一点目ですが、つい先日、おとといの報道などによりますと、十八年前のよど号事件にかかわる容疑者というんでしょうか、逮捕されたという報道がなされております。これについて、この間の事実経過といいますか、それを警察庁の方から御説明いただけますか。
  10. 國枝英郎

    説明員國枝英郎君) 事案概要について申し上げます。  昭和四十七年に北朝鮮に帰国いたしました二重国籍人物日本戸籍が盗用されまして、昭和六十一年、この人物名義日本旅券が不正に取得されておったわけでございます。兵庫県警祭におきましては不正に取得した人物を五月六日旅券法違反で逮捕、取り調べを行いまして、先日赤軍派よど号ハイジャック事件犯人紫田泰弘と断定した次第でございます。
  11. 千葉景子

    千葉景子君 現在明らかになっている事実というのは、そこまでということでございますか。
  12. 國枝英郎

    説明員國枝英郎君) 概要としては以上のとおりでございます。
  13. 千葉景子

    千葉景子君 ところで、この中で残留戸籍国籍といいますか、二重国籍の問題が取り上げられているんですが、これの実態などは把握なさっていらっしゃるんでしょうか。警察庁の方ではいかがですか。
  14. 國枝英郎

    説明員國枝英郎君) 警察庁としては把握いたしておりません。
  15. 千葉景子

    千葉景子君 法務省の方で何かこれについて今後調査をなさるというようなことも、これもまた報道の中で出ているようです。これは事前に通告はさせていただいておりませんけれども、けさの新聞報道等でこういう記載がなされておりますが、この点については法務省の方はいかがですか。
  16. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 市町村において、日常の事務処理の中で二重国箱把握したような場合には、市長村長が法務局の方に通知をするということにはなっております。しかし、特に二重国籍者を事改めて調査をするということにつきましては、先ほどの昭和五十九年の国籍法改正の際、国箱選択に関連して二重国籍者把握が二重国籍者の差別につながらないか、つながらないようにすべきであるという議論もございましたような次第でありまして、慎重に対応すべきものと考えておりまして、直ちにそのようなことはできるとは思っておりません。
  17. 千葉景子

    千葉景子君 かなりこういうものを利用してといいますか、こういう事件がある、こういうことも可能性がございます。片方では、日本に在住する外国人等については管理が登録という形で厳重に行われているわけですけれども、逆に内外を割と自由に行き来がやれているというこういう現状について、法務省としては今後どんなふうにお考えになっていくつもりでしょうか。何か検討なさっているようなことはございますか。
  18. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 一般的に二重国籍というものが非常に好ましくないものであるということは、国際的な考え方として出てきているわけでございますけれども、しかし、例えば先生御指摘のように、特にパスポートを二重に使って出入りするというようなことがございますと、入国管理というものが全くルーズといいますか、しり抜けになるという結果があるわけでございます。  ただ、その二重国籍把握という問題につきましては、先ほど局長が申し上げましたように非常に難しい問題がございます。そして、そういう意図がない、善意の方々もおられるわけでございまして、そういう方々の何といいますか、権利の保障と申しますか、そういうものについても配慮すべきだという御意見も当然あるわけでございます。その弊害と、それからそういう権利侵害にわたるかどうかということとの調和の上で、私どもとしては、そういう二重国籍というような状況をなるべく解消する方向考えていくべきかということは検討してまいりたいというふうに思っております。
  19. 千葉景子

    千葉景子君 これは今後どういう問題点が生ずるか、私もまだ整理がつきませんけれども、捜査の面では十分に大きな事件ということで、第三者の人権を侵害したりあるいは無理な捜査などがなされないようにその辺の御配慮をいただきたいと思いますが、警察庁の方はいかがですか。
  20. 國枝英郎

    説明員國枝英郎君) 警察の捜査におきましては、違法な事案を認知いたしました場合には、厳正、公平に対処いたしておるところでございます。
  21. 千葉景子

    千葉景子君 それじゃもう一点、今度は別な件でお尋ねしたいと思います。  最高裁で先日陪審制の問題を検討あるいは研究をしていくというようなお話が報道されておりましたけれども、これは一体どういうことでございましょうか。
  22. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者吉丸眞君) 五月二日に行われました最高裁判所長官記者会見におきまして、この陪審参審制度に関する発言がございました。その御発言の要旨はおおよそ次のようなものでございます。  将来一層裁判所国民に開かれたものとし、裁判に対する国民の理解と支持を得やすくするという観点から、裁判手続等についてもいろいろ検討していく必要がある。その一つとして、陪審あるいは参審というような形で国民裁判に参加するというような制度についても、もとより直ちに実行するということではないけれども、将来の裁判制度考えるに当たって検討されるべき問題であると思う。大体そのような御発言があったわけでございます。
  23. 千葉景子

    千葉景子君 これは、今後どのような検討あるいは制度として取り入れていかれるような具体的な予定予定といいますか、そういうことは現在の時点でどんなふうにお考えになっていらっしゃるんでしょうか。
  24. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者吉丸眞君) 現在のところでは、刑事局におきまして文献等をもとに基礎的な研究を行っているところでございます。  これはもとより、今すぐどうこうするというような問題ではなくて、将来の刑事裁判のあり方を広くいろいろ考えていくに当たりまして、先ほどの長官の御発言にもございましたとおり、一つ研究課題として取り上げて基礎的な勉強をしているということでございます。そういうまだ基礎的な勉強という段階でございますので、将来のことにつきまして申し上げるほどのことはないわけでございます。
  25. 千葉景子

    千葉景子君 わかりました。  最近司法制度につきましても、司法修習の問題であるとか、司法試験の問題であるとかそしてこういう陪審の問題であるとか、さまざまな、いろいろな制度改革あるいは検討、こういうものがなされていらっしゃるように思うんですね。こういう問題は、全体に司法について将来こういう方向で充実させていこうとか、何か一番基本になるような考え方にのっとって行われていることでございましょうか。その辺はいかがですか。
  26. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者吉丸眞君) 大変大きな問題でございまして、恐らく刑事局長が答える権限の範囲を超えているようなところではないかと思いますが、さしあたり陪審参審制度の問題について申しますと、先ほども出ましたけれども、今すぐということでなくて将来の裁判というものを考えていく場合に、いわば国民に開かれた裁判所と申しますか、あるいは裁判に対する国民信頼を確保していくという観点と申しますか、そのような非常に大きなといいますか、広い視野から見た場合に、やはり一つの問題として陪審参審などの制度についても研究をする必要があるのではないか、このような考え方に立つものでございます。
  27. 千葉景子

    千葉景子君 ぜひ開かれた民主的な司法、こういう点も今叫ばれているところでございますので、この陪審に限らず、そういう観点をぜひ頭に置きながら今後研究を重ねていただきたいというふうに思います。  それでは、法案にかかわる質問に入らせていただきたいと思います。  今回は不動産登記法商業登記法の一部を改正するという法律案でございますけれども、今登記制度現状、その数であるとかあるいは登記の具体的な事件内容とか、こういう登記制度登記現状といいますか、これは大枠どのような現状にあるのでしょうか。
  28. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 登記申請事件経済の拡大に伴いまして逐年かなりの勢いで増加をしてまいっております。これは登記申請事件、いわゆる甲号事件はもちろんでございますし、特に謄抄本請求及び閲覧請求といういわゆる乙号事件においてその傾向が顕著でございます。  事件数につきましては、お手元にお出しいたしております法律案関係資料の後ろの方でございますけれども、参考資料の6というところに昭和五十一年度から六十一年度までの件数が記載してございます。六十二年度につきましては、まだ会計年度としましては集計ができておりませんが、六十二年一月から十二月までの暦年でもって集計をいたしましたところによりますと、登記申請事件数は二千五百九十六万六千件であり、謄抄本交付等事件は四億九千九十八万五千件でございます。これはいろいろな土地の需要その他現在の経済情勢、景気の動向を反映しておるものでございます。また、特に近年では首都圏等大都市圏にその傾向が著しい、都市集中傾向がある。と同時に、その内容におきましても、事件複雑化多様化という傾向が見られるというようなところでございます。
  29. 千葉景子

    千葉景子君 数は本当に相当増加をしているということがこの資料でもよくわかります。事件内容複雑化というのは、具体的に言えば例えばどういうところにあらわれているんでしょうか。
  30. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 例えば事件処理がかなり困難であると申しますのは、区分所有建物が非常に多くなってきている。こういったものにつきましては、先年区分所有法不動産登記法改正されまして相当程度改められてはまいりましたが、事件処理困難性というものは存在するというふうに言ってよろしいんじゃないかと思います。また、いろいろな担保権等登記、それから公共事業関係で大量の登記申請がなされるといったようなことも事件複雑化させている原因であろうと思います。
  31. 千葉景子

    千葉景子君 登記現状をお聞きいたしますと、やはり数の増加、そして複雑化といいますか、こういうものがあらわれているように思います。  ところで、今登記制度の中でこういう点が問題になる、改善をしなければいけない問題点であるというようなところは、法務省の方としてはどんな点を認識していらっしゃいますでしょうか。
  32. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 現象面であらわれたところを申し上げますと、よく言われることでございますが、お客様に対するサービスが甚だよろしくない。サービスの悪い方の官庁を順番で数えて何番目であるというふうなことが往々にして取りざたされるわけでございまして、これは、その主たる原因事件増に伴う極度の繁忙化というところに原因があるであろうと思われます。また、近年登記簿抜き取り改ざん等部外者による不正事件が起こってきている。これがしばしば報道されて、新聞紙面をにぎわすようなことになっておりまして、これなどは、登記制度に対する国民信頼を揺るがせる重要な要素になるおそれがあるという危惧を抱いております。
  33. 千葉景子

    千葉景子君 法務省の方から言っていただいてしまったものですから、サービスが悪いというのは余りこちらから申し上げる必要はないんですけれども、どうしても繁忙化してまいりますと処理が遅滞をするというようなこともあろうかと思うんです。  それから、今おっしゃられたように抜き取りとか改ざんというような登記信頼性、こういうものを揺るがせるおそれのあるような行為、こういうものはできるだけ今後改善をしていかなければいけない点だというふうに思っております。  今の事件処理、これは個々事件申請内容にもよるかと思いますけれども、どのくらい時間がかかっておりましょうか。
  34. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) これは、個々登記所における事情がそれぞれ置かれた場所によりまして、また環境によりましていろいろ違うものでございますから一概に申し上げることはできないのでありますが、登記申請事件あるいは謄抄本交付等申請を受けてから、それを全部処理し終わるまでにどのぐらい待っていただいたかというのを調査したものによりますと、これは全くの単純平均で出しておりますので、必ずしも実態をどの程度正確に反映しているかどうかはわかりませんが、登記申請事件、いわゆる甲号事件におきましては、全く単純に平均をいたしまして三・八日ぐらい、それから謄抄本交付につきましては三・八時間ぐらい、こういうふうな結果を一応把握いたしております。
  35. 千葉景子

    千葉景子君 甲号事件は三・八日、これは単純平均ということでございますけれども、これだけいろいろ取引などが複雑化してくる時代を考えますと、平均が三・八日ですから、これ以上の場合もあれば以下の場合もあるかと思うんですね。急を要する申請もあろうかと思います。そういう意味ではさらにこれを迅速化するという必要があるのではないかと思うんですが、今回のこの不動産登記法商業登記法の一部を改正するというのは、多分この迅速性といいますか、サービス向上、こういうところに大きな眼目があろうかと思いますけれども、そういうとらえ方でよろしいんでしょうか。
  36. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) まさに御指摘のとおりでございます。これを迅速に行い、お客様に対するサービス向上させるというところにねらいがあるわけでございまして、そうすることによりましておのずから事務処理が適正に行われる、事務処理上の過誤も減少させることができるという効果もあると考えております。
  37. 千葉景子

    千葉景子君 もう一点の、先ほど出ました登記信頼性という問題、それをできるだけ確保していく、こういう課題ももう一方にあろうかと思うんです。これについては現在の制度の中での担保している制度、あるいはそれ以外にこういう点を考えていかなければいけないというところ、どんな点があるでしょうか。
  38. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 現行登記制度のもとにおきましては、登記登記権利者登記義務者共同申請によるということを建前にいたしておりまして、双方の意思をそこに明示させる。これは、具体的には登記申請書もしくは委任状に押捺されている印影と印鑑証明書とを照合するという形で、実際に意思が確認できるわけでございますが、さらに添付書面としまして登記義務者が保有いたしております登記済み証、いわゆる権利証を添付させる。さらに、付随的ではございますが、登記原因証書が存在する限りはこれも添付させる。あるいはその他保証書であるとか、いろいろな書面によりまして真正を確保するという仕組みになっております。
  39. 千葉景子

    千葉景子君 そういう仕組み信頼性をできるだけ確保していくという建前になっておろうかと思うんです。しかしながら、中には改ざんであるとかあるいは不正な登記がなされるというようなことがないわけではない。こういう問題については、法務省としては今まで制度的に備わっていること以外に、こんな形でそれを防いでいこうというようなお考えはございますか。
  40. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 登記コンピューター化を進めてまいりますと、登記簿に悪いことをするという方法によって、部外者が不正な登記面を作出して犯罪行為ないしそれに類するようなことを行うということは、もうほとんど防止できるであろうというふうに考えます。  いま一つコンピューター処理によりまして相当程度事務省力化ができるということになりますと、登記所の職員の側から申しますと、それによって生じた時間を審査事務の充実に振り向けることができるというふうに考えております。現状におきましては、登記申請事件審査、これは極めて重要なことでございますが、事務繁忙のために場合によっては必ずしも十分行われていないという場面がないわけでもございません。そういった点は今後大いに改善され得る可能性があるというふうに考えております。
  41. 千葉景子

    千葉景子君 ところで、今回の改正、これは迅速化を図る、サービスをよくするというような趣旨で基本的には電子情報処理組織コンピューター化と簡単には言うんでしょうが、こういうものを導入するというのが基本的な柱であろうかと思うんです。  この電子情報処理組織を用いることによって、どんな点でどの程度といいますか、迅速化あるいはサービスの点で改善が図られるということになるんでしょうか。
  42. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) コンピューターによって登記事務処理するということによりまして、当面最も大きなメリットが生まれると考えられますのは、いわゆる乙号事務についてであろうと思っております。  乙号事務につきましては、現状では先ほど申し上げましたような待ち時間を要するというのが残念ながら現状でございますけれども、これはコンピューター活用におきましては相当画期的な処理の促進が図られるのじゃなかろうか。それでは、それはどのくらいかと、こういうふうにおっしゃられますと、現実にまだブックレスで、現場においてその処理をいたしておりませんから、どれだけというふうに申し上げることは甚だ難しいのでありますが、これは一度ごらんいただきますればよくおわかりになると思いますけれども、相当程度スピードアップが図れると言って差し支えないと思います。と同時に、コンピューターからプリントアウトされた謄本、今後登記事項証明書と呼ぶことになりますが、これは大変きれいで見やすいものになるというふうに自負いたしておるわけでございまして、そういった点に大変大きな効果があるものと考えております。  もちろん、登記申請事件いわゆる甲号事件についても、その効果は及んでまいります。ある程度処理時間の短縮というものは当然期待できるところでございますし、また一定の記載例を呼び出してそれに必要事項だけを打ち込んでいくというやり方をとることができますから、記載漏れであるとか、誤記であるとかといったような登記処理上の過誤も減少させ、登記適正化に役立つものと思っております。
  43. 千葉景子

    千葉景子君 大分このコンピューター化によって期待できる点があるのではないかと思うんですが、このサービス向上、迅速な処理あるいは先ほどの登記信頼性、こういう点なども含めまして今回はコンピューター化という点で改正がなされました。今後はさらにこんな点で改正作業とか考えているというふうな点はございますか。
  44. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 今回は、さしあたり今までの紙でできた登記簿記載をするという登記のやり方だけでなく、コンピューター登記簿、電磁的記録にこれを格納するという形での登記もできる、そういう改正をお願いしたわけでございます。今後、これをそのような方式で事務を進めていった場合に、事務処理上どういう問題が起こってくるかということは現在必ずしも全部が全部把握できているわけでもございませんので、あるいはさらに法律に手当てを要するという部分ができてこないとも限らないと思います。そうなりますれば、またそのような改正は当然必要になってまいります。さらにもっと先のことを申しますと、全部の登記所についてコンピューター化が完了をしたという暁には、もう登記用紙でもって構成されている登記簿登記をするということはなくなるわけでございますので、ややこしい読みかえをして、今の登記法を使用するというのではなくて、やはり全面的に改めるということも当然考えられていいのではなかろうかと思っております。
  45. 千葉景子

    千葉景子君 それ以外の面で登記法の内容改正などは、当面は考えられていないということでしょうか。
  46. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 登記の真正確保の手段として、当面問題になっておりますのに保証書制度がございます。これは確かに見直しを要する点があるのではなかろうかと思っております。この点などにつきましては、どのような方策が考えられるかということを検討いたしまして対処してまいりたいと思っております。
  47. 千葉景子

    千葉景子君 ところで、このコンピューター化に伴いまして徐々に移行作業が進んでいかれるだろうというふうに思うんですが、当面のコンピューターシステムへの移行計画というんでしょうか、これはでき上がっているんでしょうか。
  48. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 移行の方針につきましては、昨年、民事行政審議会からちょうだいした答申の中にそのことが触れられております。お手元の参考資料の中の民事行政審議会答申の十七ページのところからそれが書かれてあるわけでございまして、私どもは、方針といたしましては、大体この方針に沿って移行計画を進めてまいりたいと思っております。まず繁忙登記所の方から優先的に実施する。それがコンピューター化によるメリットを端的に、顕著にあらわすことができるというふうに考えております。  そういった方針のもとに、まず初年度の移行といたしましては、各法務局、地方法務局において比較的移行量の少ない中規模登記所一庁を対象とし、その後各年の移行量はほぼ均等にすることとして、計画全体は後半の方に傾斜させるというふうな答申になっておりまして、このような方針を私どももとってまいりたいと思っております。
  49. 千葉景子

    千葉景子君 ちょっと具体的にお聞きさせていただくんですが、まず第一弾といいますか、モデルケースのようにもなろうかと思うんですが、具体的にはどのような登記所からこのコンピューター化というのをお進めになられますか。
  50. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 御承知いただいておりますように、東京法務局板橋出張所では、昭和五十八年以来パイロットシステムを稼動させてまいりました。そこで、本法律案が成立いたしました暁にはまず第一号として、今後はブックレスシステムでコンピューター登記簿だけで運営することになりますが、板橋出張所を第一号として大臣に指定をしていただいて運用を始めたい、こう考えておるところであります。
  51. 千葉景子

    千葉景子君 全国的にはどんな移行の進展になりますか。
  52. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 全国で八ブロックございます。その各法務局、八つの法務局の管内におきましてそれぞれ一庁ずつ選んで、そこについて移行を始めていくというのが基本的な方針でございまして、既に昭和六十二年度で四庁についてその作業に着手をいたしました。六十三年度においては残る四つの法務局においてもこれを始めたい、こういうふうに思っております。
  53. 千葉景子

    千葉景子君 これは、具体的な登記所の名称といいますか、選択はもう決まっていらっしゃいますか。
  54. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 既に着手いたしております四つの登記所を申し上げますと、東京法務局江戸川出張所、大阪法務局の不動産登記部門、これは本局でございます。それから名古屋法務局名東出張所、仙台法務局大河原支局でございます。さらに六十三年度には、広島、福岡、札幌、高松でそれぞれ移行作業に着手するべく準備をいたしておりますが、これはまだ具体的に確定するまでには至っておりません。
  55. 千葉景子

    千葉景子君 その準備としては、登記ファイルの作成作業というものが既に進められていると思われるんですが、これはどのような形で今行われているんでしょうか。
  56. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 登記ファイルの作成に当たりましては、現在紙の登記簿に載っております登記データをすべてコンピューターの磁気ディスクに移さなければならないという作業が伴うわけでございます。その場合には、そのデータを現在の登記簿から出しましてそれを登記簿に、磁気電子的記録の形に変換いたしまして、そしてそれを校正し、最後にきちんとチェックして正しいものだということを確認する。こういう一連の作業が要るわけでございまして、これを登記所の職員だけでやるということは非常に困難でございます。  したがいまして、その最終的なチェックの部分につきましては法務局の職員がやるということでございますが、その前段階のものにつきましては外部に委託をいたしまして、そこでやっていただくというようなことで現在処理を進めております。
  57. 千葉景子

    千葉景子君 そうすると、もう六十二年度決定をされている大阪、名古屋、仙台、そして東京も含めてですが、ここの作業というのは相当進んでいると考えてよろしいんですか。
  58. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) それぞれそういう外注先と申しますか、そういうものを選定いたしまして、入力原稿を作成し、逐次作業を進めている過程でございます。
  59. 千葉景子

    千葉景子君 外部委託といいますか、全部法務局の職員の手で行うというのは困難だと思うんですが、これは、具体的にはどういう形で委託をなさっているんですか。何かコンピューター会社といいますか、ソフト会社のようなそういうところに一括して委託をなさる、そういう形ですか。
  60. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 現実に、その作業を行うところはそういうようなことになろうかと思います。法務省の法務局といたしましては、一応総合的な監督を行うという見地から考えますと、公益法人にその作業を一括してやっていただいて、あと具体的な作業はかなり地区ごとに分散いたしますので、具体的にやるところの将来の能力、これが終わったときの位置づけ等も考えまして、外部のしかるべき信頼性のあるコンピューター会社を選定して具体的な作業はやっていただく、こういうようなことを考えております。
  61. 千葉景子

    千葉景子君 その登記ファイルの作成作業ということになるんですが、これは民事行政審の方の答申から考えると、登記簿記載されている事項で現に効力を有しないものは省略してもよいというような答申になっておりますけれども、法務省のお考えとしては、この答申どおりの方向でおやりですか。
  62. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) これは利用頻度とコストとの兼ね合いによるわけでございますが、基本的には現在粗悪用紙を移記する、あるいは事項が多くなり過ぎた登記用紙についての移記というものと同じように、現に効力を有する事項についての移記を原則にするのがいいのではないかというふうに考えております。ただ、非常に利用頻度の多いということがある程度予測されるもの、そして利用者からある程度の要望があるものについては、これを登記簿に、コンピューターに記録の形で移記するということを考えております。  具体的には、不動産の場合でございますと表題部の登記部分でございますが、地目とか地積とか、そういうものの歴史的経過というものを使うということが多いという御指摘がございまして、そういうものとか、あるいは商業登記の場合でございますと、本店の移転の経過とかあるいは商号変更の経過というようなものは、これは会社の同一性というようなものを示すために重要な意味を持つわけでございます。そういうものは移記してはどうか、現に効力を有する事項でなくても移記してはどうかというようなことを考えております。
  63. 千葉景子

    千葉景子君 考えてはどうかということなんですけれども、現実にその作業の中ではこういう部分は移記をされる、省略しないということで具体的にはやっていらっしゃると考えていいんですか。
  64. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 現実に移行作業が行われているのは不動産だけでございますが、不動産はそういう方向でやっております。
  65. 千葉景子

    千葉景子君 今予測されるということでやっていらっしゃるんだろうと思うのですが、今後、これが実際に動き始めて、例えば非常にほかの部分で情報入手の要求が多いというようなものが出てきた場合、そういうところについても移記をするというようなことはお考えですか。
  66. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) この移記すべき事項につきましては、法務省令で定めることができることになっておりますので、そういう需要が出てまいりましたら、私どもとしては適宜そういう方向で対処してまいりたいというふうに思っております。
  67. 千葉景子

    千葉景子君 登記の中などでも、所有者の変遷などもやはり経緯を知りたいという要望もあるような箇所ではないかと思うのですけれども、こんなところは今回は移記するということはお考えじゃありませんか。
  68. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) これは、もちろんそういう需要のある不動産もかなりあるとは思いますけれども、しかし全体として、それを全部移記するということになりますとかなりの事務量になるわけでございます。先ほどの表題部の移記というのは、事項としてはそれほど大きな量にはならないわけで、労力から考えてそれほどコスト増加にもならない、あるいは移行のための作業をおくらせることにもならないという見地から、そういう御要望におこたえしたわけでございますけれども、すべての不動産の所有権の経過を明らかにするということになると、これはまた難しい。非常に量が多いということでございます。  もちろん、最近の例えば十年ぐらいの経過だけというような選択肢も考えられますが、これをやりますと、また十年のものがどれだけかということの入力原稿を確定する段階で、非常に手間がかかるというようなこともございます。それから先ほども申し上げましたように、枚数過多、事項過多あるいは粗悪用紙の移記とか、そういうことで移記をやっているわけでございますが、そういう場合の今までの利用の頻度から申しましても、それほど利用が多いわけではない。そういたしますと、そういう特殊の場合につきましては、閉鎖登記簿を見ていただくということにしませんと、そういう移行経費というものは全部受益者負担ということで、手数料にはね返ってまいるわけでございまして、それがそういう利用をしない人の手数料にもはね返ってくるということについては、やはり私どもとしては考えなければならないわけです。  そういう意味では、移行のための経費というのはできるだけ、もちろん利用者のニーズにこたえるということも非常に大切でございますけれども、それは費用とのバランスの上で考えなければいけないので、そういう見地から考えると現在のところは無理ではないかというふうに考えております。
  69. 千葉景子

    千葉景子君 ところで、コンピューターシステムというのは、一番最終的に便利なところといいますと、登記所以外のところにも外部端末などを置いて、そこでも情報を得ることができるというようなことがある意味では便利なところといえば最終的なところかと思うのですけれども、こういう外部端末の導入とかそれの設置などについては、今法務省としてはどんなふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  70. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) その点は、先ほど局長も申し上げました民事行政審議会の答申の中にも触れられているわけでございます。これにつきましては先生御指摘のように、登記所へ出向かないでも情報が入手できるという点、ひいては登記所事務繁忙度がそれによってあるいは緩和されるかもしれないというような、そういうメリットが考えられるわけでございますが、一方ではデータの不正入手とか不当利用、あるいは登記データの不当アクセプティッドというような問題点がございます。さらに現状では、そういうシステムをつくるということについてかなり費用がかかるということもあるわけでございます。  そういう不当利用というようなものについて、きちんとした統制と申しますか、チェックができるような体制を考えるということと、それから回線使用料、あるいはコンピューターの負荷の変動というようなものに応ずるコストというものが低減されるということを期待して、これは将来としては、先生の御指摘のような方向というのは望ましい方向ではないかというふうに考えておりまして、前向きに検討してまいりたい。しかし、当面はもう少し地道な努力をしてまいりたいというふうに思っております。
  71. 千葉景子

    千葉景子君 ところで、少し個々の条文といいますか、改正点にもかかわるところでございますが、先ほど移行の第一弾といいますか、それから六十二年、三年のコンピューター化登記所、こういうものをお答えいただいたんですが、今後は法務大臣が指定される登記所においてこのコンピューター化というのが導入できる、こういうような改正案になっているわけですね。これは指定される登記所というのは、今後どういう基準であるいは段取りで指定がされていくというふうに考えられるんでしょうか。
  72. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 法務大臣による指定は、現行の薄冊の登記簿からコンピューター登記簿の方へ移行が完了いたしまして、コンピューターによって登記処理ができるという段階に至りまして大臣に指定をしていただく、こういうことでございます。したがって、どういう順序で指定をしていくかということになりますと、それは先ほど申し上げました移行をどういう順序でやっていくかということにかかわってくるわけでございます。さしあたって出だしのところは、いわばテスト的にやるわけでありますから、中規模程度のところ一カ所を選んで始めることになりますが、その後は繁忙登記所を優先的にやっていく。そして、逐次そうでないところに及ぼしていく、こういう考えでありまして、指定もおのずからそのような順番になってまいります。
  73. 千葉景子

    千葉景子君 登記所は全部で千百七十とも言われておりますけれども、一定のものとか小さいところとかを除いては、最終的にはコンピューター化というのがなされていくのだろうと思うんですが、大体どの辺を完成時点というふうに考えてよろしいのでしょうか。
  74. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 約千百七十の登記所の全部をコンピューター化する計画でございます。そのうち小規模のところにはコンピューター本体は必ずしも設置しないで、隣接の登記所と端末でつなぐという形での処理考えております。  この全体計画でございますが、何分にも大きなプロジェクトでございまして、どのぐらいということは先の見通しの問題になるわけでございますが、私どもは答申にものっとりまして、大体十五年ぐらいかけてこれをやりたい、二十一世紀当初には全部移行しているような形に持っていきたいというのが計画であります。
  75. 千葉景子

    千葉景子君 時間でもございますので、視察、参考人の御意見等を聞きましてから、また個々に御質問させていただきたいと思います。  終わります。
  76. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 私は、不動産登記法商業登記法の一部改正法律案に対する質問に先立ちまして、今日までの経緯について若干お伺いをいたしたいと思います。  まず第一に、昭和六十年に制定された電子情報処理組織による登記事務処理円滑化のための措置等に関する法律、いわゆる円滑化法でありますけれども、この円滑化法には、コンピューターを用いて登記を行う制度その他の登記事務を迅速かつ適正に処理する体制の確立に必要な施策を講ずることが国の責務である、こうされているわけでありますが、この円滑化法と今回の登記改正との関係をどのように理解すればいいのか、まずお尋ねをしていきたいと思います。
  77. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) ただいま御指摘のございました円滑化法、これによりまして、電子情報処理組織を用いて登記を行う制度の確立に必要な施策を講じることが国の責務とされまして、そういう経緯を踏まえまして私どもは、かねてから研究開発を進めてまいりましたコンピューターによる登記事務処理を実現すべく、今回の改正法案を立案して御審議を仰ぐに至ったわけでございます。今回の改正法案は、まさにこの円滑化法の五条によって宣言をされております「必要な施策」として、この法律を提出させていただいたわけでございます。
  78. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 先ほどもちょっとお触れになりましたけれども、法務大臣の諮問機関であります民事行政審議会から、コンピューター化を図る場合の留意点について答申がなされていると思います。今回の法律案はこの民事行政審議会の答申に沿ったものとなっているのかどうか、まずこの辺からお伺いいたします。
  79. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 先ほど触れました円滑化法の五条の第二項で、法務大臣は、この施策を行うに当たって、「政令で定める審議会の意見を聴かなければならない。」と定められておりまして、この規定に基づきまして法務大臣が、その諮問機関である民事行政審議会に諮問をいたしたわけであります。昨年十月に答申をちょうだいして立案を行ったわけでありまして、今回の改正法案はこの答申をほとんど全面的に取り入れて立案したものでございます。
  80. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 そこで、登記所現状コンピューター化の必要性ということについて伺うわけであります。  今回の登記法の改正案は、最近における登記事務処理状況にかんがみ電子情報処理組織、すなわちコンピューターシステムを用いて登記を行う制度を設け、その制度のもとにおける登記手続の特例を定めるというところが主眼点となっているわけでありますが、まず最初に登記事務現状登記所現状についてお尋ねをしたいと思います。  先ほど千葉委員も御質問をなさいましたけれども、御答弁の中で、特に近年登記事件がふえておって、とりわけ大都市及びその近郊の登記所が大変忙しいというようなふうに伺ったわけでありまするし、実態として甲号、乙号を含めて五億二千八百万件ですか、そういうような膨大な件数が出てくるわけでございます。登記所の事務の取り扱いの実情というのは現在どうなっているのか、この辺をお伺いしたいと思います。
  81. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 近年、特に大都市圏において登記事件増が著しいわけでございます。これは、経済活動が極めて活発であるということのほかに、土地に対する需要が非常に多くて土地が細分化されてきているというようなこと、あるいは建物が高層化されて区分所有の建物がふえているとか、あるいは持ち家政策が推進されている、公共事業関連嘱託登記が非常に多くなっているというようなことが関係をしてまいっていると言ってよろしいかと思います。  そういう状況になりますと必然的に登記事務は極めて繁忙になってまいります。その繁忙対策としましては、もちろん内部の省力化は必要でございますし、能率器具、その他必要な物的手当てもしなければなりませんが、同時に人的な手当てもお願いしなければならない。年々極力増員をお願いしてまいっております。しかし、事件増と職員数とのアンバランスというものがさらに拡大をしておるのが現状でございまして、残念ながら事務処理の遅滞、それから粗雑化といったような弊害も目にしないわけではございません。こういう状況を何としてでも改善をしなければならないと思っております。
  82. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 先年来いろいろと登記所合理化を進められまして、合併とか統合とか随分おやりになりましたね。にもかかわらず、随分件数がふえているというところに私どもはちょっと疑義を感ずるわけでありますけれども、その登記事件増加によって登記事務処理上どのような問題点があるのか、またコンピューターを導入する必要性、あるいはコンピューター化を図ることによってどのような問題点が解決をされるのか、まずこの辺の御説明をお聞きしたいと思います。
  83. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 事件数と職員数がアンバランスになって事務処理の遅滞を招いているということは先ほど申し上げたところでございますが、もう一つ、二つつけ加えるといたしますと、現行登記制度はブック処理のシステムである、唯一無二の登記簿というものを使って登記事務を行っているわけでございまして、事件増加してまいりますと、一冊の登記簿の使用頻度が非常に高くなってくる。そこで、甲の人と乙の人との申請が同じ簿冊について競合いたしますと、片方で登記簿を使っておれば別の方の人の登記申請事件はその簿冊があくまで処理ができないというようなことになってまいります。  さらに、ブックシステムのもとではそのブックそれ自体をお客さんに閲覧をさせる。一つしかないものを見せるがために、その登記簿について不正な記入をされるとか、抜き取りをされるとかというふうな出来事も起こってくるわけであります。そういったゆゆしい事態が起こってくる、これが非常に顕著な弊害であるということが言えようかと思います。さらに、登記簿を絶えず搬出入をしている、狭い登記所の中で人が動き回るということで、職場環境を非常に悪くするといったような弊害もあわせて指摘することができようかと思います。コンピューター化という今回の事業は、これらの抜本的解決を目指したものであります。
  84. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 田舎の末端の方へ参りますと、登記所合理化等によって非常に不便を逆に感じているところが随分出てきておるわけであります。そういう意味では、コンピューターシステムというものを早く導入すべきであるなと私は思いますが、導入することによって登記制度を利用する国民の側に、今申し上げたようなことを含めてどんなメリットが出てくるのか。それからまた、その一方で登記所の職員のロードワークというものがどういうふうに減らされたり、あるいはどういうメリットが出てくるのか、この辺をちょっとお尋ねをしたいと思います。
  85. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 登記事務コンピューター化は、登記所の中における事務処理のやり方を登記用紙で構成されている登記簿からコンピューター登記簿に切りかえるということでございまして、外部の一般国民の方と登記所との関係、登記申請の関係につきましては別に何の変更も加えるわけではないわけであります。手続的には何も変更はない。しかし、登記所の内部の事務を合理化しスピードアップすることによりまして、申請人の方に非常に大きなメリットが生ずる。先ほども申し上げましたように、特に乙号事件につきましては現在よりもはるかに早い時間でもって登記事項証明書交付することができますし、それは非常に見やすいものになってくるということが言えます。  また、これは現在直ちにではございませんが、将来相当広範囲に指定庁がふえていきましたならば、登記事項証明書を別の管轄外の登記所でもって請求できるとか、支店登記本店所在地登記所を経由してできるといったような国民の利便も生まれてくるわけでございます。職員の側から見ますと、これは薄冊処理から端末装置の操作というふうに仕事は変わってまいります。しかし、登記事務登記法によって、実体法の定めるところに従って処理をするという事務工程の基本に何も変更があるわけではございません。  私どもとして考えなければならないのは、新たに端末の操作、VDT作業といったようなものによってどういう健康上の影響が生ずるか、そういった点に対する配慮はどうしても必要であろうと思っております。
  86. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 コンピューター化を今後進めるに当たっては、膨大な登記簿冊をコンピューターに全部入れなければならないわけです。これはコンピューター化移行に当たっては、現在の登記簿記載されている事項というものは全部コンピューターに入れることになるわけですか、ちょっとその辺を。
  87. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 先ほど千葉委員の御質問にもお答えしましたように、全部を移すわけではなくて、現に効力を有する事項ということで、例えば既に抹消されている登記事項というものは移さないということで、原則として移さないということで対応したいというふうに考えております。
  88. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 先ほどの御答弁の中では、何かしらせっかくこういう計画をお立てになっていて、最終的に全部できるのが二十一世紀だなんというような、気の遠くなるようなお話をされましたね。私はできるだけ急いで、二十一世紀なんて言わないで、今世紀中に何とかしてこれをやっていただけないのかと思うんです、どうせやるんであれば。しかし、これは金もかかるわけでございますので、全国の登記所についてコンピューター化を推進するには、今申し上げた相当費用がかかると思うんです。そのための資金計画は一体どうなっているんですか。  また、現状の見通しでどのぐらいの資金総額を考えていらっしゃるのか。それによっては我々も大いにひとつ協力して、もう一年でも二年でも早く促進するように努力をしたいと思うんですけれども、その面についての御答弁を煩わしたいと思います。
  89. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 大変長過ぎる期間ではないかという御指摘は、まことにごもっともでございます。これには資金計画をどのように立てるか、それとの兼ね合いもあるわけでございます。さしあたり、コンピューター化をするための経費の総額がどれくらいかということになりますと、特別会計を導入していただきました当時の試算では五千億円弱ということを申し上げていたわけでありますが、現段階におけるおおよその見込みを申し上げるといたしますと、やはりこれは五千億を超えるものになるというふうに考えております。  この実施経費は円滑化法を制定していただいたときに、それにのっとりまして、特別会計法をつくっていただきまして特別会計が導入されたわけでありますが、その登記の特別会計制度のもとでは、主として登記情報の利用者、つまり乙号の利用者の負担をする登記手数料によって賄うという考えできておるわけでございまして、その乙号収入を中心とした歳入によって特別会計は運用されていくというふうになっております。
  90. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 十四年も十五年もかかるということになりますと、これは私どもが目の黒いうちにできるかどうかわかりませんし、実際あなた方だって役所にいらっしゃるかどうかこれもわかりませんよね、はっきり言って。  私どもは、やはり時間が長くかかればかかるほど地域間でいろいろな不平が出てくるだろうし、問題も出てくると思うのですね。だから、予算の面だけでそういうことができないんだと、もう二十一世紀までかかっちゃうんだということであれば、その計画の組み方もまた別に出てくると思いますので、これは御要望だけにしておきます。私どももできるだけ早くしていただくように、少なくとも私どもが議員をやっているうちに、来年私は選挙ですから、この次は出てくるかどうかわかりませんけれども、そんな中で、やはり全国レベルでやっていただきませんと、何だ我々の時代にこれできなかったのかなんというようなことになっちゃうと、まことにどうも例の公約違反につながってくることになりますから、なるべく早くひとつできるように、ぜひ御協力と御推進方をお願いしたいと思いますし、我々も協力していきたいと思います。  そこで、そうなりますと、登記簿がすべてコンピューター化された暁には、先ほどもお話がございましたが、現在の不動産登記法とか、商業登記法というものは全面的に改正をしなきゃならぬということになりますね。その辺はどういうことになりますか。
  91. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 登記そのものの理論と申しますか、基本的な考え方は何もいじっておるわけではございませんので、そういう意味での改正が必要であるかどうかは、今後のコンピューター化の推進の中で見きわめていかなければならないと思います。  今回の改正法で、電子情報処理組織を用いて登記事務を行うについては、従来の法律の特例としてこれだけの規定を設けなければならない、そういう考え方で立案をしております。全部がコンピューターになってしまいますと、専らコンピューターだけを対象にした法律になっていけばいいんで、登記用紙で構成されている登記簿を対象としたような規定は不要になるわけでございます。そういう意味で、全面的な見直しは必要になってまいろうと思います。その際には、片仮名の法律を平仮名に変えるということも可能になってくるわけでございまして、いずれそういう時期は参ると考えております。
  92. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 ところで登記所には、登記簿のほか例の図面があると思うのですね。図面も多数保有していると思いますけれども、このような図面の種類、それから地図はどのぐらい保有しているんでしょうか。  それから、これらの地図をコンピューターに入れるようになるような計画をなさっていらっしゃるのかどうか、この辺をお伺いしたいと思います。
  93. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 登記所にはいろいろな図面がございます。それを種類別に申し上げますと、昔から存在しております税務署から引き継ぎました旧土地台帳附属地図が、枚数にいたしまして二百三十五万枚。それから国土調査法による地籍図が百七十二万枚。土地改良、土地区画整理等の図面が六十七万枚でありまして、法務局が独自に作成をした図面は二千枚でございます。結局、合計いたしますと、四百七十四万枚であります。  不動産登記法では、十七条でもって地図を備えつけるということが書いてございます。ここに言う地図を備えつけるというのは、あるものは何でも備えつけたものになるというのではございませんで、やはり精度の高い現地復元能力のあるような地図のことを指しているわけであります。  そこで、今申し上げましたうち、法十七条の地図として備えつけているものはどれだけかと申しますと、国土調査法による地籍図百四十二万枚、土地改良、土地区画整理等の図面が三十四万枚、そして法務局が作成いたしました二千枚と、全部を合計いたしますと百七十六万枚ほどであります。旧土地台帳附属地図、いわゆる公図でありますが、これは成り立ちの経緯からいたしましてそれほど精度の高いものではありませんので、十七条としての地図として指定することはできません。  そこで、地図のコンピューター化計画があるかと、こういうお尋ねでございますが、これは私どももぜひ実現したい施策であると考えております。ただ、問題は二つございまして、コンピューター化する地図というのは精度の高い十七条の地図でなければならないわけでありまして、そうすると、十七条の地図を極力これから整備してふやしていかなければならないということが一つございます。それからもう一つは、これのコンピューター化には相当の経費を要するわけでありまして、現在の登記簿コンピューター化と並行してやれるだけの余力はございません。そうなりますと、どうしても現在のコンピューター化計画がほぼ完了した後になると申し上げざるを得ないわけであります。
  94. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 地図のコンピューター化は現在の技術でも十分でき得ることでございますから、これは一般の登記簿コンピューター化をするのにもう二十一世紀までかかって、それからまたさらに五年になるか、十年になるかわかりませんが、これはやるのであれば、日本のあらゆる産業の非常に効率化に結びついてくることですから、私は並行してやっていくというような考え方をお持ちになるべきだと思うんです。これは、大臣も特にこの辺に意を用いていただいて、やっぱり研究していく必要があると思うんですね。両方相まってやっていくということが一番いいんですけれども、ひとつなるべく早く、この図面のコンピューター化等についても御検討を煩わしたいと思うわけであります。  そこで、今回の登記法の改正にはコンピューター化のほか、現在の登記制度についても若干の改正がなされているようであります。大変不勉強で申しわけありませんけれども、どのような点が改正されているのか、これをわかりやすく御説明をしていただけませんか。
  95. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 一つは閉鎖登記簿保存期間でございまして、これが従来二十年でございました。これは短いという御意見がございますので、今回長くすることにいたしまして、建物については三十年、土地については五十年というふうにいたしたいと考えております。  それといま一つは、いわゆる休眠抵当権などの抹消手続について簡易な手続を設けたということでございます。これは改正法の百四十二条でございまして、百四十二条に三項後段として規定をつけ加えるということになっております。  現在の規定でございますと、登記義務者が行方不明になっている、この場合には抵当権などの抹消登記を、非常に古い抵当権登記を抹消しようとする場合でございますから、登記義務者といいますのは抵当権者でございますが、どこへ行っているかわからない、そこで消してもらおうにも消してもらえない。それをどうするかということでございまして、現行法では民事訴訟法の規定に従って公示催告の申し立てをするという規定があるわけでございますが、これもなかなか十分に使いこなせないということで今回新たに、登記義務者の行方が知れずかつ債権の弁済期から二十年を経過したとき、このときにはその債務の全額、つまり元本と利息、遅延利息すべて耳をそろえて法務局に供託をしていただく、それによって一応債務が消滅をしたということが推定できるわけでございますので、それだけの資料を整えてまいりますれば登記権利者、つまり土地所有者の方で、単独で抹消できるという特例を設けたわけでございます。
  96. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 時間が参りましたので急ぎますけれども、商業登記簿閲覧の問題でございます。これは従来無料であったものを有料化する、その理由はどういうことに基づくのか、それでまた、有料化によって国民の負担が大きくならないのか、閲覧手数料は一体どのぐらいのことを考えていらっしゃるのか。この辺はどうですか。
  97. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 従来からこれは無料になっていたわけでございますが、これはもともとそれほど大した事務量でないという頭があったと思います。ところが近年、この商業登記簿閲覧というのが非常に数がふえてまいりまして、そういった方々が現実に登記所の狭い場所を占領いたしまして、施設を使って登記簿冊を利用してそれを見ているというわけでございますので、それによって登記所にそれなりのコストがかかっているわけであります。今後これは、もちろんコンピューター化すればコンピューター経費がかかるわけでございます。従来からの閲覧につきましても同様に、何もこれはコストがかからないでできているわけでもございません。そういうことを考えまして、この際有料化について踏み切って応分の費用負担をお願いいたしたいというふうに考えているわけでございます。これは、閲覧手数料としましては不動産登記と横並びの額が考えられると思っております。
  98. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 どうも御丁重な答弁をいただいておるうちに時間がなくなりましたが、今後のコンピューターの問題を実施いたしますに当たっては、会社や法人の代表者の印鑑を提出させて、それの印鑑証明をしているわけでございます。印鑑証明コンピューター化すべきである、こういうふうに我々は考えておりますけれども、これはどうなっていますか。
  99. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) これは、いわゆるイメージ処理方式を採用すべきであるというのが民事行政審議会の答申でございまして、そのシステムを導入いたしますと、ほかのコンピューターシステムとは違う形での処理をしなければならないということがあります。そのために、かなり事務量の多い登記所についてはそういうことをやりたい、コンピューター処理をやりたいというふうに考えておりますが、登記所によりましては会社の数が非常に少ないというようなことで、コンピューター化することに余りメリットのない登記所もあるわけでございます。そういう登記所は従前の仕組みでやるということでございますが、それだけのメリットのあるところについては、先生の御指摘のような方向考えたいというふうに思っております。
  100. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 最後に、大臣にちょっとお伺いをしておきたいと思います。  私は、登記事務改善合理化して国民に対するサービス向上させる、あるいはまた登記所の職員の執務環境をよりよくするためにもコンピューター化を積極的に推進すべきであると考えておるわけであります。そのための第一歩を踏み出すために今回の登記法の改正がなされるものと認識している次第でありますけれども、登記事務改善合理化を図って充実発展させていくことは、国民権利を保全し、取引の安全を保障するためにも極めて重大な課題であると考えておるわけでありますが、このコンピューター化を進めるに当たって、大臣の御所見と御決意を最後にお伺いして質問を終わります。
  101. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) ただいままで説明申してまいりましたように、登記事件が著しく増加をし、また複雑多様化してまいりまして、そういう中から事務の過誤処理でありまするとか、あるいは部外者によりまする登記簿抜き取りあるいは改ざん、そういうようないろいろな問題が派生をしてまいっております。それで、これを改善いたしまして、コンピューターシステムを用いて登記を行う制度を設けまして、またこれによりますると、これが完成してまいりますると、それだけの余裕が登記に携わっておる職員にできてくるわけであります。それで、その職員はさらに事務の審理がよく行える、あるいはまた研修も行っていく、そういう方途によりまして能力を向上させることができるわけであります。  そういういろいろなメリットがありまするので、ぜひこの登記制度コンピューターシステムを用いて行っていくという方法改善をしていきたいと考えておるわけでございまするが、何分にもこのためには五千億以上ぐらい金がかかるだろう。そういたしますると、十五年ぐらいかけるといたしましても毎年三百億ないし四百億の金が余計かかってくる、こういうことになってまいります。したがって、財政当局と十分協議をいたしまして、できるだけ予算を投入していただいて、これを速やかに完成するように努力をしたい、かように考えておる次第でございます。
  102. 工藤万砂美

    ○工藤万砂美君 ありがとうございました。
  103. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 今回のコンピューターシステムによる登記事務の利点というふうなことについてお伺いしようと思いましたら、工藤委員の方からの御質問でいろいろ御答弁がございましたので、その点は省略させていただきます。確かにコンピューターシステムによる登記事務現行登記事務処理に比べて非常に国民に大きな利便を与えるということは、私も非常によくわかるわけです。ただ、これをやっていく上について国民の立場から考えると、いろいろ細かいことはあるでしょうけれども、大まかに言って二つの問題についてきょうはお伺いしたい。  一つは、現行登記利用に比較して国民の費用がどの程度増大するのだろうか、この点が一点です。それからもう一点は、コンピューターシステムに移行することによって国民のプライバシーの保護はどういうふうに変化するだろうかという点であります。  まず最初に、経費の方の問題についてお伺いしますが、経費というか国民の費用負担の増大という側面からお伺いしたいと思います。  先ほどからお話がございますように、国民登記所とかかわりを持つについては、いわゆる登記申請のための事件としての甲号事件と、それから登記されている内容についてのいろんな証明書類をいただきたいという乙号事件と二つございます。まず甲号事件についてお伺いしますと、登記申請をするについては、国民は登録免許税を負担しなければならない、こういうことになっておりますが、この登録免許税というのはどういう性質の税金あるいは国民の負担なんでしょうか、お伺いします。
  104. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 登録免許税は財産権を創設するあるいはそれを移転する、そのほかいろいろございますが、そういう行為を行うに当たりましては、その背後には、やはりそういうことをする人には税金を負担する担税能力があるんだという背景がある。そこに着目をいたしまして財産の移転に対して税金が課せられる、一種の流通税であるというふうに把握されております。
  105. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 登録免許税の問題をなぜここで持ち出すかといいますと、先ほどからお話がございますように、乙号事件手数料で今回のコンピューター化を進めていこうというふうなお考えが前提にあるものですから、この登録免許税という莫大な金額を国民は納めているわけです。これが何らかこちらのコンピューターシステムの移行の方に利用できないものだろうか、こういうふうな点からお伺いしているわけなんです。  それで、登録免許税は今流通税というふうにおっしゃいましたけれども、私が考えるところ、国が設営している登記所において自分の権利登記するということによる、あるいは商業登記で言えば登録する側面もあるでしょうけれども、それによる国家の設営する機関の利用税だというふうに私は考えるんです。だとしたら、このコンピューターシステムによって登記事務を行うというのは、国家が運営している登記所の事務の中核をなすものであるから、この辺はまず国家自身のお金でつくって、そして登録免許税を払ってそこを利用させてもらうというのが筋じゃないかと思うんですが、その辺は私の考えは間違っているのか、いかがお考えでしょうか。
  106. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 国の設営した機関を利用する対価であるというふうなとらえ方をされるといたしますと、これは公の役務に対する反対給付といったような性格を持ってまいることになりまして、手数料というものがまさにそういう考え方に立っていると思うのであります。  登録免許税につきましては、大体これまでの支配的な考え方は先ほど申し上げましたように、その行為の背後にある担税力に着目をして課税をしているのであるという説明が通常であろうと思います。事柄によりましては、そういう手数料的性格のものがないわけではないということを説かれる方もおられるようでありますけれども、一般的には先ほどのように、私が申し上げたような考え方じゃなかろうかと思います。
  107. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 そうすると、甲号事件についての登録免許税はそういうことだとして、乙号事件に関して国民が負担する手数料はどういう性質のものとお考えでしょうか。
  108. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) これは、ただいま申し上げました役務に対して徴収をする料金でございまして、実費支弁を目的とした手数料であると考えております。
  109. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 登録免許税であれあるいはこの乙号事件手数料であれ、先ほどの局長のお話のように、この手数料が国家の設営した機関の利用料だとすれば、その利用料によって国家の機関を設営するというんだと、何か自分でつくって自分で利用させてもらって自分で払っている、何かおかしな、くるくる回っているようなふうに思えますけれども、どうでしょう。
  110. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 国家の財政というものは、基本的には国民の負担と申しますか、租税によって支えられているわけでございまして、広い意味ではそういう性格があるわけであります。  ただ、基本的に先ほど局長が申し上げましたように、その登録免許税等の、所得税あるいは法人税等もそうでございますが、そういうものは一般財源として国がプールをして、それを広く国家予算として配賦するという形になっているのに対して、登記手数料のような性格のものはまさしく受益者負担という観念から、その受益者のみが原則として負担すべきものだという観念で割り振りがされていると、こういうふうに考えております。
  111. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 理屈を言っていてもしようがないのでお伺いをしますが、もし統計的なあるいは数字の確定ができなければ別ですけれども、過去といっても昭和六十年以降今日までの各年度ごとの、登録免許税の国庫の収入額と登記手数料の収入額がおわかりになりましょうか。
  112. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 登録免許税の決算額は、昭和六十年度は六千七十五億円であります。それから六十一年度は七千五百八十一億円であります。六十二年度はまだ判明いたしておりません。  それから登記手数料でございますが、それの決算額は、昭和六十年度が二百六十四億円、ただしこれは特別会計が始まりました六十年七月からの九カ月分でございます。それから昭和六十一年度の年間の決算額は、三百六十四億円であります。昭和六十二年度会計年度の数字はいまだ把握いたしておりませんが、昭和六十二年一月から十二月までの暦年で申しますと、三百九十八億円であります。
  113. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 登記特別会計によって、その乙号事件登記手数料コンピューターシステム導入のための費用に充てる、こういうことなんですが、法務省関係の昭和六十三年度予算によれば、登記特別会計の歳入はどういうふうに概算されておりますか。
  114. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 昭和六十三年度の登記特別会計歳入予算額は、登記印紙収入三百九十億、一般会計からの受け入れ五百六十六億、それから前年度剰余金六十億、ほかに雑収入が八千万円ほどございまして、歳入合計は千十七億円という歳入予算であります。
  115. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 歳入予算の中で、私が特に注目したいのは登記印紙の収入が約三百九十億円あるんです。六十三年度予算の歳出概算を見ますと、登記情報管理事務費として計上されている金額は百六十五億円にすぎません。要するに、登記印紙収入は三百九十億入ってきている。  ところが、いわゆるコンピューターシステムのための直接的な支出としての、歳出としての登記情報管理事務費はその半分にも満たない百六十五億円が計上されているわけですが、この登記情報管理事務費百六十五億円というのはコンピューターシステム導入のための経費というふうに考えてよろしいわけでしょうか。
  116. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 登記情報管理事務経費百六十五億円の内訳でございますが、この中には従来どおりの登記事務処理、乙号事務処理に要する費用としまして大きなところを申しますと、例えば謄抄本作成機器等整備経費が三十一億円、これは謄本をつくっておりますコピーの機械であります。それから謄抄本作成業務委託経費三十三億円、これは謄抄本作成を外部委託しておる経費であります。さらにそのほかに、事件処理経費二十九億円などがございまして、これらは現在行われております乙号事務処理に必要な経費でありまして、コンピューター化経費ではございません。  コンピューター化に関係いたします経費といたしましては、登記情報システム実施経費が二十八億円、電子計算機借料二十一億円、そのほか登記情報システム施設借り上げ料といったようなものが一億八千万円ほどある。これがいわゆるコンピューター化経費でございます。
  117. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 そうすると、登記特別会計をつくって、この乙号事件手数料収入三百九十億円集めておきながら、六十三年度にその移行のための経費として使っている金が一体幾らあるのか。今局長がお話しになった従来からの登記事務にかかる費用としてそれを足し算すれば九十三億円にもなってしまう。そうすると、数十億、五十億か幾らかぐらいは使っているのかもしれないけれども、三百九十億せっかくそのための費用だといって特別会計で持ってきておきながら、コンピューターシステム移行のための金として数十億しか使っていないとすれば、これはどういうことなんですか。
  118. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 手数料収入と申しますのは、登記所謄抄本あるいは閲覧をされる方々がその対価として払われた金額ということになるわけでございまして、当然にこれは、その事務処理に要する費用全体を賄うという趣旨のお金でございます。したがいまして、それはすべてコンピューター経費に使われるものではなくて、コンピューター経費はその中で、何と申しますか、国民が要求されるサービスにこたえたその余りという形から支弁するということになるわけでございます。  この情報の経費というのは、先生御指摘のように、比較的少ない百六十五億でございますが、謄抄本交付等に要する人員の人件費等は、その前の方の一般的な登記所管理費という形で計上されております、登記所管理に必要な経費というところで入っているわけでございます。  さらに施設の関係については、施設整備費という形でそれが入っておりまして、これはいずれも甲号と申しますか、登記申請に要する費用とそれから情報に要する費用、両方とを支弁するということで、これはそれぞれその負担割合を算定いたしまして、一般会計からの繰り入れとそれから登記印紙の収入と、この二つに割り振って予算化されているわけでございます。
  119. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 今おっしゃったけれども、例えば人件費の問題にしたって、この登記情報管理事務に必要な経費の中に謄抄本作成業務委託経費として三十三億円はもう計上されている。結局現行謄抄本事務についての人件費的なものはもう三十三億もここへ出ている。それから、施設整備費と言うけれども、コンピューターシステムを導入するための特別の施設経費なんていうものが幾らあるのか知らぬけれども、施設整備費が七十二億ある。その中の一体どれだけがそれじゃコンピューターシステムのために使われているのか。要するに、私が言いたいのは、登記特別会計をつくって手数料収入でもってコンピューターシステムを整備していきますとおっしゃるけれども、三百九十億集まった登記印紙の手数料のうち一体どのぐらいが使われているのか。そんなことをしているから、先ほど工藤委員も言われたように、先がいつになるかわからぬようなことになるんじゃなかろうかというところです。この点は後で詳しくまた機会があったら伺いたいと思います。  コンピューターシステム完成までの日時と経費については、一応先ほど御説明がございましたので大体わかるんですが、約十五年ぐらいで数千億円という金額のこの数千億円の調達方法というか、入ってくる形というか、これはどんなことを考えておられるのか。
  120. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) これにつきましては、登記手数料を中心としました収入によって賄うことを基本的な考え方にいたしております。今後コンピューター化の作業が順次拡大してまいります。そうなりますと、現実の資金手当てがどのぐらい必要であるか、それと事業量との見合いによりましてその都度検討をしていかなければならないわけでございまして、受益者負担考え方からいたしますと、いずれ手数料の増額ということでもって利用者の方の御負担を願わなければならないと考えております。
  121. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 受益者負担ということを言われるんですけれども、具体的に手数料について幾つかお伺いしたいと思います。  先ほどから、このコンピューターシステムが完成すると、A登記所において、全国的な規模において登記事項証明書をもらえることになる、大変便利なことになる。こう言っているけれども、せっかく便利になっても、さらにそういうふうにしていただく登記事項証明書には、通常の登記事項証明書のほかに遠くからもらってくる分についての通信回線使用料相当額の金額が付加されるというふうなことが答申には書いてあります。この辺についてはどうお考えなんでしょうか。
  122. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 基本的には、その方向考えてまいりたいというふうに思っております。
  123. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 だけれども、極端に言えば国が設営したものじゃなくて、国民乙号事件手数料でつくったシステムで、こんな便利なものができるできると言ってつくっておいて、便利なんだからまた銭を加算しろと言うんじゃ、何か国がやっている仕事として国民としては非常に心外に思うだろうと思うんですよ。大臣、この辺は今回の法案ではどういうふうにして、今後どういうふうに措置するお考えなのかお伺いしたいと思います。
  124. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) ちょっと補足させていただきますと、結局そのお金は、これは回線使用料がかかることは間違いないわけでございまして、その費用を全員で負担するのか、それともその人だけが負担するのかという問題でございます。  したがいまして、長距離電話をかければ長距離電話をかけた人が負担するというのは、これは現在のそういう考え方でございまして、それを市内通話と長距離電話と同じ料金にするというような仕組みにはなっていない。そして、それはまた、そういうふうにするということは国民の常識に反するのではないかというふうに思われるわけでございます。この場合にはいわば長距離電話をかけているわけでございまして、そういう長距離電話による利益を受けている方については、それの利益を受けた分だけは特別に負担していただくということにしないと、手数料体系としては少しいびつなものになるのではないかというのが基本的な考え方でございます。  少なくとも現在のシステムとの比較で申しますと、遠隔地においても登記情報を入手する手段というのはあるわけでございますが、それは郵送による方法でございまして、郵送で請求して郵送で返してもらう。その場合には郵送料を納付して初めて謄抄本交付を求められるという仕組みになっておるわけでございまして、そういう意味では往復の郵便料に相当するものは、少なくとも普通の現行制度と比較してもそれは出していただかないといけないのではないか。それが郵便料とそれから電話のように瞬時にやれるということの利便との比較、それからそれに要するコストとの比較において、そういう金額というのは定めざるを得ないのではないかというのが基本的な考え方でございます。
  125. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 私もあなたがおっしゃるとおりだと思うんです。ただ、今お話の中で基本的に私と考え方が違うところは、長距離電話をかける電話設備はだれがやったかということなんです。長距離電話をかけて非常に料金が高くなる、それは結構な話なんです。その設備は、今例えばNTTならNTTが設備してそれを利用させている利用料金が高くなる、これはいいんです。国民から取った手数料によってコンピューターシステムをつくっておきながら、遠距離電話と同じように便利だからというのは、直ちに理屈が通るわけのものじゃなかろうと私は思うわけです。その点は今後の検討課題ということでお伺いしておきます。  それから、先ほど工藤委員もお話しになりましたけれども、現在商業登記簿閲覧は無料になっているわけです。ところが、今回の法案、私も見落としたんですけれども、よく見てみると現行で無料であるにもかかわらず簿冊の方の登記閲覧も有料にする、それでコンピューターシステムになった場合にももちろん有料にする、こういうふうな法改正になっているわけです。現行制度のもとにおいて商業登記簿閲覧が無料であるということの法的な理由はどこにあるんですか。
  126. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 現行商業登記簿閲覧の無料制は、明治三十二年の非訟事件手続法施行当時からの沿革を有するのでありまして、その根拠として通常挙げられておりますのは、商人に関する重要事項を一般に周知させることを目的とする商業登記制度効果的に機能させるという点であるように思います。しかし、同じ公開制度を担っております商業登記簿謄抄本交付、これは最初から有料なのでありまして、そのことと考え合わせますと、謄抄本は有料だが閲覧は無料だというのは、別に登記事項を一般に周知させるという機能から見まして、そんなに差をつけるのは余り合理的な理由はないんじゃなかろうか。そうしますと、商業登記簿閲覧事務というのは登記所にとって、そんなに目くじら立てるほどの負担になることではなかったというのが、もともとの理由なんではなかろうかというふうに思っております。それが非常に近時さま変わりをしてまいりまして、これの閲覧事務がかなりの分量を占めてくるようになったというのが現在の客観情勢でございます。
  127. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 結局、昔はいわゆる会社なんというのも数も少ない、民法法人なんというのも数も少ない、だからそれの閲覧は無料にしても大したことはなかった。ただ、謄抄本の場合にはともかく手間をかけて紙をつくって渡すんですから、これは銭がかかるのはしようがない。そういう意味で商業登記簿において謄本、抄本の方を有料化する、これは当たり前のことだろうと思うんです。  しかし、商業登記簿においては、不動産登記のような権利関係の問題とは違って、法人の権利能力の存否の問題、要するに法人格があるかないかというそういう問題だから、やはりだれでも行って見れなきゃならない、それから近時になれば類似商号の検索のためにもいろいろぐるぐる見なきゃならない、こういう意味で無料化されているのだろうと私は思うんです。ところが、現在においてはいわゆる株式会社を初めとする会社の数は膨大になってくる、ここで閲覧手数料を他の不動産登記閲覧と同じように二百円ということにしたって、何件あるか私は知らないけれども、莫大な金額がまた国民の負担になる。  しかも、登記の簿冊の方の人にとっては今と何にも変わらない。十年、十五年先にコンピューターシステムになるかもしれぬ、そのときにそっちの方で銭を負担してもらうから今度はこっちの方も銭を負担してもらうということになると、何かお土産がまだずっと先なのに、金だけ先に取られるような感じになる。この辺何とか考える余地はないんですか。
  128. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 先ほどから局長も申し上げておりますように、基本的にはコンピューター経費というのは、登記手数料から賄っていただくということになっておるわけでございます。そういたしますと、その費用は現在のところだれが出すかというと、有料の手数料を出している、つまり謄抄本交付をされている人、あるいは不動産閲覧をしている人の手数料ということになるわけでございます。それで先ほど局長も申し上げましたように、そちらの方も、どうも今後の推移から見るとある程度値上げをしていただかなければならないということになるわけではございます。  そうしますと、無料である者との間の格差というのは非常に大きくなるわけでございまして、無料であるということが、必然的な要請に基づいてこれをやることがおよそおかしいというのであれば、それはその格差もやむを得ないということになるわけでございます。  今も申し上げましたように、もともとそんなに目くじらを立てなくてもいい程度のものだという考え方でやっていたわけですが、それがかなりの費用にかかわるということになると、その分だけは負担をしていただかないとほかの有料利用者が割を食うということになるのではないか。それはやはり負担の公平感を損なうのではないかということが基本の考え方でございまして、その点について御理解をお願いしたいというふうに考えているわけでございます。
  129. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 それは、全然私には納得できない理屈です。せっかくこの手数料からコンピューターシステムをつくったら、今までただだったのが銭がかかるようになったというのじゃ、何か銭払うために銭を払っているようなものだ。  もう一つ手数料に関連して、この答申は将来いわゆる甲号利用者にも、コンピューターシステムのための相応の負担を求める方策も検討すべきであるというふうなことが書かれております。そうすると、登録免許税で不動産価格が相当高額になって、高い登録免許税を払っていて、その上さらに応分の負担を求めることも検討すべきだというふうな答申がありますが、これについては、大臣はどんなふうにお考えなんでしょうか。
  130. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) コンピューター化による効果は、当面主として乙号利用者の方にあらわれると言えますけれども、それに付随しまして、甲号事務の方にもそれ相応のメリットは生まれてくるということは確かであろうと思います。そういうことを踏まえまして、それならば甲号利用者にも応分の負担をさせてもいいんじゃないか、そういうことも考えられないかというのが、民事行政審議会の答申における「今後の検討課題」ということとして取り上げられたことでございます。  表現はこのような形になっておりますが、甲号利用者に相応の負担を求める方策は、それじゃどんな方策があるだろうかということは、これはいろいろ考え方があり得るとは思うんです。根本的には国の財政制度そのもののあり方にかかわってくることでございます。それに見合うものを一般財源から繰り入れるという考え方もありましょうし、甲号事件についても手数料的なものを見込むとかいうような考え方もありましょうし、いろいろなことがございます。また、今後答申に指摘されました状況などを勘案して、いろいろ関係省庁とも協議をしていかなければならないことでございまして、今直ちにこれはどうするということを申し上げられる段階ではございません。
  131. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 私が、なぜこんなに細かいことを申し上げるかというと、結局登記手数料は政令で定めるということになっておりまして、国会の窓口とは関係なしに今後自由に定められる可能性があるわけです。そして、しかも先ほど申し上げたように、登記特別会計で三百九十億国民が年間支払っている金の中から、直接的にコンピューターシステムのための金としては数十億しか使っていない。それで、後になってやれ金が足りないどうだということで受益者負担受益者負担ということで手数料を二倍にする、三倍にするということになったら、国民の負担はたまったものじゃない。  そういう意味でこの手数料を、法律事項じゃないですけれども、改正するのどうのというふうなことについては、国民の負担の軽減を図るということを前提はして慎重に考えてもらわなきゃならない、こういうことで申し上げているわけです。  もう一つ、プライバシーの問題を伺おうと思ったけれども、時間がなくなりましたので、法務大臣に、ともかく手数料を今後いろいろ増額するようなことになる場合には、非常に慎重にやっていただきたい、この点についての御意見をお伺いして終わりにしたいと思います。
  132. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 御承知のように登記特別会計は、登記手数料のほかに一般会計から繰り入れをしてもらいまして、それで賄ってきておるわけであります。そして、先生おっしゃいまするように目的税ではありませんが、登録免許税は七千億から八千億になっておる、それだけこの登記所が稼いでおると言ってもいいわけでございます。そういうことも考慮いたしまして、これから、一般会計からもできるだけ繰り入れを考えてもらい、そしてまた登記手数料の方も考えてもらって、その辺も調整いたしながら、この辺を財源として決めていきたい、かように考えておるわけでございまして、よろしくお願いいたします。
  133. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 どうもありがとうございました。  終わります。
  134. 橋本敦

    ○橋本敦君 私の方からも伺います。きょうは最初の質問ですから、まず大きな観点から政府の見解をただしていきたいと思います。  言うまでもありませんけれども、六十年のいわゆる円滑化法からパイロットシステムの実験ということで出発をいたしました。この実験の結果の評価やあるいは今後のいろんな計画の見通しなり、それが国民生活に与える影響とか、国民の負担とか総合的な観点を厳密に検討した上で、次のステップへというように理解をしておったわけですが、早々と二年たった今日、本法案によって全国的なオンラインシステムを含むコンピューター化の全面的な施行ということに政府としては踏み出てきたわけであります。  そこで、まず聞きたいことの第一点は、こういう全国的なコンピューター化を行うという場合、一つは全国の登記所が幾らあって、全部それを行うという、そういう計画であることは間違いないのかどうか。それから、コンピューター化をすると言うけれども、一体コンピューターにインプットしなきゃならない登記件数がどれぐらいあるのか。この点をまず明らかにしてほしいんですが、どうですか。
  135. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 全国の登記所約千百七十ございますが、これを時間はかかりますが、全部コンピューター化する計画でございます。日本全国の不動産の筆個数でありますけれども、土地が二億三千万筆、建物が四千万個、これが不動産の数でございますからそれだけの登記がある。そのほかに、船舶でございますとか、財団でございますとか登記簿の種類は非常に多いですが、数としては全体の数を左右するほどではございません。商業登記で申しますと、会社、法人合わせておよそ四百万社ございます。
  136. 橋本敦

    ○橋本敦君 したがって、実に大きな計画になりますね。そこで、こういうような大きな計画の全面的な実施に踏み込んでいくという、そういう決定は十分慎重に審議会等の意見を聞いて決められたのか、法務省の内部で決定されたというそういう手続経過にすぎないのか、こういうことを決定された経緯そのものを説明してくれますか。
  137. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 昭和五十八年から板橋出張所でパイロットシステムを稼働させまして、現行登記簿による処理にあわせてコンピューター化した登記簿処理を実験的に、並行的に行うということを進めてまいりました。と同時に、パイロットシステム評価委員会というものを発足させまして、ここでもってパイロットシステムの運営、稼働から生ずるいろいろな問題点について検証をしてもらい、それが今後登記事務処理としてたえ得るものであるかどうかという評価をしてもらったわけでございます。六十年にその中間報告がありまして、ちょうどそのころに円滑化法も制定をしていただきました。これによって、今後電子情報処理組織を用いて登記を行う制度を推進するというのが国の責務となったわけでございます。それで、板橋登記所におけるパイロットシステムの実験を拡大、推進いたしました。  他方、同じ昭和六十年に円滑化法の五条に基づいて、法務大臣が民事行政審議会に対しまして、電子情報処理組織を用いて登記を行う制度の導入に当たり特に留意すべき事項いかんということで諮問をいたしました。これに対しまして六十二年の十月に答申をいただいて、これがお手元の合本の資料に編綴をされているところであります。  また、パイロットシステム評価委員会におきましては、本年の三月に最終報告を提出されました。これによりますと、  パイロット・システムでは現に、コンピュータシステムによる登記事務の合理的、効果的な処理が行われていると認められ、また、コンピュータ処理の場面においては、薄冊処理に比較し、利用者に対するサービスの一層の向上登記事務に従事する職員に対するより良好な執務環境の提供を図ることが可能であると考えられる。 という評価をちょうだいしたわけであります。このような経緯を踏まえまして、これから板橋出張所を第一号にブックレスで、つまり登記簿冊を廃止してコンピューター登記簿、磁気ディスクによってもっぱら登記を行うというシステムを進めるためには、法律の改正をお願いしなければならないということで今回の法案の立案をさせていただいたわけであります。
  138. 橋本敦

    ○橋本敦君 今おっしゃった評価委員会の評価、これはもっぱらパイロットシステムを技術的に検討するということが中心の評価ですね。
  139. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) そのとおりでございます。
  140. 橋本敦

    ○橋本敦君 それで、行政審への大臣の諮問は、今局長がおっしゃったように、将来このコンピューター化制度導入に当たって特に留意すべき事項ということですから、一部にはコンピューター化に伴う基本的な視点もありますが、全面的に今おっしゃった登記日本のすべての、今でいえば山の中の一人庁もあるわけですが、そういうところも含めてすべてやる必要があるかどうかという、そういう政策的な検討は、この行政審では十分なされている形跡はないんです。というのは、諮問の内容が実施をすることを前提にして、その上で留意すべき事項、こうなっていますからね。  だから、私が言うような高度の政治的な判断でこれを全国的に、これから今すぐにも着手しなきゃならないという、そういう必要性があるのかどうか。国民負担はどうかという、そういう観点での客観的な審議が法務省以外の何らかの機関でなされた形跡はない、私はこう見ているんですが、結論としてそうでしょう。
  141. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) コンピューター化の必要性というのは、先般来の各委員の御質問に対してお答えしているとおりでございまして、登記の繁忙が非常に甚だしくて、これを抜本的に登記所の執務体制というものを改善するためには、これ以外にはないという基本的な判断があるわけで、それを前提にして円滑化法ができたわけであります。そういう意味では、繁忙庁においては、これは緊急欠くべからざる方向でございまして、先生おっしゃるように、山の中と申しますか、僻地あるいは、特に私ども問題にしておりますのは離島でございまして、離島の場合には三階層ネットワークを組もうといたしますと通信回線が非常にかさみます。そういう意味で、離島についてはあるいは旧来のシステムというものを維持することが適当なのかどうかという点の判断をまだ留保しているわけでございます。  しかし、少なくとも民事行政審議会が答申していただいたような、繁忙庁を中心とするというものについては、これはもうやらざるを得ないという判断でございます。そういう前提でこの計画といいますか、今回の改正法ができているというふうに御理解いただければと思っております。
  142. 橋本敦

    ○橋本敦君 今おっしゃった行政審の答申が、繁忙登記所優先という方向を留意事項の重要な部分として出しているのは、私も見ていますよ、それは当然です。また、実際に繁忙登記所がまさに問題なんです、国民サービスの点で。だから、繁忙登記所の事務を国民サービス向上のために合理化する、機械化する、オートメ化する、あらゆる施策をやるということについて私は決して反対ではありません。  この間も、私は徳島へ調査に行ってきて徳島法務局長にもいろいろ話を伺ったんですが、徳島県下全体で見ると繁忙庁は二つだけなんです。一つは鳴門大橋ができた関係で鳴門地域の登記事務が激増している、これが一つ。それからもう一つは、徳島の市内の本局ですね。他の圧倒的部分は余り動いてないんですよ。だから、さしあたり繁忙登記所優先でやっていくということで合理的に考えていくということなら、それなりの合理性はあるけれども、山の中の登記所まで含めて全国ですべての登記所コンピューター化をするという方針、そして国民は経費負担がそれでどんどん高くなっていくということになりますと、それ自体が合理性を欠くと言わざるを得ないんですよ。  そこで、先ほどから資金計画もいろいろ言われておりますけれども、三階層ネットワークということはなりますと、中心は千葉の情報センターに置いて、そして各県にそれにふさわしいバックアップセンターをつくって、それから登記所ということとのコネクションをつくっていかなくちゃならない。  それで、まず聞きますけれども、幾つのバックアップセンターをつくって、そしてそれ自体の経費はどれくらい見込んでいますか。
  143. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) バックアップセンターは各法務局、地方法務局ごとに一つずつつくるわけでございまして、全局五十カ所を必要とします。ただ、それにどれくらいの費用が必要かということは、現在施設をどういう形で確保するか、つまり国有地の上に合同庁舎で建てられる部分とか、あるいは単独庁舎の出張所とか、そういうところの一部に増設する。いろんな方策があるわけでございまして、それを各地について全部網羅して計算しているわけではございませんので、確定的な金額というのはここではちょっとはっきりしないわけでございます。
  144. 橋本敦

    ○橋本敦君 そうでしょう。例えば徳島の場合は合同庁舎に入っていますから、あの徳島の本局で法務局にバックアップセンターをその場でといったって、これはスペース的余裕が全然ないことぐらい見てわかりますから、どこかにつくらなきゃならぬ。そうすると、それは国有土地でつくるのかあるいは土地を買い入れてやるのか、各県によって全部違いますね。だから、そういう意味では、この行政審の答申は今言った三階層ネットワークをやるべきだと、こう言っておりますが、その中心のバックアップセンター自体が全国的にどういう計画で進められるか、費用がどれくらいかかるか、計算のしようもない、こういうことですね。  先ほど局長は、全体の予算は、円滑化法当時は五千億と見たが、恐らく五千億では済むまい、五千億を超えるというようにおっしゃった、私はそのとおりだと思うのです。これは、延びれば延びるほど経費はかかっていきます。一説によれば、今局長がおっしゃった全国のすべての登記所コンピューター化を全部やっていく経費というのは、五千億どころか一兆円を超すだろうという、そういう見積もり試算の話もありますが、具体的に十五年なら十五年かかって経費がどれぐらいだという試算は、これはできるんですか、できないんですか、どうですか。
  145. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) コンピューターの技術というのは日進月歩でございまして、ハードの費用というのはどんどん安くなっているわけでございます。それと一方では、施設整備に要する費用というようなものはかなり上がっているわけでございまして、そういう意味で完全な予測ということになると、これはもうとてもできないわけでございまして、結果として十五年の経済発展と申しますかあるいは物価の状況というものを全部見通せと言われても、これはとてもできる話じゃないわけでございます。  現在のところの推計でございまして、全くこれは目の子である程度やった数字でございますが、それでまいりますと、大体五千億を若干上回るというような数字が出てきているということでございまして、結果的にそこでおさまるということになるかどうかというのは、今後逐次情勢変化に応じて計画を見直してまいる、計算を是正していくということをやっていかなければいけないのではないかというふうに考えております。
  146. 橋本敦

    ○橋本敦君 結論的に言って審議官も正直におっしゃったように、見通しも計算もできないという条件と要素があるというわけです。だから、五千億を超すだろうというのは五千億から出発した現在の推定的見方であって、それで済まないだろうという予測がついておるが、何ぼになるかわからない。しかも、それはどうやっていくのだというと、登記特会を中心とした金で賄っていくのだ、こういうことになりますね。その点で行政審、行政審とおっしゃるが、行政審の答申自体は、留意すべき事項として「効率的な移行体制の確保」、「資金計画との整合性」を非常に重視している、これは当然だと思います。資金がなしに大きな国家計画は進みませんよ。  ですから、この問題はまさに具体的な予算と資金計画の裏打ちのない計画だと私は指摘せざるを得ない。十五年ぐらいでというふうにおっしゃったが、その十五年ぐらいでという根拠は一体何なのか、だれが十五年ぐらいだと決めているのか、どこで決めているのか、一遍説明してくださいますか。
  147. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) これは先ほど申しましたように、現在の計画で、現在の推算で考えまして、効率的な移行体制の確保というのはできるだけコストを安くして移行をするということでございます。そのためには、移行の事務量を平均化するような体制でやるということと、それからメリットが多い地区から順々にやっていくということが必要だろうというふうに考えております。それから資金計画の面では、手数料の額をそうむちゃに、むちゃにというと語弊がありますが、そんなに国民の御負担を願うようなことはできない。例えば先ほど現行手数料の二倍とか三倍とかいうようなことも出ましたけれども、そういう数字になるようなそんな負担を求めるようなことは、これはもう絶対に私どもとしてはできないだろうというふうに考えております。  そういうようなことを考えまして、先ほど工藤委員からはもっと早くという御指摘もございましたけれども、十五年というかなり長年月をかけてやらざるを得ないという判断をしているわけでございまして、そういう意味では国民へのサービスの均てんということを考えますと、なるべく普遍化する方がいい。先生の御指摘のように、それは効率化から考えると、ある地区は要らぬのではないかという考え方もあるかもしれませんけれども、国民の立場から考えていってあるところは迅速かつきれいなあれが出る、そしてまた、全国どこのデータも瞬時に取り寄せられる。ところが、ある地区はそういうことはないのだ、しかし手数料は同じ手数料を払わなきゃいかぬのだというようなことで、果たして国民が納得するかどうかという制度の問題もあるわけでございます。  そういう国民のニーズというものを考えますと、やはり全体をコンピューター化するという方向の方が正しいのではないかというふうに私どもは考えております。  しかし、それについてできるだけ効率化、コスト、国民の負担を低減するという方向考えるということになって、しかもなるべく早くやりたいということも考えるということになると、そのくらいの年月が要るのではないかというふうに思っているわけでございます。
  148. 橋本敦

    ○橋本敦君 私は、十五年かかるのがいかぬと言っておるわけでもなく、そういうことを私は言っているのじゃないんです。要するに、計画の具体性と内容のコンクリートな固めがない。いわば資金計画も漠然としているし、十五年というのも漠然としているし、そういうようなことで出発をしていいのかという批判的な立場から言っているんですよ、いいですか。  それで、登記特会との関係で聞きますが、五千億円にしろ、六千億円にしろ、これは今後の資金は乙号を中心とする手数料登記特会だけでいく、あるいは大臣がおっしゃったように、このコンピューター化は一般会計からも出してもらって進める、これは可能なんですか。あるいは財政投融資資金の借り入れ、これはできるのですか、特会の性質からいってどうなんですか。そこらをどう考えていますか。
  149. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 私どもとしては、先ほども申し上げましたように、現時点で確定できる数字に基づいてできるだけコンクリートな考え方の計画という形で、これを出しているわけでございます。この民行審の答申にも幾つか出ておりまして、資金計画を登記手数料だけで賄うというようなことには立ち至らないという、そういうことではもう処理し切れないということが起こり得るという可能性は民行審の答申も認めておりまして、そのためには、国や地方公共団体の手数料の有料化というものも検討すべきだし、あるいは先ほども話に出ました甲号の手数料、甲号利用者の負担、これは大臣が申し上げましたように、一般会計からの繰り入れという考え方もあり得るわけでございますが、そういうものも含めて考える。  さらには先生御指摘のように、後年度の人たちの利益にもなることでございまして、手数料の費用の負担者をならすという意味で、借り入れにやっておいて後年度、それを将来の手数料収入から返済していくというやり方もあるわけでございます。ただ、この場合には、この最後の方法につきましては、現在の特別会計法の制約でできませんので、これも一つ検討課題として、私どもは検討しなければならないのではないかというふうに考えております。
  150. 橋本敦

    ○橋本敦君 私が言うのは、今あなたがおっしゃった最後なんですよ。特別会計法との関係において、そう簡単に一般会計から出せないですよ、これは。大臣は努力目標としておっしゃったというように私は思うんですが、大臣どうですか。
  151. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 簡単にはいかないと思います。  しかし、現在の登記特別会計が単に登記手数料ばかりではなくて、一般会計から繰り入れてもらってやっているわけです。したがって、将来一般会計の繰り入れをもう少し多くしてもらうということによってある程度やっていけるのじゃないだろうか、かように考えております。
  152. 橋本敦

    ○橋本敦君 それがやっぱり努力目標であり、将来のことだ。だから非常にかたいのは、特会として乙号手数料を中心とする収入ですよ。これを中心としなきゃどうにもならぬから今おっしゃったように、甲号についても登録免許税以外に手数料を取るということを考えざるを得ないという国民負担が出てくるし、それから商業登記関係でも、閲覧がただであったのを有料にするということも出てくるということ。そして、先ほど藤井局長がおっしゃったように、乙号についての手数料の値上げも考えざるを得ない、こういうことになるわけです。  ここのところで聞きますけれども、将来の資金計画を特会を中心にやっていくための手数料の値上げは、十五年間に私は一回では済まぬだろうと見ている、一回では。そこで、お尋ねをしますけれども、その登記特会の大事な基礎である手数料が、先ほどお話しのように六十一年では三百六十四億、それから六十二年では一月から十二月までで三百九十八億と、こうなっておりますが、これはどれぐらい伸びていくというように試算されておりますか、何%ぐらい、あるいはほとんど伸びないと思いますか。計算根拠はありますか。
  153. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 手数料の伸びは、これは各年における主として不動産の取引の趨勢によって左右されることであります。しかし、近年ここ十年ばかりをずっと見てまいりますと、年によって多少の差はございますけれども、おおむねこれが増加をしてきている趨勢にございます。でありますから、それによって大体の傾向、何%程度の増が見込まれるという数字ははじき出せるというふうに考えます。  登記手数料でございますが、これまでの経緯を見ましても、手数料の改定は短いときには三年ぐらいであるいは五、六年ぐらいで大体改正がなされてまいっております。したがいまして、今後十五年間を見通してどうだと、こうおっしゃられますと、これまでのペースで物を考えてみましても、やはり物価の上昇その他経済情勢の変動がございますから、やはり二回やそこらの値上げというのはあり得るでございましょう。それにさらに加えて、これだけのプロジェクトを進めるということになりますと、やはりこれから先大きな効果を生み出すものとして、当面さしあたってこれについての国民の御負担を願わなきゃならない。その時期はどうしても近々やってくるというふうに私は考えております。  要は、このコンピューター化の計画は何も物好きでやっているわけでも何でもございませんで、昭和四十年代以降の非常に大きな登記事件増、これが業務を圧迫し、もういろいろなひずみを生んできている。これを解決するために人をふやせばいいというのは確かに正論でございますけれども、これは幾ら頑張ってもふやしていただくには限度がございます。先生方にもいろいろと御支援をいただいたわけでございますが、それには限度がある。そうすると、どうしてもやらざるを得ないということで四十七年から計画をスタートさしたわけでございますから、今日までそれだけでも既に相当かかっている。決して私ども拙速であるというふうには考えていないところを御理解いただきたいと思います。
  154. 橋本敦

    ○橋本敦君 今の局長のお話によってもやりたいというあなたの気持ち、法務省の立場はわかります。しかし、私が問題にしているように、この特会制度のもとで、結局こういった大きなプロジェクトをやっていくということになって、全体計画、資金計画がなかなかはっきりしない中で、はっきりしているのはこれから十五年の間に、通常のペースで言えば二回程度手数料の値上げはあるだろうと。しかし、それにプラスしてこのコンピューター化推進のための資金に見合う負担の値上げをやらなきゃならぬという、そういうことも考えているという国民負担の増大がはっきりしたわけですね。そこで、この問題については非常に国民の立場から見て大事なんですから、それに見合うサービス国民の側に得られるか、こういう問題があるわけです。  そこで、先ほどおっしゃった全国オンラインネットワークで、一カ所でどこの登記も見られるということですが、これも登記証明事項をもらおうとすれば、先ほど猪熊委員がおっしゃったように、長距離のオンラインを、回線を使ったという費用まで負担しなきゃならぬということで、これも経費が高くなるわけですが、具体的にそういう必要が国民の中にどれだけあるかというと、そんなにしばしばあるものじゃない。例えば岡山の町のだれかが北海道の土地を調べるということの必要性が一生のうちにどれだけあるだろうか、ほとんどありませんよ。そしてまた同時に、そんな遠くでなくても、私の住んでいる大阪なら大阪で、私が調べなきゃならぬというのは調査等でそれはあり得ますが、一般の人にとってはそうないですよ。  だから、そういう全国オンラインネットワークで瞬時にして多くの登記事項を手に入れて、費用を何ぼかけてもいい、それが便利になるというのは、これは特別の目的を持った人かあるいはデベロッパーか、不動産会社か、そういう限られた範囲になるんです。一般国民はそんなに必要があるという、そういう状況じゃありません。  そしてもう一つの問題について言うなら、今度は登記事項に関連をするんですが、先ほどお話が出ておりますように、現在有効事項コンピューターインプットで移行されるわけで、不動産の経過について、経歴については経費その他を考えて当面やるということではない、こうおっしゃっている。  ところが、国民個人にとってはめったにないことだけれども、特定の不動産権利関係を、その経歴をさかのぼって調べなきゃならぬ方がよっぽど多いんです、遠いところのをとるよりも。また、遠いところの場合もそういう場合があるんです。例えば所有権の移転がどういう原因でなされておるか、代物弁済か、売買かあるいは三項による所有権移転の登記が抹消されたことによって所有権関係が変わるのか。そういうことで所有権のまさにその本体、実体がどうかということを検討する場合には、現在登記事項じゃなくて過去にさかのぼった経過を調べるということの方がはるかに必要が多い。裁判所で起こっている所有権確認の訴訟などというのはほとんどそうです。  だから、そういうことを考えますと、国民のニーズにこたえるためには現在事項だけじゃなくて、簡単な登記証明事項じゃなくて、やっぱりそういった不動産の経歴、ヒストリー、これがわかるというシステムがあるということが大事です。それをわかるためには閲覧制度があることが大事です。そして、閲覧制度に基づいてそれを見きわめて、そしてその謄本がとれるということが大事です。これが今までの経過ですね。こういうことがなくなるということについては、私は国民の側から見て権利保全のためにも重大な問題だと、こう思っておるんですが、民事局長はどうお考えですか。
  155. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 国民の利便に対してすべてこたえるという立場をとりますならば、現在あります、記載されている登記事項を全部磁気ディスクの方に移す、そうすることが最も望ましい、そっくりそのまま移す方がその目的にかなうということは、まことにおっしゃるとおりでございます。  しかしながら、私どもは先ほどから先生の御指摘にありますように、資金計画をどういうふうに立てるかということについて率直に申しまして大変苦労をいたしております。これだけのコンピューター化、ネットワークを組んだコンピューター化をするためには、先般来申しておりますような非常な経費がかかる。そうすると、これをできるだけ切り詰めて極力経費を抑えた形で効率的な移行をやり、コンピューターシステムに移っていかなければならないと思っております。  過去の履歴を含めて全部移すということになりますと移行の量が非常に多くなる。これは労力ももちろんでございますし、経費にしましても大変大きなものがかかるというふうに聞いておるところでありまして、そうでありますならば、現在法律で移記作業をやるときにとられておる建前をこの際も、これも移記の一種でございますので、同じ方針をとるということにさせていただいたらどうであろうかという、それが最大多数の方々にはそれでおよそ通用することじゃなかろうか。どうしても来歴が必要な方ということになりますと、これはコンピューターに移しまして閉鎖をしました旧登記簿閲覧していただくなり、閉鎖登記簿謄本をとっていただくということで対処していただく。それが必要な方々がどれぐらいいるか、それとの費用効果の問題として、そのあたりが折れ合う線ではなかろうかというふうに思っているわけであります。
  156. 橋本敦

    ○橋本敦君 ですから、費用の点が大変だということは私も理解はしておるんですが、国民のニーズにこたえるという面からいうと、その部分のニーズが切り捨てられますよ、あるいは大変不便になりますよということを私は指摘している。その事実は否めませんよ。先ほど審議官も閉鎖謄本を見てもらうということをおっしゃっている、局長もおっしゃっている。そうすると、移記する前の閉鎖謄本、それは閲覧して見るということにしますが、今度はコンピューターに移記された後、三年先にこの三年間の所有権の動きを見るとなりますとそれはどこで見るんですか。
  157. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) その移記された後には、そのまま現在の登記簿と同じように、その磁気ディスクの中に残ってくるわけでございます。ですから、そのまま証明書を現在事項証明書という形でとらないで全部証明書という形で請求していただければ、それは出てまいります。
  158. 橋本敦

    ○橋本敦君 わかりました。  そこで費用の問題。現在事項登記証明書はそれ自体費用を払うわけですが、過去にさかのぼって、費用は一体どういうようになりますか。
  159. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 現在の謄抄本手数料体系は謄本でありましても、抄本でありましても一通幾らということにしております。その体制を今後証明書についてもとりたいというふうに考えておりまして、基本的に証明書については全部同額ということにすることになろうと考えております。
  160. 橋本敦

    ○橋本敦君 そうすると、今審議官がおっしゃったのは一回の証明手数料でいいと、こういうことですね。
  161. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) おっしゃるとおりでございます。
  162. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、現在ならば登記簿閲覧させてもらって、それでよく調べて、そしてああこれならばよくわかった、証明書をもらうまでもなくこの部分ではなかったと。だから、次のまた登記簿閲覧するということで、調べること自体は費用をかけずにできるんです。今度は自分で見れませんから、これがつまり閲覧制度の廃止ということですから登記事項証明書をもらって、いやこれじゃなかった、こちらの不動産の方を調べたいんだとなりますと、それも登記事項証明書で金を払って、手数料を払ってもらわなきゃならなくなる、こうなるんです。わかりますね、私の言っていることは。そのとおりでしょう。
  163. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 御指摘はそのとおりでございますが、もともと閲覧という制度がいわば緊急避難的に行われていると。そして、それは確かに低廉ではありますけれども、非常に危険な扱いでございまして、そのために先ほど大臣、局長も申し上げましたように、抜き取り改ざんというようなことも行われるものでございまして、そういう意味では危険を負担して、危険を承知の上で低廉性、効率性を要求しているということになるわけでして、それがそのまま維持するのがいいのかどうかという問題ももう一つ政策的にはあり得ると考えております。
  164. 橋本敦

    ○橋本敦君 それはおかしいですよ。善良な市民に費用を全部負担させることになっているのに、特定の、特別に少数の悪いことをやった人間の不利益を全部国民にかぶせるというような必要はないですよ。それはもう理屈として私は成り立たぬと思う。それはあなた、国民が今まで閲覧制度ができてから今日までに何千万人が閲覧していますか、それだけの利益を国民は得ているわけです。それを全部今度は有料化にする。特定の者の不法行為があるために今度のコンピューターシステムをやったわけじゃないでしょうが、そのためだけのコンピューターシステムの発想じゃないでしょうが。そうなれば不正が防げるということが一面においてあるというだけの話です。それ以外に負担が合理的だという理屈は成り立たぬと思う。  私が言うのは、閲覧制度の廃止問題は次また時間をかけてやりますが、要するに不動産のヒストリー、履歴を全部調べるということについて新たな不便と費用もかかるという意味で、国民サービス向上だとばっかりは言っておられませんよと、こういうことを私は指摘しているんです。  そういうことで、私の指摘をしていることについて御意見がありますか。
  165. 稲葉威雄

    政府委員稲葉威雄君) 確かに、閲覧にかわる制度としては要約書という制度を設けて同じ手数料額でやろうということを考えておりますけれども、これは全体を見るということではなくて、重点的な事項を明らかにするということにしているわけでございます。そういう意味では、そういう形での今までの果たしている閲覧と同じようなことができるかどうかという点になると、先生の御指摘のような点が出てくるだろうと思います。しかし、これは最大多数の最大幸福という思想からいって、閲覧と同じようなことをやりますと、結局コンピューターの費用から申しますと、証明書を出すのと同じことになって費用をちっとも節減することにならない。ある意味では、これはコンピューターシステムの宿命みたいなものでございます。そういう意味では、先生の御批判のコンピューターシステムをとらぬでもいいじゃないかということになるのかもしれませんが、他方から考えてまいりますと、繁忙登記所現状ということを考えるとこれ以外にはないということもあるわけでございまして、その辺をどういうふうに整理して考えるかということでございますが、私どもとしてはこうするのが一番将来に向かって適当な方策なのではないかという決断をしたわけでございます。
  166. 橋本敦

    ○橋本敦君 要するに、私は全体計画が非常にコンクリートに固められたというものではないこと、そして資金計画も含めてそういった計画が明確に合理的な内容だということが判断できるような状況にもないこと、そして国民負担の増大ということは避けられない、そしてそれに見合うサービスは、逆にサービスの面で後退している面があり得る。こういった問題があることをきょうは明らかにしたかったわけでありますが、時間が参りましたのでこれで終わります。
  167. 西川潔

    ○西川潔君 最後になりましてよろしくお願いいたします。  重複する部分がたくさん出てくるかと思いますが、おさらいの気持ちでおつき合いをいただきたいと思います。  現在本当に法務局、登記所の忙しさは大変なものだと伺っております。現に渋谷のあのNHKの近くにあります登記所では、日によってはもちろん違いがあるのですが、午前中に行っても午後になります。午後の早い時間に参りましても三時を過ぎるというような日がたくさんあると聞いております。結局訪れた人の不満は募るばかりで、ひいては窓口のサービスの悪さ、ワーストランキングの上位という不名誉な記録をちょうだいしたということになるんですが、今回それを解消するためにコンピューター化をする。お話をお伺いしておりますとコンピューター化が終了するには十五年ほどかかるとただいまお伺いいたしました。なるべく我々の切なる願いを早くひとつお願いしたい次第でございます。  そこで、コンピューター化に伴って職員の方方、現在のお仕事に加えてデータのインプットを行わなければなりませんが、職員の方々がその際行う仕事の内容と負担量、それと登記所に長く勤めておられる中高年の方々、僕はついついお年寄りの方々のことが気になるんですが、コンピューターと聞いただけでおじけづくという方々が各企業でも最近はたくさんいらっしゃいます。そういうことでノイローゼになっている方もたくさんいらっしゃるんですが、主にそういう職場では若い人がお仕事につくんでしょうか、それともまた中高年の方々も新たな勉強をしていただいてお仕事をしていただくんですか。その辺の対処の仕方をお伺いしたいと思います。
  168. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) コンピューター化を進めるに当たりましては、まず現在の登記簿からコンピューターの方にその事項を移さなければならないわけでありまして、どういう仕事をするのかというお尋ねでございます。  まず、コンピューターの方へ入力をする原稿をつくる。そして、それの校正、修正をやる、これだけのものを移行するということを確認するわけですが、最終的には校合という手順を踏むことになります。できるだけ外部に委託できる部分は外部に委託をいたしたい。しかし、最終的な移記校合、移したものがこれで間違いないということを確定的に判断をする、この作業だけは登記所の職員がやらなきゃならないということになります。また、外部委託の手順、手続の過程におきましては、やっぱり登記所の職員が責任を持って監督もいたさなきゃならない。仕事としてはそういうものがあるということになります。  そこで、それではコンピューターへ移行した後、一体どういう人がそれを扱うのかということでございますが、中高年の方々もそれほど大したことはないようでございます。端末装置を操作するわけでありますが、これの習熟期間というものは、記入の事務は若干完全になれるまでに日がかかりますけれども、それ以外の受け付けとか、調査とかそれから最終の校合とかというような端末の操作はもうほんの一、二日もあれば習得できるということでございます。中高年の方もこのごろは皆さんワープロぐらいは平気で扱う、中高年に一番人気のあるOA機器だという評価もあるぐらいでございまして、実際には職員の受けとめ方というのはそれほど心配することはないんじゃないかというように思っております。
  169. 西川潔

    ○西川潔君 それをお伺いしまして安心いたしました。どうぞ高齢者の方を冷遇されないようにひとつよろしくお願いいたします。  次に、登記所謄本などをとるときに、今僕も書類を持ってまいりましたんですが、地番が必要です。地番というのは一般に生活している我々にとって非常になじみが薄いんですけれども、ここで例えばお伺いしまして即問即答でなかなか出てこないと思いますが、この地番とは何なんでしょう。住居表示と地番を違えることによる何かメリットがあるのでしょうか。
  170. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 地番は土地を区画いたしまして、その土地にそれぞれ番号として付されているものでございまして、むしろ昔から地番がございました。昭和三十七年に住居表示というものができまして、市街地における住居を表示する制度として生まれたわけでございます。後発の住居表示制度が一般化いたしまして、私ども登記を扱っている立場からすると、後から出てきたもののために迷惑を受けているというのはちょっと言い過ぎでございますけれども、少々それによって混乱が生じているわけでございます。  これは、土地を特定するために登記所が地番区域を定めて土地の位置がわかりやすいようにしているものでありまして、住居表示とはどうも性質が全く違うわけでありますので、これを一緒にするというわけにはまいらないんですが、ただ現実に登記所へおいでになる方は住居表示でもってこの土地を見たいというふうにおいでになりますので、その範囲内で登記所としましては、ある限られたその地域でもって指定しておいでになった場合には、住居表示から地番を検索するシステムは備えましてお客様サービスをいたしたいと思っております。
  171. 西川潔

    ○西川潔君 次に、謄本や抄本を見ますと古い漢字の羅列が目に入ります。また、何がどういうことを意味しているのか、私たち素人には本当に今回の法律は複雑で難しくて、いろいろ目も通したんですが読むのが嫌になってしまうぐらいです。例えば旧漢数字も使っているため、私の資料に「参六五日当り」とあって、一年の三百六十五日がこれは三だけが参議院の参になっております。私などは大変恥ずかしい話ですが、参議院の六十五の日当たりというような読み方をいたしまして、なかなか難しゅうございます。  今回の法案ではこれらをアラビア数字に変えるそうなんですが、この点は読みやすくなると思います。形式や書式は今までどおりだとすると、素人にわかりにくいという点では余り改善されないことになると思います。ですから、だれでも明確に内容がわかるようなものにするというようなお考えはないものでしょうか。
  172. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) コンピューターは、そのデータを自由に編集できる機能がございますので、例えば主登記がございまして、それからずっと離れてそれについての付記登記がなされているというようなときに、これは登記事項証明書を発行する段階で、主登記のすぐ後ろに不記登記をくっつけるという形で見やすくするということは考えられております。これで完全にわかりやすくなったかと言われますと、登記そのものがかなり技術的な仕組みになっておりますのでどこまで言えるかわかりませんが、多少の工夫はいたしたいと思っております。
  173. 西川潔

    ○西川潔君 そのあたり、ひとつどうぞ本当によろしくお願いいたします。  次に、最近の土地の値上がりに伴い、不動産の相続が大きな問題となっております。相続税の問題だけではなく、例えば遺産分割などをめぐって登記の手続も大きな問題となりますが、そのときに相談に例えば乗ってもらえるような窓口はないのでしょうか。また、問い合わせに答えていただけるような、何かほかの省庁のような専用電話などをつくっていただくような予定はございませんでしょうか。
  174. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) お尋ねになられます事項が、一般的な法律相談ということになりますと、これはちょっといろいろなほかの業種との関係もございまして、簡単に何でも法律相談に応ずる、こういうわけにはまいらないのですけれども、登記についてどういうふうにしたらいいかという御相談でございますれば、これは登記の窓口においてもう実際にお受けいたしております。実際には、窓口における相談というものは相当ふえてきております。登記所の方でも、それに対応できる体制をとらなければならないわけでありまして、登記相談官というようなものを置きまして御相談に応じる仕組みをつくっております。電話なんかでももちろん御相談がありますので、忙しい仕事をやっておりますから、必ずしも十分な応対はできていないかもしれませんけれども、応じていると存じます。
  175. 西川潔

    ○西川潔君 近年、値上がりした土地を年寄りからだまし取る事件が大変ふえております。  例えば、ことしの二月九日の朝日新聞に載っておりましたんですが、小平市では造園業者らがひとり暮らしのおばあちゃんに取り入り、十七筆、六千平方メートル、時価にして三十億円のうち十筆の四千平方メートル、時価十九億円が被害に遭ったとありました。お年寄りを相手にした不動産をめぐるこのような詐欺事件の対策などはどうなっているか、お伺いしたいんですが、例えば今回のコンピューター化権利書の偽造防止など、そういうふうな対策が講じられている部分があれば現況をお伺いしたいと思います。
  176. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 一般的な対策と申しますと、ちょっとお答え申し上げる材料がないのでございますが、登記済み証の偽造防止という点につきまして申し上げますと、今回の改正におきましては、登記済み証の作成方法は、これはさしあたり現行の方式を維持することといたしておりますので、コンピューターを利用しての偽造防止策というものは特に講じられておりません。しかし、この点については、例えば登記済み証に暗証番号を付与して、これを添付して登記申請があったときには、その番号をコンピューターに読み取らせて真否をチェックするという方法考えられるところでございます。  ただ、そういうようなものを考えたといたしましても、登記済み用紙が損耗して読み取れなくなったらどうするかとか、紛失したとして保証書で申請してきたらどうにもならないというような問題がございまして、まだ十分問題は解決し切れておりません。将来の問題として検討さしていただきたいと思っております。
  177. 西川潔

    ○西川潔君 その点よろしくお願いいたします。  それでは最後になりますが、先ごろ登録の免許税が大幅に値上げをされましたが、その税収増はどれぐらいになっているかお伺いしたいと思います。
  178. 野村興児

    説明員(野村興児君) 昨年九月に法改正が行われまして、土地の登記に係ります登録免許税の引き上げがあったわけでございます。適用は、実は六十二年十一月一日以降のものについて行われておりまして、これによります六十二年の税収についての増収額、これは九百億円程度と見込んでおります。
  179. 西川潔

    ○西川潔君 ありがとうございました。  そこでお伺いいたしますが、先ほどからいろいろお金の話も出ておったようでございます。登録免許税はあくまでこれは税でありまして、手数料ではないということはわかりますが、実際には登記を行うことに対する対価の意味も含まれていると思います。そこで登記所も、この税収増の恩恵にあずかれないものでしょうか。登記所の例えば特定財源的性格というようなものとして還元されるように、大蔵省に法務の方から働きかけるようなことをして、少しでも先ほど来から出ておりますお金の負担を軽減するというようなことのお考えはないものでしょうか。これを最後にお伺いしたいと思います。
  180. 藤井正雄

    政府委員藤井正雄君) 一般財源として課されております登録免許税を目的財源化するというようなことでございますので、これが適当であるのか適当でないのか、いろいろ議論があるところのようでございます。今後検討はさしていただきたいと考えております。
  181. 野村興児

    説明員(野村興児君) 登録免許税と申しますのは、課税の根拠は財産権の創設とか移転あるいは人的資格の取得等々、いわゆる登記、登録免許、こういったものに対しましてそれによって受ける利益、そういったものに着目をいたしまして応分の負担を求めており、そういった一般財源になっているわけでございます。  一方、行政上のサービス、例えば登記で、乙号の関係で実費弁償の趣旨から手数料が取られておりますけれども、そういった手数料と今申しました登録免許税はそもそも基本論を申して非常に恐縮でございますが、性格を異にしているわけでございますので、そこの部分をたくさん取っているから登記官署についてその一部をということはなかなか特定のひもつきじゃないと、こういうふうに解しているわけでございます。
  182. 西川潔

    ○西川潔君 これで終わります。
  183. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 本案についての審査は、本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十九分散会