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1988-03-31 第112回国会 参議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月三十一日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  三月二十八日     辞任         補欠選任      宮本 顕治君     吉川 春子君  三月二十九日     辞任         補欠選任      吉川 春子君     宮本 顕治君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         三木 忠雄君     理 事                 工藤万砂美君                 鈴木 省吾君                 猪熊 重二君                 橋本  敦君     委 員                 梶木 又三君                 下稲葉耕吉君                 徳永 正利君                 中西 一郎君                 長谷川 信君                 林  ゆう君                 秋山 長造君                 千葉 景子君                 関  嘉彦君                 西川  潔君    国務大臣        法 務 大 臣  林田悠紀夫君    政府委員        法務大臣官房長  根來 泰周君        法務大臣官房司        法法制調査部長  清水  湛君        法務省民事局長  藤井 正雄君        法務省刑事局長  岡村 泰孝君        法務省矯正局長  河上 和雄君        法務省人権擁護        局長       高橋 欣一君        法務省入国管理        局長       熊谷 直博君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総長       大西 勝也君        最高裁判所事務        総局総務局長   山口  繁君        最高裁判所事務        総局人事局長   櫻井 文夫君        最高裁判所事務        総局経理局長   町田  顯君        最高裁判所事務        総局民事局長        兼最高裁判所事        務総局行政局長  泉  徳治君        最高裁判所事務        総局刑事局長   吉丸  眞君        最高裁判所事務        総局家庭局長   早川 義郎君    事務局側        常任委員会専門        員        片岡 定彦君    説明員        警察庁刑事局保        安部経済調査官  五十嵐忠行君        警察庁警備局公        安第三課長    伊藤 一実君        警察庁警備局外        事課長      國枝 英郎君        法務省入国管理        局登録課長    黒木 忠正君        文部省初等中等        教育局中学校課        長        辻村 哲夫君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○昭和六十三年度一般会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和六十三年度特別会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和六十三年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)について  (裁判所所管) ○裁判所職員定員法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  昭和六十三年度総予算裁判所所管を議題といたします。  大西最高裁判所事務総長から説明を求めます。大西最高裁判所事務総長
  3. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者大西勝也君) 昭和六十三年度裁判所所管歳出予算要求額について御説明申し上げます。  昭和六十三年度裁判所所管歳出予算要求額の総額は、二千四百八億四千七百三万二千円でありまして、これを前年度予算額二千三百七十一億二千九百五十八万六千円に比較いたしますと、差し引き三十七億一千七百四十四万六千円の増加となっております。  これは、人件費において三十七億五千九万四千円、裁判費において六百二万四千円、司法行政事務を行うために必要な庁費等において一億三千七十一万六千円が増加し、施設費において一億六千九百三十八万八千円が減少した結果であります。  次に、昭和六十三年度歳出予算要求額のうち、主な事項について御説明申し上げます。  まず人的機構充実、すなわち増員であります。  民事執行法に基づく執行事件破産事件簡易裁判所民事訴訟事件等の適正迅速な処理を図るため簡易裁判所判事五人、裁判所書記官十人、裁判所事務官五十二人、合計六十七人の増員をすることとしております。  他方、定員削減計画に基づく昭和六十三年度削減分として裁判所事務官等三十七人が減員されることになりますので、差し引き三十人の定員増となるわけであります。  次は、司法の体制の強化に必要な経費であります。  裁判運営効率化及び近代化のため、庁用図書等裁判資料整備に要する経費として五億四千四百八十九万円、複写機計算機等裁判事務能率化器具整備に要する経費として五億二千四百六十八万三千円、調停委員に支給する手当として四十六億九千四百八十六万三千円、裁判費充実を図るため、国選弁護人報酬に要する経費として二十八億六千七百八十八万八千円、証人、司法委員参与員等旅費として七億一千百十三万五千円を計上しております。  また、裁判所施設整備を図るため、裁判所庁舎の新営、増築等に必要な経費として九十五億三千五百十三万八千円を計上しております。  以上が昭和六十三年度裁判所所管歳出予算要求額の大要であります。よろしく御審議のほどをお願いします。
  4. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 千葉景子

    千葉景子君 まず最初に、外国人登録法関係質問をさせていただきたいと思います。  最近、指紋押捺拒否者に対する判決が幾つか出ているようでございます。名古屋高裁ではさきの三月十六日、それから山口地裁下関支部で三月二十三日に押捺拒否に関する判決が出ておりますが、ちょっとこの要旨を教えていただきたいんで すが。
  6. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者吉丸眞君) 私どももまだ判決文そのものを入手しておりませんので、その要旨によって御紹介申し上げます。  まず、名古屋高裁昭和六十三年三月十六日、韓基徳に対する外国人登録法違反被告事件判決でございます。この判決は、主文におきまして第一審判決を破棄いたしまして、被告人罰金三万円に処し、判決確定後二年間刑の執行猶予といたしました。その理由憲法判断から量刑まで多岐にわたっておりますが、その要点だけを申しますと、指紋押捺制度憲法国際人権規約の各条項などに反する違憲、違法なものでないとした一審判決は正当で、一審判決法令適用に誤りはないし、また被告人指紋押捺拒否行為は可罰的違法性を具備していると判断いたしました上で、一審判決時点では一審判決量刑、これは罰金三万円の実刑でございました。その量刑は相当であった。しかし、今次改正法が制定、公布されたことと、その際衆参両院において決議された附帯決議内容とに照らすと、現時点では執行猶予が相当であるという判断をしたものでございます。  次に、山口地裁下関支部の六十三年三月二十三日の判決でございますが、これは外国人登録法違反事件につきまして、被告人罰金五万円、執行猶予二年にしたものでございます。その理由要旨につきましては、まず被告人国籍につきましていろいろ法律問題を検討した上、被告人平和条約の発効により日本国籍を失い朝鮮の国籍を取得したものであると認定いたしました。そして、指紋押捺制度憲法及び国際人権規約適合性につきまして判断をいたしました上で、刑の罰金刑を猶予した理由につきまして、前回の外登法改正及び国会の附帯決議趣旨を考慮して、執行猶予が相当であるという判断を示したものでございます。
  7. 千葉景子

    千葉景子君 今内容をお聞きいたしまして、理由につきましては多々問題点もあろうかと思うんですが、罰金刑執行猶予を付したという非常に珍しい判決ではないかと思うんです。しかも、その理由としては、外登法改正、そしてその附帯決議趣旨を考慮するという、むしろ司法外登法改正、これを先取りしてその趣旨を生かしているということが言えるのではないかというふうに思うんですが、近時拒否者に対して捜査が進展をしているように思われますが、拒否者に対する捜査状況は今どのようになっているでしょうか。
  8. 國枝英郎

    説明員國枝英郎君) 個々具体的な捜査内容につきましては答弁を控えさしていただきたいと存じます。
  9. 千葉景子

    千葉景子君 私がいろいろな情報を得たところによりますと、最近千葉県の習志野警察署、ここから出頭呼び出し状内容証明で到着をしている、これは在日韓国人の方です。それから、それ以外にも船橋で在日中国人の方にやはり同じように出頭命令が来ている。そのほかにも東京の深川署、京都の九条署、こういうところで三月になりましてから呼び出しがかかっている、こういう状況でございます。  しかしながら、最近の一連の判決を見ましても、罰金執行猶予がつくいわば非常に寛大な処置がとられている。こういう状況の中で、この捜査附帯決議などの趣旨も生かして控えられる、こういうようなことは考えていらっしゃいませんか。
  10. 國枝英郎

    説明員國枝英郎君) 警察は、違法行為に対しましては厳正かつ公平に対処すべきものと考えておるところでございます。今先生御指摘の附帯決議趣旨も踏まえまして、今後とも適切に対応してまいりたいと考えております。
  11. 千葉景子

    千葉景子君 指紋押捺につきましては、実際にこれまで一回押している人あるいは一度も押していない人、こういう内容の違いもあろうかと思いますけれども、六月施行になりますれば指紋一回制度、こういうことにもなる、その直前の今の状況です。そういうのをかんがみて捜査にも弾力的な運用をぜひお願いしたいというふうに思うんですが、この名古屋高裁判決、これにつきまして、検察庁の方はこれに対して上告はなさいますか。
  12. 岡村泰孝

    政府委員岡村泰孝君) 名古屋高検におきましては上告はいたさなかったと聞いております。
  13. 千葉景子

    千葉景子君 今検察庁の方でもやはりもうこの判断については上告をしないと、執行猶予という形でこれが確定をするということになろうかと思います、弁護側上告問題があろうかと思いますが。そういう中でぜひ捜査の面でも附帯決議趣旨を生かした運用をお願いしたいと思うんです。  ところでひとつ行政処分、これについては指紋押捺拒否理由にして再入国申請などが行われることがあろうかと思うんですが、この取り扱いはどのように考えていらっしゃいますか。
  14. 熊谷直博

    政府委員熊谷直博君) 過去に一度以上指紋押捺をしたことがある人たちについて、現行法のもとではいまだこの人たち違法行為者でありますので、原則として再入国について従前どおり取り扱いを現在いたしております。ただ、永住許可者等渡航目的葬儀の参加とかその他、真にやむを得ない事情があると認められるような場合には許可の方向で検討してもいいのではないかというふうには考えております。
  15. 千葉景子

    千葉景子君 ありがとうございます。今葬儀などのケースなどについては弾力的に考える余地もあるということでございます。それ以外にも衆議院の方でもこれは問題になったかと思いますが、留学の問題でありますとか、あるいは神父さんとかの問題であるとか、これまでも再入国申請がなされたようなケースもあるようでございますので、ぜひこの点は六月以降、そしてそれが近くなった現状のもとでぜひ考えていただきたいと思いますが、これについて法務大臣はどんなふうにお考えでしょうか。法務大臣が最終的に結論をお出しになる問題でございますから。
  16. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 御承知のように、改正外登法は六月一日に施行する予定にいたしておりまして、それまでは現在の法律が生きておるわけであります。したがって、法律に基づいて行政を行う者といたしましては、六月一日までは現法によらなければならないということでありまするけれども、あすはもう四月でございまして、四月、五月あと余すところ二月になったわけであります。そこでその間に、ただいま入管局長が御答弁いたしましたように、渡航目的が真にやむを得ないものというような人に対しましては、再入国を弾力的に認めていくということを考えたいと存じておるような次第でございます。
  17. 千葉景子

    千葉景子君 ぜひそれについてはよろしくお願いをしたいと思います。  ところで、今回の改正によりまして登録証作成などについては各自治体などに今ワープロ機械、これがかなりもう設置をし始められているというふうにお聞きしておりますが、これはどのような今現状になっているでしょうか。
  18. 熊谷直博

    政府委員熊谷直博君) 各市区町村登録証明書調製用原紙作成のため、指紋転写装置付ワードプロセッサーを配備することとしております。今般その機器の開発が完了いたしましたので、都道府県を通じてその仕様等を連絡すると同時に、四月中旬以降開催を予定いたしております都道府県単位事務研修会において、職員の同機器についての習熟訓練を行う予定にいたしております。
  19. 千葉景子

    千葉景子君 これは各都道府県自治体全部にワープロというのは備えられるようになるわけでしょうか。
  20. 黒木忠正

    説明員黒木忠正君) ワードプロセッサーにつきましては登録人口がおおむね十名を超える自治体に配備する。したがいまして、それ以下の自治体には配備しないという計画でございます。
  21. 千葉景子

    千葉景子君 その他は、そうすると手書きでその事務処理を行うということになりますか。
  22. 黒木忠正

    説明員黒木忠正君) そういうことでございます。
  23. 千葉景子

    千葉景子君 ところで、このワープロ導入ということになりますと、自治体などでは組合などとの間でこういうOA機器導入については事前にいろいろな協議をしてその運用方法、時間、労働時間ですね、あるいは照明、採光の問題、机、 いすの調節の問題とか、さまざまそういうものについて協議を行っている場合が多いかと思うんですね。これも新しいOA機器に属するものでございますけれども。これを実際に使う、そこで働いている皆さんとの今後協議などについてはどう考えていらっしゃいますか。
  24. 黒木忠正

    説明員黒木忠正君) 自治体職員団体への説明につきまして、私どもなるべくこれを早く実施するということで、実は機械を配備する前の三月の初めでございますが、こういう機種、こういう仕様のものを使うんだということをまず都道府県を通じて各市区町村にお知らせをし、それをもとに職員団体との話し合いをしてもらうという手はずを整えております。また一方、まだそういう話し合いが進んでないところもございますので、六月一日の施行を目途に、精力的に話し合いをするようにということを各都道府県を通じて御連絡をしているところでございます。
  25. 千葉景子

    千葉景子君 その点につきましては、六月施行ということですから、こういう協議が整いませんと実際窓口業務に支障が出てこようかと思いますので、ぜひ十分な、慎重な対応をお願いしたいと思います。  次に、今回は入管局登録証作成するということになるわけですが、自治体作成した調製原稿、これの取り扱いですね、どこで保管なりされるのか、あるいは廃棄処分になるのか、この点についてはどうお考えですか。
  26. 黒木忠正

    説明員黒木忠正君) 六月一日以降は今お話しのように、市区町村でつくりました登録証明書調製用原紙というものを地方入国管理局に送りまして、そこで登録証明書作成するわけですが、本来登録証明書作成し終わりますと、今の調製用原紙用済みのものとなるわけでございます。したがいまして、その瞬間に廃棄するということは、これは本来そうすべきものであろうと思いますけれども登録証明書地方入管から市区町村郵送途中に、場合によっては事故等によって郵便物が届かないということもあり得ようと思いますので、郵送途中事故なく、間違いなく市区町村に届いたということが確認できるまでの間は、しばらくの間は地方入管でそれを保管する。そういたしまして、おおむね一カ月ぐらいたって到着しない、どうしたというような催促がない事態になりましたら、その時点地方入管においてこれを廃棄するということを考えております。
  27. 千葉景子

    千葉景子君 次に、指紋転写についてなんですが、これは一番直近の新しいものを転写するというのが原則だと思うんですが、不鮮明な場合などは最も過去において鮮明なものを転写するということですが、そうなりますと、これは以前に押された回転式指紋、これが転写される可能性もあるわけですね。
  28. 黒木忠正

    説明員黒木忠正君) ただいまお話しのとおり、指紋は一番新しい指紋転写するというのを原則としております。  ただ、一番新しい指紋が不鮮明であるといったような場合は、古いのにさかのぼりましてそれを転写するという措置考えておりますが、今お話しございましたように、昭和六十年の六月以前に押捺された指紋回転指紋でございまして、非常に広い面積指紋を原票に押してございます。したがいまして、それを転写することになるわけでございますが、登録証明書回転指紋が、広い面積のものが転写されるということは、登録証明書の何と申しますか、全体の面積大変指紋が占める面積が大きくなってしまうということもありますし、それを持つ外国人不快感ということもあろうと考えまして、指紋転写する装置に一応のシステムを組みまして、広い面積を全部転写するのではなくて、その指紋中心部分中心面積を縮小したものを転写するという仕組みを考えております。
  29. 千葉景子

    千葉景子君 この指紋といいますのは、これまでの裁判判決内容あるいはいろいろな皆さんの意見、それから自分自身一人一人の問題としても最も高度のプライバシーにかかわる事項だというふうに思うんですね。それについては、例えば以前の回転指紋などが転写をされるという場合には、やはり本来は本人承諾とか了解を得てやるべきではないか、やはり本人プライバシーをきちっとそういう意味で守っていくべきではないかというふうに思うんですが、その点についてはどうお考えでしょうか。
  30. 黒木忠正

    説明員黒木忠正君) 指紋転写は、せんだっての法律改正によりまして転写するという法律事項になっておりますので、その点について特段、本人了解とか承諾を得るということは私ども必要はないのではないかと考えております。  ただ、指紋が何と申しますか、そういうプライバシーにかかわるものでありますので、私どもとしてはその転写に当たりましては、先ほど申し上げましたように注意深く取り扱っていきたいというふうに考えているところでございます。
  31. 千葉景子

    千葉景子君 もしこれを転写した結果、転写を受けた本人がいや自分はこれは嫌だ、もとあった回転指紋などを使われるのは困る、それ以降の新しいものがあるんだからそっちでやってくれというようなことになりましたらどう扱われますか。
  32. 黒木忠正

    説明員黒木忠正君) 先ほど申し上げましたように、原則は一番新しい指紋転写するということでございます。したがいまして、古い回転指紋を使うのはどうしても新しい指紋が不鮮明になっているような場合に限られる場合でございます。したがいまして、不鮮明な指紋転写しても意味がないわけでございますので、どうしても古いものにさかのぼらなければならない。  それからもう一つは、不鮮明になれば、今度の改正法によりますと指紋の再押捺を命じることができるのが今度の改正法でございますが、私どもが古い回転指紋にさかのぼると申しますのは、そういった場合に本人に再押捺を命じないで、それで古い指紋を利用する、こういうことでございまして、先ほど申し上げましたように法律事項でもありますし、特段本人承諾その他を要するものとは考えていないという次第でございます。
  33. 千葉景子

    千葉景子君 私の質問は、そういう取り扱いをされる、ただその結果本人は古い指紋は嫌だとなりますと、もしこれをもうやめてくれというような話が出ましたらどうなさいますか。
  34. 黒木忠正

    説明員黒木忠正君) 本人が古いのは嫌だと、平面指紋転写してくれとこう言われましても、平面指紋が不鮮明である場合は、不鮮明な指紋転写するわけにもまいりません。さりとて、法律本人指紋の再押捺をその場合は命ずることはできないわけでございますので、古い指紋が、鮮明な指紋があればそれを利用するということに必然的になりますので、本人が仮に嫌だということを申しましても、それはこちらの措置として古い回転指紋指紋転写するということになろうと思います。  ただ、先ほど申し上げましたように、回転指紋で非常に広い面積指紋転写するという措置はとらずに、平面指紋と同じぐらいの大きさの指紋転写するということになりますので、外国人にとりましてそれが特段不当であるというようなことにはならないのではないかというふうに考えております。
  35. 千葉景子

    千葉景子君 回転指紋の一部を使われるということですけれども、それが問題ではなくて、そのもともとの回転式に押した指紋というのは、もう自分の意思としては使いたくないということです。そういう意味では、法務省の方でそれは一部であると言われようとも嫌だということもあるかと思うんですね。こういうときに承諾なく、そして鮮明じゃないから古いのを使うということは、せっかくこの回転指紋を廃止したという措置とは逆行する、ちょっと納得がいかない措置ではないかと思うんですね。この点については再度御検討いただきたい。本人了解を得るなり、それから回転指紋まではさかのぼって使わないというようなこともやはり考えていただきたいというふうに思うわけです。ちょっと時間がありませんので、これについては、また具体的な何か問題があれば質問させていただきたいというふうに思っております。  ところで、次にちょっと令状関係の問題について質問をさせていただきたいというふうに思うんです。  最近、私、大変びっくりした捜索差し押さえが行われているということに気がつきました。実は昨年からことしにかけまして丸岡修、これの旅券法違反旅券不実記載、同行使被疑事件、それから泉水博旅券法違反旅券不実記載被疑事件、これに関連して全国で相当多数の捜索差し押さえ処分が行われているというふうに私情報を得ているんですが、この捜索差し押さえ令状ですね、一体どのくらいの数出ているんでしょうか、裁判所の方で。いかがですか。
  36. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者吉丸眞君) 私どもにおきましても、個々の事件令状発付状況については調査を行っておりませんので、お尋ねの令状発付の数につきましては承知していない状況でございます。
  37. 千葉景子

    千葉景子君 承知されていないというのは随分おかしなことかと思うんですね。ちょっと調べていただければわかることではないかと思うんです。これはもう処分がなされてしまっているわけですからね、なされて実際の捜索差し押さえ処分は。私の知る限りでも全部で二百以上の捜索差し押さえ処分が行われているのじゃないか、これはもう本当に全国にまたがっております。被疑事件内容旅券法旅券不実記載被疑事件、これで二百以上の捜索差し押さえが行われるという、一体これは警察庁どういうことですか。ちょっとこれを説明してください。
  38. 伊藤一実

    説明員伊藤一実君) お答えいたします。  本件事案は、昨年の十一月二十三日に日本赤軍構成員丸岡修旅券法違反で検挙いたしますとともに、その後の捜査によりまして本件に関与した三名を旅券法で検挙いたしました。さらに国外逃亡中でございました日本赤軍構成員泉水博が本事件にかかわっていたということが判明いたしまして、同じく同人を旅券法違反容疑で国際手配したということでございました。委員御承知のとおり、日本赤軍というのは過去にも幾つか国際的な事件を敢行いたしまして、こうした組織の関係者が絡んだ極めて組織的、計画的な犯行であります。したがいまして、警察といたしましてはその動機、目的あるいは背景、関係者等を解明するために必要な捜索差し押さえを行ったところであります。
  39. 千葉景子

    千葉景子君 しかし、今図らずもおっしゃっていらっしゃるように、丸岡自体は既に昨年の十二月十二日起訴をされている。その協力者とされている二名も逮捕されている。そしてその供述などから泉水博という人も逮捕状が出ている、こういうような捜査というのはこの旅券法にかかわりましては相当進んでいる、解明をされているという状況です。  そういう中でさらに——この被疑事件ですよ、別に私は人脈解明なんて言ってないんですから。旅券法違反旅券不実記載、同行使、こういう事件にかかわらしめてその他捜索すべきものというのはどんなものが考えられるんですか。
  40. 伊藤一実

    説明員伊藤一実君) 本件捜査につきましては、ただいま申し上げましたとおり日本赤軍関係者によります組織的な犯行である。その上に日本旅券の持ちます国際的信用を失墜させたと、極めて重大な犯行であるという認識に立っております。その解明に必要な範囲内で捜索差し押えを実施しているということになっています。
  41. 千葉景子

    千葉景子君 しかし、一般に捜索差し押さえを行う場合というのは、被疑者の場所には何らかの証拠物があるというふうに推定はされます。しかし、第三者の場所というのは一般的にそういう推定は働かないわけですよね。そうなりますと、やっぱりそこには押収しなければいけないそういう証拠物なりがあるという、何か一定のやはり存在を認める状況、そういう蓋然性のようなものがなければどこにでも捜査の手は伸ばすことができるということになるわけです。そういう意味では、極めて厳しいその辺にはチェックが施されなければいけないと思うんですけれども、この関係捜査をされたということですが、一体二百名以上にも上る場所に、この犯罪にかかわる目的物が存在しているという何か蓋然性というものはどんなことがあったんですか。
  42. 伊藤一実

    説明員伊藤一実君) ただいま申し上げましたとおり、一連の捜索につきましては、丸岡修らにかかわる旅券法違反事件を解明するために、私ども警察といたしまして必要性を十分判断した上で、裁判官によりましてさらにこの上に適法性、妥当性あるいは必要性という点につきまして十分な事前審査を受けまして、捜索差し押さえ許可状の発付を得て執行したものでありまして、無関係なものあるいは無関係な範囲についてまでこれを執行したということは断じてございません。
  43. 千葉景子

    千葉景子君 いや、私はこういうところを捜索差し押さえするためには、何らかのそこに押収すべき証拠物なりがある、これを裏づけるような状況とか蓋然性とか、そういうものがなければいけないという私は指摘をしているわけです。それはおわかりですね。だとすれば、それは具体的にどんなことがあり得るのか、それを答えていただきたいんですよね。じゃ、大変な事件だからいろいろなところを捜索してみなければいけないといったら、ここにいる人みんな捜索してみなければいけないことになるじゃないですか。その辺を少し具体的におっしゃっていただきたい、こう言っているんです。
  44. 伊藤一実

    説明員伊藤一実君) それぞれ必要な疎明資料を収集いたしまして令状請求をしたわけでありますから、その具体的な疎明の中身につきましては、捜査の中身にかかわることでございますので、この際答弁は差し控えさせていただきます。
  45. 千葉景子

    千葉景子君 それじゃ言いますけれども、結果的には二百名以上の方ほとんどが丸岡、あるいは泉水とやらには顔も見たこともない、そしてあるいは捜索差し押さえ令状が来て初めて何者だろうとびっくりした。まあ新聞等では名前ぐらい知っている人がいるでしょう、こういう人ばかりですよ。  そして、押収していった押収物、これはどんなものがございますか。
  46. 伊藤一実

    説明員伊藤一実君) 具体的に押収した物につきましては、捜査の中身にかかわることでございますので、答弁は差し控えさせていただきます。
  47. 千葉景子

    千葉景子君 また、中身にかかわることだと言って全部答弁をなさらないとすれば、こちらでそれをもう推測するしかないわけですよ。あるいは捜索をされた方のいろいろな結果を見て推しはかるしかないわけですけれども、ほとんどこの事件にかかわるような押収物などはないんです。押収していった物といえばどこにでも配布をされているようなビラであるとか、一般に書店などで売っているパンフレットであるとかあるいは住所録、これも別にそこに泉水やら丸岡の名前があるというわけでも何でもない。こういうものをほとんど差し押さえていって、一体何のために行われたこれじゃ捜索差し押さえなのか。客観的な状況からは無意味捜索差し押さえとしか言いようがないんですけれども、どうですか。
  48. 伊藤一実

    説明員伊藤一実君) 今回の一連の捜索差し押さえによりまして、丸岡修、あるいは泉水博旅券法違反等につきまして、これを裏づける有効な押収資料を多数入手したというふうに承知しております。
  49. 千葉景子

    千葉景子君 そうですか。押収された物はところがすぐ請求をしたらば返還をされた、返してくれた、こういうものが多いんですよ。そんなに重要なものがそれだけ押収されたんですか。
  50. 伊藤一実

    説明員伊藤一実君) 押収した後にとめ置きが必要ないというものにつきましては、いずれも還付をした、あるいは仮還付をしたということでございます。
  51. 千葉景子

    千葉景子君 重要なものであれば、そんなに簡単に普通は還付などしていただけないんです。住所録なんかは差し押さえられ、その内容さえ知ればもうこれは要らないんです。これでいろいろな人の住所なりあるいは人脈関係がわかるわけですからね。まるでこれでは情報収集のための捜索差 し押さえとしか言いようがないではないですか、客観的に言って。  しかも、この捜索差し押さえの執行も異常な執行の仕方がされているんですが、一つお尋ねしますけれども、こういう職務執行に当たっては身分を明らかにしなければいけませんね。それについてはどう指導されましたか。
  52. 伊藤一実

    説明員伊藤一実君) お答えいたします。  捜索差し押さえ時におきまして、相手方からの請求を待つまでもなく身分を明らかにするように私ども指導しております。実際にも、警察官である旨を告げますとともに警察手帳等を提示するというふうにやっておるように承知しております。
  53. 千葉景子

    千葉景子君 承知はされていても、実際には今回の捜索差し押さえの執行に当たってはほとんどそういうことは実行されていない。みずから自分の身分を明らかにするなんということはまずない。明らかにせいと要求をされてようやく、そして渋々警察手帳を出す、それすら拒んだ例だってあるんですよ。それから数名でいらっしゃる、そうするとその中の一人しか身分を明らかにしない、こういう実態があるのをちゃんと把握していらっしゃいますか。
  54. 伊藤一実

    説明員伊藤一実君) お答えいたします。  その場の状況によりまして所属、氏名、階級等を告げる場合もございますけれども、緊急を要する場合には警察官である旨を告げれば足りるというふうに理解しております。また、多数の捜査員が捜索する場合には責任者が身分を明らかにするように指導しているところでありまして、それで足りるというふうに理解しております。
  55. 千葉景子

    千葉景子君 でも、実際にはだれが来たかわからないわけですよ。だれだと言われたら、やはり自分はこういう者だ、警察の者だというのを明らかにするのは当然の義務じゃありませんか。少し実態をきちっと調査をしてくださいよ。上の方で考えていらっしゃることと実際に現場で行われていることとは全く違うんですよ。  それから、例えば捜索差し押さえを開始する場合令状提示を行いますね。これについてはどんな指導をなさっていますか。
  56. 伊藤一実

    説明員伊藤一実君) お答えいたします。  過去の裁判例等に基づきまして、捜索差し押さえ許可状等の執行に当たりましては、処分を受ける相手方がその内容を十分に知り得る程度に、明確に令状を示すように指導を徹底しているところであります。
  57. 千葉景子

    千葉景子君 これも同じですよ。幾ら指導をなさっていると言っても、実際に行われることといえば令状をほとんどちらりと見せるだけ。相当な量の捜索差し押さえの目的物が書かれているわけですからそれを十分に見る、読む時間というのが必要ですけれども、それを要求しても読んでいる途中で取り上げてしまう、こういうことが実際行われている、むしろほとんどそういう状況です。  さらに言えば立ち会い、それから捜索差し押さえに際しては必要な処分というのができることになっております。これは私もよく存じておりますが、今回の捜索差し押さえで必要な処分として行われたものはどんなことがありますか。
  58. 伊藤一実

    説明員伊藤一実君) 具体的にはいろいろなケースがございます。しかしながら、具体的な内容といたしましては写真撮影、メモ、こういったものを状況によっては制限する等の処分もあり得たというふうに考えております。
  59. 千葉景子

    千葉景子君 これも執行の目的を達成する上で、やはり必要だというものじゃなきゃおかしいわけですよね。これもそれに本当に合致するかどうか。例えばどこからか電話がかかってきた、それにも一切出させない、あるいは写真撮影といっても顔写真をとっていく、また住所録等の中から勝手な部分だけメモをつくって持って帰る、これが本当に捜索差し押さえで必要な処分と言えますか。
  60. 伊藤一実

    説明員伊藤一実君) お答えいたします。  証拠物の証拠価値はその存在した場所とか、発見されました状態によりまして影響を受けることがございますので、証拠物をその発見された場所あるいは状態とともに写真撮影すること、あるいはその内容を録取すること、こういったことは、これは捜索差し押さえに当然付随する処分として許容されるものと理解しております。
  61. 千葉景子

    千葉景子君 一般論としてはそういうこともあり得るということは言えようかと思いますよ。しかし、具体的な状況から見て全く無意味処分、そういうものが乱発をされている。何でもできる、こういうような状況ですよ。  そして、さらにこれは私も十分に調査をしていただかなければいけないと思いますが、身体検査、これは特別な令状によらなければいけませんね。
  62. 伊藤一実

    説明員伊藤一実君) 捜索差し押さえの場所にいる者に対しましては、目的物を体に隠匿するというような不審な挙動その他の諸般の事情から総合的に判断いたしまして、社会通念上必要かつ妥当と認められる範囲内でなければ身体については、その場所に対する捜索差し押さえ許可状によりまして捜索を行うことは許されない。必要があれば改めて令状を請求して発付を受けた上でなければできないというふうに承知しています。
  63. 千葉景子

    千葉景子君 今回の捜索差し押さえの中で、女性ですが、身体検査を頭の先から足の先まで、下着の中まで行われている女性がおります。しかも、これは身体検査に関する令状も全く示されていない。それは今おっしゃったように、どうしても隠匿をしたような状況がある、こういうことがあれば別ですよ。全くそういうことなしに、もう捜索が終わり、そして身体検査をしている。これは全くの違法行為じゃないですか、いかがですか。
  64. 伊藤一実

    説明員伊藤一実君) お答えいたします。  ただいまお話ししましたとおり、目的物を身体に隠匿するなどの不審な挙動その他諸般の事情から総合的に判断いたしまして、社会通念上必要かつ妥当と認められる範囲内でなければできないわけでありますから、それを踏み越えた身体検査を行ったということは断じてございません。
  65. 千葉景子

    千葉景子君 断じて行っていないと言うなら、それをきちっと調査をして報告をしていただけますね。
  66. 伊藤一実

    説明員伊藤一実君) 事実関係は改めて調査いたします。
  67. 千葉景子

    千葉景子君 きちっと調査をして、どういう状況で身体検査がなされたのか、それは報告をいただきたいと思います。  もう時間がありませんから、一つ一つこの違法性、これを洗っていきましたら本当に一日かかったって出し尽くせないぐらいの状況があるわけです。これは全く一般の市民に対して、まさに住居の平穏あるいはプライバシー、こういうものを土足で踏みにじるような行為ですよ。こういうことは断じて許すわけにはいかない行為だというふうに思うんですね。捜査の問題である、そういう指導をなさっていると口ではおっしゃっているわけですけれども、実態を調べていただければ全く現実と違う状況がある。こういう捜査の仕方、今の話をお聞きになって法務大臣などはどう考えられますか。
  68. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) まず、捜査令状を発付するかどうかという問題につきましては、これは裁判所の権限に属しておりまするので、法務大臣としましては答弁を差し控えたいと存じまするが、いずれにしましても、令状の執行等を含めまして捜査が適正に行われなければならないことは申すまでもございません。当局としましても、今後引き続き適正な捜査の遂行実現のために格段の努力を行ってまいらなければならないと存じております。
  69. 千葉景子

    千葉景子君 こういう捜査によって、今はもう警察に対しては本当に信用をなくしているんですよ。ぜひ実際の状況調査され、こういうことがないようにきちっと対処をしていただきたいと思います。  じゃ、私の質問を終わります。
  70. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 裁判所所管の六十三年度予算各目明細書に基づいて数点お伺いしたいと思います。 時間の関係で、質問通告をしておきましたけれども、省略するものもありますので御了解願いたいと思います。  各目明細の三ページに記載されている外国留学旅費七百五十万円についてお伺いしますが、これの趣旨それから留学の人数、留学の期間、留学先等について概略御説明ください。
  71. 櫻井文夫

    最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) ただいま御指摘の外国留学の旅費でございますが、これはいわゆる人事院の長期在外研修の旅費でございます。人事院が中心となって各省庁及び裁判所職員の二年間の海外留学の研修が行われるわけでございますが、裁判所からは毎年一人派遣されております。二年間欧米の大学に派遣されまして外国の法律あるいは司法制度の研究に従事するわけでございます。行く先といたしましては、過去五年間について見ますと、アメリカに行った者が三名、それから英国に行った者が一名、西ドイツに行った者が一名ということになっております。
  72. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 この制度ができてからどのくらいになるのかわかりませんが、今日までの留学者の数、この留学者が現在においても裁判所の仕事に携わっているのかいないのか。もしいないとすればその人はどんな理由でやめたのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  73. 櫻井文夫

    最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) この留学制度が発足いたしましたのは昭和四十一年でございます。それ以来毎年裁判所が派遣いたしまして、そして二年間の留学を終えて帰国してきているわけでありますが、現在までに二十名の者が行って帰ってきているわけでございます。二十名の中で退職いたしました者は一名でございます。この方は退官されまして現在国会議員になっておられるわけでございます。それから、それ以外に現在検事に転官しておる者も二人おりますが、いずれにしましても今申しましたお一人の方を除きますと、いずれも裁判官あるいは一時期検事に転官をして戻ってくるというような関係で、裁判所の仕事に従事しているわけでございます。
  74. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 それは大変結構なことでございます。  次に執行官の問題についてお伺いします。  やはり八ページのところに執行官の旅費というのが四千六百万円計上されております。御承知のとおり執行官は、本来事件の申立人から手数料、旅費、費用をもらうことになっているわけですが、ここに言う旅費というのはいかなる性質の金なんでしょうか。
  75. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 全国裁判所には地裁の本庁、支部合わせまして二百九十二庁ございますけれども、現在のところそのうちの九十五庁につきましては専属の執行官を置いておりませんで兼務にいたしております。その執行官が本務庁から兼務庁へ出向いて執務をする際の旅費でございます。これは国家公務員等の旅費に関する法律で、第二条で出張という定義書きがしてございますけれども、それは本務庁から兼務庁に出向いて執務をする際にも、この出張という概念に当たって旅費を支給するということになっておりますので、この出張旅費でございます。
  76. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 これは後でお伺いしますけれども、執行官は非常に多額の手数料収入等があるわけですから、今のお話の本庁、支部、出張所、出張所は別にしても、全体をひっくるめて裁判所で職務執行区域と、こういうふうに決めれば別に旅費を支給する必要もないんじゃありませんか。
  77. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 執行官の職務区域はその地裁の管内ということになっておりまして、ただ支部の場合に、例えば佐渡でございますとか新宮でございますとか高山でございますとか、そういった支部に参りますと事件数も非常に少のうございまして、一人の専属の本務の執行官を置くだけの事件数がないために兼務をいたしているわけでございます。そういった兼務の関係上どうしてもこういった旅費が必要になってくるわけでございます。
  78. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 いや、私が言っているのは、勤務場所を本庁だけじゃなくて、本庁と支部と全体を勤務場所だと決めれば、その勤務場所に行くのに本庁に行こうが支部に行こうが、自分が勤務場所に行くだけの話であって、あえて旅費というものを支給する必要はなくなるじゃありませんかと、こう申し上げているわけです。
  79. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 勤務場所は地裁の全管内にまたがるわけでございますが、例えばほかの裁判所職員でございましても、東京の本庁に勤務して八王子支部の兼務という例がございますけれども、その場合にも本庁が本務でございますと、八王子支部に行く際にやはり出張旅費が出ております。そういう一般の裁判所職員、一般の公務員と同様な取り扱いをいたしているわけでございます。
  80. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 私が申し上げたいのは、執行官の給与とか旅費というものについて、一般の公務員と同じように考える必要はないんじゃなかろうかということを前提にしているから、先ほどから同じ質問をしているわけなんです。いずれにせよ執行官規則によれば、書記官に事務を行わせることができるというふうな規定がありますが、旅費を払ってまで執行官を出張勤務させなきゃならぬとしたら、そこの当該裁判所の書記官に執行官の事務を代行させる、行わせるということはできないんですか。
  81. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 現在でも、執行官の事務取扱書記官といたしまして四十七庁で発令しているわけでございますけれども、どうしても不動産の競売でございますとか動産の差し押さえ、競売ということになりますと、やはりその事務になれた執行官を差し向けるということにいたしておりますので、ただいまのような執行官の出張ということにいたしております。いわゆる簡単な事務でございますと、今でもそういった書記官の事務取扱で賄っておりますが、やはり本格的な執行ということになりますと執行官にさせているわけでございます。
  82. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 執行官は現在全国にどのくらいの人数が任命されていて、これの近年の動向、人数の動向についてお伺いしたいと思います。
  83. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 現在は執行官全国で四百九十五人でございます。  ただいまお尋ねの動向でございますが、ちょっとさかのぼりまして執行官法が施行されました四十一年で見ますと、これが三百四十一人でございます。したがいまして、法律施行当時と比べますと百五十四人の増加で、約パーセントで申しますと四五%の増と、こういうことになっております。
  84. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 それで、今おっしゃられた昭和四十一年当時から現在までに比べて、執行官の受理事件数はどういう動向を示しているんでしょうか。
  85. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 執行官の事務の中で、送達事務というのは若干特殊なものでございますので、送達事務を除きますと、四十一年当時全国で二十九万八千件ございまして、執行官一人当たりにいたしますと八百七十四件になります。これを六十一年で見ますと、事件数は四十八万三千件でございまして、執行官一人当たりにいたしますと九百六十九件になります。
  86. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 年数は近年のことでよろしいんですが、執行官の手数料、費用の収入を裁判所としては個別的には把握しているんでしょうか。
  87. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 各地裁別に把握いたしております。
  88. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 個人の方がどうこうということじゃございませんので、それでは全国平均して、執行官が年間一人当たりどのくらいの手数料、費用収入を上げ、またそれから実質収入がどのくらいになっているか、概数でも結構ですがおわかりになりますか。
  89. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 六十一年で申しますと手数料総額、粗収入でございますが、手数料総額は二千百五十万になります。その中から経費等を控除いたしますと、いわゆる収入といたしましては千三百三十万になります。
  90. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 手数料収入が年間一人当たり二千 五百八十万円、これは全国平均ですから変なことを言うと怒られるけれども、北海道の方の余り事件のないところの人も、東京の忙しい人も全部ひっくるめて、そして二千五百八十万円の手数料収入があるわけです。それで今、経費を差し引いて千三百三十万とこうおっしゃるけれども、私なんかが見聞きする限り、執行官にかかる費用としたら正規に、二人、三人の事務所で一人の事務員を置いておく程度の、事務員の雇用経費がかかる程度のものだと私は思うんです。そうすると、算数がすぐわからぬけれども経費が一人当たり千二百五十万もかかるなんということは私としては到底考えられない。執行官事務所へ行って、執行官が三人いて事務員が一人いるだけで、あと裁判所の電気を使って全部やっているんだから、そうすれば事務員の経費千二百五十万も、しかもそれが三人なら三人、二人なら二人の執行官が持っている事務員の給料で、経費が一人当たり千二百五十万かかるというのは、それはそれでいいですけれども、いずれにしても、平均収入千三百三十万円という金額について裁判所としてはどうお考えでしょうか。
  91. 泉徳治

    最高裁判所長官代理者(泉徳治君) 私、先ほど言い間違ったかもしれませんが、粗収入は、手数料収入は二千百五十万でございます。それで、そこから経費を引きましたものが千三百三十万でございます。この千三百三十万という収入につきましてはいろいろな見方もございまして、また御批判もあろうかと思います。  ただ、執行官と申します職種は特殊なものでございまして、退職金もございません。それから国家公務員の共済組合制度の適用も受けておりません。それから御承知のように、執行官の職務というのは非常に特殊でございまして、債務者の住まいの中に入っていかなきゃならない、そういったためにナイフでありますとか包丁でありますとか、そういったものを突きつけられて脅迫され、また傷害を受けるということが多々発生しております。そういった職務の特殊性。それから、この中から先ほど御指摘のありましたようにいろんな経費を払わなきゃいけない、そういったものを考えますと、この収入が高いかどうかはいろいろ問題があろうかと思います。  ただ、私ども委員御指摘のような観点から、最近におきましては執行官を増員いたしまして、収入をできるだけならしまして、かつ国民に対するサービスをふやすために増員をする、こういう方向で努力している次第でございます。
  92. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 私の申し上げたいのは、執行官の金が、所得金額が大きいことに文句を言っているんじゃないんです。この金はだれが出しているかということが問題なんです。結局金を払えぬで家も競売されるとか、あるいは家財道具を差し押さえされるとか、こういう人々から、あるいはそれから金を取る債権者の方からの費用もありますけれども、究極的には債務者の中からこれだけの金を出させられているわけです。要するに競売されるような経済的苦境にある国民の銭から、売却した銭の中からこれだけのものを払って、しかもそれが年間収入、あなたのおっしゃることで千三百三十万円なんていう多額の収入があるということが果たして妥当なんだろうか。取られる立場に立ってみたらえらい高い金だなと。私も弁護士を二十年やっていたんだけれども、年間収入千三百三十万なんてありゃせぬ。弁護士よりも、失礼だけれどもあなた方裁判官よりも高い金を取っている。随分この制度はおかしな制度だと思う。これについてはまた日を改めていろいろ詳しく伺いたいと思います。  次に、刑事補償金二億円が八ページに記載されております。この刑事補償金二億円というのは、どのような基準に基づいて計上されたんでしょうか。
  93. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者吉丸眞君) 刑事補償金は裁判費でございますので、その基本的な算出方法といたしましては、前々年度の実績に事件の増減の傾向値を乗じまして、そこで出ました値に新規の値上げ分を加えて算出するというものでございます。
  94. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 刑事補償金というのは、結局無罪の判決もしくは再審の場合無罪判決によって国が被害を受けた国民に対する補償金、賠償金です。過去二十年間の刑事補償金の原因別の支払い金額の動向について、数字を細かく二十年間読まれていると時間がなくなっちゃうので、およその動向をかいつまんでお教えいただきたい。
  95. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者吉丸眞君) 昭和五十二年から六十一年までの刑事補償金、これは拘禁補償と費用補償の合計でございますが、その総額は十五億五千二百八十二万二千円でございます。そして、対象となりました人員が八百四十一人ということになります。  そして、動向ということでございますが、これは年によって非常に出入りがございます。特定の傾向ということは認められませんが、この十年間で最も少なかったのは昭和五十四年の三千九百九十九万九千円、六十六人でございます。最も多かったのは昭和六十一年の四億五千九十六万円で百十七人でございます。
  96. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 結局人数あるいは金額等からして、どういう原因で刑事補償金を支払わなきゃならなくなったのですか。その原因をちょっと教えてください。
  97. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者吉丸眞君) 刑事補償金を支払う原因といたしましては、いわゆる再審無罪の場合とその他の無罪の場合に大きく分けられると思います。先ほど申しました昭和五十二年から六十一年までのこれは実は拘禁補償だけについて申しますが、この十年間で再審無罪となりましたのは十人で、三億一千六百八十六万六千円でございます。それに対してその他の無罪は五百四人で六億八千六百八十七万円でございます。
  98. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 露骨に申し上げれば、今再審無罪の十人、三億円何がし、これは裁判所の誤判が原因なんだ。その他の五百四人、六億八千六百万円というのは検察の捜査の不手際による無罪ということになるわけです。これについて裁判所、確かに十年間で十人ぐらいということではあるけれども、再審無罪というのは裁判官の誤判なんですから、こういうことについてどうお考えか。  というのは、刑事補償金を払うというのは二重に国民に迷惑をかけているんです。まずとっ捕まって無罪になった、無罪になったのはいいけれども、とっ捕まっているその人間に甚大な迷惑をかけている。迷惑かけたその国民に対する賠償金として国民の税金からまた金を払っている、二重に迷惑をかけている。この辺について裁判所自体としてどうお考えなのか。そしてまた、五百四人という審理による無罪は、結局検察の捜査の不手際ということになるわけですが、これに対して裁判所としては検察庁との間で、こういうふうな審理による無罪が出ないようにするための方策等については何か検討しておられるんですか、伺います。
  99. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者吉丸眞君) 刑事裁判におきまして適正な事実認定がなされることは、極めて重要であるということはまことに御指摘のとおりでございます。私どもにおきましても、これまで行われました裁判官の会同や各種の研究会等におきまして適正な事実認定のための方策がしばしばテーマとして取り上げられまして、証拠調べの運用の問題や、あるいは証拠の証明力の評価等の問題につきましていろいろな角度から、またいろいろな事例をもとに討議、検討等が重ねられております。私どもといたしましても、今後ともこの点につきましては十分考慮してまいりたいというふうに考えております。
  100. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 次に、検察審査会についてお伺いします。  検察審査会は後ろの方に五十億円の予算が計上されています。ここ数年間の動向でも結構ですが、検察審査会に対する申し立て件数ないしこの申し立てについての検察審査会の議決の動向というか、件数というか概略で結構ですからお教えください。
  101. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者吉丸眞君) 昭和四十三 年から六十二年までの二十年間について申し上げます。その間の受理事件数の合計は四万三千百三十六件でございます。また、その間の既済事件の数は四万三千七百二十二件でございます。この既済事件のうち起訴相当、不起訴不当の議決がなされたものが二千四百四十六件ございます。全体の五・六%でございます。不起訴相当の議決がなされたものが三万三千九百四十九件、その他の議決がなされましたのが七千三百二十七件ということになっております。
  102. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 ちょっと私わからないんですが、その他の議決というとどんなことになるんでしょうか。
  103. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者吉丸眞君) これは例えば申し立てが取り下げられまして審査の打ち切りになるような事例、あるいは申し立て却下、あるいは移送というようなことでございます。
  104. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 全然知らなくてあれですが、相当の件数を検察審査会で御苦労されているということはわかりましたが、この起訴相当二千四百四十六件、これに対する検察庁のその後の起訴、不起訴はどのようになったかおわかりでしょうか。
  105. 吉丸眞

    最高裁判所長官代理者吉丸眞君) この起訴相当事件のその後の検察庁における処理ということになりますと、いわゆる追跡調査が必要になりまして、これは長い期間の統計がございませんので、昭和六十年から六十二年までの三年間に起訴相当、あるいは不起訴不当の議決があった事件についてのその後の処理結果について御報告申し上げます。  昭和六十年には、起訴相当、不起訴不当の議決が五十八件ございました。そのうち十三件について起訴が行われ、四十四件については不起訴が維持されました。残りの一件はまだ未処理という状況でございます。次に、昭和六十一年には四十四件の起訴相当、不起訴不当の議決がございましたが、このうち十一件について起訴が行われ、二十二件について不起訴が維持されました。残りの十一件はまだ未処理ということでございます。昭和六十二年は、九十五件の起訴相当、不起訴不当の議決がございましたが、このうち二件について起訴がされ、九件について不起訴が維持されております。残りの八十四件はまだ未処理ということでございます。
  106. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 わかりました。最後の質問をさせていただきます。  簡裁の統廃合法案に関連して、廃止された裁判所のいわゆる跡地について地方公共団体等から払い下げの申し入れがあったような場合には、裁判所としても積極的に助力すると、応援すると、こういうふうな答弁もいただいたわけですが、現在までに地方公共団体からこの跡地の利用につき、裁判所に何らかの申し入れ等はあったでしょうか。
  107. 町田顯

    最高裁判所長官代理者(町田顯君) 簡裁の敷地につきましては、一部借地等はございますけれども、現在裁判所が所管しております廃止予定の簡裁の国有地というのは百一庁ございます。その中で六十九庁の地元市町村から払い下げの要望が出ております。ただ、私ども説明して歩きましたときに、払い下げの要望があればお取り次ぎするのでお伺いしたいという形で御希望を聞いてまいりましたので、御希望も非常に漠とした、ただもう払い下げを受けたいんだというようなところから、具体的にこういう形で使いたいんで払い下げを受けたいというような、その払い下げの要望には強弱さまざまなものがございますけれども、何らかの形で払い下げを受けたいと考えているというところが六十九庁でございます。
  108. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 いろいろ具体的になると難しい問題もあるかもしれませんが、大蔵省に返しちゃってまた地上げ業者に売られてしまうというようなことにならぬように、地方公共団体からの要望があったら、できる限り誠意を持って大蔵省に取り次いで地方公共団体が効果的に公共目的に使えるように尽力いただきたいと思います。  以上でございます。どうもありがとうございました。
  109. 橋本敦

    ○橋本敦君 私は、きょうは人権問題に関連をしてお伺いするのですが、先ごろの新聞で、これは大変なことだなということで私も気にしておる事件がありました。  一つは、子供たちの卒業アルバムに学校の校則に違反したという生徒の写真が掲載をされずに花壇の写真、花の写真が載せられた。こういう卒業アルバムを三十年、五十年先に見て一体その子供はどういう思いをするだろうか。そしてまた、お互いの子供たちの中で、名前はその花の下に書いてあるが、どういう子供だったかと顔を思い出してもらえるだろうか、まさに私は、写真を載せられなかった児童の人権にかかわるこれは重大な問題だというように思わざるを得なかったわけであります。  こういう問題が起こったのは、これは静岡県の清水市の市立第二中学でありますが、この問題について具体的な事実関係はどうなのか、文部省、御調査をお願いしておきましたが、まず事実を明確にしていただきたいと思います。
  110. 辻村哲夫

    説明員(辻村哲夫君) お答えをいたします。  御指摘の事件につきまして、静岡県の教育委員会の方に照会をいたしまして事実の概要を確認いたしておりますので、その点について御報告を申し上げます。  まず事件でございますが、今御指摘がございましたとおり静岡県清水市の公立中学校で起こった事件でございまして、今年度卒業生のうち男女四名の生徒につきまして、顔写真にかえて花壇の花を載せたというものでございます。  事件の経過といたしましては、同校が例年どおり昨年の十一月ごろから卒業アルバムの作成に取りかかったようでございます。学校といたしましては、卒業アルバムというものが一生に残るものだということで、学校の言い分でございますけれども、生徒の将来のことを考えてということでございますが、中学生らしい服装で卒業アルバムに掲載さしてやりたいということで、髪型や服装の乱れ等を正して写真を撮るということで指導したようでございます。その時点で約十名ほどの生徒の髪型あるいは服装の乱れがあったようでございますけれども、今回の事件にかかわる者以外につきましては、学校側の指導に従って撮影をし終えたということのようでございます。  今回の事件にかかわる子供たちにつきましては、学校側の繰り返しの指導にも納得をいたしませんで、ずるずると経過してしまった。学校側としては一日延ばしに写真提出の期限を延ばしながら説得をしたわけでありますけれども、ついにアルバムの写真の提出期限であります一月いっぱいを待ちましても生徒たちが応じないということで、ただいまのような顔写真にかえて花壇の花を載せるという決定をしたようであります。  なお、その後子供たちのうち三名につきましては、二月中旬に入って正しい髪型、服装にして撮影を行ったようであります。それを持って学校側に来たということで、学校側は直ちに写真屋さんの方に相談をしたわけでございますけれども、もうその時点では間に合わないということで、ただいま先生御指摘になりましたような形で卒業アルバムができ上がってしまったということが事実の経過でございます。  以上でございます。
  111. 橋本敦

    ○橋本敦君 今四名ということですが、新聞では男女五名となっておりますが、四名に間違いないですか。
  112. 辻村哲夫

    説明員(辻村哲夫君) 一名につきましては、第三学年在学中ほとんど一日も出席をしないということでございまして、卒業の認定に至っておりませんということで、卒業ということになりますと四名というのが正確なようでございます。
  113. 橋本敦

    ○橋本敦君 この学校の校則によりますと、髪型は男子は坊主刈り、女子についてはおかっぱもしくはお下げ髪、こういうふうに規定されているということは事実ですか。
  114. 辻村哲夫

    説明員(辻村哲夫君) 校則という文書に書かれたものにおいては、中学生らしい髪型、服装ということでございますが、実際の指導として学校側 は、ただいま先生御指摘になったような指導をしていたというのが事実のようでございます。
  115. 橋本敦

    ○橋本敦君 この四人の子供たちは、いわゆる具体的な指導としての坊主刈りもしくはお下げ髪、これに反していたということですね。
  116. 辻村哲夫

    説明員(辻村哲夫君) そのとおりでございます。
  117. 橋本敦

    ○橋本敦君 この学校では昨年は三人、一昨年は一人、同じように卒業アルバムに名前を載せてもらって顔写真は載せてもらえなかった生徒があったのは事実ですか。
  118. 辻村哲夫

    説明員(辻村哲夫君) 私ども静岡県教委に問い合わせました内容は、今回の事件を特に中心にしておりましたので、人数までは確認をしておりませんが、過去にもそのような事例があったということは事実でございます。人数につきましてはそういうことで確認をいたしておりません。
  119. 橋本敦

    ○橋本敦君 文部省は、この件について問い合わせをやったのは今回が初めてですか、過去の例があったのを知っていても問い合わせしなかったんですか。
  120. 辻村哲夫

    説明員(辻村哲夫君) 今回、こうした形で卒業のアルバムが作成されたということは初めて承知したわけでございます。したがいまして、これまでにこの種の件で当該学校に問い合わせた事例はございません。
  121. 橋本敦

    ○橋本敦君 学校が生徒に対する指導上適切な校則や生徒心得を自主的に定められること自体は、これは当然のことですし、それに基づいて指導される、これも大変教育的には大事なことです。しかし、卒業アルバムということの重みを考えてみますと、まさにこれはもう今後指導する問題じゃなくて、それがもう最後の問題で、生涯そのアルバムとして残っていくわけでしょう。そうすると、名前はあるけれども、顔写真は載せてもらえないたった四人の生徒、五百人余りの中でたった四人、異様ですね。一体これは何だということですね。そして、そのことは同時に、この子供たちは学校の校則もしくは今言ったような服装指導に反したということのゆえに顔写真が掲載されなかったという事実も、これは生徒全般、学校全体では客観的に明白ですね。いわば校則を守らせるための見せしめ的処置という一面が否定できないと私は思うんです。こういうことが本当に教育的に指導という観点から見て正しいだろうか。これはまさにこの事件においては重大な問題だと思うんですね。  言うまでもありませんけれども、子供たちにも大事な人権があります。私が指摘するまでもありませんが、児童憲章が定められていることは文部省も御存じのとおりですね。児童憲章の冒頭には、まさに「日本憲法の精神にしたがい、児童に対する正しい観念を確立し、」ということでこの憲章が定められ、真っ先に「児童は、人として尊ばれる。」、こういうことがはっきりとうたい上げられ、「児童は、よい環境のなかで育てられ」ねばならないということもうたい上げられている。まさに人格権を持った児童として児童を尊重することは、憲法と今日の民主的な社会において当然のことでしょう。  そして、しかもその第十項目を読んでみますと、「すべての児童は、虐待・酷使・放任その他不当な取扱からまもられる。あやまちをおかした児童は、適切に保護指導される。」、こういうふうにはっきり書いています。だから、教育的配慮で保護指導するのは当然のことですが、それよりも大事なことは、「児童は、虐待・酷使・放任その他不当な取扱からまもられ」ねばならない、これですね。まさに、この服装規定に違反をしていることを聞かなければ一生涯にわたっておまえは顔がないぞ、名前だけだぞ、こういう扱いをされるということは、児童憲章の建前からいっても私はこれは許されることではない、こう思うんですよ。  特に教育指導について文部省自身も、もう古いことになりますけれども昭和五十五年の三月には、「生徒指導上の問題についての対策」というこの通達をお出しになっている。中では立派なことをおっしゃっているんですね。「規則であるがゆえに守れというだけでは、教育的とは言えないであろう。」、そのとおりです。「機会があれば解説などを行って父母の認識を深め、学校と家庭とで協力して指導に当たることができるように役立てることも大切である。」、つまり家庭の協力も得て教育的指導をやる必要がある、当然ですね。「生徒心得に違反した生徒を指導する場合など、違反を問われた箇所を示し、その行為に対する反省を求めるだけでなく、なぜそれが生徒心得として示してあるのかという意味を十分に納得できるように指導する必要がある。」、これもそのとおりですね。この事件の経過でこういう丹念な教育的指導が本当に行われたのかどうか、これはひとつ文部省の指導の問題として厳しく調査をしてもらいたいと思いますが、いかがですか。
  122. 辻村哲夫

    説明員(辻村哲夫君) 御指摘がありましたとおり、若干この卒業アルバムから顔写真を外してしまうということにつきましては、私どももやはり行き過ぎがあったのではないかというふうに思いますし、またその後、私ども県教委を通しての学校の様子を聞いてみますと、学校側も何らかの形で修復をしたいというような方向で動いているというようなことも承知をいたしております。そういうことでございますので、この事例等を取り上げまして、私ども来年度に入りますと生徒指導担当の会議等もございますので、そういうところで全国の生徒指導上の一つの事例として取り上げて研究を深めてみたいというような気持ちを持っております。
  123. 橋本敦

    ○橋本敦君 おっしゃったように確かに行き過ぎですし、ぜひそういうように指導してもらいたいと思うんです。  そして、この新聞報道で見ますと、男の子で髪が長いから切れと言われた子供は切ってきた。そうすると、おまえは切っただけではなくてそり込みがあるから、そのそり込みに毛が生えるまでだめだと、こう言われた。そしてようやく毛が生えたころに行くと今あなたがおっしゃったように、写真屋さんでもう時間切れで間に合わない、こう言われた。悲しかった、悔しかったと書いてあります。私はそう思います。生徒は言われて指導に従った、ところがもう間に合わないと言われた。なぜもっと早くから指導してやらなかったか。間に合わないならばアルバムの発行をおくらしてやってでもできるんですよ、こんなものは。今からでもこれはできるんですよ。  だから、こういう意味で子供の気持ちを考えますと、今おっしゃいましたが、学校も検討されているという話も聞きましたが、ぜひともこの子供たちの写真を入れてみんなの卒業アルバムをつくってやる、それぐらいのことは学校の責任でするように指導してもらいたいと思いますが、どうですか。
  124. 辻村哲夫

    説明員(辻村哲夫君) 卒業アルバムをどうするかという具体のことになりますと、学校側のいろいろなお考えもあるでございましょうから、的確なお答えを申しかねますが、ただいまのような御指摘があったこと等は教育委員会を通しまして十分に伝えたいというふうに考えております。
  125. 橋本敦

    ○橋本敦君 この点については多くの識者が当然のことですが、厳しい意見をおっしゃっていますね。例えば校則問題や生徒指導に詳しい加藤宣彦、この方は東京都の東村山市の中学校の校長さんのようですが、「卒業アルバムというのは、全員そろって載っていることに意味がある。」、こうおっしゃっている。私は確かにそうだと思いますよ。そして突っ張りの子供だというけれども、将来この子供たちはどんな思いをして自分が花になったアルバムを見るだろうか、そう思いますね。それよりは、突っ張りの写真であってもそれが載っておって、将来ああおれはこんなばかなことをやっていたのかなと、こう言って笑いながら自分を反省する、こういうことの方がいいのではないか、こうおっしゃっている、私は本当にそう思いますね。  また、別の劇作家の方の意見では、これは生徒に対する生徒指導上の面当てのような意図を感じると。もしそうであれば、まさにそれは生徒を指 導する側が生徒と同じレベルに相対してしまったのではないか、確かにそうですね。これでは教育的な指導というのはできないでしょう。こういうわけですから、厳しい批判があるのも当然です。そしてまた、さらに子供の人権に詳しい静岡大学の教授で山崎教授の話ですが、こうおっしゃっています。学校の画一的な考えで一人一人の記録と思い出を取り除いてしまうということは、その取り除かれた子供にとって人権上の問題が大きいと言わざるを得ない、こうおっしゃっているわけですね。私は確かに児童憲章の考えや個々の子供の人権という角度から見ますと、教育上の指導的な問題ということを越えて人権上の問題にもなっている、そういう重大な事件だと思うんです。  私は、教育問題をここであれこれ教育現場の教育についてとやかく言うつもりはございません。人権問題という角度でこれを見たわけですが、そういう点から見ますと、この人権問題という形でそういう側面から見た場合でも、この事件、この問題というのは、これが非常に重大な問題であるというふうに重大な関心を持たざるを得ません。大臣いかがでしょうか、人権という観点から見ていかが思われますか。
  126. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 法務省におきましては人権擁護の見地から人権擁護局、また法務局を中心にいたしまして、特に昨年はこの児童生徒のいじめ、暴力の根を絶とうと、こういうことを合い言葉にいたしましていろいろ啓発活動を行ってまいりました。  本件につきましても、やはりまず学校当局が十分指導し説得をすべきものと存じます。そして、どうしてもそれができないという場合には、また方法もあろうかと存じまするけれども、やはりまず指導を徹底させまして、その上で将来いつまでたっても卒業アルバムというものは懐かしく見るものでございますから、子供のときはいろいろな考え方があったろうと思いまするけれども、大人になってからそれを振り返ることもできるわけでありまして、十分その辺のことを考えてやるべきものと存じます。また最近は教師の暴力もあるわけでありまして、そういうところから、人権擁護のために学校当局と十分連絡を取り合いながら努力をしてまいりたいと存じます。
  127. 橋本敦

    ○橋本敦君 一人のお母さんがこう言っていますが、私はこれは全く同感なんですね。これはこう言っています。学校から何の連絡もなくて、アルバムを見て息がとまりそうになった。そうでしょうね、自分の子供の写真がないんですから。死んだら花もわかりますよ、生きている子供に名前があって写真が花で、ないんですからね。息がとまりそうになった、こうおっしゃっています。いろいろ子供はそれはあったでしょう。しかし、でも卒業するときぐらいはほかの子と同じようにして送り出してやってほしかった、一生残る形で罰を加えられた思いがしますと、こう言っているんですね。私は確かにそう思います。だから、まさに写真が載らなかった子供は、一生この子は校則に違反をしたよというレッテルを張られたという、そのことが公然と残っているという意味において私は、児童憲章から見ても、人権擁護から見ても人権上の問題がある、こういうわけです。  人権擁護局長の御意見を伺いたいんですが、犯罪歴は戸籍に絶対に記載しない、これは人権上当たり前ですね。社会的な制裁を受けた事実も、その人権のためにはその人に一生つきまとうようなそのことは排除するのが当然だと思います。まさにこの卒業アルバムからこういうことで校則違反あるいは生徒指導違反を理由にこういう処置をやられて、一生アルバムに残っていくということは、私は犯罪歴を戸籍に記載することとは次元が違うとはいうものの、今母親の意見を紹介しましたが、当該の子供にとってはまさに一生罰を受けたことが痕跡として残されている思いがすると思うんですよ。そういう意味で子供の人権を守るという立場から見て、人権擁護局長として、この問題は人権問題として是正していただきたい、そういうように私は思うのですが、御意見はいかがでしょうか。
  128. 高橋欣一

    政府委員(高橋欣一君) ただいま大臣が申されたとおりでございますが、この事案につきまして新聞情報で事実を認知いたしまして、直ちに所管の地方法務局において情報収集に入っております。  いろいろ情報収集をした結果、人権侵犯に当たると判断すべきような場合には、それ相応の対処をしたいというふうに考えております。
  129. 橋本敦

    ○橋本敦君 その結果、人権上問題があれば人権擁護局としては適正な処置として一般的に言ってどのような処置がとれるんですか、人権侵犯事件に対して。
  130. 高橋欣一

    政府委員(高橋欣一君) もし人権侵犯事件として、これは一般論でございますけれども、人権侵犯事件として立件すべきという判断に至りました場合には、これを立件いたした上でさらに調査をして説示とか勧告とかいう処置をとることができます。また、事情によって侵犯事件として立件するには至らないという場合でありましても、人権上の配慮を十分尽くされたいという意味で啓発をするということもございます。
  131. 橋本敦

    ○橋本敦君 そうしますと、この件については今情報収集をやっておられるということですが、調査の結果によっては、今おっしゃったいずれかの処置はおとりいただくということになると期待してよろしいですか。
  132. 高橋欣一

    政府委員(高橋欣一君) そういう結論に至ることもあり得ると思います。
  133. 橋本敦

    ○橋本敦君 私がこの問題をきょう持ち出してお尋ねしたのは、この件にとどまらないということが実はあるわけです。  三月十九日の新聞によりますと、相模原の中学卒業生、この中でかわいそうに、障害児三人の名前が卒業名簿にも欠けている、それからアルバムからも欠けているという事件が起こりまして、これも相模原市教委では人権問題にかかわる重大なことだとして徹底的に調査し厳しく対処したい、こういう談話が載っておりますが、教育委員会では調査を始めている。これもひどいんですね、障害を持っている子供が今言ったように差別をされて名簿にもそれから写真にも載せられない。これは本当に大変なことです。だから、今日教育は大事な問題ですが、児童の人権ということを本当に真剣に考える立場からも、正しい教育が進むように私ども考えてお互いに力を尽くさなきゃならぬという状況があるように思うわけで、きょう質問したような次第でございます。  以上のようなことで、この件について子供の人権を守る立場を貫いて、せっかくの御指導を強めていただきますように、その点最後に文部省の御見解を重ねて伺って質問を終わりたいと思います。
  134. 辻村哲夫

    説明員(辻村哲夫君) 今回の静岡県清水市の例におきましても、従来からやっていたというようなことで、ややもいたしますと安易に処してきた面があるのではないかということを痛感いたしております。ただ、私ども教育委員会からの情報でございますけれども、学校側としては、先生先ほど校則に反したからということでございましたけれども、校則に反するのはもちろんでございますけれども、やはり何とか中学生らしい髪型なり服装なりということで一生懸命先生として努力をしたということもうかがわれるわけでございます。そうであるがゆえに、それに従わない子供というものについては、やや行き過ぎた形で結果が出てしまうということもあるわけでございます。そういうことで、さらに事情を確認しなければならない点も多々あるわけでございますけれども、私どももこうした事例等を十分把握いたしまして、先ほど申し上げましたように、全国の教育委員会で生徒指導を担当しております会議等においても取り上げて、全体の問題として考えてまいりたいというふうに考えております。
  135. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 他に御発言もなければ、これをもって昭和六十三年度一般会計予算、同特別会計予算及び同政府関係機関予算中、裁判所所管及び法務省所管についての委嘱審査は終了いたしました。  なお、審査報告書の作成については、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  136. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時四十五分休憩      ─────・─────    午後一時三分開会
  137. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。林田法務大臣
  138. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、下級裁判所における事件の適正迅速な処理を図るため、裁判所職員の員数を増加しようとするものでありまして、以下、簡単にその要点を申し上げます。  第一点は、裁判官の員数の増加であります。これは、簡易裁判所における民事訴訟事件の適正迅速な処理を図るため、簡易裁判所判事の員数を五人増加しようとするものであります。  第二点は、裁判官以外の裁判所職員の員数の増加であります。これは一方において、地方裁判所における民事執行法に基づく執行事件及び破産事件並びに簡易裁判所における民事訴訟事件及び督促事件の適正迅速な処理を図るため、裁判官以外の裁判所職員を六十二人増員するとともに、他方において、裁判所司法行政事務を簡素化し、能率化することに伴い裁判官以外の裁判所職員を三十七人減員し、以上の増減を通じて裁判官以外の裁判所職員の員数を二十五人増加しようとするものであります。  以上が裁判所職員定員法の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速かに御可決くださいますようお願いいたします。
  139. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  140. 千葉景子

    千葉景子君 今大臣の方から裁判所職員定員法につきましての趣旨説明をいただきました。  そこで、今回幾つかこの定員増減をするに当たっての理由が記載をされております。それについて若干お伺いをしたいと思うんですが、まず一つには、今回の増減、簡易裁判所における民事訴訟事件処理充実強化ということで、簡易裁判所裁判官五名の増員ということになっております。これは資料によりますと、簡易裁判所の民事、刑事新受件数ですね。この数自体はこの三年間ばかりどちらかといえば減少傾向にあるようにも思います。これは裁判というのは数だけでその内容あるいは処理の時間、こういうものははかり知れないものでございますので、この簡易裁判所充実強化、そしてそれに対する五名の増員と、このあたりの関連性、最近の簡易裁判所の傾向など等を含めて御説明いただきたいと思います。
  141. 山口繁

    最高裁判所長官代理者山口繁君) 千葉委員御指摘のとおり、関係資料に載せております五十九年、六十年、六十一年の事件の動向を見ますと、若干減少ぎみの傾向があるわけでございます。ただ、少しさかのぼりまして数字を見てまいりますと、五十一年当時は、実は民事訴訟は五万八千件ぐらいでございました。これが五十六年に九万件ぐらいになりまして、六十年がピークで二十三万件、こういう数でございますから、かつてに比較いたしますと非常に多くの訴訟事件を抱えておる、いわば高値安定の傾向を示しているわけでございます。  簡易裁判所事件処理につきましては、先年管轄法の改正法の御審議のときにもいろいろ御指摘をいただいたわけでございます。平均審理期間は若干ずつ減少はいたしておりますものの、簡易裁判所の審理の充実を図らなければならない、こういう御指摘がございまして、私どももそのような方向で人的な充実考えてまいりたいと思っているところでございます。数字的には二十万件ぐらいの事件の多くは、いわゆるクレジットの事件でございまして、比較的定型的な処理が可能ではございますけれども、今後の傾向については予断を許さないという点もございます。  簡易裁判所の判事の増をお願いいたしましたのは、簡易裁判所の適正配置によりまして約十名程度の簡易裁判所の判事がいわば浮くわけでございます。それとあわせまして今回お願いしております五名の方々、これを給源にいたしまして、簡易裁判所の中で裁判官の常駐していない庁がございますので、相当の事件数のあるいわゆる非常駐庁については常駐化を図っていきたい。他面、多数の事件を抱えております都市部の簡裁の方にやはり簡裁判事を振り向けていきたい、こういうようなことで簡易裁判所の審理の充実を図ってまいりたいというように考えております。
  142. 千葉景子

    千葉景子君 審理の充実強化というのは私も望むところでございまして、多分十名、それに今回の増員五と、非常に何か努力の跡といいますか、五という数字が何ともつつましやかな感じがするわけでございますけれども、今回は簡易裁判所ということですけれども、これはほかの地方裁判所以上の裁判官については増員ということが図られていませんけれども、これは不必要だということなんでしょうか、それとも今回はやむを得ずこの程度でということでしょうか。その辺の事情はいかがですか。
  143. 山口繁

    最高裁判所長官代理者山口繁君) 民事執行事件につきましては、関係資料の二十五ページにございますような事件の傾向がございます。執行事件につきましても、かつてに比較いたしますとかなり事件がふえてまいっておりまして、その処理に追われているような状況がございます。これまでも民事執行法に基づく執行事件の増加に対応いたしますために、昭和五十五年以降、判事十九名、書記官二十六名、事務官六十七名の増員をしてまいったわけでございます。一応判事につきましては、今申しましたように十九名の増をこれまで図ってきておりますので、今年は補助機構でございます書記官それから事務官、この増をお願いいたしまして、判事については増員を求めておりません。これは今申しましたように、これまで判事の増員措置をとってまいりましたので、今年は書記官、事務官の増で十分処理できるであろうという見通しのもとに、判事の増員はお願いしていないわけでございます。
  144. 千葉景子

    千葉景子君 今十分であるというお言葉でございますが、私などは全体から見れば絶対数としても不足をしているのではないか。しかしながら、毎年多量に定員を増加するというのも簡単にいくことではありませんので、それを順次増加していらっしゃるというのが現状ではないだろうかというふうに推測をするわけですけれども、今回は裁判官以外の職員の増というのが大分図られているようですが、この中で、今民事執行関係については若干お触れになりました。破産事件については、数としてはこの数年減少傾向にあろうかとも思うんですが、これについては増員破産事件処理充実強化ということで十二名でしょうか、ということでございますが、これはどういう実情でございますか。
  145. 山口繁

    最高裁判所長官代理者山口繁君) 破産事件の傾向につきましても関係資料の二十六ページに示してございますが、近年は事件はどんどん減ってまいっております。ただ、これも例えば五十七年当時と比較いたしますと、五十七年は五千件でございました。六十一年一万四千件ぐらいございますので、破産事件は結構手続が難しゅうございまして、最近は減っているとは申しましても、やはり事件処理に追われているような状況がございます。そのために、今年は書記官四名、事務官十二 名、合計十六名の増をお願いしているわけでございますが、裁判官につきましても、過去三年にわたりまして合計十名の増員措置をとってまいりました。破産事件がこういうふうに減少傾向をたどっている点もございますので、今年は判事の増員は要求いたしませんで、書記官、事務官の増員要求にとどめたわけでございます。
  146. 千葉景子

    千葉景子君 これはそれぞれに、今のお話を伺っておりますと、ある年は裁判官を増加して充実をさせ、そしてその次には、その他の職員の数をふやしていく、いろいろと苦労の跡がうかがわれるような気がするわけですけれども、今回は家庭裁判所関係は、家庭裁判所における司法行政事務の簡素化、能率化に伴い減員というような形になっておりますですね。しかし、最近家事調停、審判、こういう類、これはそんなに減少している様子ではありませんし、またさまざま社会情勢といいますか、意識の変化によっても複雑な問題が出てきている。また、特別養子の制度どもできまして、ある意味ではさらに充実をしていかなければいけない部門かとも思うんですが、この家裁についてはいかがでしょうか。
  147. 山口繁

    最高裁判所長官代理者山口繁君) 今御指摘の家庭裁判所において、これは七名の事務官の減を立てておりますが、これは御承知のとおり、政府におかれましていわゆる定員削減計画をお立てになって、最高裁判所に対しても協力を求めてこられているわけでございます。私ども裁判所といたしましては、裁判部門につきましては、やはり裁判所の使命にかんがみまして減員等の措置をとることはできません。しかしながら、司法行政部門、いわゆる事務局部門でございますが、これは総務とか人事とか会計ということで、他の行政省庁と大体似たような仕事をしている面がございます。そこで、報告事務を簡素化するとか、あるいはOA機器導入して効率化を図るとか、そういうふうな工夫をいたしまして減員の措置をとっているわけでございます。家庭裁判所における司法行政事務の簡素化、能率化に伴う減ということで、これはいわゆる事務局部門でございまして、家庭裁判所事件処理には影響を来さないような体制をとって進めてまいりたいと思っております。
  148. 千葉景子

    千葉景子君 今幾つかの項目についてお尋ねをさせていただいたわけなんですが、今回の定員の増加、あるいは削減などによっても、どうも現在既に過員、多過ぎるといいますか、過員になっている部分があるんですね。提出をいただいている資料によりますと、裁判所事務官においては、最高裁三十三名、高裁四名、地裁百八名、家裁が三十七名、計百七十八名の過員になっている。それが今回の定数をふやしましても、数の上でさらにまた過員ということになってきはしないかと思うんですが、そうなりますと、これは一体その過員の方はどうなっちゃうんだろうというふうに思うわけです。そもそもここに掲げられているそれぞれの裁判所の定員といいますのはどういう意味を持っているんですか。
  149. 山口繁

    最高裁判所長官代理者山口繁君) まず最初に過員の点について御説明申し上げますと、御承知のとおり、裁判所には裁判官の補助機構といたしまして書記官がございます。書記官は、裁判所事務官の中から書記官研修所の入所試験に合格いたしまして、そこで一年あるいは一年半の研修を受けまして書記官の任命資格が得られるわけでございます。そういうふうに裁判所事務官で入所試験に合格をして書記官研修所に入っております裁判所事務官が、毎年三百名ぐらいおります。これらの研修生が書研に入りましても、忙しい部門の裁判所におきましてはその穴埋めをしなければなりません。したがいまして、その事務官が書研に入所しました後に充員をする。その結果といたしまして、全国的に見ますと、書研の入所者数に近い二百人弱の過員が出てくるわけでございます。  ただ、この過員が定員をオーバーするわけにまいりませんので、どうするかと申しますと書記官あるいは家庭裁判所調査官あるいは裁判所調査官、速記官といった方々は一定の研修養成を経て初めて資格が得られるわけでございますので、年度途中に退職等によって欠員が生じましても、これをすぐ補充するわけにはまいりません。そこで、欠を抱えていかなければならない。その欠員を見合いにいたしまして過員が生じているわけでございます。したがいまして、トータルをいたしますと、裁判所職員定員法で定められました定員、予算で定められました定員をオーバーすることはないわけでございます。  この定員の仕組みがどうなっているかということでございますが、裁判所職員定員法では裁判官以外の裁判所職員ということで、各職種の別は定めておりません。予算関係でこういうふうな各職種別、それから組織別の定員がそれぞれ定められるわけでございます。私ども、この定員の定め方につきましては事件数を大体基礎にいたしまして、それからそれぞれの裁判所の機構というものを考えてこのような定員の割り振りをしているわけでございます。
  150. 千葉景子

    千葉景子君 そうしますと、ここで過員という形で挙げられている部分は、何らかの形で書記官になられるとか、あるいは家庭裁判所調査官になられる、そういう形で直ちに職がなくなるというわけではないということでございますね。  ところで、今この定員の問題をお聞きしているわけですが、私は裁判所裁判官だけではなくて、法曹全体として、今一体本当に迅速な、公正な裁判などが行われるために数が充足している状況なのだろうかというちょっと心配を持つところなわけです。そこで、最近司法試験改革の問題が取りざたをされているようでございますので、それについてお尋ねをしたいというふうに思います。  今法務省の方でお考えになっている法曹界が抱えている問題、これは司法試験改革という方向に一つは焦点が絞られてきたようでございますけれども、どんな問題点が今法曹界にあろうというふうにお考えでしょうか。
  151. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 司法試験は、御承知のように日本の現行の試験制度の中におきましても最も難しい試験と言われております。大体志願者が二万五千名程度ありまして合格者は五百名、したがって二%より合格しない。こういうような難しい試験でありまして、そこで試験を受ける人は大体平均しまして六回ぐらい受けて初めて合格するということであり、その年齢は大学を出ましてから受験に専念をいたす者が多くて二十八歳が平均年齢、こういう状況でございます。  そこで、この司法試験は法曹についての基本的な重要な問題ということになっておりまして、それで法曹基本問題懇談会を法務省に設置いたしまして、去る三月八日にその御意見を賜ったのでございます。その御意見によりますると、余りに何回も試験を受けておられる、試験に専念しなければならぬというので、その回数を少し減らしたらどうかということが一つと、また現在五百人より合格をさせませんので、これをもう少しふやして七百名ぐらい合格をさせる、そういうようなことがいいのではないか。その他、大学から推薦をしてもらいまして、その人をもう試験を免除して合格にしてもらう、こういうようなこともございます。  そういうような御意見を承りまして、法務省といたしましてはこれから日弁連あるいは最高裁判所、そういうところ、また大学の先生方と十分協議を続けてまいり、そして国民の声も聞きまして一つの案をつくっていきたい、かように考えておる次第でございまして、これによりまして現在法曹関係に横たわっておりまする基本的な問題を解決していかなければならぬ、かように考えておるところでございます。
  152. 千葉景子

    千葉景子君 私は最後のところが実はお聞きしたいわけでございまして、この法曹基本問題懇談会が設置されるに当たりましては、やはりこういう点を解決していかなきゃいかぬ、こういうことを今後どうしたらいいか、そういう基本の考え方というのが法務省にあろうかと思うんですね。こんな問題があるのでこういう懇談会をつくって解決を図っていこう、その問題点そのものはどうい うところにあるとお考えですか。
  153. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) この基本問題懇談会は当面司法試験の問題でございますけれども、現在法曹界をめぐりましていろいろの問題がございます。例えば迅速な裁判をどうして確保していくかとか、これまでも法務委員会等で御質問のあったいろいろの点がございます。しかし、一番問題なのはやはり法曹界の後継者をどういうふうに確保してそれを育成していくか。また、その後継者の確保というのは数の問題と質の問題がございます。数の問題はやはり迅速な裁判等にも深くかかわっている問題でございますし、質の問題は最近のいろいろ新聞などを見ていましても、外国で事故が起こるとその法的な解決はどうするのかとか、いろいろ考えがあるわけでございますけれども、そういう問題を将来やはり解決していく担い手として法曹がどういう仕事をしていくかという問題もございます。しかし、最終的にはやはり後継者の確保に尽きるのではないかということで、当面それを検討していただくということで法曹基本問題懇談会をお願いした、こういういきさつでございます。
  154. 千葉景子

    千葉景子君 今お伺いしましたところ、当面この後継者の育成といいますか、司法試験を中心にした問題を検討するということでございますが、この法曹基本問題懇談会、これは昨年四月でしょうか発足になりまして、約一年で一つの意見が出されてきております。これは非常にある意味ではスピード審議といいますか、大変早い結論ではないかと思うんですが、これはこれで終わってしまうわけですか、それとももっと長期的な展望に立ってさらに問題を深めていくという懇談会なんでしょうか。
  155. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) この点につきましては、この意見の最後に、今後の検討課題ということでいろいろ提案がございますけれども、その検討課題等については法曹基本問題懇談会も注意深く見守っていく、こういうことでございますので、やはりこの意見の中に提案されました長期的な展望に立ったいろいろの問題点、それに対する解決ということについては基本問題懇で将来また検討していただくこともあり得ることだと考えております。
  156. 千葉景子

    千葉景子君 ぜひそれは充実をさせていただきたいんですが、そうなりますとこの構成メンバー、これなどについてももう少し再検討といいますか、追加をなさるとかということも今後必要になってくるのではないかというふうに思うんですが、この辺はどうお考えでしょうか。今のメンバーが固定化されていると考えてよろしいのですか。
  157. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 今回の基本問題懇談会のメンバーは元最高裁長官、あるいは日弁連の会長、それから司法研修所の所長とか大学の学長、あるいは経済界の重鎮というような、要するにそれぞれの道における第一人者をそろえましてお願いしたわけでございまして、私どもとしてはこれがベストのメンバーであろうと考えております。しかし、時移り時代が変わりますと、またいろいろの観点から御検討願うことになろうと思いますので、そのときはまた違った見地から人選をしてお願いをすることになろうかと思います。
  158. 千葉景子

    千葉景子君 そうですね、確かに大変立派な皆さんがおそろいでいらっしゃいます。しかし、国民全体のさまざまな意見を入れながら、やはり利用するのは国民それぞれでございますので、そうなりますと、例えば訴訟の今やっている当事者というわけにはまいりませんけれども、そういう訴訟に関係をしてきた人、そういう意見であるとか、あるいはさらに広い国民、市民の意見、こういうものも反映させていく必要があるのじゃないかと思いますが、そういう点はどういう形で反映をさせていく、あるいは取り入れていこうというお考えでしょうか。
  159. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) この法曹基本問題懇談会は、確かに去年の四月から発足いたしまして十回にわたる精力的な御検討を願いまして、さしあたりの意見をちょうだいしたわけでございます。しかしながら、これに至るまでには大変な事務当局が努力をしまして、資料を集めたりあるいは学校の先生の意見を聞いたり、いろいろの努力を積み重ねた結果こういう懇談会を開催する運びになったということを理解しておるわけでございます。  この懇談会におきましても十回の会合を持たれているわけでございますけれども、くどくなりますが、参考人といたしまして会社の法務関係の方々あるいは大学の先生、これは外人の大学の先生でございますけれども、そういう方々、あるいは日本司法書士会連合会の役員の方々とか、東京都の消費者センターの相談課長とか、警察関係の方あるいは報道機関、弁護士の方々、それから大学の現に法律学部等を教えておられる先生等について十分な御意見をちょうだいして、それを参考にしてこういう意見をまとめていただいたわけでございます。いろいろの方々から意見を伺う必要があると思いますけれども、これはいろいろ方法論で難しい点がございます。しかしこれから、先ほど大臣も申しましたように、意見を固めていくその間に最高裁判所なり弁護士会なり、いろいろの御意見を聞きまして、また法律改正ということになりますと、当然国民の代表者である国会の御審議を受ける、こういうことに相なろうかと思います。
  160. 千葉景子

    千葉景子君 ぜひこれは、非常に大きな今後の改革ということになろうかと思いますので、十分に広い意見を聴取できるような仕組みを考えていただきたいというふうに思います。  この当面緊急な課題として司法試験改革ということが指摘をされているわけですが、今回出てきております例えば年齢の問題、あるいは受験回数の問題、推薦の問題等々あるんですが、具体的にこういう意見が出されまして、今後司法試験改革はいつごろから、どんな内容で行う予定でございますか。
  161. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) この答申をいただいたことを基本にいたしましてこれから最高裁判所、これは司法研修所を所管されておるものですから、最高裁判所と十分協議をいたしまして法務省案といいますかそういうものを素材をつくりまして、これを三者協議会、これは裁判所法務省、弁護士の協議会でございますけれども、三者協議会にかけるとともに、一方法曹制度法律家の養成制度ということでございますので、法制審議会の部会を招集していただいて法制審議会でも御検討いただき、そして成案を得たいというふうに考えております。  まあ、いつからと申されましてもなかなか確たることを申し上げにくいのでございますけれども、私どもはこの秋からでも三者協議会で御審議願うような手はずで進めたい、こういうふうに考えております。
  162. 千葉景子

    千葉景子君 内容については、法務省側としてはどんな点を提案したいというふうにお考えですか。
  163. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) これはまだそういう段階でございますので、はっきりしたことは申し上げかねるわけでございますけれども、この法曹基本問題懇談会では三つの点を提案されております。一つは、受験の回数制限ということでございます。回数制限が三回がいいのか、五回がいいのかまだこれから検討の余地が十分あろうかと思います。  第二番目は、これは法律改正ということではございませんけれども、回数制限をする裏側の話といたしまして司法修習生、いわゆる合格者の数をもう少しふやしたらどうかという御意見がございます。司法修習生として受け入れられる数がどれぐらいであるかということについてさらに最高裁でも御検討願わなければならないし、また司法試験考査委員の御了解といいますかそういうことも必要でございますが、そういう点が提案されております。  第三番目には、大学の推薦制度、これも取り入れたらどうかということも提案されております。この大体三つのことを柱にしてこれから案を考え ていき、そして三者協議会に提案したいというふうに考えております。
  164. 千葉景子

    千葉景子君 私も先ほどから申し上げているように、法曹全体として数というのは十分足りている状態ではないというふうに思います。そういう意味では、その一番基本となる司法試験で合格者数をふやしていくというのは、これは当然必要なことだろうと思うんですが、その回数制限、こういう問題になりますとこれはいかがなものだろうかという気もするんですね。司法試験というのは資格試験でございます。そして、その回数制限ということの後ろ側には、どうも合格者が高齢化をしてくるということが多分あるのだろうと思うんですが、その回数制限、そして合格者の高齢化が問題になるというのはどんなところに何か支障が出てくるとお考えでしょうか。
  165. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) まず高齢化の問題でございますけれども、大学卒業のときに、学生が将来の進路を定めるときに会社へ行こうかあるいは官公庁にしようかというふうに思いめぐらすと思います。その選択肢として同じような比重を持ちまして法曹界を選ぶような司法試験にしたいというのが、平たく言ってそういう希望を持っているわけでございます。法曹界へ進もうか、会社を選ぼうかあるいは官公庁へ行こうかというような同じような比重でやれるような試験にしたい、こういうことでございます。  その点につきましては、最近大臣が話されましたように、平均回数、受験回数が六回とか、合格者の平均年齢が二十八歳というような司法試験の現状では、例えば法曹界を選択する場合には、長い灰色の受験生活と苦しい経済生活を覚悟して重大な決意を持ってこれに臨まなければならないということでございます。そういうことになりますと、優秀な学生が他の分野に逃げてしまうという結果になるのではないか。現に大学の先生あたりはもうそういうことを公言されている方々もあるわけでございます。そういうことになりますと、やはり法曹界の将来は暗くてかつ非常に危ういことになろうということで改革に着手しようとしている現況にあるわけでございます。  したがいまして、高齢者がいけないということではなくて、高齢者を生むような試験が悪いというふうなことを言っているわけでございます。ほかに人生経験を持って途中で司法試験を目指されて勉強されるということはむしろ歓迎すべきことでございますけれども現状を見ますと、試験の間空白期間を持って人生経験が全くなしに、いたずらに——いたずらにと言うと非常にまた失礼でございますけれども、年を重ねて最後に試験に合格する、こういう状況ではいい人が来ないのではないかというふうな危惧を持っているわけでございます。そういうことで、何とか一般の学生も、優秀な学生も法曹界に来ていただきたいという願いを込めまして、何とかこの現状を改革したいということでいろいろ知恵を絞っていただいた結果、回数制限ということでどうだろうかという提案をされているわけでございます。  それで、回数制限の基本的な考え方でございますけれども、やはり試験を受けるときには同じスタートで試験を受けてもらいたい。長く勉強すれば通るのは当然でございますけれども、法曹界に向く素質を検証する試験といたしまして、やはり同じスタートで同じような条件の方を試験して、同じようなレベルで合格者を決めていく。そういうことになると、やはり回数制限というのも合理性があるのではないかというような考え方で御意見をちょうだいしたように理解しております。
  166. 千葉景子

    千葉景子君 私も、自分司法試験を受けたことがございまして、余り自分にはね返ってくるようなものでございますからあれなんですけれども、必ずしも今おっしゃっていらっしゃったように、社会を経験してそういう中から受験をする、そして法曹として充実した仕事をしていくということも十分考えられるわけですね。  それから、灰色の受験生活というのは余り好ましいことではないかもしれませんが、これなどは回数というよりは試験の内容などを再検討する、こういうこともむしろ必要なことではないかと思うんです。そういうことから考えると、回数を制限する、そういうことによってできるだけ若い人でも入りやすい、むしろ若い人が入るようにしていこうというのは少し安易な考え方ではないだろうかというふうに私は思います。むしろ今の裁判所の取り組むべき方向としては、社会からの人材をむしろ積極的に登用する、そういうことも半面は考えていかなければいけないことではないかと思うんです。それは例えば法曹一元の制度考えるとか、あるいは陪審制のような制度を取り入れて、民主的な、あるいは開かれた司法ということを再検討してみる、こういうことも若年の方を採用して育てていくということと同時に必要なことではないかと思うんですが、その辺はいかがでしょうか。
  167. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 先生は優秀な成績で早くお通りになりましたので、試験制度のことはよく御承知と存ずるのであります。  社会経験を経られました、年齢を重ねた方を排除するわけではございません。それは試験を受けて通っていただくことがまことに望ましいことであります。しかし、一般的に長くこの試験を受け続けられる方は、実は予備校なんかがありまして、そこで受験勉強ばかりをやって、そしてようやく六回目ぐらいで通ってこられるということでありまして、そういうことになりますると、やはり弾力性に富んだ有為な方がややもすると排除されるということになってくるわけでございまして、その辺をよく考えなければならない。法曹一元というためにこの試験制度は法曹の基本として十分考えなければならない、こういうところへ来ておると存ずるのであります。
  168. 千葉景子

    千葉景子君 ぜひさまざまな分野から司法を目指す、そして職務を行う、こういう人材を確保することができるように柔軟に今後も考え方を進めていただきたいというふうに思うんです。  法務省、最近検察庁の方でも検事の希望者が少ないというようなことでいろいろと苦慮されているところがあるやに聞いておりますが、このあたりについてはどんなふうにお考えですか。
  169. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 検事の希望者がここ三年ばかり非常に落ち込んでおります。ことし四月に任官する者は四十一人ということでございまして、去年三十七人でややふえておるわけでございますが、部内でもどういうふうにふやしたらいいかということをいろいろ検討しております。一つ申し上げられることは、やはり検察庁の中の執務環境といいますか、宿舎等を含めてそういう問題をもっと向上させるべきだという意見もございますし、また仕事の内容ももっと明朗濶達といいますか、そういうふうにして各検察官の個性を発揮できるような職場にさらに努力をすべきである、こういうような意見もございます。しかし、いろいろ社会情勢もございますし、このごろのいろいろの考え方もございまして、なかなか特効薬というのが見つからないというのが現状でございます。しかし、私どもとしてはできる限り努力いたしましてその数を確保するということと、また少数精鋭で事件をやるということで、その質の向上をしようということで研修制度等についてもいろいろ研究しておるところでございます。
  170. 千葉景子

    千葉景子君 今御指摘になられたような問題もあろうかと思うんです。しかし、必ずしも個人のいろいろな理由ばかりではなくて、検察制度そのものにも起因するところがあるのではないかというふうに思うんです。というのは人事のあり方あるいは決裁の制度、あるいは最近はなかなか大きな政治的な犯罪、権力犯罪というようなたぐいにいま一つはっきりと態度が決まらない弱さがある。こういうような側面なども若い人たちが見て余りおもしろくないんじゃないかとか、こういうこともあるというふうに今さまざまなアンケートなどをとっても出ていることもあります。こういう検察内部のさまざまな制度とか、今の職務の執行のあり方、こういうところにはもう少し反省を加えられるべきではないかと思いますが、いかがですか。
  171. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 刑事局からお答えする問題かもわかりませんが、私の印象を申し上げますと、確かに決裁とか、大事件への取り組みの姿勢とかそういう問題はいろいろ指摘されておるところでございます。しかしながら、大事件に対する取り組みについて私ども法務省から見ておりますと、要するに検察官、事務官を含めまして寝食を忘れてやっておるわけでございまして、それに対して法務省なり最高検察庁が制肘を加えるというようなことは、これは一切ございません。  ただ、最近といいますか、戦後いろいろ制度がございまして勾留期間が短いとか、いろいろ制約がございます。その武器を使って捜査しておるものですから、やはり歯がゆいという点は否めないところだと思います。そういう点は十分御理解をいただきたいわけでございますけれども、一般の方々はなかなかそういうことについては理解をしていただけないということをうらみに思っておるところでございます。  ほかにも情報過多といいますか、非常に情報で風船が膨らんで、その風船が膨らんだところまで捜査がいかなければ事件が不発だというような批判もございます。これも私ども内部におります者にとっては非常に不愉快といいますか、余りおもしろくないところでございます。  決裁については、仰せのように検事の個性を壊すんじゃないかというような話もございます。これについてもいろいろ内部でも検討し、反省し、そして改善していこうという機運にございます。
  172. 千葉景子

    千葉景子君 じゃ、時間ございませんので、この問題についてもまだまだお聞きしたいところもありますが、最後に大臣にお聞きしたいんですが、今後法曹問題を検討なさるに当たって、それから当面課題となっている司法試験制度改革に当たっても、やはり法曹の意義というのは国民の基本的人権擁護に当たる、そのために国民の裁判を受ける権利などにきちっと奉仕をできる、そしてそれに対して深い理解を持つ。こういうような法曹を育成していくというのがやはり最も必要な基本姿勢ではないかと思うのですが、今後の取り組みに当たる基本的な態度、こういうものをお尋ねして質問を終わりにしたいと思います。
  173. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 私も、法曹の意義と申しまするのは、これは民主主義を守るところの基本をなすものである、かように考えております。したがって、それはまた人権を擁護し、また財産の保全を図っていくというところにあるわけでありまして、国の基幹的なものが法曹でなければならないと存ずるのでございます。したがって、法曹はそういう国民の要望に対応をいたしまして、十分な使命感に燃えてそれを果たしていけるようなものにさらに努力を続けていかなければならない、かように存じておりまして、今後とも努めてまいりたいと存じます。
  174. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 定員法に関連してお伺いしますが、時間の関係上、質問申し上げていた中で省略さしていただくものがありますので、どうぞ御了解願いたいと思います。  一番最初に、簡裁判事五名増員に関連してお伺いしますが、現在の簡裁の判事の人数とそれの資格についてお伺いしたいと思います。
  175. 櫻井文夫

    最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 簡易裁判所判事は現在大体七百五十名でございます。  御承知のとおり、簡易裁判所判事につきましては、いわゆる法曹資格のある簡易裁判所判事と、それから法曹資格がなくて簡易裁判所判事選考委員会の選考を経て任命される特任簡裁判事と申すものと二つがございます。現在特任簡易裁判所判事が大体この簡易裁判所判事の中の八割程度を占めているという状況でございます。
  176. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 今の法曹有資格簡裁判事が二割ぐらいというのは、ずっとこのところ十年、二十年の傾向としてはどんなことになっていましょうか。
  177. 櫻井文夫

    最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 有資格の簡易裁判所判事でございますが、はっきり申しまして少し減少してきているのでございます。昭和四十年代は半分程度を占めている時期がございました。それが少し減少してまいりまして、昭和五十年代に入りまして四分の一程度、二割五分程度になってまいりまして、最近の二割程度ということになってきているのでございます。  これはいろいろ理由はございますけれども、簡単に申しますと、ここのところ、この有資格の簡易裁判所判事になる判事の定年者と申しますか、そこの年齢層の者が非常に減少してきているということが大きな理由であるわけでございます。
  178. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 そうすると、今の予定でいくと今回予定している五人もいわゆる特任判事からの補充というようなことを考えておられるわけですか。
  179. 櫻井文夫

    最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 今回の充員でございますけれども、この五名だけではございませんで、関係資料にもございますが、昨年の十二月一日現在の簡易裁判所判事の欠員が三十二ございます。これと、それから今回の増員分と、そのほか昨年十二月以来生じました若干の欠員、全部合わせまして四十名余りになるわけでございますが、この中の十名程度は有資格の簡易裁判所判事で埋めていきたいというふうに思っております。今回の五名分がどうこうということではございませんが、割合としてはそういうふうなことを考えております。
  180. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 よく高齢化社会と、こう言われるので、判事を退職された方が簡裁判事に行ってまた五年、十年頑張ってもらうというふうな形で、有資格の定年退職判事の簡裁判事への登用ということについてもいろいろ気を配っていただきたいと思います。  次に、書記官十名増員に関して伺いますが、いただいた資料によると地裁の書記官が三十五名ほど欠員があるというふうなことですが、これは通常に比べて多い欠員状況なんでしょうか、それともまあまあ常にこのぐらいの欠員はあるということなんでしょうか。
  181. 櫻井文夫

    最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) この地裁の書記官の欠員も昨年の十二月一日現在のものでございます。  いつも御説明申し上げておりますように、裁判所書記官は毎年春に裁判所書記官研修所を卒業した者で充員をするわけでございますが、だんだん年度の途中で欠員ができてまいります。これは、裁判所書記官はそういった教育方法でもって養成しておりますので、年度の途中で出てきたものを逐次埋めていくということはできないわけでございまして、翌年の春にまた埋める、こういうことになります。十二月ごろになりますと年度途中の欠員がこの程度出てくるというのは、これは通常の欠員でございまして、これまでの欠員数に比べますと、どっちかというと昨年の欠員は少ない程度の欠員であったというふうに考えております。
  182. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 書記官の仕事が不満で、欠員が非常に多いというふうなわけじゃないということをお伺いしてそれは安心しました。  今度は、直接この法案には関係ないんですけれども、判事、判事補の現在員と、それの実際の裁判実務についているかついていないか、こういうふうな点についてお伺いしたいと思います。  判事、判事補の去年の十二月一日現在の数だと千九百二十人ぐらいなんでしょうか、これらの判事、判事補が、まず最初に伺いたいのは、広い意味裁判所の業務にタッチしているのか、それともどっか行っちゃっているのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  183. 櫻井文夫

    最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) この資料に挙げてございます判事、判事補の現在員でございますが、これはいずれも裁判官の身分を現に有している者の数でございます。したがって、これはすべて裁判所の業務についているわけでございますが、ただ昨年来新聞等にも載っておりますけれども、例えば民間企業等へ研修に出ている者がございます。こういった者は、裁判官の身分は持っているけれども直接裁判所の業務には従事していないということになるわけでありますが、そういった者は四名だけでございまして、それ以外の者はすべて実際に裁判所の業務に従事しておりま す。
  184. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 わかりました。  それで今度は、いわゆる広い意味裁判所の業務に従事しておられるという中で、実際に法廷に立って訴訟活動を指揮しておられるいわゆる裁判をしている裁判官と、そうじゃない、一口に言って何というんでしょうか、事務屋と言うとおかしいけれども、そちらの司法行政事務を担当している裁判官とのおよその数とか比率というのはどの程度になりましょうか。
  185. 櫻井文夫

    最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) ただいまの判事、判事補合わせまして大体千九百二十名でございますけれども、この中で裁判事務に従事していないと申しますと、まず最高裁判所の事務総局に勤務している者がございます。最高裁判所の事務総局の局長課長等のポストについている者でございますが、これが全部で四十七名でございます。それから、高等裁判所の事務局長というのがございます。これは八つの高等裁判所すべてに置かれているわけでございます。これが八名おります。ただ、高等裁判所の事務局長の場合は、これは裁判所によりましては、高等裁判所の事務局の仕事をしながら法廷に入るというのもございます。したがいまして、これは全員がというわけではないんですが、一応八名という者がございます。  そのほかに、直接法廷に入らない、しかし裁判事務に近いような仕事をしているという者として裁判所調査官がございます。これは最高裁判所裁判所調査官でありまして、これが三十名でございます。それから、司法研修所で教官の仕事をしている者、あるいは司法研修所の事務局長等をやっている者、これが四十名おります。全部で、今挙げました者合わせまして百二十五名でございます。これらは裁判事務に近接した仕事をしている者もございますけれども、一応法廷には入らない者ということになるわけでございます。
  186. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 わかりました。そうすると、一割弱くらいの方はそういう事務をやっておられるけれども、それ以外の方はそれぞれ現場の裁判事務に携わっているということのようにお伺いしまして、よく中身がわかりました。  次に、判事に登用する件についてお伺いしますが、現在判事補が、現在というのは去年の十二月一日現在の表で五百八十七名ほど判事補がおられるらしいけれども、この中で、この三月かあるいは四月で十年の期間が経過して判事に任命される資格を有する人はどのぐらいおられるんでしょうか。
  187. 櫻井文夫

    最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 判事補五百八十七名のうちで判事任命資格がこの春生ずる者が六十五名でございます。この六十五名のうち一名がこの春事情があって退官いたしますので、それを引きました六十四名がこの春判事に任命される予定でございます。
  188. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 判事補から判事に任命されるについて、一般的に言うと、もう十年たったらすぐみんな判事になるというふうに外から見えるんですが、どのような選考方法を用いて判事補から判事に任命しているんでしょうか。
  189. 櫻井文夫

    最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 判事に任命されます以上は、やはり判事というにふさわしいだけの事件処理の上での能力も必要でありましょうし、それからまたその背景となる人格あるいは識見についても十分なものが備わっていなければならないと考えられるわけであります。判事補に任命されて十年間の間にそういった人格、識見の上での力も備えていき、そしてまた実務処理能力という面でもそれだけの力を十年間でつけていくのが通常でございます。したがって、大体毎年判事の任命を希望する者は、その十年間の修練の結果が認められて、まず全員が任命されていくということになるわけでございますが、その任命に当たりましては、そういった十年間のその人の業績というものは十分判断をいたしまして、その結果、その判事任命資格ありというふうに認めて裁判所の方から内閣に判事に任命すべき者の名簿を提出するという運びになっているわけでございます。
  190. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 最高裁に私が申し上げるのは釈迦に説法で申しわけありませんが、同じ研修所を卒業して、弁護士は弁護士としてあしたから弁護士になれる。検事は検事としてあしたから検事になれる。それにもかかわらず、同じように研修所を卒業しながら、裁判官の場合だけはまだ判事補ということで一人前の判事になれない。要するに判事というためには少なくも法律の素養というか、実務というかそういうものを十年間ぐらい経験して、法律的にも識見も立派な者を判事にする、こういうことになっているわけです。  ですから判事だけは、失礼な言い方ですけれども、同じにスタートラインに立ちながら判事補ということになっている。判事じゃないと。判事の地位というか、仕事というか法律自身がそれだけ考えているわけです。ところが、判事補を十年やったらすうすう行ってしまうんじゃ、余りちょっと簡単過ぎるじゃないかというふうに考える点が一つと、もう少し、せっかく法が判事と判事補というものをそれだけ区分けして判事というものの地位、あるいは仕事の重要性というものを言っているわけですから、十年たった人も対象に入れて、それ以外のも含めて判事に任官するための試験みたいなものを公表して、広く判事選考試験というか、採用試験というかそういうものをやるということをお考えになったことは全然ないんですか。いかがです。
  191. 櫻井文夫

    最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) まことにごもっともな部分もあると思うんでございますけれども、私ども決して十年たった人を自動的にすうすうと判事にしているというわけのものではないわけでございまして、そこは十分な判断はしているつもりでございます。  ただ、今おっしゃいましたような試験というような方法で、そこらのスクリーニングが適当であるかどうかということでございますが、判事の場合はやはり単なる法律的な知識、能力、あるいはそれ以外の学識というようなものをテストのようなもので試すというよりは、やはりもっとそれをもひっくるめた大きな判断と申しますか、そういった観点からの判断をすべきものであろうというふうに思っております。ただ、その判断についてはただいまお話しのように、決して自動的に上がっていくというようなことではなくて、十分な審査はすべきものというふうに思っておりますが、それをどういうふうに一般世人からも御納得いただけるような形でやるかということが問題であろうというふうに考えるわけでありますが、今後も一層そこらは御趣旨を体して十分な判断はできるようにいたしていきたいというふうに思っております。
  192. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 今の点に関連しまして、過日、最高裁長官が弁護士より判事を採用したいというふうな発言がありましたが、長官直接じゃなくて、どういう気持ちで御発言になったんですかというふうに聞くわけにもいかないんですが、長官のこの発言の趣旨、目的、それから具体的に採用すると本気で考えるんだったらどんな方法を考えているんだろうか。この辺についてお伺いしたいと思います。
  193. 櫻井文夫

    最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 先日、新聞でも報道されました弁護士からの裁判官任官問題でございますけれども、これは最高裁長官の発言ということで載っているわけでございますけれども、決して最高裁長官が突出して発言されたというようなものではございませんで、もちろん最高裁判所の方針として考えているわけのものでございます。  最高裁では、以前から適任者が得られれば弁護士からも多数裁判官に任官していただきたいという希望は持っていたわけでございます。現に裁判官として適任であるというふうに考えられる弁護士から任官の申し出があった場合には、任官が行われてきたわけでございます。ただ、事実上昭和五十年代に入りましてからその数が非常に少なくなってきたということでございますが、現在の複雑で変化の激しい社会情勢のもとで裁判所がこの 時代に対処していくということのために、弁護士として豊富な経験を有しておられる方に多数来ていただくというのは非常に意義のあることであろうということから、改めてそこらの方針をはっきりさして、そして弁護士の中にもそういったお気持ちをお持ちの方がたくさんおられると思いますので、そういった方針をここで世間に向かって明らかにしたわけでございます。  どういうふうにするのかということでございますが、これは裁判官の採用の問題でございますので、何か機械的な広告をするというようなものではないと思っておりますが、先日、三月二十五日に裁判官の採用選考要領をつくりましたものを日本弁護士連合会の方に持っていきまして、そしてそこで趣旨説明をし、かつ日本弁護士連合会の中でも周知徹底をしていただくようにお願いをしたわけでございます。これによってもし全国の弁護士の中に徹底していけば希望者もまた出てくるのではないかというふうに思っているわけでございます。
  194. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 最後の問題として裁判官の研修について二、三点お伺いしたいと思います。  ことしの三月五日の読売新聞によると、若手判事補を二年間外交官として研修するというか、研修させるというふうなことが新聞に報道されておりますが、この新聞報道の内容等は大体そのとおりなんでしょうか。
  195. 櫻井文夫

    最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 裁判官を外交官として研修させるという報道はそのとおりでございます。
  196. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 そうすると、現在裁判所から外に、外にというか外部に出向というのか、形はどうなのか私わかりませんけれども、外に勉強にお出しになっているのが去年ありました民間三社に一年間ずつ一人で三名、五つの省庁、五省に二年間研修させるというので五名、一年あたりにすると現在八名の方が研修に出ておられる。そしてまた、ここで外交官として二名の方の研修ということだと、要するに一年単位で考えるとどのくらいの人間を外に勉強に出していることになるんでしょうか。
  197. 櫻井文夫

    最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) まず、昨年度研修に出しました者が民間会社に三名、そのほかに弁護士事務所に一名出しております。それから五つの行政庁に各一名で五名、これだけの者が出ているわけでございます。この弁護士事務所及び民間会社へ行っている者は一年で帰ってくるわけでございます。しかし、五つの行政庁に出ている者は二年目も滞留するわけでございます。今回新たにまた五つの省に各一名の者を出向させることになります。その外交官に出ていくという者は今回二人あるわけでございまして、その二人の中の一人はこの五つの省庁の中の一つということで出ていくわけでございます。それから、そのほかにそういう行政庁へ一たん出るのではなく、直接在外公館へ出ていく者が一人、こういうことになります。そこで、人数として見ますとこの春以降は全部で十五名の者が出ていく、こういうことになるわけでございます。
  198. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 去年の民間会社三名、弁護士事務所一名の研修について、私は反対の意見をいろいろ申し上げたんです。また、今回外務省に二名行かれる。大体最高裁判所としては裁判官の資質、裁判官としての必要不可欠な識見というか、人格というかそれをどういうことにお考えなんでしょうか、お聞きいたします。
  199. 櫻井文夫

    最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 裁判官として、結局突き詰めて最も大切なことというのは何かということでございますが、それはやはり現場の裁判において適切な裁判を行う、もうこれに尽きることだというふうに考えられるわけであります。問題は、その適切な裁判を行うためにどれだけの修練をするかということであろうというふうに考えられます。もちろん、多くの者は地方裁判所、家庭裁判所あるいは高等裁判所裁判を経験しながらその修練をしていくわけでございます。これはこれでもちろん必要なことでございます。しかし、現在のような社会情勢あるいは国際情勢のもとにおいてやはりさまざまな分野での活動についての知識、経験を経ていくということもこれまた必要なことでございます。  特に、裁判所の場合は、そういった知識、経験を積んだ人を外から裁判官に来ていただくというのは制度上なかなかできないシステムになっております。そこで、裁判官が外へ出ていって、そしてそういった知識、経験を得ては戻ってくると、こういった形で裁判官の全体としての知識、経験の拡充、充実に努めていくということも、また現在の状況下において必要なことではないかというふうに考えているわけでございます。
  200. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 今の人事局長のお答え、それなりに私はわかるわけです。法律的知識を深めるために、今言われたような各種の場所に行って研修をするということは私としてはわかるんですが、私は裁判官の資質というのは、そういう法律をよく知って法の適用を間違わないようにするということは、給料をもらって働いている公務員としては当然のことなんだと、もう前提である。  憲法七十六条三項に書いてある。裁判官は「憲法及び法律にのみ拘束される。」。この憲法の尊重、憲法に準拠してということを考えれば憲法の基本原則は、これもまた釈迦に説法で恐縮ですけれども、平和主義、民主主義、基本的人権尊重主義ということになっているわけです。そして、裁判官は公務員の中で、憲法九十九条において憲法擁護義務を持っておる公務員としては、一般公務員としては裁判官だけが裁判官は憲法を擁護しなければならぬと書かれている。要するに、裁判官というものは、一番考えなきゃならぬことは憲法に生きるということだろうと思うんです。  法律を知って法律をうまく理解し使いこなせるというのは、これは職員としては当たり前のことです。ですから、私は裁判官の研修ということについても、何かもう少し憲法感覚に従った、もっと具体的に言えば人権感覚を鋭敏にするための研修というふうなものをやってもらわないと、近時の裁判所の動向等から見ると非常に不安に思う。これは私の意見でございますので、時間が来ましたので以上で終わります。
  201. 橋本敦

    ○橋本敦君 まず最初に法案に即して二、三点だけ最高裁判所関係でお尋ねをしていきたいと思います。  まず第一点は、今回若干の増員が手当てをされたわけでございますけれども、我が国全体として法曹人口が先進諸国に比べてまだまだ少ない現状にあることはこれは否めないところであります。裁判所自体をとってみましても、裁判官が国民から負託された職務で国民の重要な人権と財産にかかわる個々のケース事件を慎重に検討して裁判をなさるという、そういう職務の重要性から考えますと、私は事件数を減らし、またとりわけ重要事件については格別な配慮をするなど、国民のためにも裁判官の増員というのがまだまだ必要ではないかというように考えております。この点について最高裁は現状をどうお考えか、まずお伺いしたいと思います。
  202. 山口繁

    最高裁判所長官代理者山口繁君) 今回簡易裁判所判事五名の増員内容といたします定員法の御審議をお願いしているわけでございますが、判事、判事補については特段の増員は求めておりません。現在の判事、判事補、簡易裁判所の判事の数で足りるかどうか、適正であるかどうかという観点で考えてみますと非常に難しゅうございます。  御承知のとおり訴訟は当事者の対立構造を持っておりますから、裁判官の増員ももちろん必要ではございますが、そのことのみによって訴訟の迅速処理が行われるわけでもございません。他面、判事、判事補につきましては任命資格の問題がございますので、その給源を見ながら増員考えていかなければならないというような点もございます。これまでには判事の増ということでずっとお願いしてまいりました。その前は判事補の増ということで増員をお願いしてまいりました。判事補の層が厚くなりましてそこから判事に任官される方が出てくるということで判事の増をお願いして きたわけでございますが、大体昨年までで一応一通りの充足を終えることができました。  現在の事件傾向は、非常に過去に比較いたしますとふえてはまいっておりますが、執行事件にいたしましても破産事件にいたしましても、昨年六十二年に入りますとだんだん減少してくる傾向を示しております。地裁の民事訴訟、通常訴訟事件はほぼ横ばいでございます。そういうふうな事件の動向をひとつ考えまして、それから今年は簡裁の適正配置の実施の年になっておりまして、簡易裁判所の人的な充実ということも昨年当委員会で附帯決議をしていただいたわけでございます。そういう点を考え合わせまして、今回は判事、判事補の増員を求めることなく簡易裁判所判事の増をお願いしたわけでございます。  現在の裁判官で足りるかと御指摘がございますと、必ずしも十分であるとは申し上げられないと思います。現在の訴訟のありようが本当に適正であるかというような観点から見ますと、やはり現在の訴訟のありようは必ずしも適正とは思えない、もっと迅速処理をしてしかるべきであろう。迅速処理をするためには手続的な整備も必要でございますが、人的措置考えなければならない、そういう観点から申しますと、必ずしも現在で十分だとは申し上げられません。今後事件の動向を十分見きわめながら、必要に応じて判事、判事補の増員ということも考えてまいりたいというように考えております。
  203. 橋本敦

    ○橋本敦君 全司法労働組合なんかの討議資料を見ますと、約千四百名ぐらいの増員が必要だ、これは裁判官だけでございますが、こういうような意見も出ているぐらいでありまして、全国的に精査をすれば、まだまだ裁判所職員を含めた職員の増加ということが必要だろうというふうに私も思っております。その点につきまして裁判所の姿勢の問題にもかかわるのですが、概算要求よりも政府案で示された方がプラスになって出てくるという事例がある、これについてどう考えますか。
  204. 山口繁

    最高裁判所長官代理者山口繁君) 御指摘のとおり昨年の概算要求時点、つまり昨年の八月三十一日時点におきましては、簡易裁判所判事五名と一般職につきましては七名の純増の要求をしていたわけでございます。今回御審議をいただいております定員法では、一般職につきましては二十五名、つまり十八名ふえたわけでございます。これは概算要求提出後簡易裁判所の適正配置に関しますいわゆる管轄法の一部改正法が成立いたしました。衆議院、参議院の両法務委員会におかれまして、統合後の簡易裁判所の人的、物的施設の充実、それから統合された地域に対する出張事件処理、そのほか簡易裁判所の審議のありように関連しまして簡易裁判所充実を求める附帯決議がなされたわけでございます。このような事情を踏まえまして、受け入れ庁を初めといたします簡易裁判所の全体の裁判事務の充実策について検討を進めまして、廃止庁に配置されている職員と合わせまして増員によってその人的充実を図っていきたい、こういうふうに考えまして、財政当局との折衝過程におきまして追加の増員要求をいたしたわけでございます。これが認められまして、最終的に二十五人の増員となったわけでございます。
  205. 橋本敦

    ○橋本敦君 経過はわかりました。経過はわかりましたが、私が質問した趣旨の背景にあるのは、裁判所は独立予算権もあるところだし、先を見越して積極的に増員要求も国民のための裁判という観点でどんどんやってくださいよ、こういう激励をしておるわけでありまして、その点は今後とも踏まえていただきたいということであります。  それから特別養子制度が、これがいよいよ実現したわけでありますが、これは事件としてはかなりの数が出ておるというんですが、現在のところ許可がおりたのはごくわずかだというように報道されている。これはどのくらいかということと、それまでについて、家庭調査官の人数が足りないために裁判所の方が判断をするのがおくれるということがあってはならないので、この増員は必要ではないかと私は思っておりますが、そこらあたりはいかがですか。
  206. 早川義郎

    最高裁判所長官代理者(早川義郎君) まず最初に、特別養子縁組の申し立て件数でございますが、一月、二月通じまして申し立て総件数は九百二十一件となっております。このうち児童相談所のあっせんによりますものが二百二十三件、それから民法法人あるいは社会福祉法人のあっせんによりますものが十八件、これら合わせて二百四十一件。それから児童相談所等の関与がないものが六百八十件となっております。  さらに、この九百二十一件を申立人と養子となる者との関係で見てみますと、里子についての特別養子の申し立てが百六十四件、申立人と養子となる者との間に親戚関係のある者が七十七件です。それからいわゆる連れ子養子について特別養子の申し立てをするというものが百四十二件。それから普通養子から特別養子への切りかえが四百五十五件。その他が八十三件となっております。  既済の方は、現在のところ四十五件でございますが、却下が一件で残りの四十四件が取り下げというふうな状況になっております。取り下げの主たる理由というものは、全数を調べたわけではございませんが、普通養子から特別養子への切りかえ、これは養親としては自由にできる。そういう感じでやっている。実親の方の同意が必要だということで、実親に接触しますとなかなか同意が得られない、そういったものが多いと思われます。  ただいま申し上げましたように一月、二月で九百二十一件とかなりの申し立て件数に上っておることは事実でございますが、このうち約半数の四百五十五件は、普通養子から特別養子への切りかえでございまして、これらはこれまで特別養子制度がなかったために普通養子にしていた者を、今度この制度が発足したということで特に申し立てられたということですので、これはあくまで一時的な現象であろうと思われるわけです。それ以外につきましても新しい制度が発足したということでどっと出てきている、こういう面があろうかと思われますので、こういった趨勢が今後とも続くとは思われないわけでございます。ただ、特別養子縁組制度の場合は、六カ月間の試験養育というふうなものもありまして、調査官の負担というものも相当重いことは事実でございます。  そこで、なぜ増員要求をしないのかということにもなろうかと思いますが、昭和六十三年度の予算要求におきましては、この特別養子縁組事件がどの程度申し立てが出てくるかちょっと皆目見当がつかなかった、そういうふうな事情もございます。  それともう一つは、特別養子制度の新設に伴う負担増だけを切り離して増員要求をするというわけにはまいりませんで、やはり他の家事事件、少年事件の趨勢も見きわめなければならない、そういう事情がございます。その観点から申しますと、昨年四月から道交法が改正されまして反則金の適用範囲が拡大された、それによりまして家庭裁判所に送致されてくる道交法違反事件というものが昭和六十一年の三十八万件が二十八万件と十万件の減少をしておる、こういうことがございます。それと、家事審判事件も六十二年度は六十一年度に比べまして一万一千五百件余り、それから家事調停事件がやはり六十一年に比べて二千六百件余り減少しているという、こういう事情があるわけでございます。  さらに特別養子の方の申し立てがふえてきますと、これまで普通養子縁組許可事件として申し立てがあったものが減少するということも考えられる、こういうことで事件の趨勢だけで申しますと、増員要求に当たっての客観情勢というものは今なお非常に厳しいものがあるという、そういう状況でございます。  ただ、一般的に家事事件、少年事件とも複雑困難な事件が増加しておる、また調査官もなかなか忙しい状況にある。こういったこともございますので、しばらく事件数の動向等を見守りながら、必要があれば昭和六十四年度において予算要求で増員要求をするといったことも含めて検討さしていただきたい、かように考えております。
  207. 橋本敦

    ○橋本敦君 期待されて発足した制度であるだけ に、家庭裁判所としてもこの法案が通れば十分な対応をいたしますという答弁もなさっていらっしゃるようなことですので、現状をよく御判断の上で、来年度以降の予算の要求も含めて期待にこたえられるような体制で進めていただきたいということをお願いしておきたいと思います。  それでは最高裁ありがとうございました。これで質問を終わります。  次の問題に入ります。  次の問題は、ここに私が手にしております、合田士郎さんというペンネームでありますが、「そして、死刑は執行された」というこの本に関連をする質問であります。これはノンフィクションのドキュメンタリーということで大変な反響を呼びまして、この本は何といいますか、十数万から十七、八万というように出ているようにも聞いておるわけであります。ことしの四月で二十五刷、二十五度目の増し刷りということになっています。  この本は、御存じかと思いますけれども昭和六十二年度の日本図書館協会選定図書に指定されておりまして、そういう意味では専門家によって選定された良書だと言うことができるものと思うのです。ちなみに調べてみますと、この図書館協会選定図書というのは一定の厳しい基準に基づきまして、国立国会図書館からも委員が出ておりますが、選定委員が選ぶということになっておりまして、そういう結果指定されますと図書館協会の月報に載せられる、あるいは「読書人」などという、こういうその道の権威ある書籍に載せられまして、学校図書館や公共図書館で本を購入するときの参考にされるというように扱われておるようでありますから、この選定図書に選ばれたということ自体は、この本がそれなりに専門家の目から見て推奨されておる本だということであるということをまず最初に言っておきたいと思うのであります。  問題は、この本の中でペンネームの合田士郎さんが、宮城刑務所におきまして死刑執行後の死体処理始末等、これをやらされたというその事実をめぐって大変な議論に、皆さん議論が起こっておるようであります。  まず聞きますけれども、受刑者に対して所内ではいろんな刑務作業が行われるわけですから、死刑因の死刑確定した者、その死刑囚の身の回りを受刑者にさせるということはあるんですか、ないんですか。
  208. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 特に身の回りを世話させるということではございませんで、配食、つまり食事を給したりあるいは掃除をしたりといったことは拘置所の中の掃夫という者にさせております。
  209. 橋本敦

    ○橋本敦君 今おっしゃった掃夫というのは掃除の掃とそれから夫という、この掃夫ですね。
  210. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) さようでございます。
  211. 橋本敦

    ○橋本敦君 その掃夫というのは正式の名前として規定上記載されておる名称ですか。
  212. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 拘置所掃夫という言葉を使っております。
  213. 橋本敦

    ○橋本敦君 その掃夫ということで、刑務作業でそれを行うことに刑務所から指定を受けるのは大体一級とか二級とか級がありますが、どういう級クラスが多いんですか。
  214. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 必ずしも級とは関係ございませんで、それからまた、死刑因だけを対象にしているわけではございませんので、一般にそういういわば経理夫と言っておりますけれども、経理作業をやらせております。
  215. 橋本敦

    ○橋本敦君 そうしますと、掃夫というのは特定の者のための掃除とかその他ということではなくて、所内の一定の地域を分けるのか、房を分けるのか、どういうことになりますか。
  216. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 今おっしゃいましたように、一定の地域ということでございます。
  217. 橋本敦

    ○橋本敦君 そうすると、その中で死刑囚が入っているところもあると、その場合は死刑囚の配ぜんその他の掃除も担当する、こうなるわけですね。
  218. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) さようでございます。
  219. 橋本敦

    ○橋本敦君 その死刑囚の身の回りをすることを俗称として、死刑囚のための掃夫ですからそういう意味では俗称として、死刑囚の身の回りを担当しているその名前を死刑囚監房掃夫と俗に呼んでいるという状況があるんじゃありませんか。
  220. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) そういうことはないと思います。と申し上げるのも、あるいは後ほど御質問があるかもしれませんが、この関係でやはり元の受刑者から、元の受刑者が新聞記者会見をしたようなことが新聞の記事に出ておりますが、その人からの宮城刑務所に対する内容証明郵便あるいは再三にわたる電話の中で、この本に書かれておりますような、死刑監房掃夫というような言葉はないはずだというような指摘がなされておりますし、受刑者の間でもそういう言葉は使われてなかったと思われます。
  221. 橋本敦

    ○橋本敦君 事実上、そういうような掃夫という人が死刑囚の身の回りの世話をするということがあることはわかりましたが、その延長として死刑執行後の始末をさせられるというような事実があるのかないのか。これはどうなんですか。
  222. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) ございません。
  223. 橋本敦

    ○橋本敦君 もしあったとしたら、それは違法な処置ということになるんですか、どういうことになるんですか。
  224. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 戦前のことは存じ上げませんが、あるいは戦前にはそういうことはなかったとは私も断言できかねますので、戦前も現在の監獄法でございますから、果たして違法であったかというと、純法律的には必ずしも違法とは言い切れないと思いますが、現在の私どもの解釈では、これはやはり法の許すところを超えていると、こう思っております。
  225. 橋本敦

    ○橋本敦君 監獄法は戦前からずっと一貫していますので、戦前と今と解釈を違えていいかどうか問題はあります。しかしまた、憲法は変わりましたから、解釈を違えて運用しなきゃならぬ面もある。しかし、戦前は違法ではないということであり得たということもあり得るということはおっしゃったとおりですから、そうすると戦後は絶対ない、こう断言されるわけですか。
  226. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 私どもの記録で調べる限りはございません。
  227. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで問題ですが、この本の中で、死刑執行後の死体の始末を掃夫ということでしたというこのことについて、宮城刑務所長は出版社に対して抗議の手紙を出されましたね。それは御存じですね。その抗議の趣旨は、そういう事実は絶対ないと、これが基本ですか。
  228. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 少しくは細かくなりますが、この合田士郎というペンネームの方のお書きになった中身で、私ども大きなところで二十数点、全く事実と相反するところがございます。例えば、この本には処刑台に上がる階段が四段であると書かれておりますが、そういった階段はございません。それから、処刑前にお酒を飲ましたようなことをたくさん書いてありますが、そういったことはございません。それからまた……
  229. 橋本敦

    ○橋本敦君 なるべく簡単に、時間ないのでね。
  230. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) はい。ある死刑囚が宮城刑務所で死刑を執行されたようなことが書かれていますが、その方は宮城では執行されておりません。そういった点から事実に相反することが非常に多いので、宮城刑務所長の方から昨年十二月に抗議の文書を差し上げました。
  231. 橋本敦

    ○橋本敦君 この本が出版されるに当たって、私は直接にも電話を通じて社長の斉藤さんにもいろいろ聞きましたし、また多くの新聞でも書かれておりますが、この件については、出版に先立って約一年にわたって百三十カ所以上のいろんなチェックポイントで慎重を期せられた。そして、教誨師の方や、また退職した刑務官の方や、元検事の方やいろんな方に裏づけをできるだけとるなど努力をしながら、この本について慎重を期して出版をされたという話も伺っておりますし、それはよくわかりますが、同時にこの合田さんなる人物がノートに記載をしたメモなるものも、これも大変な分量のメモだということも新聞でも報道されて おりますけれども、そういったものをもとにして、百三十冊のノートあるいはその他のメモをもとにして書かれておるということですね。したがって、多少の思い違いの箇所ということはこれはあり得るかもしれませんが、本を出された方としては、この点について確信を持っておられるというように私は聞いておるんです。  そこで、多くの論点に絞るわけにまいりませんが、一番肝心なこの著者である合田というペンネームの人が、死刑執行後の死体の処理始末をしたということについて大きな反響を呼びまして、私もそういうことはやらされたことがあるんですよということを、わざわざ内容証明郵便で宮城刑務所に送った仙台のAさんという方があるということが報道されておりますし、私も聞いておりますが、その手紙は間違いなく届いておりますか。
  232. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 内容証明は来ております。  その内容は、自分がそういうことを、つまり死刑囚の死体の後始末をしたということは自分がしゃべっていない。それなのにそのような報道がされたといったようなことと、自分はともかくいずれにしろ死体処理をしたことはない。それからそれに絡む電話その他でもって、この本ではガス銃をぶっ放したとかその他いろいろ書いてあるけれども、余りにひどいうそなので新聞社に自分が抗議をしたと。役所の方でもって新聞社を抑えてくれないか、こういう御要求がございましたので、役所としてはそういうことはできないから、どうかあなたの方でもって処置していただきたい、こういうふうに申し上げております。
  233. 橋本敦

    ○橋本敦君 私もそういうような死体の後始末をしたということを言っているというんじゃないと言うんですか。
  234. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 自分が後始末をしたということはしなかったし言いもしなかったと言っております。
  235. 橋本敦

    ○橋本敦君 それは本人自身がまた社長にも別のことを言っているようですから、それは問題がまた別のところに発展しそうですね。  そこで、宮城刑務所長がこの出版社に出した抗議の中で、この合田という人物そのものは実在しない人物だと、書いている事実も、死体の始末なんかさしていないということと、実在しない人物だと、ここまで言っているんですが、実在しない人物だと本当に言い切れるんですか。これは非常に重要な問題ですね。
  236. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) この本に書かれております犯罪内容あるいは刑期、それに合致する人間はおりません。そういう意味で実在する人物はいない。ただ、およそその犯罪内容、それから生まれたところの記述その他から見て、多分この人ではないかという推測はできる人はおりますが、確認はできません。
  237. 橋本敦

    ○橋本敦君 ですから、全くその人物が不存在だという趣旨ではないわけでしょう。ところが、この抗議文を見ると、全体として虚構と捏造が多いということの中で、とりわけその合田という人物、そういう人物はこれは実在しない、このような「合田士郎なる者は実在しないのであります。」とはっきり書いてありますよ。何かこの趣旨は、これはこの人物が実在しないということを抗議で言うということになりますと、これは本当に実在していれば重大な責任が官の側にありますよ。  そして、この人については、新聞の詳細な記事でもこの人の生まれは大阪であること、三十六年にある強盗事件に関連して死刑求刑を無期懲役になったこと、それから千葉刑務所から宮城刑務所に移ったこと。そして現在、これは新聞記者が直接会って詳しく確認してはっきりしているのですから、実在の人物であることは間違いない。実在まで否定されるということになると、これは私は行き過ぎじゃないかと思うんですが、どう思われますか。
  238. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) ここに書かれているような経歴の人物が宮城刑務所に存在したことはないわけですから、そういう人物はいないと。しかし、それに類似の人物がいるかどうかは私どもとしては一応推定はできても、ここに書かれているとおりの人間は存在しないわけですから、それは存在しないと、こういうことでございます。
  239. 橋本敦

    ○橋本敦君 それは言い方が違う。すべてここに書かれてあることが全部、例えば私は大阪生まれだけれども近畿生まれです、こう書くときもありますし、自分自身が受刑をしたことに関連して書くんですから、多少自分の経歴その他についてぼやかしがあったってこれはおかしくない、本人の名誉にかかわること。そういう意味でこの書いていることがおたくの日誌その他から見てぴったりとこない面があるかもしれません。この人物が実在しないとまでは断定するのは、これは問題ですよ。この抗議書を見るとこんな人物は実在しないと、今おっしゃったような趣旨は書いてないんですよ、この抗議文を見ると。  だから、実在しないとなると、実在したらだれがどう責任をとるのかということになりますからね、こう聞いているわけです。いやしくも出版、言論の自由がありますわな。それに対して官、国家が、まさにそれを代表するあなた方が抗議をなさるということは言論、出版の自由の妨害にならないように本当に慎重な配慮が要る。その場合に実在しないなどと、こういうことで抗議を突きつけて善処をしなさいと、こういうことになりますと、まさに国家の責任において実在している人物を実在しないなどと称してこの本について信用を陥れ、あるいは善処せよですから、出版を控えろとでもこうなったら、これはもう大変なことですよ、憲法上の問題として。だから、そういう意味で抗議をなさることは事情としてあったにしても、その中身において、この著者の存在まで否定するというのは、それは行き過ぎじゃないですか。どう思われますか。
  240. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 今おっしゃった抗議書というのは、恐らくこの部分であろうかと思います。二度目の抗議書の「死刑確定者の身辺の世話を専任し、処刑後の遺体の処置をも行う受刑者の作業は存しないのであり、したがって、当然のことながらそのような作業に就役した合田士郎なる者は実在しないのであります。」と、こういう文書でございますので、全体として読む限り私の申し上げたとおりだろうと思います。
  241. 橋本敦

    ○橋本敦君 納得できませんね。実在しないなどというのは言い過ぎ。むしろあなたがおっしゃるように、こうだと思う人物があるということは推定できているときに、実在しないなどというのは自分の主張を一方的に言うにすぎませんよ。この件が公になって、そして大きな反響を呼び、宮城刑務所のそういった事実があるという者が出て、全国から多くの反響が出てまいりまして、たくさんの人たちが、私も聞いたあるいは私もやったということで銀座の東急ホテルで特に名を解禁してもいいという人まで出て、記者会見までやられておる事実がある。  そこで、こういうような状況でありますから、今あなたがおっしゃったような死刑囚監房掃夫という、そういう名前がないということはそうであっても、実際は掃夫ということで死刑囚の配膳その他身の回りの世話をしているという、そのことは刑務作業としてあることはお認めになったんだし、戦前はまた死刑執行後の処理もやらしてないとは断言できない事情もあるということをお認めになったんだし、あなたのそういう立場にかかわらず、事実上実際に死刑執行後のいろんな手伝いを掃夫と称する役目を持っている受刑者に、死刑執行後のさまざまないろんな手伝いをさした事実が絶対ないと言い切れるだろうか。私は、こういう状況について、この本に限らず一遍きちっと調査をしてその点は明らかにしてもらいたいと思うんですが、どうですか。
  242. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 私どももこの本が出ました後でもって調査いたしました。古いもう既に退職されたOBの方々その他を調査しまして、少なくとも私ども調査の限りではそういう事実はございません。
  243. 橋本敦

    ○橋本敦君 多くの人たちが、そうしますと私も聞いたとか、あるいは私もやらされたということ で言っていることについて、全部当たって調査をされたということには私はなるまいと思うんですよ。例えば東京新聞では、通算二十四年の刑務所暮らしをなさったという方で本を出している谷川岩雄さんという人が、合田さんの本にこの点うそはないと、私も宮城刑務所にいたころ合田さんと同じように死刑執行後の遺体の処理をやった人と同房になったことがある、こうも言っているんですね。こういう人に直接会って事情を聞いたということは、これはそこまでやってないでしょう、内部の調査にすぎぬでしょう、おっしゃったのは。
  244. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 具体的に、今の方に調査したかどうか私報告を受けておりませんが、内部に限らず既にやめられた職員の方々、あるいは拘置所に関係した方々にともかく幅広く接触さして調査したことは事実でございます。
  245. 橋本敦

    ○橋本敦君 この抗議文では、事実に反するというだけではなくて善処せよということを要求しているんですよ。善処せよというのはどういうことを言うんですか。
  246. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) 私はこれを読みまして、ノンフィクションと銘打っておりますけれども、いわばフィクションであろうかと思いまして、ただ、ノンフィクションということになりますと、どうしてもこれをお読みになった方はそういったものが事実であるというふうに誤解なさる方が非常に多いわけですので、それはその部分、後で例えば増刷されるときに、これこれこういう部分はフィクションであるというふうにしていただければと、こういうことでございます。
  247. 橋本敦

    ○橋本敦君 もう時間がありませんから終わりますが、善処せよというのはそんなことまで書いていませんよ、抗議文では。もしそうであるならば、これは本当に双方がはっきり事実を指して徹底的に調べた上でやらなきゃならぬということが一つと、もう一つは出版社と著者に対して、国家権力たるものがこんなふうにこう書けというようなことを言うというのは、これは行き過ぎですよ。こんなことは絶対にできません。そういうことを善処せよということでそういう内容を含むのであれば、それは重大な言論に対する介入の危険がある。私は絶対賛成できないということを申し上げておきます。何か御答弁があれば言ってもらって結構です。
  248. 河上和雄

    政府委員(河上和雄君) お話し合いでございます。
  249. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 本日、議題になっております簡易裁判所の判事及び書記官、事務官の増員については異存ございません。  きょうはそれに関連いたしまして、この委員会でも前からしばしば取り上げられ、また私もこの委員会で取り上げたことがあるんですけれども、法曹界の人員の増加及び任官者の若返りの問題の必要について、今回法務省としてその方向への第一歩だろうと思うんですけれども法務大臣の私的諮問機関である法曹基本問題懇談会に対して諮問されたわけですね。そのことは私は非常に賛成でございます。しかし、その答申の意見には若干疑問もありますので、それを申し上げまして今後の具体化に当たっての参考にしてもらいたい、その趣旨質問するわけでございます。  現状のこの答申、法曹基本問題懇談会の報告ですけれども現状の認識において法曹が国民からほど遠い存在であり、裁判に時間がかかり、法曹の対応が全体としては立ちおくれている、その結果、速やかに解決されるべき問題が放置され、法によらない不合理な方法で処理されているという現状の分析があるわけです。これはある意味においては現状に対する批判的な意見と言ってもいいと思うんですけれども、この法曹基本問題懇談会の現状認識は正しいというふうに法務省はお考えでしょうか。
  250. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) この基本問題懇談会でいただいた意見、現状分析はまさに正鵠を得たものだと考えております。
  251. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 その「時間がかかり過ぎる」ということが書かれているんですけれども、その時間がかかり過ぎる原因はどこにあるのか。今言ったような現状の批判的な分析ですね、その原因はどこにあるかということは、この報告書には必ずしも明白には書かれてない、対策は書かれていますけれども。しかし、長期的な改革というその結論のところを見ますと、やはり法曹界の人員が足りないということが原因ではないかというふうに推測されるわけですけれども裁判に時間がかかるのは、やはり法曹界の人員が少ないことが原因であるというふうにお考えでしょうか。それ以外に原因があるというふうにお考えでしょうか。
  252. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 裁判に時間がかかり過ぎるという問題につきましては、いろいろの観点から論ぜられておりまして、その原因についてもまたいろいろの主張があるわけでございます。しかし、一般的に非常にわかりやすい議論というのは、やはり法曹三者がそれぞれ人員が少ないのではないか、あるいは地域的にもいろいろ偏在しているのではないか、こういう意見が主流だというふうに考えております。
  253. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 恐らくこの報告書の趣旨もそういう考え方からだろうと思う。とりあえず、現在司法試験の合格者が五百人ぐらいであるのを当面七百人程度にふやせという意見が多かったというふうにありますけれども、五百人を仮に七百人に合格者の数を増加した場合に合格者の質がそれによって劣る、下がってくるというふうにお考えでしょうか。
  254. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) これもまたいろいろ難しい問題がございまして、今の司法試験は、御承知のように資格試験でございまして、裁判官、検察官、弁護士になろうとする者の素質といいますか、そういうものをテストする試験でございます。  しかしながら、いろいろの御意見を拝聴しますと、やはり知識偏重ではないかということも言われておるわけでございます。前の法務委員会委員からもそういう御指摘があったように記憶しておりますけれども、そういう知識偏重であるという点から申しまして、そういう観点じゃなくて、やはり素質を重視して採用資格試験を行うべきではないか。そういうことを、違う観点からいたしますと、必ずしも五百人を七百人にふやしたから素質が低下するということにならないのではないかというふうに考えております。
  255. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 ここには司法試験に合格された方も随分おられますし、弁護士さんなんかも随分おられるわけですけれども、先ほど法務大臣のお答えのように二%しか合格しないんだと。恐らく日本でこんな難しい試験というのはほかにないんじゃないかと思うんですけれども、その難関を突破してこられた皆さんたちに、大変偉い方だと思って改めて敬意を表する次第であります。けれども、私の友人なんかにやはり合格した人があるのでいろいろ聞いてみました。そうしたら、自分はたまたま合格したけれども、翌年また受けて果たして合格するかどうかわからぬ、運が大分関係しているようだというふうな話なんで、先ほどの敬意も五〇%ぐらいディスカウントするわけです。  そこで、司法試験についてお尋ねしたいと思うんですけれども、合格者の平均年齢は二十八歳だそうですけれども、これを若返りさせる必要があるという意見には私も賛成でございます。しかし、若返りを図るために受験回数の制限であるとか、あるいは大学推薦を受けた者に対しては一部の試験を免除する、それによって若返りを図ろうというふうな提案がこの中になされておりますが、受験回数の制限というのは私は必ずしもベターな方法ではないんじゃないか。この問題は後でまた取り上げます。  しかし、大学推薦制というのはそれぞれの大学で在学中の成績なんかを見てこれは推薦に値するからというので推薦してくるだろうと思うんですが、その場合にやっぱり各大学に枠をはめるわけでしょう、人数の枠を。しかし、それはちょっと問題ではないか。結局、そういった割り当て制にするというのは、これはちょうど例えば貿易摩擦で問題になっている対米輸出の自動車の数を割り 当て制にするのと同じことで、現在比較的多数の合格者を送り出している大学はその枠を維持していくことになるだろう。つまり現状をそのまま認めていくということになるわけで、大学の中には今は悪いけれどもこれから大いに努力してもっと合格者の数をふやそう、そう考えている大学もあるんじゃないかと思う。  そういう意味からいうと、むしろ大学間の競争は奨励した方がいいのであって、どうも割り当て制といいますか、推薦制というのは現状を固定してしまう、悪い意味で既得権の擁護になってしまうのではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  256. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) この懇談会の意見でございますが、原文どおり読みますと、「当面、推薦を受けた者には短答式試験を免除するのが現実的であるとの意見が多数であったが、法曹養成における大学の役割を重視する観点から、論文式試験をも免除することについても検討すべきであるとの意見もあった。」、こういうふうに言っておられるわけでございます。その基本には、やはり法曹養成と大学における法学教育を関連づけるという見地からいただいた意見でございまして、そういう意見は確かに総論的には非常に貴重な意見だと思います。しかし、この意見の中でもおっしゃっておりますように、一方では、技術的な面で難点があるという慎重論があったというふうに述べておられるところでございます。  ですから、理念として非常に結構なお話だと思います。しかしながら、技術的にどういうふうにするかということについては、ただいま委員が御指摘にあったように非常に難しい問題がありまして、どういう基準で推薦するのか極めて難しい問題がございます。そして、どの大学がどのぐらいの数の学生を推薦するのか、これはだれがそれじゃ決めるのかということを言われますと、これも非常に難しい問題がございます。  例えば被推薦者の数にしましても、過去の出願者の数を基本とするのか、あるいは短答式試験の合格者のそれをとるのか、あるいは論文式試験のそれをとるのか、あるいは最終合格者の数を基本として案分比例するのか、その辺はっきりしないわけでございます。それから、合格者と申しましても在学生がございますし、もう卒業して十年も十五年もたった者もございます。そういう者を同じ大学の実績ということで評価できるのかどうか、これも非常に問題がございます。そういうことになると、案分比例と申しましても合理性がないんじゃないかという御批判が出てくると思います。  また一方で、役所の方でそういう数を割り当てるということについては、大学の格付といいますか、極端なことを言えば、A大学の法学部とB大学の法学部はAの方がいいんだというふうなことにもつながりかねない問題がございます。そういう点もございますので、これは慎重にいろいろの御意見を聞いて決めていきたい、こういうふうに考えております。
  257. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 今官房長が終わりの方に言われましたようないろんな欠点があるし、むしろプラスの面よりも私はマイナスの面の方が多いのではないかと思います。大学の推薦制というのはどうも弊害の方が多いんではないかと思いますので、私の意見はそういうものでございますのでお聞き取り願いたいと思います。  それから、合格者の年齢を若返らせるために受験回数の制限というふうなことの提案もなされているようでございますけれども、私は別な方法で合格者の年齢を若返らせる方法があるのではないか。また、検事とか裁判官に任官される方は別ですけれども、弁護士の方では、三十にして志を立て、四十にして惑わずという言葉があるんですけれども、三十、四十ぐらいから勉強して弁護士になりたいという人にも、その門戸は残しておいてやった方がいいように思います。その意味で私は、やはりこれからの法曹界の人間として必要なのは国際化でありますとか、情報化であるとか、社会が急激に変動しつつある時代、そういう場合におきましてはやはり広い意味の社会的常識といいますか、あるいは教養と申しますか、そういう教養の豊かな人間でないと新しい情勢に対応できないのではないかというふうに考えます。  そのためにはむしろ教養科目、現在でも教養科目が一科目、心理学とかいろんな学科の中から一科目選択して受けるようになっているそうでありますけれども、そういう科目を一科目選択させるのではなしに、試験問題の中に大学の教養課程でやらなくちゃならないような科目、人文、政治経済学関係、あるいは法律の基礎となるような法哲学であるとか法制史であるとか、そういったふうな面からの試験問題をより多くする。何か受験者の負担を軽くするために試験科目を減少するというふうな提案がなされておりますけれども、私は、大学の授業をまじめにやっていた者であれば、大体特別に勉強をしなくても答えられるような、そういう科目の問題をふやしていくことの方が合理的ではないかというふうに思うんです。それに対して反対論もあるという話ですけれども、どういうふうな反対論があるのか、あるいはその反対論は合理的なものであるというふうにお考えかどうか、そのことをお答え願いたい。
  258. 根來泰周

    政府委員根來泰周君) 委員のおっしゃる御意見はもう全面的に賛成でございますけれども、試験を実施する側としましては非常に技術的に難しいということがございます。といいますのは、一般教養と申しましても、その範囲が明確でないんじゃないかというふうな意見がございます。大学によってはいろいろ教育の方法も違いますし、先生の考え方も違うわけでございます。  そういうものを試験科目に入れた場合に、試験を受ける方が、極端に言えば受験勉強をどうしたらいいかとおっしゃることを考えれば、受験勉強なんかしない者が合格する試験を期待されておるというふうに受け取れますけれども、手近な話はやはり試験勉強をどうしたらいいかというのがわからぬじゃないかという意見があります。そうしてまた、受験者あるいはその母体をなす大学の方も余り賛成してくれないとか、従来そういう御意見があって立法にも着手したことがございましたけれども、これがなかなか方々から反発を受けて結実しなかったことがございます。そういうようなことで、確かにこれは結構なことだと思いますけれども、これも技術的に非常に難しいのではないか、こういうふうに考えております。
  259. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 今どういうふうに試験勉強をしたらいいかわからない、私はそういう問題の方がいいんじゃないかと思うんです。もちろん法律の専門的な知識をテストする科目は別ですよ。これはあくまで試験勉強をしなくちゃ合格できないようなそういう問題はもちろん必要ですけれども、一般教養的な学問というのは、例えば文学であるとか歴史であるとか、大学卒業生としては、自然科学の方に行く学生は別ですけれども法律あるいは人文系統に行く学生としては少なくとも持っていなくちゃならないそういう教養、そういう問題をむしろ入れてどういうふうに勉強したらいいかわからないような問題を出して、それでつけ焼き刃ではだめであって、やはり大学在学中にいろいろな講義を幅広く研究してくる、そういう学生を採った方が、そういう学生が比較的入りやすいような試験にすることの方がいいのではないかと思うんですけれども、大臣いかがでしょうか、私の意見は。
  260. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) 大変おもしろく伺っておったんですが、私のその時分は高等文官試験だったんですけれども、受けた時分のことを思い浮かべながら今伺っておった次第でございます。選択科目をそういうふうな教養科目を多くしまして、そしてその選択をして点数もほかの者と同じぐらいの点数を与える、そして教養豊かな者が通り得る、こういうことをやったらどうだろうと。実は、私は政治学であるとかあるいは経済政策であるとかそういうものを選択科目としてとったんですが、余り勉強しなくてもこれは通り得るわけでありまして、したがって、そういうことで通ったというわけでありまして、先生のおっしゃるこ ともなかなかおもしろいなと思いながら伺っておりました。
  261. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 最後に希望だけ申し上げておきますけれども、実は私も政治学、経済政策を入れたかったんですが、私の専門のことを余り言うのもどうかと思って言わなかったんです。やはりそういった政治学の基礎的なもの、経済学の基礎的なもの、これをやはり試験問題に加えていただきたい。現在でも教養科目の中から一科目選択するのがありますね。しかし、何か伺うところによると心理学を選択するのが非常に多い。これはつまり暗記が非常に易しいものだから、これでは余りテストの意味がないので、私が今申しましたような意味のその人間の教養を試す、そういう問題を科目じゃなしに問題を入れてテストを考えていただきたい、そのことを希望して私の質問を終わります。
  262. 西川潔

    ○西川潔君 まず今回の簡易裁判所のことについてお尋ねいたします。  簡易裁判所における民事訴訟事件の適正迅速な処理を図るために、今回判事の方の人数が五人ふえるということでございますが、質問がいろいろまた重複すると思いますが、その点よろしくお願いいたします。  簡裁における民事訴訟事件また判事さんの一人当たりの事件数、それにまた裁判にかかる時間はどれぐらいなんでしょうか。
  263. 山口繁

    最高裁判所長官代理者山口繁君) まず事件数でございますが、法律案関係資料の二十四ページに、簡易裁判所の民事訴訟の件数が載っております。これを見ますと、六十年に二十三万二千件というふうになりまして、これがこれまでの最高でございます。その後、六十一年に二十一万四千件に減りまして、六十二年はここに掲げておりませんが、十九万件というふうになっております。これは過去と比較いたしますと、例えば昭和五十一年、これを見てみますと大体五万八千件ぐらいでございましたから非常にふえて、最近は減っておりますものの高値で安定している、こういうことになるわけでございます。こういうふうに急にふえましたのは、御承知の消費者信用事件でございました。消費者信用業者によります少額の金銭請求事件、これが大幅に増加したことによるものでございます。  そのほか督促事件なんかもここに記載してございますが、審理期間につきましては二十五ページにございます。簡易裁判所の場合は五十九年、六十年と三・四月になっておりますが、六十一年は三・二月というふうに短縮されております。これも過去と比較いたしますとかなり短くなってきているわけでございます。  今お尋ねの簡裁判事さん一人当たりの事件数というものにつきましては、これは簡易裁判所でそれぞれ事件処理の仕方が違っておりまして、民事訴訟を専門にやっている大きな簡易裁判所もございますれば、小さな簡易裁判所になりますと、民事訴訟事件、刑事訴訟事件、それから支払い命令、ここに書いておりますような和解、調停、それから略式事件処理と、一切合財やっているところもございます。そんなものですから、一人当たりの平均事件を取り出してみましても余り意味がないわけでございますので、そういうふうな統計は特にはとっておりません。  しかし、せっかくのお尋ねでございましたので、比較的大きな東京簡裁、新宿簡裁あるいは大阪簡裁で民訴、民事訴訟事件を専門にやっている裁判官について一人当たり大体どれくらいの事件をこなしているか調べてもらったわけでございます。そういたしますと、東京簡裁の場合は一人当たり年間千三百六十件、未済の件数は二百五十件ぐらい。それから新宿も大体年間千二百でございます。それから大阪は少しふえておりまして、年間約千六百五十件。こういうふうに千二百件以上となりますと月に百件以上、大体二十日勤務いたすといたしまして大体一日に五件。これは非常に大変だなというふうにお考えいただけるだろうとは思いますが、簡易裁判所の民事訴訟事件と申しますのは比較的当事者が争うケースは少のうございまして、欠席判決判決総数の大体八〇%でございます。それから、事件のほぼ半数に近い四二%が和解取り下げで終了しております。争ってちょっと難しい判決を書かなければならないケースというのは全体の約一一%ぐらいです。  そういう状況でございますので、月百件以上と申しましても余り大きな負担にはなってないようでございます。  大体以上でございます。
  264. 西川潔

    ○西川潔君 余り大きな負担にはということのお言葉でございますけれども、大変なお仕事だと思います。今それだけの数字をお聞かせいただきまして、今回五人ふやされるということですが、簡裁判事のそうなりますと定員さんというのは、大体平均をとって何人さんぐらいおられますとスムーズに事が運びそうなんでございましょうか。
  265. 山口繁

    最高裁判所長官代理者山口繁君) 一体幾らの人員が適正なのか、あるべき定員の姿はどうかということになりますと非常に難しいわけでございます。私ども裁判所の使命は、事件の適正、迅速な処理ということになるわけでございますから、事件の適正、迅速な処理を担保できる員数、これが適正な定員ということになろうかと思います。今申しましたように、所によりますとかなりの事件数がございますけれども、先ほどもちょっと申しましたように審理期間そのものを見てまいりますと、かつては昭和五十年当時は五・六月かかっておりましたのが六十一年には三・二月になっていく。これはもちろん事件はふえましたけれども、欠席判決とか和解取り下げで終了する事件が多くなったからこういう結果にはなっているわけでございまして、不動産に絡まる事件等でございますと、やはりかなり時間がかかっているところもございます。  そういうふうな事件数の動向等を踏まえますと、またそれから事務処理上のいろんな工夫をしなければなりません。例えば利息計算等では簡単なコンピューターを使って効率的にやっていく、それから運用面でもいろいろ工夫改善をしていく、そういうことによって事件処理の適正あるいは効率化を図ることができるわけでございます。現在のところ未済がどんどんふえるとか、あるいは審理期間がどんどん長くなるとか、そういう状況はございません。  今回五名の増員をお願いいたしておりますけれども、実は簡裁の適正配置が本年の五月一日で実施されます。それによりまして廃止される庁に配置している簡裁判事さんが約十名ございます。合わせますと十五名でございます。その十五名の簡裁判事さんを忙しい、先ほど申しました新宿とか大阪のような忙しいところへ振り向けたり、あるいは存続する簡易裁判所裁判官が常駐してないところがございますから、それの常駐化に充てる。そのようにいたしますと、まあ年間の簡裁の事件を適正迅速に処理するには十分とは申しませんが、今回お願いした増員で足りるのではないかというふうに考えております。
  266. 西川潔

    ○西川潔君 同じことの答弁で大変恐縮するんですけれども、申しわけございません。  次に、裁判官以外の裁判所職員の方の勤労意欲と申しましょうか、向上のために職員出身の方から簡裁判事を任命することも考えなければいけないと思います。そういう人たちというのは、簡裁判事さんになることを大変望まれて、またお仕事をしておられる方がたくさんいらっしゃるものなんでしょうか。また、現在の法曹資格者以外の方からの任命方法があればお伺いしたいと思います。
  267. 櫻井文夫

    最高裁判所長官代理者(櫻井文夫君) 簡易裁判所判事の任命につきまして、裁判所法の四十五条でいわゆる特任の簡易裁判所判事の任命についての定めがございます。ここでは、「多年司法事務にたずさわり、その他簡易裁判所判事の職務に必要な学識経験のある者は、」「簡易裁判所判事選考委員会の選考を経て、簡易裁判所判事に任命されることができる。」と、こう定めてございます。毎年この簡易裁判所判事選考委員会では、そのための試験をいたしております。この試験の対象になる 人たちは、各地の簡易裁判所判事の推薦委員会がございまして、そこから推薦をされてきた人たちでございます。これを対象にいたしまして厳格な試験、筆記試験と口述試験を施すわけでございます。  ただいま仰せのとおり、全国裁判所職員はある程度の年齢になりますとそういった登用試験を受けて、そうして簡易裁判所の判事になることを希望している者が多数ございます。そのほか、裁判所外からもそういったことを希望してこられる方もございます。大体年度によってさまざまではございますけれども、平均いたしますと毎年の受験者、百八十名程度の受験者がございます。これがこの選考委員会の試験を受けまして、そして任命されるわけでございます。最終的な合格者、これも年度によりさまざまでございますが、二十名あるいは三十名といったような数が合格しているというのが現状でございます。
  268. 西川潔

    ○西川潔君 どうもありがとうございました。  それでは次に、今度は問題商法、悪徳商法などについてお伺いしたいと思います。  悪徳商法などと呼ばれている商法の被害者数は、大体まずどれくらいに上っているのか、警察庁の方にお伺いしたいと思います。
  269. 五十嵐忠行

    説明員五十嵐忠行君) 悪質商法につきましては、一般消費者が多大の被害にかかっているという現状にかんがみまして、警察としましては、これら悪質商法の取り締まりを全国警察の取り締まり最重点課題の一つといたしまして、積極的に取り組んでまいったところであります。その結果、昨年中を見ますと、先物取引、原野商法などの資産形成事犯を初め訪問販売事犯、健康食品をめぐる事犯など多数検挙しております。  こうした悪質商法による被害でございますが、昨年中検挙した主要事件に関連して把握したものだけを見ましても、資産形成事犯で約二万人、訪問販売事犯で約十二万人、健康食品をめぐる事犯で約八万人でありまして、被害者総数は二十万人を超えております。警察としましては、消費者保護、弱者保護の観点から、今後ともこうした悪質商法には徹底した取り締まりを行っていく所存でございます。
  270. 西川潔

    ○西川潔君 次にお伺いしたいのは、その中で特にお年寄りの占める割合はどれぐらいあるんでしょうか。
  271. 五十嵐忠行

    説明員五十嵐忠行君) 正確な数字はわかりませんが、昨年検挙しました海外先物取引をめぐる事件、これの被害者のサンプル調査をいたしております。その結果によりますと、六十歳以上の方が約三〇%を占めているという状況にあります。また、現在把握しております悪質商法に関する一般消費者からの相談の関係でございますが、これは六十五歳以上ということで統計をとっておりますが、六十五歳以上の方からの相談が約二〇%を占めております。  こうしたことから見まして、悪質商法による被害者のうちお年寄りの占める割合は、正確な数ではございませんが、およそ二〇%ないし三〇%ではなかろうか、このように考えております。
  272. 西川潔

    ○西川潔君 今お伺いいたしまして、本当にたくさんのお年寄りの方々が被害をこうむっておられるわけですが、その要因の一つには、お年寄りの所有の土地の値上がりとか、そしてまた年金の充実、土地の方は少し鎮静化をしておるとはいえ財産はすごく大きくなっております。大変お金持ちのお年寄りの方々がふえてきているわけなんですが、いま一つ核家族化による一人暮らしの老人の増加、そして先ほど警察の方から教えていただきましたこの数字が示すように、問題商法のえじきに遭っている人たちが本当に高齢者の方が多い。  一つ御紹介をさしていただきたいんですけれども、昨年ですが、十一月二十七日の日経新聞でありますが、Aさんという八十一歳の方がいらっしゃるんですけれども、十年前に夫に先立たれまして、自分で一人暮らしをしておるわけです。当初は長男が二階を事務所に使っていたんです。近所に住む長女が食事の世話をしてくれるんですが、長男がお金を盗んだとか長女が食事に毒を入れるとか、こういうことを言い出すようになったんですが、子供たちからついに見放されてしまった。そしてある日、長男のところに不動産屋から立ち退き請求が舞い込んできたんです。調べてみると、不動産屋からビルを建ててもうけさしてあげる、こうAさんが言われまして、宅地家屋売買契約というのにサインをしたことが判明したんです。そこで長男は、母親の禁治産宣告と後見人の選任、さらに審判前の財産保全処分を家庭裁判所に申し立てたと、こういうふうに新聞に載っておるんです。  民法には禁治産宣告や準禁治産宣告という制度がございまして、戸籍に禁治産者、準禁治産者と記載されるため、年々数がふえてきたとはいえ、身内のものは申し立てをできるだけ避けようとする傾向にあるんです。管理能力のない場合、財産を守る方法としてこの禁治産宣告や準禁治産宣告ほど極端な手段ではなくお年寄りを守る対策はないものでしょうか、こう思うのでありますが、いかがでしょう。
  273. 藤井正雄

    政府委員(藤井正雄君) 民法には、ただいま御指摘のような禁治産宣告あるいは準禁治産宣告という制度がございまして、これによって財産管理能力のない、あるいは乏しい方の財産管理を保全するという機能を果たしているわけでございますが、禁治産宣告によって後見が開始する、あるいは準禁治産宣告で保佐人が選任されるということになりますと戸籍に登載されるという仕組みになっております。これを嫌って、嫌うがゆえにそういう手続を避ける傾向があるということも確かに聞いているところでございます。財産保全のためには禁治産宣告などが望ましいと、しかしそれを秘匿しておきたいということになりますと、そういう人と取引をしようとする第三者の利益が十分に守られないということになります。取引に入ろうとする第三者といたしましては、だれを相手として交渉してよいかということがわからないことになるわけでございまして、現在の仕組みでございますと、やはり手続的には禁治産宣告をし、戸籍で公示をするということが望ましいというふうに申し上げざるを得ないのではなかろうかと思います。  しかし、そうは申しましても社会の多様化、実態の変化に応じまして何らかの制度考える必要があるのではないかという御指摘でもございますので、今後研究をさせていただきたいと思っております。
  274. 西川潔

    ○西川潔君 ぜひよろしくお願いいたします。  聞くところによりますと、アメリカにはパブリックガーディアン制度、公の後見人制度というものが今回勉強して初めて知ったんですが、こういうものがあるということをお伺いしたんですが、これは詳しくはどのような制度なのか、ちょっと教えていただきたいんですが。
  275. 藤井正雄

    政府委員(藤井正雄君) 私どもも、アメリカのパブリックガーディアンという制度につきましてそれほど詳しく承知をしているわけではございませんが、これは身寄りのない老人などの生命や財産を保護するためにアメリカにおいて、それも全部の州ではないようでございますが、一部の州において裁判所が州の機関を後見人に選任し監督をするという制度であるというふうに聞いております。州法上定められましたパブリックガーディアンの職務は、ただいま申し上げましたように、主として老人の健康と財産の保全という点にあるということのようでございます。アメリカでは子供の親に対する扶養義務といったようなもの、はっきりしたものはございませんで、老人は自分の資産や福祉の援助によって生活を確保している、財産がある者は信託制度とか弁護士を活用して財産管理をしている、そういう現状にございまして、パブリックガーディアンはそのような財産管理をすることができない老人などのための扶助制度であるというふうに承知をしている次第でございます。
  276. 西川潔

    ○西川潔君 ぜひまた検討していただきまして、日本にも活用できるようなものであればよろしくお願いいたします。  我が家にも三人親がいるんですが、どうもおっくうになるというんですか、お役所へわざわざ出向いていっていろいろ相談をするというのがどうも日本人というのは苦手なようでございまして、何とか国サイドでそういうふうな保護をよろしくお願いいたします。  高齢化社会に向けて現行の法律制度をいま一度見直していただきまして、新しい、ぼつぼつ本当に大変な高齢化社会が参りますので、老人の財産保護制度というようなものをぜひおつくりいただいて、年寄り年寄りということばかりではないと思うんですけれども、やっぱり一生懸命我々のために本当に働いてきてくださったお年寄りのためにきめ細かな対応を考えていただきたいと思うんですが、法務大臣いかがでございましょう。
  277. 林田悠紀夫

    国務大臣林田悠紀夫君) やはり、今のところは禁治産制度以外にないわけでございます。昔は、いわゆる痴呆老人が少なかったわけですから、ある方が禁治産になったとこういいますると、もういかにも何だか侮辱したような感じを与えたわけでありまするけれども、今はそうでもないわけでありまして、そういう法律制度があるのでありまするから十分利用していただいたらどうだろうかと思います。  なお、パブリックガーディアン制度につきましても十分研究をしまして、日本にも合ったような制度になりましたならば採用をしていったらどうだろうかと考えます。また、十分そういう老人が困らないようにPRをしていかなければならないと考えております。
  278. 西川潔

    ○西川潔君 本日はこれで終わります。ありがとうございました。
  279. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 他に御発言もなければ、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案についての質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  280. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより本案に対する討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより採決に入ります。  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  281. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  282. 三木忠雄

    委員長三木忠雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十九分散会