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最高裁判所長官代理者(早川義郎君) まず最初に、特別養子縁組の申し立て件数でございますが、一月、二月通じまして申し立て総件数は九百二十一件となっております。このうち児童相談所のあっせんによりますものが二百二十三件、それから民法法人あるいは社会福祉法人のあっせんによりますものが十八件、これら合わせて二百四十一件。それから児童相談所等の関与がないものが六百八十件となっております。
さらに、この九百二十一件を申立人と養子となる者との
関係で見てみますと、里子についての特別養子の申し立てが百六十四件、申立人と養子となる者との間に親戚
関係のある者が七十七件です。それからいわゆる連れ子養子について特別養子の申し立てをするというものが百四十二件。それから普通養子から特別養子への切りかえが四百五十五件。その他が八十三件となっております。
既済の方は、現在のところ四十五件でございますが、却下が一件で残りの四十四件が取り下げというふうな
状況になっております。取り下げの主たる
理由というものは、全数を調べたわけではございませんが、普通養子から特別養子への切りかえ、これは養親としては自由にできる。そういう感じでやっている。実親の方の同意が必要だということで、実親に接触しますとなかなか同意が得られない、そういったものが多いと思われます。
ただいま申し上げましたように一月、二月で九百二十一件とかなりの申し立て件数に上っておることは事実でございますが、このうち約半数の四百五十五件は、普通養子から特別養子への切りかえでございまして、これらはこれまで特別養子
制度がなかったために普通養子にしていた者を、今度この
制度が発足したということで特に申し立てられたということですので、これはあくまで一時的な現象であろうと思われるわけです。それ以外につきましても新しい
制度が発足したということでどっと出てきている、こういう面があろうかと思われますので、こういった趨勢が今後とも続くとは思われないわけでございます。ただ、特別養子縁組
制度の場合は、六カ月間の試験養育というふうなものもありまして、
調査官の負担というものも相当重いことは事実でございます。
そこで、なぜ
増員要求をしないのかということにもなろうかと思いますが、
昭和六十三年度の
予算要求におきましては、この特別養子縁組
事件がどの程度申し立てが出てくるかちょっと皆目見当がつかなかった、そういうふうな事情もございます。
それともう一つは、特別養子
制度の新設に伴う負担増だけを切り離して
増員要求をするというわけにはまいりませんで、やはり他の家事
事件、少年
事件の趨勢も見きわめなければならない、そういう事情がございます。その観点から申しますと、昨年四月から道交法が
改正されまして反則金の適用範囲が拡大された、それによりまして家庭
裁判所に送致されてくる道交法違反
事件というものが
昭和六十一年の三十八万件が二十八万件と十万件の減少をしておる、こういうことがございます。それと、家事審判
事件も六十二年度は六十一年度に比べまして一万一千五百件余り、それから家事調停
事件がやはり六十一年に比べて二千六百件余り減少しているという、こういう事情があるわけでございます。
さらに特別養子の方の申し立てがふえてきますと、これまで普通養子縁組
許可事件として申し立てがあったものが減少するということも
考えられる、こういうことで
事件の趨勢だけで申しますと、
増員要求に当たっての客観情勢というものは今なお非常に厳しいものがあるという、そういう
状況でございます。
ただ、一般的に家事
事件、少年
事件とも複雑困難な
事件が増加しておる、また
調査官もなかなか忙しい
状況にある。こういったこともございますので、しばらく
事件数の動向等を見守りながら、必要があれば
昭和六十四年度において
予算要求で
増員要求をするといったことも含めて検討さしていただきたい、かように
考えております。