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1988-03-31 第112回国会 参議院 文教委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月三十一日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  三月二十九日     辞任         補欠選任      梶原 敬義君     久保  亘君  三月三十一日     辞任         補欠選任      木宮 和彦君     坪井 一宇君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         田沢 智治君     理 事                 仲川 幸男君                 林  寛子君                 粕谷 照美君                 佐藤 昭夫君     委 員                 小野 清子君                 川原新次郎君                 山東 昭子君                 杉山 令肇君                 竹山  裕君                 坪井 一宇君                 寺内 弘子君                 柳川 覺治君                 久保  亘君                 安永 英雄君                 高木健太郎君                 高桑 栄松君                 勝木 健司君                 下村  泰君    国務大臣        文 部 大 臣  中島源太郎君    政府委員        文部大臣官房長  古村 澄一君        文部大臣官房総        務審議官     川村 恒明君        文部大臣官房会        計課長      野崎  弘君        文部省初等中等        教育局長     西崎 清久君        文部省教育助成        局長       加戸 守行君        文部省高等教育        局長       阿部 充夫君        文部省高等教育        局私学部長    坂元 弘直君        文部省学術国際        局長       植木  浩君        文部省体育局長  國分 正明君    事務局側        常任委員会専門        員        佐々木定典君    説明員        外務大臣官房外        務参事官     田辺 敏明君        厚生省保健医療        局健康増進栄養        課長       松田  朗君        運輸省国際運        輸・観光局観光        部旅行業課長   高野 富夫君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○昭和六十三年度一般会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和六十三年度特別会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和六十三年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)について  (文部省所管)     ─────────────
  2. 田沢智治

    委員長田沢智治君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る二十九日、梶原敬義君が委員辞任され、その補欠として久保亘君が選任されました。     ─────────────
  3. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 去る二十八日に引き続き、予算委員会から審査を委嘱されました昭和六十三年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、文部省所管を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 高木健太郎

    高木健太郎君 今回の文部省の御説明によりますと、独創的、先端的な学術研究推進ということに重きを置いておられまして、六十二年よりも科学研究費が三十八億円前年プラスになりまして四百八十八億円ということでございますが、科学研究費はどういうところにふやされたか、そういうことについてまず最初お聞きします。
  5. 植木浩

    政府委員植木浩君) 科学研究費補助金は、日本学術を振興するための基幹的な経費でございまして、大学等研究者のすぐれた学術研究推進するためのものでございます。六十三年度予算は、今先生がおっしゃいましたように、対前年度三十八億円増、八・四%増でございまして、特に重点領域研究推進、独創的、先端的な基礎研究推進、あるいは若手研究者のすぐれた研究の奨励、試験的、応用的な研究の促進、さらに海外学術研究推進、そういったところに重点を置いて増額をいたしております。
  6. 高木健太郎

    高木健太郎君 私、科学研究費をつけていただくということは非常にいいことでございますし、それが増加しているということも私は非常に評価するわけでございますが、科学研究費をいただいていつでもみんなが困っているのは、その中には人件費が含まれないということでございます。人件費を入れられない。今まで入れられたことはあるかどうか知りませんが、ほとんどは人件費というのはついていない。これを入れられないという理由はどこにあるんでしょうか。あるいは雇用問題のための何か不都合があるかどうか、その点についてお聞きします。
  7. 植木浩

    政府委員植木浩君) 科学研究費補助金人件費を認められないかということはたびたび問題になっておるわけでございますが、やはり常勤の職員を雇用するということになりますと、労働基準法の問題であるとか、あるいは税法上のいろいろな手続の問題であるとか、いろいろな問題もございまして、やはりまだ日本のそういった情勢からいって、その辺は本当にうまく円滑にやれるのだろうかという点が、どうも踏み切れない点があるわけでございます。しかしながら、例えば常勤でないパートタイマーを雇うような賃金謝金等につきましては、科学研究費補助金の中でも従来から認めておりまして、そこまではやっておるわけでございますが、常勤的な雇うという意味での人件費というものはまだそういう状況でございます。
  8. 高木健太郎

    高木健太郎君 その賃金ということですが、パートで雇うということにつきまして、もう将来はぜひこれを十分につけていただくということをお願いしておきたいと思います。  次に、重要基礎研究ということでございますが、この中には、基礎とは書いてありますけれども、どうも基礎科学応用科学が混在しているように思います。そういう意味では、重要基礎研究という名前はちょっとおかしいんじゃないか。例えばその中には科学技術庁厚生省その他の省庁とのものも含まれている。科学技術庁でもやれば厚生省でもやる、文部省でもやるというふうになっているんじゃないか。この点をもう少しはっきりしておく必要があるんじゃないかと思いますが、その点はいかがお考えですか。
  9. 植木浩

    政府委員植木浩君) 学術研究を進めていく場合にいろいろな形で研究費を確保しなければいけないということでございますが、やはり宇宙科学であるとか加速器科学であるとか、あるいは核融合研究、さらには海洋科学とか、大型施設等を伴う研究につきましては、かなり計画的に、それからいろいろな総合的な視野に立って、長期的な見通しに立って研究を進めていかなければいけないということで、主としてそういった性質の、予算額からいいますと、例えば加速器科学でございますと百六十五億とか、宇宙科学でございますと百九十七億とか、そういう大型のものにつきまして重要基礎研究という呼び方で一応言っておるわけでございます。もちろんこれらは、大学国立大学共同利用機関等で行っております研究基礎研究中心で、その他応用面にわたる点もいろいろございますけれども、今申し上げたような次第で、そういった大型施設等を伴うようなもの、長期的、総合的な視野に立って推進をしなければならないもの、こういったものにつきまして、特に学術研究上の必要性あるいは社会的な要請、そういったものを踏まえまして、これらを推進するときに重要基礎研究と、こういう呼び方をしているということでございます。
  10. 高木健太郎

    高木健太郎君 本当意味基礎研究をやっているという人がこの中からはじき出されている、そういうことがあるわけでございますからして、全体ではこれ五百六十五億というような非常に膨大な予算でございますから、いかにも研究費出しているように見えますけれども、現実には、非常にじみな基礎研究をやっているという人は、何かこういうものの中に入らなければできないということで落ちついた基礎研究ができないのじゃないか。そういう意味では私は、この中でやはり真の意味基礎研究というものと応用研究とをある程度分けるというようなことを今後考える必要があると思うわけでございます。その点いかがお考えですか。
  11. 植木浩

    政府委員植木浩君) ただいま申し上げました宇宙科学あるいは加速器科学核融合研究等につきましても、いわゆる基礎研究、まあ応用研究開発研究という場合の基礎研究がやはり中心でございますし、同時に応用研究等もいろいろと入っているということでございます。ただ、先ほど来申し上げておりますように、大型施設を伴うとか、あるいは長期的、総合的な視野に立って組織的に推進をしなければいけない、こういうものを重要基礎研究と、こう称しているわけでございまして、そのほかのいろいろな分野基礎研究も確かに先生指摘のようにあるわけでございますが、それは、先ほど来申し上げております科学研究費、こういった形でもカバーをしているという構造になっておるわけでございまして、やはり大学の使命というのは先生がおっしゃるような基礎研究中心であるということでございますので、大学国立大学共同利用機関基礎研究推進ということには、いわゆる重要基礎研究はもとより、科学研究費充実などを図ることによってさらに進めてまいりたいと思っております。
  12. 高木健太郎

    高木健太郎君 私が申し上げたいのは、例えば科学研究費の方は四百八十八億、それから重要基礎研究というのは、加速器宇宙生物というので五百六十五億、こういうことになっておるわけですから、この中に基礎研究が含まれるなら科学研究費の方へもっと大きくやって、そして本当意味応用研究というようなものは科学技術庁、そういうところでやられてはどうか、こういう意味でございまして、そうでなければ科学研究費の方はますますしぼんでいくというか、こういう重要基礎研究の中に組み入れてもらえなければ研究費がない、こういうことになるので、私は、応用基礎研究というのは、たくさんあることは結構ですけれども、このうちの基礎研究、これによって基礎研究の方がかえってしぼむという危険もありますから、その点をぜひお考えをいただきたい、こういう意味でございます。  次に、生物関係もこの重要基礎研究の中に入っておりますが、これは何ですか。がん研究対がん研究ですか。
  13. 植木浩

    政府委員植木浩君) 生命科学で二十二億円という計上をいたしておりますが、これは今先生がおっしゃいましたように、対がん十カ年総合戦略に基づきますがん研究ということで、私どもの方は大学等におきますがん研究重点研究課題推進あるいは研究体制整備等でございます。
  14. 高木健太郎

    高木健太郎君 私いろいろ文句をつけるわけじゃないんですけれども対がん研究というのは十年ぐらいで済むかどうかわからないですね。本当基礎研究をやっているという人に、対がん研究は何かボスが何人かおりまして、その配下に入らなければ本当基礎的のがん研究やろうと思っても金がもらえない。また、がんとつかないものをやっているという者の中から、がんの解明ができるとも私は思うわけですね。だから何でもいいからがんという名前をつけようというふうにした、大勢の者がそこにたかってくると言っちゃ悪いですけれども、そこへ集まってくる。こういうことにそのお金が使われては私はいけないんじゃないかと思うんですね。だから、本当意味生物学研究と言うならばもっといろいろのものが別にほかにあるんじゃないか。そういうものをやられた方が本当意味対がん研究になるんじゃないか。これは対がん研究というのは中曽根前総理が言われたことかもしれませんが、そういう意味ではもう少し私は何か聞こえのいいようなものに重要基礎研究という名前をつけて、目立たないもの、将来はどこに発展するかわからないものというのは何か逃げてしまうんじゃないか、こういう憂いを持っているものでございますが、そういう点についてあなたの所見を聞きたいと思うんです。
  15. 植木浩

    政府委員植木浩君) 先ほども申し上げましたのは、いわゆる対がん十カ年総合戦略の点でございますが、そのほかに科学研究費等では生命科学バイオサイエンスということで、幅広く科学研究費重点領域研究ということで取り上げておりますし、その他広い意味での生命科学という点では、脳、神経科学あるいは生物工学、あるいはがんを含めその他の難治疾患、幅広くやっております。確かに先生が御指摘のように、対がん十カ年総合戦略だけではなく、そういった点、いろいろな学問の分野でいろいろなアプローチを生命科学についていたしておりますので、基礎科学中心とする文部省学術政策におきましては、そういったことを多角的にとらえながら接近をしていくということが大事だと思います。
  16. 高木健太郎

    高木健太郎君 大変よくわかりました。ただ、ここに「重要基礎研究」と書いてありまして、その中に対がん研究が入っている。ほかのは重要じゃないというふうに見えるものですから、そうじゃなくて今のおっしゃったようなバイオテクノロジーみたいなことも重要な基礎研究の中に私は入ると。ここで本音の面から見ると対がんだけが重要な生物学研究に見えますから、そういう重要という名前をつける、しかも基礎という名前をつけるということは十分これ注意され、将来何かお考えになった方がいいんじゃないかと思うんですね。  次にお聞きしますが、昨年の補正予算で、国立大学だと思いますけれども図書購入費というものが昨年の九月ごろに各国立大学に回っているわけですね。それが私のこの入手した資料によりますと、国立大学附属図書館外国学術図書整備を図るための購入予算が計上されましたと。ついては選定基準として欧米、括弧して主として米国発行の医学、生物学関係学術図書というようなものを買ってくれというようなことが各教室に回っているわけです。そして購入された図書全学共同利用図書として附属図書館に入れる、そこが一つあります。もう一つの問題は、これが九月十一日に各教室に回されておりまして、提出は九月十六日午前中までに出してくれ、こういう通知が行っているんですが、これはどういうことでございますか。
  17. 植木浩

    政府委員植木浩君) 六十二年度の補正予算におきまして、総額三十億円の外国図書購入予算措置をされたわけでございます。私どもといたし ましては、昨年の八月の下旬に各国立大学に対しまして購入予算額通知をいたしました。したがって、各大学では本年の三月いっぱいにそれぞれ希望する図書購入するという手続を進めているわけでございます。  文部省としてはどこの国ということの指定はもちろんいたしておりません。広く諸外国のすぐれた学術図書購入のために措置をしたものだということで連絡をいたしておりまして、各大学では、全学的な図書選定委員会におきまして、各学部とか研究所の意向を尊重しながら購入図書選定を進めていると承っております。御指摘の件につきまして、主として米国ということは、恐らくその学内でのいろいろなそういった選定委員会でそういうような思想が出たのかもしれません。それはそれぞれの大学によって御事情があると思います。実際、米国等から購入する図書が恐らくシェアとしてはかなり多いように承っておりますが、それはその学内で恐らくそういう考え方からやられたのだと思います。  なお、九月にということでございますが、私どもとしては三月いっぱいまでに購入が終わるということを予想しておるわけでございますが、やはり外国から図書を買うということになりますと、手続が国内で買うよりはなかなか時間もかかるというような心配もあって、恐らくその大学では早目ということで大学判断でそういうことをやられたかと思いますけれども、私どもといたしましては、先ほど来申し上げておりますように、今月いっぱいということで連絡申し上げたわけでございます。
  18. 高木健太郎

    高木健太郎君 それならば結構なんですけれども、とにかくここにある書類そのものは、九月十一日に通知が各教室に行きまして十六日までに出せと。一週間ないわけでございますね。そして括弧しまして主として米国と書いてある。これは押しつけじゃないか。欲しいものがあるから申請して買っているわけなんでして、お金が余ったからというか、補正がついたから、前々から文部省の方にはそういう要求が来ておった、ちょうど補正がついたからそれでやったというのならいいんだけれども、何か余ったからそこへやっちゃった、だから早う出せと、そういうふうにこれ見えるわけですね。それからまた大学の人に聞いてみますと、いや急に来ちゃってねと、こういう話なんですね。それですぐ決めろ、よれ、選択しろというようなことでは私は金のむだ遣いじゃないかと、こういう気がちょっとしたものですから、今度は大学の方にも本当に三月なら三月いつまでにやればいいというふうなそういうはっきりしたことを言わないと、末梢の方では非常に混乱している、誤解をされていると、こういうふうに思いますので、今後ともひとつこの点は留意をしていただきたいと、こう思います。  それからもう一つは、機器大学の方へ補正予算で買われたということですが、それはどうなっておりますか。
  19. 植木浩

    政府委員植木浩君) ただいまのは外国学術図書でございますが、その他の備品といいますか、器具類設備費につきましても補正予算で計上いたしまして、特に各大学研究用設備が非常に足りないという声がございまして、大変この補正予算で各大学のそういった設備費充実も行うことができたわけでございます。
  20. 高木健太郎

    高木健太郎君 これも大変大学では喜んでおられるとは思います。しかし例えば大型コンピューターであるとか、非常に高額のそして大型機器になりますと、これだけのお金があるんだから少しこういうものを買えと言われて、それを買ったとしましても、それをオペレートする人ですね。そういう人がつかないでその機械が遊んでしまう。あるいは置く場所もないというようなことになっては困るんではないか。その点はどのように把握されておりますか。
  21. 植木浩

    政府委員植木浩君) 大学でいろいろな設備購入する場合に、まずその場所の問題があるわけでございますが、これは各大学でいろいろと御工夫をいただいたりしております。  それからそれを運営します要員でございますけれども、なかなかこういう定員の厳しい状況でもございますし、それから既存のいろいろな学内施設専任要員というのがおるわけでございますので、私どもとしてはできるだけそういった専任要員を活用するということでお願いをしております。例えばスーパーコンピューターなどを購入したわけでございますけれども、一部の大学の例などを見ましても、学内共同利用に供するわけでございますけれども、例えば総合情報処理センターというものの組織が既にありまして、そこにスーパーコンピューターを入れるということで、既にそういったところにはある程度の要員が配置をされておるわけでございまして、そういったところの要員を活用して新しいスーパーコンピューターの運営をしていただく、こういうふうにやっておるわけでございます。
  22. 高木健太郎

    高木健太郎君 そうだろうとは思うんですけれども、これは現場先生方から私は聞いたところによると、もらったのはいいけれども、それの要員もつかないし動けない、動かすことができないんだ、こういう点は不経済じゃないかなという声があるわけなんですね。これは国家財政が大変窮屈であって赤字もあるというときに、やはり補正予算でついたからといってもぱっぱっとやらないで、十分それを検討して、必要なところに必要なものを差し上げる、あるいは人間が要るならば人間もつけてやらなきゃ機械が遊んじゃうということになるわけです。私はそういうことを申し上げるので、いろいろな図書のこととか、あるいは機器のことにつきましてはもう一度よく現場のものをよくお調べいただいて、どのようにその機械が動いているか、あるいは本がどのように利用されているか、そういうことはぜひこれ調べていただきたい。また、ことし補正予算がついたらそういうことをやるというんじゃなくて、もう少し計画的に本当に喜ばれるようなひとつ予算の使い方をしていただきたい、こういう意味予算に関係しておりますので私申し上げた次第です。よろしくお願いします。  次に、今度新しい項目として総合研究大学院大学というものを創設される、幾つかの国立研究所が集まりまして、そこに研究大学院大学というものをつくる、総合研究大学院大学ということが言われております。まず第一に、ちょっと私、大学院大学という研究所が集まって大学を、まあ大学というイメージが何か研究教育をする場であるというふうに思っておりますから、大学院大学、この名前ですけれども、これはどういうふうにして決まっているんですか。これでいいのか。ただの大学院じゃいけないんですか。
  23. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 総合研究大学院大学名称でございますけれども、これは総合研究大学院というところで切るか、あるいは大学院大学という名前をつけるかということはいろいろ議論があったところでございますけれども、今回のお願いをしておりますこの総合研究大学院大学は、もちろん大学院だけ、学部を持たない大学ということでございますが、現在の学校教育法制度の上では、そういうものであっても大学の一環であるということでございますので、大学院というところで切ってしまいますと、一般大学の場合に何とか学部というところで切ってしまうのと同じようなことになってしまう。やはり制度上は大学であるということから、大学という名称で全体ができ上がっているという名称の方が学校教育法の規定から見て適切であるというような、主として法制的な判断から大学院大学という名称にさせていただいたわけでございます。
  24. 高木健太郎

    高木健太郎君 理科系大学院には御存じのようにオーバードクターが非常にふえている。今度、総合大学院大学できますと新たに二十三名の大学院生を抱える。これが三年なりまあその程度とすると二十三名ずつが出ていくということ、これはそういうことになるわけですね。これはあそこだけですね。例えば岡崎の大学院大学がもしできたとすれば、そこから毎年二十三名ずつ、各研究所合わせるとかなりの数の大学院生が卒業して いくということになるわけです。現在でもオーバードクターで大変困っている。その人材がうまく活用されていない。この点はどのようにお考えですか。  例えばもう一つは、残念なことですけれども学閥というものがございまして、ある大学を卒業しますとその大学に所属しておるからこそどこかに就職できる、だから大学が一種の就職のあっせん所のような形で動いているわけですね。だから、どこかそこへ所属していないといかぬ。そういう帰属意識が強い日本でございますが、こういう研究所大学院大学というものができまして、それを出たときにその人たちはどういうふうになるんでしょうか。それについてはどういうふうにお考えですか。例えば、また大学へ戻って助手になるのか、あるいは研究所にじっと残っておって、そして何か上があくのを待っているのか、どこかで働くのか、その点はどういうふうにお考えですか。
  25. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) いわゆるオーバードクター問題というのが御指摘のようにあるわけでございます。これはいろいろなタイプが集まって、それをオーバードクターと正確な定義なしに呼ばれておるわけでございますけれども、実態的に見ますと、大学院ドクターコースの課程は修了したけれども、まだ学位論文をこれからつくるということで大学に実質上残っているというケースと、それから既に学位もとって、あとは就職口等を探すために研究を続けながら待っているというようなケース等々があるわけでございます。  こういったことが現実に起こっておりますことは、やはり現在の大学院のあり方というのが、一般的に申しまして大学等研究者志向という志向が非常に強過ぎて、一般の社会へ出ていくという感覚が比較的乏しいというようなところに問題があるのではないかというようなことは考えられておるわけでございますが、この状況も最近はある程度改善されつつあるようでございます。先般、このオーバードクター状況というものを経年的に状況を見てみますと、例えば新規修了者で博士課程五年間を終えたという者でオーバードクターというような格好になる者の数は年々若干ずつではございますけれども減少いたしてきておりますし、また、ある年度にオーバードクターになった者が翌年、翌々年どうなっていくかという状況を見ますと、翌年には二分の一に減り、三年目には三分の一に減るということで、いろいろ学位をとったり、あるいは就職を見つけたりというようなことで逐次社会へ出ていっているというように思うわけでございます。  今回の総合研究大学院大学の卒業生というのが新たにこういった人材の供給のソースとして出てまいるわけでございますけれども、全体の数としてはせいぜい数十名という数の者でもございますし、また、これらの方々は修了した後、主として大学とか研究機関等に就職をする、同時に広く社会の各方面に行けるようにという配慮をしながら新しい大学院大学におきましてもそういう指導をしていきたいという構えでおるわけでございますし、現実に国立大学共同利用機関でこれまで受け入れておりました受託学生の進路状況ども見てみますと、例えば民間企業等へ研究員として出ていったという方々も既に三十名ぐらいに上っているというような状況等もございます。現在、創設準備室の段階でございますけれども、準備要員の方々もそういうことを十分念頭に置きながら指導できるような体制をつくっていきたいということでもございますので、この方々の進路に著しく困った状態が起きるとか、あるいはオーバードクターの数を著しく増加させる要因になるとか、そういうようなおそれは私どもとしては持っておらないわけでございます。
  26. 高木健太郎

    高木健太郎君 ぜひそういうことのないようにしていただきたいと思います。  それから、この総合大学院大学をつくるに当たりまして、学長というようなものはあるんでしょうか。  それから、各所に研究所が散らばっておりますが、この連絡事務所をどこかに置かれるということですが、それの事務員としての定員増というのはないんでしょうか。あるいは教官には定員増は全然ないと書いてあるわけでございますが、そういう連絡事務員それから技術者、そういう者の定員増もないんでしょうか。  それから、事務所の設置のための予算というようなものはどのようになっているんですか。  それから、学生一人当たりの積算というものは、この中には積まないんでございますか。
  27. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) たくさん御質問いただきましたので、あるいは漏れがありましたらば御指摘をまたいただきたいと思いますけれども、この総合研究大学院大学の場合には既設の国立大学共同利用機関、現在のところ五つのものを予定しておりますけれども、その研究スタッフ、それから研究用の各種の施設設備というものを活用しながら新しい大学院大学をつくろうという考え方に立っておるわけでございますので、全体的に経費、定員等の面につきましては、いわば更地に新しいものをつくるのに比べますと、かなり現在の行革の思想に沿った程度のもので実施が可能であろう、こう思っておる次第でございます。  教職員、もちろん学長は専任としてこれは置いていかなければならないと思いますが、教官の系統につきましては、これは原則として現在の共同利用機関の教授、助教授等の中から適任者に来ていただく、併任をしていただくという形でセットをしたいと思っております。  なお、本部につきましては、これは全体に分かれておりますので、全国各地に研究所が散らばっており、それぞれの場所で実際の学生に対する指導というものは行われるわけでございますが、全体を取りまとめる本部、事務局のごときものが必要でございますので、これは場所といたしましては神奈川県にございます東京工業大学の長津田団地がございますけれども、その中に事務局の施設をつくらしていただいて、そこで全体的な事務連絡等が行われるようにしよう、こういう構えでおるわけでございます。  なお、教官スタッフは先ほど申し上げましたように併任という形でお願いをするわけでございますけれども、本部の事務局職員等につきましてはもちろん専任の方を採用しなければならないわけでございまして、これは今後の財政当局との折衝になってまいるわけでございますけれども、本部等の事務スタッフあるいは学長等も含めました要員としましては四十名弱の者が必要になろうか、こういうふうに考えております。
  28. 高木健太郎

    高木健太郎君 これは簡単な、予算の事項別表、これは主要と書いてありますけれども、これには総合大学予算が載ってないのですが、大体学生の積算校費も要ると思うんです。そういうものを全部加えて大体どれぐらいの予算考えておられるんですか。
  29. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) もちろん大学でございますから、教官当たりの積算校費あるいは学生当たりの積算校費というようなものは他の大学とのバランス等を見ながら計上をしたい、こう思っておりまして、昭和六十三年度の予算におきましては、まだ学生受け入れに至りませんので準備の段階の予算と、十月以降創設ということになりますけれども、実際の学生受け入れは六十四年度になってくるということでございますので、金目としましては六十三年度は全体として七千三百万円が準備室要員のための経費その他事務的経費等として組まれておるわけでございます。六十四年度以降の経費につきましては、今後六十四年度以降の予算の問題として財政当局と御相談をするということになりますが、先ほど申し上げました教官当たりの校費、学生当たりの積算校費等を含めまして、私ども現在の推定では年間の経常費が完成年度で約六億円ぐらい、こういうふうに見ております。
  30. 高木健太郎

    高木健太郎君 それから、外国人のこれ院生も入れるんじゃないかと思いますが、それはどうでしょうか。もし院生を、今までも外国人の希望、あそこに研究している人はたくさんいるわけで す。そういう院生もやはりお採りになるおつもりなのか。院生を採ったとなると、今の円高の状態で院生の生活が非常に困ると思うんですけれども、そういう宿舎とかあるいは奨励金を特別にお考えになりますかどうか。
  31. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 外国人の留学生等につきましても、この大学の方針としてやはり国際的にも開かれた広い視野を持った学生、研究者の養成ということをねらいとしておりますので、これは積極的に受け入れをしていきたいという構えでおるわけでございます。また宿泊施設等いろいろな問題も出てこようかと思いますが、特に宿泊施設等につきましては現在の共同利用研の方と十分相談しながら対応できるようにしたいと考えておりますし、また各種の奨学制度などにつきましても、一般大学大学院に留学生等が入りました場合に対応しておりますのと同じ措置はもう当然講じなければならない、こういうふうに思っている次第でございます。
  32. 高木健太郎

    高木健太郎君 後でノーベル賞の利根川さんのお話もちょっとしたいと思うんですが、ああいうふうに我々日本人が外国へ行きまして立派な仕事をして、それで世界の文化に貢献しているわけなんですね。こういうところに日本人だけが入ってしまうというのじゃなくて、できるだけ立派な人を院生として迎えて、そこで十分ゆったりと研究させるような場をつくってやるということは、今後の日本が世界に対する非常に信用を得ることになるんじゃないかと私思うんです。だから、こういう点は十分お考えいただいて、まあ六億円でいいのかもしれませんけれども、十分予算をおとりになって、そういうものを一緒に含めて予算請求をする。来られた院生は、ああ、あそこで勉強してよかったというようにして帰さないと、せっかく留学生を呼んでも、院生を入れても、いつでも不服を持って帰られるという話をよく聞くわけですね。今度、こういうこの総合大学院大学をおつくりになるにつきましては、そういう細かいところまでひとつ気を使って、六億円といわずもっと十分な予算をとって、職員もあるいは教官もあるいは院生も非常に豊かな気持ちでゆったりと勉強できるようにしてやる、こういうふうにひとつやっていただきたいと特に私注文をしておきます。  この研究所というのは、できる初めは、これだけの研究所のできるときには私も一生懸命やりましたけれども、やっているとき、やろうとするときには若い人もおりまして非常に活気にあふれているわけですけれども、だんだん年を経るに従って活気を失っていくということは、どこの国の研究所にも見られることでありまして、例えばロックフェラーの研究所でD・W・ブロンクという人が大学からこのロックフェラー研究所に移ったわけですが、もうロックフェラー研究所はだんだん衰微していく。活気がなくなっていった。そのときにこのブロンクがやってきまして、それで大学院をそこに置きまして、そして若い人、学生に行儀作法を教えたりあるいは学生とフリーにディスカッションをするとか、そういうことを、研究の体制といいますかバックグラウンドをつくってやる。これによって今まで、まだほんのこの間できたものですから、まだノーベル賞は一人しかできませんけれども、非常にこれは活気づいているということなんです。そういう意味では、この総合大学院大学をつくることは私は賛成でございます。しかし、今言ったようなことに注意をしないと、結局それは仏つくって魂入れずということになるんじゃないかと思います。  だから、もう一つは、この学長がどれぐらいの権限を持っているか私は知りませんし、それから各研究所によって大学院の部長というのでしょうか、各研究所研究所で何かそこの長がおられるんじゃないかと思うんですけれども、自由な勉強、研究というそういう体制をつくることは非常に大事ですけれども、しかし今までの年功序列式にやっていくということになると、研究というものはすぐ衰微してしまうわけです。そういう意味では、だれがどれぐらい能力あるかということを若い人たちだけで論議することも大事ですし、また上に立つ者がそれを見抜く炯眼が必要である。いわゆる伯楽ですね。名伯楽がその上にいることがその研究推進する上において非常に大事だと思うんです。それは決して独創研究を妨げるものでも何でもない、こう思うわけです。  あるいはまた、非常にいい先生をスカウトするとか、研究の方向を相談し合うとか、そういう長としての采配というのは私は極めて大事なことだと思うんですけれども、この学長なりその研究所長なりはどれぐらいの権限を持っているか。権限は、普通の学部長、学長というのは大学の中では権限はほとんどないわけですね。こういう研究所でそれを伸ばしていくためにはかなりの権限あるいは人事権を持たさなければならぬと思いますが、その点についてはどのようにお考えですか。
  33. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) この総合研究大学院大学大学一つでございますので、そういう意味から申しますれば、全国に現在ございます大学と同じように、学長は学校教育法に定める学長としての権限というものがございます。そのほか、もちろん教授会等も関係の教官によって組織をされるということになるわけでございますので、その点は一般大学と同じであろうかと思っておりますが、やはり要は学長に人材を得てその方に純粋に、何と申しますか、リーダーシップを発揮していただくということが事実上の問題として大事なことであろうと思うわけでございまして、今回の大学院大学の学長にだれがなるかということは今後の問題でございますけれども、現実に創設準備に当たっておられる関係の先生方が非常な理想と努力を重ねて準備を進められておりますので、そういった中からこの新しい大学の運営というものについて、先生が御指摘のようないろいろな最近の世界の動向等を踏まえた適切な運営が行われるように私ども期待もいたしたいと思いますし、学術局長の方とも協力をしながら適宜助言等もしていかなければならない、こう思っておる次第でございます。
  34. 高木健太郎

    高木健太郎君 利根川博士はスイスのバーゼル研究所におられて、そこの所長は非常に理解があって、利根川さんに、技術員があるなら技術員やるよ、あるいはまた研究費があるなら研究費もやるよ、あるいはもう少しおまえ助手が要るなら助手もやるよというふうにして優遇して、ほかのやつと段をつけて利根川さんの研究を伸ばしたわけですね。しかし、大体日本大学では講座に均等に振り分けている、いわゆる平等ということが一番いいことである。それは和をとうとぶという精神からきているんだと思いますが、それは私は悪いとは言いませんけれども、学問の世界はやはり競争の世界であり、立派な仕事をする者を引き上げていくことこそ新しい仕事もできてくるという面もあるわけです。  こういう面で、学長というものにある程度の権限を、権限というとまた何かかた苦しくなりますけれども、今の学校法とかなんとか言っていると、やっぱり同じような悪平等ということになるという気配もあると思いますので、特に私はこのことを申し上げるわけなんです。だから、それは運用次第であると思うんですね。評議会とかそういうものをおつくりになるんでしょうが、その評議会の運営をどうするかというようなことも、よく文部省も、あなたの方の独創性あるいは立派な研究者をつくるという意味で自分たちはこういう気持ちを持っている、それからまた、評議委員会あるいは設立者の方々はどういうお気持ちでやられるのか、それを十分話し合いをされまして、そこから自由な、しかもよいものはよいとするような、悪平等はやらない、そういうような空気でやっていかないと同じことをまた繰り返すということになるんじゃないか、特に御注意を申し上げたいと私は思います。  もう時間が大分なくなりましたからあれですが、もう一つ同じような問題でございますけれども、利根川博士は一九三九年名古屋生まれでございまして、私どこに住んでおられたか知りませんけれども、名古屋にとっては名誉なことだと思いますが、現在四十八歳で、京大の理学部を出て、 それで一九八七年単独で世界最初のノーベル医学生理学賞を受けられたということを私たち非常に喜んでいるわけです。その受賞の対象になった研究は、スイスのバーゼル研究所時代、一九七六年ですから三十七歳のときにやられた研究が対象になったということは御存じのとおりでございます。この受賞に関して、文部大臣はどのようにお感じになっておられるか、まず所感をお伺いしたいと思います。
  35. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 利根川博士のノーベル賞受賞についての感想でございますが、これは言うまでもなく大変喜ばしいことと存じております。日本では七人目のノーベル賞受賞者が生まれたわけでございまして、ノーベル賞の中でいろいろ物理、医学関係あるいは文学関係ございますけれども、特に利根川博士がおやりになってきた分野は比較的若い時代に新しいものに取り組まれまして、そして国際的な新しい研究上の功績を挙げられた、それを喜ばしいと存ずるのと同時に、利根川博士のような一つのモデルとしてと言っては失礼でありますが、利根川博士が歩まれましたその中から、やはり研究のしやすいような環境、方法は何であったのか、それから、これからそれでは日本はそのいい点をくみ取りましてどのような方向に努力をしていったらいいのか、これを十分やはりお一人の功績を今後につなげるように努力面に生かすべきであろう。先ほどからの先生の御質問も段々その点は含めながらの御指摘と御質問であるように拝聴しておったわけでありますが、私どもも心して進めていくべきであろうと思っております。
  36. 高木健太郎

    高木健太郎君 大変私今の文部大臣の御所感には賛成でございます。日本人は私は優秀だと思いますが、何か日本研究環境に不十分なところがあったのじゃないか、それの整備、改革ということにこの際ぜひひとつ力を入れていただきたいというのを先ほどから申し上げているわけでございますが、これに追加しましてもう少しお聞きしたいと思います。  湯川さんとか朝永さん、そういう方が、まあ福井さんもそうですが、自然科学系で受賞者が五人のうち四人が京都大学の出身である。どうして日本大学の最高峰と言われる東大から少ないんだろうか。それは方々で議論されているわけですが、まあ東大の方もおいでのところでこういうことを言うのはまことに恐縮でございますけれども、事実は事実としてどういうふうにこれを把握されているかということをお聞きしたいと思います。
  37. 植木浩

    政府委員植木浩君) 私どもいろいろな学者の方と今のような点をよく議論するわけでございますが、一つは、まだ数が自然科学系で五人ということで大変少ないから、それをもって京都大学がと言うのは早過ぎるぞという御意見も片やございます。しかしながら、やはり京都大学あるいは京都というところに何らか独特な学問の風土といいますか、自由な雰囲気といいますか、独創性につながるような雰囲気があるいはあって、それが原因なのかもしれないという御意見も主張される先生方もおられるわけで、私どもも両方の意見を承りながら、確かにこれからは日本全体として独創的な、学問的な風土をつくっていかなければいけない、このように考えておるところでございます。
  38. 高木健太郎

    高木健太郎君 ぜひよく研究していただいて、どこに問題があるのかを掘り下げて研究していただきたいと思います。  東大ができたというときには日本の文化の始まりでございまして、西洋文化に追いつけ追い越せと、いわゆるキャッチアップの時代であったと私は思うわけですが、あるいは通事の世界、通事的な役割を東大はやっておったんだと、それが終わったというわけじゃありませんが、それだけではいかないということはもう御存じのとおりでございまして、これから日本の進むべき道は、海図のない航海、マップのない、地図のない航海を続けなきゃならぬ、こういう時代に私は入っていると思うわけでございます。そういう意味で、今文部大臣もおっしゃいましたように、ぜひここでよく考えなければいけないときに来ている、こう思うわけです。科学技術の国際化を主題として去年科学技術白書が発表されました。それによりますと、物質材料、エレクトロニクス、ライフサイエンス、この三分野基礎科学分野では、光エレクトロニクスを除いてはすべて日本は欧米からおくれているわけです。生産、加工では、コンピューターソフトウェアを除きましては日本は他の先進国に比べて非常にすぐれております。こういうことを見ましても、独創的な面が非常に落ちているということは考えられるわけでございます。  そこでお聞きしたいんですが、日本の学士院賞、恩賜賞、そういうものを三十代のときにやった仕事でもらわれた自然科学の学者というのは、六十代の人、七十代の人もありましょうけれども、大体何%ぐらいが三十代の仕事でもらわれたでしょうか。
  39. 植木浩

    政府委員植木浩君) 学士院賞のここ三十年間の状況を調べてみたわけでございますが、自然科学部門で百八十三名の方が学士院賞を受賞されておられます。三十代は八名で四・四%でございます。それから、今先生おっしゃいました学士院賞の中でも特にすぐれた研究業績に対して授与されます恩賜賞につきましては、ここ三十年間で三十代が一名でございますから、三・八%ということになっております。
  40. 高木健太郎

    高木健太郎君 ちょっと少ないように思うんですね。自然科学系ではもっとあってもいいんじゃないか。日本の学問的な雰囲気というのは何かちょっと社会的に偉くなった、名声があるという者にやっていっている、あるいは選考の方法とか、そういうものにもあるんじゃないか。二十四歳で横綱になる人もあるわけですから、一芸に秀でた人というのは必ずそういうときがあるわけで、変わり者でもあるわけです。ですから、その変わり者というものは日本ではちょっと入れられない。こういう点もあるので、本当意味学術の優秀性というものを選考していく、そういう人たちに対してそういう賞を与えるというようなこういうシステムが私は大事である。学士院会員の者が集まって、じいさんと言っちゃ私もじいさんですけれども、そのおじいさんばかり集まってやっていれば、本当意味の優秀な仕事というものを選択できないんじゃないか、こういう点は私は考える必要がある。将来恩賜賞や学士院賞をやられるときにも、そういう若い人のいろいろの御意見も入れて、そして選考されるということをお願いしておきたいと思います。  もう一つ若い者を、若手研究者の育成に格段の努力をすると文部大臣はおっしゃっておられます。私これ非常にいいことだと思うんです。独創性というものは若い人に多いわけでございますから、そういう点は非常に私はいいことである。その具体策としてどういうことをお考えになっておられるか。特別研究制度というものがある。それを拡充すると言っておられますが、その特別研究制度というのはどういうものでございましょうか。拡充するというのは何を拡充されるのかですね。
  41. 植木浩

    政府委員植木浩君) 先生御案内のように、従来は日本学術振興会の若手研究者育成事業として奨励研究制度がございました。これを学術審議会等でいろいろと検討いたしまして、昭和六十年度から今先生おっしゃった新しいフェローシップ制度でございます特別研究制度をやはり日本学術振興会の事業として創設をし、年々充実をしておるわけでございます。昭和六十三年度予算におきましては総採用者数を今五百六十八人でございますが、百六十人増員して七百二十八人ということになっております。なお、従来の奨励研究制度と比べますと、従来は主として博士号を取得した後の方を対象にいたしましたけれども大学院の博士課程後期の方も対象にしておりますし、従来は一年間であったものを二年間にいたしたり、それから奨学金の充実を行ったり、さらに研究費ということで科学研究費補助金の奨励研究Aといわばドッキングをさせたり、そういう改善拡充措 置を講じてきておるわけで、これを進めていきたいと思っております。
  42. 高木健太郎

    高木健太郎君 結構なことだと思います。ぜひそういう意味で、具体的に若い研究者の育成に努めていただきたいと思います。  それから、若い研究者というのは大体日本では助手なんですね。大学では助手なんです。助手というのは、英語で言いますとアシスタントと、こういうやつ。アメリカ人に聞きますと、名刺にアシスタントと書くと何かそこらの雑役をしているように聞こえるんじゃないかと私は思うんです。外国ではアシスタントというのはそういうふうにとるわけですね。だから、私は給与の面は別にして、少なくともアシスタントプロフェッサーぐらいに名前をつけると、そうすると向こうへ行ったときにも対等に物が言える、そういう意味があるんじゃないかと思うんです。だから、本人の業績次第によりましてはアシスタントプロフェッサーという名称を、あるいは称号はおかしいんですが、地位といいますか、そういうものをつけられたらかなりいいんじゃないかなと、こう思うんです。これは給与がふえるとか、そういうことじゃなくて、ただアシスタントプロフェッサーという名前をつけてよろしいと、こういうふうにしたらどうか。大学を卒業してもう五年も十年もアシスタント、アシスタントでは、とても私は外国へ行って、それは余りいい顔はできないじゃないかと、そう思うんですが、それについてはどうでしょうか。
  43. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 現在の日本大学の助手というのは非常に複雑な存在でございまして、端的に分けていえば、一つには研究者の一段階として、研究者へ行くルートの最初のステップだという位置づけで、実際そういう仕事をしておられる方々がある。また片一方では、教授、助教授等の教育研究の純粋な補助的な仕事をしておられる方々、それの中間的な方々等いろいろ複雑な態様になっておりますが、大きく分ければ、今申し上げましたように二つのタイプがあるわけでございます。  この前者の方の研究者のコースを歩んでいく第一段階としてのフルタイムの職員という位置づけは、これは利根川先生もおっしゃっていましたけれども、アメリカあたりではアシスタントプロフェッサーという位置づけになっているということのようでございまして、確かにそういう点で助手という名称がいいのかどうかということは問題があろうかと思いますが、ただ助手そのものが、先ほど申し上げましたように、いろいろなタイプの補助職員等まで含んだ格好で現在置かれているということもございますので、まずはこの助手制度をどうするかということを基本的に議論をしてみる必要があるだろうと思っておるわけでございます。先般の臨時教育審議会の答申におきましても、この助手の位置づけ、処遇、そして先生の御指摘がございました名称をどうするかという問題まで含めて、さらに検討しなきゃいけないという課題をいただいておりますので、現在、大学審議会で大学改革の御論議をいただいておりますが、そういった中での一つの検討課題として、私どももぜひこれは議論をしていただきたいと思っておるところでございまして、先生の御指摘は十分念頭に置きながら、この先、審議会での御検討をお願いしよう、こういうふうに考えております。
  44. 高木健太郎

    高木健太郎君 ぜひ検討していただきたいと思います。それもいつまでもかかるというんじゃなく、できるだけ早くやる、いいことは早くやるというふうにしていただきたいと思います。  それから、今までの自然科学的の受賞というのは大抵外国での仕事でもらっているわけなんです。それで、私はある私の友人ですが、アメリカで非常に立派な仕事をして、ノーベル賞の候補にも上がった男がおりましたので、君はいい仕事をしてまことに日本のために名誉だと、こう言いましたら、波は私に、何が日本の名誉だ、おれは日本から追い出されるようにして出てきたんだ、日本では仕事ができないから、こっちでやってこうなっている、だからこれは日本の恥だよと、こう言っておりました。その男は物をはっきり言う男で、日本にやっぱり利根川さんみたいにおれなかったんだろうと思うんですね。それを受け入れるだけの日本にあれがないわけなんですね、雰囲気といいますか。これは十分私考えておかなきゃいけないと思う。  文学的だとか、あるいは数学、物理でもらわれた、理論物理学でもらわれたのは、余りお金がかからないで自分で黙ってやっていればいい、上の者とけんかもしないでいい、そういう人が、湯川さんやら朝永さんはそうじゃなかったかなと思うんです。湯川さんもあるいは朝永さんも自分の卒業した大学にはおれないで、どこか初めは助手として行かれているわけですね。だから、そういう空気をぜひこの日本研究分野からなくすということが非常に私は大事である。これ非常にまた難しいことでもあるわけですけれども、これはぜひ文部大臣にもとの点は留意して、そうでなければ独想的研究日本からは生まれないよと、こういうことをひとつぜひ留意していただきたいと思います。  そこで、もう時間がなくなりましたから簡単に私の感想を申し上げますので、ひとつそれをお聞き取りいただきまして、今後のひとつ施策にそれを反映していただきたいと思います。  その一つは、研究費の配分でございますが、研究費の配分というのはやっぱり教授というものが握っておりまして、助手は配分を受けにくいというわけですね。それから受けましても、教授の命令でなければ仕事ができないようになっているわけです。研究というものには上下ないわけなんですね。そういう空気がないわけですから、私は申請時、いわゆる科学研究費を申請しますけれども、申請したときにいい仕事であれば助手であってもそれを採択する。それを教授に審査を任せておくとうまくいきませんから、その審査の委員をもっと若い人にもさせる、こういうようにされてはどうか。それからそういうボスの支配を受けないようにする。  それから、若い研究者の助手も独立して研究ができる体制をつくっていただきたい。教授から言われて仕事をするのでなく、自分も独立して仕事をする。これは利根川さんもそういうふうにやっている。しかし、教育その他に対しては教授の助手を務める。だからそこをはっきり研究教育大学の中で分ける。こうされれば私はうまくいくんじゃないかと思います。米国では、三十代の研究者研究費あるいは人事、あるいは人間を雇うとか、そういうことを一〇〇%独立して自由にやっているわけです。こういうことをひとつ研究していただきたい。  それから、研究室の中では正当な批判精神を涵養する。これはイデオロギーにとらわれてはいけないんで、正当な批判精神というものの向上を今後努められるということが大事じゃないか。  それから、自由な独立した研究といいますけれども、私は自由に放任するというんではいけない。助手は自由に研究していいと言うと、おれは勝手なテーマで勝手なことをやる、それは私はいけないんじゃないか。自由に放任するということではなくて、適切な指導があって、そしてお互いに十分討論をして、その上でテーマを決めていく、あるいは研究費を決めていく、こういうふうにすべきじゃないかと思います。そういう組織づくりをしていただきたい。  もう一つは終身雇用制ですね。これは非常に問題がありまして、反対もたくさんございますけれども、若いうちに終身雇用になりますと、全然勉強をしない人が出てくるわけなんです。だからぬるま湯につかっている。二十代や三十代で終身雇用ということになりますと、もうそれでいい、何にもしなくてもひとりでに月給は上がっていく。こういうことはやっぱり私は若い人を伸ばすゆえんではない、これは何とか考えなきゃいかぬ。任期制というとまた非常に問題が多くなりますが、そういう点もお考えいただいたらどうか。  それから、地方大学をひとつもう少し振興させる。今東京の一点集中というようなことで経済界 では非常にやかましく言われておりまして、首都の移転というようなことも、一部移転というようなことも言われている。しかし、東京一点集中とは経済だけじゃないですね。文化も東京一点集中になりつつある。そういう意味では地方に立派な国立研究所、例えば岡崎もそうですし、遺伝研もそうです。そういうふうに地方に立派な研究所あるいは地方の大学に附属した研究所でもつくる、こういうことによって地方文化を盛んにする。それがその地域のいわゆる経済もまた発展させるということになるんじゃないかと思います。  以上が私の申し上げたいことでございますが、注文ばかりいたしましたけれども、ひとつ新しく文部大臣に中島先生がおなりになりまして、大変また尊敬しているわけですが、今やらないと次の時代に私は日本はおくれをとるという意味で申し上げたわけでございまして、もし御感想がいただければ大変ありがたいと思います。
  45. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 大変的確な御指摘だというふうに拝聴いたしました。まさに研究部門もいろいろございました。先生おっしゃるように、例えば文学とか物理の面ではまたそれなりに年代層も違ってくると思いますけれども、概してある部分で若いうちに新しい研究に取り組まれる、そして功績を上げられる分野につきましては特に先生がおっしゃったような方策は必要であろうというふうに思います。教授の分野それから権威というものは保ちつつ、その中でもさっきおっしゃったようなアシスタントプロフェッサーなるものがみずから研究テーマを出され、そして的確な審査のもとに、その中には一つのプロジェクトをみずからつくってそれの経費を申請して、認められればその研究をある一定期間自由にできる、しかもある一定期間たちましたら、そのチェックポイントがありまして、そこでプラスの認定を受けますと、その次にさらに上に進んでいける、こういうことも一つの励みであろうと思いますし、そのテーマがいろいろ自由に討論され、そして定まっていくのと同時に、その審査機関というものがこれがまた大きな目を必要といたすと思いますけれども、それが比較的中堅どころの四十代あるいは五十代あたりで的確な審査ができるような環境ができれば、それはまた一つのプラスだと思います。  それから、利根川先生もおっしゃっていたように、自分は外へ出てノーベル賞をとったと、こう口ではおっしゃいますけれども、その反面で、ぜひ日本が世界的な視野で人材を集めて、そしてそれが出稼ぎ的でなく、日本に定着をして、日本だからこそ研究がしやすかったと言われるような環境を早くつくるべきだ、こういう熱烈たる気持ちを持っていろいろな御提言をしておりますのは、まさに先生と同じような感覚でおありのように受けとらしていただいておりました。その中に、まさにむしろこれからは地方都市あるいは地方でそのような研究に没頭できるような環境がつくりやすいかもしらぬ、しかも今の情報化の時代でありますから、世界的に今だれがどこでどの程度の研究をしているかということは手にとるようにわかるので、その情報をもとに自分がゆっくり安心して、ある自分の必要なプロジェクトのもとに研究できる環境さえあれば日本で定着してできるんだ、そこから日本だからこそ生まれるような研究ができるはずだ、こういう可能性も指摘されておりますわけでございますので、重々今おっしゃった高木先生の御指摘を貴重な御提言といたしまして検討を速やかに進めてまいりたい、率直にそう思いました。
  46. 高木健太郎

    高木健太郎君 よろしくお願いします。  私、質問これで終わります。     ─────────────
  47. 田沢智治

    委員長田沢智治君) この際、委員異動について御報告いたします。  ただいま木宮和彦君が委員辞任され、その補欠として坪井一宇君が選任されました。     ─────────────
  48. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 まず、文教予算に対する文部大臣の基本姿勢からお尋ねをいたします。  文部省予算説明資料によりますと、文教は国政の基本であるとの認識に立って予算の確保に努めた、こう書いていますけれども、どうお義理で見ても、国全体の一般会計に占める文教予算の比率は、六十三年度八・〇七%で戦後の一時期を除いて最低であります。しかも、近年たどってみますと、一九七六年一一・四%、八〇年一〇・四%、八四年九・〇%、八七年八・五%と、そしてことしといいますか六十三年度案八・〇七%ということで低下していく一方です。これがあの臨教審最終答申後の初めての文教予算、一体これで国民の願いにこたえる教育予算だと文部大臣は胸を張れますか。
  49. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 六十三年度予算は二十九億円をアップいたしまして、四兆五千七百六十六億というものを計上さしていただいております。佐藤先生一般会計との御比較で申されました。それも一つの比較だと思いますが、一般会計というのは御存じのようにこれは国債費その他で国民に返還していく利子分を十一兆入れておりますので、その一般会計と比較するというのは私は余り正しくないんではないか、そういう面では一般歳出と比較をいたしますと大体一四%程度確保さしていただいておりまして、〇・一ぐらいを前後しておるところでございますので、これで六十三年度は賄わしていただく。その中でも重点的に今御意見のありました科学研究費その他、ここぞというところには相当部分のアップを計上さしていただいておりますので、六十三年度はこの四兆五千七百六十六億、これをもちまして万全を期してまいりたい、こう考えます。
  50. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そういう言い方で欺瞞をすることはできないわけで、絶対額がふえているというのはどこの省庁も全部ふえているんです、そういう絶対額という点で見れば。問題は一般会計総額の中での文教予算の比重がどうなっているかということで、私数字挙げましたけれども、年々低下しているということは否めないことでしょう。だから、一体これでいいのかという国民が疑問を持つのは当然だと思うんです。  もう一つ聞きましょう。中曽根前内閣のもとで初めての昭和五十七年度予算、そして六十三年度予算案、ここ対比すると軍事費の伸び率は四三・一%です。文教予算はマイナス〇・一八%です。ここに鮮やかに事態の核心が出ているんじゃないかということで、中曽根内閣に続く竹下内閣の文教予算のこれが実態だ。総理は本会議の所信表明で、教育改革の推進で創造的で活力ある文化国家として我が国を発展させる、こう言っているんですけれども、私は軍事栄えて教育枯れる、こういう予算じゃないかというふうに言わざるを得ないのでありますけれども、憲法、教育基本法の目指している文化的な国家の建設の方向にふさわしい姿になっているというふうに担当大臣としては思われますか、これで。
  51. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) この六十三年度予算、この中で目指すべきものは教育をさらに今の変化する社会に対応する教育に変えていこう、こういう精神を持った予算でございます。まさにその方向そのものが大事だと思いまして、百十二国会でこの限られた予算の中でどの方向に持っていくのか、これを国民の総意の御理解を得つつ教育改革を本格実施に持っていこう、その意気込みでおることを御理解いただきまして、ぜひ教育改革を前進をさしていただきたい、このように考えます。それは、文教がほかとどうかということでありますが、今おっしゃるように、私ども一般歳出と比べてみて決して引けをとらない。しかも前年度よりも絶対額はふやしていく。まさにその中の進むべき方向はこれから必要だ。その方向を教育改革に的を絞ってぜひ御協力をお願いしたい、こういうふうに考えます。
  52. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 あなた非常に滑らかにお言葉はおっしゃいますけれども、中身はないと思うんですよ。本当にやるべきことはちゃんと今度の予算に、いろいろ御批判はあろうけれども、ちゃんとのったというふうにおっしゃるか知らぬけれども、端的な例が四十人学級問題です。  先日来、同僚議員からもこの問題は多々出ましたけれども、私も少し触れておきたいと思いますけれども、しからば四十人学級の十二年計画の九年目に入りますね。達成率は何%ですか。
  53. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) 達成率のとらえ方いろいろございますが、四十人学級を全面実施するために必要とされる教職員の定数増の達成率という意味でございますれば、今度の昭和六十三年度予算におきましては四〇・五%を予算上計上しているわけでございます。
  54. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そうでしょう。数字は雄弁に語るということであって、九年目に入っても四十人学級完全実施をするために必要な教員増、それの四〇・五%しかできていない。こういうことになるんですから、大臣、お義理にもよくやったというふうには、余り胸張れませんよ。  そこで、具体的にそれならその六十三年度予算案、この教職員の増員には大きくいって二つありますね、四十人学級計画分とそれから配置率改善。これがそれぞれ増員が何人か。そして合わせて何人か。一方、児童生徒減による教職員の自然減は何人か。対比してどういう関係になるか御説明ください。
  55. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) 六十三年度予算案におきましては、いわゆる四十人学級等の学級編制の改善に伴います教職員の増員数が四千二百一名でございます。それからその他の配置率改善等によります教職員の定数増が五千八百五十でございます。したがいまして、合計一万五十一名の増員をいたしているところでございます。一方、教職員の六十三年度におきます児童生徒数の減少に伴います教職員の自然減は一万五千九百名でございます。これを差し引きいたしますと、六十三年度の教職員の定数総数は五千八百四十九名の減となるわけでございます。失礼しました。このほかに最低保障の三百三十八名がございますので、それを差し引きますと、加算いたしますと五千五百十一名の減員となります。
  56. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 大臣、これまた数字は雄弁に語っているじゃありませんか。このふやす教職員の数よりも、それは児童生徒が減ったとはいえ、減る教職員の数の方が五千五百人余り多い。これを減らさずにもっと有効に使えばこの四十人学級がもっと促進するのにというふうに国民が見るのは当然じゃないでしょうか。  昨年の十月六日、文部省はこの臨教審答申を受けて「教育改革に関する当面の具体化方策について 教育改革推進大綱」、これを閣議決定いたしましたね。その中で「小・中学校の四十人学級の実施を含む教職員定数改善計画の着実な推進に努める」というふうに麗々しくうたったのに、六十三年度の予算案の中身というのは先ほど来数字をもって雄弁に示されるようなそういう姿になっておる。あの閣議決定というのは飾り言葉だというふうに言わざるを得ないと思うんですよ。この四十人学級問題というのは、もう今や党派を超えた国会でも意見の一致を見ている問題でありますし、もう国民の圧倒的な世論になっているということで、衆議院、参議院でも決議、委員会としての決議もやってきましたし、あるいは請願もたびたび採択をしてきております。国会として。  ちょっと試みに聞きますけれども、計画がスタートをした昭和五十五年以降、請願を採択をしたその国会の回次、それから採択をした請願の件数を言ってみてください。
  57. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) 私ども恐縮でございますが、今までの請願採択数を正確には把握いたしておりません。
  58. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私はそこらに、何も意地悪で言っているんじゃないんですけれども文部省のこの問題の重要さのとらえ方の姿勢の弱さのあらわれが、国会の意思として請願を採択したその数が今まで何回ぐらいあるかということが念頭に、頭の中に焼きついてないというところが私は問題だと思うんですよ。念のために教えておいてあげましょう。七回あるんですよ、今まで請願採択。九十一国会、九十五国会、百一国会、百二国会、百三国会、百十一国会と、六国会、七回請願書を出されて、一緒にくっついて出てきますから、それだけこの四十人学級問題については、しばしば国会としても国民の願いにこたえて意思表示をしておる問題なんですよ。ところが、親も教師もさして要求もしてないところに教員の定員がついていくという問題が片一方で出ている。同僚委員も触れておられましたけれども、いわゆる初任者研修制度、この試行という名の段階です。これに五十三億百万円予算を組むということで、初任者研修の試行のために指導教員の定員化、これを行う。何人分定員化するんですか。
  59. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) 初任者研修の試行は六十二年度からスタートしているわけでございまして、六十三年度はこの二年目になりまして、五十七都道府県、指定都市すべてに実施をお願いしておるわけでございますが、初任者研修の試行に要します指導教員の定数といたしましては千四十六名を六十三年度予算で計上いたしておるわけであります。
  60. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 千四十六名というと、これはいやそれぞれ出どころ違うというふうに言うかもしらぬけれども、例えば四十人学級達成率四〇・五%、余りにもおくれているからそれだけの教員の定員の予算がとれるんだったら、四十人学級の促進の方に回したら、私は本当に国民の願いにこたえたものになる。ところが、願ってもないところに金つける、こういうやり方ですね。どうなんですか、大臣、こういうスローテンポで十二年計画がいっているんですけれどもも、昭和六十六年度までには、今文部省の言っている十二年計画に基づく教員増、四十人学級完成、これは必ずやるというふうに明言をできますか。
  61. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 現在までの途中経過で、厳しい状況に今見舞われておりますが、六十三年度で四〇・五%、あと六十六年完成を目指しまして最大限の努力をいたしてまいります。
  62. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 いや、最大限の努力じゃないんです。それは必ずやると法律でもう決めたんですから、国会決議もやったんですから。ということで、そういう努力したけれどもできませんでしたということでは済まない。必ず責任を持ってやりますというふうに明言してください。
  63. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) これは各委員の目標でもあり、私どもの目標でもございますので、六十六年に四十人学級を完成する、こういう目標でございますので、これはもう六十四年度予算、六十五年度予算、頑張ってまいるわけでございますから、皆様方からも御鞭撻、御協力をいただいて、その努力を続ける、こういうことでございます。私どもは、現在六十三年度予算をもって内容を御審議いただいておりますので、逐年努力を重ねる、これは当然のことでございます。
  64. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 重ねて聞きますけれども、渾身の努力をやるから信頼してくださいということですか。裏切ることないでしょうね。
  65. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) そのようにお受け取りいただいて結構でございます。
  66. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そうすると、さっき問題にしました初任者研修制度文部省は法案まで出してこれからずっとやっていこうということかと思うんですが、この初任者研修のための指導教員の定員は、これは当然別枠ですね。
  67. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) 現在、六十二年から先ほども申し上げましたようにスタートしております初任者研修の試行につきましては、六十三年度も同様でございますが、教職員定数改善十二カ年計画の中の研修と定数という形で措置をさしていただいております。しかし六十四年度以降につきましては、現在法案提出中でございますが、この法案が成立いたしますれば六十四年からの本格実施を予定しております。この場合に、他におきます指導教員の定数につきましては、今申し上げました教職員定数改善計画の外で、私どもとしましては六十四年度予算の要求をさしていただきたいと考えているところでございます。
  68. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 ぜひ理の当然としてそういうことでなくちゃならぬという問題でありますが、そこで昭和六十六年までに四十人学級計画を完成す る、それにさらに続いて次は、それを二十人、三十人学級編制とさらに前進をさせるという課題がもう登場をしてきておるわけです。御存じと思いますが、既に全日本中学校長会は教育改革に関する提言というものを発表して、その中で、二十ないし三十人学級編制とし、適切な教育指導が行われる必要があるということを一九八五年の五月二十七日の提言で発表している。臨教審も、臨教審には多々批判がありますが、この点では、臨教審でさえその答申で、当面四十人学級を円滑に実施し、その後は欧米主要国における教員と児童生徒数の比率を参考としつつ、児童生徒数の推移等を勘案しながら、教員配置をさらに改善する、要するに四十人学級でそこでとどまることなく、さらに一クラス人数を減らす、こういう方向へ前進をさせようということを臨教審でさえ言っているという理解に間違いありませんね。
  69. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) ただいま佐藤先生おっしゃいましたような文章かは再確認さしていただきますが、臨教審答申では、現行改善計画の完成後は、小中学校の教員配置について、欧米主要国における教員と児童生徒数の比率等を参考としつつ、児童生徒数の推移等を勘案しながら、さらに改善し、学級編制基準については弾力化するということを答申いただいているわけでございまして、この答申を踏まえまして文部省としても今後の対応を考えていきたいというところでございます。
  70. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 ちなみに、欧米主要国はどういう姿ですか、学級編制は、編制基準といいますか。
  71. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) 例えばアメリカでございますと、これは各州によって違うわけでございますが、例えばインディアナ州のような例でございますと、一学年から三学年までが三十人以下、四学年から八学年までが三十四人以下、九学年から十二学年までが二十八人以下というような形で、各州で定めがそれぞれ違いますけれども、おおむねこの前後のような数字でございます。それからイギリスにつきましては、小等中等学校につきましての学級編制基準はございませんが、かつては小学校につきましては四十人以下、中学校につきましては三十人以下という学級編制基準が定められておりました。それからフランスにつきましては、小学校が、第一学年は二十五名、第二学年から第五学年までが三十名、それから中等学校につきましては、一定条件のもとで学校において定めるわけでございますけれども、例えば後期のリセでございますと四十人とか三十五人という定めがございます。それから西ドイツにつきましては、これもまた各州によって基準が違うわけでございますが、一つの例といたしまして、ノルトライン・ウエストファーレン州の例でございますと、小学校につきましては、最高基準が一学年から四学年までは三十名、それから、前期中等教育に相当します第五学年から第九学年までが最高基準が三十五名、第十学年は最高基準が四十名、後期中等教育の十一学年から十三学年までは二十五人、こういうような定めでございます。それから、ソビエト連邦につきましては、第一学年から第九学年が三十人以下、第十学年、十一学年は二十五人以下といったような学級編制基準が定められております。
  72. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 それで、そういう諸外国の現状を参考としつつ、今の四十人学級計画を昭和六十六年度をもって完成をさせるという、しかる上でということであるにしても、どうなんですか。臨教審の答申でも触れていることでもあるが、さらに四十人からさらに一層改善、前進をさせる、その調査などの必要な準備は着手しているんですか。
  73. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) 御承知のように、六十六年までの十二カ年計画、これを着実に前進させるという形で最大限の現在努力をさせていただいているところでございます。六十七年度以降の事柄につきましては、もちろん、児童生徒数の推移状況等もございます。それから、各教育現場におきまして学級編制基準の問題のみならず、教職員の配置率の改善の問題等もいろいろ御関心があるわけでございまして、そういったこれからの問題につきましては、当然私どもとしましても、各教育委員会あるいは校長会その他の関係団体等の御意見も踏まえながら、六十七年度以降の考え方についての準備あるいは検討の準備を進めてまいりたいと思っております。
  74. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そういう各界のいろいろな意見も聴取しながら必要な準備は準備として、六十六年度への完成作業の努力、これと並行してやっていこうということですね。
  75. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) これは当然現在の計画の着実な前進ということが前提条件になるわけでございますし、それから、児童生徒数の予測の問題等もございます。事柄といたしましては、特に今後の六十七年度以降を考えます場合に、まだ出生されていない児童生徒数の予測から入るわけでございますし、そういった計数の問題等も一つございますし、また学校現場等におきましてどういう形での教職員増というものを必要とするか、その必要な度合い等の感触等もございますし、そういった点は総合的に諸般の情勢を勘案し、また今後の財政状況の推移等も、予測は非常に難しゅうございますけれども、相当程度念頭に置きながら考えていくべき事柄であろうと思いますし、そういった点ではまだ具体的な作業には入っておりませんけれども、そういった事前の各種の情報あるいは検討ということには当然私ども取りかかるべき段階に来ていると思っております。
  76. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そこで、例えばアメリカ並みにするというか、日本の学級編制基準とアメリカの基準と少し物差しの違う点があるから、どんぴしゃりということにはいかぬにしても、大まかにアメリカ並みと、さっき御紹介あったような、そういうところへ持っていくのに何人ぐらい教員の増員が必要かということを、ちょっと文部省の人来てもらって聞いたら、いやそんなことを聞かれても計算のしようがありませんというふうな、ちょっとまだそんな計算ができる段階ではないと。それなら私の方で計算をしたところによればということで、十二年計画ですね、今の四十人。これが終了後アメリカ並みに持っていくということのためには十万五千二百二人、現在の平均賃金でいったとして約千二百五十億円ということで、これまたくしくも航空母艦護衛のイージス艦を、新型ミサイルイージス艦を導入しようという、これ一隻で千二百五十億ぐらいだという、その額と割合よう似た数字になるわけです。  だから、そういった点で本当に四十人学級の早期達成もちろんのこと、それに引き続く前進、これはやろうと思えばできないことではないというふうに思うわけでありますけれども、そこの軍事費との対比になると、いやそんなことは文部省は知りませんと、こういう話になる。私の申し上げた十万五千二百二名というこの点についてどうでしょうか。私の計算によればそういうことになるがということで質問したら答えてくれるかというて、きのう言っておいたんですが。
  77. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) 数字というのは算定が非常に難しいわけでございまして、例えばアメリカと同様な学級編制ということでございますが、アメリカの場合も、先ほども申し上げましたように、各州による違いがございますが、おおよその目見当、腰だめでということで、そういう先生おっしゃいますような数字になり得る可能性はあると思いますが、ただ教職員の配置状況というのが一学級に一人という形ではございませんで、日本の場合は、御承知のように、例えば専科教員であるとか、あるいはその他のきめ細かい一学級一名以外の配当、あるいは事務職員、栄養士、あるいは養護教諭等の配置もされている状況等はかなり国情によって違うと思いますし、そういう意味では、単純な学級編制による積算以外の配置率改善に伴います日本の方がきめ細かい配慮がされていると、私は考えております。しかし、今言ったそういった要素を全くミクロな点を排除いたしまして、単純に学級編制をアメリカ並みということでございますれば十万人程度の増員は必要になるであろうというぐあいに考えております。
  78. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 それで十万人ほど必要になるけれ ども、しかし片一方で、児童生徒数のピークを超えて下降線へいくわけですからね。だから、そういった点でそれだけの人数の増員をあえて必要としなくとも、例えば三十五人学級に持っていくことは可能だと思うんです。こういう状況になるわけでありますから、さっき六十六年に向けての四十人学級の完成の努力と並行をしながら、さらに引き続く改善に向けての必要な準備作業なんかはやっていきたいという、こういうことでありますので、ぜひ私の申し上げておる数字も念頭に置いていただきながら努力をしてもらいたいというふうに思います。  そこで、次は高等学校の問題なんですよ。御存じのように、小中学校の四十人学級計画は国としても、一定のスローテンポですけれども、しかしいろいろやってきたと。高等学校が全く国としての対策がないわけですね。むしろ高等学校進学率今や平均九四%ということで、準義務教育という言葉なんかがあるように義務教育に準ずべきそういう姿になってきているという、にもかかわらず、前回、小中学校の計画を発足させるときに、この高校生の急増期だから、それで四十人をやろうと思ったらごつい教員が要るということで高校に対する計画が見送られたわけですけれども、これ来年をピークにして高校生も減っていくわけですね。だから高等学校の四十人学級計画をいよいよ俎上に上せて検討すべき時期を迎えているということかと思うんでありますけれども、文部大臣、まずこの考え方の原点といいますか、高等学校についても何かのことをしなくちゃいかぬということはお考えでしょうね。
  79. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) 高等学校につきましても、小中学校の十二カ年計画と同時に並行いたしまして、第四次の教職員定数改善計画が現在進行中でございまして、六十六年度に向けての同じような歩みをしている段階でございます。したがいまして、私ども現時点におきましては小中学校教職員定数改善計画と同様に高等学校の教職員定数改善計画につきましてもその着実な推進に努力をいたしている段階でございます。また、同じように六十七年度以降の問題につきましても、小中学校の場合と同様に、今後どうすべきかということは私ども部内でも当然考えていかなければならない大きな課題であると考えております。
  80. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 高等学校についても第四次計画で定数問題についての改善をやっておるとおっしゃるんだけれども、それは言うならば微々たるもので、いわゆる高等学校の四十人学級計画ということでのあれじゃないですね。俗に言う配置率改善、こういう域にとどまっているわけなんで、いよいよ高等学校の四十人学級計画を考える段階に来ているんではないかということなんでありますが、念のために聞きますけれども、昨年十月の閣議決定、さっき引用いたしました教育改革推進大綱、そこでの「教職員定数改善計画の着実な推進に努める」というこの中には当然高校も含めてということですね。
  81. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) 推進大綱では、小中学校の四十人学級の実施を含む教職員定数改善計画ということでございまして、この中には高等学校の教職員定数改善計画も小中学校と同様に着実な推進を図るということと理解いたしております。
  82. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そこで、既に昭和二十三年高等学校の設置基準、これで本来は四十人以下というふうにしておったんです。それが当分の間はどうだこうだということで、四十年たった現在、四十人以下ということが完全に制度としてそれが実施されるという姿になってない。むしろ県によっては四十六人はおろか四十七人、四十八人学級というところさえ出始めておるという最近の姿さえあるわけですね。それで、冒頭にも触れたわけでありますけれども、高校生の数は来年をピークにして、あと数年はだんだん減っていくということでありますけれども、そこらの数字を一九八七年、八九年、九五年どういうふうになりますか。
  83. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) ちょっと西暦の方でおっしゃられましたので、恐縮でございますが、今の年次を何年と何年か、ちょっともう一度お願いいたします。
  84. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 いや、それならもう時間のむだですから、私から申し上げます。  一九八七年、昨年ですね。これが五百三十七万人。そして来年一九八九年、これが最高期、ピークで五百六十五万人。そしてその六年後、だんだん年々減っていくんですが、六年後、一九九五年度は四百七十四万人というふうにずっと下降線をたどっていくわけです。ですから、そのことに伴う必要教員数の自然減みたいなものがあるんですから、そこをうまく運用すれば高等学校についても四十人学級計画をやれる、そういうチャンスを迎えると思うんです。  何しろ最近の高校の実態でありますけれども、再びまたちょっと深刻な状況が出ているんですね。高校中退者十一万人を超えたということなんです。あるいは高校生の自殺者、昭和六十一年度で二百四十八人。というようなことに示されるような、すし詰め教室、そのことの中からの学力のいわゆる落ちこぼれ、そういうことからのまたいろいろな非行の問題、我が人生の未来に対する絶望等々、そういうことの中からも起こってきておる事態でありますけれども、そういった点で本当に高等学校についても四十人学級を初めとする、将来はもっとさらに改善をさせるべきでありますけれども、そういう学級等の改善というものが緊急の課題になっているという、そのことの必要さ。どういうふうにやっていくかということは、これは具体論の問題として、理念として、考え方としてその必要さはどうですか。お認めになるでしょうねと文部大臣にお尋ねしたんだけれども、隣の局長がかわって答えましたので、文部大臣に重ねてそこの基本的な考え方を。
  85. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 御趣旨の基本的な考え方はそのとおりだと思います。今お話しの中の高校中退十一万人、この内容をちょっと見てみました。いろいろな理由がございますが、しかし一方において、その理由がどうあれ、教育条件の向上のためには今までも努力をいたしてまいりましたけれども、今後もさらに努力をしていくべきだ、このように考えます。
  86. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そこで、さっき局長の方から、諸外国の学級編制というか、教員一人当たりの児童生徒数、いろいろ指標のとり方のあれはあるんですけれども、紹介もあったわけでありますけれども、いわゆる後期中等教育ということで日本の高等学校を見た場合、教員一人当たりの生徒数をアメリカ並みにするには教員が何人ぐらい、例えば一九八七年度時点のそこを数字にしてみた場合に、アメリカ並みにするにはどのくらいの教員増が必要なんでしょうか。
  87. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) 昭和六十二年度の時点におきまして、日本の場合小学校、いわゆる初等学校でございますが、小学校につきましては本務教員一人当たりの児童数が二十四人でございます。それから中学校につきましては、本務教員一人当たりの生徒数が二十一・五人でございます。一方、これは一九八二年の時点でございますが、アメリカでございますとアメリカの初等学校が本務教員一人当たり二十・五人、中等学校につきましては教員一人当たり十六・七人ということでございまして、これは単純に児童生徒数を本務教員の数で割った結果の数字でございます。  内容的には、先ほど申し上げましたように、日本の場合は一学級当たりの教員数あるいはその他の職員の配置率が高いわけでございますけれども、ここは教員だけの押さえ方をしております。そういう意味で単純にいたしますれば、この数字を今申し上げました二十四人を二十・五人で割り、二十一・五人を十六・七人で割った倍率に現在の教職員総数約七十万人、教員でございますから七十万人程度だと思いますけれども、掛ければ出てくるわけでございますが、ちょっと計算の時間を若干おかしいただければ後ほど概数を申し上げたいと思います。
  88. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 質問通告をしておいたつもりですけれども、一遍中断して、後から突き合わせましょう。私が計算したところでは二万一千二百人ぐ らい増員をしたらアメリカ並みになる、日本の高等学校。ちょっと首ひねっておられるけれども、これは数字のことですから突き合わせしましょう、後から。
  89. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) ただいま私申し上げましたのは、いわゆる小学校、中学校の児童生徒数の話でございまして、ただいま先生は何か高等学校の方の……
  90. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 後期中等教育ですよ。
  91. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) 失礼いたしました。そちらの方はちょっと数字を持ち合わせておりません。
  92. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 一遍数字計算してみてください。そう難しい計算ではありません。  片一方、さっき言いましたが、一九九五年度、ずっとこのピークから生徒数が減っていくということで、もちろん公立と私立とありますから、この公立を七割というふうに大体推定をして公立の高等学校教員、これで自然減がどれくらい出るかというのを私一九八七年度から一九九五年度にかけて計算をしてみると二万八千九百人。だから、もうその半分で悠々と高等学校をアメリカ並みに持っていくということができる。四十人学級計画も大いにやり得るだろう、可能であろうというふうに私見ているんです。ぜひひとつ、一遍そこら本当文部省として、文部大臣も言われたように、どういう手順、段取りで進めるかということについては細部の問題あるけれども、高等学校についても考えなくちゃならぬという、ここを何といいますか原点にして、そのためにはどれくらいの教員増、自然減との関係がどういうことになるかという、そこを至急にひとつ必要な調査を開始していただきたいというふうに、もう大臣に聞いておきましょう。
  93. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) それはちょっと技術的、事務的な事柄がございますので、私の方から初めにお答えさしていただきたいと思いますが、高等学校の今後の考え方というのはかなり変動要因、あるいは不確定要因がございます。それは、一つには児童生徒数は確かに減少いたしますが、公私立のバランスが、比率を先生おっしゃいましたような形のままで何年か先同様に考えていくのか、あるいは私学は私学としての立場を尊重しつつ公立の方を減らしていくのか、その県の考え方、あるいは県内におきます公私のバランスの問題というのは政策的な配慮がございまして、そういう意味では単純に今の公私の比率どおりに減るかどうかという問題が一つございます。それは、県の判断が相当影響するという事柄がございます。そういう意味で、進学率をまた九四%で固定するかどうか、そういった問題等もございます。  さらに、今後の問題といたしまして、高等学校におきます臨教審答申にもございますが、生徒の個性に即し、その多様なニーズにこたえて、選択の機会の拡大であるとか、いろいろな形の提言ございますけれども、ということはいろいろなカリキュラムを準備するために、いわゆる学級編制のみならず配置率の改善についての要求に関連する事柄が相当あるわけでございます。それと後年度におきます地方財政状況がどうなっていくかという複合的な要因が多々ございますので、今の時点で調査をしたからこういう形での数字ということは、多様な不確定要因をたくさん踏まえた上での調査ということで、現実に将来の六十七年度以降対応すべきようなデータとしてとり得るかどうか。そういったどういう形でデータをとるのかということからまず考えていかなきゃならぬ難しい問題が前提としてあるということをちょっと事務的に申し上げさせていただきたいと思います。
  94. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 局長はごちゃごちゃといろいろなことを言いましたけれども、この高校進学率が今の九四%より大きくダウンをしていくということは日本の場合あり得ないことだと思うんですよ、上昇することはあっても。ということだし、それから、公私のバランスと言いますけれども、これは多分に今までそういう高校対策について、公立高校増設は金がかかり過ぎるということで私学におんぶしてきたという、しかし、そういう状況のもとでも、今大体公立が平均七割。何というか、文部省としてはこの私学にもっともっとおんぶしたらよろしいというようなことは言えないはずだと思うんです。やはり国と地方公共団体とのここの責任で基本的に国民に対する教育の責任を果たしていく。ただ、私学は私学としての独自の役割があるわけですから、そことは緊密な提携のもとに進めていくというこういう関係。  だから、例えばいろいろなケーススタディーがあるじゃないですか。いろいろなケーススタディー、パターンを想定して、そのことに基づいて必要なこの高校四十人学級計画についてのこの準備は準備として急いでもらわぬといかぬと思うんですよ。この小中学校が六十六年で終わるんでしょう。終わってからさて高校対策をどうするか。それではどうしたって準備に最低二年ぐらいはかかるんじゃないですか。そういうことで、そこにブランクの期間が出ないようにということで、小中学校の三十五人計画のための必要な調査などは並行して進めますという大体きょうはお話が出ました。同様に高校対策についての、六十六年度終わったら六十七年度からでももう高校対策が講ぜられるように早く、準備を早くやるに越したことないわけですからね。そういった点で、それは文部大臣、えらい荷物をしょうときに文部大臣になったということか知りませんけれども、これあなたが頑張ってそれをやったら、あなたの末代に至る誇りある仕事になるわけですからね。そういうことで、またとない今チャンスを迎えているわけですから、早く計画をどういうふうに決めるかということにはいろいろな慎重な検討要るでしょう。しかし、必要な調査、いろいろなケーススタディーに基づく調査という、それは早くやるということでひとつやってもらいたいという、そこの基本的な立場について、もう局長いいです、大臣。
  95. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 確かにいろいろ勘案すべき条件は多々あると思うんです。これからの進め方にいろいろインプットして、いろいろな条件を勘案すべきだと思いますが、しかし教育条件の維持向上のためには一生懸命やらなければいけませんので、よく勉強を続けていきたいと思います。
  96. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 ぜひ早急に着手してもらいたいと思います。  さて、ここで少し話が変わるようでありますが、結局は教職員定数の問題に関係をする問題でありますので、次の問題に移りますが、昨年末の教育課程審議会の答申で打ち出されたいわゆる小学校低学年の生活科ですね。この生活科に関する研究指定校を各都道府県に一校ずつ指定して、本年四月から単なる研究だけじゃない、授業もやれと。すなわち社会科、理科を廃止して、やめて、かわりに生活科、こういう研究推進校の指定が今進んでいるわけでありますけれども、この問題についてであります。  まず確かめておきますけれども、この学習指導要領の改定なるものは、今は答申の段階であって、いわゆる本決定は秋ないし年末の、そこで省令という形で学習指導要領の改定。だから、その間はあの答申の内容について広く教育関係者のいろいろな意見に耳を傾けて文部省としての最終結論を出す、こういう手順でいくということですね。
  97. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 先生指摘の生活科の問題につきましては、お話にございましたように、教育課程審議会の答申が昨年末、それから文部省としての指導要領の作成は年末を予定しておるわけでございます。その形態は学校教育法施行規則に基づきまして文部大臣が定める告示という形を、これは指導要領の従来からの性格でございますが、そういう形式を予定しております。その間私どもは指導要領の作成に向けて、十全なる指導要領を作成すべく研究を進める、こういうふうな段取りでございます。
  98. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 文部省としても部内としてよく慎重な検討をやる、同時に教育関係者の意見も可能な限り耳を傾ける、こういう態度ですね。
  99. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 指導要領の作成のプロセスにおきましては、協力者会議というふうなそれぞれの教科別の会議を持つわけでございますが、そういう組織でいろいろ検討していただくと同時に、いろいろな立場からの御意見もあろうかということで、そういう御意見にももちろん耳を傾けさせていただく、こういうつもりでおります。
  100. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 にもかかわらず、今回いよいよもう早速四月から生活料の新設を当然のことであるかのごとくにして、そのための本格実施は言われておるように昭和六十七年度からですね。であるのに早々と本年の四月から研究推進校を指定する。そこの学校では社会と理科はやめて、低学年は二時間ずつこれやめて生活科三時間、それから国語を一時間上積み、こういう形を各県一校、二校になるところもあるらしいですけれども、ということで、研究推進校ということでやるというのは一体何事かと。まだ決まってもいない、これからよくいろいろ検討もしていこう、関係者の意見にも耳を傾けようと言っておる。あたかも当然のこと、不動のことであるかのごとき前提の上に立ってやるというのは一体何事かというふうに私は思いますね。
  101. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 先生ぜひ御理解いただきたいと思いますのは、やはり新しい教科ということで生活科が発足するわけでございます。指導要領なり実際の実施につきましては御指摘のとおりでございますが、私どもは実施を控えてやはり生活科のあり方等については十分な調査研究が必要である、こういう考え方を持つわけでありまして、その点に関しましては学校教育法に基づきまして施行規則で、これは条文を申し上げますと、第二十六条の二という条文なんでございますけれども教育課程に関して改善に資する研究を行うため特に必要がある場合、「児童の教育上適切な配慮がなされていると文部大臣が認める場合」は、現行の指導要領によらないで研究ができるというふうな、いわゆる研究開発学校に関する規定があるわけでございます。  先生指摘の私どもが生活科に関する研究指定校を設けたいという趣旨は、この研究開発学校としての指定をするということでございまして、この研究開発学校におきましては、生活科というものが指導要領その他いろいろな手続を経て制定され、そして実施の運びになるわけでございますので、それらが全国の学校で十全に実施できるように研究指定校においていろいろな場面での研究を進めていただく、それを全国にまた普及していくと、そんなふうな趣旨なんでございますね。ですから、現行の指導要領に基づいてと、それを外すにつきましては研究開発学校の指定を行った上でこれを行う、そういうふうな立場でやらしていただくわけでございますので、その点は御理解をいただきたいというふうに思います。
  102. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そんな言い方で事柄をごまかすことはできないと思うんですよ。本格実施六十七年でしょう。それまでにあとまだ四年あるじゃないですか。そしてあなた方が、まあ私どもはそう見ていませんよ。文部省が法的拘束性を持つ、発揮するというふうに言っているその大臣告示による、省令決定による学習指導要領の改定もまだ行われていないというこの四月の段階から、あたかももうそれは決定をしたというそういう前提の、かのごときそういう立場から、この各県一校ずつ、これが例えて言えば、私は通達をもらいました、文部省が各県一校ずつ指定する通達。それが表題は「生活科の円滑な実施に関する研究実施要項(案)」ということで、六十三年二月、あなたの名前による初中局長通知で出ているわけですね。百歩譲って、生活科(仮称)とかということで、まだ本決まりではありませんよと。しかしまあそこに向けてのいわゆる準備、トレーニング、トレーニングというのもおかしいけれども、それに向けての第一弾準備としてという、こういうことであれば百歩譲ってもまだしも、あるいは秋ないし年末に学習指導要領の改定が行われると、それが終わってから、すなわち来年の昭和六十四年度からこういう研究推進校なるものが指定をされるというんだったら、それでいいというわけじゃありませんよ、ありませんけれども文部省なりの理屈は通っている。しかし、文部省の今までの理屈からも外れているんじゃないか。  で、やる際にはそういうことで本来の基準的教育課程を組みかえてある教科についてはやらないで、ほかの教科のあれをやりますというのが、あなたの言った施行規則で決めているというのは、それはやり方を決めていることであって、そういうことが大臣が認可したらできるんですということになっているということにすぎないわけですね。そもそもこの計画自身が逸脱じゃないかというふうに私はどうしても思わざるを得ない。そのことは逆に言えば、こんなもの法的拘束性ないんだから、何か都道府県から学校について推薦を受けているのでそれを指定するというんでしょう。そんなもの都道府県が勝手に学校側とよく相談もしないで推薦をして、ぽっぽっぽっと指定したって返上が起こりますよ。また返上ができますよ。そうでしょう、法的拘束力がありますか。
  103. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 研究開発学校の性格について御理解をいただきたいと思うわけでございますが、例えば中学と高校の教育課程に関する連携の研究開発学校もございます。それから、小学校と中学校の教育課程の連携に関する研究開発学校もあるわけでございます。そういう学校を指定した場合には、現行の指導要領の枠にとらわれずに、いろいろな弾力的な教科課程についてそれぞれの学校が教育課程を組んで実施、研究をするわけでございます。  先生、今生活科についての御指摘でございますが、研究開発学校につきましてどのような教科課程でどういうふうな形で行うかにつきましては、やはり全体の教育課程のいろいろな必要に基づいて、そのために指定をするわけでございますから、生活科につきましても指導要領が作成されるのが年末、実施が行われるのが六十七年でございますが、そういう形の全体の見通しのもとにこのような研究を開発学校で行ってもらうということは法制度で許される、そして必要であるというふうな形で行わしていただいておるわけでございますので、その点は御理解をいただきたいと思います。
  104. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 返上できるのかどうか、そこを答えてください。
  105. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) これは先生指摘の二月一日付の通知で私どもは各県から希望をとる、そして各都道府県においてはそれぞれの学校の相談をして私どもに推薦をするわけでございますから、私どもとしては、都道府県教委からの推薦があった学校についてはそれを私どもの立場で十分検討して、そしてそこに問題がなければ指定をさしていただくということでございます。返上問題その他は都道府県内部における問題でございますので、今コメントは差し控えたいと思います。
  106. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 コメントを差し控えるというのは苦しいところなんですよ。学校に相談をしないまま、ぽっと文部省に推薦校の報告を上げておる、そういう県が少なからずあるんですよ。それで、ふたをあけたら話が違うということで、まあそこの問題はさておいて、あなたがるる前段で言うた施行規則のそれは、この研究の正当性が立証できる場合について施行規則の手続でこういうふうにやっていきますということを決めておるんであって、今この段階で、暮れの決定もまだ出ていないという段階で、生活科(仮称)じゃない生活科として研究推進校を指定するという、こんなことはできるはずがないというそこのところを私は問題にしておるんで、一遍頭冷やしてよく考えておいてくださいよ。  そこで、もう時間ないからあれですが、この生活料研究推進校、このためにまた加配教員が一人ずつつくんですよ。初任者研修でぽっとつくんでしょう。これにまた加配教員がつくということで、本当に教師や親が切望しておる四十人学級をもっとスピードアップしてやってもらいたいという、これに背を向ける、そういうものになってい るじゃないですか。  それからもう一つ重大な問題は、四月からやるといったらあと一週間後でしょう。目の前に迫っている。ところが、ならば、授業をやると言うんだからどういう内容でやるのか。もうあしたから四月ですよ。学年としてはあしたからなんですよ。実際に学校が始まるのは四月の八日ごろということですけれども、授業やると言うんだから、どういうカリキュラム案で実際に授業を含む研究をやるのか、そのカリキュラム案をひとつ資料として出してもらいたいと言うても出さぬのですよ、文部省は。こんなばかな話は私ないと思うな。もういよいよあしたからそれこそ四月一日になる。エープリルフールでごまかせる話じゃないわけでございまして、ということで文部大臣ね、こんなことを文部省に決定権があるとかいうようなことでごり押しするというのはだめだと思いますね。  私は、最後に大臣に、私がるる申し上げた点をもう一遍よくそしゃくをしてもらって、法的な瑕疵がないように、これは実施延期をする、でもってよく練り直すということと、それからカリキュラム案についてはこれはもう即刻と言いたいところだけれども、一日でも早くひとつ出すように委員長からも御指図を願いたいということをお願いし、大臣にその実施延期問題について答弁を求めます。
  107. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 特に生活科についてお尋ねでございました。これは今まで理科、社会、これも実効があったと思います。ただ、これからは小学校低学年生に対しまして、自分の体験を通して自分の身の周りの社会を知る、その社会の中のおのれを知るということをやっぱり体験を主体にして進めていこうというのがまさに社会科の大きなテーマでございます。したがって、この学習指導要領をこれから一年かかってやっていくわけでありますけれども、その間に指導要領を作成しつつ、一方で実際に進めてみよう、それが施行規則の中に教育開発学校という規定があるわけでございますので、それを活用していただこう、これはまさにこれからの少年少女諸君の進む道に学習指導要領をつくっちゃいましたよ、しかし、つくりつつ、そういう指定校を設けましてやっていくというのは、私はむしろ親切なことというふうにお受け取りをいただき、御理解をいただくべきではなかろうか、こういうふうに御理解をいただくようにお願いをいたしまして答弁といたします。
  108. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 最後の先生の御指摘の点でございますが、やはり個々の学校でそれぞれ生活科について創意工夫で研究をし、そして実施をしてもらうということでございますから、私どもは一定の指導計画を四十七校に押しつけて、そしてこれでやってちょうだいという立場ではないんでございます。教育課程審議会やいろいろな審議会等が従来から指摘している生活科の趣旨、これを生かして各学校でやっていただくというふうなことでございますので、そういう意味で指導計画をお出しするというのは遠慮さしていただいておる、こういうことでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  109. 田沢智治

    委員長田沢智治君) それでは、午前の質疑はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時十八分休憩      ─────・─────    午後一時三十一分開会
  110. 田沢智治

    委員長田沢智治君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和六十三年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、文部省所管を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  111. 勝木健司

    ○勝木健司君 まず家庭における教育費負担の増大についてお尋ね申し上げます。  私たち日本人というのは非常に教育に熱心でありまして、高い進学率が我が国の進歩と発展の礎になっているといえますけれども、家計に対する教育費の負担の重圧というものはまさに大変なものであります。昨年行われました総理府の物価問題についての世論調査、また経企庁の物価意識調査、さらには大手銀行の行いました子供の教育費調査にも、教育費負担に苦しんでいる御父兄の姿が浮き彫りにされております。文部省が毎年行っております保護者が支出した教育費調査でも、消費者物価指数の伸びと比べ、教育費の伸びが突出しているようでありますが、最近の調査結果につきまして御説明願いたいと思います。
  112. 川村恒明

    政府委員(川村恒明君) ただいま御指摘のございました調査、文部省が実施しております保護者が支出した教育費調査でございますけれども、これは御案内のとおり昭和五十二年ごろから毎年教育費を調査さしていただいております。保護者が支出した教育費につきまして、これを学校教育費それから学校給食費、家庭教育費、こういう内訳で子供一人当たりにどれだけの教育費が支出されておるかということを調査しているわけでございます。  最近の一番新しい調査は、昭和六十一年度に実施したものでございまして、これで見ますと、例えば公立の小学校の場合には一人当たり十七万八千円というようなこと、あるいは私立の幼稚園の場合には三十二万五千円というような一人当たりの年間の保護者が支出した経費、こういうことでございます。前年度に比べてみると、今申し上げました公立小学校の場合、十七万八千円というのは対前年度一・七%の増でございます。今先生指摘のございました消費者物価指数と比べてみるとということでございますが、この間の消費者物価指数の対前年度の伸び率は〇・六%でございますから、その物価指数よりは高い伸びを示している、こういう状況でございます。
  113. 勝木健司

    ○勝木健司君 教育費負担が特に大きいのは子供を私立学校へ通わせている家庭であろうかと思います。我が国では私立に通う生徒の割合というものが比較的大きく、幼稚園児と高等教育機関の学生の四人に三人までが、また高校生の四人に一人が私立に通っており、その教育費は大変なものであろうかと思います。特に子供二人が同時期に私立の大学に通っている家庭での教育費は実に家計の三割を超えていると聞いております。  そこで、幼稚園から大学までの平均的な初年度納付金はそれぞれ幾らになっておるのか。また、大学卒業まですべて私立に通った場合と公立と比べて、学校教育費の総計というものはどのくらいになるのか、お伺いいたしたいと思います。
  114. 川村恒明

    政府委員(川村恒明君) 最初の初年度納付金でございますけれども、私どもで実施しております保護者が支出した教育費調査の結果によりますと、入学第一年度に支出した経費が出てくるわけでございますが、私立の幼稚園の場合は十六万六千円でございます。それから公立の高等学校の場合は十万二千円でございますが、私立の高等学校では四十一万二千円というふうになっておるというふうに承知をいたしております。それから、この調査では大学の方の学納金につきましては調査対象にしておりませんが、別途これを大学につきまして授業料、入学金及び施設設備費というふうな初年度納付金を合算いたしますと、六十三年度の場合は国立大学で四十八万円、私立大学で九十九万円余りと、こういうことでございます。  そこで、第二のお尋ねの、それではずっと私立に通わせた場合にどれくらいの父兄負担になるのか、こういうことでございますけれども、大変申しわけないのでございますが、私どもの今申し上げました調査では私立の小中学校に要する経費というものを実は算定しておりません。調査をいたしておりません。対象の数も少ないというようなこともございまして、ちょっと幼稚園から大学まで全部私立というケースがそういうことで数字がないわけでございますけれども、仮に幼稚園から高等学校までを公立、大学国立、つまり公立、国立でやった場合と、それから幼稚園は私立、小中は公立で高等学校、大学は私立というふうなケースと、これ比較することはできるわけでございますが、この調査結果でモデル的にその経費を計算する。実際は子供たちはずっとその間十六年なり十八年間通っているその間の経費の変動というのはありますので、一概にこれをモデル的にも算定することは困難でございますが、仮にこの六十一年度の調査結果でやってみるということになるとどうなるかということでございますが、先ほど申し上げました幼稚園から高等学校までが公立で大学国立という国公立でやってまいりますとと全体で父兄の負担というのは三百二十万円でございます。それに対して小中学校が公立、幼稚園、高等学校、大学が私立という手元にある数字でできるだけ私立を使った場合でやりますと約六百万円でございます。一方が三百二十万円に対してもう一つの方は、私立の場合は約六百万円ということでございますから、その格差というものは大体二倍弱、一・九倍ぐらいになろう、こんな感じでございます。
  115. 勝木健司

    ○勝木健司君 中島文部大臣は所信の中で「教育は、国家社会発展の基盤を培うものであり、次代の日本を担う青少年を育成する上で一日たりともゆるがせにできない国政上の重要課題」であると述べられております。しかし、国政上重要な教育に要する費用といいますと、その多くを家庭に負わせているのではないかというふうに思われます。六十三年度文部省予算案は国の苦しい財政の中から二十八億円増としたということでありますけれども、家庭の負担軽減のためにどのような措置をなさっておるのか、お尋ねしたいと思います。
  116. 川村恒明

    政府委員(川村恒明君) ただいま申し上げましたような保護者が負担をする経費というものがあるわけでございます。やはり私どもの立場で申し上げますと、教育の機会均等ということで、その理念を実現するために、こういう今申し上げましたような保護者の負担する経費というものが余り過大になるということは大変にぐあいの悪いことでございまして、その軽減ということは御指摘のとおりだろうと思っております。  そういう教育費が過大にならないようにするためにはどうすればということでございますけれども、やはり二つのやり方があって、一つは申し上げるまでもなく歳出面の問題でございます。例えば育英奨学事業というふうな個人に対する補助でございますとか、あるいは私学助成というふうな機関補助というのもございますが、そういうルートを通じての教育に対する公財政の支出というものをできるだけふやしていくという歳出面の問題もございますし、もう一つは税制面の問題、税制面でできるだけ軽減措置が図れるようにするという二つのやり方で従来も進めておりますし、今後ともそういうことで取り組んでまいりたいというふうに思っておるところでございます。
  117. 勝木健司

    ○勝木健司君 例えば税制ではどういう面を今やられていますか、具体的に。
  118. 川村恒明

    政府委員(川村恒明君) 税制面での対応ということでございますけれども、私ども現在関係当局にお願いをし進めておりますのは、特にこういう教育費の負担の重い中高年齢層、そういう人に対する所得税の負担の軽減ということでございます。このことはさきの臨教審の答申でも再三取り上げておりまして、できるだけそういう所得税負担の軽減を図るべきだという答申もいただいております。そんなことでお願いをし、昨年の百九国会で所得税法の一部改正が行われまして、中堅所得者層に対する所得税負担の軽減が図られておるということでございます。さらに現在政府税調その他におきまして税制の抜本的な改革ということも御審議をいただいているわけでございますけれども、そういう中でできるだけ中高年齢層、そういう教育費負担の重い層に対する所得税の軽減が図られるということを期待しているわけでございます。
  119. 勝木健司

    ○勝木健司君 臨教審は、学校教育に関する費用の適度の上昇というものは教育の機会均等の確保という観点から問題である、負担軽減を図るべきであるという提言をいたしております。また昨年の日米教育協力研究の両国の報告の中でも、米国側は、受験勉強に費用がかけられたエリートの子供が超有名大学に入る、このことはゆゆしき問題であるというふうに報告、問題提起されております。家庭の経済状態が子供の進路を大きく左右することがないように、教育費の負担軽減のための具体的な施策というものをお示しを願えたらと思いますが、いかがですか。
  120. 川村恒明

    政府委員(川村恒明君) 先生指摘のとおりでございまして、できるだけその負担の軽減を図らなければならない。そこで、具体的にどういう取り組みをすべきかという御指摘でございますけれども、ただいまも申し上げましたように、一方で歳出面での施策、育英奨学事業の充実、私学助成の充実というふうなものをさらに引き続き進めてまいりたい。それからもう一つは、そういう税制上の措置として所得税の軽減を図っていただきたい、こういうことでございます。  ちなみに、昨年の秋に成立しました所得税法の一部改正でその軽減の第一歩が進められた。例えて申しますと、これはモデル的にその平年度ベースに換算した場合でございますけれども、仮えば年収八百万の収入があって夫婦で子供二人がいるという家庭の場合にどうなるか、所得税と住民税がどの程度軽減されたかということでございますけれども、改正前でございますと概算所得税と住民税合わせて百二十万円ぐらいでございましたが、改正後ではこれが百四万ということでございまして、十六万三千円程度の軽減が図られておる。率にいたしますと一三・六%の軽減というようなことで昨年の秋の制度の改正を見たということでございます。先ほど申し上げましたように、現在そういう抜本的な改革ということもございますので、さらにこの方向が進められることを期待をし、またそういうことで関係方面にお願いしている、こういう状況でございます。
  121. 勝木健司

    ○勝木健司君 次に、育英奨学制度ということで、先ほどもありました育英事業についてお伺いいたします。  この制度は、臨調の答申を踏まえて昭和五十九年度に奨学事業の拡大ということから有利子貸与制度を導入したところであります。そこで、まず無利子、有利子のそれぞれの予算額の推移、そして六十三年度の貸与人員、貸与額等について御説明願いたいと思います。
  122. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 御質問にございましたように、日本育英会の育英奨学事業につきましては、昭和五十九年度以降かなり抜本的な改革を行ったわけでございます。一つは、先生のお話にございました従来からの無利子貸与事業に加えまして新しく有利子貸与事業ということを実施して対象の拡大を図ったということでございます。もう一つは、貸与月額につきまして相当額の引き上げをこのときに行っておるわけでございます。  そういうことでございますので、五十九年度以降の予算額を無利子、有利子効に申し上げますと、無利子貸与の場合には、昭和五十九年度一千百十九億円、六十年度一千百二十八億円、六十一年度一千百三十九億円、六十二年度一千百八十一億円、六十三年度は一千二百三十二億円ということで漸増という状況になっております。また、有利子貸与の場合には、昭和五十九年度は六十五億円、六十年度百五十一億円、六十一年度二百二十九億円、六十二年度三百十四億円、そして六十三年度は三百三十一億円となっております。これは有利子貸与事業を学年進行的にふやしたということがございますので、四年間はかなりの額で伸びたわけでございますが、六十二年度でおおむね学年進行が完成いたしましたので、六十三年度の伸びは漸増という程度になっております。  そこで、昭和六十三年度の全体の姿でございますけれども、貸与を受けております学生の数が総数で四十四万人、そして奨学生に対する貸与事業の事業費の総額が一千五百六十三億円というところまで到達をしておるわけでございます。
  123. 勝木健司

    ○勝木健司君 有利子貸与制度が発足したときは、有利子貸与の希望者が少ないのではないかというふうに言われておりましたけれども、申し込み状況の推移というものをお伺いしたいところで あります。また、この有利子貸与を受けた者が返還を開始した場合に、年間の返還金というものはどの程度のものになるのか、モデルケースで御説明願いたいというふうに思います。
  124. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 有利子貸与の申し込みの状況でございますけれども昭和六十二年度、今年度の状況で申し上げますと、採用予定数二万人に対しまして応募者が五万五千人ということで、かなりの方が希望しておられるという状況が出ております。  また、この有利子貸与を受けた者のその後の返還でございますけれども、モデルケースで考えますと、国公立大学で自宅から通っているということで有利子貸与を受けた方の場合には、毎年の返還額が十万円、月額にいたしますと一万円弱ということになろうかと思いますが、それで十三年間という返還になります。それから、一番高額のケースは私立大学の自宅外ということで貸与を受けた方々でございますけれども、毎年の返還額が十七万円、十五年間で返還をするという形になるわけでございます。
  125. 勝木健司

    ○勝木健司君 これも五十九年の衆参両院の文教委員会におきまして、「育英奨学事業は、無利子貸与制度を根幹としてその充実、改善に努めるとともに、有利子貸与制度は、その補完措置とし、財政が好転した場合には廃止等を含めて検討すること。」となっておりますし、「また有利子貸与の利率は、将来にわたって引き上げることなく、長期低利を維持し、奨学生の返還金の負担軽減に努めること。」という附帯決議が付されております。  そこでお尋ねいたしますけれども、無利子と有利子との貸与人員の割合がどの程度までなら有利子貸与は補完的と見ておられるのか、御説明願いたいと思います。
  126. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) ただいま手元に十分な資料を持っておりませんので恐縮でございますが、現在無利子の方七万五千対有利子二万五千というぐらいの比率のようでございます。大体現在程度のところが根幹という状況にはふさわしいのではないか、こう考えておる次第でございます。
  127. 勝木健司

    ○勝木健司君 有利子貸与の財源であります財投金利、これは制度発足時に七・一%であったわけでありますけれども、現在五・〇%に引き下げられております。したがいまして、附帯決議の「長期低利を維持」するために、上限を三%としながら、財投金利の低下に見合った分だけの有利子貸与の金利というものを引き下げるべきではないかというふうに思いますけれども文部省のお考えをお聞きしたいというふうに思います。
  128. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) この有利子貸与の場合の金利でございますけれども、御質問にもございましたように、財投金利とそれから育英会において定めております貸付利率は、これは三%としておるわけでございますけれども、その差額については利子補給をする、こういう仕組みで今日まで至っておるわけでございます。財投金利の変化によってこの三%という利率をどうするかという問題は確かに御指摘のとおりあるわけでございますけれども、財投金利が現在下がっておるときでございますからあれでございますが、財投金利が上がってきた場合にそれでは三%を上げるのかというような問題等もあり得るかと思います。そういう意味から、この三%という部分については、これについてはある程度固定的に考えた方がいいのではないかと、こう思っておるわけでございます。  なお、私立大学の医学部、歯学部の関係につきましては、さらに増額貸与という仕組みがあるわけでございまして、こちらの貸付利率につきましては財投金利を勘案した金利を定めておるわけでございますが、昭和六十三年度の入学者につきましては、財投金利の低下を考慮いたしまして、従来六・五%の金利であったものを五・八%に引き下げるというようなことを行っておりますので、こちらの方につきましては、そういった財投金利との関係を考えながら御指摘のような対応を今後とも検討したいと、こう思っておる次第でございます。
  129. 勝木健司

    ○勝木健司君 次に、貸与額についてお伺いいたします。  貸与額というものは年々拡充されてはきておりますけれども文部省が臨教審に提出いたしました学生生活費と奨学金の推移、この資料を見てみますと、昭和三十五年度以降年々学生の生活費に占める奨学金の割合というものが低下していることがわかります。このことは授業料や生活費等の高騰に奨学金が追いついていないということではないかというふうに思われます。文部省はこの実態をどのように見ておられるのか、また貸与額の拡充策についてどのように考えておられるのか、お伺いいたします。
  130. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 奨学金の貸与月額につきましては、できるだけ学生の生活関係の経費あるいは学習関係の経費等を見ながら、適切な額を定めたいと例年努力をしてきておるところでございますが、財政事情等もいろいろ絡みまして、必ずしも十分とは言えない状況であろうかと思っております。昭和五十九年度に改革をいたしましたときにはかなりの、一番大きく上げたケースで申しますと、私立大学の学生の場合には二万七千円であったものが最高自宅外四万一千円というところまで金額を引き上げたというような、かなり大幅な改定を行ったわけでございます。そしてまた六十二年度、今年度でございますけれども大学では四千円、博士課程の場合には五千円というような貸与月額の増額を行っております。昭和六十三年度につきましては、貸与人員の増加を、約二千九百人増員ということを行ったこと等もございまして、この引き上げに至っておらないわけでございますけれども、今後とも諸般の状況を十分考慮しながらこの育英奨学制度充実に努めたいと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  131. 勝木健司

    ○勝木健司君 日本育英会の奨学金には災害家計急変等による特別採用枠があるというふうにお聞きしておりますけれども、この制度の概略を御説明願いたいと思います。同時にあわせて、この特別採用枠には特別推薦制度が適用されておりますけれども、その運用基準というものはどのようになっておるのか。またこの基準からも、有利子貸与の基準からも外れたような子弟の場合には、育英奨学の道を閉ざされるということになるのか、お伺いいたしたいと思います。
  132. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 育英会の奨学生の採用基準でございますけれども、これにつきましては、一つは家計基準、もう一つは学力基準、こういうことで対応をしておるわけでございます。通常の場合でございますと前の学校、高等学校なり中学校なりの在学中の成績が成績基準としては三・五以上というようなところ、それから家計基準につきましては年々改定をいたしておりまして、例えば、国公立大学の場合には昭和六十三年度は四人家族の標準的なケースで六百八十七万円以下、私学の場合には七百二十二万円以下というような水準を定めて、要すれば家計基準とそれから学力基準の両方について合致したケースについて奨学生として採用する、こういう仕組みをとっておるわけでございますが、先ほど先生のお話にございましたのは、恐らく各種の災害でございますとか、あるいはその他病気等の事由でもって突然家計の主な負担者であるお父さんあるいはお母さんが亡くなられたというようなケースについてのお話かと思いますけれども、そういったケースにつきましては、学力基準につきまして三・五以上というものについて三・二以上というところまで緩和をして、そういった家庭の状態の急変によって実力が落ちたけれども将来伸びる見込みがあるというケースの者については、これを救済すると申しますか、奨学生として採用できるような道を開くように現在いたしておるところでございます。
  133. 勝木健司

    ○勝木健司君 政府は今、災害遺児育英制度の実現に向けて努力をしておられるというふうに聞いておりますけれども、文部大臣は育英制度創設についてどうお考えなのか、御所見をお伺いしたいと思います。
  134. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 育英制度について今政府委員からお答えしたとおりでございます。また、災害遺児につきまして熱心な御要望があることも承知をいたしております。ただ、災害の範囲の特定に非常に困難がございまして、いろいろな、例えば離別によるもの、あるいは病死によるもの、それによって家計支持者がなくなった、それで進学が困難だという御家庭もあるわけでありますので、その辺の整合性、調整をどういたすかということにつきましても心を痛めてまいりました。この辺は各省庁にわたるものでございますから各省庁と話し合いをいたしてまいったわけでございますけれども、その後、各党首会談の中でそのお話も出まして、総理としては内政審議室でこれを取り扱うということで、目下調整を急いでいただいておるところでございます。  そこで、文部省としては、文部省所管の中でどのような方法があるか、これは別途今調整を急いでおりますけれども、総体的には内政審議室で取りまとめを急いでいただいているところでございまして、御要望の筋はよく承知をいたしながら、まとめを急いでおります。
  135. 勝木健司

    ○勝木健司君 次に、貧困家庭に対する就学援助の拡充についてお伺いしたいと思います。  急激な円高、また技術革新の進展、産業構造の変革など社会経済環境の変化によりまして炭鉱、鉱山は閉山し、中小企業は経営の悪化や倒産に追い込まれておる現状であります。このような状況の中で、子供を抱えた貧困の家庭というものがふえておるように思われます。現在、このような家庭に対しましてどのような就学援助を行っているのか、御説明を願いたいというふうに思います。また、この制度予算の推移と、援助を行っている費目と単価、援助を受けている保護者の推移につきましてあわせて御説明願いたいというふうに思います。
  136. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) ただいま担当政府委員が参っておりませんので、至急連絡をとらせていただきたいと思います。
  137. 勝木健司

    ○勝木健司君 厚生省所管の生活保護法によります教育扶助、文部省所管の要保護、準要保護児童生徒援助というものがありますが、現在義務教育へ就学する者にだけ行われております。高等学校進学率は九五%となっている今日、義務教育段階だけの就学援助というものは、貧困家庭の子供というものは進学をするなと言っているようなものではないかというふうに思います。希望した子供には安心して進学できるように国としてももっと援助を拡充していくべきだと思いますが、文部大臣の御所見をお伺いいたします。
  138. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 御趣旨はそのとおりだと思います。よく検討し、勉強してみたいと思います。
  139. 勝木健司

    ○勝木健司君 貧困に陥った家庭に対する就学援助は、各省ばらばらに行うというものではなく、一元化して、育英奨学も含めた新しい就学援助制度の確立というものが望まれるというふうに思います。ただいま文部大臣からの御所見をお伺いしましたけれども、今後どのように対処していかれるのかお伺いしたいと思います。
  140. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) この種の業務は大変各省、御指摘にございましたように、労働省、厚生省、その他いろいろなところと絡み合う問題でもございますので、関係各省とも十分連絡をとりながら、検討さしていただきたいと存じます。
  141. 勝木健司

    ○勝木健司君 それでは、順番を変えまして、外務省また運輸省の方、来ておられますから、進めさせていただきます。高知学芸高校の修学旅行事故に関してでありまして、質問をいたしたいと思います。  まず、事故によって亡くなられました先生、生徒の皆様方に対して心から哀悼の意を表しますとともに、負傷者の方々の一日も早い回復を祈るものであります。さて、海外への修学旅行というものは異なる文化に触れる経験を持つということで、児童生徒に与える上では大きな意義があるように思います。何分外国であり、今回のように思わぬ事件、事故に遭遇しないとも限りません。現在、外国へ修学旅行に出ている学校、生徒の数はどのくらいあるのかお伺いいたしたいと思います。
  142. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 御指摘の、外国への修学旅行の状況でございますが、高等学校につきまして、公立学校では八校、これは公立では少のうございます、約千七百人。それから、私立の高等学校では百二十六校、二万七千人でございます。合計いたしますと、学校数にして百三十四校、約二万九千人の生徒が海外へ修学旅行として出かけている、こういう実情でございます。
  143. 勝木健司

    ○勝木健司君 海外へ修学旅行に行き、今回のように、万が一事件、事故に巻き込まれました場合の連絡体制というものはどうなっておるかお伺いしたいと思います。今回の事故でも、情報のおくれというものが父兄に不安と焦りを与えたというふうに思います。連絡体制の強化が必要だと思いますけれども、お伺いいたしたいと思います。
  144. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) せっかくの御指摘でございます。まず、高知学芸高校の今回の事故につきましては、大変痛ましい、悲しい出来事であったと、まず私からも亡くなられました方々の御冥福をお祈り申し上げ、また負傷されました方々の一日も早い御全快をお祈りを申し上げる次第でございます。  去る二十四日、事故の第一報が入りました直後に、文部省といたしましては、海外での事故でございましたので、外務省さんに協力方御連絡を申し上げました。また、向こうからの緊急に帰られる便あるいはこちらから緊急に向こうへ渡られる便、その点につきまして運輸省さんにも御連絡をいたしまして、ともどもに全面的な御協力を得るという体制をとりました。翌朝がちょうど閣議の日でございましたので、全閣僚に御協力をお願いし、特に総理からも、文部、運輸、外務、この三省は特に連絡を緊密にしてこの事後処理に当たるようにという御指示がございまして、文部省としては審議官を直ちに上海に、そして企画官外一名を高知学芸高校に派遣をいたしまして、現地とそれから学校、並びに父兄、関係者の御要望、それから政府の対策、この三位一体の連絡が緊密にとれるようにということに直ちに万全の手配をいたしたつもりでございます。  私もその後、高知へ参りまして、お見舞い並びに御冥福をお祈りを申し上げ、そのときたまたま在日中国大使の章曙大使とお会いをいたす機会がございましたので、章曙大使に対しましても事後処理その他に対する御要望を申し上げ、章曙大使から、承った御要望は直ちに本国に連絡をするというお答えもいただいて、今日に至っておるわけでございます。  細かくは各省からお答えをいたさせます。
  145. 田辺敏明

    説明員(田辺敏明君) 今回の事故につきましては、私からも改めて亡くなられた皆様方に対して哀悼の意を表したいと思います。  外務省といたしましても、先ほど文部大臣もお話ございましたように、外務、文部、それから運輸省と協力してこれに取り組んできたつもりでございます。外務省に関して申し上げますと、事故が起きた後、直ちに領事移住部長、黒河内でございますが、を団長とする対策本部を外務省のオペレーションルームに設けました。上海には上海総領事館がございますが、そこでは吉田総領事をキャップにします現地対策本部を設ける。そして、その翌日ですが、もう新聞等で御存じのとおり、浜田政務次官に現地に行っていただきまして陣頭指揮をとっていただいて今まで対処してきたということでございます。  今まで、事故に遭われた御遺体、御遺骨、もう日本に帰国したわけでございますが、今の時点でまだ今の時点でといいますと若干あれかもしれませんが、けさの時点ですとまだ八名の方が残っております。そのうち一名はその後飛行機で今ちょうど日本に向かっている最中でございまして、残りの三名の人もきょうの夕方までに飛行機に乗るというふうな手配になっております。したがいまして、それが終わりますと四名の方が残っておるわけでございますけれども、この四名の方につ きましても、関係者、特に御家族の御要望等を踏まえまして、四月二日までに日本に帰国できるようにいろいろと手配をしていると、こういうことでございます。
  146. 勝木健司

    ○勝木健司君 ありがとうございました。御苦労さんです。  海外で修学旅行生や先生方が事故で負傷したりあるいは急病になった場合、言葉や文化の壁などで治療面に不安があるということは大いにあるんじゃないかというふうに思われます。また、現在海外にいる在留邦人の間でも、子弟の教育とともに健康、医療に対する不安というものが強いようであります。緊急の場合の医療行為に支障がないように外務医務官の充実を図るとともに、修学旅行をセットしております旅行社の添乗員に医療知識を持つ者を含ませるようにするとか、あるいは学校の保健担当者と外務医務官との連絡体制を確立しておくというようなことが必要じゃないかというふうに思われます。これについての御意見をお伺いいたしたいと思います。
  147. 田辺敏明

    説明員(田辺敏明君) 先生指摘のとおり、確かに在外におりますと、我々外務省員でありましても、おなかがしくしく痛いとかちくちくするとか、これを英語で的確に言ってみろというと、なかなか難しいわけでございます。そういうふうなことでございますので、一般の方々が初めて違う外国に行かれたというふうなことになりますと、いろいろ御苦労も多いと思います。外務省といたしましても、できるだけそういうふうなことで手当てができますように、第一義的には在外にいる外務省員を対象にするわけでございますけれども、医務官制度というのを設けております。これについてももっと人数をふやしたいというようなことをいろいろ努力している最中でございます。と同時に、特に開発途上地域におきましては、年に十数回、十二、三回だと思いましたけれども、巡回医師団というのを派遣しまして皆さん方の健康相談等に当らせているということでございます。  なお、今回の上海の列車事故につきましては、現地に、北京におります日本大使館の医務官をもちろん派遣しましたし、それから国内の関係機関の御協力も得て、日本からも何名かの先生に行っていただいて、中国側の医者と協力して万全の手当てができるようにやってきたつもりでございます。今後ともそういうふうな形で努力していきたいと、こう考えております。
  148. 勝木健司

    ○勝木健司君 修学旅行に出まして海外で事件、事故に巻き込まれた場合、補償の問題などが難しい問題になってくるかと思われますが、補償や保険などにつきまして現在どうなっておりますか。また、今後どのように対処していくつもりなのか、お伺いをいたしたいと思います。
  149. 田辺敏明

    説明員(田辺敏明君) 外国におきます特に交通関係の事故の場合、補償問題が当然出てくるわけでございます。基本的な考え方といいますか、それは今回の例に例えて申し上げれば、御遺族を初めとするその関係者の方々と中国側との間で話をするというのが基本でございますけれども、外務省としても当然のこととしてかかる当事者間の話し合いが円滑に進められるようにできるだけの協力はしていく、こういう姿勢で対処したい、こう考えております。
  150. 高野富夫

    説明員(高野富夫君) お答えいたします。  旅行者の皆さんが旅行業者を介しまして旅行される場合でございますが、旅行業者は運送機関などと旅行者との間に立ちまして、当事者の一方のためにいわゆる手配をしている形になっております。したがいまして、運送などのサービスに関する事故が発生した場合につきましては、その損害賠償責任は旅行業者の故意、過失による場合は別といたしまして、運送機関等が責任を負うということになっております。このことは旅行業者の約款において明示をされておるところでございます。
  151. 國分正明

    政府委員(國分正明君) 我が国の補償の仕組みをただいまの御質問に関連してお答え申し上げたいと思いますが、現在御案内の日本体育・学校健康センターというのが児童生徒の学校管理下における災害補償を行っているわけでございますが、これは修学旅行中ということであれば当然教育活動の一環として行われているわけでございますので、国内における場合も国外における場合も同様に災害共済給付の対象になるというふうに考えております。今回発生しました事故に関連して申し上げますと、高知学芸高校と日本体育・学校健康センターとの間で災害共済給付にかかわります契約を結んでおりますので、例えば死亡見舞金あるいは医療費の給付というようなことが行われる、このような仕組みになっておるわけでございます。
  152. 勝木健司

    ○勝木健司君 海外で今回のように日本人を含む大事故が起こった場合の緊急救援体制として、例えば政府専用機を活用するとか、あるいは救援のための船舶の派遣などを考えておくべきだというふうに思いますけれども、いかがでありましょうか。また、このような大事故が発生した場合の大使館また領事官というものは、連絡や対応に忙殺されることと思われます。大使館に日本人旅行者や在留邦人の指導に当たるいわば危機管理の専門官を置く必要はないのか、あわせてお伺いいたしたいと思います。
  153. 田辺敏明

    説明員(田辺敏明君) 海外におきます、特に緊急事態の場合に政府救援機云々というふうな話はいろいろ今までも出てきたわけでございまして、今般外貨関連のあれで政府専用機を購入したわけでございますが、その使用目的等については今目下具体的な運用のあり方等について検討している最中でございます。  もう一つ先生の御指摘の特に在外における邦人の方たちの保護というふうな点につきましては、従来から在外公館におきましては、大使館の中においても総領事ないし領事というのがおりますし、さらにそれに加えて、昨今では特に治安関係のことも含めまして警護官というのも配置しております。こういうふうな人たちがさらに政治情勢を担当する政務担当官などと協力して、できるだけ事前にいろいろな情報を集め、緊急事態が発生した場合には邦人の方々の面倒を見れるようにできるだけの努力はやってきているつもりでございます。今後とも、もちろんこれで十分というわけではございません。我々としても、外務省も定員増でいろいろお願いしているわけでございますけれども、そういうふうな形でもっと多くの人をつけていただき、先生が今御指摘になったような御要望に応じられるようにさらに努力していきたい、こう考えております。
  154. 勝木健司

    ○勝木健司君 海外での事件、事故あるいは国際紛争やテロなど、邦人の生命にかかわる事態に敏速に対処するためには、今回の場合はたまたま閣議があったということで、文部省、運輸省、外務省連係プレーがよかったというふうに思いますけれども、そういう場合に備えて、政府部内に必要な情報収集、連絡等に当たる部局というものを新たに設置する必要はないのか、お伺いしたいというふうに思います。
  155. 田辺敏明

    説明員(田辺敏明君) 一般的な形での海外での治安情勢あるいは政治情勢等々、特に日本の在外における邦人の方々に関連するものにつきましては、外務省の中に海外安全相談センターというのを設けております。これにつきましては、去年の九月に海外移住審議会、これは前総理からの諮問でございましたが、その諮問に対して安全対策という形で答申を出しまして、その中でも海外安全相談センターというものをもっと強化するというふうなことをうたっておりまして、六十三年度予算では定員も何名か認めていただいたというふうなことになっております。  我々としましては、在外から入ってくるもろもろの情報をここに集中して、海外に旅行に行かれる方あるいは商用で出かけられる方等々が事前に十分な知識を持って行かれるようにしたいというふうに配慮しております。さらに、昨今は情報化の時代でございますので、コンピューターを使って、端末機で簡単に引き出せるような、そういうネットワークを設けまして、情報の提供ができる ような形で努力している最中でございます。  なお、こういう場で言っていいのかわかりませんですけれども、外務省の方としましては、こういう「海外安全ハンドブック」というのをつくっておりまして、ここで基本的な状況あるいは特に在外に行った場合に気をつけるべきようなところ、緊急連絡先等を網羅したような本を出しておりまして、これも毎年拡充強化していきたい、こう考えております。
  156. 勝木健司

    ○勝木健司君 海外への修学旅行というものが盛んになるということは決して悪いことではないというふうに思います。むしろいいことだというふうに思いますが、例えば日本国内でも北海道など経済の地盤沈下が著しく、またしかも美しい大自然が残っているようなところへは修学旅行や研修旅行を計画してもらえばいいんじゃないかということで、我が党の委員長も衆議院の本会議質問で述べておりますけれども、北海道経済の浮揚も含めて一石二鳥あるいは三鳥の策になるというふうに思われます。文部省が今計画をしておられます自然学校などを多数設置をして、都会の児童生徒を受け入れるようなお考えはないのか、お伺いしたいと思います。
  157. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 御指摘のとおり、修学旅行につきましては異なる環境、新しいいろいろな見聞という意味で有意義なところでございまして、その旅行先につきましては、それぞれの設置者あるいは学校の判断で児童生徒の発達段階に応じて選定をするということでございます。  この問題につきましては、それぞれの生徒の発達段階なりあるいは所要経費の問題等がかかわりますので、私どもが特定地域の方向性を示すということは差し控えておるわけでございますが、先生指摘のように、日本全国的に見れば豊かな自然のある場所が多々あるわけでございますので、それぞれの設置者における適切な修学旅行先の選定につきましては、一般論といたしまして十分指導してまいりたいというふうに思っておりますし、それからお話にございました自然教室の拡充につきましては、文部省の補助予算を毎年厳しい中ではございますが増額をいたしておるところでございます。この自然教室の奨励につきましては、なお今後とも私ども努力をしてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  158. 勝木健司

    ○勝木健司君 加戸局長がおられるということでありますから、先ほどの就学援助の拡充についてお伺いしたいと思います。
  159. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) 就学援助の関係でございますが、具体的な経費といたしましては、例えば学用品費、新入学の児童生徒の学用品費、通学用品費といった物品に対する補助、通学費に対する補助、修学旅行費、校外活動費、さらに学校給食費、それから医療費と、これだけの費目につきまして、要保護、準要保護の児童生徒に対します援助費の市町村からの補助に対します二分の一の補助を文部省で行っております。六十三年度予算額が百九十一億九千八百万円でございます。  それから、先ほどのお尋ねで、義務教育段階だけではなくて、高等学校段階についての検討の御発言ございましたが、御承知のように、小中学校の児童生徒は義務教育の対象となっておるわけでございます。そういった観点から各般の施策が講じられておるわけでございますが、高等学校の場合は義務教育でないということ、それから確かに九四%の就学はいたしておりますけれども、貧困家庭であるがゆえに働いていらっしゃる方、そういった方とのバランスの問題等も一つ問題点としてはございます。しかしながら、例えば育英奨学等の経費、奨学金の貸与を受ける方法ございますし、現在のところは制度としてこのような形で進んでいるということでございます。
  160. 勝木健司

    ○勝木健司君 今、六十三年度予算をお聞きしましたけれども、この制度予算の推移ということで、ここ最近の予算はどういうふうになっているのか、お聞きしたいと思います。
  161. 加戸守行

    政府委員(加戸守行君) 内容的な関係は変わっていないわけでございますが、御承知のように、義務教育段階の児童生徒は年々減少いたしました関係上、予算額もそれにスライドする形で減少いたしております。
  162. 勝木健司

    ○勝木健司君 余り時間もありませんので、スポーツの振興等についてお伺いしたいというふうに思います。  高齢化社会におきましては、一番大事なことはやっぱり健やかに老いるということでないかというふうに思います。生涯を健康で明るく生きていくことが要請されているわけですが、そこで国民一人一人の体力、能力に応じて安全で、しかも科学的な指導方法を確立し、これらの知識や体験を身につけた指導者の養成というものがまずソフト面での整備として必要だというふうに思われます。文部省のお考えをお伺いしたいと思います。また、文部省の機構見直しの中で、体育局に生涯スポーツ課の設置が予定されておりますが、設置理由と役割等についてあわせてお伺いいたしたいと思います。
  163. 國分正明

    政府委員(國分正明君) 御指摘のとおり、国民の間でスポーツに対する関心が非常に高まっておりまして、スポーツに親しむ人たちも中高年齢者あるいは御婦人というふうに幅広くなり、また行うスポーツも多様なものになってきているということでございます。やはりその場合に指導者ということが大事でございますので、私どもも従来からいろいろな指導者の養成あるいは確保策を講じてきたわけでございますが、昨年の一月に、例えば野球であるとかサッカーであるとかバレーであるとか、競技種目別に指導者の資格養成制度というものを発足させました。これによって質の高いスポーツ指導者の養成に努めているところでございます。また、これからスポーツをしようという場合に何をやっていいかわからないということもあるわけでございますので、そういう人たちに対して年齢、体力、健康状態あるいは好みというものに合わせてスポーツプログラムを提供できる、そういう指導者の養成について先般保健体育審議会から御答申をいただいておりますので、その制度化に現在準備している、こういうことでございます。  それから二点目の機構改革の問題でございますが、生涯スポーツにつきましては、ただいま申し上げましたように、国民の多様なニーズがございまして、行政需要としても大変ふえておりますし、また今後さらに積極的に進めていく必要があるだろう。また、競技スポーツの分野につきましても、競技力の向上に対する国民の期待というものも大きいわけでございますので、従来、生涯スポーツあるいは競技スポーツ両面にわたりまして体育局のスポーツ課というところが担当しておったわけでございますが、よりこういう情勢に対応し、それぞれの内容の振興を図るために、これを改組分離いたしまして、生涯スポーツ課と競技スポーツ課に分けて、一層スポーツ行政の充実を図ってまいりたい、こういう考え方に基づくものでございます。
  164. 勝木健司

    ○勝木健司君 次に、今日におきます余暇時間の増大、そしてまた高齢化社会の進行というさまざまな文化、スポーツ活動への国民の参加志向を高めておるように思います。余暇時間あるいは高齢化の進行に伴いましてそういう志向というものが高まっておるように思います。  そこで、高齢化社会を迎えてスポーツを楽しむ人々というものがふえておるわけでありますけれども昭和六十一年の十一月に文部省の保健体育審議会は、「社会体育指導者の資格付与制度について」なる建議というものを行い、文部省も社会体育の充実に向かって努力されておるようでありますけれども、六十二年の四月から指導者の育成事業がスタートするかと思っておりましたけれども、この六十三年三月現在時点でもどうもはっきりいたしません。どのような状況になっておりますか。また、民間の団体が行っております技能審査を文部省が認定する方式をとるというふうにも聞いておりますけれども、うまくいっているのかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  165. 國分正明

    政府委員(國分正明君) 御指摘のとおり、昨年にこの制度を発足させたわけでございますが、具 体的にこういう指導者養成事業を行いますのはそれぞれのスポーツ団体でございます。例えて申しますと、バレーボールであればバレーボール協会、サッカーであればサッカー協会という、主として体育協会に加盟している団体でございますけれども、それらにつきまして各団体でこの制度発足後種々検討がなされておりまして、この六十三年度、四月からも発足させたいということで、先般も体育協会内部で関係団体とともに議論したようでございますが、まだ若干いろいろな検討する点があるということになっております。しかし、本年度の初めにはこの具体の実施に取り組みたいということで関係団体が順次準備を進めておる、こういう段階でございます。
  166. 勝木健司

    ○勝木健司君 昨年十二月にも同じく保健体育審議会は建議を行い、スポーツプログラマーの養成というものを打ち出しておりますけれども、この新しい職種について御説明を願いたいと思います。  また一方、厚生省も、健康運動指導士なる社会体育スポーツ指導員の認定制度を六十三年度からスタートさせると言っておりますが、これは何を指導する指導者か、お伺いいたしたいと思います。時間の関係で、文部省のスポーツプログラマーと厚生省の健康運動指導士の職務内容にはかなり重なりがあるんじゃないかというふうに思われますけれども、両者間での調整が行われたのか。また、国民の体育スポーツ振興の観点に立ちまして整理し直してはどうかというふうに思いますけれども、お伺いしたいと思います。
  167. 國分正明

    政府委員(國分正明君) スポーツプログラマーにつきましては、先ほどもちょっと触れたところでございますが、これから運動しようという人たちに、その年齢、体力、健康状態あるいは嗜好等に応じまして、どういうスポーツをやったらいいかというスポーツの相談に応じ、あるいはプログラムを提供する、そして現実にまた実技の指導も行う、こういう指導者を養成しようということでございます。厚生省の方は後ほど御答弁があろうかと思いますが、私どもは、主としてそういう地域スポーツの振興という観点からの指導者の養成でございまして、伺うところによりますと、厚生省の方は健康水準の維持増進という、健康という観点からのものというふうに承っているところでございます。その目的、内容等もそれぞれ異なり、活動範囲、指導対象等も異なると思われるわけでございますが、今後運用を経まして、必要があれば厚生省といろいろなお話し合いをしてまいりたい、こんなふうに考えております。
  168. 松田朗

    説明員(松田朗君) 健康運動指導士についてお答え申し上げます。  御承知のように、現在においては一般に運動不足の状態にございまして、個々の日常生活におきましては運動習慣を普及させるということが非常に重要な課題になっております。したがいまして、そのためには健康づくりのための運動を的確に指導できる人の養成が必要だということでございまして、そのために厚生省ではことしの一月に「健康づくりのための運動指導者の知識及び技能の審査・証明事業の認定に関する規程」、こういう告示を出しまして、これに基づきまして健康運動指導士という審査証明事業を認定したところでございます。この健康運動指導士は、呼吸あるいは循環器系の生理機能、この機能を向上する、あるいはその維持向上を図ることによりまして成人病である心臓病だとか高血圧など、こういう疾病の予防に資する、あるいは現在の健康水準をさらに向上させる、あるいは保持する、こういう観点から主として医学的な知識あるいは運動生理学的な知識に基づきまして個人個人の身体状況に応じた運動プログラムを提供する、こういう役割を担っているものでございます。  したがいまして、先ほども文部省さんの方から御説明がございましたが、私どもの方のこの健康運動指導士というのは健康水準の保持、増進を図るためということでございまして、本質的に競技種目に関して運動の指導だとかあるいはスポーツの導入的な指導を行うという文部省さんのこの制度とは異なっているということだと思います。  以上でございます。
  169. 勝木健司

    ○勝木健司君 最後になりましたけれども、けさのサンケイ新聞の朝刊にも載っておりましたけれども、総理大臣の私的諮問機関のスポーツの振興に関する懇談会の報告書の最終原案が新聞で紹介されております。五輪メダリストへの功労金の交付、総合トレーニングセンター等の施設整備、スポーツ省の設置など、やや遅きに過ぎるがかなり思い切った改革案を出す考えのようではありますけれども、スポーツ所管大臣としての中島文部大臣はどうこれを評価されておるのかお伺いして、質問を終わりたいというように思います。
  170. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) スポーツに関しましては、教育改革の中にも大綱の第一番に生涯学習というのがございます。生涯学習というのは、いつでもどこでも学び加え、同時にいつでもどこでもスポーツに親しみ楽しめるということが両方あるわけでございますので、私どもは生涯スポーツ、同時に競技スポーツ、それを両々相まって考えていくべきであろうと考えておりまして、たまたま総理大臣のもとに第一線の競技経験者の方々、それからスポーツ関係者の方々を中心に、自由な立場からの御意見をまとめていただきまして、いわゆるスポーツ振興に関する懇談会というものが持たれてまいりましたが、昨日そのまとめをいただきましたものですから、これを文部省としては正規の審議会で御審議をいただいて具体化していこう、こう思っておりまして、早急に保健体育審議会を開かしていただきまして具体的な諮問を申し上げたい、こう思っておりまして、それに従って競技スポーツ、生涯スポーツ、青少年のうちからジュニア対策と申しますか、小さいうちから資質を発見し、そしてそれに応じた指導者がおり、また医科学的にそれを分析し、そしてカリキュラムを組んでいく、こういうことでございますけれども、ある一定のオリンピックなどで大変活躍される種目がありますと、それがまた広く一般に底辺が広がりますから、両方相補い合いながら競技スポーツ、生涯スポーツが伸びますように、それを念じて努力してまいるつもりでございます。
  171. 勝木健司

    ○勝木健司君 ありがとうございました。終わります。
  172. 下村泰

    ○下村泰君 たまたま今スポーツに関係することでお話を伺おうと思いましたところが、勝木委員から既に今お話が出たようでございます。ちょっと重なるとは思いますけれども、私がちょうど戦後のあの混濁した世の中で、私はちょうどあの当時はビルマからタイ国へ行って、タイ国のナコーンナヨクというところからちょうど一年後に引き揚げてきたんですが、帰ってきて芋がゆだとか、それからグリーンピースの入った豆御飯とか、それも御飯粒のはっきりしてない、形で見れば御飯粒の形をしているんですけれども、口の中へ入るとなくなっちゃうようなまるで歯ごたえ、手ごたえ、舌ごたえのない食べ物を食べているときに、あの古橋広之進とか橋爪なんという選手が、あたかもそれこそフジヤマのトビウオという表現がぴったりするような、あの水の上を飛んで世界記録を次から次へとつくっていった。  ところが、今はもう肉でもあれば食べ物は何でもある。しかも設備はよくなっている。それでいて、国会でもしばしば問題になりますが、日の丸が国旗じゃないとか国旗だとかという話になりますけれども、私はそういうことを越えて、官費旅行とはいえ、鉄砲を担いで南方の方へ行ってきたんですけれども、やっぱり日の丸という旗はいい旗ですよ、あれは。国旗であろうとか、なかろうとかというんではなくて、自分の生まれた国のこれが旗なんだよというのが、あの南方の灼熱のごとき太陽が沈んでいくときに、ヤシの間にはたはた揺れるあの日の丸というのはいいもんです。これがましてやオリンピックとか、世界の若人が集まってスポーツの祭典をやるような場所で、一番高い柱の上にあの日の丸がすうっと揚がっていくというのはこれ実に見ていていい気持ちのものです。ところが、このごろはちっとも揚がらないん ですよ。条件がよくなっているのに何で揚がらないのか。  こういうことに関しては、それは文部省は所轄の省といったって別に文部省が体育協会のかわりをやっているわけじゃないんですから、日本体育協会というのは下にあって、そこが一生懸命やっているんでしょうけれども、どういうふうにお考えなんでしょうか。どうすりゃ一体日の丸が揚がるようになるんですか。何か非常に抽象的なんですけれども、聞いている方も実はつらいんですけれども、どうやったら揚がるのか、もしお考えがあったらちょっと言ってみてください。
  173. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 専門的にはまたお答えいたしますけれども、私どもも確かに前回ロス・オリンピックでは三十二個のメダルは取ったんですね。ただあのときは東欧圏が参加しておらないときでございますから、今度百六十一カ国参加のソウル・オリンピックを前にいたしまして、はっきり言って諸外国のスポーツの水準も大変上がっておりますし、日本の選手が、おっしゃるようにあの一番高いところに国旗を揚げる機会が幾つあるかと申しますと、非常に厳しい状況を予想せにゃならぬかもしらぬと思っております。理由は専門家から申しますが、じゃ今後対策でどのようなことに対策を持っていくのかということにつきましては、やはり私どもは四点考えておりまして、今申したように、ジュニア対策と申しまして小さいときからその資質というのはすぐ見抜けるそうだものでございますから、見抜いて、さて次にそれを根性論でたたき上げても、これは今の時勢あるいはスポーツの振興とは一致するとは限りませんでしょうから、まず指導者によき人を得なければいかぬわけでありますので、よき指導者を育成するというのが二番目であろう。それからよき指導者といえども、それにやはり今度医科学的な面で、あるいは水泳なら流体力学上の解析もありましょうし、いろいろな面で医学、科学面でそれをフォローする面がなければいかぬ。そしてその年代がだんだん成長されますし、種目によっても違いますから、その種目、年齢に応じて適切なカリキュラムをつくるようにこれをしていかなきゃいかぬだろう。  この四つを前提に、総合的にまず今になってみればソウルを目指すと、こういうことでありますが、ソウルはもう目前でありますので、さらにソウルを目指し、その後も引き続き計画的にそういうようなことが行えるように、今までの方向にさらにそういう面で対策を立てるべきだろう。今までどうしてこうなったかということはいろいろあると思うんですが、過ぎた年を数えるより先のことを考えようと、それが率直な感じで努力しておるところでございます。
  174. 下村泰

    ○下村泰君 大臣のお気持ちはよくわかりますし、言葉の内容もよくわかるんですよ。ただ我々ぐらいの年、大臣も私も同じですけれどもね、大体年格好は。やっぱり過去を振り返りたくなるんですね。例えば、あのベルリンのときの村社講平ですね。あの小さい体で三人に挟まれて前に出られなかった。あるいは前畑頑張れ前畑頑張れで、あの放送が終わった途端に、前畑が一位になって優勝したときに、あの放送を聞いていた銀座の四丁目から八丁目にかけてのラジオ屋の前、電気屋の前でカンカン帽子が吹っ飛んだっていうんですね、あの当時はカンカン帽ですから。足の踏み場もないぐらい帽子が吹っ飛んだ。ああいう感激性といいますか、そんなのにやっぱり今でもあこがれるんですよ。つまり私が言いたいのは、メダルの数だけじゃないんですね。そういう感激性なんですよ。これが今の何か私は日本には欠けているような気がするんですね。  殊に、ひとつ伺いたいんですけれども、中学校はこれは県外対抗やりませんか、すべてのスポーツで、全日本で。
  175. 國分正明

    政府委員(國分正明君) 中高校生の対外スポーツ活動といいますか、県外を越えたものについては一定の基準を設けておりますけれども、中学生の場合も原則として年に一回は全国大会というのが行われる、こういうふうになっております。
  176. 下村泰

    ○下村泰君 今までなかったでしょう、中学生は。
  177. 國分正明

    政府委員(國分正明君) 学校活動の一環として行うのは、原則として年一回というのは従来から認められております。
  178. 下村泰

    ○下村泰君 それが私に言わせると少ないんですね。もう中学生といったって大きいですよ、今の中学生は。ですから、先ほど大臣のおっしゃられたように、医学的にきちんと、何といいますか、管轄をして、まあ管轄というんですかな、何というんでしょうか、調整をするというのかな、医学的にいろいろと見て、これならばあらゆる対抗の試合やってもよろしいというような判断を下したら、私はどんどんやるべきだと思うんですがね。そうすると、その時代からもう逸材というのはすぐ目につくわけでしょう。殊に、私、少年サッカーなんか時々見るんですけれども、自分自身もサッカーでゴールキーパーやった経験がありますので見ますけれども、ああいうのを見ていると、小学校の六年生ぐらいでもって各チームができていますよね、全国的に。こういう対抗試合見ていると、ああこの子は将来物になるなとか、この子は今にすごい選手になるなというような予想がつくわけですよ。  それで、先ほどもおっしゃられましたように、すばらしいコーチや何かがだんだんいなくなる、あるいはコーチの養成にも心を砕いている。目の前にもすばらしいコーチが今こっちへ来ちゃっているから向こうも困っているだろうと思いますけれども、そういう方々の養成、それからそういう方々に対する手当て、こんなものも文部省としてはもう少し力を入れて考えてみたらいいんじゃないんでしょうか。ただ、何か好意的に指導をするとか、あるいはその人が持っている例えば何々教室とか何とかスクールとかいうところだけがやっているというんでなくて、そこに多少何かの利益にもつながるかもしれませんけれども、やはりその人の本来のお気持ちの底には好意的なものが主体でやっているんだろうと思うんですね。  ここにもアマ規定というのがいろいろ問題になりまして、六十年でございましたか、今までのアマ規定を根本的に変えるようなのが出ています。出ていますんですが、何となく割り切れないんです、これ読んでいて。警察庁が冠大会を外せとか、こういうのは私らの感覚からいくと、警察庁がつまらないあれを出して冠大会外せとかどうのこうの言うんで、いろいろと何ですか、白バイやお巡りさんも大変な御苦労だとは思いますけれども、そういったいろいろな言葉が言われていますけれども、その反面で、やれ選手に功労金を出してみたらいいじゃないかとか、あるいは年金を出してみたらいいじゃないかとかというお話もあります。  それで、今度、じゃ功労年金なんか出ている外の国のことをちょっと調べてみると、選手のうちは年金が出て、現役でなくなって引退したら年金打ち切りと、例えばソビエトがそういう傾向らしいですね。ですから、私ちょっと見たんですけれども、ある千五百メートルですか走っている女子の選手で、この方これから三千メートル目指してソウルのオリンピックに出るんだそうです。ところが、体の調子余りよくないそうです。ところが、やめると年金もらえないんだそうです。そのために駆け続けなきゃいけないというようなお国もあるそうです。ですから、果たして年金を出すべきがいいのか、出さざるがいいのか、あくまでも選手としてそのまま育ってもらえればいいのか、ここのところがさっぱり私は実はわからぬのですね。昨日も、そういったようなスポーツアマがどうのこうの、ステートアマというようなあれも出ていますけれども、大臣としてはどういうふうにお考えですか。この功労年金にしたらいいだとか、やれどうのこうのというのが出ていますけれども、どうしたら一番いいと思いますか。
  179. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) アマ規定は順次緩和されておりますけれども、しかし、それも先生おっしゃいますように、確かにまだ根本的に割り切れてないという感じがするのが実感だと思います ぬ。そして、これからいろいろな御意見があるところでございまして、そして第一線で活躍された競技選手の方々、そういう逸材をどのように社会で活躍していただくか、それは今少なくとも指導者資格付与制度ということで、そういう第一線で活躍された方を有能な指導者として、引退後のというか、現役を引かれても今度指導者、育成者として活躍していただく、その間が年金でなく実際の収入があるようにと。まあ一体、その方が本当にコーチからも指導者からもリタイヤされたとき、そのときどういうふうにまた生活を保障するのか、各段階にいろいろな意見がございまして、私自身もはっきり申しますと下村委員と同じように、これからまさにそれを取りまとめる段階で、今率直に言ってこうしたいと考えておるということははっきり申し上げられないんですが、その面もきのうごらんになりましたように、私的諮問機関でありますけれども、スポ懇の中で与えられた中に入っておるというふうに思いますので、これからその点を至急に取りまとめをしてまいりたい、こう思っております。今同じくらいのところで本当に取りまとまった考えがございませんで申しわけないんですが。
  180. 下村泰

    ○下村泰君 たしか古代オリンピックが途絶えてしまったのも、やはり一位に対する賞金がだんだんふえていったために、むしろ選手が堕落してしまって、それで賞金目当ての方に傾注するようになって、スポーツなんかどうでもいいというような感覚になって、そのために古代オリンピックはなくなったというような説もあります。  それから、この間のボストンマラソンなんですけれども、ボストンマラソンで、あるランナーはこういうことを言っているんですね。賞金が例えば解禁されても金のために走るのではない、でも走った後で金をくれるというなら拒む理由はない、お金はないよりあった方がいいに決まっていると、こういうふうに言っている。そうかと思うと、途中で棄権しようと思ったが賞金のことを考えて走り続けたと。これ情ないことに日本人なんですよ、この言っているのは。賞金のために走り続けたと。これは日本人のランナー。こういうのもいる。  そうしますと、この間も、そこに小野委員もいらっしゃるんだけれども、いろいろ話をしてみたんだが、果たしてこういうことを、要するにマネー攻勢をとっていいものなのか悪いものなのか、さっぱり私自身わからないんです。ですから、昨日あれだけのあれが出ておりますけれども文部省としてはよほどこれ指導者側の立場として人間性のなくならないような結果になるようにひとつまとめていただきたいと思います。お願いしておきます。  それから、同じスポーツなんですけれども、今高校野球が花盛りです。高校野球の花盛りは結構なんですが、時々学校の中で不祥事件が起きる。そうすると不祥事件が起きたために野球部に何ら関係のない人間が不祥事件を起こしても、何ですか出場を辞退する。あるいは高野連の方の裁定でもって一年間は対外試合をしてはいけないとか、いろいろな規定があるんです。あれはいつごろできて、大体いつごろからまたそうなったんですか、私もよくわからないんです。
  181. 國分正明

    政府委員(國分正明君) いつごろからというのははっきり記憶ございませんが、野球憲章で不祥事等の場合の取り扱い規定を定めているわけでございまして、高野連もそれに沿って不祥事等の場合に出場停止であるとか禁止であるとか、それが何カ月であるとか何年であるとかというような個々のケースに応じたいわゆる処分と申しますか、を決めているわけでございます。  ただ、高野連の関係者によりますと、ここ数年来、例えば今お話しのように、野球部とは関係のない個人的な何か非行があったというような場合等と、それから野球部全体としてやはり責任を負うべき事案というものとを仕分けをいたしまして、それなりの対応をここ数年間してきた、こういう状況でございます。また先般開かれました役員会において、さらにそれを徹底するという形で今後運営していこう、こういう申し合わせをしたやに聞いておるわけでございまして、いわゆる厳し過ぎるのではないかという指摘に対しましては、そういう方向がとられつつあるということを申し上げたいと思います。
  182. 下村泰

    ○下村泰君 実はいつかの週刊誌、どこかのFF関係の週刊誌だと思いましたが、女の子に、たばこかなんか男の子に渡して吸わしておいて撮りましたよ、写真を。あれもう完璧にやらせですよ。私も後からそれ事実をつかみましたけれども。そうしますと、こういう話もあるんですよ。  例えば常連がおります、常連校というのが。必ず出てくる学校が。いつもその次席みたいに二番目あたりから三番手あたりくっつけている。こいつがいるためにちっとも出られない。そうすると、暴力関係のやつに仕込まして、オートバイに乗せましたり、いろいろなことをさしてどかんと事件を起こさせておいて、その学校を出さないというようなことを陰で仕掛けているやつがおる。それで私も見聞きしている、実際に。名前言いませんよ、名前挙げるとえらいことになるしね。それから暴力団も絡んでいますからね。私が東京湾に浮くの嫌だから言わないけれども。そういうこともあるんです。  それだけに、よほど今言ったように、資格審査する場合、こういう事件が起きた、この事件が起きたからおまえのところはもうだめなんだということが果たしていいのか悪いのか。それと、そのために何年も苦労してやっとこうなってきた形のものが一遍に目の前真っ暗けになる。すると、この中から非行も出てきます、下手すれば。非行に走る子供も出てきます。それから逆に、そういうことをやった子の方は村八分なんです、今度は。それこそその町に住んでいられない状態にもなる。本当にこんなことになって果たしていいんだろうか。教育の一環というけれども、そういった教育の一環なんだろうかというようなことも考えるんですが、いかがなんでしょうか。
  183. 國分正明

    政府委員(國分正明君) 嫌な言葉でございますが、いわゆる密告というような言葉がございますけれども、高野連におきましても、こういうことで例えばそれが発端になって、出場停止とか謹慎とかということを極力避けたいということで、何か事故、事件等が起きました場合には直ちにそれぞれの地区の高野連に申し出るということ、それによって、またそれに対する対応も速やかにすることによって、できるだけそういう一種の密告的なものを避けようという運用を今一生懸命やっておるところでございます。  それから、処分に当たりましても、従来は例えば一年間処分、出場停止というようになりますと、結果としてかなりな春、夏、選抜野球と夏の大会とあるわけでございますが、出られない。単に一回出られないということでなくて、野球部員がもう卒業するまで出られないというような、ちょうど月の区切り方によっては出てくる場合があるわけでございますので、そういうこともできるだけないように、その処分の期間ということも、その辺を判断して決めようというような申し合わせもなされているようでございますので、私どももそういうことを期待してまいりたいというふうに思っております。
  184. 下村泰

    ○下村泰君 傷みやすい年齢ですしね、一番十六、七、八というのは。それだけに、私は罰することもいいけれども、罰すること自体がむしろ教育ではないと思うんですよ。ですから、そこのところをひとつうまく今後ともやってください。これはお願いします。  それでは、ちょっと今度は色覚異常のことについて質問させていただきたいと思います。学校保健法の何か全面見直しということがなされるんだそうですが、学校健診の全面見直し、これもやるというふうに予定があるそうですが、その目的、それから方法、その概要をちょっと、あと今後の見通しを。
  185. 國分正明

    政府委員(國分正明君) 御指摘のように、学校におきます健康診断の見直し作業を現在私どもやっているところでございます。直接の動機になり ましたのは、最近の児童生徒の疾病状況というものが大変変わってまいりました。いわゆる伝染性のトラコーマであるとか、あるいは結核とかというのは今日ほとんど見られなくなってまいりました。一方、成人病の若年化と申しますか、小中学生のうちから糖尿病あるいは高血圧、コレステロールあるいは心臓疾患、こういったような傾向が非常に見えてきた。こういう状況にございまして、それに対応いたしまして、学校における健康診断のあり方を見直すべきである、こういうことで、これは文部省の補助事業といたしまして、具体的には日本学校保健会で健康診断調査研究会というのを設けまして、昨年からお医者さんあるいは学校関係者あるいは養護教諭の方等々に入っていただきまして、三年程度をかけて健康診断の検査項目あるいは内容の見直しを行おう、こういうふうになっているわけでございます。先ほどお話のございました色覚検査のあり方についても含めまして検討しているところでございます。
  186. 下村泰

    ○下村泰君 その色覚異常に対する現在の学校での定期検査、これの現況はどうなっていますか。
  187. 國分正明

    政府委員(國分正明君) 現在学校における定期検査で色覚異常検査をやっているわけでございますが、現在は小学校の段階で一年生と四年生、それから中学校、高校では一年生の段階で行うことになっておるわけでございます。
  188. 下村泰

    ○下村泰君 ところで、最近名古屋市の学校医の眼科会で識別調査というのを行ったんですが、それは御承知ですか。
  189. 國分正明

    政府委員(國分正明君) 直接聞いておりません。
  190. 下村泰

    ○下村泰君 ああそうですか。  これは名古屋市の眼科医で高柳泰世という博士が、五十六年に色覚異常の子を持つ親から、小学五年の社会科教科書に見にくいところがあると指摘されまして、いろいろ始めて、校医としてかねがね色覚異常と教育の関係に関心を持っておりまして、この方が五十七年六月、全国眼科学校医連絡協議会に愛知県支部の提案として色覚異常生徒のために教科書改善を訴えた。日本眼科医会はこれを取り上げて文部省などに、これは既に教科書になっていますね。これも私もたしか取り上げた覚えがあるんです。それで線引きをはっきりしますと、多少の色盲の方でも色覚異常者でも、グラフでも何でも見えるようになる、こういうふうになったわけです。  この方がこういうことを言っています。「名古屋の工業高校で生徒にリトマス試験紙やデンプン反応の色の識別テストをしたら正常者と色覚異常者に差はなく、成績も変わらなかった。進学、就職にしても入り口で制限するのではなく、入ってから実際に作業をさせて判断し、進む道を選ぶようにすべきです」、こういうことを提案しているわけですよ。こういうことは全然文部省の方は御存じなかった。
  191. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 個別ケースにつきましてはちょっと私どもは承知いたしておりませんが、色覚異常児童生徒に対する学習指導の問題、先年も先生から御指摘ございまして、私どもは去年の春から色覚異常に関する学習指導上の問題のあり方、こういうことで協力者会議を私どもの局に設けまして二つ検討しておるわけでございますが、一つは、御指摘のような学習指導における色覚異常者について、教師なりあるいは教科書を初め教材なりにどういう配慮をすべきか、今二年計画で検討中でございます。それからもう一点は、高校入試において色覚異常者についていわゆる欠格条項のような形で受験を認めないというふうな例が工業高校等であるものでございますから、これについては昨年の秋に都道府県を指導いたしまして、その辺についてはやはり受験の機会を与えるようにということで、ことしの結果につきましてはまた近く各都道府県の扱いを全部調査してまとめたいと思っております。  そういう作業を現在しておりますので、色覚異常児童生徒にかかわる学習指導の問題は、先生指摘の点を含めてちょっと時間をいただきまして、私ども十分検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  192. 下村泰

    ○下村泰君 私がこれから聞こうと思うことを先にお答えになっちゃった。立場がなくなっちゃった。実はその眼科医のグループの皆さんが高柳先生のこれをもとにしまして、たしか文部省の方にお願いが行ったと思いますよ、高校入試を制限するなという。それを聞こうと思ったら先に答えちゃって、本当に私の立場がなくなっちゃった。  ところで、私今まで気がつかなかったんですが、高校入試でさえ色覚異常者を阻んでいるという理由、これどこにあるんですか。高校ですよ、大学なら話はまだわかるにしても。
  193. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) これは工業高校等で主として実験とか実習、それから化学実験、薬品の扱い等がある、工業高校すべてがそうではございませんが、私どもが先年いろいろ調べたところでは、そういうふうなところで入学資格についての若干制限をする、学校側としてそういうような考え方があるようでございます。ただ、調べてみますと、全国四十都道府県で、ある県は工業高校で制限をし、あるところは制限をしていないんでございますね。そういう実態があるわけなので、私どもは、いや、おたくの県だけで制限するというのもおかしいではないか、これは一般的に資格をまず与えるということでいかがかと、こんな指導をしておるわけでございますので、そういうふうに私どもも今後努めてまいりたいというふうに思います。
  194. 下村泰

    ○下村泰君 これはもう文部省の方の方がよく御存じでしょうけれども、色盲検査とよく一般的に言いますけれども、何かページをまくってぱかぱかっとやる、あれは何式と言いましたかね。
  195. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 石原式と言うようでございます。
  196. 下村泰

    ○下村泰君 あれでやられますと、異常のないやつでもわからないときがありますよ、速くやられると。この中に、今これだけたくさんいらっしゃるが、自動車の運転免許証取りに行った人はみんなやられているよ、あれ。私も鮫洲でやられたことある。おまえ色盲かなんて言われたことありますよ、余り速いから。  たしか三秒ですか、三秒じっと見ていると色弱の人でも色わかるんです。そういうふうにできておるらしいです。三秒というのはどのくらいかというんです。文部大臣、三秒というのはどのぐらいの速さだと思いますか。三秒どのぐらいの速さかと思うか、お口でやってみてください。——大体合っています。私らラジオでさんざんそういうことをやってきましたので、秒数で三十秒数えてみるといったら私はプラスマイナス一秒ですよ。それぐらい正確にやれます。一秒の長さというのは物すごく長いものです。一、二、三、これが三秒です。ぴったりだろう。疑い深い人がおるな、そこに。何も時計見なくてもよさそうなものを。そのぐらいあるんですよ。ですから一、二、三と見ていればある程度わかる。それをはい、はい、はいとやられたんじゃ、とてもじゃないけれども正常な人でも見損なうことがある。こういうことでおまえは色覚異常というような分け方をされたんでは大変だと思いますが、今どうやっていますか。まさかそんなやり方はしてないと思うけれども
  197. 國分正明

    政府委員(國分正明君) 学校における色覚異常検査というのは、そういう異常を持っている子供たちにできるだけ適切な教育を行おう、こういう配慮からでございますから、機械的な検査ということでなくて、その子の身になった検査が行われているものというふうに考えております。
  198. 下村泰

    ○下村泰君 いずれにしても、最初からおまえは色覚異常、色盲というふうに決めつけて、それで入試から何から全部分けてしまうというのは僕は余りにも人間的な行為ではなさ過ぎると思うんですね。これは本当に改めてほしいと思いますけれども、今色覚異常者の受験を制限している大学国立が五〇%、公立が一二・八%、私立が六・三%、これはいまだにこのパーセンテージでしょうか、現在。
  199. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 大学の入学者選抜にお ける色覚異常の取り扱いにつきましては、六十一年度の入試の際から文部省としてできる限りこの制限を廃止する、あるいは緩和するということを考えてほしいという指導をいたしました。六十一年度の入試には、実際上各大学の方針があるいは既に決まっていたのかと思いますが、必ずしも効果があらわれてなかったと思いますけれども、六十二年度には相当の効果があらわれてまいりました。  六十一年度と六十二年度の比較で数字を申し上げますと、学部数で申し上げますと、国公立全体で百二十二の学部が六十一年度は色覚障害者の入学制限を行っておったわけでございますけれども、六十二年度に至りましてこの制限を行っている学部が四十八学部ということで、三分の一近くにまで減少してきております。大学でございますから、高等学校以上にかなり専門的な研究等も行われるかと思いますので、全く各大学全部同じ扱いというわけにいかない面もあろうかと思いますけれども、私どもとしては、出しました通達の線に沿って、それぞれの教育上どうしてもだめだというケース以外は認めるようにということで引き続き指導してまいりたいと思います。
  200. 下村泰

    ○下村泰君 私も決して全部が全部門戸を広げろと言っているわけではなくて、確かにそれは色彩というものを基調にしたものをやる場合、これはもう無理でしょう、どっちにしても。けれども、それを外したらば結構私はまだ広げられる学部はたくさんあると思うんですよ。ですから、そういうふうにひとつ御指導願いたいと思います。  そうしてあげませんと、あるいは文部省の方も御存じだろうとは思いますが、私これ前に取り上げたことありまするけれども、あるところで色盲は治るんだ、色覚異常は治るんだという宣伝のもとに大勢の人がそこに行っておるわけですよ。そして詐欺とまでは言いませんけれども、それにやや近い。ところが、そのときの健康状態によって色の判別できるのは、これは弱色ですね。私の弟子におるんですから、一人。青空千夜一夜という漫才がおるんです。この弟子の一夜の方が弱色なんです。体の調子のいいときは信号見えるんです、ちゃんと。だから、体の調子のいいときに鮫洲行ったからよかったようなものなんです、こいつは。もし悪いときに行ったら色わからないんですから。調子のいいときにはちゃんと赤、黄、青がわかる。ところが調子の悪いときにはみんな同色になっちゃうんですね。ですから、そういう方は何か刺激によってきちんと色分けできることもあるでしょう。けれども、この間も東北大学の医学部先生に伺いましたときに、あるいはほかの眼科の専門家の先生に伺いましたときにも、あらゆる方法で色覚異常者を正常に戻そうと努力はいろいろな形でしてはいるけれども、医学的にはもうだめだと。それを治るんですよという宣伝をしている。多分入学時期とか就職時期になると各紙の下の方に広告出ていますよ。そしていまだにやっています。そこで変な商業ベースに乗せられて、泣き泣きまたおうちまで帰っていった、半月以上そこに寝泊まりしていって帰っていったという人がおるんです。そのときに私それ取り上げたんですけれども、これなんて裁判ざたになったりなんかしておりましたんで、もう今ここで申し上げませんけれども。  アメリカあたりでは、パイロットでも色覚異常の人は昼間飛んでよろしい、夜はいかぬ、そのくらいなんです。ただ日本の場合にはもうすべて、あれもだめ、これもだめと、非常に狭いんですよ。ですからそれは、この人はこういうわけだから完全にもうだめなんだという状態をきちんとしないと、ある程度までは範囲を広げてあげないと実に気の毒だなという気もします。ですから、中には、私の事実知っている方の中でたしか朝日の記者さんだと思いますよ。やっぱり色覚異常なんです。個々にそれを人に知られたくない努力をしている、こういう人もいます。だから、各社にもいらっしゃるんじゃないですかな、きっとそういう方が。けれども、それは人に知られたくないというふうに本人も努力している。こういう人の努力は並み大抵のものじゃないと思います。それだけに大学の門戸もどんどん広げて、そうした人たちに勉強のできるような場を広げていただきたいと思います。これは文部省の方のお考えでどうにでもなることだと思いますので、大臣、ひとつ一言。
  201. 中島源太郎

    ○国務大臣(中島源太郎君) 下村委員が御質問で、前回たしか、障害あるがゆえに障害者ではないという言葉が私は非常に心に深く印象に残っておりまして、今おっしゃるように、私は治るか治らないかわかりませんけれども、いろいろな御苦労の結果、医学的にそれが色覚異常者は色覚異常者であられても、それならばその範囲で、将来やっぱり八十年の人生でありますから、どういう方面で活躍いただけるのか、どうしてもやはり非常に微妙な識別の要る範囲、これは御無理であろうとか、やはり小さいうちから自分の進むべき門戸をこの範囲は大丈夫だ、その範囲はどうしてもだめだろう、それはあると思いますが、しかしあるならばあるで、なるべく異常者であっても識別可能な環境を整えるということもございましょうし、そういう面で異常なるがゆえに自分が進む道が狭まらないように、なるべく広げるということをいろいろな意味考えながら、おもんぱかりながら考えていくことはぜひ必要だろうと思います。前回のお言葉非常に感銘深く伺いましたので、そういう意味でみんなが力を合わせて努力せにゃいかぬ、こう思います。
  202. 下村泰

    ○下村泰君 ありがとうございました。色覚異常についてはこれで終わりにさせていただきます。  次に、今度は受験のことでちょっと伺います。  もう既にこの報は御存じだろうと思いますけれども、和歌山大学経済短期大学部に、「けいつい損傷で手が不自由な同市内の男子受験生が「入試でワープロを使わせてほしい」と文書で申し入れた。文部省大学大学入試室によると、受験生がワープロを使った例はなく、短大側は「できるだけハンディをカバーする措置を取りたいが、入試は競争であり、辞書機能を持ったワープロの使用で、かえって他の受験生の不利になってはいけないし……」と頭を痛めている。」、こういう記事が出ておったのです。この人は、何か水泳をやっておりまして、たまたま消波ブロックですか、波を消すブロックから海に飛び込んで、首の骨を折って両腕から下が麻痺状態になった。リハビリの結果、特製の補助具で鉛筆を腕に固定し、大きな字をゆっくり書いたり、ワープロのキーをたたいたりできるようになった。何か手に器具をつけて、その先に鉛筆をつけて書くらしいんですね。これはもちろんそれくらいですからワープロを打った方が早いわけです。何とかしてワープロで受験をさせてくれとお願いをしたのですが、ついにこれがだめだということになりました。と申しますのは、入試運営委員会、ここで「日本語をどれだけ正確に書いているかは採点の大きな要素。他の受験生との公平を欠く」として、ワープロの使用は許可しないことに決めたんだそうです。もちろんこの受験生は受けると。ある程度のお時間を延長させてくれるんでしょうけれども、さあどれだけできますか。とにかく三倍以上かかるらしいんです、この補助器具に鉛筆つけて書くと。ですから、どのくらいまでいけるかやってみると御本人は言っておるんですが、さあどうなんでしょうか、こういうのは。
  203. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) ただいまの件でございますけれども大学側から状況を聞いておりますと、御指摘のようにワープロを使いたいということでございますが、その記事にも出てまいりましたように、ワープロを使いますと辞書の機能がございますので、要するに辞書を引きながら解答をするのと同じ結果になってしまうということで、他の受験生と著しくその点は不公平であるという問題があるわけでございます。ただ、こういった向学の精神に燃えている青年に対してやっぱりチャンスを開くべきであるという考え方から、大学当局としては、ワープロは認めないけれども介助者をつけて解答をしてくれるということは認めるということで、この形での受験を認めたそうでご ざいますが、結果はまだ合格したかどうかはちょっと把握をいたしておりません。
  204. 下村泰

    ○下村泰君 こういう状況は、この人は一つの例としてまだまだたくさんあると思うんですよ。ですから、何か規定を見ますと、受験時間を一・五倍とか何か随分ささやかなちょっと延長時間帯で受験をさせるというふうになっております。これもう少し文部省側としても、その症状に応じてある程度の時間のやりくりとか、あんばいというものをもう少し何か指導してあげられる方法というのはあるんでしょうか、ちょっと聞かしてください。
  205. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 例えば視覚障害者なんかの場合に点字などを使う場合のケースにつきましては、いろいろな研究の結果、大体一・五倍で正常人と同じ程度の能力が発揮できるという判断のようでございますが、ただいまのように、肢体不自由というようなケースの場合については違う事情もあるだろうと思います。文部省としては、全体的に一・五倍でなければいけないとか、それでやれとか指導しておるわけではございません。症状の種類に応じて、各大学判断でどの程度の時間を与えた方がいいかということは弾力的に扱ってほしいと思っておりますし、また今後機会あるごとにそういう指導をしたいと思います。
  206. 下村泰

    ○下村泰君 では次に、点字教科書のことについて伺いますけれども、現在義務教育課程及び高校などで点字の教科書、この必要な児童生徒数というのはどのくらいいますか。
  207. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 点字教科書につきましては、対象児童生徒数が非常に人数が少のうございまして、今ちょっと私手元にありますのは、小学部の一年生ということで申しますと、百八十名しかいない。それから中学部の一年生で申しますと三百五十五名しかいない。小学部は六年制でございますから単純に百八十人の六倍とか、それから中学でございますと、三年でございますから、三百五十五人の三倍と、そういうふうな数字でございます。
  208. 下村泰

    ○下村泰君 私もいろいろとお医者さんの関係でお話も承ったことがあるんですけれども昭和十二、三年、あのころはまだやっていたんでしょうね、とにかく十六年に入ってから戦後二十八、九年ごろまで日本の医学界と世界の医学界の交流がなくなったために非常に医学がおくれた。ところが昭和三十二、三年ごろから交流が本格的に始まりまして、例えば保育箱とかああいうものがどんどん来ている。生まれてすぐの赤ちゃんが死亡する率が非常に少なくなってきております。それにあわせて視覚異常者というんですか、いわゆるお目の不自由な方、ああいうお子さん、これが救われるようになった。以前は母親の病気を引いてそのまま生まれてきてお目が不自由になったり、あるいは黄疸とかその他によって目が見えなくなったりという方が随分いたらしいんですね、お子さんが。それが医学の発達によってそういう数が少なくなった。そのために今はむしろ聴覚、聞こえない方の数が多くなっている。視覚異常者の方が少なくなっている。これは大変結構なことだと思うんですよ。ただ、こういうお子さんたちのこういったいわゆる点字教科書といいますか、これはどの程度まで保障されているんですか。
  209. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 一般の商業ベースに非常に乗りにくいということもございまして、小中学校につきましては英、数、国、社、理、外国語でございますか、この主要教科につきましては、それぞれ一般の教科書は多くの種類の教科書が出ておるわけでございます。その中から一点を選びまして、専門家は参加していただきますが、その一点を選んで文部省で点字に翻訳をしまして、そして出版社を委嘱して、そして発行をする、こういうふうな形をとっております。それから英、社、国、数、理、外国語以外の教科につきましては、それぞれ依頼をいたしまして、出版社で一点ずつ翻訳点字にいたしまして出版をすると、こういうふうな事態になっておるわけでございます。  ですから、一般の小中学校につきましては、教科書採択として数種類ある教科書からどの教科書かを選べるというふうになっておりますけれども、おのおのの学校の小学部、中学部の生徒諸君については、今のような状況がありますので、申し上げたような一つの教科書の選定をして、それについての点字教科書で教育を受けている、こんな状況でございます。
  210. 下村泰

    ○下村泰君 そういった教科書の費用ですね、それはどういうふうになっていますか。義務教育の間は無料ですか、それともどうなんですか。
  211. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) この点は義務教育教科書無償によりまして、小中学部はすべて無料でございます。それから高等学校は、一般の高等学校生徒の教科書代は父兄負担でございますけれども、盲聾養護の高等部の奨学奨励費でございますね。これによって教科書代を国が補助をしていく、父兄負担にはなっていないということにいたしております。
  212. 下村泰

    ○下村泰君 何かこんな話を聞いたんです。例えばある大阪の高校の場合ですね。点字一ページにつき三百円、普通の字の三倍として二百ページテキストなら六百ページ分になるわけです。そうすると、これ十八倍になっちゃうわけです。えらい高いのにつく。そうしますと、この費用を親御さんが負担するということになると、これえらいことになるわけですね。そのためにむしろ学校へも行かれなくなるという状態が生まれてくるわけです。これが全額とはいきませんが、大変御無理な注文でしょうけれども、何とか面倒見ていただける方法というのはないものなのかなというお願いなんですけれども
  213. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) この問題は、先生指摘の点で、盲聾養護学校の小学部、中学部に就学している子供ではなくて、恐らく一般の通常の学校に就学している盲の子供たち、この子供たちは点字教科書として出版されている以外の教科書をその学校で使っていますと、教科書がないわけでありますね。そうすると、普通の学校で使われている教科書をその当該個人お一人のためのものとして点字に翻訳しなければならない、こういう事態が起きるわけでございますが、やはり盲聾養護学校の制度の仕組みといたしましては、普通の教科書が読めないお子さんについては就学指導でやはり盲聾養護学校に行ってください、こういう仕組みに就学指導の問題としてなっておりまして、そして恐らく今先生指摘のケースは教育委員会なり学校側とのお話し合いで、普通の学校に行けば点字教科書はありませんよと。そうすると、点字の翻訳は父兄負担でその相当な費用を負担してでもお行きになりましょうかと、そういうことで親御さんとの話し合いがあり、親御さんもそれでもいいから通常の学校に行かしてほしい、それじゃ受け入れましょうと、こういう姿になっているケースだと思うわけでございます。したがいまして、そのようなケースについて国あるいは都道府県等で補助をすることがなかなか難しい問題だ、こういうふうに申し上げざるを得ないということを御理解いただきたいと思います。
  214. 下村泰

    ○下村泰君 そのお答えが普通でしょう。それを無理やり私は何も言いません。ただ、もしできればなという本当にこれは希望的観測であります。  次は、訪問教育について伺いますけれども、今訪問教育の現状はどうなっていますか。
  215. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 訪問教育につきましては、昭和五十四年に養護学校を義務化いたしましたので、従来であれば就学免除になるようなお子さんたちが、学校には通えないけれども、家庭在宅のままで、学校に通えない重度の心身障害のある方でございますが、そういう子供たちに対して学校から出向いて週一、二回という形で指導する姿でございます。現在実情といたしましては、これはちょっと全体の生徒数の押さえをちょっと今私どもしておりませんが、小学部で申しますと、三千二百人程度でございます。それから中学部で二千二百人、合わせて五千五百人、こういうふうな実態になっております。
  216. 下村泰

    ○下村泰君 これは訪問教育というのは私は大変だと思うんですね、これは。やられる方は訪問される方ですから、ほとんど動けない状態ですね。 そこへ訪問して教育をする。何回行ったからいいというものじゃないと私は思うんです。回数の問題じゃないと思います。私自身もこういう方の仕事ばかりやってきておりますんで、人情も多少わかっております。回数よりも中身の問題なんですね。先ほどから大臣が大変あの言葉をお気にいっていらっしゃるようですけれども、とにかく障害を持っているというのは、普通の我々の常識では考えられない感情を持つ子が多いわけですね。それだけに訪問しながら教育する任に当たっている人、これはもう大変な苦労だと思いますよ、その御苦労は。だから、私別に局長の方から回数がどうのこうのというお答えよりも、携わっている人たちの御苦労ですね。そして中身がどうなっているか、そちらの方が私は気になるんです。そういうやはり御報告というのはあるんですか。
  217. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 先ほど児童生徒数のことを申し上げましたが、携わっておられる先生方は大変御苦労でございまして、担当しておられる教員の数は全体で千七百人ぐらい全国でおられるわけでございます。これらの先生方が週に何回かずつ児童生徒の自宅へ出向いて教育をするわけでございますが、その内容はやはり一般の子供さん方とはちょっと異なるところがございまして、例えば運動の問題、手足をどういうふうにしたら機能的にだんだんと向上するかという問題、それから言葉の問題でいろいろなあいさつとか話とかが自分でできるようにとか、それから情意と申しますか、内面的な子供たちの心情の発達を段階的に促していくというふうなことが主になっておるわけでございまして、この点につきましては大変な個人個人の差がございまして御苦労があるので、私どもは毎年一回訪問教育に携わる先生方の一部ずつお集まりいただいて、情報交換なり指導のあり方についての研究会というものをやっておるわけでございまして、この点につきましてはやはり一人一人の子供さんの実情に合うような指導をしていただくというふうなことで、今後も先生方の研修については努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  218. 下村泰

    ○下村泰君 とにかく、この今勉強させられる方ですね、授業を受ける方というのは、その場にいるからこそ初めて訪問教育を受けるわけですから、この子たちは世間は全然知りません。社会も知りません。したがって、自分以外の世界というのは何だかわからないわけですね。ですから、そういうことをわからせること自体も大変な先生に負担がかかると思います。それだけに回数を、まあ私としては回数をふやしてください、それこそ毎日でも行ってくださいと言うことは簡単なんですよ。だけれども、はい、そうしましょうだけではどうしようもないんですからね、これは。今申し上げたように、やっぱり中身の問題なんですから、極力ひとつそういう先生方のお気持ちもお酌み取りの上、十分にそういう子供たちが勉強できるような方向にひとつ持っていってほしいと思います。  私のいただいている時間が四十一分までだそうですけれども、私は時間にこだわらないものですから、自分の言いたいことを言ったら全部おしまいにしちゃいます。まだ時間の使い方は幾らもありますので、そのときにやらしていただきますが、ここで別に通告も何もしてないんです。通告しないでおどかそうというわけじゃありませんが、福祉協力校、福祉に対して協力をする学校、こういうのを御存じですか。
  219. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) 具体的な名前として、それぞれの学校でどういう名前をつけているかは別でございますが、先生御案内のように、学校の特別活動の中でボランタリーに学校の児童生徒がいわゆる奉仕活動とかという形で老人ホームに出かける、駅の清掃に携わるとか、そういうふうなことを重要な教育計画実施の内容としてやっている例はたくさんあるわけでございます。そういう点私どもは奨励しております。そういう学校がみずからを福祉協力学校というふうに名づけているところがあるかもしれませんが、具体には私まだそういう名前をつけた学校は承知いたしておりません。
  220. 下村泰

    ○下村泰君 これは厚生省の方がやっているんですね、文部省の方ではないんです。ただし、厚生省がやっているからといって文部省が知らぬ顔というのはできないと思うんですよ、これから先。このことにつきましては私もまだよく存じ上げておりませんので、これからよく調べまして、この次にまた質問さしていただくかもわかりませんけれども厚生省がこういうことをやっているとすれば文部省も多少なりとものバックアップとか、あるいは全面的なバックアップというのは必要じゃないかと思いますので、その節はまたよろしくひとつお願いいたします。  これでおしまいにいたします。
  221. 田沢智治

    委員長田沢智治君) これをもって昭和六十三年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、文部省所管についての委嘱審査は終了いたしました。  なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  222. 田沢智治

    委員長田沢智治君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十九分散会