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高木健太郎君 ぜひ検討していただきたいと思います。それもいつまでもかかるというんじゃなく、できるだけ早くやる、いいことは早くやるというふうにしていただきたいと思います。
それから、今までの自然科学的の受賞というのは大抵
外国での仕事でもらっているわけなんです。それで、私はある私の友人ですが、アメリカで非常に立派な仕事をして、ノーベル賞の候補にも上がった男がおりましたので、君はいい仕事をしてまことに
日本のために名誉だと、こう言いましたら、波は私に、何が
日本の名誉だ、おれは
日本から追い出されるようにして出てきたんだ、
日本では仕事ができないから、こっちでやってこうなっている、だからこれは
日本の恥だよと、こう言っておりました。その男は物をはっきり言う男で、
日本にやっぱり利根川さんみたいにおれなかったんだろうと思うんですね。それを受け入れるだけの
日本にあれがないわけなんですね、雰囲気といいますか。これは十分私
考えておかなきゃいけないと思う。
文学的だとか、あるいは数学、物理でもらわれた、理論物理学でもらわれたのは、余り
お金がかからないで自分で黙ってやっていればいい、上の者とけんかもしないでいい、そういう人が、湯川さんやら朝永さんはそうじゃなかったかなと思うんです。湯川さんもあるいは朝永さんも自分の卒業した
大学にはおれないで、どこか初めは助手として行かれているわけですね。だから、そういう空気をぜひこの
日本の
研究の
分野からなくすということが非常に私は大事である。これ非常にまた難しいことでもあるわけですけれ
ども、これはぜひ文部大臣にもとの点は留意して、そうでなければ独想的
研究は
日本からは生まれないよと、こういうことをひとつぜひ留意していただきたいと思います。
そこで、もう時間がなくなりましたから簡単に私の感想を申し上げますので、ひとつそれをお聞き取りいただきまして、今後のひとつ施策にそれを反映していただきたいと思います。
その
一つは、
研究費の配分でございますが、
研究費の配分というのはやっぱり教授というものが握っておりまして、助手は配分を受けにくいというわけですね。それから受けましても、教授の命令でなければ仕事ができないようになっているわけです。
研究というものには上下ないわけなんですね。そういう空気がないわけですから、私は申請時、いわゆる
科学研究費を申請しますけれ
ども、申請したときにいい仕事であれば助手であってもそれを採択する。それを教授に審査を任せておくとうまくいきませんから、その審査の
委員をもっと若い人にもさせる、こういうようにされてはどうか。それからそういうボスの支配を受けないようにする。
それから、若い
研究者の助手も独立して
研究ができる体制をつくっていただきたい。教授から言われて仕事をするのでなく、自分も独立して仕事をする。これは利根川さんもそういうふうにやっている。しかし、
教育その他に対しては教授の助手を務める。だからそこをはっきり
研究と
教育を
大学の中で分ける。こうされれば私はうまくいくんじゃないかと思います。
米国では、三十代の
研究者が
研究費あるいは人事、あるいは
人間を雇うとか、そういうことを一〇〇%独立して自由にやっているわけです。こういうことをひとつ
研究していただきたい。
それから、
研究室の中では正当な批判精神を涵養する。これはイデオロギーにとらわれてはいけないんで、正当な批判精神というものの向上を今後努められるということが大事じゃないか。
それから、自由な独立した
研究といいますけれ
ども、私は自由に放任するというんではいけない。助手は自由に
研究していいと言うと、おれは勝手なテーマで勝手なことをやる、それは私はいけないんじゃないか。自由に放任するということではなくて、適切な指導があって、そしてお互いに十分討論をして、その上でテーマを決めていく、あるいは
研究費を決めていく、こういうふうにすべきじゃないかと思います。そういう組織づくりをしていただきたい。
もう
一つは終身雇用制ですね。これは非常に問題がありまして、反対もたくさんございますけれ
ども、若いうちに終身雇用になりますと、全然勉強をしない人が出てくるわけなんです。だからぬるま湯につかっている。二十代や三十代で終身雇用ということになりますと、もうそれでいい、何にもしなくてもひとりでに月給は上がっていく。こういうことはやっぱり私は若い人を伸ばすゆえんではない、これは何とか
考えなきゃいかぬ。任期制というとまた非常に問題が多くなりますが、そういう点もお
考えいただいたらどうか。
それから、地方
大学をひとつもう少し振興させる。今東京の一点集中というようなことで経済界
では非常にやかましく言われておりまして、首都の移転というようなことも、一部移転というようなことも言われている。しかし、東京一点集中とは経済だけじゃないですね。文化も東京一点集中になりつつある。そういう
意味では地方に立派な
国立の
研究所、例えば岡崎もそうですし、遺伝研もそうです。そういうふうに地方に立派な
研究所あるいは地方の
大学に附属した
研究所でもつくる、こういうことによって地方文化を盛んにする。それがその地域のいわゆる経済もまた発展させるということになるんじゃないかと思います。
以上が私の申し上げたいことでございますが、注文ばかりいたしましたけれ
ども、ひとつ新しく文部大臣に中島
先生がおなりになりまして、大変また尊敬しているわけですが、今やらないと次の時代に私は
日本はおくれをとるという
意味で申し上げたわけでございまして、もし御感想がいただければ大変ありがたいと思います。