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参考人(
向井重郷君) ただいま御指名をいただきました全
日本トラック協会理事長の
向井でございます。
本日は、
法案の御
審議に際しまして、
参考人として
意見を申し上げる
機会を与えていただきまして、ありがたくお礼を申し上げます。また、日ごろからトラック運送事業の運営につきましては、深い御理解と御
指導をいただいておりますことを重ねて改めてお礼を申し上げたいと存じます。
ただいまは、
佐藤さん、
池田さんの方からは
農村地域の
立場からいろいろ切実なお話がございました。私は、これから
農村の方にあるいはこういう
法律によって
導入されるべき事業という方面からのお話を申し上げてみたいと存じます。
皆様が既に御高承のとおり、トラック輸送は今や国内貨物輸送のうち輸送トン数では九〇%、それから輸送のトンキロ、トン数とキロ数でございますが、これを掛け合わせたものにおきましては五〇%という比重を占めまして、一般消費者に対する宅配便あるいは引っ越し輸送、それから
産業活動に不可欠な資材輸送等、
我が国産業経済の大動脈として重要な
役割を果たしておることは御承知のとおりでございます。トラック事業の
昭和六十一年度における輸送トン数は十九億二千九百万トン、輸送トンキロでは千四百八十一億トンキロでございまして、いずれも対前年比でそれぞれ二%、八%、わずかではございますが増加をしておるところでございます。国内の輸送量は全体として減少しておるのでありますが、トラックだけはほんのわずかでありますがふえているというのが
実情でございます。
トラック輸送の中で、その
中心をなしておるものはトラック運送事業でございます。私
どもの団体の全
日本トラック協会は、そのトラック運送事業者をもって組織する団体でございますが、この私
どものトラック事業は定路線により積み合わせ輸送を行う路線トラック事業というもの、これは宅配便などをやっておるので御承知のとおりでございますが、それと一定の区域を限ってやっておる区域輸送、地場輸送とも言っておるのでありますが、区域トラック事業、この
二つに大別されるわけでございます。
それぞれの構成について申し上げますと、路線トラックは事業者数が三百三十六社、わずかでございます。系列化や再
編成等がだんだん進んでおりまして、これはどうやら減少の傾向にございます。それから区域トラック事業の方は三万六千九百二十六社、これはつい先ごろの統計でございますが、日によってちょっと出入りがあるかもしれません。増加傾向でございます。その特徴としますところは、何としてもやはり労働集約型の
産業であるということと、燃料集約型の
産業であるということでございます。どんな小さなトラックでも大きいトラックでも運転者がなければ動きませんし、それからまた燃料がなければ動かないというようなところに大きな特徴を持っておるのが私
どもの
産業でございます。それで、路線トラックにおいては八三%、また区域トラックにおいては九九・六%という多くのものが中小
企業で占められておりまして、極めて零細性の強い
産業であるということを申し上げることができるわけでございます。
そして、最近におきまするところのトラック事業を取り巻く
環境は、比較的好調な内需に支えられまして荷動きそのものも上昇傾向にありますが、
基本的な流れとしましては経済のソフト化あるいは
産業構造の変化、いずれも非常に急激に変わっております。小口少量貨物の多頻度輸送あるいはちょうどよいときに荷物をそのまま持っていくような、ジャストインタイム輸送ということを言っておりますが、それなど質の高い輸送サービスの提供が求められまして、トラック事業経営には時代に即応した効率的な経営が望まれておるところでございます。
さて、中小
企業が九九・五%を占めるトラック業界の近代化につきましては、事業協同組合の組織化と共同事業を
全国的に展開し、貨物自動車ターミナル等集団化の事業、トラック団地というようなことも言ってございます。それから貨物自動車運送事業所共同利用事業、これは各地に見られますが、トラックアパートというようなことも言ってございます。共同施設事業等において多くの成果を現在上げておるところであります。しかしながら、最近における物流
環境の著しい変化、多様かつ高度な輸送ニーズに対応するためにはさらに
努力が必要でございまして、
昭和六十二年度よりトラック運送事業経営の戦略化
構造改善事業に取り組んでおるところでございます。その中身といたしましては、経営
方式を改善すること、それから共同マーケティングを行うこと、情報をシステム化して大幅にこれを利用すること、またその基盤となる人材の開発を
推進すること、この四つの柱を
中心に事業を行ってまいりたいと思っているところでございます。
次に、トラック事業におきまするところの労働力の確保は最も重要な問題でございます。労働集約
産業であることはさっき申し上げましたけれ
ども、トラック運送事業の事業所は五万五千五十九カ所、お手元にある資料の中にもそういうふうに出ておりますが、五十六年以降一四・一%の増加を見、一方従業員の数は百十二万九千五百八十六名、これも資料に載っている
数字でございます。五十六年以降一七・四%の増加を見ておりまして、比較的高い増加率を持っておるわけでございます。しかしながら、最近の風潮として、単純労働を忌避する傾向にあり、しかもトラック事業の場合は長時間労働などが
企業のイメージとして定着しておりまして、人材の確保がなかなか困難になってきておるというのが
実情でございます。さらに、本年四月、労働基準法の
改正が行われまして、労働時間の短縮に向けて目下トラック業界を挙げて対応を図っておるところであります。労働集約
産業である当業界に新しい労働力確保問題が大きく関連してくるということになっているわけでございます。
さて、次に、
我が国の経済構造が知識あるいは情報、サービス
中心型へ移行し、さらに
多様化、高度化する輸送ニーズ、荷主さんの輸送ニーズにこたえるため、きめの細かい輸送システムを構築する必要がありまして、このための輸送の
拠点となる配送センター等物流施設の
整備が緊急の
課題となっておりますが、
都市部とその周辺地区においては地価の高騰や交通混雑等数々の問題に直面しておるところでございます。トラック事業におきましては、これまではトラック事業者がみずからの
努力によって、あるいは協同組合による共同施設として用地を取得し、施設
整備を
推進してきたところでございますけれ
ども、以上述べたような
状況などによりまして、交通網が
整備されつつあるという
状況を踏まえ、まとまった取得しやすい
土地があり、さらに十分な労働力が確保できる適当な
農村地区への立地を要望する声は極めて強くなっておると申し上げて差し支えないところでございます。
一方、トラック事業の
立場から
地域活性化事業に参画し、例えば一村一品運動など
地域ぐるみの新しい需要開発に携わるケースが多く見られてきておるところでございます。さらに六十一年八月に
改正されました市街化調整区域における開発許可
制度の運用につきましても、これを活用して市街化調整区域にトラック事業施設を
整備しようとする要望が多く、このことから推測いたしまして
農村地区へのトラック事業の立地意欲は相当強いものがあると申し上げてよろしいかと存ずるのでございます。
今般、
農村地域工業導入促進法を
改正し、
法律に基づく
導入対象事業に
倉庫業ほかの
方々とともにトラック事業も加えていただき、税制あるいは金融上の優遇措置をとっていただければトラック事業による
地域活性化への貢献が容易になりますとともに、国民生活に密着したトラック輸送サービスの
充実が促進できるものと確信する次第でございます。
以上、トラック事業の
立場からのみ物を申したのでございますけれ
ども、終わりに臨みまして、そういうようなわけでございますのでこの
法律は私
どもにとってはまことにありがたい
法律でございます。一日も早く可決
成立を見て実施されますことを心から念願いたす次第でございます。
以上で
参考人としての
意見の陳述を終わらせていただきます。
ありがとうございました。