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1988-05-17 第112回国会 参議院 農林水産委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月十七日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  五月十六日     辞任         補欠選任      初村滝一郎君     遠藤 政夫君  五月十七日     辞任         補欠選任      遠藤 政夫君     初村滝一郎君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         岡部 三郎君     理 事                 高木 正明君                 水谷  力君                 稲村 稔夫君                 刈田 貞子君     委 員                 青木 幹雄君                 上杉 光弘君                 大塚清次郎君                 熊谷太三郎君                 鈴木 貞敏君                 初村滝一郎君                 星  長治君                 一井 淳治君                 菅野 久光君                 八百板 正君                 及川 順郎君                 諫山  博君                 三治 重信君                 喜屋武眞榮君                 山田耕三郎君    国務大臣        農林水産大臣   佐藤  隆君    政府委員        農林水産大臣官        房長       浜口 義曠君        農林水産省経済        局長       塩飽 二郎君        農林水産省構造        改善局長     松山 光治君        農林水産省農蚕        園芸局長     吉國  隆君        農林水産省畜産        局長       京谷 昭夫君        食糧庁次長    近長 武治君        通商産業大臣官        房審議官     安藤 勝良君        運輸大臣官房審        議官       橋本 昌史君        労働大臣官房審        議官       佐藤 仁彦君    事務局側        常任委員会専門        員        安達  正君    説明員        通商産業省立地        公害局立地指導        課長       寺西大三郎君        資源エネルギー        庁石炭部炭地        域振興課長    古賀 英宣君        労働大臣官房政        策調査部労働経        済課長      澤田陽太郎君        労働省労働基準        局監督課長    松原 東樹君        労働省労働基準        局安全衛生部労        働衛生課長    草刈  隆君        建設省河川局水        政課長      横田 猛雄君    参考人        岩手藤沢町長  佐藤  守君        全国農業会議所        専務理事     池田  齊君        社団法人全日本        トラック協会理        事長       向井 重郷君        財団法人日本立        地センター常務        理事       飯島 貞一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○農村地域工業導入促進法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日、初村滝一郎君が委員辞任され、その補欠として遠藤政夫君が選任されました。     ─────────────
  3. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) 次に、農村地域工業導入促進法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案につきましてお手元の名簿にございます参考人方々から御意見を拝聴いたしたいと存じます。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多用なところを本委員会に御出席をいただきましてまことにありがとうございました。  本日は、農村地域工業導入促進法の一部を改正する法律案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を伺いまして、今後の本委員会の審査の参考にさせていただきたいと存じております。よろしくお願いをいたします。  それでは、これより御意見をお述べいただきますが、あらかじめ議事の進め方について申し上げます。  御意見をお述べいただく時間は、議事の都合上、お一人十分以内とし、その順序は佐藤参考人池田参考人向井参考人飯島参考人の順といたします。  参考人方々の御意見開陳が一応済みました後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。  それでは、佐藤参考人からお願いをいたします。佐藤参考人
  4. 佐藤守

    参考人佐藤守君) 岩手県の藤沢町長佐藤守と申します。  このような場に出席を許可されまして光栄に存じます。そしてまた、私ども農村地域振興のために賜っております御当局の御努力に対して心から御礼を申し上げたいと存じます。  農村工業導入法につきましては、私ども農村に生きます者には農業施策充実もさることでございますが、農村施策もまた大事な課題であるわけであります。農村と申しますと、何か農業だけで生きられるような感じなしとしないわけでありますが、今や農村意識多様化都市化の中で、多様な意識構造の中で地域産業である農業を支えなければならない現実にあるわけでありまして、言ってみますれば、私どもの町も昭和三十年に一町三カ村が集まりまして一万六千人の、大きいことはいいことだということでスタートを見たわけでありますが、高度経済成長の中、産業構造の変化の中で四千人の人口の流出となりまして典型的な過疎の町と相なり、現在過疎からの脱却ということを至上命令にして住民とともに取り組んでおるところでございます。  特に、過疎原因は単なる農業と他産業所得格差という単純なものではございませんで、農村意識都市化多様化というものもその根底にあるわけでございまして、私どもが新しい時代に向けて農村定住条件整備を考えます場合には、農業中心とし、さらに新たなる工業農工一体の中に地域の豊かさを準備しなければならないという現実にあるわけでございます。したがって、現在、農工一体という仕組みの中の地域産業の再編成、特に、他産業並み所得形成ができる産業としての地域農業をどのようにしてつくっていくのか。また、農業を望まない住民方々のいわゆる他産業への就労をどう確保するのか。これについて今取り組みの最中であるわけであります。  特に、導入ということにつきましては、いろいろ今までも国の制度の中でお力添え願ってまいったわけでございますが、今まではどちらかと申せば拠点方式一つ広域性の中で拠点を形成し、そこに工業団地を形成してやってきたというのが典型的な姿であろうと思うわけでありますが、なるほど拠点中心工業導入はいいように見えますけれども、それは近隣町村をねぐらの町にして活力を喪失させるという大きな問題を含んでおります。したがって、私ども拠点方式ではなくて、それぞれの地域が持っておる工業立地条件を活用した、そしてそれを統合したクラスター方式と申しますか、そういう方式の中で新しい地域農村振興が図られるべきものだと、そのように承知しております。  なお、工業導入と申しましても、工業自体が突出して存在できるものではございませんで、産業立地が必要になってまいります。水道道路、電気、排水、すべてがその根底に具備されなければ農村工業の存立はでき得ないわけでございまして、私どもの町の例をとりますと、例えば過般、この工業誘致の中で水資源の問題にぶつかったわけであります。これにつきましては、通産省が実施されました小規模工業水道という施策が大きく農村工業導入条件整備を果たしておるという事実もあるわけでございまして、感謝を申し上げておるところでございます。したがって、これからの農村振興、活力ある農村農工一体というものが前提であるとすれば、特に農村におくれております工業という産業条件整備が次々に準備されてまいらなければならない、かように考えておるところであります。  それから三つ目には、工業というのは農村にとりましてはなかなかなじまない産業でありまして、工業とは一体何なのかということになってまいりますと、農村地方役場職員はほとんど農業高校出身者がその中心でありまして、工業とは一体何なのか、企業経営とはどうなのか、そういう予備知識すら持ち合わせておらないというのが現実でございます。  加えて、どういう企業を欲したとしても、どういう手順でどこから一体導入すればいいのか、これが実はどこの農村も大きな悩みの種になっております。なるほど日本全国には何万という企業がある、工場があるということは知っておりますけれども、どういう状態でどこに行って相談すればいいのか、これはほとんどが望んでおるところだと思います。そういう中で、私どもの町の場合は農工センターというものは工業を誘致しなければならない農村地域にとりまして灯台みたいなものでありまして、すべては東京にはせ参じ農工センター職員方々企業立地に対する御指導を賜り、その中で導入活動を展開するというのが現実でございます。したがって、農工センター強化充実農村工業導入振興の当面の大きななさねばならない課題ではないかというふうに存じております。  私ども企業導入に歩きまして、私の場合申し上げますと、尼崎から青森まで一年間に二百何カ所の工場をめぐりました。これは私どもの町もただ単なる工場があればいいということではなくて町の願望がございます。言ってみれば先端産業、そしてそれが農業振興にインパクトする、そういう願いを込めてのことでございます。  現在、私どもの町の中に会社が八社ございまして、今基盤造成中もございまして、九社になります。そうしますと、千三百名の就労が確保されるわけでございますが、その中で四〇%はUターンの方々であります。私ども工業誘致をする場合に、一つは町内から都市に出ていった若者のふるさとに望む就労の場の姿を全部データをとりますし、それからまた、企業に対する対応として、地元大学なり高専なりさまざま関連する企業協力体制承諾書を得て、それらの条件を付し、働く希望の若者の名前を添えて、一社一社回るわけでございまして、それは結果としてその実が結べばいいわけでありますけれども、実は大変でありまして、全国町村長、そういう意味では今最大課題として全国を走り回って、おらが町に工業導入という課題に取り組んでおるところだと存ずるわけであります。  それから、農業の面につきましては、私どもは二千八百世帯の町でございますが、二千戸の農家がございます。どうしても地域の永続する産業として二五%の純然たる専業農家をつくり上げるのが地域の共同の課題と思っております。幸いにして農林水産省のお力添えで国営開発をしていただきまして、現在一千ヘクタールの農地開発のさなかにございます。続々毎年百ヘクタール、二百ヘクタールの農地が出ておりますが、これについてはすべて農業生産法人、目指すものは企業的農業、言ってみれば他産業並みの報いられる農業をつくろうということで取り組んでおるわけであります。このような企業的産業としての農業経営の場合に、地域にある企業経営というものは単なる企業経営ではございませんで、一つのインパクトを与えまして相互補完する中で農村に新しいいわゆる産業としての農業産業としての豊かさを形成する素地をつくりつつあるわけであります。  したがって、お願い申し上げたいのは、農業に生きようとする町すべてがどうしても農工一体の中に地域産業の再編成をなさねばならない時期にあろうかと存じます。したがって、それがためには農村は挙げて工業という新しい産業分野に対する諸条件と、今次法案改正にありますように、流通形態に対するいろいろ条件整備までもしていただくことが必要かと存じます。そういう意味で、今次の農工法改正は当を得たものであり、地域に生きる者として大きな期待を申し上げておるところであります。  以上申し上げて、以後御質問にお答え申し上げたいと思います。  どうもありがとうございました。
  5. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) どうもありがとうございました。  次に、池田参考人お願いいたします。池田参考人
  6. 池田齊

    参考人池田齊君) 全国農業会議所池田でございます。  本日は、私、農業団体に所属しておりますので、農業団体立場から、今ここで御審議が進んでおります農村地域工業導入促進法改正につきまして、この法律農業構造改善を進めるという上からも、また農村地域活性化のためにもぜひひとつ速やかに成立するということをお願いいたしたいと思うわけでございます。  以下、その理由等につきまして若干申し上げたいと思います。  ここ一、二年、御案内のように急激な円高農産物貿易摩擦、非常にこれ激化しておるわけでございまして、そういう環境の中で農業農村はまさに激動の中にあり、大きな転換期を迎えておるのが実情であると思います。円高のために農産物内外価格差が非常に拡大し、それも一つの材料として世界各国から大量の農産物輸入され、今ちまたにあふれているというのが現状ではないかと思います。  そういう中で、御案内のようにアメリカは、現在、牛肉、オレンジの輸入全面自由化ということを強硬に迫っておりますが、この問題はついに二国間の交渉がまとまらないで今ガットに提訴されておる、こういう状況でございます。また一方、ウルグアイラウンドが始まっておりまして、農産物の新しい貿易ルールづくりというものが日本の将来の農業にどういう影響を与えるかというような問題につきましても深く心配をいたしておるものでございます。  翻って我が国農業を考えますと、釈迦に説法でございますけれども、今農業者は全水田面積の三分の一、七十七万ヘクタール、実質的にはもう八十万を超えておりますが、そういう転作を余儀なくされており、それに忠実に今取り組んでおる最中でございます。しかし、輸入農産物に押されまして転作作目というものは一体何があるのかという問題に悩んでおるというのが実情でございます。また一方、東京一極集中と申しますか、過疎、過密の状況もさらに進んでおるわけで、農村地域農業の停滞、地場産業の不振などで全く活気を失うというような状況でございます。私ども農業会議所の調べにおきましても、北海道東北九州、これは我が国食糧基地とも言える地帯でございますが、御案内のように、こういう地帯は地価が今下落をしつつある姿でございます。そういう中で、農業担い手はだんだんと減少し、高齢化が進むというような状況でございます。  こんな農業農村の危機的な状況をどう打開しながら、農業国際化が進むという中で生き残るということをどう考えるかということが当面した、また今後の最大の問題でございます。しかし、我が国農業は、特に土地利用型農業が非常に弱いわけでございまして、その体質をどう変えるかということが喫緊急務になっておる。このことは規模拡大等を通じまして、農業産業として確立する構造政策、これをもっと加速するということが当面最大の大事な問題ではないかと思います。そうして、経営能力の高い農業者を育成いたしまして、そしてこれらの人たち我が国農業の大半を占めていくというような将来の農業のビジョン、そういうものをつくり上げることが極めて喫緊急務になっておるというふうに私は考えるわけでございます。  そのためではございませんが、農業会議所も二十数年前から土地と人ということを農政の柱に据えまして、農地流動化による担い手への土地の集積、産業として自立できる農業経営者の育成に全力を挙げて今日までまいりました。構造政策中心は、私は何といっても農業生産基盤整備、これが基本だと思います。しかし、それと並行しながら、一方において農業経営規模拡大を図るということでございます。この経営規模拡大を図るというためには、農地流動化が必要でございますが、これは今所有権の移転もございますけれども、どちらかといいますと、賃借権の問題の流動化、これが基本であると思います。その場合に一番大事なのは、地元で安定した就業機会が余りないということがやはり流動化を妨げる一つの大きな原因になっているというふうに思うわけでございます。  全国農業会議所が、全国の三千三百の農業委員会対象に五十九年実施いたした調査がございますけれども、この調査の結果は、流動化が進まない理由として、農地に貸した人が他産業就業機会が少ないということを挙げた農業委員会がかなりあるわけでございます。北海道ではその一三%、東北では二二・二%、また九州では一三・七%、こういう数字がございまして、やはりこの就業機会農村にあるということが土地流動化一つの大事な要素になっておる。しかも、今申し上げました三つ地域は、これから我が国食糧基地としての大きな役割を担当する地域でございます。  こういうような意味におきまして、この昭和四十六年に制定されました農村地域工業導入促進法は御案内のように税制、金融の特別措置で支えられている法律でございますが、現在まで約四千二百の企業農村地域導入されております。そして、二十六万八千人の雇用が創出されておる、そのうちの八割が地元市町村または周辺市町村からのいわゆる地元雇用であるという統計が出ておるわけでございます。そういう意味におきましても、この導入法は四十六年以降の施行の姿の中で農村地域活性化農業構造改革にある程度の意味を持ったということは言えると思いますが、先ほど申しましたような我が国の客観的な環境の中で、さらに雇用の創出を積極的に進めるためにどうしたらいいか、こういうことが今後の構造政策推進あるいは農村地域活性化にとって非常に大事な問題になってきたというふうに考えるわけでございます。  この法律を活用して、非常に大きな成果を上げた一つ事例を申し上げておきたいと思います。これは熊本県と鹿児島県の県境にある町でございまして、過疎がどんどん進んでおるところでございます。そこの町長さんのお話を私聞いたわけでございますが、この導入法を活用いたしまして、地元雇用を安定させるということで積極的に二つの大きな企業導入した。一つは、電機関係日本一流企業で、IC等先端部品をつくる会社でございます。しかし、ここは大体女性中心とする企業で六百人ほどの女性雇用する、こういう企業のようでございます。それからもう一つは、自動車の一流メーカー部品をつくる工場、これは男性中心とする企業である。女性中心とする企業男性中心とする二つ企業を非常な努力を重ねてこの導入法にのせながらこの町に導入した。それ以来この町の過疎化がだんだんととまって、今ではこの町の人口が逆に若干ふえ出したということを聞いておるわけでございます。  そういう町というものは、熊本県の県南の四十カ町村の中で唯一の町である。いかに農村工業導入法がそういう問題に役立ったかという一つ事例ではないかと思います。もっとも、この町は基盤整備を、いわゆる構造改善事業その他を活用して九十数%完了しているというような条件もあり、そういう中でこの工業導入が契機となっていわゆる専業農家がふえた、そういう数字もあらわれておるわけでございます。そしてまた、専業農家規模拡大してきた。いわゆる兼業が極めて安定して雇用の場を持った、こういうことではないかと思います。  そういう魅力のある農業が進んでいくという中で、いわゆる後継者の確保というものの心配がだんだんなくなってきた。しかも、先ほど申しましたような二つの違うタイプの企業が積極的に導入されたというようなことで若い女性が町から出ていく現象がとまってきた、そのことがまた村の青年の心の安らぎのもとになってきた。こういうようなことで、いわゆる世に言う花嫁飢饉というものがこの町では解消した、こういうようなことのようでございます。  ただ、この町長さんはいろいろ考えまして、企業導入の際に導入してもいいけれどもあなたの町の近くにゴルフ場があるかというような話があったそうでございます。これはどうしてもゴルフ場をつくらにゃいかぬというようなことで、この町には企業導入の前にゴルフ場を誘致したというようなことで、企業の幹部だと思いますが、それらの方々もその町に住みながらレジャーもエンジョイできる。いろいろなことを含めながらそういうことをやるということを聞きまして、これはまさに工業導入法が本来的にねらった法案の趣旨に合致した非常にすぐれた事例ではないかというふうに私は考えております。  しかし、現在の工業導入法で各市町村導入されております問題は、確かに地元雇用には役立っておりますけれども、このようにこの法案がねらった最終目標まで達しておるようなところは少ないのではないか。言うならば出かせぎがなくなってきたとかそういうような程度にとどまっているというようなことがあるかと思いますけれども、これからはそういう問題まで含めて、法案の最終的なねらいが構造政策推進につながっていく、こういう問題に発展することを私は念願するわけでございます。  そういうようなこともございまして、今回この国会に四省の提案によりましてこの法律の一部を改正し、そして対象業種に新たに四つの業種を加える。道路貨物運送業倉庫業こん包業卸売業、これはまさに時宜に適したものであると思います。もっともっと本当はさらに業種拡大する ということが大事かと思いますけれども、今日この法案が少なくとも雇用機会拡大につながるというようなことで、農業会議所もこれの早期成立の要望を既に出していることは御案内のとおりであります。二次産業中心としたこの立法が三次産業を含めながらやっていくということは、まさに時宜に適した問題ではないかというふうに考えるわけでございます。  ただ、最後に一つ申し上げておきたいことは、こういう情勢の中で構造政策というものは、これができればそれで一つ役割を持ちますけれども、それで十分であるということにはならないと思います。いわるる農用地利用増進法などの農地三法の一層の推進、また近く恐らく改正を要するでありましょう農業者年金制度の問題、あるいは今回は国会提出をあきらめましたけれども構造政策推進のための新しい立法、そういう一連の構造政策推進施策を総合的かつ一体的に運営するということが大事であると思います。そういうものの一環としてこの農村工業導入促進法改正を位置づけ、そしてその運用をされるということが非常に大事であると思います。また、農村地域活性化をいかに図るかということは関係者がひとしく非常に頭を痛めているところでありますが、今回の法改正工業農業のバランスのとれた地域経済の確立の呼び水となり、今後農村活気がよみがえるということを期待するものでございます。  いずれにいたしましても、私はこの法案成立を一日も早くということを切に希望いたしまして、私の意見開陳を終わります。  ありがとうございました。
  7. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) どうもありがとうございました。  次に、向井参考人お願いいたします。向井参考人
  8. 向井重郷

    参考人向井重郷君) ただいま御指名をいただきました全日本トラック協会理事長向井でございます。  本日は、法案の御審議に際しまして、参考人として意見を申し上げる機会を与えていただきまして、ありがたくお礼を申し上げます。また、日ごろからトラック運送事業の運営につきましては、深い御理解と御指導をいただいておりますことを重ねて改めてお礼を申し上げたいと存じます。  ただいまは、佐藤さん、池田さんの方からは農村地域立場からいろいろ切実なお話がございました。私は、これから農村の方にあるいはこういう法律によって導入されるべき事業という方面からのお話を申し上げてみたいと存じます。  皆様が既に御高承のとおり、トラック輸送は今や国内貨物輸送のうち輸送トン数では九〇%、それから輸送のトンキロ、トン数とキロ数でございますが、これを掛け合わせたものにおきましては五〇%という比重を占めまして、一般消費者に対する宅配便あるいは引っ越し輸送、それから産業活動に不可欠な資材輸送等、我が国産業経済の大動脈として重要な役割を果たしておることは御承知のとおりでございます。トラック事業の昭和六十一年度における輸送トン数は十九億二千九百万トン、輸送トンキロでは千四百八十一億トンキロでございまして、いずれも対前年比でそれぞれ二%、八%、わずかではございますが増加をしておるところでございます。国内の輸送量は全体として減少しておるのでありますが、トラックだけはほんのわずかでありますがふえているというのが実情でございます。  トラック輸送の中で、その中心をなしておるものはトラック運送事業でございます。私どもの団体の全日本トラック協会は、そのトラック運送事業者をもって組織する団体でございますが、この私どものトラック事業は定路線により積み合わせ輸送を行う路線トラック事業というもの、これは宅配便などをやっておるので御承知のとおりでございますが、それと一定の区域を限ってやっておる区域輸送、地場輸送とも言っておるのでありますが、区域トラック事業、この二つに大別されるわけでございます。  それぞれの構成について申し上げますと、路線トラックは事業者数が三百三十六社、わずかでございます。系列化や再編成等がだんだん進んでおりまして、これはどうやら減少の傾向にございます。それから区域トラック事業の方は三万六千九百二十六社、これはつい先ごろの統計でございますが、日によってちょっと出入りがあるかもしれません。増加傾向でございます。その特徴としますところは、何としてもやはり労働集約型の産業であるということと、燃料集約型の産業であるということでございます。どんな小さなトラックでも大きいトラックでも運転者がなければ動きませんし、それからまた燃料がなければ動かないというようなところに大きな特徴を持っておるのが私ども産業でございます。それで、路線トラックにおいては八三%、また区域トラックにおいては九九・六%という多くのものが中小企業で占められておりまして、極めて零細性の強い産業であるということを申し上げることができるわけでございます。  そして、最近におきまするところのトラック事業を取り巻く環境は、比較的好調な内需に支えられまして荷動きそのものも上昇傾向にありますが、基本的な流れとしましては経済のソフト化あるいは産業構造の変化、いずれも非常に急激に変わっております。小口少量貨物の多頻度輸送あるいはちょうどよいときに荷物をそのまま持っていくような、ジャストインタイム輸送ということを言っておりますが、それなど質の高い輸送サービスの提供が求められまして、トラック事業経営には時代に即応した効率的な経営が望まれておるところでございます。  さて、中小企業が九九・五%を占めるトラック業界の近代化につきましては、事業協同組合の組織化と共同事業を全国的に展開し、貨物自動車ターミナル等集団化の事業、トラック団地というようなことも言ってございます。それから貨物自動車運送事業所共同利用事業、これは各地に見られますが、トラックアパートというようなことも言ってございます。共同施設事業等において多くの成果を現在上げておるところであります。しかしながら、最近における物流環境の著しい変化、多様かつ高度な輸送ニーズに対応するためにはさらに努力が必要でございまして、昭和六十二年度よりトラック運送事業経営の戦略化構造改善事業に取り組んでおるところでございます。その中身といたしましては、経営方式を改善すること、それから共同マーケティングを行うこと、情報をシステム化して大幅にこれを利用すること、またその基盤となる人材の開発を推進すること、この四つの柱を中心に事業を行ってまいりたいと思っているところでございます。  次に、トラック事業におきまするところの労働力の確保は最も重要な問題でございます。労働集約産業であることはさっき申し上げましたけれども、トラック運送事業の事業所は五万五千五十九カ所、お手元にある資料の中にもそういうふうに出ておりますが、五十六年以降一四・一%の増加を見、一方従業員の数は百十二万九千五百八十六名、これも資料に載っている数字でございます。五十六年以降一七・四%の増加を見ておりまして、比較的高い増加率を持っておるわけでございます。しかしながら、最近の風潮として、単純労働を忌避する傾向にあり、しかもトラック事業の場合は長時間労働などが企業のイメージとして定着しておりまして、人材の確保がなかなか困難になってきておるというのが実情でございます。さらに、本年四月、労働基準法の改正が行われまして、労働時間の短縮に向けて目下トラック業界を挙げて対応を図っておるところであります。労働集約産業である当業界に新しい労働力確保問題が大きく関連してくるということになっているわけでございます。  さて、次に、我が国の経済構造が知識あるいは情報、サービス中心型へ移行し、さらに多様化、高度化する輸送ニーズ、荷主さんの輸送ニーズにこたえるため、きめの細かい輸送システムを構築する必要がありまして、このための輸送の拠点となる配送センター等物流施設の整備が緊急の課題となっておりますが、都市部とその周辺地区においては地価の高騰や交通混雑等数々の問題に直面しておるところでございます。トラック事業におきましては、これまではトラック事業者がみずからの努力によって、あるいは協同組合による共同施設として用地を取得し、施設整備推進してきたところでございますけれども、以上述べたような状況などによりまして、交通網が整備されつつあるという状況を踏まえ、まとまった取得しやすい土地があり、さらに十分な労働力が確保できる適当な農村地区への立地を要望する声は極めて強くなっておると申し上げて差し支えないところでございます。  一方、トラック事業の立場から地域活性化事業に参画し、例えば一村一品運動など地域ぐるみの新しい需要開発に携わるケースが多く見られてきておるところでございます。さらに六十一年八月に改正されました市街化調整区域における開発許可制度の運用につきましても、これを活用して市街化調整区域にトラック事業施設を整備しようとする要望が多く、このことから推測いたしまして農村地区へのトラック事業の立地意欲は相当強いものがあると申し上げてよろしいかと存ずるのでございます。  今般、農村地域工業導入促進法改正し、法律に基づく導入対象事業に倉庫業ほかの方々とともにトラック事業も加えていただき、税制あるいは金融上の優遇措置をとっていただければトラック事業による地域活性化への貢献が容易になりますとともに、国民生活に密着したトラック輸送サービスの充実が促進できるものと確信する次第でございます。  以上、トラック事業の立場からのみ物を申したのでございますけれども、終わりに臨みまして、そういうようなわけでございますのでこの法律は私どもにとってはまことにありがたい法律でございます。一日も早く可決成立を見て実施されますことを心から念願いたす次第でございます。  以上で参考人としての意見の陳述を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  9. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) どうもありがとうございました。  次に、飯島参考人お願いいたします。飯島参考人
  10. 飯島貞一

    参考人飯島貞一君) 私、財団法人日本立地センターの常務理事を務めております飯島でございます。  国の過疎、過密をなくしていくために一つの大きな条件でございます工業の地方分散、それから地域開発の計画、そういうことをやっておる団体でございます。委員長の御指名によりましてお三人の参考人に引き続きまして意見を述べさせていただきたいと思います。時間が追っておりますので、簡単に結論から先に申し上げたいと思います。  この委員会審議されております農村地域工業導入促進法の一部を改正する法律案につきまして、私は賛成の意を表するものでございます。  今回の改正点の要点は二つあるかと思いますが、その一つ工業以外の業種を追加することにあるかと思います。工業立地に関連があってこれを支援していく産業、すなわち道路貨物運送業倉庫業こん包業それから卸売業でございますけれども、この業種の追加についての意見は賛成でございます。  その理由でございますが、私、昭和四十六年にこの法律が最初に国会審議をされておりますとき、昭和四十六年の五月十九日でございますが、衆議院の農林水産委員会参考人として呼ばれまして意見の陳述をいたしております。その私が出席しました委員会議事録をちょっと読み直してみたわけでございますが、委員会での御質問に対しまして、工業団地の意義についてでございますが、次のようにお答えをしておるわけでございます。日本では工業団地というとすぐ製造業が入るものをいっておりますけれども、これは世界的に見まして製造業だけで団地をつくっても機能的にだんだん非常に問題が出てくるだろう、そこには流通施設であるとかトラックターミナルであるとかストックヤードであるとか、こういうものが次に必ず必要になってくるということをこの議事録で言っておるのを読み直してみて私も気がついたわけでございまして、今回の業種導入の必要性を私は当時から述べておりまして、実は大変我が意を得たりというような感じが今しておるわけでございます。そういう面でこの業種の追加について賛成をいたすわけでございます。  工業団地も百ヘクタール以上の大きいもの、五十ヘクタール、それから十ヘクタール以下、いろいろ大きさによって場所によって種類というか、ございます。それぞれの地域でその大きさによっての役割を果たしておるわけでございますが、そういう大きさの役割を果たす中で、工業以外の業種も入れるということは非常に重要になってくるかと思います。さらに、工業は大変厳しい情勢の中で合理化を進めておりまして、雇用力がだんだん下がってきておりますが、流通業とか卸売業雇用力が大変多うございますので、そういうものが入ってくる、そういうものがあるからさらに工業が入れるという形になるのかと思います。  それから次に、広域的に物を考えて、計画を実効あらしめるという改正につきましても、今全国の計画についても広域市町村計画とか定住圏とか、当然これは考えなければいけない問題かと思います。国土全体を結ぶ高速交通体系も非常に重要でございますけれども地域の域内交通体系というものも非常に重要になっておりまして、こういうことが通勤範囲を広げてだんだん地方へ産業が浸透していく、こういうふうになるかと思います。ただ、四全総で一日行動圏ということを考えておられますけれども、まだまだこれからで、域内交通の整備もまだ十分ではないということがございますし、特に僻地も抱えておられます農村地域工業導入、これにつきましては、やはり幾つかの市町村が共同してやる、計画も共同してつくっていく、これが非常に重要かと思いますので、この点についても賛成をするわけでございます。  昭和四十六年にこの法律成立いたしまして十三年ほど経過しておりますが、この間先ほど池田参考人がおっしゃいましたように、大変雇用がふえております。私もこの制度を効果があったと考えますけれども、さらに、農工法がねらっている成果を促進させるためにもこの改正が必要かと考えております。特に、公共事業が国の財政の悪化からゼロシーリングが続いたりして、全国の高速交通体系もこれからだと思っておりますので、そういう点も含めて、さらにこういう新しい制度改正というものが農工法の成果を促進する一つの手段になるというふうに考えるわけでございます。  簡単でございますが……。
  11. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) どうもありがとうございました。  以上で参考人方々の御意見開陳は終わりました。  それでは、これより参考人方々に対し質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  12. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 参考人の皆さん、きょうは大変貴重な御意見をどうもありがとうございました。  私は、社会党の稲村と申します。  それぞれ持ち時間というものがございまして、持ち時間の範囲内ということで大変短うございますので、大変失礼でございますけれどもお一人一問ずつお伺いをいたしまして、もし時間が残ればさらにまたどなたかに御質問申し上げるというような形にさせていただきたい、こんなふうに思います。どうぞひとつよろしくお願いをいたします。  最初に、佐藤参考人にお伺いしたいのでありますが、非常に大きな御努力と御活躍をされているということに敬意を表するわけであります。それだけに、地方自治体の責任者というお立場でいろいろな御苦労がおありになると思いますけれども工場立地と産業立地のために周辺の条件整備をいろいろしなければならない。それにはまた地方自治体がいろんな形で、例えば道路一つにいたしましても言ってみれば公共投資をしていかなきゃならない。財政的なかかわりとの間でいろいろと御苦労をなさっているのではないかと思うのでありまして、その辺の問題をひとつお聞かせいただければ大変ありがたいというふうに思います。  次に、池田参考人にお伺いしたいのでありますけれども規模拡大をしなければならないということはよくわかるわけでありますし、私どももそのことを理解しているつもりでありますけれども、しかし、例えば稲作でいきますと、北海道規模に本州の方の規模が仮になったとしても、北海道で今大変厳しいという状況の中にありますね。そうすると、何倍にもなってもやはり厳しいという状況が続くんではないだろうか。規模拡大で合理化し、メリットを出していこうという企業努力はしなきゃならぬけれども、同時に、そうした壁が我が国農業にはあるんではないだろうか、そんなことを気にしております。これは大変大きな課題でありますが、基本的なお考えをできるだけ簡単にお答えいただければありがたいと思います。  向井参考人に対しましては、トラックも中小を中心にして共同化などの御努力をされている、こういうことであります。成果が上がっているというお話も聞きましたが、地方ではどちらかというと運送業は過当競争ぎみになっているところも結構あるんじゃないだろうか。その辺のところを今後どういうふうにしていかれようとしているのかをお伺いしたいと思います。  それから、飯島参考人に伺いたいのは、域内交通体系の問題を言われましたが、これも通勤圏の問題というのは確かに非常に大きな問題でありますが、地方へ行けば行くほどこの辺に非常に問題があると思うのでありまして、それこそどういうふうに解決をしなきゃならぬかというのは大きな課題だと思うんです。そこで、何かアイデアがありましたらお聞かせをいただきたい、こんなふうに思います。
  13. 佐藤守

    参考人佐藤守君) 一つは、農村地区どこでもそうでございますが、用地取得の資金というのは、いわゆる公共用地取得の法があるわけでございまして、私どもの場合には一関地区の土地開発公社、これから資金を導入いたしまして公共用地を形成し、そしてその代金をもって支払っていくという手順になっております。  それからもう一つ地域の経済の実態として御理解いただきたいと思いますのは、私どもの町では昭和六十年に第一次産業に従事する者の就業者一人当たりの所得は百十万円になっております。それから、工場導入によってそこに働く方々のいわゆる所得は二百六十一万円になっております。それから、農村若者だれしもが願望します農協職員とか役場職員、いわゆるサービス業でございますが三百七十八万円になっております。このような地域における厳然たる所得格差の中で、農業の近代化とそして工場という中で地域の豊かさをつくるといっておるのが農村工業導入の願いなんであります。  以上です。
  14. 池田齊

    参考人池田齊君) 規模拡大問題は、基本的に農業の体質改善、国際競争力というようなものを含めながらこれから前進しなきゃなりませんが、今お話がございましたように、それなら、国際的に対応できる稲作を中心に考えた場合に一体どの程度までやればという、これは本当に難しい問題だと思います。  しかし、一方におきましてやはり国際市価の関係が、国際競争力で外国との対応もございますけれども、国内の消費者に対してできるだけ低いコストで安い米を消費してもらうということも一面大いに努力をしなきゃならぬと。しかし、それは常に限界があると思います。農水省等では都府県で五ヘクタール以上と、その辺を願望しておる、平均としてですよ。願望しておるようでございますが、なかなかそれには時間がかかると思います。少なくとも土地流動化を含めながら規模拡大をしていくということは、一面今日の国際化に対応する農業の姿から見ても、また、国内的には他産業との関連におきまして、産業としてどうにか農業も成り立つんだと、そしてコストを下げて安い米を消費者に送ると。その辺を含めてどこまでいくかという限界はございませんが、その努力は続けるべきである。  したがって、そういう姿の中での我が国農業の保護政策は、我が国農業の特性として国際的にも政府は訴えていく、我々農業団体もその方向で進むべきであるというふうに考えております。
  15. 向井重郷

    参考人向井重郷君) ただいま稲村先生からの御質問の問題は、実は私ども一番頭を悩ましておる問題でございます。  元来、トラック運送事業は極めて公共性の強い事業でございますので、事業の開始に当たりましては国の免許というものが要るわけでございます。その免許をやる場合には、やはり輸送の需要というものがありまして、それに対して見合うべき供給輸送力を設定するということを大原則にしてやっておるわけでございます。それが正しく行われておれば過当競争というようなことは少なくて済むわけでございますが、実際は経済は生きておりますし、輸送の需要そのものも日々刻々変わっているというような状況でございますので、どうしてもそこにお互いの競争というものが出てくるのでございます。  しかしながら、この問題は、一番困るのは料金の競争になることが間々あるわけでございます。他の事業者よりも安い料金で貨物を運ぶからというようなことになりますと、お互いにその競争を操り広げてまいりますと、これはもう従業員の給与その他にも直ちに影響しますし、自動車の保守というようなことにも影響が起こりまして、交通事故その他の問題にも波及するわけでございます。したがいまして、運賃も認可ということで政府の決めた運賃ということになっているわけなんでございますが、その間いろいろと競争が出ておる現状は事実であろうと思うわけでございます。しかし、こういうようなことになりますと、ついには共倒れをするというような悪い結果になりますので、おのずからその辺はお互いに事業者としての自覚を持ってやるようにということでございます。  具体的には、先ほど申し上げましたそういうところでこそ協同組合化、協業化また共同マーケティングであるとかいうようなことにどんどん進んでおりまして、いい方の例では協同組合によって共同集金というようなことにまでいって値崩れを防いでいるというような事例も多々ございます。  しかし、輸送の秩序ということは確かに大きな問題でございますので、今までのように、輸送というものが運送屋ということで、ただ単にトラックを提供して運賃を投げ与えていただいているというだけではぐあいが悪いのでございます。地域の特産物の輸送には、それぞれ本当の輸送の技術というものが伴ってくるわけでございます。工業製品には工業製品の、生鮮食料品には生鮮食料品のそれぞれの輸送の技術というものがありますので、むしろ荷主さんに対して積極的にトラック事業の方からノーハウを提供いたしまして、輸送というものを通じてその荷主さんの産業そのものに貢献できるようなぐあいに持っていくべきであろうということで盛んにやっているところでございます。  しかし、世代交代というようなものも特に農村地帯ではどんどん進んでおるところでございますが、特に若い経営者を中心にいたしまして、いろいろ研修というようなことにも力を入れまして、今御指摘のありましたようなことについてはなるべくこれを避けて、トラック事業が健全に発達するということは地域全体の活性化なり発展ということにつながるわけでございますので、そういうことをしたいということで、中央の私どもの団体も、また各県にトラック協会がございますが、各県のトラック協会も、また地方の末端の業者もそういうところに意識を持っていく。最近流行の意識革命、感性革命というようなものがそういうところに活用されるということを目下期待して仕事を進めておるというのが実情でございます。  今後とも、お気づきの点がございますならば御指摘をいただきまして、仕事を進めてまいりたいと存じます。
  16. 飯島貞一

    参考人飯島貞一君) お尋ねの域内交通体系について何かアイデアがないかということでございますが、大都市、地方都市でも大きな都市、これは都市からの放射状の道路とさらに環状の道路とが一体になって域内交通をしっかりしようというふうに進めておりますが、地方都市では環状線というのがまだまだ十分いっていない、これが問題かと思います。  建設省の方で広域都市計画というものをつくっておられて、これで進めておられるのだと思いますが、実は私、昭和六十二年の三月につくられました第四次の農村地域工業導入基本方針をつくるときに委員として参加したわけでございます。そのときにちょっと申し上げたことがございます。  それは、農村工業導入促進法によっていろいろ進めてきたけれども一つ非常に有効な手段があるではないか、それは広域農道というものがございます。私ども行ってみますと、今言ったように地方の町村を非常にうまく横につないでいる道路が大変多いわけでございまして、この効果というのは農工法を進めていく上にもっと重要視していいんではないかという意見を申し上げたことがございます。ですから、アイデアというほどのことはございませんけれども、広域農道が特に農村地域については域内交通体系の非常に重要な役割をだんだん果たしてきている、これを何とかもう少しうまく工業導入促進法の計画につなげていただけないかという意見を私ちょっと申し上げたことがございますので、ここで申し上げておきたいと思います。
  17. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 ありがとうございました。  それでは、もう時間もございませんので、池田参考人にもう一つお伺いをしたいんでありますけれども農地流動化の関係でいきますと、特に都市部が大きくなればなるほどみたいな感じがないわけではありませんけれども、その周辺の農地は比較的規模が小さくて兼業をやりながら維持していける、そういうような条件どもあるせいもありましょうが、宅地化されて壊廃していく部分を除きますと、経営体そのもので見ていくと、余り農地を手放さないという傾向がどうも強いような感じがいたします。要するに、言ってみれば都市部、つまり工業就労の場が集中的にある場所では逆に土地への財産的な保持の意識の方が高くなっていってしまって、流動化の方向への一種のブレーキになっているんじゃないだろうか、そんなことをちょっと心配するんですが、その辺どういうふうにお考えになっておりましょうか。
  18. 池田齊

    参考人池田齊君) 都市周辺の農地都市計画法で市街化区域と調整区域に分かれており、特に市街化区域あるいはそれにつながる調整区域等において御指摘のような問題は確かにあると思うんです。都市化をするのは市街化区域ですから、これはできるだけ計画が先行しながら宅地供給を農地が与えるという、これは基本的にその方向だと思いますが、しかし、地価の問題は農業側の責任ではないと私は思うんですね。地価が上がってまいりますと、どうしても資産的な考え方が強くなってくる。そこに一つのブレーキが起こることは事実だと思いますが、我が国としては、土地対策、地価対策をもっと根本的にやらないとその辺の問題は解決しないのじゃないか。  ただ、一言申し上げておきたいのは、そういう地域でも、面積は仮に大きくなくても立体的な農業をやりながら基本的に立派な農業をやっておる者もおるわけなんですね。これを宅地並み課税で追い出すというような問題につきましては私どもは賛成できない。ただ、基本的には市街化区域が宅地化の候補地でございますから、これは二十数万ヘクタールまだ余っている、農地があるというような問題はもっとその辺の整合性を持ちながら今後進めていく。しかし、基本的に立派な農業が行われている、そういうものまで税金で追い出すというようなことはぜひ避けていただきたいというふうに考えております。
  19. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 ありがとうこざいました。  もう時間がないので、終わります。
  20. 鈴木貞敏

    ○鈴木貞敏君 私、自民党の鈴木貞敏でございます。  きょうは、本当に御苦労さまでございます。いろいろ貴重な御意見を伺わせていただきまして、大変ありがとうございました。  日本産業構造全体が、一次産業がどんどん減っていく、二次産業はハイテク等を除いて他の分野は横ばい、三次産業はどんどんふえていく。これはいわば常識としてそういう構造でどんどん変わっていくというふうな格好であるわけでございますが、そういう中で、先ほど来のお話しで、今回の法案につきましてそれぞれの立場で御賛成と、こういうふうな御意見でございました。私も、四十六年この法律ができましてから今までに何らの改変なく、時代の非常に大きな変化にかかわらず一度も改正がなかったというのはむしろ遅きに失したのじゃないか。先ほど飯島参考人のお話しにもございましたが、そんな感を深くしながら御意見を聞いておったわけでございます。  いずれにしましても、そういう中で、この法律の趣旨とするところが雇用を確保するということとあわせて農業構造を改善していく、こういった目的を二つの柱としてやっていくということであろうと思うわけでございます。  佐藤参考人は、同じ東北人としまして非常に感銘深く聞いたわけでございます。本当に陣頭指揮で二百数十社の会社をお回りになる、大変な御苦労でございます。私、聞き漏らしたのかもしれませんが、非常に一般的な、町長さんとしての、首長としての立場での御苦心というふうな、非常に幅広い立場で、高い見地からの御意見であったわけですが、具体的に町として誘致された企業、この企業の種類がどんな種類で、女子型、男子型労働いろいろあるわけでございますが、今非常にうまくいっているのかどうか。そしてまた、将来さらにそれに付加してどういう構想でどんな企業を誘致したいのか、町としての農工一体といいますか、農工対話の中でのこれからの構想等含めまして、いろいろ御苦労の話もいただきましたが、あわせてこれからの御苦心なり、そういった漏れた話を伺えれば幸いであると、こう思うわけでございます。  それから、池田参考人でございますが、いろいろ本当にうんちくの深いお話を伺いましたが、先ほど来稲村委員の御質疑にもございましたが、農地規模拡大ということが言われるわけでございますが、素人の立場からもいろいろわからぬというか、疑問に思っている点があるわけでございます。先ほど申し上げました、農業就業人口はどんどん減っていくということがある面においては非常にいいことだ、望ましいことだ、あるいは近代化のバロメーターであるというふうな考え方、こういうのが一部やはりあるんじゃないか。それは好ましくないという意見もあろうかと思いますけれども、やはり趨勢としてはやむを得ない、こういうふうな意見がいわば大方かなというふうに私は受け取るわけでございます。  そういう考え方が基調にあるということは、農家就業人口、いわゆる農家の子弟で農業に従事しない者がどんどんふえていく。したがって、農家戸数が減っていく。したがって、その残った農家で、そういう人たち農地は集めて、おのずからそこに規模拡大されていくという期待があることが前提ではなかろうか。ところが、そういうふうな農家の学卒者の就業の減少あるいは戸数の減少と比例してといいますか、それに対応した格好での規模拡大というものは必ずしも進んでおらない。日本の歴史的な、明治時代以来の地主制下の小農制から、戦後農地改革でいわゆる自作制の小農制に変わった、こういう体制の中でそうちょっとやそっとやっても構造改善というのは難しいのだということかもしれませんけれども、先ほど来のお話では、雇用の場が完全でないために規模 拡大は非常に阻害されておるというふうな一つのアンケート等の御紹介もあったわけでございますが、そういう面に関連して、さらにそれ以外の規模拡大を阻害する要因がいろいろあるのじゃないかというふうな感じもするわけでございますが、その辺の御意見を伺わせていただければ大変ありがたい。  それとまた、日本人の労働観というのはこれからどういうふうに変化していくんだろうか。外国人の単純労務者の問題等もいろいろ論議されておりますが、ホワイトカラーあるいはブルー労働といいますか、そういう面での労働観というものが農工一体の中でうまく調和していく、これの一つの将来の見通しといいますか、土に生きるというか、本当にとうとい農民魂というものが将来培われていく、永遠に続いていくということを私は期待しているわけでございますけれども、そういう面での勤労観、労働観、こういった面についての池田参考人の専門的な立場からの何か御私見あればお伺いしたい、こう思うわけでございます。  それから、向井参考人でございますけれども、いろいろ路線、業者の種別等もお伺いしたわけでございますが、道路貨物運送業は零細企業である、こういうふうな格好でございますけれども、将来トラックターミナルとか営業所とかそういったものがいろいろ農村地域にもつくられていくわけでしょうが、じゃあ今まではどういうふうにアクセスをやられておったのか。指定にならなかったために、隣のカキの実は赤いじゃございませんけれども、大変不利な立場でいろいろやられておった。いわばこの工業団地でしかも流通関係のこういったものが除外されておったことによって相当遠いところからアクセスをせぬといかぬ、こういう実態で、のけものにされておったことによって相当いろいろつらい思いをされておったのかな、こういうふうな感じもするわけでございますけれども、今までの御苦労、これからのそれに伴う御希望といいますか、そういった点を伺えればありがたい。  それから、飯島参考人でございますが、農村地域工業促進法に関連しまして、幅広い見地から日本の立地問題を検討されておる、指導されておる立場から、農村以外のハイテク、頭脳立地、情報産業、いろいろの面で、他の分野とこの農村地域との工業等の誘地、これとの関連で、これからの農工一体の面を促進するためにこうあるべきだ、こうやってほしいというふうな面の御意見があればお知らせ願えればありがたいと思います。  よろしくお願いします。
  21. 佐藤守

    参考人佐藤守君) それでは申し上げます。  私ども農村工業導入の流れを見ておりますと、二つの区切りがあるのではないかと見ております。  いわゆる昭和四十年代を中心とする農村工業導入は、どちらかといえば、出稼ぎ、それよりよりベターないわゆる工場誘致というその願いは、農業所得の補完というのがそのねらいであったと思います。しかし最近ではそうでございませんで、先ほど申し上げましたとおり、地域産業としての立地、育成という観点がその内容的になってきておるというふうに見ております。そしてやはり、職業選択でございますので、農村といえども職業選択の自由と願いがあるわけでございまして、これをすべて一自治体が満たすわけにはまいりません。したがって、町村自治ののりを越えて、それぞれの地域に自分の志向と合致する職種を求めて交流しておるというのが現況でございまして、その地域内の閉鎖性の中で工場があるというものでは決してございません。したがって、私どもの現在応募しておる会社なんか見ておりますと、半数以上は近隣町村から来ておったり、また町の若者が隣の町へ行ったり、そういう中で、限られた条件ではございますけれども、いわゆる職業選択の願いを生かしながら農村工業が動いておるというのが現時点だろうと思うんであります。  それから、この中身でございますが、最初はどちらかといえば女子型の、縫製関係が多かったわけであります。それがだんだん産業としての定着性、将来性、それから農業に対するインパクトという問題がありますもので、私どもといたしましては、今やっておりますのはまず基本的にはパーツ、いわゆるアッセンブリーではございませんで、製造業というものがより経済性にたえ得るということと、それから経済社会の変動に対してノーハウを持っておるというより安定性に思いをいたしまして、そして、困難ではありますけれども全力を挙げていわゆるパーツ産業というものにその観点を絞っております。  それから二つ目には、可能な限り先端産業といわゆる農業、他産業とのインパクトを考えまして、そういう方向で努力してまいりました。それが私どもの町の歩みでありますと、当初は繊維工業、そしてある段階では電機産業、それから先端科学、そして現在志向しておりますのはバイオテクノロジーそれから食品加工、このように方向が変わってきておりまして、現在は、みずからの食品工場の設置、これは国土庁の指定によりますいわゆるハム・ソーセージの加工工場の設置とか、それから生命産業、バイオ関係という方向に総力を挙げておるところでございます。したがって、最終的には農村工業も生命産業という農業の共通性の中で地域の発展をつくろうという戦略と願いを込めて取り組んでおるところであります。  以上であります。
  22. 池田齊

    参考人池田齊君) 非常に今難しい御質問等を伺いながら、意見を申し上げることが非常に大変だと思うんですが、これからの我が国農業農村社会の姿ということを整合性を持ちながら展望を考えていきますと、お話しのように、国際化の中の日本農業産業として確立する、どうしても規模拡大はこれから大いに推進しなきゃならぬ。そうすると、確かに就業人口が減るのは当たり前ですね。ただ、そのことが兼業を追い出すということじゃなくて、兼業農家はやはり、まあレジャーとは言わぬでも、自分のところの食い物ぐらいは自分のところでつくる、そういう形で、今四百何十万戸ある中で圧倒的に八割、九割が兼業である、この数はやはり残ると思いますし、また農村の秩序を守るためにもそういうものが存在をする、これはもう当然肯定していいと思うんです。  ただ、本気に農業をやるものは規模拡大し、産業として農業を打ち立てていくんだというならば農業政策は産業政策としてこれからは追求していく、これは当然この国際化の中ではやるべきであるし、国内的な産業の構造の中でもそれは推進すべきである。しかし、一方におきまして、いわゆる二種兼的なものですね、しかもそれは飯米農家的なもの、あるいはレジャー農家的なもの、これはもうまさに他産業の中で十分に生活の根拠を持つことになるわけでございますから、工業導入法がそういう側面を含めながら進んでいくということが私は一つの姿ではないかと思います。  しかし、そういうにもかかわらず、今担い手の問題が非常に大問題になってきている。これをどうするかという問題ですが、これはやがて世代交代の時期もまいりますが、そういうことで望ましい方向に規模拡大を通して基本的に兼業は安定をする。そして農業はそれらの人々に任せるというような姿が出てくればやがて、今四千人しか学卒で新規就農はおりませんが、魅力があればやはり農業をやろうというような者も残ってくるんではないか。  また、私が特に申し上げたいのは、これからの産業として農業を確立する場合には、農家の跡取りが必ずしも農業をやる必要はないんじゃないかと。日本の全体の国民の中で農業に魅力を感じてやりたい者、これは言うなれば、農業以外の中からも農業をやる人をどうやって受け皿をつくりながらやっていくかということも一つの方法ではないかと思います。もう二十年前から私はそういう主張をしておったんですが、ようやく政府におきましてもその辺の問題を政策としてもやろうじゃないかというので、農業会議所に新規参入導入センターというものがございまして、かなりたくさんの農業をやってみたいという者が非農家の中に出てきていることは事実でございます。ただ、これはよほど注意しないと、何か土地ブローカー的な感覚を持った者まで大分来ますので、やはり本気でやるかどうかということを十分テストをして、訓練をして、しかもそれに対する受け皿を農村側がどうつくるか、こういうことも今後の担い手対策の一環として取り上げる時期に来ておるのではないか。  それから、先ほどお話しのように、農地改革で自作農創設をした。それが日本農業の再生につながるという考え方でスタートを切ったわけでございますが、世の中の流れがこういうふうに変わってまいりますとその辺が今ネックになっておる。所有権の移転で規模拡大はもちろん限界はありますけれども賃借権流動化というものを含めてやっていく、これが六、七年前にできました農地三法の精神だと思うわけです。これが今、二十一万五千ヘクタールぐらいのストックが賃借権流動化でありますが、この程度じゃどうしようもないんです。世代交代の方もにらみながら、さらにこれをどう加速するか、そしてそのストックをどんどんふやしていくというような問題を万全を期してこれから進めていく必要があるのではないか。したがって、先ほどもちょっと都市地域で申し上げましたが、どうしても一方に財産として保有するという気持ちがありますから、賃借権で、貸し借りの関係は農地法の例外規定がございますので心配はないのだ、ようやく最近その辺のことが徹底をしてきている。こういうことで、今までは貸したらもう返ってこないんじゃないかというような心配もあったようでございますが、ようやくそれが農地三法がもう大分たちますので、これを加速するというようなことではないかと思います。  最後に、労働観という、これは非常に難しい問題ですが、農業も筋肉労働は伴いますけれどもかなり科学的になっておりますし、今田値えなんかもちろんございません。いわゆる勤労的なそういう考え方と近代農業というものは私は両立すると思います。特に最近の青年の中に——青年農業会議所ども私は世話してつくっておるんですが、こういう連中は、勤労をいとうんじゃなくて、勤労を含めながらさらに頭脳労働、そういう一つの新しい価値観を含めた労働観が確立しつつある。将来の農業はそういう形でやっていけば、言うなれば過去に言われた勤労意欲を失うのじゃないかというようなことはないと私は思います。そういう感覚でいくべきではないか、こんなことを考えております。
  23. 向井重郷

    参考人向井重郷君) 今まで、実はこういうような法律がなかったために非常に苦労しておったのではないかと、ありがたい御指摘でございますが、輸送というものは、もう御承知のとおり、どちらかというと、在来は荷主に付随していくというのが現状でございました。工場が地方に進出するあるいはコンビナートができるというようなときに、新たな輸送需要がそこに発生しますので、それを賄うために既存の業者あるいは新規の業者がそういうところに行ったわけでございます。そういうようなわけで、今まではどちらかというと、輸送需要の多く発生するところ、つまり荷物の多いところということでございますので、大都市の周辺でありますとか、あるいは交通の極めて要衝であるとかというところに主としてトラックのターミナルなり、あるいは団地というようなものができているわけでございます。  ただ、そういうようなドーナツ現象というのを離れて、最近は各地で工業団地でありますとか問屋の団地でございますとかいうようなものがどんどんつくられるようなあんばいになっております。必ずそこにはまた輸送施設も付随して出ていく方が便利であるというようなことでございます。したがいまして、先ほども申し上げましたけれども、こういうような法律によりましてこの農村地域に、農村地域といっても随分いろいろ広うございますけれども、私ども道路関係なり、そういうような点から見て、トラックの方があるいは共同にあるいは単独でも行くかもしれませんけれども、そういうようなところに輸送の施設をつくることができますならば、非常に近ごろ細分化しております、要するに在庫ゼロというのが恐らく荷主産業の理想でございますから、それを達成するというためにはきめの細かい輸送サービスをする、より輸送需要、それからエンドユーザーに近いところというようなことで農村地域にも私どもが基地を置かせていただけるチャンスはふえてくるのではないか、かように期待をしておるところでございます。
  24. 飯島貞一

    参考人飯島貞一君) 地域開発の制度があって地域開発いろいろが進めるれてきたわけでございますが、昭和三十年代、四十年代に新産業都市建設促進法、工業整備特別地域整備促進法、こういうことで重化学工業化を進めてまいりました。オイルショック以後の新しいハイテク地域を受け入れるために、御承知のテクノポリス法といいますか、これが進められておるわけでございます。これは空港とか高速道路とか新幹線とか、大変交通条件の恵まれたところ、それから地方都市都市機能の充実した母都市、それから工科系の技術系の大学、こういうものを中心にして、世界に負けない新しい地域づくりをしようとしております。  これと農工法との関係はどうかといいますと、これも第四次の基本計画の中で工業再配置とかテクノポリス関連施策との連携をぜひとらなきゃいかぬということが第四次の方針に出ております。これをどうするかということは、先ほど稲村委員の御質問にありましたように、高速交通体系とか域内の交通体系でつながざるを得ない。現在東北縦貫道、それから関越道、こういったものができますと、その間の農村地域については、大変企業立地が進んでいる。  先日、福島県の商工労働部長にお話を伺いましたところ、福島県はこの円高にもかかわらず企業立地は減っていない。これは明らかに交通体系を中心にして産業が立地をしているということかと思います。そういう面を考えますと、今後の農村地域につきましても、全国的な高速交通体系の網の中に早く全部を取り入れたいわけですが、これも一挙にできないわけでございます。  御承知のように、東北縦貫道とか、中国縦貫道とか九州縦貫道がございますが、今もう一つ横断道というものを進めております。私国土庁の過疎地域、それから豪雪地帯委員をさせられておりますが、この横断道というのは当然過疎地域、豪雪地帯を通ってまいります。そういうものが過疎地域条件を上げていくということが非常にございまして、最近豪雪地帯でも工業が入ってくるからおまえも委員になって少し検討しろということでございまして、これからどうしても農村地域工業導入促進については全国交通体系の中での縦貫道のほかに横断道というものが非常にいい効果を果たすんではないかというふうに考えております。
  25. 鈴木貞敏

    ○鈴木貞敏君 どうもありがとうございました。
  26. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 公明党の刈田でございます。  きょうは、参考人の皆様大変御苦労さまでございます。時間がございませんので、早口で端的に、本当は質問の趣旨を説明してからお答えいただくと一番よろしいんでございますけれども、時間がございませんので質問だけをさしていただきます。  まず、佐藤参考人には、先ほど来お話を伺っておりまして、大変御努力をいただいていることを感謝申し上げておりますが、私は、幾つかの市町村にまたがって広域的な一つのこうした場の創出をしていくということはなかなか大変なことだろうと思うんですが、先ほど広域性の中で拠点方式にはいささか問題があるというお話をなさいました。したがいまして、クラスター方式というようなものはいかがなものだろうかというお話でございましたので、そのことについてもう少し御説明いただければと思います。  それから、池田参考人には、いろいろとお伺いしたいことはございますんですが、一つだけ、最近農村地においての地価が下落をしているというお話がございました。これが今度の農工法にかか わって、いい材料になるかならないかというようなことでございます。  それから、三番目が向井参考人でございますが、先ほど、路線トラック業で八三%が中小企業、それからいわゆる区域輸送ですか、そちらの方が九九・五の中小企業だというお話でございましたので、いろいろ難しい面もあろうかと思いますが、私がお伺いしたいのは賃金の話でございまして、これまで他産業農村地域に入ってきた場合に確かに農工法等の効果、効用によって、つまり雇用の場の創出というものはある程度私はそれで効果が上がっていると思うんです。それが所得の中身の問題と都市においてイコールになるのかならないのかという課題があるんじゃないかというふうに思います。したがいまして、おたくの業界においては大変競争性があるというようなこと、あるいは長時間労働であるというようなこと、そういう条件も加味して、賃金はどんなふうなことを考えられるのかということが知りたいと思います。  それから、日本立地センターの飯島先生には、私はこれもいろいろお伺いしたいことがあるんですが、先ほど来道路網のお話だけを伺いました。そのほかに、通信情報網というような事柄についておたくの機関で果たせる役割があるのかどうなのか、この点お伺いいたします、大変恐縮でございますが。
  27. 佐藤守

    参考人佐藤守君) 実は、農村地域、山村はどこの県もそうであろうと思いますが、農村工場への県段階の基本的対応というのはいずれも大規模開発方式、いわゆるある地域の中に広大な工業開発用地を準備して、団地をつくって、そしてやっていくというのが現実の動きでございます。したがって、県段階等におかれましても一応準備したその工業団地を埋めるのが先行するというようなことになってまいりまして、どちらかといえば各地域のいわゆる工場対応がおくれておるというのが現実でございます。  したがって、そういう中で一つ一つの町村が工場誘致を求めて走り回り、その拠点とお力添えを願っておるのは、先ほど申したとおり農村地域工業導入促進センターの果たす役割というものは重大な意味を持っておる。したがって、なおそういう動きの中で、これからは大規模開発方式から一歩入って、小規模の開発単位に基づいて有機的に連携していく、そういう誘導というものが必要なのではないか。そうでないと各地域が同質性なり同じものを競って競争し合うということになってまいります。  特に、農村はそれぞれの産業施策、とりわけ産物を持っております。したがって、農業とのかかわりでそれを誘導する付加価値を形成するような小規模の開発単位というものを設置して、そして農業との関連の中で地域のいわゆる工業が発展するような方向というのが大事なのではないか。そうでないと、何か不毛の競争があったり、それ自体が縦の運動性をなくしたり効率性を失ったりするという要素があるのではないか。  したがって、特に問題になりますのは、工業団地の近隣の町村はいいんですけれども、距離の遠いところになってまいりますと、そこに若年労働力が吸収されましてその町村はねぐらの町になったり、活性化、活力を失ってしまう、こういうものがあります。したがって、地域活性化という観点から考えた場合にも、大規模開発方式というような一点のために他が衰弱するという事態は農村の全面発達の上にとっては意味がないのではないか。むしろ勇気を持って、効率性が悪いかもしれませんけれども、小規模のそれぞれの町村の個性を生かしながらそれを有機的に結合したクラスター開発方式というものにもっと力を入れて御指導いただいていいのではないか、条件整備を賜っていいのではないか、そういうことで申し上げたわけであります。
  28. 池田齊

    参考人池田齊君) 地価下落の期待は、先ほど申しましたように北海道であるとか、東北、それから南九州、こういうようなところに農地の価格の下落傾向がございます。農工法との関係でそれがどういうふうになるかというお話でございますが、これは概して過疎地域となるわけで、そういうところにこれは工業導入センター、私も理事をしておりますが、やはり企業が立地をする場合には立地条件がうまく合致しないとなかなか入っていかない、概して交通体系その他を含めまして非常に立地をしにくい、よほどの条件整備を行わなければ立地しない。したがって、工業導入の方から見ましてもそういうところには今までの経過の中では積極的に入っていく企業が概して少ないというような問題が、やはりその地域過疎化等を含めまして、どうしても農業をやる者もだんだんと難しくなるというようなことで地価が下落する。  その辺の関係は、導入法で考えますと、日本食糧基地ですから、そういうところにこそどうやって工業が入っていくかということをこれからの施策としてぜひやっていくべきではないか。そして地価が下がりまして規模拡大に積極的につながればいいわけですが、その地域農家は地価が下がることによって担保力を失うというような問題等もございまして、地値の下がることは今後の農業の近代化のためにいい条件であると短絡的には必ずしも言えない面があるわけです。したがって、工業導入は今後むしろそういう地域にどうやって入っていくかというようなことがこの改正法案を含めながら推進さるべきではないかというふうに考えております。
  29. 向井重郷

    参考人向井重郷君) ただいまの刈田委員の御質問でございますが、賃金に関連してのことでございますけれども、トラック運送事業は、先ほども申し上げましたように、零細性が極めて強い産業でございます。しかしながら、これを路線、区域ともに見ますと、賃金水準は他産業に比べてさして悪いものではないと思います。区域の方が路線に比べて劣っていることは事実でございます。  ただそこで、進出する企業はどういうものが出るであろうかということになるわけでございますけれども、路線事業のデポになる、中継基地というようなものになるのか、あるいは区域事業がその地域の区域の方々が協同組合なりあるいは共同施設をつくるとかいうようなことで土地税制その他の優遇措置というものを利用させていただいて、そういうところへ出ていくかということになるわけでございます。いずれにしても、トラック運送事業の関係につきましては、一番大事なのはやはり運転者を中心とする人の問題であります。そういうようなところで、この法律の趣旨にも書いてございますけれども、健全で良質な労働力というものがこういうところに行くことによって確保できればこれは望外の幸せであるということになるわけでございます。  また、逆の面から見て、トラック運送事業が進出した場合に、就労したいという地元方々が、他の産業に比べて賃金が安いがゆえに進出してもそこに就労できないではないかというようなことは、これはどうなるのかちょっと今のところ見通しがつかぬような状態でございますけれども、そうほかの一般に比べて悪い水準ではないと思っておりますので、そういうものが立地のいいところに施設をつくることができれば甚だ結構なことであろう、かように考えているところでございます。  どちらの面から見てお答えしていいのかちょっとわからなかったものですから、お答えになっているかどうか、どうぞひとつよろしくお願いします。
  30. 飯島貞一

    参考人飯島貞一君) 通信とか情報網について私どもの団体でどう考えているかということでございますが、私どもの団体、シンクタンクの一つでいろいろなプランづくりを進めておるわけでございまして、先ほどから道路とか空港とか新幹線の話をしておりますが、道路とか新幹線ですと計画してからできるのに十年以上かかってしまう、大変な時間がかかるわけでございます。ところが、NTTが札幌から鹿児島まであっと言う間に光通信を敷いてしまう、それから第二電電もやります。それから最近は、宇宙を通じれば道路の買収とかそういう煩わしさが余りないということで、どちらかというと、先に線ができて、何を送ろうかというのが後についてくるというような状態でございます。  私どもも、産炭地域というのがございますが、特に北海道の空知の地域に、これは地域振興整備公団が三百ヘクタールに及ぶ空知の中核工業団地をつくっておりますが、大変広いものですから、いろんなアイデアを出して、その中にテレトピアというようなことを考えて、これをぜひ推進しようということで、線を敷くというのは余り問題にならなくて、情報の発進とか情報の受け入れを地域としてどう考えたらいいかというのが重点になってくるのかと思います。簡単でございますが。
  31. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 ありがとうございました。
  32. 諫山博

    ○諫山博君 佐藤参考人にお伺いします。  地方自治体が企業を誘致するというのは、自治体にとっても大変経費のかかることだと思います。やはり健全な公害のない企業を誘致したいという希望が強いわけで、そのために道路整備したり水道整備したり、場合によったら保育園とか幼稚園までつくるというようなことをやられて、企業誘致をしますね。これは農村工業導入法に限らず、すべてそうだと思う。ところが、予定していた企業が来なくなったというような話を私は九州で聞きます。せっかく来たけれども、一年か二年もたたないうちにさっさと引き揚げるというような話も聞きます。そういう場合、地方自治体は大変迷惑を受けているんじゃないかと思いますけれども参考人地域の方ではどうでしょうか。ちょっとその点をお聞きします。
  33. 佐藤守

    参考人佐藤守君) 先ほど申し上げましたとおり、工場導入は単なる工場という機能だけの導入ではございませんで、一切の条件整備が必要になるわけでございます。今、先生のお話しのとおり、工場と一緒に来る技術者のために労働省の雇用促進事業団による住宅をつくっていただいたり、それから農林省のさまざまな道路計画を導入してその条件整備したり、さまざまな制度を結合してそこに一つ工場団地を形成する。しかも、おいでになる方々等については幼稚園の問題まであるわけです。それから医療機関の問題。したがって、工場はそれ自体が来るのではなくて、相当の条件整備のために地域としても資本形成をしなきゃならない。これが一つの問題点になるわけです。  それから、御案内のとおり、来た企業であっても経済変動の中で揺れ動いております。経済社会の企業生活でありますので、これはいたし方のない要素でありますが、ただ、そのために住民が泣くというようなことがあってはならない。したがって、誘致する企業についても多方面にわたって、電機関係一色ということじゃなくて、さまざまのサービス的なレジャー産業なり食品産業なり、多種にわたってその導入をしておく。そしてそれが、経済変動の中で、その産業の最小限度の影響というものに抑えていくというような仕組みとしなきゃならない。したがって、単発的に一社、二社というわけにはいかない要素があるわけです。  したがって、これはいたし方のないことではありますけれども、経済、企業経営導入するわけでございますので、その都度それらの困難点を企業とともどもに解決する。言ってみれば、企業は単なる企業のものだけではございませんで、地域にとっては産業財産でございます。しかも、その中に住民が生きておるわけでございます。したがって、そういう意味では農村工業を、地域行政も一体となって企業経営の中で働く方々の豊かさを確かなものにする、そういう努力は常に継続されなければならない課題となっております。
  34. 諫山博

    ○諫山博君 予定していた企業が来なくなった、あるいはせっかく来たけれども予想より早く引き揚げてしまったというような問題が起こって、自治体は経済的にも損失を受けるということになるでしょうけれども、そういう場合にそれを予防する方策、制度的な改善も含めて、例えばいろいろ自治体が協力をして進出した企業については一定の期間継続を義務づけるとか、何かそういう面についての御要望はありませんか。
  35. 佐藤守

    参考人佐藤守君) いずれ農村工業導入というものは、そこに導入した首長の政治責任の中で展開されるわけでございます。企業の経営もそうでございますし、それから一たん雇用という場になってまいりますと、必ずしも全員が雇用されないわけです。そうなってまいりますと、落ちた方々にとっては恨みとして返ってくる。首長の中では最も厳しい対応が常に迫られておるわけでございまして、今申したとおり、制度的に農村工業であるがために地域との住民との安定ということで、特に制度的に補完される制度があればこれにこしたことはないわけでありますが、私どもとしてはそれはいたし方のないというよりも、一つの経済変動の中でともに乗り越えていくという仕組み以外に現在はないわけでございます。
  36. 諫山博

    ○諫山博君 結局、進出してくる企業が健全な企業で、そういう問題を起こさないということが必要なわけでしょうけれども、結局どの企業を選択するかということは、もう自治体と企業だけの問題でしょうか、それとも政府なり何らかの公的機関が関与されますか、どのようにして健全な企業を選ぶかという問題については。
  37. 佐藤守

    参考人佐藤守君) これは直接の制約はないと存じます。ただ、間接的には道路条件なり電力の問題とか、産業立地条件というものがかなり外的な規制として企業の選択肢の中に入ってくることは事実でございます。その他の規制というものはございませんです。
  38. 諫山博

    ○諫山博君 終わります。
  39. 三治重信

    ○三治重信君 参考人の皆さん、どうも御苦労さまでございます。  時間がないから一、二の方にだけしか質問できませんけれども、まず池田参考人さんには、私学校も同級生でして、別に質問を避けるわけじゃございませんけれども、きょうお聞きした農業界を代表しての農村工業導入法に対する御意見ばかりでなく、農業全体のスタンス、規模拡大のスタンスというものについては私も同感でございます。ひとつそういう方向で、結局明るい農村、昨今、農業は損だ得だとかいうことではなくして、明るい農村をつくる展望をしっかり開くようなオピニオンのリーダーをぜひやっていただきたいと思っております。農村日本で重要だというのは、やはり農村に住む人たちが本当に明るい希望を持って住む社会が維持できるかどうか、こういうことだろうと思うんです。  それから、佐藤参考人さんに、村から出た優秀な人をUターンさせる計画を立てて工業導入を図った、こういうお話なんですが、これは非常にいい着手だと思うわけなんですが、そういうふうに目をつけられた、Uターンをやるために農村工業導入しようということで何人ぐらい目をつけてやってこられたのか、その点と、それから同時に、大変だったと思うんですが、やはり国営事業の農地の開発をやって、恐らくこれは酪農工業じゃないかと思うんですが、草地の養成が主で水田開発とか畑地の開発じゃなくて……
  40. 佐藤守

    参考人佐藤守君) 畑地です。
  41. 三治重信

    ○三治重信君 畑地ですか、酪農草地じゃなくて。そんなのを開拓して、畑地だと何をつくってそういう専業農家が成功したのか、その点ひとつお願いをいたします。  それから、向井参考人さんには、農村の進出のやつは私は共同化でやると思うんですが、その着眼点が人の確保だというのは非常にいい着眼点だと私は思うんですよね。この点で、ぜひ団地をつくるなり配送センターをつくって当該進出する農村に対して自分たちがどれぐらいの、殊に運転者だろうと思うんですが、それから荷物の管理人だとか、そういうことから接触していただくと非常にうまくいくんじゃないかと思うんです。そしてまた、そういう人の養成計画、そういう人がいるからそこですぐ雇うというんじゃなくて、トラック業界に必要な人を、こういう計画であなたたちを私の方は養成してあげますよ、そして進出してそこに場所ができたらこれだけの人を供給してもらいますと、人材を先に優先してぜひ計画をしてやっていただきたい、この点についての御意見、これだけをお願いします。
  42. 佐藤守

    参考人佐藤守君) 農村工場の持つ側面と申しますか、これについて御理解いただきたいと思うんですが、人口の流出というのは若年労働力がその内容なわけです。したがって、残った家族というものは核家族になりまして、いわゆる社会問題として若者のいない家族が続出するというような問題であります。どこも残っております老父母は都会に行った子供らが帰ってくればという願望をそれこそ持っておるわけであります。  したがって、そういう家庭を回りまして子供さんのこと、家庭の考えを聞き、職種をお聞きしながらそれに合致した企業誘致に取り組んでいくというのが処方せんになっております。現在、Uターンで帰ってまいりました若者が三百三十七名ございます。三百三十七名あるということは、三百三十七世帯の中に若者が帰ってきたということになっております。ある意味では鋭く農村の福祉施策でもあるということでございます。したがって、常時私どもはそういう流出した家族の願い、本人の願いというものを資料に整備しておりまして、そのデータに基づいて企業誘致なりなんなりに走り回っておるというのが一つでございます。  それから二つ目には、何としても農業で生きていく町でございますし、工場誘致いたしましてもしょせんは五十五歳、人生三万日の間の二万日の産業であるわけでありまして、全体を考えますとどうしても、とにかく長寿社会の中では農業というものの持つ地域産業の重みというものは日々増大しているわけでございます。そのためには農業で立っていける、産業としての農業という柱をつくらねばならないというのが私どもの悲願でございまして、先ほど申しましたとおり、現在一千ヘクタールの農地開発をしております。これもただ単なる開発ではございませんで、よく農山村においでになりますと行政区域をもってそこに生きる方々の財産とお考えになられる方がありますけれども、そうではございませんで、近隣の都市方々が山林等を持っておる場合が多いわけでございます。私どもの町はそれを何とかしてその他域に生きる者の資源にしようということで、総力を挙げまして買い求めた農地だけでも六百ヘクタールございます。  そういうものと、現在町民が持っております土地との連動の中で農地の有効活用を図りまして、今申し上げた農地開発をしておるわけですが、場所は北上山系の丘陵地帯でございますのですべてが連檐するわけではございませんで、五十町歩、三十町歩がいわゆる面として点在するわけです。したがって、その地形を利用いたしまして一団地・一法人・一作物、いわゆる企業農業への方向をとっておりまして、現在果樹、リンゴでありますれば最低単位を十ヘクタール、しかも実際につくるのは八ヘクタールでやってあとの二ヘクタールは常に新しいリンゴの品種なら品種を導入するローテーションの中でやるというような仕組みなどなどやっておりまして、現在の主な作物は果樹、リンゴ、ナシ、ナシといってもこれはラ・フランスなんかでございますが、そういうもの、それからアスパラ団地、それからたばこ団地、桑の団地もございます。あとは、畜産農家の共同のいわゆるホールクロップサイレージを形成いたしますデントコーンの共同飼料畑というようなことで、今企業農業のいわゆる団地農業に総力を挙げておるところでございます。  なお、後継者につきましては、現在も毎年九名ほど入るわけでございますが、三年間に限って町が役場職員と同じ俸給を与えております。これは、リンゴ等を植えましても三年間は収入がないわけであります。その間の農業青年の生活を保障し将来への技術革新を身につけさしていくというような意味後継者対策をしながらやっておるわけでありまして、これら等も含めて農工一体という中で何とか展望をつくろうとやっておるさなかでございます。
  43. 向井重郷

    参考人向井重郷君) ただいま三治委員の御指摘のとおりでございます。  現在、私どもトラック協会の一番大きな問題は中小企業の育成という問題でございます。やはりその中で中心になるものは協同組合化、協業化の促進ということでございます。これは特に零細企業の多い地方には必要なことでございます。したがいまして、この法律の恩恵を受けて事業を拡張しようというような場合には、まず出ていくのは協業化の姿で、協同組合で出ていくということになろうと思うわけでございます。協同組合化の中の一番大きな柱は人材の養成ということでございますので、こういうような事態が実現できるような場合には、必ずや地方の協同組合あるいは協会において、今先生御指摘のようなところに十分に意を用いて進出して、所期の成果を上げるように、これは企業も地方の自治体あるいは住民方々も一体となって仕事を進めていく必要があろうと、ありがたい御意見でございました。  ありがとうございました。
  44. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 大変有益な御意見をお聞かせくださいまして、ありがとうございました。  その感謝の心を込めて、理解をさらに深めたいと思って、次の点を御四名の参考人にお尋ねいたします。  まず、佐藤参考人に対しては、御所見をお述べなさるときに、水資源の非常に重要さを述べておられましたが、その水資源の現状をどうとらえておられるか。さらにエネルギー資源についてはどのような状況にあるでしょうか。  次に、池田参考人に対しては、農村活性化ということを強調しておられました。ところが、これはもう要因、多様化、いろいろありますが、時間がございませんので、基本条件はどうお考えでしょうか、何でしょうか、こういう観点から述べていただけばありがたいと思います。  次に、向井参考人に対しては、輸送体系の整備ということから、九五%以上がトラック輸送と述べておられましたね。それで、その実情の中で女性ドライバーがどの程度おるでありましょうか。女性ドライバーですね。  そして、もう一つ気になりますことは、安全という面から、事故という点からどのような状況でありますでしょうか。  次に、飯島参考人に対しては、四全総との関係はどのように位置づけておられるでしょうか。  以上でございます。
  45. 佐藤守

    参考人佐藤守君) 農村工場、これすべてそうでございますが、水資源の確保なくして地域定住条件はないわけであります。これは地域の特性かと存じますが、私どもの町は北上山系の丘陵地帯で保水力がない。したがって国営開発のためにダムを三つつくっていただいております。目下工事は進行中でございます。それから、工場導入のためにも水資源の確保が必要なわけでございます。  幸いにして、通産省の小規模工業水道事業というのがございまして、これをいただきまして五年くらいになりますか、この制度の適用を受けまして、八キロ下流から上流に工業水道を引きまして、それをリサイクルしながらその八キロの水道の区間の中に工場を配置してくる。ちなみに申し上げますと、二億七千万の工業水道料がかかったわけでございまして、通産省からその三〇%補助をいただいたところでございます。一社で大体千五百トンの水を使うという会社どもございますもので、まさにこれから農村工業基本になるものは水資源をどのように確保するか、これはどの農村も挙げて対応しなければならない課題かと存じます。したがって、将来農村工業の発展の中で、水資源確保に対する特別の御配慮を賜るならば幸いと存じます。  それから、電力関係につきましては、いわゆる電力エネルギーになっておりますので、これは何とか問題の克服ができます。
  46. 池田齊

    参考人池田齊君) 農村活性化ということは皆さんがおっしゃる問題で、その基本的な条件は何かと、こういうお尋ねでございます。  これは、将来の農村のビジョンをどういうふうに描くか。先ほど三治委員からも明るい農村と、こういうお話がございました。ビジョンを描く場合に、一つはその地域農業産業として一方においては成長していく。そしてその周辺にいわゆる兼業農家が安定をする。これは工業導入その他雇用の場を農村で確保する。そしてそういうことを含めて過疎化の姿を防止をする。  なお、四全総ではございませんが、定住構想に対する交通網の体系でありますとか、あるいはこれから進展する情報化社会、そういうようなものの情報のシステム化と申しますか、農林省もグリーントピアの構想があり、私は、日本農村情報システム協会の会長をしておりますが、交通の網、それから情報化の網、それから兼業がしっかり安定をする、そこに工業導入が働いてくる、農業産業として伸びていく、こういうようなものを含めながらその村の特色のあるその加工を含めた農産品、そういうようなものが頭の中に夢として描かれる、それを地域地域の社会の実情に合わせてどうするかというようなことではないかというふうに考えております。
  47. 向井重郷

    参考人向井重郷君) 御質問の女性ドライバーのことでございますけれども、極めてこれは少のうございます。率直に言って数はちょっと今資料を持ち合わせておりませんが、私どもは毎年ドライバーコンテストといって運転競技会を実はやっております。一県当て三名ぐらいの代表選手を選んでやるわけですが、一昨年たしか沖縄からたった一人女性ドライバーが選出されてまいりました。入賞はしなかったけれども、非常にいい成績でございまして話題になりました。ただ、大型の方についてはいろいろ労働基準法の問題などもありまして、そう女性の進出する余地は少のうございます。ただし、皆様御承知の宅配便、都市における集配は非常に小型車でもってフリークエントサービスをしているわけでございますが、この方には女性方々も相当に出ていらっしゃる。これはアルバイトというような形と思いますけれども、そういうふうに聞いているところでございますが、実数の把握はちょっといたしておりません、申しわけございませんが。  また、安全と事故の問題につきましては、もう輸送をやっている者の基礎でございます。これはもう飛行機から小さな自動車に至るまで全部事故という点は命取りでございまして、安全、確実、迅速というのが輸送の三原則になっている、基礎的条件でございます。毎日それに心を用いているところでございますが、特に零細企業におきましては、一つ大きな事故をやりますと、損害賠償その他におきまして会社の存立に影響を及ぼすというようなことでもございますので、非常に熱心にやっているところであります。しかしながら、いろいろな関係から若干の減少を見ているのでありますけれども、なお後を絶たないということは遺憾に存じておるところで、さらにこれは中央、地方を通じ、全業者を挙げて事故防止には力を尽くしたいと考えているところでございます。
  48. 飯島貞一

    参考人飯島貞一君) 四全総との関係でございますが、いろんな地域開発の法律がたくさんございまして、新産業都市、テクノポリス、低開発地域、産炭地、たくさんあるかと思いますが、私どもそういうものを含めた第四次の全国総合開発計画というのはやはり一番上位の計画だと思っております。  拠点開発とか、定住構想とかいろいろ時代の要請に応じて変わってまいりましたが、今回の第四次の全総計画で一番問題になってまいりましたのが、東京への一極集中をどう地方へ分散させるか、これだと思います。その結果、多極分散型というような方式をとっておりますが、こういう四全総の中で当然地域格差をなくして、過密、過疎をなくする、これはずっと生きておるというふうに私ども考えており、四全総の中でも農山村、漁村へ工業導入を進めていくんだということを言っておりますのは、やはりこういう農工法というものを意識をするというか、重要性を意識しているんだというふうに私ども考えておる次第であります。
  49. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 時間の関係で全部の参考人の方にお尋ねはできません。その失礼をお許しをいただきたいと思います。  まず最初、佐藤参考人にお尋ねをいたします。  かつて、農業基本法が制定をされましたとき、その実態を振り返ってみますと、中核専業農家を育成をしていくというもくろみはある程度達成をされましたが、離農して都市の労働者の中に参入をされました人たちは、その後にやってまいりました経済の低成長期には大変お困りになりましたという事実があります。なぜなれば、それは多くの人が中途採用者であったがために不安定職業層にしか参入できなかった、こういうことでございます。  農村地域工業導入促進法の場合には、職場を自分の生活圏内に待ってくるというねらいでありますから、食住が接近をいたします。そういったことから、離農することはその農家の選択の自由にゆだねられてあります。したがって、構造改革をしていこうという規模拡大についてはその目的を十分に達し得ない点がここに発見できるのでございますけれども、こういった場合に、農村地域でお住まいの方々規模拡大して構造改善をしていこうという願いを達成していくことと、それよりも地域全体の経済の活性化をねらって行政をやっていくというねらい、その二つがありますと思いますけれども、どちらを選んでいかれた方が現状に適しますのか、その辺の御見解をお願いをいたしたいと思います。  その次には、向井参考人にお尋ねをいたします。  今回の、拡大をされようといたしております四つの業種農村地域への立地は望ましいことだとの御意見でございました。確かに、今回拡大をされました業種は成長産業としての業種でございます。けれども、立地の条件を満たした場合においてこそそのことが可能であるわけなのでございますが、こういった地域でありますからそんなに大きな工業団地をつくるということも不可能だろうと思います。そういったときに、運送業にしましても、倉庫業にいたしましても、梱包業にいたしましても、現在の製造工業と近接をしておらなければならないという条件があるのではないか、素人ながらそのように考えますんですけれども、そういうようなことを度外視して立地が可能なのか、その辺の御意見を承りたいと思います。  以上です。
  50. 佐藤守

    参考人佐藤守君) 私どもはあくまで農村でございますし、農業で生きようとする町でございます。したがって、そのあり方でございますが、今までは農工両全とは申しましても、一家族の中でせがれが工場に行ったり嫁がうちで農業をするというような農業自体の中の分離があったわけでありますが、これはだめである、こういう行き方は二兎を追うものであって安定にはならない。今志向しておりますのは、農業をやる者は農業をしよう、工場に勤める者は工場に勤めよう、いわゆる農工分離の中で新しい結合をつくろうとしております。  したがって、農地流動化についても最近とみにその流動化の傾向が出てまいりまして、水田等を中心に大きな団地化の方向に参っております。そういう意味では農業の専業化の条件、コスト低減の条件整備というものを進めつつ、工場というものの工業の機能をまた地域に定着させよう、こういう方向でございます。
  51. 向井重郷

    参考人向井重郷君) ただいま山田委員の御指摘のとおり、新規に今度加えられますトラック運送事業、倉庫、そういうようなものにつきましては、メーカー、工場というようなところと近接しているところは確かに大きな利点でございます。しかし、また同時に、エンドユーザー、消費地に近いということも大きな要素でございます。  したがいまして、最近の例を見ますと、本法の適用地域そのものに当てはまるかどうかわかりませんけれども東京から申しますと東北関係、あるいは上越関係というような方向に向かってそういうような施設が最近どんどんできている。これは工場からは遠くなる、しかし消費地にはどんどん近くなる。しかも消費地が複数のものを持っているというような場合には集散地としての機能、これは保管倉庫、保管的な施設ではなくて、荷さばきあるいは輸送のための基地という意味での施設でございます。そういう点については今後道路、そういうようなものと関連を見ますれば農村地域に進出というような余地は十分に残っていると考えている次第でございます。
  52. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 終わります。
  53. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) 以上をもちまして参考人方々に対する質疑は終わりました。  参考人方々に一言御礼を申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず本委員会に御出席をいただきまして、長時間にわたりまして有意義な御意見をお述べいただきましてありがとうございました。本委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。  午前の審査はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時十六分休憩      ─────・─────    午後一時三十四分開会
  54. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  農村地域工業導入促進法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案につきましては、既に趣旨説明を聴取いたしておりますので、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  55. 一井淳治

    ○一井淳治君 我が国の生産する農産物で消費が伸びている農産物とすればどんなものがあるのか、その点をお尋ねしたいと思います。  あわせて、米の消費の動向でございますけれども、最近の最も新しい状況によりますと、米の消費がどういうふうな状態になっているのか、お尋ねいたしたいと思います。
  56. 浜口義曠

    政府委員(浜口義曠君) 先生お尋ねの前半につきまして、私の方から概略御説明を申し上げたいと思います。  経済の高度成長を通じまして、我が国の食糧消費は高い伸びを示してきたわけでございますが、五十年度に入りましてからややその伸びを鈍化させてきているところでございます。米につきましては緩やかな減少を続ける一方でございましたが、肉類を初めとする畜産物につきましては、あるいはさらに油脂等につきましては増加の傾向を示してきたわけでございます。  最近のデータによりまして、六十一年度につきまして申し上げますと、個人消費の支出が比較的堅調であったということ等によりまして、品目別に見ますと、砂糖類あるいは米、小麦といったものが引き続き減少しておりますけれども、鶏卵、肉類、油脂等のものが増加をしております。  なお、食糧農産物以外の消費が伸びているものにつきましては花、特に切り花というものがございます。  なお、米につきましては食糧庁の方からお答えをいたします。
  57. 近長武治

    政府委員(近長武治君) では、米の消費の動向について、最近の状況について簡単に御説明申し上げます。  御案内のように、戦後一人当たりの米の消費が一番高かったのは昭和三十七年度でございまして、当時は百十八キロほど消費をしていたわけでございます。最近は、一番新しい統計の数字昭和六十一年でございますが、食料需給表によりますと七十三・四キロになっております。この二十四年間で約四割程度減少しております。  ただ、この二十四年間の減少のテンポというのは必ずしも一様ではございませんで、特に五十年代の前半では大変高い減少率で、年平均大体二%から三%程度でございました。その後、五十年代後半には減少のテンポがやや緩んでまいりまして、特に昭和五十八、五十九年度には減少率が〇・九%とかあるいは〇・五%というふうに一%台を割って、当時、これで米の消費減退はそろそろ下げどまりになるのかなというふうな見方も一部では出ていたわけでございますが、その後、六十年に入りまして、また減少度合いが高くなっております。昭和六十一年度の減少度合いは一・六%ということで、最近は米の消費の減少の度合いが高くなっております。特に最近の動態、私たち食糧庁の方では、現場の実務的な意味合いを込めました米の消費動態調査を食糧事務所等の組織でやっておりますが、この六十二年の一月以降も前年同月比で二%以上の消費の減少が続いているというようなところでございます。  なお、最近の米の消費についての特徴を申し上げますと、家庭購入量は大変大きく減ってきておりますが、外食の増加という点では、外食におきまして米の消費がふえているというような点がございますので、その点だけつけ加えさせていただきたいと思います。
  58. 一井淳治

    ○一井淳治君 これは、言うまでもございませんけれども我が国農業はとにかく内外ともに非常に今厳しい状況にあると思いますけれども、そういう中におかれまして、大臣は先ほど来、大変対外的な側面で御努力いただいておるわけでございますけれども、この日本農業の将来をどのように活路を開いていこうとされておるのか。大臣として、熱意を持って取り組まれておられますテーマといいますか、課題といいますか、やっていこうという点をお聞かせいただきたいというふうに思います。  重ねて質問して悪いんですが、農業の振興のためになさいます佐藤農政の真髄というものを、腹蔵ないところをお尋ねしたいというふうに思います。
  59. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 所信表明のときも触れておることと若干重複することを御理解賜りたいと思います。  現在、我が国農業経営規模拡大の停滞、生産性向上の立ちおくれ、農産物需給の不均衡などの諸問題に直面いたしまして、また、内外価格差の是正、農業保護のあり方などにつき、今おっしゃいますように、内外から強い関心が寄せられるなど極めて厳しい状況にございます。平たい言葉で言いますと農業たたきというような形でいろんなことが今日ほど言われておることはないのでございます。  関係団体や農業関係者の自覚もございますし、私ども担当いたします役所といたしましても十二分な自覚のもとに活力ある農村、魅力ある農業、こういうことについて全力を尽くしておるわけでございますけれども、こうした中で、二十一世紀へ向け農政の進むべき方向として、先般来申し上げておりますように農政審議会から報告をいただいております。我が省といたしましては、この報告を踏まえ、国民食糧の国内供給力の確保を図りつつ、国民の納得し得る価格での安定供給に努めることを基本といたしまして、与えられた国土条件等の制約のもとで最大限の生産性向上を図るという観点から農政を展開してまいる所存でございます。  その基本は、内外ともに鮮明にいたしておりますのは、我が国で主要食糧を自給しつつ、足らざるところは安定的な輸入体制、これをあわせまして、そして、国民に安定的な食糧の供給を、あるいは安全な食糧の供給を図ってまいりたい、こういうことでございます。  特に、その中でも具体的に二、三申し上げるとするならば、中核的な担い手が明るい希望を持って農業に取り組むことができるように、また構造政策推進による生産性の高い農業の実現、農村社会の多様な構成員の間における適切な役割分担などを通じた所得機会の確保及び農村社会の活性化、さらに加えまして、まさに時の流れでございますが、バイオテクノロジー等の先端技術の開発、実用化、これを推進することといたしまして、各般の施策を展開してまいる所存でございます。  こうしたことによって将来へのやはり展望というものがわかってもらえるのではないか。その展望のもとに逐一ひとつ手順を踏んでまいりたい、 こういうふうに考えておるわけでございます。
  60. 一井淳治

    ○一井淳治君 圃場整備でございますけれども農産物のコスト切り下げのためには必ずこれは必要だということで一致しているようでございますけれども、圃場整備にもやりようによってはいろいろな結果が出てくるというふうに思います。現在の状態では、隣の田んぼに水が入りますとこちら側では畑がつくれない、水が浸透してきて大型の機械が入れないというようなことも起こっているようでございますし、また、相当大規模農業を国内でつくり出していくというのであればもう少し圃場も大型化しなくちゃならぬのじゃないかというふうな気がいたしますけれども、そういうふうな圃場整備について土地の高度利用ができるように、どういうふうなお考えをお持ちなのか、改善すべき点はないのか、そういう点について御説明をお願いしたいと思います。
  61. 松山光治

    政府委員(松山光治君) 状況の変化に応じまして必要な見直しを怠っちゃいけないというのが私ども基本でございますが、今先生から御指摘、御質問のございました圃場整備のあり方の具体的な点についてお答え申し上げたいと思います。  まず、排水対策と申しますか、水田と畑との関係の問題でありますが、特に水田農業確立対策を的確に進めていくという点からいたしましても、水田として利用する圃場と、それから畑として利用する圃場との関係は非常に重要だというふうに考えております。  そういう意味では、やはり用排水分離ということを基本といたしまして、排水路なり暗渠排水の整備に重点を置いていく。汎用耕地化を進めていくというのが基本でございますが、同時に作付等の面におきましてもでき得ることならば水系ごとにブロックローテーションを組む等の形での計画的な水田利用ということを心がけてもらいたいものだ、このようにも考えておるわけであります。  それから、圃場整備の進め方の問題といたしまして、大区画圃場の整備の問題でございますが、これまで地域実情に応じながらやってきておるということでございますが、一応三十アール区画を基準におきまして圃場整備を進めてきておるのでありますけれども、御指摘のように、今後の高能率な農業のあり方ということを考えますれば、地域条件さえ許せばできるだけ能率的な大区画圃場の整備を促進していくということも重要な課題であろうというふうに考えております。  こういう観点から、昭和六十一年度に、中核的な担い手農家中心といたします生産組織の育成が見込まれるという一定の条件を備えた地域におきまして、五十アール以上の大型大区画高生産圃場をモデル的に実施するための事業を新たに創設したところでございます。加えて、六十二年度の補正予算からもNTT資金を活用いたしまして、大区画圃場を造成いたします新たなプロジェクトも開始をしておるところでございまして、六十三年度もこの関係の予算といたしましては三百八十四億円を計上しておるところでございます。今後とも地域実情に即した、かつ、できるだけ生産性の上がり得るような圃場整備を目指して努力してまいりたい、このように考えております。
  62. 一井淳治

    ○一井淳治君 事は非常に簡単なことでございまして、できる限り大きくまとめるとか、あるいは隣の水がこちらの畑に入ってこないという、結果とすれば非常に簡単なことを実現するということでございますけれども、できるだけそういう方向で一層の努力お願いしたいというふうに思います。  それから次に、農地流動化原因といいますか、農家が自分の農地を手放したり、あるいは賃貸する動機といいますか、原因についてお尋ねしたいと思います。
  63. 松山光治

    政府委員(松山光治君) 私どもの方が業務上得ました数値を整理したところによりますと、昭和六十一年の場合でございますけれども農地を譲渡する場合の事由の主なものといたしましては、面積比率で申しまして資金が必要だというのが一番多うございまして、面積比率で二二%強になってございます。もちろんその場合の資金も農業関係の資金というよりも別途の資金が必要だ、こういうようでございますが、これに次ぐものといたしましては相手の要望が強かったからとか、それから高齢化、病気等で労力不足であるとか、若干程度は劣りますが、兼業による農業縮小といったような事由からなっておるわけでございます。  また、貸し付けの方の場合を農用地利用増進法によります利用権設定の場合について見ますと、一番事由として上がっておりますのは高齢化とか病気等で労力不足になった、これが面積で二一%弱の比率になっております。  そのほか、兼業によって農業を継小しておるというのが一六%程度。あと相手方の要望、農業廃止といったような事由が続いておるということでございます。
  64. 一井淳治

    ○一井淳治君 農工法成立いたしましてから後、いろいろ利害関係のある、例えば工業の側を見ますと、安い労働力あるいは安い土地を求めて確かに工業の分散が進んでおるということははっきりと目に見えてわかっているわけでございます。また農民の所得形成とか就業場所の確保、こういう点におきましても農民が職場が確保できて、そして賃金も毎月もらっているという現実でもございまして、これも成果が本当に上がっているというふうに思いますけれども、ただ農業自体の構造改善がどういうふうになっておるかという、これはなかなか目に見えないわけですけれども経営規模拡大とか生産組織の育成とか、そういった点はどのようになっているのでございましょうか。  この法律成立して以来、工場の設置と同時に構造改善を進めておられるということはよくお聞きしておるわけでございますけれども農業自体がこの法律の結果、どのような影響を受けておるのか、今後の課題としてどういう点に力点を置いてやっていかれるのか、その点についてお尋ねしたいというふうに思います。  きょう午前中、参考人からいろいろお話があったんですけれども、実は、全国農業会議所専務理事さんでございます池田参考人からも、この法律の目的とした最終目標の達成においては現時点では余り実現できなくて、今後を期待するというふうなお話もあったわけでございますけれども、それ等もありましたので、お尋ねいたしたいというふうに思います。
  65. 松山光治

    政府委員(松山光治君) 我が国農業構造の現状につきましては、個別経営の世界では平均的に見れば一ヘクタール程度というような状態で推移はしておりますけれども、内容的には大規模層が増加する、それから生産組織の面でもいろんな形での生産組織が各地にあらわれておるということで、一定の前進を見せておるとは思っておりますけれども、今の農業の置かれた現状からいたしますれば、これから大いに努力しなければならない、そういう重い課題に直面した現状にある、このようにまず認識をいたしておるわけでございます。  そういう現状の中での本制度農業構造改善の関係の問題でございますが、今後構造改善を進めていくに当たりましては、当然のことながら農業から離れていくと申しますか、手を引いていく方々にとっての安定的な就業機会をいかにして確保していくかというのが非常に重要な条件一つであるというふうに考えておりますし、農村における就業機会の安定的な確保という点からいたしますれば、まだまだ努力の余地はあるにいたしましても、本制度はそれなりの成果は上げてきたものというふうに考えておるところでございます。  ただ、それが構造改善という形をとってあらわれてくるためには当然のことながら、そういう条件を踏まえながら片方での農地流動化に向けての地域ぐるみでの取り組みの問題でありますとか、あるいは基盤整備の問題でございますとか、もろもろの努力が必要なわけでございます。しかも、そのことが地域のもろもろの条件の中で決まってくる、こういうことに相なりますれば、本制度構造改善の関係についてなかなか一律な評価はしにくいというふうには認識をいたしておりますけれども、概してこの制度をうまく御活用いただいて工業導入をやっておられる市町村におきましては、農地流動化を通じての農業構造の改善が比較的進んでいると言ってもいいのではなかろうかというような現状にあるというふうに認識しておるわけであります。  私どもといたしましては、これまでの成果を踏まえながら農業構造改善のためになお一層の努力を続けたい、このように考えておる次第でございます。
  66. 一井淳治

    ○一井淳治君 結局、農工法というのは兼業農家の促進強化に、結果としてそうなっているんではないかというふうな感じもするわけでございますが、その原因としては、例えば勤務場所が近くなりますと、休みを利用して兼業が可能である。また、企業から給料が入りますから、機械化によって簡単に農業ができるようになる。また、農工法によって誘致している企業というのは大部分が中小企業で、しかも中高年の状態で就労するものですから、賃金も高くないし、定年まで余り長期間勤務しませんから退職金も安い、退職後の生活の不安もあるというようなことで、どうしても農地を手放さないというふうな状況があるように思います。確かにこの近辺で大型経営が開始されておる事例もありますけれども、どうもこれが農工法の関係と結びついていないんじゃないかというふうな感じもいたすわけでございます。  文献などを見ますと、農工法というのは兼業農家の促進にかかわっているというふうなことが非常に書かれておることが多うございますし、きょうの先ほどの池田参考人もそういうふうな感じのお言葉であったわけでございますけれども、それでよければそれでもいいですし、それでいけないんだったらどうするのかという問題があると思います。その辺のお考えをお尋ねしたいというふうに思います。
  67. 松山光治

    政府委員(松山光治君) 御指摘のございましたように、自分の住んでいるところから通って職が得られる、あるいは技術も進んでおりまして、比較的、特に水稲作であれば手軽に兼業しながらでも農業ができるといった実態があることは御指摘のとおりでございます。ただ、やはり安定的な就業機会のもとで、別の職業であっても十分生活がやっていけるという条件がまずは一つございませんと、農業構造の改善と申しましてもなかなか条件ができてこない。したがいまして、そういう意味では、私ども農村地域導入される企業につきまして、できるだけ安定的な労働条件が確保されるということはまずもって重要なことだというふうに考えておりまして、そういう考え方を基本方針にも明らかにするとともに、関係省庁ともどもいろいろと御努力をいただいておるというのが現状でございます。  それで、今までの各地域における努力の結果、就業機会の確保という点ではそれなりの成果をおさめてきておるということでございますので、そういう実態を踏まえながら、各地域農業を今後どのように持っていくのか、現状のままではこれからの厳しい状況になかなか対応できないわけでございますので、地域実情によって展開の仕方には差はあろうと思いますが、中核農家中心にした兼業農家との任務分担の問題あるいは場合によれば中核農家への集中、もろもろの形態をとりながらいかに地域農業の展開を図っていくか、大いに努力せにゃいかぬということが私どもの考え方でございます。
  68. 一井淳治

    ○一井淳治君 この法律の「目的」でも抽象的に書かれておりますけれども、「農業工業との均衡ある発展」という言葉が使われておりまして、これが果たして何を意味するのかという大きな問題があるわけですけれども、兼業の促進か、あるいは大規模農業を育成していくのかというそこのところが非常に難しい問題であると思います。兼業ばかりをつくっていってそれでいいというものでも、それは非常に寂しいんじゃないか、とにかく外国の農産物と好むと好まざるにかかわらず競争下に置かれるとコストの削減をしなくちゃいけないということは、これはもう農業経営をなさっている方は皆さん自覚なさっているわけでございます。  そうすると、そういう中に大農経営をやってコスト削減の実験でもやってみようという人が相当出てきてもいいんじゃないかという気もいたしますし、ただ、そういうふうないろんな機会をうまくとらえて、いろんな機会を伸ばしていくことが必要じゃないかと思うんですけれども、今言いました大農経営といいますか、そういう形での現象が余り見られないような気もいたしまして、そうすると、農業経営をやろうとする若い人たち農工団地にとられてしまって、地域工業農業とがせめぎ合いをやって優秀な人材が工場にとられてしまって、農業の方が元気がなくなるということになっても困りますし、その辺はどうなんでしょうか、それが全体的な問題ですね。そのあたりはいかがなんでしょうか。
  69. 松山光治

    政府委員(松山光治君) 法律の「目的」に書かれてございますように、この制度基本的なねらいは工業農村地域に入れて安定的な就業機会を確保しながらあわせて農業の発展を図っていく、こういうことにあるわけでございまして、工業が入って工業は栄えているけれども農業がおかしくなったというのではこれはまた困るわけでございます。繰り返しになって恐縮でございますけれども、安定的な就業機会が確保されるということはそれだけ構造改善問題を進める上での必要な条件一つは充足してきておる、こういうことに相なることではなかろうかと思うわけでございまして、私どもとしてはそういう実績を踏まえながら地域によりまして大型経営が中心になるところもございましょうし、あるいは地域条件によりましてはどちらかといえば集団的な生産組織で対応していくという必要があるところもあろうかと思いますけれども、要はこれからの厳しい農業情勢に対応できるだけの能率的な生産単位を各地域実情に応じて育成していく、そういう意味での構造政策基本的な課題に総ぐるみで取り組んでいくことが必要なんだと、このように考えておる次第でございます。
  70. 一井淳治

    ○一井淳治君 昭和四十六年にこの法律が策定されまして、第一次の基本方針を見ますと昭和五十年度において雇用労働力百万人、工業出荷額九兆円という非常に高い目標を掲げておったわけでありますけれども、それに並行して相当多量の農工団地が造成されたんじゃないかというふうに思いますが、当初のころにつくられた農工団地で売れ残りがどの程度あるのか。それから昭和五十六年の第三次基本方針を見ますと、就業機会の不足している地域に重点を置いて工場進出を図るというふうになっておりまして、これは現在まで続いておるわけでございますけれども、そういうふうな遠隔の地へ積極的に工場を引っ張ってこようとすれば、反面、工場団地をつくっても企業の方がちょっと足元がすくんで進出できないというようなこともあるんじゃないかと思いますけれども、この五十六年前後どろに団地化したもので売れ残りがどれくらいあるのか、その点についてお尋ねをいたしたいと思います。通産省の方にお願いします。
  71. 寺西大三郎

    説明員(寺西大三郎君) 御説明申し上げます。  昭和四十六年からただいままでに、農村地域におきまして約一千五十一の市町村が実施計画を有するようになったわけでございます。そのうち導入済みあるいは一部導入済みの企業数は八百八十でございまして、全体の八三・七%が一部は導入済みということになっておるわけでございますが、これを面積別に見ますと、敷地面積の関係で見ますと、全体が現在農耕地区約一万八千ヘクタールございますが、このうちの五四%に相当いたします約一万ヘクタール弱が分譲済みとなっておるわけでございます。遠隔地のものが分譲率が悪いのではないかというお話でございますが、御指摘のとおり近畿地区が六三・七%、中国、四国六一・六%、北陸六〇・四%といったところが高いところでございまして、北海道四四・四%、東北五〇・三%というように遠隔地の方がやや分譲率が低くなっておるのが実情でございます。
  72. 一井淳治

    ○一井淳治君 遠隔の地といいますか、就業機会の不足している地域企業を立地させようという基本方針が現にあるわけでございますけれども現実には関東内陸部とか東海あるいは南東北の方に、東京あるいは太平洋ベルト地帯に既に集中しているのが現実ではないかというふうに思います。  そういったふうな、大半の企業が立地する箇所以外の場所へ工業やあるいは場合によっては第二次、第三次産業でもいいと思いますけれども、地方分散を大いに進めていくために何か方策でもお持ちであれば御説明をいただきたいというように思います。
  73. 安藤勝良

    政府委員(安藤勝良君) 産業の地方分散に関しましては、通産省といたしましても省を挙げて法案整備あるいは補助制度の確立等につきまして努力してまいったわけでございます。その結果、今課長の方からも答弁されましたようにそれなりの成果を上げてまいりました。  マクロ的に申し上げますと、立地件数で地方に行く企業が約八割、敷地面積で申しましても約七割という地方分散が着々と進みつつあるというのが実情かと思います。ただ、地域間格差があることもこれまた事実でございまして、先ほどのブロック別の進出状況、分譲状況でもおわかりのとおり地域間格差がございます。そんなことからさらに制度充実を期すべく我々努力してまいったわけでございます。  一つは補助金、これは工業再配置補助金と申しまして企業が立地した場合に市町村あるいは企業に床面積当たり一定の額が交付されるようになっておりますが、特にいわば過疎地区と思われる地区、北海道を含む十二道府県でございますが、そのほか特定不況地域対象にいたしまして、特別誘導地域ということから五割増しの補助金を出すようにしております。そのほか、いろんな面で地方への立地が進むようにいろんな努力をしてまいったわけでございますが、さらに今回の法律でも御案内のようにこういった地域については特利の融資制度を設けるというさらに強化も図っておるわけでございます。  いろんな面から、いわば遠隔地への立地につきましては我々も考えてもいきたいと思いますし、また、産業政策全体におきましても、これは何といっても地域活性化最大の我々の課題でございますので、いろんな角度から地域産業の高度化を目指した施策を今展開中でございまして、そういったものももろもろあわせて遠隔地の立地についてさらなる強化を図ってまいりたい、こういうふうに考えるわけでございます。
  74. 一井淳治

    ○一井淳治君 企業は営利目的でございますから、損をしてまで絶対に地方分散には応じていかないというふうに思います。これまでいろいろと助成措置をお考えでございますけれども、大体農工法所定ぐらいの助成がほかの法律でも行われておるわけでございますから、今まで以上に企業の地方分散を可能にしようと思えば例えば法人税率に差を設ける等のかなり思い切った手段をとらないとどうにもならぬのじゃないか。中央集中がますます進んでいくこの流れを変えることはできないのじゃないかという危惧の念が強いわけでございますけれども、その点はいかがでございましょうか。
  75. 安藤勝良

    政府委員(安藤勝良君) 我々工業再配置政策におきまして、いわば移転促進地域から誘導地域への誘導策を講じているわけでございます。これでも特別償却の制度導入など税の恩典を与えるようにしておりますし、また、移転に当たってはさらなる融資制度もございます。そういったことで一般的対策を強化してまいったわけでございます。  また、最近の産業の動向、いわゆるハイテク化ということで御案内のようにテクノポリス構想を五十八年に打ち出しました。これにおきましてはさらなる税制の拡充をいたしまして、特別償却三〇%、一般のものよりさらなる制度の拡充を見たわけでございます。そういったものでさらに地方の分散を図っていきたいということで今日までまいったわけでございます。今後ともこういったものを見直しながら一層の促進を図っていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  76. 一井淳治

    ○一井淳治君 次に、事務処理の手続の問題でございますけれども、例えば農工団地が一応設置されまして、その後この農工団地の範囲を拡張しようとする場合にも実施計画の変更手続を必要とするわけでございますけれども、ちょっとした変更にも非常に手続が煩雑ではないかというふうに思うわけです。例えばこの農工団地に臨接をして、臨接地の農地の所有者が売りたいという気持ちになっておる、企業もそこに立地したいということでお互いの要求はマッチしているんだけれども、しかし、それを実現するためには、企業農工法の適用がないと参りませんので農工団地の範囲を拡張しなくちゃならない。そのためには大変いろいろな書類をつくったり、書類もかなり分厚いものを印刷しなくちゃいけないようでございまして、田舎の小さな町役場あたりでは手間と経費が大変で、せっかくのチャンスを生かせないということも起こっているように思うんですが、この事務処理の簡素化という問題についてお考えをお聞きしたいと思います。
  77. 松山光治

    政府委員(松山光治君) この種の問題を考えるに当たりましての事務手続あるいは必要な書類等については、できるだけ簡素化していくように考えていくというのが私ども基本的な考え方ではございます。他面、実施計画を市町村が策定する、あるいはそれの計画変更を行う、こういった場合でも、事柄の性格上地元関係者の意向を十分煮詰めた上で、その合意の上に立ちまして一定の土地利用調整と申しますか、農地転用の問題等々も踏まえましたそういったことを十分やっておきませんとかえって工業導入に適性を欠いていく、こういったようなことがあるわけでございまして、そういう意味では地元との利害関係者の調整なりあるいは県との協議等々、どうしても一定の事務手続が必要になるわけでございますし、またそれに伴う手間と経費も必要になるということで、その辺のところはある程度やむを得ないものということで御理解を賜りたいというふうに思っております。  今御指摘の点がどういう具体的な関係にあるのかは、もし御示唆いただければまたいろいろと考えてみたいと思います。基本的にはできるだけ簡素化は進めたいけれども、やはり必要な手続は踏んでいただく必要があるだろう、こういうことで御理解をいただきたいということでございます。
  78. 一井淳治

    ○一井淳治君 企業が来ない団地もたくさんあるわけでございまして、企業が立地するということは非常にありがたい、本当によく来ていただいたという気持ちになって、今言ったように、条件の実施計画の変更という範囲のことはできるだけサービスをするということで、できるだけ簡略にしていただけるように要望申し上げまして、次の質問に移らしていただきます。  最近の、農工団地の計画策定に当たっての指導でございますけれども企業立地の可能性が相当高度でないと前に進めてもらえないというふうな現実があるんじゃないかというふうに思われます。一概にそれがどうこうとは言えないと思いますけれども、仮にオーダーメード方式と申し上げましょうか、一応実施計画の段階では幹線道路と用地の線引き、あるいは団地の取得程度にとどめておきまして、あと企業の方の注文をとって、それで自然環境に適したように受益者の希望を聞きながら工場団地をつくってさしあげるというふうにいたしますと金利もかからないし、安い土地が手に入るということで相当評判がいいんじゃないかというふうに思います。そういったふうなオーダーメード方式と申しましょうか、そういう方法で工場用地をつくっていっているところもあるようでございますけれども、そういった場合について余り企業立地の高い熟度を要求されますと工場団地の形成が非常に困難になってしまうということでありますので、そういう場合には余り立地可能性についての高度の要求をなされずに、一つ二つかでも来そうであるというぐらいであれば許可していただいたらいいんじゃないかと思いますけれども、そのあたりはいかがでございましょうか。
  79. 松山光治

    政府委員(松山光治君) この問題は、企業導入の可能性をどの程度確実なものとして事柄を進めていくか、こういう話になるわけでございまして、余り見通しのないままに特に団地を造成するといったようなことになりますれば、せっかく団地を造成いたしましても後で金利負担等で地元が大変苦労するといったようなこともあり得るわけでございます。そういう意味では、土地利用だとか、あるいは農業振興との関連だとか、地元企業との関係等々、各般の面から十分検討をしていただきました上で、大丈夫だろうというある程度の見通しを立ててもらってこれを進めてもらう必要があるのではなかろうかというふうに考えております。  ただ、計画の策定の段階でどういう企業が入るかといったようなところまで具体的に固めてからでないと仕事が進まないというのではこれまた硬直的過ぎるだろうと思っておりますし、私どもとしてはそこまで考える必要はないんではなかろうか。もしそういうふうな立場での思想があるとすれば、それはできるだけ確実に農工団地の造成を行い、企業導入をやっていきたいという担当者の恐らく意欲のあらわれというふうにまず御理解をいただきたいと思いますけれども、余りに硬直的なことにならないような指導をしていきたい、このように考える次第でございます。
  80. 一井淳治

    ○一井淳治君 今申し上げましたように、いわゆるオーダーメード方式でいく場合には金利もかかりませんで、危険率も非常に低いわけですから、場合に適した指導お願いしたいというふうに思います。  それから、ブドウの作付についてお尋ねしたいわけでございますけれども、現在ブドウは水田農業確立助成補助金の体系からは転作対象物とされておるわけでございます。これは恐らくブドウは生産過剰の状況があるからだということではないかと思うわけですけれども、しかし、ブドウ酒の製造工場がせっかく農村部に立地した、そのブドウ酒の製造工場の周辺の農民の方々転作をしよう、そういうふうな場合には、一般のブドウとは違いまして、ブドウ酒工場へ納入するということで消費の道は開けておるわけでございますから、そういった場合には転作対象物として認めていただいたらいいんじゃないかというふうに思いますけれども、その点いかがでございましょうか。
  81. 吉國隆

    政府委員吉國隆君) ワイン用のブドウの生産と転作、水田農業確立対策との関係についてのお尋ねでございます。  ブドウの需給状況にも先生若干お触れになりましたが、お話のございましたとおり、残念ながら果樹全体が総じて消費が、頭打ちないし物によっては相当程度消費が落ち込んでまいっている。食生活の多様化というようなことがあろうかと思われるわけでございますが、そういった中で、転作との関連に触れます前に、御承知のように、基本的には果樹農業振興法によりまして果樹農業振興基本方針を定めまして、またこれを踏まえて各県におきまして振興計画をつくっていただき、需要の動向に応じました計画的な生産ということを心がけている次第でございます。そういったものとの関係上、過剰供給につながらないということに細心の注意を払いながらいろいろの施策を進めているという背景をひとつ御理解をいただきたいと思うわけでございます。  ブドウの中でも、お話しございましたようにワイン用の消費は近年相当増加をしてきているという状況があるわけでございまして、この果樹農業基本方針の運営に当たりましても、ほかのブドウについては厳しく新植の抑制ということをやっているわけでございますが、ワイン専用園ということが確実に認定できる、ワイン工場との契約も確保されているというような場合には生産の拡大につながることも可能なような整理をいたしております。ただその場合、全体としてのブドウの植栽面積、加工用と申しましても実はいろいろございまして、汎用性というか兼用性を持っている品種も多いわけでございます。そういったことで、全体の計画植栽面積との関係というものもにらみながら運営をいたしているところでございます。  そういった背景のもとで、この転作制度の上での取り扱いといたしましては、他の永年性の果樹で需給上問題があります温州ミカン、かんきつ、リンゴ、そういったものと並びまして御指摘のように転作対象外の作物という取り扱いを原則といたしているところでございます。ただ、そういったワイン用のブドウのように一定のやり方をすれば需給事情、特に影響を心配しなくていいんではないかというものにつきましては農林水産省と県との御協議を踏まえまして転作の実績に参入するという取り扱いの道も開いているところでございまして、そのような運営に心がけている次第でございます。
  82. 一井淳治

    ○一井淳治君 転作の実績に加えていただくということはそれだけ多少はありがたいことかもしれませんけれども現実転作対象物として地域では非常に悩んでいるわけでございます。  そして、きょうの参考人の中にも、農村部では転作対象がなくて非常に活気を失っているというふうな御説明もあったわけでございますけれども、今申し上げましたブドウの場合には汎用性といいましてもブドウ酒用のブドウというのは品種が違う上に値段の点でも生食用のブドウとは非常に違うわけで、これを一緒にすることは不可能で、生食用に原料用のブドウが回っていくとは考えられませんし、また今御説明がありましたように、ブドウ酒については販路が確保されておる。ミカンとは違うわけでございますから、ブドウについてはブドウ酒用でかつ納入先が確立しているというふうな場合には、実績に加えるというだけではなくて補助金の対象として、そして団地化した場合には助成もいただけるというふうにされた方がいいんじゃないかと思いますけれども、今後の検討の機会に検討の対象に加えていただきたいんですが、いかがでございましょうか。
  83. 吉國隆

    政府委員吉國隆君) 農家の気持ちとしては先生おっしゃるような気持ちもよくわかるわけでございますが、一方におきまして、全体としての需給を都道府県あるいは市町村指導というものを通じまして果樹についていかに秩序ある供給を図っていくかということ自身もなかなか困難な厄介な課題でございます。その間の調和をどう図るかという問題になろうかと思いますが、需給への影響というものが分離遮断して考えられるかどうかということが一つのポイントであろうかと思いますし、また、当然のことながら栽培方法が営農面から推奨できるようなものであるかどうかという総合的な判断が要るのではないかというふうに思っておりますが、お話しが今後に向かってよく検討しろというお話でございます。せっかくの御指摘でございますので私どももよく検討はしてみたいと思いますし、地域実情もよく勉強してみたいというふうに思う次第でございます。
  84. 一井淳治

    ○一井淳治君 岡山に現実事例がありまして、農工団地にワイン工場が来まして、ワイン工場の方は非常に評判が高いわけでございますけれども地元からは一切ブドウは買えないというふうな非常に寂しい状況がありまして、地元の方も口に指をくわえているというふうなこともありますので、そういう特殊な事情の場合にはいろいろ柔軟に対応していただけるように今後よろしく御検討をお願いしたいというふうに思います。  それから次は、労働省にお尋ねしたいんですが、労働基準法の四十一条によりまして農畜産関連事業につきましては労働時間、休憩、休日について適用除外になっているというふうなことで長年やってきておりますけれども、最近はそういった種類の産業もだんだんと構造が変わってまいりまして、例えばブロイラーの飼育などは大規模に行われましてコンピューターなどを導入して近代的な管理が行われますし、また深夜労働が行われたりして、通常の工場地帯工場以上に工業的な様相を呈しておるわけでございます。そういったものにつきましては労働者の保護ということを考えませんと、農村部の労働条件が非常に悪くなる方へも影響していくというふうに思うわけでございます。  前回の労基法の改正の際、その問題も内部的には検討されたといううわさも聞くわけでございますけれども、その辺どうなっているのか。今後私は早急に改正していただかなくちゃいけないと思いますけれども、そのあたりのことについてお尋ねをいたしたいと思います。
  85. 松原東樹

    説明員(松原東樹君) 労働基準法におきましては、御指摘のように、事業の種類とその内容に応じまして適用関係を定めましてその円滑な施行を図っているところでございます。  御指摘の農林漁業あるいは動物の飼育等、労働基準法の八条の六号、七号に掲げる事業につきましては、その事業の性質上、一般に自然的な条件に左右されることが大きいという特殊性にかんがみまして、通常の事業に適用されております労働時間等の法的基準を適用することが適当でないということから、御指摘の労働基準法の四十一条におきましてこれらの規定の適用を除外しているところでございます。また、このような観点から、ILOにおきましても農林漁業等にかかわります労働時間等に関する条約はこれまでに採択されたことがないというようなこともございまして、これらの分野につきまして労働時間等に関する規定を適用するということは困難ではなかろうかというふうに考えておるところでございます。  ただ、法律上の適用がないといって労働者に過重な労働を強いるようなことがあってはならないということは当然でございまして、御指摘のような御趣旨も踏まえまして、問題の存する事業場につきましては労働基準法の趣旨につきまして啓発に努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  86. 一井淳治

    ○一井淳治君 啓発は大いに進めていただきたいと思いますけれども改正をするかどうかということを内部的に論議なさったということもちょっと聞いているんですが、今後改正の際にその点もぜひとも取り上げていただきたいと思うんですけれども、そのあたりはいかがでしょうか。
  87. 松原東樹

    説明員(松原東樹君) 確かに、一部の畜産あるいは植物の栽培等におきまして従来と違った手法で事業が行われるというような形態も出てきていることは確かでございますが、そういった部分だけ取り出して適用関係を法律上区分けするということにつきまして技術的になかなか難しいというような問題等ございまして、今回の労基法の改正の際も特段取り上げるには至らなかったところでございます。御指摘のように、今後のそういう動向等も見ながら、さらに将来の法改正の際にはまた検討をする一つ課題ではないかというふうには考えております。
  88. 一井淳治

    ○一井淳治君 それから、水のことでございますけれども、きょう午前中に佐藤参考人からも、工場立地については水資源が非常に重要なんだという御説明がございました。工場立地に当たって企業側が進出するかどうかということで、その決意をする理由として、多量の水あるいは良質の水というものがどの程度重要性を持っているのかということにつきまして、通産省の方からお尋ねしたいと思います。
  89. 安藤勝良

    政府委員(安藤勝良君) ただいまの御質問にお答えする前に、ちょっとお断りしておわびを申し上げたいと思います。  先ほど税のことでちょっと私勘違いしてお答えしたので訂正さしていただきたいと思いますが、工配補助制度と言いましたけれども、これは特別償却は制度入っておりませんで、地方税関係で固定資産税とかあるいは特別土地保有税、こっちの方で優遇されておりまして、そのほかいろんな地方への産業立地法、これは農工法もそうでございますし、そのほか産炭法、こういったものについては特別償却の制度導入されております。御訂正申し上げます。  それでは、ただいまの工業用水の問題についてお答えしたいと思います。  御案内のように、工場の立地因子と申しますか、条件といいますか、そういった面につきまして申し上げますと、企業が地方へ行く場合には、これは労働力の問題なりあるいは市場の問題なりあるいは土地工業用水、そのほか交通条件整備とかいろんな因子が整備されていなくちゃ地方に行かないわけでございます。  とりわけ、工業用水につきましては、確かに今先生御指摘のあったICなりあるいは食品といった業種につきましては、大体内陸に立地する傾向が強い企業でございまして、そういう企業につきましては、単なる量的な問題に限らず、良質の水を求める傾向がございます。そういった面から、工業用水の確保というのは大変重要なわけでございまして、我々も古くから工業用水の整備、特に工業水道整備、これは世界に確固たる事業じゃないかと自負しておるわけでございます。そもそもは地盤沈下対策事業で進めていたわけでございますが、昭和三十一年からそういった事業を進めてまいりまして、今全体の三四%を占めるに至っておりまして、大体工業団地をつくる場合において用水型の企業が来るということが予想される場合におきましては、こういった面を活用しながらやっておるわけでございます。  また、最近、内陸団地につきましては、要するに大量な工業用水を使うということじゃございませんものですから、六十年から小規模工業水道事業を制度化いたしまして、臨機応変に対応するような制度導入し、その整備に努めておるわけでございまして、今後ともこの面については十分留意して工業立地を進めてまいりたいと考えております。
  90. 一井淳治

    ○一井淳治君 建設省の方にお尋ねしたいんですが、私ども川を見ておりますと、いつも川には水が流れておりまして、相当多量の水が海へ捨てられているというふうな状況があるわけで、あの水を何とかうまく利用すればもっと地方に工場が立地するんだなというふうな非常に残念な気持ちでおるわけでございます。  これは素人の考えで非常に大ざっぱな、無鉄砲な主張になるかもしれませんけれども、例えば今の水利権について、例えば渇水時は要りません、余るときだけで結構ですというふうな特別な水利権を設定するとか、あるいは現在水利権割り振りができておりますけれども、この際いっそ全部新規に水利権の割り当てをやり直すとか、何かそういうことで余剰の水を生み出すというふうなことはできないものかどうか、建設省にお尋ねしたいと思います。
  91. 横田猛雄

    説明員(横田猛雄君) お答えをいたします。  水利権の申請がございましたときには、まず水がなければ許可できないわけでございまして、その水量の判断をするわけですけれども、これは安定的に水を確保するということから渇水流量というものが決められておりまして、これは年間三百五十五日確保できる水量ということでございます。それを過去十カ年の中で一番少ない数値、これを基準にいたしまして水量の判断をいたします。さらに、河口では、維持用水と申しておりますが、河口の閉塞あるいは漁業に対する影響等を考慮いたしまして、ある程度の水量が必要であるということになりますので、河川水の安定的確保という観点からそのような形での水量の計算をいたしまして、それに基づいて水利権の許可を行っているということでございます。  ただ、そうは申しましても、非常に緊急に水を必要とするということもあるわけでございまして、そのような場合に暫定水利権というものも許可をいたしております。ただ、これは安定的な水の確保ということで、既存水利権者等に対する影響が大変強いということから、緊急に必要であるということも当然ですが、さらに恒久的な水資源の確保、つまりダムですとかせきですとか、そのような形で将来確実に水の手当てができる、このような条件で暫定的な水利権というものを許可をしておるわけでございます。  水利、水の使用ということはこれまでいろんな秩序もございますし、大変重要なことでございま すので、建設省といたしましては水の必要が出た場合には、ダムなりせきなり、あるいは水利の合理化ということも行ってはおりますけれども、そのような形で水資源を消費させて、それを確保するということで進めております。
  92. 一井淳治

    ○一井淳治君 時間が参りましたので、最後に簡単に要望だけさせていただいて、終わりたいと思います。  私、今度いろいろと勉強をさせていただいたのですが、やはり政策のトレースが十分できていないというのか、あるいは統計が確保されていないといいますのか、例えば農工法のいろいろな施策がなされておりますけれども、それに関連してどの程度、労働力の移動とかあるいは兼業農家あるいは大規模経営がどういうふうに移行をしておるか。それから、例えば本当に農村での将来の農業担い手となるべき人間が、農工のせめぎ合いの中でどちらに移動しているかというふうないろんな問題について、例えば誘致企業の労働条件の実態などを見ますと、それによって若手労働者がどちらに動いていくかということもわかると思うわけでございますけれども、そういうふうないろんな基本的な資料というものが残念ながら、私の努力が及ばなかったせいかもしれませんけれども、どこを探してもないようなことで、これは農林省だけではなくてほかの省庁にもいろいろお願いしたのでございますけれども、こういうふうな基礎的ないろんな資料が集まっていないと、一つの政策が将来どういうふうに効果を発揮していくのか、将来どういうふうな政策をとったらいいのかということも非常に判断がしにくいんじゃないかというふうな感想を持ったわけでございます。    〔委員長退席、理事高木正明君着席〕  そういうことで、今後農政におかれましては、農政についてはよく変わって困るというふうな話も聞かされますけれども、現場でどういうふうなことが起こっているのかということをちゃんとつかんだ上で将来農政が展開できますように、基礎的な資料だけは何とか集めていただくように要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  93. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 私も、今一井委員から最後に指摘があったわけでありますけれども、やはりこの制度かつくられて以降、具体的にどういうふうな成果が上がってきているのかということをいろいろ示す指標というものは、もっときめ細かにいろいろと提起をされてこなければいかぬのではないかというふうに思います。  先ほど、構造改善局長の御答弁の中にももろもろの条件とか、通産省の安藤審議官ももろもろの政府の対策とかというふうに言われましたが、このもろもろというくらいわからないものはないんでありまして、そのもろもろという言葉を使わなければならないようなことがないように、言ってみればかなり細かいことまでいろいろと配慮をして、あるいはさらに柔軟に対応しているということを意味しているんだろうと思いますけれども、やはりそこのところはもう少し具体的な判断ができるよう、今後の問題としてはぜひ体制をつくっていただきたい、こんなふうに思うわけであります。こんなことを先に申し上げましたのは、やはり本制度導入をされて以降、それぞれ目的としていること、そしてその当初立てられたいろいろ目標等についてどういうふうにして実際に実行されたのかという評価がやはりどうしても要るからであります。私はそれこそもろもろのことを聞きたいと思いますけれども、しかし、時間の関係もございますので、そうした評価について幾つかの点について簡単にお聞かせをいただきたいと思います。  一つは、農業構造改善についてのことはいろいろと一井委員からも質問ございましたので、それで納得したわけじゃありませんけれども、一応時間の関係もあって省かしていただきます。  ただ、その中で、例えば規模拡大がこの法律によって目標を持っておられたのかどうかということと、そしてどの程度この法律のおかげで、この制度のおかげで達成できたのか、こういうことをお聞かせをいただきたいと思います。  それともう一点は、この制度導入されましたけれども、立地に当たってはかなり特定な条件のところだけにしかできなかったのではないだろうか。例えば高速道路が開通をしているとか、あるいは地方空港が整備をされたとか、あるいは工場が張りつけるようないろいろと関連をした地場の産業なり何なりと、そういう背景があるとかいうような特殊なところに限られていたのではないだろうか、そんなふうにも思うわけでありまして、その辺もどう評価をしておられるか、この二点をお聞かせをいただきたい。
  94. 松山光治

    政府委員(松山光治君) 農業構造とのかかわり合いの話につきましては、先ほどもお答え申し上げましたように、この農工制度のもとで形成されております就業機会の確保という現実の上に立ちまして今後一段の努力を重ねる必要があるというふうに考えておる次第でございます。  なお、法制定当時に何らかの具体的な目標があったのかどうか、こういうお尋ねでございますけれども、全体としては特段の何か指標的なものでこうするんだということは農業構造の関係についてはなかったというふうに承知をいたしております。各地域でそれぞれの実情に応じた目標のようなものを掲げておる場合もあろうかと思いますが、全体としてはそういうことでございます。  なお、企業導入の現状についての評価でございますが、先ほども通産省の方からもお話のございましたように、全国対象地域二千五百市町村のうちで、千五十余の市町村で計画がつくられ、その八割で、一部導入も含めまして既に企業導入されておる。やはり私企業の論理の世界でございますから、立地条件のよりよい地域企業立地が進みやすいという現実のありますことは否定できないところでございますし、そういう意味での地域間のばらつきの問題に今後どのように取り組んでいくかというのは私どもにとっての政策課題であるわけでございますが、さはさりながら、必ずしも立地条件に恵まれないそういう地域におきましても地元努力、工夫によりまして、工業導入の成果を上げている地域もあるわけでございますので、そういった事例参考にしながら、特に今回の制度改正におきましては、そういった地域間のアンバランス問題に少しでもアプローチできたらということで、広域就業計画でございますとか、あるいは別途低利融資制度でございますとか、そういった工夫も凝らしておりますので、各地域でひとつ格別の活用を願いたいと思っておるわけであります。  なお、先ほどの一井委員からのお話しにもございまして、あわせて先生からも御指摘のございました資料の収集整理の問題でございますが、私ども主務省庁、お互い連絡をとり合いながら、的確な実態分析の上に立ちましての政策運営の必要性、十分考えておりまして、できるだけの努力はいたしておるわけでございますが、何分にも事柄の性格上、資料整理にまだ完全にはなかなかいきにくい面もあることも事実でございます。御指摘の点も踏まえまして、今後とも努力してまいりたい、このように考えております。
  95. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 あと成果をどう評価しておるかいろいろと伺いたい面もありますけれども、その辺ちょっと質問の都合上割愛させていただきまして、今まで社会経済的な動向というものは非常に大きく変わるということがあったわけです。四十六年という本制度の発足をした当時と今日とでは非常に大きな変動があります。何回かそういうことをくぐってきていますということなんでありますが、そうすると、社会経済的な大きな変化というものがあっても、法律そのものが全然改正がなかったわけでありますけれども改正をする必要がなかったというのはどういう理由によるんでしょうか。
  96. 松山光治

    政府委員(松山光治君) 御指摘のように、昭和四十六年の制度改正以降、二度にわたるオイルショックもあったし、また高度経済成長から安定成長への移行といったような変化もあったわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、この制度の運用に当たりましては五年ごとに基本方針の見直しを行いまして、できるだけ状況の変化に弾力的に対応するような制度運用に努めてきたところでございますけれども、今回法律改正を御提案申し上げましたのは、一つにはそういう工業導入を進めてきたという実態と、それからその後の産業経済の状況の中で新しく四業種対象にする可能性と必要性が出てきた、そういう状況の変化、それに地域別の導入状況の不均衡の問題に対応していくためにこの際広域就業計画の問題に取り組もう、そういう議論の煮詰まりがあった。そういう意味では、十数年にわたります制度の運用の実績を踏まえた上での今回の法改正の御提案であると、このように御理解いただければありがたいというふうに考えております。
  97. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 私は、今回新業種が四業種加えられたということはそれなりに評価をしております。これはまた内容的にはいろいろとこれからお伺いをするわけでありますけれども産業構造がいろいろな形で大きく変化をしてきた。そういうことに対応していきますと、例えば工業なら工業ということに限定をしてきた、限定をもう少し早く外して対応するくらいのことがあってもよかったんじゃないか。言ってみりゃちょっと遅かったのか。それから、今この四業種だけでいいのかというような問題意識もありますので、それでそういうことを伺っておりますが、そのことはまたこれからの議論ということにさせていただきましょう。  評価の問題としてさらに伺っておきたいと思いますのは、本制度が発足をするときに、法案審議をいたしました際の本委員会の附帯決議があるわけです。この附帯決議にどう対応してこられたかということについても、これは法案審議をした委員会の構成メンバーの一人として責任があると思いますので伺っておきたいわけであります。八項目もありますから、全部を伺うというわけにもいきませんけれども、ちょっと気にかかるところを伺っていきたいと思います。  その一つは、新産都市の区域等の「都市計画区域を含む市町村以外の市町村を本法の対象とすること。」となっております。具体的にはどんなところがあったんでしょうか。
  98. 松山光治

    政府委員(松山光治君) 附帯決議の一で農村地域の範囲につきまして御指摘をいただいたわけでございまして、附帯決議の御趣旨を踏まえまして具体的に政令で定めておるところでございます。特に附帯決議の中で御指摘のございました「新産業都市の区域」あるいは「工業整備特別地域」、これを原則的には本法の対象になります農村区域から外すというのが法律の建前でございましたが、御審議の中では、新産業都市なり工業整備特別地域は広いわけでございますから、附帯決議にもございますようにいわゆる市街化区域と市街化調整区域の線引きを行っておるそういう「都市計画区域を含む市町村以外の市町村を本法の対象とすること。」という御指摘をいただいたわけでございます。それでその趣旨を踏まえまして政令で定めたわけでございますが、具体的には新産業都市二百六十四市町村でございますが、今申しましたような線引き市町村以外の市町村ということで百四十五市町村対象に相なっております。また、工業整備特別地域九十市町村あるわけでございますが、同じようなことでそのうち二十四市町村対象にしておる、このように御報告申し上げておきます。
  99. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 次に、第四項に「工業導入については、公害回避と環境保全の観点からその業種を選定するとともに、公害防止対策の積極的な措置に遺憾なきを期すること。」と、こんなふうになっております。そうすると業種選定ということでどういう対応をされたのか。それから公害防止対策に積極的にというのはこの導入法に伴って特にこういう点を留意しなさいというようなものがあったのかどうか、その辺をお聞かせいただきたい。
  100. 松山光治

    政府委員(松山光治君) 結局、附帯決議の趣旨は「公害回避」あるいは「環境保全」という観点から運用に適切を期せと、こういう御趣旨であろうかと思うわけでございますが、私どもといたしましては基本方針の中に公害のおそれのない業種または公害防止設備を完備した企業導入を図っていくんだということを明記いたしまして、実施計画を策定いたします場合に公害の防止なり自然環境の保全に配慮するように特別に指導を行ってまいったというのが一つでございます。同時に、導入業種の特性等から見ましてこれはやはり念には念を入れた方がいいというような場合につきましては、実施計画の策定に先立ちまして環境調査を行うような指導もいたしておるわけでございます。  なお、公害防止のための援助措置につきましては御案内原因者負担の原則がございますが、その原則の中で必要な税制面あるいは指導でありますとか技術開発でありますとか金融面の措置をとってございまして、そういった各般の措置の有効活用によりまして工業導入に伴う公害の発生の防止に努めてきておるということでございます。
  101. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 事前の対策についてはそういう御努力をなさってきたことがよくわかります。  ただ、これから先の問題ということになってくると、公害というのはその当時は予測をしていないけれども後になってからいろいろ公害だということが問題になることがあります。例えば電子関係の工業、ICの工場誘致をしたと、今まで安心をしていたけれどもところがフロンガスが、フロン液が問題になってくるというようなことは起こり得るわけですね。ですから、そのときよかったからそれでいいではないかということだけではなくて、公害行政というのは市町村等も大変な活動をしているわけでありますし、それぞれ地方自治体、市町村、県等とあるいは担当の省庁等の連携をとりながらその辺は十分に今後ということについても対処をしていただきたい、こんなふうに思います。  次に、これはどういうふうに考えておられるかということです。五項の「農用地区域の確保と地価上昇防止対策に努め、」と、こういうことがありますけれども、私の方の見方からいえば少しそれはすれ違うのかもしれませんけれども、農用地区域というのは規模拡大ということをいろいろと御努力になっているけれども、そっちの方は必ずしも十分にいっていないというふうにも思うんです。だが同時に、都市周辺を中心にして工業が入ってきたところはだんだん工業が入ることによって農用地区域が侵食をされていくという傾向は否めなかった。その辺をどういうふうに抑えておられるかということが一つ。  それから、「地価上昇防止」というのは、これは今度は全然また、先ほどの参考人の御意見の中では地域によっては下落が起こっているところもかなり出てきている、こういうことでありますけれども、今まで一応常識的には工業導入をされる、そうするとその周辺は地価が上がっていく、こういうようなことに常識的にはなっていたと思うんです。その辺は何か対策を立てられていたのかどうかというようなことについてお聞かせいただきたい。
  102. 松山光治

    政府委員(松山光治君) まず、「農用地区域の確保」の問題でございますが、本制度のねらいが農業工業の双方の健全な発展をねらいにしておるわけでございますので、そういう意味では農業的な土地利用を図ることが適当でございます集団的優良農地の保全あるいは周辺農業への影響を十分考慮して計画を策定していくようにという指導を行ってきたところでございますけれども、具体的な扱いの問題といたしましてもいわゆる農振法に基づきます農用地区域に工業導入地区を設定しない、こういう考え方のもとに関係部局で十分土地利用調整を行うように、こういう指導を行っておるところでございます。  それから、地価の問題でございますが、工業導入に伴って不当な地価上昇が起こる、これは大変な話でございます。したがいまして、実施計画の策定なり用地の買収、造成に当たりまして特にタイミングその他が非常に重要な点であろうかと思いますので、不当な地価の上昇を招くことのないような適切な対応を行うように指導を行ってきたところでございますけれども、実際の運用を見ましてもそれぞれの地域いろんな工夫もいたしております。特に農村地域内の団地設定で地元雇用が多うございますので、それに伴う住宅地需要というものが比較的少なくて済む、こういうようなこともございまして、これまで地価上昇が問題になったという報告には接しておらないところでございます。
  103. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 地価上昇については聞いておられないということでありましたが、我が国全体で地価の上昇傾向というのがずっとあった時代というのがありました。そういう時代、特に農村地域では地価の上昇に期待をしていた部分も、そう言うと大変悪いんですけれども、ちょっと今の時期とは違うかもしれませんがあったということも言えるわけであります。それだけに、今後の問題としてもこの辺は、また事情の変化がいろいろと起こってくる中でやはり地価対策というものについての監視といいましょうか、そういうものは関心を持ち続けていかなきゃならない問題だと思うのでお聞きをいたしました。  次に、これは労働省の関係でありますけれども、六項目で「中高年令者対策に特別な配慮を行なうこと。」というようなことが述べられております。特別な御配慮はどのようにして行われたのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  104. 佐藤仁彦

    政府委員佐藤仁彦君) お答え申し上げます。  附帯決議の三の(三)におきまして、「中高年齢者の雇用を促進するため、これらの者を雇用する企業に対する特別な配慮を行うこと。」という附帯決議をいただいております。労働省におきましては、農村地域における農業従事者の就業機会を確保いたしますために、職業紹介の充実、職業訓練の実施等の就職援助措置を講じておりますが、特に中高年に対しましては、市町村が計画いたします実施計画の策定に当たりまして、労働力の需給として若年層に偏る需要を計画しないように、特に中高年の雇用に配慮するように市町村指導しております。また、導入企業が実際に入ってまいりまして労働力を調達するに当たりましては、通達で労働力の需要充足計画を公共職業安定所に提出していただいておりますが、その中で具体的な求人に当たりましても中高年を中心とする農業従事者の採用を行うように指導をしているところでございます。
  105. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 これを伺いましたのは、私が、農村地域へこの法律によって導入をされたものを具体的に知っているわけじゃないんです、申しわけないんですが。農村地域へ進出してまいりました企業の場合、かなりの部分が、例えば電機関係ですと、地元ではかなりの者が雇用されるという期待をしていたのに、結局若い女性の人だけが採用されて、あとは指をくわえちゃった、こういう例がかなり多いんであります、私の周りなどを見ておりましても。それだけに、企業が入ってきたときはそういう動向が一般的にあるんじゃないだろうかというふうに思うものですから、この法律制度に従って入った企業についてはこの辺実際にどういうふうに対応されたかということが気になるんでありまして、少し具体的なものがおわかりでしたらお聞かせをいただきたいと思います。
  106. 佐藤仁彦

    政府委員佐藤仁彦君) 農工法に基づきまして農村地域に入ってまいります工業がどのような製造業の中での業種であるか、そして、その入ってきます特定の事業所がどういう労働力を主として求めているかというようなことは、入ってまいります企業業種に大きく制約されるところだと思います。したがいまして、最近農村地域に立地が進みました業種を見てみますと、ただいま先生御指摘になりましたように、電機関係でありますとかそうした製造関係が多いわけですが、そういうところでの実際の求人は若年、女子労働力に偏っていることは現実でございます。  そこで、職業安定所といたしましては、単にそうした求人のあり方をそのままうのみにすることなく、女子の中でも中高年を採用することができないか、あるいは男子労働力の職域をふやすことができないか、そうした具体的な求人条件の緩和指導を行っているわけでございます。そうした地道な活動をしながら職業紹介に当たっておりますが、現実には、最近の農村地域への立地が進んでおります企業の需要がどうしても若年の、そしてその中でも女子に偏っているというようなことから、中高年の方々のそうした企業への就職が過去に比べてやや減ってきているのは否めない事実だと思います。その点につきましては、さらに農村地域の求職者の実情を見ながら、中高年を中心に就職を進めていくという立場を維持しながら今後とも努力してまいりたいというふうに考えております。
  107. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 私がこういうことを伺っておりますのは、今もお話がありましたように、新しく立地をする場合というのは、企業はそれだけ合理化できて、そしてコストダウンができてというようなメリットをやはりどうしたって必要とする。そうすると、柔軟な頭脳と肉体を持っていて、しかも賃金が比較的安くて済むというようなと乙ろをどうしたってねらうことになると思うんです。そういう傾向があればあるほど、この制度を利用してもらうときにせっかくのものが農村からの雇用ということにうまく結びつかない。そうすると導入した意味が、全然ないとは言わないけれどもかなり阻害をされる、こういうことになると思うんです。  ただいま資料の中で雇用の成果を見てまいりますと、地元での雇用者が全雇用者数の八〇・二%、こういうことで八割が地元雇用だということになっています。ところが、八割の地元雇用なんですが、地元雇用のうち農家世帯からの雇用者数ということになると四四・二%、半分いかないわけですね。地元雇用はあるけれども農家からの雇用というのは半分いかない。そして、今のような傾向がこれからさらに続いていくとしたならば、せっかくの制度がありながら、いわば農業の面でいけば構造改善に資する、そして農業よりも、他産業での仕事に専念をしてもらう人たちが生まれてこなきゃ困るということになるんだけれども、そっちの面の、今の企業の動向等からいったら必ずしも十分な成果が今後上がっていくかどうかというようなことが気になるんですよ。というのは、農家はほとんどが中高年層なわけですからね。ということで、これからの問題としてまたさらに議論をしなきゃならぬわけでありますけれども、特に今までの成果について私は気にしておりましたので伺いました。  さらに、これまた農林水産省の方に戻りますけれども、農協系統を中心とした工業導入というのがありますけれども、これは具体的にどんなものが実際には行われたわけですか。
  108. 松山光治

    政府委員(松山光治君) 特に農協の場合には、農林水産物の加工事業を中心として工業的な活動をやっていく、こういうことになろうかと思うわけでございますが、農林水産省といたしましては、農協が行います加工事業に必要な施設の設置につきまして、いわゆる定住事業あるいは第三期山村振興事業、新農業構造改善事業等々の各種の事業によりまして一定の助成を行ってきておるところでございます。    〔理事高木正明君退席、委員長着席〕 こういうことを通じまして近年加工事業を実施いたします組合数が増加しております。六十一年度で七百近い組合がこういった農産加工を行っておるということでございまして、その中には工業導入地区に工場を立地させておる、そういうものも各地に見られておる、こういう実情でございます。
  109. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 これを伺いましたのは、これも内容をいろいろと議論している時間がないから自分の意見の方を中心にして申し上げてしまう形になりますけれども、例えば農産物を原料とする農産加工を中心とした農協系統の工業というのはかつていろいろと試みられて、結局一定の期間を過ぎたら、時代の流れについていけないでやめざるを得なかったというようなものがかなりあるわけです。これからもまた国際化などの圧力、圧力というと言葉は悪いのかもしれませんけれども、大臣が行って一生懸命奮闘しておられるそのアメリカからいろいろと加工品などが入ってくる、こういうようなことになってまいりますと、せっかくつくったものがまた厳しい状況の中に追い込まれていくという心配も多分にあるわけであります。それだけに、せっかくこの制度を利用してつくらせたわけでありますから、これが維持できるようにということをいろいろな角度でまたこれから対策を考え対応を考えていただかなきゃならないというようなことがあるんではないだろうか、こんなふうに思うからであります。  次に、「積寒地域への工業導入等が円滑に行なわれるよう配慮すること。」、これは具体的にどういうふうに評価をしたらよろしいですか。
  110. 松山光治

    政府委員(松山光治君) 積雪寒冷地帯等の地域につきましては、工業導入を図っていく場合にもなかなか難しい条件を持っておるところでございます。そういうことも頭に置きながら従来から就業機会の不足しておる地域については工業導入を重点的に行うんだということを基本方針でも目標の一つに掲げまして、できるだけの努力を行ってきておるところでございます。  特段の対策ということになりますれば、農水省の方で行っております先ほど申し上げました定住事業でございますとか、第三期山村事業等によりまして除雪なり融雪施設の整備に助成しておるといったようなこともございますし、要すれば、これはまた通産省の方から詳細を御説明いただいたらと思いますけれども、豪雪地帯の主要な事業といたしまして工業水道の建設でありますとか、あるいは中小企業近代化資金によります消融雪設備の援助でありますとか、あるいは技術研究開発面での推進でありますとか、そういったことについても御協力をいただいておるところでございまして、私どもとしては引き続きこういった地域についての重点的な工業導入の問題に取り組んでいきたい、このように考えておる次第でございます。
  111. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 それぞれの担当のところからも伺いたいんでありますけれども、自分の意見を言ってしまったためにちょっと時間を経過してしまいました。法律の今度の改正点について若干お聞きをしておきたいというふうに思っております。そっちの方に移らせていただきます。  最初に、道路貨物運送業倉庫業こん包業卸売業の四業種が今度新しくこの対象に加えられるということになったんでありますけれども、この新しい業種というのは製造業の関係、工業に比べるとそれにも増して立地条件の影響を非常に大きく受ける、そういう業種ではないか、こんなふうに思うわけです。例えば道路網との関係であるとか、それからマーケットとの関係であるとかいろいろと立地条件が面倒になってくるんではないか、こんなふうに思うわけであります。  さらに、先ほど参考人のいろいろな御意見を伺っている中でも、例えば貨物運送業、これも地方においてはかなり過当競争ぎみという事実は認めておいでになります。そういたしますと、これから地方での貨物運送業というのはどれだけの発展性を見ていったらいいのか、こういう問題にもなるわけであります。さらにまた、倉庫業というのがありますけれども、最近の倉庫業というのは、私の見ているところにもありますけれどもほとんどもう自動化してしまいまして、無人倉庫と言ったらいいんでしょうか、そういうような形になっているものもあります。  そういたしますと、倉庫というものはつくられるけれども雇用とのかかわりということでいったら余り期待持てないんじゃないだろうか。倉庫業というのは、道路運送業にも増してまたさらに立地条件の方が面倒になるのではないだろうか、こんなふうにも思うわけであります。その辺、この業種の見通し等についてお伺いできれば幸いです。
  112. 松山光治

    政府委員(松山光治君) 一応総括的に私の方からお答え申し上げ、あと必要な補足を関係省からしていただきたいと思います。  御指摘のように、追加業種いずれも流通にかかわるものでございますし、交通条件に依存するところの大きい業種でございますから、従来は交通網の整備の進んでおる都市ないしはその近郊で主に立地しておったわけでございます。  ただ、その後の状況を見てまいりますと、交通条件が相当整備されてまいりましたから、そういう意味での農村地域におけるこれら業種の立地の制約というものがかなり緩和されてきておるという事情が一つございますし、それから農村への工業導入が進んだということで、これらは工業との取引関係の深い業種であるだけに、そういう意味でも営業機会がふえておるわけであります。  さらに、もろもろの施設整備をなお必要とする業界である、業種であるというふうに理解しておりますが、当然大きな敷地を必要とするということになりますれば都市ないしはその近辺ではこれら業種にとって制約条件が逆に大変出てきておる。また、人の面でも当然のことながら農村地域の方がやりやすい。こういうことがあるようでございまして、そういう意味では私ども今回の制度対象にいたしまして税制なり金融なりの優遇措置の対象にするということで、農村の方に入ってきていただけるんじゃないかということを非常に期待しておる次第でございます。  なお、雇用効果の点でございますが、もともとかなりこれら業種、一般の製造業全体に比べましても労働集約的な業種であるというふうに理解をしておるわけでございます。今無人化といったようなお話があったわけでございますが、もちろんこれら業種におきましてもいわゆる合理化が進んでおることは事実のようでございますけれども、もちろんそういった合理化にもおのずから限度があるというふうに承知をいたしておりますし、それ以上にかなりきめ細かいサービスを必要とするというのがどうも最近の状況でもあるようでございまして、事業所数のみならず従業員数におきましてもこれら業種におきましては増加傾向にある、こういうことを踏まえまして今回の導入業種の追加を考えたわけでございます。
  113. 橋本昌史

    政府委員(橋本昌史君) 道路貨物運送業倉庫業など追加業種は、委員御指摘のとおりいずれも流通に関連する業種でございますので交通条件に依存するところが大きいわけでございますが、従来は交通網の整備が進んでいた都市部あるいはその近郊に立地する傾向が強かったと思われます。しかしながら、近年におきましては農村地域でも交通条件整備が進んでまいりました。また、大都市圏を中心都市部におきましては、必要な用地を確保するということが甚だ困難になってきております。さらに、追加業種の性格といたしまして労働集約的な産業でございまして、労働力は都市部においてより農村部において確保することがより容易であるというような事情もございます。さらには、農村地区に工業等が立地してまいりましてそこから発生する需要があるわけでございますので、そういう工業等の立地に伴って追加業種の立地も考えられるわけであります。このようなことを考えますと、道路貨物運送業あるいは倉庫業農村地域へ立地することは我々としては大いに考えられるというふうに思っております。  この農工法が適用されますと、税制上、金融上の優遇措置も講ぜられるわけでございますし、さらには、共同流通業務施設の整備など基盤整備を進めることになっておりますから、物流業種農村地域への立地は今後進むものである、このように理解いたしております。
  114. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 私は、自分の周辺をどうしたって見るわけですけれども、私の周辺からいけば、地方における例えばトラック運送業者などはもう農村地区へほとんど出てしまっておりますね。この制度導入ということで、またさらに改めて広いところをというようなことになるのかどうかというようなこともありますけれども、しかしそれをするには今かなり競争が激しく、先ほどのトラックの御意見ではないですけれども、安売り競争なども現実には起こっているわけです。そういうことになっていきますと、やはり今後の見通しということについて若干不安がないわけではありません。  というのは、これはおたくの方が免許を与えていかなければならないわけでありますが、いろんな面で直接御指導される面があるわけでしょう。新たな流通の新たなマーケットで拡大をしていくというのであればいいですけれども、そうでないと過当競争ぎみのところへ新たにこうしようなんというようなことになったら、おたくの方だっていろいろ指導上困ることが起こってくるんじゃないだろうか、そんなことなども心配になるわけなんです。その辺はいかがですか。
  115. 橋本昌史

    政府委員(橋本昌史君) 委員御指摘の、農村地域の中でも特に需要が少ない、あるいは需要が減少してトラック事業の間の競争が厳しいというところについての御質問でございますが、今のトラック事業の現状をマクロ的に申し上げますと、鉄道なり内航海運なり、こういうどちらかといいますと重厚長大の物資を扱っている交通機関の輸送量というのはこの十年間非常に減ってきておりますけれども、トラックは、特に営業用トラックは比較的堅調な伸びをマクロ的にはしております。  そういう意味で見ますと、輸送量だけではなく、事業者の数もあるいは車両数も増加しておるわけでございまして、局地的に見ますと確かに円高の影響等によって需要が減少しているような地域においては厳しい競争がある地域もあるかと思うわけでございますが、今度の農工法で例えば新たに工場が立地し、それに伴って需要が発生するような場合におきましては、道路貨物運送業等の新規進出等も考えられると思っておりまして、そのような場合には我々今までの既存事業者との競合関係等も考えながら事業が成り立っていくようによく審査し、必要なものは認めていきたいと、このように考えております。
  116. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 その点は、議論をしている時間がとても足りないわけでありますけれども、私が実はこんなことを伺っておりますのは、四業種それぞれ——私はまた議論をするといろいろ気になっていることがそれぞれあるんですけれども、しかしそれは別にいたしまして、これから先のことを考えていったら、直接工業に結びつくと思われるということで多分挙げたのだろうと思いますけれども、この四業種よりももう少し枠を広げて業種の適用を考えていかないとこれからまたお困りになるのではないだろうか。そんな気がしないでもないわけなんで、それで私は伺っているわけなんです。この辺は意見としてお聞きおきをいただいて、計画をつくる際にはいろいろとその辺も御検討いただきたいし、もし対応しなければならないことになればできるだけ早く、さっきのあれではありませんけれども、今のこの四業種だって遅過ぎたということではないですけれども、やはり早く法律改正をして対応できるようなこともお考えをいただかなきゃならぬのじゃないかというふうに思っております。これは意見として申し上げておきます。  次に、イメージ的にはっきりわからないのでお聞かせいただきたいのでありますけれども、トラックターミナルなどを例示として挙げました共同流通業務施設というのは一体どういうものか、トラックターミナルはわかりました、例示として出ましたから。ほかにどういうことが考えられるのでしょうか。
  117. 橋本昌史

    政府委員(橋本昌史君) お尋ねの施設でございますけれども委員御指摘のように、一般の路線トラックが中心として利用いたします自動車ターミナルのほかに、集団化倉庫あるいは共同配送センター、卸共同ターミナルのようにトラック事業あるいは卸売業等に携わる相当数の事業者が利用する施設でございまして、これらの事業を単独あるいは共同して実施するための拠点となるような施設を我々考えておるわけでございます。
  118. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 今のお話はわかりましたが、しかし、今時代の流れとともに流通業務というものをどういうふうに理解をするかという問題もあるんですけれども、例えばキャプテンシステムを利用して情報の集約をすることによって対応を、マーケットを早く押さえていくとか、人手よりも早く品物が届けられるようにするとか、これは流通とかかかわりを持つわけなんですけれども、そういうような施設を何かやっていこうというようなときはこれの中には入らないのですか。
  119. 橋本昌史

    政府委員(橋本昌史君) 先ほど申しましたように、共同で利用する流通業務施設でございまして、それは相当多数の流通関係の事業者が共同して使う施設でございますから、今委員御指摘のようなソフトといいますか、情報に関する共同利用のような施設も入り得るものだというふうに理解いたしております。
  120. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 そうすると、いろいろとこれ柔軟なものになるわけでありますから、その辺は新しい時代にどう対応するか、私の方も関心を持ってよく見させていただきましょう。  そこで、新しく加えられた四つの業種と、それからこうした共同流通業務施設などというのが導入されることによって、全体として雇用としてはどの程度ふえるということを期待しておられますか。
  121. 佐藤仁彦

    政府委員佐藤仁彦君) 今回加わります四業種でどれだけ雇用量がふえるかということにつきましては、景気の動向でありますとか、あるいは地元の受け入れ条件就業希望者の状況等の多くの要因によって左右されますので、量的な予測をすることは極めて難しいものと考えております。  これまでの運輸省からの説明を伺いましても、こうした四業種はこれから、主として三業種について触れられたのかと思いますが、追加業種でかなりの企業立地農村地域において進むであろうという御指摘がございました。  この運送関係三業種について申し上げますと、極めて労働集約的でございますし、また、男子型の産業という面も強く持っているように思います。したがいまして、この四業種におきます企業立地農村地域で進みますならば、農業従事者の就業面でも量的にもかなり進むと思いますし、また、最も需要の高い男子中高年の求人もふえてくるものと期待いたしております。
  122. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 私は、その辺の見通しの問題についてはもう少し具体的に何かこういう効果があって、こういうふうにしてこの程度のものが期待ができるとかなんとかというお答えが聞けるかと思って伺ったんでありますけれども、実際は推定の問題ですからなかなか難しいものはあると思いますが、過去のデータも必ずしも十分でないということの中で、私はその辺のところがやはり問題なんだと思いますんで、ここへもう一度戻りますけれども、これからの計画を立てるに当たってはかなりきめ細かい対応を考えながら計画を立てていただきたいというふうに思います。次の審議をするときにはもう少し具体的なことが伺えるようにお願いをしたいというふうに思います。  最後に、通産省の見通しを伺った後で、大臣に伺いたいというふうに思います。  通産省に、本当は細かくいろいろと伺いたい面があったんでありますけれども、その時間がなくなりましたので、それこそ全体として伺っておきたいと思うんです。というのは、我が国経済の今後の見通しとのかかわりで、本制度がどういうふうに推移するかということは重大な関心事であります。例えば製造業関係でいきますと、大企業中心にしまして海外立地がどんどん進む、それに今度中小企業も一緒についていかなきゃ、優秀な技術を持った中小企業がついていかなきゃならないというようなことなどで産業の空洞化ということで随分問題になってきております。そういう産業の空洞化というものが今後こうした農村での製造業立地をするときには影響があるんじゃないだろうか、こんなことを心配いたします。  それから、このごろアジアの途上国の工業化への意欲というのは物すごいですね。そのために途上国へ我が国企業がどんどんと進出をしていっているという形があります。そうすると、その途上国で我が国企業が進出してつくった物が我が国のマーケットへ流れ込んでくる、こういう問題 も最近はかなり出てきております。それからさらに、アジアNICSがどんどんと力をつけてきております。そうするとそのNICSの製品が、今まで我が国の、言ってみれば製造業が担当していたような製品をどんどん生産して我が国へ入れてくるようになりましたね。例えばカメラにしてみましても、機械にしましても、電気製品にしてもそういう傾向があります。我が国の経済はそういう形でいろいろと追われているわけでありますが、そういう中で、今後の見通しというのは本当に大丈夫なんだろうかというようなことがありますので、その辺を伺いたいと思います。  それから、大臣には、もう時間がないから一括をして質問してしまって恐縮でありますけれども、いずれにしても、私は今まで本制度がいろいろと果たしてきた役割はそれなりに認めますけれども、しかし、これからの経済の厳しさというものを農業の厳しさというものとあわせて考えていったときに、制度の運用というのはこれはかなり機敏な情勢判断とそれから柔軟性を持った対応をしていかないとならなくなってくるんではないだろうか、そんなふうにも思うんです。しかも、そういう中で特に農村農業構造改善に資するという部分が、今までの分でいったら私は思ったほどいかなかったというふうに思っているんですけれども、今後どういうふうにそれを展開していかれるのか、その辺のところの御決意を伺って、終わりたいと思います。
  123. 安藤勝良

    政府委員(安藤勝良君) 我が国がいわば国際社会へ貢献する国として発展していくためには、いわば貿易の自由化、貿易摩擦を解消しながら国際的に協調してともども発展していかなくちゃいかぬ使命を背負っておると認識しているわけでございます。最近の海外投資の状況を見ますと、先生今御指摘のように、これはアジアNICSも含めまして活発に海外投資も行われておりまして、今後の予想でも一〇%台の投資の増加が続くんじゃないかという見通しもございます。一方、御指摘のように、こういった国々からの製品輸入、これも活発になっていることも事実でございます。アジアNICSからも最近の傾向で見ますと倍近くの製品輸入も行われていることも事実でございます。このように、いわば日本の経済が世界的に国際分業化の方向へ向かって進んでいる一つのあかしじゃないかと思うわけでございます。  しかし、御指摘のように、そういった傾向がいわば国内への影響が懸念されることも事実でございまして、特に地方の活性化、この問題は大変重要な問題と私らは認識しております。そういった中におきまして、一昨年に閣議でも決定いたしましたように、こういった経済運営を図っていくための最大のポイントとして挙げられておりますのは、内需拡大型の経済運営でございました。こういった運営の結果によりまして、最近におきましては投資の方も徐々に活発化してまいりまして、六十二年度下期におきましては、前年度同期を大幅に上回るというような傾向を示してまいりました。  かつまた、今後の予想でも、六十三年度におきましては、六十二年度との対比で申しますと一五・五%というような投資が期待されておりまして、これも業種別に分析してみますと、従来のいわば内需振興型の産業にとどまらず、広くそういった投資が進む、いわば企業の投資マインドが急速に高まりつつあるというような一面も出てまいりました。その結果が、最近の工業立地動向を見ますと、いっとき大変低迷を続けていたわけでございますが、それも大変活発化してきたというような明るい面もございます。  しかし、予断は許されないということも事実でございまして、我々も地域活性化については最大限の努力を払ってまいりたいと考えておりまして、従来、産構法あるいは特定地域の円滑化法、こういった法案によりまして事業の転換あるいはその地場産業の振興、もろもろの施策を講じてまいったわけでございますが、六十三年度におきましては中小企業の融合化法あるいは民活化法の業種拡大、または、いわば産業のソフト化ということに対処いたしまして、頭脳立地法、この三法案を今国会でも御審議いただき、また通していただいたわけでございますが、こういった法案を糧にさらに一層の努力をしていかなくちゃいかぬと覚悟しておるわけでございます。
  124. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 広範にわたる分析の結果に基づく御質疑がございましたが、現在の農業農村を取り巻く環境は極めて厳しいことは先刻来申し上げているところでありますし、認識の一致するところでございます。  今回の改正一つのステップといたしまして、本制度の適正な運用、これには柔軟に対応していかなければならぬと思っておりますし、農村地域における安定的な就業機会の確保、これを通じての農業構造の改善、こういうことでひとつ努力をしてまいりたいと思っております。  一言だけつけ加えておきたいことは、各省庁にわたってこれだけの議論をしてもまだまだ議論をしなければならない腹のうちはお互いにあろうかと思います。そういう中にあって四全総、このフォローをどうしていくかということに大きくかかわっているように思います。したがいまして、農林水産省はもとより、また内閣におきましても当然のことながら、この四全総のフォローアップに重大な関心を持ちながらそれぞれの目的を果たしていかなければならぬものと心得ております。
  125. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 ありがとうございました。
  126. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 農村地域工業導入促進法の一部を改正する法律案について質疑をさせていただきます。  私は、ただいま同僚の稲村委員からお話がございましたこれからの景気及び産業の動向について、それをさらにまず通産省からお伺いしてみたいと思います。  ただいまいろいろお話がありまして、六十三年度等も含めて投資は上回っていくというような景気の上昇がうたわれているわけでございますけれども、私どもは、長期化する円高の問題とかあるいは貿易摩擦等による、まあ先ほど来お話がございました企業の海外進出による産業の空洞化ですか、こういう問題等も含めて明るい見通しばかりを持っているわけではございません。  通産省が出されました「21世紀産業社会の基本構想」では、西暦二〇〇〇年に五十六万人の失業者が発生するという見通しを示されておるわけでございますが、こういうことも含めまして、日本産業構造というのは今後一体どんなふうに変遷していくのか。それを農工法農村における雇用機会拡大するために農村地域に他産業を誘導してくる、こういう法律でございますけれども、通産省としては、ただいま申し上げましたような条件も踏まえながら、今後農村における他産業による経済振興というものをどういうふうに見ておられるか、まずその点から先に伺わせていただきたいと思います。
  127. 安藤勝良

    政府委員(安藤勝良君) お答えいたします。  先ほどお話ししました内容とダブりますので、やや重複されたところは省かせていただきたいと思いますが、いずれにいたしましても、我が国の経済運営の基本は対外不均衡を是正し、世界に貢献しながら我が国の国民生活の質の向上に努めていく、かつ、国土の均衡ある発展、そういったものに努めていかなくちゃいけないという使命を背負っておると認識しておるわけでございます。そういった点から、中におきましては、いわば地域活性化を初めとする経済運営の施策の展開が重要と認識しているわけでございます。  先ほど、先生から御指摘ございました二十一世紀ビジョン、これは昨年十二月十日に出された改訂版がございますが、それとも符合しているわけでございまして、これは我々の産業構造審議会の企画小委員会で出したものでございますが、この二十一世紀ビジョンの後にまた昨年も出しておりますけれども、これの中でもいろいろなことが提言されておりますので、これをベースに御報告したいと思います。  ここでも、今後の産業構造はどうなるかということも予測されておりまして、いわば我々の一番 関心の深い製造業につきましては横ばいで推移するんじゃないか、こういう報告が出ておりまして、その中でも伸びるものあるいは停滞するものいろいろ形態はあろうかと思いますが、伸びるものではエレクトロニクスあるいは新素材とかあるいはバイオとか、こういったものが期待されるわけでございます。また、産業の中におきましては、いわば産業のソフト化といいますかサービス化ということで、外生化したサービス産業が相当伸びていくという予想もされております。また、あわせまして産業内で内生化している部分、いわば研究部門だとかあるいは情報処理部門だとか、そういったいわば生産面のウエートが徐々に減って、逆に企業内におきましてもそういった高次の機能、いわば研究開発だとかあるいは情報処理部門、こういったものがふえていくというような予測もされているわけでございます。  そういった面から、我々も今後の産業構造の変化に対応いたしまして、いかに足腰の強い産業を育てていくかということが大事じゃないかと思うわけです。いわば産業の高度化ということが一番重要な課題じゃないかというふうに考えておるわけでございまして、我々も、ことし法案を出した頭脳立地法などこれはもう端的な例でございまして、これは御案内のように、日本東京に頭脳部分、研究部門とか情報処理部門、こういったものが大変一極集中しているというような状況でございまして、このまま行ってしまいますと地方は空洞化しちゃう。先生御指摘のように、企業は立地を求めて海外に行ってしまう。地方はそういった面での強化を図らなくちゃますます産業の停滞が見られる、こういった懸念もございまして、我々がことし産業の高度化を図るべく産業の頭脳立地、これを図るべく法案を提出したわけでございまして、今国会で御審議いただきまして衆参とも通していただいたわけでございます。  現在、十六業種五つのカテゴリーに分けて考えておりまして、研究部門、情報部門あるいはデザイン部門、それから企業のいわば経営あるいは販売部門に該当する経営コンサルタント関係部門、こういった事業を地方に分散して地方の産業を高度化していこう、こういった横断的な政策も展開し、かつまた、最近におきましては、先ほど申しましたように、不況地域につきましては産構法に基づくもの、あるいは中小企業の特定不況地域の円滑化法に基づくもの、そういったものとあわせて中小企業の融合化によってさらに一層の新規産業を生み出すとか、あるいは技術を生み出すとか、そういった面とかあるいは民活法を活用した事業の展開、これも八施設だったんですが十一施設をふやしまして十九にする。これもまさしく地方の活性化を図るための一つの大きな転換を図ったということでございまして、これらひいては農村地区にも大変好結果、いわば波及を及ぼす、こう理解しております。  御案内のように、テクノポリスを二十五地域指定いたしましたが、これはもう拠点地域にもちろんつくるわけでございますが、これを核として農村地区にも大いに拡大されていくでありましようし、また頭脳立地法、これもどちらかというと地方分散の一つの目玉でございますが、地方の都市中心に指定する予定でございます。これもそういった核を通じて農村地域にも大いにその高度化の役割を果たしていく、こういったことも期待されるわけでございまして、そういったもろもろの施策を通じて農村地区の活性化に我々も努めていきたい、こう思うわけでございます。
  128. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 もろもろのお話を伺わせていただきましたけれども、私具体的に数字挙げましたのは、五十六万人の失業者が発生するという根拠はどこにあるのかということが実は本当は知りたかったんで、バラ色の話ばかり出たので、私はちょっとこの失業者の問題について疑問を持っておるんですが、答えられるんだったら後で答えてください。  労働省、六十一年白書で、「海外直接投資により経済全体では七〇年度に四四万七〇〇〇人の雇用機会喪失効果が生じる」と、こう出ていますね。この根拠は何ですか。
  129. 澤田陽太郎

    説明員澤田陽太郎君) 御説明いたします。  海外直接投資が我が国に与えます影響は、一つはそれによって輸出が減少する。それから二つ目には、海外投資先へ部品の輸出がふえるというプラスの効果。それから三つ目には、投資先の国から逆輸入がふえる、いわゆるブーメラン効果。この三つがございます。私どもはこの三つの動きをそれぞれ推計いたしまして、御指摘のように昭和七十年度で四十四万七千人の雇用喪失効果があるというふうに推定したわけでございますが、その前提としては昭和六十一年から七十年にかけまして年率一四%で海外投資がふえるということを大きな前提にしております。これは通産省のアンケートに基づく数字でございます。  七十年度に四十四万七千という数字が出たわけですが、同様な方法で六十年度にどれぐらい雇用喪失が計算上あったかということを見ますと、約五十六万人の雇用喪失になります。したがいまして、この二つ数字、ある程度幅を持って見る必要はございますが、七十年度にかけて国内の雇用機会が加速度的に喪失されるということには必ずしもならないというふうに考えております。
  130. 寺西大三郎

    説明員(寺西大三郎君) 先ほどの御質問にございました雇用削減の数字について、ごく簡単に御説明いたします。  これは、日本の製造業が海外に進出することによりまして、そちらで生産を行う、その生産に必要な雇用数というものを地域ごとに計算をいたしまして集計いたしたところ、おおよそ五十六万ないしは五十八万という数字でございますが、六十万弱の雇用削減をもたらすのではないかということになったわけでございます。  ただし、同じこのレポートの中で新しい技術革新、新素材ですとかバイオテクノロジーその他の新しい技術革新によります新産業がつくり出す雇用創出効果として約百十七万人という数字を挙げておりまして、さらに、サービス産業拡大による雇用創出効果、これが約四百四十万ということで、トータルでは十分吸収し得るということを結論づけているものでございます。
  131. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 労働省にお伺いいたしますけれども、先ほど来通産省の方から産業全体にわたっての変化していく状況のお話があったわけですけれども、そういう産業構造の変化が雇用の場に与える影響はどうでしょうか。
  132. 佐藤仁彦

    政府委員佐藤仁彦君) 産業構造が大きく変わろうといたしております。そういう中で今後の産業構造をどう見るか、またそれに伴う就業構造がどうなっていくかということに関しまして、昨年来学識経験者による研究会を設けて将来推計を行ってまいりましたが、これからの約十年間を展望いたしますに、第一次産業は高齢者の引退がある、その他の要件もありまして、就業者数は減少していくであろう。製造業につきましては、全体の就業者数はほぼ横ばい。したがいまして、製造業の産業構造に占める比率は下がってまいりますが、総数としての就業者はほぼ横ばい。したがいまして、就業者数がふえますのは第三次産業中心としてふえる。その中でも主として対個人サービスあるいは対事業者サービスというようなサービス部門での就業者の増加が著しいのではないか。そういう推計結果をいただいておりまして、そういうことに基づきまして私どもも今後の将来を見通しました雇用対策等を現在策定中でございます。
  133. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 重ねて伺いますけれども、先ほど来通産省から説明がありましたように、これからの産業の変化の中に今言われたような産業の高度化という言葉が出てきておりますね、ソフト化という言葉も入っておりましたが。そういう産業の質が違っていくということ、この問題が今度の農工法との問題で私は一つ心配するところの点なんでございますけれども、いわゆる言われるところのミスマッチというような問題とどうかかわってくるのかということがあろうかと思います。つまり進出しようとする企業の必要とする労働力の質と、それからそこで得られる労働力そのものとが格差があったのではこの法そのものが今後生きてこないということであろうかと思います。したがいまして、そうした需要と供給の間におけるこの差、こういうものを今後大きな課題にしていかなければならないのではないかというふうに今通産省さんのお話を聞いているにつけても思うわけでございます。したがいまして、この質的なミスマッチの問題について農水省と、それから労働省から伺います。
  134. 佐藤仁彦

    政府委員佐藤仁彦君) ただいま委員御指摘のとおり、そうした労働力の需要側と供給側との間のミスマッチが今後の大きな問題となってこようというふうに私どもも認識いたしております。  もとより、産業が高度化いたしまして、求める労働力も単純労働力よりもむしろより高度な技術技能者を求めるようになってまいりますから、そうした労働力の供給が円滑にまいりませんと、農村地域への企業進出を期待することができなくなるという点は全く御指摘のとおりだと思います。  そこで、私ども現在重点を置いてやっておりますのは、農業者農業に従事しておられる方々が転職するために訓練を受講していただく、そういう機会を設け、また訓練を受講される方に対しての手当を支給するということを通じて受講の促進を図るという措置を講じております。また、実際に職場に入ってOJTといいますか、仕事をしながら技術技能を身につけていく、そういう道を開いていくことも肝要でございますので、職場適応訓練制度というものを設けまして、これも農村地域に適用しております。こうした技術技能を習得するためのいろいろなチャネルをつくり、その受講を促進していくことがそうしたミスマッチに的確にこたえていく最善の道ではないかというふうに考え、それらの政策努力を重ねているところでございます。
  135. 松山光治

    政府委員(松山光治君) 第四次の基本方針におきましても、これからの安定的な雇用の確保といいますか、成長性といったようなことも考えまして、技術先端型産業というものを例示しながら成長性と安定性のある業種導入、こういうふうなことを目標といたしておるわけでございます。  今ミスマッチの問題が出たわけでございますし、そのおそれは十分あるわけでございますけれども、ただ、今私どもの考えております技術先端業種におきましても、比較的労働集約的な面も多うございますし、かつまた、専門技術者だけではなくて一般的な労働需要といったようなものもあるやに現場の話としては聞いておるわけでございます。いずれにいたしましても、今労働省の方から職業訓練その他いろんな施策の考え方の御説明があったわけでございますが、労働省とも連携を保ちながらこの問題に取り組んでいきたい、このように考えておる次第でございます。
  136. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 お伺いしたいことはたくさんあるんでございますけれども、四十六年以来この農工法がどんな効果、効用をもたらしたかということについては、先ほど来からいろいろ御答弁の中でもあったわけでございますけれども企業数で四千二百三十七ですか、それから二十六万八千人の雇用を創出したというような評価をされているわけでございますが、これは後からまた集約することにいたします。  私は、最初から今日の経済全般の中でのこの農工法というものをずっと見てきておりますものですから、いささか四十六年以降の経済を下敷きにこの農工法の効果、効用というものを見てみたいと思うんでございますけれども、先ほど局長言われたように、四十六年以降二度のオイルショックを経てきた、低成長へと入っておるわけでございますけれども、その都度都度に方針をいささか変えておりますね。私は手元に、先ほど来お話がございましたように農工法の効果というものがどのほどにあったのかという数字でこれを確認したいというにはいささか数字が確かにないんでございます。先ほどの同僚の委員のお話どおりでございますので、私は比較的近いところの数字で、つまり円高の影響がこの農工法に基づいて導入された中小の企業に対してどんな影響を与えたかというところを重点的に数字で拾ってみたわけでございます。  これは、大なり小なり影響を受けております。それによってかなり当初の目的を失しているというものもあるわけですね。この円高による影響というものをまずどのように受けとめておられますか。
  137. 松山光治

    政府委員(松山光治君) お話しございましたように、農工制度の直接の目標は農村地域での安定的な就業機会の確保ということでございまして、雇用者にしまして二十六万八千、地元雇用が約二十一万強、そのうち農家世帯員からは十万をちょっと切っておりますが九万五千人、そういう直接的な効果があるわけでございまして、そういうことを通じまして地域活性化なり、それから、農業構造との関連におきましても事例的ではございますがいろんな動きが見られるということが一つあるわけでございます。  今の円高との関係でございますが、昨今の円高状況の中で、委員御指摘のように農工団地に入りました企業もそれなりの御苦労があるというふうに認識いたしております。いろんな合理化努力あるいは雇用調整の問題等々もろもろの対応努力が行われているというふうに理解をいたしておりますが、一応私ども把握しておりますデータで若干状況の御説明をいたしますと、直接円高によるかどうかというのはなかなか難しいところでございます。一応円高が始まった六十年の九月以降六十一年度末までの倒産件数がどれぐらいあったんだろうかということで調べてみますと二十八件という報告を受けておるわけでございます。  これのもたらすもろもろの影響の問題でありますが、事柄の性格上、行政サイドからなかなかつかみにくいという制約があるわけでありますが、今の二十八件の倒産企業のうちで二十三社について情報がとれまして、そこに従事しておりまして解雇された者が八百六十二人と、そういう報告が一つあるわけでございます。このうち農家世帯員については二十二社についての集計結果でございますが、三百七十三人といったようなことになっておりまして、一般企業全体の動きに比べまして特に農工団地においてひどいというふうには言いにくいのではないかと思いますけれども、やはり全体としての経済情勢の中で農工団地立地企業もそれなりの御苦労をいただいておるという認識をいたしておる次第でございます。
  138. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 これは、通産省の委託調査なんですね。六十二年二月にして三月に発表されている調査じゃないかな。——失礼。そうじゃありません。内閣官房内閣内政審議室の資料ですか、局長、今の数字数字ないはずなんですよ、そんなに。
  139. 松山光治

    政府委員(松山光治君) これは各県からヒアリングした結果でございます。
  140. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 六十二年の、昨年の二月に調査なさって三月に出された内閣官房内閣内政審議室の調査資料というのが、一括してまとまっているのがその今の数字と大体似ています。ただ、工場閉鎖四十六事業所とかあるいは解雇者九百七十一人とかいろいろまた出ています。まとまったのがこれだけ見つかったんです。だから、今各県から吸い上げてこられたというけれども、まとまったものが一つありますので。  それで、やはり結局影響を受けているということ、さらに市町村の影響も大きいんでございますね。市町村においてはそういうところで解雇された人たちの吸収をどうするかとか、あるいは閉鎖工場についてどう対応するとかいうようなこともいろいろあるわけですよね。それからさらには、今後一体どうやって復活させていくのかということ、そういうような問題に市町村でも大変深刻に対応をしております。私はこういう数字を見ながら農工法もかなり厳しい山坂を越えているんだなということを思うわけでございまして、先ほど来、数字がないものだから、例えばこんな波風を受けていますよ、それでなかなかうまいこと進捗してない部分もあるのではないかなというふうなことが申し上げたくてそのことを言うているわけですね。  これはいただいている資料でございますが、「ブロック別市町村工業導入状況」で、導入済みと未導入の部分で、北海道東北、関東、北陸とずっと分かれている例のデータですね。これで導入済みとはなっておるのだが、一部導入というところの数字、ここが一番ウエートが高いわけですね。一部導入というのは、計画を立てて、当初ここに工場立地を進めるという部分があったんだけれども、そこに対して一工場しか進出しなかったとか一企業しか進出しなかったという部分でしょう。そうすると、例えば北海道でいけば、導入という構成比は九〇・二%にはなっているけれども、事実上一部導入が七四・五%という数字なんです。だからこれは工業導入というものが非常に進んでいるやに見えるが進んでいないという数字ではなかろうかと思うんですが、この一部導入という数字をどのように読めばよろしいですか。
  141. 寺西大三郎

    説明員(寺西大三郎君) ただいま御指摘の数字でございますが、導入済みといいますのはそこに計画された用地が完売されたものでございます。一部導入は、御指摘のとおり例えば四社なり五社なり分の土地を用意し、そこに導入する予定でありましたけれども例えば二社しか導入してない、残り三社分は余っている、こういったものをすべて数えたのがこの一部導入数字でございます。  先ほどの御質問にもあったかと思うんですが、例えば五社分土地を用意いたしまして、五社の名前が全部決まったときに初めて農地の転用をいたしまして本当にスタートをするということになりますと実際には動きません。ということで、市町村といたしましては、どうしても積極的に工業導入による地域開発というものに熱意がありますので、多少多目の数字あるいは多少早目に計画をスタートさせていくということがございますのでこういうことになるわけでございます。
  142. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 だから、要するに進んでないんですよね、なかなか難しいんですよね。  それで、もう一つ数字、私いろいろ皆さんのお話のように数字で確認したくて数字を拾い集めたんでございますけれども、六十年の四月に私が決算委員会で労働省に質問をいたしましたときに、農水省にも立ち会っていただいて確認をさせていただいた数字なんでございますけれども、出稼ぎの数字との連動で私はこの農工法の効果、効用というものを推しはかってみました。農林水産省といたしましては、出稼ぎのような不安定な就業状況を早く解消するために農工法のようなものをもって農村地域工業導入の促進を図っていくのだ、そして就業機会を確保するのであるというふうにおっしゃっておられるわけです。ところが、今度は出稼ぎの数字を見てみますと、減ってはいますけれどもなくなっていない。そして、本来ならこういう地域に、つまり積雪寒冷地帯のようなところに、そういう産業企業が進出してもらいたいと思うところにそういうものが立地してないから、そういう地域からの出稼ぎの数字が動かないで横ばいで来ているという数字と合わせてみたんです。やはり工業導入というのは進んでいないのではないかなというふうに私は思ったんですけれども、これは局長いかがですか。
  143. 松山光治

    政府委員(松山光治君) まず、数字で申し上げたいと思いますが、本法制定時の昭和四十六年、出稼ぎ者が三十五万人でございました。六十二年の数字によりますと十万人に減っておるわけでございます。それから、出稼ぎのみならず農村における安定的な就業機会という点からいたしますと、日雇いでございますとか臨時雇いといったような、できるだけ農家の不安定兼業をなくしていきたいという願いもあるわけでありますけれども、そういうものも含めた数字で申しますと二百四十六万人が六十二年百四十四万人ということで、百万人減っておるわけでございます。もちろん、今先生御指摘のように地域差がかなりあるわけでございますし、私この減少した数字が全部農工法の成果であるということを申し上げるつもりもございませんけれども農村社会における安定的な就業機会の確保の一助という意味農工制度もそれなりの役割を果たしてきたものというふうに考えていいのではないか。  ただ、御指摘のように、農村地域への工業導入のありようにつきましても、地域別にかなりの差がございますので、その差をどのようにこれから埋めていくのかというのが我々にとっての重要な課題であろう、このように考えておる次第でございます。
  144. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 労働省に伺いますけれども、一番近いところの、直近の数字で出稼ぎ労働者の数はわかりますか。
  145. 佐藤仁彦

    政府委員佐藤仁彦君) 昭和六十一年度における出稼ぎ労働者数は二十一万六千人でございます。このうち六十一年秋から六十二年春にかけて就労したいわゆる冬型と呼んでおりますが、冬出稼ぎに出ておられる方の数は十二万三千人でございます。
  146. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 労働省の方に差し上げてあると思いますけれども、秋田県の出稼組合連合会の会長さんが書かれたこの手記「論壇」をお読みになったと思いますけれども、私は前に、労働省に向けて、日本農村を守るためにも出稼ぎ者の労働条件をしっかり管理していかなきゃいけないということを申し上げましたね。しかし、状況は一向に変わっていないということで、賃金の問題であるとか、あるいは労働環境の問題等、あるいはまた労働災害、あるいは有給休暇の問題、こんなふうなことが指摘されておりますね。  関連しておりますので、こうした農村から都会に働く場を求めて出ている人たちへの労働省の指導についてお示しください。
  147. 松原東樹

    説明員(松原東樹君) 御指摘の出稼ぎ労働者の労働条件、賃金、労働時間等の状況でございますが、私ども昭和六十一年に調査いたしましたその結果によりますと、男子の出稼ぎ労働者一カ月当たりの一人平均の賃金額を見ますと、二十万円以上二十五万円未満の者が三五%というふうに最も高くなっております。全体といたしまして七二・五%の者が一月当たり二十万円以上の額になっております。また、一般の男子労働者の賃金の状況でございますが、毎月勤労統計調査に見ますと、昭和六十一年平均で建設業が約二十二万円、製造業が約二十六万円となっておるところでございます。  一方、出稼ぎ労働者の労働時間について見ますと、一日当たりの所定労働時間は七時間を超え八時間以内の事業所が八〇・四%というふうに大部分を占めております。一般の労働者の一日当たりの所定労働時間は、賃金労働時間制度総合調査でございますが、これによって見ますと、建設業の企業平均で七時間四十九分、製造業は七時間四十八分というふうになっておるところでございます。  今申し上げましたように、賃金、労働時間等の実情は、統計的に見ますと必ずしも出稼ぎ労働者に関して問題があるということにはならないかと思いますが、やはり依然として賃金不払い等の問題あるいは事業附属寄宿舎等の整備の問題等問題なきにしもあらずということで、私ども主として建設業を中心といたしまして出稼ぎ労働者の労働条件の確保あるいは福祉の向上を図るという見地から指導監督を重点的にいたしておるところでございます。
  148. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 数字で労働時間等を言われましたけれども、細谷さんは自分で百カ所以上の場所、現場を歩いておられるわけですよね。だから、今の所定労働時間を幾らと決めているかどうかは別として、「正月明けから二月中旬までの一カ月以上、一日も休日のない連続労働の状況であった。」というようなデータを持っておられるわけね。そして、「冬の好天の続くうちに作業の進行を図ろうとする」建設現場では非常に過酷な労働が強いられているということが書いてあるじゃありませんか。だから、総体としての数字はあっても、こういう現場で個々ケースはたくさんあるということをやはり御認識いただかなければいけないと思います。  それから、ここの中にも出ておりますように、これは秋田県の一番新しい数字です。私、先般六十年の時も秋田の数字を申し上げましたけれども、ことし三月一日現在のこの互助会に入っている「加入者二万二千四百余人中、三月一日現在の出稼ぎ先の死亡者が三十九人」、そして「病死が二十三人、労災事故死が十三人、」、「労災事故死が昨年より十人も激増している。」と書いてありますでしょう。こういう状況の中で農村の人が都会に出て働かなければならない現状があるわけよ、局長。これはもう労働省の問題ではなくって、こういう実態を農水省がやはり知らなければいけないというふうに私は思います。  これもついでにお話をいたしておきますけれども、先ほど二十一万何がしの数字を申されましたけれども、あれは恐らく職安を通った数でしょう。いわゆる出稼ぎ手帳を交付した数字と一致しないというこの前の私の論議と一緒だと思うんだけれども、職安を通って出稼ぎに出るのは四割しかいないんですよね、四割しか。だから、私は五十万近くの人が出ているというふうに思います。つまり、職安を通したのでは仕事につけないわけですから、去年、その前の年、その前の年と行っているところへじかに出ていくわけですから、だから二十一万何がしはおたくが掌握した数字であって、実態はそうではないというふうに私は思うんです。これいかがですか。
  149. 佐藤仁彦

    政府委員佐藤仁彦君) 私ども出稼ぎ労働者の就業機会の確保あるいは就業先での事故の回避、また一たん事故がありました場合、例えば賃金不払いとかいう事件がありましても、やはり職業安定所を通じて就労していただく就業ルートの明確化が最も基本的に出稼ぎ労働者の福祉を向上する対策であるというふうに考え、職安を通じて就労するように、出稼ぎに出ていくように指導いたしておりますが、先生御指摘のように、約四〇%強程度が安定所を通じてというのが現状でございます。このことにつきましては各県の御協力も得、また市町村、農協団体等の御協力も得ながら、職安を通じて出ていくように今後とも最善の努力をしてまいりたいというふうに考えます。
  150. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 これは、労働省にお願いをいたしておきますが、四月一日から新労基法になりまして、それに先立ってこうした出稼ぎ労働者に対する有給休暇の付与について御指導なさっておられますね。これはぜひ強力な指導をしていただいて実現を見るようお願いをしておきたいというふうに思います。  あと、私は、農工法が有効であったかなかったかということで、円高の影響の数字、それから今の出稼ぎ者の数字を見ながら果たしていかなるものであろうかということを一生懸命探っているわけでございますけれども、もう一つは、今度は、農村の現場に誘致されてきた企業の実態について少しお話を伺いたいわけですが、先ほど参考人の方からもいろいろ御希望、御意見がありました。そして、佐藤参考人岩手県の藤沢町の町長さんでございますけれども、この方の言い分としては、広域的な幾つかの市町村にまたがって大型の企業団地というようなものができていくよりは、一市あるいは一町村という形に小規模企業進出があることが一番望ましいということを言われました。そして、あわせてその業種というものは地域に根差した、つまり農村農家の実態と特色を生かした産業が誘致されてくれば一番ありがたいのだと、それが一番長続きする方法であるということも言われておりまして、大変に私は説得性のあるお話だというふうに思ったわけです。  ところで、その参考人が言われますのに、団地をつくって誘致を始めると、一番最初に来るのが繊維関係の企業である、それからその次に電機、そしてそれから先端技術、IC等が来て、だけれども引き揚げて帰っていったりする、それで最後に食品が根づきますというようなお話もしておられました。大変これはおもしろい現象だと思って私は聞いておったんです。  その繊維産業のことで、これはそちらにも申し上げてありますので何でしょうけれども、私のところへ秋田県五城目町から手紙が来ておりまして、縫製工場ができたそうです。ところが、そこで働いている農家のお母さんたちはみんな繊維の粉じんで息苦しいような健康現象が今出てきておって、何とかこれを早く労働衛生上の問題として取り扱ってくれないかというようなことで手紙が来ています。ただ、名前を出されると後から上司にしかられるかもしれないので、どうしたらよかろうかということが書いてあるわけでございますけれども、例えばこの縫製工場が象徴するように、企業が出てきても労働現場の衛生上の問題等も含めてしっかり管理ができているのかどうなのか、そういう心配がありますが、いかがですか。
  151. 草刈隆

    説明員(草刈隆君) 事業主が事業場内におきまして安全衛生面の確保の責任を持つことは、進出する工場等についても共通でございます。労働安全衛生法に基づきまして、一定規模以上の事業場については安全管理者、衛生管理者等の選任を義務づけておりまして、安全衛生に関する技術的事項を管理さしているところでございます。これらの活動を通じて、安全衛生が確保されるよう監督、指導を通じて指導しているところでございます。  また、今般、中小規模事業場の安全衛生管理体制を充実させるために、労働安全衛生法の改正をお認めいただきまして、新たに五十人未満の事業場についても安全衛生推進者の選任を義務づけることとしたところでございます。この徹底を図ってまいりたいと思います。  なお、先生御指摘の、縫製工場に一般的に浮遊する繊維粉じんにつきましては、その粉じんの発生の状況によりまして、当該事業場に対し清掃の徹底、作業の方法の改善、あるいは全体換気装置を設ける等、必要な指導を行っているところでございます。  御指摘のように、秋田県のデータを拝見いたしましたが、衣服その他の繊維製品が一番最初に入ってくるということでございます。六十二年度から秋田の局を中心にいたしまして、その繊維製品の製造業、電気機械・機具製造業、それから、過去にいろいろな問題があると認められる事業場を重点対象といたしまして、法定労働条件の確保のための指導を行っているところでございますが、今後縫製工場指導を行った際に、粉じんについても留意してまいりたいと存じております。
  152. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 この繊維粉じんについては基準がないそうですね。そういうものもやはり設けていくことが必要じゃないかというふうに私は思います。  それから、もう一つは労働省に伺うんですけれども、先般、テクノポリスの関係で幾つかの場所を視察していただいて、いろいろ私はないしょで聞いてきたのですけれども、要するに、テクノポリスなんかの場合はかなり大手の企業が進出しておりますね。ですから、当初の計画では地域では進出に対して大変喜ぶわけですよね。ところが、そこの賃金水準、この賃金水準の決定の仕方というのは、まずその県の県民所得の水準を調べるそうです。そして、その県民所得の水準に合わせて賃金体系を組んでいく、したがって、賃金の水準が非常に低いのだという話なんですね。  したがって、私、確かにこの農工法就労の場の創出に寄与していないとは言わないのだけれども、それが一体農家所得に対してどう影響してきているか、効果、効用をもたらしてきているかということを考える場合に、やはり労働の質の問題、そして今の賃金の体系の問題、こういうようなものもすごく問題になるんですね。  それで、これ四十六年当初発足のときは農業所得の補完的性格を持って発足したわけでしょう。だけれども、いつまでもそれであってはいけないので、昨年の四次基本方針の書きかえには既にもう農業就労する人あるいは工業で生きていく人をしっかりと線引きをしながら新しい農業農村というものをつくっていくということが明確に打ち出されているように私思うんですね。だから、そこに誘致されてきた企業で食べられる、生活できる賃金水準というものが確保されなければいけないというふうに思うんですけれども、その辺の賃金水準の問題を、都市の所得と比べてどんなふうになっているのか、データありますでしょうか。
  153. 佐藤仁彦

    政府委員佐藤仁彦君) 大変難しい御質問だと思います。難しいと申しますのは、例えば賃金比較をいたします際に、企業ごとの平均賃金でありますとか、一つ地域ごとの平均賃金というものを比較する場合に、我が国のように年功によって賃金が上がっていくというような場合、平均勤続年数が何年かというようなことも条件を同一にして比較いたしませんとなかなか正確な比較ができないとか、あるいは地域ごとに比較いたしますならば、産業構造を同じにしてみて考えて賃金がどうかというふうないろいろな比較のテクニックがございますが、そうした過程を経ませんと正確な比較はできないと存じます。  そこで、最もわかりやすいのは新規学卒者の賃金がどうかという点です。これは全国的な労働市場でもございますし、それに勤続年数も影響しておりません。農工法に基づく導入企業というのは一番古くても十何年しかございませんから、農村地域企業に勤めておられる方の平均勤続年数を出せば非常に短く出てくると思います。したがいまして、全国平均の数字と比べることは難しいために、新規学卒の数字で比べますとそう大差は出ていないようでございます。  農水省の関係だと思いますが、農村地域工業導入促進センターが六十一年三月卒の高校卒の男女の初任給を調査しております。ここで、労働省で調べました全国平均は男子が十一万五千円ですが、これ、平均値は出ておりませんが、この調査で見ましても、一番低いところで九万九千円、一番高いところで十二万三千円と出ておりますから、恐らく平均いたしましても新規高卒男子に関する限りそう低いことはないようにデータからは推測できます。  ただ、その他の労働力でどのような賃金格差があるかにつきましては、やはり勤続年数でありますとかその地域の労働市場の需給の強さ弱さが影響してまいりますから、若干の賃金の差はあろうかと思います。
  154. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 確かに、賃金の比較というのはおっしゃるように難しいというふうに思いますけれども現実これ見ても、差があると読めばいいのかないと読めばいいのかわかりませんけれども、私はあるというふうに思うんでございます。今県名は申しませんけれども、一般的にそのように言われておりまして、実はそういう声を聞いてきておるわけでございます。これがテクノポリスにかかわって調査をしたときでございますから、私に言わせればこれはかなり大手の企業の話である。今この農工法に基づいて立地するところの企業産業というものは中小がかかわってきますね。そうすると、非常にこれは厳しいものがあるんじゃないかなというふうに思います。その辺の賃金水準の問題を考えていかなければならないのではないかというのは、これは労働省よりむしろ農水省の方で考えていかなきゃならない課題じゃないかなというふうに思う。農業の構造のすべての立場の中からここで所得を得るというところまで考えていく、これはそこまで当初計算済みですべてが進められていかなければならないと思うんだけれども、農民が離農して生活できる賃金水準というようなものについて局長はどうお考えですか。
  155. 松山光治

    政府委員(松山光治君) 安定的な就業機会の確保ということからいたしますれば、当然のことながら量の世界だけではなくて質の世界と申しますか労働条件の面におきましても適正なものが確保されておる、これは基本的には私どもも重要なことだと考えておりますし、基本方針等におきましてもそういう考え方を明らかにした上で関係省庁とも御一緒に指導その他に努めておるつもりでございます。  ただ、若干の感想と申しますか、どういうふうに考えたらいいんだろうかと思い悩む点を申し上げておきますと、やはり企業が入ってくるということは非常に重要なまたこれポイントであるわけでございますし、賃金水準のいかんがそのインセンティブとしてどういうふうな意味合いを持つかといったようなことも重要なポイントにもなるんだろう。そういったことを考えますと、例えば東京並みの賃金でないといかぬと言っているとなかなかこれまた難しい話かもしらぬなというふうな気もいたすわけでございまして、そういう意味では地域地域の事情に応じた、しかしあくまでも考え方としては適正な労働条件の確保という点を頭に置いた指導にこれからも関係省庁ともども努めていきたい、このように考える次第でございます。
  156. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 運輸省さんすみません、先ほど稲村先生のお話と同じでございまして、私トラックの話をお伺いするつもりでございましたが、割愛さしていただきます。恐縮です。  最後になりますけれども、さっき私が申し上げました、これからの産業としてどんな形のものが望ましいかということについては、これは私の持論でありまして、そういう趨勢になっていくかどうかは別なんですけれども、私の持論として、言うならばやはり一・五次産業のようなものを大事にしていこうというのが持論なんです。それがどれだけの経済性を持つか、あるいはまた地域振興にどれだけの役に立つかというようなことになりますと、先ほど来稲村先生も言われておるように、これもかなり厳しいものがあろうかとは思います。  けれども農村地域のつまり特殊性というようなものを生かしていった場合には、そういうものの上に上積みされていくものが漸次発達していくということ、それが一番私は自然じゃないかというふうに思いまして、木に竹を接ぐというんですか、そういう種類のものが、ある日畑の真ん中にICの工場がぽんと建って、そしてしかし町は全然活性化してない、閑古鳥が鳴いているというような状況で、つまり地域活性化に何ら役に立っていないというようなものであってはならないというふうに思いまして、私の持論として、一・五次産業をもっと農水省としては大事に考えながら、今回はこの農工法に連動させていくことを考えるべきではないかなというふうに思っています。  それで、あわせて、先ほど私が使いました内閣官房のデータによりますと、円高の影響を受けてかなりの市町村が痛手を負うた。それを復活させるための一つの策として考えておることを読ませてもらいますと、主なる手段として地域産業興しというのが出ているわけ。で、先端技術と産業の再編成によって、円高によって痛手を受けた地域をどう再興していくかというのは、先端産業によって再編させてやっていくというのはわずか一七%。あとは三六・四が地域産業を興していくと言っている。さらには、農林水産業の振興によってその場に就労の場をつくっていくのが一番安定化するんじゃないかというふうに言っているのが三五%というわけだ。これは皮肉な現象でありますけれども、こういう声があるわけです。  したがいまして、こういった数字なんかも見ながら、農工法がこれまで果たしてきた役割、そして、これからどうあればいいのかという方向も含めまして、私もろもろ申し上げましたけれども、最後に大臣に、今後日本農村農業というのはどうあればいいのかということを伺いまして、終わりにさせていただきます。
  157. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 数字を挙げての極めて熱心な御論議をちょうだいいたしました。  先ほど来申し上げておりますように、各省にわたる、絡み合っておる問題でございます。特に、出稼ぎと農村工業導入の調和の問題、これをどう図っていくか。積雪寒冷地にまで例示をされての御意見もございました。また労働衛生上の問題、これなどはまさに中央本省筋において県行政、市町村行政にわたるきめ細かな配慮が必要だなという感じを率直に改めてそう思うわけでございます。そういう中にあって、また一方、賃金、それによって生活をしている、農業者としてでなくて、農家経済をどう生かしていくか。そこに農村工業導入で得た賃金、最賃制というお言葉は使 われませんでしたが、最賃制に及ぶ論議にも発展するのかなと思うようにもまた承っておりました。特に縫製工場等につきましては、その地域の賃金体系、特に労働集約型の賃金、これとの従来からのかかわり合い等々新しい企業が配置されますと、その地域によっては問題が起こる、高ければいいというものではない、そのバランスがまたその地域の秩序、公平性という問題も出てくる。こういうことも私どもも実は自分の近間において、我々の直接関係する地域においても経験をしておるわけでございまして、おっしゃることを一々かみしめておったわけでございます。  しかし、いかに農家の生活水準が徐々に上がってきたとはいいなから、労働集約型の産業を知識集約型のものと切りかえるには残念ながらまだほど遠いのではないか、そこにまた職業訓練等の問題も労働省とのかかわり合いにおいて出てくるのではないか。こういうようなことで今私はその端々をちょっとメモをとってみましたが、非常に多岐にわたる問題でございます。農工法導入当初においてここまでの議論は果たしてあったであろうか、その当時の議事録も読んでみたいなというような気もいたします。しかし、現実に今そういう議論があるわけでございますから、先ほど来申し上げますように、いよいよもって全国総合開発計画、この具体的な裏打ちと相まって、関係各省において一緒になって縦割りでなくてやらなければならない省庁的な政策になってきたとつくづく感じておる次第でございます。そういう観点に立ってこの改正機会にまたひとつ誓いを新たにして取り組まねばならぬ、かように考える次第でございます。     ─────────────
  158. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) この際、委員異動について御報告いたします。  ただいま遠藤政夫君が委員辞任され、その補欠として初村滝一郎君が選任されました。     ─────────────
  159. 諫山博

    ○諫山博君 農村地域工業導入促進法に基づいていろいろな企業農村に進出する、これは結構です。農業の置かれた状況が厳しいだけに、農村の自治体は大きな期待をかけています。ところが、その期待にかかわらず自治体が非常に大きな迷惑を受けているという例をしばしば聞きます。  私は、大分県について幾つかの問題を指摘したい。  まず、大分県の豊後高田市に松原工業が進出を計画しました。この会社は本社は東京都の狛江市、豊後高田市では土地を造成しこれを松原工業に買ってもらうという計画を立てました。造成の費用は一億二千五百万円、金を借りて造成しましたからこのために支払う金利が一年間六百五十万円。ところが松原工業がなかなか来ないわけです。計画自体は非常に進みまして、松原工業では現地で十七名の労働者を雇い入れて東京の本社で研修を行いました。ところが、工場が来ない。せっかく採用されて本社で研修まで受けた十七名の労働者は解雇されてしまった。このことが大分合同新聞で大きく報道されていますけれども、この新聞の表題は、「さめたバラ色の夢」。豊後高田市は経営収支比率が九六で、県下で最悪のクラス。市財政はまさに火の車で、一円でもむだにできない。ところが、このために年間約六百五十万円の利子を払わされている。何とか進出してくださいと頼むけれどもなかなかそれが実現しない。倉田市長は悶々とした日が続いているという大分合同新聞の記事です。調査お願いしましたけれども実情はどうでしょうか。
  160. 松山光治

    政府委員(松山光治君) 今の御指摘の事情については、今先生からお話があったような実情だというふうに承知しておるところでございます。
  161. 諫山博

    ○諫山博君 もう一つ、大分県日出町、ここには日本テキサスインスツルメンツという会社が来ています。外資系の企業です。本社は東京。IC関連の工場ですけれども、十万平方メートルの新たな造成をしました。つまり、工場を増設する計画を立てたわけです。ところが、この増設計画が途中で取りやめになりました。農地をつぶして十万平米の新たな造成をしたけれども、これは使いようがない。造成の費用は会社が負担したようです。しかし、工場というのは、土地を造成すればそれで済むというわけではありません。例えば、道路が必要だし、水道が必要だし、いろいろな付随の経費がかかるわけです。こういうのは日出町が負担をしたままです。一たんは増設計画を立て、そのために自治体がいろいろ協力をしているのに、もう景気が悪くなったから増設はやめますといって手を引かれたのでは自治体は大変だろうと思いますけれども、この実情はどうでしょうか。
  162. 松山光治

    政府委員(松山光治君) 今の日出町の事案につきましても、今おおむね先生からお話のあったような事情にあるということは承知しておるところでございますけれども、造成地につきましては、どういう事情かはつまびらかではございませんが、若干町が負担をいたしました上で当該企業に売り渡されておるというふうにまず承知をいたしておるわけでございます。  企業が立地を決定いたしましてから具体的に操業に入るまでの間にはある程度のタイムラグがあるわけでございますが、今お話しございました二つ事例ともに、最近の経済情勢の中で、工場の拡張なりあるいは立地を予定していたものがなかなか当初どおりのわけにはいかないということで着工を見合わせておる、そういう事例であるというふうに承知をいたしておるわけでございます。せっかく立地を決定し、それから地元が非常に期待を持っておる中で、企業側のやむを得ない事情があるにいたしましても、当初予定どおりに操業が行われないということは、農業従事者への安定的な就業機会の確保という点からいたしましても決して好ましいものだというふうには考えておりません。  ただ、幸いこの二つのケースとも企業側としてはもうちょっと様子を見たいということでありますし、かつまた、地元自治体といたしましても、立地予定企業に対しまして引き続き操業を開始するように働きかけを行っておるというふうにも承知しておるところでございまして、私どもといたしましては地元企業のそういう意味での努力ができるだけ早く実を結ぶことを期待したい、このように考えておる次第でございます。
  163. 諫山博

    ○諫山博君 大分県の杵築市に昭和六十年の四月に日本ダイナテックという会社が進出する予定になりました。本社はボストンです。宅地を造成しまして十年間の約束で会社に賃貸しいたしました。質料は入っているようです。ところがもう三年目になるのに肝心の会社が進出してこない。今のところ賃料が入っているからいいようなものですけれども、やはりこの種の問題というのは自治体としては雇用確保ということを最大の目標に協力をするわけです。賃料を払っているから杵築市に迷惑をかけていないとは言えない。この外資系の会社、これは、昨年三月の第四次農村地域工業導入基本方針の中でも「外資系企業導入にも配慮する。」という言葉が出ているようですけれども、実際は本社がボストンだから交渉するのに大変だというんです。事実上交渉しようにも交渉のしようがない。これも経済状況が変わったといえばそれまでかもしれませんけれども、この法律に基づいて企業が進出しようとしてきた。この法律というのは雇用確保ということが一つの重要な眼目になっておりますけれども、とにかく話だけはあったけれども工場はいつ来るかわからぬという状態で自治体は大変困っているし、将来が心配だと言っております。この点はどうなっていますか。
  164. 松山光治

    政府委員(松山光治君) 本件につきましても、当事者でございます杵築市、継続的に交渉を行ってできるだけ早く建設着工、操業を開始するように要請しておるというふうに聞いておるところでございまして、県としてもその市と当該企業との間の折衝状況を見守りながら早期着工を必要に応じて要請していきたい、こういうことでございますので、私どもといたしましては関係自治体のこれからの努力を期待したい、このように考えておる次第でございます。
  165. 諫山博

    ○諫山博君 切りがありませんけれども、もう一つだけ大分県の問題を指摘します。  大分県杵築市に国城金型工業という工場が進出する予定になっておりました。ところがやはり来ないわけです。土地だけは会社が買っているようです。自治体としてはいろいろおぜん立てをして迎えようとしているのに来ない。これもこの法律の趣旨からいったら大変困った状況ではないかと思いますけれども、その点どうなんですか。
  166. 松山光治

    政府委員(松山光治君) 御指摘がございましたように、日野地区農工団地内に進出予定で六十一年の二月に立地決定をして六十二年の四月から建設着工という予定であったようでありますけれども、大型冷蔵庫の枠づくりを行っておる会社だと聞いておりますが、やはり同社をめぐる諸般の事情の中で現在着工されておらぬわけであります。ただ、ことしの三月、市議会での質問に対しまして企業側としては一年間ぐらい待ってほしいんだということを言っておるというふうに聞いておりますし、これもまた杵築市が早期の操業を強く要請しておる案件でもございますので、私どもとしては他の案件と同様企業側あるいは当事者である自治体サイドのこれからの努力を期待したいとこのように考えておる次第でございます。
  167. 諫山博

    ○諫山博君 大分県の例ばかりを挙げましたけれども、これは大分合同新聞が七回にわたってこの問題を取り上げ連載したからです。新聞の見出しを見ると共通した表題は「さめたバラ色の夢」、そして「幻の企業誘致にジリジリ」、「雇用拡大の期待むなしく」というような言葉がずっと並んでおります。これはもっときちんとした企業を選択すべきではなかったのかという問題もあるけれども農村地域から見ればとにかく雇用の場をつくっていただきたいというので進出の話があるとやはりそれに飛びついて期待をかけるわけです。ところが、この期待が裏切られてかえって損失をこうむるというような事態が大分県でこれだけ問題になっていますから、ほかの県でも問題になっていないはずはないと思うんです。こういう場合にこういう企業に対して何らかの義務的な拘束とかあるいは制裁とかそういうことはできないんですか。どうですか。
  168. 松山光治

    政府委員(松山光治君) 農工制度は、御案内のように、地方への工業等の導入を進めたいという地元の意向、それから農村地域に進出したいという企業側の意向、そういったものを踏まえながらそれが円滑に進むような条件整備を可能な範囲内で行っていく、そのために一つの計画制度のもとで所要の誘導措置その他を講じておる、こういう制度でございまして、あくまでもどういう企業を誘致しあるいはどういう企業がどういう形で出ていくかという点につきましては、これは今の日本の社会の基本的な枠組みの中で企業とそれから関係自治体との間の話としてゆだねられておる、こういうことになるわけでございます。  そういうことでございますので、私どもといたしましても関係省庁とも連携をとりながらできるだけ本制度が適正的確に運用されるように関係者への、特に関係自治体への指導に努めておるつもりでございますが、今のようなことを聞くにつけましても、関係地方自治体において導入を予定する企業についてこれを考えるに当たってのいわば能力の向上といいますか、やはりどうしても企業問題には習熟しにくいような地域もあるわけでございますので、そこで私どもとしてもそういうことも踏まえまして御案内農村地域工業導入促進センターを通じましての情報の提供なりあるいは研修会の開催等に努めておるところでございます。  ただ、今申しましたような全体としての制度の枠組みなり事柄の性格からいたしまして、何らかの強制的なものでもってこれを進めていくというのはやはり無理があるんではなかろうか。両当事者間のできるだけ円滑な話し合いの中で事柄が円滑に進んでいくように期待いたしたい、このように考えておる次第でございます。
  169. 諫山博

    ○諫山博君 財団法人農村地域工業導入促進センターがいろいろな文書を出している。この中には今私が指摘したような問題がいろいろ取り上げられております。政府としては制度をつくってやってそれから先はもう企業と自治体にお任せだというのではなくて、やはりこの制度がどのように運用されているのか、運用の中で何か問題は起こっていないのかというような点にまで配慮しなければ仏つくって魂入れずになりかねないと思いますが、この点、御意見いかがですか。
  170. 松山光治

    政府委員(松山光治君) 私どもといたしましても、制度をつくって、後は関係者努力ということだけに過ごしているつもりはございませんで、今先生からお話しのございました農村地域工業導入促進センターを通じましての情報の提供その他にも努めておるつもりでございますし、かつまた、県なりを通じました指導という点にも特別の費用を用いておるつもりでございます。ただ、制度としての性格上、政府として行い得ることにはおのずから限度がある、こういうことを申し上げたかったわけでございます。
  171. 諫山博

    ○諫山博君 労働省お見えになっていますか。——この間、衆議院の農林水産委員会で我が党の藤田スミ議員が青森県の例を取り上げて、労働基準法違反が多いではないかという議論をされているようです。私もいろいろ調査しましたけれども、この法律で進出した企業に非常に初歩的な労働基準法違反が多い、こういう感じを持つわけです。さらに社会保険その他の制度についても当然手続がとられていなければならないのにそれがやられていないという話も聞きます。労働省としてはそういう実情をどうつかんでおられますか。
  172. 松原東樹

    説明員(松原東樹君) 誘致企業と申しましても、その実態はさまざまでございますが、一般的には全国各地に事業場を展開しておるということから、労務管理上一応の水準にあるということで、それぞれの地元で主導的立場に立って労働条件の改善に取り組んでいるという企業も逆にあるというふうに認識しております。  ただ、御指摘の青森県の例に見られますように、一部の企業におきまして労務管理担当者がその知識、経験に乏しく、そのために法違反を生ずるというような実態も見受けられるということもまた事実でございます。私ども労働基準監督行政におきましては、基本的に全国的な斉一性を担保するという観点に立って運営をいたしておりまして、全国的な方針の中で、かつそれぞれの労働基準局あるいは労働基準監督署の管内の実情に応じまして、それぞれの問題業種あるいは問題の事業場に対しまして重点的あるいは計画的な監督、指導を実施するという方針に立っておるところでございます。それぞれの管内の誘致企業等に問題がございますならば、それぞれの地域における問題業種、重点業種としてとらえまして、それぞれの監督機関におきまして監督、指導を行っておるところでございまして、今後ともいろいろな工夫をしながら、誘致企業も含めました全体の労働条件の確保に努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  173. 諫山博

    ○諫山博君 この法律に基づく企業の進出は雇用の確保ということが一つの重要な課題ですけれども雇用が確保されさえすればいいというのではなくて、やはりきちんとした労働条件が保障される、とりわけ労働者としての権利が保障されなければならないのは当然だと思います。  今の御説明で、進出した企業に知識、経験が乏しいために基準法違反が出ているというような指摘もありましたけれども、労働基準法違反というのは実に普遍的で、私もわずかなことではびっくりしませんけれども、今度の場合、この法律に基づく誘致企業で相当顕著な違反が見られるわけです。これは労働省として、例えば職種を特定して一斉に調査する、これは基準法違反だけではなくていろいろな社会保険の面でも調査するというようなことはできませんか。
  174. 松原東樹

    説明員(松原東樹君) 御指摘の青森県の場合、地元における問題にかんがみまして特に誘致企業対象に監督いたしたわけでございますが、青森県における誘致企業がすべて問題だということではございませんで、それまでの監督をいたしました実績等を踏まえまして、問題があると見られる事業場に絞って重点的に監督をしたということから法違反がかなり出てまいっておるということでございます。必ずしも労働基準法ということだけではなくて、最低賃金法あるいは労働安全衛生法における安全衛生の管理体制等、そういった手続的な問題も含めまして法違反の指摘をしておるところでございますが、それぞれの問題につきましては監督の結果、是正をさしておるところでございます。  なお、これは全国的にやるべきではないかという御指摘でこざいますが、それぞれの地域における実情等、それぞれ区々でございまして、一律に誘致企業であるからといって一斉に監督というようなことは当面は考えておらないところでございますが、それぞれ問題がございますれば、それぞれの監督署あるいは労働基準局の方にお話しございますれば、それぞれ適切に対応をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  175. 諫山博

    ○諫山博君 青森県でやったというのは、特別な理由があったんですか。
  176. 松原東樹

    説明員(松原東樹君) 一部の企業の従業員からの申告等に基づくものでやったというふうに承知をいたしております。
  177. 諫山博

    ○諫山博君 通産省にお伺いします。  産炭地における圃場整備の問題について、福岡県の筑豊地帯、いわゆる産炭地は今石炭がほとんど壊滅してもう産業らしい産業といっては農業しかない、農業でこれから生きていく道を模索するというのが共通して出てきておる現象です。あの産炭地については普通の圃場整備とは違っていろいろ特別な優遇の方法があるはずですけれども農地の圃場整備について言えばどういうことが行われていますか。
  178. 古賀英宣

    説明員(古賀英宣君) 通産省といたしましては、炭鉱の終閉山による財政疲弊の著しい産炭地域六条市町村等に対する財政援助措置の一つといたしまして、産炭地域振興臨時交付金制度を実施いたしております。先生御指摘のように、産炭地域におきまして農業の振興を通じて地域の振興を図るということは非常に重要な課題であるわけでございまして、農業の振興を助成するものといたしましては、この産炭地域振興臨時交付金制度の中の特定事業促進調整額ということで、国の補助を受けまして産炭地域六条市町村土地改良事業、農業構造改善事業、林業振興事業等十一事業ございますが、これを実施した場合に市町村の財政負担を軽減するための援助措置といたしまして、この産炭地域臨時交付金を交付をいたしております。  先生御指摘の圃場整備でございますけれども、これは対象となります十一事業の中の土地改良事業の一つとして交付金の適用対象になっているということでございます。
  179. 諫山博

    ○諫山博君 圃場整備というのはさまざま補助が行われているわけですけれども、一般で行われている圃場整備と産炭地で行われる圃場整備にはどの点で相違がありますか、特に自治体の負担、農家の負担という面から見て。
  180. 古賀英宣

    説明員(古賀英宣君) 先ほども御説明いたしましたように、産炭地域、特に産炭地域六条市町村で行われます圃場整備につきましては、地元市町村が負担いたすわけでございますけれども、その財政負担を軽減するという格好で、上乗せ措置といたしまして交付金が交付されるという格好になっておるわけでございます。
  181. 諫山博

    ○諫山博君 上乗せの内容はわかりますか。
  182. 古賀英宣

    説明員(古賀英宣君) 御説明申し上げましたその特定事業促進調整額の中の御指摘の圃場整備でございますけれども、これは、地元市町村が、産炭地域振興実施計画及びその地元道県が作成いたしました経済生活圏ごとの発展計画に基づきまして、国の補助を受けて広域的な地域発展に寄与する土地改良事業等の十一事業、先ほど申し上げました十一事業でございますが、その事業の中の一つとして圃場整備を行った場合に、事業を行った市町村が補助基本額の二〇%を超えて負担をしている場合に、一定の算式がございまして、これによって算定をいたしました金額を交付金として交付いたしておるわけでございます。
  183. 諫山博

    ○諫山博君 そういう制度が現に存在しているし、農民も自治体もその実施を期待しているわけですけれども、これが余り行われていないんじゃないですか。実情はどうでしょうか。
  184. 古賀英宣

    説明員(古賀英宣君) 圃場整備につきましては、現在その詳しい数字がございませんけれども昭和六十二年度の特定事業促進調整額の交付実績でございますけれども十二億四千万円でございまして、六十七市町村に対して交付をいたしております。当初交付予定額が約十億四千万円ということでございますので、これを上回る交付実績になっておるという状況でございます。
  185. 諫山博

    ○諫山博君 産炭地一つである福岡県の川崎町について質問します。  人口が二万三千七百九十三人、八千五百世帯、この中で生活保護世帯が二千八百です。本当に貧しいところです。もう炭鉱はつぶれてしまいました。これから生きていく道は農業しかない。農業については、今御説明があったように産炭地としてのさまざまな特別の上乗せ措置がありますから、本当はこれで農業基盤整備なんかを進めて、石炭はつぶれたけれども農業が盛んになったというような状態を願っているわけです。ところが、余りにも自治体が貧しい、余りにも農民が貧困だということのためにその制度が活用できずにおるという実情のはずですけれども課長、御存じですか。
  186. 古賀英宣

    説明員(古賀英宣君) 川崎町の財政状況でございますけれども、先生御指摘のように、昭和六十二年度の基準財政収入額が約七億七千万円、基準財政需要額が約三十八億六千万円ということで、財政力指数は〇・二、同年度の全国平均〇・七六に対して非常に低い数字、三分の一以下の数字になっておるわけでございます。こういった状況にあるものですから、川崎町の補助事業に対する負担の比率が二〇%を下回っているということで、残念ながらこの調整額の交付の対象になっていないということは承知いたしております。
  187. 諫山博

    ○諫山博君 この問題で、共産党の入江という町会議員が何回も上京して通産省と話をされたのではないかと思います。入江町会議員はどういう要求をしておられますか。
  188. 古賀英宣

    説明員(古賀英宣君) 入江町議員の要請の内容は、一つには地元の負担の割合でございますけれども、交付金の交付の基準であります地元市町村の負担の割合二〇%をもう少し下回る数字にできないかということ、あるいは、地元の負担ということで県なり市町村の負担割合を合算して計算することができないか、こういったような御要望の趣旨というふうに承っております。
  189. 諫山博

    ○諫山博君 これは、制度はあるけれども地元でそういう事業が始まらない限りこの制度の適用の仕方がないという状況なんですね。そこで入江町会議員としては、何とか制度をもっと利用しやすいようにして産炭地農業振興に寄与できないかという話だと思うんです。  局長にお聞きしますけれども、とにかく農業にみんな期待をかけているわけですよ。圃場整備などの作業が始まれば産炭地域だというので特別な上乗せ措置も可能なわけです。ところが、肝心の地元にそれだけの力がないわけですね。だから、この制度を効果的に運用しようと思っても運用できないという状況です。これは何とかならないものでしょうか。今までずっと通産省と話をしていますけれども、農水省として何かこういう問題を解決する方法はないんでしょうか。
  190. 松山光治

    政府委員(松山光治君) 川崎町の具体的な話でございますが、全体の状況を若干御報告申し上げておきますと、水田面積が四百三十六ヘクタールのうち、整備が必要だということで現地で言っております面積が三百四ヘクタールございます。いろいろ御指摘ございましたように、鉱害復旧の対象になってきた面積がかなり多うございまして、それが百ヘクタール、それから地域改善対策の対象になってきた——これも具体的には末端の受益 者負担がない姿でございますが、これが四十ヘクタール余ありまして、そのほかに、既に五十八年から六十二年度にかけまして団体圃場整備事業で、これは国の補助事業でございますが十五ヘクタール事業が行われてございます。したがいまして、整備が百五十七ヘクタール、整備率にしまして五一・六ということで、たしか県の平均水準よりも高かったと思いますが、一応その程度の整備が進んでおるわけでございます。  残りが、百四十七ヘクタール残っておるわけでありますが、私どもが得ております情報によりますれば、そのうち百ヘクタール、これは鉱害復旧事業でかなり補助率が高いわけでございますけれども、やる予定というふうに聞いておりますし、かつ地域改善対策でも来年度からやりたいという希望があるようでございます。  そのほか、六十三年度からの事業として団体圃場整備十四ヘクタールという計画がございまして、こういうものにつきましては、私どもの守備範囲のものにつきましては地元の要望を踏まえました上で事業採択等についてできるだけ考えていきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  191. 諫山博

    ○諫山博君 農水省としては随分次々に手を打っているという御説明のようですけれども、実際は町会議員が九州からわざわざ上京して何とかならないのかということで通産省と交渉するという状況です。私は川崎町の例を引いて質問しましたけれども、これは川崎町だけのことではないんです、すべての産炭地に共通しております。福岡県の産炭地、佐賀県の産炭地、長崎県の産炭地、やはり同じような状況です。将来とも私はこの問題に関心を持ちながら産炭地農業の振興、とりわけ産炭地という特別な措置が今つくられておりますから、これがもっと積極的に活用できるようにやっていただきたいわけです。そのためには、制度の弾力的な運用あるいは制度改正というような問題までしないとなかなか行き届かないのではないかと思います。何しろ、川崎町を例にとりますと、八千五百世帯のうちに二千八百世帯が生活保護世帯ですよ。こういうところで土地基盤整備などを進めていくというのは、今の制度を機械的に運用しただけではなかなか難しいのではなかろうかという気がしてしようがないからです。この問題について、通産省と農水省に御意見を聞きたいと思います。
  192. 松山光治

    政府委員(松山光治君) 先ほどからも、先生と通産省の方のお話を伺っておりました限りでは、私どもの行います事業につきまして別途通産省の方でお決めになっておる一定の要件を満たしましたときに交付金制度対象になる、こういうふうに理解いたしたわけでございますが、私どもといたしましては、全体のバランスを見ながら、補助率については、団体営でございますれば四五%の国補ということで仕切ってございまして、今弾力的な取り扱いというお話がございましたが、事業の採択等の面では地域の特性を考えながらできるだけ現地の御要望にこたえられるような線でいろいろとこれからも考えていかなければいかぬとは思っておりますけれども、そういう事情でありますだけに、通産の制度に垂れるようにできるかどうかという点につきましては、私どもの範囲では何ともちょっと手の打ちようがないというのが実情である点をひとつ御理解賜りたいと思うわけでございます。
  193. 古賀英宣

    説明員(古賀英宣君) 制度の改善のお話でございますけれども、ただいまこの制度の原資になっております石特会計、非常に財源が厳しい状況でございます。この限られた財源の中で、各種各般の産炭地域振興政策をバランスをとりながら最大限の効果を上げるべく進めておるわけでございまして、そういう苦しい財源の状況を考え、からかつまた、こういった交付金の交付におきましてはある程度の地元の受益者の負担といったものも考えなければいかぬわけでございますし、こういった点を考えますと、制度の改善というお話でございますけれども、大変に難しいというふうに考えられる次第でございます。
  194. 諫山博

    ○諫山博君 最後に、牛肉、オレンジの問題で質問します。私たちは牛肉、オレンジの自由化はしてはならないと思っております。輸入課徴金とか関税引き上げというような問題でお茶を濁してはならないと思います。やはり自由化そのものをしないという立場を貫く必要があります。  そこで、この問題に対するアメリカ側の理不尽な態度について二点質問します。  アメリカは食肉輸入法を持っておるし、これで現在までの二十三年間の間に輸入制限を発動したことが一回、輸出の自主規制を強要したことが十二回、合計十三回、二カ年に一回の割合で実質的な輸入制限を行ってきました。アメリカ自身がこういうことをやっている限り、これと違った立場日本に要求するというのは私たちの感覚からいったら厚かましいというか心臓が強いというか、とにかく筋が通らないと思います。私が今言ったような輸入制限なり自主規制が十三回行われた、この事実は間違いないかどうか、そういうアメリカがなぜ日本に自由化を求めるのか、アメリカ側はどう言っているんでしょうか、お答えください。
  195. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 御指摘のございましたアメリカの食肉輸入法に基づく食肉輸入に関する規制がどのように行われているかという問題でございますが、御指摘のとおり、これは一定の数量を決めましてその数量水準を超える場合において輸入割り当て制に移行することができるということが決まっておりますが、現実にこの規定を援用いたしまして輸入割り当てを実行いたしましたのは一九七六年の第四・四半期に一度行ったのみでございます。  そのほか、先生から御指摘のございました、こういった制度を背景にいたしまして、主要輸出国、対米輸出国としては豪州、ニュージーランド、カナダ等があるわけでございますが、これらの輸出国との間で双方の二国間交渉をしまして自主規制を実行するというケースが間々ございます。昨年度の場合も行われたわけでございますが、そういった事例が、回数まで私も今確かめておりませんけれども制度が発足してからそういう事例があったということを私どもも承知をしております。  これまでの日米間協議におきましても、アメリカにおきます食肉輸入法の運用実態による保護の状況について我が方からもいろいろ指摘を行っておるわけでございますが、少なくとも自主規制そのものがガットの規定違反であるという認識はアメリカ側としては全く持っておらない。かつまた、いかなる国からもガット上違反の措置であるという挑戦を受けたこともないということで、この違法性については強く否定をしておるわけでございます。それに対しまして、日本が現在とっております輸入割り当て制につきましては、ガットの規定に照らしても違反の疑いがあるということで、我が方からの再三にわたる説明にもかかわりませず、御承知のとおり、かねてから主張しておるところに従いまして、五月四日にガットに対して本件についての審査を行うためのパネル設置を求め、これが決まったという経過をたどっておるわけでございます。  一方でまた、私ども、本件については、我が国実情を十分説明しながら、アメリカ及び豪州との二国間協議におきましてこの問題についての一定の解決を図るべく努力をしてきたわけでございますが、ガット・パネルの設置が決まった現時点におきましても、たびたび大臣から申し上げておりますように、国内の牛肉産業の存立を守るという観点でパネル手続と並行いたしまして二国間協議を通じた問題の解決に努力をしていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  196. 諫山博

    ○諫山博君 アメリカは核兵器まで持っている超大国なんですね。このアメリカが、例えば昨年十月にはオーストラリアとニュージーランドに自主規制を求めたわけです。簡単に言うと、そんなにたくさん牛肉をアメリカに輸出しないでくれと要求しているわけでしょう。そしてアメリカとしては自分の力を背景にしてその要求をのましてきているわけです。そういうアメリカがなぜ日本に自分のやっていることを反省もしないで強引に要求してくるのか、そこが私には理解できないんです。アメリカはその問題はほおかぶりしているんですか、それとも自分のやっていることと日本に要求していることとは矛盾しないと言ってるんですか。その点はどうでしょうか。
  197. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 先ほども申し上げましたとおり、アメリカが食肉輸入法に基づいてといいますか、食肉輸入法を背景にいたしまして行っている自主規制と、日本が従来から保持をしてきております輸入割り当て制というものは法律論としては全く異質のものであるという見解をアメリカ側は強く述べておるわけであります。私ども、実質的な問題として国内のそれぞれの事情に応じまして一定の保護措置を一国の判断でやっていくということの正当性というものを主張しておるわけでございますが、ガットの規定に照らした法律論として、この問題、これはアメリカ側の問題もあるでしょうし、また日本側の問題もありますが、ガット規定に照らした法律論として論議をするということになりますと、おのずからそういった実質論とは違った観点での論議が必要になってくるのではないかというふうに考えておる次第であります。
  198. 諫山博

    ○諫山博君 もう一つ輸入課徴金です。課徴金をかけるかどうか、関税の税率をどうするのか。これはもともと独立国の主権に属することだということを前回も私は申し上げました。そして、課徴金がガットの上から見ても合法的な制度だというのは常識だと思いますけれども、これはガットの中では常識にはなっていないんでしょうか。アメリカはこれを否定しているようですけれども、ガット全体の空気としてはどうなんですか。例えばEC諸国なんか長年にわたってこれを運用しているわけですけれども、ガットの常識ではないんですか。まずお聞きします。
  199. 京谷昭夫

    政府委員(京谷昭夫君) 国境措置といたしまして現在各国がそれぞれの国内事情を踏まえながら、御指摘のような課徴金あるいは関税、それから輸入割り当て制、それからまた、最低輸入価格制といったような非常に多彩な国境措置をとっている事実関係がございます。  その背景にありますのは、ガット規定の解釈につきまして、各国がそれぞれの立場から多様な解釈の観点をとって行っておりまして、問題が生じますれば二国間あるいは多国間、さらにはガットの場におきましてガット規定に照らしたいわゆる違法性、合法性を論議をするということは一般的な慣例でございます。課徴金をめぐります日米間協議における論議も、まさにそういった慣例に従いまして課徴金というものがアメリカ側としてどのように解釈し、また我々としてどういうふうに解釈をしているかということの論議を二国間に行っている例でございまして、本当に議論になりますれば改めてガットでの論議をしていくことになろうかと考えております。まだ現実に、さすればこれについてはどのような形でどのようなものができるという事実関係が出ておりませんけれども、したがいましてすぐさまガットでの論議というわけにもいかぬと思います。  ただ、ECの課徴金は現存をしておるわけでありますが、これにつきましてアメリカがどのように考え、またEC自体がどう考えているかという考え方ありますけれども、私どもにとりましてはいわば第三国の関係でございます。私どもの見解として、ECあるいはアメリカといった第三国関係について私どもが特別の考え方を述べるということは差し控えさせていただきたいと思います。  関税率の問題につきましても、基本的には、第一義的にはそれぞれの国が持っております関税自主権に基づいて決める権能を持っておりますけれども、これにつきましても御承知のとおり二国間あるいは多国間におきましてこの関税自主権の行使の仕方について国際的な約束をすることがございます。現実にガットバインドの制度というものがございまして、ここにバインド税率として登録をしたものについてはその税率をそれ以上上げることはしないという約束を国際的にしておるわけであります。それを解除する場合には一定の代償措置を行って解除をすることができるということもガット上明確になっておりまして、我が国に限らず各国も多国間交渉等を通じましてこういった関税自主権の行使について国際的な約束をするということは十分従来からの実例でも行われているところであります。
  200. 諫山博

    ○諫山博君 最後に、大臣に質問します。  今の話を聞いていると、ガット違反かどうかというのは、何か紛争が起こって、その中でしか決まらないものかのように聞こえるんですよ。しかし、ガットの条文には第十一条に「租税その他の課徴金以外の」という言葉が使われておりますから、共通した解釈というのはあるわけです。そしてアメリカ自身が制度として課徴金を持っていることはもう議論の余地がありません。私は二つの問題に絞ってアメリカの言い分というのは理屈が通らないな、大臣が理不尽と言われたのも当然だなと思いましたけれども、改めてこういうめちゃくちゃな要求をするアメリカに対して断固として自由化はいたしませんと言うことはできないものでしょうか。大臣にお聞きします。
  201. 塩飽二郎

    政府委員(塩飽二郎君) アメリカの輸入課徴金制度でございますとか、あるいはガットの条文の解釈として、紛争が起きた場合にパネルの手続を通じてしか解釈できないものであるかということをおっしゃいましたので、その部分につきまして私の方から補足して申し上げますと、一つは、ガットの条文の解釈は先ほど畜産局長から申し上げましたように、現実には加盟国間の貿易紛争の解決を通じてパネルが関係条文の解釈について当該紛争案件について具体的な適用を示すという形を通じて解釈が現実にはなされるというケースが非常に多いわけでございます。ただ、それだけには限りませんで、一般的にある条文の解釈に関連いたしましてガットの加盟国全体がもう少し明確な解釈を確定する必要があるという事態になりましたら、何らかの作業グループ等を設けて解釈をより明らかにする、それでその成果を何らかの文書にまとめていくということも具体的な解釈を明確化するプロセスとしてあり得るわけでございます。しかし、一般的には紛争の解決を通じて具体的な解釈が明らかになるということでございます。  それから、もう一つのアメリカの輸入課徴金については、先ほど畜産局長から申し上げましたように、我々としては輸入課徴金は一般的にガット上合法な制度であるというふうに理解をいたしておりますが、そういった前提のもとでアメリカは輸入課徴金制度現実に適用した事例がございます。これは御案内のように、一九五五年にアメリカがアメリカの国内法でございます農業調整法に基づく国内の価格安定制度を有効に実施していくために、海外から農業調整法の対象農産物が大量に輸入されて国内の価格安定がうまくいかないということを防止する見地から、輸入数量制限のほかに場合によっては輸入課徴金をかけることあり得べしということでガットのウエーバー手続によりまして特別の許可を得てそういった措置ができるような権限を取得しているわけでございます。  現に、その権限に基づいて一九五〇年代にも例えばアーモンドにつきまして輸入課徴金を現実に適用した事例がございます。最近では、既に廃止になっておりますけれども、砂糖類の数品目について輸入課徴金が適用された実例がございます。しかし、これはあくまで、先ほど畜産局長から申し上げましたように、関税について一定パーセンテージ以上関税を上げないという約束をあらかじめした産品について、その後の事態によりまして輸入課徴金を上げるという必要をカバーするためにそういう措置をとっているわけでございまして、一般的にはそういう関税についての事前の約束のない品目については輸入課徴金はガット上合法的な措置として取り得るものであるというふうに私どもは解釈いたしておるわけでございます。
  202. 諫山博

    ○諫山博君 私、大臣に質問したんです。
  203. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) いや、ちゃんと答えます よ、心配しないでいいです。  わかりました。簡潔に申し上げます。  両局長からそれぞれ具体的な説明がございました。今日までの交渉の経過は御案内のとおりでございます。二度にわたる訪米によってその後の評価、その後の批判、その後の反応、暫時それを見きわめつつ今後の対応を考えてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  204. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十三分散会