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1988-05-12 第112回国会 参議院 農林水産委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月十二日(木曜日)    午前十時一分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         岡部 三郎君     理 事                 高木 正明君                 水谷  力君                 宮島  滉君                 稲村 稔夫君                 刈田 貞子君     委 員                 青木 幹雄君                 上杉 光弘君                 浦田  勝君                 北  修二君                 熊谷太三郎君                 鈴木 貞敏君                 初村滝一郎君                 星  長治君                 本村 和喜君                 一井 淳治君                 菅野 久光君                 八百板 正君                 及川 順郎君                 諫山  博君                 三治 重信君                 喜屋武眞榮君                 山田耕三郎君    国務大臣        農林水産大臣   佐藤  隆君    政府委員        農林水産省構造        改善局長     松山 光治君        水産庁長官    田中 宏尚君        通商産業大臣官        房審議官     安藤 勝良君    事務局側        常任委員会専門        員        安達  正君    説明員        資源エネルギー        庁石炭部炭業課        長        斉藤 真人君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○漁業災害補償法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○農村地域工業導入促進法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     ─────────────
  2. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  漁業災害補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案につきましては、既に趣旨説明を聴取いたしておりますので、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 一井淳治

    一井淳治君 我が国におきます水産物消費伸びでございますけれども、最近どういう状況なのか。将来伸びることが確実に期待される状態があるのかどうか、その辺についてまず御説明願いたいと思います。
  4. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ここのところ国民栄養水準はほぼ飽和状態に達しているわけでございます。したがいまして、国民一人当たりの供給食糧伸びは鈍化いたしておりまして、特に水産物関係の深いたんぱく質摂取量も大体横ばいという状況でございます。こういう中で、水産物消費につきましては、総体として残念ながら水産物より畜産物の方が価格が安定的に推移してきているということからいいまして、ここのところ畜産物に比べまして相対的にウエートとしては若干落ちてまいりまして、いわゆる動物性たんぱく質供給量の中に占めます水産物ウエートは五十一年以降畜産物を下回りまして、ここのところは四五%程度という形で推移しているところでございます。  ただ、最近の状況でございますけれども、特に魚介類に含まれておりますいろんな栄養分につきましては、健康の維持というようなことからここのところのヘルシー志向ということもございまして、国民がかなり理解を深めてきているということに加えまして、いろいろ多種多様でしゅんのある水産物というようなことでグルメ志向にも合致しているというようなことで、幸いにいたしまして六十二年の八月から七カ月連続いたしまして家計費調査で見ましても前年同月を上回った伸びを示しておりますし、それから、例えばデパートでございますとかスーパーでございますとか、こういうところにおきましての鮮魚売り場の面積がかなり拡大傾向にあるということからいいまして、ひところに比べますと、若干ではございますけれども上向き傾向にあるということが総体的に言えようかと思っております。
  5. 一井淳治

    一井淳治君 消費が思うままに伸びないという状況があるわけでございますけれども、その原因につきましては、例えば魚特有においがするとか、消費者の好み、調理が面倒だというふうないろんな理由が言われておるわけでございます。先ほど長官からも酪農の場合と対比してちょっと御説明があったわけでございますけれども、生産者段階現状でよいのかどうか。それから、水産物小売段階での販売力の弱さ、こういったことが消費伸びない重要な原因であるんではないかというふうに思うわけですけれども、そのあたりはいかがでございましょうか。
  6. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ただいまも先生からお話しありましたように、食糧消費の全体の水準がほぼ飽和点に達しておるということのほかに、畜産物に比べての割高感でございますとか、あるいは調理の問題でございますとか、あるいはにおいの問題でございますとか、いろんな問題が複合しているわけでございますけれども、この中で一つ生産者段階でのコストダウンの努力外国との関係からいいましても今まで以上に厳しいことが求められておりますし、それから流通、それから加工段階、こういうところで新しい消費者のニーズというものがいろんな形で出てきておりますので、そういうものにどう的確に対応する流通加工システムをつくっていくかということも御指摘のとおり急務かと思っております。
  7. 一井淳治

    一井淳治君 長官先ほど言われたわけなんですけれども、最近健康志向グルメ志向というものが強まっていること、それから輸入食品が増加したり、あるいは外食産業が非常に勢力を伸ばしているというふうな状況の中で、食品一般消費者の選択が非常に流動化しているといいますか、非常に流動性が大きくなっているというふうに思うわけでございます。そういう中で水産物消費促進政策を強力に進めていただかなくちゃならぬじゃないかというふうに思うわけでございますけれども、そのあたりはいかがでございましょうか。
  8. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 先生指摘のとおりでございまして、やはり何といいましても、まず需要なり消費拡大していくということが産業政策の前提になってくるわけでございますけれども、人間様に何を食べさせるかということにつきましての行政の関与というものはある意味じゃ狭いわ けでございまして、我々といたしましてもできるだけ消費拡大のために努力をするということで、従来からいろんな事業をやってきているわけでございます。  一つは、魚食に関します消費者の啓発を図りますためにいろんな宣伝媒体を使いまして、栄養特性でございますとか、あるいは料理方法、こういうものにつきましての情報でございますとか、あるいは未利用資源を原材料といたします新しい食品普及促進というようなことを行っておりますし、それから鮮魚小売商主婦等対象といたしまして、例えばおさかなセミナーの開催というようなことで、地域単位での食生活実情に応じました魚食普及活動というものを行っております。  それから、さらには全国的な形でいろんなネットワークを使いまして宣伝すると同時に、その魚食普及地方ステーション担当者育成強化というものも行っているわけでございます。  こういうソフト的な助成に加えまして、水産物流通加工、このものを物的にも整備していくということで、先般お認めいただきました水産加工施設資金、こういうものを中核といたしまして、いろいろと新しい流通加工のチャンネルなり技術、こういうものの開発普及、例えば水産物を高鮮度で流通させますシステムでございますとか、ここのところ相当定着してまいりましたゼロ度C前後の温度帯での保存の技術開発あるいは管理基準というものも設定しておりますし、それからいろいろと新しい、特に若い方に通した加工食品開発というものにつきましてもいろいろな試験研究なり助成を行っている次第でございます。
  9. 一井淳治

    一井淳治君 昭和五十一年に動物性たんぱく質摂取量の中で、これまで水産物が占めていたものを畜産物の方に譲り渡して、もう現在では四〇%台に落ち込んでいるということですが、畜産物の方は外国の圧力もありますし、国内でもコスト切り下げという非常な努力が進んでおりまして、今後畜産物消費がふえる傾向が一層強まるんじゃないかということを痛感いたしておりますけれども、そういう中でぼやぼやしておりますと水産物が押されてしまうんじゃないかというふうな危機感も多少あるわけでございます。  六十二年度に現在の水産物需要拡大施策が一応見直されて進行しているわけでございますけれども、来年度はもっと本格的にといいますか、よほど本気で取り組んでいただかないと水産物畜産物に押されてしまうんじゃないかという心配があるわけでございますが、そのあたりの心構えといいますか、取り組む決意といいますか、そういう点についてお尋ねいたしたいというふうに思います。
  10. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 食生活全体が飽和状態に達しつつあるということから言いまして、どこかが伸びるとどこかが減るということでは、農林水産行政全体としては問題があるわけでございまして、それぞれが調和がとれた形で消費伸びるなり定着していくということを省全体として心がける必要があるわけでございます。ただ、水産物につきましては、先ほど来お話ししておりますように、ヘルシー志向でございますとかあるいはグルメ志向でございますとか、こういうことで、特に若い方々にも復権し始めてきているという新しい芽がございますので、そういうものに着目して従来からもいろんな消費拡大なり普及運動をやってまいりましたけれども、こういう従来の施策を今後ともさらに一層充実しながら強化してまいりたいと思っております。
  11. 一井淳治

    一井淳治君 学校給食関係でございますけれども、これは消費を促進するというだけでなくて、国民食生活食習慣子供のころから形成するという意味で大きな意味があると思いますけれども、学校給食に対して水産物を一層取り入れていくという関係での御努力を、これは主管の官庁が文部省でございますのでまともには文部省に要望するべきことであるかもしれませんけれども、しかし水産物生産を主管しておられます農林省として、学校給食消費の増大ということに一層御努力いただきたいというふうに思うわけでございますけれども、そのあたりはいかがでございましょうか。
  12. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 魚食普及させていきますためにも、これは別に魚食に限らずすべてそうだろうとは思いますけれども、子供のころからそのものになれ親しませるということが何といいましても長期的に必要なわけでございまして、学校給食にできるだけ水産物利用をしていただくということから、従来からもいろんな働きかけなり助成も行ってきているわけでございまして、その結果もございまして最近学校給食におきます水産物消費というものはおかげさまで若干ではございまけれども伸びつつあるという現況にあるわけでこざいます。  ここのところ、農林水産省におきましても、外食における水産物消費拡大を図るための事業というものを行っているわけでございますけれども、こういう中で給食者への水産物安定供給を図るということで、結果的に学校給食に対して円滑供給ができるというようなことに助成を行ってきておりますし、それから関係団体、具体的には大日本水産会で行っておりますおさかな普及協議会というものがあるわけでございますけれども、ここで学校給食用のメニューの作成でございますとかあるいは学校給食関係者対象といたしました料理教室、こういうものを実施しております。  それから、学校給食魚食普及する際、何といいましても給食利用しやすいような加工品供給することが急務でございますので、先般も通していただきましたし、先ほども触れました水産加工施設資金、こういうようなものを核といたしましてそういう新しい集団給食に適した加工材料、こういうものの開発なり普及なりに努めているわけでございますけれども、今後ともそういう線で努力してまいりたいと思っております。
  13. 一井淳治

    一井淳治君 学校給食につきまして、文部省の方では六十一年三月の三日付で「学校給食食事内容について」という通知を出しまして、その中で学校給食標準食品構成表というものをパン給食米飯給食ごとに定めているわけでございますけれども、それを見ますと、パン給食の場合は魚介類よりも獣鳥肉類を多く使う。また、米飯給食の場合には獣鳥肉類よりも魚介類を多く使うということでバランスがとれてあるわけでございますけれども、しかし、現実学校給食での消費量というものを見ますと、魚介類獣鳥肉類の半分に達しない、あるいは大体半分ぐらいというふうな現実があるわけでございまして、現実学校給食現場での水産物摂取量は非常に少ないわけでありますので、その点なお一層強く学校での給食がふえるように努力いただきたいと思います。  と同時に、学校給食助成でございますけれども、先ほどちょっと助成ということを長官は言われましたけれども、水産物については助成が全くないというふうに思うわけです。米穀、牛乳、果汁、それから小麦の流通経費等については非常に大きな助成があるわけでございますけれども、水産物については残念ながら助成がないわけで、そういう点を含めながら一層学校給食での消費を増大していただきたいというふうに思うわけでございますけれども、その点もう一度御見解をお尋ねしたいと思います。
  14. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ここのところ学校給食水産物摂取量を見てみますと、昭和五十五年に、小学校で申し上げますと、十五・四グラムのものが、五年後の昭和六十年には十七・七グラム。同じく中学校では五十五年に十九・九グラムだったものが六十年には二十四グラムということで、畜産物が五十五年に比べて六十年が小学校中学校とも若干減っているのに比べまして、おかげさまでと申し上げますと畜産局に悪うございますけれども、水産物の場合にはふえてきているという傾向にあるわけでございます。  これにつきましては、先ほど助成というのはちょっと舌足らずだったかと思いますけれども、副食物につきまして現在の財政の総体仕組みの中でストレートな助成を行うということはもちろん 難しいわけでございますけれども、学校給食に適した水産加工品供給形態なりあるいは供給システム、こういうものをつくるという形で外食産業一般に対する食材を円滑に流通するための家庭外消費用水産物流通促進パイロット事業というようなものを行っておりますので、こういうものが結果的には学校給食に対しましても国の援助という形で寄与しているというふうに認識している次第でございます。
  15. 一井淳治

    一井淳治君 統計数字ではいろいろございますけれども、私が文部省の方から手に入れました「年度別食品分類別摂取量」という表がございまして、昭和六十年が一番新しいわけでございますけれども、中学校を見ますと、魚介類水産物に該当するものが十四・九グラム、それから獣鳥肉類を見ますと、二十八・四グラムというふうに非常に大きな開きもあるようでございますので、学校給食水産物を使用するための水産庁の方の一層の御努力をお願いしたいというふうに思います。  それから、この法案に関連してでございますけれども、加入率が非常に低い、そして大きな赤字が累積しているという非常に大きな問題を抱えておるわけでございます。これは非常に言葉が悪いかもしれませんが、率直に言って制度が余りよろしくないからではないかというふうに思いますけれども、その大きな問題の中に掛金の問題があるというふうに思います。私は、県によって非常に不合理な大きな差がこの掛金にあるんじゃないか、これの是正が必要じゃないかと思います。特に海というものは連続しているわけでございますから、県別に小さく掛金の割り振りをしたらいかぬのじゃないか。やはり瀬戸内海であれば瀬戸内一帯というふうに、あるいは日本海の西側というふうな、何かもっと大きな枠で掛金を区切っていかなくちゃいかぬのじゃないかというふうに思うわけでございますけれども、この掛金県別による差の是正について御見解をお伺いしたいと思います。
  16. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 漁業につきましては、同一の漁業種類に属します漁業でございましても、漁場環境でございますとかあるいは操業方法によりまして地域によって差異がございますので、その結果、被害発生態様というものも地域的な差異が出てくるということで、こういう被害発生態様に差があることの反映といたしまして、基準共済掛金率につきましてもできるだけ地域実態に即するようにしたいということから、我々の立場といたしましては、できるだけ実態に即するということで、必要に応じまして可能な限り地域ごと細分化しているというのがむしろ実態なわけでございます。  それで、この共済掛金細分化は、その共済組合地域と合致させるということで、ただいまも先生からお話しありましたように、原則として都道府県を単位として共済事業が行われておりますので、その結果として県間に掛金格差が生じているということは事実でございますし、ある意味ではそういう差があることがその地域実態を反映しているというふうに考えている次第でございます。  しかし、お互い隣同士のところでというようなお話しもあったわけでございますけれども、それぞれの県で採用している掛金率というものが実態を的確に反映しているものであるかということを、試行錯誤を積み重ねながら常に適正な方向改善努力は重ねていかなければならないと思っております。
  17. 一井淳治

    一井淳治君 例を挙げて説明いたしますけれども、特定ノリ養殖業の場合でございますが、岡山、これはB地区でございますけれども、全事故比例てん補方式の場合を見ますと一四・九%というふうになっております。ところが、お隣広島A地区で六・一%ということで半分以下の料率になっておるわけでございます。どうしてそういうふうに非常に大きな格差ができておるのかという歴史的な事情を調べてみますと、昭和五十二年ですね、もう十年以上昔に田之浦という地域補償金の支払いがなされている、そういったことがあって岡山掛金は非常に高くなっているということがあるようでございます。海はつながっておりまして、広島に近い笠岡でも特定ノリ養殖業をやっておるわけでございますけれども、すぐお隣の福山に行きますと、海続きでございますけれども、六・一%というふうな非常に安い料金で入れるわけでこざいます。  それで、まあこういったことを漁民は知らないからいいようなものの、もし仮に知れれば、笠岡地域漁民は絶対これに入らないというふうに思うわけです。せっかく全国的な共済という形で再保険がしてある、あるいは国庫の方からも相当補助をしたり、国がまた保険を引き受けるというふうな状況でございますから、かなり広い範囲でならさなければ意味がないんじゃないか、現在の状況ではもう掛金率が倍以上になっておるというふうな状況があることは、結局県別共済になってしまっておって再保険等をする意味がなくなってしまっているんじゃないかというふうに思います。将来、長期的に見ればこれは全国的に強制加入という方向に持っていくべきものではないかというふうに思いますが、現在はその道程ではないかというふうに思うわけでございます。やはり県別、非常に細かく分けて、これが極端な掛金の差があるという状況では漁民が納得しないと思うので、この点もっと広い範囲料金をなだらかに決めていくという必要があるんじゃないか、是正をお願いしたいと思いますが、もう一遍その点についての御見解をお伺いしたいと思います。
  18. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) そこは非常に判断として難しいところでございまして、全部一本化の方向でいくか、それともそれぞれの地域実態に応じてむしろ細分化した方が、それぞれの地域の要望なり、御理解が得られやすいかという判断になるわけでございますけれども、水産の場合には、御承知のとおり、同じようにつながっておるような海でございましても、それぞれの地域での被害発生状況というものが過去の統計的にも相当差異がございますので、やはりその差異差異として受けとめて共済制度を仕組むということの方が現時点では実態的かと思っておる次第でございます。しかし、いろいろと、近所隣との平衡感覚ということからいいましても、それぞれに問題のあるところもあろうかと思いますけれども、そういうところにつきましてはよく実態も我々といたしましては精査はしてみたいと思っておりますけれども、仕組みとしては、やはりそれぞれの地域実態を的確に反映する方がむしろ全体的にはプラスじゃないかというふうに理解しております。
  19. 一井淳治

    一井淳治君 地域実態というふうに言われたんですけれども、ノリ養殖関係でいいますと、ただいまの特定ノリ養殖業の場合と、もう一つ通常養殖共済の中でのノリ養殖業の場合とがございまして、今の特定ノリ養殖業については広島岡山では岡山料率が高いわけでございますけれども、通常養殖共済の中でのノリ養殖業掛金率を見ますと、岡山の方がA地区広島B地区で、岡山が安くなっているというわけです。  ですから、保険でございますからやはり自然発生的に発生する事故、この事故率を見るべきではないか。自然発生的に発生する事故率から見れば岡山広島も変わらない。ただ、過去にたまたま補償金を請求した人間がおったというだけでそんなふうな変化が出てくるわけでございます。例えば岡山人間が入ろうと思えば、一四・九%という非常に高い率を見まして、なぜこんなに高いのかというふうなことになってくる。全然関係ない遠い海域の田之浦漁協人間が十年以上も昔にたまたま請求している、そのためにこんなに高いんだということがわかりましたら、こんな不合理なものには入らないというふうになってくると思いますので、この次の料金の改定の場合にはぜひとも、こういうふうな地域別料金格差が起こっていることをもう少し前向きに、組合員が少しでもふえる方向で再検討いただきたいというふうに思うわけでございますけれども、この点非常に大事な問題であると思いますので、大臣の御感想があ りましたらお尋ねしたいと思うんです。
  20. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ただいま申し上げましたように、それぞれの地域実態に応じて、過去の危険率というものを的確に反映するというのがむしろ基本的な立場というふうには考えておりますけれども、そういうごく近接した地域先生が今御指摘になったような問題が仮にあるといたしましたら、それも恐らくPQ方式物損方式というような方式の違いであるとかいろんな現場実情はあろうかと思いますけれども、我々といたしましてもその現状につきましては精査させていただきたいと思っております。
  21. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 今長官から申し上げておりますように、検討をさせます。
  22. 一井淳治

    一井淳治君 それからもう一つ掛金関係で申し上げますと、漁種によって相当掛金率の違いがございます。漁種別にもう一度公平に掛金が決定されるような御検討が必要ではないかというふうに思うわけです。例えばハマチについて、漁民の間では、ハマチばかりが優遇されているというふうなうわさがありまして、ハマチについてはかなり抑えられたわけでございますけれども、今回はサケ・マス定置漁業についてかなり漁獲数量の制限を加えるというふうな改善が行われるようでございますけれども、こういうふうないろんな改善が行われるということは、結局、漁種別掛金の不合理があったからそのような改善が行われていっているわけでございまして、特定の漁種についての大きな赤字が出るとか、不合理があるとか、不公平があるとかいう点についての、今後、料金を変える際の検討をお願いしたいのでございますけれども、その点いかがでございましょうか。
  23. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 漁種別なりあるいは操業方法の違いというものに起因いたしまして、被害発生態様にいろいろ差がございますので、掛金率につきましては漁業種類間で相当差が出るということはこれは避けて通れない仕組みでございますけれども、しかしその違う中でもそれぞれが適切に決まるべきことは当然でございますので、我々といたしましては、それぞれの漁業種類別に適正な掛金率体系になっているかどうかということは過去も常々見直してきておりますし、これからもそういう基本的態度で臨みたいと思っております。
  24. 一井淳治

    一井淳治君 それからもう一つ、加入が進まない事情でございますが、全員加入方式。これは養殖共済の場合でございますけれども、加入区ごとに全員加入方式がとられておるわけでございます、相当の人数が集まりますと何人かの反対が出るというのは、これは民主主義の世の中であるから当然だと思うのですけれども、そういったわずかな反対者のために加われないということもあるわけでございまして、全員加入方式是正ということが必要ではないかと思いますけれども、この点いかがお考えでございましょうか。
  25. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ただいまお話しありましたように、集団契約方式でありますノリの養殖以外の養殖共済、これにつきましては漁場区域単位で全員加入方式というものがとられておるわけでございます。こういうものがとられております背景には、災害が発生いたしました場合に共済組合が個々の漁業者の災害を適切に認定いたしますためには、漁場全体としての損害ということを的確に把握する必要があるということが一つでございます。それからもう一つは、全員に対しまして必要な管理の指示というものを行う必要がありますし、それから加入者の相互牽制というものも働きますためにやはり全員に入っていただいた方がモラルリスクを防止できるということでこういう仕組みをとっておるわけでございます。  しかし、できるだけ加入しやすいということは我々としても願っておるところでございますので、同一加入区域内におきます共済契約者の契約割合というものは、これは従来は一律ということになっていたわけでございますけれども、これを契約割合は自由に選択できるという制度改善いたしております。こういう契約割合の選択ということで、実質的には全員加入であっても相当弾力的な加入ができるというふうに考えておりますので、今後ともこういう仕組みをPRすることによりまして、できるだけ多くの方々が加入していただくように努めてまいりたいと思っております。
  26. 一井淳治

    一井淳治君 割合を弾力性を持たせるという改善が行われたことはよろしいと思うのでございますけれども、それにしても全員加入しなければいけないというのが残りますと、結局は加入の促進ができないということが起こりかねないと思うわけでございます。もうしばらく様子を見ていただきまして、やはり加入の促進ができない場合には、全員加入方式を根本から再検討いただくように要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  27. 菅野久光

    ○菅野久光君 漁業災害補償制度が一九六四年に創設されてから、今まで四度目の改正になるわけであります。そういう今までの改正のたびに論議された経過等を考えてみますと、この制度は公的救済制度の範疇として位置づけられるのではないか。また、漁業経営対策の一環としても位置づけるべきだというふうに考えるわけであります。  しかしながら、本制度だけでは漁業経営を安定することが困難であるというふうに思われますので、水産業全般にわたっての政府の適切な施策の展開が必要になるというふうに思うわけでありますが、その点についての政府の考えはいかがでありましょうか。
  28. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 漁業災害補償制度の性格づけあるいは位置づけということについての基本的な考え方をただされておるように思いますので、私から簡潔にお答えを申し上げたいと思います。  この制度は、経営基盤の脆弱な中小漁業者が、災害等によって受ける損失を相互救済の精神を基調とした共済事業によって相互に合理的に補てんをする、そのことによって漁業の再生産の確保と漁業経営の安定に資するという目的のものでございます。御案内のとおりでございます。  このような制度は、国の災害対策の一環として金融対策等の諸施策と相まって、漁業経営の安定と発展を図るという見地から大きな意味を持っておる、こういうふうに位置づけておるわけでございます。
  29. 菅野久光

    ○菅野久光君 大臣も牛肉、かんきつから今度はポイントを切りかえて海の問題ということで、十二品目の問題といい、牛肉、かんきつの問題、これも日本農業にとっては大変な問題でありますが、水産も二百海里以降、本当に大変な問題が国際的な環境あるいは国内的にも韓国漁船の問題などがあって、水産業をめぐる環境が大きな変化をしてきておるわけで、それだけに今度漁業災害補償制度の改正に寄せる関係者の期待が大変大きいというふうに思いますので、そういうことを踏まえながら御質問を申し上げたいというふうに思います。  まず、今回の改正に当たりまして、特定漁業における基準漁獲数量の導入の問題でありますが、これが今回の改正の一番大きなものではなかったかなというふうに思います。  そこで、今回の改正で基準漁獲数量を導入して、漁獲量が基準数量を上回った場合、その程度に応じて共済金の支払いを逓減するということが改正の中身になってきているわけですが、これは政府の水産行政の価格政策がいわば欠如していたのではないか。それをカバーしていた収穫保険制度、いわゆるPQ方式がなし崩しにされる危険性が非常に大きいのではないかということを指摘しなければならないというふうに思うんです。この特定漁業における基準漁獲数量の導入について、特に北海道はサケ・マスの定置の問題がありまして、大変な問題でありますので、導入の契機についてひとつお伺いいたしたいというふうに思います。
  30. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ただいまお話しありましたように、漁業共済制度PQ方式をとっておりまして、ある意味では価格の下落を補てんする、我が国の共済制度では例を見ない仕組みにな っておるわけでございます。今回そういう中で、基準漁獲数量概念というものを導入させていただくことに相なっておるわけでございますけれども、これは、そもそもPQ方式自体がどういうことでとられてきたかといいますと、漁業の場合には、単価も違う、大きさも違うものがあわせてとられる、いわゆる混獲されまして、単に数量概念だけで共済をやっていては十分な効果が出ないということが一つございましたし、それから取引なり漁民の感覚といたしましても、何トンとれたかということじゃなくて、幾らで売れたかということが過去の経験値からいっても頭の中にあり、商取引慣行上もそっちが優先してきていたということに着目いたしましてPQ方式をとってきたわけでございますけれども、一方サケ・マスの大型定置漁業の現況を見てみますと、ふ化放流事業を行っているという特殊な事情から申し上げまして、近年サケ・マスの回帰量はかなり高水準で推移してきておりまして、これを反映して漁獲量そのものもかなりいいという状況に御承知のとおりあるわけでございます。  しかし、こういうふ化放流事業をやっているということからいいまして、あらかじめ予想される漁獲量の増加に伴う魚価の低落という面が一つございますし、そういうことで連年のように残念ながら特定の地域それから同一漁種、ここで多額の共済金が支払らわれてきてしまっているということを見てみますと、やはり全体で救い合おうという漁業共済という相互救済の精神を基調として初めて成り立っている制度から申し上げますと、必ずしもいい話ではないんじゃないかという感じが一つしているわけでございます。  そういう全体の話と同時に、サケ・マスの大型定置漁業自体にとってみましても、このまま放置しておきますと毎年の多額の共済金の支払い、それを追っかけるような形での共済掛金の上昇という悪循環を招来する危険があるということでございまして、そこで何とかそういうものを断ち切って、サケ・マスの共済につきましても安定的に今後継続してまいりたいということで、関係者ともいろいろと協議をいたしまして、サケ・マス大型定置漁業の場合には一般の漁業の場合と違いまして混獲の問題を余り心配する必要はないということで、一定の場合に漁獲数量に着目した共済金の支払いの特例措置というものは技術的にも可能であるということで、今回こういう改正をお願いしたわけでございます。  我々の基本的立場といたしましては、こういう特殊事情から今回お願いしておりますので、やはり収穫保険方式、いわゆるPQ方式の基本を何とか維持する。維持するためにはこの程度の経過的な改善措置というものを加えなければ根っこからおかしくなってしまう心配があるということで、現地にとってはある意味では厳しい話かもわかりませんけれども、全体としてのPQ方式の根幹を今後とも守っていくというために、何とかこういう改正をお認めいただきたいという気持ちで今回提案をさせていただいている次第でございます。
  31. 菅野久光

    ○菅野久光君 今考えられている特定漁業というのは、私は北海道なものですからサケ・マスということで限定をしてお伺いいたしましたが、サケ・マス以外には考えておられませんか。その辺はいかがでしょうか。
  32. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ただいま申し上げましたような趣旨で、ふ化放流という中で一定の地域で一定の漁種に偏って災害が起きているという状況でございますので、こういう状況にある漁種はほかにございませんので、サケ・マス大型に限定してこれを運用してまいりたいと思っております。
  33. 菅野久光

    ○菅野久光君 サケ・マスのふ化放流事業について、近年技術がかなり向上して、回帰率も高まっているという状況はあるんですが、確かに漁獲数量は上がっているんだけれども、肝心かなめの魚価が非常に下がっているというところが非常に問題ではないかというふうに思われます。  魚価の方なんですが、キログラム当たり調べてみますと、単価が一九七七年は千八十円、これを頂点として下落をしてまいりまして、最近三カ年間を見ましても八四年が七百六十七円、八五年は五百三十七円、八六年は四百四十八円ということで、まさに八六年あたりは七七年当時に比べても半値以下ということになってきて、いわば大暴落なわけですね。このために、漁獲量がふえても漁獲金額の方は逆にかなりの角度で下落をする傾向を強く見せておるわけですが、こうした魚価の暴落の原因、これはどのように押さえておられますか。
  34. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ただいまお話しありましたように、昭和五十二年、五十三年段階では北海道物でキロ当たり一千円台になっておりましたのが六十一年には四百四十八円、それから六十二年は若干戻りまして六百十五円ということでありますけれども、それにつけても半値近い値段になっているわけでございます。  この背景といたしましては、昭和五十年代の初めといいますと沿岸で生産されておりましたサケはせいぜい五、六万トン程度でございましたけれども、ここのところ沿岸が五十五年に十万トン台になりまして、それで一番下落いたしました六十一年の四百四十八円水準のときには沿岸でとれましたのは十八万トンということでございますので、やはり基本的には数量との相関において残念ながら価格が低落したと言わざるを得ないのじゃないかというふうに考えております。
  35. 菅野久光

    ○菅野久光君 そうすると、政府としては、今のサケの価格の下落は沿岸における漁獲量がふえた、そのために下がったという押さえ方というふうに受けとめてよろしいですね。
  36. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 沿岸だけじゃなくて、北洋なりあるいは輸入なり全体含めて見ましても、先ほど言いました昭和五十一年、五十二年、この段階で大体十三、四万トンという水準でございましたけれども、これが六十年、六十一年になってきますと、特に六十一年度には三十三万トンというように沿岸、北洋、輸入、総体がなりまして、当時に比べて三倍近い数量になっているわけでございます。  そして、この中で一つ問題は、当然輸入というものがかなりふえてきているわけでございますけれども、この輸入のふえ方を見てみますと、従来北洋でとっておりましたものがかなり輸入に変わっていったという経緯が一つございますのと、それから御承知のとおり現在輸入の中心を占めておりますのはベニザケということで、沿岸でとれておりますのとは品質的にもあるいは用途でもかなり違っているという点から言いまして、輸入物が直接的に足を引っ張ったという形は数量的あるいは計数的にも余り証明されていないわけでございます。ただ、全体としてのサケの需給という問題がございますので、品質なり用途は違うといいましても、サケ全体がふえてくるとそれで価格も影響されてくるということも事実でございますので、我々といたしましては、全体の需給を総体的にいろんな形で眺めていかなければ価格問題に対する適切な対応はできないかなというふうには考えております。
  37. 菅野久光

    ○菅野久光君 沿岸でもかなりの量がとれるようになったし、また輸入物も大変ふえてきた。今、輸入物がふえたということだけで価格が下がったとは必ずしも言えない、総対的な漁獲量、それから輸入量、それを踏まえての関係が影響したのではないかというようなお話しでありましたが、最近におけるサケ・マスの輸入状況について、おわかりでしたらちょっとお答えいただきたいと思います。
  38. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) サケ・マスの輸入は、先ほど来年次で出てきております昭和五十年代の初めで申し上げますと、昭和五十年が七千トン程度で、これが昭和五十二年に約二万トンになりまして、それから徐々にふえてまいりまして五十七年に初めて十万トンという大台に乗ったわけでございます。その後、大体その水準で推移しておりまして、六十年度は十一万九千トン、それから六十一年は十一万六千トンということで、ここのところは大体十一万トン強で横ばい状態で推移して いるという形に相なっております。
  39. 菅野久光

    ○菅野久光君 今お話しのように、輸入物が十一万トン、国内の沿岸で大体十六万トンぐらいですか、ややそれに近づくぐらいの輸入物が入ってきているということになっておりまして、調べますと期初の在庫の方もだんだんふえてきまして八二年度で六万七千トン、以下九万六千トン、九万一千トン、八万三千トン、続いて八六年度は十二万四千トンというふうに輸入がふえるに従って期首、期末ともに在庫量もふえている。こういうことになっているわけで、その在庫数量は輸入数量とほぼ同量かあるいはそれを上回っているのが実態だというふうに思うわけです。在庫のこういうような実態は、その供給量が需要量を大幅に上回って、秋サケの価格を圧迫していることを証明しているのではないかと私は思いますが、そういった点からいえば輸入を何らかの形で規制できないものかというふうに思うんですが、その辺はいかがですか。
  40. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 期初なりあるいは期末なりの在庫数量が確かにふえたことは事実でございますが、これも全体の供給ボリュームが五十年代前半の十数万トン台から今や三十万トン前後の全体の需給規模になってきた、こういう中でございますので、在庫の絶対数値がふえたということをもちまして直ちにこれが過剰であるとか、これが価格の足を引っ張っているとかということにはならないとは思っておりますし、それからどの程度の在庫、何カ月分の在庫が適正在庫であるかということにつきましては、それぞれの業界なり商売の方々もなかなか判断の難かしいところでございます。ここのところの数値を見てみましても、例えば五十八年に十万トン台に乗りました期初在庫が五十九、六十と減ってまいりまして六十一年にまた少しふえたという変動もあるわけでございます。  したがいまして、一定の需給規模の中で適正な在庫というものは流通秩序を確保いたします上から当然持たなければなりませんので、これが直ちに秋ザケの価格にはリンクしていないとは思いますけれども、やはり適正な在庫水準にこしたことはございませんので、できるだけ消費拡大なり輸入全体の秩序ある輸入ということにも心がけまして円滑な流通の確保というものに努めてまいりたいと思っております。
  41. 菅野久光

    ○菅野久光君 以前に私は、漁業経営にとって魚価がどうなるかということが大変大きな影響を持っているものですから、この委員会で質問したことがありますが、輸入業者は水産物だけの輸入業者ではなくてほかのいろいろなものを取引する輸入業者なんですね。ほかのものを引き取る、それに見合うというんですか、それと抱き合わせでこの水産物の輸入をやる。だから、水産物の価格については多少高いものであってもそれはもう抱き合わせでやむを得ないと。そして国内へ来たらこのように需給がダブる、あふれているものですから価格を下げる。魚で損をしてもほかのものでもうければいいというのが輸入業者のやり方だと言ったら言い過ぎかもしれませんが、そういうような傾向が多分にあったように私が調べた段階ではわかったわけです。  そういうようなことを考えていきますと、やはりこの輸入の窓口を何とか一元化できないものか、生産者団体と輸入業界が協議して毎年度の輸入数量を決定するなど、少なくとも国内産価格に余り影響を与えない秩序ある輸入の仕組みというものを検討すべきではないかというふうに思うのですが、その御意思があるかどうか、お伺いをいたしたいと思います。
  42. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 商社なり水産関係会社の輸入に対するビヘービアはいろいろあろうかと思いますけれども、サケの場合は輸入先国が非常に限られていて特殊な地域であるということからいいまして、比較的プロパーの価格体系なりあるいは取引条件というもので多くは入ってきているんじゃないかというふうに大数的には観察いたしております。  しかし、いずれにいたしましても、サケ全体としての需給というものがどういうふうに動いていくかということが国内の水産業者にとりましてもそれから消費者にとりましても重要なことでございますので、我々といたしましても現在冷凍水産物需給情報検討会というものを二カ月に一回開催いたしまして、輸入品、国産品を含めて、サケの需給なり価格というものの見通しを立てるということを行っているわけでございます。こういうものに即しましてそれぞれの関係業界なり団体なりが適切な対応なりビヘービアをとっていただきたいということを常日ごろ指導してきておりまして、今後ともこういう検討会を継続開催いたしまして、できるだけ適切な輸入なり流通を確保してまいりたいと思っております。
  43. 菅野久光

    ○菅野久光君 今この席でそういう意思があるかと言われてもなかなかうんとは言えないのかもしれませんが、その辺のところがきちっとならないと、サケの価格の問題についてはいつも不安な状態に置かれるのではないかというふうに私は思うんです。  国内産のサケ・マスの価格は、カナダのブリストル湾の漁模様によって決まるというふうに言われているんですね。つまり、その仕組みは、まず、毎年の春ブリストル湾でベニザケが漁獲され、日本に搬入されるのは約十一万トンから十二万トンの量で、これがちょうど秋サケの漁期前の七月に入ってくるわけです。この輸入ベニザケは、主として関西、九州方面の市場に出回る、こういう状況になっていますね。続いて、日ソ交渉による沖取りのギンザケが漁獲割り当て量の二万五千トンが水揚げされて市場に出回るわけです。秋サケはその後を追っかけて秋に十五トンが漁獲されて市場に出回る、こういうことになってくるわけです。  そうした物流の中で、期首在庫量は平均して六万トンから七万トンあり、合計してサケの供給量は四十万トンから四十五万トンということになるんだけれども、需要量は三十万トンから三十五万トンが限界だということなんですね。だから、結局出おくれて市場に出回る、比較して味の落ちる秋サケの六万トンから七万トンがあぶれるということになって価格が暴落するのが実態だというふうに思うんです、物流、ずっと流れを見ていきますと。  しかも、今までこういったようなことについての価格対策がなかったということがいわゆるサケについてあのような共済事故の発生につながったのではないか、それらを総合的にずっと考えていくとそう思わざるを得ないんですが、その辺はどのようにお考えでしょうか。
  44. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) その辺の見方がいろいろ難しいわけでございまして、それから非常に詳しい先生にお話しするのもあれでございますが、秋ザケは、少なくとも用途といたしましては、御承知のとおり新巻ザケでございますとか切り身用、それからその他の加工品、それから雌につきましてはいくらなり、すじこをとるという用途に使われているわけでございまして、これに対しまして輸入のベニザケ、これは高級切り身でございますとか、それからここのところはスモークサーモンというようなものに大量に使われるということで、用途そのものがかなり異なっておりますし、それから消費地の市場での輸入ベニザケの価格というものは通例でも秋ザケより五割から十割高いということで、両方の間に相当価格帯としても違いがある。それから輸入ベニザケの産地の価格は、産地で漁獲量でございますとか、ヨーロッパあるいは米国向けの缶詰、それから日本の需要というそういう世界全体の動向を反映いたしまして決められてきているわけでございます。  これに対しまして秋ザケは、確かに秋ザケより前に入ってまいりますベニザケを中心といたします輸入物が全く影響がないとは申しませんけれども、これは秋ザケプロパーの漁獲量なりその在庫量、こういうもので価格が形成されているという感じがしているわけでございます。  これは、数字的に見てみましても、過去、例えば輸入が初めて十万トン台になりました昭和五十 七年、この年は前年より輸入量が三万トン近くふえて十万トンになったわけでございますけれども、この年には沿岸の漁獲量が逆に減少したということで、輸入量が三万トンもふえながら秋ザケは価格が上昇したという実態がございますし、その翌年は逆に、五十八年でございますけれども、輸入が一万トン減少いたしましたけれども沿岸の漁獲量が二万トン増加したということで、秋ザケの価格は今度大幅に低下したということで、輸入がふえた、減ったということとストレートな関係がここ数年のところ、いろいろ数字を検証してみましても、そうストレートには結びついていないということが数字的な検証でございます。  しかし、先ほど来申しておりますように、サケという全体の中での流通でございますので、全体のボリュームがどういうふうに入ってき、どういうふうに流通し、それからどういうふうに食べられていくかということはやはり注意深く見守っていく必要はあろうかと思っております。
  45. 菅野久光

    ○菅野久光君 単純に輸入がふえたからそれが価格にストレートに影響したということではなくて、それもいわゆる価格暴落の一つの大きな要因ではないかという点では認識は一致するのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  46. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 大きな要因といいますか、関係がないわけではないということにつきましては一致しております。
  47. 菅野久光

    ○菅野久光君 関係がないわけではないということで、そこのところは大きいか大きくないかという点は必ずしも一致はしないけれども、しかし関係があるのではないかということでは、いろいろな総合的なことを見ていきますと想定できることだというふうに私は思っていろいろ御質問申し上げましたので、その点についての認識の問題はそのぐらいにいたします。  いずれにしろ、ふ化放流によって漁業が成り立っている、そういう問題でありますから、ふ化放流事業についてちょっとお尋ねしたいというふうに思います。  一九八四年度にはこのふ化放流が二十億三千三百万尾の稚魚が放流されたということでありますし、回帰率も一九七〇年当時は一・八%、それが今日二・五%にまで上昇した、非常に結構なことだというふうに思いますが、この放流の時期等と回帰との問題です。回帰がおそくなる、言えばブナザケがふえて、味の悪いサケがとれるようになってしまう。何とかベニだとかギンケに近い味のいいサケをということで、ふ化放流についてもいろいろ研究をしているようであります。このふ化放流の問題については前期とか、中期とか、後期とか、いろいろ試験的になのか、あるいは確信を持ってそういうふうにされているのかはわかりませんが、そういうような放流をして、技術改善という漁民の要求にこたえていることも実際やられているわけですね。  そこで、ふ化放流の状況によってサケの漁獲量に何らかの影響があったのではないかというふうに思われますけれども、その点についてはどういうように状況を把握しておられるか、お答えいただきたいと思います。
  48. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ここのところ、おかげさまでふ化放流の技術は相当向上し、定着してまいりまして、回帰率というものも高い水準で安定的に推移してきているわけでございます。  こういう中で、全体の需給規模ということから見てみますと、もうそろそろ数量だけを頭に置いたふ化放流ということからの脱皮が必要な時点になってきていることは確かでございまして、ただいま先生からもお話しありましたような放流時期を操作することによって少しでもギンケ系統をふやしていく、あるいは今まではシロザケというものがほとんど主体でございましたけれども、サクラマスでございますとか、あるいはギンザケでございますとか、こういういわゆる高級ザケと称されているものに少しでも質的な転換を図っていくということがこれからのふ化放流に課せられた任務かとは思っております。  数量的な面からでも、特定の地域におきましては相当目いっぱいまでは来ておるけれども、まだ地域によっては数量としても伸ばすべきところもあるというような地域間のアンバランスも若干見受けられますので、そういう地域間の調整をとりながら、これからは質的な面での向上ということにふ化放流の力を注いでいくべき段階に来ているというふうに認識いたしております。
  49. 菅野久光

    ○菅野久光君 ふ化放流の技術が、今のように前期とか、中期とか、後期とかということで、なるべく国民のニーズにこたえるいわゆるギンケをできるだけ多くということで、ふ化放流の技術について、言えば政策的な試験放流といいますか、そういうようなことをされてきたというふうに思うんですよ。そうした中で、漁獲量に何らかの影響はなかったのかどうかということをお尋ねしたいと思います。
  50. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 御承知のとおり、放流しましてから四年程度で帰ってくるわけでございまして、そういう質的な研究というものはここ数年間急速に高まってきておりますので、現在までに帰ってきておりますサケにつきましては、従来の数量確保的な視点から行ってきたふ化放流というものの延長線上で帰ってきているはずでございますので、今回の基準漁獲数量の導入でございますとか、そういうものにつきましての影響といいますか、そういうものを狂わせたというような点はふ化放流の実態からいってはないのじゃないかというふうに思っております。
  51. 菅野久光

    ○菅野久光君 ないのではないかということになると、ちょっと問題があるのではないかなあというふうに私は思うんですよ。ふ化放流の技術が完全に確立されたということで、だから漁獲量に影響がなかったのだと、ないというふうに言い切られるのであれば、それは実態からいくと必ずしもそうではない部分があるというふうに言わざるを得ないんです。  前期の放流ということになればどうしても魚体が小さくなることは間違いありませんね。それから、後期の放流ということになればブナが非常に多くなるということなどがあるわけです。ですから、そういう意味からいくと、ふ化放流の技術が確立された、もうこれできちっとやれるのだというふうに今の段階なっておるのかどうか、それじゃ、その辺のところをお聞きしたいというふうに思います。
  52. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ただいま私の説明がちょっと舌足らずだったかと思いますけれども、質的な向上を目指しての新しい技術にのっとってのふ化放流というものが今回まだ具体的に回帰という形で表に出ていないので、それがストレートに今回の改正に結びついたというふうには思っていないというふうにお答えしたわけでございまして、全体としての数量がふ化放流という前提でどのくらい帰ってくるかということが予測可能になり、しかも回帰率が相当高水準で推移しまして、その結果としてボリュームがふえ、価格の低落につながり、そういうことで特定地域に損害が連年発生いたしまして、今回のような改正に至ったということは事実でございます。  それから、ふ化放流技術自体は数量でございますとか回帰率、こういう点におきましては大体世界に見本になる技術が確立できたと思っておりますけれども、ここのところ考え始めておりますそういう新しい魚種なり、回帰の時期を平準化するという点につきましては、現段階ではまだいろいろと試行錯誤的な点がございまして、技術として完全に確立したという段階までには立ち至っておりません。
  53. 菅野久光

    ○菅野久光君 ふ化放流技術の問題については、まだ政策的試行錯誤という部分があることは否めない事実だと、私はそう思っておったものですからあるいは長官の答弁を聞き違えたのかもしれませんが、このことについて申し上げたわけであります。  そういった意味で、結局共済事故が発生して漁業共済がその損失をカバーしたということになるわけですが、しかし技術を確立するためにはそういうこともやはり必要なことなんです。やらなく ちゃわからないわけですから。そういう点で私は政府の責任を追及しようとは思っていません。  ただ、今回の場合に、サケの大型定置の問題が特定漁業ということで今回の改正の非常に大きな点になってきておるものですから、そういったような試行錯誤的な点もあるということ等を考えれば、漁業災害の補償制度を取り入れるのもやむを得なかったのかなというふうに思います。  先ほども私確認をいたしましたが、基準漁獲数量の導入はサケ大型定置に限定をしてもらいたいという点についてはいかがでしょうか。
  54. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 今回の新しい制度を導入いたしました経緯なり理由から申し上げまして、現段階でサケ大型定置以外にこういうものに該当するものがあるとは思っておりません。
  55. 菅野久光

    ○菅野久光君 ぜひ、これだけにとどめていただきたいということを強く申し上げておきたいと思います。  それから、二つ目でありますけれども、細かいことは政令で運用されることになっておるわけですね。この政令の運用に当たりましては混獲問題等の問題があるわけでありますから、秋サケが八〇%以上の定置に限るなど、ぜひ弾力的な運用をしてもらいたいというふうに思うんですが、これはいかがでしょうか。
  56. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 基準漁獲数量制度の具体的な運用につきましては、ただいま先生からお話がありましたように政省令事項ということになっているわけでございまして、現段階でまだ最終的に決めてはおりませんけれども、その基準漁獲数量制度の導入趣旨に反することがないよう、漁業実態を十分踏まえまして弾力的に運用する所存でございます。
  57. 菅野久光

    ○菅野久光君 私も、この八〇%以上の定置に限るということで、弾力的に運用してもらいたいというふうに混獲問題について申し上げましたので、それもひとつ頭に置いて漁業者の方々の意見なども十分聴取してやってもらいたいというふうに思います。  それから、基準漁獲数量の導入という今回の改正案は、秋サケ大型定置にかかわる漁業共済事業の収支の悪化という事態に基づいてなされたわけでありますね。したがって、この漁業共済事業、秋サケの共済事業の収支が改善されればこの条項はぜひ削除をしてもらいたいというふうに思うんですが、そこのところはいかがでしょうか。
  58. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 今回こういう制度をお願いしておりますのは、先ほど来申しておりますように、秋サケ定置の漁業としての特性に加えまして、特定地域で連年のように災害が発生しているという実態に着目してお願いしているわけでございます。仮に、将来収支改善がなされた場合、その時点でどういうふうに扱うかということにつきましては、その時点で関係団体なりとも十分協議させていただきまして決定させていただきたいと思っておりますけれども、いずれにしても、漁業経営の安定ということを旨として適切に対処してまいりたいと思っております。
  59. 菅野久光

    ○菅野久光君 特定漁業ということで特定された漁業ですから、ここのところの収支が改善されれば、当然これは削除をしてほかと同じような状況に、またそうしても十分運用ができるようなふ化放流事業などを含めた対策をしっかりやって、とにかく一年でも早くこの条項が削除できるように私どもは期待をしておりますので、その点についてはひとつ含んでいただきたいというふうに思います。  次に、漁協の一括契約の導入の問題でありますが、今回の改正の非常に大きな問題になっております。そこで、漁協は今でも連合加入あるいは義務加入の単位としての位置づけはなされているわけですね。しかし、全漁連の調査によります漁業協同組合統計表を分析してみますと、共同販売事業を行っている漁協は、調査対象漁協数全体の八四%あるにもかかわらず、漁業共済を扱っている漁協は五五%しかない、こういう状況になっているわけですね。ですから、共同販売取扱高に対する漁業共済保有金額はわずかに二〇%弱であるにすぎないわけです。しかも、漁業共済事業に重要な役割を果たすであろう指導事業担当職員の数は全職員の〇・六%に満たないというのがこの調査の結果になっております。  こういうようなこと等を踏まえて漁協契約の導入、これは共済事業普及拡大のためというふうに理解をいたしますが、政府はどの程度加入拡大が図れると予定しているのか、それをお伺いいたしたいと思います。
  60. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 今回、加入拡大ということを通じまして何とか共済経営全体を健全化したいということで漁協契約方式というものをお願いしているわけでございますけれども、こういうものを導入いたしました結果、漁協契約なりあるいは一般の加入方式でどれだけ契約がこれからふえていくかということにつきましては、これはまさしく漁業共済団体を初めといたしまして、関係団体の加入推進努力、これにかかわる問題でございますので、具体的な係数として申し述べることは難しいわけでございますけれども、それぞれの系統組織がかなり今回は力を入れるという動きにございますので、加入の拡大というものが相当見込めるんじゃないかと思っております。  当方として、行政の側が加入拡大ということでどれだけの数量あるいはどれだけの金額というように上から数字を出すなり見通しを立てるということは、こういう自主的な運動という建前から申し上げましてむしろマイナスなり混乱を与えるという感じがいたしますけれども、漁協系統といいますか共済団体みずからの一つの目標といたしまして現在行っております「ぎょさい第二次中期実行計画」、この中では共済金ベースで申し上げまして、六十一年度の実績が約三千億という加入規模になっておりますが、これを六十四年度に約三千四百億まで増加させたいということを系統みずからの目標として掲げておりますので、水産庁といたしましても、系統みずからが掲げました目標が円滑に達成されますようそれぞれ関係の地方公共団体とも緊密な連携をとりながら適正な指導を行ってまいりたいと考えております。
  61. 菅野久光

    ○菅野久光君 それぞれの団体の自主的な運動にまつ、政府がそういう目標を持つことによってかえって混乱を起こすんじゃないかというような御答弁がありましたが、私もちょっとお伺いしたところでは、個々の団体も今度のこの改正に非常に大きな期待を持って本当に本腰を入れて取り組む、そういうような形が見えているように思うんですよ。  そんな点を考えていきますと、それぞれの団体が自主的にということだけではなくて、運動体としての漁協運動、こういう中でやられること、あるいは漁済連がみずからの運動としてやられること、それは当該団体として私は当然のことだというふうに思いますが、政府も、目標云々のことは別にしても、漁業災害補償制度ではあるけれども、このことがやはり日本の水産業の安定、発展、そういうことと大きなかかわりを持っているということを踏まえて、政府が本腰を入れて全漁連なりあるいは漁済連なりと密接な連携をとってやるのと同時に、政府が立ち上がってやっているということが、地方公共団体まで含めた意味でこの制度をより確かなものにしていくことになるのではないかというふうに思うんですが、その辺について、ここは大臣ひとつ決意をお聞きしたいというふうに思いますが、いかがですか。
  62. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 私、今やりとりを聞いておりまして、ちょっと誤解を受けているのではないかと。  長官が申し上げておりますのは、漁協みずからが、系統みずからが自覚をいたしまして目標を設定して努力をしておるときだから、いよいよもって我々も今まで以上に努力をしなければならぬという気持ちの中で、しかし、数値を挙げて押しつけるようなやり方があったのではせっかくの自主努力というものの妨げになってはならぬということもあっての表現であった、こう思いますので、おっしゃるように、私どもは、系統みずからがそういう努力に芽生えていることはまことに結構な ことでございまして、それにまた相こたえまして努力をすべきである、政府も努力をすべきである、こう考えておりますのでよろしく。
  63. 菅野久光

    ○菅野久光君 大臣も、おかの問題やら海の問題やらいろいろ大変だと思うんですけれども、このことだけにかかわってということでもないわけですけれども、水産の問題も大変でありますので、団体の会合などにも出て今のような決意も述べていただくと団体の方々の気持ちもまた違うんじゃないかというふうに思いますので、その点はぜひひとつお願いをしておきたいというふうに思います。  次に、漁協契約のメリットの問題についてちょっとお伺いをいたしたいと思いますが、漁協契約を導入したことによって、国の関与度といいますか、それが今までよりは強くなるというふうに私は思うんですが、この方式が成功するかしないかは、国がどれだけ助成できるかどうかということにかかっているのではないかと思うんです。現行の一号漁業の漁協契約については、国の掛金補助が六五%ついているんですね。改正後における漁協契約については、これだけ漁協契約ということを今回の改正に強くうたっているわけですから、何とか五%程度の優遇措置があってしかるべきではないか。ちょっと数字を挙げて申しわけないんですけれども、そのように思うんですが、いかがでしょうか。
  64. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 今回せっかく御審議いただいております漁協契約方式をより円滑に遂行するためにはそういう方法も一つの方法かとは思いますけれども、御指摘のように、現在第一号漁業についての補助率が優遇されているわけでございますけれども、これは第一号の漁業が、第二号なり第三号の漁業に比べまして規模が小さい採藻なり採貝業をやっているというその規模に着目いたしまして、こういう特別な補助率のかさ上げを行っているわけでございます。今回の漁協契約方式につきましては、少なくとも負担能力なりあるいは漁業規模と漁業種類という点では個別方式で加入する方々と何ら違っておりませんので、今までのような第一号と二号、三号との仕分けのような扱いというものは、残念ながら、むしろ漁業者間の公平を欠くことにもなりかねないという問題がございまして、補助率を高めるという方途でこれをバックアップするということはできかねるのじゃないかと思っております。
  65. 菅野久光

    ○菅野久光君 漁協契約ということにかなり力点を置いているということからいけば、そこまで政府はとにかく後押しをして、これを成功させるためにやるんだぞという何らかの形があっていいのではないかなということで実は申し上げたわけですが、そういうことがなかなか難しいということになれば、次善の策ということになるかどうかは別にいたしましても、漁協契約は組合員の三分の二以上の同意があれば加入しなければならないことになるわけで、その場合の国の補助率は、改正案によれば逆に半分に削減されることになりますね。それでは漁業者にとっては全く魅力がないし、普及拡大もできないというふうに私は思わざるを得ないんですが、三分の二以上の同意による加入については段階的に全数加入の補助率に近づけていく、そのことは考えられないかどうか、お伺いいたします。
  66. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 確かに、全数加入につきましては、補助率での優遇を一気に二倍にするという形でしているわけでございますけれども、これは加入のすそ野を広げると同時に、危険を分散するということで全数加入についてこういう恩恵的な措置を講じているわけでございます。今御提案ございましたような、三分の二以上の加入があった場合に加入率に見合って補助率を優遇するということも一つの方途かとは思いますけれども、そういう方法をとりますと、逆に、本来一番望ましい姿でございます全数加入というものへの達成の意欲というものが減殺されるというような問題もございまして、現在、全数加入についての特別措置を講じております補助体系、これの基本にかかわる問題でございまして、なかなかそういう方途はとりがたいとは思っておりますけれども、そういう御要望も方々からあるようでございまして、将来の問題としては、そういうものが体系上なじむのかどうかということも含めまして、慎重な検討をさせていただきたいと思っております。
  67. 菅野久光

    ○菅野久光君 ぜひそういうことも検討していただきたいというふうに思います。  それから漁協の運営です。これは漁村の複雑な事情を反映して大変難しいわけでありますが、共済の世界においても全数加入を強制するのは至難であります。このことは二号漁業における義務加入率の低いことを見てもよくわかります。したがって、義務加入成立条件の緩和措置について何か知恵はないものかというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  68. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) これは要するに、それぞれの関係者の方々にどれだけ共済に対する認識をしていただくか、現在は被害を受けていなくても長期的に見るとどこで天災が起きないとも限らないという、長期的視点に立って全体で相互扶助についての認識を深めていただくということに尽きるわけでございますけれども、そういうものを本人の理解なり意識なりに、一定の制度でございますとかあるいは助成でございますとか、こういうもので無理押しするということはかえって制度の永続性なり円滑な運営ということにつきましてマイナスの点もございますので、やはり基本的には、それぞれの良識なり理解を深める努力をお互いにどれだけしていくかということに尽きようかと思っております。  ただ、例えば資格の面できつ過ぎてなかなか入れないというようなことも過去にございましたので、そういうものにつきましては、五十七年の法律改正で義務加入の対象者の資格要件というものを若干緩和するということを行ってきてもおりますが、いずれにしてもそれだけですべてが解決する問題ではございませんで、何とか系統を挙げてのお互いの話し合いというものを従来以上に深化させていただきたいと思っておりますし、そのためのPRなり説得というものにつきましては行政みずからもいろいろな行動をしなければならないというふうに認識しております。
  69. 菅野久光

    ○菅野久光君 そこで、この制度をより充実したものにするためには、何といっても人なんです。先ほど私、全漁連の調査の結果を申し上げましたが、指導事業担当職員の数は全職員の〇・六%ということですから、この調査時点のような状態ではこの事業もなかなか思うようにいかないんじゃないか。しかし、本腰を入れてそれぞれの団体がやるということでありますから、この数は当然変わってくるだろうというふうには思いますが、営漁職員と共済担当職員というのは運動として当然一体的なものになると私は思うのです。最低一人は漁協に配置するような助成措置というものが私はぜひ必要だというふうに思うのですが、助成措置の必要でない漁協は別にして、後からこれも御質問申し上げますが、特に不振漁協などの問題、あるいはまだ経営の脆弱な漁協についてはそういったようなことが必要ではないかというふうに思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  70. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) これから漁業を推進していくに当たりましても、それから共済制度を円滑に運用するに当たりましても、やはり究極は人の問題、どれだけ漁協で人的な体制が整っているかということにかかっておることは先生の御指摘のとおりだろうと思っております。しかしながら、ただいまも御指摘がありましたように、残念ながら漁協の指導体制というものは、担当職員数が一組合当たり平均〇・六人ということで、全組合に一人いるという状態でさえない状況にあるわけでございます。  これにつきまして、人件費補助というようなことも過去から議論としてはあったわけでございますけれども、こういういろいろな指導でございますとか、地域の重要な活動をしているとは申しましても協同組合としての一つの経済主体、こういうものにつきまして、こういう財政状況の中で人 的助成、人的補助というものは非常に難しい点があることもひとつ御理解いただきたいと思っております。  それで、何といいましても人的基盤を強化するためにも、漁協そのものの経営基盤をどうやって強化し高めていくかということでございますので、先般成立させていただきました漁協の合併助成法、ああいうものにつきましても、漁協系統として、今度こそは真剣に本当に取り組むという姿勢を示しておりますので、我々といたしましても、系統みずからが示しております七百組合の統合というものを目指しまして、漁協の基盤そのものを何とか拡充し強化するという方向に全力を傾注してまいりたいと思っております。
  71. 菅野久光

    ○菅野久光君 国の財政問題でいえば、これは人件費補助ということがなかなか難しい状況もわかりますが、せっかくやられる制度を何とか成功させるために、今のような人の配置ではいけないんじゃないかという心配があったものですから申し上げましたが、それぞれの団体等でも努力をして、何とか専任の職員を置いて営漁指導あるいは共済の担当ということで活動を進められるようなそれぞれの体制、これは当然団体でもお考えだとは思いますけれども、その点については国としても十分な目配りをしてほしいというふうに思います。  それから、漁協の一括加入の問題でありますが、同意の取りつけの手続の問題なんですが、三分の二以上の組合員の同意を得て規約をつくればいいということになるわけでしょうが、これはそういうふうに考えていいんですね。
  72. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) そのとおりでございます。
  73. 菅野久光

    ○菅野久光君 それで、簡単といったら簡単でしょうかね、三分の二以上の組合員の同意を得て規約をつくって契約してもよいということになるようですが、組合員の意思を尊重していく場合に、かつ、後に問題を残さないようにするためには、漁業権行使規則の変更手続のように、何か総会における特別決議事項というような形にした方がいいのではないかというような意見も実はあるわけですけれども、その点についてはどのようにお考えでしょうか。
  74. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 今回のものは、ただいまお話しありましたように、三分の二の同意ということでございますので、普通の議決のように総会の出席者の何分の一とかいうことじゃなくて、関係組合員全体をとらまえておりますので、これで組合員の的確な意思というものが相当反映されると思いますし、一方に偏った運営になることなしに三分の二でございますので円滑にいくのじゃないかというふうに考えております。
  75. 菅野久光

    ○菅野久光君 後に問題が残らなければいいんですけれども、後に問題が残るようになったら大変だから、まあ特別決議というような形にしておいた方がいいのではないかなというような意見もあるということは申し上げておきたいというふうに思います。  今回の改正で、掛金率を若干引き下げる、そういうようなことを予定しているようでありますが、その反面、共済事故発生のありようによっては共済金の支払いが削減されることもあるようであって、関係者からはもういろんな話を聞くわけであります。掛金は安くなる、しかし共済事故が起きたときには今までよりも支払いが削減されるというようなこと等を含めていって、漁協を契約対象としたことによって加入の普遍化を図るということを目指しているようでありますが、掛金あるいは共済金の支払いというようなことがそのようなことになっておっても相当な効果が図れるというふうにお考えでしょうか。
  76. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ここのところ計画的な営漁といいますか、それぞれ管理された漁業ということについて局地的ではございますけれどもかなり認識が深まってまいっておりまして、漁協の漁業者に対します指導、関与が相当強化されている地域も出てきているわけでございます。こういう計画的な営漁を目指しまして、漁協が主体的にいろんな指導なり関与を行っているところにおきましては、個々に損害を見るとかということじゃなくて、むしろ漁村集落全体、この地域社会全体の漁獲金額が落ち込んだ際にむしろ十分な補償をもらった方が計画的な営漁を進めるに当たってもベターであるという面での新しい共済のニーズというものが地域によって出てきていることも事実でございます。  したがいまして、そういうニーズに対しましては今回こういう漁協契約方式という形で地域ぐるみでの評価というもので共済金を支払っていくという仕組みをつくったわけでございますし、それからそれに並行いたしまして、掛金につきましてもただいま先生からお話しありましたように、ある程度安い掛金率になるというメリットもございますので、今までいろんな理由から加入ができていなかったというところにおきましてもこういう新しい仕組みにのっとりまして相当の程度加入してくるということを見込んでおりますし、そう期待もしているわけでございます。
  77. 菅野久光

    ○菅野久光君 期待が実現されるように私どもも願わずにはおられないわけで、いろいろ取り越し苦労もあるかもしれませんが、心配なことはやはり心配だということで、申し上げておかなければならないというふうに思います。  次に、ノリの養殖共済の問題についてお尋ねをいたします。  ノリ養殖共済は、試験実施から本格実施へいよいよ移行されることに今回の改正でなるわけですが、その際、混乱が発生しないように円滑な移行を期すための措置が必要だと思いますが、政府にそのお考えはあるでしょうか。
  78. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 今回、物損方式でございます本則のノリ共済、これに対しまして特定養殖共済という形でPQ方式の新しい仕組みというものをお願いしているわけでございますけれども、この仕組みをつくるに当たりまして、関係者の要望を随分積み重ねてきたわけでございます。  その結果、加入の方法といたしましては個別加入なりあるいは個別てん補方式もとれますし、それから今回御審議いただいております漁協契約方式も加入の方式としては採用できるということになっているわけでございますし、それからさらに、いろんなてん補方式改善を行うことに加えまして、例えば基準生産数量の適用方法を改善するとか、それから今回新しく長期共済につきましても導入いたしまして、掛金率の割引とか、あるいは無事故の戻し、こういうものも適用されることになりますので、従来の物損オンリーのノリ共済に比べますとかなり制度として改善、充実された形で本則に移行いたしますので、新しい共済需要に応じまして相当加入しやすい制度になったというふうに我々としては認識している次第でございます。
  79. 菅野久光

    ○菅野久光君 混乱が発生しないように、十分な手だてを尽くしていただきたいというふうに思います。  今回の改正案で、ノリ業者が積極的に加入してくるような魅力あるものとなっているのかどうかということですね。それから、補償水準とか掛金の国庫補助率は現行と比較してどのようになるのか。例えば、補償水準については、試験実施では八〇%であったが、これを八五%にまで引き上げられないかなということなどもいろいろあるようでありますが、その辺はどうなんでしょうか。
  80. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 今の限度額率につきましては八〇%というふうに御指摘のとおりなっているわけでございますけれども、これにつきましてはいろいろ御要望もあることは我々十分承知しておりますが、現在の共済事故の発生頻度等々から見まして、この限度率を現時点で引き上げるということはなかなか難しいのではないかというふうに考えております。  このほか、先ほどもちょっと触れましたけれども、限度額率の八〇の引き上げということは困難ではございますけれども、本則移行に伴いまして長期共済を採用するということで、長期共済に加入いたしますと掛金率の割引でございますとか、 あるいは無事故戻しというようなものも新しく恩典として適用になりますので、そういうものをいろいろと積み重ねまして、本則化が魅力あるものとして機能するように図っている次第でございます。
  81. 菅野久光

    ○菅野久光君 時間の関係もございますので、次に養殖共済の問題についてお尋ねをいたします。  栽培漁業の促進は、政府の水産政策の目玉となっておるわけでありますが、そうした栽培漁業の進展に対応して養殖業は魚種が拡大されております。現在、養殖されている魚種は何種類ぐらいあるのか。そのうち何種類が養殖共済対象となっているのかをまずお尋ねいたします。
  82. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 現在行われております養殖業の種類でございますけれども、極めて小規模分散的なものも含めましておおむね八十種類程度というふうに我々は把握いたしております。このうち共済事業対象になっている養殖業の種類でございますけれども、これはノリ、カキ、真珠養殖、それから真珠母貝、ホタテ、ハマチ、タィ、この七つが現在の共済対象になっている次第でございますが、このほかに、ノリにつきましては別途特定養殖共済という形がある等のことがございますけれども、通常の養殖といたしましてはこの七種類でございます。
  83. 菅野久光

    ○菅野久光君 魚類の養殖は栽培漁業の進展に対応して、現在、ヒラメだとかあるいはシマアジ、マアジ、カンパチ、フグ、クルマエビ等については企業化に成功しているということでありますし、地域的にも広がりを見せております。それにもかかわらず、今度はこの養殖共済対象にしていない、魚種に枠をかけているのは、どうもこの種の共済の問題としてはおかしいのではないかというふうに思いまして、魚類の養殖としてもっと対象範囲拡大すべきではないかというふうに思います。  また、貝類についてはホタテ養殖が普及しているにもかかわらず、加入がほとんどないのが現状ですね。その理由は一体何なのか、どこにあるのか。制度実態に合わなくなっているのであれば、それをどうするのか。その点についてもあわせてお答えをいただきたいと思います。
  84. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ここのところ、養殖事業というものが、水産物に対します需要の高級化でございますとか多様化に対応いたしまして相当発展してきておりますし、我々といたしましても、将来の一つ漁業の明るい方向といたしましていろんな手だてを講じてきているわけでございます。ただいま先生から御例示ありましたような魚種について、共済対象にすべきであるという御意見もいろんなところからいただいているわけでございますけれども、先生御承知のとおり、共済事業として仕組むに当たりましてはそれなりの前提なり論理なりというものが必要なわけでございます。  まだ共済対象になっていない養殖業につきましては、生産数量なりを見ましても地域的な広がりが余りございませんで、全国的あるいは一定の地域の危険分散という保険にのせるための基本的な前提というものがまだ十分確立されていないという点がございますし、それにも関連いたしまして、まだ成立して日が浅うございますので、いろんな危険率等のデータの入手でございますとか、保険設計に必要な数値の集積というものができないわけでございます。それに加えまして、損害査定時の数量確認でございますとか、こういうものにつきましても共販であるとか執行体制、こういうものが新しくできてきた養殖については残念ながらまだ定着していないというような問題もございまして、現時点で今御例示のあったものについて共済対象にするということはいずれも困難な点があるわけでございます。しかし、これらの問題につきましては養殖が定着するに従いまして一つ一つほぐれてくる問題でもありますので、我々といたしましても養殖漁業そのものの推移を十分見守りながら今後の問題として検討させていただきたいと思っております。  それから、ホタテにつきましては、現在、共済対象にしているわけでございますけれども、ここのところ局地的にはいろいろ被害が出ておりますが、全体としてホタテ養殖が安定しておりまして共済需要が弱いということで現実漁業経営者の方々がホタテ共済に入ってこないというのが現状かと思っております。しかし、場所によりましては災害が局地的に発生しているという現実もございますので、せっかくある制度でございますのでできるだけ加入していただくようにいろんな形で今後もPRに努めてまいりたいと思っております。
  85. 菅野久光

    ○菅野久光君 保険設計の関係から魚種を拡大していくということにはまだならないというような、端的にいえばそういうお答えだというふうに思います。いずれにしろ、栽培漁業の促進ということがこれからの水産政策の中で大きなウエートを占めてくるということからいえば、条件が整ったときには少しでも早く共済対象にするように何とか努力してもらいたいということを申し上げておきたいというふうに思います。  次は、二百海里対策の問題なんですが、非常に難しい問題はあろうと思いますが、現在のところ減船だとかあるいは漁獲量の削減、漁場規制など二百海里規制を強く受けることが明らかな漁業種類については共済の引受制限をせざるを得ない場合がある。とても事故率の問題等含めて設計しづらいという面もあるのかもしれませんが、そういうことがあるんだろうというふうに思います。これは、共済事業の安定のためにはやむを得ない措置であるというふうには思いますが、しかし、その結果、当該漁業種類を営む漁業経営は大変不安定なものにならざるを得ないというわけです。  ところで、漁業関係保険共済制度の中には特殊な政策目的を持つ制度が設けられております。例えば、漁船保険には特殊保険、これは戦争とか変乱その他これに準ずる原因によって生ずる損害をてん補することを目的とする保険ですね。それから、この特殊保険と密接に関連する保険に漁船乗組員給与保険、これは漁船の乗組員が抑留された場合における給与の支払いを保障する保険、これもあります。さらに、養殖共済には赤潮特約というのがあるんですね。これは、異常な赤潮による損害をてん補する特約で、その共済掛金については国が三分の二、地方公共団体が三分の一を負担し、漁業者の負担はない、こういう保険があるわけです。  そこで、減船など二百海里規制を強く受けることが明らかで、共済の引受制限をせざるを得ないような二号漁業や三号漁業についても現行制度仕組みを変えるなり、新たな制度を創設するなり、何らかの救済対策を講じてもよいのではないか。私は北海道なものですから、特にこういったようなことにかかわる漁業者が多いのでいろいろ調べていまして、こういうような特殊なものもあるということになれば、何らかこういったようなことが考えられないものかどうか。そのことについてお尋ねをいたします。
  86. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 我々も二百海里でございますとかいろいろ対外交渉をしておりまして、その影響遮断のために何かいい制度はないかということは我々自身悩んでいるわけでございますけれども、これを保険にのせるということにつきましては、やはり保険というものがどうしても自然的な災害あるいはただいま先生からお話しありました戦争とかあるいは掌捕という、これも全く受け身で、ここのところアメリカの二百海里なんというような暴力的な受け身的な点もないわけじゃございませんけれども、戦争、掌捕というこちらとの協定でございますとかなんとかじゃなくて、先様から降ってきたいわば天変地異とそう違いのないような事態、こういうものについて、過去の推移等からいいまして一定の保険設計ができるというようなものを特例的に漁船保険でございますとかでやっておりますし、それから赤潮につきましては、その原因はいろいろ言われておりますけれども、やはり天然自然現象というものが大方を占めているということでああいう特例的な対策が講じられているわけでございます。  したがいまして、保険設計として御提案のようなものを組み入れるということは、技術的にもあるいは法的にも非常に難しかろうかと思っておりますけれども、いずれにしても、二百海里でございますとか外国との関係での減船というような不幸な事態に対しましてはそれなりの対策を別途講じまして、漁業者の痛みが少しでも和らぐような努力はしていかなければならないというふうに思っております。
  87. 菅野久光

    ○菅野久光君 二百海里の問題は、もう戦争という言葉は余り使いたくないんですが、外交戦争みたいなもので、本当に漁業者にとってはもう大変な状態で、毎年毎年の交渉を見守って、その結果自分たちの仕事がどうなるのか、生活がどうなるのかということをかたずをのんで見守っているというのが実態なものですから、何らかの方法がないかなというふうに私はいつも思っておりまして、今回たまたまこういったような法案の審議に当たって、何とか知恵を出すことができないものかということで申し上げました。これからも私も一つの課題としてこれは考えていかなきゃならないことではないかなというふうに思っております。  次に、不振漁業及び不振漁業共済組合の対策についてであります。  漁業共済団体は、事業収支の悪化に大変悩んでいるところが多いんですね。中でも石川とかあるいは福井、山形、秋田など日本海側の漁業共済組合の不振が大変目立っております。これは、イカ釣りとか底びき網などの不振漁業を多く抱えていることや、事業規模が小さいことなどに起因するようであります。私は、不振漁業対策に真剣に取り組んでもらわなければ大変なことになっていくなという思いで申し上げるわけでありますが、不振漁業対策について今後どのような具体的な措置をとっていく方針か、ぜひお聞かせをいただきたいというふうに思います。  あわせて、不振漁業共済組合に対しても、例えば事務費補助について従来よりも手厚くしたり、累積赤字対策としての借入金に対する利子補給、いずれにしろ財政的な問題が非常にかかわってきますので、具体的な救済措置を講じてしかるべきだというふうに思うんですが、その点はいかがでしょうか。
  88. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ここのところ、漁業を取り巻く情勢がいろいろ変わってまいりまして、地域によりましては、先生からお話しありましたように、経営状況が非常に苦しくなっている漁協あるいは漁業経営者というものが出てきているわけでございます。これにとりましては対症療法といいますか、当面の対策としてはおかげでいろんな金融制度というものを持っておりますので、我々といたしましてはできるだけそういう金融でつないでいくということが一つ当面の応急処置としてはございますけれども、応急処置だけでなかなかけりがつかないという基本的な問題が、そろそろといいますか地域によっては多く出てきているわけでございます。  そういうところにつきましては、何といいましても前浜なりそういうところの漁場をどうやって再構築していくか、若干息の長い話ではございますけれども、今までやってきております沿構でございますとかあるいは沿整でございますとか、あるいはふ化放流、それから栽培というようなつくり育てる漁業ということに従来以上に力を注ぐと同時に、やはりそれぞれの漁業者が一定の認識を持って自分たちの資源なり海というものを適切に管理していくという計画的な視点に立ってやっていくことが苦しいときほど必要でございますので、何とかそういうものにつきましてのコンセンサスの醸成に我々としても系統団体ともども努めてまいりたいと思っている次第でございます。  それから、その結果として漁協なりあるいは共済組合、ここが経営上行き詰まっているところもあるわけでございますけれども、漁協につきましては信用事業についてそういう不振漁協について特別の低利融資でありますとか行っておりますし、共済事業の過去の赤字につきましても実質棚上げして利子補給をするというようなことを過去二度ほど国の施策としても行ってきております。それから個別の組合につきまして、こういう財政事情でございますのでなかなか十分な手だてというものはできませんけれども、できるだけいろんな助成手段なりというものも持っておりますので、そういうものの運用面でいろんな知恵を出しながら個別対応として対処してまいりたいと思っております。
  89. 菅野久光

    ○菅野久光君 資源と漁獲努力量の不均衡というのが水産の場合に非常に大きいんですね。これは漁業の許可の問題などもそういう中にかかわってきているわけで、資源との関連で漁獲努力量が過剰となっている漁業種類について漁業調整とかあるいは生産調整、殊に減船など漁獲努力量を削減する必要があるというふうに考えますが、これは先ほど申し上げた地域だけでなくてほかの地域でも不振漁協の問題についてはいろいろあるわけで、その辺漁協経営の安定化、それから漁業経営の健全化、そういうことを目指していく場合に許可の問題も大変大事なことではないかな、資源量と漁獲努力量とのバランス、その辺について水産庁としての許可方針あるいは知事許可の部分もあるわけですけれども、その辺についてはどのようにお考えでしょうか。
  90. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 現在、我々が遭遇しております一番の悩みがただいま先生からお話しのあった点でございますが、資源問題とそれから漁獲努力量が非常にちぐはぐになっている地域なり漁種というものが残念ながら方々に散見されるわけでございます。  これを規制するには、許可でございますとかあるいは漁業権の問題でございますとか、こういう権利上の問題に立ち至るわけでございますけれども、実は許可の方につきましては去年一斉更新ということで見直しが行われておりますので、当面全体的な見直しというチャンスはないわけでございますけれども、現実問題として、それぞれの業種なり業態によりまして苦しさが加速されまして、それぞれの業界がみずから自主減船というようなものを過去何回かやってきている業界もございますし、それから国際関係での減船というようなものもやってきているわけでございます。  率直に申し上げまして、現在の資源水準からいいまして現在の漁獲努力量がかなりちぐはぐである地域なり漁種があることは我々としても認識せざるを得ないと思っているわけでございますけれども、現在の日本の経済情勢、しかも、それぞれの漁業がそれぞれの地域で果たしている役割、そういうものからいいまして手荒な手術というものも言うべくしてなかなかできないという悩みが一方にあるわけでございます。  そういう中で、先ほど来の繰り返しになろうかと思いますけれども、一つは漁獲努力量を減らさないのなら資源量をふやす。日本国自体、これだけの我が国の二百海里、しかも、過去豊饒な海だったはずの二百海里というものを持っているわけでございますので、これの再構築をどうやって図るかということと、それから、ここのところ後退に後退をしてきております海外との関係、この外交努力というものをどれだけ粘り強くやっていくかということに今まで以上に精力を注がなければならないというふうに考えている次第でございます。
  91. 菅野久光

    ○菅野久光君 本当に難しい問題がいろいろあって大変だというふうに思いますが、水産資源保護法の第九条から第十一条には、許可漁船の定数とか、定数超過による許可の取り消し、その場合の損失補償を規定しております。資源と漁獲努力量の不均衡という問題に対しても極めて適切に対処し得る規定であるというふうに考えるわけですが、この規定がこれまでに適用されたことはありますでしょうか。
  92. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 少なくとも私が長官になって四カ月の間には適用はございませんが、過去にあったかどうかはちょっと調べておりませんのでわかりません。  ただ、問題は、法律制度としてはいろいろとそ ういう荒い手術の方途というものは確かにいろんな法律でつくられているわけでございますけれども、それと実態なり経済の動き、これとの調整、調和というものをどうやって図っていくかということにつきまして、我々の悩みがあるわけでございまして、やはり法律というものは最後の伝家の宝刀でございまして、これを抜く前に我々としてはいろんな調整という地道な努力を積み重ねなければならないというふうに考えております。
  93. 菅野久光

    ○菅野久光君 時間がありませんのでちょっとだけ申し上げておきますが、今まで一回もないようなんですね。前に松浦長官のときにこのことについて資源量が把握できれば適用するというようなことを答弁されているようでありますが、資源量がなかなか把握できない部分があってあるいは適用していないのかもしれませんが、これは今後の資源と漁獲努力量の不均衡を是正するということについて考えていただきたいものだというふうに思います。これはいろいろ利害関係があって難しい問題だとは思いますが、せっかく水産資源保護法という法律で規定されていることでありますので、そのことを申し上げておきたいと思います。  最後に、漁業関係保険とかあるいは共済制度の統合、一元化の問題についてお伺いをいたします。  漁業関係保険共済制度には今審議をしております漁業災害補償制度のほかに、漁船を対象とする漁船損害補償制度や、厚生(生命)、火災、自動車などを対象とする水協法共済制度があります。これらはいずれも漁業経営の安定や漁船乗組員の厚生を目的とする制度でありまして、相互に密接な関係を持っております。その上、事業運営はそれぞれ別個の団体によって行われているものの、末端の実務はいずれもそれぞれの漁協がやっているわけです。このような事情を背景に、漁業関係者の間からは、これらの制度や団体を統合、一元化すべきだという意見が早くから出されておるわけですけれども、私は政府もこの方向検討を進めるべきではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
  94. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 御指摘のとおり、漁業に関しましては保険でございますとか共済でございますとかいろんなものがございまして、これを統合、一元化すべきじゃないかという話が相当早い時期からございました。それで、昭和五十年度に漁業に関する災害補償制度検討会というものを開催いたしまして、その関係者の意見を聴取し検討したわけでございますけれども、残念ながらその段階で意見の一致を見なかったということで、さしあたって保険共済団体によります保険共済事務の共同化ということについての試験実施というもので、実務段階を共同化できるかどうかというものを試験的に実施をしてみたわけでございます。  その後、そういう経験を踏まえまして、それぞれの団体からの意見としては、現段階で保険共済事務の共同化をするのはまだ時期尚早である、その前にそれぞれの系統の事業による事務の合理化をまず図るべきではないか、それに加えまして、それぞれの事業についてもいろいろな問題がございますので、それぞれの事業が健全になるような加入促進等に当面努力することが急務であるというような意見が出されまして、現段階ではまだ統合、一本化につきましてのコンセンサスなり方向性というものは具体化されていないわけでございます。  先生からお話しありましたように、非常に錯綜している点もございますので、でき得れば一本化にこしたことはないかとも思いますけれども、それぞれの実態がそれぞれできてきていること、それから、それぞれの仕組みにおいて相当違いがあることというような状況もございますので、今後の問題として慎重に検討を加えていく必要があろうかと思っております。
  95. 菅野久光

    ○菅野久光君 終わります。
  96. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時十二分休憩      ─────・─────    午後一時三十分開会
  97. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、漁業災害補償法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  98. 及川順郎

    ○及川順郎君 法案審議に入る前に、大臣に牛肉、オレンジ問題できのうの一般紙に報道されました件について一、二点お伺いをしたいわけでございますが、きのうの読売新聞の報道によりますと、「米政府が牛肉の自由化に関連して、日本側が課徴金の新設を断念すれば、その見返りに現行の関税(二五%)を最高五〇%まで引き上げることを認めてもよいとする案を日本側に打診してきていることを明らかにした。」というぐあいに報道されておるわけですけれども、一つはこういう動きがあるのかないのか、この点に対する確認と、こうした問題に対しての我が国の基本的な姿勢ですね、アメリカのこうした動きに対して、これを検討の余地に値するという認識をお持ちになっているのかどうなのか、この点も含めて大臣の御所見を承りたいと思います。
  99. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 従来とも一部報道には困惑をしておるということで、率直な言いたくないことを言ってきたわけでございますけれども、いまだにそれが引き継がれておることは極めて残念でございます。こうしたことがいかに交渉に差し支えるかということについて極めて残念に思います。しかし、どんなにやりにくくても、交渉責任者としての私の責任は果たしていかなければならぬわけでございます。  新聞記事をずっと見ますと、いろんな紙がいろんな書き方をしておりまして、全部足して読んでみますと割り切れない。やっぱり決まってないんだなということがわかるわけでございます。そういうことで、私は言論弾圧をするつもりは毛頭——そんなことできるわけもございませんし、しようとも思っておりません。御自由でございます。御自由でございますけれども、交渉の中身について具体的に逐一申し上げるわけにはいかない。しかし、課徴金そのものについては向こうは嫌だ、困るというようなことは言っておることも事実でございます。それじゃそれにかえてどうのこうのという議論には至っておりません。これは、アメリカ側での推測とアメリカにいる日本関係者の推測、日本にいるアメリカ側の推測、日本にいる日本の報道機関の推測、そういう四種類の推測がございまして、私は甚だ迷惑に思うことがしばしばであるわけでございます。  しかし、あれだけの時間をかけても、もう少し早目に煮詰まるかと思えばなかなかそうもいかなかった。これも残念であり、遺憾でございまして、しかし、反応はいかがかと言えば、逐次反応はいろんな形で出てくるんじゃないか、また出てきているのではないかなというような感じ、これは全くの感じでございます、まだ。そういうことで、暫時その評価、その批判、その反応、国内外の広い立場に立ってのいろんな意見も加わっての、と申し上げますのは、豪州もそれを見ているでしょう、ECも見ているでしょう、いろんな方々が見ておるわけでございますから、その反応がどのように出てくるかということを見きわめてということで、暫時その反応を見きわめた上で対応をしてまいりたい、こう考えておるところでございます。
  100. 及川順郎

    ○及川順郎君 二度にわたってアメリカへ飛んで御努力をされました大臣の尽力に対しましては私も大変敬意を表するところでございますが、やはり今回の動きにつきまして、一面においては農林水産省当局の事務レベルの詰めが甘かったのではないかという指摘もあるときでございますので、ぜひひとつ事務レベル挙げてこの問題、国内の生産農家の方々も含めて御納得のいくように御尽力を賜りたいと思っておりますのでよろしくお願いしたいと思います。
  101. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 事務当局の詰めが甘かったという御指摘でございますが、責任者は私でございまして、そのような御批判があれば私自身がまた十分心して取り組まなければならぬことでございまして、一にかかって私の責任にあろうかと思っております。
  102. 及川順郎

    ○及川順郎君 それでは、今回の漁災法の問題に移りたいと思います。  午前中の質疑にも出ておりますように、そしてまた趣旨説明でもございましたように、今回の改正趣旨が中小漁業者の漁業生産活動を災害から守り、経営を安定させ再生産を確保する、ここに趣旨があるわけでございますが、この改正案提出の背景になるような問題につきまして何点かまず最初に承っておきたいと思いますが、念のために、今回の漁災法の適用対象となる中小漁業者の経営規模、統計的な対象戸数、あわせまして最近年次の総水揚げ量等の数値がございましたらまずお示しをいただきたい。
  103. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 対象戸数という形で集計したものを今残念ながら手持ちしておりませんが、全国の漁家の総数の推移という点で申し上げますと、昭和五十年に総数では二十一万九千戸でございましたものが六十一年には十九万戸ということで、この六年間ほどで二十一万九千から十九万という減少の仕方をしております。この中で、一方、専業という点で申し上げますとむしろ比率が高まってきておりまして、昭和五十年が五万一千戸でございましたものが六十一年に五万八千戸ということで、絶対数におきましてもそれから総数に占めますシェアというものも専業のウエートが高まっているという形になっております。  それから、収入でございますけれども、一戸当たりということで五十年と六十一年を比較してみますと、五十年に漁業収入が三百八十四万円、これが六十一年には六百七十一万円ということで、その間にいろいろと物価変動等々ございましたので、これをどういうふうに評価するかという問題はもちろんございますけれども、絶対数におきましては五十年に比べましてこれだけの増額ということに相なっております。
  104. 及川順郎

    ○及川順郎君 沿岸漁家の方々の水揚げ量、ほぼで結構ですけれども、全体の漁業生産に対してどの程度の占有率を示しているのか。そして、全体の中で中小漁業者の生産活動の位置づけをどのように位置づけているのか、念のためにその認識を確認させていただきたいと思うんですが、特に沿岸漁家の水産物につきましては、近いということで鮮度を売り物にするという特色もあろうかと思いますし、水産物消費に関する流通対策、さらには地方自治体、特に県の各区域における、この関連におきましてどういう位置づけを持っているというぐあいに認識をされておられるのか、この点を伺いたいと思います。
  105. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 漁業生産の総生産量で申し上げますと、六十一年直近時点で千二百七十四万トンというのが我が国の遠洋、沖合、沿岸、養殖、これをトータルしての数字でございます。このうちで、養殖を除きまして沿岸だけで見てみまして二百二十一万トン、したがいまして、全体の中で一五%程度の数字になっているわけでございます。  それで、この推移でございますけれども、六十一年に対しまして十年前の昭和五十一年で見てみますと沿岸が二百万トン、これが先ほども申し上げましたように、六十一年に二百二十一万トンということでふえてきているわけでございます。  一方、総生産量が同じく五十一年で一千六十六万トンでございまして、これが先ほど言いましたように一千二百七十四万トンとふえているわけでございますけれども、このふえているものの大部分は沖合でイワシがここのところかなり大漁であるということを反映いたしまして、沿岸ではこの十年間で二十万トン程度しかふえておりませんけれども、沖合のふえというものが総生産量の増加の大部分に寄与しているという形になっておるわけでございます。  それで、沿岸漁業というものの位置づけでございますけれども、これはそれぞれの規模におきましては必ずしも大きくないことは御承知のとおりでございますけれども、長い間それぞれの地域地域に根づいた地域社会なり経済を形成する大きな因子になってまいりましたし、イワシというような形で人間がストレートに食べない、加工原材料であるとか肥料になるというような形じゃなくて、生鮮魚介類消費者に直接的に供給するという点から申し上げましても、数量ウエート以上に質的なウエートの高さということは事実かと思っております。
  106. 及川順郎

    ○及川順郎君 もう一点は、午前中の質疑にも出ておりましたし、また農林水産省の統計資料等で見ますと、減少傾向はずっと続いておるわけでございますが、漁村社会の変化の中で、こうした就労者の減少傾向、まだまだ歯どめがかかっていないのではないか、こういうぐあいに受けとめられるわけでございますけれども、こうした要因をどのように分析をしているのか。特に、今回の改正法案の対象となる中小漁業者の動向につきまして、その活性化のための対策の青写真等を描いておられましたならばお聞かせいただきたいと思います。
  107. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ここのところの漁業就業者の動向でございますけれども、これは一つにはやはり二百海里時代が定着してきたということで、国際漁業規制というものがいろんな面で強化されてきまして、遠洋関係での就労というものは、ここのところのたび重なる減船ということに具体的にあらわれておりますように、相当減ってきているということに加えまして、近海におきましても漁業経営が悪化してきたということで、残念ながら減少傾向が依然として続いているわけでございます。  これが、今後どういう傾向を持っていくかということにつきましては、そのときどきの経済情勢なり、これからの国際関係ということで大きく動きますので、的確な推計はできませんけれども、ただ一つ言えることは、非常にここのところ高齢化してきている。例えば六十歳以上が約二割を占めておりますし、これに五十五歳から五十九歳まで含めますと三割強というようなことになっておりますし、一方で、四十歳未満という最も労働力として活性力のある階層が三割弱ということに相なっているわけでございます。したがいまして、ここのところ新規参入といいますか、若者の後継者の参入というものが余り期待されない中で、年々老齢化してきているということが、絶対数の減もさることながら、そういう質的な労働力の変化ということがそれぞれの地域社会にとりましても、それから漁業問題そのものにとりましても大きな問題になってきているわけでございます。  こういう中で、やはり省力的な漁業経営ということで、漁船につきましてもそれからあるいは収穫方法、それから輸送手段、こういうものにつきましても相当省力的な技術体系というものが出てきておりますので、できるだけ減ってまいりました労働力に適応した機械化なりあるいは輸送体系というものをまずつくることが肝要でありましょうし、それからその前提としてやはり資源量がふえなければそういう機械化や省力化をいたしましても限界がございますので、日本の持っている二百海里の資源というものをどうやってふやしていくかということで、そのために本年度から沿岸漁業構造改善事業でございますとか、あるいは沿整事業でございますとか、それから漁港計画でございますとか、こういうものの新しい長期計画に着手したところでございますので、こういう構造政策も相携えながら何とか沿岸漁業の活性化というものを図ってまいりたいと思っている次第でございます。
  108. 及川順郎

    ○及川順郎君 FAOと大蔵省貿易統計資料によりますと、水産物の輸入数量は世界合計の一二%台を示しておりますし、金額では約三〇%近いシェアを占めておるわけですね。漁価問題を含めまして、輸入水産物と国内漁業生産との関連、競合する部分と、お互いに協調し合いながら消費者のニーズにこたえていく部分と、これ両面あるわけ ですけれども、こうした輸入水産物と国内水産物生産のバランスをどのように分析をなさっているのか。特にそうした状況の分析を、できましたならば今回の改正法案の対象となっております中小漁業者の漁業活動をどう安定、反映させていくかという視点で、その認識を伺いたいと思っておるわけでございます。
  109. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ただいま先生からお話がありましたように、ここのところ輸入水産物というものはかなりふえてきておるわけでございますが、この背景には米国、ソビエト等の二百海里規制、それからエビでございますとか、日本近海では資源上とても手当てのできない水産物に対する国内需要拡大というような問題があるわけでございまして、直近時点の六十二年で申し上げますと、数量にして二百八万トン、それから金額で一兆二千億台という多額の輸入になっているわけでございます。  先生からも今お話がありましたように、水産物の場合には、日本の水産資源問題からいいまして、消費者との関係では当面外国に依存せざるを得ない。例えば、エビでありますとか、カニでありますとか、そういうものにつきましては、旺盛な消費者需要にこたえてむしろ円滑に外国から持ってきて手当てをするという部類が現時点では大方を占めているわけでございますけれども、そろそろ国内と競合する問題も魚種別に出始めてきているわけでございます。  しかし、そういうものにつきましては、特に今先生からお話しありました中小漁業者、沿岸漁業者が主に扱っております品目、例えばイワシでございますとか、それからサバ、イカ、こういうものにつきましては水産の場合には輸入割り当て制度、いわゆるIQ制度というものが現時点におきましても堅持されているわけでございまして、沿岸漁業の中小漁業経営者と衝突する魚種につきましては、毎年適正なIQ枠の割り当て等を通じまして沿岸漁業家に対する影響の遮断ということにつきまして我々も意を用い、制度の円滑な運用を図ってきているわけでございます。
  110. 及川順郎

    ○及川順郎君 それから、当委員会におきまして、過日の参考人に対する質疑の中で参考人の方が大変強調されておりましたけれども、資源管理型漁業の確立が大事であると。ただいままでの質疑を通しましても、日本の二百海里内の資源をどう活用し確立していくかということが重要問題でありまして、この部分というのは特に中小漁業経営者あるいは漁業活動については非常に重要なかかわり合いを持っておるわけですね。しかし、考えてみますと、そうした資源管理型漁業の確立というものに対して、中小漁業者が個人的にこれを具体化したりあるいは行動を起こすということは、資金力も非常に脆弱なこれらの漁業者にとっては非常に難しい、厳しい面がある。そうした中でもこの資源管理型の漁業というものはこれから非常にますます重要度を増していくというこの関連におきまして、沿岸漁家の方々も参画できるような形で資源管理型漁業を推進していく上におきまして、現在政府はどのような青写真をお持ちになっているか、また既に具体化、あるいはまたテストケースとしておやりになっている中でどういう感触をお持ちになっているかをお伺いしたいと思うんです。
  111. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 御指摘のように、二百海里体制というものが定着してまいりますと、我が国自身の二百海里というものをどう有効に活用していくかということがますます緊要の課題になってまいりまして、いわゆる管理型漁業の必要性というものもここ数年強く叫ばれておるわけでございます。したがいまして、我々といたしましても今後の方向として、何とか限られた漁場、限られた資源をどうやって長期的、持続的に有効に活用していくかという点から、こういう管理型漁業というものを育てていきたいということでいろんな手だてをしているわけでございますけれども、先生から今お話しありましたように、何といいましても地元の中小の地場の漁業者、この方々がどれだけ意識を持ってそういうものに参加するかということに加えまして、やはり個々ではなかなかできませんので地域なり集団としてどう育てていくかということが肝心なわけでございます。  したがいまして、我々といたしましても単位漁協を核といたしました管理型漁業というものを早急に定着させるという観点から、一つ昭和六十年度からでございますけれども、漁業者集団の話し合いによりまして地域実情に応じた計画的な営漁を推進するための事業、沿岸域計画営漁推進事業といっていますけれども、こういう事業を国の補助事業として組みまして、それぞれの地域実情に応じた話し合いというものを行ってきておりますし、それから昭和六十三年度からは今度は関係沿岸漁業者みずからが広域的な資源を対象として計画的な資源の培養なり漁業の管理を進めるということから資源培養管理対策推進事業というようなものを行ってきております。それからさらに、こういう管理型漁業一つの大きな柱になります定着性資源の管理というもののために資源管理沿岸漁業経営改善資金というものも昭和六十三年度から創設したというようなことで、いろいろな手だてを行ってきております。  それに加えまして、従来から行っております沿岸漁業構造改善事業でありますとか、あるいは沿整事業、こういうものも管理型漁業を推進するためのハードの事業として十分活用できますし、むしろそういう方向にこういう既存の事業につきましても方向性をつけながら運用していくということが必要かと思いますので、そういう既存の事業というものも一体として何とかそういう方向に持ってまいりたいというふうに考えております。
  112. 及川順郎

    ○及川順郎君 今の御答弁の中で確認ですけれども、沿岸漁家の方々もそういう事業に参画するという意識変革の動きは十分に出てきているというぐあいに認識されておられますか。
  113. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ここのところいろんな動きがございまして、率直に申し上げまして、総論としては皆様方が相当認識を深めてきたという感じはしておりますけれども、現実の具体論になってまいりますとそれぞれの利害でございますとか、長い間、無主物である魚をとるというくせというと妙でございますけれども、そういう上で漁業というものが成り立ってきたといういろんな歴史的経緯もありまして、そうきれいごとでは済まないという地域もございますけれども、しかし、ここのところはやはりそういうことを言っていては共倒れになってしまうという深刻な認識というものも深まってまいりまして、徐々にではございますけれども、管理型漁業を何とか目指そうという機運というものは相当醸成されかかってきているというふうに認識しておるところでございます。
  114. 及川順郎

    ○及川順郎君 この問題については、くどいようですけれども、国で決めたものをばっと押しつけるのはいけないという、こういう意識は意識として尊重しなければなりませんけれども、待っていたのでは各論の部分がなかなか育ちにくいという要素も私たち各所へ行きまして非常に強く感ずるわけですね。ですから、沿岸漁家の方々も参画できるようなそういう土壌づくり、環境づくりに対する国の格段の肝いりといいますか、力点を置いた施策の実行というものも今後ますます充実していただくように、これは強く要望しておきたいと思うわけでございます。  続きまして、今回の改正法案の裏打ちといいますか、それになったのが水産庁長官の諮問機関であります漁業共済制度検討協議会というのですか、昨年の六月に発足しまして十二月に報告がなされたというぐあいに認識しておるわけでございますが、この骨格といいますか、報告書の主な内容と今回の改正法案に特に反映した部分について御説明いただければと思うんでございます。
  115. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 検討協議会で半年近くにわたりましていろいろと問題を深めていただいたわけでございますけれども、漁業共済制度のいろんな問題が解明されまして、問題点といたしましては、一つは加入が不十分である。それでその結果収入が悪化するという悪循環が続いている。 それから収入の悪化の一つ原因としては、加入が不十分に加えまして、漁業実態がいろいろと変化してきているにもかかわらず、漁業実態の変化に適切に対応した制度にまだなっていないというような問題分析を前提といたしまして、結論的な対応策といたしましては何項目か出ております。  大きな項目を拾い上げて申し上げますと、漁協が契約締結に関与する方式を何らかの形で導入すべきである。それから危険の程度に応じまして掛け金率の割引それから割り増しを強化すべきである。それから被害程度に応じた段階別てん補方式の特約を導入すべきである。それから長期共済におきまして今までは途中で契約割合を変更するということはできなかったわけでございますけれども、三年目以降の契約割合を引き上げるべきである。それからさらに、例えばサケ・マス定置漁業については財政上もそれから収支上もそれから漁業実態上もいろいろと問題が出てきているので、基準漁獲数量的なものをくふうすべきである。それから水産の養殖等が出てきているのでそういうものについてもできたら検討すべきである。それからさらに、段階別の収支の問題に絡みまして、現在の段階別の責任分担制度、これについて実情に促した見直しを行うべきである。それから最後に現在行われておりますノリの共済の試験実施、これをもうそろそろ本格実施に移してもよいのではないかというような非常に多岐にわたる報告をいただいているわけでこざいます。  今回の改正案でお願いいたしておりますのは、この報告案で出ました項目おおむねすべて網羅いたしまして今回お願いしたいという形に相なっておるわけでございます。
  116. 及川順郎

    ○及川順郎君 ただいまの内容でも明らかなように、共済制度そのものに対する問題分析に絞られていた、検討する内容がそこに焦点を置いてということですからこれは当然だと思いますけれども、法律の適用というこういう状況から考えますと、近年における漁業災害の実態の分析というものがどうだったのかという点に私たち非常に関心を持つところなんです。特に自然災害によるものと人為的要因によるものを整理して、これまでこの法の裏づけになっておる、あるいはまたこの法の適用をしなければならないという状況の中で、できるならば未然防止をしていくということは理想的であるわけですが、災害というのは必ずしも未然防止のできない状況の中で出てくる事故ということにおおむねなってくるわけでございますので、そうした状況を含めて災害の内容分析をどのようにされておられるのか、そして本法改正案との関連においてどのように位置づけて反映されておられるのか、この点についても伺っておきたいと思います。
  117. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 検討会におきましても、それから我々が法律を出す過程におきましても、漁業実態の変化なり、それから漁業実態の変化に伴う災害の推移というものにつきましては、いろんな過去のデータなり今後の推計を含めまして検討を加えてきたつもりでございます。その一つといたしましては、例えば今回お願いしておりますサケ・マスの定置漁業、こういうものにつきましても漁業実態それから災害の深さなり地域的偏りというようなものも十分分析の上今回のようなお願いをしているわけでございますし、それからノリ共済の本則共済への移行というものにつきましても、PQ方式ということでここのところのノリ関係の災害発生の頻度なり状況というものも十分踏まえて今回対応を考えた次第でございます。  しかし、ただいま先生からお話しありました人為的あるいは天災であるかどうかというようなことにつきましても、過去からも個々の災害につきましてもちろん精査しております。例えば人為的じゃないかという批判が一部にございます赤潮につきましてもいろんな機関が試験研究なり解明の努力をしてきておりますけれども、発生原因は完全には解明し切っておりませんが、現時点では大方の要因は気温でありますとか、塩分濃度でありますとか、こういう自然現象というものが基本的には原因であるというようなことに相なっておりまして、現在我々が扱っております共済対象事故といたしましては、おおむね天災あるいは自然現象に起因するというものがすべてじゃないかというふうに認識しております。
  118. 及川順郎

    ○及川順郎君 それでは次に、共済事業の累積赤字問題についてでございますけれども、六十一年度末現在で見ますと漁業共済組合が三十八億四千九百万円、漁済連が二百一億三千七百万円、国の特別会計部分に占めるものが百五十一億二千五百万円という膨大な額に上っておるわけでございますね。この累積赤字対策をどのように考えておられるのか。また、今回の法改正でこの累積赤字問題を抜本的に解消しようとなさっているのか、あるいはまた徐々ですけれども、健全経営に変えていこうという段階的な方向性を踏まえて見通しを立てておられるのか、この点を伺っておきたいと思います。
  119. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 全体的な収支状況で申し上げますと、具体的な数字といたしましては、ただいま先生からお話があったようなそれぞれの段階別の収支状況になっておるわけでございますけれども、これは特に不幸にいたしましてここ数年間、例えば五十九年度には異常低水温によりまして昆布であるとかアワビが不漁であった。あるいは六十年度にはサンマの魚体が小型化した。それから六十一年度にはサケ・マス大型定置の漁獲金額が大幅に減少したという、その年々のそれぞれの漁種についての大きな変化ということで共済金の支払いが多額にわたったわけでございます。  こういう赤字対策といたしまして、政府として一般会計からの繰り入れというものを過去二回お願いし、ことしも先般法律の改正もお願いいたしまして、一般会計からの繰り入れということで当面の資金繰りというものは過ごしているわけでございますけれども、やはり長期的には何といいましても収支が均衡する体制をとるということがこういう共済にとりましては緊要でございまして、今回改正をお願いしておりますのも、加入というものを普遍的に拡大して危険分散を図り、収支の改善につなげる。あるいはサケ・マスにつきましても、基準漁獲数量という概念を導入するというようなことで何とか収支改善に役立てたいということでございますけれども、これだけの赤字でございますので、ことし来年一気に収支のバランスということは難しかろうかと思っておりますし、長期的な収支の改善を目指すべくこういう制度の改正の積み重ねなり、それから運用の改善というものにいろんな知恵を出しまして何とか長期的な収支の安定というものを実現してまいりたいと思っております。
  120. 及川順郎

    ○及川順郎君 加入率の問題ですが、今回の法改正のねらいというものがやはり加入率の促進に大変大きなウエートがあったということは十分理解できるところでございます。現行制度のもとで加入率が低迷したというその原因ですが、これは掛金の問題や地域における中小漁業者の意識のばらつきとか、いろいろな要因があったと思いますが、現制度下で加入率促進の行政指導を今までおやりになってきた経緯があればその事実と、現行制度のもとで加入率が低迷したという最も大きな原因をどのように分析されているか、その二点を伺っておきたいと思います。
  121. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) まず、加入率が低迷している原因でございますけれども、これは幾つか今先生もお挙げになりましたように、あろうかと思っておりますが、そのうちの一つは、物によりましては関係漁民の加入意欲が乏しいといいますか、例えば漁業共済の場合には漁獲実績でございますとか、海況あるいは資源状態、こういうことによりまして共済事故の発生の頻度なり危険度というものが非常に大きな差がございまして、余り危険度を感じていない方々はどうしても加入したがらないという基本的な問題が一つ残念ながらあろうかと思っております。  それからそれに加えまして、いろんな形で我々もPRなりに努めてきたつもりではございますけれども、共済というみんなで助け合うという制度 についての認識が残念ながらまだ末端まで浸透していないという点は率直に認めざるを得ないかと思っております。  それから第三点として、こういう共済といいましても、保険でございまして、例えば損害額を査定するとかということにつきましても、相当な事務体制というものが必要でございまして、そのためには漁協の共販体制というものも十分確立していく必要があるわけでございますけれども、残念ながら場所によっては漁協の共販体制なり事務体制というものは十分でなくて、場所によっては漁民が入ろうと思っても漁協自体の体制が整っていないというところもあるわけでございます。こういうことが積み重なりまして現在の低い加入率になっているわけでございますけれども、この中で我々といたしましては何とかやはり加入率を上げることが共済制度を長続きさせるゆえんのものであるということで、過去再三法律の改正をお願いしたり、あるいは運用の改善をしたりもしてきておりますし、それから関係団体とも一緒になりまして「ぎょさい加入向上運動」に取り組んできているわけでございます。  現時点では、残念ながらまだ低い加入率にあるということで、今回の例えば漁協一括契約方式でございますとか、いろいろな仕組みを新しくお願いすることによりまして、何とか所期の目的を達成するように努力してまいりたいと思っている段階でございます。
  122. 及川順郎

    ○及川順郎君 先日の参考人の方々の意見の中にも、今回の法改正が加入率促進のラストチャンスであるというぐらいの気持ちで取り組みたいということで、私たちも期待を大きくしているわけですが、一面においてはこうした共済制度というものが漁業者の任意加入の原則というものがあって、その原則が弱められるんではないかというような懸念が、そういう意識を持っている方々の中に意見としてあるわけですね。こういう方々に対する啓発といいますか、具体的な手だてをどのようにお考えになっておりますか。
  123. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 加入を少しでも促進するためには、一つの意見としては義務加入といいますか、制度上むしろ当然加入にすべきであるという、極端といいますか、一つの一方の意見があると同時に、そういう一括加入とか当然加入、義務加入ということになると、個人の意識なり考え方が埋没してしまってかえって問題ではないかという意見も一方であることは事実でございます。  それで、我々といたしましては、お互いが助け合うという共済制度でございますので、何といいましてもお互いが理解し合って入っていくということが必要でございまして、いろんな法律制度で強制的に入れるというようなことがあっては法律制度なり共済制度そのものが長続きしないというような問題もございますので、何といいましても粘り強く系統団体と我々が一緒になりまして共済制度の必要性、重要性というものを関係漁民にPRなり説得していくということが必要かと思っております。  従来もそういう努力を積み重ねてきておりますけれども、今後とも法律の改正を機会に意識の向上徹底ということに全力を注ぎたいと思っております。
  124. 及川順郎

    ○及川順郎君 契約の具体的方法について具体的に伺ってみたいと思うんですが、まず共済金の算定方式ですね。それからもう一つは、単位共済限度額の決め方はどうなのかということ。それから省令では割合を乗じて共済金を決めるというぐあいになっておりますけれども、この割合というのは具体的にどのような算定になるのか理解できないものですから御説明いただきたいと思うんです。  それから、一括加入になるわけでございますけれども、例えば掛金の割引など何らかのメリットが付与されているのかどうかという点ですね、この点をお伺いしたいと思います。
  125. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) それぞれ具体的には政省令等で細かく決まってくるわけでございますけれども、特に、今先生の中で一番御関心の深いと思われます一括加入に絡みましてのいろんな掛金の扱い等でございますけれども、これにつきましても漁協で一括入るということのメリットから、当然掛金についての一定の恩恵的といいますか、一括して入ることを反映した適正な掛金率の設定ということが必要になってくるわけでございますけれども、この辺につきましてもこれから政省令段階なり扱いの段階で具体的に決めていくということを予定しております。  そういうものを決める際には、従来からもこういう法律改正自体につきましても関係団体といろいろ相協議しながら進めてまいっておりますので、具体的取り扱いにつきましても十分関係団体と協議の上それぞれの御了解を得ながら設定してまいりたいというふうに考えております。
  126. 及川順郎

    ○及川順郎君 この一括契約では、全体としての当該区域における漁業状況によって補償水準が左右されてくる状況になるわけですね。そうした状況によりまして個々の中小漁業者は自分が一体どれくらいの補償を受けられるかという問題に対しては不確定な状況下に置かれているという状況になるわけでございますが、そうした事態が加入促進にマイナス誘因にならないかという懸念があるわけですけれども、この点についてはどのように認識されておられますか。
  127. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 漁協の一括契約方式も、あらかじめ関係漁業者と十分相談をしてスタートするという仕組みになっておりまして、三分の二以上の地区内の漁業者が共済掛金の負担関係なり共済金の配分関係、こういうものにつきまして一定のルールでございます規約をつくって初めて漁協一括方式のスタートが切られることになっております。そこに皆様方が参加されて、自分たちの掛金の負担方法なりあるいは共済金の分配方法なりというものが具体的に明示され、それを十分理解したことが前提として契約関係も動いてまいりますので、ただいま先生御心配のような事態は避けられますし、ぜひ避けなければならないというふうに考えております。
  128. 及川順郎

    ○及川順郎君 ただいま出ました規約の問題ですけれども、これが実施されるに当たっては規約の適正な内容というものが重要な意味を持ってくると思うんですね。この規約について、政府として今までどういう内容が規約の中に盛り込まれてくるか、想定をされておられれば伺いたいと思いますし、また、特定漁業者の場合は、三分の二以上の者が共済加入に同意してこれが所定の手続によって公示された場合、特定漁業者は規定を定める義務を負うというぐあいになっているわけですね。この規約を定める義務というものの具体的内容はどういうぐあいになっているのか。それからさらに今後養殖共済にも漁協契約方式の導入の可能性があるのかどうなのか、この点も含めましてお述べいただきたいと思います。
  129. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 規約につきましては、規約の記載事項として一番基本をなしますのは掛金の負担関係と、共済金の配分関係でございます。これにつきましては国の方から一方的にこういう方法、こういう金額ということを明示するよりは、漁協自体の自主的な運動としての一括加入、そのための規約でございますので、それぞれの自治規範として均衡を持った定め方をされることを期待しているわけでございます。  それから、義務加入関係についてもお話しございましたけれども、義務加入というものは全員が加入することをもちろん制度上期待しているわけでございますけれども、しかし、それに加入しなかったからといって罰則がついてこないという点では個人の意思は完全に拘束される形には実は相なっていないわけでございまして、そこが逆に問題ではないかという指摘も一部からはあるわけでございます。こういう共済事業というお互いがお互いの認識に立ちまして助け合うという仕組みにありましては、その罰則ということまで伴っての加入を強制するというものは制度仕組み上いかがなものかというふうに考えている次第でございます。
  130. 及川順郎

    ○及川順郎君 それから、一括加入の問題です が、被共済者は漁脇になるわけですね。今まで被共済者であった個々の中小漁業者というのは、共済契約上は表には出てこなくなるんじゃないか。そうしますと、こうした加入方法の変更によりまして従来であれば中小漁業者が受けられた継続契約での掛金の割引とかあるいは一定期間無事故で過ごした場合に掛金の引き下げをするというような優遇措置が受けられなくなるのではないか、こういう疑問が漁業者の中に出てくるわけですけれども、この点に対する見解はいかがでしょうか。
  131. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 漁協契約方式というものは、何とか実態に即しつつ加入を促進させたいという願いを込めてつくる制度でございますので、従来の個人が入る場合に比べてマイナス点があるというようなことがありましてはこれは大変でございますので、今後、政省令でございますとかいろんなものを詰めていく段階におきまして、入りやすい漁協契約方式ということを念頭に置きましていろいろと検討を進めてまいりたいと思っております。
  132. 及川順郎

    ○及川順郎君 それから、事務運用の問題でございますけれども、共済の事務体系では、これまでの状況を見ますと、漁協が共済組合から委託されて、そして共済契約の申しつけ事務とかあるいはまた漁獲物の販売とか金額の調査とか掛金の受理、払い戻し等の事務を行ってきたわけですね。今回の改正で漁協みずからが被共済者と共済者の両面の事務を行える状況になるのではないかということが想定されるわけですが、大変な多額な金額が動くわけでございまして、その場合の事務事業の適正、公正さというチェック機能が弱まるのではないかという懸念もされるわけでございますが、この点についてはどのように認識されておられますか。
  133. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 漁業協同組合という本来漁業者みずからの自主的協同組織としてつくられたものがこういうことを契機にして不正であるとかあるいはずさんな経理というものがございましては大変でございますし、それから今度は逆に被共済者というきちんと法的な立場に立つ。しかも、その前提として一定の規約というものが定められまして、この規約に従いまして支払われた共済金の分配関係というものも確定されているということからいいまして、そういうものにのっとって、しかも協同組織体という本来の姿からいいましてそういう不正が起こるというようなことは万々ないものとは我々思っておりますけれども、しかし念には念ということもございますし、それから今先生からお話がありましたように相当多額の金を扱うという事態も出てこようかと思いますので、従来にも増しまして系統のいろんな監査でございますとか、それから水産庁自体の検査でございますとか、あるいは都道府県の検査、指導、こういうものを濃密に行いまして、こういう制度をつくってこれとの関連で不正が起きるというようなことは絶対にないように努めてまいりたいと思っております。
  134. 及川順郎

    ○及川順郎君 国の場合には会計検査院の監査等があるわけでございますけれども、例えば、担当省庁としてそうした点に対するある一定のチェック機構みたいなものを具体的にお考えになっておられますか。
  135. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) こういう事業を行っております漁業協同組合につきましては法律上も都道府県の常例検査等がございます。それから水産庁自体、一般的な指揮監督という権能ももちろん持っておりますので、従来の法律で与えられております我々の監督権限、国、県それから指導上部団体、こういうものを全部総合いたしまして万遺漏なきを期してまいりたいと思っております。
  136. 及川順郎

    ○及川順郎君 先ほど菅野同僚委員からも、サケ・マス定置漁業の問題につきましてはかなりさまざまな角度から議論されましたので、私は自分の用意した質問の中から若干整理して伺います。  最近の輸入によって、あるいはまた経済的には円高の影響等も相乗作用を持ちまして、魚価の低迷によって、今回政府が導入しようとしております制度そのものに対する理由の中に、サケ・マスの場合にはふ化からそして成魚になって収穫するという状況の中で、ある一定の計画生産ができるということと、この計画生産とあわせて、安定収入の保障もそれと連動してできるのではないかということが理由づけになっておるわけですね。基準漁獲数量制を導入するということの理由づけが、現在の状況からしますとその理由づけだけではなかなか割り切れない現象が最近は出ているのではないか。そういうことから、やはり今回の改正がサケ・マスの定置漁業者の経営を不安定にするのではないか、こういう不安感を現場で耳にするわけです。こうした点に対しての見解をどのようにお持ちになっているのか。  それから、あわせまして、そうした不安感を取り除く意味におきましても、基準漁獲数量制が導入されるサケ・マス定置漁業に対しましては、やはり適切な政府の対応措置というものが必要ではないか。特に、共済制度そのものの意義づけから考えますと、単に天災や人為的な災害から守るという事象だけではなくて、魚価変動を含めた補償システムでない限り、漁業の再生産を確保するための共済制度としてはやはり問題点が残るのではないかという指摘もあるわけですね。こうした点に対する見解を、これは確認の意味でお伺いをしておきたいと思います。
  137. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 確かに従来、基準漁獲数量という概念がございませんで、純粋にPQ方式ということで行われてきたものについて、今回新しい基準漁獲数量概念というものが導入されますので、それに伴ういろんな憶測なり不安というものを関係の方が一部お持ちであることは事実かと思っております。  それで、我々といたしましては、この法律の審議の過程なり、あるいは法律が成立し次第、こういう制度を導入したゆえんのもの、それから制度の運営に当たってこれからいろいろ政省令でも決めていかなければならない数値等もございますので、そういうものを含めまして、関係漁民に対しての説得なりあるいはPRというものは十分に果たしてまいりたいと思っております。  それから、特にこういうものを入れることによりまして、今までPQ方式である面では担ってきておりました価格の低落に対する安心感というものが薄れるんじゃないかという話がございましたけれども、一定の基準数量を超した場合にのみ一定の比率で共済金を削減するということでございますので、そこまでは少なくとも補償されている。逆に言いますと、基準数量範囲内の場合には、一般的な価格の下落でございますとかあるいは品質低下によります価格の下落、こういうものも当然共済金の支払い対象として上がってまいりますので、こういう点では従来のPQ方式、こういうものの基本は堅持していられると思っておりますので、そういう点につきましても関係漁民に十分理解を得られるように、いろんなチャンネルを通じまして説明は続けてまいりたいと思っております。
  138. 及川順郎

    ○及川順郎君 それから、サケ・マス定置漁業共済事業における累積赤字の問題です。これまた六十一年度までの間に、五十八年からずっと見てみますと、累計で三十三億二千二百万円の赤字が出ておるわけですね。現行制度のもとで、こうした事態に対して、政府としてやはり何らかの対応策を持つべきではなかったかというぐあいに思うんですけれども、具体的に今まで講じた対応策等がございましたら承っておきたいと思いますし、またあわせまして、今回のこの改正によりまして、今後これらの事業が、健全な計画生産とあわせまして収入の面でも安定した展望を見通せるのかどうか、この点に対しての認識を承っておきたいと思います。
  139. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) サケ・マスの大型定置につきましては、ただいま先生からお話しありましたように、残念ながら多額の赤字が累積しているわけでございます。途中におきまして、いろいろ運用上の仕組みとしては何回か変革を加えてきておりますけれども、全体的に見ました場合に、漁獲量は相当程度確保できたけれども、価格が低 迷したと。その結果、漁獲金額が減少して共済金の支払いになったということがやはり基本的にどうしてもございますので、そういう点からいいますと、いろんな手だてなり改正というものを従来もやってきましたけれども、ここでこういう基準漁獲数量というような仕組みを導入しなければ、そういう基本問題にどうしても対応できないんじゃないかということで、今回の改正のお願いになっている次第でございます。  それから、所得対策といたしましては、先ほども申し上げましたように、基準漁獲数量範囲内の場合には、例えば価格の低下でございますとか品質の傷み、こういうものにつきましても、従来と同じように対応ができますし、それから単に数量だけじゃなくて、やはり高価値のサケに帰ってきてもらう、サケをたくさんとるということが一つのこれからの政策方向でございますので、そういう点を念頭に置きまして、放流技術改善あるいは放流方法の改善というものにもここのところ取り組んできているわけでございます。そういう方向で、数量自体はともかくといたしまして、質的に価格の高いサケができるだけ多く日本の近海に帰ってくるような方途というものも並行して講じてまいりたいと思っている次第でございます。
  140. 及川順郎

    ○及川順郎君 あわせて、ノリ養殖共済につきましては、前回の改正のときにも、本格実施に努めるよう附帯決議がつけられておるわけでございますが、今回の改正で本格的に実施するという方向が、具体化されるわけでございますが、これによりまして、収支について安定運用の見通しを持っておられるのかどうなのか。それからまた、これが今までおくれてきた理由は何だったのかということもあわせて承っておきたいと思います。
  141. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) まず、収支について見ますと、これからこれを本格実施いたしまして、どの程度の加入が実現するか、それからその後、年々の災害の発生状況がどうかということで、一概に将来を推計することはできませんけれども、今回の改正で、ノリの養殖の実態を踏まえまして、共済需要に応じました制度改善ということをいろいろとやっておりますので、相当加入がふえると見込まれております。  したがいまして、加入のすそ野が広がってまいりますれば、危険というものも今まで以上に分散でき、収支につきましても長期的には均衡を目指し得るというふうに考えている次第でございます。
  142. 及川順郎

    ○及川順郎君 最後に、大臣に伺いたいと思いますが、今まで法改正に関連しての問題点、懸念されることを確認しながら承ってまいりましたが、先ほど共済保険制度につきましては、現状を勘案しながら統一一元化の方向ということも話題に出ておりました。  さらに、漁業経営の厳しい今日の環境の中におきまして、安定的に将来的にも発展させるためには、今回の漁災法の改正充実もさることながら、これとあわせまして、漁業生産活動の構造対策や金融対策、魚価対策なども含めた総合的な見地から、この種の対策強化が今後ますます重要になってくるのではないか、このように思うわけでございますが、この点に対する大臣の取り組みの決意を承りまして、私の質問を終わらせていただきます。
  143. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 今いろいろやりとりをお聞きいたしておりましたが、最近の漁業をめぐる情勢は非常に厳しいのでございまして、そういう中にあって、特に二百海里体制の定着、それに派生するいろいろな問題、魚価の伸び悩み、いろんなことがございまして、漁業生産者のあるいは団体の立場というものも十分考えながらどうやっていくかというその工夫の一つとして、検討協議会において参考意見を生み出していただいて、そしてこのような法改正をお願いしたところでございます。  一元化はまたなかなか難しい点もありますが、やはり検討は続けていかなければなりません。  また、総合的な対応という今のお話がありましたとおり、金融面につきましても特段の努力を、行政指導を私どもはしてまいらなければならぬ、こう思っております。 特に、午前中にも申し上げましたけれども、行政指導をやるにつきましても、共済保険、このことに対する観念は欧米諸国と比べてちょっと日本がおくれておるのではないかと、従来からの指摘もございます。考えてみれば、確かにおくれはあるなと、私自体もいろんな自然災害対策や何かで考えたこともございました。そういうおくれを取り戻す意味においても、より積極的に、より真剣に取り組んでいかなければならぬ、こういう認識で実はこの法改正をお願いいたしておるところでございますので、御理解いただければありがたい、こう思っております。
  144. 及川順郎

    ○及川順郎君 ありがとうございました。
  145. 諫山博

    ○諫山博君 まず、法案に即して二、三点質問します。  ノリ特定養殖共済が、十三年間の試験実施期間を終えまして、いよいよ本格実施されるということになります。このことは私は結構だと思います。多くの漁民も歓迎しているのが多いようです。これまで行われてきたノリ養殖共済が廃止されて特定養殖共済に移行するわけですけれども、どのようにして移行しようとしているのか。その期間をどの程度見ておられるのか。また、それによる漁民のメリットというのはどこにあると考えておられるのか、まずお聞きします。
  146. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 今回、かねて懸案になっておりましたノリ共済の本格実施をおかげさまでお願いできる立場になったわけでございますけれども、せっかく本則移行いたしましても、関係漁民の納得なり御理解が得られないということでは大変でございますので、我々といたしましては、何とかいろんなチャンネルを使いましてPRにこれからも努めてまいりたいと思っているわけでございます。  特に、今回のPR方式によります特定養殖共済というものの方が、何といいましてもノリの養殖実態に適合している制度でございますし、それから今回、本則移行というものを契機といたしましていろいろな所要の改善というものも行っておりますので、相当これへの移行というものが期待できるわけでございます。ただ、一気にこれに全部ということは、過去従来の物損方式養殖共済が二十年間行われてきたという歴史もございますので、経過的には従来のものも存続させましてこれが全部移行を完了してから廃止する、そういう長期的といいますか、なだらかな姿勢でこれについては対応をしてまいりたいと思っております。  それから、今回の本則の話で、漁民にとってのメリットの点でございますけれども、一つはいろんな加入方式、個別加入でございますとかあるいは個別てん補方式、それからさらに、今回お認めいただこうと思っております漁協契約方式というようないろんな加入の仕方が選択できることに相なりましたし、それから、基準生産数量の適用方法の改善でございますとか、あるいは本則になったということで長期共済の導入が可能になりまして掛金率の割引あるいは無事故戻しというものも享受できるようになったという点で大きなメリットもございますので、こういうものも積極的に関係漁民にPRいたしまして加入の拡大ということに努めてまいりたいと思っております。
  147. 諫山博

    ○諫山博君 西日本のノリ産地、例えば福岡県とか佐賀県ではノリ養殖共済の加入が割合に多いようです。これが特定養殖共済に移行することになるわけですけれども、加入の促進を急ぐ余り無理をしてはならないと思うんです。確かに加入率を高めようという要求があるわけで、この要求自体は結構ですけれども、やはり十分の漁民理解と納得が必要だ、民主的に進めなければならないと思いますけれども、この点はどうですか。
  148. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) その点は御指摘のとおりでございまして、ただいまも申し上げましたように、本格実施にしたからといって従来の物損方式のものを直ちにやめてしまうというような仕組みはとりませんで、なだらかな移行を図りながら十分関係漁民の意向が反映した形でスムーズに移っていくということを我々としてもこいねがって おる次第でございます。
  149. 諫山博

    ○諫山博君 なだらかな移行という言葉の中には、十分な理解と納得のもとにという趣旨が含まれていると思います。  そこで、そのことが非常に大事であると同時に、やはりノリ特定養殖共済漁業者にとって魅力のあるものでなければならない。その問題を放置しながら加入率を高めようと思ってもこれはなかなか無理だと思います。その点で気になるのは、被害が基準生産量を超えた場合に、支払い共済金を削減するという問題があります。これは漁業者にとってはなかなか重要な問題ですけれども、なぜ漁獲共済並みに漁獲金額が一定水準を下回った場合には補てんするというやり方がとれないのでしょうか。
  150. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 過去からいろいろこの点については議論があるようでございますけれども、ノリ養殖という、これはサケ・マスなどにも若干共通する点でございますけれども、養殖ということで人間の加えました労力なりあるいは設計、こういうものである程度数量というものが確定してくるというようなこともございまして、従来から基準生産数量という仕組みを導入してきていたわけでございますけれども、従来の仕組みにつきましてはただいま御指摘ありましたようないろんな批判がございましたので、今回本格実施に際しまして共済金は基準生産数量の一定倍に達しない場合に支払うことといたしまして、それからその金額も生産数量実績に応じてきめ細やかに算定するという方式といたしますよう制度改善することとしておりますので、従来これについていろいろ御不安があった向きにつきましてはかなりの程度解消されるのではないかというふうに考えております。
  151. 諫山博

    ○諫山博君 漁業共済組合と漁済連と国の責任関係の見直しが提起されています。そして国の負担が減らされようとしています。その理由はいろいろ言われているようです。例えば保険事故が多発している、保険金の支払い財源が不足しているというようなことがありますけれども、もう一つ考えなければならないのは政治的な背景があるのではないかということです。  例えば、二百海里漁業規制の強化というような問題が背景にあるのではないか。そうだとすると、国の負担を減らすというのは何となく漁民にもっと重い責任をかぶせるという結論になるようですけれども、この点はやむを得ないと考えているのかどうか。
  152. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 責任分担関係の見直しにつきましては、純共済論理的に積み重ねてきたつもりでございまして、今回の責任分担の見直しは、最近における共済事故被害発生状態、こういうものを十分考慮いたしまして、その結果、共済組合の責任につきましては従来と変わらない、それから連合会の責任につきましては新たに五%の比例部分がふえる。しかし、これにあわせまして、こういう比例部分がふえるということと並行して連合会の手持ち掛金、これもふやすということを考えておりますので、これによりまして連合会の収支というものが直ちに影響を受けるということはございませんし、それから比例部分を導入はいたしましたがより深い事故につきましては従来どおり政府が持つということでございますので、長期的にはその辺についても変更はないというふうに考えております。
  153. 諫山博

    ○諫山博君 この点は衆議院の農林水産委員会でも随分議論されたようです。そして、例えば、「責任分担割合については、」「適宜・適切に見直しを行う」、こういう附帯決議がなされておるし、農水大臣はこの決議を尊重しながら慎重に対処すると述べられていますけれども、これはもっと国が積極的に責任を負うという立場で絶えず念頭に置いてもらう必要があると思いますが、衆議院での附帯決議との関係はどう理解されておられますか。
  154. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 我々といたしまして、適切なそれぞれの責任分担とそれから掛金の保有ということが共済制度を長期的に維持していくために不可欠であるという前提に立ちまして、さきの衆議院の附帯決議にも即しましてこれからいろいろと具体的な数値を責任関係につきまして定めてまいるわけでございますけれども、こういう場合にも十分共済団体の意向も聞きまして決定してまいりたいと思っておりますし、それから、今後とも長期的にもそのときどきの共済実態に応じて適切な責任分担関係というものが構築されますよう常にウオッチングしてまいりたいと思っております。
  155. 諫山博

    ○諫山博君 次に、我が国の漁業の基本的なあり方に関して幾つかの問題に触れます。  三月二十五日の本委員会で私は、大企業が水産分野で海外進出をしている、そのために日本の水産加工業が打撃を受け、いわゆる産業の空洞化が進もうとしているという問題について質問しました。これはまだ端緒的な傾向ですけれども、今のうちに手を打たないと大変な事態が起こりかねないということを指摘しました。  次に、似たような問題ですけれども、我が国の大企業、特に従来水産業と何の関係もなかったような大企業が水産分野に進出しようとしているという問題について質問します。  今、大企業が焦点を当てているのは養殖漁業だそうです。新聞報道などを見ますと、例えば電力会社が温排水を利用して養殖漁業の研究、開発を進めている。電力中央研究所我孫子研究所がヒラメの高能率生産システムを既に開発した。中国電力では、ヒラメの短期育成実験に成功した。他の電力会社も大体同じようなことをやっている。報道されている限りではこれはまだ研究、開発として取り上げられておりますけれども、この研究、開発が我が国の漁業振興のために役に立つというんだったら結構ですが、これが養殖事業に乗り出してきたら大変なことになると思うんです。  こういう大企業が養殖漁業に進出をしようとしている、部分的に既に進出が始まっているという事態について、水産庁は認識しておられましょうか。
  156. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ここのところ、いわゆる構造不況業種という業種を中心にいたしまして、水産業ではない他企業の水産関連事業への進出というものが相当局地的には出てきているわけでございます。これをどう評価するかという問題、いろいろあろうかと思いますけれども、我々としては、そういう他企業であっても水産の新しい技術を構築するとか、新しい方向を模索するという点では一つの活性化の方向につながるという点もあろうかと思いますが、その入ってきぐあいなり、入ってきた後の出荷なり、あるいは地元漁協との連携関係、こういうものも十分並行して意を用いていかなければならないわけでございまして、そういう観点からそれぞれの進出状況というものを現在注意深く見守っているところでございます。
  157. 諫山博

    ○諫山博君 新聞報道ですけれども、大企業の養殖漁業への進出というのは非常に活発に始まっているように見える。  例えば、コスモ石油の出資会社であるコスモ開発はアワビの養殖に着手した。清水建設は北海道でマダイの養殖に取り組み始めた。ヤンマーディーゼルは大分にヤンマーマリンファームを建設し、養殖関連の事業を始めた。しかも、驚くべきことに、JR東日本がことしから岩手県の釜石市でサケの薫製品、さらにその生産、販売に乗り出した。こういうことまで報道されている。なぜJRの場合に私が驚くのかといいますと、国鉄が分割民営されてから、JRが中小企業を侵害するようなことはしてはいけないということは法律で決まっている。旅客鉄道株式会社法の中には「中小企業者への配慮」という一条文がつくられて、同種の事業を営む中小企業者の事業活動を不当に妨げたりまたその利益を不当に侵害してはならないということになっているわけです。JRがこういうことに乗り出すというのはこれはもう論外ですけれども、それにしても清水建設だとかヤンマーディーゼルだとか、そういうところが養殖漁業に乗り出すというのは全く異常だと思う。金もうけの ためには手段を選ばないということのように思われます。今のうちにしかるべき手を打っておかないと大変な事態になるのではなかろうかという懸念があるんですけれども、その点はどうですか。
  158. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ただいま先生から御指摘があったような事例がありまして、我々も十分承知しているわけでございますけれども、ここのところ見てみますと、大企業が主に入ってきておりますのはアワビでございますとかヒラメ、それからクルマエビ、こういうものはいずれも陸上養殖という形でございまして、これは大企業に限ったことではなくて、アワビ、ヒラメ、クルマエビというものは現在資源的にいろいろ問題があり、むしろ消費者関係から非常に需要も強いということでございますので、いろんなジャンルのいろんな活力を集合いたしましてむしろ全体としての資源のすそ野を広げていくということはある意味では必要なことかと思っております。  それから一方で、海面養殖につきましてもギンザケでございますとか、サクラマス、あるいはマスノスケ、こういうものにつきまして、一部大企業なりあるいは大企業とおぼしき漁業会社がいろいろな研究を始めてきておりますけれども、海面養殖につきましては漁業権の免許権を持っておりますのは漁民でございますので、いずれもそれぞれの地域漁民名義で、漁民とのいろいろな連携なり協力関係の中で高度な技術なり資本を投下して資源の再生産を図っていくという動きでございますので、一概に大資本であるからとか、漁業関係のないジャンルだからといってこれを忌避するということは、むしろ日本漁業の現在の資源状況あるいは消費者のニーズ、こういうものから考えまして、恐縮でございますけれども、いかがなものかという実感も持っているわけでございます。
  159. 諫山博

    ○諫山博君 今の認識に私は非常に不満です。  日本の漁業というのは、魚がちゃんととれさえすればいいというものではないと思います。やはり漁業で生活をしている漁民が生計を維持できるということが基本です。そして現に、漁業白書などでも養殖漁業は過剰生産ぎみで価格が低迷しているというようなことも指摘されているようだし、このまま放置すると金もうけの対象になり得るところはどんどん大企業が進出するというのが資本主義社会の法則だと思います。そして、確かに営業の自由がありますけれども、この営業の自由については、中小企業を守るためには公共の福祉という立場から一定の規制を加えるというのが現在の仕組みになっております。  例えば、中小企業の分野確保法というのがありますけれども、こういうのも強い者勝ちというような競争の状態に放置するのではなくて、中小零細業を保護するという措置がとられております。大スーパーが進出してくる場合にも例えば売り場面積を制限するというようなことがやられております。農業分野でも、例えば養鶏などについては羽数の規制ということが行われているわけです。  この養鶏問題について私たちは、かつて共産党として法律案を提出したことがあります。この中では、「農外大企業は、採卵養鶏分野で新たに事業を開始することはできない。」、「農外大企業とは、資本金十億円以上の大企業をいう。」、これはやはり長年養鶏で生計を立ててきた零細な養鶏農民を保護するという立場からの法律案ですけれども、残念ながら実現は見ておりません。  しかし、そういうやり方というのは農業分野でも行われているわけだし、いよいよ被害が広がってからでは間に合わない。やはり今のうちに何らかの警告を発すべきではないか、私はそう思いますけれども、我が国漁業百年の大計を考えて、これは水産庁長官大臣のお二人の意見をお聞きしたいと思います。
  160. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ちょっと事実関係で補足しておきますけれども、現在水産業以外の企業が盛んに進入し始めておりますのは、先ほど言いましたようにアワビとかヒラメとかクルマエビ、こういう日本の近海でむしろ資源問題がありますものを何とか陸上での養殖技術が確立しないかということで、陸上養殖という形で現在の段階ではまだ技術自体も固定してないところについて、いろんなそれぞれの企業の持っているノーハウでございますとか技術陣、こういうものを動員して、むしろ試験研究的な取り組みというふうに我々は現時点では見ておりますし、それから漁業者と一番関係をいたします海面養殖、これにつきましてもギンザケでございますとかサクラマス、それからマスノスケというような今まではむしろ日本近海ではなかったもの、これにつきましていろんな知見なり技術力というものを駆使し始めてきているわけでございまして、そういう点では日本の漁業の全体の力というものを広げていくという点からいって、一つ新しい芽としてむしろ評価してしかるべきものがあろうかと思っております。  しかし今後、これが一般の中小漁業経営者がやっておりますいろんなことと衝突するというようなことがありましては元も子もなくなるという問題がないわけではございませんので、そういう点につきましては地元の労力の活用でございますとか、あるいは地元の漁業経営との共存共栄というようなことにつきましてはもちろんそれぞれの地域でいろんな話し合いが進められ、それから、海面につきましては、そもそも漁業者自体が漁業権を持っているところで漁業者の協力を得て初めて成立する他産業の侵入でございますので、一般に言われているような問題はほとんど現時点ではなかろうかというふうに認識しております。
  161. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) いろんなお話が今委員からございました。我が国の体制、現状というものにも若干触れるがごとく資本主義社会においてはという御指摘もございました。私も、実は農林水産大臣立場にありながらもまた自由民主党所属国会議員でもございまして、自由社会というものをかくあるべきだと頭の中に描いておる一人でございますし、現状否認をしたのでは私は仲間外れになるわけでございます。そういう意味でもあなたの御意見に、いやあなたの言うとおりでございますとは絶対に言えない立場にございますし、そうも思っておりません。  また、公共の福祉についてもお触れになりました。あるいはまた中小企業分野調整、このことについてもお触れになりました。いろいろお触れになりましたけれども、先ほど水産庁長官が御説明申し上げておりますように、我が方といたしましては零細な漁業者に影響を及ぼしてもいいとは決して思っておりません。影響を及ぼしてはならぬということで、現状悪影響を及ぼすような零細な沿岸漁業者に対する問題点は何であろうか。もしそういうような具体的事例ありとすればまた検討もしなければならない、かように思っておるところでございます。
  162. 諫山博

    ○諫山博君 残念ながら意見は一致しませんでした。  私は、このことで現に中小零細漁民被害を受けているとは言っていないんです。そうなる危険性があるのではないか、そうなってしまっては手おくれになる。だから、何らかの警告的な措置ぐらいは考えないと大変な事態にならないかなという心配を提起したんです。十年後に、あのときに諫山委員の意見をもう少し聞いておけばよかったなと言わなくて済むように処理していただくことを要望します。
  163. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 十年後にそういう事態が来るとは、私自身ただいま現在思っておりません。
  164. 諫山博

    ○諫山博君 今度はほかの問題です。  九州に有明海というのがあります。この有明海には福岡県、熊本県、佐賀県、長崎県が面しております。そしてここは日本でも有数の漁場だと聞いております。例えば有明漁連の資料によりますと、県内海域のみならず全国でも例を見ない高生産漁場となっている。有明漁連を調査しますと、就業者数が六千百五十九名、生産額が百七十一億、一人当たりの生産額は漁業者が二百七十八万円、これは農業者の百五十八万円に比べて非常に高い。そしてここはノリとか貝の生産で非常に有名だと聞いていますけれども、水産庁はこの有明 海の漁業をどう認識しておられますか。
  165. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 具体的数字を持ち合わせておりませんけれども、あそこにつきましては、ただいま先生から一般的にお話がありましたように、規模としては必ずしも大きくはございませんけれども、あそこの地域社会でそれなりの漁業経営というものが営まれ、それぞれの漁業経営者にとりましては非常に重要な海域というふうに認識しております。
  166. 諫山博

    ○諫山博君 今、この有明海の漁場がもう大変な状態になっています。そしてますます大変な状態になろうとしています。それは三井が有明海の海底で石炭を掘っている。この石炭の採掘で漁場が荒らされて、さまざまな被害が現に発生しております。そしてこれからもとの被害拡大しようとしています。特に大きな被害を受けているのは有明海の漁業の中心であるノリと貝、こういう状況になっていることを水産庁は御存じですか。
  167. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ただいま先生からもお話しありましたように、これはかなり古くといいますか、昭和三十四年ごろから有明海の沖合で陥没現象が見られてきているわけでございます。それで昭和五十四年ごろから最大一・五キロメートルに及ぶ局地的な陥没が起こっているようでございまして、ここでノリ養殖なりアサリ漁業について被害が出ておるということにつきましては了知しております。
  168. 諫山博

    ○諫山博君 海底の石炭採掘でどういう影響が出ているかというと、例えば海底の陥没、干潟の水深線変化、ゼロメートル線の後退が著しい、ノリ支柱竹の変更に伴う経費が増加した、底質の変化に基づくアサリの被害がふえた、こういうことが福岡県などの公式文献に出ております。  通産省にお聞きしますけれども、三井の有明海の海底での石炭採掘はいつごろから開始され、今どのくらいの範囲に及んでいるんでしょうか。
  169. 斉藤真人

    説明員(斉藤真人君) 三池炭鉱の歴史といいますのは約一世紀近くに及ぶわけでございますが、海底の石炭の採掘は大体三十年代の真ん中ぐらいからになっておりまして、現在すべて海底からの石炭生産ということになっております。
  170. 諫山博

    ○諫山博君 私が聞いたところでは、海底で石炭を掘る限り必ず陥没が起こる、これはもう避けられないことだ。さらに、石炭採掘を続けていくとすれば、これからもずっと採掘に伴う海底の陥没が発生するそうですけれども、間違いありませんか。
  171. 斉藤真人

    説明員(斉藤真人君) 現在の石炭の採掘方法といいますのは、石炭の層を百メーターぐらいの壁をつくりまして、そこをずっととっていきます。とった後は、バラスといいますのは充てんせずに天井を落とすということでございます。こういうような採掘方法でございますから、当然海底にも影響が及ぶということでございます。
  172. 諫山博

    ○諫山博君 つまり、海底で石炭を掘れば被害は避けられない。これから採掘を続けていくわけですけれども、採掘を続ける限り将来も被害は続くだろうということになりますか。
  173. 斉藤真人

    説明員(斉藤真人君) 若干の技術的な改善ということはできますが、多かれ少なかれ被害が続くということになります。
  174. 諫山博

    ○諫山博君 石炭の採掘は通産省が認可しますね。施業案というのが提出され、それを通産省がつぶさに検討して採掘を認めるという手続がとられるわけです。当然有明海の石炭採掘についてもその措置がとられているはずですけれども、施業案を認可するときからこういう被害が発生することは予想されていたんでしょうか。
  175. 斉藤真人

    説明員(斉藤真人君) 先ほど説明の繰り返しになりますが、石炭を今の技術で採掘いたしますと、その周囲ということになりますが当然海底が陥没いたします。ですから、その時点で石炭を掘りますと、その付近は海底が落ちるということはわかっております。
  176. 諫山博

    ○諫山博君 三井の施業案を認可するときに海底が陥没することは予想されていた。当然その被害漁業者を初めとして周辺の人に及ぶことも予想されていたということになるとなかなか重大だと思いますけれども、その点はどういうふうに考えておられましたか。例えば当然漁業者は被害を受ける、漁業者だけではなくて、今、干潟が非常に減少しているというのが大問題になっておりますけれども、こういう問題が予想されていたのに施業案を認可したということですけれども、発生が予想されていた被害に対してはどう考えておられたのか。
  177. 斉藤真人

    説明員(斉藤真人君) 施業案の上では海底下二百メーターよりさらに下になるわけでございまして、できるだけいろいろ配慮はしながらやるわけでございますが、現実に海底が落ちるという結果になっているわけでございます。
  178. 諫山博

    ○諫山博君 石炭というのは日本の貴重なエネルギー資源です。私たちは日本の石炭をもっと採掘すべきだと思っています。有明海の石炭採掘についても反対はいたしません。  ただ、そのために石炭と何の関係もない漁民とか農民とか一般市民が被害を受けるということになれば、すべての被害は補償する、被害の復旧が可能であれば速やかに復旧をする、これは当然のことです。その第一次的な責任者は私は三井だろうと思います。この被害の完全な弁償、破壊された海底の復旧についてはどう考えておられますか。
  179. 斉藤真人

    説明員(斉藤真人君) 三井と有明漁連とは毎年二回海底の陥没状況を調査しております。その結果に基づきまして埋め立て、あるいは陥没で漁業被害が出るわけでございますが、そういうことに関しましては金銭をもちまして補償するということをやっております。三井がそういうような能力があるということが非常に重要なことになってくるわけでございますが、三井が復旧工事あるいは金銭賠償をやれるように通産省でもいろんな策をもちまして支援といいますか、応援しているところでございます。
  180. 諫山博

    ○諫山博君 今日まで三井からどのような支払いがなされたのか、内訳を説明してください。
  181. 斉藤真人

    説明員(斉藤真人君) 賠償といいますのは大体昭和五十四年から始まっておりまして、復旧事業といいますのが昭和五十六年から始まっております。それで、金銭賠償及び復旧工事の総額が六十二年度末で累計で約百億になっております。そのうち復旧工事に使いましたお金が七十三億でございます。残りが金銭賠償ということになります。
  182. 諫山博

    ○諫山博君 復旧が大部分のようですけれども、この復旧は漁連に金を渡して漁連が復旧するのか、それとも三井の方で復旧してやるのですか。
  183. 斉藤真人

    説明員(斉藤真人君) 毎年どこを復旧するかという箇所につきましては漁連と三井と話し合いをやります。復旧できる時期といいますのがノリをつくりません夏場に限られます。その時期をとらえまして三井は九州あるいは遠くは関西まで泥を運びます船を集めてまいります。そこでいわゆるしゅんせつ土砂あるいは海砂あるいは炭鉱のズリも一部まぜますが、そういう埋め立て材料を使いまして漁業組合との間で話し合いがつきましたところを埋め立てていくという工事をやっております。ですから埋め立て自身は三井の施行のもとでやっておるということでございます。
  184. 諫山博

    ○諫山博君 そうすると、埋め立てを除いた金銭的な補償は二十七億円ですか。
  185. 斉藤真人

    説明員(斉藤真人君) 正確にちょっと今引き算いたしますと二十四億円になります。先ほど約百億円と申しましたのが九十八億円でございます。
  186. 諫山博

    ○諫山博君 この金銭補償は、何に使う金になりますか。漁民に損失の補償として渡すのか、あるいは何かほかのために使うのか。
  187. 斉藤真人

    説明員(斉藤真人君) 三井鉱山と有明漁連との話し合いのもとで、被害がこれだけ出た、あるいは陥没で深くなったところでノリをつくるために大きい竹が要る。そういうようないろんな事情を話し合いまして金額が設定されます。その金額は三井鉱山から有明漁連に渡されます。それから有明漁連の中でそのお金がどういうふうに分配されるというか、どういうふうに使われるかというのは私どもはちょっと承知しておりません。
  188. 諫山博

    ○諫山博君 年度ごとの詳細な金額などは後で資 料をいただきたいと思いますが、いいでしょうか。
  189. 斉藤真人

    説明員(斉藤真人君) はい、結構でございます。
  190. 諫山博

    ○諫山博君 補償金の中心的な部分をなしているのは埋め立て作業のようですね。どのぐらい土地が陥没するんですか。
  191. 斉藤真人

    説明員(斉藤真人君) 陥没は、一番深いところでございますと二メーターをちょっと超えるところがございます。面積的に一番大きいところといいますのは大体一メーター以下の陥没でございます。そういうところが中心でございます。
  192. 諫山博

    ○諫山博君 現地の漁民の話を聞きますと、埋め戻しのやり方がでたらめで貝がすみつかない、それからノリのさおが立てられないというような不満が出ていますけれども、そういう話は聞いてますか。
  193. 斉藤真人

    説明員(斉藤真人君) 私ども直接は聞いておりません。
  194. 諫山博

    ○諫山博君 埋め戻しの復旧率は今日まで三四・七%にすぎない。大半は陥没したまま復旧がされていない。その理由の一つに、陥没していることは漁連も三井も認めるけれども、海底の採炭による陥没かどうかが疑わしいという議論があるそうですけれども、そういう状況ですか。それとも、三井の陥没ということが争えない事実になっているのに、復旧がまだわずかしか進んでいないという状況なんでしょうか。
  195. 斉藤真人

    説明員(斉藤真人君) 先ほど申しましたように、調査海域といいますのは非常に広範囲に及んでおります。将来石炭を掘るようなところ、あるいは直接関係ないところもかなり広範に調査しておりまして、その中で有明漁連で調査された、いわゆる計算された結果を見ますと、先ほどおっしゃいましたようにかなりの残存量といいますか、残存の埋め戻しをする必要のある量が残っておるということでございます。  それに対しまして、いわゆる採掘によります影響範囲、三井に言わせますと、三井が責任を持つべき範囲といいますのはもうちょっと小さいということを会社側は言っております。ただ、この埋め戻しにつきまして、大体毎年百万立米の埋め戻しをやっておるわけでございますが、先ほど申しましたように大体夏場の限られた時間に埋め戻しをやらぬといかぬということ、それから有明海という海洋の事情といいますか、埋め戻しというのはできるだけなだらかにやらぬといかぬということから小さな船をたくさん使うわけでございます。そういう船の調達の問題等がございまして、六十一年、六十二年の実績を見ますと大体百万立米ということになっているわけでございます。
  196. 諫山博

    ○諫山博君 私が現地で聞いたところでは、陥没している実際の量が千二百万立米だ、この点は三井も有明漁連も一致している。埋め戻しが終わっていないのが九百万立米だと。問題なのは、このうち二百四十万立米程度については三井鉱山はうちの責任ではないと言っている。漁連では三井以外に責任者は考えられないと言っている。  こうなりますと、これは石炭問題の専門家である通産省が専門的に三井の採掘に基づく陥没なのか、ほかの原因に基づく陥没なのか、調査してやる必要があると思います。そうでなければこの争いは解決しません。私は、施業案を認可した通産省としてこの問題はぜひ責任を持って調査していただきたいんですが、いかがですか。
  197. 斉藤真人

    説明員(斉藤真人君) 現在のところ、問題になっておりますのが残存の問題といいますより年々どうやってどこを復旧していくか、その復旧が長く続くようにということ。といいますのは、現在三井鉱山自身いろいろ合理化に迫られておりまして、三井鉱山の資力といいますか、そういう工事をやる能力が落ちるんじゃないか。要するに、将来にわたって鉱害の復旧ができぬことになるんじゃないかということを地方自治体の方あたりが心配されまして、私どもにその辺ちゃんと三井鉱山が復旧できるように指導してくれということは言われておりますが、残存の、いわゆるへこんだところはだれが責任かという問題は、私どもまだ余り、この場で初めていろいろ聞いたようなところでございまして、将来の検討課題として考えさしていただきたいと思います。
  198. 諫山博

    ○諫山博君 それは、ぜひ積極的に通産省が調査し、検討してもらいたいと思います。漁連では採掘による被害だと言っている。三井の方ではおれの責任ではないと言っている。だとすれば、被害は現にあるのにいつまでたっても復旧されない、補償ができないという状態になりますから。  そこで、埋め戻しのやり方です。大体、漁場が陥没して貝なんかがすみつかなくなっているということで問題になっているわけで、これは陥没したところに石とか土を持っていきさえすればいいということではなかろうと思うんです。やはり漁業の専門家の助言が要るのではないかと思いますけれども、この埋め戻しについては農水省なり県は関与しているんでしょうか。
  199. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 毎年の具体的埋め戻しのやり方につきまして、率直に言いまして我々余り実情を把握しておりませんけれども、聞くところによりますと、先ほども通産の方から話がありましたように、五十六年に三井とそれから有明漁連との間に協議ができまして、その後毎年どこをどうやって埋め戻すかという協議をしながら埋め戻しているようでございますので、その過程で当然漁業につきましても、しかも地元について一番精通している当事者でもある有明漁協、ここの考え方なりというものが反映されているものとは考えておりますけれども、我々自身といたしましては詳細には把握しておりません。
  200. 諫山博

    ○諫山博君 どういうやり方で埋め戻しをしたらいいのか、埋め戻しのための土はどういうものが適当であるのかという点について、三井の方が財団法人九州環境管理協会に専門的な意見を求めたそうです。九州環境管理協会では、それに対して報告書を書いて三井に渡したと言われております。ところが、これが公表されていないわけですね。三井としては、恐らくこの報告書に基づいて埋め戻しをするんでしょうけれども、果たしてそれが漁業専門家から見て適当な埋め戻しのやり方であるかどうかということはやはりチェックされる必要があると思うんです。これは漁業専門家にも見ていただくし、漁民にも見ていただくという必要があるし、私も農林水産委員として見たいと思うんです。この九州環境管理協会が三井に出した報告書、これはどういうやり方で埋め戻しをやったらいいのかということの結論だそうです。ぜひ我々の手に入るようにしていただきたいと思いますが、どうでしょうか。
  201. 斉藤真人

    説明員(斉藤真人君) 三井が調査させましたレポートの要約は有明の各漁協の方々にお配りしたというふうに会社からは聞いておりますが、レポートを取り寄せまして、もしお読みになる方がございましたら提供するような手配をしたいと思います。
  202. 諫山博

    ○諫山博君 要約ではなくて、全文を私に見していただけますか。
  203. 斉藤真人

    説明員(斉藤真人君) はい、そういうふうな手配をやりたいと思います。
  204. 諫山博

    ○諫山博君 この陥没は、福岡県だけではなくて熊本県、佐賀県にまで及んでいるんじゃないでしょうか。
  205. 斉藤真人

    説明員(斉藤真人君) 現在、埋め戻しを毎年百万立米やっておるとは申しましたが、百万立米のうち二十万立米は佐賀県側で埋め戻し、八十万立米は福岡県側での埋め戻しをやっております。
  206. 諫山博

    ○諫山博君 とにかく、三県にまたがる漁業被害ですからこれはなかなか深刻な事態だと思います。その中で、被害が一番大きい福岡県が本年度から有明海漁場再開発調査事業というのを開始しております。この調査項目は、有明海の陥没に対するさまざまな調査が中心です。福岡県が予算を組んでこの調査を始めているようですけれども、本来は施業案を認可した政府とあるいは漁場の保全に責任を負う水産庁というようなところがもっと前面に出てこの調査をやるべきだろうと思うんです。  私の聞いたところでは、福岡県から通産省にこ の問題についての協力要請があったということですけれども、そういう事実があったのか、逢ったとすればどのように処理されたかお知らせください。
  207. 斉藤真人

    説明員(斉藤真人君) 福岡県が六十三年度から有明海漁場再開発調査というのを実施するということは知っておりまして、そのため県の方から通産省も何か応援してもらえぬだろうかというような話がございます。漁場整備というような目的からいたしますと、私どもの省が直接この調査費の一部を負担するというのはなかなか難しい面がございます。しかしながら、私どもはまた産炭地域の振興というようなこともやっておるわけでございますから、こういうような観点から通産省としましても何らかの側面的な支援が可能かどうか、予算の都合等も考えながら、福岡県あるいは関係方面と十分連絡をとりながら検討していきたいというふうに考えております。
  208. 諫山博

    ○諫山博君 この問題で水産庁も協力を求められたんじゃないでしょうか。
  209. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) この問題につきましては、三井というある意味では加害者が相当程度特定している問題であるということで、我々としてはいわば有明漁協と同じように被害者側の立場ということでございますので、できるだけ加害者でございます三井に何とか復旧なり援助の手というものを差し伸べてもらいたいということが基本的スタンスでございますけれども、地元から漁場全体の問題ということで実務的にはいろんな相談が来ているようでございますけれども、具体的には、先生から今お話がありましたように、福岡県でも調査を始めるということでございますので、当方としてもその調査の動きなり結果というものを注意深く見守ってまいりたいと思っております。
  210. 諫山博

    ○諫山博君 この問題で第一次的な責任があるのは三井です。この点は当然だと思います。ただ、三井がやるべきことをやっていないわけですよね。そして、漁場が今破壊されているわけです。  この点については、水産庁としても、例えば赤潮が発生すればそれはどういう科学的なメカニズムでこうなっているのか、それを解消するためにはどうすればいいのかというような問題でやはり金を出して調査研究してあるんじゃないかと思います。あるいは水俣でいろいろ魚が汚染されるというような場合に、これは日窒という明白な加害者がおりますけれども、それでも現に広範な海が汚染されているというようなときには、水産庁として積極的に乗り出して対策を立てていると思うんですけれども、私は三井が第一次の責任者であるということはもちろん否定しません。その上に立って水産庁としてももっと漁場を確保する、漁業を守るという立場で金銭的にも援助すべきではなかろうかと思うんです。現に、福岡県は責任者ではないけれどもこれをやっているわけです。福岡県から協力を求められた以上、積極的にこたえるべきではなかろうかと思うんですけれども、どうですか。
  211. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 物事の性格から言いまして、これだけはっきりしている加害者がいるわけでございますので、我々といたしましては何とかそういう加害者に原状復旧なり補償というものをお願いしてまいりたいわけでございますけれども、地域社会を統括しております福岡県におきましてもこういう調査を現在始めたところでございますので、こういう調査の進め方なり進行、こういうものにつきましてはいろんな協力をこれからして、水産業に対するあそこの陥没の影響等々の調査ができるだけ早く終結するようにこいねがっているわけでございます。
  212. 諫山博

    ○諫山博君 通産省にお聞きします。  この問題ではもっと話が進んで、何とか通産省なり農水省で金を出そうじゃないかというところまでいったんじゃないんですか。しかし、国土庁あたりでそれが通らなかったというような経過はなかったんですか。
  213. 斉藤真人

    説明員(斉藤真人君) 通産省も、恐らく農水省も予算的に非常に困っておられまして、私の方はそうなんですが、国土庁でこういうような調査費というのがあるんじゃないかということで、できたらこういう調査のためにいただきたいということでお願いに行ったりしたことはございますが、国土庁の方もなかなか厳しい状況でございまして、それは失敗に終わっております。
  214. 諫山博

    ○諫山博君 そうすると、通産省としては国土庁が金を出すべきじゃなかろうかという立場をとられたんですか。
  215. 斉藤真人

    説明員(斉藤真人君) 私どもはいわゆる地域振興の、漁業という面から見ますと確かに漁業という面があると思いますが、全体的な有明地域地域振興というのにこういう調査というのは非常に役立つだろうというような考え方で、国土庁の予算をもらえぬだろうかと考えたわけでございます。
  216. 諫山博

    ○諫山博君 通産省はそこまで説明されましたけれども、農水省も何とか金を出さぬとまずいんじゃないかと思われたんじゃないんですか。
  217. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) これは性格といたしまして鉱山という通産の分野が加害者になりまして、水産という農林水産省被害者になっているわけでございますが、この両方を調整しながら、仮に地域振興という観点から調査をできるといたしましたら、恐らくただいま話がありましたように国土庁の調整費ですか、ああいうものが場合によってはこれに活用できるというような道はあろうかと思いますけれども、うちの立場といたしまして、できるだけあそこが復旧してもらいたいことはもちろんでございますけれども、加害者というものが特定している中で、うち自体がみずからのリスクで乗り出すということにつきましてはいろんな問題が多過ぎようかと現在の段階では思っております。
  218. 諫山博

    ○諫山博君 通産省も農水省も何とかしなければならないなという気はあったと私は理解します。  その点は、福岡の革新県政はさすがだと思います。これは有明海福岡県地先全域における陥没の現状を調査する、これは三井が陥没させたわけですよ、それでも福岡県の問題だというので福岡県が調査する、ただ福岡県だけが金を出す理由はないから政府にも協力を求めるということで協力を求めて、筋としてはなかなか理解できるけれども、出す筋が発見できないということのようです。しかし、これは積極的に、特に通産省の場合は施業案を認可したわけですよ。認可するときにはこういう被害が起こることは予想されていたわけです。被害が予想されていたのに認可した以上、その被害がまだ大部分放置されていますから、政府として責任をとるということを強く要求いたします。政府として責任をとるというのは三井を免罪するわけではありません。これは三井にも大いにやれやれと言ってください。同時に、政府としてもきちんとするということを私は通産省の代表と農水大臣にお伺いしたいと思います。
  219. 斉藤真人

    説明員(斉藤真人君) 施業案の認可の問題と絡みまして、鉱業法の中には鉱害を出したら金銭賠償する、しなきゃならぬというようなことになっておりまして、基本的には、私どもは三井がまず第一だと思っております。それで、三井にいわゆるやるように、じかに漁連の方々と適切に対応するようにというようなことは今後ともずっと続けてまいります。さらに、鉱害復旧のために必要な資金、現在非常に低利の金を鉱害事業団から貸しているわけでございますが、こういうような資金も引き続き十分活用できるような状態にしていきたいというふうに考えております。
  220. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 原因は相当明らかになっておるようでございます。加害者という表現は余りこういう場合に使っていいのかどうかちょっとわかりませんが、しかし被害を受けておる漁民ということから考えれば加害者は三井である、こういうことで通産省も積極的に取り組むでありましょうが、今、通産省側の答弁を聞いておりますと、この場で委員から初めて聞くようなこともあった、新しく聞いたというような答弁がございました。そういうことであればあるほどきょうのや りとりというもの、水産庁長官とエネルギー庁長官で連絡をとらせたい、こう思っております。
  221. 諫山博

    ○諫山博君 終わります。
  222. 三治重信

    ○三治重信君 漁災法の中身を少し勉強させてもらったんですけれども、なかなか複雑で、大体の筋はわかるけれども、中身の実際の事務がどうなっているんだろうか、掛金がどうなっているんだろうか、補償の金額の計算がどうなっているんだろうかというのをいろいろ説明も積極的に受けてやったのだけれども、短時間ではよくわからない。  午前中からも若干その問題で議論になって、一応はお答えになっているわけなんですけれども、どうしても加入率が二五%と非常に低いというのは、えらい高い掛金の補助も国が出しているのにかかわらず、こういうふうに加入率が低いという本当の原因は何だろうか。単に団体加入か単独加入かということだけで加入が進まぬということなんだろうか、団体加入であれば加入率は上がるということなんだろうか、こういう疑問をまず第一に持つわけなんです。  それから僕は、この団体加入、漁協一括加入というのは、希望者をできるだけ集めて、そうして漁協がいわゆる加入の当面の責任者になって一括加入をやる、そして一人でも多く加入者をふやす、こういうことだろうと思ったら、午前中から聞いていると、漁協の加入者全員の加入でなければ団体加入は認めないというふうな解説じゃないかと思うのだが、その点はどうなんですか。
  223. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) これだけ加入率が低いということにつきまして、制度の運営上も問題がございますし、多くの方々から御心配をいただいておるわけでございますけれども、加入率の低いことの原因、これはいろいろあろうかと思います。  一つには、漁業経営が非常に千差万別でございまして、加入率をはじく際には、すべての漁業者を分母にして何%の加入ということをはじいておるわけでございますけれども、こういう分母の中に入ってきている漁業者の中には一部共済に入ることが経営上メリットのない漁業者も現にいるわけでございまして、そういうものの取捨選択ができませんので、トータルとして分母に入れて加入率をはじいているというような計算上の問題もあるいはあろうかとは思います。  それ以上に、こういう共済制度といいますか、相互に助け合っていこうということについての認識が残念ながらまだ末端まで浸透していないということに加えまして、やはり共済制度でございますので、損害査定でございますとか、いろいろな実務なり計算というものが付随してくるわけでございます。こういうものにこたえ得る体制が漁協段階で十分にできていないというところも相当数あることは否めないわけでございます。  そういう中で、今回いろいろ制度改正を行い、それから漁協の一括加入ということをお願いしておるわけでございますけれども、この漁協の一括加入につきましては、一定の地区の漁民の三分の二以上の多数で規約をつくって、その規約で共済掛金の分担方法なり、あるいは共済金の支払い方法、こういうものを明定いたしまして入ってくるという任組みでございまして、トータルということにはなっていないわけでございます。全員といいますか、すべてということにはなっていないわけでございます。
  224. 三治重信

    ○三治重信君 加入率の低い原因一つ今感じたのは、零細漁民の補償だということは、これだけ掛金まで国が高い補助金を出しているという理由にもなっているのだろうと思うのだけれども、それにしても余りにも零細な、災害が起きてもそれほどの損失もないし、普通営漁しておってもそれほど、農家でいうといわゆる第二種兼業みたいな漁民が相当あるのじゃないかというような感じをちょっと今受けたわけなんです。  そうだとすると、いわゆる農業でいう第二種兼業みたいな主なる生活手段は漁業じゃなくて、漁業の方は副業的な、伝統的に沿岸で、天候のいいときに出かけていってやるということがすぐやめられない、船を持っているからやめられないということでやっているというふうなのが多いのかなと感ずるんです。  そうすると、余り第二種兼業農家みたいな兼で、漁民であるけれども、漁業の不漁によってもそれほど生活に影響を受けないのだというような漁民は、ある程度そういう実態から外すような格好にしないと、加入率を上げるといったって、また本当の災害補償の趣旨というものが、そこの焦点がピンぼけするのじゃないかというような感じを受けます。これはひとつ検討課題として、地域だから、第二種兼業農家がみんな農協に入っている。もっと言えば、地主で百姓は全然やらないで、やみ小作なり小作に出している地主でも農協に入っている。それで農協の組合員になっている。漁協と漁村の関係も大体余り違いはしないのじゃないかというような感じを持っているわけです。今、説明を聞いて。  そういうことになってくると、一つの漁協というのはその地域漁民ということで統括しているのだけれども、漁業補償というのは、零細漁民だけれども、零細漁民としての生活を主としている漁民でないとこの漁災法の適用をしてみても実効性が非常に少ないんじゃないかという感じを持つわけなんですが、その点はどうなんですか。
  225. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 農業と同じように、漁業で生計を立てていない兼業漁家というものもかなり多いわけでございますけれども、その事例的な調査の結果によりますと、そういういわば漁業に余り依存していない漁家、こういうものは現実問題として共済に加入していないという形になっておりますので、そういうごく零細で全く経済的に漁業とのつながりが薄いというものまで全部含んだ形で共済が組まれ、収支がいろいろ議論になるという形じゃございませんので、現実問題としては恐らくそういう対応をそれぞれの漁家が現場ではしているんじゃないかという感じが現段階ではいたしております。    〔委員長退席、理事高木正明君着席〕
  226. 三治重信

    ○三治重信君 そういうことだと、だんだんやっていくと、二五%、二五%と言うと非常に不信感を持つわけだよね、我々としては。そんな漁災法の適用状態でどうするんだという不信感を持つけれども、漁協の組合員である漁民を分析してみるというと、漁災法の適用を受けるほどの所得というものを重要視していない漁民が相当いるんじゃないか、こういう感じを受けざるを得ない。そうじゃなきゃ、こんな二五%と低くていいはずがない、今まで漁協が努力してきている実態を見ると。そうすると、ここに二五%という認識の数字の出し方の誤りが出てくるんじゃないか。それは、二五%というのは計数上は間違っていない。計数上は間違っていないけれども、漁災法による漁業災害補償に値する漁民の程度というものをもう少し検討して、そして漁業によって生活を相当、過半数維持するような漁民でないと対象にはやはりこれは無理だと思うんですよね。そういうことからいけば、そういう漁民の数というものになると、漁協に入っている漁民から見るとずっと減るんじゃないかと思うんですが、農業のように漁民の第一種兼業、第二種兼業というふうな統計は余りないですか。
  227. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 兼業と専業というふうな統計はもちろんあるわけでございますけれども、ただいまの議論に関連いたしまして一つ農業と非常に違っておりますのは、農業の場合には一定の農地でございますとか施設、こういうものがございまして、その規模というものが具体的、はっきりとしているわけでございますけれども、漁業の場合には、その年その年の漁況でございますとか、いろんなことに応じまして、個別の対応で変化というものが毎年毎年非常にあるということで、農業のように規模がまず先にありきという形には必ずしもなっておりませんので、その辺で漁家らしい漁家は何であるかとか、そういう議論になりますと、農業よりもう一つ難しい問題が介在してこようかと思っております。
  228. 三治重信

    ○三治重信君 加入している漁家というものが、 生活の所得の割合で加入率がどうなっているかというものを一遍ぜひ検討して、この二五%というものをぜひ再分析してもらいたいと思います。  それから、漁協の一括加入というのは、全員ではなくて、漁協の中の組合員の加入希望者の三分の二が規約をつくって、そうして賛成すればその一括加入という制度でやれる。だから漁協の組合員が半分でもいいし、あるいは極端なことを言えば三分の二でもいい、こういうことですか。
  229. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) これは、一つの海区を設定いたしまして、そこでやっている漁業者の三分の二という形にしているわけでございますけれども、通常の場合といいますか、多くの場合は漁協の地区がイコール加入区という形になっておる場合が多かろうかと思っております。
  230. 三治重信

    ○三治重信君 そうすると、漁協の一括加入というのは各漁協の中の各区ごとの一括加入、こういうふうに理解していいわけですか。
  231. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 保険の設計でございますとか、あるいは逆選択を防止するということからいいまして、同じ漁業条件にあります広がり、これを区として設定しておりますが、多くの場合にはこういう一定の広がりが漁協の地区そのものという場合が多うございますので、組合員の三分の二という形に相なる場合が多かろうと思っております。
  232. 三治重信

    ○三治重信君 わかりました。  そうすると、漁協の全部をひっくるめてのものではないと。そうでないと、一括加入をやっていてもこれは大変な思想統一というのか、全員加入ということは、理屈はいいけれども、現実に漁協が進めていくとなると、今まですらなかなかまとまらぬのに、これはとてもじゃないが時間がかかってまとめられないじゃないかと、こういうふうに思ったから聞いたわけなんですが、そういう特定区でとの一括加入を漁協が面倒を見る、こういうことであれば非常にいいわけだろうと思うんです。  それからもう一つは、掛金の金額なんですが、どういうように決められているかということなんです。僕が不思議に思ったのは、掛金の補助限度率というものがあって、連合加入だ、義務加入だということによって、また漁獲共済からいくというと各漁業の種類ごと、また三号漁業になると十トンからずっと大型漁船というふうに非常に細かく掛金の補助の率が違えてあるわけなんですが、この中で補助金の率が変わっているのは零細なものに対して国が補助を多くする、こういう思想だろうと思うんですけれども、掛金を決める掛金率というものは、これだけ補助率が違う対象でありながら掛金の決め方は統一しているのか、またこれ別々みんな掛金の決め方が違うのか。これは一号、二号、三号全部掛金の決め方は統一的な決め方になっているのか。    〔理事高木正明君退席、委員長着席〕
  233. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 漁業共済事業基準共済掛金率と申しますのは、原則としては漁業種類ごとに過去十年間の平均的な被害実績というものに着目いたしまして、同期間における被害発生の年ごとのばらつきを若干考慮して安全率を上積みしたものを基礎として決定するということで、考え方なり原則としてはそれぞれに共通した基本原則を打ち出しているところでございます。
  234. 三治重信

    ○三治重信君 次に、共済補償の問題なんですが、ずっと累積赤字が多いのはわかりましたが、最近の事例で、漁済連は六十年、六十一年、六十二年黒字になっている。しかしながら、県漁済組合の方はどんどんどんどん赤字がふえている。同じ掛金の中で掛金が二つに分かれるんだろうけれども、その掛金の分け方が、分配の掛金の上納の仕方は従来変わらないでおる、こういうぐあいになるだろうと思うんだけれども、しかし、県の漁業共済組合の方がどんどん赤字になって、漁済連の方は黒字になる。漁済連の方は経営としては赤字になったり黒字になったりするから現在でも改善の余地があるんだけれども、県の漁済組合はもうどんどん赤字がふえつつあるというが、これの対策はどういうぐあいになりますか。
  235. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 共済制度という長期で収支均衡を図るということからいいまして、短期的にはいろんな変動があるわけでございますけれども、御指摘のとおり、ここのところ連合会段階では黒字という形になっているわけでございます。これは基本的には昭和六十年度以降大きな共済事故が発生したり、あるいは国の保険事故となる漁種というものも一部にはございましたけれども、平均的には事故が小型化してきたということで、全体的に監査した場合に、連合会としての支払いが減少するというパターンをここ六十年から続けてきたということが現在の収支状況になっているわけでございます。  ただ、連合会が黒字になったとは申しましても、五十七年度以降の一定の事業不足金というものを棚上げしてきているわけでございます。この棚上げ分につきまして毎年七億円ずつ償還するということをやっておりますので、実質的には、残念ながらまだ黒字になったといってそう喜べる状態ではないというふうに考えているわけでございます。  しかし、いずれにいたしましても、最近の共済事故の小型化傾向ということが顕著になってまいりまして、従来共済組合の負担について設計してまいりましたものと若干異なった動きが出てきたことは事実でございますので、今回、責任分担関係というものの見直しをお願いしておるわけでございますけれども、これも最近のそういう実態に応じまして改正をさせていただきたいということでございます。
  236. 三治重信

    ○三治重信君 それじゃもう一つ制度の中で長期共済という特約の制度というのがあって、加入した者の九割が長期共済の契約を加入と同時にする、こういうふうなことが書いてあるわけなんですが、もしもそうだとすれば、長期共済的な共済運営をした方がもっと効率的になるんじゃないか。加入したわ、別に共済掛金を決めてやったわ、それからまたさらに二重に共済掛金の契約をしなくちゃならぬ。その長期共済のメリットというのは何かというと、事故がこの四年の中で出ないというと還付金がある、こういうことが書いてあるわけなんで、その還付のメリットで長期の特約をする、こういうふうなことなんです。  その長期契約の特約で還付金を出す制度と補償の事項とはどうも余り——補償するというのはどちらかといえば自然災害や天然災害の方が多いわけなんで、特約してたまたま還付金が出るときには自然災害が少ないから還付金が出るということになるだけのことなんで、しかし、加入者にしてみれば災害が少なければ還付金がもらえるということで長期契約をするということだけれども、共済組合の方からしてみるというと、これは余りメリットは具体的にはないんじゃないか、こう思うんですが、その関係はどうなんですか。
  237. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 共済事業というものを長期固定的に運用するか、あるいはその年々のいろんな漁業情勢というものを反映して刻々見直しをしていくか、その辺の見方につきましてはいろんな見方があろうかと思いますけれども、そもそも長期共済制度というものは五十七年に制度として導入したわけでございまして、基本的には共済契約は漁業実態に即応した補償内容ということに時々刻々することがむしろ適切なわけでございますが、そういう前提の中でも長期共済という形で、ことしは入るけれども来年は入らないというその脱落を防ぎまして、ボリュームとして何とか固定させる努力をしたいということでこういう特約制度というものを設けているわけでございます。  基本は、個別の契約でありながら、期間を長期に、お互いの納得の上で特約をつけていくという現在の選択が共済の運営としてはベターではないかというふうに現時点では考えておるところでございます。
  238. 三治重信

    ○三治重信君 そういうことで、毎年毎年やると脱落が多くなるということからいけば、長期契約方式共済の運営に全部直しちゃえばその方が脱落を心配することもないし、だから、共済の運営 そのものを長期契約の方式に直したらどうか、こういうふうなことを思うわけなんです。  いずれにしても、どうも中身が複雑で、直ちには理解できにくいところで若干の疑問を御質問したわけなんですけれども、こういうので確かに災害補償というのは近代的ないわゆる共済保険制度という装置を使ってやるけれども、零細業者が多い。また、地域によって非常にアンバランスがあるということで、実際の運用はなかなか難しい問題があろうかと思うんですけれども、そうかといって余り各現地ごとに違うから違うからといってその場その場の適用の区分や掛金も違うというようなことをやると、これは何のために全国統一的にやっているのかという、共済制度そのものの意義を疑わしめるような格好にならぬか。できるだけ基本は統一して、全国一律にやるという基本を持っていないと、何か余り現場事故や加入の状況によって支配され過ぎて統一性がなくなってしまっているんじゃないか、こんな気がします。加入促進もいいけれども、共済の運営が統一的に、できれば一律的にやられるような方向に向けられた方がいいと、私はこういう希望を申し上げておきます。  それから、参考人の聴取のところで、漁業協同組合の会長さんが、現在の漁協を二千から七百に合併を促進してもらうやつを国会で通してもらったからやるというふうな御発言があって、二千から七百になると大したものだなと思っておったら、きょう訂正の連絡を受けて、大数で二千二百だろうが二千でもいいわけなんですが、実際の実数は二千二百ということなんだそうですが、そのうちで七百の組合を合併して二百ぐらいにしたい、合計としては二千二百から五百引いて千七百の目標の組合にしたい、こういう御連絡で、それでも七百の漁協を五百整理する、合併させる、こういう目標というものは大変な努力だと思うんですが、これは法案を通したばっかしなんだけれども、何年ぐらいでその五百を合併するかということがわかったら教えていただきたい。  それとともに、私は漁港の整備も、できるだけ農協の中心点の漁協を整備して、そこへみんな魚が揚げられるようにして、小さな漁港は船だまり程度にしていく体制をとらぬと、従来どおりの零細な漁民が零細な漁港で出入りをしている、また、漁災をやっていく上においても、水揚げがはっきりわからぬというのは、余り小さな漁港の市場へ揚げられて分散してしまうからだろうと思うのですが、そうすると、やはり一定の大きなところの魚市場が整備されれば、その近くの小さな漁港からの船も、みんなそこへ魚の水揚げもきちんと決まる。こういうことから、この漁済連の加入の促進からいっても、この漁協の整備と関連して、漁港の売り上げの施設も整備をする中心点を集約化していく、こういうことが必要じゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  239. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 最初の漁協の合併計画でございますけれども、これただいま先生から数字につきまして詳しく御説明がありましたように、現在ございます二千二百組合、これを千七百組合程度まで減らしたいということで、系統自体が目標を掲げまして取り組んでいるわけでございますけれども、これは一応今回の法律延長とも絡みまして、五年間でこの目標を実現したいということで系統自身取り組んでおりますので、水産庁といたしましても、何とかこの目標が実現できますように、いろいろな手だてを講じてまいりたいと思っております。  それから、漁港の整備でございますけれども、考え方といたしましては、ただいま先生からお話があったとおりでございまして、特に一定の地域内に複数の漁港がある、こういう場合には、従来からそうでございますけれども、それぞれの漁獲物の陸揚げをして、流通の拠点になるものなり、あるいは加工業の拠点となるものとあるいは漁業経営上拠点になるものというようなものを判断基準といたしまして、重点的、効率的に集中して投資をし、整備をしてきている次第でございますけれども、今後もいろいろと漁村の状況が変わり、しかも漁協の合併ということになってまいりますと、流通なり加工なり、こういう拠点移動というものも十分考えられますので、そういう実態を反映した形での漁港整備ということに従来以上に意を用いてまいりたいと思っております。
  240. 三治重信

    ○三治重信君 最後に、ひとつここで大臣にもちょっと聞いておいてもらいたいのですが、牛肉の自由化が非常に叫ばれております。その結果としては、牛肉の値段が下がるというふうなのが予想に入ってくるわけなんですが、牛肉の値段が三割なり五割なり下がっていくとすると、まあちょっと大きいかもしれないが、下がっていくとすると、必然的に魚価も上がることがなくて下がる可能性が非常に強くなってくるんじゃないか。そうすると、この魚価が牛肉の値段の引き下げとともに下がる傾向になるというと、これは漁業対策も非常に難しい問題になる。そういうことを、何も外へ対策として出す必要はないけれども、そういう関連性を検討して水産対策をやる準備を、もしもそういう牛肉の価格と関連して魚価の方も非常に抑圧される可能性が強く出てくるんじゃないかという部面もひとつここで検討をして、牛肉は牛肉で一生懸命やっていく、魚はもう全然別だということのないように、ぜひ総合的な御配慮をお願いしたいと思っております。
  241. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 牛肉の方も消費者の利益というものも考えながら生産面、流通面、これに取り組みつつあります。多少テンポが遅いとか時間のかかっておる点はそれなりの難しさがございまして、そういう現状を御理解いただきたいと。しかし、方向としてはそういうことで全力を挙げております。  また、日本型食生活を私どもは消費者のニーズとして、また世論といたしましてもその実効が上がっておるときだけに、その中にあっての肉食との対比において鮮度の高い高品質な物がなるべく安い値段で供給されるようなことは、魚価の伸び悩みという言葉もありますけれども、十分考えておかなければならぬ、心しなければならぬと考えております。
  242. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 きょうは午前からただいままで質疑が交わされておりますので、私が質問したいと思って予定したことが大分ふるい落とされまして困ったなというのが実感でございます。でも、私なりにぜひ認識は確実にしたいと、こういう気持ちでお尋ねいたしたいと思います。持ち時間の関係もありまして、多くを尋ねることはできませんが。  それで、第一点にまず大臣にお願いしたいことは、今回の漁業災害補償制度の改正につきまして、一体その趣旨、そして改正によってどのような効果をねらっておられるのであるか、まずこのことを大臣にお尋ねしたいと思います。
  243. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 漁業災害補償制度は、中小漁業者が災害等によって受けることのある損失を相互に合理的に補てんすることによって、漁業の再生産の阻害の防止と漁業経営の安定に資するということを目的としたものでございます。趣旨説明のときにも提案理由の説明のときにも触れておるところでございます。しかしながら、まだ加入は総体的に低い水準にございまして、共済事故の多発に対応できるような十分な危険分散が図られていない状況にあります。  このような漁業共済事業現状を踏まえまして、漁業実態に即した制度とすることによりまして、加入の普遍的拡大を図りつつ漁業災害補償制度の健全かつ円滑な運営と発展を確保するため制度改正を行うものでございます。
  244. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、この制度に一通り目を通してみますと、特に私の目に映ったのは、加入率が低いということと、それから累積赤字を抱えておるということです。  そこで、お尋ねしたいことは、一体その原因は何であるのか。そして、政府として、農水省として、それに対する対策はどのように考えておられるか、お尋ねします。
  245. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ただいま御指摘ありましたように、加入率がいまだに低いということは 事実でございまして、この加入率の低さというものがひいては累積赤字といいますか、共済全体の収支にも大きな影響を与えているわけでございます。  その中で、加入率の低さの原因でございますけれども、これはいろいろあろうかと思いますけれども、大きく申し上げまして、一つは何といいましても漁業経営の実態がいろいろ千差万別でございまして、個別の漁業経営者からとってみますと、危険率はそれほどでもない、別にわざわざ掛金を払って共済に入る必要はないというような認識を持っている漁業経営者がまだかなりいるということでございます。  それからもう一つは、こういう共済でございますので、一定の保険数理に従いまして仕組まれ、しかも、損害が発生した場合にはそれの認定でございますとか、いろいろな事務手続、体制というものが必要なわけでございますけれども、残念ながらそういう事務手続にこたえ得るような体制が漁協段階で確立していなかったり、あるいはそもそも損害額の認定の基礎になります販売代金等につきましても共販体制がしかれていないというようなことで把握できないということで、その漁協の体制によって加入ができないというようなこともあるわけでございます。  こういう中で、何とか加入の普遍化を図りまして、共済収支そのものを向上したいということで今回、例えば漁協によります契約方式を導入するとか、それにあわせまして加入しやすい制度にするための掛金率の体系を見直すというようなことを加えまして、すそ野をできるだけ広げまして加入率を向上し、この共済事業が長続きするように持っていきたいというふうに考えまして今回改正案をお願いしている次第でございます。
  246. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 今の御答弁に対しても深めていきたい、重ねていきたいという気持ちもありますが、時間の関係もありますので次へ急ぎたいと思います。  次に、中小漁業者の経営の安定を図るために、自然災害や異常気象などによって受ける損失を漁業共済制度によっててん補することが必要であるということは申すまでもありません。だが、沖縄県におきましては、漁業共済事業の加入件数は、漁業協同組合による共販体制の整備が大変おくれておることもあり、そして非常に少なくなっておるわけです。でも今後は、漁業共済事業への加入の促進を図る必要がある。そのためには漁業協同組合による共販体制の強化を図ることもまた必要である。今回の改正により導入される漁協契約方式で、漁業協同組合が中心となって相互助け合いを行うことになっているように、漁業協同組合は漁業共済事業の活性化のために重要な役割を果たしておるということ。  そこで政府は、沖縄県での漁業共済事業の加入の促進を図るために、漁業協同組合による共販体制の強化を含めてどのように考えておられるか、お聞きいたしたい。
  247. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ただいま先生から御指摘ありましたように、沖縄県の漁協の共販体制は、その他に比べまして若干見劣りがしていることは事実でございます。  こういう販売活動というものは、漁協の基幹的な活動の一つでございまして、今後ともさらに漁業生産活動に対する指導等を通じまして漁業者との結びつきを強化することによって共販率を向上させる。そしてそれを通じて共販体制を確立していくということが重要でございます。そういう運動に加えまして、漁協の経営基盤、事業基盤そのものを何とか強化していくということで、先般通過さしていただきました漁協合併助成法、これに基づきまして漁協の合併等を推進いたしまして販売事業の基盤を強化する。それからさらには、消費地での事業活動というようなものを含めまして流通分野への取り組みも従来以上に充実していただくということを通じまして共販体制を整備し、それがひいては共済の加入の促進に役立つように、我々といたしましてもいろんな手だてを講じてまいりたいと考えております。
  248. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 大事なことを述べていただきましたが、問題は今おっしゃったことに対する実行、より早く、より確実に実現してもらうということが最も大事でありますので、特に沖縄の場合にはそのことは私が申し上げるまでもありません。ひとつ理解と愛情と誠意をもって早く実現してもらうように重ねて申し上げておきます。  次に、水産業を取り巻く情勢が大変厳しいということは大臣初めたびたび繰り返されたお言葉であります。そういう中での漁業協同組合の果たす役割は、任務はますます大きくなっておる。また、漁業協同組合の行う事業に対するニーズも組合員の価値観の多様化に伴って複雑多岐になっておるということも事実であります。  しかし、沖縄県では、漁業協同組合の事業基盤が、また申し上げるわけでありますが、一、二を除けば大変脆弱で、すなわち全国平均に比べて正組合員数が少なく、準組合員数がはるかに多い。また資産規模は全国平均の四七%にすぎません。その構成を見ても自己資本の比率が極めて小さい。このため経済事業や指導事業などの面で不十分である。当然であります。この現実に対して、政府は沖縄県の漁業協同組合の事業基盤の強化を図るためにどのように取り組もうとしておられるのか、ひとつ明確にお答え願いたい。
  249. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 漁業協同組合全体を見てみましても、ここのところの金融自由化の進展でございますとか、あるいは水産物流通消費の多様化というようなことで、いろいろ取り巻いております環境というものが激変してきているわけでございますけれども、こういう激変に対応しながら漁協が組合員の要請に十分こたえていく、このためには経営基盤を何とか強化する必要があるわけでございます。  こういう中で、特に沖縄の漁協につきまして、ただいま先生から具体的に数値で御説明ございましたように、一般に比べてもう一つ弱いという深刻な問題を抱えているわけでございます。何とか経営基盤を強化するために、先ほどもお話ししましたけれども、一つは何といいましても零細な漁協の合併というものを積極的に推進していくということが一つでございますし、それから現に欠損金を抱えた漁協もございますので、こういうものにつきましては現在行っております漁協信用事業整備強化対策ということで、長期低利の借りかえ融資ということで経営基盤の建て直しを図るということに加えて、行政だけじゃなくて系統上部団体、こういうものでも指導なり検査をきめ細やかにやっていくというような、いろんな努力を積み重ねまして、何とか沖縄の漁協の経営基盤の強化というものをできるだけ早く達成したいと思っておるところでございます。
  250. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、内容については申し上げませんが、実はきょうのこの時間でぜひお尋ねしたいという問題がございます。それは、水産庁長官、もうこれだけ申し上げれば御理解願えると思いますので、それは一応棚上げしておきたいと思います。時が来れば必ずこれを取り上げていかなければいけない沖縄の漁業問題でありますので、ひとつお含みを願いたいと思います。  次に、加入率の低下ということで表の上から、資料の上からお尋ねしたいんですが、全般的に加入率が低いということははっきりいたしております。ところが、低い上にも漁獲共済養殖共済と漁具共済のこの三つを比較しますと、特に漁具共済がさらに低率にある。これは何が原因でしょうか、どういうわけでしょうか。よく理解できませんので、ひとつお聞きいたしたいと思います。
  251. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 漁具につきましては、ここのところの漁獲法のいろんな変遷でございますとか、漁具自体の品質の改善でございますとか、こういうことが積み重なりまして共済事故が非常に少ないということで、わざわざ漁具共済に入ることのメリットというものが、特定の定置でございますとか、こういうものを除きまして現在乏しくなってきたという点がございまして、加入率がほかに比べましてかなり低くなっているというのが現状かと思っております。
  252. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それでは最後になりますが、これは質問というよりも、これから申し上げることに対する大臣のコメントが伺えれば大変幸いだと思います。  実は、去る十日、宮原参考人、小林参考人、長谷川参考人の御三名の御意見を拝聴いたしました。それを聞きながら、そして私なりに感じた点が次の点でございます。  まず、我が国の水産物輸入に対する点から、円高ドル安が原因して輸入に拍車をかけておる。それから二百海里漁業規制の強化によって輸入が多くなっておる。そうしてまた、漁獲量は減少しておる。こういったことを述べておられたんです。そして今度は、漁船の問題は大型漁船から小型化へ。漁業技術の向上あるいは漁具の発達といいますか、こういった点いろいろあるわけですが、漁具をあるいは制度を充実するということは、結論申し上げると、漁業を盛んにしてたくさん魚をとることである。ところが、このことに対して、たくさんというのもこれは限度があるわけですが、乱獲、みだりにとるということは問題がある。こういうことを、矛盾するようなことを私なりに感じたわけであります。そこで、今度は漁場の問題、漁種の問題、国民の魚志向の問題、流通機構の問題、こういった点から総合的に考えてみる必要がある。特に流通機構の整備ということが、これは日本だけでもないでしょうが、国際的な、あるいは特に日本においては流通機構を整備強化するということが今後の漁業問題を解決する上に非常に重大な関係があるのではないかと私なりに思った次第であります。  以上申し上げまして、これは私が御三名の参考人の話を聞きましてメモった結論でございますが、大臣の御所見あるいは長官のまた御意見、お聞きできれば結構だと思います。よろしくお願いします。
  253. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) まさしく現在の水産が抱えております問題につきまして、総括的なお話があったわけでございます。  全体として輸入がふえてき、それから国内資源の問題がある。そういう中で、魚をたくさんとることが経営には役に立つけれども、資源問題なり乱獲という相矛盾した問題の中で、いろんな悩みを抱いているわけでございます。  その中で、何といいましても長期的にどうやって漁業というものをもっていくかということで、ここのところよく言われております管理型漁業といいますか、日本自身が持っている二百海里を豊かな海として再構築し、これを永続できる形でみんなが納得し合って漁業を続けていくという体制をどうやって一日も早くつくっていくかということが肝要かと思いますし、それからここのところの流通消費というものを見てみますと、単に漁業政策が魚をとるということだけじゃございませんで、そこから先の流通、加工、消費、これが全部積み重なりまして初めて漁業政策は完結するわけでございます。  残念ながら、そういう流通とか加工とか消費の段階につきましての行政手だてというものは必ずしも十分に今まで整備されていないという嫌いがございまして、先般も加工施設資金というものにつきまして御審議をいただいたわけでございますけれども、これから限られた漁場で限られた魚をどう上手にとって、これに付加価値をつけて消費者に安定的に供給していくかということについては、我々自身もいろんな立場からいろんな知恵を出していかなければならないということを、ただいまの先生の総括的なお話しから感じたところでございます。
  254. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 今長官から申し上げたとおりでございます。  ただ一点、沖縄という地域性を考えますと、私なりにもう一点つけ加えさせていただくならば、海洋レジャーと沿岸漁業との関係、これもまた重大な関心を持っていかねばならぬ、こういうことでございます。
  255. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 私は、まず冒頭に佐藤農林水産大臣に、今後の水産行政の展開についての所信をお尋ねいたします。  今日の我が国漁業を取り巻く情勢はまことに厳しいものがあります。明治以来百年、世界一優秀な漁獲技術や漁具を駆使しての乱獲は、海洋生物資源の枯渇を招き、不漁は慢性的となり、さらに、沿岸における環境汚染に加えて二百海里問題や北洋における海外漁場の制約が飛躍的に増大する等で日本漁業は袋小路に追い込まれた状態にありますと言っても過言ではございません。その上、私自身の考え方として致命的な問題がもう一つあります。  それは、商業捕鯨の禁止が決議されましたIWC総会やガット総会に見られますように、日本を理解する世界の友人がないということで、西欧諸国と比べてみてもはるかに孤立した国になっており、その上、最近巨額の貿易黒字を使って外国の企業や不動産を買いあさる日本人の心ない動きは新たな疑惑の種をまき、世界から疑いの目を向けられておりますのが現実であります。だが、日本は世界から疑いの目を向けられておることさえまだ気がついていないようだと、前西ドイツの首相シュミットさんが先日日本においでになって、記者のインタビューに答えておいでになります。この現実の中で、日本の水産業を守り発展をさせ、農民の生活を支える施策はどのようにあるべきか、大臣の所信を承りたいと存じます。
  256. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 極めて重要な、今日の急速な国際化の時代に対応しての基本的考え方をただされたように思います。私も実はインターアクション・カウンセルに関係をいたしておりまして、シュミット西独元首相のそういう認識については時として一度ならずお伺いをしたことがございます。やはり、むやみやたらに目に余る行為だと指摘されるようなことがあったのでは国際化の中で日本が孤立をする、そして日本の真意が伝わらない、そして日本がいわゆる日本たたきということにされてしまう。日本さえたたいておれば気は済むというような雰囲気さえ国によっては出てくるのではないかということを懸念いたしておる一人でございます。そういう認識を、自由社会であっても社会秩序というものを国際秩序と連動させていかが考えるかということで、特に真剣でなければならぬとかように思っております。
  257. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 我が国漁業は大部分が中小漁業者によって営まれており、一般的に中小漁業者は生産性が低く、自己資本比率も低い等脆弱な経営体質を持っております。このために、漁業共済制度は中小漁業者の経営安定のための制度としてその充実が期待されると言っておいでになります。私もこれには異論はございません。にもかかわりませず、共済制度への加入率が二三%と極めて低いのはなぜか。さらに、今回の制度改正では共済事業の安定に不可欠な加入の促進を図ることに重点を置いておいでになります。これにも異論はございません。  にもかかわりませず、この改正により加入率の向上が見込めるのだろうか、この改正が制度の安定にどの程度寄与できるのだろうかの不安の声はやはり絶えませんが、政府はこの共済制度の不振の現状をきょうも何回かお答えになっておられます。けれども、私はまだ本音が出ておらないと思います。こんな漁業の漁獲の停滞しておる中にあっても先見性のある優良な漁業者は結構漁獲を上げておるのだと思います。だからこそこの人たちは共済に入りたがらない。しかし、共済という互助制度の成立要件から考えてみますと、こういう人こそ入れなければならない。こういったことでいろいろ苦慮しておいでになるのだと私は考えておりますが、ただいまの質問に対して政府としてはどのような現状認識をしておいでになりますのか、まずそれをお尋ねいたします。
  258. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) まず、残念ながらこれだけ低い加入率が続いているということの原因でございますけれども、一つはただいま先生からお話があったことにもある意味では関連するわけでございますが、漁業経営の実態なりというものが相当それぞれによって違っておりまして、中には危険の程度というものが余り大きくございません で、それなら別に共済掛金まで払って加入する必要はないという立場なりあるいは共済に対しての認識の薄さということが一つ基本にあることはこれは否定できないところでございます。  それに加えまして、やはり共済制度でございますので、例えば損害認定でございますとか、こういうことについていろいろな手続なり事務というものが必要になってくるわけでございますけれども、場所によりましてはそういうものを担当すべき漁協の共販体制が整備していないというようなことで、全体として共済に加入しようにも加入できないというようなところも散見されるわけでございます。そういう中で、今回何とか共済加入率を上げまして共済事業全体の今後の発展を図ろうということで、例えば漁協の一括加入方式、それから掛金率体系の見直しというようなことを行ったわけでございますけれども、これがどれだけ加入促進に直接的に役立つかということにつきましては、まさしく今後の我々を含めまして関係者の努力、運動にかかっているわけでございます。  これにつきましては、系統団体におきましてもこれがいわば正念場であるということで関係漁業者に対するPRなり説明に全力を挙げる体制を系統挙げてとるという方向にございますので、我々といたしましても何とかそういう動きを支援いたしまして、今までなし得なかった加入率の少しでもの引き上げを実現してまいりたいと考えているところでございます。
  259. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 ただいまも長官からお答えがございましたが、今回の改正に基づきます加入率向上を期待できる目玉商品となる改正点は、先日の参考人の意見陳述から判断いたしましても漁協契約方式の導入のようであります。その理由とするところは漁業協同組合も自分の事業だという認識が出てくること及び掛金が安くなること等が系統団体の責任者から挙げられておりましたが、その中で一部気になる言葉がございました。  それは、どこにでもあることですが、へそ曲がりがいて事業の推進が阻害されておったがこれで抑止される意味の発言でございました。へそ曲がりとはひねくれた人とか、殊さらに人と同調しない性質、態度を言うようでありますが、今日、一般的に意見を言い、自己主張をする人はそのような言葉で片づけられがちでありますけれども、そのへそ曲がりと言われている人から見ればへそ曲がりと言っている人がへそ曲がりであるかもしれないし、多くの場合長い社会生活の中でその人は自己主張をしなければならない原因となる生活経験を持っておることが多いのです。責任ある立場に立つ人はそこを見抜いていかなければ組合の体質強化もできません。  そこで、私は次の点お尋ねをいたします。  一つは、漁業共済制度においては、制度発足当時の論議の中でも明らかになっておりますように、個々の漁業者が任意に加入することを原則としております。そこへ今回の漁協契約方式の導入でありますが、漁業共済制度への漁業者の加入のあり方についての基本的な考え方はどうなっておりますのか、これをただしたいと思います。  その次は、漁協契約方式の導入により、どのような新しい面で加入促進が期待できますのか。  その次は、漁協契約方式の導入は、結果的には優良な漁業者がへそ曲がりの名のもとに組合加入の自由を奪われ、強制的に加入させられ、かえって不満を内部で増幅させるようなことが起こりませんのか、そういったことのない保障はありますのか、その辺のところについてお答えをいただきたいと思います。
  260. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) まず、共済の加入につきましての基本的スタンスでございますけれども、やはり共済事業というものが漁業者なり系統組織みずからの協同事業といいますか互助事業ということでスタートし定着してきておりますので、これはそれぞれの方々の自主的な判断、任意性というもので入っていただくということが長期的に共済事業を長持ちさせるゆえんでもございますし、これが漁業者の利益にも合致するというふうに基本的に考えているわけでございます。  そういう中で、今回こういう漁協契約方式を導入したわけでございますけれども、これは御承知のとおり、一定の加入区ことに三分の二以上の同意によりまして、一定の規約というものを定めまして、そしてそれに賛成した方々、それに乗ってきた方々が入ってくるという仕組みでございまして、これはただいまの先生のお話の中にもございましたように、漁協が漁協みずからの仕事としてこれに取り組むということが制度上も位置づけられたということが一つ大きな効果を生むものと考えておりますし、それから今回こういう一括加入方式に並行いたしまして掛金率体系の見直しということも行っておりますので、そういうメリットというものもございますから、我々といたしましては、系統全体の熱意ある取り組みに加えまして、こういう制度上のメリットということの効果を足しまして相当の効果は加入促進に出るものと思っておりますし、心から期待しているところでございます。  それからさらに、こういう一括加入の弊害といいますか、その結果むしろ個人の意思が尊重されないんじゃないかという御疑念もあったようでございますけれども、これは先ほど申しましたように、そういう規約をつくることに参加するかしないかということはそれぞれの方々の自主的な判断に任せておりまして、そういう判断を引き出すべく漁協が当事者意識を持ちまして積極的に対話なり説得をしていくということが今回のねらいでございますので、この制度ができたからといって強制にわたることはございませんと思いますし、またそういうことがないように我々といたしましても見守ってまいりたいと思っております。
  261. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 漁業共済事業運営の将来の見通しについてお尋ねをいたします。  今回の改正では、近年の共済保険事故の発生実態を反映して三者、すなわち元受け、再共済保険等各機関の責任分担関係について現行の責任分担の基本は維持されつつも新たな比例部分を設ける等その見直しを行っておいでになります。結果的には漁済連の負荷が重くなっているようでありますけれども、三者のいずれに赤字を押しつけるかだけで、根本的な解決策にはならないと思います。  導入される比例部分にはどのような意味がありますのか、改正の結果は、漁業共済組合、漁済連、さらには国の各収支はどのように変化するのかお尋ねをいたします。  なお、今日、共済事故原因としては、漁業者個人はもちろんのこと漁業協同組合の対応では何ともならない国際的な政治・経済問題にかかわる規制強化などさまざまな問題の多発が予測されておりますが、これらから生ずる漁業災害補償についての国の責任についてはどのように考えておいでになりますのか、あわせて承りたいと存じます。
  262. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 共済事業の収支状況全体としても、いろいろ問題はもちろんあるわけでございますけれども、ここのところの災害の発生状況の変化に対応いたしまして、それぞれの段階別での収支状況につきまして若干過去と違ったトレンドというものが出てきているわけでございます。それに対応いたしまして、今回単位組合と連合会それから連合会と国の特別会計、こういうところでのそれぞれの責任のあり方を見直すことにしたわけでございますけれども、この基本につきましては、先生からただいまお話がありましたように、比例部分を導入するというようなことが一つの柱になっておるわけでございます。  この結果、どういうふうに今後収支が動いていくかということでございますけれども、お話がありましたように、赤字のっけかえということでは制度全体として何の意味もないわけでございまして、赤字全体につきましては先ほど来の加入促進でございますとか、いろいろな制度の変革ということを通じまして全体の収支を立て直していく。それと並行いたしまして、段階別の責任保有というものを現在の漁業実態なり、災害発生状況に適合したものに直していくということでございますけれども、当面すぐ収支にどういうふうに具体的 に影響するかということはなかなか推計困難でございますが、少なくとも長期的には収支が均衡するという立場でこういう設計を行っておりますし、その効果が十分に出るものというふうに期待しているわけでございます。  それから、国際的にいろいろと二百海里でございますとか、二国間あるいは多国間のいろいろな漁業交渉の結果、漁場から出てくる不幸な事態がことのところ多いわけでございますけれども、こういう国際的な変化というものは、言ってみるとそれぞれの国の間の条約等に基づく折衡の結果でございまして、これそのものを保険事故ということにすることにつきましては、保険技術的あるいは制度的な仕組みからいいましてなかない難しいかと思いますし、こういう国際的な関係での激変というものにつきましては、従来も減船補償でございますとかいろいろな形で別途の構造政策というもので対応してきておりますので、今後ともそういう構造政策、いろいろな施策を含めましてそういうものにつきましては対応してまいりたいというふうに考えております。
  263. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 最後に、我が国の漁業の先行きについてお尋ねをいたします。  残念ながらまことに暗いものでありますと思います。例えば、一つは、漁業資源は枯渇の一途をたどっております。一つは、漁業環境は悪化するばかりです。一つは、政治、経済に支配される海外漁場の制約は、増加こそすれ減る見通しはございません。  以上のとおりで、漁獲の減少は魚価の高騰をよし招くといたしましても、畜産物との競合から限度があります。このままでは未来はありません。したがって、緊急避難的な措置として今回の共済制度の改正は必要だと思いますけれども、制度の改正だけでは対応はできませんと思います。  先日の参考人の意見陳述における長谷川教授の意見には啓発をされました。すなわち、明治以来百年、漁獲能力の一方的な拡大、優良漁場の一方的な拡大だけで対応してきた日本漁業の過去の歴史の反省の上に立って、漁業は天然生物資源を対象とした特殊な産業であって、労働力や資本の投入に見合って生産量が上がるどころか、逆に減少するという特性を持っているところに着目をしなければならないことを指摘され、今までの乱獲体質から脱皮することが肝心であり、難しいこととは思うけれども、今こそ漁業者の合意に基づく自主的管理型漁業に移行すべきときだ。  今回の漁災法改正も加入拡大のためとの説明ではありますけれども、資源管理型漁業促進のための漁災法の改正だと受けとめたい旨の警告には共感を覚えました。このことは先ほど質問もございまして長官は肯定的な答弁をされましたし、系統団体間にも機運がかなり醸成されておるとの意見の表明もありました。漁業共済事業制度として今日のように続けられております今のうちにこそ、みんな倒れてもおれだけは生き残るという個別経営優先の方針ではなく、全体が生きられるという全体的な計算に立った漁業、すなわち資源管理型漁業への移行を急ぐべきだ、このように思いますけれども、改めてもう一度お答えをいただきたいと存じます。
  264. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ただいま先生から御指摘があったとおりでございまして、我々といたしましても、日本の漁業が将来にわたって永続していく。そのためには、何といいましても資源管理型漁業というものをどうやって定着させるかということが当面の急務かと思っているわけでございます。  そのためには、例えばハードの仕事といたしまして、種苗の放流でございますとかあるいは漁場の造成というような物的な仕事も積極的に推進する必要がもちろんございますけれども、それ以上に、やはりみんながわかり合う、全員が長く魚をとり続けるような漁場をどうやってつくっていくか、あるいはどうやってそういうとり方をするかということにつきましてそれぞれの地域でコンセンサスをつくっていただくということが緊要でございまして、そのためには、当方といたしましても六十年度から地域営漁計画というものを全国六百カ所ほどでつくらせるというような助成もいたしておりますので、今後ともそういう方向で何とか限られた資源を再生し、しかも、未来にわたって上手に活用していくという全体のコンセンサスづくりに全力を挙げてまいりたいと思っております。
  265. 山田耕三郎

    山田耕三郎君 以上で終わります。
  266. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  267. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  漁業災害補償法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  268. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  高木君から発言を求められておりますので、この際これを許します。高木君。
  269. 高木正明

    ○高木正明君 私は、ただいま可決されました漁業災害補償法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合、二院クラブ・革新共闘の各派及び各派に属しない議員山田耕三郎君の共同提案に係る附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     漁業災害補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   我が国漁業をめぐる厳しい情勢の中で、漁業災害補償制度は、今後とも漁業生産の確保と漁業経営の安定に重要な役割を果たすことが期待されている。  よって政府は、本制度と密接な関連を有する構造政策、金融政策、価格政策漁業施策を強力に推進するとともに、本法の施行に当たり、次の事項の実現に万全を期すべきである。  一 漁業災害補償制度の健全な運営を確保するためには、加入の普遍的な拡大が不可欠であることにかんがみ、漁業実態に即しかつ漁業者の共済需要を踏まえた適切な補償水準及び掛金率を設定する等魅力ある制度の確立に努めるとともに、政府及び地方公共団体が行う融資措置等の経営対策と本制度との有機的な運営に努めること。  二 漁協契約方式の導入に当たっては、漁業者等への本契約方式の周知徹底を図るとともに、共済事業推進体制の充実に資するよう漁業協同組合及び漁業共済組合の指導・援助に努めること。   また、漁協共販事業を一層推進し、共済事業実施のための条件整備を図ること。  三 漁村社会の変化等にかんがみ、本制度漁業依存度の高い経営の安定に十分効果を発揮しうるよう対象漁業者の範囲について検討するとともに、漁獲共済において義務加入の不成立が加入率低迷の一因となっていることに対処し、その成立促進のための措置を講ずること。  四 基準漁獲数量の設定による共済金支払方法の特例を設けるに当たっては、共済金の減額により漁業の再生産が阻害されることのないよう十分配慮すること。   また、特例措置の対象となる漁業の種類は、漁業実態等を踏まえ、さけ・ます大型定置漁業に限るとともに、魚価の下落等さけ・ます大型定置漁業に係る共済事故多発の原因をさらに究明し、適切な対策を講ずること。  五 円高の進行、諸外国水産物輸出意欲の高まり等に伴い水産物輸入が急増している状況にかんがみ、水産物の国内需給を踏まえた秩 序ある輸入に努めること。  六 国、連合会、共済組合の段階別責任分担割合については、本制度の性格を踏まえつつ、それぞれが抱える累積赤字の状況及び共済事故発生状況に即し適宜・適切に見直しを行うこと。  七 養殖技術の発展に伴い多様な魚種の養殖業が定着している現状にかんがみ、共済需要に応じ共済対象拡大を図ること。また、地域共済事業に対する公的援助及び同共済事業として定着した事業共済事業への移行の在り方について検討すること。  八 特定養殖共済の本格実施に伴うのりの養殖共済の廃止については、本則共済への加入の現状を踏まえ、十分な経過措置を設けて円滑に移行すること。  九 漁業経営の合理化の必要性、漁業関係共済保険事業の運営の現状等にかんがみ、総合的な漁業関係共済保険制度の確立に向けてその統合・一元化を検討すること。   右決議する。  以上でございます。
  270. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) ただいま高木君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  271. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) 全会一致と認めます。よって、高木君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの附帯決議に対し、佐藤農林水産大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。佐藤農林水産大臣
  272. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を尊重し、十分検討の上善処してまいりたいと存じます。
  273. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  274. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  275. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) 次に、農村地域工業導入促進法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。佐藤農林水産大臣
  276. 佐藤隆

    国務大臣佐藤隆君) 農村地域工業導入促進法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  農村地域工業導入促進制度は、昭和四十六年に発足して以来、農村地域への工業の導入を積極的かつ計画的に促進するとともに、農業従事者がその希望及び能力に従って、その導入される工業に就業するための措置を講ずること等により、農業と工業との均衡ある発展及び雇用構造の高度化に寄与してまいりました。  しかしながら、我が国農業をめぐる状況が厳しさを加える中で、農業構造の面では、経営規模の拡大は一定の進展が見られるものの依然として立ちおくれており、また生産性の向上もなお不十分な実情にあります。今後、我が国農業の健全な発展を図っていくためには、農業構造の改善を可能な限り促進することが急務となっております。  これらの課題に対処するためには、農業生産基盤の整備等農業構造の改善を促進するための各般の施策の推進とあわせ、農村地域における就業機会の増大を図ることが不可欠であります。このため、産業構造の変化も踏まえながら、農村地域において農業従事者の他産業分野への就業機会の確保をより強力に促進することとし、この法律案を提出することとした次第であります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、農村地域への導入対象業種として、現行の工業のほか、道路貨物運送業、倉庫業、こん包業及び卸売業を加えることとしております。これに伴い、法律の題名を農村地域工業等導入促進法に改めるとともに、主務大臣が定める基本方針、都道府県が定める基本計画等において、工業等の導入に関し定めるべき事項を充実することとしております。また、新たに導入対象となる業種については、その導入を円滑に促進するため、税制上の優遇措置を適用するとともに、農林中央金庫からの資金の貸し付けの対象とすることとしております。  なお、これらに関連して、運輸大臣を新たに主務大臣とすることとしております。  第二に、都道府県が実施計画を定めることができる場合を拡大し、工業等の導入の進んでいない複数の市町村の区域において広域的見地からその導入を促進するための計画を定めることができることとしております。  以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  277. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) 次に、補足説明を聴取いたします。松山構造改善局長
  278. 松山光治

    政府委員(松山光治君) 農村地域工業導入促進法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を補足して御説明申し上げます。  本法律案を提出いたしました理由につきましては、既に提案理由説明において申し述べましたので、以下、その内容について若干補足させていただきます。  第一に、農村地域への導入対象業種の拡大であります。現行の法律は、工業を農村地域に積極的かつ計画的に導入し、農業従事者がその導入される工業に就業することを促進しておりますが、これまで以上に農村地域における安定的な就業機会の確保を図るため、産業構造の変化等を踏まえ、工業に加え、新たに道路貨物運送業、倉庫業、こん包業及び卸売業を導入の対象とすることとしております。  このため、主務大臣が定める基本方針、都道府県が定める基本計画等においては、工業及び新たに導入対象となる業種について、その農村地域への導入の目標、農業従事者の就業の目標等を定めることとするほか、新たに共同トラックターミナル等の共同流通業務施設の整備に関する事項についても定めることとしております。  また、新たに導入対象となる業種については、現在、工業に適用されている税制上の優遇措置を適用することとしております。  その一は、豊用地等の所有者が、これを実施計画で定める工場用地等の用に供するため譲渡した場合に、当該譲渡に係る譲渡所得について所得税を軽減できることとするものであります。  その二は、実施計画に従い導入された企業に対し、事業用資産の買いかえの場合の課税の特例、減価償却の特例を適用することであります。  その三は、地方公共団体が事業税、不動産取得税または固定資産税の課税免除または不均一課税を行った場合に、地方交付税による補てん措置を適用することであります。  また、金融上の措置として、農林中央金庫が、工業のほか、今回導入対象となる業種の用に供する施設に対し、新たに資金の貸し付けができることとしております。  第二に、都道府県が実施計画を定めることができる場合の拡大であります。現在、都道府県は、自然条件その他の立地条件から見て周辺の農村地域への工業の導入の拠点となると認められる地区について実施計画を定めることができることとなっております。これに加え、工業等の導入が進んでいない複数の市町村の区域において広域的見地から工業等の導入を促進するため、当該広域の市町村における農業従事者が導入された工業等に相当数就業することが見込まれることその他の要件に該当する場合には、新たに都道府県が実施計画を定めることができることとしております。  以上のほか、所要の規定の整備を行うとともに、関係法律について所要の改正を行っておりま す。  以上をもちまして、農村地域工業導入促進法の一部を改正する法律案の提案理由の補足説明を終わります。
  279. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) 本案に対する質疑は後日に譲ります。     ─────────────
  280. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  農村地域工業導入促進法の一部を改正する法律案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  281. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  282. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十五分散会