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1988-03-25 第112回国会 参議院 農林水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月二十五日(金曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  三月二十五日     辞任         補欠選任      一井 淳治君     本岡 昭次君      八百板 正君     久保田真苗君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         岡部 三郎君     理 事                 高木 正明君                 水谷  力君                 宮島  滉君                 稲村 稔夫急                 刈田 貞子君     委 員                 青木 幹雄君                 上杉 光弘君                 浦田  勝君                 北  修二君                 熊谷太三郎君                 鈴木 貞敏君                 初村滝一郎君                 星  長治君                 本村 和喜君                 一井 淳治君                 久保田真苗君                 菅野 久光君                 本岡 昭次君                 及川 順郎君                 諫山  博君                 三治 重信君                 喜屋武眞榮君    衆議院議員        農林水産委員長  菊池福治郎君    国務大臣        農林水産大臣   佐藤  隆君    政府委員        農林水産政務次        官        吉川  博君        農林水産大臣官        房長       浜口 義曠君        水産庁長官    田中 宏尚君    事務局側        常任委員会専門        員        安達  正君    説明員        公正取引委員会        事務局取引部景        品表示監視課長  本城  昇君        厚生省生活衛生        局食品保健課長  大澤  進君        資源エネルギー        庁公益事業部業        務課長      清川 佑二君     ─────────────   本日の会議に付した案件原材料供給事情変化に即応して行われる水産加工業施設改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出) ○漁港法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○漁港法第十七条第三項の規定に基づき、漁港整備計画の変更について承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○漁業協同組合合併助成法の一部を改正する法律案衆議院提出)     ─────────────
  2. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  原材料供給事情変化に即応して行われる水産加工業施設改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案につきましては、既に趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 菅野久光

    菅野久光君 初めに、先日委員会北洋はえ縄刺し網等救済対策についてお尋ねをいたしましたが、時間がなくて十分にお聞きすることができませんでしたので、重ねてお尋ねをいたしたいと思います。  まず、先日もお聞きいたしました緊急融資対策、これについては、私がなぜこうおくれたかという質問に対しまして、長官が、今までよりは相当迅速にやったつもりだというふうに、胸を張ったかどうかまでは私は見えませんでしたけれども、そういう答弁がありました。一生懸命やったという自負があったからそういう答弁になったんだというふうに思います。業者の待つ身になって、そういう立場で一日も早くという気持ちを私は言ったわけですが、これからも胸を張って言えるように、ひとつ関係者立場に立った迅速な対応を心からお願いを申し上げたいということを、まず申し上げたいというふうに思います。  そこで、アメリカの二百海里の問題を含めた割り当ての確保、これが困難だということでこういう措置をとったんだろうとは思いますけれども、全くだめだというふうに判断をされておるのか、今後さらに要請を続けるということで進めていくのか、現状と今後の見通しについてお答えをいただきたい、このように思います。
  4. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 一月末に、正式に外国に対するアメリカ二百海里内の漁獲割り当てゼロということの決定を見たわけでございます。その際にも、自国漁民漁獲努力の結果、自国内割り当てが十全に消化されなかった場合には外国に対する割り当てについてもできるだけ早急に考慮するという留保がつけられておりますので、我々といたしましては何とかそれに期待いたしまして、少しでも望みがあればその望みに託して外交折衝というものをこれから積み上げたいとは思っております。現在のいろんな状況を見てみますと、非常に困難も多いということも率直に申し上げて事実でございますけれども、これから漁期にかけまして何とか最善の努力を尽くしてまいりたいと思っております。
  5. 菅野久光

    菅野久光君 今のアメリカ漁業、まあ漁業だけじゃないんですけれども、彼らの漁業に対する態度から見て極めて難しい、ほとんどゼロといいますかね、残念ながら、努力はされても見通し真っ暗やみだというふうに考えていいのではないか。努力をされて何とかなるんじゃないかという気持ちをまだお持ちになっているのかどうか、その辺はいかがでしょうか。
  6. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 正直申し上げまして、心の片隅にはそういう期待を持っておりますけれども、客観的に見て非常に困難が多いということは残念ながら事実かと思っております。
  7. 菅野久光

    菅野久光君 仮に、幾らか割り当てがあったとしても、例の調査捕鯨に対するPM法の発動などということをいろいろ言われていることで、本当に大変な漁業外交といいますか、そういうことだというふうに思わざるを得ないわけです。  そこで、この海域で操業していた漁船あるいは乗組員、そういったような方々対策の問題でありますが、私が一月二十九日の代表質問のときにも大臣から御答弁がありましたが、「ソ連海域でのはえ縄漁業共同事業拡大に向けて民間交渉を積極的に支援してまいりたい」というふうに答弁をされました。このソ連との共同事業のための交渉は、去る二月二十三日から二十七日まで行われたんですね。しかし、この交渉では妥結には至らなかったというふうに聞いております。今回の交渉がうまくいかなかった原因をどのように見ておられるのか、それをお答えいただきたいと思います。
  8. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 従来から先生から御意見がございまして、我々としても何とか西カムチャッカを初めとする日ソのマダラ共同事業、こういうものを成熟させたいということでいろんな努力をしてきているわけでございますけれども、先般行われました民間ベースでの交渉では、残念ながら漁獲量であるとかあるいは区域、こういうものについて相互の主張にかなりまだ隔たりがございまして、現時点では成約に至ってない次第でございます。
  9. 菅野久光

    菅野久光君 今後交渉を続けるにしても、民間交渉とはいえこれは外交交渉ですね。したがいまして、政府の強力な後押しがどうしても不可欠だというふうに思いますが、そういう点で政府はどのように対処される方針か、お伺いいたします。
  10. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) これは基本的には民間ベースの話ではございますけれども、ただいま先生からもお話ありましたように政府としての後ろ盾後押しということも肝要でございますので、我々といたしましては、例えば昨年末に行われました日ソの地先沖合交渉、これでは一九八八年におきましてもマダラはえ縄共同事業というものを継続するということについて基本的に政府間での確認ということを行っているわけでございます。  それからさらに、先般行われて現在中断しております日ソ・サケマス交渉、この場におきましても共同事業の発展、拡大につきましてソ連側の配慮を求めるということを、場違いではございましたけれども、サケマス交渉の場でも当方からはっきりと申し上げているわけでございます。  それから、あとは現地なりいろんな接触の機会、チャンネルというものもございますので、ありとあらゆる段階を活用いたしまして、何とか支援を申し上げてまいりたいというふうに考えております。
  11. 菅野久光

    菅野久光君 昨年の西カムチャッカで行われました、今長官も言われたマダラ共同事業、これは価格トン当たり二万六千円から三万三千百円で、アメリカ入漁料約二万円に比べてかなり高い、そういうことで採算の面で大きな問題があったわけです。しかも、このときは漁労、加工分野への技術協力をすることになっていました。したがって、今回の交渉を実現するためにも、また出漁することになった場合に採算に合った経営ができるようにするためにも、政府価格に対する助成だとかあるいは技術協力に対する援助が必要だというふうに思うんです。これは米国水域から不当に締め出されることを、ある意味ではやっぱり外交の中で阻止し得なかったという政府としては、当然負うべき責務ではないかというふうに思うんですが、何とか今の関係者がこのソ連との間の交渉がうまくいって、そこで仕事ができるようにしていただきたいものだというふうに思いますが、いかがでしょう。
  12. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 本件の場合に課せられます共同事業協力金、いわば入漁料でございますけれども、これは基本的性格といたしまして一般のほかの国の二百海里水域で操業する場合の入漁料、これと同性格でございまして、漁業者が本来負担すべき経営コストという性格を持っておりますので、残念ながら国庫補助というものを直接行うということは、事柄の性格としてはできないんじゃないかという感じがいたしております。しかし、その協力関係につきましては、共同事業との関連技術協力の実施の御要請というものがありますれば、その内容を十分精査させていただきまして、適切に対応し援助してまいりたいというふうに考えております。
  13. 菅野久光

    菅野久光君 いずれにいたしましても、先日緊急特別融資をした、それはあくまでも融資ですから戻さなきゃならないわけですね。それに、仕事がないというようなことでいろいろ困難な状況に直面しておりますので、これらの方々が何とか仕事につけるようなそういう方策というものを、政府としても真剣に取り組んでいるとは思いますけれども、一日も早く何らかの対策が立てられるように特段のひとつ努力をしていただきたいということを、この件については申し上げておきたいと思います。  次に、法案関係について御質問をいたしたいというふうに思います。  この水産加工施設資金制度に基づいて、五十二年度いわゆる二百海里が制定された、それ以来、水産加工原材料供給事情の著しい変化があった。そういうことで、これに即応して行われる水産加工施設改良等に必要な長期かつ低利資金貸し付けというものが行われてまいりました。水産加工施設資金制度は具体的にはどのような水産加工施設改良などのために利用されてきたのか、また、融資された件数や金額の実績はどうであったのか、その辺についてお答えをいただきたいというふうに思います。
  14. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 現在の水産加工資金につきましては、種類が御承知のとおり二つございまして、いわゆる政令第一号資金、これは北洋転換等資金と称しておりますけれども、その原材料転換なり製品転換のための資金、それから製造方法または加工方法改良のための資金というものでございます。それから、二号資金として多獲性魚有効利用促進資金というのが御承知のとおりございまして、これは赤身多獲性魚練り製品製造施設の増設のための資金でございますとか、あるいは多獲性魚有効利用のための資金というものがあるわけでございます。  それで融資実績でございますが、六十一年度までが集計できております。全体で見てみまして七百八十八件、四百六十二億円となっております。その内訳でございますけれども、いわゆる一号資金は百十一件で七十億円、それから二号資金の方が多うございまして六百七十七件で三百九十二億円と、こういう貸付実績に相なっております。
  15. 菅野久光

    菅野久光君 資料をいただいたんですけれども、資料の二ページ目に水産加工施設資金融資計画及び融資実績ということで表が出ておりましたが、ここに件数がちょっと出てなかったものですから、改めて私の方で資料をもらいましたが、この種のものについてせっかく資料をつくられるんですから、件数も入れていただくと親切な資料だったなというふうに思いますので、その点まず申し上げておきたいというふうに思います。  次に、水産加工業経営体質が非常に脆弱な産業だというふうに思います。脆弱であるからこそ信用力がまたこれも低いということに必然的になるわけで、水産加工施設資金制度のような長期かつ低利融資に対する需要はかなり強いはずだというふうに思います。しかし、水産加工施設資金制度融資実績を見ますと、制度発足直後の五十三年度と五十四年度には融資実績融資計画を上回ったものの、五十五年度以降は融資実績融資計画を大幅に下回る状態が続いております。  この理由としては融資金利、これは六十三年三月九日以降の利率は五・一五%、ただし北洋魚種の三分の一以上を近海利用魚種転換する場合などは四・〇五%と、こういうことになっておりますね。この融資金利だとかあるいは償還期限魚種地域指定などに問題があるのではないかというふうに考えられますが、どうして五十五年度以降そういうことになっているのか、その辺はどのようにお考えでしょうか。
  16. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 先生からも御指摘ありましたように、制度発足当初はかなり高い資金消化率というものがございまして、五十三年から五十五年にかけましては平均七十億というかなりのハイペースでの融資というものが行われてきたわけでございます。その後、年平均で見てみますと四十億円程度となって、かなり計画に比べて実績というものが低くなっていることは事実でございます。特に、昭和六十年度以降、円高でございますとか二百海里体制の深化ということもございまして、残念ながら経営がかなり悪化して設備投資に対する意欲というものが減退したということも否めないわけでございます。そういうことで、昭和六十年には二十二億という非常に低い水準まで落ちたわけでございます。  しかし、六十年後いろいろショックはございましたけれども、こういう一時的なショックから立ち直り、しかも食生活全体の成熟、高度化ということに応じまして、いろいろ水産加工に対する需要というものも芽生えてきたというような経営環境変化ということもございまして、水産加工設備投資というものもある程度積極化してまいりまして、六十一年には四十億、それから六十二年度はまだ最終集計できてございませんけれども、現在のところの概算では四十五億ということで、二十二億まで六十年落ちましたやつが現在は上向いてきておる形になっておるわけでございます。  それで、今回お願いいたしております法律改正、こういうものによりまして、そういう経営環境なり設備投資環境変化という前提条件の変わりもございますので、こういう法律改正ができますれば、こういう意欲をさらに刺激して本資金が円滑に活用されるのではないかというふうに認識している次第でございます。
  17. 菅野久光

    菅野久光君 確かに不況の時期、六十年度などは特に二十二億という実績ですね。六十一年度で四十億、六十二年度で四十五億と、設備投資に対する意欲なども非常に上向いてきたというようなことはこれで言えるのではないかというふうに思います。本法案では制度内容が変更されることとなっているわけですが、融資金利の引き下げ、償還期限の延長、それから魚種地域指定拡大など、もっと何というのですか、思い切った抜本的な改善を図るべきではなかったのかなというふうに思いますし、また水産加工施設資金制度から二百海里規制対策という枠組みを取り払って、水産加工施設資金制度水産加工業の振興のための制度として再編成すべきではないのかなというふうに思いますが、その辺はいかがでしょうか。
  18. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) この資金性格づけでございますけれども、やはり本来一般企業に対する貸し付けでございまして、しかも農林漁業金融公庫という農民なり漁民なり森林経営者、こういう第一次産業経営者を本来の貸し付け対象といたしておりますものに対して、こういう関連産業といいますか、車の両輪でもございます加工業に対して特別に公庫資金貸し付けるという一定の枠があるわけでございます。それに加えまして、制度資金ということで財投金利との関連もございまして、そういう中では融資期間なり利率にいたしましても、現場の方々なり先生方からはいろいろと御注文はございますけれども、一つの大枠の中ではかなり優遇された資金制度というものが構築されてきているわけでございます。  そういう中で、我々といたしましてもできるだけさらに優遇できないかということでの検討をもちろん深めてきているわけでございまして、その結果として、今回のように魚種拡大でございますとか、それから新しい資金種類の創設に伴いまして地区の拡大でございますとか、そういう実質的な拡大も幾つかできているわけでございます。  特に、金利につきましては、こういう制度金融につきまして金利改定ルールというものがやはり財投金利調達コストとの関係でございまして、六・五%というものの固定的運用とされているということとの関係はどうしても脱却できない。それに、こういう六・五頭打ちということを制度上しているわけでございますけれども、六・五が下がったからといってどんどん下げていくということになりますと、逆に六・五より財投金利なりが高いということも過去再三あったわけでございます。現在は幸いにいたしましてこういう低金利という時代でございますけれども、そういうときには逆に六・五より上げろという議論を誘発するというようなこともございまして、六・五を固定といたしまして、その中でできるだけ有利に活用したいということで行ってきているわけでございます。  それから、北洋転換資金を今回廃止したわけでございますけれども、それにも関連してもっと抜本的な水産加工施設資金制度をつくれないかという今お話があったわけでございますが、我々といたしましては今回の二つ資金、これで大体の加工関係について特別に制度融資として手当てしなければならないもの、これにつきましては少なくとも施設資金の面では十二分にカバーできるんじゃないかというふうに認識している次第でございます。
  19. 菅野久光

    菅野久光君 水産加工業は非常に経営が脆弱だということを前段申し上げたわけで、脆弱であるからこそ何とか体質を強化していくという意味合いも含めて、やっぱり脆弱なところにはある程度手厚い対策というものが必要ではないかという意味で御質問申し上げたわけであります。  それで、水産加工施設資金として、従来から北洋魚種原料転換等資金、どうもこの種の資金の何称が長いので、ちょっと簡単に言ったら何と言ったらいいのかわかりませんが、正確にやっぱり言っておかなければなりませんので申し上げますが、あと多獲性魚有効利用促進資金というのがあったわけですね。確かに本法案によれば、近海利用資源利用促進資金近海資源型水産加工業体質強化資金に今度は変更されるという提案になっております。北洋魚種原料転換等資金は、これは廃止されることになるわけですね。これはどのような考えに基づいて廃止をされるのか、それをまずお聞きしたいと思います。
  20. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 非常にこういう資金、せっかく皆様方に活用していただく資金につきまして、その名前が長うございまして理解が深まらないという点は非常に残念でございまして、私自身も長官になりましてこういう長い名前を覚えるのに四苦八苦している次第でございます。  いずれにいたしましても、北洋転換資金につきましては今回発展的に廃止いたしまして、新しい資金種類をつくったわけでございますけれども、これは実は今までの貸付実績というものを見てみますと、特に最近、例えば五十八年から六十一年度というもので見てみますと、全体の貸付件数のうちで約一割程度というような形になっておりますし、それからこの一割程度貸し付けました北洋転換等資金につきましても、その相当部分というものは今回つくりました資金を初めとするほかの資金で対応可能である。例えば、今までの貸し付けの約半分を占めております北洋魚種からイワシ、サバ等への転換は、今回の近海利用資源利用促進資金というものの融資対象となっておりますし、それからまたホタテでございますとかイカ、こういうものにつきましても、今回設けることをお願いいたしております近海資源型水産加工業体質強化資金、こういうもので融資対象になりますので、北洋転換資金というものが廃止になりましても関係者皆様方に御不便をかけるということはなく、むしろ新しい時点なり視点に立っての近海魚の活用という観点からくくって対応した方が、現在の情勢にマッチしているんじゃないかというふうに考えている次第でございます。
  21. 菅野久光

    菅野久光君 これを廃止しても加工業者特段のあれはない、別な新しいことでそれに対応できるということであります。名前が長い話はありますが、名は体をあらわすというから、やっぱり正確にやらなきゃいかぬということでこういう名称になっているんだろうと思いますが、余り長いやつは略称というものが大体あるわけですね。そんな意味で、知恵を絞って何とか略称ができれば私たちも非常に理解がしやすいんじゃないかというふうに思いますので、その点ひとつ工夫をしていただければ、私どもも、これは加工業者人たちもそうじゃないかというふうに思うんですが、工夫をしていただければと思います。  北海道沖などでは、これはわずかとはいえスケトウダラ漁獲されております。しかし、この措置によってスケトウダラ原材料とするすり身の歩どまり向上のための施設改良だとか国産のホタテやウニへの転換、それから輸入魚への転換完成製品製造から半製品製造への転換など、一割程度融資対象から除外されることになるんではないかというふうに思いますが、そうだとすれば、なぜこれが除外されるのか、その点についてお答えいただきたいと思います。
  22. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) スケトウダラにつきましては、いろいろ先行きの問題が、実は先ほどもお話ありましたように二百海里の問題でございますとか公海の問題でございますとかであるわけでございます。そういう中で漁獲が安定的に継続し得るといいますか、原材料が安定的に確保し得るという保証というものがなかなか難しいという点から言いまして、制度融資対象としてスケトウダラ加工施設を直接融資するかどうかということにつきましては消極的にならざるを得ないわけでございます。  しかし、原材料について長期的な見通しが立って、設備投資をしても大丈夫というようなものにつきましては、別途中小金融公庫でございますとか、いろいろな政府関係中小企業に対します融資制度というものもございますので、こういうものの融資によりまして新製品なり新技術の開発、導入ということを行うことも可能でございますので、そういうものにつきまして個別案件に応じて御相談に応じさしていただきたいと思っております。
  23. 菅野久光

    菅野久光君 個別案件について相談に応じていきたいというお答えでありますので、ぜひこういったような加工業者相談にはひとつ親切に対応していただきたいというふうにこれは要望をいたしておきます。  次に、水産加工施設資金制度は、これは運転資金は含まないわけですね。施設資金を中心とした制度であります。何回も言いますけれども、水産加工業経営基盤はとにかく脆弱ですから、運転資金も十分ではないというのが一般的なわけですね。運転資金融資に対する需要にはどのように対応されるおつもりか、お答えいただきたいと思います。
  24. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 水産加工施設資金は、これは名のとおり施設資金でございますけれども、この資金制度融資として認めていることと同じねらいというものを達成しますための運転資金として、これも名前が長うございまして恐縮でございますけれども、従来からも水産加工経営改善強化資金という融資を行ってきているわけでございます。六十三年度からこれを衣がえいたしまして、水産加工経営改善促進資金という形にして運転資金の手当てを行っております。  この中身は三つから成っておりまして、一つは、主要な近海魚種、こういうものを原料とします加工新製品なりあるいは新技術の開発、導入のための運転資金、それから二つ目は、多獲性魚を含みます近海利用魚種水産加工の原料としての利用の促進を図るための運転資金ということでございますので、この二つはまさしく、今回御議論いただいております水産加工施設資金、これをハード資金といたしますと、こちらがソフトといいますか、運転資金として表裏一体として運営できるものでございますし、それからこのほかに、最近、国際規制の強化等に伴いまして経営が困難に陥っている水産加工業者というものも残念ながらあるわけでございますので、こういうものに対します一般的な経営安定のための資金というものもこの水産加工経営改善促進資金対象といたしておりますので、この資金の活用によりまして、経営基盤が脆弱な中小が多い水産加工業の運転資金の対応というものの十全を図りたいと思っておる次第でございます。
  25. 菅野久光

    菅野久光君 今お答えになりましたこの運転資金についての借り入れ、その実績というのは今わかりますか。わかりましたらちょっと教えていただきたいんです。今わからなければ後から教えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  26. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 六十一年度の実績で申し上げますと、全体で五十七億の貸し付けになっております。それから、ここのところ数年間、若干のぶれはございますけれども、大体五十億程度から五十億の後半という形で毎年の貸し付けが行われております。
  27. 菅野久光

    菅野久光君 次に、六十三年に今度新設される水産加工経営改善促進資金制度、これは五十八年に創設されました水産加工経営改善強化資金制度を引き継いだものというふうに思いますが、水産加工業者に対して、経営の維持安定それから近海低利用資源の有効利用の促進等、近海資源を原材料とする水産加工業体質強化を図るための運転資金を融通するものだというふうに思います。これの利率は四・〇五%から五・四〇%ですね。水産加工経営改善促進資金制度施設資金を扱う水産加工施設資金制度融資に当たっては、これは両者の関連性にも配慮する必要があるのではないかというふうに思いますが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。
  28. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 二つ違う仕組みの資金でございますが、水産加工業者の経営の改善を図るという点で同じ趣旨を持っておりますので、貸し付け主体は違っておりますけれども、両者が連携をとりまして調和のとれ、しかも整合性がとれた形で運営すべきものと我々も心得ておりますので、関係金融機関間の調整なり調和というものを十分図りまして加工業者経営の安定に努めたいと思っております。
  29. 菅野久光

    菅野久光君 その辺の連携を十分にひとつ配慮していただきたいというふうに思います。  本改正案は、最近における外国政府による漁業水域の管理の強化などに伴う水産加工原材料供給事情水産加工品の貿易事情の変化を背景として提出された法案だというふうに思います。この法案は五年間の時限立法ということですね。こういうような状況というのは五年間で解消するものではないのではないかというふうに私には思われるわけですけれども、なぜ五年という時限立法にしたのか、どうして恒久立法にしなかったのか、その辺の考えをお伺いしたいと思います。
  30. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 本法が制定されましたのは御承知のとおり昭和五十二年で、五十二年に二百海里の本格的スタートということで行われたわけでございます。  先ほども申し上げましたように、こういう農林漁業金融公庫という本来農林漁業者貸し付け対象とする制度融資機関、ここにおきまして、あるいは車の両輪とはいえ、関連企業に融資するということにつきましては、やはり一つの時限的な政策、緊急課題というものがあって初めて設定できる話でございます。そういうことで、例えば入漁資金につきましても、農林漁業金融公庫法の附則で時限的に経過措置として認めてきているという経緯があるわけでございます。  いずれにしても、水産につきましても、五十二年に二百海里が本格的にスタートし、何とか急場をしのいで経営の安定を図りたいということで、五年間で緊急に経営改善をして、後は一般金融に期待したいという願いを込めて五年ということで当初スタートしたわけでございますけれども、その後二百海里体制の深化ということに伴いまして延長していただき、今回に至っているわけでございます。  それで、今回は、その五十二年が第一次の二百海里ショックといいますと、六十年代に入っていわば第二回目の二百海里ショックということで、米ソを初めとして二百海里というものが非常にリジッドな形で運用され始めてまいりまして、その影響というものが国内の水産加工業者にも出てきたわけでございます。外国といいますか、二大国である米ソと二百海里からの締め出しというとあれでございますけれども、漁獲高の低減というものは大体行き着くところまで来た感じでございまして、ここでこれから五年間程度こういう資金手当てをいたしますと、大体二百海里体制というものも深化した形で固定し始めてきておりますので、これに対応した加工体制というものがそれなりに整備されるんじゃないかということで今回も五年ということでお願いしているわけでございますけれども、この五年をどういうふうに扱うかということにつきましては、そこの時点での水産情勢なりあるいは加工業の姿、こういうものを総合的に判断させていただきまして、またその時点で判断したいというふうに考えております。
  31. 菅野久光

    菅野久光君 これは、まあ五年と。五年一区切りとかということで、切りがいいから五年ということにしたのかなというふうな気持ちはありますけれども、また一面、今の状況からいけば、第二次二百海里ショックによる世界の海洋漁業のそういったような安定が、もう五年たてばおよそ落ちつくという見通しを持ったから、これを五年やれば大丈夫だなというある程度の確信を持たれて出されたのか。どうも実はこれも日切れということじゃないんですけれども、時限立法になりますと日切れという扱いになるわけですね。そうしますと、いつも国会は三月、参議院の方は予算が来ていまして、もうとにかく扱いが大変なんですよ。  したがいまして、これは五年という時限立法じゃなくて、ある程度恒久立法にして、必要がなくなったときは法律廃止すればいいのではないか。あるいは今のこの法律、これではちょっと対応し切れないものがあれば改正すればいいのじゃないかというふうに思うんですけれども、その辺はいかがでしょう。
  32. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 五年で漁業情勢が楽になるとかという話じゃございませんで、何とかこの五年間で水産加工業体質というものを強化したいという我々の願望を込めて五年ということをお願いしておるわけでございます。  そういう中で、恒久法化という話は再三ございますけれども、やはり恒久法化じゃなくて、ただいま言いましたように何とか緊急に体質を改善して将来に備えたいということでございますので、やはり一定期間を区切って、それぞれに汗を流していただき、当方としても御援助させていただくということの方がこういう緊急に立て直すという際には適していようかと思いますし、これは水産庁長官として言うべきことじゃないかとは思いますけれども、恒久法ということになりますと農林漁業金融公庫法全体の体系にかかわる問題でございまして、恒久的な位置づけとなりますと、こういう特別立法というよりは農林漁業金融公庫そのものの性格を見直し、そこで資金種類としてどう拡充するかという問題も恐らくあるのではないかというふうに考えております。
  33. 菅野久光

    菅野久光君 今のような状況だから、五年間という時限立法で、五年間の間にこの資金を活用して脆弱な体質から抜け出して強化をしてほしいという願いを込めて、とにかく五年間の時限立法だよということを加工業者にも周知徹底をして、この資金の活用を図って、何とかこの間に経営体質というものをしっかり強化するような、そういったようなことをやってもらいたいという願いを込めての時限立法だというふうに、端的に言えば受けとめてよろしいですか。
  34. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 率直な気持ちとしてはそういうことでございます。
  35. 菅野久光

    菅野久光君 率直な気持ちとしてはそういうことだということですから、これらの制度の利用についてはやはり水産加工業者の方々に、周知徹底というところまでいくかどうかは別にしても、十分にそういう国の意図というものを知らせるようなひとつ努力をして、五年たったらもう本当に、あとは必要がないとまでは言わなくても、こういうようなことが余り必要でないような状況にまで何とか押し上げるように努力をしていただきたいということを要望しておきたいというふうに思います。  次に、我が国の漁業は、二百海里漁業規制の著しい強化による、好漁場から締め出すために、大変な厳しい状況に諸外国があるわけですね。特にアメリカソ連、そこはそういうことになっております。アメリカの二百海里漁業水域内は、我が国の遠洋漁業にとってスケトウダラとかマダラ、カレイなどが豊富なドル箱の最大の漁場であったわけでありましたが、アメリカが六十三年の対日漁獲割り当てをゼロとした。また、我が国漁船を完全にそういうことで締め出すということになってきております。  一方、日ソ漁業交渉の結果、六十三年の日ソ両国の二百海里漁業水域内での漁獲割り当てと操業条件について、日ソ両国の無償漁獲割り当ては二十一万トン、日本漁船に対する有償漁獲割り当ては十万トンで、これは六十二年と同じ程度。そういうふうにするかわりに、今度は日本側の支払う入漁料は六十二年と比べて三二・五%増しの十七億一千万円とすることになったわけです。これは大変な状況になってきておりますが、我が国の漁業を振興するためにこれからどのような施策を講じていかれようとするのか、その点についてひとつぜひお聞かせをいただきたいというふうに思います。
  36. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ただいま先生からも詳しくお話がありましたように、世界的に二百海里体制というものが定着してまいりまして、沿岸国はそれぞれ主権的権利というものを前面に出しまして、自分の二百海里で泳いでいる魚は自分でとって自分で付加価値をつけて自分で流通させるという方向にどんどん来ているわけでございます。それから、さらにサケでございますとかマス、こういうものにつきましてはいわゆる母川国主義というものを関係国が強烈に出してきておりまして、国際的にもそれが定着してきているわけでございます。  そういう中で、非常に今まで世界に雄飛し発展してまいりました日本の水産業が苦しい局面に立っているわけでございますけれども、これに対します基本的考え方といたしましては、一つは、やはり粘り強い漁業交渉というもので海外での漁獲量の確保と、それから新漁場なりあるいは新資源、これだけ広い世界の海でございますし深い海でございます。まだ開発されてない漁場なり未利用の資源というものも存在しているわけでございますので、そういうものを何とか確保したいということが一つでございます。  それから二つ目には、外国に頼っておるだけじゃなくて、日本自体がこれだけ広大な自分自身の二百海里という漁場を持っておるわけでございますので、この漁場の再開発なりこの漁場への種つけというものを、沿整事業でございますとかあるいは栽培事業でございますとか、こういうことでやって、我が二百海里自体を立派な漁場として再構築していくということが二つ目でございます。  それから三つ目といたしましては、やはりどこの産業もそうでございますけれども、魚をとったというだけでは完結しないわけでございまして、そこからの流通、加工、消費、これが産業としても国民生活全体としても非常に重要なことでございますし、それから個々の国民生活の高度化、成熟化ということに伴いまして、ますますそういう消費者なり流通との関係というものを考慮しなければならなくなってきておりますし、これは単に消費者のためだけじゃなくて、そういうことを通じて流通コストを低減するなりあるいは付加価値をつけるということで漁業者みずからの経営に寄与する話でございますので、そういう面につきましても何とかいろいろな知恵を出してまいりたいというふうに基本的には考えている次第でございます。
  37. 菅野久光

    菅野久光君 今までにないような状況の中で担当の仕事をされていて、本当に御苦労だというふうに思います。私も、出てきてから、特に私は北海道で、韓国漁船の問題についてもうとにかく委員会のたびに質問をしまして、どうやら形はついたんですが、これもまた撤退の置き土産といいますか、何かかなり漁網だとかそういうことの損害なども受けているようでありますし、もう日本海の武蔵堆などは全く底がならされてしまったというようなことで、しっぽのついている魚がいないとは言わないけれども、本当に少なくなったんですね。日本海の漁協などに行っていろいろ状況を聞きますと、本当にしっぽのついている魚がめっきり少なくなった。それで、やっと韓国漁船の問題がけりがついたなと思ったら、もう日本海の方には魅力がない、といいますか、行っても結局、採算のとれるような状況になっていないものですから、あそこには今韓国船はほとんど行っていないんじゃないかというふうに思います。荒らされるから早く早くということで言っていて、撤退するように決まったときにはもうもとに戻らないような状況じゃないかというふうに思います。  今、世界の国が、自国の二百海里内のそこで漁業をやっていくというような方向になってきて、ベーリング公海なども何か公海がなくなってしまうんじゃないかというような、これはまた別の機会に質問させていただきたいと思いますが、そういうような状況なども生まれてきているわけですね。ですから、沿整事業などは本当に真剣に取り組んでいかなきゃならない仕事じゃないかというふうに私は思いますし、栽培漁業の問題なども十分に、これはやっぱりある程度時間のかかる仕事なんですよ。  大蔵省は、今投資をすればすぐそのことが利益として上がってくるような、そういうところには金は出すけれども、将来的に時間のかかるところにはなかなか金を出したがらないという面があるのではないかというふうに私は思うんですね。あれは六十一年でしたか、栽培漁業ということで国の方から資金を受けて、そして一生懸命大事に育てて、それがある程度大きくなるまでその周辺も含めてひとつ禁漁区にしよう。せっかく国の大事な資金をここへかけたんだから、それを有効に生かすためにはその周りも禁漁区にして、そしてそれを大事に育てていこう。こういうことで関係者がやっていたら、会計検査院の人が行って、何だこれは計画と違うじゃないか、今こうやってもそれが漁業者の方で何ぼ利益が上がるという計画を立てた計画と違う、これは違法だというような、形だけでいけばそうなんですけれども、そういうような貸し付け条件というんでしょうか、国の方の資金を投下するときの条件、そういうものが実態と合わないような形になっての計画ではなかったかなというふうに私は思うんですね。  そんなことをいろいろ考えていきますと、特に二百海里内の漁業を、今しっかり沿整事業をやっておかないと、どんどん遠洋から締め出されてしまう、そういうものを救っていくといったらあれですが、そういうものを受け入れるといいますか、そういうことがいよいよできなくなってしまうんじゃないかというふうに今思われてならないわけです。ぜひこの点については、やっぱりかけるべき金は将来のためにかけるということで、我々も一生懸命頑張らにゃいかぬなと思いますけれども、担当の農林水産省として特段のひとつ努力をしてもらいたいというふうに思いますが、その辺については大臣いかがでしょうか。
  38. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 今委員の御見識を承っておりましたが、まずわかりやすくしなければならぬという先ほど来の御意見、私も同感でございます。この国際化の中で我が国がとっておる政策、これを相手にやっぱり理解してもらう。そういう観点からも、長たらしい名前をつけて、水産庁長官でもなかなか覚えられない、私においてをや、こういうわけでございまして、この点は私はいい機会でございますから、本当にただ縮めりゃいいというものじゃございませんけれども、わかりやすくする。これは農林水産省全体にかかわる問題でございます。常日ごろ実はいろんな方々からそういう御意見をいただいておるわけでございまして、きょうまたその御意見が出ましたので、これはどの程度実効が上がるか私も自信はございませんけれども、自信がないからといって手をつけないわけにはいかない。検討をひとつ事務方にしてもらいたいと思っておりますことを申し上げておきます。  なおまた、今御指摘の財政当局に絡んだ御発言もございましたけれども、やっぱり政策金融あるいはこういう制度金融というものが水産加工業界にどの程度貢献し得るか。二百海里時代を迎えたそのときから始まった。五年間で何とかできるかなと思った。なかなかそうはいかぬよ、当初考えたようなテンポではいかない。財政当局との今の議論に直接結びつくわけじゃございませんけれども、これは間接的に結びついておりますので申し上げるわけでございますけれども、やっぱり先行き水産加工業界が漁業とともに両輪であると言っている以上は、私どももそう言っているわけでございますから、水産加工業界が漁業とともに発展をしていくということのためには、制度金融、政策金融に頼らなくても、何もここで民活論議を言う気持ちはございませんけれども、経営として、企業として一般金融で、市中金融でこれが発展をしていく形が望ましい。しかし、そうはなかなかいかない。だから、これを十二分に補完する意味においても、また政策誘導するためにもこの種の法律が必要である。こういうことで緊急なものとして考えてきた。  五年間一区切りということかもしれませんが、普通世に言う十年一区切り、こういうことを私ども先輩から言われてきたわけでございますけれども、ここでもう十年がたつ。こういうことになるわけでございまして、水産加工業界の行方というもの、展望というものをやっぱりこうした機会に明確にしておかなければならない。まさに漁業と両輪である。このことについて財政当局も近視眼的な対応ではいけない、やっぱり将来展望。それにしても我が省におきましても、水産庁におきましても、将来展望というものをなかなかこれは見きわめにくい、執拗に外交案件としては厳しさが加わっておる現実もございますので、なかなか見きわめつきにくいわけでございますけれども、ひとつ真剣な努力をしてまいらなければならぬ。これからの五年間延長をお願いするに際しましても、そういう決意で当たらなければならない。そして、水産加工業界に徹底をどの程度できるかなという御心配の御意見もございましたが、私はやっぱり先ほど申し上げたような制度金融、政策金融そして市中金融、この関係考えますときに、水産加工業界のメーンバンクとしての市中銀行、そういうところにも我々の趣旨というものが徹底しなければならぬ。そこで初めて実効が上がる。こういうことになろうかと思いますので、私の今お聞きをしておった感じを率直に申し上げた次第でございます。
  39. 菅野久光

    菅野久光君 私の質問していることを真摯に受けとめた答弁をいただきまして、ぜひひとつ頑張っていただきたいと思いますし、また私どもも頑張らねばならぬなという思いをしております。  次に、スケトウダラなどの北洋魚は、これは練り製品などで水産加工食品の原材料として非常に重要な魚種でありますが、スケトウダラなど北洋魚の今後の生産についてどのような見通しを持っておられるか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  40. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 北洋魚の主体でございますスケトウダラにつきましては、五十三年以降は大体毎年百四十万トンから百六十万トンという台で漁獲が推移してきたわけでございますけれども、このうち、従来、生産の大部分というものを依存してまいりました米ソ水域、これにつきましては、先ほど来お話ございますように、漁獲割り当て量の削減でございますとか、あるいは操業規制の強化ということで非常に厳しい状況が続いているわけであります。しかし、最近はその一方で、いわゆるベーリング公海、こういう公海での生産が伸びたということで、どうやら全体としてはまあまあで推移してきたわけでございます。  これからの見通しといたしましては、今もお話ありましたように、国際規制というものがますます強くなってきそうである。それから、特に公海資源の状況というものが、遠隔の地で、しかも公海であるということからいいまして、我々としても十分な資源についての知見というものを持ってないということもございまして、なかなか将来を的確に見通すということは難しいんでございますけれども、いずれにしても米ソを中心といたします公海底魚なりあるいは資源の管理の強化の動きということからいいまして、我が国の漁獲量というものは楽観を許さないというふうに判断せざるを得ないと考えております。
  41. 菅野久光

    菅野久光君 先ほども申し上げましたように、水産加工食品の原材料としては大変重要な魚種でありますので、非常に見通しが困難な状況もわかりますけれども、それをやっぱり確保するためにひとつ最大限の努力をしていただきたいということを要請しておきたいと思います。  次に、我が国の漁業水産加工業は、イワシとかサバ、イカナゴなど近海資源への依存を強めております。近海資源の今後の生産についてどのように見通しておられるか、また、近海資源を維持培養するためにどのような施策を講ずるおつもりでいるのか、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  42. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 近海資源の中で特に大宗を占めておりますイワシ、これはここ数年四百万トン台で推移してきておるわけでございます。特に昭和六十年でしたか、これは四百五十八万トンということで史上最高を記録いたしましたし、それから六十二年、去年も、まだ集計できておりませんけれども、若干悪かったんじゃないかという説もございましたけれども、四百万トン台には十分乗っているようでございます。  これからの見通しでございますけれども、近海でのいろんな知見といたしまして、産卵量というものもかなり高水準にあるということから申し上げまして、当面この水準が急激に減っていくということはないんじゃないかというふうに見通しているわけでございます。  それから、イワシに次ぎます主流を占めておりますサバでございますけれども、これは五十三年の百六十万トンというものをピークといたしまして、その後若干減ってまいりまして七十万トンなり九十万トン台ということで推移してございますけれども、ここのところまた若干ふえてまいりまして、特に最近マサバの若齢魚の出現状況というものが比較的良好であるということもございますので、資源の増大と生産量の増加ということはこれは見込まれるんじゃないかという見通しを立てているわけでございます。  そういう中で、こういう近海資源の維持培養をこれからどうやって図るかということでございますが、それは先ほどもちょっと触れましたけれども、一つは、沿整事業というものを中核といたしまして、海の畑づくりといいますか、海の基盤自体をつくっていくということが一つあろうかと思いますし、それからもう一つは、海の種づくりといいますか、栽培漁業というものでつくり育てる漁業というものを進めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  43. 菅野久光

    菅野久光君 先ほどもこの点についてちょっとお尋ねをいたしましたが、何といっても二百海里体制の中では、我が国二百海里内の漁場というものをしっかりつくり上げていかないとだめだ。しかし、これも時間のかかる仕事なんですね。ですから、この点にはぜひ力を入れていただきたいと思います。六十三年度の予算は今提案されておりますが、六十三年度でもかなりあれですが、六十四年度以降これらについて今いろいろ重点的にやらなきゃならぬことはたくさんあるんですけれども、一番やっぱり基盤、農業も畑がちゃんとしてないとこれはとれないわけですから、そういう意味で来年度以降二百海里内の畑づくりということでの沿整事業予算、これをしっかり確保していただきたいと思うんです。そのときまで大臣がずっとやっていただいておれば一番いいんですけれども、六十四年度に向けて、八月は概算要求ですから、これは絶対とは言えませんが、大臣がまだ在職中だと思いますので、来年度の概算要求に向けて六十四年度沿整事業に対する決意をひとつぜひここで聞かせていただきたいと思います。
  44. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 概算要求時点まで私が務めておるかどうか、また、年末の政府予算原案決定時期まではどうかと、生々しい私の立場についてのお話でございますが、私が常に申し上げているのは、政策の継続性、そしてそのときそのときの横並びでの整合性、こういうことを考えながら、整合性と考えれば、先ほどちょっと触れましたように、水産加工業界と漁業というものが一緒になって進まなければならぬ、そのための予算措置ということもございますし、継続性を言えばもう当然のことで、私が引くときは私が申し継ぎをして、私はこういうことで言っておったよ、この点は特に注意しなさいよということは当然申し継ぎをしていく、これは継続性。この二つの点を常に頭の中に置かなけりゃいかぬということは私も重々心得ておるつもりでございますが、当面、概算要求時点ではひとつ皆さんのバックアップもいただきながら、我が省の責任において十分な配慮をしていかなければならぬと考えております。
  45. 菅野久光

    菅野久光君 漁業者水産加工業とはまさに車の両輪、原材料を供給してもらってこそ水産加工業はあるわけで、そんなことは今さら言うまでもありませんが、ぜひそういう意味でも、原材料が安定的に供給できるためには二百海里内の沿整事業をしっかりやって畑づくりをするということが今何よりも大事なことではないかというふうに思います。今からもう来年度の話をしておかないとこれはいけませんので、大臣としてもいろいろ力点を置くところはあるでしょうけれども、ぜひ特に力点を置いてほしいということを申し上げておきたいと思います。  国民食生活の安定のために、我が国近海資源の食用向け利用の増大を図ることがやはり必要だというふうに思います。我が国近海資源の食用向け利用の増大を図るためにはどのような施策を考えておられるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  46. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ここのところ消費者のニーズというものが非常に多様化してまいりまして、近海資源を利用した食用向け利用というものも、今までいろいろと試みながらできなかったことも、ある意味ではできる環境というのもできてきているわけでございます。  そういう中で、何といいましても新製品の開発、新技術の導入という、そういう技術基盤を確立していくということが必要でございますし、それからもう一つは、せっかく魚の見直しというものが行われてきておりますこともとらえまして、水産物全体の消費拡大ということを図る必要があろうかと考えております。  このために、具体的な対策といたしましては、こういう新製品なり新技術の開発、導入を行います者につきましては、今まさに御審議いただいております水産加工資金法、こういうものでいろんな手だてを行ってまいりたいと思っておりますし、それから技術開発につきましても、国の研究所を初めといたしまして官民学挙げましていろいろな新技術、新製品の開発に取り組んでまいりたいと思っております。  それから、消費拡大につきましては、これは官側だけが行うべき性格ではございませんで、やはり関係業界なり消費者団体、こういうものと一丸となって、魚の栄養なり、よさに対する普及なりあるいは調理方法の普及指導ということを行っていきたいと思っておりますけれども、こういうものにつきましても、当方としてもいろいろなマスメディアなりあるいは冊子をつくって消費者啓発を行うとか、あるいは水産加工食品等の市場開拓のための需要拡大事業であるとか、こういう具体的な手だてを用意しておりますので、そういうものを十二分に活用いたしまして何とか活路を開いてまいりたいというふうに考えております。
  47. 菅野久光

    菅野久光君 土光さんの目刺しで、魚の効用というのは国民一般にかなり理解をされた部分があるわけですけれども、魚は非常に健康にとっても有用な食品だということはもう私が今さら申し上げるまでもないので、今のお話のように官民一体となって、やはり漁業者がとったものが消費の方にすぐ回る、消費拡大、これが今やっぱり水産業界でも非常に大きな問題になっておりますので、こういったような法案審議の機会に、またみんなでこの消費拡大努力をしていかなきゃならぬじゃないかなというふうに思っております。  先ほど来からいろいろお話がありましたが、水産加工業漁業というのは車の両輪だ、相互に密接な関係を持っていることは今さら申し上げるまでもありませんが、しかし、水産加工業原材料の供給の変化、それから水産加工品の輸入の増加、水産加工品の需要の低迷など厳しい状況の中にあるわけです。水産加工業の脆弱な経営基盤の強化と国民食生活の安定を図る見地から、政府はどのような方針でこの水産加工業を振興しようとしているのか、その点、先ほどからも幾らかお話がありますけれども、この際まとめてお答えをいただければというふうに思います。
  48. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 水産加工業は、今お話ございましたように、漁業と密接な関連を持って発展をいたしてまいりました。しかも、水産加工業漁業というのは車の両輪だということは、先ほど来話が出ておるところでございます。これが一体として振興する必要がある、こういうことでございます。  なおまた、水産加工業は水産物の周年安定供給、それから今おっしゃいましたように水産物の消費拡大、流通コストの削減にも大きな役割を果たしていると私は考えております。  今後、水産行政を推進していくに当たりましては、常にこうした点を念頭に置きながら、国際規制に関連する漁種から今委員お話しのように近海資源への原料転換、さらに体質強化、消費拡大等の施策を確実に実行していく、こういう基本的な考え方は忘れてはならぬ、こう思っておるところでございます。
  49. 菅野久光

    菅野久光君 次に、水産加工業は、前浜で漁獲された水産物を原材料として、その数量の変動によって操業状態が大変不規則になりやすい、そういう業者が多いというふうに思います。そのために一工場当たりの従業員数が十人未満のものが大変多い。従業員も日雇いだとかあるいは臨時という雇用形態に基づくものが多くて、しかもその従業員の多くは女性なんですね。水産加工業経営体質は脆弱にならざるを得ないような面を持っておりますが、水産加工業体質を強化するため具体的にどのような施策を講じようとされているのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  50. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ただいまお話ありましたような悩みというものを水産加工業が構造的に持っていることは否めないわけでございます。  そして、そういうことに対応いたしまして、具体的な対策といたしましては幾つか考えているわけでございますが、一つは、何といいましても原料を安定的に確保するということが、企業の採算にとりましても、あるいはただいまお話ありましたようなこととの関係加工業というものを周年操業させるためにも、不可欠かと思っております。そのためには、外国でとっております魚、スケトウを初めといたしまして、こういうものの安定的確保ということもさることながら、やはりことのところの国際情勢に応じまして原料転換をひとつ促進する、身近にあるもの、ただいま先生からもお話ありましたように前浜でとれたものをみずから使うということが必要でございまして、そのための近海資源を中心とします加工体制をひとつ整備するということが今回の資金融通法の再延長につながる話でもございますし、それから水産物中核流通加工施設整備事業というようなもので、こういう近海魚を加工いたしますモデル加工施設というものも助成をしてつくっているわけでございます。  それから二番目に、先ほど来話も出ておりますように、消費者ニーズに合った新製品を開発、普及していくということが加工全体としてのパイを大きくし、それから付加価値を高めるというゆえんのものでございますので、いろんな試験研究でございますとか、これは若干の情報が伝わっただけでも随分プラスになるということもございますので、いろんな市場関係の情報を初め、あるいは基礎的な技術情報というものを積極的に提供してまいりたいと思っておりますし、それから魚につきましてはいろいろとまだ科学的に未解明の部分というものも多いわけでございまして、今までせっかくとれていながら捨てられていたもの、せっかくとれていながらむしろ公害であるとか邪魔者扱いされていた部分というものも、最近になりましてむしろ資源として有用であるというような試験研究というものも相当出てきておりますので、そういうものについてもさらに一層取り組んでまいりたいと思っております。  さらに、こういう原料の確保、それから市場の開拓に加えまして、それぞれの経営の合理化なり経営の安定ということが個々の企業対策として必要なわけでございますが、このためには、現在、分散的で、ただいま先生からもお話ありましたように非常に小規模で家内工業的にやっている、あるいは十人以下の従業員が多いという形でございますが、これから広域流通あるいは高度加工ということになってまいりますと、やはり規模のメリットというものは相当出てまいりますので、経営の共同化なり協業化というものを何とか推進したい。そのために、今回お願いしております法律の中でも、水産加工施設資金の融通の中でも、こういう共同化、協業化というものを大きく取り上げているわけでございますし、それから水産加工業者の経営なり、あるいは生産技術等につきましてマニュアルというようなものも学界なり業界なりのお知恵も拝借いたしましてつくって、それぞれの指針として提供するというようなことも具体的な施策としては行っているわけでございますけれども、こういうことでいろいろな政策手段というものはそれぞれつくられておりますが、これをどうやってかゆいところに手が届くような形で、しかも総合化された形で運用していくかということが肝要かと思いますので、そういう方向で、せっかくつくっていただいた法律制度なり、あるいはせっかくとれた予算の円滑な運用ということに十分意を用いてまいりたいと思っております。
  51. 菅野久光

    菅野久光君 十人未満の零細な加工をやっている工場が多いということを申し上げましたが、今長官からの答弁にもありますように、共同化とかあるいは協業化、そういうことによってやはり生産のコストを下げる、そういうことによって体質を強化していくというようなことは、これはぜひやっぱり今後やっていかなければならないことではないかなというふうに思いますし、そこに働いている方たちも不安定な状態で働くということではなくて、ある程度雇用も安定するような、そういう方向というものをこれからも目指していかなきゃならぬじゃないかというふうに思いますので、その点についても、業界との関係いろいろおありでしょうが、政府としてもやはり指導をしっかりやっていただきたいものだというふうに要望いたしたいと思います。  次に、赤身魚は特有な色とにおいのために余り人気がないわけです。特に、イワシは食用向け利用の比率が非常に低くなっております。したがって、近海資源を利用した食用加工技術の開発、これは急務だと思うんです。先ほどもお話がありましたが、四百万トンからとれるイワシの利用というのは特に急がれるのではないかというふうに思います。そういう意味では、今回の改正は研究開発費にも融資の道を開いたということで一歩前進としてこれは評価できるというふうに思います。今後は水産庁や地方公共団体の研究機関における水産加工品に関する研究の促進を図ることも必要だというふうに思いますが、これについてはどのような施策を講じようとされているのか、お尋ねをいたします。
  52. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 魚の消費問題といいますか、あるいは漁業全体の問題の基本の大きな一つは、イワシをどうやって人間様に食べてもらうかということかと思っております。今もお話ありましたように四百五十万トンからおととしもとれ、去年も四百万トン台とれているうちで、わずか二%だけが生食用で一七%が加工、全体でも一九%だけが食用に供されておりまして、残りはえさでありますとかあるいは肥料という形になっているわけでございます。  これをどうやって食べさせるかということが、本当に我々としても長い間いろんな研究もしてきているわけでございますけれども、一つは、生食用としてももう少し努力をする方法があるんじゃないか。例えば、今年度熊本のある漁協が宅急便で全国的にイワシのパックを売り出したわけでございます。これは九州内だけじゃなくて東京まで来ている。実は、私自身もわざわざ熊本から取り寄せたわけでございますけれども、千葉に住んでいる私が、銚子であれだけイワシがとれながら熊本から取り寄せる。これは非常に皮肉な話でございまして、今まで大量にとれている銚子あたりでも、もっともっと東京都民なり千葉県民に売る努力というものはしてしかるべきかと思っております。  ただ、やっぱり生食用だけに頼っておりましては、あれだけ一時に大量にとれて非常に劣化しやすいということでございまして、大量消費という点から言いますと加工ということを追求せざるを得ないわけでございますが、従来から冷凍すり身あるいは冷凍フィッシュブロックあるいはマリンビーフというようなものの技術を開発してまいりましたし、それから栄養素としてたくさん含んでおりますタウリンでございますとかいわゆるEPA、こういう有効栄養分を分離、活用するという研究も行ってきているわけでございます。  それから、今後特に技術の面で、生のままのすり身じゃなくて、冷凍魚を原料としてすり身にする製造技術でございますとか、あるいは今までのような単にすり身だけじゃなくて、もっと広範な形で食品素材として使っていただけるような、粒子を細かくするとかあるいはぶつ切りにするとか、いろんな方法がございますけれども、そういうことを考えるとか、あるいは鮮度低下というものに対応いたしましてスーパーチルド保存という技術がここのところ開発され、若干普及もしてきておりますので、こういうものも活用いたしまして、何とかおいしいイワシというものを消費者に安定的に供給してまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  53. 菅野久光

    菅野久光君 日本は、科学技術等は非常に世界でも冠たるものを持っているわけでありますから、これだけ科学が発達をして、日本の優秀さというものが世界に認められているわけでありますから、民間の研究機関というところでも相当やっておられると思いますが、これは国としても何とか研究資金というものをしっかり持ってやるべきではないかというふうに思うんです。やっぱり民間はある程度限られたことになっていくのじゃないかなと。しかし、民間は民間で非常に優秀な方たちもおるわけですが、国としてもぜひ早期にこういう多獲性魚の加工についての取り組みをやるべきじゃないかという、これは私は提言をしておきたいというふうに思います。  次に、低成長下の需要の低迷だとかあるいは減塩化あるいは簡便化のような消費指向の変化、それから添加物や防腐剤の使用に対する関心の高まりなど、水産加工品の消費を定着、拡大していくに当たっての困難は非常に多いというふうに思います。水産加工品の消費を定着、拡大するために、先ほどからいろいろなことを考えておられるように言われましたが、ことで改めてひとつまとめて消費の定着、拡大、それについてお答えをいただきたいというふうに思います。
  54. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 消費拡大が一つの政策の柱として非常に重要なわけでございますけれども、水産物だけじゃなくていろんな消費拡大につきまして、何といいましても子供と御婦人、これにどう目を向けさせるかということが肝要かと思っております。  そして、そのためにも、我々といたしましてテレビ放映でございますとかあるいはパンフレットでございますとか、こういうことでできるだけわかりやすく魚の特性、栄養素あるいは調理方法、こういうことをPRしてまいりたいと思っております。残念ながら、今の若い御婦人たちの場合にはどうしても魚のにおいであるとか、あるいは調理が面倒であるとか、焼けば煙が出るとかということで魚に対する抵抗感というものがある世代というのもあるわけでございますけれども、それに対応していろんな加工を施すことによりまして今までマイナスと思われたものを除去できると思っておりますし、それからここのところのゆとりのある生活ということにかんがみまして、煙が出ること自体がゆとりにつながるというような逆の動きも少し出てきておりますので、そういう復古調的な趣味というものも少しくすぐりながら全体としてPRを行ってまいりたいと思っております。  特に、子供のころからやはり魚になれなければ困るということで、学校給食側に対しましても、学校給食の場では非常に調理が難しいということがございましてなかなか今まで入らなかったわけでございますけれども、ここのところ、イカリングでございますとかあるいは魚のフィレでございますとか、ああいう形で大量処理なり簡単な調理で児童に提供できるという素材がたくさん開発されてきておりますので、こういうものをぜひ学校給食の中に取り入れていただくように考えたいと思っております。  それからさらに、いろんな笛や太鼓でPRすると同時に、市場関係者なり魚を売る人、この人方自体がやはり旧態依然たる商慣習でございますとか売り方、こういうことでは困るわけでございまして、そういう売る人なりつくる人そのものに対しましても、いろんな指導なり情報提供を強めてまいりたいと思っております。  幸いにいたしまして、ここのところ、例えば家計調査を見てみましても、魚の消費というものは全体の食料消費が停滞している中で確実にふえてきているわけでございますし、それからスーパーでございますとかデパート、こういうところでの魚の売り場面積というものがかなり拡大してきている。しかも、その拡大してきた中で対面販売コーナーというものも、銀座でございますとか新宿でございますとか池袋でございますとか渋谷でございますとか、ああいうど真ん中のデパートの食品売り場でも相当ふえてきているという情勢にございますので、こういうものを何とか我々といたしましても側面から応援しながら、魚の消費拡大につながるように努めてまいりたいと考えております。
  55. 菅野久光

    菅野久光君 この法案の最後に、実は電力料金のことについてちょっとお尋ねをいたしたいというふうに思います。  円高と原油安の差益を還元するために六十三年一月から電力料金が改定をされて、一般的には引き下げられました。しかし、この改定には極めて大きな問題点が含まれていたと思うんです。つまり、三百キロワット以上五百キロワット未満の事業所も、毎月の契約電力を年間最大の電力を使用する繁忙期の月を基準に決められることになったということで、例えば北海道の水産加工業者の多くは大体三百キロワットから五百キロワット未満の契約を結んでおります。夏場に大量の電力を使って冬場は電力消費が半分以下に落ちるということがあるんですが、結果的には電力料金が引き上げられることになります。例えば、四百キロワットの契約を結んでいる工場では、年間二百六十万円程度の負担の増加となるというふうに業界では推定をしているようであります。本来は、円高差益の還元ということで電力料金が下がるというはずなんですが、今度はかえって電力料金が上がるというようなことは、ちょっと問題ではないかというふうに思います。  六十三年の二月二十四日に北海道水産物加工連だとかあるいは北海道冷凍事業協会、北海道水産物荷主協会、北日本魚粉工業組合、全国すり身工業組合の五団体の代表が北海道電力だとかあるいは札幌通産局、北海道庁、そこを訪れて電力料金の改定内容の是正を要望したというふうに聞いております。具体的にはこれらの業界の方々は、一年間を二期に分けて最大需要電力を決定する二段階契約制の採用だとかあるいは時間帯別の電力料金制度の適用など、地域や業種に応じた特例措置の採用を要請したというふうに聞いております。  今回のこの法改正に当たっても強調されておりますように、最近は水産加工業体質強化というのが緊急の課題になっているわけです。また、水産加工業では、生産コストに占める電力料金のウエートが極めて高いわけです。それだけに、水産加工業に対する電力料金の実質的な値上げは時代の要請に逆行するものということになるのであって、極めて残念な事態だというふうに思いますが、しかし、残念だからといってこのままにしておくわけにはいかないので、この事態を放置するならば、水産加工業体質強化に本当に政府は本気で取り組んでいるのかということにもなりかねない問題なんです。  政府は、一年間を二期に分けて最大需要電力を決定する二段階契約制の採用だとか時間帯別電力料金制度の適用など、地域や業種に応じた特例措置の採用というのができないのかどうか。何か今業界とそれぞれの電力との間で話し合いをしているということもちらっと聞いておりますが、その辺について通産省としてどのようにお考えなのか、まず通産の立場をお聞かせいただきたいと思います。
  56. 清川佑二

    説明員(清川佑二君) 今回の料金改定の際に、実量制という仕組みを取り入れるということで申請がございまして認可したわけでございます。  これを一言ちょっと御説明いたしますと、従来電気料金の算定の際に大口のユーザー、これにつきましては計量メーターの実測値に基づきまして料金を決定する、こういうことでやってきたわけでございますが 小口のユーザーにつきましては需要家の受電設備とか負荷設備の容量などに基づきまして一定の計算の方式で決定する、こういう方式が料金の決め方として行われてまいりました。これはどうしてそういうことになっておりましたかと申しますと、小口需要家の場合に、計量メーターのコスト、こういったものが相当に高い、そうすると実質的には料金が高いということになってしまう。あるいは設備の管理能力というような問題がございまして、またそういうことがあるものですから、他方でコストを安く抑え、もう一方、いろいろ需要の形態がそういう計算の方式になじむ方法であるということがございました。  本年一月からの改定に際しましてのことでございますが、需要家の電気の使用の実態がいろいろ多様化しておりますし、それから計量メーターというのも小型化、低廉化が進んでまいりまして、よりコストが安い計量メーターができるようになってきている。そうなりますと、電気料金がより客観的に定まって公平なものであるようにするためには、大口の需要家と同様に、実際にはかってそれで料金が決まるという方が適切であるというふうに考えられたわけでございます。これにつきましては、いわば電灯と同様でございますけれども、御使用いただいた分をメーターではかって料金とするというのがよい仕組みであるということで、従来から公聴会などで中小企業団体などから要請されておりまして、これが実際上できるような状態になってまいりましたものですから、電力会社から申請があり認可されたわけでございます。  ただ、先生が今おっしゃいましたように、そういたしますと、制度切りかえということになりますといろいろ問題が出るかもしれないわけでございまして、一部の需要家におきまして計量メーターで計算した場合に、今までの方式から計算した場合よりも料金が下がる場合には、これはメリットがあるわけですから結構でございますと、これは当然そういうことになるわけでございますが、メーターではかってみたら実は今まで得していたということはあるのかもしれませんが、とにかく電力料金が上がってしまう、こういう場合に、結果として値上がりするというのはやはり需要家にとっていろいろ不都合な事態が多いわけでございますので、直ちにこれを適用するということはやはり避けるべきである、こういうふうに考えてまいりました。そのようなことから三年間の経過措置、経過期間を設けまして、その間に使用していただく皆様方の方でもいろいろな使い方の工夫をしていただくとかいうようなことをして、何とかして円滑に新しい料金体系に入っていただきたいと、こういうようなふうに考えられているわけでございます。  それで、水産加工関係につきまして、やはり御指摘のような状態がございまして、私どももお話を伺いました。これは実際上、現場でどのような電気の使い方をするか、どのような操業をするかというような話とも絡み合いますので、三年後の話とはいいましてもやはりユーザーの負担がふえないように極力うまくいくことが望ましいと、こういうことでございまして、私ども電力会社に指導いたしまして、個別のユーザーの方々とよくお話をし、うまい使い方ができるようにいろいろ御協力、御相談に応じ、円滑に新しい仕組みになるようにということで話をさせておりまして、先ほどお話ありましたような団体も北海道電力と話をし現実に御相談に乗っていると、こういうことで今後ともこの方向で進めてまいりたいと思っているわけでございます。
  57. 菅野久光

    菅野久光君 今の御説明で私も理解できましたが、何か初めの改定のときの状況でいくと、これは大変なことになるんじゃないかというふうに思いましたが、それぞれ各電力と需要家との間でそういったものについてはいろいろ話し合いをして、実質的には、それは使った電力の代金は払わなきゃならぬけれども、これは契約のあれによって大変な違いがあるし、特に水産加工業は魚がとれたときには、あるいは原料が来たときには一度にどっと電力を使って、原料がないときにはほとんど使わないというような、非常に何というんですか、加工業の工場によっては平準的にずうっとやっていくところもありますけれども、個々の零細なところはそういうふうに非常に波のある産業だと思うんですね。  そういう点で、最初に出された方向でいくとこれは大変なことになるということで、片方では下げるためにやったことが逆に上がることになっちゃ大変だなというような思いで質問したわけであります。今、資源エネルギー庁の方でそういうようないろんな配慮をして、しかも特定のそういったところについては十分それぞれの電力と話し合いをして、急激な電力料金を払わなきゃならぬなんというようなことのないような形の方向で努力をしていくということであれば、まさに制度の間での整合性というのはとれるので、片方では何とか体質強化ということで資金制度なども含めてやった、片方はそういうことによって電力料金が上がるということでは、これはちょっと整合性がとれないのではないかということで私も心配をいたしましたが、今の答弁でよかったなという感じでありますので、それぞれの電力とそれからそれぞれの業界との話し合いの状況というものを見守っていきたい。円高差益がそういうところにも何とかいくような形で、しかもそのことが水産加工業体質強化にも影響を及ぼさないような形でぜひやってもらいたいものだと、そういうことをお願いをしておきたいというふうに思います。  予定の時刻が来ましたし、あと大臣も本会議の何か関係もあるようでございますので、私の質問は以上で終わります。どうもありがとうございました。
  58. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時四十四分休憩      ─────・─────    午後一時三分開会
  59. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、原材料供給事情変化に即応して行われる水産加工業施設改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  60. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 午前中に引き続き、私も原材料供給事情変化に即応して行われる水産加工業施設改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案質疑させていただきます。  午前中、いろいろ法案そのものに触れて同僚の委員からお話がございましたので、確認をさせていただく形でお伺いをしてみたいと思うわけでございますが、この法案というより制度ですね。制度資金計画実績を見て、その利用状況についていろいろお話がございました。私はその利用状況が低い事情について先ほどお伺いをいたしておりましたけれども、長官はこの利用状況が低い理由の一つに、大変水産業が不況であることを一つ挙げられ、もう一つは、二百海里問題の深化によってというふうなことを言われておりますけれども、私はこの法案の目的が、二百海里漁業水域を設定された結果、我が国漁業が北洋漁場などへの依存傾向を見直さざるを得なくなったことを背景に持っているということを考えれば、二百海里問題が深刻化してきたということが理由にはならないんじゃないか。むしろ、そういう背景が出てきたから、この法案制度が利用されなければならないというふうに私どもは単純には思うのでございますけれども、五十年、七百八十八件とおっしゃいましたが、そういう利用度にあるということ。  これはそういたしますと、当初の目的は、ここ十年、二度更新したんですか、達してなかったというふうに考えてよろしいのかどうなのか、まずこの点からお伺いします。
  61. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 午前中の答弁で、若干その点舌足らずだったかと思いますけれども、この制度が発足いたしましたのは、今先生からもお話ありましたように、二百海里という新しい漁業秩序なり体制ができるということに伴ういろいろな影響を排除するということでスタートしたわけでございます。  したがいまして、五十三年から三年間ほどは貸付実績平均してかなり高い水準にあったわけでございますけれども、実はその後二百海里体制が定着しながら、ある意味ではもたれ状態といいますか、小康状態を保ってきたわけでございます。ところが、その深化して苦しくなったと申し上げましたのは、六十年代に入りましてから、その五十年代の後半の小康状態からもう一つ情勢が変わりまして、大体五十年代の後半というものは、アメリカの二百海里にいたしましてもソビエト関係にいたしましても、ある程度漁獲割り当てにつきましてはそう大きな変化というものはなかったわけでございますけれども、六十年代に入ってそれぞれの国の水産資源を自国化するという動きが急になってまいりまして、漁獲割り当てが急速に減ってまいりました。その特徴的なのが、アメリカにつきましては今年度ゼロというところまできたという意味で、その小康状態からまたもう一つ深化といいますか、第二次二百海里ショック的な状況というものが出てきたということをお話ししたわけでございます。  ただ、ただいま先生からお話がありましたように、いずれにしてもこういう新しい二百海里体制に対応いたしまして、水産加工業体質を整えるということで、せっかく五十二年当時に法律をつくりまして、五年間、五年間と延長してきたにもかかわらず、いまだにまた再々延長をお願いするということは、いろんな環境の変化はもちろんございましたけれども、所期の目的を達していないと言うとあれでございますけれども、初期の五年間で完遂できなかった、それから延長さしていただきましたもう五年でも達成できなかったということは、紛れもない客観的な事実かと思っております。
  62. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 そこで、この法律は時限立法で、今回もまた五年を目途に考えておるわけでございますね。そういたしますと、今の話ですと、最初の五年で達成できなかったものを次の五年でまたもう一つというふうに言われたわけですが、先ほど同僚菅野委員の方からもお話がありましたように、日本を取り巻く水産業の環境というものがこれから先どういう環境になるかというその見通しの問題ともかかわってくるわけですけれども、これは果たして時限立法でいいのかどうなのかという問題があろうかと私は思います。  例えば、この制度を利用しようとする業界においても、めどが立たぬということ、いつ借りようかと思うめどを立てる安定さがないんじゃないか。三月で決算期を見合わせながら次の年度からの分を借りようかと思うけれども、この年度には果たしてこの制度がまだ動いているのか、いないのかというようなことはいろいろあるのじゃないかと思うんですね。  したがいまして、本当の意味でこの制度を生かすのならば、私はこれはやはり恒久化すべきではないかなという思いを持っておるんですが、先ほどそうできない事情も伺いましたけれども、改めてお伺いいたします。
  63. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 水産関係加工業は、その大方が中小零細企業が多いわけでございます。一般中小企業につきましても、それぞれの一般市中金融機関なりあるいは中小企業金融公庫でございますとか国民金融公庫、こういう一般対策というのはあるわけでございますけれども、水産加工業につきましては、二百海里時代の到来という特別の事情に着目いたしまして特別の制度資金ということを設けたわけでございます。しかも、この資金の大宗を占めております農林漁業金融公庫の本来の性格からいいまして、農林漁業経営者という第一次産業そのものを融資対象にしている。しかし、ただ水産の場合には、水産加工業漁業経営というものはまさしく車の両輪ということでもって、こういう特別の横からの法律で事業能力といいますか、事業能力まではいかなくても、こういう低利長期融資というやつを創設しているわけでございます。  そういうことに加えまして、五年間と切り、今回もまた五年の延長でお願いしておりますのは、何とかこの五年間で体質を強化していただきたいという、そういう願望を込めまして、やはりこれだけ激変している中でございますので、いつまでも長い間かかって体質を強化するということじゃなくて、こういう事態の変化に対応して緊急にやはり自助努力も積み重ね、こういう資金も活用して立ち直り、経営の安定を図っていただきたいという願望を込めましてこの五年でお願いしているという次第でございます。
  64. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 そうしますと、その次の五年はあるかないかわからないということも含んでいるわけですね。
  65. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 我々といたしましては、やはり何といいましても水産加工業体質が強化され安定的に仕事を継続し、食料の安定供給にも寄与するということを念頭に置いておりますので、今後五年間たった際に、その時点でのいろんな情勢を見きわめながらその時点で判断させていただきたいと思いますけれども、いずれにしても基本は水産加工業体質を強化したいという点には変わりございませんので、そういう基本ラインに沿いましてその時点で判断さしていただきたいと思っております。
  66. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 それから、私の質問の中に、運転資金の問題がこの制度では含まれていないのでということを申し上げてありますけれども、これも先ほど同僚委員の方からお話が出ましたが、いわゆる水産庁が利子補給しているところの水産加工経営改善促進資金ですね、あの強化資金が変わった促進資金ですけれども、これは六十一年度の融資枠が百四十億ですか、それに対して実績が六十億。さっきの御答弁では五十七億とおっしゃられたようですが、あの実績ですね。私、単純に思いますと、施設資金の方については、今こういう時期に施設を増設したり取得したりということはまさに考えられない部分もあるんですけれども、いわゆる運転資金の利用状況が低いということへの理解がちょっとつかないんです。この辺のところは、先ほど、今の施設資金の方とセットでお話しをなさいましたけれども、これはどう考えればよろしいんでしょうか。
  67. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 今年度から新しいネーミングになりました水産加工経営改善促進資金、これは従来からもそうでございますけれども、水産加工業すべての運転資金を手当てするという形じゃございませんで、要件として、細かくなりますが、三つほどございまして、一つは、国際規制の強化に対応した経営維持に必要な資金、それから近海利用魚種の食用利用の促進に必要な資金、それから近海資源型水産加工業の新製品なり新技術の開発、導入に必要な資金ということで、対象が限定されているということが一つあるわけでございます。この対象というものは、主に今回御審議いただいております施設資金考え方としては非常に似通っている点がございまして、これは施設資金の導入が残念ながら計画をかなり下回っていたということと、傾向なり理由としてはほぼ一致しているというふうに考えております。
  68. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 次に、公海の問題について少しお伺いをしたいんでございます。  報道によりますと、アメリカの上院本会議でベーリング公海水域での操業を一時凍結するという米ソ間の合意が実現することになったということで、この海域で操業する日本などについてもこの合意を遵守させる決議案を可決したとのことを新聞報道で読みました。そこで、この決議によって今後どのように我が国としては影響を受けていくのか。それによってスケトウあるいはサケ漁への影響などどんなふうになってくるのか、あるいは水産庁はどう対応なさろうとしておるのか。以上お伺いします。
  69. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 今回いろいろな形で新聞に報道されているところでございますけれども、具体的な中身を申し上げますと、三月二十一日に米国上院はベーリング公海での全漁業の全面禁止、いわゆるモラトリアムでございますけれども、これを米ソの合意により実現することを国務長官要請する決議を採択したということでございまして、院の、国会の決議によって国務長官にそういう働きかけをするようにという要請決議に現在の段階ではとまっている次第でございます。  したがいまして、国会の決議、これはそれぞれの行政府がそれに従いまして行政の努力をすることはもちろんでございますけれども、少なくとも現段階で決議の状態でございますので、法的なりあるいは条約的に我が国として拘束されることは全くございませんし、それから我が国といたしましては、公海におきます漁業の自由という国際的にも認められていることを一方的に制限するということは到底是認できるところではございません。ただ、今後米ソがどういうふうに動くかということは非常に予見しがたい環境にあるわけでございますけれども、四月中にも米ソ間でベーリング公海問題について協議をするということが予定されているやに聞いているわけでございます。  いずれにしても、こういう形でベーリング公海での漁業規制という動きというものは徐々に強まってくる傾向は確かでございますので、我々といたしましては十分注目しながら事態の推移を見ると同時に、こういう公海自由の原則という国際的に認められた基本ラインに沿いまして、それぞれの国にいろんなチャンネル、いろんな場で働きかけを行ってまいりたいと思っております。
  70. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 政務次官にお伺いいたします。  今もお話ありましたように、国務長官への要請事項であるというふうに今御説明がございましたが、いずれにしても我が国の漁業は年を追うことに狭められて、大変厳しい状況に追い込まれていっていることは確かでございます。これまで水産国日本が開発してきたたくさんの好漁場と言われるようところから締め出しを食っていくというようなことで、一方、水産物の輸入の激増というような状況の中で、今後我が国の漁業はどんな方向にかじ取りをしていけばいいのか、その振興はどんな形で振興策を進めていけばよろしいのか、この点について御認識をお伺いしたいと思います。
  71. 吉川博

    政府委員(吉川博君) 我が国漁業の現状は、二百海里体制の定着に伴う国際規制の一層の強化、また消費支出の停滞に伴う魚価の伸び悩み、水産物の輸入の増大等、まことに厳しいものになっております。  このような状況を踏まえ、水産庁では長期的視点に立って水産施策の基本方向を確立するため漁業問題研究会を開催し、我が国周辺水域における漁業の振興策について、昨年十一月にその中間報告を受けたところでございます。今後は、同報告を踏まえて我が国二百海里水域の高度利用や消費者ニーズに適合した水産物供給体制の整備等について施策の具体化を図るとともに、海外漁場の確保を図りつつ漁業の再編、整備を推進することにより漁業の振興に努めてまいりたいと考えております。
  72. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 水産加工品の問題についてお伺いをいたしますが、水産加工品といいますと、私ども一番最初すり身のことを思い出しますけれども、すり身を主原料としたところの練り製品の話ですね、この練り製品が全体的に生産が大変縮小傾向にあるということを水産新聞にも盛んに書かれております。これは消費者の嗜好にもよるわけでございますけれども、すり身等の原料、こういうものの減少にもよるのかどうなのか。まず、この練り製品全体の生産状況、あるいはその周辺問題についてお伺いします。
  73. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 水産加工の非常に大きなウエートを占めております水産練り製品でございますけれども、これはただいま先生からもお話ありましたように、消費者のニーズというものが多様化、高度化してきているということに伴いまして、水産練り製品の消費というものが停滞傾向にある。それからここ数年間、非常な勢いで外国に輸出しておりましたカニ風味かまぼこ、これが円高なりあるいは発展途上国の輸出努力ということがございまして日本からの輸出が減少しているということで、全体的に申しますと、ただいまお話ありましたように伸び悩み傾向というものは否めないわけでございます。  しかし、ここのところ若干情勢が変わってきておりまして、特に原料が昨年の秋以降かなり安かった。ことしの一月などは数年来の底値を記録したということによりまして、消費が回復基調にございまして、直近時点のあれで申し上げますと、去年の十一月、十二月の家計調査、これで見ますと、久しぶりに水産練り製品の一世帯当たりの消費量というものも前年同月に比べまして上がってきたという形になっておりますし、それからここのところいろんな努力の積み重ねがございまして、例えばテリーヌ風のかまぼこでございますとか、そういう新製品の開発努力というものが進んできておりますので、高級感なりあるいは調理の簡便性ということもございまして、水産練り製品のこれからの将来というものは決して悲観すべき状況にはないというふうに基本的には考えておる次第でございます。
  74. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 これは食品需給研究センターのデータですと、昨年の練り製品生産量は七十六万五千百四十トン、これは対前年比三・一%の減ということで四年続きの減産なんですね。だから、いい方に向いているというのはごく最近のデータでありまして、ここのところ四年連続減産であることは間違いないわけですね。これはやっぱり私はすり身の量が足りないのじゃないかなというふうに思うんですけれども、これはどうなんでしょうかね。いわゆる原魚不足というようなことが考えられるのではないかというふうに思うんですが、消費が進まないから生産が落ちておるのか、それともやはりそれは原魚不足によるものなのかどうなのかということで、これは昨年のスケトウだけですが、すり身の生産量が洋上買い付け分を含んで対前年度比一七%減なんです。十八万四千五百トン。だから、結局私は原魚不足ではないかと。消費が落ちているから練り製品の生産が落ちているのではなくて、原魚が不足しているのじゃなかろうか。  今、すり身は価格が安くなっているというふうに言われました。底をついたとおっしゃっておられましたけれども、原魚が不足してすり身の量が不足すれば価格は勢い上がるわけでございますが、その辺のところも含めまして、こういうすり身の生産量等が関連業界に及ぼす影響みたいなものはどういうふうになっているんでしょうか。
  75. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) すり身でございますけれども、これは従来ほとんどすべてがスケトウダラすり身という形で行われてきたわけでございます。ここのところの外国との関係等から言いましてスケトウダラすり身自体が少なくなってきたことは事実でございますけれども、これにかわるものといたしまして、ホキでございますとか、あるいはミナミダラでございますとか、あるいはイトヨリ、さらにはホッケ、それから近海でのイワシというようなもののすり身への使用という新しい傾向も出てきているわけでございます。それに加えまして、国内生産量としての特にスケトウダラのすり身生産というものは確かに数字としてここ数年低減傾向にあるわけでございますけれども、一方、輸入というものも結構ふえてきておりまして、全体としてのスケトウダラ、それからその他の冷凍すり身、それプラス輸入量という、トータルとして見てみますと、ここのところ数年間、大体五十万トン台ということで横並びで来ているわけでございます。ただいま御紹介ありました六十二年の数値につきまして我々としては正確な数字の集計をまだ終えておりませんけれども、それほど六十一年に比べて大きく減ったというふうには認識していないわけでございます。  したがいまして、原料が少なくなったということもさることながら、消費者の嗜好でございますとか、それからむしろ消費者の嗜好に合わせるという形で原材料をいろいろと多角化してきているという傾向がここのところ顕著に見られますし、そういうものの一つの動きとして、例えばその代替といたしましてむしろ地元でとれた魚を地元らしいすり身にし、かまぼこなり加工品にしていくという、そういう特産的な練り製品をつくっていくというような努力もいろいろと見られまして、そういうものが予想外に消費者に受けてきているという、ほかの食品でもそうでございますけれども、個性化、個別化というような動きもひとつございますので、そういう全体の動きとして見ますと、先ほども申し上げましたように、練り製品全体としてはこれから努力のしようによっては決して暗くはないというふうに考えている次第でございます。
  76. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 やっぱり消費者が一生懸命買わなければ日本の魚加工業界が大変困るんだということになるわけですけれども、きょうの新聞に魚肉練り製品の活性化ということで日水が新しい新製品をたくさんつくり出したという話が載っていまして、私は大変興味があるものですから一生懸命読んでおりますわけですが、最近こうした今おっしゃられているように、消費者の目先を変えてそして嗜好をそそる商品をたくさん開発しておるわけですね。  私、ここでちょっとお伺いをしたいのは、先ほども局長答えられておりましたように、マリンビーフ、それからサケソーセージとかいうふうな話をなさっていたと思うんだけれども、きょう公正取引委員会さんにも来ていただいているのでネーミングの問題を少し伺ってみたいのでございますけれども、マリンビーフというものの実物を私まだ見たことがございません。ですけれども、この名称、品名からくる感覚というのは、ちょっと私はビーフというのが大変気になりまして、あと私が後からお話しに出しますサージンミートというのがあるわけです。それからシェルステーキ、それからカニ風かまぼこは大変問題になりましてこれは改姓させられたわけです。  公正取引委さんにちょっとお伺いいたしますけれども、今言ったような名前から魚が想像できるか肉が想像できるかという、こういう問題になるわけでございます。過去にも公正取引委員会ではいわゆる疑似商品というような食品についていろいろ商品名の適正化の御指導をなさったと思うのでございますけれども、その具体的な内容といいますか経過についてちょっとお伺いしたいんですが、私が先ほど言いましたシェルステーキというのは、これは完全に違法でございます。というのは、シェルステーキというのは貝の形をした加工品なんだけれども、使っているのは魚のすり身なわけです。そうすると、これは形状で貝の形を見せておいて原材料は魚であるということはどうなんだろうかというような問題も含めまして、カニ足かまぼこの問題から消費者の間でネーミングの問題が大変問題になっているんですよ。今公正取引委員会にお伺いいたしますので、ひとつよろしくお願いいたします。
  77. 本城昇

    説明員(本城昇君) 先生から今御指摘いただきましたように、疑似加工食品の表示、ネーミングの問題でございますが、昭和五十八年ごろ形状あるいは色をカニに似せたかまぼこに、カニ足、カニスティックといったカニの文言を含む商品名を付しましたり、あるいはシシャモの卵をスケソウダラのすり身で固めました魚卵製品にかずのこ風味などと表示するなど、本物と紛らわしい商品名などの表示を付した疑似加工食品が出回っていたわけでございます。このため当委員会は、こうした表示は本物であると一般消費者に誤認され景表法上問題があるといたしまして、昭和五十二年二月に関係団体に対して要望を行うなどいたしまして、こうした疑似加工食品の商品名等に関する表示の適正化を図った次第でございます。  その内容は、具体的には疑似加工食品に本物と紛らわしい商品名とかあるいは本物の絵、図案を付したりしないこと、あるいは商品名と同一視野に入る場所に本物でない旨を明瞭に表示することなどを表示の要件とするものでありまして、このように疑似加工食品の商品名につきましては公正取引委員会として厳正に対処してきたというところでございます。
  78. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 だから今のお話で、誤認をされるような疑似加工食品をつくる場合は打ち消し表示というのが必要になってくるわけです。さっきのシェルステーキなんかについては、これは貝ではありませんと書かなければいけないわけで、今のカニ風味かまぼこには、これはカニではありませんと必ず書いてあるわけですね。だから、そういうことを含めて、私はそういう新商品がどんどん開発されていくことを希望いたしておりますし、今回のこの制度では新しい開発商品に対しても大きく窓口を開いておるわけですね。だから、こういうものが今後この制度を利用してどんどん出てくると思いますし出てきてほしいと思うわけです。  ただ、その際に、消費者に誤認をされるようなことあるいはまた消費者を欺くようなことをあえて意図的にネーミングにおいてやるようなことになれば、これはだんだんこの種の商品から消費者が離れてしまいます。そういうことで、消費者が正しい選択をするために、そしてこういうものに正確になじんでもらうために、これからの魚を使った加工食品にはこの手のものが出てくるのだということをちゃんと認識させるためにも、正しい表示をやっぱりきちっと行わなければいけない。  それから、かなりフィーリングに近いネーミングの問題でございます。マリンビーフは、マリンで打ち消しがあるからいいと公取さんはおっしゃるんですけれども、マリンが取れたらビーフでございますから、塩釜からマリンビーフを送ったよというこういう電話が入った、それを受けた人は、何か塩釜からビーフを送ってくるようだと、こういうことになって、マリンだけ落としてきたら、あれ、塩釜もいよいよ魚がだめになったからビーフになったかと、こういうふうなことにもなりかねないわけでございまして、今後マリンビーフのような種類のものも含めて私はやっぱりネーミングの問題もぜひいろいろ御指導を賜りたいと、このように思うわけでございます。公正取引委員会さんに関しては、今後もこうした魚肉加工食品というのはどんどん出てくるわけでございます。したがいまして、そういう景表法の問題が出てくる場合については適切な御指導をしていただきたいことを希望いたしますので、よろしくお願いいたします。  それから、引き続き魚の加工ということで、さっきイワシの話が出ておりました。これは厚生省さんにお伺いいたしますが、最近煮干しが褐変しないということが言われております。煮干しは置いておきますと色が変わってくるのが普通でございますが、褐変をしないということでこれは酸化防止剤BHTが使われていることは間違いないわけでございますけれども、消費者はこの手のものにまでそういう添加物が使われては困るということで、これはぜひBHTを除いた煮干しをつくろうということで、消費者団体が申し入れて業界と提携をしてそういう煮干しをつくろうということを提案したところ、加工業者がBHT、つまり酸化防止剤を使ってない煮干しは市場流通が無理である、こういう話をして、つくる方はつくってもいいんだけれども市場が受け入れないという話が出てきておる、こういうことなんですけれども、まず厚生省さん、BHTの使用状況はどんな状況になっていますか。
  79. 大澤進

    説明員(大澤進君) 御承知のようにBHTは食品添加物に指定されておりますが、もちろん目的は酸化防止剤ということで、対象食品、つまり使用状況なんですが、魚介類の冷凍品、それから鯨の冷凍品、チューインガム、それから油脂、バター、煮干しなんかを含めた魚介類の乾製品、それからあるいは塩蔵品とか、さらに乾燥裏ごしの芋、これらに使用が認められておりまして、現在使われている状況でございます。
  80. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 すべてに使われますか。
  81. 大澤進

    説明員(大澤進君) この添加物も使用基準が定まっておりますので、今私が申し上げたような対象食品、これらについては広く使われている。ただ、例えば魚介の冷凍食品の何と何に使われているかとか、あるいは今言った干物、そういうものについてもどれとどれに使われているか、そこまで私ども詳しくその業界の実態は把握できておりませんが、一般には広く使われているという状況承知しております。
  82. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 そういうことなんです。それで、消費者としては、やっぱりそういう添加物みたいなものがこういう魚肉加工品に入っていることは考えられないわけでございまして、こういうものも御指導していただかなければなかなか魚加工品になじめない。これは煮干しだけじゃないんです。すべての干物におよそ使われていると思います。市場流通段階でそれを荷受けしないというのが実態のようでございますけれども、ぜひこの辺のところを調べていただければと思います。  それからもう一つは、これは千葉県の行政の話でございます。お名前を申し上げてもよろしいんですが、あえて言わずに申し上げれば、千葉県の主婦たちがさっき言ったサージンミート、これは先ほど菅野委員の方からも出ておりましたように、多獲性魚としてこれからいろいろな形でさらに利用されていかなければいけないということでサージンミートというものを開発しよう、こういうことで県の漁政課から補助金を受けようと、こういうことになったわけです。そうしましたら、県が指定している添加物を使わなければ助成対象にならないと、こういうことになってきた。それで、そんなものは我々はできないということで、そのサージンミートは今棚上げになっているというんです。ただネーミングだけがひとり歩きしているんですよ。そういう実情があるわけですね。  したがいまして、消費者の方では、今御存じのとおり無添加という付加価値を大変望んでいるわけでございますね。その中で、行政や業界があえてそういうものを使わなければ流通させられない、つくらせないというような加工現場の実態では、幾ら消費者に買っていただかなければ業界は活性化しないのですと言われてもこれは無理でございます。ですから、そういうものもいろいろ御配慮いただきながら、新しい技術の面でいろいろ今度融資枠が広がっておりますね、添加物を入れるのではなくて、真空パックのごとき物理的技術を使って包装の技術を開発して、無添加で流通するというようなことは幾らだって考えられるわけですから、そういうふうな指導をしっかりしていっていただきたいなというふうに思うんでございますけれども、もろもろお話をいたしましたことを含めて、長官の御見解を伺いたいと思います。
  83. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ネーミングなり添加物なり幅広い消費者との接点についていろいろ御意見をちょうだいしたわけでございますけれども、まずネーミングの問題にしましては、先ほどもちょっと議論になりまして、我が役所の仕事といたしまして、今御審議いただいている法律名前法律に直りますと六十七文字という非常に長いやつになりますし、それから資金名前も、先ほど言いましたように長官でもなかなかすぐ暗記できないやつになっておるわけでございますので、できるだけネーミングというものは国民の皆様方のフィーリングなりにさっと入るということも一つ肝要でございますけれども、それが一歩間違えまして虚偽の表示ということになるようでございましては、せっかく国民のフィーリングに訴えながら逆に遠ざかっていってしまうという問題がございますので、そこの兼ね合いというものは非常に難しゅうございますけれども、消費者が誤解することなしに食料品を手に入れられるということを基本といたしまして、今後とも注意深く見守ってまいりたいと思っております。  それから、添加物につきましても、魚のように一度にたくさんとれまして、しかも非常に劣化するのが速いというものでございますので、まさかの場合ということを考えますと、いろいろと注意に注意を重ねるということも必要でございますけれども、注意を重ねるがために余計なものを入れるということもかえってマイナスでございますので、その辺は厚生省あたりとも十分連絡をとりながらこれから適切な対応ということをしていかなければ、水産物の消費拡大ということにマイナスになるというふうに考えております。
  84. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 それから、大変細かい話ばかりで恐縮なんでございますけれども、加工業界からの御要望の中で、缶詰の缶の値段が大変に高くて採算が合わないと。きょう私ちょっと買って持ってきて、うっかり置いてきてしまったんです。イワシの缶詰九十八円というのを買ってまいりましたけれども、九十八円のイワシの缶詰で缶代が幾ら一体するのだろうかということを考えますと、この缶代が非常に業界にとって負担になっている、コスト高につながるということでございますけれども、この辺のところはどんなふうになっているんでしょうか。
  85. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 我々残念ながらすべて統計的な処理で集計できているわけではございませんけれども、缶詰の缶代につきましては非常に種類なり材質というものも区々でございまして、余り確かな数字ではございませんけれども、製造原価に占めます缶の割合というものはマグロ缶詰で一から二割程度、それからイワシ缶詰で四割程度ということになっております。これは製造原価でございますので、末端の小売原価に比べますとその後の小売マージン等がかかりますので、比率としてはただいま申し上げました数字よりかなり低くなることはもちろんでございます。
  86. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 だから、安いのほどやっぱり缶のウエートが高くなっていくわけですよね。この辺のところが泣きどころでございまして、これも私が思いますには、必ずしも缶を使わなくてもいいんじゃないかなというふうに思いますので、さっきの包装技術、こういうふうなものも含めて、いろいろな技術の開発というのは今後考えられる部分ではないかなというふうに思っております。最近、何か合成洗剤なんかでも、容器代が大変にプラスチックが高くなったときに開発したということでみんな袋入りです。薄い袋にみんな合成洗剤なんか液体洗剤ですけれども入っておりますから、缶詰は缶におさまらなければならないということでもないんで、考え方もやっぱり発想を変えていかないとコストの安い製品というのはでき上がっていかないんじゃないか、こんなふうに思いますので、いろいろ場所がありましたら御指導賜ればありがたいというふうに思います。  それから、最後になりますけれども、先ほど同僚委員の方からもお話がございましたように、魚資源の確保ということで沿整事業が大変な事業になっていくんだというお話でございましたが、その中でも主流を占めていきますところの栽培漁業について少しお伺いをしておきたいというふうに思います。  先般発表されました沿岸漁場整備開発法に基づいて出されました基本方針、水産動物の種苗生産、放流、育成に関する基本方針ですね、まずこのポイントからお話しいただけませんか。
  87. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ただいま御指摘がございました基本方針のポイントでございますけれども、一つは、種苗の生産につきまして、従来の種苗生産数量ということの増大に加えまして、何といいましても良質な種苗の生産なり種苗生産のコストの低減を図る、量的拡大に加えて質的な問題を重視していくべきであるということが第一点でございます。それから第二点といたしましては、これは一つの都道府県じゃなくて数都道府県にわたって回遊する魚種につきましては、関係都道府県が相協力いたしまして調査なり管理を行うべきということが第二点でございます。それから第三点といたしまして、放流効果が明らかになってきたものにつきましては、受益者負担というものを確保すべく努めるべきであるということが言われておるわけでございます。それから第四点といたしまして、その技術開発に関しまして、バイテクでございますとか、いろいろここのところの新しい技術の導入につきましては、特に海洋の生態系、こういうものに対して与えます影響、こういうものを十分配慮して慎重に対処すべきであるということが言われておるわけでございます。  こういう四つの柱にのっとりまして、その目標年度を昭和六十八年度までとして、今先生からもお話しありました沿岸漁場整備開発事業、こういうほかの事業といいますか、いろんな事業を相連係させ調和させて、栽培なりあるいは育成に努めるべきであるということが今回の基本方針の基本になっております。
  88. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 これは五十九年三月に公表され、六十二年度で締めになる第一次の基本方針ですね。私も読ましてもらいましたけれども、いろいろ出されておりますが、それはクリアされてきておるんでしょうか。例えば、私なんかは、八十種にわたる種苗の研究とか、それから十種については大量生産実用化が進んだとかいうふうなことを伺っておりますけれども、一次方針は経過的にはどういうことになっておりますか。
  89. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 第一次の基本方針の成果といいますか達成度合いということでございますけれども、一つは、ハード面で申し上げますと、国の栽培漁業センター、これにつきましては全国の各海区別に整備が行われてまいりまして、今年度、六十二年度竣工予定の南伊豆の事業場、これで一応それぞれの地域における整備というものが完了いたしまして、全国で十四カ所の整備を終えるという形におかげさまでなっておるわけでございます。それから、別途、国だけじゃなくて都道府県の栽培漁業センターの整備というものも行ってまいっておりまして、現時点では三十七道府県で設置がされておりまして、こういう国のセンターと都道府県のセンター、これが相呼応いたしまして栽培漁業技術開発の体制なり、それから種苗の量産体制というものは一応整ったというふうに考えております。  こういう体制整備の中でそれぞれの具体的な魚種についての成果でございますけれども、アワビでございますとかあるいはアカガイ、ウニ、こういうものにつきましては、技術的には当初見通し技術開発というものができた。しかし、残念ながら現実の放流なり育成という点ではまだ実効が必ずしも上がっていないというものも少しございますけれども、五十八年に掲げました魚種の中で、特にホタテガイでございますとかあるいはマダイ、ヒラメ、クルマエビ、ガザミ、それからヨシエビ、こういうものにつきましては、種苗の量産を安定的に実施することが可能となりまして、当初の目的を達成できたというふうに考えている次第でございます。
  90. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 大臣も所信の中でつくり育てる漁業というようなことをうたっておられますから、これから漁業考えるに当たっては非常に大事な部分になるわけですけれども、菅野委員の方からも、息の長い事業なものだから財政当局からの理解がなかなか得られないということで、近視眼的な物の考え方をとにかくせぬように理解を求めていかなければならないというお話も午前中あったわけでございますけれども、やはり財政当局から理解を得ていくためには、私はやっぱり正しい予算の使い方というのが大事だと思うんですね。これは小言を言うのじゃありませんから聞いてください。  六十一年十一月ですか、会計検査院からの指摘事項として、増養殖場造成事業の適正化にかかわって指摘を受けておりますね。一つが管理状況の問題ですね。それからもう一つが、種苗の放流が計画どおりに行われていないということで会計検査院の指摘があるわけですが、これはどうなっていますか。
  91. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ただいまお話しありましたように、せっかくつくり育てる漁業ということに全力を傾注していながら、会計検査院から不幸にして御指摘があったわけでございます。指摘内容につきましては先生からただいまお話しあったとおりでございますけれども、我々といたしましては、この事業の重要性なり必要性、そういうことに着目いたしまして、早速指摘された事項についての改善処置というものを取り進めているわけでございます。  その一つといたしましては、事業主体に対しまして施設の適切な管理運営を図ることにつきましての指導強化を図ったということ。それからもう一つは、何といいましても、計画をつくります際に、事前協議等によりまして適切な計画の策定をするようにということについて従来以上に指導を強めておりますし、それからもう一つは、せっかくできました施設の適正な管理運営ということにつきましても的確な把握なり施行ということに努めさせることにしているわけでございます。  いずれにいたしましても、こういう指摘があったことは非常に我々としても残念でございまして、今後こういうことが二度とないよう、全力を挙げてこの系統の事業の十全な効果の発揮に努めたいと思っております。
  92. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 これは県名も言いませんけれども、マダイの人工種苗年間で二十万尾を放流するというのに九千尾しか放流されなかった、この辺のところが非常に放流計画が進んでいないということで指摘されていることですね。これは措置済みとして検査院に報告をするにはなかなか大変なことだろうというふうに思うんですが、この種の事業はこれから水産庁にとっても大切な事業になってまいりますので、やはり丁寧に適切に措置を進めていただきたい、このように思います。  あとは、大臣が見えておられませんので、政務次官よろしゅうございますか。大臣のかわりに答弁していただけますか――。  今のつくり育てる漁業のことですね、これは六十八年をにらんで今基本方針が出ているわけです。要するに、魚資源の確保という問題になるわけですけれども、私は今大変関心を持っているというか、興味を持っているものの一つに、内水面の振興策というのを今一生懸命考えておりまして、あれはたしか高知県だと思いましたけれども、高知で転作田の跡を利用してウナギを養殖しているのを見てきました。言うてみれば、内水面の振興策というのも、海の魚に比べれば微々たるものでございますけれども、やはり大切な魚資源の確保の一策ではないかというふうに思いますし、それからまた沿岸の環境を整えるということで、魚礁の整備というようなことではやはりこれも力を入れていかなきゃいけないと思うんですが、これも私、大変興味を持ったのは同じ高知で間伐材を魚礁にしているというおもしろいケースを見てまいりましたが、大変に結果はよろしいようでございます。こんなふうな工夫とか、あるいは大変有名な大分の海洋牧場、こうしたことも含めまして、これから日本の育てる漁業に向けていろんな手だてがあるというふうに思うんでございます。  したがいまして、大臣から育てる漁業について抱負をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。
  93. 吉川博

    政府委員(吉川博君) 私も実は愛知県におりますときにいろんなことをやったわけでございますが、稚魚の増殖もいたしておりますし、あるいはウナギの養殖もかなり大きくやっております。あるいは沿岸に要らなくなった電車なんか沈めましたし、いろんな方法で漁業というものを進めてまいりました。しかし、これも技術的に大変難しい面がありまして、採算に乗るまでにはなかなか努力が必要だと思うわけであります。ちょうど始まってここ七、八年ぐらいでございまして、まだ完全にそれが軌道に乗ったということは言えないだろうと思うんでありますが、これから当然それらの事業を努力して発展させる必要があると、かように存じておる次第でございます。
  94. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) ただいま政務次官から誠実にお答え申し上げましたとおりでございますので、ともどもその趣旨に沿って努力をしてまいりたいと、かように思っております。     ─────────────
  95. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) 委員の異動について御報告いたします。  本日、一井淳治君及び八百板正君が委員を辞任され、その補欠として本岡昭次君及び久保田真苗君が選任されました。     ─────────────
  96. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 大変おくれて、委員会審議を軽く見ておるようで申しわけございませんでした。  実は先ほど、衆議院本会議直前に外電が入りまして、テーブルをつくるというか、話し合いたいということを米側から連絡をしてまいりましたので、実は慌ただしく、これは国会の了承をいただかなければならぬ。具体的には国対筋に、皆さんに御了承いただかなきゃいかぬという前提で、いただいた上で、三月の二十九日渡米をさせていただきたいと思いますと、総理にも議場で、議場から私出るとき御報告、御連絡申し上げ、そして、もうしょっちゅうマスコミもいるものでございますから、マスコミに対しても一分間だけそのことのみを御報告申し上げまして、慌ただしい三十分間でございましたが、おくれて来たわけでございまして、お互いの関心事でございますので、あえて発言を求めて御報告をいたした次第でございます。
  97. 諫山博

    ○諫山博君 日本は昔から魚の豊富な国とされてきました。戦前から有名な水産国だったと思います。ところが、現在は世界で有数な水産物の輸入国になりました。水産物の輸入額が既に一兆円をはるかに超えるというような状況です。この問題をどう考えるのかということです。国内の水産だけでは需要を満たせない。魚の供給減が、今問題になっている水産加工業の不振の原因になっているということが言われています。  一方では、外国からの水産物の輸入が、国内の水産業を圧迫するその重要な要因になっていることも明らかです。しかも、水産物を輸入しているのは大体大きな商社あるいは大きな水産会社です。この輸入が年々ふえて、国内の中小水産業が非常に大きな打撃を受けている。一方では、そうしないと国内の需要を満たせないではないかという議論もあるようですけれども、この問題に対する農水省の基本的な見解はどうでしょうか。
  98. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ただいま御指摘ありましたように、水産物の輸入がここのところふえてまいりまして、去年、暦年で申し上げましても、一兆二千億を超す金額、規模になっているわけでございます。そして、これをどう位置づけ、どう評価するかという問題、非常に難しい問題もはらんでいるわけでございますけれども、この中の大宗を見てみますと、例えば一兆強のうち三千五百五十億強がエビである、あるいはカニ等につきましても五百億というようなことで、日本近海ではなかなかとれないけれども、国民の食生活の嗜好というものからいって、輸入に待たざるを得ないというものも相当なウエートを占めているわけでございます。  ただ、その中でも日本の近海、日本の漁業者みずからがとっているものと競合するものももちろんあるわけでございまして、こういうものにつきましては、何とか消費者の要望にこたえるためには相当程度の輸入はせざるを得ないと思いますけれども、きちんと秩序のある輸入ということで、集中豪雨的に一時期に入ってきて国内流通を混乱させるということは少なくともあっては困るわけでございますので、そういう秩序ある輸入体制のもとで国民が必要とする食料は外国からも輸入せざるを得ないという形にあるわけでございます。ただ、長期的には、何といいましても、国内で少しでも魚の供給力というものを高めるということは肝要でございますので、沿整事業でございますとか、あるいは構造改善事業でございますとか、各種の事業を活用いたしまして、つくり育てる漁業というものを今後とも展開してまいりたいというふうに考えております。
  99. 諫山博

    ○諫山博君 国内の水産業と競合しない魚の輸入というのは、これは当然あり得ることなんです。ただ、国内の水産業を直撃するような魚の輸入も相当あると思いますけれども、魚種としてはどういうものがありましょうか。
  100. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 具体的にはサバでございますとか、イワシでございますとか、イカでありますとか、我々の身近な魚、これが競合するものになるわけでございますし、零細中小な沿岸なり沖合の漁業者というものに悪影響を与える危険があるわけでございます。  したがいまして、こういうものにつきましては、輸入割り当て制度というものを水産につきましてはまだかなり残しているわけでございますし、それから、例えばやはり経営上いろいろ問題のございますマグロでございますとかワカメ、こういうものにつきましては、政府間でございますとかあるいは民間レベル、こういうところで輸入数量の協議というものを行いまして、合意数量を担保するため、輸入事前確認制の対象にするということも行っておりますので、少なくとも近海の、相当程度といいますか、決定的に競合するようなものにつきましては、輸入制度というものをおかげさまで現在、ただいまお話ししましたような形で採用させていただいておりますので、これの円滑な運営ということで、国内への影響を遮断してまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  101. 諫山博

    ○諫山博君 研究者の書いたものを見ますと、例えば非自由化品目をふやすべきではないかとか、あるいは関税率を検討したらどうかとか、輸入課徴金を採用したらどうかとか、いろんなことが言われているようですけれども、そういう問題は検討の対象になっていませんか。
  102. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ここのところ苦しさを増しております国内の漁業経営という点からいいますと、そういう御意見なり考え方というものもあることは確かでございますけれども、ただいまお話ししましたように相当数の魚種につきまして現に輸入割り当てをとっている。それから関税制度においてもしかりでございまして、これだけ国際化してきている環境の中、しかもガット体制というものの中で、これ以上の輸入規制ということを制度的に確立するということは困難でございますし、そういうことをしない中で日本の漁業が立ち行くように考えるということが、むしろやはり行政としての方向じゃないかというふうに考えております。
  103. 諫山博

    ○諫山博君 今、ガットは農産物に関して随分議論されておりますけれども、かつてアメリカがニシン、スケソウについてガットへの提訴をしたことがあると聞いています。これは話し合いで、輸入枠の拡大ということで決着がついたと聞きましたけれども、最近アメリカが日本に対して、水産物についてももっと自由化をすべきだという要求をしているという話がありますけれども、その実情をお聞きしたいと思います。
  104. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) アメリカの動きでございますけれども、ここ数年、こういう国際化してきた中で日本がかなりの残存輸入制限品目を魚については持っているということで、ただいまも御例示がございましたニシン等を初めとして、日本の輸入制限を撤廃するなり緩和するなり関税率を下げるなりというようなことをいろんな機会に申してきていることは当然でございますけれども、現在のところ日本側の置かれている漁業の情勢ということにも理解を示しておりまして、決定的にガット提訴であるとか、そういう話には立ち至っておりません。
  105. 諫山博

    ○諫山博君 農産物にしましても水産物にしましても、外国から一切輸入するなというようなことを私たちは言っているんじゃない。日本の農業、日本の水産業に大きな悪影響を及ぼすような輸入は極力規制すべきだという立場で、この点は農産物についてさんざん議論されましたけれども、やはり魚についてもその立場をぜひ貫いていただきたいということを要望したいんですが、これは大臣いかがでしょう。
  106. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) そのような考えは常に持っていなければならないものと心得ております。
  107. 諫山博

    ○諫山博君 水産物の輸入ということとは幾らか形が違いますけれども、似たような問題がいわゆる洋上買い付け、洋上加工、洋上すり身ではないかと思います。大洋とか日水とか極洋とか日魯、大体大きな水産業者がほとんどこれをやっている。そして、国内の中小加工業者に非常に大きな打撃を与えているという事実があると思います。この問題について、例えば一九八五年十月、全国底曳網漁業連合会というところが洋上買い付けに反対だという声明を出したそうですけれども、この点の実情及びこの問題に対する水産庁の見解はどうでしょうか。
  108. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 洋上買い付けなり洋上加工というものも、いろんな動きを経まして相当量になってきているわけでございます。その過程でみずから洋上加工をなし得ている方々と、そうじゃなくて、ただいまありました底びきのように資源量が少なくなってきている方々との間でいろんな摩擦のあることも我々は十分承知しております。  しかし、この洋上加工問題につきましては、アメリカなり、それからソ連の二百海里体制というものがこれだけ確立してまいりますと、そう言っちゃなんでございますけれども、アメリカならアメリカで申し上げまして、アメリカ漁業者が二百海里内で魚をとり、それをみずから加工して日本に提供してくるよりは、日本が洋上買い付けをして日本で付加価値をつけるということの方が次善の策としてはかなりベターでございますので、こういう方向も一つの方向として我々は評価しているわけでございます。しかし、既存の加工業者等との摩擦という問題もあろうかと思いますので、その辺につきましては、関係業界の調和なり話し合いというものが十分図られますよう今後とも見守ってまいりたいと思っております。
  109. 諫山博

    ○諫山博君 洋上買い付け、洋上加工というのは大体大きな日本の水産業者がやっていると思いますけれど、これはもうかる仕事になっていますか、利益という点では。
  110. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 洋上加工なり洋上買魚そのもののコスト計算、収益計算というものを分離してやった数値はでき上がっておりませんけれども、それぞれの漁場それぞれのときどきによってかなり収益状況は違っているようでございまして、場所によりましては、むしろ若干の魚をとらしてもらうために採算を度外視して洋上買魚なり洋上加工しているという地域も現にあるわけでございまして、全体としてもうかっているということでは必ずしもございませんし、それから大手のウエートが高いことは、全体の魚扱いからいいましてある意味では当然でございますけれども、中小なり零細につきましてもいろんな形で入っておりますし、それから特にソ連水域等では北海道の中小というものが洋上買魚という形でみずから付加価値をつけ、みずからの労働の燃焼の場を確立しているというふうに聞いている次第でございます。
  111. 諫山博

    ○諫山博君 工業では今、産業の空洞化というのが大問題になっております。日本の企業が外国に工場をつくって外国の安い労働力などを使って外国で生産をする、そしてそれを外国にも販売するし日本にも持ってくる、いわゆる産業空洞化です。つまり、金もうけのためには日本の産業が空っぽになってもやむを得ない、こういうやり方がアメリカでも広く行われているし、我が国でも広がって広範な失業の原因をつくり出すというような事態が社会問題になっていますけれども、食品加工についても同じような事態が生まれています。  例えば、水産食品メーカーが外国で工場をつくる。外国と合弁会社を開く。そして、現地での安い労働力などを使って加工業を営む、こういうやり方がようやく本格化してきた、これから急激にふえていくのではないか、こういうことが広くささやかれておりますけれども、この問題に対する水産庁の認識及び方針をお聞きします。
  112. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 水産加工会社の外国への進出状況というものをセンサス的に水産庁としては把握しているわけではございませんけれども、二百海里体制がしかれた際には、将来への危惧ということで、いわば相当無理して海外に工場を立地させるなりあるいは合弁をしたというところがあるわけでございますけれども、その後比較的数字としては落ちついてきておりまして、現時点でそれほど急激にふえるという形には今なっておりません。しかし、六十年代に入りまして二百海里体制というものがもう一つ深まってきたということで、機運としてはやはり原料の確保を中心にいたしまして海外に立地したいという企業もあるようでございます。  水産の場合は、何といいましても原料あっての水産、しかもその原料が外国の二百海里内でとれるということでございまして、二百海里体制というものが世界的に確立し、それぞれの国が自分の国の二百海里内での魚はみずからとり、みずから加工し、みずから付加価値をつけるという方向に向かってきている中では、やはりこういう海外に立地して、そこで日本の企業が活動できるならそれも一つの道でございますし、それから国内に現に消費を望む消費者がいるという事態でございますれば、その原料を外国に占められてしかも黙って待っているというよりは、外国に出かけて外国内の原料で付加価値をつけ、日本に持ってきて日本の消費者に安定的に供給するというのも一つの方向かと思いますので、一概に空洞化でございますとかいうことの一環としてあしき例というわけにはまいらないのではないかというふうに認識している次第でございます。
  113. 諫山博

    ○諫山博君 そういうやり方、いわゆる水産加工業の空洞化というのは、日本の零細な水産加工業者に対して直接的な打撃を与えるのではないでしょうか。
  114. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 外国の二百海里内で原料を依存せざるを得ず、しかも日本国民が望んでいるもの、これにつきましては、こういうジョイントベンチャーでございますとか外国への立地ということで製品を日本に持ってくるということも一つの道でございますが、一方でもちろん、国内の零細、中小な水産加工業、これがその結果崩壊していくということはこれは大きな問題でございまして、そういう点に着目して今回の制度資金の再延長というものをお願いしているわけでございますけれども、国内の近海での魚、近海魚を活用して立地し得る可能性なり余地というものも大きいわけでございますし、新技術の開発というようなことを並行してやりまして、付加価値の高い、消費者に歓迎されるものを国内の水産加工業者みずからがつくっていくという道もございますので、そういう国内対策を講じまして、国内の零細加工業者が立ち行く道というものを我々としても築いてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  115. 諫山博

    ○諫山博君 いわゆる産業の空洞化に対して、余りにも認識が甘過ぎると思います。  例えば、自動車産業外国に出ていったためにどのくらい日本の下請業者がつぶれたか、どのくらいたくさんの労働者が失業したか、このことを考えてみると、生産の拠点を外国に移すというのは企業の金もうけにはなりますけれども、日本の経済をめちゃくちゃにするわけです。今、水産加工業のいわゆる空洞化というのは始まったばかりだと思います。工業のような深刻な影響は出ていませんけれども、今のうちに手を打たなければああいう事態になるのではないかということを私は懸念しております。  例えば、日刊水産経済新聞とかいろいろこういう専門紙なんかを読みますと、企業がどういう形で外国に出ていっているのか、出ていこうとしているのかということが、いろいろ企業の名前を挙げて報道されております。日本水産は、韓国に冷食合弁会社を設立して東遠産業と提携している。ニチレイは、タイで冷食合弁会社を設立した。静岡県のほてい缶詰は、タイ国に現地水産加工業者サイアム・フード・サプライと共同出資でサイアムほてい株式会社を設立した。これは水産、農産品加工を行うための合弁会社だ、こう言われております。沼津市のカネモトは、タイ国に加工生産拠点をつくった。そのほか、例えば千葉県の水産加工業者がタイ国でイワシ、アジ加工品の委託加工を開始したとか、さまざまな実例が記事として報道されております。  これは、いわゆる水産加工業の空洞化の始まりだろうと私は認識しているし、そういう警告を発している人がたくさんおられます。この実情を水産庁としては掌握されているのかどうか、そしてこれは経済の自然の流れとして放置されているのかどうか、見解をお聞きしたいと思います。
  116. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ただいま先生から御例示ありました海外生産なり委託につきましては、大企業でございます日本水産を初め、それぞれ地場産業でございます丸神海産でございますとかあるいはほてい缶詰、こういうものが海外に立地しているということは我々としても十分承知しているわけでございます。  これは、先ほども申し上げましたことの繰り返しになって恐縮でございますけれども、水産加工の場合にはどうしましても外国の二百海里内というもので今漁獲が非常に制限される、あるいは認められても入漁料が非常に高いということで、外国で魚をとって日本に持ってくるということが非常に難しい局面になってきているわけでございます。それにもかかわらず、魚に対する需要というものが結構根強くありますし、これは今後ともふやしていかなければならない形になっているわけでございます。そういうことになりますと、原料事情からいいまして、海外に立地するあるいはジョイントするということは一つの避けて通れない道というふうに考えている次第でございます。  しかし、といいまして空洞化ということにもろにつながるということは問題でございますので、何といいましてもそういう水産加工品全体の消費のパイを大きくしていく、あるいは付加価値が高まるような加工技術を開発するということで国内も共存し得るあるいは共栄し得るというような形に持っていくことが不可欠でございまして、そのための今回の法律のお願いを初めとした施策を積み上げてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  117. 諫山博

    ○諫山博君 この問題に対して非常に楽観的な見通しを持っておられると思います。この問題の含む危険性というのを全く認識しておられないなという感想を持ちます。  この問題に対しては、さまざまな見解が表明されています。例えば、小林末男という京食社長は、海外生産拠点づくりは当然の方向だ、こうした動きはさらに活発化するだろうと語っております。大体水産庁長官と同じ発言だと思います。マルゴ産業の社長は、日本で高いコストをかけて生産するより安い海外加工品を輸入して販売するケースはこれからもふえていくだろう、こう言っております。私たちの仲間が伊藤忠に事情と見解を聞きに行ったことがあります。そのときの答えは、うちはまだやっていない、うちはやっていないけれども当然これは広がってくるでしょう、時の流れでしょう、既に現実には始まっています、そしてそれが恐らく水産加工業のいわゆる空洞化というようなものと関係が出てくるのかもしれませんというような言い方をしております。この人たちはいわゆる産業の空洞化の実態、その恐ろしさを知っているわけですけれども、そういうふうになるのが恐らく時の流れだろう、こう言っているわけですよ。だから、総合商社などではこういうやり方を期待している向きが強いと思います。  ところが、例えば全国いか加工協同組合の名取理事長の談話が日刊水産経済新聞に発表されています。海外における安い労働力を活用した加工生産は急増しており、水産加工業の空洞化が心配される、業界はいたずらに海外脱出を図るのでなく、加工品の市場供給使命を果たすべきである。見解は真正面から対立しているわけです。そして、この見解の対立というのは、一方では食品業者とか総合商社などがこれを推進しようとする。しかし、日本で魚をとる人たち、日本で魚の零細な加工業を営んでいる人たちは、このことを非常に憂慮している。そういう状況の中で水産庁長官答弁というのは、日本の零細な漁民立場ではなくて、例えば伊藤忠なんかと同じような見解のように聞こえますけれども、そうなんですか。
  118. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 国内の水産加工の空洞化を前提として海外進出ということを申しているつもりは毛頭ございません。国内の地場産業としての水産加工、これはそれなりに全体のパイを広げるとか技術を開発するとか、あるいはこういう施設資金経営資金融資するとか、こういうことで何とか再構築してまいりたいと思っておるわけでございます。それから場所によりましては、ああいう魚加工という残念ながら非常にダーティーな仕事、過酷な仕事でございますので、従事者がいないというようなところも残念ながら地域によっては出てきているわけでございます。そういうことも一つ背景となっているわけでございまして、我々としてはあくまでも外国二百海里内での原料事情なり、あるいは国民の消費動向というものに対応しての海外立地ということを指向しているわけでございまして、それと並行して、国内の零細中小地場産業である水産加工業、これの健全な発達というものをこいねがい、いろんな施策を講ずることは当然でございます。
  119. 諫山博

    ○諫山博君 新聞には、日本の企業が外国に生産の拠点を移して、いわゆる工業の産業空洞化と同じようなやり方が始まっているということを企業の名前を挙げて報道しております。その一部は私が今読み上げたとおりです。この問題を農水省としては実態調査しておられるのでしょうか。それとも新聞記事程度の御認識しかないのですか。十分実態調査をした上での見解の発表でしょうか。
  120. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 全体をセンサス的に把握はいたしておりませんけれども、それぞれの事例につきましては、関係商社なりそれから特に水産業者がみずから進出しているという例が圧倒的に多うございますし、商社が出る場合にも何らかの形で水産関係会社が絡んでおりますので、そういうチャンネルを通じましてそれぞれの実態というものは的確に把握しているつもりでございます。
  121. 諫山博

    ○諫山博君 農水大臣にお聞きします。  今私が指摘したような日本の業者外国に生産拠点を移して、外国の安い労働力などを使用して水産加工業を営む、これが今ふえようとしているということは長官もお認めになったと思います。この問題は、いわゆる産業空洞化を経験している日本であるだけに、速やかに実態を調査して、深刻にならないうちに何らかの手を打つべきではなかろうかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  122. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 今水産庁長官からお答えしておりますように、それをそのまま素直に受けとめていただければありがたいと思いますが、おっしゃるにはそうではないとおっしゃいます。そして、名を挙げて、伊藤忠なんかと考えは同じではないか、産業の空洞化がどんどん進んでおるではないか、そういう実態は知っているのか、こういうことでございますが、そういう実態は一々承知をいたしております。産業空洞化に直ちに結びつくかどうか、いろいろの見方がありましょう。しかし、中小零細企業に大きなダメージを与えるとするならば、これは当然のことながら打撃を与えないように我々が努力をするのは当然のことでございまして、そうならないようにいろいろの手だてを講じておる。  ただ、自由経済社会の中におきまして、企業それ自体の活力もまた当然のことながら認めつつ、国内産業、零細企業の育成というものにつきましては、通産省、中小企業庁ともども政府を挙げて、労働省が担当でありますが、雇用の問題にもかかわることでございますから、世界の国々と比べて日本の失業率がどんどんふえていくような結果になっては相ならぬということで、おっしゃられるような言い方をされないように努力をいたしておるところでございます。
  123. 諫山博

    ○諫山博君 私は今、日本の水産加工業が既に空洞化しつつあるとまでは言っておりません。今そういう傾向が始まっている、進んでいる、放置したらそういう事態になりかねませんよということを言っただけですから、その点は……。  それから、長官の御説明の中に、そういうやり方で我が国の中小零細業者が打撃を受けたとしても、そういう問題のために今度の制度の継続があるのだという趣旨を言われましたけれども、そう聞いていいんですか。
  124. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ただいま先生からるるございましたような問題で打撃を受けるから今回の法律をお願いするということではございませんで、とにかく日本の地場産業としてこれだけ歴史もあり、それぞれの地域で重きを置いております水産加工業、しかも中小零細が多い、こういうものの体質をまず強化し改善したい。その体質の強化なり改善というものができれば、仮に海外にジョイントベンチャーかなにかが出ていって、それに国内的に打ち勝てるということで申したつもりでございます。
  125. 諫山博

    ○諫山博君 それにしても、融資の枠は余りにも小さいなというのが私の感想です。過去の実績を調べると、昭和五十九年度は、六十九億円の枠に対して実際に融資されたのは四十四億円。六十年度は、六十七億円の枠に対して実際は二十七億円。昭和六十一年度は、六十三億円の枠に対して実際に融資したのは四十億円という数字になっているのですか。
  126. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 数字といたしましては、ただいま先生がお読みになりましたとおりの数字でございます。
  127. 諫山博

    ○諫山博君 日本全体で六十億円程度の枠をつくって、それがごく一部しか消化されないというのは驚くべき事態だと思うんです。  例えば、昭和六十年度を例にとりますと、日本全体でわずかに二十七億円しか融資されていない。これは本当に水産加工業者に役に立つ制度であれば、我先にとこれを利用するんじゃなかろうかと思いますけれども、どうしてこんなに利用度が少ないんですか。
  128. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 本制度の具体的貸し出しが始まりました昭和五十三年あるいはその翌年の五十四年と、こういうものは、当初用意いたしました枠よりオーバーして貸し付けが行われたわけでございます。この時期は先生承知のとおり、昭和五十二年に米ソが二百海里を適用いたしまして、二百海里のショックというものがあってこういう形になったわけでございますが、その後、昭和五十六年あたりからこの融資実績というものはかなり落ちてきているわけです。これは大宗を占めておりました北洋等からの転換、これが幸いにいたしまして原料の漁獲なりあるいは洋上買い付け、こういう数量というものがそれほど五十年代の後半はカットされませんで、ある意味では二百海里体制というものは小康状態を保っていた。そういう中でございましたので、積極的に原料を転換するとかあるいは近海の多獲性魚種を活用して新しく施設を投下するということを余りしなくてもまあまあにやっていけたのかもわからない感じがしているわけでございます。  その後、六十年代に入りましてから、ここでまた二百海里体制というものの締めつけがもう一つ厳しくなりまして、アメリカ、ソビエトの漁獲割り当てというものが大幅に減ってきたわけでございます。それと同時に、いろんな事情が重なりまして、消費の減退といいますか、停滞あるいは魚価の低迷ということもありまして水産加工自体が非常に苦しくなってきた。そういう苦しさの中で投資意欲というものが残念ながら燃焼しなかったという状況で、先生からお話ありましたように昭和六十年度には二十二億という底になったわけでございます。  しかし、その後、そういう第二次二百海里ショック的なものから徐々に立ち直ってまいり、それから国民生活の成熟化に対応いたしまして、高度な水産加工物に対する需要というものも根強く復活してきたということがございまして、六十一年度には四十億、それから六十二年度はまだ集計が最終的にできておりませんけれども、仮集計段階で四十五億ということで、資金需要も上向き、それからこういう施設に対する設備投資というものも活発化してきているというような情勢の推移をたどっている次第でございます。
  129. 諫山博

    ○諫山博君 日本の水産加工業は、非常に零細な企業が多いということが問題になっています。従業員数について言いますと、十人以下の従業員が全体の六一%を占めているというような本当に零細です。今日までの貸し付け経営形態からいったらどういうところに貸し付けられているのか、これは企業規模。それから、その融資はどういうことに使用されているのか、御説明ください。
  130. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 今までの五十三年度から六十一年度までのまだ集計しかできておりませんけれども、これを借り受け企業規模別に見てみますと、一番モードが高いといいますか多いのが、従業員数で言いまして十人から四十人、この規模が約五〇%、正確には四九・四%という件数になっております。それから、これを含めまして四十人以下というものが非常に零細な企業というふうに認識いたしますと、四十人以下の従業員を有するものに対します貸し付けでは七割の貸付件数ということで、本資金は非常に中小零細なものを中心にして制度のねらいどおり運用されているというふうに考えております。  それから、具体的な貸し付け対象といたしましては、やはり金目が多くなっておりますのは、こういう近海の多獲性魚を中心にしてでございますので、一度にたくさんとれる、あるいは経時劣化が激しいということがございまして、冷蔵庫でございますとか、保管庫でございますとか、こういうものが融資対象の金額としては多くなっているという実態でございます。
  131. 諫山博

    ○諫山博君 融資を受けているところは、いわゆる二百海里問題と直接関係のある業者ですか。
  132. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 現在の資金には二種類ございまして、一つは、北洋等から転換することによって原料の魚を北洋関係の魚から近海の魚に変えるというものでございますので、この資金はもろに北洋関係といいますか、海外関係の影響を受けた方々ということに相なっております。
  133. 諫山博

    ○諫山博君 それにしても、融資枠があるのにいっぱい利用されないというのは、やはり水産加工業者から見て余り魅力がないといいますか、飛びつくような融資ではないということのように思われますけれども、他の制度融資に比べて、例えば利息だとか償還期限だとか、そういう点はどうなっていますか。
  134. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ここ数年間は非常に融資実績が落ちていたわけでございますけれども、先ほども申し上げましたように、制度発足当初は計画の倍あるいは三倍近い融資件数というものになり、融資金額におきましても倍なり五割増しという貸付実績があったわけでございまして、    〔委員長退席、理事高木正明君着席〕 必ずしも、そういうことから申し上げますと、融資条件がほかに比べて不利であるというようなことはなかろうかと思っておりますし、特にこういう中小企業という本来市中金融で行うべき企業につきまして、特別緊急に対応するということでの長期低利資金制度をつくっているわけでございますので、せっかく用意しながら枠が消化されないというのは、先ほど申し上げましたように二百海里体制のいろいろな変遷、こういうものを残念ながら反映し、しかも漁業情勢全体の反映かというふうに理解しております。
  135. 諫山博

    ○諫山博君 最近十分融資が利用されてないというのは、もともと申し込みがないんですか。申し込みはあるけれども採択されてないんですか。
  136. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 申し込みというものをどの時点で申し込みがあったと判断するかあれでございますけれども、少なくともきちんと窓口段階に相談に来られまして断られたというケースはほとんどないというふうに聞いております。
  137. 諫山博

    ○諫山博君 そうすると、余り魅力がないんですね。これは水産加工業そのものに余り希望が持てなくなっているんじゃないかということが一つ考えられます。それから、融資の条件が、業者が飛びつくような有利なものになっていないんじゃないのかということが考えられます。それとも、こういう制度があることが余り関係業者に周知されていないということも予想されると思います。ほかの原因もあるかしれませんけれども、とにかく窓口に来る人は大体融資を受けている。それでもやはり融資の枠が余っているという原因はどこだと理解しておられますか。
  138. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ここ数年、二百海里時代が非常にきつくなってきたということで、水産情勢全体が非常に暗い一つの谷間を歩き、あるいは水産加工業も新しい施設に投資するという環境に必ずしもなかったことは事実でございます。それに加えましてといいますか、本制度資金、これは水産加工業者すべてに対してすべての資金需要を賄うという仕組みではございませんで、先生もよく御存じのとおり、北洋から原料を転換するということと、それから近海での多獲性魚を使っての加工施設の導入というようなことでございますので、これは北洋関係につきましては、先ほど申し上げましたように五十年代の後半はある意味では二百海里体制が小康状態にあった、それから多獲性魚を使っての施設資金につきましては、これは需要なり消費なりとの関連もあり、いろいろとそう急には残念ながら伸びなかったという点があるわけでございます。  しかし、先ほどもお話ししましたように、六十年度に二十二億というボトムまで貸付実績が落ちたわけでございますけれども、ここのところ四十億、四十五億と上向いてきておりますし、それから先ほど来申し上げておりますように、国内の消費者のいろんな味覚に対する移り変わりということも反映いたしまして、こういう近海魚を使っての付加価値を高めた加工品に対する需要というものもかなり上向いてきておりますので、新しい施設なり新しい技術導入についての関係者意欲、熱意というものもようやく上向いてきている。こういう時期にこの法律を直しまして、しかも新しい資金種類を加えるということでございますので、熟しかけてきている投資意欲というもののスピードを倍加できるというふうに我々としては読んでいるわけでございます。    〔理事高木正明君退席、委員長着席〕
  139. 諫山博

    ○諫山博君 五年前、昭和五十八年に衆議院と参議院でこの法案に関する附帯決議が採択されております。この附帯決議に次のような言葉が出てくる。「水産加工業経営体質強化のため、共同化、協業化の推進」、これは衆議院、参議院で同じ言葉ですけれども、この問題については農水省はどう理解されておりますか。
  140. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 先ほど来お話がありますように、水産加工業の構造的な問題として非常に零細、分散的であるという問題があるわけでございます。これは長い歴史的背景がございまして、前浜でとれた地域の魚を地場産業として加工してきたという流れが一つあるわけでございますけれども、最近のような広域的な流通消費体制というものができてきた中では、何といいましてもこの規模の拡大なりあるいは共同化、それから合併というものが緊要というふうに我々としても考えておるわけでございます。  しかし、残念ながら、せっかくこういう資金制度までつくりいろいろとやってきておるわけでございますけれども、それぞれの企業の状況なり、しかもそういう長い歴史を背負って前浜の魚を加工するということでできてきた背景ということがございまして、言うべくして合併なり共同化というものが前進してないということも事実でございますけれども、今回この資金法の再々延長でいろいろと資金種類もふやしたということもございまして、何とかそういう共同化なり企業合同というものについて、これから我々といたしましても関係業界を指導し成果を上げてまいりたいと思っております。
  141. 諫山博

    ○諫山博君 何しろ非常に零細な水産加工業者が多いし、しかも経営形態も個人経営が六一%を占めているというような状況ですから、何らかの組織化、共同化が必要な場合は多いだろう。ただ、それはやはり関係者の自主的なものでなければならない。そして、農水省はそれを強引に引っ張っていくんじゃなくて、援助するという役割を果たすべきではなかろうかと思うんですけれども、この組織化、共同化に対する水産庁の役割についてはどのようにお考えですか。
  142. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 組織化、共同化の必要性なりその進め方の理念につきましては、先生と全く立場を同じにしております。水産庁の役割といたしましては、先生からもお話ありましたようにやはりこういう生き物である組織なり企業、こういうものを行政が上から指導して一緒にさせるということではだめでございますし、永続もいたしません。そういう点から言いまして、側面からいろんな情報を提供し、あるいは必要な場合には、今回御審議いただいておりますこういう融資手段ということで、できるだけ自主性の上に乗って、それをスムーズに進めるための潤滑油を注いでいくということで何とか推進を図ってまいりたいというふうに考えております。
  143. 諫山博

    ○諫山博君 問題を変えまして、鯨のことを質問します。  日刊水産経済新聞にこういうことが報道されています。日本が一方的に調査捕鯨を行ったとして、アメリカは懲らしめのため二百海里内漁獲割り当てをしていない。これは事実に反すると思いますけれども、どうなんでしょうか。
  144. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 我々といたしましては、アメリカとの関係では去年IWC総会なりあるいは科学委員会等で議論になりまして、アメリカともいろんな相談をし、科学委員会の特別委員会というものも招致していただきまして、そこでも議論をしていただいて調査捕鯨に着手したつもりでございまして、アメリカとの関係において一方的に調査に着手したということは、経緯に必ずしも合っていないというふうに理解しております。
  145. 諫山博

    ○諫山博君 調査捕鯨というのは、一航海にどのくらいの金を要するものかどうか。その金というのはどこからつくられていますか。
  146. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 今回三百頭を限度として調査捕鯨に着手いたしまして、二十三日に捕獲調査というものを終えて二百七十三頭ほどの実質頭数を捕獲いたしまして、現在日本に向かって帰路についているわけでございます。  これに要します経費につきましては、終わってみませんときちんとはわかりませんけれども、我々の見込みといたしましては約十七億円の経費がかかろうかと思っております。  これにつきましての手当てでございますが、こういう調査捕鯨の公益性、公共性ということから見まして、こういう厳しい財政状況の中ではございますけれども、三億五千万ほど一般会計からこの調査について助成しているわけでございます。それからその残りにつきましては、これは解体し調査が終わってからその鯨肉を販売するわけでございますけれども、これが幾らで売れるかという問題がございますが、過去の鯨肉の値段なり、あるいは調査のためでございますので、歩どまりなりあるいは品質が低下するという問題を前提といたしましてはじいてみますと、恐らく五、六億円というようなことが言われておるわけでございます。そうなりますと、これと先ほど申し上げました三億五千万と足しましても、今年度必要となります十七億弱、これに対して赤字が出るわけでございますけれども、これにつきましてはこういう調査捕鯨というものがこれだけ国際的に議論になり、しかも日本の食生活なり食文化というものにとりましては長い間の重みなりというものがあるわけでございますので、国民全般あるいは関係の企業、こういうところからも寄附金を仰ぎまして、何とか収支は合うように持っていきたいというふうに考えている次第でございます。
  147. 諫山博

    ○諫山博君 今の問題が赤旗に報道されて、私びっくりしたんですよ。調査捕鯨というのは私たち必要だと思います。ところが、調査捕鯨に必要な金というのは、国の金がごく一部分、鯨の肉でごく一部分賄う、大半は一般の寄附にお願いするというのじゃ長続きしないんじゃないのか。なぜ安定的な財源を考えないのかという問題が提起されておりまして、私も初めてそういう問題があることに気づいたわけです。調査捕鯨を一回だけしかやらないというのだったら、一時的な寄附で調査捕鯨の財源を賄うということもあるんでしょうけれども、もっと系統的に長期間にわたって調査捕鯨をするとすれば、当然そのための財政措置が必要だ、これは国が賄うべきだというふうに考えますけれども、これは農水大臣どう考えられますか。民間からの寄附で調査捕鯨を続けるというのでは、余りにも調査捕鯨を軽視し過ぎていると思いますからお聞きします。
  148. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) この調査につきましては、現在提出しております計画では、一九九〇年にIWCで商業捕鯨禁止につきまして全面的な包括的見直しをするということになっておりまして、そのための資料を得るということで、今年度行っている調査は我々としては予備調査というふうに位置づけているわけでございます。  それで、今年度を含めこれから予定されております本調査につきましても、所要経費につきましては、今まで捕鯨関係をやってきてといいますか、今まで商業捕鯨をやってきました会社等が、商業捕鯨ができなくなったということとの関係で従来の剰余金、こういうものも調査のために拠出したいということが、従来の鯨関係業界からも十分な御納得といいますか、御理解といいますか、むしろ先様からもそういう話があるわけでございますし、それから一般の国民の理解も得るということで、これから行う調査の分を含めまして寄附で十分対応できるというふうに考えておりますが、今年度三億五千万一般会計からも出し、国としての調査に関する強い意識なり参加というものも行っているわけでございますが、来年度以降の予算につきましては、そういう予算単年度主義ということがございますけれども、今年度の実績というものを踏まえまして我々といたしましても財政当局と折衝したいというふうに考えておる次第でございます。
  149. 諫山博

    ○諫山博君 商業捕鯨をやっていた会社にも寄附を求めるんですか。
  150. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 実は、従来商業捕鯨をやっておりました共同捕鯨という会社が、商業捕鯨をやめたことに伴いまして解散せざるを得なくなったわけでございます。この解散に伴います残余財産、これは出資者等に返っていくわけでございますけれども、こういうものにつきましてはむしろ単なる残余財産の分配ということじゃなくて、将来に備えて公益的な調査に拠出してもらうということがベターということからいいまして、拠出をお願いするという形に相なっているわけでございます。
  151. 諫山博

    ○諫山博君 最後に一点。  調査捕鯨はこれからも続けられるだろうし、私たちは続けるべきだと思うんですよ。それを民間の寄附でやろうというのじゃ余りにもふがいないし、しかも商業捕鯨をやっていた会社から寄附をもらうというのはよくないですよ。これは商業捕鯨をまたねらっていると思われても仕方ないじゃないですか。私は政府がしかるべき財政措置を講ずべきだと思うんですけれども、いかがですか。
  152. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 民間側から奇特なお考えでもって寄附をしたい、そして予備調査、いわゆる調査捕鯨、国際関係の厳しい中にあって引き続きその実績を踏まえながらも捕鯨というものを続けていくことができるように念願をしつつ寄附をされるという奇特な方々には、今日の政府の財政状況、御存じのとおりでございますから、ありがたいことだと感謝を申し上げておるわけでございます。
  153. 諫山博

    ○諫山博君 これは政治の放棄ですよ。  終わります。
  154. 三治重信

    ○三治重信君 私は予算委員と兼ねているものだから、きょうは朝から出られなくて、あるいは質問が重複するかもわかりませんけれども、あしからずひとつ御了承願いたいと思います。  今の鯨の問題も質問の中に入っていたんだが、重複するからこれは省きます。  それで、おたくの方からいただいたこの国会資料で、八ページの「新製品・新技術の例」、こういうのが載っているわけなんですが、こういうふうな新製品や新技術にどれぐらい研究費、またそういうことを研究さしている施設の数、これは新製品、新技術の開発の状況はどうなっておるかという質問であるわけなんですが、こういうふうな新製品、新技術というものの開発の状況、何カ所くらいで、どれぐらいの研究費なんかでやっているのか、わかりましたらひとつお願いいたします。
  155. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 農林水産省自体の研究所といたしましては、東海区水研、これは千葉から名古屋、三重ですか、ここまでを管轄している東海区水産研究所というのが東京の築地にございます。ここに水産加工の研究というものをやる部がございまして、ここで集中的にやっているわけでございますけれども、残念ながら現在予算をちょっと持ってきておりませんので、具体的にそこの水産加工部門の予算というものがどれだけになっているかということは恐縮でございますけれどもお示しできませんけれども、ここのところ全体に予算情勢が厳しい中ではございますけれども、比較的新しい分野ということで予算額的にも、それから組織、定員的にも徐々にふやしてきているということだけは確かでございますし、それから試験研究は国だけではできないということで、各県でも水産試験場なり研究所というものをかなり持っておりまして、それぞれの都道府県でとれる魚の加工技術の開発というものをやっておりますので、そういうものに対する試験研究費の助成でございますとか、それから民間に対する助成という面もいろんな形で行っているわけでございます。
  156. 三治重信

    ○三治重信君 この開発の状況答弁を用意されておると思ったんだが、用意されてないということで、ここに書いてある例、我々はこういう新製品を余り利用する機会がなかったんですけれども、こういうのはどれぐらい今商品として出回っているんですか。ここに出ている商品はどれぐらい出回っているんですか。
  157. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 先生の今御例示ありました新製品、これは現在実は技術開発が大体行き着いて商品化の緒についたというものが大方でございます。  それで、実は私も先般、今国会での法律審査に対応いたしまして、これの見本品を全部取り寄せまして試食してみたわけでございますけれども、中にはもうすっかりネーミングも決め、それからラベルも決めまして一部スーパー等に出回っているものもございますけれども、中にはまだ試作品というものもあるわけでございますが、いずれにいたしましても、関係流通業界とこういう加工業界とのいろんな会合の席でも、かなりこれから商品として可能性があると言われているものがここに例示してあるものというふうに御理解いただきたいと思っております。
  158. 三治重信

    ○三治重信君 あと、加工の近海資源としてたくさん載っているのと、それから一番最後の十二ページには「近海低利用資源の漁獲量」というのが載っている。こういうふうな近海低利用資源というようなものについては、追加指定分と、こういうぐあいになっているんですけれども、こういうのは、とれたのが今のところ加工じゃなければ利用道がないという意味近海低利用資源のそういうものを例示されておるのか。  それともう一つ、イワシ、サバが一番量が多いんで、イワシはどっちかというと年々非常に漁獲量がふえている。サバは相当減っている。しかし、イワシ、サバが一番近海魚としてたくさんとれているわけなんですが、これを食用加工としてやる場合に、これはどれぐらいこういうのが食用加工として親しまれていくように技術的に進められるのか、まだどの点の技術開発が進まないのか、その状況をちょっとお示し願いたい。
  159. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 十二ページに出ております近海低利用資源ということで今回、従来のものに追加して指定する分につきましては、これはこのネーミングのとおりでございまして、これだけとれていながら残念ながら十分に利用されてない、食用としてでございますけれども、食用として利用されずに、一部はえさであるとか肥料であるとか、そういうほかの加工用なりあるいはそのまま養殖等で投与されているというものでございます。それからイワシでございますけれども、イワシは一番とれた六十一年が四百五十万トンとれまして、去年の六十二年も四百万トンを超える数量が近海でとれているわけでございます。  それで、これからの水産物の消費問題なり、あるいは水産行政そのものと言ってもいいかと思いますけれども、四百数十万トンとれるイワシというものをどうやって有効活用するかということが大きな分かれ目になってくるわけでございます。従来で言いますと、この四百数十万トンとれているもののうち生食用で食べられているものがわずか二%、それから加工に向かっておりますものが一七%、両方足しましても人間が食べているものは一九%ということで、二割に満たない数量しか、せっかくとれた貴重な栄養源でございますイワシというものが人間様によって消化されてないという形になっているわけでございます。ここのところせっかくとれているこのイワシを何とか消費拡大したいということで、一つは、すり身にいたしまして外国からいろいろと締め出されてまいりましたスケトウダラのすり身、これの代替なり、あるいは一味違ったかまぼこ原材料ということで、イワシ、サバを含めましてここのところ一万三千トン程度のすり身というものもつくられてきているわけでございます。  しかし、こういう加工の過程でにおいなりそれから色、これはどうしてもスケトウのように真っ白な色にならない。昔ですと、ある程度どす黒いといいますか、くすんだ色のかまぼこも食べられたわけでございますけれども、ここのところすっかり冷凍スケトウダラのすり身というものにならされまして、真っ白でなければ消費者が歓迎しないというふうなこともございまして、そういうための技術開発ということで、においなりそれから色を消すための技術というものを、例えば真空さらし法というような形でここのところようやく開発されてまいりましたので、こういうものを現実のものとしてまいりたいと思っておりますし、すり身にしないでほかの形でいろいろと加工食品の原材料にするという技術もできてきておりますし、従来ですと、缶詰の場合に調味料なり液体というものをある程度入れなければ缶詰としての長もちなり製造というものはできなかったわけでございますけれども、ここのところ焼き魚の缶詰というようなものが、先ほどの資料にもございました高真空缶詰製造法というようなものでできてまいっておりますし、ちくわでございますとか塩干品、こういうものを焼く際にも、遠赤外線焙焼法と言いまして、余り焦げないで均質に焼けるというような技術も開発されてきておりますので、こういうものが徐々に積み重なりまして、イワシ全体の加工のウエートの引き上げということに寄与できるんじゃないかというふうに現状では考えている次第でございます。
  160. 三治重信

    ○三治重信君 これは、見ていますと、だんだん若い子は生の魚を食べるのが非常に苦手だよね。大体骨のあるものを嫌うね。我々は小さいときから頭つきの魚を食べるのは、きょうはごちそうがある、こう思って食べたんだけれども、僕の孫なんか見ていると、魚を出すと、どうして食べるかというと、しばらく眺めておって、はしを入れてみると骨があるから、骨があってというようなことで、どうも魚に対する嗜好というものからだんだん僕は逃れていると思うんです。したがって、加工だね、骨抜き、皮抜き、頭抜きの加工品をこれからの若い者に提供しなければ水産物の消費はふえぬと僕は思うんです。嗜好が違っちゃった。殊に、尾頭つきの魚で、骨を食べぬで、うまいことはしさばきをして食べるということの苦労なりそういう味わいをもうやらなくなって、ほかのところの嗜好になっている。これはひとつ本当に考えていかないと、魚はとれたけれども食用には牛肉なりほかのものにいってしまう。だから、やはり練り製品なり加工品で勝負するよりほかにないと思うんです。こういう方向でひとつぜひやってもらいたいと思う。  それから、最近の水産で非常に問題になっているのは、養殖は非常にいいんだけれども、水産加工をした養殖のえさがもう非常に海水を汚すような格好で与えられているんじゃないかと思うんです、私は事実は余り知らぬけれども。だから何というんですか、魚を養殖する新しいえさがむやみやたらに投げ与えられてそれで海水を汚染するということを防ぐことをやらぬと、近海の養殖漁業というのは僕は必ず行き詰まると思うんです。環境整備、赤潮が出たり、それからほかの貝類とかなんかがみんな死んじゃったりするわけだと思うんですね。養殖をするためにえさを与える、与えたえさがそういうふうな環境被害を起こさぬようなえさを加工して与えることを考えにゃならぬと思うんですが、こういう部面についてはどうなっていますか。
  161. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 沿岸域の海洋汚染問題につきまして、いろいろ新聞等でも書かれている経緯があるわけでございます。実は中央公害対策審議会、ここで専門に審議していただいたわけでございますけれども、いわゆる汚染負荷のうち養殖によるものは極めて少ないということで、世上言われていることとは学術的にはかなり違う結論が出ておりますし、我々としてもそうであるというふうに考えている次第でございます。  しかし、地域によりましては、若干汚染の原因になっていることも事実でございますし、それから養殖漁業というものの今後を考えた場合には何とか適正な管理ということが必要なわけでございまして、我々といたしましても従来から給餌方法の改善でございますとか、いろんな指導をいたしてきているわけでございますけれども、ただいま先生から御提言ありましたことに沿いまして、まさしくそのとおりの飼料というものをここのところ開発して投与し始めているわけでございます。それはモイストペレットと申しまして、これはいわば生魚と配合飼料とを混合いたしまして成形して、海に投与いたしましても分散しない。それから落ちていくスピードが至ってゆっくりであるということで、分散しなくて下にたまらないということで、途中でできるだけ魚が多くそれを摂取するようにという工夫を施しました飼料も開発されまして、これの活用方というものがかなり進んできておりますので、今後ともそういう方向で海洋汚染につきましては慎重に対応をしてまいりたいというふうに考えております。
  162. 三治重信

    ○三治重信君 確かに海洋汚染を申し上げたんだけれども、養殖業の生産性を高めるためにも、えさが完全に利用され養殖魚の腹へ全部入るようなえさをつくる。それから、与え方も一般的にぽんとばらまくだけじゃなくて、魚がつっついたら出るとか、いろんな工夫をやってもらいたいと思うんです。  それから、これは新聞で見たんだけれども、カナダでかずのこをとるために、かずのこだけとって、ニシンをみんな加工場のそばにそのまま埋めて、においが立ってしようがない。こんなことをやっている。日本の企業の非常な無責任さというものがあって恥ずかしくてしようがないというような投書もあったし、それから一面、遠洋漁業で、洋上で漁獲するのもいいけれども、目的の高い魚だけとって、あとのやつは稚魚もほかのやつもみんな殺しちゃう。船から海へほかし投げちゃう。こんなのは持って帰られぬので、要らぬものはみんな海へほかして後は野となれ山となれ式の漁法というものをやっているが、こういうものについて、漁業の倫理というのか、そういうものもある程度やらぬと、日本の漁業も国際信用を失うのじゃないかと思うんですが、そういう部面についてどう考えられますか。
  163. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 日本と外国の場合、魚に対する消費形態というものがかなり変わっておりまして、日本の場合には、こういう島国で長い間魚で生きてきたということもございまして、比較的外国に比べると魚を丸ごと活用するということが進んでいる国かと思っております。  例えばスケトウダラで申し上げますと、卵は卵でメンタイコにいたしますし、それから魚肉はすり身にする。それから皮であるとか頭であるとか骨であるとか、人間が食べれないものにつきましてはミールとして活用するということで、丸ごと活用という日本らしい使い方をしているわけでございますけれども、一部遠洋等で操業しております際に、確かに本来の漁獲目的でない海産物等というものがああいう網にかかってきて、一部投棄しているということもございますけれども、日本の場合にはできるだけコストといいますか収入を上げたいということで持ち帰っている例が多いわけでございますが、一部そういう事実があることは事実でございます。  しかし、外国の場合には、例えばニシンなどはほとんど肉は食べないとかいろいろなことがございまして、局地的にはそういう問題があるようでございますけれども、せっかくとれた資源でございますので、これが全世界的に有効に活用されるという方向が好ましいことはもちろんかと思っております。
  164. 三治重信

    ○三治重信君 確かに、いろいろの肉でも、食用にする部分は食用にして、頭だとか腹だとかというのはミールにしたり他の動物のえさにしたり、そういうような加工というか、とにかく不要物は廃棄しても悪臭を放つが、加工すればまた利用できる。しかし、そこの間のコストをどういうふうにやるか、流通関係というものを整理していかにゃいかぬと思うんです。これは一面経済に乗せるということと、やはり環境保全を相当考えていかぬと、漁業に対する国民の離反が起きるんじゃないかと思うわけだから、ひとつそういううまいこと生産性を高めるために金の融資をやるというだけでなくて、それを取り巻く全体の水準を上げる技術上の指導、経済上の指導を相当改善せぬと、僕は日本の水産業というものがいわゆる世界的に発達した肉の加工技術やなんかと格差が出てきているのじゃないかと思うんです。肉の加工技術の方と水準を同じように合わしていくためにこれは相当な努力が要る。これをやるのは日本しかないのじゃないかと思うんですよ。だからひとつよろしくお願い申し上げます。  そこで大臣、この水産加工については非常に低利融資をやるようになっているんだけれども、私はもう一つ、農産物やなんかもうえらい高い値段、小麦など三倍ぐらいの値段で製粉業者に渡して、そうして消費せい消費せいといってやっているんだけれども、こういうような加工産業でこれだけ融資するなら、ほかの農水省の農産物の加工の近代化のために、これだけじゃなくて農水省全体の加工上の融資にもっと幅を広げたらどうかと思うんですが、どうなんですか。
  165. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 水産加工の場合には、おかげさまで皆様の御理解を得まして、二百海里ショックということを契機としてこういう長期低利制度融資というものができてきているわけでございますが、農林水産省全体といたしましては、例えば乳業関係につきましては乳業資金という形で公庫の貸し付け対象ということに特別に認めていただいておりますし、それから一般の加工につきましても、新規用途開発資金という形で、新しい技術でございますとか新しい資源の開発、こういうものにつきましては先般公庫資金対象ということにもいたしております。それから、農林中央金庫の系統資金におきまして、農産加工の場合には系統関連がやる場合も多うございますが、それ以外でもその系統と一般とが一緒になっているものであるとか、比較的第一次産業に近い加工につきましては、もちろん農林中金でも関連産業貸し出しという形で十分やっておりますので、そういうものを総体として活用してやはり加工につきましても対応していくべきであるというふうに考えております。
  166. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 一言だけ長官答弁に補足をいたしておきますけれども、今小麦のことをおっしゃったんではないか。製粉云々とおっしゃいましたが、そういうところまで政策融資制度融資もどうかなと。ちょっと研究はしてみますけれども、分野調整的な、中小関係、例えば商工中金、そういう関係との競合とかあるいは中小企業金融公庫とか、いろいろ出てまいります。そういう分野調整問題がございますし、今長官言うように、やっぱり系統融資の中にアグリビジネスとして融資をしていくというのが本体ではないかなと。  なおまた、お孫さんに触れまして言っておられましたが、これは私も実は驚いたんでございますけれども、先生の認識と同じなんであります。うちの孫は今離乳食を食べているのは、ミジンコを粉にしまして、そしてそれをもう離乳期から魚の味を覚えさせるというか、日本型食生活の一環としてさせるというのか、そういう技術開発を、私実は驚いたわけでありまして、やっぱりそういう工夫、今技術の点が盛んに先ほど来議論されているわけでございますが、そういう技術開発、こういうものは極めて重要なことだなと私も感じ入って先ほど聞いたわけでございます。
  167. 三治重信

    ○三治重信君 ありがとうございました。
  168. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私が最後でございます。最後で得をすることもあればいいがなと思うけれども、なかなか得を感じたことがありませんが、一つ一つ削り落として落ち穂を拾ってお尋ねしなければいけない、こういう心境をひとつお察し願いたいと思います。  ところで、落ち穂を拾うという気持ちで申し上げるわけではありませんが、どうしてもこの機会に申し上げておきたい一つは、大臣は先ほど記者会見も済んだと、こうおっしゃっておられましたね、インタビューですか。訪米も秒刻みで迫りつつある。それで、私この前、心を込めて激励を申し上げる気持ちと申し上げたが、叱咜と申し上げると失礼になるかと、こう申し上げたのを覚えていらっしゃると思うんですが、ただいまの心境は叱咜も含めて叱咜激励をしたいという、次のことであります。  ワシントン情報によると、ごらんになったと思いますが、リン・アメリカ農務長官とヤイター通商代表のお二人が異例の会見をして、そして日本の牛肉、オレンジ問題で記者会見をされておりますね。その会見の談話は、市場開放が日本の消費者の利益になることを強調し、三月末で期限切れとなるこれらの輸入割り当て制度の撤廃を促すとともに、日本が自由化を示さず問題が解決しない場合は直ちにガットへ提訴することを明らかにし準備していると報じておりますね。そこで、静かに考えてみますと、アメリカの代表は自分の国民の国益を守るというこの使命があると思います。ならば、日本のまた大臣には、日本国民の国益を守るこの使命が当然あるべきであります。そこで問題は、誠意を持って粘り強く当たれば道おのずから開けると私はいつも言うんですが、問題は、そのぶつかり合いの中でどういう答えを、どちらも国益を守るという姿勢を持っておられるわけですから、その対決場の対話の中で、協調の中でどのように国益が守られてくるかという、これが私が聞きたいことであります。  そこで、農水大臣はこれをどのように受けとめてどう対処なさるつもりか決意のほどを承りたい、これが第一点。
  169. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 突然の御質問で、水産加工の議題とちょっと違う次元でございまして、答弁を申し上げるのにいささかちゅうちょいたします。しかし、お尋ねでございますので、先ほど私がこの委員会におくれてきた理由、それを率直に申し上げまして、また当委員会におきましても、衆議院の委員会におきましても、両院の予算委員会におきましても、また新聞報道等報道関係、広く私の訪米の時期いかんということで、これはまさに先ほど申し上げたお互いの関心事でございますので、そういう意味でそのことだけを先ほど申し上げた次第でございます。  内容につきましては、これから、それじゃどのような決着を見るために運ぶかどうかとかということは、今やっとテーブルができたところでございますから、私がまたその前に、私の考えが例えばまとまっておったにしても、外交交渉でございますのでここで申し上げるわけにはまいりません。しかし、おのずから私も日本国政府の一員といたしまして、また農林水産省の責任者といたしまして国益を守るのは当然である、こういうことでございます。これ以上のコメントは差し控えさしていただきたいと思います。
  170. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 ひとつ大胆にして細心、ぜひ結果は国民が喜ぶ方向に使命を果たしてもらうことを期待いたしておきます。  次に、水産庁長官お尋ねいたします。  去年の秋、実は私の部屋にある会社の課長が見えまして、こういうことを言って、私は非常に共鳴をいたしました。二十世紀の人類は陸上の資源を食糧として生きてきたが、主としてですよ、二十一世紀の人類は海洋資源を食糧として生きなければいけない、生きるだろう、よって我が会社では海洋資源の調査を既に始めておる、こういうことを実は言ってくれたんです。  それには背景があります。実は国会で私、対馬丸事件、沖縄戦で疎開学童が悪石島沖で潜水艦にやられました。アメリカの潜水艦にやられまして、七百余名の、父兄合わせて千五百名の命が散っている。いまだにその対馬丸の所在が明らかになっておらない、どの辺だろうということはわかっておりますが。それを、国会の質疑を聞いて、その某課長が資料を携えて私の部屋に来たわけであります。それのありかがわかることはわけありませんよ、私たちは海洋資源を調査しておる、その調査の中で特に悪石島の近海を通る場合には、そのつもりで調査すればすぐ対馬丸の所在がわかるんですよというくだりなんです。こういういきさつがあったわけであります。  それで、政府とされても、私が言いましたこの考え方に立っておられるのか、あるいは立っておられぬのであるか、あるいはまた関心を持って調査を計画されておるのであるか、あるいは調査を始めておるのであるか、いかがでしょう。
  171. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 全地球的に言いましてこれだけ広い大洋、しかも深度のはかり知れない海洋でございます。こういうところの資源問題につきましては、単に海産物だけじゃなくて、鉱物資源、これをも含めまして二十一世紀の大きな産業として、国を初めいろんな産業界が海洋に注目してきているということは当然でございまして、我々水産庁の局面で考えましても、これからそういう新漁場なりあるいは新資源、特に深海に生息しております、我々といたしましてはまだ完全にといいますか、全く利用できていない資源、こういうものをどう発見し、どう活用していくかということがこれからの食生活を考える際にも、それから水産行政を考える際にも非常に重要なことになってきております。  こういう線に沿いまして、水産庁といたしましても海洋資源開発センター、こういう法人をつくりまして、これを中心に世界各国のいろんな海産物の新資源の調査開発というものをやっておりまして、これに対して国からも助成いたしておりますし、国自身大型の調査船でこういう調査の一翼を担っているということで、二十一世紀に備えたいというふうに考えている次第でございます。
  172. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 すべて後追いをするのではなく、夢と希望を二十一世紀に向けて、宇宙時代になっておる今日でありますから、そのような姿勢で、感覚でひとつ日本の行政を、そして政策を打ち立てていただきたいということを要望しておきます。    〔委員長退席、理事高木正明君着席〕  次に、落ち穂を拾って尋ねますが、水産加工業経営基盤は脆弱である、これは個人企業が六〇%を占めておるということでもはっきりいたしております。ところで、私がタッチした、触れた工場の社長とか、あるいはまた要望された問題点が一致しておりますのは運転資金の問題、施設設備はさることながら、運転資金がありませんでもう行き詰まっております、何とかなりませんかね、こういう強い要望がたくさんございます。その点について、運転資金についてどのように考えておられるのであるか。先ほどからの質問でもいろいろ因果関係があるやに察せられますが、どこかで行き詰まってそのように立ち往生をしておるのでないか、現に私もそういう実感を持っておったようなことが数々ございます。  以上の点で、まずお尋ねします。
  173. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 水産加工関係の運転資金といたしましては、こういう法律による制度融資という形はとっておりませんけれども、いわゆる政策融資ということで、その基準金利と実効金利との間を利子補給するという形で、六十三年度からの資金名で申し上げますと、水産加工経営改善促進資金という形で、水産の場合にはこういう苦しい状況でございますので、異例の処置といたしまして運転資金融資助成をいたしている次第でございます。ただ、これにつきましては、国のかかわりぐあいは国が利子助成をするという形でございまして、都道府県が特別会計をつくって窓口として融資するという仕組みをとっておりますので、こういう法律と違う次元での助成というふうになっている点は御理解いただきたいと思います。    〔理事高木正明君退席、委員長着席〕
  174. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 これはぜひ御検討願いたいと思います。実現させていただければ、必ず私は前進、発展があると信じております。この点、ひとつ御検討をお願いいたします。道を開いてくださるように要望しておきます。  次に、どうしてもまた沖縄の問題に触れなければいけませんのですが、沖縄県での水産加工品の生産量は年間四千から五千トン程度の横ばいの状態というのが現状であります。そのほとんどが練り製品、かつおぶしでございます。特に、かつおぶしの生産は、最近のカツオ漁業の不振と県外からの移入品の流入により厳しい状況を迎え、新たな展開を迫られております。これまで水産加工業の振興についてはかつおぶし工場、削り節加工場、モズク加工場、すり身加工場など、漁獲物の処理、保存のための基本施設を中心に整備が図られてきたことも事実でございます。今後、国民の食生活の多様化、高級化、簡便化、減塩化という消費者ニーズに即応した地域性の豊かな付加価値の高い水産加工業の育成を促進すべきでありますが、しかし、言うはやすく、なかなかこれを定着させるということは困難な点であると思われます。沖縄県の水産加工業を振興するために政府はどのような施策を講ずるお考えを持っておられるのか、その点をまずお伺いいたしたい。
  175. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 沖縄県の水産加工業の現状につきましては、ただいま先生からもお話ございましたように、六十一年度で、練り製品が主体でございますけれども、総体で五千トンということで、ここしばらく数年間ずっと四千トン台で推移してまいりましたのが、五千トンということで、全体としてはふえているわけでございますし、それから経営体数といたしましても横ばいないし若干ふえるという形にあるわけでございます。  しかし、いろいろと問題を持っていることはもちろんでございますが、こういう沖縄県の水産加工業というものをこれからどう持っていくかということでございますけれども、水産加工業というものは、そもそもそれぞれの地域で水揚げされました魚、そういうものを使っているわけでございますけれども、沖縄の場合には、加工原料に適した多獲性魚、こういうものが少のうございまして、県外からの移入品に依存する割合がかなり高いということが一番の問題かと思っているわけでございます。  したがいまして、県内に水揚げされる魚種等の加工原料としての最大限の活用を促進するということから申し上げまして、新沖縄県水産業構造改善特別対策事業、これはいわゆる沿岸漁業構造改善事業の一つでございますけれども、これによりまして製氷施設でございますとかあるいは共同処理加工施設、それから荷さばき施設、こういうものの整備を現在行っているわけでございまして、できるだけこういう整備を通じまして、沖縄のせっかく五千トン台になっております加工業というものの今後を期したいというふうに考えている次第でございます。
  176. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 特に、最近実績を上げておるパヤオ漁業の問題ですね。これについて政府としてどのように考えておられるか。
  177. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) ただいまお話がありましたパヤオ漁業につきましては、最近技術が開発されてまいりまして、非常に魚の寄りつきがいいということで沖縄で普及し始めてきているわけでございますけれども、いろいろ在来型の漁業との調整という問題も局地的には出ているようでございまして、そういう調整を図りながら、近海の資源を増殖なり寄りつかせるためには非常に有効な手段の一つでございますので、今後その推進に待ちたいと思っている次第でございます。
  178. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 漁業が北から南に移ったようなもので、余りにも魅力があるものだからこれがまたトラブルの場所にもなっておりまして、管理、行政指導、その点ひとつ念頭に置いていただきたいと思います。きょうはこの点はこのぐらいにいたします。  付加価値の点でちょっと疑問がございますので、付加価値の高い水産加工業の育成ということはこれはもう時代の趨勢、当然のことでありますが、この資料の四ページに、缶詰が漸減している。多くなるべきではないかと私は思っておりましたら、缶詰の量が、推移が減っておりますね。これはどういうわけなんでしょうか。
  179. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 缶詰につきましては、国内消費もさることながら、輸出というものが従来の缶詰製造相当部分を占めていたわけでございますけれども、ここのところの円高傾向ということと、それから東南アジアでございますとかあるいは韓国、こういうところが円高ということとも関連いたしまして輸出能力を持ってきたということで、輸出量の減ということがトータルとしての缶詰の生産量の減につながっておる次第でございます。
  180. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、沖縄県の水産業の現状と問題点及びその振興策という観点から次のことをお尋ねします。  沖縄県の水産業関係融資をなさったわけですが、その融資件数と金額の実績ですね、これは大前提。  それで次に、イ、ロ、ハ、ニ、四つに砕きまして、イが漁業に対する融資された件数と金額の実績、これがイ。ロが、水産加工業に対する融資された件数と金額。ハ、金融機関別の融資された件数と金額の実績。ニ、資金種類別の融資された件数と金額の実績。  以上、申し上げた類別で、もし今お答えできるならば聞かしてもらいたい。
  181. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 沖縄県の水産金融全体を総括して申し上げますと、制度資金の比重が極めて高い。沖縄県の制度資金依存率というものが約六割ということで、全国では約三割でございますので、制度資金のウエートというものが全国に比べると倍という形に相なっておりまして、この中の大宗を占めておりますのはもちろん沖縄振興開発金融公庫資金、これが中心的な役割というものを持っているわけでございます。  それから、それぞれ今イ、ロ、ハ、ニに分けられまして具体的数字についての御質問があったわけでございますけれども、ちょっと非常に細かい数字になりまして、口頭で申し上げましてもお聞き取りにくい点があろうかと思いますので、恐縮でございますけれども、後ほど一覧表にいたしまして先生のところに届けさしていただきたいというふうに思っております。
  182. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それでは、重ねてお願いいたしますが、今私が申し上げました項目に準じて資料として求めたいと思います、それに基づいて私検討してみたいと思っておりますので。よろしいですね。――それじゃ、以上で結構です。
  183. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  184. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  185. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  原材料供給事情変化に即応して行われる水産加工業施設改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  186. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  菅野君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。菅野君。
  187. 菅野久光

    菅野久光君 私は、ただいま可決されました原材料供給事情変化に即応して行われる水産加工業施設改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時情置に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合及び二院クラブ・革新共闘の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     原材料供給事情変化に即応して行われる水産加工業施設改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   水産加工業は、重要な食料産業として国民の食生活の安定に大きく貢献してきた。しかるに、最近における水産加工業を取り巻く情勢は、二百海里規制の強化による原料魚供給の不安定化、水産加工品の需要の低迷、沿岸国の製品輸出指向や円高の急速な進行による水産加工品の輸入の増大等厳しいものがあり、業界において圧倒的多数を占める脆弱な体質の零細規模業者は、苦しい経営を余儀なくされている。   よって政府は、本法の施行に当たり、次の事項の実現に遺憾なきを期すべきである。  一 水産業の発展に資するため、水産物の流通加工対策の一層の充実に努めること。    特に、漁業との関連性に配慮した水産加工金融制度の確立について検討すること。  二 本資金の融通に当たっては、近海資源の食用加工利用の実態等を考慮し、貸付対象地域の弾力的見直し等その適切な運用に努めること。    また、本資金水産加工経営改善促進資金との関連性にも十分留意して、両資金の融通に必要な万全の措置を講ずること。  三 水産加工品の輸入の急増、水産加工品と畜産物との競合の激化、情報化の進展等に伴い、水産加工業経営体質の強化が急務となている実態にかんがみ、水産加工業者の組織化・共同化を促進すること。  四 水産加工品に対する消費者のニーズが多様化してきている現状と製品輸入が急増を続けている実態に対処して、新製品・新技術の開発・導入と新製品の消費の定着・拡大を推進すること。   右決議する。  以上でございます。
  188. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) ただいま菅野君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  189. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) 全会一致と認めます。よって、菅野君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの附帯決議に対し、佐藤農林水産大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。佐藤農林水産大臣
  190. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を尊重し、十分検討の上、善処してまいりたいと存じます。
  191. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  192. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  193. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) 次に、漁港法の一部を改正する法律案漁港法第十七条第三項の規定に基づき、漁港整備計画の変更について承認を求めるの件、漁業協同組合合併助成法の一部を改正する法律案、以上三案件を便宜一括議題といたします。  まず、漁港法の一部を改正する法律案について、政府から趣旨説明を聴取いたします。佐藤農林水産大臣
  194. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 漁港法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主な内容を御説明申し上げます。  漁港の整備につきましては、昭和二十五年の漁港法の制定以来、水産業の発達を図り、国民生活の安定と国民経済の発展に寄与するという観点から、同法に基づき積極的に推進してきたところであります。  しかしながら、近年、水産業を取り巻く情勢は大きく変化しており、増養殖技術の発達等を背景に、増養殖漁業が著しい進展を見せ、特に養殖漁業漁業生産金額の二割近くを占めるに至っております。また、国民の食生活の嗜好の変化等に伴い、鮮度の高い魚介類を速やかに消費地へ輸送することが求められております。このような漁港をめぐる諸情勢の著しい変化に伴い、漁業根拠地としての漁港に求められる役割は高度化、多様化してきております。  このような状況を踏まえ、その機能が十全に発揮されるよう漁港の整備を一層推進することとし、この法律案を提出した次第であります。  次に、この法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、漁港施設のうち機能施設について、必要な施設の追加等を行うことであります。  すなわち、新たに、水産種苗生産施設等の増殖及び養殖用施設、漁船の破砕その他の処理を行う廃船処理施設及び広場、植栽、休憩所等の漁港環境整備施設を追加することとしております。このほか、輸送施設対象に駐車場及びヘリポートを加えるとともに、漁船漁具保全施設、補給施設等についても、対象施設の追加等を行うこととしております。  第二に、漁港の整備を推進するため、日本電信電話株式会社の株式の売り払い収入に基づく国の無利子貸付制度のうち収益回収型の資金を活用することであります。  すなわち、国は、水産業協同組合に対し、漁港施設等の整備に要する資金を無利子で貸し付けることができることとしております。  以上がこの法律案の提案の理由及び主な内容であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。     ─────────────
  195. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) 次に、漁港法第十七条第三項の規定に基づき、漁港整備計画の変更について承認を求めるの件について、政府から趣旨説明を聴取いたします。佐藤農林水産大臣
  196. 佐藤隆

    ○国務大臣(佐藤隆君) 漁港整備計画の変更について承認を求めるの件につきまして、その提案の理由及び主な内容を御説明申し上げます。  漁港につきましては、漁業生産の基盤であり、かつ、水産物流通の拠点であるという重要性にかんがみ、漁港法に基づき漁港整備計画を定め、国会の承認を受けて、計画的に漁港施設の整備を図っているところであります。  現行の漁港整備計画は、昭和五十七年第九十六回国会において承認を受けたものでありますが、本年度をもって計画期間が終了するため、最近における水産業をめぐる情勢の変化に即応するよう、その全部を変更し、国会の承認を求めることとした次第であります。  次に、本件の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  今回の漁港整備計画は、漁業と漁港施設の現状を基礎とし、我が国周辺水域有効利用等による漁業生産の確保、流通機構の改善、水産加工業の振興、漁港の安全性及び快適性の確保並びに活力ある漁村の形成の観点に立って策定いたしました。  計画内容といたしましては、沿岸漁業及び増養殖漁業の振興上重要な漁港、沖合漁業の根拠地として重要な漁港、遠洋漁業の根拠地として重要な漁港並びに漁場の開発または漁船の避難上特に必要な漁港について、それぞれその整備を図ることとしております。  整備漁港の選定に当たりましては、指定漁港のうち漁業振興上及び地域振興上重要であり、かつ、漁港施設の不足度の高いもの、事業効果の大きいもので緊急に整備する必要があるものを採択いたしました。その結果、昭和六十三年度以降六年間に、四百九十港の漁港について漁港修築事業を実施することとしております。漁港修築事業の内容といたしましては、それぞれの漁港に適応した外郭施設、係留施設水域施設、輸送施設、漁港施設用地等を整備することとしております。  なお、以上申し上げました漁港整備計画につきましては、漁港法に基づき漁港審議会の意見を徴し、妥当であるとの趣旨の答申を得ております。  以上が、本件を提案する理由及びその主要な内容であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御承認くださいますようお願い申し上げます。
  197. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) 次に、補足説明を聴取いたします。田中水産庁長官
  198. 田中宏尚

    政府委員田中宏尚君) 漁港整備計画の変更について承認を求めるの件につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  まず、現行の漁港整備計画の実施状況を見ますと、計画当初に予定しました総事業費一兆二千億円のうち、昭和六十二年度までに実施済みの事業費は八千九百五十三億円で、その進捗率は約七五%となっております。  次に、変更後の漁港整備計画に基づいて整備を進めることとしております四百九十港の種類別内訳を申し上げますと、第一種漁港が百四十九港、第二種漁港が百七十九港、第三種漁港が七十七港、特定第三種漁港が十一港、第四種漁港が七十四港となっております。これらの漁港を、昭和六十三年度以降六年間に、総事業費一兆三千百億円をもって、漁港修築事業により整備することといたしております。  また、現行の漁港整備計画に定められております整備漁港と、変更後の漁港整備計画に定められております整備漁港との関連を申し上げますと、現行の漁港整備計画から引き続き変更後の漁港整備計画に採択されるものは三百三十九港、新規に採択されるものは百五十一港となっております。  変更後の漁港整備計画に採択されなかったその他の漁港につきましても、必要に応じ、漁港改修事業または漁港局部改良事業により整備することといたしております。  なお、漁港修築事業に漁港改修事業、漁港局部改良事業を合わせた六年間の総事業費は、調整費等を含め二兆四千百億円となっております。  以上をもちまして、漁港整備計画の変更について承認を求めるの件の提案理由の補足説明を終わります。     ─────────────
  199. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) 次に、漁業協同組合合併助成法の一部を改正する法律案について、提出者から趣旨説明を聴取いたします。衆議院農林水産委員長菊池福治郎君。
  200. 菊池福治郎

    衆議院議員菊池福治郎君) ただいま議題となりました漁業協同組合合併助成法の一部を改正する法律案につきまして、提案の趣旨及びその主な内容を御説明申し上げます。  本案は、三月二十三日の衆議院農林水産委員会において全会一致をもってこれを成案とし、委員会提出の法律案とすることに決したものであります。  御承知のとおり、漁業協同組合合併助成法は、昭和四十二年に制定され、以来三回にわたり、同法に基づく合併及び事業経営計画の認定制度の適用期間の延長措置を講じてきたところであります。  その間、本制度をてこに漁港協同組合の合併が進められてまいったのでありますが、最近における漁協の経営状況と、これを取り巻く経済情勢の急速な変化等に対応して、零細な漁協の経営基盤を強化し適正な事業運営を行うことができる漁協を育成することが緊急の課題となっております。  こうした課題にこたえるため、昭和六十年三月末日をもって期限切れとなっている同法に基づく合併及び事業経営計画の認定制度の適用期間を、この法律の施行の日から、昭和六十八年三月三十一日まで復活延長することとし、この合併及び事業経営計画の認定を受けて合併する漁業協同組合に対し、従前と同様、法人税、登録免許税、事業税等の軽減措置並びに漁業権行使規則の変更または廃止についての特例措置を講じ、合併促進の一助にしようとして、ここに本案を提出した次第であります。  以上が提案の趣旨及びその主な内容であります。  何とぞ御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  201. 岡部三郎

    委員長岡部三郎君) 三案件に対する質疑は後日に譲ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時九分散会